2025年12月1日月曜日

備忘録(25/12)

備忘録(2025/12/3)
●企業
●マクロ
中国が台湾に対して行動を起こす可能性への懸念が高まる状況にあって、トランプ米大統領は2日、米国の対台関与に関するガイドラインの見直しを国務省に義務づける法案に署名し、成立させた。ホワイトハウスが発表した。
法律では、このガイドラインの下で米台関係がいかに深化しているかを説明するため、定期的な見直しを国務省に求めている。少なくとも5年に1度の評価では、米台関与に関する米国側の自主的制限を緩和する機会を特定し、詳細に示すことも義務づけている。
法案を提出したワグナー下院議員(共和)は同法について、「中国共産党による地域支配という危険な試みに対し、われわれが断固として立ち向かうというメッセージを送るものだ」と表明した。
高市早苗首相が11月、中国が台湾に侵攻した場合、集団的自衛権を行使できる存立危機事態になり得ると答弁したことで中国側が反発。中国の習近平国家主席はトランプ氏との先月の電話会談で、台湾を自国領とみなす中国にとって統一が極めて重要な問題だと、あらためて強調していた。
台湾紙の自由時報は、トランプ氏の署名でこの法律が成立したことを受け、台湾当局者は米連邦政府機関を公務で訪問したり、代表事務所で米側と交流したりできるようになると、林佳竜外交部長(外相)を引用して報じた。同紙によれば、米台関係の正常化に向けたこのさらなる一歩を台湾外交部は歓迎している。
米国の指導者は伝統的に、台湾問題で「戦略的曖昧さ」のアプローチを維持してきた。このアプローチの下では、米国は武力行使の権利を留保しつつ、中国が台湾を攻撃した場合に介入するかどうかを明確にはしていない。
ロシアとウクライナの戦争を巡りトランプ米政権がまとめた28項目の「和平案」から、中国が教訓を引き出そうとしている。米国が合意の実現に向けてどこまで踏み込むのか、そして、それがロシアへの譲歩を意味するのかを注視している。
中国共産党の習近平総書記(国家主席)はこの機会を利用し、かねてから掲げてきた台湾を支配下に置く目標をさらに明確にしている。米国が一段と曖昧なシグナルを発する一方、習氏の意図はますますはっきりしており、台湾は危険な立場に置かれている。
台湾の行方が、ロシアのウクライナ侵攻と結び付けられた例は過去にもある。2022年に岸田文雄首相(当時)は「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と語った。
同様の見方を示すのは、オーストラリア軍の退役少将ミック・ライアン軍事ストラテジストで、中国がこの局面を利用して独自の構想を提示する可能性があると警鐘を鳴らす。
ライアン氏は習氏について、これまで軍事行動を伴わずに台湾を掌握することを好んできたと指摘した上で、「近い将来から中期にかけて、中国共産党がトランプ政権に対し、台湾を巡る28項目の計画を秘密裏または公に提示する可能性がある」と見方を示している。
その戦略はすでに中国政府が22年に公表した白書「台湾問題と新時代の中国統一事業」で明示されている。同白書は、台湾は歴史的に中国の一部だとし、国際社会の関与を拒み、統一は国家復興に不可欠だとしている。中国は目標達成のために武力行使も辞さない姿勢を示している。
中国政府は先月、ニュージーランド海軍最大の艦艇が台湾海峡を通過したことを受け、台湾海峡で「波風を立てるな」と警告した。この強い反応はニュージーランドだけでなく、この問題に関与しようとする台湾を支持する全ての国に向けられたものだ。
これはより広範な外交攻勢の一環だ。トランプ氏と習氏は11月24日に1時間の電話会談を行い、貿易問題に加え、高市早苗首相による台湾に絡む発言をきっかけに高まった日中間の緊張について協議した。
トランプ氏は会談後の声明で台湾について一切触れなかったが、中国外務省は習氏の台湾に関する発言を強調し、台湾の中国「復帰」は戦後国際秩序の不可欠な一部だと習氏が述べたと説明した。
この表現は意図的だ。習氏は自身を第2次世界大戦後に構築された国際秩序の擁護者として位置付け、台湾、さらには台湾を支持するあらゆる国を不安定化要因として描こうとしている。
これを受け、台湾は400億ドル(約6兆2100億円)を追加で投じる防衛支出計画を発表した。頼清徳総統は、資金は米国からの新たな兵器調達や、中国との「非対称」な戦力の強化に充てると表明した。
これには、有事の際、米軍が台湾に到着するまで中国人民解放軍に多大な損害を与えることを想定した小型で比較的安価な兵器も含まれる可能性がある。台湾が発したこのメッセージは、北京と同時にワシントンにも向けられている。
頼氏が不安を抱くのも無理はない。同僚のコラムニスト、ハル・ブランズ氏が論じるように、台湾の安全保障にとって今後数カ月が極めて重要になる可能性がある。トランプ氏が中国との関係改善に関心を向けているように見える一方、習氏は統一を巡る発言で一段と強気の姿勢を示している。
地域安保の中心
台湾は世界経済の重要な柱であり、最先端半導体の約90%を製造している。深刻な中台衝突が起これば、スマートフォンや自動車、人工知能(AI)向けデータセンターなどあらゆるサプライチェーンに大きな穴が開くことになる。
米政府はこの脅威について幻想を一切抱いていない。超党派の議会諮問機関、米中経済安全保障調査委員会(USCC)の最新報告書は、台湾侵攻能力を中国が高めており、ほとんど前触れなく海上封鎖や攻撃を開始し得ると分析している。
報告書は中国政府の発信内容が相手によって変わる点にも言及。英語では緊張を和らげる一方、国内向けには台湾が「挑発」しているとして、行動を正当化しようとする傾向が強まっている。人民解放軍は現代化を着実に進め、米軍との戦力格差を縮めている。
頼氏の防衛計画は理にかなっているが、野党側が多数派を握る立法院(国会)で審議が停滞する恐れもある。台湾はドローン(無人機)やミサイル、機動発射装置、耐性ある指揮系統への資金拠出を進めるべきだ。また民間防衛訓練や中国の影響力工作への対抗策も一層の強化が求められる。
日本や豪州、韓国、フィリピンといった米国のアジア同盟国も、協力を深め、台湾防衛を地域安全保障の中心に据える必要がある。台湾海峡での航行継続は、中国を刺激するリスクがあるものの、国際法の重要性を改めて示す上で大きな意義がある。
トランプ大統領のウクライナ和平案は、台湾周辺で起きている事態から遠いものに思えるかもしれない。だが、中国政府はこれこそ好機だと見ている。
ティモシー・ガイトナー氏は、自身のキャリアを通じて日本とも深く関わった元米財務長官だが、予測をそれほど重視していなかった。若手時代に東京で四半期ごとの経済見通しを作成した際、どんなに優れた予測でも結局は「根拠のある推測」に過ぎないのだと理解した。
円相場の転換点を見抜く難しさは、ガイトナー氏が回顧録で指摘したこうした点を裏付けている。同氏は円買い、円売り両方の為替介入に関わったことがある人物だ。円相場が1ドル=160円に迫り、日本当局が円安に歯止めをかけるため、介入にいつ踏み切るのかとの臆測が広がる中、断定がいかに危ういかを思い出す必要がある。1日当たりの取引が9兆6000億ドル(約1500兆円)規模に膨らんだ外国為替市場であればなおさらだ。
片山さつき財務相は、円の弱気派に対する警告を強めている。先月には記者団に対し、「投機的な動向も含め、為替市場における無秩序な動きについては必要に応じて適切な対応を取る」と述べた。
財務省は、一方的かつ急速な動きとみられる状況に強い懸念を抱いている。だが、こうした評価は見る側によって異なる面がある。大台に近付く中では、絶対水準も無視できない。
偽りの夜明け
為替介入は、通貨を問わず持続的な反転をもたらすことはほとんどない。だからこそ、今回の局面に至る経緯を振り返ることは重要で、偽りの夜明けが何度も繰り返されてきたことを踏まえればなおさらだ。一つ明確なのは、2024年前半に広まった「マイナス金利の解除が円の新たな出発点になる」という考えが誤っていたということだ。
確かに、日本銀行が24年3月に利上げに踏み切ったこと自体は注目すべき出来事だった。しかし、海外に積み上がった巨額の資金がすぐに国内に戻り、国際金融の新たな時代を切り開くという見方は願望に近かった。円相場の基調を根本的に変えるには、日銀が本格的な利上げに踏み切り、米国との金利差を大幅に縮める必要がある。
だが、植田和男総裁は慎重姿勢を崩していない。日銀はその後、小幅な利上げを2回行い、政策金利を0.5%に引き上げたが、最後の利上げは今年1月だった。追加利上げ観測はあるものの、日銀は言葉の上では現状維持へと後退している。政府から独立しているが、実際には財務省との摩擦を避ける意識が働く。
金利差を巡る主張にも限界がある。例えば、韓国は早期かつ頻繁に利上げを実施していたが、それでもウォンはドルに対して下落傾向にあった。
予測を絶対視できず
日銀の年内最後の金融政策決定会合を控える中、同じことが繰り返される可能性がある。日銀は12月にも利上げするかもしれないが、米国の関税措置による影響もあり、実質の国内総生産(GDP)が縮小した状況では、持続的な利上げ局面を描くのは幻想に近い。
一方で、円はなお事実よりもストーリーに左右されやすい。高市早苗政権の補正予算案はGDPの3%未満にとどまり、ここ数週間の円安を招いたとする説明は説得力を欠く。しかも昨年度の税収は過去最高だった。
それでも市場が反応するのは、高市首相が積極財政を支持する立場で知られ、コスト削減の時代に終止符を打とうとする「高圧経済」論者を周囲に抱えているためだ。ただ、国会の勢力図を踏まえると、これは高市氏が何事も思うままにできるということを意味するわけではない。
クレディ・アグリコル証券のチーフエコノミストで、高市首相が新設した日本成長戦略会議のメンバーを務める会田卓司氏はリポートで、高市政権は為替介入により積極的になる一方、大幅な円高を目指す公算は小さいと分析。円安は国内の企業投資を増やす絶好の機会だと政府が捉えていると指摘した。
ガイトナー氏が米財務省で高官、後に財務長官を務めていた時期、米国は日本の要請で2度、円を巡り救援に回った。1度目は1998年のことだった。そして2度目は2011年の東日本大震災に伴う津波の後、景気が減速の瀬戸際にあり、円高が復興を脅かしていた時期だ。ガイトナー氏は財務長官として、G7による日本支援の調整に重要な役割を果たした。
予測を絶対視すべきではない。的中したとしても、それは単なる偶然かもしれない。為替予測などを信じ過ぎると高くつく可能性があるが、運が良ければ、その代償も小さくて済む。
世界最大級のヘッジファンドによる国債取引に、規制当局からの監視が強まっている。当局は人気の高い戦略のレバレッジを制限する措置を検討している。
イングランド銀行(英中央銀行)とスイスのバーゼルに拠点を置く国際決済銀行(BIS)は2日にそれぞれ公表した報告書で、ヘッジファンドが国債などを担保に資金を借り入れるレポ取引を通じて積み上げているレバレッジについて検証した。
両機関は、少数の大手ヘッジファンドによる借り入れが金融安定への潜在的なリスクになると指摘した。
レポ市場で積み上げることができるレバレッジを制限する案が議論されている。イングランド銀行(BOE)と金融安定理事会(FSB)は共に、レポ取引で担保に必ず一定以上の割引率(ヘアカット)を適用することを義務づける最低ヘアカット(minimum haircut)の導入を提案している。
これにより、担保価値が低めに評価され、借りられる額が減り、レバレッジが抑制される。業界は同案に反対している。
問題の核心にあるのは、ヘッジファンドの相対価値(レラティブバリュー)戦略が過度なリスクを抱えているかどうかだ。現物債と先物価格のわずかな差からの利益を狙うベーシス取引も、レバレッジを活用する相対価値戦略の一つだ。
業界側は、こうした取引が市場流動性の改善につながると主張するが、英中銀は市場ストレス時にレバレッジ取引が急速に巻き戻されれば、強制売却の「負の連鎖」を誘発する恐れがあると警告した。
オーバーナイトのレポ市場は、ベーシス取引を含む多様なヘッジファンド戦略にとって重要な資金調達源だ。平常時であれば、この戦略は現物債と先物の価格差を縮小させ、市場のミスプライシング修正に寄与する。
規制当局が懸念するのは、市場ストレス時にヘッジファンドが短期間でポジション解消を迫られ、強制売却が誘発されるリスクだ。
マネージド・ファンズ協会(MFA)のチーフ・アドボカシー・オフィサー、ジリアン・フロレス氏は、オルタナティブ投資ファンドによる債券売買は「市場流動性を高め、ボラティリティーを低下させ、政府の借り入れコストを引き下げる」と主張。「運用者が導入する堅牢なリスク管理や、カウンターパーティーが課す証拠金要件が、市場ショックへの耐性を高めている」と説明した。
規制当局の懸念の核心にあるのは、大手ヘッジファンドのレポ取引の大半が、ほとんどヘアカットなしで行われている点だ。2日に公表されたBISの報告によれば、上位10ファンドに対して銀行が適用するヘアカットは平均でゼロ近辺だった。
これにより、これらファンドは「小規模な同業他社に比べて非常に高いレバレッジ」を得られると、BISは分析した。論文は「こうした大手ヘッジファンドは主要ディーラーにとって重要な顧客であり、ディーラーはより有利なヘアカット条件を与えることで、この強固な取引関係に報いているように見える」としている。
最低ヘアカットを巡る規制論議は決着にはほど遠い。今年公表された米連邦準備理事会(FRB)研究者の論文は、最低ヘアカットが「保護を大きく高めることなく、レポ市場や証券市場の流動性を低下させる可能性がある」と指摘した。
国債市場が世界金融システムにとって極めて重要であり、銀行がリスクテークを抑える中でヘッジファンドの役割が拡大していることを踏まえると、この問題は今後も重要な政策課題となる見通しだ。
EUは、ロシア産ガスの輸入を恒久的に停止することで合意した。ウクライナ侵攻を受け、ロシアとのエネルギー関係を断ち切ろうとするEUの取り組みの中で重要な節目となる。
合意によると、ロシア産ガスの輸入は27年秋から全面的に禁止される。液化天然ガス(LNG)や短期供給契約については、より早い時期に段階的に廃止することが決まった。
EUはこの歴史的決定により、信頼できない供給者への依存から脱却する。ロシアはこれまで欧州のエネルギー市場を何度も不安定化させ、エネルギーを利用した脅迫で供給を危機にさらし、欧州経済に損害を与えてきたと述べている。
ロシアからのLNG輸入は26年12月31日までに段階的に廃止され、パイプラインガスは27年9月30日までに停止される。しかし、ガス貯蔵量が必要水準を下回った加盟国については、期限を27年10月31日まで延長可能とした。
欧州委員会は、27年末までにロシアからの残るすべての石油輸入も段階的に廃止する方針に変更はないと述べた。フォンデアライエンお欧州委員長は「われわれはこのページをめくり、完全に新たな時代、すなわちロシアからのエネルギー完全独立の時代を迎える」と述べた。
EU全体のガス輸入に占めるロシア産の比率は現在13%で、22年のウクライナ侵攻前の約45%から大幅に低下。石油の輸入量のシェアも22年初めの26%から2%まで低下。EUは現在、ガスの大部分をノルウェーや米国などから調達している。
大きな物語
中国は、年初よりもはるかに大きな自信をもって世界舞台で2025年を終えようとしている。
中国は主要経済国として初めて米国の「解放記念日」関税に報復し、レアアース資源を積極的に活用するようになった。中国のテクノロジー企業は米国の半導体規制を克服し、OpenAIのような、はるかに高価な米国製品に匹敵する低コストの人工知能モデルをリリースした。中国に対する世界の認識は改善しつつある。
中国経済全体が同様のレベルの自信を醸し出しているかどうかは、はっきりしない。
中国の最高指導者たちは、来週開催される年次「中央経済工作会議」で2026年の政策計画について議論すると予想されている。正式な日程は発表されていないが、昨年は12月11日から12日にかけて開催された。
経済学者が注目している3つの主な要因は以下のとおり。
1. 財産
中国の不動産問題は今年多くの面で悪化しており、最近では不動産大手の万科集団が中心となっている。
かつては売上高で中国最大級のデベロッパーであり、象徴的な地元ブランドでもあった万科集団は、 12月15日が期限の20億元(2億8300万ドル)の国内債券の返済延期を求めている。このニュースを受け、S&Pグローバル・レーティングは先週末、万科集団の債務格付けを引き下げた。
S&Pグローバル・レーティングの企業格付け担当ディレクター、エドワード・チャン氏は「中国における住宅購入者の信頼感はすでにかなり脆弱なので、万科銀行が不良債権処理のための資金調達を迫られるとすれば、おそらくセンチメントはさらに悪化するだろう」と述べた。
「これは全国的に不動産販売の落ち込みにもつながる可能性がある」と同氏は述べた。さらに、現在議論されていると報じられている住宅ローン補助金計画は、不動産販売の落ち込みを反転させる可能性は低いと付け加えた。
ゴールドマン・サックスは週末、11月の新築住宅販売が前年比20~30%減少したと発表した。「我々の見方では、新たな不動産金融緩和策が導入される可能性が高まっている」とアナリストらは述べた。
しかし、どれくらいひどいとひどいのでしょうか?
チャン氏は、10月時点で全国の平均月間売上高は2024年の水準を依然として653億元下回っていると指摘した。
「政府がどの程度のレベルをより広範な懸念レベルと考えるのかを現時点で判断するのは難しい」
2. 消費
北京は明らかに他のことを考えている。
10月下旬に開催された5カ年計画会議の後、政策立案者たちは国内消費の拡大に向けた強い決意を示した。これは、習近平国家主席をはじめとする中国の指導者たちが米国をはじめとする各国との高官級貿易協議に向け北京を出発するわずか数日前のことだった。
先週、6つの省庁が共同で、電子機器からスポーツ用品に至るまで幅広い消費財産業を育成するための包括的な計画を発表した。計画書によると、2027年までに少なくとも3つのセクターが それぞれ1兆元規模に達し 、さらに10のセクターが同期間に1000億元規模に達するとされている。しかし、具体的な目標達成の方法は明らかにされていない。
ゴールドマン・サックスのアナリストは週末の報告書で「資金調達の取り決めと実施の詳細が欠如している」と述べ、消費者向け製品の開発とサービスへのAIの統合に明確に重点が置かれていると指摘した。
「全体として、この計画は完全に供給側に焦点を当てている」とアナリストらは述べた。「持続的な消費の伸びには、雇用創出と所得増加に向けた政策支援が必要だと引き続き考えている」
ナティクシスによれば、懸念されるのは、中国の家計の不良債権比率が今年上半期に1.33%に達し、 1.2%に低下した法人の比率を上回ったことだ。
ナティクシスのシニアエコノミスト、ゲイリー・ン氏は、特に不動産市場や労働市場からの圧力が続く中、企業は再編できるが、家計の選択肢ははるかに少ないと述べた。
3. デフレ
パンデミック以降、中国の消費者は価格にますます敏感になっており、一方で企業は値下げを通じて消費者の財布をめぐる競争を激化させている。
第三者の分析によると、10月初旬から11月中旬まで延長されたプロモーションにもかかわらず、中国最大のショッピングイベントの売上高の伸びは昨年の26.6%から14.2%に鈍化した。
総合インフレ率はここ数ヶ月、ほぼゼロで推移している。しかし、食品とエネルギー価格を除いた「コア」消費者物価指数(CPI)の上昇率は1.2%と、それよりもはるかに大きく、安心材料にはなりにくい。
野村證券の中国担当チーフエコノミスト、ティン・ルー氏は先週、公式統計を分析し、インフレ率の上昇の約4分の1は金価格の上昇によるものだと推定した。金価格の上昇を除くと、10月のコアCPIはわずか0.9%だったと同氏は述べた。
陸氏は、中国の次期5カ年計画を順調にスタートさせるため、中国政府が春に政策支援を強化すると予想している。
中国は12月10日に11月のインフレデータを発表する予定で、続いて12月15日に小売売上高、工業生産、投資の統計を発表する予定だ。
オートノマス・リサーチの中国担当マクロ金融シニアアナリスト、シャーリーン・チュー氏は、デフレが続くことで利益を生み出せないことを恐れ、中国企業が国内投資を控えるようになっていると述べた。
収入の半分以上を航空貨物から得ているSATSのケリー・モク社長兼CEOは、中国の貿易全体が拡大する一方で、米国では「デ・ミミニス」規則の撤廃により電子商取引の売り上げが減少したと述べた。
アナリストたちは数年ぶりに高級品に関して楽観的な見方を示している。
市場関係者によると、来年にはこのセクターはようやく成長に回帰するだろうが、各社の業績は顧客層のさまざまなセグメントへのエクスポージャーの度合いに応じて異なる可能性が高く、2026年の高級品投資家にとっては銘柄選びが重要になる。
JPモルガンは、このセクターは厳しい2024年と不安定な2025年を経て、中国の消費者信頼感と製品イノベーションの向上によって改善し、2026年には安定すると予測している。
高級ブランドグループは過去2年間、大幅な売上減少に悩まされてきました。パンデミック後の好景気の後、生活費の上昇と雇用不安から消費者が支出を控えたため、企業は勢いを取り戻すのに苦戦しました。
一般的に考えられていることとは異なり、ラグジュアリーセクターは、ロンドンのメイフェアやニューヨークの五番街に住む超富裕層だけのものではありません。いわゆる「憧れのラグジュアリー消費者」、つまりエントリーレベルのラグジュアリーアイテムを購入できるものの超富裕層には属さない消費者も、同様に重要なのです。
「高級ジュエリーや腕時計など、ハードラグジュアリー、超高級品は好調だが、中間層の落ち込みと底値の崩れが見られる」と、5ニューデジタルの創業者マイケル・ザックール氏は金曜日、CNBCの「スクワーク・ボックス」で語った。
「憧れの高級品購入者は事実上姿を消した。」
ザックール氏は、皮革製品やハンドバッグ、衣料品などの「ソフトラグジュアリー」は厳しい状況にあると指摘。「3,000ドルのハンドバッグを買うために長い間貯金してきたような、高級品に憧れる消費者が、もう買わなくなっているからだ」
二極化したパフォーマンス
JPモルガンのアナリストは、マクロ経済のボラティリティの高まりと、不動産や株式などの資産価値の上昇により裕福になったと感じる人々がより多く支出するという考えである富裕効果の認知度の低さが、パフォーマンスの二極化につながると予測している。
アナリストの第一候補はリシュモン
カルティエとヴァン クリーフのブランドが好調に推移している。また、モンクレールも好調だ。
JPモルガンと同様に、UBSのアナリストも高級品市場の最悪期は過ぎたと楽観視しており、来年は担当地域全体で約5%のオーガニック売上高成長が見込まれると予測している。彼らは先週の分析で、この成長率は2年間のマージン圧迫の後、収益性を押し上げるのに十分なはずだと指摘した。
UBSはソフトラグジュアリー銘柄については慎重ながらも楽観的であり、2026年にはそれらの銘柄が上昇すると予想しているが、より裕福な顧客層を基盤とするジュエリーが引き続き好調を維持すると予測している。
意見の相違点はバーバリー
独特のチェック柄のスカーフや衣料で知られる英国ブランド、バーバリー。UBSはバーバリーを「今のところの重要な事業再生ストーリー」と評価し、「買い」推奨としている一方、JPモルガンは先週金曜日にバーバリーの投資判断を「アンダーウェイト」に引き下げた。
JPモルガンは金曜日の分析で、バーバリーの来年の業績改善予想に関するコンセンサスは楽観的すぎると述べた。
バーバリーは過去12ヶ月間、売上密度の安定化を示してきました。しかし、いくつかの簡単な対策(例えば、スカーフやアウターウェアの強化、マーケティングキャンペーンやブランドメッセージの改善など)が実施された今、今後は実行リスクが高まると考えています。
リスクは残る
富裕効果は現在、米国の堅調な需要を支えていますが、その効果は双方向に作用します。そのため、株式市場が調整局面に入った場合、需要はリスクにさらされる可能性があります。高バリュエーションとAIバブルをめぐる最近の市場の動揺を考えると、このリスクはさらに顕著になっています。
中国もまた、もう一つの圧迫点となっている。同国の消費者は、特に直近の決算サイクルにおいて回復の兆しを見せているものの、完全な回復を語るには時期尚早だとの見方が強い。
JPモルガンの欧州高級品部門責任者であるキアラ・バッティスティーニ氏は11月、CNBCのインタビューで「回復、完全な転換点と呼ぶのは時期尚早」であり、今回の改善は比較しやすい基準の中でのものだと述べた。中国のマクロ経済圧力も、回復を不安定なものにする可能性がある。
2026年に向けて、企業は製品ラインの革新に注力しており、ファッション業界の競争が激化する可能性があります。また、パンデミック後のブランドによる価格設定の強引さに顧客が疲弊し、品質向上が実感できない状況が続くという、ラグジュアリー業界の「消費者疲労」への対応も始まる可能性があります。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
人気のクロード・チャットボットを開発するAIスタートアップ企業アンスロピックは、早ければ来年にも過去最大規模の新規株式公開(IPO)を実施するため初期協議に入っているとフィナンシャル・タイムズが水曜日に報じた。 
フィナンシャル・タイムズが事情に詳しい2人の情報筋の話として報じたところによると、アンスロピックはIPOに向けて、グーグル、リンクトイン、リフトなど著名なテクノロジー企業のIPOを手がけた実績のある法律事務所ウィルソン・ソンシニ・グッドリッチ・アンド・ロザティと契約した。
ダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)が率いるこの新興企業は、マイクロソフトからの総額150億ドルのコミットメントを含む、評価額が3000億ドルを超える可能性のある民間資金調達ラウンドも追求していた。
また、アンスロピックは大手投資銀行ともIPOの可能性について協議したが、情報筋によると協議は予備的で非公式なものだったという。 
もしこのニュースが事実であれば、Anthropicは、同じく株式公開の準備を進めていると報じられているChatGPTの開発元であるライバルのOpenAIとの市場競争に参入することになるだろう。また、いわゆるAIバブルへの懸念が高まる中、潜在的な上場は、赤字のAIスタートアップに対する投資家の投資意欲を試すものとなるだろう。 
しかし、アントロピックの広報担当者はフィナンシャルタイムズに対し、「当社の規模と収益レベルで事業を展開している企業にとって、実質的に上場企業のように運営するのはごく普通の慣行だ」と語り、上場の時期や行うかどうかについては何も決定していないと付け加えた。
CNBCは、アンスロピック社および同社に数年にわたり助言してきたウィルソン・ソンシニ社にコメントを求めたが、連絡が取れなかった。 
FTの情報筋の1人によると、アンスロピックは上場の可能性に向けて社内準備を進めているが、詳細は明らかにされていない。 
FTの報道は、同社の2020年のIPOで重要な役割を果たした元Airbnb幹部クリシュナ・ラオ氏の採用など、同社における最近のいくつかの注目すべき変化を受けてのものだ。
CNBCはまた先月、アンスロピックがマイクロソフトから最大50億ドル、エヌビディアから100億ドルの投資を受け、最近評価額が3,500億ドルにまで上昇したと 報じた。
AI分野でOpenAIを追い抜く競争の中で、このスタートアップは積極的に事業を拡大しており、最近、テキサスとニューヨークにデータセンターを建設し、国際的な従業員を3倍に増やす500億ドルのAIインフラ構築を発表した。
FTの報道によると、同社の投資家は、OpenAIから「主導権を握る」可能性があるAnthropicの潜在的なIPOに熱心だという。
OpenAIはIPOを検討していると噂されているが、同社の最高財務責任者は最近、 10月に5000億ドルの評価額で66億ドルの株式売却を完了したにもかかわらず、近い将来に上場する予定はないと述べた。
OpenAIが開発した対話型生成AI(人工知能)、ChatGPTの予期せぬ登場が世界を驚かせてから3年が経過した。何年もかけて蓄積された技術を人々が広く使えるようになり、1993年のワールドワイドウェブ(WWW)の一般向け開放と同じような衝撃をもたらした。
2022年11月30日は、状況を一変させた分岐点としてますます重みを増している。
これについては多くの論評があるが、市場への影響に絞ると、ChatGPT公開後の世界は、非常に少数の巨大な勝者が支配する展開となった。S&P500種株価指数の構成銘柄のうち、エヌビディア株の値上がりがこの間で最も大きかったことは、言うまでもない。直近の数営業日は荒い値動きとなり、過去3年の上昇率は1000%を若干下回ったが、いかにリターンが集中しているかを物語っている。
3年でここまで成長する企業自体は珍しくないが、すでに世界有数の規模となっている会社がここまで成長するのは例がない。AIが変革を起こす期待と、エヌビディアが準独占的地位を維持できるという確信が背景にあると考えられる。しかし、こうした前提に沿って多くの物事が進む中で、見直しが起きても不思議ではない。
意外なのは、生成AIが国際秩序を変えたと言えるほどの影響をまだ及ぼしていない点だ。恩恵を受けるごく少数の米大企業に巨額の資本が集まったことを除けば、ほとんど変化は見られない。
エヌビディアやグーグル親会社アルファベットを含む「マグニフィセント・セブン」を除くブルームバーグ独自の米大型株500銘柄指数と、米国を除く先進国・新興国市場全体を対象とするFTSEの指数を比較すると、両者はおおよそ同じ動きを示し、いずれもChatGPTのリリースから1年経過するまで本格的に動き出すことはなかった。
エヌビディアの半導体に投じられる資金はまさに桁外れだ。準備中の設備投資は、経済全体の予測を変えるほど規模が大きい。それでも金融市場について言えば、勝ち組と見なされる一部企業のバリュエーション(株価評価)高騰のストーリーにとどまっている。
次のチャートは、S&P500種の時価総額加重指数(マグニフィセント・セブンが今や3分の1余りを占める)と、全銘柄を0.2%ずつ割り当てた均等加重指数の株価収益率(PER)を比較したものだ。
この二つは通常、ほぼ同じ動きをする。新型コロナウイルス禍後の利上げで、短期的に厳しい弱気相場となったChatGPTのリリース当時、両指数のPERはいずれも低い水準にあった。その後の目覚ましい回復ぶりは、革新的で新たな技術の影響というよりスタート台が低かったという側面もある。
均等加重指数のPERはそれほど上昇していない。ChatGPTの登場後間もなく起きた変化は、時価総額加重指数のPERとの乖離(かいり)だ。平均的な米株のバリュエーションは高めではあるが、注目するほどではない。これに対し、マグニフィセント・セブンの時価総額ウエートを完全に反映した全体指数は割高に見える。
ここから導き出される結論は何だろうか。「バブル」かどうかの議論はやや不毛で、バブルをどう定義するかで大きく変わってくる。3年で大いに進化したChatGPTや類似アプリを試す機会は存在し、確かに胸が躍る。市場が先回りするのは自然なことで、株式投資は過去ではなく、企業の将来的な利益に賭けるものなのだ。
株式市場を見ると、ChatGPTが現時点でもたらした変化は一部企業の急成長にほぼ限られ、それも将来への期待が中心だ。バブル崩壊という形を取るかは別として、ChatGPTが何度も年を重ねる前に一連のチャートの線は、どこかの時点で再び収れんするだろう。マグニフィセント・セブンが下落する形になるにせよ、その他の株が追い付く展開になるにせよ、その可能性が高い。
ここは深呼吸をして、米テクノロジー大手以外のウエートを高める戦略を検討するのが合理的だろう。
米国の商業用不動産市場が低迷している。近年の不動産価格下落で痛手を被ったことで、手を出したがらない投資家が多い。そもそも投資家にはより有利な選択肢がある。半導体大手エヌビディアの株式が年70%のリターンをもたらす中、不動産投資のリターン7%に甘んじる必要はない。
それでも不動産は米国で適正価格にあると見える数少ない資産の一つであり、株式市場で人工知能(AI)バブルが起きているとすれば、資金の避難先となる可能性がある。
年金基金や保険会社のような機関投資家は、伝統的に商業用不動産市場で中心的な役割を果たしてきた。ポートフォリオの1割以上を不動産に配分し、インフレヘッジや安定収入の確保、株式市場と相関しない資産の保有を目的にビルを購入してきた。
しかし米連邦準備制度理事会(FRB)が2024年9月以降、5回の利下げを実施し、今月にも追加利下げが見込まれているにもかかわらず、機関投資家が再び不動産を大量に購入する動きは見られない。
MSCIのデータによると、2025年年初来の大口投資家による米不動産購入額は売却額を46億ドル(約7200億円)上回っており、3年ぶりに買い越しとなっている。ただし、取引活動は過去の水準と比べると低調だ。
大口投資家のポートフォリオにおける商業用不動産の役割が精査されている。米国不動産の収益は期待外れで、とりわけ集合住宅とオフィスが振るわない。2019年7-9月期以降、非上場不動産ファンドのリターンは20%にとどまり、S&P500種指数の150%を大幅に下回っている。
インフラやコモディティー(商品)も、不動産より良い投資対象となっている。ホーズ・ワイル・アンド・アソシエーツの投資配分モニターによると、機関投資家は今年、不動産への投資配分を減らした。
想定外の問題もあった。新型コロナウイルスの大流行は商業用不動産に打撃を与えた。また、インフレの再燃によって、金利が数十年ぶりのペースで上昇したことで、不動産価格がダメージを受けた。投資家は、老朽化しつつある不動産に新たなテナントを呼び込むために投資する必要がある金額を過小評価していた。
不動産調査会社グリーン・ストリートによると、米国の商業用不動産の価格は依然、2022年のピークを平均で17%下回っている。オフィスと集合住宅の価格は特に割安となっており、ピーク時からの下落率がそれぞれ36%と19%になっている。
このため、機関投資家が帳簿に抱える何十億ドルもの不動産の価値は、取得時の価格を下回る状態になっている。さらなる不動産の取得に向けた意欲も小さい。
投資家にはリスクを分散する選択肢が他にもある。インフラやデータセンター、プライベートクレジットは、ポートフォリオマネジャーに人気だ。商業用不動産は投資資金を巡り、これらの人気資産と競わなくてはならない。投資家は現在、不動産を実際に所有するよりも、不動産担保融資を提供する方が多くのリターンを得られる。
ただ、米国の商業用不動産の価格が10%以上下落したケースは、今回を含めて数えるほどしかない。直近の2回は、1990年代初頭と2008年の世界金融危機の時期だ。
「人々は今、商業用不動産を見て、他の資産と比べて割安だと感じている」。商業不動産サービス会社CBREグループで米国・カナダ資本市場担当の共同責任者を務めるジェームズ・ミロン氏はこう語った。
投資家は歴史的に、不動産を所有する際には、より流動性の高い社債以上の利回りを求めてきた。グリーン・ストリートによると、このスプレッド(利回り差)の水準からみて、民間不動産の現在の相場は適正水準にあるという。公開市場における不動産関連株の相場は割安に見える。CBREのデータによれば、不動産株は米国株全体と比べて過去20年間で最も割安になっている。
ハイリスク・ハイリターン型の投資家は現状を好機と捉えて既に取引に動いている。RXRは機関投資家から、マンハッタンの複数のオフィス不動産をピーク時より30~50%安い価格で買い取っている。米投資会社ブラックストーンも、サンフランシスコのオフィス不動産を1件購入した。
機関投資家の多くは、高級オフィスでさえ、賃貸契約更新に必要な改装の費用負担に消極的になっている。RXRのスコット・レヒラー最高経営責任者(CEO)は「こうした費用が機関投資家の保有資産の問題点になっており、彼らはこれ以上の負担を避けたいと考えている」と語った。
債務コストの高止まりが予想される中で、不動産投資に旧来の手法はもはや通用しなくなっている。世界金融危機の後10年以上にわたり、低金利によって不動産価格が上昇した上に、低コストで十分な借り入れができたことも投資家のリターンを押し上げた。だが買い手はもはや、不動産価値がこれまでのように急激に上昇することを見込めなくなった。
そのため、建物が生み出す収益がはるかに重要になっている。現在、収益が最も大きいのは、高齢者向け住宅、小売店舗、高級オフィスビルといった流行から外れた種類の物件だ。
インフレの影響で、一部のタイプの商業用不動産は新規建設が少なくなっている。モーテンソンのデータによれば、建設コストは2020年から25年7-9月期までの間に40%超上昇しており、新規建設の経済的合理性を見いだすのが難しくなっている。
この状況は、既存物件の所有者にとっては良い兆候だ。10年以上新規建設がほとんどなかった小売り分野の物件には特に当てはまる。供給がタイトになれば、家主が賃料引き上げの主導権を握るだろう。
理論的には、建設コストが40%上がった場合、新築物件が採算を維持するためには賃料の40%引き上げが必要になる。現在の店舗オーナーにとってこれは、新規供給物件との競争がほとんどない状況で長期にわたる賃料の上昇が期待できることを意味する。
不動産投資は1997年から2000年にかけて、他の投資と比べて振るわなかった。投資家は当時、より注目を浴びるテクノロジー分野に気を取られていた。グリーン・ストリートのリサーチディレクター、セドリック・ラシャンス氏は「ドットコムバブル期には、ゆっくり着実な投資というのは投資家が最も望まなかったものだった」と話す。
だが、AI相場が減速あるいは急落すれば、不人気だった不動産が最終的に投資家の避難先というポジションに躍り出る可能性がある。
連邦エネルギー規制委員会(FERC)はPJMインターコネクションに対し、大規模データセンターをシステムに追加できるのは、確実にサービスを提供できる場合のみであると伝えるべきだと、火曜日に同委員会に提出された送電網運営会社の市場監視員による苦情で述べられている。
PJMは、同社が確実に供給できず、データセンターや他の顧客に定期的な停電が必要となるデータセンターの負荷を許可する提案を検討していると、送電事業者の市場監視機関モニタリング・アナリティクスは述べた。
「この結果は、信頼性の高い電力網を維持するというPJMの基本的責任に反しており、公正かつ合理的ではない」とモニタリング・アナリティクスは述べた。
訴状によると、市場監視団体は、米国最大の電力網で中部大西洋岸と中西部の13州とコロンビア特別区で電力網と卸売電力市場を運営し、6,500万人の顧客に電力供給しているPJMインター コネクション には、大規模な新規データセンターに対し、それらの施設に供給するのに十分な発電と送電が確保されるまで、システムへの追加を待機させる権限があると主張している。
しかし、市場監視機関によると、今秋にPJMの利害関係者らが大規模な負荷相互接続規則の可能性について議論した際、PJMのスタッフと多くの利害関係者は送電網運営者にその権限があると言いたがらなかったという。
「PJMがすべてのPJM負荷に信頼性の高いサービスを提供する義務を負っているのであれば、PJMが信頼性の高いサービスを提供できない新たな負荷を追加することは正当かつ合理的と言えるのでしょうか?」とモニタリング・アナリティクスは問いかけた。「その問いへの答えはノーです。」
この苦情は、PJMの利害関係者が、データセンターやその他の大規模負荷をPJMのシステムに追加するための新たな枠組みについて合意に至らなかった数日後に提出されました。利害関係者間の協議プロセスにおいて、モニタリング・アナリティクスは、データセンターが電力網に接続する前に、対応する新たな電源設備の設置を義務付けるよう提案しました。
PJMの取締役会は、大規模負荷相互接続案を作成し、FERCの承認を得るために提出する予定です。
モニタリング・アナリティクスは、FERCが苦情について裁定を下す意向を示し、近い将来に裁定を下せば、委員会の仕事は「大幅に管理しやすくなる」だろうと述べた。
「PJM市場は、大規模な新しいデータセンター負荷の相互接続に関するPJMの権限を早急に明確にする必要に直面している」と市場モニターは述べた。
市場モニターによると、PJMのデータセンターの負荷が大幅に増加したことにより、伝送コストが上昇し、エネルギー価格と容量価格も上昇している。
モニタリング・アナリティクスによると、既存および予想されるデータセンター負荷により、PJMの過去2回の容量オークションにおける容量収益は166億ドル増加した。「大規模データセンター負荷の増加に伴う問題が解決されるまで、この合計は増加し続けるだろう」と市場モニターは述べている。
送電網運営会社PJMの広報担当者ジェフリー・シールズ氏は、同社が苦情を検討中だと述べた。PJMは、中部大西洋岸地域と中西部の13州、およびコロンビア特別区で送電網と卸売電力市場を運営している。
東部標準時午前9時過ぎ、ブルームバーグがインフォメーションの報道を激しく批判したことで、先物は突然急落した。この報道は、マイクロソフトのアジュールクラウド部門の営業担当者2名を引用し、多くの営業担当者が売上成長目標を達成できなかったことを受けて、マイクロソフトはエージェントと呼ばれる新しいAI製品に顧客がどれだけ早くお金を使うようになるかという期待を引き下げたと主張している。
法人顧客からは、AI技術の活用によるコスト削減効果の測定が難しく、場合によってはAIを完璧に機能させることが難しいという不満の声が上がっています。これは、AIによるIRR(内部収益率)を定量化しようとしている人にとって重要な点です。IRRは依然としてゼロか、わずかに上回っているようです。
報道によると、マイクロソフトのAzureクラウド部門の営業担当者2名によると、6月期に多くの部門が売上成長目標を達成できなかったことを受け、複数のマイクロソフト部門が特定のAI製品の売上成長に対する営業担当者の目標を引き下げたという。同担当者2名は「マイクロソフトが特定の製品に対してこのようなノルマを引き下げるのは珍しい」と付け加えた。
マイクロソフトは、AIへの支出を増やすことに対する企業の抵抗に適応しているが、AI企業による新たな支出とマイクロソフトのAIソフトウェアの販売により、AIはマイクロソフトのビジネスにとって大きな恩恵となっている。
●その他


備忘録(2025/12/2)
●企業
バリー氏は、テスラが自社株買いを実施せず、年間約3.6%の株式希薄化を招いているという見方を示し、マスク氏の記録的な報酬パッケージによって希薄化は続くと予想。11月30日のブログ投稿で、「テスラの時価総額は現在、途方もなく過大評価されており、これまでかなり長い間そうだった」と述べた。
前週末28日引け時点でテスラの予想株価収益率(PER)は 209倍前後と、5年平均の94倍を大きく上回っている。 一方、LSEGがまとめたデータによると、S&P総合500種(.SPX), opens new tabの予想PERは約22倍。
アナリストは、北米のトラック市場は関税、排出基準の不透明感、長引く貨物不況による逆風の中で、低迷が続いていると分析している。同アナリストは、米国の回復を早くても26年下半期まで見込んでいない。
一方、欧州では大型トラックの登録台数が堅調で、第3四半期の貨物運賃は安定を維持した。アナリストは、ダイムラー・トラックの26年1株利益の見通しを13%引き下げた。同社の北米市場への高いエクスポージャーを考慮したもの。ボルボではトラック販売台数の約50%が欧州であるため、米国の不透明感による打撃は小さいという。
ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏は月曜日、コングロマリットのエヌビディア株を売却するという決定を軽視した。
同氏は、株式を手放すことに「泣いていた」と語った。
孫氏は月曜日に東京で開かれたフォーラムで、ソフトバンクが11月にアメリカの半導体大手ソフトバンクの株式を58億3000万ドルで売却したと明らかにしたことに触れた。 
孫氏によれば、ソフトバンクは、OpenAIやデータセンタープロジェクトへの大規模な投資を含む、次の人工知能投資に資金を調達する必要がなかったら、この動きは起こさなかっただろうという。 
「株を1株も売りたくありません。OpenAIやその他のプロジェクトに投資するために、もっと資金が必要だったのです」と孫氏はFII Priority Asiaフォーラムで述べた。「NVIDIAの株を売りたくてたまらなかったんです」
孫氏のコメントは、アナリストや他のソフトバンク幹部が11月に述べたことと一致しており、売却はソフトバンク・ビジョン・ファンドのAI戦略資金を強化するための幅広い取り組みの一環だと説明している。
ソフトバンクは今年、スターゲイト・プロジェクト・データセンターの取り組みや米国のチップ設計会社アンペア・コンピューティングの買収など、一連のプロジェクトを通じてAI計画を強化している。
事情に詳しい人物が以前CNBCに語ったところによると、この日本の大企業は、ChatGPTメーカーの業績とさらなる資金調達ラウンドの評価次第で、OpenAIへの投資を「潜在的に」増やす可能性もあるという。
孫氏は今年初め、ソフトバンクはOpenAIに「全力で取り組んでいる」と述べ、このAIスタートアップはいつか世界で最も価値のある企業になると予測した。 
これまでのところ、その賭けは一定の成果を上げており、ソフトバンクは先月、保有するOpenAI株の評価益により、第2四半期の純利益が2倍以上の2兆5000億円(166億ドル)に増加したと発表した。
しかし、ソフトバンクのAIへの大規模な投資は、AIバブルの可能性に対する市場の懸念と不安が高まる中で行われた。 
孫氏は月曜日の講演でこうした懸念にも反論し、AIバブルを語る人たちは「賢くない」と主張した。
彼は、「スーパー[人工知能]」とAIロボットが長期的に世界の国内総生産の少なくとも10%を生み出すだろうと予測し、それはこの技術への数兆ドルの投資を上回るだろうと述べた。
●マクロ
イングランド銀行(英中央銀行)は、いわゆるベーシス取引による英国債へのリスクの高まりを指摘した。
ベーシス取引はヘッジファンドが好む収益性の高い債券投資戦略で、現物債と対応する先物との価格のわずかな乖離(かいり)から利益を狙う。
中銀は市場参加者に対し、無秩序な取引の巻き戻しを避けるよう、リスクテークを管理することを促した。一斉巻き戻しが英国債市場のボラティリティーを誘発しかねないためだ。
中銀の2日の発表によると、英国債を担保としたレポ取引でのヘッジファンドの純借入額は、11月に約1000億ポンド(約20兆6000億円)に達した。統計開始以来の高水準で、6月時点の推計770億ポンドを上回った。
増加はベーシス取引に関連しており、ポジションの大半は英国外の運用主体によるものだという。特に米系運用会社が手がけるヘッジファンドが全体の約60%を占めている。
中銀は「英国債のレポ市場で少数のファンドが集中してレバレッジの大きい取引を行っていることは、相場急変のリスクを高める。ショック発生時にファンドが同時にレバレッジ解消を迫られる恐れがある」と分析。「歴史的な相関から外れる動きを含め、起こり得るショックを織り込んでポジションを適切にリスク管理する」よう市場参加者に求めた。
大手ヘッジファンドによる国債取引への関与は、ノンバンク金融機関からのリスクを抑制しようとする世界の規制当局の主要議題となっている。レポ市場は、ベーシス取引を含め、さまざまなヘッジファンド戦略にとって重要な資金源だ。
英中銀はこれまでも、英国債市場でヘッジファンドの役割が拡大することで、投げ売りが発生するリスクが高まると警告してきた。
2日のリポートで、英国債レポ市場の一部は不透明であり、規制対応を難しくしているとも指摘した。
BOEは、レバレッジを用いる市場参加者の有用性に触れつつも、「強制的または広範なレバレッジ解消が生じれば、初期の価格変動を増幅させ、さらなる強制売却を招く悪循環を引き起こす可能性がある」と論じた。
イングランド銀行(英中央銀行)は、英国の銀行セクターが必要とする資本水準の推計値を10年ぶりに引き下げた。
また、来年のルール変更に向けた協議を行うとしている。変更が貸し出し拡大や自社株買い増加への道を開く可能性がある。
中銀は2日発表した声明で、英国の銀行システムはリスク加重資産の約13%を中核的自己資本(ティア1資本)として保有すべきだとの認識を示した。これまで必要とされていた水準14%から引き下げた。同水準は2015年に最初に示され、19年の見直しで据え置かれていた。
ベイリー総裁は記者会見で、政治的思惑による規制緩和ではないかという観測を退け「変更によって規制体系がどうなるかという点について、私は何の懸念も持っていない。理にかなった対応だ」と述べた。
国際的な銀行規制枠組みであるバーゼル規制の次ステージを英国が2027年に導入するのに合わせ、銀行システム全体の要件は約13%に低下すると見込まれている。
また、英中銀金融行政委員会(FPC)は、来年に銀行資本枠組みのさらなる改善に向けた協議を行う方針も示した。
英中銀は声明で、「FPCの基準引き下げによって、銀行は高い確実性と自信を持って英国の家計や企業への貸し出しに資本を活用することができる」と説明。銀行セクターの強靱(きょうじん)性が高まったと指摘した。英銀のティア1資本比率は現在、全体で約17%。
中銀は2日、英国の主要銀行7行全てが、中銀による最新のストレステスト(健全性審査)に合格したと発表した。
経済がインフレ率と金利の急上昇を伴う深刻なストレスに見舞われても、銀行には貸し出しを継続できるだけの資本があると判断した。
それでも、2日に発表された中銀の最新の金融安定報告は、一部領域でのリスクの高まりを指摘した。
人工知能(AI)関連では、数兆ドル規模の投資が巻き戻されるリスクに当局者が警告を強めている。また、英国債市場におけるヘッジファンドのベーシス取引が一段と注目を集めている。
英中銀は80ページに及ぶ文書の中で、銀行資本を巡る見直しで検討対象となる幅広い論点を示した。
レバレッジ比率や銀行の資本バッファー(上乗せ資本)についての検討が含まれる。
中銀は声明で「FPCと健全性規制機構(PRA)は、英国の銀行、シンクタンク、業界団体、投資家、学識関係者など幅広い当事者から意見を求める」とし、「検証が必要な論点に関するフィードバックや根拠を歓迎する」と表明した。
12月2日に発表されるユーロ圏の11月インフレ率は2%近辺にとどまる見通しだ。12月の会合で金利を調整する必要はないとの安心感を欧州中央銀行(ECB)に与えそうだ。
ブルームバーグが調査したエコノミスト29人の予測中央値によると、11月の消費者物価指数(CPI)は前年比2.1%上昇と見込まれる。エネルギーなど変動の大きい品目を除いたコアインフレ率は2.4%の見込み。いずれも前月から変わらずとなる。
11月のCPIが予想通りの内容であれば、12月18日の金利決定に向けてECBの据え置き姿勢は確固たるものになり、当局は四半期経済予測に専念できるだろう。最新の予測は2028年までの見通しを含む。
ECB当局者は現時点で様子見の姿勢を強めており、次の金利変更の方向性について明確なコンセンサスはない。28日に発表された各国のデータは、当局の姿勢をさらに曖昧にするものだった。ドイツとスペインでインフレ率が予想を上回った一方、フランスとイタリアでは下回った。
政策委員会内にどちらかの方向へのバイアスがあるとすれば、現時点では物価上昇圧力を示す材料を探す方向に傾いているもようだ。デギンドス副総裁は26日のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「私の見方では、下振れリスクは限定的だ」と述べた。
現行の政策スタンスが良好な位置にあるとの見方を繰り返し示しているラガルド総裁は、12月3日にブリュッセルで予定される議会証言で自身の見解を示す。
ECB内で方向感が定まらない状況は、エコノミストのまちまちな見方に反映されている。ブルームバーグ・エコノミクスは、今後数カ月でインフレが減速し、利下げの根拠が強まると予測している。
一方、BNPパリバは異なる見解だ。先進国市場担当チーフエコノミスト、ポール・ホリングスワース氏はリポートで「2026年入りが近づくに伴い、ECBは現在の想定を上回る成長とインフレを見込むようになり、金利据え置きを長期化させる根拠はいっそう強まるはずだ」との見方を示した。「次の一手は利上げとみている」という。
12月1日からの週にはそのほか、経済協力開発機構(OECD)が2日に最新の世界経済見通しを公表する予定。米国では消費者物価指標が発表され、英国では当局が金融安定性に関する評価を示す。
米商務省経済分析局(BEA)は12月5日に、遅れていた9月の個人所得・支出統計を公表する。発表内容には、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する個人消費支出(PCE)価格指数およびコア指数が含まれる。エコノミストはコア指数が3カ月連続で0.2%上昇すると予測している。前年比上昇率は3%をわずかに下回り、インフレ圧力が安定しつつも粘着性があり、FRBの目標を上回る状態が続いていることが示される見込みだ。
こうした状況下で、12月9-10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、雇用情勢を焦点に3会合連続の利下げを実施すべきかどうかが議論される。投資家は利下げが実施される確率が高いとみている。
直近の雇用統計では非農業部門雇用者数が予想以上に増加したものの、その増加はごく一部の産業に偏っていた。失業率はほぼ4年ぶりの高水準に上昇した。企業からは人員削減のニュースが相次いでいる。
欧州ではユーロ圏インフレ率のほか、イングランド銀行(英中銀)が12月2日に金融安定報告を公表する。予算発表後の市場混乱リスクは後退したように見えるものの、別の金融安定上の懸念が指摘される可能性が高い。ベイリー総裁の記者会見も予定されている。
ブラックロック投資研究所(BII)は2日、2026年のグローバル投資見通しで、米長期国債について弱気スタンスに転じたと述べた。
AI(人工知能)関連投資に絡む資金調達の波が到来し、米国の借り入れコストに上昇圧力がかかり、政府債務への懸念が一段と高まる可能性があるとしている。
投資家の間では、米テック大手によるAI推進が今後数年で数千億ドル規模の新たな債務発行につながるとの見方が浮上している。追加のレバレッジが同セクターの強固なバランスシートを大きく損なうとの見方は少ないが、こうした借り入れの拡大は、米国などの先進国で公的債務がすでに高水準にあるという状況下で進むとみられ、金融システム全体でレバレッジが上昇するとの懸念が出ている。
BIIは「官民両部門の借り入れ拡大で、金利上昇圧力が続く可能性が高い」と指摘。今後6─12カ月の米長期国債を従来の「中立」から「アンダーウエート」に変更した。
「構造的な資本コストの上昇で、AI関連の投資コストが上昇し、経済全体に影響が及ぶ」とし「システムのレバレッジが高まれば、ショックに対する脆弱性が生じる。財政懸念に起因する債券利回りの急上昇や、インフレ・利払い費の管理を巡る政策上の緊張に起因する債券利回り急上昇などが、ショック要因だ」としている。
AIによる生産性向上で将来的に歳入が拡大し、米国の債務負担軽減につながる可能性もあるが、こうしたプロセスには時間を要する見通し。
一方、ブラックロックは、AI関連投資が来年も米国株を押し上げるとの楽観的な見方を維持した。
ただ、AIによる収入拡大が経済全体を底上げする一方、技術革新の恩恵をどの程度受けるかは、企業によって異なると予想。「勝ち組を見極めることが、アクティブ運用における投資テーマとなるだろう」と述べた。
また、今後6─12カ月間の日本国債については、金利上昇や国債増発の可能性を理由に、一段とアンダーウエートにした。
新興国のハードカレンシー建て国債については、従来のアンダーウエートからオーバーウエートに引き上げた。発行が限定的で政府のバランスシートが健全だとしている。
日銀の植田和男総裁による1日の発言をきっかけに、市場は12月会合での追加利上げを有力視し始めた。注目されるのは、利上げに慎重な姿勢を示してきた高市早苗首相が容認姿勢に転じるかだ。日銀が見送りを決めれば円安が進みかねない状況ながら、高市氏が従来から強調してきた「マクロ経済政策の最終責任は政府にある」との持論が日銀の判断を難しくしているとの見方も政府内に浮上している。
<見送りの選択肢>
「まだ本当に利上げに踏み切るかどうかは分からない」。植田総裁が利上げの是非をめぐり、12月18─19日の金融政策決定会合で「適切に判断したい」と話した翌2日、経済官庁の幹部はこう語った。理由として挙げるのが、高市氏と日銀の微妙な距離感だ。
「高市氏は利上げによる景気悪化で支持率が落ちることを相当警戒している。『責任は政府が負う』と言い切ってしまった以上、野党から『どう責任を取るのか』と追及されるのは目に見えている」と同幹部は話す。日銀が政治的波及を過度に意識すれば、利上げを見送る選択肢も残ると説明する。
一方、今年度補正予算案の編成過程で高市政権が為替や長期金利の動向を強く意識している様子が明らかになっている。片山さつき財務相は、折に触れて市場動向を高市氏へ報告。複数の政府関係者は「片山氏が財務省幹部に対し『円安と長期金利の上昇は何とかならないか』と漏らしていた」と証言する。
政府と日銀による緊密な意思疎通を訴えてきた高市氏は11月18日、就任後初めて植田総裁と首相官邸で会談した。植田総裁は記者団に「経済、物価、金融情勢、金融政策についてさまざまな側面から率直に良い話ができた」と語り、利上げについて「今後のデータ・情報次第で適切に判断する」と説明。高市氏から政策面の要請や要望はなかったとした。
それ以上の詳しい説明はなかったが、日銀の情報発信はその後変化がみられた。植田総裁は21日の衆院財務金融委員会で、円安が基調的な物価上昇率に波及する可能性に初めて言及。外為市場で円安傾向が強まれば、利上げ判断につながり得るとの考えを示唆した。
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストで元日銀審議委員の木内登英氏は、12月1日の講演で植田総裁が利上げに前向きと取れる発言をしたことについて、「質疑応答ではなく事前に準備された原稿に書かれたものなので、日銀と高市政権がそれなりに事前調整を済ませ、利上げに踏み切る可能性は高まった」と話す。「高市政権は金融緩和の継続を望んでおり、本来利上げはうれしくないはずだが、日銀の独立性侵害は法律違反でもあり、首相の周辺からの提言などにより首相が態度を軟化させた可能性がある」と語る。
<落としどころを探る>
植田総裁の講演後、翌日物金利スワップ(OIS)市場が織り込む12月会合での利上げ確率は82%に跳ね上がった(東短リサーチ/東短ICAP調べ)。ニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミストは「12月に利上げが行われない場合は、その時の水準次第で2─3円ほど円安が進んでもおかしくはない」と言う。
ある日銀幹部経験者は「利上げ見送りで円安進行なら日銀の責任、利上げ決行で株安進行でも日銀の責任とするのが高市政権の意向だろう」と見る。一方で、前出の経済官庁幹部は「最終的な責任は政府」との発言が状況を複雑にしていると解説する。
「以前のように高市氏が利上げを嫌がっているわけではない」と同幹部は話す。日銀の最終判断を見極めつつ、仮に利上げが景気に悪影響を及ぼした場合、国民にどう説明するかの落としどころを探っているのが足下の状況だという。
エコノミストは、暗号資産の売りは、新年に向けて大きなリスク回避のセンチメントを示唆している可能性があると指摘している。最近のビットコインの急落は、規制の不透明感、暗号資産関連の大規模な法執行措置、僅かな流動性の引き締まりによって引き起こされた可能性があるという。
今回の急落は投機的資産市場におけるある程度の疲弊を示している可能性が高いとも付け加えている。それでも、暗号資産の売りは米経済見通しにとって懸念材料となる可能性があるものの、こうしたデジタル資産は米国経済を左右するものではないとも指摘した。
中国の住宅市場では、不動産市場の低迷が5年目に突入し、過剰在庫が住宅価格を押し下げる中、新たな警告の兆候が出ている。
中国不動産情報公司が月曜日に発表したデータによると、11月の上位100社の不動産販売額は、10月の42%減からやや持ち直したものの、前年同月比で36%急落した。今年最初の11カ月間では、住宅販売は前年比19%減少した。
ゴールドマン・サックスの中国担当チーフエコノミスト、フイ・シャン氏は月曜日のメモで「不動産データの悪化は事実であり、懸念される」と述べ、住宅市場刺激策がさらに実施される可能性が高まったことを示唆した。
一方、業界調査機関の中国指数研究院は月曜日、調査対象となった中国100都市の中古住宅価格が11月に7.95%下落し、前月比で若干の下落幅となったと発表した。同研究院は、価格下落の深刻化は、物件掲載件数の増加と住宅購入意欲の低迷に起因すると分析した。
モルガン・スタンレーは、大手不動産開発会社25社の11月の平均売上高が前年同月比42%減少したと推計しており、この低迷は来年の春まで続く可能性が高い。
大和証券キャピタル・マーケットの不動産アナリスト、ウィリアム・ウー氏は、昨年9月に発表された「住宅市場の下落を食い止める」という中国政府の目標は「ますます非現実的になっている」と述べ、住宅価格の下落が加速し「著名な債務不履行が再燃」する中、第4四半期に住宅セクターで「新たな混乱」が生じたことを指摘した。
政府の支援?
不動産大手の中国万科集団が12月15日に満期を迎える国内債券の1年間の返済延期について債券保有者の承認を求めるという最近の決定は、このセクターの流動性に関する新たな懸念を引き起こしている。
かつては中国の不動産開発会社の中でも健全な企業の一つと考えられていた万科集団は、潤沢な資金力を持つ国有株主である深セン地下鉄の金融支援のおかげで、債務不履行リスクを回避できた。11月初旬、深セン市は万科集団への約200億元相当の無担保融資について担保提供を求めると発表し、債権者を動揺させ、債券価格は過去最低水準に下落した。
金融データプロバイダーのオクタス(旧リオーグ)のクレジットアナリスト、キャシー・ルー氏は、この予想外の動きは「包括的な再編につながる可能性が高い流動性危機を反映している」と述べ、万科銀行の延期後に延長や債務不履行がさらに広がる可能性は依然として低いと付け加えた。
「不動産危機によって、バランスシートの弱いデベロッパーは淘汰された」と陸氏は指摘し、政府が万科集団の崩壊を阻止するために広範な救済策を打ち出す可能性は低いが、債務の「再編」と住宅供給の確保に重点を置くだろうと付け加えた。
格付け会社S&Pグローバルは先週金曜日、苦境に立たされているこの開発業者が今後6カ月以内に「経営難による事業再編」に陥るリスクが高まったため、万科の長期発行信用格付けを「CCC」から「CCC-」に引き下げた。
同社の債券は火曜日も下落を続け、いくつかの人民元建て債券は20%以上下落し、深セン証券取引所による取引停止を招いた。
中国当局は昨年5月、地元の国有企業が建設済みで売れ残っているマンションを購入できるよう、金融機関に 3000億元を融資した。
この額は住宅部門を不況から大きく脱却させるには十分ではなかったようで、過剰在庫は依然として住宅価格回復の大きな足かせとなっている。
S&Pグローバルによると、 2025年8月末時点で完成・未販売の住宅在庫は約7億6,200万平方メートルで、2024年12月末時点の7億5,300万平方メートルから増加している。S &Pグローバルは、在庫調整が引き続き政策上の優先事項になると予想している。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニットによると、開発業者への土地供給を締め付ける政策措置が効果を発揮し、アパートの在庫が減少すれば、住宅価格は早ければ2027年前半に底を打つ可能性があるという。
EUIのエコノミストは先週のレポートで、住宅在庫数を月平均売上高で割って算出される在庫回転率は、2025年4月のピークである25.9か月から5か月短縮したと述べた。供給の減少によるものであれ、需要の増加によるものであれ、在庫回転率の短縮は価格安定の兆候となる。
現在のペースでいくと、クリアランスサイクルが12~18カ月に短縮されるまでには、あと1年半かかるかもしれない。これは歴史的基準からすると比較的健全な範囲だ、と調査会社は指摘している。
CNBCが話を聞いた数人の経済学者は、中国当局が長らく同国経済の重要な原動力となってきた部門の低迷を食い止めるために段階的な政策緩和策を打ち出すと予想している。
価格の下落と不動産販売数の減少は資金繰りに苦しむ不動産開発業者にさらなる負担をかけ、銀行は差し押さえ物件をさらに市場に出すようになっている。「これはまさに政策立案者が断ち切らなければならないタイプの『負のフィードバックループ』だ」とゴールドマンのシャン氏は警告した。
モルガン・スタンレーによると、中国政府は、銀行に打撃を与えることなく住宅購入者の住宅ローンコストを下げ、住宅価格を安定させ、「緩やかな需要主導の回復のための時間を稼ぐ」ことになる「金利補助金」を検討する可能性がある。
ウォール街の銀行は、2026年第2四半期に住宅ローンコストが1パーセントポイント引き下げられると、新築住宅販売が増加し、来年のデフレ圧力が緩和され、住宅価格は上位都市で底値に達する可能性が高いと見積もっている。
米国の天然ガス先物価格は、 12月前半にアメリカ本土48州全域で極寒となることを予測するモデルが発表されたことを受け、約3年ぶりの高値に急騰した。また、複数の予報官は、今月下旬に極渦の影響による北極圏の寒波が発生する可能性についても警告しており、気温がさらに低下する可能性がある。 
まず、火曜日の朝、北東部全域に 冬の嵐警報が発令されるという(この時期としては)珍しい光景から始めましょう。
天然ガス先物は、2022年第1四半期以来最大の四半期上昇に向けて推移しています。火曜日の朝の価格は1mmbtuあたり5ドル付近で取引され、2022年12月以来の高値となりました。この上昇は、中西部と東部全域で12月上旬の気温が急速に低下し、暖房需要の見通しが高まっていることが要因となっています。
気象モデルは、12月6日から10日にかけて、国の東部3分の2で気温が下がり、12月11日から15日にかけてさらに寒くなると予想している。これらの予測は、住宅および商業施設の暖房負荷が短期的に急増するという予想を裏付けるものに過ぎない。 
気象学者ライアン・マウエ氏はXで、北極上空の成層圏極渦が約2週間以内に再び温暖化現象を起こすだろうと警告した。 
「長くて寒い冬になりそうだ」とマウエさんは別の投稿で述べた。 
気象学者のジュダ・コーエン氏は、「私の意見では、次の太陽の嵐の期間は米国東部で休暇シーズンまで寒波が続くだろう」と述べた。
グレタ・トゥーンベリ氏が突然パレスチナ問題に焦点を絞ったこと、そしてビル・ゲイツ氏が気候危機に関する言説の多くが誇張されていたことを公然と認めたことは、明らかになりつつある事実をさらに強固なものにしている。気候危機に関する言説は、まるで砂上の楼閣のように崩壊したのだ。北東部はすでにシーズン序盤の寒さに見舞われている。どうかお許しを…今こそ「地球温暖化」の兆しを感じていただきたい。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
集合住宅市場には依然として大量の新規供給が続いています。これに、特に若年層の需要減退が加わり、空室率が上昇し、家賃が下落しています。 
アパートメントリストによると、全国のアパート賃料の中央値は11月に10月比1%下落し、現在は1,367ドルとなっている。これは4ヶ月連続の月次下落となる。アパート賃料は2024年11月比で1.1%下落し、2022年のピーク時からは5.2%下落している。 
アパートメントリストの研究者によると、「今年初めには、年間成長率が2023年半ば以来初めてプラスに転じる軌道に乗っているように見えたが、その回復は特に低迷した夏の間に失速し、方向転換した」という。
この指数は2017年以来の最高値を10月に記録した後、全国の集合住宅空室率は11月も7.2%にとどまった。 
過去数年間の集合住宅建設の歴史的な急増は現在では落ち着きを見せているが、需要が大幅に弱まっている時期にも新規ユニットの十分な供給が依然として続いている。 
秋は歴史的に見て、集合住宅の家賃が最も大きく下落する時期ですが、今年はその傾向がさらに顕著です。CoStarは、過去15年間の調査で最大の月間家賃中央値の低下を記録したと報告しました。主な理由は、より多くの若者が新たな世帯を形成するのに苦労していることです。  
「18歳から34歳までのグループでは、現在、家族と同居している人の割合が32.5%に達しており、これはここしばらくで最高水準です」と、CoStarのマルチファミリー分析担当全国ディレクター、グラント・モンゴメリー氏は述べています。「これは、長年にわたり上昇してきた家賃の高騰と、大学を卒業したばかりの若者にとって厳しい雇用市場を反映していると思います。」 
「伝統的に多くの需要はそこから生まれており、賃貸需要の中心はそうした若い層である」と彼は語った。
主要上場アパートREITの株価にも弱さが表れています。アバロンベイのような銘柄が今年に入ってからはすべて下落しています。 
一部の市場では、地域経済の影響により、他の市場よりも賃料の下落ペースが速い。例えばラスベガスでは観光客の減少が見られ、それが雇用にも影響を及ぼしている。ボストンでは、バイオテクノロジーへの連邦政府の資金援助が減少し、大学への留学生数も減少しており、どちらも賃貸セクターに大きな打撃を与えている。テキサス州オースティンでは、集合住宅の建設が依然として増加しているため、賃料への打撃が最も大きい。 
全国的に家賃が軟化しており、家主が値引きを拡大している一方で、より手頃な家賃の市場で物件を探す借主が増えている。 
ヤーディのレポートによると、昨年夏、新規賃貸契約が最も活発な時期であるにもかかわらず、アパート探しの活発な地域を調査したところ、最も検索された市場はシンシナティで、次いでアトランタとミズーリ州カンザスシティが続いた。セントルイスでは、入居希望者数が四半期ベースで最大の増加となり、ワシントンD.C.はトップの座から4位に後退した。 
「特に中西部はこれまで以上に注目を集め、その『隠れた宝石』市場の多くがもはや秘密ではなくなったことを示している」と報告書は述べており、賃貸需要上位30都市のうち11都市が中西部にあることがわかった。
ヤーディは2026年の供給予想も修正し、新規供給は2027年まで減少するものの、建設中のパイプラインが予想以上に多かったため、2025年と2026年の四半期予想をそれぞれ6.8%と2.5%増加させたと述べた。
アパートメントリストのレポートによると、来年も建設は引き続き減速するが、市場全体はいくぶん安定するはずだ。
「とはいえ、供給ブームはまだ少し余地があり、労働市場が不安定な中で需要見通しは弱まり始めている」と研究者らは記した。

●その他 


備忘録(2025/12/1)

●企業
中国の不動産大手、万科は人民元建て社債の元利支払いを1年待つよう債券保有者に要請した。同社は先週、償還延期を突然提案して市場を驚かせたが、期間は明らかにしていなかった。
事情に詳しい関係者によると、万科は1日、15日に満期を迎えるはずだった20億元(約440億円)の社債について保有者に対し、1年間の支払い遅延を求める意向を伝えた。これが認められる場合にも、3%の表面利率は変わらないという。関係者は非公表の問題を話しているとして匿名を要請した。
深圳を拠点とする万科はかつて売上高で中国最大の不動産開発会社だったが、いまや資金繰りに窮し、政府の支援は細っている。同社は今回の社債を含め、来年半ばまでに総額134億元の償還を控えている。
こうした動きを受け、万科の社債のいくつかは過去最安値に下落。国内最大級の不動産会社に対してすら中国政府は支援を控えるのか、全般的な懸念が広がっている。
万科には1日の営業時間外にコメントを要請したが、今のところ応答はない。
中国の不動産危機は長期化し、同業界では中国恒大集団や碧桂園など大手を含む記録的な数のデフォルト(債務不履行)や清算、再編が発生。大手のうちこれまでデフォルトを回避できていた数少ない1社だが、昨年後半以降に深刻な流動性不足に陥っている万科は、不動産業界に対して政府がどれだけ支援するのかを見極めるバロメーターと見なされている。
S&Pグローバル・レーティングは11月28日、万科の乏しい流動性を踏まえれば債務の支払いは「持続不可能」だと指摘し、今後半年以内に債務再編を強いられるリスクが上昇していると警告した。
ブルームバーグがまとめたデータによると、万科の2027年償還予定のドル建て債は1日の取引では落ち着いているが、先週1週間で60%余り急落していた。
●マクロ
日本銀行の植田和男総裁は1日、今月にも追加利上げを行う可能性を示唆した。前回実施した1月以降、最も踏み込んだ発言と言えそうだ。名古屋市で行われた金融経済懇談会で講演した。
植田総裁は18、19日に開催予定の金融政策決定会合に向けて、企業の賃上げ姿勢に関して精力的に情報収集していると説明。その上で、内外経済・物価情勢や金融資本市場の動向を、さまざまなデータや情報を基に点検・議論し、同会合で「利上げの是非について適切に判断したい」と語った。
前回の利上げが行われた1月会合の前には、植田総裁と氷見野良三副総裁が、同会合で「利上げを行うかどうか議論し、判断したい」と相次いで発言していた。植田総裁が今月会合における利上げ判断に言及したことは、約1年ぶりの政策調整に向けた地ならしとも言える。
野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジストは、植田総裁が10月会合後の会見で利上げの判断基準とした春闘の初動のモメンタムについて、講演で示した賃金をめぐる環境と動きの図表などを見ると「利上げの準備は整ったと言っているとしか聞こえない」と指摘。12月利上げの可能性が高まったとみる。
植田総裁は賃金動向について、賃上げ原資の企業収益は「関税政策の影響を加味しても、全体として高い水準が維持される見通し」と語った。現在は賃金価格設定行動が継続するかを「見極めていく段階にあり、特に来春闘に向けた初動のモメンタムを確認することが重要」との考えを改めて示した。
午後の記者会見では、特に重視していた関税政策などに伴う米国経済に関する不確実性が「数カ月前よりかなり低下した」との認識も示した。講演では、世界経済の大きな下押し要因と考えられていた関税政策の影響は「さほど顕在化していない」と指摘していた。
高市政権
植田総裁は会見で、高市早苗政権が先月策定した21.3兆円規模の総合経済対策による影響に関して、成長促進の政策が成長率を押し上げ、「基調物価にプラスの影響を及ぼす」と語った。
高市政権との関係については、先月来、高市首相や片山さつき財務相らと面談する中で「さまざまな論点について率直に良い話ができた」と説明。今後とも十分な意思疎通を図っていく考えを示した。
日銀の利上げに向けた環境が整いつつある中、金融緩和を重視するとみられる高市政権の発足が、金融政策の先行き不透明感を強める要因とされていた。一方で、政府は物価高対応を中心とした大規模な経済対策を決定。円安による物価上昇を回避するため、日銀の利上げを容認するとの見方が広がっている。
植田総裁は講演で、遅すぎることもなく早すぎることもなく、緩和度合いを適切に調整していくことは、日本経済を息の長い成長軌道に乗せるために必要だと説明。「政府と日本銀行の取り組みを最終的に成功させることにつながる」と述べていた。
1日の日本市場では植田総裁の講演を受けて今月利上げ観測が高まっている。長期金利(新発10年債利回り)は一時1.87%と2008年以来の高水準を更新した。円は対ドルで一時155円台半ばに上昇。株式は大幅反落し、日経平均株価の下げ幅は一時1000円を超えた。
円安
植田総裁は講演で、円安基調にある為替動向については、「企業の賃金・価格設定行動が積極化する下で、過去と比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている」と指摘。こうした動きが、基調的な物価上昇率に影響する可能性に留意が必要との認識を示した。
日銀の金融政策運営を巡っては、審議委員から利上げに前向きな発言が相次いでいることや円安進行などを背景に、市場で早期の政策調整観測が強まっている。植田総裁の発言を受けて、金利スワップ市場では12月会合での利上げ予想が1週間前の20%前後から足元で80%超に上昇している。
高田創氏と田村直樹氏の2審議委員は、9月に続き10月会合でも政策金利の維持に反対し、利上げを提案。小枝淳子審議委員は20日の講演で、現状の極めて低い実質金利を踏まえて金利の正常化の必要性を訴えた。増一行審議委員も同日の日本経済新聞とのインタビューで、利上げの環境は整っていると言及した。
総裁は講演で、実質金利は極めて低水準で、経済・物価に対して中立的な自然利子率を大きく下回っていると説明。利上げは緩和的な金融環境の中での調整だとし、「景気にブレーキをかけるものではなく、安定した経済・物価の実現に向けて、アクセルをうまく緩めていくプロセスだ」と語った。
暗号資産(仮想通貨)ビットコインは1日に急落している。最近までの下落の動きはいったん落ち着いたと見受けられたものの、新たな売り圧力にさらされている。
ブルームバーグ集計のデータによれば、ビットコインはアジア時間の取引で一時6%下げて8万6000ドルを割り込んだ。イーサは7%強下落し約2800ドルとなった。他の大半のトークンも同様のパターンをたどり、ソラナの下げ幅は7.8%となった。
ビットコインは12万6251ドルの最高値を付けた後、数週間にわたり下落傾向が続き、先週になってようやく売り圧力が和らいで9万ドル台を回復していた。
だが地合いは不安定で、1日にあらためて売りが広がったことを受け、トレーダーはさらなる下落の可能性に備えている。
ファルコンXのアジア太平洋デリバティブ責任者ショーン・マクナルティ氏は「12月はリスクオフの幕開けだ」と指摘。「最大の懸念は、ビットコイン上場投資信託(ETF)への資金流入に乏しく、押し目買いが不在なことだ。今月も構造的な逆風が続くとみている。ビットコインの次の重要な支持線として8万ドルを注視している」と話した。
投資家は1日、ストラテジーのフォン・リー最高経営責任者(CEO)の発言を消化。リー氏は11月28日に出演したポッドキャストで、同社の企業価値とビットコイン保有の比率であるmNAVがマイナスに転じた場合、ビットコインを売却する可能性があると述べた。
リー氏は「mNAVが1倍を下回り、配当支払いのために必要となれば、ビットコインを売却でき、売却するだろう」としつつも、最後の手段になると指摘。ストラテジーのウェブサイトによると、560億ドル(約8兆7000億円)相当のビットコインを保有する同社のmNAVは1.19まで低下している。
一方、S&Pグローバル・レーティングは先週、世界最大のステーブルコインである「テザー(USDT)」のドルペッグ維持能力について、最も低い評価に引き下げた。ビットコイン価格が下落すれば、テザーの裏付け資産が不足する恐れがあると警告した。
このほか、中国人民銀行(中央銀行)は29日、ステーブルコインを含む仮想通貨のリスクについて警告を発し、政府機関が連携を深め、違法行為の取り締まりを強化すべきだとした。
コインエックスのチーフアナリスト、ジェフ・コー氏は、USDTの評価引き下げや中国人民銀の警告など「週末の一連の弱材料」が暗号資産への圧力を再び強めたと語った。
欧州の航空機メーカー、エアバスは1日、主力機A320の胴体に使われる金属パネルの一部で品質問題を特定したと明らかにした。同機を巡っては、前週末11月28日に約6000機でソフトウエア不具合のため緊急のソフト更新を航空各社に要請したばかりで、懸念が深まっている。
これに先立ち、ロイター通信は数十機のA320ファミリー機で胴体パネルに製造上の品質問題が見つかったと報じた。
エアバスは報道を受けて「当社は慎重な対応を取っており、影響を受けている可能性がある全機体を点検している。追加対応が必要となるのは一部に限られる見通しだ」との声明を公表した。
問題の原因は特定済みで、影響は抑えられており、新たに製造されたパネルはすべての要件を満たしていると同社では説明している。ただ、追加点検が今年の引き渡しスケジュールにどの程度影響するのか、また対象となる機数がどれほどになるのかは依然として不透明だ。
同日のパリ株式市場で、エアバス株価は一時11%下落し、日中としては4月7日以来の大幅安となった。
A320は同社の主力機で売れ行きも群を抜く。エアバスは11月28日、太陽放射の影響で飛行制御が損なわれる恐れがあるとして、運用中のA320ファミリー機の半数超について緊急のソフトウエア更新を航空各社に要請した。
エアバスは週明け1日朝の時点で、影響を受けた機体の大半が既に修正済みだと述べていた
1日の商品市場で銅が上昇、ロンドン金属取引所(LME)で取引される銅先物は過去最高値を更新した。世界的に供給ひっ迫への懸念が強まった。
LME銅先物は一時0.9%高の1トン=1万1294.5ドルに上昇。ニューヨーク商品取引所(COMEX)で取引される銅先物も一時1.6%上昇した。鉱山会社が需要に追いつけない中、米国が輸入関税を発動する可能性を見据え、同国向けに銅を急いで輸送する動きが強まり、ほかの地域では銅不足が一段と悪化する可能性が高い。
上海で先週開かれた主要な銅会議では、鉱山での1年にわたる想定外の操業障害を受け、供給圧迫の兆しが浮き彫りになった。こうした中、銅相場は急伸している。製錬会社は鉱山会社側との年間の鉱石供給交渉で厳しい局面を迎えており、割増金(プレミアム)は急伸した。大手商社マーキュリア・エナジー・グループも、来年の金属不足を警告している。
ソニーフィナンシャルグループ(FG)傘下のソニー生命保険は資金運用手段として今年度中に、オルタナティブ(代替)投資を開始する。同社の高橋薫社長が1日、FGの投資家向け説明会で明らかにした。500億円から段階的に規模を拡大していく方針だ。
資料によると、オルタナティブにはプライベートエクイティー、プライベート・デット、インフラ、不動産などが含まれる。高橋氏は「将来的には新しい運用資産のノウハウを社内に取り込み、自社運用と外部委託を組み合わせて収益拡大を図っていきたい」と述べた。
ソニー生命は過去のマイナス金利環境下で超長期債の購入を進めてきたが、近年の金利上昇を受けて保険債務に対して債券の保有金額が大きい状況となり、規制上のネガティブ要因となっていた。債券売却を進めるとともにデリバティブ取引の活用などに取り組んでいる。
高橋氏は「財務の健全性を最優先に、財務基盤の強化に取り組んできた」と説明。その上で、「まだ道半ばだが、収益機会の拡大にも挑戦していく」と話した。
また運用体制について、「まだまだ十分ではない」とし、海外運用会社との合弁などより先に「外部委託をスタートし、インハウスでノウハウや知見を貯める」などと述べた。
ソニーFGの早川禎彦執行役・最高財務責任者(CFO)は、同社の財務健全性指標に関して、「ソニー生命の金利感応度の高さが課題だ」との認識を示した。
ドイツ株式市場は、より多くの国際投資家を来年呼び込む可能性が高い。政府が5000億ユーロ(約90兆円)の特別基金によるインフラ投資に動き、景気を支えるほか、合併・買収(M&A)などディールメーキングブームに道を開くとバンカーや経営幹部は期待している。
ドイツ取引所が今週開催したミッドキャップ(中型株)関連の年次会議には、企業や投資家、ファミリーオフィス、アナリストを含め過去最高の2100人が参加した。ドイツ株式相場の年初来上昇率は約20%とニューヨーク市場を上回り、会議の盛況ぶりもドイツへの関心の高さをうかがわせる。
ドイツが政府支出拡大に大きくかじを切ったことが株価高騰の一因だ。巨額の資金が投じられる防衛・インフラ分野の関連企業は人気銘柄となった。
中小企業が恩恵を受ける余地があると銀行関係者は指摘する。フランクフルト株式市場のSDAX指数およびMDAX指数構成銘柄のバリュエーション(株価評価)はなお相対的に低く、魅力的な買収対象だ。 
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の欧州・中東・アフリカM&A共同責任者ルーカス・ポエンスゲン氏は「中小企業の株価がアンダーパフォームする(標準を下回る)状況を受け、(M&Aによる)非公開化の動きが続くだろう」と予想する。
ディールメーキングは既に活気づいており、スポーツ用品メーカーのプーマも海外から関心を寄せられている。中国のスポーツウエアメーカー、安踏体育用品が買収提案を検討しているとブルームバーグ・ニュースが先に伝えた。
ミッドキャップ会議では、IT企業のナガロが頻繁に買収の打診を受けていると明らかにした。アポロ・グローバル・マネジメントは今後10年間にドイツだけで最大1000億ドル(約15兆5300億円)の資金を投じる用意があるという。
トランプ米大統領は29日、南米ベネズエラの上空や周辺の空域は「全面的に閉鎖された」と見なすべきだと交流サイト(SNS)に投稿した。詳細は明らかにしなかったものの、トランプ政権はベネズエラのマドゥロ大統領への圧力を強めている。
トランプ氏は、カリブ海と太平洋で麻薬密輸船だと主張する船舶を攻撃し、地上戦に発展する可能性もあると繰り返し述べてきた。これらの攻撃では80人以上が死亡している。一方、マドゥロ氏との電話会談では同氏の訪米の可能性についても話し合ったとも報じられている。
<ベネズエラ軍の戦力は>
ベネズエラの軍事力に詳しい6人の関係筋によると、同国の軍は、訓練不足、低賃金、軍事装備品の劣化によって弱体化しており、米軍の戦力はベネズエラ軍を圧倒している。
2013年から政権を握っているマドゥロ氏は、軍の将校を政府の役職に就かせることで軍からの忠誠心を保ってきた。しかし一般兵士の月給は現地通貨で100ドル相当にとどまっており、これは平均的な家庭が基本的に必要な額の約5分の1に過ぎないとされる。
複数の情報筋は、ベネズエラ軍の多くの部隊からは既に脱走兵が出ており、米軍が攻撃した場合にはさらに増加する可能性があると指摘している。
マドゥロ氏は約800万人の民間人が民兵組織で軍事訓練を受けていると主張している。しかし、ある情報筋は実際の防衛行動に参加するのは計数千人の情報要員と武装した与党支持者、民兵組織のメンバーだけになると推計している。
軍の装備も不足しており、それらの多くは数十年前に造られたロシア製だ。ベネズエラは2000年代にロシアのスホイ製戦闘機を約20機購入したが、米軍のB2爆撃機と比較すると見劣りするとされる。ベネズエラ軍のロシア製ヘリコプターと戦車、肩撃ち式ミサイルも時代遅れになっている。
<ベネズエラ軍の対抗策は>
情報筋およびロイターが確認した計画文書によると、ベネズエラは米軍から空襲または地上攻撃を受けた場合、ゲリラ戦形式で抵抗するか、混乱させる計画を立てている。
ベネズエラ軍高官らが詳細を明かさずに公言した内容によると、同軍の対抗策の一つは「長期的抵抗」と名付けられており、280カ所を超える拠点に配置された小規模軍事部隊が破壊工作や、ゲリラ戦を実施する。
マドゥロ氏が国営テレビで最近称賛したロシア製のイグラ地対空ミサイルシステムは5000基を配備済みだ。ある情報筋によると、攻撃を受けた場合には部隊が分散し、各地に潜伏するように命令が出ている。
第二の戦略は「無政府化」と呼ばれている。当局者は認めていないものの、情報機関と武装した与党支持者らが首都カラカスで混乱を引き起こし、ベネズエラを統治不能に陥れる作戦だと情報筋は解説している。
<ベネズエラの他の武装勢力は>
ベネズエラ西部では、国民解放軍などのコロンビアのゲリラ組織が活動している。この地域は麻薬のコカインの原料となるコカの栽培拠点でもある。
与党支持者らはオートバイの隊列で、マドゥロ政権への抗議活動と対峙することが多い。与党支持者らは武装している場合もある。
ベネズエラの野党勢力、非政府組織(NGO)、米政府、および一部の中南米政府は、マドゥロ氏とベネズエラ軍が麻薬密売組織と結託していると非難している。これらの麻薬密売組織は暴力行為も非難されている。
ベネズエラ政府はこうした関係を一貫して否定しており、米国がベネズエラに埋蔵している膨大な原油を掌握するため政権交代を図っていると主張している。
デリー北東部の雑多な路地裏をぬけた先にある薄暗い部屋で、シャージャハーンさん(32)は床に座り、ナイフで電線の皮を剝いでいた。そばでは彼女の子ども2人が銅を選別し、破片でつまずかないよう注意しながら室内を動き回っていた。
シャージャハーンさんは小規模のスクラップ業者から持ち込まれた電子廃棄物を分解し、1日に数百ルピー(数百円)を稼いでいる。
だが、その収入は減りつつある。電子廃棄物の多くが首都近郊にある政府の認可を受けた工場に流れ、入手できる廃棄物が減っているためだ。
シャージャハーンさんはファーストネームだけを明かして取材に応じた。
「もし仕事がなくなったら、どうすればいいのか」
インドでは、太陽光パネルや電池、電気自動車(EV)の主な材料となる銅などの鉱物をより多く回収するため、非正規リサイクルの取り締まりが広がっている。
こうした動きは、デリー東部シーランプー地区の人々に大きな損失をもたらしている。
環境保護団体「トキシック・リンクス」が2019年に発表した報告書によると、デリーに5000カ所ある非公式の電気電子機器廃棄物(電子廃棄物、e-waste)リサイクル場のうち、半数以上がシーランプー地区に位置しており、同地で暮らす何万人もの生活を長年支えてきた。
<鉱物探し>
国連の24年の報告書によると、インドは中国、米国に次ぐ世界第3位の電子廃棄物排出国で、昨年の排出量は政府のデータでは175万トンに上る。
インド政府は1月、40億ドルを投じて「国家重要鉱物ミッション」を発足。銅、リチウム、レアアース(希土類)などの重要鉱物を確保するため、海外および国内の鉱山からの供給確保や、電子廃棄物からの抽出を計画している。
政府は電子廃棄物リサイクル工場の設立や運営に対して資金援助を行い、処理能力の27万トン増加や、年間約4万トンの重要鉱物生産、7万人近くの雇用を目標に掲げた。
インドにおける昨年の電子廃棄物のリサイクル率は40%以上と、欧米と近い水準にある。
ただ、持続可能性の専門家らは、認可工場に送られる前の初期段階の分解・分類作業の多くは依然、保護具もない家庭や非正規の作業場で行われていると警告する。
ノルウェーを拠点とする環境研究センター「GRIDアレンダール」の循環型経済専門家、スワティ・シン・サンビアル氏は、インド政府はこうした現実を認識する必要があると指摘した。
「非正規の労働者らは、インドにおける電子廃棄物リサイクル網の第一かつ最も重要な段階の担い手であり続けている。(認可工場へのシフトは)彼らの権利を守り、より良い仕事への道を開くものでなければならない」
<失われる収入>
シーランプーでは長年、非常にシンプルな「リサイクル網」に依存してきた。労働者らは地元のスクラップ業者から廃棄された電線や電子機器を買い取ると、自宅で半導体や銅、アルミニウムを取り出して近隣のバイヤーに売り、そこから工場に供給される、という仕組みだ。
この「供給網」が弱体化しつつある。正規のリサイクル業者が拡大する中、地元当局は電力を遮断したり罰金を科すことで、家庭での解体作業を制限している。また、大手のスクラップ業者や仲介業者も、事業を工業地帯へと移している。
解体作業の危険性は、モハマド・サリームさんの手にも表れている。8年間も電線を剥き続けたサリームさんの手のひらは黒ずみ、傷だらけだ。
「私の稼ぎは2、3年前には1日700ルピー(約1200円)だったが、今では300ルピーに減ってしまった」と狭い2階建ての自宅の外でサリームさんは語った。
「この仕事は、路地から消え去りつつある」
こうした人々の多く、特に女性たちが遠く離れた工場へと職場を移すのは難しいだろうと指摘する声も聞かれた。
モハメド・シャダブさん(28)も、一生懸命に築いた基盤を失う気分だと話した。月給1万ルピーの工場での仕事を辞め、自宅で最大2万5000ルピーを稼げる電子ごみの解体業を始めたという。
「仕事は工場に移っている。認可工場を立ち上げる資金も情報もない。ただの労働者に押し戻されているような気分だ」
複数の正規リサイクル業者らは、今後も非正規労働者の手を借り続けるとした一方、そうした労働者全員を雇用する能力やインフラは不足していると明かした。
ムンバイを拠点とする企業「リサイクルカロ」のラジェシュ・グプタ氏は、企業は認可を受けたバイヤーや基礎的な訓練機会の提供を通じて非正規労働者との連携を模索しているとしつつ、より多くの雇用を生み出すにはさらなる投資が必要だと述べた。
予測可能な供給量と価格がセクターの成長には必要だ、と新興企業プランネックスのヤシュラジ・バルドワジ氏は言う。
インドの規則では、メーカーは政府の認可を受けた施設で1キロあたり最低22ルピーで電子廃棄物をリサイクルするよう義務付けられている。規則を守る施設を支援し、安全でない作業場への依存を減らすのが目的だ。
「価格が安定していれば、成長に自信が持てる」とバルドワジ氏は語った。
この価格規定を巡っては、ダイキン工業のほか韓国のサムスン電子やLG、米空調大手キヤリアといった複数の世界的な企業がインド政府を提訴。固定価格制は市場をゆがめかねないと主張した。
インドにおける「リサイクル網」の構築と、小規模業者や非正規労働者がその一翼を担い続けるかどうかは、この訴訟の行方が左右することになりそうだ。
ここ数年、自動車を購入する米国の消費者にとって価格の高さが問題になることはないように思われた。今年に入って新車の平均価格が5万ドル(約777万円)に近づく中でも、ディーラーが心配していたのは、この値段が客を遠ざけるのではないかということでなく、在庫が十分に確保できるかということだった。
だがそのような日々は終わりを迎えつつある。
自動車ディーラーやアナリストおよび業界データによれば、負担が増す中で消費者は、新車に払える金額に上限を設け始めている。自動車の購入者はより小型の車両や中古車を購入する動きが見られるほか、より長期間のローンを組み、値引きを待つようになっているという。
テキサス州東部でディーラーを経営するロバート・ペルティエ氏は、「顧客に聞かれるのは『どうやったら支払えるのか』だ」と説明。同氏によると、来店者数は依然として多いものの減少傾向にある。また小型のシボレーのトラックスなど、より安価な車両に顧客が流れているという。
ペルティエ氏は「借金を抱え、給料ギリギリの生活をしている人もいる」と述べた。
米国の自動車業界にとって、2025年は税制優遇や規制緩和の波に支えられた好調な1年になるはずだった。複数のアナリストは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)や半導体不足で打撃を受けた自動車メーカーが、今年はようやく工場をフル稼働させると予想。年間販売台数は3年連続で増加するとみていた。
しかし、現在の見通しでは、2025年は成長が鈍化するか横ばいにとどまる可能性があり、2026年も同様の見込みとなっている。
自動車業界には楽観的になる根拠があった。新型コロナ後の供給不足を受け、車両価格は高騰したが、在庫が回復し販売台数が歴史的な水準に近づいても、消費者は高価格を受け入れ続けていた。2025年に入ってからも、消費者は食洗器やビールなどの買い物を控える一方、自動車に関しては価格を気にせず購入していた。
だが現在は自動車関税に加え、持続的なインフレそして雇用市場のタイト化もあり、より多くの米国人が高額な買い物について再考している。また9月には連邦政府の7500ドルの電気自動車(EV)税額控除が終了したことにより、米国のEV市場は崩壊し、業界は数十万台の潜在的な販売を失った。
税額控除が終了する前のEV需要急増により、自動車販売は年初来から7-9月期を通じ好調を維持。北米に大きな生産拠点を持つ自動車メーカーは関税負担を吸収する能力もみせた。米ゼネラル・モーターズ(GM)の販売は10.5%、フォードは7.3%増加。だが10月になると販売ペースは1年以上ぶり低水準となった。今週発表される11月の販売台数に関しても減少が予想されており、早期の回復は見込まれていない。
逆風の兆候はデータに表れ始めている。ディーラーが在庫を抱える期間が長くなっており、販売促進のための追加値引きも実施されている。さらに低所得者層の借り手が自動車ローン返済を滞納している兆しもある。そして米国全体として、自動車の購入にかける支出は1年前より減少している。
自動車販売サイトのエドムンズ・ドット・コムのアナリスト、イバン・ドルーリー氏は、「経済の他の要素が消費者に影響を与えている」と述べた。
だがアナリストやエコノミストは、この余波が劇的な価格下落や販売急減につながる可能性は低いとみている。理由は、新車の供給が長年逼迫(ひっぱく)してきたため中古車は特に年式のより古い車両も含め歴史的高値で推移しており、こうした中で多くの自動車所有者が新車購入を待つ限界に達しつつあるのだという。
また自動車部品や修理費用も上昇しており、古い車を維持するコストがかかるなど、ドルーリー氏は「本当に救いのない」状況だとした。
こうした現実は、全国のショールームで明確に示されている。業界最大手の自動車小売業者のいくつかは、直近の四半期の新車販売における利益率や利益の減少を報告している。
調査会社コックス・オートモーティブのエグゼクティブアナリスト、エリン・キーティング氏は、「どこかが譲らなければならない状況で、通常はディーラーが自動車を売るためより多くの値引きを行うことになる」と言及。キーティング氏は米国の自動車販売が引き続き増加するとみているが、ペースはより緩やかになると予想している。
全ての消費者が厳しい状況に置かれているわけではない。国内の一部の消費者は引き続き貯えを増やしており、加熱式ハンドルやマッサージ機能付きシート、高度な運転支援システムを備えたトラックやSUV(スポーツタイプ多目的車)に高額を支払うことで業界の利益を支えている。それでも、K字型経済の上昇局面にいる米国人の数には限りがある。
キーティング氏は「市場を支えるため上位20%の世帯に依存している、という警鐘がさらに鳴らされることになるだろう」とした。
ニューヨーク州ニューロシェルにあるシボレーのディーラーを経営するマイケル・サッサーノ氏は、店舗のウェブサイトやショールームの訪問客に関するデータを確認したところ、どちらも減少傾向にあると述べた。
価格に敏感ではない消費者はすでに自動車を購入しており、現在はより高いローンを避けるため何年も購入を控えていた消費者が増えていると同氏は説明。「より多くの顧客が購入をためらっている」とし、「彼らは『今は月500ドルを支払っているが、700ドルは払いたくない』と言っている」とした。
サッサーノ氏によると、好ましい動きもある。自動車の所有者が愛車の寿命を延ばそうとしており、これが業者のサービス部門を支えているという。
アイダホ州在住のペトリット・シュードさん(35)は、所有するホンダのアキュラが事故で全損したため新しい車を必要としていた。現在、妻と共に新しいテスラの自動車を所有しているが、長距離旅行に耐えられて信頼性が高く、適度に広いセカンドカーを狙っているという。
シュードさんは専業主夫、妻は医師であることから、世帯は経済的に安定した状況にある。だがそれでも自動車価格の上昇に関する報道を耳にして不安を感じ、難しいことになると予想しながら自動車購入を検討した。当初の候補の中には現代自動車の車両もあったが、その価格には「驚愕(きょうがく)した」とシュードさんは述べた。
シュードさん夫妻はその後、1週間かけて12軒のディーラーで価格を比較、複数の州で交渉を行って価格を引き下げようとした。そして日が経つにつれ、最初は割引額に応じなかったディーラーが連絡をくれ、より良い条件を提示してきたという。
シュードさんは、「彼らはだれもが、『どうすればあなたと取引できるか?』と尋ねてきた」と述べた。ディーラーが最初の提示価格から約5000ドルを値引きしたことから、最終的に現代自動車のツーソンの上位ハイブリッドモデルを購入したとシュードさんは述べた。
ひどい11月(2018年以来最悪)の後、12月もその傾向が続き、一夜にして大幅下落となり、安定しつつあると思われていた市場を揺るがした。
タカ派的な日銀
一晩の急落は、日本銀行が12月の会合で借入コストを引き上げるだろうとの見方から日本国債(JGB)先物が下落したことがきっかけとなったようだ。
日本の2年国債利回りは一時1.01%と、2008年以来の高水準に達した。トレーダーらは日本銀行の長期にわたるほぼゼロ金利の時代が終わりに近づいていると見ている。 
約90分後、上田一夫日銀総裁は講演で、近く金利を引き上げる可能性があると述べた。
上田総裁が経済界幹部らに対し「政策金利引き上げの是非を検討し、適切に判断する」と述べたことを受け、トレーダーらは12月の日銀利上げの確率を約80%に引き上げた。
同氏は、利上げは緩和の程度の調整となるが、実質金利は依然として非常に低い水準にあると述べた。
ブルームバーグが報じているように、この反応は、来週の会合で金融政策を緩和すると広く予想されているFRBをはるかに超えたマクロ的な力に仮想通貨投資家が今や対応しなければならないことを強調した。
「初期の頃は、ビットコインは主にFRBのシグナル、つまり利下げ、利上げ、あるいはバランスシートの変更に応じて動いていた」とBTCマーケッツのアナリスト、レイチェル・ルーカス氏は述べた。
「最近では、ビットコインは単一のプレーヤーだけでなく、中央銀行の状況全体に反応しています。」
「円キャリートレード」への脅威によりリスク資産が幅広く暴落したため、反応は迅速かつ激しく、特に最大の仮想通貨であるビットコインは、約92,000ドルから84,000ドルまで急落し、その後小幅に反発して86,000ドルを超えた。
「12月はリスクオフのスタートだ」とファルコンXのアジア太平洋デリバティブ取引責任者、ショーン・マクナルティ氏は語った。
「最大の懸念は、ビットコイン上場投資信託(ETF)への流入が乏しく、押し目買いの需要がないことにあります。今月も構造的な逆風が続くと予想しています。ビットコインの次の重要なサポートレベルとして、8万ドルを注視しています。」  
CoinGlassによると、過去24時間で18万人以上のトレーダーが清算され、清算総額は5億3900万ドルに達し、その大部分は過去数時間に集中している。これらの清算の約90%は、主にBTCとEtherのロングポジションだった。 
戦略売り?
今朝、状況は悪化した。ブルームバーグは、トークン価格が引き続き下落した場合、ストラテジー社が保有する約560億ドル相当の仮想通貨の一部をまもなく売却せざるを得なくなる可能性があるという懸念が高まっており、市場前取引で同社の株価が乱高下する事態に至ったと報じている。
ストラテジーのウェブサイトによると、同社のmNAV(企業価値とビットコイン保有額を比較する主要な評価指標)は月曜日に約1.2で推移し、投資家の間では近いうちにマイナスに転じるのではないかとの懸念が高まっている。
「ビットコインを売却することは可能であり、mNAVの1倍を下回る配当金の支払いに資金を調達する必要がある場合にはビットコインを売却するだろう」とストラテジーの最高経営責任者、フォン・レ氏は金曜日のポッドキャストで述べ、それは最後の手段としてのみ実行されるだろうと指摘した。
「私の中には、それが絶対に正しいことだと考える数学的な側面と、ビットコインを販売する会社にはなりたくないと考える感情的な側面、市場的な側面がある」とル氏は付け加えた。
「一般的に言えば、私にとっては数学的な側面が勝ちます。」
MSTRはプレマーケットで5%下落している
しかし、ビットコインの保有量を増やさなかった1週間後、Strategy会長のマイケル・セイラー氏はXの日曜日の投稿で、近いうちにさらに購入する可能性があることを示唆したようだ。
緑のドットを追加し始めたらどうなるでしょうか?pic.twitter.com/a19bD33KzD
— マイケル・セイラー(@saylor)2025年11月30日
中国は「憶測」に気づき、再び禁止令を発令
最後に、中国人民銀行はステーブルコインをリスクとみなし、2021年以来禁止している暗号通貨取引の取り締まりを強化すると約束していることを指摘します。
中国人民銀行は土曜日、他の12機関との会合後、さまざまな要因により「仮想通貨投機が再燃」し、リスク管理に新たな課題をもたらしていると述べた。
同銀行は声明の翻訳で、「仮想通貨は法定通貨と同じ法的地位を持たず、法定通貨としての地位を欠いており、市場で通貨として使用すべきではないし、使用することもできない」と述べた。
「仮想通貨関連事業は違法な金融行為に該当する。」
中国人民銀行は、犯罪を抑制する必要性を理由に、また仮想通貨が金融システムにリスクをもたらすとして、2021年に仮想通貨の取引とマイニングを禁止した。
つまり、すでに敏感な暗号通貨市場にとって、一夜にして三重の打撃となる。これはサンタクロースラリーが始まるために必要な弱気な手札フラッシュなのだろうか?
銀は、その変動の激しさから「悪魔の金属」とも呼ばれるが、専門家によると、今年に入って記録的な高値に達しており、供給不足にもかかわらず、さらに上昇する可能性があるという。
金属の価値上昇は金と連動しており、金も今年に入って価格が1オンスあたり4,000ドルを超えて急騰している。
銀価格は11月下旬に1トロイオンスあたり57.16ドルという史上最高値に達し、前年比90%の上昇を記録しました。その後、上昇幅はやや縮小しましたが、供給量が少ないにもかかわらず、再び上昇傾向にあります。
「配達需要を満たすために、貨物船ではなく飛行機で銀を輸送しなければならない人もいる」とインベスコのEMEA ETF債券および商品製品管理責任者、ポール・シムズ氏はCNBCに語った。
「価格が急騰する一方で、若干下落しているのも見てきました。長期的には、今回は状況が異なり、銀価格は比較的高値を維持し、今後しばらく上昇を続ける可能性があります」と彼は付け加えた。
過去50年間で銀価格がピークに達したのは、10月が3度目です。銀価格がピークに達した時期としては、ハント兄弟が市場独占を目指して世界供給量の3分の1を蓄えた1980年1月や、米国の債務上限危機後に金と銀が安全資産として受け入れられた2011年などがあります。
「銀は金市場の10分の1ほどの規模しかないため、このショートスクイーズは明らかに一部の投資家を驚かせた」とシムズ氏は語った。
これまでの投資の波とは異なり、2025年の銀ブームは、インドからの供給不足と需要の高さ、そして産業ニーズと関税の組み合わせに依存していました。
「解放記念日以降、金価格は急騰しましたが、銀価格は実際には若干下落しました。そして金銀比価は100を超えました」とシムズ氏は述べた。金銀比価とは、金1オンスを買うのに何オンスの銀が必要かを示す指標である。
比率が低いということは、金が比較的安価であることを意味します。一方、比率が高いということは、銀が過小評価されており、値上がりする可能性が高いことを意味します。4月には、この比率は過去最高を記録しました。
「金融機関や産業界のリスク管理者は、例えば米国に金属が35%高値で戻ってきた場合を恐れて、いかなる金属も米国から持ち出したくなかった」とストーンXのEMEAおよびアジア市場分析責任者、ローナ・オコネル氏は語った。
秋に早送りすると、特にインドのモンスーンと収穫期が終わりに近づいたため、銀の需要はピークに達しました。
「農家は銀行をあまり好んでいないので、収穫が終わると、まず金、最近では銀に頼る傾向がある」とオコネル氏は語った。
インドは世界最大の銀消費国でもあり、毎年約4,000トンが主に宝飾品、食器、装飾品として使用されている。
この秋の銀のアピールは、繁栄と幸運を祝う5日間の「光の祭典」であり、インド最大の祝日でもあるディワリ祭と重なった。
供給不足
金は伝統的に人気があるが、今年は、国民の約55%が農業で生計を立てている国では手頃な投資オプションである銀が、他の金属を上回った。
10月17日、インドの銀価格は急騰し、1キログラムあたり17万415ルピーという過去最高値を記録した。年初から85%上昇したことになる。
しかし、インドの銀供給量の80%は輸入に頼っています。UAEと中国は需要の増加に対応していますが、伝統的に英国はインド最大の銀供給国です。
しかし、ここ数年、ロンドンの金庫は急速に空っぽになっている。2022年6月、ロンドン貴金属市場協会(BBMMA)の銀保有量は31,023トンだった。2025年3月には、その量は約3分の1減少し、22,126トンとなり、ここ数年で最低の水準となった。
「金庫室で何が起こっているかは、必ずしも人々の目には見えにくい」とオコネル氏は述べた。「そして、ロンドンには利用可能な金属がほとんど残っていないという状況にまで陥っていたのだ。」
10月には、需給逼迫により、トレーダーはポジションを解消するために、はるかに高い借入コスト、つまりリース料を支払わなければならなくなった。
「ある時点では、翌日借り入れは年率200%のコストがかかり、控えめに言っても多くの人が非常にストレスを感じていた」とオコネル氏は語った。
銀は、他の貴金属や希少金属と同様に、供給が常に問題となっています。シルバー・インスティテュートによる2025年版世界銀調査では、鉱山生産量が過去10年間で減少傾向にあり、特に中南米で顕著であると推定されています。
「過去12カ月ほどの間に、基礎的な黒字が赤字に転じ始めたが、その3つの理由は、車両の電動化、人工知能、太陽光発電の影響だ」とオコネル氏は語った。
「現時点では、標準的な電気自動車には約25グラムの銀が使われており、大型の電気自動車では部品の一部として50グラムの銀が使われているかもしれない」とシムズ氏は語った。
「固体銀電池に移行すれば、電気自動車1台あたり1キロ以上の銀が必要になるかもしれない」と彼は付け加えた。
過去8年間、銀の産業需要は着実に増加しており、2016年の約31,000トンから2024年には36,000トンを超えると予想されています
。しかし、シルバー協会は、世界的な経済不確実性と銀価格のピークアウトを受け、2025年には産業需要が2%減少すると予測しています。
しかし、銀は他の金属に比べて熱伝導率と電気伝導率が高く、EV、AI、再生可能エネルギーの需要増加も相まって、銀の価値は今後も高まり続けると考えられます。
「銀は貴金属と工業用金属の間の橋渡しをしており、バッテリーやソーラーパネルといった技術の進歩により、より電化が進んだ世界に移行するにつれて、銀には素晴らしい利用例がいくつかある」とシムズ氏は語った。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
「ChatGPT」が公開されたのは、わずか3年前のことだ。もともとは控えめなウェブデモにすぎなかったが、いまや週間利用者は8億人超と、世界でも最速級の成長を遂げたオンラインサービスになった。年内には10億人に達する可能性もある。生成AIブームの象徴としての存在感は揺るがない。
その成長を主導するのが、OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)だ。アルトマン氏は巨額のコスト負担を抱えるなか、ChatGPTに新しい個性機能や、年齢制限を前提とした性的会話機能を加える取り組みを進めるなど、利用者のエンゲージメントを一段と高める構えだ。
一方、最大の競争相手とみられるグーグルも黙ってはいない。同社のAI「Gemini」は、昨年11月のアップデートで性能テストの指標を大きく伸ばし、ChatGPTを上回ったとの評価も出ている。セールスフォースのマーク・ベニオフCEOは、最新のGemini3を試した結果、3年間使い続けたChatGPTから乗り換えるだろうと公言した。
しかし市場シェアで見ると、Geminiはまだ大きく出遅れている。調査会社シミラーウェブのデータによれば、10月のウェブ版への月間訪問数はGeminiが1億5300万人にとどまったのに対し、ChatGPTは11億に達した。足元の利用増加もChatGPTの方が速い。
グーグルが巻き返しに苦戦する背景には、同社が検索や地図などの実用的なサービスに強みを持つ一方で、ソーシャルネットワークのように「使えば使うほど価値が高まる」仕組みづくりを得意としていない点がある。
AI研究を率いるデミス・ハサビス氏が科学的成果を優先する姿勢も、Geminiの改善速度が速い一方で利用者拡大が進みにくい理由とされる。対照的に、OpenAIのアルトマン氏はスタートアップ育成の現場で「急成長しながら試行錯誤を続ける」経営手法を身につけてきた人物だ。
グーグルもGeminiを文章作成やスケジュール管理の支援に生かすなど改良を続けているが、ChatGPTは「会話相手」としての親しみやすさを前面に押し出し、消費者の支持をつかんでいる。
もっとも、これはグーグルにとって致命傷ではない。検索エンジンやクラウド事業、AIチップなど既存の柱は健在で、Geminiがゆっくり成長しても同社は痛手を受けない。大型船を操るように着実に進むグーグルに対し、OpenAIは高速艇のように加速を続ける必要がある。
OpenAIは2029年までに1150億ドルを投じる計画で、ChatGPTの成長は同社の存続に直結する。無料利用者を月額20ドルの有料会員へと転換することも急務となっている。
ChatGPTはすでにエンゲージメントの時代へと入った。AI競争が高度化する中、グーグルが「より賢さ」を追求する一方で、OpenAI は「離れにくさ」を武器に勝負を挑んでいる。
再生可能エネルギーを手掛けるカナダのカナディアン・ソーラー<CSIQ>が上昇。米国による中国製品への審査強化を受け、中国子会社CSIソーラーを同社の所有下へ移転すると伝わったことが材料視。
蘇州に拠点を置くCSIソーラーは、米国市場向けの3つの海外工場の75.1%を親会社であるカナディアン・ソーラーに売却すると上海証券取引所への提出書類で明らかにした。
クリーンエネルギー供給網における中国の支配的地位を受け、米国は中国製太陽光パネルや電池に対する直接関税や、中国企業が米国で再生可能エネルギー関連製造に投資する際の税優遇を制限するなど、様々な規制措置を講じている。
提出書類によると、移転対象となる3工場の所在地は明示されていないが、3GWhのエネルギー貯蔵システム工場、2.9GWの電池工場、8GWの太陽光ウエハー切断工場で構成され、米国向け供給が中心で、総価値は約6600万ドルとされている。
また、これらの工場は米国で太陽光発電とエネルギー貯蔵に焦点を当てた2つの合弁事業の立ち上げに活用される予定で、同社が75.1%、CSIが24.9%を保有する。CSIは米国の法規制変更に対応し、事業運営の正常化、リスク低減、米国市場への長期的な関与を確保することが目的だと説明。
アナリストは、今回の資産移転によって、CSIは米国向け太陽光・蓄電システム輸出に関する懸念外国企業規定への適合を維持できるだろうと指摘している。
【企業概要】
太陽光発電技術および再生可能エネルギーを手掛ける。北米・南米・欧州・南アフリカ・中東などで、ソーラーインゴット・ウェーハ・モジュール・その他の太陽光発電および蓄電池製品を設計・開発・製造するほか、グローバルエネルギー部門において、太陽光発電および蓄電池プロジェクトの開発・運営・売電事業なども行う。
●その他

0 件のコメント:

コメントを投稿