2025年3月1日土曜日

備忘録(25/3)

備忘録(2025/3/10
●海外企業決算
●海外企業
自動車メーカーのフォルクスワーゲンとステランティス
北米で生産された自社の車両は、ドナルド・トランプ大統領が新たに導入した25%の関税から免除されることを確認したが、BMW
欧州の自動車メーカーが新たな貿易ルールに取り組む中、関税に直面することになるだろうと述べている。
新たにホワイトハウスに復帰したトランプ大統領は、カナダ、メキシコ、EUを含む米国の主要貿易相手国に関税を課すと長らく警告してきた。先週、メキシコ、カナダ、中国からの製品に対する新たな関税が発効した。
欧州では、自動車と機械が欧州連合(EU)の対米輸出品目として最大であることから、輸入関税の脅威に警鐘が鳴らされている。2023年、EUは米国との機械・自動車貿易黒字が1020億ユーロ(1106億ドル)に達し、この分野は対米輸出の41%を占めた。
しかし、この地域の自動車大手の中には、少なくとも一時的には新関税を回避できる企業もあるかもしれない。先週、ホワイトハウスは、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)( 3カ国間の貿易協定)に準拠した自動車を製造する自動車メーカーに対し、 1か月の関税延期を認めた。同協定の規定では、自動車部品の少なくとも75%が北米産であれば、カナダとメキシコからの輸入品に課せられる新関税を免除される。
「北米で組み立てられた当社のVWブランド車はUSMCAの原産地規則を満たしており、25%の関税が免除されている」とフォルクスワーゲンの広報担当者は電子メールによる声明で述べた。
「世界的な自動車メーカーとして、当社は北米の動向を非常に注意深く監視しており、米国、カナダ、メキシコ、欧州連合に発表された関税の結果として自動車業界と当社に及ぼす可能性のある影響を評価しています。」
フォルクスワーゲンは、主力ブランドの他に、シュコダ、アウディ、ベントレーなど、さまざまな主要自動車ブランドを所有しています。
「労働者、企業、消費者の経済的機会を維持しながら、米国の産業を支援する解決策を見つけるために政策立案者と協力する用意がある」と、この自動車大手はCNBCに語った。
一方、ジープやダッジの自動車で知られるステランティスは、金曜日の声明でトランプ大統領がUSMCAの免除を認めたことに感謝し、米国事業の拡大を約束した。同社は、いわゆる相互関税が4月2日に発効する前に、 1か月間の関税免除を与えられた大手企業の1つである。
「当社は、より多くのアメリカ車を生産し、永続的なアメリカの雇用を創出するという大統領の目標を共有しています」と同社は当時述べた。「大統領と彼のチームと協力することを楽しみにしています。」
メキシコに複数の工場を持つステランティスの株価は、トランプ大統領が先週、自動車メーカーへの免除を発表したことを受けて急騰した。ロンドン市場では月曜午後、株価が2%以上上昇した。
「不安定で複雑な」状況
一方、ドイツの自動車大手BMWは、USMCAの規制が存続すれば課税対象となると述べた。
「北米における輸入関税導入に関する現状は非常に不安定かつ複雑だ」とBMWは電子メールによる声明で述べた。「輸入関税とUSMCA規則の遵守との関連は最新の発表だ。この規制が引き続き有効であれば、BMWグループは影響を受ける企業の一つとなるだろう」
「当社の立場は変わりません。BMWグループが常に指針としてきた自由貿易は、世界中で極めて重要です」と同社は付け加えた。「自由貿易は成長と進歩の最も重要な原動力の一つです。一方、関税は自由貿易を妨げ、イノベーションを遅らせ、負のスパイラルを引き起こします。結局、関税は顧客に不利益をもたらし、製品の価格を高くし、革新性を低下させます。」
UBSのアナリストは金曜日の顧客向けメモで、BMWの米国での販売台数の10%が、主に同社の2シリーズと3シリーズのモデルで、かなり低価格でメキシコから輸入されたと推定した。
「BMWの米国向けメキシコからの輸入車は、すでに関税の対象となっていたことは強調しておく価値がある」と彼らは述べた。「他の条件が同じであれば、追加関税はEBITに約4億ユーロ(値上げ前)の影響をもたらすはずで、グループ全体から見れば比較的小さい(4%)。BMWや他のドイツOEMにとってより大きな潜在的脅威は、4月2日に期限を迎えるEU製自動車への潜在的な関税だ。」
トランプ大統領がカナダとメキシコ(世界の自動車メーカーの多くが生産工場を置いている)を標的とした関税の導入と撤回を発表したことで、同地域の自動車株の取引が不安定になっている。先月、大統領が関税の30日間延期を発表すると、世界の市場で自動車株の大規模な売りが起こり、株価は急落した。
●日本企業
●先進国政治動向
ドナルド・トランプ米大統領に反対する人たちは、彼がもたらしている大混乱に批判の声を上げ、共和党の一部も不安を募らせている。そんな中、同大統領は自身を批判する人たちに恐れをなすどころか、勇気づけられており、混乱に拍車をかけることを決意しているように見える。
ある特定の観点から見れば、世界が崩壊しつつあるように感じられるかもしれない。米連邦政府の官僚機構は解体されつつあり、大西洋をまたぐ同盟関係は緊張状態にある。また、関税の脅威が一進一退する中で株式市場は揺れ動いている。1週間足らずのうちに政府機関の閉鎖が起きる可能性もある。しかし、非常に多くの機関に激震をもたらしているにもかかわらず、トランプ氏の人気がこれまでのところわずかしか傷ついていないのは、同氏の支配的立場の証しと言える。そして、共和党も民主党も同様に結果がどうなるか身構えているため、異常で緊迫した政治的ダイナミズムが生み出されている。
「人々は行動を好む。彼(トランプ氏)が行動していること、そしてその勢い、スピードを高く評価している」。ホワイトハウスに近い共和党ロビイストのデービッド・アーバン氏はこう語る。アーバン氏は、ペンシルベニア州西部にある故郷の友人や、米陸軍士官学校時代の級友たちは皆、彼らが目の当たりにしているものを気に入っていると語った。それは、政治的な勇気を持ち、長年にわたる問題についに対処している大統領の姿だ。「短期的な混乱はあるが、米国民は混乱を見たがっていた。だからトランプ氏を大統領にしたのだ。彼らは余りにも非効率で無力な政府にうんざりしている」
トランプ氏が4日、議会の上下両院合同会議で演説し、米国民に「信じられないような未来に備えよ。米国の黄金時代は始まったばかりなのだから」と熱心に説いたとき、そのダイナミズムは明らかになった。2時間近い演説の間ずっと下院の議場の共和党側からは騒がしい歓声が沸き起こったのに対し、反対側に座っていた民主党議員たちは不機嫌な様子で、ほとんど歓声を上げようとしなかった。
トランプ氏の支持者たちにとって、この演説は同氏の決断力と強さをはっきりと示した勝利だった。「それは権力の絶頂にある大統領が、すべてがうまくいく、すべて良い結果になる。私を信じてほしいという自信がにじみ出た演説だった」とアーバン氏は語った。同氏によると、米国民は今起きている良いことに熱狂している。それは国境を越えてくる人の大幅な減少や、外資による大規模投資の発表といったようなことだという。
トランプ反対派は、彼への反感が強まっており、共和党が今後の選挙でその代償を払うことになる可能性があると考えている。元共和党下院議員のチャーリー・デント氏は「無秩序と混乱が人々を本当に困惑させている」と話す。同氏は2018年までペンシルベニア州の激戦区を代表する議員で、昨年11月の大統領選では民主党のカマラ・ハリス候補を支持した。デント氏はトランプ氏について「自らがやっていることや進めようとしていることすべてを加速させ、自身の意思決定への政治的影響を考慮していないように見える」と指摘。とりわけ、トランプ氏が何十年にもわたって維持されてきた地政学的秩序を壊そうとしていることと、権力分立を踏みにじろうとしていることにデント氏は動揺していると言う。
世論調査によると、有権者の新政権に対する評価はまあまあだ。これはトランプ氏に世論を二分させる性質があることや、国の分断が固定化していることを反映している。任期開始時点のトランプ氏の支持率は他の近代の大統領ほど高くなく、通常は政党に関係なく支持が集まるハネムーン期間の恩恵をほとんど受けていない。2021年1月6日の議会襲撃事件の暴徒らに恩赦を与えるなど、彼が講じた個々の措置の多くは不人気だ。最近の幾つかの調査では、有権者はトランプ氏が経済に十分焦点を当てていないとみていることが分かった。それでも、彼がもたらしている混乱は支持率の急落につながっていない。政治アナリストのネート・シルバー氏によると、先ごろ発表された世論調査の平均からは、トランプ氏の支持率と不支持率が48%ずつで拮抗(きっこう)していることが分かった。多くの有権者は今後の行方を見守ろうとしているようだ。
一部の共和党関係者は有権者の不満の兆候について、公私を問わず不安をあらわにしている。連邦議会議員の電話は何週間にもわたって鳴りやまない状態で、議事堂の電話システムで対処できないほどになっている。苦悩に満ちた選挙区民は、リベラル派団体に促され、議員が地元で開催する集会に大挙して訪れるようになっている。このため、共和党指導部は対面のタウンホール集会を開催しないよう議員らに助言した。マイク・ジョンソン下院議長は記者団に対し、「彼らはカメラに映りたいがために、それを行っている。今は彼らの術中にはまらないようにすることが賢明だと思う」と語った。
多くの共和党員は、政府職員の解雇と、トランプ氏が関税で脅しをかけ、その後に修正を繰り返していることを受けて、米景気の悪化が続くことを恐れている。7日発表された2月の米雇用統計は落ち着いた内容ではあったが、非農業部門就業者数が予想をやや下回り、失業率はわずかに上昇した。インフレ率は上昇し、消費者の景気信頼感は低下している。米政府当局者らはこうした状況について、米経済のより良い未来に向けた短期的な調整だと指摘。関税や規制緩和、エネルギー生産などによって企業の活動が促進され、米民間部門の雇用が拡大するとの見方を示している。
トランプ氏が要求している矛盾の多い法案への対応に米議会が苦慮する中で、今後の同氏の議会対応は一層難しくなるとみられる。トランプ氏は、自身が主導して2017年に導入した各種の減税措置の恒久化に加え、チップや社会保障給付金への課税廃止などの新たな減税策も求めている。その一方で同氏は、メディケア(高齢者・障害者向け公的医療保険制度)やメディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)、社会保障などの支出は削減できないと主張している。専門家によると、トランプ氏が早期に実現すると約束している予算の均衡化は、共和党議員が誰一人支持していない大規模な新規増税がない限り実現不可能であり、財政赤字と政府債務が増え続けるとみられる。民主党は、国民が頼りにしているさまざまなプログラムの予算削減が避けられないと非難している。また、議会でつなぎ予算が可決されなければ、14日に政府機関が閉鎖される恐れがあるが、議会幹部らの協議は行き詰まっている。
トランプ氏が誇らしげに主張する大規模な変革の多くが、見かけ倒しであることは確かだ。不法移民の国外追放のペースは、ジョー・バイデン前大統領の政権下と比べて大きく加速していない。政府効率化省(DOGE)が達成したと主張する財政支出の削減はしばしば幻想に終わっており、連邦政府予算の丸めた数字の誤差程度にとどまっている。批判的な人の中には、トランプ政権が本質的には劇場型なのではないかと考えをめぐらす人もいる。有権者が求める大規模な変革を進めているとの印象を与えるだけで、実際には変化は限定的だと。トランプ氏は、何らかの一時的な苦痛があってもそれは前進の代償に過ぎないとの認識を一般市民に植え付けるために、大統領としての強い公権力を行使してきた。
4日のトランプ氏の演説に対する民主党の反応は、同党の混乱をよく表していた。アル・グリーン下院議員(テキサス州)は、トランプ氏にやじを飛ばすために立ち上がり、つえを振りながら、大統領に「メディケイドを削減する権限はない」と叫んで、議場から退出させられた。一部の民主党議員は、明らかに女性への支持を示すメッセージとしてピンク色の服を着用していた。また、「Musk Steals(マスクは盗む)」「Protect Veterans(退役軍人を守れ)」といったスローガンが書かれた、オークションで使われるような黒色のパドルを振る人たちもいた。出席を拒否したり、演説が長引くにつれて退席したりする人が複数出て、共和党が議場を支配する空気は少しずつ強まる一方だった。
その後、エリッサ・スロトキン上院議員(ミシガン州)が民主党としての公式な反対演説を行い、米国旗を背に良識ある中道主義を訴えた。民主党の支持基盤の多くはトランプ氏の行動に激怒している。しかし民主党はこのような混乱した状況とは大いに異なる従来の正常なやり方が自党に求められているのか、それともアブノーマルな状況にあってはそのような手段で応じることが求められているのか、明らかに決めかねている。
「このような状況は今までに見たことがない。民主党の行動は明らかに不十分だ」とタラ・セトマイヤー氏は語った。同氏は、トランプ氏を巡って離党した元共和党関係者で、現在はスーパーPAC(特別政治活動委員会)の運営者だ。同氏のスーパーPACは、トランプ氏が退役軍人を裏切り、米国の敵の側についていると批判する広告を出している。
おそらく、4日夜のトランプ氏の演説が始まる前の、ほとんど気付かれなかったある出来事ほど、現在の政治状況をよく捉えた瞬間はないだろう。メラニー・スタンスベリー下院議員(民主、ニューメキシコ州)は、トランプ氏が議場に入る際に中央の通路に無言で立ち、「これは正常ではない(This is NOT Normal.)」と書かれた紙を持って深刻な表情を浮かべていた。
トランプ氏がスタンスベリー氏の横を通り過ぎる際、スタンスベリー氏は、通路の反対側の席で熱狂する共和党議員らに取り囲まれた。その共和党議員の中の一人、ランス・グーデン下院議員(テキサス州)が大統領の背後で手を伸ばし、スタンスベリー氏の手からその紙を奪い取って、放り投げた。紙が床に舞い落ちると、グーデン氏は拍手を再開した。トランプは知らん顔で、そのまま歩いていった。
ドナルド・トランプ米大統領は9日、米国経済が今年縮小してリセッション(景気後退)入りするか問われた際、その可能性を排除しなかった。そのうえで自身の包括的な経済政策が短期的な混乱を引き起こすことは考えられるとし、それが将来の繁栄につながるだろうと述べた。
米FOXニュースの「サンデー・モーニング・フューチャーズ」に出演したトランプ氏は、年内のリセッション入りを想定しているか聞かれ、「そういったことを予想するのは嫌いだ。われわれが行っていることは非常に大きいので、移行期間がある」と答えた。
トランプ政権は新たな関税や移民制限、規制緩和、そして政府雇用と税金の削減に焦点を当てた政策を打ち出し、経済の抜本的な改革を推進。また多くの連邦プログラムで、支出削減を目指している。多くの企業が同氏の幅広い政策を歓迎している一方で、メキシコやカナダなどの主要貿易相手国に対する関税を巡っては不確実性が生じ、市場に動揺も見られる。トランプ氏はここ数カ月だけでも、関税の導入提案と延期を何度も繰り返している。
またトランプ氏の政策は、力強い成長と低失業率を維持してきた米経済の回復力を試しているものの、消費支出の落ち込みやインフレへの懸念が企業に重くのしかかるなど、緊張の初期の兆候が見られる。
米株式市場は2024年終盤には、トランプ氏の政策への投資家の期待感を背景に上昇したが、ここ数週間は低迷。ダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数はいずれも7日の終値が1月20日のトランプ氏就任時の水準を下回った。
トランプ氏は9日に放送されたインタビューで、関税についてより明確な説明を求める企業を安心させられることができるか尋ねられた際に返事をしぶり、「そう思う」と回答。「関税は時間とともに上がる可能性がある」と語った。
さらに同氏は1期目には株式市場のパフォーマンスを頻繁に自慢していたが、2期目の政策では株式市場はあまり重視しない姿勢を示し、「強い国を作ることがわたしの仕事だ。株式市場を見ているわけにはいかない。中国を見てほしい、彼らは100年の視点を持っている」と述べた。
スコット・ベッセント財務長官も、経済移行期間中に米経済が厳しい局面を迎える可能性があると発言。CNBCの「スクワーク・ボックス」に出演した同氏は、「政府支出に依存するようになってしまい、解毒期間が必要になる」と述べた。
一方でハワード・ラトニック商務長官は9日、NBCニュースの「ミート・ザ・プレス」に出演し、「米国でリセッションは起こらない」と発言して経済縮小の可能性を否定した。
J・D・バンス氏は、従来の米国の副大統領像とは異なる存在だ。
ワシントンの裏側で暗躍するマキャベリ的な権謀家、ディック・チェイニー氏のようでもなければ、ジョージ・H・W・ブッシュ氏やジョー・バイデン氏のように外交面で信頼できるタイプでもない。
若々しいバンス氏はむしろ、上司であるトランプ大統領がSNSで発する過激なメッセージを体現しているかのようだ。先月末に行われたホワイトハウスでの会談ではウクライナのゼレンスキー大統領を挑発し、外交危機を招いた。安全保障会議が開かれたドイツ・ミュンヘンへの旅を楽しみ欧州の同盟国を侮辱した。さらにウクライナには「30~40年も戦争をしていないどこかの国」が提示するものよりも優れた安全の保証が必要だと言い放ち、英国で新聞の1面を飾った。バンス氏は後になって、英国やフランスに言及したと解釈するのは「極めて不誠実だ」と釈明したが、実際にウクライナへの「平和維持部隊」に名乗りをあげたのは、英仏だけだった。
バンス氏は、共和党内でどちらに風が吹いているかを心得ている。そのため2016年当時はトランプ氏を「米国のヒトラーになる可能性がある」と疑っていたとまで伝えられながらも、その後はトランプ氏への軽蔑を捨てた。トップを崇拝する党内で、副大統領は大統領の「特に熱心な崇拝者」のひとりとなったわけだ。
一方で、バンス氏は興味深い人物でもある。アパラチア地方の厳しい環境で育ち、イエール大学法科大学院を卒業し、非常に頭が切れる。そのため、同氏の政治的立ち位置は打算によるものと受け取られやすい。短期間だがオハイオ州の上院議員を務め、従来型のメディアやワシントンのエリート層を嫌悪している点はトランプ氏のポピュリズムと親和性がある。海兵隊出身でもあるため、対テロ戦争での同盟国の貢献について詳しいはずだ。バンス氏はシリコンバレーでも財をなし、急速に右傾化し2期目のトランプ氏を支持するIT業界の大物らとも親しい。
バンス氏の名を知らしめたのは、自身の回顧録「ヒルビリー・エレジー」だった。幼少期を過ごしたオハイオ州やケンタッキー州の貧困地帯で、産業の空洞化が貧困や薬物依存を広げ、グローバル化した自由貿易政策への政治的反発を引き起こした過程を語ったこの16年の著書は、トランプ氏の第1次政権の支持層を理解するための手引のようでもあった。
そうした経歴を考えれば、バンス氏が「米国第一」を掲げる経済政策の最も雄弁な論客となったのも不思議ではない。40歳の同氏はトランプ氏の後継者になり得るが、先日のFOXニュースのインタビューでトランプ氏は面白おかしくそうした考えを否定した。
バンス氏は、欧州の多くの人々が軽蔑する米国の特徴を象徴しているといえる。それはウクライナに中核となる国益はないとみなす孤立主義的な姿勢だ。無遠慮で自信満々な態度も海外の人々をいら立たせる。ドイツの右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」をはじめとする欧州の極右勢力への支持もそうだ。ホワイトハウスでゼレンスキー氏と衝突する前日には、言論の自由をめぐり英国のスターマー首相を非難したが、スターマー氏は明確に反論してみせた。
若く、野心的、かつイデオロギー的で、既存の知識階級へ不満を持つバンス氏から想起される副大統領がいる――リチャード・ニクソン氏だ。
1952年にドワイト・アイゼンハワー氏の副大統領候補に選ばれたとき、ニクソン氏の上院議員としての在任期間はバンス氏と同じく短いものだった。そしてバンス氏と同様、新たなタイプの共和党のイデオロギー支持者でもあった。バンス氏がリベラルな「woke(ウォーク、意識の高い人たち)」を批判するように、ニクソン氏は米国内の共産主義者と思われる人々を追い詰めた。そしてバンス氏同様、ニクソン氏も「もっと上」を狙っていた。強い野心と政治の闇への傾倒は、経験豊富なアイゼンハワー氏との間に軋轢(あつれき)をもたらすこともあったが、これはトランプ氏とバンス氏の関係にも起こりえる。
ニクソン氏は8年間の副大統領時代で国際関係を急速に学んだ。68年の大統領選で勝利して以降の成功はそのときの経験による部分が大きい。バンス氏がニクソン氏のように世界を飛び回ることはなさそうなのは、同氏の政治的利益が国内にあるからだ。
バンス氏を侮ってはいけない。同氏は短期間で高みに駆け上がった。しかし傲慢(ごうまん)さによって「太陽に近づきすぎる」危険はないだろうか。
ドナルド・トランプ大統領のホワイトハウス復帰に伴う世界市場の不安定化と地政学的な混乱により、米国経済が景気後退に向かう可能性があるとの警告が出ているが、経済学者らは、景気後退はまだ予想されていないと述べている。
「米国の景気後退について話すことはないと思う。ドナルド・トランプ氏にもかかわらず、米国経済は回復力があると言える」とベレンベルク銀行のチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は月曜日、 CNBC
「スクワーク・ボックス・ヨーロッパ」で語った。
シュミーディング氏はトランプ大統領を「混沌と混乱の代理人」と呼び、「関税に関する大統領のジグザグな対応は、彼が自らの関税政策の潜在的な結果をほとんど理解していないことを示している」と述べた。
それでも、「米国の消費者はお金を持っており、おそらく使うだろう。米国の労働市場は比較的堅調に推移しており、エネルギー価格が若干下がり、おそらく減税や規制緩和も行われることから、差し迫った景気後退のリスクはないと思う」とシュミーディング氏は言う。
「しかし長期的にはますます明らかになっているのは、トランプ大統領が米国の成長トレンド、つまり2026年以降の成長を損なっているということだ。また、トランプ大統領は米国消費者の価格上昇を支持しており、それは私の見解では、トランプ大統領が大統領となり、混乱と混沌を巻き起こしている限り、FR​​B(連邦準備制度理事会)が金利を引き下げる理由はないことを意味する」と同氏は指摘した。
CNBCはホワイトハウスに返答を求めて連絡を取り、返答を待っている。
トランプ大統領が中国、メキシコ、カナダからの製品に厳しい輸入関税を課すと発表したことで、世界的な貿易戦争を再開させる意図があるのではないかという懸念から、ここ数週間、国際株式市場は大きく動揺している。
大統領が先週金曜日、米国の近隣諸国および最も近い貿易相手国に対する一部の関税を4月2日まで猶予し延期すると発表したため、混乱と不確実性が続いている。
貿易と国際外交に対するトランプ大統領の型破りなアプローチは市場に不評を招き、米国株価指数は乱高下した。一方、ストラテジストらは、トランプ2.0時代においても市場のネガティブな感情は続くだろうと警告した。米国株先物は月曜朝早くに下落し、新しい取引週の始まりに米国市場が再び不安定な展開になることを示唆した。
ビジネスリーダーや経済学者は、関税により米国にさらなるインフレ圧力がかかり、輸入品の価格上昇の矢面に消費者が立たされる可能性が高いと懸念を表明している。
また、消費者が財布の紐を締め、経済の予測不能性と高インフレと高失業率を特徴とする潜在的な「スタグフレーション」の時期を耐え抜くため、投資、雇用、成長が悪化する恐れがあると警告している。
そうなれば、FRBは景気刺激策として現在の政策金利4.25%~4.5%から引き下げるのではなく、金利を据え置くよう圧力を受けることになる。金利が下がれば支出が増え、インフレが進む可能性がある。
連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は金曜日、FRBは金利を再度引き上げる前にトランプ大統領の積極的な政策措置がどのように展開するかを見守ることができると述べた。
「移行期」
2月に消費者信頼感が打撃を受けたことを示す最近の経済データは、トランプ政権にとって考えさせられるものとなるだろう。アトランタ連邦準備銀行の GDPナウ 追跡システムも先週、米国の国内総生産が1月から3月にかけて2.4%減少する可能性があると示唆した。テクニカルリセッションとは、少なくとも2四半期連続でマイナス成長を記録した場合と定義される。
先週の雇用統計は、米国の労働市場が依然として拡大しているものの、弱さの兆候も現れ始めていることを示した。非農業部門雇用者数統計によると、2月の雇用の伸びは予想よりも弱く、雇用の伸びは依然として安定しているが、このデータはトランプ大統領が連邦政府職員の削減に取り組んでいる中で発表された。
労働省労働統計局が金曜日に発表した統計によると、非農業部門雇用者数は季節調整済みで前月比15万1000人増加し、1月の下方修正後の12万5000人増を上回ったが、ダウ・ジョーンズのコンセンサス予想17万人を下回った。失業率はわずかに上昇し4.1%となった。
TSロンバードの米国担当チーフエコノミスト、スティーブン・ブリッツ氏は、最新の雇用統計は「経済が引き続き成長していることを示している」とし、「トランプ大統領の一連の政策によって生じた景気後退リスクの増大」を示唆するものではないと述べた。
しかし、同氏は金曜日のメモで「トランプ大統領の行動の総計は、設備投資の崩壊を含め、経済を何らかの形で歪める可能性がある」と述べた。
「大統領は就任1年目に景気後退を受け入れることで知られていることを心に留めておいてほしい。それは免罪符であり、彼らは前大統領のせいにして景気回復の功績を自分のものにする。私の基本シナリオは依然として成長とFRBの現状維持だ。私の基本的な懸念は資本市場側にある。貿易が崩壊すれば経済を支える資本流入が崩壊する」とブリッツ氏は語った。
トランプ大統領は今年の景気後退の可能性を否定しなかったが、今週末、経済は「移行期」にあると主張した。
フォックスニュースチャンネルの「サンデー・モーニング・フューチャーズ」でアトランタ連銀が経済収縮を警告したことについて質問されたトランプ大統領は、自身の関税計画が米国の成長に影響を及ぼす可能性があることを認めたようだ。
「そのようなことを予測するのは嫌だ」と、日曜放送のインタビューで景気後退の警告が懸念事項かと問われると、同氏は答えた。
「我々がやっていることは非常に大きなことなので、移行期間がある。我々はアメリカに富を戻している。これは大きなことだ」とホワイトハウスのリーダーは付け加えた。「少し時間がかかる。少し時間がかかる」
JPモルガンの米国市場情報部門は先週、関税の予測不可能な性質から、米国経済は「新たな不確実性の時代」に入りつつあると指摘した。アナリストらは、市場のボラティリティが高まり、米国の成長が「急落」する可能性があると予想し、米国株に対して「弱気」の姿勢を取っていると述べた。
「政策や貿易の不確実性が家計と企業の支出に与えた悪影響はすでに確認されているが、今後1か月でさらに大きな影響が出る可能性が高い。失業率、レイオフ、WARN通知などに注意が必要だ。失業率が急上昇し始めら、市場は再び『景気後退シナリオ』に逆戻りする可能性が高い」とJPモルガンは指摘した。
米国の景気後退は同銀行の基本シナリオではなかったが、JPモルガンのアナリストは「関税の期間が未定であることと、貿易戦争で新たな関税が加速する可能性があることから、米国のGDP成長率の予測が引き下げられると株価は下落するだろう」と警告した。
「この緊張の高まりに終止符が打たれる見込みがないことを考えると、この規模の関税はカナダとメキシコ両国を景気後退に追い込むと予想される。米国のGDP成長予想は​​急落し、利益修正は大幅に下方修正され、年末予想の再考を余儀なくされるだろう。これを踏まえ、当社は見通しを戦術的弱気に変更する」と彼らは指摘した。
ドイツの緑の党は、次期首相就任が有力なメルツ・キリスト教民主同盟(CDU)党首が打ち出した数千億ユーロに及ぶ防衛・インフラ支出パッケージを支持しないと表明した。メルツ氏の看板政策が廃案に追い込まれる恐れが出てきた。
先月の選挙で勝利し、連立交渉を進めるメルツ氏だが、この政策の成立には借り入れ制限を緩和する憲法改正を伴うため議員の3分の2の賛成票が必要で、緑の党の支持も欠かせない。トランプ米大統領が欧州安全保障への関与を後退させる中で、5000億ユーロ(約80兆円)に上るメルツ氏の支出計画は欧州の防衛を強化する大きな一歩になるとして、北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国から歓迎された。
緑の党の指導者たちは、次期政権の連立協議で蚊帳の外に置かれ、気候変動対策など同党の優先政策が無視されているとして、メルツ氏らを強く非難。同党のブラントナー共同党首は、新政府の「選挙の贈り物」の配給を助ける気はないと述べた。
ただ、さらなる協議の余地は残し、独自の法案を提出する意向を示した。メルツ氏陣営および、連立相手として交渉が進む社会民主党(SPD)は10日遅く、ベルリンで緑の党の議員らと会合を開く。
事情に詳しい関係者によると、緑の党に対するメルツ氏の扱いを巡り、同氏陣営の内部からも批判的な声がある。同氏は長年敵意を抱く緑の党に対して、感情的な知性を欠いていると関係者の1人は述べた。
緑の党の強硬な拒否にメルツ氏陣営は不意を突かれたが、土壇場で合意できる余地はまだあるとみていると、CDU当局者は発言。SPD当局者も、週内の合意は可能だろうとの見方を示し、緑の党は政治的な力を行使して要求を引き上げていると指摘した。関係者は全員、交渉は非公開で進んでいるとして匿名を要請した。
クキース財務相はブリュッセルで記者団に対し、「このような状況で、懸念や要求があるのは完全に普通だ」と述べ、「NATOの欧州の柱として防衛努力を強化し、インフラ支出を増やさなければならないという2つの目標で、最終的には合意が得られると自分は楽観している」と続けた。
緑の党が反対を表明した後、ドイツ国債は上げを広げ、10年物利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.77%を付けたが、引けまでに上げを縮小した。ユーロもドルに対して一時下落したが、前日終値付近で推移している。
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
米ニューヨーク・マンハッタンのコンドミニアム(分譲マンション)を所有する費用は昨年、さらに上がった。
不動産鑑定会社ミラー・サミュエルによると、昨年10-12月(第4四半期)にマンハッタン区のコンドミニアム所有に要した月当たりのコストは前年同期比8.6%上昇した。これは同期の米インフレ率(2.9%)をはるかに上回る。
このデータはニューヨーク市内の家計が一段と圧迫されていることを示す最新の兆候であり、住宅を所有する余裕のあるニューヨーカーも例外ではない。 コンドミニアムやコープ住宅(住民がアパートの管理・運営に参加する形式)の管理組合が住民に毎月課す光熱費と人件費、基本的な維持管理費はいずれもここ数年、大幅に上昇。 また、この市場が大規模訴訟の影響に対応する中で保険料も値上がりしている。
ミラー・サミュエルのジョナサン・ミラー社長はコンドミニアムのコスト上昇には、2000年代後半から2010年代にかけて完了した再開発プロジェクト関連の減税措置が段階的に廃止されていることも反映されていると指摘。この減税措置は、一部の手頃な価格の住宅を含む物件に適用されたが、一般的に建設完了後10-15年で段階的に廃止される。
ミラー氏は、同社のデータは四半期中に完了した販売の費用を追跡しているため、高額な新築大型物件の取引により市全体の平均はさらに高くなっている可能性が高いと説明した。
コープ住宅に関しては月当たりの所有コストは昨年かなり安定し、10-12月期は前年同期比0.1%上昇にとどまった。
ニューヨーク市の住宅所有コストは向こう1年で一段と上昇する可能性がある。 関税導入がエネルギーコストをさらに押し上げ得るほか、 電力会社コンソリデーテッド・エジソン(コンエド)は26年1月1日から電気料金を11.4%値上げする認可を州に求めている。
日本企業を対象とした合併・買収(M&A)が増える中、社債投資家から予想外の信用力悪化に備えてコベナンツ(財務制限条項)の普及を求める声が強まっている。
日本の社債市場では、会社の経営権が変わった場合に投資家が社債の早期償還を請求できる「チェンジ・オブ・コントロール(COC)条項」はほとんど活用されていない。だが、セブン&アイ・ホールディングスや日産自動車など定期的に円建て社債を発行する大手企業で支配権の変更につながり得る動きが続いたこともあり、投資家は現状に危機感を覚えるようになっている。
ニッセイアセットマネジメントの宮田浩之債券運用部専門部長は、「COC条項は格付けに関係なく一律に付けることが望ましい」と話す。同条項のない社債への投資はリスクが高まっていると言う。
セブン&アイは企業価値の向上を迫られる中で社債スプレッド(基準金利に対する上乗せ金利)が急拡大。市場調査会社マクロミルと光学機器メーカーのトプコンも、海外のプライベートエクイティー(PE)企業が買収を競う中でスプレッドは記録的な水準に急騰した。
スプレッドの急拡大は、買収などによって会社の経営権が変わり、債務の増加や上場廃止、信用格下げにつながる可能性があるとの市場の懸念を反映したものだ。
SMBC日興証券の原田賢太郎チーフクレジットアナリストは、非上場化などのイベントが増える可能性がある中、社債投資家からそのリスクにどう向き合っていくべきかという問い合わせを多く受けていると明かす。株価収益率(PER)が低いなど買収されるリスクが意識されやすい企業の社債で、適切な保護措置が導入されないものに対しては今後、投資家がより高いプレミアムを要求する可能性があると述べた。
海外の主要な社債市場では、COC条項は主に低格付け債の発行時に付けるのが一般的だ。投資適格債に付与されることもある。これに対して日本での活用が少ないのは、企業が従来、資金調達を銀行からの借り入れに頼ってきたという事情がある。買収のターゲットになりやすいとされる低格付け企業の社債発行も海外と比べて少ない。
しかし、M&A活動が格付けにかかわらず活発になっている今、日本でも投資家保護への注目は日に日に高まっている。PE企業によるレバレッジド・バイアウト(LBO)は社債投資家にとって寝耳に水となりやすく、社債を購入した時点ではその可能性を織り込んでいないことが多い。高格付け企業の社債に投資する場合は特にそうだ。
日本証券業協会は昨年のワーキンググループ会議で、格付けがBBBプラスを下回る社債を対象に、COC条項と、債務不履行(デフォルト)の可能性が高まった場合に投資家への通知を発行体に義務付ける「リポーティングコベナンツ」を柔軟性を保ちながら適用することで合意した。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所の顧問の木村明子氏は、日本では間接金融の比重が大きいとした上で、M&Aの規模が大きくなっていることから資金調達を「銀行のローンだけで全部賄うのは無理なところまできている」と話す。COC条項は投資家からのニーズが強まり、社債発行の可否にも影響するようになれば増えるとみている。
みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストは、今年は日本企業が買収のターゲットとなるリスクが去年よりさらに高いと指摘。ニッセイ基礎研究所取締役の徳島勝幸金融研究部研究理事は、COC条項を付与することは投資家に安心感をもたらすとし、「発行体や証券会社が積極的に考えるべきテーマだ」と述べた。
米経済成長を巡る懸念からドルが急激に売られた後、ドル強気派は鳴りを潜めているように見える。しかし一部の投資家は、トランプ政権の関税政策にはなおドルを支える力があると考えている。
トランプ大統領が就任した1月20日以降でドルは約5%下落し、4カ月ぶりの安値に沈んだ。一連の関税を巡る報道が米国の成長に対する不安感を生んだほか、ドイツの財政支出拡大見通しで欧州の先行きに明るさが見えたため、経済成長の観点からの資金投入先としてのドルの魅力がさらに低下した。
1月下旬に9年ぶり高水準の352億ドルに膨らんだ通貨先物市場におけるドル買い持ちも足元で153億ドルに圧縮されている。
関税は米国の企業や消費者が負担するコストを押し上げ、供給網を混乱させるとともに、貿易取引縮小につながる、というのがドル売りの根拠だった。
それでも投資家の中には、今はドルの売り場ではないとの見方も聞かれる。
アムンディUSの債券・通貨戦略ディレクター、パレシュ・ウパディアヤ氏は「今の状況がドル弱気一色とは思わない」と話す。
関税は輸入物価押し上げを通じて外国通貨の需要を減らし、ドルを強くするので関税が全面的に発動される間はドルが引き続き上昇してもおかしくないというのが、複数のアナリストの見立てだ。
ウパディアヤ氏は、昨年ドル高をもたらした多くの要素はまだ健在で「ドルは依然として王様だ」と言い切った。
同氏は、実際米国の成長ペースは鈍化の兆しが出ているかもしれないが、なお他の主要国より高いと指摘した。米国の利回りもまだ相対的に高く、世界的な混乱期にはドルが安全な避難先だとの見方も根強い。
実際これまでドル弱気派は時期尚早の売りを仕掛けて手ひどいしっぺ返しを受けてきた。過去2年でドル指数は直近高値から5%前後下落した局面が2回(2023年10-12月と24年4-9月)あったものの、両方ともドルは数カ月で値を戻した。
昨年11月の米大統領選後にドルが5%近く上昇したとはいえ、トランプ政権のさまざまな国に対する関税が長期間発動される展開でドルに吹く追い風を、果たして市場が完全に織り込んだのかどうか疑問は残されている。
INGの外為ストラテジスト、フランチェスコ・ペソーレ氏は「特に欧州を標的とする関税は比較的長く適用されると想定する陣営にわれわれは属している」と語り、ユーロがいずれ対ドルで再び軟化し、足元1.08ドルのユーロ/ドルは年末に1.02ドル前後まで下がると見込んだ。
ニューバーガー・バーマンのシニア・ポートフォリオマネジャー、ウーゴ・ランチオーニ氏は、ドルは既に潜在的な上昇余地の大部分が実現しているとの考えから、ドルの戦術ポジションをやや売り持ちに傾けている。
しかし同氏は、貿易戦争が悪化すればドルが下げ幅を縮小する可能性があると言及。「(貿易戦争の)大規模なエスカレーションは恐らく織り込まれていない」と述べた。
UBSのストラテジスト、バシリー・セレブリアコフ氏も「トランプ氏による関税の脅しがある以上、ドル弱気派になるのは難しい」と認めた。
欧州の成長上向き期待がユーロを4カ月ぶり高値に押し上げたものの、ユーロがそうした堅調地合いを保てるか懐疑的な投資家もいる。
スタンダード・チャータードのG10FX戦略を統括するスティーブン・イングランダー氏は、2020年にも欧州の大規模経済対策発表を好感してユーロが一時上昇したが、その後しばらくしてユーロ/ドルが等価近辺まで下落した点を挙げ、財政拡大の報道に過剰反応したくないと主張した。
2002年に当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領が鉄鋼製品を対象に導入した関税は2年足らずで終了した。しかし、その経済的影響ははるかに長く続いた可能性が高い。
この関税は苦境にあえぎながらも政治的影響力のある米鉄鋼業界を保護するために設計され、自動車部品や金属プレスなどに鉄鋼を使用する企業のコストを引き上げた。翌年に撤廃されたが、影響を受けた企業はその後も自社製品を国外で販売しようとする際の競争力が低下した。ウィスコンシン大学マディソン校のリディア・コックス教授(経済学)はそう話す。
企業は苦しみ、雇用は失われた。
「影響は非常に広範囲に及んだ」とコックス氏は言う。同氏の研究によると、その影響はブッシュ氏の関税撤廃後も約5年間続いた。
ドナルド・トランプ大統領が主要貿易相手国に対して実行している断続的な関税の拡大は、現代史に類を見ない。しかし、過去から学ぶべきことはある。半導体から木材、鶏肉に至るまで、これまでの貿易紛争は時に数十年にわたって続き、国際市場を揺るがし、消費者物価を押し上げてきた。
こうした関税政策を追求した大統領の中で、トランプ氏ほど保護主義を重視した者はいない。対象となる製品はメキシコ産ビール、中国製おもちゃ、カナダ製航空機など多岐にわたる。
経済学者らは、トランプ氏のアプローチが在任期間をはるかに超えて意図せざる結果をもたらす可能性を懸念している。
「これは近年で最大の関税政策の変更だ」とコックス氏は語る。
ダートマス大学のダグラス・アーウィン教授(経済学)によると、米政府が過去に課した関税には特定の目的があった。レーガン時代の日本の半導体に対する関税は、米国のハイテク産業を手ごわい競争相手から守ることを目的としていた。ニクソン大統領は1971年、輸出大国の西ドイツと日本が通貨価値の引き上げに同意した直後に、広範囲にわたる関税を短期間で終了させた。
過去数十年に起きた多くの貿易紛争とは対照的に、トランプ政権は外国製品への関税について相矛盾する根拠を示している。これは今後の貿易戦争が長期化しかねない兆しだ。
「(今日の)問題は、他国に何を求めているのか明確でないことだ」とアーウィン氏は言う。「これは劇的な(問題の)拡大となる」
この不確実性はすでに消費者信頼感を低下させ、インフレ期待を高めている。ボストン地区連銀の研究者らは、トランプ氏の初期の関税により、米国の輸入業者の対応次第でコアインフレ率が0.5~0.8ポイント上昇する可能性があると推定している。
ウォール街では、貿易を巡るトランプ氏の発言を交渉戦術と見なしていた投資家が、この先に限られた出口戦略しかない可能性に直面している。株式市場は過去1カ月間で大きく下落。米政権は6日、カナダとメキシコからの多くの輸入品に対し1カ月の関税免除を発表したが、株価の下落を食い止めることはできなかった。
トランプ氏は時に、カナダとメキシコからの大半の輸入品に対する25%の関税や中国に対する20%の追加関税について、合成麻薬フェンタニルと不法移民の米国内流入を阻止する取り組みの一環だと主張してきた。一方で、政権高官らは関税を国内製造と政府収入を押し上げる措置だと位置付けており、経済学者はこうした目的が互いに相反すると指摘している。
トランプ氏は自身のアプローチを、国際的な供給網(サプライチェーン)と外国投資が急拡大する前の19世紀の概念になぞらえている。4日の施政方針演説では関税について、米国の雇用を保護するとともに「わが国の魂を守る」手段だと述べた。
「多少の混乱はあるだろうが、われわれは大丈夫だ」と付け加えた。「大したことにはならない」
経済学者はおおむね、トランプ政権1期目の貿易政策は、言葉は激しかったが実際の影響はそれほどでもなかったと考えている。とはいえ1次産品や消費財に対する関税は米国の新たな保護主義時代の幕開けとなり、バイデン前政権がその大部分を引き継いだ。
2018年に導入されたアルミニウムや鉄鋼などへの関税は、製造業を国内に呼び戻すことを目的としており、一部は成功した。学術誌アメリカン・エコノミック・レビューに掲載された研究によると、洗濯機に対する関税はサムスンなどの企業で推定1800人の雇用を創出したが、消費者には年間約15億ドル(2200億円)、つまり雇用された労働者1人当たり80万ドル(1億2000万円)以上のコストがかかった。
米国は世界最大の経済大国だが、外国のサプライヤーに関税のコストを負担させられるほど大きくはないと、ジョージ・メイソン大学マルカタスセンターのクリスティン・マクダニエル上級研究員は話す。
「米国はこれらの関税の半分以上を吸収した。われわれは考えられているほど価格決定力を持っているわけではない」
バイデン前政権は、同盟国からの輸入品に対するトランプ時代の関税を一部緩和した。しかし、中国を対象とした多くの関税は維持された。これは「関税を引き上げるのは簡単だが、引き下げるのは難しい」ことを示していると、カンザス大学の貿易戦争ラボを指揮するジャック・ジャン教授(政治学)は述べた。
「保護主義の教訓は、既得権益集団が根付いてしまうこと」で、各国が報復するとその複雑さが増すという。貿易戦争の当事国双方で保護された産業は「関税を維持するために必死に戦うだろう」。
米国の一部の貿易戦争は数十年続いている。いわゆる「チキン税」を例に取ろう。1960年代初頭、欧州諸国が米国産の鶏肉に関税をかけたため、リンドン・ジョンソン大統領は独フォルクスワーゲンなどが製造するピックアップトラックなどに報復関税をかけた。この措置は以来、米国内の自動車製造を支えてきたが、一方で自動車購入者の選択肢を制限し、価格を押し上げたとアナリストらは言う。
波及効果は米国の国境を越えて広がる可能性がある。針葉樹材を巡り40年以上続く紛争では、米国の関税がカナダ産品の価格を非常に高く押し上げることがあったため、米国企業がチリやオーストリアなど遠方からの輸入に転じた。オーバーン大学森林・野生生物・環境学部のダオウェイ・チャン副学部長(研究担当)はそう述べた。
「木材価格が上がるだけではなく、価格変動も劇的に増加した」。その影響は米国の建設会社、リフォーム会社、住宅所有者にまで及んだという。「人々は計画を立てられなくなる」とジャン氏は述べた。
欧州諸国は米国製ジェット戦闘機やミサイルの購入を拡大しており、米国の防衛企業は世界の武器取引における支配力を強めている。
シンクタンクのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が公表した最新データによると、過去5年間の世界の武器総輸出に占める米国の割合は43%と、それ以前の5年間の35%から上昇した。
SIPRIのデータからは、ロシアによるウクライナ侵攻や、ドナルド・トランプ米大統領が欧州に防衛費支出の引き上げを求めていることなどから、米国の兵器産業が欧州諸国の防衛予算拡大による大きな恩恵を受けていることが示されている。
一例として、英国やドイツ、イタリアを含む欧州13カ国は、米国のF35戦闘機を購入あるいは発注している。欧州諸国はまた、パトリオット防空システムや高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)といった米国製装備の購入を進めている。
ただ、トランプ政権がウクライナへの軍事装備や予備部品、情報の提供を一時停止したことで、一部の欧州諸国はいずれ自分たちもそうした状況に陥るとの懸念を抱き始めている。アナリストらや一部の議員は、こうした懸念の広まりは欧州の米国製兵器に対する需要に影響を及ぼす可能性があると指摘している。
ドイツのセバスティアン・シェーファー議員は、「こうした議論は確実に始まっている」と述べた。
SIPRIによると、北大西洋条約機構(NATO)の欧州加盟国による武器総輸入は2024年までの5年間で、19年までの5年間に比べて2倍余りに増加した。また、輸入先に占める米国の割合は2分の1強から約3分の2に拡大している。
その一方で、中国は自国での武器生産を拡大しているため、米国からの輸入が64%減少。中国は、伝統的な供給国であったロシアがウクライナとの戦争のため国内で武器を備蓄しているため、同国からの輸入も縮小している。
SIPRIは、1年単位の数字は大規模な納入などによってゆがめられる可能性があるとして、複数年単位の数字に基づいて統計を公表している。
日本ではここ数カ月、2つの異なる出来事が全く違うペースで展開されてきた。
まずは、所得税が生じる「年収の壁」だ。この種の政策論議はどの国でも退屈なものになりがちだが、日本では特にそうだ。少数与党を率いる石破茂首相は、非課税枠の引き上げを看板政策とする国民民主党の支持を必要とし、行ったり来たりの議論に耐えてきた。
衆議院で来年度予算が可決され、石破政権はようやくこの苦境から抜け出せることになった。与野党間の歩み寄りを難しくしていたのは、税収減が7兆ー8兆円に上るのではないかという懸念だった。
そうした中でも訪日観光客は増え続けた。1月には過去最高の370万人を記録。日本国民には世界的に見ても高い税負担が課せられているが、外国人観光客にとっては日本は非常に安い国だ。このギャップは何だろう。海外からやって来る観光客のあまりの多さに住民の不満も高まっている。
私は以前から、インバウンド需要をより有効に活用すべきだと主張してきた。訪日客にもっと多くの税金をどれだけ支払ってもらうようにすれば、こうした財源不足を補うことができるのかという考えも生じる。
無理な話なのは分かっている。政府は2020年代末までに訪日客を年6000万人に増やすという野心的な目標を掲げているが、それでも1人当たり12万円を超える課税を行わなければならないことになる。
しかし、それでもなお、私の思考実験では、もっと多くの驚くほどの税収を捻出することができた。
入国時に課税
まず、日本は訪日客に直接課税する必要がある。19年に始まった「国際観光旅客税」は、日本居住者を含め誰であれ出国時に1000円の税金を支払わなければならないというものだ。報道によると、これが最大5倍に引き上げられる可能性もあるという。
日本政府はさらに踏み込むこともできるはずだ。特に訪日客が到着時に支払う明示的な税金を検討すべきだ。
ニュージーランド(NZ)は19年に「国際観光客保全・観光税」を導入した。税額は最近、100NZドル(約8400円)に引き上げられた。当初35NZドルだった。この税金の使途は年次報告書で国民に伝えられる。
航空会社の燃油サーチャージと同様、訪日客はこうした避けられない課金に甘んじて応じるだろう。ネットフリックスやディズニープラスの定額サービスのようなものだ。かつてはお得感があった。だが、ユーザーが夢中になるにつれ、価格を徐々に引き上げる時が来たのだ。
私は国際観光旅客税を段階的に30年までに9000円に引き上げることを提案する。そうなれば、5400億円の追加税収が見込める。
宿泊税
訪日客の宿泊支出は19年からほぼ倍増しているが、需要には影響していない。これは、まだ需給バランスに余裕があるか、値上げが比較的容易な外資のホテルチェーンなどが訪日客を取り込んでいることを示唆している。
日本各地での宿泊税導入は当然の成り行きだ。東京では02年に初めてこうした制度が採用されたが、それでも1泊当たり最大200円だ。最近のデータによると、東京では客室の半分以上が訪日客によって占められており、増税の潮時だ。
スキーリゾートの聖地ニセコでさえ、宿泊税率はわずか2%だ。一方、北海道全域では1泊当たり500円を上限とする税を26年4月にスタートさせる予定だ。
それでも外国と比べれば、たいしたことはない。ハワイでは18%近い税率が課せられている。バルセロナの宿泊税は倍の15ユーロ(約2400円)に引き上げられた。ローマやパリでは10ユーロ以上の税が課せられている。
住所を証明できる国内居住者は宿泊税を免税されるべきだ。24年のデータを基にし、年6000万人の訪日客で30年のホテル支出が4兆8000億円に上ると推計すると、平均税率10%で4800億円の税収となる。
免税制度見直し
訪日客は現在、同一店舗における1日の購入額が5000円以上で、外国のパスポート(旅券)を提示すれば10%の消費税が免除されている。
その分の消費税を政府に納めなくて済む小売業は歓迎しているが、住民側の評判は良くない。導入されてから35年以上たつ消費税は今でも非常に不人気で、野党は常に消費税の税率引き下げを訴えている。
国内で使えないはずの免税品の転売による不正行為のニュースが報じられていることもあり、居住者はなぜ訪日客が消費税を免除されるのか疑問に思っている。26年には仕組みが変わり、訪日客の消費税払い戻しは、出国時に空港で受けることになる。
ただ、こうした免税措置を完全に廃止するのはリスクが高いようにも思われる。英国は21年に付加価値税(VAT)還付を取りやめたが、今後復活させる可能性もある。
しかし、日本は少なくとも5000円以上の買い物という基準は見直すべきだ。オーストラリアの外国人観光客向けの還付スキームは、300豪ドル(約2万8000円)のショッピングが条件となっている。
消費税免税対象の支出が1兆2000億円との試算もあり、税率10%を適用すると、1200億円の税収が見込める。
不動産購入
理論上は、これで計1兆1400億円の税収が増えるが、それでもまだ穴埋めするには十分ではない。もっと創造性が必要だ。例えば世界遺産への入場料を訪日客に対し高めに設定するなどの施策だ。  
京都のような都市は、民間セクターによる混雑緩和策を検討すべきだ。大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)では有料の「エクスプレス」パスや需要に応じて料金が変動するダイナミックプライシングなどの金銭的インセンティブを活用して混雑緩和を図っている。
トランプ米大統領は500万ドルを支払う投資家に対し、米国での居住権を付与し、市民権取得への道を開くプログラム「ゴールドカード」を提供する構想を示している。日本でそうした査証(ビザ)に500万ドルを課すことはできないかもしれないが、長期滞在の外国人が負担するコストは安過ぎる。
多くの外国人、特に富裕層の中国人にとって、日本は非常に魅力的な場所になりつつある。これは潜在的な収益源だ。日本での永住許可申請にかかる費用は8000円。豪州や米国ではこの20倍ほどの支払いが必要だ。そして、日本は外国人の帰化申請に手数料を課していない。
関連して、今後さらに大きな議論となる公算が大きいのは、日本がアジアで不動産購入に関する規制が最も緩い国の一つであるという事実だ。シンガポールのように外国人に課税し買いにくくすることもなく、外国人の土地購入に居住要件さえ設けていない。
これが、人気の高い東京都心の地価の一部が法外なほど高額になっている一因であり、賃金の伸び悩みと相まって国民が割を食っているという不満につながっている。
今後は観光のみならず、日本のあらゆる面で外国人が増えることが現実になるだろう。そのため、政策当局は日本が外国人にとって何もかも高い国と考えられ、外国人観光客を呼び込むのに幾つものインセンティブが必要だった時代に抱いてた古い考え方を捨て去る必要がある。
最善を尽くしても、観光収入だけでは日本の歳入不足全てを解消することはできない。しかし、これほど多くのものを提供している国であれば、もう少し高い料金を請求しても妥当だろう。
●中東情勢
イスラエルとトランプ米政権の関係が、めずらしく気まずくなっている。米国人人質の解放という問題も含め、米政府がイスラム組織ハマスと直接交渉したことが原因だ。
米国務省の人質問題担当大統領特使に任命されたアダム・ベーラー氏は先週、ハマスの高官とカタールで会談。この詳細が明らかになるにつれイスラエル政府高官らは、ハマスはテロ組織であってその約束は信用できず、額面通りい受け止めるべきではないとして、不快感をにじませている。
ベーラー氏は9日のテレビインタビューで、イスラエルから「懸念が表明された」ことを認めたが、ハマスの要求と提案に耳を貸すことは有益だとも述べた。「われわれはイスラエルの代理ではない。米国としての利害がある」とCNNで指摘した。
ハマスは米国をはじめ複数の西側諸国・地域からテロ組織に指定されている。ベーラー氏によるハマス接触が引き起こした摩擦は、イスラエルと米国の間で最初に生じた見解の相違だ。トランプ米大統領はイスラエルへの支持を明白にしているものの、同氏の予測不能な行動に当局者らは頭を抱えている。ウクライナの戦争を巡り、トランプ氏がロシアと直接の停戦交渉を開始したのはその一例だ。
イスラエルのディクター農業・地方開発相は10日、イスラエル・ラジオでベーラー氏について公に批判した。
「意図するところは非常に良いが、その実行は非常に悪い。大いに問題がある」とディクター氏。「イスラエル側の認識外で連携せずに行動を起こすことは、非常に危険だ」と述べた。
イスラエル交渉団は10日、カタールに赴き、エジプトとカタール、米国の仲介でハマスとの間接交渉を再開する。米国からはウィットコフ中東担当特使が参加する予定。
●エマージング
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
**為替市場**  
ドルは対円で0.47%安の146.33円となり、昨年10月以来の安値を記録。米政権の関税政策への不透明感から米景気減速懸念が強まり、米株急落も影響。一方で、一部主要通貨(ユーロ、スイスフラン、ポンド)に対しては利益確定の動きで上昇。  
**債券市場**  
米国債利回りは低下。特に2年債利回りは7.8bp下落し、4.539%。米株急落による安全資産需要の高まりが要因。10年債利回りは10.5bp低下の4.213%。  
**株式市場**  
米株は急落。ダウは890ドル安、ナスダックは約4%安、S&P500は2.7%安。関税問題や米政府機関閉鎖懸念が背景。テスラはCEOの発言や抗議活動の影響で15.4%急落。  
**金先物**  
米インフレ指標発表前の警戒感から利益確定の売りが優勢となり、0.50%安の1オンス=2899.40ドル。  
**原油市場**  
米高関税政策による景気減速懸念で売りが強まり、WTI原油は1.51%安の66.03ドル(4月物)。
ロンドン株式市場は続落。米政権の関税政策に対する不透明感や経済成長への懸念が投資家心理を圧迫した。FTSE250種指数は1.26%下落し、航空宇宙・防衛株は4.49%の大幅安。海運サービスのクラークソンは業績見通しの不安から21.7%急落。英国の労働市場も冷え込み、初任給上昇率が過去4年で最低に。  
欧州株式市場も下落。米景気への懸念からハイテク株が売られ、欧州600種テクノロジー株指数は3.12%安。ドイツの投資計画に不透明感が生じ、銀行株や工業株も下落。デンマークのノボノルディスクは肥満症治療薬の治験データが期待を下回り8.1%安。  
ユーロ圏債券市場では国債利回りが小幅低下。ドイツ10年債利回りは4bp低下の2.8%。トランプ大統領の関税政策発言を受け米10年債利回りが低下し、独米債利回り格差は縮小。イタリア10年債利回りは1bp低下の3.89%。

備忘録(2025/3/7-9
●海外企業決算
●海外企業
●日本企業
セブン&アイ・ホールディングスに買収提案しているカナダの小売大手アリマンタシォン・クシュタール(ATD.TO), opens new tabは、米規制当局の承認を得るための明確な道筋があると考えており、セブン&アイに確実性を与える提案を行ったと明らかにした。広報担当者が述べた。
セブンのスティーブン・ヘイズ・デイカス次期社長は6日の投資家・アナリスト説明会で「基本的なハードルは米規制絡みのところ。クシュタールとは先の道筋を見つけようと話し合いを続けている」と述べていた。
米コンビニ業界でシェア1位と2位が統合することで、複数店舗の売却などが必要となる可能性がある。
クシュタールの広報担当者は「規制当局の承認を得るための明確な道筋があると信じており、私たちのコミットメントについてセブン&アイにしっかりとした提案を行った」と話した。
「買収合意に達した場合に米国での承認を確保するための予備計画の一環として、米国店舗の売却対象候補を特定した」とし「さらなる確約を与えられるよう、売却先候補の特定に向けた第三者との予備的協議を行っている」と述べた。
デイカス氏によると、規制をクリアするために売却が必要な店舗は2000店舗規模になる。こうした店舗を独立して運営し、競争力を維持していける売却先を見付けなければならないという。米スーパーマーケット1位のクローガーと2位のアルバートソンが合併に合意しながらも、2年後に米国連邦取引委員会(FTC)の反対で頓挫したことを例に挙げ「2年間でアルバートソンは競争力を失った。打撃を受け、株主にとってもマイナスの影響となった」と話し、こうしたリスクを下げるべく話し合いを続けていると説明した。
セブン&アイの井阪隆一社長も6日の会見で「米独禁法関連の課題を解決するための具体策が出せていない」と述べ、買収提案当初から同社が示してきた懸念がいまだにクリアできていないことを指摘していた。
●先進国政治動向
米政府は、ロシアがウクライナ紛争の終結に合意した場合に迅速な措置を講じられるよう、ロシアのエネルギー部門に対する制裁を緩和する方法を検討している。関係筋2人が明らかにした。ホワイトハウスは財務省に対し、エネルギー制裁緩和の選択肢を検討するよう要請したという。
ロイターは3日、米国がロシアのオリガルヒ(新興財閥)を含む特定の団体や個人に対する制裁解除の提案を策定していると報じていた。ただ、ロシアの巨大な石油・ガス産業が含まれるかどうかは不明だった。
ロシアは世界有数の産油国。米国はロシアの石油産業を制裁の対象とし、その輸出価格を1バレル=60ドルに制限する多国間努力を主導することで、ロシアの戦争資金を枯渇させようとしてきた。
紛争終結に向け、トランプ大統領とロシアのプーチン大統領の会談が計画されている。
情報筋は、この取り組みにより、和平合意が成立した場合に米国は速やかに制裁を緩和できるようになると説明した。ただ、ロシアの譲歩なしに緩和するわけではないとも明言した。
財務省は、産油国としてのロシアが完全復活することで世界の原油価格がどのような影響を受けるか、欧州市場がロシアから米国の供給へとシフトしている取引の構図にどのような変化があるかについても分析している。
国家安全保障会議(NSC)と財務省はコメントの要請に応じなかった。
米国のルビオ国務長官と、政府効率化省(DOGE)を率いる実業家イーロン・マスク氏が6日の閣議中、トランプ大統領の目の前で衝突したとニューヨーク・タイムズ紙が報じた。ルビオ氏が実施した人員削減の規模を巡り対立したという。
ロイターは、トランプ氏が6日の閣議で、連邦政府の人員配置や政策の最終的な決定権は所管する閣僚が持ち、マスク氏が率いるDOGEは助言的な役割だけを果たすと訴えたことを報じた。今回の対立は、この際の閣議中だった。
NYタイムズによるとマスク氏は、ルビオ国務長官が「誰も」解雇せず、マスク氏の大規模な人員削減の推進に抵抗していると非難した。
これに対しルビオ氏は、国務省職員1500人が早期退職優遇制度を利用していると反論。マスク氏が彼ら全員を再雇用した上で改めて解雇しようと考えているのかと、皮肉を込めて問いただしたもようだ。
トランプ大統領は7日、記者会見で報道内容を否定。質問した記者に対し「衝突などない。私は実際その場にいた。あなたはただのトラブルメーカーだ」と非難し、「マスク氏とルビオ国務長官はとても仲が良く、2人とも素晴らしい仕事をしている」と述べた。
トランプ米大統領は7日、カナダが乳製品と木材に課す関税が極めて高いと非難し、早ければ同日中にカナダ製品に対し相互関税を課す可能性があると表明した。
トランプ大統領は記者団に対し、カナダの木材や乳製品に対する関税によって「われわれは何年もだまし取られてきた」と述べた。その上で「カナダは関税を撤廃しなければ、同じ関税を課されることになる」とし、「われわれは今日にでも関税を課す可能性がある。10、11日まで待つかもしれない」と述べた。
●先進国中銀、金融当局
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は7日、現在進行中の包括的な政策枠組み再検討の一環として、連邦公開市場委員会(FOMC)参加者らの政策金利見通しを図で示す「ドットチャート」を見直す可能性があることを示唆した。ニューヨークで開催された会議で発言した。
「コミュニケーション、特にFOMC後のコミュニケーションのあり方について、SEPを注意深く検証するとともに、世界の中央銀行が行っていることと比較するつもりだ」と述べた。
SEPとはFRBが年4回公表する政策・経済見通しのことで、FOMC参加者がそれぞれ、今後数年間の経済成長率、失業率、インフレ率、政策金利について、各自の見通しを示す。FOMC後に公表され、市場にとっては金融政策の先行きを予想する重要な材料となっている。
2018年にパウエル議長が就任するかなり前から現在の形で公表されており、これまでにもさまざまな改善案が提起されてきた。
この日の会議では、FRBのコーン元副議長が、金利予想の中央値では不確実性やさまざまな代替シナリオを捉えることができないと指摘。金利見通しの前提となる経済状況を明示することなどを提案した。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は7日、トランプ新政権の政策が経済にどのような影響を与えるかがより明確になるまで、FRBは利下げを急ぐつもりはないとの見解を示した。
ニューヨークで開かれたシカゴ大学ブース経営大学院の経済フォーラムでの演説で「新政権は貿易、移民、財政政策、規制という4つの異なる分野で重要な政策変更を実施している。変更とその影響をめぐる不確実性は依然として高い」と指摘。その上で、「FRBは見通しが変化するにつれて、シグナルとノイズを区別することに焦点を当てている。急ぐ必要はない。より明確な見通しが出てくるまで待つ態勢が整っている」と述べた。
経済は「引き続き好調」だと述べたが、経済指標は消費者支出の減速の可能性や企業の経済見通しに関する不確実性の高まりも示唆している。「こうした動きが将来の支出や投資にどのような影響を与えるかはまだ分からない」とした。
それでも、主要指標は堅調に推移し、インフレ鎮静化は不均一ながらも進展しており、雇用も引き続き増加していると述べた。
この日発表された2月雇用統計を受け、パウエル議長は、9月以降、米経済は毎月「堅調に」19万1000人の雇用者を増やしていると指摘した。
FRBが金融政策に関し慎重になるコストは現時点で「非常に低い」としつつも、インフレ期待が圧力にさらされれば、そうしたコストは上昇する恐れがあると述べた。
関税に絡み予想される一時的な物価上昇に対しては、金融政策による対応はしないというのが標準的な考えだが、今回は状況が異なる可能性があると指摘。「一連の事態に発展し、大幅な物価上昇につながれば問題となり、長期インフレ期待にどう影響するかが実際に問題となってくる」と述べた。その上で、「非常に高いインフレからは抜け出したが、持続可能な形での物価2%目標には完全には戻っていないという状況を思い出す必要がある。このため、これら全てを考慮に入れる必要がある」とした。
パウエル氏は、FRBが2019年、第1次トランプ政権による関税とそれに伴う景気減速に対応するために利下げを3回実施したことにも言及。当時の関税はインフレを引き起こすどころか、世界経済の成長を鈍化させ、実際にFRBによる金利引き下げにつながったと指摘し、関税だけでなく、経済政策の幅広い変化による成長への影響やその他の動向も重要になってくるという認識を示した。
また、米政権当局者が国内総生産(GDP)などの主要指標を変更する可能性を示唆したことについて、FRBは懸念しているかという質問に対し、パウエル議長は、政府機関が発表する米経済データはFRBの責務達成にとり極めて重要で、世界の「ゴールドスタンダード(絶対的基準)」と応じた。
ベッセント米財務長官は6日、関税は一時的な価格上昇を引き起こすかもしれないが、永続的なインフレにはならないと主張。「一度限りの価格調整という点では、関税ほど一時的なものはない。インフレについては心配していない」としていた。
パウエル氏とベッセント氏の見解の相違は、トランプ大統領が最終的に大規模な関税を実行に移した場合、FRBと政権の間に対立が生じる可能性があることを示している。
エバーコアISIの副会長クリシュナ・グハ氏はパウエル議長の発言について「不安を抱く市場に成長に関する安心感を与えると同時に、政策の根底にあるややハト派的なトーンを伝えている」と評価。「パウエル議長が19年の例を自ら挙げたことにも意味があると思う。この時FRBは、貿易戦争による成長への影響を理由に3度も利下げした」と述べた。
日本銀行は今月に開催する金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める公算が大きい。1月に利上げしたばかりであるほか、世界経済の不確実性が増しているとの考えが背景にある。複数の関係者への取材で分かった。
関係者によると、日銀は日本の経済・物価は引き続き見通しに沿った動きと判断しているが、現状は前回の1月会合での追加利上げの影響を点検する段階にある。米トランプ政権による関税措置などの政策が国内外の経済や物価、金融市場に与えるリスクは1月会合時点よりも高まっているという。
一方で消費者物価は日銀目標の2%を上回って推移し、2025年春闘の賃上げ要求が32年ぶりの6%超えとなるなど賃金・物価は想定通りの改善を示しており、引き続き段階的な利上げで金融緩和度合いを調整していく局面にある。日銀は最終判断は下しておらず、18、19日の会合直前までに入手可能なデータを検討する予定だと関係者は述べた。
物価見通しは上振れリスクが大きいものの、少なくとも現時点で日銀が追加利上げのタイミングを早める状況にはないようだ。さらなる利上げは近いとの市場の見方とは対照的と言える。金利スワップ取引から算出される5月までの利上げ確率は約20%となっており、1月の政策決定直後から倍増している。
日銀は1月会合で政策金利の無担保コール翌日物金利の誘導目標を17年ぶりの0.5%程度に引き上げた。その後の良好な経済指標や政策委員からの利上げに前向きな発言などを受けて市場には早期利上げ観測がくすぶるが、内田真一副総裁は5日の講演と記者会見で、利上げは経済・物価の反応を確認しながら進めていけるとし、「毎回利上げしていくようなペースではない」とも語った。
日本最大の労働組合の全国組織である連合は6日、25年春闘の賃上げ要求が6%を超えたと発表した。これが市場の利上げ期待を高め、円相場は同日に一時1ドル=147円32銭と5カ月ぶりの高値を付けた。長期金利は7日に一時09年6月以来の水準となる1.53%まで上昇した。
日銀では、強い要求を背景に今年の賃上げは昨年と同水準になる可能性が高いとみていると、関係者は述べた。これは日銀の予想の範囲内だという。
関係者によると、一部の当局者は物価の上振れリスクの高まりに引き続き警戒感を示しており、4月30日と5月1日の会合での利上げが正当化される可能性がある。
1月会合直後にブルームバーグが実施した調査では、5割超は次の利上げ時期を7月会合と見込み、3月会合を予想したエコノミストはいなかった。
●先進国経済指標
米労働省が7日発表した2月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は15万1000人増加した。伸びは前月から加速したものの、エコノミスト予想の16万人増を下回った。貿易政策を巡る不透明感の高まりや連邦政府の大幅な支出削減により、堅調に推移してきた労働市場に陰りが出始めているもよう。
失業率は4.1%と、1月の4.0%から上昇した。
1月の非農業部門雇用者数は12万5000人増に下方改定された。当初発表は14万3000人増だった。
年初来の雇用者数の伸びは平均で月間13万8000人。昨年第4・四半期の月間の平均は20万9000人だった。
今回の雇用統計は第2次トランプ政権下で初めてとなる。
BMOキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は、これは第1・四半期の労働市場と経済成長の急速な冷え込みを示唆するものの、実際に景気後退(リセッション)が差し迫っている兆候は見られないと述べた。
業種別では、病院や介護施設など医療関連の雇用が5万2000人増、金融が2万1000人増、運輸・倉庫が1万8000人増、社会扶助が1万1000人増。
政府部門は1万1000人増と、過去6カ月平均の3万5000人増を下回った。
郵便局を除く連邦政府では6700人減となった。しかし、実業家イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」が政府縮小と支出削減の取り組みの一環として、これまで数千人の職員を解雇していることから、これは氷山の一角にすぎないとみられる。
小売は6000人減少した。
建設や製造、レジャー・接客などはほぼ変わらず。
FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「新大統領の下、米経済は緩慢なペースでの滑り出しとなっている」と指摘。「連邦政府職員や政府請け負い業者の大量解雇が、民間部門の雇用の喪失を意味しないと考えることはできない。関税は物価上昇につながり、雇用を含む経済成長へのブレーキとなる」と述べた。
時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇した。1月は0.4%上昇していた。
週平均労働時間は34.1時間と、5年ぶりの低水準で推移しており、一部のエコノミストは冬の異例の寒波が雇用増の妨げになった可能性が高いと述べた。
家計調査によると、経済的な理由でパートタイムで働く人は46万人増の490万人。増加数は2023年6月以来の高さ。
働く意思があるものの就職活動をあきらめた人や、フルタイムの仕事が見つからずパートタイムで働いている人などを含む、より広範な失業率は8.0%に大きく上昇し、21年10月以来の高水準となった。
約38万5000人が労働市場から離脱した。労働力参加率は62.4%と、前月の62.6%から低下し、2年ぶりの低水準となった。
経済の雇用創出能力の尺度とされる就業率は59.9%と、1月の60.1%から低下した。
複数の仕事に就いている人は886万0000人と、前月の876万4000人から大きく増加した。全就業者に占める割合は5.4%と、09年4月以来の高水準を記録した。
金融市場では引き続き、米連邦準備理事会(FRB)が1月に停止した利下げを6月に再開するという見方を織り込んでいる。
●金融市場、先進国トピックス
米国は中国に関連するあらゆる船舶から入港料を徴収する方針で、同盟国にも同様の措置を取るよう求め、応じない場合は報復措置を取ることを計画している。ロイターが6日に確認した2月27日付の大統領令草案で分かった。
トランプ政権は国内の造船業を復活させ、世界の海運業界における中国の影響力を低下させる大統領令を起草している。
草案は米国の港に入港する船舶に対し、「建造地や船籍に関係なく、中国で建造された船舶や中国籍の船舶を含む船隊の一部である場合」に手数料を課すことを提案している。
また、同盟国やパートナーに同様の措置の実施を求めるよう米当局者に指示しており、応じなければ報復措置を講じる可能性に言及している。
草案によると、米国は中国製の貨物取扱設備にも関税を課すことを計画している。
「中国の海運、物流、造船部門における不公正な貿易慣行により、米国の国家安全保障と経済的繁栄が一段と危険にさらされている」と主張している。
米政権と中国政府の当局者からのコメントは現時点で得られていない。
この案は、世界の造船・海運分野での中国の影響力を巡る調査を行った米通商代表部(USTR)が先月示した是正措置案に基づいている。USTRは、米国の港に入港する中国製船舶に最大150万ドルを課すことなどを提案した。
ただ、大統領令の草案には手数料の金額や計算方法などは含まれていない。
この計画が実施された場合、中国遠洋海運(コスコ)、スイスのMSC、デンマークのマースク、ドイツのハパックロイド、台湾の長栄海運(エバーグリーン・マリン)などのコンテナ船大手や、食料、燃料、自動車などを輸送する船舶の運航会社は多大なコスト負担を強いられる可能性がある。
いわゆる「トランプ・プット」は希望的観測に過ぎないことを示す兆候が、これまでで最も明白に表れている。しかも、そのメッセージの発信者はトランプ大統領自身だ。
トランプ氏は6日、米株式相場の急落に関する質問に対し、「私は株式市場に目を向けてすらいない」と答えた。
トランプ氏は、メキシコとカナダに対する関税方針の二転三転がウォール街に広がる不安と関係しているなどといった見方を否定。いつものようにすぐに他の誰かに非難の矛先を向けた(今回は「グローバリスト」の仕業だと主張した。なお、この用語は反ユダヤ主義的な中傷の言葉として使われている)
それでも今週の株価急落は、トランプ氏が勝利した昨年11月の大統領選以降で最も深刻なものであり、ウォール街では2つの相反する懸念が浮上している。
一つは、1期目に株価を成功のリアルタイムのバロメーターとしていたトランプ氏が、少なくとも現時点では米国例外主義の新時代という自身のビジョンを実現するために、株式の強気相場と経済を犠牲にすることをいとわないという懸念だ。
もう一つは、関税に関する48時間での方針転換が景気後退を食い止めるためのもので、貿易や市場に関する強硬な発言もそれだけのものに過ぎないとしても、「大統領はやるのかやらないのか」と投資家が常に疑心暗鬼になり、最悪の事態に備える以外に選択肢がなくなることだ。
「政策レベルと株式市場への影響の両面において、2期目がどのようなものになるかに関するコンセンサスは誤りだった」と、アイオン・マクロ・マネジメントの創業者で最高経営責任者(CEO)のマイケル・ショール氏は述べた。
トランプ大統領の政策転換について「安心できるには限界がある。われわれはチャーリー・ブラウンとルーシーの領域にいるようなものだ。フットボールが置かれたと思ったら蹴る前に奪われてしまう」と述べ、「うんざりする」と付け加えた。
こうした展開は、トランプ大統領が株価を支えるために何でもするだろうという当初の期待を裏切るものだ。11月のトランプ氏勝利以来、投資家は第2次トランプ政権が成長促進策によって経済を後押しするという楽観的な見通しに基づき、テクノロジー大手などの銘柄に資金を投じてきた。
そうした見方は今や揺らいでいる。大統領の断続的な貿易戦争やイーロン・マスク氏率いる「政府効率化省(DOGE)」主導の政府支出削減は、景気失速やなお高水準にあるインフレへの懸念と相まって、投資家の心理を揺るがしている。
米株式相場は2月19日のピークから6%余り下落しており、激しい動きが続いている。7日発表の米雇用統計も投資家の不安を和らげるにはほとんど効果はなく、S&P500種株価指数は一時1.3%安となった。その後は持ち直しプラスで取引を終えた。
S&P500種が取引時間中に少なくとも1%変動する日は7日連続で続いている。
過去3カ月間に市場をけん引してきたエヌビディアやテスラなどのテクノロジー株が大きな打撃を受けている。これにアップルとマイクロソフト、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムを加えたいわゆる「マグニフィセント・セブン」7銘柄から成るブルームバーグの指数はこの期間に12%下落し、12月の最高値からは16%下げている。
「プットはない」
ベッセント米財務長官は7日、経済専門局CNBCとのインタビューで、バイデン前政権下での景気拡大は政府支出で人為的に支えられていたと主張。「市場も経済も中毒になっていた。われわれは政府支出に病みつきになっていた」とし、「この先はデトックスの期間になる」と話した。
株式相場を下支えするためにトランプ大統領が政策を転換することはあるのかと問われると、株式アナリストらがいう「トランプ・プット」といったものは存在しないと言明。 「上方向の『トランプ・コール』はあるだろう。良い政策を実施すれば、市場は上昇するものだ」と付け加えた。
ゥルイスト・ファイナンシャルの共同最高投資責任者兼チーフ・マーケット・ストラテジスト、キース・ラーナー氏は、株価が10-15%以上下落し続けるような場合、トランプ・プットは存在しないとは言い切れなくなると考えている。しかし、その同氏もトランプ大統領の優先事項や野望が相場の浮き沈みに対する考慮を超えて拡大しているとみている。
「トランプ・プットはありそうだが、それはおそらく、これまでの認識よりもやや低い水準だろう」と指摘。1期目には高値更新に関心が集中していたが、「今回はより総合的な見方をしていると言える。株式市場だけでなくメインストリートにも関心を向けている」と述べた。
予測不能
トランプ氏が株安に歯止めをかけるため介入する意向だとしても、それがどの程度効果的かは不明だと、トールバッケン・キャピタル・アドバイザーズのマイケル・パーブスCEOは指摘する。その理由はトランプ氏がどれほど予測不能な人物であるかによる。
「トランプ・プットが発動された場合に実際にそれが機能すると想定することには大きなリスクがある」と指摘。「トランプ氏が突如として貿易面でハト派に転じたり、確実な合意を成立させるために外国にすぐに譲歩したりする姿を想像するのは難しい」と述べた。
いずれにせよ、関税に関する堂々巡りが、ほんの数カ月前にはほとんどの人が予想していなかったほど投資家をうろたえさせていることは明らかだ。
以前は金曜日に「市場がどこで引けるか、かなり正確に予想できていた」とショール氏は話す。最近の目まぐるしい取引を経て、もはや確信が持てなくなっているという。
ドナルド・トランプ米大統領は、米国の新たな「黄金時代」を約束して昨年秋の大統領選に勝利した。米国民は自信を取り戻し、株価は大きく上昇した。
今週、その約束された黄金時代の負の側面が明らかになった。4日にトランプ氏は議会で「米国の勢いが戻ってきた」と誇らしげに語ったが、その同じ日にメキシコとカナダからの輸入品に対する大幅な追加関税を発効させ、1930年代以降で最も激しい貿易戦争になるかもしれない状況を引き起こした。
株式市場は大統領選後の高揚感をほとんどなくし、消費者信頼感はしぼみ、エコノミストたちは低成長ないし成長停滞とインフレ率の上昇が続くスタグフレーションについて語っている。
そうした影響を意識して、トランプ大統領のアドバイザーたちは、関税の発動延期あるいは修正の方策を強く求めている。5日には自動車について関税を30日間免除することが発表され、6日にはハワード・ラトニック商務長官が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠した物品を対象とする適用除外措置の可能性に言及した。その後間もなくトランプ氏は、一部のメキシコ製品に対する関税の適用を4月2日まで延期すると述べた。
だが、何かが根本的に変わると考えてはいけない。トランプ氏の任期は始まったばかりで、自身が率いる共和党と議会を完全に支配しており、信頼回復のために減税に期待している。金利の低下と原油相場の下落は関税による痛みを和らげる可能性がある。こうしたことはすべて、貿易に関して自身に最も深く根付いている直感に身を任せて行動する自由をトランプ氏に与えている。
自身が2018年に交渉した北米自由貿易協定(NAFTA)を事実上否定する判断は、トランプ氏が長年抱き続けている考えから来ている。それは、同盟国および貿易相手国が米国の富と安全を補強するのではなく、それを損なっているたかり屋だという考えだ。対ウクライナ支援を一時停止し、西欧の安全保障への支援を低減することを示唆する彼の判断も、同様の考え方で説明できる。
トランプ氏は関税が米国を豊かにすると主張する。しかし、それが当てはまるのは、相対的な意味でだけだ。
関税が維持されれば、カナダとメキシコはいずれも深刻なリセッション(景気後退)に陥り、その後何年にもわたって米国の巨大市場へのアクセス喪失に伴うつらい調整を強いられるだろう。
米国が受ける影響は、国の規模、豊かさや起業家精神のダイナミズムのおかげでずっと小さくなるだろうが、それでも、マイナスになるだろう。米国は、北米大陸全体の市場が提供してきた効率性とスケールメリットや、隣国との関係を穏やかで予想可能なものに維持してきた信頼関係を失うことになる。
トランプ氏、真の目的は
外部の人々は、トランプ氏の真の目的を見定めるのに苦労している。彼とそのアドバイザーが彼の行動について、複数の矛盾する動機を挙げているからだ。
彼のアドバイザーは彼をディールメーカーと表現し、関税は彼にとって目的を達成するための手段だと述べる。しかし、トランプ氏は自らの行動を通じ、関税が目的であることを示している。
カナダとメキシコへの関税を正当化する理由として挙げられているのは、合成麻薬フェンタニルと不法移民の流入を減らしたいというものだ。資料によると、米南部国境での不法な越境行為はほぼなくなり、メキシコは麻薬カルテルのボス29人の身柄を米国に引き渡した。米国のデータによると、カナダから北部国境を越えて流入し、押収されたフェンタニルの量はすでに少ない状態にあったが、1月に急減した。
それにもかかわらずトランプ氏は、関税措置を実行に移した。そして彼は3日の発言の中で、その動機を明確にした。トランプ氏は「この国をうまく利用して利益を得てきた者たちにとって、その行為のコストはこれから非常に高くなる」と説明。「彼らは、ここに来てわれわれのお金を盗み、われわれの仕事を盗み、われわれの工場を奪い、われわれの企業を奪っておきながら、罰を免れられると期待すべきではない」と語った。
トランプ氏は、薬物、不法移民、さらには貿易赤字をなくそうとしているだけではない。彼は、メキシコとカナダの産業基盤を奪い取ろうとしているのだ。トランプ氏は「彼らがやるべきことは、端的に言うと、米国に自動車工場や他の施設を建てることだ。そうすれば関税を払う必要がなくなる」と述べている。
カナダに関するトランプ氏の目標はもっと野心的で不吉なものだ。彼は、米国の一部になればカナダは関税を回避できると語っている。間もなくカナダ首相の座を去るジャスティン・トルドー氏は4日、「トランプ氏は、カナダ経済が完全崩壊することを望んでいる。そうなればカナダの併合が容易になるからだ」と語った。
トランプ氏、真の目的は
外部の人々は、トランプ氏の真の目的を見定めるのに苦労している。彼とそのアドバイザーが彼の行動について、複数の矛盾する動機を挙げているからだ。
彼のアドバイザーは彼をディールメーカーと表現し、関税は彼にとって目的を達成するための手段だと述べる。しかし、トランプ氏は自らの行動を通じ、関税が目的であることを示している。
カナダとメキシコへの関税を正当化する理由として挙げられているのは、合成麻薬フェンタニルと不法移民の流入を減らしたいというものだ。資料によると、米南部国境での不法な越境行為はほぼなくなり、メキシコは麻薬カルテルのボス29人の身柄を米国に引き渡した。米国のデータによると、カナダから北部国境を越えて流入し、押収されたフェンタニルの量はすでに少ない状態にあったが、1月に急減した。
それにもかかわらずトランプ氏は、関税措置を実行に移した。そして彼は3日の発言の中で、その動機を明確にした。トランプ氏は「この国をうまく利用して利益を得てきた者たちにとって、その行為のコストはこれから非常に高くなる」と説明。「彼らは、ここに来てわれわれのお金を盗み、われわれの仕事を盗み、われわれの工場を奪い、われわれの企業を奪っておきながら、罰を免れられると期待すべきではない」と語った。
トランプ氏は、薬物、不法移民、さらには貿易赤字をなくそうとしているだけではない。彼は、メキシコとカナダの産業基盤を奪い取ろうとしているのだ。トランプ氏は「彼らがやるべきことは、端的に言うと、米国に自動車工場や他の施設を建てることだ。そうすれば関税を払う必要がなくなる」と述べている。
カナダに関するトランプ氏の目標はもっと野心的で不吉なものだ。彼は、米国の一部になればカナダは関税を回避できると語っている。間もなくカナダ首相の座を去るジャスティン・トルドー氏は4日、「トランプ氏は、カナダ経済が完全崩壊することを望んでいる。そうなればカナダの併合が容易になるからだ」と語った。
どんな措置にも反発がある
トランプ氏は、経済的または地政学的な断絶によって被る損失は米国よりも他の国々の方がはるかに大きいため、それらの国々が同氏の要求に応じるはずだとの前提で事を進めている。これまでのところトランプ氏の前提はおおむね正しかった。
だが、メキシコとカナダが関税を交渉ではなく、最終目的だと判断すれば、両国の戦略は、トランプ氏の機嫌をうかがう姿勢から、新政権下で気まぐれで脅威をもたらすようになった隣国に対して守りを固める姿勢へとシフトするだろう。
1990年代まで、米国とメキシコの関係は、不信感と、政治・経済の幅広い問題における協力の欠如という特徴があった。
元駐中国メキシコ大使で、現在はグローバルリスクに関するコンサルティング会社DGAグループに勤めるホルヘ・グアハルド氏は「われわれのDNAはかつて完全に反米だった」と語った。その状態を変えたのが自由貿易だったと同氏は指摘する。その自由貿易がなくなれば、メキシコはまた「北の隣国に完全に不信感を持つ」状態に戻り、犯罪や移民、保健医療、気候問題における協力を減らしていくだろう。
カナダでは、トランプ氏が関税を発動し、カナダ併合という目標に言及していることで、現代では前例がほとんどないほどのナショナリズムの波と怒りが沸き起こっている。
今後行われるカナダ総選挙は、人気のないトルドー氏に対する国民投票から、トランプ氏に対抗するのに最適なのは誰かという争いへと様相を変えている。
カナダ元副首相のジョン・マンリー氏は「カナダが米国を信頼できる経済パートナーとして見なすことは二度とないと思う」とし、「カナダは自国の経済を構築し、米国以外に目を向けるための独自戦略を策定する必要がある」と述べた。
ウォール街は再び成長に対する不安に陥っている。
投資家は2025年を楽観的な気持ちで迎えた。規制の巻き戻しや市場が好む減税を推進する新政権によって、すでに力強い米国経済はさらなる後押しを受けるとの期待があった。ところがここ数週間は、貿易摩擦や経済成長鈍化の兆しが主要株価指数を押し下げている。
今週に入り相場の下げは加速した。ドナルド・トランプ米大統領が主要貿易相手国に25%の関税を課し、投資家は同氏が保護主義的な政策を追求することにどれほど真剣なのかを改めて考えざるを得なくなった。
値下がりは銀行や中小企業など、景気減速に敏感に反応しやすいとされるセクターで特に目立った。ハイテク株が多いナスダック総合指数は2月半ば以降、7.5%下落した。原油価格も下落している。一方、資金の逃避先とみなされる金や米国債は上昇している。
トゥルーイスト・アドバイザリー・サービシズのキース・ラーナー共同最高投資責任者(CIO)は「関税は『はったり』に過ぎないと多くの人が思い込んでいたようだが、今はそれに関して不透明感が高まっている」と述べた。
米国株は昨年、年間上昇率が2年連続で25%近くに達した。投資家は現在、その背景となった状況が大きく悪化しているかどうかを見極めることに苦慮している。米国株が今年も同じような好調さを維持できるとみていたアナリストは極めて少なかったものの、上げ基調は継続すると大半が考えていた。
今回の景気不安については、ここ数年に起こった他のできごとよりも悪いものではないと確信している向きが多い。現在脅威として映っているものをそれほど警戒する必要はないとの見方もある。なぜなら、脅威の原因となっているのは政府の政策であり、それはトランプ氏が過去にそうしたように、一瞬で覆せるためとの理屈だ。
カナダとメキシコからの輸入品に対する新たな関税を巡りホワイトハウスは5日、自動車メーカーは1カ月間対象から除外する発表した。これを受けて同日の米株式相場は週初からの下落分の一部を取り戻した。6日の取引は主要株価指数が再び急落して始まったが、ハワード・ラトニック米商務長官が1カ月の猶予はより幅広い品目に拡大されるとの見通しを示した後、下げは縮小した。
トランプ氏の就任以降、ウォール街では懸念が高まってきた。新政権は予想以上の強硬な姿勢で関税政策や政府職員の解雇を押し進めたためだ。
悪化が目立つ経済指標はこれまでのところ、信頼感調査などのいわゆるソフトデータにおおむね限定されている。
例えば、全米産業審議会(コンファレンスボード)が発表した2月の消費者信頼感指数は2021年以来の大幅な下げを記録した。米供給管理協会(ISM)が3日発表した製造業調査では、新規受注が大幅に低下する一方で仕入価格は上昇した。複数の回答者が関税に対する懸念を示した。ある回答者は「関税の導入によって、当社の製品の価格が上昇している」とし、「インフレ圧力を懸念している」と述べた。
アトランタ地区連銀が公表する予測モデル「GDPナウ」では現在、1-3月期の米経済成長率は年率でマイナス2.8%と予想されている。ただ、他のモデルはまだプラス成長を示している。
エコノミストの間では、経済活動は減速するとの見方が大勢となっている。企業は関税の大幅引き上げによって輸入品に対する支払いの増加を強いられ、そのコストを消費者に転嫁することが予想されるためだ。
ただ大半のエコノミストは、関税引き上げが経済を縮小に追い込むほどの影響を及ぼすとはみていない。ゴールドマン・サックスのエコノミストは最近のリポートで、関税は今年の米経済成長率を0.2%押し下げるにとどまるとの見方を示した。これはカナダなど他国が被ると予想される影響と比べてはるかに小さい。
米株式市場では5日の取引終了時点で、S&P500種指数は2月19日に付けた過去最高値から約5%下落し、週初からは1.9%下落した。小型株で構成するラッセル2000指数は1月下旬から9.4%下落した。
銀行株は特に値下がりが目立つ。ゴールドマン・サックスは2月18日に過去最高値を付けて以降、12%下落した。業種別では、生活必需品が他の業種と比べ健闘している。洗剤の「タイド」や歯磨き粉の「クレスト」を製造する日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は週初から0.4%上昇した。
不安はウォール街を超えて広がっている。オハイオ州ウースター在住で、サービス・広告業を営むトーマス・クーパーさん(34)は毎日、株取引をしている。トランプ氏が大統領選で勝利して以降、相場の急激な変動から資産を守るために金(ゴールド)の購入を増やしたという。「市場は突然、何の根拠もなくアゲインストになる」と話した。
投資家にとって明るい話題の一つは債券相場の上昇だ。ここ数年は、根強いインフレが債券への打撃になっていた。ブルームバーグ米国総合債券指数は4日時点で、値上がり益と利子を含めた年初からのリターンが2.7%となった。
ただアナリストの間では、債券相場の上昇継続はこの先難しくなるとの見方もある。インフレ率は依然として米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を上回っており、FRBはこれ以上の大幅な利下げに慎重な姿勢を示している。利下げが予想される状況では、投資家はできるだけ高い利回りを確保しようとするため、既発債に対する需要を押し上げる傾向がある。
アネックス・ウェルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ブライアン・ジェイコブセン氏も債券相場の上昇継続に懐疑的な一人だ。
ジェイコブセン氏は、トランプ氏が関税を主に交渉の手段として使うとの見方を変えていないとしながらも、大統領の交渉姿勢は以前予想していたよりも厳しいことがはっきりしてきたと述べた。ジェイコブセン氏は関税について、「発動の前に交渉が行われるものだと思っていた」と話した。「どうやら彼は、先に発動し、交渉は後にするつもりらしい」
ベッセント米財務長官はトランプ政権が成長の基盤を政府から民間セクターにシフトさせる中、米経済には何らかの混乱が生じる可能性があると警告した。
ベッセント氏は7日、経済専門局CNBCとのインタビューで「われわれが受け継いだこの経済が、ややふらつき始める可能性はあるだろうか。それはもちろんある」と発言。「公的支出から脱却するのに伴い、自然な調整は起こる」と述べた。
最近発表された複数の米経済指標は成長の減速を示唆し、2月のISM製造業総合景況指数は停滞の領域に近づいたほか、2月の消費者信頼感指数は2021年8月以来の大幅な落ち込みを記録した。
バイデン前政権下での景気拡大は政府支出で人為的に支えられていたと、ベッセント氏は主張。インタビューは2月の雇用統計が発表される前に収録された。同統計では雇用の伸びが堅調に推移した一方、失業率はわずかに上昇。強弱まちまちの内容は政策の急速な変化に揺れる雇用市場の状況を映している。
ベッセント氏は「市場も経済も中毒になっていた。われわれは政府支出に病みつきになっていた」とし、「この先はデトックスの期間になる」と話した。
株式相場を下支えするためにトランプ大統領が政策を転換することはあるのかと問われると、ベッセント氏は株式アナリストらがいう「トランプ・プット」といったものは存在しないと言明。
「『プット』はない」とし、「上方向の『トランプ・コール』はあるだろう。良い政策を実施すれば、市場は上昇するものだ」と続けた。
関税政策
関税は長期的に維持されるのかとの質問に対しては、「いずれ分かる」と回答。
「トランプ大統領は毎日多くの情報を取り入れており、株式相場はその一部だ」とベッセント氏。「私は全てを見ている」と述べた。
同氏はトランプ氏の経済政策について「必要不可欠な軌道修正だ」とし、「痛みが生じるかどうかはこれから分かる。適正な政策をとれば、非常にスムーズな移行になると私は確信している」と付け加えた。
ベッセント米財務長官は7日、米経済は公共支出から民間支出へと原動力を移行する過程で、鈍化する可能性があるとの見通しを示した。同時に、この過程はより持続可能な均衡に到達するために必要な「調整期間」だとした。
ベッセント氏はCNBCの番組で、「公的支出から民間支出への移行に伴い、自然な調整が起こるだろう」とし、市場と経済が政府支出に依存していた状態から調整期間を迎えつつあるとの見方を示した。
また、トランプ米政権による規制緩和は民間部門の成長促進を目的とするため、民間主導の経済への移行に経済的に大きな痛みが伴うことはないとした。
ミレニアム・マネジメントの2つのチームが今年これまでに約9億ドル(約1330億円)の損失を出したことが、事情に詳しい複数の関係者の話から明らかになった。これらチームは、さまざまな株価指数にどの企業が採用・除外されるかに賭ける「インデックス・リバランシング」と呼ばれる戦略を取っており、最近の世界的な株価急変動で打撃を受けた。
同関係者らによれば、2チームのうち、より規模の大きいSRBLをグレン・シャインバーグ氏が率い、もう一つのチームはドバイ在勤のプラティク・マドバニ氏が管理している。ミレニアムの担当はコメントを控えた。
インデックス・リバランシング戦略は高いレバレッジを効かせることが多い。ミレニアムなどマルチマネジャー型ヘッジファンドにとって利益の大きい戦略となり得る。
ただ、市場の不安定化と取引の集中が重なると、たとえポートフォリオマネジャーが正しい銘柄に賭けていたとしても、大きな損失が発生する可能性もある。
事情に詳しい関係者1人によれば、インデックス・リバランシング取引を専門としていた香港在勤のシニアポートフォリオマネジャー、ジェレミー・マー氏がミレニアムを退社した。マー氏にソーシャルメディアを通じてコメントを求めたが、返答はない。
インデックス・リバランシング戦略は2022年を含め、過去にもリターンを悪化させたことがある。
あるファンドマネジャーは、1998年にはわずか12社がこの取引を行っていたと推定している。その数は近年、少なくとも50社に膨れ上がったが、その後リターンの悪化で一部のトレーダーは離脱した。
ただ、利益を大きく膨らませることもあり得る。シャインバーグ、マドバニ両氏のグループは昨年、いずれも利益を上げていた。
総額約750億ドルの資産を運用するミレニアムは、今回の損失にもかかわらず、今年2月までのリターンは1%未満のマイナスにとどまっている。
●中東情勢
トランプ米大統領は7日、核問題を巡りイランとの交渉を望む意向を示し、5日にイラン首脳宛てに書簡を送ったことを明らかにした。
トランプ大統領はホワイトハウスで記者団に対し「イラン側と最終段階に差し掛かっている」とし、「イランを巡り、間もなく何らかの動きがあるだろう。和平合意もあり得るかもしれない」と期待を表明した。
これに先立ち行われたFOXビジネス・ネットワークのインタビューでは「イランにとっても良いことで、交渉に応じることを望むと伝えた」とし、新たな核兵器を許すことはできないと述べた。
書簡はイラン最高指導者のハメネイ師宛てかという質問に対しては、「そうだ」と応じた。
さらに「イランにとっての対応は2つある。軍事的な対応か合意(ディール)かだ。イランを傷つけたくはなく私は合意を好む」と述べた。
トランプ氏は2月には、核兵器開発を阻止するためイランと合意を結びたいと述べていた。
イラン国連代表部は7日、イラン側はトランプ氏の書簡を受け取っていないと述べた。イラン外務省からはトランプ氏の発言についてコメントは得られていない。
イランのヌールニュースは、米政府による「繰り返しの芝居」と一蹴。Xへの投稿で、イランとの対立を望まないとしながら、「最大限の圧力」政策を復活させて制裁を課し、その後に交渉を巡る書簡を送るトランプ氏の外交政策はパターン化されていると指摘した。
トランプ大統領は先月4日、イランに対する「最大限の圧力」政策を復活させる大統領覚書に署名。イランの核兵器保有を阻止するため、原油輸出を完全に停止させること目指すとした。
●エマージング
リバタリアン(自由至上主義者)として知られるアルゼンチンのミレイ大統領は2023年の大統領就任時に中国を共産主義の「暗殺者」と呼び、対中関係の見直しを示唆していたが、実際にはミレイ政権の1年目にアルゼンチンは大豆やリチウムなどの対中輸出が15%も増加した。
本来は米国の同盟国であるアルゼンチンのこうした実利重視の政策転換は、トランプ米大統領の対南米政策の課題を浮き彫りにしている。豊富な天然資源を抱える南米諸国では近年、コモディティー(1次産品)ブームを追い風に中国の影響力が高まっている。
一方でトランプ政権は脅しや関税をテコに貿易相手国に対して米国の利益になるような条件を飲ませようとしている。既にコロンビア、パナマ、メキシコに譲歩を求めたほか、ブラジルも鉄鋼に対する新たな関税措置の標的となっている。
しかしロイターが取材した政府関係者や外交筋、貿易専門家など6人は、巨大でなお拡大している中国の貿易面での優位性によりトランプ氏の政策は効果がそがれていると指摘した。これは経済上のライバルが世界的に増える中で米国の懲罰的なアプローチが限界に達しつつあることを示している。
ブラジルのルラ大統領に近い高官は、同国経済は米国に依存しておらず、昨年の貿易収支が300億ドルの黒字となった中国の方がはるかに重要だと述べた。また、トランプ氏による関税の脅しは、米国が長年にわたりブラジルを軽視してきた末に打ち出した政策であり、各国はよりリスクの少ない選択肢として中国や欧州、BRICSなどとの関係を模索するとの見方を示した。米国と違い中国は「実利的なパートナー」であり、「ビジネスをしに来ている」とも語った。
ブラジル、チリ、ペルー、アルゼンチンといった資源大国がけん引する形で南米諸国は対中輸出が過去10年間で2倍以上に増加した半面、対米輸出の伸びは小さいことが、ロイターの貿易データ分析で明らかになっている。低成長と高債務に苦しむ南米の指導者にとって中国の巨大市場は極めて重要であり、たとえ政権のイデオロギーが異なろうとも、南米において中国のソフトパワーは強まっている。
<近所のいじめっ子>
ルビオ米国務長官は1月下旬、コロンビアなど南米諸国が中国に接近するリスクについて「馬鹿げている」と一蹴。トランプ政権は短期間で成果を上げたと主張した。トランプ政権は関税をちらつかせてメキシコを交渉の場に引き出して貿易協議に応じさせ、国境警備のための軍隊派遣を約束させた。また、重要な貿易ルートであるパナマ運河を取り戻すと宣言。パナマは中国の「一帯一路」インフラ計画からの離脱を決めた。
ワシントンのシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のディレクター、ライアン・バーグ氏は、トランプ氏はむしろ中南米を重視しており、スペイン語を話すルビオ氏が初の外遊で同地域を訪問先に選んだと述べた。
米下院中国特別委員会の民主党トップ、ラジャ・クリシュナムルティ議員は、米国は「近所のいじめっ子」にならないよう注意すべきだと語った。「なぜなら、いじめっ子に何が起こるかは明白だからだ。人々はいじめっ子に立ち向かうのだ。それはわれわれの長期的な国家安全保障上の利益にとって極めてマイナスな形を取る可能性がある」と危惧を示した。
<急成長するコモディティー輸出>
中国は南米全体で貿易面の優位性が一段と大きくなっているが、その原動力となっているのが穀物や銅、リチウムといった重要資源だ。米国はこの面で依然として中国をリードしているものの、その差は縮小している。
10年前に銅の主要生産国であるペルーの最大の貿易相手国は米国だったが、今では断トツで中国がトップだ。中国はペルー産の銅を大量に輸入し、両国間の貿易を加速させるためペルー沿岸に巨大な港を建設した。ペルーのアリスタ前経済相は「米国が関税を導入してもペルーにとっての影響は最小限にとどまるだろう」と予想した。
アルゼンチンは米国寄りのミレイ氏が政権を握っているが、やはり中国の影響力は強い。中国はアルゼンチン産の大豆と牛肉の最大の輸出先で、昨年はアルゼンチンのリチウム輸出の約3分の1が中国向けだった。ミレイ大統領の側近は昨年末、「中国と協力することがアルゼンチンの国益に最もかなうのであれば、何の問題もない」と発言している。
コロンビアは米国との貿易関係がはるかに緊密だが、それでも2023年末には中国との外交関係を「戦略的パートナーシップ」へと格上げした。またパナマは2021―23年にかけて中国への輸出額が米国向けを大幅に上回ったものの差は縮小しており、しかもパナマ運河を巡り米国との緊張がくすぶり続けている。
<中国に追い風か>
米国と南米諸国は歴史的に近い関係にあり、文化的にも共通点を持っている。しかしそれにもかかわらず中国は貿易面で本来的に優位性を持っている。
中国と南米の関係は移民の移動や犯罪、麻薬といった問題に左右されず、開発段階の中国では南米産コモディティーの需要が高まることから経済的な相性も良い。
ルビオ米国務長官の中南米歴訪後、中国外務省は珍しく米国の対中南米政策を非難する声明を発表。米国は中国と中南米諸国の間に「不和」を生じさせようとしていると批判し、中南米地域と中国との協力関係の深まりは「不可逆的な流れ」だと強調した。
広東国際戦略研究院のリ・シン教授は、トランプ氏の強硬な外交姿勢は中国にとって有利に働くと指摘。「米国とその同盟国の間に混乱が生じるほど、中国にとって好都合だ」と述べた。
航空業界のデータや専門家によると、中国を拠点とするプライベートジェット機の数が、過去数年で大幅に減少していることが明らかになった。中国経済の低迷や反汚職運動、新型コロナによる影響が背景にある。
ビジネス航空コンサルタント兼ブローカーのアジアン・スカイ・グループによると、昨年末時点で中国本土、香港、マカオを拠点とするプライベートジェット機は、2017年のピーク時の481機と比べて3分の1に減少した。
一方、他のアジア太平洋地域では同時期にインド、オーストラリア、日本などを中心に20%増加している。
中国での減少の多くは、2021年半ばに始まった不動産危機で中国恒大集団などの不動産会社が所有していた航空機を売却したことによるものだ。
また、シンガポールや日本へ航空機が移されたケースもり、近年の富裕層を中心とした中国からの海外流出を反映している。
アジアン・スカイのコンサルティングサービス担当ディレクター、デニス・ラウ氏は、中国は依然としてアジア最大の市場だが、「企業向けビジネスジェット機の利用は明らかに減少している」と語った。
プライベートジェット機の貸し出しを手がけるビスタジェットのチーフ・コマーシャル・オフィサーのイアン・ムーアはビジネスフォーラムの傍らで、中国でのビジネスはコロナ前の水準に戻っていないとの見方を示した。
「5年前や10年前とは異なり、もはや中国をアジアの中心地としてフォーカスしていない。東南アジアや日本など、他の地域も成長してきた」と語った。
アビエーション・ウィーク・インテリジェンス・ネットワークによると、世界のビジネスジェット機保有台数は北米が大半を占める。アジア太平洋地域の割合は7%にとどまるが、今後10年間は年率2.1%で成長し、世界平均の1.4%を上回ると予測されている。
シンガポール、ベトナム、ラオス、インドネシア、タイなどの東南アジア諸国では、低水準ながらも力強い伸びを示している。
業界幹部らによると、中国でプライベートジェット機が減少している背景には、当局による富の誇示に対する取り締まりの強化や、新型コロナ感染対策による移動制限などの政策がある。
しかし、国際企業がサプライチェーンを多様化するために拠点を拡大しているインドやベトナムなどで、新たに富裕層が生まれていることも理由の一つという。インドのプライベートジェット機数は昨年、168機となり2019年から約25%増加した。
ロシアは、一定の条件の下でウクライナとの一時的な停戦を受け入れる用意があることを示唆した。そうした中、トランプ大統領はウクライナに対し、和平合意に向け進むよう圧力をかけ続けている。
ロシアによる3年前の全面侵攻で始まった戦争の終結につながる取引を追求するトランプ氏は、長く続けてきたウクライナへの軍事支援を一時停止し、ロシアに接近している。
トランプ氏は7日、大統領執務室で記者団に対し、「ロシアとは非常にうまくやっている」と語り、「率直に言うと、ウクライナを相手にする方がより難しい」と述べた。
協議に詳しい複数の関係者によると、トランプ氏のアドバイザーらは、対ロシア制裁をどのように緩和するかについて既に概要を練っている。緩和対象にはロシア産石油の価格に設定されている上限などが含まれる。
ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ大統領による2月28日のホワイトハウスでの会談は激しい口論の末、決裂したが、両国の当局者は3月11日にサウジアラビアで会合する準備を進めている。両国関係を改善させ、ゼレンスキー大統領との口論後にトランプ氏が停止した対ウクライナ武器供与と情報共有を再開させることを目指す。
米国家地球空間情報局の報道官は7日、G-EGDシステムからの衛星画像へのウクライナのアクセスを一時的に停止したと明らかにした。これについてはニューヨーク・タイムズ紙が先に報じていた。
トランプ大統領のロシア寄りの姿勢は、ロシアに有利な条件でウクライナをディール(取引)に追い込むのではないかとの懸念をウクライナと欧州の同盟国に抱かせている。
事情に詳しい複数の関係者によれば、ロシア当局者は先月行われた米当局者との協議で、最終的な和平合意に向けて進展がある場合、短期的な停戦を検討する用意があると伝えた。非公式な協議を理由に匿名を条件に語った。
関係者のうち2人は、停戦に合意するためには、最終的な和平協定の原則的な枠組みについて明確な理解が必要になると語った。別の関係者は、ロシアは最終的な平和維持活動の境界を確立することに特にこだわるだろうと述べた。これには具体的にどの国が参加するかについての合意も含まれるという。
ロシア大統領府のペスコフ報道官はコメントの要請には直ちには応じなかった。
ウクライナ当局者によると、ロシアはウクライナへの空爆を強化しており、数百発のミサイルやドローンによる攻撃を実施した。
トランプ大統領は7日、ロシアのプーチン大統領もディールを望んでいると確信を示したが、これに先立ち、ロシアが協議を進めない場合は、追加制裁と関税を同国に加える考えも示した。
トランプ氏は7日、自身のソーシャルメディアプラットフォームであるトゥルース・ソーシャルで、「現在戦場においてロシアがウクライナを『叩きのめしている』という事実を踏まえ、停戦と最終的な和解合意が締結されるまで、ロシアに対して銀行への大規模な制裁、そして関税を設けることを私は強く検討している」と表明。「ロシアとウクライナには、手遅れにならないよう、今すぐ交渉の席につくよう求める」と付け加えた。
その後の発言ではこうした警告には触れなかった。既に広範囲な制裁が科されていることを踏まえると、どのような追加措置が可能かは不明だ。
ゼレンスキー大統領は夜のビデオ演説で、今回のロシアによる攻撃は、和平実現にはロシアに対する強制措置が必要なことを裏付けていると発言した。
トランプ大統領に対しては融和的な姿勢をあらためて示し、「今日、トランプ大統領のチームとこれまでで最も集中的な作業が、さまざまなレベルで終日行われている」と述べ、「ウクライナは非常に前向きだ」と付け加えた。
ゼレンスキー氏はトランプ政権当局者との協議のため、11日に側近をサウジに派遣する。米国のウィットコフ中東担当特使によれば、会合の目的は「和平合意の枠組みと最初の停戦」にこぎ着けることだ。
ロシアは、ウクライナ領内に北大西洋条約機構(NATO)軍の駐留は認められないと主張しており、「有志連合」が和平合意の監視を支援するとの欧州諸国による提案を拒否した。関係者2人によると、戦争に中立の立場をとってきた中国などがウクライナに軍を派遣することにはロシアは異議を唱えていない。
トランプ氏は先月、プーチン大統領と電話協議し、ウクライナでの戦争を終結させるため首脳会談を行うことで合意したが、日程は設定されていない。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
**為替市場**  
ドルはユーロと円に対して数カ月ぶりの安値となり、大半の通貨に対して下落。米雇用統計の結果を受けて、利下げ観測が強まり、ドル指数は0.4%安の103.81で週間では3.5%安と2022年11月以来の最悪のパフォーマンス。ユーロは対ドルで0.6%高、ドル円は147.99円で横ばい推移。ビットコインは2.8%安の87,030.54ドル。  
**債券市場**  
10年国債利回りは3.8bp上昇し4.32%。パウエルFRB議長が利下げ時期について慎重な姿勢を示したことで、利回りは上昇。市場では年内の利下げ幅を69bpと見込んでいる。  
**株式市場**  
米株式市場は反発。パウエル議長の「景気は良好」との発言を受け、序盤の下落から回復。しかし、週間ではS&P500が3.1%安、ナスダックが3.45%安、ダウが2.37%安と大幅下落。HPエンタープライズは関税の影響で12%安、コストコは商品コスト増で6%安。一方、ブロードコムは好調な業績見通しで8.6%上昇。  
**商品市場**  
金先物は5営業日ぶりに反落し、1オンス=2,914.10ドル。週間では2.3%上昇。原油先物は増産見送り観測で続伸し、WTI4月物は1.02%高の67.04ドル。週間では3.9%下落。
ロンドン株式市場は下落し、FTSE100指数は0.03%安、週間では1.47%安と年初来最大の下落率を記録。FTSE250指数も0.15%安、週間で0.97%の下落となった。米政権の関税政策の変更が投資家心理に影響し、バーバリー株が6.8%安など高級ブランド株が大きく下落。一方、石油・ガス株は上昇。  
欧州株式市場も下落し、STOXX欧州600種指数は週間で0.69%安。特に中国市場依存度の高い高級品株や工業株、資源株が下落。一方、通信株は上昇。米雇用統計が市場予想を下回ったことが、FRBの利下げ観測を強め、投資家心理をやや改善させた。  
ユーロ圏債券市場では、ドイツ10年債利回りが5.5bp低下し2.83%に。ECBが政策金利を0.25%引き下げたが、声明文の変更を受けて利回りは一時上昇した。イタリア10年債利回りも5.5bp低下し、独伊利回り格差は106bpとなった。

備忘録(2025/3/6
●海外企業決算
●海外企業
小売り大手の米ウォルマートは、一部の中国サプライヤーに大幅な値下げを要請している。トランプ米大統領が課す関税の負担をサプライヤーに転嫁しようとするこの動きに、中国企業は強く反発している。
関係者が匿名を条件に述べたところによると、キッチン用品や衣類のメーカーを含む一部のサプライヤーは、関税が課されるごとに10%の値下げを迫られており、実質的にトランプ大統領の関税の全額を負担することを求められている。交渉は個々のメーカーと行われており、値下げ幅はメーカーによって異なるという。
これまでのところ、ウォルマートの要請に完全に応じたサプライヤーはほとんどない。競争優位を維持するために商品を安く調達するという同社の戦略により、サプライヤーの利益率はすでに極めて薄い状態にあると関係者は述べた。
関係者によれば、2%以上の値下げをすれば赤字になる企業もある。また、別の関係者によると、自社の納入業者から3%を超える値下げを拒否され、一部の部品をベトナムから輸入することを検討せざるを得なくなったメーカーもあるという。
こうした動きが広がれば、低価格化が製品の品質低下を招くのではないかという懸念が高まっていると関係者は指摘した。
ウォルマートを巡る情勢からは、高まる地政学的緊張が世界的なサプライチェーン再構築を迫る中で、既に生活費高騰に見舞われている米国の消費者が最終的にさらなる負担を強いられる可能性が示唆される。
ベッセント米財務長官は関税に関する懸念を軽視し、中国メーカーが追加コストを負担するだろうと述べたが、米小売り大手のターゲットとベスト・バイは、メキシコとカナダも巻き込んだ貿易戦争により、消費者は価格上昇を覚悟すべきだと警告している。
ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は今回の関税発動以前に、一部の買い物客は次の給料日までに財布が空にならないように商品の小分けパックを購入していると語っていた。
ウォルマートの広報担当者は、同社は今後もサプライヤーと協力し、顧客のために価格を可能な限り低く抑える努力を続けると述べた。値上げから買い物客を守り、米経済の成長を維持するため共通の解決策を見いだすべく、全ての関係者に協力を呼びかけているとしている。
事情に詳しい関係者によると、ウォルマートは従来から中国サプライヤーに対して強い交渉力を持ち、値下げの要請はほぼ受け入れられてきた。しかし、最近の要請の値下げ幅は異例であり、メーカーは長期的な取引関係を維持するためにコストを吸収すべきかどうか悩んでいるという。
関係者によれば、ウォルマートは2月前半にトランプ大統領が中国からの輸入品に10%の関税を課した際にメーカーに値下げを要請し、同月後半にトランプ氏が関税倍増をちらつかせた時に追加の値下げを要求した。
他の大手小売企業も追随する可能性がある。ターゲットのブライアン・コーネルCEOは4日、同社は次のステップについてベンダー側と協議中だと述べた。
●日本企業
●先進国政治動向
ドイツの次期政権樹立に向けて連立交渉中の保守連合キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派の社会民主党(SPD)は、5000億ユーロ規模のインフラ基金の創設と、借り入れ規制の見直しで合意したが、緑の党が難色を示しており、支持獲得に疑問が生じている。
CDU・CSUとSPDは来週、連邦議会(下院)に法案を提出する方針で、採決は17日に実施される可能性がある。
しかし、現在の議会で改革実施の重要な鍵を握る緑の党は気候変動対策が盛り込まれていないことを疑問視し、支持表明を拒否している。
極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と旧共産党系の流れをくむ左派党は法的措置を取ると警告した。新議会では両党が改革を阻止するのに十分な議席を有することになる。
次期首相への就任が有力視されるメルツCDU党首は、CDU・CSUとSPDの議員連盟が来週、連邦議会に対し、国内総生産(GDP)比1%を超える防衛費を債務ブレーキの対象から外す内容の憲法改正案を提出すると述べた。
これとは別に専門家委員会が、恒久的に投資を促進するために債務ブレーキの近代化案を作成する。
CDU・CSUとSPDは現在の議会会期中の法案通過を目指しているが、見通しは不透明だ
演説は約100分と、現代の一般教書形式のものでは最も長く、そのトーンや範囲、受け止められ方の点で注目に値するものだった。
それはまさにドナルド・トランプ氏そのもので、大胆なアイデア、壮大な考え、辛辣(しんらつ)な批判の傑作だった。
選挙戦からのおなじみのテーマである国境の安全確保や関税、そしてウォークネス(人種差別など社会的不公正の問題に高い意識を持つこと)と多様性・公平性・包括性(DEI)を終わらせることに焦点を合わせた。2月28日に米大統領執務室で行われた会談が完全な失敗に終わったことを遺憾に思うというウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の声明にトランプ氏が言及したことは、注目を集めた。トランプ氏はこれで鉱物資源協定に調印し、和平交渉の場に戻ることができる。
大統領の演説には幾つかの素晴らしい言い回しがあった。民主党は「国境を安全にするのに新たな法律が必要だと言い続けていたが、われわれに必要だったのは新たな大統領だったことが分かった」というのはその一つだ。
一般の米国民を称賛する、心温まる場面もあった。脳腫瘍と闘う13歳の子どもに大統領警護隊(シークレットサービス)名誉隊員の称号が与えられた。昨年7月のトランプ氏の暗殺未遂事件の際に妻と娘を守ろうとして命を落としたコリー・コンペラトーレさんの家族にも敬意が表された。
家族で4代目の軍人になることを願うカリフォルニア州の若い男性は、ニューヨーク州ウェストポイントにある陸軍士官学校への入学を、カメラを通じて大統領に宣言してもらった。また、不法移民に殺害されたレイクン・ライリーさんとジョセリン・ナンガリーさんに哀悼の意が示された。ライリーさんについては、米国に不法入国した凶悪犯罪者を取り締まる法律に彼女の名前を付けた。ナンガリーさんについては、テキサス州にある彼女の自宅近くの野生生物保護区に彼女の名前を付けた。
党派を超えて賛同するに値する言葉に民主党議員が拍手を送ることはほとんどなかった。トランプ氏が米国民の共感を呼ぶ話題に触れたときには、そうした方が賢明だっただろう。彼らがそうしなかった理由の一つには、民主党左派のゆがんだ世界観があった。別の理由には、トランプ氏に対する根深い個人的な嫌悪感、同氏が米国の憲法秩序の脅威になるという懸念、同氏の前任者に対する度重なる攻撃があった(ホワイトハウスに忠告するが、ジョー・バイデン前大統領については攻撃するよりも、忘れた方が良い。バイデン氏への言及は、トランプ氏を小物に見せる)。
大統領として自身が過去最高だと主張する発言の数は尋常ではなかった。トランプ氏は自慢気に「ほとんどの政権が4年または8年かけて達成した以上のことを43日間で成し遂げた」と語った。また、大統領就任後の1カ月間が「米国史上最も成功した」期間だと主張し、これに近いことができたのはジョージ・ワシントンだけだと述べた。ほとんどの米国民は、トランプ氏がこうした大げさな発言をするものだと思っており、多くの人はほとんど無視している。
問題を引き起こす可能性があるのは、トランプ氏の誇張表現や過大な約束だった。これはトランプ氏に直接影響を与えるものではないかもしれない。米国民は同氏の発言には慣れている。また、彼が再び出馬することはない。だが、民主党がしっかりとした行動を取れば、共和党は(中間選挙がある)2026年に苦境に立たされる可能性がある。
トランプ氏は、自らの政権で既に「何千億ドルもの不正」を発見し、回収したと述べた。また、イーロン・マスク氏率いる「政府効率化省(DOGE)」が、生きていれば150歳代になっていると思われる人の社会保障の不正受給事例130万件と、160歳以上になっているはずの人の不正受給事例13万件を突き止めたとトランプ氏は述べた。接戦の上下両院議員選で、賢明な民主党候補者は共和党の対立候補に、訴追や回収した資金の提示を要求するだろう。
いずれの場合も、共和党候補者は苦しい対応を強いられ、DOGEが何百億ドルもの無駄な支出と社会保障給付金の小切手が誤送付された少数の事例を発見した可能性はあるものの、不正は著しく誇張されていたと説明することになるだろう。
そして関税の問題もある。トランプ氏は「若干の混乱が起きるだろうが、それでもわれわれは大丈夫だ」と語ったが、それでは済まないかもしれない。バイデン氏はインフレによって窮地に追い込まれたが、トランプ氏の関税によって物価が上昇すれば、消費者は今後、買い物の際にバイデン政権下と同様の感覚を抱くだろう。また、企業がコスト削減や商品の値上げに踏み切れば、米国民は関税が彼らの勤め先にどんな影響をもたらすのか知ることにもなるだろう。
トランプ氏はまた、関税は「米国の農家のためになる」と語り、その理由は米国の農家が今後「米国内市場に作物を売り込めるようになる」からだと説明した。しかし国内市場だけでは十分とは言えない。米農務省によれば、米国の農家は「農産物の価格と収入を維持する上で、輸出市場に」依存している。2023年の米国の農産物輸出額は1740億ドル(約26兆円)に上っている。これは米国の農産品生産額の20%に相当する。関税戦争によって、米国の貿易相手国が米国以外から農産物を輸入するようになれば、米国の農家はトランプ氏が約束しているような「素晴らしい日々」を過ごすことはできなくなるだろう。
次に「連邦予算を均衡させる」というトランプ氏の約束について考えてみよう。それは実現しない。実現に近づくことさえない。トランプ氏はなぜ共和党への攻撃を招きかねない約束をするのだろうか。民主党は、この財政問題への解決策を持っている。それは富裕層に応分の負担をさせるというものだ。
とはいえ、今回の演説は見事なものだった。堂々としていて熱意にあふれていた。トランプ氏の準備は2017年の時よりも整っていた。4日の演説を見る限り、彼は以前よりも楽しんでいるようだ。
ドナルド・トランプ米大統領が教育省の廃止に向け、早ければ6日にも大統領令を出す見通しとなった。事情に詳しい関係者らが明らかにした。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した大統領令の素案では、リンダ・マクマホン教育長官に対し、「法律で認められる最大限の範囲内で」、教育省の廃止に向け、「あらゆる必要な措置を講じる」よう求めている。
今回の大統領令はトランプ氏が政権移行への準備を進めていた当時から取りまとめていたもので、WSJは2月上旬には、政権が教育省の廃止を検討していると報じていた。
大統領令案は「連邦政府のプログラムと資金を通じて米国の教育を管理するという実験、そしてそれらのプログラムと資金に支えられた説明責任のない官僚らは、子どもたち、教師たち、そして家族たちを失望させてきた」とも言及。WSJが確認した草案には「決定前」と記されており、今後内容が変更される可能性もある。
マクマホン氏は3日夜、上院で承認された直後に職員に送った電子メールで今後の方針に触れ、「教育を州政府に戻す」と述べた。さらにトランプ氏と国民が「教育省の官僚機構の肥大化を解消するという重要な最終任務を、迅速かつ責任を持って遂行するようわれわれに課した」と付け加えていた。
法律専門家らによれば、教育省を完全に解体するには上院で絶対多数となる60人以上の賛成が必要となる。また障害のある学生向け資金や学生ローンなどといった同省が管轄する主要プログラムは法律で定められたものであり、大きな政治的支持基盤がある。大統領令案には、議会への言及は含まれていない。
法律事務所ブルーマン・グループのジュリア・マーティン氏は「法律で定められていない(教育省の)機能など思いつかない。なぜなら、ほとんどの機能は法律で定められているか、もしくはそれらの機能を果たすためのものであるからだ」と述べた。
マクマホン氏は承認公聴会で、トランプ氏は連邦プログラムを削減するのではなく、より効率的にする意向だとした。また教育省の廃止には議会の同意が必要だとも述べていた。
トランプ政権はすでに同省を弱体化させるための一連の措置を講じており、試用期間中の職員を解雇し、他の職員には退職奨励金を提示している。また公民権執行業務の一部を停止し、研究や教師の質に関連する多くの助成金や契約もキャンセルしている。
教育省は昨年の時点で約4500人の職員を抱えており、閣僚級機関の中で最小規模となっている。世論調査ではほとんどの米国民が教育省の廃止に懐疑的で、民主党は反対の姿勢を示している。
トランプ米政権のウィトコフ中東担当特使は6日、ウクライナと和平合意や停戦の枠組みを巡り協議しており、来週サウジアラビアでウクライナ当局者と会談する計画と明らかにした。
ウィトコフ特使はホワイトハウスで記者団に対し「ウクライナとの会談の調整に向け協議を行っている」と明らかにし、「和平合意と初期段階の停戦の枠組みをまとめるのが狙い」という認識を示した。
会談はリヤドかジッダで開催される公算が大きいという。
これに先立ち、FOXニュースとニュースサイトのアクシオスは関係筋の情報として、トランプ米政権の高官が12日にリヤドでウクライナ当局者と会談すると報じた。
報道によると、ウクライナからはゼレンスキー大統領ら、米国からはルビオ国務長官らが出席する見通しという。
トランプ米大統領は6日、カナダとメキシコからの輸入品の大半に対する25%の関税について、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠した製品は4月2日まで延期する大統領令に署名した。米国にとって最大の貿易相手国に大きな時間的猶予を与えることになった。
関税の一時停止は不法移民と合成麻薬フェンタニル追跡に関連するもので、4月2日までとなる。この日には大統領が世界各国に対する相互関税や、特定分野を対象とした関税計画の発表を開始する見込みだ。
トランプ大統領は大統領執務室でメキシコとカナダについて「最近、彼らはかなり懸命に取り組んでいるが、あなた方はそれに気付いているか? 流入してくる人と麻薬に関してだ。われわれは両面で大きく前進した」と述べた。
USMCA要件に合致する自動車・自動車部品は、関税賦課が免除される製品に含まれる。米農業生産者が肥料として大量に使用するカナダ産カリは、10%の低い関税率が適用される見込み。
ホワイトハウスは、カナダからの輸入品の62%はなお関税の対象で、その大半は10%の税率が適用されるエネルギー製品になると想定し、メキシコからの輸入品は5割が対象と推計している。ホワイトハウス当局者は、輸入業者が新規則への対応を急ぐ中で、この割合が変わる可能性があるとした。
トランプ大統領は自動車メーカーへの救済措置については短期にとどまると警告し、さらなる延長に来月署名することはないと明言した。
「私は彼らにこれが最後だ、短期のディールだと伝えた」と述べ、自動車業界幹部に対し再び救済を求めてこないようよう話したと語った。
4日にトランプ氏は1世紀ぶりとなる大規模な関税引き上げを発表していたが、48時間後に方針を撤回したことになる。背景には株価急落や、共和党が経済への影響を巡る懸念を示したことがある。
大統領は「私は市場を見てもない」と述べ、市場の反応を重視しない姿勢を示した。また外国が「米国から金を巻き上げている」と主張し、関税適用で米国はより強固な立場になると指摘した。
「短期的な混乱は常に生じるだろう。大きな混乱にはならないと思う」と語った。
トランプ米大統領は6日、「米国は日本を守らなければならないが、日本はどんなことがあっても米国を守る必要がない」と述べた。日米安全保障条約が片務的と不満を示した形だ。ホワイトハウスで記者団に語った。
「私は日本が大好きだし、日本とは素晴らしい関係にある」と言及したうえで「しかし、日本とは興味深いディール(取引)がある」と日米安全保障条約に触れた。
●先進国中銀、金融当局
欧州中央銀行(ECB)は6日、主要政策金利の預金金利を0.25%引き下げ2.5%とした。利下げは5会合連続で過去9カ月で6回目となる。
声明で「利下げにより企業や家計の借入コストが低下し融資の伸びが加速するなか、金融政策は実質的に制約的ではなくなりつつある」とした。
理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。
<不確実性の増大>
不確実性が増大しており、投資と輸出に対し予想を上回る重しになる可能性が高まっている。ただ、所得の増加と借入コストの低下が経済成長の下支えになるとみられる。
ECBのスタッフ予測では、貿易摩擦がこれ以上激化しない限り、世界的な需要の回復に伴い、輸出は持ち直すとの見方が示されている。
<消費の持ち直し>
家計収入の増加と堅調な労働市場を背景に、消費は緩やかに持ち直している。ただ、消費心理はなお脆弱だ。貯蓄率も高水準で推移している。
●先進国経済指標
米労働省が6日発表した3月1日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比2万1000件減の22万1000件だった。予想以上に減少し、輸入関税や連邦政府支出の大幅削減による混乱はあるものの、労働市場が安定を維持したことが示された。
ロイターがまとめたエコノミスト予想は23万5000件だった。
2月22日までの1週間の継続受給件数は4万2000件増の189万7000件だった。
再就職あっせん会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスがまとめた2月の米国で発表された人員削減数は、245%増の17万2017人となり、コロナ禍で経済が混乱していた2020年7月以来の高水準に達した。2月としては16年前の大不況以来の高い数字だった。
連邦政府職員の解雇、契約キャンセル、貿易戦争への懸念が背景にあるとみられ、トランプ政権が労働市場に与えた打撃が鮮明になった。
2月は連邦政府の17機関が6万2242人の人員削減を発表、全体の削減数のかなりの割合を占めた。政府の人員削減数は今年1─2月は約6万2530人と、前年同期比で4万1311%増となっている。
チャレンジャーのシニアバイスプレジデント、アンディ・チャレンジャー氏は「大量解雇が起こると、残った人も不安や不確実性を感じる傾向がある。自主的な退職者が今後、増える可能性が高い」と述べた。
実業家イーロン・マスク氏が率いる政府効率化省(DOGE)が連邦政府職員の解雇を進める中、チャレンジャーはDOGEが関連する削減数(連邦政府職員と請負業者)は6万3583人に上るとしている。
欧州連合(EU)統計局が6日発表したユーロ圏の1月の小売売上高は前月比0.3%減少した。非食品と燃料が減少した。0.1%増の市場予想に反してマイナスとなり、消費主導の景気回復がまだ見通せないことが示された。
小売売上高の伸びはこれで4カ月連続のマイナスもしくはゼロとなった。
国別では、ドイツが小幅増となる一方、フランスとイタリアは減少した。
ユーロ圏の小売売上高は前年同月比1.5%増と、前月の2.2%増から鈍化し、予想の1.9%増も下回った。
欧州中央銀行(ECB)当局者は、利下げ継続もしくは休止を巡り、次回政策金利を決定する4月会合では激しい議論が交わされることを覚悟している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
部外秘の内容を話しているとして匿名を条件に述べた同関係者によると、ハト派的な当局者は今のところ、休止の根拠はほぼ見当たらないと考えている。その一方で、よりタカ派的な当局者は地政学的なリスクや欧州での防衛費拡大の影響を見極めるため、休止の方向に傾いているという。
インフレ率が目標の2%へと低下しつつある中、昨年6月から実施した6回の利下げで特に反発はあまり起きなかった。ラガルド総裁は6日の政策声明発表後の記者会見で、利下げには反対がなかったことを明らかにした。オーストリア中銀総裁で政策委員会メンバーのホルツマン総裁だけは棄権した。
当局者らは、政策スタンスに対する「景気抑制の度合いが有意に低下しつつある」との声明の文言を歓迎し、タカ派・ハト派いずれも今後数週間にわたって金利について見解を示す上で役立つとみているという。
ECBの報道官はコメントを避けた。
DWSのシニアエコノミスト、ウルリケ・カステンス氏は「ユーロ圏でより高い成長率とディスインフレプロセスの減速を見込んでいる」と指摘、「これらはいずれも、今後1カ月における追加利下げの余地を引き下げるだろう」と続けた。
●金融市場、先進国トピックス
スタグフレーションが話題に上り始めた。
輸入品への関税を大幅に引き上げるというドナルド・トランプ米大統領の決定により、米国は成長の鈍化または停滞と物価上昇が同時に起こる不快な状況に直面する恐れがある。いわゆるスタグフレーションだ。
米国はメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課し、中国に対しては先月の10%引き上げに続いてさらに10%を上乗せした。プルーデンシャルのチーフエコノミスト、レイ・ファリス氏は、関税が企業の投資計画に大きな混乱をもたらすとの見方を示し、「インフレを引き起こすため、雇用と賃金の伸びの鈍化によって家計所得の拡大が減速している中で、実質家計所得にショックを与えることになる」と述べた。
トランプ大統領がどれだけの期間関税を維持するつもりなのかはまだ不透明だ。ハワード・ラトニック商務長官は4日午後にFOXビジネスに出演し、関税引き下げが検討されている可能性を示唆した。
一部のエコノミストは、関税が維持されれば景気後退の可能性が大幅に高まるとみている。
アクセス/マクロのチーフエコノミスト、ティム・マヘディー氏は「事態は急速に悪化しかねない。1970年代や80年代ほどの水準ではないが、スタグフレーション、またはミニスタグセッション(小規模なスタグフレーション的景気後退)の兆しがある」と述べた。
ここ数週間の景況感指標や企業関係者のコメントは、物価上昇の脅威に対する信頼感の低下を示している。
米家電販売大手ベストバイのコリー・バリー最高経営責任者(CEO)は4日、アナリストに対し、中国とメキシコが同社で販売される家電製品の調達先の上位2カ国だと指摘。「全商品ラインアップにわたって、当社のベンダーが関税コストの一部を小売業者に転嫁すると予想している。米国の消費者向け価格が上昇する可能性が極めて高い」と語った。株式市場が全体的に下落する中、同社の株価は13%急落した。
ニューヨーク州ロチェスターを拠点とする従業員95人のブラザーズ・インターナショナル・フード・ホールディングスは、メキシコからマンゴーとアボカドを輸入し、食品・飲料メーカーにフルーツジュース、ピューレ、凍結濃縮食品を販売している。同社は顧客に関税引き上げ分を転嫁するか、利益率の低下を受け入れざるを得なくなっている。
同社の顧客の多くは関税発動を見越して1月に出荷を前倒しした。「今後数カ月は販売の軟化に備えている」とジャック・ウィティアー最高執行責任者(COO)は述べた。
トランプ氏と同氏の顧問らは、米国経済の再構築という政権の長期的な目標を達成するためには、短期的な痛みは正当化されるかもしれないと述べている。また、エネルギー生産を後押しする措置が物価上昇を相殺する可能性も指摘している。とはいえ、関税は米連邦準備制度理事会(FRB)にとって対処するのが特に難しい経済的脅威だ。FRBの使命はインフレを低水準に安定させつつ、健全な労働市場を維持することだ。関税は「供給ショック」を意味し、インフレ率を上昇させる(これは利上げを促す)一方で、雇用に悪影響を与える(利下げを促す)。FRBはどちらの問題を重視するかを選択しなければならない。
FRB当局者らは過去18カ月間で経済のソフトランディング(軟着陸)を実現できたかもしれないと考えていた。一部の当局者はスタグフレーションのシナリオを公の場で警告している。
セントルイス地区連銀のアルベルト・ムサレム総裁は3日、ワシントンで開かれた経済会合で「労働市場の悪化とインフレ上昇が同時に起これば、難しい選択を迫られる可能性がある」と語った。
ニューヨーク地区連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は4日、ブルームバーグ主催のイベントで、関税により今年のインフレ率が予想以上に上昇すると見込んでいると述べた。消費財への関税は「消費者が支払う価格に比較的早い時期に反映される」とした一方、中間財への関税は価格に反映されるまでに時間がかかるが、その影響は長く続くと指摘した。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコアインフレ率は、FRBが重視する指標ではピークだった2022年の5.6%から着実に低下を続けており、1月には2.6%となった。それでもFRBの2%目標をまだ上回っている。
ボストン連銀の調査担当者らは、カナダとメキシコへの関税を25%、中国への関税を10%引き上げると、米国の輸入業者の対応によってはコアインフレ率が0.5~0.8ポイント上昇する可能性があると推定している。この推定では、消費者が安価な国内製品に代替することや、報復措置の導入、為替レートの変動は考慮されていない。
サンフランシスコ連銀に以前勤務していたマヘディー氏は「経済が縮小すれば物価上昇は小幅で済むが、冷え込みもあまり期待できない。これはFRBの足かせとなる」と述べた。金融政策はしばしば過去のデータに基づいて決定されるため、景気減速下でのインフレ懸念は「金融政策の対応が遅れる状況が整っている」ことを意味すると同氏は指摘した。対照的に、19年の貿易戦争時にはFRBが景気後退を先取りして行動したが、これはインフレ率が低かったため可能だった。
インフレの高止まりや長期的なインフレ期待の上昇は、利下げの正当化を難しくする。セントルイス連銀のムサレム総裁は「インフレが目標水準かそれ以下で、消費者や企業が最近高インフレを経験していなかった場合に比べて、潜在的なリスクはより高い」と述べた。
ムサレム総裁は米国で前回スタグフレーションが起きた1970年代に言及した。FRBは当時、インフレ抑制のために金利を引き上げ、その後高い失業率に対処するために金利を引き下げるという「ストップ・ゴー・ストップ」政策を繰り返したが、「インフレも失業も十分に抑制できなかったため、広く失敗とみなされている」と同総裁は語った。
確かに、アナリストらは過去4年間にわたって繰り返しスタグフレーションを警告してきたが、それが現実のものとなることはなかった。サプライチェーン(供給網)の混乱と政府支出の急増を背景に生じた新型コロナウイルス流行時のインフレの特異な性質により、FRBは景気後退を引き起こすことなく、インフレ抑制のために急ピッチで利上げを行うことができた。
FRB当局者らはコロナ禍によるインフレが21年に発生した当初、短期的な供給ショックによるコスト圧力は一時的、つまり自然に解消されるものだとし、大幅な利上げを行うべきではないと判断した。
シカゴ地区連銀のオースタン・グールズビー総裁は、理論的には関税も一時的な供給ショックであるため、同様の議論が現在も行われていると述べた。「『一時的』という言葉が出たらすぐに警戒すべきだ。なぜならその論理は正しくなかったことが分かったからだ」  グールズビー総裁は「コロナ禍での規模に近づく政策ショックが発生した場合」、当時の教訓が特に関連性を持つだろうと語った。
筆者は旧東独の共産党独裁政権が国境を開放した直後に東ベルリンに行き、筆者が生まれてからずっと欧州を分断していた壁から、落書きされたコンクリート片を削り取った。全てが変わった。
この1週間は、1989年にもたらされたのと同じくらい重要な変化の始まりかもしれない。だが、武装した警備隊が守る検問所を大勢の群衆が通過するという印象的な映像はなく、投資家は新たな現実を織り込むのに苦労している。
投資家は三つの大きな問題に対処する必要があり、どれも簡単な答えがない。最も重要なのは、グローバルな同盟関係を作り替える動きと、その長期的な影響だ。最も差し迫った問題は、関税に対する米連邦準備制度理事会(FRB)の反応だ。その中間にあるのは、脱グローバル化と各国間の信頼喪失、金融障壁の可能性だ。
短期的な話から始めよう。カナダとメキシコからの輸入品に対する関税は、中国への10%の追加関税と共に、全米で即時の物価上昇や生産の混乱を招く恐れがある。企業は北米のサプライチェーン(供給網)統合の流れを逆戻りさせようとしている。
関税発動の再延期を見込んでいたゴールドマン・サックスの予測では、カナダとメキシコに対する関税により、食品とエネルギーを除くコアインフレ率が0.6ポイント押し上げられ、対中追加関税の影響でさらに若干押し上げられるという。消費者のインフレ見通しが上昇しており、FRBは難しい立場に置かれている。
中央銀行は伝統的に、関税のような供給ショックを無視しようとする。結果としての値上げは一度限りとの見方からだ。これにより、中銀は経済を支えるための利下げが可能になる。それはまた、株式市場が受けるダメージを軽減させる。
だが、値上げが繰り返されると消費者と企業が考えるなら、そうした予想だけでもインフレ高進につながり得ることをFRBは懸念し、利下げに消極的になるだろう。
現在のところトレーダーらは、FRBが経済の方を重視して利下げするという見通しに賭けている。CMEのFedWatchツールによると、金利先物市場は現在、年内に少なくとも4回の利下げが実施される確率を38%織り込んでいる。1月20日にドナルド・トランプ大統領が就任した直後の4%程度から急上昇した。
しかし、関税によってインフレ率が押し上げられても、FRBは本当に利下げをしようとするだろうか。
長期的に見ると、世界の新たな同盟・協力関係は、ソ連崩壊後の秩序を脅かす。国連でロシアと北朝鮮の側(がわ)に立ち、反ウクライナの立場を取ったトランプ氏の判断は、強力なシンボルだった。それは米大統領執務室におけるウクライナ大統領への対応によっても浮き彫りになった。こうしたメッセージを受け取った欧州の政治家たちは、欧州大陸は自力で防衛する必要があり、もはや北大西洋条約機構(NATO)に頼ることはできないと相次いで警告した。欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会とドイツが話し合っている新たな借り入れによって、軍事費として数千億ユーロもの資金が調達される可能性がある。
われわれはベルリンの壁の崩壊以降、半世紀近くにわたり、軍事よりも経済を優先する世界で暮らしてきた。中国が台頭し、米国がもはや信頼できる同盟国と見なされない中で、軍事が再び優先されることになるだろう。消費を防衛支出に入れ替えるように経済・貿易・税システムを再構築すれば、政治的な論争が巻き起こるとともに、大きな負担が生じるだろう。欧州の軍事関連企業は明らかな勝者となる。敗者になるのは誰だろうか。
世界の同盟・協力関係が流動的になっている中で、この軍事重視への転換は、第2次世界大戦後初めて、世界を多極化へと向かわせる要因ともなりかねない。
米国の友人たちの一部は、トランプ氏の任期が4年だけであり、次の大統領はトランプ氏よりも、米国の従来の約束を守ることに前向きになるはずだと、自らを納得させようとしている。しかし、ドイツの次期首相就任が確実視されるフリードリヒ・メルツ氏を含む熱心な大西洋主義者の一部でさえも、一度壊れた信頼関係をすぐに元に戻すのは不可能だと認識している。そして今週も、信頼関係を壊す出来事が起きた。たとえトランプ氏ないし彼の後継者が率いる米国が再び同盟諸国に友好的になることがあったとしても、同盟諸国は自立できる力を持つ必要がある。
軍備の再増強と、多方面との新たな冷戦勃発の可能性が、世界経済に及ぼす打撃は一体どれほどなのだろうか。どのような同盟・協力関係が新たに構築されるのだろうか。
トランプ氏は、この複合的状況を関税によってさらに流動的にした。トランプ氏の言動を単なる脅しだと考えていた投資家たちは、その考えを改めさせられた。トランプ氏が、米経済と隣国との関係が損なわれるにもかかわらず、これら隣国からの輸入品に高い関税を適用したからだ。貿易障壁が高くなれば、世界の生産性と成長率は低下する。そして、こうした関税に対する報復措置によって、貿易障壁はさらに高くなっていくかもしれない。米国から関税を課された中国とカナダは、すぐに対抗策を打ち出した。
米政府が好き勝手に関税を導入すれば、企業に対する政府の影響力が強まる。企業は、自社が輸入する重要部品の関税免除を求めてロビー活動を行わざるを得なくなる。企業はまた、工場の立地やサプライヤーに関する決定を下す際に、貿易協定の恩恵を当てにできなくなる。その協定が現職大統領と同じ人物がまとめたものであってもだ。2018年の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のケースがそれに当てはまる。関税が実際に導入されない場合でも、こうした不透明感はそれ自体、企業活動に悪影響をもたらす。
景気の減速がどれほど深刻になり得るかについて懸念する声も既に出始めている。米国の景気後退(リセッション)について語るのは時期尚早だと筆者は考えるが、この「リ」から始まる言葉が不用意に使われるようになっている。米国債市場では再び「逆イールド」が発生し、10年債利回りが3カ月債利回りを下回っている。ただ、この昔からあるリセッションの警告シグナルは、昨年12月までの2年間点灯していたが、実際にはリセッションに至らなかった。
長期的には、より深刻な問題がある。欧州各国政府は、軍事費の増強を始める前の段階で既に多額の債務を抱えている。米国は、丁重な表現をすれば、「持続不可能な財政軌道」をたどっている。つまり債務は永遠に増え続け、抑制の見込みがない。どの国でも増税は政治的な難題だ。そうかと言って歳出削減が歓迎されることはほとんどなく、成長の妨げにもなる。世界貿易の効率が悪くなれば、債務への対処はさらに難しくなる。
先進国の政府債務が過剰になると、投資家はその国の債券から資金を引き揚げ、利回りが上昇する。これは2010~12年のユーロ圏経済危機の際に欧州で起きたことであり、英国は2022年、短命政権に終わったリズ・トラス首相の下で再びこれを体験した。第2次大戦後、多くの国々にとって解決策は「金融抑圧」だった。金融抑圧とは、金利を人為的に低く抑え、資本規制を用いて自国からの資金流出を防ぐ一方、インフレによって債務価値を減らすことだ。
欧米諸国で資本規制が行われるような状況には程遠い。だが、状況は急速に動いている。事態はどこまで悪化する可能性があるのか。これらのリスクからどのように資産を守るのか。筆者が持ち帰ったあのベルリンの壁のかけらはどこに行ったのだろう。壁の崩壊がもたらした希望が再び見つかれば素晴らしい。
木曜日、世界中で政府の借入コストが上昇し、ドイツ国債は再び売り込まれ、35年前のドイツ再統一以来最大の利回り上昇をもたらした。
債券価格と利回りは反対方向に動きます。つまり、資産価値が下がると利回りは上昇します。
ドイツ国債(ブンデス債とも呼ばれる)の利回りは水曜日に急騰し、10年債の利回りは約30ベーシスポイント上昇した。この売りは、ドイツの次期連立政権を形成すると広く見込まれている政党の議員らが、国防費の増額を可能にするために  歴史的な債務政策ルールを改革する計画に合意したことを受けて起きた。
ドイツ政府の借入コストは木曜日も全般的に上昇を続けた。10年国債の利回りは
ユーロ圏のベンチマークとされる5年国債利回りは、ロンドン時間午後12時28分時点で7ベーシスポイント上昇し、これまでの高値から下落した。
20年国債
それぞれ4ベーシスポイントと6ベーシスポイント上昇した。同時に、ドイツ最大手企業の株価指数であるDAXは過去最高値に達した。
ドイツ銀行の調査ストラテジスト、ジム・リード氏は木曜朝の顧客向けメモで、ドイツの政治のギアシフトが欧州におけるリスク資産への需要拡大につながったと述べた。
「反応の点では、10年国債利回りの上昇は1990年のドイツ再統一以来最大の日次上昇だった」と同氏は述べ、ユーロとドイツのDAX指数が
このニュースを受けて、欧州の資産は急騰した。「市場が一世代に一度の政策体制の転換を織り込んでいることは間違いない。それが欧州資産の大きなリスクオンの動きをもたらした」
「売り圧力の要因として、ドイツ株の好調とインフレ期待の上昇の両方が示すように、財政による需要刺激策への期待が最重要だった」とラボバンクのアナリストらは木曜朝の報告書で述べ、ドイツからの政治ニュースを受けてユーロ圏の10年インフレ・スワップが14ベーシスポイント急騰したことを指摘した。
木曜日には欧州全域で政府への融資意欲が減退し、地域全体の債券利回りが小幅上昇した。
欧州の借入コストの上昇は、欧州中央銀行による最新の金融政策発表を前にも起きている。市場は、中央銀行が木曜遅くに決定を発表する際に0.25ポイントの利下げが行われ、ユーロ圏のコア金利が2.5%に下がると予想している。
午後12時29分までに、ロンドン市場でイタリア10年債利回りは8ベーシスポイント上昇し、フランス10年債利回りは7ベーシスポイント上昇、スイス10年債利回りは午後早い時間帯の取引で約5ベーシスポイント上昇した。
英国10年国債(ギルト債)の利回りは約6ベーシスポイント上昇した。今年初め、英国政府の借入コストは経済不確実性の高まりにより数十年ぶりの高水準に達した。
さらに、債券売りは日本市場にも波及し、日本の10年国債の利回りは
木曜の取引時間中に7ベーシスポイント上昇した。
ロンドンのザイ・キャピタル・マーケッツの最高投資責任者、ナイーム・アスラム氏はCNBCに対し、日本の債券利回りは木曜日に16年ぶりの高値に近づいたこともあり、トレーダーは日本の債券利回りを注視すべきだと語った。
「上限金利にもかかわらず日本が利回りを上昇していることに注目してください。それはより広範な市場の緊張の兆候となる可能性があります」と同氏は電子メールでのコメントで述べた。
米国では、ベンチマークとなる10年国債の利回りは
直近では4ベーシスポイント上昇し、4.311%前後で取引された。
ADMインベスター・サービスのチーフエコノミスト兼グローバルストラテジストのマーク・オストワルド氏は木曜日、世界的な債券売りの背後には2つの主な要因があるとCNBCに語った。
「一つは、トランプ大統領の関税戦争がインフレを招くのではないかという懸念だ」と彼は電子メールでのコメントで述べた。
同氏は、ドイツの次期首相となる可能性が高いフリードリヒ・メルツ氏の欧州防衛に対する「『何でもやる』2.0」アプローチも債券価格に圧力をかけていると付け加えた。
「これは、EUが防衛費を約8000億ユーロ(8640億ドル)増額すると約束したことと相まって、政府の借入額の大幅な増加を意味し、ドイツ国外での債務負担が記録的な水準にある時期に起きている」とオストワルド氏は述べた。
バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのG10金利・為替戦略部門グローバル責任者ラルフ・プロイサー氏は木曜日、市場は関税、地政学、米国の財政政策という3つの世界的な不確実性に悩まされていると電子メールで語った。
「これらすべての詳細が重要だが、今のところは不確実性のショックの方が大きく、金利市場が価格設定を難しくしている」と同氏は述べた。「インフレリスクを考えると、FRBは迅速な利下げに苦戦するかもしれないし、欧州はもはや米国の財政拡大ではなく自国の財政拡大に資金を提供している。関税や地政学は米国よりも世界の他の国々にとって依然として大きなダメージを与えている」
プロイサー氏は、特に欧州では、ドイツの新たな政治的立場がバンク・オブ・アメリカの見通しに課題をもたらしていると述べた。
「ドイツは財政姿勢のパラダイムシフトを起こしている」と同氏は述べた。「我々はこれに応じて10年国債の利回りが2.75%に達する可能性があると考えている。我々の基本シナリオからのこの大きな逸脱は、2025年に対する我々の想定に対する唯一の課題ではない。米国株式市場の調整と米国の短期金利の上昇は、我々の予測を取り巻くリスクをより広範に再考する必要があるかもしれないことを示唆している。」
UBSインベストメント・バンクの金利ストラテジスト、エマヌイル・カリマリス氏も、市場はドイツの財政改革案や欧州連合(EU)の「欧州再武装化」計画に「明らかに」反応したと述べた。「これらの計画は、欧州の防衛費増額が急務となっているため、発行パターンが大幅に増加していることを示唆している」と同氏は木曜日の電子メールでのコメントで述べた。「その結果、投資家は予想される供給増加を吸収するためにより高いプレミアムを要求する。成長とインフレにも影響があるが、今週は財政ニュースと供給の検討が中心だったとみている」
日本の国債利回りは木曜日に急上昇し、10年国債利回りは2009年6月以来の高水準を記録した。専門家は世界的な国債売り圧力を指摘している。
10年国債の利回りは8ベーシスポイント近く上昇し、2009年以来初めて1.5%を超えた。一方、30年国債は13ベーシスポイント上昇し、2008年以来初めて2.5%を突破した。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのシニア債券ストラテジスト、マサヒコ・ルー氏は、国債の売りは世界的な利回りの上昇圧力と連動していると述べた。米国の10年国債利回りは5ベーシスポイント上昇し、4.317%となった。
野村の日本FX戦略責任者、後藤雄二郎氏はCNBCに対し、現在、日本国債市場の需給は好調ではないと語り、欧州国債の利回りが急上昇していることも指摘した。
「投資家は現在、EUとドイツ政府が財政支出を増やすと予想しており、それが世界の債券利回りに上昇圧力を加えている」と同氏は述べた。
ドイツの10年債利回りは2023年10月以来の高水準に急上昇し、2.8%に達した。
日本銀行の内田慎一副総裁の発言も売りを助長した。報道によると、内田副総裁は日銀が「金融市場と経済学者の主流の見解に沿ったペースで金利を引き上げる可能性が高い」と述べたという。
ルー氏は、日銀の利上げサイクル継続への期待に加え、日本の銀行などの投資家は3月の会計年度末を前にリスク選好度を低く抑えて様子見姿勢を保っていたと述べた。
先週、内田総裁は、最近の利回り上昇にもかかわらず、日銀は国債購入の規模縮小を続けるだろうとも述べたと報じられている。
日銀は昨年、超金融緩和政策の正常化に踏み切り、国債購入額を四半期ごとに約4000億円削減すると発表した。
バークレイズのアジアFX・金利戦略責任者ミトゥル・コテチャ氏は木曜日、CNBCの「スクワークボックスアジア」で、売り圧力の一因は日本のインフレ上昇にあると語り、「実際のインフレは実際の指標が示すものよりもさらに高いと言っている人が多い。だから、その一因は利回りを押し上げているインフレの動きにあると思う」と語った。
日本の総合インフレ率は日銀の目標である2%を34カ月連続で上回っており、直近の1月の数値は2年ぶりの高水準となる4%を記録した。
日銀が注視している生鮮食品とエネルギー価格を除いたいわゆる「コアコア」インフレ率は1月に2.5%と小幅上昇し、2024年3月以来の高水準となった。
インフレ率が上昇すると日銀によるさらなる利上げへの期待が高まり、債券利回りが上昇する。
米連邦政府の規模を劇的に縮小しようとするトランプ政権の矢継ぎ早の取り組みを受け、エコノミストの間では、2025年も労働市場が堅調に拡大するとの予測を見直す動きが出ている。
ブルームバーグ・エコノミクスは、トランプ大統領就任からの6週間ですでに数万人の連邦政府の雇用が削減されたと推計している。コメリカ・バンク、エバコアISI、バークレイズなどは、年末までに50万人超の雇用が失われる可能性があるとみている。
50万人という数字には民間部門への波及効果も含まれており、2024年の雇用増の4分の1が実質的に消える計算になる。7日発表の2月雇用統計では、連邦政府縮小の影響は限定的なものにとどまるとみられる。しかし、3月と4月の統計では、より顕著な影響が現れることになりそうだ。
再就職あっせん会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのデータによると、米雇用主が2月に発表した人員削減数は前年比103%増の合計17万2017人と、新型コロナ禍初期に当たる2020年7月以来の高水準に達した。また別の統計では、連邦政府職員による失業保険申請件数は、利用可能な最新データである2月22日終了週で1634件と、前の週(614件)から急増した。
イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」が各省庁に各種契約の見直しや打ち切りを求めているため、政府機関と取引のある民間企業も人員削減を始めている。
科学的イノベーションや国際開発への連邦政府からの拠出停止の動きは、大学や非営利団体(NPO)での雇用計画を変えつつある。首都ワシントンなど連邦政府職員が多く働く地域では、レストランやホテルなどのサービス業者もおそらく打撃を受けるだろう。
パンテオン・マクロエコノミクスのエコノミスト、サミュエル・トムズ、オリバー・アレン両氏は2月25日のリポートで、民間部門では10月までに10万人分の雇用が影響を受けると予想。「連邦政府の雇用削減による収入減や、DOGEの混乱を招くアプローチが引き起こす不確実性により、支出と雇用の後退が広がる公算が大きい」とした。
州政府には採用の動き
過去2年にわたって米国全体の雇用増の原動力となってきた州政府および地方自治体は、失業した連邦政府職員の採用に積極的だ。
首都ワシントンの玄関口であるユニオン駅では、自由の女神をモチーフにした広告に「DOGEが解雇と言うなら、われわれは採用と言おう」と書かれている。これは、ニューヨーク州が州政府関連の求人7000件への応募を呼び込むために始めたキャンペーンの一環だ。
7日発表の雇用統計は、連邦政府関連の人員削減が本格化する前の2月第2週にデータ収集が行われたため、DOGEが進める措置による影響は限定的だろう。  
しかし、その影響は今後数カ月で顕在化するとみられる。ホワイトハウスは連邦政府機関に対し、3月13日までに「大規模人員削減」の計画を提出するよう命じている。
こうした人員削減の波は失業率の上昇と個人消費の減速を招く恐れがあり、ウォール街にとっては米経済の下振れリスクが増えることを意味する。トランプ大統領の関税政策や移民強制送還も金融市場のセンチメントを支える役割は果たしていない。  
パンテオンのエコノミストは「これまでのDOGEの行動は米経済をリセッション(景気後退)に追い込むほどだとは思わない。しかし、労働市場への打撃はすぐに数字に表れるはずだ」としている。
●中東情勢
●エマージング
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
- **為替市場**:円とスイスフランが上昇し、ドルが下落。トランプ政権の関税政策に対する懸念がリスク回避の動きを強めた。ドル指数は0.3%下落し、一時4カ月ぶりの安値。ユーロはECBの利下げを受けて一時1.0854ドルと4カ月ぶりの高値を記録。
- **債券市場**:長期債利回りが上昇。トランプ政権の関税政策や「政府効率化省」による政府縮小の影響への懸念が広がる中、不安定な相場展開。米10年債利回りは4.28%、30年債は4.576%。米貿易赤字は過去最大。
- **株式市場**:反落。貿易政策の不透明感からナスダックが12月以降の調整局面入り。S&P500は一時200日移動平均線を下回る。半導体株が大幅安となり、フィラデルフィア半導体指数は4.5%下落。
- **商品市場**:金先物はほぼ横ばい(1オンス=2926.60ドル)。米原油先物(WTI)は小幅反発(1バレル=66.36ドル)。
ロンドン株式市場はまちまちの展開となり、FTSE100は続落したが、中型株のFTSE250は0.16%上昇。英国債利回りの上昇や米関税措置への不透明感が重しとなった。銀行株が大きく下落し、不動産関連株も下落。一方、建設・資材株は上昇した。  
欧州株式市場はほぼ横ばいで終了。ECBは市場予想通り利下げを決定したが、長期金利の上昇が重しとなった。銀行株や自動車株は上昇し、フォルクスワーゲンやBMWが特に買われた。  
ユーロ圏債券市場では、ドイツの「債務ブレーキ」改革により国債発行増の見通しが強まり、ドイツ10年債利回りが大幅に上昇。ECBの利下げ発表後も、声明文の変更を受けて利回り上昇が続いた。

備忘録(2025/3/5
●海外企業決算
●海外企業
●日本企業
●先進国政治動向
トランプ米大統領は4日夜、上下両院合同会議で施政方針演説を行った。2017年に自ら成立させた減税を延長するよう議会に訴えたほか、4月2日に相互関税を導入する方針を改めて示した。
演説は100分間に及び、アメリカン・プレジデンシー・プロジェクトによれば大統領の議会演説として米近代史上最長となった。
トランプ氏は民主党のバイデン前大統領を非難し、移民の犯罪者を「野蛮人」と呼び、「トランスジェンダー・イデオロギー」を攻撃。選挙戦中の集会をほうふつとさせた。
「米国は戻ってきた。わが国は、世界が目撃したことのないような、そしておそらく二度と目撃することのないような復活を遂げようとしている」と述べた。
<ゼレンスキー氏から書簡>
トランプ氏によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は4日、両首脳の衝突によって宙に浮いている鉱物資源取引に署名する用意があると書簡で伝えてきたという。
トランプ氏は「われわれがロシアと真剣に話し合ったのと同時に、彼らが和平の準備ができているという強いシグナルを受け取った」と説明。「それは素晴らしいことではないか?」と語った。
ただ、外交政策には数分しか時間を割かず、中東に和平をもたらし、政権1期目に達成したイスラエルと一部アラブ諸国の国交正常化「アブラハム合意」を拡大するとの意欲を繰り返した。
<「国王はいない」>
演説開始直後に民主党議員らのやじで中断され、着席を拒否した同党のアル・グリーン下院議員が退場を命じられる混乱もあった。また、一部の民主党議員は「国王はいない」「これは普通ではない」などと書かれたプラカードを掲げ、開始から1時間も経たないうちに約30人が途中退席した。
グリーン議員の退場後、トランプ氏は「目の前にいる民主党員たちを見ると、彼らを喜ばせたり、立ち上がらせたり、笑わせたり、拍手させたりできる言葉が私には全くないということに気づいた」と語り、与野党の分断があらためて浮き彫りになった。
反論演説に立った民主党の穏健派エリッサ・スロットキン上院議員(ミシガン州選出)は、共和党のレーガン元大統領を引き合いにトランプ氏を批判。「冷戦時代に子どもだった者として、1980年代に大統領だったのがトランプではなくレーガンだったことに感謝している。トランプだったら冷戦でわれわれは敗れていただろう」と述べた。
<マスク氏を称賛>
トランプ氏は1月末の就任から6週間で、外交政策を大転換させ、緊密な同盟国との貿易戦争を引き起こし、連邦政府職員を大幅に削減するなどしている。
施政方針演説では、実業家イーロン・マスク氏と同氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」を称賛し、マスク氏が「数千億ドルの詐欺」を発見したと主張した。
<関税では多くの共和党議員が着席>
トランプ氏は関税政策について「他国は何十年もの間、米国に関税を課してきたが、今度はわれわれが他国に関税を課す番だ」と訴えた。
この点については多くの共和党議員が着席したままで、同氏の関税が党内を二分していることを浮き彫りにした。
トランプ氏は根強い物価高についてはあまり触れず、卵の値段についてバイデン氏を非難し、エネルギー増産によってインフレを引き下げると述べた。
また、大規模な減税法案の可決を議員に求める一方、連邦予算を均衡させると誓った。
トランプ米大統領はカナダとメキシコに対する関税について、米東部時間5日の午後に変更を発表する予定だと、ラトニック商務長官がブルームバーグテレビジョンで話した。大統領は自動車セクターなどを対象に税率の引き下げを検討しているという。
大統領による決定はこの日の午後に想定されていると、ラトニック氏は続けた。トランプ政権の関税政策は4月2日の再評価で品目の範囲を広げ、相互関税が導入されると改めて指摘した。
「関税は発動される。それははっきりさせておきたい。しかし大統領が考えているのは、4月2日までにどのセクターを対象に軽減措置を検討するかということだ」とラトニック氏。「何らかの中間になるだろうと考えている」と述べた。
トランプ政権は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)下での規制を準拠している特定の商品を対象に、関税の税率引き下げによる軽減を検討する。USMCAはトランプ氏が最初の大統領任期中、カナダ、メキシコと締結した貿易協定。
ホワイトハウスは5日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠する自動車について、メキシコとカナダに対する関税の適用を1カ月猶予すると発表した。
キャロライン・レビット大統領報道官は、今回の決定は自動車メーカーのフォード・モーターやゼネラル・モーターズおよびステランティスの経営陣からの要請を受けたものだとし、USMCAに基づいて輸入される自動車が対象になると述べた。
各社からは今のところコメントは得られていない。
関税の猶予は、デトロイトに本拠を置く自動車メーカーの製品だけでなく、貿易協定に準拠する全ての自動車に適用されると政府当局者らは明らかにした。
レビット氏はまた、ドナルド・トランプ大統領がこれらの自動車メーカーに認めたような猶予を追加で付与することにも前向きだと述べた。レビット氏は関税がある程度の経済的混乱を引き起こす可能性があることも認めた。
同氏はトランプ氏が4日夜の議会演説で、関税により経済的混乱が生じる可能性があると述べたことに触れ、「大統領は率直かつ正直に話している」とした。
今回の措置を受け、自動車や部品への高額な関税の影響を緩和しようとしていた業界幹部には数週間の猶予が与えられることになる。ただし政権が示唆した潜在的な関税の脅威が消えたわけではなく、自動車メーカーやサプライヤーの間では数カ月にわたって緊急対策の検討が続いている。
レビット氏は「国民は非常に大きな改革と変革をもたらすためにこの大統領を選んだ。これには国内の製造業基盤の再構築や、何十年もわが国を食い物にしてきた外国に立ち向かうことも含まれる。そのためには多少の混乱が必要だ」と述べた。
レビット氏は、トランプ氏が関税の猶予を検討する可能性のある他の分野については具体的に述べなかった。一方で4月2日に予定されている相互関税の発動など、これからの措置については例外を設けない可能性が高いとした。相互関税は、他国が課している関税や非関税障壁と米国の関税を同等にすることを目的としている。
ドナルド・トランプ米大統領は5日、カナダからの輸入品に対して発動した関税を巡り、いかなる歩み寄りも拒むそぶりを見せた。米国への合成麻薬「フェンタニル」の流入阻止に向けたカナダの対策が不十分だと主張した。
ソーシャルメディアへの投稿で、「カナダのジャスティン・トルドー首相から電話があり、関税について何ができるか尋ねられた。カナダとメキシコの国境から流入したフェンタニルで多くの人が亡くなっており、それが止まったことを確信させるものは何もないと伝えた」と述べた。
その上で、「彼は状況が改善していると話した。だが『それでは十分ではない』と私は言った。電話会談は『多少』友好的に終わった! 彼はカナダ総選挙がいつ実施されるのか教えてくれなかった。これは一体どういうことかと不思議に思った。そして、彼がこの問題を権力の維持に利用しようとしていることに気付いた。頑張れジャスティン!」と書き込んだ。
フランスのマクロン大統領は5日、ロシアは欧州全体にとって脅威であるとし、フランスの核の傘を欧州の同盟諸国に拡大することについて議論する用意があると述べた。国民向けの演説で明らかにした。
欧州の核保有国はフランスとイギリスのみ。
マクロン大統領はロシアとトランプ米政権による国際秩序の転覆に対する国民の懸念を認め、フランスは防衛費を増やす必要があり、ウクライナへの支援を続けると明言。ロシアの脅威を前に「傍観して何もしないのは正気の沙汰ではない」とした。
さらにフランスは核抑止力のおかげで欧州で独自の立場にあると強調し、その防衛力を欧州同盟国に拡大することについて議論する用意があると述べた。核兵器に関する最終決定はフランス大統領の手に委ねられるとした。
防衛支出の増額幅は明らかにしなかった。増額のための増税は行わないが、厳しい選択を迫られるとの見通しを示した。
また、米国が「われわれの側に留まる」と信じたいとしながらも、それが事実でなくなった場合に備えて欧州は備えていなければならないとも述べた。
●先進国中銀、金融当局
ドイツ連邦銀行(中央銀行)は4日、憲法で定められた借り入れ上限(「債務ブレーキ」)の抜本的な改革を提案した。これにより政府は2030年までに、最大2200億ユーロ(2320億ドル)の追加資金を国防と投資に充てることができるとしている。
ドイツの債務ブレーキは財政赤字を対国内総生産(GDP)比0.35%に制限するもので、一部の投資家や政治家からは経済成長を阻害しているとの批判が出ている。
独連銀の提案では、政府債務がGDPの60%未満の場合、財政赤字を対GDP比最大1.4%まで拡大することを認め、このうち0.9%ポイント相当を固定資産形成を中心とする投資に充てるとしている。
債務が60%以上の場合は、財政赤字をGDPの0.9%に制限し、全額を投資に充てることを提案している。
連銀は「(対GDP)債務比率が60%を下回る場合、借り入れ可能額は30年までに現状から合計2200億ユーロ増加する。債務比率が60%以上の場合でも、30年までに現状より1000億ユーロ増加する」と試算した。
ドイツの債務は現在GDPの62%程度で、緩やかなペースで減少する傾向にある。連銀の提案は、経済成長が鈍化しても政府債務はGDPの60%に戻ることを前提としている。
連銀は特別基金を設けて国防費を拡大することも選択肢の一つとしながらも、特別基金には制限があり透明性も低くなるため、債務ブレーキ改革の方が望ましいとの見解を示した。
ナーゲル独連銀総裁は「われわれはより予測しやすい債務ブレーキの抜本的な改革を望んでいるが、同様の財政効果を持つ特別基金も選択肢の一つだ」と述べた。
日銀の植田和男総裁は5日、地政学的緊張が国境を越えた資本フローの急激な反転を引き起こすなど、金融の安定に影響を及ぼす可能性があるとして、国際的な協力を呼びかけた。
植田総裁は都内で開かれた国際通貨基金(IMF)主催のセミナーで、アジア新興市場経済の強靭性が今後、地政学的緊張の高まりによって幾つかの形で試されることになると述べた。
各国間の地政学的緊張の高まりは国境を越えた資本フローの突然の反転を引き起こす可能性があるとし、その影響は先進国よりも新興国の方が大きくなる可能性があるとの見方を示した。
また、世界経済の分断で中銀間の金融政策スタンスの乖離が拡大し、それによって市場のボラティリティーが高まり、為替レートの動きに不安定な影響を及ぼす可能性があるとした。
さらに、世界の金融市場におけるノンバンクの存在感の高まりにより、資本フローの予測可能性が低下する可能性もあると指摘した。
その上で、地政学的緊張の激化がもたらし得るこうした影響を考慮すると、アジアの中央銀行とIMFは引き続き協力を深めていくべきだと述べた。
欧州中央銀行は木曜日の会合で今年2度目の利下げを行うと予想されているが、関税を巡る不確実性や地域の防衛費増額の可能性を背景に、政策担当者間の意見の相違が拡大する可能性がある。
市場は水曜日、3月の会合で0.25ポイントの利下げが行われ、ECBの政策金利は昨年半ばのピーク時の4%から2.5%に引き下げられることを完全に織り込んでいた。年末までにさらに2%に引き下げられることも織り込まれていた。
ユーロ圏の総合インフレ率は一貫して3%を下回り、経済成長も弱いままであることから、過去9か月間、比較的速いペースで金融緩和が行われると予想されてきた。ECB理事会はほぼ常に全会一致で決定を下し、市場の期待を導くために次のステップについて比較的確固とした指針を示してきた。
しかし、中央銀行は今や、政策が経済を刺激も抑制もせず、金利を据え置くことが期待される、激しく議論されている「中立金利」に手が届くところにいるようだ。政策担当者の間では、この水準が正確にどこなのか、また、低成長などの要因に対応して金利をその水準よりさらに引き下げる必要があるかどうかについて意見が分かれている。
ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は1月にCNBCに対し、金利範囲は1.75%から2.25%の間だと考えていると述べ、以前の1.75%から2.5%の間という予想から引き下げたが、ECB自体はそれ以降、より明確な示唆を出していない。
バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのアナリストらは水曜日のメモで、今週の会合後、政策担当者間の内部対立が激化すると予想していると述べた。
「意見の相違が広がる中、これは我々の見解では最後の『緩やかな』利下げだ」と彼らは述べた。しかし、市場予想に先駆けて、ECBが9月までに政策金利を1.5%に引き下げるという見解を繰り返した。
ゴールドマン・サックスのアナリストらは「ECB政策担当者らの間ではここ数週間議論が活発化している」と指摘し、投票権を持つ理事会は、広範な金融情勢、銀行の貸出状況、事業報告、貸出が金利が依然として引き締め的であることを示しているかどうかに焦点を合わせると予想していると述べた。
支出増加
一方、市場と経済に動揺をもたらす多くの要因により、見通しは不透明となっている。したがって、木曜日に発表されるECBスタッフによるインフレと成長に関するマクロ経済予測は注目されるが、あまり疑ってかかる必要はないだろう。
米国は最大の貿易相手国に関税を課し、自動車を含む世界的産業の減速を引き起こすと予想されているが、関税はまだ引き下げられる可能性がある。ドナルド・トランプ米大統領は、次に高い関税を課すのは欧州連合だと述べているが、交渉の見通しもまだ不明だ。こうした関税の影響も不確実で、貿易の減速は経済活動を圧迫するだけでなく、ユーロにも重くのしかかり、輸入コストを上昇させる可能性がある。
一方、ウクライナ戦争をめぐる米国との関係が悪化する中、欧州各国政府は防衛費の増額に向けて準備を進めている。
ラガルド氏は、今週ドイツで発表された、同国の次期連立政権のパートナー候補との合意が及ぼす潜在的な影響について質問される可能性が高い。ドイツの債務規制改革に関する合意はまだ最終決定されていないが、防衛とインフラへの支出が最大1兆ユーロ増加すると予想されており、水曜日のこのニュースを受けてユーロは急騰した。
ラボバンクのアナリストらは、ユーロ高の要因は「ECBのさらなる利下げ余地がさらに限定されるだろうとの見方が一因」であり、改革と支出増加が「経済成長の上昇を約束している」と述べた。
マッコーリーのグローバル為替・金利ストラテジスト、ティエリー・ウィズマン氏は火曜日、欧州再軍備に向けたより広範な動きは「債務による財政拡大となり、経済活動を刺激し、ある程度のリフレーションを許し、ECBに今後の政策金利引き下げの範囲を再検討させる」ことになるだろうと述べた。
まだ制限がありますか?
こうした不確実性にもかかわらず、一部のアナリストは、ECBが木曜日にガイダンスを大幅に更新するとは予想していない。ECBは1月に、インフレは目標に向かって収束すると予想され、金融政策は引き続き引き締め的であり、中央銀行はデータ依存のアプローチを継続すると強調していた。
特に注目されるのは、政策が「引き締め的」であるというメッセージが変わるかどうか、そして次回4月の会合で金利据え置きが示唆されるかどうかだ。
「進行中の政治的、地政学的展開によって生じた異例の不確実性を考慮すると、ECB理事会は今週、その後の行動について選択肢を最大限に広げたいという思いに駆られると予想される」とシティのアナリストは水曜日に述べた。
「これは、金融政策が引き締め的であるとはもはや主張しない、より慎重なコミュニケーションにつながる可能性があると我々は考えている。しかし、我々はこれを緩和プロセスの一時停止が近づいている兆候と解釈することはないだろう。地政学的な変化は、最終的にはリフレ財政政策を生み出すかもしれないが、短期的には、金融緩和の議論を強める可能性が高いだろう。」
米連邦準備理事会(FRB)が5日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)によると、全体的な経済活動は1月中旬以降、ばらつきはあるものの小幅に増加し、雇用はやや増え、物価は緩やかに上昇した。トランプ政権の政策が今後の成長や労働市場、物価に与える影響を巡って不透明感が高まる中でも企業や家計は楽観的な見方を維持した。
報告では経済活動に関して「6地区が変化なし、4地区が緩やかに成長、2地区がやや縮小を報告した」とし、「今後数カ月の経済活動に対する全体的な見通しはわずかに楽観的だ」と記した。
2月24日までの情報を基に作成した今回の報告で、不透明感に関する言及は47カ所と、1月の前回報告での17カ所から増加。関税への言及は倍増した。
トランプ米大統領は今月4日、メキシコとカナダからの輸入品の大半に25%の関税を課し、中国製品への追加関税を20%とした。カナダと中国は米製品への関税で報復するとし、メキシコのシェインバウム大統領も対抗措置を取ると表明した。
米政権は5日、米・メキシコ・カナダの貿易協定を通じて輸入される自動車は1カ月関税免除になると発表。ただ、市場では、新たな関税はインフレ加速と成長鈍化につながる可能性があるとの見方もある。
連銀報告では、インフレ見通しの高まりや企業活動の減速、製造業の新規受注減や原材料の値上がりが示されている。
FRBは3月18─19日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、現行の政策金利4.25─4.50%を据え置く方針を示唆している。FRBの目標2%に向けて徐々に鈍化してきたインフレを抑制する意向で、労働市場は健全に推移しており、利下げによる支援は必要ないとみている。関税措置のほか、減税や移民対策、連邦政府の雇用や歳出の削減など、トランプ政権の政策が今後数カ月、経済に与える影響を見極めたい考えだ。
●先進国経済指標
米供給管理協会(ISM)が5日発表した2月の非製造業総合指数は53.5と、前月の52.8から上昇した。価格指数が上昇し、最近みられる工場での原材料価格の急騰と相まって、今後数カ月でインフレが加速する可能性を示唆した。ロイターがまとめたエコノミスト予想は52.6だった。
新規受注指数は52.2と、前月の51.3から上昇。これを受け、価格指数は62.6と、前月の60.4から上昇した。
トランプ政権によるカナダ・メキシコ・中国製品への関税により、アボカドから自動車まで、あらゆる品目の価格が上昇すると予想される。
ISMが3日発表した2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)では、支払い価格指数が約3年半ぶりの水準に上昇したことが示された。 もっと見る
供給業者の納入を示す指数は53.4と、前月の53.0から上昇。50を超えると納入が遅くなっていることを示す。
雇用指数は53.9と、前月の52.3から上昇した。
調査では、コメントの中で関税について広く言及された。一部の業界は関税が「混乱を引き起こし」、「将来の事業活動に大きな不確実性」をもたらしていると指摘されている。
連邦政府の大幅な支出削減も企業の不安感を高め、今後数カ月で経済活動が鈍化する可能性を示唆している。高インフレと経済成長の鈍化が重なると、米連邦準備理事会(FRB)は難しい立場に追い込まれる可能性がある。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は「新たな関税の導入で経済は勢いを失い、インフレがじりじりと上昇する可能性が高い。FRBは今後数カ月、難しいバランス調整を迫られることになる。最も賢明な選択肢はじっと待つことだ」と述べた。
宿泊・飲食サービス部門の一部は「関税措置により価格設定などに混乱が生じ、購入が急増した後で急減する可能性がある」と報告した。
建設業界でも同様の意見が聞かれた。「関税の導入は、われわれのプロジェクトに多大なコスト影響を与えるだろう」などの指摘があった。
教育サービスでは「連邦政府の支援プログラムによる現在の潜在的な変化をまだ検証中」との声があった。農業、林業、漁業などでは「関税やその他の潜在的な政府措置のリスクにより、将来の事業活動について大きな不確実性がある」との報告があった。
トランプ米政権は4日未明、メキシコとカナダからの輸入品に25%の新たな関税を課したほか、中国製品への追加関税を2倍の20%に引き上げる措置を発動。3カ国と貿易戦争により、価格上昇圧力が一段と高まる可能性がある。
S&Pグローバルがまとめた2月のフランスのHCOBサービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値は45.3と前月の48.2から低下し、2023年10月以来の低水準を記録した。
好不況の分かれ目となる50を6カ月連続で下回った。
2月の落ち込みは新規事業が大幅に減少したことによるもので、企業は事業を維持するために受注残への依存を強めている。
ハンブルグ商業銀行のエコノミスト、タリク・カマル・チョードリー氏は「フランスのサービス部門は苦境に立たされている。需要の減少、全般的な景気低迷、顧客の消極的な姿勢が生産を押し下げている」と分析した。
仕入れ価格、人件費、外部のサービス料の上昇により、投入コストを示す指数は6カ月ぶりの高水準を記録した。しかし、企業はこれらのコストを十分に価格転嫁できず、サービス価格は小幅な上昇にとどまった。
新規事業指数は国内市場の不振を背景に23年11月以来の低水準となった。これを受けて事業見通しは一段と悪化した。
サービス業と製造業を合わせた総合PMIは45.1と1月の47.6から低下し、24年1月以来の低水準となった。これは主にサービス部門によるもので、製造業の落ち込みはやや緩やかだった。
雇用指数は20年8月以来の低水準だった。これは予算の制約と、景気が低迷する中での慎重な雇用方針が背景にある。
S&Pグローバルがまとめた2月のユーロ圏のHCOB総合購買担当者景気指数(PMI)改定値は50.2で、1月および2月速報値から変わらずだった。サービス業が弱い成長を維持する一方、製造業は縮小が和らいだ
全体的な需要の減少が深刻化し、総合新規事業指数は49.3から49.0に低下した。
サービスPMIは51.3から50.6に低下し3カ月ぶりの低水準。
欧州中央銀行(ECB)が注視しているサービスの物価圧力は依然強い。販売価格の指数は53.9から54.7に上昇し10カ月ぶり高水準となった。
ハンブルク商業銀行(HCOB)のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は「次回のECB理事会を前に、賃金主導の投入コスト上昇に注目が集まっている。投入コスト・インフレに沈静化の兆しが見えない中、ECB内で次回会合で利下げ休止を議論したいという声があるのは理解できる」と述べた。
S&Pグローバルがまとめた2月のドイツのHCOBサービス業購買担当者景気指数(PMI)改定値(季節調整後)は51.1だった。
3カ月連続で好不況の分かれ目となる50を上回ったが、需要の低迷で前月の52.5から低下した。
新規受注が6カ月連続で減少。顧客である製造業の減産や予算の制約が響いた。ただ、減少ペースは現在の縮小局面で最低。輸出受注の著しい落ち込みが和らいだ。
受注残の減少ペースは2020年半ば以来の高水準だった。
雇用は2カ月連続で増加したが、増加ペースは前月から鈍化した。一部の企業は特にセールス部門で戦略的な雇用を進めた。
全体では今後1年に対する楽観度が前月から低下。先行きを示す指数は長期的なトレンドを下回った。
新政権樹立後の景気好転を期待する声もあったが、物価高と熟練労働者不足が依然、懸念要因となっている。
●金融市場、先進国トピックス
S&P500種株価指数の下落を受け、短期のヘッジ需要が高まったことで、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)先物のカーブは、期先より期近が高い逆ざや状態となった。
VIX先物の逆ざやについて、ボラティリティーに特化したヘッジファンド運営会社QVRアドバイザーズのパートナー兼ポートフォリオマネジャー、スコット・メイデル氏は「確かに市場のストレスを反映している」と分析した。
新型コロナウイルス禍の2020年は多くの期間を通じて、VIX先物のカーブは逆ざやだったが、過去数年はプレミアムが短期間しか続かなかった。しかし、CBOEのデリバティブ(金融派生商品)市場情報責任者のマンディ・シュ氏によれば、今回は状況が異なる可能性がある。
「経済の不確実性が高まる中で、ボラティリティーが持続する見通しをトレーダーは織り込みつつある。単なる市場への一時的ショックではない」と同氏は指摘した。
トランプ米大統領による度重なる貿易戦争の挑発は、米国にとって1930年代以来最大規模となる保護主義的な政策だ。短期的に米経済の成長にブレーキをかける公算が大きい。
それだけではない。「政府効率化省(DOGE)」のイーロン・マスク氏が進める連邦政府職員の削減や移民締め付けもある。政策の不確実性は、企業投資に潜在的な悪影響をもたらしている。
これらを全て合わせると、世界一の経済大国で経済成長が鈍化するというのがエコノミストらの間でまとまりつつあるコンセンサスだ。
減税などの経済成長を促す計画もあり、米経済が今年、大幅に縮小するリスクはほとんどないと見る向きは多いが、それでも「トランプセッション」、つまりトランプ氏が引き起こすリセッション(景気後退)が到来するのではないかとの懸念は拭いきれない。貿易戦争で報復合戦がエスカレートすれば、その危惧は一段と強まるだろう。
トランプ政権は、数十年にわたる貿易赤字によって空洞化した米国の産業を復興させ、製造セクターで適正な賃金を支払える雇用を国内に取り戻すには抜本的な改革が必要だと主張している。
ベッセント財務長官は関税の影響とそれが引き起こす世界市場の低迷に対する懸念を一蹴しているものの、世界中で株価が下落し、米S&P500種株価指数は昨年の米大統領選後の上昇をほぼ帳消しにした。
同長官は4日、トランプ政権は「経済のリバランス」を図っているとFOXニュースに説明。「中期的にメインストリートが焦点だ。ウォール街は素晴らしい成果を上げており、今後もそうだろう。しかし、中小企業と消費者も焦点だ」と述べた。
ウォール街であれ中小企業あるいは消費者であれ、米国の輸入約1兆5000億ドル(約225兆円)相当に対する新たな課税の影響が及ぶのは間違いない。4日時点で、米国の平均関税率は1940年代以来の高水準に達した。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のメーバ・カズン、ラナ・サジェディ両氏によれば、それだけでもスタグフレーション、すなわち低成長と高インフレの時代に入る可能性がある。「これらの関税は米経済にとってマイナスの供給ショックとして作用する」と2人はリポートで指摘した。
「ある程度の痛み」
トランプ政権発足当初に連邦準備制度が使用したモデルに基づく算出によると、直近の関税ショックで米国の国内総生産(GDP)は1.3%減り、コアインフレ率が0.8%上昇する可能性がある。
エール大学予算研究所のエコノミストは、2025年にはその半分程度の成長ショックが起こると予測しているが、その傷跡は何年も残り得ると警告している。
生産拠点の移転やサプライチェーンの再編が行われたとしても、トランプ氏による直近の関税と他国が講じる報復措置により、長期的にGDPは0.4%減少するとし、「これは、米経済が恒久的に年800億-1100億ドル縮小するのと同等の影響だ」と論じた。
トランプ氏は、米国民が貿易戦争で「ある程度の痛み」を感じるかもしれないと認めているが、自身の政策による長期的な利益は膨大なものになると述べている。政権によれば、議会で審議が始まった関税と規制緩和、減税が相まって投資ブームをけん引するという。
トランプ氏のチームはタカ派的な貿易政策が実を結んでいる証拠として、人工知能(AI)向け半導体製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が米国の工場に1000億ドルの追加投資を行うという最近の発表を挙げている。
政権が打ち出した政策のもう一つの重要な一角は、安価なエネルギーだ。トランプ氏が産油国のサウジアラビアとロシアに対し増産要請に応じるよう説得した兆しがあり、増産が実現すればガソリン価格が下がり、関税で打撃を受けている米国の消費者にいくらかの救済をもたらす可能性もある。
米経済はこれまで繰り返しその強靱(きょうじん)さを示し、リセッション予測を覆してきた。それでも、トランプショックが積み重なっているとウルフ・リサーチのチーフエコノミスト、 ステファニー・ロス氏は言う。「経済にとって本当にネガティブとなるものを設計するとしたら、それがこれだ」と同氏はブルームバーグテレビジョンに語った。
ウォール街の経営幹部や元当局者は、トランプ米大統領が主要貿易相手国に関税を課したことで、市場が不安定になることに対し身構えている。
カーライル・グループのハービー・シュワルツ最高経営責任者(CEO)は4日、ニューヨークで開催されたブルームバーグ・インベスト会議で「われわれは皆、シートベルトを締めるべきだ」と述べた。
カナダとメキシコからの輸入品のほとんどに25%の関税を課し、中国からの輸入品には20%の追加関税が課す措置が4日に発動した。
関税が経済全体の価格にどのような影響を与えるかという疑問の中で、市場は動揺。S&P500種種株価指数は4日に1.2%下げ、昨年11月5日のトランプ氏の選挙勝利以来の上げを失った。
ラザードのレイ・マクガイア社長はブルームバーグの会議で「少なくとも現代において、これほどの高関税は見たことがない」と述べた。
ルービン元米財務長官は、関税は最終的に経済に悪影響を及ぼすだろうと警告。 「関税障壁のある世界が新たな常態となるなら、われわれは皆、生産性と効率性が低下する」と述べ、関税は議会で承認された条約に違反し、成長と生産性を損なうと付け加えた。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、2018、19年の関税の最終ラウンドは短期的なインフレの押し上げにつながったが、当時はインフレが低過ぎる状態だったと指摘。高インフレが数年続いた今は「状況は異なっている」と述べた。
IBM副会長のゲーリー・コーン氏は、関税にはさまざまな目的があるが、資金を調達することが目的であるならば、それは富裕層ではない米国民を犠牲にして行われていると指摘した。関税は「本当に逆累進的な」資金調達方法だと述べた。
コーン氏は、トランプ政権1期目で国家経済会議(NEC)委員長を務めたが、鉄鋼とアルミニウムに高額の関税を課す計画について意見が合わず18年に辞任した。
疑問なのは、トランプ政権が一時的に関税を導入しているのか、それとも本格的な貿易戦争にエスカレートさせようとしているのかだとシュワルツ氏は述べた。 一時的な関税は「一時的な価格上昇を加速させるものではあっても持続的なインフレを引き起こすものではない」が、「貿易戦争は持続的なインフレを引き起こす」と指摘した。
政策の方向性を明確に示すとは限らない個々のデータに市場が過度に注目している可能性についても警告し、「関税に関する議論がどこに向かうのか、まだ分からない。時期尚早だ」と語った。
インフレに圧迫された買い物客はまず、有名ブランドの軽食や飲み物をあきらめ、低価格のプライベートブランド(PB)を手に取り始めた。しかし現在、コーヒーや卵、その他の基本的な食料品の価格が高騰する中、消費者はより安い多くの商品への支出も削っている。このため、米最大級のプライベートブランド食品・飲料のメーカー、ツリーハウス・フーズは厳しい状況に置かれている。
ウォルマート、ホールフーズ、トレーダー・ジョーズ、ターゲットなどの小売業者向けにクッキー、クラッカー、コーヒーなどを製造しているツリーハウスは、インフレで買い物客が安い食料品を選ぶようになったことから、ここ数四半期で業績を伸ばした。現在では、売上高の伸びが大幅に鈍化しているため、ツリーハウスは大幅なコスト削減と商品ラインアップの微調整を実行して利益率の維持に努めている。同社は少なくとも当面、買い物客の苦境が続くと予想している。
ツリーハウスのパトリック・オドネル最高財務責任者(CFO)は「消費者のストレスが近い将来軽減されるという見通しを示す有力な指標はない。もしそれが正しくなく、事態が好転するとしても、コスト削減を進めることはいずれにしても恩恵をもたらすと私は思う」と語った
食料雑貨小売業者は通常、自社の名を冠したストアブランド商品の製造をツリーハウスのようなサードパーティーに依存している。ウォルマート、クローガー、アルバートソンズやコストコ・ホールセールなどの大手がストアブランド商品への投資を増やす中、プライベートブランドはナショナルブランドの商品を上回るペースで成長した。その後、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に突入すると、消費者はお金に余裕がある状態で自宅にとどまることを余儀なくされ、なじみのあるナショナルブランドに戻った。ナショナルブランドはまた、一部のプライベートブランド商品よりも入手しやすい場合があった。
低価格のプライベートブランド商品が再び台頭してきたのには、幾つかの理由がある。食料品の価格上昇が買い物客を圧迫している以外に、小売店がストアブランド商品の種類を拡大していることがある。例えば、ウォルマートは「グレートバリュー」ブランドのほか、「ベターグッズ」という高級食料品ブランドの提供を始めた。
最近のツリーハウス幹部の話によると、買い物客は依然としてプライベートブランドのポテトチップス、クッキーやクラッカーを望んでいるものの、その意欲は薄れている。業界全体で見ると、ツリーハウスが商品を販売する分野におけるプライベートブランド商品の販売個数は、昨年12月末までの3カ月間で、前年同期比0.6%増にとどまった。ツリーハウスによれば、昨年1~3月期の販売個数は同4.5%増だった。ツリーハウスが販売する商品にはピクルス、キャンディー、非乳製品クリーマーや店内ベーカリー用製品も含まれる。
オドネル氏は「人々の動きは引き続き、プライベートブランド商品の購入に向かっており、われわれは一定のシェアを獲得しつつある。しかし、今この分野の成長は鈍化している」と指摘。「このためわれわれは、少なくとも短期的には考え方を少し変えつつある。それは『消費者の動向が不透明なので、利益の押し上げを助けるために調整可能な分野で調整する』というものだ」と語った。
これは、サプライチェーン(供給網)に関する支出を幾つかの手段で減らすことを意味する。ツリーハウスは、食品素材や包装材の供給業者とともに、コスト削減策に取り組んでいる。同社はまた、自社工場でのスイーツ、スナック、飲料のケース詰めの自動化といった効率化策によって、生産工程のスピードアップを図っている。ツリーハウスは、2027年までの4年間で、サプライチェーンの総コストを2億5000万ドル(約375億円)削減することを目標に掲げている。
また、消費者の要求に合致するような、さまざまなサイズ、価格帯の商品を取りそろえるため、価格やパッケージングに関しても細かい対応を行っている。こうした対応は、ツリーハウスが提供する商品のリストについても同様だ。
ツリーハウスは、一部分野では事業を拡大している。2023年にはファーマー・ブラザーズからコーヒー事業の一部を約1億ドルで買収。今年1月にはハリス・ティーを約2億0500万ドルで取得した。同社はその一方で、幾つかの事業から手を引いており、直近では、レディー・トゥ・ドリンク(RTD)事業から撤退した。オドネル氏はRTD事業について、「消費者の裁量的購入がほとんどで、ブランド商品がより強い足場を固めている分野」だと述べた。
オドネル氏によると「年内に幾つかの事業から撤退する可能性がある」という。同氏は、この影響が特定の製品にとどまり、カテゴリー全体には及ばない見込みだと述べたが、詳細を明らかにするのは控えた。
アナリストらは、ツリーハウスの事業運営の円滑化を期待している。同社は2023年にブロス(スープ)工場の稼働を保守点検と更新のために停止した後、フル稼働に戻すのに苦戦し、それが売り上げに影響した。ワッフルなどの冷凍グリドル製品の自主回収を行ったこともそれに追い打ちを掛けた。10-12月期の売上高は前年同期比0.6%減となり、5四半期連続の減収となった。
ウィリアム・ブレアのリサーチアナリスト、ジョン・アンダーセン氏は「ツリーハウスは事業運営を改善する必要がある。工場関連の問題もリコールも、これ以上出してはならない」と述べた。
同社が今年、是が非でも売り上げを伸ばそうと焦らず、コスト削減と収益性改善に集中している点は、需要が鈍化している環境では合理的だというのがアナリストらの見方だ。これは成長が鈍化することを意味する。ツリーハウスの今年1-3月期の調整後売上高は前年同期比で約3.5%減になる見通しだ。
だが、アンダーセン氏によると、これは必要であり、一時的な方針転換だ。同氏は「事業環境に応じた経営が必要だ。ツリーハウスが今年行っているのはまさにそれだ」と語った。
人工知能のブーム、データセンター増設の差し迫った必要性、そして特に交通機関におけるエネルギー転換の話題は、いずれも電力需要を刺激しており、既存の電力インフラはそれに追いつくのに苦労している。
専門家らはCNBCに対し、新たな需要地域の出現により電力供給許可申請が前例のないほど増加しているため、企業は老朽化しひっ迫した欧州の電力網への接続に5~8年待たされる状況に直面していると語った。IEAによると、少なくとも1,500ギガワットの世界のクリーンエネルギープロジェクトが送電網接続不足のために停止または遅延しており、各国がグリーン目標を達成するには送電網に約7,000億ドルの投資が必要だという。
マッキンゼーのパートナー、ディエゴ・エルナンデス・ディアス氏は、データセンターはコンピューティング処理用のサーバーを収容し、多くの場合大量の電力を必要とする大規模施設であり、電力網への接続をめぐる競争の激化の「主役」であると述べた。
同氏はCNBCに対し、顧客は送電網への接続に最長8年かかると見積もっていると語った。
「ヨーロッパには、すでに2人、3人、あるいはそれ以上の人々が同時に同じノードに接続しようとしている状況に直面している送電システム事業者が存在します。…誰が最初に接続できるかを競うため、個々の接続ポイント内に文字通りの待ち行列が存在します」と同氏は説明した。
電気集約型産業に注力するヘルナンデス氏は、過去18か月間、ほぼすべての業務がデータセンターに集中していたと述べ、同氏はこの分野が今後6年間で年率20%の成長率で成長すると予想している。テクノロジー大手がAIの覇権を競う中、大規模言語モデル(LLM)のトレーニングに必要な設備の需要は今後も急増すると予想される。
エネルギー管理会社シュナイダーエレクトリック
1月の報告書では、欧州は電力不足の危機に直面しており、エネルギー制約のある地域では送電網接続に3年から5年の待ち時間があると警告した。
「これは一種の競争です」とシュナイダーエレクトリックのAIおよびデータセンター担当チーフアドボケートのスティーブン・カルリーニ氏はCNBCに語った。「多くの企業が可能な限り多くの容量を展開しようとしています。しかし、それはGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)の数、利用可能な電力、許可によって制限されています。」
「一部の国では、年間に[送電網に接続するための]申請が1件か2件だった状況が、1,000件にまで増加しています」とカルリーニ氏は語った。
マッキンゼーのディアス氏は、この問題に対処するには、必要な投資額だけでなく、それを導入するスピードも重要だと述べた。同氏はまた、高圧送電網運用者の業務がますます複雑化していることや、年間400キロメートルの送電線建設を2,000キロメートルに増やす必要があるドイツの例を指摘した。
ディアス氏は、送電網への接続をめぐる競争は2025年には「維持されるか、あるいは激化する」と予想している。
海底ケーブル製造会社ネクサンスのイノベーション担当副社長ジェローム・フルニエ氏は、同社には70億~100億ユーロ(72億8000万~104億ドル)の「膨大な」受注残があると語った。ネクサンスのケーブルは、風力発電所や太陽光発電所で発電された電力を送電し、家庭や企業に電力を供給するために使用されている。
「誰もが考えている。我々の計画にはまだ他のプロジェクトを製造する余地があるだろうか?」と彼は語った。
フルニエ氏はCNBCに対し、ネクサンスのような企業は、洋上風力タービンの相互接続など、小規模なプロジェクトのための枠も確保しておくべきだと語った。「計画の負荷、収益性、そしてこの種の電化の間で適切なバランスを取らなければならない」と同氏は語った。
新たな電力エコシステム
シュナイダーエレクトリックのカルリーニ氏によると、電力制約により、データセンター運営者は独自の「電力バックアップのエコシステム」を開発する必要に迫られているという。
将来的には、データセンターがグリッドエコシステムの中心となることが期待されており、特に小型モジュール炉(電気を生み出す小型原子炉)を使用して独自の電力を生成できるようになると予想されます。
バッテリー貯蔵と戦略的充電もますます重要になってきているとカルリーニ氏は述べた。これらのシステムにより、電力網からのエネルギーを一時的に貯蔵し、追加のバックアップを提供することができる。
電力ソリューションプロバイダーAVKのCEOベン・プリチャード氏は、一部の欧州諸国は、これまでに見たことのない規模の100メガワットの大規模な送電網接続の要請に直面していると語った。
彼は、独立した独立した電力システムであるマイクログリッドの使用など、移行に関連したエネルギーソリューションを提唱しています。
シンクタンク、エンバーの上級エネルギー・気候アナリスト、ベアトリス・ペトロヴィッチ氏は、ノルウェーでは、顧客が一定の条件に基づいて送電網への接続を制限する柔軟な接続契約を試験的に導入していると強調した。これにより、顧客は特定の時間帯の送電網の状況に応じてエネルギー使用量を調整できる。
エンバーはまた、いわゆる「先見的な」送電網投資に関する規則の実施も求めた。これにより、送電網運営者は再生可能エネルギーや蓄電池の成長など、主要技術の市場動向を考慮した将来を見据えた計画を立てることができるようになるとペトロヴィッチ氏は説明した。
AVKのプリチャード氏は、企業が完全に脱炭素化されたエネルギースタックを持つことを可能にする法律の改善を進める国々が「競争の勝者」となり、データセンターの周りにより「優しいエコシステム」を提案するだろうと述べた。
結局のところ、電力網のボトルネックは「人々に違った考え方を促し、違った考え方を促されると、人々は異なる解決策に対してよりオープンになります。それが市場が大きく変化するきっかけになると思います」とプリチャード氏は語った。
EUの緩やかな成長
一部の新興産業や発展途上産業からの電力需要が高まっているにもかかわらず、電力需要の伸びに関しては、ヨーロッパは依然として世界の他の地域に遅れをとっています。高い電気料金と運用コストがこの地域の全体的な需要を妨げ、市場の細分化を招いています。
国際エネルギー機関(IEA)は今月、「電力の新時代」の到来を歓迎し、世界の需要予測を引き上げ、2025~2027年の成長率を3.9%と予測した。これは近年で最も速い成長率だ。
しかし、欧州の予測はもっと控えめだ。エネルギーシンクタンク、エンバーの1月の報告書によると、同地域では電力需要が2年間急激に減少した後、2024年にはわずか1%の増加にとどまる見通しだ。
「2024年は電力需要の転換点となる」と、報告書の執筆者の一人であるエンバーのペトロビッチ氏は述べた。「私たちが目にしたのは、長年の減少後の小さな回復ではあったが、初めての回復であり、それはブロック全体に広がった」
マッキンゼーのディアス氏は、ロシアのウクライナ侵攻とそれに続く制裁によって引き起こされたエネルギー危機以来、電気料金は1メガワット時あたり60~80ユーロ程度に落ち着いていると説明した。しかし、それでも過去20年間の価格より50~100%高い。
その結果、消費者のコストが急騰し、ヒートポンプや電気自動車の需要が減速する兆候が出ていると彼は述べた。
ディアス氏はさらに、ヨーロッパの製造業者にとって、エネルギー要件は「世界の他のどの地域よりも高く、潜在的にコストが高くなるだけでなく、より困難になる可能性もある」とヘルナンデス氏は述べた。
データセンターの「前例のない」成長は「全体の曲線をほんの少し押し上げているが、他のすべてがそれに逆らっている」とヘルナンデス氏は語った。
米金融市場はリセッション(景気後退)のリスクが高まりつつあるとのシグナルを発している。関税に関連した不透明感や景気の弱さを示す経済指標を背景に、ウォール街全体に不安が広がっている。
JPモルガン・チェースのモデルは、市場が示唆する景気下降の確率が4日に31%と、昨年11月末時点の17%から上昇したことを示した。5年債やベースメタルといった主要な指標は、景気縮小の可能性がさらに高くほぼ五分五分であることを示している。基本シナリオからはかけ離れているものの、ゴールドマン・サックス・グループの同様のモデルもリセッションリスクは23%と、1月時点の14%から上昇していることを示す。
資産運用担当者や企業幹部は、トランプ米大統領による関税の警告が引き起こす市場のボラティリティーにうまく対処できていない状況だ。トランプ氏は4日夜の議会演説で、包括的な関税政策の実施に伴い「多少の混乱」が生じる可能性を認めつつも、世界貿易秩序を再構築するという自身の計画を弁護した。
JPモルガンのストラテジスト、ニコラオス・パニグリツグルー氏は「米国の経済活動データは低調で、企業や消費者の信頼感はここ数週間に既に弱くなっている。3月4日に発動されたカナダとメキシコ、中国に対する関税で、企業や消費者の信頼感がこの先さらに大きな打撃を受けるリスクが高まっている」と指摘。「結果として、米リセッションの可能性は高まる。市場は当然ながら確率の上昇を織り込んだ」と述べた。
最近発表された2月のISM製造業総合景況指数は停滞の領域に近づいた。受注と雇用が縮小圏に沈んだ。2月の米消費者信頼感指数は2021年8月以来の大幅な落ち込みを記録した。
JPモルガンはさまざまな資産クラスのリセッション前のピークと景気後退期の底値を比較してリセッションの可能性を算出する。この指標によると、米5年債とベースメタル、小型株の価格はリセッションの確率が約50%であることを示唆している。一方、投資適格級のクレジット市場は同確率が8%と依然低いことを示唆。ただし、昨年11月末時点の事実上のゼロよりは高くなっている。
ゴールドマンのモデルは、信用スプレッドやシカゴ・オプション取引所(Cboe)のボラティリティー指数(VIX)など複数のクロスアセット指標に基づいている。12カ月後のフェデラルファンド(FF)金利に関する先物市場の予想を追跡する指標では、景気後退の確率を46%と示唆している。
ゴールドマンの資産配分調査責任者、クリスチャン・ミューラーグリスマン氏は「米利下げの織り込みと利回りカーブに大きな変化が生じている。これは潜在的なリセッションリスクを示唆する傾向がある」と電子メールで指摘。「VIXも既に上昇している。これはリセッションの周辺で急上昇する傾向があり、どちらかと言えば一致指数だ」と説明した。
●中東情勢
●エマージング
米国との貿易戦争のさなかにもかかわらず、中国の習近平国家主席は5日の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、野心的な成長目標を推進するという決意を示した。アナリストは、トランプ米大統領が関税をさらに引き上げる場合、中国政府は大規模な景気刺激策実施に迫られると指摘する。
中国は2025年の国内総生産(GDP)成長率目標を約5%と発表した。中国政府が3年連続で同じ成長率目標を設定するのは、約10年ぶりだ。成長の下限となるこの目標は、米国が対中関税を一律20%に引き上げてから、1日もたたないうちに発表された。関税はさらに引き上げられる見通しだ。
関税が成長の主要な推進力を損なう恐れがあるため、中国の当局者は、強さをアピールする一方で金融リスクを管理してバランスを取ろうとしている。米国との貿易減少によって生じた穴を埋めるために、大規模な景気刺激策を実施すれば、債務の急増を抑制しようと長年取り組んできた習氏の取り組みを損なうことになる。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、過去の景気下降期や他の主要経済国とは対照的に、中国政府は「バズーカ」的な景気刺激策を避けてきた。
香港のギャブカル・ドラゴノミクスの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベダー氏は、大幅な対中関税引き上げがなされた場合、「成長のために払ってもよいとする対価について、政治的な判断が下されることになるだろう」と述べた。
中国がさらなる景気刺激策を回避する一つの方法は、トランプ氏と取引することだ。中国政府がより多くの米国製品を購入することを約束したり、電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)のような国内企業に、米国工場を建設するよう提案したりすることが考えられる。トランプ氏は2月、習氏と会談したい意向を示したが、大統領就任以来、米中の電話会談はまだ実現していない。
マッコーリー・グループの中国担当チーフエコノミスト、ラリー・フー氏によると、トランプ氏が選挙戦中に公約した60%の対中関税が課された場合、中国の今年の成長率は2ポイント押し下げられる可能性がある。
中国政府高官はすでに、さらなる景気下支え策を示唆している。政府活動報告の草案作成を担当するシェン・ダニヤン氏は5日の記者会見で、「実際、マクロ経済政策には代替案があり、政策は状況の変化に先手を打って対応できるよう、動的に調整する」と述べた。
追加措置は、関税の影響を政府関係者が十分把握した上で、発表される可能性が高い。中国は4月中旬、公式な1-3月期(第1四半期)の経済成長率を発表し、その後、党中央政治政治局が経済についての会議を開く予定だ。
選択肢
関税によって生じた損失を埋めるために必要な費用について、アナリストの意見は分かれている。ユニオンバンケールプリヴェ(UBP)のアジア担当シニアエコノミスト、カルロス・カサノバ氏は「数十兆元規模になる」と話す。
オーバーシー・チャイニーズ銀行のアジア・マクロリサーチ部門責任者の謝棟銘氏によると、1兆ー2兆元(約20-41兆円)の追加刺激策を講じれば、成長目標を達成できるという。一方、UBSの中国担当チーフエコノミストの汪濤氏は、財政赤字が2兆元以上増える可能性があるとみている。
マッコーリーのフー氏は「中国では、最も強力なマクロ政策は、金融政策、財政政策、住宅政策の融合、つまり、中央銀行のバランスシートで財政支出を賄うことだ。輸出が大幅に減速した場合、政府はそれを利用するだろう」と予想した。
中国にとってのもう一つの選択肢は、通貨切り下げだ。ロビン・シン氏らモルガン・スタンレーのエコノミストの分析によると、2018、19年の米国との貿易摩擦の際には、人民元は米ドルに対して11.5%下落し、関税引き上げによる影響の約3分の2を相殺した。
今回はそう簡単にはいかなそうだ。人民元はすでに、中国人民銀行が為替変動を許容できる範囲の下限に達しており、そのような動きは資本流出を誘発するリスクがある。
今のところ、トランプ氏の関税に対し、習氏は冷静さを保ち、穏健な対応にとどめている。しかし、関税率が中国の成長軌道を深刻に脅かすとなれば、友好的な関係が保たれる保証はない。
成長目標の発表から数時間後、在米中国大使館はX(旧ツイッター)に「米国が望むのが関税戦争でも、貿易戦争でも、またはその他のいかなる戦争でも、われわれは最後まで戦い抜く覚悟だ」と投稿した。
中国の国家発展改革委員会(発改委)は5日、気候変動対策に関する主要な開発計画を発表した。洋上風力発電所の建設や、砂漠地帯での「新エネルギー基地」の建設加速などが含まれる。
発改委は報告書で、2030年までに二酸化炭素(CO2)の排出量をピークアウトさせ、60年までに実質ゼロを達成するよう積極的かつ慎重に取り組んでいくと表明した。
報告書にはチベットのヤルツァンポ川における水力発電施設の建設が盛り込まれた。このプロジェクトは下流の水流に影響を与える可能性があるとして、インドで懸念が高まっている。
また、チベットと香港、マカオ、広東省を直接結ぶ送電ルートを開発する計画にも言及した。
報告書は石炭火力発電所での低炭素技術の試験や、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を推進するとしながらも、今年は石炭の生産と供給を増やす方針を示した。
昨年は経済成長の単位当たりのCO2排出量を3.4%削減したが、「期待を下回った」とし、エネルギー消費の急速な増加と異常気象が原因と分析した。
グリーンピースの国際政策顧問Yao Zhe氏は「中国では再生可能エネルギーが世界最高のペースで拡大しているにもかかわらず、エネルギー効率がそれほど向上していないというのは不都合な真実だ」と語った。
中国は5日開幕した中国全国人民代表大会(全人代)で、低迷する個人消費の喚起を、技術革新や工業生産よりも重視する姿勢を示した。
李強首相は恒例の政府活動報告で、今年の経済成長率目標を昨年と同じく5%前後に設定するとともに、内需刺激と消費拡大に向けた「特別行動計画」を約束した。
これまで中国当局は、消費者の懐にカネを入れるような政策を取ることをためらってきた。しかし、米中貿易戦争再発の様相を呈する中、自国製品を海外ではなく国内で買ってもらうためにも、そうした政策の重要性は増すとみられている。
国泰君安のアナリストによると、今年の政府活動報告では「消費」が31回出てきて昨年の21回から増加した。「技術」は28回で昨年の26回からわずかに増えた。
昨年は、習近平国家主席が提唱した、先進的な製造業や技術発展への投資を意味する「新たな質の生産力」の発展と産業システムの近代化が最優先課題だった。
中国の家計支出が年間経済生産に占める割合は40%未満で、世界平均を約20ポイント下回る。これに対し投資は20ポイント上回る。
ガベカル・ドラゴノミクスのテクノロジーアナリスト、ティリー・ザン氏は「中国当局は、これまでの供給側の技術刺激策が不均衡を招き、消費者需要とサービス部門が低迷状態だったと認識している」と述べた。
今年の消費拡大策の一つが、昨年から始まり、現在は電気自動車(EV)や家電を対象とする下取り補助制度の大幅な拡充だ。同制度の支援に向けた超長期特別国債の発行計画を3000億元(約412億6000万ドル)とし、昨年より1500億元増額した。
財政省の報告書は「このプログラムをより多くの製品に拡大し、補助金の請求手続きを改正、古い製品のリサイクルシステムを改善することで、高額製品の消費を大幅に拡大させることが可能になる」としている。
子育てや高齢者介護、医療支援の強化も打ち出した。消費者が安心して支出するためには、社会のセーフティネット整備が必要との認識からだ。このほか、デジタル・スマート製品、文化、観光、スポーツへの支出拡大や、消費を刺激するために免税店関連の規則改正も打ち出した。
<技術は依然重点分野>
とはいえ、技術が重点分野であることには変わりない。政府活動報告は「複雑かつ厳しさを増す外部環境は、貿易、科学、技術などの分野で中国により大きな影響を及ぼす可能性がある」と警告。米国について直接言及していないが、プレナム・チャイナ・リサーチのパートナー、ボー・ゼンギュアン氏は「中国に対する米国の技術封じ込め措置がさらに強化されることは明らかだ」と述べた。
政府活動報告は、人工知能(AI)にも何度も言及した。国内新興AI企業ディープシークの台頭を背景に、若手の科学者やエンジニアに強力な支援と「重要な責任」を与える計画とし、「中国は、探求を奨励し、失敗を許容する革新を可能にする環境づくりに努める」と述べた。
バイオ製造、量子技術、エンボディドAI(身体性を持つAI)、第6世代移動通信システム(6G)技術など「未来の産業」を育成する方針も示した。
仮想現実(VR)、高度コンピューティング、オープンソースの半導体設計「RISC─V(リスクファイブ)」において発展の推進を目指し、資金援助を増やし、ベンチャーキャピタル投資の成長を促すとした。
ザン氏は、報告書が「効果的な投資」と強調しているのは、半導体で見られた大規模な国家介入からの脱却、自立に関する当局の姿勢軟化を示唆すると指摘。「当局は、全ての分野で自給自足を達成することは非現実的かもしれないと認識し、既存の地位を守ることよりも将来の技術開発を主導することに重点を置いているようだ」と述べた。
中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日開幕した。政府活動報告は今年の経済成長率目標を5%前後とし、前年と同じ伸び率に設定した。
李強首相が演説を行い、今年の重要政策を詳しく説明する。
デフレ圧力を回避し、米国の追加関税の影響を緩和するため、昨年よりも財政出動を拡大する方針。財政赤字目標は国内総生産(GDP)比4%とし、昨年の3%から引き上げた。また、消費を刺激するための「特別行動計画」を約束した。
特別国債の発行は1兆3000億元(1790億ドル)を計画。昨年は1兆元だった。
地方政府には4兆4000億元の特別債発行を認める。昨年は3兆9000億元。
ハイテク産業への支援を継続し、投資効率を向上させることも約束した。
国際通貨基金(IMF)の元中国担当ディレクターであるコーネル大学のエスワール・プラサド教授(貿易政策)は「外部環境が悪化し、デフレ圧力が定着しつつある中、国内の家計消費需要を押し上げることが重要な優先事項だ。所得支援とセーフティネット強化に向けた持続的な対策が不可欠となっている」と語った。
財新/S&Pグローバルが5日発表した2月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は51.4と、1月の51.0から上昇した。輸出受注を含む需要の回復ペースが速まった。
PMIは50を上回れば景況拡大を、下回れば悪化を示す。
3カ月ぶりに雇用が増加したほか、1年先の事業見通しを示すサブ指数も3カ月ぶりの高水準となり、企業は需要拡大を楽観視している。
一部原材料価格の下落もあり、投入コストは2020年6月以来初めて低下した。
製造業とサービス業を合わせた総合PMIは前月の51.1から51.5に上昇した。
●プロファイ、インフラ、自然災害
再生可能エネルギー投資から今はリターンを得られない。グリーンエネルギー移行に特化したヘッジファンドの創設者が、ファンド立ち上げ1年未満のタイミングでこうした見方を示している。
ロンドンを拠点とするカノウ・キャピタル創設者兼最高投資責任者(CIO)ニシャント・グプタ氏は、「太陽光や風力、水素、燃料電池などクリーン関連のセクター全体が今は死んだも同然だ」と語った。
米国での政治的逆風や戦争によって悪化するエネルギー危機、金利高止まりといった逆境に直面し、クリーンエネルギー業界の大部分が失速している。S&Pグローバル・クリーン・エネルギー指数は過去1年で20%下げた。これに対しS&P500種株価指数は16%上昇している。
トランプ政権下の米国では気候変動関連の政策が後退しており、グリーン重視の投資家の多くが様子見の姿勢だ。
グプタ氏は、昨年自らのファンドを立ち上げる以前は運用資産約27億ドル(約4000億円)のヘッジファンド、クリーン・エナジー・トランジションで働いていた。「ファンダメンタルズは非常に悪い」と言及した上で、「長期的なことではなく、足元の弱さについて話している」と述べた。
その弱さは数年前から徐々に顕在化してきた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後にグリーン関連資産の価値は最初の大きな打撃を受け、投資戦略の売り込みも難しくなった。この機に乗じ米共和党は、環境・社会重視で投資する戦略を禁止したり訴訟の可能性をちらつかせたりした。
そうした逆風が吹く中でも、クリーンエネルギー移行に向けた長期のニーズは依然存在すると、グプタ氏は指摘。約1億ドルの資産を管理する同氏のヘッジファンドは、需給の力学を通じて必然的に価格が上昇する市場の発掘に集中的に取り組む。
グプタ氏は「エネルギー移行関連の投資は1兆8000億ドル程度から、2030年までに5兆-6兆ドルに増加する見込みだ」と指摘。「そのうち約3分の1がサプライチェーンに費やされるのを踏まえ、サプライチェーンのボトルネックを中核の投資機会として特定するのに重点を置いている」と話す。
同氏が注目する投資機会の一例は、ノースカロライナ州に拠点を置くインガソール・ランド。エア・ガスコンプレッサー、真空システムやポンプといったエネルギーフロー制御機器を製造する。
インガソール・ランド株にはキャピタル・グループやバンガード・グループ、ブラックロックなどが投資しており、過去3年間で約80%上昇。今年は7%下げている。
「コンプレッサーの耐用期間にかかる電気代は購入価格を容易に上回る可能性もあり、効率的な機器や継続的な性能向上への投資が、長期的で大幅な節約につながる可能性がある」とグプタ氏は説明している。
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
**為替市場:**  
ユーロは対ドルで4カ月ぶりの高値を更新。ドイツの「債務ブレーキ」改革が欧州の成長見通しを改善させるとの期待が影響。一方、貿易摩擦やインフレの影響でドルは大半の通貨に対し下落し、ドル/円は0.6%安の148.87円となった。  
**債券市場:**  
米国債利回りは上昇。2月の米雇用統計の鈍化で一時下落するも、ISM非製造業総合指数の好結果を受け上昇。10年債利回りは4.269%、30年債は4.559%。  
**株式市場:**  
米国株は反発。トランプ大統領がカナダ・メキシコへの関税延期を検討しているとの報道で上昇。フォードは5.8%、GMは7.2%上昇。テスラは2.6%高。一方、インテルはトランプ氏のCHIPS法廃止発言を受け2.4%下落。  
**商品市場:**  
- **金:** ドル安を受け、3日続伸し1オンス=2926.00ドル。  
- **原油:** 在庫増加により4営業日続落。WTI4月物は2.86%安の66.31ドルで、約半年ぶりの安値を記録。
ロンドン株式市場はまちまちの動きで、FTSE100は小幅下落、FTSE250は0.89%上昇。英ポンド高が輸出企業に重しとなり、ユニリーバやシェルが下落。一方、貴金属、銀行、航空宇宙・防衛、建設・資材、旅行・娯楽関連株は上昇した。  
欧州株式市場は反発し、ドイツのDAX指数が3.38%高。ドイツの政党間合意(インフラ基金創設・借り入れ規則見直し)が市場に好感された。特に建設・資材株が急伸。ECB理事会での利下げ決定が注目されている。  
ユーロ圏債券市場ではドイツの長期ゾーン国債売りが膨らみ、利回りが大幅上昇。ドイツ10年債利回りは30bp上昇の2.785%、30年債は24bp上昇の3.069%。ECBの金利見通しに敏感な2年債利回りも上昇し、12月の預金金利は2.02%になるとの市場予想が織り込まれた。

備忘録(2025/3/4
●海外企業決算
●海外企業
トランプ米大統領は4日、米国の銀行がカナダで事業展開を認められていない一方で、カナダの銀行は米国で営業していることは公平ではないとの考えを示した。
トランプ氏は「カナダは米国の銀行がカナダで事業を展開することを認めていないが、カナダの銀行は米国であふれている。こうした状況をフェアと言えるだろうか」と自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
ただ、カナダ銀行協会によると、2月時点で16行の米銀がカナダ国内で事業を展開。企業向け融資のほか、財務サービス、クレジットカード事業、投資銀行業務、住宅ローンなど幅広い金融サービスを手掛けているという。
同協会によると、こうした米銀は国境を越えた事業を行う顧客だけでなく、カナダ国内のリテール市場でもサービスを提供しており、カナダにおける外国銀行資産の半分を米銀が占めている。
●日本企業
セブン&アイ・ホールディングスが、カナダのアリマンタシォン・クシュタールからの買収提案を拒否するとの一部報道を受け、セブンは4日、そのような事実はないとするコメントを発表した。
株主価値実現のため、クシュタールからの提案を含め、引き続き全ての戦略的選択肢を精査・検討するとセブンは説明。米競争法上の課題に対処できる案を実現できるどうかかを確認するため、セブンの特別委員会はクシュタールと建設的に協議を続けているとした。
複数の関係者によると、セブンは現時点で買収提案の可否について判断を下すのは難しいと見ている。米国で広く事業を展開するセブンをクシュタールが買収する場合の独占禁止法上の懸念に関する調査に時間がかかるとみられるからだ。これに対して、セブンの広報担当者は、競争法上の深刻な課題に対処しうる実行可能な案を実現できるかを確認するため建設的に協議を続けているとコメントした。
クシュタールからの買収提案を拒否し、自力での企業価値向上を目指す方針を固めたと、読売新聞が4日報道。セブン株は同日反落し、一時前日比12%安の1939円を付け、24年8月21日以来の日中安値となった。セブンのコメントを受けて、同社株は下げ幅を縮小した。  
香港のヘッジファンド運営会社オアシス・マネジメントの設立者、セス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)は、クシュタールが株主にとって実質的により良い提案をした場合、セブンが最善のガバナンスを遵守することを引き続き期待していると述べた。さらに、クシュタールのデューデリジェンス(資産査定)を可能にし、株主に決定させることが大事だとした。
三井住友フィナンシャルグループ(FG)が、銀行の温室効果ガス排出量削減を促す「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」から脱退することを決めたことが4日、分かった。同組織からは米トランプ政権の気候変動政策の後退を背景に、北米金融機関の脱退が続いていた。
三井住友FGの広報担当者が、ブルームバーグの取材に対し電子メールで事実を確認した。グローバルな動向を総合的に踏まえて判断したとしている。同社は2050年に投融資ポートフォリオ全体をネットゼロとする目標を独自に設定し取り組みを進めており、社内体制の整備・高度化も進んできていることから、NZBAへの加盟を継続せずとも独自に対応できる状況にあると説明した。
NZBAは50年までに投融資のポートフォリオにおける温室効果ガス排出量のネットゼロを目指す民間金融機関の連合で、100以上の金融機関が加盟。昨年12月から年明けにかけて、ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェースなど主要米銀の脱退が相次いだ。日本の大手金融機関の脱退方針が明らかになるのは初めて。 
日本の金融機関では三井住友FGの他、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)やみずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングス(HD)など6社がNZBAに加盟している。日本経済新聞電子版は4日、三井住友FGがNZBAからの脱退を決め、野村HDも脱退を検討していると先に報じていた。
野村HDの広報担当者は、同社はネットゼロに関する取り組みを注視していくと電話でコメントした。
●先進国政治動向
トランプ米大統領は4日夜(日本時間5日午前)、上下両院合同会議で施政方針について演説する。テーマは「アメリカンドリームの再生」で、経済やインフレ、関税、ウクライナでの戦争、ロシアとの関係、中東情勢などが主なトピックとなる見通しだ。
政権2期目のトランプ氏は1月20日の就任から1カ月余りで、連邦政府職員の間に混乱を生じさせ、同盟国の間に衝撃を広げている。
トランプ氏は2大貿易相手国のカナダとメキシコに新たに関税を賦課した。一方、同氏のロシア寄りの発言によって、ウクライナでの戦争の解決を巡る見通しに不確実性が高まっている。トランプ氏はウクライナに対する全ての軍事支援の一時停止を命じた。
他方で、米政府当局者はウクライナとの鉱物資源のディール(取引)の復活に急きょ取り組んでいると、複数の関係者が明らかにした。トランプ氏が4日夜の議会演説でウクライナとのディールを発表することを目標にしているという。
国内では、イーロン・マスク氏率いる「政府効率化省(DOGE)」が進める歳出削減・連邦職員の大量解雇に対し全米で抗議活動が行われ、共和党議員の一部は有権者の怒りに直面している。
トランプ氏は米経済を立て直し、インフレを抑制することを公約に掲げてホワイトハウス返り咲きを果たした。だが、CBSニュースとユーガブが共同で実施した世論調査によれば、インフレ対策をトランプ氏が「かなり」優先しているとした回答はわずか29%で、経済についてそうした見方をしたのは36%にとどまった。
トランプ米政権とウクライナは、ウクライナの鉱物資源の権益に関する協定に署名する見通し。関係筋4人が4日明らかにした。トランプ大統領が4日夜の議会演説で合意を発表したいと顧問らに伝えたという。
ただ署名はまだ行われておらず、状況は変わる可能性がある。
トランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領は2月28日、ホワイトハウスで会談。ウクライナ鉱物資源に関する合意文書に署名する予定だったが、記者団の前でロシアへの対応などを巡り激しい言葉の応酬が相次ぎ、ゼレンスキー氏は合意文書に署名せず、トランプ氏の指示でホワイトハウスを後にした。
ホワイトハウスはコメント要請に応じていない。ウクライナ大統領府や在ワシントンのウクライナ大使館のコメントも得られていない。
関係者によると、米当局者はここ数日間に、先の首脳会談決裂にもかかわらず鉱物資源協定に署名することについてウクライナ当局者と協議した。トランプ氏に公に謝罪するようゼレンスキー氏を説得することを求めたという。
ゼレンスキー氏は4日、先の首脳会談での衝突について「会談が予定通り進まず、このような結果となったことは遺憾だ」とXに投稿。「ウクライナは恒久的な平和の実現に向け、可能な限り早期に交渉の席に着く用意がある」と述べた。
合意に変更が加えられたかどうかは不明だ。先週署名される予定だった合意は、ウクライナに対する明確な安全の保証を含まない一方、ウクライナの鉱物資源から得られる収益へのアクセスを米国に与える内容だった。ウクライナが有する鉱物資源から将来的に得られる収益の50%を、両国が共同管理する復興投資基金に拠出することも想定されていた。
●先進国中銀、金融当局
米短期金融市場は早ければ5月にも米政策金利が引き下げられるとの見方を織り込んでいる。すでに軟化しつつある米経済が、トランプ米大統領の関税引き上げで打撃を受けるとの懸念が背景にある。
この2週間に市場で積み上がってきた懸念は、ここに来て金融市場に著しい見直しを促した。株価は下げ、短期債利回りは低下。トレーダーらは米利下げ再開を織り込み始めた。世界経済の成長をけん引してきた米経済はこれまで、驚異的な底堅さを見せていたものの、トランプ大統領の政策によって失速している。
トランプ大統領がメキシコ、カナダ、中国に対する関税を予定通り発動したことで、世界の経済成長に与える影響が懸念されている。政府職員の大規模な解雇と連邦支出の削減は、米経済成長と消費者信頼感をさらに損なうとみられている。
RJオブライアンのマネジングディレクター、ジョン・ブレイディ氏は「世界の金融市場ではインフレよりも経済成長への懸念が深まっている。関税政策の強化が関係している」と述べた。関税以外では「米政府支出の基本的な反転が、成長と信頼感への不安を高めている」と指摘。さらに米政府は「過去4年続いた浪費型財政は終わったと明白にした」と同氏は続けた。
米国債市場では金融政策の変化に敏感な短期債を中心に相場が上昇。2年債利回りは一時11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。30年債は一時10bp上昇した。
スティープ化の動きは欧州でも出ている。ユーロ圏はトランプ関税の次の標的となると見込まれており、欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測が高まった。一方、欧州連合(EU)が防衛費を大きく増額する計画であることから、財政赤字の拡大が意識され、長期債利回りを押し上げた。
ジェフリーズの欧州担当チーフエコノミスト兼ストラテジスト、モヒト・クマール氏は「関税はインフレではなく、成長に関する問題だというのが依然として当社の見解だ」と指摘。とりわけ英国とドイツでイールドカーブのスティープ化の動きが加速すると予想している。
市場参加者にとって、トランプ氏が実際に関税発動に踏み切ったことは転換点となる。関税が単なる交渉戦術ではないことが明確になったためだ。カナダとメキシコに対する25%の関税発動に加え、中国への関税が20%に引き上げられたことで、年間およそ1兆5000億ドル(約223兆円)相当の輸入品に影響が及ぶ見通しだ。
XTBのリサーチディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「関税リスクが実体化したことで、市場はそのリスクを再評価する必要がある」と指摘。「7日発表の雇用統計まで、向こう数日は不安定な動きが続くかもしれない」と述べた。
ドル先高観に疑問も
貿易摩擦の激化に伴い、米経済見通しに対する懸念は強まっている。米供給管理協会(ISM)が3日発表した2月の製造業総合景況指数は停滞の領域に近づいたことを示唆しており、米経済の動向を把握する上で雇用統計の重要性がさらに高まった。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は、米経済データの悪化が続けば、「力強い成長、高インフレ、タカ派的な連邦準備制度理事会(FRB)というドル高を支えてきた根拠に疑問が生じる」と話す。
関税に加え、米国による対ウクライナ軍事支援の一時停止、EUの防衛費増額に関するニュースも相次ぎ伝わったことで、市場ではリスク回避の動きが加速。スイス・フランと円への逃避買いが一時膨らんだ。一方、これまで関税を巡る材料で恩恵を受けていたブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.7%下落した。
INGの為替戦略責任者、クリス・ターナー氏は「今後は不安定な展開になるだろう」と指摘。欧州の防衛費増額計画と米経済見通しを巡る懸念が、足元でドルの重しになっていると続けた。それでも「今年前半はドルが全般的に上昇するとの予想を変えていない」という。
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
ドイツの次期政権が国防支出を大幅に拡大し、同国で冷戦後最大の国防投資ブームが訪れるとの観測が高まっている。
関係筋がロイターに明らかにしたところによると、次期政権樹立に向けて連立交渉中の政党は、防衛とインフラに関してそれぞれ数千億ユーロ規模の特別基金を早急に設置することを検討している。
ドイツの次期政権が国防支出を大幅に拡大し、同国で冷戦後最大の国防投資ブームが訪れるとの観測が高まっている。
関係筋がロイターに明らかにしたところによると、次期政権樹立に向けて連立交渉中の政党は、防衛とインフラに関してそれぞれ数千億ユーロ規模の特別基金を早急に設置することを検討している。
長期にわたる緊縮財政の結果、橋や鉄道などドイツの公共インフラは老朽化が深刻なため、インフラ基金のほうがより大きな効果をもたらす可能性がある。
次期首相が有力視されるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のメルツ党首は特別基金の設置を確認していない。だが、ロイターの報道を受けて、ティッセンクルップ、ヘンソルト、レンク、ラインメタル、BAEシステムズ、レオナルドなどの防衛関連企業の株価は3日午前の取引で2桁の上昇率を記録した。
トランプ米大統領が世界貿易と地政学的な面に緊張をもたらす高関税政策を打ち出したことで、世界貿易の80%を担う国際海運業界は先行き不透明感に覆われている。
 こうした中、今週カリフォルニア州ロングビーチで開催されるS&Pグローバル(SPGI.N), opens new tab主催の「TPMコンテナ海運・サプライチェーン会議」に注目が集まる。毎年、この会議はコンテナ輸送契約交渉シーズンの幕開けを告げるイベントだ。
 会議にはデンマークの海運大手マースクやドイツのハパックロイド、主要荷主の米ウォルマートのほか、大手物流企業のデンマークのDSV、ドイツのDHLなどの担当者が参加する。
いずれの企業も保護主義の高まりに対応せざるを得ない。国際貿易は縮小しかねず、これまで大型コンテナ船所有者として大幅な利益を上げ、価格決定で優位に立っていたものの、今後は持ち前の交渉力が弱まる恐れがある。
ハパックロイドのロルフ・ハベン・ヤンセン最高経営責任者(CEO)は3日、記者団の取材に答え、「世界は極めて予測不可能な状況になった」と警戒感を隠さなかった。同CEOはさらに「高関税や料金割り増しは世界経済に好ましくない」と指摘し、海運業界の成長や、支えてくれる消費者に負担をかけてしまうと懸念を示した。
世界貿易はトランプ政権の高関税政策以前からサプライチェーン(供給網)問題を抱えていた。地球温暖化がもたらす異常気象に加え、中東パレスチナ自治区ガザでの武力衝突を背景にスエズ運河回避の航路選択により、海運コストの急増に直面している。そうした中で起きたのが、世界最大の輸入国である米国が自由貿易主義から保護主義に転換したことだ。
米国のコンテナ輸入は、プラスチック製おもちゃから機械部品に至るまで急増している。これは一部には、関税を回避するための先行購入が影響している。しかし、貿易の専門家は、米政府の高関税に対して相手国が報復関税を発動し、インフレに疲弊した消費者が関税によるコスト上昇の打撃を受けることで、輸入が落ち込む可能性が高いと警鐘を鳴らしている。これは輸送需要や運賃に圧力をかける要因となり得る。
英国の海洋事業調査会社ドリューリーの世界コンテナ指数(WCI)によると、40フィートコンテナのスポット運賃は2月27日時点で2629ドルとなり、新型コロナウイルスのパンデミック中の2021年9月に記録した高値1万0377ドルから75%下落し、24年5月以来の最低水準となった。
米連邦預金保険公社(FDIC)は3日、銀行同士の大型合併の審査を強化したバイデン前政権時代の政策を撤回する案を承認した。
FDICは2024年以前に有効だった合併政策を一時的に復活させるものだと説明した。共和党が主導するこうしたFDICの動きは、銀行の合併をより厳しく審査しようとした民主党前政権の取り組みからの後退となる。
24年に導入された従来方針では、合併を進める大規模な銀行に対してより厳しい監視が課されることになっていた。例えば、資産規模が500億ドルを超えるような合併は公聴会や意見聴取の対象となり、資産規模が1000億ドルを超えるような合併は金融安定化リスクについてより厳しい分析を受けることが義務付けられていた。
こうした方針は、バイデン政権下で産業界の合併をより厳しく監視しようとする動きが広まった中で打ち出されたもので、ビジネス寄りのトランプ政権下では後退するとみられている。
銀行業界はこれまで、合併に関する当局の承認取得プロセスが煩雑で不透明だと批判してきた。
米投資会社カーライル・グループは今年、より多くの投資先企業が新規株式公開(IPO)に踏み切ると予想している。同社の米州プライベートエクイティ(PE)部門を率いるブライアン・バーナセク氏とスティーブ・ワイズ氏がロイターに語った。
カーライルは今年、IPOや既存投資の解消を通じて40億─50億ドル相当の資産を売却すると見込んでいる。昨年はPE部門の投資解消が50億ドルだった。
米国における企業の合併・買収(M&A)は今年、トランプ政権による関税導入を巡る不安もあって静かな滑り出しとなったが、バーナセク氏とワイズ氏は、今後はM&Aの動きが本格的に再開するとの強気の見方を維持している。
バーナセク氏はインタビューで「ここ2四半期の間に状況は改善した。金利を巡っては先行きが大きく明確になり、インフレは米連邦準備理事会(FRB)が目指す水準に合致とまではいかないが、低下してきた」と指摘。「株式相場は非常に高く、バリュエーションは極めて高い。S&P総合500種(.SPX), opens new tabが過去最高値圏にあるのは、経済が成長してきたからだ」と述べた。
ディールロジックのデータによると、今年これまでの世界のM&Aは4417億ドルと、前年同期の5234億ドルを下回った。カーライルは、貿易戦争が起きた場合に投資先企業に及ぶ影響は限定的にとどまると予想。ワイズ氏は「投資先企業の80%余りは関税を巡る交渉の影響を受けない。これらの企業の大半はサービス業だからだ」と説明した。
ドイツ政府は借り入れ制限を緩和する劇的な政策転換により、防衛およびインフラ投資に数千億ユーロを費やす。
メルツ次期首相は4日夜、ドイツは憲法を改正し、国防および安全保障支出を財政支出の制限から除外した上で、国を守るために「あらゆる手段を講じる」と述べた。交通やエネルギー網、住宅などの優先分野に投資する5000億ユーロ(約80兆円)規模のインフラ基金を立ち上げることで主要政党が合意したとも明らかにした。
メルツ氏は「欧州は防衛を強化する必要がある」と述べた。2月23日投開票されたドイツの総選挙では、メルツ氏の所属する保守系野党のキリスト教民主・社会同盟 (CDU・CSU)が第1党となった。「必要な決定、特に連邦予算に関するものは、最近の米国政府の選択を受けて、もはや先延ばしにすることはできない」と語った。
米国が欧州の安全保障でプレゼンスを弱めようとしている現在、欧州各国はロシアの侵略の脅威に対抗するために、防衛費として数兆ユーロの追加資金を動員する必要がある。トランプ米大統領はウクライナへの軍事支援をすべて一時停止するよう命じ、ウクライナの欧州同盟国に大きな負担を強いることになった。
トランプ米政権は4日未明、メキシコとカナダからの輸入品に25%の新たな関税を課した。さらに中国製品への追加関税を2倍の20%に引き上げる措置を発動し、米国と主要貿易相手国3カ国との間で新たな貿易紛争に発展した。
これら関税措置は米国の自動車メーカーや住宅建設業者、小売業、原材料など、幅広いセクターの収益に打撃を与える見通し。
◎自動車メーカー
S&Pグローバルの試算によると、メキシコとカナダに工場を有する米自動車メーカーの年間EBITA(利払い・税引き・償却前利益)は平均10─25%下押しされる見通し。
JPモルガンのアナリストは、関税に絡む直接的なコストの大部分を自動車メーカーが負担すると予想する。ゼネラル・モーターズ(GM)にかかるコストは約140億ドル、フォードは約60億ドルに達する見通し。
◎住宅建設業者
近隣諸国から原材料を輸入する米住宅建設業者もコスト増に直面する公算が大きい。
S&Pグローバルは、メキシコと中国からの家電製品、電子機器、戸棚などの完成品に対する関税によって建設コストがさらに拡大する可能性があると指摘する。
◎航空宇宙関連サプライヤー
航空宇宙産業協会によると、カナダは米国にとって航空宇宙関連製品の最大の輸入国(ドル換算)で、サプライヤーほか、すでに苦境に立たされている航空機大手ボーイングなどのコスト拡大を招く可能性がある。
カナダ製造業者はゼネラル・ダイナミクス子会社やテキストロン向けにエンジン、ボーイングとエアバスに着陸装置なども製造している。
また、メキシコのケレタロとチワワには航空宇宙拠点があり、ハネウェルなどの大手サプライヤーを誘致している。
◎鉄鋼メーカー
米鉄鋼協会の2023年データによると、米国にとりカナダ、ブラジル、メキシコが鉄鋼の最大の供給国。
アルミ大手アルコアは2月、アルミへの関税措置によって、米国で約10万人の雇用が失われる可能性があると警鐘を鳴らした。
米ディスカウントストア大手ターゲットのブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は4日、トランプ米大統領が同日発動した新たな関税措置を巡る不透明感や消費意欲の鈍化が、第1・四半期の利益の重しとなるとの見方を示した。
コーネル氏はCNBCのインタビューで、米国がメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税、さらに中国製品への追加関税を2倍の20%に引き上げる措置を発動したことについて、アボカドなどの季節の農産物は「かなりの量の供給」をメキシコに依存しているため、「今後数日で」価格が上昇する可能性があると指摘。 もっと見る
価格を守るためにあらゆる取り組みを行うとしつつ、25%の関税が賦課されれば「間違いなく今後1週間で価格は上がる」と述べた。
また、米家電量販大手ベスト・バイは、関税措置の発動は、米消費者にとって物価上昇につながる可能性があるとの見方を示す。
ベスト・バイのコリー・バリー最高経営責任者(CEO)はアナリストとの電話会議で、同社が販売する製品の調達先について、「中国が依然として第1位、メキシコが第2位」であると指摘。また、消費者の必需品以外への支出が抑制傾向にあるとの見方も示した。
スイスのチョコレートメーカーからドイツの自動車部品メーカーまで、欧州企業は4日に明白な現実となった米国の貿易関税に適応するための「プランB」を準備している。来月には特に欧州を標的とした第2弾の集中砲火が予想されるためだ。
トランプ米政権は4日未明、メキシコとカナダからの輸入品に25%の新たな関税を課した。さらに中国製品への追加関税を2倍の20%に引き上げる措置を発動した
欧州企業は今のところ対象外だが、トランプ米大統領は欧州の自動車などに対する25%の「相互関税」を提案しているため、4月には欧州連合を標的とした第2弾の関税集中砲火に直面する可能性がある。
米国内に複数の工場を持つスイスのチョコレートメーカー、リンツ&シュプルングリーは、トランプ関税の影響を避けるため、カナダからの供給を減らし、米工場へのサプライチェーンを欧州に移す可能性がある。アダルベルト・レヒナー最高経営責任者(CEO)は「現在カナダ向けに調達している量は全て欧州に移すことができる」としている。
一方、ドイツのタイヤ・自動車部品メーカー、コンチネンタルAGのオラフ・シック最高財務責任者(CFO)は「この関税問題が生産ラインの移転につながるかどうかはまだ分からない」と述べたが、同社はメキシコに持つ7工場のうち1つの閉鎖を決めている。「われわれは追加関税を吸収することはできないという立場だ。サプライヤーに関しては、通常は現地で調達している」と語った。
欧州企業はまだ関税の直接の標的にはなっていないが、4月初旬に自動車をはじめとする輸出品に関税が課される懸念はますます高まっている。
イタリアの農業ロビー団体CIAのクリスティアーノ・フィニ会長は、欧州に対する関税の可能性はイタリアの食品業界に「数十億ドルの損害」をもたらし、パルマハムからプロセッコ・スパークリングワインに至るまで幅広い生産者に打撃を与える可能性があると述べた。
欧州の首脳らは米国の関税の脅威に対し、団結して強気な姿勢を取る構えだが、アナリストらは、貿易戦争が欧州の経済成長見通しに打撃を与えるのではないかと懸念している。
ドイツのハーベック経済相は「交渉による解決策を見つけるために米国政府と協力するという欧州委員会のアプローチを支持する」としながらも、「欧州連合(EU)は屈服しない。トランプ大統領がEU製品に関税を課すなら、われわれは団結して自信を持って対応するだろう」との立場を示した。
●中東情勢
●エマージング
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
ユーロは対ドルで約3カ月ぶりの高値を更新。ドイツ次期政権の連立交渉で5000億ドルのインフラ基金設立と借り入れ規則の見直しが合意され、欧州通貨も上昇。トランプ政権の関税発動により、米ドル指数は下落。米国債利回りは当初低下したが、ドイツの財政支出計画を受けて上昇。米国株式市場は関税懸念で続落し、特にナスダックが大きく下落。金は安全資産需要で上昇、原油は産油国の減産縮小方針と関税問題で一時下落したが、その後買い戻された。
ロンドン株式市場と欧州株式市場はともに反落。トランプ米政権がメキシコ、カナダ、中国への関税を発動し、貿易摩擦の激化懸念が広がったことが要因。FTSE250指数は2.12%安、欧州STOXX600指数は2.14%超下落し、7カ月ぶりの大幅安となった。  
業種別では、自動車株や旅行・娯楽、石油・ガス関連が特に下落。EUへの関税懸念もあり、欧州の自動車大手が大幅安。一方で、景気の影響を受けにくい製薬・バイオ関連株は上昇。  
債券市場では、貿易摩擦や欧州防衛費増加の影響でユーロ圏国債利回りが低下。ECBは6日の理事会で25bpの利下げを行うと予想され、短期国債の利回りは大きく低下した。

備忘録(2025/3/3
●海外企業決算
●海外企業
半導体受託生産(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、向こう4年で米国の複数の半導体工場に1000億ドル(約15兆円)を投資する計画だ。ドナルド・トランプ米大統領が3日、この計画を発表する見通しとなっている。複数の関係者が明らかにした。
投資資金は先端半導体製造施設に充てられる見込み。米国内の半導体業界の活性化を目指す米政府の長年の目標に沿った動きだ。
TSMCは2020年に米南西部アリゾナ州に半導体工場を建設すると発表。この第1工場は昨年終盤に量産を開始し、同じ敷地内にさらに二つの生産施設の立ち上げを予定している。ただTSMCは最も高度な半導体を地元・台湾だけで生産している。
世界の高級ブランド大手3社が昨年欧州でオープンした店舗は29店にとどまり、2023年から20%減少した。業界の減速をあらためて示唆した。
不動産仲介業者クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによると、クリスチャン・ディオールやティファニーを傘下に持つLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンの店舗のオープン件数は15件。リシュモンは11件、ケリングは3件だった。23年には3社合計で36店をオープンしていた。
この減速は、高級ブランド業界の不安定な回復を反映している。新型コロナウイルス禍後に需要は急増したが、その後は特に中国人消費者などの支出が低迷している。
世界の全ての高級ブランドが昨年に欧州12カ国でオープンした店舗は83店にとどまり、23年の107店から減少。ただ、これは一等地の店舗スペース不足も原因だと、クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのEMEA(欧州・中東・アフリカ)小売業界責任者ロバート・トラバース氏が指摘した。
パリのシャンゼリゼ通りやロンドンのボンドストリートなど、調査対象となった20の主要な高級ショッピング街で、昨年の店舗の空室率は10%未満。そのうち六つのショッピング街で空室率はゼロだった。高級ブランド店の賃貸料は引き続き上昇しており、24年には平均3.6%上昇した。
●日本企業
●先進国政治動向
ホワイトハウスの大統領執務室で2月28日に実施されたトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の首脳会談は、険悪になりつつあった雰囲気にバンス米副大統領がとどめを刺した。バンス氏はゼレンスキー氏に対して「大統領、失礼ながらあなたが米大統領執務室にやって来て、米国のメディアの前でこの件を訴えようとするのは無礼だと思う」と訴え、「この紛争に終止符を打とうとしているトランプ氏に感謝すべきだ」と直言した。
この会談ではゼレンスキー氏とトランプ氏の不和が公になると同時に、バンス氏がトランプ氏に代わって相手に食ってかかる「攻撃犬」としての役割を高めていることも示された。
米民主党は、ホワイトハウスがゼレンスキー氏に猛攻撃を仕掛けたと非難した。この会談について詳しい情報筋は、バンス氏の出席は「計画されたものではなかった」と明らかにした。
米中西部オハイオ州選出の元上院議員のバンス氏は、トランプ氏の忠臣として仕えるとともに、鋭い口調でトランプ氏を擁護するという立ち位置も確保した。
ある米政府関係者は「バンス氏が腕を見せつけたということだ。バンス氏は(トランプ氏の側近の)イーロン・マスク氏とは違う。トランプ氏の前に座ってゼレンスキー氏に挑んだことは非常に大きな出来事だった」とし、「バンス氏は大統領に助け船を出した。トランプ氏は普段自分がしているような対決を他の人々が進み出てやってくれるのが好きなのだ」と語った。
ホワイトハウス高官は、会談の雰囲気が変わったのはゼレンスキー氏がバンス氏に反論した瞬間だったと言う。
ロシアのプーチン大統領が2019年の停戦協定を守っていないと訴えたゼレンスキー氏は、バンス氏に対して「JD(バンス)、どのような外交について話しているのか」と問いかけた。
バンス氏はゼレンスキー氏を「大統領」と呼び、「私は、あなたの国の破壊を終わらせるような外交について話しているんだ」と言い返した。トランプ氏が激高し、ゼレンスキー氏が無礼であり、第三次世界大戦を賭けてギャンブルをしていると非難した後、バンス氏は「一度でも『ありがとう』と言ったことがあるのか」と追い打ちを掛けた。さらに、ゼレンスキー氏が24年の米大統領選で民主党候補だったハリス前副大統領の選挙運動をしたと反発した。
ゼレンスキー氏は昨年9月、バイデン前大統領の故郷である米東部ペンシルベニア州スクラントンに予告なしに立ち寄り、軍需工場を訪問していた。
バンス氏が声を荒げたと問題視したゼレンスキー氏に対し、トランプ氏は「バンス氏は声を荒げてはいない」と否定。その上で「君はたくさん話した。君の国は大きな問題を抱えている」と制した。
バンス氏は今年2月にドイツでのミュンヘン安全保障会議でも対決姿勢をあらわにし、欧州の指導者らが言論の自由を検閲し、移民を管理できていないと非難していた。
共和党のストラテジスト、ランス・トローバー氏は「バンス氏は大統領のアジェンダを明確にし、攻撃するのが得意で、それはトランプ氏がバンス氏を(副大統領に)選んだ理由だ」と説明した。
トランプ氏に近いリンゼー・グラハム上院議員(共和党)は「わが国のために立ち上がったバンス氏を非常に誇りに思う」と評価した。
報道陣が大統領執務室から退去させられた際、バンス氏はトランプ氏に近寄って腕をなでた。少なくともカメラの前ではゼレンスキー氏と握手することはなかった。
●先進国中銀、金融当局
欧州中央銀行(ECB)は6日の理事会で再び利下げを実施する見込みだが、投資家が次の措置についてこれほど迷っているのは前例がない。
米国による関税発動リスクに加え、ドイツの新政権、ウクライナ停戦の可能性、国防費急増に伴う影響など、不確実な要素が極めて多い。
ECB当局者の間では、昨年6月以降で5回目の利下げを実施した後、どの程度のペースで利下げを行うかについて意見が分かれている。
チューリヒ・インシュアランス・グループのチーフマーケットストラテジスト、ガイ・ミラー氏は「もはや、会合ごとに利下げを行うような、自動操縦モードではない」と指摘した。
以下は、市場からECBへの5つの質問。
1)ECBは6日に何を決めるのか?
それは簡単だ。主要政策金利をさらに25ベーシスポイント(bp)引き下げ、2.50%にすることだ。
3月以降の金利見通しを示唆する可能性があるため、金融の状況評価も注目される。
INGのグローバルマクロヘッド、カーステン・ブルゼスキ氏は「政策はなお制約的との認識を示すのか、それともより中立的なスタンスにあることを示唆するのか注目される」と述べた。
先週発生した、ユーロ圏の中銀間の決済システム「ターゲット2(T2)」の障害に関するコメントも要注目だ。
2)利下げは3月以降も続くのか?
市場はそう考えているが、そのペースについては一筋縄では行かないかもしれない。
市場では、年末までに90bp弱の利下げが実施されると見ており、2%まであと3回、もしくは1.75%まであと4回の利下げが実施される可能性がある。これは、ECBが1.75─2.25%と見積もっている、成長を刺激も抑制もしない中立金利におおむね一致する。
それでも、トレーダーは4月利下げの可能性を70%程度と予想しており、不確実性が浮き彫りになっている。
多くの当局者は、政策金利の最終的な水準については市場の予想に同調しているようだが、利下げペースに関する議論は白熱している。
例えば、当局者の間ではECBの政策が依然として制約的との見方が一般的だが、タカ派の筆頭とされるシュナーベルECB専務理事はそれを疑問視している。
そのため、スウェーデンの銀行SEBは、当局者の一部は4月会合で利下げの一時停止を主張する可能性があるとみている。
しかし、タカ派が懸念している高いサービスインフレを下支えしてきたと考えられる賃金の伸びは今後、急速に低下する兆候がある。実際、先週末に発表されたデータでは、サービスインフレを含むインフレ見通しが改善していることが示唆された。
ハト派のセンテノ・ポルトガル中銀総裁は、経済が低迷していることを理由に、インフレ率は目標を下回る可能性があると指摘している。
3)ECBはこれまでの関税の影響をどう評価するのか?
現在までのところ、実際に発効したのは米国の対中関税10%だけだ。よって、ECBはまだ関税を政策に織り込まないだろう。
トランプ米大統領は、欧州に対しては、3月12日から鉄鋼とアルミニウムの輸入品に25%の関税を課すと発表した。また、米国からの輸入品に課税している全ての国に対して、相互関税を検討している。
先週には、欧州の自動車やその他の商品に25%の相互関税をかけることを示唆した。
ドイツのキール研究所の試算では、これにより欧州経済は最初の1年で0.4%押し下げられるという。2025年のユーロ圏成長率がわずか0.9%にとどまる見通しであることを考えれば、大きな打撃だ。
一方、関税の脅しが交渉ツールである可能性もある。
INGのブルゼスキ氏は、何が課されるのか、ECBは4月まで待つことになるだろうと話す。
4)ECBにとってウクライナ停戦は何を意味するのか?
投資家は、ウクライナの停戦は経済を下支えし、エネルギー価格を下げるだろうが、それは小幅なものにすぎないと考えている。
ベレンベルクのチーフエコノミスト、ホルガー・シュマイディング氏は、停戦はECBの考え方にわずかな影響しか与えないだろうと述べた。「関税の方が大きな影響を与える」という。
欧州抜きでのウクライナ停戦交渉は、欧州の防衛力強化への圧力を高め、数千億ユーロの公的支出が必要になる可能性がある。
バークレイズは、財政支出が増えれば利下げ幅が小さくなる可能性があるとみる。一方、シティなど他の金融機関は、長期借り入れコストの上昇は利下げ幅の拡大を意味すると考えている。
5)ECBの最新予測では何が示されるか?
24年末の成長率はECBの12月時点の予測を下回った。そのため、成長率予想は3回連続で下方修正されるだろう。
インフレ率については、前回の予想からエネルギー価格が上昇しているため、今年の数値は若干の上方修正が予想される。
三村淳財務官は3日、物価上昇を上回る賃金上昇を実現する上で円安がマイナスの影響を及ぼす可能性があるため、為替動向を注視する必要があるとの見解を示した。都内で開催されたイベントで英語で講演した。
三村財務官は、円安の影響で輸入物価が上昇していることに言及。その上で、実質賃金の上昇実現という観点において、「為替は間違いなく何らかの悪影響を及ぼす。注意すべき点の一つは為替レートの問題だ」と語った。政府は賃上げ促進策に数多く取り組んでおり、今後も努力を続けるとも語った。
●先進国経済指標
米供給管理協会(ISM)が3日発表した2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は低下したものの、拡大・縮小の分岐点となる50を超える水準にとどまった。ただ、支払い価格指数が約3年半ぶりの水準に上昇し、トランプ米政権が掲げる関税措置が近い将来に生産活動の重しになる可能性が示唆された。
製造業PMIは50.3。前月の50.9から低下し、ロイターがまとめた市場予想の50.6も下回った。前月に2022年10月以来初めて50を超えていた。
構成指数では、支払い価格が62.4と、前月の54.9から大きく上昇。22年6月以来の高水準となり、エコノミスト予想の55.8も上回った。
供給業者の納入を示す指数は、54.5と、前月の50.9から上昇。50を超えると納入が遅くなっていることを示す。
先行指標となる新規受注は48.6と、前月の55.1から低下。
雇用は47.6に低下。前月は50.3と、24年5月以来、初めて拡大していた。
米国が3月4日からメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課し、中国からの輸入品に10%の関税を上乗せする見通しについて、アナリストは、メキシコとカナダで生産した車両を米国で販売する米国の自動車メーカーやその他の企業にとって、経済的打撃となると警告。
ISMの調査でも、トランプ政権が掲げるカナダ、メキシコ、中国などの貿易相手国に課す関税措置により事業環境の先行きが不透明になると多くの企業が指摘するなど、 輸入関税に対する懸念が多く寄せられた。
ISM製造業景況調査委員会のティモシー・フィオーレ委員長は「サプライヤーが困難に直面し始めている初期の兆候が出ている」と指摘。「事業環境の不透明感が高まる中、調査対象企業は引き続き人員削減を進めている」と述べた。
サンタンデール・USキャピタル・マーケッツの米国チーフエコノミスト、スティーブン・スタンレー氏は「関税措置で製造業に及ぶ影響は、経済全体への影響よりも明らかに大きくなる。急激な関税引き上げは明らかに経済にとってマイナスで、先行きが不透明になっていることで状況が一段と悪化している」と指摘。
キャピタル・エコノミクスの北米担当エコノミスト、トーマス・ライアン氏は、支払い価格指数の上昇について「モノの価格上昇で、下半期にコアインフレが再燃するというわれわれの見方が裏付けられた」と述べた
S&Pグローバルがまとめた2月のドイツのHCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は46.5と、前月の45.0から上昇し2023年1月以来の高水準となった。独製造業の回復の兆しが示された。
生産、新規受注、輸出売上高が小幅な減少にとどまった。新規受注の落ち込みは2022年4月以降で最も小さかった。一方で、雇用は大幅に減少し、人員削減幅ペースは3カ月ぶりの高水準となった。
ハンブルグ商業銀行(HCOB)のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は「最近、雇用削減が急速に進んでいる。しかし生産が安定しつつあることから、企業が徐々に方針を転換する可能性もある」との見方を示した。
2月はサプライチェーン全体の余剰生産能力を背景に、仕入れ価格と販売価格が共に低下した。
今後の生産に対する見通しは明るいが、地政学的緊張と関税に対する懸念から、景況感は3年ぶり高水準だった1月から小幅低下した。
●金融市場、先進国トピックス
ジョンソン米下院議長は2日、現行の予算が14日で期限を迎えることから、9月まで現在の歳出水準を維持するつなぎ予算を可決し、歳出削減策は翌年度予算に盛り込みたいとの考えを示した。
ジョンソン氏は一連のテレビ出演で、実業家イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」による歳出削減がつなぎ予算に反映されるとの見方を否定した。
NBCの番組で、「政府が運営を継続できるよう、予算を現在の水準で凍結するクリーンなつなぎ予算を可決することを目指している」と説明した。
「われわれは政府を閉鎖しないよう責任を果たすために懸命に努力している。民主党は交渉に協力しなければならない」と訴えた。
これに対し下院民主党のジェフリーズ院内総務は声明で、「トランプ政権からの働きかけは一切なく、下院共和党は交渉のテーブルから離れた」と指摘した。
下院では共和党の議席数は218で、民主党の215議席を上回っているが、党内で可決に必要な支持を集められるかどうかは不透明だ。
ゴンザレス議員は「つなぎ予算には反対だ。議会は仕事をし、保守的な予算を可決する必要がある」とXに投稿した。
ベーコン議員もXに「つなぎ予算は軍に悪影響を及ぼし、国家安全保障を弱体化させる。新たな兵器計画を開始できず、中国、ロシア、イランを抑止するような軍隊を作ることに真剣に取り組んでいないことを意味する」と投稿し、つなぎ予算に反対を表明した。
ジョンソン氏はトランプ政権が進める歳出削減について、10月1日からの2026年度予算に盛り込む意向を示した。
FOXニュースの番組で、DOGEが発見した不正や無駄遣いを廃止することによる節約分や、トランプ政権の政策によってもたらされる他の収入を次年度の財源として組み込むことができるだろうと語った。
トランプ米大統領が表明した欧州連合(EU)からの輸入品に対する25%の関税賦課について、S&Pグローバル・レーティングは実施されれば中欧諸国の経済見通しが悪化し、各国の財政問題が深刻化する可能性が大きいと指摘した。
S&Pグローバルは、トランプ関税で予想される影響に関するロイターの質問に、中東欧諸国の対米直接貿易エクスポージャーは限定的だが、ドイツの自動車セクターを通じて成長見通しが打撃を受ける可能性が高いと指摘。
「これは特にチェコ、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、ルーマニアに当てはまる」とし、これらの国は、ドイツ向けの機械・輸送機器輸出が総輸出の1割以上を占めると述べた。
中欧諸国はEUの中で対外貿易への依存度が高い。EU統計局の2023年のデータによると、国内総生産(GDP)に占める輸出の割合は、スロバキアが92%、チェコは69%で、EUの平均を下回るのはルーマニアの39%のみだ。
中欧最大の経済大国ポーランドは、自動車輸出が依存度が低く、国内市場が相対的に大きいこと、数十億ユーロのEU復興資金を受け取っていることから西欧の景気低迷の影響を受けにくいとみられている。
キャピタル・エコノミクスの欧州新興国アナリスト、ニコラス・ファー氏は、EU製品への25%関税が発動された場合、中欧のGDP伸び率を平均0.5%程度押し下げると指摘した。
S&Pグローバルは、ドイツ車に対する中国の需要の落ち込みは、米国の関税よりも中東欧の成長に大きな影響を与える可能性が高いとも指摘。
「中東欧諸国の成長鈍化は、同地域の主要なリスクとして以前から指摘してきた財政(赤字)問題をさらに深刻化させる可能性がある」と述べた。
生活費の高騰が続く中、消費者の節約意識が強まっている。総務省が21日に発表した1月の全国消費者物価指数では、生鮮食品を含む総合指数が前年同月比4.0%上昇と2023年1月以来の高水準となった。物価上昇に賃金の伸びが追いつかず、切り詰めづらい食費が家計を圧迫することで、消費意欲が減退する懸念も浮上する。
ディスカウントスーパー「オーケー浅草店」で買い物をしていた込山妙美さん(35)は、「生の野菜は高いので、冷凍品を買うようにしている」と話す。夫と2人で暮らす込山さんは、これまで1カ月の食費に4万円を充てていたが、やりくりし切れず今年から5万円に引き上げたという。節約のため外食も控える。いまは専業主婦だが、物価がさらに上がれば、働きに出ることも考え始めた。
昨年の春闘で日本企業も賃上げに動いたが、物価上昇を補うには至っていない。厚生労働省の毎月勤労統計調査(確報)によると、24年の実質賃金は0.3%減だった。値上げ攻勢は今後も続く見通しだ。帝国データバンクは食品分野について、夏にかけて継続的な値上げラッシュが見込まれ、通年で2万品目前後になる可能性があるとしている。
足元で物価を押し上げているのは野菜やコメなどの生活必需品で、支出を絞りづらい。代わりに車・家電の買い換えや、旅行など大型の出費を控えるようになれば、景気の足かせになる可能性もある。オーケー浅草店から出てきた矢野啓子さん(77)は、「もともとぜいたくしている訳ではないからこれ以上の節約はできない」とため息をつく。周りに海外旅行に行っている人は全くいないという。
個人消費に詳しいソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之シニアエコノミストは、消費者の間で「賃金と物価の好循環の実感があるとは言えない」と話す。バレンタインデー関連でお金を使っても、他のところで節約するなど、消費には強弱が見られるという。
死活問題
企業も原材料価格の高騰に苦しむ。ファミリーレストラン「ガスト」などを展開するすかいらーくホールディングスは、インフレ要因で今期(25年12月期)の営業利益が112億円押し下げられると見込む。このうち51億円が食材の原価高騰で、前期の3倍の水準だ。特に割合が大きいのがコメで、22億円と見込む。金谷実社長は2月の決算会見で状況を見ながら値上げのタイミングや上げ幅を検討していく意向を示した。
ディスカウント店「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの吉田直樹社長は2月の決算会見で、「デフレの時とは複雑さが全く違うゲームになっている」と吐露した。仕入れ値や人件費などが上がる中でも価格を実質的に下げていく取り組みが重要だと指摘する。
宮嶋氏は、企業は原材料費の高騰を価格転嫁できなければ収益はマイナスになるものの、値上げをすることで消費マインドが落ち込むことには注意せざるを得ず、頭を抱えていると話す。一部の小売企業などでは低価格帯の商品をそろえる動きや、値上げを踏みとどまる動きも見られるという。
消費者や企業への負担増加は、経済再生のためインフレを強く望んできた政治家たちにとってもやっかいな問題だ。24年の衆議院議員選挙でも、物価高対策が不十分だとして国民は石破茂首相率いる自民党に厳しい審判を下した。
名字のみを明かして取材に答えてくれた東さん(64)は、野菜は安い店を探して買いに行っているという。「賃上げは大企業だけで、物価高に追いついていない」と不安を口にした。
米国経済は悲観論者の予想を何度も覆してきたため、経済を止められるものは何もないと考えたくなるものだ。
ドナルド・トランプ大統領の就任1カ月目の矢継ぎ早の政策攻勢は、経済の回復力を試している。
全体的な経済に亀裂が生じているかどうかを判断するのは時期尚早だ。2024年10-12月期の米経済成長率は前期比年率2.3%と健全な水準だった。1月の失業率は4.0%に低下し、これまでと比較して低水準だ。
しかし商務省の2月28日の発表によると、需要の3分の2以上を占める個人消費支出は1月に0.2%減少した。月間ベースでは4年ぶりの大幅な減少だった。エコノミストは上昇を予想していた。
全米産業審議会(コンファレンスボード)が発表した2月の消費者信頼感指数は、前月比で21年以来最大の下げ幅となり、消費者のインフレ期待は上昇している。ニュース記事に基づく世界の経済政策不確実性指数は、新型コロナウイルス流行時に記録した水準を上回った。
S&P500種指数は昨年11月5日の米大統領選当日から今年2月19日にかけて6%超上昇したが、その後3.1%下落した。米10年債利回りは2月28日時点で4.23%と、1月14日の4.79%から大幅に低下しており、3カ月物国債の利回りを下回っている。債券利回りは経済成長と米連邦準備制度理事会(FRB)の金利政策に対する期待を反映する。長期債利回りが短期債利回りを下回る「逆イールド」と呼ばれる状態は、景気後退(リセッション)を予兆する傾向にある。
エコノミストは信頼感調査や金融指標を「ソフト」データと呼ぶ。こうしたデータは変動が激しく、ニュースの影響を受けやすいことで知られており、実体経済の動向を予測する上で精度が低いことが多い。
一方、所得、労働市場、生産に関するほとんどの「ハード」データは、概して経済が着実に前進していることを示している。1月の消費支出の落ち込みは、南部の寒波やロサンゼルスの山火事が一因だった可能性がある。
さらに、トランプ氏がちらつかせている関税の導入をすべて実行に移すとは限らない。
ノーザン・トラストのチーフエコノミスト、カール・タネンバウム氏は「威嚇と実行の間にはかなりの隔たりがあると考えている」と述べた。一方で議会は財政赤字を拡大する方向で動いており、これは成長を後押しするだろう。「当然ながら政府の一部のコスト削減が消費に与える影響を注視しているが、堅調な労働市場が引き続き家計支出を下支えするというのがわれわれの見方だ」
ハードデータに見られる軟化の兆しの一つは新規失業保険申請件数で、2月22日までの週は前週比2万2000件増の24万2000件だった。過去6カ月で最も高い数字ではないものの、首都ワシントンでの申請件数は昨年同時期の倍に達しており、トランプ政権による連邦政府職員の解雇や請負業者の経費削減の影響を示している可能性が高い。
トランプ氏の政策変更の急激なペースは、それ自体が企業や家計の支出を圧迫しかねない政策の不確実性を生み出している。
KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「経済の実体を見極めようとノイズをフィルタリングしているが、そのノイズ自体が経済的な影響を及ぼしている」と述べた。
同氏は、トランプ政権の政策の順序付けが一因となり、年内に景気後退に陥る可能性が高まっているとみている。
関税引き上げ、移民制限、連邦職員や契約の削減といった、最も迅速に実行に移されている政策はいずれも、短期的な成長の足かせとなる可能性がある。トランプ氏と共和党議員が目指している減税は、来年まで効果が現れないかもしれない。
INGフィナンシャル・マーケッツのチーフエコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は「成長にとってプラスとなる減税や規制緩和については進展が見られない。代わりに政権はマイナスをもたらす政策に焦点を当てている」との見解を示した。
ソフトデータの悪化は、選挙後の一時的な高揚感の反動である可能性もある。ゴールドマン・サックスは今後12カ月以内に米国が景気後退に陥る確率を15%に据え置いている。チーフエコノミストのジャン・ハッチウス氏が明らかにした。
調査結果の間にも不一致が見られる。コンファレンスボードによると、1月下旬から2月上旬にかけて調査した最高経営責任者(CEO)の信頼感は3年ぶりの高水準だった一方、S&Pグローバルは2月中旬に調査した購買担当者の今後1年間の見通しに対する楽観度が大幅に低下したと発表した。
しかし、トランプ氏の関税の脅威も消費者のインフレ期待を押し上げているようだ。この現象は複数の調査で数カ月連続して確認できるため、無視するのは難しい。
インフレ期待の上昇は潜在的な問題だ。エコノミストは、インフレ期待が自己実現的になり、経済の勢いが弱まってもFRBが利下げを躊躇(ちゅうちょ)する可能性があると考えている。
高金利に抑制されている建設業界は、トランプ氏の移民取り締まりの影響を大きく受ける。22年半ば以降、下降トレンドにある製造業生産は、新たな貿易戦争によって深刻な混乱に見舞われる可能性がある。
トランプ氏は2月27日、米国が中国からの輸入品に3月4日から追加で10%の関税を課す計画だと述べた。2月初めに発表した10%にさらに上乗せすることになる。また、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課す方針を改めて示した。
EYパルテノンのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「これは大きな打撃となる可能性がある。国内生産で一夜にしてそれを相殺できるというのは事実ではない。工場を建設するには何年もかかる」と述べた。
ダコ氏は今後12カ月以内に景気後退に陥る確率を35~40%とみており、年初時点から約5ポイント上昇させている。
一方、旺盛な需要を示す兆候の中には、詳しく調べると安心材料とは言えないものもある。商務省の2月27日の発表によると、航空機と国防関連を除く資本財の新規受注は1月に前月比0.8%増加した。エコノミストは、関税引き上げ前の駆け込み発注が反映された可能性を指摘している。在庫積み増しについても、同様の兆候が財の貿易赤字に関する新たなデータから読み取れる。商務省によると財の貿易赤字は1月に過去最高の1533億ドル(約23兆円)に膨らんだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が調査したエコノミストは1月上旬時点で、25年1-3月期の国内総生産(GDP)成長率が前期比年率2.2%拡大すると予想していた。このうち何人かは、ここ数週間で予想に大きな変化はないと述べている。
しかし、貿易赤字の拡大はGDPを押し下げる。米アトランタ連銀が公表するリアルタイムの経済成長予測「GDPナウ」は、1-3月期の成長率予測をプラス2.3%からマイナス1.5%に引き下げた。2月28日にはパイパー・サンドラーのエコノミストが、1-3月期のGDP予想をプラス2%からマイナス2%に下方修正した。
パイパー・サンドラーのチーフエコノミスト、ナンシー・ラザー氏は「これは景気後退の始まりなのか。われわれはそうは考えていない。しかし、この経済的不確実性が不安定な状況を生み出している」と述べた。
先週のドナルド・トランプ米大統領、JD・バンス米副大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談での大惨事は、北大西洋条約機構(NATO)の基盤がますます揺らいでいることを証明した。ウクライナでの戦争を巡る2月12日のトランプ氏とロシアのウラジーミル・プーチン大統領との電話会談から始まり、トランプ氏がゼレンスキー氏を「独裁者」であり、この戦争の扇動者だと呼んだことで事態は悪化した。バンス氏がロシアとの比較分析を示さずに、西欧諸国の民主主義が不十分だとのネオコン(新保守主義)的な不満を述べたことで、プーチン氏の外交的な孤立状態が緩和された。国防費の大幅削減を検討するというピート・ヘグセス米国防長官の計画は、さらに悪い結果の前兆だ。米大統領執務室での敵意に満ちた対決でこの状況は完成し、今やすべてが歴史上最も成功した政治・軍事同盟の崩壊を示している。トランプ氏はNATOから正式に脱退したわけではないが、NATOを極めて著しく弱体化させていることから、離脱しても単に最後の侮辱的な振る舞いになるだけだろう。
危機にひんしている米国の同盟関係はNATOだけではない。トランプ氏は1期目で、現在ほどあからさまにではないものの、NATOへの攻撃と同時に他の同盟国への批判も行っていた。米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国による情報共有パートナーシップ「ファイブアイズ」、豪州向け原子力潜水艦の建造に関する英米豪のコンソーシアム「AUKUS(オーカス)」、そして「ならず者国家」が大量破壊兵器を入手するのを阻止するための輸出管理規則も、すべて危機にひんしている。日本や韓国との2国間関係さえ問題になっている。台湾は強い懸念を抱くべきだ。
イスラエルは当面この危機を免れるかもしれないが、イスラエル人はドイツの神学者マルティン・ニーメラーの警句を思い出すべきだ。「そして彼らが私を追ってきたとき、私のために声を上げる者は誰一人残っていなかった」
ウクライナをロシアから救い、NATOを救い出すためには、二つの補完的な政治的反撃が必要だ。根拠に乏しいが、トランプ氏のアドバイザーの中にはまだ、方向を転換するのに十分な同盟支持者がいるかもしれない。もしそうであれば彼らは、トランプ氏の事実に基づかない発言にただ「はい、かしこまりました」と答えるだけでなく、大統領が何をすべきかを助言する必要がある。
これは他の人々と同様に私自身も経験したことであり、米国とその憲法に忠誠を誓う者にとって不快なことだと証言できる。だが、どこかの時点で、雇用の確保や野心より信条を優先させなくてはならない。辞任が唯一の名誉ある道になる。それぞれのアドバイザーはいずれ自身で決断しなくてはならない。その決断を始める必要がある。
上下両院の共和党議員も、われわれの同盟の解体や国防予算の削減に異議を唱えなければならない。一部の議員はウクライナとNATOへの支持を強く主張しているが、より多くの議員がそれに続く必要がある。民主党議員の中にも支持者は見つかるだろう。一緒になれば、支持者は両院で過半数に達する可能性がある。われわれの同盟の強化と国防費の大幅な増額を議員が声高に支持することはそれ自体が重要であり、同様に感じているトランプ政権当局者を安心させるためにも重要だ。トランプ氏を動かす力として、自身の政治的立場を守りたいという欲求ほど強力なものはない。
同盟の支持者はまた、トランプ氏を説得して、同氏のよく知られた欧州連合(EU)嫌いに気を向けさせることで、NATOへの攻撃が抑制されるようにすべきだ。トランプ氏のEU嫌いは、欧州の弱さと不十分な国防支出や、歴代の米政権が交渉してきた貿易条件への批判を反映している。こうした不満の一部は正当化されるが、より広範な米国の安全保障上の利益を消滅させるほどのことではない。
欧州の人々は、とりわけフランスが支持するEUの教条主義を否定する必要がある。フランスはEU創設前から、欧州は米国から分離すべきだと主張していた。この集団思考は、NATO内の「欧州の柱」を求める声に長らく反映され、NATOの結束をむしばんできた。これは皮肉なことであり、NATOにとって致命的にもなり得るが、仮にフランスの考え方が支配的となり、EU自身がNATOの代わりの役割を果たそうとすることになれば、米国は撤退すべきだというトランプ氏の考えが補強される。すべての欧州諸国がこの類いの考えにとりつかれているわけではない。ドナルド・ラムズフェルド元米国防長官が「新しい欧州」と呼んだ東欧の国々の大半と、英国や北欧のNATO加盟国などの「古い欧州」の一部は、常に大西洋主義を重視してきた。主に問題になるのは、フランスやドイツなどの「古い欧州」だ。
トランプ氏の攻撃に対して欧州が最初に示した反応は――予想通りエマニュエル・マクロン仏大統領が先導したものだが、米国のNATO離れはもはや取り返しがつかないというものだった。だが西側諸国全体の安全保障と高まりつつある世界的脅威への共通の懸念を守るために、大西洋の両側のNATO支持者らはむしろ、トランプ氏の姿勢が変わらないという誤った印象に抵抗しなければならない。真の包括的脅威である中ロの枢軸に、欧州諸国だけで立ち向かえるかどうかは疑わしい。欧州諸国はEUの一部であることよりも、西側諸国の一員であることにずっと大きな価値を見いだし、その考えに基づいて行動すべきだ。残念なことに、ドイツの次期首相になるとみられるフリードリヒ・メルツ氏は総選挙後すぐに、米国の影響からの「独立」を目指す考えを示すという誤った方向に踏み出した。EU幹部のカヤ・カラス氏の「自由世界には新たなリーダーが必要だ」といった発言も、良い影響をもたらさない。
「同盟諸国と共に戦うことよりも悪いことが一つだけある。それは同盟諸国なしに戦うことだ」というウィンストン・チャーチルの洞察を、トランプ氏が重視したことは一度もない。このため、トランプ政権下で米国の国家安全保障上の利益を推進し、不完全だと分かっている同盟関係を崩壊させないためには、優位に立とうとする前に耐え抜くことが必要になる。トランプ氏に対して粘り勝ちを収め、彼の関心をそらし、彼のために新たな標的を見つけることが、一つの答えになるだろう。しかし最も重要な方策は、今すぐ米国民に真実を伝えることだ。
貿易赤字は、ドナルド・トランプ米大統領が公人としての生活を通じて執着してきた問題だ。
それにもかかわらず、大統領としてのトランプ氏の政策は、貿易赤字の縮小とは相いれないものであることが多い。
企業に有利な規制緩和や減税は民間投資を促進し、財政赤字を拡大させる。これは輸入を呼び込み、金利やドル相場を押し上げて輸出を抑制する。一方、関税は輸入を減少させるだけでなく、他の国・地域に打撃を与えたり、報復を招いたりすることで輸出も減少させる可能性がある。
従ってこれらの目標は他に何もしなければ互いに矛盾する。その矛盾を解決できる政策はあるのだろうか。解決策はあるし、共和党にはそれを実行に移す絶好のチャンスがある。その解決策とは、連邦政府の歳出の大幅かつ迅速な削減だ。予算を削減すれば、需要とインフレの抑制を通じて金利やドル相場が押し下げられ、輸入が減り輸出が増える一方で、民間投資の拡大に必要な条件は保たれる。
双子の赤字
貿易赤字は根本的に、一つの国の生産よりも消費の方が多いことに起因する。財政赤字は、税金で減る分より多くの需要を、財政支出を通じて経済に注入することによって、この不均衡の一因となる。こうしたつながりがあるため、この二つの赤字は「双子の赤字」と呼ばれることもある。
この関連性は不変ではない。リセッション(景気後退)によって税収や輸入は減るが、(1990年代終盤のような)民間投資ブームが起きるとそれらは増える。いずれの場合も、貿易赤字と財政赤字は逆方向に動く。
しかし、財政緊縮策を通じて意図的に財政赤字を縮小する、あるいは財政刺激策を通じて意図的に財政赤字を拡大すると、通常、貿易に影響が及ぶ。国際通貨基金(IMF)が2021年に公表した、1978年から2019年までの33カ国を対象とした研究によると、米国のような大国では、1ドルの財政赤字縮小によって、経常収支(財・サービスや投資収益を含む広範な貿易の指標)の赤字が0.30~0.50ドル縮小した。
米国は昨年に1兆8000億ドル(約270兆円)、国内総生産(GDP)比で6.4%の財政赤字を計上した。スコット・ベッセント財務長官は、トランプ氏の任期が終わるまでにそれを3%に減らすことを提案している。前出のIMFの計算に当てはめると、昨年9000億ドルを超えていた財・サービスの貿易赤字は3000億~5000億ドル減る。
関税より良い
貿易赤字は本質的に悪いものではないが、現政権のようにそれに同意できないとしても、被害が最小限になる方法で対応すべきだ。財政緊縮策は、関税よりはるかに少ない巻き添え被害で役目を果たす。インフレ率は上がるのではなく、下がる。貿易相手国が報復してくることはない。特定の利益団体によるロビー活動も起きなければ、誰がどの程度の期間、打撃を受けるのかを巡り、徐々に悪影響を及ぼすような不透明感も生じない。
財政緊縮策の主なマイナス面は、成長を鈍化させることだ。2007年から2009年の金融危機後に財政緊縮策を講じた国々では、高い失業率がさらに上昇し、中央銀行が利下げでそれに対応しようとしたが、金利が既に0%近辺だったためできなかった。
今の米国は、それと逆の状況にある。失業率は低く、インフレ率は連邦準備制度理事会(FRB)が目標としている2%を上回っている。野心的な財政赤字縮小策を講じれば、インフレ率は低下する可能性がある。そうなればFRBは利下げし、財政緊縮策による経済成長面の打撃を相殺するとともに、ドル安にできるかもしれない。その一方で、連邦政府の債務が減れば、国債利回りは低下する。このように、財政赤字の削減は、民間投資と輸出を呼び込む。財政赤字の拡大がそれらを締め出すのと同じ仕組みだ。
これとは対照的に、関税では貿易赤字が減らないことが経験と理論から明らかになっている。1期目のトランプ政権が中国に関税を課した際、米国の輸入品はメキシコ製とベトナム製にシフトした。そして人民元相場の下落が、中国の輸出に対する関税の影響を緩和するのに寄与した。4日から適用される予定のメキシコとカナダに対する25%の関税は、既に両国通貨の相場を下落させている。それに加えて、両国は報復を約束している。これらすべては、米国の輸出品への需要を減退させる。
難しい計算
年間財政赤字の累積額である連邦政府債務残高は、GDP比100%を超えようとしている。このため、財政赤字の削減が不可欠になっている。正しいやり方でそれを実現できれば、貿易赤字を減らすことも可能だ。
それは増税でも実現可能だが、実際には財政支出削減の方がより効果的だ。短期的な計算では、例えば政府の給付金を1ドル減らした場合の消費、輸入の減少幅は、税金を1ドル増やした場合よりも大きい。税金が増えた場合には、一般家庭は貯蓄を取り崩すことで生活を維持しようとするからだ。
長期的に見ると、増税は仕事と投資に悪影響を及ぼし、GDPを減少させる。米議会予算局(CBO)の2022年の調査で、給付金の削減の方が所得税率の引き上げよりも、財政赤字のGDP比率押し下げ効果が大きいと結論付けられたのは、このためだ。
これは偶然にも共和党が優先する政策とも一致する。共和党は、2017年に導入された減税策の延長に加え、新たな減税の実施も求めている。しかし、こうした減税を行った上で、財政赤字削減を実現するのは難しい。
CBOと上下両院税制合同委員会(JCT)の推計によれば、減税を延長した場合、財政赤字のGDP比は2029年度になっても7%の水準に維持される。筆者の計算では、これを3%に引き下げ、その水準を維持するには、今後10年間にわたり財政支出を現状と比べて12兆ドル削減する必要がある。しかし、共和党が多数を占める米連邦議会下院が最近承認した予算決議案で想定されている支出削減額は1兆5000億~2兆ドルにとどまっている(彼らはこれに加えて自分たちの計画がもたらす成長の配当による財政赤字の削減を想定しているが、それは筆者の計算に含まれていない)。
トランプ氏が社会保障やメディケア(高齢者・障害者向け公的医療保険制度)を削減する可能性を一切否定することによって、この作業はことさら難しくなっている。公的債務の利払い分を含めると、支出の半分には手をつけられない。2029年度時点で財政赤字をGDP比3%にするには、それ以外の、国防、国土安全保障、退役軍人向け手当、メディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)、フードスタンプ(低所得者向け食料費補助制度)、生活保護給付など、ありとあらゆる連邦プログラムへの支出を40%削減する必要がある。メディケイドとフードスタンプを廃止し、全職員を解雇したとしてもまだ十分ではない。共和党は既にメディケイド支出の削減には二の足を踏んでいる。
つまり共和党は、社会保障とメディケア、増税を議論のテーブルに載せるか、経済成長に奇跡が起きるのを待つか、さもなければ、ずっと低い赤字削減目標を受け入れるかしかない。
財政緊縮策を使って貿易赤字を削減する場合、もう一つ注意すべき点がある。関税同様、この場合も他国がそろって同じ行動を取れば効果がないということだ。実際、米国の貿易赤字の原因は、米国が消費し過ぎていることだけでなく、他国の消費が少な過ぎることにもある。ドイツと中国は経済構造的に、消費志向ではなく、輸出志向に偏っている。
だが、その状況は変わりつつあるのかもしれない。ドイツの次期連立政権を担うとみられる各党は、減税を実施し、国防や発電、インフラへの支出を拡大する意向だ。中国指導部は、消費の低迷と雇用市場の不振への対応として、景気刺激策の実施を迫られている。ドイツと中国は、トランプ氏の関税が両国の輸出を狙い撃ちしてくるのではないかと懸念している。
では、この場合はどうだろう。ドイツと中国が自国の経済を刺激して輸入を拡大する一方で、米国は財政赤字を縮小し、追加関税を課さないという合意ができた場合だ。
なんと、貿易戦争を起こすことなく貿易赤字の縮小が可能になるではないか。
多くの米国人が物価高騰と根強いインフレに疲弊し節約を余儀なくされている一方で、富裕層は惜しみなく支出している。
年収約25万ドル(約3700万円)以上の世帯である上位10%の所得層は、株式や不動産、その他資産の大幅な値上がりに後押しされ、バカンスからブランドバッグまであらゆるものに大金を費やしている。
ムーディーズ・アナリティックスの分析によると、この消費者層は現在、全支出の49.7%を占めており、1989年にさかのぼるデータの中で過去最高を記録した。30年前は約36%だった。
このことは、経済成長が富裕層の継続的な支出に異常なほど依存していることを意味する。ムーディーズ・アナリティックスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏の推計によると、上位10%の支出だけで国内総生産(GDP)のほぼ3分の1を占める。
2023年9月~24年9月には高所得者層の支出が12%増えたが、労働者階級および中産階級世帯の支出は逆に減った。
分析を監修したザンディ氏は「富裕層の財務状況がこれほど良好だったことはなく、彼らの支出がこれほど堅調で、経済がこの層にこれほど依存したこともない」と述べた。この分析は連邦準備制度理事会(FRB)のデータに基づいており、入手可能な最新データである2024年7-9月期までを対象としている。
全体として見ると、富裕層はインフレ率をはるかに上回るペースで支出を増やしているが、それ以外の層の状況は異なる。下位80%の所得層の支出は4年前と比べて25%増加したが、これは同期間の21%の物価上昇率をわずかに上回るに過ぎない。一方、上位10%の支出は58%増加した。
株価の急落や住宅価値の低下により、上位10%の信頼感が揺らぎ、彼らが消費を抑制すれば、経済に大きな影響を与えるだろう。関税の脅威などを背景に消費者信頼感は全体的に低下し始めており、富裕層でも同様の傾向が見られる。 
ザンディ氏によると、米国の富裕層は年齢層と教育水準がより高い傾向にあり、その購買力を支えているのは、過去数年間の大幅な住宅価格上昇や株高などだ。資産価格の上昇は良好な経済の兆候として称賛されるが、同時に不動産や株式を持つ人とそうでない人との格差を広げている。
インディアナ州インディアナポリスに住むビベック・トリベディさん(38)は新型コロナウイルス流行時に貯蓄し、2022年と23年に同地で3カ所の投資用不動産を購入した。自身の住宅コストは安定している。コロナ流行中の金利が低かった時期に自宅のローンを3%未満で借り換えたためだ。
トリベディさんと妻のプルバさんは共に製薬業界で働いている。2人の年収は合わせて35万ドル以上で、コロナ前と比べて約45%増加した。幼い子どもが2人おり、トリベディさんの両親も同居している。
トリベディさんは「自分たちのキャリアと投資ポートフォリオに戦略的に対応してきた」と述べた。「支出を抑える必要は特になかった」
トリベディさんはロードサイクリングを始め、3000ドルの自転車を購入した。夫婦は食料品の値上がりに気付いたが、自分たちには欠かせないオーガニック製品の購入はやめないという結論に至った。今年は旅行に1万~1万5000ドル程度の予算を立てており、これには母国インドへの旅行計画も含まれる。
コロナ下では、どの層の米国人も貯蓄額が記録的な水準となった。外出自粛で支出が減った上、政府のさまざまな景気刺激策による臨時収入を受け取ったためだ。2022年初めには家計の過剰貯蓄が2兆6000億ドルに達した。
その後インフレが襲い、物価が急騰した。ほとんどの米国人は支払額の増加に対応するために貯蓄を取り崩した。しかし、上位10%の所得層は貯蓄の大半を維持した。
また、富裕層が所有する株式などの資産の価値は突然大幅に上昇した。FRBのデータによると、上位20%の純資産は2019年末以降、35兆ドル以上増加した。伸び率は45%で、これは他の層でも似たような数字だったが、金額に換算すると大きな差があった。下位80%の増加額は14兆ドルだった。
ニューメキシコ州アラモゴードに住むテストパイロット、トム・ショーフさん(61)は、コロナ禍以降、自身の純資産が約40%増加したと推定している。ワイオミング州の牧場から退職口座で保有する株式まで、ほぼ全ての資産の価値が大幅に上昇している。
妻のクリスティさんは作業療法士で、2人の年収は合わせて約50万ドルだ。最近になり、成人した息子2人にそれぞれ、贈与税の非課税枠上限である1万9000ドルの年間贈与を始めた。「コロナ禍で親族が何人か亡くなった。『なぜ待つ必要があるのか』と思った」とショーフさんは語った。
バンク・オブ・アメリカの調査によると、上位3分の1の富裕層顧客のクレジットカードとデビットカードの支出が、下位3分の1の低所得層顧客の支出よりも速いペースで増加していることが分かった。特に大幅な支出がみられたカテゴリーもあり、上位5%の世帯は1年前と比べて米国外での高級品支出が10%以上増えた。
バンク・オブ・アメリカ研究所のシニアエコノミスト、デービッド・ティンズリー氏は「彼らはパリに行き、高級バッグや靴、衣服でスーツケースを一杯にしている」と述べた。
デルタ航空のエド・バスティアン最高経営責任者(CEO)は1月、高級志向の旅行への強い需要が今年の利益を押し上げるとの予想を示した。同社のプレミアム席の売り上げは8%増加したが、エコノミークラスは2%増にとどまった。
クルーズ船運航大手のロイヤル・カリビアン・グループは、過去最高となる5週間の予約期間をここ数カ月で記録したと発表し、より高級志向の顧客に人気のある欧州河川クルーズを開始すると明らかにした。
JPモルガン・チェースのアナリスト、マシュー・ボス氏は、こうした企業と、富裕層以外の顧客を対象とする企業との間には「極端な二極化が見られる」と指摘した。ディスカウントストアチェーンのビッグ・ロッツは昨秋に破産法の適用を申請した。同業のファミリー・ダラーと百貨店チェーンのコールズは店舗閉鎖を進めている。「彼らは皆、減りつつある消費を何とか獲得しようと争っている」とボス氏は述べた。
トランプ米大統領は3日、カナダとメキシコに対する25%の関税を4日に発動すると言明した。北米における貿易戦争への懸念が高まり、金融市場に動揺が広がった。
トランプ氏はホワイトハウスで、カナダとメキシコに関税を課す必要があるとし、「彼らがやらなければならないのは、自動車工場などを米国内に建設することだ。そうすれば関税はかからない」と述べた。
カナダとメキシコが米国への合成麻薬フェンタニル流入抑制で合意すれば関税を回避できるのかという記者団からの質問に対し、「両国に余地は残されていない」と応じた。
同氏の発言を受け、米国株は午後終盤の取引で大きく値を下げ、メキシコペソとカナダドルも下落した。
トランプ政権は関税が米東部時間4日午前0時01分(日本時間午後2時01分)に発効する予定だと確認した。関税率は25%で、カナダからのエネルギー輸入については10%となる。
カナダのジョリー外相は、同国には対応する用意があると表明した。メキシコ当局者は現時点でコメント要請に応じていない。
トランプ氏は中国からの全ての輸入品に対する追加関税をこれまでの10%から20%に引き上げる方針も再確認した。中国が「違法薬物危機を緩和するための十分な措置を講じていない」と述べた。
また、4月2日からは米国製品に関税を課している国に対し「相互関税」を発動すると述べた。
米コーネル大学のグスタボ・フローレスマシアス公共政策教授は、消費者が数日内にも価格上昇に直面する可能性があると指摘。「特に自動車部門はかなりの悪影響を受ける可能性が高い。製造工程が3カ国にまたがるサプライチェーン(供給網)の混乱だけでなく、車両価格の上昇を見込んで需要が減退する可能性があるためだ」と述べた。
3日の米株市場で自動車株は大きく下げ、メキシコで大規模なトラック生産を行っているゼネラル・モーターズ(GM)は約4%下落。フォード・モーターも1.7%安となった。
トランプ米大統領は3日、日本と中国が通貨安政策を取るなら米国は「不当に不利な立場に置かれる」と述べた。この発言を受け、円は対ドルで上昇した。
トランプ氏は中国と日本を例に挙げ、こうした国々に関税を課すと示唆。ホワイトハウスで発言したもので、円は一時1ドル=149円11銭とこの日の高値を付けた。米国株が売られ、安全資産として円の魅力が高まった。
トランプ氏は暗号資産(仮想通貨)の戦略備蓄に関して演説後に記者団の質問に答え、日本が円を押し下げて、中国が元を押し下げれば、「われわれは極めて不当に不利な立場に置かれる」と指摘した。ブルームバーグ・ガバメントが伝えた。
具体的には鉱業・建設機械大手の米キャタピラーに言及し、日本や中国などの国々が自国通貨を押し下げれば、米国でトラクターを製造するのは「とても困難になる」とコメントした。
その上で、中国の習近平国家主席や「日本の指導者」に電話し、米国にとって不公平であることを理由に、「通貨を押し下げ続けることはできないと話した」とし、「関税率をやや引き上げなければならなくなるだろう」と語った。
また、習主席や他国の指導者に何度も電話をかけて、こうした国々が自国通貨を押し下げている点を何度も指摘してきたと主張し、そうする代わりに「これを非常に簡単に解決する方法は関税だ」と述べ、「彼らがそうするなら、われわれは関税で埋め合わせる」と話した。
一方、トランプ氏が中国からの輸入品に対する関税率を現行の2倍の20%とする措置に署名したとのホワイトハウスの発表を受け、中国のオフショア人民元は対ドルで下落し、一時0.2%安の1ドル=7.3067元とこの日の安値を付けた。
このほか、トランプ氏がカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を新たに課す方針をあらためて確認したことを受け、カナダ・ドルとメキシコ・ペソも対米ドルで下落。カナダ・ドルは一時0.5%安の1米ドル=1.453カナダ・ドル、メキシコ・ペソは0.9%安の1米ドル=20.75ペソで取引された。
トランプ米大統領は、「外国産」農産物への関税を4月2日に発動すると明らかにした。輸入品への関税賦課を警告する最新の動きとなる。
「米国の偉大なる農業従事者にメッセージだ。米国内で販売される大量の農産物を生産し始める準備をせよ。外国産の製品に4月2日に関税が賦課される。お楽しみに!」とトランプ氏は3日にソーシャルメディアに投稿した。
トランプ氏はどの製品が対象となるのか、あるいは例外があるのか、一段の詳細は示さなかった。この計画がほぼ全ての貿易相手国にいわゆる「相互」関税を課すという、以前に発表された取り組みの一環になるのかも不明だ。
トランプ氏は既に、鉄鋼・アルミニウムの輸入に25%の関税を賦課しているほか、自動車や医薬品、半導体、木材、銅など幅広い分野に関税を課す意向を示している。米国の産業を保護し、米製造業を活性化させる取り組みだとしている。
CBOEグローバル・マーケッツの最新データによると、オプション取引業者は迫りくる株式市場の暴落に備えている。
月曜日にマーケットウォッチに共有されたCBOEグローバル・マーケッツのマンディ・シューからの報告によると、CBOEボラティリティ指数に連動したディープ・アウト・オブ・ザ・マネーのコールオプションの需要が高まっていることがわかった。 
VIXは先週急上昇した。
需要の急増は、S&P500のような米国の株価指標の上昇と同時期に起きた。 
ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによれば、9月以来最悪の2週間の上昇となった。
最近の指数の低迷により、S&P 500に連動するプットオプションの多くがイン・ザ・マネーとなったため、トレーダーらはプットオプションから利益をあげているようだ。これにより、S&P 500プットオプションの「歪み」、つまりアウト・オブ・ザ・マネーの契約に対する需要と、より支払いに近い契約に対する需要を測る指標がいくらか緩和された。
しかし同時に、VIXコールオプション(VIX指数が50を超えた場合に利益が出るVIX連動の強気契約)の需要が急増し、暴落保護の需要がまだ十分にあることを示した。
「実際、木曜日は高権利行使価格(50以上)のVIXコールオプションの購入が過去2番目に多い日となり、ある顧客が5月の55~75権利行使価格のコールオプションを26万件以上購入し、総額1,070万ドルを支払った」と徐氏はマーケットウォッチに共有されたレポートで述べた。
実際、CBOEのデータによると、大幅にアウトオブザマネーとなっているVIXコールの顧客による純購入は25万契約近くに急増し、1日としては2023年5月4日以来の最大の数字となったとCBOEの代表者は述べた。
8月5日の市場前取引では、米国の経済成長不安と日本円の急激な下落により、VIXは一時50を超えた。 
米ドル円
+0.04% キャリートレードは世界市場に打撃を与え、ウォール街の恐怖指数は2020年4月以来初めて日中ベースで65を超えた。
しかし、指数は最終的に38前後でその日を終えた。一部の人は、この早い時期の急上昇はデリバティブ市場全体の流動性問題によって引き起こされた可能性が高いと推測した。
ファクトセットのデータによると、VIXは2020年3月以降50を上回ったことがない。
金曜日の指数は20をわずかに下回る水準で終了したが、これは同指数の長期平均とほぼ同水準だ。ボラティリティ・トレーダーにとって、VIXの20水準は大きな意味を持つ。20を超えると市場は不安定と言われ、それ以下では平静と見なされる。
米供給管理協会(ISM)の最新製造業報告で2月の経済活動が縮小したことが示されたことを受けて、米国株は月曜日に低迷した。これにより、アトランタ連銀のGDPNowによる第1四半期GDP予測はマイナス2.8%となった。これが現実となれば、2022年初め以来初めて米国経済が四半期ベースで縮小することになる。 ドナルド・トランプ大統領がカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税、中国製品に10%の追加関税を火曜日から発効 する ことを確認したことで、月曜日の午後、市場の下落は激化した。
S&P500は104ポイント、1.8%下落し、ナスダック総合指数は497ポイント、2.6%下落した。ダウ工業株30種平均は 
DJIA
CBOEはまた、S&P500指数に連動するいわゆる「ゼロデイ」オプションの取引が2月に過去最高水準まで急増したことも明らかにした。満期間近の契約の取引は先月、S&P500に連動する契約全体の56%を占めた。 
オプション取引では、コールは、原資産または指数が「権利行使価格」と呼ばれる特定のレベルを超えて上昇した場合に利益が出る強気の契約です。一方、プットは、原資産または指数が権利行使価格を下回った場合に利益が出る弱気の賭けまたはヘッジを表します。
VIX に連動した契約の場合、S&P 500 が突然急落した場合には、コールが利益をもたらす可能性が最も高くなります。VIX はボラティリティの指標であるため、市場が混乱しているときには通常急上昇します。
どちらの場合も、契約保有者に支払われたプレミアムを補償するためには、原資産が行使価格を十分な幅で超える必要があります。
●中東情勢
イスラエルが2月にトランプ米政権へ、シリア暫定政権の弱体化と中央集権化の阻止を働きかけていたことが、ロイターの複数の関係者への取材で分かった。
シリア暫定政権の後ろ盾がイスラム主義色の強いトルコ与党を率いるエルドアン大統領のためで、イスラエルはトルコの影響力拡大を防いで国境の脅威を排除したい考えだ。
関係者らによるとイスラエルはこの一環として、トルコに対抗するためロシア軍がシリア領内に持つ2カ所の基地の存続を米国側に求めた。一連の要望のうち主要な論点は「ホワイトペーパー」(政策提言書)として複数の高官に配布された。
イスラエルは、アサド政権打倒をけん引した過激派「シリア解放機構(HTS)」への不信感を公然と表明しており、ネタニヤフ首相は2月23日、シリア南部におけるHTSや暫定政権に関係したいかなる勢力の存在も容認しないと言明し、同地域の非武装化を訴えた。
この発言に先立つ2月上旬にはサール外相が、イランによる親イラン民兵組織ヒズボラの再建活動をトルコが支援していると懸念を表明。さらに、シリア領内のイスラム主義グループがイスラエルに対する新たな戦線を構築していると指摘していた。
一方、エルドアン大統領は昨年、イスラム諸国はイスラエルについて「拡張主義の脅威が高まっている」と指摘し、連携するべきだと表明していた。
今回のイスラエルの米国への働きかけを巡り、ロイターの取材に匿名を条件に応じた関係者は第2次トランプ政権がどの程度イスラエル提案を受け入れるか不明だと語った。
同政権はこれまでシリアに関してほとんど言及しておらず、制裁措置の行方や北東部に展開する米軍についても先行きが不透明となっている。
●エマージング
中国の代表的な「火酒(蒸留酒)」の茅台酒は国内消費市場の動向を測るバロメーターであり、メーカーが拠点を置く貴州省にとって貴重な財源でもある。しかし近年は不景気や消費者の嗜好の変化などを背景に販売が鈍っており、多額の債務を抱える貴州省政府の財政への影響が懸念されている。
春節(旧正月)前の数週間、製品名の由来となった貴州省・茅台村には贈答用に茅台酒を購入しようと観光客が押し寄せるのが通例だが、今年は明らかに人出が少なかった。地元酒店の店主は「以前は北京から飛行機でやってきて3000元(約412ドル)以上もする茅台酒を年に何度もまとめ買いする客がいた。今では価格が1699元に下がったのに、景気が悪すぎて誰も買おうとしない」とぼやいた。
地元メーカーの貴州茅台が製造する茅台酒は、何十年にもわたり結婚式や仕事上の夕食会、国家行事に欠かせない酒だった。しかしここ2年間は消費者や企業の景況感が悪化したことで販売が打撃を受けている。
カリフォルニア大サンディエゴ校のビクター・シー教授(政治学)は、貴州茅台の強力なキャッシュフローは「絶え間なく到来する貴州省政府の債務返済を支援する戦略の重要な一部だ」と指摘。貴州茅台の利益が減少すれば省政府にとって深刻な問題になるとの見方を示した。
上海証券取引所上場の貴州茅台は、親会社である茅台集団が筆頭株主で、茅台集団は中国の省で2番目に負債額の多い貴州省が全額出資している。
貴州茅台の貴州省への貢献は絶大だ。大口の雇用主であるだけでなく、同省が収入を確保し、債務を返済する上でも極めて重要な存在になっている。
しかし景況感の長期低迷で貴州茅台の株価や販売価格は大幅に下落した。同社の株価は2021年の最高値からほぼ半減。看板商品であるアルコール度数53度の「飛天」(500ml)の販売価格も24年初めの2700元(約371ドル)から最大22%下落した。
<逆風は継続か>
貴州茅台は2023年後半に飛天の出荷価格を20%引き上げたため、24年の売上高伸び率が目標を15%上回った。しかし今後も成長を維持できるかは依然として不透明だ。
証券会社や企業幹部の推計によると、貴州茅台は過去10年間に生産した在庫の少なくとも50%が消費に回らず、投資目的で保管されている。これらの在庫が大量に市場に流出すれば製品価格や株価が下落する恐れがある。UBSは「飛天」の販売価格が2025年半ばまでに2000元を大きく割り込む可能性があるとの予測を示している。
価格の下落は茅台酒の高級ブランドとしての評価にも影響しそうだ。北京のプライベートエクイティー企業のマネージャー、ジョージ・リウ氏は「茅台酒を飲むということは、その人が重要で成功した人物であることを示す。価格が下がれば飲む意味がなくなる」と述べた。
一方、上海に拠点を置くチャイナ・マーケット・リサーチ・グループのマネージングディレクター、ベン・キャベンダー氏は茅台酒が人口動態の変化にも直面していると見ている。「アルコール度数の高い蒸留酒は伝統的に年配の男性向けの酒で、35歳以下の消費者の多くは好まない」という。貴州茅台は若年層を取り込むため、カフェラテやアイスクリームとのコラボレーションなど手頃な価格の商品を展開しているが、「目立った効果は出ていない」(キャベンダー氏)という。
さらに貴州茅台は外国での展開を成長戦略の一つとして掲げているが、国内市場の減速を補うには不十分だと見られている。
<揺らぐ貴州省の財政>
貴州茅台の経営不安は貴州省の財政にも暗雲をもたらしている。
赤・白・青の配色の貴州茅台のロゴは貴州省の公共事業の場の至るところで見られる。同社の従業員数は3万人を超え、貴州省の税収の20%、省内総生産(GDP)の5%を占める。省内の高速道路建設会社の救済に動いたほか、道路、鉄道、空港、病院などの公共インフラにも資金を提供してきた。
一方、貴州省は2023年末時点の債務が1兆5000億元に達し、前年末から26%増加。債務の対GDP比は72%に達している。
スイスのザンクトガレン大のグイド・コッツィ教授(マクロ経済)は、貴州茅台の成長鈍化は貴州省の財政支援能力を制限して「最終的に借入コストを押し上げ、同省が債務不履行に陥るリスクが高まるかもしれない」と警鐘を鳴らしている。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
#### **為替市場の動向**
- **ユーロ上昇**:ウクライナ和平合意の期待感や欧州の財政支出拡大の可能性を背景に、ユーロは**0.89%高の1.0468ドル**まで上昇。  
- **カナダドル・メキシコペソ下落**:トランプ前米大統領が**4日から25%の関税を発動**すると発言したことで、両通貨が下落。  
- **ドル指数下落(0.48%安の106.78)**  
- **ビットコイン上昇(1.7%高の85,665.91ドル)、イーサリアム下落(4.74%安の2,119.73ドル)**  
#### **債券市場**
- **米国債利回り低下**:  
  - 10年債利回り:4.168%(12月以来の低水準)  
  - 2年債利回り:3.991%  
- **要因**:  
  - **ISM製造業PMI(2月)50.3**(前月50.9から低下)→ 景気減速懸念  
  - **関税発動の影響**  
#### **株式市場**
- **主要3指数が下落**(S&P500、ナスダック、ダウ)  
  - **ISMの経済指標悪化**と**トランプ氏の関税発言**が影響  
  - **エヌビディア(NVDA)8.7%安、アマゾン(AMZN)3.4%安**  
  - **ディフェンシブ株(ヘルスケア、不動産)は上昇**  
#### **コモディティ市場**
- **金価格上昇(1.85%高の2,901.10ドル)**  
  - **関税政策の不透明感**から安全資産としての需要増  
- **原油下落(WTI 1.99%安の68.37ドル)**  
  - **米景気減速懸念**と**OPECプラスの増産観測**が影響  
### **総括**
- **ユーロ高・ドル安の流れ**、関税問題で**カナダドル・メキシコペソ下落**  
- **景気減速懸念の高まり**(ISM指標の悪化、利回り低下)  
- **株式市場は関税と経済指標の悪化で下落、コモディティ市場はリスク回避の動き**
ロンドン株式市場と欧州株式市場はともに上昇し、防衛関連株が大幅に買われた。FTSE100種は続伸し、終値で最高値を更新。防衛費増額への期待が背景にあり、BAEシステムズは14.6%高、ロールスロイスは4.4%上昇。欧州株式市場でも防衛関連株が上昇し、ラインメタルは13.7%高、レオナルドは16.1%高となった。 

また、欧州首脳は防衛費増額とウクライナ和平案の策定で合意。米ウクライナ首脳会談は決裂した。これを受け、ユーロ圏の国債利回りが上昇。ドイツ10年債利回りは2.497%に上昇し、ユーロ圏の追加利下げ観測も強まった。 


備忘録(2025/2/28-3/2

●海外企業決算
●海外企業
苦境に立たされている半導体メーカーは金曜日、オハイオ州の半導体製造工場の開設を延期すると発表した。
同社は、最初の工場の建設は2030年まで完了せず、同年か翌年に稼働を開始すると述べた。最大1000億ドル規模の複合施設の2番目の工場は、おそらく2031年に完成し、翌年に稼働を開始するだろう。同社は当初、最初の工場の生産を2025年に開始する計画だった。
「米国拠点への投資を継続する中で、当社の事業ニーズとより広範な市場の需要に合わせて工場の生産開始時期を合わせることが重要だ」とインテル・ファウンドリー・マニュファクチャリングの副社長兼グローバルオペレーション責任者のナガ・チャンドラセカラン氏はリリースで述べた。「これは常に当社のアプローチであり、これにより責任を持って資本を管理し、顧客のニーズに適応することができる」
長年世界トップの半導体メーカーだったが近年その地位を失ったインテルは、人工知能ブームの傍観者だったことが主な理由で下降線をたどっている。同社の株価は昨年半分以上下落し、同社は売り上げの減速に対処しつつ、資本集約型の半導体製造事業へのさらなる進出を図っている。
8月、同社が四半期決算で期待外れの業績を発表したことを受けて、株価は過去50年間で最悪の1日下落を記録した  。インテルはまた、従業員の15%を解雇すると発表した。これにより同社は最近、買収の標的になる可能性があり、 12月にはCEOのパット・ゲルシンガーが解雇された。
インテルは、ジョー・バイデン前大統領のCHIPS・科学法事務局の主要受益者だった。政府は最近、米国国内での半導体生産拡大を目指し、11月に同社に約80億ドルの助成金を交付した。
●日本企業
日産自動車は再びスーパーヒーローを探している。今から約26年前、フランスのルノーとカルロス・ゴーン氏という積極的でコスト削減に熱心な経営者が、経営危機にひんしていた日産を救った。
日産は今、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)を退任させることを視野に調整を進めている。業績悪化に加えてホンダとの共同持ち株会社設立交渉が頓挫したことなどを受けた動きだが、四半世紀前のような明白な救世主はいない。
日産の問題は深刻化している。同社はここ6年間で3度目の年間ベースでの純損失を予測。米国と中国での販売は低迷している。
2026年に債務返済が急増することから、抜本的な対策を迫られる可能性もある。手頃な価格の電気自動車(EV)で日産が築いてきた初期の優位性は比亜迪(BYD)を筆頭とする中国勢により覆された。
トヨタ自動車のハイブリッド戦略は日産をさらに引き離している。内田氏は製品ラインアップの古さや利益率と信頼性の低下という問題に直面しており、時間的余裕はなくなっている。
ブルームバーグは取締役会が内田氏(58)の後継者候補の選定に乗り出したと報じたが、より大きな課題は、長期的な財務および戦略的支援を確保することだ。
筆頭株主のルノーは、中国の浙江吉利控股集団との提携に大きな可能性を見いだしている。米KKRなどのプライベートエクイティー(未公開株、PE)投資会社が関与し抜本的な再編を迫ることも考えられるが、そのためには日産の複雑な提携関係を解きほぐす必要があるだろう。
企業カルチャーや戦略上の違いといった障害は多いものの、ホンダとの協力は依然として選択肢の一つだ。
「日産は的を射た製品ポートフォリオから、全く的外れなポートフォリオへと10年の間に転落した」と、現在業界向けにコンサルティングを行っている元日産最高執行責任者(COO)のアンディ・パーマー氏は指摘。
「内田氏は幾つかの再生計画を実行しようとしたが、うまくいかなかった。恐らく、必要な大きな変化を断行するほどの冷酷さが欠けていたため」だと述べた。
ドラマの始まり
18年以後、日産を巡る物語は裏切りや追放、同盟の変化といった波瀾(はらん)万丈のドラマのような展開を見せている。
その年、ルノーによる日産への侵食を恐れた内部関係者たちが、ゴーン会長(当時)の解任に動いた。逮捕され特別背任などで起訴された元会長は大胆にもベイルートに逃亡。今もなお国際指名手配を受けている。
19年12月にCEOに就任した内田氏は、自動車会社を率いる典型的タイプではない。大学で神学を学んだ同氏は、日商岩井(現在の双日)から日産に移ってきた。
日商岩井は、自動車製造よりも小麦粉や工業部品の取引で知られていた。CEOの座を争った関潤氏とアシュワニ・グプタ氏は、自動車業界での経験が豊富で、19年後半に共同COOに就任した。
だが、関氏はほどなく退社し、日産の工場や製品開発を監督する業務上の全権限をグプタ氏に委ねた。同氏は時に投資家やアナリストにとって好ましい窓口となり、内田氏よりもCEOらしい対応をすることも多かった。 
グプタ氏が23年に不正行為の疑いで事実上解任され、内田氏が単独でトップに立ったことで、両者の権力闘争は決着した。
その間、日産の業績は悪化。取締役会は立て直し計画を命じた。内田氏は昨年3月、利益率の向上や数十の新モデルの投入、3年以内に年100万台の販売増という野心的な戦略を発表した。
それでも投資家は納得しなかった。日産の株価は急落し、それ以来約30%下落し、同社の時価総額は約1兆6000億円にまで落ち込んだ。かつては日本2位の自動車メーカーだった日産は今では時価総額で5位と、トップのトヨタに大きく水をあけられた。
昨年末までに日産の経営難は深刻化。売上高の減少と純利益の94%減という結果に表れた。 従業員9000人削減と生産能力の2割カットを計画する中、内田氏は報酬を半分にすることに同意した。
この業績悪化により、ホンダや鴻海精密工業など、提携先候補の関心を集めることとなった。鴻海は米アップルのスマートフォン「iPhone」の受託生産で知られる台湾企業だ。
交渉決裂
ホンダとの協議については、日本政府、特に経済産業省が慎重に支援し、日産の経営権を国内にとどめ、重要産業である自動車業界を守ることを目指した。 
日産とホンダは昨年、共同持ち株会社設立計画を発表し、世界3位の規模を持つ自動車メーカーの誕生を目指した。しかし、両社の経営陣はすぐに意見が対立した。
ホンダは日産を買収して子会社化することを提案。買収対象となることはあり得ないとしていた日産と、長年の提携先で保有している日産株36%の価値を最大限に高めたいルノーを動揺させた。
ホンダの技術主導の実用主義と日産の独立志向という対立は、乗り越えるにはあまりにも大きなものだった。
業績悪化と交渉決裂により、内田氏のリーダーシップに対する厳しい視線はさらに強まっている。
格付け会社のムーディーズとフィッチは日産をジャンク(投資不適格)級に相次ぎ格下げ。S&Pグローバルは23年以後、日産をジャンク級としている。
日産の取締役会は3月6日に予定されている指名委員会の開催に合わせて、正式に内田氏を退任させる計画を立てているとダイヤモンド・オンラインは報道。最高財務責任者(CFO)に任命されたばかりのジェレミー・パパン氏が暫定CEOに起用される可能性があると伝えた。
パパン氏は社内での評価は高いが、元調査アナリストという経歴には幾つかの問題点もある。ルノー出身のパパン氏は、ゴーン氏退任後の日産社内では一部の派閥から歓迎されない可能性もある。 
現職に昇進する前は、北米地域を担当していたが、日産はラインアップに目新しさがなく、値引きでコストを膨らませた。
次に正式な日産CEOとなる人物は、財務面で救い手を確保するのに苦労するかもしれない。主要な競合他社はほぼ全て、貿易上の脅威に悩まされている。EVの勢いが鈍化し、世界最大の自動車市場である中国での業績が急速に悪化している。
鴻海が日産を手に入れようとすれば、日本の大手企業が中国と密接な関係にある台湾企業の手に渡ることを嫌う経産省の抵抗を乗り越える必要がある。
鴻海は、日産などの従来型の自動車メーカーが生き残るためにはアウトソーシングが必要になるだろうと見込んで、EVの受託生産を手がけることを熱望している。
鴻海のEV事業を監督するのは、他ならぬ内田氏と日産CEOの座を争った関氏だ。
関氏は日産に関する知識を活用し、鴻海がルノーや日本政府にアプローチするよう主導した。鴻海の劉揚偉会長はルノーが保有する日産株の取得に関心を示していることを認めたが、日産の戦略的買収を目指すのではなく、「協力」が優先事項だとしている。
債務返済
統合は失敗に終わったが日産とホンダはEVとバッテリーに焦点を絞った戦略的提携を続けている。特に経営陣が交代すれば、将来的な協議の余地を残している。ダイヤモンドはパパン氏について、日産がホンダの子会社になることにもっとオープンだと報じた。
KKRも日産への潜在的な投資家として浮上しており、株式または負債オプションを見極め、同社の財務強化を検討している。
しかし、KKRは経営権を狙っているというより、需要低迷に苦しむ日産の主要サプライヤーであるマレリホールディングスに投じている26億5000万ドル(約4000億円)を保護しようとしている可能性が高い。
事情に詳しい関係者によると、日産COOだったグプタ氏の退任に一役買った独立社外取締役の永井素夫氏は、日産の次期リーダーの選定と提携交渉において重要な役割を果たしている。永井氏は、指名と報酬、監査の各委員会に所属する唯一の取締役だ。
リーダーシップの課題とは別に、日産の負債は急激に増加する見通しだ。日産とその関連会社は、今年16億ドルの債務償還期限を迎えるが、26年には56億ドルにまで膨らむ方向。これは、ブルームバーグのデータによると、少なくとも1996年以来の高水準だ。
日産は3月中旬までに、より踏み込んだ再建策を提示する予定だ。日産の取締役会は、新しいCEOや新しいパートナー、あるいはその両方を決めるという重要な決断を迫られている。しかし、その選択肢は急速に狭まっている。
英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエーツの自動車アナリスト、ジュリー・ブート氏によれば、「日産には今、単なるリストラ以上のものが必要」だという。日産は今、「かつてのような会社ではない」との見立てだ。
●先進国政治動向
ベッセント米財務長官は28日、メキシコが米国の対中関税に足並みをそろえることを提案したことを明らかにした。「非常に興味深い」動きだとし、カナダも同様の措置を取るべきだと述べた。
メキシコとカナダの高官は今週、トランプ大統領が両国への関税発動を言明した期日の3月4日を前に、米政権の閣僚らと通商協議を行った。米国は同日からメキシコとカナダからの輸入品に25%の関税を課し、中国からの輸入品に10%の関税を上乗せする見通し。
ベッセント財務長官はブルームバーグテレビとのインタビューで、「カナダも同様の措置を取れば素晴らしい意思表明となり、不公平な中国製品の洪水から北米を要塞化することができる」と述べた。
メキシコとカナダ両政府とも、現時点でベッセント財務長官の発言に反応していない。
ワシントンの中国大使館は、米国による一方的な関税引き上げは世界貿易機関(WTO)のルールに違反し、中国、米国、そして世界の利益を損なうとした。
ブルームバーグは関係者の話として、メキシコが提案する対中関税は自動車と自動車部品に焦点を当てるものと報じた。米国によるメキシコ製品への関税導入を回避するための対応とみられる。
メキシコのシェインバウム政権はここ数カ月、米国とカナダ政府の対中政策を注視しているとの立場を明らかにし、トランプ氏の大統領再選以前から、不公正な中国の貿易慣行に対処するため「足並みをそろえる」ことを検討していたと発信している。
メキシコのレレナス経済副大臣は27日、メキシコは主に中国からの安価な製品に関税をかけてきたが、さらなる措置を取る可能性があると述べた。
カナダとメキシコは、危険な合成麻薬「フェンタニル」の流入を抑えるため、米国との国境の安全確保が進んでいることをトランプ政権に示そうと必死だ。
カナダのマクギンティ公安相は4日間の訪米を終えるにあたり、カナダが国境を守るために迅速に行動していることを米国に伝えたと説明。「われわれは国境に関するいくつかの非常に重大な調整、投資、改善を行ってきた。全日程を会議に費やし、米政権にその成果を伝えた」と語った。
メキシコのエブラルド経済相は、ラトニック米商務長官、グリア米国通商代表部(USTR)代表と「友好的な実務会談」を行ったと説明。米国とメキシコは「共に働く素晴らしい未来がある」とXに投稿したが、米国の関税期限を巡る協議についての詳細は明らかにしなかった。
米国のドナルド・トランプ大統領は、もう一つ質問を受けると言った。これがすべての始まりだった。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はロシアとの3年にわたる戦争を終結させる取り組みの中、米国の継続的支援を確保すべく首都ワシントンを訪れトランプ氏と会談した。当初はおおむね丁重な議論が続いていた。
だが、JD・バンス副大統領がその流れに水を差した。同氏は、トランプ氏とロシアのウラジーミル・プーチン大統領との関係を巡る記者らの質問に異議を唱え、「反論しなければならない」と言った。そして、「アメリカを良い国にしているのは、アメリカの外交努力だ。それこそトランプ大統領がしていることだ」と述べた。
ゼレンスキー氏はこれに反論。プーチン氏が長年にわたりウクライナを占領しようとしてきたことを説明した。
そこから会談は、何百万人もの視聴者の前でテレビカメラに映し出される緊迫した論争へと発展した。両国の高官らに衝撃を与え、戦争終結につながる可能性のあった米ウクライナ間の合意を危うくした。
米国とウクライナの当局者によると、トランプ氏がウクライナは停戦に向けた支援を望んでいないと宣言し、米大統領側がゼレンスキー氏にホワイトハウスを去るよう求めて会談は終わった。
長年、米大統領と世界の指導者たちの間で綿密に演出された交流の舞台となってきた大統領執務室で、公の場での緊張が表面化する珍しい瞬間だった。この会談に先立って同日行われたゼレンスキー氏と超党派の上院議員団との会談は、団結を誓い、笑顔の自撮り写真を撮って終わっていた。
「大統領執務室に来て、米国のメディアの前でこの問題を議論しようとするのは無礼だと思う」と、明らかに怒ったバンス氏は言い、ゼレンスキー氏への叱責を続けた。
「一度でもありがとうと言ったか?」とバンス氏は尋ねた。「感謝している」とゼレンスキー氏は答えた。
ある時点で、ゼレンスキー氏はバンス氏が叫んでいると非難し、「大声で話せば―」と言いかけたが、トランプ氏が遮って「彼は大声で話していない。あなたの国は大変なことになっている」と言った。
「分かっている」とゼレンスキー氏は言った。
「あなたは勝っていない」とトランプ氏は言った。「(この戦争に)勝っていない。我々のおかげで、うまくいく可能性がすごくある」
ゼレンスキー氏とバンス氏の間の椅子に座り身を乗り出したトランプ氏は、話しながらゼレンスキー氏を指差し、同氏の肩に触れることもあった。
この会談は、欧州各国の指導者たちとの1週間にわたる協議の集大成だった。彼らはトランプ氏がウクライナを支援することを期待して、同氏に取り入っていた。
ここ数日、トランプ氏はゼレンスキー氏がレアアースに関する協定に署名し、米国が行ってきたウクライナに対する数十億ドルの支援を償還することになると示唆していた。しかし、記者会見は中止され、トランプ氏がソーシャルメディアでゼレンスキー氏は米国を軽視したと宣言する結果となった。
「和平への用意ができたら戻ってくればいい」とトランプ氏はトゥルース・ソーシャルに書き込んだ。
大統領執務室での激論が展開する中、ウクライナのオクサナ・マルカロワ駐米大使は青いノートに書き込むのをやめ、頭を抱えた。ホワイトハウスのスタッフの1人が「これは大変なことになる」とささやいた。
メディアが大統領執務室を退去した後、ホワイトハウスの記者室に、ゼレンスキー氏との予定されていた残りの行事がすべて中止されるという情報が流れた。ホワイトハウスの当局者らによると、トランプ氏とゼレンスキー氏の昼食会用に準備された食事は、代わりにホワイトハウスのスタッフに提供された。記者たちはホワイトハウスの外に集まり、ゼレンスキー氏の黒いSUVが出発するのを見守った。
世界の指導者たちが米大統領と会談するために米国を訪れる際、通常は大統領執務室に座り、メディアの前で互いについて事前に調整されたコメントを交わす。その後、扉を閉め、意見の相違を話し合う。
今週、トランプ氏がフランスのエマニュエル・マクロン大統領と英国のキア・スターマー首相と会談した際もそうだった。28日もその予定だったが、途中で脱線してしまった。
28日の会談が異例だったことを示す兆候は最初からあった。ロシアの国営タス通信所属だと自認する記者が、ブリーフィングルームで他の記者たちと並び、名前をチェックするホワイトハウスの報道担当者の前を通過した。タス通信は通常、ホワイトハウスの制限付きイベントには許可されていない。ホワイトハウスの当局者によると、タスが承認されたメディアリストに載っておらず、会談が進行する中で部屋から退去させられた。
会談の初めに、米国を拠点とする記者がゼレンスキー氏になぜスーツを着ていないのかと尋ねた。ゼレンスキー氏は、自国が戦争中であることを訴えるため、世界の指導者たちと会う際にカジュアルな軍服風の服装をする習慣がある。彼は、自国が戦争中でなくなったら、その記者が着ている青いスーツよりもおそらくもっと素敵なスーツを着ると答えた。
ソファに座っていたマルコ・ルビオ国務長官は、この質問にバンス氏が笑ったのを見て眉をひそめ、目をそらした。
トランプ氏とゼレンスキー氏の意見の相違は、プーチン氏を信頼できるかどうかとの記者団からの一連の質問に答える中で浮き彫りになり始めた。トランプ氏は、プーチン氏と特に親密な関係にあると述べ、ロシアが自身の選挙に介入したと非難された1期目にその絆が深まったことを示唆した。
トランプ氏がプーチン氏は戦争に関連して結んだ合意を尊重するだろうと言うと、ゼレンスキー氏は頭を横に振って同意しなかった。
それでも、トランプ氏とゼレンスキー氏は最初は意見の相違を覆い隠すようにしていた。ゼレンスキー氏は、プーチン氏とのこれまでのやりとりと、ロシアが幾度となく合意を尊重しなかったことをやんわりと指摘するにとどめていた。
その後、バンス氏がトランプ氏はロシア側に立っているのではとの記者の質問に対して発言したいと述べた。トランプ氏自身は、自分は世界と立場を共にし、平和を見いだしたいと答えていた。
トランプ氏は最初、2人が言い争うのを見ていた。しかし、ゼレンスキー氏がロシアを信頼することの結果を米国もいずれ感じることになるだろうと言った時に割り込んだ。
「我々が何を感じるかをあなたが指図する立場にはない」とトランプ氏は言い、「第3次世界大戦になりかねないギャンブルをしている」と付け加えた。
約50分後、トランプ氏は「十分見ただろうと思う」と言い、報道陣に退出を求めるよう報道担当者に合図した。記者たちが大統領執務室を去る際、トランプ氏は「これは最高のテレビネタになるだろう」と皮肉を込めて言った。
●先進国中銀、金融当局
米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート縮小プロセスを巡り、先行き見通しが混乱している。19日公表の1月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨がきっかけだ。保有債券残高を削減するFRBの取り組みについて「さまざまなメンバー」が政府の債務上限問題の動向と絡み合い、影響を受けかねないと懸念を示したからだ。
議事要旨公表の数日前まで、FRBによる米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の残高を削減する「量的引き締め(QT)」について、多くの銀行が終了予想時期を後ろ倒しにしていた。しかし、今では削減プロセス見通しにコンセンサスが存在しなくなっている。
議事要旨で懸念を表明した複数のメンバーは、連邦議会が政府財政の在り方や1月に効力が復活した法定債務上限について対処する中、FRBとしては先行き不透明感のある短期金融市場の状況を乗り切るため、QTの一時停止か減速をする準備があると述べた。
こうした背景には、法定債務上限に達する時期がはっきりしないことがある。財務省は既に「特別措置」を導入し、制限範囲でほとんど通常通りに国債発行を継続しているものの、市場では債務上限到達時期の予想にかなり幅があり、中には初夏までに到達するとの見方もある。
このため上限到達の前後の短期金融市場の様子を想定すると、しばらくの間不安定化する恐れがあり、FRBが流動性を過剰吸収するリスクが高まる。FRBはこうした事態を望んでおらず、QTプロセスの変更につながる可能性がある。
市場の流動性レベルを読み取ることは難しい。アナリストらによると、債務上限が適用されている間も資金調達を続ける措置を財務省が取ることで、金融システムに資金が流れ込み、それまで安定推移だった準備預金の水準が押し上げられる。一方で、債務上限問題が解決されると、今度は急速に市場から流動性が吸収されてしまうことになる。
<停止、減速、それとも継続か>
ライトソンICAPのアナリストは「FOMCはバランスシート縮小ペースを完全に停止するのではなく、『減速』する方向に傾くと考えられる」と話す。完全停止してしまうと、FRBは保有残高を安定させるため、国債買い入れが一定程度必要になる。「QTペース変更だけでも市場との対話に非常に苦労するのに、一時的な新たな資産購入プログラムの導入まで説明するとなれば一層大変なことになる」と指摘する。
バークレイズのアナリストは依然、QTが9月か10月に終了するとの見解を維持している。「例えば3月や5月のFOMCで一時停止を決定し、その後は短期間再開し9月や10月に資産圧縮を終えるのは、合理的ではないかもしれない」と指摘する。
その上で「1月のFOMC議事要旨で示された懸念について、われわれの見方では、準備預金の水準に関しての意味は大きくなく、むしろ8―10月にかけ、水準がどれほど急ピッチに減るかに関するものかもしれない」と話す。
一方で、QTを停止すればFRBが望むよりも早期にQT終了に追い込まれるリスクがあると考えるアナリストもいる。
調査会社LHマイヤーのアナリストは「一時停止後に再開されない場合、完全停止に転じかねない。特に債務上限問題が市場機能への信頼を傷つけたとの見方が強まれば、QT再開は慎重を要するだろう」と推測する。
こうしたことから、債務上限問題が続く間はQTを減速させるべきとの見解につながっている。
<流動性の見極め>
FRBは以前から、政府が財政をやりくりする取り組みによって、流動性が十分かどうかを市場からに明確に読み取ることが難しくなるのではないかと懸念していた。このためFRBは昨年、QTのペースを減速させることで最終段階に向けたアプローチを慎重に進めることにした。
さらに、短期金融市場で過度な変動を引き起こしたり、政策金利のフェデラルファンド金利のコントロールを損なったりすることなく、QTをどこまで進められるかを見極めるのに腐心していた。
ただ、最近までFRB当局者はQT継続の余地があるとの認識を示しており、市場流動性に関する最新のデータでもQT停止が必要となる問題は見られなかった。ただ、1月の議事要旨公表後にQTプロセスを巡るFRBの次の一手が予想しづらくなっている。
トランプ米大統領がワシントンの政府機関をくまなく攻撃する中で、1期目で格好の標的となった連邦準備制度理事会(FRB)は奇しくもこれを逃れている。
もっとも、こうした状況はいつ変わってもおかしくない。トランプ氏は返り咲きを果たして以降、金利の引き下げを求めるとともに、インフレ抑制に失敗したとしてFRBを批判。規制の監督者としてあまり適していないとの見解を示している。だが、かつてトランプ氏がFRB当局者らを「ばか者」呼ばわりしたことを考えると、かなりのトーンダウンだ。
注目すべきは、トランプ氏が1月の金利据え置き決定を「正しい判断」と表現したことだ。1期目で狙ったパウエル議長解任の試みも今のところ封印している。独立機関を従わせるための大統領令でも、金融政策には例外を設けた。ベッセント財務長官はFRBが設定する短期金利ではなく、長期金利の引き下げに焦点を当てたいと考えており、トランプ氏もそれに従っているようだ。
FRBの独立性を損ない、米国市場への信頼を損ないかねないと懸念していた投資家にとって、トランプ氏の「停戦」は歓迎すべきニュースだ。また第2次トランプ政権がまい進する破壊的なアプローチとも一線を画す。
市場ウォッチャーは主に2つ理由があるとみている。1つは、ベッセント氏やハセット国家経済会議(NEC)委員長などの側近らが、金利政策には関与せず、伝統的なホワイトハウスの権限に沿った政策に専念するようトランプ氏を説得し、市場の不安を鎮める役割を果たしているとの見立てだ。
大統領への影響力
ベッセント氏ら政府高官の一部は、歳出削減と減税、積極的な関税の活用、エネルギー生産拡大の相乗効果により、成長を促進するとともに、財政赤字を削減しインフレを抑制するとの見解を提唱する。これにより、企業と家計の借り入れコストは抑えられるという。そして、その成否を測る指標として、FRBの政策金利ではなく、10年債利回りを挙げている。
エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏は「ベッセント氏は長期金利に一段と焦点を当てるという点において、上司に多少の影響を与えているかもしれない」とリポートで指摘。「少なくとも目先、これはFRBと新政権の緊張を和らげ」、利回り低下を後押しするとの見方を示す。
近年の米国債市場の動向は、ベッセント氏の主張を幾分裏付ける。FRBが50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)で利下げを開始した2024年後半に、10年債利回りはむしろ反対の方向に向かった。
長期金利は住宅ローンや自動車ローンから法人向け融資に至るまで、実体経済の借り入れコストに最も大きな影響を与えるため、こうした国債市場の動きにより、FRBに介入すれば簡単に解決できるとの考えは損なわれた。
それでも、金融政策見通しは唯一とは言わないまでも、米国債利回りを左右する最大の要因であることに変わりはない。今月に入っての米国債の値上がりで、10年債利回りは4.2%に迫り、1月につけた高水準から0.5ポイント余り下がった。背景には、FRBが景気減速を一段と懸念する方向へと転換するとの読みがある。
また、アナリストの間では、トランプ氏とベッセント氏が進める経済政策が主張通り、実際に借り入れコストの押し下げにつながるか懐疑的な見方が多い。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の通貨戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は「政権の政策が10年債利回りを低下させることはないだろう」と話す。「関税はインフレを引き起こす。これについては疑う余地がない」とシン氏。共和党が主導する議会が減税の実現を目指しており、「財政刺激策が実施される見通しだ。すでに完全雇用の状態にあるため、これはインフレ圧力を招く」と述べる。
トランプ氏が相対的に控えめな姿勢を見せているもう1つの理由として、低金利を要求することは今や政治的なリスクが大きく、経済的にも理にかなわないとの見方がある。高インフレなど遠い過去の記憶だった1期目から、状況は劇的に変化した。トランプ氏はインフレ抑制を掲げ、新型コロナ禍で物価高騰に苦しめられた有権者の不満を吸収する形で大統領選に勝利した経緯がある。
ドイツ銀行のチーフ米国エコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏は「インフレ率は高止まりする一方で、労働市場は力強く経済も堅調だ。市場も好調で、FRBに自由にさせておくことが容易な時期だ」と述べる。
だが、雇用が弱まり、インフレが目標を上回ったままなら、状況は一変する可能性があり、その両面において警戒すべき兆候が出ている。「そうなれば、トランプ政権がFRBに対して再び批判的な姿勢を強めるかもしれない」と、 ルゼッティ氏は指摘した。
ベッセント氏はトランプ氏とは対照的に、金融政策についてコメントしないと明言している。「FRBが利下げするかどうかには注目していない」と、同氏は2月5日にブルームバーグに語った。住宅ローン金利や長期資本形成に影響するとして「10年債こそ注目すべき重要な価格だ」と述べている。 
ベッセント氏は昨年の大統領選でトランプ陣営に加わって以降、この点についてトランプ氏への働きかけを続けてきた。事情に詳しい関係者によると、FRBに対するアプローチでトランプ氏が安定を演出することが自身の利益につながるとベッセント氏は遊説の合間を縫って水面下で伝えていた。
パウエル氏を即座に解任しようとすれば、努力に見合わない市場の動揺と憲法上の危機を引き起こすことになるとベッセント氏は訴え、トランプ氏の説得に成功したという。パウエル氏の任期は2026年半ばに終了するため、FRBをトランプ氏の意向に沿った形にしようとするには十分な時間がある。さらに、FRBの独立性を巡って大きな論争を招けば、有能な候補者が次期議長となることを思いとどまる可能性がある。ベッセント氏はこう主張したもようだ。
トランプ氏はパウエル氏を任期満了まで務めさせるつもりだと言明し、返り咲きを決めた後も改めてその点に言及した。ベッセント氏とパウエル氏は今月、両機関の長年の伝統である週次会合を開始した。財務省はコメントの要請に応じなかった。
究極の歯止め
金融政策決定という中核業務以外では、トランプ大統領による圧力を受けて、FRBがシフトしている兆候もうかがわれる。マイケル・バー氏(民主党)は先月、共和党が同氏の解任に動くのではないかとの臆測が流れる中、2月末をもって監督担当の副議長を退く意向を表明した。規制関連での譲歩ともとれるこうした動きは、金融政策の独立性を巡る論争が激化した場合に備え、FRBは体力を温存しておきたいとの思惑があるかもしれない。
さらにFRBはトランプ大統領の就任式の直前、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するために2017年に設立された「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)」からの脱退を表明した。
パウエル氏は、トランプ政権とうまくやっていけるとの自信を示しており、トランプ大統領の経済政策が政策金利の軌道にどのような影響を与えるかについては総じて発言を控えている。
ポトマック・リバー・キャピタルのマーク・スピンデル最高投資責任者(CIO)は、休戦にほころびが出始めたとしても、トランプ大統領が強硬路線を突き進まないよう抑える重要な要因があると指摘する。トランプ氏が自身の成績表だととらえる金融市場だ。
「金融政策の独立性が損なわれている、あるいは誤った政策が実施されている、もしくは大統領がFRBビルに押し入ってFOMCの席を要求するかのような兆しを金融市場が嗅ぎ取った場合、極めてネガティブな反応を示す恐れがある」とスピンデル氏。「それが究極の歯止めになるだろう」と語った。
●先進国経済指標
INSEEによると、鈍化の原因はエネルギー価格の低下。特に、前年同月に急上昇した電力価格が、大幅に低下したことが背景にある。
また、サービス価格の上昇も鈍化し、製造品やタバコの価格上昇もより緩やかではあるが減速した。食品価格はわずかに加速したという。
引き続き経済の縮小が予想されており、家計はユーロ圏の経済見通しに比較的厳しい見方を維持しているようだ。
変動が激しい食品とエネルギー価格を除いたコア指数は、2.6%上昇。前月の2.9%から伸びが鈍化した。
高止まりが続き、全体のインフレ率の押し上げ要因となっていたサービスインフレ率は3.8%と、2024年10月以来初めて4%を下回った。
エネルギーコストの高騰や依然として高水準の金利、不透明な経済見通しなどを背景に24年のドイツの国内総生産(GDP)は、2年連続のマイナス成長となり、ユーロ圏内で最も景気が低迷した。
独欧州経済センター(ZEW)の専門家、フリードリヒ・ハイネマン氏は、ドイツはスタグフレーションの状態にあると指摘。「産業が深刻な景気後退(リセッション)に直面し、失業率が上昇する中、インフレ率は2%をわずかに上回る水準で高止まりしている」と述べた。
12月は関税導入で輸入品の価格が上昇するとの見方から消費が押し上げられたとみられる。1月はこうした前倒し需要の効果が薄れたことに加え、全米各地が異例の寒波と雪嵐に見舞われたことで消費が抑制された。カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した大規模な山火事も影響した可能性がある。
気象条件に加え、トランプ政権が進める関税措置や大幅な支出削減などの政策も経済活動に影響を及ぼしている可能性がある。
FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリストファー・ルプキー氏は「消費者はトランプ政権が打ち出す変化を見極めようと右往左往しており、様子見姿勢を取ることを選んだようだ」と述べた。
1月は飲食店での支出も弱含み、消費者の節約志向が強まっていることが示唆された。
●金融市場、先進国トピックス
ウォール街で由緒あるプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社が、ある企業の売却を望んだ。ゴールドマン・サックス・グループやモルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースといった一流の投資銀行が、この取引を支援した。
取引完了からわずか数カ月後、売却された企業の最も重要な利益指標、EBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)が幻影だったことが分かった。
多くの金融専門家は長年にわたり、非上場企業がEBITDAという高度に操作された利益を業績を示す指標として報告していることに警告してきた。
悪夢が現実となったかのような今回の事件は今、刑事捜査と責任のなすり付け合いの渦中にある。
裁判所文書などから問題の詳細が明らかになり、重要な利益指標の背後にある会計上の錬金術について、内部の様子がまれに見るほど詳しく伝えてられている。企業買収に資金を投じようとする投資家が教訓とすべき事例だ。
発端
PE投資会社のリンゼイ・ゴールドバーグが2019年にオーストリアの包装会社シュア・フレキシブルズの売却に乗り出したところ、市場から疑いの目を向けられたことが発端だった。
ゴールドマンによる買い手探しは初期段階で失敗に終わったが、最終的に21年に投資会社B&Cグループに売却された。B&C側のアドバイザーはモルガン・スタンレーとマッキンゼーが務めた。
シュアは売却された後、ほぼ即座に崩壊したが、売り手側は何も間違ったことはしていないと主張している。
B&Cが雇った会計士がシュアの経営陣が資金を不正使用した証拠を発見したことを受け、オーストリアの検察当局がEBITDAとそれが悪用された疑いで捜査に着手した。
PE投資業界は3年間のM&A(企業の合併・買収)低迷期に前例のない水準まで積み上がったポートフォリオ企業の売却を図っている。
その際には、売却される企業の収益性がどの程度改善したかが徹底的に検証される。シュアの例は、収益性の算定を誰が行うかによって結果が異なることを示した。
売却に向けたゴールドマンの最初の取り組みでは、潜在的な買い手であるプラチナム・エクイティー、シンベン、ローンスターがシュアの財務状況について懐疑的な見方を示したことが、ゴールドマンの内部文書から明らかになっている。
買い手候補はシュアの利益急増を分析するのが難しいことに難色を示した。しかし、利益を示す数値が誇張されている可能性があるという指摘は、当時シュアの諮問委員会メンバーだったマイケル・ディーズ氏によって退けられた。同氏はリンゼイのマネジングパートナーだ。
ディーズ氏は昨年12月の宣誓証言で、単なる見解の相違だったと述べている。
ウィーンを本拠とするB&Cは、デューデリジェンス(資産査定)の期間を短縮した後、シュアの企業価値を約9億ユーロ(現在の為替レートで約1400億円)と評価する取引で同社の過半数株式を取得した。 リンゼイは20%の株式を保持した。
暗転
JPモルガンは、新たな債務パッケージの取りまとめを支援。しかし数カ月後、シュアの新オーナーとなったB&Cは、経営陣による浪費や報告された利益を水増しする工夫が施された会計処理の証拠を見つけたと債権者宛ての書簡で訴えた。
シュアに絡む債権の価値は急落。銀行が与信枠を凍結したため、B&Cはアポロ・グローバル・マネジメントが率いる債権者グループにシュアの経営権を譲渡せざるを得なくなった。
シュアは最終的にEBITDAを修正し、20年のEBITDAを3分の1に引き下げた。KPMGから送り込まれた会計士は、それ以前の2年分についてもさらに大幅な修正を勧告した。
この経緯は、当事者がやり取りした社内メールや電子メッセージ、裁判での宣誓証言、その他の記録から明らかになった。
オーストリアの不動産帝国シグナが会計処理に対する批判が原因で破綻し、ドイツの決済会社ワイヤーカードの不正会計を巡る裁判が続く中、欧州の監査業界は再び厳しい目にさらされることになった。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)はシュアの決算を承認。EY(アーンスト・アンド・ヤング)は買い手のデューデリジェンスを支援した。  
リンゼイの広報担当者によれば、シュアの「財務諸表は、4大会計事務所の1社であるPwCによって監査され、承認された」という。
同担当者は「B&Cはシュアを買収する前に広範なデューデリジェンスを実施し、同社がEBITDAをどのように計算し報告しているかを知り、理解していた。また、迅速な新規株式公開(IPO)による大きな利益を見込んで、シュアの市場価格を上回る評価額を提示した」と主張した。
シュア諮問委の会長だったリンゼイの幹部、トーマス・ウンガー氏の代理人を務める弁護士は、同氏はシュアの会計には関与しておらず、不正支出の疑惑も知らず、横領容疑で捜査されているわけではないと説明。
シュアの元最高経営責任者(CEO)と財務担当取締役の弁護士は、2人はいずれも不正に関与していないと述べた。
ゴールドマンの広報担当者は「シュアの財務アドバイザーを務めていた際には適切に対応しており、不正行為については認識していなかった」としている。
反論
B&Cは買収完了後に初めて実態を知ったとし、「シュアのEBITDAと実際の事業状況は、リンゼイの監督下で著しく誤って報告されていた」と反論。「加害者が法の裁きを受け、B&Cが賠償を受けられると確信している」と付け加えた。
PwCは守秘義務を理由に取材に応じなかった。現在シュアの経営権を握るアポロに加え、モルガン・スタンレーとマッキンゼー、EY、JPモルガンもコメントを控えた。
B&Cはこの事件で大打撃を受けた。約3億ドル(約450億円)のPE投資は1年足らずでゼロになった。その後、保険金で半分ほどを取り戻したが、今はリンゼイに賠償を迫っている。
EBITDAは、企業買収の世界では重要な指標とされており、企業評価や融資条件、経営陣のボーナス額の見極めに寄与する。本業とは見なされない特定の費用を除外することで、買い手企業や銀行、監査法人、貸し手、経営幹部が事業の真の価値を評価するのに役立つ。
しかし、企業側の判断や会計処理によって影響を受け、時には業績を誇張して見せることにもなる。
懐疑的な投資家がEBITDAについて語る場合、企業による仮定に基づく「調整後」の数値を指すことが多い。B&Cによるシュア買収では、報告されたEBITDAで同社が資本支出として除外した費用が焦点となった。
リンゼイの下で、シュアは特定のボーナス支払い、過剰なコンサルティング契約、さらには機械の試験・保守・移設にまで及ぶ膨大な支出を資産として計上し、時間をかけて減価償却していたとされる。 
要するに、一連の経費をすぐに認識せず、提示するEBITAの数値を水増ししていたということだ。
数十年前、著名なバリュー投資家ウォーレン・バフェット氏は、自身の投資・保険会社バークシャー・ハサウェイの株主に、そのような数値を当てにするのは危険だと警告した。
「EBITDAという言葉を見るとぞっとする。経営陣は妖精が資本支出を支払ってくれるとでも思っているのだろうか」と語っていた。同氏は最近、再びこの問題に言及し、EBITDAを「欠陥のあるウォール街の人気指標」と呼んだ。
オーストリアの刑事事件捜査は、シュアの元経営陣だけでなく、リンゼイ欧州部門のマネジングパートナーだった諮問委の元会長にも及んでいる。現時点では誰も起訴されておらず、訴追に至らない可能性もある。
不信感
この事件は、企業を買収し、立て直し、売却するというサイクルを繰り返しながら、投資家に利益を分配しようとするPE投資会社が、投資先企業の行動に対してどの程度の影響力と責任を持つかという問題に帰着する。
19年にシュアを売却しようとしたリンゼイによる最初の試みが失敗に終わったのは、EBITDAに対する懸念があったためだ。
ゴールドマンがPE投資会社にシュア買収を持ちかけた後に各社が示した反応を追った内部文書からは、EBITDAの急上昇に対する懐疑的な見方、または全くの不信感が浮き彫りになる。
シュアの元幹部は昨年12月、EBITDAの数値と関連する資本的支出の間に大きな隔たりがあったため、売却プロセスは失敗に終わったとオーストリアの捜査官に語った。 
リンゼイは21年に売却プロセスを再開し、今度はB&Cに白羽の矢を立てた。B&Cはデューデリジェンスのペース加速に同意し、買収が実現した。
裁判所への提出書類によれば、シュアの幹部は売却契約締結前に収益について活発に議論していた。「利益を上げず、損失を出しているという真実を語るわけにはいかない」と、ある上級幹部が同僚にメッセージを送っている。
ブルームバーグが入手した文書によると、リンゼイはシュアと話し合い、経費を資産として計上するという方法でかさ上げしたEBITDAを報告。EBITDAと実際の損失の差は、「特定の費用の資産計上が主な原因だ」とB&Cに伝えた。
ウィーン経済・経営大学コーポレートガバナンス研究所のアン・ダーシー所長は「シュアの経営陣が実際に行ったのは、費用を貸借対照表に載せることだった。非常に短期的な措置だという点で奇妙な行動だ」と述べ「経営陣が、売却が完了するまでの間、数値を粉飾しようとした」との見方を示した。
シュアの会計処理が実際に違法の域に達していたかどうかは別として、この件は財務実績をぼかしたり、強化したりしようとする場合に会計ルールが柔軟に利用できることを示す一例だ。
そして、時間的制約や買収される企業が提供する情報への依存という状況下で、企業買収には本質的な盲点があることを示し、デューデリジェンスプロセスの欠陥を浮き彫りにしている。
EBITDAの性質を考慮すると、なぜこれほど多くの財務専門家が数値を精査しながら異議を唱えなかったのかという疑問が生じる。
「全てを検証した上で、一体どうして監査法人が異常に気付かなかったのか」と監査法人RSMのリチャード・ガードナー公認会計士は言う。「監査法人はどんな質問をしたのだろうか」。
アトランタ連邦準備銀行の発表によると、2025年第1四半期の初期経済データはマイナス成長を示している。
中央銀行のGDPNowトラッカーは、金曜日の朝に投稿された最新情報によると、1月から3月までの国内総生産(GDP)が1.5%減少するペースにあることを示している。
最新の指標によると、1月の悪天候による消費者支出は予想を下回り、輸出も低迷したため格下げとなった。金曜日の消費者支出報告前、GDPNowは同四半期の成長率を2.3%と示していた。
この指標は変動性が高く、通常は四半期のかなり後になってからより信頼性の高い指標となるが、成長の減速を示している他の指標と一致している。
「アトランタ連銀が維持している非常に高頻度の『ナウキャスト』の本質的な変動性にもかかわらず、これは憂慮すべきことだ」と、アリアンツの首席経済顧問でケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジ学長のモハメド・エラリアン氏はソーシャルメディアサイトXへの投稿で述べた。
同指標は2月初めにGDPが3.9%上昇すると示していたが、その後追加データが入るにつれて下落傾向にある。
商務省は金曜日、1月の個人消費が0.2%減少したと発表し、ダウ・ジョーンズの0.1%増加予想を下回った。インフレ調整後の個人消費は0.5%減少した。その結果、GDPナウの計算によると、GDPへの貢献度は1パーセントポイントも減少し、1.3%となった。
同時に、純輸出の寄与度は-0.41パーセントポイントから-3.7パーセントポイントに急落した。
こうしたデータとそれが成長見通しに与える影響は、消費者信頼感の低下とインフレ上昇への懸念を示す調査結果と相まって現れている。商務省はまた、FRBが好むインフレ指標が今月低下し、コア個人消費支出価格指数が12月から0.3パーセントポイント低下して2.6%になったと報告した。
今週は労働市場からも懸念すべきニュースがいくつかもたらされた。新規失業保険申請件数が10月初旬以来の高水準に達したのだ。
さらに、債券市場も成長の鈍化を織り込んでいる。今週、3か月物国債の利回りは10年債の利回りを上回ったが、これは12~18か月先の景気後退を示す歴史的に信頼できる指標である。
経済と政策の不確実性により、株式市場は今年不安定なスタートを切った。不安定なニュースサイクルによる激しい変動の中、ダウ工業株30種平均は2025年に2%上昇する見込みだ。
「資産市場に忍び寄った自己満足感は、今にも崩れ去ろうとしているというのが私の感覚だ」とRSMの米国担当チーフエコノミスト、ジョセフ・ブルスエラス氏は語った。
市場では、FRBが今年、景気減速への対応として複数回の利下げを行うとの見方が強まっている。フェデラルファンド金利先物市場のトレーダーは、金曜日午後の時点で、6月に0.25パーセントポイントの利下げが行われる確率を約80%に引き上げ、年内に合計3回の利下げが行われる可能性も高めた。
●中東情勢
●エマージング
世界最低を記録していた韓国の出生率が、2024年に上昇を見せた。過去9年間で初となる。コロナ禍で先送りしていた結婚に踏み切るカップルが増加し、企業と国民に子育て支援を促す政策努力が成果を生みつつある。
ナム・ヒュンジンさん(35)は昨年8月に2人目の娘を授かったが、社会の変化を実感していると語る。その大きな要因は、政府が子育て支援策を拡大し、その取り組みに参加する企業が増えたことだという。
「最初の子が生まれた5年前に比べて、社会全体が出産を奨励するようになった」とナムさんは言う。
さらに重要な点として、「企業文化が出産を奨励するようになっているのが、とても助かる」とナムさんは指摘する。ナムさんの勤務先である建設会社のブヨングループは昨年から、従業員に対して1億ウォン(約1000万円)の出産祝い金を支給するようになった。
こうした社会の変化は、韓国にとって大きな転機になるかもしれない。韓国では、住宅や育児のコストが高騰したため、女性が結婚や子育てよりもキャリアの向上を重視するようになり、過去10年のあいだに出生率が世界最低の水準まで急落した。
このままでは5100万人の総人口が今世紀末には半減する勢いであり、アジア第4位の規模を誇る経済の成長と社会保障制度の維持にとって、人口危機は最大のリスクとなっている。
だが2024年、暗雲の漂っていた韓国の出生率統計に明るい兆しが見えた。出生率は依然として世界でも過去に類を見ない低さではあるが、23年の0.72に比べ0.75に上昇した。出生率低下に歯止めをかけるべく、韓国は少子化対策に何十億ドルも投じてきたが、それでも出生率は15年の1.24から8年連続で低下していた。
回復の大部分は、コロナ禍に延期されていた結婚が増加したことを反映しているが、それ以外のデータからは、単にコロナ禍からの一時的な反動だけでなく、政府の対策が奏功している兆しも見られる。
四半期データによれば、2024年後半に第1子の出生数が11%増加したのに対し、ナムさんのような第2子の出生数は12%増加している。
<まさに転機>
人口政策担当の大統領秘書官を務めるヨー・ヒェミ氏はロイターに対し、「今後しばらくは(出生率が)さらに上昇する可能性が高く、私たちはまさに転機を迎えている」と語った。
現在、弾劾裁判中の尹錫悦大統領は昨年、「国家的人口危機」への対処に特化した新たな省の設立を提案した。効果に乏しかった従来の給付金中心の支援策から、もっと幅広いアプローチを目指すものだ。
ロイターが先週、政策担当者や関連業界の専門家、エコノミスト、韓国の母親らにインタビューを行ったところ、出生率回復の要因として挙げられたのは、仕事と家庭のバランス、保育、住宅という3分野における政府の支援策と、さらに企業に子育て奨励を呼びかけるキャンペーンだった。
韓国政府は今年、上記3つの重点分野に19兆7000億ウォン(約2兆円)を支出する予定で、これは2024年に比べ22%増となる規模だ。
モルガン・スタンレーで韓国・台湾担当エコノミストを務めるキャスリーン・オー氏は、「韓国が直面している人口推移は、世界でも最も困難なレベルにある。政府は6月に「人口非常事態」を宣言したが、それは決して誇張ではない」と語る。
「リアルな危機感が感じられ、関連当局がその場しのぎの対策ではなく、構造改革に向けて動いているのは朗報だ」
昨年実施された政策転換の1つは、父母双方が育児休暇を取得する場合に給与が全額支給される期間を、それまでの最長3カ月から6カ月に延長したことだ。
さらに、父母双方が取得する場合、育児休暇の最長期間が1年から1年半へと延長された。
父親の育児休暇も、最長10日から20日に延長された。中小企業の従業員については、政府が休暇期間中の給与を肩代わりする。
政府は今年から、上場企業に対し、法令で定められた提出文書に育児関連の統計を記載することを義務付けるとともに、政府の少子化対策プロジェクトに対するインセンティブ、中小企業を対象とする助成金を提供するようになった。
こうした政策は実を結び始めているようだ。
23年の婚姻件数はコロナ禍後の反動で12年ぶりに増加に転じ、さらに2024年には、過去最高のペースで急増した。昨年の政府の調査では韓国民の52.5%が結婚に対して肯定的な見方を示しており、14年以降で最高の数値となった。
翰林大学のシン・キュンア教授(社会学)は、「政府は、制度面で打てる限りの手を打っている。今求められるのは、より多くの企業がこうした少子化対策を取り入れることだ」と語った。
昨年、ブヨングループが出産祝い金制度を発表したところ、同社従業員のあいだで出産が急増した。
ブヨンのキム・ジンソン人事部長は、「結局のところ、企業としてもこれが生き残るための手段だ。我が社はアパートを建てるが、そこで生活する人たちが十分にいなければ、アパートだって売れない」と語った。
<対策は道半ば>
大統領代行を務める崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相兼企画財政相は今月、「この勢いを生み出すのは難しかったが、しっかりと維持していかなければならない。そのためには、フリーランスや自営業といった、少子化対策の空白地帯になっている部分を急いで埋めていく必要がある」と語った。
とはいえ、特に若い世代の中には、「この勢い」と無縁の人たちもいる。
学生のキム・ハラムさん(21)は、「手放しで喜べることではないと思う。この韓国社会で結婚して子どもや家庭を持つことは簡単ではないし、お金もたくさんかかる」と語った。
韓国で最後にベビーブームが見られたのは1991年から1996年にかけてのことだった。韓国は2030年までに出生率を1まで上げたいとしているが、それでも人口の安定維持に必要な出生率である2.1には遠く及ばない。
前出のシン教授は、人口動態における課題として、非正規雇用の比率が27.3%と高い点を指摘する。これは経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で2番目に高く、OECD平均は11.3%だ。
シン教授は、「この国では大企業と小企業、正社員と非正規労働者の格差が非常に大きい。少子化対策の制度を万人向けのものにするために、政府にはさらなる工夫が求められる」と語った。
長らく敬遠されてきた中国の不動産関連株を、一部の大手ヘッジファンドや投資家が安値で買い集めている。不動産業界が長引く危機から回復すれば大きなリターンを得られると見込んでいるためだ。
投資家によると、主要都市で住宅が値上がりし、政府が業界トップである万科企業の支援に動くなど不動産業界はこのところ明るい兆しが出ており、今年が転換点になりそうだ。
もっとも、投資家は慎重に銘柄を選別しており、狙いを国有の大手住宅開発会社と最大手のオンライン不動産仲介会社に絞っている。
上海重陽投資管理(運用資産50億ドル)の王慶会長は「当社は最近、一部の大手国有不動産開発会社株を追加で取得した。不動産業界が持ち直していることと、勝者総取りの理屈に基づいた判断だ」と話した。「第一級都市(大都市圏)では土地取引が回復している。われわれが注目しているのは、今も積極的に土地を購入しているのがこうした一部業者だという点だ」と述べ、こうした企業は市場シェアを拡大しているとの見方を示した。
中国の不動産セクターは過去3年余りにわたり、債務危機の影響から空売りの際に筆頭の標的となってきた。とりわけ中国恒大や融創中国など大手民間開発会社の相次ぐ経営破綻によって市場では業界全体に対する不信感が深まっていた。
しかし最近の投資家心理の動向からは、中国政府が昨年9月以降に打ち出した市場安定化策や不動産業界における合従連衡の進展によって投資家が再び同セクターに対する信頼を取り戻しつつある様子が読み取れる。
香港に拠点を置くヘッジファンド、ゴールデン・ネスト・キャピタルも一部の国有不動産会社株を購入し始めている。最高投資責任者(CIO)のスタンリー・タオ氏は「確かに新築住宅の販売量は半減したが、それ以上に開発業者の数が減っている」と指摘。不動産セクターが安定すれば、長年敬遠されてきた銘柄が非常に大きく反発すると予想している。
香港市場に上場する中国本土の不動産株は今月に入って15%余りも急騰し、ハイテク株に次ぐ上昇ぶりとなっている。
<人気集める不動産情報サイト株>
米不動産情報サイト、ジロウの中国版とも称されるオンライン不動産売買プラットフォームの貝殻找房(KEホールディングス), がアジアの有力ヘッジファンドの間で人気を集めている。
香港拠点のヘッジファンド、アスペックス・マネジメントは2024年第4・四半期に、米上場のKEホールディングスの株式651万株を追加で購入した。またWTアセット・マネジメントも昨年第4・四半期にKEホールディングスの株式を4000万ドル強で220万株買い増した。
KEホールディングスは春節(旧正月)後の主要都市での中古住宅販売の好調やハイテク技術の進化が追い風になっていると、シティ・リサーチの不動産アナリスト、グリフィン・チャン氏は今週のリサーチノートで分析した。
資金繰りに苦しんでいた不動産最大手の万科企業が2月初旬に政府の支援策を受けたことも市場心理の大幅な改善につながった。多くの投資家はこの支援が節目となり、他の大手開発会社の債務不履行リスクが大幅に低下すると受け止めた。開発会社の多くは過去3年間に80%以上も株価が下げたが、KEホールディングスなどの株価は2月に入って急反発した。
ピクテ・アセット・マネジメントのアジア部門を率いるジョン・ウィサー氏は「不動産株はそろそろ転換点に近づいていると思う」としつつ、実際にこうした銘柄に投資するかどうかは政府主導による一層の業界再編の有無や不動産価格の動向次第だと慎重な姿勢も見せた。
中国の不動産市況の回復は今のところまだ初期段階にすぎない。小規模都市では売れ残り物件の問題が続いており、今後の見通しを巡って投資家の間で意見が分かれている。
UOBケイ・ヒアン・ウェルス・マネジメントのワン・チー最高投資責任者(CIO)は「これはあくまでトレーディングの機会だ。一過性のものかもしれないが、それでも3-6カ月間は投資のチャンスがあるのではないか。こうした銘柄は極めて割安で、50%の値上がりは普通にあり得る」と、短期売買に期待を寄せた。
ココ・ウェンさん(31)は中国政府の補助金制度を利用し、米アップルのスマートフォン「iPhone」を販売価格の3分の2程度で買い換えた。ただ、同時に他の支出をカットしている。
「自分の誕生日は素敵な食事で祝う習慣だが、今年はスキップする」とウェンさん。新型コロナウイルス禍前に比べて中国人の外国旅行が減ったため、勤務している旅行代理店の給与は以前より減っている。
このため「家族の支出習慣が変わり、必需品しか買わなくなった」と話し、今では外食を控えて自炊している。
中国政府が直近で打ち出した大型の消費刺激策は、電気自動車(EV)や家電、電子機器の買い換え時に補助金を出すというものだ。しかし、他の支出とのトレードオフが起こる。
この制度によって家計は短期的な支出を増やすが、結局は補助金の出ない財やサービスへの支出を減らすことになる。消費者は家電やEVを何年も買い換えない可能性があるため、制度が利用されると将来の支出が減る恐れもある。
ANZのシニア中国ストラテジスト、シン・ジャオペン氏は「5、6年のサイクルで見れば有害かもしれない」と語った。
現在の対策はこうした弱点を持つため、当局は3月5日に開幕する全国人民代表大会(全人代=国会)で、長期的な効果のある消費拡大策を打ち出すよう迫られている。
米国による関税引き上げに直面しているだけに、消費拡大の重要性は一段と増している。
中国は昨年、5%の経済成長目標を達成するため輸出に大きく頼った。しかし、関税引き上げが浮上する以前から、輸出依存戦略は過剰設備とデフレ圧力を生むとの懸念が語られてきた。
S&Pグローバルの首席アジア・エコノミスト、ルイス・クイジス氏は「中国は深刻な過剰設備問題を抱えている。これは国内で価格と利益を圧迫し、対外的には中国の輸出に対する反発を増幅させている。消費を増やせば非常に有効だろう」と語った。
クイジス氏は消費拡大の観点から、「政府が医療、教育、社会保障における役割と支出を拡大する何らかの計画を打ち出すことを切に願う」と述べ、全人代でそうした政策が浮上するかもしれないとの見方を示した。
<消費拡大の掛け声は大きく>
中国政府が発表する新たな政策はほとんど知られていないが、当局はこれまで、今年は所得、年金、医療補助の引き上げを通じて消費を「力強く」押し上げると約束している。
ただ、問題はその規模だ。
昨年の全人代で、政府は農村部を中心に最低年金を月額20元(2.76ドル)増やして123元とし、約1億7000万人がその恩恵を受けた。しかし年間の増加分は国内総生産(GDP)18兆6000億ドルの0.01%にも満たない。
中国はGDPに占める個人消費の割合が40%未満と、世界平均より約20%ポイント低い。これに対して投資の比率は20%ポイント高い。
この差を縮めるのは大仕事だ。
アナリストによると、それには税制を変更し、所得拡大を犠牲にして資本のリターンを追求する長年のインセンティブを反転させ、企業および政府部門から消費者へと資源を再配分する必要がある。
年金、医療保険、失業保険を拡充してセーフティーネットを強化し、家計が安心して支出できるようにすることも必要だ。
また、農村部と都市部の大きな格差の原因になっているとされる独特の戸籍制度の撤廃を進めれば、農村部から都会に出稼ぎに来ている労働者の購買力が高まるかもしれない。
しかし、こうした政策はどれも、短期的には安定と成長を損なうとの懸念を生じさせる。輸出セクターから資源をシフトさせ、習近平国家主席が技術分野における中国の競争力を高める上で重視する「新質生産力(技術革新)」が後回しになるからだ。
ローディアム・グループのアソシエイトディレクター、カミーユ・ブルノワ氏は「中国政府は国内消費てこ入れの緊急性を認識しているが、これまでの政策対応は、中国の経済モデルを有意に変えるのに必要な構造改革にはほど遠い」と語る。
ローディアムの試算では、消費押し上げに必要な構造的政策改革にはGDPの約30%に相当する資金が必要になる。
<債務拡大>
中国の李強首相は全人代で、2025年の成長率目標を約5%に据え置くと予想されている。短期的に経済を揺るがすような政策変更は間近に迫っていないようだ。
経済発展の新たなエンジンに切り替えることなく高成長を維持するには、債務を増やすしかない。貿易摩擦と不動産危機が続いている今は特にそうだ。
李氏は今年の財政赤字が拡大し、特別国債の発行額が過去最高に達すると発表する見通しだ。ある政策顧問は匿名を条件に「われわれは、外的なショックが経済成長に影響を及ぼすのを防がなければならない。消費拡大は、投資および貿易拡大の取り組みと併せて鍵を握る」と明らかにした。
中国国家統計局が1日発表した2月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2に上昇し、3カ月ぶりの高水準となった。新規受注と購買量の増加により生産活動は堅調に推移し、景況拡大・縮小の分かれ目となる50を上回り、景況拡大に転じた。1月は49.1、ロイターがまとめたアナリスト予想中央値は49.9だった。
サービス業と建設業を含む非製造業PMIは50.4となり、1月の50.2から上昇した。
5日に開幕する全国人民代表大会(全人代=国会)を前に、政府が昨年打ち出した新たな景気刺激策が奏功していることが示された格好だ。
ただ、トランプ米政権との報復関税の応酬で、景況拡大が持続するかどうかはまだ分からない。全人代では経済目標や新たな政策の発表が見込まれているほか、投資家は苦境にある不動産セクターへのさらなる支援があるかにも注目するだろう。
政府は全人代で2025年の成長率目標を約5%に据え置く見込み。だがアナリストらは、とりわけ米国との貿易摩擦激化を踏まえると、政府が低迷する需要をどれだけ早く復活させられるのか不透明だと考えている
保銀投資(ピンポイント・アセット・マネジメント)のチーフエコノミスト、張智威氏は「PMIデータは前月比で算出されるため、1月と2月の旧正月関連の季節要因の影響を受ける可能性がある」と指摘。正確な検証にはさらなるデータを待つ必要があるとしながらも、「製造業のデータは比較的安定している」と述べた。中国の1─2月の貿易統計は7日に発表される。
2月PMIの内訳では、新規輸出受注、出荷価格、雇用の指数が全て50を下回ったが、前月から上昇した。雇用の指数は引き続き22カ月ぶり高水準だった。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
- **為替市場**: ユーロが下落し、1.0359ドルまで下落。米ウクライナ首脳会談の決裂が影響。ドル指数は0.23%上昇し107.61。FRBの6月利下げ観測は79.1%に上昇。ドル/円は150.59円で上昇。  
- **債券市場**: 10年国債利回りは6.4bp低下し4.216%。トランプ・ゼレンスキー会談決裂で国債利回りがさらに低下。  
- **株式市場**: S&P500は一時下落後、回復して上昇。デルが4.7%下落、エヌビディアとテスラは4%近く上昇。VIX指数は21.26に上昇。  
- **商品市場**: 金先物は1.64%安の2848.50ドル、週間で3.55%下落。原油先物(WTI)は0.84%安の69.76ドル、週間で0.90%下落。
**ロンドン株式市場**はまちまちの結果で終了。  
- **FTSE100種指数**は最高値を更新し、2月は1.57%上昇。  
- **FTSE250種指数**は0.43%下落。  
- 住宅価格の上昇を受けて住宅建設株指数は2.07%上昇。  
- **ライトムーブ(+4.3%)**、**IMI(+5.8%)**、**IAG(+4.0%)**は増収・増配見通しで買われた。  
- **モルガン・アドバンスト・マテリアルズ(-16.2%)**は通期減収見通しで急落。  
**欧州株式市場**はほぼ横ばい。  
- **STOXX欧州600種指数**は週間で0.60%上昇。  
- **テクノロジー株(-1.51%)**、**資源株(-0.69%)**は下落。  
- **ヴァレオ(-11.2%)**は通期業績が低調で急落。  
- トランプ氏の関税措置表明が市場の重荷となる一方、米利下げ期待が投資家心理を支えた。  
**ユーロ圏債券市場**では、ドイツ2年債利回りが一時10週間ぶりの低水準。  
- フランスとドイツのCPI発表を受け、欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測が強まる。  
- ECBは来月の理事会で追加利下げを実施する見込み。

0 件のコメント:

コメントを投稿