2023年10月24日火曜日

中東情勢ニュースまとめ(10月23日~29日)

<10月30日朝まで>
イスラエル軍は29日もイスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を展開した。イスラエルのネタニヤフ首相は3週間にわたる戦争が第2段階に入ったと表明した。
首相は28日にテルアビブで記者会見し、イスラエル国民に「長く厳しい」戦いになるとの見通しを示した。また、ハマスが拘束している外国人を含む200人以上の人質解放に向けた努力を惜しまないと語った。
今のところ地上作戦は限定的なものにとどまっているもようだ。米当局者の話では、バイデン米大統領の側近がイスラエル側に早急な総攻撃は控えるよう助言したとされる。
ネタニヤフ首相は「これは戦争の第2段階であり、ハマスの統治・軍事能力を破壊し、人質を自宅に帰すという明確な目標がある」と説明。「地上と地下の敵を破壊する」と述べた。
イスラエル軍は29日、パレスチナ自治区ガザの住民に対する南部への退避要請は緊急を要するものだと表明した。
イスラエル軍のハガリ主席報道官は「ここ2週間、ガザ地区北部とガザ市の住民に対し一時的に南に移動するよう呼びかけてきた。南への移動は住民の身の安全のためだ」とした上で、「われわれは本日、これが緊急の呼びかけであることを強調する」と述べた。
ガザで拘束されていることが確認された人質の数が239人に増えたとも明らかにした。
レバノンの親イラン組織ヒズボラは29日、レバノン南部上空でイスラエルのドローン(無人機)を地対空ミサイルで撃墜したと発表した。
イスラエルとの国境から約5キロの町キアム周辺で撃墜し、イスラエル領内に落下したという。複数のレバノン治安筋によると、ヒズボラがイスラエルの無人機撃墜を発表するのは初めて。
イスラエルの国防省や軍はコメントしていない。
カーネギー中東センターのモハナド・ハジ・アリ氏は、ヒズボラは無人機を撃墜する能力があることを示唆していたが、公表するのは初めてだと指摘した。
イスラエル軍は同日、イスラエルに向けて対戦車ミサイルを発射しようとしたレバノン南部の拠点を攻撃したと発表。レバノン領内からの飛翔体発射を受けてヒズボラの標的を航空機で攻撃したと明らかにした。
ヒズボラはこれまでにイスラエルとの国境沿いの42地点に84回の攻撃を行い、戦闘員46人が死亡したと述べた。一方、イスラエル軍は少なくとも7人の兵士が死亡したとしている。
中東における政策、暴力、和平に対する米国のアプローチを定義するうえで、「二重」ほどふさわしい言葉はない。その理由は、米国がずっと前に、イスラエルが何をしようと、あるいは何を要求しようと、同国を支援しようと決めたことだ。米国とイスラエルの関係は偽善と例外主義に基づいている。すなわち、暴力に関する偽善と、イスラエルの利益を他より優先する例外主義である。
この二重の政策が最も顕著なのは、ガザ地区に閉じ込められている200万人の民間人に対してイスラエルが今も続けている残忍な攻撃に関してである。10月7日、過激派組織ハマスが同地区からイスラエルの標的に対して恐ろしい攻撃を開始し、イスラエル自体はもとより世界を驚かせた。この攻撃については誇張はあるものの、多くの罪のない民間人と非番のイスラエル軍兵士が殺害され、負傷し、拉致された。
イスラエル軍が同国のパレスチナ人に対する行いに関するあらゆるメディア報道を厳しく統制・検閲しているため、どこまでが真実でどこからが虚偽であるかを知るのは困難である。しかし、二重という言葉は即座に当てはまる。
例えば、米国はこの紛争に関するニュースに対して二重のアプローチを取っている。米当局者は、イスラエルがメディアプロパガンダキャンペーンで主張することならば何であれ疑いなく受け入れる。最終的に誇張あるいは全くの嘘であることが証拠によって示された時でさえ、それに固執する。暴力に対するこうした二重のアプローチには呆然とさせられる。10月7日にイスラエルを襲ったハマス戦闘員らは、1000人以上の民間人と300人のイスラエル軍兵士の命を奪った。米当局はイスラエルと共にこの「大虐殺」に対する憤りを表明しつつ、イスラエル軍で軍務に就いていた人々を含む全ての死者を「犠牲者」と見なした。
ここで二重性が表面化する。その同じ米当局者らが、イスラエルによるガザ地区の民間人に対する空爆がもたらした、それより圧倒的に多い死者数を無視しているのだ。イスラエルの空爆は何百軒もの住宅、病院、モスク、教会を破壊し、6000人以上のパレスチナ人を殺害している。米国が停戦の呼びかけを阻止する限り、この数字は増加し続けるだろう。
ジョー・バイデン大統領もアントニー・ブリンケン国務長官も、罪のない民間人の殺害を終わらせるための停戦を呼びかけることを拒否している。これは、イスラエル人の命のことは気にするがパレスチナ人の命への関心に欠ける米国の二重政策を反映したものだ。その二重性を隠すために、バイデン大統領とブリンケン国務長官は民間人の殺害を止めることが必要だと表明したが、現在行われている唯一の殺戮はイスラエルによるパレスチナ人を標的とした無差別殺戮であることには言及しなかった。
米国の二重政策のもう一つの例は、イスラエルからの出国を希望する米国人の退避のためにバイデン政権が懸命になっていることだ。バイデン大統領は実際、イスラエルに要件を満たす能力やプログラムを公平に適用する意思があるのかという懸念があるにもかかわらず、イスラエル国民がビザなしで米国に入国することを可能にするビザ免除プログラムへのイスラエルの参加を迅速に認めた。一方でバイデン政権が行っていないのは、ガザ地区にいる米国人を退避させることだ。数百人の米国民がラファ国境検問所に身を寄せているにもかかわらずだ。彼らはこの検問所を通過できないが、米国は彼らを助けるために何もしていない。
二重という言葉は国籍に対する忠誠心にも及ぶ。イスラエル人の多くは米国とイスラエルの二重国籍を持っている。民族的起源に関係なく、18歳以上のイスラエル人は全員イスラエル軍での兵役を求められる。一方、米国民には兵役義務はない。そのため、イスラエルと米国の二重国籍者が守らなければならないのはイスラエルだけであり、米国を守る必要はない。人質に取られている人々をはじめとする「イスラエルにいる米国人の命」に関する懸念を米国が表明する時、その問題には触れない。
パレスチナにルーツを持つ米国人であり、ベトナム戦争の時には誇りを持って米軍に従軍した私は、兵役を務めることを希望する米国人は外国の軍ではなく米軍でそうすべきだと考えている。
バイデン大統領もブリンケン国務長官も取り上げようとしない疑問は、ハマスに囚われている米国人人質は実際に米国人なのか、それとも二重国籍を持っていてイスラエル軍で兵役に就いているが米軍では就いていないイスラエル人なのか、というものだ。「米国人」という呼称の使用は適切なのだろうか。
最後に、紛争で死亡した米国人に関して、米国は紛れもない二重政策を取っている。イスラエル系米国人の命は神聖なものとされる。バイデン大統領もブリンケン国務長官も、彼らに関する懸念を繰り返し強く表明している。しかし、パレスチナ系米国人が殺された時、米政府はどのように反応してきただろうか。ほぼ毎回、彼らの悲劇的な運命に対しては弱い懸念しか表明していない。
昨年、2人の米国人がイスラエル軍兵士によって殺害された。2022年1月、ヨルダン川西岸地区のパレスチナの村において夜間に急襲が行われた際、パレスチナ系米国人のオマル・アサドさん(78)が激しく殴られ、目隠しされ、虐待された。彼はいかなるテロ活動にも関与していなかったため、面目が立たなくなったイスラエル政府は、調査を行ったうえで関与した兵士を罰すると述べた。イスラエル政府はそれから何ヶ月も後に、関与した兵士らは懲戒処分とするが起訴はしないと発表した。
2022年5月には、パレスチナの都市ジェニンに対するイスラエルの急襲を記者として取材していたパレスチナ系米国人のシリーン・アブアクラ氏がイスラエル軍兵士に銃撃され死亡した。この殺人に関して裁判は行われていない。真相究明を求める厳しい言葉さえない。米国は、同氏が撃たれたのは事故だったとのイスラエルの主張を単純に受け入れた。
さらに遡ると、2003年に米国人活動家のレイチェル・コリー氏がイスラエル軍のブルドーザーによって轢き殺されたが、米政府は彼女の殺害について調査しなかった。2010年のガザ支援船団急襲事件では、マビ・マルマラ号に乗っていたトルコ系米国人のフルカン・ドガンさん(18)がイスラエル軍兵士らによって殺害された。2016年には、パレスチナ系米国人のマフムード・シャアランさん(16)がヨルダン川西岸地区の検問所を通過中にイスラエル軍によって殺された。
米政府による懸念の表明のバランスが取れていないことは、あらゆるレベルにおける二重の道徳規範を反映している。すなわち、イスラエルについては高いが、パレスチナ人についてはほぼ存在しない道徳規範である。
多くの人は認識している。イスラエル・パレスチナ紛争の文脈における二重という言葉が実際に意味するのは偽善であることを。
テヘラン:イランのイブラヒム・ライシ大統領は29日、イスラエルによるガザへの継続的な爆撃は「すべて者を行動に駆り立てるきっかけとなるかもしれない」と述べた。これは、イスラエル・ハマスの紛争が始まって以来、イランが発した最新の警告である。
10月7日ハマスの武装集団が境界を超えてイスラエルを襲撃した。イスラエル当局によると、これにより民間人を中心に1400人以上の人々が殺害された。それ以来、イスラエルはこの小さなパレスチナ領土を激しく攻撃している。
ハマスが運営するガザの保健省によれば、現在までに8000人以上が殺害され、その半数は子どもだという。この貧しい地区の人口は約240万人である。
「シオニスト政権の犯罪はレッドラインを超えた。これは、すべて者を行動に駆り立てるきっかけとなるかもしれない」と、ライシ大統領は29日、X(旧ツイッター)に投稿した。
「米国は我々に何もしないよう求めている。しかし、彼らはイスラエルに広範な支援を与え続けている」
「米国は『抵抗枢軸』にメッセージを送ったが、戦場では明確な返答を突き付けられた」と彼は述べた。「抵抗枢軸」という言葉は、イラン政府高官が同国、および同盟組織であるレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクとシリアのシーア派勢力を指す場合によく使用されている。
彼が具体的に何を指しているのかはすぐにはわからなかったが、ガザ紛争が始まって以来、イラクとシリアでは米軍への攻撃が相次ぎ、レバノン国境ではヒズボラとイスラエル軍との間で武力衝突が増加している。
ハマスに資金的・軍事的支援をしているイランは、10月7日の攻撃を「成功」と称賛した。
しかし、イスラエル当局によれば、同国は230人が人質として拉致されたこの襲撃には関与していないと主張している。
イラン国営通信IRNAが公表した抜粋によれば、イラン大統領は28日のアルジャジーラとのインタビューで、「イランは抵抗組織を支援する義務があると考えている。しかし……抵抗組織はその意見、決定、行動において独立している」と語った。
「米国は我々の現在の能力をよく知っており、それを克服することは不可能だと知っている」と彼は語った。
エルサレム:世界的なネットワーク監視団体であるネットブロックスは29日、ガザ地区のインターネット接続が復旧に向かっていると報告した。同地区のインターネット接続は、イスラエル軍の激しい爆撃により2日ほど前から切断されていた。
「リアルタイムのネットワークデータは、#ガザ地区 のインターネット接続が復旧に向かっていることを示している」と、同監視団体がX(旧Twitter)に投稿した。
ガザ市にいるAFP通信の職員は、午前4時過ぎ(02:00 GMT)に、インターネットの使用が可能になり、ガザ地区南部の人々に電話連絡することができたと語った。
ガザ地区では、イスラエル軍の爆撃によって27日から全域でインターネットと電話の回線が切断されていた。
10月7日、ハマスの武装集団がガザ国境を越えてイスラエル国内になだれ込み、イスラエル当局の発表によれば、1,400人(主に民間人)を殺害し、230人を人質として誘拐。イスラエル軍の大規模な爆撃活動は、この後に開始された。
それ以降、イスラエル軍が繰り返すガザ地区への空爆により、8,000人以上(半数は子供)が死亡したと、ハマス管理下の保健省は28日に発表した。
パレスチナ赤新月社は、通信の切断で緊急通報が遮断され、極めて重要な救急サービスが混乱に陥ったと語った。
ベイルート:イスラエルのドローンは28日、国境線から約20キロ離れたレバノンのイクリム・アル・トゥファ地域のジャベル・サフィにミサイル3発を発射した。
ガザ紛争を背景にレバノン南部のヒズボラとの緊張が高まるなか、レバノンでのイスラエル軍による領空侵犯は過去21日間で2度目となった。
砲弾はナクーラにある国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)本部の境界フェンスにも命中し、軽微な損害がでた。
ヒズボラが発射した地対空ミサイルは、アイアンドーム・ミサイルに迎撃され、破壊された。
活動家らは、ティールの東に落ちたパトリオットミサイルの残骸の映像をSNSに投稿している。
先週は、イスラエルのドローンがリタニ川の北、ジャベル・アル・リハンのビルケット・ジャブール地区を標的にした。
今回の攻防は、イスラエル軍が「レバノン領内のヒズボラのインフラを標的にしている」と発表した後に起きたものである。
イスラエルの偵察機は南部国境地帯上空を中高度で飛行した。
イスラエル軍の報道官アヴィチャイ・アドレー氏によれば、イスラエルのドローンは、イスラエル北部のハニータに向けて対戦車ミサイルを発射しようとしていたヒズボラの部隊を標的にしたものだという。
レバノン南部では、イスラエル軍がナクーラのラブネ郊外に20発以上の焼夷弾を撃ち込んだ。
イスラエル軍のリン弾により、アルマ・アル・シャアビ近郊でも火災が発生した。現場に向かった消防士たちは、イスラエル軍の砲撃により撤退を余儀なくされた。
レバノンの医師会は、国際的に禁止されているリン弾を使用しないようイスラエルに警告し、違法な使用を記録に残すため、とくに負傷した場合に皮膚からサンプルを採取するよう当局に求めた。
医師会はまた、「戦闘員と市民は、窒息死を避けるため、濡れた布を口と鼻に当てるように」と勧告している。
米国は、「予断を許さない治安状況のため」レバノンにいる自国民に対し、民間便が就航している間に退避するようあらためて呼びかけた。
米大使館はXで、「危機的状況下において、米政府が米国民とその家族を救出する保証はない」と述べた。
レバノン民間航空局は27日、必要時に空港から避難するための緊急計画に関する通達を出したが、これは市民の間に混乱を引き起こした。
民間航空局のファディ・アル・ハッサン局長代理は次のように述べた。「ベイルートのラフィク・ハリリ国際空港は現在も通常通り運航しています。現在のところ、ルフトハンザとサウディアの2社がベイルート便の運航を停止していますが、その他の航空会社は通常通り運航しています」
アル・ハッサン氏によれば、1日あたり4,000人から5,000人の乗客がレバノンに到着し、一方、出発する乗客の数は6,000人から7,000人だという。
「現在の状況を考えれば、この数字は非常に妥当なものです」とハッサン氏は述べている。
ナジーブ・ミカティ暫定首相は、レバノンの大ムフティー、アブドゥルラティフ・デリャン師と会談し、ガザ地区の情勢について話し合った。
ミカティ氏は、「政府は、レバノン南部とガザに対するイスラエルの侵略を止めるため、地域的にも国際的にも外交的、政治的な努力をしています」と述べた。
ミカティ氏は、政府には「起こりうる事態の影響を緩和するための緊急計画」があるという。
ヒズボラ中央評議会のシェイク・ナビル・カウク氏は、「地上のレジスタンスはガザへの侵略を注視している」と述べた。
そのうえで「ヒズボラはあらゆるシナリオに備えており、多くの驚きを用意している」と述べ、米国はヒズボラの姿勢について疑いを抱くべきでないと警告した。
「われわれは(米国を)安心させたいのではなく、むしろ、さらに懸念を強めさせたいのだ」と彼は言う。
イスタンブール:イスラエルは29日、トルコから外交官を呼び戻すと発表した。イスラエルがガザ地区の過激派組織ハマスに対して実施している軍事作戦を、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が激しく批判したことを受けたものだ。
この発表は、10年間ほぼ凍結されている政治的・経済的関係を回復するために両国が始めたばかりの努力に大打撃を与えた。
イスラエルとトルコ(圧倒的多数がイスラム教徒の国で、NATOの防衛にとっては中東の端で防波堤となっている)は昨年、相互の大使の再任で合意したばかりだった。
両国はまた、米国が支援する天然ガスパイプラインプロジェクトに関する協議を再開していたところだった。それは、今後数年間のより緊密で持続的な協力の基礎を築く可能性があるものだった。
しかし両国関係は、イスラエルがガザ地区のハマスに対して行っている報復的軍事作戦について、エルドアン大統領が批判のペースと激しさを上げ始めたことで破綻した。
10月7日、ハマス戦闘員らは奇襲攻撃を仕掛けて1400人(その大半は民間人)を殺害し、220人以上の人質を取った。
ハマス傘下のガザ保健省は、イスラエルの空爆による死者は7703人(やはり大半が民間人)で、そのうち3500人以上が子供だと発表した。
エルドアン大統領率いる親イスラム政党は28日、イスタンブールで大規模な集会を開いた。同大統領によると150万人が集まったという。
同大統領は、トルコ国旗とパレスチナの旗を振る支持者の群衆に対し、「イスラエル、あなた方は占領者だ」と糾弾した。
また、イスラエル政府は「戦争犯罪人」のようにふるまい、パレスチナ人を「全滅」させようとしていると非難した。
「もちろん、どの国にも自衛権はある。しかし今回の場合、正義はどこにあるのか。正義などない。ただガザ地区で残酷な虐殺が起きているだけだ」
エルドアン大統領がこの演説を終えた直後、イスラエルのエリ・コーヘン外相はトルコから全ての外交官を呼び戻したと述べた。
同外相は声明の中で次のように言った。「トルコによる由々しき発言を受け、同国にいる外交代表らに帰国を指示した。イスラエルとトルコの関係の再検討を実施するためだ」
イスラエルは既に今月、安全のための措置として、トルコを含む地域諸国に駐在する外交官に帰国を指示していた。
あるトルコ外交筋によると、10月19日までにイスラエルの外交官は全員トルコから出国していたという。
この外交筋は、「コーヘン外相が誰に帰国指示を出したのかは理解し難い」と語った。
しかし、コーヘン外相の声明は外交官の引き上げに新たな外交的次元を加えている。
同外相の声明は、エルドアン大統領自身が今週、「非人道的」戦争を理由にイスラエル訪問計画をキャンセルすると発表したことに続くものだ。
両国の外交関係は今や、ガザ地区への援助物資を運んでいたトルコの船舶がイスラエルに急襲され民間人10人が死亡した事件が起こった2010年のような最悪の状態にまで転落する危機にある。
エルドアン大統領は20年におよぶ在任期間を通し、パレスチナ人の権利に対する外国の有力な支持者であり続けてきた。
同大統領は28日の集会で、イスラエルは欧米諸国が中東に自分たちの権威を押し付けるために利用している「地域における手先」だと述べた。
同大統領は、「ガザ地区で行われている虐殺の背後にいる首謀者は欧米だ」と断言した。
さらに、イスラエルの同盟諸国が「十字軍戦争の雰囲気」を作り出してキリスト教徒とイスラム教徒を戦わせようとしていると非難した。
「我々の対話の呼びかけを聞いてほしい」と同大統領は言った。「公正な和平なら誰も損をしない」
エルドアン大統領の演説は、イスタンブールやその他の主要都市で、トルコの右寄りの団体やイスラム保守派団体が主催する親パレスチナデモが数日にわたり行われたことを受けたものだ。
しかし、メトロポールが今週公開した世論調査では、回答者の過半数が、この戦争に関してトルコが中立を保つか仲介役を務めようと努力することを望むと答えている。
この調査では、「ハマスを支持する」と答えたのは11.3%だった。
一方、トルコは「中立」を保つべきという回答は34.5%、仲介役を務めるべきだという回答は26.4%だった。
「イスラエルを支持する」と答えたのは僅か3.0%だった。
ロンドン:10月28日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長はイスラエルがガザ爆撃を「前代未聞の規模でエスカレート」させていることを厳しく批判し、支援物資を届けるために即時の人道的停戦を再度求めた。
「中東において、少なくとも人道的戦闘休止に関して合意が成立しつつあるように思われたことに私は勇気づけられた」とグテーレス氏は声明の中で述べた。「しかし残念ながら、爆撃は前代未聞の規模でエスカレートしており、人道上の目的を損なっている」
グテーレス氏はカタールの首都ドーハを訪れてムハンマド・ビン・アブドルラフマンカタール外相と会談したが、ドーハ滞在中にこの現状を覆すよう呼びかけた。
グテーレス氏が発言したのと同じ28日、イスラエルはハマスとの戦争が「新たな段階に入った」と宣言しており、イスラエル史上もっとも壊滅的な被害をきっかけとする紛争の開始から3週間が経過した現在、イスラエル軍はガザに容赦のない激しい攻撃を加え続けている。
10月7日にハマスの武装集団がガザの国境を越えてイスラエル領内に押し寄せ、その大半が民間人である1,400人を殺害し、220人以上を連れ去って以来、イスラエルは空襲を行っている。
ハマスの支配下にあるガザの保健省によると、イスラエルの攻撃によりその大半が民間人である7,703人が犠牲になり、内3,500人以上は子供である。
「人道的停戦を即時に行うようにという要求、および人質の無条件解放とガザの人々の深刻な必要に見合った水準の救援物資の搬入を行うようにという要求をあらためてここで繰り返す。ガザでは、私たちの目の前で人道的惨禍が繰り広げられている」とグテーレス氏はX(旧ツイッター)に投稿した。
ハマスの政治局をドーハに受け入れているカタールはこれまでに数百万ドル相当の財政支援をガザに行っており、ハマスとイスラエルの捕虜交換を仲介する取り組みに関わっている。
カタール外務省の声明によると、外相は「ガザ地区への無差別爆撃とそこに住む人々を強制的に移住させる試みを断固拒否するカタールの姿勢を強調」した。
外相はまた、「地上戦の激化の危険…とガザ市民および人質の安全の危機」について警告を発した。
一方、EUの外交政策代表ジョセップ・ボレル氏は28日、海沿いにあるガザに夜通し激しい空爆が行われたことを受けて、ガザ地区に人道支援がアクセスするための「一時的休戦」を求めた。
「激しい砲撃が続く中、ガザは完全に停電し、孤立している。UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)はガザの人々の電気、食料、水がない絶望的状況について警告している」とボレル氏はソーシャルメディアに投稿した。
「子供を含むあまりに多くの民間人が犠牲になっている。これは国際人道法違反である」
「人道支援がアクセスするための一時的休戦が即刻必要だ」とボレル氏は続けた。
ボレル氏はまた、「イスラエルに対して続いている無差別のロケット攻撃を含めて」すべての民間人への攻撃を非難し、「人質全員を即刻無条件に開放すること」を求めた。
27日夜、イスラエルはガザへの空爆を拡大し、数百のビルと数千の家屋ががれきと化した。
ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官は28日、イスラエルがガザで大規模な地上攻撃を行えばさらに数千の民間人が犠牲になる可能性があると警告していた。
カイロ: エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は28日、27日にエジプト紅海沿岸の2つの町に無人機が落下した事件を受け、エジプトの主権と同地域における立場を尊重するよう国際社会に対し強く求めた。
エルシーシ大統領はカイロで開催された製造業の展示会の場で、エジプト国民は安全であると感じなければならないし、エジプト軍は国を守ることができると述べ、さらに、エジプトはイスラエルとハマスの紛争における役割を積極的に果たし続け、地域的な紛争に拡大することを望まないと強調した。
アンカラ:10月28日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はイスラエルに対し、イスラエル軍がパレスチナ領への空爆を激化させていることを受け、「ただちにこの狂気を止め」てガザへの「攻撃」を終わらせるよう求めた。
「ガザへのイスラエルの爆撃は昨夜激化し、またしても女性と子供、無辜の市民を標的として進行中の人道危機を悪化させた」とエルドアン氏はXに投稿した。「イスラエルはただちにこの狂気を止め、攻撃を終わらせなければならない」
ベイルート:レバノンの国境の村アイタルーンにおいて、同国軍の軍事車列がイスラエル軍から銃撃を受けたとの報道があった。死傷者は報告されていない。
レバノン南部国境における両者間の衝突は、1日だけ大幅に沈静化したものの、再び激化している
ヒズボラは27日、レバノンのアル・アダイセ村の向かいに位置するミスガブ・アムのイスラエル軍前哨基地を誘導ミサイルで攻撃し、「設備の一部に損害を与えた」と発表した。
また、「アル・サダの前哨基地を誘導ミサイルで」攻撃し、「施設や設備の大部分を破壊するとともに、そこにいた兵士らを死傷させたことが確認された」とも述べた。
ヒズボラによる地上侵攻が懸念される中、国境地域では依然としてイスラエル軍の作戦が行われており、偵察機が上空を飛行している。
27日朝、レバノン南部からアル・マナラの居住地に向けて誘導ミサイル1発が発射され、イスラエル軍は住民に対し避難所に留まるよう指示した。イスラエルは報復として、レバノン南部の村ムハイビブの郊外に戦闘機からミサイル2発を発射した。
それに先立ち、イスラエル軍はブルーラインに隣接する地域(アル・ダイラ、アルマ・アル・シャアブ、ナクーラ、アイタ・アル・シャアブの間)を白リン弾で攻撃し、木々を炎上させた。
ある軍事観測筋は次のように指摘する。「イスラエル軍は標的地点を露出させるために、また焼け跡を利用して密林の中に隠れているヒズボラ構成員の動きを監視するために、国際的に禁止されている白リン弾を意図的に投下した」
この国境地域からは約600世帯がサヘル・アル・ザフラニに避難し、現在は18の村々に散らばっている。
レバノン国営通信は次のように報じた。「レバノン赤十字社との協力のもと、避難民に配布するための約400枚のマットレスと約400枚の毛布が確保された」
10月7日にハマスの「アル・アクサの洪水作戦」が始まって以降、イスラエル軍との衝突で死亡したヒズボラ構成員は約50人に上る。
ヒズボラの議会ブロックの代表であるモハメド・ラード氏は、同組織は「この国を防衛し、我々の安全を守る」と述べた。
聖職者らは27日、犠牲への「対処として、レバノンを救うために大統領選出の問題を解決」すべきだと提案した。
レバノンでは、ヒズボラ支持派と国家主権擁護派の間で分裂している国会が新大統領を選出することができないまま、大統領がほぼ1年間空位となっている。
イスラム・シーア派最高評議会のシェイク・アリ・アル・ハティブ副議長は次のように述べた。「この地域の危険な状況に対し、レバノン人は政治的対立を脇に置き、協力して国家の統一を守るべく、政治的セーフティーネットを速やかに形成しなければならない。レバノンを守るため、そしてこの重大な局面に必要とされる政治的安定を実現するためだ」
「大統領の選出に関して速やかに合意に至ることで、全てのレバノン国民を結束させ、公的機関を再活性化する必要がある。危機や問題に対処し、脅威に対するレバノンのレジリエンスを強化する緊急救助政府の樹立への準備としてだ」
大ジャアファリ・ムフティーのシェイク・アフマド・カバラン師は次のように述べた。「大統領選出の問題と政治的国益の確保に関しては妥協の余地はない」
「大統領選出の問題は主権的に対処されなければならない」
一方、在レバノン・イラン大使館は、テヘランからの代表団が27日にベイルートに到着し、パレスチナ諸派の代表らと面会したと伝えた。
ロンドン:アメリカは27日、ハマスへの資金提供を断つ取り組みを拡大し、1400人以上の死者を出したイスラエルへの攻撃以来、2回目となる、同グループと関連する人物および組織に対する制裁を発表した。
アメリカ財務省外国資産管理局は声明において、新たな制裁は、イランがハマスに資金、後方支援、活動支援を提供していることを強調するものだと述べた。制裁対象には、ハマスのイラン代表やイラン・イスラム革命防衛隊のメンバーも含まれている。
この制裁措置は、ウォーリー・アデエモ財務副長官がロンドンに赴き、アメリカとイギリス両国がテロ組織とみなすハマスへの資金援助を締め出すために、アメリカの最も緊密な同盟国のひとつであるイギリスからの支援を強化するために発表された。
「本日の行動は、テロ対策の制裁権限を行使し、国際的な金融システムを悪用する能力をハマスに与えないよう世界中のパートナーと協力することで、ハマスの資金ネットワークを解体するというアメリカの決意を強調するものだ」とアデエモ財務副長官は述べた。
制裁の対象には、ハマスとイラン政府との連絡役とされるKhaled Qaddoumi氏や、イスラム革命防衛隊のコッズ軍の幹部で、ハマスの戦闘員を訓練・支援したとして告発されているAli Morshed Shirazi氏とMostafa Mohammad Khani氏も含まれている。
アメリカはまた、Martyrs Foundationとしても知られるイランのBonyad Shahidを含む、多くの組織にも制裁措置を科した。アメリカ当局によれば、パレスチナ・イスラム聖戦と密接な関係のある同組織は、ガザを拠点とするアル・アンサール・チャリティー協会を通じて、武装勢力の家族のために数百万ドルを送金しているという。
この送金は「最終的にはテロ活動の勧誘ツールになる」とアメリカは述べた。
制裁措置によって、対象となる個人と組織が所有または管理するアメリカ国内の資産が凍結される。また、対象となる個人・組織による金融取引が封鎖され、資金、商品、サービスの提供が禁止となる。
ワシントン:経済危機がイスラエルと国境を接する国々に徐々に広がっている。エジプト、ヨルダン、レバノン各国の財政的・政治的安定をより悪化させ、さらなる問題を引き起こす、ハマスとの紛争による連鎖反応がおこる可能性が高まっている。
この3カ国はそれぞれ異なる経済的圧力に直面しており、国際通貨基金(IMF)が9月の報告書で、この3カ国は「社会政治的安定」を失うかもしれないと警告するに至った。この警告が発せられたのは、ハマスがイスラエルを攻撃し、バイデン大統領と欧州連合による対応が必要となりそうな経済的混乱が容易に起こりかねない紛争を引き起こした、10月7日の直前のことだった。
世界の指導者や政策アナリストたちが今、この予想された影響を認識し始めている。イスラエル・ハマス紛争の拡大を阻止しようとするバイデン政権は、今回の紛争が3カ国の経済的負担を増大させ、政府を崩壊させる可能性があるとみている。この混乱状態に歯止めがかからなければ、その影響が世界の石油供給にとって極めて重要な地域全体に広がり、世界全体にまで及ぶ可能性がある。
国際弁護士で元財務省職員のクリストファー・スウィフト氏は、「経済的に不安定になればなるほど、その地域の悪人がより簡単に状況を混乱させることになります」と述べた。「経済から政治を切り離すことができるという意見は、少し近視眼的で考えが甘いと思います。政治と経済と安全保障は非常に緊密に連動しているのです」
世界銀行のアジェイ・バンガ総裁は今週サウジアラビアで行われた会議で、戦争により経済成長が「危険な岐路」に立たされたと警鐘を鳴らした。
エジプトの財政状況は深刻で、欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は先週、IMFの関係者との会合に出席した際、IMFはエジプト政府の支援にもっと力を入れるべきであると伝えた。同氏によると、エジプト政府はハマスが掌握するガザ地区からの移民や、スーダンの内戦から逃れてくる人々が流入するかもしれず、圧力を受けているという。
同氏はその後、報道陣に対して「エジプトを支援しよう。エジプトは我々の支援を必要としており、我々はエジプトを支援する必要があるのです」と語った。
米国のジャネット・イエレン財務長官は26日のブルームバーグのイベントで、イスラエル・ハマス紛争の影響について「経済的影響を注意深く見守っている」と述べた。「これまでのところ、世界的な影響はまだそんなに確認されていない」が、戦争が拡大すれば、「もちろん、重大な影響が生じる可能性はある」と語った。
エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、イスラエルがパレスチナ人に永久追放を強制し、パレスチナ人の国家樹立の要求を無効にしようとしているのではないかと懸念し、パレスチナ難民の受け入れを拒否している。同大統領はまた、パレスチナ人の大量移動により武装組織がシナイ半島に流入する危険があるとも述べた。
100万人以上がすでに、ガザ地区内で避難を行っている。また、レバノンとイスラエルの国境沿いでは、イスラエル軍と武装組織ヒズボラが衝突し、紛争激化の脅威が迫っている。
「ガザ住民の移動はないと推測するのは、考えが甘く、時期尚早です」とスウィフト氏は指摘した。「経済的打撃か、あるいはガザ地区からシナイ半島へ大量の住民が突然押し寄せるか、そのいずれであっても、外部からエルシーシ政権に何か突然打撃が加われば、不安定化の要因となるかもしれません」
スウィフト氏によると、エルシーシ政権は米国からの経済援助と軍事援助に大きく依存しているが、エルシーシ氏の行動はますます、エジプト国内の民意に左右されるようになっている。これは、2011年にムバラク政権を打倒した「アラブの春」の抗議行動から学んだ教訓であるという。
IMFは4月、エジプトの今年の資金需要は国内総生産の35%に相当すると結論づけた。10月5日、ムーディーズはすでにジャンク級だったエジプト国債を格下げした。今回の格下げは、これまでの取り組みでは、昨年末時点で約1600億ドルの債務があるエジプトの経済を上向きにできなかったことを示している。
中東研究所エジプト研究プログラム所長のミレット・F・マブルーク氏は、「エジプトは、私が記憶している少なくとも50年間で最悪の経済危機に陥っている」とし、このエジプトの経済状況が、イスラエル・ハマス紛争による現在の混乱をただただ複雑にしていると語った。
「ガザ地区でこのような惨事がおこった場合、誰もが適切かつ正しい行動を取るために、他の地域が安定している必要があります」とマブルーク氏は語る。「すでにかなり不安定な地域を、これ以上不安定にする必要はありません」
マブルーク氏は、経済的困窮が拡大している最も直近の兆候のひとつとして、エジプト中央銀行が先週、地域の銀行口座に紐づけされているカードに外貨規制を課したことを挙げた。
今回のイスラエル・ハマス紛争が原因で、エジプトで予想される景気後退の主な理由をひとつ挙げるとすれば、古代のピラミッドなど歴史を探索したい観光客の減少になるだろう。観光業はエジプトの主要な経済部門のひとつであり、外国投資とともに、世界経済の他部門への必要とされる窓口を提供している。
エジプト政府の担当者はAP通信からコメントを求められたが、応じなかった。
IMFによると、近隣国のヨルダンは経済成長の鈍化と外国投資の減少により苦戦している。金融データ提供会社ファクトセットによると、ヨルダンの債務見通しはエジプトよりも健全だが、失業率は二桁にのっている。
世界銀行によると、レバノン経済の規模は、2019年から2021年にかけて半分以下に縮小した。レバノンの通貨は1997年以来、1米ドル=1,500レバノン・ポンドに固定されていたが、現在は1米ドル=約9万レバノン・ポンドで取引されている。
多くの企業がドル建てで請求に踏み切る一方で、まだレバノン・ポンドで給料を受け取っている公務員の購買力は崩壊しており、その多くが現在、なんとかしのぐために海外の親族からの送金に頼っている。米国やカタールなどの国際援助国は、レバノン軍兵士の給料を補助している。
レバノンの指導者は2022年4月、緊急財政支援についてIMFと暫定合意に達したが、最終合意に必要な改革の大半を実施していない。IMFは今年初めの報告書で、改革が実施されなければ、危機的状態にある、この小国の公的債務は、GDPの550%近くに達する可能性があると警告した。
今回のイスラエル・ハマス紛争勃発前、レバノン政府関係者の一部は、レバノンの観光業回復こそ、経済の生命線であると指摘していた。しかしレバノン南部の国境では、ハマスと同盟関係にある武装組織ヒズボラとイスラエル軍との間で、すでに定期的に小規模な衝突が繰り返されて、今回の紛争の影響がレバノン全土に及ぶ恐れがあり、外国大使館が自国民に退避を警告したり、航空各社が同国への運航を取りやめたりしている。
ワシントンの中東研究所所長ポール・セイラム氏は、「緊張が湾岸地域まで拡大すれば、今回の紛争は国際市場や世界中の苦境にある経済や人々に深刻な影響を与える可能性がある」と述べた。
モスクワ:ガザを支配するパレスチナの組織ハマスは、停戦が合意されるまで、イスラエルへの攻撃中に捕らえた人質を解放することはできないと、ロシアの新聞「コメルサント」はモスクワを訪問したハマス代表団のメンバーの発言を引用した。
同紙は、アブ・ハミド氏の言葉を引用し、ハマスが、10月7日の攻撃でパレスチナの諸派によりイスラエルからガザに連れ去られた人たち全員の居場所を突き止めるには時間が必要だと述べた。
「彼らは数十人を拘束したが、そのほとんどが民間人だった。ガザ地区で人質となった人を見つけ、解放する時間が必要だ」とハミド氏は述べた。 
コメルサント紙は、この作業を完了させるためには穏やかな環境が必要だとの同氏の言葉を引用した。ハマス側は10月26日、イスラエルの空爆で約50人の人質が死亡したと発表した。
イスラエルはロシアに対し、ハマスの代表団をモスクワに招いたことを「遺憾である」とし、追放するよう求めている。
ロシアは、イスラエル、イラン、シリア、パレスチナ自治政府、ハマスなど、中東のすべての主要な国々とつながりを持っている。
ロシアは、現在の危機はアメリカの外交の失敗によるものだと繰り返し非難し、イスラエルとハマスの停戦と和平解決を目指した協議の再開を求めている。 
ガザ地区:包囲されたパレスチナ領域へのイスラエルの執拗な空爆に対するアラブ世界の憤りが高まる中、イスラエルの地上部隊がハマスの拠点を標的としてガザ地区への大規模な夜襲を行った。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエル軍は依然として全面的地上侵攻の準備の最中だと述べていたが、米国を初めとする諸国は中東の他の不安定な地域における敵対行為を激化させることを恐れ、イスラエルに対してそうした攻勢の先延ばしを要請していた。
避難所や水、食料、医療が切実に必要とされている中、ガザ地区のパレスチナ市民への援助提供を行っている国連機関は、ハマスの支配下にある同地域に燃料が届かなければすぐにでも活動を停止せざるを得なくなるかもしれないと述べた。
イスラエルは、10月7日のハマスによる自国の一般地域社会への攻撃を受けて、人口密集地のガザ地区を3週間近くにわたって空爆してきた。イスラエルは、ハマスが約1400人を殺害し、200人以上を人質にしたと述べている。
ガザ保健省は、10月26日、報復空爆により7,028人のパレスチナ人が死亡し、その中には2,913人の子供たちが含まれていると発表した。
10月25日、ジョー・バイデン米大統領はパレスチナ側が発表した死傷者数に疑問を呈した。イスラエル軍の報道官はこの死傷者数は信頼できないと述べた。
イスラエル軍は独自の結果分析を一切公表しておらず、ガザ保健省のアシュラフ・アルキドラ報道官は同省発表の死傷者数への疑問を一蹴した。
ガザ保健省は、10月26日、特定された死亡者全員の名前とID番号を記載したとする文書を公表した。
イスラエル軍ラジオは、イスラエル軍が今回の戦争で最大規模となるガザ地区北部への夜襲を行ったと発表した。イスラエル軍が発表したビデオには、装甲車両が要塞化された境界線を越えて建造物を攻撃する様子が映っていた。
「戦車と歩兵が多数のテロリストの下部組織や拠点、対戦車ミサイル発射基地に打撃を与えた」と、このイスラエル軍のビデオは述べた。
パレスチナ側は、イスラエル軍の夜間空爆が再びガザ地区に対して行われたと語った。また、ガザ地区中央部の市民らは、戦車による夜通しの激しい砲撃を受けたと述べた。
アラブ側からの非難
ガザ地区の情勢が鎮静化する気配がない中、バーレーンやエジプト、クウェート、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の外相らは、民間人を標的とする事は国際法に違反しているとしてイスラエルを非難した。
アラブ諸国の外相らは、共同声明で、イスラエルの自衛権は国際法違反やパレスチナ人の権利の無視を正当化するものではないと述べた。同外相らは、ガザ地区でのパレスチナ人に対する退去の強制や集団懲罰を非難した。
同外相らは、また、イスラエルによるパレスチナ地域の占領を非難し、数十年に及ぶ紛争を解決するための二国家解決の実現に向けたさらなる尽力を呼びかけた。二国家解決は、長期にわたって停滞し消滅寸前となっている和平調停における中心的な紛争解決案である。
「パレスチナとイスラエルの紛争に対する政治的解決策の不在が、パレスチナ人とイスラエル人そして中東地域の人々に度重なる暴力的衝突と苦しみをもたらしています」と、同外相らの共同声明は述べている。
欧州各国の政府はイスラエルを支援している。
ドイツのオラフ・ショルツ首相は、10月27日にブリュッセルで会合を行うEU首脳らはイスラエル支持の明確なメッセージを表明する見込みであると述べた。
「イスラエル軍は、その全行動において国際法に基づく規則を遵守すると私たちは確信できます」とショルツ首相は語った。
しかし、一枚岩ではないEUの内情を反映し、ベルギーのアレクサンダー・デ・クロー首相は、ガザ地区において物資の欠乏を引き起こさないようイスラエルに対して警告を発した。
デ・クロー首相は、イスラエルは行動する権利と将来の攻撃を未然に阻止する権利があると語った。
「しかし、それは地域全体を封鎖したり、人道支援の持ち込みを妨害する理由にはなりません。それは、住民を飢えさせる言い訳にはならないのです」
人質
また、10月7日の襲撃でハマスによって拘束され、ガザに連れ去られた200人以上の人質の安危についての懸念も高まっている。
ハマスの軍事部門であるアルカッサム旅団の広報担当者は、26日、イスラエルのガザ地区に対する空爆により約50人の人質が死亡したと述べた。同広報担当者はその詳細を明らかにせず、ロイター通信はこの死亡者数の検証を行うことが出来なかった。
イスラエルは、拘束されている人質が224人おり、そのため地上侵攻が困難となっていると述べている。人質の中には、外国パスポートの保持者も多数含まれている。ハマスは、10月20日以来4人の人質を解放している。
カタールの交渉担当者は、スカイニュースに、戦闘が一時停止されれば今後数日間で人質がさらに解放される可能性があると語った。
カタールのムハンマド・アルフライフィ外相は、「これは非常に困難な交渉です…」と述べた。
「空爆が毎日続いている中、私たちの任務は困難さを増しています。しかし、それでも私たちは希望を失っていません」と、アルフライフィ外相は語った。
死亡者数の増加
ガザ地区北部のジャバリア難民キャンプでは、イスラエルによる空爆が住宅を襲い、母親と3人の娘、そしてまだ乳児の男児が死亡した。乳児の父親は病院で遺体を抱きしめていた。
「この子が誰かを殺しましたか?この子が誰かを傷つけましたか?この子が人質を取ったりしましたか?家にいた無邪気な子供たちでした」と、その父親は語った。
ガザ地区南部のハンユニス市のナセル病院に空爆で死亡した77人の遺体が一晩の内に運び込まれ、そのほとんどが女性と子供だったと同病院のナヘド・アブ・タエマ院長が述べたと、ハマスのラジオ局である「アルアクサ」が報じた。
ナセル病院関係者らによると、10月26日正午頃、イスラエルは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の避難所からそれほど離れていない地区を空爆し、その結果少なくとも18人が死亡したという。
イスラエル軍は、ハンユニス市域のモスクと幼稚園の近隣にあったハマスのロケット弾発射設備を攻撃したと発表した。イスラエルとハマスの双方が、同じ空爆に言及しているのか否かは定かではない。
イスラエルがガザ地区北部の自宅を離れるよう警告したことを受け、数多くのパレスチナ人らがハンユニスの病院や学校、住宅、難民キャンプや路上に退避している。
UNRWAは、ガザ地区における救命人道活動の維持のために燃料が緊急に必要だと述べた。イスラエルは、ハマスが燃料を奪取する可能性があるとして、ガザ地区に持ち込む援助物資に燃料を含めることを許可していない。
戦争によって住居を失った61万3,000人以上の人々が、壊滅的な打撃を被ったガザ地域全域にあるUNRWAの150施設に避難している。
人道援助物資は深刻な不足を来しているが、世界の主要諸国は、国連において、相応量の援助物資を輸送するための戦闘の一時停止を呼びかける方法について合意に達することが出来なかった。
イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は、国連で演説し、イスラエルのハマスへの攻撃が止まなければ米国はこの「火災から救われる」ことはないと述べた。
ベイルート:レバノンの消防隊は26日、レバノン南部の国境付近の森林や果樹園に撃ち込まれたイスラエルの白リン弾が引き起こしたと見られる一連の夜間火災を食い止めようと苦闘していた。
国境の町アイタ・アル・シャーブの住民は、国連平和維持軍、レバノン軍、民間防衛隊員に対し、近隣の農地を荒廃させた火災を消火する作業に参加するよう要請した。
目撃者によると、イスラエル軍の砲撃によって残された地雷やクラスター爆弾が火災によって爆発したという。
イスラエル軍の砲撃によって、レバノン軍がアイタ・アル・シャーブ近くの脅威にさらされている森林に到達しようとする試みが妨げられ、近くの町アイタルーンの郊外にある牧場でシリア人労働者が閉じ込められた。
レバノン議会のナビーフ・ビッリー議長は、「イスラエルがガザ地区とレバノン南部国境沿いで進めている焦土作戦」を非難した。
ビッリー氏は、国際的に禁止されている白リン弾が、この地域に集まった国際特使の目の届くところでレバノンに向かって発射されていると述べた。
レバノン赤十字の職員は26日、ヤルーン近郊でイスラエル軍の砲撃により死亡した武装組織ヒズボラの戦闘員2名の遺体を回収した。この殺害により、ヒズボラの死者数は2週間で40人となった。
イスラエルのイェディオト・アハロノト紙によると、イスラエル軍は前日、レバノン南部から発射された地対空ミサイルを迎撃したと発表した。
「レバノン領内からイスラエル軍の軍用無人機に向けて発射されたミサイルを防空システムが迎撃し、イスラエル空軍機がレバノン南部のミサイル発射場所を攻撃した」とイスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は述べた。
一方、レバノンのバールベック・ヘルメル県のバシル・カドル知事は、「ガザに対する戦争とレバノン南部国境の動向」から起こりうる影響に対処するための緊急時対応計画について、国際機関と協議したと述べた。
バールベック・ヘルメル県はヒズボラの拠点とされている。
カドル氏は、最悪のシナリオは、レバノンが2006年7月のイスラエルとの紛争よりも過酷な全面戦争に突入することだと述べた。
「このシナリオに至らないことを祈りつつ、最悪の事態に備えなければならない」とカドル氏は述べた。
カドル氏は、戦争が起きた場合、同県は「戦場の一部になるので」避難場所としてはふさわしくないと警告した。
「この地域がイスラエルによる空爆や侵攻の対象となる可能性があり、レバノンにおける戦場の一つになる可能性があることを前提に行動しなければならない」とカドル氏は述べた。
「避難民を受け入れる計画はないが、県内の避難先としてより安全な地域を決定するための緊急時対応計画を策定している。とはいえ、イスラエルとの戦いの経験から、安全な地域はないと思われる」
同県の災害管理室のジハード・ハイダル室長は、「噂や誤解を招くメディアによる心理戦や電子戦のリスク」について警告した。
ハイダル氏は、「統制と的確性を保ち、認識を広め、信頼できる情報源から情報を得る必要がある」と述べた。
また、「建物やインフラの破壊に直面する可能性があり、十分な準備をし、瓦礫を撤去するための機材を提供し、救助、救援、避難のための代替道路を開き、安全なセンターや避難所を確保し、水、食料、医薬品の供給源を提供する必要がある」と付け加えた。
米国のリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は27日の国連総会で、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突は、世界にとって「危険な瞬間」に達したとの認識を示した。
その上で、イスラエルが自衛権を行使する際は戦争のルールに則って行わなければならないと、米国はこれまでも明確に示してきたと述べた。
また、ガザ地区で人道的な緊急事態が発生しているとし、米国は人命救助に全力を尽くしていると表明。米国は引き続き、イスラエルやエジプトを含む全ての関係国に対し人道的危機の緩和に向け確実な措置をとるよう要請すると述べた。
危機収束後は次のステップに関するビジョンが必要となり、「2国家共存」に基づく解決策を中心としたものでなければならないとの考えを示した。
イスラエル軍は27日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがガザの主要病院を指揮統制拠点や地下トンネルの盾として利用していると非難した。
イスラエル軍の首席報道官は写真や音声記録などを示し、「ハマスは病院を指揮統制センターとし、ハマスのテロリストや司令官の隠れ家として利用している」と指摘。「ハマスのテロリストはガザの病院内部や地下で活動している」と述べた。
ハマスの政治部門幹部はテレグラムへの投稿で、イスラエル軍報道官の主張に「根拠はない」とし、「市民に対する新たな虐殺を行うために」虚偽を広めていると批判した。
イスラエル軍は29日もイスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を展開した。イスラエルのネタニヤフ首相は3週間にわたる戦争が第2段階に入ったと表明した。
首相は28日にテルアビブで記者会見し、イスラエル国民に「長く厳しい」戦いになるとの見通しを示した。また、ハマスが拘束している外国人を含む200人以上の人質解放に向けた努力を惜しまないと語った。
今のところ地上作戦は限定的なものにとどまっているもようだ。米当局者の話では、バイデン米大統領の側近がイスラエル側に早急な総攻撃は控えるよう助言したとされる。
ネタニヤフ首相は「これは戦争の第2段階であり、ハマスの統治・軍事能力を破壊し、人質を自宅に帰すという明確な目標がある」と説明。「地上と地下の敵を破壊する」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は28日夜、イスラム組織ハマスによる7日の奇襲を事前に察知できなかった治安機関幹部をX(旧ツイッター)で批判し、戦時内閣メンバーから投稿内容を追及されると、29日朝になって「間違っていた」と謝罪した。
イスラエル側で1400人以上が死亡したハマスの奇襲を巡っては、ガラント国防相や軍、治安機関幹部が相次いで責任を認める一方、責任回避のあいまいな姿勢に終始するネタニヤフ氏に批判が高まっている。
イスラエルメディアによるとネタニヤフ氏は28日夜「私にはハマスが戦争を仕掛けるという警告は届いていなかった。治安機関幹部はハマスは抑止されていると信じていた」とXに投稿した。
それに対し、戦時内閣に加わるガンツ元国防相がXで「指導者は責任を示す必要がある。それ以外の言葉は国民の団結を壊す」と指摘すると、ネタニヤフ氏は先のメッセージを削除し「私は間違っていた。謝罪する」と投稿。「私は治安機関幹部を支持している。共に勝とう」と続けた。
イスラエルでは、ネタニヤフ氏の支持が急落し、ガンツ氏の人気が急上昇している。
イスラエルは国際社会が自制を促すなかでパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を拡大している。イスラエルとガザ側双方の死者数は9000人を超え、民間人の犠牲は広がっている。中東諸国はイスラエルへの批判を強めている。
トルコは29日、現在の共和国建国から100年の節目を迎えた。オスマン帝国の崩壊後、政治と宗教を切り離した西洋的な近代国家として再出発したが、近年はエルドアン政権下で進むイスラム化が世論を分断する。祝賀行事にも国家像を巡るあつれきがみえる。
中東情勢をめぐりイランとイスラエル、米国の緊張が高まっている。イランのアブドラヒアン外相が「ガザへの攻撃拡大が中東を制御不能にする」と語るなど、挑発的な文言で警告を続ける。イランの狙いはどこにあるのか。テヘランを拠点とする外交ジャーナリスト、アッバス・アスラニ氏に聞いた。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスとの戦争がエスカレートする中、イスラエル経済は10-12月期に年率換算で11%縮小する可能性があると、JPモルガン・チェースが指摘した。
ニコライ・アレクサンドル・チデシウク氏を含む同行のアナリストは27日付のリポートで、ハマスの武装勢力による7日のイスラエル攻撃で勃発した紛争の経済的影響について、同行の初期予測は「楽観的過ぎた」と認めた。
このリポートは、イスラエルがガザへの地上作戦を拡大し、ネタニヤフ首相が「長く難しい」作戦になると警告する約24時間前に発表された。
この予測は、ウォール街のアナリストがこれまで発表した中でもかなり悲観的なものだ。しかし、イスラエル資産は既に売りを浴びている。テルアビブの主要株価指数は7日以降、自国通貨ベースで11%下落し、通貨シェケルは2012年以来の安値水準に下げている。
JPモルガンはイスラエルの国内総生産(GDP)成長率が今年は2.5%、2024年は2%となお予想している。今年10-12月期に11%縮小するとの試算は、7-9月期と比較した季節調整後の成長率。
リスクは「まだ下向きに偏っているかもしれない」と、同行アナリストは指摘。「紛争の規模や期間に関する不確実性がまだ非常に高いことに加え、手元に高頻度のデータが不足していることから、イスラエル経済への戦争の影響を測ることは依然として難しい」と付け加えた。
イスラエルの近年の紛争(約7週間続き、地上攻撃を含んだ2014年のハマスとの紛争やレバノンを拠点とするヒズボラとの2006年の戦争を含む)は「ほとんど経済活動に影響を与えなかった」とアナリストは指摘するが、「現在の戦争は、国内の安全と信頼感にはるかに大きな影響を与えている」としている。
死者数はこれらの過去の例よりもはるかに多い。米国などからテロ組織と指定されているハマスが今月行った侵攻によって、イスラエル人は約1400人死亡したと、同国政府は発表。一方、イスラエルによるガザへの報復攻撃で、数千人のパレスチナ人死亡している。
ネタニヤフ政権は開戦以来、イスラエル史上最多となる約35万人の予備役を招集した。これはイスラエルの労働人口の5%余りに相当する。
イスラエルの中央銀行は23日、主要金利を4.75%で据え置いた。金融緩和を見送ったのは通貨シェケル防衛が理由。27日にシェケルは13日ぶりに上昇し、1984年以来最長の連続安に終止符を打った。
米軍は26日、イランのイスラム革命防衛隊とその支援を受けるグループがシリア東部で使用している2つの施設を攻撃した。シリアとイラクで米軍への攻撃が相次いでいることを受けた。米国防総省が発表した。
オースティン国防長官は声明で、今月17日に始まった親イラン武装組織によるイラク・シリア駐留米軍への攻撃に対応する「精密な自衛攻撃」だと説明した。
攻撃はバイデン大統領が命じた。
オースティン氏は「イランの支援を受けた米軍への攻撃は容認できず、止めなければならない」とした上で、「イランの代理勢力による米軍への攻撃が続くようであれば、国民を守るため、さらに必要な措置を取ることをためらわないだろう」と述べた。
バイデン大統領は、中東地域で米軍部隊を攻撃の標的にしないよう、イランの最高指導者ハメネイ師に「直接メッセージ」を伝えた。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が26日明らかにした。
米国防総省によると、イスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争で緊張が高まる中、米軍と連合軍は過去1週間で、イラクとシリアで少なくとも19回、イランが支援する組織に攻撃を受けた。21人の米兵が軽傷を負い、その大半が外傷性脳損傷だったという。
米政府高官によると、今回の攻撃はイラクと国境を接するシリアの町アブ・カマル付近で現地時間27日午前4時半頃に実施。F-16戦闘機2機が精密兵器で武器弾薬貯蔵施設を攻撃した
イスラエル紙マーリブが27日掲載した世論調査によると、半数近くの国民がパレスチナ自治区ガザへの侵攻を遅らせることを支持した。ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに対する反撃の次の段階を巡り支持が低下している可能性を示唆した。
イスラエル軍が直ちに大規模地上攻撃に乗り出すべきかとの問いに29%が賛同した一方、49%は待った方が良いと回答、22%はどちらとも言えないと答えた。
マーリブによると、今月19日の調査では65%が大規模地上攻撃を支持していた。
同紙は回答の内訳から、支持する政党や人口動態による相違はないと指摘し、最重要課題に浮上している人質問題の動向が世論の変化に影響したのはほぼ間違いないと分析した。
ハマスは過去1週間に人質4人を解放した。さらなる解放に向けた周辺国の仲介努力も行われている
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは、今月7日のパレスチナ武装組織の急襲で拘束された人質のうち50人がイスラエルのガザ爆撃で死亡したと述べた。
モスクワを訪問中のハマスの代表団のメンバーがロシア紙コメルサントに語った。
同メンバーは、停戦で合意が成立するまでハマスが人質を解放することはできないと発言。パレスチナのさまざまな派閥がガザに連行した人々全員の居場所を突き止めるには時間が必要だと述べた。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは、停戦で合意が成立するまでイスラエルで拘束した人質を解放できないと表明した。
モスクワを訪問中のハマス代表団メンバーがロシア紙コメルサントに語った。
このメンバーは、今月7日のハマスの攻撃でパレスチナのさまざまな派閥がイスラエルからガザに連行した人々全員の居場所を突き止めるには時間がかかると主張。
「数十人の人々を拘束した。大半は民間人だ。ガザで居場所を特定し解放するには時間が必要だ」とし、この作業を完了するには静かな環境が必要になるとの認識を示した。
ハマスは26日、イスラエルの空爆で人質約50人が死亡したと述べた。
イスラエルはロシアに対し、ハマス代表団を国外に退去させるよう要求。ハマスを招請したのは「遺憾だ」としている。
ロシアはイスラエル、イラン、シリア、パレスチナ自治政府、ハマスなど中東の主要勢力全てとつながりがある。
ロシアは現在の危機の原因は米外交政策の失敗にあると繰り返し主張。イスラエルとハマスに停戦を呼びかけ、和平調停に向けた交渉を再開するよう求めている。
また、タス通信によると、ハマスのロシア訪問団の別の高官はモスクワでイランのアリ・バーゲリ・カニ外務次官と会談し、ガザの停戦や住民への人道支援に向けた取り組みを協議した。同次官はイランがパレスチナの理念を強く支持していることも再確認した。モスクワのイラン大使館筋の情報として伝えた。

<10月27日朝まで>
イスラエルのガラント国防相は26日、条件が整えばパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻が実施されると述べた。さらに、イスラエルはガザを実効支配するイスラム組織ハマス以外との戦闘に関心はないという認識も示した。
ガラント国防相は記者団からのガザへの地上侵攻に関する質問に対し、「その日が来るのは遠くない。条件が整えば作戦は開始されるだろう」と応じた。
カタールの仲介による人質解放の可能性についてはコメントを控えつつも、「目標が達成されるのであれば、どのような手段も可能性はある」と述べるにとどめた。
また、イランとの紛争の可能性について尋ねられたガラント氏は、南部でハマスとの戦闘を展開し、北部戦線の状況に備えているとしつつも、「戦争を拡大することに関心はない」と強調した
バイデン米大統領は、中東地域で米軍部隊を攻撃の標的にしないよう、イランの最高指導者ハメネイ師に「直接メッセージ」を伝えた。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官が26日明らかにした。
バイデン大統領は25日、米軍が引き続き攻撃の標的となれば、「米国は対応するとハメネイ師に警告した」と明らかにしていたが、どのように伝えたかについては明確にしていなかった。 
カービー氏は詳細な説明は避けた。
米国防総省は、中東の駐留米軍について、既に到着した兵士らを含めて約900人を増派すると発表。急増する親イラン派組織の攻撃から米軍兵士を守るために防空体制を強化するとした。
同省によると、過去1週間に米軍部隊がイラクで12回以上、シリアで4回攻撃されたという。
一方、イランのライシ大統領の側近、モハマド・ジャムシディ氏はカービー氏の発言に先立ち、バイデン氏からハメネイ師にメッセージは送られていないとソーシャルメディアに投稿していた。
国営イラン通信(IRNA)はこれとは別に、関係筋の話として、米国がイランやレバノンの親イラン武装組織ヒズボラなどに対し、戦闘拡大は求めない立場を示して自制を求めるメッセージを送っていたと伝えた。
「米国がイスラエルに軍事装備を送って戦争管理で主導権を握る一方で、政治的メッセージを発信して戦争拡大に反対すると表明することは認められない」とし、親イラン組織は「自主的に行動しており、イランの命令に従っているわけではない」と主張した。
米国防総省のパトリック・ライダー報道官は26日、中東地域での親イラン武装勢力による米軍基地への攻撃が強まる中、防空強化に向け米兵約900人が同地域に到着または向かっていると発表した。
記者団に対し、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの紛争で緊張が高まる中、米軍および連合軍が先週、イラクで少なくとも12回、シリアで4回攻撃されたと述べた。合計21人の米兵が軽傷を負い、その大半が外傷性脳損傷だったという。
また、26日未明にもイラクで米軍が再び標的にされたが、攻撃は失敗したと明かした。イランとの関連があるとみられる武装集団が犯行声明を出したが、これ以上の詳細な情報はないという。
イランのアブドラヒアン外相は26日、 国連総会の中東情勢を巡る緊急特別会合で、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに対するイスラエルの攻撃が止まなければ、米国も「火の粉をかぶる」と警告した。
アブドラヒアン外相は「パレスチナにおけるジェノサイド(集団虐殺)を管理している米国の政治家に対し率直に言う。われわれはこの地域の戦争拡大は望んでいないが、ガザ地区で集団虐殺が続けば、米国も火の粉をかぶることになる」と述べた。
また、ハマスが拘束している人質を巡り「イランはカタールとトルコと共に、重要な人道的な取り組みで役割を果たす用意がある。6000人のパレスチナ人囚人の釈放が必要で、国際社会の責任でもある」と述べた。
サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などのアラブ諸国の外相は26日、イスラエルが激しい砲撃を続けているパレスチナ自治区ガザで民間人が標的にされ、「明白な国際法違反」が行われていると非難する声明を発表した。
声明にはヨルダン、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート、エジプト、モロッコの外相も参加。「国際法および国際人道法に対する明白な違反のほか、パレスチナ人の正当な人権の意図的な無視は(イスラエルの)自衛権で正当化されるものではない」とした。
その上で、ガザの住民に対する強制的な避難勧告のほか、「集団懲罰」を非難し、「パレスチナとイスラエルの紛争が政治的に解決されていないことで、パレスチナ人とイスラエル人の双方のほか、この地域の住民が繰り返し暴力と苦しみにさらされている」と指摘。「東エルサレムを首都とし、1967年6月4日以前の境界線に基づく、独立したパレスチナ国家」の樹立を保証する「2国家共存」の必要性を改め強調した。
突然、イスラエル・ガザ戦争が表舞台に再浮上した。しかし、何が変わったのだろうか?この戦争が何十年もの間、断続的に勃発し、今日のガザやここ数カ月のヨルダン川西岸でのケース同様に煮えたぎっていることは誰もが知っている。より広い文脈で見れば、レバノンのヒズボラとの断続的な小競り合いや、革命後の崩壊したシリアに駐留するイランや親イランの組織に対するイスラエルの定期的な攻撃もある。イランの核開発プログラムを標的にしたイラン国内での否認可能な暗殺や妨害工作、あるいは公海上でのイスラエルとイランの海上資産が一触即発の攻撃(もちろんしばしば否認可能だ)に巻き込まれるなど、イランとイスラエルが世界のいたるところで繰り広げているいわゆるシャドウ・ウォーも忘れてはならない。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、武装組織ハマスは最大の過ちを犯したかもしれないと主張したとき、同首相が何を言いたかったのかわからない。もしかしたら同首相は、自国がパレスチナの土地を占領し、領土を分断し、違法な入植地を建設し、宗教的に厳格なユダヤ人に全権を与えて、パレスチナ人に嫌がらせをし、宗教的な場所を冒涜することを許してきたことを忘れていたのかもしれない。
ハマスの抵抗も、その動機も新しいものではない。ネタニヤフ首相は長い間、この組織の推進者であり、パレスチナ人の分裂を助長し、パレスチナ人がイスラエルと和平協定を結ぶ統率力と団結力を欠いているという印象を与えるためにガザを支配させてきたと多くの人が言う。ハマスは1990年代半ば以来、自爆テロを繰り返し、イスラエル人を殺傷してきた。そして、ネタニヤフ首相が属するリクードの歴代政権は軍事報復を主導し、パレスチナ人に対して不釣り合いなことが多いとはいえ、同等の手痛い損害を与えてきた。しかし、これらすべてが和平プロセスの活力を奪ってしまった。和平などネタニヤフ首相もハマスも信じていなかったとはいえ。
冷酷な武力行使や、ハマスのガザにおける将来の拠点を否定するような目的設定は、憤激と怒りによるものだ。それは、過去75年間、すべての当事者に不安と戦争と苦しみを与えてきた紛争において、イスラエル側の「勝利」、「やるか、やられるか」という絶望を反映している。中東の多くの人々は、この紛争を 「永遠の戦争 」と呼ぶようになった。 
ハマスの衝撃的な侵攻によって1400人以上の国民を失い、約200人の民間人と軍人の人質が拘束されたイスラエルの「最も暗い時」に、西側の指導者たちが支援を惜しまず、イスラエルの側に立つと宣言したことは理解できる。しかし、イギリスの首相らが表明したように、テルアビブが「勝利」する必要性を述べることを正当化すべきではない。この2週間、多くの人々が繰り返した「イスラエルは勝たなければならない」というスローガンは、明らかに目の前の問題をよく理解していないことを示している。イスラエルの復讐心を抑え込められなかった場合、あるいは、彼らの言うように、軍の戦略的優位性をリセットできなかった場合、この地域を非対称戦争へと巻き込み、パレスチナだけでなく、不安定な中東全域で、さらなる人命の損失と民間人への被害をもたらすことになりかねない。
先週イスラエルを訪問したアメリカのジョー・バイデン大統領が、イスラエルへの全面的な支援と2つの空母機動部隊の緊急派遣を約束しながらも、紛争の封じ込めを図ったことは周知の事実である。アメリカ政府は、イスラエルがガザのハマスに対して焦土作戦を追求することを思いとどまらせようとしており、バイデン大統領がエジプト、ヨルダン、サウジアラビアといったアラブのリーダーたちとの外交努力を強めているのは、その明らかな表れである。
人道的な大惨事を恐れて、アメリカはエジプトを通じて何らかの援助を認めるようイスラエルに圧力をかけることに成功し、イランの代理人ヒズボラがイスラエルとの国境を交えて銃撃戦を繰り広げている隣国レバノンや、さらに遠くまで占領地を越えて火種が拡大するのを防ぐために、アメリカは24時間体制で外交に取り組んでいる。たとえば、イエメンではイランと同盟を結ぶフーシがイスラエルに向けてミサイルやドローンを発射したが、アメリカの艦船が紅海上で迎撃した。
バイデン大統領の慎重な姿勢を、イスラエルは無視するべきではない。また、イスラエル人は怒りを感じているかもしれないが、過ちを犯してしまわないためにも、怒りに飲み込まれるべきではないという同大統領の指摘も見逃すべきではない。バイデン大統領は、9.11後のアメリカの過ちについて言及した。また、紛争が長期化し、複合的で、多層的で、国家と非国家主体が混在し、しばしば理性を忘れさせてしまう武装化された宗教的熱狂によってより複雑になっているこの地域では、「勝利」という言葉は使うべきではないとも言える。
また、イスラエルとハマスの戦いは、20年前のアルカイダとの対テロ戦争とは似ておらず、また2014年以降、イラクとシリアにおいてダーイシュと戦う国際連合にも似ていないことも知っておく必要がある。これら2つの例では、過激派は、一種のフランチャイズ化された外国人戦闘員であり、地元住民とのつながりも、パレスチナ人の国家を求める戦いのような大義もないにもかかわらず、国際的なテロキャンペーンを展開していた。武装組織ハマスは、好むと好まざるとにかかわらず、ガザの社会構造の一部であり、多くのパレスチナ人が共有する大義のために戦っている。
社会構造に深く入り込んでいる組織を排除しようとするのは非常に危険なことである
過去には、アルカイダを制圧してアフガニスタンから淘汰した後、その指導者を追跡して殺害することは可能だった。ダーイシュの場合も、それは可能だった。1982年にイスラエルがレバノンからパレスチナ解放機構を追い出すために侵攻した時でさえ、シリア政権が自国の地政学的利益のためにイスラエルの仕事を引き継いでいなければ、実を結ぶことはなかっただろう。これにより、レバノン国内に残されたパレスチナ解放機構の息の根は止まり、イランとシリアが取り引きをするヒズボラが、2000年5月にイスラエル軍がレバノンから撤退した後も、長きにわたり国境を越えた活動を続ける重要な非国家な過激派主体として台頭するのみとなった。
だからこそ、緊張を緩和し、基本的な人道物資を慈善事業としてではなく権利として市民が入手できるようにする努力が必要なのだ。一方、調停者と外国勢力は、民間人の人質解放のために、持てる影響力のすべてを行使しなければならない。これは、民間人および軍人双方の犠牲という点で、全面的かつ性急で確実に犠牲の多くなる侵攻を防ぐための第一歩である。
ハマスを永久壊滅させることで勝利するという考え方は、とても非現実的である。それを擁護する者たちは、同じような紛争の歴史が教えてくれていることを理解していない。社会構造に深く入り込み、イランのような強力な国家主体から支援を受けている組織を排除しようと望むのは非常に危険だ。イラン政府は長年にわたり、自国の目的を達成するために非対称戦争を利用し、イラクからレバノン、パレスチナからイエメン、シリアに至るまで、さまざまな国の情勢に干渉することで自らの力を誇示し、過激派組織の利益のために国家の中央機関を弱体化させてきた。
ロシアのウクライナ侵攻後の世界は分断されており、ガザでの戦争がイスラエルとパレスチナの国境を越えて拡大すれば、分断はより進み、多国間主義、そして平和と安定の重要な信条に残されたものを破壊してしまう可能性がある。
国連憲章が「国際的な平和と安全の維持のための第一義的責任」を委ねている国連安全保障理事会は、中東で現在進行中の情勢に対して行動を起こすことができないでいる。安保理は先週、イスラエルとハマスの紛争に「人道的一時停戦」を求めるブラジルの決議案を採択できなかった。アメリカは拒否権を行使してこの決議を阻止したが、この決議には常任理事国の中国とフランスを含む12カ国が賛成した。アメリカのリンダ・トーマス=グリーンフィールド大使は、ジョー・バイデン大統領がイスラエルを訪問するため、理事会はアメリカが行った懸命な外交努力を「実現」させる必要があると述べた。
今月の安保理議長を務めるブラジルのマウロ・ヴィエイラ外相は、パレスチナ問題を含む中東に関する公開討論の中で、「2016年以来、安保理はこの地域に関する決議案を可決できていない」と指摘した。
さらに、ロシアがウクライナに関する行動を妨害しているため、国連安保理は、国際的な平和と安全を脅かす2つの危険な紛争の間で完全に麻痺している。これは、多国間協力やより大きな戦争の防止にとって悪い兆候である。
常任理事国5カ国による拒否権とその行使は、発足当初から国連安保理の活動を妨げる最大の障害のひとつとなっている。冷戦期の国連創設当初、ソ連は拒否権を頻繁に行使(2月現在で合計152回)した。アメリカが理事会内で支配的な勢力であり、アメリカの思い通りになっていたからだ。
アメリカは現在までに拒否権を88回行使している。この危機以前の最後の拒否権は2020年だった。アメリカの拒否権の大半は、イスラエルと中東情勢に関するものだ。
中国はかつて、拒否権の行使に慎重であったが、最近は頻繁に行使している。中国が拒否権を行使した回数は19回(ロシアやアメリカと比べると非常に少ない)だが、そのうち16回は1997年以降である。フランスとイギリスは1989年以降、拒否権を行使していない。
国連安保理における大国の妨害は、今に始まったことではない。国連安保理の歴史を通じて、大国間の緊張が高まると、安保理は麻痺し、紛争や国際的危機を管理する役割を果たせなくなる。安保理の歴史の中で最も生産的な協力作業が行われたのは、冷戦後の大国間の競争が最も穏やかだった時代である。しかし現在、アメリカ、中国、ロシアの間で緊張が高まるなか、国連安保理と国連全体が国際的な平和と安全を守り、世界の紛争を管理する役割を果たせるとは考えにくい。
国連総会とその加盟国は、現在の国際秩序が確立して以来、この問題に対処しようとしてきた。国連安保理の膠着状態を解消しようと、2つの真剣なイニシアチブが試みられてきた。
ひとつは、国連安保理が行動を起こすことを阻まれたときに打開策を提示するため、国連総会が1950年11月3日に決議377を採択したことから生まれた「平和のための結集決議」である。決議には「安全保障理事会が、常任理事国の全会一致を欠いたために、平和への脅威、平和の破壊、または侵略行為があると思われるいかなる場合においても、国際的な平和と安全の維持のための主要な責任を行使しなかった場合、総会は、国際的な平和と安全を維持または回復するために、平和の破壊または侵略行為の場合には必要に応じて武力の行使を含む集団的措置について加盟国に適切な勧告を行うことを目的として、直ちにその問題を検討することを決議する」とある。
国連総会の会期中でない場合、決議には「要請から24時間以内に緊急特別総会を開催する」とある。緊急特別総会は、国連安保理加盟国9カ国からの要請、または国連総会の過半数によって招集することができる。このプロセスは採択以来、11回実施されているが、その半数以上が中東に関するものである。
直近の緊急特別総会開催要請は10月22日に国連総会議長に送られた。デニス・フランシス議長は、アラブグループとイスラム協力機構の代表から、「平和のための結集決議」に基づき、「第10回緊急特別総会の可能な限り迅速な再開」を要請する書簡を受け取ったと発表した。ロシア、マレーシア、インドネシア、シリアを含む12カ国からなる別のグループも同様の要請を行った。フランシス議長は、10月26日に国連総会の緊急特別総会を招集すると述べた。
ふたつ目のスキームは、拒否権として知られるイニシアチブであり、国連安保理がウクライナ問題でロシアに妨害されたことで、安保理の無策に対する批判が高まった。2022年4月26日に全会一致で採択された国連総会決議は、国連安保理の常任理事国5カ国に拒否権行使の責任を負わせることを目的としている。この決議では、常任理事国が拒否権を行使するたびに、国連総会議長は10日以内に正式な会議を招集し、拒否権を行使した国はその理由を説明しなければならないと定めている。
同決議案は、国連総会が緊急特別会合を開催する場合、拒否権発動に基づく討議を行うべきではないと規定している。これにより、アラブグループとイスラム協力機構による緊急特別会合の要請が拒否権発動国の要請を無効にするため、拒否権を発動した国は、先週のアメリカの拒否権に関する国連総会での討議を要請する計画を進めることができなくなった。
多くの外相らが出席したパレスチナ問題を含む中東に関する公開討論会では、国連安保理への妨害に対する不満が明らかになった。この討論会は、さまざまな関係者が、行き詰まった理事会への失望を表明する機会となった。
ヴィエイラ外相は「国連の評判の多くは、現在進行中の危機に対するアプローチにかかっている」と述べた。同外相は、理事会が決定を下すことを妨げている「妨害的な戦略」に苦言を呈し、「理事会は、目の前の課題に立ち向かわなければならない。われわれの無策と自己満足は、おそらく将来の世代によって裁かれ、有罪判決を受けるだろう。私たちは、多国間の行動を解除する方法を見つけなければならない」と付け加えた。
ウクライナと中東での行動をそれぞれ阻止しているロシアとアメリカでさえ、国連安保理の役割について述べた。ロシアのワシーリー・ネベンジャ大使は、国連安保理がその責任を果たせないことを嘆く一方、アントニー・ブリンケン国務長官は、国連安保理が「この危機に対処する上で(…)極めて重要な役割を果たしている」との見解を示した。
一方、パレスチナのRiad Al-Malki外相は「理事会では失敗が続いている」と批判し、「許しがたい」と述べたのに対し、イスラエル側はアントニオ・グテーレス国連事務総長に怒りを向けた。
国連憲章は「主権平等」を掲げており、国連に加盟するすべての国が同じ権利を享受するとしている。しかし、国連安保理に関しては、一部の国々が他の国よりも「平等」である。拒否権はこの不平等の最も顕著な表れであり、世界の平和と安全保障に影響を及ぼしている。
エルサルム:イスラエル軍は25日遅く、地対空ミサイルが発射されたことへの報復として、レバノンを航空機で空爆したと発表した。
イスラエル国防軍(IDF)は声明を発表し、「先ほど、IDFのUAV(無人機)に向けてレバノンから地対空ミサイルが発射され、IDFの防空システムが迎撃した」と説明した。
そして、「これを受けて、IDFの航空機が発射地点に空爆を行った」と付け加えた。
イスラエルは、10月7日にハマスと戦争状態に突入して以降、レバノン南部のイスラム過激派組織ヒズボラおよび同盟関係にあるパレスチナ系勢力らとの間で、報復合戦を繰り返す状況となっている。
イスラエル軍は25日未明にも、イスラエルに向けてミサイルを発射した報復だとして、シリア国内の軍事目標を空爆していた。シリア国営メディアの報道によると、この空爆で8人の兵士が死亡した。
世界の指導者らは、こうした武力の応酬により、イスラエルが他の周辺国をも巻き込んだより大規模な紛争へと陥り、ハマスとの争いが激化していくのではないかとの懸念を表明している。
イスラエルは、ハマスの武装集団が国境を破って奇襲攻撃を行ったことへの報復として、ガザ地区に砲撃を続けている。イスラエル当局によれば、今回の襲撃で1,400人(主に民間人)が死亡し、222人が誘拐され、同国の歴史上最悪の被害を記録したという。
ガザ地区のハマスが運営する保健当局は、これまでに6,500人以上のパレスチナ人が殺害されたと発表。イスラエルが計画しているとされる地上侵攻を推し進め、ハマスの壊滅と人質救出に打って出た場合には、この数字はさらに増加する恐れがある。
ヒズボラは25日午前、パレスチナ武装組織ハマスとイスラム聖戦の幹部がヒズボラ指導者のハッサン・ナスラッラー師と会談し、イスラエルとの戦いで「真の勝利」を実現することについて話し合ったと明らかにした。
ヒズボラの声明では、ナスラッラー師がハマスのナンバー2であるサレフ・アル・アルリ氏、イスラム聖戦の指導者ジヤド・ナハラ氏と会談した場所や時間は明言せず、レバノンの非公開の場所とだけ述べられていた。
リヤド:サウジアラビアのアブドラティフ・ビン・アブドルアジーズ・アル・シェイク・イスラム問題担当大臣は、パレスチナ人を支持し、彼らに対する攻撃的な政策を非難することは、湾岸協力理事会(GCC)発足以来の揺るぎない原則であると明言した。
パレスチナの大義はサウジアラビアにとって重要な問題であり、サウジはパレスチナの人々と彼らの法的権利を支持していると、同大臣は述べた。
この発言は、アブドラティフ大臣がサウジ代表団を率いて、オマーンのマスカットで25日(水)に開催された第9回GCCイスラム問題・寄付担当閣僚会合に出席した際になされたと、サウジ通信(SPA)が報じた。
「パレスチナというのはパレスチナ人だけの問題ではありません。我々イスラム・アラブ諸国、ひいては人類全体の問題なのです」と同大臣は述べた。
「我々にはこの大義を我々の意識と、宗教的言説の中に存在させる義務があるのです」と続けた。
アブドラティフ大臣はまた、会合の議題である他のいくつかの問題、特にアラビア湾岸諸国における宗教的、道徳的、家族的価値の保護について言及した。同大臣は、国や社会の障壁が弱まった技術進歩とグローバル化の時代において、文化的価値を守ることが重要だと強調した。
また、イスラム問題・宗教・寄付担当省庁には、若者にイスラム教の正しい原則と価値を教え込む責任があると述べた。そしてこれは、家族を社会の核として扱うことによってのみ達成できるとした。
アブドラティフ大臣はさらに、環境を保護し気候変動と闘うためのイスラムのビジョンを概説した省の報告書を発表した。その中で大臣は、グリーン・リヤドやサウジと中東のグリーン・イニシアティブなど、サウジの主要な環境イニシアティブを力説した。
同氏はまた、灌漑に雑排水を利用したり、屋上に太陽光パネルを設置したりするなど、モスク建設に関する新たな政策を採用する省の意欲を強調した。
ガザ:イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は25日、同国はガザへの地上侵攻を準備していると述べた。イスラエルによる砲撃でパレスチナ市民の犠牲者が増え続けるなか、ハマスが拘束している人質を保護し、援助を提供するよう国際的な圧力が高まっている。
ジョー・バイデン米大統領は、パレスチナのハマス武装勢力による10月7日のイスラエルへの攻撃が引き起こした戦争の行く末に関する発言で、将来はイスラエルとパレスチナの二国家解決策を考慮すべきだと述べた。
「イスラエルはアラブ近隣諸国の間で統合されるべきだ」と彼は述べた。
「イスラエル人とパレスチナ人は等しく、安全、尊厳、平和の中で共存する権利がある」と、バイデン氏はワシントンで、米国を訪問中のオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相との共同記者会見で述べた
ハマスが支配するガザ地区の保健省は25日、イスラエルの報復攻撃により6500人以上が死亡したと発表した。ロイターは、双方の死傷者数を独自に確認することはできなかった。
バイデン氏は、パレスチナ人が何人の犠牲者を出したかについて真実を語っているという考えはないと述べた。「無実の人々が殺されていることは確かであり、それは戦争を遂行する代償だ」
ネタニヤフ首相はエルサレムで、軍がガザに出動するかは政府による臨時の戦時内閣で決定されると述べた。作戦の時期やその他の情報についての詳細は明らかにしなかった。
「我々はすでに数千人のテロリストを殺害したが、これは始まりに過ぎない」と、ネタニヤフ首相はテレビで声明を発表した。
「我々は、同時に地上侵攻の準備も進めている。いつ、どのように、何人で、ということについては詳しく述べない。また、我々がどのような計算をしているのか、公にはほとんど知られていない事柄についても詳細は述べない。そして、そうあるべきだ」
イスラエルの戦車と軍隊はガザとの境界エリアに集結し、命令を待っている。イスラエルは約36万人の予備役を招集した。
人質の存在を理由に、ガザへの侵攻を遅らせようという国際的な圧力が高まっている。イスラエル政府によれば、ハマスが拘束している推定220人の人質の半数以上が、25カ国の外国パスポートを所持しているという。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、米国とイスラエルの政府関係者の話として、イスラエルはガザ侵攻を当面延期することで合意し、その結果、中東全体に広がるガザ戦争に対する反応を懸念している米国は、地域に駐留する米軍を守るためのミサイル防衛システムの設置に注力できる、と報じた。
米政府高官は、早ければ今週中にも米国の防空システムがこの地域に設置されるまで、ガザ侵攻を延期するようイスラエルを説得している、と同紙は伝えている。
この報道について質問されたアメリカ政府関係者はロイターに次のように語った。「米国はイスラエルに対し、イランとイランに支援されたイスラム主義グループが中東に駐留している米軍を攻撃することで紛争をエスカレートさせる可能性があるとの懸念を示した」。イスラエルによるガザ侵攻は、イランの代理勢力にとって行動の引き金になる可能性があるという。
イスラエルがガザ南部への爆撃を強化する中、中東の他の地域でも暴力が激化し、国連ではパレスチナ市民への支援をめぐる対決が迫っていた。何十万人もの人々が、この小さな沿岸地域の北部から南部へと避難している。
イスラエルは、ハマスの過激派を一掃するため、主に北部を爆撃すると警告していた。
25日、南部の町ラファにある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の学校近くの空爆で国内避難民が死亡、44人が負傷した。同機関は、地域内のパレスチナ難民の安全に関する任務を負っている。
UNRWAの声明によれば、学校には4600人が避難しており、深刻な巻き添え被害を受けたという。
イスラエルとハマスの戦争は、すでにガザの外でも紛争を激化させている。
イスラエル軍機は、イランの同盟国であるシリアから発射されたロケット弾に反応、シリア軍のインフラを攻撃した。
シリアの国営メディアによると、イスラエルは南西部の都市ダラア近郊で兵士8人を殺害、7人を負傷させ、北西部のアレッポ空港を攻撃した。同空港はすでに使用されていない状況であった。
イスラエルはシリア軍がロケット弾を発射したとは非難していないが、シリアに大きな軍事的・治安的プレゼンスを持つ敵対国、イランを疑っている。
イランは何十年もの間、地域の覇権を狙っており、シリアやレバノン国内の武装組織やハマスなどを支援している。イランはイスラエルに対し、ガザへの猛攻撃を止めるよう要求している。
イスラエルはまた、レバノン南部で攻撃を準備していた5つの分隊を攻撃したと発表した。イランの支援を受けているレバノンのヒズボラ・グループは、ガザ紛争が勃発した後、イスラエルとの国境エリアでの衝突が再開されて以来、同グループの戦闘員42人が死亡したと発表した。
米国は国連で、ガザへの援助を可能にするために戦闘を一時停止するよう要求しているが、ロシアはこれに反対している。ガザでは、電力、食料、清潔な水の不足のために医療が機能せず、悲惨な生活環境となっている。
エジプトからの食糧、医薬品、水の限定的な配達は、イスラエルによってコントロールされていない唯一の検問所であるラファを通して21日に再開された。
国連安保理が25日に検討すると予想されている提案の中で、米国はガザに援助を届けるための短期的な一時停止を求めており、ロシアはより大幅な停戦を提唱している。イスラエルは、ハマスが優位に立ち、民間人に対する新たな脅威を作り出すだけだと主張し、両国の意見に抵抗している。
ベイルート:イスラエル・ハマス紛争をめぐってより広範な戦争への恐れが高まる中、レバノンは「奈落に陥る」危機にあると、レバノンの財界幹部が警告した。
商工会議所連合の会長であるモハメド・チョウケア氏は、食料の備蓄が供給を脅かしている一方で、国内外からの注文の減少により国内の産業活動は3分の1以上減少していると述べた。
同氏は「全ての政治勢力と関係者に対し、ガザ地区の戦争がレバノンに拡大する可能性によって、国民経済および国家が奈落に陥るのを防ぐために、必要な措置を講じる」ように要請した。
チョウケア氏は、レバノンのホテルの稼働率は10パーセント未満にまで落ち込んでおり、ほとんどのイベントや会議がキャンセルされていて、夜の娯楽業界もほぼ麻痺していると述べた。
この財界の長の警告は、ヒズボラ戦闘員とイスラエル軍がレバノンの南部国境で小競り合いを続ける中で発せられた。
ヒズボラは25日に、イスラエル軍との戦闘でメンバー2名が死亡し、10月8日以降の組織内の死者数が36名となったと発表した。
国連平和維持軍の報道官であるアンドレア・テネンティ氏は、25日にブルーライン沿いで攻撃の応酬が続いたと述べたが、UNIFIL (国連レバノン暫定軍)のパトロール隊は交戦において標的とされたり攻撃を受けたりはしていないと付け加えた。
「我々の平和維持隊は引き続き任務にあたり、パトロールなどの活動を続けている」と、同氏は述べた。
イスラエルは、レバノン南部でイスラエル軍への砲撃を企てた5つのヒズボラグループを排除したと発表した。
ヒズボラは2日続けて、イスラエル軍のJal Al-Alamの拠点を誘導ミサイルで狙い、国境の西部地区にある別のイスラエル軍の標的に砲撃を行った。イスラエル軍は南部国境の町々への砲撃で応戦し、住宅を被弾させた。
ある軍事監視員はアラブニュースに、ヒズボラとイスラエル軍は「この18日間にわたって戦争状態」にあると語った。
この人物は、地形や軍事作戦で使用される先進技術を考慮すれば、ヒズボラの損失は「大きくない」と表現した。
「イスラエル側は損失をあらわに開示しておらず、一方のヒズボラは、ブルーライン沿いのイスラエル軍の監視装置やセンサーを破壊する作戦を行ったという」と、この監視員は述べた。
イスラエルは、最大15万人の軍勢をレバノンに接する北部国境に駐留させていると見られている。
しかし、イスラエルがガザ地区の紛争を拡大するにあたっては、「地域的および世界的な政治判断」が必要となり、「これまでのところ、多くの検討事項への対処がなされていない」と、この監視員は語った。
イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まった後、バイデン米大統領が鮮明に打ち出したイスラエル支持の姿勢が、米国のアラブ系市民やイスラム教徒らの批判の的になっている。
バイデン氏は彼らから、パレスチナ自治区ガザの人道危機回避に向けてもっと努力するよう求められており、対応を怠れば来年の米大統領選で支持を失いかねない状況だ。
多くのアラブ系市民が怒っているのは、イスラエルの空爆から逃れようとしているパレスチナ人が次々に命をなくしている中でも、バイデン氏が人道上の観点から停戦を推進しようとしない点だ、と学者や市民団体関係者、イスラム教徒のコミュニティー、あるいは政権幹部らは指摘する。
そうした不満の高まりは、バイデン氏の再選戦略に影響を及ぼす恐れがある。足元の世論調査を踏まえれば、バイデン氏と大統領選で対決する野党共和党候補はトランプ前大統領になる公算が大きいが、同氏とは2020年の前回選挙において幾つかの激戦州で際どい勝負を演じた。
ミシガンでの得票率はバイデン氏が50.6%、トランプ氏が47.8%、ペンシルベニアではバイデン氏50.01%、トランプ氏48.84%で票数にして8万1000票弱にとどまる。
アラブ・アメリカン研究所のジム・ゾグビー所長によると、そのミシガンの有権者に占めるアラブ系の比率は5%、ペンシルベニアとオハイオも1.7─2%に上る。
複数の市民団体関係者は、アラブ系やイスラム教徒がトランプ氏を支持することはなさそうだが、大統領選を棄権してバイデン氏には投票しない可能性は出てくるとの見方を示した。
ガザで支援活動を行っているライラ・エルハダド氏は、バイデン氏が今の態度のままならば、ミシガンにおける得票でツケを払わされると思う、と述べた。
米国のアラブ系市民は、ハマスが7日にイスラエルの民間人を襲撃したことを非難しつつも、イスラエルの空爆などによる反撃は度を越しており、これを糾弾しないバイデン氏は、果たして「人権重視」の外交を実践しているのか大いに疑問だと訴えている。
米国で最も単位人口当たりのイスラム教徒が多いミシガン州ディアボーン市で、初めてアラブ系の市長となったアブドラ・ハモウド氏は、ガザへの水や電気、食料供給を遮断したイスラエルをバイデン氏が非難しないことをやり玉に挙げている。
ハモウド氏は「われわれの声が、自分たちを守ってもらおうとして代表に選んだ人々の手で完全に消されてしまうのは、全く想定していなかった。ガザに閉じ込められたわれわれの家族は無視され、われわれによる停戦の呼びかけは、戦争の太鼓で押し流されてしまった」とX(旧ツイッター)で訴えた。
ホワイトハウスは、バイデン氏や他の政権高官が繰り返しガザにいる米国人の解放を働きかけていると説明。バイデン氏は24日、ガザへの支援物資到着スピードが十分でないとも発言した。
ニューヨークのアラブ系米国人団体幹部だったリンダ・サーサワー氏は、21日に開かれたイスラム教市民団体「米イスラム関係評議会(CAIR)」の集会で、米国の外交政策が修正されることを条件として政治献金をするべきだと参加者に提言した。
アラブ系の多くの人々が望んでいるのは、バイデン氏がイスラエルにガザへの攻撃を一時的に停止するよう促してくれることだ。
CAIRは、イスラエルのガザ空爆はもはやジェノサイド(民族大量虐殺)の域に達しており、米政府が手をこまねいているなら同罪だと主張している。
バイデン氏がイスラエル向けに140億ドル余りの新たな支援を行おうとしていることも、アラブ系の反発を招いている。
ペンシルベニアの大学で平和・紛争問題を教えているクエーカー教徒のパレスチナ系米国人、サエド・アトシャン氏は「バイデン氏の言動は信じられない。イスラエルに次々に何十億ドルもの軍事支援を試みつつ、パレスチナ人への人道支援は1億ドル程度だ」と憤る。
いつもはバイデン氏の政策を何の注文もつけずに応援してきたオバマ元大統領さえ、23日には政権に助言を送った。絶望感を増しているガザの人々向けの重要な支援や物資提供を加速させる取り組みにおいて、米国は引き続き世界をリードするべきだと述べた。
バイデン氏は、歴代のどの大統領よりも多くのアラブ系やイスラム教徒を政府のポストに起用してきたし、初めてイスラム教徒の連邦判事2人を誕生させた。しかし「シオニスト(ユダヤ民族主義者)」を自称する同氏の下では、こうした多様性が政策に反映されていない。
ホワイトハウスは、政権の中東政策に批判が出ているのは承知していて、イスラムコミュニティーなどとの対話を進めていると表明。また、バイデン氏が公的な場、あるいは水面下でガザ支援の道筋が確実になるよう動いていると強調した。
ただ、先週には11年にわたって国務省に勤務し、直近では政治軍事局の議会・広報部長を務めていたジョシュ・ポール氏が、イスラエルへの軍事支援に納得がいかないとして辞任した。
同氏はリンクトインへの投稿で「ガザの人々が抹殺される事態に直面しているのに、盲目的にイスラエルへの武器供給を急いでいる」という自身の懸念を首脳部が聞き入れてくれなかったと述べた。
バイデン米大統領は25日、パレスチナ自治区ガザを巡る危機について、イスラエル人とパレスチナ人のための独立国家や、中東地域へのイスラエル統合を含む「和平への道」を模索するべきだという考えを示した。
訪米中のオーストラリアのアルバニージー首相とホワイトハウスで会談した。
共同記者会見で、イスラエルに対する米国の支持は揺るぎないが、ガザ問題が解決した後は、この地域の進むべき道について考える必要があると述べた。
「危機が収束した際には、今後のビジョンが必要だ。われわれの見解ではそれは2国家解決策でなければならない。これはイスラエル人、パレスチナ人、地域のパートナー、世界の指導者ら全ての当事者が和平への道を歩むために集中的に努力することを意味する」と語った。
また、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる7日のイスラエル攻撃について、イスラエルとサウジアラビアの関係正常化を阻止する狙いがあったという見解を示した。
イスラエルは報復としてガザを空爆しており、ガザの保健省は25日、6500人以上が死亡したと発表した。
バイデン氏はこれについて、罪のない人々が死亡しているのは確かだとした上で、パレスチナ側が発表している数字には確信が持てないと述べた。
アルバニージー氏は冒頭挨拶で、豪はガザの人道支援に向け1500万ドルの追加資金を拠出すると発表。さらに、ウクライナ支援への協力継続も約束した。
このほか両首脳は、中国を巡る問題も協議。重要鉱物に関する協力や太平洋諸島のインフラ強化計画、日本を含む3カ国の広範な安全保障協力も発表する見通し。
バイデン氏は「インド太平洋が自由で開放的かつ繁栄し安全であり続ける」ことを確実にする決意を両国は共有していると述べた。

<1026日朝まで>
イスラエルのネタニヤフ首相は25日、テレビで声明を発表し、パレスチナ自治区ガザへの地上侵攻に踏み切る準備を進めていると言明した。作戦の詳細については明確にすることを避け、侵攻のタイミングについては戦時内閣が決定すると述べた。
今月7日に起きたイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃に応える必要があるとも述べた。
ガザの市民は南部に移動すべきという考えを改めて示したほか、イスラエル市民に対しては武器を保持するよう促した。
また、ハマスによって拘束されている人質の解放に向けて可能な措置を全て講じていると述べた。
ネタニヤフ首相は、これまでのところハマスの攻撃を許した安全保障上の失敗の責任を取っていないが、関係者全員が責任を問われるだろうと述べた。ただ、その調査は全て紛争が終わってからだとした。
これに先立ち、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は25日、イスラエルはガザへの侵攻を当面延期する方向で合意したと報じた
ヨルダンのラニア王妃は、10月7日に起きたイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に対する恐怖を表明する機会をCNNのインタビューで得た。「アラブ人として、パレスチナ人として、1人の人間、1人の母親として」どう感じたかと質問されたのだ。
それに対し王妃は、ハマスの奇襲攻撃に続くイスラエルによるガザ空爆と西側の「ダブルスタンダード」を痛烈に非難。イスラエル南部で起きたこととガザで起きていることを重ね合わせ、「銃を突きつけて家族全員を殺すのはいけないことだが、砲撃して殺すのは構わないというのだろうか」と語った。
イスラエル国内で大きな反発を招いたこのインタビューは、イスラエルと他の中東諸国などがこの紛争をどうとらえているかで分断が深まっていることを浮き彫りにするものだ。
イスラエルでは国民の64%が身の危険を感じているとの世論調査結果が新たに明らかになった。ハマスは連日イスラエルにロケットとミサイルを撃ち込んでおり、陸路や海路での侵入も試みている。治安当局者らは、10月7日に侵入した武装勢力の一部は、2度目の攻撃に備えて潜伏している恐れがあるとみている。
一方でイスラエル国外では、多くの人が異なる見方をしている。国連のグテレス事務総長は24日、「ハマスによる攻撃が理由もなく起きたわけではないことを認識することも重要だ」とし、パレスチナ人は「56年間にわたり息が詰まるような占領下に置かれてきた」と述べた。
イスラエルのエルダン国連大使はその発言に激怒し、グテレス氏の辞任を求めた。こうした感情は何も同国政界の右派に限ったことではない。野党指導者ベニー・ガンツ氏はX(旧ツイッター)に「国連事務総長がテロを容認するとは暗黒の時代だ」と投稿した。
ドイツは10月7日以来、イスラエル支持を早くから打ち出していた国の1つだ。そのドイツも、国連事務総長の辞任を求める声は否定。「国連事務総長はもちろんドイツ政府の信頼を得ている」と政府報道官がベルリンで語った。
イスラエルは、甚大な被害を受けた10月7日の攻撃には背景があることを認めている。しかし同国にとって、その背景とはパレスチナ人に対する不当な扱いではない。ハマスによる攻撃は何世紀にもわたる反ユダヤ主義的な攻撃の延長線上にあるとイスラエルは考えている。
エルサレムのホロコースト記念館はグテレス氏の発言を受けて声明を発表。10月7日の攻撃とホロコーストが違うのは「ユダヤ人が今は国家と軍隊を持っており、無防備で他人のなすがままになっている訳ではない」ことだとした上で、ここを訪れて「二度と繰り返さない」と誓う世界の指導者らの誠意が試されていると指摘した。
バイデン大統領ら西側指導者たちは相次いでテルアビブを訪れ、イスラエルへの連帯と支持を表明した。
各国指導者のテルアビブ参りを受け、イスラエル人は自分たちが理解されていると感じた。ネット上にはハマス自身が撮影した虐殺の動画も出回っており、イスラエルは自分たちのハマス壊滅計画が世界の共感を得られると信じた。
しかし、イスラエル軍のガザ空爆で数千人が死亡し、イスラエルが期待した世界の共感は予期せぬ方向に変わった。
トルコのエルドアン大統領は25日、「ハマスはテロ組織ではなく、領土と市民を守るために戦う聖戦士の集団だ。子どもたちを殺すことは決して許されない」とアンカラで発言。年内に予定していたイスラエル訪問をキャンセルした。
ハマスは解放者の集団、テロ組織ではない-トルコ大統領
イスラム教を国教とするマレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、ガザでの出来事が簡単に解決すると思っているイスラム指導者はいないと発言。「イスラエルは米国と欧州の支援を受けて、あまりにも傲慢になっている」とし、「人々が虐殺され、赤ん坊が殺され、病院が爆撃され、学校が破壊されるのを許すのは狂気の沙汰だ。この世界における野蛮の極みだ」と語った。
イスラエルはハマスを新たなイスラム国(ISIS)と呼び、米国と欧州連合(EU)がテロ組織に指定しているハマスを壊滅させると宣言している。
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)のリナ・カティブ氏は「ハマスを新たなISISと呼ぶのは分析的に不正確であるだけでなく、ガザの全住民を無防備な標的にしてしまうリスクがある」と指摘。「アラブ人とイスラム教徒は、この単純で危険な描写を広く拒絶している」と述べた。
イスラエルでは、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが参戦してくることへの懸念が高まる中、米国や欧州に一時的に出ることを考える人もいる。しかし、欧米の各都市で反イスラエルのデモが行われている状況を踏まえると、国内の方が安全だと考える人もいる。
多くのイスラエル人は、これはユダヤ人の祖国のための戦いであり、第二の独立戦争だと語る。しかし、それが最終的に国内で何を生み出すかは定かではない。当局者によれば、銃所持許可申請は3倍に増加する勢いだという。
息子がハマスに連れ去られたというレイチェル・ゴールドバーグ・ポリンさんは、国連での演説でこう問いかけた。世界はなぜ、拉致された人々のことをもっと騒がないのかと。
ロシアのプーチン大統領は25日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの衝突が中東域外にも広がる可能性があると警告するとともに、ガザにいる罪のない女や子ども、老人が別の誰かが犯した罪のために痛めつけられるのは間違いだと述べた。
プーチン氏は国内のさまざまな宗教の指導者と大統領府で面会し、中東地域での流血を止めなければならないと強調。外国首脳と電話会談した際、戦闘を止めなければ戦火が大幅に拡大するリスクがあると伝えたと説明した。
中東危機のさらなる激化は「重大かつ極めて危険で破壊的な結果を招く」とし「中東の境界をはるかに越えて波及する可能性がある」と語った。大統領府が発言内容を公表した。
また、特定の勢力ができる限り多くの国や人を紛争に引き込もうとしていると述べ、名指しすることなく西側諸国を批判。「混乱と相互憎悪の本当の波」を中東だけでなく、域外に起こすことが目的だと主張した。
ロシア政府はパレスチナとイスラエルが共存する「2国家解決」を引き続き支持している、と語った。
バイデン米大統領は25日、訪米中のオーストラリアのアルバニージー首相とホワイトハウスで会談した。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの紛争も議題となり、バイデン氏は「和平への道」を模索すべきとの考えを示した。
共同記者会見でバイデン氏は、イスラエルに対する国の支持は揺るぎないが、ガザ問題が解決した後は、この地域の進むべき道について考える必要があると述べた。
アルバニージー氏は冒頭挨拶で、豪はガザの人道支援に向け1500万ドルの追加資金を拠出すると発表。さらに、ウクライナ支援への継続も約束した。
このほか両首脳は、中国を巡る問題も協議。重要鉱物に関する協力や太平洋諸島のインフラ強化計画、日本を含む3カ国の広範な安全保障協力も発表する見通し。
リヤド:サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、米国に対し、罪のない人々の命を奪ったイスラエルの軍事作戦を停止させる方法の協議に直ちに取り組むよう求めた。
皇太子は火曜日、ジョー・バイデン米大統領から受けた電話の中で、ガザで起きている軍事的エスカレーションと、ハマスによる10月7日のイスラエルへの奇襲攻撃後に始まった戦争を終わらせるための努力について語った。
サウジアラビアの報道機関が報じたところによると、皇太子はまた、いかなる形であれ、民間人を標的にすること、あるいは彼らの日常生活に影響を与えるインフラや重要な場所を標的にすること、あるいは強制移住を止める解決策を見つける必要性を訴えた。
また、国際人道法を遵守し、ガザ包囲を解き、基本的なサービスを維持し、人道的・医療的援助の受け入れを許可する必要性を強調した。
皇太子はまた、パレスチナの人々が正当な権利を獲得し、公正で包括的な和平を実現するために、和平の道を回復することの重要性を説明した。
バイデン氏は、エスカレーションを抑え、それが地域に拡大するのを防ぐために行っているムハンマド皇太子の努力に謝意を表明した。
一方、皇太子は未来投資イニシアティブ(FII)フォーラムの傍ら、クウェートの国防大臣と会談した。
サウジアラビアのハーリド・ビン・サルマン国防大臣も同席した会談では、両国の関係や共通の関心事について話し合われた。
イスラエルのガザ地区における戦争に対しどのような立場を取るかに関係なく、戦場の状況が最終的に沈静化したとしても世界はもう以前の姿には戻らないだろう。10月7日にハマス戦闘員がイスラエル南部で行った残忍な攻撃と、イスラエルの逆上した反応という形でのそれ以降の展開は、2003年の米英によるイラク侵攻以降見られなかったような形で世界を二分している。ハマスによる攻撃はイスラエル・パレスチナ紛争の軌道を、双方だけでなく世界にとって大きく変えてしまった。この中東における最新の戦争は既に危機に瀕している世界秩序を揺さぶるような顕著な余波をもたらすだろう、などという言明では足りない状況である。
この戦争が沈静化する前に(どうやってそうなるかは誰にも分からないが)、イスラエル側がどのように反応したかを見ておくべきだろう。ハマスによる攻撃はイスラエルにとって、悪い意味で劇的なものだった。その痛み、屈辱、そして16年間封鎖されているガザ地区を囲む、テクノロジーで最も厳重に監視されたフェンスが不面目にも突破されたことは度肝を抜いた。イスラエルはいつかこの攻撃について、1973年の戦争の後と同様に調査し、何人かの首が飛ぶだろう。全ての真実については何ヶ月も、あるいは何年も分からないままかもしれない。
イスラエルの反応は予想通りだった。すなわち、ガザ地区に対する全力かつ無制限の空爆である。我々はこれを以前にも目にしたことがある。しかし今回は、軍事作戦の目標として宣言されているものが変わっている。それは、ハマスの軍事・政治インフラの完全な根絶である。それは大規模な地上侵攻によってのみ達成できる目標だが、まだ実行には移されていない。
しかし、それだけではない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相(国民の大半からこの大失敗の責任を問われている)と彼の戦時内閣は今や、ハマス指導部の殺害以上のことを望んでいるようなのだ。彼らは数百万人のガザ住民をエジプトに追いやりたいと考えている。それを強制移住と呼ぼうと民族浄化と呼ぼうと、いずれにせよ戦争犯罪である。
短期間の地上侵攻によってそれを行うことに失敗すれば、ハマスの勝利ということになる(大量の民間人死傷者を伴ってではあるが)。より長期的な地上侵攻を行う場合、2つのシナリオが考えられる。イスラエル南部における莫大な人命の損失と、ヒズボラとの北部戦線の激化の可能性である。後者が現実となれば地域戦争の可能性が高まり、その結果は予測できない。
イスラエルは現時点では、ガザ地区北部に対し大規模な空爆を行い、数百万人に南部への退避を強いている。3km、5km、あるいは9kmの緩衝地帯(デッドゾーン)を作りたいと考えているのだ。イスラエルは戦争を終結させるためにそれを受け入れるつもりがあるのだろうか。それは分からない。
一方、15年以上にわたってガザ地区を支配している過激派組織ハマスは、イスラエルとの間の幾度にもわたる激しい戦闘を経て、弱体化するどころかさらに強力になっている。10月7日の攻撃は数年前から計画されていたに違いない。ハマスがイスラエルの対応の遅さを予想していたのかどうか、あるいは人質を何人か取って、イスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人数千人の一部の解放を交渉することがハマスの唯一の目標だったのか、それらは知る由もない。しかし、ハマスは今や自分たちが、優勢な軍事力を有し欧米諸国から政治的支持を得ている国家であるイスラエルとの公然の戦争に入ったことに気づいている。
イスラエルによる2週間以上におよぶ残忍な爆撃(最新の集計による死者数は子供や女性を含む5000人以上)がハマスの軍事インフラに小規模な被害しか与えていないことは明白である。ハマスは2014年の戦争から教訓を得ているうえ、ヒズボラの戦争ゲームのプレイブックを使用している。イスラエルによる地上侵攻に対する準備を進めており、21世紀型のハイテク軍隊に対して20世紀型のゲリラ戦術を用いるだろう。地上侵攻が行われれば、何年も後まで歴史書に言及されるような戦闘が起こることになる。
それでは、イランとヒズボラについてはどうだろうか。これは何百万人もの人々の脳裏にある最も差し迫った疑問である。米国はヒズボラおよびイランの関与を恐れ、2つの空母打撃群を精鋭部隊や戦略ミサイル砲台と共に東地中海に派遣した。これまでのところ、ヒズボラはイスラエルからの挑発に反応するのみで曖昧な立場を取っており、イスラエル側は憶測を続けざるを得ない状況だ。
懸念されるのは、追い詰められ面目をつぶされたネタニヤフ首相が、イスラエルの遺伝子DNAを改変しようとする自身の臆面もない企てを覆い隠すために、米国を新たな中東戦争へと誘い出そうとする可能性だ。彼は保身のためなら何でもする危険な男である。それが現実となれば、米国、地域、そして必然的にイスラエルにとって大惨事となるだろう。彼が地域戦争に火をつけるために10月7日の悲劇を利用することは許されてはならない。
それにもかかわらず、欧米諸国の反応は概ね近視眼的かつ無責任である。欧州の指導者らは、イスラエルには自衛権があるとの米国の立場をオウム返ししている。その偽善と二重規範には全く反吐が出る。イスラエルをウクライナと比較するべきではない。パレスチナ人の厄災と苦しみは何十年も前から続いている。ガザ地区とヨルダン川西岸地区のパレスチナ人が置かれている地獄のような状況への同情が欠如したまま、イスラエルに対する免責が長年にわたって許されてきたのだ。
イスラエルによる占領は現代史上最長であり、19世紀にまで遡る欧州の植民地主義の遺産である。そのような歴史的ナラティブはシオニストのプロパガンダによって何十年にもわたって無効にされてきたが、今回の紛争によって世界の公論はパレスチナ人の犠牲という現実に目覚めた。
何十年も前から、欧米諸国が説くところのルールに基づいた万人に適合する国際世界秩序を実現する試みは、イスラエル例外主義によってことごとく頓挫させられてきた。2000人の子供を含む5000人以上の民間人が死亡し、住宅、モスク、教会、病院、学校、その他の建物がブロックごと破壊されるという、現代史上最も恐ろしい民間人虐殺の一つが行われている中、ルールに基づいた秩序だけでなく、複雑な紛争を扱ううえでの公平性が問われなければならない。
一極的な世界秩序の過去30年以上にわたる実績は悲惨なものだ。今回のシナリオは、イラク、アフガニスタン、リビア、イエメン、シリアの戦争の時と同じである。今は多極的な世界秩序が必要とされる時代だ。地域諸国は自国の未来について発言権を持たなければならない。イスラエルは何十年にもわたって例外であり続けてきた。その例外主義を終わらせなければならない。より公正な世界を実現するために、イスラエルは他の全ての国と同様に国際法を遵守すべきだ。欧米諸国の政府はその国民たちと立場を異にしている。この危機の影響は今後、欧米に波及していくだろう。
ガザ地区で起こることとは関係なく、世界にはルールに基づいた秩序が必要であり、それに対する最終決定を欧米に任せることはもはやできないのである。
カイロ:エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は25日、イスラエルとハマスの紛争を緩和し外交的解決を見いだすために、エジプトが「非常に積極的な役割」を果たしていると述べた。
エジプトは、紛争の停戦を主張する一方で、ガザとの国境にあるラファ検問所を通じたガザ住民への支援物資の輸送や人質解放の交渉で積極的な役割を果たしてきた。
エジプトとガザ地区との国境から約135マイル(215キロ)離れたシナイ半島の西端で行われた演習で、エジプト軍の戦闘機や戦車などの軍備を視察した大統領は、エジプトには相当の軍事力があるが、それは自衛のためにのみ賢明に使用すると述べた。
大統領は、エジプトによる紛争関与を求める内部の声に対し、「このような力を持つときは、それを合理的に、賢明に、慎重に用いること、そして行き過ぎたり、自分の力に幻想を抱いたりしないことが非常に重要だ」と言及した。
「自衛する能力があるならば、[中略]決して怒りや熱狂に任せてはいけない」と大統領は述べた。
エルシーシ大統領は25日にカイロでエマニュエル・マクロン仏大統領と会談予定で、この軍事演習は、10月6日に始まった1973年の対イスラエル戦争50周年記念行事のために行われる予定だったが、紛争のために延期されたという。
21日のカイロ和平サミットで、エルシーシ大統領は、ガザ地区住民をエジプトのシナイ半島に移住させようとするイスラエルの動きに警告し、「正当な解決なくパレスチナ問題が消滅することなどありえない。いずれにせよ、それがエジプトの犠牲のうえで起きることは決してない」と述べた。
ベイルート:水曜日、シリア南西部の軍事拠点に対するイスラエルの攻撃で、兵士8人が死亡したほか、7人が負傷したとシリア国営通信社(SANA)は報じた。
SANAは軍関係者の話として、イスラエルの「空からの攻撃」は南西部の都市ダルアー近郊の多数の軍事拠点を標的にしたと伝えた。また、この攻撃により物的損害も発生したと報じた。
SANAの報道によると、攻撃は水曜日の午前1時45分頃(グリニッジ標準時の火曜日22時45分)に行われた。
イスラエル軍は、シリアからイスラエルに向けたロケット弾発射への報復として、同国の戦闘機が水曜日早くにシリア軍のインフラと迫撃砲発射台を攻撃したと発表している。
イスラエル国防軍(IDF)は声明で、「昨日(火曜日)イスラエルに向けた発射への報復として、同軍の戦闘機がシリア軍の軍事インフラと迫撃砲発射台を攻撃した」と述べた。
イスラエルとハマスとの戦争によって、より広範な地域混乱が起こり、特にシリアならびにイランの支援を受けたレバノンのヒズボラとの現在の緊張がさらに激化するのではないかとの懸念が高まっている。
10月7日にパレスチナ・イスラム運動の武装勢力がガザ地区の国境を越えて襲撃し、凶行に及んだことで戦争に発展した。イスラエル当局によると、この襲撃で1,400人以上が命を落とした。
また、このイスラエル史上最悪の攻撃で、220人以上が人質として拉致された。これが沿岸のパレスチナ人地区へのイスラエルによる激しい砲撃の引き金となり、ガザ地区を支配するハマスは、これまでに5,791人が死亡したと発表している。
シリア国営メディアによると、日曜日のイスラエル軍の攻撃により、内戦で荒廃したシリアの2つの主要空港が使用不能となった。
イスラエルの攻撃により、首都ダマスカスと北部の都市アレッポにある政府管理の空港では、繰り返し航空便の運航停止が発生してきたが、今月のイスラエルとハマスとの紛争が始まってから、この2か所が同時に攻撃されたのは2度目である。
シリア当局によると、今月初め、イスラエル軍の攻撃でアレッポ空港が標的となり、5人が負傷し、空港も使用不能になったことを戦争監視団が報告した。
シリアでの10年以上にわたる内戦の間、イスラエルは主にイランに支援された部隊とレバノンのヒズボラ戦闘員、さらにはシリア軍の軍事拠点を標的として、北の隣国に対して数百回の空爆を行ってきた。
イスラエルは、シリアに対する個別の攻撃についてコメントすることはめったにないが、バッシャール・アル・アサド大統領政権を支援する宿敵イランのシリアにおける影響力拡大は許さないと繰り返し述べている。
ドバイ:ヨルダンのラーニア王妃は24日、イスラエルが行っているガザ地区侵攻おいて、世界の「明らかな二重基準」と「痛ましいほどの沈黙」を批判した。
ラーニア王妃はCNNのクリスティアン・アマンプール氏とのインタビューで、西側メディアのナラティブが広く流布しているが、「この紛争は10月7日に始まったものではない」ことを強調した。
「大半のネットワーク局は『戦時下のイスラエル』と題して報道を行っていますが、分離壁と有刺鉄線の反対側にいる多くのパレスチナ人にとって、戦争が去ったことなどありません。これは75年間続いてきた話なのです。あまりにも多くのパレスチナ人が死に、難民にされてきたという話なのです」とヨルダンの国営通信社ペトラが王妃の発言を報じている。
「このナラティブからは、核武装した地域の超大国によるパレスチナの人々に対する占領、抑圧、日々記録されている犯罪行為の実行といったことが抜け落ちています」
ラーニア王妃は、この18日間の戦争による膨大な数の民間人の犠牲者に対し、ヨルダンの人々は「嘆き、痛み、衝撃」によって団結していると述べた。
「私たちは、子どもの手に名前を書き込むパレスチナの母親たちの姿を目にしています。それは爆撃によって彼らが遺体となってしまう可能性があまりにも高いからです」CNNのアマンプール氏に対し、ラーニア王妃はそう語った。
「世界中の母親たちと同じように、パレスチナの母親たちも子どもたちを愛しているということを世界に気づいてほしいのです。彼らがこんな状況下に置かれなければならないことは、本当に信じられません」
ラーニア王妃は、交戦規定はすべての陣営に適用されるべきであり、イスラエルが自衛を名目に残虐行為を行っていることを強調した。
「これまで、2,400人の子どもを含めて6,000人の民間人が犠牲となっています。これのどこが自衛なのでしょうか。私たちは精密兵器を用いた大規模な虐殺を目の当たりにしているのです」ラーニア王妃はそう語った。「この2週間、私たちはガザ地区への無差別爆撃を目の当たりにしてきました。家族が皆殺しにされ、居住区が跡形もなく消し飛ばされ、病院、学校、教会、モスク、医療従事者、ジャーナリスト、国連の支援従事者が標的にされています。これのどこが自衛なのでしょうか」
ラーニア王妃はこの地域の多くの人々が、西側世界はイスラエルへの支持や擁護を通じてこの戦争に加担していると見なしていると述べた。
「人々がこれほど苦しんでいるのに世界は停戦さえ呼びかけないというのは、現代史上でこれが初めてです」ラーニア王妃はそう述べた。「アラブ世界の多くの人々は、西側世界がこれを容認しているだけでなく、支援し、扇動していると見ているのです」
ドバイ:ガザにおけるイスラエルとハマスの戦争は、パレスチナ抵抗勢力に同調する民兵がイスラエルやアメリカの標的を攻撃することで、より広いアラブ地域に波及する危険性をはらんでいる。このエスカレートの可能性に特に脆弱な国のひとつがレバノンだ。
ヒズボラは、1975年から90年にかけてのレバノン内戦から生まれたシーア派民兵組織で、現在も強力な武器庫と国民経済のシェアを支配している。
財政難にあえぐベイルート政府とイスラエルとの国境沿いの地域社会は、壊滅的な財政危機と長年にわたる政治的麻痺の中で、全面戦争が起こった場合に持続的な防衛を行える状況にはない。
とはいえ、政府機関、病院、学校、ホテルは、深刻な戦闘が勃発した場合の避難、安全地帯、死傷者の治療の準備を始めている。
「夫は湾岸で働いていて、できるだけのことはしてくれていますが、私は数週間以上ホテルに滞在することはできません。それから私はどこに行けばいいのでしょう?” 国境地帯から安全なベイルートに逃れた2児の母、ラヤルさんはアラブニュースに語った。
「私の子供は11歳と9歳です。2006年の苦い思い出を味わっていないのが幸いです。彼らは私たちが休暇に来たと思っています。何が本当に起きているのか、私はまだ彼らに説明していません」
レバノン南部の市民は、2006年7月のヒズボラとイスラエルとの戦争をよく覚えている。イスラエルでは兵士を中心に160人が死亡した。この30日間の紛争で、レバノンの市民約100万人が避難した。
殺戮が繰り返されることを恐れ、地域社会全体がすでに家から避難している。
「近隣がゴーストタウンと化しているのは一目瞭然です。ベランダに洗濯物が干していないのを見ればわかります」レバノンのメディア関係者であるサフィさんはアラブニュースにこう語った。
「残っているのは、妻子を安全な場所に送り出した男性たちです。人々は怯えています。人々の口から出てくる言葉は、今回の破壊規模は2006年と同じではなく、もっともっとひどいものになるだろうという認識です」
「ヒズボラを支持する人々でさえ、破壊の規模は2006年とは比べものにならないことを認識しています」
サフィさんは、ナクウラで住んでいたビルがベイルートへ避難に向かった直後に爆撃を受け、命が助かったのは幸運だったと語った。「私は運が良かったが、今では隣のタルーザ村の住民も逃げ始めている」
しかし、すべての人がすでに逃げ出したわけではない。小さな商店は営業を続け、ダイラのオリーブ農家も留まることを決めた。「衝突が続いているのは聞こえるけれど、タイレやナバティエに出れば、そこはまったく別の雰囲気です。平穏と交通がまだ残っています」とサフィさんは言う。
レバノン軍とイスラエル軍の小競り合いにより、レバノン・イスラエル国境沿いは依然として緊張が高まっており、さらなるエスカレートが懸念されている。最近、激しい砲撃がビント・ジュベイルとラブ・アル・タラティーンに隣接する係争中のシェバア農場を襲った。
AFP通信の集計によれば、レバノン側では41人が死亡しており、そのほとんどが戦闘員だが、4人の民間人も含まれている。イスラエルでは、3人の兵士と1人の民間人を含む4人が死亡した。
すでに4,000人以上のレバノン市民が、ティレなどの近隣地域や首都ベイルートに避難している。一方、イスラエルは独自の避難計画を拡大し続け、コミュニティを国境から離れた国費提供の仮設住宅に移している。
両国を隔てるブルーラインを管理する国連レバノン暫定軍のアンドレア・テネンティ報道官は声明で、平和維持軍は「レバノン南部の安定回復を主とする任務に全力を尽くしており、敵対行為の激化を防ぐために最大限の努力をしている」と述べた。
10月7日、ハマスがイスラエルへの前例のない越境攻撃を開始し、ガザへの砲撃と地上攻撃が広く予想されるようになった。
ヒズボラの指導者であるサイード・ハッサン・ナスラッラー師は、まだ公の場で紛争の激化に言及していないが、彼の副官であるナイム・カセム氏は、ヒズボラは「完全に準備ができている」と述べ、紛争に関与しないようワシントンに脅かされることはないと述べた。
ヒズボラ議員のハッサン・ファドララ氏も声明を発表し、民兵組織は事態の推移を注意深く監視し、兵士に指示を出していると述べた。
ヒズボラとスンニ派グループのハマスには、イランの強力なイスラム革命防衛隊の対外活動部門であるクッズ部隊とのつながりがある。両者はまた、イスラエルに反対するレバノン、パレスチナ、シリア、イラク、イエメン、その他イランが支援する武装グループからなる、いわゆる「抵抗の枢軸」の一部でもある。
テヘランはヒズボラに財政的、軍事的支援を提供し、ヒズボラが内戦でアサド大統領側で戦っている隣国シリアは、誘導ミサイルを含む武器の移送を促進している。
もしヒズボラがハマスの側について紛争に参戦し、レバノン南部からイスラエルに対する新たな戦線を開くことを選択した場合、その結果は双方にとって壊滅的なものとなる可能性がある。
ガザの人道危機は、アラブの路上でパレスチナ人への強い支持とイスラエルへの敵意を引き起こしたが、レバノンの世論は、ヒズボラが戦争に直接関与すべきかどうかで分かれている。
レバノンは2019年後半から壊滅的な経済危機の渦中にあり、政治的不調和は安定した機能する政府を国内に作り出せないままだ。現在、人口の約90%が貧困ライン以下で暮らしている。
イスラエルに断固反対しているにもかかわらず、進歩社会党の元党首であるワリード・ジュンブラット氏は、レバノンは “戦争の輪が広がる “可能性から逃れられないかもしれないと述べた。
そのため、山間部のドルーズ派村落は「シーア派、スンニ派、キリスト教徒を問わず、誰にでも開放される」とジャンブラット氏は述べ、「イスラエルの攻撃時に標的となりうる地域からの避難民を受け入れるために、必要な後方支援を行っている」と語った。
ティレ市長のハッサン・ドブーク氏は、避難所はすでに満杯であり、市は現在、避難家族を受け入れるためのセンターをさらに開設することを検討していると述べた。
災害管理部門の責任者であるモルターダ・モハナド氏によると、3つの公立学校が仮設シェルターとなり、約1000人が避難しているという。一方、援助機関は食料やその他の基本的な生活必需品の配給に注力している。
しかし、こうした必死の準備の一方で、避難民から利益を得ようとしている人々もいるようだ。
レバノンの観光シンジケート組合の代表であるアリ・タバジャ氏は、ホテルや家主がこの危機に乗じて価格を吊り上げていると述べた。
タバジャ氏は、ワリード・ナサール観光大臣とホテル・シンジケートに対し、「値上げや避難民の状況を利用することを禁止する指示を出す」よう求めた。
レバノンのナジーブ・ミカティ暫定首相は、レバノンは戦争を望んでいないと述べたが、状況は常に変化しているため、「どの政党からも情勢についての確約を得ることはできなかった」と述べた。
レバノン政府は、全面戦争に備えた緊急計画を策定し、150万人近い市民が避難すると見積もっている。
この計画では、国内の地域を色分けしたゾーンに分類している。南部の町や、アル・ヘルメル、バールベク、バアブダなどのイスラエル国境沿いの町はレッドゾーンとされ、イスラエルに狙われる可能性が最も高い。
ティレ、シドン、ベイルート、ザーレ、ベカー西部などはイエローゾーンとみなされ、避難所や支援、援助を提供するために選ばれている。シュフ、アレイ、メトンとベカーを含むグリーン・ゾーンは、避難民を受け入れるために選ばれた。
この計画では、レバノン全土の約75の学校が仮設シェルターとなり、ベイルート港の収益の20%が攻撃時の再建とインフラ整備に充てられる。
保健省は、人道支援とサービスを確保するための資金を確保している。食料と清潔な水の供給の問題に取り組むため、政府による毎日の会議が開始される。
政府のイニシアティブにもかかわらず、多くのレバノン国民は、国家支援の実施に懐疑的な態度を崩していない。「1ドルも支給されることはないでしょう」と、2人の子どもを連れてベイルートに避難してきた母親のラヤルさんは言う。
「政府が援助するとは思えない。国際援助が届いた瞬間に、彼らの懐は満たされるでしょう。2006年にはアラブ諸国が支援してくれた。神様、神様だけです」
アンカラ: トルコのエルドアン大統領は25日、イスラエル軍とパレスチナ軍間の即時停戦を強く求めると共に、イスラム諸国は恒久的な平和のために共に行動しなければならないと述べ、イスラエルに対し攻撃を停止するよう圧力をかけることを世界の列強に呼びかけた。
エルドアン大統領は、議会で与党議員らを前に演説し、人道支援のためにラファの国境検問所を開放し続ける必要があり、早急に人質の交換を行うべきだと述べた。
さらに同大統領は、ガザの過激派組織ハマスに対するイスラエルの「非人道的な」攻撃を理由に、「イスラエル訪問を計画していたが、中止となった」と述べ、ハマスを自分たちの土地のために戦っている「解放者」であると位置づけた。加えて、イスラエルがトルコの善意に付け込んだこともイスラエル訪問中止の理由として挙げている。
イスラム組織ハマスに拘束されているイスラエル人の人質をさらに解放するための交渉は現在も続いており、近いうちにさらなる打開が見られる可能性があると、カタールのムハンマド副首相兼外相がテレビ放映された記者会見で述べた。
同外相は「スタート時点と現時点を比較すれば、いくつかの前進やブレークスルーが見られる」とし、「われわれが双方とうまくやることができれば、近いうちに何らかの突破口が開けるのではないか」と語った。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの侵攻を当面延期する一方、米国が同地域のミサイル防衛を急ぐことで合意したと、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が米国およびイスラエルの関係者の話として25日報じた。
ヨルダンのアブドラ国王は25日、同国を訪問中のマクロン仏大統領と会談し、イスラエルに対しパレスチナ自治区ガザへの空爆や包囲をやめるよう大国から圧力をかけるべきとの見解を示した。
同国王は、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの武力衝突を終わらせることが急務であり、でなければ中東全域で「爆発」が起こる可能性があると警告した。
王室の声明によると、同国王は「パレスチナ人難民流出を引き起こしたり、ガザの住民に避難を余儀なくさせるような、イスラエルによるいかなる行動にも反対する」と述べた。
マクロン氏は24日、イスラエルでネタニヤフ首相と会談した後、ヨルダン川西岸のラマラでパレスチナ自治政府のアッバス議長とも会談を行っている。
トルコのエルドアン大統領は25日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスはテロ組織ではなく、パレスチナ市民と土地を守るために戦う解放グループだと述べた。イスラエルとハマスに即時停戦を求め、イスラム諸国は地域の恒久的平和に向け共に行動しなければならないとした。
エルドアン大統領は与党・公正発展党の議員に「ハマスはテロ組織ではなく解放集団で土地と人々を守るための戦う『ムジャヒディン(聖戦戦士)』である」と述べた。
イスラエルの攻撃を支持する西側諸国を批判し「西側諸国がイスラエルのために流す涙は欺瞞の表れだ」とした。
トルコは、10月7日のハマスによるイスラエル南部への攻撃で民間人の犠牲が多数出たことを非難する一方で、イスラエルに抑制的な反応を促している。
労働力は枯渇、ロケット弾の飛来を告げるサイレンは絶え間なく鳴り響き、奇襲攻撃で受けたショックは簡単には消えない──。イスラエル経済がイスラム組織ハマスとの紛争で被る打撃は、過去数十年に経験したことのないものになりそうだ。
高層ビルが増え続ける主要都市テルアビブでは、市が建設現場を閉鎖したため建設用クレーンが数日間動きを止めていた。今週に入ると厳格化された安全指針の下で作業が再開されたが、業界の報告書は建設部門の停滞だけで1日当たり1億5000万シェケル(3700万ドル)の経済損失が発生していると推計している。
イスラエル建設業協会のラウル・サルゴ会長は「打撃を受けているのは建設業者や実業家だけではない。イスラエルの全世帯が受けている」と話す。
約5000億ドル規模のイスラエル経済はハイテク業と観光業に強みを持ち、中東地域で最も発展している。今年は大半の期間にわたり堅調を維持。通年の成長率は3%に達する勢いで、失業率も低かった。
しかし、ガザへの地上侵攻が間近に迫り、戦闘が地域紛争へと拡大する恐れがあるため、国民は身を潜め、食料品以外の支出を大幅に減らしている。格付け会社は既にイスラエルを格下げする可能性を警告している。
何十万人もの陸軍予備役が召集されて人繰りに穴が開き、港湾からスーパーマーケットにいたるサプライチェーン(供給網)が混乱。小売業者は従業員を一時解雇し、通貨シェケルは下落している。
また紛争の影響でガザ地区からイスラエルへのパレスチナ人労働者数千人の移動が止まり、ヨルダン川西岸地区からの流れも細っている。
エルサレムの主要なショッピングモールのエスカレーターや通路は紛争勃発から2週間閑散としていた。利用者は徐々に戻っているが、 「客足は激減している」と、スポーツウエアを扱う店舗の店長は言う。
<主力のハイテク業に打撃>
ホテルは国境地帯から避難してきたイスラエル人で半分ほどが埋まっているが、残りはほとんど空室だ。工場は、ガザ近郊の拠点でさえ操業を続けてはいるが、定期配送を担うトラック運転手の数は必ずしも十分ではない。
先週のクレジットカードによる買い物は前年同期比で12%減少。スーパーマーケットでの買い物が急増した以外、ほぼすべてのカテゴリーで激減した。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大期に隆盛を極めたハイテク産業は苦戦を強いられている。イスラエルは国内総生産(GDP)の18%、輸出の半分をハイテク業が占める。
「生産性が著しく低下している。生きるか死ぬかが問題になっているときに日々の仕事には集中できない」と、フィンテック企業シータレイのバラク・クライン最高財務責任者(CFO)は語る。同社は国内の従業員80人のうち12人が予備役に招集された。
イノベーション庁のドロール・ビン最高責任者によると、ハイテク業界では労働力の推計10─15%が予備役として招集された。同庁が多数のハイテク企業、特に初期段階のベンチャー企業と接触したところ、その多くが資金調達ラウンドの最中で、資金不足に陥っている。こうした企業を支援するためにイノベーション庁は1億シェケル(2500万ドル)の基金を設立し、ハイテク新興企業100社が苦境を乗り切るのを支えている。
<情緒的危機>
イスラエル政府は紛争のための資金と被害を受けた家計や企業への補償に「無制限の」支出を約束しており、これは財政赤字と債務の拡大を意味する。
今後のイスラエル経済を占う上で過去の紛争は参考にはならないかもしれない。2006年にイランを後ろ盾としたレバノンの武装組織ヒズボラと34日間にわたり戦った際には輸出が減少し製造業が減速、GDPが0.5%も落ち込んだが、その後すぐに経済が回復した。
しかし、今回は過去の例とは異なると当局者は指摘する。
国民の間に「情緒的な危機」があり、それがすでに打撃を及ぼしていると指摘するのは、大手ハポアリム銀行のチーフ経済アドバイザー、レオ・レイダーマン氏。「人々は先行きの不透明さと不安な気持ちから消費支出を最小限に抑える」と見ている。個人消費は経済活動の半分以上を占めるだけに、経済への影響は重大かもしれない。
「イスラエルは最近の全ての戦闘で驚くほどの回復を示してきた。今回はもっと劇的な事態のようだ」と財務省高官は不安をにじませた。
イスラエル中銀は23日、今年の経済成長率予測を3%から2.3%に下方修正し、来年についても3.0%から2.8%に引き下げた。これは戦闘がガザ地区に限定されるとの前提に基づいた予想だ。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラ、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマス、同イスラム聖戦の指導者が会談した。ヒズボラが25日明らかにした。
「ガザとパレスチナにおけるレジスタンス(抵抗運動)の真の勝利を実現し残忍な侵略を阻止するために、国際的な立場と抵抗の枢軸の当事者が何をすべきかについて評価が行われた」と明かした。調整を継続することで合意したという。
声明によるとヒズボラのナスララ師、ハマスのサレフ・アル・アルリ氏、イスラム聖戦のジヤド・アル・ナハラ氏が参加した。会議がいつ行われたかは明らかにされていない。
ヒズボラは25日、さらに2人の戦闘員が死亡したと発表した。今回のイスラエルとの軍事衝突以来、戦闘員の死者は40人となった。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は25日、リヤドで開催された国際投資会議「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ(FII)」で、イスラエルとハマスの戦争は新たな懸念であり、世界経済の見通しが悪化する可能性があると警告した。
「多くの雲があった地平線上にもう一つ雲が増えた」と表現。近隣諸国の観光部門への影響にも触れた。
世界的な金利上昇については米連邦準備理事会(FRB)の政策金利に言及した上で、「より長くそこにとどまることを理解する必要があり」と呼び掛けた。
イスラエル軍は、25日未明に戦闘機でシリア軍のインフラと迫撃砲発射台を攻撃したと発表した。シリアからのロケット弾発射を受けた対応という。
24日夜に空き地に着弾したシリアからの2発のロケット弾を確認し、発射源に対して砲撃で応戦したと説明。
さらなる対応として、戦闘機が「シリア軍の軍事インフラと迫撃砲発射装置を攻撃した」とした。これ以上の詳細は明らかにしなかった。
シリアからのコメントは現時点で得られていない。
イスラエルはイスラム組織ハマスとの対立が続く中、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラやシリアの武装勢力と交戦しており、北部の国境付近に紛争が拡大している。

<1025日朝まで>
イスラエルがパレスチナ自治区ガザだけでなく「多正面」の作戦を迫られている。北隣のレバノンの武装組織がイスラエルを攻撃し、ヨルダン川西岸でも衝突が激化する。イスラエルはガザへ地上侵攻した場合に戦力分散が必要となり、戦線が本格的に広がれば中東が一層緊迫する。米国も警戒を強めている。
イスラエル軍は22日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のジェニンのモスク(イスラム教礼拝所)を「テロリストの指揮所」として空爆し、パレスチナ人2人が死亡した。ガザと違い、西岸で空爆に踏み切るのは珍しい。
他の地点にも急襲作戦を重ねており、パレスチナ保健当局によるとガザの戦闘が始まった7日から23日までに、西岸だけでパレスチナ人95人が死亡した。
西岸では2022年末にイスラエルで史上最も右寄りとされるネタニヤフ政権が発足してから暴力の連鎖が続く。国連によると今年初めから9月中旬までに西岸でパレスチナ人189人、イスラエル人25人が死亡した。これに比べても、ここ2週間の急増ぶりが際立つ。
パレスチナ自治区は自治政府が統治する西岸と、イスラム組織ハマスが実効支配するガザに分裂している。西岸にもハマスの支持者は多い。ガザの同胞の窮状に反発を強めており、イスラエルが警戒水準を上げている。
同時にイスラエルが神経をとがらせるのが、北部国境だ。レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラが越境砲撃を重ね、イスラエル軍が応戦。北部国境付近の14地区の住民に新たに退避命令を出した。
ネタニヤフ首相は22日、レバノン国境付近を視察し「我々は2つの戦闘のさなかにある」と述べた。16日には「イランとヒズボラに告ぐ。北部で我々を試すな」と警告していた。
イスラエルと敵対する地域大国イランはハマス、ヒズボラの後ろ盾と目される。イランのアブドラヒアン外相は16日「パレスチナ人への戦争犯罪がやまなければ、他の複数の戦線が開かれる」とけん制した。直接イスラエル攻撃に関わるとは考えにくいが、親イラン勢力を通じて揺さぶりをさらに強めそうだ。
イエメンを拠点に活動するイスラム教シーア派武装組織フーシの脅威もある。米CNNはイエメン沿岸付近で米軍の駆逐艦が19日にドローン(無人機)とミサイルを迎撃した際、当初の見方より長時間にわたり大規模な対応を迫られていたと伝えた。9時間のうちに巡航ミサイル4発とドローン15機を撃ち落としたといい、本格的な攻撃だったことを示唆した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は23日、シリアやイラクで米軍拠点を無人機やロケット弾で攻撃する例が増えたことに関し「イランが積極的に推進する場合がある」と述べた。周辺国の武装勢力を介し、自国の関与を否定する狙いだと非難した。
米シンクタンクの戦争研究所は、イランが「ハマスとイスラエルの戦闘が地理的に広がり多正面の紛争になるとメッセージを送っている」と指摘する。ネタニヤフ氏は「すべての任務に準備ができている」と強調するが、主戦場のはずのガザ地上侵攻の時期や規模の計算に影響している可能性は高い。
国境をまたぐ戦闘が本格化すれば、中東情勢は一挙に流動化する。バイデン米政権が空母打撃群を2つも東地中海に送るのは強い警戒感の表れだ。米国防総省は21日、中東に地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備と地対空ミサイルシステム「パトリオット」の追加配備も決めた。イランや、中東の親イラン組織による攻撃を抑止する狙いとみられる。
ブリンケン米国務長官は24日、イランやその代理組織が米国人を攻撃した場合に米国は「断固として」対応すると警告した。イスラエルとハマスの戦争にイランを参加させたくない米国にとって、これまでで最も厳しい警告となった。
「米国はイランとの衝突を望んでいない」とブリンケン長官は国連安全保障理事会(安保理)で発言。「この戦争が拡大することを望んでいない。しかしイランやその代理組織が米国人を攻撃するようなことがあれば、はっきり言っておく。われわれは国民を守り、われわれの安全を迅速かつ断固として守る」と宣言した。
長官はさらに、ロシアや中国を含む安保理メンバー15カ国に対し、対イスラエル紛争で新たな戦線を開くことや、同盟国を攻撃することのないようイランにくぎを刺すことを要請。イランがそのような行動に出た場合には、その責任を追及するよう求めた。
格付け会社S&Pグローバルは24日、イスラエルの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。イスラム組織ハマスとの紛争がより広範囲に拡大し、国内の経済や治安状況により顕著な影響を及ぼす可能性があることが理由。
S&Pは発表文で「現在のところ、紛争は(パレスチナ自治区)ガザに集中している状況が続き、3─6カ月で収束すると想定している」とした。
紛争が解決し、イスラエルの経済と財政に長期的な打撃を与えることなく、地域的・国内的な安全保障上のリスクが軽減された場合、見通しを「安定的」に修正する可能性があるという。
国際的な支援により、イスラエルへのマクロ経済的な悪影響が一部緩和される可能性があるとも指摘した。
長期および短期の外貨・現地通貨建てソブリン債格付けは「AAマイナス/A─1プラス」に据え置いた。
同業フィッチは先週、イスラエルのソブリン債格付け「Aプラス」を「ネガティブウォッチ」に指定。ハマスとの衝突が大幅にエスカレートすれば、格付けにマイナスの影響が及ぶ恐れがあるとした。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は24日、パレスチナ自治区ガザに燃料が搬入されなければ25日夜には、人道支援業務を停止せざるを得なくなると発表した。
バイデン米大統領もこの日、ガザへの人道支援が十分な速さで行われていないとの見方を示した。
ガザとエジプトの境界のラファ検問所は21日に再開され、ガザへの人道支援物資の搬入が始まった。
これまでのところ21日から合計54台のトラックが支援物資をガザに届けている。ただ、燃料は、ハマスに使われることをイスラエルが懸念し、支援物資には含まれていないという。
米国防総省のライダー報道官は24日、米軍部隊がこの1週間でイラクで10回、シリアで3回の攻撃を受けたと発表した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、米政府が引き続き、中東地域に派遣されている米兵に対する将来的な攻撃の可能性を深く懸念していると述べた。
カービー氏は23日、イラクやシリアの米軍基地に対する親イラン武装勢力のロケットや無人機攻撃を、イランが積極的に手助けしているケースが幾つかあると指摘し、バイデン大統領が国防総省に対応強化を指示したと明らかにした
米国務省は24日、ブリンケン国務長官がイラクのスダニ首相に対し、イラクにおける米軍および連合軍への攻撃や脅迫の背後にいる人物を追及するよう求めたと発表した。
米ホワイトハウスは声明で、バイデン米大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子が24日に電話会談し、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの紛争について協議したと発表した。
ホワイトハウスによると、両首脳は「地域全体の安定を維持し、紛争の拡大を防ぐため」に、より広範な外交努力を追求することで合意。今後一定期間にわたり両首脳は直接、あるいは両首脳のチームを通じて緊密な連携を維持するとした。
さらに、エジプトからガザへの人道支援を歓迎すると同時に、市民が食料や水、医療支援などに持続的にアクセスできるよう「さらに多くのことを行うことが必要」という認識で一致した。
ハマスに拘束されている人質の解放に向けた継続的な努力も歓迎し、人質の即時解放を求めた。
トルコのエルドアン大統領は24日、ロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、西側諸国が「沈黙」していることが、パレスチナ自治区ガザの人道危機の悪化につながっていると述べた。
トルコ大統領府によるとエルドアン氏は電話会談で、パレスチナに対する「残虐性」が増しており、多くの民間人が犠牲になっていると指摘。トルコはこの地域の平穏を取り戻すための取り組みを続けると改めて表明した。
ロシア大統領府(クレムリン)も今回の電話会談に関する声明を発表。プーチン氏がエルドアンに対し、ロシアとトルコはイスラエル・パレスチナ問題でほぼ同意していると伝えたとした。
声明で、両国は「平和と安全のもとにイスラエルと共存する独立したパレスチナの創設」に焦点を当てているとした。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの幹部は24日、アラブ諸国やイスラム諸国、国連に対し、イスラエルによるガザへの攻撃を停止させるよう訴えた。
人道支援の輸送に必要な検問所などを開放し、燃料や支援物資などの搬入を可能にするようにも求めた。
またアラブ諸国に対し、イスラエルとの国交正常化を中止するよう呼びかけた。
ロンドン:欧米のメディアは、ガザ紛争が近隣諸国に波及すれば、世界経済に「劇的な影響」が及ぶと警告しているかもしれないが、中東アナリストは、紛争が拡大した場合の経済的打撃は、危機に瀕した地域諸国が負うことになるだろうと予測している。
さまざまな動きが、来るべき事態の前兆と見られている。レバノンからは、ヒズボラとパレスチナの武装勢力がイスラエルと連日のように国境を越えた砲火を交わしている。米海軍の艦船はイエメンのフーシ派民兵が発射したミサイルを迎撃した。シリアでは2つの米軍基地が銃撃を受けている。イラクでは無人偵察機やロケット弾が米軍に向けて発射された。
サウジアラビア、クウェート、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、カナダなど数カ国は、自国民に対し、レバノンへの渡航を避けるか、フライトが残っている間に退避するよう促している。
ロンドンを拠点とする専門家アリ・メトワリー氏は、「紛争が長期化する」可能性は60%で、イランが支援する民兵を含む地域組織の「関与が強まる」可能性があると予測し、イラク、レバノン、シリアの経済が最も危険にさらされていると言う。
「もしヒズボラがイスラエルと紛争を起こせば、レバノンはヒズボラと密接な関係にあり、直接的な軍事衝突の可能性があるため、経済的に大きな打撃を受けるだろう」とアラブニュースに語った。
レバノンのサービス経済に大きく貢献している観光業と接客業が最も被害を受け、サプライチェーンは “ベイルート港の損害や閉鎖 “による混乱に直面し、”必需品の不足 “と “現在のハイパーインフレの煽り “を引き起こすだろう。
2019年の金融破綻と、その結果レバノンの銀行が被った麻痺を考えると、これ以上のショックは、残っている預金者や投資家を震え上がらせるだけだとメトワリー氏は推測している。
同様に、2011年の内戦勃発以来、代理戦争の場となっているシリアは、10年の大半の間、高い投入コストとインフレ率、燃料や医薬品の不足、通貨の崩壊、荒廃したインフラ、水不足に喘いできた。
国連によれば、人口の90%以上が貧困ライン以下になり、1,500万人のシリア人が人道支援を必要としている。現在も続いているEUとアメリカの制裁は、シリアとの国交を回復した政府でさえ、シリアの復興に投資する能力を制限している。
メトワリー氏によれば、このような状況下で紛争が拡大すれば、「国際社会がシリアの再建と安定化から新たな紛争への対処へと援助努力を振り向け、戦後復興のための資金が不足する可能性がある」ため、重要な援助の流れが断ち切られる可能性があるという。
メトワリー氏の懸念は、アメリカを拠点とする政治アナリスト、アマル・アブドゥルハミド氏も同様で、彼は、戦争が拡大すれば、「シリアとレバノンという2つの国が戦場になり、両国に存在する指導部はすべて壊滅することを意味する。2つの国家は、経済だけでなく、国家として崩壊するだろう」。
メトワリー氏は、イラクのさまざまな民兵やグループが、危機が発生した際に味方になる可能性を指摘し、イラクは内部抗争に事欠かない国であり、「宗派間の緊張」が継続的な懸念事項であると指摘した。
イラクは石油部門の収入と雇用に大きく依存しているため、安全保障上の懸念が高まれば、石油インフラへの攻撃や、重要な航路を通る石油の運搬に支障が生じ、イラクの石油収入は減少し、黒字が続いていたイラクの財政赤字が拡大する可能性がある。
世界銀行の報告書によれば、イラクは過去20年間で前例のないほどの安定を見出し、2021年以降、経済は徐々に回復している。
2022年には、ロシアのウクライナ戦争とそれに伴う西側の対ロ制裁によるエネルギー価格の上昇に伴い、約1150億ドルの石油収入があった。この石油高に後押しされ、イラク政府は2023年の予算に1530億ドルを計上した。
アブドゥルハミド氏は、イラクがパレスチナから地理的に離れていることが「多少の余裕」をもたらす可能性があると考えているが、メトワリー氏は、安全保障問題に対処するために財源を「転用」すれば、政府の予算が逼迫し、必要不可欠な公共サービスの供給が減少することを懸念している。
アブドゥルハミド氏は予算のバッファーを認めたが、イスラム革命防衛隊は「その代理勢力や忠実な民兵を通じて行動し、そのほとんどを吸い上げ、イラクの富を軍資金として使おうとするだろう」と述べた。そのため、「戦争が数カ月長引けば、イラクの経済が崩壊するにつれて、地域間・地域間紛争の可能性が高まるだろう。イランもそれに続くだろう」と述べた。
このような事態が起こった場合、現在原油価格の恩恵を受けている湾岸諸国を含む、最も堅調な地域経済にも何らかの影響が及ぶだろうと両氏は述べた。メトワリー氏は、現在のところリスクは低いものの、アラビア湾や紅海での石油輸送が途絶えた場合、これらの国々の石油収入が打撃を受ける可能性があると述べた。
アブドゥルハミド氏は、この地域の他の国々、特に湾岸諸国の運命は、「米国がどれだけ国境の安全確保に協力するか に大きく左右される」と述べた。特にイランとその代理勢力、それにロシアや中国などは、ガザでの紛争が長引けばイスラエルやアメリカ、ヨーロッパに対して優位に立つことができる。
経済的打撃の矛先が誰に向かうかについては、アナリストたちの意見は一致しているかもしれないが、紛争が拡大する見通しについては、あまり一致していない。アブドゥルハミド氏は、戦闘は収束すると確信しており、「誰もが失うものは大きいが、当事者が失態を犯す可能性は限られている 」と強調している。
同様に、シリア系カナダ人のアナリスト、カミール・アレックス・オトラクジ氏は、好戦的なレトリックが増加しているにもかかわらず、戦争が避けられないとは考えていない。「イスラエル、アメリカ、イラン、ヒズボラは、防衛戦略と積極的な攻撃戦略の両方を含む広範な有事計画を常に微調整し、再評価している可能性が高い」という。
しかし、各当事者がどの程度エスカレートする準備ができているかは、国際的なオブザーバーにとって謎のままである。
「自信と決意の表明は、それぞれの側で相当なものであり、それぞれの側で疑いようのない道徳的に明瞭な主張と相まっている。しかし、すべてのプレーヤーが相手側に対して常に警告を発している。”もしこの紛争に参戦するのであれば、計り知れない犠牲を覚悟しなければならない”と」
イスラエルがガザを占領しようとすれば、ヒズボラが何万発もの高精度ミサイルでイスラエルの都市を攻撃することになり、その結果、イスラエルとアメリカはダマスカスの破壊を目指すことになる。
「米国が紛争に参戦すれば、イラクからイエメンにまたがるイランの代理勢力は、中東全域の米軍基地への攻撃を開始する可能性がある」最後に、オトラジ氏は次のように語った: 「イスラエルのネタニヤフ首相やワシントンの戦略思想家が “新しい中東 “の夜明けを告げるたびに、古い中東はその不変の複雑さを思い起こさせながら復活するのです」
ツチ族は「ゴキブリだ。我々は奴らを殺す」。アラブ人は「瓶の中で薬漬けにされたゴキブリだ」
最初に引用したのは、ツチ族への憎悪を扇動したとして大きな批判を受けたルワンダのラジオ局、Radio Television Libre des Mille Collinesで頻繁に繰り返されていた言葉だ。次の引用は1983年、イスラエル軍の元参謀総長、ラファエル・エイタン将軍によるイスラエル議会委員会の公聴会での発言だ。
ルワンダの憎悪に満ちたラジオ局が運営されていたのは1年間だけだった(1993~1994年)が、その扇動行為によって起きたのは、ツチ族の大量虐殺という現代人類史上でも最悪レベルの悲惨で悲劇的な事件だった。この「ラジオ虐殺」と、パレスチナ人を非人間的に扱おうとするイスラエルと米国による大規模な西側のプロパガンダを比較してみると、ほぼ同じ言葉が使われていることが見えてくる。
多くの人が忘れているようだが、直近のイスラエルによるガザ侵攻より遥か以前、さらにはイスラエルが建国される1948年よりも前から、イスラエルのシオニストによる主張は常に人種差別的で、相手を非人間的に扱い、排除的で、場合によっては明白に虐殺を訴えるものであり続けてきた。
イスラエル史から時代を無作為に選んで政府関係者、機関、さらに知識人の政治論を検証してみれば、行き着く結論は同じものになるだろう。それは、イスラエルが常に扇動と憎悪のナラティブを形成し、パレスチナ人の虐殺を絶えず主張し続けてきたということである。
この虐殺への意思に、今や多くの人が気づき始めている。「パレスチナ人の虐殺のリスクがある」と国連の専門家グループは先週声明を発表した。だが、この「虐殺のリスク」は、最近の事件から発生したものではない。
実際、世界中どこであっても、実行的な政治または軍事行動はそれを促し、理屈を与え、正当化する体系的な文章や言葉がなければ、まず実行に移されることはない。イスラエルによるパレスチナ人に対する認識は、この主張の完璧な裏付けになっている。
イスラエル建国以前、シオニストはパレスチナ人の存在自体を否定していた。多くの者は未だに否定を続けている。そうなってくるとイスラエルの集団意識としては、そもそも存在しない人々を殺すのは倫理的に責められるべきものではないという結論に達するのが合理的だということになる。
パレスチナ人がイスラエルの政治論において考慮される場合でも、彼らは「血に飢えた獣」、「テロリスト」、「瓶の中で薬漬けにされたゴキブリ」として扱われる。これに対して単なる人種差別だとレッテルを貼るのはあまりにも都合が良すぎる。人種差別もあるが、この人種至上主義は単にイスラエル人が主人でパレスチナ人が奴隷だという社会政治秩序を維持するためだけに存在しているのではない。実態はそれよりも遥かに複雑である。
10月7日にパレスチナ人の戦闘員がガザ地区の境界を越えてイスラエルに侵入し数百人を殺害した後も、この向こう見ずな行動の背景に対してはイスラエルの政治家、アナリスト、主流派知識人の誰一人として関心がないようだった。10月7日以後のイスラエル人、それと同程度の数の米国人たちが発した言葉が、その後のイスラエルによる残忍な対応に必要な雰囲気を作り上げたのだ。
イスラエルによるガザ侵攻の最初の8日間で殺害されたパレスチナ人の数は、過去最長かつ最大の破壊をもたらした2014年のイスラエルによるガザ侵攻、通称「境界防衛作戦」の犠牲者数を上回ったと報じられている。ディフェンス・フォー・チルドレン・パレスチナによると、パレスチナの子どもたちは15分に1人が殺されており、パレスチナ防衛省によるとガザ地区の死傷者の70%以上が女性、子ども、高齢者だという。
イスラエルにとって、こうした事実は意味を持たない。穏健派と認識されることも多いイツハク・ヘルツォグ大統領の考えでは、「民間人が気づいていない、関わっていないというレトリックは、全くの嘘である」という。「彼らは立ち上がることができたはずだ、あの悪の政権と戦うことができたはずだ」という単純な理由から、彼らは正当な標的なのだとヘルツォグ大統領は言う。彼が言う悪の政権とはハマスのことである。そのため、ヘルツォグ大統領によれば「責任は国全体にある」ことになり、彼は報復を誓ったのである。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相のリクード党に所属する国会議員のアリエル・カルナー氏は、ガザ侵攻の背景にあるイスラエルの目的を説明している。「現在の目標はひとつ、ナクバです。1948年のナクバが霞むようなナクバです」とカルナー氏は述べている。
ヨアフ・ガラント防衛大臣も同じ心情を表明している。彼こそイスラエルの宣戦布告を行動計画へと変えた責任者である。「我々が戦っている相手は野蛮人たちであり、相手に合わせた行動を取ります」ガラント氏は10月9日にそう述べている。「相手に合わせた」行動とは、つまり「電気、食料、燃料を断ちます。すべてを遮断します」ということだ。当然ながら、数千人の民間人が犠牲になっている。
既にイスラエルの政治権力のトップの1人が10月7日の事件はパレスチナ人全員に集団的責任があると宣言しているということは、ガラント氏の評価ではパレスチナ人は全員が慈悲に値しない「野蛮人」であるということになる。
予想通り、米国やその他西側諸国のイスラエル支持者たちもこのコーラスに加わり、極めて暴力的かつ相手を非人間的に扱う言葉を用いている。それにより、イスラエルの一般市民の間で主流となっている今の政治的論調が形成されているのである。たとえば、米国の大統領候補の1人であるニッキー・ヘイリー氏はFOXニュースに対し、ハマスの攻撃はイスラエルだけでなく「米国への攻撃」でもあると述べている。そしてヘイリー氏は真っ直ぐにカメラを見据え、「ネタニヤフさん、奴らを仕留めて、仕留めて、仕留めて」と悪意を込めて宣言した。
米国のジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官はまったく同じ言葉を使ったわけではないが、両者共に10月7日の事件と9月11日のテロ攻撃を比較している。その言葉の裏にある意図を詳しく説明する必要はないだろう。
リンゼー・グラム上院議員は米国の保守派と宗教支持者を集めて「我々は宗教戦争の只中にいます。なすべきことをしてください。あの場所を跡形もなく消し去るのです」と述べている。
同じように邪悪な言葉が、数多く発せられ続けている。その結果は絶え間なく放映され続けている。イスラエルはガザ地区の民間人を「仕留め」、数千という家屋、モスク、病院、教会、学校を「跡形もなく消し去り」つつある。まさに、またしても痛ましいナクバを生み出しているのである。
ゴルダ・メイア氏のパレスチナ人は「存在しない」、メナヘム・ベギン氏のパレスチナ人は「2本脚で歩く獣だ」、イーライ・ベン・ダハン氏のパレスチナ人は「動物のようなものだ。彼らは人間ではない」をはじめ、人種差別的で相手を非人間的に扱う発言が繰り返されるシオニストの論調は変わらぬままだ。
今ではそれらすべてが一体となりつつある。言語と行動の完璧な同調だ。今こそ、いかにしてイスラエルの虐殺的な言葉が現場での実際の虐殺に結びついているかということに目を向け始めるべきなのだろう。残念ながらパレスチナの数千人の民間人にとっては、この気付きは遅きに失するものなのだが。
ドーハ:カタール首長のシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ殿下は、イスラエルに無条件殺戮の許可を与えるべきではないと述べた。
この発言は、カタールのシュラ(諮問評議会)の開会にあたって首長が行った年次演説においてなされたものだ。
シェイク・タミーム殿下は、イスラエルとハマスの間の戦闘は地域と世界に脅威を与える危険なエスカレーションであると警告した。
ワシントンD.C.:米国は23日、イランが中東の米軍基地に対する攻撃を「積極的に助長している」と非難した。また、少数の軍事顧問をイスラエルに派遣したことを明らかにした。
米国は、イスラエルとハマスの間の戦争がエスカレートする可能性に対し懸念を高めているが、同盟国イスラエルには自衛権があるとして、停戦を呼びかけることは拒否している。
米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官はホワイトハウスで記者団に対し次のように述べた。「イランはハマスとヒズボラを支援し続けている。イランがこれらの出来事を注意深く監視し、場合によってはこれらの攻撃を積極的に助長したり、自分たちやイランの利益のためにこの紛争を利用したい者たちを扇動したりしていることは分かっている」
「地域において一定レベルの否認権を維持することがイランの目的であることは分かっているが、我々はそれを容認するつもりはない」
今回の暴力再燃までは、米国とイランの当局者間で密かな交渉が行われたことを受け、ジョー・バイデン大統領の政権は地域の親イラン民兵組織との間で比較的平穏な時期を迎えていた。
しかし、18日以降、ダーイシュとの戦闘のために編成された国際連合軍の一部である米軍が駐留しているイラクの軍事基地3ヶ所に対し、ロケット弾やドローンによる攻撃が少なくとも5回行われた。
イランのシーア派聖職者指導らはハマスだけでなく、レバノンのシーア派運動ヒズボラ、イラクのシーア派準軍事組織、イエメンの反体制派組織フーシ派なども支援している。
10月7日のハマスによる攻撃以降、米国はイスラエルに対し大規模な防衛援助を約束している。カービー調整官はまた、米国が「少数の」軍事顧問をイスラエルに派遣したことを明らかにした。
これらの顧問は「イスラエルが実施している、あるいは今後実施する可能性がある作戦と同種の作戦」の経験を有し、「いくつかの見地を提供するために派遣された」という。
イスラエル当局によると、1948年のイスラエル建国以来最悪のものとなったハマスの攻撃による死者は1400人以上に上り、その大半が民間人である。
一方、ガザ地区のハマス傘下の保健省によると、イスラエルの報復空爆により5000人以上が死亡しており、やはりその大半が民間人だ。
EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は23日、ガザ地区の悲惨な状況を受け、支援物資を搬入するためにEU諸国の指導者らが共同で「人道的な戦闘停止」を呼びかけることを期待すると述べた。
米国は作戦停止を呼びかけることを拒否した。
米国務省のマシュー・ミラー報道官は記者団に対し次のように述べた。「(停戦すれば)ハマスに休息を与え、装備を整えてイスラエルに対するテロ攻撃を続ける準備をさせることになる」
「イスラエルにとって容認できない状況であることは完全に明確に理解できるはずだ。残忍なテロ攻撃に遭い、境界においてテロの脅威を目の当たりにし続けている国にとって容認できない状況である」
同報道官はまた、米国はガザ地区への人道救援物資の搬入を可能にするべく別途努力しており、デイヴィッド・サッターフィールド特使が現地で「集中的に」援助に取り組んでいると述べた。
ワシントン:米国のジョー・バイデン大統領は23日、ガザ地区での停戦に関する協議は、ハマスが10月7日の攻撃でイスラエルから連れ去った人質を全て解放した場合にのみ行われると語った。
バイデン大統領は、ホワイトハウスの記者会見で「人質解放を条件とする停戦」の取り決めを支持するかとの質問に対し、「人質解放が先で、話はそれからだ」と答えた。
そして、「解決すべき別の問題」があるためホワイトハウスのシチュエーションルームに向かわなければならないと話し、来年の大統領選に向けた経済プログラムの宣伝で退席することを謝罪した。
この発言の直前には、イスラエルから拉致した女性の人質2人を解放したとハマスが発表していた。
ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は、「ハマスの人質となっていたイスラエル国民2人が本日解放されたことを歓迎する」と述べた。
「ガザ地区で拘束されている残りの人質全員を解放するべく、我々は引き続き全力を尽くす」と、サリバン大統領補佐官はX(元Twitter)に投稿した。
20日には、アメリカ人母娘のジュディス・ラーナンさんとナタリー・ラーナンさんが解放された。
イスラエルは23日、ハマスの武装集団が国境を越えてイスラエル南部にあるキブツや町、軍事基地を攻撃した際、人質として連れ去った人数を222人に引き上げた。
イスラエル当局によれば、ハマスの戦闘員らによる今回の攻撃で1,400人が殺害され、同国では史上最悪の被害を記録したという。
これを受けて、イスラエルは猛烈な爆撃で対抗。ガザ地区のハマスが運営する保健当局によると、現在までに5,000人を超える住民が命を落とした。
バイデン大統領はさらに、22日に行ったローマ教皇フランシスコとの電話会談にも言及。イスラエルとハマスの紛争や、ガザ地区の人道的な状況について話し合ったとした。
「教皇と私は認識が一致しており、我々が行っていることに対して非常に、非常に、強い関心を持っておられた」という。
バイデン大統領また、米国のイスラエル支援に関する「行動計画の内容を説明した」ことも明かした。
そして、「教皇は全面的に支持されていた」と付け加えた。
イスラム組織ハマスは23日、イスラエルからパレスチナ自治区ガザに連れ去った人質2人を新たに解放した。ガザには現時点で少なくとも220人の人質が捕らえられているとみられる。イスラエルに対し地上侵攻をとどまるよう求める声が国内外で上がるが、ネタニヤフ政権内には強硬論も根強い。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが23日に解放した2人の高齢のイスラエル人女性の一人、ヨシェベド・リフシッツさん(85)が、記者団の取材に応じた。10月7日にガザに連行された際は戦闘員に暴力を振るわれたものの、その後はよくしてもらったと述べた。
車椅子に座ったリフシッツさんは、ガザのトンネル内に留め置かれた。解放されるまでの2週間の間、医師が訪ねてきて、必要なものは全て用意されたと語った。
フランスのマクロン大統領は24日、イスラエルを訪問し、イスラム過激派との戦いでイスラエルを孤立させないと表明した。
エルサレムでヘルツォグ大統領と会談し、フランスはイスラエルと協力すると述べ、ガザの人質解放を第1の目標とすべきと指摘した。
「混乱をもたらしたり紛争を拡大させたりせずテロと戦うのがわれわれの義務だ」と語った。
仏大統領補佐官らによると、マクロン大統領はイスラエルとの結束を示すだけでなく、事態の悪化を防ぎ、人質を解放し、イスラエルの安全を確保し、2国家共存による解決に向けて取り組むための「可能な限り実行可能な提案」をしたい考え。また人道的停戦を訴えるという。
仏大統領府はマクロン氏がイスラエルのネタニヤフ首相のほか野党指導者とも会談すると説明した。パレスチナ自治政府はアッバス議長がマクロン氏と会談すると明らかにした。
しかし一部のアナリストは、マクロン氏がフランス伝統の親アラブ外交から英米の親イスラエル路線にシフトしていると指摘し、中東における同氏の影響力は限られるとの見方を示している。
フランス国際関係戦略研究所(IRIS)の外交政策専門家カリム・エミール・ビタール氏は「地中海以南におけるフランスのソフトパワーはかなり衰えた。フランスと他の西側諸国との違いは何もないという印象だ」と語った。
仏政府がパレスチナ支持のデモを全面的に禁止したことがマクロン氏がアラブ世界で信用を失った理由の一つだと述べた。

<1024日朝まで>
【イスラエル】ハマス、人質2人を解放-カタールとエジプトが仲介
イスラム組織ハマスは、今月7日のイスラエルへの奇襲攻撃の際に拘束した人質のうち高齢女性2人を解放した。解放された2人はラファ検問所に到着した。カタールとエジプトが解放の仲介をした。
英情報当局と兵器専門家は先週起きたガザの病院爆発について、イスラエルが関与したものではないと結論付けた。
米国は親イラン民兵組織ヒズボラなどの武装勢力が紛争を拡大するのを阻止するため、中東により多くの軍事力を投入すると表明した。
人道支援物資を積んだトラックの車列がラファ検問所を通過しガザに入り始めているが、国連はまだ不十分との認識を示した。
イスラエルの通貨シェケルと国債は下げを拡大。同国中銀が2006年以来の高水準にある政策金利を据え置き、ハマスとの紛争の影響で今年と来年の成長見通しを引き下げたことが嫌気された。
イスラエル、人質理由に地上攻撃遅らせる考えない─閣僚=独紙
スラエルのカッツ・エネルギー相は、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻計画について、拘束されている人質の問題を理由に遅らせる考えはないと述べた。ドイツ紙ビルトが24日、インタビューを掲載した。
カッツ氏は人質解放に向けてあらゆる措置を講じるとした一方、そうした取り組みが「地上攻撃を含むわれわれの行動を妨げることはできない」と述べた。
また「ハマスはわれわれが人質に対処することを望み、(イスラエル)軍がハマスのインフラを取り除くために突入しないことを期待している。それは起きない」と語った。
イスラエルとハマス、今は停戦の時期ではない=ホワイトハウス
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は23日、CNNに対し、現在はイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦の時期ではないと語った。
「われわれは、今が停戦の時だとは思っていない。イスラエルには自衛権があり、ハマス指導部を追い詰めるためにすべきことがまだ残っている」と述べた。
東の米軍基地への攻撃、イランが背後で手助け=米戦略広報調整官
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は23日、イラクやシリアの米軍基地に対する親イラン武装勢力のロケットや無人機攻撃を、イランが積極的に手助けしているケースが幾つかあると指摘し、バイデン大統領が国防総省に対応強化を指示したと明らかにした。
パレスチナ自治区を実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルへの襲撃を行った7日以降、中東地域における米軍事施設への攻撃が増加している。
カービー氏は、過去1週間、特にここ数日でそうした攻撃が増えていると説明。背後ではイラン政府とイラン革命防衛隊が支援しているとの米国側の分析を示した上で、攻撃がエスカレートする可能性を深く懸念していると述べた。
一方で「イランの目的は中東地域で一定の拒否能力を維持することだとわれわれは承知しているが、それを許すつもりはない。われわれはこの地域における米国の権益へのいかなる脅威も野放しにはしない」と強調した。
一方で「イランの目的は中東地域で一定の拒否能力を維持することだとわれわれは承知しているが、それを許すつもりはない。われわれはこの地域における米国の権益へのいかなる脅威も野放しにはしない」と強調した。
米、イスラエルにガザ地上侵攻控えるよう助言=関係筋
米国はイスラエルに対し、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザでの地上侵攻を控えるよう助言しているほか、ハマスとの仲介役であるカタールにもその協議の内容を通知している。複数の関係者が述べた。
米政府高官は、カタール政府がハマスとの仲介役を担っていることを考慮し、人質に関する交渉が続けられる中、カタール政府高官にイスラエルへの助言を伝え、最新の情報を得られるようにしていると指摘。「現時点では、完全な緊張緩和に向けた明確なロードマップや一連の流れはない。人質を段階的に救出することが優先事項だ」と述べた。
関係者によると、欧州各国政府も人質解放に関する交渉の場を与えるため、イスラエルに対し地上侵攻を控えるよう提案しているという。
また、人質解放交渉とともに、イスラエルに侵攻を控えるよう助言することで、ガザに人道支援を届ける時間を増やすこともできるとした。
イスラエル関連ETFから資金流出、CDSスプレッドも拡大
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突が他戦線にも拡大する中、イスラエル株式を投資対象とした上場投資信託(ETF)からの資金流出が加速している。
リッパーのデータによると、iシェアーズMSCIイスラエルETFは10月9日─20日に250万ドルの純流出を記録。残高は1億1162万ドルとなっている。同ファンドの基準価額は同期間に13.8%下落した。
イスラエルのハイテク株を対象とするETFからもこの2週間で多額の資金が流出し、価額下落に見舞われている。
イスラエルの通貨シェケルも売られた。1ドル=4シェケルを超えて下落し、約8年ぶり安値付近で推移している。
イスラエルの信用リスクにも懸念が高まっている。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによると、同国の5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドは、20日終値から13ベーシスポイント(bp)拡大し149bpと、2012年11月以来の高水準を付けた。
イラン、中東駐留の米軍攻撃を直接指示していない=国防総省
米国防総省のパトリック・ライダー報道官は23日、イランの最高指導者ハメネイ師が直接、中東地域に駐留する米軍攻撃を命じたとは考えていないと述べた。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突が始まった今月7日以降、イラクとシリアではイランの支援を受けたとみられるグループによる攻撃が相次いでいる。
18日にはシリアに駐留する米軍部隊がドローン(無人機)1機の攻撃を受け、軽傷者が出た。別の1機は撃墜された
イラクでも19日、米軍が駐留する2カ所の基地を標的とするドローンやロケット弾による攻撃があった。
ライダー氏は、「イランがこうした攻撃を行うよう明確に命令したとは必ずしも考えていない」としながらも、これらについて米は最終的にイランの責任を問う考えを明らかにした
EU、ガザ衝突で新たな移民流入リスクに直面=ギリシャ移民相
ギリシャのディミトリス・カイリディス移民相は23日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの武力衝突により欧州連合(EU)は移民が流入するリスクに直面しているとし、警戒と連帯強化を呼びかけた。
同相は「中東の不安定な情勢が拡大し、特に人口が非常に多いエジプトのような近隣諸国を巻き込めば、事態は本当に危険なものになりかねない」と指摘。「われわれは警戒する必要があり、欧州として結束する必要がある。国境警備を強化し、密入国を手引きする犯罪組織と闘い、難民認定されなかった人々を送還しなければならない」と語った。
2015年、EU各国はトルコからギリシャに渡ったシリア難民など100万人以上の難民流入の対応に苦慮した経緯がある。
ヒズボラとイスラエル戦闘激化、レバノン南部などで約2万人退避
国際移住機関(IOM)は23日、ガザ危機を背景にイスラエル・レバノン国境でイスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘がエスカレートする中、レバノン国内では南部を中心に約2万人が退避を強いられていると発表した。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエル軍の衝突が続く中、イスラエル軍とヒズボラの戦闘も2006年以降で最悪の事態にエスカレートしている。
イスラエル当局もこれまでに、北部の数十の集落などから住民を避難させているという。
ヒズボラによると、ハマスがイスラエルに奇襲を仕掛けた10月7日以降、イスラエル軍の戦闘でヒズボラの戦闘員27人が死亡。レバノンの治安筋は、ヒズボラと同盟関係にあるレバノンのパレスチナ人グループの戦闘員11人も死亡したと明らかにした。
バセム・ユセフの出番だ
昔のイギリスのことわざに、”本当のことを言うなら、笑わせろ。さもなければ殺される“というものがある。これを、エジプトの風刺コメディアン、バセム・ユセフが最近、著名なテレビ司会者ピアーズ・モーガンと行ったインタビューほど明らかに表したものがあるだろうか。
このインタビューは、『ピアーズ・モーガン・アンセンサード』番組史上最多となる1,700万ビュウーをオンライン上で記録し、欧米のチャンネルでの公正な表現を求める多くのアラブ人の渇きを癒すことに成功しただけでなく、私たちアラブ人が自分たちのストーリーを国際的に伝える方法の転換点となるかもしれない。
まず、モーガンとそのチームが、日替わりトークショーを担当するプロデューサーなら誰でも知っているように、それがいかに難しくても、常に最も興味深く適切なゲストを招き、彼らにチャレンジングな質問をするよう努力していることに脱帽する。また、視聴者の不評を買いかねないイスラエルを批判することが予期できたユセフを遠慮なく起用したことも称賛に値する(YouTubeの驚異的な数字がそれを明らかに証明している)。
しかし、タンゴを踊るには二人必要なのだ。インタビュー中、ユセフは非常に効果的な方法でメッセージを伝える突出した能力を発揮した。私にとっては、彼がモーガンに言い放った”自分の意見だけを聞きたいのなら、ハマスだけを非難して帰ってもいい “という言葉が最高だった。
これは、107日のハマスの行動を非難するアラブ人やイスラム教徒のゲストだけを集めるという、近視眼的な西側メディアの強迫観念に対する最善の対応であり、非常に満足のいく発言だった。このような語り口は、イスラエルとパレスチナの紛争は2週間前に始まったばかりで、75年前にさかのぼるような話はなかったと、また、アラブ人やイスラム教徒なら誰でも、デフォルトでハマス支持であると、ほとんどすべての政府が前提としていることに対してである。ほとんどの政府が双方の民間人が標的にされていることに対して非難声明を出しているにもかかわらずである。また、何年もの間、多くの政治家、知識人、そして一般市民でさえも、一貫してパレスチナ社会全体を一本の筆で塗りつぶすことや、この長く、そして非常に辛い紛争の歴史的背景、そして現在も続くイスラエルの占領によって引き起こされた苦しみを傍観することに警告を発してきたという事実に対してである。
同様に印象的だったのは、ユセフが、相手側が武装解除せずにはいられないような軽妙な論理を展開したことだ。たとえば、このエジプト人風刺家は、イスラエル軍が「爆撃する前に市民に警告する世界で唯一の軍隊」であるという「可愛らしい」ものであると揶揄した。彼はこの揶揄を、フロリダ州知事で共和党の大統領候補であるロン・デサンティスの発言に基づいて行った。「もしロシア軍がウクライナ人の家を爆撃する前に警告を発したら、プーチンは冷静だと感心されるだろう?」2022年のロシアのウクライナ侵攻は、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、その他多くのアラブ諸国によって国連で非難された。
私は常々、アラブ人として、他者に物語を乗っ取られないよう、自分たちの物語を語らなければならないと主張してきた。最近、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がFOXニュースのインタビューに英語で答えたことでもわかるように、私たちの主張を論理的に冷静沈着に主張できる英語を話す人が十分にいないことを、私はいつも政府を批判してきた。
最近のガザ問題について言えば、ヨルダンのアブドゥッラー国王、サウジアラビアの元情報長官トゥルキ・アル・ファイサル王子、フーサム・ゾムロット駐英パレスチナ大使など、信じられないほど説得力のある、この地域の公の発言者たちがいる。
しかしもちろん、政府関係者は常に特定のプロトコルに縛られ、それぞれの政府のシナリオに制限される。バセム・ユセフの出演がピアーズ・モーガンの番組に描き出したのは、アラブ人も面白く、ウィットに富み、そして……ノーカットでいられるということだ!
ユセフのような経験豊富な風刺家のユーモアや自信は一般人にはないかもしれないが、若いながらも有能で説得力のあるアラブの専門家が増えているのも事実だ。パレスチナ人ジャーナリスト、ヤーラ・イード氏が最近イギリスのスカイ・ニュースでインタビューに答えている。
また、アラブ人の声を取り上げるために一役買う欧米のメディアも賞賛しなければならない。前述したように、モーガンがユセフの立場を前もって知りながら、リスクを負ってインタビューしたという事実だけでも称賛に値する。英国や米国のような民主主義国家では、このようなことは珍しいことではないはずだが、最近の検閲の波と優勢な削除志向では、賛否両論を放送することは革命的な行為になっている。
そういえば、米MSNBC3人のイスラム系司会者の番組を休止するという決定を反故にしたそうだ。彼らの意見に同意するかどうかは別として、アイマン・モヒエディーン、メフディ・ハサン、アリ・ヴェルシの「カムバック」である。このような恐ろしい考え方が検討され、短期間でも実行されたと報じられたこと自体が、アメリカの現状と民主主義を物語っている。
戦時の悪魔化と非人間化は残虐行為の正当化である
言葉遣いの影響は大きい。戦時や紛争時なら、それはさらに大きくなる。暴力的な対立では、激化しやすいレトリックがどうしても広範囲に用いられる。とりわけ、相手を悪魔扱い、非人間扱いする物言いが増える。国内外で支持を集めるために皮肉としてそのような言葉を使う人もいれば、コミュニケーションの手段として他の言い方を知らない人もいる。
言葉で人は殺せないと主張する人は、次の事実を無視している。言葉は、直に殺傷はしないかもしれないが、大量虐殺をはじめとする最悪の残虐行為が起こる条件や環境を作り出すのだ。ナチスは、ユダヤ人を人間に劣るネズミ、害虫と呼んだ。カンボジアのクメール・ルージュは敵を「虫」と呼び、彼らが消えても「死者の数に入らない」と主張した。 ルワンダでは、フツ族のプロパガンダが、少数民族のツチ族を繰り返し「ゴキブリ」や「ヘビ」と呼び、「ゴキブリを駆除せよ」と煽った。そして私たちは、それがどのような結末をもたらしたかを知っている。
人間性を剥奪するこのような行為は、ある集団を辱め、貶めるだけではなく、その人々に対する暴力を正当化しようとするプロセスの一環でもある。イスラエルとパレスチナの紛争では長年にわたってそのやり口が繰り返され、敵対行為が勃発するたびに言葉の激しさが増している。イスラエル人とパレスチナ人はあまりにも長い間、互いを人間とみなすのをやめてきた。ましてや生きる権利を含めて平等な権利を持つ人間として考えることなどなかった。
相手を人間として見ず悪魔化することは、「他者に対する完全な人間性の否定」と定義されている。それは、部分的にせよ完全にせよ、人の人間性を否定し、道義を重んじる、理性的に判断するといった、人を人間として唯一無二の、自然界のどのような存在とも違う存在たらしめている特徴を放棄することだ。さらには、悪魔化した相手には、さまざまな感情を抱くなど人間の本性に最もかかわる特別な属性もないものと考えることだ。
イスラエル人を悪、パレスチナ人を動物と呼ぶのは、侮蔑の表現の中でよく見られる。だが、107日にハマスが残虐行為を行って以来、そのような言葉遣いはさらに極端になり、ハマスとイスラム聖戦が一緒くたにされるほどになっている。ガザの大多数の一般のパレスチナ人は、ハマスの圧政とイスラエルの過酷な封鎖の狭間で、生き延びようとしているだけだ。だが、結果的に、板挟みにあっている民間人であるにもかかわらず、正当な標的とみなされる事態になっている。
歴史は、人間が恐ろしい残虐行為に走る可能性があることを何度も教えている。文明が、攻撃性を排除しないまでも、それを抑制する手段やメカニズムを発達させてきたゆえんだ。悪魔化と非人間化は、国連憲章、世界人権宣言、ジュネーヴ条約第4条などに成文化されているような社会的行動の許容規範に反している。本来、これらの条約によって、たとえ戦時中、紛争中でも、人間が他の人間をどのように扱うべきかについて、世界的なコンセンサスが形成されるはずだった。
しかし、対立する相手を人間としてみなさないとなると、これらの条約は敵には適用されないと思い込んでしまう。イスラエルとハマスの間で現在起きている過去最悪の敵対行為で、あらゆる抑制が失われていることがその表れだ。双方が、乳幼児、女性、高齢者を含む罪のない民間人を大量に殺害し、多くのイスラエル人が人質にとられている。それぞれが、敵を自分と同じ人間で、自分と同じ基本的権利を持つ存在とみなしていたら起こり得ないことだ。
民間人の死亡に関しては、紛争中ずっとその状況が続いている。ガザにおけるイスラエルの対応は、数千人の命を奪い、何十万人もの避難民を出しているが、ガザのパレスチナ人をハマスとの戦争の巻き添えになっただけの存在として扱うのもそのひとつだ。イスラエルがパレスチナ人を対等な人間として見たことがないと言い切れる根拠は十分にある。ナクバから占領と封鎖に至るまで、一般のパレスチナ人の生活は、自由で安全なイスラエル国家を樹立するというプロジェクトにおいてはあくまでささいな付け足しに過ぎなかった。
クネセトの議員アリエル・カルナー氏は、ハマスの殺害行為に対し、無分別にも「今の目標はただひとつ、ナクバだ。1948年のナクバを超えるナクバだ」と言い放ち、第二のナクバかそれよりもさらに極端な対応を要求した。ハマスによる罪のない人々の虐殺に対する怒りは理解できるが、自国が中心になって重要な役割を果たした1948年の残虐行為よりもさらにひどい対応をしようというこの呼びかけは、大量殺戮と移住強制の扇動である。ここに見られる原罪は、パレスチナ人の人間としての苦しみをないものとして無視し、彼らを苦しめるのを一切やめず、彼らの集団的権利を一切認めないことである。
この社会で平和が実現するためには、振り子が非人間化から再人間化へと振れなければならない。しかし、まさにこの考え方が、今の紛争に過激な目的を抱き、それを拒否する人々を恐怖に陥れる。何をもって勝利とするかにかかわらず、勝つまで争いを続けたい人にとって、敵を悪魔化することは有効な手段である。そもそも、なぜ自分と似た人間の属性を持つ人を殺すのか、という話だ。和平プロセスでは、長年そしり続けてきた相手に歩み寄り、信頼する必要があるが、その第一の条件は、敵を等しく人間として見るのを妨げる巨大な心理的ハードルを克服することである。
1990年代、紛争で肉親を亡くしたイスラエル人とパレスチナ人の遺族のグループが、勇気をもってイスラエル・パレスチナの共同団体「ペアレンツ・サークル・ファミリーズ・フォーラム」を設立した。死別がまた起こるのを防ぐため、対話、寛容、和解、平和を通じてあらゆる手を尽くすことを目的としている。同団体は、「悲しみを分かち合い、希望をもたらす」というスローガンのもと、イスラエル・パレスチナ合同追悼記念日の実現にも尽力した。そのメッセージの核心は、苦しみには国籍も宗教もなく、誰もが等しく影響を受ける、だからこそ、私たちは互いの人間性を認め合わなければならない、ということだ。
しかし、憎悪が渦巻く中ではこのユニークなイニシアチブは拒絶され、イスラエルでは大勢が同団体のユダヤ人を裏切り者とみなし、彼らが家族を亡くした苦しみと痛みを無視した。だが、この人々が賞賛に値するという事実に、議論の余地はないはずだ。彼らは、あまりにも長い間争い続けてきた二つの民族の関係の中心に人間性を据えているからだ。そして今も、日を経るごとに、数千人の単位で遺族に名を連ねる人が増え続けている。この団体の例に倣い、互いの人間性を認め合って平和への希求を決意して初めて、この無意味な殺戮を終わらせ、永い平和を築ける可能性が生まれる。
イスラエルがガザ、シリア、ヨルダン川西岸を攻撃、ハマスとの戦いが新たな戦線を開く恐れ
イスラエル軍の戦闘機は、ハマスとの2週間にわたる戦争がより広範な紛争に発展する恐れがあるとして、夜から日曜日にかけてガザ全域、シリアの2つの空港、占領下のヨルダン川西岸のモスクを攻撃した。
イスラエルは戦争が始まって以来、ほぼ毎日レバノンの過激派組織ヒズボラと銃撃戦を行っており、イスラエル占領下のヨルダン川西岸では緊張が高まっている。
イスラエルは数日前から、ハマスによる107日の暴行への対応の一環として、ガザへの地上攻撃を開始しようとしているようだ。戦車と数万の軍隊が国境に集結し、イスラエルの指導者たちは作戦の次の段階が計画中であることを口にしている。
しかし軍は、徹底的な避難命令が出されているにもかかわらず、ガザ北部にはまだ数十万人のパレスチナ市民がいることを認めている。また、ハマスの同盟国であるレバノンやシリアとのより広範な戦争を誘発するリスクも、軍を躊躇させているのかもしれない。
日曜日にエジプトのメディアは、パレスチナ人への援助を運ぶ17台のトラックの車列がガザに入ったと報じた。これは、イスラエルが2週間前に完全な包囲網を敷いて以来、ガザに物資が入るのは初めてのことである。
ガザでは230万人の人口の半分が避難しており、人道的危機が急増している。患者や避難民で満杯の病院では、医療品や発電機の燃料が不足し、医師たちは縫い針で手術をしたり、消毒液として台所の酢を使ったり、麻酔なしで手術をせざるを得なくなっている。
国連が運営する学校やテントキャンプに避難しているパレスチナ人は、食料が不足し、汚れた水を飲んでいる。領土唯一の発電所は1週間以上前に停止し、領土全体の停電を引き起こし、水と衛生システムを麻痺させた。国連人道機関によると、清潔な水がないため、水ぼうそう、疥癬、下痢の患者が増加しているという。
ハマスが運営するガザ内務省は、イスラエルがパレスチナ人に避難するよう伝えていた南部地域を含む、日曜日までのイスラエルによる激しい空爆を報告した。
土曜日遅くには、避難民が携帯電話を充電するために集まっていた南部の町ハーン・ユーニスのカフェを空爆が襲った。近くのナセル病院によれば、12人が死亡、75人が負傷した。
イスラエル軍は、ハマスのメンバーや施設を攻撃しているが、民間人は標的にしていないと述べている。パレスチナの過激派は連日ロケット弾攻撃を続けており、ハマス側は日曜日未明にテルアビブを標的にしたと発表した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は土曜日遅くに内閣を招集し、予想される地上侵攻について協議したとイスラエルのメディアは報じた。軍スポークスマンのダニエル・ハガリ少将は、イスラエルは「戦争の次の段階」に備えて土曜日から空爆を強化する予定だと述べた。
イスラエルによる地上攻撃は、双方の死傷者を劇的にエスカレートさせる可能性が高い。この戦争でイスラエルでは1,400人以上が死亡しており、そのほとんどが最初のハマスの攻撃で殺害された民間人である。少なくとも210人が捕らえられ、男性、女性、子ども、高齢者を含むガザに連れ去られた。金曜日に2人のアメリカ人が解放されたが、これはハマスの人道的ジェスチャーだという。
ハマスが運営する保健省によれば、ガザでは4,300人以上が死亡している。その中には、病院の爆発による犠牲者も含まれている。
イスラエルによるダマスカス空爆
一方、シリアの国営メディアは、イスラエルの空爆が首都ダマスカスと北部アレッポの国際空港を標的にしたと報じた。空爆により1人が死亡し、滑走路が損傷して使用不能になったという。
イスラエルは戦争が始まって以来、空港を含む数回の空爆をシリアで行っている。イスラエルが個々の空爆を認めることはほとんどないが、ヒズボラや他の過激派グループが、ハマスも支援している彼らの後援者であるイランから武器を持ち込むのを阻止するために行動しているという。
レバノンでは、ヒズボラが土曜日に6人の戦闘員を殺害したと発表し、同グループの副リーダーであるシェイク・ナイム・カセム氏は、イスラエルがガザ地区で地上攻撃を開始した場合、高い代償を払うことになると警告した。イスラエルは日曜日未明、ロケット砲に対抗してヒズボラの標的を攻撃したと軍は発表した。
イスラエルはまた、レバノンとの国境付近の別の14のコミュニティに対する避難計画を発表した。人口2万人以上のキリヤト・シュモナは先週、避難するよう指示された。
占領下のヨルダン川西岸では、イスラエル軍との衝突、逮捕、ユダヤ人入植者による攻撃などで、数十人のパレスチナ人が死亡している。イスラエル軍は、攻撃を防ぐためと称して、同地域への横断歩道や都市間の検問所を閉鎖している。イスラエルは107日以来、主にハマスのメンバーと疑われる数百人のパレスチナ人を逮捕した。
国際的に承認されたパレスチナ自治政府はヨルダン川西岸の一部を管理し、イスラエルと治安面で協力しているが、人気がなく、パレスチナ人の暴力的な抗議の標的となっている。
パレスチナ保健省によると、イスラエル軍はヨルダン川西岸で日曜日未明に少なくとも5人を殺害した。それらの人々はジェニンの町のモスクへの空爆で死亡した。この町では、昨年来パレスチナ武装勢力とイスラエル軍との間で激しい銃撃戦が続いている。
イスラエル軍によれば、このモスクはハマスとイスラム聖戦の武装勢力のもので、ここ数ヶ月の間に数回の攻撃を行ない、また新たな攻撃を計画していたという。
保健省によれば、日曜日の死者により、107日の戦争勃発以来、ヨルダン川西岸でのパレスチナ人の死者数は90人となった。ほとんどがイスラエル軍との戦闘や暴力的な抗議行動で死亡したとされる。
先週、ヨルダン川西岸の町トゥルカレムの難民キャンプでの戦闘で、5人の未成年者を含む13人のパレスチナ人と、イスラエルの準軍事組織である国境警察の隊員1人が死亡した。
ガザでは、砲弾に衝撃を受けた住民が、どこに行けばいいのか、どうやって家族を守ればいいのかわからないと語った。
「最悪の悪夢を見たときでさえ、こんなことがあり得るとは思わなかった」とラミ・アブ・ワズナさんはガザ中心部のアル・ザハラ地区の破壊を見つめた。
国連によると、身元不明の遺体約40体は、身元を確認する前に保冷剤が切れたため、土曜日にガザ市の集団墓地に埋められたという。
一方、イスラエル軍は、援助関係者が24時間体制の援助通路の開設を求めるなか、人道状況は「コントロール下にある」と述べた。
OCHAとして知られる国連人道援助機関は、土曜日に行われた輸送は、戦争前の平均的な1日の輸入量の4%程度であり、「13日間の完全な包囲の後に必要とされるもののほんの一部である」と述べた。OCHAは、1100台のトラックの入境を呼びかけている。エジプト側の交差点付近には大量の援助物資が集まっているが、いつさらに入境できるかについてはまだ発表されていない。
アメリカのジョー・バイデン大統領は、ラファに関する合意に達するために他の調停者と協力しているとし、「ガザの市民が、ハマスによって転用されることなく、食料、水、医療、その他の援助へのアクセスを確保し続けることに引き続きコミットしている」と述べた。
声明では、米国はラファの開放を維持し、米国市民がガザから出国できるよう努力すると述べた。しかし、土曜日に検問所に集まっていた数百人の外国人パスポート保持者は、援助隊が入った後、出発することができなかった。
アメリカ国籍のディナ・アル・カティブさんは、彼女とその家族は出国したくてたまらないと語った。「以前の戦争とは違います。電気も、水も、インターネットも、何もありません」。
エジプトが主催した和平サミットで、アントニオ・グテーレス国連事務総長は「この恐ろしい悪夢を終わらせるために」人道的停戦を再び訴えた。
しかし、国際的な分裂の表れとして、西側諸国はハマスに対する明確な非難を要求し、アラブ諸国の出席者は世界の指導者を批判する独自の声明を出すことを選択したため、会議は共同声明に合意することができなかった。
サウジ外相、シリア外相とガザ危機を協議
リヤド:サウジアラビアの外相であるファイサル・ビン・ファルハーン・ビン・アブドゥラー王子は23日、シリアのファイサル・ミクダード外相から電話を受けた。
両外相は電話会談で、二国間関係や、現在のガザ地区における軍事的エスカレーションについて話し合った。
また、緊張を緩和し、民間人の保護や危機の影響の軽減のための公正な解決策を見出すことの必要性を強調した。
イラク、軍事基地攻撃犯の追跡を命令
バグダッド:イラクの首相は治安部隊に対し、国際連合軍の顧問団を受け入れている軍事基地に対する攻撃の犯人を追跡するよう命じたと、政府軍報道官が月曜日に発表した。
この発表は、アメリカ軍をはじめとする国際部隊を受け入れているイラクの軍事基地に対するロケット弾やドローンによる攻撃が最近急増していることを受けたものである。
「イラクにおける国際連合の顧問団を受け入れているイラクの基地を標的にした攻撃は容認できない。顧問団は政府の招きに応じてここにいる」とイラク軍総司令官を兼ねるムハンマド・シア​​・アル・スダニ首相の報道官は述べた。
イラク西部のアル・アサード航空基地、バグダッドの国際空港近くの軍事基地、イラク北部の都市イルビルのハリール航空基地の3つの軍事基地が1週間足らずの間にカチューシャ・ロケットとドローンによって攻撃された。
イラクの治安当局者によると、首相はアメリカ軍をはじめとする国際部隊を受け入れている3つのイラク軍基地へのさらなる攻撃を防ぐため、「先制的な治安対策」を強化するよう命じたという。
イランと協調するイラクの武装集団は、もしワシントンがガザのハマスに対するイスラエルを支援するために介入すれば、ミサイルやドローンでアメリカの利益を標的にすると脅迫した。
イスラエルとガザの武装勢力ハマスとの紛争が始まって以来、イラクとシリアでアメリカ軍に対する攻撃が増加している。
アメリカ国務省は日曜日、イラクのアメリカ軍や軍関係者に対する最近の攻撃を受けて、アメリカ国民はイラクに渡航すべきではないと述べた。
アメリカはイラクに2500人、隣国シリアに900人の部隊を派遣しており、2014年に両国の領土を掌握したダーイシュに対抗するため、現地の部隊に助言を与え、支援する任務を負っている。
ガザの暴力が不人気のアッバース大統領への圧力を高める
ラマッラー:著しく不人気なパレスチナ大統領マフムード・アッバース氏は、イスラエルがガザのハマスと戦争を行う中、占領下のヨルダン川西岸地区の路上で高まる怒りに直面している。
同氏はパレスチナの人々の募る絶望に無関心だと見なされており、107日のハマスの攻撃に対するイスラエルの猛烈な応戦により、人々の不満を高めるばかりだ。
先週のガザの病院へのロケット弾攻撃が新たな怒りを巻き起こした後、数百人のパレスチナ人が路上で異例のデモを行い、「アッバースは辞めろ!」と叫び、その後治安部隊によって解散させられた。
アッバース氏は、18年間にわたってパレスチナ自治政府を率いてきたが、ヨルダン川西岸地区に対する同氏の権力は限られたものでしかなく、2007年にハマスによって武力で追放された自治政府はガザに対しては、なんの権力も有していない。
世界の舞台では、アッバース氏は1993年のオスロ合意の実現されない約束にしがみついてきた。
パレスチナ自治政府は、パレスチナ独立国家に向けた最初の一歩となるはずだったが、交渉は10年以上にわたって行き詰まっている。
共に1967年から占領され、連続したパレスチナ領土となるはずだったが分断されたヨルダン川西岸地区と併合された東エルサレムにおける、イスラエルの入植地と軍事支配の急拡大に対して、アッバース氏は無力だった。
イスラエルの入植者たちによるパレスチナ市民への暴力と、イスラエル軍とパレスチナ武装組織の間の衝突は増加してきた。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相のもとで、12月にイスラエル史上最極右の内閣が発足した後、状況は悪化の一途をたどってきた。
「アッバース氏は、国際社会がパレスチナ人に国家を与えるため、イスラエルに占領地域からの撤退を強いると信じて、国際社会に賭けた」と、ラマッラーを拠点とするシンクタンクであるビサン研究開発センターのウバイ・アル・アボウディ理事長は述べた。
「しかしながら、国際社会はパレスチナ人の血が流れることや彼らの苦難についてほとんど関心がないことを示してきており、それゆえ、民衆の怒りが高まった」と、アボウディ氏は語った。
アッバース氏は、1948年のイスラエル独立以降で最悪の攻撃となった107日のハマスの襲撃以来、傍観の姿勢を保っている。
政治的立場に関係なく、多くのパレスチナ人がソーシャルメディア上でハマスへの支持を表明している。
アッバース氏は先週、パレスチナの公式通信社が報じた「ハマスの政策と行動はパレスチナの人々を代表するものではない」というコメントで人々の怒りを買った。この発言は撤回されている。
現在の戦争以前にも、アッバース氏の人気はかなり低く、平和的な交渉への支持は低下していた。
9月にパレスチナ政策調査研究所(Palestinian Center for Policy and Survey Research)が発表した世論調査によると、パレスチナ人の78パーセントは、アッバース氏の退任を望んでいた。
およそ58パーセントがイスラエルによる占領を終わらせるための「武装闘争」を支持するとしており、交渉による解決への支持は20パーセント、「平和的な抵抗」への支持は24パーセントとなっていた。
アッバース氏に反対する人々は、「パレスチナ自治政府は、不作為や安全保障協力によって、ますますイスラエルの政策に同化してきている」と感じていると、パレスチナ自治区を専門とする政治学者のXavier Guignard氏は述べた。
「アッバース氏はガザで起こっていたことに対応できなかった」という実感があったと、パリを拠点とするNoria Researchに所属するGuignard氏は語った。
欧州外交評議会のアナリストであるヒュー・ロバット氏は、パレスチナ自治政府が世論を無視し続けるならば、「武装抵抗を支持するパレスチナの民衆感情が強固となる中で、パレスチナ自治政府は一掃される危険がある」と述べた。
「米国とイスラエルがパレスチナ自治政府に、ハマスやヨルダン川西岸地区の他の武装組織への弾圧を強めるよう求め、それが民衆からの評価をさらに損なうことになるため」アッバース氏はさらに弱体化するだろうと、同氏は述べている。
ガザのパレスチナ人を支援して20日にラマッラーのデモに参加したオマル・カティブ氏は、パレスチナ自治政府に対して手厳しい評価を下した。「抵抗組織がガザでイスラエルに立ち向かい、私たちはここで自治政府に立ち向かっている。自治政府は、ヨルダン川西岸地区で私たちを抑圧するための占領者の手中の道具でしかないからだ」と、同氏は語った。
イスラエルがガザとレバノン空爆、西岸で衝突 ハマス・イラン協議
イスラエルは23日未明、パレスチナ自治区ガザを空爆したほか、レバノン南部で軍機による夜間攻撃を実施した。
ガザ保健省は過去24時間にイスラエル軍の空爆により436人が死亡したと発表した。その多くは南部だったという。
パレスチナのメディアによると、イスラエルの攻撃はガザの中心部と北部に集中。北部のジャバリア難民キャンプ近くの民家が攻撃を受けた。
イスラエル軍は23日午前、過去24時間でガザの320以上の目標を攻撃したと発表。ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの戦闘員が潜んでいる地下トンネルや指令室、監視所などが攻撃目標になった。「ガザ周辺で地上作戦の準備を進めている軍隊を危険にさらす」拠点のほか、迫撃砲や対戦車ミサイルランチャーの拠点を攻撃したとしている。
イスラエルは現在、軍をガザとの境界付近に集結させているが、地上戦をいつ開始するかは明らかになっていない。
イスラエルはガザ住民に北部からの避難を命じている。しかし、国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、南部でも砲撃が強まり避難所が不足しているため、最大数千人の避難民が北部に戻っているとみられる。
イスラエル軍はレバノンの親イラン組織ヒズボラの2拠点も空爆した。同軍によると、ヒズボラはこれらの拠点からイスラエルに向けた対戦車ミサイルやロケット弾の発射を準備していた。
ヒズボラは戦闘員1人が死亡したとだけ明らかにした。
イスラエル軍によれば、空爆した1拠点は、レバノン南部アイタルーンの南西約13キロにあるイスラエルの町マタトに隣接しており、もう一つはさらに国境に近い紛争中のシェバア農場付近にあった。軍はヒズボラから攻撃を受ける前に両拠点を空爆したという。
レバノンの国営通信社NNAは、イスラエルがアイタルーン郊外を空爆したと報じたが、詳細は伝えていない。
イスラエル軍は今回の紛争が始まって以来、レバノン国境で兵士7人が死亡したと発表した。
イスラエル占領下のヨルダン川西岸では、ラマラ近郊のジャラゾン難民キャンプでパレスチナ人2人が死亡したと、パレスチナ保健省が23日発表した。
住民がロイターに語ったところによると、イスラエル軍がキャンプを急襲し、銃器携帯者や投石する若者と衝突するとともに多くの人の身柄を拘束した。イスラエル軍はこの衝突についての声明を出していない。
ハマスによると、最高指導者のイスマイル・ハニヤ氏は22日夜、イランのアブドラヒアン外相と電話協議を行い、ガザにおけるイスラエルの「残忍な犯罪」を停止させる止める手段について話し合った。
焦点:軍事関与避けるイラン、ハマス支援との整合性に苦慮
今月15日、イランは宿敵イスラエルに痛烈な最後通告を行った。パレスチナ自治区ガザへの猛攻撃を止めなければ、わが国も行動を起こさざるを得なくなる、と外相が警告を発したのだ。
そのわずか数時間後、イランの国連代表はタカ派的なトーンを和らげ、イスラエルがイランの利益や市民を攻撃しない限り、自国の軍隊は紛争に介入しないと世界に保証した。
イスラム組織ハマスを長年支援してきたイランは今、板挟みの状況に立たされている。そのことが、イラン指導部の考え方を直接知る同国高官9人への取材で分かった。
イスラエルによるガザ侵攻を傍観すれば、イランが40年以上追求してきた地域支配戦略が大きく後退することになると、これらの情報筋は言う。
しかし、米国が支援するイスラエルに大規模な攻撃を行えば、イランは大きな打撃を被る上に、既に経済危機に苦しむ国民の間で指導者への怒りに火がつく可能性がある。
イランは軍事、外交、国内の優先課題など、幅広い問題をてんびんに掛けていると情報筋らは説明した。
安全保障当局者3人によれば、イランの最高意思決定者の間では、当面のコンセンサスが以下のように形成されている。
一つ目は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによるイスラエルの軍事目標への限定的な越境攻撃および、地域の他の同盟組織による米国の軍事目標への小規模な攻撃に賛同すること。
二つ目は、イラン自身を紛争に巻き込むような大規模なエスカレーションを防ぐことだ。
イランの国営メディアによると、議会・国家安全保障委員会のバヒド・ジャルザデ委員長は18日に「われわれは、友であるハマス、(ガザの過激派)イスラム聖戦、ヒズボラと連絡を取り合っている。彼らのスタンスは、われわれが軍事行動を起こすのを期待していないということだ」と述べた。
イラン外務省に今回の危機に対する対応についてコメントを求めたが、回答はなかった。イスラエル軍当局もコメントを控えた。
イランは綱渡り状態だ。
情報筋らによると、30年以上をかけ、ハマスとイスラム聖戦を通じて築いてきたガザの権力基盤を失うことは、イランにとってネットワーク構築に穴が開くことを意味する。
同国はヒズボラからイエメンの親イラン武装組織フーシ派まで、中東全域に代理武装組織の網を張り巡らせてきた。
3人の政府関係者によれば、イランが軍事行動を起こさなければ、こうした代理組織から弱腰と見なされかねない。また、イスラエルに対するパレスチナの大義を長年支持してきたイランの立場が損なわれる恐れもある。イランはイスラエルを国として認めず、邪悪な占領者と見なしている。
「イランは、ガザ地区にある武器を守るためにヒズボラを戦場に送るのか、それともこの武器を放棄して降参するのかというジレンマに直面している」と、イスラエルの元諜報高官、アビ・メラメド氏は語った。「これがイランの立ち位置だ。リスクを計算しているのだ」とも語った。
<国の存続を最優先>
軍事大国イスラエルは、核兵器を持っていると広く信じられている。同国はこれを肯定も否定もしていない。イスラエルはまた、米国の支持を得ており、米国はイランへの警告も兼ねて空母2隻と戦闘機を地中海東部に移動させた。
イランの外交高官は「イランの指導部、とりわけ最高指導者ハメネイ師にとって、最優先事項はイランの存続だ」と述べるとともに「だからこそ、イラン当局は攻撃開始以来、イスラエルに対して強い言い回しを用いながらも、少なくとも今のところ、直接的な軍事的関与を控えている」と解説した。
ハマスがイスラエルを攻撃した今月7日以来、ヒズボラはレバノン・イスラエル国境沿いでイスラエル軍と衝突し、ヒズボラの戦闘員14人が死亡した。
ヒズボラの考え方に詳しい情報筋2人によると、こうした低レベルの戦闘はイスラエル軍を忙殺させつつ、新たな主要戦線は開けないよう意図されたものだ。
イスラエルの安全保障に詳しい情報筋3人と西側の安全保障筋1人がロイターに語ったところによると、イスラエルはイランとの直接対決を望んでいない。また、イランはハマスを訓練し武器を供与してきたが、7日の攻撃を事前に知っていた形跡はないという。
最高指導者ハメネイ師は、ハマスがイスラエルに与えた損害を賞賛しつつも、イランによる攻撃への関与は否定している。
イスラエルと西側の安全保障筋は、イスラエルがイランを攻撃するのは、イラン軍に直接攻撃された場合だけだと語った。もっとも状況は不安定であり、ヒズボラや、シリアやイラクのイラン代理組織がイスラエルを攻撃し、多くの死傷者が出た場合には、状況は変わり得るとくぎを刺した。
<米国は軍事介入せず>
米政府高官らは米国の目的について、選択肢を開けておきつつも、紛争拡大を防ぎ、他国が米国の利益を攻撃するのを抑止することだと説明している。
バイデン米大統領は18日にイスラエルを訪問した帰り、ヒズボラが戦争を始めた場合、米軍はイスラエル軍と一緒に戦うとバイデン氏側近がイスラエルに示唆した、というイスラエルメディアの報道をきっぱりと否定した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、紛争を封じ込めたいという米国の意向を改めて説明し「米軍を戦闘に投入する意図はない」と記者団に語った。
<イラン国内に蓄積する指導部への不満>
一方、今回の中東紛争にはイラン国民自身が一定の影響を及ぼすかもしれない。
高官2人によると、国内では経済危機と社会問題を背景に指導部への反感が強まっており、指導部はこれを鎮めながら直接紛争に関与する余裕はない。
昨年、スカーフの着用が不適切だとして当局に拘束された女性が死亡して以来、何カ月間も社会不安が続いている。国は着用規則を守らない国民への取り締まりを続けている。
経済的な苦境が続く中、多くのイラン国民は、中東におけるイランの影響力を拡大するため、数十年にわたり代理組織に資金を流してきた政府を批判するようになった。
イランの反政府デモでは何年も前から「ガザでもレバノンでもなく、私はイランのために命を捧げる」という言葉がスローガンとなっている。
元イラン高官は「イランの曖昧な立ち回りは、地域の利益と国内安定との間で微妙なバランスを採る必要性を浮き彫りにしている」と語った。
ガザ情勢「非常に深刻」と中国特使、UAEなど中東歴訪へ
中国のザイ・ジュン中東問題担当特使は、パレスチナ自治区ガザの状況について「非常に深刻」という認識を示した。イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突が激化し、大規模な地上戦のリスクが高まっているほか、近隣諸国にも影響が広がっていると指摘した。中国国営の中国中央テレビ(CCTV)が23日に伝えた。
中東を訪問している同特使は、イスラエルとレバノン、シリアの国境沿いに紛争が広がる中、地域や世界への波及拡大を指摘し「先行きを懸念させる」と述べた。国際社会に「強い警戒」を呼びかけ、国際人道法の厳格な順守と深刻な人道的災害の回避を関係当事者に促す措置を直ちに取るとともに「状況を管理する協調努力」を行うよう求めた。
また、中国は対話を促し、停戦を実現し、平和を回復するためや2国家解決と紛争の公正で永続的な解決を推進するために「有益なあらゆる対応」を取る用意があると表明した。
ザイ氏は23日にUAEで中国とアラブ諸国の会合に出席し講演をする予定。
中国外務省の毛寧報道官は定例会見で、同氏がイスラエルとパレスチナも訪問する予定があるかとの質問に、「中東の関係国(・地域)」を歴訪する予定だと説明した。CCTVによると、サウジ、ヨルダンなどの中東諸国を歴訪することになっている。
同氏は出発前にパレスチナ、イスラエル、エジプト、サウジ、UAE、ノルウェーの各外相のほか、国連や欧州連合(EU)の特別代表と電話会談した。
CCTVによると、同氏は中国は国連や二国間ルートを通じてパレスチナに緊急人道支援を実施しており、今後も支援を継続する方針だと述べた。
欧米首脳、イスラエルに民間人保護を要請 6カ国が共同声明
バイデン米大統領とカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国の各首脳は22日、中東情勢に関するオンライン会議を開き、イスラエルとその自衛権に対する支持を強調するとともに、国際人道法を順守し民間人を保護するよう求めた。
共同声明で、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる人質2人の解放を歓迎しつつも、残りの人質全員の即時解放を要求した。
バイデン氏はイスラエルのネタニヤフ首相と会談後、英仏独伊とカナダによるオンライン会議を開いた。
首脳らは、特にガザからの脱出を希望する自国民を支援するために緊密に協力することを約束した。
また、今月のイスラエルとハマスの衝突以来初めて、ガザに人道支援物資が到着したことを歓迎し、ガザに住む220万人の人々が食料、水、医療、その他の人道支援を持続的かつ安全に受けられるよう、地域のパートナーと協力を続けることも確認した。
紛争拡大を防ぎ、中東の安定を維持し、政治的解決と永続的な和平に向けて努力するために、地域の主要なパートナーを含め、緊密な外交協調を継続することでも合意した。
イラン、アルメニア・アゼル外相による和平協議を23日主催へ
イラン、トルコ、ロシアの外相は23日、イランの首都テヘランで、国境紛争中のアゼルバイジャンとアルメニアの両外相と会談し、和平合意に向けて話し合う。イランとロシアの国営メディアが伝えた。
ロシア、アルメニア、アゼルバイジャンの外相会談は、9月のアゼルバイジャン軍によるアルメニアとの係争地ナゴルノカラバフへの攻撃後、初めて行われる。
イラン国営通信は、各国は「非地域諸国や西側諸国が干渉しない」会談を望んでいるとする外務省の発表を伝えた。
ロシアのインタファクス通信は、ラブロフ外相が会談のためにテヘランに向かうと伝えた。
米、中東派遣軍に攻撃激化の可能性想定 イランの動き警戒
米国のブリンケン国務長官とオースティン国防長官は22日にテレビ出演し、中東に派遣している米軍への攻撃が激化するほか、イランがイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を拡大させようと狙う可能性を想定していると明らかにした。
米国は紛争拡大を望んでおらず、最近の中東地域への部隊や装備の配備は拡大を防ぐためのものだと説明した。
ブリンケン氏はNBCニュースの番組で、ハマスが20日に米国人の人質2人を解放したのに続き、さらに多くの人質解放を望んでいると述べた。
オースティン氏はABCの番組で「地域全体で米軍部隊や米国民に対する攻撃が、大幅にエスカレートする可能性を想定している」と語った。この紛争を拡大させようとしている組織や国には「やめるよう忠告する」とした。
米国は過去数週間で中東地域に空母2隻と支援艦、約2000人の海兵隊員を派遣している。国防総省は21日、中東に地上配備型ミサイル迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」と追加の防空システム「パトリオット」大隊を配備すると発表した。
米駆逐艦は先週、イエメンの親イラン組織フーシ派から発射された巡航ミサイル4発とドローン(無人機)十数機を撃墜したと明らかにしていた。イラクの米軍駐留基地にもドローンやロケット弾による攻撃があった。
パリでパレスチナ支持の大規模デモ、衝突発生後警察が初許可
フランスの首都パリで22日、パレスチナを支持する約1万5000人の市民による大規模なデモが行われた。警察はパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃後にパレスチナ支持派のデモを禁止していたが、今回パリで初めて許可した。
デモ隊は「ガザ、パリはあなたとともにある」などと唱え、イスラエルとハマスの停戦を訴えた。ガザではイスラエルの攻撃による死者が4700人を超えている。
ベルギーの首都ブリュッセルでもパレスチナ支持派のデモが実施され、約1万2000人が参加した。
フランス内相は当初、パレスチナ支持のデモを全面的に禁止する方針を示していたが、裁判所が個別的に禁止の是非を決定するよう命じる判決を下していた。過去数日にパリ以外の各都市でもデモが許可されている。
警察は今回のデモについて、主催者がハマスによるイスラエル攻撃を非難すると表明したことから許可したと説明した。

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