2025年11月2日日曜日

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備忘録(2025/11/24)
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トランプ米政権が数日前、ウクライナに対し受け入れるか拒むかの二者択一として突然提示したロシアとの28項目の和平案は、実際には数週間にわたる水面下での交渉の産物だったことが分かった。
この交渉はトランプ大統領のウィトコフ特使とロシアのプーチン大統領の経済特使キリル・ドミトリエフ氏の間で行われ、ウクライナやその同盟国のみならず、一部の米政府高官さえも排除された形で進められた。
ウクライナ当局者は23日、この和平案を巡り欧州の国家安全保障担当顧問らと話し合った。その後、同日にスイスのジュネーブで米国とウクライナの協議が行われた。
ウクライナはより有利な条件を引き出したい考えで、イェルマーク大統領府長官によれば、米国の交渉担当者とともに「アップデートされ、練り直された和平に関する枠組み文書」をまとめた。
イェルマーク氏はテレグラムへの投稿で、立場の調整と次のステップを明確にするうえで、ジュネーブでの協議は著しい進展を見せたと述べた。
欧州連合(EU)の首脳らは24日、アンゴラの首都ルアンダで開催されるEU・アフリカ連合(AU)サミットにあわせ、ハイブリッド形式で会合を開き、ウクライナ情勢について協議する。
トランプ氏は先に、ウクライナが27日までに提案を受け入れるべきだと主張した。だが、ルビオ米国務長官はジュネーブでの協議後、トランプ氏が提示した期限は確固としたものではないとの認識を示唆した。
この計画がどのようにして生まれ、誰がその背後にいたのかを再構成した記事をまとめた。この内容は、機微な交渉について匿名を条件に語った複数の関係者への取材に基づいている。
欧州側が警戒感を強めたのは、新たな人物がこの交渉の場に登場した際だった。エール大学ロースクール時代からバンス副大統領の親友として知られるドリスコル米陸軍長官だ。
ドリスコル氏は各国の大使やウクライナ当局者に対し緊迫した口調で、トランプ氏が既に忍耐の限界に達しており、ウクライナは不利な立場にあるため、領土の譲歩に応じなければならないと伝えた。
米軍高官の代表団が先週、ウクライナの首都キーウを訪問した際、この計画の推進役を任されたのが副大統領に近いドリスコル氏だったという事実は示唆的だ。
このような重要任務は通常、ルビオ氏といった外交トップなどが担うものだ。バンス氏とルビオ氏は戦争終結のあり方について見解が異なり、バンス氏は一段と孤立主義的な立場を取る一方、ルビオ氏はロシアに利用されるリスクに対してより慎重な姿勢を示している。
欧州首脳やゼレンスキー大統領が行動を起こす前に、まず確認しようとしたのは、この枠組みを主導した人物が誰なのかという点だった。欧州側は完全に蚊帳の外に置かれており、トランプ氏の対ウクライナ政策に最も影響力を持つのが誰なのかも明確ではなかった。
ポーランドのトゥスク首相は「私たちが作業を始める前に、この計画の作者が誰で、どこで作られたのかを確かめるのが良いだろう」と、皮肉を込めてX(旧ツイッター)に投稿した。
関係者によると、明らかになった構図は次の通りだ。ウィトコフ氏とドミトリエフ氏は10月にフロリダ州マイアミで会談し、この計画をまとめた。この場には、ウィトコフ氏とともにイスラエル・パレスチナ自治区ガザ和平案に関わったトランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏も同席していたという。
ルビオ氏がこの計画を完全に把握したのはかなり後になってからだった。トランプ氏も土壇場で報告を受けたが、内容を承認したとされる。ホワイトハウスはこれまでのところコメント要請のメッセージに答えていない。
今回の合意が実現すれば、トランプ氏にとっては政治的な勝利となる。民主党が4日のバージニア、ニュージャージー両州知事選やニューヨーク市長選で共和党を大差で破ったことで、米国内では政権の求心力低下が進み、来年の議会中間選挙で厳しい結果に直面する可能性が高まっている。
一方、ゼレンスキー氏も自国で厳しい立場に立たされている。側近のイェルマーク氏を巻き込む汚職疑惑が浮上し、政権を揺るがす事態となっているためだ。
トランプ氏にとって重要なのは、細部ではなく合意をまとめることそのものだ。これに対し、ウクライナ側にとっては、細部こそが肝心だ。ウクライナ側の知らぬ間にロシアが文書の大部分を起草したのではないかという懸念は、結果的に正しかったことが判明した。この文書には、いまもなお不自然な表現を含むロシア語からの直訳と見受けられる痕跡が随所に残っている。
この計画では、ウクライナが広大な領土を割譲し、軍の規模を縮小し、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を恒久的に禁じられることが求められている。また、ロシアと米国との経済関係を再構築することも盛り込まれている。
トランプ氏が1月にホワイトハウスに返り咲き、「数日で戦闘を終わらせる」と誓って以来、停戦に向けた取り組みはまるでオペラのように激しい起伏を繰り返してきた。
今回の展開も過去の劇的な場面に劣らない。2月にはゼレンスキー氏が、ホワイトハウスの大統領執務室でバンス氏とトランプ氏から叱責(しっせき)を受けたことがあった。8月にアラスカ州アンカレッジで行われたトランプ氏とプーチン氏との首脳会談の直後、欧州首脳らは慌ただしくホワイトハウスへ駆けつけた。
トランプ氏が10月、プーチン氏との2回目の首脳会談に前向きな姿勢を示し、今度はハンガリーの首都ブダペストでの開催を提案したと突然表明した際、欧州側には夏の再現のように映った。だが今回、欧州にはルビオ氏という頼れる存在がいた。同氏がロシアのラブロフ外相と電話会談を行い、ロシアが要求を一切譲っていないことを確認したため、会談は中止となった。
欧州側が知らなかったのは、その裏でウィトコフ氏が後に28項目の計画と呼ばれる文書をまとめつつあったことだ。欧州側は、ルビオ氏がウィトコフ氏に代わり、ウクライナ問題における米国の主要な交渉役となったと考えていた。
米共和党のラウンズ上院議員によると、ルビオ氏はジュネーブへ向かう途中、同氏および民主党のシャヒーン上院議員に対し、28項目の計画はロシア側の提案であり「われわれの勧告ではない。これはわれわれの和平案ではない」と伝えたという。
その後、ルビオ氏はXへの投稿で、和平提案は米国が作成したもので、交渉に向けた強固な枠組みを提供するものだと主張した。ただ、言葉選びは慎重だった。「ロシア側からの意見を基にしているが、ウクライナ側の以前および現在の意見にも基づいている」と説明した。
一方、ドリスコル氏は欧州当局者との新たな連絡役となって以降、ウィトコフ氏およびバンス氏と継続的に連絡を取り合っている。また、関係者の話では、バンス氏の国家安全保障担当補佐官を務めたアンディ・ベイカー氏も深く関与しており、副大統領の影響力を示すもう一つの証拠となっている。
暗号資産(仮想通貨)ビットコインは24日に下落。今週も軟調なスタートとなった。長引く売りに押され、このままいけば月間ベースでは2022年以降で最悪のパフォーマンスになると見込まれている。
週末にいったん持ち直したものの、24日午前の取引で一時2.3%下落し、短時間ながら8万6000ドルを割り込んだ。その後は下げ幅を縮小し、ニューヨーク時間午前6時45分では8万6300ドルで取引されている。
21日に付けた安値の8万553ドルは上回っているものの、トレーダーの間に楽観的な見方は乏しい。トランプ米大統領が業界を支持しており、政策面で追い風が相次いだにもかかわらず、暗号資産市場全体では低迷が続いている。
オービット・マーケッツの共同創業者キャロライン・モーロン氏は「早朝の取引ではやや弱含んだが、値動きはかなり小さく通常のレンジ内にある」と指摘。今週は8万-9万ドルのレンジ内で推移する可能性が高いと予想し、市場は米金融当局の今後の金利決定に関する手がかりを探っていると付け加えた。
BTCマーケッツのアナリスト、レイチェル・ルーカス氏によると、先週の下落を受け、トレーダーらは8万5200ドルを下値支持線の節目として注視している。ルーカス氏は「現在はテクニカル要因とマクロ経済の逆風がファンダメンタルズよりも強いが、過去の例では、新たなショックが起きなければ、こうした清算局面の後には反発が見られることが多い」とも述べた。
高市早苗首相の経済ブレーンで、クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは23日、外国為替市場で急速に進行する円安に対し、政府は積極的な為替市場への介入で対応するとの見方を示した。
会田氏は高市政権が新設した日本成長戦略会議のメンバーだ。NHKの番組で、政府はこれまでよりも為替介入を積極的にやり、「円安の副作用を軽減していくということになると思う」と述べた。日本の財政状況は深刻ではないとの高市政権の考えに基づけば、現在の外貨準備は過大だとも述べた。
政府が先週末に21兆円を超える大規模な経済対策を決定し、積極財政路線を鮮明にさせる中、外国為替市場では急速に円安が進行している。片山さつき財務相は21日、為替介入は選択肢として「当然考えられる」と市場をけん制。会田氏も改めて言及したことで市場で介入への警戒感が高まりそうだ。
人工知能(AI)や造船、防衛といった17の戦略分野に対しては、「国債を発行してでも投資をすることによって供給能力を拡大する」ことの重要性を指摘。国債発行で将来の成長投資をしっかり行うことで、官民連携のグローバルな成長投資競争を勝ち抜く覚悟が必要だとした。
日銀の金融政策運営に対する政府の考えも、高市政権では「強い経済成長と物価安定の両立を目指して適切な金融政策を行う」ことが重要との考え方に変わっているとい指摘した。米連邦準備制度理事会(FRB)と同様に「二つの目標を持ってしっかり景気を支えてくださいということだ」と語った。
ベッセント米財務長官は23日、トランプ政権は米国の医療費抑制に取り組んでおり、この問題への対応策に関する新たな発表を週内に予定していると明らかにした。
ベッセント氏はNBCの番組「ミート・ザ・プレス」で、バンス副大統領が政府の生活費対策について「少しの忍耐を」と国民に呼びかけたことに関連して、「医療費は下がると考えている」と発言。その上で、「この件について今週発表がある」と語った。
トランプ大統領は先週、2025年末で補助金が失効することで医療保険料が急増する恐れがあるとして、1月30日までに対策をまとめたいと話していた。今月行われたバージニア州およびニュージャージー州知事選では、アフォーダビリティー(暮らし向き)を争点に掲げた民主党候補が勝利しており、26年の中間選挙を前にホワイトハウスへの圧力が強まっている。
ベッセント氏は具体的な内容には触れなかったが、トランプ氏は議会で進められている医療保険制度改革法(オバマケア)の保険料補助を延長する法案に反対しており、支援は国民に「直接」行うべきだとの考えを示している。
米政治メディアのポリティコによると、ホワイトハウスは近く、補助の2年延長と対象者の新たな制限を盛り込んだ政策枠組みを発表する見通しだという。
スイスの富裕層向け資産運用会社ジュリアス・ベア・グループは2025年通期で減益になると予想した。過去の問題事業の清算に取り組む中で、不動産融資について1億5000万スイス・フラン(約291億円)の貸倒引当金を計上したことが響くという。
24日発表された暫定報告によると、1-10月に富裕層顧客の資金は117億フランの純流入で、流入額は前年を上回る。運用資産残高は同期間に4%増えて5200億フランとなった。
ジュリアス・ベアは2年前、オーストリアの実業家レネ・ベンコ氏が創業したシグナ・グループ向けの融資で巨額の損失を被り、経営陣を刷新。これを受けて就任したステファン・ボリンジャー最高経営責任者(CEO)とノエル・クイン会長は、事業の立て直しを図っている。この融資については、スイス連邦金融市場監督機構(Finma)の調査も進む。
同行は、5月に発表したクレジットポートフォリオの検証を完了したとも報告。住宅用・商業用不動産を中心に7億フラン相当の「融資ポートフォリオを縮小する」ことを決定したと明らかにした。
24日のチューリヒ市場で、ジュリアス・ベアの株価は一時6%近く下落。欧州の銀行株の中で、年初来で最も下落率が大きい銘柄の一つとなっている。
格付け会社ムーディーズは21日、イタリアのソブリン格付けを「Baa3」から「Baa2」に引き上げた。政治・政策の一貫した安定性を評価した。23年ぶりの格上げとなる。
ムーディーズは声明で、「イタリアは国家再建・強靭化計画のマイルストーンと目標の達成に向けて順調に進んでおり、欧州連合(EU)加盟国の中で支払い要請の件数と支払いでトップだ」と述べた。
ムーディーズがイタリアを格上げするのは「Aa3」から「Aa2」に引き上げた2002年5月以来。同国の格付けは18年10月の引き下げ以降、据え置かれてきた。
イタリアのジョルジェッティ経済財務相は「23年ぶりとなるムーディーズの格上げをうれしく思う。これは現政権、ひいてはイタリアに対する信頼回復をさらに確認するものだ」と声明で述べた。
イタリアは今年の財政赤字が対国内総生産(GDP)比で3%を下回り、赤字削減が予定よりも早く進むと予想している。政府は以前、今年の財政赤字を昨年の対GDP比3.4%から3.3%に削減する方針を示していた。
今年に財政赤字がGDP比3%を下回れば、イタリアは26年半ばまでにEUの過剰赤字に関する違反手続きから脱却できる。
ムーディーズは「高水準となっているイタリアの政府債務負担は27年以降、徐々に減少する見込みだ」と述べた。
信用力の強さと課題のバランスを理由に、見通しは「ポジティブ」から「安定的」に修正した。
イタリアで最も長寿のテレビクイズ番組の名前は、「遺産相続」という。これだけでも、多くのイタリア人が大金を入手する理想的な方法は相続だと考えていることや、相続税率が周辺国と比較してかなり低く設定されている理由が垣間見える。
相続税率を他国の水準まで引き上げれば、欧州連合(EU)第3位の経済大国でありながら慢性的に低迷しているイタリア経済や社会の問題緩和に資することができるとの指摘も出ている。
経済学者のサルバトーレ・モレッリ氏とデメトリオ・グッツァルディ氏が米国の研究機関のデータに基づいて行った分析によると、イタリアの相続財産は2024年には2430億ユーロ(43兆7000億円)に達し、国内総生産の14%に相当する。
ピサのサンタンナ大学の経済史家ジャコモ・ガブーティ氏によると、この比率は30年間で倍増し、19世紀後半以降で最高に達している。
イタリアが突出しているとはいえ、この傾向は多くの先進国に共通する。戦後の「ベビーブーマー」たちが蓄積した資産の価値が急増しているからだ。
しかしイタリアでは、相続資産に対する課税率は平均0.5%以下で、世界平均の3分の1だ。とりわけ巨額の資産を受け継ぐ富裕層ほど、税負担は軽く抑えられている。
<低い相続税と社会的流動性>
前出のモレッリ氏は、「イタリアの相続税の低さは、社会の流動性を阻害し、世代から世代へと特権を温存している」と語る。同氏は、ローマのトレ大学の経済学教授で、ニューヨーク市立大学大学院センターのウェルス・プロジェクトを率いる。
イタリアでは、富裕層の多くが自らの富を相続によって手にしている。スイス金融大手UBSの報告書によると、イタリアには昨年62人の億万長者がいたが、そのうち自力で稼いだと認定されたのはわずか42%で、欧州で最も低い割合だった。
イタリアでトップの富豪はジョバンニ・フェレロ氏で、フォーブス誌によると推計純資産は約410億ドル(約6兆3000億円)。2015年に父ミケーレ氏からヘーゼルナッツ・スプレッド「ヌテラ」製造会社フェレロの株式の過半数を相続した。
このような現象には、深い歴史的ルーツがある。
イタリア銀行(中銀)の調査によると、ルネサンス時代の1427年にフィレンツェで富の上位3分の1を所有していた家は、戦争や疫病、革命、資本主義を経た2011年の時点でも、上位3分の1にいる可能性が50%高かった。
2016年に発表されたこの研究は、イタリアでは相続財産が比較的長期間保たれてきたことを示すものとして話題となったが、税制の変更を促すことはなかった。
イタリアの相続税収は年間10億ユーロに過ぎない。これに対し、ドイツと英国はそれぞれ約90億ユーロ、フランスは210億ユーロを相続税から得ている。平均的な実効税率は、ドイツが2%、英国が2.9%、フランスが7.5%で、米国の相続税率は1.3%だ。
イタリアのわずかな相続税収のうち、100万ユーロを超える資産から発生するのはわずか30%だとモレッリ氏は指摘。相続税をEU平均の水準に引き上げるだけで、イタリアはさらに60億ユーロの税収を得ることができるという。
<メローニ政権は増税に反対>
ミラノのボッコーニ大学のティト・ボエリ経済学教授は、イタリアが相続税収を増額すれば、公的教育や保育の
その税収があれば、メローニ首相は所得をより多く消費する低所得者の給与税を減税し、内需の押し上げを図れると指摘するエコノミストもいる。
しかし、メローニ氏の右派政権は、富裕層への課税強化を求める野党や労働組合の要求を度々跳ねつけている。同首相は今月、「左派は富裕税を提案し続けているが、右派が政権を握っている以上、日の目を見ることはないだろう」と、Xに投稿した。
イタリアでは、一般にあらゆる増税に対する反発が根強い。同国では、多くの公共サービスがEUの基準からすると貧弱で、国家に対する信頼が低いという調査結果もある。
億万長者のメディア王、故ベルルスコーニ元首相は、2001年に相続税を全廃したが、5年後に次の政権が低水準で再導入した。
22年に就任したメローニ首相は、富裕層が生前に相続人に現金や資産を贈与することで相続税を回避しやすくなるよう税制を変更した。
<富裕層優遇の税制>
イタリアでは、配偶者と子供への遺産相続は100万ユーロまで免税となる。この基準を超えると4%課税される。その他の相続人らは最高8%の税率を支払うが、納税免除となる相続額は低いか、あるいはない。
フランスとドイツは、納税免除となる相続額はより厳しく、課税率は5%から60%となっている。
相続税や富裕税に反対するイタリア人は、イタリアはすでに比較的税額が高く、これ以上の増税は成長を阻害し、富裕層の海外移住を後押しする結果となると主張する。
しかし、イタリアの富裕層にはイタリアに留まる強い動機がある。最近の調査によると、社会で最も裕福な7%の人々は、中低所得者よりも納税額が相対的に少ない。
イタリアでは、富裕層の典型的な収入源である一部の不動産や金融資産に対する課税率が低く、自営業者には有利な「フラット(一定)」所得税率が適用される。一方で、中所得の給与所得者の納税条件はより厳しい。
サンタンナ大学のガブーティ氏は、フランスやドイツの経験を引き合いに出し、相続税を引き上げたとしても経済への副作用は小さいとみる。
「ユーロ圏をけん引する2大経済大国は、イタリアよりはるかに重い相続課税を行っている。それでも富裕層の国外脱出を招いておらず、経済成長を大きく損なっている証拠もない」と同氏は指摘した。
高市早苗首相は23日、訪問先の南アフリカで20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の日程を終えて記者団の質問に答えた。高市内閣が総合経済対策をまとめたことに関し、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事から祝意を伝えられたと説明した。
首相は同氏と立ち話した際のやりとりを明かした。「『財政上のリスクも手当てされており安心している』というコメントがあった」と語った。
政府が21日に閣議決定した総合経済対策は、減税などの効果を含めて21.3兆円規模になった。一般会計の歳出で17.7兆円にのぼり、新型コロナウイルス禍後では最大規模の補正予算となる。首相が掲げる「積極財政」に沿う内容で、市場は財政悪化を懸念している。
秋の予算は金融市場にとって常に重要なイベントだが、投資家がレイチェル・リーブス財務大臣の支出と課税計画に注目していることから、今年はそのことが特に実感された年となった。
リーブス氏が昨年制定し、首相が変更を拒否してきた自ら課した「財政ルール」は、借入コストの上昇、成長の鈍化、福祉支出削減の方向転換を伴い、推定200億~350億ポンド(約260億~460億ドル)の予算不足に陥っており、その財政赤字を埋めるためには増税以外の選択肢はほとんど残されていない。
リーブス氏が自身のルールを破れば、日々の支出が税収で賄われ、2029~30年までに公​​的債務が経済生産高に占める割合が確実に低下するという目標を掲げているため、増税は不可避だと広く見られている。もしリーブス氏がルールを破れば、国債市場で大混乱が生じ、 債権者がリーブス氏の自制心と支出抑制力に疑問を抱く可能性があり、英国の借入コストが上昇する可能性がある。
市場ストラテジストらは、リーブス首相は自身のルールを堅持する必要があり、投資家をなだめるためにいくつかの増税が実施される可能性が高いことに同意している。
しかし投資家は支出削減、経済成長の促進、インフレ抑制策を望んでおり、イングランド銀行が12月から来年にかけて利下げ路線を継続するのを支援するため、財務大臣はそれ以上の措置を講じる必要があるだろうと彼らは警告している。
「金融市場は財政規則の修正や無視を許さないだろう。実際、財務大臣は11月4日の予算発表前演説で、規則を「鉄壁」と表現し、規則へのコミットメントを強調してきた」と野村のエコノミストは予算発表前分析で述べ、「英国の財政状況の持続可能性を最終的に判断するのは、恣意的な規則の集合体ではなく、市場となるだろう」と指摘した。
パンテオン・マクロエコノミクスの英国経済学者ロバート・ウッド氏とエリオット・ジョーダン=ドーク氏は、予算発表後に英国債が小幅に売られることをすでに予想しており、リーブス氏の選択の「現実」が「期待を裏切る」ことになると予想している。
「政府が所得税増税を撤回したことで、政治的な動きが予想よりも早く表面化し、我々が予測していた英国債の調整が前倒しとなった。しかし、政治情勢も我々の想定以上に悪化しており、その結果、予算もさらに悪化しているため、2025年末の10年債利回り予想を4.65%、30年債利回り予想を5.45%に引き上げた」と、彼らは金曜日の分析で指摘した。
月曜日、英国の指標となる10年国債の利回りは4.552%、30年国債の利回りは5.364%だった。
「異常に重要なリスクイベント」
水曜日の市場には、リーブス財務相が何を発表するか、また彼女が自身のルールをどう満たすかだけでなく、予算責任局(OBR)が水曜日に経済と財政の予測を発表する際に何を言うかについても、大きな不確実性が生じている。
今月初め、財務省が11月26日の予算で所得税増税を発表する可能性があるとの噂があった(これは選挙公約に反することになるが)が、財務大臣がそれを棚上げにしたようにみえると、英国債利回りは急上昇し、政府に対して、歳入増加策に関するいかなる大きな方向転換も、物議を醸すか否かに関わらず、投資家からの激しい反応に遭遇するだろうというシグナルを送った。
ストラテジストらは、予算で何が期待されるのか、何が得られるのかがよく分からないことが市場を不安にさせていると指摘する。
「今年の秋の予算をめぐっては前例のない不確実性があり、市場にとって異例に重要なリスクイベントとなっている」と、エバリーの市場戦略責任者マシュー・ライアン氏は先週の電子メールでのコメントで述べた。
「投資家は支出削減を強く求めているが、削減できる額はごくわずかになる可能性が高い。政府が自ら課した借り入れルールに違反すれば、市場は政府を罰するだろう」と同氏は付け加えた。
「リーブス氏が、持続可能な形で財政均衡を図りつつ経済成長も促進する確かな計画を持っていることを市場に伝えられるかどうかが鍵となる」とストラテジストは結論付け、「増税が重く、財政均衡を回復するための具体的な戦略が明確でない、成長を阻害する予算とみなされる」ことは、ポンドや英国債などの英国資産にとって弱気材料となるだろうと指摘した。
国立経済社会研究所のデイビッド・エイクマン所長もこれに同意し、月曜日にCNBCのインタビューで「重要なのは、英国の財政状況を安定させる信頼できる予算があることです。つまり、財政ルールに対して十分な余裕があるということです。つまり、6ヶ月後、あるいは1年後に財政再編を繰り返すような状況には陥らないということです」と述べた。
「投資家が注目するのは、首相が提示する政策パッケージの信頼性だ。その信頼性の一側面は、対策が後回しにされるかどうかだ」と同氏は述べた。つまり、政策措置は現在の予測期間の後半、つまり次回総選挙が予定されている2029年まで延期されるということだ。
政府は、予算編成に先立ち、国民や市場の反応を見るために税制変更の可能性について説明や情報を漏らすなど、レゾリューション財団が「過剰な凧揚げ」と呼ぶ行為に手を染めることで、市場の不確実性を悪化させ、消費者や企業の信頼を損なうリスクがあるとの非難に直面している。
エイクマン氏は、予算をめぐるニュースが「少しずつ」流れてきたことで政策とビジネスの不確実性が生じたことに同意したが、財務大臣にはまだ状況を好転させる余地があると述べた。
「もし予算に明確な内容があり、それが市場から信頼でき、成長促進につながるとみなされるなら、彼女(リーブス氏)には現状を正すチャンスが必ずある」
かつては国有企業が中心だったアフリカにおける中国の商取引は、現在では民間部門の消費財へと移行しつつある。
アフリカでは、ケニア、ウガンダ、ザンビアといった経済成長率の高い国々の年間成長率はそれぞれ4.8%、6.4%、5.8%である一方、アフリカ大陸全体の50カ国以上のGDPは4.1%にとどまっている。これは、IMFが先月発表した経済見通し報告書によるものだ。
今年11月18日に発表されたロジウム・グループの中国越境モニターによると、伝統的な資源産業における収益の減少と建設収入の減少により、アフリカの資源集約型セクターへの中国の投資は2015年のピークから約40%減少した。
一方、中国の対アフリカ輸出は、2020年から2024年にかけて57%増加した後、2025年の最初の3四半期で前年比28%急増したと報告書は述べている。輸出品のほとんどは、電子機器、プラスチック、繊維などの高付加価値製品である。
「当初、中国に進出した企業はインフラ整備をかなり行っており、天然鉱物の採掘も盛んに行っていた」とマッキンゼー・グレーター・チャイナのジョー・ンガイ会長は語った。
「ここ数年、人々はアフリカの消費者市場について考え始めていると思います」と彼は述べた。しかし、市場の細分化と薄い利益率がこうした事業を困難にする可能性があると警告した。 
この変化は、アフリカ大陸で初めて開催されるG20サミットが週末に南アフリカで開幕する中で起こった。米国は代理大使のみを派遣した一方、中国の李強首相が北京を代表し、より多くのハイレベルのビジネス協議の機会が生まれた。
中国国内の人々がアフリカの現状をほとんど知らなかった以前とは対照的に、今では「出張が増え、従業員の海外派遣も増えています。より深く関わっているという実感があります」と、The Dot Connectorの創設者で中国・アフリカコンサルタントのヘザー・リー氏は述べた。彼女は、中国の大手企業が、特定の市場機会を探るために意思決定者をアフリカに派遣するケースが増えていると指摘した。
西アフリカでは電力不足のため、中国の太陽光発電製品は歓迎されており、また医療用品、ベビー用品、家庭用品もアフリカ大陸全土で人気がある、と李氏は述べた。
すでに中国のスマートフォンメーカー、トランシオンは長年にわたりアフリカで事業を展開しており、通信大手のファーウェイや家電メーカーのミデアもアフリカで事業を拡大している。
中国国営メディアは7月、美的集団がアフリカサッカー連盟(AFFC)と協定を締結し、同地域への投資を拡大すると報じた。同社は既にエジプトに工場を建設しており、さらに工場を建設する計画もある。
中国のソーシャルメディアの注目が高まる
状況の変化は、投資データだけでなく、中国の起業家がオンラインで共有している経験からも明らかです。
小紅書やビリビリのようなソーシャルメディアプラットフォームでは、過去1年間の投稿で、ドロップシッピングや電子商取引、さらには中国のサプライチェーンに結びついた製造業や小売業など、小規模で機敏なビジネスベンチャーにとってアフリカが新たな目的地として描かれている。
イヤホンとデータケーブルを扱うある業者は、中国からナイジェリアへの移住とアフリカでのパートナー探しについて語り、別のソーシャルメディアアカウントでは、ケニアのバブルティー事業の進捗状況が記録されている。ソーシャルメディアの投稿には、スリッパ、小型家電、家具、付け爪などを販売する起業家の姿も見られる。
中国人起業家と緊密に連携してきたナイジェリア生まれの不動産投資家兼ビジネス戦略家のジョセフ・ケシ氏は、起業家の中には最初の1年で6桁ドルもの収入を得た人もいると語った。 
李氏は、ソーシャルメディア上で誇張する人もいるかもしれないと警告する一方で、こうした露出によってアフリカにおける機会に対する中国人の認識が高まる可能性があると指摘した。
ユーロモニターのデータは、この傾向がより大規模に起きていることを裏付けており、アフリカで多くの中国企業がおむつ、家庭用品、パッケージソース、スナック菓子といった基本的な消費財を販売していることを浮き彫りにしている。
「急速に都市化が進み、若年化が進み、インターネット接続が進む人口の増加に伴い、アフリカ大陸全体の世帯支出は2030年までに2兆ドルを超えると予測されている」と、ユーロモニター・インターナショナルの地域インサイト・マネージャー、クリスティ・タウィー氏は声明で述べた。
彼女はまた、アジアや中国のブランドをアフリカの家庭に広めている チャイニーズ・スーパーマーケットなどの電子商取引プラットフォームの台頭を指摘した。
これらの起業家の多くは、アフリカにおける人民元の利用拡大が取引リスクの低減と商業関係の深化につながると楽観視している。ロジウムのレポートによると、現在、人民元は「貿易請求書の30%」で使用されている。
しかし、ロジウム・グループとアトランティック・カウンシルは、中国がアフリカ諸国の大半と貿易黒字をあげていることや、世界が米ドルに依存していることを理由に、人民元の利用拡大には「構造的な上限」があると述べている。 
輸出のみの落とし穴
中国の消費財企業のアフリカへの関心が高まっている背景には、経済成長の鈍化と競争の激化により国内の利益率が縮小していることがある。
ロジウム・グループは、米国や欧州との貿易障壁に直面する中国企業にとって、アフリカの消費者への販売はより魅力的になっていると指摘した。アナリストらは、中国が過剰生産能力問題を解決できず、欧州でさらなる規制に直面した場合、中国の輸出がアフリカなどの地域にますます流入するという「停滞シナリオ」を予測した。
安価な輸入品は消費者に利益をもたらすが、世界の他の地域と同様アフリカでも、低コストの輸出の急増は地元の製造業を弱体化させ、貿易不均衡を深める可能性がある。 
「アフリカを単なる消費市場としてではなく、大陸自体が消費する商品を生産する市場として見る必要がある」と、アフリカ政策研究所の客員研究員兼コンサルタントのエビペレ・クラーク氏は述べた。
一部の中国企業はすでに現地生産を開始している。
「アフリカでは工業化への動きが強まっています」と、ザ・ドット・コネクターのリー氏は述べた。「私は、中国の軽工業を誘致し、製造業をアフリカに移転させるためのコンサルティングプロジェクトにいくつか関わってきました。彼らは米国や欧州市場への優先的なアクセスも得ています。」
広州に拠点を置く貿易会社サンダ・インターナショナルは、農具から日用品まで幅広い製品を販売しており、過去10年間でアフリカに20以上の生産センターの建設を強化したと主張している。
スンダは、赤ちゃん用おむつや生理用ナプキンなどアフリカの必需品市場に供給することで、年間最大4億5000万ドルの利益を上げていると伝えられている。
スンダの上場工場のいくつかはザンビアにあります。李克強首相は先週、ザンビアとインド洋を結ぶ鉄道の近代化を目的とした14億ドルの契約に署名しました。この契約は貨物輸送量の大幅な増加を目指しています。
議会は現在、オバマケア加入者を5年間にわたり医療費の高騰から守ってきた一時的な税額控除の2度目の延長を議論している。民主党は、この補助金がなければ、大晦日の真夜中過ぎに何百万人ものアメリカ人が医療保険市場から締め出されると警告している。
ドナルド・トランプ大統領と他の共和党議員らは延長を望んでおらず、当初からこのプログラムを悩ませてきた、実行不可能な政策と不当なインセンティブを排除する抜本的な変化を望んでいる。
オバマケアが失敗だったと言っているのは共和党員だけではない。多くの専門家、そして一部の民主党員でさえも、この制度は確かに一時2400万人のアメリカ人の医療保険を手頃なものにしたが、実質的には裏目に出ていることを認識している。
オバマケアが道を誤ったと彼らが考える理由、それがどのように見直される可能性があるか、そしてそれが医療保険市場全体にどのような影響を与えたか、ここに記す。
失敗した目標
医療費負担適正化法は、すべての人にとって医療保険を手頃な価格にし、医療費を全体的に引き下げることを目的としていました。
「(オバマケアの)現実は全く違う」と、シンクタンク「アメリカン・アクション・フォーラム」のダグラス・ホルツ=イーキン代表は11月19日、上院委員会への書面コメントで述べた。
共和党は、この制度は2014年の導入当初から設計がまずかったと主張してきた。現在、一部の民主党員は、この制度は成功していないと認めている。
ピーター・ウェルチ上院議員(民主党、バーモント州選出)は11月6日の演説で、12月に期限が切れる臨時税額控除の延長を同僚議員らに懇願し、同様の発言をした。
「なぜ今日ここに立って、一時的な措置の延長を求めているのか、皆さんに答える義務があります」とウェルチ氏は述べた。「理由はこうです。私たちは医療費の削減に失敗したのです。」
ビル・キャシディ上院議員(ルイジアナ州選出、共和党)は11月19日、「民主党と共和党の間には驚くべき合意があると思います。オバマケアはすべてのアメリカ国民に医療へのアクセスを提供することに失敗し、医療費の抑制にも失敗しました」と述べた。
コストの上昇
オバマケアが提案されたとき、議会予算局は、2019年までに加入者が2,900万人に達し、無保険の成人の割合が17%から6%に低下すると予測した。
しかし、それは実現しませんでした。 2019年までに加入者数は約1,140万人で横ばいとなり、成人の約11%が無保険のままでした。
1年後、議会は2020年にこのプログラムを変更し、COVID-19の緊急事態によって引き起こされた経済の落ち込みにアメリカ国民が対処できるようにした。
重要な変更点は、「強化された」税額控除の追加であり、これにより中所得世帯は医療費の補助を受けられるようになり、一部の低所得世帯は保険料ゼロで医療保険に加入できるようになった。
強化された税額控除は2021年から2年間提供され、その後2025年まで延長されました。
入学者数は急増し、5年間で倍増しました。
しかし、コストも急速に上昇していました。
強化された税額控除が適用される以前から、保険料はオバマケア開始前の2013年から2倍以上に上昇していました。2025年までに、保険料上昇率は約133%に達し、インフレ率の約4倍に達しました。
責任ある連邦予算委員会によると、医療費は賃金上昇、業界内の統合、人口の高齢化、新しく高価な医薬品の普及などにより、この10年間で全体的に劇的に上昇した。
一方、一部のアナリストはオバマケアが保険料上昇の主な要因だと指摘している。
2025年11月12日、マイアミの保険代理店の外にオバマケアの看板が掲げられている。データによると、2021年に税額控除の拡充が始まって以来、加入者数は急増し、5年間で約2倍に増加している。ジョー・レードル/ゲッティイメージズ
市場の混乱
従来の健康保険(およびその他の形態の保険)では、顧客への価格は保険会社のリスクと選択した補償の種類に基づいて決まります。
しかしながら、オバマケアは違います。
オバマケアの主なセールスポイントは、既往症を理由に健康保険適用外となる慣行をほぼ終わらせたことだ。
病気を理由に保険適用を拒否される人は誰もいなくなり、すべてのプランは同じ最低限の給付を提供することが義務付けられました。
この画一的なシステムでは、高リスクの顧客も低リスクの顧客も同じように扱われるため、若くて健康な人が多く市場から去り、保険料の値上げにつながっています。
また、既往症は保険適用の障壁にならないため、こうした消費者は病気になった時だけ保険市場に参入し、コストがさらに上昇すると、ロン・ジョンソン上院議員(ウィスコンシン州共和党)は大紀元に語った。
こうした値上げは業界全体に広がっている。なぜなら、医療費負担適正化法により、保険会社は商業市場の個人や小規模グループにオバマケアに準拠した保険を提供することが義務付けられているからだ。
ジョンソン氏は、解決策は、既存の病気を抱える人々を高リスクプールでカバーすることであり、これによりオバマケア内の人々のグループが個別に価格設定され、補助金が支給されるようになると述べた。
「これらを再構築しなければなりません」とジョンソン氏は述べた。「まずは既往症のある人をカバーすることから始めなければなりません」
「ヘルスケアに可能な限り自由市場を取り戻せば、人々は実際に価格、顧客サービス、品質で顧客獲得を競うことになる。」
補助金に隠された悪循環
責任ある連邦予算委員会によれば、オバマケアに対する連邦政府の総補助金は現在、年間1,380億ドルと推定されている。
シンクタンク、パラゴン・ヘルス・インスティテュートの創設者ブライアン・ブレイズ氏によると、こうした補助金によって保険料の値上がりが隠され、保険料が実質的に抑制されないまま上昇しているという。
「加入者が保険料のほんの一部しか支払わない、あるいは全く支払わない場合、保険会社は価格規律にほとんど直面しない」とブレイズ氏は11月19日に上院議員らに語った。
財務省によれば、2024年までにオバマケア加入者の80%が月額10ドル以下のプランに加入できるようになる。
ブレイズ氏は、それがコスト上昇のスパイラルを生み出したと述べた。「保険料の上昇は、さらなる補助金を求める圧力を生み出しました。補助金の増加は、高コストのシステムを固定化し、大手保険会社と病院システムの非効率性を助長するのです。」
保険料の値上がりにより、補助金の対象とならない一般市場の消費者も排除され、さらなる値上がりを引き起こしていると、メディケア・メディケイド・サービスセンターの長官メフメット・オズ博士は述べた。
オバマケア市場は民間部門の顧客と経済的支援を必要とする人々を50/50の割合で想定して設計されたとオズ氏は11月16日のCNNとのインタビューで語った。
「政府の補助金によってシステムの価格が高騰し、個人の購入者が締め出されてしまう」とオズ氏は語った。
職場における歪んだインセンティブ
従業員50人以上の大規模雇用主は、オバマケア補助金を受けるフルタイム従業員1人につき2,900ドルの罰金を科せられます。これは、企業が雇用主主導の健康保険を提供することを奨励するための措置です。
ホルツ・イーキン氏によると、現実には、一定水準以下の収入を得ている従業員にとっては逆の効果があるかもしれないという。
「計算してみれば分かるが…雇用主が保険業をやめて従業員を保険取引所に加入させるのは非常に合理的で、従業員と雇用主の双方が利益を得られるはずだ」とホルツ=イーキン氏は語った。
こうしたことは、従業員のために保険を購入するよう促す罰金の脅威がない多くの中小企業で起こっているようだ。
オバマケア開始前の年には、従業員数25人から49人の企業の85%が従業員に健康保険を提供していました。2025年までに、その割合は64%に低下しました。
詐欺の温床
2021年に強化された税額控除が導入された際、無保険者の42%が保険料ゼロの保険に加入する資格を得ました。健康危機の間、加入者数を増やし維持するため、資格確認が緩和され、再加入も自動化されました。
また、保険ブローカーは、加入した人ごとに手数料を受け取ります。
これらの要因により、このプログラムは詐欺や不正使用に悪用されやすくなっているとブレイズ氏は述べた。
「多くの加入者が、本人の知らないうちに、あるいは本人の同意なしに加入させられていた」とブレイズ氏は述べた。また、悪質な販売業者の中には、加入者に現金給付を約束する者もいたほか、本人の同意なしに別のプランに変更させられた者もいたと指摘した。
連邦政府のデータによると、2024年には約280万人が複数の州でメディケイドまたは児童健康保険プログラムに二重に加入、もしくはこれらのプログラムのいずれかとオバマケアのプランに同時に加入していた。
また、2024年に保険料ゼロのプランに加入した人の40%、400万人以上が医療費請求をしなかった。
パラゴン・ヘルス・インスティテュートによると、健康保険の請求がない顧客の割合は全国平均で15%で、保険に加入していることを知らなかった人々に保険をかけるために納税者が2024年に350億ドルを費やしたと推定している。
政府対市場の解決策
民主党は医療費の高騰が問題であることを認めているものの、オバマケアとは関係ないと主張している。提案されている解決策は、一般的に法人税の引き上げと企業の不正行為の取り締まりである。
「保険料は急騰している」と、ジョナサン・ジャクソン下院議員(イリノイ州民主党)は11月20日、大紀元時報に語った。ジャクソン議員は、薬価交渉と法人税引き上げを部分的な解決策として挙げた。
ロン・ワイデン上院議員(オレゴン州民主党)は11月19日、医療費削減は「医療制度全体における保険会社の不正行為を抑制することを意味する」と述べた。
共和党員は一般的に、消費者が医療費支出をよりコントロールできるようにする市場ベースの改革を支持している。
「自由市場は3つのことを保証します」とジョンソン氏は述べた。「可能な限り低い価格とコスト、可能な限り最高の品質、そして最高レベルの顧客サービスです。」
「自由市場は3つのことを保証します」とジョンソン氏は述べた。「可能な限り低い価格とコスト、可能な限り最高の品質、そして最高レベルの顧客サービスです。」
トランプ大統領は、低所得層および中所得層のアメリカ人に対し、医療費に充てるための現金直接支給を提案している。キャシディ上院議員とリック・スコット上院議員(共和党、フロリダ州)も同様の案を提案している。
チップ・ロイ下院議員(共和党、テキサス州)は、患者が自らの健康に関する決定を下せるようにする方法として、直接プライマリケア、健康共有省、健康貯蓄口座の拡大を挙げた。
「個人がより良い選択肢を持てるようにしたいのです」とロイ氏は大紀元に語った。「そこから始めれば、変革が起こり、価格が下がるでしょう」とロイ氏は語った。
議会は12月中旬、補助金増額の延長と、場合によってはその他の医療改革について投票を行う予定だ。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
バイオジェン<BIIB>が時間外で上昇。ノボ・ノルディスクが「オゼンピック」の経口薬がアルツハイマー病の進行抑制に失敗したと発表したと発表したことが材料視されている。
AIの評価に関する懸念が株式市場に重くのしかかる中、世界の株価は過去1週間で大きく変動した。
4日間の売り出しから少し休憩したエヌビディア
同社は水曜日に業績を発表したが、ニューヨーク証券取引所に上場する銘柄がさらに下落したため、木曜日の取引時間中に同社の上昇分はすぐに反転した。
金曜日、米国株はプラス圏に回復したが、アジアの半導体株は大打撃を受け、欧州では売りが再燃した。  
「すべてがバブル」
株式市場が AI バブルに陥っている可能性は数か月前から話題になっており、投資家たちは企業が1 兆ドル規模の AI ブームを実現できるかどうかを見極めようと躍起になっている。   
しかし、投資運用会社ナインティワンでグローバル戦略株式戦略の共同運用者を務めるダン・ハンバリー氏はCNBCに対し、AIバブルの形成は「現時点では究極の疑問」に見えるものの、異常な価格変動は人工知能の領域をはるかに超えていると語った。
「一歩引いてバリュエーションを見れば、米国市場にバブルがないと主張するのは非常に難しいと思う」と彼は認めた。しかし、株式市場には「多くの危険信号」があるにもかかわらず、ハンバリー氏は市場参加者はより広い視野を持つ必要があると述べた。
「驚異的な利益成長があり、現段階でそれが弱まる兆候はほとんどなく、同時に金利と割引率が正常化しつつある」と同氏は説明した。
「まだ完全には脱却していないと思います。つまり、いわゆる『万物バブル』の真っ只中にあると言えるでしょう」とハンバリー氏はCNBCに語った。「債務担保証券、債券市場、不動産、そしてそれが株価にどう影響するかによって、万物バブルが生み出されているのです。」
バンク・オブ・アメリカが11月に172人のファンドマネージャー(運用資産総額4,750億ドル)を対象に実施した調査では、世界の株式市場は過大評価されていると考えている回答者が多数を占めていることが分かりました。また、今年大幅な上昇を記録した欧州の防衛関連株やグローバル銀行など、市場の他のセクターのバリュエーションについても疑問が投げかけられており、一方で債務危機の可能性を懸念する投資家もいます。しかし、こうした議論の多くはAI取引の影に隠れてしまっています。
ハンバリー氏は、市場、政府、中央銀行が評価に関する懸念をより意識するようになるため、現在の状況がどうなるかを予測するのは難しいと述べた。
「つまり、彼らは本当に、この状況をどう切り抜けるかを考えているということです。市場には、恐怖と貪欲が入り込み、それが証券価格にどう影響するかという行動的な側面があります」と彼は述べた。
英国の資産運用会社ラスボーンズの資産配分責任者オリバー・ジョーンズ氏はCNBCに対し、市場が全てにおいてバブル状態にあるとは考えていないが、わずかな変化がバブルを引き起こす可能性は否定しないと語った。
「米国の株式、特にテクノロジーセクターやAI投資の恩恵を受けると見られる企業の株式は、過去の基準からすると間違いなく割高だ」と彼は述べた。「しかし、四半世紀前のドットコムバブルのピーク時とは異なり、株式は一律に割高というわけではない。」
ジョーンズ氏は、株式発行の大幅な増加やM&A活動の急増など、過去に見られたより広範な投機的過剰に関連するいくつかの兆候が米国およびその他の地域では見られないようだと指摘した。
「最近はそのようなことは起きていません。AI関連の活動を考慮しても、これらの指標は依然として低調です」と彼はCNBCに語った。「大規模なバブルの発生は、総投資額と民間債務の急増が先行することが多い。しかし、これもまた最近は起きていないのです。」
しかし同氏は、「こうした状況が変化し始めたら、より広範なバブルについてより懸念すべきだ」と警告した。
BRIウェルス・マネジメントの投資責任者トニ・メドウズ氏は、市場がいわゆる「あらゆるものバブル」に巻き込まれているとは考えていないと同意したが、彼のチームは今後の見通しが平坦ではないと指摘した。
「実体経済において雇用をめぐるリスクが高まっている兆候が見られると考えています。そして、テクノロジーの究極的な影響は、いずれこの状況を悪化させるでしょう」と、同氏はCNBCへのメールで述べた。「しかしながら、現時点では、景気低迷が長期化する明確な兆候は見られません。」
しかし、メドウズ氏は、投資家が考慮に入れるべきリスクがあることを認めた。例えば英国では、重要な秋の予算を前に不確実性が高まっている。
「英国では、予算発表前に新たな資金を投入するよりも、リスクのバランスが取れた分散ポートフォリオを運用する方が賢明でしょう」と彼は述べた。「今回の緩和幅は、人気のハイテク株の多くが9月の水準に戻る程度にとどまっています。私たちはこの時期、現金残高がやや高い状態でスタートしたので、より良いエントリーポイントを待つことに抵抗はありません。」
購入の機会
モーニングスターのチーフ株式ストラテジスト、マイケル・フィールド氏はCNBCとの電話会議で、「バブルのリスクを完全に無視しているわけではない」としながらも、市場でバブルがすでに形成されているとは考えていないと語った。
「ありがたいことに、我々の見方では、すべてがバブル状態にあるとは思えません」と彼は述べた。「まずは主要指標の数字を見て判断したいと思います。」
フィールド氏は、水曜日の電話会議時点で、米国株はモーニングスターの適正価格推定値より約5%安く取引されている一方、欧州株は3%近い安値で取引されていると述べた。
「我々はどちらかと言うと慎重な方で、ここ数年、市場は過大評価されていると何度も指摘してきた」と彼は付け加えた。「確かに危険信号はいくつかあり、懸念すべき点もあるが、バリュエーションや企業そのものについて、まだパニックに陥っているわけではない」
大手テック企業に関して、フィールド氏はテスラおよびNVIDIAが過大評価されている一方、アルファベット、メタおよびマイクロソフト欧州のヘルスケア企業(ロシュを含む)は、今後さらなる上昇が見込まれている。
GSKそしてノボノルディスクなどのハイテク株も、「今年の大部分で打撃を受けた」後、かなり割安で取引されていると彼は主張した。
感謝祭の祝日の影響で取引時間が短縮された週に入り、市場は再び不安定な取引週となりました。S&P 500とナスダックはともに週の終値を下げましたが、金曜日にはオプションの満期を迎えたことで反発しました。AI関連株と半導体関連株への継続的な売り圧力は、これまでの買われ過ぎ状態を反転させ、株価は反発しました。大きなニュースはNVIDIAの決算でした。市場の反応は低調でしたが (決算発表後の反応としてはごく普通でした)、決算内容は素晴らしいものでした。
エヌビディアの業績は予想を上回っただけでなく、ほぼすべての指標で予想を大きく上回りました。売上高は前四半期比34%増、データセンター売上高は41%増となりました。高性能GPUの需要は供給を上回り続けており、CEOのジェンスン・フアン氏は「これは新たな産業革命の始まりだ」と述べ、バブルへの懸念を一蹴しました 。この発言が広く拡散されたのには、十分な理由があります。決算発表後の株価急騰は、テクノロジー業界全体を牽引し、今年の主要取引であるAIインフラに新たな活力を与えました。
重要なのは、NVIDIAの決算発表が単なるセンチメントの改善にとどまらず、AI分野、特に大手テクノロジープラットフォームによる設備投資が依然として堅調であることを裏付けるものだったことです。Microsoft、Amazon、MetaはいずれもAI関連設備の増強に積極的に投資しており、NVIDIAはその中心に位置しています。だからこそ、株価の変動は重要なのです。これは一つの企業だけの問題ではなく、AIサプライチェーン全体の動向を反映するものなのです。
マクロ経済面では、経済指標は引き続き好調を維持した。失業保険申請件数はわずかに増加したが、悪化を示唆するほどではなかった。ブレークイーブン・インフレ率と消費者調査の両方で測られたインフレ期待は、依然として安定していた。債券利回りは小幅​​低下し、株式市場に余裕が生まれた。こうした状況は、野村が 「サンタ・ラリー」と呼ぶ 、インフレの抑制、雇用の安定、流動性の改善、そしてFRBによる当面の反発がないという状況の全てを網羅している。
しかし、すべての兆候が明るいわけではない。特にテクノロジーセクターのバリュエーションは依然として高水準にあり、ナスダック100の予想PERは25倍を超え、過去平均を大幅に上回っている。一方で、一部の分野では収益の伸びが鈍化している。市場は明らかに理想的なシナリオ、すなわち継続的な成長、デフレーション、そして政策ミスがないことを織り込んでおり、ミスを許容する余地はほとんどない。
12月を迎えても、前述の通り、季節的な追い風は依然として健在です。12月は歴史的に株式市場にとって最も好調な月であり、  「サンタクロース・ラリー」と 呼ばれる現象が平均1.5%から2.0%の上昇をもたらすことがよくあります。企業の自社株買いが本格化し、1日あたり50億ドルから60億ドルの取引量増加が見込まれること、投資家のポジションが安定していること、そして特にテクノロジー企業への投資においてプロの運用会社がアンダーウェイトとなっていることなどから、上昇の原動力は十分にあります。しかしながら、市場は依然として脆弱な状況にあり、ボラティリティの上昇も懸念されるため、注意が必要です。
短期的な見通しは、FRBが静観的な姿勢を維持し、債券のボラティリティが抑制されている限り、建設的です。しかし、インフレ、成長、あるいは地政学的なサプライズがあれば、センチメントは急速に変化する可能性があります。投資家にとって重要なのは規律です。上昇局面を盲目的に追いかけてはいけません。質の高い銘柄にこだわり、分散投資を維持し、高値圏で適切なタイミングで株価を調整しましょう。最近の調整局面を経て年末の上昇の可能性は高まっていますが、保証されているものは何もありません。
技術的な背景を振り返ってみましょう。
📈技術的背景 – 幅の急落
S&P 500指数が50日移動平均線を下回り、週を6,603で終えたことで、ここ数週間の強気相場は勢いを失いました。この下落は注目に値します。10月下旬の安値以来、頼りになるサポートラインとなっていたこの水準は、セクター全体にわたる幅広い売り圧力によって崩れ去りました。下落局面では出来高が増加し、市場の幅は大幅に縮小しましたが、相対的な強さと幅は依然として非常に弱いままです。さらに、資金の流れは蓄積から分配へのシフトを示しています。
テクニカルな観点から見ると、木曜日の市場反転局面では、指数は重要なサポートレベルである50日移動平均線を下回り、100日移動平均線まで下落しました。木曜日に市場がこれほど大きく反転した理由については様々な憶測が飛び交いましたが、その反転の大部分は、11月のオプション満期としては過去最大となる金曜日の満期日を前にしたポジション変更によるものと考えられます。
金曜日の100日移動平均線の力強い反発は心強いものですが、まだ危機を脱したわけではありません。前述の通り、相対的な強さと幅は依然として懸念材料です。100日移動平均線を維持できない場合、次のサポートエリアは6,163付近の200日移動平均線付近となります。しかしながら、現時点では、現在の反落はより強気な構造の中に留まっていますが、上昇圧力が高まっており、それを無視すべきではありません。
先週、他の市場も売り圧力から逃れることができませんでした。ナスダック総合指数は下落に追随し、週ベースで約2.75%下落し、短期サポートラインを下回って引けました。AI関連銘柄バスケットは5%以上下落し、ビットコインは10%近く下落しました。全体として、投資家にとって厳しい週となりましたが、幸いなことに、ほとんどの市場は適度に売られ過ぎの状態にあり、反発するには十分な状況となっています。
最近の売り圧力で感情的に苦しんだ投資家は、ポジションを見直すことをお勧めします。もしドローダウンへの対応が難しかった場合は、以下の対策を講じてください。
リスク許容度を下げましょう:最近の下落でパニックになったり、先行きに不安を感じたりした場合は、リスクエクスポージャーが高すぎる可能性があります。この反発を利用して、ボラティリティの高い銘柄や高ベータ銘柄のポジションサイズを減らしましょう。10~15%の調整局面でも感情的な負担なく持ちこたえられるポジションを中心にポートフォリオを再構築しましょう。調整のために次の下落局面を待つ必要はありません。
戦略的に現金を調達する:現金は機会損失ではなく、選択肢です。下落局面で柔軟性がなかったのであれば、上昇局面を利用して現金を調達しましょう。弱いポジションや、特定の市場シナリオでしか機能しないポジションは縮小しましょう。10~20%の現金を保有することで、不安に駆られて売却するのではなく、将来の下落局面で買いを入れる余裕が生まれます。
資産配分の見直し:市場の下落局面は、個別銘柄の選定だけにとどまらず、資産配分の欠陥を露呈させます。ハイテク銘柄への偏重や集中が強すぎたでしょうか?この反発局面を機に、グロース株、バリュー株、ディフェンシブ株のバランスの取れた投資へとシフトしましょう。AI、小型株、投機的なセクターなど、特定のテーマへの投資が過度に偏らないように注意しましょう。
決済レベルと損切りレベルを見直す:過去2週間で、決済プランを立てていなかったことの代償が露呈しました。この上昇局面では、感情ではなくサポート/レジスタンスに基づいて損切りレベルを設定、あるいは引き上げましょう。取引またはポジションごとの最大リスクを定義し、記録しておきましょう。市場が再び弱含みになった場合、反応ではなくルールに基づいて対応できるでしょう。
何が悪かったのかを記録する:この反発を振り返りとして活用しましょう。下落局面において、具体的に何が不安だったのでしょうか?過剰投資、レバレッジ、ポジションサイジング、それとも分散投資不足でしょうか?書き出してみましょう。そして、今後の取引やアロケーションのためのチェックリストを作成しましょう。市場のストレスは避けられませんが、より良い準備をすることで、自ら招くダメージを最小限に抑えることができます。
今は損失を追いかけたり、完全な回復を賭けたりする時ではありません。規律と明晰さをもって、力強いポジションを築き直しましょう。市場はあなたの気質に逆らうのではなく、あなたのために動きます。
💰 AIトレードが行き詰まる
最近の市場調整 により、「AIトレード」 は厳しい監視下に置かれています。人工知能(AI)関連のインフラ、ソフトウェア、プラットフォーム関連銘柄は下落しており、単なるセンチメントの変動以上の動きを示しています。ロイター通信によると、  「投資家は、利下げのペースと、株価上昇の大きな原動力となってきた大型AI関連銘柄の割高なバリュエーションを懸念している」とのことです。 しかし、バリュエーションへの懸念以上に深刻な問題が存在します。それは、AIを活用した主要企業における債券発行の増加とクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドの上昇です。
最近、クレジット市場は警戒すべき兆候を示しています。例えば、オラクル社の5年CDSスプレッドは100ベーシスポイント以上急上昇し、今年初めから大幅に上昇しました。これは、同社の債務保証コストの増加を反映しています。AIセクターの債務に関連するCDSの取引量は、ここ6週間で約42億ドルに増加しました。
CDSはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の略です。これは、一方の当事者であるデフォルト保護の購入者が四半期ごとにベーシスポイントで表された手数料を支払うデリバティブ契約です。その見返りとして、カウンターパーティである保護提供者は、デフォルトが発生した場合に購入者が債券の額面金額を受け取ることを保証します。CDSスプレッド、つまりデフォルト保険のコストは、市場における市場デフォルト確率を簡便に定量化する手段を提供します。簡略化されていますが、デフォルトリスクを計算する式は以下のとおりです。
基本的に、この計算式は保険費用を債券の額面金額から回収率を差し引いた値で割るものです。回収率は、デフォルト発生時に債券保有者の投資額のうち回収される割合を表します。市場では、当初投資額の30~40セントしか回収できないと想定されることがよくあります。したがって、この計算式を5年物Oracle CDSとCoreWeave CDSのスプレッドに適用し、デフォルト回収率を35%と仮定すると、年間デフォルト確率は以下のようになります。
Oracle CDS 108 bps: 108 / (10,000*(1-0.35)) = 1.66%
コアウィーブ CDS 675 bps: 675 / (10,000*(1-0.35)) = 10.38%
つまり、メディアによる恐怖煽りにもかかわらず、デフォルトリスクは依然として極めて低い水準にとどまっているということです。では、なぜこれほど急上昇したのでしょうか?それは、テクノロジー企業がAIデータセンターやプラットフォームの構築に巨額の資金を調達しており、市場を少々驚かせたためです。オラクルだけでも380億ドルの資金調達を計画しており、2028年までに純負債は2,900億ドル近くに達する可能性があります。
レバレッジの増加により、これまでほとんど存在しなかった借り換えリスクと金利リスクが生じます。  「メガキャップ」企業は多額のフリーキャッシュフローを保有していますが、 将来に向けて「過剰投資」 しているのではないかという懸念が高まっています 。
「2005年8月以来初めて、FMS投資家の過半数(ネット20%)が、企業の投資が過剰であると回答しました。この急増は、AI設備投資ブームの規模と資金調達に対する懸念によって引き起こされています。」 – BofA
これらの企業は、支出と負債を正当化するために、将来の多額のキャッシュフローを当てにしています。 投資家がCDSプロテクションを購入するということは、デフォルトまたは経営破綻の可能性を高く見積もっていることを意味します。これは、AIの成長という物語に対する市場の警戒感が高まっていることを示しています。したがって、  「AIトレード」における最近の調整 が単なる小さな変動以上のものになっているのは理解できます。これは、投資家が実行力、収益、そしてバランスシートの回復力に関する証拠を求めていることを反映しています。
投資家の視点から見ると、これは現在の調整が真の 「テーゼの転換」 なのか、それとも単に長らく待たれていた価格調整なのかを見極めることを意味します。近年の株価上昇を牽引したAI関連取引は、期待と物語に基づいて構築されました。今、同じ企業が、高金利環境下で巨額の負債を管理しながら、その期待を利益に転換する能力を評価されています。
こうした懸念は重大な疑問を提起します。
最近の株式の急落は早期警告か、それとも参入のきっかけか?
チャンスか警告か?
「AIトレード」における構造的な機会は 依然として大きく、マッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートによると、生成AIをはじめとする高度なAIのユースケースは、ビジネスユーザーだけで最大4.4兆ドルの生産性向上をもたらす可能性があります。一方、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの調査によると、コード生成ツール市場は2024年から2029年にかけて約53%の年平均成長率(CAGR)で成長すると予測されています。
これらのデータは、AIを大規模に導入する企業は売上高の成長とコスト効率の向上が見込まれるという幅広い期待を裏付けています。 ボストン・コンサルティング・グループの別の調査によると、  「エージェント型AI」の 導入は、2025年のAI総価値の17%から2028年には29%に増加すると予想されており、パイロット段階から本格的なビジネス展開への移行を示唆しています。さらに、イングランド銀行は、2025年から2028年の間にAIインフラへの設備投資が最大2.9兆ドルに達する可能性があり、そのうち約1.5兆ドルが外部資本から調達されると予測しています。
データセンターの建設には債務が使われていますが、その債務は 「生産的」であり 、経済成長を促進し、ひいては需要の増加によってこれらの企業の収益を増加させます。支出が経済成長に与える影響について詳しくは、以下をご覧ください。
財政赤字の議論は人工知能(AI)で解決できるかもしれない – RIA
経済再加速:逆説的な見方 – RIA
AIへの設備投資が経済の弱さを隠蔽している – RIA
強気な見方をさらに裏付けるものとして、NVIDIAの最近の業績は予想を大きく上回りました。同社は過去最高の売上高を計上し、業績予想を再び引き上げました 。CEOのジェンスン・フアン氏は、AIバブルという概念を明確に否定しました。
「私たちは新たなコンピューティング時代の幕開けを迎えています。私たちが目にしているのは誇大広告ではありません。ほぼすべての業界にわたる、現実的で幅広い需要です。」 - CNBC
GPUの需要は依然として非常に高く、供給増加にもかかわらずハードウェアは売り切れており、これは採用がかなりのペースで進んでいることを示しています。これらのファンダメンタルズは、AIエコシステムにおいて適切なポジションにある企業が、収益とキャッシュフローの大幅な増加を経験する可能性があることを示唆しています。例えば、AIワークロードをホストするプラットフォーム、インフラを提供するチップメーカー、そしてエンタープライズアプリケーションにAIを組み込むソフトウェアベンダーは、いずれも複数年にわたる成長期の恩恵を受ける可能性があります。多くの企業がまだAI投資の収益化の初期段階にあることを考えると、長期的な見通しは依然として良好です。 言い換えれば、この仮説が正しいと証明されれば、一部のAI関連銘柄の現在の弱さは、忍耐強く選別的な投資家にとって、戦術的な参入ポイントとなる可能性があります。
しかし、警告の側面も同様に重要です。
2025年のAI関連大型株の急成長は、すでに例外的な利益をもたらしている。Business Insiderによると、投資家は 「活況を呈しているAI取引を再考している」 と述べ、好業績の一部企業でさえ、期待評価が実績を上回ったために株価が下落したケースがあると指摘している。同様に、イングランド銀行は、 特にAI技術分野での 割高な評価を踏まえ、  「急激な市場調整が進んでいる」と懸念を示している。ゴールドマン・サックスのアナリストは、AIブームによる上昇余地の多くは既に現在の株価に反映されている可能性があると推計しており、5兆ドルから19兆ドルの追加収益の上昇余地があると見込んでいる。 前述のように、彼らの懸念は妥当なもので、市場が既にそのかなりの部分を織り込んでいるという点である。
根本的な観点から見ると、警告は2つあります。
長期的な収益成長への期待は依然として高いものの、多くの企業はまだ投資を実質的なキャッシュフローに転換できていない。arXivプレプリントアーカイブに掲載された研究では、「能力実現率(CRR)」モデルが紹介されている。このモデルによると、多くのAIネイティブ企業は、現在の業績ではなく将来の可能性に基づいて評価されており、「評価の不一致リスク」が生じているという。
AI関連銘柄の急激な上昇ペースは、将来のパフォーマンスに対するハードルを引き上げています。あるアナリストは次のように述べています。「パランティア・テクノロジーズのような企業でさえ、業績が予想を上回ったにもかかわらず、株価は急落しました。しかし、高すぎるバリュエーションがそれを阻んだのです。」つまり、リスクは実行力だけでなく、既に株価に織り込まれている非現実的なほど高い期待感にも存在するのです。
要約すると、巨大な市場規模、導入の加速、そして利益率向上の可能性に牽引され、ファンダメンタルズはAIのビジネスチャンスを支えています。しかし同時に、バリュエーションの高騰、許容誤差の縮小、そして市場が既に期待成長の多くを享受していることなど、警告の兆候も確かに存在します。そこで、2つの重要なポイントを指摘します。
長期的な視点を持ち、実績のある実行力と現実的な評価を備えた企業に投資する意思がある場合、慎重なエクスポージャーは理にかなっています。
しかし、投機銘柄の勢いを追っているのであれば、現時点では無差別な購入よりも慎重になるべきだ。
成功するには、自分自身を知らなければなりません。
AIに投資する前に自分の投資行動を理解しよう
AI関連銘柄に投資する前に、ボラティリティへの対応方法を理解する必要があります。これは決して軽々しく扱うべきテーマではありません。ここ数十年で最も革新的な技術の一つに結びついた長期投資であり、リスク、ハイプサイクル、そして急激な価格変動も伴います。調整局面における行動は、エントリーポイントよりも、投資結果を左右するでしょう。
10%の下落の兆候が少しでも見られればパニック売りに走る傾向があるなら、前述の警告サインは意思決定において大きな意味を持つはずです。AI関連銘柄は大幅な上昇を記録しており、現在、厳しい監視の目が向けられています。最近の株価下落は例外ではなく、モメンタムの高いセクターでも急激に反転する可能性があることを改めて示しています。強固なファンダメンタルズを持つ企業であっても、投資家の期待が非現実的な場合は脆弱です。クレディ・スイスの最近の行動ファイナンスの見通しは次のように述べています。
「物語主導の投資は、忍耐に報い、感情的な決断を罰する価格変動を生み出します。」
これが私たちが今入りつつある段階です。
長期投資家で、ボラティリティに耐えられるなら、AI関連銘柄の取引はまだサイクルの初期段階にあると言えるでしょう。ゴールドマン・サックスによると、AIによる収益増加の大部分は、特にエンタープライズユースケースやインフラサービスにおいては、2027年以降まで顕在化しない可能性があります。この点を理解し、3~5年を視野に入れたポジションを構築しているなら、今回の市場リセットは、保有したい銘柄を積み上げる絶好の機会となります。 ただし、これは、リスク管理を徹底し、エクスポージャーを分散し、これらの投資が成果をもたらすまでのタイムラインを明確に把握していることを前提としています。
リスク管理の方法がわからない場合は、こちらをお読みください: ポートフォリオリスク管理:厳しい真実を受け入れる – RIA
AIは単なるミーム銘柄ではありません。これは、セクターやバランスシートをまたいで不均一に進行する構造的な変化です。ボラティリティは今後も続くでしょう。避けられない下落局面で売却を狙うなら、長期的な価値を獲得できる可能性は低下します。どのように、あるいはそもそも投資すべきかを決める前に、自身の投資行動を理解しておきましょう。
🔑 来週の重要な触媒
来週は感謝祭の祝日のため取引時間が短縮されますが、だからといって静かというわけではありません。流動性は低下するため、主要指標発表前後のボラティリティが上昇する可能性があります。最も重要な指標は、FRBが好むインフレ指標である10月の個人消費財価格指数です。水曜日に発表され、12月のFOMC(連邦公開市場委員会)までの金利予想に大きな影響を与える可能性があります。
市場はテクニカル的に弱い展開から脱しつつあり、PCE指数の上振れは利回り上昇圧力となり、株価バリュエーションをさらに押し上げる可能性があります。一方、軟調な数値が出れば「ゴルディロックス」説が強化され、年末にかけて上昇が続く可能性が高まります。消費者心理と支出データも注目すべき点です。ホリデーショッピングシーズンが到来する中、弱気の兆候は小売株に影響を及ぼす可能性があります。小売株は第4四半期に全般的に低迷しています。
さらに、FRB当局者は次回の政策会合を前に沈黙期間に入っており、今週は公のコメントを聴取できる最後の週となります。トレーダーは、金融状況やバランスシート政策に関する発言に注意を払う必要があります。債券市場はFRBの最近のハト派的な姿勢にまだ適応している最中であるため、ウォーラー氏やグールズビー氏のような発言者の発言は、例年以上に重要になる可能性があります。
取引セッション数と取引量が少ないため、市場はヘッドラインリスクに対してより敏感になります。ボラティリティの高い週を迎えるにあたり、機敏な対応と慎重なポジション管理を心がけてください。
●その他
中国トップクラスの理工系学生で活気あふれる清華大学の北京キャンパスで、「脳・知能実験室」のある新しい棟は静まり返っている。研究者たちの決意は固く、数式で埋め尽くされたホワイトボードと塗りたての塗料のにおいに囲まれながら、人間の心の仕組みを解読しようとしている。
清華大は中国における理工系大学の最高峰として長く知られてきた。米国のスタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)、カーネギーメロン大学を「合わせたような存在」と形容する人もいる。だが今年は、清華大だけでなく中国全体にとっても転機の年となった。
中国の人工知能(AI)スタートアップ、DeepSeek(ディープシーク)が革新的な大規模言語モデル(LLM)を発表し、世界のテクノロジー業界を驚かせたことで、清華大の若き研究者たちの間には世界のトップと競い、追い越すことができるという新たな自信が芽生えている。同大の卒業生はこれまでに、国内有数のAIスタートアップ4社以上を立ち上げている。
「DeepSeekは、中国のチームでもLLM競争をリードできることを示した」と語るのは、清華大で計算生物学の博士課程に在籍する26歳のユーヤン・チャン氏だ。
清華大は長年にわたり学力の高さで知られてきた。米誌USニューズ・アンド・ワールド・リポートの世界大学ランキングでは、工学、AI、コンピューターサイエンス、化学工学といった分野で首位となっている。
これまでと違うのは、知的成果を「金と名誉」に変える新たなチャンスが生じている点だ。習近平国家主席と中国共産党は、AIをはじめとする重要技術の開発に民間セクターの力を結集するよう呼びかけており、税優遇措置や補助金、政策支援でそれを後押ししている。
DeepSeekの創業者・梁文鋒氏ら起業家は、巨額資金を調達して事業を構築できるほか、その姿が国営メディアで習主席と並んで紹介され、「国家的英雄」としてたたえられている。ちなみに習主席自身も清華大の卒業生だ。
こうした状況の中で、清華大は大きな影響力を発揮している。卒業生はAI企業を立ち上げるだけでなく、アリババグループや字節跳動(バイトダンス)などの大手テック企業でもAI分野の主要なポストを担っている。
学内の研究室では、業界トップの米エヌビディア製品に対抗するAIチップ「Accel」、創薬エンジン「DrugCLIP」、人間が提供したデータを介さず自律的に学習できる訓練プロトコル「Absolute Zero Reasoner」などが開発されている。
同大の教授や学生らは膨大な知的財産を静かに蓄積しつつある。AI研究論文の被引用回数で上位100本のうち最も多いのは清華大の論文で、年間の特許取得件数はマサチューセッツ工科大学(MIT)、スタンフォード大学、プリンストン大学、ハーバード大学の合計を上回る。
データ分析サービスのレクシスネクシスによると、清華大は2005年から24年末までの間にAIおよび機械学習関連の特許を計4986件取得。そのうち900件余りが昨年だった。AI分野の有効な特許ファミリー(複数の国・地域で出願している関連特許群)では、中国が世界全体の半数以上を占めるという。
「これはわずか10年足らずで起きた驚異的なイノベーション転換であり、中国がAI超大国を目指し進めてきた組織的な取り組みを反映している」と、レクシスネクシスの知的財産分析・戦略担当シニアディレクター、マルコ・リヒター氏(ボン在勤)はみている。
清華大は、中国全体の教育戦略の中核を担う。その戦略は初等教育から始まり、現在ではAIが算数や国語と並んで授業に組み込まれている。こうした取り組みにより、米国よりもはるかに幅広いテクノロジー人材層が形成されつつある。
ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)によると、中国で科学・技術・工学・数学(STEM)分野の学位取得者は20年に357万人と、米国の82万人と比べて圧倒的に多い。中国共産党機関紙の人民日報によると、昨年は500万人に達したという。
中国の教育制度は長年、暗記と標準テスト重視の弊害に悩まされ、批判的思考を育みにくいとされてきた。しかし、清華大はその状況が変わりつつあることを示す一例だ。
同大の伝説的教授の1人である姚期智(アンドリュー・チーチー・ヤオ)氏は、コンピューターサイエンス分野のノーベル賞とされるチューリング賞を中国で唯一受賞。プリンストン大、スタンフォード大、MITなどでの長年の研究生活を経て母国に戻り、教壇に立つ。
清華大では、厳格で学際的な教育手法で知られる革新的なコンピューターサイエンスプログラム「姚班」を創設し、高い評価を受けてきた。脳・知能実験室はこの伝統を受け継ぎ、計算論的神経科学、工学、コンピューターサイエンスといった分野の交差点を探求している。
AIスタートアップのサピエントは、こうした学際的アプローチの成果の一つだ。学部生だったグアン・ワン、ウィリアム・チェン両氏は23年、同実験室で人間の脳の層状推論構造から着想を得たAIシステムの構想を練り始めた。
彼らの初期実験はサピエントの「階層的推論モデル(HRM)」として結実した。HRMは脳の情報処理を模倣し、時間をかけた体系的な思考と瞬時の反射的反応を合わせ持つ。このモデルは推論ベンチマークや複雑な数独パズルで、米OpenAIやアンソロピックの大規模モデルを上回る成果を上げている。
現在24歳のワン、チェン両氏は、シリコンバレーで主流となっている大規模言語モデルとは異なる形で、汎用(はんよう)人工知能(AGI)への道を切り開こうとしている。彼らの戦略は、人間並みかそれ以上の水準であらゆる課題をこなせるAGIを構築することだ。
チェン氏はキャンパス内のオフィスでのインタビューで、「われわれにはAGIへの独自の技術的アプローチがある。既存のモデルより10倍優れたAIアーキテクチャーを作りたい」と話した。
米ハーバード大の元教授で統計学の第一人者であるジュン・リウ氏は今年、中国に戻り、清華大に新設された統計・データサイエンス学部の立ち上げに携わった。今は米主要大学から積極的に人材を招聘(しょうへい)している。
リウ氏は新しいオフィスでのインタビューで、「政府、産業界、学界のいずれにおいても、AIと機械学習に対する熱意が非常に高い」と指摘。「資本のほか、中国政府のAIおよび関連分野を含む科学研究への支援が、AI分野の人材を引き寄せている」と説明した。
米国は依然として最も影響力のあるAI関連特許と最先端のモデルを保有しており、ハーバード大やMITは特許の影響度の面で清華大を常に上回る。スタンフォード大のAIインデックス・リポートによると、米国の大学や企業が24年に生み出した注目すべきAIモデルは40件と、中国の15件を上回った。ただ、特定の性能ベンチマークでは中国勢が急速に差を縮めている。
AI研究者の数で見ると、米国が主導的地位を維持し続けるのは困難になるかもしれない。首都ワシントンに本拠を置くシンクタンク、情報技術・イノベーション財団の最新データによると、世界上位2%のエリートAI研究者に占める中国人の割合は22年に26%と、19年の10%から上昇。一方、米国人の比率は35%から28%に低下した。
計算生物学を専攻するチャン氏によると、清華大の卒業生は最近、海外ではなく中国にとどまる傾向を強めている。
「クラスメートのほとんどは中国に残るだろう。今の清華大はこれまでで最も活気に満ちた状態だと感じている」と語った。

備忘録(2025/11/21-23)
●企業
アパレル廉価販売のロス・ストアーズ<ROST>が上昇。前日引け後に8-10月期決算(第3四半期)を発表し、既存店売上高が予想を上回ったほか、1株利益、売上高とも予想を上回った。新たなマーケティング施策が追い風となった。ガイダンスも公表し、通期の1株利益の見通しを上方修正している。
コンロイCEOは声明で「われわれは強い勢いを持ってホリデーシーズンに突入しており、全店舗で魅力的な商品構成を提供できる万全の態勢が整っている」と述べた。また、「売上高の力強さに加え、コスト管理への継続的な取り組みが奏功し、営業利益率は予想を大きく上回る11.6%となった」とも述べている。
アナリストは「第4四半期の関税コストは無視できる程度とみられ、今回の好決算はホリデーシーズンへの強い勢いを示すものだ」と評した
暗号資産(仮想通貨)ビットコインが急落し、相場は危険な局面に入った。オプション取引を背景とする売りがボラティリティーの増大に拍車をかけている。
ビットコインは21日の取引で一時7.6%安の8万553ドルまで値を下げた。今月に入っておよそ25%の下落となり、2022年にステーブルコイン「テラUSD」の運営会社とFTXが破綻して以来の大幅安で11月を終える見通しだ。当時は業界全体で企業破綻が相次いだ。
今回の下落は主に現物売りが要因だ。大型の上場投資信託(ETF)からの資金流出、長期間動いていなかったウォレットによる保有資産の売却、モメンタム投資家の需要減退などが重なった。
一方で、オプション取引のポジションも変動を拡大させている。ビットコインが特定の価格水準を割り込むと、ディーラーが中立を保つためにヘッジを調整する必要性が生じ、この「ガンマ・エクスポージャー」と呼ばれる過程が価格変動を増幅する。
重要な水準の一つである8万5000ドルは、21日にすでに下抜けた。この行使価格にはプットオプションの需要が集中しており、マーケットメーカーは大規模なエクスポージャーをヘッジする必要に迫られていた。こうした局面では、ディーラーは一般に「ショート・ガンマ」の状態にあり、バランスを保つためにビットコインをさらに売る傾向がある。これが下落をさらに加速させる構図だ。
これらの企業は高頻度取引を行う流動性の供給者であり、価格変動に応じてポジションを調整し、中立を保とうとする。しかし、取引が集中する行使価格を割り込むと、そのヘッジの動き自体がテクニカルな引き金となって作用する場合がある。
次の重要水準は8万ドルだ。オプションモデルによると、この水準でヘッジの力学が反転する。8万5000ドル付近ではディーラーは「ショート・ガンマ」の状態にあり、価格下落に伴うリスク増大により売りを強める必要があった。
一方、8万ドル付近では「ロング・ガンマ」に転じる。具体的には、さらなる下落でリスクが低下し、バランス維持のためにビットコインを買い戻す必要が出てくる。この反転により、売りの勢いが幾分和らぐ可能性もある。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は21日、労働市場の軟化を背景に、連邦準備制度理事会(FRB)が近いうちに再び利下げを行う余地があるとの見方を示した。これを受け、市場では12月利下げの観測が再び高まっている。
ウィリアムズ総裁はチリのサンティアゴでの講演で、雇用の下振れリスクが高まっている一方、インフレの上振れリスクは和らいでいると述べた。発言内容は事前原稿に基づく。金利先物市場の動向によると、総裁の発言を受けて12月9、10日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げの確率は約70%に上昇。発言前は約35%だった。
「金融政策は最近の一連の措置以前と比べればいくぶん緩和的になったものの、依然としてやや景気抑制的だとみている」と同氏は指摘。「そのため、政策スタンスを中立に近づけ、2つの使命のバランスを保つために、短期的にはフェデラルファンド金利の誘導目標レンジをさらに調整する余地がある」と語った。
FRB内では、当面の追加利下げの是非をめぐり見解が分かれている。パウエルFRB議長が12月のFOMC会合に向けて合意形成を進めるなか、ウィリアムズ総裁の発言は、追加利下げの可能性がなお残ることをうかがわせる。
ウィリアムズ総裁は、パウエルFRB議長と歩調を合わせる傾向がある。パウエル議長は、10月29日の政策決定後の記者会見を最後に、12月会合まで公の場で発言する予定はない。
クリシュナ・グハ氏らエバコアISIのエコノミストはリポートで、「ウィリアムズ総裁の発言は少なくとも、FRB指導部が利下げをあきらめてはいないことを示唆している」と指摘。「それ以上の意味合いを読み取ることも妥当だとは思うが、確実とは言えない」と記した。
10月会合で2回連続での利下げが決定された後、一部の当局者は3回目となる12月の利下げに対して反対ないし慎重な姿勢を示している。21日も、2人の政策当局者がそうした認識を示した。
ダラス連銀のローガン総裁は、スイス・チューリヒでのイベントで、「これまでに2回の利下げを実施した。この状況では、インフレが想定以上に速く鈍化する、あるいは労働市場がより急激に減速するという明確な証拠がない限り、12月に追加で利下げを行うのは困難だと考える」と述べた。
またボストン連銀のコリンズ総裁は、ブルームバーグのポッドキャスト番組オッド・ロッズで、政策金利の据え置きが「当面は適切」になるとの考えを示した。さらに経済専門局CNBCとのインタビューでも同様の見解を表明。今週発表された9月の雇用統計について、労働市場に対する自身の見通しが大きく変化することはなかったと述べた。
ウィリアムズ総裁は講演で、「労働市場の冷え込みに伴い、雇用に対する下振れリスクが高まっている一方で、インフレの上振れリスクはやや後退しているというのが私の認識だ」と述べ、「関税による二次的影響の兆候がない状態では、基調的なインフレ率は引き続き低下傾向にある」と指摘した。
総裁は、貿易関税が現在のインフレ率を0.5-0.75ポイント程度押し上げている可能性が高いとしつつ、関税が二次的ないし波及的な価格上昇を引き起こす兆候は見られないと付け加えた。
ミシガン大学が21日に発表した11月の消費者マインド指数は、過去最低近辺に落ち込んだ。生活費の高騰や雇用に対する不安が根強いことが示された格好だ。
一方、9月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比3%上昇となったことが、一部当局者の懸念材料となっている。
同総裁は、インフレ率を目標の2%に戻す必要があるとしつつ、労働市場に過度な負担をかけずにその水準を達成することが重要だと述べた。
フランスの高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンを率いるベルナール・アルノー氏が9月に上海を訪れた際、いつも通りの視察だろうと多くの人は考えていた。ルイ・ヴィトンやディオールなど、LVMHの旗艦ブランドが並ぶ中国有数の高級モール訪問だ。だが、意外にも、アルノー氏は中国ブランドの買い物に出かけた。
上海の新興高級商業施設、前灘太古里でアルノー氏は、ミニマル志向のレザーグッズブランド、ソングモント(山下有松)を訪れた。事情に詳しい複数の関係者によると、アルノー氏はハンドバッグを2点購入した。
別の高級モールでは、カルティエやヴァン・クリーフ&アーペルのすぐ近くに店舗を構える中国発ジュエリーブランド、ラオプー・ゴールド(老鋪黄金)を訪れた。アルノー氏は約30分滞在し、「素晴らしい」「興味深い」などと口にしていたとされる。
ささやかな行動だが、象徴的な意味は大きい。現代のラグジュアリーの概念を築き上げてきたアルノー氏が、今やその次の章を担うかもしれない中国ブランドのブティックを見て回ったのだ。
このエピソードは、約490億ドル(7兆7000億円)規模の中国高級品市場が急速に変化していることの象徴と言える。
景気減速で海外ブランドへの支出が伸び悩む一方、中国の消費者が高額品を購入する際に自国ブランドを選ぶ傾向が強まっている。この動きは世界有数の高級品市場の勢力図を塗り替え、グローバル企業に新たな対応を迫っている。
オンライン販売プラットフォームが、こうした国産ブランドの成長を後押ししてきた。データマーケティング企業、ビッグワン・ラボ(百观科技)のデータをブルームバーグ・ニュースが分析したところ、過去2年間でハンドバッグ、アパレル、フレグランス、化粧品、ジュエリーの分野で中国国内の高級ブランド5社が、売り上げの伸びで海外勢7社を上回った。
ラオプー・ゴールドの1-9月の電子商取引売上高は、2年前と比べて1000%以上急増した。ソングモントのオンラインでのバッグ販売も約90%伸びた。一方、グッチの中国でのオンラインバッグ販売は50%以上減少し、マイケル・コースは約40%落ち込んでいる。
他の中国ブランドでは、メーキャップブランドのマオゴーピン・コスメティクス(毛戈平化粧品)、香水ブランドのトゥー・サマー(观夏)、高級ファッションブランドのアイシクル(ICICLE、之禾)などがそれぞれの分野で顕著な成長を遂げている。
中国最大のオンライン小売業者であるTモール(天猫)では、一部の中国ブランドの売上高が海外勢に並ぶか、上回る水準に達している。業界コンサルタントの杭州知衣科技によると、ラオプーのTモール店舗での売り上げは、10月までの12カ月で6億3000万ドルに上り、ヴァン・クリーフ&アーペルの5700万ドルを大きく上回った。マオゴーピンの売り上げも1億2500万ドルと、ボビイ・ブラウンの2倍以上だった。
一方、ベイン・アンド・カンパニーの推計によると、LVMH、ケリング、バーバリー・グループなど欧州大手が支配する中国の高級品市場全体は、昨年20%縮小し、少なくとも2011年以来で最も急激な落ち込みとなった。回復の兆しはあるものの、経営陣の間では「慎重さ」と「不透明感」が話題となっている。
悪化する中国経済は、海外高級ブランドへの購買意欲を冷やしている。新型コロナウイルス規制の解除後に回復するとみられていた需要はむしろ低迷し、その失望感が主要ブランドの株価下落につながった。
LVMHの株価は23年のピークから約30%下落し、ケリングは21年のパリ市場での高値から約60%下落している。
LVMH、ケリング、シャネル、リシュモンなど各社はコメント要請に応じなかった。
こうした中で、より手頃な価格の中国国内ブランドに消費者が流れている。アイシクルのカシミヤウール製「エアコート(Aircoat)」は約1123-2808ドル。一方、中国の消費者がよく比較対象として挙げるマックスマーラの「101801」コートは4200ドル超だ。ソングモントのバケットバッグは、SNS上でエルメスの「ピコタンロック」の代替品と評されており、約421ドルで販売されているが、後者は5054-8016ドルと10倍近い。
これは中国特有の現象ではない。世界の消費者も高価格を続ける大手ブランドに飽き、より手頃な価格で高級感を備えたブランドを選ぶ傾向が強まっている。
ただ、価格だけが決定要因ではないと、デジタル・ラグジュアリー・グループで中国事業マネジングディレクターを務めるジャック・ロワザン氏は指摘する。
ロワザン氏は「一般的な認識に反し、中国のビューティーブランドは価格で競争しているわけではない。豊かなブランド世界を構築し、ストーリーテリングを重視している」と述べた。「欧米の高級化粧品ブランドにとって、中国ブランドの台頭は目を覚まさせる契機であると同時に、警鐘でもある」という。
ストーリーの根底には職人技と文化的誇りがあり、西洋ブランドのロゴを洗練の象徴と見なさなくなった若い中国購買層の共感を呼んでいる。現代の消費者はより自分に寄り添った商品を求めており、多くの中国ブランドはこの価値観の変化をブランドの核として取り込んでいる。トゥー・サマーやソングモントといったブランドは、中国の歴史、芸術、日常生活から着想を得ており、発信しているメッセージは明確だ。中国発のラグジュアリーであることを誇っていいというメッセージだ。
ソングモントの理念は「東方美学」を強調しており、店舗デザインは中国書道の流麗な筆致を反映している。トゥー・サマーは茶や金木犀、陳皮といった伝統的な素材を使って香りを作り、中国有数の陶磁器産地である景徳鎮製の磁器を採用している。アイシクルは儒教の「調和」と「節度」の思想をブランドの根幹に据えている。
ソングモントの創業者である傅松氏は、このコンセプトを立ち上げ当初から明確に意識していた。
「私たちは地域文化に根差した中国ブランドとして自らを位置付けてきた」という。「グローバルなファッション界の対話において、中国の声はいまだにあまりに少ない」と語った。
この戦略は、オンラインで特に効果を発揮している。マーケティングがより中国の消費者心理に寄り添っているためだ。ビッグワンのパートナー、アンバー・チャン氏によると、ソングモントは都市で働く女性の生き方に焦点を当てた自社ポッドキャストを立ち上げており、社会的地位ではなく自己価値や多様な生き方をたたえる内容が共感を呼んでいる。グローバルブランドのキャンペーンよりも深く消費者の心に響いたという。
上海在住で金融業界で働くワン・イーファンさん(30)のような消費者にとって、そのメッセージは心に響く。かつてはエルメスやトムフォードを愛好していたが、今では210ドルのソングモント製ホーボーバッグを愛用し、マオゴーピンの化粧品を使っている。ワン氏は「若い頃は消費主義のわなにはまっていた」と話す。「今はただ、本当に自分が好きなものだけを持ちたい」と語った。
中国ブランドの人気は、いまや国境を越えて広がっている。ロンドン在住のナオミ・ジャンさん(16)は、ハンドバッグを買う際に有名ブランドにこだわらなくなった。エルメスなどのデザイナーブランドは高過ぎると感じ、デザイン性と価格のバランスを理由にソングモントを選んだという。「より多様で質の高い服を選べるようになっている」と語った。
上海を拠点とするアパレルコンサルタントのレン・ユン氏は、「中国のプレミアムブランドは既にデザイン力、生産力、マーケティング力を備えている」と指摘する。「もはや西洋を追いかけてはいない。かつての西洋ブランドと同じような存在になりつつある」と述べた。
ソングモントやトゥー・サマー、マオゴーピンなどの中国ブランド幹部は、今後は世界展開を目指す考えを示している。
トゥー・サマーの創業者兼最高経営責任者(CEO)であるエルビス・リウ氏は「中国ブランドは中国市場の外にも目を向ける必要がある」と語る。「なぜグローバルブランドは中国ブランドとの競争で優位に立てるのか。それは世界市場で展開しているからだ。中国市場だけに依存していては、あくまでローカルブランドの域を出ず、競争の中で非常に不利な立場に置かれてしまう」と述べた。
米関税ショックでドルが急落してからわずか数カ月後、海外投資家が米国の保有資産を通貨下落から守ろうとする動きは急減速している。
アナリストによると、投資家によるヘッジは歴史的に見ても高い水準にあるが、トランプ米大統領が関税政策を発表した4月2日の「解放の日」直後と比較してこうした動きはから鈍化している。
当時、米国資産を保有する外国人投資家は株価、債券価格、ドルの急落に見舞われた。機敏な投資家はドルのさらなる下落に対するヘッジに動き、その勢いは増すと見込まれた。しかしその動きは鈍化し、ドルは安定した。
野村のFX・新興国市場担当グローバル責任者デビッド・リー氏は「現在、顧客との間で交わされている話では、こうした(ヘッジ)フローは5月時点で示唆されたほど差し迫ったものではないようだ」と明かす。
ドル指数は6月末から4%近く上昇。上半期は1970年代前半以来となる約11%の大幅下落を記録していた。
ヘッジに関するデータは限られており、アナリストは数少ない公表数値や銀行・証券管理(カストディー)機関がまとめた数値から推測している。
カストディー業務で世界最大級のBNYが顧客のポジションを分析したところ、2025年序盤には米国資産を非常にロングにしていた。それが4月には一変し、ヘッジは通常より高水準になったが、市場が米利下げを予想し始めた23年終盤よりは低くなっている。
市場によっても異なる。
11月にナショナル・オーストラリア銀行(NAB)がオーストラリアの年金基金を対象に行った調査では、「米国株へのヘッジ行動に大きな変化はない」との結果が出ている。
一方、デンマーク中央銀行のデータによると、同国の年金基金によるヘッジは4月以降増加していたが、安定している。
コロンビア・スレッドニードルのウィリアム・デイビス最高投資責任者(CIO)によると、同社は当初、さらなるドル安から保有する米国株を保護するために動いたが、その後、これ以上下落しないとの見方からヘッジの一部を解除した。
HSBCのFXリサーチ担当グローバル責任者ポール・マッケル氏は「今年これまでには、雪だるま式にヘッジが加速するのではないかと騒がれたが、実際にはそうはならなかった」と指摘。来年については「注目しているが、われわれの基本シナリオにはない」と話す。
それでも投資家の行動は変化しているかもしれない。ブラックロックの推計によると、今年は欧州・中東・アフリカでの米株上場商品へのフローの38%が為替ヘッジありだった。24年は98%がヘッジなしだったという。
<コスト、相関関係、複雑性>
コスト要因や金利差にも左右されるため、市場ごとに状況は異なる。これらの理由でヘッジに消極的な可能性もある。
ラッセル・インベストメントの債券・FXソリューション戦略担当グローバル責任者バン・ルウ氏によれば、日本の投資家はドル安ヘッジに年率約3.7%ものコストを支払っている。
一方でユーロ建て資産投資家の同等のコストは約2%。同氏は「ユーロ建て資産への投資家の経験則では、コストが1%程度ならあまり気にしないが、2%になると気になってくる」と語る。
資産の相関関係も重要だ。伝統的に株価が下がるとドル高になり、海外投資家は米国のポジションを実質的に保護されることになる。
4月はそれが起こらず、ヘッジに殺到する一因となった。今月は株価が再び下落したため、ドルは堅調に推移した。
また、固定ベンチマークがヘッジされていない場合、そのベンチマークをアウトパフォームすることを目指す多くの投資家にとって変更も複雑だ。
フィデリティ・インターナショナルは欧州を拠点とする投資家に対し、ドル・エクスポージャーの50%をヘッジする方向へ徐々に移行することを推奨しているが、マクロ・戦略的資産配分担当責任者サルマン・アーメド氏は、ガバナンスやベンチマークの変更が必要となる可能性があり、「非常にややこしい」プロセスだと指摘する。
ドルに対して金利が動き、再びドル安が進んでヘッジが割安になれば、変更の圧力が強まる可能性がある。野村のリー氏は「ドル投資がヘッジされる余地はまだかなりある。それが起こるのかどうか、いつ起こるのか、為替市場が把握しようとしているのはその点だ」と述べた。
高市早苗首相は21日、総合経済対策を閣議決定した。大型減税を含む規模は21.3兆円、一般会計支出の増加分は17.7兆円とする。コロナ禍以降で最大規模となる一方、急伸する円安、債券安に政権内の警戒感が強まっているとの見方もある。専門家からは日銀の年内利上げを予想する声も出ている。
<片山氏のタブレット端末>
「当初予算と補正予算を合わせた国債発行額は昨年度の42.1兆円を下回る見込みだ。財政の持続可能性にも十分配慮した姿となっている。『責任ある積極財政』はプロアクティブな、先を見据えた財政政策であり、決していたずらに、拡張的に規模を追求するものではない」。対策の閣議決定後、高市氏は首相官邸で記者団にこう述べた。大型経済対策による財政悪化リスクへの懸念を少しでも軽減しようと、マーケットに向けて強いメッセージの発信に注力した形だ。
高市氏のこうした発信には伏線があった。17日午後、対策の策定に携わる政権幹部が官邸で高市氏を囲んだ。対策の規模や項目の最終調整作業だ。事情を知る政府関係者によると、その場で片山さつき財務相が自らタブレット端末を開き、高市氏に長期金利のチャートを示した。その上昇ぶりを高市氏は神妙な表情で確認していたという。同関係者は「片山氏は警戒感を高めている。高市氏も円安、債券安はかなり気にしているようだった」と話す。
この日、円債市場では新発10年国債利回り(長期金利)が前営業日比3.0ベーシスポイント(bp)上昇の1.730%と、2008年6月以来の高水準(債券価格は下落)となった。
<空振り続く「口先介入」>
とはいえ、円相場に関する政権内の警戒感が市場に伝わっているとは言いがたいのが現状だ。これまで片山氏や木原稔官房長官が試みた「口先介入」は、いずれも効果を発揮したとは言えない。21日には片山氏が就任後初めて「(為替介入も)当然、考えられる」と踏み込んだが、直後の相場の反応は限定的だった。
市場からは「介入をちらつかせ、けん制を強めたという印象は受けない。介入前夜との印象もない」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志・主席エコノミスト)との声も聞かれた。
<「日銀の意地の見せ所」>
こうした状況の中で注目度を増しているのが、12月18、19日に開かれる日銀の金融政策決定会合だ。日銀の小枝淳子審議委員は今月20日の記者会見で、金利の正常化は「適切なペースで進めていくことが必要だ」と述べる一方、具体的なタイミングは「足元の経済・物価状況について確認しながら判断していく」とした。
円安に歯止めがかからなければ、更なる物価高が政権の体力を奪いかねない。前出の政府関係者は「利上げの時期は見通せない」と断りながらも、「次の決定会合は日銀の意地の見せ所だ」と語った。
利上げの可能性を専門家はどう見ているのか。
農林中金総合研究所の理事研究員、南武志氏は「小枝審議委員の講演や会見も利上げに前向きだった。日銀は12月利上げに踏み切るだろう」と指摘。その上で「7―9月の国内総生産(GDP)はマイナスだったが、政府の総合経済対策も最大の目玉は物価対策だ。円安が進むと政府も困る。円安阻止のために高市政権としても日銀の利上げを認めざるを得ないとみている」と話した。
ゴールドマン・サックス(GS.N), opens new tabは、S&P総合500種指数(.SPX), opens new tabが注目されていた水準を割り込んだことを受け、トレンドフォロー型のヘッジファンドが今後1週間に400億ドル近い株式を売却する可能性が出てきたと指摘した。
S&P500指数は19日に6725を下回り、6642で終了した。
ゴールドマンは、19日遅くに顧客に送ったメモで、トレンドフォロー型のヘッジファンドは、6725をポジションを解消するか、ショート(売り持ち)を追加するシグナルとみなしていたと述べた。節目的な水準を下回ったのは最近では10月、それ以前ではトランプ大統領が相互関税措置などを発表した4月2日だという。
6725を下回ったことで、今後1週間で390億ドル相当の世界の株式が売られる可能性があるとゴールドマンは試算。株価がさらに下落した場合、システマチックトレンドフォローのヘッジファンドが約650億ドル相当を売却する可能性があると指摘した。
これらのヘッジファンドは、株式市場の下落が始まる前は世界の株式約1500億ドル相当をロング(買い持ち)にしていたとしている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は21日、ロシアとの戦争についてアメリカ政府が示している和平案をめぐり、ウクライナがアメリカの支援を失う危険があると国民に警告した。この案についてドナルド・トランプ米大統領は同日、ゼレンスキー氏がそれを「気に入る必要がある」と述べた。
ゼレンスキー氏は首都キーウの大統領府を背に、約10分間にわたり国民に向けて演説し、ウクライナが「非常に難しい選択に直面するかもしれない。尊厳を失うか、重要なパートナーを失うかという選択だ」と、「今日は私たちの歴史の中で最も困難な瞬間の一つだ」と述べた。
ゼレンスキー氏は、「我々を弱体化させ、分断させるための多大な圧力」にウクライナは直面することになると国民に警告し、「敵は眠っていない」と付け加えた。
そのうえで、国民に団結を呼びかるとともに、ウクライナとしての「国益を考慮しなければならない」と強調した。
「私たちは大声で声明を発していない」と大統領は続け、「私たちは冷静に、アメリカやすべてのパートナーと協力していく。主要パートナーと、解決策を建設的に探して行く。(中略)私は主張し、説得し、代案を提示していく」と述べた。また、「ひとつ確かなことがある。私たちは敵が『ウクライナは平和を望んでいない、ウクライナは交渉を妨害している、外交の用意ができていないのはウクライナの方だ』などという口実を与えない。そんなことは起きない」と強調した。
ゼレスキー氏はさらに、「この計画のあらゆる要点のうち、ウクライナ人の尊厳と自由というこの二つが決して無視されないよう、私は闘う。なぜなら、私たちの主権と独立、国土、国民、そしてウクライナの将来が、この二つにかかっているからだ」と強調した。
「私たちは、結果として戦争が終わるように全力を尽くすだろうし、そうしなければならない。しかし、ウクライナは終わらず、ヨーロッパは終わらず、世界平和も終わらない」
大統領は、ウクライナは「今日も土曜日も日曜日も、来週も毎日、必要なだけいつまでも」迅速に取り組むとしたほか、「来週はとても厳しいものになる。いろいろなことが起きる」と述べ、「今まで以上に私たちは団結する必要がある。私たちの故郷に、尊厳ある平和が訪れるように」と、国民に向けて強調した。
大統領はまた、「欧州各国とも話したばかりだ」と述べ、欧州諸国は「ロシアはどこか遠くにいるのではなく、EU(欧州連合)の境界のすぐ隣にいて、快適な欧州の暮らしとプーチンの計画の間にある唯一の盾が、ウクライナなのだと完全に理解している」と主張。そうした「欧州の友人たちを、私たちは頼りにしている」と話した。
広く流出しているアメリカの和平案には、ウクライナがかつて拒否した内容が含まれている。ウクライナが統治する東部地域の割譲、軍の規模の大幅削減、北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないという誓約などを、アメリカはあらためて提案に盛り込んだ。
こうした条項は、2022年2月にウクライナ全面侵攻を開始したロシアにとって極めて有利な、ロシア寄りの内容と受け止められている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、アメリカによる計画が和平合意の「基盤」になり得ると発言している。
プーチン氏は21日の安全保障閣僚会議で、ロシアはアメリカの提案を受け取ったものの、その詳細はクレムリン(ロシア大統領府)として協議したものではないと話した。
また、ロシアには「柔軟性を示す」用意がある一方、戦闘を続ける準備もできていると述べた。
プーチン氏は20日、ロシア軍の「西方」集団司令部を訪れ、戦争継続の決意を示した。
軍の迷彩服を着たプーチン氏は軍司令官を前に、「我々には任務と目標がある」、「何より重要なのは、特別軍事作戦の目的を無条件に達成することだ」と強調した。
ウクライナの戦場では、ロシア兵が多数、死傷していると言われている。
ドナルド・トランプ米大統領は同日、「和平を手にする方法があると思う」として、ゼレンスキー氏はこの計画を「承認しなくてはならない」と発言。そうしなければ、ウクライナとロシアは戦闘を続けることになると述べた。
トランプ氏はホワイトハウスで、このままではウクライナが「短期間」で、ロシア相手にさらに領土を失うことになると警告。アメリカの感謝祭にあたる11月27日まで、ウクライナに猶予を与えるのが「適切」だが、状況が「順調なら」その期限を延長するかもしれないとも述べた。
トランプ政権は、和平案を素早く受け入れるようウクライナに圧力をかけ続けている。20日はダン・ドリスコル米陸軍長官、ランディ・ジョージ参謀総長、クリス・ドナヒュー欧州司令官らがキーウを訪れ、ゼレンスキー氏と会談している。
ウクライナがロシアの空爆を迎撃するには、アメリカ製の先進兵器や防空システムのほか、アメリカ政府が提供する情報が欠かせない。
西欧諸国との協議
ゼレンスキー氏は同日、キア・スターマー英首相、エマニュエル・マクロン仏大統領、フリードリヒ・メルツ独首相と電話で会談。各国の継続的な支援を確認したと明らかにした。
これについてスターマー首相は21日夜、「今度こそ公正で永続的な平和を一気に確立する」ことを、ウクライナの同盟諸国は今も重視していると述べた。
南アフリカで22日に始まる主要20カ国(G20)サミットを前に、スターマー首相は自分と各国首脳が「現在の提案について話し合い、トランプ大統領の和平推進を支持しながら、次の交渉段階に向けてこの計画をどう強化できるか、方法を検討する」と述べた。
トランプ氏は、南アフリカで白人が迫害されているという、広く否定されている言い分を理由に、G20に欠席する見通し。
ゼレンスキー氏はこのほか、J・D・ヴァンス米副大統領やダン・ドリスコル陸軍長官と「ほぼ1時間」話したと述べ、ウクライナはトランプ氏の戦争終結への努力を「常に尊重してきた」と強調した。
28項目の和平案
28項目からなるアメリカの和平案は、ロシアがウクライナ南東部で小規模な領土を獲得したと主張する中で浮上した。この間、ゼレンスキー氏は国内で、側近の関与が取りざたされる1億ドル規模の汚職スキャンダルで、閣僚2人が辞任するという事態に直面している。
ホワイトハウスは、和平案はスティーヴ・ウィトコフ米特使とロシア側のキリル・ドミトリエフ特使による会談を経てまとまったもので、ウクライナが提案の起草から排除されたという批判を否定している。
匿名の米高官はBBCがアメリカで提携するCBSニュースに対し、この計画はウクライナの国家安全保障責任者ルステム・ウメロフ前国防相との協議後、「直ちに」作成されたもので、ウメロフ氏はその大部分に同意していると話した。
和平案をゼレンスキー氏に提示する前に、ウメロフ氏がいくつかの修正を加えたとされる。
リークされた草案には、ウクライナ軍が現在統治している東部ドネツク州の一部から撤退し、ドネツクと隣接するルハンスク州、さらに2014年にロシアが併合した南部クリミア半島でのロシア支配を認めることなどが、条件として含まれる。
和平案にはさらに、ウクライナ南部のヘルソン州とザポリッジャ州の国境を現在の戦線に沿って凍結することも含まれる。両地域は部分的にロシアに占領されている。
アメリカ案はこのほか、ウクライナ軍の人員を60万人に制限し、欧州の戦闘機を隣国ポーランドに配備することを定めている。
ウクライナ政府には「信頼できる安全保障の保証」が与えられるとあるものの、詳細は示されていない。文書には、ロシアは近隣諸国に侵攻せず、NATOもこれ以上拡大しない「ものとされる」と書かれている。
和平案はさらに、制裁解除や主要国グループへの再加盟を通じてロシアが再び「世界経済に再統合」されると示す。この場合、現在のG7はG8に戻ることを意味する。
ロシア占領下と自由地域に住むウクライナ人はそれぞれ、アメリカ案に反発した。
首都キーウでは、ウクライナ兵だった夫を亡くした女性がBBCに対して、「これは和平案ではなく、戦争を続けるための計画だ」と話した。
ウクライナ占領地域の一人はBBCに、「ここでは、ウクライナは私たちのことなどもう忘れているというプロパガンダが、ひっきりなしに続く。それでも私は正気を保とうとしている。(ウクライナ政府は)これに署名しないでほしい」と話した。
ロシアは現在、ウクライナ領土の約20%を支配している。ロシア軍は、甚大な損失が報告されているにもかかわらず、長大な前線に沿ってゆっくりと前進を続けている。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は21日、ホワイトハウスでゾーラン・マムダニ次期ニューヨーク市長と会談した。この会談は「今年最大の政治的対決」になると予想されていたが、結果的には互いを称賛し合う場となった。
民主社会主義者を自称するマムダニ氏は、今月4日の選挙後の勝利演説で、トランプ氏を「独裁者」と呼んだ。一方、ホワイトハウスの報道官はこの日の会談前、マムダニ氏の訪問を「ホワイトハウスに共産主義者が来る」と表現していた。
しかし、大統領執務室で並んだ2人は、驚くほど融和的な姿勢を示した。
両者は繰り返し、ニューヨーク市の住宅費高騰への対応という共通の関心を強調した。二人はしばしば笑顔を浮かべ、マムダニ氏が市長選の最中にトランプ氏の政治姿勢を攻撃し続けたことについて記者が尋ねると、トランプ氏はむしろ楽しそうな様子を見せた。
こうした会談の雰囲気は、アメリカ政治ウォッチャーの多くを驚かせたものの、住宅費負担危機への取り組みが政治的成功に不可欠だと二人とも認識していることが、あらわになった。
しかし、この「休戦」が果たして、マムダニ氏が来年1月1日に市長となった以降も続くのかは不明だ。
トランプ氏は、その時まで「彼を応援する」と述べた。
トランプ氏から称賛の嵐
融和的な雰囲気は、トランプ氏とマムダニ氏が報道陣に話し始めた瞬間から明らかだった。
非公開の会談後にメディアに向き合った際、マムダニ氏はトランプ氏の右側に立ち、手を組んでいた。一方、トランプ氏は机の後ろに座っていた。特にトランプ氏が、リラックスした様子だった。
トランプ氏はマムダニ氏への攻撃を控えただけでなく、実際に何度も称賛した。
トランプ氏は、マムダニ氏が「本当に素晴らしい市長になることを望む」と述べた。
また、「彼が非常に良い仕事をできると確信している」と付け加えた。
「ジハーディスト」と「ファシスト」について質問され
マムダニ氏とトランプ氏は、市長選を通じて政治的な舌戦を展開した。ホワイトハウス記者団は当人たちを前に、トランプ氏がマムダニ氏を「共産主義者」と呼び、マムダニ氏が大統領を「独裁者」と呼んだことに言及した。
しかしこの日、2人は過去の発言に関する複数の質問をかわし、相手をたたえ続けた。
記者がマムダニ氏に、トランプ氏を「ファシスト」だと思うかと質問した際、トランプ氏はマムダニ氏に回答を促した。
「大丈夫だ、ただ『イエス』と言えばいい」とトランプ氏は口を挟み、マムダニ氏の腕を軽くたたいて笑顔を見せた。「説明するより簡単だ」。
マムダニ氏の政治姿勢について、トランプ氏は取り立てて批判しなかった。多少なりとも批判的と言えるかもしれない表現は、「彼には少し突飛な考えがある」というものにとどまった。
トランプ氏の発言の中では、エリーズ・ステファニク下院議員(共和党)によるマムダニ氏への攻撃を、一蹴したことが特に目立った。ステファニク氏はニューヨーク州知事選に出馬しており、トランプ氏を強力に支えてきた政治的盟友の一人。
ステファニク氏がマムダニ氏を「ジハーディスト(イスラム聖戦主義者)」と非難したことを踏まえて、記者の一人が大統領に、「大統領執務室で今、『ジハーディスト』の隣に立っていると思いますか」と尋ねると、トランプ氏は「そうは思わない」と即答した。
「選挙戦では時に、いろいろなことを言うものだ」としたうえで、トランプ氏はステファニク氏について「彼女は非常に有能な人物だ」と付け加えた。
ニューヨーク出身という共通点
マムダニ氏とトランプ氏には共通点がある。2人ともニューヨーク出身で、クイーンズ区を故郷と呼んできた。
トランプ氏の幼少期の自宅はクイーンズのジャマイカ・エステーツ地区にある。マムダニ氏は現在、クイーンズのアストリアに住んでいる。
自分たちは同じようにニューヨークを愛しているのだと、マムダニ氏は話した。
最近のトランプ氏は、マンハッタンにあるトランプ・タワーで過ごすことはほとんどないが、記者会見を通じて故郷への愛着を率直に語った。
「(ニューヨークは)信じられないほど素晴らしくなれる。(マムダニ氏が)目を見張るような成功を収められるなら、自分はとてもうれしい」とトランプ氏は述べた。
トランプ氏はさらに、政治家として今とは別の人生を生きていたなら、自分もニューヨーク市長になりたかったと話した。
「手頃な価格」を重視
この日、トランプ氏とマムダニ氏が足並みをそろえているように見えた理由の一端は、どちらも生活費の問題を重視していることかもしれない。
昨年の大統領選でトランプ氏は、有権者が不満に思っていた高インフレ問題を集中的に話題にし続けることで勝利した。食料品、住宅、その他の必需品の価格に消費者の不満が高まる中、トランプ氏は経済安定重視のメッセージを伝えようとしてきた。
しかし、今月初めに行われた一連の選挙では、共和党が苦戦し、民主党が重要な選挙で勝利した。そして今は、米連邦議会の行方を決める来年の中間選挙に注目が集まっている。
選挙運動中、マムダニ氏は手頃な住宅の不足に焦点を当て、自治体が家賃の値上げ率の上限を設定している「レント・スタビライズド(家賃安定型)物件」の一部で家賃値上げを凍結するなど、複数の住宅政策を提案した。
マムダニ氏は記者会見で、トランプ氏と「ニューヨーカーに手頃な生活を提供する方法」について話し合ったと述べた。
2人の見解の違いに関する質問を受けるたびに、マムダニ氏はこの話題に会話を戻した。
中東和平の実現に関する見解の違いについて質問された際にも、マムダニ氏は、トランプ氏の支持者らから「永遠の戦争の終結」と「生活費危機への対応」を望んでいると言われたと答えた。
共和党の戦略に混乱も?
トランプ氏とマムダニ氏がすぐにも対立姿勢に戻り得る、重大な政治問題はまだある。
記者の一人は、ニューヨーク市での連邦移民法執行の可能性について質問した。この問題は民主党や一部の移民コミュニティーを激怒させている。
マムダニ氏は、ニューヨークでの連邦移民法執行の実施と、その方法に対する住民の懸念について話し合ったと述べた。
一方のトランプ氏は、移民よりも犯罪について議論したと語った。
「彼は犯罪を見たくないし、私も犯罪を見たくない」と、トランプ氏は述べた。そして、自分たちは「ほとんど何の疑いもなく」この問題でうまくやっていけるはずだと話した。
トランプ氏はさらに、マムダニ氏が治めるニューヨークで、自分は安全だと感じるだろうと述べた。
しかし、トランプ政権が積極的な強制送還目標を設定し続けるなかで、両者が再び対立する可能性は残っている。
また、この2人とその具体的な政策を超えた、別の潜在的な問題も存在する。
共和党は、2026年の中間選挙で米連邦議会の支配権を争う中、マムダニ氏を政治的な対抗軸として利用する意向を示唆している。
しかしトランプ氏は、大統領執務室でマムダニ氏を称賛しながら、ニューヨークの新しい市長が「一部の保守派を驚かせる」と信じていると述べた。
そうなった場合には、トランプ氏自身の政党にとって、戦略的にややこしい事態になるかもしれない。
サウジアラビアの建国者であるアブドルアジーズ国王が、フランクリン・ルーズベルト米大統領との有名な会談でサウジとアメリカの関係の基礎を築いたとき、彼は相互利益と公平な関係を発展させることを約束した2つの独立した友好国間の関係を確立することに熱心だった。
当時のサウジアラビアは、その富と地理的な位置、そして石油という有望な経済的機会が目前に迫っていたことに代表されるように、利用できる資源が限られていたにもかかわらず、創始者は、その外交的洞察力と新興の世界秩序における米国の重要性に関する先見性によって、石油探査のための利権を認めた。これが、両国間の継続的かつ有益な関係の始まりとなった。
サウード国王、ファイサル国王、ハーリド国王、ファハド国王、アブドゥラー国王は、1973年の石油禁輸措置や2001年9月11日の事件など、一時的な困難があっても、こうした関係の発展と維持に尽力した。しかし、サウジアラビアは平等と利益と利益の交換という原則に基づき、これらの関係を維持してきた。
この点で、私は(以前外務省に勤務していたこともあり)世界貿易機関(WTO)への加盟に関するアメリカの立場を今でも思い出す。アメリカは、発展途上国であるわが国の加盟を認めないという主張、イスラム法に反する数多くの製品に恒久的な輸入禁止措置を課すことを認めないという主張、1,000%を超える極めて高い関税を課すという提案のために、わが国が交渉をまとめることができなかった唯一の国であった。
交渉は暗礁に乗り上げた。当時皇太子だったアブドゥラー皇太子は、ジョージ・W・ブッシュ大統領に対し、サウジアラビアが米国に提供する経済機会の大きさを説明するとともに、サウジアラビアのイスラム教のアイデンティティを考慮することの重要性と、特定の製品の入国を許可することの不可能性を説明する、強くインパクトのあるメッセージを送ることにした。彼は最後に、アメリカの立場が両国関係に及ぼす影響について説明した。それから1ヵ月も経たない2005年、サウジアラビアは世界貿易機関(WTO)に加盟した。
今日、「ビジョン2030」の立役者であるサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン皇太子の下、王国は10年のうちに、政治、経済、社会、文化の各レベルにおいて、地域的、国際的なパワーの中心地となることに成功した。こうした動きを追っていれば、すべてではないにせよ、世界の指導者のほとんどがリヤドを訪問していることがわかるだろう。リヤドはまた、湾岸、アラブ、イスラム、国際的なサミットの開催においても、経済、投資、貿易、社会、文化の各分野でかつてないほどの盛り上がりを見せている。サウジアラビアは毎年、あらゆる分野で常に主導的地位を獲得している。
パレスチナの国家承認に関する王国の努力と、パレスチナの大義の正義とイスラエルによるガザ殲滅戦争を停止させる必要性について、国際社会、特に米国を説得する努力を思い起こせば十分だろう。これは月曜日の国連安全保障理事会決議2803に結実し、1967年の画期的な決議242以来、パレスチナの大義の歴史において最も重要な決議とみなされている。サウジアラビアは、国際社会の他のセグメントとともに、パレスチナ国家を樹立するために必要な措置を講じる必要性に関する重要な修正を加えるために多大な努力を払った。
皇太子の今週の歴史的な訪米は、このような二国間関係に栄冠を与え、サウジアラビアを主要な非NATO同盟国、信頼できる戦略的パートナーの地位に押し上げた。皇太子がホワイトハウスで受けた前例のない歓待、大統領執務室でドナルド・トランプ大統領が表明した賞賛と称賛、皇太子の名誉のために開かれた公式晩餐会、締結された協定、人工知能における戦略的パートナーシップ、投資フォーラム、3000億ドルの投資協定の発表がすべてを物語っている。
サウジアラビアは、その前例のない業績にもかかわらず、慣例としてアラブとイスラムのルーツを忘れてはいない。議論は、アラブ・イスラム世界の安全と繁栄に貢献するあらゆるものを網羅した。パレスチナ、レバノン、シリア、スーダンの問題はすべて大きく取り上げられた。皇太子の要請でシリアへの制裁を解除したのに続き、トランプは皇太子がスーダンの和平を促進するために直接介入することを要請したと発表した。
これらのことは、サウジアラビアがサルマン皇太子と皇太子のリーダーシップの下、輝かしく有望な未来を持っていることを裏付けている。
偶然の一致かもしれないが、歴史が目的なしに自らを書き表すことはめったにない。来週ワシントンで行われるサウジアラビアの皇太子であり首相であるムハンマド・ビン・サルマン殿下、そしてドナルド・J・トランプ米大統領の会談は、1945年にアブドルアジーズ国王とフランクリン・D・ルーズベルト大統領がUSSクインシー号で交わした決定的な会談から80年後に行われる。この会談は、戦争、石油ショック、政治的変遷に耐えてきた戦略的パートナーシップの基礎を築いた。
当時と現在の類似性は際立っており、重要である。
1945年、世界は第二次世界大戦の灰燼から立ち上がりつつあった。米国は世界的な超大国になる態勢を整えていた。アブドルアジーズ国王率いるサウジアラビアは領土を統一し、近代国家の建設を始めたばかりだった。USSクインシー・サミットは、主に王国の安全保障とアメリカのための石油という2つの柱に焦点を当てた。このサミットは、世界最大の石油会社に発展した合弁会社サウジアラムコの誕生からちょうど10年後のことだった。現在では完全にサウジ資本となっているが、その成功におけるアメリカの貢献は否定できない。
今日、私たちは新たな章の入り口に立っている。それは、アラムコのサクセスストーリーを飛躍的に増大させる可能性のあるものである。
この関係はもはや石油と安全保障にとどまらない。核協力、宇宙開発、人工知能、先端技術も視野に入っている。これは単なる二国間のアップグレードではなく、戦略的飛躍である。これほどシュールなタイミングはない:ビジョン2030とメイク・アメリカ・グレート・アゲインは、野心、範囲、緊急性において一致している。
サウジアラビアはもはや過去の石油依存経済ではない。王国は観光、医療、鉱業、ハイテクなど、その潜在能力を最大限に開花させつつある。アメリカ企業は、これら多くの分野で先陣を切り、早期投資、知識移転、協力から報酬を得る絶好の機会を手にしている。
さらに、過去 10 年間に導入された大胆な改革により、サウジアラビアでビジネスを行う上で抱いていた懸念はもはや関係ない。また、サウジアラビアが完璧であることには程遠いとはいえ、女性の地位向上、参入障壁の撤廃、官僚的手続きの撤廃、サウジアラビアの住民と市民の生活の質の向上といった分野における飛躍的な進歩は、公正な立場であれば誰も否定することはできない。
「取引巧者」で知られるトランプ大統領は、官僚主義に進歩を阻害させるようなことはしない。公正な競争に対するトランプ政権のオープンな姿勢は、アメリカ企業がお役所仕事に邪魔されることなく関与できることを意味する。これは双方にとって、そして注視する世界の投資家にとっても朗報である。
とはいえ、安全保障が最重要であることに変わりはない。この地域は不安定だ。ならず者は後を絶たない。この地域最大の米軍基地を抱えるカタール領をイスラエルが最近攻撃したことは、強固な防衛体制の緊急性を強調している。サウジアラビアは2030年の万博と2034年のFIFAワールドカップの開催を控えており、国境、領空、領海の安全を確保しなければならない。文書による防衛条約は単に望ましいというだけでなく、必要不可欠なものなのだ。
サウジから見れば、フーシ派による民間インフラ攻撃の傷跡は生々しい。バイデン政権がフーシ派をテロ組織として登録抹消し、パトリオット・ミサイル・バッテリーを2022年に撤収させるという早期の決定を下したことは、懸念をもって迎えられた。しかし、ジョー・バイデン大統領の任期が終わるころには、歴史的な防衛条約の交渉はほぼ完了していた。今回の訪問は、この条約を最終決定し、このような残虐行為が二度と起こらないようにするためのチャンスである。
サウジとアメリカの関係は嵐を乗り越えてきた。
共産主義の打倒からクウェートの解放に至るまで、両国はグローバルな課題に協力して取り組んできた。共和党と民主党の政治的な変遷にもかかわらず、サウジアラビアの戦略的価値は不変である。サウジアラビアは現金輸送機ではなく、安定化させる力なのだ。イスラム教の聖地の管理者であり、この地域最大の経済大国であり、世界の石油市場における重要なプレーヤーであるサウジアラビアは、米国の利益にとって不可欠である。
サウジの外交も進化している。王国はパレスチナの2国家解決を推進し、ガザでの残虐行為を非難し、スーダン、ウクライナ、シリアでの交渉を促進してきた。人道支援と開発援助は寛大かつ一貫している。リヤドはもはや単なる地域的なアクターではなく、世界的な調停者なのだ。
米国はこの地域で尊敬を集めるパートナーを必要としている。サウジアラビアはその役割にふさわしい。制裁解除にせよ、和平の仲介にせよ、リヤドの保証には重みがあることをアメリカの政策立案者は知っている。数十年にわたる混乱の末に新しいシリアが誕生したことは、その影響力の証しである。
今回の訪問は儀礼的なものではない。結果的なものだ。イスラエルがパレスチナの国家化に向けた真剣な道筋を約束する用意があれば、皇太子の言う「新しいヨーロッパ」、つまり統合、協力、繁栄の共有地域に加わることができる。賭け金は高い。チャンスはめったにない。そして今がその時なのだ。
2025年11月18日が、過去の記念日としてだけでなく、未来への出発点として、歴史に刻まれる新たな日となることを願おう。
米国の労働市場は9月に予想に反し、遅延統計によると11万9000人の雇用増加を記録しましたが、 失業率は4.4%に上昇し、4年ぶりの高水準となりました。通常であれば、この時期は多くの従業員にとって、自分 が会社にとって 最も貴重な資産であることを自覚する時期です 。特に、レイオフが急増し 、様々な業界でAIがエントリーレベルの職を徐々に置き換えている状況ではなおさらです。 
しかし、  Z世代の労働者たちはこのメッセージを理解していないようだ。 多くの若い労働者は、長時間労働を強いられるどころか、 足元の状況が変わりつつあるにもかかわらず、ワークライフバランスは譲れない権利だと信じている。
業界を問わず、新入社員は午後5時以降はメールに返信しない、夜遅くまで外出しない、平日の夜にピックルボールを楽しむなど、若手社員にとって以前の景気低迷期には考えられなかった行動をとっていると述べている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、 管理職たちは、若手社員が粘り強さ、信頼性、そして価値を最も示さなければならないまさにその時に、こうした離職が起こっていると 指摘している。 
ロサンゼルスの広告会社に勤める24歳のダマリアン・ベントンさんは、ログオフする前に上司に連絡を取り、残業しないことを明確に伝えている。「 5時以降、ノートパソコンのそばにいなければ、もうそばにいません」と彼は言う。「その理由も説明しません」
ヒューストンの眼科クリニックに勤務するニア・ジョセフさんは、最近、日曜日の午前8時までに出勤しなければならなかったにもかかわらず、午前2時まで外出していたという。数年前ならもっと早く帰宅していたのに、と彼女は言う。「昔はもっと物事を楽しんでいたんだな、と改めて思ったんです」と彼女は言った。
また、ニュージャージー州のシニア監査アソシエイトであるジェシカ・モラン氏は、特定の平日の夜にはピクルボールの練習が優先されることをマネージャーに確実に理解させたと述べた。
「私は同僚、上級同僚、管理職に質問して、彼らのワークライフバランスとその実態を測った」と24歳のモラン氏は WSJに語り、「私にとってそれは、ここにはワークライフバランスがなければならないということだ」と付け加えた。
共通するテーマは、Z世代は仕事が自分たちのライフスタイルに適応することを望んでおり、その逆ではないということです。
高齢労働者は危険信号に気づく。Z世代は気づかない。
企業幹部らは、労働市場が明らかに冷え込みの兆候を示している中で、この乖離は拡大していると述べている。
企業は採用を減速させ、ポジションを削減し、新入社員に対して境界線が曖昧になる可能性があると警告している。歴史的に見て、経済の不確実性が高まる時期は、若いプロフェッショナルたちが頼りにされる存在であることを証明するために、より一層努力する時期だった。
「ジェネレーションX、困難な時…私たちはどうする?もっと一生懸命働き、もっと努力し、もっと頑張る」と、エトス・イノベーションの創業者マーシー・メリマン氏は語る。若い世代の労働者は、努力や対応力ではなく、成果のみで評価されることを期待していると彼女は言う。
求職者が優位に立っていたパンデミック時代の採用ブームでは、こうした姿勢は理にかなっているかもしれない。しかし今日では、雇用主たちは、こうした姿勢は自己満足に見えてしまう恐れがあると指摘する。
Z世代は忠誠心は報われないと語る。一方、雇用主は規律が依然として重要だと主張。
世代間の分断の一因は、パンデミックとリモートワークの増加にあります。若い世代の労働者が労働市場に参入した当時、多くの雇用主はメンタルヘルス、柔軟性、そして境界線を重視していました。多くの人が、家族が従来の仕事で燃え尽き症候群に陥るのを見てきました。ジョセフさんは、両親のキャリアが「完全に人生を支配してしまった」と言い、彼女は同じパターンを繰り返したくないと思っています。
しかし、経営者たちは、振り子が行き過ぎていると主張している。安定した雇用市場では、無関心は自信の表れに見えるかもしれない。しかし、弱体化している市場では、コミットメントの欠如の表れに見える可能性がある。
ギャラップのデータによると、労働時間の減少は若年労働者が主導しており、パンデミック以前と比べて週あたり約2時間減少している。高齢労働者の減少は1時間未満にとどまっている。
優先順位の変化は、労働時間の短縮に現れている。ギャラップ社の調査によると、アメリカ人の週平均労働時間は昨年42.9時間で、2019年の44.1時間から減少した。減少を最も顕著に表したのは35歳未満の若年層で、週平均2時間近く労働時間が短縮された。一方、高齢層は週平均1時間弱労働時間が短縮された。
ギャラップの職場管理担当主任科学者ジム・ハーター氏は、市場が厳しくなっている兆候があるにもかかわらず、多くの若い従業員は「依然として雇用主とのつながりを感じている」と述べた。
ほとんどの人が聞きたくない警鐘
若い労働者たちの経験は、雇用主が柔軟性の欠如を理由に罰することはないし、罰することはできないという信念を反映している。しかし、労働市場はZ世代がなかなか受け入れることができなかったもの、つまりレジリエンス(回復力)を評価し始めている。
ベントン氏は、かつてインターン時代に自分に課していたプレッシャーを思い出す。午前7時にログインし、病気と闘いながら働き、時には深夜まで起きていた。今では、わざわざ余分な仕事を引き受けることはないという。インターンシップ中に締め切りに追われて大変だった時、マネージャーは休暇を取るように勧め、締め切りを延ばしてくれた。今では、有給休暇を自由に取得し、勤務時間外の申請についても心配していない。
ベントン氏やジョセフ氏のような従業員は、こうした境界線を健全なものと捉えています。一方、経営陣は、より競争の激しい雇用市場の要求に対応できる準備ができていない従業員の兆候だと捉えています。
次のサイクルに迫る疑問は、Z世代が適応するかどうか、あるいは雇用主がすでに適応している労働者を優先することを決定するかどうかだ。
トランプ大統領は金曜日のFOXニュースとのインタビューで、イランの核開発計画は大幅に後退したと述べ、現在テヘランはワシントンとの合意を模索していると主張した。
トランプ大統領は、6月に米国がイランの主要な核施設3カ所を爆撃して以来、ここ数ヶ月で状況が劇的に変化したと強調し、合意に至る可能性を示唆するというやや意外な発言をした。「彼らは合意を望んでおり、おそらく合意に至るだろう」と彼は述べた。
トランプ大統領はさらに、中東におけるより広範な地域的変化について述べ、イスラエルとの歴史的なアブラハム合意正常化プログラムへの署名に関心を持つ国のリストは「増え続けている」とコメントした。
彼は、前例のない平和の機会を歓迎するとともに、レバノンにおけるヒズボラとの危機も現在緩和しつつあると称賛した。
実際、トランプ大統領は、今週サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が訪問した際の水曜日、ワシントンDCで行われた米国・サウジアラビアビジネスフォーラムでも同様の発言をしている。
テヘラン攻撃について、トランプ大統領は聴衆に対し、「我々は皆さんの国から暗雲、つまりイランとその核能力を取り除き、非常に迅速かつ強力にそれを消滅させました。しかし、それは中東全体を覆う真の暗雲でした」と語った。
「今、彼らは取引を望んでいる。彼らは取引を望んでいる。我々と合意できるかどうか見極めようとしている。そして我々はおそらくそうするだろう。しかし、それは長い間、我々が抱え続けなければならなかった恐ろしい暗雲だった」と彼は付け加えた。
しかし現実は、イランの指導者たちは、米国がいつでも離脱できる新たな合意(JCPOA崩壊後)を結ぶことにほとんど動機を感じていない。 
これは、6月のイスラエルとの戦争以前、テヘランが米国と誠意を持って核交渉に積極的に取り組んでいたことと重なります。しかし、それは単なる策略に過ぎず、イスラム共和国はイスラエルと米国による大規模な奇襲攻撃を受けました。控えめに言っても、永続的な「信頼」の問題が残るでしょう。
イランは平和目的の原子力エネルギー計画のみを保有していると常に主張しているにもかかわらず、今や秘密裏に核兵器を開発するあらゆる動機を有している。これは、イランの核施設への無差別攻撃を仕掛けるという米国の決定に対する、大きな「反動」となる可能性がある。
中国経済は崩壊しつつあるのか?それとも、もっと深刻な事態が待ち受けているのか?
端的に言えば、経済崩壊よりもはるかに深刻な事態を目の当たりにしている可能性があるということです。中国は世界通貨システムの崩壊の一因となる可能性があります。
まずは、中国から発表された最新の公式経済指標から分析を始めましょう。これらの指標は、2020年のパンデミック崩壊以来、中国経済が最も弱いパフォーマンスを示したことを示しています。
状況は良くない
10月の鉱工業生産は前年同月比4.9%の伸びとなり、前月の6.5%から低下しました。これは2024年8月以来の最低水準です。自動車、コンピューター、造船、通信など、政府の支援を受けている一部のセクターは平均を上回りましたが、製造業全体は大幅に減速し、鉱業の生産も低迷しました。
10月の小売売上高も低調でした。全体では2.9%の成長を記録しましたが、家電製品(-14.9%)、建材(-8.3%)、自動車(-6.6%)など、一部のセクターでは大幅な落ち込みとなりました。
堅調な伸びを示したセクターとしては、宝飾品(+37.6%。ただし、これは宝飾品という形で金を購入することの代替指標とも言える)と化粧品(+9.6%)が挙げられます。これは小売売上高の伸びとしてはここ数年で最も低く、10月は例年、季節的な購買意欲が高まる時期であることを考えると、特に弱い伸びとなっています。
最も悲惨なデータは固定資産投資(FAI)で、年初来で1.7%の減少を示しました。これは、パンデミックによる景気低迷が始まった2020年以来、最も急激な減少です。
不動産投資は14.7%減少し、インフラ投資(長らく中国の経済成長の柱となってきた)は0.1%減少しました。製造業投資は2.7%増加しましたが、これは今年初めの半分に過ぎません。
結局のところ、投資の3つの柱、すなわち固定資産、不動産、製造業が同時に減速しているのです。投資は中国の経済成長を牽引する最も強力な要因の一つです。先進国では通常、GDPの約25%が投資によるものですが、中国ではその割合は45%近くに達します。中国で投資が急落すれば、経済全体の成長もそれに伴って急落することになります。
不動産も暴落
この最近のデータは、数年にわたる不動産価格の暴落に加えて発表されたものです。この暴落により、多くの不動産の資産価値が消失しました。消失した資産価値は多くの中国国民にとって生涯の貯蓄であったため、消費への影響は甚大であり、新たな不動産投資への抵抗感も顕著です。
不動産市場の暴落は個人所有者にとどまらず、恒大集団(損失190億ドル)、碧桂園(損失110億ドル)、方多斯ホールディングス(最近10億ドルの営業損失)、融創科技(2023年に破産申請)など、中国最大手の建設会社や不動産投資会社数社の倒産につながっている。
中国恒大、碧桂園、融創の破綻は、いずれも不動産担保ローンと不動産担保型資産運用商品の広範な暴落を背景に起きた。このグラフは、主要な中国高利回り不動産指数が近年82%下落し、その後回復していないことを示している。
不動産市場の崩壊は、新型コロナウイルス感染症後の中国経済における数々の「経済再開」と、その後の数々の「景気刺激策」が失敗に終わった時期と重なった。パンデミックによるロックダウンが緩和された2022年、中国は大規模な経済再開を発表した。これは失敗に終わった。その後、中国は利下げ、銀行預金準備率の引き下げ、優遇産業への補助金など、いわゆるバズーカ砲のような大規模な景気刺激策を発表した。これらは2024年と2025年にも失敗に終わった。米国と同様に、低金利は景気刺激策の兆候ではなく、景気後退と不況を示唆するものだ。
マイナス成長?
中国の経済データはグッドハートの法則に照らして考察する必要がある。この経済法則によれば、指標が政策の対象となると、指標としての価値は失われる。
これは中国のGDPにも当てはまります。中国のGDP成長率は、2000年代初頭の年率10.0%から2024年には5.0%に低下しました。2025年第3四半期のGDP成長率(前年比)は4.8%でした。中国はGDP成長率を明確に目標としており、現在は5.0%の成長を目標としています。つまり、成長率はほぼ確実にこれよりも低く、中国は統計的な策略、あるいはあからさまな嘘をつき、目標達成あるいは目標に近づいているように見せかけているのです。
前述の通り、中国のGDPの約45%は投資によるものです。しかし、その投資の多くは、ゴーストタウン、無用の長物、そして投資回収の見込みが全くない贅沢なプロジェクトに浪費されています。もしこの無駄な投資が(GAAPで義務付けられているように)帳消しになった場合、中国の成長率は4.8%から約2.5%に低下するでしょう。その他の操作やグッドハートの法則を考慮すると、中国のGDP成長率が現在マイナスになる可能性は十分にあります。しかし、この結果は広く理解されておらず、ウォール街のパンダ愛好家にとっては衝撃となるでしょう。
中所得国の罠に陥る
さらに高いレベルで見ると、中国は完全に中所得国の罠に陥っている。蔓延する汚職や戦争がなければ、都市化、インフラ整備、そして型にはまった組立型の製造業を組み合わせることで、低所得国(一人当たり年間GDP約5,000ドル)から中所得国(一人当たり年間GDP約15,000ドル)へと容易に移行できる。
高所得国(一人当たりGDPが年間2万5000ドル以上)への躍進は、独自の技術と高付加価値製造業によってのみ実現できる。第二次世界大戦以降、このような飛躍を遂げた国は、シンガポール、台湾、韓国、香港などごくわずかだ。中国は技術を盗むのは得意だが、それを自ら生み出し、自国の製造業に応用するのは得意ではない。これが中国の成長にとってもう一つの大きな逆風となっている。
成長へのその他の逆風
中国は、上記の問題とは別に、成長を阻む重大な課題を抱えています。中国は現在、世界史上最大の人口減少の初期段階にあり、その規模は14世紀の黒死病をも凌駕しています。
中国の現在の人口約14億人は、今後50年間で半減すると予想されています。これは7億人の減少に相当します。これは、1980年に始まった一人っ子政策、性別による中絶と幼児殺害(これにより2,000万人の女児が死亡)、そして教育、都市化、雇用機会の平等化に伴う女性一人当たりの出生数の減少が重なった結果です。
経済成長を推定する最もシンプルな公式は(労働力×生産性)です。世界的な生産性の低下は、経済学者も完全には理解していない原因によって起こっています。中国では、労働者一人当たりの生産性の低下と数億人の労働者の減少が重なると、経済は半分以上縮小する可能性があります。これは2080年に突然起こる大惨事ではありません。今まさに起こっており、時間とともに悪化していくでしょう。
中国の成長は、過剰な債務対GDP比によっても阻害されるだろう。この比率は300%と推定されており、米国の123%の2倍以上である。90%を超える比率は成長を阻害する。借金で債務の罠から抜け出すことは不可能だ。唯一の解決策は、債務不履行、ハイパーインフレ、あるいは政府支出の削減による債務対GDP比の引き下げである。
これら3つはいずれも、それぞれ異なる形で成長を阻害し、資本を破壊します。唯一確かなのは、資産価値と債務が完全に崩壊しない限り、成長は今後数十年にわたって低迷するということです。その場合、数兆ドルもの富が失われた後、システムはリセットされる可能性があります。
投資家:中国から遠ざかるべきだ
この経済的破滅に加えて、政治的混乱も発生している。入手可能な情報では、習近平国家主席がソフトな軍事クーデターに巻き込まれ、人民解放軍指導部に従属するようになったという。習近平の側近はほぼ粛清された。中国の指導部が今後どうなるかは不透明だ。しかし、外国資本の中国への投資を阻むような不確実性はほぼ確実だろう。
そして、中国だけの問題ではない。今日の中国経済の弱さは、日本と英国のマイナス成長、そしてEUの辛うじてプラス成長にとどまっている状況の中で生じている。失業率は上昇し、世界貿易は縮小し、商業銀行は予想外の信用損失を受けて融資基準を厳格化している。
中国がAI競争で勝利し、技術大国を築きつつあるというウォール街の言い分を信じてはいけない。それは事実ではない。中国は中所得国の罠に陥っており、経済崩壊、貿易戦争、人口動態の悪化、過剰債務、政治的混乱、法の支配の欠如、そして成長のない世界の中での外国資本の流出という、特異な状況を抱えている。投資家は中国から可能な限り距離を置くべきだ。
自由世界では、人々は疲弊し、制度は無反応に見え、指導者たちは疎外感を感じている。政治は依然として終わりのない争いの連続だ。こうした状況の中で、機械の方がより優れた成果を出せるかもしれないという新たな考えが広がりつつある。
億万長者の技術者であり、元Google CEOのエリック・シュミット氏は、この誘惑に対して公然と警告を発しつつも、なぜそれが増加しているのかを認めている。民主主義国家が期待に応えられないとき、人々は自然と何か、何でもいいから、能力を約束してくれるものを求めると彼は指摘する。
2025年の調査では、多くの国民が、選挙で選ばれた代表者よりも人工知能(AI)システムに自分たちの代わりに意思決定を任せていることが明らかになっています。これは驚くべき変化ですが、テクノロジーそのものよりもさらに深刻な問題を浮き彫りにしています。
アメリカと西側諸国が直面している真の危機は技術的なものではなく、道徳的なものだ。民主主義は、その手段が時代遅れになったからといって弱体化するのではない。民主主義を支える人々が自信、明晰さ、そして内なる方向性を失ったときに弱体化するのだ。
たとえ最先端のAI駆動型市民プラットフォームを構築し、アルゴリズムを用いて審議の規模を拡大したり参加を効率化したりしたとしても、まず根本的な問題に取り組まなければ、私たちは失敗するでしょう。自由な政府は、道徳的に混乱した国民のもとでは存続できません。どんなに洗練されたアルゴリズムでも、徳が存在しないところに徳を供給できるわけではありません。
しかし、「アルゴクラシー」(アルゴリズムによる政治)という考え方は、ますます混乱に陥る社会を魅了し続けている。アルゴリズムは、人間の制度が提供に苦労するもの、すなわちスピード、一貫性、中立性、腐敗からの自由、そして政治的紛争の渦からの解放を約束する。
不信と制度の衰退の時代に、こうした約束は救済のように聞こえる。しかし、それらは人間性と機械の論理の両方に対する誤解に基づいている。アルゴリズムは効率を最適化できるが、効率は知恵ではない。最適化は判断ではない。そして、判断――道徳的、歴史的、そして人間的な判断――こそが民主主義生活の中核を成す機能なのだ。
市民が主体性を失ったり、分断によって疲弊したりすると、秩序を回復できる何かを自分以外の何かに求め始めます。かつての時代では、その「何か」とは権力者でした。今日では、それは統計システムです。その衝動は同じです。つまり、一見中立的な権力に責任を委ねようとするのです。
しかし、人々が「アルゴリズムが最善を知っている」という考えに慣れてしまうと、自治を可能にする習慣を徐々に失ってしまいます。市民としての責任感は弱まり、相反する真実を比較検討する本能は鈍り、道徳的識別力は蝕まれていきます。判断力を放棄した社会は、どんなに洗練されたツールが開発されても、民主主義を維持することはできません。
建国の父たちは、機械学習が登場する何世紀も前に生きていたにもかかわらず、今日のテクノクラートの誰よりもこの力学をよく理解していました。ジョン・アダムズが「憲法は道徳的で宗教的な人々のために作られた」と述べたことは、決して神学的な要求ではなく、社会学的な事実でした。自由な共和国には、自制心を持ち、意見の相違を許容し、誠実に行動し、善悪を判断できる市民が必要です。それがなければ、法律は空虚になり、制度は脆くなります。
ジョージ・ワシントンは退任演説で、道徳的原則の共有なしには自由は持続できないと警告した。彼は外国の帝国を恐れるよりずっと前に、共通の倫理観の喪失を恐れていた。
彼らの先見の明は、人間性に対する理想主義的な信仰ではなく、冷静な理解から生まれたものでした。徳を欠いた民衆は混乱に陥るか、自らの力で自分たちを救ってくれる支配者を懇願するかのどちらかになることを彼らは知っていました。今日の運命のいたずらは、多くの人々が頼りにしている「支配者」が人間ですらないということです。
これは、AIが「より良い民主主義」の構築に貢献できるという希望の根本的な欠陥を示唆している。AIは社会を修正するものではなく、社会を反映する。そして、反映するものは何でも、拡大する。ある文化が正義について混乱しているなら、そのAIシステムはその混乱を深めるだろう。人々が真実について分裂しているなら、AIモデルはその分裂を激化させるだろう。市民が責任を回避するなら、AIは喜んで介入するだろう。道具はそれを扱う人の道徳観を受け継ぐ。そして、その選択を導く人々に道徳的明晰さが欠けているなら、機械は単に彼らの混乱を拡大させるだけだ。
だからこそ、アルゴクラシーへの傾倒は非常に危険なのです。真の脅威は、AIシステムが私たちを支配することではなく、支配に抵抗できる市民を生み出せなくなることです。道徳的に混乱した社会は、ほとんどあらゆるものによって支配される可能性があり、誰も完全に理解できない技術的なブラックボックスも例外ではありません。
これはAIが民主主義社会において何の役割も果たさないという意味ではない。しかし、AIが越えることのできない一線が存在する。AIは人間の価値を決定したり、正義を定義したり、道徳的な市民を育成したりはできない。歴史に刻まれた知恵に取って代わることもできない。自由な人々が自由であり続けるための内なる規律を提供することもできない。民主主義の健全性は、そのコードの洗練さや機械の能力に左右されるのではなく、市民の人格にかかっているのだ。
前進への道は、新たなアルゴリズムの中に見つかるものではない。それは、この永続的な共和国が始まった場所、すなわち市民の形成から始まる。社会は、懐古主義ではなく、歴史的な方向性を指針として取り戻さなければならない。勇気、誠実さ、義務、尊厳といった共通の人間的価値観と美徳を通して、道徳的な明晰さを再構築しなければならない。透明性、公平性、権力の制限、法の下の平等な扱いといった、政治的流行を超えた人間的原則を基盤として、制度を再構築しなければならない。そして、AIを市民としての責任を代替するものとしてではなく、人間の市民参加を強化するためのツールとして扱わなければならない。
これらすべての中心には人間が存在します。アルゴリズムであろうとなかろうと、個人の尊厳を弱める政治システムは、決して自由を維持することができません。
民主主義は新たなテクノロジーにも耐えうる。産業革命、世界大戦、経済大変動、そして情報エコシステムの劇的な変化を乗り越えてきたが、市民の崩壊には耐えられない。民主主義を永続させたいのであれば、解決策は判断をアウトソーシングすることではなく、それを取り戻すことだ。機械は審議を支援することはできるが、何が善であるかを判断できるのは人間だけだ。機械は意思決定の尺度となることはできるが、判断を下せるのは人間だけだ。機械はデータを整理することはできるが、徳を育めるのは人間だけだ。
現代の問題は、AIが私たちを支配するかどうかではありません。問題は、私たちが自分自身を統治する方法を思い出せるかどうかです。
世界的な刺激策の列車が出発しようとしています。 
現在不況に陥っている日本が、間もなく(GDPに対して)1500億ドルという巨額の財政刺激策を発表する予定である中、(ますます好戦的になっている)西側の隣国もまた、刺激策を打ち出そうとしている。
中国は、不動産市場のさらなる弱体化が金融システムの不安定化を招く恐れがあるとの懸念が高まる中、縮小が6年目に突入するゾンビ化した不動産市場を立て直すための新たな措置を検討しているとブルームバーグが報じている。 
住宅省を含む政策当局は、全国で初めて新規住宅購入者への住宅ローン補助金支給 など、様々な選択肢を検討している。 他にも、住宅ローン借り手に対する所得税還付の引き上げや、住宅取引コストの引き下げといった対策が検討されている。しかし、結局のところ、中国は需要喚起に躍起になる他の経済圏と同様に、消費者に直接小切手を配ることになるだろう。 
新規住宅ローンの金利を補助する計画は、暴落する住宅市場への参入をためらってきた住宅購入者を呼び戻すことを目的としている。ブルームバーグ・エコノミクスのエリック・チュー氏は、この措置は短期的な押し上げ効果をもたらすかもしれないが、不動産市場の需給不均衡を是正するには「おそらく大胆さが足りない」と指摘する。  「人々が借り入れを望まなければ、住宅ローンの金利引き下げはあまり効果がないかもしれない」。
住宅市場の販売と価格の低迷が深刻化する中、中国の景気刺激策は少なくとも第3四半期から議論されていると関係者は述べ、実施時期や具体的な政策は依然として不透明だと付け加えた。
モーニングスターの不動産株式アナリスト、ジェフ・チャン氏は「財政政策の緩和はこれまでの予想通りで、税金や手数料の引き下げは住宅購入活動を緩やかに押し上げるだろう」と述べた。「住宅購入者の信頼感回復には、不動産価格のさらなる安定が必要だと考えている」
中国は、家計資産から消費、雇用に至るまであらゆるものに重くのしかかってきた5年間の不動産市場の低迷を収束させようと努めてきた。つい最近まで世界最大の資産クラスであった住宅セクターは…
政府が約1年前に支援を強化した後、景気は緩やかに回復したものの、その勢いはすぐに失速しました。住宅販売は第2四半期以降減少しており、固定資産投資は先月急落しました。
不動産市場の暗い見通しと、家計の住宅ローンやその他の個人ローンの返済能力の低下が相まって、銀行の資産の質が来年悪化する可能性があると、フィッチ・レーティングスのアナリストは先月警告した。中国の銀行の不良債権は9月末に過去最高の3兆5000億元(4920億ドル)に急増した。
中国は同様の措置として、9月に家計支出の促進を目的とした消費者ローンへの利子補給を開始しました。住民はローン額に応じて上限が設けられ、1パーセントポイントの金利免除を受けることができます。
ローン限度額の引き下げや複数購入規制の緩和などこれまでの措置が景気低迷を食い止めることができなかったため、住宅不動産市場へのより強力な政策支援を求める声がここ数カ月高まっている。
中国は昨年、借入コストの引き下げを目指し、個人住宅購入者向けの全国的な住宅ローン金利の下限を撤廃した。その後、人民銀行は、管轄区域における金利の下限設定の継続の必要性について、自らが監督する地方金利自己規律制度に判断を委ねた。
中国三大都市(北京、上海、深圳)は前四半期、特に郊外地域において住宅購入要件を緩和した。しかし、10月には新築住宅と中古住宅の価格が少なくとも1年ぶりの大幅な下落を記録した。 
一方、中国の消費者は、低迷する所得見通しと景気減速による不確実性の高まりを背景に、依然として債務削減に固執している。住宅ローン残高は第2四半期と第3四半期に37兆4000億元に減少し、2023年初頭のピークから3.9%減少している。 
中国が解決策を模索する中、10月の経済指標は、特に不動産と投資において、広範な弱さを示しました。主要指標の大半は前年比5%未満の伸びにとどまり、新規住宅着工戸数は前年比で約30%減少しました。今年の成長目標は概ね達成可能と見られることから、政府は来年第1四半期まで政策支援を温存する可能性があると考えられます。 
不動産市場の混乱は続く:10月の住宅価格と不動産取引は急落した。不動産投資のGDPへの直接的な影響は減少しているものの、信頼感の低下、地方自治体の弱体化といった間接的な影響も見られる。 
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
米連邦準備理事会(FRB)のジェファーソン副議長は21日、株式市場での人工知能(AI)関連銘柄の急伸は、1990年代後半に起きたドットコム株ブーム(ITバブル)の崩壊のような事態を招かないのではないかとの見解を示した。AI関連企業が安定した基盤と収益を持っていることを理由として挙げた。クリーブランド地区連銀の会合での講演原稿で明らかにした。
ジェファーソン氏は、AI企業に対する投資熱の背景には「健全かつ堅固な」金融システムがあると指摘した。AI企業が借り入れによる資金調達への依存度が低い点を、ドットコム株ブームとの違いとして挙げた。債務による調達が限定的であれば「AIに対するセンチメントの変化が信用市場を通じて経済全般に伝わる広がりは小さくなる可能性がある」との見方を示した。
FRBがまとめた報告書によると、AIに対する投資家の評価が変化することが米金融システムや世界経済にとって顕著なリスクになると、市場関係者の約3割が回答した。ジェファーソン氏は、一部のアナリストが予測するように将来のAIインフラ投資により多くの負債が必要となるかどうかを注視していくと述べた。
AIがもたらす労働市場やインフレ、金融政策への具体的な影響については、予測するには時期尚早だと述べるにとどめた。
●その他

備忘録(2025/11/20)
●企業
●マクロ
国内金利の上昇(価格は下落)を受け、生命保険会社が保有する国内債券の含み損が拡大している。生保各社は基本的に満期保有を原則としているが、金利が急騰する中、減損損失の計上リスク回避や収益向上につなげるため、運用の巧拙が一段と問われる局面となっている。
大手生保4社が20日までに発表した決算によると、国内債券の含み損は9月末時点で11兆3000億円弱に上った。6月末時点から約1兆4500億円拡大した。含み損の金額は日本生命保険が4兆6887億円、第一生命保険が2兆8923億円、住友生命保険が1兆9957億円、明治安田生命保険が1兆7106億円だった。
国内では7月、米国など海外の長期金利上昇や国内の財政拡張観測から新発20年国債利回りが2000年以来の高水準を更新するなど、金利が急上昇した。足元でも高市早苗政権による補正予算の規模が拡大し、財政の悪化懸念からさらなる急騰を招いている。
日本生命の赤堀直樹副社長は「金利急騰時は保険契約の解約行動が見られたり、保有資産の全体の価値が落ちたりする」として「健全性指標の悪化につながりかねない」と警戒感を示した。富国生命保険の森実潤也財務企画部長は「足元の金利上昇は積極財政の影響が大きいと考えている」とした上で、「経済対策の数字が明らかになってくるタイミングで金利上昇のペースがどうなるかには非常に注目している」と述べた。
一方、金利上昇を歓迎する声も聞かれた。日生の赤堀副社長は「金利上昇は必ずしも悪い話ではなく、プラス・マイナス両面ある。金利が上がることで商品の予定利率を見直す余裕ができてくる」と述べた。住友生命の高尾延治執行役常務は「運用手段の選択肢が増えていくという点ではメリットは大きい」と語った。
生保各社は基本的に満期での保有を前提に国債などを購入している。ただ、保有債券の時価が取得価格を50%以上下回るなど回復の見込みがない場合には評価差額を損失として計上することが現状の会計基準で定められている。
日本生命は25年4-9月期に簿価ベースで約1兆5000億円の国内債を売却し、約5000億円の売却損を計上した。有価証券全体の売却損は6113億円と前年同期比で4000億円超拡大した。
第一生命では、国内上場株式の今期(26年3月期)の売却額見通しを当初比8割増の7000億円に増やす半面、最大約1兆円の国内債入れ替えることで売却損を約2000億円計上する見通しだ。これにより、年間170億円の利息配当金収入の増加につながるとみている。
保有債券の入れ替えは、損害保険会社傘下の生命保険会社にも広がる。東京海上あんしん生命保険は簿価1000億円弱を入れ替えて売却損300億円を計上する計画だ。三井住友海上あいおい生命保険も含み損の膨らんだ一部国内債を売却して600億円の損失を計上する。利回りの高い債券への入れ替えにより、あんしん生命は年間で10億円、あいおい生命は50億円程度の収益増加を見込む。
住友生命は国債ではない円建て公社債の一部で減損処理を行い、141億円の損失を計上した。一方、含み損が膨らんだ一部の国債について、簿価の水準に回復するまで保有する「保有継続」の措置を取ることを決めたとブルームバーグは10月に報じた。
住友生命の高尾執行役常務は「債券の含み損が資産運用の制約になっているということはない」と語った。明治安田の中村篤志副社長は「国内株式の含み益が債券の含み損を上回っている」と述べるとともに、健全性の観点からも問題はないとの認識を示した。
米著名空売り投資家カーソン・ブロック氏によると、今は米国の主要テクノロジー株を空売りすべき時ではない。人工知能(AI)分野にバブル懸念が高まっているにもかかわらず、このような見方を示した。
米投資会社マディ・ウォーターズ・キャピタルを率いる同氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「今の市場ではショートよりロングの方がはるかにいい」と述べ、「エヌビディアや他の大手テクノロジー銘柄を空売りしようとする投資家は、長くは生き残れないだろう」と語った。
米株市場はここ数日、テクノロジー株の上昇が行き過ぎているとの懸念から動揺した。S&P500種株価指数は10月の高値から3%以上の下落となり、ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェースの幹部は、相場がさらに下落する可能性があるとの見方を示した。
エヌビディアは19日、予想を上回る力強い売上高見通しを示すと共に、バブル懸念を退けた。これにより不安がやや和らぎ、テクノロジー株比率の高いナスダック100先物は20日に1.5%上昇した。
ブロック氏は、空売りの対象としてAIに関わりのある中小企業を注視していると述べた。
「AI関連をうたう周辺企業、見せかけだけのAI企業は多い。空売りを狙うならそうしたところだ」と語った。「ただし、エヌビディアのようなリーダー企業が右肩上がりで上昇している間は、それは非常に危険な取引になるだろう」とも述べた。
ブロック氏は、パッシブ運用の拡大が「価格発見機能を大きく損ない、市場をゆがめた」とも指摘。
「S&P500種株価指数に連動するファンドは、資金流出がない限りエヌビディア株を売らない。資金流入がある限り、どんなに高くても毎日エヌビディア株を買い続けるだろう」と語った。
英国など、財政赤字を抱え市場からの資金調達に依存している国は、トラス政権時のような混乱に再び陥るリスクが「間違いなく」あると、資産運用会社アシュモア・グループのマーク・クームズ最高経営責任者(CEO)が論じた。
クームズ氏は「現在の英国に関する疑問の一つは、われわれが再び同じことを経験しようとしているのではないかという点だ」と述べた。2022年に当時のトラス首相の新政策が引き起こした市場の混乱を指して語った。
「赤字を抱え、市場アクセスに依存している国の場合、市場の信認を失うと単なる価格調整では済まない。イールドカーブの一部で買い手のストライキが起こり得る」と語った。
英国では2022年9月、当時のトラス政権が大規模な赤字財源による減税策を含む一連の新政策を打ち出したことを受けて、国債利回りが急騰。市場の混乱は深刻で、トラス氏はその後、政策の大半を撤回し、財務相を解任。就任からわずか44日で辞任に追い込まれた。
シンガポールで開催されたブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラムで語ったクームズ氏は「いったん信認を失えば本当に深刻な問題になる。市場ショックが起きる」と警鐘を鳴らした。
これに対し、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)のマネジングディレクター兼副会長ジョン・スタジンスキ氏は異なる見解を示した。
同じフォーラムで同氏は「もうトラス事件のような事態は起きないと思う」と述べ、市場の混乱は「事前に予見されていれば起きない」と語った。
さらに「トラス政権時の混乱について言えば、要因は3分の1がトラス氏で、残りの3分の2は年金負債対応投資(LDI)だったと思う」と述べ、市場混乱は年金基金が用いた運用戦略による部分が大きかったと指摘した。
クームズ氏は債券市場について、米国の関税政策に起因した価格下落局面で、市場が世界的な債務水準の上昇に対して懸念を強めている兆しが見られたと指摘した。
関税による景気悪化懸念にもかかわらず「長期ゾーンでの買いは大きくなく、誰もが予想した通りの反応にはならなかった。これは市場が短期のポジションにとどまる方を好んでいたことを示している」と語った。
債務増大への懸念から長期債が敬遠されたとの見方だ。
英国債は先週、リーブス英財務相が次回予算案で所得税の主要税率の引き上げを見送る方針を示したことを受けて下落した。
日本国債も20日に下げを広げた。市場は高市早苗首相が21日に発表する予定の景気刺激策に備えている。
政府も企業もそろって借り入れを拡大し、世界の債務残高は約74兆ドル(約1京1641兆円)に膨らんでいる。
信用情報会社トランスユニオンの調査によると、感謝祭シーズンの買い物にクレジットカードを利用する予定の米消費者の割合が、前年と比べて上昇した。調査は10月に、3000人の消費者を対象に実施した。
感謝祭からサイバーマンデーまでの買い物の支払いにクレジットカードを使用すると答えた消費者は42%で1年前の38%から増加。
また調査では、およそ55%の消費者が今後12か月間の家計について楽観的な見方を示したが、この比率は昨年の58%から低下した。
調査によると、金銭面での最大の不安要因は依然としてインフレであり、消費者の86%がこの問題を懸念。リセッション(景気後退)の可能性や住宅価格の高騰も懸念事項として挙がった。
トランスユニオンのシニアバイスプレジデント兼グローバルリサーチ&コンサルティング責任者であるチャーリー・ワイズ氏は「高所得層は引き続き消費に積極的」と指摘。「低所得層は昨今の生活費高騰に苦しんでいる。しかし、失業率が低い中、クレジットカードや無担保ローンの延滞は抑制されているようだ」と述べた。
ブリッジウォーターの創業者レイ・ダリオ氏によると、人工知能への支出が市場でバブルを形成しているが、投資家は保有ポジションを手放す必要はないという。
「バブルだからといって売ってはいけない」とダリオ氏は木曜日、CNBCの「スクワーク・ボックス」で述べた。「しかし、今後10年間のリターンとの相関関係を見ると、その領域にいるとリターンは非常に低くなる」
ダリオ氏の発言は、AIの寵児であるNVIDIAが
予想を上回る業績とガイダンスを受け、木曜日に株価は5%以上急騰した。エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは水曜日、アナリストに対し「我々は全く異なる状況を見ている」と述べ、バブル懸念を一蹴した。
エヌビディアの株価上昇で株式市場は上昇し、ウォール街は最近の取引で株価の重荷となっていたAI取引の停滞をめぐる懸念を乗り越えたようだ。
テクノロジー株中心のナスダック総合指数
AIをめぐる継続的な期待の中、大型ハイテク株の上昇に後押しされ、2025年には株価は17%近く上昇しました。
ダリオ氏はバブルの形成を予測しているものの、それを崩壊させるには何らかの対策が必要だと述べた。億万長者の投資家である同氏は、それが金融引き締め政策となる可能性は低いものの、富裕税の引き上げによって実現する可能性があると述べた。
「バブルの領域にあるという状況は明らかだ」とダリオ氏は述べた。「しかし、まだバブルの兆候は見られない」
ダリオ氏は、市場参加者は金などの投資を通じてポートフォリオの多様化を目指すべきだと述べた。
長らく安全資産とみなされてきたこの金属は、今年史上最高値に急騰した。
ビル・アックマン氏は、金融危機後10年以上連邦政府の管理下にある住宅ローン金融の柱であるファニーメイとフレディマックの16年間の宙ぶらりん状態を最終的に解決するために何をすべきか分かっていると考えている。
パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントの創業者で億万長者の 彼は、火曜日にXで行われたプレゼンテーションで、 トランプ政権の政策目標を満たし、同時に各社を 民間市場の規律に回復させる3段階の提案を概説した。この計画は、ホワイトハウスが住宅価格の引き下げに苦慮している中で発表された。その中には、50年住宅ローンの導入という突飛な構想も含まれていた。 
2つの政府支援機関(GSE)は、アメリカの12兆ドル規模の住宅ローン市場の約 半分を支えています 。GSEは直接融資を行うのではなく、銀行や金融機関から住宅ローンを購入し、それを証券化することで、投資家の損失を保証しています。このシステムは、景気循環を通じて信用の流れを維持するのに役立っています。 
パーシングは両社の株式を合わせて2億1000万株以上を保有する最大の普通株主である。 
アックマン氏は、  2008年に正式に導入された金融 危機後の両社に対する政府の管理は 一時的なものだったが、当初の目的を超えて何年も長引いていると長々と主張してき た。 
彼は、GSE を規制する財務省と連邦住宅金融局のための 「すぐに実行可能な」ロードマップとして、次のことを提案しています。
ステップ 1: 救済措置が返済されたことを確認します。
ファニーメイとフレディマックは、危機の間、財務省から1870億ドルの支援を受けた。アックマン氏は、GSEが四半期ごとの「純資産スイープ」を通じて連邦政府に「数千億ドル」の利益を送金しており、これは当初の救済額をはるかに上回る額だと指摘した。アックマン氏は、財務省とFHFAに対し、債務履行の正式な宣言を促した。これは、金融危機の時代からの象徴的な脱却となるだろう。
ステップ 2: 納税者を正式な所有者にする。
2008年の救済措置の一環として、財務省は各社の普通株式の最大79.9%を名目価格で買い取るワラントを取得した。アックマン氏によると、これらのワラントを行使することで、納税者の​​暗黙の経済的利害関係が正式な支配権へと転換されることになる。これは、米国政府が2つの上場金融機関の過半数を保有するという異例の構造となる。
ステップ 3: GSE を株式市場に戻す。
ファニーメイとフレディマックは、管理下に入った後、ニューヨーク証券取引所から上場廃止となった。アックマン氏は、両社は現在上場要件を満たしており、再上場によって投資家の流動性が回復し、株主構成が拡大し、資本増強も促進されると述べた。納税者の株式保有率が80%に近づくことで、株式時価総額は3,000億ドルを超える可能性があるとアックマン氏は主張した。
この提案は、米国住宅金融の将来をめぐるより広範な議論と重なる。住宅金融は政治的にデリケートな分野であり、歴代政権下でも改革が実現していない。民営化支持派は、GSEは市場規律と十分な資本に基づいて運営されるべきであり、納税者は将来の景気後退から保護されるべきだと主張する。一方、批判派は、時期尚早な資金の放出や不十分な安全策は、2008年の金融危機の一因となったようなリスクテイクを助長する可能性があると警告している。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
本日のマグニフィセント7はまちまちの動きとなる中、アルファベット<GOOG><GOOGL>の上昇は目立っている。前日に傘下のグーグルがAIモデル「ジェミニ」のアップデート版、「ジェミニ3」を発表し、経営陣は推論力とコーディング能力が大きく飛躍したと強調した。
ジェミニ3を高く評価する声が相次ぎ、変化の激しいAI業界で競争力を維持できるとの期待が高まった。ジェミニ3は性能面で高評価が広がっており、これに先立ち今年発表されたオープンAIの「GPT-5」モデルが賛否両論を呼んだのとは対照的な反応。
アナリストは、「絶賛レビューが続出しており、ジェミニ3はGPT-5が目指していた姿なのか」と指摘。「検索エンゲージメントや収益化への効果に加え、グーグルはリアルタイムのウェブ索引インデックス化と高度なモデル訓練を組み合わせており、これが大きな競争優位になると見ている」と述べた。
アルファベットは年初来で57%上昇。値上がり率はマグニフィセント7の中で首位となっているほか、ナスダック100指数の上昇率の約3倍となっている。
英国の住宅売り出し価格は11月に予想以上に下落し、前月比1.8%減となった。これは2012年以来、この時期としては最大の価格下落となった。
興味深いことに、ライトムーブは英国政府の予算不安に加え、「売り出し中の住宅数が過去10年間で最多」となり、その結果として価格が下落する圧力が主に高級住宅層に影響していると指摘した。
ナイト・フランクの英国住宅調査責任者トム・ビル氏は「予算発表前の数カ月にわたる投機は、経済の他の部分と同様、住宅価格にも打撃を与えている」と述べた。
ライトムーブの不動産専門家、コリーン・バブコック氏は次のようにコメントした。
「クリスマスの時期に見られる通常の閑散期が今年は早く到来したようで、引っ越しを熱望する売主は、競争力のある価格で買主を誘致するために特に努力しなければならない…これは買主市場だ。」
しかし、この弱さは全国的なものではなく、ロンドン(特に高級住宅地)で下落が目立った。
ロンドンを除くイングランド全地域で、9月までの1年間の住宅価格が前年比で上昇した。ONSによると、スコットランドでは5.3%、ウェールズでは2.7%の上昇となった。
不動産税の変更が噂されており、50万ポンド以上の住宅の売却に対する新税の導入、印紙税の廃止、200万ポンド以上の住宅に対する豪邸税の導入などが超高級住宅市場に劇的な影響を与えており、ブルームバーグは、富裕層が多数を占めるケンジントン&チェルシー(K&C)の住宅価格が前年比11.3%下落し、ウェストミンスターでも14.4%下落したと報じ ている。
2つの行政区を合わせた住宅価格は平均で100万ポンドを超えている。
リーブス財務大臣は、労働党が「労働者」と呼ぶ人々への増税なしで国家財政の穴を埋めるよう圧力を受けている。
一連の政策転換と借入コストの上昇により、彼女の財政目標にはすでに数十億ドル足りない状況となっている。
新たな固定資産税はロンドンの不動産に不均衡な影響を与えるだろう。不動産会社ナイト・フランクの最近の報告書によると、200万ポンド以上の不動産の約60%がロンドンに集中している。
そして、そのギャップを埋めるアップグレード購入者のことは忘れてください...
「首都では、平均的な収入の夫婦が頭金を貯めるのに今や約13年かかる。これは偶然ではなく、歴代の政府が十分な住宅を建てることができなかったためだ」と、さらなる開発を求める団体「ブリテン・リメイド」のCEO、サム・リチャーズ氏は語った。
需要と供給の不均衡により、買い手は時間と選択という二重の贅沢を得ることができ、値下げを要求し、値下げを得る勇気を持つようになっている。
マーティン・ジェラード不動産の会長サイモン・ジェラード氏は、ロンドンの住宅価格下落は政府の責任だとし、高額不動産への予算税はそこに住む家族に「圧倒的な打撃を与える」だろうと警告した。
「首都で家族を持つのはほぼ不可能であり、この状況は今後何年も続くことになるだろう」と彼は付け加えた。
テレビ司会者のカースティ・オールソップ氏を含む住宅市場の専門家は、 印紙税の変更の可能性について「人々はパニックに陥っている」と述べ 、予算発表まで「じっと待っている」と語った。
しかし、超高級贅沢品市場におけるこうした劇的な価格下落が、労働党政権の抑圧から逃れようとする資本にとって、炭鉱のカナリアのような大きな兆候ではないと主張するのは難しい。
●その他

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