2023年10月24日火曜日

備忘録(23/10)

備忘録(2023/10/31)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
米共有オフィス大手ウィーワーク(WE.N)が早ければ来週にも連邦破産法11条の適用を申請する計画だと事情に詳しい関係者が31日に明らかにした。
同社の株価は時間外取引で32%下落した。年初来下落率は約96%。
ウィーワークはコメントを控えた。
同社はこの日、一部の社債について、支払い猶予期間の終了が近づく中、一時的に支払いを延期することで債権者と合意したと明らかにした。
6月末時点の純長期債務は29億ドル、長期リース契約は130億ドル超だった。8月には事業継続の前提に「重大な疑義」があると表明していた。
ウィーワークにはソフトバンクグループが出資している。
米電気自動車(EV)メーカー、テスラの株価は、ここ2週間足らずで2割近くの価値を失う勢いだ。EV需要が失速し始めているとの懸念が重しとなっている。
株売りのきかっけは、テスラが7-9月(第3四半期)決算の電話会見で、成長に対して従来よりも弱気な見方を示したことだ。その後、複数の自動車メーカー大手やウォール街のアナリストから暗い発言が続き、今週にはパナソニックホールディングス(HD)や半導体のオン・セミコンダクターも、EV業界に対して厳しい見方を示した。
こうした警告は、全米自動車労組(UAW)と激しい労使交渉を繰り広げてきた米自動車メーカー全体の株価を総じて圧迫。それでも、テスラの下げは突出する。決算を発表した10月18日以降の下落率は約20%に達し、時価総額から約1450億ドル(約21兆9300億円)が吹き飛んだ。これに対し、同期間におけるS&P500種株価指数の下落率は3.6%、ナスダック100指数が4%余りだ。
モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナス氏は31日、業界全般の弱含みについて触れたリポートで「問題の核心は、コスト上昇、価格下落、金利上昇、需要鈍化の中で、証明されていないEV戦略に投資する資本集約的なセクターにある」と指摘。「投資家はここにきて、EVへの巨額投資は価値を高めるどころか、価値を破壊するかもしれないとの見方に目覚めつつあるようだ」と述べた。
高金利により車の所有コストが高騰しているため、自動車業界全体の見通しは悪化している。これに物価高が重なり、消費者が大型商品を購入する能力は低下している。EVはまだ比較的新しい技術であり、充電網も未整備なことから、この影響を真っ先に受けている。
●決算関連
米製薬大手ファイザーが31日発表した2023年7〜9月期決算は、最終損益が23億8200万ドル(約3600億円)の赤字に陥った。前年同期は86億800万ドルの黒字だった。新型コロナウイルス向けのワクチンや治療薬の販売縮小が止まらず、買収に伴う関連費用が膨らんだ19年10〜12月期以来、3年9カ月ぶりの赤字に転落した。
売上高は42%減の132億3200万ドルだった。アナリスト予想(133億4000万ドル)を下回った。なかでもコロナワクチンは70%減、コロナ向け飲み薬「パクスロビド(日本での製品名パキロビッドパック)」は97%減と大幅な減収だった。
コロナ関連製品を除いたベースの売上高は10%増だった。発熱やせきなど風邪の症状を引き起こすRSウイルス(RSV)の高齢者向けワクチン「アブリスボ」が好調だった。22年に買収した片頭痛治療薬や遺伝性の血液疾患「鎌状赤血球貧血」の治療薬も堅調だった。
市場では米国で需要が高まる肥満症薬の早期開発への期待が高まっている。デンマーク大手ノボ・ノルディスクや米イーライ・リリーが先行しており、同日開いたファイザーのアナリスト向け説明会でも肥満症薬をめぐる質問が殺到した。ファイザーのミカエル・ドルステン最高科学責任者(CSO)は「新たな飲み薬の臨床試験データを年内に公開できるのを楽しみにしている」と述べるにとどめた。
23年通期の売上高は前期比4割減の580億〜610億ドルとなる見通し。米国政府によるコロナワクチンと治療薬の返却などが影響する。業績悪化に対応するため、10月中旬には総額35億ドルのコスト削減策に踏み切ることも明らかにした。米メディアによると24年2月までに東部ニュージャージー州の施設で800人近い人員削減を実施するなど、人件費や物流費の大幅抑制に取り組む。
米重機械メーカーのキャタピラー(CAT.N)が31日発表した第3・四半期決算は、北米の堅調な建機販売が寄与して2桁の増益となった。ただ、機械需要に鈍化の兆しが見られたことを嫌気し、株価は6.7%安で取引を終えた。
ディーラー在庫が3四半期連続で増加したほか、受注残が前期比26億ドル減少し、機械需要がピークを打った可能性を示唆した。
経営陣は決算説明会で投資家の懸念払拭に努めた。アンドリュー・ボンフィールド最高財務責任者(CFO)はディーラーの建機在庫について「典型的な3─4カ月分の販売の範囲内」と説明した。また「ディーラーがより多くの在庫を持ちたい分野や製品もまだある」と述べ、在庫水準について憂慮していないとした。
第3・四半期の利益は27億9000万ドルに増加。1株当たりでは5.45ドルで、アナリスト予想の4.79ドルを上回った。
売上高は168億ドルで前年同期から12%増加した。
英エネルギー大手BP(BP.L)が31日発表した第3・四半期決算は33億ドルの黒字と、市場予想を下回った。
石油トレーディングと精製マージンは好調だったが、ガス事業が低迷したほか、米国の洋上風力発電プロジェクトで多額の評価損を計上した。
配当は1株7.27セントで据え置いた。15億ドルの自社株買いプログラムを今後3カ月延長する。株主還元の方針に変更はなかった。
0910GMT(日本時間午後6時10分)現在、BPの株価は5.4%下落している。
ニューヨークの洋上風力発電プロジェクトで5億4000万ドルの評価損を計上した。「インフレ圧力と許認可の遅れ」を反映した条件改善の要求を当局に拒否されたという。
純利益に相当する実質再調達原価利益は33億ドル。同社がまとめた市場予想の40億ドルを下回った。ガス・低炭素部門が大幅な減益となったことが主因。
ただ、前四半期の26億ドルからは増益となった。石油・ガス生産の増加、好調な精製マージン、製油所のメンテナンス減少、「非常に好調な石油トレーディング」が寄与した。天然ガスの販売・トレーディングは低調だった。
天然ガスのトレーディング低迷は市場の「ボラティリティーの不足」が原因という。過去2四半期は「非常に好調」だった。
同社は今年の設備投資が予想レンジ(160億─180億ドル)下限の160億ドルになるとの見通しを示した。第4・四半期の業界の精製マージンが前期比で「大幅に低下」するとの見方も示した。
欧州化学最大手のドイツBASFが10月31日発表した2023年7〜9月期決算は、最終損益が2億4900万ユーロ(約400億円)の赤字(前年同期は9億900万ユーロの黒字)だった。世界的に化学品の需要が低迷し販売価格も下落。石油・ガス開発を手がける子会社は5億3500万ユーロの最終赤字となった。
●先進国、グローバル、金融市場
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのストゥルナラス・ギリシャ中銀総裁はインフレ率が2024年半ばに持続的に3%を下回った場合、利下げを検討すると述べた。独経済紙ハンデルスブラットが31日に公表したインタビューで語った。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビルロワドガロー・フランス中銀総裁は31日、フランスではインフレが明らかにピークを過ぎたが、フランス経済は底堅く、金融政策の有効性を裏付けていると述べた。
声明で「このような経済状況は先週26日のECB理事会で決定された利上げの一時停止を十分に正当化する」と指摘。「われわれの金融政策は今、2025年までのインフレ率の2%回帰に向けて確実に前進しているという確信と、なお必要な限り金利を現行水準で安定的に推移させる忍耐によって導かれなければならない」とした。
10月の米消費者信頼感指数は102.6と9月改定値の104.3から低下した。インフレや金利上昇、政局を巡る懸念が根強く、3カ月連続で低下した。
ロイターがまとめたエコノミスト予想では100.0への低下が予想されていた。
CBのチーフエコノミスト、ダナ・ピーターソン氏は「消費者は引き続き物価全般、特に食料品とガソリンの上昇に頭を悩ませている。また、政治情勢や金利上昇に対する懸念のほか、最近の中東情勢を受けて戦争や紛争に関する懸念も高まった」とした。
米連邦住宅金融庁(FHFA)が31日発表した8月の米住宅価格指数(季節調整済み)は前年同月比で5.6%上昇と、7月の4.6%上昇から3カ月連続で伸びが加速した。軟化していた住宅市場の回復が浮き彫りとなった。
前月比では0.6%上昇。7月は0.8%上昇だった。
地域別では中部大西洋沿岸地域とニューイングランド地域でそれぞれ前年同月比8.6%、8.4%上昇し、8月の地域別上昇率で最大となった。
これとは別に米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが同日発表した8月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は、全国の住宅価格指数が前年同月比2.6%上昇し、住宅市場が夏季に底打ちしたとの見方を裏付けた。7月の1%上昇していた。
都市別ではシカゴが4カ月連続で最も大きく上昇した。
第3・四半期の雇用コスト指数(ECI)は前期比1.1%上昇し、伸びは前四半期の1.0%上昇から加速した。市場予想の1.0%上昇も上回った。
米連邦準備理事会(FRB)が高金利を当面維持する可能性が高まった。
前年同期比では4.3%上昇と、前四半期の4.5%上昇から鈍化した。
賃金・給与は1.2%上昇。伸びは前四半期の1.0%から加速した。前年同期比では4.6%上昇。前四半期も同率だった。賃金の伸び率は引き続き新型コロナウイルス流行前を上回っている。
民間部門の賃金・給与は1.1%上昇。前四半期の1.0%上昇から加速した。前年同期比では4.5%上昇した。
州・地方政府部門の賃金・給与は1.8%上昇。前四半期の0.8%上昇から加速した。教育・保健サービス部門と行政部門の賃金が上昇した。前年同期比では4.8%上昇した。
全部門のインフレ調整後の賃金・給与は前年同期比0.9%上昇。前四半期は1.7%上昇だった。
諸手当は0.9%上昇。前四半期も同率の伸びだった。前年同期比では4.1%上昇した。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、ルベーラ・ファルーキ氏は「賃金は引き続き高いペースで上昇している。FRBは再利上げの選択肢を残しておくだろうし、しばらくの間は制約的な政策スタンスを維持するだろう」と述べた。
欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が31日発表した第3・四半期のユーロ圏域内総生産(GDP)速報値は前期比0.1%減と予想を下回った。
前年比では0.1%増に急減速した。ロイターがまとめた市場予想は前期比0.0%、前年比0.2%増だった。
国別ではフランスが前期比0.1%増、スペインが0.3%増、ベルギーが0.5%増。ドイツは0.1%減。イタリアはゼロ成長、オーストリア、ポルトガル、アイルランド、エストニア、リトアニアはマイナス成長だった。
ユーロ圏経済は高インフレ、高金利、緩やかな財政引き締めという逆風に直面している。
欧州連合(EU)統計局が31日発表した10月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)上昇率(速報値)は前年比2.9%と、9月の4.3%から低下し、2021年7月以来の低水準となった。
エネルギー価格の下落と高金利に伴う需要後退を受けた。市場は欧州中央銀行(ECB)の利上げが終了したとの見方を強めそうだ。
インフレ率は先月から急低下し始めたが、これは前年のエネルギー価格の大幅上昇が比較する上で影響したためだ。
ECBが注視する食品・エネルギー・アルコール・たばこを除くインフレ率も4.5%から4.2%に低下し、22年7月以来の低水準となった。
全構成要素の上昇率が前月を下回った。ただ、サービス業では4.7%から4.6%と減速幅は小さく、賃金上昇の影響とみられている。
EUが同日発表した第3・四半期のユーロ圏域内総生産(GDP)速報値は前期比0.1%減。前年比では0.1%増に急減速した。ロイターがまとめた市場予想は前期比0.0%、前年比0.2%増だった。
ECBは今月26日の理事会で11会合ぶりに政策金利の据え置きを決定したが、ユーロ圏経済が減速すると同時にインフレが鈍化していることは、ECBの利上げが確実に終了したことを示している可能性がある。
クインテット・プライベート・バンクのダニエレ・アントヌッチ最高投資責任者(CIO)は「インフレ鈍化と景気減速を踏まえると、(ECBの政策)金利は現在の水準でピークを付けたと考えている」とし、「ECBは来年中盤に利下げに着手する」との見方を示した。
<地政学的不確実性などが経済の重し>
ユーロ圏のインフレ率は25年までECBが目標とする2%に戻らないと予想される中、目標達成までの最後の一歩が困難になる可能性がある。ナティクシスのエコノミスト、ダーク・シューマッハー氏は「現在は需要の減退で物価上昇が抑制されているが、緩慢なプロセスになる」 との見方を示した。
エコノミストは、ユーロ圏の「浅い」景気後退(リセッション)の始まりが示されたとしながらも、ウクライナのほか、パレスチナ自治区ガザで起きている武力衝突で悪化する可能性があると指摘。
INGのエコノミスト、バート・コリン氏は「急激な景気後退は見られていないものの、経済環境は弱体化しつつある」とし、「経済と地政学情勢を巡る不確実性は払しょくされておらず、金利上昇による影響と相まって経済活動に重くのしかかる」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーでハト派として知られるビスコ・イタリア中銀総裁は31日、ECBはこれまで急激な利上げを行っており、今後数カ月は慎重な対応が必要だとの見解を改めて示した。
この日退任するビスコ氏はローマで銀行関係者に対し「十分に長い期間、現在の金利水準を維持するという(ECBの)方向性は賢明な判断だと思う」と発言。
「政策金利は顕著かつ急速に引き上げられており、今後数カ月は明らかに警戒が必要だ」とし、金融引き締めにより今後数カ月で需要がさらに縮小する可能性があると述べた。
イタリア中銀の次期総裁にはパネッタ元ECB専務理事が就任する。
イタリア統計局(ISTAT)が31日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前期比と前年比がともに横ばいとなった。いずれもアナリスト予想は0.1%増だった。
今回の速報値では前期比でのテクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)をかろうじて回避。第2・四半期GDP(前期比0.4%減、前年比0.3%増)の改定はなかった。
ISTATは第3・四半期について、前期比横ばいとなったのはプラスの純輸出が内需縮小を相殺したためと説明。工業部門は拡大したが、サービス部門は停滞し、農業部門は縮小したという。
ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は1日公表した半期の金融安定性に関する報告書で、高額の債務を抱える家計に対する圧力が高まっていると警告した。
ニュージーランドでは中銀がインフレ抑制に取り組む中、金利が15年ぶりの高水準となる5.5%に上昇しており、住宅ローンの滞納が増えている。
中銀は報告書で「高額債務を抱える家計が債務負担の増大に試され続ける中、中期的にストレスが高まる公算が大きい」と指摘。「これまでのところ、大部分の借り手はこうした負担の増大に対処できているが、一部の借り手は苦戦を余儀なくされ、対応できていない」とした。
報告書はまた、中国の景気減速に伴うコモディティー価格のリスクにも言及、中東情勢を注視すると表明した。
中銀によると、農家は世界的な牛乳価格の低迷で圧迫されており、長期の価格低迷が銀行の融資損失拡大につながる可能性がある。
ただ銀行の流動性は潤沢であり、自己資本比率は改善していると指摘した。
ニュージーランド(NZ)の7-9月(第3四半期)の失業率は2年ぶりの高水準となった一方、賃金インフレ率は鈍化した。NZ準備銀行(中央銀行)の利上げが労働市場に影響を与えていることが示された。
NZ統計局が発表したところによると、失業率は第2四半期の3.6%から3.9%に上昇した。エコノミストの予想と同水準だった。雇用者数は第2四半期から0.2%減少。エコノミストは小幅増加を見込んでいた。年間の賃金インフレ率は4.1%に鈍化した。
記録的な移民の流入が労働力不足の解消と賃金上昇圧力の緩和に貢献している一方、借入コストの上昇が需要を減退させている。中銀はインフレ抑制のために十分な利上げを行ったと示唆しているが、一部のエコノミストは、物価上昇圧力をコントロールするため引き締め再開を迫られると考えている。
元ゴールドマン・サックス・グループ社長のゲーリー・コーン氏は、11月14日にニューヨークで開かれるニッキー・ヘイリー元米国連大使の資金調達イベントを共同主催する。ブルームバーグ・ニュースが入手した招待状で明らかになった。
ヘイリー氏は2024年米大統領選挙の共和党候補指名をトランプ前大統領らと争っている。国家経済会議(NEC)委員長としてトランプ政権を支えたコーン氏がイベントを共同主催することは、最近支持率が上昇しているヘイリー氏に大きな追い風となる。コーン氏は現在、IBMの副会長を務める。
ヘイリー氏は初回と2回目の候補者討論会で際立ったパフォーマンスを見せ、世論調査で支持率が上昇。共和党の大物献金者から新たな関心を集めている。ロシアのウクライナ侵攻とイスラエルとハマスの戦争をめぐる地政学的緊張も、ヘイリー氏に外交政策の実績をアピールする機会を与えている。7-9月(第3四半期)入りからこれまでに集めた資金は1100万ドル(約17億円)。
神田真人財務官は1日、為替相場が1ドル=151円台後半と年初来の安値を更新したことを受け、一方的で急激な動きを懸念するとし、為替介入の可能性について「スタンバイです」と市場をけん制した。財務省内で記者団に語った。
介入のタイミングについては市場の状況をみながら緊張感を持って判断するとし、「いつ何をするかは申し上げることはできない」と述べるにとどめた。
神田財務官は年初来25円、足元でも短期間に数円動いていることから「一方的で急激な動きを大きく懸念している。過度な変動にあらゆる手段を排除せずに適切な行動を取っていきたい」と発言。
急激な円安の背景については、内外金利差や地政学的リスクなどさまざまな要因がある中で、「一番大きいのは投機だ」と指摘。その上で、「総合的に勘案すると、ファンダメンタルズと合っていない。そういうものに対しては、国民生活に対しての影響が大きいので適切な対応を取らなければならない」と述べた。 
ドル高の勢いは失速しつつあるかもしれない。
バークレイズやモルガン・スタンレー、ナショナルオーストラリア銀行(NAB)の各ストラテジストは、ドル高を見込むポジションが膨らみ続けていることに注意を促している。オプションのポジション動向によれば、新たなドルのポジションを建てる意欲は2カ月ぶりの弱さ。ボラティリティーの指数では、予想される為替変動は18カ月ぶりの低水準となっている。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は今月初旬に年初来の高値を付けて以降、ほぼ横ばいで推移している。米国債利回りは先週、過去10年余りで最も高い水準に急上昇したが、ドルに上値を追わせるほどの勢いはもたらさなかった。
バークレイズの為替分析責任者、テミストクリス・フィオタキス氏は「現時点では、ドル高論は危険をはらんでいる」と述べた。
ウォール街はこれまでもドルの終焉(しゅうえん)を予想したが、ドル高に振れる展開になるだけだった。7月の下落時にはドル高の終了を示すとの見方が浮上したが、すぐに力強い上昇に転じた。もっと最近では、中東の地政学的な混乱による逃避需要で、散発的にドルが買われている。ドルは31日の取引でも上昇。日本銀行がイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の一段の柔軟化措置を決めたにもかかわらずだ。
しかし、最近のブルームバーグ「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査では、ドルに対する熱狂は9月にピークを付けた可能性が示唆されている。 
ナショナルオーストラリア銀行の通貨ストラテジスト、ロドリゴ・カトリル氏は「通常のプラス材料があるにもかかわらず、ドルが上値を伸ばせられないでいるのは、7月半ばから10月初旬にかけての力強い上昇が一巡したことを示唆している」と指摘。「ドルのロングポジションは一段高への相応な向かい風になる」と述べた。
ドルに問題があるにせよ、一部の投資家にとってはなお唯一の選択肢となっている。シュローダー・インベストメント・マネジメントのヨハナ・カークランド最高投資責任者(CIO)は欧州や中国では経済成長が減速しているにもかかわらず米経済が引き続き堅調なことや、米国例外主義、高い債券利回りを魅力として挙げた。
その上で、「信頼できる代替投資先がない」と語った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の製造業活動は10月に縮小に転じる一方、非製造業の拡大ペースが予想外に鈍化した。中国経済は脆弱(ぜいじゃく)なままで、支援策が必要であることを示唆している。
国家統計局が31日発表した10月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.5。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は50.2、9月も50.2だった。活動拡大・縮小の境目は50。
建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは50.6。9月は51.7、エコノミスト予想は52だった。
10月のPMIが予想を下回ったことで、中国当局による追加刺激策の必要性が高まっている。政府は今月、追加の国債発行や財政赤字拡大を含む景気対策の強化を発表。消費者信頼感の低迷や輸出需要の不振、不動産危機が新型コロナウイルス対策撤廃に伴う経済再開後の景気回復の足を引っ張っている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊宇霆氏はPMIの下振れを受け、「中国当局はなお景気支援策を講じる必要がある」と話す。
ピンポイント・アセット・マネジメントの張智威チーフエコノミストは、持続的な経済回復を促すため、中国政府は2024年の財政赤字を引き上げる可能性があると分析。低調なPMIは支援策強化の論拠を裏付けているとし、不動産政策の調整が必要だとの見方を示した。
今回のPMIは国慶節(建国記念日)に伴う月初の大型連休による季節的要因を一部反映したが、市場の需要が弱いままであることも示した。製造業と非製造業の新規受注指数はいずれも50を割り込んでおり、需要の縮小を示唆している。
ソシエテ・ジェネラルの大中華圏担当エコノミスト、ミシェル・ラム氏は「PMIの低下は季節性が一因だが、それを踏まえても少々期待外れだ」と指摘。「回復がなお脆弱であることを示しており、コロナ対策撤廃に伴う経済再開後の持ち直しはホリデーシーズン後に終わる恐れもある」と述べた
●中東
●中南米・アフリカ
メキシコ南部ゲレロ州アカプルコに25日上陸したハリケーン「オーティス」について、州当局は30日、死者と行方不明者が約100人に達していると発表した。
オーティスは最も勢力が強い「カテゴリー5」のハリケーンとしてアカプルコを直撃。風速70メートルを超える暴風により市内が冠水し、自動車が水没するなどしたほか、家屋やホテルなどの屋根が飛ばされ、通信や道路、空路などが寸断されている。
食料や飲料の確保が困難になり、略奪も発生しているという。
ゲレロ州のサルガド知事は、州検察当局の数字として45人が死亡し、47人が行方不明となっていると述べた。
29日時点では、政府当局が死者48人と報告。このうち43人がアカプルコ市内、5人が近隣のコユカデベニテスで死亡したとした。
●市況
<為替> 円が全面安となり、対ユーロでは15年ぶり、対ドルでは1年ぶりの安値に沈んだ。日銀は31日までに開いた金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化を決めたものの、より大きな動きを期待していた投資家の間で失望感が広がった。
<債券> 米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を翌日に控え、長期債利回りがほぼ横ばいで推移した。
<株式> 続伸して取引を終えた。米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表を明日に控え、投資家はまちまちの企業決算を消化した。
今回のFOMCで政策金利が据え置かれるとの楽観的な見方が広がる一方、一部の企業決算は失望を誘い、地政学リスクを巡る不安も漂った。
建機大手キャタピラー(CAT.N)は6.7%下落。第3・四半期利益が市場予想を上回ったものの、需要減速の兆候が嫌気された。バイオ製薬のアムジェン(AMGN.O)も2.8%安。一部主力薬の第3・四半期売上高が予想を下回った。
半導体大手エヌビディア(NVDA.O)は一時の安値から下げ幅を縮小したものの、それでも0.9%安で終了。米国による最新の対中輸出規制で中国からの注文キャンセルを余儀なくされる可能性があるとの報道を受けた。
<米原油先物> 石油輸出国機構(OPEC)の産油量増加を背景に、続落した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値は前日比1.29ドル(1.57%)安の1バレル=81.02ドル。これは今年8月下旬以来約2カ月ぶりの安値。1月物は1.18ドル安の80.50ドル。
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。決算内容が嫌気された石油大手のBPが売られて相場の下げを主導した。
BP(BP.L)が4.6%下落。エネルギー価格が前年から大幅下落したことが打撃となり、2023年第3・四半期の利益が予想を下回ったことが嫌気された。
同業のシェル(SHEL.L)も1.5%下げ、FTSE350種石油・ガス株指数(.FTNMX601010)は2.47%下落。
中国の製造業関連の指標が低調だったことで需要への懸念が再燃して卑金属価格が値下がりしたため、鉱業株指数(.FTNMX551020)は1.30%下げた。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。堅調な決算内容を好感した買いが相場を押し上げた。
<ユーロ圏債券> 利回りが低下した。10月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)上昇率が過去2年間で最低だったことを示す指標を受けた。
日経先物31470、ダウ先33077、債先143.65、米4.930、独2.8255、仏3.441、西3.920、伊4.720、英4.5585、波5.650、原油81.29、銅8,122、ドル円151.40、ユーロドル1.0571
※11/1 9時35分頃

備忘録(2023/10/30)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
米半導体大手ウエスタンデジタル(WD)は、上場企業2社に分割すると発表した。WDはキオクシアホールディングスとの統合交渉が破談に終わったと報じられていた。
30日の発表文によると、WDはコンピューターや携帯用機器などのメモリーに軸足を置くフラッシュメモリー事業をスピンオフする。残るハードディスク(HDD)事業はクラウドデータセンター向けの大容量メモリー販売に注力すると、投資家向けプレゼンテーションで説明した。
この発表を受け、WDの株価は30日の米株式市場で一時13%余り上昇した。
WDは7-9月(2024年6月期第1四半期)決算も発表した。純売上高は前年同期比26%減の27億5000万ドル(約4100億円)となったが、アナリスト予想はわずかに上回った。フラッシュメモリー事業は9.6%減の15億6000万ドル、HDD事業は40.7%減の12億ドルだった。
●決算関連
米企業の利益見通しがここにきて悪化している。先週末27日に直近高値からの下落率が10%を超え、調整局面入りしたS&P500種株価指数にとっては、さらなる逆風となりそうだ。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)がまとめたデータによると、米企業の7-9月(第3四半期)決算は予想外に利益が増える見通しだが、向こう数四半期については、企業が需要の低迷やマクロ経済の先行き不透明感を警告していることから、業績見通しが足元で切り下がっている。ドイツ銀行は、10-12月のアナリスト予想が決算発表シーズンに入ってから1.9%下方修正され、「通常以上に」引き下げられたと指摘した。
ブルームバーグがまとめたデータによると、S&P500均等加重指数の向こう1年の利益予想は、10月に入ってから1.8%減少した。同指数は時価総額による加重ではなく、指数内で固定された均等ウエートを割り当てたもので、巨大ハイテク企業の影響力を弱めている。
RBCキャピタル・マーケッツの米株式戦略責任者、ロリ・カルバシナ氏はリポートで、決算後の電話会見では「悲観的なトーンが際立っている」と記述。2023年と24年の業績見通しの引き下げ幅の大きさを踏まえると、決算シーズンはこれまでのところ「米国株式市場を足元の不振から脱却させるには力不足だ」と指摘した。
米株に弱気なことで知られるモルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は「非常に好調な経済状況であっても、10-12月と2024年の利益見通しは依然として高過ぎる」と指摘。米国株の年末ラリーの見込みは薄れつつあるとの見方を示している。
米ファストフードチェーン大手マクドナルド(MCD.N)が30日発表した第3・四半期(9月30日まで)決算は、利益と売上高が市場予想を上回った。食品価格が高騰する中、低価格のハンバーガーやフライドポテトの需要が堅調に伸びたことが追い風になった。
世界既存店売上高は8.8%増。伸びはLESGがまとめたアナリスト予想平均の7.36%を上回った。
米国内の既存店売上高も8.1%増と、伸びは予想を上回った。
調整後の1株当たり利益は3.19ドル。市場予想は3.00ドルだった。
クリス・ケンプチンスキー最高経営責任者(CEO)は決算発表後の電話会見で「消費者は消費の対象を依然として選好しているが、(マクドナルドの)価格設定について顧客の受け入れという点で全く変化は見られていない」と指摘。ファーストフード業界全体で来店客数が減少しているにもかかわらず、マクドナルドでは低所得者層を中心に来店客数が伸びていると述べた。
欧州銀大手6行が30日までに発表した2023年7〜9月期決算は、純利益が前年同期比35%の増益となった。金利収入の増加が好業績を支えてきたが、鈍化の兆しも出ている。中央銀行の利上げ停止で利ざやの改善が見込みづらくなり、金融引き締めの需要縮小による融資残高の減少にも直面している。
●先進国、グローバル、金融市場
日銀は31日に開く金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の再修正を議論する。現在1%としている長期金利の事実上の上限を柔軟にし、一定程度1%を超える金利上昇を容認する案が有力だ。米金利上昇を背景に日本の長期金利は1%に迫っている。
国際通貨基金(IMF)のトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は日本経済新聞のインタビューで、商業用不動産の価格低下が金融システムを揺さぶるリスクになるとの見方を示した。多額の負債の借り換えが控えており「2〜3年のうちにさらにデフォルト(債務不履行)が増加する」と指摘した。
世界銀行は30日に発表した「一次産品市場の見通し」で、原油価格は第4・四半期の平均で1バレル=90ドルになる見込みだが、経済成長の鈍化が重要を後退させ2024年は平均81ドルまで下落するとの予想を示した。一方、中東での紛争が激化すれば原油価格が大幅に上昇する可能性があると警告した。
世銀は、イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争開始以来、原油価格は約6%しか上昇しておらず、農産物や大半の金属、その他の一次産品価格は「わずかな変動にとどまっている」とした。
報告書では、1970年代以降の域内の紛争の歴史に基づき3つのリスクシナリオを概説した。「小規模な混乱」シナリオでは、世界の石油供給量は11年のリビア内戦時の減少量とほぼ同じ日量50万─200万バレルの減少となり、第4・四半期の原油価格は1バレル=93─102ドルに上昇すると予想した。
一方、03年のイラク戦争に相当する「中程度の混乱」シナリオでは世界の石油供給は日量300万─500万バレル抑制され、原油価格は109─121ドルになると想定。1973年のアラブ石油禁輸に匹敵する「大規模な混乱」シナリオでは世界の石油供給は日量600万─800万バレル縮小し、原油価格は140─157ドルになることが見込まれるとした。
世銀のアイハン・コーゼ副チーフエコノミストは「原油価格の上昇が続くと必然的に食料価格が上昇する」と指摘。「深刻な原油価格ショックが現実のものとなれば、すでに多くの途上国で上昇している食料価格インフレを押し上げるだろう」とした。
ドイツ連邦統計庁が30日発表した10月の消費者物価指数(CPI)速報値は、 欧州連合(EU)基準(HICP)で前年比3.0%上昇した。伸びは前月の4.3%から鈍化し、2021年8月以来の低水準。ロイターがまとめた予想の3.3%も下回り、ユーロ圏全体の物価上昇が大きく収束しつつある可能性が示された。
変動が激しい食品とエネルギーなどを除いたコアインフレ率は4.3%と、前月の4.6%から鈍化した。
コメルツ銀行のエコノミスト、ラルフ・ソルベーン氏は、総合インフレ率は来年初めの数カ月に一段と緩和する可能性が高いとしながらも、コアインフレ率は少なくとも春まで3%前後で推移すると予想。「コアインフレ率は欧州中央銀行(ECB)が望む水準を来年も大きく上回る」との見方を示した。
欧州連合(EU)統計局は31日に10月のユーロ圏消費者物価統計を発表。ロイターが実施したエコノミスト調査で、10月のユーロ圏のインフレ率は3.2%と、前月の4.3%から緩和するとの予想が示されている。
INGのマクロ担当グローバルヘッド、カールステン・ブルゼスキー氏は、人口動態、リスク回避、脱炭素化などは全て物価上昇圧力の増大に作用するとし、「ECBはインフレ目標を『2%近辺』ではなく『2.0%』としたことを、ある時点で後悔する可能性がある」と述べた。
スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は30日、商業銀行がSNBにオーバーナイトで預け入れる資金に支払う金利を引き下げると発表した。
マイナス金利の終了とスイスフラン上昇抑制のための取り組みによりコストが急上昇したことが背景にある。
約8年にわたるマイナス金利政策の下で中銀は商業銀行からオーバーナイトの資金に対し金利を受け取ってきた。マイナス金利時代のSNBの各銀行からの受取額は113億ドルだったが、昨年9月のマイナス金利政策終了により資金フローが逆転。2023年上半期には33億スイスフラン(36億6000万ドル)の金利を支払った。
12月1日以降、最低準備金を満たすために預けられているサイト・デポジット(当座預金)への付利がなくなり、異なる金利が適用される水準が調整された。
各行は最低準備金の25倍に相当する預金に対し、SNBの政策金利(現在1.75%)が支払われる。これまでは28倍の預金に対して金利が支払われていた。
銀行の個別基準を超えて保有するサイト・デポジットには、SNBの政策金利から0.5%ポイントを差し引いた金利が支払われる。
SNBは「今回の変更は現在の金融政策スタンスに影響を与えるものではない」と説明。「これらの調整により、金融政策が引き続き効果的に実施され、SNBの金利コストが削減される」としている。
どの程度コストが削減できるかについてはコメントを控えた。
UBSのエコノミスト、マキシム・ボテロン氏は、SNBは現在の政策金利で年間約7億フランを節約できる可能性があると試算。銀行の個別基準を超えて保有するサイト・デポジットに対する金利がSNBの政策金利を0.5%ポイント下回ることで、銀行は短期金融市場で融資するインセンティブを得るほか、金融活動が活発化し金融政策の伝達を支援すると述べた。
オーストラリア統計局が30日発表した9月の小売売上高は8カ月ぶりの大幅な伸びを記録し、個人消費の底堅さを示した。早ければ来週にも利上げが行われるとの見方が強まる可能性がある。
9月の小売売上高は名目ベースで前月比0.9%増の359億豪ドルで、アナリスト予想の0.3%増を上回った。前月は0.3%増に上方改定された。
前年比では2.0%増加。昨年8月以降初めて前年比の伸びが拡大した。
統計局の小売統計責任者は、春先の温暖な天候で家庭用品や衣料品の売上高が押し上げられたことなどが寄与したと述べた。
新型iPhoneの発売や、エネルギー消費節約に向けたクイーンズランド州の還付プログラムも寄与したという。
個人消費の上振れはオーストラリア準備銀行(中央銀行)が来週にも政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げるとの見方を後押しする。
先週発表された第3・四半期インフレ率が予想以上に加速したことを受けてそうした観測が高まり、先物市場は利上げ確率を61%と予想している。
オックスフォード・エコノミクスのマクロ経済予測責任者、ショーン・ラングケーク氏は「(小売)売上高は過去数カ月、高金利や高インフレに対し強さを示してきた」と述べた。
豪ドルは0.4%上昇し、1豪ドル=0.6360米ドル。豪3年国債利回りは12年ぶり高水準の4.388%。
複数のアナリストによると、7─9月の小売売上高は0.2%─0.3%増とプラスになる見通し。
ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)のシニア市場エコノミスト、テイラー・ニュージェント氏は「消費が底堅いことが改めて浮き彫りになった」と指摘。「中銀は家計消費の下振れリスクを注視してきたが、これまでのところリスクは現実のものにはなっていないようだ」と述べた。
米大統領選に向けた共和党ユダヤ人連合(RJC)の政治献金集会が28日、ネバダ州ラスベガスで約1500人を集めて開催され、候補指名を狙うトランプ前大統領やヘイリー元国連大使、フロリダ州知事のデサンティス氏がいずれもイスラム組織ハマスの駆逐を図るイスラエルに揺るぎない支持を表明した。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザに空爆を行い人権団体の批判が高まっているものの、トランプ氏は「米国はためらいなく無条件に、何ら釈明なしにイスラエルを100%支持する」と発言。聴衆の歓呼に応えた上で、イランに制裁を課し、米大学内のパレスチナ支持のデモに断固とした措置を取る考えを示した。
ただ、トランプ氏は今月初め、イスラエルにとって長年の敵であるレバノンの民兵組織ヒズボラを「非常に賢い」と話し、さらにハマスによる7日の急襲についてネタニヤフ首相に「備えがなかった」と批判。このためイスラエルから非難を浴びた。その後は自分が大統領だった時ほど「イスラエルにとって良い友人、同盟国はなかった」と弁明する経緯があった。
強硬な外交姿勢を公約に掲げるヘイリー氏は共和党の孤立外交主義を批判し「今日ウクライナを見捨てるような人は明日イスラエルを見捨てる恐れがある」と発言した。さらに、トランプ政権で国連大使を務めた経験からトランプ氏批判のトーンを上げて「過去にしたことをわれわれ全員が知っている。疑問はこうだ。『彼は将来何をする気なのか』。4年間にわたる混沌や確執、大騒ぎはあり得ない」と付け加えた。
ヘイリー氏と支持を争っているデサンティス氏はトランプ氏のあら探しはせず、イスラエル支援を誓った。
共和党の候補指名争いは2024年1月15日にアイオワ州で開かれる党員集会が初戦。トランプ氏は現在、相次ぐ小口献金を追い風に選挙戦を圧倒的にリードしている。
RJC自体は共和党予備選で特定候補に献金しないが、本選挙では、民主党候補として有力なバイデン大統領と対決する共和党候補に積極的に資金を投入する。
RJCのマット・ブルックス最高責任者(CEO)はロイターのインタビューで「前回の大統領選があった20年、われわれはトランプ氏がユダヤ人票で過去最大のシェアを獲得できるよう1000万ドルを超える資金を集めて拠出した。今度の大統領選でも共和党候補には、それ以上ではないにしても、同じことをしようと計画している」と話した。
ブルックス氏はRJCを通じて献金した支持者がRJCとは別に計5000万―6000万ドルを拠出したと述べた。
2024年米大統領選に向けた共和党候補指名争いの初戦の舞台となる中西部アイオワ州で、トランプ前大統領が圧倒的なリードを維持していることが、最新の世論調査から分かった。
調査はNBCニュースとアイオワ州の地元紙デモイン・レジスターなとが22━26日、アイオワ州の党員集会に参加する可能性の高い404人を対象に実施。トランプ氏が第1候補とする回答は43%と、相次ぐ訴訟にもかかわらず、同率2位(16%)のヘイリー元国連大使とデサンティス・フロリダ州知事に約30%ポイントの差をつけている。
トランプ氏のデサンティス氏に対するリードは8月の調査時点から拡大。アイオワ州の選挙運動にリソースを投入してきたデサンティス氏にとっては痛手となる。
また、トランプ大統領が再選を目指す現職のバイデン大統領に勝利する可能性があるという回答は65%となった。
共和党は来年1月15日にアイオワ州で開催する党員集会を皮切りに、大統領候補指名争いを開始する。
スペイン統計局が発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前期比0.3%増で、伸び率は第2・四半期の0.4%(改定値)から減速した。ロイターがまとめたアナリスト予想は0.2%だった。
前年比の伸びは1.8%で、前期改定値の2.0%から減速。ロイター調査による予想の1.6%は上回った。
カルビノ経済相代行はRNEラジオに「きょう発表された第3・四半期の経済成長率と昨日発表された失業率の数字で、力強く成長し続けているスペイン経済の強さが確認された」と述べた。
第3・四半期は、国内消費が好調を維持した一方、海外からの需要は減少した。夏季の観光が好調だったことから、外国からの観光客による支出が大幅に増えた。
スペイン政府は2023年の経済成長率を2.4%と予想している。同国は、製造業への依存度がより高く世界的な景気鈍化の影響を受けやすいドイツなどの欧州諸国より高い成長率を記録している。
米自動車大手ゼネラルモーターズ(GM.N)と全米自動車労働組合(UAW)の労使交渉が暫定的な合意に達したと、事情に詳しい複数の関係者がロイターに述べた。これにより、史上初となる米3大自動車メーカー(ビッグ3)に対するUAWによる一斉ストライキは事実上終結した。
UAW執行部は29日、米フォード・モーター(F.N)と暫定合意した労働協約を承認。28日にはクライスラーの親会社であるステランティス(STLAM.MI)とも労使交渉で合意に達していた。 もっと見る
GMとの合意内容は現時点で不明。関係者によると、GMの従業員は合意の正式発表後に職場に復帰するという。
GMの広報担当者はコメントを控えた。
今後、UAWの一般組合員による合意内容の承認が必要となる。
GMの株価は30日の取引で0.6%下落。一方、フォードは1.9%下落。ステランティス株はイタリア証券取引所で横ばいだった。
バイデン米大統領は30日、暫定合意について「素晴らしい」と称賛した。
ビッグ3はUAWの要求についてコストの大幅増につながり、米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O)やトヨタ自動車(7203.T)などと比較して不利な立場に立たされると主張したが、UAWはGMとの暫定合意に先立ち、ソーシャルメディアへの投稿で、2028年の労使交渉では「ビッグ5またはビッグ6」の間で行われることを望んでいるとし、交渉拡大にコミットしているとした。
ゴールドマン・サックスは、米連邦政府機関が年内に閉鎖される可能性が大幅に低下したとみられると指摘した。
中東情勢の緊張など地政学リスクの高まりや米下院議長の選出が背景。政府機関が閉鎖されれば米軍にも影響が出る。
従来の基本シナリオでは、第4・四半期に最大2─3週間の閉鎖を予想していた。
ただ、つなぎ予算は来月17日の期限までに一時的に延長される可能性が高いが、政策上の根本的な対立は解消できないとみられ、来年初めに政府機関が閉鎖される「一定のリスク」があるという。
30日午前のニューヨーク外国為替市場では円が上昇し、ドルに対し日中高値を付けた。日銀が31日に開く金融政策決定会合で長短金利操作の再修正を議論すると、日本経済新聞電子版が30日報じたことに市場が反応した。
円はそれまでの下げから切り返し、一時0.6%高の1ドル=148円81銭を付けた。日銀は現在1%としている長期金利の事実上の上限を柔軟にし、一定程度1%を超える金利上昇を容認する案が有力という。
ソシエテ・ジェネラルのチーフ為替ストラテジスト、キット・ジャックス氏は「当局が何も措置を講じなければ円は下落するだろう。しかし何か手を打てば上昇する」と指摘。「ただ円は、何もしないために下落するという以上に、政策の動きに反応して上昇する可能性の方が高い」との見方を示した。
米国では右肩上がりの成長と底堅い労働市場にもかかわらず、1年前に比べて経済情勢を悲観する中間層が増えていることが、ブルームバーグ・ニュースの委託で実施された最新のハリス世論調査で明らかになった。
それには大きな理由が1つある。米金融当局がインフレ抑制のために実施してきた積極的な利上げだ。足元では政策金利は「より高くより長く」維持されると見込まれている。
9月29日-10月8日の期間で実施された同世論調査では、中間層の57%が、借り入れコストの上昇が家計に悪影響を及ぼしていると回答。経済のことでストレスを感じているとの回答は約44%と、1年前の40%、今年3月の39%から上昇した。今回の調査は4166人を対象に実施され、そのうち中間層は1478人。 
過去2年間に注目を集めた経済的なニュースの多くが記録的な高インフレの影響を受けたものだったとすれば、米家計が抱える痛みの大部分は金融政策の副作用によるものだ。米消費者金融保護局(CFPB)によれば、米消費者は昨年、クレジットカードの金利と手数料だけで過去最高の1300億ドル(約19兆4800億円)を支払った。
インディアナポリスでパラリーガル(法律事務職員)として働くレベッカ・アクナさん(28)は、数年前に比べて毎月の食料品への支出が200ドル増え、光熱費も値上がりしたと嘆く。借リ入れ入コストの急上昇により、8年乗った車の買い換えも諦めているという。
「現在の金利で自動車ローンを組むなんて考えられない。壊れるまで今の車を乗るつもりだ」と語った。
世論調査では、個人の懐事情が1年前より悪化した、もしくは変わっていないとの回答は中間層では61%に上った。「ずっと良い」との回答はわずか12%にとどまる。
インフレは1年前に比べれば緩和されたものの、多くのカテゴリーで物価は高止まりしており、家計が一息ついたと言えるような状況にはない。2020年2月以降で家庭食料品の価格は24%上昇した。1ドル当たりの購買力は約40年前の3分の1にすぎない。
ハリス・ポールのジョン・ゲルゼマ最高経営責任者(CEO)は「エコノミストは中間層と一緒に食卓を囲んでいる訳ではない」と指摘。実際には中間層の多くは給料ぎりぎりの生活を強いられていると語った。
ドイツ経済は7-9月(第3四半期)に縮小した。欧州最大の経済大国である同国が再びリセッション(景気後退)に陥る恐れが高まっている。
ドイツ連邦統計当局が30日発表した7-9月の国内総生産(GDP)速報値は前期比0.1%減。エコノミスト予想では0.2%減だった。家計の支出抑制が響いた。
統計内容は昨冬のエネルギー高騰がもたらした不況からドイツが立ち直りきれていないことを浮き彫りにした。
ブルームバーグ・エクノミクス(BE)のエコノミスト、マルティン・アデマー氏は「ドイツ経済は金利上昇や外需落ち込み、エネルギー価格の上昇によって低迷を続けている」と指摘。ただ、10月のIfo企業期待指数が半年ぶりに改善を示したことなどを挙げ、「見通しに対するリスクは引き続き下振れ方向に大きく傾いているが、年末にかけて経済活動が安定に向かうかもしれない初期の兆候が見られている」と述べた。
S&Pグローバルによると、第4四半期に入っても民間部門の経済活動は縮小を続けている。
インフレ減速と賃金上昇が消費者主導の景気回復をもたらすと期待されているが、最近のドイツ連邦銀行(中央銀行)の報告書によると、家計の支出はまだ増えていない。ブルームバーグが調査したアナリストらは、2024年のドイツ経済成長率をプラス0.5%と予想している。
米財務省が30日発表した第4・四半期の借り入れ予想額は7760億ドルで、7月時点の見積もりから760億ドル少なくなった。
財務省高官の1人は、カリフォルニアをはじめとする幾つかの州で自然災害などにより滞っていた税収が集まり始めたため、第4・四半期は歳入増加が期待されると説明した。
これを受け米国債利回りは小幅に低下。ジェフリーズの短期金融市場エコノミスト、トーマス・シモンズ氏は借り入れ予想額減少について「市場にある程度安心感をもたらした」と指摘した。
ただドイツ銀行の米金利ストラテジスト、スティーブン・ゼン氏は、借り入れ予想額が減っても、長期債の「タームプレミアム」が押し下げられるとは考えていないと主張し、この問題は11月1日に発表される年限別の詳しい国債発行計画に左右される面が大きいと付け加えた。
またゼン氏は、市場の予想に反して財務省が長期債の発行をさらに積極的に進める姿勢を示せば、むしろタームプレミアムが上昇する余地が残っていると警告した。
実際7760億ドルという借入額は第4・四半期としてはなお過去最大規模となる。
財務省によると、来年第1・四半期の借入額は8160億ドルと想定されている。
米財務省が11月1日に発表する四半期定例入札の詳細を控え、オプション市場では米国債に対して弱気なヘッジを積み増す動きが広がっている。背景には、大量の国債増発が明らかになるとの読みがある。
30日の取引では、米国債利回りの上昇に備えたポジションの需要が増大。中でも目を引いたのが10年債利回りが5.05%を上抜けた場合に利益を得るオプション契約で、プレミアムがこれまで1500万ドル(22億3500万円)に達した。
ブルームバーグがまとめたデータによると、11月24日のオプション期限までに10年物利回りが5.20%まで上昇すれば、このポジションは約2000万ドルの利益をもたらすことになる。
●中国・アジア・ロシア・東欧
英金融大手HSBCホールディングス(HSBA.L)のノエル・クイン最高経営責任者(CEO)は30日、中国の不安定な商業用不動産市場が最悪局面を脱した可能性があるとの見方を示した。この日発表した第3・四半期決算は、税引き前利益が前年同期の2倍余りになったが、中国本土の商業用不動産セクターに関連して5億ドルの減損を計上した。 もっと見る
クインCEOは決算会見で「(中国不動産市場の)大幅な調整は終わり、今は長期的な漸進の局面にあると思う」と述べた。
HSBCとスタンダード・チャータード(STAN.L)はアジア事業が柱で、中国不動産セクターへのエクスポージャーが懸念されている。スタンチャートは、第3・四半期の税引き前利益が3分の1減少し、中国不動産・銀行関連の投融資で10億ドル近い損失を計上した。 
HSBCのジョルジュ・エレデリー最高財務責任者(CFO)は「セクターの調整に伴い、2、3四半期は困難が予想される」と述べる一方で、長期で見ると先行きは明るいとの認識を示した。
ハーグリーブス・ランズダウンの株式アナリスト、マット・ブリッツマン氏は、HSBCの対中国エクスポージャーについて「市場にはまだ不透明感が漂っているが、ひどいサプライズがないことを投資家は好感するだろう」と述べた。
中国の民間不動産調査大手、中国指数研究院によると、国内の不動産差し押さえは1─9月に58万4000件と、前年同期比32.3%増加した。不動産市場が低迷し、景気回復が不安定な中、住宅所有者は負債に苦しんでいる。
調査結果は28日に発表された。住宅の差し押さえは2022年1─9月の20万6000件から28万4000件に増加した。
差し押さえ件数の多い都市は四川省に集中しており、前年同期比2万7585件増の7万件以上となった。
中国軍制服組トップである張又キョウ・中央軍事委員会副主席は30日、軍事フォーラムで基調講演を行い、共産党の統治を弱体化させようとする「一部の国」を非難する一方、米国との軍事関係を発展させると表明した。
29日に始まった「北京香山フォーラム」は中国最大の軍事外交の場。これまでは国防相が基調講演を担ってきたが、先週解任された李尚福前国防相の後任は決まっていない。
張氏は「われわれはロシアとの戦略的協力・協調を深める」とする一方で「相互尊重、平和共存、ウィンウィンの協力に基づいて米国との軍事関係を発展させる意欲がある」と発言した。
米国を念頭に「各国は台湾のような重大かつ敏感な問題に関して、他国を意図的に刺激すべきではない」とも述べ、台湾は中国の核心的利益だと強調した。
ロシアのショイグ国防相は同フォーラムで、西側諸国のウクライナ戦争への関与が重大な危険を生み出したと警告した。
国営タス通信によると、同氏は「ロシアとの紛争を着実にエスカレートさせる西側のやり方は、核保有国間の直接的な軍事衝突の脅威をはらんでおり破滅的な結果を伴う」と訴えた。
西側諸国は「ハイブリッド戦争」でロシアに「戦略的敗北」を与えるつもりだと主張した。またロシアと中国の関係は模範となるモデルだと称賛した。
米国防総省は中国担当幹部シンシア・カラス氏率いる代表団を派遣。多くの西側諸国はこのフォーラムを敬遠するか、もしくはハイレベルではない小規模な代表団しか派遣していない。
タイ中央銀行のセタプット総裁は28日、現状の政策金利水準は適切とする一方、世界的なリスク増大と中東紛争への懸念があると警告し、中銀は必要なら「調整」を行う用意があると述べた。
総裁は、第3・四半期の経済成長率は見込みを下回る可能性があるものの、通年では予想の2.8%に近い水準になるとの見通しを示した。
24年の成長予想(4.4%)については、政府の景気刺激策に変更があれば修正するとした。昨年の成長率は2.6%だった。
また、セタプット氏は「非常に懸念している新たな要素は中東問題。このリスクによる影響の評価は極めて難しい」と述べた。
さらに、「現時点の金利水準は適切だが、状況がわれわれの予想や想定枠組みから大きく変化した場合は調整を行う」と述べた。
中銀は先月、主要政策金利の翌日物レポレート(THCBIR=ECI)を予想外に25ベーシスポイント(bp)引き上げ2.50%とし、成長率とインフレ率はともに来年加速するとの見通しを示した。
中国の習近平国家主席は、政府が高齢化と出生率の低下に取り組む中、女性には重要な役割があり、「家族の新潮流」を確立しなければならないと述べた。中国の国営新華社通信が30日、コメントを掲載した。
習主席は共産党の下で運営されている中華全国婦女連合会の新たな指導部との会合で、女性の仕事において良い働きをすることは、女性自身の発展だけでなく、「家族の調和、社会の調和、国家の発展、国家の進歩」にも関係すると指摘。「結婚・出産に関する新しい文化を積極的に育成し、若年層の結婚・出産・家族観に対する指導を強化する」ことが必要とした。
●中東
●中南米・アフリカ
ブラジルのルラ大統領は27日の会見で、優先分野に適切な予算を配分する重要性を理由に挙げて、必ずしも2024年までに財政赤字を解消する必要はないとの考えを示した。 
ブラジル政府は24年中に財政収支の均衡を達成する方針を表明してきた。ただこれまでに歳入てこ入れ策の導入が遅れ、内容も期待外れとなっているため、この目標の実現は難しくなっている。
こうした中でルラ氏は「(来年の財政赤字)ゼロを目指すのは困難になる。なぜなら私が、とりわけ建設投資向けの予算を削りたくないからだ。わが国にとって優先度の高い巨額プロジェクト(の予算)を年初から削減することを強いる財政目標を設定するつもりはない」と説明した。
その上で同氏は、ブラジルにとって最善で正しい方向へと財政を運営していくと付け加えた。
政府が財政均衡化を掲げてきたことが市場に安心感をもたらした面がある点についても「市場はしばしば貪欲過ぎて、達成できないと分かっている目標を要求し続ける」と、あまりにもハードルを設けないようたしなめた。
シンクタンク「世界開発センター(CGD)」は30日、アフリカ諸国が製造業拡大によって人々を貧困から救い出すという東アジアの発展モデルを踏襲する可能性は低いとの研究結果を公表した。
2050年に世界全体で工場労働者の数が現在よりも減少し、安価な労働力が豊富にある貧しい国々でさえ製造業の雇用の伸びは停滞するという。
中国は例外かもしれない。この研究でモデル化された59カ国のうち、製造業生産高に占める割合は18年の30%から50年には43.8%へとさらに拡大する見通し。
中国が世界の製造業を支配し続け、より高価値の分野に移行していくという。
これによって、アフリカ、東南アジア、中南米の他の発展途上国は中国が放棄したローエンド分野の製造業に移行する余地が生まれる可能性はあるものの、農業から製造業への移行という東アジアの変革的発展モデルを再現するには不十分となりそうだ。
●市況
<為替> 円が上昇し、対ドルで2週間ぶり高値を付けた。日銀が31日に開く金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の再修正を議論する可能性があるという報道に反応した。
日本経済新聞は30日、日銀がYCCの再修正を議論し、現在1%としている長期金利の事実上の上限を柔軟にし、一定程度1%を超える金利上昇を容認する案が有力だと伝えた。
日経の報道を受け、円は一時148.81円と、17日以来の高値を付けた。終盤の取引では0.4%高の149.065円。
<債券> 国債利回りが上げ幅を縮小し、長期債利回りは一時低下に転じた。財務省が第4・四半期の借り入れ額が従来見通しより少なくなるとの見通しを示したことを受けた。
<株式> 主要3株価指数が1%超上昇して取引を終えた。金利に敏感な大型株が買われ、前週の下げから切り返した。今週は相次ぐ米企業決算や経済指標、米連邦公開市場委員会(FOMC)などイベントが目白押しとなっている。
<米原油先物> 中東情勢の緊迫化を背景とした買いが一服し、反落した。
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。イングランド銀行(英中央銀行)が次回会合で利上げの一時停止を決めるとの期待感から投資家心理が改善した。
最近発表された経済指標は雇用水準の低下や企業の一段の低迷を示しており、利上げ停止への期待を強めた。
短期金融市場は、英中銀が今週、政策金利の据え置きを決める確率は94%とみている。
<欧州株式市場> 反発して取引を終えた。製薬銘柄などが買われた。投資家が主要なインフレ指標の動向を評価している中で、国債利回りが低下したことも買いを促した。
ドイツの電力・ガス大手シーメンス・エナジー(ENR1n.DE)は12.7%と急伸。ドイツ政府とプロジェクト関連の保証を巡る協議が続く中、ジョー・ケーザー会長が国からの資金を必要としていないと発言したのが材料視された。
<ユーロ圏債券> 国債利回りがまちまちの動きを示した。ユーロ圏最大の経済規模を持つドイツの10月の物価上昇が緩和すると同時に、第3・四半期はマイナス成長となったことを反映した。
日経先物30618、ダウ先33024、債先143.68、米4.895、独2.8260、仏3.440、西3.895、伊4.734、英4.6140、波5.732、原油82.26、銅8,142、ドル円149.15、ユーロドル1.0614
※10/31 8時35分頃

備忘録(2023/10/27-29)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ドイツ経済省は、エネルギー供給を守る上でシーメンス・エナジーが重要な役割を果たす戦略的資産になるとみており、同社を支援する用意がある。同省の立場に詳しい関係者が明らかにした。
匿名を条件に述べた同関係者によれば、シーメンス・エナジーのオンショア風力タービンを巡る問題が利益をもたらしている他部門にも波及し始め、同社は160億ユーロ(約2兆5400億円)の融資保証を求めざるを得なかった。
●その他産業
●決算関連
LSEGのデータによると、米S&P総合500種指数(.SPX)採用企業の2023年第3・四半期利益は前年同期比4.3%増となる見通し。25日時点の2.6%増から上昇した。
エネルギーセクターを除くと9.7%増になる見込み。
決算発表で示された実績と今後発表する企業の予想を集計した。
これまでに第3・四半期決算を発表した245社中、77.6%で利益がアナリスト予想を上回った。過去4四半期の平均は73.6%。
主要株価指数は米長期金利上昇への懸念で軟調に推移しているため、企業決算が注目されている。 第3・四半期売上高は前年同期比1.4%増加する見通し。エネルギーセクターを除くと3.6%の増収となる見込み。
これまでに第3・四半期決算を発表した企業のうち、売上高がアナリスト予想を上回った企業の割合は60.2%。
第3・四半期の1株利益について、悪化もしくは市場見通しを下回ると予測する企業は81社。改善もしくは市場見通しを上回る予測を出した企業は42社。悪化を改善で割ったネガティブ/ポジティブレシオ(81/42)は1.9。 今後4四半期(23年第4・四半期─24年第3・四半期)の予想PER(株価収益率)は17.3倍。 10月30日からの週は164社が決算発表を予定している。
米石油大手のエクソンモービルとシェブロンの7-9月(第3四半期)決算は、いずれも利益が市場予想に届かなかった。製油や化学事業が振るわなかった。
エクソンの1株当たり利益は予想を9セント、シェブロンは66セントそれぞれ下回った。両社は化学製品の工場増設による国際的な過剰供給、および国外製油事業の損失をそれぞれ理由に挙げた。
両社とも歴史的な買収を模索しており、石油生産能力の大幅な拡大につながると見込まれる。エクソンによる600億ドル(約9兆円)規模のシェール大手パイオニア・ナチュラル・リソーシズ買収、およびシェブロンによる530億ドルでの同業ヘス買収は、今後数十年にわたり原油生産を下支えできる膨大な資源を掌握することで、欧州の競合大手や米国の独立系企業に先行し続けるという両社の決意を浮き彫りにしている。
エクソンは利益が予想を下回ったものの、12月11日に株主に支払う四半期配当額を1株当たり95セントに引き上げた。これはブルームバーグの予想を1セント上回る。7-9月のフリーキャッシュフロー(純現金収支)は前期の2倍余りに拡大して117億ドルと、市場予想平均の93億6000万ドルを大きく上回った。
シェブロンは国外製油部門の純利益がアナリスト予想の約半分にとどまった。パーミアン盆地原油生産事業が低迷したほか、カザフスタンでのテンギス・プロジェクトのコストは約4%増えた。
コマツ (6301.T)は27日、2024年3月期の業績予想(米国会計基準)を上方修正し、連結営業利益を4910億円から前年比11.7%増の5480億円に引き上げた。北米や中南米を中心に売り上げが増加、値上げや円安が上期の業績を押し上げた。
IBESがまとめたアナリスト16人の予想平均5669億円には届かなかった。
足元の円安を反映し、通期の前提為替レートを1ドル125円から137.7円に、1ユーロ=133円から150.3円に、1豪ドル=83円から90.3円に見直した。
下期は景気後退が懸念されるとして建機の需要減速を想定する一方、鉱山機械は引き続き堅調に推移するとみている。
中間期の配当は1株72円と、前回予想から3円引き上げた。期末の配当予想も1株72円と2円上積みした。
英大手航空会社ブリティッシュ・エアウェイズなどを傘下に置くIAG(ICAG.L)が27日発表した第3・四半期決算は過去最高益を計上した。
夏季の需要が好調だった。ただ、政治・経済の不透明要因がリスクだと警告した。
消費者は生活費の高騰にもかかわらず、旅行を続けており、欧州の航空各社の四半期決算は好調な内容になるとみられている。ただ、中東紛争に伴う原油高や景気後退リスクが見通しを圧迫する要因になっている。
営業利益(特別項目計上前)は前年比39%増の17億ユーロ(18億ドル)。バランスシート全体が改善したという。
同社がまとめた市場予想の15億5000万ユーロを上回った。
ルイス・ガイエゴ最高経営責任者(CEO)は「第3・四半期は全路線で強い需要が続いた。特に北大西洋、南大西洋、欧州各地の全ての観光地が好調だった」と表明。
年内の輸送能力は新型コロナウイルス流行前の96%に達する見通し。IAGは、イベリア航空、エア・リンガス、ブエリング航空も傘下に置いている。
営業利益率は20.2%。前年は16.6%だった。好業績を受けて負債の返済が可能になり、負債は前年同期の111億ユーロから80億ユーロに減少した。
中国・華為技術(ファーウェイ)(HWT.UL)の第1─第3・四半期の売上高は前年同期比2.4%増の4566億元(624億ドル)だった。
デジタルパワー事業とクラウド事業が拡大したほか、自動車部品事業の競争力が向上した。
ロイターの算出によると、利益は177.8%増の730億5000万元。同社の広報担当によると、2020年11月に売却した格安スマートフォン部門「Honor」に関連する収入が増益の主因。
ロイターの算出によると、第3・四半期の売上高は1.5%増の1457億元だった。
同社のケン・フー輪番会長は「予想に沿った」成長だったと表明した。
調査会社3社によると、第3・四半期のファーウェイのスマホ販売は8月末の「Mate60」シリーズの投入で急増した。調査会社カウンターポイント・リサーチは前年比で37%の増加と推定。中国国内では6位で市場シェアは12.9%と、前年同期の9.1%から拡大した。首位はHonorで市場シェアは18%という。
ただ、ファーウェイの広報担当は、第3・四半期の増収に寄与したのはデジタルパワー、クラウド、自動車部品事業だと指摘。Mate60シリーズの販売は当初、供給が限られたことや発売時期が第3・四半期後半になったことで制約を受けたと説明している。
ファーウェイのスマートカー事業のリチャード・ユー最高経営責任者(CEO)は今月、同社が支援する電気自動車(EV)ブランド「AITO」について、モデルチェンジした「M7」の受注が7万台を超えたと発表。需要に対応するため、供給網に投資すると述べている。
●先進国、グローバル、金融市場
世界最大の債券市場である米国債市場について、リスクリワードを比較検討する過程で、苦境にある投資家は5%という利回りが気に入ったようだ。
26日に発表された米国の実質GDP(国内総生産)は前期比年率4.9%増と2021年以来約2年ぶりの高い伸びとなった。米国債利回りは、金融危機前を最後に経験したことのない水準まで上昇しているが、それは一連の堅調な経済指標を反映している。
その一方で、米国債発行の増加傾向は、年限がより長い国債のタームプレミアムがプラス回復することを促した。
債券市場に痛みが生じ、これで終わりでないと一部のトレーダーが考えているにもかかわらず、米国債利回りが5%以上で推移するなら、長期の買い手にとってずっと魅力的に映る。
そのような水準は、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の上限(5.5%)に近く、米連邦準備制度がいずれ緩和サイクルに入る前に買い手が高い金利収入を固定することが可能になる。
ティー・ロウ・プライスのポートフォリオマネジャー、スティーブン・バートリーニ氏は「不利な期間が非常に長く続いた後、計算上有利な方向に動き出した。利回りが得られるため、12カ月という期間でトータルリターンを帳消しにするには、今後さらに大きな上昇が必要だ」と指摘した。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル独連銀総裁は27日、これまでの一連の利上げがインフレ抑制で効果を発揮しているとの認識を示した。
将来の政策行動について予断を持っていないとも述べた。
総裁は声明で「インフレは依然として目標の2%への到達には程遠いが、金融引き締め政策は効果を発揮している」とし「このため、理事会は方針を堅持しており、金利を据え置いた」と述べた
全米自動車労働組合(UAW)は28日、米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)に対するストライキを拡大した。一方、ステランティスとは新たな労働協約で暫定合意に達した。
GMとの交渉が行き詰まる中、テネシー州スプリングヒルのGM工場では28日夕から組合労働者がストに入った。同工場では中型のスポーツタイプ多目的車(SUV)や電気自動車(EV)のキャデラック「リリック」が製造されているほか、エンジンや金属プレス加工の業務も行われている。
UAWがデトロイトの自動車大手に対して歴史的なストを始めてから6週間余りが経過し、労組側と合意に至っていないのはGMのみとなった。一連のストで業界には数十億ドル規模の負担がかかっている。
フォード・モーターがまず25日にUAWと暫定合意。雇用保障で歩み寄ったステランティスも28日、合意に達した。ただ、各社の組合員による投票はまだ残っている。
公に話す権限がないとして匿名を条件に話した協議に詳しい関係者によると、ステランティスやフォードと同様、GMも時間給労働者を対象とした25%の賃上げと生活費手当に同意したが、臨時雇用の従業員を含む問題でなお隔たりがあり、交渉は停滞しているという。
GMはフォードなどに比べて非正規労働者を多く抱えており、交渉で難しい問題となっている。GMには常時10%もの臨時雇用従業員がおり、フォードやステランティスが提示したような150%以上の賃上げとなれば、その分費用もかさむことになる。
GMは電子メールで配布した発表文で、「われわれが確保してきた進展を踏まえると、UAW側の行動には失望している」と表明。「当社はUAWと誠意を持って交渉を続けており、できるだけ早期の合意を実現するという目標は変わっていない」と説明した。
9月の米個人消費支出(PCE)統計では、食品とエネルギーを除くコアベースでの価格指数の伸びが前月比で加速。4カ月で最大の伸びを示した。また個人支出も増加ベースが加速した。向こう数カ月における追加利上げの可能性が残された格好だ。
PCE総合価格指数は前月比0.4%上昇と、市場予想(0.3%上昇)を上回る伸びとなった。エネルギーの値上がりが影響した。
家計の底堅い需要とインフレ加速を受け、10-12月(第4四半期)に入る時点で経済に勢いがあったことが浮き彫りとなった。エコノミストは総じて個人消費が向こう数カ月に減速すると見込んでいる一方、金融当局はこれまで、力強いデータが示された場合は引き締めを継続する可能性があると説明している。
調査会社インフレーション・インサイツのオメイア・シャリフ社長は、顧客向けリポートで今回のPCE統計について「年末を前にしてコアインフレがやや上昇しており、金融当局としては注意を続ける必要があることを示唆している」と指摘。「第4四半期に入る時点で上振れリスクがあったように見受けられる」と付け加えた。
ただ来週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では政策金利が据え置かれると、市場では広く見込まれている。
米金融当局が注目するサービス業の価格指数は前月比0.5%上昇と、1月以来の大幅な伸び。住宅とエネルギーを除くサービス業の価格指数は前月比0.4%上昇と、前月(0.1%上昇)から伸びが加速した。
個人消費支出では財とサービスが共に増加。自動車や処方薬、国外への旅行などが伸びた。
賃金・給与は0.4%増。一方で実質可処分所得は減少し、これで3カ月連続のマイナスとなった。こうしたことから、消費者は支出のため貯蓄を取り崩している状況だ。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、スチュアート・ポール、イライザ・ウィンガー両氏はリポートで、「個人消費支出の伸びは所得の伸びをはるかに上回っており、消費者が9月も自らの収入を超える支出を続けていたことが分かる。そうしたダイナミズムはあまり長く続き得ないと考えられる」と記した。
貯蓄率は3.4%に下げ、今年最低。こうした状況は、米消費者が年末まで現在の支出ペースを継続できないのではないかとの懸念を生じさせる。
米ミシガン大学が発表した10月の消費者調査(確報値)では、1年先のインフレ期待が5カ月ぶりの高水準に上昇した。ガソリンの値上がりを受け、消費者の景気に対する見方は悪化した。
調査では今後1年間のガソリン価格について、インフレ率が約40年ぶりの高さを記録した2022年6月以来の大きな上昇になるとの見方が示された。この日先に発表された9月個人消費支出(PCE)統計では、エネルギーの値上がりが影響し、総合価格指数が市場予想を上回る伸びとなった。
ミシガン大の消費者調査ディレクター、ジョアン・シュー氏は「消費者はインフレが昨夏のピークから鈍化したことを認識しているが、家計の厳しさが続いて購買力が低下していることが念頭にある」と発表文で指摘。「それでも、堅調な所得が引き続き支出全体を支えている」と述べた。
今回の調査では、今後1年間は失業よりもインフレの方がより大きな苦境をもたらすとの回答比率が80%超と、約1年ぶりの高水準。物価高が生活水準を低下させているとの回答は半数近くに上り、過去15カ月で最も高い水準となった。
インフレに加え、中東情勢緊迫化や下院議長選出を巡る混乱、トランプ前大統領の法的問題などの話題も消費者心理を圧迫。消費者マインド指数は63.8と、前月から4ポイント余り低下した。現況指数、期待指数はともに悪化した。
シュー氏は、保有株式の価値下落を受けた高所得者層のマインド低下にも言及。この状況が続けば「今後数カ月の消費に下振れリスクをもたらす可能性がある」と続けた。
米3大自動車メーカー(ビッグ3)に対する全米自動車労組(UAW)のストライキは10月の米国の非農業部門雇用者数を少なくとも2万9000人減少させる可能性があることが、米労働省の月次ストライキ報告によって分かった。
それによると、10月の調査期間中、フォード・モーター(F.N)、ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)、ステランティス(STLAM.MI)が保有する米全土の組立工場で2万5300人が一時解雇されていた。
また同期間中、スウェーデン商用車大手ボルボ・グループの米子会社マック・トラックスのフロリダ、メリーランド、ペンシルベニア各州の工場でも4000人のUAW組合員がストライキに入っていた。
政府が米雇用統計のために事業所を調査する期間に給与を受け取らなかったストライキ参加者は失業者として扱われる。
10月の米雇用統計は来週11月3日に発表される。
ロイターがまとめたエコノミスト調査によると、非農業部門雇用者数は17万2000人増が見込まれている。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の不動産開発大手、中国恒大集団に対する清算申し立てを巡る審理が30日に香港高等法院で開かれる。同社にとっては今後の命運を左右する局面となる。
約3270億ドル(約49兆円)相当の負債を抱える中国恒大に清算命令が出された場合、香港の法律下でこうした命令を受ける不動産開発会社としては過去最大級となる。
これはもはや仮定のリスクにとどまらない。以前は中国恒大の再編計画を支持していた債権者グループも揺れ動く。いわゆるアドホックグループは清算の申し立てに反対するかどうかまだ決めていない。
中国恒大は先月下旬、債権者会合を土壇場で中止し、自社の再編案の条件を見直す必要があると発表。約190億ドル相当の同社オフショア債のうち、60億ドル超を保有するアドホック債権者側は蚊帳の外に置かれたとの反応を示した。
新たな再編計画の策定に手間取る中国恒大が清算命令を受ければ、先行き不透明感はさらに高まる。また、販売低迷や住宅購入者の信頼感欠如、資金繰り難にあえぐ中国不動産業界にも衝撃が広がることになる。
法律事務所デチャートのパートナーで、アジア再編問題を専門とするダニエル・マルグリーズ氏は、中国恒大と同社のアドバイザーにとって「審理は非常に難しくなる公算が大きい」と指摘。中国恒大はこれまで再編案のプロセスが進み、アドホックグループの支持を取り付けていたことを理由に、再三の審理延期で清算を免れてきたが、「今ではいずれも疑わしくなっているように見受けられる」と話す。
社債保有者グループは今月のプレスリリースで、清算となれば中国恒大の「制御不能な崩壊につながる」恐れがあり、再編を進める上で当局の承認を得られなければ「中国企業の再編に向けた道筋も尽きる」と主張した。
シンガポールの住宅価格は7-9月(第3四半期)に上昇に転じた。政府の介入や脆弱(ぜいじゃく)な経済状況にもかかわらず、4-6月(第2四半期)の落ち込みから回復したことで、市場の底堅さが示された。
都市再開発庁(URA)が27日発表した確定値によると、民間住宅価格の指数は前期比0.8%上昇。速報値は0.5%上昇だった。4-6月期は3年ぶりに下落していた。
シンガポールの不動産市場は今のところ、成長鈍化と金利上昇で需要が鈍化した他の主要市場のような低迷を免れている。このためシンガポールでは過熱した市場を落ち着かせるための抑制策がなお続いている。香港が今週、苦境にある不動産セクターの支援に向け印紙税引き下げを発表したのとは対照的だ。
中国は西側のテクノロジーを「国産」に置き換えようと、投資を強化している。背景には、米国政府によるハイテク製品の対中輸出制限の強化がある。政府の入札案件や研究論文、状況に詳しい4人の人物への取材から明らかになった。
ロイターが中国政府や中国軍、政府系の事業体による入札の詳細を報じるのは、今回が初めて。昨年以来、国内の代替テクノロジーへの置き換えが加速している様子が明らかになった。
業界の事情に詳しい2人の人物によれば、中国はコンピューター機器の置き換えに大規模に投資しており、次には電気通信セクターと金融セクターが対象になるという。また国の補助を受けた研究者らは、西側によるハッキングの可能性に対して特に脆弱(ぜいじゃく)なものとしてデジタル決済を挙げており、この分野の国産化の動きもありそうだ。
ロイターが中国財務省のデータベースを閲覧したところ、国有企業(SOE)や政府、軍機関による入札案件のうち、設備の国産化に関する件数は、2022年9月以降の12カ月間で119件から235件へと倍増していた。
データベース上では、この間に落札されたプロジェクトは総額1億5690万元(約32億円)で、前年比3倍以上となっている。
このデータベースで分かるのは中国全体での入札案件のごく一部でしかないが、国による入札案件を集めたデータベースとして一般に公開されているものとしては最大だ。IT分野の調査会社ファーストニューボイスによれば、中国は2022年に外国のハードウェア及びソフトウェアの置き換えのために前年比で16.2%増の1兆4000億元を投じている。
ただしアナリストによれば、最先端の半導体製造能力が不足していることから、100パーセント国産の代替品による完全な置き換えは困難だという。
北京のコンサルタント会社トリビアムチャイナで技術政策調査部門を率いるケンドラ・シェイファー氏は、過去にも国産品で代替しようという努力はあったものの、「成功させるだけの技術的能力がなかったために頓挫した。今でも一定程度、そうした能力不足は残っている」と指摘する。
証券会社5社によれば、国有企業は昨年9月、オフィスのソフトウェアシステムを2027年までに国産品に置き換えるよう国有資産監督当局に指示された。こうした具体的な期限を定められるのは初めてだったという。ロイターではこの指示について独自の裏付けを得ることができなかった。
入札データから見ると、今年の国産移行プロジェクトは、機密に関わるインフラを対象としている点が際立っている。
「甘粛省のある政府機関」による入札案件は、詳細は明らかにされていないものの一部の情報が公開されており、予定価格440万元で、情報収集システム用の機器を更新するという内容だった。
北東部ハルビンと南部アモイ の人民解放軍部隊は昨年12月、外国製コンピューターを国内製品に置き換えるための入札を行った。
国内最大の国営研究組織である中国科学院の莫建雷氏らテクノロジー研究者らは、中国政府は、西側諸国製の機器が外国勢力によってハッキングされることへの懸念を強めていると指摘した。
国有資産監督当局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
政府系の研究者らはこの1年、地政学的な懸念を理由として、国内の金融インフラにおけるハッキング対策を強化するよう政府に呼びかけてきた。
3月に発表されたある研究論文は、中国のクレジットカード「銀聯(ユニオンペイ)」の決済システムが米BMCのソフトウェアに依存している点に注目。「米国側が設定したハードウェア及びソフトウェアのセキュリティーの脆弱性に注意し、金融セキュリティーのファイアウォールを築くべきだ」と指摘した。
BMCはコメントを控えるとしている。
国営通信大手の中国電信の研究者らが専門誌「サイバースペースセキュリティ」 で今年発表した論文は、中国が米半導体大手クアルコム(QCOM.O)のバックエンド管理用の製品や、基本ソフトとして米アップル(AAPL.O)の「iOS」、米アルファベット(GOOGL.O)傘下グーグルの「アンドロイド」に依存しすぎていると結論づけている。
研究者らは「これら(のシステム)はすべて米国企業にガッチリと掌握されている」と指摘した。
米財務省によれば、中国は世界貿易機構(WTO)の公的調達に関する条項に調印していないため、こうした国産品への置き換えの取り組みが国際合意に反しているとは考えにくいという。米国も同様に、公共部門が行う調達から中国企業を排除するルールを導入している。
クアルコム、グーグル、アップルにコメントを要請したが、今のところ回答はない。
独自のコンピューティング・システムを構築する中国の取り組みは、少なくとも2006年の科学技術開発5カ年計画までさかのぼる。同計画は、国家的な優先分野として半導体及びソフトウェアシステムを挙げていた。
この取り組みから生まれた国有企業が、このところ大型案件の落札を増やしている。ハルビンの案件を落札した2社は、米国の厳しい制裁の対象となっている中国電子信息産業集団と中国電子科技集団の子会社だった。
国産オフィス業務処理ソフトウェアを開発する北京の企業の従業員は、当局による22年の指示を受け、国有企業はマイクロソフト(MSFT.O)やアドビ(ADBE.O)などの米国企業の製品を使わなくなったと話す。
例えば国有煙草メーカーと取引のあるソフトウェアベンダーの従業員によれば、中国煙草は7月、子会社の一部でマイクロソフトのウィンドウズから中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)のEulerOSへの切り替えを開始したという。
西側諸国のテクノロジー企業は長年、中国政府の懸念に対処するためソースコードを提供し、中国企業と提携契約を結んできた。だが、中国工程院の倪光南氏など著名なコンピューター科学者は、こうした対応では中国のセキュリティー面でのニーズを満たすには十分ではないと指摘している。
中国煙草、マイクロソフト、アドビにコメントを要請したが、回答は得られなかった。
ロイターをはじめとするメディアは9月、中国の中央政府機関において一部の職員が業務でのiPhone使用を禁止されたと報じた
在中国欧州連合商工会議所は、ロイターの問い合わせに対し、「一部のセクターや顧客が国内サプライヤーを選ぶようになっており、外国のサプライヤーは非公式の障壁にぶつかることが珍しくない」と回答した。
在上海米国商工会議所は今年、同会議所に加盟しているテクノロジー企業の89%が、規制上の障害として「中国国内のライバルに有利な調達慣例」を挙げたと報告している。これはすべてのセクターの中で最も高い数字だ。
同支部のエリック・ツェン代表は、中国の国家安全保障上の懸念を認識しつつ、「米中両国の利益のために、米国企業がフェアに競争してビジネスチャンスを追求できるよう、通常の調達手続きが政治に左右されないことを願う」と述べた。
米商務省、中国電子信息産業集団と中国電子科技集団にコメントを要請したが、回答は得られなかった。
<優位に立つ華為技術>
中国の法人向けテクノロジー産業に詳しい3人の情報提供者によると、国産品への置き換えを目指す今回の動きの先頭に立つのが華為技術だ。
ソフトウェアやクラウドコンピューティング部門を含む華為技術のエンタープライズ事業は、2022年には前年比30%増となる1330億元の売上高を計上した。
情報提供者の1人は、非上場企業の華為技術は、国有企業グループに比べて製品の発売やプロジェクトの推進という点で機敏だと話す。
他の2人の情報提供者は、華為技術の優位点として、半導体からソフトウェアにまで至る製品ラインアップの幅広さを強調した。
また中国煙草のテクノロジー関連サプライヤーの従業員によれば、華為技術は社内サーバーと外部クラウドネットワークにおけるデータ処理能力、さらにはサイバーセキュリティー製品を幅広く提供している点も顧客に高く評価されているという。
華為技術はコメントを控えるとしている。
国産品への置き換えの動きによって、ソフトウェア産業の下位産業全体の構図も変化している。調査会社IDCによれば、データベース管理システム分野において、米企業を中心とする主要外国企業5社の中国市場におけるシェアは、2018年には57.3%だったが、2022年末には27.3%まで低下した。
一方、国産品への置き換えに向けた大規模大投資があっても、銀行や電気通信企業のデータベース管理のサプライヤーとしては、外国企業が依然として優位に立っている。テクノロジー市場専門のコンサルタント企業イコールオーシャンによれば、2022年末の時点で、銀行向けデータベースシステムに関する市場シェアは非中国企業が90%を握っている。
金融機関は一般的に、政府からの圧力があってもデータベースシステムの乗り換えには消極的だと、業界関係者の1人は言う。他の多くのセクターに比べ、金融機関では安定性への要求が高く、国内企業ではそのニーズに応えきれないと語る。
業界関係者の1人は、銀行がパソコンに関して国際ブランドから中国の主力サプライヤーであるレノボ (0992.HK) に乗り換えるとしても、肝心の半導体については西側諸国の企業が提供する製品への依存が続くだろうと話した。
ハンガリーのオルバン首相は27日、国営ラジオに対し、ウクライナ戦争に関する欧州連合(EU)の戦略は「失敗」しており、ウクライナが前線で勝利することはないとして、プランBを策定すべきだと述べた。
EU首脳会議の合間にブリュッセルで、特にウクライナ支援を巡って「大きな闘い」があると明かし、支援のためにハンガリーが納税者のお金を供与する理由はないと語った。
その上で、EUによるプランBのコストが分かれば負担を分かち合うことができるとの考えを示した。
欧州連合(EU)首脳会議のためにブリュッセルに到着したエストニアとルクセンブルクの首脳は26日、ハンガリーのオルバン首相が今月の訪中時にロシアのプーチン大統領と会談したことを批判した。
エストニアのカラス首相はオルバン氏にこの問題を提起すると述べ、ルクセンブルクのベッテル首相はプーチン氏との会談はロシアの侵攻を受けるウクライナ国民に「中指を立てる」ようなものだと非難した。
オルバン氏は自身の戦略を「誇りに思う」と表明。「われわれは平和のために何でもやるつもりだ。それ故、ロシアとの対話ラインを全て開いたままにしている。そうしなければ平和の機会が失われる」と釈明した。
オルバン政権は他のEU加盟国に比べてロシアと近い関係にあり、対ロシア制裁に繰り返し反対しているほか、EUのウクライナ追加支援阻止もほのめかしてきた。
中国の李克強前首相の突然死は、習近平国家主席に新たなリスクをもたらしている。習主席に次ぐ中国ナンバー2として10年間首相を務め、改革派として人気のあった李氏への市民の思いが、景気減速に対する不満に波及する恐れがあるからだ。
中国では不動産危機で多くの人が資産を減らし、若年層失業率は記録的高水準に達している。こうした中、習主席が外相と国防相を相次ぎ解任したことで、すでに政権の安定性には疑問が投げかけられている。
李氏の死去に乗じて反体制の声が広がれば、政情不安への懸念は一段と強まりかねない。中国市民は実際に過去、共産党指導者の死去をきっかけに党の権力掌握への抗議を示したことがある。
アジア・ソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治を研究するニール・トーマス研究員は「習氏は恐らく、追悼を率先して行うことで、李氏の死が政治的主張に利用される可能性を封じようとするだろう」と指摘。「李氏の死を利用して習体制に反対しようとする企てを押さえ込むための協調的な取り組みもあるだろう」と述べた。
中国では1976年、周恩来氏の死去が広範な抗議行動のきっかけとなった。1989年4月に胡耀邦氏が死去した際には、天安門広場での民主化要求デモにつながった。共産党指導部は天安門広場とその周辺に軍部隊を送り込み、抗議者たちを武力で排除。死者数は最大2600人に上ると推定されている。
中国外務省の毛寧報道官は27日の定例記者会見で、「突然の心臓発作による李克強前首相の悲劇的な死に深く哀悼の意を表する」と述べ、李氏の葬儀の段取りについては「しかるべき時に」発表されると説明した。
中国のインターネット上では李氏を悼む声が広がり、ソーシャルメディアの微博(ウェイボ)では訃報の閲覧回数が約13億回に上り、多くのユーザーがショックと悲しみを表していた。
アメリカン大学の歴史学者、ジョゼフ・トリジアン氏はX(旧ツイッター)への投稿で、中国指導部が直面する当面の課題は、李氏の遺族を満足させながら習政権の政治的アジェンダにも配慮しつつ、民衆の感情を煽らないような方法で李氏の死去を扱うことだと指摘した。
中国政治に関するニュースレター「内参」を発行しているアダム・ニー氏は、李氏の死去は「重要かつデリケートな政治的節目」になる可能性はあるものの、全体的な影響は限定的とみている。
「周氏や胡氏の死去時のような政治的潮流が生まれるほど、民衆の不満が高まっているとは思わない。平均的な中国人は、来月の今頃には李氏の死を忘れているのではないだろうか」と語った。
●中東
●中南米・アフリカ
26日に発表された調査機関アナロギアの世論調査によると、アルゼンチン大統領選第1回投票で予想外に首位に立った与党連合の中道左派セルヒオ・マサ経済相が、リバタリアン(自由至上主義者)のハビエル・ミレイ氏に支持率でリードを広げている。
両氏は来月19日の決選投票に進んだ。アナロギアスの調査は、決選投票に関する支持率を集計した初の結果となった。
調査では、マサ氏の支持率は42%、ミレイ氏は34%だった。
ブラジルの世論調査は近年大きくはずれることが多く、第1回投票もでほぼ全ての事前調査でミレイ氏の支持率が優勢だったにもかかわらず、最終的には6ポイントの差で2位となった。
ただ、回答者の18%が決選投票で支持する候補をなお決めておらず、どちらにも投票しないとの回答も6%あった。
調査は23─25日、有権者約2000人を対象に実施した。
ロイター通信によると、メキシコ政府は28日、ビーチリゾートで知られる南部ゲレロ州アカプルコを25日に直撃したハリケーン「オーティス」による死者が39人に上ったと発表した。オーティスは一時、5段階分類で最強の「カテゴリー5」に発達。地元メディアは同国観測史上最強だったとしている。
オーティスは街を浸水させ、多くの家屋や店舗などの屋根を引きはがし、通信や道路を寸断した。
●市況
<為替> ドル指数が下落した。ポートフォリオのリバランスが影響した。ただ週間では米経済の堅調な足取り維持を示す経済指標を背景に上昇する見込みとなった。ドル指数は0.07%安の106.5。アナリストによると、ポートフォリオのリバランスを目的とした取引が影響したという。一方、ドル指数は週間で0.4%上昇した。
ドル/円は0.6%安の149.515円だった。
鈴木俊一財務相は27日の閣議後会見で、為替円安に対し「引き続き強い緊張感を持って万全の対応を行なっていく」との考えを示した。為替はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映して安定的に推移することが重要で、過度な変動は望ましくないとの認識も示した
<債券> 長期債利回りが上昇した。朝方発表された米インフレ指標をはじめ、最近発表された一連の指標が今後の金利の道筋にどう影響するか見極める動きとなった。
<株式> 主要株価指数がこの日の安値圏で引けた。投資家は「高金利長期化」シナリオを示す経済指標やまちまちの米企業決算を消化した。
アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)、アップル(AAPL.O)、メタ・プラットフォームズ(META.O)の上昇を背景にハイテク株比率の高いナスダック総合指数はプラス圏を維持した一方、S&P総合500種とダウ工業株30種平均は下落した。
ベアードの投資戦略アナリスト、ロス・メイフィールド氏は「市場のトレンドに逆らうのは難しい。トレンドは一段と下落している。決算は好調だが、反転上昇の起爆剤にはなっていない」と述べた。
メイフィールド氏は「大手ハイテク企業の決算は大半が良好だったが、十分ではなかった。ただ全体像は良好で、年末ラリーの土台になるかもしれない」とした。
米アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)は6.8%高。26日、年末商戦を含む第4・四半期の売上高と利益が急拡大すると予想した。
米半導体大手インテル(INTC.O)も9.3%上昇。26日発表した第4・四半期業績見通しは、売上高が市場予想を上回った。
フィラデルフィア半導体指数(SOX)(.SOX)は1.2%上昇した。
S&P主要11セクターではエネルギー(.SPNY)が最も下落した。一方、一般消費財(.SPLRCD)、情報通信(.SPLRCT)、通信サービス(.SPLRCL)のみ上昇した。
米石油大手シェブロン(CVX.N)は第3・四半期決算の減益を受けて6.7%下落。米石油大手エクソンモービル(XOM.N)は2023年第3・四半期決算の純利益が91億ドルと過去最高益だった前年同期からは約54%減ったことを受け1.9%下げた。
米フォード・モーター(F.N)も12.2%安。26日、通期の業績見通しを撤回した。全米自動車労働組合(UAW)と暫定的に合意した新たな労働協約について、組合員の正式承認を待っているためとしている。 もっと見る
<米原油先物> パレスチナ情勢が緊迫する中、エネルギー供給不足への懸念が再浮上し反発した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値は前日比2.33ドル(2.80%)高の1バレル=85.54ドル。1月物は2.16ドル高の84.70ドル。
<ロンドン株式市場> 続落して取引を終えた。英銀のナットウエストが業績見通しを下方修正したことなどが嫌気され、銀行株が売られた。今週はさえない企業決算の発表が相次いだことも相場の重しとなってFTSE100種指数(.FTSE)は週間ベースで1.50%安と、2週連続のマイナスとなった。
27日はナットウエスト(NWG.L)が11.6%下げ、1日の下落率としては英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が決まった2016年以来の大きさだった。利益見通しを引き下げたほか、旧ブレグジット党の党首を務めたナイジェル・ファラージ氏の「銀行取引解除」における違反の可能性を巡り、規制当局の調査に直面したことも売りを促した。
FTSE350種銀行株指数(.FTNMX301010)は2.30%下げた。 生活必需品株の英日用品のユニリーバ(ULVR.L)、酒造大手のディアジオ(DGE.L)がそれぞれ2.0%、2.7%下落したことも相場を押し下げた。
<欧州株式市場> 続落して取引を終えた。フランスの製薬大手サノフィが大幅下落し、相場を押し下げた。
サノフィ(SASY.PA)は18.9%と急落。2025年に事業営業利益率を32%に引き上げる目標を撤回したことが嫌気され、時価総額は210億ドル近く減った。フランスのCAC40指数(.FCHI)は1.36%下げた。
四半期決算の中核利益が予想を下回ったスウェーデンの家電メーカー、エレクトロラックス(ELUXb.ST)は27日に13.6%下落。通期の業績見通しを引き下げたフランスの酒類メーカー、レミー・コアントロー(RCOP.PA)は11.3%下げた。
<ユーロ圏債券> 国債利回りが低下した。今週は欧州中央銀行(ECB)が11会合ぶりに金利据え置きを決定。ユーロ圏国債利回りは週初と比べ低下している。
日経先物30580、ダウ先32475、債先144.31、米4.845、独2.8125、仏3.438、西3.905、伊4.799、英4.6090、波5.755、原油85.16、銅8,096、ドル円149.65、ユーロドル1.0566
※10/27 NY引け値

備忘録(2023/10/26)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ドイツのシーメンス・エナジーが保証の確保を求めて政府と話し合いを進めている。同社は低迷する風力タービン部門の再建に苦戦している。26日の株式市場で同社の株価は一時36%下落した。
発表文によれば、今年の純損失とキャッシュアウトフローは市場予想を上回る見込み。スペインの風力部門シーメンスガメサが一部のオンショアプラットフォームについて新規契約の受注を停止したことが響いた。
これによりシーメンス・エナジーは特にガス・電力部門でより長期のプロジェクトを請け負うために保証が必要になったという。事情に詳しい関係者が語ったところによれば、シーメンス・エナジーに深刻な流動性問題はないものの、同社の約4分の1を所有するシーメンスは、これ以上の支援を提供することは望んでいない。
●その他産業
英石油大手シェル(SHEL.L)は25日、輸送・工業セクターの脱炭素化を目指す「低炭素ソリューション(LCS)」部門の人員を少なくとも15%削減するとともに、水素燃料事業を縮小すると発表した。1月に就任したワエル・サワン最高経営責任者(CEO)が進める収益向上のための改革の一環。
ロイターの問い合わせに対する同社の回答では、約1300人体制のLCSで、来年200人を削減する予定。これとは別に130人の配置換えを検討している。一部は他部門に統合する見通しだ。
今回の改革の重点は水素事業。水素燃料電池で動く乗用車の技術を開発している事業を大幅に縮小し、大型車・重工業部門に集中する。
シェルは早くから水素燃料電池車を推進してきた企業の1つだが、消費者の間で電気自動車(EV)の方が普及したため、近年は世界中で数多くの水素補給ステーションを閉鎖している。
サワン氏は前任者の方針を転換し、利ざやの大きいプロジェクトに集中するとともに、石油生産を維持し、天然ガス生産を拡大する改革を打ち出した。
●決算関連
国際貨物輸送大手の米ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS) (UPS.N)は、2023年の売上高予想を下方修正した。電子商取引関連の配送需要の減少が響いた。
UPSは、労使交渉の難航で顧客を失い、現在は顧客の取り戻しに取り組んでいる。
今年度の売上高予想は約930億ドルから913億─923億ドルに引き下げた。調整後営業利益率も約11.8%から10.8─11.3%に下方修正した。
貨物輸送業界は、電子商取引関連の需要減少で競争が激しくなっている。ロイターは今月、UPSなどが市場シェア維持へ数年ぶりに値下げなどを実施していると報じた。
キャロル・トメ最高経営責任者(CEO)は、低調なマクロ経済環境が世界の需要に悪影響を及ぼしたと指摘。一方で、労使交渉中に失った需要を取り戻しつつあると説明した。
7─9月の調整後1株利益は1.57ドル。LSEGが集計したアナリストの平均予想は1.52ドルだった。
川崎重工業(7012.T)は26日、米航空防衛大手RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)(RTX.N)傘下のプラット・アンド・ホイットニー(P&W)のエンジン不具合を巡り、国際共同開発を行う参画プログラムメンバーとして、約580億円の損失を2024年3月期第2・四半期に計上すると発表した。
9月に民間航空エンジンの国際共同事業体IAEが公表した損失見込み額である約70億米ドルに対し、川崎重工業のプログラム参画シェア5.8%を乗じて算出した。
RTXは9月、P&Wが手掛ける「ギアード・ターボファン(GTF)」エンジンについて、エアバス(AIR.PA)の旅客機「A320ネオ」に搭載されている600─700基を今後3年で回収・検査する必要があると明らかにした
日立建機 (6305.T)は26日、2024年3月期(国際会計基準)の連結業績予想を上方修正した。連結営業利益は1360億円から1560億円(前年比17%増)へと引き上げ、過去最高を見込む。中国を含むアジアの減速を好調な米州がカバーする。マイニングなどの需要が好調なほか、為替円安、原価低減や販売価格の引き上げも寄与する。
IBESがまとめたアナリスト13人のコンセンサス予想の平均値1643億円は下回っている。
塩嶋慶一郎CFO(最高財務責任者)は会見で「下期は、欧州、アジアでの需要減速を慎重に織り込みつつ、注力する米州事業、マイニング、バリューチェーン事業を着実に伸長させる」と述べた。
地域別では、ロシアCISや中国、中南米は減収となるものの、米州が大きく増加する見通し。米州の売上高が19%増となる一方で、景気減速が懸念されている中国の売上高計画は22%減、ロシアCISは23%減と落ち込む。緊迫している中東情勢下でのイスラエル市場については「軽微でほとんど影響はない」という。ただ、欧州の市況等に影響することについては、情報を集めて対応していきたいとした。
高水準の資源価格などを背景に鉱山の採掘などで使うマイニングの需要は好調。高い稼働率からオーバーホール需要やメンテナンス需要も継続している。マイニングの売上高は前年比10%増の2723億円を見込んでいる。
下期の想定為替は1ドル135円と前回予想より5円円安、1ユーロ145円と同15円の円安に修正した。
未定としていた中間配当は85円(前年同期は50円)とする。
米州が前年同期比8%増収と大きく伸びたことなどから、4―9月期の売上収益は6741億円(前年同期比16%増)、営業利益は828億円(同56%増)となり、上期としては過去最高の売上高・利益となった。
独高級自動車大手メルセデス・ベンツ(MBGn.DE)が26日発表した第3・四半期決算は、納車台数の減少などで減収減益となった。
メルセデス・ベンツ・カーズ部門の通年の調整後売上利益率については予想レンジ12─14%の下限になるとの見通しを示した。
同社は、市場環境は低調で、特に電気自動車(EV)分野での価格競争が顕著だと指摘。各メーカーが特にEV需要を喚起するため、世界中で年間を通じて値下げする中、同社は販売台数よりも利益率改善に重点を置くため、追随しないできた。
メルセデス・ベンツは第3・四半期は、インフレ加速、3億ユーロ超の為替差損、サプライチェーン関連コストなどが利益を圧迫したと説明。
グループ全体の税引前利益(EBIT)は6.8%減の48億ユーロ(51億ドル)、売上高は1.4%減の372億ユーロだった。
カーズ部門の調整後売上利益率は12.4%で、年間予想の下限となった。
小型商用車のバンズ部門は、EBITが44%増の7億1500万ユーロ、調整後の売上高営業利益率が15%となり、好調だった。
メルセデス・ベンツは今月初め、第3・四半期の全世界販売台数が前年同期比4%減少したと発表した。 
第3・四半期は納車台数の減少により、自動車関連の売上高は3.8%減少したが、平均販売価格は安定していたという。
今後については、第4・四半期も第1─3・四半期とほぼ同じペースでの販売を見込んでおり、横ばい成長という通期販売目標を据え置いた。
英金融大手スタンダード・チャータード(スタンチャート)(STAN.L)が26日発表した第3・四半期決算は、税引き前利益が3分の1減少し、アナリスト予想を大幅に下回った。中国の不動産および銀行セクターへのエクスポージャーが10億ドル近い損失を計上したことが響いた。
第3・四半期の法定税引前利益は6億3300万ドル。前年同期(9億9600万ドル)と同行のアナリスト予想平均(14億1000万ドル)を大きく下回った。同行はアジアが収益の大半を占める。
信用減損損失は前年同期比6200万ドル増の2億9400万ドルを計上。中国の商業用不動産市場に関連して1億8600万ドルを計上した。
また、渤海銀行(9668.HK)の保有株で7億ドルの損失を計上した。業績低迷と厳しい経済状況を反映したものだという。
スタンチャートの中国不動産エクスポージャーは総額27億ドルで、前四半期から2億ドル減少した。
同行は、有形株主資本利益率(ROTE)で今年10%、来年11%という目標に引き続き自信を示したが、今年のその他の業績予想の一部を下方修正した。
純利ざやは1.7%ポイント「前後」から「近づく」水準と修正した。
金融市場トレーディング部門の収益は前年同期比8%減少。市場のボラティリティー低下により、特に金利、コモディティー、外国為替に関連する商品の取引に対する顧客の意欲が減退した。
フランスの銀行大手BNPパリバ(BNPP.PA)が26日発表した第3・四半期決算は、純利益が前年同期比4%減の26億6000万ユーロ(28億1000万ドル)となり、同社がまとめた市場予想の26億4000万ユーロとほぼ一致した。
トレーディング収入が引き続き減少したものの、法人向け金融サービスが好調だった。
収入は4%増の115億8000万ユーロ。市場予想の115億2000万ユーロをわずかに上回った。
トレーディング収入は9%以上減少。FICC(債券、為替、コモディティー)が、株式部門から移管した事業を除くベースで14.3%の減収となった。
債券発行、シンジケートローン、キャッシュ・マネジメントを手がけるグローバルバンキング事業は約20%の増収で、トレーディング収入の落ち込みを相殺した。
第3・四半期の貸倒引当金は7億3400万ユーロ。市場予想の8億1500万ユーロを下回った。営業経費は3.4%増と、増収率を下回り、業績を下支えした。
有形株主資本利益率(RoTE)は12.7%。同社が設定した2025年までの目標である12%を達成できる見通し。
今年の自社株買い計画(50億ユーロ規模)の85%以上を完了したことも明らかにした。
米決済処理ネットワーク大手マスターカードの7-9月(第3四半期)決算は、カード利用額が増加した。金利上昇と景気減速の脅威がある中でも、消費者がアナリスト予想を覆し続けていることが明らかになった。
同社の26日発表によると、カード利用額は12%増の1兆8800億ドル(約282兆円)となり、アナリスト予想を上回った。買収や人件費の増加により、営業費用は前年同期比約2%増の27億ドルとなった。ただ、アナリストの予想は下回った。
クロスボーダー決済額は21%増加し、堅調な海外旅行および旅行以外の国境をまたぐ支出の強さを反映した。
マイケル・ミーバック最高経営責任者(CEO)は発表文で、「今四半期も大幅な増収増益を達成したが、これは当社事業の堅調なファンダメンタルズと引き続き底堅い個人消費を反映したものだ」と指摘。「マクロ経済と地政学的な不確実性は依然として高いものの、当社の多角的なビジネスモデルは、決済とサービスにおける大きなビジネスチャンスを生かす上で有利な立場にある」と述べた。
純利益は32億ドル、1株当たり利益は3.39ドルと、いずれもアナリスト予想を上回った。
自動車世界大手の独フォルクスワーゲン(VW)が26日発表した2023年7〜9月期決算は、売上高が前年同期比12%増の788億4500万ユーロ(約12兆5000億円)、営業利益は15%増の48億9400万ユーロだった。一方、1〜9月の原材料の価格ヘッジで25億ユーロ(約4000億円)の損失が発生し、通期の業績予想を一部下方修正した。
アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)は26日、年末商戦を含む第4・四半期の売上高と利益が急拡大すると予想した。ホリデーシーズン向けのマーケティング策や配送スピード向上、クラウド事業の見通し改善などが寄与する見通し。
引け後の時間外取引で、アマゾンの株価は一時5%上昇した。
併せて発表した第3・四半期決算は、売上高が13%増の1431億ドル。LSEGのデータによると、アナリスト予想は1414億1000万ドルだった。
純利益は99億ドルと、前年同期の28億7000万ドルから増加した。
7月に開催した有料会員向け特売「プライムデー」の売上高は過去最高を記録し、業績押し上げに寄与した。
インサイダー・インテリジェンスのアナリスト、ザック・スタンボー氏は「(アマゾンは)今年を通じて大幅なコスト削減に取り組み、主要成長分野への注力を強化してきたことから、昨年の減速は過ぎ去ったようだ」と述べた。
クラウドサービス部門「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」の売上高は231億ドルで、アナリスト予想の230億9000万ドルを上回った。
アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は声明で、「AWSの伸びは引き続き安定している」と述べた。
小売部門では物流網の再編を通じて配送スピード向上やコスト削減を図った。
ハーグリーブス・ランズダウンの株式アナリスト、ソフィー・ルンドイエーツ氏は「小売部門は特に北米で活気を取り戻している」と指摘。アマゾンが年末商戦に備え採用している季節労働者は大幅に増加しており、裁量的支出見通しにとって良い兆しだと述べた。
北米部門の売上高は11%増の約88億ドル、営業利益は43億ドル。前年同期は営業赤字だった。
第4・四半期の売上高見通しは1600億─1670億ドルと予想した。市場予想は1666億2000万ドル。
フォード・モーター(F.N)は26日、通期の業績見通しを撤回した。全米自動車労働組合(UAW)と暫定的に合意した新たな労働協約について、組合員の正式承認を待っているためとしている。
フォードとUAWは25日、向こう4年半で25%の賃上げを行うことなどを盛り込んだ労働協約に合意した。
第3・四半期の調整後1株利益は0.39ドルで、LSEGデータに基づくアナリスト予想の0.45ドルに届かなかった。売上高は前年同期比11%増の440億ドル。
電気自動車(EV)部門の利払い・税引き前損益は13億ドルの赤字で、予想を上回る赤字額となった。
フォードは、EV事業が価格と収益の面で「急激な下押し圧力」に見舞われており、顧客はEVに対して内燃エンジン車やハイブリッド車よりも高い価格を支払おうとしないと説明。ジョン・ローラー最高財務責任者(CFO)は、新たなEV生産に向けて予定していた数十億ドル規模の投資について一部を先送りする方針を示した。
米自動車大手フォード・モーターは26日、全米自動車労組(UAW)によるストライキがEBIT (利払い・税引き前損益)を13億ドル(約1900億円)下押しするとの見通しを発表した。UAWとの労使協議は暫定合意に達し、ストは終結するが、9月15日から40日超続いた争議の影響は大きい。暫定合意は最終決定までに手続きが残っているとして、2023年12月期通期の業績見通しは撤回し.
米半導体大手インテル(INTC.O)が26日発表した第4・四半期業績見通しは、売上高が市場予想を上回った。ノートパソコンで人工知能(AI)搭載ソフトを動かす半導体を開発する中、パソコン市場が健全に回復すると楽観的な見方を示した。
引け後の時間外取引でインテル株は8%上昇した。
第4・四半期の調整後売上高は約146億─156億ドルになると予想。LSEGがまとめた予想の143億5000万ドルを上回った。
調整後の1株当たり利益は約0.44ドルになると予想。アナリスト予想の0.32ドルを上回った。
第3・四半期決算は、調整後の1株当たり利益が0.41ドルと、LSEGがまとめた予想の0.22ドルを上回った。
売上高は8%減の142億ドル。部門別では、PC向けを含む中核部門が3%減の79億ドル、データセンター部門が10%減の38億ドル。
パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)の再建計画を支えるための多額の設備投資により、2020年には60%以上あった粗利益率は、第2・四半期には30%台半ばにまで縮小した。
ただ、第3・四半期の調整後粗利益率は45.8%に改善し、予想の42.7%を上回った。
ゲルシンガー氏はロイターに対し、インテルは既に半導体受託製造事業で3社の顧客を獲得しており、年内に4社目の顧客との契約が成立する見込みだと語った。
インテルがこれらの企業向けに製造するチップの数については明言を避けたが、最初の顧客は「非常に重要な顧客」だと述べた。次の2社は、最初の1社ほど大きくないが、重要な顧客だとした。
サミット・インサイツ・グループのアナリスト、キンガイ・チャン氏は「新たな顧客を得たことで、インテルは(製品製造のための自社工場を持たない)ファブレス大手にとって信頼できる最先端ファウンドリー(受託製造)企業になる」と述べた。
今年の米国株上昇をけん引してきた「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるテクノロジー7社の決算が期待外れになっている。約2000億ドル(約30兆円)の時価総額が吹き飛び、S&P500種株価指数を調整局面に追い込む恐れがある。
グーグルの親会社アルファベットやテスラ、フェイスブックの親会社であるメタ・プラットフォームズはいずれも決算発表以降に株価が低迷しており、決算が好感されたのはマイクロソフトのみだ。アマゾン・ドット・コムは26日の通常取引終了後に決算を発表するが、オプション市場では同社株の1日の騰落率が8.1%になると予想されており、時価総額にして約1000億ドルが動くとみられる。
残り2社のアップルとエヌビディアは来月、決算を発表する予定。
この7社は人工知能(AI)にまつわる熱狂的な関心を背景に、今年の株式市場で話題をさらった。しかし金利上昇と中東での戦争を受けて楽観的な見方は弱まり、S&P500種は年初来高値から8.8%下落。強気相場の調整局面と定義される10%安が視野に入っている。
ただ、高揚感はまだ十分に残っている。マグニフィセント・セブンの影響が強いナスダック100種株価指数は、年間でなお31%上昇しており、下値余地は十分にある。
メタは25日の投資家向け電話会見で、マクロ経済環境に広告事業が大きく左右されるとの見解を示した。
アルファベットは25日に時価総額が1800億ドル近く減少した。前日に発表したクラウドコンピューティング部門の利益がアナリスト予想を下回ったためだ。1日での時価総額消失としては、同社では過去最大だった。今月にはテスラが決算の発表翌日に720億ドルの時価総額を失っている。
今のところ、7社唯一の希望の光はマイクロソフトだ。24日に発表した7-9月期決算が予想を上回り、25日には時価総額が約750億ドル拡大した。
クラウドインフラでアマゾンに後れを取っているアルファベットとマイクロソフトは、自社のプラットフォームを顧客にとってより魅力的なものにする方法として、AIサービスの拡充を競ってきた。クラウドコンピューティングのリーダーであるアマゾンは、26日夕に決算を発表する
●先進国、グローバル、金融市場
米商務省が26日発表した2023年第3・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期より4.9%増え、伸び率は21年第4・四半期以来1年9カ月ぶりの高水準だった。ロイターがまとめた市場予想は4.3%増だった。
米経済活動の3分の2超を占める個人消費が伸びをけん引し、労働市場の逼迫による賃金上昇が背景にある。
第2・四半期のGDPは2.1%増えていた。米連邦準備理事会(FRB)当局者がインフレを伴わない成長率とみなす1.8%前後を上回るペースで拡大している。
第3・四半期の大きな成長ペースが続く可能性は低いものの、FRBの積極的な利上げにもかかわらず経済が底堅いことを裏付けた。第4・四半期は、全米自動車労働組合(UAW)のストライキや学生ローン返済の再開による影響で成長が鈍化する可能性がある。
大部分のエコノミストは従来の予想を修正し、今ではFRBが経済の「ソフトランディング」(軟着陸)を実現できると考えている。第2・四半期に労働生産性が堅調に推移し、単位労働コストの伸びが緩やかになった傾向が第3・四半期も続くと見込んでいるためだ
26日の米金利先物市場で、連邦準備理事会(FRB)が年内は金利を据え置き、来年半ばに利下げを開始するという観測が強まった。朝方発表された第3・四半期の米国内総生産(GDP)速報値は、市場予想を上回る4.9%増と、強い伸びとなったものの、他の一連の指標は過去の利上げにより経済が減速している兆候を示唆した。
市場が織り込む12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%ポイント利上げの確率は24%と、米GDP発表前の30%近辺から低下した。
LPLファイナンシャルのジェフリー・ローチ氏は、GDP統計で示された堅調な個人消費について「投資家は驚くべきでない」とし、「このトレンドが今後数四半期続くかどうかが真の問題で、われわれはそうなるとは想定しない」と述べた。
イエレン米財務長官は26日、足元で米長期債利回りが急上昇していることについて、強い経済と高金利の長期観測を反映しているとの考えを示した。
イエレン氏はブルームバーグのワシントン支局で開かれたイベントで、国債利回りの上昇は「先進国における世界的な現象だ」と指摘。「経済は引き続き極めて堅調であり、これは高金利が長期化する可能性が高いことを示唆している」と述べた。
一方、財政赤字に対する懸念が利回りを押し上げているとの見方については退けた。
イエレン米財務長官は26日、7-9月(第3四半期)の米国内総生産(GDP)データは米経済が非常に好調であることを示しており、リセッション(景気後退)を招くことなくインフレを抑制する「ソフトランディング(軟着陸)」の兆候があるとの認識を示した。
イエレン氏はブルームバーグのイベントで、7-9月GDPについて「力強い数字で、経済が非常に好調なことを示す」と指摘。「このペースで成長が続くとは思っていないが、良好で堅調な成長を遂げている」と述べた。
また「米経済にとって非常に良い結果をもたらすソフトランディングのように見える」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)は26日の理事会で、政策金利の据え置きを決定、25年の歴史で最長となった連続利上げを打ち切った。最新のデータではインフレ率が目標の2%に向かって緩やかに低下していることを引き続き示しているとの見解を示した。
中銀預金金利を過去最高の4.0%に据え置き、現在の政策金利を「十分に長い期間」維持すれば、インフレはしっかり抑制される可能性があると再確認した。
ECBは「これまでの利上げは、引き続き資金調達環境に力強く伝達されている。これにより需要が次第に減衰し、インフレ押し下げの一助になっている」とした。
パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)は、来年末まで継続すると改めて表明した。一部の当局者は前倒し終了を求めていた。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ユーロ圏経済は低迷しているとの認識を示すと同時に、物価上昇圧力は依然として強く、中東紛争でエネルギーコストが上昇すれば、追い打ちがかけられる可能性があると指摘。「われわれは安定しなければならない。今回は据え置きを決定した」とし、「何も行動を起こさないこと自体が、行動を起こすことになるときもある。据え置きの決定には意味がある」と述べた
その上で、ECBがこれまでに実施した利上げで、特に銀行融資が縮小するなど、経済に明らかに大きな影響が及んでいると言及。「年内は景気は弱い状態が続く公算が大きい」と述べた。同時に「インフレがさらに低下し、家計の実質所得が回復し、ユーロ圏の輸出需要が回復するにつれ、経済は将来的に力強さを増す」との見方も示した。
総裁によると、今回の決定は全会一致。利下げの可能性を含め、将来的な金利の行方について議論するのは時期尚早とも述べた。
また、1兆7000億ユーロのPEPPについて、債券保有高の早期削減は議論されなかったと述べた。
◎金利はピーク、当面は制約策維持
<クインテット・プライベート・バンク(ロンドン)の最高投資責任者(CIO)、ダニエレ・アントヌッチ氏>
今回の決定で、ECBの政策金利がピークを付けた可能性が高いというわれわれの見方が裏付けられた。
インフレは高水準にとどまると予想されているが、最近は一段と低下したほか、基調インフレを示す大部分の指標も緩和し続けている。
同時に、景気減速も明らかになりつつある。われわれは向こう数カ月にわたる穏やかなリセッション(景気後退)を予想している。
経済活動が弱体化する中、インフレは緩やかに低下しているものの、引き続きECBの目標を上回っている。こうしたダイナミクスを踏まえると、ECBの政策金利はピークに達したと考えられる。
ただ、インフレとの戦いに完全には勝利していないため、インフレ再燃の防止に向け、ECBは当面は制約的な金融政策を維持すると予想される。
◎問題は金利据え置き期間
<ドイツ銀行ロンドン支店欧州担当チーフエコノミスト、マーク・ウォール氏>
欧州中央銀行(ECB)は2022年夏以来初めて、政策金利の引き上げを見送った。今は忍耐が重要だとしている。現在の制限的な金利水準を十分に長く維持することによってのみ、インフレ率が目標に戻ることを確信できる。問題は、十分な長さとはどれくらいなのかということだ。
◎利上げサイクル終了へ
<UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのチーフユーロ圏兼英国エコノミスト、ディーン・ターナー氏>
欧州中央銀行(ECB)による金利据え置き決定は十分周知されていたため、投資家にとってサプライズではなかった。プレスリリースのメッセージは、データ依存を強調し、インフレ率が目標に戻ることを確認する必要性を強調するなどほとんど変わっていないが、利上げサイクルが終わったことは明らかだ。
カナダ銀行(BOC、中央銀行)のマックレム総裁は、インフレが中銀の予想通りに低下すれば、一段の利上げを行う必要はない可能性があると述べた。
マックレム総裁は26日に放送されたカナダの公共放送CBCラジオのインタビューで「景気はもはや過熱していない。将来的にインフレは一段と緩和すると予想されており、これが実現すれば、一段の利上げの必要性はなくなる」と述べた。
利下げについては、金利を引き下げる前に、インフレ率が中銀が目標とする2%に向けて低下していることを示す「明確な証拠」が必要になると指摘。「インフレを低下させられれば、金利を現行水準から引き下げることができる」と述べた。ただ、「新型コロナウイルス感染拡大前の水準には戻らない」との見方も示した。
カナダ中銀は25日に開いた理事会で、政策金利である翌日物金利の誘導目標を予想通り5.0%に据え置くと決定した。 
次回決定会合は12月6日。大部分のアナリストは今回の利上げサイクルは終了したとの見方を示している。
米労働省が26日発表した10月21日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は1万件増の21万件だった。今年の新規失業保険申請件数は19万4000件─26万5000件の範囲の下限にとどまっている。
10月14日までの1週間の継続受給件数は前の週の172万7000件から179万件に増加した。予想は174万件だった。
住友生命保険は2023年度下期の一般勘定運用で、超長期債を中心に日本国債等を数千億円規模で積み増す計画。また足元で利回りが1.8%台に上昇した30年債については「投資妙味が相応にある」として、投資に適切なタイミングだとの考えを示した。
増田光男・運用企画部長が26日、運用方針説明会で明らかにした。
同社の運用資産の主軸で円建て負債に対応する日本国債等は、上期に引き続き、金利リスク削減と収益力向上を目的に、超長期債を中心に投資を進める。買いのペースは、年間購入予定額を均等に割った「平準買い」を基本に、金利上昇局面ではまとまった金額を投入する。その結果、残高は「下期は上期と同程度の、数千億円規模で増加するイメージ」(増田氏)という。
投資対象となる超長期国債の年限について、増田氏は「30年債が中心。市場環境次第で40年債に行くことはあっても、20年とか年限を短くする選択肢は考えていない」と話している。
足元で1.8%台半ばと10年ぶり高水準に上昇した30年国債の利回りについて、増田氏は「当社の負債コストを上回ってくるような水準で、相応に投資妙味がある」と前置き、「イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の撤廃やマイナス金利の解除をある程度織り込んだ水準で、ここからさらに大幅に上昇するとは考えづらい」ことから、適切な投資タイミングであるとの考えを示した。
日銀の金融政策について、同社は「賃上げに関するデータがそろう来春まで日銀がさらなる政策修正へ動く可能性は低い」との見方から、「24年4月にYCC撤廃とマイナス金利解除が実施される」ことをメインシナリオとして想定。「早ければ年内にYCCを撤廃、年明けにマイナス金利を解除」する可能性もサブシナリオとして備える。
外国債券のうちヘッジ付きは、ソブリンはヘッジコスト上昇の影響緩和のため売却する方向で、外貨建てクレジットは米国事業債を中心に投資を拡大する。またオープン外債は、為替・金利の水準
国内株式・外国株式は、いずれも株価動向次第としているが、現時点では残高増加を見込む。オルタナティブ資産は、上期に続き、インフラエクイティやプライベートエクイティファンドなどに投資を行い、残高を増やす方針。
住友生命の資産残高(会社計)は、3月末時点で35兆2982億円。うち外貨建て資産は10兆0191億円(28.4%)。
自動車関連情報調査会社S&Pグローバル・モビリティは25日公表したリポートで、10月の米国の自動車販売台数は増加すると見込みつつも、米3大自動車メーカーのストライキを理由に年内の見通しは引き続き不透明と分析した。
同社は10月の新車販売台数は前年同月比3.3%増の122万台と予想している。
同社の首席アナリスト、クリス・ホプソン氏は「10月の自動車販売台数は季節調整済み年率換算で1570万台と予想され、見た目よりも堅調だろう」と述べた。
フォード・モーター(F.N)、ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)、ステランティス(STLAM.MI)3社の全米自動車労組(UAW)に加入する従業員約4万5000人が各社の主要施設でストを続けており、人気のスポーツタイプ多目的車(SUV)やピックアップトラックの一部の生産が停止している。
S&Pは、22日までの週の時点で、各拠点で行われたストの影響で約15万台が生産されなくなったと推計。9月は販売台数への影響は限定的だったが、ストによる生産停止は3社の10月の販売台数に響くと見込まれ、影響は11月も続きそうだと付け加えた。
豪銀大手ウエストパック銀行のチーフエコノミスト、ルーシー・エリス氏は、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が11月に25ベーシスポイント(bp)の利上げを決定する可能性が高いと予想した。従来の据え置き予想を変更した。
豪中銀が11月7日の次回理事会で、政策金利を25bp引き下げて4.35%にする可能性が高いとした。
同氏は「インフレ率は低下しているが、中銀が金利を据え置くほどの速さでは低下していない」と指摘しつつ、据え置きも完全に排除できないと語った。
同氏は最近まで中銀の経済部門責任者だった。
オーストラリア統計局が25日発表した第3・四半期の消費者物価指数(CPI)上昇率は予想以上に加速。コアインフレ率も予想を上回り、利上げが必要な可能性が示された
著名投資家ビル・アックマン氏のヘッジファンドが、米30年物国債の価格下落を見込んだ取引で約2億ドル(300億円)の利益を稼ぎ出したことが、事情に詳しい関係者の話で25日分かった。
アックマン氏は23日、X(旧ツイッター)への投稿で自身が率いるヘッジファンドのパーシング・スクエア・マネジメントが米30年債の売り持ち高を解消したと明かしていた。売り持ち高を組んだことは、8月初めに公表していた。
同氏は23日の投稿で「米経済は最近のデータが示唆する以上に減速が進んでいる」と指摘。「現行の長期金利水準で、債券の売り持ちを継続するのは、世界的にリスクがあまりにも多い」とした。
パーシング・スクエアは株式を中心に運用しているが、リスクヘッジのための取引も時折行う。
米30年債利回りはアックマン氏が売り持ち形成を公表した時点で4.16%程度で推移していた。足元は5.08%程度まで上昇(価格は下落)している。
●中国・アジア・ロシア・東欧
クレジットデリバティブ決定委員会(CDDC)は26日、中国不動産開発大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)(2007.HK) の外貨建て社債について、10月18日に「支払い不履行」のクレジットイベントが発生したと発表した。
同社の2025年9月満期のオフショア債1500万ドルの利払い猶予期間が18日に終了した。社債保有者はロイターに対し、期限が過ぎても資金を受け取っていないと明らかにしていた
中国の不動産開発大手、万科企業のドル建て債が26日午後の取引で急落し、一部の銘柄は過去最大の値下がりとなりそうだ。中国不動産業界を巡る懸念がいっそう広がっている。
同社の2024年3月償還債は額面1ドルに対し7.5セント下落し84セント、25年償還債(表面利率3.15%)は同9セント安の59.2セントと、このまま引ければいずれも1日の下げ幅として過去最大となる。
アジアの投資適格級ドル建て債に関するブルームバーグ指数を構成する発行体の今年のパフォーマンスを見ると、万科は同業の龍湖集団に次いで2番目に悪い。2社の年初来下落率は25日時点で30%を超えていた。
フィッチ・レーティングは先週、万科と保利発展の格付けを1段階下げ「BBB」とし、両社の高い債務水準を指摘した。今年の売上高では保利が中国不動産開発会社として首位、万科は2位に付けている。
フィリピン中央銀行は26日、政策金利を0.25ポイント引き上げ、金融引き締めを再開すると発表した。
レモロナ中銀総裁は記者会見で、政策金利を27日に6.5%に引き上げると説明。政策決定会合は11月16日に予定されていたが、その前に利上げを決めたことを明らかにした。
同中銀は2022年5月、ここ20年間で最も積極的な引き締めを開始。この日発表の利上げで金利引き上げ幅は計450ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)になる。
追加利上げは今週に入り総裁が示唆。中東紛争の激化に伴い世界的に原油価格が高騰したため、インフレリスクが高まっていると警戒感を示していた。
中国は25日、親米国として知られる南米コロンビアとの関係を「戦略的パートナーシップ」に引き上げ、中南米での影響力を拡大する取り組みを大きく進展させた。
コロンビアのペトロ大統領は今週、北京を訪問して習近平国家主席と会談。ペトロ大統領にとっては、昨年の就任以降初めての中国訪問となった。
コロンビア大統領府によると、両国は12件の協力契約を締結した。その中には、中国がコロンビア産牛肉の輸入を来年から許可することや、両国間の商取引を改善するためにいくつかの作業部会を立ち上げることなどが含まれる。
これにより南米11カ国のうち中国と戦略的関係を構築したのは10カ国となった。
コロンビアは南米11カ国で対中貿易赤字が最大だが、中国は近年、コロンビアからの輸入を大きく増やしており、コロンビアにとって米国に次ぐ第2位の貿易相手国となっている。
韓国銀行(中央銀行)が26日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)速報値は、季節調整済みで前期比0.6%増と、第2・四半期と同じ伸びを示した。伸び率はロイターがまとめた市場予想(0.5%)を上回った。輸出が成長をけん引した格好で、今後数カ月の金利据え置きを後押しする結果となった。
第3・四半期の輸出は3.5%増。前四半期の0.9%減から回復した。民間消費は0.3%増で、前四半期の0.1%減から持ち直した。
政府支出は0.1%増。建設投資は2.2%増となり、前四半期の0.8%減から回復した。
設備投資は2.7%減と大幅に落ち込んだ。
第3・四半期GDPは前年比では1.4%増と、前四半期の0.9%増から加速、エコノミスト予想(1.1%増)も上回った。
中銀は先週、6会合連続で政策金利を据え置き、ガザ紛争と国際原油価格からのインフレリスクを警戒しつつ、金融引き締めバイアスを維持した。 
中銀の当局者はGDP発表後の記者会見で「輸出の停滞が徐々に和らいでいる」とコメント。消費はインフレ圧力が阻害要因となってきたが、今後落ち着いたペースで回復すると見込むと述べた。
HI投資証券のチーフエコノミスト、パク・サンヒョン氏は、中銀が予測する年間1.4%の経済成長率を達成できるかはまだ不透明だと指摘。この日発表された企業景況感指標がそれほど良い内容ではなく、輸出の回復もあまり強くない可能性があるとした。
●中東
トルコ中央銀行は26日、大幅な利上げを決定した。年末には70%近くに達するとみられるインフレを抑制する狙いがある。
エルカン総裁率いる金融政策委員会(MPC)は政策金利を35%と、これまでの30%から引き上げた。利上げ幅は大半の予想通り。この決定発表後、トルコの銀行株は上げを拡大。通貨リラはほぼ変わらず。
サウジアラビアのジャドアーン財務相は25日、2024年1月1日以降、政府と契約を希望する外国企業にサウジ国内の拠点開設を義務付ける措置を予定通り実施すると述べた。
この措置は21年2月に発表され、経済多様化政策と地域の競争激化を踏まえて国民の雇用創出を支援するのが狙い。
ジャドアーン氏は、1月1日の実施期限は引き続き予定しているかとのロイターの質問に「期限は新たなものではなく、予定通り実施される」と述べた。
外国企業は長年、サウジを含む地域営業開始の足掛かりとして隣国のアラブ首長国連邦(UAE)を活用してきた。今回の措置については、一部企業が税制など規制の枠組みを巡り懸念していることから、投資家の疑念に対応するため期限を延期する可能性があるとの憶測もある。
●中南米・アフリカ
アルゼンチン大統領選で得票率が2位だった右派で野党のハビエル・ミレイ下院議員は25日、得票率3位だったパトリシア・ブルリッチ元治安相の支持を取り付けた。11月の決選投票に向け大きな弾みをつけた。
22日の大統領選では反米左派で与党連合のセルヒオ・マサ経済相が約37%の票を獲得。ミレイ氏の約30%、ブルリッチ氏の約24%を上回り、トップとなった。
投票で当選を決めるには、45%以上の得票率獲得、もしくは40%以上で2位候補に10ポイント以上の差をつけることが必要だった。どの候補者も当選条件を満たせなかったため、マサ氏とミレイ氏が11月19日の決選投票に進むことになった
ブルリッチ氏はこの日、記者団に「アルゼンチン国民の大多数は変化を選んだ。われわれはその変化の一翼を担っている」と述べ、中立という選択肢はないと強調。「より大きな目標のために(ミレイ氏と)力を合わせなければならないと信じている」と述べた。
25日に公表されたバンコ・ジニアルとクアエスト・ペスキザスの世論調査によると、ブラジルのルラ大統領支持率が低下した。経済悪化への懸念が重しになった。
大統領の政権運営を評価するとの回答は54%で、前回調査が行われた8月の60%から低下。一方、評価しないとの回答は42%と7ポイント増えた。
政府を前向きに評価した回答は38%で同42%から低下。否定的な評価は5ポイント上昇して29%となった。
経済が悪化しているとの回答は32%で同23%から上昇。楽観的な回答は34%から33%に低下した。
現政権がボルソナロ前政権より良いとの回答は47%と、8月の49%から低下。前政権より悪いとの回答は34%から38%に上昇した。
調査は10月19─22日に有権者2000人に実施。誤差は2.2%ポイント。
●市況
<為替> 終盤のニューヨーク外為市場では、ドル指数が小幅に上昇した。第3・四半期の米国内総生産(GDP)が約2年ぶりの高い伸びを示したことを受けた。
<債券> 米金融・債券市場では、国債利回りが低下した。第3・四半期の国内総生産(GDP)統計で物価と可処分所得の伸びの鈍化が示されたことで、米国の政策金利はピークを付けたか、ピークに近い水準に達しているとの見方が裏付けられた
<株式> 米国株式市場は続落して取引を終えた。まちまちの企業決算や米連邦準備理事会(FRB)の高金利長期化につながる経済指標をにらみ、ハイテク株が下げた。
主要3指数は全て下落した。ハイテク株比率の高いナスダックは最も下げ幅が大きかった。業績見通しの視界不良や高金利長期化を巡る懸念で巨大テクノロジーなど超大型7銘柄から成る「マグニフィセント・セブン」が下げたことが響いた
<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、米成長率が予想を大幅に上回ったことを受けて売りが先行したものの、その後は買い戻され、小幅続伸となった。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、中東情勢を背景とした供給不安が幾分和らぎ、反落した。
パレスチナ自治区を実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの紛争について、バイデン米大統領は25日の記者会見で、民間人保護に全力を尽くす必要があるとの考えを表明。イスラエルが米国の要請に応じて侵攻を遅らせることで合意したとも報じられた。イスラエル軍が25日夜から26日未明にかけてガザ北部で「次の段階の戦闘準備」として急襲作戦を実施したと伝わり今後の情勢は不透明なものの、この日はいったん利益を確定させる動きが優勢になった。市場関係者の間では、イスラエルの原油産油量が少ないことから、同国とパレスチナ間の戦闘がエネルギー供給に及ぼす影響は限定的と指摘する向きもあった。
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。英大手銀行スタンダード・チャータード(スタンチャート)や英日用品のユニリーバの決算内容が期待外れだったのを受け、銀行株や消費関連株が売られた。
スタンチャート(STAN.L)は12.4%下落。中国の不動産および銀行セクターへのエクスポージャーが10億ドル近い損失を計上したことが響き、2023年第3・四半期の税引き前利益が33%減少したことから売り込まれた。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。さえない企業決算の発表が相次いだのが嫌気され、銀行株や自動車銘柄が売られた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが低下したほか、中核国債と周辺国債の利回り格差がやや縮小した。欧州中央銀行(ECB)が政策金利を据え置いたほか、1兆7000億ユーロのパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)について、来年末まで継続すると改めて表明したことを受けた。
日経先物30747、ダウ先32982、債先144.32、米4.851、独2.8425、仏3.468、西3.935、伊4.865、英4.6445、波5.807、原油83.65、銅8,011、ドル円150.35、ユーロドル1.0564
※10/27 9時00分頃

備忘録(2023/10/25)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ドイツ銀行は、新たな人員削減を開始する。クリスティアン・ゼービング最高経営責任者(CEO)は経費削減と収益性向上に向けた取り組みを加速させる。
同CEOは25日アナリストに対し、新たな人員削減措置は4月に発表した800人の上級職の削減を上回る規模となるだろうと述べた。この削減にもかかわらず、ドイツ銀の従業員数は今年4000人以上増加している。
ゼービングCEOは2025年までに経費を収入の62.5%未満に減らすという公約を達成しようとしているため、従業員数は今後減少すると予想していると述べた。賃金上昇を含む高インフレに加え、顧客サービス問題の解決費用からITプロジェクトの経費超過まで、多くの同社固有の問題がこの目標の達成を難しくしている。
25日の発表によると、ドイツ銀の経費は年初来9カ月の間に7%増加し、通期では2022年の204億ユーロ(約3兆2400億円)を「わずかに」上回る見込み。7-9月(第3四半期)の費用収益比率(CIR)は72.4%だった。
ゼービングCEOは、経費目標を達成するために必要であればボーナスを削減することもあり得ると述べた。
米プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社KKRが目指す新たなインフラ投資向け資金調達を支援する銀行や証券会社の中で、異色の顔ぶれが存在感を発揮している。フィデリティとチャールズ・シュワブだ。
両社とも個人に金融サービスを提供することで知られ、KKRのような巨額の投資パートナーシップに投資することの多い年金基金や寄付基金とは異なる。しかし、これらの大手機関投資家からの資金の流れは細っている。その多くが、金利がゼロ近辺に張り付いていた時代に高リターンを求め貪欲にPE投資を進めてきた結果、この資産クラスに過度に偏ってしまったためだ。
これとは対照的に、個人投資家の資産はいわば眠れる巨万の富だ。KKRが9月に行った投資家向けプレゼンテーションによると、2020年時点で個人投資家の資産は世界で推定178兆ドル(約2京6700兆円)に上るが、このうちオルタナティブ投資への配分はわずか1%に過ぎない。フィデリティやシュワブはKKRのような企業に対して「マス・アフルエント(大衆富裕層)」への入り口を提供する。KKRをはじめPE投資会社は足元、10万ドル-100万ドルの投資資金を抱えるこの層のマネーに注目し始めた。
ベビーブーマー世代が確定拠出年金(401k)のような雇用主が提供する老後の貯蓄口座から個人退職勘定(IRA)へと資金を移す中で、フィデリティやシュワブは個人の退職金口座へのアクセスを提供する。IRAはオルタナティブ投資の自由度がはるかに高く、これはヘッジファンドやPE投資会社にとって有望な傾向だ。
ウェルス・エンハンスメント・グループのシニア・バイス・プレジデント、デービッド・ヒンメルライヒ氏は「IRAにある資金は、地球上で最大の流動性資本プールだ」とし、PE投資会社にとって重要性が増していると話す。
規制当局への提出書類によると、シュワブとフィデリティは、モルガン・スタンレー・スミス・バーニーとロックフェラー・ファイナンシャルとともに、「KKRインフラ・コングロマリット」の資金調達に絡み、報酬を受け取る可能性があると記載されている。
KKR、シュワブ、フィデリティはKKRインフラ・コングロマリットについてコメントを拒否した。KKRインフラ・コングロマリットは、「KKRプライベート・エクイティ・コングロマリット」とともに、富裕層から資金を調達するために設立された。
●その他産業
中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)はオランダ半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングの装置を使って、華為技術(ファーウェイ)のスマートフォン向けに先端プロセッサーを製造したことが、事情に詳しい複数の関係者によって明らかになった。
問題となっているプロセッサーの製造には、欧州最大の企業価値を有するハイテク企業、ASMLによる極端紫外線(EUV)露光装置のほかにも複数企業のツールが用いられたという。関係者らは非公開の情報であることを理由に匿名で話した。中国による半導体生産技術の進歩を食い止めるうえで、ASMLに対する輸出規制は遅過ぎた可能性が示唆された。
ASMLはコメントを控えた。同社の販売が輸出規制に違反したという指摘はない。
米国は日本、オランダと連携し、ファーウェイのスマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載された回路線幅7ナノメートルの半導体で実証された高度な半導体技術を、中国が利用できないようにしている。
●決算関連
スペインの金融最大手サンタンデール銀行が25日発表した2023年7〜9月期決算は、純利益が前年同期比9%増の29億200万ユーロ(約4600億円)だった。金融引き締めによる利ざやの拡大で、欧州を中心に金利収入が伸びた。
純金利収入は7%増の112億1900万ユーロだった。欧州中央銀行(ECB)による利上げが追い風となったスペインやポルトガルのほか、メキシコでも増えた。純手数料収入は2%増の31億1900万ユーロとなった。北米や南米で自動車金融などが好調だった。
貸倒引当金は19%増の32億6600万ユーロとなった。ポーランドのスイスフラン建ての不動産ローンの損失への備えで積み増した。
サンタンデール銀行のアナ・ボティン会長は「外部環境の不透明さは高まっているが、2024年までは業績への追い風が続くと予想している」とコメントした。
ドイツ銀行が25日発表した2023年7〜9月期決算は、純利益が10億3100万ユーロ(約1600億円)と前年同期比で8%の減益だった。金利の上昇を追い風に商業銀行部門で収益が増えたものの、投資銀行部門などが伸びなかった。
米油田サービス大手ベーカー・ヒューズ(BKR.O)が25日発表した第3・四半期の調整後1株純利益は0.42ドルで、LSEGデータに基づくアナリスト予想の0.40ドルを超えた。
原油価格上昇などで記録的な利益を計上したエネルギー業界が増産や新規の探査に向けた資金を投じつつあることが、ベーカー・ヒューズなどの油田サービス企業に追い風となっている。
ロレンツォ・シモネッリ最高経営責任者(CEO)は「世界経済に不透明感が根強いものの、われわれの事業全体にわたって前向きの動きが見え続けている」と述べた。
同社の油田サービス・設備部門は海外からの収入が前年同期比で約19%増えて28億9000万ドルに達し、北米からの収入も8%増加した。
産業・エネルギー技術部門の収入は37%増の26億9000万ドル。各国が温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す中で、水素やその他低炭素エネルギーの開発需要の高まりがプラスに働いた。
ボーイング(BA.N)は25日、主力単通路機「737」の今年の納入目標を従来の400─450機から375─400機に引き下げた。スピリット・エアロシステムズ・ホールディングス(SPR.N)が供給する部品の不具合の影響が続いているためだ。
複通路機(ワイドボディ機)「787ドリームライナー」については、今年目指している少なくとも70機の納入を達成させる方針で、月産ペースを4機から5機に移行させつつある。
第3・四半期の1株当たり損益は3.26ドルの赤字で、赤字幅はアナリスト予想平均の2.96ドルより大きくなった。売上高は181億ドルと、アナリスト予想の180億ドルをわずかに上回った。
各事業のうちでは、防衛部門が固定価格での受注に伴うコストオーバーに苦戦を強いられている。次世代の大統領専用機の製造や人工衛星プログラムなどの費用負担で第3・四半期は9億3300万ドルの赤字となり、粗利益率はマイナスが続いた。
デービッド・カルフーン最高経営責任者(CEO)は、防衛部門の業績回復が期待しているよりも遅れているとの見方を示した。
今年のフリーキャッシュフロー目標は30億─50億ドルを維持。ブライアン・ウエスト最高財務責任者(CFO)は、商用機全体の納入ペースや在庫整理、次世代大型機「777X」の生産体制強化などを踏まえれば、来年のフリーキャッシュフローは今年見込みを上回るとみている。
IBM(IBM.N)が25日発表した第3・四半期売上高は前年同期比約5%増の148億ドルで、LSEGデータに基づくアナリスト予想の147億3000万ドルを上回った。調整後1株利益は2.20ドルと、やはり予想を超えた。
第3・四半期はドル高が売上高をおよそ2億5000万ドル目減りさせた。同社は全収入の半分以上を米国外で稼いでいる。
ただソフトウエア部門は好調で、こうした為替レートの影響を除いたベースで8%近い増収を確保した。
同社は通期の売上高伸び率とフリーキャッシュフローの見通しを据え置いた。
ITサービス事業は、厳しいマクロ経済環境下で顧客が予算圧縮を続けているため、逆風に見舞われている。それでも同社のジェームズ・カバノー最高財務責任者(CFO)はロイターに、この事業で市場シェアを伸ばしたと語った。
生成人工知能(AI)がブームとなる何年も前から企業向けAIアプリ開発に乗り出していた同社には、ソフトウエアとコンサルティングサービスの双方で、多数の顧客から技術の引き合いがきているという。
メタ・プラットフォームズ(META.O)が25日発表した第3・四半期決算は、売上高と利益がともに市場予想を上回った。デジタル広告の回復と積極的なコスト削減が寄与した。
底堅い個人消費に期待する広告主が、年末商戦期を前に広告を増やした。
第3・四半期の広告閲覧数は前年比31%増加。広告単価は6%下落したものの、下落ペースは過去7四半期で最も小幅となった。
インサイダー・インテリジェンスの主席アナリスト、ジェレミー・ゴールドマン氏は「デジタル広告支出が世界的に増加し、来年に6676億ドルに達する見通しの中、メタは効果的な実行力とコスト管理をもって強い足場を築いている」と述べた。
メタの株価は引け後の時間外取引で3%上昇した。
同社は今後の規制面での圧力や、人工知能(AI)サービス構築に伴うインフラへの追加支出についても改めて警告した。
2023年の総費用見通しは870億─890億ドルとし、従来の880億─910億ドルから下方修正した。
24年の総費用は940億─990億ドルのレンジになると予想。LSEGによると、アナリストの予想を上回った。
第3・四半期売上高は23%増の341億5000万ドル。LSEGによると、アナリスト予想は335億6000万ドルだった。
1日にソーシャルメディアプラットフォーム「フェイスブック」、「インスタグラム」、対話アプリ「メッセンジャー」、「ワッツアップ」のいずれかを利用したユニークユーザーを追跡する1日当たりのアクティブユーザー(DAP)は7%増加した。
フェイスブックの1日当たりのアクティブユーザー数は5%増、メタ全体の広告インプレッション数は31%急増した。
米ホテル大手ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスの2023年7〜9月期決算は、純利益が前年同期比9%増の3億7700万ドル(約565億円)だった。アジア太平洋地域など海外旅行が堅調だった
夏の強い旅行需要を取り込み、売上高は13%増の26億7300万ドルだった。収益力の目安となる「1部屋あたりの売上高」(為替影響を除く)は、中国や日本、タイなどアジア太平洋地域が39%増と最も伸びた。中東・アフリカ地域も19%増だった。米国は3%増にとどまった。
フランチャイズなどを含んだ全体の平均客室単価(ADR)は3.6 %増の161.2ドルと19年同期の145.11ドルから11%増えた。人気のアジア太平洋地域は17%増だった。
クリストファー・ナセッタ最高経営責任者(CEO)は同日の決算説明会で「中国の景気悪化を懸念する声があるが、旅行需要は堅調だ。この傾向は24年にかけて続くだろう」と指摘した。同社は23年12月期通期の1部屋あたりの売上高を事前予想の前期比10〜12%増から12〜12.5%増に引き上げた。
●先進国、グローバル、金融市場
カナダ銀行(BOC、中央銀行)は25日の理事会で、政策金利である翌日物金利の誘導目標を予想通り5.0%に据え置いた。今後の成長鈍化を見込みつつも、インフレが2024年半ばまで平均3.5%で推移する見通しとし、追加利上げ余地を残した。
中銀は声明で「過去の利上げが経済活動を抑制し、物価圧力を緩和させているという証拠が増えている」と指摘。「一連の指標は経済の需要と供給が均衡に近づきつつあることを示唆している」とした。
インフレは24年下期には約2.5%に鈍化し、25年末までに2%の目標に回帰する見込みとしつつも、「エネルギー価格とコアインフレの継続的な持続性により、短期的な軌道はさらに高くなる」という見通しを示した。
同時に、コアインフレを示す指標には「さほど下方モメンタム」は見られないとし、追加利上げの可能性に含みを持たせる文言を維持。「物価安定に向けた進展の遅れとインフレリスクの高まりを懸念しており、必要に応じ政策金利をさらに引き上げる用意がある」と言明した。
物価安定へのリスク要因としては原油価格の上昇と、地政学的な不確実性増大につながるイスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの紛争と指摘した。
マックレム中銀総裁は記者団に対し、インフレリスクが7月以降高まったと指摘。「われわれは多くの進展を遂げたが、まだ(目標には)到達していない」とし、金利を22年ぶりの高水準である5.0%に維持する必要があるという認識を示した。
23年の成長率見通しは1.2%、24年は0.9%とし、それぞれ7月時点の1.8%、1.2%から下方修正した。世界経済は減速し、最近の世界的な債券利回りの上昇は需要を圧迫していると指摘した。
中銀の決定を受け、短期金融市場では年内追加金利観測が後退し、12月に追加利上げが実施される確率は約18%となった。
TDセキュリティーズのチーフカナダストラテジスト、アンドリュー・ケルビン氏は「中銀の経済を巡るハト派的なトーンを考慮すると、12月に行動を起こすために迅速に方向転換するのは難しいように感じる」と述べた。
フランクリン・テンプルトン・カナダの債券部門ディレクター、トム・オゴーマン氏は「いずれ利上げが経済に打撃を与え、おそらく景気後退に近い段階に差しかかかりつつある」と述べた。
米商務省が25日発表した9月の新築一戸建て住宅販売戸数(季節調整済み)は年率換算で前月比12.3%増の75万9000戸となった。慢性的な中古住宅不足が追い風になっているものの、8%に迫る住宅ローン金利が需要を抑制する可能性がある。市場予想は68万戸だった。
8月の販売戸数は67万5000戸から67万6000戸に上方修正された。
9月の前年同月比は33.9%増だった。
米抵当銀行協会(MBA)が25日発表した週次データによると、代表的な住宅ローン金利は7週連続で上昇し2000年9月以来の高水準となる一方、住宅ローン申請件数は28年ぶりの低水準になった。
10月20日終了週の期間30年の固定住宅ローン金利は平均7.9%で前週から20ベーシスポイント(bp)上昇した。
MBAの副会長兼副チーフ・エコノミストのジョエル・カン氏は、住宅ローン申請件数が1995年以来の低水準に低迷しているとしたうえで「ローン金利の上昇は、住宅購入希望者を市場から遠ざけており、借り換えを抑制し続けている」と述べた。
米国務省のジェフリー・パイアット次官補(エネルギー資源担当)は24日、水素や風力発電など、エネルギー転換の供給網に関わる米国の新興産業は、中国に独占されないよう迅速な行動を取る必要があると訴えた。
ワシントンで開催された会合で、風力発電や小型原子力発電、水素エネルギー関連の産業で、中国が優位に立つことは回避すべきだと指摘。中国が太陽光発電用のウエハーやセル市場を「実質的に独占」しているため、米国内で製品の生産が妨げられていると批判した。
パイアット氏は、欧州のエネルギー転換が単にロシアから中国への依存のシフトにとどまらないよう、欧州連合(EU)や日本、オーストラリアの産業界と連携していると強調した。
明治安田生命保険は2023年度下期の一般勘定運用について、上期に続き、超長期国債を中心に円建て債券の残高を増やす計画を示した。ペース配分は平準買いを基本とするが、足元は「やや慎重」姿勢で臨んでおり、日銀の政策修正を受けて金利が上昇する局面を待って買いを加速する方針。
北村乾一郎・運用企画部長が25日、資産運用方針説明会で明らかにした。
このうち円金利資産の核となる円建て債券は、金利リスク削減に向けて、20年物と30年物を中心に超長期国債を積み増す。買いペースに緩急をつけない「平準買い」を基本としつつも、金利上昇局面をとらえて機動的に追加投資に動く計画だ。
北村氏は、上期は7月の日銀決定会合で決まった長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用柔軟化を受けた金利上昇時に、一時的に国債買い増しのペースを加速したが、「今はまだ政策修正前でこれよりも金利は上昇すると考えており、ここまではやや慎重な姿勢で取り組んでいる」と総括する。
日銀の金融政策見通しについては「YCCの修正やマイナス金利の解除について、いつ、など具体的に予想を立ててはいない」とした上で、「どちらにせよ金利は上昇するという一方向で投資スタンスを考えれば良い。金利が上がったら買いに動く」との考えを示した。
政策修正後にスタンスを変えるかどうかは、「1回修正があっても、将来もう一段の修正・金利上昇があるなら慎重姿勢継続だし、YCCを解除してしまうならまた別の話になる」と述べ、政策修正の内容次第だとしている。
外債のうち為替ヘッジ付きソブリン債は、ヘッジコストの高止まりを受けて新規投資を抑制しつつ、低利回り銘柄を売却して残高を圧縮する。一方、為替オープンのソブリン債は、為替や金利の水準次第だが、現時点では残高増加を見込む。
またヘッジ付きの海外クレジットは、自社のニューヨーク拠点での直接投資などの体制を強化し、インハウスでスプレッドの取れる米国クレジット資産を積み増す。
ドル/円のヘッジコスト(3カ月物の為替予約)について、同社は年度末時点で5.30%と、9月末実績の5.96%から「やや低下するが高止まりする」と想定している。
外国投信がメインとなる外国株式は、こちらも自社のニューヨーク拠点を活用し、インハウス運用で残高を増やす方針。
一方、国内株式については、中期計画で掲げた23年度までに簿価ベースで1500億円程度を売却する取り組みの一環で、残高は前年度に続き減少見込みだが、トータルリターンの向上につながる銘柄入れ替えも実施する。
このほか投資用不動産は、市況を見極めながら大都市圏を中心に優良物件を厳選して積み上げ、残高を増やす計画。
明治安田生命の一般勘定の資産残高は、3月末時点で43兆6718億円。うち外貨建て資産は13兆2404億円(30.3%)。
日本生命保険は、2023年度下期の一般勘定運用で、超長期の日本国債のほか通貨スワップで円金利化した外国社債を含む「国内債券等」を積み増す計画。足元では超長期金利が10年ぶりの高水準にあるが、さらに上昇する可能性もあるため積極的に買う状況ではないとの見解を示した。
都築彰・執行役員財務企画部長が25日、資産運用方針説明会で明らかにした。
このうち、円金利資産の柱となる「国内債券等」には日本国債(JGB)のほか、通貨スワップを使って円建てのキャッシュフローに固定した外債が含まれるが、両方とも積み増す計画。買い入れる超長期国債の年限について、同氏は「30年が基本と言う方針に変わりがない」として、今のところ対象を拡大する考えはないことを明らかにした。
都築氏は上期の国債買いを振り返り、抑制的なペースでスタートしたが、7月の日銀決定会合で決まった長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の運用柔軟化を受けた金利上昇の機会を捉えて買いを加速させ、年間購入予定額を均等に割った「平準ペース」に追いついたと説明。
さらに足元の30年金利は1.8%台半ばと10年ぶりの高水準に上昇しているが、都築氏は「負債コスト(平均で1.9%程度)に見合う水準となり、絶対水準としてはいいところ」との認識を示しつつ、金融政策の変更や米金利上昇により今後まだ金利が上昇する可能性もあるため「今は前のめりになって買っている状況ではない」と述べた。
ただし、同社はメインシナリオでは今年度内に日銀の政策修正があるとは予想していないという。
外国債券のうち為替ヘッジ付き外債は、ヘッジコストの高止まりが見込まれる中で低利回り債を売却する一方で中長期的視点で妙味のある社債に投資を行い、残高は横ばいとする。オープン外債は為替や金利水準次第だが、残高は横ばいから減少を見込む。
このほか、国内株式は残高横ばい、オルタナティブを含む外国株式は、利回り向上と分散投資の観点から残高を積み増す。国内不動産は物件のリニューアルに投資するなどして、残高は横ばいの計画。
オーストラリア統計局が25日発表した第3・四半期の消費者物価指数(CPI)上昇率は予想以上に加速した。ガソリン価格や賃料の値上がりが主な要因だった。コアインフレ率も予想を上回り、利上げが必要な可能性が示された。
統計発表を受け、先物市場が織り込む来月の0.25%ポイント利上げ確率は66%と、発表前の35%から上昇した。
前期比上昇率は1.2%、市場予想の1.1%を上回った。前四半期は0.8%だった。
前年比の伸びは6.0%から5.4%に鈍化。市場予想の5.3%は上回った。
コアインフレ率の指標として注目されるCPIの中銀トリム平均値は前期比1.2%上昇。予想は1.1%上昇だった。前年比上昇率は5.9%から5.2%に鈍化したが、予想の5.0%を上回った。
9月単月のCPIは前年同月比5.6%上昇。8月の5.2%から伸びが加速した。
国内4大銀行のうち、コモンウェルス銀行(CBA)とANZは25日、利上げ休止予想を撤回し、11月に0.25%ポイントの利上げがあると予想した。
ANZのオーストラリア担当調査責任者であるアダム・ボイトン氏は、根強いインフレと政策当局者による最近のタカ派的なガイダンスを踏まえ、来月に0.25%ポイントの利上げを予想。「4.35%が金利のピークとなるはずだが、それ以上に引き締まるリスクもある」と語った。
CBAの豪経済担当責任者、ガレス・エアード氏は、11月に利上げを実施すれば、2025年後半までにインフレ率が目標圏内に戻るとの中銀の主張を維持できると指摘した。
豪ドルは0.5%上昇し、1週間ぶり高値の1豪ドル=0.6385米ドル。豪3年債先物は15ティック下落し95.68と、11年以来の安値。市場は金利が来年初めに4.46%でピークを付けると予想。統計発表前は4.35%だった。
燃料価格は前年比7.2%上昇し、2四半期続いた下落から上昇に転じた。中東の紛争がインフレ圧力をさらに高める可能性がある。
獣医、外食、美容院などさまざまなサービスでもインフレは高止まりしている。家賃は前年比7.6%上昇と09年以来の高い伸びとなった。
一方、果物や野菜が値下がりしたため、食品価格は2年ぶりの低い伸びだった。
中銀のブロック総裁は24日、インフレが予想以上に根強く、金利をさらに引き上げる必要が生じる可能性があると警告した。
オックスフォード・エコノミクス・オーストラリアのマクロ経済予測責任者、ショーン・ラングケーキ氏は「今週のブロック総裁の発言は政策引き締めの土台を築いた。コアインフレ率の上昇は利上げ再開を正当化する可能性がある」と語った。
独IFO経済研究所が25日発表した10月の業況指数は86.9と前月から予想以上に改善した。6カ月ぶりの上昇となったが、エコノミストは依然としてリセッション(景気後退)を懸念している。
ロイターがまとめたアナリスト予想は85.9だった。9月は85.8へ小幅に修正された。
企業は現在の経営状況にある程度満足しており、今後数カ月の見通しについてそれほど悲観的でないことが示された。
IFOのクレメンス・フュースト所長は「独経済には明るい兆しが見えている」と語った。
一方コメルツ銀行のチーフエコノミスト、イェルク・クレーマー氏は、IFO景況指数の水準は低く今年下半期のマイナス成長を示唆しているとの見方を示した。
欧州中央銀行(ECB)の利上げが独経済に影響を与えているとし、来年は力強い回復を見込んでいないと述べた。
「また過去15年間でビジネス拠点としてのドイツの魅力が損なわれており、企業は経済政策や気候政策に不安を感じている」と分析した。
ハウク・アウハウザー・ランペ・プリバトバンクのチーフエコノミスト、アレクサンダー・クルーガー氏は「中東での紛争が期待にブレーキをかけた可能性が高い。成長への期待は今後数カ月間埋もれたままだ」と指摘し、希望を見出すのは難しいと述べた。
IFOの調査によると、企業の景況感は製造業、サービス業、建設業では改善したが、貿易業では悪化した。
キャピタル・エコノミクスの欧州担当シニアエコノミスト、フランツィスカ・パルマス氏は、IFO業況指数よりも現況指数のほうがドイツの国内総生産(GDP)との関連性が高いと指摘した。
その上で第4・四半期GDPの前期比成長率が1%程度のマイナスになることと整合的だとし「独経済が再び景気後退に陥っているというわれわれの見方と一致する」と述べた。
これは10月の総合購買担当者景気指数(PMI)で示された状況よりもさらに悪いと語った。
S&Pグローバルがまとめた10月のドイツのHCOB総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は45.8と、9月の46.4から低下し、好不況の分かれ目となる50を4カ月連続で下回った。
欧州中央銀行(ECB)が25日発表した9月のユーロ圏の企業向け融資は前年比0.2%増と、2015年後半以来の低い伸びだった。
前月の0.7%増から鈍化した。
ユーロ圏の景気後退懸念が一段と強まった。ここ数週間発表された鉱工業生産や購買担当者景気指数(PMI)などはユーロ圏経済の停滞や縮小を示唆。外需低迷、消費者の警戒感、高金利が重しとなっている。
ただ、新規融資の月間のフローはプラス140億ユーロと、前月のマイナス199億ユーロから改善した。
家計向け融資は0.8%増。前月の1.0%増から鈍化した。月間のフローはプラス45億ユーロ。
ECBの調査によると、域内銀行は第4・四半期に企業向け融資を一段と抑制する計画。融資需要の減少も予想している。
9月のマネーサプライM3は前年比1.2%減。前月は1.3%減、ロイターがまとめた市場予想は1.7%減だった。
米経済がいまだに支障を来していないことに投資家が驚くそれなりの理由が存在する。米国債利回りが前回これほど著しく、これほど速いペースで上昇した際には、続けざまにリセッション(景気後退)に陥った。
米国の10年国債利回りは過去3年で4ポイント余り急上昇し、今週に入り2007年以来で初めて5%を突破した。今回の上げ幅は、ボルカー米連邦準備制度理事会(FRB)議長(当時)らがインフレ退治に動いた結果、10年債利回りが16%近くまで押し上げられた1980年代初め以降で最も大きい。
パウエルFRB議長の下での利上げが、その後最も積極的であることを考えれば、類似点は驚きではなく、同時に時代の変化も浮き彫りにする。
80年代には金融引き締めの猛攻が2回のリセッションの引き金となったが、今は米景気が悲観的な見通しを裏切り続けている。アトランタ連銀の推計では、今年7-9月(第3四半期)は勢いを増した可能性が高いほどだ。
ブルームバーグの集計データによれば、81年半ばに始まった当時2回目のリセッションまでに10年国債の実質利回りは4%前後に達したが、現在は1%前後にとどまっており、ボルカーFRB議長時代の金融政策の方が景気抑制的だったことは、言うまでもない。
それにもかかわらず、米景気が驚くほど強いために市場に大きな不確実性が生じ、米連邦準備制度が政策金利を高止まりさせるとの確信が強まる中で、債券利回りは過去数カ月で急上昇した。
しかし、米経済のそうしたレジリアンス(耐久力)が持続可能かどうかは、まだ分からない。 ヘッジファンド運営会社パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントを率いるビル・アックマン氏は23日、「最近のデータが示唆するより速いペースで米景気が減速しつつある」との認識を示し、米長期国債のショートポジションを手じまったことを明らかにした。
先物市場には米利上げが終わった公算が大きいというトレーダーの見方が反映されている。一方、連邦準備制度や他の主要中央銀行を含む大口の伝統的買い手が債券購入から手を引く状況で、新発国債を市場にあふれさせる連邦財政赤字の急増も最近数週間の利回り上昇の一因に挙げられる。
欧州の金融機関は中央銀行に預け入れる準備金を増やすことを義務付けられるのではないかとの臆測が広がっている。
コメルツ銀行、バークレイズ、UBSグループなどのストラテジストは、欧州中央銀行(ECB)が早ければ今週にも、いわゆる最低準備率(MRR)を引き上げる可能性があると警告している。
ユーロ圏の金融機関は現在、顧客預金などの負債の1%をそれぞれの国の中銀に預け入れる義務があるが、これには利息が支払われない。MRRを引き上げれば、中銀にとって4%の金利を支払う超過準備金が減り、金利コストの節減になるほか、過剰流動性の縮小につながる。
ブルームバーグの調査によると、ほとんどのアナリストは今後12カ月以内にMRRが引き上げられると予想している。バークレイズとコメルツ銀行は、今週2%に修正される可能性があるとみている。
中銀に固定される資金が増えることは銀行の収益性を悪化させるだけでなく、マネーマーケットにも直接的な影響を与える。金融機関は規則順守の負担を軽減するため、例えば翌日物預金金利を下げて預金流出を促すなどの「回避戦略」に出るかもしれない。
ECBが9月20日に最低準備金の付利をゼロとした後、既にこのような行動の兆候が見られた。ユーロ短期金利(ESTR)として知られるユーロ圏金融機関の無担保翌日物借入金利は2.6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し、月末の低下幅としては2020年12月以来最大となった。
バークレイズのユーロ金利戦略責任者、ロハン・カーナ氏は「ECBの翌日物基準金利がこのように変動するのは決して望ましいことではない。MRR引き上げは、単に多額の利払いの節約にとどまらない影響がある」と指摘した。
コメルツ銀のストラテジスト、クリストフ・リーガー氏によれば、MRRが1%のままであっても、10月末のESTRの低下はさらに大きくなる可能性があるという。
「マイナスの中銀預金金利の転嫁と同様に、より多くの銀行がMRRコストの上昇という要素を預金のプライシングに反映させるには、幾らか時間がかかるだろう」と同氏は述べ、「月末の曜日の巡り合わせに関連したテクニカル的な要因も、今月の大幅な低下を示唆している」と付け加えた。
銀行の回避戦略がレポ市場に与える影響も懸念される。ECBとユーロ圏のマネーマーケットで主要な役割を担う銀行の代表で構成する短期金融市場連絡調整グループ(MMCG)の9月会合の議事録では、マネー・マーケット・ファンド(MMF)が銀行ではなくレポ市場に資金を預け、報告日前後にレポ金利が「顕著に低下」するリスクが強調された。
9月の米新築住宅販売件数は大幅に増加し、2022年2月以来の高水準となった。住宅ローン金利が急騰している中でも、消費者の住宅購入意欲が依然あることが示唆された。
高水準の住宅ローン金利や物件価格を受け、購入を様子見する人は増える可能性があるが、中古住宅市場の在庫不足がこれまでのところ新築物件への需要を下支えしている。 
9月末時点で売りに出されていた物件は43万5000戸と、2月以来の高水準。現在の販売ペースで見た場合、在庫消化に要する期間は6.9カ月で、昨年の早い時期以来の低い水準となった。
新築住宅の販売価格(中央値)は41万8800ドル(約6280万円)に下落。ただ、新型コロナ禍前の水準は依然上回っている。
販売件数は北東部と南部を中心に、全地域で増加。特に南部は21年12月以来の高水準となった。
世界鉄鋼協会は25日までに、9月の世界粗鋼生産(速報値、対象は63カ国・地域)が前年同月比1.5%減の1億4930万トンだったと発表した。4カ月ぶりのマイナスとなった。最大生産国の中国で生産抑制をした影響が出た。2番目のインドは増加を維持した。
中国は8210万トンで、前年同月に比べ5.6%減った。政府は過剰な生産の抑制を指示している。インドは国内のインフラ投資などが堅調で、1160万トン(同18.2%増)となった。日本は700万トンで1.7%減。建設向けで中小案件の先送りが続くほか、機械や輸出向けが低迷している。
1〜9月期の世界粗鋼生産は前年同期比0.1%増と横ばいだった。欧州や米国、日本で生産量が減ったが、中国が1.7%増だったほかインドは11.6%増で他の国・地域の減少分をカバーした。
米下院は25日、共和党の保守派マイク・ジョンソン議員(51)を次期下院議長に選出した。賛成220票、反対209票の賛成多数で決定され、今月3日以降不在となっていた議長ポストがようやく埋まることになった。
ジョンソン議員はルイジアナ州選出の弁護士。トランプ前大統領からの支持も受けていた。投票直後に声明を発表し、下院の信頼回復と保守派政策の推進、同盟国支援に向けた意欲を表明した。
下院の勢力は共和党221、民主党212となっており、法案採決において造反はほとんど許されない。
2016年に初当選したジョンソン議員は、ここ数十年で最も経験の浅い下院議長となる。このため政敵が少なかったことも、議長選出の一助となった
米連邦議会下院は25日、共和党のマイク・ジョンソン氏を新議長に選出した。トランプ前大統領に近いジョンソン氏の知名度は低い。議長空席を巡り3週間に及んだ泥沼は、共和党の右傾化が確実になることで決着した。
マッカーシー前下院議長の解任後、3人の候補が後任を目指したがいずれも頓挫。前例のない共和党の派閥争いで下院は機能がまひし、イスラエルとウクライナに対する緊急支援で行動できなくなっているほか、米政府機関は来月閉鎖に追い込まれる恐れがある。
ルイジアナ州選出のジョンソン氏(51歳)は、2020年の大統領選で不正に勝利を奪われたとするトランプ氏の主張を中心となって支持していた人物。トランプ氏が大統領選に当選した2016年に下院議員に初当選した。
ジョンソン氏は今週、共和党議員に宛てた書簡で、交渉の時間を確保するため、年明けまで政府資金を手当てする暫定予算への支持を示した。現行のつなぎ予算は11月17日に期限を迎える。
これまで懐疑的な立場を示していたウクライナ支援については、バイデン大統領が求める追加支援に関する協議に応じる姿勢を示唆した。
米長期債が過去40年余りで最悪の売りを浴びたことで、最大の買い手だった連邦準備制度理事会(FRB)の不在にスポットライトが当たっている。
FRBは年間7200億ドル(約108兆円)のペースで国債のポートフォリオを縮小しており、2兆ドル近い連邦財政赤字を賄うという財務省の仕事をさらに難しくしている。量的引き締め(QT)として知られるFRBの同プログラムは、前回実施された時には当局者の想定よりも早期に終了したため、一部の市場参加者は今回も同じだと予想している。
一方でパウエルFRB議長ら米金融当局者は、長期債の利回り急上昇が利上げ継続の論拠を弱める可能性があるとこれまでに示唆しているが、QTに関してはそのような見解は示していない。むしろ、同プロセスは利下げが始まった後も継続される可能性があるとしている。
ただ、米10年債利回りが今週一時、2007以来初めて5%を超え、1982年以来の速いペースで上昇したことで、FRBは再考を迫られる可能性もある。問題は借り入れコスト高騰が経済のハードランディングを招くという脅威だ。そうなれば、株式や社債といったリスクの高い資産が危険にさらされる。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏はQTについて、「債券自警団がメッセージを送り続けるならば、必要に応じて米金融当局はすぐに変更することが可能だ」と指摘。「今は供給が重要だ。QT中の供給であり、興味深い」と述べた。
パウエル議長は今年6月の議会証言で、FRBのバランスシートについて、各緩和サイクルの後に膨張させたままにするだけでなく、縮小する必要があることを「非常に意識している」と語っていた。量的緩和(QE)の代償は明白だ。QEが生み出した銀行の準備預金にFRBは高い利子を支払っており、財務省の収入に約1000億ドルの穴が開いている。
しかしダドリー前ニューヨーク連銀総裁の計算によれば、流動性はまだ多過ぎる状況だ。銀行システムの準備金は米国内総生産(GDP)の約12%と、同氏は見積もっている。2019年9月は7%だったという。
ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるダドリー氏はブルームバーグテレビジョンで先週、「市場では多くの人が『FRBはいつQTをやめるのか』と問いかけているが、それは近い将来には起こらない」と話した。
日本の投資家ら、かつての大口の買い手も目立った動きがない。現在では価格に敏感なヘッジファンドなどがわずかな買い手となっているにとどまり、利回りを押し上げる一因となっている。
ドイツ銀行のチーフ国際ストラテジスト、アラン・ラスキン氏は、長期債相場が目立って上昇する場面がない中での利回り上昇はQTが「問題になる可能性」を意味すると指摘。ヘッジの強化や含み損を強いられる銀行が増え、社債利回りの上昇につながる可能性もあるとし、「悪循環となり得る環境が整っている」と続けた。
カナダ銀行(中央銀行)は25日、政策金利を2会合連続で5%に据え置いた。据え置きは予想通り。成長見通しについては下方修正したものの、根強いインフレ圧力を理由に追加利上げの選択肢を残した。
中銀は声明で「これまでの利上げが経済活動を抑制し、物価上昇圧力を緩和している兆しが増えている」と指摘。一方で「物価安定に向けた進展が鈍く、インフレリスクが高まっていることを懸念している」とし、必要ならさらに利上げする用意があると強調した。
来年のインフレ率見通しは平均3%と、前回7月時点の2.5%から切り上がった。
インフレの上振れリスクとして、家計や企業のインフレ期待の高止まり、異常気象の増加、イスラエル・ハマス戦争を含む地政学的な不確実性の増大を挙げた。
成長見通しは今年が1.2%、来年は0.9%にそれぞれ下方修正した
カナダ中銀は12月6日に次回の政策会合を開く。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国人民銀行(中央銀行)は25日、構造的政策ツールの融資残高が9月末時点で7兆180億元(9590億ドル)だったと発表した。6月末時点の6兆7800億元から2%増えた。
人民銀は、再融資や再割引制度、その他の低コストの融資など構造的政策ツールを拡大してきた。しかし、アナリストによると、資金逃避や人民元の外国為替レートに悪影響を及ぼす恐れから現在は制約が設けられている。
新型コロナウイルス禍後の中国経済の回復ペースが失速したのを受け、人民銀は流動性を高めるために金融機関の預金準備率を9月に引き下げた。引き下げは今年に入って2回目となった。
こうした経済支援策によって世界第2の経済大国である中国は2023年第3・四半期に予想を上回る経済成長率を示し、今年の成長率目標である5%前後を達成できる可能性が高まった。
中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は24日、1兆元の国債発行を承認した。当局者は長引く不動産不況といった幾つもの逆風に対処する必要がある中で、景気回復を後押しすると主張している。
中国国務院(内閣に相当)は、高水準の債務を抱える12の地方政府について、新規の負債を制限し、新たに着手できるプロジェクトにも制限を設けた。関係筋3人が明らかにした。
9月下旬付の国務院の文書が地方政府と国有金融機関に今月送られたという。
12の地方政府が新たな債務を取るのは、国務院が承認した主要プロジェクトと主要分野への数種類のプロジェクト向けの資金調達に限られる。都市部の再開発や手頃な価格の住宅建設のための資金調達は可能だが、新しい鉄道駅や発電所の建設などは認められない。
また地方政府傘下のインフラ投資会社「融資平台」の債務増加率は、融資平台が拠点を置く地域の企業セクターの平均債務増加率を超えてはならないとしている。
今回の措置は景気を刺激するために主要なインフラプロジェクトに資金を投入しながら、地方政府の債務リスクを軽減する中央政府の取り組みを反映している。
対象となったのは以前からデフォルト(債務不履行)のリスクが高いとされてきた12の地域で、遼寧、吉林、貴州、雲南など7省と3つの自治区、天津と重慶の2市。
関係筋によると、国務院の文書は今年と来年に期限を迎える債務の返済を優先するよう求めており、返済の繰り延べや債務の借り換えが許可されるという。
インドネシアのジョコ大統領は24日、景気支援策を発表した。
大統領府の声明によると、20億ルピア(12万6000ドル)未満の住宅購入にかかる11%の付加価値税(VAT)を来年6月まで廃止する。その後も無期限で税率を半減する。
また、2100万以上の低所得世帯に対するコメの配給を12月まで1カ月延長する。
ジョコ大統領は同日、投資家が参加したセミナーで、中東紛争の激化による原油高騰の可能性や米金融引き締めに伴う資本流出がインドネシア経済に悪影響を及ぼす可能性があるとした上で、ルピアの下落率については「インフレ目標だけでなく、実体経済にとっても金融業界にとってもまだ問題ない」と述べた。
中国国家発展改革委員会(発改委)は、石油精製部門の合理化に向け2025年までに原油の一次処理能力を10億トンに制限する方針を明らかにした。10日付の通知が25日、同委のウェブサイトに掲載された。
中国の石油精製能力は22年に年9億2000万トン(日量1840万バレル)に拡大し、米国を抜いて世界最大となった。
発改委は新規の石油精製能力を厳しく規制するとともに、製油所の改修・最適化を促進し、小規模で老朽化した施設の廃止を加速すると説明。
25年までに1000万トン以上の精製能力を持つ製油所が55%を占める見通しとした。また、石油精製産業のエネルギー効率向上を促進し、二酸化炭素排出管理を強化する方針を示した。
国家統計局のデータによると、中国の1─9月の石油精製量は前年同期比11.5%増の5億5480万トンだった。
ハンガリー国立銀行(NBH、中央銀行)は24日、主要政策金利を75ベーシスポイント(bp)引き下げ、12.25%とすることを決めた。
海外市場の不透明感増大に伴って通貨フォリントが下落しやすい状況が続いており、従来から利下げ幅を縮小した。
中銀は5月以降これまでは、5回連続で100bpの利下げに動いてきた。今年序盤に25%を超えた物価上昇率が鈍化したためだ。9月の物価上昇率は12.2%。
今回の声明で中銀は「強いディスインフレとハンガリー(経済の)脆弱性低下によって、NBHは政策金利引き上げを通じて金融環境を整え続けることが可能となっている」と説明。一方で対外リスクの高まりという観点では、慎重な対応と利下げのペースダウンが妥当だとの見解を示した。
中銀のビラグ副総裁は、今後の政策決定はデータ次第で着実な形になると指摘。年末の政策金利が11%前後になるという市場関係者の見通しは、今の状況を踏まえると「現実的」に見えると述べた。
ビラグ氏は、総合ベースの物価上昇率は12月までに7─8%前後に減速すると予想し、これでプラス領域の実質金利は確実に上昇すると付け加えた。
中国国営メディアによると、習近平国家主席は25日、中国は米国と協力する用意があると表明、米中は見解の相違を管理し、グローバルな課題に協力して対応していると述べた。
米中が「正しい」付き合い方を確立できるかどうかが、世界にとって重要だとの認識も示した。
ニューヨークに拠点を置く米中関係全国委員会の年次晩餐会に送付した書簡で述べた。
習氏はより安定した二国間関係が必要だと主張。二国間関係は「相互尊重、平和的共存、ウィンウィンの協力という原則に基づくべきだ」と述べた。
中国の王毅外相は26─28日にワシントンを訪問する。サンフランシスコで11月に開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議ではバイデン米大統領と習主席が会談するとみられている。
タイのセター首相は24日、政府が打ち出した景気刺激策について、生活費抑制などの短期的な必要に対応するものだと擁護した。
国内紙ネーション主催のイベントで述べた。
政府はデジタルウォレット政策を通じて16歳以上の国民に1万バーツ(276.5ドル)を支給することなどを含む総額5600億バーツの景気支援を行うと発表。当初は来年2月1日開始の予定だったが、財政圧迫の恐れがあるという批判を受け第1・四半期内に延期された。
中国有数の不動産開発業者である碧桂園のドル建て債について、初のデフォルト(債務不履行)に該当すると受託機関が債券保有者に通知した。ブルームバーグ・ニュースが内容を確認した。
世界2位の中国経済を動揺させた不動産セクターの債務危機が広がりを見せる中で、ドル建て債のデフォルトは、碧桂園が資金繰りに行き詰まりディストレス状態に転落したことを浮き彫りにする。同社は中国で過去最大規模の債務再編に向かう可能性が高い。
受託機関のシティコープ・インターナショナルは、碧桂園が先週終了した猶予期間内にドル建て債の利払いを履行できなかったことが「デフォルト事由」に該当すると債権者側に通告した。
碧桂園は9月17日が当初の期限だった1540万ドル(約23億円)の利払いを30日間の猶予期間内に履行しなかった。
発行済み元本総額の25%以上の債券保有者が要求する場合、受託機関は猶予されていた元本と金利の支払いを請求しなければならないが、債権者がそのような要求を行った兆候はまだない。
シティグループの広報担当者は、債券保有者への受託機関の通知に関するコメントを控えた。碧桂園にも25日に連絡を取ったが、これまでのところコメントは得られていない。
碧桂園は最近、資本構造を見直すためにアドバイザーを起用した。より広範な債務再編の前段階としてよくある動きだ。同社のドル建て債は額面1ドル当たり5セント前後の価格が提示されており、投資家が回収できると期待する金額がいかに少ないかをうかがわせる。同社の株価は年初来で約74%下げている。
シティの通知はクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の買い手にとって重要な意味を持つ可能性がある。CDS市場を監督するクレジットデリバティブ決定委員会(CDDC)は、碧桂園のドル建て債利払いの不履行がCDS発動の事由に該当するか判断を求められた。
CDDCは、ロンドン時間25日正午(日本時間午後8時)に信用事由に相当するかを協議をする。
碧桂園は2023年に入り業界7位に転落するまでの数年間、販売契約ベースで国内最大の不動産開発業者だった。順位は後退したが同社は最近になっても小規模都市で3000件以上の住宅プロジェクトを手掛け、約7万人の従業員を抱えていた。プロジェクトの多さから、碧桂園を巡る混乱は、同業の中国恒大集団が21年に起こした債務問題よりも深刻な影響をもたらす恐れがある。
世界2位の経済大国、中国の習近平国家主席が急激な経済成長鈍化とデフレリスク長期化は容認できないとの強いシグナルを発し、景況感の改善を図る異例の政策調整に踏み切った。
中国は24日夜、過去30年間で最も大きな負担となる財政赤字を容認し、伝統的な成長モデルからの転換を示唆する国債発行計画を発表した。習主席は同日午後、就任以来初めて中国人民銀行(中央銀行)を訪れ、経済を重視するとのメッセージを市場に送った
申万宏源集団は24日遅く出したアナリストリポートで、「驚くべき政策が打ち出されたのは、来年の成長安定に向け圧力が高まるという政策当局の認識によるものかもしれない」と指摘した。
今回発表された景気刺激策は2024年の中国経済への期待を高めるとみられる。政府系のエコノミスト数人が来年の成長率目標を最大5%とするよう求めていた。
中央政府が建設プロジェクト向けに1兆元(約20兆5000億円)の国債を発行するという動きは、インフラ整備で地方政府に頼っていた以前の景気刺激モデルからの転換を図る兆しだ。地方政府は今年、不動産不況の中で債務返済に苦しんでいる。
野村ホールディングスの陸挺氏らエコノミストはリポートで、地方政府の簿外債務が一段と持続不可能になりつつあり、中央政府は国債増発を通じ景気下支えに動く意向を強めている可能性があると分析。
アブソリュート・ストラテジー・リサーチの新興国市場エコノミスト、アダム・ウルフ氏は「国債増発と地方債の発行前倒しは8月に始まったリバウンドが新しい年になっても続くことを保証するはずだ」と話した。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況
<為替> 終盤のニューヨーク外為市場では、ドル指数が約1週間ぶりの高値に上昇した。米グーグルの持ち株会社アルファベット(GOOGL.O)など、予想を下回る企業決算を受けて景気先行き懸念が高まり、投資家のリスク選好姿勢が後退した。
<債券> 米金融・債券市場では、国債利回りが上昇した。5年債入札の需要が低調だったことや、9月新築一戸建て住宅販売戸数が増加したことで、2024年に向けて高金利が長期化するとの市場予想が裏付けられた。
<株式> 米国株式市場は反落。グーグルの持ち株会社アルファベット(GOOGL.O)がさえない決算を受け急落し、相場を圧迫した。また、米債利回りの上昇を受け、金利が長期にわたり高水準に据え置かれるという懸念が再燃した。
フィラデルフィア半導体指数(SOX指数)(.SOX)は4.1%下落と、2022年12月22日以来の大幅安となった。
S&P500業種別のうち通信サービス(.SPLRCL)は2月3日以来の大きな下落率を記録した。
<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻への警戒感がくすぶる中で安全資産として買われ、3営業日ぶりに反発した。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、中東情勢緊迫化への懸念がくすぶる中、供給不安から反発した。
<ロンドン株式市場> 続伸して取引を終えた。鉱業株や製薬株の上昇が相場をけん引した。
英製薬のアストラゼネカ(AZN.L)、グラクソ・スミスクライン(GSK)(GSK.L)はそれぞれ1.0%、0.9%上昇した。
英銀大手のロイズ(LLOY.L)は2.2%高。2023年第3・四半期の利益が予想を上回り、通期の業績見通しを維持したことが好感された。銀行株指数(.FTNMX301010)は0.36%上げた。
<欧州株式市場> はほぼ横ばいで取引を終えた。発表された企業決算の内容はまちまちで、フランスの決済会社ワールドラインが急落した一方、ソフトウエア企業ダッソー・システムズやドイツ銀行は上昇した。
フランスの高級ブランド「グッチ」を抱えるケリング(PRTP.PA)は3.5%安。高級衣料品やアクセサリーの需要鈍化で第3・四半期の減収幅が予想より大きかったことが嫌気された。
同業LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)(LVMH.PA)は0.3%、スイスの同業リシュモン(CFR.S)は0.9%、それぞれ下げた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが上昇した。ただ、経済指標が景気後退の可能性を示唆したことを受け、上昇は小幅にとどまっている。
日経先物30753、ダウ先33116、債先144.44、米4.949、独2.8985、仏3.528、西4.018、伊4.911、英4.6550、波5.911、原油85.20、銅7,994、ドル円150.15、ユーロドル1.0564
※10/26 8時45分頃

備忘録(2023/10/24)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
デンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)の「ウゴービ」など、食欲を抑えて肥満症を治療する薬の需要拡大を受け、食品の消費が減るとの懸念から食品メーカーの株価が最近下落した。ただ肥満治療薬は一部の食品メーカーには新たな商機をもたらしており、市場の反応は行き過ぎだとの声もある。
米小売り大手ウォルマート(WMT.N)は今月、肥満治療薬の投与が始まってから食品の消費がわずかに減ったとの見解を発表。これを機に、加工食品世界最大手ネスレ(NESN.S)などの株価が売りを浴びた。
しかしアビバのポートフォリオマネジャー、リチャード・サルダンハ氏は「かなり過剰反応のようだ。長期的な消費慣行にまで広げて受け止められている」と語る。
ウゴービは既に米国で社会現象的な成功を収めており、現在ノルウェー、デンマーク、ドイツを含む一部の欧州市場で販売が始まろうとしている。このため消費・小売りセクターでは食品の売り上げが打撃を被るかもしれないとの懸念が広がった。
ノルウェー最大の年金基金KLPの投資責任者、キラン・アジズ氏は「確かにノボの大成功は食品と飲料双方の企業に大きな変化を引き起こすかもしれない。肥満に関わる他の健康関連株にも変化は及ぶだろう」と言う。ただ同氏は、利ざやが薄く収益性への打撃がメーカーより大きそうなスーパーマーケットへの影響にもっと注目すべきだとも述べた。
ネスレのマーク・シュナイダー最高経営責任者(CEO)は先週、同社がウゴービのような肥満症治療薬を補助する製品の開発に着手したと明かした。「除脂肪筋肉量の減少」や「急速な体重のリバウンド」を抑えるサプリメントなどが含まれる可能性があるという。
こうした取り組みに加え、ノボの生産がウゴービの需要に追い付いていないこともあり、「奇跡の薬」とされる肥満治療薬は長期的には食品業界に悪影響を及ぼさないと、一部の投資家は考えている。
EYで米州の健康関連産業を統括するアルダ・ウラル氏は、新種の肥満治療薬に対する市場の反応は、メタバース黎明期の興奮ぶりを思い出させると言う。その後、人々の行動様式の変化スピードは遅いとの認識が広がるにつれ、メタバースは投資家の関心から外れていった。
ウラル氏は「問題は、社会経済面で地位が低い層の方が肥満とリスク要因が多いのに、こうした薬はコストが高く、それが制約要因になっていることだ」と指摘。「薬が手の届きやすい価格になり、そうした層に良い影響が及び始めるといった変化は非常に緩慢なスピードでしか起こらないだろう」と述べた。
とはいえ、ネスレに投資するミラボード・グループのシニア投資専門家、ジョン・プラサード氏は「最もリスクが高いのは『ジャンクフード』専門の企業や、代替的な商品をほとんど提供できないレストランチェーンなどだ」と警戒する。
一方、フランク・バリュー・ファンドのポートフォリオマネジャー、ブライアン・フランク氏は、ウゴービ関連で売られた株を買い増すつもりだ。「市場が値引きしてくれるなら喜んで買わせてもらう」と言う。
またリーガル&ジェネラル・インベストメント・マネジメント・アメリカの調査アナリスト、My Nguyen氏は、肥満治療薬の需要は米国主導の動きのようだと指摘。「他の地域を見ると、新興諸国では中間層が豊かになり移動範囲も広がっているため、スナックやインスタント食品へのシフトが後押しされるかもしれない」との見方を示した。
欧州中央銀行(ECB)が24日公表した銀行貸出調査によると、ユーロ圏では高金利と経済見通しの悪化を背景に家計・企業の融資需要が減少する一方、銀行も与信を厳格化した。
銀行は7─9月に企業・家計向けの融資基準を厳格化。経済に悲観的な見方が強まっていることやECBの金融引き締めで流動性が低下していることが理由という。
与信承認基準を厳しくした金融機関の割合は、特に住宅ローンと消費者ローンで金融機関自体の3カ月前の予測よりも高くなった。
ECBによると、銀行は第4・四半期について、より緩やかではあるものの、企業向け与信基準の引き締めがさらに進み、住宅ローンの与信基準はほぼ変わらずと予想。消費者ローンについてはさらに大幅な引き締めが見込まれるという。
第3・四半期は融資需要も全てのカテゴリーで減少した。
ECBは「これまで同様、純需要は銀行の従来予想よりも大幅に落ち込んだ。主因は金利上昇、企業の固定投資減少、家計の消費信頼感低下と住宅市場の見通し悪化だ」と述べた。
銀行は第4・四半期について、あらゆる種類のローン需要がそれほど顕著ではないもののさらに減少すると予想している。
また調査では預金獲得競争の激化を反映し、第3・四半期に銀行が特に個人顧客から資金を確保することが難しくなっていることが示された。
気象庁は24日、11月〜来年1月の3カ月予報を発表した。南米ペルー沖の海面水温が上がる「エルニーニョ現象」の影響で偏西風が北に蛇行し暖かい空気に覆われやすく、全国的に高温となる。
冬型の気圧配置が弱く、南から湿った空気が入りやすいため、降水量は東日本太平洋側と西日本で平年並みか多く、降雪量は北日本日本海側で平年並みか少ない。一時的に強い寒気が入り大雪となる恐れもあることから、注意が必要だとしている
●その他産業
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、約1年半前に各地の中央銀行は金融予測で「100%の大間違い」を犯した事実を踏まえ、来年の見通しについて謙虚になるべきだと主張した。
サウジアラビアのリヤドで開催されている国際投資会議「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ(FII)」でのパネル討論会でダイモン氏は、インフレ上昇と世界の成長鈍化から生じる経済への打撃を、世界中の中銀や政府が管理できるのかと疑問を呈した。
カーライル・グループの共同創業者デービッド・ルーベンスタイン氏が司会を務めた討論会でダイモン氏は、「財政支出はかつてのいかなる平時よりも増大しているが、中銀や政府にはこの全ての事態に対処できるという全能感がある」と述べた上で、「来年何が起こるかについて私は慎重だ」と続けた。
ダイモン氏は現在の状況を1970年代の世界経済になぞらえ、支出が多く浪費が多いと指摘。また、さらなる利上げがあってもあまり影響はないとの見方を示した。
「金利があと25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上がろうが、それ以上上がろうが、何の違いもないと思う」とし、債券の「イールドカーブ全体が100bp上がるかどうかはわからないが、それには備えておくことだ」と話した。
同じパネルでブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオCEOは、24年の世界経済の見通しについて、高水準の公的債務、紛争、混乱など幾つかのリスクを挙げ、「悲観的だ」と述べた。
ダイモンはまた、気候変動に取り組む政策当局のアプローチを非難し、現在の取り組みを明確な戦略のない非効率的な「もぐらたたき」に例えた。
「われわれは必要な突破口を開くだろうが、われわれ自身の基本的な無能さのために、それはわれわれが考えているよりも遅くなり、時間が長くかかりそうだ」と述べた。
米カリフォルニア州など30余りの州がメタ・プラットフォームズを訴えた。同社傘下のインスタグラムやフェイスブックが利益をあげるために若者を利用し、有害なコンテンツを提供していると原告団は主張している。
カリフォルニア州連邦裁判所に提起されたこの訴訟は、若年層ユーザーへのサービス提供を巡ってソーシャルメディア大手に対する監視をいっそう強めそうだ。
原告側は訴状で「メタは強力で前例のないテクノロジーを駆使して若者を誘惑し、夢中にさせ、最終的にはとりこにしてきた」と指摘。「その動機は利益であり、経済的利益を最大化しようとする中で、メタは傘下ソーシャルメディア・プラットフォームの本質的な危険性について市民を繰り返し欺いてきた」と論じた。
●決算関連
英金融大手バークレイズが24日発表した2023年7〜9月期決算は、純利益が前年同期比16%減の12億7400万ポンド(約2300億円)だった。減損損失などが響いた。預貸の利ざやが鈍化するとの見通しを示したことで、同日の英国株式市場ではバークレイズ株が一時前日比9%安と急落した。
英国の純金利収入は1%増の15億7800万ポンドとなった。利ざやを示す純金利マージンが3.04%と、3.01%からわずかに上昇。23年の見通しは3.05〜3.1%と、前回決算発表時点の約3.15%から下方修正した。英イングランド銀行(中央銀行)は9月に15会合ぶりに政策金利を据え置いており、今後の金利上昇による業績改善余地が小さいとの懸念が強まった。
投資銀行部門の収入は9%増の30億8200万ポンドだった。「FICC」と呼ばれる債券・為替・商品(コモディティー)取引などのトレーディング業務や債券の引受業務が低調だったが、金利上昇による法人向けの貸し出しが伸びた。
イタリア金融大手のウニクレディトが24日発表した2023年7〜9月期決算は、純利益が前年同期比36%増の23億2200万ユーロ(約3700億円)となった。世界的な金融引き締めで利ざやが拡大した。
純金利収入は45%増の36億ユーロとなった。欧州中央銀行(ECB)は9月までに10会合連続となる過去最速ペースの利上げをしており、イタリアや中東欧で貸出金利が上昇した。純手数料収入は5%減の17億6900万ユーロだった。イタリアでの預金手数料の引き下げが影響した。
23年通期の業績予想では純金利収入が137億ユーロ超と、4〜6月期の決算発表時点の132億ユーロ超から伸びるとした。
資本の準備金として110億ユーロを積み立てることも発表した。イタリアは銀行への追加課税を導入したが、市場の混乱や業界からの反発があり、追加の準備金を割り当てれば税金の支払いを回避できると定められた。
アンドレア・オーセル最高経営責任者(CEO)は「欧州の不確実性が高まり、将来の好業績を保つための投資をしている」とコメントした。23日にはギリシャのアルファ銀行の株式の9%を取得し、両行のルーマニア子会社を合併させる計画を発表していた。
米クレジットカード大手ビザ(V.N)が24日発表した第4・四半期(7─9月)の調整後1株利益は2.33ドルで、LSEGデータに基づくアナリスト予想平均の2.24ドルを超えた。純収入は前年同期比11%増の86億ドル。
決済額は9%増で、クロスボーダー決済額は18%伸びた。物価高や生活費増大という逆風の中でも、消費者が旅行や外食などでカードを活発に利用したことが分かる。
9月末までの年度通期の調整後1株利益は8.77ドルで、やはりアナリスト予想の8.68ドルを上回った。通期収入は11%増の327億ドルだった。
ライアン・マキナニー最高経営責任者(CEO)は「年度全体で消費支出は底堅く推移し、クロスボーダー旅行の支出が(コロナ禍前の)2019年比で回復し続けている」と述べた。
米半導体大手テキサス・インスツルメンツ(TI)(TXN.O)が24日発表した第4・四半期業績見通しは、売上高と利益が市場予想を下回った。経済成長の低迷を背景に、産業用半導体を含む主要市場で需要が低迷していることが重しになっている。
テキサス・インスツルメンツは第4・四半期の売上高が39億3000万─42億7000万ドルになると予想。LSEGがまとめたアナリスト予想平均は44億9000万ドルだった。
一株当たり利益は1.35─1.57ドルと予想。アナリスト予想は1.76ドル。
第3・四半期(9月30日まで)の売上高は14%減の45億3000万ドル。予想は45億8000万ドルだった。
一時項目を除いた1株当たり利益は1.85ドル。予想は1.82ドルだった。
米グーグルの持ち株会社アルファベット(GOOGL.O)が24日発表した第3・四半期決算は、クラウド事業の売上高が市場予想に届かず、少なくとも過去11四半期で最も低い伸びにとどまった。経済を巡る不確実性や高金利を背景に、企業が高額の人工知能(AI)ツールを含むクラウド関連サービスへの支出を削減していることが響いた。
全体の売上高と利益は市場予想を上回ったものの、クラウド事業の減速を嫌気して株価は引け後の時間外取引で5.7%下落した。
クラウド事業の売上高は22.5%増の84億1000万ドルで、市場予想の86億2000万ドルを下回った。伸び率は前四半期の28%から鈍化し、少なくとも2021年第1・四半期以来の低さとなった。同事業の営業利益は2億6600万ドル。前年同期は4億4000万ドルの営業赤字だった。
ルース・ポラット最高財務責任者(CFO)は決算説明会で、第3・四半期のクラウド事業の伸びは「顧客の最適化の取り組み」が要因と述べた。詳細には踏み込まなかった。
インベスティング・ドット・コムのシニアアナリスト、ジェシー・コーエン氏は「四半期の利益と売上高は予想を上回ったものの、投資家はクラウドプラットフォームの比較的弱い業績に失望した。同事業は(マイクロソフトの)アジュールやAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)に一段と後れを取る可能性がある」と述べた。
全体の売上高は766億9000万ドルで、LSEGのまとめたアナリスト予想の759億7000万ドルを上回った。
純利益は196億9000万ドルで、前年同期の139億1000万ドルから増加した。
広告収入は596億5000万ドル。前年同期は544億8000万ドル、市場予想平均は591億2000万ドルだった。内訳では動画共有サービス「ユーチューブ」の広告収入が79億5000万ドルと、前年同期の70億7000万ドルから増加した。
米マイクロソフト(MSFT.O)が24日発表した第1・四半期(7━9月)決算は売上高が市場予想を上回った。クラウドサービスとパソコン向けソフトの好調がけん引した。
売上高は13%増の565億ドル。LSEGのデータによると、アナリスト予想は545億2000万ドルだった。
1株利益は2.99ドルと、アナリスト予想の2.65ドルを上回った。
株価は引け後の時間外取引で4.2%上昇した。
クラウドサービス「アジュール」を含むインテリジェンス・クラウド部門の売上高は243億ドルで、市場予想の234億9000万ドルを上回った。
アジュールの売上高は29%増。調査会社ビジブル・アルファのまとめた予想は26.2%増だった。
インベスティング・ドット・コムのシニアアナリスト、ジェシー・コーエン氏は「AI(人工知能)製品が販売を促進し、既に売上高と利益の増加に寄与していることが示された」と指摘した。
マイクロソフトは対話型AI「チャットGPT」を開発した米新興企業オープンAIに投資することでAIで他社に先行しており、生成AIサービスの本格展開による業績押し上げ効果に市場は注目している。
同社は業務ソフト「マイクロソフト365」に1日分の電子メールの要約などをするAI機能「コパイロット」を搭載し始めているが、まだ限定的な提供にとどまっている。同社のインベスター・リレーションズ担当バイスプレジデント、ブレット・イバーセン氏は、今後予定されるAIサービスのためにクラウドの利用を再開する動きが7─9月期の増収に寄与したと述べた。
投資家はAI向けデータセンターに同社がどれだけ投資しているかも注視している。7─9月期の設備投資は112億ドルと、2016年度以降の最高を更新した。
パソコンの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」を含む部門の売上高は137億ドルと、市場予想(LSEGデータ)の128億2000万ドルを上回った。
ビジネス向け交流サイト(SNS)リンクトインを含む部門は売上高が186億ドルと、こちらも市場予想の182億ドルを上回った。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)は24日、通年の見通しを引き上げた。業績予想の上方修正は今年3度目となる。
ジェットエンジン部品や航空会社向けサービスの需要が好調で、第3・四半期の業績も市場予想を上回った。同社の株価は午前の取引で7%超上昇した。
同社は2023年通年の調整後1株当たり利益を2.55─2.65ドルと予想。従来予想は2.10─2.30ドルだった。
年間のフリーキャッシュフローは47億─51億ドルとした。従来予想は41億─46億ドルだった。
第3・四半期の調整後利益は1株当たり0.82ドルで、LSEGがまとめたアナリストの平均予想0.56ドルを上回った。
航空宇宙部門は、受注、売り上げ、利益ともに前年比で2桁の伸びを記録。利益率は前年比で130ベーシスポイント伸びた。
仏サフラン(SAF.PA)との合弁会社で生産している航空機向けLEAPエンジンの納入については、22年比40─45%増と予想。従来予想の50%増から引き下げた。
ラリー・カルプ最高経営責任者(CEO)によると、24年のLEAPエンジン納入数は前年比20─25%増を目指すという。
無線通信で米最大手ベライゾン・コミュニケーションズが24日発表した7-9月(第3四半期)決算は、利益が予想を上回った。家庭用インターネットと法人向け電話契約が伸び、個人向け携帯電話の契約減少を補った。
調整後の1株当たり利益は1.22ドル。ブルームバーグがまとめた平均予想は1.18ドルだった。
ベライゾンは通期見通しを上方修正。フリーキャッシュフロー(FCF)は180億ドル(2兆7000億円)余りと、従来のガイダンスから10億ドル引き上げた。営業収入は333億ドルで、市場予想と一致した。
携帯電話の契約数は10万件の純増。法人グループがけん引し、伸びは市場予想の6万8197件を上回った。一方、コンシューマー・グループは5万1000件の減少。ただ、減少幅は前四半期から縮小した。
家庭用無線インターネットの契約者数は38万4000件と、市場予想の26万2000件を上回る伸びとなった。
工業製品・事務用品大手の米スリーエム(3M)が24日発表した2023年7〜9月期決算は、訴訟関連の特別費用がかさみ最終損益が20億7500万ドル(約3100億円)の赤字となった。前年同期は38億5900万ドルの黒字だった。8月に軍需用耳栓の品質問題に関連する集団訴訟で約60億ドルの和解金支払いを提案。7〜9月期に引当金として42億ドルの特別支出を計上したことが赤字要因となった。
売上高は83億1200万ドルで、前年同期比で約4%減だった。訴訟関連などの特別費用を除いたベースの1株利益は2.68ドルで、前年同期の2.60ドルを上回った。コスト削減への取り組みが奏功し、営業利益率が前年同期の21.6%から23.2%に改善した。
地域別の売上高は中国の需要不振などでアジア太平洋地域の売上高が16%減り、全体の重荷となった。米州は1%、欧州・中東・アフリカは4%それぞれ増収だった。
事業部門別では、オフィス用品や文具などを扱う「消費者向け」が7%減収と落ち込んだ。マスク販売が縮小した「安全・工業品」は5%減だった。「交通・エレクトロニクス」は3%減、「ヘルスケア」は前年同期比でほぼ横ばいだった。
マイク・ローマン最高経営責任者(CEO)は直近の需要環境について、米国で9月の新学期に向けた学用品・文具の需要伸び悩みが見られたと指摘。「消費者が必需品などに支出を絞り込む傾向が続くかどうか、年末商戦の行方を見守っている」とコメントした。
一方で、これまで取り組んできたリストラの効果が引き続き業績改善に貢献すると説明。特殊要因を除いた1株利益で8.60〜9.10ドルとしていた23年12月期通期の業績予想を同8.95〜9.15ドルに引き上げた。
3Mは自動車産業向けに、部品や研磨剤、塗料、接着剤など幅広い部材を供給している。全米自動車労組(UAW)が米自動車大手に対して進めているストライキの影響については「これまでのところ大きな影響は出ていないが、動向を注視している」と説明した。
米飲料大手コカ・コーラが24日発表した2023年7〜9月期決算は、純利益が前年同期比9%増の30億8700万ドル(約4600億円)だった。再び値上げに踏み込んだが、レストランや映画館向けが好調で販売数量は減らなかった。23年12月期通期の業績予想も上方修正した。
売上高は8%増の119億5300万ドル、1株利益は9%増の0.71ドルと、ともに市場予想を上回った。平均9%の値上げをしたが、全体の販売数量は2%増を確保した。飲食店や映画館、テーマパークなど夏場のレジャー需要をうまく取り込んだ。ソーダ飲料やフルーツジュースなど全ての分野で販売数量が増えた。
ライバルの米ペプシコに比べ、コカ・コーラは値上げ戦略は成功しているとみられる。ペプシコが10日に発表した7〜9月期決算では、北米飲料事業の販売数量は6%減と大きく落ち込んだ。同社は平均11%の値上げを実施していた。
ペプシコは消費者動向や需要に応じて値決めしているが、コカ・コーラは競合の値段と比較しながら適切な価格を設定しているという。ブランド力の差も販売数量の増減につながった。
コカ・コーラの地域別の売上高では、中南米が24%増、北米は6%増だった。欧州・中東・アフリカ地区も10%増えた。アジア・太平洋地区は2%減だった。同地域ではコカ・コーラなどの商品の売り上げが増えたが、飲料水の販売が減少した。
ジョン・マーフィー最高財務責任者(CFO)は同日の投資家向け説明会で、今後の値上げについて「高インフレが続く国を除けば、値上げのペースは落ち着いていく」と説明した。
食欲を抑制する肥満症薬の普及については「動向を注視しているが、低カロリーやカロリーゼロ商品が品ぞろえ全体の68%を占めていることがプラスになると自信を持っている」と話した。
23年12月期通期については、為替変動や買収などの影響を除いた実質売上高で前期比10〜11%増(従来予想は8〜9%増)、1株利益は7〜8%増(同5〜6%増)を見込む。米ドル高が4%の減益要因になるが、値上げ効果で吸収する。
●先進国、グローバル、金融市場
日本銀行は30、31日に開く金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の再修正について、長期金利の動向などを直前まで見極めた上で必要性を判断する。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、米国の長期金利上昇が主導する形で日本の長期金利も日銀が上限に設定している1%に迫っており、会合ではYCCの再修正が必要かどうかが議論の対象になり得る。上限を守るための大量の国債買い入れを迫られる前に、予防的に対応することも選択肢になるという。
関係者によると、インフレ期待の改善が続く中で、日本の実質金利は極めて低い水準で推移しており、仮にYCCのさらなる調整を実施しても、日本経済に悪影響を及ぼす可能性は低いと日銀ではみている。
一方で、国内の経済・物価情勢は政策修正を正当化するほど大きく変化しているわけではなく、予防的な対応による上限の引き上げ自体が長期金利を上昇させてしまうリスクへの懸念も日銀内にある。米国の長期金利上昇の勢いが弱まれば、YCCを再修正しなくても日本の長期金利も落ち着いてくることが期待できるという。
YCC修正の具体策としては、さらなる上限の引き上げや、めどとしている0.5%の撤廃、上限の運用方法の変更などが想定されるとしている。日銀は7月の会合で、それまでの長期金利の上限の0.5%をめどと位置付け、連続指し値オペの水準を1%に引き上げるYCCの柔軟化措置を決定した。
注目の物価見通しは、2023年度と24年度が上方修正され、3年連続で消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)が日銀が目標とする2%を超える可能性があるものの、海外経済や来年の賃上げが不透明な状況に変化はなく、25年度は2%に届かない見込み。
関係者によると、今回のYCCの枠組みを巡る議論は、先行きの物価上振れリスクの強まりに対する対応ではなく、米長期金利の上昇に連動した日本の長期金利の上振れが市場機能などに及ぼす影響への懸念から生じている。
会合では2%物価目標が持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っていないとの判断が改めて示される可能性が大きく、YCCやマイナス金利の撤廃という本格的な政策変更は見送られる見通しだとしている。
市場では、今月の会合で「必要があれば、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる」との文言の削除などフォワードガイダンス(指針)の変更を予想する向きも少なくない。関係者によると、日銀内では指針の扱いについて、コミットメントの安易な変更は金融政策運営に対する信頼の低下が懸念されるとの声もあり、現時点で変更する必要性は乏しいとみられている。
日本の10年債利回りは23日に0.86%まで上昇し、13年7月以来の高水準を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)が当面、政策金利を高水準に維持するとの観測が強まる中、米10年債利回りは同日に一時5%を超え、16年ぶりの高水準に達した。
かんぽ生命保険は超長期債投資について、米国の長期金利動向と日本銀行の政策を見極めた上で進める考えだ。野村裕之執行役員兼運用企画部長が24日の2023年度下期運用方針説明会で明らかにした。
野村氏は、国内の30年金利はヘッジ後の外債利回りなどに比べ「魅力的に映る」と指摘し、「円金利がかなりいい水準に変わってきたので、買い入れを徐々にスタートしていく」と語った。
ただ、購入ペースは「米金利が上昇する中で少し慎重姿勢で上期も現在も見ている」と説明。今は米金利のピークを見極めており、「低下に向かうタイミングが日本国債を購入するタイミングとして非常に重要だ」と述べた。
国内の金融政策については「日銀がいつどう動くか正直分からないので、決め打ちしてベット(投資)できない」と話し、超長期債は「日銀のいろいろなイベントがあるので、状況を見ながら積み増していく」との方針を示した。
足元では超長期債主導で金利が上昇し、日銀は同日、長期債と超長期債を対象に臨時の国債買い入れを実施した。日銀が月末の金融政策決定会合で政策修正に踏み切るのではないかとの観測が強まっており、投資家は動きづらい状況が続いている。超長期債の主要な投資家である生保も日銀の政策待ちの姿勢を続けており、金利には一段と上昇圧力が加わる可能性もある。
かんぽ生命の野村氏は、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の撤廃やマイナス金利解除は「早ければ2024年1-3月に行われても不思議はない」と語った。一方、需要主導で経済の好循環が始まるにはまだ時間がかかるとして、ゼロ金利の解除は「まだ先ではないか」との見方を示す。
円金利資産は償還が23年度年間で約2兆円あるため、買い入れが追いつかず、下期も残高は減る計画だという。ヘッジ付き外債に関してはヘッジコストが高いため、下期も売り越しベースを継続する構え。「円金利へシフトするスタンスは変わらない」と述べた。
オープン外債は、為替相場について「やや円高を見ているため、残高を増やすことは現在考えていない」として、償還により残高が減少する見通しだ。
超長期金利はYCC撤廃やマイナス金利撤廃などが意識され、一時的にさらなる金利上昇する可能性もあるが、 その後の金融政策の正常化は慎重スタンスが想定されるため、上値の重い展開を見込む。
米長期金利は積極的な利上げによる実体経済への影響が徐々に顕在化していく中、金利は現水準でピークを付けた後、低下していくと予想。米短期金利は利下げ開始には相応の時間を要する見込みから高止まりし、ヘッジコストも高止まりまたは小幅低下にとどまることを想定している。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、インフレとの闘いはうまく行っているとの認識だが、財政規則に関する域内の合意がないことが問題になりつつあると考えている。事情に詳しい関係者が明らかにした。
ラガルド総裁は23日、欧州委員会、欧州理事会、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)のトップとの電話会談で、ユーロ圏経済は今後数四半期にわたり停滞し、下振れのリスクに直面しているが、物価に対するリスクはバランスが取れてきていると述べたという。
インフレ対策の進展に自信を示す発言は、インフレ率が依然として「高水準」だと指摘した最近のコメントとは対照的だ。関係者によると、総裁は経済について、雇用は持ちこたえているものの軟化の兆しが見られていると語った。
ユーロ圏民間部門の経済活動は10-12月(第4四半期)の始めも低調で、域内経済がリセッション(景気後退)に陥る恐れを示唆した。
S&Pグローバルが24日発表した10月のユーロ圏HCOB総合購買担当者指数(PMI)速報値は46.5と、3年ぶりの水準に落ち込んだ。拡大と縮小の境目を示す50を大きく下回り、エコノミスト予想の47.4にも届かなかった。
HCOB(ハンブルク商業銀行)のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は、「ユーロ圏の状況は、『悪い』から『いっそう悪い』に移行しつつある」と指摘。「ユーロ圏が今年下期に2四半期連続のマイナス成長となり、軽度のリセッションに入ったとしても驚きではない」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)の相次ぐ利上げや世界的な景気減速など、ユーロ圏経済はいくつかの逆風に直面している。中東情勢の緊迫化によってエネルギー価格が上昇していることも、状況を悪化させるリスクをはらむ。
ECBは24日発表した四半期銀行貸し出し調査で、上昇する金利と悪化する経済環境を理由に域内の銀行は7-9月に与信基準をいっそう厳格化させたと明らかにした。
ブルームバーグがまとめた予測によると、来週発表されるユーロ圏の7-9月域内総生産(GDP)は前期比0.1%減少の見通し。マイナス成長なら、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期以来となる。
「世界で最も安全な資産」の乱高下が再び、世界市場全体のボラティリティー上昇の要因となっている。
10年物米国債利回りは23日、一時5%を突破した後に急低下した。堅調な米経済が連邦準備制度の利上げ停止時期を見定めづらくしていることが背景にある。米国債発行の急増と地政学的緊張も見通しを曇らせている。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のブロック総裁は24日、インフレ見通しが大幅に上方修正された場合、追加利上げを「ためらわない」と表明した。物価上昇圧力が再び高まりつつある脅威についてこれまでで最も強く言及した。
同総裁はこの日のスピーチで、「雇用を拡大させながら、インフレ率を合理的な期間内に目標に戻すことが引き続きわれわれの焦点だ」と語った。
豪中銀は11月7日に政策委員会を開く。金融市場では政策金利を4.35%に引き上げる確率は40%弱とみられている。豪中銀は金利決定から3日後に最新の四半期見通しを発表するが、政策委のメンバーは政策決定の会合時に最新見通しにアクセス可能。
「インフレ見通しが大幅に上方修正された場合、政策委は追加利上げをためらわない」とブロック総裁は述べるとともに、需要の伸びとインフレが鈍化しており、政策の効果波及にはかなりの時間を要することも念頭に置いていると説明した。
国際エネルギー機関(IEA)は24日、2040年末までの世界の天然ガス需要がこれまでの予想を下回るとの予測を示した。エネルギー源に占める再生可能エネルギーの比率が高まることが背景だ。また、ガス市場でのロシアのシェアは低下が見込まれている。
IEAは最新の年次世界エネルギー見通しで、ガス消費量の予測を4年連続で下方修正した。ロシアが昨年、パイプライン経由でのガス供給を大幅に減らしたため欧州の需要は減少した。その一方で米国とカタールが液化天然ガス(LNG)供給を拡大し、市場への十分な供給に貢献した。
IEAは全てのシナリオにおいて30年までにガス需要はピークに達すると予想する。「それ以降にパイプラインもしくはLNG取引において拡大余地はほぼ残されていない」という。
最新見通しは世界のエネルギー事情が大きく変化したことを明確に示している。IEAのガス需要予測の下方修正で約75%は欧州が占めており、中国の将来的な消費は不透明だ。これまで欧州にとって最大の供給元だったロシアは、だぶつきつつあるLNG在庫を背景に市場シェアを失っている。
IEAは「ロシアが新たな市場を確保できる機会は非常に限られている」とみる。国際的に取引されるガスに占めるロシアのシェアは21年に30%だったが、IEAの基本シナリオによれば、20年代の終わりまでに半減すると予想されている。
朝日生命保険は、2023年度下期の一般勘定資産運用計画で、円金利の上昇局面をとらえて国内債券の積み増しを継続する考えを示した。負債デュレーションとのマッチングや利回り確保の観点から、30年債を中心に新規投資をする。
為替ヘッジコストの高まりと円金利の上昇を受け、為替予約によるヘッジ付外債は上期にほぼすべて売却し、円建債券への配分を実行しているという。国内債券は上期に2000億円増加。当初は年度で国内債券の700億円の増加を計画していた。今後の国内債券投資は、金利動向を見つつ慎重に判断していくスタンスと説明している。
外債は減少を計画する。当初計画ではヘッジ外債1300億円減を見込んでいたが、上期は2700億円減少した。為替リスクは、ゼロコストオプションなどの活用を通じ、ヘッジコストをかけずにコントロールするという。オープン外債は1000億円増を計画していたところ、上期には400億円増にとどまった。
日銀による追加の政策修正は、24年1―3月期にイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃を想定するが、その時期は春闘の動向に左右されるとみている。マイナス金利の解除は24年度以降と想定している。
米国の景気減速の明らかなデータが出てくるまでしばらく時間がかかるとみており、年度内の米国の利下げは織り込んでおらず、運用計画への大きな影響はないとみている。
米国の財政運営が限界に達しようとしている。金利上昇や膨らんだ返済費用に、議会の機能不全も加わり、これまで投資家が何年もほぼ無視してきた財政赤字(今年度は1兆7000億ドル)への注目度が次第に高まりつつある。何らかの節約措置は一時しのぎにはなるだろうが、歳入と歳出のバランスを図る現実的な方法は増税しかない。
米政府の借り入れ能力は、間もなく危うくなるかもしれない。足元の10年国債利回りは5%前後と、過去10年間で2倍以上に上昇。何も改革しなければ、利払い費は2051年までに単一の歳出項目として最大になると予想される。
そこで、歳出を圧縮する分野を見つけるのが大事になるが、歳出総額のうち合計で6割近くを占めるのは、政治的に最も手を付けにくい国防と社会保障、高齢者向け公的医療保険メディケア向けだ。
議会予算局(CBO)の試算では、もし、議会がこれらの「聖域」を維持したまま、トランプ前政権時代に施行した法人減税を続けるなら、郵便サービスから空港の保安まで全ての連邦政府機関を廃止したとしても、200億ドルの赤字が残る。
だから、歳入を増やさない限り、財政の計算は成り立たなくなる。トランプ前政権が打ち出した2017年減税の最大部分は、法人税率を35%から21%に引き下げたことだ。この税率を28%に戻せば、年間で約1300億ドルが国庫の追加収入になる、というのがホワイトハウスの見積もりだ。
相続を巡る抜け穴をふさぐのも財政立て直しに役立つ。現在、死亡によって相続された資産は評価額の上昇がいったんリセットされ、相続者はキャピタルゲインに課税されず、資産売却ができる。この制度を打ち切れば、10年間で260億ドルの歳入増が見込まれ、財政赤字拡大の圧力を幾分緩和できる。
民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は2021年、純資産500億ドル超の世帯に2%、10億ドル超の世帯に1%の課税を提案。これが実現すれば、向こう10年で想定される歳入は約3兆ドルと、法人税率28%による歳入の2倍以上に達する。
ピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、米国の成人の6割は、最上位富裕層への課税が不十分と答えており、ウォーレン氏の提案は考慮に値する。
もっとも、法人税率引き上げや相続税制の修正、富裕層向け課税強化を実施しても、米国には国内総生産(GDP)の6%強の財政赤字が残される。
さらに国際通貨基金(IMF)が見込む今年の欧州連合(EU)の財政赤字対GDP比3.4%に近づけようとする場合、米議会は5%の付加価値税導入や、所得税率の引き上げ、二酸化炭素排出量1トン当たり25ドルの課税を行うことで対応できる。
ただ、そうした展開がすぐにやってくるとは期待できない。
国際エネルギー機関(IEA)は24日、年次報告書「世界エネルギー見通し」を公表した。電気自動車(EV)の普及や中国のクリーンエネルギーシフトにより、世界の化石燃料の総需要が2030年までにピークに達するとの見通しを示した。
各国政府が現行政策に基づく場合のシナリオでは、石油、天然ガス、石炭の需要はこの10年でピークに達するとの見通しを示した。
一方で、地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」を達成するには需要は引き続き高水準との見方を示した。パリ協定は産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指している。
脱化石燃料の動きは加速しており、30年までにEVの普及が現在の10倍近い水準に達すると予想。主要国のクリーンエネルギー政策が化石燃料の需要を抑えると説明した。
エネルギー消費における中国の役割も変化しているとし、過去10年間世界の石油消費の伸びのほぼ3分の2を占めていた中国は、経済成長鈍化で需要が鈍化していると説明した。
また、中国は「クリーンエネルギー大国」になったとし、世界のEV販売台数に占める中国の割合は22年には全体の半分以上に達したと指摘した。
世界銀行のバンガ総裁は24日、地政学的な緊張が世界経済にとって最大のリスクとなっているが、リスクは急速に変化する傾向があるため、他のリスクも無視できないと述べた。
サウジアラビアの首都リヤドで開かれた国際投資会議「未来投資イニシアチブ(FII)」で「米10年債利回りは昨日、一時5%を超えた。これまで見られなかった領域だ。こうしたものが陰に潜んでいる」と指摘。
「次のパンデミックまでどの程度の期間があるだろう。今起きている戦争やイスラエルとガザで最近起きたことなど、世界と地政学では非常に多くのことが起きている。結局のところ、こうしたことを全て合わせると、経済発展への影響はさらに一段と深刻になる」と述べた。
「先進国では少し前の予想よりも全てが良くなっているように見えるが、われわれは非常に危険な岐路に立たされていると思う」と語った。
途上国では民間投資が必要だが、一部の国では依然として政治リスクが障壁となっていると述べた。
「新興市場では再生可能エネルギーだけでも1兆ドルが必要だ。政府も国際開発銀行も十分な資金はない。民間部門の資金を関与させる必要がある」とし、これが「最大の課題」と強調した。
カナダ銀行(中央銀行)は24日、各州首相から利上げに反対すると意見表明されたことに対して、マックレム総裁が中銀の独立性を脅かしかねないと苦言を呈したことを明らかにした。
オンタリオやブリティッシュコロンビアなど複数の州の首相は、9月6日の中銀会合前にマックレム氏宛てに書簡を送り、金利上昇の悪影響に懸念を示すとともに、これ以上の政策金利引き上げは控えてほしいと求めた。
中銀はこの会合で政策金利据え置きを決めた一方、追加利上げ余地は残っていると警告した。
その後9月13日にマックレム氏は各州首相に向けた返答で、政治家からのこのような要求は「中銀の職務上の独立が危うくなっているとの印象を与える恐れがある。職務上の独立は中銀の正統性と物価安定達成手段としての政策運営の実効性にとって大事だ」と訴えた。
ただオンタリオ州のフォード首相は、マックレム氏からの指摘を受けてもなお、追加利上げをしないよう改めて要望する書簡を記したことを22日にX(旧ツイッター)に投稿した。
中央政府のトルドー首相やフリーランド財務相は今年、金利水準には言及しているが、いずれも政策運営には何も注文を付けていない。
全米自動車労組(UAW)は自動車メーカーに対するストライキを再び拡大した。ゼネラル・モーターズ(GM)のテキサス州アーリントン組立工場で5000人の組合員がストに参加した。
この工場は「シボレー・タホ」や「GMCユーコン」、「キャデラック・エスカレード」など収益性の高い車種を生産していると、UAWは24日の声明で指摘した。GMはこの日、ウォール街の予想を上回る四半期決算を発表していた。今回のスト拡大で、米3大自動車メーカー(ビッグスリー)でストに参加している組合員の総数は4万5000人余りとなった。
23日にはミシガン州にあるステランティスのピックアップトラック工場で働くUAW組合員がストに参加した。UAWは3社全てから23%賃上げの提案を受けたが、フェイン委員長はさらなる譲歩を引き出そうとしており、スト拡大は自動車メーカーへの圧力を強める計画の一環だ。ブルームバーグの報道によると、UAWは25%の賃上げを要求している。
フォード・モーターのケンタッキー州のピックアップトラック工場で組合員が今月11日にスト入りしたのを皮切りに、UAWは現在、ビッグスリーの最も収益性の高い3工場を閉鎖に追い込んでいる。フォードの同工場ではFシリーズ上位モデル「スーパーデューティー」や大型のスポーツタイプ多目的車(SUV)が生産されている。同社によると、この工場は年間250億ドル(約3兆7500億円)の売り上げを上げている。
S&Pグローバルが24日発表した米国の製造業・サービス業を合わせた10月の総合購買担当者指数(PMI)速報値は、前月から上昇。製造業での需要回復とサービス分野でのインフレ鈍化が寄与した。
総合PMIでは販売価格の指数が3年ぶり低水準に下げた。サービス業でのインフレ圧力後退が背景にある。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのチーフ・ビジネス・エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「10月の状況改善を受けて、米経済のソフトランディング期待が高まるだろう」と指摘。「PMIの販売価格指数はパンデミック前の長期平均に近づいており、総合インフレ率が向こう数カ月に金融当局目標の2%に向けて低下していくとの見方と整合している」と述べた。
製造業ではコスト圧力が高まった。石油・石油関連製品の価格上昇が影響した。
雇用はサービス業では増加が継続。ただペースは減速した。一方で製造業では雇用が減少した。多くの企業は、自発的な離職により空いたポジションを埋めていないと報告。先行きやコスト節減の取り組みが不確実なためとしている。製造業の雇用指数は、2020年半ば以来の50割れとなった。
今後については、企業が楽観を強めていることが示された。事業の見通しを示す指数は2022年5月以来の高い水準に並んだ。
米投資会社KKRは、高利回り債券に一段の機会があるとみており、変動金利債の一部を売却している。米金融当局が利上げを休止していることが背景にある。
2000億ドル(約30兆円)のクレジット資産を運用する同社では最近、米銀行ローンを売却するなどの方法で、変動金利債へのオーバーウエートを減らしている。米レバレッジドクレジット責任者のジェレマイア・レーン氏が24日付の顧客向けリポートで明らかにした。一方で、特に欧州のジャンク(投資不適格級)債は数カ月前よりも魅力的になっているとの見方を示した。
レーン氏は電話インタビューで、「固定金利よりは変動金利を依然選好しているが、アロケーションはかなり均等に近くなるべきだ」と指摘。「当社では米金融当局がここから大幅に金利を引き上げるとは考えていない」と述べた。
レバレッジドローンのパフォーマンスは今年、米国と欧州の双方でジャンク債を上回ってきた。中央銀行がインフレ抑制を目指し、利上げを進めてきたためだ。ただ足元では、米金融当局は金融引き締めサイクルが終了に近づいていることを示唆しており、固定金利型の債券がアウトパフォームする可能性がある。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の習近平国家主席が24日午後、異例の中国人民銀行(中央銀行)訪問を行った。事情に詳しい関係者が明らかにした。10年前の就任以来、習主席がこれまで人民銀を訪れたことはなく、中国政府が景気と金融市場の支援を一段と重視している新たな兆しとなる。
中国共産党の総書記でもある習主席は、何力峰副首相ら政府高官と共に北京の人民銀と国家外為管理局(SAFE)を訪問した。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。何副首相は政府系ファンド(SWF)も訪れたという。
訪問の詳細は今のところ不明だが、習主席の動向は潜在的な政策シグナルとして投資家が注視している。共産党は金融業界に対する「中央集権的で統一された」指導力をうたっている。
公表されている記録によれば、習主席がこれまで人民銀を訪れたことはなく、今回が初訪問。こうした訪問はこれまで首相や副首相が行うことが多かった。
習主席の人民銀訪問は、政府が最近示している経済成長促進と市場安定化の動きを強化することになる。事実上の閣僚更迭が続き、米国との不安定な関係の中で習主席が経済を軽視しているのではないかという懸念も浮上していたことから、投資家にとって一定の安心材料となる可能性もある。
関係者の1人はSAFE訪問について、中国の3兆ドル(約449兆円)に上る外貨準備について理解を深めることが目的の一つだと説明。中国は5年に一度の全国金融工作会議を非公開で来週開催する予定で、金融業界のリスクを防ぐ中期の優先課題を策定するとみられる。
人民銀とSWFである中国投資(CIC)にコメントを求めたが、すぐに返答はなかった。
中国不動産市場の低迷が深刻化した場合、同国の2024年の実質国内総生産(GDP)成長率は3%を割り込む恐れがあると、格付け会社S&Pグローバル・レーティングが指摘した。世界2位の経済大国にとって住宅危機がいかに大きな足かせになっているかが浮き彫りとなっている。
S&Pによると、下振れシナリオでは、来年の不動産販売が22年比で最大25%減の約10兆元(約204兆5000億円)にとどまり、GDP成長率は2.9%に鈍化する。このシナリオが顕在化する確率は20%だとし、中国政府が同セクターへの大規模な刺激策を講じなかったり、裁量的な財政・金融支援を提供しなかったりした場合に考えられるという。
アジア太平洋担当クレジット調査責任者で、アナリストのユーニス・タン氏は、「不動産問題が中国経済回復の足かせとなっており、負のフィードバックループで不動産販売に一段と打撃を与える」と分析した。
直近の経済指標は予想を上回り、政府が設定した今年のGDP成長率目標である5%前後の達成も視野に入りつつあるが、悲観的な見方は残っている。国際通貨基金(IMF)は今月、不動産セクターからの強い逆風を踏まえて24年の成長率見通しを4.2%に引き下げた。
S&Pの基本シナリオでは、23年の不動産販売が前年比10-15%減、来年はさらに5%縮小と想定されている。このシナリオでは24年の経済成長が4.4%となり、ブルームバーグ調査の予想中央値4.5%におおむね沿っている。
中国財政省が24日発表したデータに基づきロイターが算出した政府の9月の土地販売収入は、前年同月比21.3%減と21カ月連続で減少した。
8月は22.2%減だった。
1─9月の土地売却収入は前年同期比19.8%減の3兆0875億元(4224億2000万ドル)だった。
住宅価格の下落や不動産販売の減少、投資の落ち込みなど、住宅市場の低迷が土地販売の重しとなっている。当局は市場を活性化させるための施策を打ち出し一部の1級都市では回復の兆しが見られるが、若干の信頼感改善にとどまり、市場はより大規模な政策支援を求めている。
全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、2023年の財政赤字を対国内総生産(GDP)比で約3.8%に引き上げる計画を承認した。3月に設定していた3%を大きく上回る水準だ。
これには10-12月(第4四半期)に1兆元(約20兆5000億円)相当の国債を追加発行することが含まれ、調達資金は災害救助や建設の支援に充てられる見通しだと、国営新華社通信が24日伝えた。
中国が年度途中に予算を修正するのは異例。過去には2008年の四川大地震、1990年代終盤のアジア金融危機の発生を受けた時など数回しかない。
キャピタル・エコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は「この日承認された追加景気対策は、われわれが想定していた介入であり、年末にかけて急激な財政引き締めが起きるのを防ぐために必要だった」と指摘した。
今回の予算修正は、来年にかけて景気の先行きに指導部が不安を抱えていることを反映しており、政府が経済と金融市場の強化を重視していることの表れだ。これに先立ち、習氏は人民銀を訪問。公表されている習氏の人民銀訪問は、10年前の主席就任以来初めて。
ブルームバーグニュースは今月、中国の政策担当者が今年の5%成長目標の達成に向けて、財政赤字拡大や国債増発を検討していると報じた。シティグループのエコノミストはその際、財政赤字の対GDP比を引き上げれば成長目標達成への「政策担当者の危機感を示す」との見方を述べていた。
●中東
サウジアラビアの首都リヤドで開幕した国際投資会議「未来投資イニシアチブ(FII)」では、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突で多数の死傷者が出る中、大手金融機関のトップが経済に悲観的な見方を示した。
会議では人工知能(AI)、戦争の経済的影響、金利上昇に伴う債務増大などを議論。
米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク会長兼最高経営責任者(CEO)は「こうした問題が解決されなければ、恐らくグローバルなテロが増える。そうなれば不安が広がり、社会が恐怖に見舞われ、経済が収縮する」と発言。
フィンク氏が出席したパネル討論には、米金融大手ゴールドマン・サックス(GS.N)のデービッド・ソロモンCEO、JPモルガン(JPM.N)のジェイミー・ダイモンCEO、シティグループ(C.N)のジェーン・フレーザーCEOが参加。職場での女性の地位や金利上昇の影響について協議した。
ヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏は自分は悲観的だと発言。「今後の金融政策などは、世界により大きな影響を与えるだろう」とし「世界の格差を見ていると、その点について楽観的になるのは難しい」と述べた。
HSBCグループのノエル・クインCEOも、重い政府債務のリスクを警告。「財政赤字の臨界点を懸念している。来る時は一気に来るだろう。世界には臨界点が来る可能性のある経済がたくさんあり、大きな打撃になるだろう」と述べた。
●中南米・アフリカ
ペルーのコントレラス経済相は23日、政府が鉱山、農業など主要部門向けに刺激策を準備していると明らかにした。
コントレラス氏は先週、ペルーが疑いなく景気後退(リセッション)に入っていると初めて認めた。エルニーニョ現象による悪影響、民間投資の減少などで、ここ数カ月は経済がマイナス成長に陥っていた。
この日の閣議後、「いくつかの部門に関する刺激策を近く発表する。鉱山と農業部門について作業を進めている」と説明。それにより、ペルーの構造的な成長トレンドを反転できるとの考えを示した。
今年の経済成長率について、中央銀行は0.9%、政府は1.1%と予想している。
一方、アナリストらはこの見通しはともに楽観的すぎると指摘。2023年通年でマイナス成長になるとの予想も出ている。
コントレラス氏は措置の詳細には触れず、「鉱山部門は2桁台の成長を示しているが、(昨年操業を再開した)ケジャベコ銅山の統計効果が薄れているのを受け、鉱山部門に対策を講じることにした」と述べた。
メキシコのロペスオブラドール大統領は23日、バイデン米大統領にキューバとの対話開始を求めていく考えを明らかにした。
ロペスオブラドール氏は22日、キューバのディアスカネル大統領を含む中南米の指導者らをチアパス州に招き、中南米から米国向けなどの移民急増を抑制する方法を協議した。
ここ数カ月、米国とメキシコの国境での拘束者はキューバ人が最多。ロペスオブラドール氏は、米国の対キューバ経済規制は「まぎれもない人権侵害」であり、停止すべきとしている。
ロペスオブラドール氏は定例記者会見で「米国とキューバの相互対話を推進して合意達成と現状の課題解決につなげることが、昨日の協議における合意事項の一つだった」と説明。
さらに米サンフランシスコで11月に行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際にバイデン米大統領と会談する席で、キューバ問題を提示する方針を示した。
●市況
<為替> 終盤のニューヨーク外為市場では、ドル指数が上昇した。一連の経済指標によって英国や欧州連合(EU)に対する米経済の力強さが浮き彫りになったことを受けた。
マネックスUSAのFXトレーダー、ヘレン・ギブン氏は「特に今朝発表された英国やユーロ圏のPMIと米国のPMIを比較した場合、全体像は依然として明らかに変化していない」と指摘。米国では製造業、サービス業、総合の3つのPMI全てが景気拡大と縮小の節目である50を上回ったのに対し、英国とユーロ圏はいずれも50を下回ったとした。
<債券> 米金融・債券市場では、10年債利回りがやや低下した。金利上昇が経済に及ぼす影響のほか、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突を受けた地政学的な緊張の高まりを巡る懸念を背景に、買い戻される動きが出ている。
<株式> 米国株式市場は急伸して取引を終えた。堅調な企業決算や業績見通しの上方修正が相次ぎ、投資家のリスク選好意欲が高まった。
<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は小幅続落。対ユーロでのドル上昇を眺めて売りが優勢だったものの、その後米長期金利の上昇一服を背景に買い戻しが入り、下げ幅を縮小した。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、需要先細り懸念を背景とした売りなどに押され、続落した。
<ロンドン株式市場> 小幅反発して取引を終えた。鉱業株や英製薬アストラゼネカの上昇が相場を支えた。ただ、英銀大手バークレイズなどのさえない企業決算を嫌気した売りも出て、相場の上げ幅は限られた。
アストラゼネカ(AZN.L)は3.3%上昇。米食品医薬品局(FDA)が、患者や介護者による経鼻インフルエンザワクチン投与の承認を求める同社の申請を受理したと発表したことが好感された。
<欧州株式市場> 小幅反発して取引を終えた。ユーロ圏の経済指標は低調だったものの、欧州や米国の企業への業績期待感が相場を押し上げた。
フランスの高級ブランド品メーカー、エルメス(HRMS.PA)は2.8%上昇。2023年第3・四半期決算の売上高が予想を上回ったことが好感された。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが低下した。この日発表されたドイツとフランスの10月購買担当者景気指数(PMI)で景気後退のシグナルが示されたことを受けた。
日経先物31250、ダウ先33334、債先144.60、米4.820、独2.8175、仏3.450、西3.918、伊4.825、英4.6055、波5.900、原油83.75、銅8,082、ドル円149.87、ユーロドル1.0593
※10/25 8時5分頃

備忘録(2023/10/23)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米マイクロソフトは今後2年間でクラウドコンピューティングと人工知能(AI)インフラを拡大するため、オーストラリアで50億豪ドル(約4730億円)を投じる。同社による豪州への投資額としては過去40年間で最大だという。
今回の投資により、マイクロソフトがキャンベラとシドニー、メルボルンに置くデータセンターは現在の20カ所から29カ所に拡大する。率にして45%増となる。同社は、今週のアルバニージー豪首相訪米に合わせて計画を発表した。
このほか、ニューサウスウェールズ州当局と共にマイクロソフト・データセンター・アカデミーを豪州に設立するほか、サイバーセキュリティー分野で豪州の情報機関ASDと協力する。
マイクロソフトのブラッド・スミス社長は「40年に及ぶ豪州でのマイクロソフトの歴史上、最大の投資となる。AI時代における豪州の成長と繁栄に対するコミットメントの証しだ」と発表資料で述べた。
アルバニージー首相は23-26日の公式訪問のため、22日に米国に到着した。主要な議題は、重要鉱物やテクノロジー分野のイノベーションになるとみられている。25日夜にはホワイトハウスで、バイデン米大統領主催の公式夕食会が開かれる。
●その他産業
米石油大手シェブロン(CVX.N)は23日、米同業ヘス(HES.N)を530億ドルで買収すると発表した。買収は全額、株式交換方式で行う。
石油資源が豊富な南米ガイアナで事業を拡大する。ガイアナは、米石油大手エクソンモービル(XOM.N)、ヘス、中国海洋石油が大規模な石油鉱床を発見し、近年、主要産油国となった。
シェブロンはヘス株1株に対して171ドル相当を支払う。ヘスの直近終値に約4.9%のプレミアムを乗せた。債務を含む買収総額は600億ドル。
買収完了は来年上半期ごろの予定。ヘスのジョン・ヘス最高経営責任者(CEO)は買収完了後にシェブロンの取締役会に入る。
シェブロンのマイケル・ワース最高経営責任者(CEO)は「独占禁止法上の懸念はない」とし、今回の買収は「エネルギー安全保障にとって素晴らしいことだ」と述べた。
両社によると、統合後の新会社は、シェブロンの現在の5カ年ガイダンスとの比較で、生産とフリーキャッシュフローの伸びが加速・長期化する見通し。
シェブロンのピエール・ブレバー最高財務責任者(CFO)は声明で「予想される長期のキャッシュ創出がより確実になるため、シェブロンは増配ペースと自社株買いの拡大を通じて株主にさらに多くの現金を還元する」と表明した。
ワースCEOによると、買収完了後1年以内のコストシナジーは約10億ドルとなる見込み。
シェブロンは買収完了後、自社株買いプログラムを25億ドル拡大し年間200億ドルの上限まで引き上げる意向という。
エクソンは今月、シェール大手パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PXD.N)を約600億ドルで買収すると発表。エクソンとシェルは石油分野で急成長しているシェールとガイアナで直接対決することになる。
ワースCEOは「BOE(石油換算バレル)当たりでCEOが多すぎるため、統合は自然なこと」とし、今後も石油業界で買収・合併の動向が続く可能性があるという見通しを示した。
23日午前の取引でシェブロンの株価は約2.4%安、ヘスは約0.7%高で推移した。RBCのアナリストは今回の買収のタイミングに驚いているとし、エクソンによるパイオニア買収を受け、シェブロンが幾分時間をかけると予想していたと述べた。
インドの資産家ムケシュ・アンバニ氏率いる複合企業リライアンス・インダストリーズは、米ウォルト・ディズニーのインド事業を現金と株式交換により買収することで同社と合意に近づいている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
関係者らによればディズニーは、インドのディズニー・スターの過半数株式を売却する可能性がある。ディズニーは、ディズニー・スターの価値を約100億ドル(約1兆5000億円)と評価している。関係者らは、協議が非公開だとして匿名を条件に語った。関係者の一部によれば、リライアンスはディズニー・スターの価値を70億-80億ドルと捉えている。
買収は11月中にも発表される可能性があり、リライアンスのメディア部門の一部がディズニー・スターに統合されることもあり得ると、関係者らは指摘。ただそれ以上の詳細には触れなかった。
また買収案では、ディズニーはリライアンスとの取引が完了した後もディズニー・スターの少数株の保有を続ける可能性が高いという。取引や評価額について最終決定はなされておらず、ディズニーがまだしばらくディズニー・スターの保有を続けるとの判断に至る可能性もあると、関係者らは付け加えた。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
22日に発足から1年となったイタリアのメローニ政権が直面する主要な問題は、低調な経済成長と、同国の巨額の債務に課される高い金利だ。
イタリアは新型コロナウイルスのパンデミックからの景気回復が失速し、今年第2・四半期の国内総生産(GDP)は0.4%減少。アナリストは、イタリアの経済成長率は来年にユーロ圏で最低クラスにとどまると予想している。
これによりメローニ首相は減税の公約を果たすのが一段と難しくなり、イタリアのGDPに対する債務の比率は140%となる。
LUISS大学のバレンティーナ・メリチアーニ経済学教授は「経済が多分、最も厳しい課題になる。政府は財政運営の余地が限られている」と述べた。
S&Pグローバル・レーティングは先週、イタリア国債の格付けを「BBB」、見通しを「安定的」に据え置いた。
だがアナリストの間では、格付け各社はイタリアの国債の格下げには踏み込まないとしても見通しを引き下げるとの見方が優勢となっている。イタリアはこれまで欧州連合(EU)の財政規律基準を順守するのに苦戦してきた。
「極右」と称されるメローニ首相は、自国優先政策に傾くとの懸念が国際社会にあったが、ウクライナ支援を明確にするなど、欧米との協調路線を打ち出している。
一方でメローニ氏は20日、性差別的な発言で批判を浴びているパートナーのテレビジャーナリスト、アンドレア・ジャンブルーノ氏との関係を解消したと発表した。
格付け会社S&Pグローバルは20日、ギリシャの格付けを投資適格級に引き上げた。2010年の債務危機以来、ギリシャが格付け大手3社から投資適格級を回復するのは今回が初めて。
S&Pはギリシャの自国通貨建ておよび外貨建ての長期発行体格付けを「BBB―/A-3」に引き上げ、見通しは安定的とした。
他の格付け大手、フィッチとムーディーズは、同国を投資適格より1段階低い格付けとしている。DBRSモーニングスターは先月、投資適格のBBB(low)に引き上げた。
S&Pは、財政黒字目標がギリシャの政府債務を平準化するのを助けると予想。政治的圧力によって同国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の大幅黒字を維持する能力が妨げられることを警戒しているとした。
ギリシャは2018年に債務危機から脱却したが、ユーロ圏で唯一「ジャンク(投資不適格)」級に格付けされていた。
S&Pは、追加の経済構造改革および予算改革とEUからの大規模資金で、ギリシャの2023─26年の堅調な経済成長が支えられると予想した。
スイスで22日に総選挙が実施され、国民議会(下院)で第1党の右派、国民党が議席を伸ばしたとみられる。移民問題への懸念の高まりを背景に、同党の掲げる移民抑制策が支持を得た。
現地テレビ局SRFの予測によると、国民党の得票率は29%と、2019年の前回選挙から3.4%ポイント上昇した。
これに基づくと、定数200の下院で8議席伸ばして61議席となる見通し。下院ではどの政党も過半数を占めていないが、右派の勢力が拡大する。
同党は、現在870万人の国内人口が1000万人を超えるのを阻止すると公約。
マルコ・キエーザ党首は「移民、不法移民、エネルギー供給の安全保障の問題がある」と指摘し、難民を巡る混乱が既に起きていると述べた。
第2党の社会民主党は得票率が前回から0.7%ポイント上昇して17.4%となり、1議席伸びて40議席になるとみられている。医療費増大が同党に有利に働いた。
一方、気候変動の注目度が移民問題ほど高まらなかったことから、環境政党の緑の党は6議席を失う見通し。
ただ、総選挙の結果は内閣に相当する「連邦会議」の構成を変えることはないとみられる。連邦会議を構成する7閣僚は主要4政党から選ばれる。
米航空宇宙・防衛大手ゼネラル・ダイナミクス(GD)(GD.N)は23日、全米自動車労組(UAW)と一部施設で働く数百人の労働者を対象とする新たな労働契約について暫定合意に達した。
同社は今月、UAWに所属するミシガン州、オハイオ州、ペンシルベニア州の従業員1000人超の4年間の契約が東部時間22日午後11時59分に期限切れとなることを受け、ストライキを承認する投票を行なっていた。
契約の詳細は不明。UAWの労働者による批准が必要となる。
T&Dホールディングス(8795.T)傘下の太陽生命保険は23日、2023年度下期一般勘定資産運用計画で、超長期債を中心に国内債券の残高を増加させる方針を示した。一方、ヘッジコストの上昇に伴い、外国債券は国債を中心に売却を進め、残高は減少を見込む。また、為替リスクの高まりからオープン外債には慎重な姿勢で臨む。
執行役員・運用企画部長の清友美貴氏が23日、ロイターとのインタビューで述べた。
<20年債を中心に国内債を増加>
国内債券は積み増しを継続し、超長期債や事業債などのクレジット資産の組み入れを進めていく。上期の残高は横ばい。日銀の政策修正への警戒感から一部残高を落としたものの、7月末の日銀会合での長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)運用柔軟化後は超長期債を中心に買い進めた。
新発10年債利回りの想定レンジは0.5―1.0%で、年度末は0.85%を予想する。足元の新発10年債利回りは0.86%と13年7月以来の高水準を更新しているものの、海外金利の上昇につられている面が大きいとし、「仮に日銀がYCCを撤廃したとしても、円金利が大幅に上昇するとはみていない」として、海外金利の低下とともに、円金利の上昇は落ち着いてくると話した。
清友氏は早ければ3月もしくは4月会合で日銀がマイナス金利解除に踏み切ると予想。マイナス金利解除に伴い金利が大きく変動する可能性があることから、YCC撤廃については6月会合を想定する。
金利上昇圧力がかかりやすい地合いが続くものの、「(金利水準の目線が合えば)ある程度買う」と指摘。資産と負債のデュレーションのマッチングが出来ていることから、「30年債よりも20年債への投資が中心になる」とみる。また、10年以下については、国債よりもスプレッドが乗る事業債を中心に投資していく。
<ヘッジ外債の売却継続>
外国債券については、主に海外国債を売却していく一方で、欧米のクレジット債は積み増していくとし、全体で残高は減少する見通し。上期は残高は減少した。ただ昨年と比較すると残高を落とすペースは緩やかとなった。
下期の米10年債利回りの想定レンジは3.0%ー5.0%で、年度末は4.0%を予想。米国の政策金利の引き上げが徐々に米経済に波及していくとし、米長期金利は低下していくとみる。これに伴い円高が進むとし、下期のドル/円の想定レンジは125─155円で、年度末は140円と予想する。
清友氏は為替をヘッジしないオープン外債は選択肢としてはあるとする一方、「今後値幅を伴って円高に振れる可能性など為替リスクが生じる」とし、慎重な姿勢を示す。一方で、数年間はネガティブキャリーとなるものの、米国の利下げが視野に入れば、ヘッジコストが徐々に縮小していくことから、ヘッジ外債の選択肢もでてくるとみる。株価の急落リスクに備えて残高をゼロにはせずに、バランスを考えて保有していく。
外貨エクスポージャーは横ばいを見込むが、市況動向に応じて機動的に対応する。
<インフレ高止まりと米景気のハードランディングに警戒>
株式は国内、海外ともに残高は減少する見通し。利益確定売りを進めていく。上期は国内株は残高を減らした一方、外国株は横ばいにとどまった。
日経平均株価の想定レンジは2万5000─3万6000円で、年度末は3万3000円と予想。米景気については現状ではソフトランディングを想定していることから、米株価は底堅く推移するとみており、日経平均株価についても底堅さを維持するとみる。
オルタナティブは引き続き増やす見通しで、収益機会の多様化を目的に中長期的に残高を拡大していく。貸付金は上期は横ばいとなった。ただ、下期は減少する見通しで、金利水準を踏まえて選別していくという。不動産は横ばいの見通し。
清友氏は、リスクシナリオとして米経済がハードランディングとなった場合、株安・円高・金利低下が急速に進むことや、地政学リスクを背景とした原油先物価格の上昇でインフレが高止まれば、米連邦準備理事会(FRB)による利下げが後ずれ、それに伴いヘッジコストの高止まりや米金利上昇、株価の下落が予想されることから、機動的に対応していくとの方針を示した。
米10年国債利回りが23日の金融市場で、16年ぶりに5%を突破した。米金融当局が高水準の金利を維持し、米政府も拡大する財政赤字を賄うため債券を増発するとの観測が背景だ。
米10年債利回りは一時11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、2007年以来の高水準となる5.02%を付けた。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は先週、金融当局が11月の連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置きに傾いているが、景気が底堅くインフレリスクをあおる場合には、引き続き追加利上げを辞さない構えも示唆した。
財源不足で米政府は債券供給の増加を強いられる公算が大きく、米財政の持続性可能性に対する懸念が高まっていることも、米国債相場を押し下げている。8月の四半期定例入札は2年半ぶりの規模に上ったが、米財務省は11月の借り換えを今準備している。
TDセキュリティーズのストラテジスト、ゲンナジー・ゴールドバーグ、モリー・マクガウン両氏は最近のリポートで、「短期的には魅力的に見える水準だが、テクニカル的に弱い中で投資家は落ちてくるナイフをつかもうとはせず、(地政学的なリスクや鈍化するデータなど)材料を引き続き待とうとするのではないか」と指摘。「これにより極めて高水準の金利ボラティリティーが短期的に続く可能性がある」と予想した。
一方、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントによれば、5%を超える米10年債利回りは買い。この水準では同社が判断するフェアバリューをオーバーシュートしているとみている。
現在の長期金利では米国債をショートで維持するにはリスクがあり過ぎると指摘。最近のデータが示すよりも、経済の減速度合いは大きい述べた。
長期債利回りの上昇は企業や家計の財務状況を引き締める上でより効果的だと、ガロ氏は指摘。「金融当局が債券利回りへのコントロールを失い、赤字は続いている。当局が量的引き締めを加速させたわけではなく、債券市場が自ら手を下した」と述べた。
さらに「インフレに対応するには、短期金利の引き上げだけでは効果がない。消費者も大企業も長期的な資金を調達している。米国では住宅ローンの借り手の約98%が長期の住宅ローンを組んでおり、S&P500種株価指数構成企業のほとんどが投資適格の格付けを取得している」と話した。
期間が短めの債券利回り上昇は大半が、中小企業や人口の所得下位半分に対する財務状況を厳しくしていると、ガロ氏は述べた。短期債利回りより長期債利回りの方が低いため、大企業は基本的に「キャリートレード」を行っていると語った。
日本の投資家が世界の長期利回りのアンカーとなってきたため、日本銀行の動きに注意が必要だと指摘。日本がマイナス金利から脱却すれば、米国債の需要に影響を与える可能性があるとの見方を示した。
レバレッジドファイナンス、つまり企業の合併・買収(M&A)の原動力となり、1兆3000億ドル(約195兆円)規模のローン担保証券(CLO)市場を潤す融資に携わる投資バンカーは、つかの間の喜びに浸っていた。
企業のバリュエーションがM&Aに魅力的な低水準で、米連邦準備制度による積極的な利上げが終わろうとする中で、融資が実行されようとしていた。だがパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が、まだ追加利上げに動く用意があるのだと分かると、ウォール街の期待は一気に冷め、資金調達が再び停滞した。
低金利時代にはローンの一角を束ねて証券として販売するCLO業界にブームが到来。10年に及ぶ低金利期にバンカーはCLOをニッチな証券化ビジネスから資本市場の一つの柱に育て上げた。しかし今はM&Aが低迷しており、CLOの最大トランシェ部分に対する米大手商業銀行の需要も落ち込んでいる。
シティグループのデータによると、CLO発行体の約40%が今年まだ新規案件の価格を決定していない。フェデレーテッド・ハーミーズの投資家、アンドルー・レノックス氏は「CLO市場はしばらく混乱している」と語る。
インベストメントバンカーの嘆きというだけの話ではない。CLO発行の低迷が続けば、既発CLOの期間延長に絡み実体経済にも影響が及ぶ。銀行など一般的な金融機関は融資に消極的で、低格付け企業の借り換えが一段と厳しくなる。
「CLO組成の減少はレバレッジドローン需要の減少につながる」とクレセント・キャピタルのポートフォリオマネージャー、ウェイン・ホサング氏は話す。今後3年間に返済期限を迎えるレバレッジドローンは約5000億ドルに上り、CLOは米企業ローン市場の約70%を占めている。欧州ではそれ以上だ。
アレス・マネジメントの米流動性クレジット担当ポートフォリオマネージャー、ダン・ヘイワード氏によれば、銀行の投資意欲が戻り始めており、レバレッジドローン市場はオープンであるものの、その対象は「より質の高い発行体」だ。CLOはほとんどが高リスクの融資で構成されている。
金融危機以前
需要減少により既発証券の借り換えが困難になっていることから、多くのCLO運用会社も苦しんでいる。以前のブーム時には、投資家は既存のCLOを「リセット」し、返済が将来に先送りされることを望んでいた。つまり、永久資本への道だ。だが、今の新たな傾向はCLOのコール(期限前償還)で、かつての真逆だ。
チェナバリ・インベストメント・マネジャーズの債券シニアトレーダー、 サイモン・ゴールド氏は「CLOをコールするのが当たり前だった金融危機以前と同じような状況になり始めるかもしれない」と予想。 「2008年以降、運用会社はCLOの期限を延ばし、低金利環境を利用するためリセットを増やした。だが、今はそれほど簡単な道ではない」と言う。
ブルームバーグがまとめたデータによると、米国での今年これまでの新規発行・借り換えの総額は約1020億ドルと、昨年の同じ時期(約1340億ドル)から減った。買収ブームの最盛期だった21年は3500億ドル近かった。
CLOはトランシェに分割されており、シニア部分が投資適格と評価され、その下のメザニン部分とエクイティー部分が最もリスクの高い層を構成する。
「AAA」格付けのシニア部分の主な買い手は、JPモルガン・チェースやシティ、 ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)だが、こうした銀行は購入をやめたか、購入を大きく減らしている。米国の新たな資本規制やシリコンバレー銀行破綻、クレディ・スイス救済合併が響き、すぐに持ち直す兆しはほとんどない。
JPモルガンとシティ、ウェルズ・ファーゴ、BofAの担当者はコメントを控えた。
日本のマイナス金利は数カ月以内に解除される見通しで、その場合は世界市場に多大な影響を与え、米国債が最も大きな打撃を受けそうだ。最新のブルームバーグ「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査が示した。
回答者315人の大半は、日本銀行がマイナス金利を2024年上期(1-6月)に解除する可能性が高いと答えた。そうなれば、日銀が16年に始めた大胆な実験に終止符が打たれることになる。最近では、インフレとの闘いで積極的な引き締めを進める他の主要中央銀行と足並みがそろわない措置となっていた。
日銀がいつ何をするかは、世界市場に影響を与えるだろう。今回の調査結果によれば、最も大きな影響は、発行残高が多額に上る米国債の値動きが一層激しくになることだ。日本の利回りが上昇すれば米国や欧州、オーストラリアに膨大な資産を保有する日本の投資家に対し、海外資金を国内に回帰させる「レパトリエーション」を促すことになるからだ。
ウエストパック銀行の金融市場戦略責任者マーティン・ウェットン氏(シドニー在勤)は「日銀の政策転換があれば日本国内の利回りが以前よりも魅力的になるため、日本からの資本輸出は鈍化する可能性がある」と指摘した。
日銀の植田和男総裁がマイナス金利を解除した場合に最も大きな影響を受ける資産は何かという質問には37%が米国債と回答。36%がドルと答えたことから、ドル建ての米国債は一段の逆境に直面する恐れがある。
世界のポートフォリオマネジャーと中銀は、マイナス金利とイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を金融政策の柱としている日銀の動きを警戒している。日銀は22年末に10年債利回りの上限を引き上げたほか、今年7月にもYCC運用柔軟化で債券利回りを押し上げ、世界市場を揺るがした。
DBS銀行のシニア金利ストラテジスト、ユージーン・レオ氏は「何らかの正常化が恐らく必要だろう」とした上で、「日本国債利回りの上昇が波及すれば、5-10年物の先進国債券利回りに上昇圧力がかかる可能性がある」と分析した。
米財務省のデータによれば、日本の投資家の8月末時点の米国債保有額は1兆1000億ドル(約165兆円)強と海外勢トップ。日本財務省のデータでは、生命保険会社は昨年10月から今年3月までの6カ月間に過去最大の8兆円相当の外国債券売り越しとなり、今年4-9月は1960億円の同売り越しだった。
日銀がマイナス金利政策を変更した場合、世界債券市場のボラティリティーはどう変化するかという質問には拡大すると61%が回答した。
三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは「利回りがプラスの状況にトレーダーや投資家が慣れるまでは、おそらく市場は極めて神経質な動きになるだろう」とした上で、「風がなかった池に大きな石が投げ込まれるようなものだ」と指摘した。
10年物日本国債利回りが日銀が上限とする1%に達する時期については、43%が来年上期の公算が大きいと回答。それより遅くなるとした回答は16%だった。
日銀がYCC運用を柔軟化した7月末以来、10年物日本国債利回りは約2倍に上昇しているものの、なお0.835%と、米10年債利回り(4.91%)とは大きな開きがある。この利回り格差は広がっており、円は今年に入ってG10通貨で最悪のパフォーマンスとなっている。
回答者の62%は、今年末時点のドル・円相場は1ドル=140-150円になるとの見方を示した。
23日のロンドン金属取引所(LME)で、銅相場が大きく下げ、昨年11月以来の安値を付けた。金利上昇と支出鈍化が工業経済の隅々まで影響を及ぼし始めていることを示す新たな兆しだ。
ゴールドマン・サックス・グループは来年の米住宅価格について、小幅な伸びにとどまると予想している。住宅ローン金利が高止まりするとの見通しが背景。
ヤン・ハッチウス氏ら同行エコノミストは22日付のリポートで、2024年12月の米住宅価格は前年同期比1.3%の上昇になると予想。23年は3.4%の上昇を見込む。
30年物固定住宅ローン金利が8%に迫る水準となるなど、買い手は借り入れコストの上昇に直面している。
ゴールドマンのエコノミストは「最近の住宅ローン金利の急上昇と、金利が当面上昇し続けるという見通しは、経済で最も金利の影響を受けやすいセクターにとって逆風となる」とリポートに記した。
ドイツ連邦銀行(中央銀行)は23日に発表した月例報告で、第3・四半期の国内経済が縮小した可能性が高いとの見方を示した。工業生産の減少、建設部門の縮小、消費の低迷が背景だ。
独経済は年初に景気後退に見舞われ、第2・四半期はゼロ成長だった。
連銀は「工業製品の外需は引き続き低迷した」と指摘。「資金調達コストの上昇も投資を抑制し、特に建設業の内需を押し下げた」とした。
雇用は好調を維持し、低迷が長期化する景気を下支えしているが、年末に向けて失業率が緩やかに上昇すると予想。「主にサービス価格の力強い勢いが続いているため、コアインフレ率は近い将来に4%をやや上回る水準で推移する可能性が高い」と付け加えた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
セルビアのブチェビッチ副首相兼国防相は、防空システムやドローン(無人機)など中国製兵器によりセルビア軍が大幅に強化されたと、中国国営メディアに述べた。
ブチェビッチ氏は、22日公表された中国共産党系メディアの環球時報とのインタビューで「セルビアと中国の二国間関係については、軍事協力、経済協力、数々の投資を挙げたい。わが国にとって非常に重要だ」と発言。軍の装備調達と近代化に向けた取り組みは防衛を意図したものだと述べた。
中国の習近平国家主席は先週、北京でセルビアのブチッチ大統領と会談し、セルビアは中国の「鉄の友人」であり、戦略的な協力関係を強化すべきだと発言。セルビアの主権と領土の一体性を守ることを支持すると述べた。
ブチェビッチ氏は、セルビアが調達した特に重要な防衛システムとして中国の防空システム「FK-3」や無人機「CH-95」「CH-92A」を挙げた。
セルビアはここ数カ月、同国から2008年に独立したコソボとの緊張が高まっており、米国のほか、伝統的にセルビアを支持するロシアが情勢を注視している。
ブチェビッチ氏は、セルビアが独立を守るため能力を強化すると述べたが、中国からさらに兵器を調達するかは明言しなかった。
米政府は20日、ロシア政府がスパイやソーシャルメディア、国営メディアを活用し、世界中の民主的選挙の正当性に対する国民の信頼を損なわせているとする情報機関の分析報告書を公表した。既に100カ国超に通知した。
報告書はロシアの活動が「世界的な現象であり、われわれの情報によれば、ロシア大統領府や政府高官はこの種のインフルエンス・オペレーションに価値を見出し、効果的であると認識している」と指摘している。
米国務省高官が匿名を条件に記者団に説明したところによると、ロシアは20年の米大統領選挙と新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)に関する偽情報の浸透に成功したため、選挙でのインフルエンス・オペレーション強化に積極的になっている。同高官は「成功が成功を生んでおり、米国の選挙が一つの触媒だと確信している」と語った。
報告書は、18日の外交公電でアメリカ大陸や欧州、アジア、アフリカの100カ国超の米大使館に送付し、その後各国政府に配布したという。
また、同高官は既に内々に相手国政府にブリーフィングを行い「来年の大統領選よりも早く」情報を共有したと明らかにした。
報告書は「米政府はこの脅威に対する自国の脆弱性を認識している」と指摘。米情報機関は「ロシア工作員が20年の米選挙に対する国民の信頼を損なう情報の拡散と増幅を行った」ことを突き止めたという。
さらにロシアが、複数スパイ組織が管理するインフルエンス・オペレーション網や代理人など「公然・非公然のメカニズムの両方を利用している」ことも挙げた。例えば、ロシア連邦保安庁(FSB)は密かに選挙係員の脅迫や投票当日の抗議行動を組織したほか、20年に欧州で行われたある選挙で「海外投票を妨害した」という。
また、報告書によると、ロシアの国営メディアは20―21年の間、アジアや欧州、中東、南米で行われた選挙に先立ち、世論調査が非民主的であると公然と主張し「虚偽の不正情報を増幅させた」ほか、ソーシャルメディアのプラットフォームや「プロキシサイト」を使って選挙の正当性についての疑念を植え付けたという。
報告書は各国に対し、制裁や情報共有、ロシア人スパイの国外追放、渡航禁止措置を通じて選挙妨害を軽減する対応を提言した。
2024年2月のインドネシア大統領選に出馬予定のプラボウォ国防相(72)は22日、ジョコ大統領の長男ギブラン氏(36)を副大統領候補にすると発表した。
ジョコ大統領は国民から人気が高く、ギブラン氏の副大統領選出はプラボウォ陣営にとって追い風になるとみられる。
ギブラン氏は現在、ジャワ島・ソロ(スラカルタ)市長。憲法裁判所は候補者の資格要件を緩和し、同氏の副大統領候補としての立候補が可能になった。
プラボウォ氏は今週の2つの世論調査を含め、今年行われた大半の調査でジャワ州のガンジャル前知事に僅差ながらリードしている。ジャカルタ特別州のアニス前知事は支持率で3位につけている。
ジョコ大統領は今週、自身は大統領候補に全く関与しないと表明した。ただ政界関係者の話では、ジョコ氏は引退後も影響力を維持する意向で、水面下でプラボウォ氏への支持集めに動いている。
中国に対する外国企業の信頼が再び揺らいでいる。中国当局が米アップルの最も重要なパートナーで、中国最大級の雇用主である台湾のフォックスコン・テクノロジー・グループを調査しているほか、外国企業の社員の身柄を相次ぎ拘束しているためだ。
国営メディアは週末、当局がフォックスコンを巡る税務調査や土地利用に関する精査を実施していると報道。フォックスコンの主要上場部門である鴻海精密工業は、中国当局に協力すると表明した。
一方、世界有数の広告会社、英WPPの幹部1人と元社員2人が中国で逮捕されたと事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。日経新聞が22日に報じたところでは、中国当局は3月に日本の非鉄専門商社でレアメタル(希少金属)などを扱う中国人社員の身柄を拘束。また、スパイ容疑で中国当局に拘束されていたアステラス製薬の邦人男性社員は今月、正式に逮捕された。
23日の台北市場で鴻海の株価は日中ベースで3カ月ぶりの大幅安。上海市場に上場している鴻海傘下のフォックスコン・インダストリアル・インターネット(富士康工業互聯網、FII)は値幅制限の10%を超える過去最大の下げとなった。
中国は規制当局の行動を公に説明しないことが多く、同国で事業を展開する企業は政府の最終目標を推測するしかない。共産党の絶大な権力を背景に、経済の監督上の不透明なアプローチが外国企業幹部の不安を招いている。
ナティクシスのアジア太平洋地域チーフエコノミスト、アリシア・ガルシアエレロ氏は「エリートの間で反対意見が増えており、私の感触では指導部の中核は外国の影響力を真に懸念している。これは外国人に対するシグナルではなく、そうした道をたどるなというエリート層に向けたシグナルだ」と分析した。
●中東
22日投開票のアルゼンチン大統領選で与党連合の中道左派マサ経済相が予想外に首位になったことを受けて、アナリストは市場の懸念が和らぐのではないかと指摘している。
開票率約80%の段階でマサ氏の得票率は約36%。経済のドル化や中央銀行の廃止を公約に掲げるリバタリアン(自由至上主義者)のミレイ氏は約30%。両氏が来月19日の決選投票に進む見通しとなった。
市場関係者は、ミレイ氏が圧勝するとの見方が後退し、通貨ペソの突然の切り下げや近い将来のペソ廃止に対する懸念が和らぐと予想。
アナリストのサルバドール・ビエリ氏は「ドルへの資金逃避が減るのではないか。多くの市場では無秩序なドル化が織り込まれ始めていた。このため、ドルがやや下落する可能性がある」と述べた。
別の市場関係者も匿名を条件に「マサ氏の勝利でアルゼンチン資産が売り込まれることはないだろう」との見方を示した。
一方、ファンドコープのロベルト・ゲレット氏は、企業の間で人気の高かった野党連合の中道右派ブルリッチ元治安相が決選投票に進めなかったことは悪材料だと指摘。過半数票を確保した候補はおらず、不透明感が続くと予想した。
22日に投開票されたアルゼンチン大統領選は、与党連合の中道左派マサ経済相と第三極候補で小さな政府を志向するリバタリアン(自由至上主義者)のミレイ下院議員が11月の決選投票に進む見通しとなった。
開票率約80%の段階でマサ氏の得票率は約36%、ミレイ氏の約30%を上回った。野党連合の中道右派パトリシア・ブルリッチ元治安相が23.7%。
過去20年で最悪の経済危機と富裕層の不満が高まる中で、ミレイ氏への注目が集まった。
22日の投票で当選を決めるには、45%以上の得票率獲得、もしくは、40%以上で2位候補に10ポイント以上の差をつけることが必要だった。
アルゼンチンの外貨建てソブリン債と有力企業の株価が23日急落した。前日行われた大統領選で、与党連合の中道左派セルヒオ・マサ経済相が予想外に躍進して首位に立つとともに、11月19日の決選投票にもつれ込むことになった結果が嫌気された。
決選投票にはマサ氏と、得票率2位だった小さな政府を志向するリバタリアン(自由至上主義者)のハビエル・ミレイ下院議員の2人が進むことが決まった。
KNGセキュリティーズの新興国市場ストラテジスト、ブルーノ・ジェナッリ氏は、投資家はミレイ氏が決選投票に行くとは想定していたが、マサ氏の強さが資産価格にマイナスの影響を及ぼしたと指摘。その理由として、市場重視の政策を掲げていた野党連合のパトリシア・ブルリッチ元治安相があおりを受けて選挙戦から脱落してしまった点を挙げた。
一方RBCブルーベイ・アセット・マネジメントの新興国市場ソブリン債ストラテジスト、グラハム・ストック氏は、決選投票でマサ氏とミレイ氏いずれが勝ってもその後の不確実性が高まると懸念を示した。マサ氏の政権になれば、与党連合内のどの勢力が主導権を握るのか読みづらくなるし、ミレイ氏は果たして過激な経済・社会政策をどこまで実現できるのかが分からないという。
マーケットアクセスのデータによると、23日午後のアルゼンチンの2035年償還債は0.023ドル下がって額面当たり0.237ドルとなり、他の外貨建て債も軒並み0.0165─0.0216ドル下落した。
アルゼンチン株では、石油のYPFが9%安と、1日の下落率としては1年ぶりの大きさを記録。銀行株は3.5─5.6%安になった。
●市況
<為替> 終盤のニューヨーク外為市場では、ドル指数が下落した。米債利回りの低下を受けた。市場では週内に発表される米経済指標が注目されている。
<債券> 米金融・債券市場では、10年国債利回りが低下した。ただ、一時5.0%を上回る場面もあった。
10年債利回りは午前の市場で再び5%を突破したが、その後4.83%まで低下した。19日には一時16年ぶりの高水準となる5.001%を付けていた。同利回りは5月中旬以来、160ベーシスポイント(bp)上昇している。
30年債利回りは9.8bp低下の4.98%。低下幅は5月中旬以来最大となった。
<株式> 米国株式市場は、米10年債利回りが一時5.0%を上回った後に低下する中、まちまちで取引を終えた。市場では週内に発表される一連の企業決算や主要経済指標も注目されている。
<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、パレスチナ情勢の緊迫化を背景とした買いが一服し、5営業日ぶりに反落した。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、パレスチナ情勢の緊張緩和への期待感を背景に下落した。
パレスチナ自治区ガザへの地上侵攻の準備を進めているとされるイスラエルは23日も、激しい空爆をガザに加えた。こうした状況下で、各国首脳らは緊張緩和に向けた取り組みを強化している。バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は22日に電話会談し、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの人道支援物資の搬入を継続することで一致。また日本を除く先進7カ国(G7)の6首脳は22日に電話会談し、紛争拡大阻止に向けて緊密な外交調整を続けることを確認した。一連の外交努力を眺めて石油供給混乱への懸念が後退し、この日は売りが優勢となった。
またロイターによると、米国が18日に対ベネズエラ制裁緩和を発表したことを背景に、資源商社トラフィグラはベネズエラから燃料油を輸出するための大型タンカーの手配に動いている。世界有数の産油国ベネズエラに対する制裁緩和により、需給が緩むとの期待も引き続き相場の押し下げ要因となっているもようだ。
<ロンドン株式市場> 続落して取引を終えた。比重の高い英製薬のアストラゼネカやコモディティー(商品)関連株が売られたのが相場の足を引っ張った
アストラゼネカ(AZN.L)は3.2%安。CMCマーケッツのチーフ市場アナリスト、マイケル・ヒューソン氏は投資家向けメモで「アストラゼネカはパスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)が退任するとの報道を『フェイク(偽)ニュース』だとして反撃しているにもかかわらず、足かせとなっている」と述べた。
<欧州株式市場> 続落して取引を終えた。国債利回りの上昇や、中東情勢への懸念が引き続き相場の重しとなった。
20日に2023年通期決算の利益率見通しを下方修正したドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)(VOWG_p.DE)は0.9%下落。
<ユーロ圏債券> ドイツ10年債利回りが小幅に低下した。世界的な債券売りの再開を背景に米10年債利回りが5%を超え16年ぶりの高水準を付けたが、その後低下に転じたことを受けた。
日経先物31095、ダウ先33128、債先144.60、米4.848、独2.8605、仏3.477、西3.963、伊4.838、英4.6625、波6.021、原油86.05、銅7,987、ドル円149.69、ユーロドル1.0669
※10/24 8時10分頃

備忘録(2023/10/20-22)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
銀行は、シンセティック(合成)証券化商品の一種であるクレジットリンク債(CLN)の販売を復活させている。金融危機以降、米国では比較的珍しくなっていた商品だが、自己資本をより多く保有することを義務付ける新たな規則を前に発行が増えている。
この債券は、銀行がバランスシート上のローンに対して保持しなければならない資本を減らするために活用される。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を組み込んだ証券化によって、銀行は住宅ローンや自動車ローンなどのローン債権についての信用リスクを投資家に移転することができる。投資家は、場合によって10%を超える利回りに引かれてこれを購入する。
銀行は銀行自己資本規制「バーゼル3」の最新条件の発表を待っている。新規則の下では、銀行は負債が増加した場合、損失をカバーするためより多くの資本を保持しなければならなくなる。このため、JPモルガン・チェースのアナリストは住宅ローン関連のCLN市場だけでも5年後には米国で約600億ドル(約9兆円)規模に成長するとみている。これは5900%の増加となる。
ヘッジファンド400キャピタル・マネジメントの創業者で最高投資責任者(CIO)のクリス・ヘンテマン氏は「金利の不安定や組成量、規制要件が強化されることが相まって、シンセティック取引はより理にかなっており、近い将来に大幅に増加すると予想される」と述べた。同社はこれまでに欧州のCLNを購入したという。
マグネター・キャピタルとアレス・マネジメントもCLNを購入しており、その利回りは担保の内容によって異なるが、1桁台後半から2桁台半ばだという。KKRとブラックストーンは積極的な買い手で、さらに購入する用意があると、事情に詳しい関係者が述べている。KKRとブラックストーンはコメントを控えた。
アレスのオルタナティブクレジット部門共同責任者、ジョエル・ホルシンガー氏は「当社が見たところでは、こうした資本救済の取引は10-12月(第4四半期)に増える一方だ」と述べ、金利の上昇とリスクウエートの引き上げは、銀行にとって難しい環境をつくり出していると指摘した。
「重要なリスク移転(SRT)」としても知られるCLNは金融危機後、米国では人気がなくなった。それでも銀行にとって理論的な選択肢であることに変わりはないが、米連邦準備制度理事会(FRB)は伝統的に、リスクを移転する債券とみなされるものについて保守的だった。
しかしFRBは先月、CLNを通じた資本救済の定義を広げた。JPモルガンのリポートによると、モルガン・スタンレーは先月、新しいガイダンスの下で新規発行の承認を得た。
●その他産業
●決算関連
米クレジットカード会社アメリカン・エキスプレス(アメックス)の7-9月(第3四半期)決算では、同社決済ネットワークでの支出額の伸びが予想を下回った。小規模事業者などがアメックスのカードでの支出を控えたことが背景にある。
アメックス決済ネットワークでの支出額は7%増の4202億ドル(約63兆円)と予想を下回った。ブルームバーグがまとめたデータによれば、ここ10四半期で最も低い伸び。商業顧客の支出額はわずか1%増にとどまった。  
スティーブ・スクエリ最高経営責任者(CEO)はアナリストとの電話会議で、小規模事業者について「過去2四半期は比較的低調となっているが、われわれは依然として非常に前向きだ」と述べた。
20日の米株式市場で、アメックス株は一時4.6%安となった。
過去数年間の大半において、アメックス決済ネットワークでの支出額は、新型コロナ禍後の旅行需要回復の恩恵を受けてきた。ただこのところは、支出額全体の伸びがコロナ禍後の高水準から鈍化してきている。
7-9月は支出額の伸びは鈍化したものの、収入と利益は過去最高に増加した。年会費の高いプレミアムカードで新規顧客の獲得が引き続き好調だった。
アメックスの発表によれば、7-9月の総収入は154億ドルと、前年同期の136億ドルから増加。アナリスト予想も上回った。カードの年会費の引き上げが寄与した。同社によれば、7-9月の新規入会分のうち70%余りが年会費の必要なカードだった。
アメックスはここ数年、プラチナカード(年会費695ドル)への投資を続けている。また7-9月にはゴールドカードの法人カードで特典を増やし、年会費をこれまでの295ドルから375ドルに引き上げると発表した。
純利益は30%増の24億5000万ドル。1株当たりで過去最高の3.30ドルとなった。ブルームバーグがまとめたアナリスト予想の平均は1株当たり2.95ドルだった。
クレジットカードのアメリカン・エキスプレス(アメックス)が20日発表した7〜9月期決算は主に富裕層向けの年会費の高いカードの需要が拡大し、増収増益となった。一方、ローン残高の増加で信用コストを大幅に積み増したことへの懸念で株価は大きく下落。家計の余剰貯蓄も底を突き始める中、個人消費の持続力への不安も高まっている。
アメックスの売上高は前年同期比13%増の153億8100万ドル(約2兆3000億円)、純利益は30%増の24億5100万ドルだった。同社のスティーブン・スクエリ最高経営責任者(CEO)は「カードの利用は好調だった。(年会費の高いカードなど)プレミアム商品に対する需要が高く、不安定な経済環境の影響は受けていない」と説明した。
アメックスは富裕層の顧客が多い。7〜9月期の新規顧客のうち70%以上が年会費のかかるカードを契約したという。30日以上の延滞率は3四半期連続で1.2%と、新型コロナウイルス流行前と比べても低水準を維持している。
一方、ローン残高の増加を受けて貸倒引当金と、融資が焦げ付いた時点で計上する償却費を合計した不良債権処理費用(信用コスト)は前年同期から58%増の12億3300万ドルとなった。同社のクリストフ・カイレック最高財務責任者(CFO)は「今後、延滞率や不良債権比率は時間とともに上昇すると予想している」と述べた。
投資家も信用コストの増加を不安視している。「信用コストの積み増しが投資家心理を冷やした。金利上昇が続く不安定な経済環境下で、誰もがデフォルト(債務不履行)の増加を懸念している」と米運用会社ナベリアのルイス・ナベリア最高投資責任者は分析する。20日の株価の終値は前日比5.4%安と大幅に下落した。
富裕層における消費は依然として底堅いものの、米家計全体を見ると消費力は徐々に弱含みになっている。ボストン連銀が19日に公表したリポートは「カードの借金残高や延滞率は増加傾向にあり、特に低所得者層で顕著だ。個人消費の低迷を示唆している」と指摘する。
米連邦準備理事会(FRB)が6日発表した8月の、クレジットカードなどの「リボルビング払い」ローン残高は前月から年率換算で13.9%増えた。金利高も重荷となる中カードによる借り入れは膨張し続けている。
粘り強いインフレ圧力や金利高に労働市場の軟化、学生ローンの支払い再開など様々な消費下押し要因が重なり、年末商戦時の11〜12月に小売売上高の伸びが縮小するとアーンスト・アンド・ヤング(EY)は予想する。堅調さを維持してきた米消費の先行きに、悲観的な見方が広がりつつある。
●先進国、グローバル、金融市場
アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏は20日、米金融当局者は入手する各データに過剰反応することで経済にブレーキをかけ過ぎる恐れがあると指摘。金利政策の先行きに関して長期的なビジョンを確立すべきだと考えを示した。
ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるエラリアン氏は「前方の道路がどうなっているか分からずに車を運転することはできない。バックミラーばかりをみて、カーブを曲がる度に調整しようとしてもダメだ」とブルームバーグテレビジョンのインタビューで指摘。「それでは政策運営の方法とは言えない。政策の影響が遅れて出てくる場合には、なおさらだ」と述べた。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は19日、ニューヨーク・エコノミック・クラブで行った講演で、次回10月31日-11月1日に開催する連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きに傾いていることを示唆したが、成長が再び加速した場合に備えて、追加利上げの選択肢も残した。
エラリアン氏はまた、インフレ率を目標の2%まで下げるために金融政策を過度に引き締めるリスクは現実にあり、経済安定のために米金融当局が年内いっぱい金利を据え置くことを望むと述べた。
「2%への回帰を急ぎ過ぎると、経済のどこかが壊れてしまう恐れがある」とした上で、「米金融当局者は行き過ぎたデータ依存から、より将来を見据えたデータ依存へと軌道修正する必要がある。今週そうなることを期待していたが、そうはならなかった」と語った。
前日の米国債市場では10年債利回りが上昇して節目の5%に接近した一方、パウエル議長の発言を受けて金融政策見通しに敏感な2年債利回りは低下した。
エラリアン氏は金融当局者の発言が不安定さを招く要因となっており、金融政策に関して語る上で適切なバランスを取ることが難しくなっているとも指摘。FOMC会合を控え、当局者が金融政策に関して発言を控える「ブラックアウト」に入るのは良いことだと述べた。
エコノミストらは2024年早期までの米経済成長見通しを引き上げ、リセッション(景気後退)の確率を1年ぶり低水準に引き下げた。消費者が支出を続けていることが背景にある。
7-9月(第3四半期)の米実質国内総生産(GDP)成長予想は年率3.5%と、約2年ぶりの高水準が見込まれている。家計支出の予想が上方修正された。その後の2四半期にわたって成長は減速するとみられているが、予想はなお引き上げられた。ブルームバーグが実施した最新の月間調査で明らかになった。
高い借り入れコストやインフレの重荷にもかかわらず、依然堅調な労働市場が引き続き家計支出を支えている。向こう1年間の雇用見通しが上方修正され、エコノミストらが今後1年のリセッション確率を五分五分とみる一因となっている。
INGフィナンシャル・マーケッツのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は「今夏の米経済動向は素晴らしかった」と指摘。「堅調な個人消費が主要な原動力となっており、インフレで購買力は引き続き損なわれているが、家計は貯蓄を取り崩したり、クレジットカードを利用したりして、生活スタイルを維持しようとしている」と述べた。
回答者らは食品とエネルギーを除いた個人消費支出(PCE)コア価格指数について、来年は平均2.6%上昇になると予想。前月時点の見通しと一致した。
米金融当局は利上げを終了したとエコノミストらはみていることが予想中央値では示唆されているが、来年の利下げペースは緩やかになるとも予想されている。強い経済データを背景に、金利がより長期にわたって高めの水準で維持される可能性が高いことや、最近の米長期債利回り急上昇で金融状況が引き締まっていることがその一因かもしれない。
日本銀行が今月の政策会合で超金融緩和政策を微調整し、利上げが近いことも示唆すれば、円は対ドルで1ドル=145円に上昇する可能性があると、RBCブルーベイ・アセット・マネジメントは予想した。
ブルーベイのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)は「長期金利の変動幅拡大を当社は想定している」と説明。日銀が10月31日の会合で長期金利の上限を1.25%に引き上げ、将来の利上げを示唆すれば、円は「145円に再び上昇する可能性がある」と付け加えた。
日銀がそうした行動に出れば、10年物の日本国債利回りは年末までに1-1.2%のレンジになると、同氏は続けた。
長年、日本国債に対して声高な弱気派であるブルーベイは、日銀が今月の行動に続いて、12月の会合でイールドカーブコントロール(YCC)政策を撤廃し、政策金利を0-0.1%に引き上げる可能性があるとみている。
「日本の政策当局者はインフレが自らの予想を大幅に上回っていることに驚き続けていると、当社では考えている」とダウディング氏は述べた。
英国の長期債が下落し、30年債利回りは1998年以来の高水準に達した。イングランド銀行(英中央銀行)は高めの金利を長期にわたり維持せざるを得なくなるとの見方が広がった。
英30年債利回りは一時7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して5.15%と、1年前にトラス前首相が財源のない大型減税計画を発表して以降の市場混乱期に付けた水準を上回った。
今回の上昇は昨年に比べて緩やかだが、不透明な経済見通しを背景に、投資家は国債により大きなプレミアムを求めている。
米国の30年債利回りも5.13%に上昇し、2007年以来の高水準
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は昨年、銀行が売却に苦慮していたいわゆる「ハングデット」を大幅なディスカウントで買い上げた。だが、足元では2桁のプレミアム水準でゆっくりと売却に動いている。
ピムコは昨年、アポロ・グローバル・マネジメントによるワールドライン決済端末部門買収の原資となった10億ユーロ(約1590億円)余りのローン債権を額面1ユーロあたり85セントで購入。これを小口ブロックで90セント台半ばから後半の価格で売却していると、内情を知る複数の関係者が明らかにした。
当局への届け出によると、ピムコはこれまで、少なくとも5500万ユーロ相当の同債権を売却している。
米金融規制当局は20日、大手銀行を対象とする抜本的な資本規制強化案に関する意見公募の期限を延長した。
米連邦準備制度理事会(FRB)と連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)は共同声明で、意見公募の期間を1月16日まで延長すると発表。従来の期限は11月30日だった。
FRBは、この提案によって影響を受ける銀行からデータを収集するとも明らかにした。この期限も1月16日。
イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は8月の賃金の伸びが引き続き堅調だったことを示す最近のデータを踏まえ、インフレ率を目標水準まで引き下げるには賃金の伸びがまだ大き過ぎるとの認識を示した。
同総裁はベルファスト・テレグラフ紙とのインタビューで、9月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比6.7%上昇し、8月と同じインフレ率だったとの18日の発表について、「驚かなかった」と述べた。
ただ、賃金の伸びがインフレ目標と合致する水準を「まだ大きく上回っている」としながらも、インフレ率は「下がり続ける」と予想。9月のインフレ率が市場予測より高かったものの、食料や燃料など変動の大きい項目を除いたコアインフレ鈍化の兆しは有望だと指摘した。
欧州連合(EU)は19日、ルクセンブルクで内相・法相理事会を開いた。相次ぐ襲撃事件を受け、加盟国は移民や難民申請者の審査を強化し、治安にリスクをもたらすと判断した場合は迅速に出身国に送還する必要性を強調した。
ベルギーで最近発生した銃撃事件やフランスの教師刺殺事件を受けて治安悪化に懸念が強まっており、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が社会不安をさらにあおっている。
EUのヨハンソン欧州委員(内務)は「EUがテロリストの脅威にさらされないよう図ることが絶対的に必要」と強調。「EUに治安上のリスクをもたらす人たちは現状よりかなり迅速に出身国に戻す必要がある」と述べた。
また、暴力的な反ユダヤ主義やイスラム恐怖症をなくす必要性も訴えた。
ベルギーの首都ブリュッセル中心部で16日にスウェーデン人2人が射殺された事件では、容疑者の45歳のチュニジア人の男が難民申請を却下された後も滞在を続けていたことが分かった。
ヨハンソン氏はこの事件について、EUの移民・難民制度に警鐘を鳴らすものだと強調した。
フランスではイスラム主義者とみられる男に教師が刺殺される事件があり、当局は男が危険人物である可能性が認識されていたが、現行の法律では国外追放できなかったと述べている。
アトランタ地区連銀のボスティック総裁は20日、インフレ率は依然として高すぎるが、景気減速の証拠が積み重なる中で鈍化してきており、来年後半には金融政策緩和への道が開かれる可能性があると述べた。
CNBCで「金融緩和を検討する前に2%にもっと近づかなければならない。インフレを抑えることが第一の仕事だ」と指摘。ただ「2024年後半」には金融緩和が議論の対象になるとした。
ボスティック総裁は今年のFOMCで投票権を持っていないが、来年には持つことになる。
ボスティック氏はまた、自身が得た情報では米経済はまだ勢いがあるものの、減速していることが示されていると言及。企業からは景気減速の到来を予期する声が聞こえており、自身が金融政策を巡る現行のスタンスや今後数カ月の展開を検討する上で、これらの声を考慮するとした。ただ、自身はリセッション(景気後退)を見込んでいないと語った。
全米自動車労働組合(UAW)による米国に拠点を構える3大自動車メーカー(ビッグ3)の時間給労働者のストライキが36日目を迎え、航空会社から自動車部品メーカーまで幅広い企業で経済的な影響が出始めている。UAWのストライキによる経済的損失は総額70億ドル超と推定されている。
アナリストはストライキが続けば経済的打撃はさらに広がると警告している。
ミシガン大学のエリック・ゴードン教授は「ストによる損失はUAWの組合員が職場に戻った後も長く続くだろう」と述べた。
米デルタ航空(DAL.N)は今月、ストライキによって事業が「著しく」抑制されたと発表し、打撃に警鐘を鳴らした最初の大企業の一つとなった。
塗料会社のPPGインダストリーズ(PPG.N)は今週、2023年第4・四半期の業績見通しに1株当たり「数セント」の利益減を織り込んだと発表した。
アナリストによるとトラックを使った運送会社や、ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)、フォード・モーター(F.N)、ステランティス(STLAM.MI)に供給している部品メーカーがストライキの影響を最も受ける企業に含まれている。
ストには3万4000人を超える労働者が参加している。
フランスの自動車部品メーカー、フォルビア(FRVIA.PA)は20日、ストによる10月の売り上げに対する影響額見通しを引き上げ、従業員のレイオフ(一時解雇)の可能性を警告した。
ハワイ・マウイ島で8月、住宅地に大きな被害を出した山火事で、建材や日用品の燃焼で発生した有害物質による汚染が復興を遅らせている。除染や廃棄物処理には半年から1年の期間と、10億ドル(1500億円)規模の費用が必要となる見通し。州政府には負担が重く、米連邦政府が支援に乗り出した。
スイスで22日、4年に1度の総選挙が実施される。事前の世論調査によると、第1党で移民抑制策を主張する右派の国民党(UDC)が議席を増やす見通しだ。
米財務省は20日、2023会計年度(22年10月〜23年9月)の財政収支の赤字が1兆6950億ドル(250兆円相当)になったと公表した。赤字額の国内総生産(GDP)比は6.3%と前年度の5.4%から悪化した。新型コロナウイルス禍以降の支出拡大で政府債務が拡大し、利払いが膨らんでいる。
シーク教徒の分離主義運動指導者がカナダで殺害された事件を巡り、カナダとインドの関係が悪化している問題に関連して、米英はインド政府へ20日、カナダに対してインド駐在の外交官の退去を求めないよう要請した。
シーク教徒の独立を支持する指導者ハーディープ・シン・ニジャール氏が6月、カナダ西部で殺害された。トルドー首相はインド政府の関与の可能性を指摘したが、インド政府は否定している。
カナダのジョリー外相は19日、翌日までに外交官の減員に応じなければ身分を保障しないとインドが通告したため、インドに駐在していた外交官41人を引き揚げさせたと説明していた。
西側諸国はニジャール氏死亡に関して、インドを公然と非難することに消極的だ。専門家によると米英も、アジアにおける中国の主要なライバルであるインドとの関係を壊したくないと考えている。にもかかわらず、今回の米国務省と英外務省の声明は、インド政府に対する最も直接的な批判となった。
英外務省の報道官は「多くのカナダ人外交官がインドを離れることになったインド政府の決定には同意できない」と述べた。
米国務省は「意見の相違を解決するには、現地に外交官が必要だ」とした上で、インドが「(外交官の地位と権利を守ることを定めた)ウィーン条約を守るよう望む」と述べた。
格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは20日、英国の格付け見通しを従来の「ネガティブ(弱含み)」から「安定的」に引き上げ、S&Pグローバル・レーティングは見通しを「安定的」に据え置いた。スナク首相にはかなり必要とされる追い風だ。
S&Pの格付けは「AA」と3番目に高く、ムーディーズは「Aa3」で4番目に高い。
ムーディーズは20日の声明で「政策の予測可能性が回復した」とし、S&Pは「複数の逆風にもかかわらず、底堅い経済実績」に言及した。
英国では春以降、財政見通しが悪化している。政府債務は対国内総生産(GDP)比で100%近くと、1960年代初頭以来の高水準にあるほか、2兆6000億ポンド(約474兆円)に上る債務の将来の返済コストが金利上昇を受け数百億ポンド上乗せされる方向にある。
米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、急ピッチの利上げ後に複数の銀行が破綻して以降、2度目となる金融安定報告(FSR)を公表。根強いインフレや米オフィス市場における巨額損失の可能性、一部銀行での資金調達圧力といったリスクに対する懸念を警告した。
今年起きた銀行破綻は、数週間に及ぶ銀行株の乱高下につながり、規制当局はシグネチャー・バンクとシリコンバレー銀行(SVB)の保険対象外の預金者を保護するという異例の措置を強いられた。
リポートでは、預金のフローはそれ以来、銀行セクター全般で安定したと説明。「しかし保険対象外の預金や他の要因を巡る懸念を反映し、一部の銀行は引き続き資金調達圧力に直面している」と続けた。
FRBが調査した市場・調査関係者や学識者からは、インフレ圧力が一段と景気抑制的な金融政策姿勢につながり、住宅・商業用不動産で多額の損失が生じる恐れがあるとの懸念が強まっていることが示唆された。調査参加者の中でこうした懸念を強調した割合は約75%と、5月時点の5割から上昇した。
報告書は世界の経済活動へのリスクにも言及した。イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの紛争やロシアのウクライナ侵攻に起因する食料やエネルギー、他の商品における地域貿易の持続的混乱などだ。中国の経済成長が鈍化する可能性への懸念も浮き彫りにした。
米連邦準備理事会(FRB)が20日公表した半年に1度の金融安定報告書は、インフレによる金利の高止まりと、商業用不動産市場で損失が生じる可能性などを最大の懸念要因として指摘した。
FRBによる調査に答えた市中銀行の4分の3が、これら2つの問題を短期的に重要なリスクに上げた。春に地銀など3行が破綻したのを受け、銀行の安定性に関する懸念も約半数の銀行が指摘した。この割合は5月の報告書とほぼ同じ。
中国経済の弱さを最大のリスクに上げた割合は44%と、5月の12%から増えた。1年前に最大の懸念だったロシアとウクライナの戦争は、11番目に心配な問題に順位を下げた。
調査はイスラエルとパレスチナの紛争が勃発する前の10月初めに締め切られた。
歴史的な高値圏にある株式や不動産などの資産価格も、金融システムの弱点として指摘。特に商業用不動産は、オフィスの空室率が高くて価格が下落しているにもかかわらず、相変わらず割高感があるとしている。
レバレッジの比率は全般に高いため、仮に経済が予想外に減速すれば一部企業を圧迫したり、倒産に追いやる可能性もあるとした。オフィス用不動産価格の調整と小幅なリセッションが重なる場合には、多額の不動産投資を行っている「幅広い金融機関が多額の損失を出す恐れがある」と予想している。
銀行システム全体は健全だが、一部の銀行は金利の急上昇に伴い一部の資産価値が大幅下落し、苦闘していると指摘した。
全般に銀行の流動性水準は高く、春に比べて預金の流出やボラティリティは収まったと評価。ただ、一部の銀行は預金者離れなどの重圧に直面しているとした。
住宅価格は5月からさらに上昇したが、2007─09年のサブプライムローン危機前に比べると、貸し出し態度は「大幅にタイト」だとしている。
クリーブランド連銀のメスター総裁は20日、米金融当局による積極的な利上げは終わりに近づいていると述べつつ、経済の動向次第では年内にあと1回金利を引き上げることがなお望ましいとの考えを示唆した。
メスター総裁はマンハッタン研究所主催のイベントで「次回会合でどのような決定が下されても、経済が想定通りに推移すれば、フェデラルファンド(FF)金利を据え置く地点に達しているか、それに近い可能性が高いというのが個人的な意見だ」と語った。
メスター総裁はインフレ予測に対するリスクは依然として上振れ方向にあると指摘。9月に公表した当局者の見通しは、経済と見通しに関する自身の予想と「一致している」と述べた。同氏は今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持たない。
また自身の予想では金利はピーク圏内にあり、「その後は当面据え置くことができる」と述べた。
足元の米長期債の利回り上昇を巡っては、持続すれば金融政策決定に影響を与える可能性があるとの考えを改めて表明。金利上昇は成長が加速するとの予想や高金利の長期化観測、投資家が求める見返りが高まっていることを反映している可能性があるとの考えを示した。
メスター氏は今月に入り、11月利上げの可能性を支持する発言を行ったが、この日は明確な支持を示さなかった。
日銀内でイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の再修正論が浮上していると、日本経済新聞が22日付朝刊で報じた。
米長期金利の上昇に伴い、国内の長期金利も上昇していることから、7月の金融政策決定会合で修正を決めた事実上の上限1%に近づいていることを理由に挙げている。今月末の決定会合で議論する見通しとしているが、賃上げ動向を見極めたいとの慎重論もあるという。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は19日の講演で、連邦公開市場委員会(FOMC)は政策の道筋を検討する上で慎重に進んでいると指摘。その上で、強靱(きょうじん)な経済成長の兆候がさらに見られた場合には追加利上げに動く用意があると説明した。
少し気が早いと思われるかもしれないが、そろそろ来年の相場見通しを検討し始める時期になってきた。円は2021年に主要通貨の中で最弱通貨となり、22年はぎりぎりでスウェーデン・クローナの方が若干弱かったが、主要通貨の中で2番目に弱い通貨となった。
今年は今のところ2番目に弱いニュージーランド・ドルに対しても5%以上下落している「ダントツ最弱通貨」となっているため、このまま行けば円は3年連続で最弱通貨の一つとなる可能性が高まっている。
来年も円は弱い通貨となるとみている。日銀は2024年に長短金利操作(イールドカーブコントロール、YCC)を解除し、マイナス金利を脱出するであろうが、その程度の動きで、円相場のトレンドが上昇に転じるようなことはないだろう。
円のファンダメンタルズの弱さは根が深い。日本のインフレ率は来年も3%台を上回る水準を維持する可能性は高いだろう。そうした状況下では、たとえ日銀が政策金利をマイナスからゼロに変えたところで、実質金利が大幅マイナスな状況は変わりない。
来年は新少額投資非課税制度(NISA)が始まることもあって、日本国民の投資熱は高まるだろう。依然として1100兆円もの円建て現金・預金を抱える日本の家計が、実質的には価値が目減りしていく円建て現金・預金を嫌気して外貨建て資産投資を膨らませる可能性は低くはないだろう。
円には、その他にも歴史的な悪化トレンドをたどる貿易・サービス収支の赤字や、大きな名目短期金利差という弱点も残る。
円は構造的に弱くなってしまっており「3年連続最弱通貨の一つとなったから、来年は強くなるだろう」といった循環的な動きに期待することが難しくなっている。円はとっくに売られ過ぎの水準となっており、むしろここまで弱くなっても反転の兆しが無い理由に着目すべきだろう。
もう一つ注目されるのは、ドルの強さが続くかどうかだ。21年のドルは加ドルについで2番目に強く、22年は最強通貨だった。そして今年は今のところスイス・フラン、英ポンドに次いで3番目に強い。22年以降の3年弱でみると、主要通貨の中では最強通貨となっている。
一時は24年末までに2%ポイントも利下げを織り込んでいた市場は、今では0.6%ポイント程度の利下げしか織り込んでいない。それでも利下げを織り込んでいるということは、仮に来年の利下げは無しとマーケットが織り込むようになった場合は、ドル/円相場をさらに押し上げる可能性が出てくることになる。
また、FRBの金融政策から離れても、ドルの強さは要注意だろう。通常、ドルはFRBの利上げ期待の高まりが落ち着くと売られる傾向が強い通貨だ。それが今回は、利上げ期待が止まっても引き続き強い通貨でいる。
ドルと円以外で24年に気になるのはスイス・フランだ。スイス・フランは22年にドルに次いで2番目に強く、今年は今のところ主要通貨の中で最強通貨だ。
全米自動車労働組合(UAW)のショーン・フェイン委員長は20日、米3大自動車メーカー(ビッグ3)全てが23%賃上げ提案で足並みをそろえたことを明らかにしたが、一段の待遇改善を求めさらなるストライキに踏み切る構えを見せた。
フェイン委員長は、過去24時間に米ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)とクライスラーの親会社ステランティス(STLAM.MI)から新たな提案を受けたとしながらも、「これらの極めて収益性の高い企業にはもっと与えるものがある」と述べた。フォード(F.N)は2週間以上前に同様の提案を行っていた。
ただ、組合員の中には、会社側の提案を巡り投票を希望する者がいることも認めた。
GMとフォードの株価はともに約1%上昇した。
格付け会社フィッチ・レーティングスによると、サブプライム層(信用力の低い借り手)向け自動車ローンの延滞率(60日以上)は9月に6.11%となり、データがさかのぼれる1994年以降で最も高い水準となった。前回高水準をつけていたのは1月の5.93%で、4月にはいったん低下していた。しかし、税還付が底をつき、雇用市場の軟化やインフレ高止まりといった逆風も吹く中で、自動車ローンの延滞が増えている。
背景には、自動車価格の値上がりと借り入れコストの上昇がある。米金融当局は長期にわたって高金利を維持する方針を示唆しており、とりわけ数百万人に上る最近の学生ローン返済再開を踏まえれば、自動車ローンの延滞増加は今後も続く可能性が高い。
フィッチの資産担保証券(ABS)グループのシニアディレクター、マーガレット・ロウ氏は、「サブプライムローンの借り手は厳しい状況に置かれている」と指摘。「この層ではマクロ経済の逆風による悪影響が最初に表れることが多い」と述べた。
ヘッジファンドが米国債市場での価格差を利用する取引戦略が、市場規制当局の頭痛の種になっている。ベーシストレードと呼ばれるこの取引について、支持者は米国債の需要源として不可欠な市場の潤滑油だと言う。しかし同取引は多額の借り入れを伴うことが多いため、予期せぬ事態が市場のボラティリティーを引き起こし、ファンドが一斉に保有資産を売却せざるを得なくなった場合、暴発する可能性がある。
米規制当局は既存の銀行監督権限を使って、このリスクを抑制したりベーシストレードをもうかりにくくしたりする方法を探っている。
1. ベーシストレードの仕組み
ベーシストレードは、米国債とその米国債に連動する先物との価格差に着目する。年金基金や保険会社などの機関投資家による大量の先物購入で、債券先物の価格は原資産である現物債の価格を上回ることがある。こうした投資家は、購入の際に現物債よりも先物を好むことが多い。現金コスト負担が比較的軽いためだ。
この価格差利用で、ヘッジファンドは米国債先物を売り、同時に米国債現物を買う。一方の市場で安い債券を買い、もう一方の先物市場で高い債券を売ることで、債券価格の上昇・下落にかかわらず、わずかな価格差から利益を得ることができる。
2. 規制当局はなぜ懸念するのか
このような価格差から得られる利益は非常に小さいため、この取引を行うヘッジファンドなど投資家は通常、多額の資金を借り入れて賭けを大きくする。銀行やマネー・マーケット・ファンドなどが資金を短期間貸し付ける、いわゆるレポ市場で借り入れるわけだ。ヘッジファンドは保有する米国債を担保として差し入れ、通常は借入金を毎日ロールオーバーしなければならない。
この戦略を危険なものにしているのは、高いレバレッジ(投資資金1ドルに対して50ドルもの借り入れ)と短期借り入れへの依存度の高さだ。例えば、レポ市場の資金調達コストが突然上昇した場合(銀行システムに十分な現金が行き渡らない場合に起こり得る)、この取引はもはや実行不可能となる。米国債市場のボラティリティーも取引コストを上昇させ、収益性を損なう。
こうした状況が起きると、ヘッジファンドは借入金を返済するためポジションを急速に解消しなければならなくなり、ボラティリティーがさらに高まる。このような価格変動は流動性の枯渇を招き、つまり買い手探しを困難とし、米国債相場を暴落させる恐れがある。
米国債はリスクフリー資産と見なされ、信用市場の根幹を成すものであるため、米連邦準備制度はこの取引が市場の正常な機能を損なった場合、大規模な介入を行わざるを得ないことがある。
3. ベーシストレードが暴発した事例は
新型コロナウイルスの大流行が始まったころ市場のボラティリティーは急上昇したため、米国債先物のマージンコールが発生し、レポ市場の資金調達ストレスが大幅に高まった。同時に外国の中央銀行は自国通貨を支える取り組みの一環として、ドルを調達するため保有する米国債を投げ売りした。その結果、現物債価格が先物を下回るという、ベーシストレードの前提条件とは逆の状態となり、ヘッジファンドに大損失をもたらした。
ベーシストレードが市場の混乱にどの程度寄与したかはまだ不明だが、ポジションの急速な解消がボラティリティーを増幅させたという点では、大方の意見が一致している。米連邦準備制度は市場を円滑に機能させるために何兆ドルもの米国債を購入し、レポ市場に緊急資金を供給、米国債市場は最終的に正常化した。
4. 2020年以降、ベーシストレードはどうなったのか
いったん下火になったが、23年の初めごろから復活し始めた。それを示す一つの指標として、先物市場のショートポジションが増加する一方、レポ市場での借り入れが急増したことが挙げられる。
ベーシストレード復活には少なくとも二つの原因がある。 需要サイドでは、米金融当局がわずか1年半で11回も利上げしたため、指標となる10年物米国債の利回りが07年以来の高水準となる約5%まで上昇し、先物市場で米国債を購入する大口機関投資家が増えた。供給面では、米財務省が膨張する政府赤字を賄うために国債発行を増やし、現物債に値下がり圧力をかけている。こうした力学が債券の先物価格と現物価格のギャップを広げ、ベーシストレードを助長している。
5. 規制当局の対応は
ベーシストレードはそのレバレッジリスクと不透明性から、監督当局に長期にわたって不安感を与えてきた。同取引は通常、当事者間で行われ、中央清算機関を介さない。また、ヘッジファンドは銀行に比べ規制が緩やかだ。
今年に入り、米連邦準備制度やイングランド銀行(英中銀)、中銀のための銀行である国際決済銀行(BIS)などが同取引について、より厳しく監視する必要があると警告している。米証券取引委員会(SEC)はヘッジファンドの米国債取引をより追跡しやすくするため、中央清算機関を通した取引を増やそうとしている。SECは5月、プライベートファンド(私募ファンド)に対し、大きな損失や急激な証拠金の増加、その他の重大な変化を報告するよう求める規則を最終決定した。この規則は6月に施行される。
スイスで22日、4年に1回の総選挙の投開票が実施された。小選挙区の全州議会(上院、定数46議席)と比例代表制の国民議会(下院、同200議席)が対象。移民抑制策などが支持を得て、右派で第1党の国民党(UDC)がさらに議席を伸ばした。
現地メディアのスイスインフォによるとUDCの得票率は28.9%と直前の世論調査の支持率(28.1%)を上回り、下院における議席数は前回の2019年選挙から8議席伸ばして61議席となる見通しだ。中道左派の社会民主党(PS)も選挙前と同じく支持率2位を維持し、2議席増の41議席を確保するとみられる。
UDCは移民の急速な流入によって国内の人口が増えすぎているとして、受け入れ上限の厳格化や不法滞在者の迅速な国外追放などを主張している。UDCの勝利により「新議会は右寄り」(スイスインフォ)に傾く見通しだ。
前回の2019年選挙で気候変動への懸念の受け皿となった環境政党は失速した。環境政党の一つである緑の党は下院で7議席を失い、21議席となる見通しだ
●中国・アジア・ロシア・東欧
調査会社クレジットサイツは中国の不動産開発会社が発行した1750億ドルのドル建て債券のうち、1245億ドル相当の債券がデフォルト(債務不履行)になっているとの見方を示した。
碧桂園(カントリー・ガーデン)(2007.HK)のドル建て債がクロスデフォルト条項により全てデフォルトになったとみなした。
ディールロジックのデータによると、10月分を含めて605億ドル相当の不動産開発会社の債券が6カ月以内に償還期限を迎える。このうち少なくとも3分の1がオフショア債券という。
ANZ銀行(中国)のアナリスト、クレジットアナリスト、ティン・メン氏は「債務不履行に陥っていない不動産開発会社も見通しは暗いままだ。販売件数が低調で好転が見られない」と述べた。
S&Pグローバル・レーティングスのアナリスト、リッキー・ツァン氏は、住宅販売からのキャッシュフロー低迷とは別に、開発業者の資金調達は民間企業を中心に依然として厳しいと指摘した。資金調達を最も必要としている開発業者は、債権の担保にするための適格資産の確保に苦しんでいると述べた。
中国金融規制当局は20日、国内銀行の不良債権比率が9月第3・四半期末時点で1.65%だったと発表した。
国家金融監督管理総局(NFRA)の当局者は記者会見で、不良債権残高は4兆元(約5467億2000万ドル)で、年初から1832億元増加したと述べた。
商業銀行の自己資本比率は14.66%だった。
規制当局は中小銀行の改革を着実に推進し、金融リスクの軽減を図ると述べた。また不動産市場の健全かつ安定的な発展を促進し、開発業者の合理的な資金需要に応えていくとした。
銀行が1─9月に組成した不動産開発ローンは2兆4000億元で、返済期限を延長したローンの残高は第3・四半期末時点で前年同期比183%増加した。
中国政府は、広域経済圏構想「一帯一路」に参加する国々の債務の持続可能性を評価する枠組みを改定した。債務国の経済成長の評価基準を厳格化し、国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際開発金融機関の「努力を歓迎する」という前向きな評価を削除した。
改定された枠組みは、今週開かれた「一帯一路」フォーラム後に発表された。中国の金融機関と他の「一帯一路」参加国の金融機関がマクロ経済予測を立てる際に「奨励する」期間を10年に半減する。これにより、成長リスクを評価する際に一段と慎重なアプローチが可能となる。
また、枠組みの適用資格を「BRI(一帯一路)低所得国」だけでなく「BRI市場アクセス国」に拡大した。これにより、スリランカのような「中所得国」が対象に含まれる。
世界最大の2国間債権国である中国は、国際開発金融機関が中国による債務救済を期待する場合、債務再編を求める国について債務持続可能性分析を共有することを求めてきた。
世銀のデータによれば、中国の低・中所得国への融資額は2020年末時点で1700億ドル相当となっている。
一方、従来は入れていた「低所得国の債務の持続可能性を改善するためのIMFや世銀、その他の国際機関の努力を歓迎する」の文言を削除した。
オーストラリア政府は、拠点港湾であるダーウィン港の中国企業へのリースについて、安全保障上の観点から精査した結果「リース契約の改定・取り消しの必要はない」と判断したことを明らかにした。
ダーウィン港を巡っては、北部準州当局が2015年、中国の嵐橋集団(ランドブリッジ)と99年間の長期リース契約を締結。リース料は総額5億0600万豪ドル(約3億9000万米ドル)に上る。ランドブリッジは同港で商業埠頭やクルーズ船ターミナルを運営している。
豪政府は21年、外国による投資に対する審査を強化し、ランドブリッジとのリース契約について調査を開始。22年の選挙で勝利したアルバニージー首相の労働党政権は2度目の見直し作業を行っていた。
首相府は調査の結果として「国民は、海外からの投資先として競争力を維持する一方で、安全が損なわれることはないという確信を持つことができる」とした。港周辺の警備態勢への監視は継続するともした。
アルバニージー首相は来週、米国を訪問する予定。年内には訪中も見込まれている。
国際通貨基金(IMF)のスリランカ担当シニアミッションチーフ、ピーター・ブロイヤー氏は20日、同国に対し強固な予算と財政赤字縮小を求めていると述べた。
スリランカは昨年、外貨準備高が記録的な水準まで落ち込み、過去70年間で最悪の金融危機に陥ったが、今年3月にIMFが29億ドルの支援を承認して以降、経済の一部安定化やインフレ率低下、外貨準備高の回復が見られている。
しかし、歳入拡大に苦戦しており、IMFは今年の歳入が15%不足すると予測している。支援プログラムの最初の審査を通過するには来年の状況改善が必要となる。
スリランカは19日、約3億3000万ドルの第2回分支援でIMFと事務レベルの合意に達したが、実行にはIMF理事会などの承認が必要。
ブロイヤー氏は歳入について、来年に不足を生じさせず、国内総生産(GDP)の12%を超える水準を確保することが目標だと指摘。
この目標を達成できる強固な予算を求めているとし、スリランカが財政赤字を縮小して再び債権者を見つけることができるようにするのが狙いだとワシントンからオンラインの記者会見で語った。
インド準備銀行(中央銀行)は19日公表した10月の月報で、同国では物価上昇が鈍化する中、経済成長の勢いが向こう数カ月にかけて高まり、マクロ経済の基礎的条件は改善するとの見通しを示した。
月報は、年度末に成長が加速すると予想し、特に祝祭絡みの支出による押し上げ効果が期待されると分析した。10月は野菜価格の調整が一段と進んで消費者の可処分所得を高める可能性があるという。
9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.02%上昇し、伸びは3カ月ぶりの低水準となったが、依然として中銀目標の中央値である4%を上回っている。
通貨ルピーは変動が小幅にとどまっており、高い米国債利回りやドル高にもかかわらず相対的に秩序を保った動きになっていると説明。インドの債券利回りについては、JPモルガンの新興国市場債券指数に組み入れられたことや政府の信頼される借り入れ方針、慎重な債務・流動性管理によって極めて安定的に推移していると評価した。
米国防総省は19日に公表した中国の軍事動向に関するリポートで、同国が保有する運用可能な核弾頭の数が今年5月時点で500発超に上っていると指摘し、2030年には1000発超に達するとの見通しを示した。
中国の核弾頭数は増加しているが、まだロシアや米国の保有数を大きく下回っている。米国は核弾頭の保有数が約3700発で、うち1419発の戦略核を配備済み。米国科学者連盟(FAS)によると、ロシアは保有数が4489発、うち約1550発が配備済みだ。
前回のリポートによると中国は2021年に運用可能な核弾頭の数が400発超だった。
米高官は記者会見で「中国は極めて急速に近代化や多様化を図り、核戦力を拡大し続けているとみている。同国の現在の取り組みは規模や複雑さが10年ほど前の水準を大幅に上回っている」と述べた。
中国はタリバン政権との関係強化に動いており、先月、駐カブール大使を任命した最初の国となった。
アフガニスタンには豊富な鉱物資源があり、中国への輸出が可能。既に複数の中国企業が同国で事業を展開している。Azizi氏は「世界各国に投資している中国は、アフガニスタンにも投資すべきだ。リチウム、銅、鉄など中国が必要とするものは全てそろっている。今まで以上に投資準備が整っている」と説明した。
中国当局が公務員や国有企業職員の私的な海外旅行を制限している。海外との個人的なつながりについても調査を進めており、専門家は外部との接触を遮断する狙いがあるのではないかと指摘している。
現役の職員や元職員10人がロイターに語ったところによると、職場での規制は2021年以降拡大しており、海外旅行の禁止、海外旅行の頻度・期間の制限強化、承認手続きの厳格化といった措置が導入されている。
新型コロナウイルス規制とは無関係で、中国が1月に国境を再開した後も海外旅行に対する監視は強まっているという。
中国国家社会保障基金など8つの政府系機関が過去2年間に公表した通知8件でも、詳細は明記していないものの、職員の私的な海外旅行に対する規制が強化された。
中央・地方政府も職員やその家族の海外とのつながりについて情報収集を進めている。
こうした動きについて、専門家2人は、西側諸国との関係が緊張する中、習近平国家主席が国家安全保障を重視していると指摘。中国ではこのほど、スパイ行為を取り締まる改正「反スパイ法」が施行され、スパイ行為の摘発対象が拡大された。
米アジア・ソサエティー政策研究所の中国分析センターで中国政治担当フェローを務めるニール・トマス氏は「中国政府は西側諸国によるスパイの脅威に対する疑念を強めている」と指摘。政治的なイデオロギーも一因で、習氏は西側諸国から新たな考え方を学ぶよりも内向き志向を強めているとの認識を示した。
中国政府はコメントを控えている。
<一般職員も対象に>
中国では以前から、機密情報にアクセスできる政府高官や国家幹部の私的な海外旅行を制限してきたが、ロイターの調査によると、足元では一般公務員や国有企業の一般職員にもこうした規制が適用されつつある。15年の最新データによると、公務員は700万人。国有企業の職員は7000万人にのぼる。
中国建設銀行の北京と上海の一般職員は、私的な海外旅行が年1回しか認められておらず、旅行期間も12日間に制限されていると語った。20年近く勤務する職員2人によると、今年初めに休暇を申請した際、過去に例がないほど厳しい制約を受けたという。
浙江省の教員や上海地区の規制に詳しい人物によると、一部の公立学校でも教師の海外旅行が新たに制限された。
現地の職員によると、政策銀行である中国開発銀行の大規模支店では今年、海外旅行が禁止された。政府系の投資信託会社の職員も、新規採用のための香港・シンガポール出張が制限されたと語った。
浙江省寧波市の一部地区が9月に出した通達や、中国国家社会保障基金が今年出した通達でも、職員の私的な海外旅行について申請の審査を厳格化すると明記されている。
同省の温州市では昨年9月、市の生態環境局が職員の海外旅行を年1回、期間を1カ月以内に制限する規則改正を公式サイトに掲載した。
中国国営テレビの元キャスターで、日本で独立系メディアを運営する王志安氏は、職員が海外事情を知ることを当局が懸念しているのではないかと指摘。
「海外に旅行すれば、職員の考え方や意識に微妙な変化が生じ得る。共産党の管理体制に疑問を持ち、なぜこのような体制なのかと考え始める可能性がある」と述べた。
<海外との接触を調査>
中国当局は、職員個人の海外とのつながりも調査している。
国有企業などの関係者によると、昨年後半以降、「外国籍の親族やや海外に永住権を持つ親族がいるか」「海外から支援を受けているか」「海外での経験があるか」といった質問状が、中国共産主義青年団、中国人民政治協商会議、地方政府、雇用主から届いている。こうした質問状を受け取ったのは初めてという。
中国国家安全省は8月、米中央情報局(CIA)のためにスパイ活動を行った容疑で中国籍の人物をイタリアで摘発したと表明。対話アプリ「微信(ウィーチャット)」に公式アカウントを開設し、中国人が海外でスパイの勧誘を受ける可能性があると警告している。
CIAはコメントを控えている。
トマス氏は海外旅行を規制すれば、中国と外部の接触に影響が出ると指摘。「政府系職員が海外に行かなくなれば、海外政府から貴重なことを学べなくなり、海外の社会に疎くなる。中国が世界でどのように受け止められているか理解しにくくなる」と述べた。
●中東
●中南米・アフリカ
アルゼンチン政府は19日、外国為替市場で通貨ペソ買いの介入を行った。大統領選(訂正)を22日に控え、ペソ相場のボラティリティを抑えることが狙いで、高官は選挙後にペソを急速に切り下げる可能性はないと話した。
非公式取引の業者によると、ドルはペソに対して公定価格の約3倍で取引されている。政府が違法取引の取り締まりを実施しているため商いは閑散で、1ドル=900―1010ペソの注文(ビッド)が入っているものの、売買は成立していないという。
アルゼンチンでは2019年以降、厳格な資本規制を受けて多くの人が違法な闇市場や非公式な場でドルを買おうとしている。今年8月から1ドル=350ペソに固定している政府にとって頭の痛い問題だ。
22日の大統領選(訂正)は、資本規制の撤廃を公約に掲げる有力候補2人が票を争う構図。ペソの対ドル相場は8月に1営業日で20%近く下がっており、多くのアナリストやトレーダーの間では、再び急激な切り下げがあるかどうかを巡って思惑が交錯している。
だが、政府は切り下げ観測の打ち消しに動いた。ガブリエル・ルビンスタイン経済政策事務官が「10月23日の公定相場は(依然)1ドル=350ペソだろう」とX(旧ツイッター)に投稿。急激なペソ切り下げは、3桁のインフレと外貨準備高のマイナスと闘うこの国の助けにならないと付け加えた。さらに11月15日からペソを毎月3%切り下げる「クローリング・ペッグ」を導入すると述べた。
●市況
<ロンドン株式市場> 続落して取引を終えた。中東紛争の激化や一段の金融引き締めへの警戒感を背景に、金融株や鉱業株が売られた。
金融大手HSBC(HSBA.L)、保険大手プルーデンシャル(PRU.L)はそれぞれ3.9%、3.4%下落した。
<欧州株式市場> 続落して取引を終えた。中東情勢悪化への懸念や欧米の国債利回りの上昇を背景に、投資家がリスク回避の姿勢を強めた。一部企業の決算内容がさえなかったことも売りを後押しした。
フランス化粧品大手ロレアル(OREP.PA)は1.5%安。アジアのトラベルリテール事業が予想より打撃を受けたことが重しとなった。
<ユーロ圏債券> ドイツ10年債利回りが低下したものの、週間での上昇幅は7月上旬以降で最大となる見込みとなった。各国中央銀行が高金利を長期間維持するとの見方が背景。
ドイツ連邦統計庁が20日に発表した9月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比で14.7%下落した。1949年の統計開始以降で最大の下落率を記録、インフレが一段と緩和するとの期待が高まった。
<為替> ドルが一時、日本当局による「介入ライン」として意識される150円台に乗せた。ただその後は押し戻された。
CIBCキャピタル・マーケッツのG10通貨戦略責任者ジェレミー・ストレッチ氏は、市場が1ドル=150円を超える水準について「明らかに不確実性の潜在的な前兆であると強く意識している」と述べた。
CMEのフェド・ウォッチによると、金融市場が見込む12月の米利上げ確率は24%、11月連邦公開市場委員会(FOMC)では据え置きになるという予想が優勢。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が19日の講演で政策決定は「慎重に進める」と発言したことに反応している。FRB議長の講演前は、12月の利上げ予想は39%だった。利下げ開始時期については6月が見込まれている。
<債券> 国債利回りが低下した。中東情勢の悪化が懸念される中、投資家が安全資産を求めた。
指標となる10年債利回りは5.7ベーシスポイント(bp)低下し4.9307%。前日には一時、2007年7月以来初めて5%を超え、5.001%を付けた。
<株式> 主要株価指数が大幅安で取引を終えた。追加利上げやイスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争拡大が懸念され、週間でも大幅な値下がりを記録した。
S&P総合500種(.SPX)とナスダック総合(.IXIC)がそれぞれ1%超下落。S&P主要11セクターは情報技術(.SPLRCT)と金融(.SPYS)の下げが目立った。
アラン・B・ランクス・アンド・アソシエイツのアラン・ランクス社長は「地政学的な要因に加え、週末ということもあり、投資家は慎重になる」と述べた。
金融(.SPSY)が1.6%安。KBW地銀指数(.KRX)は3.5%下落した。リージョンズ(RF.N)は利益がアナリストの平均予想を下回ったため12.4%下げた。
太陽光インバーター製造のソーラーエッジ(SEDG.O)は27.3%安。第4・四半期決算の大幅減収を警告したことを受けた。
投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)(.VIX)は3月24日以来の高値を付けた。
米クレジットカード大手アメリカン・エキスプレス(アメックス)(AXP.N)が20日発表した2023年第3・四半期決算は1株当たりの利益が3.30ドルと、前年同期の2.47ドルを上回ったが、株価は5.4%安となった
<金先物> パレスチナ情勢の一段の緊迫化への懸念を背景に安全資産として買われ、4営業日続伸した。中心限月12月物の清算値(終値に相当)は、前日比13.90ドル(0.70%)高の1オンス=1994.40ドルと、7月末以来約2カ月半ぶりの高値水準を付けた。金は週間では2.72%高となった。
<米原油先物> 上げ一服感による利益確定などの売りが優勢となり、4日ぶりに反落した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日比0.62ドル(0.69%)安の1バレル=88.75ドル。12月物は前日比0.29ドル安の88.08ドルだった。
日経先物30990、ダウ先33258、債先144.64、米4.914、独2.8915、仏3.524、西4.008、伊4.924、英4.6980、波5.950、原油88.29、銅7,944、ドル円149.85、ユーロドル1.0593
※10/20 NY引け値

備忘録(2023/10/19)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
アメリカン航空など米航空大手3社の2023年7〜9月期決算が19日出そろった。夏場の旺盛な旅行需要がけん引し、アメリカン、デルタ航空、ユナイテッド航空の3社全社が増収を確保した。ただパイロット不足が続いているほか、足元では中東情勢の悪化を受けて燃料費も高騰しつつあり、業績拡大に急ブレーキがかかる懸念が強まっている。
アメリカンが同日発表した23年7〜9月期決算は、売上高が前年同期比0.1%増の134億8200万ドル(約2兆220億円)だった。新型コロナウイルス禍の収束を見越して前期に路線を大幅に増やしたため、伸び率は小幅にとどまったが、新型コロナの感染拡大以前の19年7〜9月期を約13%上回った。
北米と欧州を結ぶ大西洋路線とアジア中心の太平洋路線が引き続き堅調だった。
ユナイテッドとデルタも国際線がけん引し、7〜9月期はともに1割超の増収を達成した。旅客収入は2社とも14%増と大幅に伸びた。
ユナイテッドはアジア太平洋地域への旅行需要が高いとして、10月から米国とアジアをつなぐ新路線を設ける。デルタも8月、米ハワイ州ホノルルと羽田空港を結ぶ直行便を新設すると明らかにした。
採算面をめぐっては、デルタとユナイテッドがそれぞれ6割、2割の大幅増益となったが、アメリカンは5億4500万ドルの赤字(前年同期は4億8300万ドルの黒字)に転落した。8月にパイロットと契約を結び直し、人件費が17.4%増えたことが響いた。夏場以降はジェット燃料の価格も急騰しており、全体の運営コストは9.4%増えた。
レジャー需要やビジネス利用の復活で増収基調が続く3社だが、今後については競争激化を警戒する声が増えている。
すでに7〜9月期も兆候があらわれている。1座席を1マイル(約1.6キロメートル)輸送して得られる「有効座席マイルあたり収入」(TRASM)は3〜6%減った。主要路線を中心に航空チケットの価格上昇が一服し、客単価が下がったためだ。
最も客単価の下げ幅が大きかったのはアメリカンで、全体の利益率悪化の一因になった。
パレスチナ自治区ガザをめぐるイスラム組織ハマスとイスラエルの対立も深刻さを増す。ユナイテッドは23年10〜12月期について全体の売上高が約10.5%増えるとみる一方、TRASMは4.5%減少すると予想する。同社幹部は中東情勢を受けた一部運休の影響を織り込んだとコメントした。
世界的な高インフレで荷動きも鈍くなっている。7〜9月期の貨物輸送収入はユナイテッドが3割減となるなど各社とも振るわなかった。先行きの需要も低調に推移するとの見方は多い。
人件費や燃料費に加え、高インフレで機材のメンテナンス費用も増える。アメリカンとデルタはコスト上昇を理由に、23年12月期通期の1株利益予想を引き下げた。
米投資会社ブラックストーンが発表した7-9月(第3四半期決算)は、12%の減益となった。金利上昇やディールメーキング(企業間取引)の後退が響いた。
分配可能利益は12億1000万ドル(約1800億円)と、2年ぶりの低水準だった前四半期からほぼ変わらなかった。1株当たりでは94セントと、ブルームバーグがまとめたアナリスト予想平均の1.01ドルを下回った。
1兆100億ドルを運用するブラックストーンは、オルタナティブ資産運用の米大手の先陣を切って第3四半期決算を発表。米利上げが及ぼした影響が明るみに出た。
ジョン・グレイ社長はインタビューで「金利とインフレに関して不透明感がある」と指摘。「こうした要素がすべて事業環境を不確実にしており、それが取引量を減少させている」と説明した。
米通信大手AT&Tは、通期のフリーキャッシュフロー見通しを引き上げた。7-9月(第3四半期)決算では、携帯電話の契約者数の伸びと利益が市場予想を上回った。
AT&Tは通期のフリーキャッシュフローについて約165億ドル(約2兆4700億円)と予想。従来予想は160億ドル以上としていた。調整後EBITDA(利払い・税金・ 減価償却・償却控除前利益)の見通しについても、4%強の増加に上方修正した。
7-9月期の調整後利益は1株当たり64セント。アナリスト予想の平均(62セント)を上回った。売上高は前年同期比1%増の304億ドルだった。  
携帯電話の契約者数は46万8000人の純増となり、伸びは市場予想を上回った。フリーキャッシュフローは52億ドルと、市場予想(46億ドル)を超えた。
仏自動車大手ルノーが発表した2023年7~9月期売上高は前年同期比8%増の105億ユーロ(1兆6600億円)だった。車両のオプションを充実させるなどの販売価格引き上げ策で増収基調を維持したものの、27%増だった上期に比べるとやや減速した。アルゼンチンペソ安などによる為替差損が主因という。
7~9月期の販売台数は51万1000台と前年同期よりも6.1%増えた。特に欧州での販売が引き続き堅調だった。ただしディーラーの在庫削減が進んだため、販売台数増は直接の増収要因にならなかった。
ルノーは通期の営業利益率を7〜8%と想定している。下期の営業利益率は上期の7.6%よりも改善し、通期目標を達成できる見通しだとした。
7月に日産自動車と最終契約した資本関係の見直しについては、23年末までに日産株28%分を信託に預け入れる予定だ。信託に預ける日産株についてティエリー・ピエトン最高財務責任者(CFO)は、「日産が優先的な売却先候補となるため連携は必要だが、(将来)我々が適切と判断した時期に売却できる」と述べた。
●先進国、グローバル、金融市場
再選を目指すバイデン米大統領を、トランプ前大統領が激戦州でリードしている。ブルームバーグ・ニュースとモーニング・コンサルトの世論調査で分かった。有権者は経済を巡るバイデン氏のメッセージを拒否している。
アリゾナ州、ジョージア州、ミシガン州、ネバダ州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州、ウィスコンシン州の激戦州(スイングステート)7州合計の支持率は、トランプ氏が47%、バイデン氏は43%だった。調査結果の誤差率はプラスマイナス1ポイント。
大統領選挙を1年1カ月後に控えた今、バイデン氏は7州のうち5州でトランプ氏に後れを取っている。全国で両候補はほぼ互角だが、大統領当選に必要な選挙人票を獲得する上で、これらの激戦州はとりわけ重要になり得る。
7州の有権者の51%が、トランプ政権時代の方が米経済は良かったと回答。今後の経済に関してトランプ氏を信頼するとの回答は49%に上った一方、バイデン氏は35%にとどまった。無党派層では経済政策に対する信頼の差はさらに開き、トランプ氏が22ポイント上回った。
移民政策やインフラなど、その他の幾つかの重要な争点でもトランプ氏の方が信頼されている。米中関係やウクライナ戦争など、バイデン氏の得意分野と見なされることの多い外交でも、トランプ氏支持が勝った。調査期間の半ばに起きたハマスによるイスラエルへの攻撃は、バイデン氏の大統領在任中で最も困難な瞬間の一つとなった。
大統領選の結果を最も大きく左右するのは、経済認識かもしれない。7州の有権者が最も重要な問題として挙げたのは、経済だった。株式市場や住宅、日用品の価格、金利、税金など具体的な金銭問題についても、トランプ氏への信頼を示した回答者の方が多かった。
調査は10月5-10日にかけて登録有権者5023人を対象にオンラインで実施。誤差率はプラスマイナス1ポイント。
モーニング・コンサルトの世論調査員でバイスプレジデントのキャロライン・バイ氏は「今のところ、バイデン氏は経済面の実績が全く評価されていない。7州ではバイデノミクスは経済にマイナスだとの回答がプラスの回答の2倍に近い。バイデン陣営にしてみれば、これはまさに驚くべき事実だ」と話した。
バイデノミクスが経済にとって良かったとの回答は26%に過ぎず、悪かったと答えたのは49%だった。経済が最重要だと答えた有権者の間では、65%対14%と数字はさらに悪い。
インフラに関しても、7州の有権者は42%対38%でトランプ氏を支持した。
低い失業率や賃金上昇といった雇用市場の明るいデータや、半導体工場の建設やグリーン経済を後押しする法律などの立法実績があるにもかかわらず、バイデン氏の経済運営に対する評価は低い。
バイデン陣営のスポークスマンであるケビン・ムニョス氏は「1年余り先を見据えて有権者に働き掛け結集することに、懸命に取り組んでいる」とし、「世論調査に一喜一憂するのではなく、ひたむきに仕事をすることで2024年に勝利する」と表明した。
バイデン氏の経済政策には人気のあるものもある。7州の有権者の過半数は、薬価引き下げやインフラ整備で連邦政府が大きな役割を果たすべきだと答えている。
ブルームバーグ・ニュースとモーニング・コンサルトの世論調査が激戦州と定義する7州は、24年の大統領選挙結果を決定付けかねない93人の選挙人に相当する。バイデン氏は20年には7州のうち6州で勝利したが、ノースカロライナ州では1.3ポイント差で敗れた。
日本の通貨当局が円安抑制のために為替介入を行うのではないかとの懸念が高まる中、ドル・円相場の変動が大きくなる可能性がある。マネックス証券の債券・為替トレーダーである相馬勉氏は、日本銀行による政策変更の思惑や中東情勢を巡る地政学リスクなどもあり、円に上昇圧力がかかることもあり得ると話す。
通貨オプション指標の一つでドル・円が大きく変動する可能性を示す1カ月物バタフライは19日、2022年11月以来の高水準を記録した。これは、ここ数週間狭いレンジで推移していたドル・円が不安定な局面に突入するかもしれないという市場の見方を反映している。政府・日銀は22年9月から10月にかけて約9兆円を費やし複数回の円買い介入を実施した経緯がある。
「円は対ドルで150円を手前に今は膠着(こうちゃく)しているが、どちらの方向にしても抜けると動きが大きい可能性がある」。相馬氏はそう述べ、「150円を抜けて大きく動けば介入のリスクという話だし、中東の話でリスクオフとなれば円高になる可能性もある」と指摘。加えて、月末に開かれる日銀の金融政策決定会合に向けボラティリティーが高まる可能性もあると語った。
円相場が約30年ぶりの安値付近で推移する中、鈴木俊一財務相は13日、為替市場では「場合によって適切な対応を求められることもある」との見解を20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で述べたことを明らかにし、投資家をけん制した。
3日には円相場が1ドル=150円16銭の安値を付けた直後に147円43銭まで急騰し、通貨当局による円買い介入の臆測を呼んだ。それ以降、円相場は比較的安定しているが、中東情勢の緊張が高まった先週後半からバタフライ・スプレッドが上昇し始めた。
日銀が世界最後のマイナス金利政策を維持する中、円は年初から対ドルで12%以上下落し、主要10通貨中最悪のパフォーマンスとなっている。米国との利回り差の拡大が円安を促し、輸入物価が上昇。既に22年4月から日銀の物価目標2%を超えているインフレをあおり、日銀が超低金利から早晩脱却するのではないかという臆測を強めている。
10年物米国債利回りが5%以上になれば、投資家が参入する好機になると、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントが指摘した。
在ボストンのマルチセクター債券チームの共同責任者を務めるビシャル・カンドゥジャ氏は、現在の環境では10年債利回りの5%突破は「デュレーションの観点からポートフォリオに長期債を組み入れる絶好の水準になる」と述べた。5%を突破すれば、同社のフェアバリュー水準から「オーバーシュートの範囲に入るだろう」と話した。
米連邦準備制度当局者が高めの金利を長期化させる方針を示す中、米10年債利回りは急速に5%の大台に近づいており、利回りがどこまで上昇するのかという議論が活発になっている。市場参入のタイミングを計ろうとするトレーダーは、中東の紛争が質への逃避を促す一方で、米国の財政赤字膨張が米国債の供給を増やすという、相反する要因をてんびんにかけなければならない。
米10年債利回りは今週30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り上昇し、19日には2007年7月以来の高水準となる4.98%に達した。トレーダーは、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のニューヨーク経済クラブでの発言に注目している。
カンドゥジャ氏は5%を適切なエントリーポイントとみているが、同時にスティープナー取引にも注目している。モルガン・スタンレー・インベストメントは、米国の2年債と10年債のイールドカーブがスティープ化(逆イールドが縮小)するとみている。
10年債利回りの急騰で2年債に対するマイナス幅は、カンドゥジャ氏がこの戦略を採用した時には100bp以上あったのが28bpまで縮小した。
2年債と10年債のスプレッドは「間違いなくプラスに戻ると考えている。しかし、その時期はもう少し先になるだろう」と同氏は述べた。同社は米金融当局が利下げに踏み切るのは2024年末か25年初頭になるとみている。
それでも、イールドカーブのスティープ化とタームプレミアム上昇が当局に代わって金融引き締めの「仕事をしてくれた」ため、1980年代以降で最も積極的な利上げサイクルは終わった公算が大きいと同氏は語った。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は19日、国債利回りの急上昇に伴う評価損で純資産がマイナスとなるネガティブエクイティーが膨らむ一方、2023年6月までの1年間の赤字は縮小したことを明らかにした。
豪中銀が公表した年次報告書によると、2022-23年度(22年7月-23年6月)のネガティブエクイティーの規模は177億豪ドル(約1兆6700億円)と、前年度の124億豪ドルから拡大。会計上の損失は60億豪ドルと、前年度の367億豪ドルの赤字から縮小した。
豪中銀は2年連続で政府への配当を見送った。
米国では新型コロナウイルス禍に家計の純資産が過去最大の伸びを記録した。前例のない政府の景気刺激策が純資産増加を後押しし、2023年の経済回復力に向けた下地を作る要因となった。
米連邦準備制度理事会(FRB)が18日発表した消費者金融調査によると、22年のインフレ調整後の純資産(中央値)は19年比で37%増の19万2900ドル(約2890万円)だった。3年間の伸び率としては1989年以降のデータで最大。同伸び率は過去2番目に大きい増加率の2倍余りとなった。
今回の統計は、雇用市場の逼迫(ひっぱく)も相まって、今年の経済を下支えしてきた力強い要因を浮き彫りにしている。個人消費はまだ減速しておらず、米家計は従来の推計よりもはるかに多くの過剰貯蓄を抱えている。これは成長を下支えすると同時にインフレを高止まりさせている。
米家計の強さは、景気減速と物価上昇圧力の抑制に向けたFRBの取り組みを阻む要因にもなっている。当局者らは年内にさらに利上げをする可能性を示唆しており、経済統計が予想外の上振れを示す中、トレーダーの間では利上げ観測が広がっている。
コロナ禍に家計資産が増加した背景には、住宅評価額の高騰や株式市場への投資増加が挙げられる。クレジットカード残高が減少したほか、破産など経済的な脆弱(ぜいじゃく)性を示す指標も低下した。
イタリア銀行(中央銀行)が19日公表した国際収支統計によると、外国人投資家によるイタリア国債の保有高が、8月にほぼ1年ぶりの大幅な減少を記録した。
外国人投資家は8月にイタリア国債を99億ユーロ(104億3000万ドル)売却。売却額は2022年9月以降で最大だった。
7月は71億ユーロの買い越し、6月は224億ユーロの買い越しだった。
昨年は11カ月にわたって売り越しが続いたが、今年上半期は買い戻しの動きが出ていた。
米労働省が19日発表した10月14日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は19万8000件と、前週の21万1000件から1万3000件減少し、今年1月以来9カ月ぶりの低水準となった。ロイターがまとめたエコノミスト予想は21万2000件。予想に反して減少し、労働市場が引き続き引き締まった状態にあることが示された。
労働市場は徐々に冷え込んでいるものの、依然としてタイトな状況が続いており、今年の新規失業保険申請件数は19万4000件─26万5000件の範囲の下限にとどまっている。
FWDBONDS(ニューヨーク)のチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「決算を発表する企業は今後の見通しやリスクについて警告するかもしれないが、適切な支援を見つけるのがますます困難になっているため、依然として雇用をしっかりと保ち続けている」と指摘。「経済と労働市場はまったく減速しておらず、これによって最近まで抑制されていたように見えたインフレの火が再燃するかどうかは時間が経てばわかるだろう」と述べた。
調整前の申請件数は1万8561件減の18万1181件。テキサス州、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ジョージア州、カリフォルニア州で大幅な減少が見られた一方、テネシー州は大幅に増加した。
全米自動車労組(UAW)のストライキによる影響は今のところ限定的だが、ミシガン州では7日までの1週間に申請件数が急増した。
今回のデータは、10月の米雇用統計の非農業部門雇用者数を把握するため政府が事業所を調査した週と重なっている。申請件数は9月の調査期間から減少した。
10月7日までの1週間の継続受給件数は2万9000件増の173万4000件だった。
アジア時間19日の原油先物は反落。イスラエルに対する石油禁輸措置を求めるイランの呼びかけに石油輸出国機構(OPEC)が応じる姿勢を示していないことや、米国による対ベネズエラ制裁緩和が材料視されている。
北海ブレント先物は12月物が0.74ドル安の1バレル=90.76ドル。米WTI先物は11月物が0.57ドル下落し、87.75ドル。取引の中心となった12月物は0.51ドル安の86.76ドル。
イランの呼びかけなどを受けた供給不安で、原油先物は前日に約2%上昇していた。
ただ、関係筋によると、OPECは緊急会合の開催など直ちに何らかの対応措置を講じる計画はない。このため、市場では供給途絶への懸念が後退した。 
RBCキャピタル・マーケッツは「OPECがイランによる対イスラエル石油禁輸の呼びかけに応じる兆しはないが、(イスラエルとイスラム組織ハマスの)紛争で幾つかの形で石油に焦点が当たることはほぼ間違いない」と指摘した。
シティは、イスラエルに原油を輸出する国の中でも、カザフスタンとアゼルバイジャンが禁輸に応じる可能性は低いと指摘した。
一方、米国はベネズエラのエネルギー部門に対する制裁を緩和し、6カ月間取引を許可する措置を発動した。
パウエル議長はニューヨークのエコノミック・クラブで行った講演で「われわれは、経済成長と労働需要のレジリエンス(回復力)を示す最近のデータに注意を払っている。成長が持続的にトレンドを上回っていること、または労働市場の引き締まりがもはや緩和されていないことを示す新たな証拠が出てくれば、インフレを巡る進展がリスクにさらされ、金融政策の一段の引き締めが正当化される可能性がある」と述べた。
その上で、インフレ率をFRBが目標とする2%に持続的に戻すためには「成長率が一定期間トレンドを下回り、労働市場の状況が幾分か一段と軟化することが必要になる可能性がある」と語った。
同時に、FRBは一段の利上げの必要性を巡る検証を「慎重に進めている」と表明。10月31日─11月1日に開かれる次回連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が5.25─5.50%に据え置かれる可能性を示唆した。
また、一部の重要な指標は新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)前の水準に近づいており、労働市場が冷え込みつつある証拠が得られているとも指摘。FRBがバランスを取りながらインフレ対応を進める中で、考慮しなければならない新たな「不確実性とリスク」が数多く存在しているとの認識も示した。
こうした不確実性とリスクには、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルに対する「恐ろしい」攻撃に起因する経済への新たな地政学的リスクが含まれると指摘。「FRBはこうした動きが経済に及ぼす影響を監視する役割を担っている」と述べた。また、個人的にもイスラエルに対する攻撃は「恐ろしいことだと感じた」と語った。
このところの市場主導による国債利回りの上昇については、全体的な金融状況を「大幅に」引き締めるのに役立っていると指摘。「金融情勢の持続的な変化は、金融政策の行方に影響を及ぼす可能性がある」とし、市場に基づく金利上昇が持続すればFRBの利上げと同様の効果をもたらすとの考えを示した
追加利上げは必要ないとの見方を明確に支持する内容ではなかったが、金融市場はそのように受け止めた。フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場が織り込む年内の利上げ確率は講演前の約40%から33%程度に低下した。
パウエル議長の発言を受け、10年債と30年債の利回りは上昇した。
パウエル議長は利上げについて「全体的な考え方は金融情勢に影響を与えることだ」と言及。債券市場は「現在、よりタイトな金融情勢を生み出しており」、FRBに対する期待とは関係なく米経済の力強さに対する見方の改善など様々な要因で動いているようだとした。
さらにこの違いは重要だとし、FRBが利上げしようとしているとの市場の見方だけで長期債利回りが上昇しているのなら、FRBはそれに従う必要があり、そうでなければ長期債利回りは低下するとした。
スコシアバンク(トロント)のチーフFXストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「金融情勢は逼迫しており、これを回避することはできない。FRBの対応が増えるのではなく減る方向に動いている」と述べた
議長は「インフレ率はなお高すぎる」とし、「数カ月間の良好な統計は、インフレ率が目標に向かって持続的に低下しているという確信を築くのに必要な始まりに過ぎない」と指摘。「こうした低い数値がどの程度継続するのかは分からない」とし、「道は険しく、時間がかかる可能性が高い。われわれはインフレ率を持続的に2%に引き下げるという決意で一致団結している」と語った。
◎市場に落ち着きを与えること目的
<LPLフィナンシャル(ノースカロライナ州シャーロット)のチーフ・エコノミスト、ジェフリー・ローチ氏>
パウエルFRB議長の講演の全体的なテーマは、市場に落ち着きを与えることだった。
今週はFRB当局者の発言が相次いでおり、中でもハト派として知られるフィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は、FRBの利上げは終了すべきだとかなりはっきり述べた。このため、きょうのパウエル議長の講演の目的は、市場に少しでも落ち着きを与えることだったと考えている。
◎ハト派だが不透明感は残る
<ウェドブッシュ証券の株式トレーディングマネジングディレクター、マイケル・ジェームス氏>
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がそれほど不透明感を解消したとは思えない。
確かにトーンは最近の他のFRB当局者発言よりもややハト派的だったうえ、彼は最近の金融情勢の引き締まりや地政学的な緊張のリスクについても言及した。一方で、インフレ率がFRBにとって望ましい水準までまだ下がっていないことから、高金利長期化バイアスも排除しなかった。
◎年内金利据え置きとの見方変わらず
<インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(ノースカロライナ州シャーロット)の最高投資責任者(CIO)、クリス・ザカレリ氏>
パウエル議長は今後の利上げに関して連邦準備理事会(FRB)の選択肢を引き続き残した。ただ、FRBが次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を据え置き、年内は金利を変更しない可能性が比較的高いという見方を変えるものは何もなかった。
関係者は、制裁緩和後のベネズエラの産油量の急回復は見込まれておらず、「おそらく少量になる。その場合、政策が変更される可能性は低い」と指摘。別の関係者も産油量の回復は緩やかなものになる可能性が高く、短期的にはOPECプラスの政策に影響はないとした。
市場ではS&Pが20日にイタリアとギリシャの、ムーディーズがフランスの格付けを見直すことに注目している。
シティのアナリストはリサーチノートで「われわれの基本シナリオでは、イタリアとフランスの格付けに変更はないが、見通しの変更は排除できない」という。
フランス10年債利回りは3.557%でほぼ横ばい。
一方、ギリシャでは、最近の選挙後も現在の慎重な財政軌道が続く可能性が高いため、ギリシャの格付けが近いうちに投資適格レベルに1ノッチ格上げされると見込まれている。
ギリシャ10年債利回りは5bp上昇の4.427%。22年10月には5.124%と17年12月以来の高水準を付けていた。
米ヘッジファンド運営会社エリオット・マネジメントの創業者ポール・シンガー氏は現在の世界情勢について、市場が織り込んでいるよりもはるかに危険であり、投資家はもっと心配すべきだと述べた。
シンガー氏は19日にトロントで開催された投資に関する会合で「世界は今、アルマゲドンの回避で指導者たちの良識に完全に依拠している」と発言。ロシアや中国、イランからどれほどの「良識」がもたらされるのかと疑問を呈した。
弱気派で知られる同氏は、大規模投資家によるプライベートクレジット進出にも懸念を表明。「資金の一部は、実際には破たんしている問題企業に流動性を提供するために使われている」と語った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
インドネシア銀行(中央銀行)は19日、予想外の利上げを発表した。中東紛争に伴いリスクが高まる中、通貨ルピアの下支えに動いた。
同中銀は7日物リバースレポ金利を0.25ポイント引き上げ、新たな4年ぶり高水準となる6%に設定。
この決定を予想していたのは、ブルームバーグが調査したエコノミスト31人中1人だけだった。残りの30人は金利据え置きを見込んでいた。インドネシア中銀の利上げは今年1月以来。
この日のルピアは予想外の決定を受けて、それまでの下げ幅を縮小。5年債利回りは9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。インドネシア株の指標、ジャカルタ総合指数は1.2%安となった。
米連邦準備制度のタカ派的なスタンスを受けトレーダーが新興国資産を敬遠する中、ルピアは今月に入って対ドルで2%余り下落。19日には2020年4月以来の安値を記録した。
中国の新築住宅価格は9月も下落した。マイナス幅としては約1年ぶりの大きさとなっており、政府が不動産市場のてこ入れ策に乗り出しているものの、不動産セクターの回復に十分なのか疑念が広がっている。
国家統計局が19日発表したデータによれば、主要70都市の新築住宅価格(政府支援住宅を除く)は9月に前月比0.3%低下。8月は0.29%下落していた。前月比の下げとしては昨年10月以来の大きさだった。
一方、9月の中古住宅価格は前月比0.48%下落と、2014年以来の大幅低下となった8月と同じマイナス幅だった。主要都市でも住宅ローンの金利引き下げや頭金要件緩和など市場を刺激する措置が講じられたが、価格の下落が続いている。
数年に及ぶ低迷を余儀なくされている中国の不動産開発会社は資金繰り難に陥り、集合住宅の完工にも遅れが出ている。中国経済にとっても、主要な成長のけん引役だった不動産市場の不振は痛手だ。住宅販売と不動産投資は7-9月(第3四半期)も景気の足を引っ張り、政策当局者が需要の喚起に向けた措置を講じている動機が浮き彫りとなっている。
マッコーリー・グループの中国経済責任者、胡偉俊氏は「今後も主要なリスクは不動産セクター発だろう。危機からまだ脱したわけではない」と述べた。
インドネシアで19日、来年2月に実施される大統領選の立候補の届け出が始まり、本格的な選挙戦の幕が開けた。
人口2億7000万人余りのインドネシアで約2億0500万人の有権者が、豊富な天然資源に恵まれ経済規模が1兆ドルを超える同国の指導者を選ぶことになる。次期大統領は外国からの投資誘致や川下産業の発展、化石燃料への依存からの脱却といった課題に取り組まなければならない。
選挙戦は事実上、プラボウォ国防相(72)、ジャワ州のガンジャル前知事(54)、ジャカルタ特別州のアニス前知事(54)の3人による争いになると予想されている。
アニス陣営とガンジャル陣営は19日に選管に立候補を届け出て政策方針を提出すると表明していた。
世論調査ではガンジャル氏とプラボウォ氏が激しく競り合い、アニス氏は大きく水を開けられている。プラボウォ氏は2014年と19年の大統領選にも出馬したが、いずれもジョコ大統領に敗れている。
闘争民主党(PDIP)選出のガンジャル氏は副大統領候補としてマフッド調整相(政治・法務・治安)と組み、アニス氏はイスラム教徒が支持基盤の国民覚醒党(RKB)のイスカンダル党首を副大統領候補とする予定。
プラボウォ氏はまだ副大統領候補を発表していないが、ジョコ氏の長男ギブラン氏が副大統領候補になるとの見方が出ている。
ジョコ大統領は今週、自身は大統領候補に全く関与しないと表明した。ただ政界関係者の話では、ジョコ氏は引退後も影響力を維持する意向であり、水面下でプラボウォ氏への支持集めに動いている。
中国のマンション価格が下げ止まらない。国家統計局が19日発表した9月の新築価格は主要70都市の8割近くで前月より下落した。とくに中小都市の値下がりが目立った。政府は住宅ローン金利などの規制を緩める刺激策を打ち出したが、効果は一部の大都市に限られている。
●中東
●中南米・アフリカ
ブラジル中央銀行のカンポス・ネト総裁は18日、現在の金融緩和局面で政策金利を会合ごとに50ベーシスポイント(bp)ずつ引き下げることが適切との認識を示した。
現地メディアのブロードキャストは先週、利下げ幅を現在の50bpから75bpに拡大するよりも、25bpに縮小する可能性の方が高いと同氏が投資家との非公式会合で語ったと報じた。
ネト氏はクレディ・スイス主催のイベントで、国際シナリオが悪化しているため75bp利下げする可能性が低下していると述べたが、必ずしも25bpの引き下げの可能性が高いことを意味するものではないと説明した。
中銀が利下げのペースについて何らかのシグナルを出すとしても、非公開の会合ではあり得ないと指摘した。
その上で「われわれは50bpのペースが適切だと考えている」と表明した。
「次回の会合で再度議論し変数を調べ、会合ごとに何が変わったかを確認する。この見解に変更があれば伝えるが今日ではない」と語った。
ブラジルのコアインフレ率にはいくつかの「ポジティブサプライズ」が見られ、同国のインフレ率は世界の平均よりも良い傾向にあるとした。
●市況
<為替> ドルが下落した。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が米経済の力強さを踏まえると一段の利上げが正当化される可能性があると述べたものの、市場ではおおむねハト派的な発言と受け止められている。
<債券> 国債利回りが再び急上昇し、指標となる10年国債利回りが一時5%に達した。5%を超えるのは2007年7月20日以来。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がこの日の講演で、一段の利上げが正当化される可能性があると述べたことが背景。
<株式> 続落。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が金融政策に関する講演で、一段の利上げが正当化される可能性を示唆したことを受け、米10年債利回りが急伸した。
<金先物> 緊迫するパレスチナ情勢を眺めた安全資産としての需要に加え、ドル下落に伴う割安 感から買いが優勢となり、3営業日続伸した。中心限月12月物の清算値(終値に相当) は、前日比12.20ドル(0.62%)高の1オンス=1980.50ドル。7月末以 来約2カ月半ぶりの高値水準を付けた。
<米原油先物> 対ユーロでのドル安を背景に買いが優勢となり、続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物(終値に相当)は前日比1.05ドル(1.19%)高の1バレル=89.37ドルと、中心限月ベースで今年9月下旬以来約3週間ぶりの高値となった。12月物は前日比1.10ドル高の88.37ドルだった。
<欧州株式市場> 3日続落して取引を終えた。企業のさえない決算発表が相次いだことが嫌気されたのに加え、中東での戦闘を巡る不安や政策金利の先行き不透明感も売り材料となった。
金利に敏感なSTOXX欧州600種不動産株指数(.SX86P)は2.95%下げた。
スイスの食品大手ネスレ(NESN.S)は3.4%下落。23年1─9月期の増収率が予想を下回ったことが嫌気された。
仏自動車大手ルノー(RENA.PA)7.3%安。第3・四半期の売上高が市場予想を下回ったことが重しとなった。フランスのCAC40指数(.FCHI)は0.64%安だった。
第3・四半期決算が減収となり、人員削減計画を発表したフィンランドの通信機器大手ノキア(NOKIA.HE)は6.4%下落。
同じく第3・四半期売上高が減ったスイスの製薬大手ロシュ(ROG.S)も4.4%下げた。
<ユーロ圏債券> イタリア10年債利回りが一時11年ぶりの高水準を付けた。世界的な債券売りの流れを受けた。その後、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の講演を控え利回りは低下に転じた。
イタリア10年債利回りは一時、2012年11月以来の高水準となる5.035%まで上昇。終盤は1ベーシスポイント(bp)低下の4.982%となった。
日経先物31207、ダウ先33509、債先144.56、米4.983、独2.9330、仏3.553、西4.049、伊4.944、英4.7340、波5.896、原油89.22、銅8,018、ドル円149.82、ユーロドル1.0584
※10/20 8時50分頃

備忘録(2023/10/18)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ノボ・ノルディスクのオゼンピックは間違いなく、世界で最も話題にのぼる医薬品となった。本来は糖尿病治療薬だったのが奇跡の「やせ薬」へと変貌を遂げ、供給が限られているにもかかわらずその売上高は記録を塗り替え続けている。この快進撃はまだ始まったばかりなのかもしれない。
オゼンピックをはじめとするGLP-1受容体作動薬に、当初の想定を超えて広範囲に及ぶ効果があることが最近の研究で明らかになりつつある。減量を助けることで多くの疾患リスクを減らせるが、それとは別に心臓や肝臓、腎臓を保護する効果があるようだ。薬物乱用やアルツハイマー病の治療に効く可能性も指摘されている。
これはさまざまな分野の医薬品や医療機器メーカーにとって悪いニュースだ。例えば米国では死因トップの心血管系疾患の治療に、年間約2500億ドル(約37兆4400億円)が費やされている。血圧を下げる薬やバイパス手術、ペースメーカーなどがこれに含まれる。ウェルズ・ファーゴのアナリストはGLP-1受容体作動薬の影響で、こうした心血管系疾患治療の市場は2050年までに約10%縮小する可能性があるとみている。
GLP-1薬品の新たな効果が証明されるにつれ、その潜在的な影響に投資家は気づき始めた。ノボ・ノルディスクが今月10日、腎臓病に対するオゼンピックの有効性が決定的であるため、臨床試験を早期に終了したと発表すると、透析器大手のフレゼニウス・メディカル・ケアとダビータの株が売りを浴び、その規模は36億ドルに膨れ上がった。
ジェフリーズで医療機器企業を担当するアナリスト、マシュー・テイラー氏は先週のリポートで「GLP-1の影響について、市場のヒステリー現象はピークに近い状態に達した」と指摘。「医療テクノロジーセクターは目に見えて打撃を受けた。影響の範囲は広く、ほぼ無差別に及んでいる。GLP-1との関係性がないはずの企業にも影響したようだ」と述べた。
ノボ・ノルディスクが2021年に発売したウゴービは、オゼンピックの最大投与量を多くしたもので、心臓病の既往歴がある過体重の患者が心臓発作と脳卒中を起こすリスクを20%減少させることが示されている。ノボ・ノルディスクとイーライリリーはこのクラスの薬剤が非アルコール性脂肪性肝炎に対して有効かどうかを確認する研究も行っている。米国では2016年に推定6400万人以上が非アルコール性脂肪性肝疾患に罹患(りかん)、年間の直接医療費は総額約1030億ドル、患者1人当たりで1600ドルを超える。
新たな用途が承認されたとしても、いくつかのハードルは残る。最大の問題はコストだ。オゼンピックの定価は1カ月約900ドル、ウゴービでは1000ドルを超える。専門家によれば、より多くのGLP-1薬が利用できるようになればコストは下がり始めるが、それはまだ先のことだ。
製薬会社はまた、副作用の少ない次世代型やせ薬を開発する必要がある。欧州当局はGLP-1が自殺念慮を増やす一因となるほか、麻酔をかけた患者に合併症を引き起こすという報告を調査している。これとは別に、オゼンピックが腸閉塞(へいそく)など消化器系の問題を引き起こす可能性があることも研究で示されている。
ノボ・ノルディスクは一方、オゼンピックの有効成分であるセマグルチドが初期段階のアルツハイマー病患者に効果があるかどうかを試験している。この研究は2026年に完了する予定だ。
国際通貨基金(IMF)は国際金融安定性報告書(GFSR)を公表した。経済がソフトランディング(軟着陸)するベースシナリオで世界の約55の金融機関が規制資本を割り込むなどの危機に至ると試算した。だがインフレを起因とする中央銀行の利上げが続き、景気後退に陥った場合、こうした金融機関の数は200超に膨れ上がる。
●その他産業
豪資源大手BHPグループ(BHP.AX)は18日、第1・四半期(7─9月)の鉄鉱石生産量が4%近く減少したと発表した。また、豪クイーンズランド州にある製鉄に使われる原料炭の炭鉱2つを豪石炭大手ホワイトヘイブン・コール(WHC.AX)に売却すると明らかにした。
アナリストの試算では、売却するダウニア、ブラックウォーターの両炭鉱の価値は30億ドル以上。BHPは両炭鉱を三菱商事の豪法人、三菱デベロップメントと共同で保有している。
一方、西オーストラリア州での7─9月の鉄鉱石生産量(100%ベース)は前年同期の7210万トンから6940万トンに減少。主産地であるピルバラ地区中央部で施設の保守作業が影響した。UBSによると、ビジブル・アルファがまとめた市場予想は7400万トンだった。
BHPは2024年度の同州での鉄鉱石生産量の見通しを2億8200万─2億9400万トンの範囲に据え置いた。
●決算関連
米金融大手モルガン・スタンレーの7-9月(第3四半期)は減益となった。投資銀行部門が不振だったほか、ウェルスマネジメント部門の収入も予想に届かなかった。
債券トレーディング収入は11%減少、ディールメーキングの手数料も伸び悩んだ。ウェルスマネジメント事業の収入は64億ドル(約9600億円)とアナリスト予想を下回り、新規資金の純流入額は357億ドルと前四半期の895億ドルから落ち込んだ。
シャロン・イェシャヤ最高財務責任者(CFO)はインタビューで「強弱入り交じった環境で堅調な業績を残せた。M&A(企業の合併・買収)に関し当社が10月ー12月期入り後に発表できた案件は、前年同期比で50%増えた。継続案件は引き続き増加している」とし、全てが回復を物語っていると話した。
減益ではあったが純利益はアナリスト予想を上回った。ジェームズ・ゴーマン最高経営責任者(CEO)はM&Aや資本調達の回復に期待を示しており、低迷していた投資銀行手数料収入は底を打ち、今後数カ月で回復して来年には平常に戻るだろうと前四半期に述べていた。
第3四半期の純利益は24億4000万ドル(1株当たり1.38ドル)。1株利益はブルームバーグが調査したアナリストの予想平均1.30ドルを上回った。
モルガン・スタンレーは今年、ウェルスマネジメント事業の税引き前利益をほぼ倍増させ、年間120億ドルとする計画を発表していたが、7-9月期の資金流入ペースは1-6月から大きく減速した。
第3四半期の債券トレーディング収入は19億5000万ドル。予想は18億3000万ドルだった。株式トレーディング収入は25億1000万ドル。
M&A助言の手数料は3分の1余り減少し、4億4900万ドルだった。
株式引き受け手数料は2億3700万ドルと低迷が続いた。大型案件である英半導体設計会社アーム・ホールディングスの新規株式公開(IPO)業務から、モルガン・スタンレーは外されていた。
オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディング(ASML.AS)が18日発表した第3・四半期の受注は市場予想を下回った。
不透明な経済情勢を背景に顧客が投資を抑制しており、来年の売上高は横ばいになると警告。アナリストは7%の増収を予想していた。
同社の株価は1.9%下落している。
同社は半導体業界が恐らく底に近づいているとしながらも「顧客は需要の回復がどのような形になるか引き続き確信を持てていない。このため、当社は来年が移行期間になると予想している」と述べた。
ロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は「(顧客は)手元資金や設備投資に非常に慎重になっており、その結果、発注にも非常に慎重になっている」と指摘した。
第3・四半期の純利益は19億ユーロ(20億1000万ドル)で、市場予想と一致した。純受注は26億ユーロ。ジェフリーズは45億ユーロと予想していた。売上高は67億ユーロだった。
InsingerGilissenのアナリスト、Jos Versteeg氏は、半導体市場の回復を予想。ASMLの「ファンダメンタルズは依然として非常に良好だ」と述べた。
ダッセンCFOは、受注残がまだ350億ユーロあると指摘。来年は不透明だが、アジア、米国、欧州の顧客の事業拡張計画を踏まえると、2025年は好調だろうとの見方を示した。
米ネットフリックスが18日発表した2023年7〜9月期決算は、売上高が前年同期比8%増の85億4200万ドル(約1兆2800億円)、純利益が20%増の16億7700万ドルだった。料金体系見直しで会員数は6月末比で約4%増加した。米ハリウッドのストライキで映像作品の制作がとまり、コストが一時的に減った。2四半期連続で増収増益を確保した。
2023年7〜9月期決算は純利益が前年同期比44%減の18億5300万ドル(約2800億円)となり、2四半期ぶりの減益となった。主力車種の値下げで採算が悪化した一方、販売の拡大ペースも鈍化した。当面の収益改善に向け、ピックアップトラック型EVなど新型モデルの投入を急ぐ必要がありそうだ。
23年7〜9月期の売上高は233億5000万ドルで9%増にとどまった。世界販売台数は27%増の約43万5000台で、23年4〜6月期の83%増から伸び率が鈍化した。テスラは23年12月期の販売目標を前期比37%増の180万台としている。23年7〜9月期の販売の伸び率は年間目標を下回る水準にとどまった。
テスラの7〜9月期決算は売上高、利益とも事前の市場予想を下回った。
4〜6月期は値下げの効果で販売台数が大幅に増えたが、7〜9月期は再び鈍化した。この理由について、テスラは新型モデルの生産準備に向けて、主力工場の出荷ペースを落としたためだと説明している。ただし、この影響を差し引いても、主力の米国、中国では値下げによる拡販効果が縮小している可能性がある。
現行のテスラ車に対する人気そのものが落ちている可能性があるからだ。テスラの現行主力4車種のうち、最新のモデルYを投入し始めたのは20年にさかのぼる。足元、中国に加えて米国でもライバルが続々と新型EVを投入するなか、テスラの車種ラインアップは変わっていない。
再びEVの販売拡大ペースを加速するためのカギを握るのが、新型モデルになる。23年中にも米国市場などに投入する予定のピックアップトラックEV「サイバートラック」が最大の焦点だ。
中国や日本では、内外装を変え、航続距離を伸ばした改良版モデル3の納車開始を23年10〜12月期に予定している。
新型モデルを適宜投入し売れ行きを伸ばせれば、EV事業の採算が改善する可能性がある。既存車の値下げで、EV事業の採算は低下している。23年7〜9月期の営業利益率は7.6%となり、前年同期の17.2%から9.6ポイント低下した。前四半期4〜6月期(9.6%)と比べても2ポイント下がった。当面の採算改善に向けても、新型モデルの投入が重要になる。
日用品大手の米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が18日発表した2023年7〜9月期決算は、純利益が前年同期比15%増の45億2100万ドル(約6800億円)だった。値上げで増収増益を確保したが、買い控えや低価格の他ブランド品への顧客流出を招き、販売数量は6四半期連続で減少した。
売上高は前年同期比6%増の218億7100万ドル、1株利益は1.83ドルで、ともに市場予想を上回った。部門別の売上高では、ヘルスケア用品が11%伸びたほか、主力の洗剤・家庭用品は8%増えた。紙おむつ「パンパース」を手掛けるベビー・女性生理用品は5%増だった。
一方、全体の販売数量は1%減った。洗剤・家庭用品は1%減少したほか、ベビー・女性生理用品部門が3%減と振るわなかった。ひげそり「ジレット」などを国内外で展開するグルーミング部門は平均9%と大幅な値上げに踏み切った影響が響き、販売数量は2%減った。
粗利益率は52%と前年同期に比べ4.6ポイント改善した。値上げの効果に加え、原材料費の上昇ペースが弱まったことが寄与した。
アンドレ・シュルテン最高財務責任者(CFO)は18日の投資家向け説明会で、今後の見通しについて「10〜12月期以降は値上げも落ち着き、販売数量の増加につながると予想している」と話した。「今後の(売上高の)成長率はこれまでの平均水準である4%ほどに鈍ると予想している」とも明らかにした
●先進国、グローバル、金融市場
イランがイスラエルへの石油禁輸をイスラム諸国に呼び掛け、18日の原油相場は急騰した。
ブレント原油先物は一時3%上昇の1バレル=93ドル付近となった。数百人が死亡したバレスチナ自治区ガザの病院での爆発を受けて、ヨルダン、エジプト、パレスチナ自治政府の首脳は、バイデン米大統領との首脳会談をキャンセルした。バイデン氏は18日未明にイスラエルに到着した。
イランのアブドラヒアン外相はその後、イスラム諸国によるイスラエルの全面的かつ即時のボイコットと、同国に対する石油禁輸を呼び掛けた。ジッダで行われたイスラム協力機構のトップとの会談で発言した。
米国の住宅ローン申請指数が約30年ぶりの低水準に落ち込んだ。借入コストが6週連続で上昇したことなどが背景。住宅市場のさらなる失速を示唆する。
全米抵当貸付銀行協会(MBA)によると、購入と借り換えを含めた全体の住宅ローン申請指数は13日終了週に6.9%低下して166.9となった。これは1995年5月以来の低い水準。
30年物固定住宅ローン金利は3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、7.7%となった。
MBAの調査は1990年から毎週実施されており、モーゲージ・バンカーや商業銀行が回答。全米の住宅ローン申請件数の75%以上をカバーしている。
ウォール街の金融機関は米国のデリバティブ(金融派生商品)規制に違反した場合、今後はより厳しい罰を受けることになる。米商品先物取引委員会(CFTC)で法執行を担う幹部イアン・マギンリー氏が17日、こうした見通しを示した。
同氏はニューヨークでの講演向けに用意した原稿で、CFTCを含む米規制当局が企業に対し指摘した問題の決着で合意する場合、今は金融機関に当局の主張を認めないまま罰金を支払うことを許しているものの、CFTCはこれから交渉においてより厳しい姿勢を取り始めるだろうと指摘した。
「CFTCをはじめとする多くの政府機関は長年、否定も肯定もせずとの姿勢を受け入れ、ほとんどの事案を決着させてきた。交渉において、もはやこうした否定も肯定もせずという決着が既定路線であると考えるべきではない」と述べた。
今年2月に執行部門の責任者に就いたマギンリー氏は、企業がより高い制裁金を支払うことになり、問題の決着後に自社の行為を監視する人材を雇わなければならなくなる公算が大きくなるとの見方も示した。
最近の例では、ゴールドマン・サックス・グループが9月29日、CFTCの指摘を否定も肯定もせず、2つの事案を決着させた。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のブロック総裁は18日、インフレ率を目標水準に戻す上で、サービス価格の高止まりやイスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争など度重なる世界的なショックといった一連の障害が存在すると指摘した。
ブロック氏はシドニーで開かれたイベントで、「インフレ率を押し下げるのは難しいことを示唆する幾つかの面がある」と述べ、テークアウト店や美容院での物価上昇圧力のほか、超低水準にある失業率などを挙げた。
世界的な出来事に伴う供給ショックにも言及し、「ショックに次ぐショックを受けており、それが供給ショックであったとしても、インフレ率の高止まりが続けば続くほど、人々の考え方が調整されればされるほど、インフレが一段と定着する可能性が高まることが問題だ」と語った。
総裁就任後初めて公の場で発言したブロック氏は、金融政策の見通しについては特に触れなかった。
豪中銀は、インフレ率を目標の2-3%に戻すため、2022年5月以降、計4ポイントの利上げを実施。エコノミストは来月にもあと1回利上げが実施され、オフィシャル・キャッシュレートの誘導目標は4.35%になると予想する。
19日に発表される9月の雇用統計と、来週発表される7-9月(第3四半期)の消費者物価指数(CPI)が注目されている。また、次回11月7日の政策決定会合では、スタッフがまとめる最新の四半期経済予測が提出される。
ブロック氏は「難しい経済環境だ」としながらも、金融政策が効果を示し始めていることが見て取れる。消費の減速が見られる」と指摘。その上で、「われわれは雇用の伸びを維持し、景気の腰折れを回避しながら、インフレを妥当な時間軸の中で押し下げることに努めていく」と語った。
英国のインフレは9月、原油価格の上昇が食料品価格の下落を打ち消し、予想通りには鈍化しなかった。
英政府統計局(ONS)が18日発表した消費者物価指数(CPI)は前年同月比6.7%上昇と、前月と同じペースだった。エコノミストは6.6%へのインフレ低下を予想していた。
イングランド銀行による14回連続の利上げが経済に重くのしかかり始めた今、インフレ上振れは利上げ見通しを高めるほどではない。
中銀は9月に2021年11月以降で初めて利上げを見送った。
短期金融市場が織り込む利上げ確率はおおむね安定しており、来月の0.25ポイント利上げの確率は30%、来年序盤までに利上げが実施される可能性は60%超となっている。市場は来年中の0.4ポイント利下げも織り込んでいる。
キャピタル・エコノミクスの英国担当チーフエコノミスト、ポール・デールズ氏は、9月にインフレ率が低下しなかったことは「残念」だが、「イングランド銀が8月に予想したインフレ率6.9%は下回っていることから、同中銀が再び利上げを行うことはないと当社は考えている」と述べた。
米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューで、借り入れコストの上昇で景気が減速する兆候が強まっており、連邦準備理事会(FRB)は利上げの休止期間を延長すべきだと述べた。
過去20カ月間の急激な利上げがインフレ抑制に十分な効果を発揮しているか見極めるため、来年初めまで待てる可能性が高いとの認識を示した。
全英1300カ所でフードバンクを運営する慈善団体トラッセル・トラストは18日、物価高が続く中で今冬は60万人以上が生活支援を必要とする公算が大きく、過去最悪の事態を予想していると警告した。
トラッセル・トラストは、今年12月から来年2月までに100万食を超える非常食を提供すると予想。前年の90万4000食を上回り、この期間としては過去最多となる。
エマ・レビー最高経営責任者(CEO)は、「毎年冬にフードバンクの状況が悪化していると言いたくはないが、そうなっている。英国人の7人に1人が、生活費不足から飢えに直面している」と述べた。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のブロック総裁は18日、同国経済について、消費が減速する一方でインフレが高止まりする「難しい」状況にあると指摘し、金融政策でこれらの要因のバランスを取ることは狭い道だとの認識を示した。
総裁はまた、インフレがとりわけサービス部門で粘着性が高いため、抑制が困難になる兆候があると語った。
中銀はインフレの上振れリスクを強く警戒しており、想定を上回る水準にとどまる場合は金融引き締め策で対応する必要があると指摘した
オフィススペースの需要が一段と冷え込んでおり、米国と英ロンドンでは空室率が少なくとも20年ぶりの高水準に達している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のピークが過ぎた後、企業が従業員に出社の再開を求めているにもかかわらず、在宅勤務が続いていることが背景にある。
米下院が18日実施した次期下院議長を選出する2回目の投票で、共和党の議長候補ジョーダン下院司法委員長が前日に続き過半数票を獲得できず落選した。下院議長不在は16日目を迎え、混迷を深めている。
2回目の投票でジョーダン氏は199票を獲得。共和党議員22人が反対票を投じ、承認に必要な217票に届かなかった。民主党212人全員も反対した。
ジョーダン氏は1回目の投票では200票を確保しており、結果は前日よりも後退した格好だ。マッカーシー前議長が1月に選出されるまでに行われた15回に及ぶ投票で、どの回のマッカーシー氏の得票よりも少なかった。
ジョーダン氏は投票後、下院議長選にとどまる意向を表明。結果は3回目の投票に持ち越されることになるが、3回目の投票を行うかどうかはまだ決めていないとした。
議会ではウクライナ戦争や中東情勢、政府機関一時閉鎖阻止に向けた対応に迫られており、共和党内では次善の策を模索する動きも出ている。共和・民主党の双方の一部からは、マクヘンリー下院議長代行の権限を拡大する案が浮上。また共和党のマイク・ケリー下院議員は、11月17日まで、もしくは下院議長が決定するまで議長に指名する案を提出している。
地区連銀経済報告(ベージュブック)で、前回9月の報告以来、ほとんどの地区で経済活動は大きく変化していないと述べた。物価は全体として緩やかなペースで上昇を続ける一方、労働市場の逼迫は全国的に緩和されたという。
報告は、10月6日以前に収集された情報に基づき、セントルイス地区連銀が作成した。
報告で「経済の短期的見通しはおおむね横ばいか、伸びがやや弱まったとされた」と指摘。「全体として企業は今後数四半期は物価が上昇するものの、これまでの数四半期よりも鈍化すると予想している」と言及した。
12地区連銀のうち5地区が緩やかな伸び、3地区がほとんどまたは全く変化なし、4地区が緩やかな縮小をそれぞれ報告した。多くのアナリストが景気後退を予想していた1月以来、全体的に弱含みとなった地区が最も多かった。
景気後退は起きていないが、景気がトレンドを上回るペースで推移しているとの「強固な」指標と、各地区から報告されるかなり弱含みの状況の隔たりが報告で示された。
ここ数週間の一連の政府の指標は、FRBが景気減速のために実施してきた政策金利の引き上げにもかかわらず米経済が勢いを増していることを示唆しており、景気が失速に近づいているというトーンとはやや相容れない。
小売売上高と製造業生産指数の増加幅は予想を上回り、雇用は増えた。9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.1%上昇し、FRB目標である2%の2倍を超えている。
FRBは10月31日─11月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を決定する。FRBはインフレ抑制のため、2022年3月にゼロ近辺だった政策金利を今年7月にかけて5.25─5.50%まで引き上げ、その後は据え置いている。
リッチモンド地区連銀のバーキン総裁はマクロ経済の指標が好調な一方、現場からの経済情報は消費とインフレがともに悪化していることを示唆しており、その隔たりに注目していると言及した。リッチモンド連銀管轄地区はここ数週間で若干の縮小を報告した地区の一つだ。
カンザスシティー地区連銀も全体として経済活動の弱まりを報告し、金融の引き締まりの影響を指摘した。複数の銀行経営者は融資意欲が 「ダイエット」状態にあるとした。
クリーブランド地区連銀は経済活動にほとんど変化がなかったと報告した3地区のうちの1つ。賃金の伸びが鈍化し、物価上昇圧力が緩和したことから、新たなひずみが生じていると指摘した。ある小売業者は「消費者が財布のひもを締めているように見えるので、私たちは現状を維持できるように努力する」と述べた。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、米政府が抱える33兆5000億ドル(約5000兆円)もの債務に対する投資家の不安にどう対応すべきか苦慮しており、今後、潜在的な政策の落とし穴に直面する可能性がある。
米財政の先行きに対する懸念は既に米国債利回り上昇の一因となり、政策当局者を驚かせ、追加利上げの先送りを検討させている。
米国の財政難に対するウォール街の懸念はFRBの二大責務の両方にリスクをもたらしている。
赤字と債務をめぐる不安は長期金利に上昇圧力をかけ、成長を鈍化させ、失業率を押し上げる恐れがある。同時に、FRBが連邦政府の借り入れコストを抑えるために物価安定の目標を軽視していると受け止められれば、なおさらインフレの火種となり得る。
2002-06年にジョージ・W・ブッシュ元大統領のアドバイザーを務めたケビン・ウォーシュ元FRB理事は「投資家が米財政の持続可能性をどう見るか、その根本的な変化の始まりを目にしている」と述べた。
国債価格が下落し、指標となる10年債利回りは今年最低だった4月6日の3.31%から今月17日には4.83%まで上昇した。この背景には、確かに他の力も働いている。その最たるものが、過去数十年で最も積極的な信用引き締めに直面しても米経済が底堅さを維持していることだ。
パウエルFRB議長は19日、ニューヨークのエコノミッククラブでの講演で自身の見解を述べる予定だ。
FRBウオッチャーは、10月31日-11月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で、利回り上昇によって政策据え置きの機会が与えられるとのコンセンサスをパウエル議長が暗黙のうちに支持すると予想している。
しかし、インフレ率は依然としてFRBの目標である2%を上回るペースで推移しているため、パウエル議長は年内の利上げの可能性を残すとみられる。
元FRBエコノミストで、マクロポリシー・パースペクティブズ創業者のジュリア・コロナド社長は「インフレ率が目標を大きく上回っている限り、追加引き上げの脅威は残るだろう」と語った。
ドナルド・コーン元FRB副議長は、一般的にパウエル議長や他の当局者は財政政策が経済や金利、中央銀行に与える影響について発言すべきだと述べた。
「少なくとも、金融政策と経済への影響について語ることができれば、この国の経済対話の一助になるだろう」と、現在ブルッキングス研究所のシニアフェローであるコーン氏は語った。
共和、民主両党の政権下で財務省当局者であったマーク・ソーベル氏はもっと率直だ。FRB当局者は米国の放漫財政が市場と経済に及ぼす潜在的な悪影響について、国民に警告する必要があると主張する。同氏はシンクタンクの公的通貨金融機関フォーラム(OMFIF)の米国議長を務める。
連邦予算が持続不可能な債務急増の道をたどっていることは長年、常識となっていた。しかし、最近の出来事が重なり、こうした懸念が前面に押し出されている。
フィッチ・レーティングスは8月、米国の格付けを最上級の「AAA」から引き下げた。先週発表された議会予算局(CBO)の試算によると、2023年度(22年10月-23年9月)の財政赤字は20%余り急増し、1兆7000億ドルに達した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国国家統計局が18日発表した9月の粗鋼生産は前月比5%減の8211万トンだった。8月は8641万トン。建設シーズンのピークで製鉄所が設備稼働率を上げたことから一部に出ていた増産予想が外れた格好。
前年同月比では5.6%減だった。
上海に拠点を置く国際証券会社FISのアナリスト、Pei Hao氏は「発表値はわれわれの予想をかなり下回った。入手可能なデータに基づけば、9月の数字は前月比、前年比ともに増加するはずだったので、このような大幅減の確かな理由を見つけるのは難しい」と述べた。
中国はロシアが主権や開発の利益を守ることを支持すると、習近平国家主席が言明した。モンゴル経由で中国とロシアを結ぶガスパイプライン事業については、事態の打開を模索する。
習氏は北京でロシアのプーチン大統領と会談。会談後に中国国営の中央テレビ(CCTV)は、習氏が中ロの関係深化は一時的なものではなく、長期的な解決策だと述べたと伝えた。
この報道によると、中国は穀物やエネルギーの安全保障確保に向けてロシアとの協力に意欲的で、中ロとモンゴル間の天然ガスパイプライン建設計画が可及的速やかに「大幅な進展」を遂げることを期待しているという。
プーチン氏は国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出されて以後、旧ソ連諸国を除く外国を初めて訪問し、17・18日に開かれた中国の一帯一路フォーラムに出席した。
両首脳はパレスチナとイスラエルの衝突についても「深い意見交換」を行ったとCCTVは報道。詳細には触れなかった。中国は2024年のBRICS首脳会議ロシア開催を支持するとも習氏は語ったと、CCTVは伝えた。
中国経済は7-9月(第3四半期)に予想を上回る伸びを示した。政府は景気支援を強化し、個人消費が持ち直す一方、不動産市場の低迷が引き続き足かせとなった。
18日発表された7-9月の国内総生産(GDP)は前年同期比4.9%増加。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は4.5%増だった。前期比では1.3%増と予想を上回った。
経済活動はここ数週間で安定化の兆しを示しており、政府の支援策による効果が表れ始めた。製造業活動が緩やかに持ち直しているほか、輸出の減少幅は縮小し、家計消費も回復しつつあり、政府が設定した通年のGDP成長率目標である5%前後の達成に向けた期待も広がっている。
国泰君安国際の周浩チーフエコノミストは「来年の成長鈍化リスクが残るものの、今回の短期的な経済モメンタムによって中国景気を巡る不透明感が少なくとも一部解消された」と話す。
ピンポイント・アセット・マネジメントの張智威チーフエコノミストは、「5%前後の成長率目標は達成されそうだ」と指摘。24年について「主な焦点は政府の新たな成長率目標と財政緩和がどの程度行われるかだ」と語った。
国家統計局の盛来運副局長は18日の記者会見で、5%前後の成長率目標の達成に関して「非常に自信がある」とした上で、その実現には10-12月(第4四半期)に4.4%超の成長率が必要になるとの見方を示した。
住宅販売の減少が続き、開発企業の資金繰り難も広がる中、不動産セクターがなお大きな足かせとなっている。国慶節(建国記念日)連休中の個人消費は政府が見込んでいたほどではなく、デフレリスクも残っている。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の大中華圏担当チーフエコノミスト、楊宇霆氏は「投資面は弱いままだが、消費は適度に持ち直したようだ」と分析。「中国当局は金融の安定により軸足を置くとわれわれは考えている。刺激策は『抑制的』にとどまるだろう」と述べた。
習近平国家主席がここ数年で最も深刻な国内経済問題への取り組みを迫られる中、中国の外交が融和的な方向へ変わりつつある。
緊迫化する中東情勢への対応に専念したい米国とすれば、こうした中国の姿勢は大歓迎だ。ただ複数の専門家の話では、中国の軟化は長期的な外交政策転換のシグナルとは言えず、すぐに従来のさまざまな国際的あつれきが復活する公算が大きい。
ロジウム・グループのアナリスト、ノア・バーキン氏は、中国は当面の間、商業分野で何も異変はないと世界を安心させたいと考えていると指摘。「中国指導部は外国人投資家に対して、米国やアジアと欧州におけるその同盟国との関係が一方的に悪化することはないと保証することに熱心だ」と述べた。
中国は先週、機密情報を外国に提供した疑いで3年以上も拘束していたオーストラリア人記者チェン・レイ氏を解放して同国との関係改善をさらに促進し、アルバニージー首相の訪中に道が開かれようとしている。
米中についても、近く北京で開催される防衛問題のフォーラムに米軍当局者が招待されて軍事交流面で雪解けの兆しが見えたほか、先週中国を訪れた米民主党上院トップのシューマー院内総務ら超党派議員団と、習氏が親しげに会話する場面があった。
さらに今週の巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議で、中国はスリランカ向け42億ドルの債務について再編に合意。デフォルト(債務不履行)に陥ったザンビアの債務再編を巡る覚書締結にも動いた。
中国外務省の報道官は、中国と米国は両国関係を健全で安定的に発展させる道筋に戻すことができると期待していると発言し、発展途上国との協力も中国が大いに重視している問題だと付け加えた。
<微笑みの裏側>
中国外交が変化した裏で、国内では習氏にさまざまな重圧がのしかかっている。例えば資金流出によって一段と深刻化してきた経済の落ち込みや、不動産危機、若者の高い失業率が挙げられる。
ジェームズタウン財団のウィリー・ラム上席研究員は「習氏は西側諸国に愛敬を振りまき、多国籍企業が中国から撤退するペースを緩め、世界のサプライチェーン(供給網)から中国が切り離されるのを防ごうとしている」と説明した。
南シナ海におけるフィリピンとの領有権争いでは一歩も引かない態度を見せている中国だが、途上国全般との政治、貿易面での結びつきは強化したがっている。それは経済的な理由だけでなく、習氏が推進するグローバルサウスを含めた「多極化世界」の構築につながるからだ。
一帯一路は借金を押しつけた一部の国を返済不能にさせる「債務のワナ」だという批判にも反論する意欲まんまんで、スリランカやザンビア向けの債務で譲歩したのは中国の主張を後押しする要素になるかもしれない。
北京にある「中国およびグローバル化研究センター」の幹部は「一帯一路の目的は常に途上国支援にある」と訴え、第二次大戦後に米国が欧州復興のために打ち出した「マーシャルプラン」に比すべきだと付け加えた。
一方、中国では外相だった秦剛氏が突然解任され、その後李尚福国防相も1カ月余り動静が不明になっていることで、米国に対して外交や安全保障の面で積極的な手を打ちにくい面もある。
こうした中で11月に米国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた習氏とバイデン米大統領の会談が実現するなどして、米中関係が安定すれば中国は一息つける。
もっとも、来年には米大統領選を控える。トランプ前大統領の挑戦を受ける可能性があるバイデン氏としては、特に半導体輸出や貿易関税を含めて中国が核心的問題とみなす領域で譲歩できる余地は乏しい。
来年1月の台湾総統選を前に、中国が台湾周辺で新たな軍事演習を実施すれば、西側との摩擦が再燃してもおかしくない。
アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の上席研究員で米中関係を専門としているザック・クーパー氏は「両国関係において根本的な緊張は残ったままで、今の状況はあくまで一時的な改善に過ぎず、ごく近いうちにもう一度悪化しそうだ」と予想している。
中国の不動産開発大手、碧桂園(カントリー・ガーデン)(2007.HK)の2025年9月満期のオフショア債は、利払い1500万ドルの猶予期間が終了した。支払いを行ったとの発表はなく、デフォルト(債務不履行)に陥ったとの見方が強まっている。
ある債券保有者は利払いを受けていないと語った。
利払いがされなければ碧桂園のオフショア債券全体が債務不履行(デフォルト)と見なされる。同社は約110億ドルの未償還のオフショア債券があり、デフォルトになれば中国企業としては過去最大級の債務再編が行われることになる。
碧桂園は18日、オフショア債務を全ては履行できないとの見通しを示した。現在の難局を解決するため、包括的な対策を模索したいとした。
発表文ではデフォルトとなったかどうかには直接言及していない。同社の関係者はコメントを控えた。
同社は先週、オフショア債務を履行できない可能性があると警告していた。
KTキャピタル・グループの上級アナリスト、ファーン・ワン氏は同じく経営難に陥っている中国恒大と碧桂園の大きな違いは、碧桂園がより良い企業とみられていたことだと述べた。
大手不動産開発会社のうち碧桂園は2021年に導入された3つの負債比率要件を全て満たした数少ない企業の一つだったが、中国恒大はどれも満たしていなかったと指摘した。
碧桂園の株価は18日は2.7%上昇、年初からは約70%下落している。LSEGのデータによると、同社のドル建て債券は額面当たり約0.06ドルと、年初の0.70ドルから大幅に下落した。
碧桂園のドル建て債を保有するある米資産運用担当者は「ある程度の損失を抱えて撤退する用意はあるが、中国恒大など他の企業と比べて再編プロセスが効率的で苦痛が少ないことを願う」と述べた。
クレジットサイツのアナリスト、ニコラス・チェン氏は、最近承認された融創中国(1918.HK)の債務再編計画は少なくとも1年半かかったと指摘し、碧桂園が債務再編となれば長い時間がかかる可能性が高いとの見方を示した。
中国の習近平国家主席は18日、北京で開いている巨大経済圏構想「一帯一路」フォーラムで、中国の「デカップリング(切り離し)」に反対すると述べ、中国経済への依存度を下げようとする米欧の取り組みを批判した。
また、10年前に提唱した同構想を自賛し、「青写真が現実のプロジェクトになった」と述べた。
フォーラムには主に「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国から130カ国以上の代表が出席。ロシアのプーチン大統領ら複数の国家元首も含まれている。
習氏は人民大会堂に集まった1000人以上の代表を前に「われわれは一方的な制裁、経済的威圧、デカップリング、サプライチェーン(供給網)の混乱に反対する」と演説。米欧を念頭に「他国の発展を脅威と見なし、経済的相互依存をリスクと見なすならば、われわれの生活は良くならず、発展は速まらないだろう」と述べた。
このほか、「グリーンインフラ、エネルギー、交通における協力の深化」と「人工知能(AI)ガバナンスのためのグローバルイニシアチブの推進」を約束した。
一帯一路は当初、中国と西欧を結ぶことを目的としていたが、欧州連合(EU)の高官は欠席。EU圏から出席した首脳はハンガリーのオルバン首相のみとなっている。
習氏に続いてプーチン大統領も演説し、一帯一路を賞賛。東西間の貿易を深化させることができるとする「北方航路」への世界的な投資を呼び掛けた。プーチン氏が壇上に立つと、数人の欧州当局者が会場を後にした。
オーストラリアのファレル貿易相は18日、11月5─10日に上海で開催される中国国際輸入博覧会(CIIE)参加のため訪中すると明らかにした。
オーストラリアが新型コロナウイルスの起源調査を中国に求めたことから、中国は2020年に多数の豪製品に禁輸措置を発動した。だが昨年、オーストラリアで新政権が誕生して以来、大半の規制が撤廃され、ファレル氏の訪中は両国関係の改善を示す新たな兆しとなった。
ファレル氏は今年5月、豪貿易相として4年ぶりに中国を訪れた。
同氏は講演で、CIIE参加が豪企業の製品・サービスの宣伝につながるよう期待すると発言。一方で、豪輸出業者は中国など単一の輸出先に過度に依存すべきではないとも指摘した。
米英など5カ国の機密情報共有の枠組み「ファイブ・アイズ」は17日、中国が知的財産を盗んでいるとの異例の共同声明を発表した。
中国が人工知能(AI)を使ったハッキングやファイブ・アイズ加盟国へのスパイ活動を行っているとしている。
ファイブ・アイズには米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加盟。声明は米シリコンバレーの民間企業との会合後に発表された。
米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は、今回の「前例のない」共同声明は、中国が世界中のイノベーションにもたらす「前例のない脅威」に立ち向かうことが狙いだと表明した。
ファイブ・アイズは、中国が量子技術、ロボット工学、バイオテクノロジー、AIなど、さまざまな分野で機密情報を盗んでいると指摘。
レイ長官は「中国は以前からさまざまな技術網を一斉に駆使して企業を標的にしている。サイバー侵入、スパイによる諜報活動、一見無害に見える企業の投資・取引などだ」とし「その網の一本一本が、より図太く、より危険になっている」と述べた。
これに対し、在ワシントンの中国大使館の報道官はロイターに対し、中国は知的財産の保護に力を入れているとし、「中国に対する根拠のない主張や中傷に断固反対する。関係機関が中国の発展を客観的かつ公正に評価することを望む」と表明した。
中国の習近平国家主席は17日、広域経済圏構想「一帯一路」の国際会議に合わせてインドネシアのジョコ大統領と会談し、デジタル経済や太陽光発電、新エネルギー自動車など新興産業における両国の協力拡大・強化に前向きな姿勢を示した。
国営の中国中央テレビ(CCTV)によると、習主席はインドネシアからの農水産物輸入を拡大する用意があるとも述べた。
また、両国は産業チェーンとサプライチェーン(供給網)の統合を深め、「地域の包括的経済回廊」の建設を共同で推進すべきとの考えも表明した。
ジョコ大統領は、インドネシアが経済発展・建設において中国を重要な戦略的パートナーとして見なしており、「中国との意思疎通と協力をさらに強化することを楽しみにしている」と述べた。
習氏は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の重要性を維持し、開かれた地域主義を推進し、主要途上国の責任を示すために、両国が緊密に協力すべきだと強調した。
●中東
●中南米・アフリカ
欧州連合(EU)理事会は17日、インド洋の島国セーシェル、カリブ海のベリーズとアンティグア・バーブーダを租税に関し「非協力的」と見なす国・地域のリストに追加した。
理事会は3カ国について、税務情報が不足しているか、もしくはガバナンスと透明性の改革に関する約束を履行していないと指摘した。
リストにはロシア、パナマなどカリブ海の6カ国・地域、太平洋の6カ国・地域も含まれている。
EUは加盟国に対し、外交・経済上の決定でリストを考慮し、当該国・地域に関連する取引や納税者の監視を強化することなどを求めている。
ブラジル中央銀行のガブリエル・ガリポロ理事(金融政策担当)は17日、中銀はインフレが緩やかになると想定していたものの、為替相場が金融政策に及ぼす影響を懸念しているとの見方を示した。
通貨レアルはここ数週間軟調。今月には一時1ドル=5.20レアル台に乗せ、3月以来の安値となった。通貨の下落は物価を押し上げる。
米国の利上げに伴い、新興国通貨は全般にドル高で打撃を受けており、ブラジル中銀は他の理事らも懸念を示している。
ガリポロ氏はムーディーズ主催のイベントで、「米金利が4.6%や4.7%になると、新興国にとって環境が厳しくなってくる。現時点でいくつかの課題がある。まずは国際シナリオにどう対応するかだ」と述べた。
●市況
<為替> ドルがユーロと円に対して上昇した。米国債利回りの上昇のほか、中東情勢の緊迫化を受けた安全資産の需要の高まりがドルの押し上げ要因になっている。
<債券> 10年国債利回りが上昇し、16年ぶりの高水準を記録した。米連邦準備理事会(FRB)当局者が「高金利は長期化する」と発言する中、国債発行への懸念が高まった。
<株式> 大幅安で取引を終えた。米債利回りが再び上昇したほか、米企業の四半期決算を受けた。
市場予想を上回る決算を発表したプロクター・アンド・ギャンブル(PG.N)は2.6%高。
モルガン・スタンレー(MS.N)は6.8%安。第3・四半期決算はディールメーキングが低調だった。 もっと見る
テスラ(TSLA.O)とネットフリックス(NFLX.O)は決算発表を受け、引け後に約2%、約12%、それぞれ上昇した。テスラは4.8%安、ネットフリックスは2.7%安で通常取引を終えた。
<金先物> 中東情勢を巡る先行き不透明感が強まる中、安全資産としての金に買いが入り、続伸した。中心限月12月物の清算値(終値に相当)は前日比32.60ドル(1.68%) 高の1オンス=1968.30ドルだった。中心限月の清算値ベースでは8月下旬以来約 1カ月半ぶりの高値水準。
<米原油先物> 需給引き締まり観測を背景とした買いが優勢となり、上伸した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日比1.66ドル(1.92%)高の1バレル=88.32ドルとなった。12月物は1.83ドル高の87.27ドル。
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。英消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を上回ったことから、イングランド銀行(英中央銀行)が追加の金融引き締めを決めるとの警戒感が強まった。
英製薬のアストラゼネカ(AZN.L)が5.8%と大幅下落したこともFTSE100種指数(.FTSE)の重しとなった。アストラゼネカが開発している肺がん患者向け新薬の後期臨床試験に関するデータ内容が一部のアナリストから失望され、売られる材料となった。
<欧州株式市場> 続落して取引を終えた。半導体関連銘柄などが売られたのが相場を押し下げた。
オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディング(ASML.AS)は3.4%下落。2023年第3・四半期の受注が市場予想を下回り、24年通期決算の売上高は横ばいになると警告したことが嫌気された。
同業のASMインターナショナル(ASMI.AS)は4.5%、BEセミコンダクター(BESI.AS)は0.8%それぞれ下げた。ドイツの同業アイクストロン(AIXGn.DE)は2.8%安。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが数年来の高水準に接近した。リスク選好の動きが低調な中、堅調な米経済指標を受け高金利長期化との見方が強まった。
米商務省が18日発表した9月の一戸建て住宅の着工件数(季節調整済み)は年率換算で前月比3.2%増の96万3000戸だった。中古住宅の供給が不足していることを背景に、新築住宅に対する需要が押し上げ要因となって大幅に増えた。
これを受け、欧米債への売りが強まった。
一方、中東情勢が緊迫化する中でリスク選好の動きは依然として弱く、安全資産としての債券の需要は維持されている。
日経先物31605、ダウ先33824、債先144.76、米4.937、独2.9110、仏3.546、西4.044、伊4.977、英4.7085、波5.764、原油87.01、銅7,979、ドル円149.75、ユーロドル1.0538
※10/19 9時20分頃

備忘録(2023/10/17)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
航空機エンジン大手の英ロールス・ロイス・ホールディングスは、全世界で最大2500人の従業員を減らす計画を発表した。トゥファン・アーギンビルギッチ最高経営責任者(CEO)の下で大規模な人員削減を行う。
同社は当局への届け出で、世界中の従業員の約6%に当たる2000-2500人が削減の対象になると説明。
事業再編の一環としてグラツィア・ビッタディーニ最高技術責任者(CTO)が来年4月に退社することも明らかにした。同CTOは2021年11月にエアバスからロールス・ロイスに入社した。
●その他産業
バイデン米政権は17日、米半導体大手エヌビディア(NVDA.O)などが設計したより高度な人工知能(AI)用半導体の中国への輸出停止を計画していると発表した。中国政府が軍事強化のために米国の最先端技術を入手するのを阻止することを目的とした措置の一環という。
30日以内に発効する今回の措置では、イランやロシアを含むより多くの国に対し、より広範囲にわたる高度な半導体および半導体製造装置を制限するほか、エヌビディアの元従業員が設立した中国の半導体製造新興企業2社をブラックリストに掲載する。
レモンド米商務長官によると、新たな措置は昨年10月に発表された規制の抜け穴を塞ぐことで中国の軍事開発を妨げることを目的としており、おそらく「少なくとも毎年」更新されるという。
措置の目的は「(中国の)軍事用途に不可欠なAIや高度なコンピュータの飛躍的進歩に拍車をかける可能性のある高度な半導体」への中国のアクセスを制限することであり、米政権は中国政府に対し経済的打撃を与えようとしているのではないと強調。中国は今後も数千億ドル相当の米国製半導体を輸入すると述べた。
中国大使館の報道官は、今回の措置に「断固反対する」と表明。「政治的な目的のために恣意的に制限を設けたり、強制的にデカップリングを求めたりすることは、市場経済と公正な競争の原則に反し、国際経済と貿易秩序を損なう」とした。
エヌビディアは声明で「あらゆる規則を順守している」とし、「当社の製品に対する世界的な需要を考慮すると、当社の業績に短期的に有意な影響はない」とした。
●決算関連
米医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)(JNJ.N)が17日発表したコンシューマーヘルス部門を除く2023年通期の調整後1株利益見通しは10.07─10.13ドルで、従来の10.00─10.10ドルから上方修正した。
医薬品部門の好調な販売状況が追い風になっている。第3・四半期の同部門売上高は138億9000万ドルで、特に乾癬治療薬「ステラーラ」は28億6000万ドルと、アナリスト予想の26億1000万ドルを上回った。
医療機器部門の第3・四半期売上高は74億6000万ドルで、アナリスト予想の75億8000万ドルに届かなかった。医療機器部門のうち整形外科領域の幾つかの製品に関しては、向こう2年間で進める事業再構築計画の一環として販売を中止するという。
J&Jはコンシューマーヘルス部門のスピンオフに続き、こうした事業再構築を通じて医薬品部門に資源を集中する姿勢が鮮明になりつつある。25年までには医薬品の売上高を570億ドルにする目標も掲げている。
第3・四半期の特殊要因を除く1株利益は2.66ドルで、アナリスト予想を0.14ドル超えた。
ゴールドマン・サックス・グループの7-9月(第3四半期)は、トレーディング収入がアナリスト予想を上回った一方、不動産投資の評価損が2四半期連続で利益を押し下げた。
不動産投資で2億1200万ドル(約320億円)の損失を計上したほか、3億5800万ドルの減損が響き、純利益は33%減の大幅減益となった。トレーディング収入は13%減のアナリスト予想に対し、ほぼ前年並みだった。
投資銀行業務が低迷し、合併・買収(M&A)活動の回復が疑問視された四半期において、トレーディングの堅調は際立った。バンカーらは投資銀行業務が底を打ち、2024年には平常に戻ると期待しているが、米国の政治的不透明性と金利がさらに上昇するリスク、世界各地で激化する紛争などが原因で、資本市場に回復が芽生える初期の兆候は遅々として進んでいない。
デービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は発表文で「資本市場と戦略的活動の両方において、好条件が続けば継続的な回復が見込まれる」とした上で、「M&A助言と株式引き受けのリーダーとして、活動回復は間違いなくゴールドマンにとって追い風となるだろう」と付け加えた。
ゴールドマンの決算は8四半期連続の減益。自己資本利益率(ROE)は7.1%と、同社が設定した目標である10%台半ばを大きく下回ったままだ。
消費者金融事業の拡大戦略を反転させ中核事業への集中にかじを切ったソロモンCEOは、株価の回復を望んでいる。
●先進国、グローバル、金融市場
最新のマーサーCFAインスティテュート・グローバル年金指数で、オランダが世界一の年金制度の座に返り咲いた。マーサーは退職後の生活が全世界でかつてないほどの圧力にさらされていると警告した。
年金制度の適切性と持続性、全体性を評価した同指数によると、昨年トップだったアイスランドが2位、デンマークは3位となった。そのほかではイスラエルのみが「A」の評価を得た。
オランダは現在、年金制度を集団型から個人型へと改革中だが、強固な資産基盤と健全な規制に支えられ、改革後も良好な給付を提供するとリポートは説明している。
しかし、ほとんどの国の年金制度は人口高齢化、政府債務の増加、高インフレによってストレスにさらされており、またギグエコノミー労働者の取り込みなどの課題にも直面している。
マーサーのシニアパートナーでリポートの主執筆者、デービッド・ノックス氏はインタビューで「もはや社会保障や公的年金だけに頼ることはできない」と述べた。
アルゼンチンは調査対象47カ国中最下位、米国は22位だった。オーストラリアは5位、英国は10位、日本は30位、中国は35位。
リポートによると、出生率の低下は長期的に幾つかの国・地域と年金制度に圧力をかけており、イタリアやスペインのような国の持続可能性のスコアに悪影響を及ぼしている。また、中国、韓国、シンガポール、日本などアジアの幾つかの国は過去5年間にスコアを改善するための改革に取り組んだとしている。
ドイツの投資家心理は10月に、3カ月連続で改善した。1年以上続いた利上げが終了し、ドイツ経済が現在の低迷を脱することができるとの期待が示された。
ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が17日発表した10月の期待指数はマイナス1.1と9月のマイナス11.4から上昇した。予想はマイナス9だった。現状指数は若干悪化した。
ZEWのバンバッハ所長は発表文で「最悪期は過ぎたようだ」とし「経済への期待の高まりは、インフレ率がさらに低下するという予想と、回答者の4分の3以上がユーロ圏の短期金利の横ばいを予想しているという事実に伴うものだ」と説明した。
ドイツ経済は、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した冬季の景気後退の後、2023年後半も低迷に直面しているが、来年には回復の兆しがある。政府は、インフレ低下と賃金上昇が内需の活性化につながり、成長率は1.3%まで回復するとみている。ブルームバーグの調査によれば、エコノミストは微弱な回復にとどまると予想している。
日本労働組合総連合会(連合)は、2024年の春闘での「基本構想案」をまとめ、ベースアップ相当分として3%以上、勤務年数などに応じた定期昇給分を含めて5%以上の賃上げを要求する方針案を固めたとNHKが17日、関係者の話を基に報じた。
報道によると、関係者は来年の春闘は経済も賃金も物価も安定的に上昇する経済社会へのステージ転換を図る正念場で、その最大の鍵は持続的な賃上げの実現だとしている。19日に正式決定される見通しという。
約30年ぶりの大幅な賃上げを実現した23年春闘の基本構想では、ベースアップを3%程度、定昇分を含む賃上げを5%程度とする目標を掲げていた。来年に向けて岸田文雄政権が「持続的な賃上げ」を求める中、連合としても表現を強めた形となる。
イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突でインフレ圧力が生じるかを見極めるため、欧州中央銀行(ECB)は原油価格に注目していると、ラガルド総裁がユーロ圏加盟国の財務相に語った。事情に詳しい関係者が明らかにした。
匿名を要請した関係者によると、ラガルド総裁は16日にルクセンブルクで開かれた非公開協議で述べた。ECB報道官はコメントを控えた。
イスラエルとハマスの衝突に市場の反応は抑制されているが、事態がエスカレートすれば原油価格は1バレル=100ドルに達する可能性があると一部のアナリストは指摘。ECBは9月に発表した経済予測で2025年にインフレ率が2%に低下すると見込んだが、原油価格が今年の82.7ドルから25年に77.9ドルに下落するとの見通しを前提としている。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は今月の政策決定会合で再利上げを検討したものの、オフィシャル・キャッシュレートの誘導目標を4会合連続で据え置く根拠が「より強い」と判断したことが、17日に公表された議事要旨で明らかになった。ブロック新総裁の下での慎重な政策スタンス堅持を示唆した。
議事要旨(10月3日開催分)によれば、豪中銀は2022年5月以降、計4ポイントの利上げを実施し、キャッシュレートの誘導目標を4.1%まで引き上げたが、想定以上に景気を減速させる可能性があるとして、据え置きを選択した。
政策委員会メンバーは政策効果の浸透が遅れているほか、借り入れコストの上昇がすでに需給を調整し始めていると指摘した。
豪中銀は「今回の会合でキャッシュレートの誘導目標を据え置いたのは主に、金利が短期間に大幅に引き上げられ、引き締め政策の効果が経済活動やインフレに関するデータで十分に示されるのは数カ月後との観測に基づくものだ。また、労働市場は転換期を迎えており、中国経済の苦境が封じ込められなければ、豪州の成長鈍化につながる可能性がある」と分析した。
インフレ率が中銀目標の2-3%を「かなり上回っている」ことから追加引き締めの可能性はなお残されているものの、利上げには経済指標に上向きサプライズが必要だと当局は示唆している。
エコノミストは年内にあと1回の利上げを見込んでいるが、金融市場は引き締めサイクルはほぼ終了したとみている。
議事要旨によると、「インフレ率が現在予想されているより目標水準への戻りが遅くなる可能性を政策委はさほど容認し得ない。従って、さらなる利上げが必要かどうかは、今後発表される統計と、それが経済見通しとリスク評価の進展をどう変化させるかに左右される」と説明している。
富国生命保険は金利先高観が強まっていることを受けて2023年度下期は円債投資を手控える方針だ。一方で、米長期金利の上昇に加えて円高リスクが低減していることから、当初計画に反して上期にオープン外債への投資を1550億円増やした。鈴木善之執行役員・財務企画部長が明らかにした。
鈴木氏は16日のインタビューで、日本銀行のマイナス金利政策の解除が24年4月前後と当初想定より早くなりそうなことを受けて金利先高観が強まっており、円債は「急いで買わなくてもいいかなというのが今の考えだ」と言明。下期は「全く買わなくてもよい」と述べた。
富国生命は生命保険会社の下期運用方針公表の皮切りとなる。日銀の政策修正観測が強まり金利に上昇圧力がかかる中、国債、特に超長期債の受け皿として生命保険会社の運用姿勢に対する注目度は高い。富国生命は一段の金利上昇を待つ方針で、他の生保もこれにならえば金利をさらに押し上げる可能性もある。
円債投資は4月の当初計画で3200億円、5月決算発表時に3800億円と、同社としては「過去に例を見ない規模の積み増し計画」を立てた。上期の実績見込みは2850億円に達したが、計画の未達分は「24年度に繰り越すことを検討している」と言う。
一方、内外金利差は24年度、25年度も急激には縮小しないとみており、急速な円高リスクは想定しにくいと指摘。「米ドル建ての債券の魅力度、特にオープン外債で保有する魅力度が上がった」と鈴木氏は語る。ヘッジ付き外債は全額売却済みで、新規投資資金1000億円と合わせオープン外債に1550億円振り向けたという。5月決算発表時は900億円減少の計画だった。
鈴木氏は「大きな流れとして円債投資への回帰は多分変わらない」としつつも、「次の金利上昇が思っていたよりも早く来そうだ」として、円債投資については当面状況を静観する構えだ。
10年債利回りの23年度末の想定は日銀が事実上の上限とする1%、20年債利回りが1.8%と、いずれも4月時点から20ベーシスポイント(bp)引き上げた。鈴木氏によると、同社の平均予定利率は1.6%台後半のため、20年債利回りがこれを上回る1.8%まで上昇すれば「買ってもいいかな、少し魅力としてはいいかなという水準だ」としている。
資産運用会社のフィデリティ・インターナショナルは、同社初のダイレクトレンディング(直接融資)ファンドを立ち上げ、オランダの歯科関連サービス会社クリニアス・デンタル・グループにローンを提供する。
フィデリティは16日の発表文で、クリニアス向けにシニアファイナンス(他の債権者よりも優先的に弁済を受けられるリスクの低いローン)のパッケージを提供することを明らかにした。クリニアスは、同社経営陣が投資会社ベンシスと共同で所有する。
発表文によると、約7500億ドル(約112兆2000億円)の資産を運用するフィデリティは、主に北欧および西欧を拠点とする中堅企業向けのシニア有担保ローン提供に特化したルクセンブルク籍の新規ファンドを立ち上げ、今回のローン提供はその一部を構成するものだという。また、同ファンドは、欧州連合(EU)の「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」第8条に分類される見通しという。
1兆5000億ドル規模のプライベートクレジット市場に照準を定めたファンドの投入が相次いでおり、フィデリティもこれに加わることになる。プライベートクレジットファンドは通常、パプリック(公開)市場で取引されている株式や債券に投資するファンドよりも手数料が高く、多くの投資会社がプライベートクレジット関連の投資商品提供を目指して、専門チームのための人材獲得やニッチ分野の事業買収を進めてきている。
フィデリティのプライベートレンディング部門は現在20人近い人材を抱える。同社は2021年以降、プライベート市場の事業拡大に向けて約70人のスタッフを採用してきた。広報担当は新規ファンドの規模およびクリニアスとの取引条件についてコメントしていない。
イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会のディングラ委員は17日、最近の労働市場のデータで経済の軟化が示されており、賃金の伸び鈍化とインフレ圧力の低下につながる可能性が高いと述べた。
王立経済学会主催のイベントで「労働市場が本格的に緩みつつある今、さらなる賃金上昇の勢いがどこから来るのか想像するのは非常に困難だ」とし「国内インフレ圧力の緩和が見られるはずだ」と述べた。
この日発表された7─9月の求人件数は2年ぶり低水準。6─8月の賃金(ボーナスを除く)の伸びは前年比7.8%上昇と、1月以降で初めて鈍化した。
5─7月の賃金は過去最高の7.9%上昇だったが、ディングラ氏は中銀のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏と同様、労働市場の力強さが過大に示されていると指摘。「他の指標や、さらに重要な先行指標を見ると、賃金の伸びは5─6%台だ」と述べた。
今年、一貫して利上げに反対票を投じているディングラ氏は「より緩やかな金利の道筋をより長期間続ける方が望ましい。企業と家計にはるかにバランスとの取れた波及効果を与えることができ、非常に高い水準への利上げに伴う激しい浮き沈みを回避できるためだ」と述べた。
世界鉄鋼協会は17日、2023年の世界鋼材需要が22年比1.8%増の18億1450万トンになるとの見通しを発表した。23年4月に発表した前回予想の18億2230万トン(同2.3%増)から下方修正した。金融引き締めの影響で世界経済が減速していることを反映した。
最大消費国である中国の23年の鋼材需要は9億3930万トンと、22年比で2.0%のプラスを見込む。23年まで続いた不動産市場の低迷が響き、中国経済は減速している。一方で7月以降中国政府が経済安定化策を講じていることから、伸び率は前回予想から据え置いた。
欧州連合(EU)に英国を加えた地域の需要は、22年比5.1%減の1億4430万トンになるとした。前回予想の1億5130万トン(同0.4%減)よりも下落幅が拡大した。高金利とエネルギーコストが製造業活動に打撃を与えている。 
世界2位の消費国であるインドの鋼材需要は、22年比8.6%増の1億2610万トンとなる見込みだ。前回予想(同7.3%増)からは上方修正した。日本は22年比2%減の5390万トンとなる見通し。前回予想時(同4.0%増)から減少に転じた。自動車産業は回復するが労働力不足などで建設活動が伸び悩む。
24年の世界鋼材需要が23年比1.9%増の18億4910万トンになるとの見通しも発表した。中国不動産市況が安定し、新興国の成長も寄与するとみている。一方ロシア・ウクライナや、イスラエル・パレスチナなどの情勢不安による原油価格上昇や経済的分断が鉄鋼需要の下振れリスクになる。
米商務省が17日発表した9月の小売売上高(季節調整済み)は前月比0.7%増えた。増加率はロイターがまとめた市場予想の0.3%を上回った。自動車購入やレストラン・バーでの消費が増えたことが押し上げ要因となった。
8月分は当初発表の0.6%増から0.8%増へ上方改定された。
FWDBONDS(ニューヨーク)のチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「消費が一服していないのは確実で、経済は高金利長期化という新常態に慣れつつあるようだ」と指摘。「連邦準備理事会(FRB)当局者らは年内の追加利上げを見込んでおり、経済指標のエコノミストを驚かせるような上振れが続けば、利上げを実施する必要があるだろう」と述べた。
9月の前年同月比は3.8%増だった。
小売売上高は大部分が商品(モノ)で構成され、インフレ調整をしていない。
労働市場の逼迫は引き続き個人消費をけん引しており、9月には33万6000人の雇用が創出された。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の間に蓄積された貯蓄は、以前の推定額を上回っている。
自動車の売上高が1.0%増加。8月は0.4%増だった。ガソリン価格の上昇を背景にガソリンスタンドの売上高は0.9%増。自動車とガソリンスタンドを除く小売売上高は0.6%増だった。
オンライン売上高は1.1%増。8月は0.4%増だった。10月は米アマゾン(AMZN.O)の有料会員向けセール「プライムデー」実施などを受けオンライン売上高が増加する可能性がある。
外食は0.9%増。8月は0.4%増だった。エコノミストは外食を家計の重要な指標とみなしている。ヘルスケア・パーソナルケア製品、雑貨店、食料品店の売上も増加した。
一方、家電・電化製品は0.8%減。建設資材・園芸用品が0.2%減だった。家具は変わらずだったが、衣料品は0.8%減少した。
スポーツ用品・趣味・書籍・楽器は変わらずだった。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、ジェイ・ホーキンス氏は「現時点では米消費者の支出意欲を過小評価するのは時期尚早だ」と述べた。
自動車、ガソリン、建築資材、外食を除くコア小売売上高は0.6%増。8月分は0.2%増と、当初発表の0.1%増から上方改定された。
コア小売売上高は国内総生産(GDP)統計の個人消費の動向を反映する傾向がある。個人消費は7月に急増したことで、2023年第3・四半期の伸びが加速したと予想されている。サービスへの支出も引き続き堅調で、消費全体を押し上げる見込みだ。
第3・四半期のGDPは年率換算で前期より最大5.1%増えると予想されている。第2・四半期は2.1%伸びていた。
モルガン・スタンレー(ニューヨーク)のチーフエコノミスト、エレン・ゼントナー氏は「今回の小売売上高は、第3・四半期を通じて個人消費にさらなる勢いがあり、基調的な強さが強まっていることが裏付けられた。こうした状況は第4・四半期にも引き継がれる可能性がある」と述べた。
一方、持続的・安定的な物価2%を見通せる状況には至っていないとの日銀の見方には変わりはないという。海外経済を中心に先行きが不確実な情勢が続いており、25年度については従来の1.6%から大きく変わらない見通しだとしている。
鍵を握る来年の賃上げの見極めには時間を要するものの、人手不足の強まりや高水準の企業収益などを背景に、日本経済は賃金・物価の好循環に向けた動きが継続。日銀が重視する基調的な物価の動きも、中長期的なインフレ期待が底堅さを維持するなど改善基調にある。
ドイツの投資家心理は10月に、3カ月連続で改善した。1年以上続いた利上げが終了し、ドイツ経済が現在の低迷を脱することができるとの期待が示された。
ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が17日発表した10月の期待指数はマイナス1.1と9月のマイナス11.4から上昇した。予想はマイナス9だった。現状指数は若干悪化した。
ZEWのバンバッハ所長は発表文で「最悪期は過ぎたようだ」とし「経済への期待の高まりは、インフレ率がさらに低下するという予想と、回答者の4分の3以上がユーロ圏の短期金利の横ばいを予想しているという事実に伴うものだ」と説明した。
ドイツ経済は、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した冬季の景気後退の後、2023年後半も低迷に直面しているが、来年には回復の兆しがある。政府は、インフレ低下と賃金上昇が内需の活性化につながり、成長率は1.3%まで回復するとみている。ブルームバーグの調査によれば、エコノミストは微弱な回復にとどまると予想している。
全米ホームビルダー協会(NAHB)とウェルズ・ファーゴが発表した10月の住宅市場指数は、9カ月ぶりの低水準となった。住宅ローン金利の上昇と値ごろ感の低下による住宅用不動産への悪影響を示す新たな兆候となった。
住宅ローン金利の上昇と住宅価格の高騰のため、この1年の大半は購入マインドと販売が圧迫されてきた。中古住宅の在庫が限られる中、多くの購入希望者は新築購入に動いているが、住宅ローン金利は過去20年間で最高水準に急上昇しており、より広範な後退を招く危険性がある。
NAHBのアリシア・ヒューイ会長は発表文で「金利上昇のため、一部の購入者、特に若年層が市場から閉め出されており、建設業者は客足の減少を報告している」と指摘。金利上昇で建設業者の開発・建設費も上がっており、「これは供給に悪影響を及ぼし、住宅の値ごろ感を低下させる一因となっている」と分析した。
現況指数、見通し指数、購買見込み客足指数はいずれも年初来の低水準。住宅市場指数は4地域全てで前月から低下した。
現在の高金利環境下において、購入者に取引を成立させるため、多くの建設業者がインセンティブを提供している。今月、あらゆる種類の購入者優遇策を提供した業者の割合は62%に上昇し、昨年12月に記録した今サイクルの最高値に並んだ。
●中国・アジア・ロシア・東欧
米利上げ長期化懸念と世界的な緊張の高まりがリスク資産を圧迫する中で、アジア新興国の政策当局は自国通貨を守るため非伝統的な手法に目を向けている。
アジア通貨は特に資金流出にさらされている。アジアのベンチマーク金利は一般的に他の新興国地域よりも低いため、米国との金利差が大きい。
各中央銀行が利上げを見送る中で、政策当局は債券市場を通じて介入している。インド準備銀行(中銀)は今月、資金を吸収するため債券売りを増やすことを検討していると発表した。
インドネシア銀行(中銀)は9月、資金流入を促すために新たな証券を発行。中国は人民元需要を高めようとオフショアで過去最高額の元建て国債を発行する。
クレディ・アグリコルCIBの新興国市場担当シニアストラテジスト、エディ・チョン氏(香港在勤)はインドネシアやインドが資金呼び込みを図るため高利回り債の発行を増やしていることについて、「外貨準備に頼らず自国通貨を支える新しい手法で、かなり賢いやり方だ」と述べた。
市場操作や債券発行は、利上げ回避に伴う通貨安に対応し外貨準備を使い果たすか、利上げして景気を抑制するかの選択を迫られるジレンマから抜け出す一つのやり方ではある。
ブルームバーグのドル指数が7月の安値から6%余り上げているのは、根強いインフレと堅調な米経済データを背景にトレーダーが米連邦準備制度の利上げ観測を強めているためだ。同時に、ロシアのウクライナ侵略とイスラエル・ハマス紛争が原油価格とドル買い需要を押し上げている。
アジア通貨の見通しは、世界の新興市場指数にとって大きな意味を持つ。MSCI新興市場通貨指数における人民元とインド・ルピー、インドネシア・ルピアのウエートは合わせて45%に達する。
JPモルガン新興市場国債指数では中国とインドの国債は計22.2%を占めているとJPモルガンの担当者は説明している。
インドの外貨準備高が減っているのは、インド中銀がルピーを支えるため外貨準備を今年使ったことを示唆している。
同中銀は10月6日の会合で、余剰資金を吸収し、利回りを押し上げることでルピーを支える債券売却計画の可能性を発表し、新たな一歩を踏み出した。
インドがこれまで採用してきた措置はおおむねうまくいっており、ほとんどの新興国が通貨安に陥っているにもかかわらず、ルピーは今年ほぼ横ばいで推移している。
インドネシア中銀は9月半ば、資金流入をさらに促そうと「インドネシア銀行ルピア証券」(SRBI)と呼ばれる短期証券の発行を開始。グローバル投資家はSRBIを通じ短期の為替リスクエクスポージャーを取ることが可能だ。インドネシア国債の売りが膨らむ中でのSRBI導入だった。
みずほ銀行の経済・戦略責任者ビシュヌ・バラサン氏(シンガポール在勤)は「インドとインドネシアの措置は外貨準備の慎重な利用も考慮した非常に創造的な通貨支援の補完だ」と指摘。「特に、外貨準備の取り崩しはもろ刃のつるぎであり、資金枯渇の可能性があるとの懸念が生じれば、突如として売りが強まる恐れもある」と述べた。
中国は人民元を支えるため、さまざまな手段を講じている。政府は10-12月期の人民元建て国債発行が260億元(約5300億円)になると発表。これで2023年の発行総額は過去最高の550億元に達する。投資家は元建て国債発行の主な目的について、人民元需要を高めることで元相場を支援することだとみている。
中国人民銀行(中銀)は先月、人民元のオフショア取引に介入し、香港で人民元を借り入れる際の銀行間コストを引き上げ、元安を見越した取引の魅力を低下させた。
こうした措置の一部には、それなりの副作用も伴う。中国の場合、国債を保有する投資家はキャッシュレートが上昇するにつれてヘッジが難しくなっている。
日興アセットマネジメントのグローバルマルチアセット共同責任者ロバート・サムソン氏(シンガポール在勤)は、「人民銀が唐突にオフショアのキャッシュレートを引き上げたことで突然、中国国債が魅力的ではなくなった。ヘッジができず、その通貨に懸念があるのなら、どうやって保有すればいいのか分からない」と語った。
ロシアのプーチン大統領は2022年2月の中国訪問で習近平国家主席から「限界のない」パートナーシップという約束を取り付けた。  
プーチン氏はそれから1カ月を経ずして、ウクライナへの武力侵攻を開始。今や中国の経済支援と自ら招いた政治的孤立からの脱却を必要としている同氏は17日、再び北京に戻った。習氏が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議が北京で同日開幕する。
両首脳の会談が、パレスチナ自治区ガザを実効支配しているイスラム組織ハマスとイスラエルの紛争の陰に隠れることは避けられそうもない。
米国と欧州連合(EU)はハマスをテロ組織に指定。ブリンケン米国務長官は中国に対し、ハマスを支援するイランとの友好的な関係や中東における影響力を生かし、紛争の拡大を防ぐよう求めた。習氏、そしてイランに接近しているプーチン氏への圧力は一段と強まっている。
ウクライナ侵攻開始から1年8カ月がたち、ロシアの対中依存は経済のあらゆる面に及んでいる。今のところ、プーチン、習両氏は首脳会談で2国間関係の強化に焦点を絞ると予想されている。
西側諸国がロシアとの貿易関係を断つ中で、中国の対ロシア輸出は今年57%急増。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)がまとめたデータによると、モスクワでの外国為替取引額で人民元が占める割合は22年1月のわずか0.4%から今年9月時点で半分近くに増えた。中国は現在、ロシア産化石燃料最大の輸入国だ。
プーチン氏にとって、今回の訪中は国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出されて以後、旧ソ連圏訪問を除けば初めての外遊となる。ロシアは中国からの経済支援を確固たるものにし、中国政府に新しいガスパイプラインに関する協定に調印するよう働きかけたい考えだ。
習氏としては、新たな世界秩序のビジョンを構築する上で強力なパートナーとなる信頼に足るロシアを必要としている。それは、西側諸国、特に米国とその同盟国に対する長きにわたる不信と、台湾を巡る中国の立場を強めたいという願いに基づくものだ。中国が領土の一部と見なす台湾に米国は支援を約束している。
習氏にとって、プーチン氏は重要な一翼を担う。すぐにはあり得ないだろうが、実際にもし中国が台湾に侵攻するようなことがあれば、ロシアは食料や燃料の供給を確保し、国連安全保障理事会で政治的な援護をする可能性がある。
だが、中国とロシアの間には不穏な雰囲気も漂う。中国がロシアとの関係で得ているのは一定の自動車・テレビ・スマートフォン市場と、値引きされたロシア産石油・ガスを除けばほとんどないと北京の一部専門家や学者は分析。このため、プーチン氏に賭けるギャンブルの度が過ぎるのではないかという疑念も浮上している。
ワルシャワのヤクブ・ヤコボフスキ東方研究センター副所長は「習氏にとってプーチン氏は理想的なパートナーではないと思う。習氏はもっと大きなことを望んでいた」と指摘。ロシアが始めた戦争に関与したくない「中国エリート層の一部からすれば、プーチン氏は習氏にとって一段と重荷になっている」と述べた。
中国共産党の総書記でもある習氏は、国内でもっと差し迫った問題を抱えている。経済成長の減速で社会不安が増大する可能性が高まっているほか、ここ数カ月で外相と国防相を事実上更迭したもようだ。中国の核兵器を管理するロケット軍の幹部も刷新された。
米国は先端技術の対中輸出規制を強化し、EUは中国から輸入している電気自動車(EV)の補助金調査に着手した。EUの行政執行機関である欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)はウクライナに対する中国の姿勢が、EUの対中投資意欲を減退させていると警告している。
マレーシアのマラヤ大学で中国研究所所長を務め、中国政治について多くの著書があるヌゲオウ・チャウ・ビン氏は「中国とロシアが同じカテゴリーに分類され続ける限り、欧米などとの橋渡し役」になれないことを中国政府は憂慮しているとし、「中国はどちらの側からも頼れる存在として自らをアピールしたいと考えている」との見方を示した。
プーチン氏は習氏が13年に中国国家主席に就任した後、初めて訪中した外国首脳だ。その後10年間、両首脳は親密な関係にあるとしばしば言われてきた。19年にはタジキスタンで習氏の誕生日を共に祝った。
プーチン、習両氏が最後にモスクワで会ったのは、ICCがプーチン氏に逮捕状を出した数日後の今年3月だった。ロシアのテレビで今週放送されたインタビューで、プーチン氏は習氏との関係について、「もしわれわれが何かに合意すれば、双方が互いの責任を果たすと確信できる」と語った。
しかし、欧州を拠点とするある外交官は、2人の関係性には同志間の抗争のような側面もあると主張する。
両国の関係はしばしば緊張し、時には公然と敵対してきた。1969年の国境紛争では、当時のソ連が中国に対して核兵器の使用をちらつかせた。EU担当の中国外交官だった王義桅・中国人民大学国際事務研究所所長によれば、この「核の脅し」がウクライナに対する同じようなロシアの威嚇に中国が反対する理由の一つだという。
中国政府にとってもう一つの「レッドライン」は、国連憲章にうたわれている領土主権の原則だ。中国は台湾を巡る自国の見解を強化しようと常にこの原則に触れている。習氏はまた、北大西洋条約機構(NATO)拡大に対するプーチン氏の懸念を共有しているように見える。だが、それは全面的なロシア支持を示すものではない。
親モスクワ派は「ロシアの領土奪取を支持している」のではなく、「西側の覇権に対抗するロシアの行動を評価している」のだと王氏は言う。「多くの人々がロシアを嫌い、ロシアを批判している」とも話した。
両国間で緊張が生じている分野の一つが、習氏肝いりの一帯一路だ。中国は1兆ドル(約150兆円)規模のこのプロジェクトを通じ影響力拡大を図っており、ロシアの裏庭である中央アジアに足を踏み入れている。
今のところ、ロシアは対中関係の不均衡についてほとんど何もできない。BEのロシア担当エコノミスト、アレクサンダー・イサコフ氏によると、「ロシア政府は国内経済を維持するため中国の協力をしかたなく必要としている」という。
ロシアの製造業は長期的には中国からの投資が必要だ。自動車産業のような分野では、欧米企業の撤退で生じた空白を埋めるため支援を得なければならず、ロシアにある乗用車工場14カ所のうち、稼働しているのはわずか8工場だ。
BEの分析によれば、中国の小規模な自動車メーカーはすでにロシアで生産を行っているが、生産台数を22年の45万1000台からウクライナ侵攻前の約140万台に戻すには、さらに大手2、3社がロシアに組み立てラインを設置することが求められる。
世界の外貨準備高のわずか3%しかない人民元の国際化は、世界の金融システムにおける米国の支配に挑む中国政府にとって、一つの戦線と見なされている。
ロシア輸出決済での人民元の使用は、ウクライナ侵攻前のゼロから今年8月には29%に達し、輸入での人民元使用は4%から38%に増加した。
ただ、米スティムソン・センターのシニアフェローで東アジアプログラム共同ディレクターを務めるユン・スン氏は、中国は自国の優位性を強く押し出すことはできないと説明。
「ロシアが今陥っている戦略的な窮地が永遠に続くわけではない。中国政府にとっての焦点はロシアがどれだけ譲歩する用意があるかということでは必ずしもない。中国がどのようなコストを背負う必要があるかが問題だ」と語った。
中国不動産開発大手の碧桂園の2025年償還の米ドル建て債保有者は17日、まだ利払いを受けていないと明らかにした。当初の支払期限は先月だったが、猶予期限に入っており、それも近く終了する。同社初の米ドル建て債デフォルト(債務不履行)が近づいている。
25年償還債の保有者2人が、香港時間17日正午(日本時間午後1時)時点でまだ利払いを受けていないと述べた。公に語る権限がないとしてが匿名を条件に語った。
中国の広範な不動産債務危機の象徴となっている碧桂園は先月、1540万米ドル(約23億円)の利払いについて当初の期限までに履行しなかった。このドル建て債には30日間の猶予期間が設けられているが、同期間は10月17-18日で終了する。それを過ぎればデフォルトが宣言され得る。
利払い期限の9月17日が日曜で事実上の期限が翌日の18日だったことから、猶予期間の終了についても10月17、18日いずれなのかははっきりしていない。
今回の期限はかつて中国不動産デベロッパー最大手だった同社にとって最初の大きな試練となる。同社は10日、オフショア債務について、期限までに支払い義務の全てに応じることはできない見通しを発表し、債務不履行と再編に向かっていることを強く示唆していた。
米ドル建て債残高が99億米ドルに上る同社が債務再編となれば、中国最大級となる。
同社はこれまでのところ、オンショア債の返済期限延長などでデフォルトを回避している。先週は「特定の負債下」で期限が到来した元本残高4億7000万香港ドル(約90億円)相当の支払いができていないことも明らかにしていた。
碧桂園に17日に取材を試みたが返答はなかった。
同社の米ドル建て債は額面1ドル当たり4-6米セント前後で取引されており、投資家の期待の低さを映していることを考えると、最終的にデフォルトに陥っても驚きではなさそうだ。
6月30日時点で負債総額1870億米ドルの同社は、世界の建設業者で最大級の債務を抱えている。10月27日には別の米ドル建て債4000万米ドルの利払い猶予期間が終了し、新たな試練に直面する。
中国当局は地方政府への融資をより低金利の長期融資に置き換えるよう国有銀行に指示した。関係筋2人が明らかにした。地方政府の債務リスクを抑制する取り組みの一環。
関係筋によると、中国人民銀行(中央銀行)は先週、主要な国有金融機関に対し、地方政府のインフラ投資会社である融資平台への融資期間の延長、返済計画の修正、金利の引き下げを命じた。
2024年より前に返済期限を迎える融資は延滞しても不良債権ではなく「正常債権」に分類され、銀行の業績評価には影響しないという。
銀行が債務再編によって大きな損失を被らないよう借り換えの金利は中国国債の金利を下回ってはならず、融資期間は10年を超えてはならないとしている。
中国の指標10年債の利回りは現在約2.7%で、銀行貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート)は3.45%。
関係筋によると、人民銀は「高リスク」と認定された12地域の債務リスクを優先的に解決する意向で、天津市、貴州省、広西チワン族自治区などが含まれる。今年と来年期限を迎える公開市場債券と非標準債務商品に重点を置くという。
銀行は融資平台に新たに融資を行い、債券の償還や非標準債務の返済を支援するよう求められている。また人民銀は短期的な流動性ストレスを解決するために、融資平台に融資する緊急の枠組みを銀行と共同で設ける。融資平台は2年以内に融資を返済する必要がある。
リスクの高い12の地域では、一部の地方政府は借り換えを受ける代わりに保有する国有企業の株式を銀行に担保として差し入れるか譲渡する。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況
<為替> 米国の9月の小売売上高が予想を上回って伸びたことを受け、ドルが対円で上昇した。ただ対ユーロでは下落した。
<債券> 米債利回りは上昇した。9月の米小売売上高が予想を上回り、2年債と5年債の利回りがそれぞれ17年ぶり、16年ぶりの高水準に達した。投資家は米連邦準備理事会(FRB)が高金利長期化を維持するとの見方を強めている。
<株式> 反落して取引を終えた。金利の上昇を嫌気した。また、米政府が人工知能(AI)用半導体の中国への輸出停止を計画していると発表したことを受け、米半導体大手エヌビディア(NVDA.O)が下落。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)(.SOX)も急落した。
バンク・オブ・アメリカ(BAC.N)は決算を好感し2.3%高。金融セクター(.SPSY)は0.6%上昇した。
ロッキード・マーチン(LMT.N)も0.2%高。第3・四半期の収益が予想を上回った。
<金先物> 中東情勢の緊迫化を背景とした買いに小反発した。中心限月12月物の清算値(終値に相当)は、前日比1.40ドル(0.07%)高の1オンス=1935.70ドル。ただパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長らの講演を前にした様子見ムードもあり、 上値も重かった。
<米原油先物> 緊迫化する中東情勢をにらんで様子見ムードが広がる中、横ばいとなった。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日と変わらずの1バレル=86.66ドルだった。12月物は0.18ドル高の85.44ドル。
<ロンドン株式市場> 続伸して取引を終えた。労働市場の減速を示す最新の経済指標が投資家心理を明るくした。市場は18日に発表される英消費者物価指数(CPI)に注目している。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。振るわない業績見通しを発表する企業が相次いだことや、ユーロ圏の債券利回りが上昇したことが株価を圧迫した。
<ユーロ圏債券> 利回りが上昇した。投資家の焦点が、安全資産への逃避から経済成長やインフレ、中央銀行の政策に戻った。
RBCキャピタル・マーケッツの金利戦略責任者、ピーター・シャフリック氏によると、イスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃を受けて安全資産としての債券を買っていた投資家が、再び債券を売るようになっているという。
コメルツ銀行の金利・信用調査部長、クリストフ・リーガー氏は、国債入札への需要が弱いことも債券市場の重しになっていると指摘した。
日経先物32095、ダウ先34103、債先144.88、米4.838、独2.8840、仏3.508、西4.004、伊4.884、英4.5615、波5.742、原油86.93、銅7,965、ドル円149.76、ユーロドル1.0573
※10/18 8時55分頃

備忘録(2023/10/16)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米ドラッグストアチェーンのライト・エイドは、債務の再編を目指して米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。また、コスト削減のために閉鎖する店舗数を増やす計画を明らかにした。
ライト・エイドは、「今回の調達資金は、このプロセス期間中の会社運営をサポートするのに十分な流動性を提供することが期待される」としている。30億ドルを超える長期債務を抱える同社の財務状況は、オピオイド系鎮痛剤を違法に処方したと主張する米政府との訴訟問題が重なり悪化した。
15日に裁判所に提出された破産法の適用申請書類によると、資産と負債は10億ドルから100億ドルの範囲となっている。ライトエイドは、債権者を推計10万人強とし、資金は無担保債権者への分配が可能だとしている。
●その他産業
●決算関連
米証券会社チャールズ・シュワブ(SCHW.N)が16日発表した第3・四半期決算は、一時的要因を除く1株利益が0.77ドルと、LSEGのデータに基づくアナリスト予想平均の0.74ドルを上回った。
総収入は前年同期比16.2%減の46億1000万ドルで、アナリスト予想平均の46億3000万ドルには届かなかった。
特に純金利収入が落ち込んだものの、資産運用事業がそれを穴埋めする以上に力強く成長した。傘下の多くのファンドへの活発な資金流入に伴い、手数料収入が17%増の12億2000万ドルとなった。
純金利収入は23.5%減の22億4000万ドル。
米製薬大手ファイザーは16日、2023年12月期の売上高が前期比4割減となる580億〜610億ドル(約8兆6800億〜9兆1300億円)にとどまりそうだと発表した。従来は670億から700億ドルを予想していた。新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の特需がなくなった反動が大きく、業績悪化が止まらない。人員削減など大規模なリストラに乗り出すこともあわせて発表した。
23年12月期通期の新型コロナ関連製品の売上高は8割減の125億ドルと大幅に落ち込む見通し。従来予想は215億ドルだった。22年はワクチンや治療薬の販売が伸びて全体の売上高も過去最高を記録していたが、一転して大幅減収となる。
23年12月期通期の1株利益も7割減の1.45〜1.65ドルとなる見通しだ。3.25〜3.45ドルとしていた従来予想から大幅に下方修正した。好採算のコロナ関連製品が落ち込むことで、全体の利益率も大きく低下する。
世界各地でコロナ禍が収束し、ワクチンなどへの需要が減っていることが背景にある。主力市場の米国も、米保健福祉省(HHS)によると11日時点でワクチンを接種した市民は700万人と低水準で、全体の人口の2%にとどまっている。
アルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は同日のアナリスト向け説明会で「世界的にコロナ疲れと呼ぶべき現象が広がっており、反ワクチン派の声も高まっている」と説明した。23年は最終的には22年と同水準となる米国人口の17%がワクチンを接種するとみるが、関連製品の販売不調は止まらない。
コロナ関連製品の販売減を補うため、大規模なコスト削減策に踏み切ることも明らかにした。人員削減を軸に、24年までに総額350億ドルの経費削減を実施する。
ファイザーは22年に血液疾患治療薬の開発会社を買収するなど、M&A(合併・買収)戦略の強化を急ぐ。コロナ特需で膨らんだ手元資金を原資に事業領域を広げる狙いだが、足元のワクチンや治療薬の減少をカバーするまでには至っていない。
●先進国、グローバル、金融市場
神田真人財務官は16日夕、為替相場が激しく下落した場合には、国は「金利を上げることによって資本流出を止めるか、為替介入で過度の変動に対抗する」と述べた。財務省内で記者団に語った。
神田財務官は、足元の例として政策金利を引き上げたロシアや、為替介入を実施したイスラエルを挙げた。その上で、「非常に複雑な状況の中で総合的にファンダメンタルズを判断する」と説明した。金利は為替相場の「ファンダメンタルズの一翼」として見ながら、主要7カ国(G7)などの合意に沿って、必要な時に適切な対応をしっかり取ることに尽きると語った。
米シカゴ連銀のグールズビー総裁は、足元では一部で根強い物価圧力を示すデータが相次いでいるが、米国でインフレが鈍化傾向にあることは「否定できない」との認識を示した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に対して語った。
最近のインフレ鈍化は「単月の一時的なもの」ではないとして、2%のインフレ目標に向けた進展が停滞しているとの見方を否定。今後の金融政策決定について、限られた一部データと関連付けないよう注意を促した。
10月のニューヨーク連銀製造業景況指数は前月から低下し、活動縮小を示した。需要の落ち込みを反映した。インフレ圧力は緩和しつつあることも示唆された。
NY連銀製造業景況指数はマイナス4.6、前月(プラス1.9)から6.5ポイント低下、エコノミスト予想の中央値はマイナス6
同景況指数は過去2年間にわたって前月比ベースで大きく変動する傾向が見られている。金利上昇や長引くインフレ、世界的な需要低迷を背景に、製造業セクターはストレスを受けている。
10月は新規受注の指数が再び縮小圏に陥った。出荷の指数は大幅に低下したものの拡大圏にとどまった。受注残の指数は急低下してマイナス19.1と、新型コロナウイルス禍が始まった当初以来の低水準となった。
販売価格の上昇を報告した企業は減少し、インフレ圧力が一部和らぎつつあることを示唆した。6カ月先の販売価格見通し指数は2020年9月以来の水準に低下した。仕入れ価格の現況指数は25.5で前月からほぼ変わらず。
今回の統計では製造業企業が雇用者数を増やしたことが示唆された。前月までの2カ月間は雇用減少が示されていた。雇用者数の見通しを示す指数も改善した。
現在の景況指数は低下したものの、将来についてはいくらか楽観的な見方が維持された。6カ月先の新規受注、出荷の指数はいずれも拡大圏にとどまった。
欧州中央銀行(ECB)は2024年9月まで利下げを見送るとの見方が最新のエコノミスト調査で示された。早期利下げはないとの政策当局者のメッセージが浸透しつつあることが示唆された。
ブルームバーグの最新調査結果は、来年3月にも利下げが実施されるとの見方が示された前回調査とは一線を画す内容で、来年10月に追加利下げが予想された。
今回の調査結果は、モロッコのマラケシュで開催された国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会の際のECB当局者発言に沿うものだ。カザークス・ラトビア中銀総裁は、現在の経済予測は24年前半の利下げと矛盾するとし、「来年後半はまだ分からない」と述べた。
スロベニア中銀のバスレ総裁は債券利回りの上昇について、インフレ率を2%目標に戻すには「高めの金利の長期化」が必要になると投資家も受け入れていることの表れだと指摘した。
ブルームバーグ調査では、物価上昇率は来年に2.7%、25年には2.1%に鈍化するとの見方が示された。一方で、経済成長率の見通しは以前より低下し、23年の0.5%から来年は0.7%への回復にとどまると予想された。
中国経済はまだ安定した足取りには至っていない。不動産危機に関する懸念が長引き、信頼感回復に手こずっていることで、最近の明るい兆しが打ち消されている。
18日に発表される7-9月(第3四半期)の国内総生産(GDP)成長率は、前期比では緩やかな伸びとなりそうだが、前年同期比ではあまり好ましくない数字が示される可能性がある。
7-9月期GDPの前年同期比伸び率は恐らく4.5%に鈍化し、5%前後という政府の今年の成長率目標を下回る見込みだ。
7-9月期の先行データには、経済活動が安定化しつつあることを裏付ける有望な数字が幾つか含まれていた。当局が景気刺激策を打ち出し、抑制的な不動産政策を緩和したことで、製造業活動は改善し、輸出の落ち込みは緩やかになった。18日に発表される9月の工業生産、小売売上高、失業率で、この安定化がどの程度広がっているかが示されることになりそうだ。
ただ、回復にはまだばらつきもある。13日に発表された9月の消費者物価指数(CPI)は伸び悩み、予想に反して前年同月比横ばいにとどまった。住宅販売も好転に至っておらず、それが投資の重しとなり、政府主導のインフラ支出強化による後押しを台無しにしかねない。
クレディ・アグリコルCIBの調査責任者、治暁佳氏は「9月の経済活動指標は注目すべき重要なデータとなるだろう。中国経済が一段と安定化の兆候を見せつつあるというメッセージとなる可能性はあるが、引き続き不動産セクターが足を引っ張っていることに関連した不確実性も残っている」と指摘した。
また、中国が景気を下支えするためにどの程度の追加刺激策を講じるのかについても疑問が残る。中国人民銀行(中央銀行)は16日、主要政策金利である中期貸出制度(MLF)の1年物金利の据え置きを決定した。エコノミストの一部は2023年末までに引き下げられると予想している。
他の措置も近く講じられる可能性がある。ブルームバーグの報道によると、中国はインフラ整備に充てるために国債を増発し、今年の財政赤字拡大を容認することを検討している。当局は株式相場の下支えに向け、新たな安定化基金の設立も検討しており、中国の政府系ファンド(SWF)は最近、4大国有銀行の株式計約6500万ドル(約97億円)相当を取得した。
一部のエコノミストは、最大の難題である不動産市場への対策の必要性をなお指摘している。
治氏は「中国政府は依然として、不動産関連を中心に政策緩和を一段と進める必要がある。主要都市でさまざまな規制をさらに緩めたり、撤廃したりする余地はまだある」と語った。
米企業の業績見通しは悪化しており、低迷が続く可能性があると、モルガン・スタンレーとJPモルガン・チェースのストラテジストが指摘した。
モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏によると、S&P500種株価指数構成企業ではここ数週間、業績見通し下方修正に対する上方修正の数が急減している。
今の時期は例年なら上向きの修正が多い傾向があるため、上方修正がさらに減るようならば「マクロ的な逆風を含む他の循環リスクが修正の背景にあることを示す」とウィルソン氏はリポートで分析している。
シティグループの業績修正指数によると、決算シーズンを前に4週連続で下方修正が上方修正を上回った。JPモルガン・チェースのストラテジスト、ミスラブ・マテイカ氏は、こうした状況が今後も続くと予想している。
同氏は「最近は米国とユーロ圏で1株利益見通し修正のトレンドが再び悪化しているようだ。この下向きトレンドは続くと思われる」とした。
弱気な見方は、13日にJPモルガンを含む大手銀行の発表で幕を開けた決算シーズン前の楽観的な論調と対照的だ。今後の決算で、金利上昇や消費者需要の鈍化といった逆風に企業がどう対処してきたかがさらに明らかになるだろう。
「より高くより長く」の米政策金利見通しは今月、市場を不安に陥れ、米10年債利回りは過去10年余りで最高水準に上昇した。投資家は、米連邦準備制度が引き締め政策を続け、中東の紛争によって強まっているリセッション(景気後退)懸念が再燃することを警戒している。
一方、RBCキャピタル・マーケッツのストラテジスト、ロリ・カルバシナ氏は、1株利益の修正がややマイナス方向に転じ、不透明なマクロ経済が企業に打撃を与えていることを示唆するコメントが出ているとはいえ、株価の反応という点では決算シーズンは良いスタートを切ったと述べた。
ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめたデータによると、これまでに決算を発表したS&P500種構成銘企業の88%で利益が予想を上回った。
業績修正トレンドが弱く見えるとはいえ、コンセンサスでは今シーズンで米企業の業績リセッションに終止符が打たれると予想されている。ブルームバーグ・インテリジェンスがまとめた予想によると、S&P500種構成企業の7-9月(第3四半期)利益は前年同期比0.8%減となり、10-12月(第4四半期)には同6.2%増に回復すると見込まれる。
「第4四半期については企業のガイダンスで見通しがより明確になり、それが2024年の業績修正の基調となることを期待している」とウィルソン氏は述べた。
イエレン米財務長官は16日、ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)に500億ユーロ(約7兆8700億円)の対ウクライナ追加支援を推進するよう促すとともに、米国は新規支援をウクライナに供与できるようホワイトハウスと過半数の議員らで「戦う」意向だと約束した。
イエレン長官は「バイデン大統領と私は超党派の多数派議員および国民とともに、米国からの支援が途切れることなく十分な資金が確保されるよう戦う意向だ」とルクセンブルクで述べた。発言内容は事前テキストに基づく。
ウクライナへの大規模な支援を継続することには、欧州と米国の両方で反対の圧力があり、それぞれが約束を実行できるかどうかは相手側次第かもしれないとの見方も強まっている。
イエレン米財務長官は16日、米国では高めの金利が長期化する可能性があるとの見解を示すとともに、米経済は「良い状態にある」と述べた。
同長官はスカイニューズとのインタビューで、国内総生産(GDP)の98%に上る政府債務の金利負担は「なお管理可能だ」と説明。
「高めの金利は長引くかもしれないが、それは明白ではない。米国の財政状況は決して解決不可能ではない。われわれは財政状況に気を配らなければならない」と語った。
「2023年は債券の年」というのがウォール街のキャッチフレーズだったが、ファンドマネジャーたちはむしろ、これまでで最も厳しい年の1つとなった今年の状況を受け入れつつある。
約半世紀にわたり市場や米金融政策、経済の分析に携わってきたホイジントン・インベストメント・マネジメントのチーフエコノミスト、レイシー・ハント氏(81)は自身の全キャリアを通じて最も厳しい状況だとし、「極めて屈辱的な年になっている」と語った。ブルームバーグの集計データによると、同社の「ワサチ・ホイジントン米国債ファンド」の年初来リターンはマイナス13%。22年はマイナス34%だった。
HSBCホールディングスのスティーブ・メージャー氏は、米政府による国債発行増加を問題視しなかったのは「間違いだった」と認めた。モルガン・スタンレーも今月、バンク・オブ・アメリカ(BofA)についに追随し、米国債に対するポジションを「中立」に移行した。
16日のアジア市場では米国債は下落。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの紛争がエスカレートして他の中東諸国を巻き込むとの懸念が和らいだことから、米10年債利回りは5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し4.66%。これは年初より80bp近く高い。
昨年の債券相場急落は顧客に説明しやすかった。インフレ率が高く中央銀行が利上げしている状況で債券価格が下落することは誰もが承知している。
今年は、米経済が過去数十年で最も急激な利上げの重圧に押しつぶされ、今後の政策緩和への期待から債券相場上昇をもたらすと見込まれていた。しかし、インフレ率が鈍化したとはいえ、雇用統計や経済の健全性を示す主要指標が好調を維持し、物価高が加速する脅威は常に存在し続けている。米国債利回りは07年以来の高水準に達し、国債相場は前例のない3年連続の下落となる方向にある。
また、米連邦準備制度による市場での債券買い入れがない中で、米国の巨額の財政赤字と、その穴埋めで必要になった国債発行の膨張が、以前にはなかった形で今、問題になりつつある。
ホイジントンのハント氏と同僚らは、インフレ鈍化が利回りを抑制するという前提が実現しなかったため、長期債を有望視する見方を全面的に変更するかどうか絶えず議論してきた。今年の早い段階でデュレーションを引き下げたが、十分ではなかったという。
ハント氏は「実際、インフレ率がこれほど大きく低下し、その直後にリセッション(景気後退)が伴わなかったことは過去にない。このため、国内総生産(GDP)の増加がまだ続いているのは前例がない」と指摘した。
それと同時に、痛手を被ったウォール街の強気派がそれほど撤退していない背景には、最終的に景気下降に見舞われるとの見通しがあり、ハント氏も「ハードランディングは来る」と付け加えた。
英紙オブザーバーが掲載したオピニアムの世論調査によると、野党労働党が支持率で与党保守党にリードを広げている。また、スターマー労働党党首の評価が大幅に上昇した。
調査では、労働党支持率が44%で党大会開催前の前週から2ポイント上昇、10月に入り党大会を行った保守党の支持率は28%で変わらずだった。
また、スターマー氏を「次期首相」とみている有権者は38%と、30%から上昇した。
スナク首相は来年にも総選挙を行うとみられているが、世論調査では常に保守党の支持率が労働党に後れを取っている。
スターマー氏は党大会で、住宅建設拡大と経済成長加速を公約に掲げた。
米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は16日、現在の金利水準は、初めての住宅購入をほぼ不可能にしているとの認識を示した。モーゲージバンカー協会の年次会合でスピーチした。
同総裁は、高金利がコストを押し上げ、在庫を縮小させるなど住宅セクターを直撃しており、「現在の状況は、初めての住宅購入者がいないとの一言に集約される」と述べた。
ただ、政策金利については「データや人々の声が大きく変化しない限り、われわれは金利を維持できる段階にあると信じている」との見解を繰り返した。
イタリア中央銀行は13日発表した四半期経済報告で、今年と来年の経済成長率予想をそれぞれ0.7%と0.8%とし、7月時点の1.3%と0.9%から下方修正した。
今年の予想は、第2・四半期の国内総生産(GDP)が予想外の前期比マイナス0.4%となったことを受け大幅下方修正となった。
政府の予想は今年が0.8%、来年が1.2%。
中銀は「地政学的緊張の高まり、中国経済の低迷、イタリア国内とユーロ圏における信用状況の逼迫」に関連する下振れリスクが存在すると警告した。
中銀が示した欧州連合(EU)基準消費者物価指数(CPI)に基くイタリアの平均インフレ率予想は、今年が6.1%、来年が2.4%。7月の予想はそれぞれ6.0%と2.3%だった。
期間長めの米国債の利回り急上昇は行き過ぎたほか、あまりにも急ピッチだったかもしれないとブラックロックのストラテジストは指摘した。ただ金利は高止まりすると予想している。
同社は16日付の週間調査リポートで「高金利が長期化する政策を市場が織り込む中で、われわれは米長期国債を戦術的には中立とするが、戦略的にはアンダーウエートを維持する」と説明。「16年ぶりの高水準にある米10年債利回りは、かなり調整されたことを示しているが、このプロセスは終わっていないと考えている」とコメントした。
利回りが根強いインフレや上昇傾向の債務水準に対するプロテクションをほとんど提供しないとの懸念から、ブラックロックは2020年終盤から期間長めの米国債をアンダーウエートにしていた。米政策金利がピークに近づいている状況にあるが、「次のステップはオーバーウエートではない」とし、投資家が今後、「債券リスクに対しより多くの見返り」を求め、「戦略的な面で長期的にアンダーウエートを維持する」だろうと予想した。
ここ数カ月における米国債利回りの大幅上昇は、米金融当局が24年に入ってからもしばらく金利を高く維持するとの市場の見方が背景にあった。財政赤字への対応で米国債の供給が増える見込みもあって10年債利回りは4.90%に向かって上昇した。
「米国債利回りがどちらかの方向に振れる確率はほぼ等しいと現時点で見ている」とし、「言ってみれば、この先、上下双方向でボラティリティーがあるとみている」と指摘した。
欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミストを務めるレーン専務理事は、インフレ率が目標の2%に戻りつつあるとECBが確信するには一定の時間を要し、おそらく来年の春以降になるとの認識を示した。16日付オランダ紙Het Financieele Dagbladのインタビュー記事で述べた。
ECBはインフレ抑制のため、過去10回の会合で利上げを実施してきたが、10月に休止する可能性を示唆。市場では次の動きが利上げではなく、2024年半ばごろの利下げになると予想されている。
レーン氏は「個人的には24年の賃金妥結についてさらに多くの情報が必要だが、多くの国でその情報が発表されるのは来年の春以降だ」と指摘。
「そのためインフレ率が2%に戻りつつあると確信できるまでにはまだ時間がかかる」と語った。
また、追加利上げの可能性にも含みを残し、インフレショックがさらに大きい、あるいは持続的なものとなれば、ECBは追加措置を取る用意が必要だとした。
「目標達成を十分に確信できる場合にのみ、政策を正常化できる。しかし、まだ現在の状況からはかなり先だ」と述べた。
ニュージーランド(NZ)統計局が17日発表した第3・四半期の消費者物価指数(CPI)上昇率は、2年ぶりの低水準ながらNZ準備銀行(中央銀行)の目標(1─3%)を依然上回った。食料品から住宅まで全ての価格が上昇した。
前年比伸び率は5.6%と、第2・四半期の6.0%から鈍化した。前四半期比では1.8%と、第2・四半期の1.1%から加速した。
エコノミスト予想(前年比5.9%、前四半期比2.0%)をやや下回った。
2年物スワップ金利は7ベーシスポイント低下し5.63%となった。市場では11月の利上げ確率が指標発表前の33%から20%に低下した。NZドルは0.3%下落。
統計局によると、前年比の伸びを押し上げたのは主に工事費と家賃の上昇で、前四半期比の主因は食料品だった。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ポーランドで15日、総選挙が実施された。出口調査によると、右派与党「法と正義」(PiS)が下院で第1党となる見通しだが、野党勢力が合わせて過半数を制する見通しで、8年続いたPiS政権に終止符が打たれる可能性が出ている。
政権交代が実現すれば、2015年にPiSが政権に就いて以降、法の支配や報道の自由、移民、LGBTなど性的少数者の権利を巡り欧州連合(EU)と対立してきたポーランドにとって大きな転換点となる。
イプソスの出口調査によると、PiSは36.8%の票を得て下院(定数460)の200議席を獲得する見通し。リベラル派の「市民連立」(KO)が率いる野党連合は合わせて248議席を確保する見込み。
KOを率いるトゥスク元EU大統領はEUとの関係修復などを掲げている。同氏は15日、党員を前に「PiS政権は終わりだ」と述べた。
公式結果が出口調査通りになったとしても、KOと中道右派の「第3の道」、左派系の「新左派」に組閣の順序が回るのは数週間、もしくは数カ月後になる可能性がある。
ドゥダ大統領はまず第1党に組閣権限を与えるとしており、PiSが最初に機会を得るとみられる。ただ、極右政党「同盟」の票が伸び悩む中、PiSにとって明白な連立相手はほぼ見当たらないと専門家は指摘する。
ポーランドで16日、下院選の一部公式結果と出口調査によると、親欧州連合(EU)でリベラル派の「市民連立」(KO)が率いる野党連合が政権を奪取する公算が大きい。
EU大統領を務めたトゥスク元ポーランド首相が率いるKOなどの野党連合が下院(定数460)の過半数の249議席を確保して政権の座に就く見通し。右派与党「法と正義」(PiS)の議席数は196議席と半数を割り込み、下野する見込みとなった。
ポーランドの金融市場は、トゥスク氏率いる政権が誕生するとの見方から急騰。優良株で構成するWIG20株価指数(.WIG20)は1320GMT時点で6.2%上昇した。
PiSは2015年に政権の座に就いて以来、法の支配や報道の自由、移民、LGBTなど性的少数者の権利を巡り欧州連合(EU)と対立してきた。野党連合はEUとの関係を修復すると宣言している。
16日午後に発表されたイプソスの出口調査によると、PiSの得票率は36.1%を獲得する見通し。野党連合のうちKO単独では31.0%の票を得る見込みだ。
開票率63%時点での公式結果は、PiSが37.5%、KOが28.6%、KOと連合を組む中道右派の「第3の道」が14.4%となっている。
アナリストは欧州でこの数十年で最も重要な選挙と見ており、野党の勝利はEUと欧州中東部で最大の加盟国のポーランドとの関係を大きく変える可能性がある。
●中東
●中南米・アフリカ
ベネズエラのマドゥロ政権は野党の一部と協議を再開する見通しで、米国による制裁の一部緩和につながる可能性がある。内情を知る複数の関係者が明らかにした。
協議では、2024年大統領選で禁止されている野党候補の出馬を認めることが合意に含まれる見通し。16日にも合意が発表される可能性があるという。実際にそうなれば、マドゥロ政権がここ10年で初めて政治的に大きく譲歩することになる。背景には、米国が対ベネズエラ制裁を緩和する見返りとして、選挙の実施条件改善を求めていることがある。
米紙ワシントン・ポストはこれに先立ち、ベネズエラが来年、国際社会の監視下でより自由な大統領選を行う見返りとして、米国が同国の石油産業に対する制裁を緩める取り決めに両国の政権が合意したと報じた。
ベネズエラの反米左翼マドゥロ大統領が率いる政権と野党勢力が今週、約1年ぶりに対話を再開する。双方は協議を通じて2024年大統領選を公正に行うための取り決めに合意する見通しだ。これを受け、米政府はベネズエラに対する経済制裁の緩和に動くことになる。事情に詳しい関係者が明らかにした。
24年大統領選を巡っては、マドゥロ氏が再選を目指すとみられているが、まだ正式な出馬表明はしていない。一方今のところ有力な野党政治家はいずれも立候補が禁じられている。
こうした中で、カリブ海のバルバドスで開催される今週の協議では、マドゥロ氏が具体的な投開票日を定め、野党候補が出馬するのを認めると約束する。マドゥロ政権と野党側がこのような取り決めを交わした後、米政府はすぐにベネズエラの石油産業に関連する制裁を緩めるという。
ただ関係者の話では、米国はマドゥロ政権が過去に公式、あるいは非公式に示した自由で公正な選挙を行うという約束を果たさなかった点を踏まえ、今回は同政権が新たな取り決めを確実に履行するかどうか見極めながら、当初は非常に限定的な形で制裁緩和を進めていく方針だ。
野党側は22日に大統領選候補選出のための予備選を開催する予定。最有力視されているマリア・コリナ・マチャド氏は現時点では、公式の選挙事務所開設が許されていない。
南米エクアドルで15日に大統領選の決選投票が行われ、右派の実業家ダニエル・ノボア氏(35)が勝利した。経済低迷や治安悪化にあえぐ同国の再建に着手すると表明した。
支持者を前に演説し、「明日、新しいエクアドルのための仕事を開始する。暴力、汚職、憎悪によって深刻な打撃を受けた国を再建するために仕事を始める」と述べた。
ノボア氏は新型コロナウイルス禍以降に苦境が続いている経済の立て直しに加え、殺人や窃盗、刑務所での暴動など犯罪の急増という大きな課題に直面することになる。
開票率約90%を超えた時点で、ノボア氏の得票率は52%超、左派候補ルイサ・ゴンサレス氏は約48%。
ゴンサレス氏は敗北を認め、ノボア氏を祝福した。
ゴンサレス氏は反米左派コレア元大統領時代の社会福祉プログラムの多くを復活させ、外貨準備で経済を活性化させることなどを公約していた。
ノボア氏の任期は12月から2025年5月までの1年5カ月。今回の選挙は弾劾手続きに直面した現職のラソ大統領が前倒しで実施を決めた。
●市況
<為替> ドルがまちまちの動きとなった。中東情勢に注目が集まる一方、投資家は金融政策の手がかりを探る上で19日に予定されるパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長発言などを待っている。
<債券> 国債利回りが上昇した。市場では中東情勢のほか、米国債の発行増などの影響を見極めようとする動きが出ている
FHNフィナンシャル(ニューヨーク)のマクロ・ストラテジスト、ウィル・コンパーノール氏は、国債供給量の増加のほか、FRBが金利を長期間にわたり高水準にとどめるとの観測に加え、好調な株式相場を背景に米国債利回りは上昇していると述べた。
<株式> 上昇して取引を終えた。企業の四半期決算を巡り楽観ムードが漂う中、運輸関連株の上昇が目立った。予想変動率を示すVIX指数(.VIX)が低下する一方、ダウ工業株30種は約1カ月ぶりの大幅な上げを記録した。
全てのセクターが上昇したが、一般消費財(.SPLRCD)の上げが目立った。
米証券会社チャールズ・シュワブ(SCHW.N)は4.7%高。決算で利益が予想ほど落ち込まなかった。
<金先物> 中東情勢の緊迫化を背景に急伸した反動からテクニカルな売りが出て反落した。中心限月12月物の清算値(終値に相当)は、前週末比7.20ドル(0.37%)安の1オンス=1934.30ドル。
<米原油先物> 米国によるベネズエラ石油産業への制裁緩和を巡る報道を受けて、需給引き締まり観測が幾分後退し、反落した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前週末比1.03ドル(1.17%)安の1バレル=86.66ドル。12月物は1.09ドル安の85.26ドルとなった。
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。イングランド銀行(英中央銀行)の今後の政策金利の道筋を方向づける一連の英経済指標の発表を控える中、コモディティー(商品)関連株が買われたのが相場を押し上げた。
<欧州株式市場> 反発して取引を終えた。資源株や金融銘柄の上昇が相場全体を押し上げた。
ポーランドのWIG20株価指数(.WIG20)は5.31%上昇した。下院選の一部公式結果と出口調査で野党連合が政権を奪取する公算なのが好感された。
イタリアの主要株価FTSE・MIB指数(.FTMIB)は0.55%高。イタリア政府は財政の逼迫に対する市場の懸念にもかかわらず、減税と歳出増を盛り込んだ240億ユーロ(253億ドル)相当の2024度予算を承認した。
ドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテック(22UAy.DE)は7.2%下げた。提携相手の米製薬大手ファイザー(PFE.N)が新型コロナウイルスのワクチンと治療薬の売り上げが減っているのを背景に、13日に通期決算の売上高見通しを引き下げたことが重しとなった。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが上昇した。複数の欧州中央銀行(ECB)当局者が、金融政策は引き続き制限的である必要があり、物価上昇に対する勝利を宣言するのは時期尚早だとの見解を繰り返した。
日経先物32250、ダウ先34152、債先145.34、米4.712、独2.7860、仏3.405、西3.908、伊4.759、英4.5290、波5.644、原油85.36、銅7,978、ドル円149.59、ユーロドル1.0557
※10/17 9時15分頃

備忘録(2023/10/13-15)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
英国の大手銀行は、西側諸国の対中制裁が将来的にエスカレートした場合に備え準備を進めており、英米政府とシナリオ分析を共有している。
金融機関の業界団体UKファイナンスの制裁担当ディレクター、ニール・ワイリー氏がロイターに明らかにした。
対ロシア制裁などで得た教訓を共有し、対中制裁の潜在的な影響について協議しているという。
UKファイナンスにはHSBC(HSBA.L)、バークレイズ(BARC.L)、JPモルガン(JPM.N)など約300社が参加。資産の所有権・管理の透明性や中国製品の追跡可能性を検証しているほか、ハイテクといったリスクの高いセクターの供給網など、西側諸国と中国の商業関係の規模に着目している。中国に適用した場合に裏目に出る政策についても注意喚起を試みているという。
UKファイナンスは数カ月にわたって、国内外の大手行を集めて隔週で会議を開き、数万語から成る文書草案を作成した。文書は8月に完成し、ここ数週間で西側の政府関係者と共有されたという。
ある安全保障専門家は「大手金融機関は地政学の悲観的な方向性を踏まえ、(中国への)エクスポージャーが許容範囲かどうか検証している」との見方を示した。
医薬品大手の米イーライ・リリーはこのほど、同社の潰瘍性大腸炎の治療薬ミリキズマブについて、消化器系の難病クローン病への効果を後期臨床試験(治験)で確認したと発表した。この結果を受けて、2024年に米国などで販売承認を申請する計画だ。
治験では中度から重度のクローン病の患者にミリキズマブを投与し、偽薬(プラセボ)を投与したグループと比較した。52週目の時点でクローン病の症状がない「寛解」状態だった患者はミリキズマブ投与のグループでは54%だった。偽薬投与グループの約2割を大きく上回っており、クローン病の症状改善に効果が期待できると結論付けた。
ミリキズマブは潰瘍性大腸炎の治療薬として、日本で2023年3月に承認を取得した。「オンボー」の商品名で持田製薬が販売する。
クローン病は腸など消化器に慢性の炎症を引き起こす難病。遺伝や免疫の働き、食生活などが発症に影響すると考えられているが、はっきりとした原因は分かっていない。米国ではクローン病と潰瘍性大腸炎を合わせた患者数は2015年の時点で約300万人だった。日本のクローン病患者は7万人程度とされる。米国に比べて発症率は低いが、患者数は増加傾向にある。
欧州の主要銀行21行の2023年4〜6月期決算は、純利益が前年同期比3割の増益となった。中央銀行の利上げによる金利収入の伸びが続いたが、前期比では3四半期ぶりの減益で鈍化の兆しも出ている。景気減速への懸念で融資の焦げ付きに備える与信費用も増えたほか、銀行への追加課税も広がり逆風が吹いている。
●その他産業
経営統合に向けて協議しているキオクシアホールディングスと米ウエスタンデジタル(WD)が月内にも合意する見通しであることが分かったと、共同通信が報じた。実現すれば、半導体メモリーで世界最大規模となる。
14日付の朝日新聞によると、統合後は両社でつくる持ち株会社「KIOXIA Holdings」の下に両社がぶら下がる形になる。統合比率はキオクシア側が49.9%、WD側が50.1%だが、実質的な経営権はキオクシア側が握る見通しで、持ち株会社の社長にはキオクシアの早坂伸夫社長が就任する方向だ。
また、同日付の日本経済新聞によると、登記上の本社は米国で、本社所在地は日本となる。米ナスダック市場に上場し、東京証券取引所への上場も目指す。統合にあたり日本の3メガ銀行と日本政策投資銀行などが1兆5000億〜1兆9000億円程度の融資を検討しており、20日までに金融機関と融資条件などを詰める。
●決算関連
米銀JPモルガン・チェースは、7-9月(第3四半期)の純金利収入が過去最高となった。金利上昇とファースト・リパブリック・バンク買収が寄与した。同行は通期の純金利収入見通しを上方修正した。
13日の決算発表によると、第3四半期の純金利収入は229億ドル(約3兆4300億円)となり、アナリスト予想を上回った。通期の同収入は885億ドルを見込んでいる。
ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は発表文で「これらの結果は、予想以上の純金利収入と通常よりも低かった信用コストの結果であり、いずれも時間の経過とともに正常化するだろう」と説明。また、ウクライナと中東での戦争が広範囲に影響を及ぼす可能性を警告し、「この数十年で世界は最も危険な時期かもしれない」と指摘した。
大手米銀の決算は、米国の消費者と企業がどのような状況にあるかを示す材料となる。JPモルガンの決算からはまた、5月に政府主導の入札で買収したファースト・リパブリックとの統合をどのように進めているかもうかがわれる。ダイモン氏は8月に、統合プロセスは「極めてうまくいっている」とし、ファースト・リパブリックの破綻につながった地方銀行の混乱は「ひとまず終わった」と述べていた。今回の決算報告によると、第3四半期純利益のうちファースト・リパブリックに帰属するのは11億ドルだった。
JPモルガンのローン残高は前年同期比18%増。預金は1%減だった。
同行は純額で15億ドルの貸し倒れ償却を計上し、クレジットカードローンが貸し倒れ増加の理由だったと説明した。ダイモン氏は先月、カードローンの損失増はここ数年の例外的な低水準からの「正常化」だとし、同行は「クレジットで稼ぎ過ぎ」ていると述べていた。貸倒引当金はアナリストが積み増しを予想していたのに反し、1億1300万ドル減少した。
市場事業の収益は株式トレーディング収入が10%減少したため、前年同期から減少した。ただ、債券トレーディング収入はアナリストが若干の減少を予想していたのに対し、予想外の1%増となった。
証券投資の純損失6億6900万ドルと法務費用6億6500万ドルも計上した。
通期の費用見通しは約840億ドルと、従来の約845億ドルから下方修正した。
米金融大手ウェルズ・ファーゴ(Wファーゴ)(WFC.N)は13日、純金利収入(NII)の通期見通しを上方修正した。この日発表した第3・四半期決算(9月30日まで)は利益が予想を上回った。
第3・四半期のNIIは8%増の131億ドルとなった。通期のNIIは前年比約16%増と予想。従来予想は14%増だった。
一時的項目を除く収益は1株当たり1.39ドル。LSEGがまとめたアナリスト予想の1.24ドルを上回った。
預金総額は1兆3400億ドルに減少した。前年同期は1兆4100億ドルだった。金利が上昇したため、一部顧客がより高い利回りを求めてマネーマーケットファンドに現金を移した。
米連邦準備理事会(FRB)による利上げが金利収入を押し上げたものの、チャーリー・シャーフ最高経営責任者(CEO)は慎重な見方を示す。声明で「景気は底堅く推移しているが、貸出残高の減少や貸倒損失の小幅悪化など、景気減速の影響が出ている」と述べた。
世界最大の資産運用会社ブラックロック(BLK.N)が13日発表した2023年第3・四半期決算は調整後利益が1株当たり10.91ドルと、LSEGがまとめたアナリスト予想の8.26ドルを上回った。
第3・四半期の純資金流入額は25億7000万ドルと、前年同期の169億ドルから減少した。機関投資家向けのインデックス株式から490億ドルが流出したのが響き、1社で190億ドルが流出した顧客もあった。
調整後利益は予想を大幅に上回ったものの純資金流入が急減したことが嫌気され、13日の米ニューヨーク株式市場で株価は一時約2%下落した。
運用資産は9兆1000億ドルと、前年同期の7兆9600億ドルから増加。第2・四半期の9兆4000億ドルは下回った。
ラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は声明で「顧客は20年弱ぶりにキャッシュで実質的なリターンを得ており、再び高いリスクを取る前に政策や市場の確実性が高まるのを待つことができる。こうした動きが業界とブラックロックの第3・四半期のフローの重しとなった」と述べた。
フィンク氏はアナリストらを集めた決算説明会でブラックロックは過去5年間は企業の合併・買収(M&A)への支出を通常より抑えてきたものの、ここ数年間になかったほど多くの案件を協議していると語った。
米金融大手シティグループ(C.N)が13日発表した第3・四半期決算は市場予想を上回った。トレーディング収入や投資銀行手数料が急増した。同銀は過去数十年で最大の構造改革に取り組んでいる。
純利益は前年比2%増の35億ドル、1株当たり利益は横ばいの1.63ドルとなった。調整後ベースでは1株当たり1.52ドルで、LSEGがまとめた市場予想の1.21ドルを上回った。
法人顧客部門の収益は前年比12%増。トレーディング収益が10%増の45億ドルとなったことが貢献した。フィクストインカムは14%の増収だった。
投資銀行業務の手数料は34%急増した。同部門は過去数四半期にわたり不調が続いていた。
パーソナルバンキングおよびウェルスマネジメント部門の収益は10%増の68億ドルに急増した。
第3・四半期末の預金残高は前年比3%減の1兆3000億ドル。顧客が高利回りの資産に資金を移行した。
全体の収入は9%増の201億ドルとなった。
マーク・メイソン最高財務責任者(CFO)は、ボラティリティーが回復し債券とコモディティーのパフォーマンスが向上したため、市場部門にとって「非常に好調な四半期」だったと語った。
また、不透明な環境の中でも米国の消費者向け融資は依然として健全だとし、「米経済はその耐性でわれわれを驚かせ続けている。それでも来年前半には穏やかな景気後退になると予測している」との見通しを示した。
ジェーン・フレイザー最高経営責任者(CEO)は9月、大規模な組織再編を発表した。ただ、第3・四半期決算にはまだ反映されていない
米銀最大手JPモルガン・チェースが13日発表した2023年7〜9月期決算は純利益が前年同期比35%増の131億ドル(約1兆9500億円)だった。金利上昇で融資などから生じる純金利収入の大幅な伸びが続いた。不良債権処理に備える与信費用の減少も利益を押し上げた。
5月に買収を決めた米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)の上乗せ効果も大きい。その影響を除くと24%増益だった。全体の純利益は過去最高を記録した4〜6月期(144億ドル)からは減ったが、なお高水準を維持している。利益が市場予想を上回り、13日の米株式市場でJPモルガンの株価は一時、前日比5%上昇し、終値は1.5%高だった。
事業会社の売上高に相当する純営業収益は前年同期比22%増の398億ドルだった。柱の純金利収入が30%増の227億ドルと伸びが大きかった。
融資残高の増加が続いたほか、預金などの調達金利と融資などで稼げる金利の差(利ざや)の拡大が寄与した。4〜6月期の利ざやは2.62%と前の四半期から小幅に縮小していたが、7〜9月期は2.72%と再び拡大した。23年通期の純金利収入見通しは885億ドルと7月時点から15億ドル引き上げた。
7〜9月期の非金利収入は前年同期比13%増の171億ドルだった。資産運用ビジネスの手数料収入などが伸びた。
利益の圧迫要因となる与信費用は13億ドルと1年前から10%減った。前の四半期比では52%減で、四半期ベースでみた増加基調が一服した。貸倒損失は増えた一方、融資の焦げ付きに備える貸倒引当金は過去に積んだ分の戻し入れが発生した。
高金利が続くなか銀行本業の収益は増え、不良債権処理費用が相対的に小さくとどまっていることが好決算につながった。ただ、ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は声明で「純金利収入と与信費用の両面で過大な利益を計上したことは認識している」と述べ、先行きの事業環境の悪化に警戒感を示した。
具体的には過熱感の残る米労働市場や巨額の財政赤字が「インフレの高止まりと金利のさらなる上昇を招くリスクがある」と指摘。ロシアのウクライナ侵攻の長期化やイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃といった地政学リスクの高まりは、エネルギーや食料需給、世界貿易に広範な影響を及ぼしうるとした。「世界は過去数十年で最も危険な時期にあるかもしれない」との見解を示した。
米銀大手シティグループが13日発表した2023年7〜9月期決算は純利益が前年同期比2%増の35億ドル(約5250億円)だった。投資銀行や株式・債券のトレーディング事業の収益が改善した。新規顧客の獲得が進むクレジットカード事業も好調で、2四半期ぶりに増益に転じた。
事業会社の売上高に相当する純営業収益は9%増の201億ドルだった。純金利収入は10%増の138億ドルだった。金利の上昇で、貸し出しに伴う利ざやが改善した。非金利収入は63億ドルと6%増えた。
M&A(合併・買収)助言が改善し、不調が続いていた投資銀行業務の手数料収入は34%増と、6四半期ぶりの増収となった。シティのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、「多くの企業が大きな挑戦をしようとしており、市場のセンチメントが改善されれば(さらに多くの)M&Aが実行に移る」と述べた。
金利や為替関連ビジネスがけん引し、マーケット関連業務も10%伸の増収だった。与信費用は35%増の18億ドルだった。クレジットカード事業の貸倒損失が膨らんだ。
営業経費は6%増の135億ドルだった。システム投資がかさんだほか、海外のリテール事業の縮小に伴い、従業員への退職金費用を計上した。
●先進国、グローバル、金融市場
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突は、過去の中東戦争と同様、世界経済に混乱をもたらす可能性があり、さらに多くの国々が巻き込まれることになれば、世界的なリセッション(景気後退)につながる恐れもある。
ハマスによる7日の奇襲攻撃に対し、イスラエル軍はガザ地区への地上侵攻を準備しており、こうしたリスクは現実的なものだ。ハマスの攻撃とイスラエル軍の報復空爆による死者は既に数千人に上っており、ハマスを支持するレバノンやシリアの武装勢力が戦闘に加わる懸念もある。
ハマスは米国と欧州連合(EU)がテロ組織に指定しているが、対立が大幅にエスカレートすれば、ハマスに武器や資金を提供しているイランがイスラエルと直接衝突するシナリオも排除できない。
そのような事態となった場合、原油相場は1バレル=150ドルに急騰し、2024年の世界の国内総生産(GDP)伸び率は1.7%に落ち込む可能性があるとブルームバーグ・エコノミクス(BE)は推計する。世界経済の損失は約1兆ドル(約150兆円)に達して事実上のリセッションに陥る。
もちろん、過去1週間の人的惨劇を踏まえれば、このような二次的影響は最重要ではない。双方の死者の大多数は民間人だ。ハマスは多くのイスラエル人らを人質としている上、イスラエル軍によるこれまでのミサイル攻撃や、近く実行に移される見込みの地上侵攻で、避難ルートのないガザ地区のパレスチナ人は生命が脅かされる。
惨状は感情を高ぶらせ、軍事的なエスカレーションの可能性も高めることになる。
鈴木俊一財務相は13日、為替市場では「場合によって適切な対応を求められることもある」との見解を20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で述べたことを明らかにした。投資家をけん制した格好。
財務相はG20会合が開かれたモロッコのマラケシュで記者団に対し、「為替相場の過度な変動は望ましくなく、場合によっては適切な対応を求められることもあることなどを発言した」と語った。
円は対ドル150円に迫っており、市場では日本当局が円買い介入に踏み切るかどうかが注目されている。米国債利回りの上昇から円安圧力が生じており、12日に発表された9月の米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことが、足元の円安の引き金となった。
鈴木財務相は同日の会見で「世界的に金融引き締めが継続される中、為替市場を含め金融市場の変動が高まるリスクに留意すべきだ」と述べた。
財務省幹部は鈴木財務相の会見での発言について、市場への警告を意図したものではないと記者団に説明。財務相発言は昨今の市場変動に鑑み、為替市場に関する姿勢に変わりがないことの確認を意図していると述べた。
同幹部は一方で、円相場に過度な動きが見られれば当局は対応するとも述べた。
米共和党はマッカーシー氏解任で空席となった下院議長の候補として、保守派の急先鋒であるジョーダン下院議員(オハイオ州)を指名したと、議会関係者が明らかにした。
強硬的な姿勢や、選挙に関する陰謀説を唱えるジョーダン氏の態度が共和党議員の再選を困難にしかねないと、穏健派議員らは懸念しており、下院議長の就任には深刻な反対が予想される。
米下院は新議長が決まるまで、イスラム組織ハマスと戦うイスラエルへの新規援助を含め、いかなる議案も承認できない。
下院議長に就任するには、少なくとも217票が必要になる。民主党の下院議員から支持票が得られる兆候はないため、複数の議員が棄権しない限り、共和党の離反が4人を超えればジョーダン氏の就任は承認されない。
米フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、ディスインフレが進行中だと指摘。データが急激に変化しない限り、政策金利を現在の水準で据え置くことが望ましいとの見解を改めて示した。
総裁は、デラウェア州商工会議所が開催したオンラインイベントに出席。事前に準備された原稿によれば、「金利を現行水準で据え置くことができる状況にあると考えられる」と発言。「何もしないことで、なお何かをしている。実際のところ、かなり多くのことをしている」と述べた。
経済・金融情勢については、総裁自身が想定していたよりも若干良い形で展開していると指摘。物価は沈静化してきているとし、労働市場の引き締まりは和らぎつつあるとした。
「政策金利は景気抑制的な水準にあると私は確信している。金利がその水準にとどまる限り、われわれはインフレを着実に押し下げ、市場のバランスを改善させられる」とハーカー氏は述べた。
物価については、9月の消費者物価指数(CPI)が高めの伸びとなったことに触れつつも、自身としては数カ月のデータの動きに注目していると述べた。
総裁は「まず、われわれは物価上昇の再加速は容認しない」としつつ、「ただ私は物価に関する月次ベースでの通常の変動性に過剰に反応したくはない」と語った。
また経済見通しが変化した場合は「いずれの方向にも」政策を調整する用意があると指摘。労働者のストライキや原油価格の上昇、政府機関閉鎖の可能性、学生ローンの返済再開などをリスク要因に挙げた。
ブラード氏は13日、国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会に合わせてマラケシュで開かれたセミナーで、「市場で織り込み不足となっているリスクは、ディスインフレが失速ないし完全に停止し、個人消費支出(PCE)コア価格指数が再び上昇し始めることだ」と指摘。「そうした事態になれば、講じた政策が十分だったのかどうかについて、金融当局者の間で新たに動揺が広がり始めるだろう」と述べた。
さらに、「そうなった場合、FOMCは6%ないし6.5%への利上げを検討せざるを得なくなる」と述べた。
米ミシガン大学が発表した10月の消費者調査(速報値)で1年先のインフレ期待が予想を上回る伸びとなり、5カ月ぶり高水準となった。
1年先のインフレ期待は3.8%に上昇、市場予想3.2%。前月は3.2%
5-10年先のインフレ期待は3.0%に上昇、市場予想2.8%、前月は2.8%
消費者マインド指数は63と、前月から5ポイント余り低下。昨年6月以来の大幅な落ち込みとなった。
ミシガン大消費者調査ディレクターのジョアン・シュー氏は「今年に入って安定していたインフレ懸念が再び強まっている」と発表文で指摘。「物価高が生活水準を低下させているとの回答比率は約49%となり、前月の39%から大幅に増えた。2022年7月に記録した過去最高の水準と並ぶ」と述べた。
生活費の高さが全米で家計のセンチメントを引き続き悪化させている。消費者が家計についてここまで悲観的になっているのは、昨年6月に米消費者物価指数(CPI)が前年同月比9.1%上昇と約40年ぶりの高い伸びとなった時以来だ。
消費者が最も懸念しているのは、食料品と燃料の価格上昇。「こうした懸念が強まり続ければ、消費動向も悪化の一途をたどるだろう」とシュー氏は語った。
10月の現況指数は66.7と5カ月ぶり低水準。前月は71.4だった。期待指数は60.7と、5月以来の低さとなった。
イエレン米財務長官は、イスラエルとイスラム組織ハマスの対立に端を発した戦争が、より広範な地域紛争に拡大するのを防ぐことが極めて重要だと述べた。
イエレン長官は13日、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の年次総会が開催されているモロッコのマラケシュでブルームバーグ・ニュースのインタビューに応じ、「紛争が拡大しないようにすることが決定的に重要であり、米国はそれに注力している」と語った。
ハマスのイスラエル攻撃による潜在的な経済的影響は、世界の財務責任者が集まる会議での最大の懸念事項だった。
イエレン長官はイスラエルとハマスの紛争による「経済への大きな波及効果は今のところない」と述べた。
レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラがイスラエルに対して行動する用意があると表明し、ガザ封鎖を続けることで紛争に新たな戦線が開かれる可能性があるとイランが警告したことで、戦争拡大の懸念が高まっている。トルコはここ数日、アメリカのいくつかの動きを批判し、中国はその最初の対応に非難を浴びている。
アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏によると、米国債市場の混乱は全てアンカー不在に起因する。
ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるエラリアン氏は13日、ブルームバーグテレビジョンで「経済的なアンカーを失った。テクニカルなアンカーも、政治的なアンカーもだ」と発言。「私たちが目にしているのは、非常に大きなボラティリティーだ。今のところ、オーバーシュートした時に何らかの反応が起きるのは幸運だ」と述べた。
今週前半は米金融当局者のハト派的な発言を受けて利回りが低下。11日にはインフレ懸念が再燃し、利回りは上昇に転じた。12日発表の消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことで、同日の30年債利回りは一時19ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、10年債利回りは5%も意識されるようになった。13日には地政学的緊張が高まる中、30年債利回りは低下した。
エラリアン氏は米金融当局の代わりに市場がもっと役割を果たすというシナリオには疑問符が多いと話す。「話はそう簡単ではない。相場見通しは非常に複雑だ」と指摘。「現在の主要な金融安定リスクは異常なボラティリティーだ。それは物事を破壊する傾向がある。過去にもそういうことがあった。これまでのところ、金融システムは信じられないほど耐性があり、これに感謝すべきだ」と述べた。
連邦公開市場委員会(FOMC)が今年の残り2回の会合で利上げを実施するかどうかという疑問が残っている。FOMCが11月に0.25ポイントの利上げを実施する確率は、11日の30%近くから約40%に上昇した。金利スワップ市場は、FOMCが来年利下げに転じることを引き続き予想しているが、その確率はやや低くなった。
FOMCはインフレを抑制し、目標である2%に戻すことを決意している。しかし、エラリアン氏はインフレ率をそのレベルまで早急に引き上げようとするのは「危険」だと主張。経済の安定のためにFOMCが年内、現在の水準で政策金利を維持することを望んでいる。
開票率20%の段階で国民党の得票率は42%弱、労働党26%、緑の党10%、ACT党9%。中道右派政権成立の鍵を握る可能性があるニュージーランド・ファースト党は6%。
ニュージーランド(NZ)で14日投開票した議会(一院制、定数120)総選挙は、野党・国民党が右派政党と連立を組み、6年ぶりに政権を奪還する見通しとなった。ヒプキンス首相が選挙の敗北を認め「新政権への円滑な移行を約束する」と述べた。
米国の銀行による企業や個人への融資が急減速している。大手行の融資残高は7〜9月期に前年同期比2%増にとどまり、伸び率は2年ぶりの低さだった。高い貸出金利が借り入れ需要を抑えたほか、銀行側も預金減で融資に慎重になった。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め効果が強まり、経済活動の鈍化につながっている。
オーストラリアが14日実施した先住民の地位を巡る改憲国民投票の大勢が判明し、改憲が否決される見通しとなった。豪公共放送ABCが報じた。改憲で設立を目指した先住民の代表機関を巡る国民の支持が広がらなかった。国民投票の実施を肝煎りで進めてきたアルバニージー政権にとって逆風となる。
全米自動車労組(UAW)による米自動車大手「ビッグ3」へのストライキは実施からほぼ1カ月が経過した。UAWは徐々にストの対象拠点を広げ、4年間の新労働協約を巡る要求の受諾を会社側に迫ってきたが、労使の溝はなお埋まっていない。UAWは13日、今後は「予告なし」でストの規模を広げる方針を示し、ビッグ3への圧力を強めた。
LSEGのデータによると、今月11日までの1週間に世界の株式ファンドから89億3000万ドルが流出し、大幅な純流出となった。
米国のインフレ率に関する重要指標の発表を控え、金利上昇を警戒したことが背景にある。イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの軍事衝突が激化している中東での地政学的緊張の高まりも、投資家のリスク回避姿勢に拍車をかけた。
地域別では、米国株ファンドが56億8000万ドル、欧州株ファンドが46億3000万ドルのそれぞれ純流出。一方、アジア株ファンドには約12億9000万ドル流入した。
分野別では、金融、ヘルスケア、一般消費財からそれぞれ5億5600万ドル、4億7900万ドル、4億5300万ドル流出した。
一方、安全重視の投資先とされるマネー・マーケット・ファンド(MMF)に約262億7000万ドル、国債ファンドに24億4000万ドルそれぞれ流入した。国債ファンドの流入額は7月12日までの1週間以来、約3カ月ぶりの高水準だった。
グローバル債券ファンドの純資金流入は合計7億4400万ドルにとどまった。
新興市場の株式ファンドからは33億ドルが流出し、流出額は18週ぶりの大きさだった。
米ゴールドマン・サックスは、中東情勢を踏まえるとイラン産原油の生産見通しに小幅な下振れリスクがあることから、2024年下期の北海ブレント先物価格予想が1バレル=100ドルに5ドル上振れする可能性があると明らかにした。
原油先物は9日、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が拡大し、世界的な石油供給に影響を及ぼすとの懸念から大幅上昇した。
ブレント先物は12日、1バレル=86ドルで引けた。
ゴールドマンはイランの原油生産に関して3つのシナリオを想定。
イランの輸出に対する西側の監視が強化され、生産量が前年同期の日量285万バレルまで減少するという「小幅な下振れ」シナリオで、ブレント価格見通しの5ドル上振れを予想した。
イランの原油供給がロシア・ウクライナ戦争前に見込まれていた日量250万バレルまで減少するという「可能性の低い」シナリオではブレント価格の予想は9ドル押し上げられるとした。
イランの生産が日量15万バレル増加するという「起こりそうにない」シナリオも想定し、この場合はブレント価格予想は2ドル下振れするとした。
イスラム組織・ハマスによる攻撃を受けて、イスラエルを巡る地政学環境が緊迫している。もし、事態が一段と深刻化し、それが予想外に原油高を長引かせるようなら、為替相場では日本円にとってさらなる逆風となってくるだろう。
現在までのところ、目立って円安動意が強まっているわけではないが、引き続きドル/円は中短期的には上値リスクを警戒。150─155円付近で日本政府が通貨防衛のため円買い介入を実施するかが問われることになると見ている。
<ドル/円の基本シナリオ>
我々は構造的円安が5年から10年といった長期の観点では継続すると考えているが、この数年間の円安には過熱感があり、向こう2─3年といった時間軸では調整局面を迎えるのではないかとにらんでいる。
中短期的にドル/円は150円を巡る攻防が続き、円買い介入を含めた日本政府の通貨政策が問われると見ており、それは円安トレンドを転換させる即時的な決定打とはならないかもしれないが、数カ月単位では為替需給への影響を通じて、効果が表面化してくると見ている。
150円を超えてドル高・円安が続くようなら、日銀も政策正常化のプロセスを現在、想定されているよりも前倒してくる可能性もある。
こうしたことを考慮すると、長期的に見れば、150円付近は結局、ドル/円の天井圏だったということになるのではないかと思われる。我々は2024年後半にはドル/円が130円前後へ下落していると考えている。
もちろん、ドル/円は日本政府の通貨政策、日銀の金融政策以外にも米国の金融経済情勢など海外要因に強く影響されよう。
シティグループでは米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げの可能性が依然くすぶっているものの、今月11日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨がハト派的な内容だったことから、当面のFF金利(フェデラルファンドレート)は現在の5.25─5.5%で据え置かれる公算が高まったと見ている。
その後、景気減速を確認した後、2024年半ばごろからは調整利下げ局面に入り、24年第4四半期には4.00─4.25%まで金利を引き下げると予想している。
この間、今月前半に一時的に4.8%台に上昇した達した米10年国債利回りは3.65%前後まで低下すると想定している。こうした中で近年、日米金利差と高い相関を有しているドル/円に下落圧力が加わり始めると考えるのは妥当な見方だろう。
<原油相場の重要性>
ここでドル/円の行方を考えるに当たって、もう一つ重要な要素となってくるのが原油相場だ。日本は原油などエネルギー資源の輸入国であり、ロシアによるウクライナ侵攻に揺れた昨年前半のように、原油高が進むと、輸入増となり、日本の貿易収支や交易条件が悪化する。それを通じて底流部分での通貨安圧力を円相場に加えるようになるからだ。
逆に原油安となると、日本の貿易収支、交易条件が改善し、底流部分での通貨高要因となる。もちろん、その時に実際のドル/円がどう反応するかは、その時々の日本国内外の全体的な金融経済環境、特に日米金利差などに依存する。
それでも、原油安が(日本の貿易収支や交易条件の改善を通じて)少なからず金利差などから生じる円安圧力を緩めることは期待できる。
その意味では、今年7月頃からのやや急激なドル高・円安は米金利上昇、それに伴う金利差拡大からの追い風に加え、その間に進んだ原油高によってもあおられていた可能性を指摘できよう。
もう少し因果関係を整理するならば、今年7─9月期は米株が底堅いなど、リスクオン的な市場環境の中、景気回復期待から原油高が進み、インフレ懸念を再び高めたことで、米金利を上昇させた。
その結果の日米金利差拡大と日本の貿易収支、交易条件の悪化観測の双方からドル/円が上昇しやすい土壌となった。
一方、当面の焦点は、これまで原油高などの「結果」として上昇してきた米金利が今度は「原因」に転じ、リスク環境を悪化させながら原油高を止めるような変化が起こるかどうかだろう。
そうなると次第に円安圧力も弱まっていくことが期待できるようになるはずだ。その意味では、先週末までの最近の米株調整や原油高の一巡はそのような展開が始まったことを感じさせていた。
これまでシティグループのコモディティ・リサーチ・チームは、ここからの原油高には限界があり、9月下旬には95ドルを超えた北海ブレント先物は24年第1四半期に80ドル前後へ反落し、第4四半期には70ドル高を割り込んで値を崩すと予想してきた。
そうなった場合には、今年5─6月頃の低水準を割り込んで原油安が進むことになる。
こういう段階まで至ると、ドル/円、米金利、原油を巡る因果関係は、世界経済の減速から原油相場の調整が明確化することで、インフレ圧力がより明確に後退。前述したようなFRBによる調整利下げや米金利の低下を伴いながら、ドル/円には下落圧力が加わることが予期される局面へと移行する。
過去には原油と米ドルは、平均的には逆相関の関係(つまり「原油高・原油安─ドル安・ドル高」の関係)にあった。だが、近年は順相関(つまり「原油高・原油安─ドル高・ドル安との関係」)になってきており、特にその傾向はドル/円で顕著である。
今後、原油相場がシティグループが予想するような展開を見せるなら、ドル/円も下落していくと考えるは自然であろう。
<緊迫する中東情勢>
だが、今回のハマスによるイスラエルへの攻撃の結果、浮上した予期せぬリスクによって、日本円にとってポジティブな(ドル/円にとってネガティブな)シナリオは、足元で新たな挑戦を受ける格好となってしまった。
シティグループのコモディティ・リサーチ・チームは、今回の中東情勢の緊迫化によって、イスラエルとサウジアラビアの関係正常化の場合に期待されたサウジによる原油減産の規模縮小の期待が遠のく可能性を指摘している。
同時に、イラン産原油への制裁が再強化される可能性があることも、原油需給が従来思っていたほど緩んでこない要因になりうるとも見ている。
核開発に絡んだ米国などの制裁でイランの原油産出量は減っていたが、水面下での核協議などが行われる中、イランの原油生産は2022年末から2023年年半ばにかけて日量60万バレルほど増加し、最近は日量320万バレルほどに達していた。
ところが、今回のハマスによるイスラエル攻撃へのイランの関与が疑われる中、米国は追加的なイラン産原油の生産、輸出にこれまでより消極的な姿勢を示し始めるのではないかと思われる。
上述の通り、原油高は日本の貿易収支と交易条件を悪化させることで円安要因となりやすい。また、インフレ懸念を高め、米金利上昇を招く場合にはより強いドル高・円安圧力を発生させかねない。中東情勢の展開とともにその原油への影響は、ドル/円を考える上でも極めて重要なポイントとなる。
現状におけるドル/円は、中短期的には改めて150円突破を試す可能性がくすぶっているとの判断であり、我々はその時には昨年秋に続く、日本政府による円買い介入が実施される公算が高まると考えている。植田和男総裁が率いる日銀の金融政策にも再び焦点が当たることになるだろう。
ウクライナは2年続きで長時間の停電を強いられる冬を迎えようとしている。ロシアのミサイル、ドローンによる容赦ない攻撃により、エネルギーシステムのあちこちで1年前よりも脆弱(ぜいじゃく)な状態が見られるためだ。
夏の数カ月、数千人のエンジニアは破壊された設備の修理に没頭し、気温が低下し始める頃には、防空体制の改善により戦争の影響は緩和される可能性がある。
だが、冬への備えを完了するには財源も時間も足りない。つまり、数百万人ものウクライナ国民が明かりも暖房も水もなしに長い夜を過ごす状況が昨年以上に増え、企業や経済全体にとっての苦痛も増すことになる。
欧州連合(EU)で新規加盟希望国に対応する部門でエネルギー担当チームを率いるマーカス・リッポルド氏は、「破壊されたものを修理するだけで多くの労力が費やされた。レジリエンス(障害復旧力)を高められたか、昨年の冬より状況が改善されているかというと、そうは思わない」と語る。
リッポルド氏はEU本部で、「大変な努力が行われたし、成功もしている。だが、それを続ける必要がある」と語った。
ウクライナは、ロシアが一般市民に最大限の苦痛を与えるために意図的にエネルギー関連施設を破壊していると非難しているが、ロシア政府はこれを否定し、攻撃のターゲットは市民ではなく、軍事関連施設に限られていると主張している。
被害は甚大だ。ウクライナは、エネルギーシステムに対する攻撃の影響について、詳細なデータは戦時下における機密情報であるとして公開していない。
だが国連の6月の推計では、ウクライナの発電能力は、2022年2月のロシアによる本格的な侵攻開始以前に比べて約半分に低下している。37ギガワット近い発電能力のうち、19ギガワット以上が破壊されるか損傷を受け、占領されたものもある。
キーウ経済大学研究センターでは、ウクライナのエネルギー関連インフラに対する直接的な損害は、6月の時点で88億ドル(約1兆3100億円)に達すると試算している。
昨年、気温が摂氏0度を大きく下回り暖房が使用される10月から3月までの時期、前戦から離れて暮らす平均的なウクライナ人の場合、約35日間を電力なしで過ごした。停電すると、水道水の供給にも影響が出やすい。
昨年冬は幸いにも寒さが比較的穏やかで、エネルギーインフラの迅速な修理、原子力発電、欧州諸国からの電力輸入もウクライナを支えた。だが当局者の中には、この冬はもっと条件が厳しくなるという予想もある。
ウクライナ西部に位置する人口約100万人の都市リビウのアンドリー・サドビー市長は8月、東部・南部の最前線からは遠く離れているとはいえ、同市でも最長2カ月は停電を覚悟すべきだろうと語った。
シンクタンク「エネルギー産業研究センター」のオレクサンドル・ハルチェンコ所長は、「厳しい状況になるかと問われれば、答えはイエスだ。電力供給制限も実施されるだろう」と述べた。
<「誰もが備えている」>
ウクライナ国内需要の約4分の1を担う民間最大のエネルギー企業DTEK(ディーテック)では、火力発電所その他の施設が、ロシアによる侵攻開始から20カ月近く、ミサイルやドローン、砲撃による打撃を繰り返し受けている。
ディーテックの業務執行取締役であるドミトロ・サハルク氏はロイターに対し、同社は冬に備えて広範な修理作業を行っているが、一部の発電所は非常に大きな損傷を受けているため、復旧までにさらに時間がかかっていると述べた。
「確かに、信頼性のレベルは(昨年よりも)低下しそうだ」とサハルク氏は言う。
とはいえ、サハルク氏によれば、ディーテックでは発電所を守るため、土のうやコンクリートブロック、石を詰めた籠やドローン突入防止用の鉄格子を設置しているという。
ウクライナのシュミハリ首相は、同様の対策が全国的に実施されていると述べている。
さらに首相は、冬に備えて7基の原子力発電所が待機しており、さらに2基の修理も仕上げの段階に入っているという。昨年、ウクライナの発電量の約60%は原子力によるものだった。
ウクライナ国営送電会社ウクレネルゴのトップ、ボロディミル・クドリツキー氏は、エネルギーシステムの中でも最も損傷の大きい部分の1つである主力グリッドについて、冬季の必要電力量を送電する体制が整っていると語る。
「攻撃のターゲットとなる前に比べ、エネルギーシステムの信頼性は低いし、予備能力も小さい」とクドリツキー氏。「だがその一方で、ロシアによるテロ行為はもはや驚きではないし、誰もがそれに備えている」
国内最大の石油・天然ガス企業であるナフトガスのオレクシー・チェルニショフ最高経営責任者(CEO)はロイターに対し、ウクライナは1991年の独立後初めて、輸入に頼らずに冬を乗り切るだけの天然ガスを備蓄していると語った。
国内エネルギーシステムのレジリエンスを高める対策の1つとして、政府は同セクターの地方分権化に着手しており、欧州からの電力輸入を可能とする合意にもこぎ着けている。侵攻前は、ウクライナは電力純輸出国だった。
一部の企業や都市では独自の発電能力を構築し始めており、可能であれば再生可能エネルギーによる小規模発電を採用し、発電機を設置している。
ウクライナでは企業、個人を問わず何万台もの発電機を輸入しているが、石油備蓄に対しても散発的な攻撃が行われており、発電機を動かす燃料の供給が脅かされている。
キーウの西にある小都市ジトーミルのセルヒー・スホムリン市長は、「現在、市内の地域暖房事業者と水道会社は83台の強力な発電機を用意している」と語る。
「安定して発電機を動かし続けることは不可能だ。しかし、数時間にわたって完全に停電することがあっても、暖房を供給することは可能だろう」
過去の本コラムへの寄稿「日本の新たな外貨流出、デジタル・コンサル・研究開発に弱点」で筆者は、サービス収支、とりわけ「その他サービス収支」を中心に拡大している赤字が執ような円安の遠因となっている可能性を議論してきた。
最近では時代の潮流を映すその性格を念頭に置いた上で、筆者はその他サービス収支赤字を「新時代の赤字」と呼んだりしている。
10月10日に財務省から公表された8月国際収支統計を見ても、その他サービス収支の赤字は8月に5229億円、1-8月合計では4兆6710億円と前年同期(3兆5670億円)から1兆円以上膨らんでいる。
一方で、インバウンド需要増大とともに注目される旅行収支は2582億円の黒字と8月としては過去最大の黒字幅を記録し、1-8月合計では2兆3656億円と前年同期(1742億円)の13倍超の黒字を記録している。
旅行収支黒字の増大によって、サービス収支全体としては赤字が抑制された格好になっているものの、その他サービス収支赤字の拡大傾向は、やはり気になるところである。
今後、日本の国際収支を分析する上で、これまでのような貿易収支、第1次所得収支の動向に限らず、サービス収支の動向も詳細に追うことが、円相場を構造的に考察する際の要諦だ、と筆者は考えている。
<日銀レビューが示した新しいサービス収支の5分類>
この点、2023年8月10日公表の日銀レビュー「国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化」では、サービス収支を主題に近年の構造変化を議論しており、非常に興味深い切り口を示している。
サービス収支に関する取引はアウトライトの為替取引を伴うものが多いと推測され、ここで議論されることはそのまま「構造変化ゆえの円安長期化」の可能性を感じさせる。
過去の本欄では、近年拡大するその他サービス収支赤字の拡大について、デジタル・コンサルティング・研究開発の3つのキーワードでイメージを把握できると述べてきたが、日銀レビューではより精緻な分類でサービス収支全体の変化を捉えており、近年の構造変化をはっきり浮き彫りにしている。
具体的に日銀レビューでは、1)モノの移動や生産活動に関係するもの(モノ関連収支)、2)ヒトの移動や現地での消費活動に関係するもの(ヒト関連収支)、3)デジタルに関係するもの(デジタル関連収支)、4)金融や保険に関係するもの(カネ関連収支)、5)上記以外(その他)──とサービス収支を5つに再編して分類している。
例えば、サービス収支で話題になりやすいインバウンド関連の受け払い(要するに旅行収支)は2)に分類され、米巨大IT企業のプラットフォームサービスやインターネット広告取引などへの受け払いは3)に計上される。
近年になって日本で業容を拡大し、売上を上げている外資系コンサルティング会社への支払いも統計上、3)に計上される。(「専門・経営コンサルティングサービス」はインターネット広告やコンサルティング関連の受け払いを計上するため)。
なお、4)は保険・年金サービスと金融サービスの合計だが、この赤字も近年拡大傾向にある。今回詳しく議論することは避けるが、日本の金融行政においても話題に上がる投資性の強い保険商品が流行した結果、本邦保険会社が海外へ再保険に出すケースが増えており、保険料支払いが増えているという側面もあるという。
<デジタル赤字の規模はどれくらいか>
「新時代の赤字」について議論を重ねる過程で「実際のところ、デジタル関連の赤字に限定した場合、どれくらいのボリュームなのか」という照会を頂戴したこがある。そこで上記の日銀分類に倣ってサービス収支の組替えを行い、足元(2023年8月)までの変化が分かるように筆者が試算してみた。
その結果、2022年に5兆4202億円と2002年以来、約20年ぶりの高水準に達したサービス収支赤字のうち、4兆7814億円がデジタル関連収支の赤字であった。日銀分類に従うと「ほとんがデジタル関連」と言って差し支えない。
もっとも、統計上の限界もあり、近年になって増勢傾向にありそうな外資系コンサルティング会社への支払いや国際的なスポーツ大会へのスポンサー料の支払いなどもデジタル関連収支に混入するため、「ほとんどがデジタル関連」と断言して良いかは議論の余地も残る。ただ、仮にそうであったとしても大きな違和感がないのも事実だろう。
ちなみにデジタル関連収支の赤字は遡及可能な2014年において2兆1483億円であったので、8年間で2倍以上に膨らんだことになる。
同じ期間に旅行収支を主軸とするヒト関連収支が8166億円の赤字から7966億円へ黒字転化し、恐らく今後は年間2兆円を優に超える黒字で安定しそうなことを考慮しても、デジタル関連収支の赤字を半分相殺するのが関の山というイメージにとどまる。
今年1─8合計で見た場合、サービス収支赤字は2兆7198億円に達しているが、このうち3兆7984億円がデジタル関連であり、インバウンド需要の急回復を主軸としてヒト関連で稼いだ2兆3329億円の黒字が全てかき消されてしまっている構図が良く分かる。
その上で、海外への再保険料支払いなどを中心として赤字を拡げるカネ関連収支の存在も捨て置けない。ちなみにカネ関連収支は2014年の1599億円の赤字が、2022年は1兆1053億円と10倍弱に膨らみ、2023年1─8月合計で見ても1兆0657億円と昨年を超えるペースで赤字が拡大している。同期間にヒト関連(旅行収支)で稼いだ黒字(2兆3329億円)の半分がカネ関連収支の赤字に消えているとも読める。
いずれにせよサービス収支の赤字構造は、簡単には解消しそうもないという意味で根深かさを感じさせる。
<デジタル赤字、やはり多い米国向け>
また、デジタル関連収支の支払い先について、完全ではないがイメージを把握することもできる。ここでは、米巨大IT企業のプラットフォームサービスへの支払いなどが含まれる通信・コンピューター・情報サービスに限定して、国・地域別に支払を確認することになる。
これをみると、2022年の約3兆円のうち米国向けが約1兆円と3分の1を占め、これにシンガポール(約4000億円)、オランダ(約2900億円)、中国(約2000億円)と続いている。
想像通り、米国向けの支払いが頭抜けており2017年の約4600億円と比較すれば、5年間で2倍以上に膨らんだことになる。この増勢傾向に今後、大きな変化があるとは考えにくいだろう。ちなみに、カネ関連サービス赤字の場合も、支払い先は米国が筆頭で国や税制上メリットが見込める中南米が続く。
いずれにせよドル/円相場が堅調に推移する背景として、米国へのサービス支払いが増えていることの影響は、徐々に注目度が上がっていく論点かもしれない。
<為替分析でも重視されるサービス取引国際化>
昨春以降、円安相場の構造的要因を指摘すると、それをかたくなに拒む論陣も見受けられた。しかし、日銀レビューが指摘するのは、サービス取引の国際化を背景とする日本の対外経済部門の構造変化であり、その意味するところは、どちらかと言えば円売りである。
国内企業の海外生産移管に伴う貿易収支の構造変化については概ね認知が進んできた印象があるものの、現代ではそうした財の取引に限らず、サービスの取引についても国際化が急速に進展している。
当然、これに伴う国際資金フローも変わってくるものであり、為替分析の世界でもそうした新しい視点を少しずつでも取り入れる必要が出てきているように思える。
第3・四半期の米企業利益は、底堅い経済情勢としっかりした消費需要を追い風に小幅ながら増加する見込みで、ここ数カ月停滞している株価の支えになってもおかしくない。
LSEGのIBESデータによると、S&P総合500種構成企業の第3・四半期利益は前年同期比1.3%増加しそうだ。低調な伸びとはいえ、過去3四半期にわたる横ばい、ないし減益の局面は抜け出すことになる。
一方でS&P総合500種(.SPX)は年初来でなお約12%上昇しているものの、7月終盤の高値からは6%前後下がっているだけに、こうした企業利益動向が株価をてこ入れしてくれると期待する投資家もいる。
ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同チーフ投資ストラテジスト、マシュー・ミスキン氏は、株式市場にとってつらかった9月が終わったところで、決算発表シーズンから「何か良いニュース」をもらう必要があると指摘。金利と信認の面でショックを受けた後、経済は何とか踏ん張っているが、株価をサポートしてくれる具体的な業績の数字を手に入れなければならないと付け加えた。
もっとも足元の経済の頑健さが市場の地合いを好転させるとの期待も出ている。チェリー・レーン・インベストメンツのパートナー、リック・メックラー氏は、特に大手企業はある程度の物価高を消費者に転嫁し、かなり力強い利益率を維持できる立場にあるとの見方を示した。
<まだ高いPER>
米国株は、金利上昇が続き、米連邦準備理事会(FRB)による引き締めがより長引くとの懸念から9月と第3・四半期全体のいずれも主要3指数がマイナスに沈んだ。
この間、実質的にリスクフリーの米国債利回りが16年ぶりの高さに跳ね上がり、株式の投資妙味を低下させる一因にもなった。
ただ、12カ月予想利益に基づくS&P総合500種の株価収益率(PER)は、直近の株安を経てもまだ18倍弱と、長期平均の15.6倍を上回っている。
こうした中で投資家は、金利上昇が企業のコストを引き上げ、「借りる力」や「成長する力」が弱まった兆しが出ていないかどうかに注目するだろう。
ジョン・ハンコックのミスキン氏は「現下の企業利益が目減りし、金利が上がって経済成長見通しがやや下振れるなら、先行きの企業利益見通しはかなり大きく下方修正されることになると思う」と警戒感をにじませた。
第3・四半期決算の発表は、13日のJPモルガン・チェース(JPM.N)など幾つかの大手銀行が口火を切り、今月終盤から11月初めに集中する。
D・A・ダビッドソンのウエルス・マネジメント調査ディレクター、ジェームズ・ラガン氏は「銀行が非常に良い流れをつくれば、市場にとってプラスになるだろう」と述べた。
<AIブームを事業に生かせるか>
今回は、人工知能(AI)も再び重要なテーマになる公算が大きい。投資家は、各企業がAI開発を巡る楽観ムードを、それぞれの業績見通しに落とし込められるかどうかに目を向けるとみられる。
ラガン氏は「企業が(AIに)多額の投資をしているのは承知している。(そこで)彼らが具体的な事業として語り出せるだろうか」と問いかけた。
LSEGのデータによると、セクター別の第3・四半期増益率見通しは、通信サービス(.SPLRCL)が33.8%と最も高くなっており、ハイテク(.SPLRCT)は6.0%。
現時点でS&P総合500種企業の第4・四半期利益は10.8%増と予想されている。
しかしFRBが昨年3月以降に計525ベーシスポイント(bp)の規模で実施してきた利上げの影響が顕在化し始めるとともに、企業利益の足場も揺らいでくるのではないかとの見方も出ている。
1つの手掛かりになるのは、前年同期比で23.1%の増益が見込まれている一般消費財セクター(.SPLRCD)だ。景気後退(リセッション)が間近に想定される事態になれば、真っ先に一般消費財向け支出が削減されると、ウエルススピア・アドバイザーズのシニアバイスプレジデント、オリバー・パーシェ氏は説明した。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル独連銀総裁は13日、ドイツのインフレ率はピークに達し2025年までに2.7%へ低下するとの見通しを示した。
金融引き締めは成果を上げており、インフレは良い方向に向かっていると記者団に述べた。
インフレ率が来年末までに3%強へ低下すれば満足との考えを示した。
総裁はモロッコで開催中の国際通貨基金(IMF)会合の合間にドイツのリントナー財務相と共同で会見し、「インフレはピークを過ぎたようだ」と発言。「10回の利上げが効果を上げている」と述べた。
今後は金融政策の経済への影響を見極めることが重要だとしながらも「ただ、全体としては金融政策の効果に満足している」と語った。
ナーゲル総裁とリントナー財務相は、ドイツが欧州の病人だとの一部のアナリストの見方を否定。ナーゲル氏は力強い労働市場と賃金の大幅な伸びを指摘し、インフレの緩和で消費も上向くとの見通しを示した。
国際通貨基金(IMF)は12日、ザンビアの債務再編協議が覚書締結に向けて進展したことを歓迎した。ゲオルギエバIMF専務理事は、途上国の債務軽減を目指す20カ国・地域(G20)の「共通枠組み」はなかなか成果が上がらないが、ザンビアなど個別国のケースで最近進捗が見られると指摘した。
ザンビアは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が起こった2020年にアフリカ地域で最初にデフォルト(債務不履行)を起こした。共通枠組みプロセス下での再編協議は難航していた。
ゲオルギエバ氏は会見で、共通枠組みができる前に比べれば、債務再編について楽観的になったとしながらも、さらなる進展が必要だと指摘した。
これに先立つ会見では、共通枠組みを完全に放棄することは、世界を「予測不可能な環境」に置くことになるとし、債務再編と気候危機をより整合させるなど、創造的アプローチも必要だと述べていた。
12日は米国、中国、その他G20諸国、ザンビアなどの債務国、民間債権者、IMF、世界銀行の担当者が債務問題について協議するグローバル・ソブリン・デット・ラウンドテーブルが開催された。
終了後、IMF、世銀、G20議長国のインドは共同声明を発表し、ザンビアなど個別国の事案では「大きな進展」が見られるものの、債権者間の同等性確保(CoT)についてなお民間債権者と公的債権者の間で相違があるとし、「公的二国間債権者と民間債権者の間のCoTの評価と実施は依然として見解が分かれる問題で、全ての利害関係者による合意は達成できなかった」と述べた。
国際通貨基金(IMF)の助言機関である国際通貨金融委員会(IMFC)は14日、IMFが「有意義な規模」で増資することを支持する議長総括を公表した。日本は現在の出資比率を維持したままの増資を「唯一の現実的な選択肢」だと主張した。
IMFは途上国への融資を拡大するため12月15日までに資本増強を決定する予定だ。経済規模に応じて出資割合の引き上げを求める中国などに対し、出資割合で1〜2位を占める米国と日本は比率の維持を求めている。
14日のIMFCには日本からは鈴木俊一財務相と日銀の植田和男総裁が出席した。財務省によると、日本は各国が均等に出資額を1.5倍に増やす案を提案。加盟する190カ国が出資比率の変更で期限内に合意に至ることは現実的ではないと主張した。
モロッコ中部のマラケシュで開かれているIMFと世界銀行の年次総会は、国際開発金融機関の増強が主要議題となっていた。
米共和党はマッカーシー氏解任で空席となった下院議長の候補として、保守派の急先鋒であるジョーダン下院議員(オハイオ州)を指名したと、議会関係者が明らかにした。
強硬的な姿勢や、選挙に関する陰謀説を唱えるジョーダン氏の態度が共和党議員の再選を困難にしかねないと、穏健派議員らは懸念しており、下院議長の就任には深刻な反対が予想される。
米下院は新議長が決まるまで、イスラム組織ハマスと戦うイスラエルへの新規援助を含め、いかなる議案も承認できない。
下院議長に就任するには、少なくとも217票が必要になる。民主党の下院議員から支持票が得られる兆候はないため、複数の議員が棄権しない限り、共和党の離反が4人を超えればジョーダン氏の就任は承認されない。
日本が円相場を支えるために為替市場で介入を余儀なくされる要素はないと、国際通貨基金(IMF)は認識している。
IMFアジア太平洋局のサンジャヤ・パンス副局長は14日、モロッコのマラケシュで開催されたIMF・世界銀行の年次総会で記者団に対し、「該当する条件は見当たらない」と述べた。同副局長は日本の見解を代弁しているわけではないと断った上で、日本当局は「この状況について私が知らないことを知っているかもしれない」と述べた。
パンス氏によれば、円安は主に金利差が要因であり、経済のファンダメンタルズを反映している。つまり日本国外ではどこもインフレ率が上昇している一方、日本銀行は超緩和政策を継続している。介入の必要性を裏付けるような主要基準である市場の機能不全や、金融安定へのリスク、制御不能になったインフレ期待をIMFは認識していないと同氏は述べた。
世界の金融市場でトレーダーは相場の乱高下に身構えている。中東での紛争継続で逃避先資産への需要は高まっており、投資家は世界的な金利見通しの再考も余儀なくされている。
外国為替市場では、伝統的に安全通貨とみなされる米ドルや日本円、スイスフランの動きに注目が集まりそうだ。東京外国為替市場の円相場は16日午前7時時点で1ドル=149円台半ばで推移している。豪ドルなどリスクに敏感な通貨は再び売り圧力にさらされる可能性がある。金相場は13日、3月以来の大幅上昇を演じ、1オンス当たり1900ドルを回復した。
市場参加者は原油価格と前週に荒い値動きとなった米国債相場にも注目するとみられる。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザでの「大規模な地上作戦」を準備していることを明らかにしている。一方で米国は、ここ数日にイランと非公式ルートで協議を実施し、イスラエルでの戦闘をエスカレートさせないよう警告。ブリンケン米国務長官は16日にイスラエルを再び訪問し、同国高官とさらなる協議を実施する予定だ。
ブルームバーグ・エコノミクスによれば、中東で紛争が拡大すれば世界的なリセッション(景気後退)につながる恐れがある。投資家の間には、米金融当局の利上げを巡る思惑や、米議会が政府閉鎖を回避できるのかについての懸念もある。
コロンビア・スレッドニードルのグローバル金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は、マクロ環境の悪化に金利の急変動が重なり、世界的にボラティリティーが高まる「舞台が整った」と指摘。世界の投資家はイスラエルとハマスの戦争が他地域に飛び火するかどうかに注目しているが、為替トレーダーは今のところ米金融当局の動向をより注視していると語った。
米下院では議長空席の状態が続いている。共和党はトランプ前大統領の支持を受けるジョーダン下院議員を候補に指名したが、穏健派議員は同議員の強硬的な姿勢を懸念しており、党内には反発の声も強い。米下院は新議長が決まるまで、イスラエルへの新規援助を含めいかなる議案も決められない。
いずれにせよ、中東の紛争が投資家にとって最大の波乱要因であることは間違いないだろう。
「この事態がどう転ぶかに誰もが神経をとがらせている。ただ原油供給が本当に懸念される事態になるまで、市場は固唾を飲んで見守ることになるだろう」とラボバンクのシニア外為ストラテジスト、ジェーン・フォリー氏は語った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
国際通貨基金(IMF)のエコノミストは中国不動産セクターの低迷について、すでに回復の勢いが失われつつあるアジア太平洋地域の成長見通しを悪化させる恐れがあると警告した。
IMFのエコノミストであるヤン・キャリエール・スワロー、クリシュナ・スリニバーサン両氏は13日に発表したリポートで「短期的には、多額の負債を抱えた中国不動産セクターの急激な調整と、それに伴う経済活動の鈍化は、特に中国と密接な貿易関係にある資源輸出国に波及するだろう」と指摘した。
しかし、経営難に陥った不動産開発業者の再建支援や未完成の不動産プロジェクトへの支援提供など、適切な不動産政策をとることで、中国は局地的なバランスシート劣化が広がるのを避けることができると、スリニバーサン氏は13日にモロッコのマラケシュで行われた記者会見で述べた。
IMFは10日、来年のアジア地域の成長率予測を4.2%に引き下げ、4月の予測から0.2ポイント下方修正した。2023年の予測は4.6%で維持し、昨年の3.9%からの加速を予想している。
両氏は「楽観度が弱まった評価は、第3四半期の成長と投資の鈍化兆候に基づくものだ。その一因は、東南アジアや日本など世界経済の減速に伴う外需の軟化や、中国における不動産投資の低迷を反映している」と指摘した。
中国の脆弱(ぜいじゃく)な景気回復が注目されているのは、中国がデフレの瀬戸際に逆戻りしていることを示唆する新たなデータが示されたからだ。ブルームバーグ・ニュースは10日、中国政府がインフラへの支出を増やす計画の一環として、今年の財政赤字拡大を容認することを検討していると報じた。
北京からの旅行者マイク・グオさんは、堅尼地城(ケネディタウン)の道路標識のそばで写真を撮った後、「今は香港にいる時間の大部分を小紅書のインフルエンサーの足跡をたどって写真を撮ることに充てている」と語った。このエリアは海や流行のコーヒーショップに近いため、多くの中国人観光客を引き付けている。
こうした動きは、停滞する経済の下支えを中国本土からの観光客に頼ることができるとの香港の期待に水を差している。政府によると、コロナ禍前に観光業は香港の域内総生産(GDP)の3.6%前後を占めていたほか、雇用者数は約23万2700人と、全体の約6%に上っていた。
JLLの香港リテール責任者オリバー・トン氏は、大型連休中に店舗の客足が20-30%増えたのにかかわらず、香港の小売売上高は通常の週末と同程度だったと話す。次の春節(旧正月)の連休についても悲観的な見方が広がっていると同氏は付け加えた。
香港政府統計局によると、8月の宝飾品や時計を含む高級品の売上高は52億香港ドル(約1000億円)と、大規模な抗議デモや新型コロナの打撃を受ける前の2018年同月から31%減少した。
中国人民銀行(中央銀行)は13日、潘功勝総裁がモロッコのマラケシュでイエレン米財務長官と会談したと発表した。
人民銀によると、両者は世界経済情勢や発展途上国の債務問題について意見を交換し、金融分野における米中作業部会に関する事項について協議したという。
一方、イエレン長官はX(旧ツイッター)で、韓国の秋慶鎬・企画財政相と会談し、最近のマクロ経済動向や安全保障に関する問題について話し合ったと明かした。また日米韓3カ国の財務相会談を楽しみにしているとした。日米韓財務相会談の開催時期は現時点で不明。
中国税関総署が13日発表した統計によると、9月の鉄鉱石輸入量は1億0118万トンで、2020年10月以来の高水準だった8月から4.9%減少した。国内産の供給増加や、鉄鋼生産の採算悪化が背景。
前年比では1.47%増加した。
コンサルティング会社マイスチールによると、中国の製鉄会社で利益が出ているのは9月末時点で全体の3分の1程度にとどまった。
今月に入って2大輸出国のオーストラリアとブラジルからの輸入が減少しており、減少傾向は続くとみられている。
スチールホームのデータによると、主要港の鉄鉱石在庫は9月28日時点で1億0850万トンで前月比8.5%減、前年比19.7%減だった。
1─9月の輸入量は前年比6.7%増の8億7665万トンで過去最高だった。
9月の鉄鋼製品輸出は806万トンで前年比61.8%増加する一方、前月からは2.66%減少した。1─9月の輸出は6682万トンで前年比31.8%増加した。
中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁は14日、中国の経済と不動産市場に改善の兆しが見られ、地方政府の債務リスクは「管理可能」だと述べた。
国際通貨基金(IMF)の助言機関、国際通貨金融委員会(IMFC)がモロッコのマラケシュで開いた会合でスピーチを行った潘総裁は、工業生産やサービス活動などの指標は、経済の前向きな傾向を示していると説明。
住宅ローン規制の緩和を受け、多くの地域で不動産市場が「回復の兆しを見せている」と指摘し、地方政府の債務リスクは「構造的なもので、おおむね管理可能」だと語った。
中国は民間企業の事業環境を改善させ、外国からの投資を誘致し貿易を安定させる取り組みを強化するとも話したが、新たな具体策には触れなかった。潘総裁によれば、「若者の雇用は大幅に改善」され、雇用全体は安定しているという。
潘総裁は別の人民銀声明で、金融政策は総体的および構造的な手段の両方をよりよく活用することになるとした上で、中国は合理的な拡大ペースを維持しながら、より持続可能な成長を目指すとコメントした。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。手数料を巡る規制当局からの圧力が伝わった資産運用会社セント・ジェームス・プレイスが売られたのが相場の下げを主導した。週間ではエネルギー株の上昇に支えられてFTSE100種指数(.FTSE)は1.40%高と、4週ぶりに上昇した。
中東紛争を背景に安全な資産とされる金の需要が高まったことから13日の貴金属株指数(.FTNMX551030)は4.86%上げ、週間では8.77%上昇した。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。世界的なリスク回避の動きや、エネルギー価格の上昇がインフレ圧力の持続に対する懸念に拍車を掛けたことが売りを促した。
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツのマルチアセット・ストラテジスト、アンティ・ツヴァリ氏は「欧州諸国は非常に景気循環的な市場となっており、エネルギー輸入国でもある。このためエネルギー価格の高騰は株式にとってマイナス材料だ」と話した。
<ユーロ圏債券> 長期債利回りが低下した。週間でも6週間ぶりに低下し、7月中旬以来となる大幅な低下を記録した。中東紛争が拡大するとの懸念から質への逃避が進んだ。
欧州中央銀行(ECB)当局者は13日、現行の引き締めサイクルが終わりに近づいている可能性を示唆した。
ECBのラガルド総裁は13日、ユーロ圏のインフレは目標の2%に回帰し始めており、ECBは必要に応じ一段の引き締めを実施する用意があると述べた。
一方、ECB理事会メンバーのナーゲル独連銀総裁は13日、ドイツのインフレ率はピークに達し2025年までに2.7%へ低下するとの見通しを示した。
コメルツ銀行の金利クレジット調査部長、クリストフ・リーガー氏は「ガザでの地上攻勢が予想され、ヒズボラのほか、米国やイランでさえ参戦するリスクもあることから、週末を控えてショートは難しい。今後数週間は安全プレミアムが上昇する可能性がある」と述べた。
<為替> ドルが続伸し、主要通貨バスケットに対し1週間ぶり高値を付けた。前日の取引は予想を上回る9月の米消費者物価指数(CPI)を受け連邦準備理事会(FRB)が金利をより長期間高水準に維持するという観測が強まる中、ドルは急伸していた。マネックス・セキュリティーズのFXトレーダー、ヘレン・ギブン氏は、11日にはPPIに対する反応は比較的控えめだったものの、「CPIを受けそうした反応に修正が入り、ドルの大幅な動きにつながった」という見方を示した。
主要6通貨に対するドル指数は0.11%高の106.63。前日は、1日としては3月15日以来最大の伸びを記録した。週足では0.5%上昇する見通し。
<債券> 国債利回りが低下した。イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を開始したことを受け、事態がエスカレートするとの懸念から安全資産である米国債が買われた。
ただ、今週の債券入札が不調だったことは投資家の警戒感を高め、利回りは上昇する可能性もある。
ステート・ストリート(ボストン)のシニアグローバルマクロストラテジスト、マービン・ロー氏は「週末に地上戦が激化した場合に備え、安全資産に投資するのが目的だ」と語った。
ただ、多くのトレーダーや投資家は、国債価格の下落を予想して国債をショートにしている。「もし週末に安全逃避的な動きがあるのであれば、過剰なショートは避けたいところだろう」(ロー氏)という。
一方、SLCマネジメント(ボストン)の投資戦略・資産配分担当マネージングディレクター、デック・マラーキー氏は「米政府の財政赤字と国債増発の必要性から国債入札の規模が大きくなると見込まれ、投資家はディーラーが当初予想していたよりも高い利回りを要求している」と指摘。国債の大幅供給に対してどれだけのプレミアムを上乗せすべきか、市場は見極めなければならないとした。
TD証券(ニューヨーク)で米金利戦略を担当するゲンナディ・ゴールドバーグ氏も、指標10年国債利回りは短期的に5%まで上昇する可能性もあれば、地政学リスクから低下する可能性もあると語った。「国内ファンダメンタルズと地政学リスクのどちらかが実際に優勢となるまで、このような波乱が続くだろう」という。
<株式> S&P総合500種とナスダック総合が下落して取引を終えた。一部の米銀大手は好決算を発表したものの、消費者信頼感指数の低下と中東紛争を受けて投資家のリスク選好意欲が削がれた。
主要3株価指数は上昇して始まったが、米ミシガン大学が発表した10月の消費者信頼感指数(速報値)が3カ月連続で低下し、市場予想中央値を下回ったことを受け、下げに転じた。ダウ工業株30種は小幅高となった。 
投資家は中東情勢も注視。イスラエル軍主席報道官のダニエル・ハガリ氏は、イスラエル軍の歩兵部隊と戦車部隊が13日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ内で「局地的な奇襲」を実施したと発表した。空爆作戦から地上作戦への移行を初めて明らかにしたとみられる。
ニューヨーク・ライフ・インベストメンツのエコノミスト兼ポートフォリオストラテジスト、ローレン・グッドウィン氏は「これはリスクオフ志向の強まりを示唆している」と指摘。債券、株式、原油の動きは、消費者信頼感指数の悪化、世界経済および地政学的紛争に対する懸念を反映していると述べた。
JPモルガン(JPM.N)、ウェルズ・ファーゴ(WFC.N)、シティグループ(C.N)の株価は金利上昇を追い風にアナリスト予想を上回った四半期決算を受け買われた。終値はウェルズ・ファーゴが3%、JPモルガンが1.5%それぞれ上昇したが、シティは失速し0.2%安だった。
銀行(.SPXBK)は一時3.4%高と3週間ぶりの高値を付けた。終値は0.6%高。
個別銘柄では、世界最大の資産運用会社ブラックロック(BLK.N)が1.3%安。第3・四半期の純資金流入額が25億7000万ドルと、前年同期の169億ドルから減少した。
米医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループ(UNH.N)は2.6%高。第3・四半期利益が予想を上回った。
米ディスカウント小売大手、ダラー・ゼネラル(DG.N)は9%上昇。ジェフ・オーウェン最高経営責任者(CEO)の後任としてトッド・バソス前CEOが就任すると発表した。
米航空機大手ボーイング(BA.N)は3%安。米航空機部品大手スピリット・エアロシステムズ(SPR.N)が旅客機「737MAX8」に影響する製造上の欠陥について、現在行っている検査の範囲を拡大したことを受けた。スピリットの株価は0.9%下落した。
<米原油先物> 中東情勢の不透明感が強まる中、需給逼迫(ひっぱく)懸念が再燃し、4日ぶりに急反発した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日比4.78ドル(5.77%)高の1バレル=87.69ドル。
日経先物31895、ダウ先33827、債先145.57、米4.616、独2.7220、仏3.306、西3.870、伊4.772、英4.4235、波5.820、原油87.72、銅7,943、ドル円149.57、ユーロドル1.0510
※10/13 NY引け値

備忘録(2023/10/12)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
サイバーセキュリティー分野には明るい兆しが見え始めている。2023年4〜6月期のこの分野のスタートアップの資金調達件数は約1年ぶりに増加に転じた。同期間のスタートアップ全体の資金調達件数が減少した点を踏まえると、これはなおさら重要だ。
23年4〜6月期のもう一つの好材料はM&A(合併・買収)によるエグジット(資金回収)の大幅な増加だった。法人向けシステム大手が自社機能を拡充するため、サイバーセキュリティー分野のスタートアップを相次ぎ買収した。
今後の見通し
資金調達環境がさらに厳しくなり、景気後退(リセッション)に陥る可能性があることを考えると、サイバーセキュリティー分野のスタートアップの資金調達件数が増加を維持できるかどうかは見通せない。
だが、ダウンラウンドが発生し、資金繰りの苦しいスタートアップが買い手を探すなか、法人向けシステム大手は企業価値の下落を生かして自社機能の拡充に取り組み、M&Aは増えるだろう。例えば、シスコは買収攻勢を続けている。9月には様々な機器の動作記録(ログ)を分析し、不正や脅威を検知するシステムを手掛ける米スプランク(Splunk)を、シスコにとって過去最高となる280億ドルで買収すると発表した。
生成AIアプリケーションの普及もサイバーセキュリティー分野への出資が増える一因となっている。企業は従業員が外部ツールに入力する情報の保護に取り組んでいるからだ。機械学習システムのセキュリティー(MLSec)などは、こうした新たなリスクに対処するのが狙いだ。
●決算関連
米薬局大手のウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンスが12日発表した2023年6〜8月期決算は、最終損益が1億8000万ドル(約270億円)の赤字(前年同期は4億1500万ドルの赤字)だった。新型コロナウイルスの検査キットなど関連需要が縮小しているうえ、消費者の支出引き締めで市販薬や日用品の販売が伸び悩んだ。事業買収に関わる費用や為替換算などの特殊要因を除いた1株利益は0.67ドルで、市場の予想(0.69ドル程度)を下回った。
売上高は前年同期比9%増の354億2200万ドル。最終赤字は税関連支出などがかさんだ前年同期から縮小した。
主力の米薬局事業では、処方薬の価格上昇が売り上げを押し上げた。ただ、処方薬を除いた店舗の売り上げは同4%減と落ち込み、業績全体の重荷となった。
米国内薬局以外の事業では、新事業として力を入れる「米国ヘルスケア」部門の売上高が約20億ドルと、前年同期比3倍強に拡大した。売上高全体に占める割合は6%となった。英薬局チェーンが中心の「国外」事業は12%の増収だった。
ウォルグリーンズが同日発表した23年8月通期の業績は、売上高が前期比5%増の1390億8100万ドルだった。最終損益は前期の43億3700万ドルの黒字から30億8000万ドルの赤字に転じた。
ジンジャー・グラハム暫定最高経営責任者(CEO)は足元の業績が「ウォルグリーンズの健全なアセットやブランドの強さなど(真の)価値を反映していない」と主張。24年にかけて、現在進めている10億ドル規模のコスト削減など取り組みの成果が現れ、業績が改善に向かうと説明した。24年8月通期見通しは、売上高で1410億〜1450億ドル、特殊要因調整後の1株利益で3.20〜3.50ドルと予想した。
同社は決算発表に先立ち、8月に突如退任した前任CEOのロザリンド・ブリュワー氏の後任に米医療保険大手シグナ経営幹部のティム・ウェントワース氏を迎える人事を発表した。ヘルスケア事業で幅広い経験を持つトップに迎え、薬局小売りから医療サービスへの事業シフトを加速する。
今期は、国内外のユニクロ事業で増収増益、特に海外ユニクロ事業の伸長が著しく、グローバルでの事業拡大継続を予想しているという。ユニクロ事業での海外出店は、前期に比べ1割強多い180店舗を予定しており、北米や欧州を中心に出店を加速する。
同社は今後の成長の柱に海外事業を据えている。決算会見に出席した柳井正会長兼社長は、「現在のやり方で5兆円の道筋は見えている。10兆円は決して届かない目標とは考えていない」と話した。
●先進国、グローバル、金融市場
欧州中央銀行(ECB)は9月に0.25ポイントの追加利上げを決めたが、当局者らはこれを「拮抗(きっこう)した判断」と認識していたことが、12日公表された政策決定会合の議事要旨で明らかになった。
9月13、14両日の会合の議事要旨によると、メンバーらは引き締め過ぎのリスクと引き締めが足りないリスクは「より均衡した」と判断。
「かなりの不確実性に照らし、利上げか利上げ休止かは拮抗した判断で、戦術的な考慮も働いたとメンバーらは強調した」という。
主な内容は以下の通り:
金利
利上げを支持する当局者は「インフレ率が依然として高水準であること、利上げはインフレ率を速やかに目標に戻すという政策委の強い決意を示すものになることを強調した
予測期間の最初の2年間の総合インフレ率予測が上方修正されたこと、そしてその予測が市場金利を前提としており、市場金利は年内のさらなる利上げ予想を織り込んでいることも強調された
据え置きを主張したメンバーは、景気の軟化と予測期間の終わりまでにインフレ率が目標に戻ると予想されたことを挙げ、「7月以降に入手されたデータは、全体として追加利上げを支持するものではない」と指摘した
これらのメンバーはまた、過去の利上げの効果の多くがまだ浸透の過程にあると論じた
インフレ率
全体として、ディスインフレのプロセスはほぼ予想通りに進んでいるようだ
コアインフレの数値が過去数カ月間、市場予想を上回っていないことで安心感が出てきた
基調的なインフレを示すほとんどの指標が、緩やかな低下をたどっていることが今やいっそう明確になったとメンバーらは認識
賃金の伸びに関しては、加速を始めた限定的な兆候が見られたが、転換点を示す具体的な証拠はまだ現れていない
経済見通し
「今後数カ月の経済成長は引き続き低調だろう」との見解で一致
振り返って考えれば、6月時点の予測は2023年の景気回復の強さについて楽観的過ぎた
それでも、実質所得の増加と力強い労働市場を背景に緩やかな景気回復が定着すると予想するのは依然として妥当
1バレル=100ドル近くから原油価格が後退したのは、原油高が米国やその他の地域で需要減が始まるほどの水準に達したことを示しているとの見解を、国際エネルギー機関(IEA)が示した。
IEAは月報で「マクロ経済指標の悪化や米国で需要が破壊されている兆しが、供給不安を上回った。米国ではガソリン需要が20年ぶりの低水準に落ち込んだ」と指摘。「為替の影響や補助金の打ち切りが燃料価格上昇に拍車を掛けている新興国市場では、需要破壊がいっそう深刻だ」と続けた。
モロッコで開催されている国際通貨基金(IMF)の会合に合わせて開かれた会議でビルロワドガロー氏は、消費者物価には前向きな兆しが表れていると指摘。2025年までにインフレ率を2%に戻すというECBのコミットメントの達成に一段と自信を深めていると語った。
同氏は「政策行動が不十分なリスクと行き過ぎのリスクの間でバランスを取る必要がある。私はこれらのリスクがいまや少なくとも均衡しているとみている」と述べ、「ユーロ圏においては、積極性よりも忍耐が今はより重要だ」と続けた。
またECB政策委メンバー、センテノ・ポルトガル銀行(中銀)総裁は、現在の金融政策設定でインフレ率が目標まで低下すると確信していると表明した。
センテノ氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「現在の金利水準ならば2%の目標達成に大きく貢献できる」とし、「この金融政策姿勢を続けることで、目標にたどり着けるだろう。インフレ率の低下を完全に確信するまで当面は維持する」と語った。
ドイツ経済省は11日、2023年の国内総生産(GDP)が前年比0.4%減になるとの予想を示した。4月末時点では0.4%増と見込んでいた。
同省の最新経済見通しによれば、来年の独経済成長率は1.3%。今年春に示していた1.6%成長予測を下方修正した。エネルギー危機の影響が長引くとしている。
米労働省が12日発表した9月の消費者物価指数(CPI)の伸びが予想を上回ったことを受け、連邦準備理事会(FRB)は年内にあと1回の利上げを実施し、来年は長期にわたり金利を高水準に維持するとの観測が一段と高まった。
短期金融市場では、FRBが12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決定する確率が約40%であることが織り込まれている。CPI統計前は約28%だった。
あと1回の0.25%ポイントの利上げが実施されれば、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は5.50─5.75%となる。市場が予測する来年末の金利水準は、この水準から約1%ポイント低い4.6%。CPI統計発表前は4.5%だった。
エクイティ・キャピタルのチーフ・マクロ・エコノミスト、スチュアート・コール氏は「今回のCPI統計だけでは、FRBが10月31─11月1日の次回会合で利上げを実施する必要があると示唆するには不十分だった」としながらも、「FRBは金利をより長期にわたり高水準に維持する必要があるとのメッセージを正当化するものと受け止める可能性があり、再利上げの可能性は残されている」と述べた。
米労働省が12日発表した9月の消費者物価指数(CPI)は、家賃やガソリン代主導で上昇したが、基調的なインフレの伸び鈍化を示唆した。基調的なインフレ圧力の着実な緩和は連邦準備理事会(FRB)が来月利上げを見送るとの見方を支えた。
フィッチ・レーティングスの米地域経済責任者、オル・ソノラ氏は「全体像としては、傾向は依然非常に明るいが、インフレとの戦いは続いている」と指摘。「最近の長期金利の上昇を考慮すると、FRB当局者は利上げ停止を12月まで維持したいと考えているかもしれない」と述べた。
CPIは前月比0.4%上昇。住居費の0.6%上昇がCPI上昇の半分以上を占めた。家賃や宿泊費が上昇した。
8月は0.6%上昇と14カ月ぶりの大幅な伸びを記録していた。8月の住居費は0.3%上昇だった。
ガソリン価格は2.1%上昇。8月は10.6%上昇だった。食品価格は0.2%上昇、家庭で消費される食品の価格は0.1%上昇した。肉、魚、卵の価格が上昇した一方、シリアルやベーカリー製品の価格が0.4%下落と、2021年6月以降で初めて下落した。果物、野菜、ノンアルコール飲料の価格は変わらずだった。
9月CPIの前年比は3.7%上昇で8月と変わらずだった。
ロイター調査によるエコノミスト予想は前月比0.3%上昇、前年比3.6%上昇だった。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は0.3%上昇と8月と一致。持ち家の帰属家賃が0.6%上昇した。上昇率は2月以来の大きさで、8月の0.4%上昇から伸びが加速した。
宿泊費の3.7%上昇もコアCPIの伸びに寄与した。宿泊費の上昇は4カ月ぶり。自動車保険、娯楽、日用品、新車、家庭用品なども上昇した。
一方、中古車・トラックは2.5%下落。服飾品も0.8%下落した。
コア指数の前年比は4.1%上昇し、前月の4.3%から鈍化し、伸びは2021年9月以降で最小となった。
バイデン米大統領はコア指数の前年比の伸び鈍化を歓迎。自身の経済政策が機能している証拠だとした。
米労働省が12日発表した10月7日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は横ばいの20万9000件となった。ロイターがまとめたエコノミスト予想は21万件だった。
全米自動車労働組合(UAW)のストライキは4週目に入ったが、労働市場に大きな影響を与えている兆候はまだ見られない。ただ、政策当局者はUAWのストを経済見通しを巡る新たな不確実性の要因とみている。
国際エネルギー機関(IEA)は12日公表した月報で、2024年の石油需要の伸びの予測を従来の日量100万バレルから88万バレルに引き下げた。
厳しさを増す世界の経済情勢とエネルギー効率化の進展が消費の重しになるとみられている。
23年の需要予測は従来の日量220万バレルから230万バレルに引き上げた。
サウジアラビアとロシアは合計で日量130万バレルの供給削減を年末まで延長。これを受け北海ブレントは9月に10カ月ぶりの高値を付けた。
ただ先週はマクロ経済見通しの悪化で需要が伸び悩むとの懸念が広がり、価格が急落した。
IEAは「1月に追加の供給削減が解除されれば、供給余剰に転じる可能性があり、枯渇した在庫の補充にある程度寄与するだろう」としている。
米金融当局者は次回連邦公開市場委員会(FOMC)会合を前に忍耐強さを強調しているものの、持続的なインフレの兆候が新たに示されたため、年内の追加利上げへの扉は引き続き開かれているもようだ。
12日に発表された9月の米消費者物価指数(CPI)統計では、食品とエネルギーコストを除くコア指数が前月比0.3%上昇した。エコノミストは基調的なインフレを見る上でコア指数の方が適していると考えている。総合指数は前月比0.4%上昇し、予想を上回った。総合もコアも前年同月比の伸びは、金融当局が目標とする2%を大幅に上回っている。
ネーションワイド・ライフ・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は「これでFOMCは追加利上げへの扉を開けておくだろう」と話した。ただ、最近の長期債利回り上昇に言及し、「市場が当局に代わって引き締めを行うことになる可能性は確かにある」と語った。
利回り上昇の理由が分析されている中、10月31日ー11月1日の次回FOMC会合では利上げを見送る可能性を示唆する政策担当者もいる。
この日のCPI統計発表後、米国債利回りは上昇。トレーダーの間では、年内利上げの確率はほぼ半々とみられている。
11日に公表された9月FOMC会合の議事要旨によると、景気抑制的な政策を当面維持すべきだとの認識で政策当局者が一致した。一方で、引き締め過ぎのリスクとインフレ鈍化を維持することとのバランスを取る必要があるとの見解も示した。
CPI統計はサービス部門の価格上昇を示した。パウエル議長率いる金融当局はサービス部門のインフレについて、労働市場の逼迫(ひっぱく)が一因であるとみているため、特に懸念している。
ブルームバーグの算出によると、住宅とエネルギーを除くサービス価格は前月比0.6%上昇し、過去1年間で最も上昇した。
ウェルズ・ファーゴのチーフエコノミスト、ジェイ・ブライソン氏は「インフレ率を持続的に2%に戻す上で最後の1マイルと言えるが、難しい。だからこそFOMCは2%への回帰を確実にするため、かなり長い間、抑制的な姿勢を続けるだろう」と述べた。
FOMCは過去19カ月間に5ポイント余りも政策金利を引き上げた後、再び引き上げる必要があるかどうかを判断しようとしている。
9月の会合では金利を据え置いたが、会合後に発表された予測によれば、19人の政策決定当局者のうち12人が年内の追加利上げを支持する意向を示している。
しかし、当局が忍耐を強調しているため、追加利上げの必要性を過半数に納得させるには追加のデータが必要になる。
LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏は「慎重に政策を進め、忍耐を判断の指針としているため、データが増えるにつれて緊急性が高まらない限り、第4四半期の利上げはないだろう」と述べた。
日銀の政策修正観測がくすぶる中、市場ではマイナス金利撤廃後の日銀当座預金について、現在の3層構造からゼロ%と0.1%の2層に移行するとの見方が出ている。マイナス金利政策の下で厳しい運用を強いられてきた銀行にとって撤廃は「朗報」となるが、短期市場への影響は見通しづらいとの声がある。国債利回りも上昇してくれば、資金運用先としての短期市場の重要性が相対的に低下するおそれがあるからだ。
米金融大手JPモルガン・チェース(JPM.N)のジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、中東における紛争が「同地域をはるかに超えて波及効果をもたらす」おそれがあると警告した。ロイターが従業員に宛てたメモを確認した。
ダイモン氏は、イスラム組織ハマスのイスラエルへの攻撃を受け、「世界中で反ユダヤ主義やイスラモフォビア(イスラム恐怖症)を増大」させる可能性があると警鐘を鳴らし、従業員の安全を保証するため、国内外の政府機関と緊密に連携していると述べた。
ロイターは今週初め、JPモルガンがイスラエルの従業員200人超に対し、自宅勤務を指示したと報じた。
また、従業員宛てのメモによると、JPモルガンは足元、救援活動向けに100万ドルを寄付し、従業員が寄付する場合には寄付金と同額を上乗せする方針という。他の米金融大手ではアメリカン・エキスプレス (AXP.N)もイスラエルへの150万ドルの寄付を表明している。
●中国・アジア・ロシア・東欧
米ハーバード大学のウクライナ研究所長でウクライナ史が専門のセルヒー・プロヒー教授は、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ全面侵攻は避けられないものではなかったが、歴史的な経緯を踏まえると、こうした事態に至る可能性は極めて高かったと述べた。また、中ロ関係の強化などこの戦争で引き起こされた変化は、どのような形で戦争が終わろうと将来的に続くトレンドになるとの見方を示した。
プロヒー教授は、ハーバード大学デイビス・センターが11日に開催したオンラインイベントで近著「The Russo-Ukrainian War (ロシア・ウクライナ戦争)」について語った。
その中で、今回の戦争は14年2月にロシアの特殊部隊がウクライナ南部クリミアの議会と政府庁舎を占拠した時点から「公式に」始まったとし、「帝国の崩壊に伴う戦争」という広く知られる現象の一つと定義。当時ウクライナは欧州連合(EU)に接近しており、ウクライナがEUと連合協定を締結すれば、ロシアのプーチン大統領が進める旧ソ連圏の再統合からウクライナが離脱するという背景に言及し、ソ連崩壊後の空間を再構築するというプーチン氏の構想はまさに「帝国」的なプロジェクトだと語った。
プロヒー教授は、ウクライナが国内に保管していた旧ソ連の核兵器を放棄したことについても言及。1994年のこの決定が正しかったか、誤っていたかは議論しないとした上で、他の国による侵攻を抑止する兵器として歴史的に使われてきた核兵器がウクライナから撤去されながらも、代替の抑止力が提供されなかったことで、ウクライナは極めて脆弱な立場に置かれたと指摘。欧州の中心に安全保障の大きな空白が生まれたことが、今回の戦争の前提条件の一つになったとの考えを示した。
その上で、14年のクリミア併合のほか、08年のジョージア侵攻に西側諸国が異なる対応をしていれば、22年に始まったウクライナ全面侵攻は回避できた可能性があると指摘。プーチン大統領は21年7月の「ウクライナ人とロシア人の歴史的一体性」と題する論文で示した「ウクライナ人とロシア人は同一民族」とのスローガンの下で全面侵攻を開始したが、ロシア帝国に由来する考えに基づく「ユートピア的な試み」で、「間違った方向にタイムマシンを進めようとしている」と語った。
中国の習近平国家主席は、コア技術のブレークスルーに向けた取り組みを加速させるよう呼びかけた。国営メディアが12日に報じた。
報道によると、習主席はまた、長江経済ベルトの発展促進に関する演説で、中国のサプライチェーン(供給網)の近代化、最先端の製造業および戦略的な新興産業の発展という目標を再確認したという。
さらに、長江流域の省や市は食料、エネルギー安全保障、サプライチェーン安全保障の責任を負う必要があると指摘。地域はエネルギーに関する協力を深化させ、クリーンで効率的な石炭利用を促進し、水力発電に注力し、伝統的なエネルギーと風力発電のような新エネルギーを組み合わせるべきだとした。
●中東
●中南米・アフリカ
アルゼンチンの中央銀行は12日、今年6回目となる大幅利上げを実施した。大統領選挙を前に物価上昇率が100%を超えて加速し続けており、利上げでインフレ抑制に取り組む。
声明によると、中銀は政策金利を15ポイント引き上げ133%とした。同日に発表された9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比138.3%上昇と、アルゼンチンがハイパーインフレから脱却した1990年代初頭以来の高水準となった。
●市況
<為替> ドルが急伸。12日発表された9月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回る伸びとなったことで、連邦準備理事会(FRB)が当面、金利を高水準に維持するという観測が強まった。
<債券> 米債利回りが上昇した。米CPIの伸びが予想を上回り、FRBが年内にもう一度追加利上げを実施する可能性が示唆されたことを受けた。また米30年債の入札で需要が低調だったことも利回り上昇につながった。
CMEのフェドウオッチによると、CPI発表を受け、米先物市場ではFRBが来月、政策金利を据え置くとの見方を引き続き織り込んだが、12月の利上げ確率は11日終盤の約28%から34%に上昇した。
<株式> 反落して取引を終えた。低調な米30年国債入札を受け、国債利回りが上昇したことを嫌気した。
S&P500の主要11セクターでは素材(.SPLRCM)が1.5%安。金利に敏感な公益事業(.SPLRCU)、不動産(.SPLRCR)も1%超下げた。プラス圏で引けたのは情報技術(.SPLRCT)とエネルギー(.SPNY)のみだった。
住宅建設関連株が売られ、アイシェアーズ住宅建設ETF(上場投資信託)(ITB.Z)は4.6%下落した。
フォード・モーター(F.N)は2%下落。全米自動車労働組合(UAW)が11日、同社最大のトラック工場で組合員8700人がストライキに入ったと発表した。
<米原油先物> 米エネルギー情報局(EIA)が発表した原油在庫が市場予想を大幅に上回ったことが圧迫要因となり、3日続落した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日比0.58ドル(0.69%)安の1バレル=82.91ドル。12月物は0.27ドル安の81.80ドルとなった。
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。米国の金利がピークに達したとの期待感を背景に原油価格が値上がりしたのを受け、石油株が買われた。
飲食のレストラン・グループ(RTN.L)は36.1%と急上昇。米プライベートエクイティ(PE)会社のアポロ・グローバル(APO.N)による5億600万ポンド(6億2340万ドル)での買収に合意したことが買い材料となった。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。米国の9月の消費者物価指数(CPI)が予想より上昇したことを受けて上げ幅が縮まった。
デンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)は4.2%上げ、過去最高を更新した。臨床試験で糖尿病患者の腎不全治療の有効性を報告したことが引き続き材料視された。
<ユーロ圏債券> 国債利回りが上昇した。米国の9月の消費者物価指数(CPI)の伸びが予想を上回ったことで、米連邦準備理事会(FRB)が年内にあと1回の利上げを実施するとの観測が高まった。
日経先物32258、ダウ先33784、債先145.21、米4.692、独2.7990、仏3.349、西3.928、伊4.759、英4.5580、波5.775、原油83.41、銅7,965、ドル円149.77、ユーロドル1.0532
※10/13 8時5分頃

備忘録(2023/10/11)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
JPモルガン・チェースなど大手米銀は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期以来で最大規模の不良債権を償却する見通しだ。金利高止まりと景気下降の可能性が借り手を窮地に追い込んでいる。
ブルームバーグがまとめたデータによると、13日に7-9月(第3四半期)決算を発表するJPモルガンとシティグループ、ウェルズ・ファーゴ、さらに17日に同四半期決算を発表するバンク・オブ・アメリカ(BofA)の貸し倒れ償却はネットベースで合計53億ドル(約7900億円)程度となる見通しだ。これは2020年4-6月以来の大規模な償却となる。
償却規模は前年同期の2倍余り。金利上昇に直面する消費者やパンデミックの影響に今も苦しむ商業用不動産を相手に金融機関は苦戦している。シティのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)は先月、信用スコアが低い米消費者に弱さの兆しが見られ始めつつあるとの認識を示した。その上でフレーザー氏は消費者の大半は金利上昇に対応できていると述べた。
UBSグループのアナリスト、エリカ・ナジャリアン氏は顧客へのリポートで、「クレジットに問題が生じれば市場によって罰せられるだろう」と指摘した。
●その他産業
欧州の高級ブランド大手10社の株式時価総額は3月末以降、1750億ドル減少。中国経済の減速や欧米の金利上昇に伴う不透明感が重しになっている。
ベレンベルクのアナリストは「狂騒の20年代が終わりを告げた」としてLVMHの目標株価を下方修正。「下期の勢い鈍化とその後数年の成長正常化を反映し下方修正した」と述べた。
RBCのアナリスト、ピラル・ダダニア氏は、来年の見通しが「依然として曇っている」とし、高級ブランド業界の業績下方修正は今後も続くだろうとの見方を示した。
石油メジャーの米エクソンモービルは11日、米シェール大手のパイオニア・ナチュラル・リソーシズを買収すると発表した。買収額は約595億ドル(約8兆8000億円)。新型コロナウイルス禍からの経済再開後、化石燃料の収益力が高まっており、シェールの事業基盤を再構築する。
エクソンは株式交換でパイオニア株をすべて取得し、24年前半の買収完了を目指す。パイオニアの株主は1株あたり約2.3株のエクソン株を受け取る。1999年にエクソンとモービルが合併して以来、同社にとって最大の買収となる。
パイオニアはスコット・シェフィールド氏が1997年に創業し、米国のシェール革命をリードしてきた。テキサス州西部のシェール鉱区「パーミアン盆地」で有数の生産量を誇り、日量60万バレル(原油換算)以上の石油・天然ガスを生産する。
買収によりエクソンの石油・天然ガスの生産量は2割程度多い日量約450万バレル(原油換算)となる。パーミアンは米国のなかでもシェール生産が好調な地域で、生産コストは低い。シェブロンなど他の石油メジャーも生産を増やしている。
世界最大の民間石油会社のエクソンは、欧州の石油メジャーに比べて太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーへの投資に慎重で、米国のシェールや南米の海底油田、世界各地の液化天然ガス(LNG)プロジェクトに積極的に投資してきた。再生エネより収益率が高い化石燃料への投資を当面続ける方針だ。
22年のロシアのウクライナ侵攻を契機に、世界各地でエネルギー安全保障の重要性が再認識されている。加えて新型コロナ禍からの経済回復で、原油相場に上昇圧力がかかりやすくなり、各社の化石燃料の上流事業は大きな収益をあげている。
このため、再生エネに積極的だった欧州の石油メジャーの間では事業戦略を見直す動きが浮上している。英シェルは再生エネの投資拡大にブレーキをかけて、LNGの生産を強化する方針を掲げた。
スウェーデンの通信機器大手のエリクソンは11日、2023年7〜9月期に320億クローナ(約4400億円)の減損損失を計上する見通しだと発表した。21年に62億ドル(当時のレートで約7100億円)で買収を発表した、クラウドサービスなどを手掛ける子会社の米ボネージに関する、のれんの減損などの影響という。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
イスラエルとパレスチナ自治区ガザに拠点を置くイスラム組織ハマスとの紛争が拡大するようなら、足元で株高が進む東京市場の風景が一変するかもしれない。イスラエルが地上攻撃を始めた場合にハマスを支援するイランが関与する事態になれば、戦火は一気に拡大するリスクが高まる。
市場では原油価格が上昇し、日本株安と円安の同時進行が予想される。米国がイスラエルへの軍事支援を強化すれば、ウクライナ支援との両面作戦で米財政赤字の急拡大に市場の目が集まり、米長期金利の上昇と日本の長期金利上昇が連動して円建て資産のトリプル安になるのが日本にとっての最悪シナリオだろう。確率は低いが甚大な影響を与える「ブラックスワン」が登場した場合、日銀の金融政策にも大きな影響が出るのは避けられない。
<注目されるイランの動向>
イスラエルは過去最高の30万人の予備役を召集し、地上攻撃を準備しているとみられている。ただ、イスラエルの北部国境では、レバノン南部やシリアからの砲撃を受けており、地上攻撃が始まれば、北部国境での軍事衝突も発生しかねない。
また、イランの最高指導者ハメネイ師は10日、ハマスによるイスラエルへの攻撃には関与していないと述べるとともに、イスラエルは軍事的・諜報的に「回復不可能な」敗北を被ったとしてハマスを称賛していた。イスラエルがガザへの大規模な地上攻撃を開始した場合、イランが明確に関与してくる可能性がある。
現在はガザ周辺に限定されている戦火が拡大するかどうか不透明だが、イランが関与してきた場合は、状況が一変し、中東全体の緊張が高まると筆者は予想する。
<日本経済にのしかかる原油高>
今のところ、東京市場はガザでの紛争は拡大しないとの前提に立って、米長期金利の低下を材料に「一段の米引き締めの可能性は低下した」(国内銀関係者)とみて、前週に大幅下落した日本株の買い戻しが進行中だ。
ただ、大前提となる「戦火の拡大はない」という事態が崩壊した場合、何が起きるのかということはシミュレーションしておく必要があるだろう。
実際、トルコのエルドアン大統領は「私は重大な懸念を抱いている。これ(紛争)が1、2週間で終わるとは思えないため、我々は和平の努力をしている」と述べている。
イランがハマスへの関与を明確にした場合、米国のイスラエル支援が一段と強化され、戦力の投入と戦闘地域の拡大が生じるというのが、最悪のシナリオへの道筋と言える。
日本にとっての最悪のシナリオは、戦火の拡大に伴ってイランが「ホルムズ海峡の封鎖」という切り札を切ってきた場合に現実化するだろう。
中東産原油への依存度が90%を超える日本にとって、ホルムズ海峡の封鎖は「死活問題」に発展する。
このケースでは、日本株安と円安が同時に進行し、政府・日銀のドル売り・円買い介入では円安を止めることは難しい。また、世界の金融・資本市場は米国の財政支出急増を予見して、長期金利に財政プレミアムを上乗せしてくると予想する。足元での有事の米国債買いと正反対の資金フローが発生している可能性がある。
その時に日本の長期金利は米長期金利とともに上昇し、円建て資産は株安・円安・債券安のトリプル安現象を招いているだろう。まさにブラックスワンの登場である
<日銀の金融政策はどうなるか>
日銀は足元で消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)が3%台で推移しても、中長期的な物価上昇を確認するまで慎重に超緩和策を実施していく方針を示しているが、ブラックスワンが姿を見せた場合は、円安と原油高を背景にCPIの上昇率が加速している可能性があり、政策運営の軌道修正を強いられると予想する。
そこまでの環境激変に至らなくても、今よりも原油高と円安の進行速度が速くなる展開になっている可能性もある。そのケースでは、景気下振れを重視するのか、物価上昇に備えるのか、という苦しい選択を迫られるかもしれない。
「対岸の火事」から火の粉がたくさん降ってくることも今のうちに予見し、当局と市場参加者が「想定外」と言わないように準備しておく必要があるだろう。
欧州中央銀行(ECB)の調査によると、ユーロ圏の消費者はインフレ率があと3年間、ECBの目標である2%をやや上回ると予想している。
最新の世論調査によると、14日に行われるニュージーランド総選挙では中道右派の野党・国民党が第1党となる見通し。ヒプキンス首相の与党・労働党が支持を伸ばしたものの、いずれもポピュリスト政党ニュージーランド・ファースト党の協力がなければ政権を作れない見込みだ。
ガーディアン・エッセンシャルの調査によると、国民党の支持率は34%、労働党は30%。
ただ、国民党とACT党の右派勢力、労働党と緑の党、マオリ党の左派勢力はいずれも過半数の議席を獲得できない見通しで、NZファーストが鍵を握る。
労働党とNZファースト党は選挙後の協力を否定しているため、右派がNZファーストとの連立などを模索する必要がありそうだ。
下院議長選に立候補している下院共和ナンバー2のスティーブ・スカリス院内総務とジム・ジョーダン下院司法委員長から非公開で意見を聴取した。
聴取を終えた議員らは、両氏とも11日に始まる党内の候補指名を巡る投票で明確な優位を得られないだろうと語った。いずれも最終的にどちらの候補が指名されたとしても、その候補を支持することを誓ったという。
共和党は下院で221対212の僅差で多数派を占めているため、両氏とも1回目の投票で議長に選出されるだけの支持を得られないのではという懸念も出ている。
解任されたマッカーシー前下院議長は、1月の就任時に議会で15回もの投票を経た経緯がある。
マッカーシー氏に反対していたラルフ・ノーマン議員は「1月のようなことをせず、党内でこの問題を処理する必要がある」と語った。
マッカーシー氏は9日、下院共和党から要請があれば議長に復帰すると述べたが、10日には記者団に「私を指名しないようお願いした」と語った
9月の米生産者物価指数(PPI)は市場予想を上回る伸びとなった。エネルギーコストの上昇が影響し、持続的なインフレ率低下への道筋が引き続き不安定になっている。
ガソリンのコストは前月比5.4%上昇した。食品とエネルギーを除くコアPPIは前月比0.3%上昇(市場予想0.2%上昇)、前年同月比では2.7%上昇(予想2.3%上昇)した。
財の価格は堅調なペースで上昇した。エネルギーコスト高のほか、食品価格がほぼ1年ぶりの高い伸びとなったことが背景。ただし、両項目を除いたベースの財価格は0.1%上昇にとどまった。サービスのコストは0.3%上昇。金融サービスなどでの伸びが目立った。
原油価格は9月に約1年ぶり高値に達した。生産者段階のインフレは数カ月にわたって抑制が進んでいたが、原油高がそうした状況を脅かしている。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘は原油価格を高止まりさせるリスクがある。
ポートフォリオ管理やヘルスケアなどPPI統計のカテゴリーのいくつかは、連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数の算出に使われる。FRBやウォール街のエコノミストは特にこれらの項目に注目している。
9月はポートフォリオ管理のコストと介護施設の費用が低下。一方、外来医療費は上昇した。
米金融当局は12日に発表される9月の米消費者物価指数(CPI)も精査することになる。次回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合は10月31日-11月1日に開催される。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「9月のPPIは市場予想ほどの伸び減速とならなかった。原油価格の変動は今後の物価上昇圧力となる可能性がある。供給ショックのマイナス要因があり、また前年同月比でのコアPPIが当局の2%インフレ目標を大きく上回っている中、同当局は慎重に政策運営を進める可能性が高い」と述べた。
食品とエネルギー、貿易サービスを除いたPPIは前月比0.2%上昇と、2カ月連続で同率の伸びとなった。
イエレン氏は訪問先のモロッコ・マラケシュで記者会見し、失業率の大幅な上昇を招くことなくインフレを減速させるシナリオに言及。その上で「リスクも当然ある。世界的なショックがその一つだ」と述べ、「イスラエルの状況はさらなる懸念をもたらしている」と続けた。
また同氏は、中東での紛争再燃を巡りバイデン政権がイランへの追加制裁の可能性を排除していないことを明らかにした。ただ何も決定はしていないという。「今後の行動の可能性については何も排除しないだろう。しかし先走ることは望んでいない」と述べた。
イランとの関係改善に向けた広範な取り組みの一環として、米国がイランの石油供給に対する制裁の一部を徐々に緩和しているとの見方をイエレン氏は否定。「イラン産石油に対する制裁は一切緩めていない」と述べ、米国は新たな情報を常に精査していると付け加えた。
財政政策を遂行する上で、米議会の対立が悪影響を及ぼしているかとの問いに対し、イエレン氏は回答を避け、「ウクライナへの資金援助はイスラエルへの支援と並び、軍的にも直接的な予算面でもバイデン政権にとって絶対的な優先課題だ」と言明。「われわれはこの点について議会に明確に示しており、超党派の多大な支持も得ていると確信する」と続けた。
英国の最大野党・労働党が2024年の実施を見込む次期総選挙で14年ぶりの政権獲得を視野に入れる。世論調査の支持率は与党・保守党を20ポイントほど上回る。8〜11日に西部リバプールで開いた党大会も近年にない盛り上がりをみせた。1997年に政権についたブレア元首相を手本に経済優先を掲げる。
9月19─20日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、参加者の大半が経済の先行きは依然として非常に不透明と判断していたことが分かった。金融市場の状況や潜在的な原油価格ショック、労働組合のストライキの影響など、先行きをめぐる不確実性の高まりが背景にある。
FRBは9月19─20日のFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%で据え置いた。ただタカ派的なスタンスを強め、年内の追加利上げを想定。金融政策は2024年を通して従来の予想より大幅に引き締まった水準にとどまるとの見方を示した。 もっと見る
議事要旨は、世界的なコモディティー(商品)市場の動向と堅調な住宅市場がインフレ率上昇につながる可能性がある一方、金融市場の引き締まりや世界的な経済成長の鈍化、最近の労働争議が成長と雇用にリスクをもたらしたと指摘。取り組むべき課題はもはやインフレリスクだけではないとの認識を示し、追加利上げの前に「慎重に進めるべきケースを支持する」理由の数々を列挙した。
主要なインフレ指標が依然として3%をかなり上回る水準のため、政策立案者らはまだ「対応すべきことがある」と表向きは足並みをそろえている。ただ、ここ数日は政策金利を引き上げる必要はないとの可能性に傾いている向きもある。
実際、議事要旨によると、追加利上げの可能性が高いとの意見が多数を占める中でも、議論は利上げの必要性よりも「制約的」な政策をいつまで続けるかに焦点が移っていた。
「何人かの参加者」は、「金融政策の決定とコミュニケーションの焦点は、政策金利をどの程度引き上げるかから、政策金利をどの程度の期間制約的な水準に保つかにシフトすべきだ」と述べた。
ダラス地区連銀のローガン総裁とFRBのウォラー理事は、ここ数カ月の米国債利回りの上昇がFRBの仕事の一部を担っている可能性があり、追加利上げの緊急の必要性をなくし、場合によっては利上げの必要性を完全になくす可能性があるとの見解を示した。
ただ、議事要旨では「(FRBの金利を決める)委員会がインフレ率が目標に向かって持続的に低下していると確信するまで、いくらかの間は政策が制約的であるべきだということで参加者全員が合意した」と記した。
議事要旨では、利上げが行き過ぎて、企業が大量の従業員を解雇するほど経済活動が鈍化するリスクへの懸念が高まっていることが示された。
FRB当局者らは、これまでの積極的な利上げにもかかわらず経済が堅調に推移し、インフレ率が2022年中盤のピークから低下しても失業率は低いままだと指摘した。
現在議論されているのは、追加利上げをしなくても物価は下がり続けるのか、あるいはもう少し制約的な金融政策が必要になるのかということだ。
9月のFOMC以来、投資家はFRBが追加利上げをする可能性があるとの確率を引き下げてきた。議事要旨発表後、CMEのフェドウオッチツールによると、次回の10月31日─11月1日のFOMC会合で利上げを決定する確率は9%、12月12─13日の会合で利上げを決める確率は約28%となっている。
議員らは米東部夏時間同日午後3時に採決する予定と伝えられていたが、対抗馬だったジョーダン下院司法委員長の支持者数人がスカリス氏を支持しないと表明したことから採決は見送られた。
共和党は221対212で辛うじて下院の多数派を占める。民主党議員は共和党候補には投票しない見通しで、承認に必要となる過半数の支持を獲得できるかは不透明だ。
スカリス氏は「結束するために努力している」と記者団に語った。
マクヘンリー下院議長代行は記者団に対し、採決は「早ければ今日中に実施される」と述べた。
下院議長候補の選出ではスカリス氏が113票、ジョーダン氏が99票をそれぞれ獲得した。
関係者によると、ジョーダン氏は本会議でスカリス氏を支持する意向で、同僚にも追随するよう促している。
コリンズ総裁はウェルズリー大学のイベント向けの講演テキストで、「現行の引き締めサイクルのピークに近づいているか、もしかするとピークにあるかもしれない」ため、当局者は新たに発表される経済指標の評価に一層の時間を費やすことができると指摘した。
ただ、「新たに入手する情報次第では、さらなる引き締めが適切となる可能性がある」とも話した。総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持たない。
総裁はまた、インフレ率が2%の当局目標に向けた持続的な道筋にあるとの証拠を目にするまで、「金利をしばらくの間、景気抑制的な水準に維持」する必要があるだろうとの考えを表明。一方で、インフレ高止まりのリスクと、金融当局が物価抑制に必要とされるよりも景気を減速させるリスクは一段と「均衡」しつつあると話した。
このほか、家計や企業の多くが新型コロナウイルス禍初期に低金利での借り入れを確保したことなどで手元現金が増えたため、経済の一部は金利上昇の効果発揮まで時間がかかるかもしれないと指摘。「こうした要因により、過去の引き締めサイクルに比べ金利に対する経済の感応度は低くなっている可能性がある」と論じた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国が今年3月、意表を突いてサウジアラビアとイランの外交関係正常化を仲介したことは、中東外交の重鎮として振る舞いたい中国の意欲を示すものだった。しかし、イスラエルとイスラム組織ハマスによる紛争発生のよって、その野心の限界が露呈しかねない状況となっている。
サウジとイランの合意後、中国メディアは、米国が長年支配していた中東外交において、中国の存在感が高まったと自画自賛した。
外交トップである王毅共産党政治局員兼外相は、世界的な「ホットスポット問題」の処理において、中国が建設的な役割を果たし続けると述べた。
だが、ハマスによるイスラエルへの組織的攻撃後、中国の反応は鈍かった。
外務省の報道官は、何度もハマスへの非難を避けた。代わりに呼びかけたのは、エスカレートを抑え、イスラエルとパレスチナがパレスチナ独立のための「2国家解決」を追求することだった。習近平国家主席は、この問題について沈黙を守っている
オランダのフローニンゲン大学の助教授で、中国と中東関係の専門家であるビル・フィゲロア氏は、中国の対応について「中国がこの種の中東問題における巨大な立役者である、というプロパガンダに穴を開けるのは間違いない」と述べた。
中国が中立を保っていることを、アメリカやイスラエルの政府関係者は批判している。中東における公平な和平の仲介者だ、という北京の主張が揺らいだとの声もある。
アナリストによると、中国の対応は驚くに当たらない。中国の外交政策は長年、リスク回避的であり、イスラエルとハマスの対立激化は中国の外交担当者らを窮地に追い込んでいる。中国は歴史的にパレスチナ、そしてパレスチナの米国に対する敵対姿勢を支援してきたからだ。
中国外務省の汪文斌報道官は10日に「中国は、パレスチナとイスラエルの紛争がエスカレートし続けていることに強い懸念を抱いており、すべての関係当事者に即時停戦、戦闘中止を強く求めている。中国はすべての当事者と意思疎通を保ち、中東の平和と安定のために絶え間なく努力するつもりだ」と述べた。
<不干渉政策の制約>
中国が3年近く続けたゼロコロナ政策を終了して以来、習近平氏は米国とその同盟国に対抗すべく外交攻勢をかけた。
新興5カ国(BRICS)などの非欧米主導の多国間グループと連携を深める一方、ウクライナに侵攻したロシアとの関係を緊密にし、中東やグローバルサウス諸国との関係を強化している。
しかし、中国が現在の危機に深く関与する可能性は低い。
一つの理由は、長年の不干渉政策にある。この政策は時に、世界の舞台で大国として振る舞うという中国の目標と衝突することがある。
SOAS中国研究所(ロンドン)のディレクター、スティーブ・ツァン氏は「習近平政権下の中国は、中東を含むあらゆる場所で尊敬され、賞賛されることを望んでいるが、結局のところ、本当に難しい地域安全保障問題を解決するのに必要な行動を起こす気はない」と語る。「中国は手っ取り早い成果だけを欲しがっており、基本的にそこ止まりなのだ」とも指摘した。
中国がイスラエル・パレスチナ問題に取り組んだ前例はある。だが、中国はパレスチナとの関係を含めた長年にわたる中東諸国との関係によって、選択肢が限られている。
一方、一部の中国の学者は最近、パレスチナ人の疎外と、米国主導によるサウジとイスラエルの関係正常化の合意が危機をあおっている根本的な原因だと批判した。
上海国際問題研究院中東研究所のLiu Zhongmin教授は、中国メディアのインタビューに対して「イスラエルとパレスチナの紛争の背後にある最も重要な外的要因は、米国がアブラハム合意(イスラエルとアラブ諸国の国交正常化合意)の履行を試みていることだ」と指摘。「中東地域の和平とパレスチナ問題の公正な解決は不可分だ」と主張した。
<取れるリスクに限界>
中国がハマスを非難すれば、同国はロシアやイランと対立してしまう可能性もある。
スティムソン・センター(ワシントン)の中国プログラム担当ディレクター、ユン・サン氏は「ハマスの背後にだれがいるのかは不明だが、中国のパートナーである可能性は高い」と指摘。「ロシアはアメリカの注意をそらすという意味で得をするし、イランも候補国に挙がりそうだ。中国にとって、今回の攻撃を非難するということは、『犯人』が特定された場合に行動を起こす義務があることも意味する」と解説した。
一方で、中国は今後数十年間で4000億ドル近い対イラン投資を計画しており、同国に対して影響力を持つ数少ない国の一つだ。だが、イスラエルでは、中国はこれ以上危機に踏み込まないのではないか、との見方がある。
イスラエル国家安全保障研究所の中国研究者、トゥービア・ゲーリング氏は「中国は国際舞台で発言力や影響力を行使し、物事を良い方向に変えようとはしない」と断言した。
中国は中東から石油を輸入し「一帯一路」構想の一環として中東の通信やインフラに投資しているだけに、中東和平は中国の望みだ。しかし、習近平氏のリスクテーク意欲には明確な限界がある。
シンガポール国立大学・中東研究所のシニア研究フェロー、ジーンループ・サマーン氏は、中東の環境が安定していたため、中国がサウジ・イランの関係正常化を仲介することが可能だったと説明。「ところが、紛争の管理となると、状況は大きく異なる。中国がその役割を果たしたがっているとは到底考えられない」と語った。
中国が景気刺激策を強化するため、年度途中に予算を修正するとすれば異例だ。実際にそうした発表がなされば、最高指導部が地方政府に大きな債務を負担させる成長モデルからこれまで以上に脱却を図っていることを示唆している。
事情に詳しい関係者によると、政策当局はインフラ投資を賄うため少なくとも1兆元(約20兆3600億円)の国債を新たに発行し、2023年の財政赤字増大を容認する方向で検討中だ。
コンサルティング会社トリビアム・チャイナの中国市場調査責任者ディニー・マクマホン氏はこうした動きについて、「従来のインフラ資金調達モデルが破綻していることを政府が暗に認めたことになる」と語った。
中国政府は通常、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%を超えないようにしている。年度半ばの予算修正は、2008年の四川省地震や1998年のアジア通貨危機を受けた数回しかない。
シティグループの余向栄氏らエコノミストは、財政赤字の上限突破となれば2023年に5%前後という経済成長率目標の達成を目指す「政策当局の一層の危機感を示しているのかもしれない」と分析した。
年度途中の予算修正でこれまでと異なるのは、中国経済が突然の打撃に見舞われている状況ではないことだ。一部の経済活動はここ数カ月間、鈍化。ただ、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が大きく響いた22年と比較すると、拡大ペースは依然として加速している。エコノミストらは、中国の成長率が今年の政府目標にほぼ一致すると広く見込む。
そうなると、中央政府の国債追加発行は緊急対応というよりも、地方政府の借り入れに関する重大な構造的問題を認めることを意味する。
マクマホン氏は「中央政府が来年と再来年、インフラ投資の負担を引き受けるかどうかが大きな問題だ」と指摘。「もしそうなら、中央と地方の財政責任の分担方法が大転換を迎える可能性がある」と述べた。
予算修正はまだ合意には至っていない。協議は進行中で、計画の変更はあり得ると、この問題に詳しい関係者の1人がブルームバーグ・ニュースに語った。また、予算修正は月内開催予定の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会の承認を必要としている。
マクマホン氏とシティのエコノミストは、この計画が11、12両月の支出を下支えし、年内の経済成長を後押しすることができるとみている。
●中東
国際通貨基金(IMF)は10日、最新の世界経済見通し(WEO)を発表し、今年と来年のサウジアラビアの経済成長率予想をそれぞれ0.8%、4%と予想した。
中東・中央アジアの成長率は、今年が2%、来年は3.4%と予想した。この予想は、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが7日にイスラエルを攻撃したことから衝突が始まる以前に作成された。
IMFは今年に入り、原油の価格下落と減産を背景にサウジアラビアの成長率予想を徐々に引き下げている。
カタール国営エネルギー会社のカタールエナジーは11日、仏トタルエナジーズに液化天然ガス(LNG)を供給する長期契約を結んだと発表した。契約期間は27年間で、フランスへの供給は2026年から始まる見込みだ。欧州ではロシアのウクライナ侵攻以降、ロシア産ガスの代わりに他国・地域からLNGを調達する動きが加速している。
●中南米・アフリカ
ブラジル地理統計院が11日発表した2023年9月の消費者物価指数IPCAは、前年同月比で5.19%上昇した。3カ月連続で前月の水準を上回った。7カ月ぶりに中央銀行の目標の範囲(1.75〜4.75%)を上回ったものの、中銀は次回の会合以降も利下げを続けるとの見方が多い。
●市況
<為替> ドルが安定的に推移した。朝方発表された米卸売物価指数(PPI)は基調インフレの鈍化継続を示唆し、市場では現在の米利上げサイクル終了への期待が高まった
<債券> 国債利回りはまちまち。イスラエル情勢の緊迫化を受け、指標となる10年債利回りは約2週間ぶりの低水準を付ける一方、2年債利回りは小幅上昇した。
CMEのフェドウオッチによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は、FRBが11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を据え置く確率を70%と予想している。
<株式> 不安定な地合いの中、主要株価指数が上昇して取引を終えた。FRBが発表した連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で政策当局者の慎重な姿勢が示されたため、金利が安定的に推移するとの投資家の期待が高まった。
S&Pの主要11セクターではエネルギー(.SPNY)が1.4%下落。シェール大手パイオニア・ナチュラル・リソーシズ(PXD.N)を595億ドルで買収すると発表したエクソンモービル(XOM.N)が3.6%安となったことが響いた。パイオニアは1.4%高。 もっと見る
金利に敏感なセクターは好調で、不動産(.SPLRCR)は2%上昇。米長期債利回りの低下を受けて公益事業(.SPLRCU)も1.6%高となった。米10年債利回りは中東情勢の緊迫化を背景に約2週間ぶりの低水準を付けた
<米原油先物> 中東情勢の悪化によるエネルギー供給混乱への懸念が幾分和らぎ、続落した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日比2.48ドル(2.88%)安の1バレル=83.49ドル。12月物は2.06ドル安の82.07ドルと なった。
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。原油価格の値下がりを背景にエネルギー株が売られた。
石油輸出国機構(OPEC)最大の産油国サウジアラビアが、中東紛争の影響が及ぶ市場の安定化を支えると約束したことを受けて原油価格が値下がりした。ともに石油大手のBP(BP.L)、シェル(SHEL.L)はそれぞれ0.9%、0.6%下落した。
FTSE350種日用品・家庭用品株指数(.FTNMX402040)は3.70%と大幅下落した。英高級ブランド会社バーバリー(BRBY.L)は3.2%安。フランス高級ブランドのLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)(LVMH.PA)が、2023年第3・四半期の売上高の伸びが鈍化したと報告したことが嫌気された。
建設資材で英国最大手のトラビス・パーキンス(TPK.L)は6.2%と急落。英住宅市場の悪化を理由として通期決算の利益見通しを最大27%下方修正したことが売り材料となった。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。デンマークの製薬大手ノボノルディスクが大きく上昇し、糖尿病治療薬「オゼンピック」について前向きな情報を発信したのが好感された。一方、高級ブランド銘柄は売られた。 ノボノルディスク(NOVOb.CO)は4.9%上昇。オゼンピックの臨床試験の中間解析で糖尿病患者の腎不全治療に効果が明らかだとして試験を予定より早く終えると発表したことが材料視された。
<ユーロ圏債券> 域内長期債利回りが2週間ぶりの低水準を付けた。政策当局者が利上げ終了を示唆したほか、安全資産への逃避が拡大した。
日経先物32270、ダウ先34047、債先145.52、米4.553、独2.7150、仏3.273、西3.808、伊4.663、英4.3720、波5.766、原油83.07、銅8,010、ドル円149.13、ユーロドル1.0623
※10/12 9時30分頃

備忘録(2023/10/10)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米銀2位バンク・オブ・アメリカ(BofA)のブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)は何年にもわたり、いずれ金利が上昇する日が来たら、同行は大きな勝ち組になると投資家に伝えていた。BofAは、米金融当局が方針転換した際に利益増加が見込まれる大規模な預金基盤を築いていた。
ただ、金利は確かに上昇したが、BofAは大手米銀の中で最も後れを取っている。同行の投資収益は他の大手行を下回っているほか、株価パフォーマンスは大手米銀の中で飛び抜けて悪い。
その一因は、BofAが新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時に低金利の長期の米国債や住宅ローン債券に多額の資金を投じたことにある。これらの保有資産が多額の含み損を抱えている今、この決定は依然としてBofA内部で責任追及の対象になっていると、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
公にコメントする権限がないとして匿名を条件に語った関係者によれば、先週BofAの株価が3年ぶり安値近辺で推移する中、モイニハンCEOは経営幹部が集まる会合で自らこの話題を切り出した。パンデミック中に同行には通常以上の預金が殺到しており、それをどこかに慎重に投資しなければならなかったと同氏は説明した。
金利上昇には他の一部の金融機関も不意を突かれ、その後の混乱は3月の地方銀行の相次ぐ経営破綻につながった。BofAにとって偏ったポートフォリオは存続の危機ではないが、今月17日の決算発表を前に、利益や投資家の熱意に打撃を与えている。
パイパー・サンドラーのスコット・シーファーズ氏はインタビューで、長めの証券に滞留している資金は「他により生産的な使い道がある可能性がある」とした上で、「それは株価を左右する要因の一つだ。BofAは他行よりも過去の決定に足を引っ張られている」と指摘した。
全ての大手金融機関が債券保有に関連した不振に見舞われたが、BofAはその規模と影響の大きさで際立っている。BofAの証券ポートフォリオは4大米銀の中で最大規模だが、利回りは最低にとどまっているほか、10年後以降に償還期限を迎える債券に集中している。
ウォール街は7-9月(第3四半期)決算発表を控え、同期のBofAの純金利収入が2.7%増と、大手米銀で最も低い伸びになると予想している。JPモルガン・チェースは27.5%増、ウェルズ・ファーゴは5.5%増、シティグループは3.7%増が見込まれている。
今のところ、金利5%の世界で、BofAの帳簿の4分の1余りは利回りが合計2.4%程度の債務証券に滞留している。また、そうした証券の帳簿上の価値は今年半ば時点で1100億ドル(約16兆4000億円)近く目減りしている。
国際通貨基金(IMF)は10日、各国・地域当局に対し、銀行セクターの脆弱(せいじゃく)性を最小限に抑えるため、ストレステスト(健全性審査)と検査を強化するよう提言した。
IMFは2023年版の国際金融安定性報告書で、金融監督当局はリスク評価を強化し、検査を増やし、危機管理の枠組みを確実に整備するよう勧告した。高金利環境に銀行側は全般にうまく対応しているが、融資需要の減少と資金調達コスト上昇に伴うストレスに直面しているという。
金融安定性報告書は「23年3月に経験した米大手地銀数行の破綻と、国際金融システムにとって重要な金融機関(G-SIB)のスイス当局支援による買収は、世界的な金利上昇がいかに速いペースで国際銀行システムに影響するかあらためて思い起こさせた」と指摘した。
金融監督当局は比較的小規模な銀行を含め「より厳しくきめ細かい」銀行ストレステストを実施すべきだとIMFは主張し、金利リスクに耐えるために必要な資本基準の厳格化も求めた。
IMFはまた、各国・地域の中央銀行に対し、「インフレ率が目標に向かって持続的に低下する明らかな証拠が得られるまで、インフレと闘う決意を持ち続ける」よう要請した。
欧州中央銀行(ECB)は不動産鑑定業者に対し、評価額算出方法の説明を求めた。商業不動産ローンの評価額引き下げが欧州の銀行は遅過ぎるとの懸念が背景にある。
商業不動産取引が1年以上にわたって冷え込み、評価額と実際の取引額とを比較することが難しいという事情もあると、非公表の情報だとして匿名を要請した関係者は述べた。
不動産評価額について、銀行が鑑定業者の見積もりに依存することは多い。銀行の多くは既に商業不動産ローンで評価損を計上しているが、評価額がまだ楽観的過ぎるということになれば、評価額のさらなる切り下げを強いられる可能性があると、関係者の一部は語った。
ECB報道官はコメントを控えた。ECBは以前、銀行監督当局が注目すべき分野として商業不動産を挙げていた。
●その他産業
フランスの高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの7-9月(第3四半期)売上高は伸びが鈍化した。消費者が高級コニャックや高価なハンドバッグへの支出を控えた。
LVMHの10日の発表によると、「ルイ・ヴィトン」や「クリスチャン・ディオール」を含む同社最大部門であるファッション・皮革製品部門の売上高は実質ベースで9%伸びた。アナリスト予想は11.2%増だった。ワイン・スピリッツ部門の売上高は14%減と、市場予想を大きく下回った。
日本を除くアジアの売上高は11%増と、市場予想を大きく下回り、中国が勢いを失いつつあることが示唆された。売上高がアナリスト予想を上回ったのは、化粧品小売りブランド「セフォラ」を含むセレクティブ・リテーリング部門だけだった。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
イタリアは、2024年の財政収支が欧州連合(EU)の基準から外れて財政規律措置を義務付けられる事態を警戒し、EUの財政ルールの柔軟化を加盟諸国に働きかけている。
関係筋3人によると、メローニ政権が特に懸念しているのは、EUの統計局「ユーロスタット」による会計規則変更により、24年の財政赤字が押し上げられて基準違反の可能性が高まることだ。
EUは新型コロナウイルスのパンデミックに鑑み、財政ルールである「成長安定協定」の適用を2020年から凍結していたが、来年は加盟国間で交渉中の修正を加えて復活させる見通し。
イタリアは最大限寛大な修正とする提案を行っており、直近では環境配慮型の住宅改修に対する税控除について、ユーロスタットの基準変更の適用回避を求めている。同国は、この税控除を予算に盛り込んだことによって過去3年間の財政赤字が膨らんだ。
しかしユーロスタットは、同税控除の影響を来年以降にシフトさせる可能性がある。つまり、過去3年間の財政赤字は縮小する一方、来年以降の財政赤字は押し上げられる見通しだ。
その場合、イタリアはほぼ確実に修正後の成長安定協定に違反することになる。
イタリア政府が9月27日に承認した予算計画では、来年の財政赤字目標が従来の国内総生産(GDP)比3.7%から4.3%に修正され、EUの基準である3%以内に戻るのは26年にずれ込む見通しとなった。
金融市場はこれを嫌気し、イタリア国債が売られて10年物国債利回りはドイツ国債とのスプレッドが9日時点で208ベーシスポイント(bp)と、1月以来で最大となった。
イングランド銀行(英中央銀行)金融行政委員会(FPC)は10日、米ハイテク株やドル建て社債など、一部の金融資産のバリュエーションが過大になっているとみられると指摘した。
四半期会合後に「リスク環境全般は引き続き厳しく、短期の成長見通しは依然低迷している」と表明。「金利上昇の影響や、インフレと成長に伴う不確実性を考慮すると、リスク資産の評価が一部で過大になっているようだ」との見方を示した。
英国の銀行と金融システム全般が強靭性を維持しているとの判断は変えず、銀行のカウンターシクリカル資本バッファー(CCyB)比率を2%に据え置いた。
「FPCは今後も動向を注意深く監視し、経済・金融情勢の進展に合わせて英国のCCyB比率をいずれの方向にも変動させる用意がある」とした。
一部のFPC委員は貸し倒れが少ない時期に銀行の強靭性を高めるため、CCyB比率の引き上げを主張。引き下げの論拠も議論された。
英中銀はこれまでの利上げの影響はまだ一部しか表れていないとしながらも、家計や企業の債務返済負担が2007年の世界金融危機前の高水準に戻るとは予想していないとした。
しかし国内金融機関の一部がエクスポージャーを持つ香港と中国の不動産市場を英中銀は注視している。
また住宅ローン金利の上昇により家主がコストを借り手に転嫁しているが、家主が売却する明確な兆候は見られていない。
国際通貨基金(IMF)は10日、国際金融安定性報告書を公表し、中央銀行が高金利を長期間維持した場合、世界の銀行の5%前後がストレスに脆弱になるとの見方を示した。
世界経済がスタグフレーションに突入した場合、さらに30%の銀行がストレスに脆弱になるという。
IMFは米シリコンバレー銀行などの破綻を受けて29カ国の約900行を対象に従来よりも厳しいストレステスト(健全性審査)を実施。基本シナリオでは高金利の長期化、預金流出リスクを想定。「深刻だがあり得る」シナリオでは世界経済がスタグフレーションに突入することを想定した。
IMFのトビアス・エイドリアン金融資本市場局長は先週のインタビューで「基本シナリオでは約5%の銀行が資本面で相対的に弱くなる。深刻なストレス下では、その数が30%以上になる」と指摘。
問題に陥る可能性がある銀行の名前は挙げなかったが、小規模銀行と大手行の双方が含まれているという。
「シナリオによっては、一部の大手金融機関が圧力にさらされる可能性があることは間違いない」とした上で、先の米銀行危機では中小銀行の破綻がいかに金融の安定を損ない得るかが示されたと述べた。
IMFは各国政府に対し国内銀行を積極的に監督し、審査官が「介入」姿勢を強めるべきだと主張。ダイレクト・レンダーはより「タイムリーで決定的な」是正措置を講じる必要があるとした。資本増強により銀行の耐性を「緊急に」高める必要性があるとの認識も示した。
イングランド銀行(英中央銀行)金融行政委員会(FPC)は10日、MMF(マネー・マーケット・ファンド)は市場の変動に対処するために相当な規模の流動資産を持つべきとの認識を示した。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)時にMMFから急速に資金が流出したと指摘した。
MMFはショックへの耐性を高める必要があるとし「現在求められているよりも大幅に流動資産を増やすことがMMFをより強靭にし、金融の安定に対するリスクを減らす最も効果的な方法であると考えられる」とした。
国際通貨基金(IMF)は2024年の世界経済成長率見通しを引き下げる一方で、インフレ見通しを引き上げ、各国・地域の中央銀行に物価圧力の緩和が持続的になるまで、引き締め的な政策を堅持するよう促した。
IMFは10日発表した世界経済見通しで、世界の消費者物価上昇率が来年は5.8%になると予想。3カ月前に見込んでいた5.2%から上方修正し、インフレへの警戒を呼びかけた。大半のIMF加盟国でインフレ率が25年まで中銀目標を上回り続けるとみている。
世界のインフレ率は22年に8.7%と、1990年半ば以来の高水準に達し、米連邦準備制度や欧州中央銀行(ECB)を含む主要中銀は1年余りにわたり積極的に政策金利を引き上げてきた。
IMFのチーフエコノミスト、ピエールオリビエ・グランシャ氏は記者会見で、「インフレ率が目標に向かってしっかりと下がり続けるまで、大半の地域で金融政策はタイトであり続ける必要がある」と述べた。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で生じたサプライチェーンの混乱やパンデミック対策として行われたロックダウン(都市封鎖)後の財政刺激策といった要因が物価高騰に拍車をかけた。パンデミック後の需要増や米労働市場逼迫(ひっぱく)、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う欧州と英国を中心とした食料・エネルギー供給混乱も重なった。IMFは来年の世界経済成長率見通しを2.9%と、7月時点の予測から0.1ポイント引き下げた。パンデミック前の20年間平均(3.8%)を下回る。2023年の成長率見通しは3%で変わらず。
IMFは来年の世界経済成長率見通しを2.9%と、7月時点の予測から0.1ポイント引き下げた。パンデミック前の20年間平均(3.8%)を下回る。2023年の成長率見通しは3%で変わらず。
成長見通しは弱いものの、世界経済は比較的安定しており、IMFは各中銀が世界的なリセッション(景気後退)を招くことなくインフレを落ち着かせることができる確率が高まっているとみている。
世界一の経済大国である米国について、IMFは今年の成長率を2.1%と、7月時点の予想(1.8%)から上方修正。来年は1.5%と、1%から引き上げた。今年4-6月(第2四半期)に設備投資の勢いが強まったことと、強靱(きょうじん)な消費の伸びが背景だ。
米国の失業率は24年10-12月(第4四半期)までにピークの4%に達すると想定。今年4月時点では5.2%と見込んでいた。米経済が従来見通しよりソフトな「着陸」になるとしている。
米国に次ぐ世界2位の経済大国、中国の成長率見通しは対照的に下方修正された。23年は5.2%から5%、24年は4.5%から4.2%にそれぞれ引き下げられた。不動産投資の減少と住宅価格下落が土地使用権売却に伴う歳入を脅かしているほか、消費者心理の弱さもあり、中国経済は失速気味だ。
ユーロ圏の成長率についても、今年が0.7%(従来0.9%)、来年は1.2%(同1.5%)と見通しが引き下げられた。
グランシャ氏は「英国に対する全般的な見方は、成長の勢いがかなり弱く、労働市場は冷え込む一方で、インフレが極めて根強いというものだ」と説明。「来年にかけてしばらくは、金融政策の引き締めを維持する必要があるだろう」と続けた。
一部の新興国が金融緩和に乗り出す中、先進国の金融政策当局が利上げを長期化させれば、今年好調な新興国通貨がリスクにさらされる可能性があると国際通貨基金(IMF)が10日、警鐘を鳴らした。
モロッコのマラケシュで開催されているIMFと世界銀行の年次総会に合わせて発表された半年に一度の金融安定性報告書によれば、「大きな金利差と市場のボラティリティー低下がキャリートレードを通じて新興国通貨の力強い上昇につながったものの、一部新興国通貨が最近反落していることは、今後数四半期がより不安定な状況になることを示唆している」という。
実質金利は過去最高水準に付近にあり、多くの新興国が引き締めサイクルの自然なピークに達したようだとIMFは指摘。借り入れコストの急速な引き下げが予想される国・地域では、政策当局は「そうするための政策余地を持つべきだ」と主張した。
さらに、特に先進国がより長期にわたって金利を高めに維持した場合の影響を考えれば、各国の中央銀行は今回の緩和サイクルを慎重に管理する必要があると分析。欧米の金利上昇が、高い借り入れコストにあえぎ、ハードカレンシー建て債務の返済に苦しむ低所得国に難題をもたらしているとの見方も示した。
今年の年末商戦に向けた米小売業者の商品輸入は2019年に近いペースで進んでいる。新型コロナウイルスのパンデミックに伴うロックダウン(都市封鎖)期間の序盤に顕著だった「巣ごもり需要」も収まり、消費者の行動が正常化しつつある表れと言える。
デスカーテス・システムズ・グループ(DSG.TO)が10日公表したリポートによると、今年1―9月に米国の港湾で取り扱われた輸入品(大部分が小売業者向け)の伸びは、19年の同期間と2.5%しかかい離していない。
小売業者は昨年、前倒しで大量に商品を仕入れて痛い目にあった。巣ごもり需要の反動で消費者がモノを買うよりも、飲食や旅行、コンサートといったサービスに支出を振り向け、過剰な在庫を抱えてしまったからだ。
サスケハナのアナリストは、今年は必要に応じて仕入れを行う「ジャストインタイム」方式の在庫管理戦略に戻っていると指摘した。
ターゲット(TGT.N)のブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は8月、予想外のサービスへの需要シフトに伴って売れ残った在庫を大幅に整理し終わり、今年の年末商戦にかけての需要の動きに対応できる態勢が整ったと表明した。
デスカーテスのクリス・ジョーンズ執行副社長は「現在の消費者はかなり移り気になっているように見受けられる」と述べた。
イスラエルとハマスの紛争は石油、穀物、肥料の輸出には影響を与えないため、昨年のロシアによるウクライナ侵攻開始時よりも経済への直接的な影響は少ないが、その影響はドル資産の急上昇など金融市場を通じて伝わると言及。インフレ率がここ数カ月で鈍化し、物価と賃金が安定し、市場は高金利長期化に慣れてきたが、紛争が長引けばこうした状況が崩れる可能性があるとした。
ドルと米国債が世界で最も有力な資金の逃げ場となる構図が再現されつつある。パレスチナ自治区ガザにおいてイスラエルとイスラム組織ハマスの間で大規模な戦闘が発生し、地政学リスクが一層高まっているからだ。米国は米国で固有の問題を抱えており、本来なら別の国や地域が安全な資金避難先として提示されてしかるべき面がある。しかし不確実性というのは相対的なものであり、過去に起きた「有事」を踏まえると、投資家はまたドルと米国債に安全を求めようとするだろう
これまでのさまざまな地政学イベントは、ドルと米国債が投資家にとって安全な落ち着き先として選ばれることを示唆している。昨年2月にロシアがウクライナに侵攻した後の2日間で、米10年国債利回りは25ベーシスポイント(bp)も低下(価格は上昇)した。これは過去10年間における平時の1日平均の6倍の値動きだった。ドルもウクライナ侵攻当日、主要通貨に対して1%近く値上がりした。
このような関係性はもっと前から見て取れる。2020年1月に米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害すると、米10年国債利回りは8bp低下。03年3月20日のイラク戦争開始後に、ドルは対主要通貨で0.9%上昇した。01年9月11日の米中枢同時攻撃では、直後こそ金融市場が止まの、取引が再開された2日後には米10年国債利回りは20bp下がった。
米国債保有者にとっても、質への逃避はまさに「干天の慈雨」になろうとしている。ここ数カ月間、国債利回りは高金利や下院議長解任騒動で16年ぶりの高水準に跳ね上がっていた。ところがシカゴ商品取引所の10年国債先物は10日に17bp低下するシグナルを発している。
とはいえ、これで米国債が直面する多くの逆風が和らぐわけではない。下院はまだ新議長を選出できず、つなぎ予算で確保した資金が尽きる11月17日までに新年度予算を可決する上で必要な審議や手続きが遅れている。さらに来年の大統領選が、米国財政の先行きを巡る不確実性を一層高めてしまう
それでも米金融市場の強さはその相対性にある。例えば、ドルが投資家の間で積極的に好まれているのか、あるいは単に他通貨が嫌われているだけなのかをきっちり判別するのは難しい。紛争が世界各地に広がり、投資の安全性が相対的な意味にとどまる局面では、まさにそこが重要だ。つまり米国は欠点を持ちながらも、おなじみの資金避難先になっている。
資産家のポール・チューダー・ジョーンズ氏は、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を受け、現在の地政学的環境は自身がこれまで目にした中で「最も脅威的かつ厳しい」ものになっていると指摘した。米経済については、来年早期にリセッション(景気後退)に陥るとの見通しを示した。
ヘッジファンド運営会社チューダー・インベストメントの創業者でもあるジョーンズ氏は10日、米経済専門局CNBCのインタビューで「イランとイスラエルが直接衝突することになれば、本当にまずい事態になる。第1次世界大戦のように多くの国を次々と巻き込む力が生じるためだ」と述べた。
現在の大きな問題はハマスがイランの代理勢力なのか、それとも単なる同盟勢力なのかということだと付け加えた。
米経済に関しては、リセッションが2024年1-3月(第1四半期)に始まると予想。米国の財政状況は第2次世界大戦以降で最も脆弱(ぜいじゃく)だと指摘。増税や歳出削減などが必要だと語った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
アジア地域の高い債務水準も懸念だとし、国内市場からの政府借入増加は民間企業が利用できる信用を制限し、結果として投資低迷を招くと指摘した。
「債務過多と投資不足という二つの問題がある」とし、「多くの政府歳出と民間消費が負債によって賄われている。信用によって賄われている投資は少ない」とし、その結果、予想よりも「はるかに低い成長率」になる可能性があると指摘した。
ハマスの予期せぬ大規模攻撃後、中国が8日に出した最初の声明は、ウクライナでロシアが始めた戦争に関する習主席の提案と同様、侵略者の名指し回避を図り、具体的な即時支援の申し出もなかった。
ハマスの攻撃で死者数が数百人に増えると、中国外務省はパレスチナへの呼びかけを繰り返したが、民間人を狙った攻撃には触れなかった。ハマスへの言及を避けた短い声明は「全当事者」に自制を要請。中国外務省はその後、中国は双方の友好国であり、死傷者が出たことを「悲しんでいる」とコメントした。
在中国イスラエル大使館のワクス副代表は反発し、イスラエルと友好的な関係にある中国が「テロリストが子どもを拘束している」と暴力を非難しなかったことは遺憾だと表明した。
中国を訪れているシューマー米上院院内総務は9日、習主席との会談で、中国がイスラエル国民に「同情を示さない」ことに「失望している」と述べた。
習主席は公の場で反論せず、 「われわれには米中関係を良くする理由はいくらでもあるが、悪くする理由はない」と語った。
シンガポールの南洋理工大学ラジャラトナム国際学院シニアフェロー、ラファエロ・パントゥッチ氏によれば、ハマスのイスラエル攻撃で習主席は「厄介」な立場に置かれた。
「中国政府は自らをグローバルプレーヤーとして描こうと動いていた。この状況の打開に向け何らかのアイデアや考えの提示を期待されているものの、実際には何も示していない」と同氏は指摘した。
関係者の1人によると、国債増発の結果、今年の財政赤字は3月に設定された国内総生産(GDP)比3%の上限を大幅に上回る公算が大きい。こうした方針は早ければ月内にも発表される可能性があるが、協議がまだ続いており、政府の計画は変更され得ると別の関係者が説明した。
中国は財政リスクを管理するため、特別国債や地方政府の資金調達事業体による借入金を除いた財政赤字をGDPの3%相当を下回る水準に抑えようとしてきた。
だが、経済成長鈍化の中で財政面での制約が大きくなるにつれ、政府系のシンクタンクやグローバル企業のエコノミストらからの財政赤字の上限緩和を求める声はここ数年ますます強まっている。
関係者によれば、財政省と国家発展改革委員会(発改委)が主導するこの計画は、国務院と全国人民代表大会(全人代、国会に相当)による最終的な承認が必要。財政省と発改委はコメント要請のファクスにすぐに返答しなかった。
中国の株式ファンドが中東の投資家からの資金集めを目指している。米中関係の緊張などを背景に米国の投資家が中国から資金を引き揚げていることが背景だ。
ヘッジファンドやミューチュアルファンドなど中国の7つの株式ファンド(運用総額5000億ドル以上)の担当者はロイターに対し、投資資金を募るため、今年に中東を訪問したことを明らかにした。うち3つのファンドは初の中東訪問だった。
中東の投資家も、割安感や景気刺激策で利益を得られるとの見方を背景に対中投資に積極的になっている。
法律事務所シドリー・オースチンのアジア太平洋投資ファンドグループ共同リーダー、エフィー・バシロプロス氏は「これまではおそらく米国からの資金調達が究極の目標とされていたが、米国の投資家が資金を引き揚げており、代わりの資本を集めることが焦点となっている。われわれの顧客の多くが中東に目を向けている」と述べた。
今年中東を訪問したファンドの一つ、ファウンテンキャップ・リサーチ&インベストメントのスティーブン・ルク最高経営責任者(CEO)は「(中国に対する)センチメントが最も良好なのが中東の投資家だ」とし、「一部の政府系ファンドは中国をオーバーウエートにしている。そうしたファンドは『なぜ中国なのか』ではなく『中国にどのように投資するか』を話している」と述べた。
ファウンテンキャップはロングオンリー型株式ファンドで、2015年から中国に投資。運用資産は21億ドルと2倍近くになった。欧州のほか、中東からも資金が流入しているという。次はオーストラリアで資金集めを目指す方針だ。
<政治と投資>
テキサス州教職員退職年金基金やカリフォルニア州教職員退職年金基金など米国の大手機関投資家は過去1年で対中投資を減らしているが、中東の政府系ファンドは中国に多額の投資を行っている。
MSCI中国インデックス(.dMICN00000PUS)は今年11%下落。一方で、世界株指数(.MIWD00000PUS)は8%値上がりしている。
シンガポールを拠点とするAPSアセット・マネジメントのウォン・コック・ホイ最高投資責任者(CIO)は「これは『政治と投資』の戦略的決定だ。中国は割安だ。その一方で、米国中心の投資からの多様化が必要との考え方がある」と述べた。APSは今年、中東・アフリカの投資家から新たな資金を集めた。
ウォン氏は、中東の軍事衝突が今後数カ月でどのような影響を及ぼすかを判断するのは時期尚早だが、中東の投資家がドル以外の資産への投資を増やすという長期的な戦略に大きな変化はないはずだと指摘。
「原油高で産油国の投資資金が増えるため、この新たな不安定な環境では投資のペースが上がるかもしれない」と述べた。
経営難に陥っている中国の不動産デベロッパー、佳兆業集団(1638.HK)は、自社が清算に追い込まれた場合、債権者が取り戻せる資金は5%未満になると説明している。同社の清算を申し立てている債権者の代理人が10日、香港の裁判所で明らかにした。
2015年にドル建て債で債務不履行(デフォルト)に陥り、再編を経た最初の中国不動産デベロッパーである佳兆業は、最近の不動産債務危機でも不履行に陥ったデベロッパーの1社だ。
しかし、オフショア債デフォルトから2年近くが経過した現在も、同社は再編計画を発表していない。
10日の審問で申立人の代理人は佳兆業が裁判所に提出した陳述書に言及。一方、同社は申し立てを退けるよう求めている。
判事は同社に対し、後日決定される次回審問までに再編の進捗状況を提出するよう求めた。
120億ドルのオフショア債務を抱える佳兆業は、中国デベロッパーでは中国恒大集団(3333.HK)に次ぐ大規模オフショア債発行体となっている。
中国不動産開発大手の碧桂園は10日、ドル建て債を含めたオフショア債務について、期限までに、または猶予期間内に支払い義務の全てに応じることはできない見通しだと発表した。同社初のデフォルト(債務不履行)につながる恐れがあるとの警告を強めるとともに、財務アドバイザーらを起用。同社が債務再編に向かっていることを最も強く示唆する形となった。実際に再編となれば、中国で最大級となる。
碧桂園は上場先の香港取引所への届け出で、「不払いとなった場合、当グループの債権者による関連債務の早期返済要求や強制措置の追求につながる恐れがある」と説明した。
中国の不動産債務危機の象徴となった同社は、「特定の負債下で」期限が到来した元本残高4億7000万香港ドル(約89億円)相当の支払いができていないことも明らかにした。
碧桂園は先月、ドル建て債2本の利払いを当初の期限までに履行できず、猶予期間はそれぞれ10月17-18日、今月27日に終了する。ブルームバーグの集計データによれば、同社のオフショア債発行残高は110億米ドル(約1兆6300億円)に上る。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のシニアクレジットストラテジスト、ティン・モン氏は碧桂園の今回の届け出について、「オフショア債保有者に対して今後の再編案を承認する圧力になるかもしれない」と指摘。「多くの未完工プロジェクトが残り、新たな資金調達アクセスも限られており、同社はなお明らかに資金繰り難にある」と話す。
碧桂園は10日、9月の契約販売が前年同月比81%減少したと発表。同社の債務問題が潜在的な住宅購入者の信頼感に影響を及ぼしていることを示唆している。販売の落ち込みは大きくなっており、6、7両月に50%超の減少となった後、8月は72%減とさらにマイナス幅が広がった。
碧桂園のドル建て債は額面1ドルに対して5-7セントの気配となっており、最終的に債務再編となった場合、ほとんど回収が見込めないと債権者が考えていることを示している。
「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」の支持者らは鉄道や航路で結ぶ貿易回廊の高い潜在性を強調してきた。バイデン米大統領は「画期的出来事」と称賛し、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は「大陸と文明をまたぐグリーンでデジタルな架け橋」と強調。インドのモディ首相も「今後数百年にわたる世界貿易の基盤」と評した。IMECは、2027年までに6000億ドルを世界のインフラに投融資するという主要7カ国(G7)の計画の一部を成す。
IMECが貿易回廊として潜在性が極めて高いのは、輸送時間を40%も短縮できる点が大きい。また、インドとサウジアラビアの貿易総額が過去2年間で2倍以上に膨れ、23年度に約530億ドルに達するなど、需要も大きい。しかし、インドにとって本当の収穫は、第3の貿易相手国である欧州との関係を強化できることだろう。
インドと湾岸諸国の関係はかなり温まっているが、サウジアラビア・イスラエル間に信頼できる輸送路を確保できなければ回廊は機能せず、インドの新興財閥アダニ・グループが今年運営権を獲得したイスラエル北部ハイファ港から将来的に欧州に製品を輸送することもできない。
しかし、サウジの実権を握るムハンマド皇太子にとって、イスラエルのネタニヤフ首相と関係正常化を進めることに伴うリスクは高くなった。アラブ世界ではガザを支持する世論が強く、7日にハマスの大規模攻撃を受けたイスラエルはガザへの報復攻撃を開始。イスラエル軍は過去最高の予備役を招集しており、既に1500人以上の死者を出している戦闘が激化する可能性がある。
IMECは長期ビジョンで、米資本の撤退に見舞われている中国が中東を重視するのも長期的な政策だ。ただ、現状下ではこれらの計画は先送りされることになるだろう。短期的にスエズ運河がインドから欧州への物流の要所にとどまり、トルコが自国の対抗ルートを推すとみられる。戦争のせいで、世界の貿易・金融ルートを再構築する困難さが思い起こされる形になった。
●中東
●中南米・アフリカ
アルゼンチン通貨ペソの下落に歯止めがかからず、10日の非公式レートは一時1ドル=1050ペソと、1000ペソの大台を超えて売り込まれた。現在の公定レートの350ペソとは200%もの開きが生まれた。
その後、中央銀行が約2億2000万ドルの外貨準備を売却したため、ペソ安の勢いはやや弱まった。今回の為替介入規模は8月終盤以降で最大とされる。
ペソ安の背景にあるのは、22日に投開票される大統領選で主要候補3人のうちリバタリアン(自由至上主義者)のミレイ下院議員が最も優位に立っていることだ。
8月13日の予備選で得票率がトップとなったミレイ氏は中央銀行の廃止と、急激なインフレ抑制のための経済のドル化を訴え、最近では国民に対してペソ建て預金を更新しないよう提言している。
8月13日以降、ペソの価格は44%も下がった。
ある銀行関係者は、誰もペソで取引したがっておらず、大統領選挙前に資産をドルにして、結果を見極めようとしていると指摘した。
●市況
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)高官のハト派的な発言を受けてイングランド銀行(英中央銀行)が追加利上げをしないとの期待が高まり、国債利回りが低下したことが買いを促した
市場調査会社カンターによると、10月の英国の食品価格上昇率は1年3カ月ぶりの低水準となり、物価高に苦しむ買い物客にさらなる安心感を与えた。
また、英小売協会(BRC)が発表した9月の小売売上高や、バークレイズが発表した別の支出データでは消費者が先月、不要不急の支出のほとんどを控えたことが示された。
<欧州株式市場> 急反発して取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備理事会(FRB)当局者によるハト派的な発言を受け、ユーロ圏と米国の長期国債相場が上昇した。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが上昇した。イスラエルとパレスチナの武装組織であるハマスの衝突がガザ地区を超えて拡大するとの懸念を背景とする安全資産への資金流入が一服した。
 <為替> ドル安・ユーロ高となった。米連邦準備理事会(FRB)高官によるハト派的な発言や中国による景気刺激策への期待から米債利回りが急低下したことを受けた。
<債券> 米債利回りが低下し、2年債利回りは1カ月ぶりの低水準を付けた。中東での紛争継続を背景とする安全資産への資金流入に加え、米利上げ終了の可能性を示唆するFRB当局者のハト派発言を受けた。
CMEのフェドウオッチによると、米金利先物市場が織り込む11月の利上げ確率は13.7%、12月の利上げ確率は27.5%。1週間前はそれぞれ28%、40%だった。
<株式> 3営業日続伸。FRB当局者によるハト派的な発言を受け、米債利回りが急低下したことが背景にある。投資家は中東情勢を注視している。
パレオ・レオンのマネジングディレクター兼共同最高投資責任者、ジョン・プラビーン氏は、投資家が米国債利回りの動向を注視しながら中東情勢にも同時に目を向けていると指摘。この日はFRB当局者のハト派発言が株価を支え、中東情勢を巡っては楽観的だったが、同地域の他の国に戦闘が拡大するなどすれば見方が変わる可能性があると述べた。
S&P500の主要11セクターのうち10セクターが上昇し、公益事業(.SPLRCU)が上げを主導。一方、前日に3.5%上昇していたエネルギー(.SPNY)はこの日は小幅安で引けた。
<米原油先物> 地政学リスクの高まりを背景とした供給不足への懸念が幾分和らいだことで、3営業日ぶりに反落した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日比0.41ドル(0.47%)安の1バレル=85.97ドル。12月物は0.47ドル安の84.13ドルとなった。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの戦闘は10日、4日目に入った。関係筋によると、双方の衝突でガザに近いイスラエルの港湾都市アシュケロンとその石油ターミナルが閉鎖されたもよう。ただ、原油輸出が大きく落ち込むような兆候は見られないとして影響は限定的との見方が広がり、ひとまず持ち高を手じまう動きが台頭した。
一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙(電子版)は8日、イランがハマスによるイスラエル攻撃計画の立案を支援していたと報じた。イランの関与が明らかになれば、大規模な地域紛争に発展し、エネルギー供給が混乱するとの警戒感も根強く相場の下値を支えた。
日経先物31855、ダウ先33942、債先145.15、米4.646、独2.7865、仏3.342、西3.897、伊4.722、英4.4905、波5.892、原油86.04、銅8,046、ドル円148.53、ユーロドル1.0609
※10/11 9時30分頃

備忘録(2023/10/9)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
英国の新興銀行メトロバンク・ホールディングスは8日、総額9億2500万ポンド(約1700億円)の資本パッケージを確保したと発表した。一部の債券保有者に40%のヘアカット(減免)を受け入れさせる内容で、コロンビア人投資家のハイメ・ヒリンスキ氏が同行の支配権を握ることになる。
メトロバンクの株価はこの1週間で乱高下していたが、今回の合意で一息つく余裕を得た。買い手探しを託されたコンサルティング会社EYが買収提案を募るため複数の銀行にアプローチしていた。
発表資料によると、資本パッケージは3億2500万ポンドの増資と6億ポンドの債務借り換えから成る。ブルームバーグの先の報道を確認した。新規資本は1億5000万ポンドの新株と1億7500万ポンドの新たなベイルイル債で構成される。
2010年に業務を開始したメトロバンクは、バークレイズやロイズ・バンキング・グループなど英大手に挑戦し得る新興銀行の一つとして台頭。他行がオンライン銀行業務を拡大する中で、ロンドンのチェルシー地区のキングスロード周辺など高級住宅街を含む地域で支店網を構築したことで注目された。
しかし同行は2019年、一部の住宅ローンに対し低すぎるリスクウエートを誤って適用していたと開示。それから数カ月間、株価下落が続いた。幹部流出に見舞われ、規制当局から制裁金を科された。
増資はヒリンスキ氏率いるスポルディー・インベストメンツが主導する。メトロバンクの筆頭株主であるスポルディーは今回、1億200万ポンドを提供。持ち株比率は9.2%から約53%に高まり、支配株主となる。
合意の一環として、2億5000万ポンド相当のティア2債が40%ヘアカットの対象となる。
英健全性規制機構(PRA)は同日、今回の資本増強の動きを歓迎すると表明した。
米製薬大手ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY.N)は8日、がん治療薬メーカーのミラティ・セラピューティクス(MRTX.O)を最大58億ドルで買収すると発表した。腫瘍事業の多様化を進めるとともに、特許の期限切れによる収入減を補う狙いがある。
ブリストルはミラティを1株当たり現金58ドル、約48億ドルで買収する。さらにミラティの株主は保有株1株につき1CVR(コンティンジェント・バリュー・ライト)を受け取る。1CVRは現金で1株当たり12.00ドルの価値を持つ可能性があり、これを加味すると買収額は最大で58億ドルになるという。
ブリストルは現金と負債を組み合わせて買収資金に充てる計画。
経営不振に陥っている英銀行メトロ・バンク(MTRO.L)は8日、3億2500万ポンド(3億9650万ドル)の増資と6億ポンドの債務借り換えを発表した。
これにより、最大株主であるコロンビアの富豪ハイメ・ギリンスキー氏が経営権を握ることになる。
同行は会計ミスや幹部の退職など混乱が続き、財務強化を模索していた。
増資は1億5000万ポンドの新規株式発行と「MREL」として知られるベイルイン債の1億7500万ポンド発行で行う。
株式による増資はギリンスキー氏が所有するスパルディ・インベストメンツが主導し、1億0200万ポンドを出資した。メトロによると、この取引が完了すれば、スパルディは53%株式を保有し支配株主となる。
また、取引には満期を延長する債務再編も含まれており、2028年6月に償還期限を迎える2億5000万ポンドのTier2債の保有者は40%のヘアカット(債務元本の減免)を受け入れることになる。
資金調達は株主と社債権者の合意を経て、第4・四半期に完了する予定。
シティグループ(C.N)は9日、中国の消費者向けウェルス事業を英HSBCホールディングス(HSBA.L)に売却することで合意したと発表した。
売却対象には約36億ドル相当の預金・運用資産が含まれ、取引は2024年前半に完了する予定。金銭面での詳細は公表されていない。
シティは「本日の発表は22年12月に示した中国の消費者向け銀行部門の縮小計画を推し進めるものだ」と説明した。
シティは21年4月に世界的な戦略の一環として、中国のコンシューマーバンキング事業から撤退すると初めて公表。シティの中国での同事業の規模は、中国の国内銀行や、スタンダード・チャータード(STAN.L)などの外資系銀行に大きく水をあけられている。
発表によると、HSBCとの今回の取引には機関投資家向け事業は含まれない。シティは、シンガポールと香港のウェルス拠点を通じて、中国の富裕層や超富裕層の顧客のニーズに引き続き応えていくとした。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃を受け、金利上昇で既に揺らいでいる世界の金融市場が今度は新たな地政学的不確実性に見舞われている。
7日に攻撃を開始したハマスに対し、イスラエルが正式に宣戦布告したことで、市場に不安が広がる恐れがある。9日のアジア時間の取引開始直後から原油相場が急伸したことで、インフレ高止まりを巡る懸念がさらに強まっている。
安全通貨と見なされる円とドルはいずれも上昇。原油高を背景に、ノルウェー・クローネは全てのG10通貨に対して上昇した。
米株価指数先物は9日早朝の取引で0.7%下落し、アジア株はまちまち。中東の主要株価指数は8日に値下がりし、イスラエル株の指標であるテルアビブ35種指数(TA-35)は6.5%安と、この3年余りで最大の値下がりとなった。
債券トレーダーは、イスラエルでの戦闘が高利回り債を避けて安全なドルに逃避する理由となるのか、あるいはインフレ再来を恐れる理由となるのかどうかを迅速に見極める必要がある。米国債先物は9日の取引開始直後から上昇。現物市場は米国の祝日のため休場となっている。
ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ社長は「中東の地政学的危機はこれまで原油価格上昇と株価下落を引き起こすことが多かった。この危機が短期的な紛争に終わるのか、それともイスラエルとイランの戦争のようなもっと重大な事態に発展するのかによって、多くのことが左右されるだろう」との見方を示した。
債券利回り上昇の影響で低迷する米国株は、米個人消費トレンド減速で予想される一連の悲観的な利益見通しという新たな脅威に直面している。
最新のブルームバーグ「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査によると、回答者567人のうち80%が一部セクターは四半期決算発表時に利益トレンドについて悲観的な見通しを示す可能性が高いと予測。労働組合と自動車メーカーの協議進展が好感され、S&P500種株価指数は6日、1.2%高で終了。ただ、週末のハマスによるイスラエル攻撃を受け、米株価指数はアジア時間9日早朝の取引で下落した。 
投資会社ナインティワンのポートフォリオマネジャー、ステファニー・ニーベン氏(ロンドン在勤)は「消費者セクターは厳しい状況となりそうだ。米利上げサイクルが浸透し始めていることも相まって、われわれはそれを感じ始めている」と語った。
中古車ディーラーから小売業者に至る全米の企業が既に需要鈍化を目にしつつある。モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏らストラテジストは、消費者の支出手控えが予想されるとして、今年これまで広範な市場をアウトパフォームしてきた消費関連株について警告を発した。
投資家は、金利上昇が経済に深刻な負担を与え、新型コロナウイルス禍以来の急激な落ち込みから回復し始めたばかりの利益を侵食するのではないかと懸念している。米国の非農業部門雇用者数が9月に市場予想を大幅に上回る伸びとなったことで、米金融当局が年内に追加利上げに踏み切るとの見方が高まった。
実際、回答者の約54%が決算期の最大のマイナス要因として、債券利回り上昇とさらなる金融状況引き締まりの影響を挙げており、依然として金利高止まりが最大の関心事となっている。米10年国債利回りは雇用統計発表直後に4.9%に迫り、30年債利回りは5%を超え、いずれも2007年以来の高水準を記録した。調査回答者の予想中央値では、10年債利回りは年末時点で4.82%前後と見込まれている。
借り入れコスト上昇と個人消費鈍化に伴うリスクに加え、S&P500種構成企業の向こう1年の利益予想は過去最高水準に近い。調査参加者の約60%が、次の決算後にS&P500種は下落すると予測。年末時点の水準について37%近くは現在から5-10%安を見込んでおり、8%はさらに下げるとみている。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がまとめたデータによると、アナリストはS&P500種企業の1株当たり利益について、7-9月(第3四半期)は前年同期比で約1%減と、4-6月(第2四半期)の約5%減から減少率が縮小すると予想。
ジーナ・マーティン・アダムズ氏らストラテジストはリポートで、「利益サイクルは短期的な底から脱出しつつあるようだが、成長のきっかけは依然つかめず、夏の終わりの原油価格急伸が回復軌道を揺るがす恐れがある」と指摘した。
また、映画や自動車、医療などの業界におけるストライキもセンチメントの重しとなっている。回答者の40%余りが全米自動車労組(UAW)によるストライキについて、タイトな米雇用市場を反映したもので、景気が鈍化するにつれてそうしたストは減っていくと予測。また、ストは、賃金の伸びがインフレに追いついていない状況を浮き彫りにしたほか、「労働者と高給取りの幹部との間で報酬の伸びに差があること」が鮮明となったとある回答者は語った。
それでも、逆風にもかかわらず今回の決算で経済の回復力が示されると40%余りが予測。10月13日のJPモルガン・チェースを皮切りとする決算シーズンの本格化で、そうしたセンチメントが試されることになる。
MLIVパルス調査は、ブルームバーグ・ニュースの読者を対象にブルームバーグの「マーケッツ・ライブ」チームが毎週実施。MLIVブログは同チームが運営している。
今週の調査では、貿易摩擦や政治手腕について質問する。これまでのところ、米中貿易対立の勝者はどちらだろうか。
独連邦統計庁が9日発表した8月の鉱工業生産指数は前月比0.2%低下した。ロイターがまとめたアナリスト予想は0.1%低下だった。4カ月連続での低下となり、リセッション(景気後退)懸念が強まった。
キャピタル・エコノミクスの欧州担当シニアエコノミスト、フランツィスカ・パルマス氏は、8月の指数低下は変動の激しい項目が影響したという側面があり、見た目よりも良い内容と指摘した。
一方、高金利と需要の落ち込みが今後数カ月の鉱工業生産のさらなる減少につながるとも予想。「独国内総生産(GDP)が第3、第4・四半期ともに縮小すると予想している理由の一つだ」と述べた。GDPは通常、2四半期連続でマイナスになるとリセッションと定義される。
7月の鉱工業生産指数は当初発表の0.8%低下から0.6%低下に修正された。
月単位の変動をならした3カ月間で見ると、6─8月は前の3カ月と比べ1.9%低下した。
8月は建設が前月比2.4%減、エネルギー生産が6.6%減、機械・設備製造が2.3%減。自動車生産は7.6%増加した。
ドイツ南部バイエルン州と西部ヘッセン州で8日行われた州議会選挙は、極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進し、連立政権を構成する中道左派政党は低迷した。支持率が低迷するショルツ首相に打撃となる。
バイエルン州とヘッセン州は合わせて、全人口の約4分の1を占める。
AfDは前回2018年の選挙から得票を伸ばし両州で2位となった。
これに対し、ショルツ氏の「社会民主党(SPD)」、環境保護政党の「緑の党」、自由民主党(FDP)の連立政権を構成する政党は、いずれも前回選挙を下回る結果となった。
FDPはバイエルン州で得票率が規定の5%を下回り議席は獲得できず、ヘッセン州でも5%に届かない情勢だ。
アナリストは、今回の結果は、足並みの揃わない連立政権内の緊張を一段と高めると予想する。
国内メディアによると、来年選挙を予定するチューリンゲン州のFDP代表は「必要なら連立を離脱する用意がある」と述べた。
ARD/ドイチュランド・トレンドの調査によると、ショルツ政権の支持率は2021年12月の発足以来最低水準で、国民の5人に4人が不満を持っている状況だ。
公共放送ARDの開票予測によると、ヘッセン州では、保守野党の「キリスト教民主同盟(CDU)」が34.6%の得票率で、第一党を維持する見込み。
バイエルン州では、CDUの姉妹政党で1957年以来、第一党の座にある「キリスト教社会同盟(CSU)」の得票率が36.4%と1950年以降で最低となった。アナリストは、今回の結果は、CSU党首のマルクス・ゼーダー氏が次期首相候補に名乗りを上げることの一定の障害になる可能性があるとみている。
2024年の米大統領選をめぐりロバート・ケネディ・ジュニア氏は9日、民主党の指名候補争いから撤退して無所属で出馬すると発表した。接戦の大統領選で第三極の候補に票が集まれば結果を左右する可能性がある。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはケネディ氏に関し「潜在的な妨害者」と評した。「誰から支持を奪う可能性があるのか判然としない」と分析。両党から票を取る可能性があり、波乱の芽になるシナリオに触れた。
同紙が最近実施した世論調査によると48%の共和党支持者がケネディ氏に好意的な見方を示し、民主党支持者(21%)を大きく上回ったという。
一つの支えは、原油高を受けた石油大手の株価急伸だ。エクソンモービルやシェブロンはそれぞれ3%高となった。国際指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の原油先物は9日、期近11月物が4%高になった。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはハマスによる攻撃の背後にイランの支援があったと伝え、米国が対イランの原油輸出制裁の強化に乗り出すとの観測が浮上している。仏ソシエテ・ジェネラルは「世界の原油交易量の20〜30%相当が通過するホルムズ海峡をイランは掌握しており、安全な通航が脅かされるだけで影響を受ける」とも分析する。
中東発の不確実性が米連邦準備理事会(FRB)の金融政策の行方にも影響するとの思惑も、株式投資家の心理好転につながったようだ。不安定な状況が長引けば金融市場の混乱、ひいては実体経済への影響も出てくる。米金利先物の値動きから金融政策を予測する「フェドウオッチ」では、年内利上げの確率が26%と、前週末時点の約42%から急速に低下した
石油輸出国機構(OPEC)は9日、世界の中長期の石油需要見通しを引き上げた。
「2023年世界石油見通し」によると、2045年までに見込まれる総需要は日量1億1600万バレルで、昨年見通しに比べて約600万バレル上方修正された。27年時点の総需要見通しも、昨年の1億0690万バレルから1億0900万バレルになった。
OPECのガイス事務局長は「新規の石油プロジェクト向け投資中止を呼びかけるのは間違いで、エネルギーと経済の分野に混乱をもたらしかねない」と警告し、石油セクターが45年までに必要とする投資額の見積もりも昨年の12兆1000億ドルから14兆ドルに引き上げた。
またガイス氏は、世界のエネルギー安全保障を犠牲にしてまで気候変動対応を進めるべきではないと訴え、「過去1年で明らかになったのは、温室効果ガス排出量の実質ゼロにする目標達成のコストや、実際にメリットがあるのかどうかを心配する人々の声だ」と指摘した。
イエレン米財務長官は、借り入れコストの高騰は米金融市場に機能不全の状態を引き起こしていないとの考えを示した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が同氏とのインタビューを引用して報じた。
金利の変動が大きい時に市場への影響が見られるのは「標準的」なことだと発言。ただし、「異例」なことは何も認識していないと付け加えた。
また、9月の米雇用統計は堅調だったとした上で、米労働市場が過熱している兆候は一切見られないとも指摘。
さらに、借り入れコスト上昇に直面する中でも、同氏は銀行が今年起きたような混乱に見舞われるとの懸念は否定した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国で中秋節と国慶節(建国記念日)に伴う大型連休期間の低調な住宅販売データを受け、政府の不動産支援策が年内に不動産セクターを回復させる上で十分かどうかを巡る疑念が生じている。
中指控股(チャイナ・インデックス・ホールディングス)が調査した主要35都市のデータによると、新築住宅市場で9月29日から8日間の連休中の1日当たり販売は前年比で17%減少。不動産調査会社の中国房産信息集団(CRIC)が8大都市を対象にまとめた別のデータによれば、中古物件の1日当たり販売は同じ期間に8%減った。
CRICの上海在勤アナリスト、ヤン・ケウェイ氏は「連休中の住宅市場は全般に低調だった。住宅市場がなお底堅く推移している数少ない一流都市を除き、他の大半の都市は活気がなかった」と語った。
連休中の販売不振は、経済成長を損ない、不動産開発会社の債務危機を悪化させている記録的な住宅市場の落ち込みへの対応に政府が苦戦していることを浮き彫りにしている。不振にあえぐデベロッパー各社は、大型連休中の販売回復に期待をかけていた。
中指の調査担当アソシエートディレクター、陳文静氏は「住宅市場の回復にはこれまでの下降サイクルよりも長い時間がかかる見通しだ。近い将来にさらなる緩和策が実施されれば、住宅市場は恐らく来年前半に底打ちするだろう」との見方を示した。
中国では中秋節と国慶節(建国記念日)の大型連休の消費と旅行の伸びが公式予想を下回り、政策当局者に一段と積極的な景気刺激策を求める圧力が高まりそうだ。
文化観光省の公式統計によると。9月29日から8日間の連休中の国内旅行者数は約8億2600万人で、7534億元(約15兆4000億円)の観光収入をもたらした。新型コロナウイルス対策で中国が世界で最も厳しい規制を導入していた2022年と比較すると、旅行者数は71%増、観光収入は約130%増だったが、9億人近くの国内旅行者が7825億元の観光収入を生み出すとしていた政府予想には届かなかった。
19年と比べると、旅行者数は4.1%増、観光収入は1.5%増にとどまった。
ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストらは8日の調査リポートで、「国慶節連休の観光データは、サービス業の回復が減速しながらも継続していることを示している」と指摘。「特に不動産不況が続いていることや信頼感がなお低迷していることを踏まえると、消費とサービスのさらなる回復には追加的な政策緩和が必要だとわれわれは考える」と分析した。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況
<株式> 続伸して取引を終えた。投資家がパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの衝突に関する報道に注目する中、エネルギー関連株が上昇した。
ユナイテッド航空(UAL.O)、デルタ航空(DAL.N)、アメリカン航空(AAL.O)はいずれも4%超下落。原油高に加え、テルアビブ便の運航を停止したことが重しとなった。
防衛関連株は買われ、宇宙航空・防衛指数(.SPLRCAERO)は5.6%高で終了。ノースロップ・グラマン(NOC.N)が11.4%、L3ハリス・テクノロジーズ(LHX.N)が約9.96%、それぞれ急伸した。
イスラエルにエクスポージャーがある上場投資信託(ETF)は売り込まれ、アイシェアーズMSCIイスラエルETFとアーク・イスラエル・イノバティブ・テクノロジーETFがともに7%超下落した。
<米原油先物> ハマスによるイスラエル攻撃を受けた地政学的リスクの高まりを背景に、大幅続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物は前週末清算値(終値に相当)比3.59ドル(4.34%)高の1バレル=86.38ドルだった。12月物は3.32ドル高の84.60ドル。
産油国が集まる中東情勢の緊迫化でエネルギー供給に影響が及ぶ可能性に懸念が広がり、原油が買い進まれた。原油は前週中に8%超下げていたが、ハマスのイスラエル攻撃で地合いが一転した
<外為市場> 安全通貨であるドルがユーロに対して上昇した。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃が、ガザ以外にも飛び火するとの懸念が高まった。ただ、ドル指数は下落した。
イスラエルのネタニヤフ首相は9日、ハマスの攻撃に対するイスラエルの対応は「中東を変える」と述べた。
イスラエルの通貨シェケルは約2.9%安の1ドル=3.9506シェケル。イスラエル中央銀行は9日、最大300億ドルの外貨を市場で売却すると発表。発表前、シェケルは3%以上急落し、1ドル=3.9880シェケルと約8年ぶりの安値を付けた。 もっと見る
ジェフリーズのグローバル外為部門責任者、ブラッド・ベクテル氏は「若干のリスク回避の動きだ。全体的なパニックや大規模な売りではなく、市場が事態の推移を見守る中、安全資産にやや向かっている」と指摘。「地政学的な出来事が市場に与える影響は通常、非常に短期的」とした。
バノックバーン・グローバル・フォレックスのチーフマーケットストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は、紛争がイスラエルとハマス以外に広がらない限り、「再び経済のファンダメンタルズに集中できる」と指摘。「地政学的なイベントが市場を動かすとはまだ確信が持てない」とした。
<欧州株式市場> 下落して取引を終えた。中東での軍事衝突が債券や金などの安全資産への逃避を促した。
原油先物が3%以上上昇し1バレル=85ドルを超えたことを受け、エネルギー(.SXEP)は2.9%上昇した。
英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)などの親会社IAG(ICAG.L)や仏蘭系航空大手エールフランスKLM(AIRF.PA)、独航空大手ルフトハンザ(LHAG.DE)などの航空株は4─8%安。燃料価格の上昇懸念やテルアビブ便の運航停止を受けた。 もっと見る
一方、スウェーデンのサーブ(SAABb.ST)、イタリアのレオナルド(LDOF.MI)、ドイツのラインメタル(RHMG.DE)など防衛産業大手が4─9%上昇した。中東地域での軍事衝突が長期化するとの見通しが背景。
ただ、ウェブルUKのニック・サンダース最高経営責任者(CEO)は航空株、クルーズ株、娯楽株への影響は短期的なものであり、来月ごろには安定化の兆しが見られると予想されるとした
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが低下した。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの衝突を受け、投資家が安全資産に逃避した。
日経先物31640、ダウ先33814、債先145.06、米4.651、独2.7570、仏3.345、西3.905、伊4.833、英4.5460、波5.994、原油86.14、銅8,121、ドル円148.61、ユーロドル1.0573
※10/10 9時35分頃

備忘録(2023/10/6-8)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
経営不振に陥っている英新興銀のメトロバンクホールディングスの株価は6日、前日比2割高と大幅に反発した。ローン債権の売却交渉や別の投資家からの資本注入が検討されているなどと伝わり警戒感が和らいだ。金利上昇の逆風下で、同社は苦境に直面するが、金融市場全般への波及はいまのところ見られない。
●その他産業
ソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長が傘下の英半導体設計アーム上場後、初めて公の場に姿を見せた。ちょうど1年前、事業家としての人生を振り返り「この程度で終わっていいのか」と大泣きした孫氏が、取引先などを集めた今年の「ソフトバンクワールド」で何を語ったのか。発言から今の孫氏が描くビジョンを読み解いた。
石油メジャーの米エクソンモービルがシェール大手の米パイオニア・ナチュラル・リソーシズの買収交渉を進めていることが分かった。買収額は600億ドル規模(約9兆円)になるもようだ。化石燃料の先行きの需要は底堅いとみて米国のシェール事業を強化する。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが5日、報じた。合意すれば、世界的にも2023年最大の買収案件となりそうだ。エクソンにとっては1999年にモービルと合併して以来の取引規模になるという。
パイオニアはテキサス州西部にまたがる「パーミアン盆地」などで日量60万バレル(原油換算)以上の石油・天然ガスを生産しており、シェール業界の名物経営者、スコット・シェフィールド氏が1997年に創業した。同氏はシェール開発の草分け的な存在で、23年末に経営から退く意向を示していた。
エクソンは世界最大の民間石油会社で、全世界で日量約370万バレル(同)の石油・天然ガスを生産する。化石燃料は当分の間は需要が見込めるとして、必要な投資を続ける方針。買収で米国のシェール生産の地位を固める。
エクソンは22年、過去最高となる約560億ドルの純利益を計上した。ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルス禍から世界経済が復活したことで原油が高騰し、利益を押し上げた。
厳しい規制下にあるはずの航空機ジェットエンジン業界で偽造が疑われる証明書が付いた部品が出回っていることが分かり、問題を起こしかねない部品の捜索が行われている。この業界では珍しい事件であり、これまでのところこうした部品が使われたエンジンはごく一部にすぎない。しかし不審な部品は世界各地で見つかっており、業界任せの規制体制を見直すべきだとの声が高まっている。
ジェットエンジンメーカーのCFMインターナショナルは、偽造の疑いがある証明書が添付された数千個ものエンジン部品について世界規模の探索に乗り出している。証明書はいずれも同じ部品納入業者のものだ。
例えば2019年に英国の供給業者からフロリダの企業に出荷されたジェットエンジン用の低圧タービンブレードという重要部品には正規品であることを示す署名が付いていたが、署名の名前の従業員は存在していない模様だ。CFMインターナショナルはエアバス(AIR.PA)やボーイング(BA.N)にエンジンを供給している。
これまでに偽造部品は見つかっていない。しかしCFMは虚偽の証明書が古い部品を新しい部品に見せかけたり、安全性の確保に不可欠なトレーサビリティ(全供給網における追跡システム)を欠く部品を販売したりするのに使われるのを懸念している。世界で最も厳しい監視の目が向けられている業界の一つである航空エンジン業界も動揺しており、規制の強化を求める声が再燃している。
英航空コンサルタント、IBAのフィル・シーモア社長によると、「これは業界にとって目新しい問題ではない。航空機部品で儲けようとする人は常にいる」という。ただ「今回大きな問題となっているのはこうした部品が実際にエンジンに使われたことで、これは初めてのことだ」
CFMの訴訟関連文書によると、最初に不審な部品が見つかったのは6月21日。TAPポルトガル航空の整備部門が、英国の供給業者AOGテクニクスから入手したダンパーと呼ばれる小さな部品の添付書類について不安があると伝えてきた。CFMによると、「その部品は証明書の記載よりも古いように見えた」という。
CFMが新たに公表した訴訟関連書類によると、虚偽の署名があったのは、全ての航空宇宙部品に添付が義務付けられている製造証明書。TAPポルトガル航空は20日間で同じ販売業者からの「重大な不一致」のある書類を24件発見したという。
9月上旬までに中国の規制当局を含む世界中の30余りの機関が同様の不一致を発見した。
AOGテクニクスのコメントは得られなかった。同社は先月、英国の裁判所に対して、CFMの主張についてコメントすることなく、調査に「全面的に協力している」と述べた。
<自主規制に批判も>
CFMによると、これまでに影響を受けたエンジンは126個で、これは全世界の航空機のごく一部にすぎない。問題の部品は交換が進んでいる。
しかし裁判所命令によってAOGから供給を受けた書類の精査が進むうちに、問題部品の数は増える可能性がある。CFMも4日、自社工場用に問題の部品を一部購入していたことを明らかにした。
現在、ジェットエンジンの部品の需要は急増し、供給不足から価格は上昇している。そうした中、今回の事案は、経済的に重要であるにもかかわらず比較的規制の緩い部分がこの業界にあることを浮き彫りにした。
航空機部品の開発業者には厳しい規制があり、製造には別途認可が必要だが、流通のための倉庫の設置に正式な許可は必要ない。「ほとんどの卸売り業者は自己認証であり、規制の必要性が検討されるべき分野だ」とシーモア氏は指摘した。業者は偽の部品を提供すれば自分の首を絞めるだけだと分かっており、固有の品質システムを備え、多くの自主規制を実施しているが、公的な規制認可は存在しないという。
米国では連邦航空局が、航空産業サプライヤー協会(ASA)など第三者機関が販売業者を認定するための基準を設けている。
ただ米運輸省の監察監室(OIG)は過去に供給業者の自主的な認証システムへの監視強化を求めた。2017年の報告書は、書類に不備のある部品数万個が倒産した供給業者から個人の手に渡り、その後通販サイトのイーベイに出品された事例を挙げている。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのクノット・オランダ中銀総裁は6日、イタリアは借入コストの上昇という形で財政赤字目標を引き上げた代償を払っていると述べ、各国政府に対し「市場の規律」に直面しないよう、財政を引き締めるよう呼びかけた。
イタリア政府は先月末、2023年と24年の経済成長率見通しを下方修正すると同時に、財政赤字も当初予測から引き上げ、26年まで公的債務がほとんど減らないとの見通しを示した。これを受け、ドイツ国債に対するイタリア国債のリスクプレミアムが拡大している。 もっと見る
独伊国債利回り格差の拡大について直接言及したECB当局者は、クノット総裁が初めて。総裁の発言から、ECBは同国債利回り格差の縮小に向け債券市場に介入する必要はないと見なしている可能性が示唆された。
クノット氏は会合で「イタリア国債のスプレッドはここ数週間、財政赤字見通しの上方修正を受けやや拡大している。このことは、市場にはまだ規律があることを示している」と述べた。
同時に、緩慢な財政政策は他の国でも見られているとし、景気後退(リセッション)に向かっている可能性がある今こそ、財政バッファーを築かなければならないにもかかわらず、多くの国で財政赤字の対国内総生産(GDP)比率が3%に近いか、超えていると指摘した。
ブイチッチ・クロアチア中銀総裁も同会議で財政規律の順守を呼びかけたほか、タカ派として知られるシュナーベルECB専務理事は6日付のインタビュー記事で、このところの国債利回りの急上昇は各国が一段と財政を引き締める必要があることを示唆していると述べている。
米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を大幅に上回ったため、米連邦公開市場委員会(FOMC)は年内の再利上げに傾く可能性が高い。
9月の雇用者数は前月比33万6000人増加し、7-8月も大幅に上方修正された。9月の失業率は前月と同じ3.8%で、賃金は緩やかなペースでの伸びにとどまった。
ウィルミントン・トラストのチーフエコノミスト、ルーク・ティリー氏は「今回の統計を受け、FOMCは景気再加速への懸念を強め、上振れリスクを非常に警戒し憂慮するだろう」と語った。
パウエル議長率いるFOMCは、過去19カ月間に5ポイント余り引き上げてきた政策金利を再び引き上げる必要があるかどうかを判断しようとしている。FOMCは9月の会合で金利を据え置いたが、会合後に発表された予測によると、政策決定者19人のうち12人が年内の再利上げを支持する意向を示している。
市場が見込む年内の利上げ確率は、雇用統計発表直後に48%から56%に上昇した。
米金融当局者は労働市場の過熱が続き、インフレ率が目標値の2%を大幅に上回る物価上昇圧力につながっていると考えている。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は9月20日、「インフレ率の低下には、トレンドを下回る成長と労働市場が軟化する期間が必要だろう」と述べた。
同時に、パウエル議長ら金融政策当局者は、利上げサイクルが終わりに近づくにつれて追加利上げには慎重になると繰り返し述べており、11月1日に終了する次回FOMC会合での利上げに慎重な姿勢を示している。
KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は長期債利回りの最近の急上昇が中央銀行の仕事の一部をすでに行っている可能性があると指摘。「債券市場はFRBのために力仕事をこなしている。とはいえ、成長の加速は金利上昇を正当化する。タカ派は11月の会合でインフレ状況の進展が後退することに引き続き懸念を示すだろう」と語った。
長期金利は9月の会合以来、上昇傾向にある。政策金利は以前考えられていたよりも長く高止まりする可能性が高いという当局のメッセージに市場が順応しているためだ。30年債利回りは今週5%を超え、2007年以来の高水準に達した。
金融当局は今回の雇用統計の他の部分には安心感を抱くことができる。平均時給は前月比0.2%上昇。前年同月比では4.2%上昇と、2021年半ば以来の低い伸びとなった。
チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「労働市場が堅調であることは確かだが、賃金の上昇ペースは鈍化している。今回の統計はFOMCに再利上げの可能性を残した。抑制されたインフレ圧力と力強い成長の間でバランスを取るのは難しい」と指摘した。
雇用統計は経済の勢いが依然として強いことを示唆しているが、FOMCは10月12日に発表が予定されている消費者物価指数(CPI)を含むインフレ指標も注視することになる。
米債券投資家は米国債市場のうち、今年の著しい相場下落から一定の防御が期待されるとともに一部の人々が引き続き予想するようなリセッション(景気後退)の備えにもなる年限を選好している。
米国債相場が3年連続の下落の方向にある状況で、ブラックロックやコロンビア・スレッドニードル・インベストメンツをはじめとする資産運用会社は1-5年程度で満期を迎える米国債を選好している。
一方で、期間が長めの債券は米経済が底堅さを維持していることや、連邦連府の借り入れニューズの拡大などが特に打撃となり、下落を主導している。
6日に発表された9月の非農業部門雇用者数の伸びが予想を大きく上回り、米金融当局が年内に追加利上げを行うとの観測が台頭したことで、米国債相場は5週連続の下落となった。
10年債と30年債の利回りは2007年以来の高水準を一時更新し、過去1カ月間の険しい下げの主なダイナミクスであるイールドカーブ(利回り曲線)の再スティープ化が進行した。過去の事例では、利回り曲線のこの種のシフトはリセッションに先行する傾向がある。
最新の雇用統計は現時点では米経済の力強さを浮き彫りにするものであるかもしれないが、金融当局が金利をより高くより長く据え置くことにつながり、先行きリスクを高めると市場ウオッチャーの一部はみている。
学生ローンの返済再開や全米自動車労組(UAW)によるストライキなどの衝撃に見舞われている米経済にとって、長期債の利回り急上昇はさらなる逆風となる。
コロンビア・スレッドニードルは期間3-5年の米国債を選好している。同社のグローバル金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は「将来にかけて非常に高水準の実質および名目金利を織り込む様子が見られる」と話した。 
ブルームバーグの指数のデータによれば、米国債のリターンは21年と22年にそれぞれマイナス2.3%、マイナス12.5%となった後、今年は今月5日の時点でマイナス2.2%となっており、こうした中で長期債は歴史的な急落となっている。
バイデン米大統領は6日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が11月にサンフランシスコで開催される機会を捉え、中国の習近平国家主席と会談する可能性があると語った。
バイデン大統領はホワイトハウスで記者団に対し、「そのような会談は設定されていないが、可能性はある」と発言した。
事情に詳しい複数の関係者がブルームバーグ・ニュースに明らかにしたところでは、米中当局はAPEC首脳会議に合わせ、バイデン大統領と習主席との首脳会談を手配する合意に近づいているが、中国側は計画をまだ承認していないという。
米下院議長の解任劇と共和党の内紛で、政府機関が11月半ばに閉鎖されるリスクが現実味を帯びつつある。
ゲーツ下院議員をはじめとする共和党の保守強硬派は、マッカーシー前議長が政府機関の閉鎖を回避するため、11月17日までのつなぎ予算を成立させたことを議長解任の最大の理由に挙げた。
マッカーシー氏の後任となる新議長にとって、これは再びつなぎ予算を支持することへの大きな抑止力として働く。さらに共和党指導部に空白が生じたことで歳出法案を巡る交渉が遅れるのは必至で、政府閉鎖の脅威が増大する。
わずか8人の保守強硬派が主導した「マッカーシー降ろし」は、前議長を支持していた多くの下院共和党議員の激しい怒りを招いている。共和党内では超保守的な政策課題をどこまで追求するかを巡り大きな意見の隔たりがあり、今回の解任劇でさらに溝が深まりそうだ。
マッカーシー氏に近いグレイブス下院議員(共和)は、党内がすぐにまとまることはないとの見方を示す。「11月に政府が閉鎖される事態となれば、それは100%ゲーツ氏と他の7人の愚か者のせいだ」とし、「われわれは身動きがとれず、何もできない」と述べた。
ウクライナへの追加支援も予算協議を一段と難しくしている。上院では超党派で支持する動きがある一方、下院共和党内では反対論が勢いを増しているためだ。下院議長選に名乗りを上げた保守強硬派のジョーダン議員はウクライナへの追加支援への反対を明言した。
保守強硬派は、政府機関の閉鎖を回避するための大型つなぎ予算の利用をやめ、各省庁の予算を手当てする伝統的な12本の年間歳出法案の成立を求めている。
だが、下院は意見の相違が小さい法案4本しか可決しておらず、上院はいずれも可決していない。上院は5日から16日まで休会を予定している。
さらに上院と下院は12本の歳出法案それぞれについて、相当な意見の相違を解決する必要がある。とりわけ、連邦政府全体の歳出額については1200億ドル(約17兆8500億円)の開きがある。
下院では目下、残り8本の歳出法案の採決が不可能な状況にある。マクヘンリー暫定議長の立場については、前例がなく権限も不透明だ。しかし、下院スタッフらは一般的な解釈として、暫定議長の職務は立法業務ではなく、議長選の実施・運営に限られるとの見解を示している。
マッカーシー前議長の解任後、下院は週内いっぱい休会となった。来週は新議長の選出を巡って激しい攻防が予想され、そのプロセスは前回以上に長引く恐れがある。マッカーシー氏は1月に15回の投票を経てようやく議長に選出された。
●中国・アジア・ロシア・東欧
台湾侵攻を狙う中国が、台湾と世界の通信を遮断するためインターネット用海底ケーブルの切断に動くとすれば、通信回線維持の上で重要になるのは、低軌道人工衛星だろう。
今年6月には台湾デジタル担当相のオードリー・タン氏が欧州を訪れ、人工衛星通信サービスを手がける英ワンウェブと会談した。ワンウェブは、既に幾つもの政府や民間顧客に衛星通信サービスを提供している実業家イーロン・マスク氏率いるスターリンクのライバルとして、急成長している企業だ。
タン氏は、ルクセンブルクに拠点を置く衛星通信サービスのSESにも足を運び、その後、SESは「破滅的シナリオ」の下で速やかに第5世代(5G)移動通信システムを復旧させることができる取り組みを、台湾やマイクロソフトと協力して進めていると明らかにした。
昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻に際しては、スターリンクの衛星群が、ウクライナの一部地域でロシアの妨害にもかかわらずインターネット接続を維持するための重要な役割を担ったとされる。
ただ、マスク氏はその後、スターリンクのサービス提供範囲をロシアが実効支配するクリミアに広げてウクライナ軍が攻撃に利用できるようにすることを拒否している。
これらの事態を踏まえ、特に自国が紛争に巻き込まれるのではないかと心配している政府の間では、人工衛星を通じた代替的な通信手段を確保したいという姿勢が急速に強まっている、と複数の専門家は指摘する。
一方、衛星通信サービスや宇宙関連ビジネスに携わる企業にとって、2020年代になってからの地政学的な緊張の高まりは、従来の想定とは全く違う世界をもたらした。
以前に見込まれていたのは、グローバル化がおおむね順調に進展し、中国と台湾で製造された部品に大きく依存するとともに、ロシアのロケットで衛星を打ち上げてもらえるという状況だったからだ。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻でこのような展開は現実味を失った。ワンウェブの場合、昨年2月にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地から近く打ち上げる予定だった衛星が36基あった。
ここでロシア側は、西側の対ロシア制裁を受けて、打ち上げ条件としてワンウェブに対する英政府の出資引き揚げを要求。英国が拒否し、同社経営陣は2020年終盤に破産申請して以来の「ブラックスワン(ほとんど予測できないがいったん起きれば重大な影響をもたらす事象)」だ、と受け止めた。
元英空軍高級将校でワンウェブの防衛セキュリティー担当バイスプレジデント、クリス・ムーア氏は、一連の流れについてジェットコースターにたとえても、まだ、足りないぐらいだと明かす。
それでもワンウェブや同業者からすると、より分断化された世界は、特にマスク氏の予測不能な言動を見てスターリンクに依存することにさらに腰が引けている国に対して、安心できる衛星通信サービスを提供するチャンスがやってきたと言える。
<打ち上げ枠の奪い合い>
台湾は自前で多数の低軌道衛星を一体運用する「衛星コンステレーション」を整備するための協議を続けているが、専門家によると、現時点では、その能力は限られる。
また、スターリンクについては、マスク氏が経営する電気自動車(EV)メーカーのテスラが生産と販売の両面で中国依存度を高めていることから、同氏がウクライナ支援で消極的姿勢に傾く前から、台湾はあまり頼らない方向にかじを切っている。
だが、先週にフランスの同業ユーテルサット(ETL.PA)との統合を完了したワンウェブなど、新興の衛星通信サービス企業の衛星も、通信能力がすぐに買われてしまうのが実態だ。
買い手は信頼できる通信手段がほしい政府から、通常の通信網でカバーされないエリアでのネット通信環境を確保したい航空会社やクルーズ船運航会社まで、多岐にわたる。
それでも台湾のメディアによると、当局はワンウェブと直接話し合っていて、年末までには全土が衛星通信網でカバーされる見通しだという。
ワンウェブは、ウクライナ向けにサービスを提供しているかどうかはコメントしていない。ロシアの宇宙基地が使えなくなった問題に関しては、インド宇宙研究機関(ISRO)やマスク氏の宇宙開発企業スペースXと打ち上げ委託契約を結んだ。
ムーア氏は、これまでロシアの「ソユーズ」ロケットに全面的に頼ってきたが、打ち上げ委託先を一層分散化する作業を続けていると述べた。
もっとも、世界的に衛星打ち上げサービスの供給余力は限界に近づきつつある。その一因は、アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)が推進する衛星コンステレーション整備計画「プロジェクト・カイパー」で、同社は2029年までに世界のほぼ全域をカバーする衛星群を保有するための打ち上げ契約を結んだと伝えられている。
●中東
ノルウェーのノーベル賞委員会は6日、今年のノーベル平和賞をイランの女性人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏に授与すると発表した。イランは政治的動機に基づいているとして非難している。
モハンマディ氏は女性の権利と死刑廃止を求め続ける活動家で、権利擁護団体「フロント・ライン・ディフェンダーズ」によると、国家に反するプロパガンダ拡散などの罪で現在はテヘランの刑務所に収監されている。
委員会は授賞理由を「イランでの女性への抑圧と闘い、全ての人々の人権と自由を推進するために闘った」と説明。イラン当局に同氏の釈放を求め、「イラン当局が正しい判断を下せば彼女は釈放され、(12月の授賞式で)この栄誉を受けることができる」と訴えた。
イラン外務省はモハンマディ氏に対するノーベル平和賞授与について、ノーベル賞を政治的に利用することを目的とした偏った動きだと非難。外務省報道官は国営メディアが報じた声明で「ノーベル賞委員会は度重なる法律違反と犯罪行為で有罪判決を受けた人物に賞を授与した。われわれはこれを偏見と政治的動機に基づくものとして非難する」とした。
これに先立ちイランの準国営ファルス通信は、モハンマディ氏は「国家安全保障に反する行為」によって注目を集め、「西側諸国から賞を受け取った」と伝えていた。
モハンマディ氏は2003年のノーベル平和賞を受賞したシリン・エバディ氏が代表を務める人権団体「人権擁護センター」で副代表を務める。女性のノーベル平和賞は19人目となる。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、モハンマディ氏は声明で「女性の解放が実現するまで、圧政的で宗教的な政府による容赦ない差別、専制、性差に基づく抑圧と闘い続ける」とし、刑務所にとどまることを意味するとしても、民主主義と平等のために努力することを決してやめないと表明した。
モハンマディ氏の夫のタギ・ラフマニ氏はパリの自宅でロイターに対し「今回のノーベル賞は人権を求めるナルゲスの闘いに勇気を与えるだろうが、もっと重要なのはこれが『女性、命、自由(を巡る運動)』に対する賞だということだ」と語った。
●中南米・アフリカ
●市況
<ロンドン株式市場> 続伸して取引を終えた。エネルギー株や金融株の上昇が支援した。
保険会社アビバ(AV.L)は5.3%と大幅上昇。関係者がロイターに対し、アビバは同業RSAの英国消費者向け事業の買収を検討している数少ない保険会社の一つだと明らかにしたことが材料視された。
英住宅金融ハリファクスが6日発表した9月の英住宅価格の前年同月比下落率は2009年8月以来、14年1カ月ぶりの大きさとなった。金利の急上昇に伴う住宅市場の減速が反映された。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。米株式市場の上昇を好感して買いが優勢となった。一方、STOXX欧州600種指数(.STOXX)は週間ベースで1.17%下落し、3週続落となった。
<ユーロ圏債券> 好調な米雇用統計を受け国債利回りが上昇した。また、独伊国債利回り格差が3月以来の水準に拡大した。
独10年債利回りは米雇用統計の発表を受け2.95%に上昇。終盤の取引では1.5ベーシスポイント(bp)上昇の2.90%となっている。前日の取引では3.024%と、12年ぶりの高水準を付けていた。
アリアンツ・グローバル・インベスターズのシニア債券スペシャリスト、マッシミリアーノ・マクシア氏は、米雇用統計を受け、金利は長期間にわたり高水準で推移するとの見方が改めて確認されたとしている。
金融市場では、欧州中央銀行(ECB)があと1回の0.25%ポイントの利上げを実施する確率は約10%との見方が織り込まれている。
イタリア10年債利回りは6bp上昇の4.96%。一時は5%台に乗せた。
独伊10年債利回り格差は202bp。一時は204.6bpと、3月以来の水準に拡大した。イタリア10年債利回りは9月初めから約80bp上昇。独10年債の42bpを大きく上回っている。
<為替> ドル指数は一時上昇した後に失速した。朝方発表された9月の雇用統計で雇用者数は堅調に伸びたものの、賃金の伸びの鈍化が示されたことが背景。
米労働省発表の9月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比33万6000人増加。市場予想の17万人増を大幅に上回り、過去8カ月で最大の伸びとなった。一方、平均時給は前年比4.2%増と、8月の4.3%増から鈍化し、2021年6月以降で最小の伸びとなった
雇用統計を受け、主要6通貨に対するドル指数は一時106.98に上昇。ただその後は失速し、終盤の取引では0.31%安の106.03。
コーペイ(トロント)のチーフ・マーケット・ストラテジスト、カール・シャモッタ氏は「今回の雇用統計を受け、連邦準備理事会(FRB)が利下げに転じる時期の予想が2024年の遅めの時期にさらに後ずれした。ただ、年内に再利上げがあると市場を確信させるには至らなかった」としている。
ドル指数は週初からは0.1%下落。これまでは11週連続で上昇し、合計の上昇率は約6%に達していた。ドル指数の軟化についてマネックスUSAの外為トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「幾分かの利食い売りが出た」との見方を示した。
FRBの政策の行方の見極めるため、市場は来週の米国のインフレ指標に注目。コーペイのシャモッタ氏は「来週発表される消費者物価指数(CPI)で米国債利回りが一段と上昇すれば、金利差に基づくドルへの資金流入に安全資産の買いが加わり、ドルの支援要因になる」としている。
<債券> 指標となる10年債利回りが16年ぶり高水準を付けた。この日発表された9月の雇用統計で雇用者数がエコノミスト予想を大幅に上回ったことを受けた。
スパルタン・キャピタル・セキュリティーズ(ニューヨーク)のチーフマーケットエコノミスト、ピーター・カーディロ氏は「雇用者数増は予想をはるかに上回ったが、平均時給の伸びは鈍化している。これは米連邦準備理事会(FRB)が据え置きを続けるかどうかに疑問を投げかける」と述べた。
CMEグループのフェドウオッチによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、11月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの可能性を29%、12月までの利上げの可能性を42%織り込んでいる。
<株式> 急反発。注目されていた9月米雇用統計の発表直後は下落したものの、午前終盤に切り返す展開となった。ハイテク株が上昇を主導し、S&P総合500種とナスダックス総合は1日としては8月下旬以来最大の上昇率を記録した。
ダコタ・ウェルスのシニアポートフォリオマネージャー、ロバート・パブリク氏は「景気は鈍化しているものの、低迷しているわけではない。米連邦準備理事会(FRB)は様子見姿勢を取っている」と述べた。
<金先物> 米賃金インフレの落ち着きを示唆する雇用統計の発表を好感した買いが入り、10営業日ぶりに反発した。中心限月12月物の清算値(終値に相当)は、前日比13.40ドル(0.73%)高の1オンス=1845.20ドル。週間では1.12%下落した。
日経先物31330、ダウ先33600、債先144.70、米4.795、独2.9045、仏3.490、西4.030、伊4.910、英4.6225、波5.988、原油82.81、銅8,044、ドル円149.30、ユーロドル1.0588
※10/6 NY引け値

備忘録(2023/10/5)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
欧州連合(EU)は5日、冷蔵庫やエアコンの冷媒に使用される強力な温室効果ガスである「ハイドロフルオロカーボン(HFC)」の利用を2050年までに段階的に全廃することで合意した。
EU加盟国と欧州議会の交渉担当者が法律の内容について合意した。今後、欧州議会と加盟国の正式な承認が必要となるが、通常は事前に合意した内容を形式的に承認する形になる。
HFCなどのフッ素化ガス(Fガス)の利用削減方法については、EUで今年協議が始まった。
今回の合意では、Fガスを使用した製品の販売を段階的に禁止する。スケジュールは製品ごとに異なり、例えばスプリット形エアコンとヒートポンプは35年からFガスの利用全面禁止を適用する。
欧州議会の交渉代表を務めたオランダのバス・アイクハウト議員は「Fガスは比較的知られていないが、気候に甚大な影響を及ぼしている。今日の合意により、こうした強力な温室効果ガスを速やかに削減できる」と述べた。
独ポツダム気候影響研究所などがまとめたリポートによると、欧州は太陽光や風力などの再生可能エネルギーに約2兆ユーロ(2兆1000億ドル)を新たに投じれば、2040年までに化石燃料を脱却して自立したエネルギー部門を構築できる可能性があるという。
それによると、30年までに1400億ユーロ、40年までにさらに1000億ユーロの年間投資が必要。
投資の大半は陸上風力発電の拡大が対象となるが、太陽光、水素、地熱エネルギーも30年までに再生可能エネルギーによる自立を目指す上で追加の柱になるという。
また、現在石油やガスを熱源としている暖房システムを含むシステム全体を再生可能エネルギーに切り替えるにはさらに10年かかるという。
リポートは「この額は大きいが、ロシアのウクライナ侵攻による影響から消費者を保護するため欧州諸国が過去1年間で現状のシステムに費やした追加費用は7920億ユーロに上る」と指摘した。
●その他産業
約2週間前に政府機関の仲裁でストが終結した米シェブロンの豪州の液化天然ガス(LNG)施設2カ所で、労使交渉が再び暗礁に乗り上げている。
労使は仲裁機関の勧告を受け入れ、法的拘束力のある労働協約にまとめる作業を進めていたが、労組は5日、経営側が仲裁機関に対する約束を「ほごにした」と主張。5日夜と6日午後に会合を開き、この問題を協議する意向を示した。
労組の代表はスト再開の意向を経営側に通知することを組合員に提案すると発言。提案は受け入れられるだろうと述べた。ストを実施する場合は7日前の通告が必要になる。
労組の代表によると、労働協約の草案作成で進展はあったものの、研修時の食事代や出張費の問題を巡って意見の相違が残っている。
シェブロンの広報担当は、経営側は仲裁機関の勧告を受け入れており「勧告に基づいた草案の作成作業を終えるため、全ての関係者と引き続き協力する」と述べた。
労使の合意が成立しない場合、仲裁機関が再び対応に乗り出す可能性がある。
2施設は「ゴーゴン」と「ウィートストーン」で合わせて世界のLNG供給量の約7%を占める。
●決算関連
市場では人工知能(AI)ブームを追い風により大幅な増収が期待されていたため失望感から株価は4%安となった。
今回発表された売上高見通しは生成AIブームが業績に寄与するまで時間がかかる可能性があることを示唆している。
エバーコアISIのアナリストは「最近のAIの追い風を考慮すると、売上高のCAGR見通しの据え置きは保守的のようだ。追い風は将来も続く」と述べた。
過去最高益だった前年同期には及ばないものの、第2・四半期を上回る。
2020年以降の相次ぐショックで失われた世界の生産高は3兆7000億ドル(約549兆円)に上ると説明した。世界経済のブロック化は、アフリカを含め新興国や発展途上国を中心に成長の機会を損なう恐れがあるとも述べた。
さらに、大半の富裕国の景気減速と、予想を下回る中国の経済活動に伴うリスクに警鐘を鳴らした。IMFは4月に、現在の世界経済の成長率はパンデミック前の20年間平均である3.8%を下回ったままで、中期見通しも弱まったと警告したが、ゲオルギエワ氏はこの日、こうした見方をあらためて確認した。
●先進国、グローバル、金融市場
米労働省が5日発表した9月30日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は2000件増の20万7000件となった。ロイターがまとめたエコノミスト予想は21万件だった。
9月23日までの1週間の継続受給件数は1000件減の166万4000件となった。
一方、国際的な再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、米国に拠点を置く企業が9月に発表した雇用削減は前月比37%減の4万7457人となった。
ただ、前年同月比では58%増加。前年比の増加率は新型コロナウイルス禍の2020年以降で最大となった。雇用削減の理由としては市場の不確実性が最も多く、次いで事業や部門、店舗の閉鎖が挙げられた。
第3・四半期の雇用削減は14万6305人で第2・四半期から22%減少した。
チャレンジャー社のシニアバイスプレジデント、アンドリュー・チャレンジャー氏は声明で「第4・四半期に入り、雇用主はインフレ、金利上昇、労働問題、消費者需要と格闘している」と述べた。
9月の雇用計画は59万0353人と、前年同月の38万0014人を上回った。チャレンジャーによると、これらの大半は季節雇用という。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「失業保険申請件数の小幅な増加は、レイオフが全般的に過去最低水準近辺にとどまっていることを示唆する。しかし、全米自動車労組(UAW)のストが長引けば、こうした状況は変わる可能性がある。ストが拡大した場合、失業保険給付の申請資格を有し、ストに加わっていない労働者を一時的に解雇せざるを得なくなる恐れがあるためだ」と指摘した。
国内需要は消費財と資本設備の両方で軟化。急速に上昇した借り入れコストにより、外国製品の購入は一段と抑制される恐れがある。
半導体を含む資本財の輸入が減少し、携帯電話など消費財の輸入も減少した。輸出には、資本財と消費財の出荷増加が寄与した。一方、自動車輸出は減少した。
ドルが1年ぶりの高値水準に近いため、米国の商品とサービスは海外の顧客にとって割高となり、輸出の回復は長続きしないかもしれない。8月の輸出は、石油出荷額の増加によって押し上げられた。
旅行収支は、輸出に相当する受け取り(米国への渡航者による支出額)が2019年12月以来の高水準となった。輸入に相当する支払い(米国民による国外での支出額)は小幅に増加した。
財の対中赤字は約13億ドル縮小の227億ドルと、5カ月ぶりの低水準だった。米国の財輸入に占める中国の割合は8月までの12カ月で平均14.2%と、2005年以来の低水準となった。
米金融当局は長期金利が2007年以来の高水準に上昇している現状を暗に容認していると見受けられる。だが、そうすることによって、当局が達成しようとしている米経済のソフトランディング(軟着陸)を危険にさらしている可能性もある。
フェデレーテッド・ハーミーズのシニアポートフォリオマネジャー、RJ・ギャロ氏は「最終的には、フィードバック効果によって、ハードランディングに見舞われるとの懸念が浮上し始める」との見方を示した。
特に強いインパクトを及ぼす可能性があるのはインフレ調整後の実質金利だ。10年物インフレ連動国債(TIPS)利回りはこの数週間で、過去20年間にほとんど目にすることがなかった水準に上昇している。
長期金利上昇には、金融当局の予想よりも多くのダメージをもたらすという危険が伴う。3月のシリコンバレー銀行(SVB)破綻は債券利回り上昇を受けたもので、パウエルFRB議長が従来想定より金利を高い水準に引き上げる可能性に言及したこともその契機となった。
米経済は既に金利上昇以外にも、学生ローンの返済再開や全米自動車労組(UAW)によるストライキなど、幾つかの逆風に見舞われている。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏は米経済が恐らくリセッション(景気後退)入りの瀬戸際にあるとみている。
市場参加者は利回り急上昇の引き金として、急拡大する米財政赤字を巡る投資家の懸念や、中国など外国勢の間での米国債需要の減退傾向、日本銀行が今後数四半期のうちに超緩和的な金融政策を解除するとの観測などを列挙している。
エコノミストや投資家の一部は、実質金利についての姿勢を巡る金融当局の混乱したメッセージも一因に挙げる。投資家を困惑させているのは、当局者が実質金利を正確にどう定義するかだ。過去のインフレに基づく数値に言及している場合と、予想インフレ率をベースにした数値を取り上げている場合がある。
そして、双方の違いは金融政策の将来的な道筋を決める上で極めて重要となる可能性がある。
ウィリアムズ総裁は8月、米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、インフレが減速すれば来年には利下げが正当化される可能性があるとの考えを示唆。インフレ鈍化に伴って実質金利が上昇し、政策が一段と景気抑制的となるのを防ぐのが目的だと説明した。
一方、クリーブランド連銀のメスター総裁は3日、「実質金利は必ずしも現在のインフレ率ではなく、予想インフレ率をベースにすべきだ」と記者団に語った。この場合、実際のインフレ率が減速した場合であっても、予想インフレ率の鈍化も伴わなければ、自動的にフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジ引き下げにはつながらないことを意味する。
元FRBエコノミストで、マクロポリシー・パースペクティブズ創業者のジュリア・コロナド社長は「金融当局は相反するシグナルを発している」とコメント。その上で、債券利回りが既に上昇している環境では、「基本的には市場にさらなる押し上げのお墨付きを与えるだけだ」との考えを示した。
その理由についてウェアネス氏は、市場の需給環境が価格上昇を後押ししていると指摘。「原油の在庫や世界全体の生産余力という点で比較的タイトな市場になっている」と説明した。
主要産油国でつくる「石油輸出国機構(OPEC)プラス」は4日に開いた監視委員会で、減産措置を講じている現状の生産方針を維持すると発表。ただ原油価格は5%余りも急落し、需要冷え込みへの警戒感の強さもうかがえる。
ウェアネス氏は「100ドル到達の可能性は否定しない。しかしそれはOPECがこの水準を望んでいるからではない」と述べ、OPECは需要を壊さないように100ドル未満に価格を誘導することを目指す公算が大きいと付け加えた。
米国、ガソリンの季節的な消費が25年ぶり低水準-データ
原油相場が急反落を続けている。世界的な成長減速が消費を冷え込ませるとの懸念が背景にある。
世界貿易機関(WTO)は、2023年の世界のモノ(財)の貿易量が前年比0.8%増になるとの見通しを示した。4月時点の予想は同1.7%増だった。米欧でのインフレやウクライナでの戦争長期化、中国の景気回復の遅れなどを下方修正の理由に挙げている。
WTOは5日の発表文で「貿易の鈍化は多くの国や幅広い品目など広範に及んでいると見受けられる。特に鉄鋼や事務機器、通信機器、繊維、衣料品といった製造業のカテゴリーで顕著だ」と指摘。「インフレや高金利、米ドル上昇、地政学的緊張が寄与している」とした。
WTOによると、世界の貿易量は昨年に3%増加した後、今年上期は0.5%減となった。年末にかけての数カ月間では「緩やかな回復」しか見込めないという。
2024年の貿易量については、4月時点の予想とほぼ変わらず3.3%増を見込んでいる。
米連邦準備制度理事会(FRB)の副議長を務めたリチャード・クラリダ氏は、日本の物価上昇が予想より持続的であると分かれば、日本銀行が年内にもイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策を撤廃する可能性があるとの見解を示した。
クラリダ氏はリポートで、「日銀が現在予想しているよりもインフレが持続可能であることがデータで示唆されれば、日銀は年内もしくは来年早い時期にYCCを撤廃する可能性がある」と指摘した。
さらに、経済のリフレに伴い、ある時点で日銀がマイナスの短期金利から移行すると予想されるとし、「政策金利は2024年初めまでに0%に引き上げられる可能性がある」としている。
米長期金利の上昇は日本にとって「対岸の火事」ではなく、市場の混乱としてその影響が波及した。
1番目は円安の進行である。日米金利差の拡大を市場に印象付け、ドル/円は一時、150円台に上昇。その後、価格は乱高下を続けている。
2番目は日本の長期金利上昇として顕在化した。4日には一時、 0.805%と10年ぶりの高水準まで上昇した。
3番目は日本株の急落だ。米系ファンドや日本の金融機関などは米長期金利が足元でこれほど上昇するとは予想しておらず、9月下旬から10月初めにかけて大きな損失を抱えたもようだ。その損失を今年4月以降に値上がりしていた日本株の益で埋めようという売りが加速。日経平均は3万0500円台まで下落する場面があった。
このように10月初めの東京市場はトリプル安に陥り、その「火元」は米長期金利の上昇であることは衆目の一致するところとなってきた。
一方、急激な円安は企業の原材料コストを増大させるだけでなく、一定のタイムラグを伴って国内物価を押し上げる大きな要因となる。物価高対策を総合経済対策の大きな柱の1つに掲げる岸田首相にとって、円安の急速な進展も頭の痛い問題に浮上しているのは間違いない。
国民投票の実施に関する条件の緩和などに向けて憲法の一部改正を提案する意向を表明した。「護憲とは、憲法を固定することではない」と主張し、「現代の民主的要求に応える」と訴えた。
現在、国民投票のテーマは公権力や経済・社会政策、条約批准などに限られている。マクロン氏はこれを「国民生活の重要分野」に広げるべきだと主張。国会議員と有権者が共同で国民投票を発議する制度は手続きを簡素化し、実現を容易にする考えを示した。
フランスでは今年、年金改革に労働者らの不満が噴出したほか、大規模な暴動で社会の分断が深まった。マクロン氏は今回の提案で「国民を結集する大統領」(ルモンド紙)をアピールし、低下した求心力の回復を図る狙いがあるとみられる。
マクロン氏は地中海に浮かぶコルシカ島の自治権拡大や、女性の人工妊娠中絶の自由を憲法でうたうことにも前向き。憲法改正は上下両院合同会議で5分の3以上の賛成を得るか、国民投票での承認が必要だ。
7〜9月の債券市場では、世界で金利が上昇(債券価格は下落)した。10年債利回りの上昇幅は米国で1年ぶりの大きさとなり、7月に日銀が金融政策を修正した日本では20年ぶりの大きさにまで広がった。10月以降は利回り水準を重視する生命保険会社などの機関投資家が、どれだけ日本の債券を買うかが焦点だ。
米長期金利の上昇が株安を引き起こし世界の市場を揺さぶっている。5%超に上がった政策金利が短期資産の魅力を高め、株式などからの強烈な資金シフトを生んだ。
高い政策金利の背景には「強い米経済」があるが、財政悪化に対する不安もマネーの萎縮につながりつつある。
長期金利の上昇が続いている。4日には一時0.8%台と2013年8月以来、約10年ぶりの水準をつけ、日銀が事実上の上限とする1%が近づいてきた。債券市場では、本来は国債利回りと一致するはずの「影の長期金利」が1%に達したことが注目の的だ。日銀は金利上昇を抑え込む姿勢を強めているが、市場には「ゆがみ」の兆しも見え始めている。
外需が低迷した。輸出の減少は2カ月連続。7月の輸出は1.9%減に下方修正された。
INGのエコノミスト、カールステン・ブルゼスキー氏は、外需低迷で構造問題が悪化していると指摘。「貿易はかつてのようなドイツ経済の強力な原動力ではなくなった。むしろ足を引っ張っている」とし、輸出統計を受けて第3・四半期の景気後退入りのリスクが高まったと述べた。
重要な市場への輸出は、中国を除き、ほぼ全て減少。ユーロ圏向けは2.6%減、米国向けは1.3%減。中国向けは1.2%増だった。
ドイツのIFO経済研究所によると、9月の国内輸出産業の業況は大幅に悪化した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
シティのエコノミストは4日のリポートで、中国の小売売上高と工業生産が改善する可能性があると予測。また、政府が発表した9月の製造業購買担当者指数(PMI)が半年ぶりに活動拡大を示したことを受け、輸出の落ち込みが縮小することもあり得るとの見方を示した。
余向栄氏らエコノミストは「ここが景気循環の底であり、政策のモメンタムが強まる中で本質的な需要が上向くかどうかが注目される」と指摘。「以前は政策への失望からGDP予想を下方修正していた」が、8月末以降は一部の不動産支援策によって「政策のモメンタムは明らかに予想を上回っている」と説明した。
ブルームバーグが実施した最新のエコノミスト調査によると、23年のGDP成長率予想中央値は5%と、政府目標に沿った水準。ただ、不動産危機が経済活動の重しとなる中、多くの企業が見通しを下方修正している。
最近のデータでは製造業など中国経済の一部セクターが安定しつつあることが示されたものの、景気回復はまだ不安定な状態だ。エコノミストは、内需や雇用市場への圧力に対する懸念や不動産市場の相次ぐトラブルに言及している。
9月のサービス部門購買担当者景気指数(PMI)は61.0と、前月の60.1から上昇した。
ロイター調査では59.5への低下が見込まれていた。
需要が一段と増加した。企業の楽観度は過去9年あまりで最高となった。
S&Pグローバルの経済アソシエートディレクター、ポリアンナ・デリマ氏は「今回のPMIはインドのサービス経済にとってさらなる朗報となった。9月の企業活動と新規受注は過去13年あまりで有数の増加を記録した」と指摘。
「内需が好調なほか、アジア、欧州、北米向けの売り上げも増加している」と述べた。
新規受注指数は61.2に小幅に上昇。輸出は6月以降で最低の伸びだったが、8カ月連続で拡大した。
今後1年間の見通しに対する楽観度は2014年6月以来の高水準。雇用も引き続き好調で、16カ月連続で雇用が創出された。
投入価格の上昇ペースは3月以降で最低。産出価格指数は6カ月ぶりの低水準となった。企業が新規顧客獲得のため大幅な値上げを控えた。
ポーランド中央銀行は4日、主要政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げて5.75%とした。市場予想通りの決定だった。
中銀は声明で「足元の経済指標により、経済情勢が悪化する中、インフレ圧力の低下に加え、経済の需要とコストに対する圧力は低い水準で推移していることが確認された」と指摘。通貨ズロチの上昇によって、インフレ低下の加速が下支えされるとの評価を維持したと説明した。
今後の政策金利については、入手する物価と経済活動に関するデータに基づいて判断すると表明した。
ポーランドのインフレ率は9月に前年同月比8.2%となり、1桁台に低下した。
アリオール・バンクのチーフエコノミストは「直近のインフレ指標を考慮すれば、利下げは意外ではない」と指摘。「当行は向こう数カ月にわたりインフレの低下が続くと予想している。このため今年末まで利下げが続く公算が大きい」と述べた。
中銀は9月には予想に反して政策金利を75bp引き下げ、ズロチの急落を招いていた。
ベルギーの情報機関、国家安全保障局(VSSE)は、中国の電子商取引大手アリババ・グループ(9988.HK)がベルギーで運営する主要物流拠点にスパイ活動の懸念があることから監視を行ってきた。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が5日報じた。
物流拠点はリエージュの貨物ハブ空港にあり、VSSEはアリババを含む中国企業による「スパイまたは妨害活動の可能性」を示す動きに目を光らせているという。
VSSEはFTに対し、中国企業は法律で中国当局や情報機関とのデータ共有が義務付けられているため、アリババが「注意すべき」存在だと語った。アリババは不正を否定しているという。
●中東
米上院民主党の20人の議員団は4日、バイデン大統領に書簡を送り、政権が模索するイスラエルとサウジアラビアの国交正常化に支持を表明する一方で、仲介役の米政府が合意の見返りとしてサウジとの防衛条約締結などサウジ側の要求に従う可能性に懸念を示した。
議員団はいかなる合意も、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」案を維持する「意味ある」規定が含まれる必要があると訴えた。イスラエル政府はパレスチナ側に大幅に譲歩する案に抵抗するとみられる。
関係筋によると、サウジはイスラエルとの国交正常化の見返りにサウジ防衛への米の関与を規定する防衛条約の締結を求めており、パレスチナ問題でイスラエルが大幅な譲歩を示さなくても合意を受け入れる構え。
議員団はサウジの権威主義的な政権がこれまで地域における米国の国益を損ねてきたと指摘し、サウジとの法的拘束力のある防衛条約が国益にかなっているとの確証が必要だと指摘した。
原子力の民生利用での支援や先進兵器の供給をサウジが要求していることにも懸念を示した。
国防総省のライダー報道官によると、シリア北東部ハサカで5日午前、米軍拠点から約1キロの場所でトルコの無人機が空爆を行っているのを確認。その後、無人機が米軍から500メートル以内に近づいたため、脅威と見なしF16戦闘機が撃墜したという。トルコが意図的に米軍を標的にしていた兆候はないとも述べた。
トルコ国防省当局者は無人機について、トルコ軍のものではないとしている。
トルコ治安当局筋は5日、アンカラで先週末に起きた自爆攻撃を受けて国家情報機関がシリアでクルド人武装勢力を標的にした攻撃を行ったと述べた。
●中南米・アフリカ
●市況
<ロンドン株式市場> 4営業日ぶりに反発して取引を終えた。生活必需品株が買われたのが相場を押し上げた。
<欧州株式市場> 4営業日ぶりに反発して取引を終えた。米長期国債利回りが約16年ぶり高水準から低下し、ユーロ圏の幅広い国債利回りも下げたことを受けて買いが優勢となった。原油価格が下がったことが支援し、航空銘柄は上昇した
旅行・娯楽関連株指数(.SXTP)が1.45%上昇。燃料費高騰が一服するとの見込みから仏蘭系航空大手エールフランスKLM(AIRF.PA)が3.8%、英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)などの親会社IAG(ICAG.L)が2.5%それぞれ上昇した。
フランスの大手鉄道車両メーカー、アルストム(ALSO.PA)は37.6%急落した。通期決算のフリーキャッシュフローがマイナスになる見通しだと警告したことが重しとなった。
ドイツのスポーツ用品、プーマ(PUMG.DE)は11.5%下落した。ドル安/ユーロ高傾向が響いて2023年第3・四半期の利益が市場予想を下回る可能性があるとアナリストが指摘したことが足を引っ張った。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが広範囲にわたって低下した。前日には債券売りが一服。市場では6日に発表される9月の米雇用統計が注目されている。
<為替> 米債利回りの低下に追随しドルが下落した。米連邦準備理事会(FRB)が来月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切るかどうかの手がかりとして6日に発表される米雇用統計が注目されている。
<債券> 米雇用統計の発表を翌日に控え、国債利回りが低下したほか、利回り曲線がスティープ化した。FRBが利上げを継続するほど経済が好調か見極めようと、米労働省が6日に発表する9月の雇用統計に注目が集まっている。
2年債と10年債の利回り格差は一時マイナス29bpまでスティープ化。長短利回りの逆転は3月以来の小ささとなった。
<株式> 小反落して取引を終えた。投資家は金利見通しに関するさらなる手掛かりを得ようと6日発表の米雇用統計を待っている。
個別銘柄では家庭用洗剤・漂白剤メーカーのクロロックス(CLX.N)が5.2%安。四半期決算が赤字になるとの見通しが嫌気された。
このところの市場の弱さを受け、投資家は今月半ばに始まる第3・四半期決算シーズンに注目している。LSEGのデータによると、S&P500採用企業の利益は1.6%増加する見通し。
日経先物30985、ダウ先33285、債先144.74、米4.723、独2.8735、仏3.457、西3.995、伊4.886、英4.5965、波5.950、原油82.84、銅7,887、ドル円148.47、ユーロドル1.0546
※10/6 9時00分頃

備忘録(2023/10/4)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
第3・四半期の米自動車販売台数は約8%増の50万0504台となった。クロスオーバーSUVとピックアップトラックに対する継続的な需要が寄与した。
3日公表のデータによると、第3・四半期の世界自動車大手の米国内自動車販売台数は急増した。新モデルへの需要と供給の改善が背景にある。金利が上昇しているものの、自動車販売にまだ大きな影響が出ていないことを示した。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は流動性を補強するため60億ドル(約8900億円)の信用枠を設定する。米工場でのストライキが長引く可能性に備えていることが示唆される。ストによるコストは既に2億ドルに達している。
GMは今回の措置を4日の届け出で発表。経営の柔軟性を維持するため、来年10月1日に満期となる364日間の回転信用枠を求めていると、同社の広報担当者は明らかにした。
6月30日時点で、GMの自動車関連流動性は総額389億ドルで、近い将来に資金不足に陥るリスクはない。しかし新たな信用枠は、全米自動車労組(UAW)によるストが長期化することに同社が備えている可能性を示唆するものだ。
GMはUAWと条件を出し合って交渉しているが、同社の施設はUAWによるスト拡大の標的となっている。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
鈴木俊一財務相は4日午前、「為替の動きは安定的が望ましい。市場動向を極めて注意深く緊張感を持って見ている」と発言した一方で、「介入の有無はコメント控える」と述べるにとどめた。その上で、為替の「急激な動きは好ましくない。過度な変動にはあらゆる対応を排除せずにしかるべき措置を取る」と市場をけん制した。同省内で記者団に語った。
神田真人財務官や松野博一官房長官も4日、為替介入へのコメントを控えた。神田財務官は政府も市場参加者の1人だとの認識を示し、介入の有無について「歴史的にむしろ言わない方が普通」と語った。 
3日の海外市場では、米国の労働需要が引き続き底堅いことを示す8月の米求人件数が発表された後、円が昨年10月以来の安値となる1ドル=150円16銭まで下落。そこから数秒間で約2%上昇し、147円43銭まで急反発するなど、荒い値動きとなった。日本の政府当局が円買い介入を実施したとの観測が流れたが、その後、介入ではないとの見方も浮上している。
ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは、3日の円急反発について「恐らく介入ではないだろう。財務相が水準ではなくボラティリティーで判断すると言った直後に150円を超えた段階で動いた。水準でないと言っておきながら介入するのはつじつまが合わない」と指摘。その上で、「昨日から今日にかけてボラティリティーが高まったので、今後の為替介入のハードルは下がった」とみている。
日本は昨年、介入に関するコミュニケーション方法を変えたようにも見える。政府当局は昨年9月、24年ぶりとなる円買い・ドル売り介入を確認したが、その後の10月の市場介入をすぐには認めなかった。結果として、市場関係者が日本の為替戦略を推測し続け、為替市場での取引が難しくなる可能性がある。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、「介入が入ったかどうかは完全には言えない」と指摘。その上で、仮に介入が入ったとしたなら、「財務官としては介入の頻度と規模が焦点になってくる。そこをオープンに言わないことで少額でも心理的なインパクトが大きくなるようにしている」と指摘。「投機的な動きへの対処というよりはすう勢的なドル高・円安の流れを止めたいのだと思う」と述べた。
財務省はこれまで過度な変動が見られたら介入すると警告してきたが、3日の急激な円高の流れは、対ドルでわずか0.2%の円下落後に生じた。150円の水準を突破したことが、この動きの重要なきっかけになったことを示唆している。
政府・日銀が昨年介入したのは、9月22日に145円90銭まで円安が進んだ時だった。その後、10月にかけて3回実施し、規模は総額9.2兆円に上った。同月21日には151円台後半と約32年ぶりの円安水準で過去最高の5.6兆円を投じた。市場では昨年の介入実績を踏まえ、145-150円の水準が介入警戒ラインとして意識されていた。
伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは、たとえ150円が防衛ラインだと当局が言わなくても「マーケット的には150円のラインが意識されており、そこで介入と思わせるだけで効果がすごく出てくる」と指摘した。
神田財務官は、「過度な変動に対してはこれまで通りの方針で臨んでいる」としながらも、3日のドル・円相場は過度の動きかとの質問に対しては「コメントを差し控える」と明言を避けた。一時150円を超えた為替水準については「直接の判断材料ではない」と語った。
今回の動きが介入によるものなら、日本が明らかに急激な動きではなく、一定の水準を守っていると受け止められ、他国から批判を受ける可能性もある。
農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「これは円安ではなく、強い米国経済や金利高止まりの見方の強まりが背景にあるドル高。日本当局にとっては非常に難しい攻防であり、いつ終わるか予想するのも難しい」とみる。一方、日銀の正常化観測が高まる下で長期金利も上昇しているとし、「足元緊張感が高まった市場環境が日銀の政策修正につながるとは現段階ではみていない」という。
ブルームバーグが先月実施した調査によると、日銀が現在マイナス0.1%の短期政策金利を引き上げる時期は、来年4月の会合までの予想が39%となった。11%はその次の6月会合を想定しており、合わせて50%に達した。
これまでは労働市場が個人消費、ひいては米経済を押し上げる原動力となってきたが、今回のデータで労働市場がさらに減速している兆しが改めて浮き彫りとなった。
ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は発表文で「9月は雇用が大きく落ち込んだ」と指摘。「加えて、過去12カ月に賃金も着実に鈍化している」と述べた。
ADPによれば、同じ職にとどまった人の賃金は中央値で前年同月比5.9%上昇と、ここ2年で最も小幅な伸び。転職した人の賃金(中央値)の上昇率も9%と、21年6月以来の弱い伸びにとどまった。
過去数年は賃金が力強く上昇してきたが、労働参加率の上昇に伴い、賃金増のペースも減速し始めている。
JPモルガン・チェースのエコノミスト、ダニエル・シルバー氏は「ADPと米政府発表の雇用統計の緩い相関関係はさておき、ADPのデータは雇用の伸び鈍化というここ数カ月のトレンドを示している。これは労働市場で起こっているはずのこととおおむね整合すると当社では考えている」とリポートで指摘した。
業況指数は3カ月ぶりの高水準に上昇したが、新規受注はほぼ6ポイント低下し、サービス需要が弱まり始めている可能性を示唆した。受注は8月に6カ月ぶり高水準となっていた。
業況指数は1.5ポイント上昇して58.8。消費者が支出先を財からサービスにシフトさせる中、サービスセクターは明るい分野となっている。
ビジネス活動が活発になったとの回答比率は約34%と、2022年4月以来の最高に拡大した。
ISM非製造業景況調査委員会のアンソニー・ニエベス委員長は発表文で、「回答者の大半はビジネスの状況に関して楽観的な見方を維持しているが、向かい風の可能性に関して懸念を示唆する回答者もいた」と指摘した。
借り入れコスト上昇や根強いインフレ、賃金の伸び減速を背景に、一部の消費者は既にサービスへの支出に一段と選別的になっている。今月の学生ローン返済再開なども裁量的消費へのリスクとなり得る。
9月は不動産や小売り、鉱業など13業種が活動拡大を報告。一方、農業や娯楽・レクリエーション、宿泊・食品サービスなど5業種では活動が落ち込んだ。
雇用指数は53.4と、前月の54.7から低下した。6日に発表される9月の雇用統計は雇用市場の方向性に関してさらなる手がかりを提供する見通し。
仕入価格指数は前月に続いて58.9と、4月以来の高水準にとどまった。入荷水準の指数は昨年11月以来初めて50を上回り、納入時間が長くなっていることを示唆した。
在庫増減の指数は拡大幅が鈍化、在庫景況感指数も3カ月ぶりの水準に下げた。
4日の債券相場は下落。長期金利は0.8%と2013年8月以来、10年1カ月ぶりの高水準を更新した。日本銀行のイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の影響を受けにくい10年物の円スワップ金利は1月以来の1%台に上昇した。
米国の長期金利が一時16年ぶりの水準に上昇したことに加え、円が対ドルで一時1ドル=150円台に下落し、円買い介入が行われたとの観測があり、日銀が再び政策修正を迫られるとの見方も売りにつながった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは「スワップ金利は日銀がコントロールしておらず、国内金利の実勢をより反映している」と指摘。為替の介入観測が出ていることについては、1年前の介入から数カ月後の12月に日銀がYCC修正に踏み切っており、「今回も介入があったのだとすると、政策修正を意識せざるを得ない」と話した。
米金利は日本を上回るペースで上昇しており、投資家が日本国債に投資するためにはより高い金利を求めるのではないかとの懸念につながっている。日本の金利が上昇すると、生命保険会社や年金基金などの間で海外債券の保有を減らす動きが活発化するリスクがあり、世界の投資家が動向を注視している。
全米抵当貸付銀行協会(MBA)が4日発表したデータによると、9月29日終了週に30年物固定住宅ローン金利は12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、7.53%となった。住宅購入申請の指数は5.7%低下し136.6と、1995年以来の低水準に下げた。また借り換えを含めた全体の住宅ローン申請指数は6%下げて96年以降で最低となった。
住宅市場は米金融当局による積極的な利上げの影響を大きく受けている。ここ最近では米政策金利が長期的に高止まりするとの見方から債券利回りが上昇。ローン金利の上昇と住宅価格の高騰によって今は住宅所有が特に困難になっている。
同総裁は4日フランクフルトでの会議で、今後のECB決定では「確実に、金利を必要な期間、十分に景気抑制的な水準に設定する」と述べた。
同副総裁はキプロスのリマソルでのイベントで、金融引き締めの資金調達環境への波及は「確かに進行している」が、実体経済への浸透のペースは比較的遅く、「かなりの部分」がまだ浸透の過程にあると述べた。
「経済全体としては、金融政策の伝達における典型的な時間的ずれのために、ECBの引き締めによる影響の大きな部分は今年かそれ以降にしか顕在化しないと見込まれる。モデルに基づく推測が引き続き示唆している」と語った。
デギンドス氏の発言は、ECBが中銀預金金利を現行の4%を超えて引き上げることはないとの見方を補強するものだ。ECB当局者はインフレ率を2%の目標に確実に戻すために高い金利を長期間維持する必要があると主張している。
ポルトガル中銀のセンテノ総裁も4日、金融政策の効果はまだ、資金調達環境に完全には行き渡っていないとの考えを示した。また、「利上げサイクルは今のところ、そして現在の経済状況の中では、終了したと想定することができる」とし、「現在の金利は、インフレ率を中期的な目標まで低下させる目的に合致している」と語った。
また、ラガルドECB総裁はフランクフルトでの会議で「金利を必要なだけ長く、十分に景気抑制的な水準に設定する」と述べた。
8月の製造業新規受注は前月比1.2%増加した。前月の2.1%減から反転し、伸びは予想の0.2%を大きく上回った。出荷も力強く増加し、第3・四半期に米経済成長が加速したとの見方が裏付けられた。
前年同月比では0.5%増。連邦準備理事会(FRB)は2022年3月以降、合計5.25%ポイントの利上げを実施したが、急速な金融引き締めにもかかわらず製造業は堅調に推移している。
コンピューター・電子製品は0.3%、電気機器・家電・部品は1.0%、機械は0.6%、それぞれ増加した。自動車は0.3%増。ただ、民間航空機は15.9%減少した。
製造業出荷は1.3%増。在庫は0.3%増。受注残は0.4%増加した。
企業の設備投資計画の指標とされる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)の受注は0.9%増。国内総生産(GDP)の企業設備投資の計算に使われるコア資本財の出荷は0.7%増。共に前回発表から改定はなかった。
2024年米大統領選の民主党候補指名争いに名乗りを上げているロバート・ケネディ・ジュニア氏が無所属に転じて大統領選に挑戦する見通しとなった。政治アナリストは、激戦州で民主党バイデン氏や共和党トランプ氏から票を奪い選挙戦の構図が複雑化する可能性を指摘する。
環境弁護士、反ワクチン活動家として知られるケネディ氏は、故ロバート・ケネディ元米司法長官の息子で、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ元大統領のおいに当たり、知名度が高い。9日にフィラデルフィアで無所属での出馬を発表するとみられる。
民主党と共和党の二大政党制は、1世紀以上にわたって大統領選を支配してきたが、過去には第3党の候補が結果を左右したこともある。
ペンシルベニア、ミシガン、ジョージア、アリゾナなど一部の激戦州においては、バイデン氏もしくはトランプ氏が勝利するかどうかは数千人の有権者にかかってくる可能性がある。アリゾナ州などでは、どちらの党にも登録していない無党派層が決め手になりそうだ。
バイデン氏やトランプ氏への支持が広がりを欠く中、ケネディ氏の富裕な後援者と知名度は両陣営から票を奪うのに役立つかもしれない。
左派系の政治戦略会社サード・ウェイの共同設立者マット・ベネット氏は「トランプ氏の支持率は50%に届いていないが安定している。トランプ氏との一騎打ちでバイデン氏を仕方なく選ぶような有権者は、ケネディ氏についてよく知らなくても同氏に投票するかもしれない」と述べた。
ケネディ氏の政治的立場には、バイデン氏の中道左派の支持層よりも、反ワクチンや陰謀論を受け入れるトランプ氏支持層と一致するものもある。ファイブサーティーエイトがまとめた世論調査によると、ケネディ氏は民主党支持者よりも共和党支持者へのアピールが強いという。
共和党のストラテジストたちは、ケネディ氏の参戦にはメリットとデメリットがあると話す。フォード・オコネル氏は「トランプ氏から票を吸い上げる可能性は確かにあるが、バイデン氏の方がより大きな痛手を被るだろう」と指摘し、トランプ氏の支持者の方がバイデン氏支持者よりも熱狂的であることを理由に挙げた。
<反ワクチン活動家としての横顔>
ケネディ氏が設立した非営利団体「チルドレンズ・ヘルス・ディフェンス」は、COVID─19(新型コロナウイルス感染症)ワクチンを接種した子どもの死亡率が高いといった情報を流布したとされる。
また、ケネディ氏を含む反ワクチン活動家たちが、19年に米領サモアでワクチンの安全性に関する誤った情報を広めた結果、数十人の幼児がはしかで死亡したという。
ケネディ氏は7月の議会証言で、ワクチンに反対したことはないし、国民にワクチンを避けるように言ったこともないなどと主張した。
<高い好感度、年齢も武器に>
ロイター/イプソスの9月の世論調査によると、ケネディ氏の好感度はトランプ氏やバイデン氏よりも高い。回答者の51%がケネディ氏に好意的な見方をしているのに対し、バイデン氏は45%、トランプ氏は40%だった。ただ、民主党の指名争いにおいては、バイデン氏がケネディ氏を50ポイントほどリードしている。
69歳のケネディ氏は、80歳のバイデン氏や77歳のトランプ氏よりも若い候補者を望む有権者にとって魅力的に映るかもしれない。ロイター/イプソスが昨年11月に実施した世論調査では、約86%が大統領の最高年齢を75歳に制限すべきと回答している。
<第3党候補は他にも>
24年大統領選には、進歩派(プログレッシブ)的な活動家として知られる哲学者のコーネル・ウェスト氏も、第3党から立候補すると表明している。ウェスト氏の選挙マネージャーであるピーター・ダオウ氏は、X(旧ツイッター)への投稿でケネディ氏の参戦を歓迎した。
ウェストバージニア州選出の民主党上院議員ジョー・マンチン氏も、第3党候補として大統領選に出馬する可能性をちらつかせている。2000年の大統領選で民主党の副大統領候補だったジョー・リーバーマン元上院議員は、24年大統領選の候補を擁立する可能性のある第3政党グループ「ノーレーベルズ」の創設会長を務める。
来月行われるニュージーランドの総選挙では野党・国民党が第1党となる見込み。ただ連立相手とみられるACT党の支持率が低下しており、3党による連立が必要となる可能性がある。
ワン・ニュース/ベリアンの世論調査では、中道右派の国民党の支持率が36%、与党・労働党は26%だった。
定数120の議会で国民党は46議席が見込まれ、過半数に15議席足りない。右派ACT党の支持率は2%ポイント低下の10%で13議席を獲得すると予想され、ポピュリスト政党ニュージーランド・ファースト党の支持も必要となる。
先住民を巡るオーストラリア憲法改正の是非を問う14日の国民投票は、高齢者層や都市部以外の反対票多数で否決される情勢となっている。
国民投票では、先住民を「最初のオーストラリア人」と認めることや、先住民が影響を受ける問題を政府に諮問する組織「議会への声」設立の是非を問う。在外投票など早期投票は既に2日に始まった。
調査結果によると回答者総数は1563人。このうち反対が53%となって賛成の38%を上回った。未定は9%。
農村部や都市近郊で反対が最も多く、回答の約3分の2を占めた。また、65歳以上では反対が68%、賛成が24%だった。
世論は二分している。「議会への声」は先住民に進歩をもたらすと評価される一方で、憲法で一つの集団を明文化すれば争いの元になるとの反対の声が出ている。
国民投票の実施は、共和制移行の改憲案を否決した1999年以来。今回の国民投票を巡ってはここ数カ月で関心が下火になっている。先週の世論調査では、国民投票が生活費や住宅といった問題から目をそらすものだとの回答があった。
ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)は4日、政策金利のオフィシャルキャッシュレート(OCR)を5.5%に据え置くことを決定した。これまでの利上げが想定通り支出とインフレを抑制しているとの見解を改めて示した。
据え置きは3会合連続で、ロイター調査でエコノミスト27人全員が据え置きを予想していた。
声明によると、金融政策委員会は、消費者物価指数(CPI)上昇率が1─3%の目標範囲に確実に戻るよう図るためには、政策金利を当面、制約的な水準で維持する必要があるとの見解で一致した。
需要の伸びは引き続き鈍化しているが、第2・四半期国内総生産(GDP)成長率が予想を上回ったと指摘し、景気見通しは依然として低調だとした。
「金融環境がなお制約的で、支出の伸びはさらに鈍る見込み」とした一方で、短期的に経済活動とインフレが十分減速しないというリスクに当局者らは留意したと説明した。
世界のニッケル市場の供給過剰が2023年の22万3000トンから24年には23万9000トンに拡大するとの見通しを示した。
ロンドン金属取引所(LME)のニッケル価格は年初から38%下落している。
INSGによると、世界のニッケル需要は23年の320万トンから24年には347万トンに増加する見通し。ステンレス鋼と電気自動車(EV)バッテリー向けの需要増加が背景。
一方で生産量は、インドネシアでステンレスに使うニッケル銑鉄(NPI)の増産が続くため、23年の342万トンから24年には371万トンに拡大する見通し。
8月のユーロ圏の小売売上高は、前月比で1.2%、前年比では2.1%それぞれ減少した。
市場予想はそれぞれ0.3%減、1.2%減だった。予想以上に悪い内容となり、インフレが高止まりする中、消費者需要の低迷を示唆している。
前月比の落ち込みは、主に通信販売とインターネットでの買い物が4.5%減少したほか、ガソリンが3.0%減となったことが響いた。
前年比では、燃料が7.7%減。食品・飲料・たばこも3.2%減となった。
8月のユーロ圏生産者物価指数(PPI)は前月比0.6%上昇、前年同月比11.5%下落した。
市場予想に沿った水準だった。
前月比の内訳は、中間財が0.4%下落、エネルギーが2.5%上昇。
前年比の内訳は、エネルギーが30.6%下落。中間財が4.5%下落した。資本財、耐久消費財、非耐久消費財は値上がりした。
ブルームバーグの集計データによれば、償還年限が10年以上の米国債の価格は、 2020年3月のピークから46%下落した。01年のドットコムバブル崩壊に伴う米株価の下げ幅(49%)にわずかに届かないが、それに匹敵する大きさだ。
30年国債相場の崩れ方はさらにひどく、下落率は53%と金融危機のどん底の株価暴落(57%)に近い。30年国債利回りは4日の取引で、2007年以降で初めて5%に達した後、ニューヨーク時間帯の取引終盤では4.86%前後に低下した。
米下院でマッカーシー議長の解任動議が可決されたことを受け、連邦予算を巡る与野党の攻防で年内に政府機関が一部閉鎖される可能性があるとした。ただ、政府機関が閉鎖されても米国のソブリン格付けには影響しないとの見方を示した。
フランシス氏は、その際に米国のガバナンスの悪化は格付けに織り込まれたとし、政府機関が閉鎖されても格付けに影響は及ばないとの見方を示した。
一方、主要格付け会社で唯一トリプルA格付けを維持しているムーディーズは、政府機関が閉鎖されれば政治的な二極化が財政政策立案を弱体化していることが浮き彫りになるため、米国の信用にマイナスになると警告している
ジョーダン氏は記者団に対して、議長に選出されたら、ホワイトハウスが求めているウクライナへの追加支援を阻止する考えを示した。米国民にとって最も差し迫った問題は「ウクライナではなく、国境警備や犯罪だ」と述べた。
ジョーダン氏は下院司法委員長を務めており、バイデン大統領に関する弾劾調査を進めている議会幹部の一人。またトランプ前大統領と近い関係にある。
イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は、インフレ圧力が年内に急速に弱まると予想した上で、インフレ退治は「まだ終わっていない」と言明した。
英オーカディアン紙とのインタビューでベイリー氏は、総合インフレ率は年末までに5%か「それを少し下回る」程度に低下するとの見通しを示したが、「目標の2%まで引き下げるにはまだその先がある」と続けた。
同氏はまた、4日に公表されたプロスペクト誌とのインタビューで、インフレ目標の変更を求める声について否定的な見方を示し、「現在直面する衝撃や、衝撃がある時期にはインフレ動向がしばらく不安定になる可能性があるという事実を踏まえると、3%へインフレ目標を修正することが答えだとは考えていない」と述べた。
同氏は欧州連合(EU)離脱について、短期的には経済に悪影響を及ぼすだろうと認めた上で、自分は英国について本質的に楽観的だと強調した。
EU離脱によって「実際には機会がもたらされた」と語り、「われわれは市場や産業の大部分が英国にとどまるよう保護してきたし、それを確実にしたとも言える。それこそが重要だ」と続けた。
また、産業が欧州に移り、英国の金融サービスが空洞化するという初期の警告をベイリー氏は退け、こうした終末論的な見方は大半が根拠のないものだったと主張した。
広範囲にわたるインタビューでベイリー氏は地政学的な緊張が高まるにつれ、英国は今後数年間、さらなるショックに見舞われる可能性が高いと警告。「より曖昧な言葉で言うところの地政学的世界がもたらす衝撃がまだあるのは明らかだ」と述べ、「英国は他の多くの国と比べてもよりオープンな経済だ。従ってこうした衝撃も受けることになる」と指摘した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の不動産開発会社、中駿集団(SCEグループ)(1966.HK)は4日、協調融資の元利金の支払いが滞ったことが原因でドル建て社債がデフォルト(債務不履行)に陥ったと発表した。全ての債務を網羅する解決策を探る考えを示した。
9月の韓国製造業購買担当者景気指数(PMI)は季節調整済みで49.9と、景気の拡大・縮小の分かれ目である50を15カ月連続で下回ったが、この縮小局面で最も50に近づいた。生産と受注の減少が和らいだ。
8月の48.9から上昇した。15カ月連続の50割れは2004年4月の統計開始以来初めてだった。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのエコノミスト、ウサマ・バッティ氏は、製造業の状況がおおむね安定していたと指摘。ただ、生産と需要の低迷は続いているとした。
内訳では、生産が17カ月連続で減少し、新規受注は15カ月連続で減少。ただ、減少幅は縮小した。
新規輸出受注は3カ月ぶりの大幅減。中国、日本、米国など主要市場からの需要が弱かった。
投入価格は8カ月ぶりの大幅な上昇を記録。原材料や原油、電力の価格上昇に加え、通貨安が響いた。
一方、雇用は13年5月以来の大きな伸びを記録した。将来の需要回復を見越して欠員を埋める動きがあったとの回答が寄せられた。
タイ中央銀行のセタプット総裁は4日、経済を巡りセター首相と一部見解の相違があると述べた。
タイの新政権は景気を回復させるため個人消費支援策などを打ち出しており、デジタルウォレット政策を通じて5600億バーツ(150億6000万ドル)を経済に注入する計画だ。
一方、中銀は先週、大方の据え置き予想に反して主要政策金利を10年ぶりの水準に引き上げた。
セタプット氏は今週行われた首相との会合について「異なる見解も幾分あったが、対立はしていない」とし、「率直に議論し、互いの意見に耳を傾けた」と述べた。
財政支出は経済に影響を及ぼすため抑制すべきとし、代わりに投資誘致に向けた規制緩和や事業環境の改善が必要だと指摘。「国の長期的な成長能力を検証する必要がある」と述べた。
国内経済の回復基調は続いており、金融システムは全般的に強固で外的衝撃に耐え得るとしたが、インフレリスクが景気の先行きに影響を与える恐れがあるとの見方も示した。
エルニーニョ現象による食品価格高騰や原油高でインフレ上振れリスクがあると指摘。賃金上昇や政府の政策もインフレ率を押し上げる可能性があると語った。
また、家計債務状況は脆弱だと説明した。第2・四半期の家計債務の対国内総生産(GDP)比は90.7%だった。
セター氏はビジネスフォーラムで、デジタルウォレット政策は短期的な措置であり、成長を促進するために外国企業にタイへの投資を促していると述べた。
「より多くの投資家を呼び込むためには信頼を築かなければならない」と語った。
●中東
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は4日、合同閣僚監視委員会(JMMC)を開き、計画を発表した。サウジは日量100万バレルの減産を行い、ロシアは原油輸出を日量30万バレル削減する。
両国の減産を受けて、北海ブレント先物は先週、バレル当たり100ドルも視野に入ったが、足元では騰勢が弱まっている。4日の取引では、原油高が米金融当局による高金利の長期化を促している構図が浮かび上がる中で、北海ブレントは87ドル台まで下げている。JPモルガン・チェースは、燃料コストが消費者を圧迫しており「需要崩壊が始まった」と指摘している。
OPECのウェブサイトに掲載された発表文によると、「委員会は市場の状況を引き続き注意深く精査していく」とした上で、「常に追加の措置を講じる用意がある」と表明した。
●中南米・アフリカ
ブラジル運輸連盟(CNT)と調査会社MDAが3日公表した世論調査によると、就任9カ月となるルラ大統領の政権支持率がやや低下しているものの、国民の約半分がボルソナロ前政権より高い評価を示している。
調査は9月27日から10月1日に約2000人に実施。その結果、ルラ政権の業績を「素晴らしい」または「良い」と評価した回答は40.6%と、5月に行われた前回調査の43%からやや低下。
一方、「悪い」または「ひどい」との回答は25%から27.2%に上昇した。
MDAのディレクター、マルセロ・サウザ氏は「政府への全般的な評価は依然好意的だが、失業率低下のほか、所得、医療、教育面の改善に対する期待は弱まっている」と指摘。治安も悪化していると述べた。
一方調査では、回答者の46%が現政権は前政権より良いと回答。ボルソナロ政権の支持率は、発足9カ月時点で12%ポイント低下していた。
アルゼンチン金融市場では22日の大統領選で最有力候補のリバタリアン(自由至上主義)経済学者が当選した場合の不確実性を映し、国債価格が下落し、通貨ペソは闇市場で1ドル=800ペソの最安値を付けている。
国内投資ファンド「ファンドコープ」のエコノミストは「投資家によるヘッジ」でペソと債券が売られていると指摘。選挙に向けた取引は懸念に支配されているとした。
8月の予備選で予想外にトップに踊り出た独立系のリバタリアン経済学者、ハビエル・ミレイ氏は世論調査で支持率首位を走る。大幅な歳出削減や経済のドル化など、市場寄りの公約を掲げるが、未知数な存在でもある。同氏は中央銀行の閉鎖も求めている。
主な対抗馬は与党候補のセルヒオ・マサ経済相氏と中道右派パトリシア・ブルリッチ元治安相となっている。
当選には得票率45%を獲得するか、得票率40%で2位に10ポイントの差をつける必要がある。決まらなければ11月19日の決選投票に進む。
店頭取引で売買される国債は過去の債務不履行(デフォルト)や債務再編の影響で既に価格が大きく目減りしているが、先週は10%余り急落。投資家は選挙後に再度通貨切り下げが行われると見込んでいる
チリ政府は3日、議会に提出した予算案で、2023年と24年のインフレ率をそれぞれ7.6%と3.5%と想定した。
また、24年の公共支出は3.5%増加すると予想した。政府は治安、医療、教育、住宅などの政策に注力する方針。
マルセル財務相は議会の委員会で、世界最大の生産を誇る銅について、8月の輸出が37億1000万ドル相当だったと説明。来年の平均価格は1ポンド当たり3.85ドルと、今年の同3.88ドルから下がると想定した。
●市況
<為替> 米債利回りの低下を受け、ドルが下落した。経済指標がまちまちとなり、米経済に軟調な部分があることが示されたことで、米連邦準備理事会(FRB)が年内にあと1回の利上げを実施するとの観測が一段と後退している。
<債券> 長期国債利回りが16年ぶり高水準から低下した。FRBによる高金利長期化観測を受け、利回りは急上昇基調にあり、30年債利回りは一時5%を突破していた
ただ、この日に発表された経済指標は、債券売りをやや和らげる材料となった。
<株式> 主要株価指数が反発して取引を終えた。最新の経済指標で9月の米民間部門雇用者数の伸びが予想を下回ったことを受けた。
ただ、この日に発表された経済指標は、債券売りをやや和らげる材料となった。これを受け、利上げや金利高止まり長期化を巡る投資家の懸念が緩和した。
パーシェ氏は「9月にストラテジストと投資家の見方に変化があった。金利は長期にわたって高水準にとどまり、米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げに踏み切るという考えは虚構であるということがようやく浸透したようだ」と語った。
<金先物> FRBによる利上げ局面が長期化するとの観測が根強い中で軟調地合いが継続し、8営業日続落した。
<米原油先物> ガソリン在庫の急増で需給引き締まり観測が後退し、急反落した。米国産標準油種WTIの中心限月11月物の清算値(終値に相当)は前日比5.01ドル(5.61%)安の1バレル=84.22ドルと、中心限月としては8月31日以来、約1カ月ぶりの安値となった。12月物は4.89ドル安の82.55ドル。
<ロンドン株式市場> 3日続落して取引を終えた。エネルギー株と鉱業株が売られたのが相場を圧迫した。また、中型株で構成するFTSE250種指数(.FTMC)は1.05%下落し、終値は昨年10月以来、約1年ぶりの安値を付けた
<欧州株式市場> 3日続落して取引を終えた
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツのマルチアセット・ストラテジスト、アンティ・ツヴァリ氏は「ますます多くの小売業者が、高級品企業でさえも、消費者があまりお金を使わずにより節約しているという事実に直面し始めた」と述べた。
銀行株指数(.SX7P)は0.38%下落した。
ツヴァリ氏は「銀行は金利上昇で少し恩恵を受けた。しかし、今は融資の需要が鈍化しているのが見え始めている」とも指摘した。
個別銘柄では、スイスの製薬大手ノバルティス(NOVN.S)は1.8%上昇。ジェネリック(後発薬)事業部門サンド(SDZ.S)のスピンオフ(分離・独立)が完了したとの発表が材料視された。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが一時数年ぶりの高水準を付けた。ただ欧州中央銀行(ECB)当局者が利上げサイクル完了を示唆したことなどを背景に世界的な債券売りが一服し、終盤は横ばいとなった。
日経先物30715、ダウ先33265、債先144.68、米4.733、独2.9255、仏3.493、西4.023、伊4.863、英4.6630、波5.966、原油84.37、銅7,917、ドル円148.96、ユーロドル1.0507
※10/5 8時50分頃

備忘録(2023/10/3)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
海外銀行がシンガポールドル建ての債券発行を増やしている。魅力的な為替スワップや潤沢な資金を保有する投資家の存在が背景だ。関係者は今後も発行増加が続くと予想している。
LSEG(ロンドン証券取引所グループ)のデータによると、今年シンガポールドル建てで販売された銀行のティア2(補完的自己資本)債は24億ドル。過去最高だった昨年の26億ドルに迫っており、2年連続で過去最高を記録する勢いだ。
発行体にとって魅力的なのは、ドルよりも低い基準金利と、調達した資金をドルに転換すればさらに有利な条件が得られる為替フォワード・スワップだ。
DBS銀行のマネジングディレクター、クリフォード・リー氏は「この市場は(現時点で条件が良く)理にかなっている。海外の発行体から問い合わせが増えている」と指摘した。
投資家にとっても、シンガポールドル建て預金金利やシンガポール国債利回りをはるかに上回る5%を超える利回りは魅力的だ。
環境・社会・ガバナンス(ESG)リスク分析を手掛けるレプリスクによると、9月末までの1年間に世界の銀行や金融サービス会社による「グリーンウォッシング」事例は148件で、前年の86件から70%増加した。3日公表の報告書で明らかになった。
148件のうち106件は欧州の金融機関によるもので、多くが化石燃料に関連していた。
レプリスクによると、銀行・金融サービス業界は、石油・ガス業界に次いでグリーンウォッシングの件数が多い。
米製薬大手イーライリリーは、前立腺がんなど向けに放射線療法の開発を手掛けるポイント・バイオファーマ・グローバルを約14億ドル(約2100億円)で取得することで合意した。
イーライリリーは肥満症薬やアルツハイマー病治療薬を巡る収益押し上げ期待から足元で時価総額が拡大しているが、がん治療薬の分野でも2019年のロクソ・オンコロジー買収を皮切りに、存在感を高める戦略に注力している。がん治療薬は製薬大手にとって継続的に高い収益が期待できる分野の一つで、2022年の世界売上高は約2000億ドルに達した。
ポイント・バイオファーマはホルモン療法に反応しない進行性前立腺がん患者向けの治療薬を開発中で、10-12月(第4四半期)に後期治験の結果が出る予定。
●その他産業
イングランド銀行(英中央銀行、BOE)の健全性規制機構(PRA)は3日、保険会社に対し、急激な一連のショックを想定したストレステスト(健全性審査)を2025年に実施すると発表した。
規制当局は世界金融危機を受けて、銀行や保険会社が十分な資本を保有しているかどうかを調べるストレステストを導入した。通常は数年にわたる「ショックシナリオ」を用いて財務上のリスクを調査する。
PRAは声明で25年の審査はこれまでと大きく異なり、短期間に悪材料が連続して生じる事態を想定して行うとし、「保険業界と今後6カ月間協力し、対象や設計、スケジュールなどの詳細を24年上半期中に公表する予定だ」と説明した。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は3日、米経済が減速しインフレ率が鈍化しているため、連邦準備理事会(FRB)が政策金利を再び引き上げる緊急性はないが、利下げが適切になるまでには「長い時間」がかかると述べた。
イベントで「私は利上げを急ぐつもりはないし、利下げを急ぐつもりもない」と指摘。「これ以上何かをする緊急性はないと思う。私は据え置きを望んでいる。それが長い時間行うべき適切なことだ」とした。
また現在の政策金利は「経済を減速させ始めている」とし、さらなる政策変更には「忍耐強い」アプローチで取り組み、FRBのこれまでの利上げに経済が適応する時間を与えるよう求めた。
米労働省が3日発表した8月の雇用動態調査(JOLTS)は、求人件数が69万件増の961万件となった。労働市場の逼迫した状況が示され、米連邦準備理事会(FRB)が来月利上げに踏み切る可能性がある。
ロイターがまとめたエコノミスト予想は880万件だった。
7月分は882万7000件から892万件に上方修正された。
イタリアのウルソ企業相は3日、国内インフレ率が現在の5%超から年末までに3.4%に低下する可能性があると述べた。
10─12月に生活費需品の価格を抑制することが寄与するという。
イタリアのインフレ率は緩やかに鈍化しているが、政権にとっては依然として頭痛の種。企業が生産コストの増加分を上回る値上げを行っているとの批判が出ている。
同相はラジオインタビューで「12月31日のインフレ率が3.4%に低下すれば、われわれは満足だろう」とし「インフレに大打撃を与え、同時に消費を喚起したい」と述べた。
政府は先週、インフレ対策の強化で小売業者の業界団体と合意。生産者からの協力も取り付けた。スーパーや小規模商店は10─12月に値下げする食品や食品以外の生活必需品を特定することになっている。
9月のカナダ製造業購買担当者景況指数(PMI)は季節調整済みで47.5と、8月の48.0から低下し、2020年5月以降で最低の水準となった。低調な市場の需要により生産と新規受注が抑えられた。
製造業PMIは5月以降、業況拡大・縮小の分かれ目となる50を割り込んだ水準にとどまっている。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの経済ディレクター、ポール・スミス氏は「世界的な景気の落ち込みと歩調を合わせ、カナダの製造業は9月に低迷が続いた」と指摘した。
9月の生産指数は45.6と、8月の47.7から低下し、2022年8月以降で最低となった。新規受注指数は46.9と、8月の47.7から低下。雇用指数は5カ月連続で下がった。
投入価格指数は8月の53.9から50.4に低下した。
ニュージーランドの総選挙が迫る中、NZ準備銀行(中央銀行)は4日の金融政策決定会合で政策金利を据え置くと見込まれている。ただ、インフレを抑制するために必要であれば、追加利上げの余地があることを示す可能性がある。
ブルームバーグがエコノミスト22人を対象に実施した調査では、全員がオフィシャル・キャッシュレート(OCR)が5.5%に据え置かれると予想。一方、NZ中銀がタカ派的なトーンを維持し、長期にわたって景気抑制的な政策を維持する必要があるとの見解を繰り返すとみられている。
ASB銀行のシニアエコノミスト、マーク・スミス氏は、「インフレの鈍化が中銀が安心できるペースで進まないようであれば、OCRが現水準からさらに引き上げられるリスクは残っている」と指摘。さらに、「総選挙が迫る中で目立った措置は控えて、必要であれば選挙後に政策調整を行うだろう」とみる。総選挙は14日に行われる。
NZ経済は4-6月期に予想を上回る強い成長率となり、原油高の状況下でインフレ期待は依然として高止まりの状態にある。中国の景気鈍化がNZ経済の見通しに追加的な不安要因となっているものの、市場は年内最後となる11月の政策会合で政策金利が5.75%に引き上げられる確率をなお50%程度織り込んでいる。
NZ中銀は現地時間4日午後2時(日本時間午前10時)に決定を発表する。公表するのは金融政策レビューに関する資料であり、新たな経済見通しを盛り込んだ包括的な声明の発表はない。オア総裁による記者会見も予定されていない。
議会は政府予算案の可決やウクライナ向け追加支援の検討など急務に直面する中で未知の領域に置かれた。
ホワイトハウスは、下院が速やかに後任議長を選出することを望んでいると述べた。
米政治専門サイトのポリティコが関係筋の話として伝えたところによると、マッカーシー氏は下院議長に再度立候補しない意向。
誰が後任に就くかは不明だ。スティーブ・スカリス議員やトム・エマー議員ら他の共和党指導部が候補になる可能性があるが、いずれも公には関心を表明していない。
臨時議長には同党指導部のパトリック・マクヘンリー議員が指名された。
カナダ銀行(中央銀行)のビンセント副総裁は3日、新型コロナウイルスのパンデミック以降に企業が増大したコストを消費者に転嫁する動きが強まっており、インフレを助長させかねないとの懸念を示した。
中銀は9月6日の会合で政策金利を5%に据え置くことを決め、カナダ経済は成長が弱まる局面に入ったと述べた。ただ物価圧力が根強い場合は、追加利上げに踏み切る可能性があるとも強調した。
今月25日の次回会合後には、最新の経済物価見通しが公表される。
こうした中でビンセント氏は、パンデミックで生じた値上げはより頻繁化し、上げ幅は通常より大きくなったと指摘。「国内外で見られるこの企業の価格設定行動は、われわれが目にしている予想外に強い物価上昇率と直接つながっている」と説明した。
さらにビンセント氏は、カナダ経済にとって最大のリスクは恐らくこうした価格設定行動の永続化になると警鐘を鳴らした。
中銀は物価上昇率について、次第に減速して2025年半ばまでに目標の2%に収まると想定している。しかしビンセント氏は、まだ困難な時期を抜け出していないのは明らかで、異例なほど大きな不確実性が中銀の見通しに影を落とし続けていると述べた。
カナダの8月の物価上昇率は前年比4.0%と、ガソリン価格の上昇を背景に7月の3.3%から加速。昨年3月からの計10回にわたる利上げでも、その効果がまだ十分に物価動向に伝わっていない可能性がうかがえる。
ビンセント氏によると、企業は今後もパンデミック前より大幅かつ頻繁な価格変更を実施する見込み。「最近の一部投入コストの減少が過去2年の値上げと同じ幅とスピードで価格に転嫁されるかどうかはまだ分からない」という。
米投資適格級債の平均最低利回り(YTW)は6.15%となり、昨年の高水準である6.13%を上回った。クレジットサイツのグローバル戦略責任者ウィニー・サイザー氏によると、急増する財政赤字への懸念が利回りを押し上げている。
米金融当局が長期にわたり高金利を維持するとの見方に加え、「米国以外の多くの投資家にとっては為替ヘッジの観点から、ドル高で米債券の妙味が薄れていること」も要因だと同氏は指摘する。
また投資適格級債券のスプレッドは、7月末に今年の最低水準である112ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)をつけて以降、11bp拡大している。根強いインフレ懸念を受けて米国債への売りが継続しており、利回りが数十年ぶりの高水準をつけていることが一因だ。ボラティリティーの高まりを受け、3日には少なくとも投資適格級の発行体2社が起債計画を見送った。
米10年国債利回りは、3日の取引で4.75%を上回った。今週のオプションの動きを見る限り、トレーダーは5%に達する可能性に備えリスクヘッジに動いている。この水準を予測したウォール街の専門家は、いたとしてもごくわずかだ。
UBSセキュリティーズの米金利戦略責任者マイケル・クロハティー氏は「動きのスピードが全てのバリューバイヤーをおびえさせた。ここで問題なのは次の72時間に何が起きるかだ」と指摘した。
ワシントンで開催された「フォーチュンCEOイニシアチブ」会議での議論で、イエレン氏は「人々は、インフレ減速に何が必要かを正確に見極めようとしている」とし、「目にしている経済の底堅さは金利がより高くより長く維持されることを示唆しているのかもしれないが、それは今後分かるだろう。決して既定路線ではないと思う」と語った。
また、グリーンエネルギーへの移行など、投資支出の割合が高まれば、長期的に金利が上昇する可能性はあり得ると述べた。一方、ここ数十年にわたって金利を抑制してきた、人口動態の傾向など構造的要因はなお「健在」だとした。
債券利回りが長期に高止まりするかどうかは「分からないというのが回答だ」と発言。「重要な疑問であり、私も政権もかなり気にしている」と話した。
イエレン氏はまた「持続可能な財政政策」を維持することが重要だと指摘。現在の債務レベルは対応可能との見方を示した上で、長期金利上昇がリスクになりかねないとも示唆した。
「われわれの予測は、金利がより正常なレベルに向かって上昇することを想定しているが、名目ベースではかなり上昇している」と述べた。
イエレン氏は、米経済見通しについては「非常に楽観的」だとした。
●中国・アジア・ロシア・東欧
インドネシア中央銀行は、ドルの需給を管理するため外国為替市場に介入した。
中銀のエディ・スシアント金融管理局長が3日、ロイターに明らかにした。ルピアは市場の混乱で今年1月以来の安値に下落している。
同局長は債券利回りの上昇と資本流出は引き続き「管理可能」だとした上で、利回りを管理するため、債券を買い入れる可能性があるとも述べた。
ルピアは3日の取引で続落し、1月6日以来の安値となる1ドル=1万5610ルピアに下落。10年国債利回りは3月以来の高水準となる7.050%まで上昇した。
同局長はこれについて、タカ派的な米金融政策を受けたリスク資産に対する心理悪化と関係があると指摘。今後も米国債利回りの動きを監視していくと述べた。
9月のインド製造業購買担当者景気指数(PMI)は57.5で、前月の58.6から低下し、5カ月ぶり低水準となった。ただ、インフレ圧力の高まりにもかかわらず需要増加で企業の信頼感は年初来水準に上昇した。
ロイターがまとめた市場予想の58.1を下回ったが、好不況の分かれ目となる50を27カ月連続で上回った。
S&Pグローバルの経済アソシエートディレクター、ポリアンナ・デリマ氏は「インドの製造業では9月に緩やかな減速の兆しが見られた。これは主に新規受注が低調で生産の伸びが抑制されたためだ」と説明した。「ただ、需要も生産も大幅に上向き、アジアや欧州、北米、中東地域の顧客の新規ビジネスも増加した」と指摘した。
新規受注と生産は国内外の需要が好調で大幅増加。それに伴い、企業の業況感も9カ月ぶり高水準となり、先行きの見通しが改善した。
雇用指数は11月以来の高水準だった。投入価格はアルミや石油価格の値下がりで小幅な上昇にとどまった。一方、産出価格は労働コスト高で上昇した。
欧州連合(EU)は、ウクライナのEU加盟協議開始を含むウクライナ支援に関してハンガリーの同意を得るため、ハンガリーへの補助金の凍結を解除することを検討している。複数のEU高官が明らかにした。
ハンガリーは他のEU諸国よりもロシアと緊密な関係を築いており、EU加盟27カ国の全会一致を必要とするウクライナの加盟協議を開始するかどうかの決定に関して反対する可能性が高いとみられている。
また、EUの行政執行機関である欧州委員会は、ウクライナ支援を拡大するため加盟国にEUへの拠出を増やすよう求めている。この決定にも全会一致が必要だ。
EU高官の1人はロイターに対し、ハンガリーの同意を得るために、EUはハンガリーの補助金の状況について検討するだろうと語った。ハンガリーへの補助金は現在、オルバン首相が裁判所の独立性を制限したとして、法の支配への懸念から凍結されている。この高官は「まず凍結された補助金に対する解決なしに、ハンガリーが同意するとは考えられない」と述べた。
もう1人の高官も、ハンガリーへの補助金交付と、加盟国拡大や予算協議など全会一致を必要とするEUの計画との間に関連性があることを認めた。
3人目のEU高官は、約130億ユーロ(136億ドル)が検討されていると述べた。
ただ関係者らは、結論は既定ではなく、国内の景気停滞と財政赤字の拡大に直面しているオルバン氏によるところがかなり大きいことも強調した。
●中東
トルコ統計局が3日発表した9月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比61.53%と、市場予想をわずかに下回った。
最近の増税やリラ安を受けて3カ月連続で加速した。前月比では4.75%上昇。
ロイターがまとめた市場予想は前年同月比61.7%だった。
エコノミストや政府の予測によると、インフレ率は年末に約70%まで加速し、来年5月前後に75%に達する見通し。その後は鈍化が見込まれている。
9月の生産者物価指数(PPI)上昇率は前月比3.40%、前年同月比47.44%だった。
9月のサウジアラビア非石油部門の購買担当者景気指数(PMI、季節調整済み)は57.2で、11カ月ぶり低水準だった8月の56.6から上昇した。
好不況の分かれ目となる50を大きく上回り、長期平均の56.9も再び超えた。
新規事業が急速に拡大する中、生産指数は62.8に上昇。8月は1年7カ月ぶり低水準の59.1だった。
新規受注指数も64.2と4ポイント上昇。ただ、拡大ペースは今年これまでの平均より緩やかにとどまった。
リヤド銀行のチーフエコノミスト、ナイーフ・アルガイス氏は「現在の金融政策環境から生じる困難にもかかわらず、非石油経済は成長を続けている」と指摘。非石油部門の国内総生産(GDP)は政府の開発計画「ビジョン2030」の下で進行中の改革に支えられて引き続き成長を支援し、今年5.5%を上回る伸びを維持するとの見方を示した。
●中南米・アフリカ
●市況
日経先物30783、ダウ先33218、債先144.70、米4.803、独2.9720、仏3.536、西4.071、伊4.935、英4.6290、波5.858、原油89.41、銅8,011、ドル円149.21、ユーロドル1.0471
※10/4 9時30分頃

備忘録(2023/10/2)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
9月のイタリアのHCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)は46.8で、8月の45.4から上昇した。ただ、景況拡大と悪化の分かれ目である50を6カ月連続で下回った。
ロイターがまとめたアナリスト5人の予想中央値は45.4だった。
HCOBのエコノミスト、タリク・カマル・チョードリー氏は「製造業不況に明確な出口がみられない。生産や新規受注、在庫などサブ指数は全て50割れが続いた」と指摘した。
生産指数は43.8から47.4に、新規受注は42.4から43.2に上昇したものの、依然50を下回っている。
イタリア政府は先週、今年の成長率見通しを4月時点の1%から0.8%に、2024年の目標を1.5%から1.2%に引き下げた。
9月の英製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は44.3と、8月の43.0から上昇したものの、依然として景況拡大・悪化の分かれ目となる50を大きく下回った。速報値の44.2からは若干上方修正された。
S&Pグローバルは、内需と外需がさえない中で「生産、新規受注、雇用の全てがさらに縮小した」と説明。今後1年の成長を見込む製造業者は55%で、8月より低下し、9%が縮小を予想したという。
外需の落ち込みは欧州本土、米国、中国、ブラジルと広範囲に及び、世界経済の低迷を反映した。
各社は圧迫された利益率を回復するため、4カ月ぶりに値上げを実施したが、その幅は小さかった。投入コストは特に金属とエネルギーで大幅に低下した。
イタリア政府は9月29日、グロスベースの今年全体の国債発行額見通しを年初時点の3100億-3200億ユーロから3330億ユーロに引き上げた。財政状況悪化や、欧州連合(EU)の復興基金からの拠出分の受け取りが遅れているためだ。
ユーロ圏主要国で国債発行額見通しを上方修正したのはイタリアだけ。ドイツは第4・四半期の要調達額を引き下げ、フランスは今年の国債発行計画を据え置いている。
イタリアの公的債務の対国内総生産(GDP)比は、最新見通しで2023―26年まで140%前後のまま変わらず、EUの財政ルールで求められている60%まで低下する道筋は見えていない。
復興基金の拠出を巡って、EU欧州委員会が設定した条件の達成が難しくなっていることが、イタリア財政の資金繰り悪化につながっている。
JPモルガンは顧客向けノートで、第2回拠出金の受け取りの遅れで一時的な資金不足を補うための国債発行が増えることになるとの見方を示した。
英住宅金融ネーションワイド・ビルディング・ソサエティーによると、最近の住宅ローン金利の上昇が緩和の兆しを見せる中、9月の住宅価格は市場予想を上回った。
ネーションワイドが2日発表した9月の英住宅価格は前月比変わらず。8月までは2カ月連続で下落していた。平均価格は25万7808ポンド(約4700万円)と前年同月から5.3%値下がり。下落率は前月と同じだった。
ネーションワイドのチーフエコノミスト、ロバート・ガードナー氏は、「英国経済の基調的なインフレ圧力がようやく緩和しつつあり、投資家はここ数カ月、政策金利の見通しを後退させている」と述べ、「この状態が続けば、住宅ローンを組み直したり、購入を検討している人々への圧力がいくらか緩和されるだろう」と続けた。
5年物固定住宅ローン金利の平均値は先週、7月上旬以降で初めて6%を下回った。
世界で企業のM&A(合併・買収)に急ブレーキがかかっている。2023年4〜9月のM&Aの取引総額は約1兆1900億ドル(約180兆円)と前年同期比24%減った。同時期としてのマイナスは2年連続。新型コロナウイルス禍からの経済再開で過去最高を更新した21年4〜9月期から縮小を続けている。世界経済の先行き不透明感や利上げで資金調達コストがかさみ、企業が新規投資に慎重になった。
財政規律をめぐる欧州連合(EU)加盟国の足並みが乱れ、イタリアやフランスの国債利回りが上昇圧力にさらされている。新型コロナウイルスとウクライナ侵攻で一時停止されていた財政規律ルールが2024年から再適用されるが、イタリアなどは財政赤字を削減し切れそうにない。EUの不協和音は危機対応で膨らんだ歳出を元に戻すことの難しさを示す。
豪産業・科学・資源省は3日に公表した四半期報告書で、オーストラリア最大の貿易相手国である中国を中心とした世界的な需要鈍化によって、今後2年にわたり資源・エネルギーの輸出収入が打撃を受けるとの見通しを明らかにした。
資源・エネルギー輸出額は2023/24年度に4000億豪ドル(2583億ドル)と、過去最高を記録した昨年度の4670億豪ドル(3015億ドル)から減少、24/25年度には3520億豪ドルになると予測した。
報告書は「中国経済が新型コロナウイルス禍でのロックダウン(都市封鎖)からの回復が遅れているなど、世界経済の減速により資源とエネルギーの輸出収入は減少するだろう。24─25年はさらに減る可能性が高い」との見通しを示した。
一部の商品の供給状況が改善すれば、価格は22年に付けたピークからさらに下がるとみられる。
キング資源相は、輸出収入の減少は、価格がより正常に戻ったことを反映していると述べた。キング氏は声明で「全般的な輸出収入は過去最高から鈍化しつつあるが、オーストラリアの資源・エネルギー輸出は引き続き堅調で、オーストラリア経済の健全性を支え続けている」と表明した
最近はコロナ前の低インフレ時代にはもう戻らない、という見方が主流になっている。カンザスシティ連銀は毎年8月下旬にジャクソンホール会合を主催するが、今年のテーマは「世界経済の構造変化」であった。
第1の構造変化は労働市場に関するものである。先進国は人口の高齢化が進行中であり、労働力不足が次第に問題になる可能性はかねてから認識されていた。そこへ訪れたコロナ禍は、労働需給のミスマッチや働く側の意識の変化を引き起こし、労働供給の制約が顕在化するのを加速させた可能性が高い。
第2に、エネルギー転換である。脱炭素化という世界的な課題に対応するには多額の投資が必要であり、それに伴う財政支出も増えていく。一方で、新エネルギーの安定供給が実現するには長い時間を要し、その間に既存のエネルギーを増やす投資は行われにくい。
第3に、地政学的な理由による世界経済の分断である。過去数十年間続いたグローバリゼーションは曲がり角を迎えており、効率的でショックにも強いサプライチェーンを維持するのは難しくなった。
これらの変化の結果、世界経済は様々な供給ショックに見舞われやすくなったのではないかとラガルド総裁は言う。米欧の中央銀行が当初「インフレは一時的」と判断したのは、物価上昇が主として供給ショックによるものだったからである。
しかし、供給ショックそのものが頻繁に起きる、あるいはしぶといものになるのであれば「供給ショックだから一時的」という理屈はもう成り立たない。
供給ショックが厄介なのは、景気が良くなっているわけでもないのにインフレが起きてしまうことである。供給ショックは経済成長をむしろ低下させるので、政治的にも財政政策を拡張的にする動機が強まる。
かくしてコロナ後のインフレは、むしろ供給ショックであったからこそ制御しにくいものとなり、最終的に大幅な利上げが必要になったのだと考えられる。
供給制約が強まる構造変化は世界的な現象であるから、日本も例外ではない。実際、日本の個人消費は前述の通り極めて弱い状態にあるが、その下で約40年ぶりのインフレが起きている。
YCCやマイナス金利の解除が現実味を帯びてきているのは、日本経済が強くなったからではなく、労働力を中心とする国内の供給制約や、資源などを含めた世界的な供給制約の影響が強まっているからである。
それはおそらく構造要因なので、日本の物価情勢もコロナ前に戻る可能性は低く、米国と同様に日本の中立金利も上昇していきそうだ。
ただし、その初期値は米国と日本では大きく異なる。米国は2.5%からの上昇だが、日本はおそらく大幅なマイナスからの上昇である。日本は約25年にわたり金利がゼロ近辺に張りついており、その下でデフレや低インフレが常態化していたのだから、その間の中立金利はかなりのマイナスであったと考えるべきである。
大幅なマイナスからスタートするなら、たとえ1─2%上がっても、日本の中立金利はたいしたプラスにはならないかもしれない。YCCやマイナス金利の解除まではこぎつけられるとしても、それだけでは円高インパクトとして力不足かもしれない。
7-9月(第3四半期)の米新車販売台数は、ローン金利上昇や価格の高止まりにもかかわらず、プラスとなったもようだ。自動車の平均使用年数が12年余りに上っており、消費者が買い換えを迫られていることが背景にある。
調査会社コックス・オートモーティブによると、7-9月の新車販売台数は季節調整済みの年率換算で15%余り増の1540万台となる見通し。
通年では、14%近い伸びになるとコックスでは予測している。価格はなお高止まりしているものの、過去最高からは下がっていることが支援しているという。同社によると、新車価格は平均で約4万7000ドル(約704万円)と、今年早い時期の5万ドル近くからやや下がっている。
9月の販売は好調だった。アナリスト5人のコンセンサス予想は季節調整済みの年率換算で1540万台余りと、1年前の1360万台から増加している。
ダイモン氏は2日行われたブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「テクノロジーのおかげで、あなたの子供たちは100歳まで生き、がんにかかることもないだろう」と発言。「そしてまさに、彼らは恐らく週3日半の勤務になるだろう」と話した。
AIを「当行の将来的な成功に不可欠」だと位置づけるダイモン氏は、新商品開発や顧客とのやり取り、生産性改善、リスク管理向上を支援するために活用することができると、以前に語っていた。
AIにはポジティブな面もあるが、リスクももたらすとダイモン氏は指摘。「テクノロジーは人類にとって信じ難いほど素晴らしいことを成し遂げてきたが、航空機の墜落や医薬品の誤用などマイナス面もある」とし、「AIに関しては悪い人々に悪用されることが最大のマイナス面だと私は考える」と続けた。
米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、今年に入り米西海岸の有力銀行2行が破綻したことを受け、新興企業やベンチャーキャピタル(VC)向けの事業拡大に取り組んでいることを明らかにした。
ダイモン氏はまた、米国の消費者と企業は現在好調だが、量的引き締めや地政学的な緊張といった強い逆風があるとの警告をあらためて繰り返した。同氏は「さらなる金利上昇と成長鈍化に備えるべきだ」と警戒感を示し、「最悪のケースはスタグフレーションだ」と続けた。
米連邦準備制度理事会(FRB)のバー副議長(銀行監督担当)は2日、FRBが十分に景気抑制的な金利水準に「達しているか、極めて接近している可能性が高い」と述べ、追加利上げの是非に関して慎重に進めることが可能だとするパウエルFRB議長と同様の見解を示した。
バー氏はニューヨークで開かれたフォーキャスターズ・クラブのイベントで、より大きな問題は金利がいつまで高止まりする必要があるかだと指摘。これまでの利上げの完全な効果は向こう数カ月に表れると付け加えた。
バー氏は講演後の質疑応答で、「インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な景気抑制的水準に達しているか、極めて接近している可能性が高いと思う」と発言。
「われわれは長期的な金利の道筋を考えることにますます重点を置くようになると思う。インフレ率を2%まで下げるために金利はしばらくの間高止まりする必要がある。2%に到達すると私は確信している」と話した。
イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会(MPC)のマン委員は2日、インフレ退治の手を緩めないよう警告し、高水準の金利が恒久的に続くとの見通しを示した。
MPCメンバーの中でも特にタカ派寄りのマン氏はイベントに出席し、金利は景気抑制的な領域に到達したばかりだと主張した。英中銀は先月、一連の利上げサイクルを休止し、政策金利を据え置いた。
同氏は「金融政策報告が示す予測は、私が想定する展開とは長期にわたり根本的に異なるシナリオを描いてきたと考えている」と述べ、「私は内需がいっそう底堅く、物価上昇圧力がより持続的だとみている。従って、一段と景気抑制的な金融政策スタンスが求められている」と続けた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
インドネシアで2日、東南アジア初となる高速鉄道が開業した。中国が建設を主導し、首都ジャカルタから西ジャワ州の主要都市バンドンの約140キロメートルを36分で結ぶ。経済効果の拡大に向け、第2の都市スラバヤまでの延伸構想も出ているが、資金負担などで曲折も予想される。
世界銀行は、中国の2024年の成長率予測を4月時点の4.8%から4.4%に引き下げた。不動産分野の低迷が理由。23年の予測は5.1%で据え置いた。
中国を含む東アジア・太平洋地域の成長率については、23年を5.1%から5.0%にわずかに引き下げた。24年は、世界経済の低迷、高金利、貿易保護主義などの外的要因が下押しするとして4.8%から4.5%に下方修正した。
「22年、世界の貿易には19年の3倍となる3000件近い規制が新たに課された」と世銀は指摘した。
中国については、3年にわたるゼロコロナ政策解除後の経済回復が勢いを失い、債務問題を抱えた不動産セクターの低迷が成長の重しになっていると述べた。
戸籍制度「戸口」のさらなる緩和、社会保障制度の充実化、革新的でグリーンな製品への投資規制の予測可能性を高めるなど、より強力な構造改革が消費と投資を活性化させ、持続可能な成長の基盤を作ることができると指摘した。
財新智庫の王喆シニアエコノミストは9月製造業PMIの発表文で、「中国経済は安定化の兆しを示した」としながらも、「内需不足や外需の先行き不透明感、労働市場への圧迫で、景気回復の基盤はまだ強固ではない」と指摘した。
ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストらは1日のリポートで、「ビジネス活動の減速が需要の下振れと関連していることを調査対象の企業は示唆している」と分析。今回のサービス業指数が弱めとなった理由について、厳格な新型コロナウイルス対策の撤廃に伴う経済再開効果の減退や不動産市場の低迷が重なったためではないかとの見方を示した。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、消費喚起や不動産市場の下支えに向けて支援策の強化が必要だと指摘。中国人民銀行(中央銀行)が追加利下げや預金準備率引き下げに踏み切り、市中銀行の貸し出し原資を拡充すると見込んだ。
ロシア中央銀行は金融引き締めを加速している。15日開いた金融政策決定会合で政策金利を1%引き上げ、年13%と3会合連続で利上げを実施した。通貨安によるインフレの抑制につなげる狙い。ロシア中銀は2023年のインフレ見通しを上方修正しており、一段の利上げに踏み切る可能性もある。
●中東
サウジアラビアは、財務省が30日に発表した暫定予算案で、今年の経済成長率予想を下方修正するとともに、財政収支見通しも黒字から赤字に修正した。
今年の実質国内総生産(GDP)予想は0.03%増で前回の3.1%増から大幅に修正。財政収支はGDP比2%に相当する赤字と予想され、同0.4%の黒字から修正した。
歳入は1兆1800億リヤル(3146億4000万ドル)、歳出は1兆2620億リヤルと予想。前回予想はそれぞれ1兆1300億リヤルと1兆1140億リヤルだった。
サウジは原油市場安定のためとして原油を大幅に減産している。
原油価格は昨年の平均を下回る1バレル=100ドルの水準にとどまっている。
●中南米・アフリカ
メキシコ銀行(中央銀行)は2日、海外からメキシコへの8月の送金額が55億6300万ドル(約8300億円)と前年同月比8.6%増えたと発表した。単月の増加は40カ月連続。通貨高による目減りを見越し、出稼ぎ労働者がメキシコ国内への送金額を積み増しているようだ。
●市況
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。金利上昇を嫌気した売りが相場を圧迫した。
英防衛大手BAEシステムズ(BAES.L)は1.1%上昇。米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」プログラムの一環として次世代攻撃型原子力潜水艦を建造するため、英国と40億ポンド(49億ドル)の契約を結んだことが好感された。さらに、ベレンベルクによる投資判断引き上げを受けて、株価は一段高となった。
上下水道・廃棄物処理のペノン・グループ(PNN.L)、水道事業のユナイテッド・ユーティリティーズ(UU.L)はそれぞれ3.8%、0.3%上昇。今後5年間にわたる規制期間のそれぞれの投資計画概要を発表したことが材料視された。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。国債利回りの上昇が株価を圧迫した。また、ユーロ圏の製造業が引き続き幅広く低迷していることを示す指標も嫌気され、売りが優勢となった。
<ユーロ圏債券> 独10年債利回りが先週に付けた12年ぶりの高水準に向け再び上昇した。
<為替> 終盤のニューヨーク外為市場では、ドルが上昇した。米政府機関の閉鎖が回避されたことや、経済指標を受けて米連邦準備理事会(FRB)が利上げを長期化させるとの見方が再び強化されたことが背景。
<債券> 米金融・債券市場では、米連邦政府機関の閉鎖が土壇場で回避されたことで安全資産としての国債の需要が薄れ、10年債利回りが16年ぶりの高水準を更新した。
<株式> 米国株式市場はS&P総合500種(.SPX)がほぼ横ばいで取引を終えた。公益事業株が大幅安となった。市場では連邦準備理事会(FRB)が金利をより長期にわたりより高水準に維持しなければならなくなる可能性が注視されている。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、対ユーロでのドル高を背景とした売りが優勢となり、3営業日続落した。
複数の関係筋がロイターに明らかにしたところによると、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の合同閣僚監視委員会(JMMC)は4日に実施のオンライン会合で、現行の生産方針を維持する可能性が高いと見込まれている。主要産油国による供給削減が原油価格の高騰を招く中、市場では需給引き締まり観測が依然として根強く、原油の下値を抑えたもようだ。
日経先物31595、ダウ先33630、債先144.71、米4.685、独2.9135、仏3.477、西3.987、伊4.802、英4.5990、波5.891、原油88.55、銅8,066、ドル円149.87、ユーロドル1.0477
※10/3 8時15分頃

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