2025年4月1日火曜日

備忘録(25/4)

備忘録(2025/4/3
●海外企業決算
●海外企業
ナイキ<NKE>57.78(-7.18-11.05%)
デッカーズ<DECK>102.39(-15.59-13.21%)
ルルレモン<LULU>254.13(-28.63-10.12%)
ナイキ<NKE>やデッカーズ<DECK>、ルルレモン<LULU>など靴や衣料品のメーカーの下げが目立っている。トランプ関税の発表が影響している。トランプ大統領はベトナムに46%、カンボジアに49%、中国に34%、インドネシアに32%の相互関税を課すことを公表したが、上記の企業のサプライチェーンに打撃を与える可能性が指摘されている。
ナイキは近年、ベトナムでの生産を拡大しており、同社の靴の約半分を生産。ルルレモンはベトナム製が40%、カンボジア製が17%となっている。
本日の株式市場はトランプ関税の世界経済に与える影響を警戒し、波乱の状況となっているが、その影響でマイクロソフト<MSFT>も下落。また、取引開始前に同社が世界各地のデータセンター計画を縮小すると伝わった。
前日のトランプ関税の発動を受けて、きょうの米株式市場は混乱している。そのような中、大手銀株の下げがきつい。2023年3月の米地銀危機以来の最悪の1日となっている状況。KBW銀行株指数は最大9.1%下落し、地銀危機以来の最大の下落率を記録する勢いとなっている状況。
アナリストからは「金融機関は関税に直接的に晒されているわけではないが、広範囲に渡る関税引き上げが経済や活動レベルに間接的に及ぼす影響に伴う不確実性とそれに続く市場の変動が、短期的には銀行株を支配する可能性が高い」とのコメントも出ている。
銀行株は代表的な景気敏感株の位置づけがあるが、アナリストは「銀行は短期的に手数料収入の減少と消費マインドの低迷の影響を受ける可能性がある」と指摘している。
同アナリストは、手数料収入の見通し低下と信用損失に伴う引当金の増加を理由に、大手11行の第1四半期および通期の1株利益の見通しを下方修正している。
●日本企業
セブン&アイ・ホールディングスが5月に開催する予定の定時株主総会に関して、3月末の締切までに株主提案を出した株主がいなかったことが分かった。同社の広報担当者がブルームバーグの取材に対し明らかにした。
5月27日の株主総会の議案は開示されていないが、例年通りであれば会社側が提案する取締役選任案などが諮られる見通しだ。セブンは井阪隆一氏に代わり、社外取締役のスティーブン・デイカス氏が社長に就任することを表明している。3月には複数の取締役が退任していた。
物言う株主の1社である米資産運用会社アーチザン・パートナーズ・アセット・マネジメントも株主提案を出さなかった。同社はかねてセブンにカナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールとの買収交渉にきちんと臨むよう求めるなど圧力をかけてきた。
3月にはデイカス氏の取締役選任について、セブンの対応によっては反対票を投じる可能性が高いことを表明。その後相次いで取締役の退任が発表された際も経営陣の責任追求を株主に呼び掛けただけに、動向が注目されていた。
セブンは4月中に開く取締役会で議案の内容を固め、招集通知を出す方向だ。株主提案がない場合は会社提案について株主は検討することになるが、株主総会当日に修正動議が出される可能性は残る。
2年前の株主総会では取締役選任を巡りアクティビスト(物言う株主)の米バリューアクト・キャピタル・マネジメントが株主提案で独自の候補者を立てたが否決された。
●先進国政治動向
トランプ米大統領は3日、各国からの輸入品に対して「相互関税」を課すと発表し、米国にとって「解放の日」になると訴えた。しかし、経済改革の公約が実現しなければ、共和党への逆風となり、有権者に経済的な苦痛を与える可能性がある。
専門家によれば、トランプ氏が関税によって達成できると主張する製造業の再活性化やサプライチェーンの再構築、生産拠点の国内回帰には数年を要する見込みだ。
その一方で、米国の同盟国は米製品に報復関税を課すとみられ、消費者は物価上昇に直面し、経済は下降局面に入る可能性がある。トランプ氏はこれを「一時的な混乱」に過ぎないと主張するが、来年の中間選挙を控え、有権者がこうした痛みを受け入れるかどうかは不透明だ。
共和党は関税政策により中間選挙で敗北し、連邦議会上下院の一方もしくは両方を失う可能性がある。
トランプ氏の1期目で広報部長を務めたマイク・ダブケ氏は、トランプ氏は困難な状況に対する耐性が高いとしながらも、中間選挙の結果次第では本当の困難に直面する可能性があると語る。「懸念されるのは、トランプ氏と側近らが期待する成果がいつ現れるかだ。中間選挙まで18カ月しかない」と指摘した。
ロイター/イプソスの世論調査によると、米国民の70%が関税引き上げにより食料品や消費財の価格が上昇すると予想している。この割合は共和党支持者でも62%に達する。
関税引き上げは利益よりも害をの方が大きいと答えた人は約53%、利益の方が大きいとの回答は31%だった。また、輸入品に関税を課すことで米国の労働者が利益を得るとの見方に同意したのは31%にとどまり、48%が同意しないと答えた。
フーバー研究所の研究員で、共和党の重鎮であるミット・ロムニー、マルコ・ルビオ両氏の顧問を務めたランヒー・チェン氏は関税について、「主要リスクは経済関連だ。まず物価に対する差し迫ったリスクがあり、それがインフレ対策を掲げて当選した大統領にとって何を意味するかだ」と指摘。もうひとつの問題がリセッション(景気後退)に陥る恐れだと述べた。
<選挙を巡るリスク>
共和党内ではトランプ氏に対する不満の兆候が見え始めている。
2日に行われた南部フロリダ州での連邦議会下院の2つの補欠選挙は、いずれも共和党候補が勝利したが、対立候補との得票率の差はトランプ氏が大統領選で勝利した時よりもはるかに小さかった。
また、大統領選の激戦州である中西部ウィスコンシン州の最高裁判事を選ぶ選挙は、トランプ氏や実業家イーロン・マスク氏が支持した保守派候補がリベラル派候補に破れた
連邦議会上院はカナダに対する追加関税を撤廃する法案を可決した。共和党から4人が賛成に回った。
相互関税を発表を受け米株式先物は急落した。株価が幅広く下落すれば、確定拠出型年金401kで運用されている資産に打撃を与えることになる。
元共和党議員側近は「米企業と消費者のお金を解放してしまうのが『解放記念日』のようだ」と皮肉った。「航空母艦は急には止まれないし、世界経済を1日で作り変えることもできない」と話した。
トランプ氏はバイデン大統領から堅調な経済を引き継いだ。2024年の成長率は約3%、失業率は約4%、インフレ率は3%未満だった。
しかし、経済はほころびの兆しを見せている。トランプ氏が関税政策について言及し始めてから2カ月で、家計や企業の経済見通しに対する信頼感は下降傾向にある。昨年11月の大統領選後に見られた楽観的な状況とは様変わりしており、政治リスクが高まるとの見方がでている。
一方で、トランプ氏はこれまでも有権者の間で大きな不安を引き起こしてきたが深刻な事態に陥ることはなかった、と指摘するのはグリネル大学(アイオワ州)の政治学教授バーバラ・トリッシュ氏。「今度こそ最後の一撃となり(どんな批判も跳ね返す)テフロンが傷つくと言われたことが何度もあった。しかし現実はそうならなかった」と述べた。
中小企業経営者の関税に対する評価は分かれる。
マーリン・スチール(ボルチモア)のオーナー、ドリュー・グリーンブラット氏は、顧客が米国製品にシフトしており、トランプ氏の関税はすでに受注増に貢献していると語った。
一方、品ぞろえの3分の2を欧州産ワインが占めるワシントンのワインショップ「DCanter」のオーナー、ミシェル・リム・ワーナー氏は「本来25ドルのワインに75ドルも払う人がいるだろうか」と先行きに懸念を示した。
経済産業省は、米国が自動車関税や相互関税を打ち出したことに対して、省内に「米国関税対策本部」を立ち上げ、3日午後に会合を開いた。会合の冒頭、武藤容治経産相は「今後国内産業にも広範囲に及ぶ影響が出る可能性がある」とし「関係部局が一丸となって、今回の関税措置からわが国の産業・雇用を守り抜く必要がある」と述べた。
短期的な企業への対策としては、1)約1000カ所の特別相談窓口の設置、2)資金繰り・資金調達支援としてセーフティーネット貸付の要件緩和や官民金融機関への相談呼び掛け、3)中堅・中小自動車部品サプライヤーの事業強化の3点を打ち出した。中長期的な対応策は、今後どのような影響が出てくるかを精査しながら考えることになる。
武藤経産相は「自動車産業は日本の産業の大黒柱でもあり、部品メーカーも含め広範なサプライチェーンを有していることから、影響を特に注視する必要がある」と指摘。副大臣や政務官に対して、自動車産業が集積している地域を訪問することを求めた。
また、サプライチェーンにおいて適切な価格転嫁が行われるよう、業界団体に要請を行う。武藤経産相は「私からも来週、直接自動車業界のトップに対し要請を行う」と述べた。
トランプ米大統領は2日、日本を含む全ての貿易相手国・地域を対象とする相互関税措置を発表した。世界の貿易システムを揺るがす相互関税のポイントを以下にまとめた。
<主要貿易相手国に高関税、ロシアは除外>
相互関税は、貿易相手国・地域の為替操作など米国製品に不利な貿易障壁をなくすことが目的とされる。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国・地域の関税や非関税障壁を考慮し、税率を上乗せした。
税率は欧州連合(EU)が20%、日本は24%。
2024年の対米貿易黒字が2950億ドルと最大だった中国の税率は34%。中国に対しては、米国のフェンタニル問題を巡り2月に20%の関税を発動しており、これと合わせると54%に達する。トランプ大統領は昨年の大統領選で、中国製品に60%の関税を課すと表明していた。
このほかアジアではベトナムが46%、タイが36%、台湾32%、インド26%、韓国25%となっている。
昨年、対米貿易収支が赤字だった英国、ブラジル、シンガポールも基本税率の10%が課される。米政権当局者は、政策がより公正なら多くの国で対米貿易赤字が拡大すると指摘した。
ただ、24年の対米貿易収支が25億ドルの黒字だったロシアは相互関税のリストに含まれていない。
<メキシコとカナダに猶予>
中国と同様、フェンタニル問題で25%の追加関税を発動しているカナダ、メキシコも当面は相互関税の対象から外れる。25%の追加関税措置が撤廃された場合は、12%の相互関税を適用する。
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準を満たす輸入品の関税免除は無期限で継続される。米自動車メーカーにとっては歓迎すべき「救済措置」となる。
<金属や自動車は対象外>
自動車・自動車部品、鉄鋼、アルミニウムといった1962年通商法第232条に基づく分野別関税を課している品目も相互関税の対象外とした。
銅、木材、半導体、医薬品など通商法232条に基づく調査を実施中、または実施する可能性のある品目も対象外になる。近日中に発表される付帯文書で、重要鉱物、エネルギー、エネルギー製品なども対象外とする見通しだ。
<発動日、法的根拠>
10%の基本税率は米東部時間5日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)に発動し、上乗せ税率は9日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)に発動する。
法的根拠は、2月のフェンタニル問題を巡る中国、メキシコ、カナダへの追加関税と同じく国際緊急経済権限法(IEEPA)。トランプ大統領は、24年に40%超拡大し1兆2000億ドルに達した「大規模かつ持続的」な貿易赤字を「国家の非常事態」と認定。大統領令で「貿易赤字は、貿易関係の非対称性が国内生産能力、特に米国の製造業と防衛産業基盤の萎縮につながっていることを反映する」と指摘した。
<中国からの小包免税措置を廃止>
トランプ大統領は2日、中国からの小口輸入品に対する関税免除措置(デミニミス・ルール)を廃止する大統領令にも署名した。この免税措置は、「Temu(テム)」や「SHEIN(シーイン)」といった中国eコマースが米国で人気化するのに一役買ったとされている。トランプ政権はフェンタニル問題に関連してこの免税措置を廃止しようとしたが、関税徴収手続きの負担などを考慮し見送っていた。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は3日、トランプ米大統領が発表した各国に対する関税は世界経済に大きな打撃になると懸念を示した。また、EUは交渉が不調に終われば対抗措置を取る用意があると述べた。
「われわれは鉄鋼関税に対する第1弾の対抗措置を既にまとめている」とした上で、「現在、交渉が失敗した場合にわれわれの利益と企業を守るためのさらなる対抗措置を準備している」と述べた。今後の措置の詳細は明らかにしなかった。
EUは3月12日に発効した米国の鉄鋼・アルミニウム関税への対抗措置として、最大260億ユーロ(284億ドル)相当の米国製品に関税を課す計画だ。
トランプ氏は2日、貿易相手国に対する相互関税を発表。全ての輸入品に最低ラインとして一律10%の関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮して国・地域別に税率を上乗せする。EUの税率は20%となる。
フォンデアライエン氏は米国の措置を非常に遺憾とした上で、最も高い関税が課される脆弱な国々を含め、世界経済に「甚大な影響」が及ぶと警告した。
「不確実性が高まり、さらなる保護主義の台頭につながる」とし、消費者にとって食料品や医薬品、輸送費が上昇するほか、企業に混乱をもたらすと指摘した。
他国が世界貿易ルールを不当に利用しているというトランプ氏の主張に理解を示し、改革の取り組みを支持する用意があるとも表明。「交渉を通じて懸念に対処するのはまだ遅くない」と述べた。
ドナルド・トランプ米大統領が2 日に発表した関税が世界経済に与える影響は非常に大きい。
その影響は、アメリカの関税収入が100年ぶりの水準に跳ね上がる様子を示すチャートの線で測定できる。これは、1930年代の強い保護主義の時期を超えるものだ。
ほかにも、特にアジアの株式市場の急落でも測定できる。
しかし真の尺度となるのは、長年の世界的な貿易手段の大幅な変化だろう。
その中心にあるのは、すべてのアメリカへの輸入品に対する10%の一律の関税で、これは4日夜に導入される。さらに、「最悪の違反者」の国々には、対米貿易で黒字を出していることに対する相互関税が課される。
アジア諸国に対する関税は非常に注目すべきもので、数千の企業や工場、さらには国全体のビジネスモデルを破壊する可能性がある。
世界最大の企業によって構築された一部のサプライチェーンは瞬時に崩壊するだろう。その不可避の影響は、こうした企業を確実に中国に向かわせることになる。
これは単なる大規模な交渉なのか? アメリカ政府は関税収入を、計画された減税のために利用すると主張しているようだ。迅速な調整の余地は限られているように見える。あるホワイトハウスの高官は率直に、「これは交渉ではなく、国家の緊急事態だ」と述べた。
この政策の目的は、アメリカの貿易赤字を「ゼロに戻す」ことだ。これは世界経済の完全な再構築を意味する。
しかし、工場の移転には数年かかるだろう。特に東アジアに対する30~40%の規模の関税は、衣料品やおもちゃ、電子機器の価格をはるかに素早く引き上げることになる。
今、問われているのは、世界がどのように対応するかだ。
欧米の一部の消費者には、衣料品や電子機器の安価な別ルートの貿易から利益を得る機会がある。内向きになった世界最大の経済圏の外では、他の大経済圏が、より緊密な貿易の統合を選ぶかもしれない。
米電気自動車(EV)テスラの販売不振が示すように、政府の対応が関係するのは、この話の一部だけでしかない。今や消費者も反撃できる時代になった。これは新しい形のソーシャルメディア貿易戦争かもしれない。
ヨーロッパは、世界中で愛されているアメリカ生まれの消費者ブランドを、買い続けないことを決定するかもしれない。
アメリカのテック大手によるソーシャルメディアサービスの独占が揺らぐ可能性もある。
そして米当局は、避けられないインフレ高騰に対抗するため、金利を引き上げる必要があるかもしれない。
混乱した世界貿易戦争は避けられないようだ。
ドナルド・トランプ米大統領の政治姿勢は、数十年にわたって人々に注目されながら活動する中で、大きく変化してきた。しかし、1980年代から一貫していることがある。関税は米経済を活性化させるうえでの有効手段だという信念だ。
そして今、大統領の座を賭けて、それが正しいと示そうとしている。
トランプ氏は2日、ホワイトハウスのローズガーデンで、友人や保守派の政治家、閣僚らに囲まれながら、新たな関税措置を発表した。同盟国、競合国、敵対国を問わず、幅広い国々を対象にするものだった。
祝福と自賛が入り混じった演説の中で、トランプ氏は所々で聴衆から拍手を受けながら、長年にわたって関税を支持してきたことに言及。同時に、北米自由貿易協定(NAFTA)のような自由貿易の取り決めや、世界貿易機関(WTO)には批判的だったと振り返った。
また、今後数日間は「グローバリスト」や「特別な利害関係者」らの反発が起こるだろうが、それでも自分の直感を信じてほしいと、国民に要望。
「忘れてならないのは、私たちと対立する人々が過去30年間に出した貿易に関する予測はすべて、完全に間違っていたということだ」と述べた。
トランプ氏は大統領2期目の今、同じような考えをもつ側近らに囲まれ、議会両院を支配する共和党内で圧倒的な力を持っている。その状況を背景に、新たにアメリカ中心の通商政策ビジョンを現実のものにする立場にある。そうした政策が100年以上前にアメリカを豊かな国にしたし、これからもそうすると、トランプ氏は話した。
そして、「何年もの間、勤勉な米国民たちは、他の国々が富み、強くなっていくのを傍観させられてきた」、「今日の措置によって、私たちはついに、アメリカを再び偉大な国にすることができる。かつてないほど偉大にだ」と述べた。
だが、トランプ氏にとってリスクはかなり大きい。
あらゆるエコノミストが、この大規模な関税はやがてアメリカの消費者に転嫁され、物価を上昇させ、世界的な不況を招くと警告している。計画では、中国に53%、欧州連合(EU)と韓国に20%、そしてすべての国に一律10%の関税を、それぞれ課すとしている。
国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストのケン・ロゴフ氏は、世界最大の経済大国のアメリカが景気後退に陥る可能性が、この日の発表で50%に高まったと、BBCワールドサービスの取材で予想。「彼はたった今、世界の貿易システムに核爆弾を落とした」とし、アメリカの輸入品にこれほどの関税をかけることの影響は「気が遠くなるほどだ」と述べた。
トランプ氏の今回の措置には、アメリカが他国との貿易戦争をエスカレートさせ、関係強化を図ってきた同盟国を遠ざけてしまうリスクもある。例えば、アメリカは日本と韓国を、中国の膨張主義的野心に対する防波堤とみなしている。ところがそれら3カ国は最近、アメリカの貿易政策への対応で協力していくと発表した。
もしトランプ氏が成功すれば、第2次世界大戦の焼け跡からアメリカが中心となって築き上げた世界経済秩序を、根本から再構築することになる。トランプ氏は、そうすることでアメリカの製造業を再建し、新たな収入源を生み出し、アメリカをより自立させるとともに、新型コロナウイルスの世界的流行の時期に大打撃をもたらしたグローバルサプライチェーンのショックから守ると約束している。
困難な目標であり、多くの人が非現実的だと考えている。しかし、戦争を終わらせ、地理的な名称を変え、新たな領土を獲得し、連邦政府のプログラムと労働力を解体することなどによって、自分の歴史的評価を確立しようと固執しているように思われる大統領にとって、これは最大かつ最も意味のある目標だ。
それは、トランプ氏が言うところの、アメリカの「解放の日」なのだ。
はっきりしているのは、2日の発表をトランプ氏が実行に移すなら、歴史的な変化を生むことはほぼ確実だということだ。問題は、それが業績として歴史に刻まれるのか、それとも悪評として歴史に残るのかだ。
トランプ氏は演説で勝ち誇っていた。彼の措置が米経済と自らの政治的地位にもたらす可能性のある高いコストを隠すものだった。
だがトランプ氏は、その価値はあると言った。演説の最後の最後で次のように述べて、大統領としての疑念の小さな影を、虚勢を通してのぞかせてはいたが。
「この日が、何年か後に人々が振り返って、『彼は正しかった』と言うような日になることを願っている」
ドナルド・トランプ米大統領の関税政策の翌日の木曜日、世界の市場、企業、そして長年の地政学的関係は混乱に陥った 。そして、ヨーロッパもこの混乱から逃れられなかった。
欧州連合は 20%の関税を課せられたが、英国は 米国とのよりバランスの取れた貿易関係の恩恵を受け、より低い10%の関税を課せられた 。政策立案者がどこまで対応に踏み切るか、そして紛争がどこまで深刻化するかに注目が集まる。
経済的な観点から見ると、予想される成長の減速と貿易関係の崩壊によって経済的恩恵を受ける国はほとんどいない、あるいは全くないというのがアナリストの大半の意見だ。
それでも、木曜日には欧州資産にいくつかの明るい兆しが浮かび上がったが、一方で非常にネガティブな兆しもいくつか現れた。
高級品
欧州のストックス・ラグジュアリー10指数はロンドン時間午後2時45分までに4.8%下落した。バーバリーの株価は8%以上下落し、LVMHは4.8%、グッチの親会社ケリングは5%下落した。
高級品は欧州で製造され米国に輸出されることが多いため、トランプ大統領の相互関税の直接的な標的となっている。
シティのアナリストらは木曜日のメモで、ドイツの靴メーカー、ビルケンシュトックが
, イタリアのファッションブランド、ブルネロ・クチネリ。
デンマークの宝飾品大手パンドラは、米国への売上高の依存度が最も高い業界企業の一つで、米国での売上高は各社の31~47%を占めている。
高級品コングロマリットLVMH
グッチのオーナー、ケリング
カルティエの親会社リシュモン
また、シティは、これらの企業はすべて米国での売上高の少なくとも20%を生み出したとも指摘した。
食品・飲料メーカー
EUは、米国をワイン、ビール、蒸留酒、チョコレート、チーズ、オリーブオイルなどの食品や飲料製品の「主要な輸出先」と位置付けている。
世界最大のビール会社であるABインベブの株価は木曜日に0.6%下落し、ペルノ・リカールは
ハイネケン​
それぞれ2.5%と1.3%低下した。テイト&ライル
世界最大級の製糖工場を運営する同社は2.6%下落した。
「大西洋を挟んで両国の産業は高度に統合されており、酒類の共通貿易は製造、流通、農業、小売、接客業など双方の多くの雇用を支えている」と業界団体スピリッツ・ヨーロッパは木曜日の声明で述べた。「EUと米国の生産者双方の継続的な成長を支える環境への回帰を確実にしたい」
ドイツ
ドイツは昨年、EUから米国への最大の輸出国だった。このヨーロッパの国には、BMW、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、ポルシェなど、EU域内最大の自動車メーカーがいくつか拠点を置いている。
これらすべてには現在25%の輸入関税が課せられています。
ドイツ銀行リサーチのチーフエコノミスト、ロビン・ウィンクラー氏は木曜日の顧客向けメモで、「昨夜の関税発表がドイツ経済にとって悪いニュースであることは間違いない」と述べた。
「しかしながら、ネガティブなサプライズは関税の直接的な影響というほどではない」と同氏は述べ、市場は相互の20%関税を予想していたと指摘した。
「しかし、米国がアジアからの輸入品に50%以上というはるかに高い関税を課したことは、本当に驚きであり、我々やほとんどの観測者が予想していたよりも世界貿易ショックが深刻であることを意味している」とウィンクラー氏は述べた。「間接的に、これはドイツにとってもマイナスのショックだ」
ドイツの卸売・貿易・サービス連盟(BGA)は木曜日の声明で、トランプ大統領の相互関税を「世界貿易への正面攻撃」と非難した。
「米国大統領は、100を超える貿易相手国に対する大幅な関税引き上げで、米国のEU離脱をめぐるあからさまな貿易戦争に世界を突入させようとしている」とBGA会長のダーク・ジャンドゥラ氏は電子メールによる声明で述べた。「この紛争はわが国の経済成長に重大な影響を及ぼすだろう。長引けば長引くほど、米国を含むすべての国にとって痛みが増すことになる」
小売り
衣料品、靴、家庭用品、電化製品などを販売する多くの小売業者は、アジアを拠点とするグローバルサプライチェーンを持っています。カンボジア、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、スリランカなどの南アジアと東南アジアの国々には、H&Mやアディダスなどの企業向けの衣料品や製品を生産する工場が密集しています。
そして、最近発表された米国の相互関税の中でも最も高い税率のいくつか、多くは40%を超える税率を課せられ、物議を醸した。
「多くの輸出業者にとって、(新たな関税は)利益と損失を分けるものだ。企業は、米国の顧客に利益を上げながらサービスを提供し続けることができるかどうかをじっくり検討する必要がある。もしそれができないなら、貿易協定がすでに存在するような、より友好的な新しい市場に焦点を絞る必要がある。そして、必要なら、製造を他の製品に多様化する必要がある」と、コンサルティング会社クロウのVAT・関税担当ディレクター、イアン・ワース氏は電子メールで述べた。
「米国到着時ではなく輸出時に関税を課す動きは、多くの問題を引き起こす可能性がある」とワース氏は付け加えた。
配送
経済成長と貿易の足かせになるとの予測が広がる中、世界経済の健全性に結びついている物流・海運会社は影響を受けることになるだろう。
デンマークの海運大手 マールスク は木曜日、ホワイトハウスが発表した関税計画により、経済環境がより不安定になる中で、顧客の間でより慎重な姿勢が強まるだろうと述べた。
「現在の形では、(関税は)世界経済、安定、貿易にとって明らかに良いニュースではない」と同社は声明で述べた。
欧州の海運・物流会社の株価は木曜日、全般的に下落し、マールスクは9.5%、 ハパグ・ロイド は8%、  DSVは 6.5%それぞれ下落した。
銀行
木曜日、銀行セクターは欧州で最もパフォーマンスの悪いセクターの一つとなり、地域のストックス銀行指数は4.52%急落し、2年ぶりの大幅な売り圧力が高まった。
このセクターは、世界経済の成長鈍化や、潜在的な景気後退や広範囲にわたる貿易戦争への懸念にも敏感だ。
英国の銀行スタンダード・チャータード
アジアへのエクスポージャーが高いHSBCは10%下落した。
7.5%低下しました。
自動車
トランプ大統領の外国からの自動車輸入に対する25%の関税が木曜日に発効し、世界の大手自動車メーカーの多くが最近の損失を拡大することになった。
ドイツのフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ・グループ、BMWはいずれも木曜日の午後に2%以上下落したが、ミラノ上場のステランティスは
ジープ、ダッジ、フィアット、クライスラー、プジョーなど有名ブランドを所有するトヨタの株価は3.5%下落した。
サプライチェーンの高度なグローバル化と、特にメキシコをはじめとする北米全域の製造拠点への依存度が高いことを考えると、激化する世界貿易戦争は自動車業界に多大な影響を及ぼすことが予想されます。
地域通貨
欧州通貨は木曜日に上昇した地域内の数少ない資産クラスの一つであった。ユーロ
そしてイギリスポンド
6ヶ月ぶりの高値を記録し、スイスフランは
10月中旬以来のドルに対する最高値に上昇した。
トランプ大統領のいわゆる解放記念日関税発表に先立ち、市場関係者はCNBCに対し、米国の新たな輸入関税が発効したことでユーロとポンドが上昇する可能性があると語った。
みずほ欧州・中東・アフリカのFICC戦略責任者、ジョーダン・ロチェスター氏は木曜朝のメモで、ユーロは短期的には1.12ドルまで上昇する可能性があると述べた。木曜ロンドン時間午後3時までに、ユーロは2.2%上昇し、1.108ドルで取引された。
「ネットネット為替は実質利回り均衡を追いかけており、これはユーロ/米ドルが1.11、あるいは1.12になることを示唆している。当社の年末予想だが、このペースだと来週には実現するだろう」とロチェスター氏は木曜日のメモで述べた。
しかし、同氏は「ある時点で米ドルの売りには限界がある」と付け加え、金曜日までにユーロが1.11ドルの閾値を超えた場合、ユーロが売り始める可能性があると予測した。
医薬品
医薬品と製薬製品はEUから米国への最大の輸出品の一つだ。同業界は水曜日、トランプ大統領の広範な相互関税から猶予を与えられたが、ホワイトハウスのリーダーは、製薬業界は他の業界とともに調査の対象となる可能性があり、最終的には関税につながる可能性があると述べた。
欧州のストックス医薬品・バイオテクノロジー指数は木曜日に約1.9%下落し、英国勢のGSKが下落した。
アストラゼネカ
それぞれ2.7%と1.5%上昇した。デンマークの大手ノボノルディスクは横ばい圏内で推移した。
ユーティリティ
木曜日、投資家がトランプ大統領の広範囲な関税に反応して市場全体が売り込まれる中、欧州の公益事業株が上昇を主導した。
公益事業株は、市場混乱時に伝統的に防御的な銘柄であるが、午後の取引では直近2.6%上昇した。フランスのエンジーとスペインのイベルドローラは同セクターで最も好調な銘柄で、両社とも約2.7%上昇し、後者は52週間ぶりの高値を更新した。
ドナルド・トランプ米大統領によるこれまでで最大の関税攻勢は、米国内外の企業に明確なメッセージを送っている。「グローバル化の時代は終わった」ということだ。
新たな関税措置に関するトランプ氏の「解放の日」計画は、数兆ドル規模の輸入品に包括的な関税を課すもので、米消費者向け製品を米国の工場で生産することを望む政権の姿勢を示している。これは数十年にわたり世界経済をけん引してきたグローバル化への米国の支持に幕を下ろすものだ。
新関税には外国からの輸入品に対する10%の基本関税と、貿易相手国・地域と同水準に関税を引き上げる「相互関税」が含まれる。中国は合計で54%、ベトナムは46%、欧州連合(EU)は20%の関税が適用される。
トランプ大統領は2日にホワイトハウスのローズガーデンで行った演説で「雇用と工場がわれわれの国に急速に戻ってくるだろう。それはすでに起きている」と述べた。不満を持つ企業や国に対しては「関税率をゼロにしたいなら、ここ米国で製品を作ればいい」と語った。
トランプ氏のメイド・イン・アメリカの野心は、ベトナムのような低コストの製造拠点や、韓国や日本といった米国の同盟国にここ数年注がれていた投資の大きな流れが枯渇することを意味する。企業は投資先として最適な場所を再検討している。
「米国はグローバル化の中心だった」。ブリュッセル自由大学の経済学教授で元EU高官のアンドレ・サピア氏はそう述べた。「今、その中心である米国が離脱しようとしている」
トランプ氏の2期目就任から数週間で、米アップル、韓国の現代自動車、米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)や米製薬大手イーライリリーなどの企業による新たな発表が相次いでおり、多国籍企業がトランプ氏の関税に対応して米国で事業拡大を準備していることを示している。
しかし、トランプ氏が望むような形で世界のサプライチェーンを解体し、米国に生産拠点を移転することは、コストを考えると困難な課題だ。また、トランプ氏が他国から貿易面での譲歩を引き出すために関税を引き下げるリスクもあると経営幹部らは指摘する。エコノミストらは、企業が貿易戦争の不透明感が晴れるまで様子見を続けることで、世界が成長を阻害する投資不足に直面する可能性があると警告している。
トランプ氏が期待しているのは、高関税の壁により、米国全土で工業生産が花開き、製造業の雇用が豊富で広範な繁栄をもたらす黄金時代が到来することだ。同氏は中国やEU、その他の米国の貿易相手国による略奪的な貿易慣行が雇用と産業を国外に流出させた原因だとし、それらを取り戻したいと考えている。
トランプ氏は今回の発表で中国に特に高い関税を課した。中国は製造拠点の米国外移転(オフショアリング)から最大の恩恵を受け、玩具や衣類から始まり、今日では先端技術を駆使した自動車、機械、電子機器を製造する工場を数十年にわたり築き上げてきた。今日、中国は世界の製造業を支配し、昨年の貿易黒字は約1兆ドル(約150兆円)に達した。
中国に対する新たな34%の追加関税は、合成麻薬フェンタニルの取引における中国の関与を背景としてトランプ政権が発動済みの20%の関税に上乗せされる。つまり、4月9日以降、中国からの輸入品に対する関税率は54%になる。
結果として、米国は中国からの輸入は減った一方、ベトナムやメキシコ、その他の国との貿易赤字は拡大した。米国の経常赤字は2024年に1兆1000億ドルに達し、トランプ氏や同氏の側近らにとって世界貿易の抜本的な見直しが必要であることを浮き彫りにした。
トランプ氏はホワイトハウス復帰後、対立国と同盟国の双方に対して貿易戦争を仕掛けている。これらの国々が第2次世界大戦後に米国が育んだグローバルな貿易システムを利用して、輸出を押し進め輸入を制限していると非難している。こうした政策が確かに米国の貿易赤字を引き起こしていると指摘するアナリストもいるが、主流派エコノミストの大半は、巨額の貿易赤字の主な要因として米国の恒常的な財政赤字と低い貯蓄率を挙げている。
トランプ氏の戦略が効果を上げている兆しがある。ロビー団体のドイツ機械工業連盟(VDMA)が昨年11月に行った調査によると、ドイツのエンジニアリング企業の約半数が、関税と市場規模の両方を理由に対米投資を増やしたいと考えている。VDMA幹部のアンドリュー・アデア氏は、ほとんどの会員企業が「米国を成長の機会と見ている」と述べた。
ドイツの総合電機大手シーメンスは3月、最大の市場である米国への投資を100億ドル増やすと発表した。これには、テキサス州フォートワースとカリフォルニア州ポモナに新設する電気製品の製造施設が含まれ、同社によると熟練工900人以上の雇用が創出される見通しだ。
またファウンドリー(半導体受託製造)最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は3月、今後数年間で少なくとも1000億ドルを米国の半導体製造工場に投資する計画だと明らかにした。トランプ氏は今回、台湾に32%の関税を課すと述べたが、半導体は免除される。
しかし、このような計画にもかかわらず、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した企業投資意欲に関する指標は、関税を巡る不確実性を背景に、米国経済全体で企業の支出計画が縮小されていることを示している。
もう一つの問題は、米国の製造業が先端技術に特化しており、国外でより安価に生産できる基本的な材料や部品の国内供給が整っていないことだ。すでに米国の製造業者はねじ、ナット、ボルトのコスト上昇に苦しんでおり、グローバルなサプライチェーン(供給網)への容易なアクセスの必要性が浮き彫りになっている。
「関税をかけてスイッチを入れれば、突然米国が再び工業国になるというわけにはいかない」。ミネソタ州セントポールを拠点とするミスコ・スピーカーズのダン・ディグレ社長兼最高経営責任者(CEO)は、こう述べた。同社は遊園地や医療機器、宇宙船で使用される音響システムを製造している。
ミスコは生産の半分程度を米国内で行っているが、振動板や銅製ボイスコイル、その他のスピーカーの重要部品を国外の工場に依存しており、その多くは中国にある。
2018年以来、約1400万ドルの関税を支払ってきたというディグレ氏は、ベトナムなどアジアの他の地域で代替となるサプライヤーを探し回っていると語った。しかし、広範囲にわたる新たな関税が迫る中、「何をすべきか判断するのは非常に難しい」と述べた。「安全な場所はどこにもない」
ドナルド・トランプ米大統領は2日、新たな「解放の日」関税を発表した。古くさい保護貿易主義時代の新たな始まりに向け、また大きく踏み出したことになる。この政策が続くと仮定すると(われわれはそうならないことを望んでいるが)、この取り組みは米経済と世界貿易システムを作り替える試みに等しい。
本稿執筆時点で全容は明らかになっていないが、トランプ氏の関税は、「相互」とは名ばかりのようだ。まず、トランプ氏は世界の全ての国に対して、米国市場で物品を売るための10%の「基本」関税を課す。彼が「悪質な行為者」と見なす国々については、当該国が米国製品に課している関税率に、「為替操作」や非関税障壁のコストについての恣意(しい)的な推計値を足し合わせている。その上で合計を出し、その半分を関税として、当該国から米国への輸出品に適用する。
トランプ氏は中国からの輸入品には34%の関税を課すが、同盟国である日本も24%という同様に高率の関税を払うことになる。欧州連合(EU)には20%、インドには26%の関税が適用される。われわれは今後さらに詳細を評価するが、きょうのところはこの新たな保護主義時代に既に明らかになりつつある影響の幾つかについて考えよう。
新たな経済リスクと不透明感
トランプ氏が集中砲火のように課す関税が経済全体に与える影響は、知る由もない。その大きな理由は、各国がどのような反応を示すか分からないことだ。各国が米国に関税引き下げを求める交渉を試みるなら、ダメージは軽減される可能性がある。 だが、各国が報復措置を取る動きが広がれば、その結果、世界貿易の縮小や経済成長の鈍化、リセッション(景気後退)、あるいはさらに深刻な事態が生じかねない。
米国の消費者と企業にとっては、確実にコストが上昇するだろう。関税は税であり、何かに課税すれば、対象となる物品の供給が減る。自動車価格は、米国車を含め、何千ドルも上がるだろう。トランプ氏は、高関税の壁によって競争から守られた企業・労働者へと消費者から富を移転させることを意図的に決定しようとしている。
これはやがて、米国の競争力が徐々に低下することを意味するだろう。競争を鈍らせる関税は、利益の独占を招く一方で、イノベーション(技術革新)の必要性を低下させる。これは、1950年代および60年代の米国の鉄鋼・自動車産業の状況と同じだ。その後、グローバルな競争によって両業界の問題点が明らかになった。
米国の輸出への打撃
米通商政策の長年の目標の一つは、米国の製品・サービスの市場を拡大することだった。そのために、共和、民主両党の歴代政権は2国間および多国間での貿易協定締結を推進してきた。アポロ・グローバル・マネジメントによると、S&P500種指数構成企業の売上高の41%は国外から得られている。
トランプ氏の一方的な関税はこうした取り決めを破壊し、報復を招く。米国の輸出は報復関税から直接の打撃を受ける。他国が米国以外の国の企業を優遇する貿易協定を結べば、米国の輸出は間接的にも打撃を受けるだろう。トランプ氏が1期目に対中関税を課したことで、ブラジルが大豆で大もうけしたことを考えれば分かる。
より大きくなるワシントンの沼
関税は、企業が避けたいと思うコストを企業に課す。ひいては、これはワシントンのロビイストにとって思いがけないチャンスとなる。企業や国々はどんな国境税の対象からも除外されることを望むからだ。
トランプ氏は関税に例外は設けないと述べている。だが、その約束が消えていかないか、注視する必要がある。政治家はトランプ氏を含め、例外措置のことを選挙の時に企業に献金させるための手段と考えているからだ。解放の日は、(特権階級やロビイストの)沼にとっては「もう一つのヨットを買う日」なのだ。
米国が世界経済を主導する時代の終わり
英国は第1次世界大戦中にこの役割を担ったが、戦争であまりにも痛めつけられたために、その役割を担い続けられなかった。米国がその役割を受け継いだのは、大恐慌と第2次世界大戦が終わってからだった。米国がリーダーシップを発揮し、自由貿易を広めるという判断を下したことはその後70年間にわたり、国内外に一層の繁栄をもたらした。世界の国内総生産(GDP)のうち米国が占める比率は、産業の盛衰があったにもかかわらず、何十年にもわたって約25%に維持されてきた。
こうした時代は今や、トランプ氏がより重商主義的な貿易のビジョンと米国の国益を重視する政策を選ぶ中で、終わりつつある。その結果、各国は自国のために動くようになる公算が大きい。各国が市場の効率性のためではなく、政治的利益のために世界市場を奪い合おうとするようになるからだ。最悪の場合、世界の貿易システムは、1930年代のような近隣窮乏化政策に退化する可能性がある。
米国の影響力低下による痛手はかなり大きくなるだろう。トランプ氏は、米国の市場と軍事力には、自身の意向に他国を従わせるための十分な魅力があると考えている。しかし、ソフトパワーも重要だ。ソフトパワーの中には「米国の言葉は、頼りになる同盟国・貿易相手国としての言葉」だという信用力も含まれる。トランプ氏は、同盟諸国を罰し、自身が1期目の政権下でまとめた米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を壊すことで、こうした信用を台無しにした。
中国にとって絶好の機会
トランプ氏の関税の皮肉な側面として際立つのは、同氏が関税を中国に対抗するための外交手段の一つとして正当化していることだ。しかし第1次トランプ政権は、中国を除外したアジア太平洋地域の貿易協定から離脱した。中国はその後、この協定に参加した多くの国々との間で、独自の通商合意をまとめてきた。
トランプ氏の新たな関税による猛攻撃は、中国に新たな好機をもたらしつつある。それは、中国が自国の巨大な市場を武器に、米国の同盟諸国を自陣に引き込むための好機だ。中国のこうした戦略の最初の標的になるのは、韓国と日本だ。しかし、中国のリストには欧州諸国も載せられている。米市場へのアクセスに疑念を抱いたこれら同盟諸国は、中国との貿易関係を強める。その場合これら諸国は、ハイテク技術の対中輸出制限だけでなく、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に続き、他の中国企業の製品も使用禁止となるケースでも、米国に同調する可能性が低くなる。
ここに示した悪影響のリストは、全てを網羅してはいない。しかしわれわれは、トランプ氏が自ら構築しつつある新たな保護主義的世界についての判断材料として、このリストを読者に提供する。世界経済の再構築は、大きな影響をもたらす。そしてその総合的影響は、トランプ氏が新たな「黄金時代」と宣伝しているような状況にはつながらないかもしれない。
ドナルド・トランプ米大統領は2日、新たな関税体制を発表した。米国の貿易政策が、第2次世界大戦直後の時期以降見られなかった規模で根本的に見直された形となる。
米国は全ての輸入品に10%の一律関税を課し、トランプ政権が貿易における悪質な行為者と見なす国々にはさらに高い税率を適用する。これらの関税は、トランプ氏が既にカナダ・メキシコ・中国からの多くの製品に課した関税や、鉄鋼・アルミニウムに対する関税に加えて導入される。
トランプが関税を課す根拠は、関税が米国の製造業を再生させ、米国の貿易赤字を削減し、政府の債務削減に役立つというものだ。批判的な人々は、関税が世界貿易を混乱させ、インフレ率を上昇させる可能性があると指摘している。トランプ氏の最新の発表について知っておくべきことは以下の通り。
トランプ氏はどのような関税を課したのか?
4月5日から米国の全ての輸入品に10%の追加関税が課される。国によっては4月9日から、さらに関税が上乗せされる。例えば、中国からの輸入品には34%、欧州は20%、日本は24%の追加関税が課される。
トランプ氏は後者を「割引相互関税」と呼び、多くの国が米国製品に課している関税率の半分を米国が課すと説明した。
トランプ氏は2日の発表で、4月3日から外国製自動車に25%の関税を課すことを確認した。
米国の関税とは何か、誰が支払うのか?
関税は米国に輸入されるものに課される輸入税であり、外国の業者から輸入品を直接購入する米国企業などが最初の負担を負う。しかし、サプライチェーン(供給網)上の企業が新しい価格と自社の需要を考慮する中で、最終的な負担者は変わる。
関税の影響を抑えたい輸入業者は価格を引き上げ、関税負担を米国内の消費者や他の企業に事実上転嫁できる。ただ、米国の輸入業者は新たに関税が課された物品の注文を減らすかもしれず、外国の供給元も痛みを感じる可能性がある。
どのような品目や国が影響を受けるのか?
輸入企業は、メキシコ製のシリアルのような日常的に消費する小さな製品から、ドイツ製のフォルクスワーゲン車のような大型で高価な製品まで、米国に輸入する全ての品目に10%の追加関税を支払わなければならない。
関税は国によって異なるため、一部の製品は他と比べてはるかに大きな影響を受ける。
ベトナム、スリランカ、ラオスは、それぞれ46%、44%、48%という最高レベルの「相互関税」を課される。米国の最大の貿易相手国の一つである中国は34%だ。
1日に行われた米ウィスコンシン州最高裁判事選での手痛い敗北を受けて、ドナルド・トランプ大統領と共和党は、イーロン・マスク氏について重大な決断を下さなければならなくなった。全米の舞台でマスク氏の名声と財産を利用し続けるのか、それとも同氏に舞台裏にとどまるよう丁重に頼むのかという決断だ。
同選挙にマスク氏が金銭的および個人的に深く関与したことは、共和党にとっては政治的にマイナス材料だった。2年前の同様の選挙と比べ、共和党よりも民主党の方が得票数を大きく伸ばした。
マスク氏は2024年の選挙サイクルにおける最大の献金者で、トランプ氏や他の共和党員を支援するために3億ドル(約450億円)近くを寄付した。共和党は、世界一の富豪であるマスク氏の財産を選挙資金に活用することを今も強く望んでいる可能性があるが、今回のような表看板の役割を同氏が演じるのを見るのはあまり楽しいことではないかもしれない。
複数のトランプ政権当局者によると、マスク氏は特別政府職員としてホワイトハウスで働いており、この雇用状態の期間満了時点で退任する見込み。今年夏までに期間満了となる公算が大きいという。
トランプ政権や共和党内には、自分たちにとって選挙でマスク氏がマイナス要因になり続けるのではないかとの懸念を内々に示す者もいる。マスク氏の社会保障制度批判に共和党議員たちは恐れを抱いている。また、頭上にチェーンソーを掲げる同氏の画像は、民主党の広告制作会社が2026年に使う可能性が高い。
共和党系の世論調査専門家ウィット・エアーズ氏は「連邦政府職員はイーロン・マスク氏よりはるかに人気がある」と話した。エアーズ氏は最近、連邦政府職員についてや、マスク氏が連邦政府の規模・権限縮小のために果たしている役割について、どう思うかを尋ねる調査を実施した。「チェーンソーを使うようなマスク氏のアプローチは全く不人気だ」という。
共和党のストラテジスト、ジェーソン・ティールマン氏は、1日の選挙結果から多くの結論を導き出し過ぎないよう注意を促した。「大統領選や中間選挙のない年の選挙は、大統領選や中間選挙がある年に何が起こるかを示すものではない。ウィスコンシン州最高裁判事選の結果をイーロン・マスク氏のせいにしようとすることは、この上なくばかげている」
ティールマン氏は、マスク氏が政府効率化省(DOGE)で行っている歳出削減の仕事について、「まさにMAGA(米国を再び偉大に)運動の支持者を勢い付ける大胆な行動の類いだ」と述べた。
MAGAをスローガンとするトランプ氏の支持者たちの間でマスク氏の人気が高いことは間違いない。3月30日にウィスコンシン州グリーンベイで開かれたイベントにマスク氏が姿を見せた際には、ある牧師が同氏のために祈ることを申し出て、聴衆がそれを静かに聞く場面があった。
しかし、今回ウィスコンシン州で行われたような総選挙型の戦いでは、マスク氏の受けはあまり良くないようだ。今回の選挙では、リベラル派のスーザン・クロフォード判事が保守派のブラッド・シメル判事に勝利した。
1日の選挙の投票数は2023年の同州最高裁判事選と比べて52万4000票余り多かったが、勝者と敗者の得票率の差はほぼ同じだった。23年の結果と比べると、リベラル派から保守派に、あるいは保守派からリベラル派に勝者が入れ替わった郡はほぼなかった。
ミルウォーキーにあるマーケット大学ロースクールが実施した世論調査の責任者チャールズ・フランクリン氏は「双方が大幅に得票数を伸ばした。だが、マスク氏が得票率の差にもたらした影響は最小限だった。2023年は11ポイント差でリベラル派が勝利し、今回は10ポイント差でリベラル派が勝利した。2500万ドルを投じたにしては、それほど大きな動きはなかった」と述べた。
最新の開示情報によると、マスク氏と同氏に関連するグループは、今回の選挙に2300万ドル余りを投じた。民主党側でも富豪らが選挙戦に関与したが、マスク氏が投じた額は他を大きく引き離して最大だった。民主党側で最大の寄付を行ったのは著名投資家のジョージ・ソロス氏(200万ドル)で、イリノイ州知事のジェイ・プリツカー氏(150万ドル)がこれに続いた。
今回の選挙に投じられた資金は、全体で1億ドルを超えるとみられる。これは米国の司法分野の選挙に投じられた額としては、これまでの記録を大きく上回っている。アドインパクトのデータによると、選挙広告に投じられた資金は7800万ドル超で、このうちクロフォード氏とその陣営が使った額が4360万ドル、シメル氏とその陣営が使った額が3440万ドルだった。
投票の際に写真付き身分証明書の提示を義務付けている現行法を強化するための同州憲法修正案の是非を巡る投票では、同案が大差で承認された。これは、同案を提出した共和党側の勝利を意味する。
フロリダ州の2選挙区で実施された連邦下院補欠選挙では、共和党が議席を維持した。ただし、伝統的に共和党支持が強固な選挙区での戦いでありながら、得票差は以前より縮小した。しかしこの日に行われたさまざまな選挙の中で最も重要だったのは、ウィスコンシン州の最高裁判事選だった。この選挙は、第2次トランプ政権の最初の主要な試金石となった。
マーケット大学が2月下旬に実施した世論調査によると、ウィスコンシン州の無党派層有権者の58%は、マスク氏に批判的だった。この比率は、民主党支持の有権者の間では97%に達した。マスク氏に好感を持っていた有権者の比率は、全体の41%にとどまった。マスク氏は最近、二極化をあおるような言動をとっているが、それ以前に行われた調査でさえ、こうした結果になっていた。
クロフォード氏の上級選挙アドバイザーを務めたパトリック・グアラシ氏は、マスク氏が(共和党候補への)マイナス要因になったと述べ、(その根拠として)ウィスコンシン州ブラウン郡を挙げた。同郡は昨年11月にトランプ氏が7.5ポイント差で勝利した激戦区で、マスク氏は3月30日に同郡を訪れた。4月1日はクロフォード氏が約3ポイント差で勝利した。
グアラシ氏は「マスク氏がこの選挙を自身に関するものにしてしまい、彼らはその代償を支払った」と語った。
マスク氏はここ数日、自身のイメージを和らげようと、主に友好的なインタビュアーを相手に幾つか取材に応じている。3月30日にウィスコンシン州で開催されたタウンホールイベントでは、人工知能(AI)からDOGEへの自身の取り組みに至る、あらゆる質問を受け付けた。
ウィスコンシン、フロリダ両州において、共和党は引き続き、トランプ政権で彼らが向き合っている中心的な課題の一つに直面することになった。それは、トランプ氏が選挙に出ていないと、同氏を支持する有権者は投票所にあまり来ないという問題だ。
マスク氏は、ウィスコンシン州での選挙を4月1日に行われる最も重要な選挙と位置付け、結果につながるよう自らが責任を取る覚悟でいるとして、「私はこの選挙をおざなりにしていない」と語った。
これはトランプ氏とは対照的だった。トランプ氏は最近、同州に呼び掛けたものの、選挙前に訪問はしなかった。トランプ氏以上に同氏の支持層を盛り上げられる人物は誰もいないが、トランプ氏はほとんど首都ワシントンとフロリダのリゾートにこもっている。
トランプ氏と共和党が、より目立たずに職務を果たすようマスク氏に求めることにしたとしても、世界の舞台で注目を集めることに味をしめるようになってしまった派手好きな大富豪にそれを受け入れさせるのは容易ではないかもしれない。
トランプ氏は3月31日、マスク氏を「素晴らしい」と評したが、DOGEを率いるマスク氏の役割はいずれ終わると述べた。「彼は大企業を経営しているため、いつかは戻ることになるだろう」とトランプ氏は語った。
ラトニック米商務長官は3日、トランプ大統領が諸外国に対する新たな関税を軽減するには、それらの国々が米国製品への輸入規制や障壁に対処する必要があるとの考えを示した。
ラトニック長官はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「これらの非関税貿易障壁はモンスターであり、退治しなくてはならない」と発言。「われわれは今日、すべての主要な貿易相手国と話し合っている。彼らはこれまでいかにわれわれを不当に扱ってきたか、どうすればそれを是正できるか、胸に手を当てて考えるべきだ」と述べた。
同氏は非関税障壁の具体的な例を挙げ、欧州連合(EU)では一部の国が20%の付加価値税を自国の製造業者への補助金に充当していると述べた。
経済諮問委員会(CEA)のエコノミストや米通商代表部(USTR)のスタッフは数十年にわたって外国の貿易障壁を精査しており、その分析が2日にトランプ大統領が発表した課税の基礎となったと、ラトニック氏は述べた。
2012年の韓国との貿易協定の例も挙げ、韓国が米国の農産物を輸入することに同意した代わりに、米国が韓国製自動車の市場参入を認めたと説明した。しかしマクドナルドがポテトの原産地を証明できなかったため、韓国側はフライドポテトを輸入できなかったと同氏は語った。
トランプ大統領が相互関税を2日午後に発表して以来、株式が売り込まれていることについては、大統領の関心は「米国が数十年にわたって被ってきた経済的苦痛」への対応にあるとラトニック長官は述べた。
同長官は中国に対する新たな34%の追加課税が、合成麻薬フェンタニルの中国での製造疑惑を理由にトランプ大統領が今年初めに課した20%の関税に上乗せされることを確認した。
「習近平国家主席がトランプ大統領に電話をかけ、フェンタニルの生産をやめると伝えればよいだけのことだ」とラトニック氏は述べ、習近平主席に責任を転嫁した。「そうすれば、税率は20%下がるだろう」と続けた。
トランプ米大統領は3日、仮に他国・地域が何か「驚くべき」ものを提示することができれば、関税引き下げにオープンであると語った。一部高官の主張にもかかわらず、ホワイトハウスに交渉の用意があることを示唆した。
トランプ氏は大統領専用機で、株価急落にもかかわらず自身の関税プログラムを総じて弁護。金利が低下していることをうれしく思うとともに、経済の乱調が収まると考えていると語った。
「関税はわれわれに交渉のための偉大な力を与える」と述べた上で、「あらゆる国がわれわれに接触してきている」と語った。
それは譲歩を考えているという意味かとの質問に対し、トランプ氏は「状況次第だ」と返答。「もし誰かが、何か驚くべきものを提示すると言って、彼らが何か良いものを与えてくれる限りはだ」とコメントした。
トランプ氏が2日、世界の貿易相手国・地域に対し相互関税を課すと発表したのを受け、米景気悪化の懸念が広がって3日の米株式相場は急落。S&P500種株価指数は4.8%安と2020年6月以来の大幅下落となった。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は1.5%の低下。
トランプ氏は「米国の市場は活況を呈すると思う。チャンスを与えなければならない。少し時間を与えなければならない」とも指摘。エネルギー価格下落と米10年債利回りの低下に言及し、それらをプラス材料と評した。
「私が望ましいと考えることの一つは金利が下がることだ。食料品価格、卵の価格が下がるのも好ましい。そして非常に重要なのはガソリン価格が下がっていることだ」と論じた。
トランプ氏はまた、字節跳動(バイトダンス)傘下の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業売却を中国が承認すれば、同国に関税軽減措置を提示する用意があるとあらためて表明した。
トランプ氏は1月の就任直後、売却の期限を当初の1月19日から4月5日に延長した。同氏がTikTok買収合意の取りまとめを促すため、期限を再延長するかどうかが焦点となる。
「ディール(取引)に非常に近づいている」と同氏は語った。ただ、中国側が関税とTikTokに絡んだアプローチを追求するかは「分からない」としている。
このほかトランプ氏は、関税の軽減を求める関係者と一日中協議したことを示唆。3日には自動車メーカー経営首脳のほか、イスラエルのネタニヤフ首相と話したことを明らかにした。経営首脳の名前は明かさなかった一方、ネタニヤフ氏が来週訪米する可能性があると話した。
トランプ米大統領がほぼ全ての国・地域に高水準の関税を課す決定を下したことは、中国経済に打撃を与える。だが同時に、習近平国家主席にとっては、米国の主要同盟国と関係強化を図るというまたとない機会が到来している。
トランプ氏の関税発表後、中国当局者はすぐさま他国との連携を図る姿勢を鮮明にした。
財政省の廖岷次官は3日、ロンドン証券取引所で開催された中国初のソブリン環境債発行イベントで、今回の発行は「中国が国際市場との統合深化に取り組んでいることの証し」だと主張。「保護主義は機能しない。解決策にはならない」とし、「中国と英国は、強固な協力関係が基盤となっているグローバル化の恩恵を理解している」と述べた。同次官は第1次トランプ政権下の貿易戦争で中国側の交渉担当者の一人。
「絶好の機会」
リヨン経営大学院上海校のフランク・ツァイ非常勤教授は「(トランプ氏の言う)解放の日は米国を世界から孤立させるものだ。米国以外の国・地域が米国を避けて互いに貿易を行うインセンティブを生み出している」と指摘。「中国は今、米国の手法を利用して逆に米国を打ち負かすという絶好の機会を手にしている」と述べた。
習主席は不動産危機やデフレ圧力に直面する中国経済に配慮し、第1次トランプ政権時代に比べて米国の関税措置に対して慎重な対応を取ってきた。今回の相互関税で対中関税率は平均65%以上に引き上げられており、中国政府は報復を示唆している。選択肢としてはアップルなど米主要企業を標的にする、重要鉱物の対米輸出を制限するといった対応が考えられる。
南京大学国際関係学院の朱鋒執行院長、朱鋒氏によれば、中国当局は他国の反応を見極めた上で動く可能性が高い。
中国にとっては「世界がどう反応するか」が問題であり、「中国は報復措置を急ぐつもりはない」と同氏は述べた。
習主席は今月、今回の相互関税で大きな打撃を受けるカンボジアとベトナムに加え、マレーシアを訪問する予定だと伝えられている。トランプ氏の政界復帰後初の外遊先で、地域での影響力をさらに拡大する機会となる。
中国への懐疑論も
中国を専門とする調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベドー氏は、中国を信頼できるパートナーとして売り込む試みは欧州の一部で懐疑的に受け止められる可能性が高いとみている。
「その主張がどれだけ効果を持つかは、まだ評価が定まっていないと」とベドー氏は指摘。「欧州の当局者は、たとえトランプ氏と意見が対立していても、中国の経済政策に対して深刻な懸念を抱いていることを非公式な場で率直に語ることが多い」と述べた。
穏健派として知られるスペインのサンチェス首相は、来週中国とベトナムを訪問する予定だ。
また、中国政府は新興市場国との関係構築でも慎重な対応が求められる。一部の国では中国製品の大量流入によって、縫製などの産業で自国の雇用が奪われているとの懸念が根強いためだ。しかし、世界が米国との貿易戦争への対応に追われる中、中国に新たな関税を課す動機は低下している。
北京にある政策調査グループ、全球化智庫(CCG)を創設した王輝耀氏は、トランプ氏の関税政策は最終的に、米国が犠牲になる形で他の貿易相手国を結束させることになると指摘する。
「トランプ氏の動きは、世界の人口または経済の8割が相互貿易を増やす流れを生み出し、米国を孤立させることになる」と王氏。「長期的には、各国間の協力関係を加速させる結果を招く」と語った。
イーロン・マスク氏は、トランプ米大統領の臨時顧問としての130日間の任期が終了すれば、「政府効率化省(DOGE)」を率いる役割から退く見通しだ。しかし、退任後も連邦政府のコスト削減には引き続き大きな影響力を持ち、トランプ氏の側近としての立場も維持するとみられる。事情に詳しい複数の関係者が語った。
マスク氏は現在、年間最大130日の勤務が可能な特別政府職員という立場にある。この日数をトランプ大統領の就任日から数えると、任期は5月30日に終了することになる。ただ正式な退任日はまだ設定されておらず、マスク氏が130日間勤務したかどうかを判断する責任はホワイトハウス法律顧問室が担っているという。非公開の協議内容であることを理由に関係者は匿名で述べた。
一方で複数の関係者によれば、連邦政府機関での大規模人員削減などを急速かつ波乱含みで進めてきたDOGEは今後も存続する見通し。DOGEの職員は、さらなるコスト削減と人員削減を求めて引き続き各機関にとどまるという。
マスク氏はここ数日、政治的にもビジネス面でも逆風にさらされた。ウィスコンシン州最高裁判所の判事選挙では、マスク氏が支援していた保守派は民主党系の候補に敗れた。また同氏が最高経営責任者(CEO)を務めるテスラは、1-3月(第1四半期)の販売台数が前年同期比で13%減少し、ほぼ3年ぶりの低水準となった。そこにはマスク氏の政治活動も影響しているとみられる。
トランプ氏の顧問の1人によれば、トランプ氏はマスク氏がどのような肩書きを持っているかには関心がなく、今後もマスク氏はホワイトハウスに頻繁に姿を見せる可能性が高いという。
ホワイトハウスにコメント求めたが、返答は得られていない。
トランプ大統領自身も、マスク氏による政府コスト削減活動の終わりについては公の場で言及している。トランプ氏は先週、「今後1-2カ月でDOGEによる削減には満足できるだろう」と発言。また「DOGEの改革は必ずしも人気のあることではない」とも語り、この取り組みが政治的リスクを伴うものであることを認めた。
関係者によると、トランプ政権の上級補佐官や閣僚、共和党議員らは、手続きや慣例を無視するマスク氏の強引なやり方に嫌気が差している。事前承認を得ずに改革が進められていることも少なくないため不満が高まっているという。
それでも、マスク氏は2つの重要な役割を担っていると関係者は口をそろえる。1つは、トランプ氏の物議を醸す行動から世間の目をそらす「代理キャラクター」のような存在であること。もう1つは、トランプ陣営が資金面でマスク氏に大きく依存しているという点だ。
トランプ氏の側近たちは2026年の中間選挙に向けてマスク氏を引き続き大口献金者として確保しておきたいと考えているため、同氏を批判することには慎重になっているという。
マスク氏は先週のFOXニュースのインタビューで、自身の任期が130日間に限られていることを認めた上で、その期間で1兆ドル規模の削減を実現できると信じていると語った。ただ、2024年度の国防を除く裁量的プログラム支出は1兆8000億ドルであり、マスク氏の意欲的な削減目標はこの半分強に相当する。
トランプ米大統領は3日、関税導入の決定を受けて金融市場が大荒れとなったことは「想定されていた」と述べた。一連の関税措置は、「病んでいる」経済の回復に向けた必要な措置という認識も示した。
トランプ米大統領は2日、貿易相手国に対し相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。
3日の取引で米国株式市場は急落し、ダウ工業株30種は1679ドル値下がりした。 外為市場ではドルが円とユーロに対し6カ月ぶりの安値を付けたほか、米債利回りは大幅に低下した。
トランプ大統領はさらに、他国が「素晴らしい」提案をすれば、関税を巡る交渉に応じる用意があると述べた。
米国は自ら構築した世界貿易秩序を破壊し、不確実な新時代を開こうとしている。
ドナルド・トランプ米大統領の2日の発表は、世界の経済関係を作り変えようとするいちかばちかの賭けだ。米経済は他の先進国がうらやむほどうまく新型コロナウイルス禍を切り抜けたが、トランプ氏の目には米国が数十年間にわたり、世界から搾取されてきたと映る。
同氏の関税を巡る動きはスタグフレーションの可能性を高めるものだ。物価が上昇すると同時に、米国をはじめ多くの国がリセッション(景気後退)に陥るリスクにさらされる。
トランプ氏は主要貿易相手国に対する関税引き上げを発表し、市場に衝撃を与えた。全輸入品に一律10%の関税をかけた上で、国ごとに相互関税を課し、関税率は欧州連合(EU)が20%、中国が34%となる。JPモルガン・チェースによると、全体の加重平均関税率は昨年の2.5%、発表前の10%から23%に上昇し、ここ100年余りで最も高い水準となる。
トランプ氏の政策転換がこのまま実施されれば、その影響は1971年にリチャード・ニクソン大統領が決めた金1オンス=35ドルの固定相場制の廃止に匹敵する可能性がある、とエコノミストは指摘する。
モルガン・スタンレーの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲイペン氏は「米国の税制・貿易構造を根本的に再構築しようとする試みとしては、1970年代初頭にニクソン氏が金本位制を廃止して以降でおそらく最大規模だ」と述べた。
ゲイペン氏によると、モルガン・スタンレーは関税リスクに関する市場の見通しが甘いと顧客に助言していたが、2日の発表は「われわれの予想をも上回る規模だった」。
トランプ氏の貿易計画は気まぐれで無秩序だ。これまでに中国製品に20%、自動車に25%、カナダ・メキシコからの輸入品については既存の貿易協定の対象外である製品に25%の関税を課し、企業投資と消費者信頼感を押し下げた。
グローバルデータTSロンバードの米国担当エコノミスト、スティーブン・ブリッツ氏は「発表された関税の大幅引き上げは主に企業に対するものだが、大半の法人税がそうであるように、価格に転嫁されて消費者が負担することになるだろう。増税すると経済は成長しない」と述べた。
今回の関税が徹底しているのは、通常は非課税となる国内生産量の少ないコーヒーや紅茶、バナナなど、全体の3分の2に相当する輸入品目も対象となる点だ。ダートマス大学の貿易経済学者兼歴史学者ダグラス・アーウィン氏はそう指摘する。
今回は、トランプ氏の2019年の対中貿易戦争より対象品目がはるかに幅広い。米スポーツ用品大手ナイキは靴の半分をベトナムで生産している。ベトナムは46%の関税を課される。中国、台湾、韓国のあまねく家庭用電子機器メーカーは、少なくとも25%の関税に直面する。石油、ガス、石油製品は適用を除外される。
関税引き上げでインフレ調整後の個人所得が大きな打撃を受け、米経済が今年リセッション入りするリスクが高まる。KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏はそう指摘する。事前の予想に比べ、発表された内容は「最悪のシナリオ」だったという。
また、貿易相手国の対応を見通せないため、不確実性は当分高いままかもしれない。スウォンク氏は「企業をここ(米国)に移転させるのが目的なら、これでは達成できない。工場が完成する3~5年後も関税が続いているかどうか分からないからだ」と述べた。
2024年の米経常赤字が1兆1000億ドル(約160兆円)に達したことで、トランプ氏と側近らは、世界貿易を再編する必要があるとの確信を強めた。
関税は新たな収入をもたらす可能性がある一方、金融市場が大きなコストを負うことになりかねない。米国の資産価格がこの2年間に上昇したのは、米経済が他国より優位にあると投資家が見込んでいたためで、テクノロジーの進歩やソフトランディング(軟着陸)への期待が背景にある。
トランプ氏が引き継いだ経済は、成長が安定しインフレ率が低下しつつある一方、住宅セクターの冷え込みや労働市場の軟化、割高な株価といったぜい弱性を抱えていた。
同氏はかねて貿易赤字を経済の弱さの印とみなしていた。トランプ政権は赤字縮小を目指しているものの、各国は米国債の購入を減らすかもしれず、米国の株式・不動産・社債市場に投資する余力も減るかもしれない。
ブリッツ氏は「真の痛みは、資本フローに関する他国との合意が崩れることだ」と指摘する。「貿易を壊しても資本フローは壊れないというのは幻想だ」
UBSのエコノミストの試算によると、関税が長期化すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視するインフレ指標は2月の2.5%から上昇し、年末には4.4%に達する可能性がある。その後は低下し、2027年末までに3%になるとみている。
このシナリオでは、米経済成長は今年停滞し、来年1-3月期と4-6月期にマイナスとなり、リセッション入りしたとみなされる。失業率は2月の4.1%から上昇し、来年には5.5%程度に達するとされる。
成長鈍化・停滞と物価上昇が同時進行すると、FRBは難しい立場に立たされる。米経済は高インフレを脱したばかりであるだけになおさらだ。当局者は、インフレと失業率上昇のどちらのリスクをより警戒すべきか、つまり金融を引き締めるべきか緩和すべきかの判断を迫られることになる。
問題となるのは、中央銀行は負の供給ショックにどう対処すべきかだ。石油価格の急騰はその一例だ。負の供給ショックが起きると、経済がモノやサービスを生産する能力が制限される。一部の生産者で価格が急騰しても、インフレ調整後の所得の目減りによって相殺され、全体的な経済成長は圧迫される。
一般的な金融政策理論に従うなら、こうしたショックによる価格上昇が局所的で一時的であると予想される場合、政策当局はショックを「やり過ごす」のが望ましい。つまり、ショック以前に計画していた金利政策を変えるべきではない。
だが現実は紙の上ほど単純ではない。関税による価格上昇をきっかけに世界的生産体制の再編が始まれば、数年単位の流れとなり、当局が価格上昇を一時的と断定するのは難しいかもしれない。
結果的にFRBは様子見を決め込み、経済活動鈍化と失業率上昇が確認されるまで、需要への打撃を緩和するための利下げには踏み切らないかもしれない。
UBSのエコノミストは、FRBがまずインフレ対策の予防的利下げを段階的に開始するとみている。失業率上昇と成長鈍化が起きたら追加利下げし、来年末には短期金利が現在の水準を2ポイント余り下回っていると予想する。
●先進国中銀、金融当局
トランプ米大統領が2日(日本時間3日)発表した相互関税などを踏まえた日本銀行の金融政策運営について、想定よりも厳しい内容で日本経済に深刻な影響が及ぶ可能性があるとし、追加利上げの時期は先送りされるとの見方がエコノミストの間で広がっている。
農林中央金庫総合研究所の南武志主席研究員は、国内総生産(GDP)を0.5%程度かそれ以上押し下げる可能性があり、「日本経済に深刻な影響を及ぼし得る」と指摘。日銀が30日と5月1日に開く次回の金融政策決定会合までに関税の影響を見極めるのは困難とし、「5月利上げの可能性は低下した」と語った。
長い目でみた日本経済の成長力を映し出す潜在成長率は、日銀が3日に発表した昨年10-12月期の推計では0.66%。昨年の実質GDP成長率は0.1%とかろうじてプラス成長を4年連続で維持したが、米関税措置を受けた輸出減や企業行動の慎重化によって、日本の実体経済の下振れ懸念が強まる恐れがある。
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストも、今後の日米交渉次第としながらも、日本経済への下押しは大きくなる公算が大きいとし、「5月の利上げは正直難しいだろう」と語った。メインシナリオは7月の利上げを維持しつつも、場合によっては秋まで遅れる可能性もあるとの見方を示した。
植田和男総裁は政策を維持した3月会合後の記者会見で、賃金・物価は想定通りとする一方、海外発の不確実性に懸念を表明した。2日には、米関税政策の範囲や規模次第では各国の貿易活動に大きな影響が及ぶ可能性を国会答弁で指摘。想定より厳しい措置を受けて政策正常化に向けてより難しい判断を迫られそうだ。
今回の相互関税では、米国への全輸出国に基本税率10%が課される。対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域には上乗せ税率が適用され、日本は24%、中国は34%、欧州連合(EU)は20%など。米政府が先に発動を決めた輸入自動車への25%追加関税は3日から適用が始まるが、相互関税から除外される。
モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅日本チーフエコノミストらは3日付リポートで、事前の想定よりも厳しい内容とし、適用除外の交渉にも時間がかかる可能性を指摘。米国を含む世界経済の減速を背景に、日本の成長がさらに減速するリスクが高まったとし、日銀が利上げ路線をしばらく停止するリスクが出てきたとみる。
9月までの利上げ確率低下
ブルームバーグのデータによると、米相互関税の発表後、金利スワップ市場で5月会合での利上げの予想確率は2日時点の14%から1ケタ台に低下。92%だった9月までの予想確率も70%台となった。ブルームバーグの3月会合前の調査では、次の利上げの予想は7月が48%と最多で、6月が15%、5月と9月が13%だった。
3日の東京株式市場では、日銀の利上げ観測の後退から、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3メガバンクを含む銀行株が大幅に下落。TOPIX銀行業指数は一時前日比8.5%安まで下げた。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは3日付リポートで、想定以上の相互関税の内容を受け、日銀が影響を見極める時間は長期化するだろうと指摘。ただ、非関税障壁として日銀の低金利政策(円安誘導)が強く考慮されているとすれば、日銀が利上げをすべきであるという話につながっていく可能性があるとの見方も示した。
今後のポイントは、日銀が経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示している2%物価目標の実現シナリオへの影響だ。日銀は経済・物価が想定に沿って推移すれば利上げで緩和度合いを調整していく方針だが、見通しが大きく下振れれば正常化路線が修正を迫られる可能性がある。5月会合で議論する展望リポートでは、新たに示される2027年度を含めて、米関税政策の影響がどう反映されるのかが焦点となる。
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
トランプ米政権が発表した日本への相互関税が24%となった。日本が米国に対し46%の関税をかけていると主張する根拠は不明瞭で、欧州連合(EU)を超える税率となったことに政府関係者からは困惑の声が上がる。日本政府は米経済へのこれまでの貢献をアピールし、譲歩を引き出す考えを崩していないが、解決の糸口は見えていない。
<想定上回る税率>
「EUを上回る税率となったことに驚いた」。ある経済官庁幹部は相互関税の発表を受け、戸惑いを隠さない。
日本政府は、トランプ政権が発足した直後から閣僚級の協議を重ね、関税措置の対象に日本を含めないよう申し入れてきた。ところが、1)鉄鋼・アルミ関税、2)相互関税、3)自動車関税のいずれも対象となり、相互関税に至っては公表された税率が「想定を上回るものだった」という。
米側は、日本が米国に対し46%の関税を課していると主張しているが、税率の算出根拠もあいまいで「どう計算すればそうなるのか」と別の政府関係者は首をかしげる。
相互関税の公表に先立ち、武藤容治経済産業相は3月10日に訪米。ラトニック商務長官、グリア通商代表、ハセット国家経済会議委員長とそれぞれ会談した際は「おおむね好感触との受け止めだった」(経産省幹部)とされる。
ただ、思惑通りに進まない現状に「日本側の意向がうまく伝わっていない。経産(省)、外務(省)が中心となって打開を図ってきたが、立て続けに押し込まれている」(別の経済官庁幹部)との声もくすぶる。
<対話姿勢崩さず>
とはいえ、報復関税の応酬は「双方の利益にならない」(複数の経産省幹部)との声が、政府内ではなお根強い。
国際ルール上は、重大な損害を救済する緊急関税制度(セーフガード)に基づき対抗する選択肢もある。ただ、今のところ日本政府は世界貿易機関(WTO)への申告を行っていない。
措置が先行した鉄鋼・アルミでは5月中旬までに申告期限を迎えるが、当面の間は「粘り強く対話を続けるしかない」(経産省幹部)との声が残る。
相互関税の公表に先立ち、対応策を協議した自民党の「日米関係の深化に関する総合戦略本部」では、出席者から「今回の措置が中期的にみて米国の利益にならないことを伝えていくべき」との声が上がった。
政府内では「急いで新たな交渉カードを切れば朝貢外交となる」(前出の経済官庁幹部)と警戒する声もある。数カ月もすれば米経済が痛み「関税措置が撤回されることもあり得る」と別の関係者は言う。
<国内対応も課題>
自動車関連への追加措置では、自動車部品への関税も段階的に課されることが想定され、与党からは「日本経済の大きな危機になる」(小野寺五典政調会長)との声が聞かれる。
経産省がまとめた資料によると、米国での自動車販売台数1600万台(2023年)のうち、日系企業は560万台に上る。
輸出台数は日本に加え、メキシコやカナダからの輸出も含めると300万台に迫り、関税分を値上げで吸収した場合は「米国市場の縮小、日本からの輸出台数減による国内経済への影響」があるとしている。
自民党の森山裕、公明党の西田実仁両幹事長は1日、政府に対し外交と内政両面で対策を求めることで一致した。基幹産業の不振は景気の腰折れに直結しかねず、外交と並行して政府がどう対策を講じるかも今後、課題となる。
米国のトランプ政権が貿易相手国の関税や非関税障壁を踏まえ関税を課す「相互関税」の詳細を発表した。米国を最大の輸出相手とする日本の企業からは米国内での物価上昇や今後の事業運営のあり方などについて懸念が広がっている。
サントリーホールディングス(HD)の鳥井信宏社長は3日のインタビューで、鳥井氏は選択肢として米国以外への輸出を増やす可能性を示唆した。「響」や「山崎」など国際的に高い評価を受けているサントリー製品を含め、関税が日本産ウイスキーの米国でのさらなる値上げの引き金になりかねないためだ。
創業家出身の6代目社長として3月に就任した鳥井氏は、アジアなどでも需要はあるとして「売り先を変えるという手はある」と述べた。国内でも供給不足の声が挙がっているといい、日本を含めて米国以外の市場への配分を増やす可能性を示した。
一方で商機もある。仮に報復関税の応酬となればサントリーが現地生産するバーボンなどの競争力が高まり、米国市場をより強化できる可能性があるとした。欧州から輸入されるシャンパンやメキシコから入るテキーラの価格競争力がなくなれば、米国で製造する商品にとっては追い風となるという。 
トランプ米大統領は2日(日本時間3日)、関税の詳細を発表し、日本に対しては24%の税率を設定するとした。米国は日本にとって最大の輸出相手国。これとは別に25%の自動車関税の追加関税もあり、日本経済や産業界に大きな影響を与える恐れが出ている。
日本郵船の広報担当者は取材に対し、関税により米国内の物価上昇と消費低迷を招き、荷動きが減速する懸念があると回答した。関税引き上げにより、他国が原材料や穀物などを米国ではなく他の国からの輸入に切り替えるような動きも考えらえれ、荷動きの変化を見極め、迅速かつ柔軟に対応していきたい、と続けた。
三菱商事の広報担当者は範囲が広く、影響については今後の政府間の交渉進捗(しんちょく)も踏まえて慎重に精査するとした。その上で自動車関連事業の一部に短期的な影響が出てくる可能性があるが、米国への輸出ビジネスは大きくなく全体への影響は限定的だとの見方を示した。
伊藤忠商事は自動車関連事業に一定のマイナス影響が見込まれる一方、米国内での取引が堅調に推移することも予想され、全体としては影響を最小限に抑えられると考えているとした。
三菱重工業は一部の部品は日本から供給しており、具体的な関税の内容によっては影響があるかもしれないとし、今後状況を注視しつつ対応するとした。
トヨタ自動車の広報担当者は、同社はこれまでも米国企業の一員として、顧客ニーズに応えられるよう取り組んできたと強調。関税の影響については引き続き状況を注視するとして、それ以上のコメントを控えた。
同社を巡ってはトランプ氏が2日、主要な自動車産業を有する日本と韓国を批判する中で、100万台の外国産自動車を米国で販売をしているなどとして名指ししていた。
マツダの広報担当者は米国の関税措置は日本の産業全体や同社の事業活動に、大きな影響を及ぼすと受け止めているとコメント。影響を最小限にすべくあらゆる対応策を検討しており、価格変更は、拙速に判断するのではなく、市場の動向や競合環境を慎重に分析した上で判断したいとした。
日系自動車メーカーへの影響度合いは米国の現地生産体制の比率や米国事業への依存度によって変わってくるとみられている。ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは利益規模に対する影響度合いは日産自動車、マツダ、SUBARU(スバル)で大きいとみる。日産は米国販売における米国産車の割合は低くないが、利益の絶対額が小さいとし、マツダは利益額の低さに加えて、米国産車の割合が低いと吉田氏は指摘する。
トランプ米大統領が2日発表した貿易相手国・地域に課す相互関税の税率は、主に既存の貿易収支に基づいて算出されていた。他国の関税率や貿易障壁を加味するとの当初の方針とは異なっている。
2日夜に公表された相互関税の算出方法に関する説明の中で、米通商代表部(USTR)は2024年の米国勢調査局のデータに基づき、当該国の対米貿易黒字をその国の総輸出額で割る計算式を提示。そして、その数字を2で割って相互関税の税率を出した。
例えば、中国の昨年の対米貿易黒字は2950億ドル(約43兆3400億円)で、輸出額は4380億ドルだった。トランプ政権の計算式に従い、中国の対米貿易黒字を輸出額で割ると68%程度。これを2で割ると、関税率は34%になる。この計算でいくと、日本や韓国など他国の関税率もほぼ同じ結果となった。
米国が貿易黒字を計上している国にも一律10%の税率が適用される。
USTRの声明によると、実際の障壁に対する税率を計算することは技術的には可能だが、今回の方法は貿易赤字を是正するというトランプ大統領の目標を達成するものになっているという。
「各国の何万もの関税や規制、税制、その他の政策の貿易赤字への影響を個別に計算することは、不可能ではないにせよ複雑だ。一方、二国間の貿易赤字をゼロにするのに整合的な関税水準を算出することで、それらの複合的な影響を代用することができる」と、署名のない声明で指摘した。
トランプ大統領は2日、ホワイトハウスのローズガーデンで「米国に課されている関税」に基づく一連の関税率と、その半分に相当する「割引相互関税」が記載されたボードを持ちながら、相互関税について説明した。
同関税の算出方法は、トランプ大統領の発表時までほとんど知られていなかった。さらに混乱を招いたのは、トランプ氏が発表した関税率が、大統領令に添付された付属文書に記載されたものと若干異なっていたことだ。例えば、韓国の場合はトランプ大統領のボードでは25%、付属文書では26%と記載されていた。
トランプ政権は相互関税の税率について、関税と非関税障壁の両方を考慮した計算になるとしていた。そして、トランプ氏のボードには、「為替操作と貿易障壁を含む米国に課される関税」と題されたカテゴリーの下に税率が表示されていた。
実際に使用された計算式は、ホワイトハウスが当初示唆していた計算方法とは異なる。
トランプ政権の計算式には、輸入需要の価格弾力性と関税に関する輸入価格の弾力性という2つのパラメーターが含まれ、これらは事実上相殺される数値に設定された。
市場の注目は、ドナルド・トランプ米大統領の政権が水曜日に発表した米国輸入品に対する広範な関税の根拠となる数字をいかに導き出したかに向けられている。この関税により世界の金融市場は暴落し、世界中で懸念が巻き起こった。
トランプ大統領とホワイトハウスはソーシャルメディアで、他国が米国に課していると主張する関税率の詳細を示す一連のグラフを共有した。これらの関税率には、各国の「通貨操作と貿易障壁」が含まれているとされている。
隣の列には、各国および欧州連合に対する米国の新たな関税率が表示されます。
これらの税率は、ほとんどの場合、各国が米国に「課した」とトランプ政権が主張する額のおよそ半分である。CNBCは、これらの関税に関する米国政府のデータを独自に検証できなかった。
市場観測者がその計算式を逆算してみるのに時間はかからなかったが、 結果は混乱を招いた。 ジャーナリストで作家のジェームズ・スロウィッキ氏を含む多くの人々は、米国は貿易赤字を特定の国からの輸入で割って各国の関税率を算出したようだと述べた。
こうした方法論は、関税を計算する従来の手法とは必ずしも一致せず、米国が物品の貿易赤字のみを考慮し、サービスの貿易を無視していたことを意味する。
例えば、米国は中国が67%の関税を課していると主張している。公式データによると、2024年に米国は中国に対して2,954億ドルの赤字を計上し、輸入品は4,389億ドル相当だった。2,954億ドルを4,389億ドルで割ると、結果は67%だ!ベトナムについても同じ計算が成り立つ。
「この方式は、関税レベルや非関税レベルの歪みという意味での相互関税ではなく、米国との貿易不均衡に関するものです。ベンチマークは米国への輸出よりも多くの米国製品を購入することであるため、アジア、特に貧しいアジア諸国にとって、短期的に関税を引き下げたいという米国の要求を満たすことは非常に困難です」と、ナティクシスの新興アジア担当シニアエコノミスト、トリン・グエン氏は述べている。
「米国製品ははるかに高価であり、最高レベルの関税の対象となっている国の購買力は低いことを考えると、このような選択肢は最適ではない。例えば、ベトナムは米国との貿易黒字が4番目に大きいことで際立っており、関税発表に先立ち、猶予なく米国に対する関税をすでに引き下げている」とグエン氏は述べた。
米国はまた、貿易黒字が出ている地域に対して10%の課税を課したようだ。
米通商代表部はウェブサイトでそのアプローチを示したが、それはいくつかの違いを除けば、サイバー探偵たちがすでに解明していたものと多少似ているように見えた。
「各国の関税、規制、税金、その他の政策の数万件の貿易赤字への影響を個別に計算することは、不可能ではないにしても複雑であるが、それらの複合的な影響は、二国間貿易赤字をゼロにすることと一致する関税レベルを計算することによって近似することができる。関税および非関税政策とファンダメンタルズが原因で貿易赤字が持続する場合、これらの政策とファンダメンタルズを相殺するのと一致する関税率は相互的かつ公平である」とウェブサイトには書かれている。
USTRはまた、輸入価格に対する輸入の弾力性、つまり外国製品の需要が価格にどの程度敏感であるか、および関税の上昇が輸入品の価格上昇に転嫁されるかどうかについての推定値も含めた。
USTR ウェブページのこのスクリーンショットには、使用された方法論と計算式がより詳細に示されています。
一部のアナリストは、米国政府の手法により合意に達する余地が広がる可能性があると認めた。
野村のグローバル・マクロ調査責任者、ロブ・サブバラマン氏は「関税の数字をめぐる不透明性は、取引を行う上である程度の柔軟性をもたらすかもしれないが、米国の信頼性を犠牲にする可能性があるとしか言えない」と述べた。
ドナルド・トランプ米大統領の衝撃的な追加関税発表を受けて木曜日に欧州株式市場が急落する中、スポーツウェアから宝飾品まで幅広い商品を販売する大手小売店の株価は最も低迷した。
欧州企業が米国の消費者に販売する多くの商品は、東南アジアで製造されているか、東南アジアの工場を経由している。東南アジアは、トランプ大統領の最高関税の一部によって予想外の打撃を受けた、発展途上国で輸出依存型の経済圏を含む地域である。
カンボジアでは、同国の輸出の約70%を生産する衣料品や履物工場で100万人近くの人々が働いており、49%という最も高い関税率を課せられた。
一方、ラオスからの米国輸入品に対する関税は48%、ベトナムは46%、タイは36%、インドネシアは32%に設定された。トランプ政権の関税算出方法は、サービス貿易と最高関税の対象となる国の低い購買力の両方を無視しているとして、厳しく批判されている。
シティのアナリストらは、スリランカとバングラデシュも、関税が「予想よりもはるかにひどい」と指摘した工場拠点の一つだ。
このニュースを受けて欧州の小売株は急落した。
宝飾品メーカーのパンドラの株価は木曜日に11%急落した。同社の製造・精製拠点は東南アジアのほか、中国、日本、インド、南米、北米、ヨーロッパに広がっている。
ドイツのスポーツウェアメーカー、プーマ
アディダス​
一方、それぞれ11%と9.7%減少した。英国のJDスポーツ
靴メーカーのドクターマーチンは5.5%下落した。
5.9%下落し、英国の高級ブランドバーバリーは6.2%下落した。
「トランプ関税が企業の利益とキャッシュフローに与える影響は、関税がどのくらいの期間続くか、そして問題となっている企業と業界に大きく左右される」とAJベルの投資ディレクター、ラス・モールド氏はCNBCに電子メールで語った。
「最大の課題を抱える企業は、総売上の大部分が米国向けで、サプライチェーンの大部分がアジアに拠点を置いている企業かもしれません。衣料品小売業者は、この点を非常に注意深く見守るでしょう。サプライチェーンを再編成できるかもしれませんが、時間がかかるでしょう。」
米国と同様に、小売業者が極めてグローバルなサプライチェーンを持つ場合が多いため、企業利益は圧迫され、消費者はより高い価格を支払うことになると予想されます。
「アジアはスポーツウェアの主な調達拠点だが、事業コストは急騰している。市場や小売パートナーの在庫が消費者への影響を若干遅らせるだろうが、それは数カ月だけだ」とキルター・シェビオットの消費者裁量アナリスト、マムタ・ヴァレチャ氏は語った。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのグローバルエコノミスト、ケイリン・バーチ氏は木曜日、専門小売ブランドが将来計画を立てるのはより複雑になるだろうとCNBCに語った。
「今回の関税は予想よりも高かった。その内容については不確実性が大きい」と彼女は述べ、トランプ大統領が将来的に関税を引き上げることも引き下げることもできると説明した。
「つまり、政権はすでに、これらの数字が最終的にどうなるかについて留保を付けている。しかも、これは市場からの圧力が来る前の話だ。だから、6カ月後や4年後に関税がどうなるか全く分からないのに、企業はどこで商品を生産し、販売し、売り出すか、どうやって確実に考えることができるのか?」
バーチ氏は、パンデミックによるインフレショックの間、消費者は概ね価格上昇に追いつくことができたが、これは価格上昇が政府の景気刺激策、堅調な労働市場、賃金上昇と相まってのことだったと述べた。
「今回は需要面が追いつくとは思えない」と彼女は語った。
●中東情勢
●エマージング
トランプ米大統領が強化している関税政策は、政権1期目に仕掛けた貿易戦争よりも中国経済に大きな打撃を与えそうだ。
シティグループによると、トランプ政権2期目で打ち出された中国からの輸入品に対する計54%の関税は、2025年の中国国内総生産(GDP)成長率を2.4ポイント押し下げる可能性がある。中国側が講じるとみられる景気対策は考慮していない。
BNPパリバやソシエテ・ジェネラル、オーバーシー・チャイニーズ銀行、ING銀行のエコノミストらは、1-2ポイントの成長率下押しを想定。中国政府は先月、今年のGDP成長率目標を5%前後に設定したと発表している。
モルガン・スタンレーの邢自強氏らエコノミストは「米国の関税ショックは、18-19年よりもはるかに大きく、広範囲に及ぶ」とリポートで指摘。
「中国の対米輸出への直接的な関税ショックに加え、米国が他の貿易相手国に対して広範囲にわたる関税引き上げを実施することで世界貿易が減速するため、間接的な影響も顕著になる」と予想した。
大幅な景気減速は中国当局にさらなる景気刺激策の実施を促す可能性が高い。一部のエコノミストは、数兆元規模の追加政府支出や銀行への流動性供給という形の対策になるとみている。
中国政府の高官は、外部からの衝撃を打ち消す行動を起こす用意があると繰り返し示唆。中国政府は3日、米国の関税政策を非難し、報復すると表明。ただ、具体的な措置は示していない。
みずほセキュリティーズアジアの周雪シニアエコノミスト(中国担当)は「必要であれば中国はさらに1兆-2兆元(約20兆-40兆円)の特別国債を発行することは十分あり得る」との見方を示した。
政府はすでに、今年1兆3000億元の超長期特別国債を発行し、そこで得た資金を消費財の購入補助に充てる計画を立てている。
金融政策
中国経済は今年に入り安定しつつあった。その矢先に米国の関税政策による影響が及び得る。ただ、これまでのところ、米国が先に引き上げていた関税による打撃の兆候はほとんど見られていない。
少なくともモルガン・スタンレーやシティ含む7つの国際的な銀行がここ1カ月で中国の25年GDP成長率予測を上方修正したが、その見通しもリスクにさらされている。中国政府が追加の刺激策を打ち出さなければ、今年の成長率目標は達成できない可能性もある。
シティの余向栄氏らエコノミストは3日のリポートで、「関税の影響は25年4-6月期から顕在化し始める可能性がある」と分析。
「追加の刺激策が実施されるかどうかはまだ分からないが、GDP成長率予測4.7%に対して50-100ベーシスポイント(bp、1bp=0。01%)の下振れリスクがあるとみている」とコメントした。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は中国の金融政策について、今月中に市中銀行の預金準備率が0.25ポイント引き下げられ、5月には7日物レポ金利が10bp引き下げられると予想。年内に預金準備率が計100bp低下し、金利は計30bp引き下げられると見込んでいる。
クレディ・アグリコルCIBの治暁佳チーフエコノミスト(中国担当、香港在勤)は「流動性を注入し市場心理を支える必要性があることを踏まえると、4月に預金準備率が引き下げられる可能性が高まっている」との考えを示した。
中国政府は3日、米国に対し最新の関税措置を直ちに撤回するよう求めるとともに、自国の利益を守るために対抗措置を取ることを宣言した。
トランプ米大統領は2日、貿易相手国に対し相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。中国は発動済みの20%に加え、34%を上乗せする。
中国商務省は、米国の動きは長年にわたる多国間貿易交渉での利益バランスを損なうものであり、米国が国際貿易から多大な利益を得てきた事実を無視していると主張。「中国はこれに断固として反対し、自国の権利と利益を守るために対抗措置を講じる」とした。
一方、ケンブリッジ大学で中国開発を専門とするウィリアム・ハースト教授は「トランプ大統領の関税は確かに中国企業の助けにはならず、一部の分野では現実的な痛みをもたらすだろうが、中国経済に決定的な打撃を与えることはない」と指摘。「対米輸出は中国にとって重要性が低下している。関税は、中国が欧州や東南アジア、アフリカなど他の地域との貿易を拡大することにつながるだろう」と述べた。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
### **■ 為替市場**
- **ドルが主要通貨に対して下落**。  
  → **円・スイスフランに対して6カ月ぶりの安値**。  
  → **ユーロも対ドルで1.74%上昇(6カ月ぶり高値)**。  
- **円は対ドルで1.95%高の146.445円**。  
- **市場は米雇用統計(4日発表)とパウエルFRB議長の講演に注目**。
### **■ 債券市場**
- **米10年債利回りは14.6bp低下の4.049%**(一時4.004%まで低下)。  
- **米2年債利回りは18.7bp低下の3.717%**(一時3.69%まで低下)。  
- **安全資産として国債に資金が流入**。  
  → **景気後退懸念が強まり、債券価格が上昇(利回り低下)**。
### **■ 米国株式市場**
- **株式市場は急落**(貿易戦争・景気後退懸念)。  
  - **ダウ:1,679ドル安(20年6月以来最大の下落率)**。  
  - **ナスダック:約6%安(20年3月のコロナ暴落以来の急落)**。  
  - **S&P500:約5%安(時価総額2.4兆ドル喪失)**。  
- **ハイテク株が大幅安**。  
  - **アップル:9.2%安(5年間で最悪のパフォーマンス)**。  
  - **エヌビディア:7.8%安**。  
  - **アマゾン:9%安**。
### **■ 金先物市場**
- **金価格は1.41%下落し、1オンス=3,121.70ドル**。  
  → 前日に**史上最高値を更新**も、**利益確定売りが発生**し反落。
### **■ 原油市場**
- **米原油(WTI)先物は6.64%安の1バレル=66.95ドル**。  
  → **米関税政策の影響+主要産油国の増産決定が売り材料に**。  
### **■ 全体まとめ**
- **米国の「相互関税」発表を受け、リスク回避の動きが加速**。  
- **ドル安・円高・国債利回り低下(債券高)・株価急落**の流れに。  
- **市場は今後のFRBの金融政策や経済指標を注視**。
### ■ロンドン株式市場
- **FTSE100指数**が下落(2024年8月以来の大幅安)。  
  → **米国の相互関税導入**による**貿易戦争懸念**と**景気後退懸念**が影響。
- **ポンド高**が輸出企業にマイナス材料。
- **FTSE250指数**も2.23%安。
- **銀行株(FTSE350銀行株指数)**は7.65%安。  
  → HSBC(8.9%安)、バークレイズ(8.7%安)。
- **個人用品株指数**は10.59%急落、バーバリー10%安。
- **鉱業株指数**は銅価格下落で5.26%安。
### ■欧州株式市場
- **STOXX600指数**が8か月ぶりの大幅安(1月中旬以来の安値)。
- **ドイツDAX**:3.01%安、**イタリアFTSE MIB**:3.60%安、**スペインIBEX**:1.19%安。
- 投資家の不安心理を示す**ユーロSTOXX50ボラティリティ指数**は25.54に上昇。
- **欧州銀行株指数**は4.94%安、資源株や石油・ガス株も4%台の下落。
- 個別銘柄:  
  - **アディダス**:11.7%安、**プーマ**:11.2%安(関税懸念)。
  - **LVMH**(ルイ・ヴィトンなど):5.6%安(EU・スイスへの関税懸念)。
### ■ユーロ圏債券市場
- 国債利回りが低下(安全資産へ資金流入)。
- **ドイツ10年債利回り**:2.636%(9bp低下)。
- **ドイツ2年債利回り**:1.93%(11bp低下)。
- **ECB利下げ観測**が高まったが、後半にはやや後退。
- **米独10年債利回り格差**:141bpに拡大。
- **イタリア・ドイツ間の格差**:112bp、**ドイツ・フランス間**:72bp。
全体として、**米国の保護主義的関税政策**が世界的に株安・債券高・通貨高(ポンド)という**リスク回避の動き**を引き起こした状況です。

備忘録(2025/4/2
●海外企業決算
●海外企業
●日本企業
●先進国政治動向
トランプ米政権は「相互関税」の詳細発表を米東部時間2日に設定したが、新たな関税の規模と範囲について、政権チームの最終調整がぎりぎりまで続いているもようだ。
事情に詳しい関係者によれば、米東部時間2日午後4時(日本時間3日午前5時)の発表を控え、政権チームは1日の会合で、取り得る選択肢の詳細な議論を引き続き行った。それでも確固とした結論に至っていない。トランプ大統領は今週に入り、関税のアプローチは決定済みと述べていた。
貿易相手国・地域の関税率と非関税障壁に応じて10%ないし20%の税率を一律に適用する2段階の関税制度や、相互関税を各国・地域の状況に合わせ個別に調整する案を含む複数の選択肢が検討されているという。
米東部時間2日の発表まで24時間を切る状況で、首都ワシントンとウォール街ではさまざまなうわさが飛び交った。
全ての国・地域からの輸入品に20%のユニバーサル関税を一律に適用するトランプ大統領の当初案に戻ることも協議されている。FOXニュースによれば、トランプ氏自身も一律20%のグローバル関税を検討している。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、米通商代表部(USTR)は一部の国・地域に限定し、一律関税を賦課する三つ目の選択肢を用意しており、20%のユニバーサル関税ほど高くならない公算が大きいと同紙は伝えた。
一連の臆測にもかかわらず、ホワイトハウスは1日、関税プランの詳細について沈黙を守った。
一方、ベッセント財務長官は今後提示される関税率について、最も高い税率を反映する上限になると議員らに語った。CNBCが伝えた。各国・地域はその上限から税率を引き下げるための措置を講じることができると発言したという。
2段階のアプローチでは、実際の関税と簡単に定量化できる非関税障壁の観点から最大の違反国・地域に対し、最も高い関税率が適用される。ホワイトハウスのレビット大統領報道官は3月31日、欧州連合(EU)や日本、インド、カナダの貿易慣行に不満を表明した。
もう一つのアプローチは、貿易相手国・地域の関税や非関税障壁の現状に合わせ、個別に設定した相互関税を適用する。このアプローチは数週間にわたり公に示唆されてきたが、もはや主な焦点でない様子が最近の一部協議からうかがえる。
レビット大統領報道官は1日昼に記者団に対し、トランプ大統領は「米国民と労働者にとって最善の取引になるよう確実を期すため、貿易・関税チームと詰めの作業を行っている」と説明した。
トランプ氏が最終的にどのアプローチを選択するにせよ、対米貿易で不均衡が生じていない国・地域にも広く適用される可能性があり、米国史上最大の新たな輸入税の一つに数えられる見込み。
各国・地域との新たな交渉窓口が今後開かれると予想されるが、多くが発表に先立ちトランプ政権当局者と既に協議を行っており、今後数週間から数カ月で関税率が変わってくることもあり得るだろう。
トランプ米大統領は米国時間2日に発表した「相互関税」の対象に日本も含め、税率を24%にすると明らかにした。米国は日本にとって最大の輸出先。財務省の貿易統計によると、2024年の対米輸出は
21兆2947億円で全体の約2割を占めた。
具体的な対象品目は現時点で明らかになっていない。トランプ大統領はホワイトハウスの演説で、日本が平均で46%の関税を課していると理由を説明。コメにも言及し、日本が米国産の輸入に700%の関税を課しているとした。
相互関税の発表を受け、日経平均先物は大阪取引所の夜間取引で急落し、心理的節目の3万5000円を下回って3万4830円に下落した。為替はドルが148円後半に水準を切り下げたほか、時間外取引の米株先物も下落した。
トランプ大統領は親密な関係を築いた安倍晋三元首相とのやり取りを振り返り、「日米間の貿易が不均衡だ、何とかしなければならないと伝えた。彼は分かっていると答え、われわれは取引をまとめた。もっと良い取引になっていただろう」と語った。「素晴らしい人物だった。残念ながら暗殺によってわれわれから奪われてしまった」と述べた。
相互関税は、非関税障壁を含めて相手国と同じ水準まで米国への輸入税率を引き上げる措置。トランプ大統領は税率の最低ラインを10%とし、国・地域ごとに適用する税率に差をつけた。カンボジアは49%、中国は34%、台湾は32%、韓国は30%、欧州連合(EU)は20%、英国は10%などとした。「完全な相互関税ではなく、親切な相互関税だ」と述べた。
米国は日本にとって最大の対米輸出品目である自動車にも25%の追加関税を課すことも決めており、日本時間3日午後に発効する。エコノミストらは、自動車関税が日本の国内総生産(GDP)を0.2%程度下押しすると試算する
トランプ米大統領は2日、貿易相手国に対する相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に対し一律10%の関税を課した上で、各国の関税および非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。
国・地域別の関税率は日本が24%、中国が34%、欧州連合(EU)が20%、英国が10%などとなっている。
トランプ大統領はホワイトハウスのローズガーデンで行ったイベントで「これはわれわれの独立宣言だ」と述べた。
さらに「われわれはついに米国を第一にする」とし、「貿易赤字はもはや単なる経済問題ではない。国家緊急事態だ」という認識を示した。
トランプ大統領がイベントで示した国・地域別の関税率の表によると、ほぼ大半が、米国に対し課している関税の約半分の水準にとどまる。
トランプ大統領は「これは完全な相互関税ではなく、親切な相互関税だ」と述べた。
輸入車に対する新たな25%の関税は3日発効すると表明した。
ドナルド・トランプ氏の弁護士、ボリス・エプスタイン氏は2023年後半の会合で大胆な主張をした。トランプ氏の大統領任期は必ずしも2期に限定されないというものだった。
同年10月、エプスタイン氏はある関係者と首都ワシントンの中心部で話をした際、トランプ氏は24年の大統領選で勝利してもレームダック(死に体)になるとの考えに反論した。その人物によると、エプスタイン氏は法律を研究し、トランプ氏が28年に再び出馬する方法を見つけられると信じていると語った。
当時その関係者は、エプスタイン氏が本気だったとしても、同氏の発言は笑える話だと考えていた。その関係者はワシントンで人々にエプスタイン氏の発言を伝え、同氏はトランプ氏がまだ24年の共和党予備選に勝つ前から、すでに大統領3期目の計画を立て始めていたと冗談めかして話した。だがそれから1年半が経過し、その関係者は当時の会話を振り返り、不安を覚えている。トランプ氏は最近、任期終了後も政権にとどまり続ける可能性を公然とほのめかしているからだ。
現在トランプ氏の外部顧問を務めているエプスタイン氏は、本記事へのコメントを控えた。ホワイトハウス広報部長のスティーブン・チャン氏は3期目について考えるのは「あまりに時期尚早」と述べた。
トランプ氏は先週末、現在の任期が終了する29年1月の後も在職し続けることについて、「冗談を言っているのではない」と述べた。ワシントンでは、3期目を目指すトランプ氏の本気度を巡って長く続いていた議論が一気に加速した。同氏はNBCニュースとのインタビューで、さらに4年の任期を勝ち取るための「方法」があると主張した。トランプ氏は2期目が終了すれば82歳になる。
16年に初めて大統領選に勝利して以来、トランプ氏は2期を超えて在職し続けることについて、思いを巡らせたり、冗談を言ったり、ほのめかしたりと、さまざまな形で言及してきた。同氏が深刻な話題を持ち出す際のざっくばらんな態度によって、3期目という考えはトランプ流の「ロールシャッハテスト」と化している。トランプ氏を恐れ、嫌っている人々は危険信号を感じ取り、崇拝する人々はたいてい受け流すか一緒に笑い飛ばしている。
トランプ氏の顧問の間では同氏の発言に対する批判者の懸念を一蹴する姿勢も見受けられ、トランプ氏は冗談を言っていると主張したり、メディアやリベラル派を挑発していると論じたりする。一方、トランプ氏に近い関係者の中には、政権高官らのチャットを巡る問題から注目をそらすためだとの見方もある。この問題では、機密性の高い軍事攻撃について高官らが議論するグループテキストチャットに国家安全保障担当補佐官がジャーナリストを加えていたことが明るみに出た。トランプ氏は最近、3期目に関する発言について友人に対し、「メディアを混乱させる」ために行ったと話したという。この人物がウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語った。
ただ、共和党幹部の中にはトランプ氏の言葉を額面通りに受け止めており、同氏は政権にとどまろうとする可能性があると内々に語る人たちもいる。インタビューでこうした幹部らは、法律事務所や大学、企業、議員などはトランプ氏の2期目の政策にこれまでほとんど抵抗を示していないと指摘。今後トランプ氏が権力を強め続けるなら、同氏を阻止することはますます困難になる可能性があると語った。
エプスタイン氏が3期目に関して人々と話し合ったという事実は、トランプ氏の最側近の一部もこの考えを検討したことを示している。
トランプ氏は憲法上、3期目の選出は禁じられている。憲法修正第22条は、大統領が2期を超えて選出されることはできないと定めている。
トランプ氏1期目の副大統領マイク・ペンス氏の首席補佐官を務めたマーク・ショート氏は、トランプ氏が3期目を目指すとは思っていないと述べた。ただショート氏は、自身が否定してきたトランプ氏の他のアイデアが実現したことを認め、「私は以前に『彼にはできない』と言ったことがあるが、彼はそれを実行する能力があることを示してきた」と語った。
ショート氏は、共和党支持者の間でトランプ氏の支持率が高止まりしている間は、共和党はトランプ氏に立ち向かうことはないとの見方を示した。「大統領の政策が経済的な影響を及ぼし支持率が低下すれば、もっと多くの共和党員が声を上げるだろうが、それまではそうしたことは起きない」と同氏は述べた。
トランプ氏に近いある人物は、同氏の発言を真剣に受け止めるべきではないと話した。トランプ氏のとっぴなアイデアで行き詰まった類似の例を尋ねると、その人物は即答した。グリーンランドの購入だという。ただ、デンマーク自治領のグリーンランドを取得するというアイデアはトランプ氏の大統領1期目では実現性の低い同氏の気まぐれに過ぎなかったものの、2期目では米外交政策の重要課題となった。
トランプ氏の3期目という話題は大衆文化にまで広がっている。ポッドキャスト「All In」の司会者ジェイソン・カラカニス氏は3月中旬、ゲストに挑発的な仮定の質問を投げかけた。トランプ氏が3期目を目指して立候補し、対抗馬が現在カリフォルニア州知事を務める民主党のギャビン・ニューサム氏の場合、どちらに投票するかというものだった。トランプ氏1期目に首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏は同月、米メディアのニュースネーションに対し3期目に関する計画について、「われわれは取り組んでいるところだ」と語った。
トランプ氏が3月30日に3期目に関する発言をして以来、記者らは同氏に発言を明確にするよう求めている。最初のインタビューが公開されてから数時間後の同日夜、トランプ氏は「今は3期目について話したくない」と述べた。31日には大統領執務室で、「調べたことはない。可能な方法があるとは聞いているが、私はそれについては分からない」と話した。
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は31日、「われわれが実際に考えていることではない」と述べた。
トランプ氏と側近らから発せられる一貫性を欠くメッセージは、オンライン上やワシントンのパーティーの場などで臆測を呼んでいる。一説によると、トランプ氏はJD・バンス副大統領、あるいは別の人物を大統領候補に立て、自身は副大統領候補として出馬する可能性がある。その後、大統領は辞任し、トランプ氏が再び大統領になるというシナリオだ。だが、これは憲法修正第12条に抵触する。同条は「大統領職に就く資格を憲法上有しない者」は、副大統領に就く資格もないと定めている。
アンディ・オグルス下院議員(共和、テネシー州)は、憲法修正第22条を改正する法案を提出した。連続しない2期を務めた大統領は3期目を目指すことが可能になる内容で、この条件に当てはまるトランプ氏にはさらに4年間の任期が与えられることになる。ただ、憲法改正はそう簡単ではない。オグルス氏の案が採択されるには、連邦議会の上下両院で3分の2以上の賛成を得て、米国の4分の3の州の承認を得る必要がある。
トランプ氏は20年の大統領選に向けた準備期間中、3期目についてたびたび言及していた。19年6月のNBCニュースとのインタビューでは「3期目はないだろう」と述べ、3期目の可能性を否定したように思われていた。
翌20年の6月、トランプ氏は息子のドナルド・トランプ・ジュニア氏によるインタビューを受け、その様子はトランプ陣営のユーチューブチャンネルで放映された。ジュニア氏は質問を始めようと、「3期目に出馬しないのであれば」と切り出した。
トランプ氏はジュニア氏を称賛し、「良いインタビューをしている」と答えた。
2024年の選挙活動中にトランプ氏はこの話を時折持ち出し、3期目、さらには4期目の可能性について言及した。
民主党はトランプ氏のそうした発言などを問題視し、民主主義の擁護を2024年の大統領選の主要テーマとしたがうまくいかなかった。
オハイオ州選出の元民主党下院議員、ティム・ライアン氏は民主党について、「2016年以降と同じ対応をすれば、16年以降と同じ結果になるだろう」と語った。その上で、「彼(トランプ氏)は経済を台無しにし、政府のあらゆる権力を掌握している。(人々は)なぜそれ以外のことについて話したいと思うだろうか」と述べた。
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
アクティビスト(物言う株主)が2025年第1・四半期に世界中の企業に要求した提案件数は前年同期比17%増の70件に上り、米国企業向けは46%増の41件に膨らんだことが英銀行バークレイズの最新データで分かった。
エリオット・インベストメント・マネジメントやマントル・リッジ、スターボード・バリューといったアクティビストが、英石油大手BP(BP.L), opens new tabや米配車大手リフト(LYFT.O), opens new tabなどに経営変革を迫った。
バークレイズの株主アドバイザリー部門グローバル責任者ジム・ロスマン氏は「現在アクティビストはあらゆる不確実性を利用している。前年同期よりも企業との対立が増加したが、合意に至るケースやアクティビストによる取締役ポストの獲得数も増えた」と話した。
こうした背景には、昨年に記録的な数のアクティビストが世界の企業を標的にした流れが今年初めに及んでいることがある。また、トランプ米大統領の高関税政策と連邦職員の大規模リストラ、米景気後退への懸念が重なり、市場が不安定な状況になって、アクティビストが企業に働きかける好機となっている。
要求項目の約4分の1が経営戦略および業務改善に関するもので、この割合は昨年とほぼ同じだ。事業部門の売却や企業売却など企業の合併・買収(M&A)要求は依然、優先順位が低い。世界のM&A件数が過去最高を記録した21年の約半分となっている。
しかしロスマン氏によると、アクティビストは成功も実感している。成功の指標となることが多い取締役ポストの獲得数は約34%増の51に急増した。
こうした動きを受け、先行き不透明であっても収益を上げたい新設ファンドや、これまでアクティビスト活動と一線を画してきたファンドが「新規参入者」となっている。
データによると、第1・四半期の新規参入数は11に上った。前年同期との比較データはないが、昨年を通じては計47だった。
バークレイズの担当者は、今年はさらに多くの企業が株主からの要求に直面し、その多くが米国企業に集中すると予測している。
今年第1・四半期はアクティビストの日本での活動も活発化し、前年同期比45%増の16件に急増した。一方で欧州では活動が低調で、18%減の9件にとどまった。
世界で最も活発な金融市場であり、あらゆる国・地域間の交易条件を決定する外国為替市場には、システム全体の危機に発展しかねない欠陥が存在する。
主要プレーヤーらは直観的にそう感じているが、恐らく手遅れになるまで証明できそうにない。
グローバル外為市場の1日当たりの取引額は7兆5000億ドル(約1120兆円)と、他の全ての主要資産クラスを合わせた額より多く、絶えず変動を繰り返す巨大なキャッシュプールのようだ。しかし最近になって、シティグループやドイツ銀行、XTXマーケッツなど主要プレーヤーが、プールの実際の深さを心配し始めた。
取引プラットフォームの乱立と、自動化の普及により市場の厚みに錯覚が生じ、大手金融機関の撤退で実際には流動性が失われたと懸念される。取引拒否の増加や主要プラットフォームの取引量減少、買い手と売り手が提示する価格の差の変動といった兆候が挙げられるが、微妙で捉えにくい。いずれも「流動性の蜃気楼(しんきろう)」と呼ばれる現象を暗示し、市場参加者にとってリスクが知らずに高まることも考えられる。
シティの外為電子取引責任者マーク・メレディス氏は「表面的には流動性がかなり潤沢に見えるかもしれないが、極端な状況下において、ますます脆弱(ぜいじゃく)になっている」と分析する。
ウォール街にとって、こうした蜃気楼は初めての経験ではない。かつて米国債市場を悩ませ、外為市場に出現したこともよく知られている。中央銀行や企業、年金資産の運用主体、ヘッジファンドのリスク管理や資金業務になくてはならない為替市場では、特に不安心理が広がる恐れがある。
トランプ米大統領の関税を巡る発言が揺れ動き、あらゆる資産がそれに翻弄(ほんろう)されている。予測不能なこの政権を考えると、脆弱な外為市場の流動性がより広範な市場危機にいつか発展しないとも限らず、気掛かりだ。
シティのメレディス氏は「為替市場の水面下に潜む危険を垣間見るには、昨年8月5日に起きたドル円の急落を振り返ればよい」と指摘する。
円建てで借り入れ、高いリターンが期待できる日本以外の資産に資金を投じていたグローバル投資家は、7月末の日本銀行の利上げをきっかけに円相場が急上昇するとポジションの解消に一斉に動き、一方向に大きなフローが生じた。8月5日に円相場は一時3.4%上げ、この日までの5営業日は2008年以降で最も激しい騰勢を経験した。
輸出業者を円高が直撃するとの懸念が広がり、日本株は1日としては1987年以来となる急落に見舞われた。キャリートレードから投資家が撤退し、ナスダック総合指数は一時6.4%の大幅安となった。日銀は結局、「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と示唆せざるを得なかった。
円相場の変動幅とそのスピードは、最近数年で外為市場の流動性が改善されたという想定を裏切るものだ。取引プラットフォームの急増は、流動性を促進する電子取引執行の普及と相まって、日々の為替変動を抑え、平均的な取引コストは大きく低下させる一因となった。
しかし、別の観点から見ると、12年の20から90余りに増えたプラットフォーム乱立で取引活動が断片化した。さらに電子外為取引で執行可否の決定前に確認を行う「ラストルック」と呼ばれる慣行により、多くのプラットフォームで同じ流動性が提示可能となり、市場の厚みに対する錯覚を生んだ。
流動性の低下はある意味で、大量の売りが招くあらゆる相場急落の顕著な特徴だ。特定の水準で取引しようとする人が減ると、価格は下落する。昨年8月のキャリートレードの事例は、流動性が関わる通貨危機の様相を示す有用なモデルと言えるが、市場の断片化や電子取引が、円相場の動きにどの程度影響したかは判断できない。
脆弱な流動性そのものが突発的動きの原因というわけではない。ドラマを引き起こす外的要因が必要であり、マクロ的流れが8月の円高の誘因だった。
米国の関税や対抗措置に関するニュースが続く中で、一部の資産運用主体の間では、「ボイストレード」に復帰する動きが最近顕著だ。シティによれば、より直接的な取引手段の流動性はかなり潤沢で、顧客が今年に入り移行しているという。
ソシエテ・ジェネラルの外為グローバル責任者ジョン・エストラーダ氏は、市場が壊れているとは思わないとしながらも、「ボラティリティーが米大統領選以降、高まっている。流動性は以前と比べ確かにやや潤沢さを欠く」と認識を示した。
●中東情勢
米国防総省は1日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する空爆を継続し、イランへの圧力を強める中、中東での米軍の展開を急拡大していると明らかにした。
ドナルド・トランプ大統領はここ数日、イラン政府が核プログラムを縮小する合意を結ばなければ同国を爆撃すると脅していた。だが当局者2人は、現在の米軍の展開の目的について、イエメンでの米国の作戦を強化し、イランを抑止することだと述べた。この展開は差し迫ったイラン攻撃への準備ではないという。
計画に詳しい複数の米当局者によると、この展開拡大にはF-35戦闘機が含まれており、B-2爆撃機や無人機「プレデター」と共に中東地域に配備される。
米国は間もなく二つの空母打撃群を中東地域に配備する。昨秋から中東で活動している「ハリー・S・トルーマン」と、通常はアジアに配備されている「カール・ビンソン」で、後者は2週間以内に到着する見込みだ。
トランプ政権は3月15日にフーシ派に対する空爆を開始し、イエメンの首都サヌアなどで攻撃を続けており、フーシ派の指導者らや軍事資産を標的にしている。
●エマージング
チリのボリッチ大統領は2日、トランプ米大統領を「まるで皇帝気取り」だと皮肉った。かつて学生運動を指揮した左派系のボリッチ大統領は、米政府による関税発表を数時間後に控え、トランプ氏を痛烈に批判した。
インドを公式訪問中のボリッチ大統領は、トランプ氏の就任式に言及し、「新皇帝気取りの人物」がジェフ・ベゾス氏やマーク・ザッカーバーグ氏、イーロン・マスク氏ら富豪に「表敬訪問されていた」と述べた。
ボリッチ氏はさらに、「相互の合意に基づくルールを考えもせず、一方的に」設ける貿易障壁を批判。「国際貿易の原則をないがしろにするものだ」と述べた。
「一部の国々にどのような条件を突きつけるのか、予測できないような発表があるだろう」と同氏は述べた。
トランプ氏は米東部時間午後4時に、ホワイトハウスのローズガーデンで関税計画を明らかにする。関係者によれば、貿易相手国・地域の関税率と非関税障壁に応じて10%ないし20%の税率を一律に適用する2段階の関税制度や、相互関税を各国・地域の状況に合わせ個別に調整する案を含む複数の選択肢が検討されている。これとは別にトランプ政権は、チリ最大の輸出品目である銅に対する関税を数週間内に発動する可能性がある。当初は数カ月後に期限を設定していた。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
**為替市場:**  
ドルは対円・対ユーロで下落。トランプ米大統領が「相互関税」を発表し、日本に24%、EUに20%の関税を課す方針を示した。これにより貿易戦争激化への懸念が高まり、ドルは軟化。終盤の取引でドル円は0.2%下落の149.255円、ユーロドルは0.3%高の1.0828ドルとなった。  
**債券市場:**  
米国債利回りは低下。トランプ氏の関税発表によるインフレ懸念や経済成長鈍化への警戒感が背景。10年債利回りは2.9bp低下の4.127%、30年債利回りは1.8bp低下の4.497%。  
**株式市場:**  
値動きが荒い展開となるも、米株式市場は上昇。テスラは5.3%上昇し、一般消費財セクターが2%上昇。アマゾンはTikTok米事業買収に名乗りを上げ、2%上昇。  
**商品市場:**  
- **金:** 安全資産需要が高まり、0.64%上昇の1オンス=3,166.20ドル。史上最高値を更新。  
- **原油:** ドル安や株価上昇を背景に反発。WTI原油5月物は0.72%高の1バレル=71.71ドルと1カ月半ぶりの高値。
ロンドン株式市場はまちまちの動きとなり、FTSE100は反落、中型株中心のFTSE250は0.30%上昇した。米政権の相互関税発表を控え警戒感が強まり、ポンド高もFTSE100の重荷となった。航空宇宙・防衛株や製薬株が下落する一方、オンラインスーパー大手オカドの上昇が中型株を支えた。  
欧州株式市場も反落し、ヘルスケア株が下落要因となった。フランスの大臣は米国の関税強化に対抗する方針を示し、ECB総裁は世界経済への悪影響を指摘。ドイツDAX指数は0.66%下落した。  

ユーロ圏債券市場では国債利回りが小幅上昇したが、依然として低水準を維持。市場はECBが4月に25bpの利下げを行う可能性を80%と織り込んでいる。 


備忘録(2025/4/1

●海外企業決算
●海外企業
新しい仕事に就いて2週間というのは、確かに十分な時間ではない。だが、リップブー・タン氏には時間の猶予があまりない。
タン氏は3月18日、名声はあるが苦境にあえぐ米半導体大手インテルの最高経営責任者(CEO)に就任し、同社のビジョンを少しずつ示し始めている。27日に年次報告書とともに提出された株主向けの書簡では、人工知能(AI)関連の重要市場でインテル製品の競争力を高めるためには「さらなる努力が必要」と述べた。また、ファウンドリー(受託製造)事業の拡大にも「同様に注力している」とした。
つまり、インテルの前CEOが達成しようとしていたことと同じだ。タン氏は31日に開催されたイベント「インテル・ビジョン」の基調講演でも改めて同じことを話した。AI戦略の強化や特定のコンピューティング作業向けのカスタムチップへの取り組みといったいくつかの抱負を除けば、タン氏の戦略は前任者のものとほとんど区別がつかなかった。人型ロボットに関するインテルの計画については、「乞うご期待」と聴衆に語った。
在任期間が短いということは、タン氏はもっと大きな変化を念頭に置いている可能性があるということでもある。だが、インテルには同じことを繰り返すという選択肢はないだろう。
タン氏の前任者、パット・ゲルシンガー氏は事実上の解任だった。それまでの数年間、インテルの半導体設計を改善し、製造プロセスを台湾積体電路製造(TSMC)と同等レベルに引き上げるという野心的な取り組みを行っていた。
そうした取り組みはうまくいっていない。あるいは、少なくともまだ成果は出ていない。インテルの年間売上高は過去4年間で33%減少した。かつては潤沢な資金を保有していたが、2022年以降は現金の流出が続いている。いまだにファウンドリー事業はインテルが設計したチップの生産が中心で、昨年は134億ドル(約2兆円)の赤字だった。
タン氏が示唆した変化の一つは、インテルのコスト構造にさらに切り込むことだ。同社は昨年、従業員を13%削減したが、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)を構成する他のどの企業よりもはるかに多い従業員を依然として抱えている。
その結果、相対的に効率が低下している。インテルの従業員1人当たりの年間売上高は、昨年は約48万8000ドルで、米マイクロン・テクノロジーや米グローバルファウンドリーズといった他の半導体メーカーを下回る。また、TSMCでは2023年(同社の従業員数が入手可能な直近の年)に従業員が1人当たり90万6000ドルを稼いだのと比べても、はるかに低い水準となっている。
顧客の声にもっと耳を傾けることも、タン氏が示唆した変化になる。これは企業の常とう句のように聞こえるが、インテルにとっては意味がある。数十年にわたる技術的成功と、パソコン用チップの事実上の独占によって傲慢(ごうまん)な企業文化が育まれた。技術学校を出たゲルシンガー氏がインテルに入社する際、面接した採用担当者は「やや傲慢」と評し、「うまく溶け込めるだろう」と記していた。
タン氏はもう少し野心的な目標も示唆している。株主向けの書簡で同氏は、AIに特化したコンピューティング機器の巨大なキャビネットの設計で米半導体大手エヌビディアと競い合うことになると述べた。インテルが出遅れていることを考えると、コストがかかる上、リスクも高いとみられる。エヌビディアは昨年からそうした装置の設計を始めており、現在は生産段階に入っている。
これまでのところ、タン氏の戦略に欠けているのはインテルの事業の根本的な転換だ。ゲルシンガー氏を指導したインテルの伝説的経営者、アンディ・グローブ氏なら現在のAIの波を、決断を下すべき時である「戦略的変曲点」と呼んだだろう。1980年代にインテルが半導体メモリーの製造から撤退した時のようにだ。当時、日本のメーカーが低コストで半導体メモリーを製造していたため、インテルにとっては採算が合わなかった。そこでインテルは、黎明(れいめい)期だったパソコン用プロセッサーの市場に参入した。
アナリストの間では現在、インテルは長年の業界トレンドに従い、製造を半導体の設計やマーケティングから分離すべきとの意見がある。製造部門に外部の投資家を呼び寄せれば、多くの資本を調達することができる。これに関しては、同社はすでに協議を行っている。
投資家はこれまでのところタン氏を歓迎しており、同氏の3月の就任以来、インテルの株価は10%上昇している。だが、ゲルシンガー氏の戦略とは明確に一線を画し、かつ期待が持てる新たな方向性を近いうちに示さなければ、市場の忍耐は尽きるかもしれない。
●日本企業
日本製鉄が買収提案しているUSスチールの将来を左右する重要な人物として、ラトニック米商務長官が浮上してきた。同氏は過去1週間、日鉄やアクティビスト(物言う株主)と会合を重ねてUSスチールへの投資などを競わせている。
事情に詳しい複数の関係者によると、日鉄は141億ドル(約2兆1000億円)でのUSスチール買収が完了した場合、追加で70億ドルの投資を行うと申し出ている。非公開情報であることを理由に関係者は匿名で述べた。
ラトニック氏はまた、USスチールの株式1%を保有し、同社の取締役会を刷新して新たな最高経営責任者(CEO)を指名しようとしているアクティビストのアンコラ・ホールディングス・グループとも会合を持った。アンコラは、日鉄との取引が破談になった場合にUSスチールに60億-70億ドルの投資を行う意向を示しているという。
トランプ大統領はこれまで、USスチールが米国企業として残ることを望むと繰り返し述べている。USスチールを巡る問題でラトニック氏を政権内のキーパーソンに据えたことは、ディールメーカーでありたいというトランプ氏の強い意欲を示唆している。
ホワイトハウスと商務省はコメントの要請に応じなかった。USスチールからのコメントは現時点で得られていない。日鉄とアンコラはコメントを差し控えた。
関係者によると、トランプ氏からUSスチール問題の責任者を任されて以降、ラトニック氏は日鉄の森高弘副会長、USスチールのデービッド・ブリットCEOと会談した。森氏は1日午後に再びラトニック氏と会い、先週に提示した案をさらに引き上げる可能性があるという。
セマフォーは3月27日、日鉄がトランプ政権との協議の一環として、USスチールの製鉄所への最大70億ドルの投資を提示したと報じていた。
協議に詳しい関係者の話では、状況はまだ流動的であり、こうした動きがトランプ氏の考えを変えるかどうかは定かではない。
●先進国政治動向
トランプ米大統領は3月30日、3期目を目指すことは冗談ではないと語ったものの、2期を超えて大統領を務めることを禁じている合衆国憲法をどのように回避するかについては説明しなかった。
以下はトランプ氏が直面する法的な課題。
<憲法上の規定>
合衆国憲法修正第22条は「何人も2回を超えて大統領に選出されてはならない」と定めている。
この修正条項は1951年、ジョージ・ワシントン以来の大統領が自らに課してきた2期という制限をフランクリン・D・ルーズベルト大統領(民主党)が初めて破った後に批准された。
ルーズベルト氏は世界大恐慌と第2次世界大戦の最中に大統領を務め、3期目を終えて、4期目に入った数カ月後の45年に死去した。
キニピアック大のウェイン・アンガー教授(法学)は、憲法は大統領の任期を2期以内で1期4年と定めているとして「最高裁は(大統領任期は)1期4年の2期なのは明らかだ、ドナルド・トランプ氏は3期目に立候補することはできないと言うだろう」と語った。
<トランプ派議員による憲法改正の試み>
野党民主党とトランプ氏が率いる共和党との政治的分断が激しくなっている現在、3期目を務められるようにするための憲法改正の可能性は極めて低い。
憲法改正には議会上下両院で3分の2以上の支持を得て、州議会の3分の2以上が憲法制定会議を招集して提案しさらに50州のうち38州以上の議会が承認する必要がある。
共和党は下院で218議席と民主党の213議席に迫られ、上院で53議席と民主党の47議席をわずかに上回って多数派になっている。共和党は28州の議会で優勢になっている。
南部テネシー州選出の共和党所属の下院議員で、トランプ氏の強力な支持者であるアンディ・オグルス氏は今年1月、合衆国憲法修正第22条を変えて大統領を非連続ならば3期務められるようにする法案を出した。
トランプ氏の2017年からの1期目と、25年からの2期目の任期が連続していないため、法案が可決されれば29年から3期目を務めることが可能になる。
<副大統領として出馬の可能性は>
トランプ氏は米NBCテレビのインタビューで、バンス副大統領が28年の大統領選に出馬し、トランプ氏を副大統領候補とすることが可能性の一つになると語った。
バンス氏が勝利し辞任することでトランプ氏が大統領に復帰する道が開かれるというもの。
しかし合衆国憲法修正第12条には「大統領職に就く資格がない者は副大統領職の資格も有さない」と記されており、トランプ氏は副大統領に立候補することはできない。
米フロリダ州で1日、連邦下院議会選の補欠選挙が行われる。トランプ大統領の政権運営を巡り、共和党の牙城である同州の有権者がどのような反応を示すのか注目されている。
争われるのは、トランプ氏から大統領補佐官(国家安全保障担当)に起用されたマイク・ウォルツ氏と、同様に司法長官に指名されたものの、スキャンダルで指名辞退に追い込まれたマット・ゲーツ氏の2議席だ。ゲーツ氏は指名後に、議員を辞職していた。
ウォルツ氏は昨年11月の選挙で、民主党候補を30ポイント以上の大差で退けた。だが、今回の補欠選で共和党候補のランディ・ファイン氏と民主党候補の教師ジョシュ・ウィール氏は接戦の様相をみせている。先週の世論調査では、ファイン氏のリードが5ポイント未満にとどまった。
フロリダ州のロン・デサンティス知事ら共和党関係者からは「本来なら楽勝のはずの選挙を、接戦にしてしまった」との批判が漏れる。
今回の補欠選は、関税や移民に関するトランプ氏の政策、さらにはイーロン・マスク氏による連邦行政改革に対して、有権者がどのような審判を下すのか、初の試金石となりそうだ。
ファイン氏は選挙戦の初期段階からトランプ氏の支持を受けていた。仮に敗北、あるいは僅差での勝利となれば、トランプ氏にとっては警告サインとなるだろう。
米下院の勢力図は共和党が218議席、民主党が213議席を占めており、その差はわずかだ。今回の補欠選挙で共和党が敗北すれば、辛うじて維持している議席数のリードがさらに縮まる。トランプ氏は下院の多数派維持するために、すでにエリス・ステファニク下院議員の国連大使指名を撤回すると発表した。
ゲーツ氏の議席に関しては、フロリダ州の財務トップ、ジミー・パトロニス共和党候補と、銃暴力反対を唱える活動家ゲイ・バリモント民主党候補が争う。同選挙も、共和党が望むよりはるかに接戦となっている。
「大統領の意向を無視するわけにはいかない」。JD・バンス米副大統領は、グリーンランド北西部にあるピツフィク米宇宙軍基地に駐留する米兵たちにこう語った。副大統領に当てはまることは、本欄のコラムニストにも当てはまる。事が関税であれ、領土拡大、対ロシア関係、米国の同盟関係の将来、中東のパワーバランスであれ、ドナルド・トランプ大統領が本当は何を望んでいるのかを理解することが、この嵐のような、運命を決する年に米国の外交政策がどこに向かっているのかを分析するための鍵だ。
トランプ氏の真意を解明するのは難しい。フランクリン・D・ルーズベルト以来の極めて精力的な動きを示すホワイトハウスを中心に外交・内政の施策が乱発されていることや、トランプ政権の政策の多くが極端に型破りなことが、この政権の分析を著しく困難にしている。分析的というより直感的で、ポスト冷戦時代の主流派のコンセンサスをほぼ否定する知的・道徳的基盤に基づいているトランプ氏の政治手法が、この作業をより複雑なものにしている。
衝撃と怒りを政治的な道具として意識的に利用するトランプ政権のやり方は、冷静で分別のある評価を一層難しくする。挑発して敵が自滅的で極端な反応をするように仕向けるトランプ氏の超人的な才能は、同氏が一躍のし上がった要因として軽視できない。
そこで話はグリーンランドとそれを「手に入れる」ことへのトランプ氏の欲望に戻る。グリーンランドに対するトランプ氏の関心を見くびってはいけない。この地域が手に入れば、トランプ氏は歴史書に名を残すことになる。この問題を巡っては、まさにトランプ氏が好む形で意見が二分化され、同氏を批判する人々の間で嘲笑と怒りの発作が起きているが、国内の世論はおおむねトランプ氏に好都合な方向に動く可能性がある。
超党派の政治エリート層だけでなく、米国の対外政策には同盟関係の維持や国際法の尊重、倫理への正しい配慮が反映されるべきだと考えるほぼすべての人々にとって、トランプ氏のグリーンランド政策は政治的にばかげた話であり、道徳的に極めてひどいものだ。トランプ政権は平和的で民主的な同盟国デンマークから自治領を奪うために軍事力の行使をちらつかせることで、北大西洋条約機構(NATO)と、大西洋を挟んだ米欧の外交コミュニティーが世界平和の礎として長年依拠してきた国際法・規範の枠組み全体を、両方とも台無しにしようとしている。
さらに悪いことに、デンマークは、米国がグリーンランド駐留軍を増やすためのほぼどんな要請にも応じる構えを見せている。トランプ氏に批判的な人々から見れば、NATOおよびルールに基づく秩序の基盤となるものへの米政府の攻撃は不当であり、関係悪化や同盟関係の弱体化というコストは全く払う必要のないものに思われる。
FOXニュースが3月に実施した世論調査によると、トランプ氏のグリーンランド取得計画を支持した回答者は26%にとどまった。しかし米国の歴史は、国民が最終的には支持に回ると信じられる理由を、大統領とその仲間に示している。ラシュモア山に顔が刻まれている4人のうち3人は領土の拡張に動いた(ジョージ・ワシントンはカナダ征服を試み、トーマス・ジェファーソンはフランスからルイジアナの広大な土地を購入し、セオドア・ルーズベルトはパナマの運河地帯の権利を取得した)。エイブラハム・リンカーンでさえ、南北戦争の際に英国に中立を維持させるための暗黙の圧力として、米国がカナダを攻撃する可能性を利用した。デンマーク領西インド諸島に対するデンマークの支配力低下を懸念していたウッドロー・ウィルソンは1917年、現在米領バージン諸島と呼ばれる島々を2500万ドルで購入した。
人口が少ないものの戦略的に重要なグリーンランドは、米国人が歴史的に併合を望んできた類いの場所だ。(北米大陸に初めて到達したヨーロッパ人とされる探検家)レイフ・エリクソンの出身地で、米本土の約4分の1の面積を持つこの土地を取得できれば、ルイジアナ購入を約9000平方マイル(約2万3000平方キロ)上回り、米史上最大の領地取得となる。グリーンランドの人口約5万7000人は、ジェファーソンが取得したルイジアナの推定人口の約半分だ。グリーンランドは長い間、米国の関心の的になってきた。ルーズベルト政権は第2次世界大戦中にグリーンランドが保護領だと宣言して、同地域を支配しようとする英国・カナダと枢軸国の動きをかわした。トルーマン政権は1946年、1億ドルでのグリーンランド購入をデンマークに打診した。
米国の提案に対するグリーンランド住民の反発は、トランプ氏を批判する人々が期待するほどの影響を、米国民の意見に及ぼさないかもしれない。主にアフリカ系カリブ人のバージン諸島民には、人種分離主義者のウッドロー・ウィルソンを積極的に支持する人はほとんどいなかった。米先住民やフレンチ・クレオール(ルイジアナの初期フランス系移民の子孫)は、米国によるルイジアナ買収を歓迎していなかった。メキシコの割譲、帝政ロシアからのアラスカ購入、ハワイの併合にも、影響を受ける人々のすべてとは言えないまでも多くが反対した。
米国のグリーンランド取得に反対する人々の主張には、重みと説得力がある。デンマークは動きが鈍いこともあるが忠実なNATO同盟国であり、同国への侵略をちらつかせることだけでも、その影響が今後数十年続く過激な動きだと言える。ロシアにとってNATOの弱体化がいかに歓迎すべきことであっても、同国が米国のグリーンランド取得を敵対的行為とみなすのは確実だ。それはウラジーミル・プーチン大統領を中国の盟友から引き離したいトランプ氏の望みを損なうことになる。しかし、トランプ支持者と浮動票層の立場から見ると、グリーンランド併合に反対する論拠は決定的なものではない。
トランプ政権を批判する人々が効果を高めるためには、非難を抑え、もっと考える必要がある。
ドナルド・トランプ米大統領は3月31日、今週発表予定の最新の関税に関する計画を決定したと述べたが、その内容は明らかにしなかった。トランプ氏の経済チームは米国の貿易戦略の再構築を巡り意見をまとめるのに苦心していた。
トランプ氏は大統領執務室で「解放の日」の計画を決定したかと尋ねられ、「決めたよ、うん」と答えた。解放の日は、自身に課した関税発表期限の4月2日を指す。
トランプ氏のチームは、事実上全ての輸入品に20%のグローバル関税を課すことを含め、他国に関税を課す方法についていくつかのアイデアを提案してきた。事情を知る複数の関係者によると、31日を通じて一部の側近は、トランプ氏が特定の方針にコミットしていないとの印象を持っていた。関係者によると、協議は流動的な状況が続いており、方針を決定したとのトランプ氏の発言は一部のホワイトハウス顧問の不意を突いた。
非公開での議論では、トランプ氏の優先事項の矛盾が浮き彫りになった。最大の問題は、関税で歳入を増やすと同時に、他国に関税引き下げや他の政策変更を促す材料として関税を利用したいという点だ。だが関税が交渉の対象となり、時間とともに引き下げられる可能性があれば、関税導入によってどれだけの歳入が最終的に見込めるかについて疑問が生じる。また、トランプ氏のチームは同氏の選挙公約を後退させているように見られたくないが、一部の側近は関税が物価に与える影響を懸念している。
全ての目がトランプ氏の決定に注がれる。事実上全ての米国の貿易相手国に対して全輸入品に最大20%の一律関税を適用するのか、それとも交渉の対象となる可能性のある全ての国に個別の関税率を課す、いわゆる相互関税アプローチを採用するのかだ。
トランプ氏は大統領選挙運動中、一律関税を支持していたが、ここ1カ月で公に国別アプローチに方向転換した。4月2日の期限を目前に控えそれぞれの派閥が、「米国第一」の貿易政策にとって自分たちの好む方法がより良いとトランプ氏を説得しようと競い合っている。
トランプ氏と側近らは関税を、製造業の米国回帰に利用するとともに、トランプ氏の看板政策である減税の更新の財源に充てると述べている。一律関税の支持者であるピーター・ナバロ大統領上級顧問(通商・製造業担当)は最近、関税によって年間6000億ドル(約90兆円)の歳入を確保でき、所得税引き下げに充てることができると述べた。
またトランプ氏と側近らは関税を交渉の道具としても利用できると述べている。他国に関税引き下げを迫ったり、移民問題や麻薬不正取引の対策など通商以外の政策変更を求めたりする際に活用できるという。ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長は国別に相互関税を課す計画の主要な提唱者だとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じている。
だがこれらの目標は矛盾する可能性があり、ここ数日間、今後の進め方を巡り政権内で意見が分かれている。
相互関税が交渉の対象となれば、グローバル企業は米国への新規投資に消極的になる可能性がある。関税が長期的に維持されるかどうか不確実なためだ。
逆に、長期的な一律の関税率を設定すれば、各国政府が通商、税制、規制政策について米国と交渉するインセンティブが低下する可能性がある。
政権は公には、歳入を増やすと同時に関税を交渉の道具として利用できると主張している。一律関税支持者が想定するように、一部の関税が恒久的に維持されるとしても、トランプ氏は個別の産業や国に追加関税を課すことに意欲的だ。これは同氏が選挙運動中に提案していた計画で、ほぼ全ての国に最大20%の一律課税をした上で、特定の産業や中国などの敵対的な国に対してはさらに高い関税を課すというものだった。
第一次トランプ政権で上級経済顧問を務め、関税に懐疑的なスティーブン・ムーア氏は、一律関税ではなく相互関税制度の下では、トランプ氏は「関税を引き上げるのではなく、引き下げる制度を創設する可能性が十分にある」と述べた。
中間的なアプローチとしては、多くの国に低い関税を課す一方で、一部の国に高い関税を課すことが考えられる。この税率は個別に設定するか、グループとして課すことができる。政権は以前、低・中・高の3段階の関税を検討したが、その後、個別の税率を設定する計画に変更した。
米アラスカ州のマイク・ダンリービー知事(63)は3月、自宅のテレビでドナルド・トランプ大統領の議会演説を見守っていた。そこで耳にしたのは、国内有数の野心的なエネルギー計画が直ちに盛り上がりそうな言葉だった。ダンリービー氏はアジア歴訪に繰り出した。
トランプ氏はアラスカの「巨大な天然ガスパイプライン」について、「本当に素晴らしいものになる」と持ち上げた。さらに、認可はすでに下りて準備は整っており、「日本、韓国、その他の国々」が主要な投資パートナーになりたがっていると述べた。
ダンリービー氏は今や、トランプ氏の宣言を実現する役割を担う。託されたのは、米国でも特にカネのかかるエネルギー計画だ。アラスカ州の北端から天然ガスをパイプラインで運び、液化して輸出するには440億ドル(約6兆6100億円)の投資が必要となる。だが完成すれば、米国のアジア向け輸出が大きく伸びる。
共和党員でトランプ氏と近い関係にあるダンリービー氏は、米国のパートナーである台湾、タイ、韓国、日本を回る12日間の歴訪に臨んだ。いずれも対米貿易黒字が世界上位だ。
トランプ氏が貿易不均衡の解消を掲げる中、神経をとがらせるアジアのパートナーに対し、ダンリービー氏はアラスカの計画に大規模投資すれば不均衡を縮小できると訴え、共同投資やガスの大口購入を持ちかける。アジアの政府関係者や産業界への売り文句は「米国からガスを調達するのは常に良いこと」だ。
同州の「アラスカLNG(液化天然ガス)」計画は、全長約1300キロのパイプラインを通じてLNGターミナルにガスを運ぶというものだ。しかし、ターミナルはまだ建設されておらず、構想は10年以上前からあるものの、着工にも至っていない。アジアへの供給が始まるのは早くて4年後だ。
中国に次ぐLNG輸入国である日本と韓国はこれまで、アラスカのプロジェクト参画には否定的で、代わりにメキシコ湾岸のベンチャー・グローバルやシェニエール・エナジーなどと契約していた。
今は状況が異なる。ダンリービー氏の訪問中、台湾の国営エネルギー会社はパイプラインへの投資とLNG購入に関する拘束力のない合意を結んだ。韓国の通商相はダンリービー氏と会談し、アラスカの「無限の成長可能性」を称賛し、協力を約束した。石破茂首相は2月にホワイトハウスを訪問し、アラスカ産LNGの輸入は日本にとって本当に素晴らしいと述べた。
トランプ氏は再就任初日、バイデン前政権が敷いたアラスカの環境規制の多くを撤廃し、エネルギー開発の障壁を取り除く大統領令を発した。議会演説の数日前、ホワイトハウスの夕食会でトランプ氏と「世界最大の計画」について話し合ったとダンリービー氏は語る。トランプ氏は「実現させよう、話して終わりにするのではなく」と述べたという。
ガスパイプラインの1日当たり最大輸送能力は約9340万立方メートルとなる見通しで、これはアラスカの天然ガス生産量の約3分の1に相当する。LNGターミナルの年間輸出能力は2000万トンで、メキシコ湾岸にある米最大級のターミナルに匹敵する規模だ。
開発にはアラスカの過酷な環境が立ちはだかる。買い手がトランプ氏を喜ばせるためにLNG購入を増やしたければ、選択肢は米国内の他の場所にもいくつもある。トランプ氏はバイデン前政権が決めたLNG新規輸出の一時停止を解除した。
メキシコ湾岸などは豊富な天然ガスの採掘が比較的容易だが、こうした好条件の地域でさえ、開発業者は労働コストの上昇やトランプ氏の25%の鉄鋼・アルミニウム関税といった逆風にさらされている。機械設備と鉄鋼は通常、LNGプラントの建設コストの約3分の1を占める。
シェニエールのジャック・フスコ最高経営責任者(CEO)は、LNGプロジェクト全般について「商業化、資金調達、建設のめどをつける必要がある。コストが下がることはない」と述べた。
アラスカのプロジェクトを進める動機の一つは州内の需要だ。アンカレジ一帯向けの暖房用ガス田はほぼ枯渇している。パイプラインができれば州内の消費者にもガスを供給できる。
連邦政府から融資保証を取り付けることができれば、開発業者にとって大きな後押しになる。政府保証がなければ多額のリスクは貸し手が負うことになり、資金調達のハードルが上がる。アラスカLNGは約300億ドルの政府保証を申請できる。同州議員は3月、元石油会社幹部でLNG推進派のエネルギー長官クリス・ライト氏に申請の支援を要請した。
アラスカLNGの計画が浮上したのは2014年で、米エクソンモービル、英BP、米コノコフィリップスなどの大手企業が支持した。だが各社は数年で撤退し、計画は州の手に委ねられた。17年に中国の出資者と契約に至ったものの、その後破談となった。
ダンリービー氏は知事選に出馬した18年当時、プロジェクトには「完全に懐疑的」だった。だが新型コロナウイルス禍が収束してサプライチェーン(供給網)が再編され、ウクライナと中東で戦争が続き、人工知能(AI)ブームで電力需要が高まるにつれ、考えが変わった。「以前は希望にすぎなかった」とダンリービー氏は言う。「わずか数年で世界が一変した」
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
米供給管理協会(ISM)が1日発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.0に低下し、3カ月ぶりに拡大・縮小の分岐点となる50を割り込んだ。製造業におけるインフレの指標となる支払い価格も約3年ぶりの水準に急上昇した。トランプ米政権の関税措置の影響を巡る懸念の高まりを示唆した。
PMIの市場予想は49.5。2月は50.3だった。
構成指数では、先行指標となる新規受注が45.2と、前月の48.6から低下し、2023年5月以来の低水準となった。
支払い価格は69.4と、前月の62.4から上昇。22年6月以来の高水準となり、モノの価格の上昇が続き、物価上昇圧力が高まる可能性を示唆した。
供給業者の納入を示す指数は53.5と、2月の54.5から小幅低下した。50を超えると納入の遅延を示す。
雇用は前月の47.6から44.7に低下した。
3月は繊維、一次金属、コンピューター・電子製品を含む9業種が拡大。一方、機械、木材、化学製品を含む7業種が縮小した。
電気機器や電化製品など複数のメーカーが、需要増加の証拠はなく、「関税措置の影響とその対策戦略が日常的な話題になっている」と指摘。また機械メーカーは「事業状況は急速に悪化している」と報告した。
トランプ大統領は4月2日に「相互関税」の発表を予定する。トランプ氏は、関税は減税を相殺して歳入を増やし、長らく衰退傾向にある米産業基盤を復活させる手段とみている。
一方、エコノミストらは、輸入関税はインフレ高進を招き、経済に悪影響を及ぼすと批判的な見方を示す。
LPLフィナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は、「物価が上昇する一方で景気が停滞していることは、経済がスタグフレーションに陥る可能性があることを示唆している」と指摘。
「企業と消費者の不安定な信頼感が支出を減速させ、単なる景気鈍化以上の事態を引き起こす可能性があるため、連邦準備理事会(FRB)は厳しい立場に置かれている」と述べた。
●金融市場、先進国トピックス
世界トップ企業の時価総額が第1・四半期に減少し、約3年ぶりの大幅な落ち込みとなったことが分かった。トランプ米大統領が打ち出す関税措置の影響で、経済成長や企業収益を巡る不確実性が増大していることが背景。米景気後退懸念が強まる可能性がある。
LSEGのデータによると、トップ10企業の第1・四半期末時点の時価総額は13.2%減の18兆6400億ドル。2022年6月末時点以来の大幅な減少となる。
米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O), opens new tabの時価総額は35.7%急減し、8335億9000万ドルとなった。半導体大手エヌビディア(NVDA.O), opens new tabは19.59%減の2兆6400億ドル、同業ブロードコム(AVGO.O), opens new tabも27.56%減の7872億5000万ドル。
ナスダック総合(.IXIC), opens new tabは10.42%値下がりし、22年6月末時点以来の大幅な下げを記録。ナスダックは過去2年間、約84.5%高騰していた。
ゴールドマン・サックスは、関税、成長鈍化、インフレ加速を理由に、25年のS&P総合500種(.SPX), opens new tab構成企業の1株当たり利益(EPS)伸び予想を従来の7%から3%に下方修正した。
カナダに市場を抱える米消費関連企業にとって、トランプ米大統領の政策への反発を背景にカナダで広がる国産品購入運動(「バイ・カナディアン」)が新たな懸念要素として浮上しつつある。
カリフォルニア州に拠点を置く紙おむつメーカーのパラソルは今年1月以来、ある卸売業者と手を組み、カナダ国内のコンビニなどへの販路拡大に取り組んできた、とジェシカ・ハン最高経営責任者(CEO)は語る。
ところが3月上旬になって、この卸売業者がカナダでの反米感情の高まりを理由に仕事から手を引いてしまった。ハン氏は「卸売業者はある小売業者から米国ブランドの発売を中止するよう指示され、われわれに市場環境が許せば再検討すると伝えてきた」と明かした。
ハン氏は「この種の混乱は全く想定していなかった。今までこのような事態が起きたのを聞いたことがない。かなりの逆風であるのは確かだ」と顔を曇らせる。
2024年にはカナダへ3500億ドル弱相当の米国製品が輸入されていただけに、小売店の棚に並ぶ品ぞろえが愛国的な消費行動に基づいてがらりと変われば、影響は大きい。
原因はトランプ氏にある。カナダは米国の51番目の州になるべきだといった発言や、カナダからの鉄鋼・アルミニウムへの25%の追加関税、またその他全てのカナダ製品に関税を適用すると脅していることなどから、カナダの多くの消費者の間で米国製品でなく国産品を買おうとの気運が高まっている。
ハン氏の話では、パラソルはカナダの消費者向けに商品のラベル表示をフランス語にする作業を進めていた。また、ご破算になった卸売業者と共同での販路拡大作戦に投入する商品の選別を開始していたという。
ケベック州サン・ジャン・シュール・リシュリューに住み、母親として医療保険業界で働くレベッカ・アスランさんは、自身が行ってきた国産品を探す取り組みをソーシャルメディアで披露している。
アスランさんはロイターに対し、最近になって子どもの紙おむつを、カナダの数少ないメーカーであるアービング・パーソナル・ケアの商品に切り替えたと話した。「私はこれまで紙おむつがどこで製造されているか考えもしなかったが、明らかにカナダ製紙おむつは入手が難しい。こうした買い物は私たちにとって大きな変化だ」と付け加えた。
アービング・パーソル・ケアは、国内各地の小売業者から販売量を増やしたいとの問い合わせを受けていると説明。事業運営担当副社長のジェーソン・マカリスター氏は「カナダで製造された唯一のブランド化された紙おむつとして、われわれの週当たりの出荷量は4倍になった」と胸を張った。
<進出計画白紙化も>
こうした現象は紙おむつだけにとどまらず、アルコール飲料や柑橘(かんきつ)系果実にも及んでいる。ウイスキーの「ジャックダニエル」を手がける米ブラウン・フォーマン(BFb.N), opens new tabは3月上旬、米国製のバーボンやウイスキーがカナダの酒店から撤去される事態は、カナダ政府による報復関税よりも痛手で、トランプ関税がもたらす不釣り合いなほど大きな副作用だと訴えた。
米カリフォルニア州における柑橘系果実の輸出事情に詳しい関係者は同じく3月上旬、カナダの小売業者が発注を取り消したとロイターに語った。
発酵飲料であるコンブチャの「シナジー」を販売し、米ロサンゼルスに本社を置くGT‘sリビング・フーズは、ウォルマート・カナダを含めたカナダの小売業者が、関税を巡る不透明感を理由に発注を減らしていると明らかにした。
幹部のダニエル・ブコフスキ氏によると、ウォルマート・カナダやロブロー(L.TO), opens new tab、メトロ(MRU.TO), opens new tabなどに商品を卸している業者から、トラック2台分ではなく1台分の購入にとどめると連絡があった。関税問題の展開を見極めているためだという。
米ペンシルベニア州の香水メーカー、ディメーター・フレグランシズは、年内に計画していたカナダ市場への進出を取りやめた。マーク・クレームズCEOは、カナダ国民の気持ちが米国製品から離れてしまっていると指摘。「市場進出は無駄な努力に思えるため、計画を単純に破棄した」と説明した。
ウォルマート・ストアーズ(WMT.N), opens new tabやコストコ(COST.O), opens new tabなど米小売り大手と、こうした企業に商品を納める中国の製造業者は、トランプ米政権による相次ぐ対中関税引き上げでいずれも苦境に立たされている。追加関税の負担を相殺したい米国の発注元は製造業者に値下げを迫るが、製造業者は既に利幅を限界まで縮小しており、発注元の要求に応えるのは難しい。多額の債務を抱える中国の地方政府が支援に動くのも困難で、関係業界の打撃はトランプ第1次政権が貿易戦争を繰り広げた2018年当時よりも深刻だ。
中国広東省・東莞で米小売り大手向けにクリスマス用装飾品を製造するリチャード・チェン氏は米国の対中追加関税で注文が昨年の半分に落ち込み、生き残りに必死だ。「もう値下げの余地はないが、注文を取るために下げざるを得ないこともある。(中略)選択の余地はない」と苦しい立場を明かした。値引きの詳細には触れなかったが「赤字だ」という。
トランプ政権は2月以降、対中追加関税を矢継ぎ早に発動。4月2日にはさらに「相互関税」の詳細を発表する予定だ。
しかし米小売り大手を顧客に抱える中国の低価格帯の製造業者は既に利幅が極めて薄い。
中国製造業者によると、2018年の米中貿易戦争開始以降、労働者の賃金は2-5%上昇し、一部業界では原材料コストも上がった。海外勢との競争も激化し、第2次トランプ政権の追加関税は低価格帯の製造業者にとって「とどめの一撃」となっている。
一方、米ニューヨークのブルックリンに拠点を置くゴミ箱メーカー、シティビンの創業者兼最高経営責任者(CEO)、リズ・ピカラッツィ氏は、中国で製造する製品の関税が52.5%になり、もう中国では生産が続けられなくなったと述べた。「長期的な関税率を7.5%と想定するビジネスモデルだった。本当にショックだ」と肩を落とす。こうした事態をある予測していたが、45%もの追加関税を吸収できる企業はないという。
中国の製造業者や輸出業者10社、および中国のサプライチェーンを利用する米国小売業の幹部2人への取材によると、米国の小売業者は10%の値下げを求めている。しかし今進んでいる交渉では、サプライヤー側が提供できる値引きは平均3-7%程度にとどまっているという。
アジアを拠点とする製造請負業者ゲニメックス・グループを率いるジョナサン・チタヤット氏も「正直に言って、10%もの値下げ余地がある企業はほとんどない。1、2回の注文なら可能かもしれないが、大半の企業にとっては7%が限界だ」と話した。
中国の製造業者は、2018年の貿易戦争時で米国の顧客が関税引き上げ後に代金支払いを拒否するケースが相次いだ経験を踏まえ、今回は代金「前払い」条件を厳格化している。これまでは出荷後30―90日以内の支払いが一般的だったが、現在は「全額前払いでなければ取引不可」という対応を取る企業が増えている。
中国の製造業者と中小企業をつなぐリヤ・ソリューションズの最高ソリューション責任者、ドミニク・デマレ氏はトランプ氏が再選されるやいなや、米国の顧客に今後の支払い条件は100%前払いだと伝えた。「関税の悪夢が来ることは分かっていたからだ」と説明する。
<雇用減の恐れも>
今回の追加関税は中国の工業地帯に深刻な影響を与えており、工場の閉鎖や縮小が進めば大規模な雇用削減につながる可能性があると、アナリストや製造業関係者は警鐘を鳴らす。
オーストラリア・モナシュ大学のホー・リン・シー教授(経済学)によると、中国の製造業者はさまざまな圧力に屈し始めており、「既に多くの企業が事業閉鎖を決断している」という。
スタンフォード大学の2018年の研究によると、関税が1%引き上げられるごとに中国の製造業者の利益率は0.35%低下した。またダートマス大学の推計に基づくロイターの試算によると、2018年の貿易戦争では中国で約350万人の製造業労働者が職を失った。
今回の影響がどの程度になるかは、まだ予測が難しいとアナリストたちは指摘する。
一部の米企業は中国政府が自国の製造業を支援するために、新たな税還付や家賃・光熱費の補助を提供すると見込んでいる。2018年の貿易戦争時にはこうした支援が行われた。
しかしロイターが取材した複数の中国の業者によると、現時点では新たな支援策は確認されていない。
シー教授は、中国政府の支援を疑問視。地方政府の多くは不動産危機の影響で既に莫大な債務を抱えており、以前のように大規模な補助金を提供するのは難しいという。
トランプ政権の関税政策の目的の1つは、製造業を米国に呼び戻すことだが、シティビンのピカラッツィ氏は、コストや品質の観点から現実的ではないと見ている。既に生産拠点を100%ベトナムに移行する準備を進めており、顧客には値上げを覚悟するよう伝えている。「これは米政府が米企業と消費者に押し付けた、極めて不公平な措置だ。米企業を破綻させることは愛国的ではない」と憤った。
シティグループとJPモルガン・チェースを含む銀行団は、カナダの自動車部品メーカー、ABCテクノロジーズ・ホールディングスによるTIフルイド・システムズ買収に向けた債務パッケージを自己資金で賄うことを余儀なくされる可能性がある。
買収完了の期限である4月15日が迫る中、9億ドル(約15億円)のレバレッジドローンには投資家の需要が十分集まっておらず、13億2500万ドルのジャンク債の募集も開始されていない。
トランプ政権が課す関税がTIフルイド・システムズの事業に影響を与えるのではないかという懸念があるためだ。
アポロ・グローバル・マネジメントが出資するABCテクノロジーは昨年11月に、TIフルイド・システムズ買収で合意した。
ABCテクノロジー、TIフルイド、アポロ、シティグループ、JPモルガンの担当者はコメントを控えた。
4月3日に発効する自動車への25%関税は、5月3日までにエンジンやトランスミッションシステムなどの主要な自動車部品にも拡大される。TIフルイド・システムズは自動車用の熱および流体システムソリューションを製造している。
この案件に限らず、クレジット投資家は最近、輸入関税の引き上げや個人消費の低迷の影響を受けやすい企業の案件には参加しない姿勢を見せている。
関係者によると、シティグループはABCテクノロジー向けのレバレッジドローンの組成を主導しており、JPモルガンはジャンク債起債を担当している。
ローンは担保付翌日物調達金利(SOFR)に5.5ポイント上乗せ、額面1ドルに対し95-96セントという比較的高い割引価格で検討されていると関係者の1人は述べた。ローン契約の期限は3日。
銀行は通常、買収が完了する前にコミットした資金をシンジケートローンや債券によって調達し自社バランスシートから切り離す。それができないと、貸し付け債権が銀行の帳簿に残ったままの「ハングデット」の状態になる。
米国では、複数の世代が同居できる住宅を購入するケースが増えている。
全米不動産業者協会(NAR)のリポートによると、昨年の住宅購入の17%が「多世代住宅」で、2021年の11%から上昇。データでさかのぼれる2012年以降で最も高い割合となった。
全年代の購買層のうち、36%が費用節約を多世代住宅購入の最大の理由に挙げた。 45-59歳前後の「ジェネレーションX」世代が多世代住宅を購入する可能性が最も高く、高齢の両親の世話をする必要があることや、成人した子供が家を出ていかないか、戻ってくることを理由に挙げている。
多世代住宅は新しいコンセプトではないが、人気が高まっている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、インフレが家計を圧迫し、住宅価格の高騰が購入を困難にしているためだ。
NARの次席エコノミスト、ジェシカ・ラウツ氏は「同居して節約する方法を模索する家庭もある。住宅ローンや家計のため資金をプールすることは、一部の人にとっては現実的な方法かもしれない」と述べた。
不動産価格の高騰と住宅ローン金利の上昇が相まって、初めて住宅を購入するのが困難になっている。パンデミックで家賃も急騰し、成人した子供が一人暮らしをするのも難しくなっている。 
住宅価格の高止まりが予想されるため、多世代同居のトレンドは今後も継続する可能性が高いと、ラウツ氏は指摘。「住宅の値ごろ感を巡る問題は、一夜にして解決するものではない。住宅を購入したい人はこれまでとは異なる方法でアプローチする必要があるかもしれない」と述べた。
あれもだめ、これもだめ、さあどうしよう。株価が落ち込んでも資産が守られるよう投資を組み立てておけば、心の平穏も守られ、お気に入りの銘柄も手放さずに済む。
だが、そのような保険を見つけるのは難しくなっている。米国債だけでなくおそらくドルでさえも、資産を保護するかつての効能を失っている。金価格がこれほど上昇しているのも不思議ではない。
根底にある問題は、投資が保険になるかどうかは他人の反応次第、ということだ。二つ目の問題はとりわけ米国債にとって重要で、インフレ感応度が新時代に入った、ということだ。
S&P500種指数がピークを付けた2月半ば以降の相場の弱さは、本来起こるべきこととそうでないことを示唆している。米国債は予想通りに動き、株安でリターンを出した。ドルはそうはならず、株に連れ安した。金は両方の動きを見せ、株に連れ安した後で急騰した。
当然ながら、数週間のリターンから何かを導き出せるわけではない。ここでは、数十年にわたって米国債がどのように資産価値を保護してきたかを調べ、ドルと金についても論じる。
米国債は1990年代後半以降、株価下落に対して実質的に無料の保険を提供する、いいとこ取りの投資だった。好況時には債券利回りが低下し、価格は上昇した。不況時には米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げし、債券価格はさらに上昇した。市場がパニックに陥ると米国債に資金が殺到し、債券価格は上昇した。さらに、短期的には債券利回りと株価が連動する傾向があったため、米国債は株式ポートフォリオのボラティリティーを抑制し、リターンが大きく目減りするのを防ぐ効果があった。
投資家がインフレに無頓着でいられた時代は終わり、常にインフレ圧力がある時代になったことで、米国債と株式の動きが変化した。インフレ懸念は債券利回り上昇と株価下落を同時進行させる要因になるため、利回りと株価は同方向に動きにくくなった。投資家が2022年に身をもって学んだように、株安時でも米国債で損失を出しかねない。
1970年代から90年代後半までは米国債利回りと株式が反対方向に動いていたが、その後は必ずしもそうではなくなった。株安時の米国債はもはや格好の投資先ではなくなった。
だからといって米国債が無駄なわけではない。利回りは10年物で4.3%と、まずまずの水準に戻った。2020年のような換金売りが起きない限り、市場がパニックに陥った時は需要が集まるはずだ。ただ、かつてその妙味だった長期リターンや、上乗せ料金なしでの短期資産の保護を期待できなくなっただけのことだ。
ドルには別の問題があるが、根本的な原因は同じで、人気がありすぎる、ということだ。米国人にとってドルは単なる自国通貨で、投資対象と見なされることはあまりないデフォルト(初期設定)の選択肢だ。しかし、それはもはや賢明な選択肢ではないかもしれない。
ドルは長年、優れた保険だった。ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)はかつてこれを「ドル・スマイル」と呼んだ。米国が好景気の時は利益を求めて資金が流入するため、ドルが強くなる。不景気の時は、米国の安全資産を求めて資金が流入するため、やはりドルが強くなる。
このところ好景気の時は非常にうまくいっていたが、おそらくうまくいき過ぎだった。主要貿易相手国通貨に対するドルのインフレ調整後為替レートは1月、ドル高是正を狙った1985年のプラザ合意以降で最も高い水準を付けた。米経済が極めて好調で、米国市場が刺激的なテック大手や人工知能(AI)関連株の本拠地だったため、国外投資家は米国を選んだ。
景気が低迷しても資金は流入するだろうか。危険なのは、「米国例外主義」の取引が広がりすぎたことだ。ドナルド・トランプ氏の大統領再選が駄目押しとなった。もし米国が苦境に陥れば、マネーは安全を求めるのではなく、流出するだろう。
通常はパニックが起きると、投資家の資金が株式市場から本国に逆流する一方、安全とされる米国債に資金が流入して相殺される。だが現在は、米株式市場に流入する外国資金が以前より大きく増えている一方、国外市場に流出していて引き揚げ可能な米国の資金が減っている。
ルファーのファンドマネジャー、マット・スミス氏は、「外国資金が流入し、米国の資金を消費支出や政府借り入れに回せた」と指摘する。これが逆転すれば、ドルはスマイルどころではなくなるだろう。
トランプ陣営の一部から聞こえてくる、ドルを保有している外国人を罰する「マールアラーゴ合意」の構想も、ドルの敬遠につながりかねない。
金はすでに大きな恩恵を受けている。外貨準備をドル建てにすることに懸念を抱く各国の中央銀行が金を買い増すとの思惑から、1年強で価格が50%上昇した。これは問題かもしれない。米国債やドルとは異なり、金はインフレ圧力が高くなった新時代でも好調だろう。だが米国債やドルと同様に、すでに多くの資金が流入している。パニックが起きたらどうなるだろう。
金は2008年3月までの12カ月間にも今回と同程度、上昇した。当時は金融不安への懸念が高まっていた。だが、米証券大手ベアー・スターンズに次いでリーマン・ブラザーズも破綻すると、金価格は1トロイオンス当たり1000ドル超から700ドル強に急落した。現金が必要になった投資家が売却したためだ。
現金は短期的には最も安全な資産で、今はそこそこ利回りもある。だが不況時に価値が上がるわけではないため、長期投資よりは投資のタイミングを計りたい時に向いている。
安全資産を選ぶ際は、資産そのものの性質と同じくらい、誰がそれを保有しているかが重要になる。パニック時に誰もが手放そうとするものは、急いで売らざるを得ない場合、価値が大きく減ることになる。それでも筆者は米国債を好み、手元の現金を通常時より増やすだろう。ただ、どの選択肢も以前に比べると妙味ははるかに薄い。
大手自動車メーカー各社が1日発表した第1・四半期の米自動車販売は増加した。トランプ大統領が予定する自動車関税の発表を控え、ピックアップトラックやSUVの販売台数が前年同期比で伸びた。関税措置により車両の価格は数千ドル上昇する可能性がある。
米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N), opens new tabは17%急増し、メーカー別で首位となった。韓国製のシボレー・トラックスなど手頃な価格のクロスオーバーSUV(多目的スポーツ車)の需要に支えられた。
フォード・モーター(F.N), opens new tabの販売台数は1.3%減少した。一部の車種の生産中止などが響いた。
一方、トヨタ自動車の北米部門トヨタモーター・ノースアメリカ(TMNA)(7203.T), opens new tabは約1%増加。
他のアジア勢でも、韓国の現代自動車(005380.KS), opens new tabのほか、マツダ(7261.T), opens new tab、ホンダ(7267.T), opens new tabが増加した。
米電気自動車(EV)大手テスラは2日に、第1・四半期の納入台数の減少を発表するとみられる。
調査会社コックス・オートモーティブは、第1・四半期の米国の新車販売台数が全体で0.6%増の379万台になると予測している。
こうした中、オークションサイトのオーナー、ダグ・デムーロ氏は関税について「多くの車両の価格がほぼ必然的に一夜にして大幅に上昇するだろう。そしてそれが売り上げの減少を招くことは間違いない」と指摘。
コックスは、自動車関税の発効によりインフレが上昇する可能性があり、これが「2025年の新車販売台数の抑制につながる公算が大きい」と述べた。
●中東情勢
●エマージング
中国の一部銀行が消費者向け融資の金利を引き上げ始めた。先月過去最低水準まで引き下げたばかりだったが、不良債権の増加懸念から方針を転換した。景気浮揚に取り組む政府に逆風となるとみられる。
銀行関係者やウェブサイトの情報によると、中国建設銀行(601939.SS), opens new tab、中国招商銀行(600036.SS), opens new tab、中国銀行(601988.SS), opens new tab、華夏銀行(600015.SS), opens new tabなどは、消費者向け融資の金利を少なくとも3%に引き上げた。1日から適用される。
中国政府は米国との貿易摩擦が激化する中、消費者信用を拡大し需要を押し上げようとしており、銀行は先月、貸出金利を過去最低となる2.5%程度に引き下げていた。
中国では消費者信頼感が依然として脆弱であり、金利上昇は借り入れ意欲を抑制する可能性があるとアナリストは警告している。
しかし国営銀行のある融資担当者は、低金利にはマイナス面もあると指摘し、資金繰り難に陥っている借り手が借り入れを増やして返済が滞れば、銀行の資産の健全性が損なわれる恐れがあると述べた。
また、一部の借り手は低金利の消費者向け融資を消費に回さず、高金利の住宅ローンの借り換えに利用しているとの懸念もあるという。
ナティクシスのシニアエコノミスト、ゲイリー・ウン氏は「政府は消費拡大を推進しているが、純金利マージンの急速な縮小と資産の質の悪化など、金融の安定性を懸念しているようだ」と述べた。
<不良債権の増加>
中国の主要国有銀行における総融資額のうち、個人向け消費者ローンの割合は2%程度に過ぎないが、不良債権は増加傾向にある。2024年末時点の個人向け融資の不良債権比率は、中国工商銀行(601398.SS), opens new tabで2.39%、中国農業銀行(601288.SS), opens new tabは1.55%と、いずれも20年以来の高水準となった。
渤海銀行では消費者ローンの不良債権比率が24年末時点で、前年の4.44%から12.37%に急上昇している。
中国交通銀行(601328.SS), opens new tabの幹部は先月の決算会見で、昨年から個人向け融資の返済不能リスクが全体的に高まっており、銀行の資産健全性に対する圧力は今年も続くと予想していると述べた。
INGの中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は、中国の高い貯蓄率に言及し、家計にお金があるものの支出に慎重になっているとの見方を示した。「より重要な要素は家計の信頼を回復することであり、そのためには健全な賃金上昇と資産価格の安定が第一歩となる」と述べた。
中国の民間不動産調査会社の中国指数研究院が1日に発表した3月の国内100都市の中古住宅価格は平均で前月比0.59%下落し、下落率は2月の0.42%から拡大した。新築住宅の価格は小幅ながら上昇したものの、不動産セクターの問題の根深さがうかがえる結果となった。
同じ100都市における新築住宅価格は0.17%上昇した。
中古住宅価格は前年比では7.29%下落した。2月は7.3%の下落だった。
中国の不動産政策が「下落を食い止める」ことに重点を置いているにもかかわらず、不振は続いている。3月上旬に発表された李強首相の政府活動報告では、不動産市場を安定させるための持続的な対策の必要性が強調された。
指数研究院は、一線都市を含む大都市が下落を食い止める努力を主導する可能性が高いと指摘。その上で、大都市圏と中小都市の格差は続くかもしれないとした。
フィッチ・レーティングスは3月29日付のリサーチノートで「中国の住宅不動産市場は、最近の幾つかの回復にもかかわらず、人口動態の変化、高水準の売れ残り在庫、住宅の手に入れにくさを背景に、継続的な課題に直面する可能性がある」との認識を示した。
●プロファイ、インフラ、自然災害
世界最大規模の政府系投資基金であるノルウェー政府系ファンドは31日、デンマークとドイツで建設が進む洋上風力発電プロジェクト2件の権益49%を14億ユーロ(約15億ドル)で取得したと発表した。
ノルウェー銀行(中央銀行)投資管理部門(NBIM)が独エネルギー大手RWE(RWEG.DE), opens new tabの二つの風力発電プロジェクトの株式を取得する。2025年7─9月期の初めには完了する見通し。建設と運営は独企業が担う。
RWEによると、両プロジェクトの発電能力は計2.64ギガワット(GW)。ドイツとデンマークの260万を超える世帯へ十分な電力を供給できる。
アナリストによると、これによりRWEの発電プロジェクトに対する権益の割合は約40億ユーロ縮小する一方、財務上は約1億5000万ユーロの利益獲得になるという
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
円が対ドルで上昇。米国の製造業・労働市場の悪化や、トランプ大統領の関税措置への警戒感から、安全資産とされる円が買われた。トランプ氏は輸入品に対する「相互関税」を発表予定で、米国経済への悪影響が懸念されている。  
債券市場では、金利低下。トランプ政権の関税発表を控え、リスク回避の動きが強まった。株式市場はまちまちで、S&P500とナスダックは上昇、ダウは下落。EV大手テスラやハイテク株が上昇したが、ヘルスケア株が下落した。  
金先物は利益確定売りで反落、原油先物も景気減速懸念で下落した。
ロンドン株式市場と欧州株式市場は反発。米政権の相互関税発表を控え、下落していた相場の買い戻しが進み、航空宇宙・防衛株や貴金属株が上昇。英FTSE250は0.59%高、ドイツDAXは1.70%高。  
トランプ政権が輸入品に20%の関税を課す案を起草したとの報道がある中、英政府は経済連携の合意による関税撤回を期待。欧州株では銀行やテクノロジー株が上昇し、ユーロ圏の消費者物価指数(HICP)が鈍化したことで、ECBの利下げ観測が高まった。  
ユーロ圏債券市場では国債利回りが低下。インフレ鈍化を受け、ECBの4月利下げの可能性が強まり、ドイツ10年債利回りは2.659%、イタリア10年債利回りは3.768%まで低下した。EUは米国の関税措置に対し、報復措置を準備していると警告した。

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