<Note、まとめ等>
<10月16日朝まで>
中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相は15日、イランのアブドラヒアン外相と電話協議した。同氏はイスラエルと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突について「政治的手段による問題解決を望み、中国と意思疎通を強めていく」と述べた。
ブリンケン米国務長官は15日、サウジアラビアの首都リヤドで実力者ムハンマド皇太子と会談した。米国務省は声明で、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突を受け「市民を保護し、中東全域やそれ以外の地域の安定を進める共通の責務があると確認した」と記した。
米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は15日、イスラム組織ハマスとイスラエルの衝突を受け「(地域で紛争が)エスカレートするリスクが高まっている」と表明した。米CBSテレビのインタビューで「イランが直接関与を選択する可能性を排除できない」と述べた。
中東歴訪中のブリンケン米国務長官15日、エジプトの首都カイロでシシ大統領と会談した。米国務省によると、シシ氏はイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃について「解決策を見いだす希望を持てなかった40年間に蓄積された怒りと憎悪の結果だ」と述べ、ハマスの行動に理解を示した。
仏大統領府は15日、マクロン大統領がイランのライシ大統領と同日電話で協議したと発表した。マクロン氏はパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突を踏まえ、ライシ氏に対して「対立の激化や、特にレバノンへの波及について警告した」という。
仏大統領府は電話協議に関する声明の中で、レバノンの親イラン組織であるヒズボラやハマスとの関係を踏まえればイランには対立の激化や波及を防ぐ責任があると指摘。「イランは地域の混乱を避けるために全力を尽くすべきだ」とした。
イスラエルと敵対するイランはハマスへの協力を続ける方針を示している。米メディアによるとイランのアブドラヒアン外相は14日、ガザへの攻撃が続けばイランが介入する可能性があるとイスラエルに警告した。
米国はここ数日にイランと非公式ルートで協議を実施し、イスラエルでの戦闘をエスカレートさせないよう警告した。イスラエル軍はイスラム組織ハマスによる先週末の奇襲攻撃への報復として、ガザ地区への地上侵攻を準備している。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は15日、CBSの番組で「われわれにはイランと非公式にやり取りする手段がある。過去数日にこうした手段を利用して、われわれが公に述べていることを非公式に明確に伝えてきた」と話した。
イスラエル軍、ハマス部隊指揮官を殺害したと発表
イスラエル軍は15日、7日の攻撃に関与したハマスの精鋭部隊ヌクバの指揮官を殺害したと発表した。米国と欧州連合(EU)はハマスをテロ組織に指定している。
テルアビブとイスラエル南部に向けロケット弾
イスラエル国防軍のコンリクス報道官はX(旧ツイッター)通じ、テルアビブとイスラエル南部に向けロケット弾が夜間に発射されたと明らかにした。
イスラエル軍はガザ地区沿いに展開し、次の作戦段階に備えていると同報道官は説明。ガザ地区北部で「重要な軍事活動」が行われるだろうと述べ、ガザ市民に南部へ移動するようあらためて呼びかけた。「次の作戦段階は、ハマスに対する作戦の強化」としている。
イスラエル、レバノンのヒズボラ拠点を攻撃
イスラエル軍は「正体不明」のものが同国領空に入ったことへの対抗措置として、レバノン南部のヒズボラ拠点を攻撃したと明らかにした。
同軍は13日夜の声明で、この正体不明のものはイスラエルの無人機によって撃墜されたと説明した。
ヒズボラ、レバノン国境近くでイスラエル軍拠点を攻撃
レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラは、レバノンとの国境付近でイスラエル軍拠点4カ所を攻撃したと、同組織のアルマナルTVが伝えた。
イラン外相がハマス、「イスラム聖戦」と会談
イランのアブドラヒアン外相はレバノンのベイルートで、ハマスおよび過激派組織「イスラム聖戦」の幹部と会談し、ガザの情勢を協議した。発表文で明らかにされた。
同外相はこれより先、ヒズボラの指導者とも会談。イランは今回のイスラエル攻撃への関与を否定する一方、ハマスに対する地域全体の支持を集めようと動いている。
アブドラヒアン外相は、ガザにおけるイスラエルの「戦争犯罪」を終わらせるための「外交努力」をイランは続けると述べた。
ブリンケン米国務長官は16日にイスラエルを再び訪問し、同国高官とさらなる協議を実施する。バイデン米政権は中東における戦闘拡大の脅威を抑えようと努めている。
ブリンケン氏は先週、イスラエルを訪問後、中東諸国を歴訪。帰国する前に16日、イスラエルに数時間立ち寄ると、国務省のミラー報道官は同行記者団に話した。
イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザでの「大規模な地上作戦」を準備していることを明らかにしている。
親イラン民兵組織ヒズボラがレバノンとの国境付近でイスラエル軍の拠点を攻撃し、少なくとも1人が死亡した。
中東地域で最も強力な民兵組織であるヒズボラは、イスラエル軍駐屯地に向けて誘導ミサイルを発射したと発表。その1時間後には別の駐屯地を攻撃し、戦車を破壊したと述べた。
イスラエル当局によると、最初の攻撃でイスラエル人1人が死亡、3人が負傷した。イスラエル軍はヒズボラの軍事目標を攻撃し、レバノン国境から4キロメートルまでの地域を封鎖したと発表した。
イスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を行った翌日の8日以降、ヒズボラとイスラエル軍の交戦は続いている。
イランは14日、イスラエルによる「戦争犯罪と大量虐殺」が停止しなければ、事態は制御不能に陥り、より広範囲に影響が及ぶ恐れがあると警告した。
これに先立ち米ニュースサイトのアクシオスが報じたところによると、イランはイスラエルに対して、イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区で地上戦を開始した場合、イランは何らかの行動を取ると国連を通じて同国に伝えた。
イラン国連代表部はX(旧ツイッター)に「イスラエルのアパルトヘイトによる戦争犯罪と大量虐殺を直ちに止めなければ、事態は制御不能に陥り、広範囲に及ぶ結果を招くことになる」と投稿した。
イスラエルは14日、イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区の市民に南へ退避するよう勧告するとともに、地上戦の準備を進めた
欧州連合(EU)の欧州委員会は14日、パレスチナ自治区ガザの住民に対する人道支援について、当初予定の3倍の7500万ユーロ(7880万ドル)に増額すると発表した。
「欧州委員会は国際人道法を完全に尊重し、ハマスのテロリストから自らを守るイスラエルの権利を支持する」と表明。「こうした状況でガザの罪のない市民が支援を受けられるよう取り組んでいる」と説明した。
イスラエルは14日、イスラム組織ハマスが実効支配するガザ地区の市民に南へ退避するよう勧告するとともに、地上戦の準備を進めた。
イスラエル軍は声明で「兵士と大隊を全土に配備し、地上作戦に重点を置きながら、戦争の次の段階に備えて態勢を強化している」とした。作戦には空、海、陸からの攻撃が含まれ、「戦闘地域は拡大」すると付け加えたが、それ以上の詳しい説明はなかった。
イスラエルは13日、ガザ北部の市民にエジプトと国境を接する南部へ退避するよう勧告。14日には2つの退避路を指定し、避難民の安全を午後4時(日本時間午後10時)まで保証すると発表した。期限を迎えると、イスラエル軍は部隊をガザ周辺に集結させた。
一方のハマスは市民に避難しないよう指示。退避路は危険で、避難民を乗せた車両が13日に攻撃を受けて数十人が死亡したと主張した。イスラエル側は、ハマスが人間の盾に利用しようと市民の退避を妨害していると非難しているが、ハマスはこれを否定している。
パレスチナ赤新月社は午後4時までに病院から退避するようイスラエルから通告を受けたものの、病人や負傷者に医療サービスを提供するという人道的義務があるとして退去を拒んだ。
ガザ当局によると、これまでに2200人以上が死亡。その4分の1が子どもで、1万人近くが負傷したとしている。
バイデン米大統領はイスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、支援が「揺るぎない」ことを繰り返しつつ、市民が水や食料の供給、医療を受けられるよう各国と協調することを話し合った。バイデン氏はパレスチナのアッバス議長とも会談し、「人道回廊」をただちに設置する必要性を伝えた。
イスラエルによる空爆が始まって以降、ガザから100万人の市民が避難したと伝えられているが、ハマスの指導者ハニエ氏は「(パレスチナ人は)我々の土地にとどまる」と強調した。
<戦線拡大の恐れ>
イスラエルとハマスの衝突が続く中、戦線は隣国レバノンにも拡大する恐れが強まっている。
ハマスと同様にイランと関係が近く、レバノン南部を拠点とするイスラム教シーア派組織ヒズボラは、係争地シェバー・ファームズにあるイスラエル軍の拠点5カ所に誘導ミサイルと迫撃砲を発射したと発表した。ロイターの記者はイスラエル軍の基地にミサイルが飛来するのを目撃、イスラエル側からは砲声と銃音を聞いた。
イスラエルのラジオ局は、レバノンからの侵攻が疑われることから国境の5つの村が封鎖されていると伝えた。
イスラエル首相の安全保障政策顧問ツァヒ・ハネグビ氏は「2正面戦争に巻き込まれないようにしている」と述べ、ヒズボラに戦闘に参加しないよう警告した。
イスラム組織ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏は14日、イランのアブドラヒアン外相とカタールの首都ドーハで会談した。
ハマスの声明によると、パレスチナ武装勢力のイスラエルに対する攻撃について協議し、目的達成のために協力を続けることで合意した。
アブドラヒアン氏はハマスによるイスラエル攻撃を「歴史的勝利」と称賛した。
オースティン米国防長官は、「ドワイト・アイゼンハワー」の空母打撃群が東地中海へ移動を開始し、すでに展開する別の空母打撃群と合流する予定だと明らかにした。
「(イスラム組織)ハマスのイスラエル攻撃を受け、イスラエルに対する敵対的な行為やこの戦争を拡大しようとする試みを抑止するため」と説明した。
ロシアはイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突を巡り、人道的停戦を求めるとともに、民間人に対する暴力と全てのテロ行為を非難する決議案を16日に採決するよう国連安全保障理事会に求めた。
ロシアのポリアンスキー国連次席大使は、同国が13日に安保理に提案した決議案について、修正箇所はなく、米東部夏時間16日午後3時(日本時間17日午前4時)に予定されていると述べた。
ロシアの決議案は、ハマスが拘束する人質の解放のほか、人道支援を可能にするよう要請、市民の安全な退避も求めている。イスラエルとパレスチナへの言及はあるが、ハマスには直接言及していない。
シリア国営通信によると、シリア北部アレッポの空港に14日深夜、イスラエル軍の攻撃があり、空港が閉鎖された。内戦下のシリアでは12日にもアレッポと首都ダマスカスの空港にイスラエル軍による攻撃があった。
イスラエルはこれまでも敵対するシリアで親イラン組織を狙った空爆をたびたび実行してきた。空港への攻撃で親イラン組織への物資輸送を妨害しようとしている可能性がある。
パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエル軍の大規模戦闘が始まった後、イスラエルとシリア国境付近でも散発的な衝突が起きている。シリアのアサド政権はイランが後ろ盾。イランの影響下にあるハマスと協力し、シリア内戦にも関与するレバノンの民兵組織ヒズボラとイスラエル軍の本格的な交戦突入の懸念も出ている。
オースティン米国防長官は14日、原子力空母ドワイト・アイゼンハワーを東地中海に派遣すると発表した。東地中海で空母を2隻態勢とし、親イラン組織がイスラエルでの戦闘に加わらないように抑止力を強める。
ドワイト・アイゼンハワーは14日、米南部バージニア州の基地を出発した。ミサイル巡洋艦やミサイル駆逐艦とともに空母打撃群を形成する。これとは別に米空母ジェラルド・フォードを中心とする打撃群が10日、東地中海に到着していた。
オースティン氏は声明で「米軍の態勢強化はイスラエルの安全保障に対する米国の鉄壁の関与と、国家や国家に属さない者がこの戦争を拡大しようとする試みを抑止する米国の決意を示す」と強調した。
米国防総省高官は9日、記者団に空母打撃群に関して「情報収集や海洋支配、長距離攻撃といった幅広い任務をこなせる」と説明していた。
米軍は、7日に起きたイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲攻撃前からドワイト・アイゼンハワーを欧州地域に派遣すると決めていた。詳細な配備先を事前公表するのは珍しい。緊迫するイスラエル情勢に対する米軍の危機感を映す。
イスラエル周辺で戦力増強を誇示し、イランや親イラン組織を抑止する狙いがある。
イスラエル軍は近く、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに対し、全面的な地上侵攻を始めるとの見方がある。
地上侵攻が始まれば、レバノンの親イラン組織ヒズボラがイスラエルに攻撃を強める可能性がある。これまでは散発的な砲撃にとどまっている。イランとつながるシリアの武装勢力による軍事介入の可能性を指摘する声もある。
親イラン組織がシリアやイラクで活動する米軍に攻撃を仕掛けるリスクにも懸念が高まる。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は米軍へのリスクに関し「懸念しないことは決してない」と語っていた。
米軍は現時点でイスラエル軍が検討するガザ地上侵攻に直接参加する計画はない。ハマスが連れ去った人質の解放に向けた専門家をイスラエルに派遣し、同国軍に作戦をめぐりアドバイスをしている。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突が、世界に波紋を広げている。ロシアや中国はパレスチナを支援し、欧米を揺さぶる構えをみせる。中東の融和の期待はしぼみ、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化は遠のくとの観測が強い。
国連安全保障理事会は13日、ハマスとイスラエルの衝突を巡り非公開で協議したが、具体的な支援策の結論を出せなかった。ロシアが示した決議案はハマスを明確に非難する文言を含まず、即時停戦を主張したとみられる。米英仏などは、民間人を襲い人質に取ったハマスの「テロ」を強く批判しイスラエル支持を鮮明にしており、ロシア案に賛成する見込みは乏しい。
ロシアのネベンジャ国連大使は記者会見で、欧米が国連で中東情勢について公開での会合を要請してこなかったと指摘した。「一方でウクライナ情勢を議論する会合はあらゆる口実を用いて開こうとする」と批判した。
ウクライナ侵攻でただでさえ深刻な安保理の亀裂が深まりかねない。ロイター通信によると、議長国ブラジルはハマスのテロ攻撃への非難を明記した決議案を配布した。
パレスチナ問題をはじめ中東の複雑な情勢は米中ロなど域外の主要国も注視し、影響力を行使してきた。中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相は13日、国連を通じてガザに緊急援助を提供する意向を示した。王氏は14日、ブリンケン米国務長官と電話協議し、ガザ衝突について議論した。
中国は3月、中東の覇を競う地域大国のサウジとイランの関係正常化を仲介し、米国の不意を突いて中東での存在感を誇示した。バイデン米政権が仲介努力を加速させてきたのが、イスラエルとアラブの「盟主」を自任するサウジとの国交正常化交渉だ。9月には両国の首脳が、正常化は近づいているとの認識を示していた。
ロイター通信は13日、サウジがその交渉を凍結していると報じた。サウジは国交正常化の前提としてパレスチナ問題の解決を掲げていた。今回のハマスとイスラエルの大規模衝突で、アラブ社会はパレスチナに同情的な見方を示している。サウジはパレスチナ人を攻撃するイスラエルとの関係改善を進めることは難しいと判断している可能性がある。
ブリンケン氏は14日、サウジでファイサル外相と会談した。米国務省の声明によると、紛争拡大防止や民間人保護を巡り協議した。イスラエルとサウジの国交正常化も議題になった可能性があるが、声明では触れなかった。
イスラム教の集団礼拝日にあたる金曜日の13日、ハマスの指導者は「怒りの日」と呼んでイスラム教徒らに行動を呼びかけた。ハマスが7日にイスラエルに大規模な越境攻撃をかけてから最初の金曜日だった。
ハマスとイスラエルの衝突は、遠く離れた欧米でも火種になる恐れがある。多民族社会の米国では13日、親パレスチナと親イスラエルの両派が各地でそれぞれ集会や抗議活動を繰り広げ、一部では暴力事件にも発展した。警察は警備を強化している。
フランス政府は13日、北部アラスの高校で発生した教師刺殺事件を受け、テロに対する警戒態勢を最高水準に引き上げた。ダルマナン内相は事件とイスラエル・パレスチナ情勢の緊迫には「おそらくつながりがある」との見方を示した。
仏政府は対立が国内に波及するリスクに神経をとがらせている。ユダヤ系の学校や宗教施設の警備を強化する一方、パレスチナ支持のデモを禁止した。パリのルーヴル美術館は14日、「安全上の理由」で閉館すると発表した。
エルサレム:日曜日、レバノンのヒズボラ戦闘員が、イスラエル北部国境の村にミサイルを発射し、1人が死亡、3人が負傷したと同武装組織とイスラエルの衛生兵部隊が発表した。
衛生兵部隊は当初、レバノン人コミュニティーのアイタ・アシャブの向かいにある国境フェンスに隣接する農業コミュニティー、シュトゥラへの攻撃で2人が負傷したと発表していた。
イスラエル軍は報復としてレバノンを攻撃していると発表した。
ソーシャルメディアプラットフォーム「X(以前のツイッター)」で拡散されたシュトゥラの動画には、身動きできない血まみれの私服を着た男性を兵士がチェックしている様子が映っていた。
ジェッダ:イスラム協力機構(OIC)は、サウジアラビアによる招待のもと、ガザ地区における暴力について話し合うための緊急会合を18日にジェッダで開く。8日間に及んでいる戦争で数千人の死傷者が出ていることを受けたものだ。
現在OICイスラムサミットの議長国を務めており、OIC執行委員会の議長国でもあるサウジアラビアは、ガザ地区とその周辺地域における軍事的エスカレーションや、民間人と地域の安全・安定を脅かしている情勢悪化について話し合うための「オープンエンド」閣僚会合の開催を呼びかけた。
イスラエルはハマスを壊滅させるための戦争を激化させており、ガザ地区を容赦なく攻撃して少なくとも2215人を殺害し、来たるべき地上侵攻を前に近隣に数万人の兵士を配備している。
これは、数百人の戦闘員がイスラエルとの境界を越え、人質を取り1300人以上を殺害した、7日のハマスによる攻撃を受けたものである。
<10月14日夜まで>
戦争は国民を結束させる。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる7日朝の攻撃がもたらした衝撃と恐怖は、分断が深まっていたイスラエル国内を一致団結させた。これでネタニヤフ首相が挙国一致内閣を樹立できる可能性が出てきた(編集注、同氏は11日、中道右派野党を率いるガンツ前国防相と挙国一致政権をつくることで合意した)。
今回の危機はかなり長期化することが予想されるため、イスラエルの結束はしばらく続きそうだ。イスラエルの子どもや高齢者を含む人質がガザ地区に連れ去られており、イスラエルは苦しみ続けることになる。
レバノンとの国境やパレスチナの自治政府が統治するヨルダン川西岸地区で新たな衝突が発生するリスクにもイスラエルは直面している(編集注、レバノンの親イラン武装勢力ヒズボラがイスラエル北部を砲撃、これを受けイスラエル軍がレバノン南部を攻撃するといった事態がすでに発生している)。
イスラエルが反省すべき点
それでもイスラエルでは近く、どこで道を誤ったのかを巡って政治的論争が巻き起こり、亀裂が生じるだろう。反省すべき点は2つある。一つは諜報(ちょうほう)活動と防衛の失敗、もうひとつはパレスチナ問題に対する戦略自体の失敗だ。
イスラエルは自国の情報収集力の高さを誇ってきた。ガザで起きることのほぼすべてを事前に察知できていると考えていた。ところが今回、ハマスは複雑かつ多面的な攻撃を計画・実行し、イスラエルが鉄壁と考えていたガザとの境界を打ち破った。具体的にはイスラエル国内に1948年の建国以来、最も激しい攻撃をしかけ、最も多くの犠牲者を出した。
右派と中道派は、諜報活動と防衛の失敗の責任を互いになすりつけ合うだろう(イスラエルに左派はもはや存在しないに等しい)。首相の座にあるネタニヤフ氏には当然、批判の矛先が向く。
ネタニヤフ氏はハマスの封じ込めに成功していると考えていたようだが、今となっては甘い幻想でしかなかったように思える。同氏は汚職疑惑を巡り公判中で、その有罪判決を免れようと極右政党と連立を組むことで昨年末、政権に返り咲いた。
これらの政党はヨルダン川西岸地区へのユダヤ人による強引な入植を支持してきた。その結果、同地区で発生するようになったパレスチナ人との衝突への対応に兵士が駆り出され、ガザとの境界の守りがその分、手薄になったという事情がある。
イスラエルの安全への脅威が高まっているとの警告はあった
しかし、イスラエルの右派と極右勢力は、今回のハマスの攻撃を招くに至った背景について異なる見解を示している。彼らは自国の防衛力低下を現政権に批判的な勢力と情報機関の責任にするつもりだ。
イスラエルではネタニヤフ氏が進める司法制度改革が民主主義を危うくするとして、大規模な反政府デモが何カ月も繰り返されてきた。この抗議を支持する者は軍や情報機関の幹部にもおり、予備役兵が軍務を拒否する動きも広がった。
イスラエル国内の諜報を担うシンベト(イスラエル総保安庁)のトップは今年、ネタニヤフ氏にヨルダン川西岸でのユダヤ人入植者によるパレスチナ人襲撃の増加で、自国の安全への脅威が高まっているという危機感を伝えていた。ところがネタニヤフ氏率いる与党「リクード」の議員らは、その忠告を強く非難した。
あるリクードの議員は「シンベト上層部にまで左翼のイデオロギーが浸透し、『ディープステート(闇の政府)』がシンベトや国防軍の指導層にまで浸透しているということだ」と嘆いた。極右勢力は今後数週間、この主張を繰り返し、ハマスへの報復を強く訴えていくだろう。
ネタニヤフ氏のパレスチナ政策すべてが間違っていた可能性
ただ、最近の諜報活動と防衛の失敗がいかに深刻だったとしても、イスラエルはもっと広い視点で検証する必要がある。そもそもネタニヤフ氏のパレスチナ政策すべてが、間違っていたように思えるからだ。
ネタニヤフ氏のパレスチナ政策の基本は、パレスチナ人との対立を抑え込み、イスラエル国民を保護し、経済を育て、アラブ諸国との国交正常化を進めるというものだ。たまにロケット攻撃を受けても、ガザを封鎖し続ければ国際社会に批判されても、やり過ごせると考えていたようだ。
同氏は、パレスチナとの和平を実現させない限り、イスラエルが中東で受け入れられることはないという見解に耳を貸すことはなかった。むしろ近隣アラブ諸国と国交を正常化させれば、こうした国々によるパレスチナへの支援が断たれ、平和が促進されると主張していた。
確かにこの計画は、イスラエルがサウジアラビアとの交渉で国交正常化の一歩手前までこぎ着けたようにみえたことから弾みがつくかに思えた。
だが協議は中断される公算が大きい。欧米メディアがハマスによる残虐行為に焦点を当てる一方で、中東ではガザにいるパレスチナ人を標的としたイスラエルによる攻撃が注目を集めることになる。そうした状況下で、イスラエルがサウジとの国交正常化を実現させるなど不可能なはずだ。
9.11テロ後の米国を彷彿させる今の状況
問題はネタニヤフ氏のパレスチナ政策が崩れ去った今、代わりとなり得る政策が全くみえていない点だ。イスラエルが悲嘆と怒りに包まれる今、政府としては断固たる軍事報復に出るしか選択肢はない。それでもハマスの指導者らを殺害する以上の見通しを持ち合わせているわけではない。
長期的にはイスラエルがこれ以上、ハマスによるガザの実効支配を容認するとは考えづらい。イスラエル軍をガザに再び駐留させるべきだとの議論も多く聞かれるが、何か罠(わな)のようにも思える。
英国際政治学者ローレンス・フリードマン氏が指摘する通り「(イスラエル軍には)ガザをコントロールできるだけの軍事力も持久力もない。200万人が暮らす土地であることは変わらず、他にどこにも行き場がないこの人々が憤りを抱えたままとどまり続けることになる」。
現在の衝撃と怒りを抱えたイスラエルの反応は、2001年9月11日の同時多発テロ直後の米国を彷彿(ほうふつ)させる。米国はあの時、自らの結束力と実力を見せつける行動を選び、10年にわたる「テロとの戦い」に突入した。
しかし、今になってみれば多くの米国人は、あれは誤った判断で自国の首を絞めることになったとみている。イスラエルも、危険をはらむ同じ道へと突き進もうとしているのかもしれない。
ニューヨーク市:13日にアラブの国連大使らは、パレスチナのリヤド・マンスール特使と共に、イスラエル・ハマス間の紛争の即時停戦と、人道援助をガザの必要とする人々に届けるための仕組みを求めた。ガザでは、水、食料、燃料、その他の必需品が尽きかけている。
マンスール氏は、全てのアラブの指導者たちが一致団結して、「このパレスチナの人々に対する大虐殺を今すぐ止める」ことを求めていると述べた。「我々は人命を救わなければならず、彼らを直ちに救わなくてはならない」
同氏はニューヨークの国連本部で、自身のそばに立つ全アラブ諸国の国連大使らを示し、こう付け加えた。「我々はアラブグループとして団結している。今この時にパレスチナを支援しないアラブの外交官が1人でもいると考える人々よ、我々の結束を見るがいい」
マンスール氏は、ガザの人道的状況について話し合うための会議が行われている安全保障理事会の議場の外で語った。この会議は、今月に輪番制の議長国となっているブラジルが呼びかけ、UAEが支持して開催されたもの。
「人として、国際人道法の擁護者として、安全保障理事会として、新たなナクバを許してはならない。ガザ地区の230万人(の住人)を追い出し、エジプトへと放り出し、エジプトの問題にすることで、最初のナクバの75年を経て、もうひとつのナクバが我々の民衆に降りかかることを許してはならない」と、マンスール氏は述べた。
合計約120万人のガザ北部の全住民と全ての国連スタッフ、国連の学校・保健所・診療所に避難している人々に対し、24時間以内に南部へ移動するよう命令が出されたことを、国連はイスラエル軍から夜のうちに伝えられた。
マンスール氏はグテーレス氏に、「事務総長職の道徳的権力を用いて、停戦・人道援助・民族浄化の実行(の阻止)という3点の計画の実行を支援する」よう求めた。
ステファン・ドゥジャリク国連報道官は、そのような避難は「破滅的な人道的影響なしに実現するのは不可能だ」と述べた。同氏は「そういった命令の撤回」を求め、こう付け加えた。「既に惨事であるものが破滅的状況に変わる可能性がある」
ガザでは完全に電力供給が停止しており、必要不可欠な保健・給水・衛生サービスが「崩壊寸前」になっていると、ドゥジャリク氏は述べた。
「病院では、枯渇する予備燃料の節約を強いられているため、毎日数時間分の電力しかない」と、同氏は加えて述べた。「医薬品と血液の深刻な不足にも直面している」
同氏によると、検問所が閉ざされたままなので、現在はガザに人道援助を運び込むことができず、現地の国連スタッフらはガザ地区内の国連の物資は「底をついた」と報告している。
ヨルダンの国連常駐代表のマフムード・ハモウド氏は、国連のアラブグループの会長でもある。同氏はアラブグループの第一目標は、11日にアラブ連盟の閣僚会議で採択された決議の内容が実行されるようにすることだと述べた。この決議は、紛争終結と、「今、眼前で起ころうとしている惨事と破滅を回避するため」のガザへの人道的アクセスの提供を求めるとともに、国際社会と国連に対し、ガザ北部から南部へのパレスチナ人の強制移動を防ぐよう求めており、強制移動は「パレスチナの住民の大規模排除につながるものだ」としている。
ハマスによるイスラエル民間人に対するテロ攻撃を受けてガザ地区で戦争の恐怖が展開しているが、イスラエル北部とそのレバノンとの国境も忘れてはならない。ここでの最大の疑問は、「イランの代理組織ヒズボラは参戦するのか」というものだ。この紛争がどのように展開していくかについては誰も答えを持ち合わせていない。しかし、一つだけ確かなことがある。それは、ヒズボラは決してハマスの下の副司令官としては働かないだろうということだ。現地での作戦のリーダーシップを持てないのであれば、また唯一の「交渉者」となれないのであれば、この戦争に全面的には参戦しないはずだ。「交渉者」はヒズボラが受け入れるであろう唯一の象徴的立場であるが、実際にはムッラーらの利益を反映している。
(この一連の出来事が引き起こされる確率や現実的な決定要因を全て無視して)手短に言えば、ヒズボラはいわゆる「抵抗」の代弁者になることを必要とするだろうということだ。それはまた、イスラム革命防衛隊の(直接的ではないにせよ)より広範な関与を意味する。そうなれば二正面以上の戦争となるだろう。レバノンにとって再びの大惨事となるはずだ。
今日の世界に目をやると、ウクライナの戦争、アルメニアとアゼルバイジャンの間の情勢、シリア北部の情勢など、地政学的変化と不安定な状況が目につく。であるから、ヒズボラが今回の紛争に参戦する行動を取れば、2006年の戦争が予行演習のように思われるようになるだろう。これまでのところ、ヒズボラによるロケット弾発射はハマスを支持するという合図であり、紛争に参戦する真の意図はない。(イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が米国のジョー・バイデン大統領に伝えたように)イスラエルがガザ地区に侵攻するまではそのような状況が続くと、ほとんどのアナリストは予想している。侵攻が実行されれば、ヒズボラが第二戦線を開く可能性は高まるだろう。
もしそうなれば、2006年の戦争が状況の展開についてのケーススタディーとなる。当時は、ハッサン・ナスラッラー師は自身とヒズボラをガザ地区とレバノンの2戦線の統一司令官として明確に位置づけていた。発言者として、そして人質に関する交渉を行う者としてである。そのような位置づけが促したイスラエルの反応でレバノンは破壊された。実際、イスラエルは一つの当事者(特にイラン)がそれら2つの役割を引き受けることを拒否した。そういうわけで、レバノンは今日までこれらの行動の代償を払っているのだ。
今のところ、ガザ地区の戦争はレバノンの国内政治に直接影響を与えるに留まっている。実際、数日前にオートバイに乗ったヒズボラメンバーらが有名なキリスト教徒地区に乗り込んだが、誰もがそのメッセージを理解した。ヒズボラはレバノンを(シリア内戦に引きずり込んだように)今回の紛争に引きずり込むべきではないと明言する声が多く上がっていることへの警告として彼らはやって来たのだ。こうした声がレバノン全体で反響していることが2006年との大きな違いである。ヒズボラは国内の支持の多くを失ったのだ。
レバノン国民は地域紛争に引きずり込まれたくないと思っている。彼らは生きたいのだ。より正確に言えば、ただ生き延びたいのだ。レバノン国民のほとんどは、アラブ和平イニシアティブが進むべき道だったのであり、地域に安定をもたらすことができたはずだと思っている。だからこそ、彼らは今回の戦争の代理人になりたくないのだ。もしヒズボラが第二戦線を開けば、間違いなくイランに交渉カードを与えることになる。ヒズボラはレバノンではなくイランの利益のために行動するだろうということだ。しかし、戦争による荒廃という代償を払うことになるのは全てのレバノン国民である。今日、これらの代理戦争の代償を最も多く払っているのはレバントの人々だ。
レバノンはこの戦争に引きずり込まれるのだろうか。レバノン国民は再び苦しむことになるのだろうか。今回は、国民はそれを受け入れておらず、大きく明確に声を上げている。しかし、彼らが今の状況に対して同情を感じていないということではない。深刻な歴史的経緯や現在のデリケートな地政学的状況を考慮すれば、レバノン国民は十分な透明性のもとで、(特にイランのために)外国の紛争における代理人となることを断固として拒否すべきだ。レバノンは重い代償をあまりにも長く払ってきたのだから。
レバノンの歴史は外国からの干渉によって特徴づけられてきた。それが、他国の利益のための壊滅的な戦争を引き起こしてきた。それほど昔まで遡らなくとも、悲惨な帰結をもたらしたレバノン内戦があった。もうそろそろ、何らかの勢力がこの国の主権と独立を毀損するのを許さないようにすべきだ。レバノンが外国勢力の代理人として利用されることを許せば、達成される唯一の成果は破壊である。自由の戦いは存在しない。名誉もない。あるのは死と破壊だけだ。イランもヒズボラもそれを知っている。
それゆえ、レバノン国民はそのような関与に断固として反対しなければならない。我々は他国のために十分に苦しみ、宗派間虐殺、壊滅的な経済状況、恐るべき人道的コストなどで代償を払ってきたのだから。我々はその傷からもほとんど癒えていない。それどころか、その傷口は今も大きく開いている。我々は、ヒズボラがレバノン全体を戦争に関与させることに対し、はっきり「ノー」と言う必要がある。
この小さな国における代理ゲームに終止符を打つべき時だ。それがレバノンの未来に対する明確かつ差し迫った危険だからである。ヒズボラはこの国を紛争に引きずり込むだけでなく、宗派間の分断を深め、国の結束を妨げてきた。だからこそ、レバノン国民は結束して、この国の安全、主権、経済的安定を守るため、あらゆる代理組織を拒否しなければならない。
欧州連合(EU)と湾岸協力理事会(GCC)の合同閣僚会議に出席した外相らは、ハマスによるイスラエルへの前例の無い攻撃から2日後の10月9日、マスカットで2日間の会合を開始した。年次総会では既に多数の議題が提案されスケジュール上の余裕は無いに等しかったが、イスラエルとガザの間で発生した事態への対応が優先された。当初、今回のハマスの攻撃の程度や規模、性質に関する情報に混乱があり、ハマスによるこれまでの小規模な襲撃が再発したとの思い込みがあり、多くの人々が、その重大性を看過しかけていた。
残酷で惨たらしいさらなる詳細が明らかとなった時、まず信じられないという茫然自失感が広がり、次に、数百人もの民間人に対して為された凄惨な殺害や拷問、辱めへの恐怖と嫌悪感が生じた。イスラエルのパレスチナ人に対する過去の振る舞いを引き合いに出して、ハマスが罪の無い民間人を標的にしたことを正当化すべきではない。イスラエルの過去の罪のリストが長いことは事実だ。そのリストには、混雑したガザ地区への大規模な無差別空爆やパレスチナ市民に課せられた集団的懲罰、大量殺人、国外追放、恣意的な拘留、土地収用、住宅破壊が含まれている。占領下のヨルダン川西岸地区のイスラエル人入植者たちも、アル・アクサ・モスクへの度々の侵入と冒涜に加えて、継続的にパレスチナ人を苦しめ、パレスチナ人の家屋や農場を破壊し、時には処罰を受けることもなくパレスチナ人を殺害してきた。こうした行為の一部は、イスラエル現政権の幹部らによっ支持され、扇動され、また、主導されており、状況は悪化するばかりだった。
しかし、イスラエルの行状がどれほど酷いものであったとしても、双方の民間人に危害が加えられることがあってはならない。ハマスの戦闘員たちの人命と人間の尊厳の軽視は恐ろしいものだった。しかし、ガザ地区やヨルダン川西岸地区の民間人にハマスの戦闘員の罪の償いを肩代わりさせるべきではない。外相たちの会議では、こうした点についての意見は一致したものの、どちらか一方に誤った意図を伝えてしまうのではないかという懸念も浮上した。ハマスに10月7日の攻撃は正当化し得るといった錯覚を与えてはならないし、イスラエルは自国がガザ地区やヨルダン川西岸地区の民間人を任意に攻撃し報復するライセンスを得たと考えてはならないのである。
GCC・EU合同閣僚会議は、討議を終えるにあたって、イスラエルとガザ地区における「憂慮すべき展開」に対して「深刻な懸念」を示す声明を発表し、暴力行為を激しく非難し、「民間人に対する攻撃」を糾弾した。同声明は、また、紛争当事者に、民間人に危害を加えないという国際人道法の普遍的原則の遵守を喚起した。さらには、「あらゆる面での」冷静さと自制と人質の解放を同声明は求めた。ガザ地区を封鎖し完全に孤立させたイスラエルの全面包囲宣言への反応として、閣僚らは、食料、水、医薬品へのアクセスの許可を求めた。閣僚らは、また、「暴力の悪循環を繰り返さない」ために今回の危機への政治的解決が急務であること強調した。この問題について引き続き協議し、関与を継続すると閣僚らは決議した。
同時に、GCCとEU双方は、ハマスの行動とパレスチナ自治政府の自制心を明確に区別することを主張し、和平プロセスについての従来の立場を堅持した。閣僚らは、サウジアラビアやEU、アラブ連盟が、エジプトやヨルダンと協力して、中東和平プロセスを復活させ、暴力行為に終止符を打ち、平和と安全への道程を進み始めるために現在行っている取り組みを支持した。
外相らは、「アラブ和平イニシアティブと関連するすべての国連決議に従って」、1967年の方向性に沿って、安全な共存を目指す二国家解決への共通のコミットメントを改めて表明した。同外相らは、いかなる一方的な措置にも反対し、「エルサレムの聖地の歴史的・宗教的現状」の維持と、難民のための公正で公平な解決を訴えた。
合同閣僚会議では、ハマスの攻撃を受けてパレスチナ人への援助の停止を提案する少数派グループもあったものの、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)やパレスチナ自治政府、パレスチナ住民の人道上、経済開発上のニーズに応える財政支援の継続を重視することで、意見が一致した。
10月7日のハマスによる攻撃の決定について、外部からの直接的関与を究明するには恐らく時期尚早である。しかし、イランと各地域のイランの代理勢力(レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派など)はハマスによる攻撃に対して全面的な支持を表明している。この作戦に関与したかどうかに関わらず、イランとヒズボラは紛争の再燃から利益を得る立場にある。イスラエルの極端論者らも、また、利益を得ることが出来る。両勢力共、妥協に反対しており、和解や政治的取引を頓挫させようと手ぐすねを引いている。
イスラエルは、ハマスによる攻撃の後、多大な同情的支持を受けたが、ガザを攻撃し、高層住宅を倒壊させ、集団的懲罰を課し、大規模な破壊を行い、無辜の一般市民多数の生命を奪ったことにより、その支持は消失しつつある。現在のイスラエルによる攻撃は、10月7日に拘束された人質たちの解放に向けて行われている調停を複雑化する可能性もある。
パレスチナ・イスラエル問題をめぐる議論の奥行きは、2022年2月に外相らが発表したGCCとEUの「戦略的パートナーシップ」のリニューアル版の性質を垣間見せた。GCCとEUの双方は、その後、安全保障問題や地域危機に関する対話がこのパートナーシップに含まれることを明らかにした。昨年承認された共同行動計画(2022~2027年)にも安全保障における協力が含まれていた。しかし、今回のマスカットでの会議まで、詳細は詰められていなかった。そこで外相らは、「地域および世界の平和や安全保障、安定に対する深刻な脅威の増大を考慮」し、また、「世界経済への挑戦」に対するこのパートナーシップの特別な重要性を強調し、関連部分のより詳細な説明を付加した。この協力を活性化させるために、外相らは、高官レベルでの「定期的で構造化されたGCC・EU地域安全保障対話」を開催し、この安全保障対話の枠組みの中で必要に応じて共同作業部会を設置し、地域的、世界的な課題に対応する取り組みを調整することを決定した。
外相らは、また、インド洋北西部での協調的な海洋プレゼンスに向けたEUの取り組みについて、GCCとEUの連携の可能性を詳しく調査研究するよう自国の高官らに指示した。
こうした中間レベルおよび実務者レベルの会合に加えて、GCCとEUの双方は、公式会合での作業の保管のため、地域の安全保障と協力についての高官レベルのフォーラムを開催することで合意に至った。6月には、イタリアのルイジ・ディマイオ元外相がEU初の湾岸地域特別代表に任命され、EUの新たな湾岸地域戦略の実行を担当することになった。ディマイオ特別代表は、ハイレベルでの安全保障関連の議論において貢献を為すものと期待されている。
ウクライナやイエメン、イラク、シリア、スーダン、アフリカの角など、多くの安全保障関連問題についての対話は、ある意味では、既に始まっている。今後数か月間は、こうした地域の課題や、GCCとEUの双方が対話の必要性を指摘した他の安全保障問題について、活発な議論が行われることになる。そうした問題には、核やミサイル、ドローンの拡散、海洋安全保障、サイバーセキュリティ、テロ対策、テロ資金の調達、徴兵とイデオロギー、人身売買、麻薬取引、不法移民、組織犯罪、エネルギー安全保障、世界全体の食料安全保障、災害対策、緊急時対応が含まれる。これは実に意欲的な議題リストである。
7日に発生した数百人のハマス戦闘員による近隣入植地や軍事基地、町への奇襲攻撃を受け、イスラエルが西側諸国の指導者たちから受けた同情や連帯の波は、今や世界世論の変化によって相殺されている。イスラエルはハマスに宣戦布告したのだと言うが、狭くて混雑し、包囲されたガザ地区への容赦ない爆撃が始まって以降、そこで起きていることは大量虐殺に他ならない。
ハマスが行ったことは、1968年に展開された、ベトナム戦争におけるテト攻勢のパレスチナ版である。これはあの戦争の転換点となった。
このハマスの驚くべき奇襲攻撃により、1,000人以上のイスラエル人が死亡し、さらに多くの負傷者がでた。それは、軍事力や情報機関で圧倒的に勝るイスラエルに屈辱的な打撃を与えた。また、ハマスは、幹部や民間人を含む数百人の人質を取り戻すこともできた。イスラエルは、その短く激動の歴史の中で、これほど被害が甚大な攻撃を受けたことはない。これに応えなくてはならなかった。
しかし、感情はさておき、次のことを考えてみよう。
ここ最近の暴力の連鎖は、何十年も続くイスラエルとパレスチナの間の紛争という文脈で見なくてはならない。これは単独の孤立した出来事ではないのだ。イスラエルはこれまでに何度もガザに戦争を仕掛けており、何万人ものパレスチナ人(そのほとんどが市民である)を死傷させた。爆弾の雨を降らせ、住居ビルを爆破し、地区全体を消し去り、学校や病院、モスク、墓地を標的にした。にもかかわらず、ハマスやその他の武装勢力を打ち負かすことも、その勢力を弱めることもできなかった。そしてその過程で、イスラエルは戦争犯罪を犯している。主に女性や子供を含む市民を殺害し、200万人以上の人々に対して全面的な封鎖を実施し、薬品、燃料、基本的な必需品、さらには破壊したものを再建するために必要なセメントの入手を出来なくしたのである。集団的懲罰はイスラエルの国家政策であり、戦争犯罪である。
今回の新たな軍事作戦は、これまでのものと何か違いがあるのだろうか。窮地に立たされたベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスの根絶を誓った。しかし、この複合的な組織を壊滅させるということは、ガザを地図から消し去ることだ。それ以外にない。西側諸国の支援を受けたイスラエルは、自衛権を利用し、ガザの人々に対してさらなるナクバ(大惨事)を引き起こしている。ガザの人々のうち約70%は、ハマスが攻撃し、現在占領している土地にかつて家があったが、家族とともに退去を余儀なくされた難民である。これは民族浄化に等しく、戦争犯罪であり、人道に対する罪である。
この最新の軍事作戦において、イスラエルはこれまで以上に民間人を無差別に殺戮し、無慈悲な破壊を行っている。9日と10日の2日間で、120人以上の子供たちが死亡し、15家族以上が全滅した。ガザの人道的状況は、イスラエルの攻撃以前から壊滅的だった。
ネタニヤフ首相とその極右勢力は、パレスチナに血を流すことで、執念深いイスラエル国民に対して自らを正当化したいのだ。首相は自身のSNSアカウントに、粉々に吹き飛ばされた住宅ビルの動画を投稿した。この恥知らずな行為には、罪のない人々を殺すことでイスラエルの犠牲者に復讐している姿勢を示し、大衆をなだめようとする、ネタニヤフ首相の試みが反映されている。
今回の流血の連鎖は、いくつかの事実を浮き彫りにした。第一に、国際社会を差し置いて関与し、独占的な立場をとりながら、米国は長年取り組んできたこの紛争に対し、政治的解決策を見出すことができなかった。米国は、占領下にあるヨルダン川西岸地区やゴラン高原、包囲されたガザ地区において、国際法、つまりジュネーブ条約や国連決議に毎日のように違反しているイスラエルの擁護者となった。何十年もの間、イスラエルの指導者に政治的な隠れ蓑を提供してきたことで、両国家間での解決は、平和への真の道筋ではなく、空虚なスローガンになり下がった。
第二の事実は、ネタニヤフ首相自身に関係している。彼は自己中心的で、利己的、狡猾かつ皮肉屋な指導者であり、30年以上にわたって、オスロ合意を妨害し、イスラエルの左派を無力化し、ユダヤ人入植者を育成し、極右に力を与え、パレスチナ自治政府を弱体化させてきた。そして最後に、この国を権威主義的な存在に変えるであろう物議を醸す司法改革をめぐってイスラエルを分裂させ、二極化させた。
彼は今、この戦争を利用して自分の政治的キャリアを救おうとしている。これは危険だ。彼は、ヒズボラやイランを戦いに巻き込むことを目的とした地域戦争に、疑うことを知らないバイデン政権を引きずり込もうとしているのだ。イスラエルがここ数日行っているように、ヒズボラを挑発すれば地域全体が不安定になり、地獄の門を開くことになる。米国をはじめとする西側諸国政府は、イスラエルの自衛権への支持とパレスチナの自決への「野望」について声明を発表する前に、立ち止まって考えるべきだ。
現在、ガザへの地上攻撃の可能性が高いと見られているが、これはパレスチナやイスラエル、エジプト、さらにその先の地域に大きな影響を及ぼすだろう。米国は、すでに長引かせる手助けをしたこの紛争に突入する前に、ベトナムやイラク、アフガニスタンの教訓を再考すべきである。この地域が混乱に陥っているのは、イスラエルの政策と、この地域の同盟国が新たな地政学的現実に目覚めつつあることに気づいていないアメリカのせいだ。今回の危機は、新たな多極的世界秩序の誕生が間近に迫っていることを告げる、産みの苦しみの一部である。
最後に、イスラエルとの連帯を急いで示した西側諸国の政府は、自らを鏡で見つめ直すべきである。ネタニヤフ首相とその極右政権はイスラエルを乗っ取り、事実上のアパルトヘイト国家に変えてしまった。この国は、民族浄化や人種差別、集団的懲罰を公然と行い、パレスチナ人を抑圧し、子どもたちを殺害・拘束し、今では大量虐殺を行っている。
イスラエルのヨアフ・ガラント国防相がガザの「完全包囲」(つまり水も食料も電気も供給しないこと)を命じ、「われわれは人間の姿をした獣と戦っており、それにふさわしい行動をとる」と付け加えたとき、欧米の政治家の誰ひとりとして、彼の人種差別的な発言や、彼が戦争犯罪を犯したことを認めた事実を非難する者はいなかった。もしウラジーミル・プーチン大統領がこのような発言をしたり、キエフ全区域を爆撃したりすれば、西側諸国全体が抗議と非難の声を上げただろう。この偽善とダブルスタンダードはうんざりするほどで、西側諸国の世論は変わりつつある。
イスラエルは今回の戦いには勝利するかもしれないが、同時に大きな損失も被るだろう。イスラエルがガザで行っている大虐殺は、何年にもわたって世界を苦しめるだろう。ハマスは200万人以上の市民の生活を支配しているが、選挙で選ばれた存在ではない。これらの市民は7日の攻撃とは無関係だ。どんな動機があろうとも、このような方法で彼らを罰することは戦争犯罪である。
米国は、この戦争における次の一手について慎重になるべきだ。米国の外交政策は道義とは無関係であるが、ネタニヤフ首相が中東におけるさらなる大量虐殺戦争に米国を再び巻き込むことに成功した場合、米国は少なくとも自国の利益を考慮すべきである。
イスラエルの政治、軍事、安全保障機関が現在展開中の事態にいかなる決着をつけ得るのかについて検討することは時期尚早である。ハマスが現状をどのように終結させ得るのかについて思いを巡らすことも同様だ。
イスラエル政府の各機関は、今回の展開は極端な敗北であり、イスラエル軍とその抑止力のイメージの毀損はハマスとガザに代償を支払わせることによって克服する必要があるという見解に至るのだろうか?
イスラエル政府は、次の戦争の準備をしつつ、責任を負うべきと考える人々の処罰に専念するのだろうか?
こうした問いの答えを知るためには、この戦争の終結を待つしかない。そして、それは、もし長期化した場合、完全に手に負えない状態に至り、これまでに私たちが目にした悲劇よりもさらに悲惨で深刻な戦闘が発生し得る戦争なのである。
ハマス側はどうなのだろうか?ハマスはどのような決着をつけ得るのだろうか?戦争以外に解決策は無いとの信念を固め、さらなる戦争に備えるのだろうか?その場合、ヨルダン川西岸地区の今後はどのようになるのだろうか?現在の戦闘を契機にヨルダン川西岸地区で今にも暴発しそうになっている緊張は、今後どのような展開をするのだろうか?
戦争拡大の可能性が熾火のように燃え尽きないレバノン・イスラエル国境はどうなのだろうか?レバノン・シリア国境はどうなのだろうか?ロシアがシリアに駐留していても、戦火は拡大するのだろうか?中東地域は全体としてどうなるのだろうか?交戦当事者の同盟国、すなわち米国とイランはどうなるのだろうか?
現在進行中の事態は、イスラエルとガザ地区の間の単なる戦争を越えたものである。それは、イスラエル人とパレスチナ人の間の長く苦い対立における新たな十字路なのだ。
報道されている映像は前代未聞のものだといっても誇張ではない。陸海空からイスラエルを攻撃することは、カッサム旅団にとって容易なことではない。このようにイスラエル軍を混乱させることは簡単なことではない。これほど多くの死亡者を出し、これほど多くの人々を負傷させ、これほど多くの人々を捕虜にすることは手軽に出来ることではない。このような攻撃を準備し、イスラエル諜報機関の意表を突くことは単純なことではないのだ。イスラエル軍が包囲し、厳重に監視していると確信していたガザがそれを為したのである。
まさに前代未聞の光景だ。ハマスの戦闘員がガザ周辺の入植地に進入し住民を人質に取るというのはは他愛ないことではない。カッサム旅団にとって、何千発ものロケット弾をイスラエルに撃ち込むことは易易たることではない。
戦いの初日は、何にもまして世論のせめぎ合いだった。イスラエル正規軍は、即座に報復することも、付け込まれた安全保障上の死角に対処することもできなかった。ベンヤミン・ネタニヤフ首相自身、イスラエルが戦争状態にあり、予備役を招集する必要があることを認めざるを得なかった。
中東の人々の記憶には、長く苦い戦争の記憶が数多く残っている。そうした記憶の中心にあるのが、パレスチナとイスラエルの対立だ。この長期にわたるレッスンを為す多数の章の内の1つには、戦争でも調停でも対立は解消され得ないと示されている。
イスラエル軍は、1967年に大勝利を収めた。アラブ軍を破り、より広い地域を占領したのだ。
しかし、この戦争が、敗者を降伏に至らしめることはなかった。それどころか、1973年にはアラブは激しい報復を行った。イスラエルは不意を突かれたが、米国の支援を受け、アラブの勝利は阻まれたのだった。この戦争の衝撃をもってしても、イスラエルが対立を終結する方法として平和を選択することは無かった。イスラエルは、ガザからのエジプトの撤退を十分な成果と看做したのだ。エジプトが撤退すれば戦争は終結し、「パレスチナの大義」はやがて忘却されるのだろうと、イスラエルは誤解していたのだ。
1970年代に、ベイルートはパレスチナの大義の中心地となった。レバノン・イスラエル国境での衝突は、熱いメッセージだった。パレスチナ人たちは、自らの権利の要求を強調していた。イスラエルは、パレスチナ人からそれらの権利を剥奪しようとしていたのだった。1982年、イスラエルは、パレスチナ解放機構(PLO)をアラブ・イスラエル間の前線に残されたその最後の足場から根絶すべきだとの結論に至った。イスラエル軍は、レバノンに侵攻し、ベイルートを包囲して、PLOを撤退させた。イスラエルは、当時、パレスチナの大義は流浪のうちに風化するだろうと考えていたのだ。
中立的なオブザーバーは、イスラエルは戦争の連鎖を断つ和解の方向へ対立を導く絶好の機会を逸失したと確信している。ホワイトハウスでのヤセル・アラファトPLO議長とイツハク・ラビン首相の握手がもたらしたチャンスは失われてしまったのだ。それは、それぞれの環境において完全な正当性を有していた2人の戦士が交わした握手だった。イスラエルは、アラファト議長の政治的、軍事的正当性、そしてパレスチナ、アラブ、イスラムの正当性の持つ重みを過小評価していたのだ。アリエル・シャロンは、アラファト議長のボイコットが、パレスチナ人の国家樹立の夢を粉砕すると誤解していた。
イスラエルは、また、ベイルートで2002年に開催されたアラブ連盟首脳会議で採択されたアラブ和平イニシアチブがもたらした機会をも無駄にしてしまった。この提案は、イスラエルと並存するパレスチナ国家の樹立を保証することで対立を解決しようとする懸命な尽力の成果だった。提案を受け入れた場合には、イスラエルを中東地域に包含するとの誓約もあった。
イスラエルはその優越感と自国の力強さへの慢心から、より多くの機会を逸した。9.11後の世界と米国のイラク侵攻が、パレスチナ紛争の本質を無視し現状を押し通す絶好の機会を提供してくれたのだとイスラエルは確信してしまった。この確信はパレスチナ人からあらゆる希望を奪い、イスラエルの振舞は交渉による解決を期待していた穏健派の立場を弱めた。イスラエル社会は、さらに右傾化を深めることになったのだ。
現行のイスラエル政府には、日常的にパレスチナに対する挑発を行う人々がいる。その結果がこの惨状なのだ。
戦争の余燼は複数の方向に吹き飛ばされて新たな火種となる可能性がある。しかし、破壊と戦争が拡大したとしても、イスラエルが予想だにしなかった事態を目の当りにした、あの最初の日に展開した異常な光景が消え去ることはない。
この対立は、いくつかの教訓を導き出すことによってのみ解決に至り得る。第1に、パレスチナ人が独立国家を持つ権利を承認することである。これ以外の選択肢は、新たなさらに激しい戦争が、より多くの、特に民間人の生命を奪い、巨額の経済的損失を引き起こすことをただ漫然と待つことに等しい。
問いが1つ残る。戦いが終わった時、戦闘員たちはどのような運命を迎えるのだろうか?深い思慮と苦渋の決断無しに、戦闘員たちはこの慢性的な対立から抜け出すことは出来ない。パレスチナ国家の樹立こそが、この地域の安定を確立するための最初の一歩だ。現在起こっているような戦闘は、パレスチナ国家が樹立されなければ、今後も発生し続けるだろう。
リヤド:サウジアラビアは、イスラエルによるガザからのパレスチナ人退去要請を激しく批判し、継続的に「無防備な市民」を標的としていることを非難すると、13日に外務省が発表した。
イスラエル軍は、110万人以上のガザ市の全市民に、24時間以内に南部に移動するよう警告した。
予期される地上侵攻を前に、イスラエル軍はガザ地区との境界付近に戦車を終結させていた。
「サウジアラビア王国は、パレスチナの人々のガザからの強制退去の要請に対する全面的拒絶と、同地の無防備な市民を継続的に標的としていることへの非難を明確に表明する」と、外務省が発表した声明は述べている。
さらに、「まともな生活のための基本的必需品を奪うことは国際人道法に違反するのだから、なおさら、(国際社会は)ガザの人々に必要な救援と医療を提供しなくてはならない」とも述べている。
そうしないことは、この地域の人々が陥っている危機と苦難を悪化させるだろうと、外務省は警告を発した。
サウジアラビアはまた、イスラエルによるガザ包囲の終結、負傷した市民の避難、国連安全保障理事会の決議とアラブ和平イニシアティブに従ったパレスチナ・イスラエル間の和平プロセスの進展を求めた。
エルサレム:イスラエル軍は、110万人が住むガザ北部から24時間以内に避難するよう指示した、と国連報道官が語った。
イスラエル軍がそのような呼びかけをしたかは確認できていない。木曜日、イスラエル軍は準備中であり、決定はしていないと述べた。
イスラエルがハマス過激派に対する攻撃を強めている中、国連はこの指示があったと述べた。国連のステファン・デュジャリック報道官は、この指示は「壊滅的な人道的結果」を回避するものと述べた。
ある国連職員によれば、国連はイスラエル政府高官から、最も政治的なレベルでの明確な回答を得ようとしているという。
「まったく前例のないことです」と、この高官は公の場で発言する権限がないため匿名を条件に語った。
金曜の早朝、ガザ人口のほぼ半数が住むガザ北部では、避難のパニック的な噂が広がり始めていた。
ハマスが支配し、距離にして40キロ(25マイル)の土地に人口が密集しているガザでの地上攻撃は、残忍な戦闘で双方にさらに多くの犠牲者をもたらす可能性が高い。
土曜日のハマスの攻撃とそれ以降の小規模な攻撃によって、イスラエルでは247人の兵士を含む1300人以上が死亡した。イスラエルは、一方イスラエル国内でおよそ1,500人のハマス過激派が殺害され、ガザで死亡したのは数百人ほどと発表している。双方で負傷者は数千人という。
イスラエルが空からガザを攻撃する一方で、ハマスの過激派はイスラエルに向けて数千発のロケット弾を発射している。戦闘が地域に拡大することが懸念される中、シリアの国営メディアは、木曜日にイスラエルがシリアに空爆を行い、2つの国際空港が使用不能になったと報じた。
イスラエルのネタニヤフ首相は、過激派が土曜日に同国南部を襲撃し、自宅で子供たちを殺害したり、音楽祭で若者を殺害するなどして数百人を虐殺した後、ハマスの「粉砕」を誓った。
イスラエル国民の悲嘆と復讐への要求の中、政府はガザでハマスの息の根を止めるための、徹底的な打倒を強く求められている。
イスラエルの空爆によって家を追われた人々の数は1日で25%急増し、人口230万人のうち42万3000人に達したと国連が木曜日に発表した。そのほとんどが国連が運営する学校に身を寄せている。
これに先立ち、イスラエル軍はガザ地区を空爆し、パレスチナ人を食糧、燃料、医薬品に困窮させている完全包囲は、ハマス過激派が週末の悲惨な侵攻の際に捕らえた約150人の人質を解放するまで続くと述べた。
アントニー・ブリンケン国務長官の訪問は、アメリカの武器の輸送とともに、国際援助団体が人道危機の悪化を警告するなかでも、ハマスによる市民や兵士への致命的な攻撃に対して、イスラエルにガザでの報復を推進する強力な青信号を与えた。イスラエルは、ガザの230万人への生活必需品と電力の供給を停止し、エジプトからの物資の流入を妨げている。
「イスラエルのエネルギー大臣イスラエル・カッツ氏はソーシャルメディア上で「イスラエルの人質が帰還するまで、電気のスイッチは入らず、蛇口から出るものはない」
イスラエル軍報道官のリチャード・ヘクト中佐は木曜日、政治指導者が地上作戦を命じた場合、軍は「地上作戦の準備ができている」と記者団に語った。
リヤド:サウジアラビアの外相であるファイサル・ビン・ファルハーン王子は13日、一連の電話会談を行った。その中で国連安全保障理事会理事国に対し、国際的な平和と安全を維持し、イスラエルのガザ地区における軍事作戦をやめさせるという責任を果たすよう求めた。サウジ外務省が明らかにした。
この発言は、イスラエルのガザ地区に対する容赦ない空爆により過去1週間で約1900人が死亡(その半数以上が18歳以下または女性)するとともに、同地区が完全な停電のもとで食料、水、医療物資の供給を断たれている状況を受けてなされたものだ。
ファイサル王子は、イギリス、ブラジル、マルタ、アルバニア、インド、ノルウェー、スウェーデンの外相との電話会談の中で、関連する国際法に従って公正かつ包括的な解決策を確立するために、パレスチナ問題に関する安保理決議を実行に移すことの重要性を強調した。
また、食料や救援物資をガザ地区に届けられるようにすることや、包囲の解除を含め、イスラエルが国際人道法を遵守する必要性も強調した。
一連の電話会談では、ガザ地区とその周辺の状況の最新の進展や、この危機の解決に向けて行われている国際的な取り組みについて話し合われた。ファイサル王子は、民間人に対するあらゆる形態の攻撃をやめさせること、そしてガザ住民の強制移住を阻止することが必要であると呼びかけた。
ファイサル王子はインドネシアおよびガボンの外相や、EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表とも電話会談を行い、民間人の保護、援助の流れ、国際社会が暴力をやめさせガザ住民の強制移住を阻止することの必要性、地域および世界の安全と安定を確保するためにイスラエルが国際人道法を遵守することの必要性などに関して同様の議論を行った。
エルサレム:ドイツ外相は13日、ハマスはガザ住民を「盾」として利用していると非難した。イスラエルは、先週末に起きたハマスによる激しい攻撃への報復として、地上侵攻の準備を進めていると見られている。
アンナレーナ・ベアボック外相は、イスラエルのエリ・コーヘン外相とともに現地イスラエルで記者会見に出席し、「ハマスは現在、ガザ地区で罪なき人々の背後に立てこもり、彼らを盾として利用している」と非難した。
ベアボック外相はガザ地区との境界線近くを訪れ、次のように語った。「ハマスはガザ地区の全住民を人質にしている」
「ハマスのトンネル、武器庫、司令部は住宅、スーパーマーケット、大学の中に意図的に置かれている。病院にもあるかもしれない」
先週7日、ハマスの戦闘員らはガザ地区を囲む軍事境界線を破り、イスラエル領内で1,300人以上を殺害。およそ150人のイスラエル人、外国人、二重国籍者を人質として連れ去った。
イスラエルはハマスの攻撃に対する報復として、ガザ地区の各所に数千発の砲弾を打ち込み、少なくとも1,799人を殺害した。
イスラエル軍が、ガザ地区の110万人(総人口の約半数)に北部から退避するよう求めたことで、地上侵攻が今にも始まるのではないかとガザ住民の懸念は高まっている。
ベアボック外相は、ドイツやイスラエルなどを含む民主主義国家は、民間人の保護を「真剣に受け止めている」と述べた。
また、「民間人は、保護や必需品を確保できる安全な場所を必要としている」とし、イスラエル外相と意見交換した内容について明かした。
ドイツ政府はまた、民間人の保護について、同じくガザ地区と国境を接するエジプトや国連とも協議を実施した。
ベアボック外相は他にも、ハマスが襲撃時に連れ去ったドイツ国籍者らをはじめとする、人質の解放なども求めた。
そして、「こうした人々が即時解放されることを、人類側に立つすべての人々が待ち望んでいる」と語った。
テヘラン:イランの国営テレビの報道によると、13日、イラン全土で政府が支持するパレスチナのイスラム組織ハマスを支援し、封鎖されているガザ地区で続くイスラエルによる爆撃に反対するデモ集会が国主導で開催された。
イスラエル軍は過激派組織ハマスによる苛烈な攻撃に応戦するために、予想される地上侵攻に備えて戦車を集結させる一方で、13日、ガザ地区の100万人以上の民間人に対し、24時間以内に南に退避するよう勧告した。
イランのデモ参加者は「イスラエルに死を。シオニズムに死を!」と叫び、その多くがパレスチナ国旗や、イランが強力に支援するレバノン武装組織ヒズボラの旗を掲げていた。
13日、中東各国やその他周辺諸国の数万人のデモ参加者は、パレスチナ人を支持し、ハマスが掌握するガザ地区の封鎖を強化するイスラエルを非難した。
先週末、ハマスがイスラエルに対して史上最悪の死傷者を出した攻撃を行ったが、その後、イスラエルはガザ地区に空爆と砲撃を続けている。
イランの政府系の国営テレビは、イランの集会を「同じ痛みを持つものの叫び…。シオニスト政権(イスラエル)に人間性を踏みにじられた痛みである」と表現した。
しかし、イラン政府はハマスを始めパレスチナやレバノンの過激派組織を一貫して支援しているが、国民から幅広い支持は得られていない。国民の多くが、政府はハマスやヒズボラに巨額な資金援助を行っているが、自国の経済成長のためにもっと資金を投入すべきと不満を抱いている。
パレスチナの大義の後ろ盾になることは、1979年のイラン革命以来、イランの政治的柱であり、シーア派イスラム教の教義による神権政治により、イスラム世界のリーダーとしてのイランを形作った国の方針でもある。
イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は13日、イスラエル・ハマス紛争についてヒズボラと話し合うために、ベイルートを訪れた。
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は13日、訪問先の中国で、EUは「建設的かつ責任ある方法」で中国との二国間関係を管理すると確約すると述べた。
ボレル氏は3日間の日程で中国を訪問。中国の王毅国務委員兼外相との会談後の記者会見で「われわれがオープンであり続けるためには、公平性、均衡性、互恵性が必要だ」と述べた。
ボレル氏はEUが中国製の電気自動車(EV)に対する調査を開始する中で訪中。王氏は今回のボレル氏との会談は「包括的で率直、かつ友好的だった」とし、中国は欧州の貿易に関する懸念を真摯に受け止めていると述べた。同時に、EUに対し「保護主義的」なアプローチを避け、貿易救済措置の使用には慎重に対応するよう求め、「公正な競争が維持されなればならない」と述べた。
このほか、ボレル氏はEUと中国は貿易と投資を拡大すべきと言及。中国外務省によると、王氏は「経済問題は政治化されるべきではない」とし、中国とEUは企業にとって公平な環境を整備しなければならないと述べた。
<ガザ紛争含む広範な議題を協議>
ボレル氏と王氏は今回の会談で、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突を含む幅広い議題について協議した。
イスラエルが13日、ガザ北部にあるガザ市で数日以内に「大規模な」作戦を展開するため100万人を超えるのガザ市の住民に24時間以内に南部へ避難するよう勧告したことについて、ボレル氏は「非現実的」と指摘。「イスラエルには侵略から自国を守る権利があるが、国際法に則って行わなければならないという点でEU加盟国の外相は合意している」と述べた。
王氏は、民間人を傷つける全ての行為を非難し、国際法違反に反対すると改めて表明した上で、関連各国は国際的、地域的な安全を一段と阻害しないようにしなければならないと述べた。
その上で、中国はイスラエルとハマスの紛争について主要当事者と連絡を取り合っており、この問題に関する国連安全保障理事会の緊急会合に参加すると表明。中東和平のための特使を関係国に派遣し、協議を行うと明らかにした。
ボレル氏はまた、中国がロシアに対する影響力を行使し、ロシアがウクライナでの戦争を止め、黒海経由の穀物輸出合意の復活に同意するよう要請。「われわれは中国がウクライナの和平交渉を支援すると期待している」と述べた。
王氏との会談に先立ち、ボレル氏は北京大学で学生に「共通の基盤を見つけ、経済・貿易関係の不均衡を是正することが、われわれの利益だ」とし「そうしなければ、デリスキング(リスク低減)が必要以上に大幅に加速する可能性がある。有権者が政治指導者に中国との関わりを断つよう圧力を強めるだろう」と述べた。
経済関係について「中国に対する私の質問は、どうすればこの相互依存体制をより対立の少ないものにできるかということだ」とも発言。EUと中国はこれまで以上に協力が必要だと述べた。
レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラは、レバノンとの国境付近でイスラエル軍拠点4カ所を攻撃したと、同組織のアルマナルTVが伝えた。
レバノン南部でイスラエル軍が複数の村落を攻撃したことに応じたものだという。
イスラエル軍は14日、パレスチナ市民による南部への「大きな移動」が見られると明らかにした。同軍は前日、パレスチナ自治区ガザのガザ市で数日以内に「大規模な」作戦を展開するとし、100万人以上のガザ市住民に24時間以内に南部へ退避するよう通告していた。
24時間以内の退避期限は、現地時間14日午前5時(日本時間午前11時)だった。
ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは住民にとどまるよう促したほか、モスクも住民に自宅を離れないよう呼びかけていた。
イスラエル軍の報道官は14日、ビデオでのブリーフィングで「南に向けてパレスチナ市民が大きく移動している」と述べた。退避期限には言及せず、質問も受け付けなかった。
報道官は「ガザ地区周辺ではイスラエル軍の予備兵が編隊を組み、次の作戦に向けて備えている」とし、予備兵らがあらゆる標的や任務に対して準備しているとした。「この戦闘の最終状態は、ハマスが二度とイスラエル民間人や兵士に損害を与えることができないよう、われわれがハマスとその軍事力を破壊し状況を根本的に変えることだ」と語った。
またイスラエル軍は14日、レバノンからイスラエルに侵入しようとした多数の武装勢力をドローンで殺害したと発表した。
国連人道問題調整事務所(OCHA)は13日、イスラエルの通告を受けてガザ北部から南部へ避難した市民は数万人と推計。OCHAのウェブサイトによると、通告が出る前の時点でガザ地区で40万人以上が自宅から避難した。
ただガザ北部にとどまる住民も多く、20歳の男性はイスラエルの空爆で破壊された建物の前で「ここを去るよりも死ぬ方がいい」と語った。
国連やその他機関は、これほど多くの市民が避難を余儀なくされれば大惨事になると警告。援助を受け入れるために包囲を解除すべきだと訴えた。
国連のグテレス事務総長は、燃料や食料、水を供給するために「ガザ全域で人道的アクセスを直ちに確保する必要がある」とし、「戦争にもルールがある」と述べた。
パレスチナ自治政府のアッバス議長はブリンケン米国務長官とヨルダンで会談し、強制的な避難は現在イスラエル領となっている土地から何十万人ものパレスチナ人が避難や退去を余儀なくされた1948年の繰り返しになると語った。ガザ住民の大半はそうした難民の子孫となる。
イスラエルのネタニヤフ首相は13日、これまでに行っているイスラム組織ハマスに対する報復攻撃は「始まりに過ぎない」と言明した。
イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は、戦車に支援された部隊がパレスチナのロケット部隊を攻撃し、人質の居場所に関する情報を得るために奇襲作戦を行ったと述べた。
バイデン米大統領は、ガザの人道的危機への緊急対応を優先していると表明。「パレスチナ人の圧倒的多数はハマスやハマスの攻撃とは無関係だ」とし、「結果的に彼らも苦しんでいる」と語った。
ヨルダン川西岸では、ガザ地区を支持するデモ隊がイスラエル治安当局と銃撃戦を繰り広げた。パレスチナ当局は16人が射殺されたと発表した。また、レバノンと国境を接するイスラエル北部などでも情勢は悪化している。
7日のハマスによる大規模攻撃以降、イスラエル側の死者は民間人を中心に約1300人に上り、ガザではイスラエルの空爆により約1900人が死亡している。
国連安全保障理事会は13日、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突を巡り非公開会合を開いた。ガザ地区への全面的な地上作戦を控え、イスラエルがガザ北部の市民に退避を指示する中、パレスチナ側はグテレス事務総長に対応を求めた。
パレスチナのマンスール国連大使は、アラブ諸国との会合前に「この人道に対する罪を止めるため、われわれ全員にさらなる対応が必要だ」と訴えた。
各国はこの日、イスラエルにガザ北部への攻撃を回避するよう求めた。イスラエルのエルダン国連大使はガザに連行されたイスラエル人の家族を招いたイベントで、ガザ北部住民への警告について「民間人の被害を軽減するため」の一時的な移動だと述べた。
安保理の非公開会合でブリーフィングを行ったグテレス氏は、会合前に「戦争にもルールがある。民間人は保護されなければならず、決して盾として使われてはならない」と記者団に語った。
一方、ロイターが確認した文書によると、ロシアは会合で、人道的停戦を求めるとともに、民間人に対する暴力と全てのテロ行為を非難する安保理決議案を提案した。
ロシアのネベンジャ国連大使は会合後、「安保理の完全な無為と無反応を受け入れられない」と述べ、ロシアがイスラエルとパレスチナ間の仲介を行う用意があると語った。ロシアの決議案が採決にかけられるかは不明。
また、ブラジルも13日夜に独自の決議案を提案。ロイターが確認したところでは、「ハマスのテロ攻撃」を非難し、「イスラエル当局にガザ北部からの市民避難命令を直ちに撤回するよう求める」内容になっている。
レバノン南部で13日、イスラエル側から発射されたミサイルが取材中の報道陣近くに着弾し、ロイターの映像記者イッサム・アブダラ氏が死亡し、6人が負傷した。
現場はイスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの交戦が続く、イスラエル国境に近いアルマアシャアブで、ロイターのほかアルジャジーラやAFP通信が取材していた。
レバノンのミカティ首相とヒズボラ関係者は、イスラエルの攻撃だと非難した。
イスラエル軍はコメントの要請に応じていない。同国のエルダン国連大使は、記者に砲撃することは意図しないが戦争状態にあると述べ、事件を調査すると表明した。
ロイターは、アブダラ氏が放送局向けにライブ映像を送っていたところ被害に遭ったと説明した。映像には大きな爆発音とともにカメラが揺れ、煙が立ち上って悲鳴が響く様子が映されていた。
声明で「われわれは映像記者のイッサム・アブダラ氏が殺害されたことを知り深く悲しんでいる」とし、現地当局と協力してさらなる情報を求め、遺族や同僚を支援すると述べた。
このほか、ロイター、AFP、アルジャジーラの記者それぞれ2人が負傷した。
負傷したロイター記者によると、ロイターなどがイスラエル側から飛来するミサイルを撮影していたところ、1発がアブダラ氏を直撃し、その直後に別のミサイルが取材車に命中した。
AFPやアルジャジーラはミサイルがイスラエルによるものと伝えたが、ロイターはイスラエルが発射したかどうか確認できていない。
ロイターは先に、イスラエル軍が国境付近のレバノン軍の監視所を攻撃したと伝えていた。イスラエル側は武装した何者かが侵入した疑いがあり攻撃したと発表したが、その後誤りだったと説明した。
米ホワイトハウスのダルトン報道官は、バイデン大統領がアブダラ氏の遺族に「心からご冥福をお祈りしている」と記者団に語った。
国連のグテレス事務総長はアブダラ氏の死亡を受けて、紛争がレバノンにも波及する危険性が極めて高いことを示していると述べた。
イスラエル軍主席報道官のダニエル・ハガリ氏は、イスラエル軍の歩兵部隊と戦車部隊が13日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ内で「局地的な奇襲」を実施したと発表した。空爆作戦から地上作戦への移行を初めて明らかにしたとみられる。
ビデオ会見で、奇襲はパレスチナのロケット部隊を攻撃し、人質に関する情報を得るために行われたとした。
イスラエルがイスラム組織ハマスへの報復としてパレスチナ自治区ガザへの攻撃を強化する中、世界各地でパレスチナを支持する大規模なデモが開催された。
ハマスによるイスラエル攻撃を巡っては、西側各国政府を中心にイスラエルへの強い支持と同情が寄せられている一方、イスラエルの対応は特にアラブやイスラム諸国の怒りを呼んでいる。
トルコではモスクの前に群衆が集まり、イスラエルへの反感を表明するとともにハマスを称えた。
ヨルダン川西岸のナブルスでは、若者らが路上で火を放ち、イスラエル軍と衝突した。
イタリアのローマでは巨大なパレスチナ旗を掲げた抗議デモが行われたほか、デンマークなどでもデモが行われ、一部参加者が警察に拘束される事態となっている。
ドイツとフランスは親パレスチナのデモを禁止している。複数の西側諸国は、デモが暴力行為につながることを恐れ、シナゴーグ(ユダヤ教の会堂)やユダヤ人学校の警備を強化した。
ハマスはイスラエルによるガザ攻撃に抗議するデモを呼びかけている。
一方、米仏などのユダヤ人コミュニティーではイスラエルと連帯する集会が開催されている。
米国の首都ワシントンでは、イスラエルと国内のユダヤ人コミュニティーを支援する集会が予定されていた。警察が連邦議会議事堂の周囲にフェンスを設置し、観光客を遠ざけるなど、厳戒態勢が取られている。
集会主催者は「ハマスが望んでいるのは、世界中のユダヤ人の心に恐怖を与え、われわれが日常生活を送れないようにすることだ。集会を中止することは、間違ったメッセージを送ることになると考えている」と述べた。
イエレン米財務長官は13日、国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会の場で、7日のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃に対する「普遍的な非難」を聞いたと述べた。
ロイターに対し、米国はハマスに対しすでに「多くの制裁」を発動しており、それを強化する方法を見つけるために常に取り組んでいると指摘。一方、イスラエルの対応についてはコメントしなかった。
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が13日に採択した共同声明では、ハマスとイスラエルの対立に関する直接的な言及はなく、G20内の分断が改めて浮き彫りになったが、イエレン氏は「幅広い人々と話したが、ハマスによるイスラエルへの攻撃に対する普遍的な非難があり、紛争で民間人にさらに多くの死傷者が出るという明らかな懸念もある」と言及。「罪のないイスラエル人に対する攻撃に愕然としなかった人は一人もいない」と述べた。
イエレン氏によると、G20は多国間開発銀行の改革やIMFの出資割当額(クオータ)の引き上げに関する合意などを通じて、開発途上国から提起された問題に対して非常によく協力し、対応しているとの感触が広まっているという。
20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は13日、共同声明を採択して閉幕した。会議はパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が激化する中で実施されたものの、共同声明にはハマスとイスラエルの対立に関する直接的な言及はなく、G20内の分断が改めて浮き彫りになった。
G20はモロッコのマラケシュで開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次総会に合わせ財務相・中銀総裁会議を開催。共同声明で、リビアとモロッコで発生した自然災害による人命の損失と破壊に深く心を痛めており、現地の人々と連帯しているとした。
一方、激化するハマスとイスラエルの戦闘に関する直接的な言及はなく、「世界中の戦争や紛争による甚大な人的被害と悪影響を深く懸念している」とするにとどめた。
共同声明は具体的な国名を挙げずに、ロシアによるウクライナ侵攻には言及。穀物輸出を巡る合意の適時実施を呼びかけると同時に、紛争が民間人の安全保障に及ぼす悪影響について深い懸念を表明。領土保全に関する国連ルールの順守を各国に呼びかけ、先月ニューデリーで開催されたG20首脳会議での合意を踏襲した。
G20には米国、中国、ロシア、インド、トルコ、サウジアラビアなど幅広い国が参加。2022年2月のロシアによるウクライナ全面侵攻開始以来、G20の分裂は深まっている。
G20の討議内容に詳しい関係筋によると、ハマスの攻撃とこれに対するイスラエルの対応を巡る見解の相違があり、ガザ紛争に関する文言が共同声明に盛り込まれなかった。ロシア、中国、インド、サウジアラビアが、米国と西側諸国と対立したという。
インドのニルマラ・シタラマン財務相はマラケシュで行った記者会見で、イスラエルとハマスの紛争は共同声明から除外されたと述べた。関係筋は、イスラエルとパレスチナの紛争はこれまでも長らくG20の分裂の要因になってきたため、今回の共同声明で言及しないと決定したのは驚くべきことではないとしている。
今回のIMF・世銀の年次総会ではイスラエルとハマスの衝突が重くのしかかった。世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長はロイターに対し、イスラエルとハマスの紛争が地域全体に拡大すれば、すでに低迷している世界貿易が大きな衝撃を受けると懸念を示した。
バイデン米大統領は13日、パレスチナ自治区ガザの人道的危機への緊急対応を優先していると述べた。また、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの人質になっている米国人の帰国に全力を尽くすと述べた。
バイデン氏は記者団に対し「われわれのチームは、イスラエル、エジプト、ヨルダンやその他のアラブ諸国の政府のほか、国連と直接連絡を取りながら、支援を拡大させている」と述べた。
グテレス国連事務総長が「人道的大惨事を回避する」ようイスラエル当局に訴えていると、デュジャリック国連報道官が13日明らかにした。
イスラエル当局は、ガザにある国連の避難所を含め、全ての民間人を守ることが不可欠と強調。さらに、国境が閉鎖されているため、支援物資がガザに届いていなとも明らかにした。
グテレス事務総長はまた、ガザの状況は「危険な最低水準」に至っていると強調。燃料や食料、水を供給するために「ガザ全域で人道的アクセスを直ちに確保する必要がある」とし、「戦争にもルールがある」と言明した。
米国時間の原油先物は6%近く急騰した。イスラエルがパレスチナ自治区ガザへの地上作戦を開始したことで、投資家は紛争が拡大する可能性を織り込んだ。
清算値は、北海ブレント先物が4.89ドル(5.7%)高の1バレル=90.89ドル。米WTI先物は4.78ドル(5.8%)高の87.69ドル。
両先物とも、1日の上昇率としては4月以来の大幅上昇を記録した。
週間では、ブレント先物が7.5%上昇。WTIは5.9%の上昇となった。
イスラエル首相「始まりに過ぎない」、ハマスへの報復攻撃巡り
https://jp.reuters.com/world/us/J6CETBZGI5JP3N2BQEEYSD3PSM-2023-10-13/
イスラエルのネタニヤフ首相は13日、これまでに行っているイスラム組織ハマスに対する報復攻撃は「始まりに過ぎない」と言明した。
また、「前例にない威力で敵を攻撃している」とも述べた。
これに先立ちイスラエル軍主席報道官は、イスラエル軍の歩兵部隊と戦車部隊が13日、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ内で「局地的な奇襲」を実施したと発表した。空爆作戦から地上作戦への移行を初めて明らかにしたとみられる
中東歴訪中のブリンケン米国務長官は13日、中東各国首脳らに対し、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスと「これ以上、通常通りの取引はできない」ことを伝えていると述べた。
一方、「大規模な」作戦が迫っているとしてガザ市住民に避難を指示したイスラエルの動きを容認するかについては明言を避けた。
死者1200人に及ぶイスラエルへのハマスの大規模攻撃については、あらゆる国がハマスを「非難する必要がある」と指摘。「今回の歴訪を通じて、ハマスとこれ以上、通常通りの取引はできないと、あらゆる会話の中で明言してきた」とし、「乳児を殺害し、家族を焼き殺し、幼い子供たちを人質に取る。これらは非良心的な残虐行為だ」とした。
ブリンケン氏は13日、ヨルダンを訪問しアブドラ国王と会談。アンマンでパレスチナ自治政府のアッバス議長とも会談した後、カタールを訪れた。この後はバーレーン、サウジアラビアを訪問する予定
ブリンケン氏は、米国がカタールに対し首都ドーハにあるハマスの事務所閉鎖を要求しているかどうかについては直接言及しなかった。一方、カタール首相は、ハマスの事務所が「地域に平和と平穏を伝え、届ける手段として使われている」とし、閉鎖しないことを示唆した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は13日、イスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争に、第三者が加わり紛争拡大を画策している兆候は見られないと述べた。
これより先、イラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラのナンバー2、ナイム・カセム師は、同紛争に関与しないよう求める声には左右されないと述べていた。
在中国・北京のイスラエル大使館の職員が13日、市内の路上で襲われ負傷したと、イスラエル外務省が明らかにした。
事件は大使館の敷地内ではなく、大使館などが集まる地区で発生。職員は病院に運ばれ、容体は安定しているという。
現地警察によると、容疑者は外国人労働者(53)で、逮捕された。
イスラエル軍主席報道官のダニエル・ハガリ氏は、イスラエル軍の歩兵部隊と戦車部隊が13日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ内で「局地的な奇襲」を実施したと発表した。空爆作戦から地上作戦への移行を初めて明らかにしたとみられる。
ビデオ会見で、奇襲はパレスチナのロケット部隊を攻撃し、人質に関する情報を得るために行われたとした。
ロシアのプーチン大統領は13日、中東地域での殺りくに終止符を打つよう呼び掛けた。またイスラエルに対し、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザでの地上攻撃は「絶対に容認できない」数の民間人の犠牲を招くと警告した。
イスラエル軍は13日、ガザ市で数日以内に「大規模な」作戦を展開するとし、100万人以上のガザ市住民に24時間以内に南部へ避難するよう指示した。
プーチン氏は旧ソビエト諸国の首脳会議で、イスラエルは「前例のない残酷な攻撃」を受けており、保護を受ける権利があるが、「イスラエルは大規模かつ非常に残酷な方法で反撃している」とし、地上攻撃は「あらゆる当事者にとって深刻な結果」につながると警告。「そして最も重要なことは民間人の犠牲は絶対に受け入れられないということだ。今重要なことは殺りくを止めることだ」とした。
さらに「ロシアは建設的な考えを持つ全てのパートナーと協調する用意がある」とし、イスラエル・パレスチナ紛争を解決する鍵は、東エルサレムを首都とするパレスチナ独立国家の創設だと主張。交渉による危機の解決を改めて求める一方、ロシアは双方と関係があるため支援できるとした。
また「イスラエル人とパレスチナ人が現在経験している大きな悲劇は、米国の中東での政策失敗による直接的な結果だ」と批判。米国は欧州各国の支援を受けて、中東和平プロセスを「独占しようとした」としたほか、第二次世界大戦中のナチスドイツによる旧ソ連の都市レニングラード(現サンクトペテルブルク)包囲戦に相当するガザでのシナリオが「米国でも」議論されているとした。
オースティン米国防長官は13日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘が激化するイスラエルを訪問し、米国はイスラエルに対し一段の軍事支援を実施する用意があると表明した。同時に、現在は「決意」が必要な時であり、「復讐」の時ではないと警告した。
オースティン長官はテルアビブでイスラエルのガラント国防相と共同記者会見を行い、米国は弾薬や防空能力のほか、必要な装備などをイスラエルに迅速に供給していると表明。すでに空母ジェラルド・フォードをこの地域に配備したほか、中東地域の戦闘機部隊を増強したとし、必要に応じて一段の配備を行う用意があると述べた。
オースティン長官はまた、ハマスとの戦闘が続くイスラエルを支援すると同時に、ロシアの侵攻を受けているウクライナの支援も継続すると表明。「米国は世界で最も強力な国だ。複数の地域に資源を振り向けることができる。米国はウクライナを支援すると同時に、イスラエルも支援する」と述べた。
イスラエル軍が北部住民に南部への避難を指示したパレスチナ自治区ガザでは、モスクが住民に自宅を離れないよう呼びかけている。ハマスも住民にとどまるよう促した。
イスラエル軍は24時間以内の避難を指示。ガザ周辺には戦車などの部隊が集結しており、地上侵攻が近い可能性を示唆する。
地上戦が差し迫る中、イスラエル、ハマス双方が心理戦を展開する。
イスラエル軍は避難指示で「あなた方を人間の盾として利用しているハマスのテロリストから離れなさい」と呼びかけるとともに「ハマスのテロリストは、ガザ市の家屋の下にあるトンネルや、罪のないガザ市民が住む建物の中に隠れている」と指摘した
ハマスの内務省報道官は会見で、世界各地のアラブ人、特にイスラエルと国境を接する国々のアラブ人に、ガザ住民への支援を呼びかけた。
イスラエルが虐殺を行い再びパレスチナの民を追放しようとしていると指摘し、ガザ北部の市民にとどまるよう促した。
ガザのアナリスト、タラル・オカル氏は、イスラエル軍の指示は「ガザのパレスチナ市民をナクバに追いやる試み」と指摘した。ナクバは、1948年のイスラエル建国に伴い、多くのアラブ人が居住地を追われ難民となったことを指し、アラビア語で災厄を意味する。
「イスラエルは、1948年のときにやったことを国際社会やカメラの前で繰り返している」とロイターに語った。
世界保健機関(WHO)は13日、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザ北部の住民に対し、ガザ南部に24時間以内に退避するよう求めたことについて、重症患者の退避は不可能だと現地の保健当局から通知があったことを明らかにした。
WHO報道官は「人工呼吸器など生命維持装置に頼らなければ生き延びれない重症患者がいる。こうした人々を移動させることは死の宣告に等しい。医療従事者にそうしたことを求めるのは残酷極まりない」と述べた。
WHOによると、ガザの病院はすでに限界に達しており、南部では病院に患者があふれかえり、北部の2つの大病院はすでに計760床の収容能力を超えている。
報道官は「病院は1日数時間しか電気を使えない。燃料は枯渇しつつあり、配給制になっている。最重要の装置を維持するには発電機に頼らざるを得ない」と発言。
「こうした装置も、燃料の在庫が尽きれば、数日で停止せざるを得なくなる」とし、そうなれば手術が必要な負傷者、集中治療室の患者、保育器に頼っている新生児に壊滅的な影響が及ぶと述べた。
ガザでは病院の血液バンクや医薬品も不足しているという。
イスラエルにとって極めて重要なハイテク産業。だが、世界的な景気後退と国論を二分した政府による司法改革の影響で資金調達が激減した上に、パレスチナとの紛争激化により、その不安定な回復は頓挫しつつある、と投資家やアナリストらは指摘する。
イスラエルは世界でも有数の革新的なハイテク産業を擁している。同セクターは労働力の14%を雇用し、国内総生産(GDP)の5分の1近くを稼ぎ出す。数十年にわたる混乱にも耐えてきたことから、今回の紛争が終結し、グローバル規模でも資金調達が復調すれば、最終的に投資は戻ってくるだろうと予想されている。
「海外からの投資は今後数週間から数カ月間、特に衝突が続く限り、鈍化するだろう」と語るのは、イスラエル有数のベンチャーキャピタル、アワークラウドのジョン・メドベド最高経営責任者(CEO)。
メドベドCEOは、イスラエルに向かうフライトがどれだけ欠航になっているかに触れつつ、「今は、投資を集めるのはなかなか容易ではない」と述べた。
7日、武装した戦闘員がパレスチナ自治区ガザからフェンスを越えて侵入し、イスラエル領土への侵攻としては50年前の第4次中東戦争におけるエジプトとシリアの攻撃以来で最悪の状況となったことを受けて、イスラエルはガザを実効支配するイスラム組織ハマスに宣戦布告した。
今回の衝突以前にも、グローバル経済の減速に伴ってイスラエルのハイテク新興企業への投資は減少していた。また米シリコンバレー銀行(SVB)の破綻により重要な資金調達先が失われ、司法改革法案により、会社法と知的財産権の基盤が揺らいでいた。
IVCリサーチセンターとルーミテックによると、イスラエルのハイテク企業による今年上半期の資金調達額は70%減少した。ただ、第3四半期には前期比マイナス14%と、減少ペースは鈍化したという。
ルーミテックのマヤ・アイゼン・ザフリルCEOはこの数字について、「資金調達の額と範囲が安定する最初の兆候であり、データとしては2018─19年の水準に戻りつつある」と述べた。
スタートアップ全体での2023年のこれまでの調達額は約50億ドル(約7490億円)。これに対して昨年は160億ドル、2021年には過去最高の260億ドル、2019年は104億ドルだった。投資は広範囲に及んでいるが、主役はサイバーセキュリティーと人工知能(AI)分野の企業だ。
ベンチャーキャピタル出身で、スタートアップ・ネーション・セントラルのCEOを務めるアビ・ハッソン氏は「もちろん、われわれが戦争の真っ最中にあるのに大規模な投資が実現するとは想像しにくい」と語る。
<信頼の実績>
そうは言いつつも、ハッソンCEOらはイスラエルのハイテク部門について、パレスチナやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの過去の紛争の時と同様に回復すると期待する。
「イスラエルのハイテク部門は、紛争中にも活動を維持し、その打撃から回復できるという点で、投資家の信頼を得てきた」とハッソンCEO。「だから、イスラエルに対する投資家の信頼がそう簡単に失われるとは考えていない」
メドベドCEOは、ハイテク投資の対象としてイスラエルが生き残ると信じている、と言う。
「歴史的にイスラエルが戦争状態に入るたびに、長期投資家は買い手に回ってきた」とメドベド氏は指摘する。
国内の大半が今回の攻撃に動揺する中、ハイテク企業は自らのオフィスを兵士向け装備の集積所として提供している。何しろ、招集された30万人の予備役の多くはハイテク企業の従業員なのだ。
米ベンチャーキャピタルファンドのインサイト・パートナーズは、事前承認リストに記載されたイスラエルの慈善団体に最大100万ドルを寄付するとしており、「これはイスラエルの友人、パートナーへの支持を示す重要な機会だ」と表明した。
クラウドセキュリティー分野のスタートアップで、つい最近、シリーズAの資金調達ラウンドで米国の投資家から2300万ドルを集めたジェム・セキュリティーは、30人のスタッフをイスラエル国内と米ニューヨークに分散させている。チームを拡大中だったが、今回の紛争が勃発し、イスラエルにいるスタッフの一部が予備役招集に応じざるを得なくなった。
ジェム・セキュリティーの共同創業者であるアリー・ジルベルスタインCEOは、「私見だが、イスラエルがこうした状況を迎えても、当社がテクノロジー部門において国内での事業を維持するという計画には何の影響も生じないだろう」と語る。
スタートアップのMDIヘルスで成長担当バイスプレジデントを務めるアリエル・エフェルガン氏は、テルアビブで勤務する40人の従業員の約5分の1が予備役招集に応じたと推計している。それ以外の従業員は、今はリモートワークを続けている。
スタートアップ向けのマーケティングアドバイザー、ヒレル・ファルド氏は、テクノロジー業界については突き詰めれば楽観的であるとして、世界的なベンチャーキャピタル界からは支援が押し寄せ、国際世論もイスラエル寄りに変化していると指摘する。
「こうした変化によって、むしろ(イスラエルへの投資に)消極的だったかもしれない投資家が前向きになる可能性さえある」とファルド氏は言う。「現在の状況がイスラエルにネガティブな影響を及ぼすとは思わない」
中東歴訪中のブリンケン米国務長官は13日、ヨルダンを訪問しアブドラ国王と会談した。パレスチナ自治区ガザへの地上戦を準備する中、イスラエルはガザ北部の住民に南部への避難を呼びかけた
イスラエル軍はこの日、ガザ市住民に南部への避難を指示した。国連は人道上壊滅的な影響は免れないとして撤回を求めている。
今回の歴訪の訪問国は、前日のイスラエル、ヨルダンに加え湾岸諸国やエジプトに拡大。13日はアンマンでパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談し、その後カタール、バーレーン、サウジアラビアを訪問する予定になっている。
ブリンケン氏は、イスラエル・テルアビブでの会見で、訪問先では、紛争拡大抑止や人質の即時・無条件解放をハマスに働きかけるよう求めていくと述べた。
イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに地上侵攻すれば、待ち受けるイスラム組織ハマスは手ごわい相手になる。イランの支援を受け、ロケット攻撃などを行う戦闘員が素早く退避するための広大な地下トンネル網をハマスは構築。過去の地上戦でもイスラエル側にそれなりの犠牲を強いてきた経緯があるからだ。
イスラエルはガザとの境界付近に戦車を集結させ、閣僚らは地上侵攻について開始するかどうかではなく、開始時期の問題になっていると示唆する。イスラエルの安全保障関係者や専門家によると、軍幹部は2008年と14年のハマスとの地上戦から得た教訓に目を向けそうだ。
だが、ハマスは当時よりも勢力が増し、その結果として今月7日にイスラエル側に強襲攻撃を仕掛けられたと言える。
こうした中で地上戦が始まった場合、どういう展開になるかはイスラエル、ハマス双方とも正確には読み切れない。
イスラエルはこれまでにない規模の作戦を展開し、ハマスを「地上から一掃する」と断言。ハマスも過去の戦いで生き残る力と奇襲能力を証明しており、今回も強力な武器を駆使し、人口密集地域を拠点に反撃してくるだろう。
ガザで活動するあるパレスチナ武装組織幹部は「地上侵攻は、占領者(イスラエル)とその軍隊が未知の領域に飛び込むのに等しい」とロイターに語った。
イスラエル当局も、地上作戦が迅速に進むとも、簡単に行くとも考えていないとの姿勢を明確に打ち出している。
特に今回は、ハマスが7日の攻撃で多数のイスラエル人を人質にして、イスラエル軍が「ガザ地下鉄」と呼ぶ地下トンネル網に拘置している恐れがあり、軍部隊がこのトンネル網を制圧しない限り、ハマスの壊滅は難しい。
イスラエルの安全保障関係者の1人は、ロイターに「作戦目的はハマスの軍事能力と装備一式を破壊することにあり、長い時間が必要になる」と説明。標的の大半は地下にあり、まずは地上の敵を一掃しないと地下壕にたどり着けないと付け加えた。
ガザの人口は230万人に達するため、地上作戦は民間人の死者が増大するリスクがあり、これもイスラエル側の軍事計画に困難をもたらしている。
<双方が準備>
ハマスの地下トンネル網は、戦闘員による「一撃離脱」攻撃や、さまざまな武器の貯蔵場所として利用されている。過去の経験に照らせば、イスラエルは地中貫通型(バンカーバスター)爆弾やハイテク装備の「メルカバ」戦車で対抗する図式になるだろう。
イスラエルは既に数十万人規模の予備役動員を開始。一方、イスラエル安全保障局の元高官によると、ハマスは戦闘員総数は2万人に上る可能性がある。
ハマスのサレー・アルアルーリ政治局副局長はアルジャジーラに、7日の攻撃を実行する前の段階で、ハマスには防御面の計画も備わっていて、これは攻撃計画よりも強力だと語った。
イスラエルは軍事に関する詳しい情報は明らかにしていない。外務省の報道官は「われわれは地上攻撃に向けた備えを進めている」と述べ、目標は「テロリストのインフラ」に重大なダメージを与え、イスラエルにとって脅威とならないようにすることだ、とだけ指摘した。
ガザの住民の話からは、既に激しい空爆が地上侵攻の準備になっていることがうかがえる。地上軍が侵入できるようにガザとの境界に沿った回廊地帯が爆撃で完全に破壊されているからだ。
パレスチナの武装勢力も準備は万端だと表明。幹部の1人は「航空兵力は戦闘の行方を左右しない。多くの戦闘員は、地上からやってくる戦車や敵軍に対し、過去何年もかけて培った能力で迎え撃つのを待ち望んでいる」と言い切った。
ハマスがヨルダン川西岸に拠点を置くパレスチナ自治政府からガザの支配権を奪った07年以降、イスラエルは08年と14年の2回、大規模な地上作戦を実施。軍兵士の死者は08年が9人、14年は66人だったが、今回ハマスに与えられた準備期間はもっと長く、イランの支援を受けていると公言している。
<長い戦い>
イスラエルは今年になって、ヨルダン川西岸のジェニンで軍事作戦を実施。兵士が待ち伏せ攻撃を受けて身動きが取れなくなり、戦闘ヘリに支援を要請する場面もあった。
パレスチナ武装組織「ジェニン大隊」のあるメンバーは「ジェニンとガザの状況は天と地ほどの違いがある。われわれにはロケット弾などの重火器も、軍事拠点もない」と語り、ガザにおける戦闘の方がはるかに過酷だとの見方を示した。
ネタニヤフ首相の下で挙国一致の戦時内閣を成立させたイスラエルも国民に対して、目的を達成するために長い戦いになるのを覚悟するよう呼びかけた。
ガラント国防相は10日、ガザの分離壁近くで兵士に「われわれは空から攻撃を開始し、その後、地上からも出撃することになる」と訓示し、今後の地上侵攻をにおわせた。
イスラエル安全保障局元高官のシャロム・ベン・ハナン氏は、地上攻撃だけがハマスを壊滅させられる手段だと強調。「われわれは非常に経験豊富で練度の高い戦闘員と戦い、犠牲に見舞われる。(それでも最後は)決定的な勝利になるはずだ」と自信を示した。
ロシア外務省は12日、イスラエルが空爆によりシリアの主権を侵害しているとし、攻撃が国際法にも抵触するとの見解を示した。
イスラエル空軍はシリアの首都ダマスカスと北部アレッポの国際空港の滑走路を破壊し、両空港とも使用不能になっている。
同省は「イスラエルとパレスチナの衝突が激化している事態にあって、こうした武力行使は地域全体における軍事行動を助長する恐れがあり、極めて危険な結果をもたらす可能性がある。そのような事態の発生を、決して許してはならない」と表明した。
国連世界食糧計画(WFP)の緊急事態対応次長、ブライアン・ランダー氏は12日、ロイターTVで、イスラエルが封鎖措置を実施したパレスチナ自治区ガザで、食糧や水が間もなく底を突きそうだと警告を発した。
イスラム組織ハマスによる攻撃を受け、イスラエルは9日、ガザ地区への食糧や燃料、水の供給を遮断し、検問所を閉鎖する完全封鎖を表明した。
ランダー氏は、WFPは現地で対応しているが「もう少しで(支援物資が)尽きる」と説明。イスラエルと隣国エジプトに対し、WFPがガザに物資を運び、国連職員が安全に働けるようにするための「回廊」を設置するよう求めた。
イスラエル開発公社(イスラエル・ボンズ)は、同国がイスラム組織ハマスによる大規模な攻撃を受けて以降、ディアスポラ債(海外居住のユダヤ人向け債券)の発行により2億ドルを調達したと明らかにした。
同公社によると、発行した債券のうち1億5000万ドルを米国の州・地方政府が購入した。公社の責任者は「多くの州は反応が素早く、需要はその時点で販売可能だった債券の量を超えた」と説明した。
イスラエルは10日、ハマスとの戦争で自国を支援するためディアスポラ債の販売を開始した。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによると、戦争を受けてイスラエル債の債務不履行に対する保険コストは11日に109ベーシスポイント(bp)と、ハマスによる攻撃前に比べて80%余り上昇し、2013年11月以来の最高水準に達した。
<10月13日朝まで>
米国防総省はイスラム組織ハマスのロケット弾を迎撃するための防空システム「アイアンドーム」用に、米国の在庫からミサイルの第1弾をイスラエルに供与した。米国防当局者が明らかにした。
迎撃ミサイル「タミル」の第1弾は米軍所有でイスラエルに配置されていたもので、これに続いて今後、他の場所にある米軍の在庫から追加で供与されると当局者は匿名を条件に話した。
同高官は、米国がイスラエルに迎撃ミサイルの在庫を持つ理由や、追加供与分の在庫が現在どこにあるかについては言及を避けた。
同ミサイルはイスラエルのラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズが、アリゾナで生産されたRTX製部品を使って製造している。
ブリンケン米国務長官は13日にカタールを訪問し、同国の首相と会談する。イスラエルとハマスの戦闘状況や事態鎮静化に向けた方策、民間人の保護などについて協議する。カタール外務省の報道官が明らかにした。
米政府当局者はブリンケン氏がカタールを訪問し、同国の高官らと協議すると明らかにしていた。
英国は、イスラエルを支援し地域の安定を強化するため、英国海軍の艦船2隻のほか、哨戒機などを地中海東部に派遣する。英首相府が12日、発表した。
首相府は「イスラエルに対する支援のほか、抑止力と保証」を提供するために派遣を行うと表明。スナク首相は声明で「今週見られたような恐ろしい光景が二度と繰り返されないようにするために、断固とした態度を取らなければならない」と述べた。
首相府によると、スナク氏はエジプトのシシ大統領と会談を実施。13日にはスウェーデンで開催される統合遠征軍の防衛会合で、イスラエル情勢を巡り北欧の指導者らと協議する。英首相府によると、ロシアの侵攻を受けているウクライナの防衛支援に焦点を当てると同時に、中東地域を安定させる必要性について協議される見通し。
中国の王毅外相は12日、パレスチナ問題は中東紛争の核心であり、問題の核心はパレスチナ人に対する「正義」が否定されたことだと述べた。
中国外務省のウェブサイトに掲載された声明によると、王氏はブラジルのルラ大統領の外交顧問を務めるアモリン元外相との電話会談で、中国は民間人を傷つける行為に反対し、国際法違反を非難すると語った。
レバノンのミカティ暫定首相は12日、イスラエルとの国境地帯で暴力が発生したことについて、レバノンは深く憂慮しているとし、国連安全保障理事会に緊急的な申し立てを行うと述べた。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは9日、イスラエル軍によるレバノンへの砲撃で少なくともメンバー3人が死亡したと発表。また、イスラエル北部に向けてロケット弾を発射したことを明らかにした。この砲撃は、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの衝突が、レバノン国境を越えて北に拡大したことを意味する。 もっと見る
ミカティ氏はテレビ放映された演説で「 レバノンは嵐の目になっている」とし、「イスラエルによる度重なる挑発」とレバノンの主権侵害が原因となり、暴力が国境を越えて拡大していると非難した。
ミカティ政権はヒズボラの支援を受けており、主にヒズボラと同盟関係にある政党で構成されている。
オースティン米国防長官が13日にイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相や他の閣僚らと会談する。米当局者が明らかにした。
当局者によると、オースティン長官はイスラエルの指導部と紛争を巡る作戦計画や目的のほか、イスラエルに対する安全保障支援に関わるニーズを巡り協議する見通しという。
米議会の戦略態勢委員会は12日、米国はロシアと中国との同時戦争に備える必要があるとする報告書を発表した。通常戦力の拡大や同盟関係の強化、核兵器の最新鋭化プログラムの強化による対応が必要となる可能性を指摘した。
報告書の策定に関わった高官は「中国とロシア間で何らかの形での連携がある可能性を懸念している」と述べた。ただ報告書に、中ロ間の核兵器プログラムにおける協力に関する言及があるかどうかについては明確にしなかった。
戦略態勢委は「米国とその同盟国は双方の敵対勢力を抑止し、打倒する準備を整えておかなければならない」と指摘。「米国が主導する国際秩序とおよび価値観は、中国とロシアの権威主義体制によるリスクにさらされている」という見方を示した。
オースティン米国防長官は12日、米軍はイスラエルへの安全保障支援に何の条件も付けていないと述べた。その上で米政府はイスラエル軍がパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの紛争において「正しいことを行う」ことを期待しているとした。
ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で「イスラエルに提供する安全保障支援に関しては、いかなる条件も課していない」と指摘。「イスラエル軍はプロフェッショナルな指導者に率いられたプロフェッショナルな軍隊であり、われわれはイスラエル軍が作戦を遂行する上で正しいことを行うことを望み、期待する」とした。
また米国はレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエル攻撃に向け集結し、紛争を拡大させる可能性があるという兆候は確認していないとした。
ブリンケン米国務長官は12日、カタールとサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプトを訪れると明らかにした。親イラン組織によるイスラエルへの追加攻撃を抑止し、パレスチナ人の避難へ人道回廊を設置するため協力を求める。
米国務省は10日、ブリンケン氏がイスラエルとヨルダンを訪れると公表していたが、4カ国を追加した。
ブリンケン氏は12日、訪問先のイスラエルで記者団に「国務長官としてだけでなく、一人のユダヤ人としてここにいる」と強調した。
義理の父がユダヤ系で、ナチスドイツの強制収容所で迫害を受けたと言及。「(イスラム組織)ハマスによるイスラエル人虐殺が苦しい記憶をよみがえらせることを個人的なレベルで理解している」と語り、イスラエルに連帯を示した。
ブリンケン氏はイスラエルの戦線がパレスチナ自治区ガザから他の地域に広がらないよう中東各国に協力を訴える。
サウジの実力者ムハンマド皇太子は11日、イランのライシ大統領と電話協議した。イスラエルの隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラはイランの支援を受けているとされ、イスラエルへ散発的に砲撃している。
米アクシオスによると、UAEはシリアのアサド政権に対して同国で活動する武装組織にイスラエル攻撃を認めないよう求めた。米国はシリアでもイランの支援を受ける組織が活動しているとみている。
ガザの民間人退避も喫緊の課題だ。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は12日の記者会見で、ガザに住む民間人の退避に向けた人道回廊を設置するためエジプトやイスラエル政府と協議を進めていると明らかにした。
イスラエル軍はガザとの境界に大規模な部隊を集めており、地上侵攻が迫っているとの見方が広がる。イスラエルはガザに電気や水、食料、燃料の供給を止める「完全包囲」を実施し、深刻な人道危機のリスクが高まる。
米国務省は12日、イスラエルへのチャーター便を手配して米国人の国外退避を支援すると発表した。イスラエル軍の地上侵攻が始まればイスラエルの治安も一段と悪化する公算が大きいとみているようだ。
チャーター便の手配は13日に始まり、1週間で数千人の退避を想定する。航空会社がイスラエル便を相次いで停止しており、政府が代わりに国外退避の手段を提供する。
イスラエルの封鎖を受けているパレスチナ自治区ガザに人道支援を入れるべく、周辺国が調整を続けている。国境を接するエジプトは12日、自国空港で受け入れる考えを示し、ヨルダンは物資を送り出した。支援の実施にはイスラエルが空爆を続ける中での安全確保が課題になっている。
エジプト外務省は声明で、ガザ地区に近いシナイ半島の自国空港で国際的な支援物資を受け入れる考えを示した。ヨルダン国営メディアは、医療品などを送ったと報じた。同国は国連を通じ、300万ディナール(約6億円)の支援も決めたという。
トルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)なども支援に向けて首脳や閣僚級の電話協議を重ねている。ただ、ガザでは広範囲な空爆が続き、支援を届けるにも危険が伴う。エジプトなどは安全が確保されるよう、イスラエルと交渉を行っているもようだ。
イスラエルはガザの「完全包囲」を宣言し、以前から人やモノの出入りを制限していたガザへの水や食料、エネルギー供給を止めた。カッツ・エネルギー相は12日、人質が戻るまでは人道支援はあり得ないとの考えをX(旧ツイッター)に投稿した。
ハマスが実効支配するガザには200万人以上が暮らし、イスラエルが計画する地上侵攻が実施されれば民間人の膨大な犠牲を生む恐れがある。空爆による犠牲者は既に1500人を超え、11日には唯一の発電所が停止するなど生活環境も悲惨さを増している。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は11日、ガザ住民の退避を可能にする人道回廊の設置についてイスラエルや国境を接するエジプトと協議しているとも明らかにした。ただ、ロイター通信によるとエジプトは大量の難民受け入れにつながる国境開放には抵抗している。
暴力はガザ地区以外にも拡大する。パレスチナ自治政府は12日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区でパレスチナ人の母子がイスラエル人の入植者に射殺されたと明らかにした。母子は11日に殺害された別のパレスチナ人2人の葬儀に参列していたところだったという。
米国防総省高官は12日、オースティン国防長官が13日にイスラエルを訪問すると明らかにした。ブリンケン国務長官に続く訪問で、イスラエルとの連帯を示す。誘導爆弾の提供を含む軍事支援を協議する。
オースティン氏は11〜12日、ブリュッセルで北大西洋条約機構(NATO)国防相理事会に出席した。ブリュッセルからイスラエルに向かい、ネタニヤフ首相やガラント国防相と会談する。ブリンケン氏は12日に同国を訪れたばかりだ。
国防総省高官は記者団に「イスラエル指導者と作戦計画や戦闘の目標を詳細に話し合う」と説明した。イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻について意見を交わす可能性がある。イスラエルはガザとの境界に大規模な部隊を集めている。
高官は誘導爆弾に加え、無誘導爆弾に取り付けて精密誘導をできるようにする装置(JDAM)の提供を議論していると説明した。いずれも爆撃の精度を上げて民間人に及ぶ被害をできるだけ抑える狙いがあるとみられる。
オースティン氏は12日の記者会見でイスラエル軍への武器提供に関し「何も条件はつけていない」と断言した。「プロフェッショナルな指導者が指揮するプロフェッショナルな軍隊だ」と強調し、人道面に配慮しながら作戦が進むとの見方を示した。
国防総省高官は米軍の態勢をめぐり「来週にかけてさらに多くの戦力が整う」と話した。これまでにイスラエルに近い東地中海に原子力空母ジェラルド・フォードを中心とする打撃群を配備し、A10攻撃機が中東地域に到着した。
空母ジェラルド・フォードは12日、X(旧ツイッター)に艦載機の発着訓練の様子を投稿し、即応態勢が整っているとアピールした。
米軍はレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラがイスラエルでの戦闘に加わらないよう抑止力を強めている。オースティン氏は12日、イスラエル北部付近にヒズボラが部隊を集めている兆候はないと説明した。現時点では散発的な砲撃が続く。
シリアは12日、イスラエル軍が首都ダマスカスと北部の都市アレッポの空港を同時にミサイル攻撃したと発表した。滑走路が被害を受け、両空港は使用不能になったという。
シリア国営のシリア・アラブ通信(SANA)はシリア軍関係者の話として、ミサイルが両空港を同時に攻撃したと報道。同関係者によると、この攻撃はガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争から世界の注意をそらす狙いがあったという。
イスラエル軍は、このような報道についてコメントしないとした。
イスラエル軍は長年にわたり、アレッポ国際空港やダマスカス国際空港などシリア国内のイランとつながりがあるとされる施設に対して空爆を実施。空港への攻撃はシリアへのイランの供給ラインを遮断することが目的とみられている。
ロシア外務省は12日、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに対するイスラエルの「無差別」空爆で多くの民間人に犠牲が出ているとし、イスラエルに対し停戦に同意し、ガザ地区への食料や医薬品の供給を可能にするよう呼びかけた。
ロシアのボグダノフ外務次官は、パレスチナ解放機構(PLO)執行委員会のフセイン・アルシェイク事務局長と電話会談を実施。ロシア外務省によると、停戦のほか、ガザ地区の住民に食料や医薬品を供給するための人道的回廊を設置する必要があるとの見解で合意。ガザ地区への水道と電気の供給を回復させる必要があるとの見方でも合意した。
ロシア外務省は声明で「多数の民間人犠牲者を出した無差別爆撃は容認できないと強調された」とし、「東エルサレムを首都とし、1967年の国境線に基づく独立したパレスチナ国家の一部となるべきガザ地区からの住民の大量流出を防止する必要性についても強調された」とした。
ブリンケン米国務長官は12日、イスラム組織ハマスの攻撃で多くの犠牲者が出たイスラエルを訪問し、テルアビブでネタニヤフ首相と会談した。会談後の共同記者会見で、米国はイスラエルの「側にいる」と述べ、イスラエルに対する支持を表明した。
ブリンケン長官は「あなた方は自力で自分を守れるほど強いかもしれないが、米国がいる限りその必要はない。われわれは常にあなた方の側にいる」と語った。
ハマスの攻撃で少なくとも25人の米国人が死亡したとも明らかにした。
さらに、イスラエルは国境を越えた攻撃が再び起きないよう、自国を守る義務があるとしつつも、報復の自制も促した。「われわれ民主主義国家はたとえ困難であっても、異なる基準を目指し、テロリストと一線を画す」と強調し、「民間人への被害を回避するために可能な限りの予防措置を講じることが重要だ」と述べた。
また、イスラエルの防衛面でのニーズの変化に伴い、それが満たされるよう、米政府が議会と連携していく構えも示した。
イスラエル訪問後、ブリンケン長官はヨルダンに向かい、アブドラ国王とパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談する。米政府高官によると、ブリンケン長官は他のアラブ諸国にも向かう公算が大きいという。
中東歴訪で、米国人を含め、ハマスに人質に取られている人々の解放を支援し、イスラエル軍の地上部隊投入の可能性を控え、ガザの市民が安全に退避する人道回廊の確保について協議する見通し。また、ハマスを後押しするイランの干渉抑止に向けたメッセージを送りたい考え。
イランのアブドラヒアン外相は、イスラエルはパレスチナ自治区ガザの包囲を強行することで、ガザの住民に対する「ジェノサイド(大量虐殺)」を行おうとしていると非難した。イラン国営テレビが12日、報じた。
アブドラヒアン外相は、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの間の衝突を巡る対応を協議するためイラク、シリア、レバノンを訪問。最初の訪問国イラクに向け出発する前に「ガザ地区における戦争は、全てのパレスチナ人に対する戦争だ」とし、水道や電気、医薬品や食料の供給を止めるガザ地区の包囲は「大量虐殺」につながる状況を作り出していると述べた。
イスラエルは、先週のイスラム組織ハマスによる大規模攻撃を「我が国にとっての9.11」と呼ぶ。一方、攻撃の首謀者とされているハマス軍事部門のムハンマド・デイフ司令官は、この攻撃を「アルアクサの洪水」と名付けた。
イスラエルが最重要の標的とみなすデイフ司令官は、謎に満ちた存在だ。
同司令官は7日、ハマスが数千発のロケット弾をガザ地区から発射するのと同時に録音済みの談話を放送。この中で、今回の襲撃をこの表現で呼び、これがエルサレムのアルアクサ・モスクにイスラエルが侵入したことに対する報復であることを示唆した。
イスラエルは2021年5月、イスラム教において3番目に神聖な場所である同モスクを襲撃し、アラブとイスラム世界を激怒させた。ガザにいるハマスに近い関係者によれば、イスラエル側に1200人以上の死者と2700人以上の負傷者を出した今回の攻撃についてデイフ氏が計画を練り始めたのは、これがきっかけだったという。
「イスラエルはラマダン(断食月)の最中にアルアクサ・モスクを襲撃し、参拝者を殴打、襲撃し、高齢者や若者をモスクから引きずり出した。そうした光景や映像が、攻撃の引き金になった。何もかもが怒りに火をつけ、油を注いだ」と、この関係者は説明した。
この襲撃の前に、イスラエル警察はエルサレム旧市街の周辺にバリアを築いていた。イスラエル側は秩序を維持するためとしたが、パレスチナ人はラマダン中に集会の自由を制限するものだとして反発。周辺に住むパレスチナ人たちが、自宅から強制的に退去させられるのではないかと不安を募らせたことも緊張を悪化させた。
アルアクサ・モスクはエルサレムの主権と宗教の問題をめぐって長年にわたり暴力の発火点となってきたが、このときの襲撃を機に、イスラエルとハマスの間で11日間にわたる戦闘が起きた。
それから2年以上を経た今回の攻撃は、1973年の第4次中東戦争以来、イスラエル国防上の最悪の失態となった。これを受けてイスラエルは戦争状態を宣言し、ガザ地区に対する報復攻撃を開始、1055人上を殺害し、5000人を負傷させた。
イスラエルは11日には、ガザから侵入してきたパレスチナ人の武装集団員を1000人以上殺害したと表明した。
イスラエル側はこれまで7回、直近では2021年にもデイフ氏暗殺を試みたが、同氏はいずれも切り抜けてきた。めったに発言せず、公の場にも姿を現さない。だからこそ、ハマスのテレビ局が7日、「デイフ氏が演説を行う」と発表した時、パレスチナ人は何か重大なことが進行中だと悟った。
デイフ氏は録音された音声で、「今日、アルアクサの怒り、人民と国家の怒りが爆発する。我らがムジャヒディン(イスラムの戦士)たちよ、今日はこの犯罪者に、その時代が終わったと思い知らせる日だ」と語った。
デイフ氏の画像は3点しか存在しない。20代の頃の姿とマスクを着用した姿、そして今回の音声が放送された時に使われた影の画像だ。
デイフ氏の所在は不明だが、ガザ地区に迷路のように張りめぐらされた地下トンネル内に潜んでいる可能性が高い。イスラエルの治安関係者は、デイフ氏が攻撃の計画・作戦の両面に直接関与していたと述べた。
パレスチナの消息筋によると、イスラエルに空爆されたガザの住宅のうち1軒はデイフ氏の父親が所有していた。デイフ氏の兄または弟のほか、親族2人が死亡したという。
<2つの頭脳、1人の首謀者>
ハマスに近い関係者は、攻撃計画の決定はハマスのアルカッサム旅団を指揮するデイフ氏とガザ地区のハマス指導者であるヤヒヤ・シンワル氏の共同によるものだが、どちらが首謀者であるかは明らかだと話している。
この関係者は「頭脳は2つあるが、首謀者は1人だ」と語り、作戦に関する情報を知っていたのはハマス幹部の中でも一握りにすぎなった、と続けた。
ハマスの考え方に詳しい中東地域の情報提供者は、今回の攻撃については秘密が厳守されており、イスラエルの宿敵であり、ハマスにとっては資金や訓練、武器の重要な提供者であるイランでさえ、ハマスが大規模な作戦を計画していることを漠然と知っていただけで、決行日時や詳細については把握していなかったとしている。
この関係者によれば、イラン政府は大規模な作戦が用意されていることに気づいていたが、ハマスとパレスチナ指導部、イラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラ、そしてイランとの間で協議されたことはなかった。
「極秘裏に進められていた」と、この関係者は語る。
イランの最高指導者ハメネイ師は10日、イラン政府はイスラエルへの攻撃に関与していないと述べた。米国政府は、イランとハマスは共謀関係にあるが、今回の攻撃にイランが直接関与したことを示す機密情報や証拠は得ていない、としている。
デイフ氏が練り上げた計画は、長期にわたる隠蔽工作を伴うものだった。宿敵イランの同盟者であるハマスは武力衝突には関心がなく、実効支配しているガザにおける経済発展に注力している──。イスラエルはそう信じ込まされてしまった。
ところが、ハマスに近い関係者によれば、イスラエルがガザ地区の労働者に経済的インセンティブを与え始める一方で、ハマスの戦闘員は、多くの場合はイスラエル軍の目にも明らかな形で訓練を続けていたという。
ハマス幹部のアリ・バラカ氏は、「私たちはこの戦いに向けて2年間準備してきた」と語った。
デイフ氏は録音の中で、落ち着いた声で、ハマスはイスラエルに対し、パレスチナ人に対する犯罪をやめ、虐待や拷問を受けている捕虜を解放し、パレスチナ人の土地の収用を停止するよう繰り返し警告してきた、と語った。
「占領部隊は毎日のようにヨルダン川西岸の私たちの村や町、都市を襲撃し、殺し、傷つけ、破壊し、拘束している。私たちの土地を何千エーカーも没収し、我が国民を家から追い出して入植地を建設する一方で、ガザに対する犯罪的な包囲を続けている」
<影の男>
ヨルダン川西岸と呼ばれる長さ100キロ、幅50キロの地域では、この1年以上混乱が続いている。同地域は1967年にイスラエルに占領されて以来、イスラエル・パレスチナ紛争の中心地だった。
デイフ氏によれば、ハマスは国際社会に対し「占領という犯罪」を終わらせるよう求めたが、イスラエルは挑発を強めたという。同氏はさらに、ハマスは過去にイスラエルに対し、パレスチナ人捕虜の解放に向けた人道上の取引を提案したが、それも拒否されたと述べた。
「イスラエルによる占領の暴虐と、国際法や決議を否定する姿勢、さらには米国や西側諸国の支持と国際社会の沈黙に鑑みて、我々はこうした状況すべてに終止符を打つことを決意した」と、デイフ氏は宣言した。
ハマス軍事部門を率いるデイフ氏は、第1次中東戦争(1948年)の後に設置されたハーン・ユニス難民キャンプで1965年に誕生し、ムハンマド・マスリと名付けられた。87年に始まった最初のインティファーダ(パレスチナ人による反イスラエル抵抗運動)の際にハマスに参加し、その後ムハンマド・デイフという名で知られるようになった。
ハマス関係者によれば、デイフ氏は89年にイスラエルに拘束され、約16カ月拘束された。
デイフ氏はガザのイスラム大学で物理学、化学、生物学を学び、理学士の学位を取得した。芸術にも親しみ、大学のエンターテインメント委員会を率いて、喜劇の舞台への出演も経験した。
ハマスで頭角を現したデイフ氏は、ハマスの地下トンネル網を開発し、爆弾製造の能力を高めた。数十年にわたりイスラエルで最も重要な指名手配者リストの最上位にあり、自爆テロで数十人のイスラエル人を殺害した責任者として名指しされている。
デイフ氏にとって、自らの存在を隠しておくことは生死に関わる必須要件だった。ハマス関係者によると、同氏はイスラエルによる暗殺未遂で片目を失い、片足に重傷を負ったという。
デイフ氏の妻と当時生後7カ月だった息子、同じく3歳の娘は、2014年にイスラエルの空爆で死亡した。
ハマス軍事部門のトップという立場でありながら生き延びたことで、デイフ氏はパレスチナの民族的英雄としての地位を獲得した。映像では覆面をしているか、影だけが映し出される。ハマスに近い関係者によると、同氏はスマートフォンなど現代のデジタル技術を使っていないという。
「捉えどころがない、影の男だ」
国連の独立した専門家グループは12日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃を非難するとともに、それを受けたイスラエルのガザ攻撃も「集団的懲罰」と指摘した。
専門家グループは声明で「ハマスによる恐ろしい犯罪」を非難する一方で、長らく厳しい状況に置かれているガザのパレスチナ人への「無差別軍事攻撃」にイスラエルは踏み切ったと指摘。「彼らは16年間も非合法な封鎖下で生活し、すでに5つの大きな残忍な戦争を経験した。これは集団的懲罰に等しい。ハマスであれイスラエル軍であれ、罪のない市民を無差別に標的にする暴力を正当化する理由はない。これは国際法で絶対的に禁止されており、戦争犯罪に等しい」と述べた。
敵対行為の一環で人質を取ることも戦争犯罪に当たると指摘。「ハマスに連れ去られた市民は直ちに解放されなければならない。まず彼らの運命と所在が明らかにされなければならない」とした。
イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザは、イスラエルによる報復攻撃で230万人の住民のほとんどが電気も水も手に入らない状況に置かれた。この狭い区域がイスラエルによる何百回もの空爆を受け、逃げ場を失った住民は絶望の淵に立たされている。
地球上で最も人口密度の高い場所の1つであるガザは、ハマスによる7日のイスラエル襲撃以降、ほぼ絶え間ない報復攻撃にさらされ、双方の死者数はいずれも1000人を超えた。
ガザ唯一の発電所は数日間断続的に稼動していたが、11日に燃料が切れて停止。電力がなければ住宅への給水は不可能だ。夜はほぼ暗闇の状態で、爆発の火花や懐中電灯代わりの携帯電話の明かりがときどき光る。
「これまでにあらゆる戦争や侵攻を経験したが、これほどひどい戦いは見たことがない」と話すヤメン・ハマドさん(35)は4児の父親。ガザ北部の町ベイトハヌーンの自宅がイスラエルの攻撃で破壊された。
ガザ南部のカーンユーニスの病院は冷蔵保管庫に空きがなかったり、電源がなかったりして、遺体を床に並べていた。遺体安置所の外には親族や友人が列をなしている。弔問客は季節外れの気温上昇で遺体が傷むのを心配し、早く埋葬しようと必死だった。
ロイターはガザの住民30人余りにインタビューしたが、そのほとんどがハマドさんと同じ心情だった。これまで見たこともないようなひどい暴力を前に恐怖と絶望を口にした。
エジプトとの唯一の境界はエジプト当局によって封鎖され、人々は窮地に陥った。イスラエルの報復により、地上戦も含めて最悪の事態がこれからも続くのではないかと恐れている。
<被害は過去最大級>
イスラエルのガラント国防相はガザでの軍事作戦を強化すると言明し、11日にはハマスを「地上から消し去る」と述べた。
イスラエルとの境界に近いベイトハヌーンはイスラエルによる報復攻撃で最初に大きな打撃を受けた場所のひとつ。ハマスや地元住民によると多くの道路や建物が破壊され、数千人が避難した。
しかし、アラ・アル・カファルネさん(31)の一家は逃げ切れなかった。妊娠中の妻、父親、兄弟、いとこ、義理の両親とともに7日に町を脱出。海岸沿いの難民キャンプに車で向かったが、そこも空爆の標的となったため、さらに東のシェイクラドワンに移った。10日夜に一家が避難していた建物が空爆され、彼以外の全員が亡くなった。「危険から逃れようとして死に向かってしまった」と話すカファネルさんは頭部に切り傷を負い、腕にギプスをはめていた。
病院の外には毛布や段ボールで寝ている人もいれば、裸のまま地面に転がっている人もいる。病院内の少ないトイレを利用するために長蛇の列ができていた。国連によるとガザでは7日以来、17万5000人余りが自宅から避難した。
ガザの赤十字国際委員会の報道官、ヒシャム・ムハンナ氏は「今回の民間人の犠牲は過去最大だ」と述べた。
別の病院で働く「国境なき医師団」のモハマド・アブ・ムガシーブ氏によると、医療物資は何年も前から不足している。イスラエルによる包囲が強化されて医療物資の在庫は急速に減っており、数週間で底をつく見通しだ。「この状態が数日続けば医療システムは崩壊する」と言う。
電気がないためガザ地区では給水がほぼ止まっている。ガザの保健当局は、発電機に頼っている病院などの医療施設は数日以内に停電状態に陥る見通しだと明かした。汚水処理施設も止まり、地区全体で廃棄物が増え、病気が蔓延する恐れがあると憂慮する。
<ビルが倒壊>
夜が明けると新たな破壊の傷跡が浮かび上がる。幾つかの地区は空爆で丸ごと破壊された。空爆で道路が寸断され、民間の防衛隊は空爆現場にたどり着けないことが多く、地元の住民は自分たちで瓦礫を運び出さなければならない。ザイトゥーンでは男性2人が携帯電話の明かりを頼りに破壊された集合住宅を捜索し、生存者を救出して遺体を運び出していた。
国連の学校は、自宅から避難してきた住民の主な避難場所となっている。ある家族は教室に詰め込まれ、ある家族はマットレスの上で、またある家族は毛布の上で眠っている。
ガザシティーの学校では爆音におびえる子どもたちや親が眠らずにいた。多くの人々がコンクリートの建物を焼くような空爆でがれきに埋もれてしまうことを恐れ、屋外に座り込んでいた。
主要7カ国(G7)は12日、財務相・中央銀行総裁会議を開き、共同声明を発表した。中東情勢を巡り「(イスラム組織)ハマスによるイスラエルに対するテロ攻撃を断固として非難し、イスラエル国民との連帯を表明する」と明記した。
日本は2023年のG7議長国を務める。日本からは鈴木俊一財務相と日銀の植田和男総裁が出席した。鈴木氏は会議後の記者会見で、イスラエル情勢について日本から深刻な憂慮を表明したと明らかにした。多くの国からも懸念が表明されたと説明した。
パレスチナ自治政府のマリキ外相は11日、イスラエル軍の攻撃を受けているパレスチナ自治区ガザについて「罪のない傷病者や子供を救う物資を届けるため国際社会は緊急に動くべきだ」と人道支援を訴えた。アラブ連盟の緊急外相会合で訪れたカイロで日本経済新聞の取材に答えた。
イスラエル軍の攻撃が続くパレスチナ自治区ガザで夜間の光が急減している。最新の衛星画像ではガザ全域で夜間の暗さが増し、停電の影響が広がっているようだ。多くの負傷者らが集まる病院が機能不全となり、人道危機が深まるおそれがある。
イスラエルのネタニヤフ首相は11日の緊急政府と戦時内閣の発足後、イスラム組織ハマスを壊滅させると公約し、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの大規模な地上攻撃を示唆する趣旨の発言を行った。
ネタニヤフ首相は夜遅くにガラント国防相およびガンツ前国防相と共にブリーフィングに臨み、「ハマスのテロリストは残らず亡き者とする」と述べた。
ハマスがイスラエルに対し大規模攻撃を開始してから5日目となる中、今回の衝突による死者数は過去半世紀で最多となっている。双方はガザ地区との境界に集結するイスラエル軍とハマスとの対決に備えており、週末にハマスに連れ去られた数多くの人質の運命が危険にさらされている。
ガンツ前国防相は「戦時と平時があるが、今は戦時だ」と述べた。ガラント国防相は「われわれは彼らを地球上から抹殺する」と述べ、3人の中で最も強い言葉を使った。
首相らの口調は、イスラエルがガザ地区への侵攻に向けた最終準備に入った可能性を示唆している。2014年にはイスラエル軍の侵攻によりガザ地区で2000人余りが死亡したが、それを上回る規模の攻撃が行われることをうかがわせる発言だ。
米国と欧州連合(EU)からテロ組織に指定されているハマスは、多数のイスラエル人らを人質に取っている。ハマスは人質殺害を始めると警告しているものの、イスラエル側の発言からは、人質の安全確保を待たずに攻撃に踏み切る可能性もうかがわれる。ガンツ氏は「難しい質問をしている場合ではない。今こそ戦場で圧倒的な答えを出す時だ」と述べた。
イスラエル軍はハマスの司令官や幹部、ガザ地区内の情報・資金インフラを優先的に攻撃していると、コンリクス軍報道官はX(旧ツイッター)に投稿した動画で明らかにした。
世界の金融市場は「中東全域で大規模な紛争」が発生するリスクを今のところ軽視していると、著名エコノミストのヌリエル・ルービニ氏が述べた。
国際通貨基金(IMF)・世界銀行の年次会合が行われているモロッコのマラケシュでブルームバーグのインタビューに応じたルービニ氏は、投資家はイスラエルが「パレスチナ自治区ガザを攻撃し、イスラム組織ハマスを壊滅させる以外に選択肢はない」とみていると指摘。「イスラエルがガザを占領し、悲惨な状況にはなるが、紛争はそこでとどまる」のが、市場が織り込む基本シナリオだと語った。
しかしルービニ氏はイランやレバノンが関与する「事態悪化のシナリオ」もあり、イスラエルとイランが衝突するリスクに言及。「そうなれば、当然、ペルシャ湾岸からの原油供給が混乱し、石油価格が高騰し、経済への影響は甚大なものになるだろう」と述べた。「これが基本シナリオではないが、リスクとしてはある」と続けた。
凍結が解除されたイラン資産60億ドル(約8980億円)について、米国とカタールはイランによる同資産へのアクセスを阻止することで合意した。ワシントン・ポスト紙が事情に詳しい関係者2人を引用して報じた。
アデエモ米財務副長官がこの合意について、複数の米下院民主党議員らに伝えたという。この資産は人道目的に利用されるものだった。
サウジアラビアのムハンマド皇太子は、イランのライシ大統領と電話会談を行い、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突について協議した。両者による電話会談はサウジとイランが今年3月に関係正常化に合意して以降初めて。
国営サウジ通信(SPA)によれば、ムハンマド皇太子は「パレスチナの大義を守るサウジの揺るぎない姿勢」と包括的な和平への支持を強調した。
イラン国営メディアは両者が「イスラム世界の団結を強く訴え」、「イスラエル政府の犯罪や米国の容認が破壊的で危険な状態の原因だと考えている」と報じた。
<10月12日朝まで>
格付け会社ムーディーズは11日、イスラエルに対してイスラム組織ハマスとの戦闘が長期化すれば格下げにつながる恐れがあると警告した。
ムーディーズは13日にイスラエルの格付け「A1」と格付け見通し「安定的」について見直すかどうかを決める予定だが、これに先立ってパレスチナ・イスラエル情勢に関する見解を示した。
「過去においてイスラエルのソブリン信用力はテロ攻撃や軍事行動への耐性を証明してきたが、争いが長引いて経済活動や政策決定が永続的かつ大幅に損なわれるようなら、この耐性が試練を迎えることになる」という。
足元ではイスラエル国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)はプレミアムが急騰して100ベーシスポイント(bp)の大台を超え、約10年ぶりの水準になっている。
ムーディーズのほかS&Pグローバル、フィッチもまだイスラエルの格下げには動いていない。ただCDSの動きからは、市場がイスラエルの格下げを現実味のある懸念と見なしていることがうかがえる
シーポート・グローバルのアナリスト、ヒマンシュ・ポーワル氏は、イスラエルのCDSプレミアムが跳ね上がって、ムーディーズの格付けが同国より5段階も低いインドのプレミアムより高くなったと指摘した。
トルコのエルドアン大統領は11日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスから大規模攻撃を受けたイスラエルがガザを封鎖、空爆していることについて、行き過ぎた報復で「虐殺」に当たると批判した。同時に、双方の仲介に改めて意欲を示した。
同氏は議会で与党の公正発展党(AKP)に対し、戦争にも倫理があるが先週末以降のイスラエルとハマスの衝突は倫理に「非常に大きく」違反していると指摘。
イスラエルがガザへの電力や水の供給を断ち、インフラを破壊していることに触れ「人々の最も基本的ニーズを満たすのを妨げ、民間人の住宅を爆撃すること、要するにあらゆる恥ずべき方法を用いる行為は戦争ではなく虐殺だ」と強調した。
その上で国際社会に対し、やみくもにイスラエル・ハマスどちらかの肩を持たないよう求めた。「米州、欧州、その他地域の国々に公正で人道的バランスに基づく立場を取るよう呼びかける」とし、パレスチナ人への人道支援を阻止するなど、懲罰的行為は避けるべきだと訴えた。
エルドアン氏はまた、同日にヨルダンのアブドラ国王と電話会談し、地域情勢について協議した。トルコ大統領府によると、エルドアン氏は地域全体に衝突が拡大しないよう警戒する必要性を強調した。
イランのライシ大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子が11日、外交関係再開後初となる両国首脳の電話会談を行い、パレスチナとイスラエルの対立について話し合った。
イラン国営メディアによると、両首脳は「パレスチナに対する戦争犯罪を終わらせる必要性」について協議した。
サウジ国営通信社SPAによると、ムハンマド皇太子は「現在進行中の情勢緊迫化を止めるために全ての国際・地域的な当事者と連絡を取り合い、可能な限りの努力をしている」ことを確認。また、サウジはいかなる形であれ民間人を標的にすることを拒否すると強調したという。
米軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長は11日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃を受け、同国に敵対的な他の勢力が攻撃を準備している兆候は現時点で確認していないと述べた。
ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で「イスラエルに打撃となる新たなプレーヤーが関与しようとする兆候は見ていない」と語った。
ハマスによる先週末の攻撃を受け、米軍は東地中海に空母打撃群を派遣するなど抑止力強化を図っている。また、周辺地域で戦闘機部隊を増強し、イスラエルへの防空システムや弾薬の供給にも動いている。
ブラウン氏は、米軍のこうした措置がイスラエルにとって有益であり、抑止につながると述べた。
サウジアラビアのムハンマド皇太子はトルコのエルドアン大統領と電話会談し、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争の激化を止めるため地域的にも国際的にも「不断の努力」を続けていると強調した。サウジ国営通信が11日に報じた。
同通信によると、ムハンマド氏はハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへのイスラエルによる攻撃を阻止する必要性を主張。サウジはパレスチナの大義と包括的で公正な和平を達成しようとする試みを断固として支持するとした。
トルコ大統領府によると、エルドアン氏は11日、トルコが戦争の影響を受けた市民に人道支援を提供するための作業を開始したとムハンマド氏に伝えた。
トルコはイスラエルとハマスの紛争の仲介に意欲を示している。
イランはパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが「対イスラエル作戦」を計画していたことを認識していた可能性が高いものの、米情報機関の初期の報告によれば、イランの一部指導者らはハマスによる大規模攻撃に驚いていたと、複数の米関係者が11日に述べた。
関係者によれば、長年ハマスに武器や資金を支援してきたイランの指導者らは通常、このような作戦について知っているはずという。
米政府高官は、ハマスがイスラエルに対する行動を計画していたことをイランは認識していた可能性が高いものの「正確なタイミングや規模」は知らなかったとの見方を示した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官はMSNBCのインタビューで、ハマスとの長年の関係を踏まえればイランは加担しているとみられるものの、今回の一連の攻撃への具体的な支援を示す情報は確認していないと改めて述べた。
関係者によると、米情報機関はイランが関与した証拠があるか引き続き分析するとともに、手掛かりを得るため古い情報も見直している。
米政府高官は、調査は継続中で「最終的な結論を出すのは時期尚早」と指摘。「何が起こるかをより明確に認識していたか、あるいは計画の一部に関与していた者がイラン体制内に少なくとも何人かいたかどうかなど、さらに情報を分析する」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は11日、イスラム組織ハマスとの戦闘を指揮するため、挙国一致政権を樹立した。ガラント国防相はハマスを「地球上から」一掃すると表明した。
ネタニヤフ氏は野党党首のガンツ前国防相と共同声明を発表し、緊急の挙国一致内閣の樹立で合意したと明らかにした。ハマスによる7日の奇襲でこれまでに少なくとも1200人の犠牲者が出ていることを受けた措置。
声明によると、挙国一致内閣はネタニヤフ、ガンツ両氏のほか、ガラント国防相が加わり、ガザにおけるハマスとの戦闘中、無関係な政策や法律を推進しない方針。
ネタニヤフ氏はその後、ガンツ、ガラント両氏とテレビ放映に出演し「国家の命運がかかっているため」見解の相違を脇に置いたと説明。「われわれは過激派組織「イスラム国」(IS)よりも残酷な敵と戦っている」と述べた。
ガラント氏は「ハマスを地球上から消し去る」と語った。
ガンツ氏は、今は戦時で団結して勝利する時だとした。
ガンツ氏と別の野党を率いるラピド氏は、現時点で挙国一致政府に参加しない見込み。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃を巡り、国際社会の溝が浮き彫りとなっている。米欧がイスラエル支持を鮮明にする一方、アラブ諸国にはイスラエルのパレスチナ占領を非難する声が強い。停戦仲介のめどは立たず、地域紛争への発展やガザ地区の住民に対する人道危機のリスクは高まる。
「イスラエルは悪意ある攻撃に反撃する権利と責務がある」。バイデン米大統領は10日の演説で、ハマスへの報復を容認した。「テロを正当化することはできない。弁解の余地はない」と指摘し、ハマスの攻撃を「まさに悪の行動だ」と断じた。
防空システムや弾薬など軍事支援を強化し、連邦議会に対イスラエルの追加予算を認めるよう要請すると明かした。「イスラエルが自国民を守るために必要なものを確保し、この攻撃に対処できるようにする」とした。
ハマスは7日、イスラエルに大規模な越境攻撃を仕掛け、これまでに同国側だけで約1200人が死亡した。ハマスは民間人を襲い、外国人を含む100人以上を人質にとった。
米欧は蛮行を「テロ」として非難する立場で一致。米、英、ドイツ、フランス、イタリアの5カ国首脳は9日、イスラエルへの「揺るぎない支持」を表明した。カナダのトルドー首相も同日、「暴力への称賛は受け入れられない」とX(旧ツイッター)に投稿し、ハマスを支持する運動を非難した。
英外務省は11日、クレバリー外相がイスラエルを同日訪問したと明らかにした。イスラエルの指導者らと面会し、「イスラエル国民との揺るぎない連帯を示す」という。
ただ、イスラエルがガザへの地上侵攻に踏み込めば、イスラエルに同情的な欧米などの見方が変わる可能性もある。
欧州連合(EU)の外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は10日、「イスラエルは自国を防衛する権利があるが、国際法や人道法に従わなければならない」と述べた。イスラエルがガザを包囲し、水などの供給を止めるとしていることを念頭に「一部の決定は国際法に反する」とも批判した。
アラブ諸国は欧米と対極をなす。アラブ連盟は11日に緊急外相会合を開き対応を協議する。同胞が多く住むパレスチナに同情的で、イスラエルによる占領をかねて非難してきた。今回もパレスチナへの連帯を改めて示す公算が大きい。
サウジアラビアの実力者ムハンマド皇太子は、パレスチナ自治政府のアッバス議長との電話で「パレスチナ人が正当な権利を追求し公正で恒久的な平和を達成するため、サウジはパレスチナの側に立っている」と語った。サウジ外務省が10日発表した。
ロシアも米欧の態度とは距離を置く。プーチン大統領は10日、イスラエルとハマスの衝突を「米国の中東政策の明らかな失敗例」と断じ、対米批判を展開した。
双方にパイプを持つエジプトやトルコは停戦仲介を試みるが、収束に向かう兆しはない。戦闘が長期化すれば、紛争地域が広がる可能性が高まる。
その兆候はある。ハマスが越境攻撃して以降、イスラエルには北隣のレバノンから、親イラン民兵組織ヒズボラやハマスによる越境砲撃が続く。イスラエルメディアによると、11日もヒズボラがレバノンからイスラエルに向けてミサイルを発射したという。
10日にはシリア領内からも砲撃があった。イスラエルは応戦しており、激化すれば南北の二正面で本格的な作戦を強いられる。
焦点は、ハマスやヒズボラの後ろ盾であるイランの関与だ。米政府は現時点で否定するが、今回のハマスの攻撃にイランが関与したとの疑念は晴れていない。
仮にイスラエルがイランが関与したと判断すれば、中東屈指の軍事大国同士の衝突へと発展する恐れがある。この場合、地域の争いが中東全体の混乱へとつながり、供給が滞る懸念から原油相場も急騰しかねない。
福岡市をやや上回る程度の土地に約220万人が暮らすガザの窮状も深まりかねない。
「7歳と1歳の子に与える食べ物がなくなるのを恐れている」。ガザに住む主婦のファティマ・イスマイルさん(35)は訴える。今回の空爆で住居を失った。
ガザでは、イスラエル軍の報復攻撃で10日までに1000人超が死亡した。イスラエルのガラント国防相は9日、ガザを「完全包囲」し、電気、食料、水、ガスを遮断すると宣言。「我々は動物たちと戦っており、それに応じて行動する」と語った。
ハマスは11日、燃料不足のためガザ唯一の発電所が停止したと発表した。
イスラエル軍がガザへの地上侵攻に踏み切れば、多くの市民が巻き添えになり、犠牲者がいっそう膨らむのは避けられない。
ガザはイスラエルがつくった塀やフェンスに囲まれ「天井のない監獄」と呼ばれる。今回の衝突前から出入りの自由がなく、経済不振や失業が深刻で困窮した状態にあった。攻撃の激化で電力や水道といったインフラが破壊されれば、復旧に時間がかかり、医療水準の低下で命が失われる恐れもある。
ハマスは2006年のパレスチナ評議会選で多数派となり、07年にガザを武力制圧した。パレスチナはガザと、自治政府が統治するヨルダン川西岸地区に分裂した状態が続いている。
レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラは、誘導ミサイルでイスラエル軍の駐屯地を攻撃したことを明らかにした。イスラエルがガザ地区での地上戦の可能性に備えて同地区近くに部隊を集める中、同国に対する新たな越境攻撃となる。
ヒズボラは今回の攻撃について、同組織のメンバーが今週殺害されたことへの報復だと説明。ヒズボラ系のテレビ局アルマナルで放送された声明では、イスラエル兵士が攻撃で負傷したと主張した。
イスラエル軍は先に、レバノン国境近くにある北部の駐屯地に向けて対戦車ミサイルが発射されたと発表していた。
イスラエルは、ほぼ不可避とみられているパレスチナ自治区ガザでの地上戦に備え、同地区近くに多くの部隊を集結させている。
イスラエルの国民や安全保障当局者は、週末に1000人余りの国民の命を奪ったイスラム組織ハマスによる攻撃への報復を求めている。ただ地上部隊の投入は、ガザの人口密集や複雑な地下トンネル網、イスラエル人や米国人を含む人質の命の危険により一筋縄ではいかない見通しだ。
オバマ政権で国防長官や中央情報局 (CIA)長官を務めたレオン・パネッタ氏は10日のブルームバーグテレビジョンの番組「バランス・オブ・パワー」のインタビューで「ガザに進攻すれば基本的に市街戦になることが問題だ。大きな対価を支払うことになり得る」とした上で、「しかしその一方で、イスラエルがガザのハマスを掃討しなければならないと決断したことは極めて明らかだと思う」と指摘した。
イスラエルの地上部隊投入は双方に多大な犠牲をもたらし、イスラエルが紛争の出口戦略を見いだせるかどうかも問われる見通し。またその影響は中東全域に及び、イスラエルとアラブ近隣諸国との関係改善を危険にさらす恐れがあるほか、紛争がより広範な地域戦争に発展するリスクを高める見込みだ。
米政府高官は、ガザ進攻後は、市街戦となった2004年のイラクのファルージャの状況と似た展開になる可能性があると指摘。特に近隣諸国が援軍を提供した場合、ガザでの抵抗は手ごわいものになり得ると匿名で語った。
イスラエルはガザに地上軍を投入するとは発表していないが、ネタニヤフ首相は「近くわれわれが敵に行うことは、何世代にもわたって影響を及ぼすだろう」と述べている。
地上部隊の動きもイスラエルが大規模な計画を示唆している。イスラエル軍の戦車部隊がガザ地区に向かう中、同軍はガザ地区近くに兵士数万人を収容可能な基地を建設中だ。イスラエルは既に過去最多となる30万人の予備兵を招集している。
イスラエル軍のヘクト報道官は10日、記者団に対し「イスラエルは非常に強烈かつ激しく対応する。死者がさらに出るだろう」と語った。
地下武器庫
イスラエルが地上戦を開始するという見方が強まっている理由の一つは、ガザへの空爆に限界があることだ。空爆ではトンネルや地下武器庫、密輸ルートを除去できない可能性が高い。
元米国家安全保障局(NSA)局長のキース・アレグザンダー氏はイスラエル軍は「どこかの時点で進攻せざるを得なくなるだろう」とし、「実行し得る作戦は限られるが、占領しようとする地域はかなり広く、住民も多い」と指摘した。
CIAで中東専門の上級職員だったウィリアム・アッシャー氏は「占領が長引けば長引くほど、イスラエルの支持は低下し、アラブ諸国で国民の圧力は高まるだろう。これは政治的、対世論的に大惨事に発展する可能性がある」と指摘した。
ハマスの人質という複雑な問題も存在する。ハマスは7日の奇襲攻撃で多数のイスラエル人や外国人を人質として連れ去った。ハマスはイスラエルが警告なしにガザの民間住宅を攻撃する度に人質1人を殺害すると表明している。イスラエルが地上部隊をガザに投入した場合の対応は不明。
戦闘がエスカレートするリスクもある。イスラエルは既にレバノンからロケット弾攻撃を受けており、これに武力で応じればより広範な地域紛争に発展する可能性がある。
さらにイランが関与する可能性もある。イランの最高指導者ハメネイ師は10日、ガザの人々の虐殺と大量殺戮はイスラエルにより大きな災いをもたらすだろうと述べた。米国はイランに関与しないよう警告し、同国を抑止するために空母打撃群を地中海東部に派遣した。
イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突を受けて、政治的主張のためにハッキングを行う「ハクティビスト」集団がイスラエルの標的をインターネット上で攻撃している。
調査会社レコーデッド・フューチャーは「既存の(ハクティビスト)グループと新しいグループが主張する被害が1日に数十件出ている」と指摘した。
ハマスを支持するハッカー集団「アノンゴースト」はイスラエルの緊急警報アプリを混乱させたと主張している。
「アノニマススーダン」と呼ばれる別のグループはイスラエルの重要なインフレを積極的に標的にしているとテレグラムに投稿した。ただ根拠はほとんど示していない。
セキュリティーアナリストによると、データを大量に送りつけてサーバーをダウンさせる「DDoS(ディードス)攻撃」の被害を受けたイスラエルのウェブサイトは100以上に達した。
エルサレム・ポストのアビ・メイヤー編集長は、攻撃により過去数日間、サイト閲覧がしばらくできなくなったと説明し、「これは報道の自由に対するあからさまな攻撃だ」と非難した。
ロシアがウクライナに侵攻した際にもウクライナを支持するハッカーがロシアのウェブサイトやオンラインサービスを攻撃したと主張している。
パレスチナのマンスール国連大使は10日、イスラエルによるイスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに対する砲撃や封鎖は非人道的であり、大量虐殺にほかならないと強く非難した。
イスラエルのガラント国防相は9日、ガザの封鎖を強化して食料や燃料の供給を止めると発表した。 もっと見る
マンスール氏は国連安全保障理事会に宛てた書簡で「このようなあからさまな非人道的行為や、砲撃により市民を服従させ、飢餓を戦いの手段とし、国家の存在を根絶しようとする試みは大量虐殺以外の何物でもない」と批判。「こうした行為は戦争犯罪にあたる」と強調した。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は10日、「封鎖という概念は、イスラエル政府が実際に進めようとしているものではない」と理解していると述べ、米政府はこの点に関するイスラエル政府の行動について同政府と協議していると説明した
イスラエルはイスラム組織ハマスによる攻撃を受け、地上攻撃を準備している。一方、バイデン米大統領はイスラエル支援を強調し、この状況を利用しようと考えている国や組織に警告した。
イスラエルは10日、パレスチナ自治区ガザに過去最大規模の空爆を行い、ガザ地区との境界を掌握したと発表した。
ガザの保健省は、イスラエルの空爆により10日までに少なくとも950人が死亡、5000人が負傷したと発表した。
イスラエル軍は同国側の死者が1200人に達し、2700人以上が負傷したと明らかにした。
イスラエル軍兵士と市民を人質に取っているハマスは9日、ガザの家1軒が攻撃されるごとに人質1人を予告なしに処刑するとしていたが、10日夜になっても実行に移された形跡は見られていない。
イスラエルのガラント国防相は、ガザのフェンス付近で兵士らを前に「われわれは空から攻撃を開始した。地上からも行うだろう。2日目からこの地域を制圧し、攻勢をかけている。攻勢は強まるばかりだ」と述べた。
イスラエル地元紙によると、パレスチナ自治区ガザからイスラエル領内に侵入した少なくとも1000人の武装勢力が殺害された。
関係筋によると、イスラエルの北部国境では、レバノン南部からイスラエルに向けてロケット弾が発射され、イスラエルが砲撃で応戦した。
また、シリア領土から発射された砲弾がイスラエルの空き地に着弾し、イスラエルが応戦したという。戦火が拡大するとの懸念がさらに強まっている。
<バイデン氏「抑止力強化」>
バイデン氏はハマスの攻撃について「悪の行動だ」と断じた。空母打撃群と戦闘機の移動など「抑止力を強化するため、この地域における軍事力態勢を整えた」と述べ、必要に応じてさらに展開する準備があると強調した。
米国務省は、ブリンケン国務長官が12日にイスラエルを訪問し、同国の政府高官らと会談する予定と発表した。
米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)はガザ市民の安全確保についてイスラエルやエジプトと協議していると述べた。
多くの航空大手が航空便の運航を一時停止する中、各国政府は自国民の退避を急いでいる
イスラエルのネタニヤフ連立政権は、主要野党幹部らと緊急の挙国一致政府を樹立することで合意した。 もっと見る
<ガザの住宅や学校が被害>
ターク国連人権高等弁務官は、イスラエル軍の空爆によりガザ全域で住宅や学校、国連の建物が被害を受け、民間人に犠牲者が出ていると指摘。「国際人道法は明確だ。民間人や民間物を避けるために常に注意を払うという義務は、攻撃を通じて適用される」とした。
同時に「パレスチナ武装組織のメンバーによる恐ろしい大量殺害」を非難し、武装勢力による人質拉致も国際法で禁止されていると述べた。
国連によると、18万人を超えるガザ市民が住居を追われ、学校などに避難している。
パレスチナ外務省によると、イスラエルによる攻撃でこれまで住宅2万2600棟が破壊され、医療施設や学校も打撃を受けている。
ヨルダン川西岸と東エルサレムでも情勢が悪化している。イスラエル警察によると、東エルサレムで10日夜、警官に向かって花火を飛ばしたパレスチナ人2人を殺害したと発表。パレスチナ保健省によると、ヨルダン川西岸では7日以来、イスラエル軍との衝突で21人のパレスチナ人が死亡、130人が負傷した。
ロシアのノバク副首相は11日、サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相と石油市場の状況と価格について協議したと明らかにした。
インタファクス通信によると、ノバク氏は石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」内での協力について話し合ったとし「今日の協議での最も重要な議題の一つだった」と述べた。
「われわれは常に連絡を取り合っており、この機会を利用して市場の状況について話し合った」と説明した。
具体的な結論に至ったかどうかは明らかでない。
会談に先立ちノバク氏はイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突が石油市場に影響を与える可能性があると発言。
インタファクス通信によると「われわれはその点を協議する。こうした世界の出来事はエネルギー資源の消費動向にいずれかの方向への影響を及ぼし得る」と述べた。
ロシア大統領府のぺスコフ報道官は記者団に、アブドゥルアジズ氏の訪ロは現在の情勢について検討する機会となったと述べた。
イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突など現在展開している出来事に市場は非常に敏感だと指摘。「サウジなどのパートナーとの調整は極めて重要だ」と語った。
ノバク氏は会談の冒頭で、ロシアはサウジの石油製品供給を拡大する用意があると表明。原子力エネルギー、地質探査、食料供給においてサウジと協力する用意があるとも述べた。
ノバク氏はモスクワで開かれるエネルギー関連会議に出席する。会議にはイラクのスダニ首相も出席する予定。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの大規模戦闘勃発で中東情勢が再び緊迫している。イスラエルとパレスチナは70年もの間、周辺国も巻き込み衝突を繰り返してきた。地域全体を不安定にさせる火種はなお残る。
<衝突の根本原因は>
イスラエルはナチスドイツによるユダヤ人迫害を経て1948年に建国。パレスチナ人はイスラエルの誕生をナクバ(大惨事)と嘆き、国家樹立を阻まれたとしている。
建国直後の第1次中東戦争でパレスチナ人約70万人が難民となってヨルダンやレバノン、シリアなどに離散したが、イスラエルはパレスチナ人を居住地から追い出したという見方を否定し、建国翌日に周辺のアラブ5カ国から攻撃を受けたと指摘。49年の休戦協定で戦闘は停止したが、正式な和平は成立していない。
周囲のアラブ諸国と長年敵対関係にあったイスラエルは安全保障を追い求めてきた。これに対し、パレスチナ側は独立した国家の樹立を一貫して主張し、これが対立の原因となってきた
<過去の大規模戦争>
イスラエルは67年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸、東エルサレム、ゴラン高原などを占領下に置いた。73年の第4次中東戦争はエジプトとシリアがユダヤ教の神聖な日「ヨム・キプール」に合わせてイスラエルを奇襲して始まった。イスラエルは3週間で両軍を押し返した。
イスラエルは82年にレバノンに侵攻。包囲されたパレスチナ解放機構(PLO)はレバノンから撤退した。2006年にレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラがイスラエル人兵士を拘束し、イスラエルが報復したことから戦争が再び勃発した。
05年にイスラエルはパレスチナ自治区ガザから撤退。しかし、ガザではイスラエルによる空爆とパレスチナ人によるロケット弾発射の応酬激化が繰り返し起きている。 パレスチナ住民の反イスラエル闘争(インティファーダ)も1987─93年、2000─05年の2度起きている。
<和平交渉>
1993年にイスラエルのラビン首相とPLOのアラファト議長がイスラエルとパレスチナの互いの生存権を認める「オスロ合意」に署名、パレスチナ自治政府の設立につながった。
ただ、2000年に米キャンプデービッドで開かれたクリントン米大統領、イスラエルのバラク首相、アラファト議長の交渉は決裂し、正式な和平協定は結ばれなかった。
02年にアラブ側が、占領地からのイスラエル撤退やパレスチナ国家樹立などを条件にアラブ諸国によるイスラエルとの関係正常化を提案。
ただ、14年にイスラエルとパレスチナがワシントンで開いた協議が不調に終わってからは、和平交渉が停滞している。
<和平努力の現状は>
バイデン米政権はイスラエルとサウジアラビアとの関係正常化を含む中東問題の「一括解決」を目指している。一部のアラブ諸国は既にイスラエルと国交正常化合意を結んでおり、今回のハマスとの戦闘はサウジも含め、アラブ諸国にとって外交的に厄介なものだ。
<イスラエルとパレスチナ間の主な懸案は>
パレスチナを独立国家として認め、イスラエルと共存する「2国家解決」やイスラエルが占領地につくった入植地、エルサレムの地位、難民の扱いを巡り双方が主張を譲らない状況が続いてきた。
ハマスは2国家解決を拒否し、イスラエルを破壊すると宣言している。イスラエルはパレスチナ国家の非武装化を要求している。
イスラエルによる占領地での入植活動は大半の国が違法と見なしている。イスラエルは宗教などの理由を挙げて正当性を主張し、入植地を拡大してきた。
パレスチナ人はイスラム教とユダヤ教双方の聖地がある東エルサレムを首都とする国家樹立を求めている。イスラエルはエルサレムが同国の「不可分で永遠の首都」としている。
パレスチナ人は長年、難民の帰還を認めるよう要求してきた。イスラエルはパレスチナ難民の国内再定住は認めない立場を示している。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは11日、イスラエルに向けてロケット弾を発射した。イスラエル軍は報復措置としてレバノン南部の町を砲撃した。
ヒズボラはイスラエル軍の砲撃によりメンバーが今週殺害されたことを受けて、イスラエル軍の拠点に向けて誘導ミサイルを発射したと明らかにした。レバノン領土への攻撃に対しては「断固とした」対応をすると強調した。
これに対しイスラエル軍は北部の拠点が11日に対戦車砲の攻撃を受けたためレバノンを攻撃していると表明した。死傷者の詳細については明らかにしていない。
レバノンの治安当局筋によると、ヒズボラはイスラエルに向けて誘導ミサイル2発を発射した。別の当局者はロイターに、レバノン南部ダイラ周辺のロケット発射地点にイスラエル軍の砲弾が命中したと語った。
破壊されたベビーベッドが全焼した家の外に放置されている。路上のあちこちに遺体が横たわり、バスケットボールコートの外には遺体の収容袋が並べられている。至る所から死のにおいが放たれている。
ほんの数日前まで、この場所は風光明媚で静かなイスラエル北西部のキブツ(農業共同体)だった。クファル・アザは750人ほどが暮らすコミュニティーで、住民の多くは幼い子どもを育てる家族だ。だが7日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが攻撃し、住宅は焼け、村は破壊された。
「母親、父親、赤ちゃん、若い家族がベッドの上や防護室、ダイニングルーム、庭で殺された」とイスラエル軍に長年所属するイタイ・ベルブ少将が10日、話した。自宅で殺害された住民の遺体を一軒一軒回収するベルブ氏は、明らかに動揺していた。
「戦争でも、戦場でもない。これは大虐殺だ」とベルブ氏。中には首をはねられていた犠牲者もいたという。
「軍に40年間所属してきたが、これまでこんな状況は見たことがない」
ガザ地区からわずか3キロの場所にあるクファル・アザは、ハマスのイスラエル南部に対する攻撃で最も大きな被害を受けた地域の一つだ。イスラエル当局は、ハマスによる攻撃で少なくとも1000人が死亡し、その多くは自宅や路上、ダンスフェスティバルで銃殺された一般市民だとしている。
パレスチナ当局は、イスラエルによる報復攻撃で少なくとも830人のガザ住民が命を落とし、複数の地区が完全に破壊されたと発表した。
クファル・アザへの攻撃から生き延びたアビドル・シュワルツマンさん(38)は、イスラエル兵に助け出されるまでの間、妻と1歳の娘と共に自宅の防護室に20時間以上隠れていたという。救出後に見た光景は「真の地獄」だったと明かす。
「至る場所に遺体があった。ありとあらゆる場所に遺体が横たわっていた」とシュワルツマンさんは言う。
「私たちの小さな楽園や天国が、全て焼かれてしまうのを目の当たりにした。燃やされ、血まみれになってしまった」
<キブツのフェンスを突破>
イスラエル国防軍は10日、海外の報道機関をキブツに案内した。焼け落ちて廃墟となった家屋が並び、通りには住民や武装勢力の遺体、焼け焦げた車、壊れた家具やその他の残骸の山が散らばっていた。
周辺の路上には、黒いシャツにカーキ色のズボンをはき、軍用ベストを着た武装勢力のメンバーの遺体が横たわっていた。拳銃を手にしたままの者もいた。
<最悪の悪夢>
シュワルツマンさんは7日の午前6時半ごろ、ロケット弾のごう音で目を覚ました。その1時間後、キブツの全住人向けに送られた、外に出るのは危険だとのテキストメッセージが届いて、家族とともに自宅の中の防護室に移動したという。
「銃声が聞こえ、軍が救助してくれるまでの21時間、私たちは立てこもった。銃撃や銃声、爆弾や警報が絶えず聞こえ、何が起こっているのかわからなかった。最悪の悪夢だった」と、妻のカレンさんが振り返った。
ヤシの木やバナナの木が植えられ、ベランダ付きの平屋住宅が整然と並んでいたキブツの通りでは、兵士たちがまだ警備を続けていた。
ある家の外には、紫色のシーツに覆われた住人の遺体が横たわっていた。シーツから裸の足がのぞいていて、まるでただ寝ているかのように見えた。枕やその他の身の回りの品が近くに落ちていた
遠くで銃声と爆発音が聞こえた。上空からはジェット機の音が聞こえ、ガザから煙が上がっているのが見えた。ロケット弾の迎撃を知らせるサイレンが頭上で鳴り響いた。
「ここで見たことを世界に伝えてくれ」。ある兵士が叫んだ。
(CNN) 30年以上にわたる政治活動で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相には選挙の当選回数と同じくらい多くのニックネームがある。
窮地を脱して勝利をもぎとる超人的能力から「魔術師」と呼ばれることがある。イスラエル政界のトップとして最長任期を誇ることから「キング・ビビ」とも呼ばれる。また、必ずしも愛着を込めてというわけではないものの、広く使われている呼び名が、いたってシンプルな「ビビ」だ。さらにもうひとつ、本人もお気に入りの呼び名「ミスター・セキュリティー(安全保障)」もあるが、こちらの評判は今や地に落ちたようだ。どこでどう間違ったのだろう。
1000人を超えるイスラム組織ハマスの戦闘員が、イスラエルにこれほど壊滅的な奇襲をかけることができた経緯はいまだ分かっていない。イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領の言葉を借りれば、1日のユダヤ人死者数としてはホロコースト(ユダヤ人の大虐殺)以来最大だ。
今のところ、野党からはネタニヤフ首相の退任を求める声は上がっていない。「誰に責任があるのか、なぜ奇襲を受けたのか。今はこうしたことは考えていない」と最大野党の党首を務めるヤイル・ラピド前首相は発言した。「その時ではないし、その場所でもない」
だが、その時はきっと来るだろう。地元テレビ局「チャンネル12」のトップ政治評論家、アミット・シーガル氏は、戦争の後もネタニヤフ氏が首相の座を維持できたとしたら驚きだと述べた。「そうなれば、イスラエル最初の事例となるだろう」と同氏はCNNに語った。「イスラエルの歴史を振り返ると、想定外の事件や危機があるたびに政権は退陣を迫られた。1973年(の第4次中東戦争)のゴルダ・メイア政権しかり、82年の第1次レバノン侵攻のメナヘム・ベギン政権しかり、そして2006年の第2次レバノン侵攻のエフード・オルメルト政権しかり。時間が刻一刻と迫っている」
たしかに、比較という点で歴史は有効だ。イスラエル情報当局がこれほどの規模、そして、これほどの死者を出した攻撃を予知できなかったのは、約50年前のヨムキプール(贖罪<しょくざい>の日)にエジプトとシリアがイスラエルを攻撃して以来だ。
だが当時の戦争は「それまでの規範やルールの原理にある程度基づいていた」とイスラエル民主主義研究所のヨハナン・プレズナー所長は語る。「数年後、イスラエルは(エジプトの)サダト大統領と平和交渉に応じ、クネセト(イスラエル国会)でも大多数の支持を得た。今回はハマスとの平和交渉に応じることはない。状況がまったく異なる」
おそらくはエジプトなどの仲介で、何らかの形で交渉を行うのは避けられない。イスラエルがガザ地区に空爆をしかけ、「完全包囲」を命じ、ハマス一掃に向けた地上攻撃の準備を進めているが、それと同時にネタニヤフ首相は、ガザ地区に連れ去られた150人余りの人質を解放する道を模索しなければならない。
ネタニヤフ首相にとって、これはただでさえ難しい問題だ。だがこの10カ月間、賛否両論を巻き起こした抜本的な司法改革に対する抗議デモや、汚職裁判、一命をとりとめた経験に見舞われ、首相の姿は円熟味を増すどころか、すっかり打ちのめされた印象だ。
首相にとってせめてもの慰めは、ハマスの急襲でイスラエルが再び団結したことだろう。イスラエル軍特殊部隊の予備役で少佐でもあるプレズナー氏は、「今、イスラエル人が全く気にしていないのがネタニヤフ氏の政治生命だ」と語る。
ネタニヤフ首相がこれまで幾度となく退任させられたことも思い出してほしい。そしてその都度「ターミネーター」のごとく復活し、反対勢力を徹底的に打ちのめしてきた。だが今回は様相が異なる。今回首相は他のことに気を取られていたかもしれないが、自らの意思に反して戦争に引きずり込まれた形だ。
司法制度の抜本的改革に専念していたことが「あだになった」とチャンネル12のシーガル氏は言う。だが同氏もいうように、今回のハマスの奇襲は12~18カ月前から計画されていたと思われる。ちょうどネタニヤフ氏が野党だった時期だ。誤算だったのは、ハマスの要望が経済面での譲歩と、イスラエルによるガザ地区包囲の緩和だと考えていた点だ。「結局はイスラエル人の壊滅をもくろむナチ集団だ。裏庭にモンスターがいる状態では生きていけない」
ネタニヤフ首相とイスラエル国防軍がモンスターを退治できるかどうかは、今後数日ないし数週間でよりはっきりするだろう。ひょっとしたら、うまいこと「緊急」の挙国一致内閣を樹立して、退任要求を阻止できるかもしれない。短期的には、ラピド氏が言うところの「過激化する」「機能不全な」ネタニヤフ連立政権の一面を排除できるかもしれない。だがいったん脇に追いやられたとしても、過激な思想が消えることはなさそうだ。
ハマスの大規模攻撃に対するショックと怒りは相当で、イスラエルの有権者がより過激な思考へ向かう可能性もある。「ある一定数の国民は、容赦ない対応を求めるだろう」とプレズナー氏は言う。「生き残るのは自分たちか、それとも向こうか。二つに一つのゼロサムゲームがベースになる」その時に、ミスター・セキュリティーは期待に応えられるだろうか。
<10月11日朝まで>
イスラエルの情報機関は世界屈指の評判を得ている。さらにエジプトに隣接する細長い土地のガザ地区は、地球上で最も監視の厳しい場所のひとつだ。電話は盗聴され、頭上では衛星が偵察する。ワシントンDCの2倍余りの地域にいる200万人の住民には、イスラエル側への密告者も目を光らせる。
ハマスに予想外の攻撃と数百人の殺害や拉致を許した失態の全てに関してイスラエルと米国が分析するには、数年を要するだろう。だが、米国やイスラエルなどの現役・元情報機関当局者によると、ハマス戦闘員がイスラエルの監視網をかいくぐった様子は既に浮かび上がりつつある。
まだ多くの疑問が残ったままではあるが、明らかなのは、ハマスはイスラエルの通信傍受を避けるためテクノロジーに頼らない方法をとったということだ。ミサイル攻撃は阻止できるというイスラエル軍の自信を逆手に取った可能性すらある。
元米国家情報副長官のベス・サナー氏は「私が思うに、多数の教官や実動訓練、膨大な量の弾薬搬入を含むこのような大規模な作戦をハマスが隠しおおせたのは、極めて古いやり方がとられたからだ」と指摘。
「作戦が電子機器でやり取りされたことはなかったのではないか。ハマスは少人数のグループに分かれ、それぞれ会合を重ねた。グループごとに、それぞれ異なる任務を与えられた。全体としてどのように組み合わさるのか、把握していたのはごく少数でしかなかっただろう」とサナー氏は語った。
イスラエルの情報活動に詳しい関係者はハマスの攻撃成功について、ガザの動向監視を主に担当する同国情報機関がハマス指導部内部に質の高い人的な情報源を欠いていること示唆しているようだと語った。
米セキュリティー会社フラッシュポイント幹部で、米国家テロ対策センター(NCTC)のグループチーフを務めたアンドルー・ボレーヌ氏は、ハマスが攻撃計画策定に暗号化技術を活用した可能性もあるとみている。「機器を使った秘密通信の要素があるという感触を受けている」と述べた。
イスラエル軍の無線諜報(ちょうほう)を担う8200部隊の元メンバー、アロン・アルバツ氏は、同国の電話や電子メールの通信傍受能力をハマスがかわしたことは明らかだと指摘。イスラエルが過去に使用した「知覚技術」の一部もそれに含まれるとし、「ハマスは情報がどのように収集されているかを明らかに学んだ。そして、それを回避する方法を学んでいる」と続けた。
文字通りの地下潜伏
通信傍受を無力化させることに加え、文字通り地下に潜ったことも、イスラエルの監視網をかいくぐる一助になった可能性がある。
ハマスに詳しい米情報関係者によると、ハマスは貯蔵兵器をトンネルや地下に隠すことが長年にわたり長(た)けている。その結果、イスラエルが地上の倉庫を何度となく空爆しても無駄に終わっていたという。
ハマスはイスラエルの混乱にも乗じたはずだ。同国の治安当局幹部は国内の政争に気を取られ、司法権の弱体化を図るネタニヤフ首相の取り組みに多くの市民が数カ月にわたって抗議活動を続けていた。
タイムズ・オブ・イスラエルは9日、ハマスが「何か大きいこと」を計画しているとエジプト情報当局が繰り返し警告していたものの、イスラエル当局はガザではなくヨルダン川西岸地域に注目することを選択したと報じた。ブルームバーグ・ニュースはこの報道を独自に確認できず、イスラエル首相府は報道を否定した。
トルコのエルドアン大統領は10日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突について、ロシアのプーチン大統領と電話協議した。ロシア大統領府は即時停戦と交渉再開が焦点になったとした。
トルコ大統領府によると、両首脳は緊張激化を防ぐ措置や人道支援を届ける取り組みについて話し合った。
ロシア大統領府は声明で「民間人の死者の悲惨な増加」を非難した。その上で、東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立を含む「2国家」計画に基づいてのみ紛争を解決できるとした。
トルコは地域の平穏を確保するための努力を続けると表明した。
エルドアン氏は国連のグテレス事務総長とも電話協議し、トルコが仲介に取り組む可能性などを話し合った。
また、アンカラで行ったオーストリアのネハンマー首相との共同記者会見で「この地域や他国の指導者と協議し、仲介や戦争停止の方法を見い出そうとしている」と説明。
「私は重大な懸念を抱いている。この(紛争が)1、2週間で終わるとは思えないため、われわれは和平への努力を続けている」と述べた。
同氏はこの日、イスラエルのヘルツォグ大統領のほかレバノン、カタール、エジプトの首脳、パレスチナ自治政府のアッバス議長とこの問題を協議した。
ロシアのプーチン大統領は10日、中東のパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに大規模攻撃を仕掛け、イスラエルが報復した軍事衝突は米国の中東政策の失敗を示していると非難した。
プーチン氏は、モスクワを訪問中のイラクのスダニ首相に対して「これは米国の中東政策の失敗の生々しい実例であることに多くの人が同意すると思う」と伝えた。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は戦闘状態にある双方と連絡を取っていると説明し、ロシアは紛争解決において役割を果たすことを模索すると述べたものの具体的な方法は明らかにしなかった。
プーチン氏は和平のための国際的な努力を米国が 「独占」しようとしているとし、米政府は双方が受け入れられるような妥協点を模索することを怠っていると非難した。
今回の軍事衝突以来、クレムリンは双方との関係が強固なのを強調し、公平だと示そうとしている。
ロシアは、ハマスも含めたパレスチナ側と長年のつながりがある。ペスコフ氏はイスラエルとも「多くの共通点」を持っているとした上で、「したがって、われわれはこの紛争の双方との関係を維持する。連絡を取り合って和解のための共通の基盤を模索するためのあらゆる方法に参加するものの、それはほとんどなく、最近の例が示すようにあまり効果的には機能していない」と言及した。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派とイラクの民兵組織の中核的な役割を担うバドル組織の幹部が相次いで、パレスチナのイスラム組織ハマスと対立するイスラエルを支援するために米国が介入した場合には米国も標的にすると表明した。
イエメンでは10日、フーシ派の指導者が、米国が介入した場合は無人機(ドローン)やミサイルなど軍事的手段で対応すると警告。フーシ派は、イラク国内のイスラム教シーア派や、すでに戦闘に関与しているレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどと協働する用意があると述べた。
イラクでは、親イランの有力政治家ハディ・アル・アミリ氏が同様の意思を表明。「もし彼らが介入してきたら、われわれも介入するだろう。米国がこの紛争に公然と介入してきた場合には、われわれは米国の全ての標的を合法的なものとみなすだろう」と述べた。
同氏はイランの支援を受けたシーア派の政治グループ、バドル組織を率いている。同組織はイラクで活動するシーア派民兵組織「人民動員隊(PMF)」の中核をなしており、PMFはイスラエルと戦うパレスチナ諸派への「明確な支持」を表明している。
イスラエルのネタニヤフ連立政権は、イスラム組織ハマスによる7日の奇襲で国内に1000人以上の犠牲者が出ていることを受け、主要野党幹部らと緊急の挙国一致政府を樹立することで合意した。与党リクードが10日発表した。
主要野党をそれぞれ率いるラピド元首相とガンツ元国防相が、挙国一致政府に加わることに基本合意している。
ガンツ氏率いる主要野党、国家団結党の報道官は、同党がネタニヤフ首相と緊急政府を樹立するという「良いニュース」がもたらされると楽観視していると語ったが、樹立の条件には踏み込まなかった。
ガンツ氏はネタニヤフ氏と10日に会談する予定だったが、11日に延期された。
中道「イェシュアティド」を率いるラピド氏は7日の攻撃の数時間後に出した声明で、ネタニヤフ氏に対し、政治的な相違を脇に置いて「専門的で限定的な緊急政府を同氏とともに樹立する」意思があることを伝えたと明らかにしていた。
欧州連合(EU)外相は10日遅くに会合を開催し、パレスチナ向け支援継続を巡る意見対立の解決を模索した。
EUは9日、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃を受けてパレスチナ向け支援を停止するとしたバールヘイ欧州委員(近隣国政策・拡大交渉)の発表を撤回した。
複数のEU加盟国政府が、パレスチナの一般市民が打撃を受けるとしてバールヘイ氏の発表に反対したためだ。
ただ、イスラエル・パレスチナ問題を巡るEU加盟27カ国内の長年にわたる立場の違いを反映し、意見は分かれている。
スペインのアルバレス外相(代行)はラジオ番組で、パレスチナ地域は近い将来より多くの援助を必要とする可能性があると主張。「協力は続ける必要がある。EUがテロ組織に指定しているハマスと、パレスチナの住民、パレスチナ自治政府、国連の現地組織とを混同してはならない」と述べた。
ドイツのショルツ首相は、援助提供とテロリストへの資金提供を断つことの間でバランスを取る必要があると指摘。「一方では人々が水や食料を確保できるよう人道的支援を行う必要があり、他方ではテロリズムにつながる構造を支援しないようにする必要がある」と述べた。
一方、チェコのフィアラ首相は援助停止を支持すると表明。「パレスチナ向け支援を即時停止し、システム全体の徹底的な見直しを開始することが正しいと確信している」とした。
イスラエルは10日、パレスチナ自治区ガザに過去最大規模の空爆を行い、ガザ地区との境界を掌握したと発表した。
イスラエルメディアはイスラム組織ハマスの攻撃による死者が900人に達したと報じた。大半が民間人で自宅や路上、ダンスパーティー会場で射殺されたという。
ガザの当局者はイスラエル軍の攻撃で700人近くが死亡し、ガザ地区全体が破壊されたと述べた。国連によるとガザで18万人が家を失った。避難民家族の緊急避難所として使用されていた旧市庁舎が攻撃され、多数の死傷者が出た。
イスラエル軍の報道官は9日以降、ガザからの新たな越境はないと述べた。
西側諸国がイスラエルを支持する一方で、アラブ諸国ではパレスチナ人を支援する街頭デモが行われた。イランはハマスによる攻撃を称賛したが、攻撃への直接的な関与は否定した
米国務省は10日、ブリンケン国務長官が12日にイスラエルを訪問し、同国の政府高官らと会談する予定と発表した。
国務省のミラー報道官は、イスラム組織ハマスの攻撃を受けて1000人超が犠牲となったイスラエルとの「連帯と支援に関するメッセージになる」と指摘。ブリンケン長官はイスラエル当局者から同国が直面している状況について直接話を聞き、何を必要とし、どのような支援が最善の策か把握したい考えと述べた。
同省によると、ブリンケン氏はイスラエル訪問後にヨルダンも訪れ、政府高官らと会談する予定。
バイデン米大統領は10日に演説し、イスラム組織ハマスのイスラエル攻撃を「全くの邪悪な行為」と非難し、米国によるイスラエルへの支援を強調した。
ハマスの人質となっている米国人への懸念も表明。イスラエルに「戦時国際法」に従って対応するよう求めた。
バイデン氏は「親が虐殺され、赤ん坊が殺され、家族全員が殺害された」などという痛ましい報告があると語った。
攻撃により少なくとも14人の米国人が死亡した。サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)によると、米国人20人が行方不明になっているが、人質にされているかどうかは不明。
バイデン氏はハマスが人質を処刑すると脅し「人間の道徳のあらゆる規範」に違反したと指摘。過激派組織「イスラム国」(IS)の暴挙を想起させると述べた。
この状況を利用しようと考えている国や組織に対するメッセージがあるとも述べ、「やめろ」と訴えた。イランや、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラなどのイランが支援する組織に言及したとみられる。
また、この攻撃がもたらし得る国内への脅威を排除するため、米国の法執行機関が措置を取っていると明らかにした。
警察が国内のユダヤ人の生活の中心地周辺の警備を強化しているという。
「米国には憎しみの場所はない。ユダヤ人に対しても、イスラム教徒に対しても誰に対してもだ」と語った。
米連邦捜査局(FBI)は事態を注意深く監視しているとした上で、イスラエルでのハマスの攻撃から生じる米国への脅威を示す具体的で信頼できる情報はないとしている。
演説に先立ち、バイデン大統領はイスラエルのネタニヤフ首相とこの4日間で3回目の電話会談を行った。バイデン大統領は会談で、米国が同様の攻撃を受けた場合、「迅速かつ断固とした圧倒的な対応に出るだろう」としつつも、民主主義国家は戦時下においても法の支配を堅持する必要があるとネタニヤフ首相に伝えたという。
イスラエルを支援するために提供する米国の軍事援助について説明し、議会に緊急の行動を取るよう要請すると述べた。関係筋によると、ホワイトハウスはウクライナとイスラエル双方への軍事援助を含む要請書を議会に提出することを検討している。
また、米国務省によると、ブリンケン国務長官が12日にイスラエルを訪問し、同国の政府高官らと会談する予定
いつもはにぎやかなイスラエルの都市テルアビブの街頭は閑散とし、学校は休校となり、フライトはキャンセルされた。予備役が招集され、多くの人々が急きょ軍服を身につけている。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの奇襲攻撃を受け、民間人を中心に多数の市民が殺害されたイスラエルは、ハマスの軍事インフラを破壊する準備を進めている。
イスラエルでは最高裁の権限を弱めるネタニヤフ政権の司法制度改革に抗議し、大規模な抗議活動が繰り広げられてきたが、ハマスによる7日の攻撃開始やレバノンへの紛争拡大の懸念で、政治対立は影を潜めた。
野党はネタニヤフ首相と挙国一致の戦時内閣づくりを議論しており、政権に反対する抗議活動も、南部の家族や兵士を支援したり募金したりすることに焦点がシフト。これまで拒絶しきた当局とも協力している。
ただ、何カ月も長期化が必至の過酷な軍事作戦の下で、イスラエルを奮い立たせている団結がいつまで続くかは不透明なままだ。ネタニヤフ氏は当面は政権の座にとどまるであろうが、情報・治安当局が今回の奇襲を事前に把握することができなかった事実は衝撃をもたらした。
1973年10月の「第4次中東戦争」の口火を切ったエジプト、シリア両軍によるイスラエル奇襲攻撃当時に首相だったゴルダ・メイア氏は、その数カ月後に不名誉な形で辞任しており、ネタニヤフ氏も同様の政治的代償を払うことになる可能性がある。
いったん棚上げ
戦時には政治的な立場の相違はいったん脇に置かれるが、ネタニヤフ首相は攻撃を未然に防げなかったとの理由で、政権にとどまる時間はあまり残っていないのではないかと、大手経済紙カルカリストの創業者兼発行人、ヨエル・エステロン氏は指摘する。
エステロン氏は「抗議活動でメイア氏は退陣に追い込まれたが、それは終戦後のことだった」とし、「今回もこうした事態が予想される。挙国一致内閣が成立する可能性は大きいものの、戦争終結後も続くか問えば、そのようには考えられない」と話した。
イスラエル軍はハマスの攻撃に対する報復として空爆を開始し、今後は地上部隊の投入につながる可能性もある。現時点でイスラエル国民は何がうまくいかなかったかの問題よりも、どう進むかに重点を置き、奇襲を防げなかった理由の調査はその後になるだろう。
団結の機運が高まっている理由の一つには、ハマスによる奇襲に続いてレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによる同様の攻撃に見舞われるとの懸念が挙げられる。ハマスとヒズボラはともにイランの強い支援を受け、テルアビブも十分射程距離内に入るものも含め、多数のミサイルを地下の発射装置に装備している。
イスラエルが全軍をガザに振り向ければ、ヒズボラが北方から攻撃する機会と捉えるとの懸念も深まっている。バイデン米政権はこうした可能性を阻止するため、空母「ジェラルド・R・フォード」などから成る空母打撃群を地中海東部に向かわせた
一方で、米国が仲介するサウジアラビアとイスラエルとの関係正常化に向けた協議は同国が軍事行動に全力を注ぐ間は一時停止となる見通しだ。
ネタニヤフ氏が首相であり続けるか、政権の座を去るかのいずれであっても、協議が再開されるかどうか予想するのは難しい。米国とサウジはともに協議の進展を望んでいるものの、中東地域が紛争状態にあればそれは不可能だ。
他方、ハマスが今回の攻撃をずっと計画していたのかどうかも明確でない。サウジとイスラエルの関係正常化が実現すれば、パレスチナへの関心が低下しかねず、ようやく最近それを阻もうと狙い、イスラエル国内の分断を好機と捉えた可能性も考えられる。
また、イスラエル軍情報部門のディレクターを務めていたアモス・ヤドリン氏は、イランが最近になってパレスチナ支援の取り組みに投資することを決めたとしている。イランは中東地域で反米・反イスラエル勢力を主導してきたが、その影響力がどの程度強いのかはっきりしていない。
米軍制服組トップのブラウン統合参謀本部議長は9日、イスラエル危機に関与しないようイランに警告した。また、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエル北部に向けてロケット弾を発射したことを受け、紛争の拡大を望んでいないと述べた。
米ホワイトハウスは同日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃にイランが直接関与していることを示す情報や証拠がないにもかかわらず、イランが加担していると表明した。
ブラウン氏はイランへのメッセージを問われると、「関与してはならない」と答えた。ブリュッセルに同行した少数の記者団に語った。先月就任が決まってから初めての公のコメントとなる。
「われわれはかなり強いメッセージを送りたい。これが拡大することを望んでおらず、イランにこのメッセージをはっきりと伝えることが目的だ」と述べた。
オースティン米国防長官は8日、イスラエルへの支持を示すため米海軍の空母打撃群を東地中海に派遣すると発表した
ブラウン氏は「イスラエルを支援するという非常に強いメッセージだ。しかし、それはまた、この特定の紛争を拡大させないための抑止力という強いメッセージでもある」と語った。
また、中東での軍事作戦を監督する米中央軍の副司令官を務めたこともある同氏は、ハマスの行動を過激派組織「イスラム国」の行動になぞらえた。
欧州連合(EU)は9日、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃を受けてパレスチナ向け支援を停止するとしたバールヘイ欧州委員(近隣国政策・拡大交渉)の発表を撤回した。EU加盟国の間で、バールヘイ氏の発表は権限を逸脱しているとの非難が相次いだことを受けた措置。
バールヘイ氏は9日、欧州委員会は6億9100万ユーロ(7億2900万ドル)のパレスチナ向けの開発支援を全面的に見直すと表明。これが混乱の発端となった。同氏はX(旧ツイッター)に「全ての支払いは即座に停止される」と投稿した。
これに対し複数のEU加盟国政府は、支援を停止すればパレスチナの一般市民が打撃を受けると指摘、欧州委にこうした決定を下す権限があるのかと疑問を呈した。
外交筋によると、スペインとポルトガル、アイルランドがバールヘイ氏の言動を公然と非難、他のEU加盟国も水面下で非難に加わった。
欧州委はバールヘイ氏の投稿から約5時間後に出した声明で支援の見直しを始めたことを確認したが、「支払いは予定されていないため、支払いの停止はない」と宣言。EUのボレル外交安全保障上級代表は、EUは決定済みの支払いは停止しないと強調した。
さらに欧州委は「EUが提供した資金がテロ組織によるイスラエルへの攻撃を間接的に可能にすることが絶対にないようにするため」の見直しを進めていると説明。開発支援とは別枠の人道支援は続けられるとした。
サウジアラビアのムハンマド皇太子はパレスチナ自治政府のアッバス議長に対し、サウジがパレスチナへの支援を続け、自治区に平穏と安定を取り戻すための取り組みを惜しまないと述べた。
パレスチナの通信社WAFAが伝えた。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは、今回のイスラエルに対する大規模な攻撃を仕掛けるにあたり、計画がイスラエルによって察知されるのを防ぐため、2年も前から入念な偽装工作を行っていた。ハマスが戦闘を望んでいないと思い込んだイスラエルは、周到に仕組まれた奇襲作戦によって完全に虚を突かれた。
ハマスに近い消息筋は1973年の第4次中東戦争以来の規模となった今回の攻撃について「イスラエルに対して戦闘準備が整っていないという印象を与えた」と偽装工作の内幕を明かした。「大規模な作戦を準備する一方、イスラエルとの戦闘や対立を望まないという印象を広め、イスラエルを欺くため、数カ月間にわたり過去に例のない情報戦を展開した」という。
イスラエルはユダヤ教の安息日と宗教的祝日に合わせて行われた今回の攻撃が、事前に察知できなかったことを認めている。
イスラエル国防軍の報道官は「われわれにとっての9.11だ。してやられた。われわれは完全に意表を突かれ、敵は空からも地上からも海からも、多くの地点に素早く襲来した」と振り返った。
<経済重視を偽装>
ハマスに近い情報筋によると、事前準備のうち特筆すべきものの一つは、ガザ地区に模擬のイスラエル人入植地を建設して襲撃訓練を行ったことで、作戦のビデオまで作った。イスラエル側はそれを認識していたが、それでもハマスが対立を望んでいないと信じ込んでいたという。
ハマスは戦闘訓練を行う一方で、ガザ地区の労働者がイスラエル側で仕事に就くことできるようにする政策を重視し、新たな戦争を始めることには関心がないのだとイスラエルに思い込ませようとした。「イスラエルに対して、軍事的な賭けに出る準備ができていないというイメージを植え付けることができた」という。
イスラエルはハマスとの2021年の戦闘以降、ガザ地区のパレスチナ人がイスラエルやヨルダン川西岸地区で働けるように何千もの許可証を与えるなど経済的利益を提供することで、ガザ地区に基本的な経済的安定をもたらせようとしていた。イスラエル側では建設、農業、サービス業の給与が、ガザ地区の10倍になることも珍しくない。
別のイスラエル軍報道官は「(ガザ地区から)働きに来て金を持ち帰ることで、一定の落ち着きが生まれると信じていた。われわれは間違っていた」と悔やんだ。
イスラエルの治安当局筋も、ハマスの偽装工作の術中にはまったことを認めた。「彼らはわれわれに金が欲しいのだと思い込ませた。そして、演習や訓練を続け、戦闘に打って出た」
<手掛かりを与えない>
ハマスがイスラエルへの敵意を抑えたことで、一部の支持者からは公然と批判を浴びた。しかし、こうした動きもまた、ハマスの関心は戦闘ではなく経済に向いているという印象を植え付けるのに役立ったと消息筋は語った。
ヨルダン川西岸地区では、ハマスの沈黙に嘲笑を浴びせる人々もいた。昨年6月にパレスチナ自治政府のアッバス議長が率いる主流派組織ファタハが発表した声明では、ハマスの指導者らが国外に逃れ、「豪華なホテルや別荘」に住んでいると非難した。
さらに別のイスラエル安全保障筋によると、イスラエルはガザ地区におけるハマス指導者のシンワル氏が、ユダヤ人殺害よりもガザ地区の運営に注力していると信じていた時期があった。
また、イスラエル自体もサウジアラビアとの関係正常化に取り組み、ハマスから関心が逸れていたという。
ハマス指導者の多くは計画を知らされておらず、攻撃に投入された1000人の戦闘員も訓練中には正確な目的を全く知らされなかったという。
ハマスの情報筋によると、作戦は4つの部分に分けられていた。初動はガザ地区から3000発のロケット弾が発射され、同時に電動パラグライダーなどにより戦闘員が上空から侵入。グライダーに乗った戦闘員は地上に降り立つと陣地を確保し、イスラエルが築いた防壁に対する攻撃準備を整えた。
戦闘員は爆薬で防壁を破壊し、オートバイで侵入。ブルドーザーが隙間を広げ、さらに多くの戦闘員が四輪駆動車でイスラエル側に侵入した。
<イスラエルに大きな被害>
消息筋によると、ハマスの特殊部隊はイスラエル軍のガザ南部司令部を攻撃し、通信を妨害した。ハマスに近い消息筋によると、作戦の最終部分は人質のガザ地区への移動で、その大半が攻撃の初期に達成された。ガザ地区の近くでは、音楽フェスの参加者が人質となった。
イスラエル治安筋によると、イスラエル軍はガザ地区に近い南部ではフル稼働していなかった。イスラエル人入植者とパレスチナ人武装勢力の間で暴力の応酬が急増し、一部の部隊がイスラエル人入植者を守るためにヨルダン川西岸地区に再配置されたという。「彼ら(ハマス)はその機に乗じた」という。
スペインのアルバレス外相(代行)は10日、パレスチナ向け支援停止への反対姿勢を示した。地元ラジオ局とのインタビューで語った。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃と、その後のイスラエル軍によるガザ砲撃を受け、パレスチナは近い将来、より多くの援助を必要とすることになると指摘。
「協力は続ける必要がある。EU(欧州連合)がテロ組織に指定しているハマスと、パレスチナの住民、パレスチナ自治政府、国連の現地組織とを混同してはならない」と述べた。
EUはきょう外相会合を開催し、パレスチナ支援問題を協議する。
バールヘイ欧州委員(近隣国政策・拡大交渉)は9日、パレスチナ向け支援について「全ての支払いは停止された」と表明した。その後欧州委は同委員の発言を撤回、支援の見直しを始めたことは事実だが、支払いは停止されていないなどと説明した
イスラエルは10日、パレスチナ自治区ガザに過去最大規模の空爆を行い、ガザ地区との境界を掌握したと発表した。
イスラエルメディアはイスラム組織ハマスの攻撃による死者が900人に達したと報じた。大半が民間人で自宅や路上、ダンスパーティー会場で射殺されたという。
ガザの当局者はイスラエル軍の攻撃で700人近くが死亡し、ガザ地区全体が破壊されたと述べた。国連によるとガザで18万人が家を失った。避難民家族の緊急避難所として使用されていた旧市庁舎が攻撃され、多数の死傷者が出た。
イスラエル軍の報道官は9日以降、ガザからの新たな越境はないと述べた。
西側諸国がイスラエルを支持する一方で、アラブ諸国ではパレスチナ人を支援する街頭デモが行われた。イランはハマスによる攻撃を称賛したが、攻撃への直接的な関与は否定した。
ターク国連人権高等弁務官は10日、イスラエル軍の空爆によりパレスチナ自治区ガザ全域で住宅や学校、国連の建物が被害を受け、民間人に犠牲者が出ていると指摘した。
「国際人道法は明確だ。民間人や民間物を避けるために常に注意を払うという義務は、攻撃を通じて適用される」とした。
イスラエルのガラント国防相が、ガザの封鎖を強化して食料や燃料の供給を止めると発表したことについて、市民の生命を危険にさらす「包囲」は国際法で禁止されていると強調した
<10月10日朝まで>
ロシアと関係のあるグループを含むハッカー集団が、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに同調し、イスラエル政府やメディアのウェブサイトを攻撃している。ハマスは週末にイスラエルに大規模攻撃を仕掛けた。
ロシアの愛国的なボランティアのハッカー集団と称するキルネットは8日、全てのイスラエル政府システムを標的にDDos攻撃として知られるタイプの分散型サービス妨害攻撃を行うと表明。今回の流血の事態はイスラエルに責任があるとし、ウクライナと北大西洋条約機構(NATO)を支援していると非難した。その後、8日にイスラエル政府と公安庁のウェブサイトを一時停止させたと主張した。
同集団の主張はすぐには立証できなかった。ウェブサイト監視サイト、チェックホスト・ドット・ネットによると、両ウェブサイトは8日、一時停止していた。
一方、サイバーセキュリティーの専門家がロシアとの関係が深いとみているハッカー集団アノニマス・スーダンは、「パレスチナのレジスタンス」への支持を表明。イスラエル英字紙エルサレム・ポストのウェブサイトを9日午前に一時オフラインにしたとして、同ウェブサイト攻撃を認めた。同紙はX(旧ツイッター)に「複数のサイバー攻撃の標的になった」との声明を投稿した。その後、ウェブサイトは復旧した。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのイスラエル南部に対する攻撃をイランは知っていた可能性があると、ネタニヤフ首相の側近の1人が語った。
イスラエルのデルメル戦略問題相はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、イランが攻撃を事前に知っていたかについて「当初はそうだとは考えなかった。だが今は、知っていた可能性を示す一定の証拠がある。この証拠の検証に取り組んでいるところだ」と述べた。
ハマスによる攻撃と侵入はイスラエルを揺るがした。これが中東地域を再び不安定化させ、イスラエルのイラン攻撃につながる恐れがあるとの懸念から、9日の市場で原油先物は急伸している。イスラエルや米欧の当局者はイランを全般的に非難してはいるが、イランが先週末の攻撃を首謀したことを示す直接的な証拠はないとも説明している。
デルメル氏は「イランが事前に知っていたか、われわれにはまだ明らかではない」と述べる一方、「だがイランは現在、さらに多くのテロ集団をこの戦闘に送り込もうとしている」と主張した。
ガザやそれ以外の地域に潜む戦闘員に対し、イスラエルの対応は厳しいものになると同氏は警告。ただ、イスラエル軍地上部隊がガザに侵攻するかどうかは明言を避けた。大規模なガザ侵攻となれば2014年以来で、当時は7週間に及び、パレスチナ側に2000人余り、イスラエル側に数十人の死者が出た。
「それにはしばらく時間がかかる」とデルメル氏は述べ、「だが、ハマスばかりでなくイスラエルの敵の誰もが二度とこのようなことを考えられないよう、われわれは高い代償を払わせるつもりだ」と続けた。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは9日、イスラエル軍によるレバノンへの砲撃で少なくともメンバー3人(訂正)が死亡したと発表した。また、イスラエル北部に向けてロケット弾を発射したことを明らかにした。
この砲撃は、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの衝突が、レバノン国境を越えて北に拡大したことを意味する。
ヒズボラは声明で、ガリラヤ地方のイスラエル軍拠点2カ所にロケット弾と迫撃砲を発射したと述べた。イスラエル軍もレバノンからイスラエルへの多数の「砲撃」を確認したと発表。反撃しているとした。
イスラエル軍は9日、イスラエル軍兵士がレバノン領内からイスラエル領内に侵入した武装集団を攻撃し、少なくとも2人を殺害したと発表。
ヒズボラ関係者は先に、同組織が国境を越えた襲撃に関与していることを否定していた。ハマスやパレスチナの過激派「イスラム聖戦」の関係者も関与を否定した。
レバノンにある国連平和維持活動(PKO)の報道官はレバノン南部の国境で交戦があったことは認識しているが詳細は不明とした。
バイデン米大統領は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃で、少なくとも11人の米国人が死亡したと明らかにした。
ハマスが人質として拘束している人の中にも米国人が含まれる可能性が高いとし、情報共有や米政府の専門家派遣を含めイスラエル側と全面的に協力するよう指示したと述べた。
また、行方不明になっている米国人の居場所についてイスラエル当局と連携して情報収集しているとした。
さらに、米国内では各地の警察がユダヤ人コミュニティー周辺の警備を強化していると説明した。
一方、英BBCは9日、イスラエル国内で10人以上の英国人が死亡したとみられるか行方不明になっていると報じた。
ただ、クレバリー英外相はイスラエルには英国とイスラエルの二重国籍者がかなり多く、その大半はイスラエルに永住し、イスラエル国防軍(IDF)への兵役が義務付けられているため、死傷者数などを把握することは難しく、推測もしないとした。
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を受けて米政府が現地に軍を派遣する計画はないと述べた。その上で、地域における米国の利益を守ると表明した。
また、イランがハマスの支援に「ある程度加担していることは間違いない」としながらも、米政府はイランが今回の攻撃計画に直接関与したという具体的な証拠を得ていないと語った。
ホワイトハウスはイスラエルから安全保障の強化要請があると見込んでおり、可能な限り迅速な対応に努めると述べた。
また、ハマスの攻撃がサウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けた取り組みに「ブレーキをかけたと言うのは早計だ」とし、関係正常化に向けた外交努力は引き続き促進されるべきだと指摘した。
米国、ドイツ、英国、フランス、イタリアの首脳は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を非難する共同声明を発表し、イスラエルへの「揺るぎない結束した支持」を表明した。
バイデン米大統領、マクロン仏大統領、ショルツ独首相、メローニ伊首相、スナク英首相は声明で「イスラエルが自国を防衛し、最終的に平和で統合された中東地域の条件を整えられるよう、われわれは同盟国として、イスラエルの共通の友人として、結束と連携を続けていく」とした。
イスラエル軍は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘に向け、過去最高となる30万人の予備役を招集したと明らかにした。地上攻撃を計画している可能性がある。
ハマスによる週末の攻撃を受け、イスラエルはガザを空爆。ハマスは、イスラエルが警告なしに民家を爆撃するごとに拘束したイスラエル人の人質を1人ずつ処刑すると警告した。
イスラエル領内では、パレスチナの戦闘員が7日の攻撃以降も複数の地域を占拠している。
イスラエルのテレビ局は、ハマスの攻撃による死者が900人に上り、少なくとも2600人が負傷したと伝えた。ガザの保健省は7日以降、イスラエルの空爆で少なくとも687人のパレスチナ人が死亡し、3726人が負傷したと発表した。
死者にはイタリア、ウクライナ、米国の市民も含まれており、バイデン米大統領は9日に少なくとも11人の米国人が死亡したと発表した。
わずか2日間で30万人の予備役が招集されたことから、イスラエルがガザへの地上攻撃を計画しているのではないか、という憶測を呼んでいる
イスラエル軍主席報道官のダニエル・ハガリ氏は「これほどの規模の招集は前例がない。これからも攻勢を掛けていく」と述べた。
また、イスラエルのガラント国防相は、ガザの封鎖を強化して食料や燃料の供給を止めると発表した。
双方の仲裁に乗り出す動きも見られている。エジプトの治安筋によると、過去にイスラエルとハマスの仲裁をしたエジプトは双方と緊密に連絡を取り合っているという。トルコのエルドアン大統領も、仲介に意欲を示した。
関係筋によると、カタールの担当者がハマス幹部と緊急の電話会談を行い、双方が拘束している女性や子どもの解放に向けて交渉している。
中国外務省の毛寧副報道局長は9日の記者会見で、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエル軍による戦闘を巡り「市民を傷つけ、安定を破壊する行為に反対する」と述べた。一方でハマスを非難せず「中国はパレスチナとイスラエルの共通の友人だ」と強調した。紛争当事者のいずれかを支持する立場を取らずに対話を呼びかける方針とみられる。
多数の犠牲者が出ている現状を踏まえ、毛氏は「即時停戦と市民の保護、さらなる情勢悪化の防止を呼びかける」と主張し、交渉を通じた解決の必要性を訴えた。ハマスを非難しない理由を問われると「パレスチナとイスラエルの共存を望む」と明確な回答を避けた。
米国防総省高官は9日、レバノンの親イラン武装勢力ヒズボラがイスラエルでの戦闘に加わるシナリオに懸念を示した。米軍の空母打撃群が長距離攻撃の役割を担うと明言し、戦線拡大を防ぐ考えを強調した。
高官は記者団に対し、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスによるイスラエル攻撃に関して過激派組織「イスラム国」(IS)に匹敵する残忍さと非難した。「オースティン国防長官はイスラエルの自衛権を明白に支持する」と話した。
東地中海に展開する予定の原子力空母ジェラルド・フォードを中心とする空母打撃群に関し「イランやヒズボラなどへの抑止のシグナルだ」と説明した。「この戦闘に参加して緊張を拡大させようとする敵はそれを再考すべきだ」と明言した。
国防総省高官はイスラエルに弾薬を早期に供給するとも重ねて言明した。「極めて重要になる多くの種類の弾薬やその他の装備品を可能な限り早く送るために取り組んでいる」と述べた。防空弾などを送る見通しだ。
イスラエル軍は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの大規模戦闘に向け、過去最高となる30万人の予備役を招集したと明らかにした。
7日から始まった戦闘で、イスラエルはガザの標的に空爆を行う一方で、地上ではハマスが占拠した集落の奪還に向けた戦闘を続けている。
主席報道官のダニエル・ハガリ氏は、集落の奪還に一定の成果を上げているものの、ハマス側の抵抗で一部で戦闘が続いていると説明した。
7日以降これまでに30万人の予備役を招集したとし、「これほどの規模の招集は前例がない。これからも攻勢を掛けていく」と述べた。
また、イスラエル領内で部隊の要員73人を含む700人が死亡したとの一部報道を確認した。一方で、パレスチナ側の戦闘員数百人を殺害したと説明した。
これより先、軍の別の報道官は、ガザからイスラエル領内へのハマス戦闘員の流入が続いていると述べていた。
一方、ガザの保健当局は9日、今回の戦闘に絡むパレスチナ側の死者が少なくとも493人、負傷者は2751人になったと発表した。
オースティン米国防長官は8日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃を受け、イスラエルへの支持を示すため米海軍の空母打撃群を東地中海に派遣すると発表した。
空母「ジェラルド・フォード」のほか誘導ミサイル巡洋艦や複数の誘導ミサイル駆逐艦を移動させる。
また、周辺地域でF35、F15、F16、A10などの戦闘機部隊を増強し、イスラエルに弾薬を供給する方針も明らかにした。
バイデン米大統領は8日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話協議し、イスラエル軍に対する追加支援を数日中に実施すると伝えた。
国防総省はオースティン氏がイスラエルのガラント国防相と電話協議し、米国の対応について説明したと明らかにした。オースティン氏はイスラエルの自衛の権利に対する米国の揺るぎない支持を確認するとともに、今回の米国の措置について、この地域における米軍の態勢を強化し、地域の抑止力を高めるために取られたと強調した。
トルコのエルドアン大統領は8日、イスラエルとパレスチナ勢力の緊張緩和に向けて外交努力を加速させると表明した。その上で「2国家共存」が地域の平和を実現する唯一の道との見方を示した。
衝突を激化させる行動をやめるよう双方に呼びかけ、イスラエルとパレスチナの対立が中東のあらゆる問題の根源にあると指摘。「持続的な地域の平和はパレスチナ・イスラエル問題の最終的な解決策を見いだすことによってのみ可能になる」とし、2国家共存の観点を維持することが非常に重要だと述べた。
トルコのフィダン外相は7日の戦闘開始以降、米国やパレスチナ自治政府のほかカタール、サウジアラビア、イラン、エジプト、ヨルダンなどの外相と電話で情勢を協議した。
ブリンケン米国務長官は8日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃について、イスラエルとサウジアラビアの関係正常化に向けた動きを阻止する狙いもあった可能性があるとの見方を示した。
米CNNのインタビューで「イスラエルとサウジのほか、イスラエルとの関係正常化に関心がある他の国々を近づける取り組みを妨害することが動機の一つだったとしても驚きではない」と述べた。
また、攻撃の背後にイランがいることを示す証拠は現時点で確認していないとしつつ、イランとハマスの長年にわたる関係に言及した。
イスラエルのネタニヤフ首相は先月、サウジとの和平に近づいていると述べ、実現すれば中東の秩序再編につながる可能性があるとしていた。
米ホワイトハウスは8日、今回の攻撃にもかかわらずサウジとイスラエルの関係正常化の取り組みは継続すべきと表明。ファイナー大統領副補佐官はFOXニュース・サンデーに対し「可能性を模索し続けることが両国の利益になると考えている」と述べた。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの攻撃の応酬では、双方で民間人含め480人以上の死者が出た。衝突は8日未明も続いており、市民らは避難先で息をひそめている。
ガザに近いイスラエル南部スデロットでは、イスラエル人の民間人の死体がガラスが散乱する道路に横たわり、自動車の中で死亡している男女の姿もあった。
住民のシロミさんは、「外に出てみたらテロリストや市民の死体がたくさんあった。スデロットでは、道路沿いやそのほかの場所が死体の海になっている」と話した。
民家の奥深くに身を隠したイスラエル市民らは、恐怖におののきながら電話やテレビで状況を説明した。
武装集団の襲撃を受けたダンスパーティー会場から脱出したというエスター・ボロチョフさんは、脱出しようと乗った車の運転手が至近距離から撃たれて死亡したため、車内で死んだふりをして生き延びたという。
「脚を動かすことができなかった。後で(イスラエル)兵士が来てバスに乗せてくれた」と、ボロチョフさんは入院先の病院でロイターの取材に答えて振り返った。
一方、ガザでは黒煙や赤い炎が空を染めていた。今回の衝突で殺害された戦闘員の遺体が、緑色のハマスの旗にくるまれて運ばれていった。
ガザでは、負傷者や死者が病院に運び込まれているが、施設は老朽化して大混雑しているほか、医療器材も著しく不足している。空襲で被害を受けた現場に向かう救急車のほかは通りに動きはない。イスラエル側が電力供給を停止したため、ガザ全体が闇に包まれた。
イランのライシ大統領は8日、パレスチナのイスラム組織ハマスの指導者ハニヤ氏と電話会談、イスラエルへの攻撃を「勇敢だ」と称賛した。ライシ師は「ハマスの作戦はイスラム諸国の誇りを高める」と絶賛した。国営通信が伝えた。イランはイスラエルと敵対している。
ハニヤ氏は、ライシ師がハマスを支持していることに感謝の意を表明。「私たちがイスラエルとの戦いで達成したことは、イスラム教徒の支持の結果であり、特にイランは支持者の筆頭だ」と述べた。
イラン大統領府によると、ライシ師は8日に発表した声明で、全てのイスラム諸国にパレスチナを支援するよう呼びかけた。「パレスチナの正当防衛を支持する。パレスチナの人々は戦場において間違いなく勝者だ」とも強調。イスラエルに対しては「地域の安全保障を危険にさらしている責任がある」と非難した。
ライシ師は8日の閣議で、ハマスの作戦に対してイスラエルは軍事上、失敗したと語った。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘は9日で3日目に入り、これまでに双方合わせて1100人余りが死亡した。
世界の石油供給量の3分の1近くを占める中東で緊張が高まる恐れから原油価格は急伸した。今回の攻撃はこの数十年間で最も激しいものとなり、イスラエルはイランの関与を主張しているが、イランは否定。西側諸国はイランの直接的な関わりの可能性について公に言及することには消極的だ。
イスラエルの中央銀行は9日、この日下落した通貨シェケルを支えるための450億ドル(約6兆7000億円)規模の計画を発表した。
ハマスによる攻撃は前例のない規模で、イスラエルの市民ら多数が人質として連れ去られた。米国は空母打撃群を地中海東部に向かわせるとともに、武器を含む追加の装備を現地に送るとしている。
イスラエル、シェブロンに海上ガスプラットフォームの生産停止指示
シェブロンは東地中海のイスラエル沖にあるガス田で操業する傘下企業が「タマル・ガスプラットフォームでの生産を停止するようイスラエルのエネルギー省から指示された」と発表した。
イスラエル、予備役30万人を招集
イスラエルは30万人の予備役を招集している。ハマスとの戦争エスカレートに備える。
テレビ放送されたイスラエル軍の発表文で明らかにされた。エルサレム・ポスト紙によると、この招集規模は過去最大。イスラエルは正式に宣戦布告し、ハマスの軍事インフラ解体まで攻撃を停止しないと表明した。これには地上侵攻も想定され、終結までに何カ月も要する可能性が高い。
イスラエル行き航空便、運航停止が増加
イスラエル行きの便の運航を停止する航空会社が増えている。ハマスの奇襲攻撃を受けてイスラエルは戦争状態を宣言し、米当局は状況を注視して運航再開を判断するよう航空会社に呼び掛けている。
これまでにデルタ航空やユナイテッド航空、アメリカン航空などの米系航空会社、ルフトハンザ航空、エールフランスKLM、ウィズエアーを含む欧州系航空会社がそれぞれテルアビブ便の運休を決定した。
イラン、関与を否定
ハマスの攻撃にイランが関与していたとの主張を、イランが否定した。イラン学生通信(ISNA)が同国の国連代表団メンバーであるアリ・カリミマカーム氏の発言として報じた。
「われわれはパレスチナの側に立つ。共感し、強く支持している」と同氏は述べつつ、「だが、パレスチナの対応にわれわれは何ら関与していない。パレスチナが純粋に独自で行っている」と説明したという。
ガザからさらなる侵入の試み、イスラエル軍が応戦
ハマス戦闘員数百人が警備のフェンスを破ってイスラエル南部に依然侵入しようとしていると、イスラエル軍が明らかにした。
イスラエル国内で人質が取られている状況も、とりわけ一つの地域で続いていると、同国軍の報道官がブルームバーグ・ラジオに対して語った。
イラン大統領、ハマスの「勝利」に祝意
イランのライシ大統領は、ハマスの「勝利」をたたえるメッセージを出した。
内閣が政府のX(旧ツイッター)アカウントに掲載したコメントで、大統領はハマスによる攻撃は「脆弱(ぜいじゃく)なシオニスト政権に対する抵抗の現れだ」とした。
南部で戦闘続く-イスラエル軍報道官
イスラエル軍のヘクト報道官は9日、同国南部では不安定な状況が続いていると語った。同軍がガザ地区にあるロケット弾発射拠点を含む1000カ所余りに攻撃を加え、4つの戦闘部隊を投入したことを明らかにした。
少なくとも4人の米国人死亡-シューマー氏
イスラエルとハマスの戦闘で少なくとも4人の米国人が死亡した。米民主党ののシューマー上院院内総務が声明で明らかにした。「悲しいことだが、犠牲者数が増えることは確かだ」とし、事態が地域的な火種に発展しないようにするため、米国はイランとその代理勢力への圧力を続けるとした。
中国、即時停戦を呼び掛け
中国外務省は8日の声明で、即時停戦を呼び掛けるとともに、パレスチナ独立国家への支持をあらためて表明。声明はハマスの名前には触れず、週末の出来事を「パレスチナとイスラエル間の緊張と暴力のエスカレート」と表現した。
この声明について、中国を訪問しているシューマー上院院内総務は王毅外相に対し、中国政府の反応に「非常に失望した」と伝え、ハマスの攻撃を非難するよう促した。
原油先物が急伸、緊張高まりで
原油価格は一時5%急伸。ハマスによる攻撃を受け、重要な海上交通の要衝が脅威にさらされ、世界の消費者に原油などのエネルギーを輸出している中東の主要な供給国が不安定化する恐れがある。
戦争リスクプレミアムが市場に戻り、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油は1バレル=87ドル付近で取引されている。今回の出来事が直ちに供給への脅威になるわけではないが、米国とイランを巻き込んだ、より壊滅的な代理戦争が勃発するのではないかとトレーダーは懸念している。
ドル上昇、安全資産需要高まる
アジア時間9日早朝の取引で、ドルは大半の主要通貨に対して上昇。ハマスによるイスラエルへの攻撃に為替トレーダーが反応した。
安全な逃避先と長く見なされてきたドルはユーロとポンドに対して上昇。オーストラリア・ドルやニュージーランド・ドルを含むリスク高めの通貨は値下がりした。
ブリンケン米国務長官、サウジ外相と会談
ブリンケン米国務長官とサウジアラビアのファイサル外相が電話会談を行った。米国務省の声明によると、ハマスによるイスラエルへの「テロ攻撃」に関連する最新情勢について話し合った。ブリンケン氏はサウジに関与を継続するよう促した。
国連安保理が非公開会合
国連の安全保障理事会は8日、ハマスによるイスラエル攻撃について協議する非公開会合を開催。米国のウッド国連代理大使によると、「多数の国」がハマスを非難したが、全ての安保理メンバーがそうしたわけではなかったという。
イランがハマスの攻撃を支援-WSJ
イラン革命防衛隊が、数カ月におよぶハマスとの数回にわたる会合でイスラエル攻撃の準備を支援したと、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が伝えた。ハマスと、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの上級幹部を引用している。
WSJによると、ハマスは2日のベイルートでの会合で攻撃への「青信号」を与えられたという。
米当局者はイランが資金や武器供給でハマスを支援していると指摘してきた。ただ、ブリンケン国務長官は8日、今回の攻撃でイランが直接関与した可能性も調べているが、その直接的な証拠はないと語った。
米、空母打撃群を派遣
米国は空母「ジェラルド・R・フォード」を含む、艦船6隻から成る空母打撃群を地中海東部に向かわせた。「地域の抑止力強化」のためだとして、オースティン国防長官が8日の声明で発表した。同地域の戦闘機飛行隊を増強することも明らかにした。
オースティン長官はまた、軍需品を含む米国の追加の装備やリソースが数日以内に現地に到着すると述べた。
イスラエルへの追加軍事支援を検討-ブリンケン国務長官
ブリンケン米国務長官は8日、複数の米テレビ局とのインタビューで、米国はイスラエルが要請してきた追加軍事支援を検討していると発言。追加支援はオバマ政権時代に合意した年38億ドル(約5700億円)の支援に上乗せするもので、「イスラエルの具体的な要請を精査している」と述べた。ハマスの攻撃で米国市民が殺害あるいは拉致されたとの報告にも注目していると発言した。
イスラエルの自衛権を支持-米大統領がネタニヤフ首相に伝える
ネタニヤフ首相は7日、バイデン米大統領と電話会談を行い、イスラエルは長期の戦闘に備えていると発言。バイデン大統領はイスラエルの自衛権を支持すると伝えた。イスラエル首相府が明らかにした。
バイデン大統領はその後にホワイトハウスで演説し、ハマスによる攻撃を「テロ組織」による襲撃だと非難。イスラエルに対する米国の支持は「揺るぎない」と表明した。
われわれは戦争状態にある-イスラエル首相
イスラエルのネタニヤフ首相は7日、「敵はこれまで経験したことのない代償を払うことになるだろう。われわれは戦争状態にあり、勝利する」とビデオ演説で訴えた。イスラエル軍の戦闘機はハマスの目標に対する空爆を実施した。
イスラエル国防軍のジョナサン・コンリカス報道官は8日の早い段階で、イスラエル国内での戦闘が続いており、「事態はまだ完全には収拾していない」とX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。
ハマスの軍事作戦で地域の安定や市場は動揺。中東の株式市場では8日、イスラエルの代表的な株価指数TA-35が6.5%ほど下落し、過去3年余りで最大の下げを記録したのをはじめ、サウジアラビアのタダウル全株指数は1.6%安、カタールとクウェートの株価指数も下落した。
イスラエル情報当局による73年以来の大失態か
ハマスによる攻撃は、1973年10月の「第4次中東戦争」の口火を切ったエジプト、シリア両軍によるイスラエル奇襲攻撃から50年に当たるだけに、同国側にとってショックは大きい。
今回の大規模攻撃を事前に把握できなかったイスラエルの情報当局にとっても、73年以来の大失態の一つとなる可能性があるが、複数の同国当局者は何が問題だったのかを理解するには時期尚早だと述べるとともに、50年前との比較を退けた。
中国の習近平国家主席は9日、同国を訪問した米上院議員団と会談した。これに先駆けて米民主党のシューマー上院院内総務は、イスラム組織ハマスとイスラエルの紛争に対する中国の姿勢を非難していた。
議員団とともに習氏と会談したシューマー氏は「イスラエルの人々と共に立ち、この卑劣で凶悪な攻撃を非難するよう中国の人々に求める」と訴え、「敬意を持ってこれを話しているが、この悲劇のさなかにイスラエルの人々に思いやりも支持も表明しなかった中国外務省の声明に私は失望した」と続けた。
シューマー氏はこの数時間前に中国の王毅外相とも会談し、イスラム組織ハマスによるイスラエルへのかつてない規模の侵入に対する中国政府の反応を批判していた。中東地域における予想外の暴力のエスカレートは、関係の円滑化を意図していた会談に緊張を加える恐れがある。
王氏は米上院議員団に対し、訪問が米中関係の修復に役立つと期待すると語った。
中国外務省は8日の声明で、即時停戦を呼び掛けるとともに、パレスチナ独立国家への支持をあらためて表明。声明はハマスの名前には触れず、週末の出来事を「パレスチナとイスラエル間の緊張と暴力のエスカレート」と表現した。
シューマー氏は今回の訪中の主目的が「経済的互恵」を確保することだと強調した後に、ハマス攻撃に対する中国の反応への失望を表明した。
シューマー氏は北京の釣魚台迎賓館での会談で、「米国はデカップリングを望んでいない。中国の人々が経済的機会を得ることをわれわれは望んでいる。これは米国にとって好ましいことだ。ただ、中国は米国の企業と労働者に対し、公平な条件を提供する必要がある。われわれ代表団を含むほとんどの米国人は、そうした公平性が現在確保されているとは考えていない」と述べた。
イスラエル中央銀行は9日、通貨シェケルを買い支えると発表した。同中銀はシェケルの変動相場制を採用して以来、為替市場に介入していないが、イスラム組織ハマスによる7日の奇襲攻撃を受けて前例のない市場支援策を打ち出した。
9日の発表資料によれば、中銀は最大300億ドル(約4兆4700億円)の外貨売り介入を行うほか、スワップのメカニズムを通じて最大150億ドルの流動性を供給する。シェケル相場のボラティリティーを抑え、必要な流動性を供給することが目的だという。
中銀はこれまで長きにわたりシェケルの過大評価を懸念してきたが、介入はこれが逆転し、シェケル下落を防ぐ意図を示す。介入措置の発表でシェケルは対ドルで一時下げを消したものの、再び下落。現地時間午前11時30分時点で2.2%安の1ドル=3.9246シェケルと、2016年以来の安値を付けた。
リヤド:サウジアラビアの外相であるファイサル・ビン・ファルハーン王子は7日、同国は非武装の民間人に対する攻撃を「いかなる形であれ」受け入れないと述べた。外務省の声明が明らかにした。
同外相の発言は、7日朝に勃発したガザ地区の暴力について話し合うために米国のアントニー・ブリンケン国務長官およびEUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表と別々に行った電話会談においてなされたものだ。
パレスチナ組織「ハマス」はイスラエルに対し近年で最大の攻撃を開始した。今回の攻撃に至るまでの何ヶ月もの間、イスラエル・パレスチナ紛争における暴力が高まっており、占領下のヨルダン川西岸地区において近年見られない規模の犠牲者が出ていた。
早朝に行われたハマスによる陸海空の攻撃を受け、イスラエルはガザ地区を空爆した。イスラエル・パレスチナ紛争における2021年5月以降で最大のエスカレーションとなった。
ファイサル王子は、エスカレーションを止め、全当事者が国際人道法を尊重することが必要だと強調した。
また、「事態の沈静化とさらなる暴力の回避に向けた協調的な努力」を呼びかけた。
ファイサル王子は、カタールのムハンマド・ビン・アブドルラフマン・ビン・ジャーシム外相、エジプトの外相、ヨルダンの外相とも別々に電話会談を行った。
一方、米国務省の声明によると、ブリンケン国務長官はパレスチナのマフムード・アッバース大統領との電話会談でパレスチナ自治政府に対し、ヨルダン川西岸地区の平穏と安定を回復させるよう求めた。
国務省の報道官は、ブリンケン国務長官は「ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃を米国は明白に非難すると改めて強調し、地域の全ての指導部に対し彼らを非難するよう呼びかけた」と述べた。
「同国務長官はパレスチナ自治政府に対し、ヨルダン川西岸地区の平穏と安定を回復させるための措置を継続・強化するよう求めた」
パレスチナのWAFA通信によると、アッバース大統領はブリンケン国務長官に対し、パレスチナ人に対する「不正義」がイスラエルとの紛争を「爆発」へと駆り立てていると述べた。
また、現在のエスカレーションの原因は「植民地主義者とイスラエル占領軍の行い、そしてイスラム教およびキリスト教の神聖さに対する攻撃」にあると非難した。
米ホワイトハウスによると、ジョー・バイデン大統領はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との電話会談において、「支援のためのあらゆる適切な手段を提供する用意がある」と明言した。同大統領はヨルダンのアブドッラー2世国王とも電話会談した。
エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、「状況が悪化しさらなる暴力へとなだれ込む危険性」に警鐘を鳴らした。
同大統領はフランスのエマニュエル・マクロン大統領との電話会談において、紛争の悪化を阻止するための国際的協力を求めた。
エジプトは歴史的に、イスラエル・パレスチナ紛争の主要な仲介役を務めてきた。
エジプトのサーミフ・シュクリー外相は、ヨルダン、UAE、トルコ、ロシア、ドイツ、フランス、ロシア、スペインの外相およびEUのボレル上級代表と電話会談し、「エスカレーションを止め全当事者が自制することが重要」だと強調した。
エジプト外務省の声明は、シュクリー外相は「国際的なアクター」を集めて「直ちに介入」する可能性を探っているとしている。
同外相とヨルダンのアイマン・サファディ外相の電話会談では、両外相は「事態が進行し危険なほどに悪化していることに対し深い懸念を表明した」という。
サファディ外相は別の声明の中で、状況の「不安定さ」について注意を促した。「特に、ヨルダン川西岸地区の都市や区域でイスラエルがパレスチナ人に対して行っている攻撃や人権侵害を鑑みてである」
エジプトのシュクリー外相はUAEのシェイク・アブダッラー・ビン・ザーイド外相との電話会談において、「現在の状況の重大性と、治安状況が制御不能に陥るのを防ぐためにあらゆる努力を行う必要性」について話し合った。
トルコの外務省関係者によると、同国のハカン・フィダン外相は地域諸国の外相と電話会談を行い。イスラエルとパレスチナの戦闘について話し合った。トルコは状況の激化抑制に協力する用意があるとしている。
この関係者は、フィダン外相はサウジ、カタール、イラン、パレスチナ、エジプトの外相と今回の紛争について話し合ったと語ったが、それ以上の詳細は明らかにしなかった。この関係者は後に、同外相はブリンケン国務長官とも電話会談し状況について話し合ったと明かした。
(Wall Street Journal) -- by Summer Said, Benoit Faucon and Stephen Kalin
DUBAI -- Iranian security officials helped plan Hamas's Saturday surprise attack on Israel and gave the green light for the assault at a meeting in Beirut last Monday, according to senior members of Hamas and Hezbollah, another Iran-backed militant group.
Officers of Iran's Islamic Revolutionary Guard Corps had worked with Hamas since August to devise the air, land and sea incursions -- the most significant breach of Israel's borders since the 1973 Yom Kippur War -- those people said.
Details of the operation were refined during several meetings in Beirut attended by IRGC officers and representatives of four Iran-backed militant groups, including Hamas, which holds power in Gaza, and Hezbollah, a Shiite militant group and political faction in Lebanon, they said.
U.S. officials say they haven't seen evidence of Tehran's involvement. In an interview with CNN that aired Sunday, Secretary of State Antony Blinken said: "We have not yet seen evidence that Iran directed or was behind this particular attack, but there is certainly a long relationship."
"We don't have any information at this time to corroborate this account, " said a U.S. official of the meetings.
A European official and an adviser to the Syrian government, however, gave the same account of Iran's involvement in the lead-up to the attack as the senior Hamas and Hezbollah members.
Asked about the meetings, Mahmoud Mirdawi, a senior Hamas official, said the group planned the attacks on its own. "This is a Palestinian and Hamas decision," he said.
The Iranian delegation at the United Nations in New York didn't respond to a request for comment. Iran's supreme leader, Ayatollah Ali Khamenei, has praised the attacks, saying in a post on X, formerly known as Twitter, that the "Zionist regime will be eradicated at the hands of the Palestinian people and the Resistance forces throughout the region."
A direct Iranian role would take Tehran's long-running conflict with Israel out of the shadows, raising the risk of broader conflict in the Middle East. Senior Israeli security officials have pledged to strike at Iran's leadership if Tehran is found responsible for killing Israelis.
The IRGC's broader plan is to create a multi-front threat that can strangle Israel from all sides -- Hezbollah and the Popular Front for the Liberation of Palestine in the north and Palestinian Islamic Jihad and Hamas in Gaza and the West Bank, according to the senior Hamas and Hezbollah members and an Iranian official.
At least 700 Israelis are confirmed dead, and Saturday's assault has punctured the country's aura of invincibility and left Israelis questioning how their vaunted security forces could let this happen.
Israel has blamed Iran, saying it is behind the attacks, if indirectly. "We know that there were meetings in Syria and in Lebanon with other leaders of the terror armies that surround Israel so obviously it's easy to understand that they tried to coordinate. The proxies of Iran in our region, they tried to be coordinated as much as possible with Iran," Israel's ambassador to the United Nations, Gilad Erdan, said Sunday.
Hamas has publicly acknowledged receiving support from Iran. And on Sunday, Iranian President Ebrahim Raisi talked to Palestinian Islamic Jihad leader Ziyad al-Nakhalah and Hamas chief Ismail Haniyeh.
Iran has been setting aside other regional conflicts, such as its open feud with Saudi Arabia in Yemen, to devote the IRGC's foreign resources toward coordinating, financing and arming militias antagonistic to Israel, including Hamas and Hezbollah, the senior Hamas and Hezbollah members said.
The U.S. and Israel have designated Hamas and Hezbollah as terrorist organizations.
"We are now free to focus on the Zionist entity," the Iranian official said. "They are now very isolated."
The strike was intended to hit Israel while it appeared distracted by internal political divisions over Prime Minister Benjamin Netanyahu's government. It was also aimed at disrupting accelerating U.S.-brokered talks to normalize relations between Saudi Arabia and Israel that Iran saw as threatening, the senior Hamas and Hezbollah members said.
Building on peace deals with Egypt and Jordan, expanding Israeli ties with Gulf Arab states could create a chain of American allies linking three key choke points of global trade -- the Suez Canal, the Strait of Hormuz, and the Bab Al Mandeb connecting the Red Sea to the Arabian Sea, said Hussein Ibish, senior resident scholar at the Arab Gulf States Institute in Washington.
"That's very bad news for Iran," Ibish said. "If they could do this, the strategic map changes dramatically to Iran's detriment."
Leading the effort to wrangle Iran's foreign proxies under a unified command has been Ismail Qaani, the leader of the IRGC's international military arm, the Quds Force.
Qaani launched coordination among several militias surrounding Israel in April during a meeting in Lebanon, The Wall Street Journal has reported, where Hamas began working more closely with other groups such as Hezbollah for the first time.
Around that time, Palestinian groups staged a rare set of limited strikes on Israel from Lebanon and Gaza, under the direction of Iran, said the Iranian official. "It was a roaring success," the official said.
Iran has long backed Hamas but, as a Sunni Muslim group, it had been an outsider among Tehran's Shia proxies until recent months, when cooperation among the groups accelerated.
Representatives of these groups have met with Quds Force leaders at least biweekly in Lebanon since August to discuss this weekend's attack on Israel and what happens next, they said. Qaani has attended some of those meetings along with Hezbollah's leader Hassan Nasrallah, Islamic Jihad leader al-Nakhalah, and Saleh al-Arouri, Hamas's military chief, the militant-group members said.
Iranian Foreign Minister Hossein Amir-Abdollahian attended at least two of the meetings, they said.
"An attack of such scope could only have happened after months of planning and would not have happened without coordination with Iran," said Lina Khatib, director of the SOAS Middle East Institute at the University of London. "Hamas, like Hezbollah in Lebanon, does not single-handedly make decisions to engage in war without prior explicit agreement from Iran."
The Palestinian and Lebanese militias' ability to coordinate with Iran will be tested in the coming days as Israel's response comes into focus.
Egypt, which is trying to mediate in the conflict, has warned Israeli officials that a ground invasion into Gaza would trigger a military response from Hezbollah, opening up a second battlefront, people familiar with the matter said. Israel and Hezbollah exchanged fire briefly on Sunday.
Hamas has called on Palestinians in the West Bank and Palestinian citizens of Israel to take up arms and join the fight. There have been limited clashes in the West Bank, but no reports of clashes between Arabs and Jews inside Israel, as happened in May 2021 when Israel and Gaza last engaged in extended combat.
The Iranian official said that if Iran were attacked, it would respond with missile strikes on Israel from Lebanon, Yemen and Iran, and send Iranian fighters into Israel from Syria to attack cities in the north and east of Israel.
Iran's backing of a coordinated group of Arab militias is ominous for Israel. In previous conflicts, the Soviet Union was the ultimate patron of Israel's Arab enemies and was always able to pressure them to reach some type of accommodation or recognize a red line, said Bernard Hudson, a former counterterrorism chief for the Central Intelligence Agency.
"The Soviets never considered Israel a permanent foe," he said. "Iran's leadership clearly does."
As Israel-Hamas War Rages, Oil Traders Focus on Iran (2)
(Bloomberg) --As oil traders prepare for the market to open after the sudden eruption of war in Israel, one question is key: will the conflict spread to the rest of the region?
Crude traders don’t expect a massive price surge as there’s no immediate threat to supply. But all eyes are on Iran, a major oil producer and key backer of the Hamas group that launched this weekend’s offensive on Israel.
A retaliatory strike against the Islamic Republic would inflame fears over the Strait of Hormuz, the vital shipping artery which Tehran has previously threatened to close. There’s also the prospect of the US cracking down again on a resurgent flow of Iranian oil exports.
“Iran remains a very big wild card,” said Helima Croft, chief commodities strategist at RBC Capital Markets and a former CIA analyst. “Israel will escalate its long-running shadow war against Iran” and “what is unpredictable is how Iran would respond to such an intensification.”
The risk of a wider conflict has emerged just as global crude supplies have been depleted by months of sharp production cutbacks by Saudi Arabia and Russia. Last month their supply constraints briefly pushed Brent futures to almost $100 a barrel.
“It is unlikely to impact oil supply in the short term,” said hedge fund trader Pierre Andurand, founder of Andurand Capital Management LLP. “But it could eventually have an impact on supply and prices.”
The onslaught comes almost exactly 50 years after the Arab oil embargo, when Saudi Arabia and other OPEC producers choked off flows to the west in the wake of the 1973 Yom Kippur War, which also involved Israel.
No one expects Riyadh — which has been negotiating with Washington over normalizing relations with Israel — to turn off the taps in solidarity with the Palestinians now. At worst, the conflict may derail the normalization talks and scupper any additional Saudi oil flows that may have resulted.
The energy minister of the United Arab Emirates, a key OPEC member, was clear on Sunday that the conflict wouldn’t affect the group’s decision-making.
“We do not engage in politics; we govern by supply and demand, and we do not consider what each country has done,” Energy Minister Suhail Al Mazrouei told reporters in Riyadh.
For its part, Iran, also an OPEC member, has expressed support for the Palestinian attack.
If Israel responds by striking any Iranian infrastructure, “crude prices would immediately spike on the perceived risk of a disruption,” said Bob McNally, president of Rapidan Energy Group and a former White House official. For now, that looks unlikely, he said.
Iranian oil has become increasingly important to the market as shipments have rebounded to a five-year high. That has come with Washington’s tacit blessing as the two sides have engaged in tentative diplomacy to re-establish limits on Tehran’s nuclear program.
This weekend’s hostilities could prompt President Joe Biden’s administration to deal more aggressively with those cargo flows, which mostly go to China.
“I think this development will mean stronger enforcement of Iranian sanctions, so less Iranian oil going forward,” said Andurand. “And then who knows what the domino effect will be in the region?”
In a more extreme scenario, Iran could respond to any direct provocation by blocking the Strait of Hormuz, a nautical choke-point just north of the Arabian Sea.
Tankers haul nearly 17 million barrels of crude and condensate each day through the waterway, which at its narrowest point is just 21 miles wide. Tehran threatened to close the strait when sanctions were imposed on the country in 2011, but ultimately backed off.
The swelling tide of Iranian barrels has helped to moderate fuel prices this year while the Saudis and Vladimir Putin’s Russia squeeze supplies. The joint Riyadh-Moscow action is draining oil inventories at the fastest pace in years, installing a hefty price premium on prompt supplies known in the industry as backwardation.
The “crude market is very tight” as “physical markets are screaming, with backwardation heading higher, dragging the flat price higher,”said Gary Ross, a veteran oil consultant turned hedge fund manager at Black Gold Investors LLC.
Last week brought signs that the push toward $100 had gone too far, as Brent slumped 11% to just under $85 on the ICE Futures Europe exchange. Production cuts by the Saudis and Russia may have juiced prices too high, exacerbating jitters over the economy and bolstering the risk of higher interest rates.
On the other hand, slashing output to about 9 million barrels a day has given Riyadh an immense buffer of spare production capacity that could be deployed if the current crisis leads to a disruption. The kingdom has about 3 million barrels day in reserve, and neighboring United Arab Emirates has another 1 million, according to Bloomberg estimates.
That prodigious safety cushion of idle capacity is another reason traders don’t expect an immediate price surge when markets reopen. Still, the events may restore some of the geopolitical risk premium that had melted away in recent years.
“The Hamas strike and Israeli response raises the geopolitical temperature,” said Richard Bronze, head of geopolitics at consultant Energy Aspects Ltd.
Oil Soars as Hamas’ Attack on Israel Fans Middle East Tensions
(Bloomberg) --Oil surged more than 3% after Hamas’ surprise attack on Israel over the weekend threatened to destabilize the Middle East, home to a key maritime bottleneck and several top suppliers of crude, fuel and energy to global consumers.
West Texas Intermediate traded above $85 a barrel in early Asian trade as a war-risk premium returned to markets. Traders fear an escalation of the violence — contained in the Middle East for now — could prompt a more devastating proxy war embroiling the US and Iran.
WTI and London’s Brent futures have plummeted this month, erasing more than $10 a barrel as worries about economies around the world and high interest rates clouded the demand outlook. Those fears overshadowed bullishness that led oil prices to rally in the third quarter as physical balances tightened due to prolonged Saudi-led crude output cuts.
Oil market observers will be watching for signs of a wider fallout involving Washington and Tehran after months of thawing relations. Iran has been exporting more oil in recent months, possibly contributing to moderating global prices. The Islamic state also conducted a rare prisoner swap deal, and freed up billions of dollars of frozen funds from previous oil sales.
“If Israel comes out and directly implicates Iran, we believe it will likely be difficult for the Biden administration to continue to adopt such a permissive sanctions regime,” RBC Capital Markets analyst including Helima Croft said in a note. “We anticipate that critics in Congress and elsewhere will contend that the White House is providing Iran with the financial wherewithal to sponsor such malign actors.”
Oil Surges Following Hamas Attack, Dollar Advances: Markets Wrap
(Bloomberg) --Oil soared more than 4% and Treasury futures jumped as traders reacted to shock attacks by Hamas within Israel over the weekend that left hundreds dead.
The Israel attacks sent West Texas Intermediate over $86-a-barrel Monday, days after crude posted its biggest weekly drop since March. The fallout in markets will likely be determined by whether conflict spreads to the rest of the Middle East region. Iran is both a major oil producer and supporter of Hamas. Treasury futures advanced while US equity futures slid in early Asia trading Monday.
“Geopolitical crises in the Middle East have usually caused oil prices to rise and stock prices to fall,” said Ed Yardeni, president of Yardeni Research Inc. “Much will depend on whether the crisis turns out to be another short-term flare-up or something much bigger like a war between Israel and Iran.”
The dollar advanced on haven demand as trading began in Sydney on Monday, seeing gains versus the euro and pound, while riskier currencies including its Australian counterpart slipped. The yen — another favored refuge for investors — rallied. Reactions will be affected by holidays in Japan and the US.
The fallout from the Israel attacks reverberated through Middle East markets on Sunday, sending stocks sliding and setting the tone for what’s likely to be a volatile start to the week. Major equities gauges in the region fell, led by a drop on Israel’s benchmark TA-35 stock index, which posted its biggest loss in more than three years, sliding 6.5%.
Stocks traded slightly higher at the open in Australia, while futures for Hong Kong equities gained and contracts for US stocks extended losses. The S&P 500 had advanced 1.2% Friday, snapping a four-week losing streak. The Nasdaq 100 jumped 1.7% with large-cap tech names, including Microsoft Corp., Apple Inc. and Nvidia Corp., powering the index higher.
South Korean and Japanese markets are shut for a holiday and there is no cash trading of Treasuries. China’s mainland markets are set to reopen after the Golden Week holidays while Hong Kong morning trading will be delayed due to a typhoon.
Inflation Worries
Rising oil prices could add to already high global inflationary pressures with investors still debating the odds of another rise in interest rates by the Federal Reserve this year.
“Any extension of this to oil-producing countries, Saudi Arabia in the lead, could make the price of crude oil more expensive, with negative inflationary effects for the West and would mean higher rates for longer,” said Guillermo Santos, head of strategy at Spanish private banking firm iCapital.
Yields on 10-year and 30-year Treasuries calmed on Friday after touching 2007 highs near 4.9% and 5.1%, respectively as global bonds sold off for a fifth straight week. An unexpected surge in hiring left swaps traders pricing in a roughly 50/50 chance of a rate hike by December.
The US nonfarm payrolls report showed employers quickened the pace of hiring, with 336,000 jobs being added in September — more than double economists’ estimates. The unemployment rate held steady at 3.8%, data from the Bureau of Labor Statistics showed Friday.
The bond selloff has been hammering risk assets from stocks to corporate credit on concerns that central banks will keep interest rates elevated longer than expected.
Mohamed El-Erian, the chief economic adviser at Allianz SE, sees more pain ahead.
“Something is likely to break,” he said on Bloomberg Television. The Bloomberg Opinion columnist said Friday’s job numbers were consistent with his call for a possible recession.
Some of the main moves in markets:
Stocks
S&P 500 futures fell 0.7% as of 8:19 a.m. Tokyo time. The S&P 500 rose 1.2% on Friday
Nasdaq 100 futures fell 0.6%. The Nasdaq 100 rose 1.7%
Australia’s S&P/ASX 200 rose 0.3%
Hong Kong’s Hang Seng futures rose 1.1%
Currencies
The Bloomberg Dollar Spot Index rose 0.1%
The euro fell 0.2% to $1.0564
The Japanese yen rose 0.1% to 149.17 per dollar
The offshore yuan was little changed at 7.3107 per dollar
The Australian dollar fell 0.3% to $0.6364
Cryptocurrencies
Bitcoin was little changed at $27,938.01
Ether fell 0.3% to $1,632.15
Bonds
The yield on 10-year Treasuries advanced eight basis points to 4.80%
Japan’s 10-year yield was unchanged at 0.800%
Australia’s 10-year yield declined four basis points to 4.50%
Commodities
West Texas Intermediate crude rose 4.2% to $86.25 a barrel
Spot gold rose 0.9% to $1,849.80 an ounce
<10月9日 日本時間2時までの報道>
イスラエル死者は600人以上に、市民ら拉致も-ハマスとの戦闘続く
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが7日開始した攻撃で、イスラエルでは少なくとも
600人が死亡した。同国政府が発表した。
イスラエル軍はガザからハマス戦闘員が侵入した地域の支配を奪還しようとしている。同国当局によると、侵入された少なくとも
29地点についてこれまでに支配を完全に回復したが、南部で戦闘は続いている。イスラエルの報復攻撃でパレスチナ側は
370人以上が死亡したという。
ハマスのイスラエルに対する攻撃は前例のない規模で、イスラエル領内には3000発を上回る数のロケット弾が撃ち込まれた。ハマス戦闘員はまた、イスラエルの市民ら多数を人質として拉致した。
イスラエルのネタニヤフ首相は7日、「敵はこれまで経験したことのない代償を払うことになるだろう。われわれは戦争状態にあり、勝利する」とビデオ演説で訴えた。イスラエル軍の戦闘機はハマスの目標に対する空爆を実施した。
イスラエル国防軍のジョナサン・コンリカス報道官は8日の早い段階で、イスラエル国内での戦闘が続いており、「事態はまだ完全には収拾していない」とX(旧ツイッター)への投稿で明らかにした。
ハマスの軍事作戦で、地域の安定や市場は動揺。中東の株式市場は8日、イスラエルの代表的な株価指数TA-35が6.4%安と過去3年余りで最大の下げを記録したのをはじめ、サウジアラビアのタダウル全株指数は1.6%安、カタールとクウェートの株価指数も下落した。
ネタニヤフ首相は7日、バイデン米大統領と電話会談を行い、イスラエルは長期の戦闘に備えていると発言。バイデン大統領はイスラエルの自衛権を支持すると伝えた。イスラエル首相府が明らかにした。
バイデン大統領はその後にホワイトハウスで演説し、ハマスによる攻撃を「テロ組織」による襲撃だと非難。イスラエルに対する米国の支持は「揺るぎない」と表明した。
8日にはブリンケン米国務長官が複数の米テレビ局とのインタビューで、米国はイスラエルが要請してきた追加軍事支援を検討していると発言。追加支援はオバマ時代に合意した年38億ドル(約5700億円)の支援に上乗せするもので、「イスラエルの具体的な要請を精査している」と述べた。
米国はまた、ハマスの攻撃で米国市民が殺害あるいは拉致されたとの報告にも注目しているとし、イランが直接関与した可能性も調べているが、その直接的な証拠はないと語った。
ハマスによる攻撃は、1973年10月の「第4次中東戦争」の口火を切ったエジプト、シリア両軍によるイスラエル奇襲攻撃から50年に当たるだけに、同国側にとってショックは大きい。
今回の大規模攻撃を未然に把握できなかったイスラエルの情報当局にとっても、73年以来の大失態の一つとなる可能性があるが、複数の同国当局者は何が問題だったのか理解するには時期尚早だと述べるとともに、50年前との比較を退けた。
イスラエル機がガザ攻撃、武装勢力はロケット弾発射-戦闘再開(2014年のガザ侵攻時)
パレスチナ自治区ガザでは8日、武 装勢力によるイスラエル南部へのロケット弾発射を受け、イスラエル軍 機が複数の拠点を攻撃した。停戦は中断され、それまで1カ月続いてい
た戦闘が再び始まった。
イスラエル軍のピーター・ラーナー報道官は電子メールで配布した 声明で、ロケット弾攻撃の再開は「容認も許容もできないし、浅はか だ」と指摘し、イスラム原理主義組織「ハマスとそのインフラ、部隊へ
の攻撃を続け、治安を回復させる」と表明した。
ガザを実効支配するハマスのスポークスマン、サミ・アブ・ズーリ 氏は、3日間の停戦が失効する数時間前にイスラエルに向けて発射され たロケット弾2発は同グループによるものではないと発言。ガザで活動
する他の2グループはその後に発射されたロケット弾については攻撃を 認めた。イスラエル軍によれば、発射されたのは計29発。
岸田首相、パレスチナ武装勢力のイスラエル攻撃を「強く非難」
岸田文雄首相は8日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスなどによるイスラエルへの大規模な軍事作戦で多数の死傷者が発生したことについて、罪のない一般市民に多大な被害が出ているとして「強く非難する」と自身のX(旧ツイッター)に日本語と英語で投稿した。
外務省はこれに先立ち、ハマスによる攻撃を「強く非難する」とする上川陽子外相の談話を発表。同相は、犠牲者の遺族に哀悼の意を表するとともに、全ての当事者に最大限の自制を求めるとした。
談話では複数の一般市民を含む多数のイスラエル人がハマスなどに誘拐されたと報じられているとし、早期の解放を呼び掛けた。日本として在留邦人の安全確保に万全を期していくとともに、イスラエルとパレスチナ双方への働き掛けを強化し、国際社会とも連携しながら事態の早期沈静化に向けて尽力する考えを示した。
焦点:ハマス「奇襲攻撃」の狙い、イスラエルとサウジの正常化阻止か
イスラム組織ハマスが7日の大規模攻撃で狙ったのは、イスラエルだけではない。この地域では、米国がイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を後押しするなど新たな安全保障秩序の構築に向けた動きが活発化しており、ハマスにはパレスチナ国家樹立への希望を脅かしかねないこうした動きにくさびを打ち込む狙いがあったとみられる。ハマスを支援するイランも、警戒感を強めていた。
米国は、サウジとの防衛条約締結などを見返りにサウジとイスラエルの国交正常化を進めている。サウジとイランの関係強化に歯止めをかける狙いがある。
パレスチナ当局者によると、イスラエルを攻撃して250人以上を殺害し多数の捕虜を拘束したハマスの武装集団のメッセージは、イスラエルが安全保障を望むならばパレスチナ人を無視してはならず、サウジとのいかなる合意もイランとの緊張緩和が崩れることになる、というものだった。
ハマスの指導者イスマイル・ハニヤ氏は、カタールを拠点とするテレビ局アルジャジーラで「(アラブの国が)イスラエルとの間で結ぶ正常化の合意により、この衝突が終わることはない」と述べた。
イランや同国が支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの事情に詳しい消息筋は、「これは、イスラエルにすり寄りつつあるサウジや、イスラエルを支援して正常化を後押ししている米国に対するメッセージだ。パレスチナ人が方程式から除外されている限り、地域全体に安全保障はない。今日の出来事はあらゆる予想を上回るもので、対立関係におけるターニングポイントになるだろう」と述べた。
イスラエルの占領下にあるヨルダン川西岸では今回の大規模攻撃の数カ月前から、イスラエル側の取り締まり強化、パレスチナ市街地での攻撃、パレスチナ人集落へのユダヤ人入植者の襲撃など、暴力が激化していた。ネタニヤフ首相が率いる強硬右派政権の下でパレスチナ人が置かれた環境は悪化し、和平への努力は何年も停滞している。
一方で、サウジとイスラエルは国交正常化に近づきつつあることをそれぞれ示唆。消息筋はこれまでに、サウジ側は米国との防衛条約締結に強い決意を持っており、パレスチナ人に有利な譲歩を引き出すために正常化の合意を遅らせることはないと、ロイターに述べていた。
<攻撃のタイミングを計る>
レバノンにおけるハマスの指導者、オサマ・ハムダン氏はロイターに対し、7日の大規模攻撃により、イスラエル側の安全保障上の要求を受け入れることで平和が実現することはないとアラブ諸国は理解すべきだ、と述べた。
その上で「地域の安定や平和を望むなら、出発点はイスラエルによる占領の終結だ。一部(のアラブの国)は残念ながら、アメリカから安全保障を求めるための入り口がイスラエルにあると想定してしまった」と語った。
ネタニヤフ首相は「暗黒の日に対し強力に報復する」と述べた。
7日に行われたハマスによる攻撃は、イスラエルがエジプトとシリアから攻撃を受けた1973年の第四次中東戦争の開始から50年の節目に行われた。
ハマス幹部は7日の攻撃について、「敵が祝祭に気を取られている適切な時期を指導者は決断する必要があった」と指摘。多方面からの攻撃により「敵はショックを受け、イスラエル軍の情報当局がこの作戦について事前に把握できなかったことが証明された」と述べた。
1973年以降、エジプトとイスラエルは平和条約を結び、複数ののアラブ諸国もイスラエルとの関係を正常化させた。だがパレスチナ人は国家樹立の夢はむしろ遠のいている。
米シンクタンク大西洋評議会に所属する元米外交官のリチャード・ルバロン氏は、「それが今回の攻撃の一番の動機だった訳ではないだろうが、ハマスの行動は、パレスチナの問題は国交正常化交渉の中のサブトピックの1つとして扱われるべきではないということをサウジに明確に示した」と述べた。
<イランの動き>
米バイデン政権の高官は、今回の衝突がサウジとイスラエルの国交正常化交渉に及ぼす影響について、「推測するには時期尚早だ」と記者団に述べた。
この高官は、「ハマスのようなテロリスト集団が(正常化交渉に)影響を与えることはないと断言できる。(交渉には)いろいろな道筋がある」と述べた。
ネタニヤフ首相は以前、イスラエルとアラブ諸国の和平合意について、パレスチナに拒否権を持たせるべきではないと述べていた。
サウジとイスラエル、米国の交渉に詳しい地域の消息筋は、パレスチナへの譲歩を拒否するイスラエルは過ちを犯していると話した。
7日の衝突を受け、サウジは双方に「暴力の即時停止」を求めた。
一方のイランは、パレスチナ人による自衛の行動だと表明。最高指導者ハメネイ師の顧問は、イラン政府は「パレスチナとエルサレムが開放されるまで」パレスチナの武装勢力と共にあり続けると述べた。
ハマスに近いパレスチナ当局者は、「(今回)イスラエルに向けて放たれた全てのロケットをイランは把握している。イランが指示したというわけではないが、ハマスなどが兵器を近代化できたのがイランのお陰だということは周知の事実だ」と述べた。
イランは中東一帯で数々の武装勢力を支援しており、ガザのほかレバノンやリア、イラク、イエメンで存在感を高めている。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派は先週、サウジとの国境沿いにバーレーン軍兵士を攻撃して4人を殺害。これについて、アナリストはイランがサウジに警告したものだと指摘していた。
ワシントン近東政策研究所に所属する元米外交官のデニス・ロス氏は7日の攻撃について、「米国とサウジ、イスラエルの間で画期的な合意が成立するのを阻止する狙いがあった」と断言した。
ハマスとイスラエルの大規模衝突続く、死者500人超 レバノンから砲撃も
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが7日に行ったイスラエルへの大規模攻撃を受け、現地では8日もイスラエル軍とハマス武装集団との衝突が続いた。イスラエル、ガザ地区双方の死者は500人を超え、この50年で最大規模の被害となっている。
ハマスの部隊がイスラエルへの攻撃を開始したのは7日早朝。イスラエル南部に大規模なロケット弾攻撃を行い、その隙にガザから前例のない規模の複数部隊がイスラエルに侵入した。
イスラエル軍によると、8日にはレバノンから迫撃砲弾が撃ち込まれた。イスラエル側もレバノンに砲撃し、衝突は拡大の様相を呈している。
一連の攻撃でハマスはイスラエル人250人以上を殺害し、捕虜数十人を拘束してガザに帰還した。イスラエルはガザに猛反撃を加え、住民ら少なくとも250人が死亡した。
イスラエルのネタニヤフ首相は「この暗黒の日について、強力な報復を行う」と述べた。
イスラエル軍報道官によると、8日にはガザ周辺の8カ所で同軍が作戦を実施している。パレスチナ赤新月社によると、ガザの民家2軒がイスラエル軍に攻撃され、18人が死亡した。
パレスチナ保健当局によると、民間人の死者256人には子どもが20人含まれる。負傷者は1800人に上った。
「街が死体の海に」、ハマスとイスラエルの大規模衝突におびえる市民
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの攻撃の応酬では、双方で民間人含め480人以上の死者が出た。衝突は8日未明も続いており、市民らは避難先で息をひそめている。
ガザに近いイスラエル南部スデロットでは、イスラエル人の民間人の死体がガラスが散乱する道路に横たわり、自動車の中で死亡している男女の姿もあった。
住民のシロミさんは、「外に出てみたらテロリストや市民の死体がたくさんあった。スデロットでは、道路沿いやそのほかの場所が死体の海になっている」と話した。
民家の奥深くに身を隠したイスラエル市民らは、恐怖におののきながら電話やテレビで状況を説明した。
武装集団の襲撃を受けたダンスパーティー会場から脱出したというエスター・ボロチョフさんは、脱出しようと乗った車の運転手が至近距離から撃たれて死亡したため、車内で死んだふりをして生き延びたという。
「脚を動かすことができなかった。後で(イスラエル)兵士が来てバスに乗せてくれた」と、ボロチョフさんは入院先の病院でロイターの取材に答えて振り返った。
一方、ガザでは黒煙や赤い炎が空を染めていた。今回の衝突で殺害された戦闘員の遺体が、緑色のハマスの旗にくるまれて運ばれていった。
ガザでは、負傷者や死者が病院に運び込まれているが、施設は老朽化して大混雑しているほか、医療器材も著しく不足している。空襲で被害を受けた現場に向かう救急車のほかは通りに動きはない。イスラエル側が電力供給を停止したため、ガザ全体が闇に包まれた。
見捨てられる恐怖に突き動かされたハマス イスラエルは甘く見ていた
パレスチナとイスラエルの間で、激しい武力衝突が起きています。なぜいま、大規模な衝突が起きたのか。この衝突は中東和平の実現や、イスラエルとアラブ諸国との間で進みつつあった関係改善にどのような影響を及ぼすのか。防衛大学校の立山良司名誉教授に聞きました。
――今回の大規模な衝突をどう見ていますか。
ガザ地区を実効支配しているイスラム組織「ハマス」によって行われたロケット攻撃の規模が、短時間に2千発以上ときわめて大きかったこと。ハマスを含むパレスチナ側の戦闘員が、非常に高い塀を越えて大規模な越境攻撃を仕掛けたこと。加えて、今回の攻撃を、イスラエルが事前に察知できず、民間人を含む大きな被害を許してしまったこと。これら全てが、これまでに例のないことです。非常に驚いています。
――なぜこのタイミングで、こうしたことが起きたのでしょうか。
実は、パレスチナを巡って「何かが起きるかもしれない」とは思っていました。一つ目の理由は、ハマス側の事情です。この夏、ガザ地区でハマスに対する住民のデモが起きました。異例のことです。
世界銀行によると、ガザ地区の直近の失業率は46%で、15~29歳に限ると59%にのぼります。イスラエルによるガザ地区の封鎖は解かれる見通しがなく、可能性もほぼありません。自分たちの将来の展望が全く見えず、経済状況もよくない。こうした状況はこれまで、ハマスへの支持と、パレスチナ自治政府に対する批判につながってきましたが、一方で「ハマスを支持しても、先が見えない」という不満も高まりはじめています。ハマスとしても、この状況を「何とかしないといけない」と思っていたとみられます。また、イスラエル軍が今年7月、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のジェニン難民キャンプを攻撃したことについても、ハマスは目をつぶれなかったのでしょう。
イスラエルの情報収集力が落ちていた?
もうひとつの理由は、イスラエルとサウジアラビアの関係正常化が進んでいることです。サウジはアラブの盟主を自任する、この地域の大国です。その大国とイスラエルとの関係正常化が、パレスチナ問題を無視したまま進んでいる。ハマス側から見ればそのように映ったのでしょう。その点で、今回の大規模攻撃は、サウジや米国に対しての「異議申し立て」の意味もあったかもしれません。
ガザの塀は、ものすごく高い。いままでなら、地面に掘ったトンネルからイスラエル領内に入って攻撃することはありました。ですが、今回は報道によれば、ハマス側は塀のゲートを攻撃して無力化したうえで、イスラエル領内に入ったようです。仮にこの情報が正しいとすると、イスラエル側は一体なにをしていたのでしょうか。
イスラエルとパレスチナの軍事力や情報収集力には、圧倒的な差があります。イスラエルは、常にガザ地区上空にドローン(無人航空機)を飛ばしていますし、電話を含めてガザ地区内の通信を傍受していました。ハマスや、同じガザ地区の武装組織「イスラム聖戦」などの動向は、全てとらえているはずでした。これに対してハマスは、イスラエルの動向をキャッチできるようなシステムは持っていません。にもかかわらず、こうした事態が起きました。
――イスラエルは虚を突かれたように見えます。どんな事情が考えられますか。
考えられる要因のひとつに、イスラエル国内の政治的な混乱があります。イスラエルでは、ネタニヤフ政権による司法改革が、政府と軍の関係をギクシャクさせています。この問題では、政府に反対する予備役の兵隊たちが、軍の呼集に応じない動きを示していました。その中には情報関連部門の人員もかなり入っていたようです。
実際、この夏にイスラエル軍トップが同国の国会で、こうした混乱によって空軍や情報部門の対応力が落ちる可能性を示唆していました。軍の内部で情報収集力に関する問題が生じていたのかもしれません。また、イスラエル側には、「ハマスはイスラエルに一定程度の攻撃をするかもしれないが、限定的だろう」という思い込みもあったのかもしれません。ハマスには大規模攻撃を実行する意思も能力もない、と甘く見ていた可能性もあるでしょう。
――イランの関与を疑う声もあります。
確かに、ハマスのスポークスマンは「イランからの支援を受けている」と、英BBCに答えています。とはいえ、どれだけの支援かはわかりません。今回、ハマスが発射したロケットは2千数百発とされます。そのくらいの数であれば、ガザ地区内で作れると思います。今回発射されたロケットは、精密誘導といった高度なものではないようです。
ガザ地区封鎖後の約16年間で、ハマスはロケットの射程を伸ばしてもいます。最初は10キロ、20キロ程度しか飛ばせませんでしたが、いまでは百何十キロも飛ぶものを作れるようになっています。今回は、そういうものを攻撃に用いたのでしょう。2年前には、約4千発のロケットをガザ地区から発射しています。2年くらいあれば、今回発射された数のロケットを自前で製造し、ためておくことはできただろうと推察します。
オスロ合意を受け入れないハマス
――そもそも、パレスチナとイスラエルが対立するようになった経緯を教えてください。
イスラエルとパレスチナの対立は、英国の委任統治時代に端を発しています。19世紀ごろ、欧州で民族主義が高まる中、欧州各地に住んでいたユダヤ人たちは「シオニズム運動」を始めました。祖先の地に祖国をつくろう、という動きです。その頃から、ユダヤ人のパレスチナ移住が進み、1948年に英国が撤退すると同時にイスラエルの建国が宣言されました。
パレスチナ側は、ユダヤ人が移住してくる前から自分たちが住んでいて、自分たちも国をつくろうとしていた土地にイスラエルをつくられたとして、暴力的な対立に発展しました。他のアラブ諸国もパレスチナを支援し、正規軍によるイスラエルとの4度の戦争を行いました。
今回、パレスチナ側による大規模攻撃が始まる1日前の10月6日は、73年に第4次中東戦争が始まった日付です。
93年にはイスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)が、両者の共存を目指す「オスロ合意」という和平合意に調印し、ヨルダン川西岸地区とガザ地区でパレスチナ自治政府による自治が始まりました。ですが、ハマスはイスラエルの領地を含むパレスチナ全土を解放し、そこに独立国家をつくることを目指しており、オスロ合意を受け入れていません。2007年、ハマスはパレスチナ自治政府から、ガザ地区を奪い、実効支配を開始します。イスラエルはハマスを「テロリスト」に指定し、同地区の封鎖が始まりました。
――ハマスとは、どんな組織なのでしょうか。
ハマスはよく、イスラム原理主義組織と言われます。イスラム的な思想に基づく統治を目指し、「パレスチナの土地は我々のものだ」と主張しています。先祖伝来の土地の解放を目指している以上、イスラエルの建国は受け入れられない、という立場です。彼らは、イスラエルに対して武力を使うことを「聖戦(ジハード)」だと考えています。こうした考えをもつひとは、ハマスの幹部だけでなく、ハマスを支持する一般民衆にも結構います。
半日で2千発以上 過去に例のない規模
――過去のガザ地区からの攻撃と比べて、今回の攻撃にはどんな特徴がありますか。
ハマスは2021年5月にも約4千発のロケットを撃っていますが、そのときには11日間かけています。今回は、2千発以上のミサイルを半日ほどで撃っている。圧倒的な密度です。加えて今回、イスラエル軍によると「相当数」の兵士や民間人を、パレスチナ側の人質に取られています。民間人も含めて、かなりの数がガザ地区に連れて行かれた。これまでも、戦闘のなかで、イスラエル兵が何人か人質になったことはありますが、今回とは全く規模が異なります。
イスラエルを巡っては、過去に4度の中東戦争がありましたが、その際にイスラエルが戦ったのはエジプトやシリアなどで、パレスチナではありません。戦いの構図も、国家の正規軍同士が、シナイ半島やゴラン高原など、イスラエルの外で衝突したものです。武装組織がイスラエル領内でゲリラ戦を繰り広げる現在の武力衝突とは、構図が全く異なります。今回のようなゲリラ戦に限れば、パレスチナ側が行った攻撃は過去に例のない規模だと思います。
――今後、どのような事態が想定されますか。
イスラエルとパレスチナによる中東和平については、今回の大規模攻撃以前から完全に頓挫していました。今回の件を受けて状況が改善されることはまずないですし、頓挫したままの状態が今後も続くだろうと思います。
イスラエルとサウジの関係正常化は、しばらくは進まないと思います。これまでは、双方が様々な条件を出しあうといった動きが報じられてきました。ただ、サウジにしてみればこの状況下で「イスラエルと関係正常化を進める」とは言えない。パレスチナ側の大規模攻撃を受けて、イスラエル軍は今後、地上戦や、人質解放のための軍事作戦など、相当規模の戦闘を行う可能性があります。今後はカタールやエジプトなどが、両者の仲介役を担うことになると思いますが、停戦合意や人質解放が簡単に実現するとも思えない。そんな中で、まだ関係正常化に踏み切っていないサウジが、いまから踏み切るとは思えません。仮にそうした場合、サウジは「パレスチナ人を見捨てた」ことになります。
――米国が狙う、イスラエルとアラブ諸国の関係正常化への影響は。
米国が徐々に中東から撤退していくなか、イスラエルと親米アラブ各国との関係拡大を通じて地域の安定を図る、というバイデン政権の戦略は、今回の件で行き詰まることになるでしょう。確かに、イスラエルとサウジ、イスラエルと他のアラブ諸国の関係正常化に関して、ハマスには焦りもあったと思います。ただ、今回の大規模攻撃へとハマスを動かしたものは、中東地域の動向を覆す「大きな戦略」というより、切迫した「内向きな論理」だと思います。アラブ諸国に「見捨てられる」という恐怖です。結果論ですが、ハマスの行動は、それに待ったをかけた形になりました。攻撃の規模が大きいだけに、影響も非常に大きいのではないでしょうか。(聞き手・伊藤弘毅)
イスラエル・サウジ国交正常化に影 ハマスと大規模衝突
不気味な安定が続いていた中東で暴力が突如として再燃した。パレスチナのイスラム組織ハマスが7日にロケット弾や戦闘員の侵入によってイスラエルへの大規模な攻撃を仕掛け、イスラエルが報復を開始した。有力な歯止め役がみえないなか、衝突が制御不能の混乱に陥るおそれがある。中東の主要国のあいだで進んだ和解の動きすら吹き飛ばしかねない。
「軍事作戦でもエスカレーションでもない。われわれは戦争状態に突入している」。イスラエルのネタニヤフ首相は7日の声明で、ことの深刻さを国民にこう説明した。
分断や対立が広がる世界にあって奇妙なことに中東の主要国が近年、次々と対立を解消し、和解を進めていた。2020年に米国の仲介でイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が関係を正常化。今年3月には中国の仲介でサウジアラビアとイランが関係の正常化で合意した。
不可解にもみえるこうした雪解けの背景には、産業多角化で外国からの投資を必要としたアラブ指導者の経済利益優先の考え方があった。みかけの安定が広がるなかで過小に見積もられたのは、中東の対立の根っこにあるパレスチナの問題を置き去りにするリスクだった。
列強による植民地支配や第2次大戦の歴史、民族、宗教が複雑に絡み合うパレスチナ問題は戦後の国際政治にさまざまな混乱をもたらした。米国の歴代大統領はその解決に多くの政治資源を振り向けてきた。問題の根深さと波及リスクの大きさを理解していたからだ。
パレスチナのガザ地区を支配するハマスはイスラエルの生存を否定し自爆テロを繰り返してきた組織だ。パレスチナ自治政府はハマスの作戦に加担していないとみられるが、アッバス自治政府議長は「パレスチナ人には自衛の権利がある」と述べ、理解を示した。過激な主張や行動が通りやすい環境が強まっている可能性がある。
悲願であるパレスチナの国家建設に展望が見えないなか、イスラエルとアラブの和解の動きはどんどん広がった。アラブ世界の事実上のリーダーとなったサウジの実力者ムハンマド皇太子は最近の米テレビとのインタビューで、イスラエルとの関係正常化が近いと公言していた。一般のパレスチナ人のあいだにも焦りと憤りがある。
イスラエルとパレスチナは過去にも衝突を繰り広げてきた。今回が深刻なのは従来のような歯止め役や仲介役を果たすことができる人物の姿がみえないことだ。
伝統的に中東地域の盟主として影響力を行使してきた米国は地域からの撤退を進めてきた。バイデン米大統領はネタニヤフ氏やアラブ指導者とのぎくしゃくした関係が指摘される。
機会主義的な利益を追う中国やロシアが長期的な安定へ建設的な役割を果たす期待は薄い。アラブ諸国で構成するアラブ連盟の存在感は近年、大幅に低下している。
イスラエルとサウジなど主要国の和解の動きへの打撃も大きそうだ。
パレスチナの同胞への同情とイスラエルへの憎悪をかかえる民衆の感情を無視してアラブの指導者がイスラエルとの関係正常化の話を進めていくことはむずかしくなるだろう。
イスラエルと対立するイランは、イスラム世界の代弁者としてパレスチナ擁護を鮮明に打ち出すとみられる。パレスチナへの対応をめぐってイランとサウジの対立が再燃する恐れもある。地域全体を巻き込んだ対立の構図が再浮上しかねない。
Israel
at war with Hamas after unprecedented attacks
Turkey is ready to help stop the fighting between Israel and Hamas,
president says
Turkish President Recep Tayyip Erdoğan said his country is ready to
help stop the conflict between Israel and Hamas "and to reduce the tension
that has escalated with the recent events."
"We are determined to continue intensifying the diplomatic efforts we have
initiated to restore tranquility," Erdoğan said, speaking at a church
opening ceremony in Istanbul. "We invite all actors who have a say in the
region to sincerely contribute to peace," Erdoğan added.
The Turkish president said that while the country always stands "in
solidarity with our Palestinian brothers; we have emphasized that any steps
that would escalate tensions in the region, cause more bloodshed, and deepen
the problems should be avoided."
Israeli military says it has killed hundreds of Hamas fighters and
wounded thousands
From CNN's Amir Tal and Mike Schwartz
Israeli troops have killed hundreds of Hamas fighters, wounded thousands and
captured scores of others, an Israel Defense Forces spokesperson said Sunday.
The initial Israeli counterattack began at 3:45 a.m. local time Sunday (8:45
p.m. ET Saturday), with "tens of tons of bombs" dropped, said IDF
spokesperson Rear Adm. Daniel Hagari.
Israeli forces destroyed around 800 targets, including launching pads used by
Hamas, with 50 planes attacking 120 targets in Beit Hanoun alone and destroying
all Hamas gathering points there, Hagari said.
Sunday saw fighting in a series of Israeli communities near Gaza, including
Kfar Aza, Nahal Oz, Kissufim and Be’eri, Hagari said.
On the coast, near the community of Zikim, a Hamas squad that tried to land was
foiled, the IDF spokesperson said.
Remember: Hamas is an Islamist organization with a military wing. It controls
the Gaza Strip, the enclave home to 2 million Palestinians, from which it
launched Saturday's devastating attacks on Israel.
Hamas has been designated as a terrorist organization by the United States, the
European Union and Israel.
Hamas says the Iranian president praised its attack in a phone call
Hamas claimed Sunday that Iranian President Ebrahim Raisi praised its
surprise attack on Israel in a phone call with the group's leader Ismail
Haniyeh.
Iran's state-run IRNA news on Sunday said Raisi spoke with Haniyeh in a phone
call and "reviewed the situation underway in the occupied lands," but
did not provide further details.
In a later statement, Raisi said his country "supports the Palestinian
nation's legitimate defense," and that Israel and its backers "bear
responsibility for endangering the security of the nations of the region."
Haniyeh expressed his appreciation for Iran's position, according to a
statement released by Hamas.
Some context: Iran is Israel's archenemy, and the two countries have long
engaged in a form of proxy war, in which Iran-backed groups fight Israeli
forces.
Israel accuses Iran of backing Hamas.
An official in US President Joe Biden's administration said Saturday that it's
not yet clear whether Iran played a direct role in this weekend's attacks on
Israel, but that there is no question Hamas is funded, equipped and armed by
Iran.
Several European leaders express "unreserved support for Israel," Netanyahu says
Prime Minister Benjamin Netanyahu says German Chancellor Olaf Scholz, Ukrainian President Volodymyr Zelensky, Italian Prime Minister Giorgia Meloni and British Prime Minister Rishi Sunak expressed support for Israel on Sunday.
Netanyahu said the European heads of state “expressed unreserved support for Israel’s right to defend itself as necessary,” according to a social media post.
The office of the Italian prime minister said on social media that Meloni “reiterated the Italian government's full solidarity for the attacks suffered and its closeness to the families of the victims, to the hostages and the injured,” adding that Italy "will work with international partners to coordinate support."
Zelensky also wrote a post about the conversation on social media.
“I spoke with Netanyahu to affirm Ukraine’s solidarity with Israel, which suffers from a brazen large-scale attack, and to express condolences for the multiple victims," the Ukrainian president wrote on X, formerly known as Twitter.
Zelensky also noted that Israeli law enforcement and diplomats are coordinating to ensure the safety of Ukrainian citizens in Israel.
Poland sending military planes to evacuate citizens from Israel
Israeli cabinet formally declares war against Hamas
The Israeli government formally declared war on Hamas on Sunday, setting the stage for a massive response against the Islamist militant group.
Prime Minister Benjamin Netanyahu already said Saturday the country was at war — but that declaration was rhetorical. Sunday’s move by the Israeli cabinet is an official decision, tantamount to a declaration of war by Congress in the United States.
The war declaration was taken in accordance with Article 40 of Israel’s Basic Law, the Israeli government press office said. Israel does not have a written constitution, but its 13 Basic Laws serve a similar function.
Netanyahu said before Sunday’s declaration that Israel would “take mighty vengeance” for the attack by Palestinian militants, while the country’s top military official in charge of activities in the Palestinian territories said after the attacks that Hamas has "opened the gates of hell." Israel has been pounding Gaza with airstrikes, which have killed more than 300 people.
A ‘Pearl Harbor’ moment: Why didn’t Israel’s sophisticated border security stop Saturday’s attack?
The gunmen came from air, sea and land. They shot at civilians, took hostages and forced families to barricade themselves indoors, fearing for their lives.
A day that began with air raid sirens blaring out in the early morning had by lunchtime turned into one of the most terrifying attacks Israel has known in the 75 years of its existence. Assailants from Hamas, the Islamist militant group that controls the impoverished and densely populated Gaza Strip, had by nightfall killed hundreds of people and wounded hundreds more.
Though Israel is no stranger to terrorist attacks, Saturday’s assault was unprecedented – not least because of the lack of warning. Israel’s military on Saturday found itself caught off-guard, despite decades in which the country became a technology powerhouse that boasts one of the world’s most impressive armed forces and a premier intelligence agency.
The questions for Israeli authorities are legion. It has been more than 17 years since an Israeli soldier was taken as a prisoner of war in an assault on Israeli territory. And Israel has not seen this kind of infiltration of military bases, towns and kibbutzim since town-by-town fighting in the 1948 war of independence. How could a terror group from one of the world’s poorest enclaves manage to launch such a devastating attack?
“The entire system failed. It’s not just one component. It’s the entire defense architecture that evidently failed to provide the necessary defense for Israeli civilians,” said Jonathan Conricus, a former international spokesman for the Israel Defense Forces.
“This is a Pearl Harbor-type of moment for Israel, where there was reality up until today, and then there will be reality after today.”
The IDF has repeatedly dodged questions about whether Saturday’s events constitute an intelligence failure. Military spokesman Lt. Col. Richard Hecht told CNN that Israel was focused on the current fight and protecting civilian lives.
“We’ll talk about what happened intelligence-wise after,” Hecht said.
‘Obviously not adequately protected’
Whether by coincidence or design, the attacks came the day after the 50-year anniversary of another unforeseen conflict, when a coalition of Arab states launched a surprise attack against Israel on Yom Kippur, the holiest day of the Jewish calendar, in 1973.
Yet the attacks still came as a surprise to Israel, former Prime Minister Naftali Bennett told CNN’s Fareed Zakaria on Sunday.
“In military history there are always big surprises, Pearl Harbor, Barbarossa, (the) Yom Kippur war. At the end of the day intelligence can only go so far,” Bennett said.
Since Israel withdrew from Gaza in 2005, it has spent billions of dollars securing the border from attacks. That has striking at any weapons fired from inside Gaza into Israel and stopping terrorists from trying to cross the border from air or underground using tunnels. To stop rocket attacks, Israel has used the Iron Dome, an effective rocket defense system developed with help from the United States.
Israel also spent hundreds of millions of dollars building a smart border system with sensors and subterranean walls that was, according to Reuters, completed at the end of 2021.
Israeli officials will almost certainly look at where those systems failed on Saturday. As of Saturday morning, Israel said Hamas had fired 2,200 rockets, though it did not release figures on how many of those were intercepted. Officials have not commented on if the border fence did its job.
Aaron David Miller, a former State Department negotiator on Middle East issues, told CNN’s Wolf Blitzer that Israeli communities near Gaza were “obviously not adequately protected.”
“I just don’t think the Israelis saw this coming,” Miller said.
How Israel responds will likely involve more than just border reinforcements. The Israel Defense Forces have already begun airstrikes in Gaza targeting Hamas infrastructure, resulting in hundreds of dead and injured.
Israeli Prime Minister Benjamin Netanyahu said that the country will “return fire of a magnitude that the enemy has not known,” while the top official in charge of activities in the Palestinian territories, Maj. Gen. Ghassan Alian, said that Hamas had “opened the gates of hell.”
Conricus, the former IDF spokesman, said Saturday’s events will force Israel to back up that rhetoric and respond “in a way that it has never responded before.
Why this Israel-Gaza conflict is so complicated for Biden
President Joe Biden and his top aides are absorbing the explosion of violence in Israel on Saturday and contending with a complicated diplomatic situation unlike any previous conflict between the Israelis and the Palestinians.
Ties between Biden and his Israeli counterpart, Benjamin Netanyahu, friends for decades, have been strained by Netanyahu’s far-right governing coalition in Israel.
A fractured political environment among the Palestinians will make it difficult for American officials to identify a reliable negotiating partner.
In the US, an already active Republican presidential primary campaign appears destined to pin blame on Biden for helping fuel attacks on Israel through his recent deal with Iran.
And looming in the background is a historic normalization agreement between Israel and Saudi Arabia that Biden had hoped was nearing the finish line.
It all amounts to one of the most volatile geopolitical situations of Biden’s presidency, which is also confronting a war in Ukraine that has become a politically fraught issue at home.
In a phone call Saturday, Biden told Netanyahu, “We stand ready to offer all appropriate means of support to the government and people of Israel.”
Biden said he would remain in close contact with Netanyahu.
Speaking from the White House later Saturday, Biden said his administration’s support of Israel’s security is “rock solid and unwavering.”
“When I spoke with Prime Minister Netanyahu this morning, I told him the United States stands with the people of Israel in the face of these terrorist assaults. Israel has the right to defend itself and its people, full
The last time major violence broke out between Gaza and Israel, Biden and senior American officials played a critical behind-the-scenes role in brokering a ceasefire. The president spoke with Netanyahu six times, and once each with Palestinian Authority President Mahmoud Abbas (who has no real authority over Gaza) and Egyptian President Abdel Fattah el-Sisi.
US officials were also in contact with officials in the region on an hour-to-hour basis and leaned on leaders in Egypt and Qatar to work with the Palestinian militant groups in Gaza to find agreement on a ceasefire.
Some of the president’s Democratic allies agitated for a more forceful response. But senior White House officials calculated that it was more productive to work quietly with allies to end the violence.
That was more than two years ago. In the time since, US-Israel ties have become exponentially more complicated.
Biden has spoken out forcefully against the Netanyahu government’s attempts at a judicial overhaul, which he and other officials have suggested amounts to an erosion of democracy. That has strained ties between the men and delayed a face-to-face meeting until last month, when they sat for talks on the sidelines of the UN General Assembly in New York. At the time, Biden acknowledged that the two men had plenty of “hard issues” – among them, matters related to “checks and balances” – to discuss.
That meeting was ultimately “very constructive” and “very candid,” one official said. It included a lengthy one-on-one component without any aides present, and Biden invited Netanyahu to visit the White House.
Still, Netanyahu’s attempts to keep his far-right governing coalition together could make American diplomatic intervention in the conflict even more difficult as he comes under pressure for a full-scale response.
And political stagnation among the Palestinians, whose leader, Abbas, was last elected to a four-year term in 2005 but remains in power since canceling several elections, has only complicated an American diplomatic response as it looks for which faction among the Palestinians to speak with.
As recently as this week, Biden had hoped to be nearing the completion of a major agreement with Israel and Saudi Arabia to establish formal diplomatic ties, potentially transforming the entire Middle East.
The expectation had been that the deal would include agreement from Netanyahu on certain concessions to the Palestinians, including potentially freezing settlements and agreeing to an eventual Palestinian state.
“It’s obvious that a move like this by Saudi Arabia will require a component dealing with the fundamental between Israelis and Palestinians,” one American official said after Biden’s meeting with Netanyahu, adding that was made clear in the leaders’ meeting.
The unleashing of violence Saturday makes it exceedingly difficult to imagine Netanyahu agreeing to those concessions now.
One thing seemed clear even in the immediate aftermath of the devastating attacks in Israel: It would only be a matter of time before the scenes of violence would become a political attack against Biden.
Republican presidential candidates slammed the Biden administration Saturday, with former President Donald Trump – the front-runner for the GOP nomination – pointing to the administration’s unfreezing of Iranian funds to claim that Biden “betrayed Israel.”
The Biden administration this year issued a waiver unfreezing billions of dollars in Iranian funds as part of a deal to free five Americans who the US government had deemed wrongfully detained by Iran. Critics have connected a line between those funds and the attacks in Israel, given that Iran funds Hamas.
“Joe Biden betrayed Israel, he betrayed our country. As president, I will once again stand with Israel and we will cut off the money to Palestinian terrorists on Day One,” Trump said while campaigning in Iowa.
Former New Jersey Gov. Chris Christie, another 2024 candidate, also linked the US-Iran deal to the violence in Israel, adding that Biden “has shown weakness and indecision.”
A senior administration official said Saturday the billions of dollars in funds that the Biden administration unfroze in the deal “did not go to Iran, are solely for humanitarian purposes and not a single cent has been spent.”
1973年10月の第4次中東戦争は、ユダヤ教で大事な「ヨム・キプール」(贖罪の日)に始まった。あの時はイスラエルが、エジプトとシリアの奇襲を受けた。あれから50年たち、またしてもユダヤ教の祭日に大規模な奇襲攻撃が仕掛けられた。今回はパレスチナの武装勢力が、イスラエルに対して。
ガザ地区ではこのところ、緊張が高まっていた。しかし、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスも、イスラエルも、どちらも事態の悪化は望んでいないというのが、従来型の見識だった。
しかしハマスはむしろ、調整のとれた、洗練された作戦の準備を進めていたのだ。7日早朝に、ロケット弾が一斉に発射された。中には、ガザから離れたエルサレムやテルアヴィヴにまで到達したものもあった。そして同時に、パレスチナ側の戦闘員が陸海空のルートに分かれて、一斉にイスラエル南部へ侵入した。
戦闘員は何時間もイスラエルの村や陸軍駐屯地を制圧し、大勢を殺害した。正確な人数は不明だが、多くのイスラエルの民間人や兵士を人質に、ガザ地区まで連行した。
この恐ろしい事態は、ソーシャルメディアと主要メディアの上で、リアルタイムで展開した。
ガザ地区に近い野原で夜通しのダンスパーティーに参加していた数千人ものイスラエル人は、気が付けば砲火の下にいた。パーティーを楽しんでいたこの人たちが、命からがら走って逃げる様子が、拡散された動画で見て取れる。
ギリ・ヨスコヴィッチさんはBBCに対して、木立の中に重装備の戦闘員がいたので、隠れたのだと話した。ヨスコヴィッチさんは、車で駆け付けたパートナーに助け出された。
「(戦闘員は)木から木へと移動して、あちこちへ撃ちまくっていた。二方面から。私の周りで、次々と大勢が死んでいた。『そうか、私も死ぬんだ』と思った。『大丈夫、ともかく息をして。目を閉じて』とも。周りではひたすら銃撃が続いていたので。本当に私のすぐ近くで」
イスラエル紙ハヨムは、空襲警報が鳴ったのでシェルターに避難した父親の安否が心配だという、キブッツ・ベエリに住むエラさんの話を伝えた。
同紙によると、「シェルターにテロリストがいると、父親が書いて送ってきた。ガザ地区内から投稿された(ソーシャルメディア)テレグラムに、父親の写真が載っている。ここではまだ銃声が聞こえる」とエラさんは話した。
イスラエルの治安部隊がただちに住民を救出しなかったことに、多くのイスラエル人は衝撃を口々に語る。他方、ハマス系チャンネルが共有する映像は、イスラエル軍の駐屯地にいた兵士たちや戦車に搭乗していた兵士たちが拘束された、もしくは殺害されたことを伝えている。
ハマスが奪ったイスラエル軍の戦車でガザ地区内を走り、周りがそれを歓迎する映像も相次いだ。
ガザシティに住む青年はBBCに、「ハマスがこれまでしたことは、うれしい。アル・アクサでのイスラエルの行動に報復してくれた」と話した。青年が言及したのは、ユダヤ教の最近の祭日に東エルサレムのアル・アクサ・モスクを多くのユダヤ教徒が訪れたこと。
アル・アクサ・モスクはイスラム教で3番目に神聖な場所だ。それと同時に、アル・アクサ・モスクが建つ場所は、ユダヤ教で最も神聖な聖地「神殿の丘」でもある。
この青年は、自宅アパートの近くをイスラエル軍が砲撃するという警報を受けて、外に出たところだった。これからどうなるのか、不安だとBBCに話した。
「心配です。2021年の戦争でイスラエルにショルーク・タワーを攻撃されたとき、うちの家族は自分たちの店を失ってしまった」、「今回のハマスの行動はあの時よりはるかに大きいので、イスラエルの反応もそれを上回ってずっと大きくなるはず」だと、青年は述べた。
イスラエルの空爆のため、ガザ地区の病院はすでに死傷者であふれかえっている。
ガザ地区は、地中海沿いの狭い集落で、パレスチナ人が約230万人暮らしている。ハマスは2006年1月のパレスチナ立法評議会選挙で過半数を得たのち、2007年6月にガザ地区を制圧した。これを機にイスラエルとエジプトは、ガザ封鎖を強化した。
ガザ地区での失業率は約50%にのぼり、住民の多くが貧困状態にある。
2021年5月にも、イスラエルとハマスの大規模な軍事衝突が発生した際には、エジプトとカタール、そして国連が仲介する間接的な協議を経て、大勢のガザ住民がイスラエル国内で働けるようになり、ガザ地区への様々な規制も緩和され、一時的な小康状態が得られた。
5年前にイスラエルとガザの境界地帯で始まった大規模な反イスラエル抗議行動にちなみ、イスラエルが設けた分離フェンスの周りで今年9月、多くのパレスチナ人が抗議に参加した。これは、ハマスの暗黙の了解があってのことだと受け止められた。目的は、イスラエルから追加の譲歩を、そしてカタールから追加の支援金を引き出すことだと、認識されていた。
しかし、今となっては、こうした小規模な抗議集会は目くらましだったかのように思えてくる。分離フェンスの周りに集まったのは、実は今回の侵入作戦の前にフェンスの状態を確認するためだったのではないかとの、推測も出ている。
今回の作戦を通じてハマスは、軍事組織としての評価を今一度、底上げしたいかのように見える。その憲章は依然として、イスラエルの破壊を重要目標として掲げている。
今回の攻撃開始にあたり、日ごろ目立つ行動をとらないハマス軍事部門トップのモハメド・デイフ司令官は、パレスチナ人と他のアラブの人々に対し、「(イスラエルの)占領を一掃」する行動に参加するよう呼びかけた。
現時点で注目されるのは、イスラエルの占領下にあるヨルダン川西岸や東エルサレムのパレスチナ人、さらには中東地域の各地にいるパレスチナ人が、デイフ司令官の呼びかけに応じるかどうかだ。
イスラエルは間違いなく、複数の前線が立ち上がる戦争に至る可能性を認識している。
最悪のシナリオは、ハマスのこの作戦を機に、イスラエルの北に位置するレバノンの、強力なイスラム組織ヒズボラが関与してくる展開だ。
今回の攻撃を受けてイスラエル軍は、予備役の大規模招集に着手した。ガザに激しい空爆を続けるほか、ガザで地上作戦を展開する方針も示している。
ハマスはイスラエルの兵士や民間人を人質にしている。「人間の盾」として、あるいは駆け引きの材料として使うつもりとみられ、事態をいっそう複雑にしている。
イスラエル国防軍の報道官、ダニエル・ハガリ少将は、「我々は現在、この地区を急ぎ再び掌握するため、懸命に取り組んでいる。広範囲を攻撃し、とりわけガザ地区の周囲に慎重に対処している」として、「鋭く徹底的な検証を実施する」とも述べた。
イスラエルがなぜ今回の一斉攻撃を受けるに至ったのか、徹底的な内部調査はまだしばらく先のことになるだろう。しかし、イスラエルの情報・治安維持当局は今後、なぜ今回のことが事前に察知できなかったのか、なぜこれほどの事態を防げなかったのか、自問自答していくことになる。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃で、人質となった民間人にドイツ人の女性らも含まれる可能性が出てきた。独紙ビルトが8日、伝えた。ドイツ政府は被害の実態を把握するため情報収集を急ぐ。
ハマスは7日朝、イスラエルに多数のロケット弾を発射して戦闘員を侵入させた。一連の攻撃では多くの兵士のほか民間人が人質になり、ガザに連れ去られたとみられている。
ビルトによると、ハマスに連行されたとみられるのは3歳と5歳の幼い娘を連れたドイツ国籍の母親。ガザ地区の近くに住む祖母を訪ねようとしたところ、親子で襲撃に巻き込まれたもようだ。
このほか、20代のドイツ国籍を持つ女性も拉致された恐れが出ている。SNSでは車の荷台に横たわる女性とみられる人物が映った動画が流れており、家族によって確認されたという。
ハマスとイスラエル軍の戦闘は激しさを増し、ドイツ国内でも衝撃が広がっている。ショルツ首相はX(旧ツイッター)で「我々は揺るぎなくイスラエルのそばに立っている」と同国のネタニヤフ首相に支持を表明。「イスラエルの安全保障はドイツの国家的な道理である」と明言した。
ブリンケン米国務長官は8日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスによるイスラエル攻撃について、同国とサウジアラビアの関係正常化交渉の妨害が狙いだったとの見方を示した。敵対するイランの関与に関しては「攻撃を指示したり、背後にいたりした証拠はまだ見つかっていない」と話した。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスとイスラエル軍の戦闘で、被害が拡大している。米国のブリンケン国務長官は8日、CNNの番組で「イスラエルで米国市民が複数人死亡したという報告があり、確認を急いでいる」と明らかにした。フランス、タイ、カンボジアの各政府もそれぞれ自国民の犠牲者を確認したと明らかにした。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスとイスラエル軍の戦闘が激しさを増している。双方の死者数は8日、970人に達した。イスラエルのネタニヤフ首相は7日夜「ハマスを無力化する」と宣言した。イスラエル軍による地上侵攻の可能性が取り沙汰されている。
イスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃は異例の規模となった。イスラエルは攻撃を阻止できず、暴力の応酬が拡大する恐れが高まっている。国連安全保障理事会は8日、非公開会合で対応を協議するが、衝突の行方は混沌としている。
8日の中東株式市場で各国の株価が急落した。イスラエルの代表的な株価指数は約2年ぶりの安値まで下げた。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘激化による地政学リスクや経済への打撃を懸念した投資家からの売りが出ている。
8日、イスラエルのテルアビブ証券取引所の主な上場企業で構成される株価指数「TA-35」は一時前営業日比8%安の1692.26と、終値ベースで2021年8月以来の安値を付けた。石油・ガス開発のデレクグループが13%安、大手銀のレウミ銀行が10%安となった。
エジプトは一時7%安、サウジアラビアやクウェートが2%安となった。ユダヤ教やイスラム教が広がる中東各国では休日を金曜日や土曜日などとし、日曜日は平日として株式取引が通常通り実施される国も多い。
週明けの商品先物市場では、供給不安から原油価格が上昇する可能性もある。米ニューヨーク原油先物の代表的な指標価格は前週、1バレル80ドル台前半と約1カ月ぶりの安値圏で推移していた。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃したことを受け、ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使が8日、都内で記者会見を開いた。コーヘン氏は「多くの市民が犠牲になっている。我々は戦争状態にある」と述べ、日本側にイスラエルと協調するよう呼びかけた。
痛ましい光景が広がっている。パレスチナのイスラム組織ハマスが7日、境界を越えてイスラエルに侵入し大規模な攻撃を実行した。ハマスによる民間人の誘拐や殺害はとうてい正当化できないテロ行為だ。イスラエルのネタニヤフ首相は「戦争状態」突入を宣言し、空爆による報復を始めた。
国際社会は大規模な暴力の連鎖に発展するのを防ぐ必要がある。国連などを通じ、連れ去られた人々の解放や停戦を求めるメッセージを発信することは、努力の第一歩となる。
ハマスへの影響力を行使できる国は限られる。イスラエル、パレスチナ自治政府のほか、中東の主要国と連携して調停の努力を重ねるほかない。
日本人も含む多くの外国人がビジネスなどの理由でイスラエルやパレスチナ自治区にいる。安全確保のための国際協力も重要だ。
バイデン米大統領は「イスラエルを敵視するいかなる勢力も今回の攻撃を利用して優位に立とうとすべきでない。世界が見ている」と警告した。ハマスの後ろ盾であるイランや、イランの支援を受けるレバノンのイスラム組織ヒズボラを念頭にした発言だ。
ハマスはパレスチナのガザ地区を支配し、イスラエルの生存を認めず自爆テロを繰り返してきた組織だ。パレスチナ自治政府はハマスの攻撃に加担していないとみられるが、アッバス自治政府議長は「パレスチナ人には自衛の権利がある」と理解を示した。
アッバス氏がハマスの暴力を明確に否定しなかったのは、道義的にみても戦略的にみても大きな誤りだったといえる。ハマスの残虐行為の動画はSNSを通じて広まり、パレスチナ人を助けたいという同情論はアラブ世界も含め後退した可能性がある。
衝突はサウジアラビアとイスラエルの関係正常化交渉など、中東で広がりつつあった和解の動きにも水を差した。パレスチナ問題を置き去りにした見かけばかりの安定は危うい。中東の対立の根っこにあるパレスチナ問題の解決に本気で向き合うときだ。
イスラエルは違法な入植活動によって、国家創設を悲願とするパレスチナ人の絶望を深めた。強硬な政策が過激派の主張を通りやすくした構図を理解すべきだ。
イスラエルとパレスチナの2つの国が共存するほかに現実的な和平の道は見当たらない。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに大規模攻撃をしかけたことを受け、バイデン米政権はイスラエルへの軍事支援を強化する考えを表明した。トルコは双方の間を仲介する意欲を示した。
米政府高官は7日、パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃にイランが関与したかどうか判断するのは「時期尚早だ」と述べた。記者団に、イランによる長年の支援がなければハマスは存在しないとも指摘し「注視していく」と話した。
ロイター通信によると、国連安全保障理事会で今月の議長国を務めるブラジルの外務省は7日、イスラム組織ハマスのイスラエル攻撃への対応などを協議するため、安保理会合を開催すると明らかにした。
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