2023年10月17日火曜日

中東情勢ニュースまとめ(10月16日~10月22日)

<10月23日朝まで>
ヨルダン川西岸地区、ラマラ:イスラエル軍は22日未明、占領下にあるヨルダン川西岸地区で、武装勢力が攻撃の計画・実行に使用していたとされるモスクの地下施設を空爆した。パレスチナの医療関係者によれば、少なくとも1人が死亡した。
イスラエル軍がヨルダン川西岸地区を空爆するのは、ここ数日間で少なくとも2度目となり、ガザ地区の武装集団ハマスが10月7日にイスラエルで多数の死傷者を伴う襲撃事件を起こして以来、この地区では暴力事件が急増している。
イスラエル軍の発表によると、ジェニン難民キャンプのアル=アンサール・モスクの地下にあった施設は、ここ数か月以内の襲撃事件に関与していたハマスとパレスチナ武装組織「イスラム聖戦」に所属する工作員が使用していたという。
軍は声明の中で、「テロリストらは無力化され、差し迫ったテロ攻撃も計画していたことを示す情報を最近入手した」ことを明らかにした。
軍はまた、モスクの下にあったバンカーの入り口とされる画像も公開。さらに、武装勢力が武器を保管していたとする場所も図で示した。
ジェニン難民キャンプは、パレスチナ武装勢力が拠点としており、今年に入ってイスラエルが展開する大規模な軍事作戦の焦点となっていた。
ソーシャルメディアには空爆現場と見られる映像が投稿され、モスクの外壁にぽっかりと穴が開き、その周囲に破片が散乱している状況が確認できた。数十人のパレスチナ人が被害の状況を確かめる裏では、救急車のサイレンが鳴り響いていた。
パレスチナ赤新月社の救急隊によると、少なくともパレスチナ人1人が死亡し、3人が負傷した。同組織はそれまで2人が死亡と発表していた。
キャンプの住民らは、キャンプへの侵攻が差し迫っているため、武装集団には近づかないようイスラエル軍から警告を受けたと話している。軍は日にちについては具体的に示さなかったという。
ハマスが襲撃事件を起こした10月7日以降、イスラエル軍は2週間にわたってガザ地区に激しい爆撃を続けている。パレスチナ当局によると、ヨルダン川西岸地区ではイスラエル軍との衝突により、これまでに少なくとも84人のパレスチナ人が命を落とした。
19日、イスラエル軍は、中心都市トゥルカルムの近郊にある難民キャンプを急襲し、空爆を実施したと発表した。容疑者の逮捕や武器の押収などが目的だったとしている。
パレスチナ側は、少なくとも12人が死亡したと発表した
ダマスカス: 2023年10月22日日曜、イスラエルが、戦時下にあるシリアの2つの主要空港を攻撃し、使用不能としたと、国営メディアが軍関係筋の話として報じた。また、運輸省はフライトはラタキア空港へルート変更されたと発表した。
首都ダマスカスと北部のアレッポにある政府管理下の2つの空港は、イスラエルによる攻撃でたびたび機能停止に追い込まれているが、今月、イスラエルとハマスの紛争が始まって以来、2度目となる同時攻撃を受けた。
国営通信SANAが伝えた声明の中の軍関係者の話によると「現地時間午前5時25分(GMT標準時2時25分)、敵国イスラエルがダマスカスとアレッポの国際空港を標的として空爆を行った。ダマスカス空港に勤務していた民間人の労働者1人が死亡、1人が負傷した」という。
また「滑走路が物的損害を受け、使用不能となっている」という。運輸省はフライトはラタキア空港へルート変更されたと発表した。
声明によると、軍事情報筋は両空港への「同時」攻撃は「ラタキアの西方、地中海方面からと、占領下にあるシリア領ゴラン高原方面から」行われたと語ったという。
シリアは、2023年10月12日当時、同時攻撃により、ダマスカスとアレッポにある2つの空港が使用不能となったと発表していた。
先週末、イスラエルがアレッポ空港を標的とした攻撃を行い、5人が負傷したと戦争監視団が報じた。また、当局によると攻撃により空港は使用不能となったという。
10年以上にわたるシリア内戦中、イスラエルはシリアに対して数百回にわたる空爆を実施しており、主にイランが支援する武装勢力やレバノンのヒズボラ、シリア軍の拠点を標的にしてきた。
イスラエルがシリアに対する個々の攻撃についてコメントすることはめったにないが、アサド政権を支持する宿敵イランがシリアで勢力を拡大するとは許さないと繰り返し述べている。
リヤド:サウジアラビアのハーリド・ビン・サルマン国防相が、フランスのセバスティアン・ルコルニュ軍事大臣から電話を受けたと、国営サウジ通信が土曜日に報じた。
電話の中で、両者は二国間関係と防衛分野における既存の協力について確認し、地域における問題や動向、情勢沈静化を目指した取り組みに関する共同調整について話し合った。
また、ガザにおける最新の情勢と、危機を終わらせるための国際的な努力についても議論した。
ハーリド王子は、軍事作戦を停止し、民間人を保護し、国際人道法を遵守し、地域の安定を回復し、パレスチナ人が正当な権利を獲得できるような形で平和の道を回復するための解決策を見出すために努力する必要性を強調した。
「我々は両国関係と防衛協力、そして地域の状況を沈静化させるための相互の努力を見直した」と、電話会談後のX(旧ツイッター)への投稿で述べた。
「軍事作戦を停止し、民間人を保護し、国際法を遵守し、和平プロセスを再開する必要性を強調した」と付け加えた。
ベイルート:ヒズボラ幹部は21日、ガザ地区で地上攻撃を開始すれば、イスラエルは高い代償を払うことになると誓い、レバノンを拠点とする過激派グループはすでに「戦いの中心 」にいると語った。
ヒズボラの副指導者、シェイク・ナイム・カセム氏のコメントが発表されたのは、イスラエルがレバノン南部で砲撃やドローンによる空爆を実施し、ヒズボラがイスラエルに向けてロケット弾やミサイルを発射する中でのことである。ヒズボラは、21日に6人の戦闘員が死亡したと発表した。これは戦闘開始以来2週間で最大の日次死亡者数である。
ヒズボラにとって、レバノン・イスラエル国境の緊張を高めることには明確な目的があり、「われわれはイスラエルを弱体化させ、準備ができていることを知らせようとしているのだ」とカセム氏は語った。ハマス当局者は、イスラエルがガザで地上攻撃を開始すれば、ヒズボラも戦闘に参加するだろうと述べた。
イスラエル南部で市民および兵士1,400人以上を殺害したパレスチナ過激派組織ハマスによる攻撃から2週間、レバノン・イスラエル国境沿いでの銃撃戦が激化している。イスラエルによるガザへの報復空爆により、4000人以上のパレスチナ人が死亡した。
イランが支援するヒズボラは、数万発のロケットやミサイル、さまざまな種類のドローン兵器を保有しており、イスラエル北部への大規模な攻撃によってイスラエル・ハマス戦争の新たな戦線を開こうとしているのではないかと懸念されている。
カセム氏によれば、ハマスと同盟関係にある彼のグループは、すでにレバノン・イスラエル国境で緊張を高めることでイスラエル軍3個師団を北部に足止めし、ガザにおける戦闘準備を妨げるという形で、この紛争の趨勢に影響を与えていると述べた。
「パレスチナの抵抗勢力を潰そうとすれば、この地域の他の抵抗勢力が行動を起こさないわけがない」21日のヒズボラ戦闘員の葬儀におけるスピーチで、カセム氏はこのように語った。「今、われわれは戦いの中心にいる。われわれは、この戦いを通じて成果を上げている」
20日、イスラエル軍は、前日の銃撃戦で3人の住民が負傷した国境の町に退避勧告を出した。
レバノン国営通信によれば、イスラエル軍のドローンが、イスラエル国境から北に約20キロ離れたセジュード地区の谷間にミサイルを発射した。ヒズボラはこの攻撃をすぐには確認していないが、もし事実なら、これは大規模なエスカレーションを意味する。レバノンのかなりの奥地で、国境から遠く離れているからだ。
レバノン南部にいるAP通信記者は、地中海沿岸に近い国境沿いで21日に大きな爆発音がしたと報じている。
ヒズボラは、自身の戦闘員がイスラエルの拠点数箇所を攻撃し、イスラエルの歩兵部隊に対しても「直撃」を与えたと主張している。
レバノン国営通信は、イスラエルによる複数の村への砲撃を報じ、ホウラ村では車が直撃を受けたと報じた。21日夕方、レバノンのヤルーン村に対峙するイスラエル軍の拠点周辺で砲撃が激化した。
ヒズボラは、21日に6人の戦闘員が死亡し、10月7日以来、レバノンの武装勢力における死者総数が19人に上ったと発表した。
イスラエル軍のアヴィチャイ・アドレー報道官によれば、武装集団がイスラエルに向けて砲弾を発射し、イスラエル軍のドローンがそれに反撃したという。アドレー報道官によれば、別の武装集団がイスラエルの町マルガリオットに向けて発砲した後にも、ドローンが出動したという。
「両方の攻撃で直撃があった」とアドレー報道官はX(旧Twitter)に投稿している。
ヒズボラのカセム氏は、過去2週間にレバノンを訪問した外国の要人がレバノンの政府関係者に対し、直近のハマスとイスラエルによる戦いに参加しないようヒズボラを説得することを求めたことについて語った。レバノン政府関係者に対するヒズボラの返答は、「われわれは戦闘の一部だ」というものだったという。
カセム氏は、「われわれは接触してきた人々に対し、『(イスラエルの)侵略を止めろ。そうすれば(紛争の)波及や拡大の可能性はなくなる』と伝えている」と述べた。これは、最近ベイルートを訪問したフランス外相やドイツ外相をら政府高官を指した発言である。
カセム氏は、予想されるイスラエルのガザ侵攻について、「われわれの情報では、ガザにおけるハマスとレジスタンス戦闘員の準備は整っている。イスラエルが地上侵攻すれば、そこが彼らの墓場になるだろう」と語った。
リヤド:マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、ガザで展開されている状況を「狂気」と非難し、イスラエルの侵略を繰り返し非難しない西側指導者たちの「偽善」に世界は目をつぶっていないと警告し、ロシアのウクライナ侵略との顕著な相似性を指摘した。
20日にリヤドで開催されたGCC・ASEAN首脳会議の傍らでアラブニュースのインタビューに応じたアンワル氏は、中東の紛争は国際政治における「矛盾と偽善」の傾向を露呈したと述べ、「一方では人権について語りながら、他方では同じ権利を否定している」と指摘した。
「歴史と地政学を良く学ぶ学習者であれば、国際政治の舞台で多くの矛盾と偽善があることに必ずしも驚くことはないだろう」と彼は語った。
「例えば、ロシアがウクライナ内のロシアの飛び地を奪取したことを理由に、ロシアの侵略を非難する。公平だ。それは非難されるべきだ。しかし、イスラエルの侵略はパレスチナ人の合法的な土地を占拠しているが、それは容認されている。
「それだけでない。侵略は支持され、擁護されている。私たちは目を覚まし、続けることのできないこの明白な偽善に目を向けなければならない」
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子はサミットの冒頭演説でこう述べた。「我々は集うにあたり、今日ガザが目の当たりにしているエスカレートする暴力、その結果として罪のない民間人が犠牲になっていることに悲しみを覚える」
皇太子は、「民間人に対する軍事作戦を停止すること。そして、1967年時点の国境線に従ったパレスチナ国家を樹立するための公正な解決に到達することを確実にするための、安定の回復と恒久的な平和の達成を目的とした条件を制定する」ことの必要性を強調した。
アンワル氏は、サウジアラビアの皇太子の発言は「情熱的で時宜を得ている」と表現しても「過言ではない」と述べ、アラブの指導者がガザの危機に対して「確固たる」立場を取るだけでなく、「人道的根拠」に基づいた立場を取ることが不可欠だと付け加えた。
アンワル氏は、即座の反応として、皇太子に感謝し、「私たちは、あなたが見ているもののために、そして、あなたとGCCとともにある。あなたが先頭に立てば、それは強力な影響力を持つだろう」と述べた。
アンワル氏は、戦闘を終結させ、より広範な戦争への拡大を防ぐためのサウジアラビアとGCCの努力を、マレーシアは全面的に支持していると述べた。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の発言は、サミットの指導者たちによるより広範な集団的嘆願の一環であり、彼らは紛争に関わるすべての当事者に対し、恒久的な停戦を実施し、ガザの民間人に対する攻撃を非難するよう求める声明を発表した。
さらに、国際人道法、特に戦時における文民の保護に関するジュネーヴ諸条約の原則と規定を遵守する必要性を強調するとともに、ガザへの人道援助、救援物資、その他の必要不可欠な必需品やサービスの提供を強く求めた。
さらに、声明は人質や民間人拘束者、特に女性、子供、病人、高齢者の即時かつ無条件の解放を促した。
本サミットのコーディネーターとして演説したアンワル氏は、1967年時点の歴史的境界線に基づく二国家解決を望むサウジアラビア皇太子の意向を繰り返した。
アンワル氏は、事態が「前例のない人道的危機」に発展し、地域的、さらには世界的な紛争に拡大するのを防ぐため、すべての国々が団結して、長期的かつ公正な解決策を見出すよう呼びかけた。
「パレスチナ人には土地、家、財産を返還すべきである」と彼は述べた。「彼らは、東エルサレムを首都とし、1967年当時の国境線に基づく国際的に承認された主権国家において、平和を享受し、尊厳を持って暮らすことが許されなければならない」
イスラエルとハマスの対立がサミットに影を落とす一方で、両ブロックの首脳は、農業と食料安全保障、銀行と金融サービス、コネクティビティ、テロ対策、エネルギー、観光、貿易と投資、文化、教育、情報などを包括するロードマップ「2024-2028:GCC・ASEAN協力フレームワーク」を採択した。首脳陣はまた、マイクロ法人や中小企業の開発政策に関する共同戦略を模索することでも合意した。
「GCCとASEANは経済的に非常に活気のある2つの小さな地域グループであり、我々は大国の影響を受けることなく、GCCの驚異的な成長とASEANの持続可能性の強さから本質的に恩恵を受けるために、この協力関係に入った。その意味で、これは歴史的なことだ」とアンワル氏は語った。
「我々はサミットについて、何年も議論してきた、そして皇太子が、よし、私が主催しようと言ってくれた。皇太子のサポートと、GCCおよびASEAN諸国におけるすべての指導者の存在により、貿易と投資をさらに促進する方法に関していくつかの条件で合意できた。我々は興奮している」
マレーシアの指導者が湾岸諸国とASEANブロックの正式な提携に自信を持つ背景には、彼が過去10年間にわたって、サウジアラビアをはじめとする同地域の「驚異的な変化」を目の当たりにしてきたことがある。
若き大学院生として頻繁にリヤドを訪れていたアンワル氏は、この地域に精通しており、個人的にその変化の速度を目撃してきたと語った。
「王国の新技術、新エネルギー、人工知能への注力は、イスラム世界全体に反映されている」と彼は語った。「もちろん、人々には課題や議論や違いがある。しかし、サウジアラビアはその宗教的役割で知られているが、それでもテクノロジー、活気ある経済、再生可能エネルギーによって近代的な国家へとシフトしているのだ」
「これは、私たちの国が見るべき、特に魅力的な部分だ。アジアには産業投資の長い伝統がある。たとえばマレーシアは、産業の倉庫としての役割から、マイクロチップのフロントエンドになり、今やその分野でリードしている」
個人的な王国での経験に加え、アンワル氏はマレーシア首相として、毎年「膨大な」数のサウジアラビア人が観光に訪れる国を統治している。マレーシア政府観光局のデータによると、観光支出の面でマレーシアへの一人当たりの支出が最も多かったのはサウジアラビアで、年間約12万1000人が同国を訪れ、その数は増え続けている。マレーシア人もサウジアラビアを訪れたいと考えており、その魅力は等しく共有されているようだ。
「サウジアラビアとマレーシアの間には、何世紀にもわたって続いてきたある種の特別な関係がある」とアンワル氏は語る。「イスラム教またはイスラム化、ハッジ(巡礼)、反植民地活動など、あなたがどのような歴史的な記述を調査したとしても、そこに、伝統的な研究者とサウジアラビア、特に学問の中心地であるメッカ周辺とのつながりをみるだろう」
「そしてもちろん、ハッジも大きな要素だ。私は幸運にも若い大学院生だった。ジェッダにはハッジ・センターのある大学があり、私もよくそこを訪れた。そこでは、学び、必要な変化を起こそうという意欲を感じ取ることができた」
両国間の相乗的な交流の歴史にもかかわらず、アンワル氏はその流れに任せるだけでは満足しない。
「これで十分かと聞かれたら、私は十分ではないと答える。つまり、現状のプロセスを促進するだけでなく、加速させることができるような仕組みを作るべきだということだ。GCC・ASEANリヤド・サミットのような会議が重要なのは、一般的にそのためだと考えている。外務大臣だけでなく、国際貿易大臣もここに来たのはそのためだ」
「私たちが探求できる具体的な分野について、彼らがフォローアップする必要があるからだ」
アンワル氏は、サウジアラビアとマレーシアの結びつきや信頼関係は「非常に独特なもの」だが、協力という点においては、さらに達成できることが多くあると述べた。
「皇太子との二国間会談では、このことを強調したい」と彼は述べた。
「さらなる努力と、我々の歴史的な前例を活用して、新生サウジアラビアと新生マレーシアの間で、変化と新たな政権のもとで、新たな関係を築きたい」
「我々の協力関係は強化されるべきだ」
オースティン米国防長官は21日、中東派遣に備える米軍部隊の増員を指示した。米国防総省が発表した。イスラエルと敵対するイランとその影響下にある武装組織の動きを警戒し、中東での抑止力を強化する狙いがある。
オースティン氏は声明で「バイデン大統領と21日に中東情勢を詳細に話し合った後、米軍の態勢強化を指示した」と明らかにした。
イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの軍事衝突を受け、オースティン氏は17日に米軍約2000人に派遣準備を命じた。ただ、任務は医療支援などで、戦闘には加わらないとも説明していた。今回は部隊の規模を明示しなかった。
オースティン氏はさらに、米海軍の空母「ドワイト・D・アイゼンハワー」の行き先をイランに近い中東に変更。これまではイスラエルに近い東地中海に送り、展開済みの空母「ジェラルド・フォード」と合流させる予定だった。
中東地域に駐留する米軍を防衛するため、迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備と地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」の追加配備も決めた。
イスラエル軍と戦闘を続けるパレスチナのイスラム組織ハマスからの人質解放を、小国カタールが仲介している。国内にハマスの事務所があり、強い関係を保つ。他にも仲介外交を展開し、実績を重ねてきた。イスラエルを支える米国は、ハマスとの関係見直しを求めている。
米ブルームバーグ通信などによると、カタールにハマスの政治拠点ができたのは2012年。対話のチャンネルを求めた米国の要請を受けた措置で、ハマスの指導者ハニヤ氏や前指導者マシャル氏らが滞在してきた。
カタールは親米国で、中東最大級の米空軍基地がある。イスラム教スンニ派が多数派だが、シーア派大国の反米イランと関係を保ち、イラン核合意再建を巡る交渉の舞台にもなった。今回の戦闘開始後もイランのアブドラヒアン外相がカタールを訪れている。
他に、アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンと国際社会の仲介役として存在感を発揮。ロシアが侵攻するウクライナで子どもが連れ去られた問題でも仲介に動く。
一方、ハマスのイスラエル攻撃を受け、米国は中東諸国にハマスとの関係見直しを要求。ブリンケン米国務長官は13日のカタールでの記者会見で「全ての国はハマスを非難すべきだ」と訴えた。
会見に同席したカタールのムハンマド首相兼外相は、ハマス事務所は「意思疎通が目的」とし、紛争終結に向けた有益な存在との考えを示した。ただ今後、米国の圧力を受けて関係の再検討を迫られるとの見方もある。
ブリンケン米国務長官は22日、米CBSテレビのインタビューでイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦に否定的な考えを示した。「今の状況を凍結すれば、ハマスが現在の場所にとどまり将来また同じ事態を繰り返すのを許すことになる。どの国もそれは受け入れられない」と明言した。
フランスのマクロン大統領は24日にイスラエルを訪問し、同国のネタニヤフ首相と会談する。仏AFP通信が22日伝えた。マクロン氏はこれまでも中東訪問の意向は示していたものの、具体的な日程は明らかにしていなかった。米欧の首脳としてはバイデン米大統領やスナク英首相に次ぐ中東入りとなる。
仏外務省によると、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのイスラエルへの越境攻撃により、フランス人30人が死亡した。その他に7人が行方不明者で、一部はハマスの人質となっていることが確認されたという。
カタール政府高官は、イスラム組織ハマスの人質となっている各国の民間人について、現在行っているハマスとの交渉を通じて「ごく近いうちに」全員が解放されるとの楽観的な見通しを示した。ドイツ紙ウェルト日曜版が報じた。
ウェルト紙は、カタール外相の顧問で同省報道官を務めるマージド・アンサリ氏へのインタビューを基に報じた。カタールはハマスに拘束されていた米国籍2人の解放で主要な役割を果たした。
同紙はアンサリ氏の発言を引用し、民間人の人質をまず解放するとの合意にカタールとして取り組んでいると伝えた。
目標は人質全員をできるだけ早期に取り返すことだが、女性や子ども、および現在行われているイスラエルとハマスによる戦闘と無関係な人たちの解放を優先することになると同氏は述べた。
「これが今日起きるのか、明日かあさってかは約束できない」とした上で、「人質、特に民間人の解放にごく近いうちにつながる道筋にある」と語った。
イスラム組織ハマスとイスラエルとの戦闘拡大防止の方策を探る国際会議「カイロ平和サミット」が、21日にカイロで開催された。アラブ諸国の首脳は、パレスチナ自治区ガザに対するイスラエルの報復攻撃を「集団的懲罰」だと非難。アラブ首脳や一部の欧州当局者は、イスラエルとパレスチナの2国家共存の必要性を強調した。
会議にはアラブ諸国の大統領や王族のほか、中東や欧州、アジア、カナダ、ブラジルの政府高官らが出席した。米国とイスラエルは参加しなかった。
主催国エジプトのシシ大統領は会議で、パレスチナ人をガザから追放するという選択肢を拒否。ヨルダンのアブドラ国王は、イスラエルがガザへの攻撃を強化する中で、パレスチナ人の命はイスラエル人の命ほど重要でないというメッセージをアラブの人々は受け取っているとの見解を示した。
欧州連合(EU)のミシェル大統領は、今極めて重要なのは「永続的な解決策に向けてあらゆる努力をすることであり、それは2国家共存という解決策に基づくものでなければならない」と主張した。
ギリシャのミツォタキス首相は「軍事介入が実行可能な政治的解決策に取って代わることはできない」と訴えた。
イスラエルは、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスによって捕らえられている人質を早急かつ大規模な形で解放するための外交努力を支持していると、交渉に詳しい複数の関係者が語った。イスラエルによるガザへの地上侵攻の先延ばしや作戦の変更につながる可能性もあるという。
20日には米国籍の母娘2人がカタールの仲介により解放された。米国はカタールに対し、人質解放に向けた取り組みをさらに強めるよう圧力をかけていると、関係者らは語った。
ハマスが拘束している人質は210人に上ると、イスラエルは説明している。
関係者らによれば、人質解放に向けた外交努力により地上侵攻がより長期にわたって先延ばしされ状況が変化した場合、イスラエルの地上作戦は形態が変わる可能性があるという。時間が味方しているのはイスラエルであり、ハマスではないと、関係者らは指摘した。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは21日、拘束している人質のうち新たに2人を「人道的理由」で解放する意向だったが、イスラエル側が受け入れを拒否したと主張した。イスラエルは「プロパガンダ」だとして否定した。
ハマスは20日、人質として拘束していた米国人女性とその娘を解放した。 
ハマス軍事部門の広報官アブ・ウバイダ氏は、別の2人を解放する意向を20日にカタールに伝えたと説明。米国人2人と同じ手順で22日に解放する用意ができているとした。
イスラエル首相府は声明で「ハマスの誤ったプロパガンダには言及しない」とした上で、「連れ去られ、行方不明になっている全ての人々を帰還させるため引き続きあらゆる措置を講じる」と述べた。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突を受け、エジプトは21日、緊張緩和を探る国際会議「カイロ平和サミット」を開いた。
アラブ首脳らがイスラエルのガザ攻撃を非難し、即時停止を訴えた一方、欧州諸国は民間人への人道支援などを呼びかけるにとどまった。また、イスラエルの代表や米政府高官は出席せず、会議は共同声明を出さずに終了した。
ヨルダンのアブドラ国王はイスラエルの攻撃に世界が沈黙していると非難し、ハマスとイスラエルの紛争を巡る公平なアプローチを求めた。
パレスチナ自治政府のアッバス議長はパレスチナ人が土地を追われたり、追い出されたりすることに反発を示し「われわれは(土地を)離れない」と強調した。
フランスはガザへの人道回廊設定を呼びかけ、英国とドイツはイスラエル軍に自制を促した。イタリアは事態のエスカレートを避けることが重要だと述べた。
米国から参加した駐エジプト臨時代理大使は会議で公には発言しなかった。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突が周辺国に広がり、中東地域の紛争に発展する恐れが高まっている。
ガザの保健省は、イスラエルの空爆により過去24時間に117人の子供を含む266人のパレスチナ人が死亡したと発表した。
イスラエルはハマスによる7日の大規模攻撃を受けてガザを「完全包囲」し、空爆を続けている。
隣国シリアの国営メディアは、イスラエルが22日にダマスカスとアレッポの国際空港をミサイル攻撃し、両空港が使用不能となったほか、2人の作業員が死亡したと伝えた。シリアではハマスを支持するイランが軍事的影響力を持つ。
イスラエル軍はまた、北部の国境付近でレバノンの親イラン組織ヒズボラと交戦した。
国境周辺で衝突が激化する中、イスラエルは22日、レバノンとシリアに近い14の地域を国内北部の緊急避難計画に追加した。
ヒズボラは22日、さらに6人の戦闘員の死亡を発表。7日以降に死亡した戦闘員は26人に増加した。
バイデン米大統領は22日、積極的な外交を展開。イスラエルのネタニヤフ首相、ローマ教皇フランシスコと会談した後、カナダ、フランス、英国、ドイツ、イタリアの首脳とも個別に電話会談を行った。
フランスのマクロン大統領とオランダのルッテ首相は今週、イスラエルを訪問する。
米国は21日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突を巡り、安全保障理事会決議案の草案を提示した。
イスラエルには自衛の権利があると明記し、イランにハマスなど「地域全体の平和と安全を脅かす武装組織やテロ集団」への武器輸出を停止するよう求める内容。
ロイターが確認した草案は、民間人の保護を求め、「テロ攻撃」に対応する国々は国際法を順守しなければならないとしているほか、ガザ地区への「継続的で十分かつ妨げのない」援助の提供を呼びかけている。
安保理は18日、ガザへの援助提供を可能にするため紛争の人道的な一時停止を求めたブラジルの決議案を採決したが、米国が拒否権を行使して否決された。
米国の草案は戦闘の一時停止や停戦を求めていない。一方で「(レバノンの親イラン組織)ヒズボラや他の武装組織に全ての攻撃の即時停止を要求する」ことを含め、ガザでの暴力が地域に波及したり拡大したりするのを阻止するよう全ての国に呼びかけている。
パレスチナ自治区ガザに人道支援物資を運ぶトラック14台は22日、エジプトとの境界から現地に入った。物資搬入は2日連続で、イスラエルによる「完全包囲」開始後2回目。ヨルダンにいる国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のジュリエット・トーマ広報官が電話で明らかにした。
境界では先に爆発があり、救急車両のサイレンが響いたとの目撃者情報があったが、イスラエル軍によると、同国軍の戦車が誤って境界近くのエジプト拠点に向けて砲撃したという。
エジプト軍の報道官は、同国の複数の国境警備隊員にイスラエル軍の戦車から発射された砲弾の破片が当たり、軽傷を負ったという。
目撃者や医療関係者は、7人が負傷し病院に搬送されたと述べた。
イスラエル国防軍は声明で悲しみを表明し、事件について調査していると説明した。
米国と欧州の政府はイスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を遅らせるよう圧力をかけている。イスラム組織ハマスによって捕らえられている人質の解放に向けカタールを通じた極秘の協議が進行中で、その時間を稼ぐためだという。この取り組みに詳しい複数の関係者が明らかにした。
この取り組みが公になっていないとして匿名を条件に語った関係者によれば、ハマスとの交渉は慎重さを要しており、失敗に終わる可能性もある。ただ、ハマスがイスラエルによるハマス囚人の解放を見返りとして要求することなく、7日の攻撃で捕らえた民間人の少なくとも一部の解放に同意する兆候が見られるとも述べた。
イスラエルは当初、地上侵攻の先延ばしに抵抗したものの、米国の圧力に押されて侵攻をとどまることに同意したと、関係者らは語った。公にはイスラエルは、ここ数日に軍事作戦に関するトーンを変化させており、民間人の犠牲者を減らすためより限定的なアプローチを採用することを示唆している。
ホワイトハウスの報道官とイスラエル政府はコメントを控えた。カタール当局は当記事に関する問い合わせに応じていない。ハマスの軍事部門は16日、イスラエル人以外の人質は「現地の状況が許せば」解放されるだろうと語っていた。
ハマスは20日遅く、拘束している人質のうち米国籍の2人を解放したと発表。母と娘の親子だとし、「カタールの努力に応えた」と説明した。イスラエル、米両当局も2人の解放を確認した。
イスラム組織ハマスを排除した後のパレスチナ自治区ガザの統治形態について、米国とイスラエルの当局者が議論を始めている。米政府内の検討状況について知る複数の関係者が明らかにした。国連が支援し、アラブ各国政府が関与する暫定政府を樹立する案などが検討されているという。
議論はまだ初期段階で、イスラエル軍による地上攻撃が成功するかどうかなど今後の展開にかかっていると、関係者は述べた。非公開の検討事項について話しているとして匿名を条件に発言した。そうした可能性がある場合、周辺アラブ諸国の同意が必要となるであろうが、確実に同意を取り付けられるとは決して言えない。
イスラエル当局者はガザを占領する意思はないと繰り返し表明しているが、ハマスによる実効支配が続くことは受け入れられないとも主張してきた。
ハマスを排除すること以外に明確な目的がないままイスラエルがガザを攻撃すれば、現在の戦闘が地域の紛争に発展しかねないと米国は懸念している。
バイデン米大統領はイスラエルに対し、長期計画を策定するよう促している。また、2001年9月11日に起きた米同時多発テロの後に米国はアフガニスタンとイラクを攻撃し、一定の目的は達したものの多数の兵士を失ったとし、イスラエルも同様の失敗をする可能性があるとの懸念を伝えた。
イスラム組織ハマスとイスラエルとの戦闘拡大防止の方策を探る国際会議「カイロ平和サミット」が、21日にカイロで開催された。アラブ諸国の首脳は、パレスチナ自治区ガザに対するイスラエルの報復攻撃を「集団的懲罰」だと非難。アラブ首脳や一部の欧州当局者は、イスラエルとパレスチナの2国家共存の必要性を強調した。
会議にはアラブ諸国の大統領や王族のほか、中東や欧州、アジア、カナダ、ブラジルの政府高官らが出席した。米国とイスラエルは参加しなかった。
主催国エジプトのシシ大統領は会議で、パレスチナ人をガザから追放するという選択肢を拒否。ヨルダンのアブドラ国王は、イスラエルがガザへの攻撃を強化する中で、パレスチナ人の命はイスラエル人の命ほど重要でないというメッセージをアラブの人々は受け取っているとの見解を示した。
欧州連合(EU)のミシェル大統領は、今極めて重要なのは「永続的な解決策に向けてあらゆる努力をすることであり、それは2国家共存という解決策に基づくものでなければならない」と主張した。
ギリシャのミツォタキス首相は「軍事介入が実行可能な政治的解決策に取って代わることはできない」と訴えた。
イスラエルのガラント国防相は20日、軍事作戦終了後にガザ地区を統治する意向はないと示唆し、同地区を巡る計画についてこれまでよりも詳しく語った。
ガラント氏はテルアビブの議会外務・防衛委員会で、イスラエルはガザから手を引き、同地区に「新たな安全保障体制」を構築することを目指すと述べた。
ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスを壊滅させるという目標をイスラエルが果たす場合に、誰がガザを統治するとイスラエルは見込んでいるのか、ガラント氏の発言からは明らかでない。
イスラエルは7日にハマスの奇襲攻撃を受けた後、ガザに大規模な空爆を実施。地上侵攻も行うと見込まれている。
ガラント氏は、軍事作戦の目的はハマスの軍事力と統治能力を破壊し、ガザ地区に対するイスラエルの責任を完全に取り除くことなどだと主張した。
「3つの段階があるだろう」と同氏は指摘し、「現在は第1の、軍事行動を実施する段階だ。テロリストを制圧し、ハマスのインフラを破壊することを目指した空爆や、その後の作戦などが含まれる」と説明。
第2段階では前段階ほど激しくはない「レジスタンスの残党」を掃討する作戦に移行するとし、最終段階で「ガザ地区の生活に対するイスラエルの責任を取り除くことが必要」になると続けた。
バイデン米大統領はパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃について、サウジアラビアとの国交正常化に向けたイスラエルの取り組みを妨害することが狙いの一つだったと述べた。
バイデン氏は20日にワシントンで行われたイベントで、ハマスが攻撃に出た理由について「私がサウジと協議しようとしていることを知っていたことが一つにある」とし、「サウジがイスラエルを承認したい意向だったからだ。実現すれば中東が事実上、団結することになるためだ」と述べた。
バイデン大統領の下で、米国とサウジは、米国の安全保障と引き換えにサウジがイスラエルを承認する枠組みに取り組んでいた。協議が進む中で政権当局者は表向きは協議に重きを置かない姿勢を示したが、バイデン氏はこの構想に熱心で、7月にはサリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)をサウジに派遣した。
カタール政府高官は、イスラム組織ハマスの人質となっている各国の民間人について、現在行っているハマスとの交渉を通じて「ごく近いうちに」全員が解放されるとの楽観的な見通しを示した。ドイツ紙ウェルト日曜版が報じた。
ウェルト紙は、カタール外相の顧問で同省報道官を務めるマージド・アンサリ氏へのインタビューを基に報じた。カタールはハマスに拘束されていた米国籍2人の解放で主要な役割を果たした。
同紙はアンサリ氏の発言を引用し、民間人の人質をまず解放するとの合意にカタールとして取り組んでいると伝えた。
目標は人質全員をできるだけ早期に取り返すことだが、女性や子ども、および現在行われているイスラエルとハマスによる戦闘と無関係な人たちの解放を優先することになると同氏は述べた。
「これが今日起きるのか、明日かあさってかは約束できない」とした上で、「人質、特に民間人の解放にごく近いうちにつながる道筋にある」と語った。
エジプト国営テレビの映像によると、パレスチナ自治区ガザとエジプトを結ぶラファ検問所から21日、人道支援物資を積んだトラックが入り始めた。
関係者や人道支援の活動家らによると、これより前、医薬品を積んだトラックが準備され、検問所のエジプト側には国境警備員が配置されていたという。
イスラム組織ハマスの声明によると、20台の輸送トラックがこの日、エジプトからガザに入る予定で「医薬品、限られた量の食料品の缶詰」が載せられているという。
イスラエルのネタニヤフ首相は20日夜、パレスチナ自治区ガザへの攻撃に関し「勝利まで戦う」ことを宣言した。イスラム組織ハマスはこの日、人質として捕らえていた米国人女性とその娘の2人を解放したが、ネタニヤフ首相はガザ攻撃を中止する意向はないことを示唆した。
ガザを実効支配するハマスは7日、イスラエルに対する奇襲攻撃を行い、民間人を中心に1400人を殺害し、約200人を拘束した。それ以来、双方により初めて確認された人質解放となった。
ネタニヤフ首相は声明で「拘束され行方不明になっている全ての人々を取り戻すための努力を諦めない」と主張。「そして、われわれは勝利するまで戦い続ける」とも述べた。
イスラエルは地上戦を計画しており、ガザ周辺に戦車と軍隊を集結させている。パレスチナ当局によれば、イスラエルによるガザ空爆で数百人の子どもを含めて少なくとも4137人のパレスチナ人が死亡。100万人以上が避難したという。
フランスの軍事偵察局(DRM)は20日、パレスチナ自治区ガザの病院で17日に起きた爆発について、イスラエル軍の空爆によるものではなく、パレスチナ側のロケット弾発射の失敗によるものである可能性が高いとの分析を明らかにした。衝撃によるクレーターが、イスラエル軍のミサイルによるものにしては小さすぎるという。
DRMは「イスラエル軍の攻撃だと断言できるものは何もないが、最も可能性の高い仮説はパレスチナ側のロケット弾の発射事故で、火薬量は約5キロ」と説明。パレスチナ側のグループは、同程度の火薬を装填する小口径のロケット弾を装備しているとした。
発射した組織については特定せず、正確な発射地点も示さなかった。
DRMがこのような情報を公表するのは異例。病院を攻撃した「犯人」についてさまざまな見方が出ていることから今回、マクロン大統領の指示により調査結果の公表に踏み切ったという
ガザ市にあるアル・アハリ病院で起きた爆発を巡っては、イスラム組織ハマスが実効支配するガザの保健当局がイスラエル軍の空爆で引き起こされたと主張。ガザ保健当局は18日、死者数は471人と発表した。これに対し、イスラエルはパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」によるロケット弾発射の失敗が原因だとしている。
バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相は20日、エジプトからパレスチナ自治区ガザに人道支援の提供を開始する計画について協議したとホワイトハウスが声明で発表した。
発表によると、両首脳はまた、イスラム組織ハマスによって連れ去られた人質の解放を確保し、ガザにいる米市民や他の市民の安全な通行を提供するための継続的な取り組みについても議論したという。
スナク英首相は20日、エジプトの首都カイロでパレスチナ自治政府のアッバス議長とエジプトのシシ大統領と会談した。より広範な地域紛争や市民の犠牲を回避し、パレスチナ自治区ガザへの支援搬入容認の重要性を強調した。英首相府が発表した。
英首相府の声明によると、スナク首相はアッバス議長との会談で「ガザで市民の命が失われていることに深い哀悼の意を表明」し、両首脳は「全ての当事者が民間人を保護するための措置を講じることが必要という見解で一致した」。
さらに、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの「テロ行為を非難し、ハマスがパレスチナ市民の代表でないことを強調」し、スナク首相は「ガザへの人道的アクセス開放へのコミットメントを強調した」という。
スナク首相は会談後、現地の放送局に対し「人道支援を必要としている人々へのアクセス確保など、具体的な分野で良好な進展があった」と語った。
さらに、ガザ危機が始まってから、ガザとエジプトを結ぶラファ検問所の開通を優先してきたと強調し、「ラファを通じた支援継続を確実にするために、英国がどのように実際的な支援を提供できるかについてシシ大統領と十分に話し合った」と明らかにした。
イスラエルの隣国ヨルダンで20日、イスラエル軍による空爆を抗議し、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスを支持するデモが各地で相次いだ。
首都アンマンには6000人を超える抗議者が集結し、イスラエルのテルアビブを攻撃するようハマスに呼びかけた。
アンマンにあるイスラエル大使館周辺にも数千人が集まり、「アラブの土地にユダヤ大使館はいらない」と抗議した。
デモは首都以外にも飛び火しており、ヨルダンの機動隊はイスラエルのパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に通じる全ての道路を封鎖した。
ヨルダンの国民の多くはパレスチナからの移住民の子孫とされている。
イスラエル軍報道官は21日、パレスチナ自治区ガザ北部のイスラム組織ハマス拠点への攻撃を強化すると発表した。「戦争の次の段階に備えるためだ」とした。イスラエルメディアによると、軍の航空機はガザ北部の住民に避難を求めるビラをまき、避難しない場合はテロ組織の仲間だとみなす可能性があると警告した。
ハマスは21日、拘束する人質のうち、女性2人を人道上の理由で解放すると仲介役のカタールに伝えたが、イスラエル政府が受け入れを拒否したと通信アプリで発表した。20日に米国人2人を解放したのと同じ手順で22日に解放する準備ができていると主張した。イスラエル首相府は「虚偽のプロパガンダだ」とし、関与しないと反発した。
イスラエルの政府や軍の高官からはガザへの地上侵攻を見据えた発言が連日、相次いでいる。ハレビ参謀総長も21日、軍幹部らに「われわれはガザに入る。ガザは複雑で人口密集地だ。敵は準備しているが、われわれも備えている」と語った。
軍はガザ周辺に部隊を集結させ、ガザ北部の住民に南部への避難を通告し、空爆や砲撃を続けている。軍報道官によると、南部に避難した住民は約70万人に上る。イスラエル北部のレバノン国境でもレバノンのイスラム教シーア派民兵組織との交戦が激化している。
ガザの保健当局によると、ガザ側の死者は4385人。イスラエル首相府によると、同国側の死者は1400人以上で、双方の死者は計5700人以上となった。
ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は21日、トルコのエルドアン大統領と電話会談し、パレスチナ自治区ガザ情勢やウクライナ和平を協議した。ウクライナ大統領府が発表した。ゼレンスキー氏は、ガザ情勢を念頭に「新たな国際的課題に直面する中でも、世界はウクライナ和平の実現へ努力を続けなければならない」と訴えた。
ウクライナが提唱する「平和の公式」に関する会合が28〜29日に地中海の島国マルタで開かれ、トルコも参加予定。
トルコはロシア、ウクライナ双方と関係を維持している。ウクライナ大統領府によると、11月にトルコでウクライナの復興に関する会合が開かれる。
イスラエルで賃貸住宅向けにソフトウエアを提供するスタートアップ企業Vennのオル・ボコブザ最高経営責任者(CEO)はこの1週間、同僚とほとんど会話をしなかった。
パレスチナ自治区を実効支配するイスラム組織ハマスが7日にイスラエルを急襲した直後から、イスラエル軍精鋭部隊の予備役兵として戦場にいるからだ。
カイロ:人道援助トラックがエジプトのラファ検問所から、包囲されたガザ地区に入り始めた。エジプトメディアが報じた。
救援物資を積んだトラックの車列は20台で、医薬品、医療品、限られた量の食糧を積んでいるとハマスのメディアオフィスは伝えた。
エジプト国営テレビは、数日間待機していたトラックがエジプトのシナイ半島から境界検問エリアに入る様子を放映した。
エジプトメディアは先に、ガザのパレスチナ人への人道支援物資を運ぶトラックの通行を可能にするため、ラファ検問所を開放する準備が進められていると伝えていた。
テレビで放映された映像では、エジプトからガザに人道支援物資を運ぶために入国するトラックを先導していると思われるトラックが検問所に向かって移動する様子が映し出された。
在イスラエル米国大使館は、ガザとエジプトの検問所が21日に開かれる可能性があると述べており、そのような動きがあれば、包囲されたこのパレスチナの飛び地、ガザから外国人が出国できるようになることを示唆した。
同大使館はソーシャルメディアへの投稿で、ラファ検問所が午前10時(GMT午前7時/日本時間午後4時)に開かれるという「情報を受け取った」と述べた。
「外国人がガザから出国するために、いつまで検問所が開かれるかはわからない」と大使館は付け加えた。
10月7日にハマス過激派がイスラエル南部の町を襲撃した後、イスラエルはガザを封鎖し、集団懲罰的な空爆を開始した。
ガザの多くの人々は、一日に一食しか食べられず、十分な水も飲めないまま、援助を切実に待っている。病院関係者も、爆撃で負傷した大勢の人々を治療するため、医薬品や発電機の燃料を緊急に必要としている。
また、何百人もの外国パスポート保持者も、紛争を逃れるためにガザからエジプトへ渡るのを待っていた。
21日、ハマスがアメリカ人女性とその10代の娘を解放した後、イスラエルと同パレスチナ武装勢力は銃撃戦を繰り広げた。彼らは、ハマスによる10月7日のイスラエルへの突入後に拉致された約200人の人質のうち、解放された最初の2人であった。
イスラエルは2週間にわたりガザの領土を封鎖しており、パレスチナ人に食料を配給し、井戸の不潔な水を飲むことを強制している。病院では、地域全体が停電する中、医薬品や非常用発電機の燃料が不足しているという。
ガザ側では、おそらく切実に必要とされている援助物資を運ぶ準備のために、空の平床トラックが列をなして移動しているのが見られた。
この解放は、イスラエルが過激派組織、ハマスを壊滅させることを目的とした地上攻撃が広く予想されているなかで行われた。ハマスは、16年間ガザを支配している。イスラエルは20日、約230万人のパレスチナ人が住むこの小さな領土を長期的に支配するつもりはないと述べた。
カイロ:エジプト政府が、ガザ地区で激化するイスラエルとパレスチナの武装組織・ハマスとの戦争について協議する国際サミットを主催する。
エジプト当局は先に発表した声明において、イスラエルの執拗な爆撃により約4000人のパレスチナ人が死亡し、1万3000人以上が負傷したことを受け、サミットはガザ地区での即時停戦を推進することを目的とすると明らかにした。
急遽開催されることになった同サミットでは、世界や地域の指導者が集結し、現在進行中の暴力から民間人を保護し、パレスチナ問題の正当な解決策を導き出す方法を探ることになる。
エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は、人道支援車両がラファ検問所で立ち往生している状況を受け、サミットの開催を呼びかけた。ガザ地区で医薬品や食糧の供給が不足し、より深刻な人道危機を引き起こしているため、1日20台の支援トラックを許可することでイスラエルと合意に達した。
出席が予定されている地域の首脳は、パレスチナのマフムード・アッバース大統領、ヨルダンのアブドッラー国王、バーレーンのハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ国王、カタールのシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ首長、クウェートのシェイク・ミシャール・アル・アフマド・アル・サバーハ皇太子らだ。
世界の首脳としては、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、スペインのペドロ・サンチェス首相、ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相、キプロスのニコス・フリストドゥリディス大統領、ドイツのアナレーナ・ベアボック外相、フランスのカトリーヌ・コロンナ外相、日本の上川陽子外相、英国のジェームス・クレバリー外相などの出席が見込まれている。
エルサルム:ガザ地区での戦争を巡って地域の緊張が高まる中、イスラエルは国民に対してエジプトとヨルダンから即時退避するよう勧告したと、同国の国家安全保障会議が21日に発表した。
「イスラエルの国家安全保障会議は、エジプト(シナイ半島を含む)とヨルダンへの渡航警告をレベル4(高い脅威):これらの国に渡航しないよう推奨、現地に滞在する国民はできるだけ早く離れること、に引き上げる」と同会議は声明の中で述べた。
この通知の数日前には、イスラエルが安全対策としてトルコから外交官を呼び戻し、それ以前には国民にも退避するよう要請していた。
イスラエルがガザ地区を砲撃したことに対して、数日間にわたる抗議運動が中東各地で行われたのを受け、その数日後に避難勧告が出された。
イスラエル当局によると、この戦争が勃発する前、ハマスの戦闘員らはガザ地区からイスラエルになだれ込み、200人以上を人質として連れ去り、少なくとも1,400人を殺害したという。犠牲者の多くは一般市民で、銃撃されたり、手足を切断されたり、焼かれたりして命を落としたとしている。
その後、イスラエルはハマスを殲滅すると宣言。報復として開始された空爆によって、ガザ地区の一部は跡形も無く破壊された。ハマスが運営する保健省によれば、これまでに4,137人のパレスチナ人(多くは民間人)が死亡した。
パレスチナ・ガザ地区:2023年10月20日金曜、ガザ地区を支配するハマスが、10月7日のイスラエル襲撃で連れ去った人質約200人のうち、米国人2人を解放。さらなる人質の解放を示唆した。
ジュディス・タイ・ラーナンさんと、娘のナタリー・ショシャナ・ラーナンさんは20日金曜夜にイスラエルに帰国したと、イスラエル政府が発表した。
2人の詳しい健康状態については明らかにされていないが、米国大統領ジョー・バイデン氏はすぐに、このニュースに「非常にうれしく思っている」と述べた。
ハマスはカタールやエジプトと協力し「民間人」の人質の解放に取り組んでいると述べ、さらなる人質解放の可能性を示唆した。
2人はガザ地区の境界で、イスラエルの特使に出迎えられ「家族の待つ」イスラエル中部の軍事基地へと移送された。
米国人親子は、10月7日、イスラエルとガザ地区との境界付近にあるキブツ・ナハル・オズから連れ去られた。イスラエルには休暇で訪れていたと報じられている。
ラーナンさん一家は、他の多くの人質の家族と同様、ガザ地区から2人を救出するための努力を強く求める国際的な運動を行っていた。
ハマスは、カタールとエジプトからの働きかけを受け「(エゼディン・)アル・カッサム旅団は人道的理由から2人の米国人を解放した」と発表した。
ガザ地区を支配するハマスは「状況が許せば、すべての仲介者と協力し、民間人(の人質)全員の解放を実行に移す」と述べたが、要求の詳細はわかっていない。
イスラエルによると、イスラエル人、二重国籍者、外国人を含む203人がハマスの武装部隊に拉致され、イスラエルの75年の歴史上最悪となる攻撃を受けた。イスラエル政府によると、少なくとも1400人が殺害され、ほとんどが民間人だという。
イスラエルはガザ地区に対する執拗な空爆作戦で応酬し、ハマスによると、少なくとも4137人が死亡、そのほとんどが民間人である。
イスラエルでは人質が大きな問題となっており、首相のベンヤミン・ネタニヤフ氏の事務所は、政府が「行方不明者全員の所在を突き止め、人質となった全員を連れ帰るためにあらゆる手段を用いる」と述べた。
赤十字国際委員会は、解放された米国人2人をイスラエルに移送したと発表した。
赤十字国際委員会総裁のミリアナ・スポリアリッチ氏は、彼女たちの解放は他の人質の家族らにとって「一縷の光」を与えるものだと述べ、紛争のすべての当事者に対し「最低限の人間らしさ」を示すよう呼びかけた。
今回の人質の解放は、米大統領のバイデン氏が、攻撃を受けたイスラエルに対する支援を表明するためイスラエルを訪問した、2日後に実施された。
バイデン氏は声明で「我々の仲間はこの14日間、ひどい試練に耐えた。解放された2人が恐怖に苦しめられてきた家族とすぐに再会できることを大変喜んでいる」と述べた。
米国務長官のアントニー・ブリンケン氏は、さらなる人質の「即時かつ無条件」の解放を求めた。
カタールはガザ地区の主要な支援国であり、ハマスの指導者2名を受け入れている。カタール外務省の報道官は、同国がハマスと米国を仲介し「すべての関係者の間で何日も継続的に意思疎通を図った」結果、解放に至ったと述べた。
「我々はイスラエルとハマス両者と対話を続け、我々の努力によって、あらゆる国籍の民間人の人質が全員が解放され、最終的な目標である現在の危機的状況を緩和し、平和を回復することに繋がることを期待する」と報道官マジッド・アル・アンサリ氏は述べた。
イスラエル軍は金曜、ガザ地区への侵攻において死体が発見されたものの、連れ去られた人質のほとんどは生存していると発表した。
軍によると、人質の20人以上は未成年、10~20人は60歳以上だという。
また、ハマスの襲撃以降、100~200人が行方不明となっていると付け加えた。
アラブの子どもたちの命が未曾有の暴力に晒されている。UNICEFの推定によれば、中東と北アフリカでは紛争の影響下にある国に暮らしている子どもの数は6,100万人強に上るという。これはつまり、アラブの子どもたちの3人に1人が暴力の被害を経験しているという衝撃的な事実を意味する。パレスチナに拠点を置く、同国の子どもの人権に関する活動を行う独立組織ディフェンス・フォー・チルドレン・インターナショナル(DCI)の推定によると、イスラエルがガザに対して仕掛けた戦争により、今月命を落としたパレスチナの子どもたちは1,200人に上るという。
悲惨な人道状況は、子どもたちに様々な悪影響を及ぼす。その核となる深刻な心理的トラウマは子どもたちの人生を損ない、感情およびメンタルのウェルビーイングに長期的な悪影響を及ぼす。若年の被害者は一般的に、不安、鬱、自尊心の低下、睡眠障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、社会的孤立、分離不安、家族や友人を失ったことへの深い悲嘆といった症状を経験する。
紛争は子どもたちとその家族に地元を放棄することを余儀なくさせ、強制退去やコミュニティの結びつきの弱体化を引き起こし、支援する仕組みがないままに不確かで不安定な未来に自分たちだけで向き合わなければならない状況を作り出す。強制的に住む場所を追われることは学校に通う生徒たちが教育の機会を奪われることにも繋がり、彼らが将来職を得るために欠かせないスキルを身につけるチャンスが減ることになる。それと同時に、生存の手段として児童労働を強制され、搾取される子どもたちも出てくるだろう。
紛争地帯に暮らす子どもたちは、肉体的負傷による衰弱や長期的な障害を被り、劇的に生活の質が落ちる可能性も抱えている。紛争地帯における食料供給の途絶は飢餓や栄養失調を引き起こし、身体および認知機能の発育不全や発育の遅れという形で子どもたちの健康に深刻な悪影響を与えかねない。最悪なのは、紛争地帯においては現在進行系の暴力、栄養失調、病気や怪我を治療するための医療サービスにアクセスできないことなどにより、小児死亡率が高いことだ。
紛争の影響を受けたアラブの子どもたちの保護と支援は、直ちに取り組むべき、極めて重要な人道および政策的課題だ。多面的な政策的ソリューションを包括的に協力して実行すれば、紛争地帯の子どもたちの保護に大きく貢献し、彼らの権利とウェルビーイングを守ることができる。シェルター、心理的サポート、健康と栄養、教育、安全とセキュリティ、家族の再会、子どもの保護機構といった数多くの不可欠な要素を優先事項に据えることを念頭に置かなくてはならない。
そういった要素がどれだけ満たされているのかを監視するために、子どもたちのモニタリングシステムを確立する必要がある。より明確な把握のためには、多角的で包括的な子どもたちのデータ収集に加え、出生時の子どもの登録が必要だ。人道危機はたいていの場合家族の暮らしに影響を及ぼすため、経済的負担を減らすために子どもを抱える家庭をサポートするための支援プログラムを立ち上げる必要がある。この支援は住居またはシェルター、食料引換券、衣類、ヘルスケア、保育助成金といった形で行うことで、親が働けるようにするためのものだ。子どもたちが安全に遊ぶことができ、地域コミュニティと交流できる、子どもにやさしい空間づくりも行う必要がある。そうした空間は育児教室、カウンセリング、子どもの発育支援、若者の教育プログラム、法律扶助クリニックなど、幅広い家族関連の必須サービスを提供するための土台としても機能する。
時宜にかなった有効な医療サービスへのアクセスは、依然として幼児期から思春期を通じて子どものウェルビーイングにおける最優先事項であり続けるだろう。発育の節目をモニタリングするための定期検診、ワクチン接種の義務化や様々な小児疾患の治療など、あらゆる角度からのサービスを提供しなければならない。人道環境は身体的な負傷や死亡のリスクが高く、恒久的な障害や子どもの死亡リスクを最小限に抑えるために緊急の負傷治療を迅速に提供できるようにすることが必要とされる。
子どもたちのウェルビーイングを守り、未来の可能性をより良いものにするために、いかなる人道戦略においても教育は課題に含めておく必要がある。第一に、子どもたちが教育を継続できるよう、複数の適切な立地に安全な臨時の学習環境を整えるべきだ。この地域の不安定な状況を考えれば、授業時間は柔軟に設定しても良いし、オンライン授業やeラーニング教材へのアクセスが変革をもたらすソリューションになるかもしれない。本を配布して回るための移動式図書館の設置に加えて、子どもへの本や教材の配布には支援が必要になるだろう。
紛争が子どもたちのウェルビーイングに大きな影響を及ぼすことは間違いない。そのため、ソーシャルワーカー、教師、心理学者らの専門性を集約し、子どもたちが様々な感情やメンタル面の問題と向き合い、立ち直るための術を身につけられるようにすることが最優先事項となる。トラウマ教育、ストレスを軽減するテクニック、不安や恐怖への対処法などを組み込むことで、紛争の影響の一部を軽減し、立ち直る力を高めることができるだろう。さらに子どもたちには、さらなる緊急事態が起きたときに自分を守るための手順を教えておくべきだ。
戦争の混乱の中では、子どもたちが家族と離れてしまい、暴力、虐待、搾取、ネグレクトをとりわけ受けやすい状況に置かれる可能性がある。こうした困難にうまく反応して対処するためには、家族との離別という問題自体に対して妥協なき介入を行い、一時的あるいは代替ケアを提供し、最終的に家族の追跡プログラムを通じて別れた家族と子どもを再会させることが不可欠だ。こうした重大な問題にあっては、子どもたちが専門かつ専任の子ども保護チームに支援を求められるよう、コミュニケーションの手段を維持しておくことが不可欠である。コミュニティを中心とした草の根の子ども保護ネットワークを構築することは、子どもの保護に関する問題が起きた際にそれを察知し対応するために極めて重要だ。
子どもたちが直面させられる困難な問題を考えれば、世界、地域、ローカルの関係者が協力し、子どもたちの安全とウェルビーイングを守ることが極めて重要である。
カイロ:エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は21日(土)、ガザ地区における人道的惨事を終結させ、平和への道を復活させるためのロードマップについて合意するため、世界の指導者をカイロ平和サミットに招待したと述べた。
ロードマップの目標には、ガザ地区への支援物資の輸送や停戦の合意、さらには二国家解決に向けた交渉が含まれるという。
ヨルダンのアブドッラー国王も同様の立場から、パレスチナ人の強制退避や国内移住は戦争犯罪になると、開会式での演説で述べた。
エジプトは、イスラエルとパレスチナの武装組織ハマスの戦争を議論する国際サミットを主催している。
エジプト当局は声明で、サミットの目的は、イスラエルによる執拗な爆撃で約4000人のパレスチナ人が死亡し、1万3000人以上が負傷したガザ地区での即時停戦を推進することだと述べた
急遽招集された同サミットには、地域や世界の指導者らが集まり、民間人を暴力から守り、パレスチナ問題の公正な解決に至る方法を模索する。
エルシーシ大統領は、人道危機を防ぐ措置として、1日当たり20台のトラックによるラファ検問所経由の支援物資の輸送を許可することでイスラエルと合意に達したことを受け、サミットの開催を呼びかけた。
出席が予定されている地域の首脳は、パレスチナのマフムード・アッバース大統領、ヨルダンのアブドッラー国王、バーレーンのハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ国王、カタールのシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ首長、クウェートのシェイク・ミシャール・アル・アフマド・アル・サバーハ皇太子らだ。
世界の首脳としては、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、スペインのペドロ・サンチェス首相、ギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相、キプロスのニコス・フリストドゥリディス大統領、ドイツのアナレーナ・ベアボック外相、フランスのカトリーヌ・コロンナ外相、日本の上川陽子外相、英国のジェームス・クレバリー外相などが出席する。
ハーン・ユーニス、ガザ地区:イスラエル国防相は、10月20日、武装組織ハマスを壊滅させた後、イスラエル軍が「ガザ地区の人々の生活」を統制する計画はないと述べた。
ヨアフ・ガラント国防相は、議員らに対して、ガザ地区の長期計画についてイスラエル政権幹部としては初めてコメントした。
ガラント国防相は、イスラエルとハマスとの戦争においては、3つの段階があると想定していると語った。まず、ガザ地区の武装組織ハマスを空爆と地上作戦行動で攻撃し、次に散開し孤立した抵抗グループを個別に壊滅させ、最終的にハマスによる「ガザ地区の人々の生活の支配」を終わらせると、ガラント国防相は述べた。
イスラエルは、10月20日早朝に、ガザ地区に対する空爆を行い、パレスチナ人らに安全のために退避するよう告知していた地区を攻撃し、レバノンとの国境近傍の相応規模のイスラエルの都市の住民に退避を開始させた。これらが、地域規模での混乱を引き起こし得るガザ地区への地上侵攻の可能性を示す最新の兆候である。
ガザ地区南部の都市であるハーン・ユーニスに対して激しい空爆が行われ、男性や女性、子供たちを乗せた救急車が現地のナセル病院に次々と到着したと、ガザ地区のパレスチナ人複数が述べている。ガザ地区で2番目に規模の大きいナセル病院は、既に怪我人や病人、避難場所を求める人々で溢れていた。
イスラエル軍は、トンネルや武器庫など、ガザ地区を支配するハマスに関係する100以上の標的を攻撃したと発表した。
ガラント国防相は、10月19日、イスラエル側への残忍な襲撃から約2週間後、地上部隊に対して、ガザ地区を「内側から」見る準備を命じ、同地区を支配する武装組織ハマスの粉砕を目的とする地上侵攻を示唆した。
イスラエル当局者は、地上侵攻作戦の予定については一切明らかにしていない。
ガザ地区では、100万人以上が退避している。地中海沿岸の封鎖された北部の飛び地からの退避をイスラエル側は勧告し、ガザ地区の数多くの人々はをこれを聞き入れている。ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、今週初め、ガザ地区南部を「安全地帯」と呼んでいたが、イスラエル軍のニル・ディナール広報官は、10月20日、「安全地帯は存在しない」と述べた。
国連職員らは、ガザ地区全域での爆撃を受け、北部から退避していたパレスチナ人らの一部が北部に戻りつつあるようだと語った。
「空爆と極めて困難な生活条件が、ガザ地区南部から依然として激しい空爆の続く北部への一部の人々の帰還を後押ししてしまっているようです」と、国連人権事務所の広報担当者であるラヴィナ・シャムダサニ氏は語った。
ガザ地区では、全ての病院が逼迫した状況にある。医薬品は減少の一途で、発電機用の燃料も配給制となっている。各機関は、切実に必要とされている援助物資のエジプト側からの輸送のために、ロジスティックスの調整に尽力している。ガザ地区全域で、医師たちは、照明のつかない暗い病棟で、携帯電話の灯りで手術を行い、感染した外傷の治療に酢を使用した。
イスラエルが支配下としていないガザ地区への唯一の入口を通じて、ガザ地区に援助物資を持ち込む取り決めは依然として強固ではない。
イスラエル側は、援助物資は民間人のみに提供され得るものであり、ハマスへのいかなる横流しも「阻止する」と述べた。エジプト北端とガザ地区南端にまたがる都市であるラファの交差路の近傍には、200台以上のトラックが待機し、約3,000トンの援助物資が集積されている。
空爆で損傷したガザ地区側国境付近の道路の修復工事が10月20日に開始され、トラックが砂利を降ろし、ブルドーザーなどの道路補修工事用の機械が大きく開いたクレーターを埋めた。
イスラエルは、ガザ地区近傍やレバノン国境沿いの住民を、国内の他地域のホテルへと退避させた。イスラエル国防省は、10月20日、レバノン国境に近くにあり20,000人以上の人口を擁する町キリヤット・シュモナの退避計画を発表した。イスラエル保健局によると、キリヤット・シュモナはロケット弾攻撃を10月19日に受け、5歳の少女を含むイスラエル人3人が負傷したという。
長距離ロケット弾を大量保有するレバノンの武装組織であるヒズボラは、イスラエルとの国境沿いで、ほぼ毎日のように銃撃戦を行っている。ヒズボラは、イスラエルがハマスの殲滅を目指すのであれば参戦する可能性があると示唆している。イスラエルの宿敵イランは、武装勢力ヒズボラとハマスの両方を支援している。
ガザ地域への空爆という武力行使は、また、米国と同盟関係にあるアラブ諸国を含む中東地域全域で抗議活動を引き起こしている。こうした抗議活動は、毎週のイスラム教徒の祈りの後10月20日にさらに激化する可能性がある。
他方、米議会に提出された機密扱いではない米情報機関の分析では、今週ガザ市の病院で発生した爆発による死傷者数は100人から300人とこれまでの見方よりも「低め」に推定されている。AP通信が入手した報告書では、死者数は「依然として驚異的な人命の損失を反映している」と述べられていいる。同報告書は、情報当局は依然として痕跡や状況を分析中であり、推定死傷者数は変わる可能性があるとしている。
この報告書では、米当局が以前に発表した、アル・アハリ病院における爆発はイスラエルの空爆によるものではないとの分析が繰り返されている。これは、ハマスが運営するガザ地区の保健省の当初の報告とは異なる認識である。イスラエル側は、この爆発がパレスチナ側の武装勢力によるロケット弾の誤射によるものであることを証明する動画や音声、その他の証拠を提示している。
AP通信は、当事者らが発表した主張や証拠類の独自検証は行っていない。
イスラエル軍は、19日遅く、アル・アハリ病院近くの退避中のパレスチナ人らを収容しているギリシャ正教会を空爆した。
イスラエル軍は、近くのハマスの指揮統制センターを標的としたところギリシャ正教会の壁にも損傷を与えたと発表した。ハマスが運営するガザ地区の保健省は、パレスチナ人キリスト教徒16人が殺害されたと述べた。
ギリシャ正教のエルサレム総主教庁はこの空爆攻撃を非難し、支援を提供する「宗教的、人道的義務を放棄することはありません」と述べた。
イスラエル軍は、10月7日のハマスの衝撃的な襲撃への報復としてガザ地区を容赦なく攻撃している。
一方、パレスチナ側の武装勢力ハマスはイスラエルに対して執拗なロケット弾攻撃を開始した。イスラエルによると6,900発を越えるロケット弾が発射されたという。そして、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区においても緊張は高まっている。パレスチナ保健省によると、10月19日、イスラエル兵士との戦闘において空爆が要請され、5人の未成年者を含む13人のパレスチナ人が殺害されたという。イスラエル側は、この戦闘でイスラエル国境警備隊の隊員1人が殺害されたと発表した。
戦争開始以来、ガザ地区では3,785人が殺害され、その大半は女性や子供、高齢者であると、ガザ保健省は発表した。関係諸機関によると、12,500人近くが負傷し、さらに1,300人が瓦礫の下敷きとなったという。
イスラエルで側は1,400人以上が殺害され、そのほとんどがハマスによる苛烈な襲撃で殺害された民間人だった。その他に、約200人が拉致されている。イスラエル軍は、19日、拉致された203人の人々の家族に連絡したと発表した。
ガラント国防相は、19日、ガザ地区との境界沿いに集結するイスラエル軍の歩兵らに対して燃えるような演説を行い、同地区への侵攻の「準備」を行うよう呼びかけた。イスラエルは、約36万人に上る予備兵力を招集し、ガザ地区との境界沿いに数万人規模の部隊を終結させている。
「現在ガザ地区を遠望している諸君全員が、内側からガザ地区を見ることになる」と、ガラント国防相は兵士らに語りかけた。「私たちが彼らを殲滅するまでに、1週間か1ヶ月、2ヶ月を要するかもしれない」と、同相はハマスに言及し付け加えた。
イスラエルによる完全包囲により物資が欠乏しているガザ地区の住民の一部は、1日に食事は1度のみで、清潔ではない水を飲まざるを得ない状況にある。
エジプトとイスラエルは、病院で使用するために燃料の持ち込みについて依然交渉中である。イスラエル軍の広報担当であるダニエル・ハガリ少将は、ハマスが国連施設から燃料を盗んだことがあり、イスラエルはそのような事が2度と起こらない保証を求めていると述べた。
ガザ保健省は、病院に燃料を提供するようガソリンスタンドに懇願している。国連機関も最後に残された燃料の一部を病院に寄付した。ガザ地区内唯一の発電所が先週停止したため、パレスチナ人らは発電機に依存せざるを得なくなっているが、戦争開始以来燃料は持ち込まれていない。
国連機関からの燃料の寄付を受けた、ガザ地区で最大規模の病院であるガザ市のシファ病院のモハメド・アブ・セルミア院長は、「これで、今後数時間、私たちは病院の機能を果たすことができます」と語った。
ロンドン:ハマス幹部のハーリド・マシャアル氏は、同テロ集団は10月7日のイスラエル攻撃がもたらす結果をよく認識していると延べ、「解放」を勝ち取るためにはパレスチナ人の命を犠牲にする必要があると付け加えた。
UAEの放送局、アル・アラビーヤの番組司会者ラシャ・ナビル氏との激しいインタビューで、マシャアル氏は「独創的な」ハマスの攻撃を賞賛し、これをイスラエル占領に対する「正当な抵抗」と呼んだ。
ナビル氏は、ハマスの元政治局長(最高指導者)であるマシャアル氏に異議を唱え、イスラエル南部での「イスラエル市民に対する違反行為」を真の抵抗と呼べるのか疑問を呈し、襲撃はパレスチナ人民の支持なしに決定された「宣戦布告のようなもの」だと述べた。
彼女はまた、西側メディアではハマスが今やダーイシュと比較されていることを指摘、1400人近いイスラエル人を殺害した攻撃を実行することで、パレスチナの大義への同情を促すことをどのように期待していたのかとマシャアル氏に迫った。
彼女はまた、ハマスがこのような攻撃がイスラエル軍の反応を促すことを予期していた可能性が高く、それゆえ、数千人のパレスチナ人が死傷し、100万人以上が国内避難民となっているガザで展開されている「大きな人道的悲劇」の責任を負わなければならないという事実を強調した。
「我々は、10月7日の作戦がもたらす結果をよく認識している」とマシャアル氏は語った。
彼は、解放のためには犠牲を払う必要があると付け加え、第二次世界大戦におけるソ連、米国との戦争におけるベトナム、ソ連と米国の占領に対するアフガニスタンの抵抗、そしてアルジェリアの独立のための戦いを例に挙げた。
彼は言った。「パレスチナの人々も他の国と同じだ。犠牲なしに解放される国家はない。イスラエルは、我々が抵抗しようがしまいが、我々を殺すだろう」
マシャアル氏は、民間人をそのように扱うことがハマスのイデオロギーの一部なのかと質問され、ハマスの抵抗の対象は「占領軍、そして兵士」にのみ集中していると答えた。
「すべての戦争で、民間人の犠牲者が出る。我々にその責任はない」と彼は付け加えた。
攻撃による民間人の死について謝罪したいかと尋ねられたマシャアル氏は、「謝罪はイスラエルに求めるべきだ。ハマスが意図的に民間人を殺すことはない。兵士に焦点を当てている。以上だ」と答えた。
彼は、エジプトの指導者たちに、さらなるハマスへの支援を求め、一方で、ガザのパレスチナ人たちとともに抵抗している人々に感謝を述べ、レバノンのヒズボラの名前を挙げた。
「パレスチナの外で、我々と共に戦う人々に感謝している」
ナビル氏はマシャアル氏に、イスラエル攻撃の「決定に参加していない」アラブ諸国が、なぜさらなる要求を受けなければならないのか尋ねた。「占領下にある以上、そう要求するのは当然の権利だ。なぜこのようなことをしたのか、誰かに相談したのか、といったことを我々に尋ねる権利は誰にもない」と彼は答えた。
彼は、10月7日の攻撃で拉致した人質を使って、「我々の息子や娘をすべての機関から」解放し、「イスラエルの刑務所を空にする」ことを望んでいると語った。
イスタンブール:金曜日、トルコのタイイップ・エルドアン大統領とエジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は電話会談を行い、トルコ大統領が言うところのガザ地区におけるイスラエルによる人権侵害と人道援助の方法について協議した。
大統領府の声明によると、エルドアン大統領はエジプトのエルシーシ大統領に対し、病院、学校、および礼拝所への爆撃について「西側の沈黙」がガザの状況を悪化させていると語った。
同声明によると、エルドアン大統領は、ガザのパレスチナ人に移住を強いることは容認できないとし、トルコは和平を実現し、人道支援と医療サービスをできるだけ早く提供するよう働きかけると述べた。
ロンドン:駐英イラン代理大使が、イスラエルによるガザへの攻撃は中東全域に予想できない影響をもたらす可能性があると警告した。
メフディ・ホッセイニ・マティン氏は、紛争がガザ以外にも広まれば、英国の利益にも影響が及び得ると述べたものの、ハマスやレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派が下す軍事的決定へのイランのいかなる関与も否定し、イランはイスラエルを取り囲むさまざまな「抵抗勢力」をコントロールしていないと主張した。
「中東の状況は非常に危険で、非常に不安定だ」と、マティン氏はロンドンのイラン大使館における記者会見で述べた。
「ガザの人々への攻撃などのイスラエル政権によるあらゆる動きは、間違いなく状況を激化させ、他の地域へと拡大していくだろう。正確に何が起こるかは誰にも予想できない」
マティン氏は、イランはガザの停戦実現と人道回廊設置のために地域の諸外国と協力していると述べた。
同氏はこう述べた。「我が国は激化を防ごうとする立場にあるが、中東の内部の組織、つまりイスラム組織や民族組織のコントロールをする立場にはない」「中東のイスラム抵抗組織に何をしろ、(何を)するなと(言うこと)は誰にもできない」
同氏はさらに、この紛争は「パレスチナがイスラム世界のアイデンティティにとって最も重要な問題となってきている中で、イスラム諸国の新たな時代を象徴するものだ」と述べた。
マティン氏はまた、約1,300人のイスラエル人が殺害された10月7日のハマスによるイスラエル市民への攻撃は正当なものだとほのめかした。
「ハマスやイスラム組織が行ってきたことの全ては、単なる自衛だ」と、同氏は語った。「テロ、残虐行為、占領、アパルトヘイトはイスラエルに結びついている」
マティン氏は、米国および英国政府はイスラエルにガザへの地上侵攻をやめるよう忠告したと考えていると述べた上で、イスラエルの行いの結果として、イスラム諸国はイスラエルに制裁を科さざるを得なくなっていると語った。
ロンドン:イギリスのリシ・スナク首相は20日、カイロでパレスチナのマフムード・アッバース大統領と会談し、17日のアル・アハリ病院に対するロケット弾攻撃の犠牲者を含め、ガザ地区で民間人の命が失われていることへの哀悼の意を伝えた。
パレスチナ当局によると、同病院の爆破により471人が死亡した。同当局はイスラエルが空爆したと非難しているが、イスラエルはパレスチナ武装組織によるロケット弾発射の失敗が原因だと主張している。
イギリス首相官邸は今回の会談後に出した声明の中で次のように述べた。「両首脳は、全当事者が民間人と民間インフラを保護し、罪のない人命の損失を最小限に抑えるための措置を講じる必要性について合意した」
「また、ハマスによるテロを非難し、同組織はパレスチナの人々を代表していないと強調した」
スナク首相は、食料、水、医薬品などを切実に必要としている数千人の人々の苦しみを軽減するために、ガザ地区への人道アクセスが開放されるよう尽力すると述べた。また、二国家解決に対する、そしてイスラエル人とパレスチナ人が平和と安全の中で暮らせる未来の実現に対するイギリスの長年のコミットメントを改めて強調した。
スナク首相は、エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領とも会談した。
イギリス首相官邸の声明によると、「両首脳は、地域における紛争の波及を回避するために、またテロを止め民間人を保護するために、世界の指導者らはあらゆる手を尽くす必要があるという見解で一致した」
スナク首相は、中東訪問中に地域の首脳らと交わした会話をエルシーシ大統領とアッバース大統領に伝えた。この訪問中、首脳らは地域におけるエスカレーションを防ぐために対話を継続する重要性について合意した。
同首相は、エジプトとガザ地区の間にあるラファ国境検問所のできるだけ早期の再開に向けたエジプトの努力を歓迎するとともに、イギリスはガザ地区の民間人を支援し悲惨な人道状況を緩和するうえで役割を果たすことに尽力すると述べた。
声明によると、「スナク首相は、イギリスからこの地域への人道援助を1000万ポンド(1210万ドル)増額したことは、そのコミットメントの最初の表明であると述べた」
両首脳は次の段階として、ガザ地区に対し援助を提供するプロセスをできるだけ効率的・効果的にするために協力することで合意するとともに、今後数日にわたって緊密に連絡を取り合うことを約束した。
ラマッラー/エルサレム:イスラエルがガザ地区への空爆を開始し、レバノン国境でヒズボラと衝突して以来、ヨルダン川西岸での暴力が急増しており、発火点となっているパレスチナ領土がより広範な戦争の第3戦線となる可能性があるとの懸念が高まっている。
イスラエル軍兵士と入植者は2005年にガザから撤退したものの、イスラエルはパレスチナの飛び地であるガザで、武装勢力ハマスとの戦争を繰り広げている。1967年の中東戦争でガザとあわせて占領したヨルダン川西岸を、イスラエルは現在も占領している。
ガザを統治するハマスが10月7日、イスラエルに奇襲攻撃を仕掛けて1,400人以上を殺害したことを受けて、イスラエルは砲撃を開始し、ガザで3,500人が殺害された。イスラエルはハマス殲滅のため、ガザへの本格的な地上攻撃を準備している。
イスラエルを支援する西側諸国は、イランが支援するヒズボラを擁するレバノンを第二戦線とし、イスラエルのメディアが第三戦線と呼ぶヨルダン川西岸を潜在的な戦場とする、より広範な戦争を危惧している。
イスラエル軍兵士および入植者と、パレスチナ人の衝突はすでに致命的なものとなっている。10月7日以来、ヨルダン川西岸では暴力により80人以上のパレスチナ人が殺害され、イスラエルは900人以上を逮捕した。イスラエルは金曜日、夜間と未明に新たな襲撃を実施し、さらに多数を拘束した。
イスラエル軍は木曜日にヨルダン川西岸のパレスチナ難民キャンプを空爆し、少なくとも12人が死亡したとパレスチナ当局が発表した。イスラエル警察は襲撃中に警察官1人が死亡したと発表した。
この暴力は、イスラエルと、そこに本部を置く国際的に承認された唯一のパレスチナ統治機関であるパレスチナ自治政府(PA)の双方に難題を突きつけている。
イスラエル軍は、厳戒態勢を敷き、ヨルダン川西岸での武装勢力ハマスによる攻撃に備えていると述べた。
ハマスは、レバノン国境とヨルダン川西岸を含む「二面あるいは三面からの戦争にイスラエルを巻き込もうとしている。脅威は高まっている」と、軍の報道官であるJonathan Conricus中佐はロイター通信に述べた。
「人々に武器を与えよ。衝突させろ」
ラマッラーでは今週、パレスチナ自治政府(PA)の与党ファタハが、ライバルであるハマスの軍事部門を支持するという珍しい唱和が起こり、武力抵抗への意欲の高まりを示した。
「人々に武器を与えよ。衝突させろ。私たちができることを見せてやる」と、20歳のデモ参加者、サラー氏はファーストネームのみを明かして述べた。
ファタハ幹部のMowafaq Sehweel氏は「私たちは手綱を手放し、占領と戦うためにどんな手段でも使うべきだ」とロイター通信に語った。
戦う準備ができていない人もいる。
建築事務所を経営するNizar Mughrabi氏は、イスラエルのガザ攻撃には憤っているが、銃を手にする準備はできていないと語った。
同氏は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とハマスの指導者イスマーイール・ハニーヤ氏について言及し、「ネタニヤフ首相は戦いたがっているし、ハニーヤ氏も戦いたがっている。彼らに銃を持たせて砂漠に連れて行き、撃ち合いをさせればいい」と語った。
パレスチナ当局者とイスラエルのアナリストによれば、いくつかの要因が緊張の火種となっているが、逆に言えば、今のところその範囲は限定されている。
ひとつは、イスラエルが行った数百人の逮捕だ。
ハマスが10月7日に攻撃した理由のひとつに、ヨルダン川西岸のパレスチナ人に対する今年の攻撃と逮捕を挙げている。
しかし、逮捕によってヨルダン川西岸での暴力も抑えられていると、52歳の入植反対活動家Salah Al-Khawaja氏は言う。
「ガザでは、(ハマスが)軍事組織化する十分な時間がある。ここでは、占領軍(イスラエル)が毎日のように取り締まりを行うことができる。これでは軍事力や政治力を構築する余地は残らない」と同氏は述べた。
複雑に入り組んだヨルダン川西岸
包囲されたガザはハマスが厳重に管理している一方、ヨルダン川西岸は、丘陵の中腹にある都市、イスラエル人入植地、軍の検問所などが複雑に入り組んでおり、パレスチナ人コミュニティを分断している。
イスラエルは1967年にこの地域を占領し、広大な支配地域、パレスチナ人が完全に支配する小さな地域、パレスチナ人とイスラエル軍が民事と治安の任務を分担する地域に分割した。
権力の中枢のあるラマッラーと、貧困にあえぐ周辺地域との間には、暴力による利点に関しての複数の見解が存在する。
難民キャンプにいる絶望した若者たちは、暴力の悪循環による損失を恐れるラマッラーの実業家やパレスチナ高官たちに比べて、戦う意欲が高い。
「騒動のせいで、ビジネスはすでに苦境に立たされている」とMughrabi氏は言う。 
暴力を食い止めているもう一つの重要な要因は、87歳のマフムード・アッバース大統領が率いるパレスチナ自治政府(PA)とイスラエルが安全保障協定を結んでいることだ。
アッバース大統領はイスラエルのガザ攻撃を非難する一方で、治安部隊によりデモを取り締まった。ファタハは武力抵抗を公式には呼びかけていない。
「パレスチナ自治政府は平和を維持したいと考えており、数千人のデモ行進がすぐに数十万人に膨れ上がることを心配している」とパレスチナの政治アナリスト、Hani Al-Masri氏は言う。
パレスチナ自治政府の幹部は財政的に余裕があり、報酬を得るためにイスラエルとの取り決めに依存していると同氏は付け加えた。
アッバース大統領が権力を失ったり、老齢により病気になったりすれば、状況が悪化する可能性がある、と氏は述べた。
「単独犯」
イスラエルの国内保障庁であるシンベト(イスラエル総保安庁)の元幹部リオル・アケルマン氏は、ヨルダン川西岸の動乱に対する懸念はハマスとの戦争以前からあったと述べた。
ハマスは何年もの間、「ヨルダン川西岸でテロリストを活性化させるためにできることはすべてやろうとしていた」と同氏は言う。
しかし、アケルマン氏は、ガザへの砲撃が始まって以来、治安対策が強化されてきたことを認め、最近の逮捕劇は通常の状況下では起こらなかったかもしれないと述べた。
「昨夜、軍は(…)ヨルダン川西岸で約100人のテロリストを逮捕した。通常であれば(…) シンベトは、テロ攻撃の準備をしていると判明している者だけを逮捕するはずだ」と同氏は語った。
ヨルダン川西岸でイスラエルが抱く懸念の一つは、地元への忠誠心には個人差があるものの、全体的にはイスラエルの占領を軽蔑しているパレスチナ人の間から出現する「単独犯」による攻撃だとアナリストは言う。
最近の調査によれば、パレスチナ人の間では、武装集団が圧倒的に支持されており、これには伝統的に別々の派閥に属していたメンバーで構成される地元の武装勢力も含まれる。
今回のガザ危機以前から、ヨルダン川西岸では暴力が急増していた。
イスラエルは軍事空襲を強化し、イスラエル人を標的としたパレスチナ人の攻撃も相次いだ。国連の記録によれば、10月7日までの2023年のパレスチナ人の死者数は220人を超え、イスラエルでは少なくとも29人が殺害された。
カイロ:パレスチナのマフムード・アッバース大統領は各国指導者と共に、21日にカイロで開かれる和平サミットに出席する。関係筋がロイターに明らかにした。
バーレーンのハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ国王とクウェートのシェイク・ミシャール・アル・アフマド・アル・ジャベール・アル・サバーハ皇太子もカイロサミットへの出席を発表した
フランスのカトリーヌ・コロンナ外相、欧州理事会のシャルル・ミシェル議長、EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表もサミットへの出席を発表した。報道によると、このサミットではパレスチナ・イスラエル問題について話し合われる予定だという。
フランスが中東地域におけるエスカレーションのリスク低減を図る中で、コロンナ外相は既に先週、カイロ、ベイルート、イスラエルを訪問している。
イタリアのジョルジャ・メローニ首相もこの和平サミットに出席すると、政府筋がロイターに語った。
エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領が呼びかけたこのサミットは、ガザ地区における暴力の激化抑制、停戦に向けた働きかけ、パレスチナ問題の公正な解決の実現を目的としている。
イスラエルはこの2週間でガザ地区に対する空爆を強め、少なくとも3800人を殺害、1万3000人以上を負傷させている。ラファ国境検問所の開放が合意されたことを受けてガザ地区が待望の援助を受ける準備を進める中、和平を求める声が高まっている。
ワシントン:中東で緊張が高まる中、10月19日には、米海軍の軍艦がイスラエルへ向けて発射されたと見られるミサイルを撃墜し、イラクとシリアの米軍基地が繰り返しドローンによる攻撃の標的とされるなど、同地域の米軍は増大する脅威に対峙している。
米海軍の駆逐艦カーニーは、紅海北部で、イエメンのフーシ派部隊が発射した地上攻撃用巡航ミサイル3発とドローン数機を迎撃した。駆逐艦カーニーによるこの対応は、今回の紛争においてイスラエルを援護しようとしている米軍による初の武器使用であると考えられる。
国防総省報道官のパット・ライダー准将は、フーシ派部隊が発射したミサイル複数発がイスラエルへ向けて発射されたものであった「可能性」があるが米軍はそれらが何を標的としていたのかについての分析を未だ終えていないと記者らに対して述べた。
米当局者は、海上で撃墜されたミサイルは米駆逐艦カーニーを標的としたものだとは考えられていないと述べた。同当局者は、匿名を条件として、未だ発表されていない軍事作戦について語った。
しかし、10月19日に軽傷者を出したシリア南部での攻撃も含め、過去3日間の一連のドローン攻撃は米軍基地を標的としていた。
数多くのイスラム諸国での抗議活動を引き起こすに至った、死亡者数百人に上ったガザの病院での爆発事件の後を追うようにして、こうした破壊的行為が頻発するようになった。イスラエル軍は、約2週間前のハマスの壊滅的な暴挙への報復ととしてガザに容赦のない攻撃を加えているが、イスラエル側はアル・アハリ病院の爆破の責任を否定しており、米政府も諜報機関の分析によりイスラエル政府に非はないことを確認したと述べた。
しかし、ここ数日、ヒズボラからフーシ派まで中東地域内の数多くの武装勢力がパレスチナ側への支持を表明し、イスラエルに対する脅威となっている。10月17日以降、武装勢力は、米軍が現地の防衛部隊を訓練し、また、ダーイシュを対象とした任務を支援しているイラク、シリア内の米軍施設に対して、ドローンによる攻撃を少なくとも4回行っている。
欧米諸国では、こうした攻撃によってイスラエル国内の紛争がより大規模な地域戦争へと拡大するのではないかという懸念が高まっている。
「私たちはまさにそれを阻もうとしているのです」と、国防総省報道官のライダー准将は述べた。
直近の攻撃は、10月19日にイラク西部のアルアサド空軍基地を標的としたものだった。イラクのイスラム抵抗勢力は、犯行声明を発表し、ロケット弾をアルアサド空軍基地に一斉発射し、「正確に標的を直撃した」と述べた。米国の当局者は、この攻撃があったことを認めたものの、その結果の分析には時期尚早だと述べた。
また、同じく19日には、シリア南東部のアルタンフ駐屯地がドローンによる攻撃を受けた。米軍は、シリアの同盟勢力の訓練とイスラム国の武装勢力の活動の監視のために、この基地に数年にわたって駐留し続けている。
米国防総省は、ドローン1機は撃墜されたものの、もう1機はこの基地を直撃し軽傷者が出たと発表した。
アルタンフ駐屯地は、レバノン南部のヒズボラやイスラエルの近傍にイランの支援を受ける武装勢力が武器を輸送するために頻繁に使用する重要な道路沿いに位置している。
また、シリアの反政府活動からは、米軍が駐留するシリア東部の石油施設に対して、別のドローンによる攻撃があったと述べている。 ヨーロッパを拠点とする活動家でメディア「デリゾール24」代表のオマール・アブ・ライラ氏は、イラクとの国境沿いのシリア・デリゾール県の東部地域にあるコノコ・ガス田を爆発物を搭載したドローン3機が攻撃したと述べた。英国に拠点を置く、反シリア政府系戦争監視団体の「シリア人権監視団」も、同ガス田での爆発を確認している。
10月17日、米国が部隊の訓練やイスラム国に対する作戦の実施のために使用している2つの基地に対して、ドローン3機を現地武装勢力が発射した。相次ぐ発射の中、アルアサド空軍基地では警告の内の1つが誤報だったことが判明したものの、兵員らは掩蔽壕に殺到した。その最中、民間軍事会社社員の1人が心停止となり死亡したとライダー准将は述べた。
ライダー准将は、いずれの勢力がドローン攻撃を行ったかについてはまだ確認できていないとしながらも、米国は「あらゆる脅威から米軍と同盟諸国の軍を守るために必要なすべての行動を取ります」と語った。いかなる軍事的対応も「米国が選択した時機と方法で」行われると、同准将は述べた。
ライダー准将は、米駆逐艦カーニーによる迎撃について、フーシ派のミサイルの飛行プロフィールが「潜在的な脅威を示していた」ため、同ミサイルに対しての攻撃が行われたと述べた。米国は「この重要な地域における米国のパートナーらと米国自身の利益を守るため」に必要なことは何であれ実行する用意があると、ライダー准将は付け加えた。同准将は、米国はフーシ派のミサイルの標的が何であったかは依然調査中であると述べたが、地上の米軍人や民間人に負傷者はいなかったと述べた。
イランに支援されたフーシ派反政府勢力は、パレスチナ側への支持を表明し、イスラエルに対する脅威となっている。先週、サウジアラビアが主導する連合軍と交戦中のフーシ派反政府勢力が支配下としているイエメンのサヌアでは、イエメンとパレスチナの旗を振るデモ隊が街路を埋めた。フーシ派反政府勢力のスローガンは、長きにわたって、「神は偉大なり、アメリカに死を、イスラエルに死を、ユダヤ人に呪いを、イスラムに勝利を」である。
先週、フーシ派反政府勢力の指導者であるアブドルマリク・アル・フーシ氏は、イスラエルとハマスの間で進行中の紛争に介入しないよう米国に警告し、介入した場合には自身の支配下の勢力がドローンやミサイルを発射して報復すると脅迫した。
フーシ派関係者に10月19日に問い合わせを行ったが、この事件についてのコメントは断られた。2人の内、1人はこの事件を知らなかったと述べ、もう1人はこの事件について話す権限が無いと答えた。
イスラエル軍は20日朝にかけてガザ地区のハマスの拠点を攻撃し、レバノンからミサイルが発射されたことを受けて同国の親イラン民兵組織ヒズボラに打撃を与えたと発表した。一方、米国はイラクとシリアにある米軍事拠点への攻撃が増えていると明らかにした。世界の株式相場は下落し、原油は上昇した。
米国と欧州は人道支援物資を届けるためガザとエジプトの国境を開くよう働き掛けているが、20日もこの国境は閉まったままだ。米国と欧州連合(EU)がテロ組織に指定するハマスは20日を再び「怒りの日」とし、イスラム教徒に抗議活動を呼び掛けた。
ヒズボラ、イスラエルの複数拠点を標的にしたと主張
ヒズボラは、誘導ミサイルでイスラエルの複数の拠点を標的にしたと主張した。同組織のアルマナルTVが報じた。イスラエル軍によると、同国に向けてレバノンから約20発が発射され、国境の駐屯地は対戦車ミサイルで数発砲撃を受けたという。死傷者の報告はないとしている。
イスラエル国防相、大枠の目標示す
イスラエルのガラント国防相はハマスを壊滅させてその軍事力と統治能力を破壊し、ガザ地区の管理からイスラエルの責任を取り除くことが目標だと発言した。ガザには「新たな安全保障体制」を構築するようにするという。ガラント氏はテルアビブで、国防省の外務・防衛委員会で語った。
ドイツ外相、中東首脳会談に参加へ
ドイツのベーアボック外相は中東訪問の日程を延ばし、21日に中東数カ国が首脳会議を予定するエジプトのカイロに向かう。イスラエルのコーヘン外相とテルアビブで会談した後、ベーアボック氏は「中東地域の大惨事を防ぐため」に域内数カ国の首脳が集まると説明した。
事情に詳しい関係者によると、エジプトのシシ大統領がホスト役を務め、トルコのエルドアン大統領、サウジアラビアのムハンマド皇太子、ヨルダンのアブドラ国王が出席し、英仏の外相も参加する見通しだという。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの奇襲攻撃から1週間たった14日、まだ強度のショック状態にあったイスラエルでは、同国軍からハマス壊滅のため「陸海空の組織的な攻撃」を準備しているとの発表があった。
ところが今週半ばになると、複数のイスラエル軍報道官は地上戦について「広く考えられているのとは幾分違ったものとなるかもしれない」と指摘。遅く始まって長く続き、予想外の方法で展開する可能性があると語った。
これまでの状況を振り返ると、米国からブリンケン国務長官とオースティン国防長官、そしてバイデン大統領が相次ぎイスラエルを訪問するという異例の出来事があった。
数十年ぶりとなる多数の犠牲者に見舞われたイスラエルの痛みを共有し、地中海東部への空母打撃群の派遣や武器供与を約束する一方で、バイデン大統領らはイスラエルに対し、対応の方法に注意を呼び掛けるメッセージも伝えた。
ガザ地区にあるハマスの軍事インフラを破壊するというイスラエルの目標を米国は共有する。米国と欧州連合(EU)がテロ組織に指定するハマスはトンネルを張り巡らせて攻撃の拠点を整備しており、この目標達成は地上侵攻でのみ可能だ。
しかし、ガザ地区の住民の犠牲を最小限に抑える方法を中心に、攻撃をどのように行うかや、攻撃が終わった段階での政府の計画については既に米国の影響が及んでいると、イスラエル当局者者や政府に近い複数の関係者らは明らかにしている。
匿名を条件に語ったイスラエル高官3人によれば、ハマスとの今回の戦いに関する米国の役割や影響力は過去の事例に比べて一段と深遠で、集中的なものだという。
イスラエルが地上侵攻を開始すれば、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが紛争に加わる恐れがあると、米国は懸念を強めている。そうした事態となれば、第2の戦端が開かれて紛争が拡大し、米国をさらに巻き込んで、イスラエルと主要アラブ諸国との関係正常化を通じた中東地域の安定を目指すバイデン政権の取り組みが頓挫しかねない。
イスラエルのコーヘン外相はインタビューで、「バイデン大統領はこの戦争が他の戦線に広がる可能性を小さくすることに重点を置いている。それが大統領の目標だ」と語った。
同国のネタニヤフ首相はバイデン大統領による訪問後、「全戦域で方程式を変える協力」を巡って合意に達したと発言。バイデン大統領はワシントンに戻る大統領専用機で、住民の犠牲者や紛争拡大についての懸念を理由に、地上戦に関してさまざまな「選択肢」をイスラエル側と協議したと話した。
米国は二つの空母打撃群を地中海東部に派遣し、米海兵隊も派遣の可能性に備え高度の警戒態勢にあるが、バイデン大統領らは民間人の犠牲を最小限にとどめる重要性を強調している。
大統領はテルアビブでネタニヤフ首相らに対し、飲料水や食料の供給が底を突きつつあり、イスラエル軍による連日の空爆に見舞われているガザ地区の住民のため、人道支援物資の搬入を認めるよう強く求めた。
駐米イスラエル大使を務めたマイケル・オレン氏は、バイデン大統領がイスラエルに対し、ガザ地区への地上侵攻の際と、ヒズボラによる攻撃激化に対処する場合の双方で一層注意するよう働き掛けていると明らかにした。
コーヘン外相は18日、イスラエルとしてガザ地区を完全に占拠するのではなく、その周辺に緩衝地帯を設けるよう目指す公算が大きいと示唆した。
一方、米国防総省で中東地域の軍事協力責任者を務め、現在はワシントンのシンクタンク、中東研究所の上級研究員ビラル・サーブ氏は、イスラエル軍がガザ地区での地上戦に当たり、通常兵力と空からの支援の下、市街戦の訓練を受けた特殊部隊を送り込んで戸別に回らせ、ハマス指導者の排除や拘束に努めるだろうと予想。その上で、「イスラエル軍高官もハマスを『一掃』することができるとの幻想は抱いていない」との見方を示した。
サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の首脳が20日、リヤドで会談を行った。イスラム組織ハマスとイスラエルの戦争が拡大する脅威を前に、地域の2大国が対立をひとまず脇に置いて対応しようとしていることを示唆する動きだ。
サウジのムハンマド皇太子は会談に先立ち、リヤドの空港でUAEのムハンマド大統領を出迎えた。サウジ国営テレビが伝えた。2人が公の場で会うのは3年超ぶり。東南アジア諸国連合(ASEAN)と湾岸協力会議(GCC)の首脳会議を前に、カタールのタミム首長もリヤド入りした。
ムハンマド皇太子は会議の冒頭で、「我々はいかなる方法であれ、どんな理由であれ、民間人を標的にすることは断固として拒絶する。国際人道法を遵守し、民間人やインフラに対する軍事作戦を停止することの重要性を支持する」と語った。
イラクとシリアで米国を標的としたドローンによる攻撃が増えていると、米国防総省が19日明らかにした。米海軍の駆逐艦は紅海でイエメンの反政府武装組織フーシ派がイスラエルに向けて発射した巡航ミサイルとドローンを撃墜した。
こうした攻撃はシリアとイラクの米軍基地を標的にしたもので、軽傷者が出たという。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争がより大きな紛争を引き起こし、米国を引きずり込むのではないかとの新たな懸念が浮上している。国防総省はまた、戦闘機を含むより多くの兵力をこの地域に派遣する見込みだ。
同省のライダー報道官は記者団に対し、「われわれはこうした事例を深刻に受け止め、適切に対応している。われわれが注力しているのはより広範な地域紛争を抑止することであり、現時点でこの紛争はイスラエルとハマスの間で収まっている」と述べた。
同報道官によると、シリアのアルタンフにある米軍基地は18日に2機のドローンの標的にされた。同じ日に米軍はイラク西部で2機、同国北部で3機目のドローンからの攻撃を防いだ。
これとは別に、米海軍の駆逐艦カーニーはイエメンのフーシ派が発射した3発の巡航ミサイルとドローン数機を迎撃したと同報道官は説明。ミサイルはイスラエルの方向に向かっていたが、米国はその標的を「まだ調査中」だとしている。
米当局者によれば、2隻の空母を中心とする打撃群や水陸両用の即応軍、戦闘機の派遣を含む国防総省の動きは、イランとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラを紛争に加担させないようにするのが目的だ。
ライダー報道官によれば、一つの懸念材料はイスラエルの防空システムがレバノンからのロケット攻撃に圧倒されることだ。米国はイスラエルの防空システム「アイアンドーム」用に迎撃ミサイルをさらに供与する見通しだ。空母打撃群はイージス弾道ミサイル防衛システムを搭載している可能性があり、これも要請を受ける可能性がある。
米半導体メーカーのインテルと独エンジニアリング会社シーメンスは、欧州最大のテクノロジー会議「ウェブサミット」への参加を取りやめる。同イベントの主催者は、イスラム組織ハマスの攻撃を受けたイスラエルを西側が支持していることを批判していた。
インテルは19日、ウェブサミットへの不参加を確認した。イスラエルで長年にわたり事業を展開している同社の担当者は、それ以上のコメントを控えた。
シーメンスは、来月ポルトガル・リスボンで開催が予定されている同会議の主要スポンサーの一つとして記載されている。しかし、「状況を再検討」した結果、同社はもはや今年のパートナーにはならず、同イベントにも参加しないと担当者は説明した。
Yコンビネーターのギャリー・タン最高経営責任者(CEO)、セコイア・キャピタルのラビ・グプタ氏ら著名なベンチャーキャピタリストも同イベントへの出席を取りやめた。複数のイスラエル在勤のハイテク企業幹部も同様に不参加を決めた。
同イベントの主催者パディ・コスグレーブ氏は、今週に入りウェブサミットのサイトに謝罪文を掲載した。「私の発言や発言のタイミング、そして発表の仕方が多くの人を深く傷つけたことは理解している」とし、「私の言葉によって傷ついた人達に深く謝罪する」と表明した。
イスラエルの隣国ヨルダンで20日、イスラエル軍による空爆を抗議し、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスを支持するデモが各地で相次いだ。
首都アンマンには6000人を超える抗議者が集結し、イスラエルのテルアビブを攻撃するようハマスに呼びかけた。
アンマンにあるイスラエル大使館周辺にも数千人が集まり、「アラブの土地にユダヤ大使館はいらない」と抗議した。
デモは首都以外にも飛び火しており、ヨルダンの機動隊はイスラエルのパレスチナ自治区ヨルダン川西岸に通じる全ての道路を封鎖した。
ヨルダンの国民の多くはパレスチナからの移住民の子孫とされている。
エルサレム正教会総主教庁とパレスチナの保健当局によると、パレスチナ自治区ガザにあるギリシャ正教の教会が夜間にイスラエル軍に空爆された。パレスチナ保健当局は、キリスト教徒のパレスチナ人16人が死亡したと発表した。
教会にはイスラエルの攻撃から逃れるために少なくとも500人のイスラム教徒とキリスト教徒が避難していた。
イスラエル軍は過激派の司令部を攻撃した際に教会の一部が損傷したとし、現在、調査を進めていることを明らかにした上で、イスラエル国防軍は「教会が空爆の標的でなかったと断言できる」とした。
エルサレム正教会総主教庁は「ガザ市の教会を破壊したイスラエルの空爆を最も強い言葉で非難する」との声明を発表。
現場の様子を撮影した動画には、けがをした少年が夜間にがれきの下から運び出される姿が映っている。
ガザには230万人が暮らしているが、キリスト教徒は推定1000人で大半がギリシャ正教の信者。
イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突が今月7日に発生して以降、イスラエルが占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸で暴力行為が急増している。
イスラエル軍はハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザを攻撃。レバノンとの国境では同国のイスラム教シーア派組織ヒズボラとも衝突しているが、イスラエルにとってヨルダン川西岸が「第3の前線」となる可能性が出てきた。
ヨルダン川西岸ではイスラエルの兵士・入植者とパレスチナ人の衝突が激化しており、今月7日以降、暴力行為でパレスチナ人80人以上が死亡。イスラエルは900人以上を逮捕した。
パレスチナ当局によると、イスラエル軍は19日、ヨルダン川西岸のパレスチナ人難民キャンプを空爆、少なくとも12人が死亡した。イスラエル警察は急襲作戦で警官1人が死亡したことを明らかにした。
イスラエル側は30日未明にも急襲作戦を実施し、数十人を拘束した。
イスラエル軍の報道官は、ヨルダン川西岸で活動するハマス戦闘員らの攻撃に備え、厳戒態勢を敷いていると表明。「脅威が高まっている」と語った。
ヨルダン川西岸の中心都市ラマラでは今週、パレスチナ自治政府の主流派ファタハに敵対するハマスの軍事部門に支持を表明する異例のデモ活動も行われており、武力抵抗を求める声が高まっていることが浮き彫りになっている。
米ニューヨークのタイムズスクエアで19日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが拘束している人質の解放を求めて数百人がデモを行った。拘束されている米国人の解放にあらゆる外交手段を活用するよう求め、バイデン大統領への圧力が高まっている。
屋外掲示板には、乳児や高齢者を含め拘束されていると思われる人々の顔が表示され、デモ隊は「彼らを帰国させよ」と連呼した。
米当局者によると、ハマスは7日にイスラエルに奇襲攻撃を行って以後、約200人を拘束している。
拘束されている米国人の公式な名簿はないが、上院外交委員会の共和党トップ、ジム・リッシュ議員は18日記者団に、人質のうち10人が米国人だと話し、「これが最優先課題だ。彼らを解放してもらいたい」と述べた。
ドイツのピストリウス国防相は19日、イスラム組織ハマスの攻撃を受けたイスラエルを全面的に支援すると表明した。
訪問先のテルアビブでイスラエルのガラント国防相と共同会見し、「物質的な支援であれ、われわれができることは何でもする」と表明。「ドイツはイスラエル、そしてイスラエルの人々の側に立っている」と述べた。
ドイツのショルツ首相も先にイスラエルを訪問し、イスラエルと結束する意向を表明している。
ピストリウス氏はハマスに人質の解放を要求。紛争がエスカレートする可能性に懸念を示した。
中国の中東問題特使、テキ雋氏は、中東危機の沈静化に向けロシアとの対話や協調を継続する用意があると表明した。今週行ったロシア外交高官との会談後の発言として、中国国営メディアが報じた。
同氏は19日にカタールの首都ドーハでロシアの中東・アフリカ担当特使と会談。その後、中東危機を巡り両国の立場が一致していると述べた。
また、「パレスチナ人の正当な国民としての権利が保証されていないことがイスラエルとパレスチナの対立を巡る情勢の根本原因だ」と主張。
中国は民間人犠牲者の多さや人道的危機に心を痛めており、パレスチナとイスラエルの和平交渉の再開や、パレスチナが国家としてイスラエルと共存する2国家解決を実現するために積極的な役割を果たす用意があると表明した。
ロシアは19日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突などの危機を巡り中東・北アフリカ政策で中国と緊密に協調していると表明していた。
国連安全保障理事会は16日、ロシアが提出した人道危機を回避するための即時停戦を求める決議案を否決
中国外務省は19日、「米国が安保理決議案を阻止したことに深く失望している」と表明した。
イスラエルのイリット・リリアン駐トルコ大使と他のイスラエル外交関係者らがトルコを出国した。トルコ民放NTVなどが19日に伝えた。
イスラエル大使館は報道に関するコメントを控えた。
イスラエル当局は今週、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの衝突に反発する勢力の標的になる恐れがあるとして、国民にトルコへの渡航を控えるよう求めた。また、トルコに滞在するイスラエル人には速やかに出国するよう通知した。
これを受け、イスラエルの各航空会社は18日夜、出国を希望するイスラエル人向けにフライトを手配した。
トルコではイスラエルへの抗議活動が拡大しており、政府はガザの病院爆発を受けて3日間の服喪を宣言した。
米国務省は19日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が激化する中、海外に滞在する米国人に安全上の警告を発した。世界各地で緊張が高まっており、過激派による攻撃や米国人への暴力の恐れがあるとしている。
警告は特定の事象に言及していないものの、イスラエルとハマスの衝突を受けて中東情勢が緊迫化する中で出された。
ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザの病院で17日に起きた爆発で数百人の死者が出たことを受け、ヨルダン川西岸やイラン、ヨルダン、レバノン、チュニジアなどでデモが発生している。
レバノンでは、ベイルート北部の米大使館付近での抗議行動がエスカレートし、治安部隊が催涙ガスと放水銃を発射した。
また、ガーランド司法長官は19日、イスラエルとハマスの戦闘に関連して米国内でユダヤ人やイスラム教徒、アラブ系コミュニティーに対する脅迫の報告が増えている状況を監視していると明らかにした。
記者会見で、司法省が特に宗教的なコミュニティーへの脅威に留意し、ヘイトクライム(憎悪犯罪)や暴力の脅しなどを特定し対応するため引き続き警戒していると述べた。
米当局者は19日、米軍がこのところイラクとシリアで繰り返し攻撃を受けていると明らかにした。イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を受けて地域の緊張が高まる中、米政府はイランを後ろ盾とする組織の動きに警戒を強めている。
イスラエルとハマスの衝突が始まった今月7日以降、米軍への攻撃が増加しており、18日にはシリアに駐留する米軍部隊がドローン(無人機)1機の攻撃を受け、軽傷者が出た。別の1機は撃墜された。
米軍はイラクでも今週、駐留部隊を狙った複数の無人機の攻撃を阻止した。19日には米軍や他の国際部隊が駐留するイラク西部の空軍基地が無人機やロケット弾の標的となり、基地内で複数の爆発音がした。
米国防総省のライダー報道官は19日の記者会見で「こうした攻撃にどう対応するか予測するつもりはないが、われわれはいかなる脅威に対しても、米軍と連合軍を守るために必要なあらゆる措置を取る」と述べた。
イエメン近海を航行していた米艦が19日、イエメンの親イラン組織フーシ派が発射したとみられる複数のミサイルと無人機を迎撃したことも明らかにした。イスラエルの方向に向かっていた可能性があるという。
ヨルダンのサファディ外相は19日、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘は「破壊的な影響」をもたらし、今後最悪の事態が想定されるとの懸念を示した。
外交努力が行われているものの、紛争の終結という成果をもたらしてないと指摘。「戦争を終わらせる決断を下すのはわれわれではなくイスラエル側であり、われわれは戦争を終わらせるためにあらゆる努力をしなければならない」と強調した。
紛争が地域全体に拡大する懸念はヨルダンのアブドラ国王とエジプトのシシ大統領の会談にも影を落とした。エジプトのカイロで行われた会談後に両首脳は声明を発表。パレスチナ人の強制退避は受け入れられないとし、イスラエルはハマスへの報復攻撃で民間人に「集団罰を課している」と批判した。
スタンフォード大学に在学するユダヤ人学生、ケビン・カダビさんは最近、祖母から電話をもらった。ユダヤ人という出自が分かるようにすると標的にされる恐れがあるため、大学周辺では「ダビデの星」をあしらったネックレスを着けないよう注意されたのだ。
そのあとで「目立ってはいけない」というテキストメッセージも来た。
セントルイス・ワシントン大学で学ぶイスラム教徒のハニヤさんは、パレスチナ人への支持を表明するために、歴史的なパレスチナ領土の形をしたイヤリングをつける決心をした。それを目に留めた同じ大学の学生に、3分近くも罵倒され、テロリスト呼ばわりされた。その間、彼女は必死に涙をこらえていた。
「もし泣けば、彼らが勝ったことになる」とハニヤさんは語った。
イスラム組織ハマスがイスラエルに甚大な攻撃を仕掛けて以来、米国の若者らは恐怖や怒り、悲しみにさいなまれている。地球の反対側で繰り広げられている暴力を受け止め、自らの交友関係の中にも分断の影響を感じている。
ユダヤ人とパレスチナ人、そしてそれ以外の18─26歳のZ世代に取材したところ、多くの人は、複雑な思いが押しつぶされていることへのいら立ちを口にした。ソーシャルメディアは事件に関する理解を深めるのに役立ったという意見は多いが、同時に若者らを疲弊させ、友人との仲違いにもつながったという。
世論調査によるとこの世代は、年長の米国人に比べ、イスラエルのパレスチナ政策に懐疑的だ。とはいえ、この世代の中でも、ハマスの行動は数十年にわたるイスラエルの抑圧への報復であり正当だと考える人もいれば、パレスチナ支持の抗議行動はテロ支援に等しいと考える人、さらに双方の罪なき市民がそれぞれの指導者の失政の板挟みになっていることを嘆く人まで、実にさまざまだ。
数十年にわたって平和的な妥協を阻んできた紛争について、いつ、どのように自分の意見を表現するか。この世代が現実でもネット上でも苦悩していることが、取材から明らかになった。
前出のハニヤさんは、安全への懸念から姓は明らかにせず取材に応じた。イスラエル政府がハマス指導部の殲滅(せんめつ)を目指す中、ガザで包囲されているパレスチナ人への支援を表明するために、「せめてこれだけでも」という思いでイヤリングを着用している。だがキャンパスでも対立が生じているため、現時点で親イスラエルの人々との付き合いが安全かどうか疑問を感じるようになった。
「正直なところ、学内はひどい状況だ」とハニヤさんは言う。
一方で、多くのユダヤ人学生らは先週、恐怖感を口にした。クラスメートの中にパレスチナ支持を掲げて集会を行い、ハマスによるイスラエル攻撃を支持している人がいるとみられるからだ。
ボストン大学イスラエル支持学生同盟の会長を務めるヨナタン・マナーさん(20)は、ハマスを非難しないのはナチス・ドイツを支持するようなものだと主張する。
「これはナチスのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)以来最大の、反ユダヤ主義の波だ」とマナーさんは言う。
米国の若い世代は、年長の世代に比べてイスラエル支持の傾向がはるかに小さい。ロイター/イプソスが12―13日に実施した世論調査によると、米国で「紛争の責任はハマスにある」と考える人は40歳以上の年齢層では58%だったが、18―39歳では34%にとどまった。
2014年に生じたイスラエルとハマスの衝突では数千人の死者が出たが、その大多数がパレスチナ人だった。当時に比べると、米国人全体でみればイスラエル支持は増加している。だが若い世代における支持の拡大は限られており、2014年の14%に対し現在は20%に上昇しただけだ。上の世代の米国人では、2014年の28%から56%に上昇している。
多くのユダヤ人学生にとって、最近パレスチナ支持の声が高まったことは自分たちの生存権が脅かされているように感じるという。パレスチナ人には同情するものの、イスラエル・パレスチナ紛争についての広範な議論より、ハマスによる攻撃への恐怖の方が勝ると主張する学生もいる。
「対話は行うべきだが、今はその時期ではない」とマナーさんは述べた。「今はユダヤ人に寄り添うべき時だ」
だが他の若者に言わせれば、そうした考え方は、パレスチナ人の窮状を無視してきた長年のパターンをいっそう強めることにつながる。複数の学生は、米連邦政府から自分自身が在籍する学校に至るまで、西側の各機関が示す明確なイスラエル支持の姿勢に不満を表明した。
シカゴ大学の博士課程に在籍するクリストファー・ヤコベッティさんは、パレスチナを支持する活動家は今回のような場合、ハマスを非難するよう求められるのに、イスラエル支持者はイスラエルのパレスチナ攻撃についての意見をほとんど求められないのは「ダブルスタンダード(二重基準)」だと言う。
ヤコベッティさんは、ハマスによる今回の攻撃を1831年のナット・ターナーの反乱(奴隷にされた黒人が白人のバージニア州民数十人を殺害した事件)になぞらえ、たとえ個々の行為が残虐なものだとしても、抑圧された人々の抵抗には正当性があると主張した。
「戦争の目的と、戦争における行為は区別すべきだ」とヤコベッティさんは言う。
<「双方とも傷ついている」>
中東情勢を巡る議論が起き、キャンパスでは抗議集会が行われているが、学生らのネット上での交流にも影響が及んでいる。取材を受けた学生の大部分は、ソーシャルメディアを利用して自分の意見を表明し、仲間の意見を評価していた。
自分も公開の場で何か意見を投稿しなければ、というプレッシャーを感じると言う人は多い。だが同時に、自分の意見が必然的に誰かを怒らせることになり、ブロックされたり、公の場で恥をかかされたり、敵対的な政治論争の中で消耗する恐れがあるという懸念もある。複数の学生が、この1週間、ソーシャルメディアは疲れる場所になっていると語った。
まれに、ネット上で生産的な議論ができることもあると学生らは言う。セントルイス・ワシントン大学のムスリム学生ハディア・カトリさんは、同じ寮で暮らすイスラエル支持の学生とインスタグラムで会話し、「双方に必要なのはより良い指導者だ」という点で意見がなんとか一致したという。
本当はもっと微妙な意味合いを含んだ対話をすべきであるにもかかわらず、ソーシャルメディアによって過度に単純化されてしまい、「人々は完全に分裂している」という思い込みにつながっているという見方もある。
最も過激な意見が最も声高に語られる、と指摘する人は多く、それによって生産的な会話が事実上不可能になっているという。
「どちらかの側に完全に連帯すべし」というプレッシャーを特につらく感じているのが、イスラエルのこれまでのパレスチナ政策に批判的な一部のユダヤ人だ。
イスラエルに封鎖されたガザ地区で死んでいく市民の姿が伝えられる中で、時には家族や友人からの反発を受ける危険を冒しつつ、イスラエルに封鎖解除を求める呼びかけに公然と参加したユダヤ人もいる。
パレスチナ独立を主張する団体「平和へのユダヤ人の声」のメンバーらは、キャンパスにおけるパレスチナ支持デモに参加した。バーナード・カレッジの学生で、この団体に所属する1人の中東出身のユダヤ人は、この団体の理念は紛争の複雑さを浮き彫りにしていると匿名で語る。
この学生はメールで「こういう時期には、どちらか一方の側に偏った態度を取り、分かりやすいラベルを貼るのが楽だが、現実は微妙で不確実だ」と述べた。
ジョージ・ワシントン大学のユダヤ人学生ラフィ・イフカーさんは、どちらの側も潔白ではないと言う。イフカーさんは、近年のイスラエルは右傾化しているため和平実現からは遠ざかっていると語り、ガザへの地上侵攻がさらに多くの民間人の死者を増やすのではないかとの懸念を表明した。
だがイフカーさんは同時に、ハマスによる攻撃後に起きたパレスチナ支持の抗議行動を見て動揺し、抗議参加者がイスラエル人殺害を「美化、または弁解」しているように見えて吐き気を覚えたと述べた。
ワシントンDCの医療関連ロビー活動企業で働くジョシュ・ジョフィさん(23)は、「認知的不協和」を経験したと語る。ユダヤ人としてイスラエルに敬意を払うよう教えられてきたが、紛争における蛮行の多くはイスラエルの責任だと考えるようになったからだ。
こうした意見は親しい友人にしか話さない、とジョフィさんは言う。「まさに今、この事態にすっかり感情が囚われている」人々と疎遠になりかねないと考えているためだ。
それでも一部の学生は、生の感情をあらわにすることが対立を和らげ、共通の足場を見いだすのに役立つのではないかと話す。
冒頭で紹介したスタンフォード大のカダビさんは先ごろ、授業を終えた時にパレスチナ出身の同級生にばったり会った。2人は抱き合い、互いの家族のことを気にかけていると語り合った。
「いま絶対に大切なのは、感情だ。人の目をくらませる力ではなく、互いの溝に橋をかけ、人間が殺されている事態に接して共に痛みを感じていることを伝える力としての、感情だ」とカダビさんは話した。

<10月20日朝まで>
米国、英国、ドイツなどは19日までに、それぞれ自国民に対してレバノンからの退避を勧告した。同日もイスラエルとの国境沿いでイスラム組織のハマスやヒズボラがイスラエルを攻撃し、イスラエル軍が反撃するなど緊張が高まっている。
ハマスの支部は19日、レバノン南部からイスラエルに対して約30発のロケット砲を打ち込んだと主張した。レバノンに拠点を置く親イランのシーア派組織ヒズボラもこれとは別に砲撃したとしている。イスラエルメディアによると民間人3人が負傷し、イスラエル軍は反撃した。
レバノン国境では8日以降、砲撃や空爆の応酬が続く。ヒズボラによるとこれまでに戦闘員13人が死亡した。ハマスとヒズボラは対イスラエルで協力関係にある。
イスラエルとヒズボラの間では2006年に大規模な戦闘が起き、イスラエルはレバノン南部に地上軍を侵攻させた。現在は国連レバノン暫定軍(UNIFIL)が停戦の維持にあたる。
米国は18日、自国民に対しレバノンへの「渡航中止」を要請。英国も「民間(機)の運航がある今のうちに」としてレバノンからの退避を促した。ドイツやオーストラリアも19日、同様の呼びかけを行った。
退避勧告は、イスラエルとの連帯を示す米欧に対し反イスラエル感情が飛び火していることも影響した可能性がある。イスラエルはレバノンと国交がなく、同国首都ベイルートには大使館を置いていないが、現地では代わって米国大使館前などで激しいデモが起きた。
日本は18日、ベイルートなどレバノン主要地域の危険レベルを1段階引き上げてレベル2とし、不要不急の渡航を止めるよう呼びかけた。
一方、パレスチナ自治区のガザでは人道危機が日一日と深刻化している。エジプトのメディアは19日、人道支援物資を運び入れるため、エジプトとの間にあるラファ検問所が20日に開通すると報じた。
格付け会社ムーディーズは19日、イスラエルの格付け「A1」を引き下げ方向で見直す対象にしたと発表した。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘が理由だ。
イスラエルのガラント国防相はこの日、ガザへの地上侵攻が近づいていることを示唆する発言を行った。
こうした中でムーディーズは「短期的な戦闘でさえ(イスラエルの)信用力に響くだろうが、交戦が長引いて深刻化すればするほど、政策の実効性や財政、実体経済への影響が増大する公算が高まる」と指摘した。
ムーディーズ以外の大手格付け会社では既にフィッチも今週、イスラエルの格付け「Aプラス」を「ネガティブウオッチ」に指定し、戦闘がエスカレートすれば格付けにマイナスの影響が及ぶと警告している。
イスラエルとレバノンの国境沿いで緊張が高まる中、19日はレバノンの親イラン武装組織ヒズボラがイスラエル軍の陣地に向けロケット弾を発射し、これに対しイスラエル軍が砲撃するなど交戦が続いた。
ヒズボラによると、イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した7日以降、イスラエルとレバノンの国境沿いの交戦でこれまでに13人のヒズボラ戦闘員が死亡した。
こうした中、在レバノン米国大使館はこの日、レバノンに滞在している米国民に対し速やかに出国するよう勧告した。米国は17日、ヒズボラとイスラエルの間の砲撃に関連した治安情勢を理由に、レバノンへの渡航警戒レベルを「渡航中止」に引き上げている
ドイツ外務省もこの日、自国民に対しレバノンから出国するよう呼びかけた。
欧州委員会のフォンデアライエン委員長はイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が地域全体に波及するリスクは現実的だと述べた。
米ハドソン研究所で講演した同委員長は「ハマスの後ろ盾であるイランは、混乱の火に油を注ぐことだけを望んでいる。イランの戦時顧客であるロシアは注意深く見守っている。ロシアとハマスは似ている」と述べた。
「イランが裏で演じている邪悪な役割」を非難、ハマスが使用している武器の93%をイランが供給していることは「疑う余地もない」と指摘した。
その上で、イランへの制裁を継続し、対象を拡大し、制裁逃れを取り締まることが不可欠だと強調した。
イスラム組織ハマスの前最高指導者メシャル氏は19日、アルアラビアテレビのインタビューで、イスラエルにいるパレスチナ人囚人全員の解放を交渉するのに十分な多数のイスラエル兵を人質として拘束していると述べた。
メシャル氏は16日のインタビューで、人質の中にはイスラエルのガザ部隊高官も含まれていると述べていた
パレスチナ自治区ガザの病院で17日に起きた爆発による死者の数について、米情報機関が「100─300人の幅のうち下限に近い水準」と推定していることが、ロイターが入手した米機密情報報告書で分かった。
ガザ市にあるアル・アハリ病院で起きた爆発を巡っては、イスラム組織ハマスが実効支配するガザの保健当局はイスラエル軍の空爆で引き起こされたと主張。ガザ保健当局は18日、死者数は471人と発表した。これに対し、イスラエルはパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」によるロケット弾発射の失敗が原因だとしている。 
ロイターが19日に入手した米機密文書は、インテリジェンス活動やミサイル動向のほか、オープンソースの映像や画像を含む入手可能な報告に基づき「イスラエルに責任はないと判断している」としている。
死者数については「100─300人の範囲の下限に近い水準と推定している」とし、まだ評価中であるため推定は変化する可能性があるとしながらも、「驚異的な人命の損失を反映している」とした
また「(現場となった)病院では軽度の構造的な損傷しか確認されていない」とし、「病院の主要な建物には確認できる損傷はなく、衝撃によるクレーターも確認されていない」と指摘した。
イスラエルのガラント国防相は19日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザの境界沿いに集結した歩兵部隊に対し、ガザを「内側から」見る日は近いと語った。
ガラント国防相は「今は遠くからガザを見ているが、もうすぐ内側から見ることになる。命令は出される」と述べた。ガザ地上侵攻が近いことを示唆した可能性がある。
バイデン米大統領は、米東部時間19日午後8時(0000GMT、日本時間20日午前9時)に国民向けテレビ演説を行い、ウクライナとイスラエルへの連帯のメッセージを掲げる予定。この演説は、同大統領がイスラエルから帰国後24時間以内に行われる。
ジョン・ファイナー米大統領副補佐官(国家安全保障担当)がMSNBCのインタビューで明らかにした。
下院議長の選出が不調に終わり、議会が停滞する中、両国に対する資金援助の重要性性を強調するものとみられる。
ファイナー氏によると、バイデン氏は「これらの紛争がわれわれの生活とどのように結びついているのか、米国民と議会からの支援がいかに不可欠であるか」を語る見通し。
中東地域を管轄する米中央軍のマイケル・クリラ司令官が19日、エジプトを電撃訪問し、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘およびパレスチナ自治区ガザへの支援方法を巡りエジプトのシシ大統領と会談した。
エジプト大統領府の声明によると、会談では特に「ガザ地区の動向」について協議。「大統領は緊張緩和に向けたエジプトの取り組みについて説明したほか、危機を収束させ、危険な方向にエスカレートすることを止めるために国際社会が一致団結して取り組むことの重要性を強調した」という。
クリラ司令官はモハメド・ザキ国防相とも会談した。
エジプト大統領府は人道状況が悪化していることから「持続可能な方法」で支援を届けることが最優先事項とした。
今回の中東紛争では、サウジアラビアの実権を握るムハンマド皇太子がどう出るかが予測しづらく、「ワイルドカード」となっている。38歳の皇太子は湾岸諸国首脳の中で、イスラエルが絡む本格的な紛争に対処した経験を持たない世代のひとりだ。
戦争が勃発した今、皇太子はサウジのイランに対する敵対姿勢、国際石油市場における役割、対外投資、そして国民3200万人の目を、全て考慮して動く必要がある。皇太子は湾岸地域の経済大国であるサウジの近代化を進めており、戦争への対応はこの路線に、そして世界に大きな影響を及ぼすだろう。
パレスチナ自治区のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃は、サウジが対イスラエル姿勢を軟化させたことが1つの背景だった可能性がある。バイデン米大統領が両国関係を正常化させるため、ムハンマド皇太子とイスラエルのネタニヤフ首相による対話を仲介した。サウジは関係正常化の見返りとして米国と強固な防衛条約を締結し、場合によっては核開発への協力も得られれば、イランに対する立場を強化できるはずだった。しかしハマスによる攻撃とイスラエルによるガザ地区への報復により、関係正常化の可能性は遠のいた。
石油大国であるサウジは、中東紛争の行方を左右する重要な役割を担っている。バイデン氏は対イラン制裁を強化する可能性がある。そうなれば、日量数百万バレルに及ぶイランからの石油輸出が減少しかねない。サウジは世界の原油増産余力(日量約300万バレル)の大半を握っているため、ムハンマド皇太子は原油価格が1バレル=100ドルを超えないよう増産に踏み切るかもしれない。
しかし皇太子には増産を見送るべき理由がある。増産すれば、ロシアを含む「石油輸出国機構(OPEC)プラス」の国々の怒りを買いかねない。サウジ自体、財政を均衡させるために原油価格を1バレル=85ドル以上に保つ必要がある。
また、バイデン氏がサウジ人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件を巡ってムハンマド皇太子の個人的責任を指摘して以来、サウジと米国は緊張関係にある。実際、昨年は米国が皇太子に石油価格抑制への協力を求めたにもかかわらず、皇太子は減産を続けた。
ただ、サウジは国際投資家の目も勘案する必要がある。経済を多角化させることで石油収入依存からの脱却を目指す皇太子の「ビジョン2030」を実現するには、2030年までに年間1000億ドル(約15兆円)の外国直接投資を誘致しなければならない。しかし昨年の外国からの直接投資は100億ドルにも満たなかった。
地政学的な緊張が高まれば、国営石油会社サウジアラムコ(2222.SE)の株式500億ドル相当を追加売却する計画もとん座しかねない。2019年に実施した2兆2000億ドル規模の新規株式公開(IPO)時と同様、外国人投資家が購入を渋るようなら、経済多角化構想は打撃を被るだろう。
一方、諸外国の政府はサウジの対外投資に疑問を呈することをいとわないだろう。サウジの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」による投資攻勢に、諸外国は既に目を光らせている。米男子ゴルフのPGAツアーと、PIFが支援するツアー「リブ・ゴルフ・インビテーショナル・シリーズ(LIV)」の事業統合は、既に米議会で調査中であり、対米外国投資委員会によって阻止される可能性もある。
今のところ、サウジは国際的な銀行や資産運用会社をあてにできる。米資産運用大手ブラックロック(BLK.N)のラリー・フィンク氏や米銀大手JPモルガン(JPM.N)のジェイミー・ダイモン氏らトップは、来週サウジの首都リヤドで開く「未来投資イニシアティブ・サミット」に出席する予定だ。
しかしムハンマド皇太子は、若いアラブ人が大半を占めるサウジ国民にも配慮しなければならない。多くの国民は、サウジが長年続けてきたパレスチナ支持の姿勢を維持し、イスラム教の聖地の守護者という役割を果たすことを望んでいる。ハマスによる攻撃後、サウジが出した公式声明は、抑制を求めながらも、攻撃を誘発した責任がイスラエルにあるとほのめかすものだった。
こうした各勢力の利害衝突を、皇太子がどのように解消していくかを予想するのは難しい。イスラエルに背を向ける可能性もあれば、米国に一層接近することも考えられる。外交官や企業幹部、投資家には手掛かりがあまりない。この点だけを考えても、中東情勢は一層不透明さを増す。
スナク英首相は19日、バイデン米大統領に続いてイスラエルを訪問した。イスラム組織ハマスとの戦いでイスラエルへの支持を示す一方、パレスチナ自治区ガザの住民の窮状を和らげるよう求めた。
スナク氏は前日のバイデン氏と同様、イスラエルに対して支援と哀悼のメッセージを伝えた。
「私はイスラエルの人々との連帯を示すためにここいる。あなた方は言語に絶する恐ろしいテロ行為に見舞われた。英国と私があなた方とともにあることを知ってほしい」とイスラエルの記者団に語った。
ネタニヤフ首相はスナク首相に対し「今はわれわれにとり最も苦しい時期だ」とし、「長期戦となることを意味し、あなた方の継続的な支援が必要だ」と語った。イスラエルで1400人の犠牲者を出したハマスによる奇襲は中東地域の和平を確立しようとする取り組みをとん挫させることが目的だったという考えも示した。
英首相府によると、両首脳はイスラエル軍とハマスの衝突が中東全域に拡大することを回避する必要性や地域の平和と安定回復の重要性を巡り協議した。
スナク首相は記者団に対し「紛争を地域的にエスカレートさせないことが重要だ。そのため、できる限り多くの地域の当局者と対話している」と語った。
一方、イスラエル軍はこの日もガザへの空爆を続けた。保健当局によると、これまでに3500人近くが死亡、1万2000人以上が負傷した。
ネタニヤフ首相との会談に先立ち、スナク首相はヘルツォグ大統領とも会談。スナク氏は、イスラエルの安全を取り戻し、連れ去られた人質の安全な帰還確保に向けた連帯を表明。同時に「パレスチナ人もハマスが行ったことの犠牲者だ。人道的アクセスの提供継続は重要」とも伝えた。
17日に起きたパレスチナ自治区ガザの病院爆発で数百人が死亡し、イスラエルとパレスチナ双方が相手の責任と非難していることについては、英首相府報道官は、治安当局からの報告を待ち、英政府としての見解を示すとした。
イスラエル訪問後、スナク首相はサウジアラビアに迎い、ムハンマド皇太子と会談する予定。情報筋によると、サウジアラビアは米国が支援するイスラエルとの関係正常化計画を凍結させたという。
サウジアラビアの政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)」は18日、初のイスラム債(スクーク)を起債した。
イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突以降、中東市場で初の大型起債となったが、旺盛な需要があり、35億ドルを調達する見通しだ。
PIFは5年物と10年物のイスラム債を起債。発行額はそれぞれ22億5000万ドル、12億5000万ドル、発行条件は米国債利回り+120ベーシスポイント(bp)、+140bp。
5年物には140億ドル以上、10年物には100億ドル以上の応募があった。
当初のガイダンスはそれぞれ米国債利回り+150bp、+170bpだった。
ある債券アナリストは、PIFは地政学的な事情から利回りを高めに設定しており「投資家の観点からはかなり魅力的に見える」と指摘。
「サウジ政府の5年物スクークは5.56%前後で取引されており、PIFの5年物スクークは国債より50bpも高い。歴史的に見てスクークは利回りが相対的に低いが、今回はPIFの従来型債券と同水準だ」と述べた。
今回の起債は、イスラエルとハマスの軍事衝突に市場がどのような反応を示すかを見極める上で注目されていた。
サウジのソブリン債の対米国債利回りスプレッドは今月に入り、約15bp拡大している。
米財務省は18日、イランや香港、中国、ベネズエラに拠点を置く企業や個人に対する制裁措置を発表した。
イランのイスラム革命防衛隊と国防省を支援し、ミサイルとドローン(無人機)製造と拡散に関与したとして11人と8社、船舶一隻を対象にした。
ブライアン・ネルソン財務次官(テロ・金融情報担当)は「破壊的な無人航空機(UAV)やその他兵器の拡散を続けるイランの無謀な選択は、世界各地で多くの紛争を長引かせている」と指摘した。
対象企業には、イランに本社を置き、耐妨害誘導システムを製造するFanavaran Sanat Ertebatatとその取締役2人が対象となっている。
また、兵器拡散ネットワークに関与した中国や香港に拠点を置く個人も対象にしている。
ニューヨーク:国連パレスチナ常任オブザーバーは20日、パレスチナ人の「強制移住と絶滅を求めている勢力の自衛権について、いまだに語る者がいる」ことに不信感を表明した。
リヤド・マンスール氏は、現在進行中のイスラエルとハマスの戦争について話し合う安全保障理事会の会合で発言した。アメリカは、紛争における「人道的休止」を求め、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃を非難する決議案に拒否権を行使した。アメリカの特使は、この決定を正当化する理由として、決議案が “イスラエルの自衛権 “に言及していないことを挙げた。
火曜日にガザのアル・アハリ病院が攻撃され、病院に避難するよう求められていた数百人の患者や市民が死亡した翌日である。イスラエルは、パレスチナの武装組織「イスラム聖戦」がこの攻撃を行ったと非難している。
「この理事会が2日前に停戦を呼びかけていれば、何百人もの命を救うことができただろう」とマンスール氏は理事会メンバーに対し、月曜日にロシアが提案した前回の決議案に言及した。この決議案も人道的見地から停戦を求めたものだったが、同様に理事会で否決された。反対票を投じた議員たちは、その理由としてハマスに言及していないことを挙げた。
「流血を止めるのです。繰り返しますが、流血を止めてください」とマンスール氏は評議会で語り、「パレスチナ人を殺しても、イスラエルがより安全になることは決してない」と付け加えた。
「国連事務総長、世界中の宗教指導者たち、ローマ法王、アラブ諸国、南半球のイスラム諸国、世界中の何十億という人々(街頭で行進した何百万という人々を含む)の呼びかけに耳を傾けるように。彼らの声に耳を傾け、流血を止めなさい。今すぐ止めるのです」
湾岸協力会議加盟国を代表して発言したオマーンのモハメッド・アル=ハッサン特使は、安保理が団結を怠った結果、さらなる流血を招いたと述べた。
「何十年もの間、安保理は、安保理自身が採択した決議を含む国際法に基づき、パレスチナの問題に対する永続的で公正な解決策を見出すことができなかった。その結果、双方が犠牲となり、安全が完全に欠如している」と述べた。
さらに、「二重基準がイスラエルをこの理事会とその決議に背かせることになりました。数え切れないほど、(イスラエルは)パレスチナ人に対して虐殺を行ってきました」
アル・アハリ病院での虐殺は、「危険なエスカレーションであり、国際法と国際人道法の違反である」
「(イスラエルは)世界の目の前でパレスチナの市民を八つ裂きにしている。これはテロ行為であり、明白な国際法違反ではないか」と大使たちに問いかけた。
「飢饉状態を起こし、集団的懲罰に至るまで、イスラエルの犯罪行為は第二次世界大戦でナチスが行ったものであり、今日の世界では通用しない」
そして、国際法を守ることを理事会に求め、「たとえそれがイスラエルであっても、法の上に立つ者はいないことを証明してください」と付け加えた。
国連アラブグループを代表して発言したヨルダンのマフムード・フムード特使は、アラブ諸国はアル・アハリ病院での「治療を受けていた罪のない市民に対する犯罪者IDF(イスラエル国防軍)による虐殺を最も強い言葉で非難する」と述べた。「イスラエルはこの凶悪な戦争犯罪の全責任を負う」、と彼は付け加えた。
現在アラブグループの輪番議長国であるフムード氏は、安全保障理事会に対し、「即時停戦とイスラエルによるガザ侵攻終結のための即時行動」をとるよう求めた。
また、イスラエルによる占領がこの紛争の背景にあるとし、「平和と安全を望むのであれば、東エルサレムを首都とし、1967年の国境線に基づく独立したパレスチナ国家を樹立すべきだ」と訴えた。
エジプトのオサマ・アブデルハレク国連常任代表は、アル・アハリ病院への攻撃を「パレスチナの人々を根こそぎ領土から追い出そうとする試み」と表現した。
「この戦争は10月8日に始まったのではなく、それよりもずっと前に始まったのです。占領が始まったときに始まったのです。占領を続けることはできない。イスラエルの犯罪を見過ごすことはできない」と警告した。
イスラエルの国連大使ギラード・エルダン氏は、理事会メンバーにこう問いかけた: 「ここで何が起こっているのか?ここ数十年で最も野蛮なテロ攻撃、9.11よりも大きな事件が10日前に起きたのに、この理事会はすでに忘れてしまったようだ」
「ハマスが殺したのは、ナチスから逃れてきたホロコーストの生存者たちだ。ISISやアルカイダがそうであったように、癌を治す唯一の解決策は、全ての癌細胞を消滅させることである 」と述べた。ISISとは、テロリスト集団ダーイシュの別名である。
エルダン氏は、安保理が「最も基本的なこと」をしなかったと非難し、こう付け加えた: 「ハマスの残忍なテロ攻撃を安保理として非難していない。その基本的なことでさえ一致団結できないとは理解できない」と述べた。
また、ハマスが死とテロという台本の中で、あなたがたのために書いた役割を、理事会のメンバーが演じていると非難した。
「ハマスが何十億ドルもの国際援助を悪用して、人口密集地の中や地下にテロインフラを構築したとき、国連はどこにいたのか?国連はすべてを知っていたが、沈黙を守っていた」
エルダン氏は、ハマスの残虐行為を非難する代わりに、人道的回廊について理事会が議論しているのは「おかしなことだ」と述べた。
「冷静な自制と停戦を求めるのは、銃創にバンドエイドを貼るようなものだ」と付け加えた。
火曜日に起きたアル・アハリ・バプティスト病院への攻撃について、エルダン氏は、安保理とアントニオ・グテーレス国連事務総長は、「赤ん坊を殺すテロリストたち」の主張を額面通りに、何の考えもなしに受け止めていると非難した。
病院を攻撃したのはパレスチナのイスラム聖戦のロケット弾「だけ」であり、イスラエルにはそれを証明する「疑いの余地のない」映像がある、とエルダン氏は付け加えた。
リヤド: 湾岸協力会議(GCC)と東南アジア諸国連合(ASEAN)に関する会合が、金曜日に両ブロックが参加する首脳会議を前に、水曜日にアル・ファイサリア・ホテルで開催された。
ガルフリサーチセンターが主催したこの会合には、GCCとASEANの代表者、経済界のメンバー、ジャーナリストが出席した。
政治、安全保障、経済協力などが話し合われた。 
GCCとASEANは1990年に関係を樹立したが、両ブロック間の首脳会談は今回が初めてとなる。
GCCのアブデル・アジーズ・アルウェイシグ政治・交渉担当事務次長補は、次のように述べた: 「この会合は、特にこの地域が経験している出来事や状況から見て、極めて重要なタイミングにある」
「この会合の主な目的は、湾岸諸国とアジアの指導者間の戦略的協力を強化することだ」、と彼は付け加えた。
「ASEAN諸国との物品の貿易交換は1100億ドルを超えており、GCC諸国とその他の国々との間の対外貿易量の高い部分を占めている」と述べた。
ガルフリサーチセンターのアブデルアジーズ・セグル会長はアラブニュースに対し、湾岸商工会議所連合会とASEANの覚書により協力が強化されると語った。
「2024年1月、湾岸諸国とアジア諸国との間で、金曜日に開催されるサミットのフォローアップとなるようなクローズドな会合を開催する予定です」
「広大で現実的な可能性があり、それを活用しなければなりません。ASEANは、アラビア湾諸国、インド洋諸国、中国東南アジア諸国、そして中国海の間の重要な戦略的位置を占めています」
「インドネシアとマレーシアの間に位置するマラッカ海峡は、石油貿易にとってホルムズ海峡に次いで重要な海峡と考えられています。これはまた、海上交通と海上保安のための物流に大きな重要性を与えています」と述べた。
在リヤド・フィリピン大使館のロンメル・ロマト臨時代理大使は、サウジアラビアとGCC共同体は「米国、中国、中央アジアといった重要な地域パートナーを持つ」と述べた。
「GCCは成長と変化の震源地だと言えます。サウジアラビアだけでなく、近隣諸国でも多くの変化が起きている。ですから、この地域だけでなく、世界にとっても、誰にとっても多くのチャンスがあるのです」
彼は、フィリピンも同様に、提案されている政治的・経済的な協力関係を現実のものにするために尽力していると述べた。
「貿易、投資、医療、観光、教育における協力を促進したい」とロマト氏は述べた。
彼は、サウジアラビアが仕事と家族への支援を必要とする東南アジアからの労働者に雇用の機会を提供している事実を高く評価していると述べた。 
「私たちはそのことにとても感謝しています。また、安全保障面での協力を強化する必要があります」とロマト氏は付け加えた。
このような時に、イスラエルとガザで展開されている悲劇の是非について踏み込むことはためらわれる。確かに、どちらか一方による最後の暴挙よりも前に遡ることのない、近視眼的な視点に基づく非難を行うことは、意味がないどころか事態を悪化させるだけだ。
しかし歴史は、現在の状況に対する最終的な責任がどこにあるのかを明確に教えてくれる。それは、英国政府の背信行為によって100年以上前に始まった永続的な災難の最新の結果にすぎないのだ。
第一次世界大戦が激化し、英国は窮地に立たされていた。1917年11月、ユダヤ人の支援を得て戦争を有利に進めることを目的として、アーサー・バルフォア外相は、国際的な銀行家の一族であり、著名な英国のシオニストであるロスチャイルド卿に運命的な手紙を書いた。バルフォア宣言として知られるようになったこの宣言は、「陛下の政府は、パレスチナにユダヤ人のための民族国家を建設することを好意的に考えており、この目的を達成するために最善の努力を払うだろう」と記されていた。
英国政府も、やがてこの文書によって根付くことになる国家も、「パレスチナに存在する非ユダヤ人共同体の市民的・宗教的権利を損なうようなことがあってはならない」という但し書きをすぐに忘れてしまった。
英国は、聖地にユダヤ人のための祖国を作ろうというシオニストの野心をほとんど気にかけていなかった。英国の動機は、対独戦争のため、影響力のある米国の有力ユダヤ人の財政的・政治的支援を確保することにあったのだ。
もちろん、「ユダヤ人」が国家の政治や財政に何らかの不当な影響力を持っている、あるいは持っていたと示唆するのは反ユダヤ主義者の常套句である。しかし、第一次世界大戦のさなか、米英両政府の最高レベルにおいて、有力なユダヤ人がパレスチナにユダヤ人の祖国を求めるシオニストの主張を押し通すことに成功したのは、陰謀論ではなく、れっきとした事実である。
米国では、ウッドロー・ウィルソン大統領の友人であり同盟であり、パレスチナにユダヤ人の祖国を「再現」することを主張したルイス・ブランダイス最高裁判事が、バルフォアと直接連携して、この問題をめぐる米国の政策に大きな影響を与えた。
広く認識されていないが、国立公文書記録管理局に保存されている内閣文書には、バルフォア宣言が1917年10月、英国のユダヤ人有力者10人(そのほとんどが著名なシオニスト)の承認を得るために、草案として秘密裏に提出されたことが証明されている。そのうちの一人がロスチャイルド卿で、最終的にその2週間後この草案は宣言されることになる。もう一人は、彼の友人で、ロシア生まれのシオニスト組織総裁、後にイスラエルの初代大統領となるハイム・ヴァイツマンであった。
もちろん、世界のシオニストたちを口説いていたときでさえ、英国はアラブ人にトルコへの反乱を促すことに成功し、まもなく崩壊するオスマン帝国の領土にアラブ人自身の独立した祖国を持つことができると、メッカのシャリフにすでに約束していた。
まるでこの二枚舌だけでは不十分だったかのように、1916年、英国とフランスは秘密裏にサイクス・ピコ協定に調印、戦争終結時にオスマン帝国の土地を分割することに合意した。
後に国際連盟から与えられた委任統治領のパレスチナの主人として、英国はアラブ人への約束を反故にした。この裏切りに対して、アラブ人を説得して蜂起させたT.E.ロレンスは、後に「絶えず、痛みと共に恥じている」と宣言した。
19世紀後半、ロシアにおける迫害に対抗して始まったパレスチナへのユダヤ人移民は、英国委任統治時代の初期に劇的に増加した。ユダヤ人とアラブ人の間に緊張の初期兆候はすぐに見られるようになり、1920年4月にはエルサレムで最初の暴動が発生した。
英国は、彼ら自身がすぐに認識し始めるようになってから今日に至るまで、解決不可能な状況を作り出した。1915年1月、英国がオスマン帝国に宣戦布告してからわずか2カ月後、ユダヤ教徒として初めて英国の大臣を務めたハーバート・サミュエルは、英国内閣で「パレスチナの将来」と題する論文を配布した。その中で彼は、戦後パレスチナを併合し、ユダヤ人移民に開放することを検討するよう政府に促した。そうすれば、「世界中のユダヤ人、特に約200万人のユダヤ人を抱える米国から、英国は永続的に感謝されるだろう」と彼は述べた。
戦後、サミュエルは非常に無神経な力学のなかで、英国のパレスチナ高等弁務官に任命された。この任命は、戦後のパレスチナにおける英国軍政府さえも警戒させた。エドムンド・アレンビー陸軍元帥は、アラブ人たちはこの任命に関して「この国を、シオニストの永久政権に一挙に引き渡した」ものと見なすだろうと書いた。ムスリム・クリスチャン教会は、「暴動やその他の平和を脅かす行為に対して、責任を負うことはできない」と警告した。
しかし、パレスチナにおけるユダヤ人の数は増え続け、後戻りはできなくなった。「アラブ人の独立国家、ユダヤ人の独立国家」、「エルサレムの国際信託統治」を想定した分割案が国連で賛成多数となり、これが1947年の内戦勃発につながった。最終的に、1948年5月14日、英国は全てを放り出して立ち去った。その翌日、世界シオニスト機構会長のダヴィド・ベン・グリオンがイスラエル建国を宣言した。
もし、この止まらない暴力の連鎖を終わらせることが不可能に見えるとしたら、それは正しい。相互の憎しみと不信の結びつきを解きほぐすために考案された多くのイニシアティブのうち、成功したものはひとつもない。
今、血なまぐさい、正当化できないハマスのイスラエル攻撃と、同じく血なまぐさい正当化できないイスラエルによるガザへの報復によって、悲劇は続いている。そして、誰も勝つことのできない、終わりのない戦いに新たな世代を巻き込んでいるのだ。
カイロ:ハマスによる10月7日の残忍な攻撃に対するイスラエルによる容赦のない報復空爆のもと、封鎖されたガザ地区で絶望的な状況にあるパレスチナ人らが何とかして避難しようとしている中、隣国のヨルダンとエジプトがなぜ自分たちを受け入れてくれないのかと問う人もいる。
イスラエルを挟んで反対側に位置し、それぞれガザ地区および占領下のヨルダン川西岸地区と境界を接している両国は、難民受け入れを断固拒否している。ヨルダンは既に大量のパレスチナ難民を受け入れている。
エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は18日、これまで最も強硬な発言をした。現在の戦争はガザ地区を支配するハマスとの戦いを目的とするだけでなく、「同地区に住む市民をエジプトへと追いやる試みでもある」と言ったのだ。さらに、それが地域の平和を破壊しかねないと警告した。
ヨルダンのアブドッラー2世国王もその前日に、「ヨルダンへの難民もエジプトへの難民もあってはならない」という同様のメッセージを発した。
両者の拒否の根底には、イスラエルはパレスチナ人を永久的にエジプトやヨルダンへと追い出し、彼らの国家樹立の要求を無効にしようとしているのではないかという不安がある。エルシーシ大統領は、集団移住によって過激派がエジプトのシナイ半島に入り込み、そこからイスラエルに対する攻撃を行うことで両国の40年にわたる平和条約を危険に晒す恐れがあるとも述べた。
エジプトとヨルダンの立場を動機づけている要因を以下で見てみよう。
強制移住の歴史
強制移住はパレスチナ人の歴史における主要テーマであり続けてきた。イスラエル建国をめぐる1948年の戦争では、推定70万人のパレスチナ人が、現在イスラエルとなっている土地から追い出されたり避難したりした。パレスチナ人はこの出来事を、アラビア語で「大災厄」を意味する「ナクバ」と呼んでいる
イスラエルがヨルダン川西岸地区とガザ地区を占領した1967年の中東戦争では、さらに30万人のパレスチナ人が主にヨルダンへと避難した。
パレスチナ難民とその子孫の数は現在約600万人に上り、そのほとんどがヨルダン川西岸地区、ガザ地区、レバノン、シリア、ヨルダンの難民キャンプやコミュニティーで暮らしている。ディアスポラはさらに拡散しており、多くの難民が湾岸アラブ諸国や欧米諸国で生活を築いている。
1948年の戦争が停止した後、イスラエルは難民の帰還を認めなかった。同国はそれ以来、和平合意の一環として難民の帰還を求めるパレスチナ人の要求を、国内の多数派であるユダヤ人を脅かすことになるとして拒否してきた。
エジプトは、歴史が繰り返され、ガザ地区から来る大量のパレスチナ難民が永久的に留まることになることを恐れている。
帰還の保証がない
それは、この戦争の終結についての明確なシナリオが存在しないからでもある。
イスラエルは、同国南部の複数の町を襲撃し人々を殺戮したハマスを壊滅させるつもりだとしながらも、その後はどうなるのか、また誰がガザ地区を統治するのかについては何も示していない。そのため、イスラエルが一定期間同地区を再占領することになり、さらなる紛争が助長されるのではとの懸念が高まっている。
イスラエル軍は、同軍の指示に従ってガザ地区北部から南部に避難したパレスチナ人は戦争終結後に帰還が認められると述べた。
しかし、エジプトは安心していない。
エルシーシ大統領は、イスラエルが過激派を十分に壊滅させていないと主張すれば戦闘が何年も続く可能性があると述べた。そして、イスラエルが軍事作戦を終了するまでガザ地区に隣接する同国のネゲヴ砂漠にパレスチナ人を受け入れることを提案した。
国際危機グループの北アフリカプロジェクト責任者であるリカルド・ファビアーニ氏は、「イスラエルがガザ地区での意図や住民の避難について明確に説明していないこと自体に問題がある」と指摘する。「その混乱が地区内で不安を煽っている」
エジプトはイスラエルに対し、ガザ地区への人道援助を受け入れるよう求めている。イスラエルは18日、許可する意向を明らかにしたが、その時期は示さなかった。国連によると、深刻化する経済危機に見舞われているエジプトは既に約900万人の難民・移民を受け入れている。その中には、今年勃発した母国の内戦から逃れてきた約30万人のスーダン人も含まれる。
しかし、アラブ諸国と多くのパレスチナ人は、イスラエルがこの機会を利用して人口構成の永久的な変化を強制的に引き起こし、ガザ地区、ヨルダン川西岸地区、(同じく1967年にイスラエルによって占領された)東エルサレムに国家を樹立するというパレスチナ人の要求を潰してしまうかもしれないとも疑っている。
エルシーシ大統領は18日、ガザ地区からの集団移住は「地域において最も重要な大義であるパレスチナの大義を抹殺する」ことを意図したものであるとの警告を繰り返した。また、もしずっと前に交渉によって非武装化されたパレスチナ国家が樹立されていれば、現在の戦争は起こっていなかっただろうと主張した。
カーネギー国際平和基金のシニアアソシエイトフェローであるH・A・ヘリヤー氏は、「歴史的な前例は全て、パレスチナ人がパレスチナの土地を去ることを強いられた時には帰還を許されないという事実を示している」と指摘する。「エジプトはガザ地区における民族浄化に加担したくないのだ」
アラブ諸国の不安は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のもとで、パレスチナ人の排除を肯定的に語る極右政党が台頭していることによって掻き立てられるばかりである。ハマスの攻撃以降そのレトリックのタガが外れており、右派政治家やメディアコメンテーターの中には軍に対しガザ地区を破壊し住民を追い出すよう求める者もいる。ある議員は、イスラエルは同地区に対し「新たなナクバ」を行うべきだと述べた。
ハマスをめぐる懸念
一方エジプトは、ガザ地区からの集団移住となればハマスやその他のパレスチナ過激派が同国領内に入り込むことになると主張している。それによってシナイ半島が不安定化する可能性があるというのだ。エジプト軍は長年、同半島でイスラム過激派と戦い、ハマスが彼らを支援していると非難したこともあった。
2007年にハマスがガザ地区を掌握して以来、エジプトはイスラエルによる同地区の封鎖を支援し、物資の持ち込みや民間人の行き来を厳しく規制してきた。また、ハマスなどのパレスチナ組織が同地区に物資を持ち込むのに使用する境界地下のトンネル網の破壊も行った。
シナイ半島の反乱は概ね鎮圧されたため、「エジプトはこの問題の多い地域において新たな治安問題を抱えたくない」のだと、ファビアーニ氏は指摘する。
エルシーシ大統領は、状況がより一層不安定化するシナリオに対し警告を発した。すなわち、1979年に結ばれたエジプトとイスラエルの平和条約の破綻である。同大統領は、シナイ半島にパレスチナ過激派が存在することになれば「イスラエルに対する攻撃拠点となる。イスラエルは自衛の権利を得て(…)エジプト領内に対し攻撃を行うだろう」と述べた。
「我々が実現した和平が手元から消えてしまう」と同大統領は言った。「それは全て、パレスチナの大義を抹殺するという考えのためだ」
カイロ:隣接するガザ地区で紛争が激化する中、エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領が19日(木)、ヨルダンのアブドッラー2世国王をカイロに招いて首脳会談を行うと、エジプト大統領府が発表した。
ヨルダン王室は声明の中で、両首脳は「イスラエルによるガザ侵攻を阻止する手段について協議する」予定だと伝えた。
エジプトとヨルダンは、それぞれ1979年と1994年にイスラエルとの関係を正常化した最初のアラブ諸国であり、それ以来、イスラエルとパレスチナ当局の間の重要な仲介者となっている。
ベングリオン空港:リシ・スナク英首相は19日、イスラエルに到着した。イスラエルの ベンヤミン・ネタニヤフ首相やイツハク・ヘルツォグ大統領と会談したのち、中東の他の国々の首都を訪問する。
英首相府によれば、スナク首相は7日のガザ地区に拠点を置くハマスの戦闘員によるイスラエル攻撃の結果としてイスラエルとガザ地区で失われた多くの人命に哀悼の意を示すとともに、中東における紛争の激化に警告を発する予定だという。
スナク首相はイスラエル訪問に先立ち、「一般市民の死はすべからく悲劇だ。ハマスの恐ろしいテロ行為の後、あまりにも多くの人命が失われた」と、声明で述べた。
またスナク首相は17日にガザ地区の病院で起きた爆発で何百人ものパレスチナ人が死亡した事件を「地域の、そして世界の指導者たちが紛争のさらなる危険な激化を防ぐため団結する重大な転機とすべきだ」と述べ、英国は「この努力の先頭」に立つと語った。
スナク氏はまた、ガザ地区に人道援助物資を送るとともに、足止めされている英国民が出国できるよう、エジプトとガザ地区をつなぐルートをできるだけ早く開くよう求める予定だ。
7日のイスラエルに対するハマスの攻撃以降、少なくとも7人の英国人が死亡し、少なくとも9人が行方不明になっているとスナク首相の報道官は18日、述べた。
スナク首相の中東歴訪と並行して、ジェームズ・クレバリー英外相はエジプトとトルコ、カタールをこれから3日間かけて訪問し、今回の紛争について話し合うとともに、平和的解決を模索するという。クレバリー外相は先週、イスラエルを訪問している。
英政府はエジプト、トルコ、カタールの3カ国は「地域の安定を守り、人質を解放し、ガザ地区への人道支援を可能にするための国際的な努力に欠かせない」国々だとしている。
クレバリー外相は各国の高官と会い、紛争の拡大を防ぐ努力や、援助物資を必要とする人々に届けるためにエジプトとガザを結ぶラファ検問所を開く緊急の必要性、ハマスに人質を解放させる方策について話し合うという。
ワシントン:バイデン大統領はハマスと戦うイスラエルを支持し、イスラエルによる封鎖で苦しむパレスチナ人に支援を提供するためにイスラエルを訪れたが、イスラエル訪問により、自分自身と今後の戦闘とが結びついてしまい、切り離せなくなった。
バイデン氏による8時間に及ぶイスラエルへの訪問滞在は、数百人のパレスチナ人が死亡したガザ市の病院爆発にアラブ世界からの非難が集中した翌日のことだった。
戦略国際問題研究所の中東プログラム責任者、ジョン・B・アルターマン氏は、「リスクの観点からいうと、バイデン氏と、イスラエル人がガザで行うと決める全てのこととが結びついてしまった」と述べた。
同氏によると、バイデン氏がイスラエルを励まし、イスラエルと交渉し、イスラエルを支援することが、同国が行動を決める上で一番影響を与えることができる方に賭けているという。
議会を通じて、早急にイスラエルに数十億ドルの追加支援を行うバイデン氏の目論見は、米国民が納める税金の使い道について議論が沸騰する可能性が高い。一方で、停戦を求める国連決議に対して米国が拒否権を発動したことで、味方を怒らせてしまった。
同氏は、米国はガザ地区と占領下のヨルダン川西岸地区への人道支援のために新たに1億ドルの資金を提供すると発表した。そしてイスラエルに対し、パレスチナ人への人道支援を認めるよう要請した。
米政府はすでに、国内向けに同氏がイスラエル政策をもっとていねいに説明する必要があることを認めている。
バイデン氏が19日のゴールデンタイムに演説を行い、「イスラエルに対するハマスのテロ攻撃と継続中のロシアによる残虐なウクライナ戦争への対応について検討する」と発表することを、18日、米政府が明らかにした。
同氏はテルアビブ出発後初めて、大統領専用機「エアフォースワン」の機内で記者団の質問に答え、エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領と協力して、ガザへの人道支援のためにラファ検問所を開くことになったと明かした。
ハドソン研究所研究員で元米情報担当国防次官エズラ・コーエン氏は、地上侵攻で民間人の犠牲者が増えると、バイデン氏が信頼を維持するのはますます困難になるだろうと述べた。
「地上部隊が一軒一軒家を回り、路上でハマスと戦闘したりしているが、民間人はいまだに現場に捕らわれたままだ。なぜなら、ハマスが民間人を放さないからだ」とコーエン氏は語った。
同氏は、バイデン氏が「イスラエルは武力紛争法に従っていると米国民に説明することについては、非常に慎重にならざるを得ない」と語った。
イスラエルは武力紛争法に従っていない、と強く批判する人もいる。
ロイター/イプソスの世論調査によると、民主党と共和党の大半を含む米国民の約78%が、戦闘から逃れてきたガザ住民が安全な国に移動できるようにする米国の外交努力を支持している。
しかし、ハマスとの紛争において「米国はイスラエルを支持すべきである」という声明に賛成する人は半数に満たない41%で、米国はパレスチナ人を支持すべきであると答えたのはわずか2%だった。
このような状況は、トルコからサウジアラビア、エジプト、カタールに至るまでのアラブ・イスラム世界各国との結びつきが深まることで、イスラエルがより安全になり、イラン、ロシア、中国など米国の敵と対抗し、米国の天然ガス価格を抑制できるだろうという期待がありながら、これらアラブ・イスラム世界の各国と友好関係を築こうとしてきた長年の外交努力をご破算にしてしまう恐れがある。
ドバイ/ワシントン:イスラエルは、ガザ地区への絶え間ない攻撃でハマスの壊滅を誓っているが、その着地点は見えない。たとえ戦場での勝利を収めたとしても、荒廃したパレスチナの飛び地をどのように統治するかの明確な計画は明らかになっていない。
「鉄の剣」作戦と名付けられたこの軍事作戦は、イスラエルが過去にガザで行ったことのないような、他に類を見ないほど激しいものなるだろうと、紛争に詳しい地域および欧米の(機密事項のため名前を伏せた)当局者8人は語っている。
10月7日にハマスがイスラエル南部を襲撃し、民間人を中心に約1400人が死亡した後、イスラエルは過去最高となる36万人の予備兵を招集し、この小さな飛び地を連日砲撃している。
米国と中東の指導者たちの間で行われた協議に詳しい3人の地域関係者によれば、イスラエルの当面の戦略は、多くの民間人を犠牲にしてでもガザのインフラを破壊し、この飛び地の住民をエジプト国境に向かわせ、ハマスが作戦を遂行するために建設した迷路のような地下トンネルを爆破して、ハマスを追い詰めることだという。
イスラエル政府関係者は、戦後の未来がどのようなものになるのか、明確な考えは持っていないと述べている。
ジョー・バイデン米大統領の側近の中には、イスラエルはハマスに永続的なダメージを与える効果的な計画は練っているのかもしれないが、出口戦略はまだ立てていないと懸念している者もいると、この問題に詳しいワシントンの情報筋は語った。
この1週間、アントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官がイスラエルを訪問し、ガザの戦後計画に焦点を当てる必要性を強調した、と同筋は付け加えた。
2006年以来ハマスに支配され、230万人が住むこの飛び地の将来について、イスラエルが明確な計画を打ち出していないことに、アラブ政府高官も懸念を訴えている。
「イスラエルはガザの最終的な解決策を持っていない。彼らの戦略は、何千もの爆弾を投下し、すべてを破壊してガザに侵入することだ。イスラエルは、ガザに対する最終戦略を持ち合わせていない」
イスラエル軍の地上侵攻はまだ始まっていないが、ガザ当局によれば、空爆によってすでに3500人のパレスチナ人が死亡、その約3分の1は子どもたちだという。これはハマスとイスラエルとの間で起きた、以前の紛争における死者数を上回る。
18日にイスラエルを訪問したバイデン氏は、ハマスに対して正義を果たす必要があるとイスラエル国民に語ったが、9・11のニューヨーク同時多発テロの後、米国は過ちを犯したと警告した。
「パレスチナ人の大多数はハマスではない」と彼は述べた。「ハマスは、パレスチナ人を代表しているわけではない」
カーネギー国際平和財団の中東専門家であるアーロン・デビッド・ミラー氏は、バイデン氏の訪問は、イスラエルの指導者であるベンヤミン・ネタニヤフ首相がガザ侵攻を実行する前に、均衡性を保った武力の行使やガザに関する長期的な計画などの問題を熟考するよう圧力をかける機会になっただろうと述べた。
「トンネルの街」
ネタニヤフ首相を含むイスラエル政府高官は、イスラエルの75年にわたる歴史の中で最も死者が出た今回の攻撃への報復として、ハマスを壊滅させると述べている。
その後に何が起こるかは、今のところ不明だ。
イスラエル国家安全保障会議のツァヒ・ハネグビ議長は17日、記者団に対し、「我々はもちろんこの件について考え、対処している。これには国家安全保障会議、軍、その他を含めた最終的な状況についての評価が含まれる」と語った。「この事態がどのようなものになるか、正確にはわからない」
「しかし、我々は『何が起こらないか』については確信している」と、彼はイスラエルによるハマス壊滅宣言を指して語った。
しかし、これはそう簡単なことではないだろう。
「これは、ベトコンのトンネルが子供の遊びのように見えるような、地下トンネルの都市だ」と、先の地域情報筋は、ベトナムで米軍を挑発した共産ゲリラ部隊を指して言った。「イスラエルは戦車や爆撃でハマスを壊滅させることはできない」
地域の軍事専門家2人がロイターに語ったところによると、ハマスの武装組織である「エゼディン・アル・カッサム旅団」が地上侵攻の対応のために動員され、イスラエルの部隊を待ち伏せるために対戦車地雷やブービートラップを仕掛けたという。
イスラエルの攻撃は、これまでイスラエル当局者が「草刈り」と呼んでいた過去のガザ作戦よりもはるかに大規模なものになるとみられるが、ハマスの軍事力を低下させることはできても、壊滅させることはできないだろう。
イスラエルは2008年〜9年、2012年、2014年と、過去に3回ハマスと衝突し、そのうちの2回で限定的な陸地侵攻を行った。しかし、それらは今回とは異なり、イスラエルの指導者たちはハマスの完全な壊滅を誓ったことはなかった。
この3回の戦闘で、パレスチナ人4000人弱、イスラエル人100人弱が死亡した。
イスラエルがハマスを完全に壊滅させることができるという楽観的な見方はワシントンには少なく、イスラエルがガザの領土を保持したり、再占領したりする可能性はほとんどないと米政府関係者は見ている、と米国の情報筋は語った。
より可能性の高いシナリオは、イスラエル軍ができる限り多くのハマス構成員を殺害または確保し、トンネルやロケット発射基地を爆破、そしてイスラエル軍に犠牲者が出た後は、勝利を宣言して撤退する方法を探すことだろう、と同関係者は語った。
地域に垂れ込める戦雲
地域全体が懸念しているのは、レバノンのヒズボラと、同組織の後ろ盾であるイランが、ハマス支援のために主要な新戦線を切り開くことで、戦争がガザの境界を超えて拡大することだ。
イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相は、イスラエルがガザ侵攻を実行した場合、イスラエルに対する「先制攻撃」が行われる可能性を警告した。彼は先週末、米国がイスラエルを抑制できなかった場合、イランは傍観するつもりはないと述べた。
アラブの指導者たちは、先週同地域の国々を訪問していたブリンケン氏に、彼らはイスラエルへのハマスの攻撃を非難しているが、一方で、パレスチナの民間人に対する集団的懲罰には反対しており、これが地域の不穏を引き起こすことを懸念していると伝えた。
死者の数が増えれば、民衆の激しい怒りは地域全体に広がるだろう、と彼らは言う。
米国はヒズボラがイスラエル北部の国境から戦闘に参加することを懸念し、空母打撃群を地中海東部に派遣した。しかし、米軍が抑止の姿勢から直接の関与に移行する兆候はない。
同地域の情報筋によれば、米国は、2007年にハマスにガザの支配権を奪われたパレスチナ自治政府(PA)の再活性化を提案しているという。ハマスが追い出された場合でも、PAや他の権力がこの沿岸の飛び地を統治することができるかどうかには大きな疑問がある。
米国の元中東交渉官であるミラー氏は、ガザを統治するポスト・ハマス政府樹立の可能性について懐疑的な見方を示した。
「国連、パレスチナ自治政府、サウジアラビア、エジプト、そして米国がヨーロッパ諸国を率いて、ガザを『天井のない監獄』からより良い場所に変えることができるのだろうか?私には、それは地球上ではなく、はるか彼方の銀河系にふさわしい絵空事に思える」と彼は言った。
一方、ガザ内に人道回廊を設け、パレスチナ市民の避難路を確保しようという呼びかけは、アラブ近隣諸国から強い反発を招いている。
彼らは、今回のイスラエルの侵攻が、1948年の第1次中東戦争と1967年の第三次中東戦争がそうであったように、新たな、そして永続的な大量移住の波を引き起こすことを恐れている。当時、避難を余儀なくされた数百万人のパレスチナ人たちは、難民として今も受け入れ国に取り残されたままだ。
1967年の戦争でイスラエルに占領され、その後併合された東エルサレムと、占領地全域にわたるイスラエルの入植地拡大は、パレスチナ人との対立の核心である。ネタニヤフ首相は宗教的で過激な極右勢力を公然と受け入れ、ユダヤ人が入植するための土地をさらに併合すると約束している。
今年に入ってから、ヨルダン川西岸地区ではイスラエル軍兵士や入植者との度重なる衝突で数百人のパレスチナ人が死亡している。近隣のガザが燃え盛る中、暴力が同地区にも拡大するのではないかという懸念が広がっている。
「最悪のシナリオがどんなものであれ、それはさらに悪くなるだろう」と、他の地域情報筋は、紛争がガザを越えて広がる可能性について語った。
アンマン:水曜日、イスラエルによるガザの爆撃と包囲に反対する大規模なデモがカイロ市内で行われるさなか、イスラエル外務省は同市にある大使館から職員を避難させたと、ヨルダンのペトラ通信は報じた。
同通信社は、イスラエルの新聞イェディオト・アハロノトの報道を引用し、イスラエル当局が同国すべての大使館で最大限の警戒態勢を敷くよう宣言した後に、この避難作戦が実施されたと伝えた。カイロでの避難は、10月8日にヨルダンのアンマンから大使館職員が避難したとの報道に続くものとなった。
ヨルダン警察は水曜日、イスラエル大使館付近で暴徒化したデモ参加者らと衝突し、複数の機動隊員が負傷したと発表した。同警察は、イスラエル軍によるガザへの攻撃に抗議する目的で、デモ隊で行進することを計画していた数千人のデモ参加者を解散させるために、機動隊を配備していた。
リヤド:サウジアラビアの外務大臣ファイサル・ビン・ファルハーン王子は18日にジェッダで、ガザにおける現在の軍事的激化とその周辺状況について、イラン外相と話し合った。
イスラム協力機構のガザの状況に関する緊急会議に合わせて行われたホセイン・アミール・アブドラヒアン氏との会談で、ファイサル王子は、王国は継続する激化を止めるために、世界および地域の全関係者とコミュニケーションをとる努力をしていると述べた。また、市民を標的とすることを拒絶する王国の姿勢を強調した。
王子は、サウジアラビアがパレスチナ問題への注力と、パレスチナの人々の正当な権利を保障する包括的和平プランへの到達に向けた支援の取り組みを断固維持することを改めて表明した。
バイデン米大統領の18日のテルアビブ訪問はイスラエルへの全面的支持を示すものだったが、アラブの指導者の同意を取り付けるというもう一つの重要な目標は達成できなかった。
紛争が制御不能に陥る可能性を示す兆候が見られる状況下で、バイデン氏は米国として同盟国を守ると明言し、対立するイランなどに対し紛争に関与しないよう明確なメッセージを送った。2隻目の米空母が東地中海に向かう中、バイデン氏はイスラエルに対する「前例のない支援」を週内に議会に求めると表明した。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻の準備を進めているが、バイデン大統領はガザの人道危機深刻化への懸念緩和に努めた。しかし援助物資を積んだトラックはなおガザ地区に入れないでいる。イスラエル当局者は物資がハマスの手に渡らないと確信できない限り搬入を認めないと述べた。
17日のガザ市での病院の爆発の後、ガザの当局者はイスラエルの空爆によるものだと主張。一方、イスラエル軍はパレスチナの過激派武装組織「イスラム聖戦」が誤射したと反論した。ガザ当局者に同調したアラブ諸国の指導者らは18日にヨルダンで予定されていたバイデン大統領との首脳会談をキャンセル。イスラエルの地上侵攻への黙認を取り付けようとするバイデン氏の課題に狂いが生じた。
米ジョンズ・ホプキンズ大学のサラ・パーキンソン教授(政治学・国際学)は「今回のバイデン氏の訪問はイスラエル政府を無条件かつ全面的に支持するものと受け止められた」とした上で、「それがこの地域の関係を急速に損なっている」と指摘した。
バイデン氏がガザの病院爆発に対するイスラエルの説明を受け入れたことだけでなく、その受け入れ方もアラブ諸国の反発を呼ぶ公算が大きい。バイデン氏はネタニヤフ首相との会談で、病院爆発は「あなた方ではなく、他のチームがやったようだ」と発言したことで、一段とイスラエル寄りの姿勢を強めた。
パーキンソン氏は「この地域の多くの人には、この発言は事実に基づいたものではなく、政治的な決断のように映る。米国の同盟国の多くは極めて困難な立場に追い込まれている」と分析した。
バイデン氏は米国防総省の情報を確認してからイスラエルの主張を支持すると決めたと語った。事情に詳しい関係者によると、病院の衛星画像とハマスのやり取りの傍受から得たこの情報はイスラエルに向かう機内でバイデン氏に伝えられた。ホワイトハウスはその後、爆発に関与していないというイスラエルの主張を情報分析により確認したと発表した。
米国務省で中東交渉の担当者を務めたアーロン・デービッド・ミラー氏は「イスラエル国民がトラウマを抱えリーダーシップと希望を求めている時に、バイデン氏がそれを与えた」とソーシャルメディアで指摘した。
米国がアラブの指導者の同意を取り付けることは、病院での爆発が起こる以前からでさえ難しい仕事だった。
ワシントンのシンクタンク、大西洋評議会の中東専門家ジョナサン・パニコフ氏は「この地域のアラブの指導者たちは自国の安全保障を第一に懸念しており、極めて強い反イスラエルの世論と矛盾するようなことはしたくないだろう」と語った。
イスラエル当局者がハマスを壊滅する計画を引き続き推し進めると述べる一方で、イランと親イラン民兵組織ヒズボラはもしそうなればイスラエルを北から攻撃すると警告しており、紛争が拡大するリスクは高まっている。
ただ、マクロン仏大統領とスナク英首相は数日中にイスラエルを訪問する公算が大きく、ガザへの地上侵攻の前にもう少し時間を稼げる可能性がある。
中国の習近平国家主席は19日、イスラエルとイスラム組織ハマスの即時停戦を呼び掛けた。10月初旬の紛争勃発以来、同氏がこれについて公に発言するのは初めて。
中国を訪問のエジプトのマドブリ首相に対し、習氏は「パレスチナ問題の包括的で公正、かつ永続的な解決を可能な限り早期に推し進めるため」、中国はエジプトや他のアラブ諸国との連携強化に前向きだと述べた。中国外務省が発言内容を明らかにした。
「紛争が拡大あるいは制御不能に陥り、深刻な人道危機が生じるのを回避するため、できる限り早期の停戦実現が不可欠だ」と習氏は付け加えた。根本的な解決策は「2国家解決」の構想を実行に移し、独立したパレスチナ国家を樹立することだと、中国が長年維持するスタンスを改めて表明した。
イスラエル軍は領内に向けて20発のミサイルが発射されたとして、レバノン内の発射源を砲撃していると発表した。レバノンから対戦車ミサイルも発射され、銃撃もあったが、負傷者はいないという。
レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラは、イスラエルの標的に向けて誘導ミサイルを発射したと、同組織のアルマナルTVが報じた。レバノン国営NNAによれば、イスラエル軍は国境近くの村落を砲撃した。

<10月19日朝まで>
パレスチナ当局は18日、イスラエル軍がヨルダン川西岸のラマラ近郊で10代のパレスチナ人2人を射殺したと発表した。これにより、ヨルダン川西岸地区でのイスラエルとパレスチナ間の衝突によるパレスチナ側の死者は少なくとも64人となった。
パレスチナ自治政府保健省の声明によると、イスラエル軍はラマラ近郊のシュクバ村で15歳と17歳の少年2人を射殺した。これ以上の詳細は明らかにしていないが、住民によると2人はイスラエルに抗議してタイヤに火をつけようとしていたという。
国連安全保障理事会は18日、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突を巡り、パレスチナ自治区ガザへの援助提供を可能にするため、紛争の人道的な一時停止を求めるブラジルの決議案を否決した。米国が拒否権を行使した。
安保理は当初、ブラジル案の採決を16日に実施する予定だったが、交渉の時間をさらに確保するため24時間延期された。その後、米国がさらに延期を求め、採決はここ数日で2回延期されていた。 もっと見る
18日の採決では12カ国が賛成票を投じた一方、ロシアと英国は棄権した。
米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は採決後、「われわれは現地で懸命な外交活動を行っている」とした上で、「決議は重要だ。そして、この安保理は声を上げなければならない。しかし、われわれが取る行動は現地の事実に基づいたものでなければならず、直接的な外交努力を支援するものでなければならない。それが人命救助につながる。安保理はこれを正しく理解する必要がある」と述べた
また、決議案がイスラエルの自衛権に言及していないことに米国は失望しており、ガザの人道危機はハマスに責任があると非難した。
「われわれはイスラエル、近隣諸国、国連、その他パートナーと共にガザの人道危機に対処している。食料、医薬品、水、燃料を一刻も早くガザに流入させることが重要だ」と主張。「ハマス自体の行動がこの深刻な人道危機を招いた」と訴えた。
米政府は伝統的に安保理のいかなる行動からも同盟国であるイスラエルを守ってきた。
ロシアのネベンジャ国連大使は「われわれは再び米国の同僚の偽善とダブルスタンダード(二重基準)の目撃者となった」と述べた。ロシア案は16日に否決された。 
国連のグテレス事務総長は18日、人質解放とガザへの支援物資提供を可能にするため、人道的な一時停戦の即時締結を求めた。
ロシアは、国連緊急特別総会を招集するよう要請したと明らかにした。どの国も拒否権を持たない総会決議に拘束力はないが、政治的な重要性を持つ。
国連で中東和平を担当するウェネスランド特使は18日、紛争が拡大するリスクは「非常に現実的で、極めて危険」と警告した。 
中国の張軍国連大使は、米国は交渉中に反対を表明しておらず、決議案が採択されると安保理メンバーに信じ込ませたと非難。今回の採決結果を「信じられないというほかない」と表現した。
イスラエル首相府は18日、パレスチナ自治区ガザへのエジプトからの支援は阻止しないが、イスラム組織ハマスに支援が届くことは容認しない方針を示した。イスラエル側からの人道的物資の提供も行わない。
声明で「バイデン米大統領の要請を踏まえ、イスラエルは支援がガザ地区南部に住む市民に対する食料、水、医薬品である限り、エジプトからの人道的物資を阻止することはない」と表明。イスラエルはバイデン米大統領の要請を受けてこの決定を下したが、「イスラエルは人質が返還されない限り、イスラエル領土からのガザ地区へのいかなる人道支援も認めない」とした。
支援物資は18日までに、シナイ半島北部のエジプトの町アルアリシュから、ガザ南部とエジプトを結ぶラファ検問所近くに到着した。しかし物資を届ける合意がないためトラックがガザに入ることはできず、国境で滞留している。
エジプトによると、ラファ検問所は公式には閉鎖されていないが、イスラエルによるガザ空爆のため利用不可能になっている。
イスラエル軍は18日、レバノンとの国境に近いイスラエル北部のキリヤット・シュモナなどでロケット弾の飛来を告げる警報が鳴り響いたと発表した。
一方、サウジアラビアの在ベイルート大使館は18日、短文投稿サイトのX(旧ツイッター)で、レバノン在住のサウジ国民に対し直ちにレバノンから出国するよう勧告したと発表した。
米国家安全保障会議(NSC)のエイドリアン・ワトソン報道官は18日、現在入手可能なデータを米国が分析した結果、17日に起きたパレスチナ自治区ガザの病院での爆発について「イスラエルには責任がない」ことが示されたと発表した。
短文投稿サイトのX(旧ツイッター)で、今回の判断は上空からの画像や傍受した情報、公開された情報の分析に基づいていると指摘。米国は引き続き情報を収集しているとした。
英外務省は18日、自国民に対し、レバノンへの全ての渡航を控えるよう勧告した。レバノンに滞在している自国民に対しても、「民間機の運航があるうちに」即時出国するよう促した。
同国南部のイスラエルとの国境付近で軍事衝突が続いているほか、イスラエルとパレスチナとの緊張感が高まっているためとした。
数百人が死亡したパレスチナ自治区ガザの病院に対する攻撃を受け、中東各地で反イスラエル抗議活動が拡大している。一部は暴徒化し、治安当局との衝突による死者も出た。
パレスチナ当局は18日、イスラエル軍がヨルダン川西岸のラマラ近郊で10代のパレスチナ人2人を射殺したと発表した。住民によると2人はイスラエルに抗議してタイヤに火をつけようとしていたという。 もっと見る
レバノンでは、ベイルート北部の米大使館付近での抗議行動がエスカレートし、治安部隊が催涙ガスと放水銃で鎮圧に乗り出した。
イランでは、全土で政府主催のデモ行進が行われ、デモ隊は「アメリカに死を」「イスラエルに死を」と書かれた横断幕を掲げて行進した。イランはパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの後ろ盾であり、イスラエルと長年にわたり対立関係にある。
イラクでは、イランが支援するシーア派民兵グループの支持者約300人が、バグダッド中心部の旧米軍管理区域(グリーンゾーン)に通じる橋の近くで抗議活動を行った。
ヨルダンの首都アンマンでは、数千人がイスラエル大使館へのデモ行進を計画していたが、機動隊が押し返した。警察によると、デモ隊はイスラエル大使館付近の敷地に放火。この衝突で警官数人が負傷した。
イエメンでは、首都サヌアで数千人がデモ行進した。フーシ派の幹部はイスラエルの嘘と憎悪を非難し、戦意をむき出しにした。
デモは中東地域だけに収まらず、米首都ワシントンでもユダヤ系の平和活動団体がバイデン政権と連邦議会に対し停戦を求めて声を上げた。
200人ほどのデモ参加者の多くは「平和へのユダヤ人の声(Jewish Voice for Peace)」という団体のメンバー。「全世界が注視している」と即時停戦を訴えた。
中東情勢の悪化を受け、各国は国民に対し警戒を呼び掛けている。
サウジアラビアは自国民に対し、レバノンからの退避を勧告。レバノン南部国境付近で武装組織ヒズボラがイスラエル軍と銃撃戦を繰り広げている状況を理由に挙げた。
フランス外務省も、自国民にレバノンへの渡航を控えるよう勧告していると述べた。
このほか、欧州各地で治安への懸念が高まっている。イタリアは、特に混雑した場所での監視や、攻撃の標的になりそうな場所の警備を強化した。
バイデン米大統領は18日、エジプトのシシ大統領が、パレスチナ自治区ガザとエジプトを結ぶラファ検問所を開通させることに合意したと発表した。人道支援物資を運ぶトラック約20台を受け入れるという。
バイデン氏はシシ氏の友好的な対応に謝意を表明した。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官によると、近日中にトラックはガザ入りするものの、まずは道路の補修が必要だという。
エジプト大統領府も18日、ガザ地区への人道支援物資の搬入を加速させる方法について、シシ氏とバイデン氏が電話会談したと発表した。
欧州連合(EU)欧州委員会のブルトン委員(域内市場担当)は18日、ソーシャルメディア(SNS)運営各社に対し、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが処刑映像をライブ配信するリスクに備えるよう要請したと明らかにした。
欧州議会の演説で、そのような「差し迫った」リスクから市民をを守る必要があり、SNS側に十分な準備があることを確かめていると語った。
一方、米メタ(META.O)は同日、傘下のフェイスブック上でイスラエルとハマスの紛争に関する不快感を与え得るコメントを一時的に制限する方針を発表。「当該地域」のユーザーによる投稿にコメントできる人の初期設定を友人やフォロワーのみに変更するとした。
当該地域がどこを指すかについて広報担当者は詳しい説明を控えた。利用者は設定をいつでも変更できるという。
メタはまた、同社が意図的に発言を抑制しているという指摘は正しくないと説明した。
パレスチナやガザの市民を支持する投稿をした利用者の一部は今週、メタによるコンテンツ抑制があったと主張していた。メタはハマスを「危険な組織」に指定し、ハマスを称賛するコンテンツを禁止している。
エルサレム:イスラエル軍は水曜日、ガザ市の病院で数百人が死亡した爆発事件への関与を否定し、爆発はパレスチナのロケット弾の誤射によるものだと述べた。
「われわれの手元にある複数の情報源からの情報によれば、ロケット弾発射の失敗はイスラム聖戦の仕業だ」とイスラエル軍は先に述べた。
軍報道官は記者団に対し、アル・アハリ・アル・アラビ病院周辺の建物には構造的な被害はなく、空爆と一致するクレーターもなかったと述べた。
同報道官は、ハマスが爆発による死傷者数を誇張していると非難し、爆発の原因が何であったかはすぐにわからないと述べた。
ガザを支配するパレスチナの過激派組織ハマスは、この爆発はイスラエルによるものだと非難した。
イスラエル軍は以前、ガザから発射された約450発のロケット弾は、この11日前不発に終わり、ガザ内に着弾したと主張していた。
しかしイスラム聖戦は、アル・アハリ病院での大爆発の背後に自分たちがいるというイスラエルの主張を否定した。イスラム聖戦は、イスラエルが行った残忍な大虐殺の責任を逃れようと必死になっていると非難した。
イスラム聖戦は、「敵が宣伝している非難は根拠がない」とし、「礼拝所や公共施設、特に病院を軍事拠点や武器庫として使用することはない」と付け加えた。
同団体は、「爆弾の落下角度や破壊の程度」などの詳細から、イスラエルの攻撃と類似していることが確認されたと述べた。
イスラム聖戦は、より小規模で過激なパレスチナの過激派組織であり、イスラエルとの闘いを共有するハマスとしばしば協力している。
ガザ:イスラエル軍の空爆により、患者や避難民でごった返していたガザ市の病院で、約500人のパレスチナ人が死亡したと、ガザの保健当局が発表した。
この空爆は、イスラエルが10月7日にハマスによるイスラエル南部のコミュニティへの国境を越えた致命的な攻撃への報復として、この人口密集地に対する容赦ない爆撃作戦を開始して以来、ガザで起きた単一の事件としては最も血なまぐさいものであった。
これは、ガザ地区を支配するハマスとの戦いにおいてイスラエルへの支援を示すため、ジョー・バイデン米大統領がイスラエルを訪問する前夜に行われた。
アラブ諸国、イラン、トルコはこの攻撃を速やかに非難した。パレスチナの首相は「恐ろしい犯罪、大量虐殺」と呼び、イスラエルを支援する国々にも責任があると述べた。
ガザ保健省の情報筋がロイターに語ったところによると、アル・アハリ・アル・アラビ病院への空爆で約500人のパレスチナ人が死亡したという。
ハマスによれば、この空爆のほとんどは、イスラエルの砲撃によって家を失った人々を殺害したもので、死者の中には患者や女性、子供も含まれているという。
ハマス幹部のイザット・エル・レシク氏は、「バラバラにされ、押しつぶされた死体が多数あり、血のバスタブとなっている」と語った。
ロイターが入手したビデオには、アル・アハリ・アル・アラビ病院で負傷した人々を乗せた数台の救急車がガザの別の病院に到着する様子が映っていた。一人の男性は、頭から大量に出血し、よろめきながら歩いていた。男の子が担架で運ばれていた。
イスラエル軍は、報告された爆撃についての詳細は不明だが、確認中であると述べた。イスラエル軍は以前、ハマスがパレスチナの市民を人間の盾として使っていると非難したことがある。
ワシントンの国防総省は、病院が攻撃されたという報道は知っているが、詳細はわからないと述べた。国防総省は、これまでイスラエルにC-17戦闘機5機を派遣しているが、援助に前提条件はないと繰り返し、「イスラエルのようなすべての民主主義国家が戦争法を守ることを期待している」と付け加えた。
火曜日、国連パレスチナ難民救済機関UNRWAは、イスラエルの空爆により、避難民のためのシェルターとして機能している学校のひとつで、少なくとも6人が死亡したと発表した。
「これは言語道断であり、またしても民間人の命を著しく軽視している」とUNRWAはソーシャルメディアに投稿した。「ガザにはもう安全な場所はない。国連施設でさえもだ」
ガザの保健当局によれば、10月7日にハマスの過激派がイスラエルの町やキブツで暴れまわり、民間人を中心に1300人以上が死亡して以来、イスラエルによる11日間の砲撃で少なくとも3000人が死亡したという。
イスラエルは、空爆によって都市化が進んだガザの一部を破壊し、人口230万人の約半数を家から追い出し、ガザを全面封鎖して食料、燃料、医療物資の供給を停止した。
死と破壊の中、イスラエル軍と戦車が地上侵攻に備えて国境に集結し、飛び地の人道危機は悪化した。
ガザへの重要な物資を積んだ数多くのトラックは、火曜日にエジプトのラファ交差点に向かった。
リヤド:サウジアラビアは火曜日、数百人が死亡したガザの病院に対するイスラエルの空爆に対する世界的な非難の先頭に立った。
サウジアラビア王国は火曜日、患者や避難民でごった返すガザ市の病院で約500人のパレスチナ人が死亡したイスラエル軍の空爆を「最も強い言葉」で非難した。
「サウジアラビアは、この残忍な攻撃を断固として拒否する。これは、国際人道法を含むすべての国際法と規範に対する明白な違反である」と外務省は述べた。 
同省はまた、イスラエルが「多くの国際的な訴えにもかかわらず、民間人に対する攻撃を続けている」と非難した。
「この危険な事態は、国際社会に対し、イスラエルの犯罪行為に対する国際人道法の適用における二重基準や選択性を放棄することを迫るものである。無防備な民間人を保護するため、真剣かつ毅然とした態度が必要だ」と同省の声明は述べている。 
同国はまた、ガザに閉じ込められている市民に食料や医薬品を届けるため、安全な通路を直ちに開く必要性を強調し、イスラエル軍があらゆる国際規範と法律に違反し続けていることに全責任を負うと述べた。
以下は、この残忍な攻撃に対するその他の世界的な反応である:
エジプトのアブドゥルファターハ・エルシーシ大統領は火曜日に声明を発表し、次のように述べた: 「イスラエルによるガザの病院への砲撃を最も強い言葉で非難する」
パレスチナ保健当局は、ガザの病院での死者はイスラエル軍の空爆によるものだと発表したが、イスラエル軍はパレスチナ過激派組織によるロケット弾発射の失敗だと非難した。
エマニュエル・マクロン仏大統領は火曜日、ガザの病院への致命的な攻撃の後、「市民を標的にすることを正当化することはできない」と述べ、沿岸部への人道的アクセスを「遅滞なく」求めた。
「病院への攻撃を正当化することはできない。市民を標的にすることを正当化することはできない。フランスは、多くのパレスチナ人犠牲者を出したガザのアル・アハリ・アラビ病院への攻撃を非難する。私たちは彼らと共にある」とXに書いた。
「ガザ地区への人道的アクセスを遅滞なく開放しなければならない」
アントニオ・グテーレス国連事務総長は火曜日、ガザの病院への致命的な攻撃に「ぞっとする」とソーシャルメディアに投稿した。
「私の心は犠牲者の家族とともにある。病院と医療従事者は国際人道法の下で保護されている」とグテーレス氏はXのメッセージで述べた。
UAEは外務省の声明で、イスラエルの攻撃を強く非難し、「人命の損失に深い遺憾の意を表明するとともに、犠牲者の家族に哀悼の意を伝え、負傷者全員の早期回復を願う」と述べた。
また、「敵対行為の即時停止と、民間人や民間機関が標的とされないようにする必要性」を強調した。 
UAEは国際社会に対し、これ以上の人命の損失を防ぐため、即時停戦に向けた努力を強化するよう求めた。
クウェートは火曜日、「イスラエル占領軍がガザ地区のバプテスト・アル・アハリ病院を空爆し、罪のない市民数百人が死亡したことを強く非難し、糾弾する」と国営通信が伝えた。
「病院や公共施設に対する占領軍の攻撃は、国際人道法違反である」と外務省は声明を発表した。
イスラム協力機構もこの攻撃を非難した。
OICのチーフであるヒセイン・タハ氏は、この攻撃を「戦争犯罪」であり「人道に対する罪」であるとみなしたと、OICはXに発表した。
タハ氏は、イスラエル占領軍のパレスチナ人に対する犯罪、テロ行為、残忍な攻撃は、あらゆる人間的価値観に反するものであり、国際人道法の明白な違反であるとして、その責任を追及した。
ムスリム世界連盟は、この攻撃を「最も強い言葉で」非難した。
MWL代表のシェイク・アブドゥルカリム・アル=イッサ氏は声明で、この「すべての宗教的、人間的価値観を加害者から奪う残忍な犯罪」を非難し、国際社会に対し、このような恐ろしい虐殺から市民を守る責任を負うよう呼びかけた。 
カタール外務省も声明を発表し、イスラエルによる空爆を強く非難した。
ヨルダン外務省は火曜日、イスラエルの攻撃を強く非難する声明を発表した。 アブドッラー国王は、イスラエルによるガザ病院への爆撃は「虐殺」であり、黙っていられない「戦争犯罪」であると述べた。 
一方、トルコ外務省は、イスラエルによるガザの病院への「野蛮な攻撃」を最も強い言葉で非難した。
「今日、ガザの病院が標的とされた結果、何百人ものパレスチナ人が命を落とし、さらに多くの負傷者が出たことに深い憤りを感じており、この野蛮な攻撃を最も強い言葉で非難する」とトルコの声明は述べた。
EUのシャルル・ミッシェル委員長は、病院への致命的な攻撃の後、ガザの民間インフラを標的にすることは国際法に反すると述べた。
「EU首脳とのバーチャルな会合で、我々はこの情報を得た。民間インフラに対する攻撃は、国際法に沿っていない」
カナダのジャスティン・トルドー首相は、イスラエルによるガザの病院への攻撃は「恐ろしいものであり、絶対に容認できない」と述べた。
トルドー首相は記者団に対し、「病院を攻撃することは容認できない」と述べた。
世界保健機関(WHO)は、火曜日の致命的な攻撃を非難し、パレスチナの飛び地における市民と医療の即時保護を要求した。
「WHOはアル・アハリ・アラブ病院への攻撃を強く非難する」と国連保健機関のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長はソーシャルメディアX(旧ツイッター)で述べた。
ハマスが支配するパレスチナ自治区の保健省は、避難民を保護する病院施設へのイスラエル軍の空爆で200人以上が死亡したと述べた。
「初期の報告では、数百人の死傷者が出ている。
「我々は、市民と医療を直ちに保護し、避難命令を撤回するよう求める」と述べた。
イラン外務省はイスラエルの空爆を強く非難し、「非武装で無防備な人々」数百人が死傷したと述べた。
ロンドン:9月29日金曜日、エルサレムでイスラエルとパレスチナの関係を専門とするイスラエル人弁護士ダニエル・シーデマン氏は、アラブ・ニュースの調査研究部門から依頼されていた研究論文の仕上げを行った。
題材は、ユダヤ教徒とキリスト教徒には神殿の山として知られるハラーム・アル・シャリフにあるアル・アクサ・モスクである。
少なくとも、それが1967年以来、この場所で支配されている現状である。
しかし、2国家間解決に合致したエルサレム問題の解決策を見出すことに重点を置く非政府組織「Terrestrial Jerusalem」の創設者であるシーデマン氏は、ここ数カ月で、過去56年間エルサレムで維持されてきた微妙なバランスが引き裂かれる危機に瀕していることを認識し、懸念するようになっていた。
そして、それを回避するために、彼は「指導者と一般市民の双方に、関連する事実を知ってもらう」ことに躍起になっていた。
それからちょうど1週間後、10月7日土曜日の朝、シーデマン氏はパレスチナの過激派組織ハマスがガザからイスラエルへの壊滅的な攻撃を開始したというニュースで目を覚ました。
そのニュースに耳を傾けていた彼は、ハマスの司令官であるモハメド・デイフがこの攻撃を「アル・アクサ洪水作戦」と表現し、イスラエルによるアル・アクサ・モスクの「冒涜」に対する報復として開始されたと主張したのを聞いても、何の驚きも感じなかった。
この攻撃の動機がモスクでの昨今の出来事だけであったかどうかはともかく、ハマスが以前から、モスクで長く続いてきた現状がますます頻繁に破られるようになっていることについて警告を発していたのは確かだが、シーデマン氏にはひとつだけ確かなことがあった。
「アル・アクサが一因であることは間違いない。常にアル・アクサに起因し、エルサレムは常に最終的な落ち着きを求めている」
「私たちは、イスラエル国民とアラブ世界の双方に、これらの相反する物語の共存を可能にするエルサレムの概念に慣れ親しんでもらわなければならない。それはユートピアではないが、エルサレムはそれが実現可能なはずだ」
「そして、これが実現しようがしまいが、私たちは常にアル・アクサの問題を扱うことになる」
9月27日、新たにサウジアラビアの駐パレスチナ大使に任命されたナイフ・アル・スダイリ氏が、パレスチナ人の懸念に配慮し、予定されていたアル・アクサ・モスクへの訪問を延期することに同意したと報じられた。
この懸念は、同モスクにおけるイスラエルの警備態勢の強化に関連していると考えられており、同モスクにユダヤ教寺院を建設することを最終目的とするユダヤ教過激派による一連の挑発的な訪問を助長している。
過激派はイスラエル内閣の多くの支持を得ている。10月3日、イスラエルの右派国家安全保障大臣イタマル・ベン・グビールは、クネセトと国家安全保障内閣に対し、”神殿の丘を24時間365日ユダヤ人に開放する “ことを緊急に検討するよう求めた。
その日、イスラエルの入植者運動のメンバー500人が敷地内に入った。翌日、ユダヤ教の祝日であるスッコトの5日目には、1000人以上が強引に敷地内に侵入し、ここ数カ月で頻繁に見られるようになったパフォーマンスを繰り返した。
1924年以来、ヨルダンが任命したエルサレム・ワクフとアル・アクサ・モスク事務局の後援によって、この場所の管理者として世界的に認められているヨルダンが、イスラエル政府への非難を表明した。
ヨルダン外務省は、アンマンのイスラエル大使館に宛てた抗議文の中で、「強硬派、入植者、クネセトのメンバーによる、警察の保護の下での聖なるアル=アクサ・モスクへの侵入」、「モスクへの礼拝者の立ち入りの制限、イスラム教の冒涜、占領下のエルサレムで増加しているキリスト教徒への攻撃」を非難した。
シーデマン氏は、アル・アクサへの侵入の背後にあるイデオロギー的思考は、”当初は小さな、おそらくは狂気のフリンジであったものが、今では主流となっている “と述べた。
閣僚を含むイデオロギー右派の国民宗教党は、イスラエルを古代の聖書の歴史の続きとみなしている。彼らにとって、イスラエルは第一神殿、第二神殿に続く “第三のユダヤ連邦 “なのだ。
第一神殿とはソロモン神殿のことで、ユダヤ人は紀元前10世紀から6世紀まで神殿の丘の場所に存在したと信じているが、紀元前587年にバビロニアのネブカドネザル2世によって破壊された。それに代わる “第二神殿 “は、紀元70年にローマ軍によって破壊された。
「宗教右派の認識では、1967年以降イスラエルが犯した最大の失策は、(当時のイスラエル国防相であった)モシェ・ダヤンが神殿の丘のイスラエル国旗を撤去し、ワクフに鍵を渡したことである」とシーデマン氏は言う。
1967年の6日間戦争に勝利したイスラエルは、ハラム・アル・シャリフを含む東エルサレムを占領し、それ以来それを保持している。
1967年6月7日、イスラエル軍の空挺部隊がハラムを襲撃した直後、司令官のモッタ・ガー大佐は司令部に無線でメッセージを送った。
このメッセージは、それ以来、イスラエルの右派の間で物議を醸している。
ダヤン国防相が双眼鏡でその様子を見ていたとき、なんと空挺部隊の一人が岩のドームの頂上に登り、イスラエル国旗を掲げたのを目撃したというのだ。
ダヤン氏は、この粗雑な象徴がイスラム世界にどのように広まるかを憂慮し、国旗を直ちに降ろすよう命じた。その後、イスラエルの勝利の瞬間、西の壁のそばに立ったダヤン氏は、驚くべき融和的な発言をした。
「アラブの隣人には、特にこの時、平和の手を差し伸べます。他の宗教、キリスト教徒とイスラム教徒に対しては、彼らの完全な自由とすべての宗教的権利が守られることを、ここに誠実に約束します」
「我々は、他者の聖地を征服するためにエルサレムに来たのではない」。
門の鍵と、アル・アクサ礼拝堂の取り締まりと管理の責任は、ワクフに返還された。
その後数十年にわたり、ユダヤ人は特定の日にムグラビ門から敷地内に入ることが許された。ムグラビ門は、非イスラム教徒が遊歩道に入れる唯一の入り口だった。
2003年以降、イスラエル政府が一方的に新しい取り決めを課し、ワクフをますます疎外するようになった。
現在、その場所を訪れることができるかできないかを決めるのはイスラエル警察である。
「彼らは、ダヤン氏の決定を覆すことがこの政府の存在意義だと信じている。これは今や主流となった」
現首相のベンヤミン・ネタニヤフは2015年、ジョン・ケリー米国務長官に促されて、「イスラエルは長年の取り決めを継続し続ける」と表明したにもかかわらず、イスラエル内閣の多くが、人々にとって信仰の対象となっているその場所に訪れる。
当時、PLOのサエブ・エレカト事務総長はネタニヤフ首相の保証を拒否した。
「2000年以前は、訪問者はワクフ部門の従業員の警備のもとハラム・アル・シャリフに入り、非イスラム教徒はそこで祈ることが許されていなかった」
「しかし現在、イスラエルは規制を変更し、訪問者はイスラエル当局の許可を得て、イスラエル警察の保護の下で礼拝を行うようになった」
それ以来、挑発行為はエスカレートしている。今年1月、イスラエルの極右国家安全保障相ベン・グビールがアル・アクサ礼拝堂を訪問したことは、イスラエルの新聞『ハーレツ』によって「無責任な挑発行為のひとつに過ぎない」と評された。
シーデマン氏によれば、それは「凱旋訪問であり、誰がボスかを見せつけるもの」だった。
ベン・グビール氏のような政治家に後押しされ、入植者グループ、国民宗教党のメンバーは、アル・アクサにますます押し寄せている。
昨年5月、1967年の勝利を祝う何千人もの若い極右宗教イスラエル人が、『アラブ人に死を』と叫びながらイスラム教徒居住区を行進した。 「あれはひどかった。あれはエルサレムで記憶に残る最悪の日だったと思います」とシーデマン氏は語った。
行進に先立ち、数百人の超国家主義者がアル・アクサの敷地内に入った。
「彼らは他のいろいろなルートで行くこともできたのに、あえてイスラム教徒の居住区を通った: ここは俺たちの場所だ、俺たちが家主だ、お前たちは借家人だ」と。
そして、宗教的不寛容の新たな波にさらされているのはイスラム教徒だけではないと彼は言う。
「ここ数カ月、キリスト教徒に対するヘイトクライムも深刻に急増しており、これは政府の一部の人間に触発されたものだと私は考えています。一方、エルサレム市長はこれを非難しておらず、市議会もこれを非難していない」。
過激派はまた、キリスト教信仰の中心地であるオリーブ山に国立公園を建設するよう迫っている。
「アル・アクサで起こっていることの鏡像ですキリスト教の聖地が入植者によってキリスト教とユダヤ教の共有の聖地に変えられようとしているのです」
エルサレムの現状を破壊しようとしている政治家たちは、「必ずしも本質的に人種差別主義者なのではない」とシーデマン氏は考えている。
「イスラム教徒であれ、アラブ人であれ、あるいはキリスト教徒であれ、他者の公平性に共感し、敬意を払って発言することは選挙に不利であり、支持層の票を失うことを理解しているのです」
「個人的には、私は彼らが人種差別主義者であることを望みます」
「1967年、イスラエルはエルサレムを併合した。ネタニヤフ首相までのイスラエルの首相はみな、「特に宗教的な場所については、この問題を無理強いするのはやめようと言ってきた。我々は、キリスト教とイスラム教における最も重要な場所の管理者でもある」
シーデマン氏は、過激な宗教団体や政治家に支配されつつあるイスラエルが、道を見失う危険性を危惧している。
「占領は私たちがすることではありません。占領はわれわれが誰になってしまったかということであり、イスラエル社会の道徳的基盤を蝕んでいるのです」
アル・アクサは、イスラエル人とパレスチナ人、ユダヤ教徒とイスラム教徒の対立の真髄の場になりつつある。それは私たちの魂を高揚させるものでなくてはならず、非常に神聖な場所を汚している」
9月6日、イスラエルの諜報機関モサドの元トップであるタミール・パルド氏は、AP通信の取材に対し、イスラエルはヨルダン川西岸でアパルトヘイト(人種隔離政策)を実施していると語った。「戦争が始まる前もそう言っていたが、今もそう言うだろう。
彼は、「イスラエルにとってこの世代で唯一存在する脅威がある」と言った。それはイランの核の脅威ではない。ヒズボラの10万発のロケット弾でもない。
しかし、イスラエルは永続的な占領国として生き残ることはできない。イスラエルは占領を終わらせる必要がある。
パレスチナ自治区、ナブルス:パレスチナのデモ隊は18日、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区で街頭に立ち、戦争の渦中にあるガザの病院が攻撃され、数百人が死亡したことに対してイスラエルを非難した。
イスラエルはこの非難を否定し、病院の爆発は「イスラム聖戦」によるロケット弾の誤爆だと述べた。
ナブルスの数百人の抗議者たちは、その多くがパレスチナ国旗をまとい、中にはハマスの横断幕を掲げる者もいた。彼らはイスラエルとその同盟国である米国に対するスローガンを唱えた。
「自由を、パレスチナに自由を」と彼らは唱えた。
また、ハマスのライバルであり、イスラエルとの協力関係をめぐってパレスチナ人から批判されている「ファタハ」を率いるマフムード・アッバース大統領を嘲笑する者もいた。
「倒せ、アッバースを倒せ」と彼らは叫んだ。
AFPのナブルス特派員によると、パレスチナの治安部隊は、市内中心部から行進するデモ隊に催涙ガスを発射した。
「私はこの領土の人々を、自分の街を、ガザとガザの人々を大切に思っている。だから私は、おそらく何年も声を上げなかった私が、今こうして声を上げている」と、ナブルス在住のフェリアルさん(50)はファーストネームのみを条件に語った。
パレスチナ自治政府の所在地であるラマッラーでも同規模の抗議デモが行われた。群衆はハマスの支持と、イスラエルとの「安全保障上の協調」反対を唱和した。
デモの最中、顔を覆ったパレスチナ人の小グループが道路を封鎖し、イスラエル兵グループの近くでタイヤに火をつけた。石を投げる者もいれば、火炎瓶を作る者もいた。
病院の爆発の少し後、17日に発生したラマッラーでのデモでは、パレスチナの治安部隊がデモ隊と衝突した。
ハマスが運営するガザの保健当局は、この爆発で少なくとも471人が死亡し、その原因はイスラエルの空爆によるものだと発表した。
しかし、イスラエル軍はイスラム聖戦のロケット弾が誤射したという証拠があると述べ、パレスチナ武装勢力を非難した。
13日朝、テルアビブに降り立ったジョー・バイデン米大統領は、イスラエルの空爆に関する説明を支持し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に「まるで他のチームによって行われたように見える」と語った。
米国が仲介した2020年のアブラハム合意に基づいてイスラエルとの関係を樹立したアラブ首長国連邦とバーレーンは、爆発は「イスラエル」の攻撃と呼んで非難した。
また、2020年にイスラエルを承認した国であるモロッコ、そして1979年にアラブ諸国として初めてイスラエルと国交を正常化したエジプトも、今回の攻撃を非難した。
イスラエルは、10月7日にハマスが仕掛けた国境を越えた衝撃的な攻撃で1400人を射殺、刺殺、焼死させた報復として、12日間にわたってガザへの激しい砲撃を続けている。
保健当局によると、イスラエルによる砲撃が始まって以来、ガザでは少なくとも3478人が死亡している。
ドバイ:イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は18日、イスラム協力機構(OIC)加盟国はイスラエルに対して石油禁輸とその他の制裁を科し、イスラエルの全大使を追放すべきであると発言した。
OICの緊急会合がサウジアラビアのジェッダで開催され、17日深夜にガザの病院で爆発が起こり、多数のパレスチナ人が死亡したことを受けて、激化するイスラエルとパレスチナの衝突について話し合われた。
イラン外務省は声明で、「外相は、シオニスト政権との関係が構築された場合、イスラエル大使らの追放に加えて、石油制裁を含むイスラム諸国によるイスラエルへの即時かつ完全な禁輸措置を求めている」と述べた。
アミラブドラヒアン外相はまた、イスラエルがガザで犯したとみられる戦争犯罪を記録するために、イスラム弁護士チームの結成を呼びかけた。
イランはイスラエルと国交がない。
17日にガザの病院で爆発が起こる前、ガザの保健当局は、ハマスが10月7日にイスラエル南部地域を攻撃し、1,300人が死亡、約200人が人質としてガザに連行された後に始まったイスラエルの11日間に及ぶ空爆で、少なくとも3,000人が死亡したと発表した。
カイロ:エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は18日、パレスチナ人の強制退避は実施できないとし、イスラエルは「過激派への対応がなされるまで」、パレスチナ人をシナイ半島ではなく、イスラエルのネゲヴ砂漠に移動させてやることもできると述べた。
エルシーシ大統領は18日、「ガザ地区のパレスチナ人をエジプトへ強制移住させること」の危険性について警告し、そうすれば「パレスチナ人のヨルダン川西岸地区からヨルダンへの強制移住」の前例を作ってしまうことになると述べた。
ガザ地区から大量の移民をエジプトのシナイ半島へ移住させるという要求を拒否している同大統領は、そうすれば「パレスチナ国家」の樹立という目標が「根絶される」と語った。
「いざとなればエジプト国民に対し、この提案を拒否する声を上げるよう呼びかけることもできます。そうすれば何百万人ものエジプト国民が、街頭に出て反対運動を行うことでしょう」と、エルシーシ大統領は記者団に述べた。
同大統領は、もしイスラエルがパレスチナ人をどこかに退避させる必要があるのであれば、「イスラエルにはネゲヴ砂漠があるのですから、パレスチナ武装勢力に対して行うと宣言した任務が完了するまで、彼らをそこに避難させればよいでしょう。エジプトに移住させるのは危険です。そんなことをすれば、シナイ半島がイスラエルに対する作戦拠点と化してしまいます」と主張した。
エルシーシ氏はまた、エジプトはイスラエルの管理下にない、ガザ地区との唯一の検問所を「閉鎖しなかった」とし、同検問所が機能していないのはイスラエルによる砲撃のためだとして非難した。
「現地の情勢と、イスラエルによる、検問所のパレスチナ側に対するたび重なる爆撃のために、業務が妨げられているのです」と同大統領は記者団に述べた。
ラファ検問所のエジプト側では現在、救援車両が6日間もの待機を強いられている。ハマスが10月7日、ガザ地区から越境攻撃を行い、少なくとも1400人(そのほとんどが民間人)が死亡したという衝撃的な奇襲に対する報復をイスラエルが開始して以降、同検問所が4度の爆撃を受けたためだ。
米大統領とアラブ諸国の首脳との会談は、ワシントンを発つ際に中止に。
テルアビブ:ジョー・バイデン大統領は18日、ハマスとの戦争がさらに大規模な紛争に発展するのを防ぐための外交的取り組みとして、イスラエルに到着した。数百人死亡が死亡したガザの病院爆発をめぐり中東全体が憤りを示すなか、この挑戦はさらに困難になった。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は滑走路でバイデン大統領を出迎えた。両者は手を取りながら、両首脳の新たな連帯を示した。
バイデン氏は当初、ヨルダンも訪問する予定だったがこれを延期。ワシントンを離れる際にアラブの指導者たちとの会談が中止された結果、彼がこの緊迫した局面を乗り切るために重要だと思われた直接会って話をする機会を失った。
現在、バイデン氏の唯一の訪問先はテルアビブのみで、ベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談で、ガザへの重要な人道支援を許可するよう働きかける見通し。イスラエルは、1400人のイスラエル人を殺害した10月7日のハマスの攻撃を受けて、ガザへの地上侵攻を準備しているとみられている。
国防総省のジョン・カービー報道官はエアフォース・ワンに搭乗した記者団に対し、バイデン氏が「イスラエル人から現地の状況を把握したい」と語り、「厳しい質問をすることになるだろう」と述べたことを伝えた。
「彼は友人として質問するだろう」とカービー氏は付け加えた。
大統領はまた、ハマスがイスラエルに侵攻した際の緊急対応者、および殺害された犠牲者や人質の家族に会う予定。
ガザに対するイスラエル軍の攻撃により、およそ2800人のパレスチナ人が死亡したと報告されている。保健当局によれば、さらに生死不明の1200人が、がれきの下に埋もれているという。
この数字は、17日にアル・アハリ病院で起きた爆発よりも以前のものである。爆発の明確な原因は不明だ。
ハマスが運営するガザ保健省は、イスラエルの空爆が破壊を引き起こしたと発表した。イスラエル軍は関与を否定し、パレスチナの別の過激派組織「イスラム聖戦」によるロケット弾の誤爆として非難。しかし、同組織も責任を否定している。
バイデン氏は声明で、「ガザのアル・アハリ・アラブ病院での爆発と、その結果生じた恐ろしい人命の損失に憤慨し、深く悲しんでいる」とコメントした。彼はまた、「私の国家安全保障チームに、実際に何が起こったのかについての情報収集を続けるよう指示した」と述べた。
負傷したパレスチナ人を治療しながら、戦闘からの避難を求める多くの人々を保護していた病院でおきた爆発を受け、抗議行動が地域に広がっている。
数百人のパレスチナ人がラマッラーを含むヨルダン川西岸地区の主要都市の通りに殺到した。レバノンのベイルートやヨルダンのアンマンでも抗議デモが発生し、イスラエル大使館の前には怒りに満ちた群衆が集結した。
病院の爆発に対して怒りの声が広がるなか、バイデン氏のヨルダン訪問計画は延期となった。ヨルダンではアブドッラー2世国王がパレスチナのマフムード・アッバース大統領やエジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領との会談を予定していたが、アッバース氏は抗議してこれを辞退、会談はその後白紙となった。
カービー氏によると、病院の爆発後、ヨルダンが3日間喪に服すことを宣言したことを受け、バイデン氏はその決定を尊重、今回の訪問中止は「相互」の決定であったと述べた。彼は、バイデン氏はワシントンに戻る際、アラブの指導者たちと電話で話す機会があるだろうと語った。
ヨルダンのアイマン・サファディ外相は、国営テレビ局に対し、戦争は「地域を崖っ縁に追い込んでいる」と発言した。
ヒズボラが活動するレバノンとのイスラエル北部国境沿いに新たな戦線が拡大する恐れもある。イランに支援された同組織はイスラエル軍と小さな衝突を繰り返している。
今回のイスラエル訪問は、イスラエルが食料、燃料、水の供給を遮断しているガザで人道上の懸念が高まっているなかで行われた。調停者たちは、民間人、援助団体や病院への物資供給をめぐる絶望的な行き詰まりを打開するために奔走している。
アントニー・ブリンケン米国務長官は、バイデン氏の訪問に先立ち、アラブ諸国とイスラエルの指導者たちとの会談を繰り返しながら、何らかの援助協定の仲介を目的に、16日にテルアビブで7時間半の会合を開いた。結果、援助がガザに入り、市民に配給される方法についての計画を策定する許可を得た。
「私たちは、何らかの人道的支援が受け入れられることを期待している」とカービー氏は伝えた。
表面上はささやかな成果に過ぎないが、米国当局者は、ブリンケン氏の交渉がイスラエルの当初の姿勢、つまりガザが燃料、電気、水などの基本的な供給から切り離されるべきという姿勢に大きな変化をもたらしたと強調している。
米国当局者は、ガザの状況が悪化すれば、イスラエルの軍事行動に対するアラブの忍耐は限界に達することが明らかになったと指摘した。
アラブ諸国の指導者によるイスラエルに対する全面的な非難は、ハマスにとって利益となるだけでなく、イランが反イスラエル活動を強化することを促し、地域的な大混乱が起こるのではないかという恐怖を増大させるだろうと、APの取材に応じた4人の当局者は、匿名を条件に政権内部の考えを語った。
リヤド:元サウジアラビア情報局長は、イスラエルとハマスが民間人に対して行っている行為は非難に値するとしつつ、パレスチナ人にはイスラエルによる軍事占領に抵抗する権利があると主張した。
トゥルキ・アル・ファイサル王子は、「糾弾されているように、ハマスが年齢や性別を問わず民間人を標的としていること」を断固として非難するとしたうえで、それらの行為は民間人に危害を加えることや礼拝の場所を冒涜することを禁じるイスラムの教えに反していると指摘した。
「しかし、イスラエルがガザ地区の罪のないパレスチナ民間人に対して無差別爆撃を行い、彼らを強制的にシナイ半島へと追いやろうとしていることも同様に非難する」
ヒューストンのライス大学ベーカー公共政策研究所で開かれた集会で講演したトゥルキ王子は、「この紛争に英雄はいない。いるのは犠牲者だけだ」と述べた。
かつてサウジアラビアの駐米大使と駐イギリス大使を務めたトゥルキ王子は次のように語った。「軍事占領下にある全ての人々には占領に抵抗する権利がある。たとえそれが軍事的手段であってもだ」
しかし、異なるアプローチの方がパレスチナ人にとって実りあるものになるとトゥルキ王子は考える。
「私としてはもう一つの選択肢の方が良いと思う。それは市民的な反乱と不服従だ。インドの大英帝国や東欧のソビエト帝国もそれで崩壊した」
10日前、ハマスはガザ地区の境界を突破してイスラエル人居住地を襲撃し、兵士と民間人合わせて1000人以上を殺害した。
イスラエルはハマスの一掃を誓い、ガザ地区に爆弾の雨を降らせて3000人以上の民間人を殺害した。17日の病院に対する空爆で死亡した500人超もそれに含まれる。
しかしトゥルキ王子は、2つの間違いを足しても正しいものにはならないとして、この紛争の両当事者が非難に値すると述べた。
イスラエル国民の半数までもが「ファシストで邪悪で忌まわしい」と見なすほど不人気なイスラエル政府にハマスは道徳的機会を与えてしまったと、トゥルキ王子は指摘した。
「イスラエルには圧倒的な軍事的優位性がある。我々の目の前には、イスラエルがガザ地区の人々にもたらしている荒廃と忘却がある」
そして、イスラエルがヨルダン川西岸地区においてパレスチナ人の子供、女性、男性の標的殺害や無差別逮捕を行っていることを非難した。
トゥルキ王子はまた、パレスチナの人々の闘争に関わる出来事の、このところの扱われ方に異議を唱えた。
「米国メディアで『挑発を受けていないのに行った攻撃』というフレーズが繰り返されているのを耳にする。イスラエルが4分の3世紀にわたってパレスチナの人々に行なってきたことを挑発と言わずして何を挑発と言うのか」と王子は述べた。「ミドル・イースト・モニターに2014年2月17日に掲載された『イスラエル軍退役軍人、1948年のパレスチナ人虐殺での役割を認める』というタイトルの記事を参照してほしい。これを読めば泣くだろう。私も泣いた」
イスラエルは5~7月に子供67人を含む450人のパレスチナ人を殺害したという。
「この流血を止めなければならない」
トゥルキ王子はまた、この紛争におけるパレスチナ人の行動とイスラエル人の行動に対する反応が異なると訴えた。
「イスラエル人がパレスチナ人に殺された時には涙を流すのに、イスラエル人がパレスチナ人を殺した時には悲しみを表明することさえ拒否する欧米の政治家を私は非難する」
20日にリヤドで開催される湾岸協力理事会(GCC)・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は、湾岸諸国が西側諸国から距離を取って新たな軌道・プランを描こうと計画する中で、人々に興奮をもたらしている。石油依存から脱却して経済を多角化することを計画するGCC諸国は、新たな市場、特に大きな市場ポテンシャルを持つアジアへと目を向けている。経済多角化は来たる首脳会議の中心的議題となり、GCC諸国にとって最優先事項となるだろう。
経済的動機だけでなく、地政学的競争もGCCの戦略的計算に含まれている。イランが西側からの制裁や国際的孤立を背景に東へとシフトしているからだ。中東とアフリカで繰り広げられてきたGCCとイランの競争は今やアジアへと舞台を移しており、それによってこの地域の緊張はさらに高まるだろう。実際、今や湾岸諸国は個々にアフリカやアジアで役割を担っているため、GCCは湾岸地域外において地政学的プレイヤーとしての性格を強めている。GCCはそれに対して組織のレベルでは最小限の関与しかしていないが、来たる首脳会議を通してそれを変えたいと考えている。トルコもアジアに関する戦略や政策を持っており、GCCはそれを受けてアジアへの関与を真剣に考え、複数のレベルでの関係強化を推進している。
これらの動機は明確であり、その重要性はコロナ後のGCCとASEANの間の接触、会合、交流の数から見て取れる。両ブロックの間では最近、数多くの公的会合やバックチャネル会合が行われている。例えば、GCCの代表らとASEAN諸国の駐サウジアラビア大使らがリヤドで会合を開いた。この会合の目的は来たる首脳会議に向けて始動することであり、その議題に関する話し合いが行われた。圧倒的に重点が置かれたのは貿易や商業機会の拡大だったが、防衛、安全保障、デジタルインフラなどに関連した他の問題についても議論された。
20日にリヤドで開催される湾岸協力理事会(GCC)・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議は、湾岸諸国が西側諸国から距離を取って新たな軌道・プランを描こうと計画する中で、人々に興奮をもたらしている。石油依存から脱却して経済を多角化することを計画するGCC諸国は、新たな市場、特に大きな市場ポテンシャルを持つアジアへと目を向けている。経済多角化は来たる首脳会議の中心的議題となり、GCC諸国にとって最優先事項となるだろう。
経済的動機だけでなく、地政学的競争もGCCの戦略的計算に含まれている。イランが西側からの制裁や国際的孤立を背景に東へとシフトしているからだ。中東とアフリカで繰り広げられてきたGCCとイランの競争は今やアジアへと舞台を移しており、それによってこの地域の緊張はさらに高まるだろう。実際、今や湾岸諸国は個々にアフリカやアジアで役割を担っているため、GCCは湾岸地域外において地政学的プレイヤーとしての性格を強めている。GCCはそれに対して組織のレベルでは最小限の関与しかしていないが、来たる首脳会議を通してそれを変えたいと考えている。トルコもアジアに関する戦略や政策を持っており、GCCはそれを受けてアジアへの関与を真剣に考え、複数のレベルでの関係強化を推進している。
これらの動機は明確であり、その重要性はコロナ後のGCCとASEANの間の接触、会合、交流の数から見て取れる。両ブロックの間では最近、数多くの公的会合やバックチャネル会合が行われている。例えば、GCCの代表らとASEAN諸国の駐サウジアラビア大使らがリヤドで会合を開いた。この会合の目的は来たる首脳会議に向けて始動することであり、その議題に関する話し合いが行われた。圧倒的に重点が置かれたのは貿易や商業機会の拡大だったが、防衛、安全保障、デジタルインフラなどに関連した他の問題についても議論された。
今度の首脳会議は、エネルギーの枠組みを超えたより深い関与を反映し、前述の諸分野に焦点を当てたものになるだろう。これは、湾岸諸国の多角化プロセスの極めて重要な部分であり、GCC諸国の投資家に対し自国への投資を増やすよう求めているASEAN諸国にとっても重要なものだ。また、中国への依存度を低減したい一部のASEAN諸国にとっても極めて重要である。その背景には、米国が同盟国に対し中国への制裁に加わるかサプライチェーンを中国以外の国に振り向けるよう圧力をかける中で、サプライチェーンの逼迫により中国への過度の依存が危険になっている状況がある。また、湾岸諸国はアジア政策の延長として南太平洋の島嶼国に手を伸ばす可能性があると見られているが、そうなれば中国にとって現実的な懸念材料となるだろう。湾岸諸国はこれらの島嶼国に代替的融資やその他の金融オプションを提供するだろうからだ。
しかし、GCCはASEANへのシフトによって中国との関係を損なうつもりはない。両者との関係の間でバランスを取ることができると考えているのだ。中国はGCCに最新技術やノウハウを提供し、国内の防衛産業の確立を支援できる。したがって、GCCの多角化プロセスにとっては中国もASEANも重要なのであり、双方が同時に複数のレベルにおいてGCCの変革に貢献できるのだ。GCCはこの2つの関係をゼロサムゲームではなくポジティブサムゲームとして見ており、摩擦を生み出すことなくその間のバランスを取ることを目指している。現時点ではGCC・ASEAN関係に中国に関する懸念はないし、中国も湾岸諸国に対し方針を変えるよう圧力をかけたりはしていない。
中国は湾岸諸国の方針を変えさせるような政治的影響力は持っていないし、GCCも中国に依存はしていない。したがって、GCCはどのような形でも圧力を受けることなく、より柔軟にアジアへの関与を深めている。中国はこのシフトを注視し、中国が関心や影響力を持つ分野にGCCが投資するかどうか、そしてGCCがアジアにおいて地政学的な役割を果たす存在へと変貌するのかどうかを特に見極めようとするだろう。中国はGCCと米国の緊密な関係が見えていないわけでもなければ、湾岸諸国への投資や3月のサウジアラビア・イラン国交再開合意で果たした役割によって米国と湾岸諸国の関係の流れが変わると考えるほどナイーブでもない。
中国はGCCに対して実利主義的であり、現在得ることができるものは得たうえで今後のさらなる進出に期待している。同様に、GCCはアジアにおいて全てを中国に賭けるのではなく、多角化と選択肢を求めて投資先を分散しようとしており、それゆえにASEANへとシフトしようしているのだ。
何年もの間、私はイスラエル人にこう尋ねてきた。「パレスチナ人が、外国による占領から自由を得るための、信頼できる効果的な方法を教えてほしい」。多くの非効果的で現実味のないアイデアが定期的に議論に投げ込まれる一方で、誰もその目的を達成するための過程や方法論を明確に説明することができなかった。つまり、私たち全員を悩ませているシンプルな問いは残ったままだ。75年に及ぶ難民危機、56年に及ぶヨルダン川西岸地区の占領、そして16年に及ぶガザ包囲を終わらせるための、確かな、そして信頼できる方法をパレスチナ人に提示できる人間はいるのだろうか?
パレスチナ人たちは、イスラエルと関連する国連安全保障理事会の決議を承認することが自由への道であると言われた。パレスチナ人は1993年、それを正確に行った。その結果、違法なユダヤ人入植地と入植者の数は3倍以上に増え、パレスチナの解放は以前よりもさらに遠のいた。
非暴力こそが解放への道だと主張する人もいた。その考えを説いたパレスチナの非暴力活動家ムバラク・アワド氏は、イスラエルによって国外追放された。南アフリカのモデルに触発された「ボイコット・ディベストメント・アンド・サンクション(BDS)」運動の中で、非暴力によるボイコットを適用しようとする努力は、反ユダヤ主義として違法とされた。英国では、国際法に違反しているイスラエルのボイコットを支持した市民を罰する国内法が検討されており、米国の各州では同様の数十の法律が可決された。
イスラエル人は、イスラエル近隣の独立国として存在を認めるためには、パレスチナ人は民主主義を持たなければならないと言った。しかし、エジプトおよびヨルダンは決してこのような条件を出していない。NGO「カーター・センター」などが監督した自由で公正なパレスチナの選挙は、ハマス支持者が勝利するまで数回行われた。しかしその後、選挙と民主主義を推し進めたまさに同じ国々が、穏健派の敗北を恐れ、マフムード・アッバース大統領に選挙に反対するよう助言した。
政治面では、パレスチナ人は武装抵抗をやめ、イスラエルと安全保障面で協力すれば、パレスチナは自由になると言われた。これもまた、世論の反対にもかかわらず、イスラエルの治安当局者の満足のために、完全に実行された。結果、アッバース氏は弱いとみなされ、入植者の暴力やポグロム(破壊、略奪)からさえ自国民を守ることさえできなくなった。そしてイスラエルは、ヨルダン川西岸地区のアッバース指導部に政治的に関与するのではなく、ハマスとの融和に関心を示した。
国際的な法律の専門家たちはパレスチナ人たちに、国際刑事裁判所(ICC)が最良の手段だと言った。そして、この試みも成された。戦争犯罪、特に現在進行中の違法入植と、パレスチナ系アメリカ人ジャーナリストの殺害という十分に文書化された事件がICCに提出された。しかし、その重要性と綿密な調査と文書化にもかかわらず、ロシアの戦争犯罪が最優先事項に上がった今、これらの容疑に対する調査の進展はない。
10月7日のハマスの対イスラエル作戦は、国際的に認められた「人民の抵抗権」に基づいて行われた。確かに、16年間も動物のように閉じこもっていたガザのパレスチナ人を含め、ハマスやその他による残虐行為はあった。突然、境界フェンスが取り払われ、イスラエル兵がいなくなり、道路が開かれたのを見たとき、一部のパレスチナ人は大暴れし、殺害や略奪を行った。イスラエルは長年にわたり、エルサレムのピエルバッティスタ・ピザバラ・ラテン総大司教「天井のない監獄」と呼ぶガザへの無許可の包囲を続けてきた。
包囲網を破ったハマスのメンバーは戦争犯罪を犯したのだろうか?その可能性はある。彼らの指導者はそれを公に容認したのだろうか?それは違う。しかし今、国連加盟国であるイスラエル政府は戦争犯罪を犯しているだけでなく、その高官たちは、ハマスのメンバーではない220万人のパレスチナ市民に食料、水、電気を提供していないと公言している。
パレスチナ人は常に、力の均衡は彼らに不利に傾いており、アラブの兄弟姉妹でさえも彼らを見捨てている、だからドナルド・トランプやベンヤミン・ネタニヤフが差し出すどんなパンくずでも受け取るべきだと言われ続けてきた。
長年にわたり、イスラエル人とパレスチナ人の両方が共存できると思われた妥協案のひとつは、しばしば繰り返された「二国家解決」であった。これは、第3次中東戦争前の1967年6月4日時点の国境線に沿って独立国家を築くというアイデアは可能な解決策であるが、これを実現するための政治的努力はほとんどなされていない。世界は1948年以来、二国家解決の一方、すなわちイスラエルを承認してきたが、国連加盟国193カ国のうち138カ国が承認しているにもかかわらず、スウェーデンを除くほとんどの西側諸国はパレスチナ国家を承認することを拒否してきた。パレスチナ人が国連で、パレスチナを占領下の国家として承認する必要性を訴えても、安全保障理事会における米国の拒否権発動の警告とともに却下されている。
現在のガザへの猛攻撃は直ちに停止し、人命を救うべきだ。停戦が宣言され、実施されれば、先に述べたひとつの「シンプルな問い」は依然として有効であり、イスラエル人とジョー・バイデン米大統領を含む国際社会にそれを問いかけなければならない。もし二国家解決に世界的なコンセンサスがあるのなら、今必要なのは、数十年にわたる殺戮に終止符を打ち、この地域の人々が平和に暮らせるようにするためのロードマップである。
バイデン米大統領は18日、イスラエルを訪問した。パレスチナ自治区ガザの病院で爆発があり数百人が死亡したことを巡り、イスラエルではなくパレスチナ武装組織の責任とするイスラエル側の主張を支持した。
17日に起きたガザの病院爆発については、パレスチナはイスラエル軍の空爆が爆発を引き起こしたと主張。イスラエル軍はパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」によるロケット弾発射の失敗が原因だとしている。
ネタニヤフ首相とともに記者団に臨んだバイデン氏は「昨日のガザでの病院爆発を深く悲しみ、憤りを感じている」とした上で「私が見たところでは、あなたたちではなく、他の組織が関与したように思える」などと述べた。
「ただ、確信が持てない人も大勢いる。われわれは多くのことを克服しなければならない」ともした。
バイデン大統領はその後、「他の組織」に責任があるという発言について、米国防総省のデータに基づくものと説明した。
イスラム組織ハマスとの戦いにおいて自衛するために必要なあらゆるものを提供すると、イスラエル側に約束した。
ネタニヤフ首相はバイデン大統領の「揺るぎない支持」を感謝したほか、大統領府によると、ヘルツォグ大統領もイスラエル擁護に対する謝意を伝えた。
また、ネタニヤフ首相はその後の会談で「イスラエルは民間人を危険から守るためにあらゆることを行う」と確約。バイデン大統領は、米国は「国民を守るために努力するイスラエルの後ろ盾であり続ける」と述べた。
イスラエル軍報道官は18日、パレスチナ自治区ガザの病院で17日に爆発があり、数百人が死亡したことについて、調査の結果、イスラエル国防軍による陸海空からの攻撃ではなく、パレスチナ側の誤射が原因だったことが判明したと表明した。
イスラム組織ハマスが実効支配するガザの保健当局は、イスラエル軍の空爆が爆発を引き起こしたと主張。イスラエル軍はパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」によるロケット弾発射の失敗が原因だとしている。
イスラエル軍報道官は、病院の建物に構造的な損傷はなく、空爆によって生じるクレーターも存在しないと指摘。未使用のロケット燃料が引火したとの見方を示した。
報道官はハマスが犠牲者の数を誇張しているとも主張。ハマスが主張するほど早く原因を特定することは不可能との認識も示した。過去11日間にガザから発射されたロケット弾のうち、約450発は飛距離が短く、ガザ領内に着弾したという。
同報道官は「われわれの情報によると、ロケット弾の発射失敗に関するテロリスト同士の交信記録がある」と発言。イスラエル軍は英語の字幕付きで交信音声を公開した。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに大規模攻撃を仕掛けて以来、ネット上ではデマや誤解を招く情報が氾濫している。専門家らは、こうした状況が国際世論をゆがめ、現地の混迷を深め、報復の呼びかけを高めていると指摘する。
イスラエルは攻撃を受けた後、報復措置としてパレスチナ自治区ガザへの大規模な攻撃を行い、18万人が住居を失い、230万人が電力と水の供給を絶たれている。
人権団体や研究者らは、世論操作のために誤った情報を付した画像や改変された文書など、誤解を招いたり、根拠のない主張をシェアしないよう、ソーシャルメディアの利用者に対して警告している。
ティエリー・ブルトン欧州委員(産業政策担当)は今週、ソーシャルメディア産業のリーダーであるイーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ両氏に対し、オンラインのコンテンツに関する欧州連合(EU)の新ルールを遵守し、それぞれが経営するサービスであるX(旧ツイッター)とフェイスブック、インスタグラムにおけるデマの拡散に対処するよう要請した。
紛争勃発後のデマについて、またその拡散の状況について知っておくべきことを整理する。
<どのような偽情報が拡散しているか>
ニュースの信ぴょう性評価とデマ追跡を行うサイト「ニュースガード」の編集者ジャック・ブルースター氏は、ソーシャルメディアで拡散しているデマには主として4つのタイプがあると指摘する。
ブルースター氏が確認した主要なデマは次のようなものだ。
・イスラエルに対する攻撃は「偽旗作戦」であり、敵方を非難する口実を作るために実行された作戦である。
・ハマスに殺害された子どもと称する映像はイスラエル側による演出である。
・米政権はイスラエルに対する80億ドルの支援パッケージを承認した。
・ウクライナがハマスに武器を横流ししている。
「7amleh」として知られる非営利組織アラブ・センター・フォー・ソーシャルメディア・アドバンスメントでも、ガザで人質になっているイスラエル人の赤ちゃんや性暴力に関するいくつかの不正確な情報を追跡している。
中東地域で暮らす家族にとって、デマは個人的な苦痛をもたらしかねない。
9日、Xに投稿されたある動画は、ガザとの境界に近い「ニル・オズ」と呼ばれるキブツ(農業共同体)の自宅から7日に拉致されたヤファ・アダルさん(85)が救出された際の映像とされていた。
映像には、高齢の女性が兵士らに取り囲まれている様子が映っている。女性は黒いバンから降りて座り、兵士から水の入ったボトルを受け取っている。
この動画はネット上で広く拡散したが、家族が確認したところ、この女性はアダルさんではないという。
孫のアドバ・アダルさんはトムソン・ロイター財団が運営するニュースサイト「コンテクスト」の取材に対し、「(動画を見て)本当にがっかりした。祖母が戻ってきたのではないかと思ったのに、実際には別人だった」と語った。
<デマを加速させる要因は>
ブルースター氏によれば、ソーシャルメディア上では、ロシアによるウクライナ侵攻の初期段階に出回ったフェイクニュースと同じように、暴力に関するデマや誤報が広がっているという。
テクノロジー及びメディアの専門家らによれば、ソーシャルメディア空間において最も顕著な変化は、X(旧ツイッター)を利用したデマ拡散の手法だという。
「ビデオゲームの映像を現実のものとして流すユーザーもいれば、まったく別の事件や戦争の映像をシェアするユーザーもいる」とブルースター氏は言う。
一方、TikTokなどその他のソーシャルメディアは、前後の文脈を欠いた動画をシェアするのに利用されている。
ニュースガードが注目するのは、イスラエル高官がハマスに拘束されたと称する動画、そしてハマス戦闘員がパラグライダーでイスラエルに侵入する様子という動画だ。実際には、前者はアゼルバイジャンの治安部隊が男性らを拘束している動画、後者はエジプトで撮影されたものだった。
これらの動画は数十万回も再生された後、ようやく削除された。
TikTokはコンテクストの取材に対し、コメントを控えるとした。
Xはコンテクストに対し、リンダ・ヤッカリーノ最高経営責任者(CEO)による声明を示した。声明では、「今回のような急速に変化する状況に対応すべく(略)社内リソースを再配分し、複数の社内チームの力を結集している」と記されている。
旧ツイッターで公共政策担当スタッフとしてコンテンツモデレーション(投稿の適正管理)を担当していたセオドラ・スケアダス氏は、改ざんを伴う投稿や誤解につながる動画・画像の氾濫に対処するXの能力は、人員削減によって大幅に低下したと指摘する。
「かつてのツイッターであれば、信頼できる情報を優先的に表示し、デマや利用条件違反のコンテンツを削除し、ある種の投稿に対しては背景情報を追加するためのラベルを付していたはずだ」とスケアダス氏は語る。
<ソーシャルメディアによる対処は>
Xでは、今回の紛争に関しては、誤解を招く可能性のあるコンテンツに対してユーザーが背景情報を付加できる機能「コミュニティーノート」が500件以上投稿されているとしている。
だがスケアダス氏は「危機の進行中には、コミュニティーノートでは投稿量に追いつけない」と言う。
ユーチューブは、ニュース価値が十分にあれば生々しいコンテンツを同サイトに投稿することは可能だが、利用ルールに反する動画については規制していると述べている。
写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営するスナップは、デマや暴力扇動については監視を続けているとしている。
インスタグラムとフェイスブックを傘下に抱えるメタは、ヘブライ語・アラビア語を母語とする者を含めた専門家によるチームが、「リアルタイムで急速に変化する状況」を監視している、と述べている。
<現実世界への影響は>
「7amleh」でエグゼクティブディレクターを務めるナディム・ナシフ氏はコンテクストの取材に対し、虚偽の言説の主な狙いは、世論を操作し集団的処罰を正当化することだと述べた。
「こうした現象は情報へのアクセスにかなりの影響を与えており、パレスチナ側の言説が検閲され、あるいはオンラインへの投稿が不可能な状況に鑑みて、非常に懸念されるところだ」
ナシフ氏は、この状況はさらなる暴力への呼びかけと実際の危害につながる可能性があるばかりか、人権侵害が闇に葬られ、司法の働きが阻害されてしまうと指摘する。
祖母が依然として行方不明となっているアダルさんは、偽情報のせいで家族が支援を求めにくくなるのではないかと心配している。
「ここの現状を世界が理解してくれることを切に願っている。こういったことが起きると、実際には酷い状況でも、好転していると思われてしまう」
パレスチナ自治区ガザの病院で17日に爆発があり、数百人が死亡したことについて、ロシア外務省は18日、衝撃的な非人間的犯罪と非難した上で、イスラエルが関与を否定するのであれば衛星画像を提出すべきと主張した。報道官が地元ラジオで述べた。
ガザの保健当局は、イスラエル軍の空爆が爆発を引き起こしたと主張。イスラエル軍はパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」によるロケット弾発射の失敗が原因だとしている。
ロシア外務省報道官は、一部の人々が責任を逃れようとしているのは明らかと指摘。事件についてメディアでコメントするだけでは不十分であり、イスラエルと米国は衛星画像を提出すべきだと述べた。
パレスチナ自治区ガザ南部とエジプトの間にあるラファ検問所は、イスラエル国外から直接ガザに入る唯一の援助ルートであり、イスラエル領内につながらない唯一の脱出口でもある。
イスラエルがガザ市とガザ地区北部の住民に退避するよう警告した後、何十万人ものパレスチナ人がガザ南部に移動。イスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの衝突が続く中、ラファの状況にも大きな注目が集まっている。
<ラファ検問所の場所と管理国>
ラファ検問所はガザ地区の南に位置する。ガザはイスラエルとエジプト、地中海に挟まれた狭い土地で、230万人が住んでいる。
検問所を管理するのはエジプトだ。
<ラファが今回の紛争で重要な理由>
ハマスによる7日の攻撃によりイスラエル国民1300人以上が死亡したのを受け、イスラエルはガザを「完全封鎖」し、同地域への電力を遮断し、食料と燃料の供給をすべて停止した。
この結果、人道支援物資がガザに入る唯一のルートは、エジプトのシナイ地域からラファを経由する道となった。ラファはまた、退避を試みるガザ住民にとって唯一の出口でもある。
外国パスポートの所持者は、ラファ検問所再開の協定が結ばれれば出国が許可される見通しであるため、ここ数日ラファ付近に向かっている。
イスラエルはまた、砲撃から身を守るためにラファの近くまで南下するようガザ住民に呼びかけているが、住民は人口密度の高い自治区内に安全な場所はないと訴えている。
<ラファ通過が制限されている理由>
エジプトはシナイ北東部に位置するガザとの国境付近の治安悪化を警戒している。この一帯では2013年以降、イスラム主義者の反乱が頂点に達したが、現在はほぼ鎮圧されている。
07年にハマスがガザを掌握して以来、エジプトはガザの封鎖を後押しし、人と物資の往来を大幅に制限してきた。イスラエルとの主要な検問所と同様、規制は緩和されることはあっても解除されることはなく、旅行者が通過するにはセキュリティー上の手続きと長時間のチェックを受ける必要がある。
08年にはハマスが国境施設に穴を開け、数万人のパレスチナ人がシナイに渡ったため、エジプトは石とセメントの壁を建設した。
エジプトは過去の紛争時や情勢が不安定な時期に、イスラエルとパレスチナの仲介役を務めてきた。しかし、そのような状況でも国境は封鎖し、援助物資の入国や医療上の理由で退避する人々の出国は許可しつつも、大規模な人の移動は阻止した。
ハマスの攻撃を受け、イスラエルはガザに最大級で容赦ない砲撃を行っているが、エジプトは今のところ従来の姿勢を変える気配を見せていない。イスラエルによる空爆では2800人以上のパレスチナ人が死亡している。
<国境開放に向けた努力>
国連はイスラエルに対し、ガザにおける「人道的大惨事」を回避するよう求め、食料、燃料、飲料水の供給さえも危険なほど不足していると警告している。
病院では、予備発電機の燃料が不足し、負傷者への対応に苦慮しているという。
エジプトの援助トラックは17日、検問所に近づいたが、いつガザに入れるのか、また入れるのか否かは不明だ。
ブリンケン米国務長官は同日、米国とイスラエルは、ハマスを利することなくガザ市民に人道支援を届ける計画を策定することで合意したと述べた。
<アラブ諸国がパレスチナ人受け入れに消極的な理由>
アラブ諸国は、今回のイスラエルとハマスの戦争が、パレスチナ人が自治区から恒久的に移住する新たな動きにつながる可能性を深く恐れている。
ガザと国境を接する唯一のアラブ国家であるエジプトと、イスラエル占領下のヨルダン川西岸に隣接するヨルダンは、パレスチナ人が土地を追われてはならないと警告を発している。
エジプトのシシ大統領は、パレスチナ人が「自分たちの土地に今後も定着できる」ことが不可欠だと述べ、ヨルダンのアブドラ国王は「パレスチナ人を全てのパレスチナ自治区から強制的に追い出したり、国内移住を引き起こしたりするいかなる試みにも反対する」とくぎを刺した。
アラブ人やパレスチナ人にとって、自らの国家を築きたい地域から立ち退く、あるいは追い出されることは、イスラエルの建国に伴う1948年の戦争で多くのパレスチナ人が家を追われ、あるいは逃亡した「ナクバ(大惨事)」を想起させる。
イスラエルは、建国後アラブ5カ国から攻撃を受けたとして、パレスチナ人を追い出したという主張に異議を唱えている。
イギリス統治時代にパレスチナにいたアラブ系住民の半数に当たる約70万人が土地を奪われ、多くは近隣アラブ諸国に移った。こうした人々とその子孫の多くは今もそこに住み続けており、難民キャンプに住む人も多い。
このため、今回の紛争がエスカレートしても、イスラエルが38年間の占領を経て2005年に撤退したガザを離れたくないとうパレスチナ人は多い。
米軍は18日、イラク駐留部隊を標的としたドローン(無人機)2機を迎撃し、攻撃を阻止した。米軍当局者2人が匿名を条件にロイターに明らかにした。イラクに駐留する米軍への攻撃は1年超ぶりとなる。
米軍が駐留するイラクのアル・アサド空軍基地への攻撃を試みたドローンを迎撃したという。
容疑者については明言を避けたが、米国はイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を巡り地域の緊張が高まる中、イランが支持する組織による活動への警戒を強めている。
イラク治安当局者や西側外交筋によると、18日遅くにもイラク北部アルビルにある米軍が駐留するアル・ハリール空軍基地を狙った別のドローンによる攻撃があったが、阻止したという。
アル・ハリール空軍基地への攻撃については、あまり知られていない「Tashkil al-Waritheen」というグループが犯行声明を出した。
17日にはパレスチナ自治区ガザの病院で爆発があり、数百人が死亡した。イスラエルとパレスチナが相手の責任だと互いに非難し合っている
サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコ(2223.SE)のナサール最高経営責任者(CEO)は17日、世界の石油消費量が年末までに過去最高を更新する見通しであることを踏まえ、同社は数週間以内に生産を拡大できると述べた。
ナサール氏はロンドンで行われたエネルギーフォーラムで、世界の石油消費は今年後半に日量1億0300万バレルに増加すると見込まれると述べた。
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は、市場の安定維持ための先制的措置として昨年から協調減産を行っている。
OPECの盟主サウジは11月から年末まで日量100万バレルの自主的減産を継続し、以降の生産方針は11月に決定する方針。
ナサール氏は、サウジアラムコは現在、世界需要の約3%に相当する日量300万バレルの余剰生産能力があると説明。また、石油生産能力を現在の日量1200万バレルから27年までに1300万バレルに拡大する計画は順調に進んでいると述べた。
米国務省は17日、レバノンへの渡航警戒レベルを「渡航中止」に引き上げた。レバノンの親イラン組織ヒズボラとイスラエルの間の砲撃に関連した治安情勢が理由という。
現地の治安情勢が予測不可能だとして、ベイルートの米国大使館から米政府職員の家族や緊急業務に携わらない一部職員が自発的に一時退避することも認めた。
パレスチナ自治区ガザの病院では17日に爆発があり、ガザ保健当局によると数百人が死亡した。これを受け、ヨルダン川西岸や中東各地で抗議デモが起きている
バイデン米大統領は17日、イスラエルに向け出発した。ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は大統領専用機内で記者団に対し、バイデン氏はイスラエルのネタニヤフ首相やイスラエル指導者たちとの会談で「厳しい質問」をすると述べた。
カービー氏は、バイデン氏はイスラエル側から今後数日間の計画などを確認したい意向だと説明した。
また、人道支援がガザに届くことを米国は楽観していると述べた。
カービー氏は「大統領はイスラエルの真の友人として厳しい質問をするだろう」と語った。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻を視野に入れており、米国は市民を救出するための人道支援を認めるようイスラエルに圧力をかけている。
バイデン氏はイスラエルで会談を行った後にアラブ諸国の指導者と会談するためヨルダン訪問を予定していたが、約500人が死亡したパレスチナ自治区ガザでの病院爆発を受けて延期した
バイデン米大統領は18日、イスラエルが確実に自国を防衛できユダヤ人安住の地に戻せるよう、今週議会に支援案の承認を求める意向だと述べた。
大統領はテルアビブで記者団を前に、「何もしないで傍観するつもりはない」と話した。人質の解放が全てに優先されるとも述べた。
欧州各地の都市では今月7日夜、記念碑がイスラエル国旗の青と白にライトアップされた。イスラム組織ハマスによる大規模攻撃で非武装の民間人を中心にイスラエル国民1400人が殺害されたことを受け、イスラエルとの連帯が示された。
フランスのマクロン大統領やイタリアのメローニ首相ら各国首脳はイスラエルへの揺るぎない支援を表明した。
だが、連帯の姿勢を誇示することで、その後数日間に表面化した根深い社会的緊張は覆い隠された。ユダヤ人は欧州各地での反ユダヤ主義台頭を恐れている。一方、イスラム教徒はハマスと同一視されているのではないかと懸念している。
パレスチナ自治区北部のガザ市では17日、病院で爆発があり500人が死亡。死傷者の数はさらに増えると予想されており、状況は悪化する可能性が高い。
コミュニティー全体の関係悪化を招くリスクは、ウクライナでの戦争やポピュリズムの台頭、生活費高騰の危機ですでに試練に見舞われている欧州連合(EU)域内の社会的結束をさらに弱める恐れがある。
近年の移民状況やホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)における役割を踏まえると、社会的緊張は特にドイツで顕著だ。同国は中東以外では最大規模のパレスチナ人居住地の一つでもある。
ベルリンのブランデンブルク門がイスラエル国旗の色にライトアップされた同じ夜に、約40人のハマス支持のデモ参加者が攻撃を祝った。
ベルリンではこの10日間、大規模な暴力事件は起きていない。だが、先週行われた地方選挙で極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進したことにより、反ユダヤ主義台頭の懸念を政争の具にしないか不安が生じている。
フランスでは先週、教師が殺害される事件が起き、マクロン大統領はイスラム主義者によるテロ行為だと非難。この事件を受けて、警察を支援するため兵士がフランス各地に派遣された。
オーストリアでは、シャレンベルク外相がガザで地上戦が起きた場合に移民数が増加する可能性を警告した。ギリシャでも同様の懸念が表明された。
一方、スペインでは社会労働党率いるサンチェス首相の政権がハマスによる攻撃を非難する一方で、パレスチナ国家の承認とガザでの国際的人権の尊重を求めている。
スペインは歴史的にパレスチナに対し同情的な立場を取っており、マドリードでは15日に1万人余りがパレスチナを支持するデモに参加した。
レバノンのアブダラ・ブー・ハビブ外相は18日、パレスチナ自治区ガザへの継続的な攻撃は「地域全体を焼き尽くす火」になりかねないと述べた。
サウジアラビアのジッダで開催されたイスラム協力機構(OIC)の会合で「抑えきれない激化につながりかねない」緊張の火種にならないよう警告した。
一方、イスラエル軍は18日、レバノン国境沿い地域にある軍事拠点への銃撃に対応していると発表した。
イランは18日、イスラム協力機構(OIC)加盟国に対し、イスラエルに対する石油禁輸などの制裁措置を取るよう呼びかけた。これを受け原油価格が急騰した。
ただ、4人の関係筋によると、石油輸出国機構(OPEC)は緊急会合の開催など直ちに何らかの措置を講じる予定はない。
パレスチナ自治区ガザの病院で17日に爆発があり、数百人が死亡した。
これを受けてイラン外務省は声明を発表し、イスラム諸国によるイスラエルへの即時かつ完全な石油禁輸やイスラエルの全外交官の国外追放などを求めた。
OICはこの日、サウジアラビアのジッダで緊急会合を開催している。
一方、OPEC関係筋は「われわれは政治的な組織ではない」と述べ、即座にイランの呼びかけに応じる考えはないことを明らかにした。
湾岸協力理事会(GCC)のジャーシム・アル・ブダイウィ事務総長も17日、石油を武器として使うべきではないとの見解を示していた。
18日の市場では、一段の中東情勢悪化を背景に石油供給への不安が台頭し、原油先物価格が急騰している。

<10月18日朝まで>
パレスチナ自治区ガザの保健当局は17日、ガザ市内の病院がイスラエル軍の空爆を受け、パレスチナ人約500人が死亡したと発表した。病院は患者のほか、避難民で混みあっていた。
また国連によると、避難所として利用されていた学校もイスラエル軍の攻撃を受けた。
これに先立ち、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)はイスラエル軍の空爆により、避難者のためのシェルターとして利用していた学校が攻撃され、少なくとも6人が死亡したと発表していた。
UNRWAによると、学校には少なくとも4000人が避難しており、空爆で数十人が負傷したほか、学校に「深刻な構造的被害」をもたらしたと述べた。
イスラエル軍は、病院と学校が攻撃されたという報道について、「なお全ての詳細を調査中」とコメントした。
パレスチナ自治政府の報道官は、イスラエル軍によるガザの病院への空爆は「大量虐殺」で、「人道的大惨事」と非難。パレスチナのシュタイエ首相も「恐ろしい犯罪」とし、イスラエルを支援する国は責任を負うと述べた。
パレスチナ解放機構(PLO)は声明で「これは大量虐殺だ。この虐殺を止めるために直ちに介入するよう国際社会に求める。もはや沈黙は許されない」とした。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は今回の攻撃を受け、3日間の喪に服すと宣言した。
エジプトは今回の攻撃を非難。外務省は声明で、病院への空爆を「最も強い言葉で」非難するとし、国際社会はこのような攻撃を止めるために緊急的に介入しなければならないとした。
カナダのトルドー首相も「病院を攻撃することは許されない」と述べた。トルコのエルドアン大統領はソーシャルメディアへの投稿で、「最も基本的な人間的価値を欠くイスラエルの攻撃の最新の例」と批判し、「ガザにおけるこの先例のない残虐行為を止めるために行動を起こすよう全人類に呼びかける」とした。
パレスチナ保健省によると、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃が起きた7日以降、ガザで約3000人のパレスチナ人が死亡、1万2500人が負傷した
同期間にヨルダン川西岸地区でもパレスチナ人61人が死亡、1250人が負傷したと発表した。
レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは17日、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザの病院空爆を非難し、18日をイスラエルとバイデン米大統領によるイスラエル訪問に対する「かつてない怒りの日」にすると表明した。
米国が「今回の大虐殺に対する直接的かつ完全な責任を負う」とも述べた。
ガザの保健当局によると、ガザ市内の病院への空爆で、パレスチナ人約500人が死亡した。
イスラエル軍は17日、パレスチナ自治区ガザの病院を空爆したという情報を否定した。軍の情報によると、パレスチナの過激派武装組織「イスラム聖戦」に責任があるという見解を示した。
パレスチナ自治区ガザの保健当局は同日、ガザ市内の病院がイスラエル軍の空爆を受け、パレスチナ人約500人が死亡したと発表した。病院は患者のほか、避難民で混みあっていた。
イスラエル国防軍の報道官は声明で、国防軍の作戦システムの分析によると、病院が空爆を受けた時間に「ガザのテロリストが発射したロケット弾が病院の近辺を通過した」とし、病院の被弾は「イスラム聖戦によるロケット弾発射の失敗によるもの」であることを複数の情報が示していると説明した。
パレスチナ自治区ガザの病院が17日、空爆により約500人が死亡したことを受け、18日から予定されるバイデン米大統領のイスラエル訪問は前途多難の様相を呈している。ただ、現時点で中東歴訪を延期する計画はないもよう。
ガザ当局者は空爆をイスラエル軍によるものと非難しているが、イスラエル軍はこの情報を否定し、パレスチナの過激派武装組織「イスラム聖戦」に責任があるという見解を示している。 もっと見る
パレスチナ自治政府のアッバス議長は病院に対する攻撃を受け、予定していたバイデン米大統領との会談をキャンセルした。世界各国からも病院への空爆への非難が相次いでいる。 もっと見る
今回の中東歴訪はイスラエルとの連帯を再確認することが目的で、バイデン大統領はアッバス議長のほか、イスラエルのネタニヤフ首相、ヨルダンのアブドラ国王、エジプトのシシ大統領らと会談する予定となっていた。
ただ、アッバス議長らパレスチナ政府高官と会談できなければ、中東地域の緊張を和らげ、ガザへの人道支援を強化する目的を達成することは困難となる見通しだ。
ヨルダン川西岸の中心都市ラマラで17日、パレスチナ自治政府のアッバス議長に反対する声を上げたり、石を投げた抗議デモに治安部隊が催涙ガスや閃光弾を使用した。パレスチナ自治区ガザの病院が攻撃され死者が出たことで民衆の怒りが沸騰している。 もっと見る
ヨルダン川西岸では数百人のデモ隊がラマラの中心広場をデモ行進。一部はガザを実効支配するイスラム組織ハマスの指導部に対する支持を大声で繰り返した。
目撃者によると、パレスチナ治安部隊との衝突は西岸の別の都市、ナブルス、トゥバス、ジェニンでも発生した。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの最高指導者、イスマイル・ハニヤ氏は17日、ガザ市内の病院に対する空爆で数百人のパレスチナ人が死亡したことについて、この攻撃の責任は米国にあると述べた。
ハニヤ氏はテレビ放映された演説で、米国がイスラエルに「侵略の隠れみの」を与えていると非難。「病院で起きた大虐殺は、敵の残忍さと敗北感の大きさを裏付けている」と述べ、今回の攻撃は「新たな転換点」になるとの見方を示した。
その上で、全てのパレスチナ人に対し占領者と入植者に立ち向かうよう促すと同時に、全てのアラブ人とイスラム教徒に対しイスラエルに対する抗議行動を起こすよう呼びかけた。
スナク英首相は17日、サウジアラビアのムハンマド皇太子とカタールのタミム首長と電話会談し、ガザ危機を受け、中東情勢の不安定化回避が必要という見解で一致した。
スナク首相の報道官によると、ムハマンド皇太子との会談では「両首脳は中東全域のさらなる不安定化を回避することが重要という考えで合意」した。タミム首長との会談では「スナク首相はタミム首長の地域外交における建設的な役割に謝意を表明し、紛争がより広い地域を不安定化させてはならないという見解で同意した」という。
シャップス英国防相は17日、中東およびウクライナでの紛争を巡る緊急協議のため米国を訪問すると英国防省が発表した。一段の不安定化を防ぎ、人道支援を可能にすることが目的という。
声明で「世界の安全保障にとって極めて重要なこの時期に、中東での激化を防ぐための継続的な取り組みとウクライナへの重要な支援について、英国のパートナー国であり友好国である米国との緊急協議を実施するためにワシントンを訪れる」とした
レバノンの治安当局は、イスラエルとの国境付近で17日に親イラン武装組織ヒズボラの戦闘員5人が対イスラエル作戦中に死亡したと明らかにした。
これに先立ち、イスラエル軍はレバノンとの国境のフェンスを越えて潜入し爆発物を仕掛けようとした4人を殺害したと発表。ヒズボラは戦闘員5人が殺害されたと確認したが、イスラエル軍が殺害を発表した4人がこの中に含まれるかは現時点で分かっていない。レバノン政府は、イスラエルによるレバノン南部への攻撃が戦線拡大につながる恐れがあると警告している。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した10月7日以来、イラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラとイスラエル軍はほぼ毎日のように銃撃戦を繰り広げており、レバノンとイスラエルの国境はこの17年間で最も深刻な状況となっている。
イスラエル軍はレバノンとの国境で侵入未遂が起きた場所については明らかにしていない。
レバノンのアブダラ・ブー・ハビブ外相は、訪問中のトルコのフィダン外相とともにベイルートで演説し、レバノン南部におけるイスラエルの攻撃は「火に油を注ぐ」ものだと指摘。「戦線収束が困難となる形で一触即発の緊張を生み出している」と述べた。
イスラエル側は、ヒズボラと開戦する意図はなく、ヒズボラが自制するならイスラエルは国境沿いの状況を現状維持すると主張。ただ、万全の準備を整えた陸軍を国境に配備しているとしている。
スナク英首相は17日、サウジアラビアのムハンマド皇太子とカタールのタミム首長と電話会談し、ガザ危機を受け、中東情勢の不安定化回避が必要という見解で一致した。
スナク首相の報道官によると、ムハマンド皇太子との会談では「両首脳は中東全域のさらなる不安定化を回避することが重要という考えで合意」した。タミム首長との会談では「スナク首相はタミム首長の地域外交における建設的な役割に謝意を表明し、紛争がより広い地域を不安定化させてはならないという見解で同意した」という。
シャップス英国防相は17日、中東およびウクライナでの紛争を巡る緊急協議のため米国を訪問すると英国防省が発表した。一段の不安定化を防ぎ、人道支援を可能にすることが目的という。
声明で「世界の安全保障にとって極めて重要なこの時期に、中東での激化を防ぐための継続的な取り組みとウクライナへの重要な支援について、英国のパートナー国であり友好国である米国との緊急協議を実施するためにワシントンを訪れる」とした。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの最高指導者、イスマイル・ハニヤ氏は17日、ガザ市内の病院に対する空爆で数百人のパレスチナ人が死亡したことについて、この攻撃の責任は米国にあると述べた。
ハニヤ氏はテレビ放映された演説で、米国がイスラエルに「侵略の隠れみの」を与えていると非難。「病院で起きた大虐殺は、敵の残忍さと敗北感の大きさを裏付けている」と述べ、今回の攻撃は「新たな転換点」になるとの見方を示した。
その上で、全てのパレスチナ人に対し占領者と入植者に立ち向かうよう促すと同時に、全てのアラブ人とイスラム教徒に対しイスラエルに対する抗議行動を起こすよう呼びかけた。
イスラエルのソブリン債格付け「Aプラス」を「ネガティブウォッチ」に指定した。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの衝突が大幅にエスカレートすれば、格付けにマイナスの影響が及ぶ恐れがあるという見方を示した。
イスラエルと敵対する他国が紛争に参戦するリスクが著しく高まっているとも指摘した。
ただ、「イスラエルのダイナミックかつ付加価値の高い経済、地域紛争からの回復力の実績、軍事的対立への備え、底堅い財政、資金バッファーなどを踏まえ、ガザに限定された比較的短期間の紛争がイスラエルの格付けに影響を与える可能性は低い」とした。
米国防総省は17日、中東の安全保障を巡る状況を踏まえ約2000人の米軍兵士が準備態勢に入っているが、現時点で派遣はまだ決定されていないと表明した。
また、国防総省のサブリナ・シン副報道官は声明で、米欧州司令部への6カ月間の派遣が終了に近づいている空母ジェラルド・フォードで構成する打撃群について、派遣の期間が延長されたと明らかにした。
18日にヨルダンの首都アンマンで予定されていたバイデン米大統領とヨルダンのアブドラ国王やエジプトのシシ大統領、パレスチナ自治政府のアッバス議長との会談がキャンセルとなり、バイデン大統領のヨルダン訪問も取りやめとなった。ホワイトハウス当局者が17日明らかにした。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの紛争が、他の中東地域に拡大する可能性を防ごうとしているバイデン政権の外交努力にとって、会談キャンセルは打撃となる。
ガザ地区の病院の爆発で数百人が死亡し、アッバス議長が喪に服すことを発表したのを踏まえ、アブドラ国王との協議の上、会談や訪問のキャンセルが決まったと、ホワイトハウス当局者は説明した。
ヨルダンのサファディ外相はこれより先、ガザの病院での爆発で500人余りが死亡したとの報道を受け、双方の同意により会談取りやめの決定に至ったと話していた。
バイデン大統領は現在、イスラエルのネタニヤフ首相との首脳会談のため同国に向かっている。
ガザ地区の保健省は、病院での爆発で少なくとも500人が死亡したと発表。ハマスによる7日のイスラエル奇襲攻撃以来、最大規模の犠牲者数となる。米国と欧州連合(EU)がテロ組織に指定するハマスの壊滅を目指し、地上侵攻の準備を進めるイスラエル軍はガザ地区を空爆している。
多数の死者が出た病院爆発の原因を巡り、ハマスとイスラエルの間では非難の応酬となっている。ハマスはイスラエル軍の空爆によるものだと主張する一方、イスラエルはパレスチナの武装勢力がミサイル攻撃に失敗した結果だと論じている。
バイデン政権は爆発の原因究明のための調査を求めると、事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に語った。
米国防総省のシン副報道官は17日早い時点で記者団に対し、ガザの病院で何が起こったのか米国として「全容」を把握していないと指摘。「誰の仕業か分からない」と述べる一方、イスラエルが他の同盟国と同様に「戦時国際法を順守」すると期待していると発言した。
イスラエル国民の意識の中で、人質の運命は特別な地位を占める。過去にはたった1人のイスラエル人を解放させるために数百人の囚人を釈放した。母国に埋葬できるよう遺体と囚人の交換に応じたことすらあった。
だが、イスラエル軍がハマス壊滅を目指している今回、人質の命に対して、複雑で新たな感情が交錯している。
当然ながらイスラエルは人質の帰還を切望している。今月7日のハマス攻撃から数時間以内に、人質解放を目指し軍の最高幹部と法律、メディアの専門家から成る組織が結成されたのもそのためだ。他の多くの国を巻き込んだ交渉も始まっている。人質の安全が最優先課題であることは、関係者全員が一致する。
それでも過去の苦い経験が頭をもたげ、イスラエルに従来の方針の再考を迫り、態度を硬化させている。
対テロを専門とし、軍の交渉チームの一員だったこともあるアリエル・メラリ氏は「主に2つの理由で、今回は状況が異なる」と指摘。「第1に、イスラエルは戦争状態にある。人質やその家族への同情はあるが、市民の多くは戦争に勝たなければならないと感じている。2つめの理由は、過去の人質対応で甚大な誤りがあったことがいまや十分に理解されているということだ」と述べた。
メラリ氏によれば、イスラエルはこれまで譲歩し過ぎ、そのせいで甚大な代償を支払うことを余儀なくされてきた。
例えば、1985年に3人のイスラエル兵を解放させるため、イスラエルは1151人の囚人らをパレスチナ側に引き渡した。そのうちの1人はアフマド・ヤシン氏で、釈放されるとすぐに新たな運動、つまりハマスの組織づくりに動いた。
大規模な捕虜交換が最後にあったのは2011年で、イスラエル兵1人に対してパレスチナ人1027人が釈放された。これを行った当時の首相は、現在も首相のネタニヤフ氏だ。
この時に釈放されたパレスチナ人の1人はヤヒヤ・シンワル氏で、後にガザのハマス最高指導者となった。同氏は7日の攻撃を立案・主導したとイスラエルは主張する。さらに同時に釈放された中で、ガザやヨルダン川西岸地域のハマス幹部となったのは6人いるとされる。
「こうした過去が、人質解放を第1とする人々の意識を変えた」とメラリ氏は述べた。
イスラエルは16日夜の段階で、199人が人質となっていることを確認。ハマスは200人を人質にとっているとし、さらに50人が別の集団によって捕らえられていると主張した。
ネタニヤフ首相は今週に入り、人質の家族らと会談した。だが、法律家でジャーナリストのナダフ・ヘツニ氏はイスラエル・ハヨム紙で、この行動はイスラエルの指導者がこれまで繰り返してきた誤りだと批判。「われわれは敵に降参し、その結果はるかに多くの人が殺され、人質となってきた」と論じた。
ユダヤとアラブとの聖地パレスチナを巡る争いは1世紀余り前にさかのぼり、7回の大きな戦争を引き起こした。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに大規模攻撃を実施した今月7日、7回目が勃発した。ハマスは反イスラエル闘争を掲げ、米国と欧州連合(EU)がテロ組織に指定する。イスラエル側の死者は少なくとも1400人に上り、報復攻撃によるガザでの死者数は2700人を突破した。衝突の歴史の理解に役立つかもしれない幾つかのポイントをまとめた。
1.衝突の根は何か
オスマン帝国の支配下で宗教的共存の時代が第1次大戦の終盤まで続いた。その後の英国の委任統治下では、ナチスによる迫害が激化した1930年代を中心に欧州からパレスチナへのユダヤ人入植が著しく増える。入植への反対とアラブナショナリズムの高まりは、30年代後半の暴動につながる。国連総会は47年、パレスチナをアラブ国家とユダヤ国家、国連管理下のエルサレムに分割する決議を採択。アラブ側は拒否したが、イスラエルは同決議に基づき48年に独立を宣言し、パレスチナ戦争(第1次中東戦争)が起きる。その間のアラブ難民の数は50万人を上回った。
2.パレスチナ人とは
67年の第3次中東戦争(六日戦争)で、イスラエルはエジプト領だったガザ地区とヨルダン統治下のヨルダン川西岸地区などを占領した。それら地域の住人はその当時までにパレスチナ人として知られていた。イスラエルが軍事占領下に置いたことで、彼らのナショナリズムがかき立てられる。
3.ハマスとは
イスラエル占領に抵抗する第1次インティファーダ(反イスラエル闘争)が起きた87年に設立された。エジプトのイスラム教・社会・政治運動組織「ムスリム同胞団」を母体とする。貧困や医療、教育ニーズに対応する福祉活動のネットワークを築き、当初パレスチナ人の支持を得たが、自爆テロや他のイスラエルへの攻撃で不評を買った。
4.ハマスの目的は何か
ハマスの主目的はイスラエル国家の破壊とされる。聖地の全てを「アラブ・イスラムの地」とし、「全面的な解放」以外のいかなる選択肢も拒否する方針を2017年改定の綱領は示す。ハマスの闘争をユダヤ人それ自体ではなく、「シオニストプロジェクト」との闘争と位置付け、「あらゆる手段を用いた占領への抵抗は、神の法が保証する正当な権利」と主張した。
9月初めにガザとヨルダン川西岸地区で実施された世論調査では、評議会(議会)選での選択肢として、ハマスに投票すると答えたパレスチナ人が全体の34%、パレスチナ解放機構(PLO)内の最大組織で主流派のファタハに投票するとの回答は36%だった。
5.シオニストとは
反ユダヤ主義に対抗し、19世紀に欧州で起こったシオニズム運動は、ユダヤ人の民族国家をパレスチナに樹立することを目指す。目的の達成後はイスラエル国家の発展および保障を支持する人を指す。
6.ガザ地区とは
ガザ地区はイスラエルとエジプト、地中海に囲まれた飛び地で、難民がその大部分を占めるパレスチナ人約200万人が、過密状態の下で貧しい生活を送る。イスラエルとPLOが調印した1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)に基づき、パレスチナ自治政府によるガザ地区の統治が約10年続いた。 2005年にはイスラエルがガザの入植地撤去を完了し、翌年の評議会選でハマスがファタハに圧勝。数カ月の抗争を経て、07年にガザを武力制圧したハマスの実効支配に至る。イスラエルはエジプトと共にガザを事実上封鎖した。
7.ガザに多くの難民が住む理由
1948年の第1次中東戦争とその余波で発生した多くのアラブ難民がガザに逃れた。恒久的な解決策は見つかっておらず、彼らの子孫も現在は難民と見なされる。
8.ヨルダン川西岸地区はどんな状況か
約300万人のパレスチナ人とイスラエルからの入植者約46万人が生活する西岸地区は、オスロ合意に基づき、パレスチナ自治政府が統治している。イスラエルと共存するパレスチナ国家樹立とエルサレムの帰属問題決着に向け、パレスチナの最終的地位交渉を進めることを前提とした暫定自治の取り決めだったが、衝突激化で協議は中断したままだ。
9.なぜ米国はイスラエルを支援するのか
第2次大戦以降、イスラエルが米国から受け取った支援額はミサイル防衛の資金を合わせ約1580億ドル(現在の為替レートで約23兆6000億円)と、他のどの国より多い。48年の建国宣言後、最初の20年間はイスラエルが米国の特に親しい同盟国というわけではなかった。60年代と70年代にソ連がイスラエルと敵対するアラブ諸国を支援する中で、冷戦の打算もありイスラエルに接近した。91年のソ連崩壊までには、米国とイスラエルの関係に新たな支えが生まれる。米国民の支持だ。反ユダヤ主義の後退で積極的に発言するようになったユダヤ系米国人は、議会とホワイトハウスがイスラエルと緊密な関係を維持することを期待している。
イスラエル建国がキリスト再臨の予兆だと信じるキリスト教福音派も同じだ。イスラエルの初期段階の左派的方向性やユダヤ人との関係もあって、同国支援はもともと民主党の政治目標だった。しかし、キリスト教福音派が共和党支持に傾いているため、超党派の政策となった。イランのイスラム革命、2001年9月の同時多発テロなど米国を標的とするイスラム主義者の攻撃を受け、米国人はイスラエルに敵対する勢力に理解を示さなくなった。
バイデン米大統領は18日にイスラエルを訪問する。イスラエルを訪問中のブリンケン米国務長官が17日未明、テルアビブでの記者会見で確認したもので、長官はバイデン大統領について「彼はイスラエルおよび周辺地域、世界にとって重要な局面でここを訪れる」と語った。
イスラエル軍によるガザ地区への地上侵攻が迫っていると予想される状況にあって、イスラエルのネタニヤフ首相からの招待を受けたバイデン大統領は同首相との首脳会談で、米国による支援を協議する見通し。ホワイトハウスの報道官はコメントを控えた。
バイデン米大統領は18日にイスラエルを訪問する。ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの攻撃を受けたイスラエルに連帯を示すとともに、紛争の地域的拡大を防ぐのが目的。
バイデン氏は、予想されるイスラエル軍のガザへの地上侵攻に先立ち、イスラエルのネタニヤフ首相と会談する見込み。その後、ヨルダンに向かい、同国のアブドラ国王やエジプトのシシ大統領、パレスチナ自治政府のアッバス議長とも面談する予定。
米国はまた、ガザの民間人に対する支援計画を強化し、パレスチナ人の窮状を訴えるアラブ諸国に重要なシグナルを送る。
イスラエルとハマスの衝突で行き場を失ったパレスチナ人難民をヨルダンが受け入れることはなく、同国とエジプトにとってこれは「レッドライン」だと、ヨルダンのアブドラ国王が述べた。
ドイツのショルツ首相とベルリンで会談した後に発言したアブドラ国王は、地域の「常習犯」を非難したが、それが誰を指すのか具体的な名指しはしなかった。
バイデン米大統領とイラクのスダニ首相は、地域の安定を促すため協調した取り組みが必要だと強調した。イラク首相府がX(旧ツイッター)で明らかにした。両首脳はまた、紛争の拡大を阻止することが重要だと主張した。スダニ氏はバイデン氏に対して電話で、「イスラエルのガザに対する攻撃の継続が、地域と世界の人々の怒りをかき立てている」と述べたと、イラク国営通信が報じた。
パレスチナ自治区ガザへの支援物資を積んだトラックが17日、ガザ南部とエジプトを結ぶラファ検問所に到着した。地元関係者と治安筋が明らかにした。ただ、イスラエルによる攻撃で検問所はガザ側でここ数日閉鎖されており、トラックがいつ検問所を通過できるのかは不透明だ。
ブリンケン米国務長官は先週に続いてイスラエルを訪問し、イスラム組織ハマスを利することなくガザの住民に人道支援を行う計画の策定で合意したと発表している。 ガザ内務省によると、イスラエルは前夜にラファと近隣の町ハーン・ユーニスを空爆、少なくとも49人が死亡した。
支援物資を積んだ160台ほどのトラックが17日早朝、エジプトのシナイ半島にあるエル・アリーシュを出発した。
国連報道官は16日、ラファ検問所の再開について、進展はないと述べていた。
エジプト筋によると、ハマスが支援物資を押収したり破壊したりすることへの懸念から16日に予定されていた物資搬入はできなかった。その後、外国パスポート保持者の限定的な避難と引き換えに、物資をガザの特定の場所に監視の下で搬入するという了解が得られたという。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルが戦闘状態に入ったことを受けて、レバノンの親イラン組織ヒズボラがこの数日、イスラエルと国境付近で砲火を交わし、紛争拡大の恐れが高まっている。
ヒズボラについて起源や戦闘能力、影響力など基本情報をまとめた。
<ヒズボラの起源>
イラン革命防衛隊がレバノン内戦(1975─90年)さなかの1982年に創設した。イランは79年のイスラム革命を他の中東諸国に広げようとしており、ヒズボラ創設はこの一環で、82年のイスラエル軍によるレバノン侵攻に対抗する目的もあった。
宗派がイランの主流と同じイスラム教シーア派で、レバノンのシーア派を対象に勧誘活動を行った。当初は日陰的な一派にすぎなかったが、その後レバノン政府に大きな影響力を持つ武装勢力に成長。米国など西側諸国の一部からテロ組織に指定されている。
<戦闘能力>
レバノン内戦後、他のグループが武装解除したのに対し、ヒズボラはシーア派が多数を占めるレバノン南部を占領していたイスラエル軍と戦うために武器を保持し続けた。長年にわたるゲリラ戦後の2000年にイスラエルは撤退した。
ヒズボラが軍事力の充実ぶりを見せつけたのは2006年。イスラエルに侵入して兵士2人を誘拐し、他の兵士も殺害した後、イスラエルと5週間にわたり交戦した。
ヒズボラはこの紛争中、イスラエルに数千発のロケット弾を撃ち込み、レバノンで1200人、イスラエルで158人が死亡した。レバノン側の死者の大多数は民間人で、イスラエル側はほとんどが兵士だった。
その後はイランと親密な関係にあるシリアに派兵され、アサド大統領が主導するイスラム教スンニ派の反体制勢力との戦闘を支援し、勢力を伸ばした。
ヒズボラは、精密ロケットや無人機などの兵器を備え、イスラエル全土を攻撃できると豪語している。また、指導者ナスララ師は2021年、10万人の戦闘員がいると述べている。
イランから武器と資金の提供を受けており、米国はイランからの資金供与が最近では毎年数億ドルに上ると推定している。
<今回のイスラエルとハマスの紛争における役割>
ガザを実効支配するハマスや、イランが支援する他のパレスチナの過激組織「イスラム聖戦」と深いつながりを持っている。
ハマスの武装集団がガザからイスラエルに侵入して1300人を殺害した7日には、「パレスチナの抵抗勢力の指導者と直接連絡を取っている」と表明。それ以来、イスラエルと何度も国境を挟んで銃撃戦を交わしている。
一方、イスラエル首相の安全保障政策顧問ツァヒ・ハネグビ氏は14日、ヒズボラの敵対行動は抑制的なようだと述べ、レバノンの国家崩壊につながるような行動をとらないよう警告した。
<中東地域での影響力>
ヒズボラは中東全域でイランが支援する他のグループを鼓舞し、支援する存在となってきた。イラクでは武装グループを訓練するとともに戦闘にも加わっている。
サウジアラビアによると、ヒズボラはイエメンでも親イランのフーシ派を支援し、戦闘を行ってきた。ヒズボラはこれを否定している。
<レバノンでの影響力>
レバノン国内での影響力を支えているのは高性能の兵器と、ヒズボラがイスラエルからレバノンを守っていると主張する多くのシーア派支持者の存在だ。
一方、反ヒズボラ政党は、ヒズボラが国家を弱体化させ、一方的にレバノンを武力紛争に引きずり込んでいると非難している。
レバノンにはヒズボラ出身の閣僚や国会議員がいる。
レバノンのハリリ元首相殺害事件を受けてシリアがレバノンから軍を撤退させた後の2005年にヒズボラは国内で政治的な影響力を拡大した。この事件については国連が支援する裁判所がヒズボラのメンバー3人に有罪判決を下している。
2016年には親ヒズボラの政治家ミシェル・アウン氏が大統領に就任。その2年後にヒズボラとその同盟政党が議会で過半数の議席を握った。2022年に議席は過半数を割り込んだが、ヒズボラは引き続き政治的に大きな影響力を行使している。
<西側を標的に攻撃か>
レバノンの治安当局者や欧米の諜報機関によると、ヒズボラとつながりのあるグループが1980年代に欧米の大使館などを狙った自爆攻撃や誘拐を行った。
米国は1983年にベイルートの米海兵隊施設が襲われて兵士241人が死亡した自爆攻撃や、同年に米国大使館が自爆攻撃を受けた事件はヒズボラによるものだと主張している。1983年にはベイルートにあるフランスの軍施設も自爆攻撃を受け、58人が死亡した。
ヒズボラはこうした事件への関与を否定している。
<欧米諸国の見解>
米国など欧米諸国はヒズボラをテロ組織に指定している。サウジアラビアなど中東湾岸のアラブ諸国も同様だ。
欧州連合(EU)はヒズボラの軍事部門をテロ組織に指定する一方、政治部門についてはテロ組織に指定していない。
中東地域を管轄する米中央軍のマイケル・クリラ司令官が17日、イスラエルを電撃訪問した。
イスラム組織ハマスとの戦闘が激化し、イスラエルによるガザ地区への地上侵攻が見込まれる中、米高官が相次いでイスラエルを訪問している。
クリラ氏は「イスラエルが自国を防衛するために必要なものを確保できるよう私はここに来た。特に他の当事者が紛争を拡大させるのを阻止することに重点を置いている」と、同行しているロイター記者に語った。
米政府当局者によると、クリラ氏はイスラエルの防衛ニーズを明確に理解するため、軍指導部とハイレベル協議を行う予定。
イスラエルとハマスの紛争拡大回避を目的とした米軍の支援についても説明するという。
米国は抑止力を示すためとして空母打撃群を東地中海に展開しており、数日中に別の空母打撃群も追加派遣する。
サウジアラビアは24―26日、「砂漠のダボス会議」と呼ばれる「未来投資イニシアチブ」(FII)の第7回会合を首都リヤドで開催する。西側諸国の企業だろうと、中国企業だろうと外国の投資家の関心を引きつけることが狙いだが、イスラエルとイスラム組織ハマスの武力衝突が影を差しそうな情勢だ。
サウジは数千億ドルを投入し石油依存体質の経済構造を大きく変える計画「ビジョン2030」を遂行中だが、今回の武力衝突が中東地域の政情不安となる恐れが出てきた。
FII主催者側がロイターに明らかにしたところでは、来週の会合に5000人超が出席を登録しており、見送りは2人にとどまっている。その上で「武力衝突が起きたからこそ、企業リーダーや政治家が一堂に会し、人類の前に立ちはだかる地球的規模の問題に取り組むことがいかに重要かが明らかになった」と強調した。
スイス金融大手UBSは中東出張を禁止したものの、FII出席は例外扱いにしている。ペルシャ湾岸地域の銀行関係者数名もキャンセルしないつもりだと話した。
ただ、イスラエルとハマスの武力衝突を契機に戦闘地域が周辺に拡大すれば、こうした状況は変わり得る。ある中国の講演者は既に中国からの出席予定の数人がちゅうちょしているとロイターに明らかにした。
サウジは歴史的に豊かな資金源となっており、LSEGのデータによると、中東・北アフリカ地域(MENA)から昨年支払われた投資銀行業務の手数料のうち約40%をサウジアラビアが占めた。
サウジの実権を握るムハンマド皇太子は地政学的な位置づけを向上させようと躍起だ。投資や貿易の協定を重視し、中東での旧来の敵国との間で対話と緊張緩和を模索することに加え、バイデン米政権との緊張を念頭に置きつつも東側諸国との連携に比重を置いてきた。
今回のFIIではサウジの東方シフトが鮮明化する見通し。主催側によると講演者のうちアジア地域出身者は70人で、うち40人が中国人だ。インドの財閥大手リライアンス・インダストリーズ会長で大富豪のムケシュ・アンバニ氏のほか、中国のセコイア・チャイナを率いるニール・シェン氏らが登壇する。
ニューヨークのウォール街の大物であるJPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)やシティグループのジェーン・フレイザーCEOも出席する予定だ。
今回の衝突が始まって以降のサウジのドル建てソブリン債についてキャピタル・エコノミクスのエマージング市場エコノミスト、ジェームズ・スワンストン氏は、米国債に対するスプレッドがわずか20ベーシスポイントの拡大にとどまり、依然水準は低いと指摘した。ただ「武力衝突が周辺地域に波及する可能性があるかどうかが注視されるだろう」と付け加えた。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突以降、世界各地でテロやヘイトクライム(憎悪犯罪)が頻発している。イスラエルがガザへの地上侵攻を始めれば、暴力や社会不安が一気に拡大する恐れがあると各国当局は警戒を強めている。中東情勢の緊迫が世界の社会不安の火種となっている。
ランの最高特使:イスラエルは、ガザ地区で報復のない軍事行動をとることはできないだろう
イラン最高の特使が、数時間内に「先制攻撃」が予期されると語ったと国営テレビが、月曜に伝えた。最高特使は、さらに、イスラエルは、ガザ地区で報復のない軍事行動をとることはできないだろうと話した。
「抵抗の指導者らは、シオニスト政権がガザ地区でいかなる軍事行動をとることも許さないだろう。… あらゆる選択肢が可能だ。我々は、ガザの人々への戦争犯罪に目をつぶることはできない」とホセイン・アミールアブドラヒアン外務大臣は国営テレビに話した。
さらに「抵抗戦線は、敵(イスラエル)と長期にわたる戦争を行うことができる…数時間内に抵抗戦線による先制攻撃があることを予期できる」と詳しい説明なしで語った。先週、イランの最高権威である最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は、テヘランが支援する過激派集団ハマスのイスラエルに対する10月7日の攻撃にテヘランは関与していないと言ったが、ハメネイ師の言うイスラエルの「回復不能な」軍事と諜報の敗北を歓迎した。
パレスチナの大義は、1979年革命以来、イスラム共和国の柱であり、シーア派に支配されたこの国が自らをイスラム教世界の指導者にする方法である。テヘランは、ガザ地区を支配するハマスを精神的および財政的に援助すると言う。
月曜、早くに、 イランのイブラヒム・ライシ大統領は、テヘランはパレスチナの大義を支持するが、イスラエルに対する抵抗戦線は、独自に決断を下したと語った。
ニューヨーク:ガザ地区における清潔な水の不足が、人々の健康への大きな懸念をもたらしている。
「ガザで水が尽きようとしていて、ガザで命が尽きようとしている」と、国連のパレスチナ人担当機関の局長であるフィリップ・ラザリーニ氏は述べた。
ガザは通常、イスラエルからの輸送管、地中海の海水脱塩工場、井戸などの供給源の組み合わせによって給水を受けている。イスラエルがハマスによる攻撃の後に、上下水処理工場の動力源となる燃料および電力とともに、水の供給を止めたことで、これらの給水は激減した。
国連は水へのアクセスを人権として認めており、基本的レベルにおいて、人体は生存のために絶え間ない水の供給を必要とする。「空気に次いで」、水は「健康維持のために本当に最も重要なものだ」と、人道的状況下における水へのアクセスについて研究してきたコロンビア大学の救急医Tsion Firew博士は述べた。
全米科学・医学アカデミー(US National Academies of Science and Medicine)の報告では、適切な水分補給のために、1日につき男性は約3.7リットル(125オンス)、女性は約2.7リットル(91オンス)を飲む必要があるとされている。その多くは飲用水と飲み物から摂取され、約20パーセントは果物などの食品から摂取される。
多くの人は水がなければ数日以上は生きられず、子どもや高齢者、基礎疾患を抱える人といった弱い人々ならなおさらだと、Firew氏は述べた。脱水はめまい、疲労、錯乱を引き起こす可能性があり、ひどい場合には臓器不全や死亡につながる。
水へのアクセスは公衆衛生にも必要不可欠であり、清潔な水の不足はコレラや赤痢といった感染症の蔓延につながる可能性がある。不潔な水によって広がり得る下痢性疾患は、世界中の5歳未満の子どもたちの主たる死因となっていると、Firew氏は述べた。
医療現場については、病人や怪我人の患者たちを治療するのに清潔な水を頼りとしているため、特に懸念がある。
ガザ地区全域の各病院が数千人の患者を必死に治療する中、世界保健機関(WHO)は水不足により命が危険にさらされていると述べた。
「入院病棟、手術室、救急診療部の衛生状態を確保するためには水が必要だ。水は病院関連感染の防止と院内での感染症流行防止のために不可欠だ」と、WHOは声明で述べている。
表現の自由と人権擁護のための発言を基本的信条とする自由で民主的な西側社会で、ハーバード大学の卒業生が、親パレスチナの意見を主張したために就職ブラックリストに載せると脅迫されている。
フランスの内相は、親パレスチナのデモを禁止し、「反ユダヤ主義的行為」を行った外国人全員を国外追放するよう命じた。同様の措置がドイツなどでも導入されている。英国のスエラ・ブラバーマン内相は人種差別的見解を公然と表明したことのある女性だが、警察幹部に対し、パレスチナの旗を振ったり、親アラブ派のスローガンを唱えたりすることは犯罪行為になりうると述べた。 
ハマスによる子どもや年金生活者、市民の虐殺は、胸の悪くなるような行いで、間違っており、パレスチナの大義を損なうものだが、こうした惨状をパレスチナ国家全体のせいにしようとする陰湿な努力がなされてきた。欧米の政治家やメディアは最も悪質と思える親イスラエル的表現を声高に唱えているが、他方では、すでに進行中のガザ市民の大量殺りくに対して、道徳的に明確な発言をする勇気がない。
欧米のイスラエル支援が崇高で神聖なものとして称賛される一方、パレスチナ人への支援はたとえ明確でなくとも疑わしく、危険で、犯罪の可能性さえあるとされる。この紛争は両陣営による長く血なまぐさい残虐行為の歴史であることが、意図的に忘れ去られている。イスラエル人が殺害されるたびに、報復として限りなく破壊的な軍隊による不釣り合いな集団的懲罰が行われてきた。ここ数日、イスラエルの政治体制を無批判に受け入れている人々は、憎悪をあおり、将来の殺りくの舞台を整えたという点で、ハマスの残虐行為に喝采を送った人々と変わらない。
私たちは、両陣営に公平に責任を問う勇気を持たなければならない。
アメリカ、イギリス、ヨーロッパでは、ポピュリスト的なオルタナ右翼の政治家やメディアが、反リベラル文化戦争の延長として、パレスチナ問題を冷笑的かつ道徳的に利用している。緊張の高まりは両陣営の攻撃性を増し加え、ユダヤ教徒とイスラム教徒双方に対する卑劣な攻撃を誘発し、世界中の学校や礼拝所が標的となっている。ダーイシュやアルカイダの勧誘資料は欧米のイスラエル支援を、イスラム世界に対する「十字軍」戦争の続きと描いて悪用している。
ニューヨーク、パリ、ロンドンなどの都市では、親パレスチナと親イスラエルの大規模な対立デモが行われ、地域社会はますます分裂している。穏健派のユダヤ人たちは、ガザへの砲撃にきわめて率直に懸念を表明する一方で、治安維持に明らかな不備がある中、ネタニヤフ首相とその極右過激派内閣が共同体の緊張を沸点にまで高めたと非難している。
真の反ユダヤ主義は非難されるべきものだ。特に、アラブ人とユダヤ人は同じセム系のルーツを持ち、非常に近い関係にある言語を共有するいとこ同士なのだから。ところが、パレスチナの苦境に対する支援は実際には人権と国際正義を普遍的に支持することの必然的な結果であるにもかかわらず、あらゆる親パレスチナ的共感に反ユダヤ主義の汚名を着せ、排除しようとする努力が絶えない。
10月7日に何が起きたかに関する本物の証言もあるが、メディアやソーシャルメディアは根拠のないうわさ、誤った情報、フェイク映像の洪水を疑いもせずに流し、多くの場合、パレスチナ人を絶滅に値する「動物」や「人間以下の存在」と描く組織的目標を追い求めてきた。ソーシャルメディアのメッセージは、アラブ系イスラエル人の「裏切り者」がガザのフェンス突破を手助けしたと偽り、さらなる反アラブ暴力の舞台を整えた。ここ数日、過激派入植者たちはヨルダン川西岸地区のパレスチナ人に対する致命的な報復攻撃を行った。
ハマスが赤ん坊の首をはねたという伝染性の高いニュースがメディアを通じて広く流布し、ジョー・バイデン大統領はその残虐行為を非難したが、後にイスラエル政府とホワイトハウスはこの件が事実ではないことを認めざるを得なかった。BBCはハマスをテロリストと呼ばなかったとして非難される一方、「イスラエルの戦争犯罪への同意を醸成した」として、親パレスチナ活動家たちからは赤いペンキをスタジオにスプレーされてしまった。
歴史上のどんな権利運動においても、穏健派と過激派が共存していた。その中には、反アパルトヘイト活動家、アメリカの公民権運動、参政権運動、アイルランド共和国運動、そしてもちろんシオニズム運動も含まれる。シオニズム運動は、後のイスラエルの指導者の多くがテロ攻撃の根拠とした大義名分であり、1946年のエルサレムのキング・デビッド・ホテル襲撃に関与したメナヘム・ベギンや、1982年のサブラ・シャティーラ虐殺を監督したアリエル・シャロンもその一人である。 後者の事件は、ここ数日のものをはるかに凌ぐ残忍さを見せた。現在の極右閣僚たちは、バルーク・ゴールドシュテインが1994年にヘブロンのモスクで29人のパレスチナ人を虐殺した事件をたたえた。この行為は、パレスチナ人すべてはどのようにこの土地から追い出されるべきかを示すものとして、シオニストの極右勢力によって称賛されたのだ。
自分の子どもたちが生きているのか死んでいるのか、あるいは人質に取られているのかわからないイスラエルの母親たちの証言には、涙が出た。1982年のイスラエルによるレバノン侵攻の個人的な記憶のためだ。スクールバスが私の2人の娘を家まで送ってくれるはずだったのだが、混乱の中、運転手は娘たちを病院の近くの安全な場所に連れて行ってくれていた。丸一日、娘たちは死んだか、永遠に行方不明になってしまったのだと、気も狂わんばかりだった。狂乱じみたその数時間に、私たちはレバノンを離れて難民となる決心をしたのだ。一触即発の国境地帯から逃れたイスラエル人のどれほどの人たちが、同じように二度と戻らない、あるいはイスラエルを完全に離れることを選ぶのだろう。
過激派を根絶やしにするまでガザを絨毯爆撃するなどという非生産的な試みは、無差別復讐の幻想を抱く、恨みに満ちた新たな世代を育て、結局ヒズボラやハマスのような憎悪に満ちた派閥の力を増し加えて、イスラエルの安全保障を脅かすだけである。暴力は、憎むべき永続的な暴力しか生みださない。
ここ数日、イスラエルの自衛権、国家権、安全保障が声高に叫ばれてきた。実際、ますます多くのアラブ諸国がすでにこうした原則に同意を表明している。パレスチナ人が控えめに求めているのは、自分たちのための同様の権利の一部であり、法的拘束力のある国連決議に基づき、自分たち自身の領土を統治するといったことなのだ。
2つの主権国家の共存というビジョンを共有する穏健派ユダヤ人を含め、パレスチナのような人道的大義を平和的に支持する世界中の人々は、尊重されるべきである。西側諸国は、復讐心に燃える極右シオニストたちをなだめようとして、何百年もかけて苦労して獲得してきた政治的権利、自由、人権擁護の精神を、簡単に捨て去ってはならない。

<10月17日朝まで>
トルコのフィダン外相は16日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの最高指導者イスマイル・ハニヤ氏と電話会談を行った。トルコ外務省関係筋によると、ハマスが人質にしている民間人の解放について協議したという。
関係筋によると、フィダン外相とハニヤ氏は、紛争の最新の状況のほか、ハマスがイスラエルからガザ地区に連れ去った民間人の解放の可能性について協議した。ただ、これ以上の詳細については明らかにしていない。
米国や欧州連合(EU)と異なり、トルコはハマスを「テロ組織」と認識していない。
この日はトルコのエルドアン大統領がイランのライシ大統領や英国のスナク首相のほか、ギリシャ首相と会談。紛争を終結させ、ガザ地区の人道問題の解決に向けた方策などについて協議した。
フィダン外相はこの日、オマーンとロシアの外相とも電話会談を実施。トルコ外務省によると、フィダン氏は17日にレバノンを訪問し、18日にイスラム協力機構(OIC)の会合に出席するためにサウジアラビアのジッダを訪れる。OICの会合では「イスラエルによる全てのパレスチナ人への無差別な軍事行動」に対する措置について協議されるという。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が激化し、ガザ地区の住民に対する人道支援に向けた取り組みが続けられる中、16日はイスラエルが同国北部のレバノンとの国境付近の住民に避難を命じた。
イスラエルはレバノン国境から2キロメートルの地帯にある28の集落の住民に避難を命令。これに先立ち、レバノンの親イラン組織ヒズボラは、イスラエル北部にある5カ所のポジションを標的にしたと明らかにしていた。
イスラエルとハマスが戦闘状態に入ったことを受け、ヒズボラとイスラエルは数日前からレバノンとイスラエルの国境沿いで砲火を交わしており、紛争拡大の恐れが高まっている。
イスラエルとイスラム組織ハマスの交戦は、石油市場にとって、ロシアによる昨年のウクライナ侵攻以来の重大な地政学リスクをもたらしている。
世界最有力の石油・ガス産出国であるロシアと異なり、イスラエルのエネルギー生産量は乏しい。しかし戦闘が中東の主要エネルギー生産国に飛び火し、石油やガスの供給に影響を及ぼす恐れがある。
今のところそれは現実化していないが、専門家らは戦闘がエスカレートすれば幾つかの大きな問題が発生しかねないと指摘する。
まずハマスのイスラエル攻撃にイランが関与した場合、米国が対イラン制裁強化に動く可能性があり、既に供給不足の市場にさらなる緊張を招いてもおかしくない。イランは報復措置としてホルムズ海峡で近隣の石油輸出国機構(OPEC)諸国からの原油輸送を妨害するかもしれない。
さらに米国が仲介するサウジアラビアとイスラエルの関係正常化が暗礁に乗り上げる事態もあり得る。
◎これまでの石油市場の反応
ハマスがイスラエル攻撃を開始した7日以降の1週間で、北海ブレント価格は1バレル=5ドル余り上がって90ドルを超えた。
専門家や業界関係者は、今回と1973年の第一次石油ショックとは様相が異なると認めている。当時はサウジが主導する形で、第四次中東戦争においてイスラエルを支援した国への石油禁輸措置を講じ、価格高騰につながった。
今はサウジとロシアが既に年末までの自主減産を発表し、9月終盤には原油価格が10カ月ぶりの高値になったが、先週になると世界的な景気悪化と需要冷え込みへの懸念で価格は劇的に下がる場面があった。
元米国務省国際エネルギー担当特使のデービッド・ゴールドウィン氏は、これからも原油価格は戦争よりファンダメンタルズに左右される面が大きいとみている。
トータス・キャピタルのシニア・ポートフォリオマネジャー、ロブ・サメル氏は、世界全体の石油供給の2割を占めるホルムズ海峡の輸送ルートにイランなどの動きによって混乱が生じない限り、原油価格が跳ね上がる公算は小さいと述べた。
◎イラン産原油輸出への影響
米国の制裁にもかかわらず、イラン産原油輸出は今年著しく拡大し、サウジとロシアが行っている合計日量130万バレルの自主減産に伴う供給の穴を埋めている。
ハマスを支援するイランは、ハマスによるイスラエル攻撃への関与は否定。イエレン米財務長官は11日、イランがこの攻撃に関係している証拠が出てきた場合、米国がイランに対して新たな制裁を発動するかどうかについては、発表する材料は何も持ち合わせていないと発言した。
イランのオウジ石油相は13日、中東地域における最近の事態を踏まえて原油価格は1バレル=100ドルの大台に達すると述べたと伝えられている。
そうした中で米国が対イラン制裁を強化すれば、世界全体と米国内の双方で原油供給をひっ迫させ、エネルギー価格を押し上げかねない。来年の大統領選を控えているバイデン大統領としてもそれは避けたい展開だ。
ただRBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ヘリマ・クロフト氏は、イランに2018年以前の水準まで原油生産を高めるのを許してきたような今の緩い制裁の枠組みをバイデン政権が継続するのは「難しくなりそうだ」とみている。
一方で米国が供給混乱につながるリスクを背負うとは想定されないとの声も聞かれる。FGEのアナリストチームは、米国はサウジがイランの輸出減少分を肩代わりすると合意しない限り、対イラン制裁強化には乗り出しそうにないし、サウジがそのような取り決めに応じる現実味はないと指摘した。
◎サウジとイスラエルの関係正常化の行方
サウジは、米国が後押ししているイスラエルとの関係正常化計画を棚上げしようとしている、と事情に詳しい関係者が13日ロイターに明かした。イスラエルとハマスの交戦を受け、サウジが外交政策の優先順位を見直していることがうかがえる。
米国はこれまで、サウジが米国と防衛条約を結ぶのと引き換えに、イスラエルとの関係正常化を進める取り組みを仲介しようとしてきた。この枠組みに沿って、サウジは来年増産する用意があると米国に伝えた、とウォールストリート・ジャーナル紙が7日に報じた。
こうした努力は続けられるべきだ、と米政府は表明している。しかし戦略国際問題研究所(CSIS)のベン・ケーヒル氏は、協議が中断され、米国とサウジの協調推進のための重要な道が閉ざされてしまう恐れがあると警告した。
◎OPECプラスの反応
サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は最近CBNCテレビで、OPECとOPECプラスは以前に遭遇した多くの試練を乗り切ってきたし、加盟各国は連携しており、その結束を揺るがそうとしてはならないと語った。イスラエルとハマスの戦闘が始まってからアブドルアジズ氏が口を開いたのはこれが初めて。
イラク石油省の報道官は12日、OPECプラスは市場の諸課題に条件反射的に対応することはないと述べた。
ロシアのノバク副首相は同日、今の原油価格について、イスラエルとハマスの交戦状況を織り込んでいて、関連リスクがそれほど高くないと市場が信じていることを反映しているとの見方を示した。
ロシアのプーチン大統領は、OPECプラスの協調は「石油市場の予測可能性(維持)のために」続けられると主張した。
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は16日、イランの核問題について、IAEA査察官を追放して核兵器を開発した北朝鮮と同じ轍(てつ)を世界は踏んではならないと述べた。
軍縮に関する米国務省の年次会合に寄せたメッセージで「イランで何が起きているのか、何ができるのか、能力を持つ国の核兵器開発を阻止しようとする一部国際社会の失敗とならないよう、われわれはこの問題にあらゆる努力を払わなければならない」と指摘。「北朝鮮でこの種の失敗を目にしたことがある」と述べた。
イランのアブドラヒアン外相は、抵抗戦線による「先制行動」が数時間内に予想されるとし、イスラエルが報いを受けずにパレスチナ自治区ガザで行動を起こすことは許されないと述べた。イラン国営テレビが16日に報じた。
同外相は「抵抗(戦線)のリーダーらはシオニスト体制がガザでいかなる行動を起こすことも許さないだろう。全ての選択肢が開かれており、われわれはガザの人々に対する戦争犯罪に無関心でいることはできない」と発言。
「抵抗戦線は敵(イスラエル)と長期的な戦争が可能だ。数時間内に抵抗戦線による先制行動が予想される」と述べた。詳細には踏み込まなかった。
 ブリンケン米国務長官が訪問先のテルアビブでイスラエルのネタニヤフ首相と会談を行っていた際に空襲警報が発令され、一時的に地下の防空壕に避難した。米国務省のマシュー・ミラー報道官が明らかにした。
ミラー報道官によると、避難していたのは約5分間で、その後は会談の参加者全員が防空壕を出た。イスラエル国防省司令部に移動し、会談を再開したという。
ブリンケン長官はイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突を受け12日にイスラエルを訪問し、テルアビブでネタニヤフ首相と会談。その後カタール、ヨルダン、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、エジプトを相次いで訪れ、この日に再度イスラエルを訪問した。関係筋によると、バイデン米大統領はイスラエルを訪問する可能性について協議している。
パレスチナのイスラム組織ハマスの前最高指導者メシャル氏は16日、人質の中にはイスラエルのガザ部隊高官も含まれていると述べた。イスラエルの刑務所に収容されている6000人のパレスチナ人囚人解放に向け「必要なものは持っている」と述べ、イスラエル人の人質を交渉の切り札として利用する可能性を示唆した。
ハマスのテレグラム・チャンネルが、同氏のテレビインタビューでの発言を報じた。
同氏はまた、イラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラが一歩を踏み出したことに謝意を示しながらも、戦闘にはもっと支援が必要との見解を示した。
同氏の発言とは別にハマスは、イスラエル人以外は「状況が許せば」解放される「ゲスト」だと述べた。
ハマスの報道官が16日に動画を通じて明らかにしたところによれば、ハマスはガザに人質として200─250人のイスラエル人を拘束している
一方、イスラエル軍によれば、ガザの人質は199人だという。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは、ガザに人質として200─250人のイスラエル人を拘束している。ハマスの報道官が16日に動画を通じて明らかにした。
イスラエル軍の報道官は16日、バイデン米大統領のイスラエル訪問は「戦略的に重要」で、「中東全体にとり重要」という認識を示した。
米・イスラエルの当局者は、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相の招きで近くイスラエルを訪問する可能性について協議していると、事情に詳しい関係者が15日に明らかにした。
ワシントン:イスラエルがガザ地区を再び占領しようとする動きは「大きな間違い」であると、ジョー・バイデン米大統領が日曜日に発表したインタビューで語った。
イスラエルは、10月7日のハマスによる攻撃への復讐を求めて、過激派グループへの宣戦布告を行い、容赦ない爆撃作戦を開始し、作戦に先立ってガザ北部の100万人以上の人々に南へ移動するよう警告した。
CBSのニュース番組『60 Minutes』から、アメリカの同盟国によるガザ占領を支持するかどうか尋ねられたバイデンは、こう答えた: 「それは大きな間違いだと思う。
ハマスが「すべてのパレスチナ人を代表しているわけではない」と彼は続けた。
しかし、侵攻して「過激派を排除する」ことは「必要条件」だと彼は付け加えた。
ハマスの攻撃では、戦闘員が1,400人以上を射殺、刺殺、焼き殺したが、そのほとんどは民間人だった。
それ以来、イスラエルによる報復攻撃は、ガザの近隣地域を破壊し、少なくとも2,670人を殺害した。
イスラエルは、人道的災害を警告する援助団体や、紛争がエスカレートする恐れ、貧しく密集した占領地で武装勢力と民間人を分離することの難しさなど、ガザに地上軍を投入することの意味について重大な警告に直面している。
イスラエルは1967年の6日間戦争で初めてガザを占領し、2005年にようやくパレスチナ人に完全に返還された。
その1年後、イスラエルはエジプトと地中海に接するこの140平方マイル(362平方キロメートル)の土地を空、陸、海で封鎖した。
2007年、イスラエルは、ハマスがパレスチナ大統領のマフムード・アッバス氏が率いる世俗的なファタハ運動からガザを掌握した後、封鎖を強化した。
バイデンが “臆病者の集団 “と評したハマスだが、これを完全に排除しなければならないかとの質問に、彼はこう答えた: 「そうだ。
「しかし、パレスチナ当局は必要だ。パレスチナ国家への道筋が必要だ」と続け、2国家解決を求める米国の長年の要求を繰り返した。
60ミニッツのジャーナリスト、スコット・ペリーもバイデン氏に、米軍が戦争に参加する可能性はあるかと尋ねた。
アフガニスタンから米軍を撤退させ、ロシアの侵攻を食い止めるウクライナを支援するために米軍が派遣されることはないと主張してきたバイデンは、「その必要はないと思います」と答えた。
「イスラエルは国内でも有数の戦闘力をもっている。必要なものはすべて提供すると保証する」と彼は言った。
アメリカはすでに2隻の空母を地中海東部に派遣し、イスラエルへの強力な支援を表明している。
サリバン安全保障顧問は、米国はイスラエルに対し、いかなる行動も戦争法に従うべきであり、「民間人は安全な場所に避難する真の機会を持つべきだ」と語っている。
イランの支援を受けたヒズボラがイスラエル北部に第二戦線を開く可能性があり、エスカレートのリスクが指摘されている。
この地域における米軍のプレゼンス向上は、「この戦争をエスカレートさせようとする国家や非国家主体を抑止するため」を意味する。
ワシントン:米国高官は日曜日、イスラエルと過激派組織ハマスとの間の戦争がエスカレートする可能性があると警告した。
イスラエルは、8日前にハマスがイスラエル国内を攻撃し、民間人を中心に約1300人のイスラエル人が死亡するという前代未聞の事態を引き起こしたことへの報復として、ガザ上空で猛烈な爆撃作戦を展開している。
ガザ当局によれば、2,670人以上が死亡し、その4分の1が子どもだという。イスラエルは、この人口密度の高い小さな飛び地に対する地上攻撃を数日以内に開始する準備を進めており、死傷者はさらに増えると予想されている。
紛争は緊張を高めている。
「ホワイトハウスのジェイク・サリバン国家安全保障顧問はCBSに対し、「この紛争がエスカレートし、北部で第二戦線が開かれる危険性がある。
ロイド・オースティン米国防長官は土曜日遅く、第二空母群の配備を発表し、「この戦争をエスカレートさせようとする国家や非国家主体を抑止する我々の決意の表れ」と述べた。
空母ドワイト・アイゼンハワーは、地中海東部の巨大空母ジェラルド・R・フォードを含む小さな艦隊に加わる。
「イランは解き放たれるのをまっている。
空母は軍艦と攻撃機を伴っている。これが地域紛争に発展しないよう、あらゆる努力が払われている」。
イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は日曜日に、自国が行動を起こす可能性があると警告し、アルジャジーラに対し、イスラエル政府高官に「もし彼らがガザでの残虐行為をやめないなら、イランは単に傍観者でいることはできない」というメッセージを伝えたと語った。
「戦争の範囲が拡大すれば、アメリカにも大きな損害が及ぶだろう」と警告した。
イスラエル北部国境での暴力はすでにエスカレートしている。レバノンのイランが支援するヒズボラの戦闘員たちは、日曜日にイスラエル軍の駐屯地と北部国境の村を攻撃した。
米国はイスラエルに対し、ガザに閉じ込められている住民のための人道的活動を可能にするため、地上攻撃を控えるよう求めている、と複数の米政府高官が語った。
サリバン氏は、イスラエルとウクライナに対する新たな武器供与について言及した。彼はCBSに対し、ジョー・バイデン大統領が今週、共和党が下院の新議長を選ぶのに手こずっているアメリカ議会と、このパッケージについて集中的な協議を行う予定だと語った。
チャック・シューマー上院院内総務は、日曜日にテルアビブで演説し、イスラエルへの資金援助を承認するために上院が先に動く可能性があると述べた。「我々は下院を待っているわけではない」と述べた。
共和党のリンジー・グラハム上院議員は日曜日、サウジアラビアとイスラエルの交渉継続を後押しするため、数日中に他の上院議員とともにこの地域を訪問すると述べた。
グラハム氏は、イランがイスラエルを攻撃した場合、「イランを石油ビジネスから締め出すために、イスラエルと共同で米国が軍事行動をとることを認める」法案を提出するつもりだと述べた。
人道的危機
米政府高官もまた、残忍な地上攻撃を想定し、ガザの人道的危機を緩和するために準備していると述べた。
イスラエル政府高官は、簡単かつ迅速な作戦ではないことを明らかにしている。イスラエルは、10月7日にハマスに拉致された数多くの人質が、地下トンネルの巣窟に囚われている可能性があるという難題に直面している。
バイデン氏はX(旧ツイッター)に投稿したメッセージの中でこう述べた: 「圧倒的多数のパレスチナ人が、ハマスのひどい攻撃とは無関係であり、その結果苦しんでいるという事実を、我々は見失ってはならない。
米国は、デイヴィッド・サターフィールド元トルコ大使を中東人道問題特使に任命した。国務省は、サターフィールド特使がガザ危機に焦点を当て、「最も弱い立場にある人々への救命支援の提供を促進し、市民の安全を促進するための活動を含む」と述べた。
「我々はイスラエルに対し、地上での行動を遅らせるよう働きかけている」と、事情に詳しい米政府関係者は語った。米国がイスラエルに対して、民間人のための地上戦を遅らせるよう働きかけているのか、と直接尋ねられたサリバン氏は、NBCに対し、「われわれはイスラエルの軍事計画に干渉しているわけでも、軍事計画に具体的な指示や要請を与えようとしているわけでもない」と答えた。
しかし、米国はイスラエルに対し、いかなる行動も戦争法に従うべきであり、「民間人が安全な場所に移動する真の機会を得るべきだ」と述べている。
アントニー・ブリンケン米国務長官は日曜日に、エジプトが管理するガザへの国境越えは再開されるだろうと述べ、米国はエジプト、イスラエル、国連と協力し、この国境越しに援助を受けられるよう努力していると述べた。
数カ国からの何百トンもの援助物資は、ガザへの安全な輸送と、ラファ国境を通る外国人パスポート保持者の避難のための取り決めがなされるまで、何日もエジプトのシナイ半島で留め置かれている。
サリバン氏はNBCに対し、「今のところ、アメリカ市民を国境を通過させることはできていないし、現時点で脱出できる人がいることも確認していない」と語った。
また、ガザに残っている民間人が食料、水、安全なシェルターにアクセスできるようにしたいと付け加え、CNNのインタビューでは、イスラエル当局が最近、”ガザ南部で水道管を元に戻した “と述べた。
共和党のリンジー・グラハム上院議員は、イスラエルによるガザ攻撃は血なまぐさいものになるだろうとロイターに語った。
「市街戦になるだろう。国際社会からはイスラエルに撤退を求める声が上がるだろうが、イスラエルにハマス殲滅のための時間と空間を与えることが不可欠だと思う」。
パレスチナ大使は、イスラエルのガザ砲撃で自分の家族や友人が家を失ったと語った。
パレスチナ自治政府は、パレスチナ人であれイスラエル人であれ、すべての民間人の命が失われたことを非難すると明言した。
同氏は、米国や他の西側諸国は調停者としての信頼性を失ったと考え、代わりに日本が重要な役割を果たすことを支持すると述べた。
アラブニュース
ドバイ:国際社会がイスラエルとパレスチナの武装組織ハマスとの対立のさらなる激化を防ぐために介入しなければ、ガザは「完全な破壊」と「大量虐殺」に直面するだろうと、パレスチナの大使が語った。
アラブニュースの番組『フランクリー·スピーキング』で、駐日パレスチナ代表大使のワリード·アリ·シアム氏は、イスラエルによるガザ包囲と砲撃に巻き込まれた自身の家族について語った。
「第一に、残念ながら私の家は今朝破壊された。しかし、何百もの家が破壊され、人々が耐えていることに比べれば、そんなことは何でもない」とシアム氏は番組の司会者ケイティ·ジェンセンに語った。
「私の家族や友人たちは各地に散らばっている。何人かは家を失った。そのうちの一人、親族の7歳の少女が私に言った。私は今日、子供時代を失ったと。私は子供時代のすべてを失ったと」
ハマスの過激派が前例のない国境を越えた攻撃を開始し、数百人の兵士や市民を殺害、多数の人質を取り、イスラエルの都市に向けてロケット弾を乱射した。その翌日の10月8日以来、ガザはイスラエルによるミサイルや砲撃の集中砲火を浴びている。
ムスリム同胞団から生まれたイスラム教スンニ派のグループであるハマスだが、シーア派のイランや、レバノンのヒズボラを含むその代理勢力から支援を受けている。ハマスは今回の「アル·アクサの洪水」作戦は、パレスチナ人の殺害とエルサレムのアル·アクサ·モスクの冒涜に対する報復であると述べている。
砲撃に加え、イスラエルは近く予想される地上侵攻に先立ち、ガザとの境界沿いに軍隊を集結させ、領土北部のパレスチナ市民に南への避難を指示、同時に電力、水、食糧や医薬品の配送を遮断した。
イスラエルのジェット機や大砲が人口密集地の建造物を無差別に破壊しており、民間のインフラもこれに巻き込まれている。
国連当局者はイスラエルに対し、市民生活の保護を要求し、集団的懲罰行為を非難する戦争のルールを尊重するよう求めている。シアム氏は、がれきだらけの道路が通行不能になり、イスラエル軍の砲撃が激しさを増すなか、家族は自宅を逃れてから安全な場所を見つけられずにいると語った。
「彼らはホテルに行ったが、そこから出ていくように言われた。イスラエル人の警告があったからだ。つまり、イスラエル軍は時間をおいてそこを爆撃するのだろう。だから今、彼らは通りから通りへと逃げ回っている」
「そして残念なことに、通りは破壊された建物のがれきでいっぱいだ。歩くこともできない。ガザには道が少ない。だから、彼らがどうしたら良いのか私にはわからない。本当にわからない」
「私たちは何人かの友人を失い、何人かの家族を失った。しかし、何と言ったらいいのか……つまり これは私たちにとって新しいことではない」
イスラエルとパレスチナの紛争が長く続いていることや、相互の反感に関係なく、シアム氏は、どちらの側でも民間人の殺害を正当化することはできないと述べた。パレスチナ自治政府は、民間人の殺害や誘拐、意図的な標的を非難するのかとの質問に対し、彼は「パレスチナ人であれ、イスラエル人であれ、民間人の命が奪われることを非難する。今日も、明日も、永遠に」と答えた。
ここ数十年で最大かつ最悪の中東紛争のエスカレーションである現在の危機の結末に関して、シアムの予測は厳しいものだった。「ガザの完全破壊、ガザ市民の大量虐殺。それだけだ」
「完全なる破壊だ。残念なことに、私たちはそう予見している。国際社会が一刻も早く介入しないかぎりは」
2007年以来のハマスによる統治、何年にもわたる効果的な禁輸措置、そしてイスラエルとの武力衝突で日常的に砲撃を受けているこの貧しい領土は、現在の包囲に耐えられる状態にはない。
この飛び地の唯一の発電所はすぐに機能を停止した。東はイスラエル、西は地中海、南はエジプトとの国境に閉ざされた人口220万人が最悪の事態に備えるなか、スーパーの棚は空になっている。
国際機関からの援助物資が届かないため、負傷した市民が殺到し、医薬品や備品の在庫が急速に底をつき、医療は圧迫されている。イスラエルは、エジプトからラファ検問所を通ってガザに向かう援助トラックを爆撃するという警告さえしていると伝えられている。
「私たちは今、人道的危機に陥っている」とシアム氏は語った。「電気もない、食料もない、水もない、薬もない……20万人以上のパレスチナ人が家を失っている。私たちは今、その中にいる。そして、この状態が続かないことを願っている」
シアム氏は、イスラエルは非国家主体との戦いを宣言しているため、国際人道法や戦争の確立されたルールの下、イスラエル側にはハマスの行動のためにガザの市民を罰する正当性はないと言う。
「イスラエルは国際法によって非国家に対して宣戦布告しているのだから、毎日砲撃を受けている民間人への人的支援や食料、電気、水の供給を止める権利はない」
「だから私は、国際赤十字や国際社会、特にアラブの同胞たちが、一刻も早くすべての援助をガザに入れるよう圧力をかけるべきだと確信している」
西側諸国はすぐにハマスの攻撃を非難し、イスラエルとの連帯を表明した。アメリカは2隻の軍艦を東地中海に派遣し、アントニー·ブリンケン米国務長官はテルアビブを訪問した。
国連の職員や援助機関が、イスラエルに戦争のルールを守り、民間人の犠牲を避け、ガザへの人道的援助の流れを許可するよう、自制を求める役割を果たしている。
「自制すべきはイスラエル側であって、パレスチナ側ではない」とシアム氏は語った。「イスラエルは世界で10番目に強力な国だ。そして、アメリカは世界で最も強力な国のひとつだ」
「その両者が、ガザにいる220万人の市民や、武装した3万から4万人のいわゆるイスラム戦士やハマスの戦闘員と戦っている。100万人の兵士に対して5万人というのは、実に不釣り合いだ」
「イスラエルはパレスチナの市民の生活と家を破壊し、彼らがやってもいないことで彼らを罰している。これは集団的懲罰だ。これは戦争犯罪だ。イスラエルに何か悪いことをした一部の住民のために、全住民を罰することはできない」とシアム氏は付け加えた。
米国、EU、その他の西側諸国政府によってテロ組織に指定されているハマスによるイスラエル民間人への攻撃は、パレスチナの大義を支持する人々によって広く非難されている。しかし、多くの人々は、この攻撃が何の理由もなく発生したものではないことも指摘している。
イスラエル·パレスチナの対立は、度重なる和平イニシアティブや一国または二国の解決策の提案にもかかわらず、75年間にわたり未解決のままである。その一方で、イスラエルの違法入植地はヨルダン川西岸地区に広がり続け、毎日のように暴力事件が起きている。紛争のもうひとつの火種は、ユダヤ教で最も神聖な場所であり、イスラム教で3番目に神聖な場所であるアル·アクサ·モスクがあるエルサレムである。
これらの聖地に対する日常的な挑発行為や侵入は、たびたび衝突に発展している。ヨルダン川西岸地区のパレスチナ自治政府を支配するファタハと、ガザを支配するハマスの分裂がパレスチナの大義を損ない、イランの利益のために利用されていると分析する人もいる。
シアム氏は、イランの強力なイスラム革命防衛隊(IRGC)の代理勢力として広くみられているハマスの台頭がパレスチナの大義を損なう一方で、イスラエルのシナリオに利益をもたらしていると考えている。
「ウィキリークス(WikiLeaks)が2007年に公開したファイルによると、イスラエル軍情報部門責任者のアモス·ヤドリン氏は、ハマスがガザを占領すればイスラエルは喜ぶだろう、そうすれば我々はガザを敵対国家として扱うだろう、と言っている」と彼は語った。「我々は最初に、イスラエル人に尋ねなければならない。ハマスとは何者なのか、誰が彼らを支持しているのかと」
「私の仕事は、パレスチナ政府を代表し、そしてパレスチナ国民を代表することだ。私は、私の人々を代表することに何の問題も感じていない。なぜなら、私たちには大義があるからだ。私たちは、過去75年間、独立した国家のために戦ってきた。そして、私たちは、国連憲章や国際法に則り、あらゆる形や方法で戦い続けるだろう」
「だから、私は大使として、自国民とその大義を代表することに迷いはない。10月7日に起きたことについては、私にとっては1948年の第一次中東戦争に始まる歴史の中で起きた出来事だ。10月7日から始まるものではない」
米国は中東和平プロセスの仲介者として関与し続けるべきだと思うかと問われ、彼はこう答えた。「米国は私たちとイスラエルとの交渉に関与する国にはなり得ない。米国は交渉のテーブルにつく国のひとつであるべきだ。私は、日本がその主要な役割を果たすべきだと信じている。アメリカや西洋諸国ではない」
シアム氏はこの点についてさらに詳しく語った。「私たちは、フランスやイギリス、その他の国々が、パレスチナ人が人間であることを忘れてしまったような発言をするのを見てきた。私たちは、イスラエルのヨアブ·ガラント国防相が述べたような『動物のような人間』ではない。私たちは人間であり、大義があり、正当な理由があるのだ」
日曜日、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、リヤドでアンソニー・ブリンケン米国務長官と会談し、現在のガザでの戦闘の激化について話し合った。
会談で、皇太子は罪のない人々の命を奪っている軍事作戦を停止する方法を話し合う必要性を強調した。
皇太子は、事態の沈静化、現在の戦闘の激化の停止、ガザ地区包囲の解除を含めた国際人道法の尊重、そして安定と回復のための条件整備に努めるサウジアラビアの努力を強調した。
皇太子は、サウジアラビアはパレスチナの人々が正当な権利を獲得し、公正で永続的な平和を実現するための和平の道を求めると述べた。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、いかなる形であれ民間人を標的にしたり、日常生活に影響を及ぼすインフラや主要関心事項を破壊したりすることを拒否するというサウジアラビア王国の姿勢を強調した。
会談にはマイケル・ラトニー駐英米国大使のほか、ダーク・シュレット米国務省顧問、バーバラ・リーフ中近東担当国務次官補、トム・サリバン国務省政策担当副大臣も同席した。
パレスチナ・イスラエル紛争の歴史において、ハマスは例外的な組織ではない。作戦を自慢するのであれば、他のパレスチナの組織も先行してハマスに劣らない作戦を遂行している。違いは、当時の撮影手段が限られていたことと、メディア機関が閉鎖的だったことだ。
指導者「アブ・ニダル」の名で知られる「ファタハ革命評議会」は、20カ国で約2000人を殺害し、航空機や船をハイジャックし、政治家を暗殺した。ジョージ・ハバシュを指導者とする左翼グループ「パレスチナ解放人民戦線(PFLP)」は、ウィーンでのOPEC会議で石油相を誘拐し、飛行機に乗せ、アルジェリアに連れ去るなど、大規模な作戦を実行した。別の作戦では、アンマン空港で一度に3機の飛行機を爆破した。
「アブ・ニダル」とPFLPはシリアとイラクで姿を消したが、ファタハ運動は存続し、パレスチナの地に定着した。その運動と武装活動は、国家的政治プロジェクトの一部である。
ハマスは10月7日の大規模な攻撃がきっかけとなったこの戦争を乗り切ることはできないかもしれない。運動の指導部は、攻撃計画を採用したとき、そのことを認識していたと私は想像している。というのも、紛争は通常、損失のバランスによって支配されるからだ。過去には、ハマスは戦闘訓練を受けた志願兵を欠いていたわけではなかったが、それでも作戦に関与した個人は両手の指で数えられるほど少なかった。バランスは、両当事者が受け入れる必要があった紛争の計算の一部だった。同様に、イスラエルは、数々の小規模な戦闘を経ているが、ヒズボラを攻撃することはめったにない。攻撃するとしても、おそらく10年に1度、ヒズボラの人的・軍事的能力が脅威と見なされるまでに成長したとイスラエルが判断したときだけだろう。
武装民兵は紛争の段階を解決するものではなく、その反響が世界にどれほど響き渡ったとしても、すぐに忘れ去られてしまう。パレスチナ自治政府(PA)が「ファタハ」が率いる「パレスチナ解放機構(PLO)」だった頃、PAは亡命政府として、パレスチナ問題を政治的、軍事的、社会的に管理していた。ベイルートから追放された後、マドリードで中東和平会議が開催され、その後締結されたオスロ合意を通じて約束の地であるヨルダン川西岸地区に戻り、合法的な権威へと変貌を遂げた。今日、困難な日常生活状況の改善と、独立したパレスチナ国家の樹立の両方を望むパレスチナ人にとって、それは希望かもしれない。
イスラエル側は、PAはその責任を果たす能力がなく、PAの指導者であるマフムード・アッバース大統領やその同僚たちは年をとり、以前のPAの指導者たちほど有能ではないと主張して、依然としてその実現を拒否している。
一方、イスラエルには現在、イツハク・ラビンなどの歴史的指導者がいなくなったと言える。ベンヤミン・ネタニヤフ現首相は、多くのイスラエル人から腐敗した日和見主義者であり、以前の取り組みのいずれにおいても和平のパートナーではなかったと見なされている。実際、服役を避けるため、ネタニヤフ首相はライバルや党内の同僚との闘争に従事している。
この地域は現在、成長・拡大しかねない極めて危険な危機に直面している。ガザに加えて、破壊はヨルダン川西岸地区にまで及ぶかもしれない。レバノンで戦争が勃発し、戦火が地理的に拡大し、戦闘が長期化する可能性がある。
私は、この戦争と、在ロンドン・イスラエル大使暗殺未遂事件の後に当時のイスラエル国防相アリエル・シャロンが指揮した1982年のベイルート侵攻(ベイルート戦争)の間に類似点があると見ている。皮肉なことに、実行犯は「アブ・ニダル」グループ出身であり、シリア政府はその関与を非難された。しかし、代償を払ったのはPLOであった。イスラエルはPLOをチュニジア、スーダン、イエメンへと追放した。実際には、武装運動としての「ファタハ」は終焉を迎えた。
イスラエルの作戦と声明は、ハマスとその戦闘員の大半を、エジプトを通じてガザ地区から追放することを含め、排除するつもりであることを示している。
北部のヒズボラが戦争に関与する可能性は低い。なぜなら、戦争への関与はイスラエル軍がレバノン南部に戻ることを意味するからだ。ヒズボラの能力が破壊されれば、ヒズボラにとって軍事的・政治的により重要になっているシリアでの弱体化につながり、レバノンに対する完全な支配を失うかもしれないことをヒズボラは認識している。
ここで再び、なぜハマスはこの大規模な攻撃、「イスラエルの9・11」と呼ぶ人もいる今回の攻撃を実行したのか、という問いに立ち戻ってみよう。これは集団自殺なのか、それともパワーバランスのジレンマを解消するための手段なのか。9・11の攻撃後、アルカイダのメンバーはアフガニスタン国家を統治する組織から洞窟で暮らす組織になり、指導者のウサーマ・ビン・ラーディンはパキスタンに、彼の子供たちはイランに潜伏することになった。しかし、アルカイダがハマスと異なるのは、その目的が現代に居場所のない歴史上の空想である「カリフ国家の設立」であるのに対し、パレスチナの目的は現実的であり、大きな希望を抱いているという点である。
しかしながら、私たちは今、1つの機会に直面している。英国のウィンストン・チャーチル元首相は、悲惨な第二次世界大戦の後、国連で「良い危機を決して無駄にするな」と言った。
ハマスはこの道を選び、イスラエルは力によってガザの現実を変え、ハマスに終止符を打つことを決めた。どちらの当事者も、紛争を思い通りに解決することはないだろう。ハマスがパラグライダーでパレスチナを解放することはなく、ネタニヤフ氏がパレスチナ人の国家樹立の決意を消滅させることもないだろう。
ドイツのショルツ首相は17日にイスラエルを訪問し、その後にエジプトを訪れる。関係筋が16日、明らかにした。
関係筋によると、ショルツ首相は17日にベルリンでヨルダンのアブドラ国王と会談を行った後、イスラエルに向けて出発する。
ドイツ政府報道官はショルツ首相の予定について確認していない。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの戦闘が激化する中、ドイツからはベーアボック外相が先週、イスラエルを訪問。英国のクレバリー外相もイスラエルを訪問したほか、米国のブリンケン国務長官はイスラエルを含む中東諸国を歴訪している。
イスラエルの通貨シェケルが16日の市場で一段と軟化している。2015年以来初めて、心理的に重要な水準とされる1ドル=4シェケル台に一時下落した。イスラム組織ハマスとの軍事衝突に対する投資家の不安を反映した。
ハマスが7日にイスラエルへの攻撃を行って以来、シェケルは対ドルで約4%下落。直近では0.7%安の1ドル=3.9981シェケルだった。
イスラエル中銀は市場介入する水準を明言したことはないが、市場関係者は1ドル=4シェケルが心理的に重要とみている。市場はまた、イスラエル中銀による利下げを織り込み始めている。
イスラエルの信用リスクにも懸念が高まっている。5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドは、13日終値から3ベーシスポイント(bp)上昇の125bpと、数十年ぶりの高水準に達した。
ロイター/イプソスの世論調査から、超党派の米国民の大半は、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの衝突が続く間、ガザのパレスチナ市民の退避を米国が支援をすべきと考えていることが分かった。
調査は12─13日に実施され、米成人1003人(民主党94%、共和党71%含む)が回答した。
回答者の78%が「米外交官はガザの戦闘を逃れた市民が安全な国に移動できることを可能にする計画に積極的に取り組むべき」という見方に賛成した。反対は22%だった。
また、回答者の81%が「イスラエルはハマスに対する報復攻撃で民間人殺害を避けるべき」という見方に賛成、反対は19%だった。
今回の衝突におけるイスラエルへの支持がこれまで以上に強いことも分かった。41%が今回の衝突で「米国はイスラエルを支援すべき」、2%が「米国はパレスチナを支援すべき」と回答。2014年のイスラエル軍によるガザ攻撃時に実施された調査では22%がイスラエル、2%がパレスチナへの支持をそれぞれ望むとしていた。
同時に他の回答も目立ち、米国は「中立的な調停者であるべき」という回答は27%、「全く関与すべきでない」は21%だった。
若年層の間では、イスラエルに対する支持が比較的低いもようだ。米国が中立的な調停者となるべきという回答は、40歳以上では19%だった一方、40歳未満では約40%と、おそよそ2倍に達した。
さらに、40歳以上の回答者の53%がイスラエルに支持を表明した半面、40歳未満は20%だった。
また、回答者の約69%が戦闘に関するニュースを「非常に注視」、もしくは「ある程度注視している」と回答し、関心の強さをうかがわせた。
今回の衝突で誰に最も責任があるかという質問に対しては、回答者の49%がハマス、9%がイスラエルという選択肢を選んだ。
中東和平の仲介役としてバイデン大統領を信頼するという回答は26%、2024年米大統領選で再選を目指すトランプ前大統領については32%。その他は、どちらも信頼できない、もしくはどちらか良いか分からないと回答した。
ブリンケン米国務長官は16日、イスラム組織ハマスとの軍事衝突が続くイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と人道支援を巡り会談した。国務省が発表した。
同省のマシュー・ミラー報道官によると、両氏は民間人の人道支援を促進するため、国連や中東諸国との緊密な連携について話し合ったという。
中東情勢が緊迫化する中、ロシアのプーチン大統領は16日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの間の停戦確保に向け、イランのライシ大統領のほか、シリアのアサド大統領、パレスチナ自治政府のアッバス議長、エジプトのシシ大統領と電話会談し、民間人に対するいかなる暴力も容認できないと表明した。
ロシア大統領府(クレムリン)によると、会談では「紛争が地域戦争にエスカレートする可能性を巡り深刻な懸念が示された」という。
プーチン大統領は戦闘阻止に向け、全ての「建設的なパートナー」と連携するというコミットメントを再確認した。
プーチン氏は、イスラエルのネタニヤフ首相とも電話会談する予定という。
ロシアはイスラエルやイランのほか、ハマスやパレスチナ自治政府などとも関係を持っており、プーチン氏は今回の危機の主要なプレーヤーと相次いで電話会談を行い積極的な外交を展開。タス通信によると、プーチン氏とアサド氏はガザ地区に人道支援を送りたいとの意向で一致したという。
ロシア国営通信によると、ウシャコフ大統領補佐官は情報機関や軍部の幹部らが出席する会議でプーチン大統領に対し、イスラエルがガザ地区に対する地上作戦を開始する恐れがあり、状況はエスカレートしていると報告。「この紛争全体が制御不能になる可能性が高い」と警告した。
プーチン大統領は中国が17─18日に開く巨大経済圏構想「一帯一路」の国際会議に合わせ訪中し、習近平国家主席と会談する。
イスラエルとイスラム組織ハマスは16日、エジプト、イスラエル、米国がパレスチナ自治区ガザ南部の停戦で合意したとするエジプト当局筋の発言を否定した。
エジプトは、ガザ南部ラファにあるエジプトとの境界の検問所について、イスラエルが支援物資の搬入と外国パスポート保持者の避難に協力していないとし、多くの物資が立ち往生していることを明らかにした。ラファは公式には閉鎖されていないが、イスラエルによるガザ側への空爆のため使用不能になっているという。
エジプトのシュクリ外相は記者団に対し、「ガザのパレスチナ住民の苦難の緩和が緊急に必要」としたが、イスラエルとの協議は実を結んでいないと述べた。
ブリンケン米国務長官は15日、ガザへの支援に向け、再開する見通しだと明らかにしていた。
エジプトの治安当局筋はこれに先立ち、エジプト、イスラエル、米国はガザ南部の停戦で合意し、ラファの検問所も再開するとロイターに明らかにした。ガザから外国人を避難させ、援助物を搬入するために0600GMT(日本時間午後3時)から数時間停戦し、ラファの検問所は同日1400GMT(同11時)まで再開されるとしていた。
しかし、イスラエルのネタニヤフ首相は合意を否定。首相府は「現在、ガザでは外国人退去と引き換えに停戦や人道支援は行われていない」とする声明を発表した。
ハマスの政治局幹部エザト・エル・レシク氏もロイターに、ラファが再開されたとか、停戦があったというメディアの報道は真実ではないと語った。
エジプトの治安関係者は停戦合意について事前に確認を受けていたとし、イスラエル側の否定に当惑していると語った。
ラファの関係者は16日は砲撃はなく、エジプト側から国境を越える準備ができていたと述べた。
エジプト北東部アリーシュの治安当局者と非政府組織(NGO)関係者は、検問所再開後も支援トラックがまだ待機していると述べた。ロイターはトラックがラファへの移動の許可を待っている様子を確認した。移動には数時間かかる可能性がある。
中国の王毅外相は16日、イスラエルでの流血の事態に歯止めをかけるため、停戦を呼びかけた。
王氏は北京でロシアのラブロフ外相と会談。人道上の危機を回避するため大国が行動すべきだと主張した。
中国語の筆記録によると、王氏は会談で「国連安保理が行動を起こし、大国が積極的な役割を果たす必要がある」とし「停戦を実現すること、双方が交渉のテーブルに着くこと、さらなる人道上の危機を回避するため緊急人道支援ルートを設置することが極めて重要だ」と述べた。
ロシア外務省によると会談では「中東情勢を含む幅広い国際問題と地域問題について徹底的な意見交換が行われた」。ウクライナにおける軍事衝突と「政治・外交的方法」による解決への取り組みについても議論したという。
パレスチナ自治政府の通信社WAFAは15日、イスラム組織ハマスの行動を批判するアッバス自治政府議長の発言を公表したが、後でハマスに言及した部分を削除した。理由は明らかにしていない。
WAFAがウェブサイトに掲載した当初の発言は「ハマスの政策と行動はパレスチナ人民を代表するものではなく、(パレスチナ解放機構の)政策、プログラム、決定がパレスチナ人民を代表し、唯一の正統な代表だと議長は強調した」としていた。
この部分は数時間後に「パレスチナ解放機構の政策、プログラム、決定がパレスチナ人民を代表し、唯一の正統な代表だ。他のいかなる組織の政策でもないと議長は強調した」に修正された。
ハマスへの言及が削除された理由は明らかにされなかった。アッバス氏の事務所やWAFAからのコメントはない。
中東を歴訪中のブリンケン米国務長官は15日、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突を地域に波及させないという米国の決意をアラブ諸国と共有したと表明した。16日にイスラエルを再訪問し、今後の対応について協議するという。
ブリンケン氏は12日にイスラエルを訪問。その後、カタール、ヨルダン、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、エジプトを相次いで訪れた。
エジプトを発つ前、「私が訪問した国はいずれも、この紛争が広がらないようにする決意がある。波及を防ぐためにそれぞれの影響力や関係を生かしている」と記者団に述べた。
ブリンケン氏は15日にリヤドでサウジのムハンマド皇太子と会談。その後カイロでエジプトのシシ大統領とも会談した。
シシ氏は、イスラエルの対応が自衛の権利を超えているとブリンケン氏に語った。
ブリンケン氏はサウジ皇太子との会談について「非常に生産的」だったとした。
国営サウジ通信(SPA)によると、皇太子は紛争を止める方法を見つけることや、イスラエルによるガザ封鎖解除など国際法を尊重することの必要性を強調した。
バイデン米大統領は15日に放送された報道番組「60ミニッツ」とのインタビューで、イスラエルがイスラム組織ハマスとの衝突で戦時ルールに沿って対応することを確信していると語った。また、米軍派遣の必要はないとも述べた。
ハマスは完全に排除される必要があるとの見解を示す一方、パレスチナ国家樹立の道筋が必要とも述べた。
また、中東情勢の混乱を受けて米国内でテロの脅威が高まっていると警戒感を示した。
バイデン米大統領は安全保障問題に集中するため、16日に予定していたコロラド州訪問を取りやめたとホワイトハウスが発表した。バイデン氏はイスラエル訪問を検討している。
イスラエルとハマスの紛争激化が民間人に及ぼす危害を最小限に抑え、紛争の拡大を防ごうと米国は取り組んでいる。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官はニュース専門局のMSNBCで、「大統領は本日、国家安全保障の問題に集中するためホワイトハウスにいることにした」と発言。「大統領は国家安全保障チームと協議する予定だ。この問題が最重要議題なのは明らかだ」と話した。
イランのアブドラヒアン外相は16日、イスラム組織ハマスとイスラエルの戦争は拡大がますます避けられなくなりつつあると警告した。ハマスの主要な後ろ盾であるイランが、広範な衝突に備えていることを示唆した。
同外相は「政治的な解決の時間はなくなりつつあり、戦争が他の戦線に拡大する可能性が避けられない段階に近づいている」と、X(旧ツイッター)に投稿した。
イランはガザのハマスやレバノンのヒズボラなど、中東各地の武装集団を支援しているが、今月7日にイスラエルで1300人が死亡したハマスの前例のない攻撃については関与を否定している。
中東で最も強力な民兵組織の一つであるヒズボラは、過去1週間にイスラエル軍とレバノンとの国境付近でたびたび交戦。イスラエル北部で第2の戦端が開かれるとの見通しが強まっている。
アブドラヒアン外相は先週中東を歴訪し、カタールでハマス、レバノンでヒズボラの指導部とそれぞれ会談した。2006年にイスラエルと1カ月にわたって戦ったヒズボラは、行動の用意はできていると警告した。
一方、ブリンケン米国務長官は16日朝、アラブ諸国当局者との会談後にイスラエルを再び訪問した。バイデン大統領自身もイスラエル訪問を検討しており、ドイツのショルツ首相は17日のイスラエル入りが見込まれている。
米国、非公式ルートでイランに警告
米国はここ数日にイランと非公式ルートで協議を実施し、イスラエルでの戦闘をエスカレートさせないよう警告した。イスラエル軍はイスラム組織ハマスによる先週末の奇襲攻撃への報復として、ガザ地区への地上侵攻を準備している。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は15日、CBSの番組で「われわれにはイランと非公式にやり取りする手段がある。過去数日にこうした手段を利用して、われわれが公に述べていることを非公式に明確に伝えてきた」と話した。
イスラエルの対応、自衛の範囲を超えた
エジプトのシシ大統領は15日、イスラム組織ハマスの奇襲攻撃に対するイスラエルの対応は「自衛の範囲を超えている」とし、集団的懲罰に等しいとの見解を示した。同大統領はカイロでブリンケン米国務長官と会談した。
シシ大統領は、現在注力すべきなのはガザ地区住民への援助を促進し、イスラエルとハマスの紛争が拡大しないよう協力することだと述べた。
イスラエルの対応、自衛の範囲を超えた-エジプトのシシ大統領
イスラエルは、イスラム組織ハマスとの紛争が長引かない限り、健全な財政を裏付けに同国初となる格下げは回避できるだろうと、財務省当局者が語った。
同省国債業務担当部門の高官は、イスラエル国債の格下げは極端なシナリオだと、デリケートな情報であることを理由に匿名を条件に話した。より現実的な可能性としては、格下げ方向で検討する「クレジット・ウオッチ」に置かれることだと述べた。
戦争や紛争、世界的な経済危機を経て、これまでにイスラエルは主要格付け会社から一度も格下げされたことがない。ただ、格付け各社は司法当局の権限抑制に向けたイスラエル政府の取り組みを問題視しており、同国の格付けは7日のハマスによる前代未聞の攻撃開始以前からすでに圧力がかかっていた。
イスラエル国債のデフォルト(債務不履行)に備えるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドは先週、10年ぶりの水準まで急上昇。ペルーなどイスラエルよりも格付けが3段階低い国を上回った。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、最近の紛争に伴う広範な信用リスクを引き続き評価するとして、13日に予定していたイスラエル格付けの見直しを延期した。同社は先週初めに公表した別の資料で、紛争が長期化すれば、イスラエルの発行体格付けに影響が生じる可能性があるとの見解を示していた。

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