- 備忘録(2025/4/30)●海外企業決算
- [ITW] イリノイツールワークス 1Q減収減益 売上高3%減38.3億ドル、営業益16%減9.51億ドル、EPS2.38ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PEG] パブリックサービスエンタープライズ 1Q増収増益 売上高17%増32.2億ドル、営業益16%増7.97億ドル、配当0.63ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [PPL] ピーピーエル 1Q増収増益 売上高9%増25.0億ドル、営業益24%増6.78億ドル、EPS0.56ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [VMC] バルカンマテリアルズ 1Q増収増益 売上高6%増16.3億ドル、営業益31%増2.26億ドル、EPS0.98ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [MLM] マーチンマリエッタマテリアルズ 1Q増収減益 売上高8%増13.5億ドル、営業益86%減1.94億ドル、EPS1.90ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [IP] インターナショナルペーパー 1Q増収最終赤字転落 売上高28%増59.0億ドル、最終赤字1.05億ドル、EPSマイナス0.24ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [ADP] オートマチックデータプロセシング 3Q増収最終増益 売上高6%増55.5億ドル、純利益5%増12.4億ドル、EPS3.06ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CAT] キャタピラー 1Q減収減益 売上高10%減142億ドル、営業益27%減25.7億ドル、EPS4.20ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [SWK] スタンレーブラック&デッカー 1Q減収増益 売上高3%減37.4億ドル、営業益50%増2.04億ドル、EPS0.60ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- スーパー・マイクロ、暫定決算受け時間外で18%安=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- 欧州銀、トレーディング好業績相次ぐ-トランプ関税巡る混乱が追い風 - Bloomberg
- 独VW、通期利益率予想引き下げ 貿易摩擦とEVコストが圧迫 | ロイター
- UBS、第1四半期純利益が予想上回る 米関税で先行きは不透明 | ロイター
- [CP] カナディアンパシフィック 1Q増収増益 売上高8%増37.9億ドル、営業益15%増13.1億ドル、EPS0.97ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [GL] グローブライフ 1Q増収 売上高5%増14.8億ドル、純利益微増2.54億ドル、EPS3.01ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AFL] アフラック 1Q減収最終減益 売上高38%減33.9億ドル、純利益99%減2900万ドル、配当0.58ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [MET] メットライフ 1Q増収最終増益 売上高16%増185億ドル、純利益10%増8.79億ドル、EPS1.28ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AWK] アメリカンウォーターワークス 1Q増収増益 売上高13%増11.3億ドル、営業益14%増3.71億ドル、配当0.8275ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [CHRW] CHロビンソン 1Q減収増益 売上高8%減40.4億ドル、営業益39%増1.76億ドル、EPS1.11ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PRU] プルデンシャル 1Q減収最終減益 売上高38%減134億ドル、純利益38%減7.07億ドル、配当1.35ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [MGM] MGMリゾーツ 1Q減収減益 売上高2%減42.7億ドル、営業益16%減3.85億ドル、EPS0.51ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [ALL] オールステート 1Q増収最終減益 売上高8%増164億ドル、純利益52%減5.66億ドル、配当1.00ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [META] メタプラットフォームズ 1Q増収増益 売上高16%増423億ドル、営業益27%増175億ドル、EPS6.43ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [COKE] コカコーラコンソリデーティッド 1Q減収減益 売上高1%減15.7億ドル、営業益12%減1.89億ドル、EPS11.87ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [EBAY] イーベイ 1Q増収営業減益 売上高1%増25.8億ドル、営業益2%減6.16億ドル、配当0.29ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [KLAC] KLA 3Q増収最終増益 売上高30%増30.6億ドル、純利益81%増10.8億ドル、配当1.90ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [MSFT] マイクロソフト 3Q増収増益 売上高13%増700億ドル、営業益16%増320億ドル、EPS3.46ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [QCOM] クアルコム 2Q増収増益 売上高17%増109億ドル、営業益33%増31.2億ドル、EPS2.52ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- 仏トタル、1〜3月純利益33%減 原油価格下落が響く - 日本経済新聞
- ●海外企業
- グーグルCEO、米司法省の「異例な」会社分割案を批判 - WSJ
- 米グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は4月30日、オンライン検索市場における同社の支配的地位を抑制するために米司法省が提案した「異例な」措置を却下するよう連邦地裁に求めた。
- ピチャイ氏はこの措置を「非常に広範囲で異例」と表現した。司法省は、グーグルにウェブ閲覧ソフト(ブラウザー)「クローム」事業の売却を強制し、検索履歴などのユーザーデータを競合他社に提供するよう求めている。首都ワシントンの連邦地裁のアミット・メータ判事は昨年、グーグルがオンライン検索市場で違法な独占状態にあるとの判断を下した。メータ判事は現在、競争を回復するためにどのような措置を課すべきかについて、審理などを行っている。
- メータ判事は8月までに判断を下す意向を示した。
- ピチャイ氏は、特に司法省のデータ共有案により、競合他社がグーグルの検索エンジンをリバースエンジニアリング(分解・解析)することが可能になると主張。同社は検索エンジンを研究開発の重点分野としている。
- 同氏はまた、司法省の提案はグーグルユーザーの個人情報も危険にさらすと述べた。
- ●日本企業
- トランプ氏が就任100日演説、経済政策の成果誇示 懸念払拭図る | ロイター
- トランプ米大統領は29日、2期目就任100日に合わせてミシガン州で演説し、経済政策の成果をアピールした。貿易などを巡る同氏の強硬姿勢に国民が懐疑的な見方を強める中、懸念払拭を図った。
- トランプ氏はデトロイト郊外ウォーレンで開いた集会で、貿易相手国に関税を課す措置が国内製造業の復活につながる可能性があると訴えた。
- 2017─21年の第1次政権について「米国史上最高の経済だった」とし、「われわれは素晴らしい成果を上げた。今はさらに良い状況だ」と主張した。
- 議会に対し減税法案を成立させるよう求め、「今後数週間、数カ月で米国史上最大の減税を実現する。これにはチップや社会保障給付、残業代への非課税措置が含まれる」と述べた。
- また、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長について、良い仕事をしていないと改めて批判した。
- 関税措置を巡っては、ミシガン州にとって経済的な命綱だと主張。「私の対中関税により、世界史上最大の雇用窃盗に終止符が打たれる」とし、「中国はどの国よりも多くの雇用をわれわれから奪ってきた」と述べた。
- 一方で、中国との貿易協定は実現するとの見方を示し、「公正な取引になる」と強調した。
- 「黄金時代」と書かれた横断幕の前で演説したトランプ氏は、政権による不法移民取り締まりの成果を強調した動画も流した。
- バイデン前大統領を含む民主党に対する激しい批判も展開した。
- 州兵基地で先に行った演説では、政権の防衛投資を誇示し、「1兆ドルの記録的な国防投資を支持する」と述べた。
- また、州空軍セルフリッジ基地が「F15X」21機を受領すると発表。同州のウィットマー知事(民主党)は声明で、これは基地の任務を確保するもので、雇用を守る「ミシガン州にとって超党派の大きな勝利」だと指摘した。
●トランプ関連- トランプ氏、就任100日の成果強調 FRB議長批判も - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は29日、ミシガン州のスポーツ施設で集会を開き、就任100日間で成功を収めたと述べた。
- トランプ氏は「偉大な100日間」と表示された巨大スクリーンの前に立ち、「これからが本領発揮だ」と述べた。
- 一方で、会場近くの商業施設では、経済情勢やトランプ氏が打ち出した関税への懸念も示されるなど、より複雑な状況が浮き彫りになった。
- 米自動車大手フォードの組立工場で働くバレリー・ウォーカーさんは、「食料品、公共料金、住宅費など、全てがまだ高い」と指摘。ウォーカーさんは2020年の選挙ではジョー・バイデン氏に投票したものの、昨年11月の大統領選ではトランプ氏を支持。トランプ氏が激戦州のミシガン州で辛勝する一因となった。
- ウォーカーさんはトランプ氏の移民政策は支持できるとした。だが関税については、自身も関わる米製造業の雇用を増やすためのものだとトランプ氏が主張しているにもかかわらず、懸念を抱いていると語った。トランプ氏の経済政策について、「彼が言うように、時間がかかるだろう」と述べた。
- トランプ氏は就任以降、フロリダ州にある自身のプライベートクラブを週末に訪れる以外、国内各地をほとんど訪れていない。だが29日の集会は、自身の政界での勢いを後押しした選挙戦でのスタイルへの回帰を示すものとなった。
- 同氏は自動車産業の労働者からの支持に感謝し、自らの関税策や政府の規模縮小に触れたほか、「トランスジェンダーの狂気」を終わらせたと誇示。「病んだ政治階級からわれわれの国を取り戻している」と演説で述べ、「中国を第一に考えるのではなく、ミシガンを第一に、そして米国を第一に考えている」と続けると、聴衆から歓声が上がった。
- トランプ氏の強気なメッセージにもかかわらず、一連の世論調査では経済や物価上昇、また関税などの問題への同氏の対応を巡り、有権者の信頼が失われていることが示されている。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」がまとめた世論調査の平均によると、トランプ氏の全体的な支持率は7ポイント低下し、45%が支持、52%が不支持となっている。
- こうした状況は中間選挙を控えたトランプ氏と共和党にとって、時期尚早ではあるものの懸念すべき兆候となっている。共和党は上下両院で僅差ながら多数派を維持しているが、これを失えばトランプ氏の立法課題が頓挫し、議会による調査が引き起こされる可能性も高い。一部の民主党議員はすでに弾劾に言及し始めているが、トランプ氏は「わたしが一体何をしたと言うのか?」と演説で述べた。
- トランプ氏は集会では規制緩和への取り組みを誇示し、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が金利を引き下げないことも批判。「彼よりも金利についてはるかによく知っている」と述べ、「信じてほしい」と付け加えた。
- トランプ氏はパウエル氏の解任が早すぎることはないと述べているが、今のところ解任を試みることは否定している。
●先進国中銀、金融当局●先進国経済指標- 米ADP民間雇用者数、4月は6.2万人増-9カ月ぶりの低い伸び - Bloomberg
- 米GDP、2022年以来のマイナス成長-関税発動前に輸入急増 - Bloomberg
- 米経済は2025年1-3月(第1四半期)に縮小。22年以来のマイナス成長となった。関税発動前の記録的な輸入急増や個人消費の低調が響いた。トランプ米大統領の貿易政策がもたらす波及効果の最初の兆候が示された。
- GDP成長率は過去2年の平均である約3%を大きく下回った。純輸出のGDP寄与度は5ポイント近いマイナス。過去最大のマイナス寄与となり、企業が広範な関税の発動前に商品を確保しようと急いだ動きを浮き彫りにしている。連邦政府による支出の落ち込みもGDPを圧迫した。
- GDPの3分の2を占める個人消費は23年半ば以来の低い伸びにとどまったものの、市場予想は上回った。サービス支出の幅広い増加と非耐久財の持ち直しに支えられた。
- 基調的な需要を示す指標は堅調だった。企業による機器投資は2020年以来の高い伸びを示した。
- 輸入は年率換算で41.3%増加し、約5年ぶりの大幅増を記録。これらの商品やサービスは米国内で生産されていないため、GDPから差し引かれる。貿易赤字の急拡大は4-6月(第2四半期)に反転すると、エコノミストらはみている。
- 今後に目を向けると、関税引き上げは供給ショックを引き起こし、企業活動の抑制や需要減退につながると多くのエコノミストは予想している。報復関税も輸出を抑制し、年末にかけて厳しい環境をもたらす可能性がある。米国がリセッション(景気後退)に陥る確率はほぼ五分五分とみられている。
- ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのエコノミスト、 カール・ワインバーグ氏は「貿易収支の悪化が、関税発動前の企業による輸入部材購入の結果であるならば、4-6月には貿易収支の悪化は反転する。それはGDP成長をある程度押し上げるだろう」とリポートで指摘。「しかし、不確実性の増大と税負担の上昇(関税は輸入にかかる税金)は、年末までに再びGDP成長をマイナスに引き戻すだろう」と付け加えた。
- S&P500種株価指数は下落して取引を開始し、米国債利回りは低下した。トランプ大統領はソーシャルメディアへの投稿で、米経済に現行政策の結果が表れるには「しばらく時間がかかる」と主張。株式相場のパフォーマンスについては、バイデン前大統領に責任があると非難した。
- 輸入された商品は通常、倉庫や店頭に直接移動する。今回の統計では企業在庫のGDP寄与度はプラス2.25ポイントと、2021年10-12月期以来の大きさとなった。最近の輸入急増は、今後数カ月に在庫増加として表れ、これも4-6月のGDPを押し上げる可能性がある。
- 貿易や在庫の変動は全体のGDPを歪めることがあるため、エコノミストは需要をより正確に把握する上で、民間の国内最終需要を重視する。この指標は1-3月に3%のペースで増加した。24年10-12月は年率2.9%増だった。
- 企業の機器投資は年率22.5%増加。米ボーイングでストライク終了後数カ月に民間航空機の出荷が増えたほか、情報処理機器やコンピューターの生産も拡大した。
- ただし、関税は設備投資への重しになるとエコノミストはみており、企業も足元の決算発表で、個人消費の先行きは厳しいものになるとの認識を示している。
- 政府支出
- 政府支出は1.4%減と、22年以来のマイナスとなった。国防支出が8%減少したことが影響した。トランプ氏は先月、ウクライナへの軍事支援を一時停止した。
- 食品とエネルギーを除く個人消費支出(PCE)コア価格指数は3.5%上昇に加速し、1年ぶりの高い伸びを示した。市場予想は3.1%上昇だった。
- 米PCE価格指数、ほぼ1年ぶりの横ばい-関税前駆け込みで消費強い - Bloomberg
- ユーロ圏経済、1-3月は予想以上に成長加速-米関税で今後は厳しく - Bloomberg
- ドイツ、4月のCPI速報値は2.2%-過去7カ月で最低水準 - Bloomberg
- ドイツが4月30日に発表した4月の消費者物価指数(CPI、EU基準)上昇率の速報値は前年同月比2.2%で、過去7カ月で最も低かった。追加利下げを検討している欧州中央銀行(ECB)には追い風となりそうだ。
- 物価上昇率は、3月の2.3%増から鈍化した。ブルームバーグがまとめたエコノミストらの予想中央値は2.1%だった。
- 注目されているサービス部門は上昇が加速したが、今年はイースター休暇が例年より遅かったことが影響した可能性がある。
- フランスとスペインでも、物価上昇率は予想を上回った。ただ、フランスの上昇率は2021年2月以来の低水準だった。
- 5月2日に発表予定の4月のユーロ圏CPIは、前年同月比2.1%増と、前月からはやや低下するが、ECBが目標とする2%はやや上回る見込みだ。エネルギーなどの変動が大きい要素を除いた指標は、微増が見込まれている。
- ECBの政策当局者はこのところ、インフレ見通しについて楽観的な見方を示しており、昨年6月から4月までの7回の利下げに続き、6月にも追加の利下げを準備している。ただし、当局者らは、トランプ米大統領の関税をはじめとする、「例外的な不確実性」への警戒も強めている。
- ドイツ4月失業率6.3%、コロナ後で最悪 景気低迷が重し | ロイター
- 独GDP、第1四半期速報前期比+0.2% 景気後退を回避 | ロイター
- ドイツ連邦統計庁が30日発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前期比0.2%増加で、昨年第4・四半期に続く2期連続のマイナス(リセッション)を回避した。
- 消費と投資が寄与した。ロイターがまとめた予想と一致した。
- INGのマクロ部門グローバル責任者、カーステン・ブルゼスキ氏は「ドイツから発表されるプラス成長の統計は最近、高く評価されているが、四半期ベースでの増加はドイツの長期停滞を終わらせるには、まだあまりにも小幅過ぎる」と述べた。
- 昨年第4・四半期のGDPは0.2%減だった。
- IFO経済研究所は、ドイツ経済が早ければ夏にも再び縮小するのではないかと指摘している。
- IFOの予測責任者、ティモ・ウォルマーショイザー氏は、関税に対する懸念で米国で駆け込み需要が発生し、第1・四半期のドイツの輸出と鉱工業生産が恩恵を受けたと指摘。
- その上で「4月に発効した欧州連合(EU)製品に対する大幅な関税引き上げや、さらなる関税引き上げのリスクが、ドイツ経済の先行きの重しになっている」と述べた。
- ●金融市場、先進国トピックス
- 焦点:国内生保、25年度の円債投資は入れ替え中心 超長期国債の妙味指摘も | ロイター
- 国内生命保険各社の2025年度の資産運用計画では、従来は主力の投資先であった日本国債に対する投資スタンスが分かれた。規制対応目的での超長期国債買いは既に一巡しており、過去に購入した低い利回りの債券を売って利回りのより高い債券に入れ替える取り組みが中心で、残高は横ばいから減少を見込む会社が多い。一方、このところの超長期金利の急上昇を受け、純粋な投資目線から国債買い意欲を示す会社もある。
- <「淡々と、平準ペース」の買い意向が減少>
- 25年度から導入される新資本規制(経済価値ベースのソルベンシー規制)では、財務の健全性を高めるために資産と負債の年限差(デュレーション・ギャップ)を縮めることが求められ、生保各社では数年にわたって保険契約という長期の負債にマッチする超長期国債の買い入れを積極的に進めてきた。
- しかしこうした対応は前年度までに一巡し、今年度は大手の多くが過去に購入した低利回り債の入れ替えを中心とした運用方針に舵を切ったことから、国内債券の残高は横ばいから減少とする計画が主流だ。
- このうち最大手の日本生命では、ポートフォリオの強化を最優先課題として、超低金利の時期に買った債券を利回りが上昇した債券に入れ替える取り組みに注力する。結果として、日銀のマイナス金利政策導入を受けた16年度以来、9年ぶりに日本国債の残高が減少に転じる見込み。
- 明治安田生命、かんぽ生命、朝日生命も残高が減少する計画であるほか、第一生命は残高がおおむね横ばい、大樹生命は小幅増を見込んでいる。
- 国債の買い方について、これまで多く聞かれた「平準的なペースで買う」、「淡々と積み増す」といった方針を掲げる生保が目に見えて減少したことが、25年度の運用計画の特徴だ。
- <「利回り2.7%の30年国債」には一定の妙味>
- こうした中、純粋な投資目線から超長期国債に妙味を見いだす向きも出てきた。
- 住友生命では、資産と負債をマッチさせるALM運用の枠組みでは国債残高の減少を見込む一方、収益力向上のため機動的な運用の枠で日本国債を数千億円規模で積み増す計画を示した。トータルで見ても、国内公社債の残高が数千億円規模で増える予定という。投資対象年限はALM運用の30年物が中心との方針を離れ、各年限のリスク対比リターンや負債と資産のキャッシュフローのマッチング状況を見ながら、10年超の超長期国債の中から機動的に投資先を判断していく。
- 太陽生命は「利回り対比ではヘッジ付き外債よりも円債の方が魅力的」だとして外債から円債へのシフトに取り組む方針で、円債残高を増加させる。
- また富国生命では、「異次元緩和の超低金利下では投資を控えてデュレーションマッチングも行っていなかったため、負債に比べて資産サイドのデュレーションが短く、公社債の含み損も相対的に小さい。超長期債を買い入れる余地は十分にある」(森実潤也財務企画部長)として、円債残高を1100億円増やす計画。
- 大同生命もALMの観点からまだ資産サイドのデュレーションを長期化する余地があるとして、超長期国債を中心に残高を3000億円程度増加させる。
- 足もとでは30年金利が2.7%をつけるなど、3月に入って以降の超長期金利の上昇(国債価格は下落)とボラティリティーの高まりが顕著だ。
- かんぽ生命が「今のレベルは魅力的だが、流動性がなく値動きが荒い時に我々が動くと市場を動かしてしまうのでやりづらい」(野村裕之執行役員・運用企画部長)と市場の落ち着きを待つ考えを示した一方で、年度ベースでは国債残高の減少を見込む日本生命では「足もとの金利は水準的には魅力的で、4月前半だけで言うと多めに買っている」(都築彰執行役員・財務企画部長)と明らかにしている。
- また明治安田生命も北村乾一郎執行役員・運用企画部長が「例えば4月9日に(トランプ米政権の関税政策を巡る混乱から)金利マーケットが壊れた時にはそれなりに入っていけた。我々は流動性を供給できる長期の投資家として、そういう時に最後の買い手として頑張って入りたい」と述べるなど、残高減少を見込む大手の一角からも利回り上昇を受けた投資妙味を評価する声が上がり始めている。
- 〔表〕国内主要生保の2025年度資産運用計画・市場見通し | ロイター
- アングル:アングル:波乱相場下の企業決算、好反応に「3つの条件」 持続には懐疑も | ロイター
- トランプ関税の影響が読み切れない中で、国内企業の決算シーズンが始まった。序盤の株価の反応をつぶさに見ると、ある3つの「条件」を備えた銘柄に対して市場が好反応を示す傾向が出ている。なかには条件が十分に満たせていなくても全体相場が反発基調にある中で底堅い動きとなった銘柄もあるが、売買の主体は短期筋が中心で、好反応の持続力に懐疑的な見方もある。
- 今回の決算シーズンの株価動向について「3つの条件がそろっていれば、翌日の好反応が期待できる」と、しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャーは指摘する。
- その条件とは、1)今期の見通しを開示していること、2)業績予想が市場の予想を上回ること、3)自社株買いや増配といった株主還元に取り組んでいることーーこの3つだ。アナリスト予想は直近の状況まで織り込めておらず、確度が低下している可能性はあるが、決算の評価では目安として意識されるという。
- これまでのところ、富士通(6702.T), opens new tabの発表内容がパーフェクトに近い。今期の営業利益予想は市場予想を下回ったが、純利益予想は上回った。発行済み株式総数の6.75%に当たる自社株買いに加え、増配も発表した。同社の株価パフォーマンスは翌日にかけてTOPIXのそれを3ポイント上回った。
- いずれの条件も満たさなかったキーエンス(6861.T), opens new tabは、発表翌日に売りが優勢となり、TOPIXのパフォーマンスを0.3ポイント下回った。同社は平時から見通しを示さないことで知られるが、「企業見通しへの市場の関心が高まる中では嫌気された」(国内運用会社のストラテジスト)との見方もある。
- 先立って決算を発表した安川電機(6506.T), opens new tabは、見通しを示しながらも米高関税の影響を織り込まなかったことで、関税影響に関する手掛かりを期待していた市場から嫌気された経緯が記憶に新しい。予想を開示しない銘柄は、投資家から敬遠されやすいとみられている。
- <シーズン序盤、急落からの反動が底上げも>
- もっとも、見通しを開示しない企業の数は、事前に警戒されたほどには多くないと受け止められている。「各社が工夫し、非開示を避けようとしている印象だ」と、野村証券・投資情報部の神谷和男ストラテジストは評価する。
- 加えて「事業環境は不透明ながら、株主還元や資本効率改善に積極対応していることは心強い」(りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャー)との声もある。波乱相場でPER(株価収益率)などの投資尺度が使いにくくなる中、「PBR(株価純資産倍率)にも関心が向かっている」(野村の神谷氏)との見方がある。自社株買いなどの還元策はPBRの向上に寄与することから、あらためて好反応につながりやすい側面もありそうだ。
- 全体相場がリバウンド局面にあったことも、個別銘柄の底堅さと無縁ではないとみられる。ファナック(6954.T), opens new tabは見通しが非開示だったが、株価は発表翌日にプラスで反応した。安川電機が売られた場面で、非開示のリスクがある程度、市場で消化されたとの見方があるほか「事前の警戒感が過度だったということだろう」(りそなAMの戸田氏)との見方がある。
- ファナックは中国関連株の一角でもあり、決算前1カ月間にTOPIXのパフォーマンスを12ポイント下回っていた。予想を非開示としながらも、いったん悪材料出尽くしと受け止められ買い戻されたようだ。決算発表前1カ月のパフォーマンスがTOPIXを約10ポイント下回っていたニデック(6594.T), opens new tabが、決算発表後にTOPIXを13ポイント上回って急騰したことも、リバウンドによる「底上げ」分があったと捉える向きもある。
- 足元では、日経平均が急落前のレンジ下限付近まで回復し「いいところまで戻った」(りそなAMの戸田氏)とみられている。日立製作所(6501.T), opens new tabは、増益予想の上、株主還元に取り組みながらも、業績予想が市場予想を下回って株価は好材料出尽くしのような反応となった。リバウンド局面が一服しつつあることがうかがわれる。
- 株価水準が復元してきたことは、次の悪材料時の下落余地につながる側面もある。30日には、商船三井(9104.T), opens new tab株が、決算発表を受けて急落する場面があった。米高関税政策の海上荷動きへの悪影響を想定して大幅減益、減配の予想を示したことが嫌気された。同社株は、外部環境が不透明な中、高配当株の一角として買い戻されてきていただけに失望売りが増幅されたとみられている。
- いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は長期投資家は二番底を待っており、まだ買いに本腰を入れていないとみている。この上で「買い戻しは短期筋が中心。決算後に株価が好反応となっても、長続きしにくい」と話している。
- 欧州企業の第1四半期、1.7%減益見込み 貿易摩擦緩和期待で改善 | ロイター
- スイス2年債金利がゼロ未満 強まるマイナス金利政策観測 - 日本経済新聞
- 米企業幹部、関税などトランプ政権の政策を懸念 - WSJ
- 米企業の幹部らが政治的な立場を超え、トランプ政権の関税政策や他の規制変更に不安を感じていることが、29日に発表された新たな世論調査の結果から明らかになった。
- 調査はビジネス団体のリーダーシップ・ナウ・プロジェクトと調査会社ハリス・ポールが300人以上の企業幹部を対象に実施。回答者の84%が現在の政治的・法的環境について、自社のビジネスに与える影響をやや懸念または非常に懸念していると答えた。
- このうち民主党支持者を自認する企業幹部は90%以上が、また共和党支持者および無党派の幹部の80%以上が懸念を感じていると回答した。
- また企業幹部の45%は、最近の大統領令や政策が自社の競争力を損なったと回答している。
- 企業幹部の多くはドナルド・トランプ大統領の就任当初、新政権が規制を緩和し、新たな成長の時代を迎えることに楽観的だった。だがトランプ氏が就任から100日間で打ち出した断続的な関税政策や他の動きは、経済的不確実性を引き起こしている。これを受けて複数の企業は業績見通しを撤回し、支出削減や大型プロジェクトの延期につながっている。
- 一方で回答者の約4分の1は、トランプ政権下の現在のビジネス環境は予想していた通りだと答えた。
- 米企業がコスト削減、関税で視界不良 - WSJ
- 米国企業のトップがコスト削減に乗り出した。
- 二転三転するドナルド・トランプ米大統領の貿易攻勢は予測不可能で、企業はほぼ全ての面で身動きが取れない。例外はコスト削減だ。化学大手ダウは新工場の建設を延期する。医療機器メーカーのボストン・サイエンティフィックは出張を含む裁量的支出を削減する取り組みを加速させている。
- 貨物鉄道会社のノーフォーク・サザンは、これまで以上に厳しくコンサルタント料を精査している。
- 日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のアンドレ・シュルテン最高財務責任者(CFO)は、「自社のコスト構造の中で関税の影響を軽減するため、われわれが持つあらゆる手段を講じなければならないだろう」と述べた。
- 大規模なレイオフを発表した企業は今のところ、ほとんどない。しかし企業は調整に動いており、労働者はそれに気付き始めている。企業は採用を抑制し、欠員を埋めず、コンサルタントや下請け業者にかかる費用を精査している。
- 多くの経営幹部は最近行った決算発表の電話会見で、「平安の祈り」の企業版ともいえる表現を使ってコスト削減策を説明した。
- 「コントロールできるものをコントロールし、そうでないものについては一部で影響を緩和できるよう努める」。ノーフォーク・サザンのマーク・ジョージ最高経営責任者(CEO)は燃料費や労務費などの削減計画に言及した際、そう述べた。
- アトランタを拠点とするノーフォーク・サザンは、関税が収益にどのような影響を与えるかについて明確な情報はないものの、ここ数年の複数の混乱を受けて、財務上、効率化を進める必要に迫られていると述べた。混乱とは、オハイオ州イーストパレスタインでの脱線事故や、アクティビスト(物言う投資家)との委任状争奪戦、予定外のトップ交代などを指す。
- IBMのアービンド・クリシュナCEOは、全社的な生産性向上の取り組みを含め、「われわれがコントロールできる分野に集中」すると表明した。飲料・食品大手ペプシコのラモン・ラグアルタCEOは、サプライチェーン(供給網)を一層効率化することなど「われわれにできることをコントロール」していると述べた。詳細を明かさなかった経営幹部も、さまざまな方策を検討していると語った。
- ホワイトハウスが関税を巡って朝令暮改を繰り返しているため、企業は投資の許可やサプライチェーンの再分散といった策を取ろうにも先が読めない。ただし、先行きが極めて不透明な時期にコストを削減するという昔ながらの作戦を取ることはできる。
- 一部の経営トップは既存の対策を強化している。玩具メーカーのハズブロは10億ドル(約1420億円)のコストを削減する複数年計画を加速させると述べた。今年は1億7500万ドルから2億2500万ドルの削減を目指しているという。同社は過去に、積み木ゲーム「ジェンガ」のブロックを一種類の木で作るなど、製品を安く作れるように設計を変更することでコストを減らした。
- ダウは第1四半期決算が需要の低迷で赤字となったことを受けて、約60億ドルのコスト削減を予定していると明らかにした。見直しは設備投資の縮小が中心になる予定で、カナダ・アルバータ州に炭素排出量ゼロのエチレン工場を建設する計画を先送りするほか、ドイツと英国の化学工場計画も再考している。
- プリンシパル・ファイナンシャル・グループのジョエル・ピッツ暫定CFOは、コンサルタントへの支出や社員の出張費などの費用をこれまで以上に厳しく監視すると述べた。採用も先送りする。
- 企業は先行きが予想できなくても、社内でのコスト削減や業務の合理化といった行動は起こせると、経営幹部や企業アドバイザーは指摘する。
- 「さらに効率や効果を高めることは可能かを自問する良い機会だ」。医療保険エトナの元CEO、ロン・ウィリアムズ氏はそう話す。同氏は今もさまざまな業界の幹部と交流がある。
- 多くの企業は、貿易を巡る緊張が緩和したり、今年の経済が予想を上回ったりした場合に事業を制約しかねない抜本的な削減は避けるよう気を付けている。
- ウィリアムズ氏は「レイオフそのものは検討していない企業は多い。コロナ禍を経験し、多くの人材を失ったからだ」と話す。経済の回復時にレイオフした人材を再雇用するのは難しかった。企業は劇的な手段は取らずに、支出に目を向けているという。
- 航空機エンジン大手GEエアロスペースのラリー・カルプCEOは、研究開発費の削減や自社のサプライチェーンの安定を揺るがす恐れのある分野の削減を避けたいと述べた。その代わり、同社の幹部は出張や事務管理部門の経費、採用といった分野で支出を削減するためバランスシートを精査している。同社は今年、関税によってコストが5億ドル増加すると予想している。
- 「(コストカットの)さらなる機会は常にある」とカルプ氏は語った。
- 人員を削減している企業もある。人材派遣会社のロバート・ハーフは間接費を減らすため、数は明らかにしていないものの、管理部門や間接部門のポジションを削減すると述べた。これで8000万ドルを削減できるという。
- 「選挙が終わって企業のマインドが急激に改善した。顧客との話し合いの方向は上向いていた。だからわれわれはかなり楽観的だった」。ロバート・ハーフのM・キース・ワデルCEOは投資家にそう話した。「それが変わった」
- 経済不安、米消費者はどう対応 - WSJ
- 物価上昇を予想している消費者は、目先の支出を増やすかもしれない。だが同時に失業の懸念もある場合は、そうはしないかもしれない。
- 米大手クレジットカード会社のデータからは相反する動向が読み取れる。消費が増加している場合もあれば、減少している場合もある。明らかなのは、階層ごとに反応は異なる、ということだ。
- 複数のカード会社が1-3月期に消費が前年同期比で増加したと報告しており、購入の「前倒し」が起きているとの見方もある。ドナルド・トランプ米大統領の関税政策で値上がりする可能性のある商品を今のうちに購入している、ということだ。
- 一方で、自社の顧客層に異なる傾向が混在しているとの報告もある。米消費者金融会社シンクロニー・ファイナンシャルはアナリスト向け説明会で、低所得層の消費は1年前から「縮小」し始めた一方、高所得層では依然として増加していると述べた。
- 匿名化した顧客データを分析したバンク・オブ・アメリカ・インスティテュートによると、3月の消費の伸びは低所得世帯が中・高所得世帯に比べて鈍かった。
- これは予想外の結果だ。低所得世帯は予算に余裕がないかもしれないが、将来物価が上昇すると予想しているなら、買いだめを控えるとは考えにくい。実際、新型コロナウイルス流行下でインフレが進行していた2021年にダラス地区連銀が発表した調査では、買いだめ傾向は低所得世帯でより顕著だった。
- インフレ予想が高まる中で、低所得世帯はより顕著に耐久消費財への支出を増やしていた。耐久財は長持ちするため、将来のニーズに備えて購入しておく価値がある、ということだ。こうした購入者は、将来のインフレで自身の債務負担が軽減することを見込んでいる可能性がある。
- 一方で、消費者は失業などの経済的リスクを感じていると、物価予想に関係なく消費を抑える可能性があることも分かった。ダラス地区連銀は「インフレ予想による消費へのプラス効果は、同時に失業率の上昇が見込まれる場合は弱まる可能性がある」と指摘した。
- カード会社にとってこれが常に問題になるわけではない。
- シンクロニーのブライアン・ダブルズ最高経営責任者(CEO)はアナリスト向け説明会で、「消費パターンの緩和は実際、信用の点ではよいことだ。この抑制は心強い。消費者が度を越すことなく節度を保っている表れだからだ」と語った。
- 伸び悩んでいるのは支出だけではない。バンク・オブ・アメリカ・インスティテュートのデータによると、低所得世帯の税引き後賃金の伸びも鈍化し始めている。ここまでの2年間の傾向とは対照的だ。
- ただ、支出を増やしている消費者も浮かれ騒いでいるわけではない。インスティテュートは最近のリポートで、カードのデータから「消費者が2月と3月に『必需品ではないがあればうれしいもの』への支出を抑え、外食や旅行・観光、レジャーを控えた」ことがうかがえる、と指摘した。
- 3月は対照的に、それまで2カ月連続で減少していた耐久財への支出が急増した。輸入テレビや家電のような大型の高額商品がけん引したかどうかは不明だが、自動車ローン申請件数は3月末に大きく増えた。
- 旅行需要の落ち込みが顕著なのは航空会社で、各社は通年の見通しを下方修正した。米金融サービス大手キャピタル・ワン・ファイナンシャルのリチャード・フェアバンクCEOはアナリスト説明会で、航空券をはじめ旅行・娯楽への支出がここ数週間に緩和したと述べた。
- 米クレジットカード大手アメリカン・エキスプレス(アメックス)の1-3月期の請求額の伸びは、旅行・娯楽(為替変動調整後)が前年同期比6%となり、財・サービスの7%を下回った。同社によると、旅行の予約状況は引き続き堅調だが、航空券への支出の伸びは24年10-12月期から鈍化した。
- 経済不安の現れ方は階層ごとに異なる。はっきりしているのは、多くの人がそれを感じているということだ。
- 今の米株市場で犯しやすい間違いとは - WSJ
- 米国の関税を巡る混乱が毎日のように金融市場を揺さぶっている。だが投資家にとって最も重要なのは、これまでの経験が蓄積された「メモリーバンク」に何が入っているかということだ。
- 若い投資家であれば、株式やビットコインが瞬く間に価値を失うことがあると心得ている。2020年3月や2022年のことを思い出せばよい。一方で、さらに速いスピードでそれらが反発し、過去最高値を更新することも経験上知っている。
- 中年の債券投資家なら、1981年から2022年初めにかけてほぼ一貫して金利が低下し、豊富なリターンを生んだ時代を覚えている。さらに前の世代なら、1929年の株価暴落が多くの投資家の記憶につきまとい、その後何十年も株式市場を敬遠することになった。
- 2009年に亡くなった金融史家で投資ストラテジストのピーター・バーンスタイン氏は、投資家にはメモリーバンクがあるとよく語っていた。それは同年代の投資家が集団として稼いだ市場リターンであり、経験をもとに期待は形作られる。
- 問題は、メモリーバンクが危険な形で投資家を欺く可能性があることだ。過去の経験が将来への合理的な指針となるのは、将来がその実際に経験した過去の一部とよく似ている場合に限られる。だが多くの場合、そうはならない。
- ドナルド・トランプ米大統領の通商政策を巡る不透明感を背景に、市場の変動が激しいことを考えると、記憶されている可能性がある投資の考え方を検証し、今の時代に有効かどうかを問う価値はある。
- グロース株はバリュー株に勝つか
- 過去15年間の大半においてバリュー株(利益や資産に比べて株価が割安な銘柄)のパフォーマンスは低迷し、割高なアップルやエヌビディア、テスラなどのグロース株に大きく水をあけられていた。
- だが今年に入ってバリュー株狙いの代表格であるウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイは、3300億ドル(約47兆円)の手元資金が評価されていることもあって株価が17.3%上昇。一方、ハイテク株主体のナスダック総合指数は10.9%下落している。
- 通商政策を巡る混乱がいかに世界経済を動揺させようとも、「バリュー株を支える要因は依然として重要だ」。投資会社リサーチ・アフィリエイツのロブ・アーノット会長はこう述べた。
- バリュー株は市場の混乱に対し、グロース株ほど脆弱(ぜいじゃく)ではないはずだ。「歴史を見ると、混乱期にはバリュー株がグロース株より有利だ」とアーノット氏は話す。
- 過去1世紀の大半においてバリュー株はより魅力的なグロース株をアウトパフォームしてきた。だが投資家のメモリーバンクはその逆の傾向を示唆しているかもしれない。もし株式ポートフォリオの大半をグロース株が占めているなら、バリュー株をいくらか追加することを検討すべきだ。
- 米国が唯一の投資先ではない
- 過去20年間の大半において、ドル高と米IT業界の急成長を背景に、世界の市場は米国市場に後れを取っていた。
- それは過去の話だ。2025年に入り、米国以外の市場を対象にしたMSCIオール・カントリー・ワールド(除く米国)指数は、S&P500種指数を14ポイント余り上回っている。
- 若い投資家なら、過去50年の大半の間、世界市場の方がアウトパフォームしていたことはメモリーバンクから知る由もない。ティー・ロウ・プライスによると、1971年~90年に、米国およびカナダを除く先進国の大型および中型株式で構成されるMSCI EAFE指数のパフォーマンスは、S&P500種指数を年平均4.2ポイント上回っていた。その期間の一部では、外国投資がドル安の恩恵を受けることとなり、他国通貨建てのリターンが米国人投資家にとって価値を増した。
- 最近高騰しているとはいえ、外国株は比較的安い水準にある。直近12カ月の株価収益率(PER)は16倍に満たず、株価純資産倍率(PBR)は2倍を下回る。一方、米国株のPERは約24倍、PBRは4倍以上だ。
- ドル安が続けば、外国株はさらに強くなる。たとえドル安でなくても、米国が唯一の選択肢ではない。世界中に投資機会がある。
- 押し目買いは時間が味方?
- ペンシルベニア大学ウォートン校のジェレミー・シーゲル教授の1994年の著書「株式投資:長期投資で成功するための完全ガイド」は、少なくとも20年の期間で、インフレ調整後に株式が債券を上回らなかった期間はほとんどないと主張している。
- だがサンタクララ大学のエドワード・マッコーリー名誉教授による最近の研究で、それは事実でないと示された。マッコーリー氏は何年も費やし、米国資産のリターンの歴史的記録を1793年までさかのぼって細かく修正した。その結果、インフレ調整後に債券が株式を上回っていた20年間をいくつも発見した。直近では2012年までの20年間がそうだった。
- だからと言って株式を買うべきでない、または長期保有すべきでないという意味ではない。長期間保有しても、株が債券を上回ることが保証されていたり、運命づけられていたりするわけではない、ということだ。
- リターンとは、金利やインフレ率、株式が債券に対してどれくらい割高かの関数だ。現時点で、株価は安いとは到底言えない水準だ。株式のリターンが増えない場合に備え、期待は控え目にして貯蓄に励むべきだ。
- 現金はくずか
- 多くの投資家は2009年~21年の経験を忘れられない。キャッシュ(現金・現金同等物)はインフレ調整後、多くはマイナスのリターンに陥り、防御を固めることさえできなかった。
- しかし2025年のキャッシュは攻めている。米財務省短期証券(TB)やマネー・マーケット・ファンド(MMF)は利回りが4%を超え、年初来で株式を上回っている。また米国の公式インフレ率をも上回っている。
- ゴールドは常に輝く
- 最近、金(ゴールド)に投資した人は、危機の時に金が輝くことを知っている。だが金価格が急上昇した後、歴史的にパフォーマンスが不振になることを、メモリーバンクは知り得ないかもしれない。金は1980年1月につけた過去最高の終値834ドルを約28年後まで打ち破れず、2011年8月に終値で1892ドルの高値をつけたものの、約9年間それを超えられなかった。ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによると、直近の金価格3300ドル付近でさえ、インフレ調整後では1980年の終値の最高値をまだ超えていない。金はいま輝いているが、平穏な時期に戻れば、色あせる可能性がある。
- 投資の考え方を検証する際は、個人的に経験していない期間を考慮に入れるべきであり、入手可能な限り、最も長期間のデータを参照するよう留意してほしい。
- メモリーバンクの信頼性を検証しても、過去の投資経験に導かれることを完全に防ぐのは難しい。ただ、それにとらわれることは防げるかもしれない。
- AIブーム立役者2人に溝、アルトマン氏とナデラ氏 - WSJ
- サム・アルトマン氏はかつて、同氏が率いる米オープンAIと米マイクロソフトは「テック業界で最高のパートナーシップ」を築いていると語った。シリコンバレーにおける両社の親密な関係は現在、大きく揺らいでいる。
- マイクロソフトは過去6年間で人工知能(AI)新興企業のオープンAIに数十億ドルの資金を投資し、急成長を後押しした。オープンAIの対話型AI「チャットGPT」の週間ユーザー数は5億人を超えるようになった。オープンAIは最先端の生成AIツールでマイクロソフトを支援し、マイクロソフトの株価は3倍になった。
- こうした関係に緊張が生まれるようになった。両氏の関係を知る複数の関係者によると、マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)とオープンAIのアルトマンCEOの間で意見の相違が深まっている。焦点となっているのは、マイクロソフトがオープンAIに提供するコンピューティングパワーや、オープンAIが同社モデルに関しマイクロソフトに与えるアクセスに加え、オープンAIのAIシステムが近い将来人間並みの知能を獲得するかどうかという問題だという。
- ナデラ氏は、チャットGPTと競合する自社のAIツール「コパイロット」の販売と利用の拡大を優先課題に据える。昨年はアルトマン氏のライバルを幹部として採用し、その人物はマイクロソフトのオープンAIへの依存度を下げるためのモデル構築に向けた極秘プロジェクトを立ち上げた。
- 両社はそれぞれ互いに依存しない将来に向けて準備を進めているが、世界的なAI競争の重要な局面において依然として互いに大きな影響力を持っている。
- マイクロソフトは、オープンAIが取り組む非営利組織から営利企業への転換を実質的に阻止することができると事情に詳しい関係者は語った。年末までに転換が実現しなければ、オープンAIは数百億ドルを失う可能性がある。関係者によると、現時点ではマイクロソフトは転換阻止に向けた動きは見せていない。
- 一方でオープンAIの理事会(取締役会に相当)は、同社の最先端技術にマイクロソフトがアクセスすることを阻止する契約条項を発動できると事情に詳しい関係者は述べた。一部の関係者によると、オープンAIの幹部らは過去1年の間にそうした可能性をちらつかせたことがある。
- 偶然の出会い
- ナデラ氏とアルトマン氏の関係は、2018年夏にアイダホ州サンバレーで開催された投資銀行アレン・アンド・カンパニーの年次会議で、階段で偶然出会ったことをきっかけに深まった。アルトマン氏はその3年前、人間を上回る能力持つ人工知能(汎用人工知能、AGI)の開発を目指し、非営利の研究所としてオープンAIを共同で設立していた。
- アルトマン氏は5分間の会話の中で、オープンAIは「多額の資金を調達する予定だ」とナデラ氏に伝えた。アルトマン氏はこのエピソードを23年にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語った。両氏は連絡を取り合うことを約束した。
- その出会いから1年後、マイクロソフトはオープンAIに10億ドル(現在のレートで約1400億円)を投資した。
- この投資により、マイクロソフトはオープンAIの技術への独占的なアクセスを得る一方、マイクロソフトはオープンAIの独占的なクラウドプロバイダーとなった。だが、22年11月に生成AIブームの最初の大ヒット製品を公開したのはチャットGPTを擁するオープンAIだった。
- チャットGPTは新しい文章を生成し質問に答える強力な能力を持ち、米アルファベットや米メタといったシリコンバレーの巨大IT企業に製品計画の大幅な見直しを迫った。マイクロソフトはオープンAIとの提携によって、老舗IT企業から現代のAIブームをけん引する代表的な企業へと変化を遂げ、一時は世界で最も価値のある企業になった。
- 両氏の関係が最も親密だった時期には、ナデラ氏がアルトマン氏に5、6回連続でテキストメッセージを送り、アルトマン氏も同じように返信することが珍しくなかった。
- 両社いずれかで従業員が何か問題にぶつかると、アルトマン氏は社内チャットツール「スラック」にナデラ氏との会話のスクリーンショットを直接投稿し、物事を前に進めようとすることがよくあったと事情に詳しい関係者は語った。
- マイクロソフトは23年初めに追加で100億ドルを投資し、これによりオープンAIは新たなモデルの訓練のためにマイクロソフトからデータセンターを借りることができた。同年後半、アルトマン氏が理事会メンバーによって一時的にオープンAIから追放された際には、ナデラ氏はアルトマン氏の雇用を申し出た。
- 当時の出来事はオープンAIの社内で「一時的な異変」として知られるようになった。ナデラ氏にとってこの騒動は、アルトマン氏とオープンAIには万が一に備えた「保険」が必要であることを示した。
- 物議を醸す人事
- アルトマン氏の知らないところで、ナデラ氏はグーグル・ディープマインドの3人の共同創設者の1人、ムスタファ・スレイマン氏を採用しようと考えていた。ナデラ氏はスレイマン氏を口説き落とそうと会合を重ねた。24年初めにはスイスのダボスで会談したが、当地のイベントでナデラ氏はアルトマン氏と共に討論会に参加していた。
- マイクロソフトは、AI新興企業インフレクションからスレイマン氏らを引き抜くために6億5000万ドルを払った。関係者によると、スレイマン氏は、当時オープンAIが公開していた最も高度な技術だった「GPT-4」に匹敵する大規模言語モデルの構築に取り組み始めた。
- このプロジェクトは厳しいスタートとなった。関係者によると、オープンAIに匹敵するモデルの構築が予想以上に困難であることが初期の訓練で判明し、マイクロソフトはこれまで通りオープンAIを頼りにすることになった。
- 知的財産権の共有に関する会議で、スレイマン氏は当時オープンAIの最高技術責任者(CTO)を務めていたミラ・ムラティ氏らの前で、オープンAIの弁護士たちを怒鳴りつけたと関係者は述べた。
- スレイマン氏はコメントの要請に応じなかった。
- 両社の間で緊張を生んでいる大きな要因として、オープンAIが人間並みの知能を持つモデルの開発に取り組んでいることが挙げられる。両社の合意によると、人間のような知能を持つモデルの開発にオープンAIが成功した場合、同社の理事会にはマイクロソフトとの関係を変更する権限が与えられる。アルトマン氏は、そうした機能はまもなく構築できるとの自信を口にしている。
- マイクロソフトの担当者らは交渉の席でオープンAIに対し、現在の技術はそうした水準にはほど遠いと伝えたと関係者は語った。ナデラ氏は2月に人気ポッドキャストで、そのような節目に到達したと宣言することには「意味がない」として一蹴した。
- オープンAIの幹部らは驚いたと関係者は語った。
- オープンAIは一方、マイクロソフトからさらなるコンピューティングパワーの提供と最先端チップへのアクセスを求めている。マイクロソフトはオープンAIに対し、可能な限りのものを提供しており、また独占契約における制限を緩和したと伝えている。
- マイクロソフトでは昨年夏、オープンAIによる強力で新たな推論モデル(「ストロベリー」というコードネームが付けられていた)のコード引き渡しが遅すぎるとの不満が高まっていた。両社の交渉を知る関係者が語った。オープンAIはこのモデルの能力を理解するためには追加の時間を必要としていたと、同社の考えに詳しい関係者は話した。
- 最近ではアルトマン氏とナデラ氏はテキストメッセージのやり取りを減らし、主に毎週の定期的な電話で話をしている。
- マイクロソフトとオープンAIは野心的なデータセンタープロジェクトについて交渉を行っていたが、アルトマン氏が一時解任された後、マイクロソフトはこのプロジェクトを保留にしたと関係者は語った。
- アルトマン氏は1月、ドナルド・トランプ米大統領、ソフトバンクグループを率いる孫正義氏、米オラクルの共同創業者ラリー・エリソン氏と共にホワイトハウスの演壇に立っていた。AI関連で最大5000億ドルを投資する「スターゲート」計画の発表の場だった。このプロジェクトはアルトマン氏が以前にナデラ氏と実現を目指していたものと非常に似ていた。ナデラ氏はその時、ホワイトハウスから遠く離れたダボスで世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に出席していた。
- ESGファンド、資金流出額が過去最大-地政学リスクの高まりで - Bloomberg
- 世界のESG(環境・社会・企業統治)ファンド市場の資金流出額が、四半期ベースで過去最高水準に達したことが、モーニングスターの分析で明らかになった。
- 同社によると、「地政学面の不確実性とESGへの反発」の高まりを背景として、2025年1ー3月(第1四半期)に推計86億ドル(約1兆2000億円)の資金が流出した。昨年10ー12月期の181億ドル規模の純流入から「鮮明な反転」としている。
- 世界最大のESG投資市場を持つ欧州でも、12億ドルが流出した。モーニングスターが18年に分析を始めて以来、欧州のESGファンドが資金流出超になるのは初めてだ。
- トランプ米大統領の就任により「地政学的環境がますます複雑化する」中で、ESGファンド市場は不安定な状態だと説明している。
- モーニングスター・サステナリティクスのサステナブル投資調査責任者ホーテンス・ビオイ氏は、第1四半期の結果について「資金フローだけでなく、市場におけるサステナブル投資戦略の捉えられ方や位置付けを巡る変化の兆しを示している」と電子メールで指摘した。
- ビオイ氏は「米国でのESGへの反発の激化に伴い、市場では統合、ブランド刷新、慎重な商品開発の動きが出てきている」とも分析。米国のそうした動きは足元で欧州の状況にも顕著な影響を及ぼしているという。
- モーニングスターによると、米国では、トランプ氏による気候変動対策への攻撃や、DEI(多様性、公平性、包摂性)を標的にした大統領令発布に伴う法的リスクを背景に、運用会社がESGへの言及を控える動きが拡大。欧州投資家の間では、米運用会社の気候・サステナビリティー関連の目標への取り組み姿勢を疑問視する声も出てきている。
- 一方、欧州では規制当局がESGを巡る過大なアピールへの取り締まりを強化しており、欧州連合(EU)と英国の双方で新たな投資要件が導入されている。
- プライベート市場、米景気後退なら破綻の危機-ジェフリーズ - Bloomberg
- 米国経済が深刻なリセッション(景気後退)に陥れば、プライベート市場はメルトダウンの危機に瀕するだろうと、ジェフリーズでグローバル株式戦略責任者を務めるクリストファー・ウッド氏は述べた。
- 30日にブルームバーグテレビジョンとのインタビューに応じたウッド氏は、「米国の景気が本格的な下降局面に入る場合、米国で崩壊するのはプライベートエクイティー(PE、未公開株)とプライベートクレジットだ」と指摘。「だが、それには本格的な景気の落ち込みが必要で、それがなければ破綻は起こらない」と説明した。
- KKRやアレス・マネジメント、アポロ・マネジメントなど米プライベート市場の投資大手は、トランプ大統領の関税発表を受けて株価が急落。ポートフォリオに抱える企業の多くが、関税で甚大な打撃を受ける恐れがあるとみられたためだ。直近の株価下落の前ですら、利益確定による資金回収に苦労し、出資者への資金返済が思うように進まない投資会社は多かった。
- プライベートクレジットファンドには固有の問題もある。国際通貨基金が先週発表したリポートによると、2024年末時点でファンドの借り手企業の40%余りが事業のフリーキャッシュフローがマイナスだった。この割合は21年末に25%近くだったため、3年間で約15ポイントも上昇した。
- 「米国でリセッションがあるかについて、自分は強い見解を持っていない」とウッド氏は述べつつ、「それでも本当に発表された通りの関税が実施されるのなら、リセッションに陥るリスクは明らかに上昇する」と続けた。
- 米小売り大手、「関税値上げ」抑えているが - WSJ
- 米小売り大手各社は、関税引き上げに直面する中、携帯電話の充電器やタオル、ミキサーといった日用品の価格を低く抑えるため、あらゆる手段を講じている。
- 小売り大手は納入業者にコスト上昇分の吸収を迫ったり、自社オフィスで提供する無料サービスを取りやめたりしている。中国からの輸入品の一部の出荷を停止し、米国にすでに輸入された在庫商品に頼ろうとしている。
- 大半の価格は今のところ、全体として横ばいを維持している。電子商取引調査会社トラジェクトデータが収集したデータをウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が分析したところ、ウォルマート、ターゲット、アマゾンがオンラインで販売する約1万点の日用品の平均価格は(相互関税が発表された)4月2日以降、実質的に横ばい状態であり、また1月以降ではおおむね下落している。
- だがウォルマート、ターゲット、ホーム・デポの最高経営責任者(CEO)らは先週、ドナルド・トランプ大統領と面会し、この現状はいつまでも続かないという強力なメッセージを伝えた。
- CEOらはトランプ氏に対し、今後値上げを避けるのは難しくなると警告。関税コストを避けるため、小売業者が販売を取りやめるケースが出てくれば、特定の商品が品薄になる可能性もあると指摘した。一方で、商品価格をできるだけ長い間、できるだけ低く抑えるよう努力すると大統領に約束した。この面会をよく知る複数の関係者が明かした。
- 価格の抑え込みにひとまず成功しているのは、追加関税発動に先立って、輸入する商品を増やそうと小売業者と納入業者が努力したことが理由の一つだろう。
- 小型家電を小売業者に卸しているミッド・ウエスト・トレーディング・アンド・TYLTは最近、2025年に予想される米CVSヘルスなどの顧客からの注文に十分対応するため、ベトナムから前倒しで商品を輸入したとスティーブ・アドルフCEOは述べた。今月トランプ氏がベトナムへの相互関税の発動を90日間停止すると発表したためだ。
- 購入の前倒しで事前の費用負担は増えたが、アドルフ氏によると、携帯電話の充電コードや小型スピーカーなどの商品は、現行価格でこそ需要があると同社は考えている。こうした対応は、在庫を抱えたり前払いしたりする必要がない小売業者には有利に働く。 ウォルマート、アマゾン、ターゲットは納入業者に対し、関税コストの負担増も求めている。だがその戦術では関税による追加コストを完全には埋め合わせられず、特に中国の場合は難しい、とメーカーや小売業者は話している。
- アマゾンの場合、独立系販売業者が売上高の60%以上を占め、商品の大部分を中国から輸入している。アマゾンには、販売業者が価格を過度に引き上げたり、他の場所で見つけた価格よりも高く販売したりすると、ペナルティーを科すアルゴリズムが導入されている。
- 一部の販売業者は、どの程度の価格上昇で、アマゾンのシステムが掲載商品をダウングレードする可能性があるかを調べるため、最大で30%の値上げを試している。台所用品をアマゾンに出品しているブランドン・ファーマン氏はそう述べた。彼らは実際にダウングレードが起きると、価格を下げるのだという。同氏によると、多くの販売業者は5%程度の小幅な値上げを試している。
- WSJの分析によると、4月には一部日用品の価格が小幅に上昇した。50ドル(約7100円)以下の商品や、特定ブランドの充電器やブルートゥース対応スピーカー、その他の電子機器などだ。だが全般的にみて消費財の価格はまだ上昇していない。ファーマン氏は、関税の影響を受ける商品の多くがまだ港を通過していないと述べた。
- ウォルマートの広報担当者は、納入業者との問題解決を含め、価格を低く抑えるために同社はあらゆる手を尽くしていると述べた。「『われわれ』と『彼ら』の対決ではない。多くのことが流動的だ」
- 「値上げせざるを得ないケースも出てくるだろう」と広報担当者は述べた。アマゾンは、商品の平均販売価格に大きな変化は見られないと述べた。ターゲットはコメントを控えた。
- ウォルマートは年末商戦向けの中国メーカーへの商品注文の一部を停止した。事情に詳しい複数の関係者が明かした。ターゲットは中国メーカーから直接買い付ける商品の出荷を一時停止した。出荷状況を把握している関係者はそう述べた。一時停止によって時間が稼げる。
- アマゾンは関税発表を受け、中国の納入業者への注文の一部をキャンセルした。WSJの分析によると、トランプ氏によるカナダとメキシコへの関税が3月初めに発動され、在庫商品の割合は約4ポイント低下した。それらの関税が数日後に延期された後も、在庫は回復しなかった。出荷データを扱う企業や米港湾当局者によると、中国から商品を積んで米国に向かう船の数は、キャンセルの影響で急減している。
- 一部のコスト削減策はすでに実施されている。先週、ウォルマートはニュージャージー州ホーボーケンにあるオフィスの従業員に対し、無料の皿やボウル、カップの提供をやめると通告した。従業員に送られたメモでは、食器を持参するよう促している。
- 一方、小売業者は値上げが必要となる時期を遅らせるため、商品以外の事業にも注力する構えだ。アマゾンは同社が商品を直接購入している一部の納入業者に対し、今年の広告出稿予定を改めて確認するメールを送るように要請した。納入業者と協力するコンサルタントのマーティン・ヒューベル氏はそう述べた。アマゾンの2024年の広告収入は約560億ドル(約8兆円)に達し、同社のウェブサイトに広告を出す販売業者がその大半を占めている。
- ウォルマートは昨秋、多くの納入業者に対し、広告支出を前年比約25%増やすよう要請した。事情に詳しい関係者はそう述べた。この交渉はウォルマートの年に1度の広告支出に関する協議の一環だという。ウォルマートの広告収入は昨年、約27%増の44億ドルとなった。「大手小売りが広告を(関税に対処するための)てこに使うのは間違いない」。ウォルマートの元幹部で現在はコンサルティング会社トゥモローのCEOであるジョーダン・バーク氏はそう指摘した。
- 米製造業、「純国産」の高いハードル - WSJ
- 米アイダホ州に本社を置くデックドは当初から「純国産」メーカーを目指してきた。ピックアップトラック用の引き出し式収納システムを製造しており、材料費の95%は米国のサプライヤーに支払っている。
- 残りの5%を米国内に移そうとする取り組みには困難が伴ってきた。ビル・バンタ最高経営責任者(CEO)は、中国から購入しているボールベアリングの国内調達先を探したが行き詰まったと話す。
- 「価格とリードタイムの面で競争力のある部品を見つけるのに苦労している」と同氏は述べた。
- 米国では産業基盤の大部分が国外に移転したものの、多くの企業は「メード・イン・USA」を強調してきた。新型コロナウイルス流行に伴うサプライチェーン(供給網)混乱を受けて一部の製造業は国内に回帰し、ドナルド・トランプ大統領は関税導入にはこの流れを加速させる狙いがあると主張する。
- すでに米国で製品を作っているメーカーは、国内だけで完結するサプライチェーンを構築するのは難しいと指摘する。製品に不可欠な部品や材料はもはや国内で生産されていないか、あるいは入手可能な量が少なすぎたり価格が高すぎたりするという。
- リッキー・カウシド氏は、ニューヨーク・ブルックリン地区に本社があるラピッド・プラスチックスの共同オーナーだ。同社では6人が働き、百貨店などの小売業者向けに高級コートハンガーを製造している。同氏によると、ハンガー用の金属フックを供給していた国内サプライヤーは軒並み20年以上前に廃業したか国外に移転した。
- 現在は中国からフックなどの金属部品を調達しており、米国の対中関税によってコストが急速に上昇している。関税導入前に40セント(約57円)だったスカートハンガーのバーは現在は80セントになったという。
- カウシド氏は、米国製の部品を見つけられないメーカーに対しては政府の政策で例外を設けるべきだと主張する。
- 「どこかの企業に『工場を開いて当社向けにこの部品を作ってください』と頼むわけにはいかない」と同氏は述べた。
- カリフォルニア州の工場用機械メーカー、ハース・オートメーションも同様の主張をしている。同社は製品のフレーム用に中国から鋳鉄を輸入している。同社の対外業務担当バイスプレジデントのピーター・ジアハット氏は、1年間で1億ポンド(約4万5000トン)を超える同社の必要量を生産できる鋳造所は米国にはなく、生産の国内回帰も見込めないと語る。
- 新たな鋳造所の建設については、1ポンド当たり数ドルの価値しかない製品を生産するために数億ドルの投資が必要だと同氏は述べ、労働者の確保も難しいと指摘した。
- 「鋳鉄という超ローテク産業が米国で事業を展開するのは現実的ではないように思える」とジアハット氏は話した。
- 同氏によると、ハースでは、鉄などの中国製部品に払う関税によって機械の価格が約20%高くなる可能性がある。一方、韓国や台湾、日本を拠点とする競合他社は10%~14%の関税で製品を米国に輸出している。
- 同社はすでにカリフォルニア州オックスナードの工場で生産を縮小し、残業は廃止したという。同社製の機械に対する需要増を見込んでネバダ州に5億ドルの工場を建設中だが、関税が軽減されなければ工場の稼働は遅れる可能性があるとジアハット氏は話す。
- サプライチェーンの米国化が進んでいるとするメーカーもある。ノースダコタ州の工場で人工呼吸器を製造するコーベント・メディカルは2年前、部品の最大70%を中国から調達していた。
- 現在では部品の最大70%を米国のサプライヤーから調達しており、今後数年以内にこの割合を100%に引き上げることを目指している。
- コーベントのリチャード・ウォルシュCEOは、板金やプラスチック製の部品は比較的容易に国内製にすることができたものの、人工呼吸器に使われるトランジスタやモーター、電源ボードは台湾からしか調達できないと話す。
- ただ同社は、回路基板を製造するミネソタ州のバーサ・エレクトロニクスと契約することで、サプライチェーンの重要な部分を米国に戻すことができた。基板の一部の部品は国外から調達しているが、コストの大部分は組み立てにかかるとウォルシュ氏は言う。バーサのケビン・ジョンスラッドCEOによると、同社は自動化機械を使って抵抗器やコンデンサー、集積回路を基板に配置している。ただ、作業員が手作業ではんだ付けすることもある。少量生産に特化しているため、国外のサプライヤーと競争できるという。
- 「携帯電話のようなデバイスを数百万台も作っているわけではない」と同氏は述べた。
- 貿易戦争が始まる一方で、「メード・イン・USA」として販売される消費者向け包装商品や食料品での数は減少していることが調査会社ニールセンIQのデータで示されている。原産地が米国と表示された商品の数は、4月12日までの12カ月間は約10万で、その前の12カ月間の10万2000から減少した。
- 弁護士の間では、企業の原産地表示に対する米連邦取引委員会(FTC)の監視が強まる可能性があるとの指摘がある。FTCは企業が米国製をうたえるかどうかについて厳格な規則を設けており、「全て、またはほぼ全て」の構成要素が米国で生産されていなければならないとしている。
- メーカーは米国製であることを強調する際に修飾語を加えることがある。一方、ペンシルベニア州に本社を置く工具メーカーのチャンネルロックは、国内生産のプライヤー、工具バッグ、ドライバーを「100%米国製」と呼んでいる。同社の販売担当エグゼクティブバイスプレジデントのライアン・ディアメント氏は、金属や布地、段ボール包装を含む全ての材料が国内での調達だと述べた。
- それでも、同氏は関税に懸念を抱いている。関税によって米国製の金属製品に対する需要が高まれば、チャンネルロックのプライヤー向け鋼材を生産する製鉄所は自動車メーカーなど大口顧客を優先する可能性があるという。
- 「2025年は影響がないかもしれないが、当社が26年に再び交渉する際には状況が変わっているかもしれない」とし、「非常に多くの要因が絡み合っている」と話した。
- AIが実現する「常時接続経済」 企業はペースアップ必要 - WSJ
- 十分に認識されていないが、人工知能(AI)の導入によってさまざまな職務や業界で利益を生み出す時間が増え、ビジネスは大きく変わりつつある。企業は、トレーディングと同じように、より多くの市場が1日24時間体制で稼働する世界に順応し始めることが必要だ。
- 人間の労働者とは異なり、医療やサイバーセキュリティーなどの分野で稼働しているAIエージェントは、ワーク・ライフ・バランスを気にすることはない。疲れることもおなかがすくことも、病気で休むことも、休暇に出掛けることもない。恋に落ちたり、愛が冷めたり、帰宅途中に買い物をしたり、子どもが眠る時に本を読んでやったり、資源ごみを分別したりすることもない。
- 「AIは従来の時間的・能力的制約を打ち破る自動化を提供し、企業が24時間連続で稼働できるようにすることで、経済を一変させつつある」。セコイア・キャピタルのパートナー、コンスタンティン・ビューラー氏はそう話す。
- ビューラー氏はこのテーマ――同氏は「オールウェイズ・オン・エコノミー(常時接続経済)」と呼んでいる――に関する投資理論を構築した。このアイデアが生まれたのは、セコイアと暗号資産(仮想通貨)投資会社のパラダイムが2022年に超高速取引業者シタデル・セキュリティーズに対して行った11億5000万ドル(約1630億円)の投資を手掛けた時だった。同氏は、シタデルがアルゴリズムとAIを金融市場に応用することで、自然と休みなく稼働するようになったことをそれまで以上に理解するようになった。
- 今後5年から7年の間に経済のさらに広い分野でこれと同じ動きが起きるとビューラー氏はみている。
- 夕方から朝までのワークフロー
- クラウドコンテンツ管理会社ボックスのアーロン・レビ最高経営責任者(CEO)はこれまで、ある分野について市場戦略分析などの調査を行うよう部下に指示するメールを出して、午後10時か11時頃に一日の仕事を終えることがあった。今ではそうした作業をAIエージェントに「蹴り飛ばす」ことができる。AIエージェントは市場リポートや競合他社のウェブサイト、業界誌、ソーシャルメディア上の会話などの情報源から取得した大量のデータを徹底的に調査し、与えられたテーマについて総合的な概要を作る。レビ氏は朝一番でこの概要を確認できる。
- 「真夜中にアナリストに指示を送って、目が覚めた時には出来上がっているという世界はこれまでなかった」とレビ氏は話す。「もしかしたら夜型の人間は会社に10年に1人はいたかもしれないが、それはほぼ不可能だった」
- こうした人的制約が、あらゆる種類の企業で意思決定の遅れや機会の見逃しにつながることは珍しくなかった。
- 一方で常時接続の能力は、企業が顧客のニーズに気を配り、「待ち時間ゼロ」を実現しようとしている販売などの分野で既に起きている動きに役立つ。ソフトウエア体験の改善支援を目的に企業にAIエージェントを提供するアルタの共同創業者でCEOのスタブ・レビ・ニューマーク氏はそう語る。昼間に利用できるのと同じ能力で1日24時間、顧客の問い合わせに対応できることがますます重要になっている。
- 「これは期待の文化的変化だ」と同氏は言う。「1分遅れるごとに顧客の意思が減退する可能性がある」
- 加速するビジネスのペース
- ほとんどのAIエージェントやAIツールはコモディティー化するだろう。しかしニューヨーク大学スターン経営大学院の最高AIアーキテクト、コナー・グレナン氏によると、常時接続経済では、ワークフローや役割、AIエージェントとの連携能力を最大限に活用する企業が、持続的な競争力を伸ばす可能性が高い。
- その実現のために最も重要な原則は、これまで以上に早く動くことだ。製品のユーザー体験向上を図る企業を支援するソフトウエアプラットフォームを提供しているペンドゥの共同創業者でCEOのトッド・オルソン氏はそう語る。「企業は新たなリズムを作り出す必要がある」
- 同氏によれば、それは、これまで続けてきた多くの習慣や決まりを重視するのをやめるということだ。例えば、スラックなどの「非同期型」プラットフォームに人を集める方が時間はかからないにもかかわらず、一週間または一カ月に一度、一つの部屋に人を集めて大きな決断を下すことがそれに当たる。
- ビューラー氏が言うように、常時接続経済への移行で重要なのは、AIを使って予測することだけではなく、その予測に基づいて絶えず行動することだ。
●ロシア、ウクライナ、中東情勢- 中国製造業活動が23年12月以来の低水準-米関税打撃、刺激策求める声 - Bloomberg
- 中国の製造業活動が4月に縮小し、2023年12月以来の低水準にとどまった。トランプ米政権の対中追加関税による影響が早くも浮き彫りとなっており、迅速な政策強化を求める声が広がっている。
- 国家統計局が30日発表した4月の製造業購買担当者指数(PMI)は49。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は49.7、3月は50.5だった。活動拡大・縮小の境目は50。
- 建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは50.4。エコノミスト予想は50.6、3月が50.8だった。
- トランプ政権が中国からの輸入品に145%の高関税を課した後、今回のPMIは中国経済の動向を示す初の公式データとなる。対中追加関税は昨年の経済成長の3分の1近くに寄与した輸出に大きな逆風となりそうだ。
- モルガン・スタンレーの中国担当チーフエコノミスト、邢自強氏はブルームバーグテレビジョンで、「予想以上に悪い結果だ。関税による影響が出始めたことを示している」と分析。今四半期の大幅な景気減速を見込んでおり、それが新たな刺激策の引き金となる可能性があると指摘した。
- 貿易戦争を受け、UBSグループやゴールドマン・サックス・グループなどはここ数週間で、中国の25年の国内総生産(GDP)成長率見通しを約4%、あるいはそれ以下に引き下げた。貨物輸送は落ち込んでいる。最大60%減る可能性があるとの推計もあり、中国の輸出企業にとっては警戒信号だ。
- 製造業PMIの新規輸出受注は22年12月以来の低水準にとどまり、低下幅も同年4月以来の大きさとなった。22年4月は上海市が新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)に入っていた時期だ。また、雇用指数は昨年2月以来の低水準で、当局には労働市場の安定化に向けた圧力が増している。
- 輸出業者への圧迫を和らげるため、中国政府は今週、苦境にある企業の資金繰り支援や国内消費の底上げに向けた計画を打ち出した。ただ、大規模な経済刺激策の発表は見送っており、3月上旬に承認された景気対策の執行に軸足を置いている。
- オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のシニアストラテジスト、邢兆鵬氏は中国当局が今後2カ月で、関税による影響を部分的に相殺するため、的を絞った対策を講じると見込んでいるが、貿易対立の長期化を見据えて政策的な余地も残すとの見方を示した。
- 国家統計局の趙慶河氏はPMI低下の要因として、前月からのベース効果や「外部環境の急激な変化」を挙げた。貿易戦争に勝者はいないとの政府の立場を改めて強調し、米国や英国、日本など主要国でも製造業活動の減速がみられると発表文で指摘した。
- 一方、民間指標の財新製造業PMIは4月に50.4と、エコノミスト予想の49.7を上回った。前月から伸びたことを示しているが、拡大ペースは鈍化した。財新PMIはより小規模で輸出型の企業の動向を反映する傾向にある。
- 財新智庫の王喆シニアエコノミストは「米国の関税引き上げが外需に打撃となり、新規輸出受注は23年7月以来最も速いペースで減少し、4月の新規受注全体の増加もごくわずかだった」とコメントした。
- 中国政府系ファンド、米プライベート資産の売却着手-貿易戦争激化で - Bloomberg
- 中国の政府系ファンド、中国投資(CIC)は、米国のプライベート資産に対するエクスポージャーの削減に乗り出した。米中の貿易戦争が激化するなか、対米投資リスクの高まりに対応する。事情に詳しい関係者が明らかにした。
- CICが圧縮を計画している米非公開資産には、プライベートエクイティー(PE、未公開株)のほか、不動産やインフラが含まれる可能性があると関係者は述べた。すでに米企業が運用する約10億ドル(約1430億円)相当のPE投資について売却先を探しているという。
- CICは現時点でコメントの要請に応じていない。ロイター通信はこれに先立ち、カーライル・グループやブラックストーンなど8社が運用するファンドに組み入れられたPE投資の売却をCICが計画していると報じていた。
- 米中が関税で報復の応酬を繰り広げる中、中国の政府系ファンドにとっては、米資産に対するリスクが今年に入って高まっており、CICは投資引き揚げに時間を要するプライベート資産へのエクスポージャー圧縮に動いていると、関係者は述べた。
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他●市況(ChatGPTによる要約版)- NY市場サマリー(30日)ダウ・S&P上昇、ドル・長期債利回りも上昇 | ロイター
- ### 【為替市場】
- - **ドルは主要通貨に対して上昇**。
- - 米第1四半期GDPは**予想に反して年率0.3%減**とマイナス成長(2022年Q1以来)。
- - マイナス成長の主因は**関税見越した駆け込み輸入**と分析。
- - ドル/円は**0.3%高の142.77円**、ユーロ/ドルは**0.4%安の1.1343ドル**。
- ### 【米国債券市場】
- - **10年債利回りは小幅上昇**(4.181%)、**30年債も上昇**。
- - 一方、**2年債利回りは低下**(3.623%)。
- - マイナス成長&インフレ継続で**FRBの政策見通しが複雑化**。
- ### 【米国株式市場】
- - **ダウとS&P500は上昇**。GDP悪化で日中は下落していたが、**終盤に買い戻し**。
- - **主要消費財セクターが上昇**。モンデリーズは好決算で3.8%高。
- - 一方、**SMCIは業績下方修正で11.5%安**、**スナップは業績見通し非開示で12.4%安**。
- ### 【金先物】
- - **ドル高で売りが優勢となり続落**(6月物:前日比14.50ドル安の3319.10ドル)。
- - ただし、**FRBの利下げ観測が下支え**。月間では**5.36%上昇**。
- ### 【原油先物】
- - **サウジが増産方針を示唆**→**供給過剰懸念で急落**。
- - WTI6月物は**3.66%安の58.21ドル**と、**約4年ぶりの安値**。
- 米経済指標の悪化とトランプ政権の関税政策が、各市場に複雑な影響を与えています。
- 欧州市場サマリー(30日) | ロイター
### 【ロンドン株式市場】- **FTSE100は13日続伸**したが、**4月は月間で1.02%下落**し、2カ月連続の下落。- 一方、**FTSE250は6日続伸・月間で2.10%上昇**。- **医療関連株が堅調**。スミス・アンド・ネフュー(S&N)は5.8%、GSKは3.6%上昇。- **銅価格の下落を受けて鉱業株が下落**、グレンコアは7.4%下落。### 【欧州株式市場】- **7営業日続伸**。ヘルスケア株・不動産株が上昇。- **STOXX600は月間で1.21%安**と、こちらも2カ月連続の下落。- 石油・ガス株は4月に10.91%下落、**原油需要への懸念が影響**。- ソシエテ・ジェネラルは好決算で3.8%上昇。### 【ユーロ圏債券市場】- **国債利回りが低下**。米欧の指標がまちまちな中、**関税による景気減速懸念**が広がる。- **ドイツ・フランスのインフレ率はやや上振れも、鈍化傾向**。イタリアは予想を下回る。- ユーロ圏のGDP速報値は前期比0.4%増(予想0.2%)と加速。- **トランプ政権の関税政策が成長率を押し下げる可能性**が指摘されている。全体として、医療株など一部好調な分野がある一方、関税政策や資源価格の影響で市場全体は不透明感が強い状況です。- 備忘録(2025/4/29)●海外企業決算
- [ECL] エコラボ 1Q減収営業増益 売上高2%減36.9億ドル、営業益7%増5.55億ドル、EPS1.41ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [SYY] シスコ 3Q増収減益 売上高1%増195億ドル、営業益6%減6.81億ドル、EPS0.82ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PCAR] パッカー 1Q減収最終減益 売上高16%減69.1億ドル、純利益58%減5.05億ドル、EPS0.96ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PFE] ファイザー 1Q減収最終減益 売上高8%減137億ドル、純利益5%減29.6億ドル、EPS0.52ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [GM] ゼネラルモーターズ 1Q増収減益 売上高2%増440億ドル、営業益10%減33.5億ドル、EPS3.35ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [GLW] コーニング 1Q増収営業増益 売上高16%増34.5億ドル、営業益75%増4.45億ドル、EPS0.18ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [SHW] シャーウィンウィリアムズ 1Q減収 売上高1%減53.0億ドル、純利益微減5.03億ドル、EPS2.00ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [XYL] ザイレム 1Q増収増益 売上高2%増20.6億ドル、営業益11%増2.31億ドル、EPS0.69ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [SPGI] S&Pグローバル 1Q増収増益 売上高8%増37.7億ドル、営業益14%増15.7億ドル、EPS3.54ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AMT] アメリカンタワー 1Q増収営業増益 売上高2%増25.6億ドル、営業益10%増12.5億ドル、EPS1.04ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [MO] アルトリアグループ 1Q減収減益 売上高6%減52.5億ドル、営業益33%減17.8億ドル、EPS0.63ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [KHC] クラフトハインツ 1Q減収減益 売上高6%減59.9億ドル、営業益8%減11.9億ドル、EPS0.59ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PYPL] ペイパル 1Q増収増益 売上高1%増77.9億ドル、営業益31%増15.3億ドル、EPS1.29ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [KO] コカコーラ 1Q減収増益 売上高2%減111億ドル、営業益71%増36.5億ドル、EPS0.77ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [RCL] ロイヤルカリビアンクルーズ 1Q増収増益 売上高7%増39.9億ドル、営業益26%増9.45億ドル、EPS2.70ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [UPS] ユナイテッドパーセルサービス 1Q減収増益 売上高1%減215億ドル、営業益3%増16.6億ドル、EPS1.40ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [HON] ハネウェル 1Q増収営業増益 売上高8%増98.2億ドル、営業益6%増19.7億ドル、EPS2.22ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [HLT] ヒルトンワールドワイド 1Q増収増益 売上高5%増26.9億ドル、営業益1%増5.36億ドル、EPS1.23ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PPG] PPGインダストリーズ 1Q減収最終減益 売上高4%減36.8億ドル、純利益6%減3.75億ドル、EPS1.64ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [SBUX] スターバックス 2Q増収減益 売上高2%増87.6億ドル、営業益45%減6.01億ドル、EPS0.34ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- スタバ、四半期世界売上高が予想以上に減少 米経済巡る不確実性で | ロイター
- [V] ビザ 2Q増収営業増益 売上高9%増95.9億ドル、営業益2%増54.3億ドル、EPS2.32ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [BKNG] ブッキングHD 1Q増収営業増益 売上高8%増47.6億ドル、営業益34%増10.6億ドル、EPS10.07ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- エヌビディアの「トランプ禍」 中国以外に波及も - WSJ
- トランプ米政権は最近、米画像処理半導体(GPU)大手エヌビディアの中国市場向け人工知能(AI)用チップの輸出を事実上禁止した。同社は成長の機会を制限され、中国・華為技術(ファーウェイ)などの競合企業に好機が生まれている。これは序章に過ぎないかもしれない。
- AIの演算能力にこれまでで最大級の制約が課されるまで1カ月を切った。「AI拡散」規則と呼ばれるこの規制は、AI用チップの販売量に上限を設けるもので、多くの国が対象となる。米国の友好国とされるイスラエルやスイス、インド、サウジアラビアも含まれる。
- さらに、マイクロソフトやアマゾン・ドット・コム、グーグル親会社アルファベットなどの米テック大手が、これらティア2市場で大規模なAIデータセンターを構築する能力も制限されることになる。その狙いは、中国などが他国を通じてAI用チップや演算能力を獲得し、米国の輸出規制を回避するのを抑制することだ。
- ジョー・バイデン前大統領が任期終盤にこの拡散規則を発表した際、エヌビディアは「見当違い」との見方を示した。同社にどのような影響が及ぶのかを予測するのは難しい。規則は複雑で、トランプ政権が変更する可能性もあるからだ。だが発効の見通しは高まっている。
- トランプ政権は強硬姿勢を示している。4月には、エヌビディアが中国市場向けに設計した「H20」プロセッサーの輸出を事実上禁止した。貿易戦争ではとりわけ中国に矛先を向けており、バイデン時代からの措置であっても、ここで取り下げるのは体裁が悪い。
- だがこうした動きが、AI分野における中国の野心に抑制効果をもたらしているようには見えない。ファーウェイがテストしようとしている新型AI用チップがエヌビディアの売れ筋の「H100」プロセッサーに匹敵する可能性があるとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じると、エヌビディアの株価は28日に2%下落。年初来では20%余り下げている。
- AI拡散規制がこのまま導入されれば、エヌビディアの成長が一段と制限される可能性がある。エヌビディアは売上高の大半を国外で生み出している。対話型AI「チャットGPT」が登場し、米テック企業がAI向け投資を大幅に増やした後もそれは変わらない。
- バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ビベック・アルヤ氏によると、エヌビディアは昨年の売上高の4分の1近くを、規制対象となる中国以外の国で得た。同氏はエヌビディアの売上高が最大10%落ち込むと予想する。現行の対中規制で売上高はすでに4%失われた可能性があり、トランプ政権の政策が及ぼす影響はかなり深刻になりそうだ。本年度の売上高がアナリスト予想通り2010億ドル(約28兆7000億円)程度だとすると、打撃の規模は280億ドルということになる。
- エヌビディアは財務の備えが厚く、2025年の設備投資計画を今のところ据え置いている米テック大手のAIチップ需要が引き続き旺盛なため、短期的には打撃を乗り切れるかもしれない。だが長期的には、こうした制約がいずれ大きな痛手に発展する可能性がある。同規則は実質的に、エヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの米企業に対し、世界市場の規模を狭めることになる。
- これはファーウェイなど中国のナショナル・チャンピオン(国を代表する大手企業)のみならず、韓国や日本、欧州の企業にとってもチャンスで、より多くのAI関連売上高が米国外の企業に流れることになる。
- エヌビディアにとっては最悪のシナリオだ。だがこれよりは妥当な結果に落ち着く可能性もある。TDカウエンの政策アナリスト、ポール・ギャラント氏は3月のリポートで、トランプ政権が「より多くの国をティア1に分類する道筋を作る」のが現実的な選択肢だと述べた。ティア1に分類されると、GPUチップの購入はほぼ制限されない。
- 取引(ディール)をして合意を得るのも選択肢だ。エヌビディアは、バイデン前政権が拡散規則を公表した昨年以降、これに反対してきた。ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は1月にホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領と面会し、4月には同氏の邸宅「マールアラーゴ」で資金集めの晩さん会に出席した。
- だがそれは「H20」の輸出制限が発表される前のことであり、エヌビディアが米国でAIスーパーコンピューターを作るために最大5000億ドルを拠出する計画を明らかにする前のことでもあった。「H20が禁止される上、AI拡散規則が撤回されない中、エヌビディアが米国で5000億ドルのAIインフラ投資に同意するとは考えにくい」。UBSのアナリスト、ティム・アルクリ氏は4月15日付の顧客向けメモでこう指摘した。エヌビディアにとって、開かれたグローバル市場へのアクセスを維持できるかどうかは、ディールの腕にかかっているのかもしれない。
●日本企業- トランプ米大統領、自動車業界への関税巡る負担軽減を検討 - Bloomberg
- トランプ米大統領は、自動車業界に影響を及ぼしている関税の負担軽減を検討している。外国で製造された米国製自動車向け部品に関する変更や、外国製自動車に対する複数の関税適用に関する見直しを進める方針だ。
- ホワイトハウス高官は28日夜、自動車メーカー各社は鉄鋼やアルミニウムに課される他の関税についても負担を免れることになると明かした。
- ラトニック商務長官は電子メールでの声明で「トランプ大統領は、国内の自動車メーカーと偉大な米労働者らとの間に重要なパートナーシップを築いている」とし、米国への投資と国内生産拡大を表明した自動車メーカーに対して優遇措置を講じると述べた。
- この方針変更は、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が先に報じていた。
- トランプ氏は2期目就任100日を祝うために自動車産業の中心地であるミシガン州を訪れる予定。当局者によれば、トランプ氏は早ければ29日に同州で予定されている演説の前に自動車関税見直しに関する行政措置に署名する可能性があるという。
- 5月3日には外国製自動車部品に対する25%の関税賦課が予定されている。当局者によると、今回の見直しでは自動車メーカーは米国での自動車生産額に応じて、輸入自動車部品に課される関税の一部が払い戻されるという。
- 払い戻しの規模は時間とともに縮小される。自動車メーカーによるサプライチェーンの米国内への移行を促すと同時に適応する時間をメーカーに与える。
- フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は発表資料で、自動車関税を巡るトランプ氏の意向を歓迎すると表明。「自動車メーカー、部品会社、消費者への関税の影響を緩和する助けになる」と述べた。
- 米財務長官、中国で1000万人雇用喪失を警告 米回帰企業に税優遇も | ロイター
- ベッセント米財務長官は29日、トランプ大統領の就任100日を記念する記者会見で、トランプ氏が打ち出す関税措置の影響で、中国では1000万人の雇用が失われる可能性があり、中国政府はいずれ中国側の関税政策が持続可能でないことを認識するだろうと述べた。
- 日本については「実質的な協議を行った」と述べた。
- また、トランプ氏の関税措置が「サプライチェーンに深刻な影響が及ぶとは考えていない」とし、小売業者は状況を見越し、在庫を十分に管理しているという見解を示した。
- さらに、米国への生産移転を検討している企業に対し、トランプ政権は工場と設備の購入費用を全額即時償却を認める措置を講じ、その適用を2020年1月20日に遡及適用する方針だとも述べた。
- 「ここでの目標は、高品質の産業雇用を米国に戻すことだ。トランプ大統領は未来の雇用に興味があり、過去の雇用ではない」とも表明。米国には精密製造業が必要であり、必ずしも繊維産業は必要ではないと述べた。
- ●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標- 米求人件数が減少、昨年9月以来の低水準-労働需要の減退示唆 - Bloomberg
- 米消費者信頼感、約5年ぶり低水準-関税で先行きの悲観強まる - Bloomberg
- 米住宅価格指数、2月は前年同月比で伸びが鈍化-販売物件が増加 - Bloomberg
- 財の米貿易赤字が過去最大に拡大、1-3月GDPの弱含みを示唆 - Bloomberg
- ●金融市場、先進国トピックス
- ゴールドマンCEO、「状況は落ち着く」-現状の不確実性には苦言 - Bloomberg
- フランスも輸入少額小包に関税導入へ-SHEINなど中国ネット通販念頭 - Bloomberg
- カナダ総選挙、与党・自由党が僅差で勝利へ-過半数獲得は困難か - Bloomberg
- スペイン・ポルトガルの大規模停電、ほぼ全域で電力復旧 | ロイター
- ユーロ圏銀行融資、3月も伸び加速 米関税措置前で利下げが恩恵 | ロイター
- 欧州中央銀行(ECB)が29日発表したデータによると、ユーロ圏の銀行融資は3月も伸びが加速した。米国が世界的な貿易戦争を開始する前で、ECBの利下げが与信を後押しした。
- 企業向け融資は前年比2.3%増加で2月(2.0%増)から加速し2023年半ば以来の伸び率となった。家計向け融資の伸びも1.5%から1.7%に加速し2年ぶりの高水準となった。
- マネーサプライM3の前年比伸び率は3.6%で2月の3.9%から鈍化し、市場予想の4.0%を下回った。
- 世界経済の分断、最大の市場リスク=ノルウェー政府系ファンドCEO | ロイター
- 世界最大級の政府系ファンド、ノルウェー政府年金基金を運用するノルウェー中央銀行の投資管理部門(NBIM)のタンゲン最高経営責任者(CEO)はこのほどロイターに対し、世界経済の分断が進んでおり、市場にとって最大のリスクになるとの見方を示した。分断は低成長とインフレ加速をもたらすという。
- タンゲンCEOは、現在金融市場にとって最大のリスクは何かとの質問に対し、デカップリング(分断)と回答。同ファンドによる、世界経済の分断を想定したストレステストのシナリオを示した。
- CEOは「このような世界のデカップリングは非常にネガティブなシナリオだ」と述べ、具体的には「実際の戦争や冷戦、貿易戦争、ハイテク戦争がある。超大国間の大きな摩擦だ」と指摘。「経済成長の減速、インフレ圧力の高まりと不確実性の増加を招く」と説明した。
- 現在はそのようなシナリオになっているかとの問いに、「そのようだ」と断言した。 ストレステストのシナリオによれば、「分断化した世界」では同ファンドの運用資産価値が最大で3割強減少する可能性がある。
- 「日本国債、すでにミニ・ショック」 英キャプラ浅井将雄氏 - 日本経済新聞
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- イラン、「数兆ドル」の経済機会あると米国を誘惑-有利な核合意狙う - Bloomberg
- 関税問題で世界各国がトランプ米大統領とのディールを目指す中で、米国の長年の敵対国であるイランが同大統領に対し、自国経済に投資機会が旺盛にあると売り込んでいる。
- イランの核活動を巡る同国と米国の協議には、進展の兆しが表れている。この過程でイラン高官は恒久的でより効果的な核合意を確保しようと、ホワイトハウスに対して自国経済をあからさまに宣伝している。
- イランのアラグチ外相は先週、米紙ワシントン・ポストに寄稿し、新たな核合意が結ばれれば、約9000万人の人口を抱え世界最大級の石油・ガス埋蔵量を誇る同国に米国企業がアクセスできるようになり、「数兆ドル」の事業機会が生まれると主張した。
- シンクタンク、欧州外交問題評議会の中東・北アフリカ政策責任者エリー・ゲランメア氏は「1兆ドルの破滅的な戦争ではなく、1兆ドルの事業機会があるとの発言は、トランプ大統領の関心を引く方法だ」と指摘した。
- この手口は、ウクライナ戦争終結を巡りロシアが米国との交渉でとっている戦略と酷似する。
- 米国とイランの関係を敵対から経済協力に転換しようとすれば大変な要求となるだろうが、数十年にわたり中東の安全保障を不安定にさせてきた争いの解決に役立つ可能性はある。
- 1979年のイスラム革命と在テヘラン米国大使館人質事件を受け、イランは米国との国交を断絶。これに対し、米国は制裁と通商禁止をイランに科した。イランは中東地域における米国の影響力に対する防波堤と自らを位置づけ、核開発と反イスラエル政策が緊張を高めている。
- 日本・サウジアラビア関係の新時代の幕開け|ARAB NEWS
- ガザ戦争はイスラエル・エリート間の断層を露呈させた|ARAB NEWS
●その他エマージング- 中国、米国との協力に前向きな姿勢-関税対立がもたらす打撃を認識 - Bloomberg
- 中国商務省は29日、米国企業との通常の協力に前向きな姿勢を示した。中国はここ最近、米国の対中関税の報復として、国内航空会社に米ボーイングの航空機の追加納入を一切受けないよう指示していたばかりだった。
- 中国当局は、トランプ大統領が実施した関税引き上げが世界的な航空輸送市場を混乱させ、中国の航空会社だけでなくボーイングにも深刻な影響を及ぼしたと認識しており、商務省は同日発表の声明で、中国は米国が通常の貿易および投資活動に向けて安定かつ予測可能な環境を整備するよう望んでいると言明した。
- 声明内容は、中国からの和解の兆しとも受け取れる。商務省の元コンサルタントで、現在は北京にある対外経済貿易大学(UIBE)の教授を務めるジョン・ゴン氏は「この声明は、中国がが以前の決定を撤回したことは示唆されていないが、交渉には臨む用意があるという融和的なメッセージを伝えている」と語った。
- 韓国最高裁、李在明氏に5月1日に判決 公選法違反の上告審 | ロイター
- 中国、米国の圧力には「屈しない」 貿易摩擦巡り - WSJ
中国政府は29日、ドナルド・トランプ米大統領が通商合意に向けて圧力をかけようと試みる中、これに対抗する意向を示した。中国はソーシャルメディアに投稿した動画で、米国による強制に「決して屈しない」と表明し、他国にも抵抗を呼びかけた。動画は中国語版と英語版のナレーションがあり、中国外務省はその中で、覇権を維持しようとする米国の威圧的戦術を非難。米国との貿易対立で譲歩しない強気なメッセージを伝えた。動画には「決して屈しない!」とのタイトルがつけられ、中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」やXに投稿された。また中国を除く全ての貿易相手国に対するトランプ氏の相互関税が90日間停止されたことを批判し、4月に発表されたこの措置は各国による中国政府との貿易を制限させるための策略だとしている。ナレーションでは雷雨のドラマチックな映像が流れ、「これは『嵐の目』で、致命的なわなだろう」と主張。他国に向けて米国の圧力に抵抗するよう呼びかけている。さらに「世界の他の国々が団結して立ち上がれば、米国はただの小さな孤立したボートに過ぎない」としている。トランプ氏はここ数日、中国との貿易摩擦を巡り態度をやや軟化させている。動画は米中両政府が潜在的な合意の詰めに入る可能性があるとの楽観論が浮上する中で公開された。トランプ氏が中国製品に145%の関税を課したことを受け、中国政府は米国製品に125%の関税を課した。中国当局者らは交渉の意思を示しているが、圧力下では応じないとしており、進展があるかどうかは不透明な状況となっている。スコット・ベッセント米財務長官は28日、貿易摩擦を緩和する責任は中国側にあると述べていた。動画は「妥協では慈悲を得られないことを歴史は証明している。屈服すれば、さらなるいじめを招くだけだ」とし、「中国のため、世界のためにわれわれは立ち上がり、戦い続けなければならない」としている。●プロファイ、インフラ、自然災害●その他●市況(ChatGPTによる要約版)- NY市場サマリー(29日)ダウ300ドル高、利回り低下・ドル上昇 | ロイター
- **為替:**
- ドルは上昇。米国が自動車関税の影響を軽減する措置を発表し、一部貿易国との合意期待が背景。トランプ大統領が大統領令に署名の見通し。対円ではドルは0.2%高だが、4月全体では5%超下落。
- **債券:**
- 米経済指標が弱く、10年債利回りは3週間ぶりの低水準に。4月雇用統計が注目されている。
- **株式:**
- 上昇で終了。企業決算や貿易政策の注目材料が多かった。GMは関税不透明感から業績予想を撤回、UPSはアマゾン向け減少を受け人員削減を発表。
- **金:**
- 安全資産としての需要が一服し、反落。
- **原油:**
- 需給緩和懸念から続落。WTI6月物は1バレル=60.42ドルに下落。
- 欧州市場サマリー(29日) | ロイター
- **ロンドン株式市場:**
- ロンドン株は続伸し、FTSE100は12営業日連続上昇。銀行株が買われ、HSBCは好決算と自社株買い発表で2.6%上昇。他にもハウデン・ジョイナリー、エンテイン、トラビス・パーキンスなどが堅調。一方、石油・ガス株は軟調で、BPは決算不調で2.4%下落。
- **欧州株式市場:**
- 欧州株も6営業日続伸。米関税緩和措置や決算内容が好感され、銀行・防衛・ヘルスケア関連株が上昇。ラインメタルは好調な売上で8.5%高。ノボノルディスクやドイツ銀行も好材料で上昇。ポルシェは業績見通し引き下げで4.1%安。
- **ユーロ圏債券市場:**
- 米重要経済指標や米ハイテク大手の決算発表を控え、ユーロ圏国債はレンジ内で推移。独10年債利回りは2bp低下の2.49%、伊10年債利回りは横ばい。米中貿易摩擦の影響にも市場が注目。
備忘録(2025/4/28)
●海外企業決算
- [ROP] ローパーテクノロジーズ 1Q増収営業増益 売上高12%増18.8億ドル、営業益9%増5.25億ドル、EPS3.06ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CINF] シンシナティファイナンシャル 1Q減収最終赤字転落 売上高13%減25.6億ドル、最終赤字9000万ドル、配当0.87ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [NXPI] NXPセミコンダクターズ 1Q減収減益 売上高9%減28.3億ドル、営業益16%減7.23億ドル、EPS1.92ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CDNS] ケイデンスデザイン 1Q増収増益 売上高23%増12.4億ドル、営業益45%増3.61億ドル、EPS1.00ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [WM] ウェイストマネジメント 1Q増収 売上高17%増60.1億ドル、営業益微減10.1億ドル、EPS1.58ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [NUE] ニューコア 1Q減収最終減益 売上高4%減78.3億ドル、純利益82%減1.56億ドル、EPS0.67ドル - 株探(かぶたん)|米国株
●海外企業
- ヘルスケアセクター、魅力的な機会を提供 バロンズ紙=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- ヘルスケアセクターは2025年に入り安定を維持しており、ディフェンシブでますます魅力的な機会を投資家に提供していると、バロンズ紙が伝えている。
- ケネディ米保健福祉省長官が医療サービス需要を損ないかねないとの投資家の懸念は行き過ぎている可能性があり、ユナイテッドヘルス<UNH>の最近の業績不振も固有の問題である可能性が大きいという。バロンズ紙は、投資家は政界の動きやユナイテッドヘルスの状況を無視すべきだとしている。
- GLP-1受容体作動薬などの画期的治療法やバイオテクノロジー革新が、イーライリリー<LLY>やジョンソン&ジョンソン(J&J)、アムジェン<AMGN>など主要企業の成長をけん引。これらはディフェンシブなセクターであり、病気がなくなることはなく、人々は保険料を支払い、医師にかかり続けるだろうと指摘している。
●日本企業
- AI新興のオルツ、収益過大計上疑惑で株価急落 問われる企業統治 - 日本経済新聞
- 人工知能(AI)開発のオルツで、主力の議事録作成サービスに関する売上高を過大計上している可能性が明らかになった。第三者委員会を設置して調査するため、2025年1〜3月期の連結決算の発表を延期した。同社は24年10月に東証グロース市場に上場したばかり。グロース市場改革の議論が進む中で、新興企業のガバナンス(企業統治)が問われそうだ。
- オルツ株は28日に急落。制限値幅の下限(ストップ安水準)である前週末比80円(19%)安の337円まで切り下げた。
- オルツはメディアドゥで取締役を務めた米倉千貴社長が14年に設立した。AIを使ったサービス開発を主力とし、生成AIを活用して従業員の分身をつくる「デジタルクローン」も手掛ける。
- 売り上げの過大計上が疑われているのは、オルツの売上高の9割を占める議事録作成サービス「AI GIJIROKU」だ。自社で開発している音声認識技術などを使って、日本語や英語など35カ国語に対応する。20年にサービスを始め、25年1月時点で利用企業数は9000社となったとしている。
- 販売経路は自社で直接販売する場合と販売代理店を通じて顧客企業に販売する場合がある。4月初旬から証券取引等監視委員会の調査を受けており、「一部の販売パートナーから受注し計上した売り上げについて、有料アカウントが実際には利用されていないなど、過大に計上されている可能性が認められた」としている。
- オルツは28日、日本経済新聞の取材に「現在第三者委員会の調査中のため、取材は差し控えたい」と答えた。
- 有価証券報告書によると、主要な販売代理店は3社あり、24年12月期の連結業績では売上高60億円のうち約5割をこのうちの1社に依存している。また、連結売上高に占める広告宣伝費比率は76%となり、顧客獲得に向け先行投資を集中させている。
- 上場前にはベンチャーキャピタル(VC)大手のジャフコグループ、SBIインベストメント、キーエンスといった事業会社も出資している。新規株式公開(IPO)時には会計監査を監査法人シドー、主幹事証券は大和証券が務めた。
- 監査法人は監査の過程で会社の内部統制の整備状況を調査し、重要な虚偽表示がないかどうかを確かめる実証手続きをとらなければならない。大和証券は「事案は認識しているが、個別の案件のためコメントは差し控える」とした。現在もオルツ株を保有するジャフコは「情報収集をしながら第三者委員会の調査結果を注視したい」とした。
- 第三者委員会の調査の行方によっては会社だけでなく、監査法人や証券会社などの責任が問われる可能性もある。
- ニコンの25年3月期、計画下振れ 半導体露光装置で減損 | ロイター
- 日産自の業績に下方圧力、米関税が収益性押し下げ=S&P | ロイター
- SMBC日興の1―3月期、26億円の最終赤字 欧州案件で特損 | ロイター
- NEC、今期の減収増益予想 米関税の動向次第で上振れも | ロイター
- TDK、今期の営業益は微増 米関税でリスクシナリオも提示 | ロイター
- コマツ、関税と円高で今期27%営業減益予想 市場予測下回る | ロイター
●トランプ関連
- 経済政策不評のトランプ政権、税制法案の成立目指し共和党議員と調整 - Bloomberg
- ベッセント米財務長官は28日、トランプ政権が推進する包括的な減税案について、独立記念日の7月4日までの議会通過を目指す考えを示した。世論調査では政権の経済運営に有権者が総じて不支持を表明していることが示されている。
- ベッセント氏は共和党議会指導部との会合後、「7月4日までに終えることができるよう望んでいる」と語った。同党は税制法案の議会通過を最優先事項としている。
- ベッセント氏とホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長は28日、スーン上院院内総務、ジョンソン下院議長、クレイポ上院財政委員長、スミス下院歳入委員長と会った。
- トランプ氏は、この法案を可決するよう共和党への圧力を強めている。ミシガン州の同党議員に対し、同州で29日に行われる大統領就任100日を記念する自らの演説に立ち会わず、ワシントンにとどまるよう指示したほどだ。
- トランプ氏も28日、ジョンソン議長と会談していた。
- スーン院内総務は28日夜、独立記念日を期限とするとのベッセント氏の発言に関し、「意欲的」だと語った上で、日程についていかなる約束もしないと述べた。その一方で、議会が連邦債務上限を引き上げるための期限の方が心配だと話した。
- 債務上限
- ベッセント氏は、議会が債務上限の引き上げや適用停止を行わない場合、政府が全ての支払いを期限通りに履行するための資金が不足する時期を巡り、公式の目安を今週中ないし来週に発表すると明らかにした。
- ベッセント氏が7月4日の日程に言及したことで、議会共和党には減税法案可決に向けてあらためて圧力がかかることになる。ジョンソン議長は下院で5月末までの法案可決を目指しており、同月26日の「メモリアルデー(戦没者追悼記念日)までに可決できると思う」と表明した。
- 法案はトランプ政権1期目に成立し今年末で期限が切れる減税の延長と新たな減税措置を盛り込み、一部は歳出削減で財源を確保する。上院では、減税法案の審議に数カ月かかる見通しで、共和党指導部は8月までの採決を見込む。
- 各種世論調査によると、米国民は家計に直結する大統領の政策に不満を抱いている。CNNが27日に発表した最新調査によると、トランプ氏の経済運営を支持する回答は39%にとどまり、1期目も含めた同氏の任期中としては最低だった。NBCニュースの調査でも、トランプ氏の関税措置は極めて不評だった。
- ベッセント米財務長官、貿易戦争の緊張緩和は「中国次第だ」 - Bloomberg
- ベッセント米財務長官は28日、政府は「あらゆる面で」中国側と接触しているが、米国との関税闘争で緊張緩和に向けた最初の一歩を踏み出すのは中国側だと述べた。その理由として両国間の貿易不均衡を挙げた。
- ベッセント長官は経済専門局CNBCで「ここからの進展を見守りたい」と発言「緊張緩和は中国側次第だと考えている。中国の対米輸出は米国の対中輸出の5倍に上るからだ。従って125%の関税は持続不可能だ」と述べた。
- 中国側が一部品目を関税対象から除外するのは、緊張緩和に対する関心の表れだとベッセント氏。自身は「エスカレーションのはしご(段階的な対抗措置)をポケットに忍ばせているが、これを使わずに済むことを切に願う」と述べた。そのはしごには「禁輸措置」が含まれる可能性があると続けた。
- 米政府は当面、中国への対応を後回しにし、15から17カ国との間で貿易協定の締結を目指していると、ベッセント氏は述べた。最初に合意を発表するのがインドとの貿易協定となっても驚きではないと続けた。
- ベッセント氏はまた、ワシントンで国際通貨基金(IMF)・世銀会合が開かれた先週、米当局者らが中国側の当局者らと「金融の安定」を協議したことも明らかにしたが、貿易についての議論があったとは示唆しなかった。
- トランプ大統領、自動車関税の影響を緩和へ - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は、自動車関税がもたらす影響を緩和する見通しだ。外国製自動車への関税が他の関税と重複して課されるのを防ぎ、米国内で自動車を製造する際に使用される外国製部品への関税も一部軽減する。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
- 関係者らによると、この決定を受け、トランプ政権が課す自動車関税を支払う自動車メーカーは、鉄鋼やアルミニウムなどの他の関税は課されないことになる。この措置はさかのぼって適用されると関係者は述べており、自動車メーカーはすでに支払った関税の払い戻しを受けられる可能性がある。完成品の外国製自動車に対する25%の関税は、今月初めに発効した。
- 政権はまた、5月3日に発効予定の外国製自動車部品に対する25%の関税も修正し、自動車メーカーが1年間、米国製自動車の価格の3.75%に相当する金額まで関税の払い戻しを受けられるようにする。払い戻し額は2年目に車の価格の2.5%に減少し、その後段階的に廃止される。
- トランプ氏は就任から100日を迎えるのに合わせてミシガン州デトロイト近郊で29日夜に集会を開く予定で、その前にこれらの措置を講じる見通しだ。
- 政権とほぼ毎日連絡を取り合っている自動車メーカーは一定の救済措置を確保する一方、トランプ氏は国内製造を巡る目標を推進するためのコミットメントを取り付けた、と関係者らは述べた。
- ハワード・ラトニック商務長官は「トランプ大統領は国内の自動車メーカーと偉大な米国の労働者の双方と重要なパートナーシップを構築している」と述べた。「この取引(ディール)は、すでに国内で製造を行っている企業に報いると同時に、米国への投資と国内製造の拡大に注力すると表明している製造業者に準備期間を与えることで、大統領の通商政策にとって大きな勝利となるだろう」
- 計画に詳しい関係者の1人は、これらの措置は自動車メーカーに部品のサプライチェーンを米国に戻す時間を与えることを目的としており、短期的には自動車メーカーにとって大きな後押しになる可能性が高いと述べた。自動車メーカーは政府に払い戻しを申請する必要があり、その資金がどこから来るのかは現時点では不明だ。
- 米自動車大手フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は声明で、「フォードはトランプ大統領の決定を歓迎し高く評価する。自動車メーカー、サプライヤー、消費者に対する関税の影響を緩和するのに役立つだろう」と述べた。また、「われわれは米自動車産業の健全な成長というトランプ大統領のビジョンを支持し、引き続き政権と緊密に協力していく。フォードは、輸出を奨励し、手頃な価格のサプライチェーンを確保して国内の成長をさらに促進する政策が不可欠だと考えている」と表明した。
- トランプ氏の関税による所得減税案、実現は不可能か - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は、関税を導入すれば大半の米国人の所得税を廃止できると繰り返し示唆してきた。だが、計算が合わないという大きな問題がある。
- トランプ氏はかねて、関税と大規模な所得減税を結び付ける考えを示唆してきた。政府歳入のあり方の大幅な変更を提案し、関税に懸念を深める有権者に将来の恩恵を約束している。こうした考えは、2017年に導入した減税措置の延長や、共和党内で広く支持されている「チップ非課税」案などのアジェンダを拡大し、現在議会で策定しているトランプ氏の「大きな美しい法案」の中核をなすものだ。
- トランプ氏はトゥルース・ソーシャルに「関税が導入されれば、多くの人の所得税が大幅に減税され、場合によっては完全に廃止される可能性がある」と投稿。「年間所得20万ドル(約2900万円)未満の人々に焦点を当てる」と書き込んだ。
- だがトランプ氏の発言は、自身の通商政策における不可解な点を示している。高関税の目的が資金調達なのか、それとも貿易相手国・地域からより良いディール(取引)を引き出す交渉力を得ることなのか。ただ、たとえトランプ氏が高関税を維持したとしても、関税歳入は年収20万ドル未満の人々からの所得税収入を相殺するには遠く及ばないとみられる。
- トランプ氏、全米の「聖域都市」に対抗 大統領令に署名へ - WSJ
●先進国中銀、金融当局
- 【オピニオン】FRBの役割拡大がもたらす代償 - WSJ
- 私は十数年前にFRB理事会のメンバーだった。この期間については何事もたやすくはなかった。われわれは適切な判断をしたが、誤りも犯した。当時最も難しかった問題、そして現在最も重要な問題が、FRBの役割と責務であるのは必然だ。
- 異例の政策支援につながった特に緊迫した週末の後、ポール・ボルカー元FRB議長は、FRBが「長年定着してきた中央銀行の原則と慣行を超え、法的および暗黙の権限のまさに境界まで踏み込んだ」とコメントした。われわれはこの発言を、強力な制度支持者から後に続く者たちに向けて投げられた、高くて厳しい死球すれすれの内角球だと受け止めた。
- しかし、ボルカー氏の警告はほとんど無視されてきた。FRBは経済政策に関するあらゆる問題において、政府内でより広範な役割を担うようになった。
- 私見では、あらゆる場合とあらゆる理由で、懸け離れた任務へ進出したことが、マクロ経済政策全体の誤りにつながっている。FRBは狭い分野を担う中央銀行としてよりも、多目的の政府機関としての役割を演じる場合が多くなった。本来の使命からの逸脱は、FRBが法律で付託された任務の最も重要な部分、すなわち物価安定を達成できていないことと同時に起きている。FRBは連邦政府歳出の急増の一因ともなっている。そして、FRBの並外れて大きな役割と不十分な実績によって、金融政策の独立性に関する重要かつ価値ある論拠が弱められている。
- 米国の財政政策は危険な道筋をたどっている。無責任な支出が急増し、特に新型コロナウイルス流行後にその傾向が強まった。米国の財政的な無駄遣いに関して、FRBの責任は不問にし難い。FRB幹部は厳しい経済情勢下で政府支出を奨励したが、成長が持続し完全雇用に近い状況で財政規律を求めなかった。金融政策立案者は財政に関するコメントを控えた方がよいというのが私の考えだ。だが、もしFRBがその一線を越えることを選ぶなら、現実と発言内容との間に整合性を持たせるべきだ。
- FRBは2008年以降、米財務省証券などの米連邦債の最も重要な買い手となっている。FRBのバランスシートは7兆ドル(約1000兆円)規模となり、私がFRBのメンバーとなった当時よりもほぼ1桁大きくなっている。これは、経済に関するFRBの裁量権が強まっていることを示すものだ。
- 一般的には「量的緩和(QE)」として知られる資産買い入れの実施については、私にも一定の責任がある。2008年の金融危機で、われわれはゼロ近辺に引き下げ、金融政策を緩和して流動性の低い市場に流動性をもたらすための新たな方法を模索した。私は当時も今も、危機時におけるこの革新的な案を強く支持している。
- だが、金融危機が終わっても、FRBはQEの方針を転換しなかった。私は、2010年夏から秋にかけて力強い成長と金融の安定が続いていた時期に、国債の追加購入を決定すれば、FRBが財政政策という厄介な政治問題に巻き込まれるのではないかと大いに懸念した。量的緩和第2弾(QE2)は発表された。私は反対し、直後にFRB理事を辞任した。
- QEは、2010年代の断続的な実施を経て、FRBの政策のほぼ恒久的な特徴となった。連邦議会議員は、政府の資金調達コストがFRBによって穴埋めされることを知り、予算作成がより容易になると気付いた。FRBと表向きの財政当局とを隔てる一線は、より分かりにくくなっている。
- 中央銀行の虚栄心は、金融政策にとどまらない。「気候変動」と「包摂性」は政治色の濃い問題だ。FRBはこれらの分野で政治的判断を下せる専門家でも、そのような権限を持つ者でもない。
- 以下に二つの例を挙げよう。一つ目は、2020年終盤にFRBが「気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)」に加盟したことだ。FRBは「気候関連の取り組みに積極的に参加しており、多くのケースで主要な役割を果たしている」と述べていた。それが2025年1月になり、幾分違った政治環境になると、FRBはNGFSから脱退し、態度を変えた。
- 二つ目は、2020年8月にFRBが目新しい金融政策の枠組みを発表したことだ。私の考えでは、この新たな指針は、FRBが高インフレは抑えられ、潜在リスクは物価が低水準になり過ぎることだと指摘して、「歴史の終わり」を宣言するものだった。
- この新たな指針の一環として、FRBは「雇用の最大化」という自らの法的な使命を、「広範で包摂性のある目標」に再定義した。「包摂性のある雇用」という新たな用語は、特定の集団の雇用率改善を実現するため、FRBがインフレ率上昇を受け入れる用意があることを強調するものだと解釈された。
- 最近のFRB指導部は、FRBの完全雇用に関する新たな定義が古いものと異なるのか否かについて、かなり曖昧な受け答えをしている。実質的に差がないのであれば、新たな用語は単なる政治的な相づちだったのか。新たな定義が古いものと異なるのなら、議会も何らかの発言権を持つべきではないだろうか。
- FRBがその経済的側面を見誤ったことも指摘すべきだ。新たな政策の代償を最も多く不釣り合いに負担しているのは、本来恩恵を受けるとされる人々だ。FRBが権限を超えた問題について意見を述べれば述べるほど、物価安定と完全雇用を確実にするための能力は危険にさらされる。
- 米国民は約40年間にわたり、物価水準の変化をほとんど気にせずにいられた。物価安定に関するFRBのこうしたうらやましいほどの実績が2020年代も続いていれば、FRB当局者らはより広範な裁量権を与えられていたかもしれない。しかしFRBはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を読み間違え、それによってインフレ率が急上昇した。
- 物価の安定は、FRBにとってのプロットアーマー(物語の主人公などを常に助ける都合の良い目に見えないよろい)だった。映画のように、このアーマーは、挑戦しようとする者から主人公を守ってくれた。しかし、このアーマーを使える範囲が、FRBの権限の変遷と大きな野望によって拡大されたため、攻撃に対して脆弱(ぜいじゃく)な部分がもっと広がった。
- 中銀の独立性が話題に取り上げられる機会は、その定義が議論される機会よりも多い。独立性はそれ自体が政策目標ではない。特定の重要な成果を実現するための手段だ。
- FRBの政策が批判されると、この独立性が反射的に持ち出される。米議会は、銀行への規制・監督に関する重要な役割をFRBに与えている。私は、銀行への規制・監督政策でFRBが何か尊敬に値することを成し遂げたとは考えていない。銀行関連の対応でFRBが独立性を主張すれば、金融政策面での独立性の根拠が損なわれる。
- FRBがその信条と伝統に反して、財務省の管轄分野に踏み込んで権力を行使したり、社会問題について明確な立場を示したりすれば、最も重要な役割を果たす上での独立性をさらに危険にさらすことになる。
- 金融政策の運営に関する独立性は、賢明な政治経済的決定であると私は強く信じている。そして、FRBの独立性の確保は、主としてFRB次第だと信じている。しかしそれは、FRBが甘やかされた王子のように扱われるべきだということではない。金融政策の結果が芳しくなければ、FRBは厳しい質問や強い監視の目にさらされるべきであり、過ちを犯した際には非難を受けるべきだ。
- 憲法を順守する米国では、中銀の独立性が認められている。しかしそれは中銀が、議会で定められた義務を忠実に順守し、与えられた役割を首尾よく遂行している場合に限られる。インフレ、そして救済策、権力の乱用に米国民が強い嫌悪感を抱く傾向が明らかになっており、そのことをわれわれは肝に銘じておく必要がある。
- FRBの現在の問題は、自ら引き起こしたものだ。信頼の喪失、評価の低下、そして何よりも米国民の経済状況の悪化に歯止めをかけるためには、戦略の立て直しが必要だ。
●先進国経済指標
- 「カオス」と「狂気」、ダラス連銀製造業指数がコロナ禍後最低に悪化 - Bloomberg
- 米ダラス連銀が28日発表した製造業景況報告指数は、4月に大きく低下。トランプ米大統領の関税政策が引き起こした混乱を、企業経営者らは「カオス(混沌)」や「狂気」といった言葉で表現した。
- 製造業景況指数は2020年5月以来の低い水準となった。ダラス連銀の調査にはテキサス州の製造業87社が応じた。現況の生産には緩やかな伸びが指摘された一方、企業の業況見通しは新型コロナ禍後で最悪となった。サプライチェーンの混乱と予測の困難さを企業は指摘した。
- 原材料と完成品の価格に関する調査指数は、平均を大幅に上回り、調査に応じた60%近くが今年のビジネスが高関税の悪影響を受けると回答した。
- 企業の過半数がコスト上昇を顧客価格に転嫁する意向だが、その約38%はそれが困難になりつつあると回答。米国の物価は過去4年で20%余り上昇しており、消費疲れや支出能力の低下で、消費者はインフレ再燃に耐えられないのではないかとの懸念が広がっている。
- 国内で部材を調達する企業も圧力を実感している。ある調査回答者は需要の減少が原因だと指摘した。テキサス州は米製造業全体の約10%を担う。
- テキサス州では共和党支持が根強い。ある企業幹部はダラス連銀に「現政権は米国が目指す方向に向いていると思うが、そこにたどり着くまでの痛みは当初想定より長期化し、程度も深刻になる可能性がある」と述べた。
●金融市場、先進国トピックス
- スペインとポルトガルで大規模停電、電力需給の急変動が原因 - Bloomberg
- カナダ総選挙、与党・自由党なお僅差でリード-トランプ氏再び口撃 - Bloomberg
- 急拡大するドル安ヘッジ、米国株投資見舞う「ダブルパンチ」回避へ - Bloomberg
- 日本やロンドン、パリの投資家にとって、ドルを買って米国株に投じるトレードは長年のリターン源となってきた。米国株のパフォーマンスは各国の株式市場を大きく上回り、ドル高がその利益をさらに押し上げた。
- ところが、トランプ米大統領が貿易戦争を仕掛けたことでこの戦略は突如崩れ、損失が急拡大している。S&P500種指数は今年に入り6%安。この損失幅は、ユーロや円ベースでは14%となり悪化する。
- 事態の急速な展開に加え、ホワイトハウスからの一貫性のない発信も相まって、米国市場を「究極の安全資産」と見てきた投資家に動揺が広がっている。
- ナティクシス・ウェルス・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、ベノワ・ペロワーユ氏は、投資家は「株式と通貨の両方で損失を被っている」とし、「ダブルパンチだ」と述べた。
- この1カ月の混乱を受け、多くの海外投資家はドルへの資金集中に伴うリスクを痛感。そのため、足元では米国株のポートフォリオに為替ヘッジをかける動きが急速に広がっている。
- 海外投資家の米国株ポートフォリオの規模は、昨年12月時点で約18兆ドル(約2600兆円)に上り、米国株全体の20%近くを占める。
- モルガン・スタンレーやバンク・オブ・アメリカ(BofA)によれば、ドル安に備えヘッジ取引を行う動きが増えているという。
- グループ・リシュリューのアレクサンドル・エゼズ氏は「すべてがひっくり返った」として、自身のファンドについて許容される最大限度までヘッジを実施していると話す。
- 同氏は多くの投資家と同様、以前は為替リスクをヘッジする意味は薄いと考えていた。世界的な市場のパニックで米国株が売られる場合、安全資産への需要でドルが上昇し米国株の損失を相殺する可能性が高いとの見方だ。
- ステート・ストリートのデータによれば、海外投資家による米国株の為替ヘッジ比率は23%にとどまる。2020年は50%近くに上っていた。
- BofAのストラテジストらの試算によれば、為替ヘッジ比率が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準に戻った場合、追加で5兆ドル規模の米国株に対するヘッジが必要になる可能性があるという。
- ドル安を懸念するトレーダーは通常、フォワード市場でドル売りポジションを構築する。スイスフランや円ベースの投資家にとって、3カ月物のヘッジコストは年率換算で約4%。ユーロの場合は2%超だ。
- これによりドル安の影響を打ち消すことができる半面、通貨上昇からの利益は得られず、ヘッジを維持するコストがリターンの重しとなり得る。
- 一方、ここ数週間の取引動向を過度に重視すべきではないとの見方もある。今後は海外投資家による米国市場からの段階的な資金引き揚げが本格化するかが焦点となるが、依然として世界有数の流動性の高さと高収益な企業群を有する米国市場に匹敵するような投資先は見当たらないとアリアンツは指摘している。
- もっとも同社の推計によれば、海外投資家による米国への投資額は約28兆ドルと巨額だ。
- アリアンツのエコノミスト、ルドビック・スブラン氏はリポートで、「こうした資産のほんの一部でも米国から流出すれば、為替レートや世界の資産価格に一段と大きなゆがみが生じる」と警鐘も鳴らしている。
- 仏極右バルデラ党首「27年大統領選候補に」、ルペン氏不出馬なら | ロイター
- 世界の軍事費2兆7200億ドル、冷戦後で最大=ストックホルム研究所 | ロイター
- アングル:欧州中小企業は対米投資に疑念、政策二転三転で計画保留も | ロイター
- トランプ米大統領の関税政策が二転三転し、欧州の工業大国ドイツやイタリアなどの中小企業の間では米国進出のメリットに疑念が広がり始めている。
- 米国は世界首位の経済大国で、欧州連合(EU)の貿易相手国としても最大だが、そうした対米投資見直しの動きからはビジネス環境が厳しさを増していることがうかがえる。
- トランプ大統領は、鉄鋼やコニャック、自動車、サンダルに至るまであらゆる品目に関税を課することで、外国企業に米国への投資を促し、新工場を建設し、何千人もの米国の雇用を創出することを狙っている。
- 自動車や製薬業界の大手企業は我先にと米国事業の拡大計画を発表したり、検討中と表明したりしている。だが、トランプ政権による関税政策は導入と撤回、例外措置の発表が相次ぎ、欧州の一部の中小企業は米国事業に慎重になっている。
- イタリアのユーログループ・ラミネーションズ(EGLA.MI), opens new tabは、フォード・モーター(F.N), opens new tabやゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N), opens new tabなど米自動車メーカー向けにメキシコ工場からモーターや発電機関連の自動車部品ローターとステーターを供給する。米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のルールを順守しているため、現在は関税を免除されている。
- マルコ・アルドゥイーニ最高経営責任者(CEO)は、仮に米国に生産拠点を移さざるを得なくなった場合、自動車部品向け特殊鋼に課せられている関税の影響を受けると話した。米国では人件費がメキシコの最大6倍に跳ね上がるのも問題という。
- 「米景気後退が起これば需要も従来と異なる様相になりかねない」―。こう話したのはドイツのファン・モーターメーカーebm―papstのクラウス・ガイスドエルファーCEOだ。トランプ政権の高関税政策の景気後退リスクなどを踏まえ、米国に3番目の工場を建設する計画や既存の米国拠点を拡張する計画を保留している。
- 中小企業は大手企業に比べ、財務余力が乏しいため新たな貿易リスクには大手よりも迅速に対応する可能性がある。
- ドイツ中小企業協会(DMB)のマルク・テンビーグ会長は「トランプ大統領の期待に反して、自身の保護主義は、より多くのドイツ企業が米国に生産拠点を移して雇用を創出することにつながらないだろう」との見解を表明した。DMBによると、中小企業数社がトランプ大統領の政策を受けて米国事業の見直しを進めている。
- ドイツ機械装置産業連盟(VDMA)の北米貿易政策アドバイザーのアンドリュー・アデア氏は、会員企業の一部は資材などの購買を先送りしていると明らかにした上で、「産業界は現在、一時停止ボタンを押しているように見える」と述べた。
- EUの統計機関ユーロスタットのデータによると、EUは過去3年間、年平均で5000億ユーロ以上の製品を米国に輸出し、大半が医薬品と自動車、機械類だった。ただ、鉄鋼と自動車、自動車部品はトランプ大統領の対EU高関税政策で主要な課税対象となっている。
- トランプ氏の政策は、欧州企業の対米投資拡大に対する政治的な反発につながっており、フランスのマクロン大統領は欧州企業に当面、対米投資計画を停止するよう求めている。
- 欧州の各種業界団体も各企業に向けて、投資先として米国でなくインドや中南米、東南アジアなどに焦点を当てるように促している。
- 欧州の格付け会社スコープの企業格付担当責任者ゼバスティアン・ザンク氏は「(トランプ大統領の返り咲きに伴って米貿易政策を巡る)状況は一夜にして変わり得ることを目の当たりにしてきた。持続可能と呼べるような状況が見えるまで、誰もが静観を続けるだろう」と話した。
- 超長期の日本国債、金利上昇局面で数千億円規模積み増す=住友生命・25年度運用計画 | ロイター
- 住友生命保険は2025年度の一般勘定資産の運用で、金利が上昇したタイミングをとらえた機動的な投資により、超長期の日本国債を「数千億円規模で」積み増す方針を示した。
- 増田光男執行役員・運用企画部長が28日、運用方針説明会で明らかにした。
- 円債は、「償還期間10年超」の日本国債を機動的に投資することにより、数千億円規模で積み増す計画。従来は負債と資産のデュレーションのマッチングの目的で投資対象は30年物が中心だった。「今後は各年限のリスク対比リターンや、負債と資産のキャッシュフローのマッチング状況を見ながら、投資する年限を判断していきたい」(増田氏)という。
- 日銀の金融政策について、同社では「米国から円安是正圧力がある中で利上げ路線は継続するものの、関税の影響が懸念されるため慎重なスタンスになることが見込まれる」として、年度内の追加利上げは10月以降に1回と想定。その先は26年度以降にもう1回利上げを行い、ターミナルレートは1.0%とのシナリオを描く。
- 国内金利に関しては、長期金利は「既に一定程度の利上げは織り込まれていることもあり、緩やかな上昇傾向」との見方から年度末に1.5%(28日時点は1.3%)と予想。また30年金利は「先行して売られており、現状は売られ過ぎ」として年度末は2.5%(28日時点は2.7%)で落ち着くとの予想を示した。
- 足元の金利水準での超長期国債への投資意欲について、増田氏は「直接的な言及は控えたいが、負債のコストから見ても投資妙味は十分にある水準と判断している」と述べた。
- 住友生命では、25年度から「円建てクレジット」の一部として、通貨スワップでキャッシュフローを円建てに固定した外国社債への取り組みを始めており、残高増加を見込む。
- 外国債券のうち、オープン外債は金利や為替動向次第で柔軟に対応する。
- ヘッジ付き外債は、為替ヘッジコスト変動による収益への影響を抑制するため変動金利資産への投資を検討するもののクレジットの残高は減少。一方でヘッジ付きソブリン債は残高増加を見込む。
- 内外株式の残高の増減は相場次第。オルタナティブ資産はインフラエクイティやプライベートエクイティ(PE)ファンドへの投資により積み増し、不動産は投資用不動産への投資により残高を増やす。
- 住友生命の一般勘定の資産残高は、12月末時点で37兆4106億円。うち外貨建て資産は12兆1934億円(32.6%)。
- 2025年度の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。
- 日本国債10年物利回り 1.00―1.80% (年度末1.50%)
- 米国債10年物利回り 3.50―5.00% (同4.25%)
- 日経平均株価 3万2000―4万2000円 (同3万7000円)
- NYダウ 3万7500─4万7500ドル(同4万1500ドル)
- ドル/円 125―150円 (同140円)
- ユーロ/円 150―170円 (同160円)
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- 北欧諸国、欧州防衛のひな型に 対ロシアで結束 - WSJ
- 北欧諸国は長年、軍事的拡張よりも平和への取り組みや快適な生活で知られてきた。
- だが、いまではそうしたイメージを払拭し、欧州防衛のひな型となりつつある。欧州ではロシアの侵略とトランプ米政権が提供する安全保障を巡る不透明感の高まりに対応するため長年の軍備縮小から転換する動きが広がっており、北欧諸国がけん引役となっている。
- 北欧の主要4カ国はウクライナへの軍事支援では人口比で欧州の上位に入るほか、米国への依存度が低い新たな地域安全保障の枠組みの導入に動いている。
- どの北欧諸国も、単独でロシアに軍事的に立ち向かうのは難しいだろう。しかし、北欧諸国を合わせた経済規模はメキシコとほぼ同じで、ロシアに匹敵する。北欧諸国はスウェーデンとフィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟を受け、軍隊の一部について統合運用に動いた。
- スウェーデンは先進的な防衛産業を誇り、潜水艦や戦車、超音速戦闘機などを製造する。ノルウェーは北極圏における海上監視・戦闘能力を有する。フィンランドの常備軍と砲兵戦力は人口比では欧州で最大規模だ。また、デンマークの特殊部隊はアフガニスタンやイラクの極めて危険な地域で数十年にわたり米国の戦争に参加した経験を持つ(北欧5番目の国、アイスランドには常備軍も防衛産業もない)。
- 米シンクタンクのカーネギー国際平和財団でロシア・ユーラシアプログラム上級研究員を務め、以前は米国の情報分析官だったエリック・シアラメラ氏は北欧諸国について、「ドイツが持つような完全に統合された防衛・産業基盤を構築する経済力と資源を備えながら、脅威に対して全く異なる種類の認識と政治的意思を持つ地域グループ」が形成されていると指摘した。
- 北欧諸国は歴史的・文化的な絆を共有している。中世においてスカンジナビアのバイキングは欧州全域で植民地化と略奪を行い、北米にまで到達した。その後何世紀もの間、北欧諸国は互いに激しい戦争を繰り広げた。地域大国のデンマークとスウェーデンは領土を巡って争い、互いの貴族を広場で斬首した。後にスウェーデンは融和的な姿勢を強め、1905年にノルウェーとの連合王国を解消した後も、ノーベル平和賞の授与がノルウェーで行われることを認めた。
- 北欧諸国の間では現在、今後深刻な脅威をもたらすのはロシアだとの共通認識によって結束がかつてなく強まっている。デンマークの情報機関による最近の分析は、ロシアが3~5年以内に欧州のNATO加盟国の少なくとも1カ国に対し大規模な戦争を仕掛ける可能性があるとしており、この見方は他の西側諸国よりもバルト諸国のものに近い。
- 元NATO事務総長で現在はノルウェー財務相を務めるイェンス・ストルテンベルグ氏は北欧諸国について、「統一した安全保障政策を持つのは1400年代のカルマル同盟以来となる」とし、「軍事協力を深める重要性に対する認識は、過去数世紀には見られなかったものだ」と述べた。
- 北欧諸国は空軍の統合運用に動き、2023年に北欧共同航空司令部を設立した。昨年は「北欧防衛協力(NORDEFCO)」の枠組みに基づく30年までの共同防衛構想を打ち出した。
- 北欧諸国は、冷戦終結後の数十年にわたった軍備縮小の埋め合わせをしているといえる。欧州では同盟国としての米国に対する信頼がドナルド・トランプ米大統領の下で低下しており、再軍備の必要性が高まっている。
- デンマークはこうした認識を特に強めている。トランプ氏がデンマーク領グリーンランドを併合する意欲を表明したことを受け、デンマークは欧州とトランプ氏との対立の矢面に立った。北極圏の島であるグリーンランドは大きさが米テキサス州の3倍で、島の防衛でデンマークが頼るのは、武器やセンサーが十分に備わっておらず軍艦とは呼べないような7隻の老朽化した船舶や、十数人の精鋭兵で構成された犬ぞり部隊などだ。
- デンマークは2月、グリーンランド向けを含めた防衛費を今後2年間で70%増やすことを決めた。この決定について、デンマーク王立国防大学のピーター・ビゴ・ヤコブセン准教授は「パニックの表れだ」と述べた。
- ヤコブセン氏は「デンマークは時間との戦いを強いられている。米国への信頼を失ったからだ。われわれが北欧での協力に必死に取り組んでいる理由は自衛の難しさにある。NATOができないのであれば、北欧が代替案となる」と語った。
- 認識の変化
- 軍備拡張は世界が北欧諸国に対して抱くイメージと相反するかもしれないが、長年にわたり進行してきたことだ。
- フィンランドは人口比で欧州最大級の軍隊を持つ。数週間で28万人の兵力を動員でき、国民のほぼ6人に1人、総数で約90万人が予備役だ。国内の地下シェルターは残りの人口のほぼ全てを収容できる。フィンランドは現在、対人地雷を禁止するオタワ条約からの脱退を検討している。
- スウェーデンは軍事における先進的な役割を演じる。短い滑走路で運用でき、ロシア機への対抗を想定して設計された戦闘機「JAS39グリペン」は3月、初めてNATOの監視任務に使用された。スウェーデンの「ストリッツヴァグン122」は世界最先端の戦車の部類に入るほか、「CV90」は最強クラスの歩兵戦闘車に数えられる。
- フィンランドとスウェーデンはいずれも徴兵制を敷いている。スウェーデンでは兵役は男女を問わず平等に課され、極めて厳格な選抜が行われる。他の欧州諸国が兵士の増員に苦戦する中で、スウェーデンは毎年何千人もの若者の入隊を却下している。
- ノルウェーに対してはこれまで、防衛支出が少ないとの批判が向けられてきた。ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格高騰から恩恵を受け、また資産運用規模が1兆5000億ドル(約210兆円)に上る世界最大級の政府系ファンドを運用しているにもかかわらず、との批判だ。ノルウェーは最近になって、ウクライナへの支援額を2025年に80億ドル超へと倍増することを発表した。
- この決定についてノルウェー財務相のストルテンベルグ氏は「ウクライナ支援を強化する必要があり、同時にNATO諸国間でより公平な負担の分担が必要だとの認識によるものだ」と述べた。
- デンマークは欧州の再軍備を積極的に呼びかけている。メッテ・フレデリクセン首相は3月、デンマーク国内に核兵器を配備する可能性を排除しないと語り、従来の姿勢からの大きな転換を示した。デンマークは自国の火砲は全てウクライナに供与し、さらにウクライナによる兵器製造に関する計画を考案した。これはウクライナ政府と資金難にあえぐウクライナ防衛企業との契約向けに資金を提供し、変化する戦場のニーズに合わせた兵器製造を促す方法で、「デンマーク・モデル」と呼ばれる。
- 米シンクタンク大西洋評議会のストックホルム拠点で北欧担当ディレクターを務めるアナ・ビースランダー氏は、ウクライナのNATO加盟に米国が否定的な姿勢を示す中、ウクライナの防衛産業を支援することはロシアに対する抑止力を持続可能な形で強化する方法だとし、各国の「防衛産業を結びつけることは非常に強力なメッセージになる」と語った。
- 北欧諸国は将来的に異なる道を歩む可能性もある。停戦後のウクライナに平和維持部隊を派遣する構想に対しては、デンマークとスウェーデンは前向きな姿勢を示す。一方、ロシアと830マイル(約1335キロメートル)の国境を接するフィンランドは兵士を国内にとどめておくことを望むとみられる。
- 北欧連合は現在、黒海周辺の国々など他の国家間連携のひな型になることが考えられる。フィンランド国際問題研究所のマッティ・ペス上級研究員はそう指摘し、トランプ氏の下でNATOが崩壊した場合に備えた将来の保険としても機能し得るとの認識を示した。
- ペス氏は「NATOが機能しなくなった場合、その代替案『プランB』となる可能性がある」と述べた。
●その他エマージング
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(28日)ドル全面安、S&Pほぼ横ばい 利回り低下 | ロイター
- **為替市場**
- ドルが全面安。米国の関税政策への懸念や米経済指標(GDP、PCE価格指数、雇用統計)発表を控え、米経済への信頼が揺らいでいる。ドルは月間で昨年7月以来の大幅下落、ユーロは15年ぶりの大幅上昇見通し。
- **債券市場**
- 米国債利回りは3週間ぶりの低水準。経済指標待ちで取引は比較的落ち着く。FRBは来週FOMCを開催し、年内4回の利下げ観測が強まる。
- **株式市場**
- S&P500はほぼ横ばい。エヌビディアやアマゾンが下落し、アップルやメタが支えた。今週は「マグニフィセント・セブン」関連企業など多数の決算発表があり、関税の影響が注目される。
- **商品市場**
- - 金先物:関税交渉・経済指標への警戒から買い戻し、反発。
- - 原油先物:需要減少懸念で反落。
備忘録(2025/4/25-27)
●海外企業決算
- [CL] コルゲートパルモリーブ 1Q減収増益 売上高3%減49.1億ドル、営業益3%増10.7億ドル、EPS0.85ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [ABBV] アッヴィ 1Q増収営業増益 売上高8%増133億ドル、営業益33%増37.3億ドル、EPS0.72ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [HCA] HCAヘルスケア 1Q増収最終増益 売上高6%増183億ドル、純利益1%増16.1億ドル、EPS6.45ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CHTR] チャーターコミュニケーションズ 1Q微増収増益 売上高微増137億ドル、営業益3%増32.3億ドル、EPS8.42ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [LAZ] ラザード 1Q減収 売上高15%減6.48億ドル、営業益微増5463万ドル、EPS0.56ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AON] エーオン 1Q増収 売上高16%増47.2億ドル、営業益微減14.6億ドル、EPS4.43ドル - 株探(かぶたん)|米国株
●海外企業
- 米航空業界では景気後退が既に本格化-サウスウエスト航空CEO - Bloomberg
- 米サウスウエスト航空のボブ・ジョーダン最高経営責任者(CEO)は、米航空業界が既に景気後退(リセッション)入りしたとの認識を示した。エコノミストによる公式な宣言を待つまでもなく、業界の現状は明らかだとしている。
- ジョーダン氏は、新型コロナ禍の期間を除けば、米国内のレジャー旅行需要が例のない規模で落ち込んでいると指摘。少なくとも米航空業界では景気後退が本格化していると述べた。
- 「現状を景気後退と呼ぶかどうかは問題ではない。この業界にとってはすでに景気後退が始まっている」とインタビューで語った。
- サウスウエストを含め、通期の業績予想を撤回する米航空会社が増えている。景気の不透明感で消費者の不安が高まり、年内の旅行需要や運賃の動向を正確に予測するのが不可能になっているためだ。
- 他の米航空会社がより広範な国際線ネットワークと多くの法人顧客を抱えているのに対し、サウスウエストは収入の多くを国内のレジャー旅行者に依存している。このため同社の予約状況は米消費者心理の急激な変化によって左右されやすくなっている。
- ジョーダン氏は「消費者は不安な時に支出を控える。直ちに支出を止める可能性もある」と述べた。
●日本企業
●トランプ関連
- アメリカの政治広告、トランプ氏視聴のFOXに集中 テレビ向け支出の7割 - 日本経済新聞
- トランプ氏、関税猶予の再延長に否定的-日本との合意「非常に近い」 - Bloomberg
- トランプ米大統領は25日、上乗せ関税適用の猶予期間を再度延長する可能性は低いとの考えを示した。各国・地域に対し、米国との通商協議を急ぐよう圧力を強めた。
- トランプ氏は大統領専用機エアフォースワンの機内で、猶予期間をさらに90日間設ける可能性を記者団に問われ、その「可能性は低い」と発言。また、中国側が「何か実質的なもの」を代わりに提示しない限り、対中関税を引き下げることはないと述べた。
- 金融市場は自身の関税政策に適応しつつあるとの認識も、同氏は示した。大規模な関税措置を発表した後に、株式と債券の市場が今月、高いボラティリティーに見舞われたことを過度に懸念する必要はないとの姿勢だ。
- トランプ氏は市場の反応について「今起きていることを見れば、そう思う。私は移行期間があるだろうと言った」と発言。「そのことについて理解されていなかったが、今や理解されつつある」と述べた。
- 中国側がどういった譲歩をすることを望んでいるのかと記者団に問われると、トランプ氏は中国には経済を開放してほしいと言明。
- その上で、「それが実現すれば素晴らしいことだ。大きな勝利となるだろう。しかし、中国は開放をしたくないので、それを要請するかどうかも分からない」と話した。
- トランプ氏はこのほか、関税引き下げをめぐる貿易相手国との協議について、近く合意に達する見通しだと述べた。
- 25日に公開された米誌タイムとのインタビューで、交渉は「3-4週間以内に終わると思う。それで終わりだ」と語った。「もし一部の国が後から調整を求めてくるなら、それは検討する」が、「基本的には、十分に状況を把握したうえで準備万端ということになるだろう」と付け加えた。
- これとは別に、トランプ氏は同日に記者団に対し、「日本とは非常にうまくやっている」と語り、合意は「非常に近い」と続けた。イタリアのローマで行われるフランシスコ教皇の葬儀に出発する前の発言。
- タイムとのインタビューでは、市場を動揺させ各国政府をワシントンへと駆けつけさせた自身の貿易政策を改めて擁護。ただ、中国との協議状況については矛盾した発言があった。
- トランプ氏は「中国とは会談している。どの国とも順調だ」と述べる一方で、「習近平国家主席が先に連絡してこない限り、自分からは電話しない」とも述べた。その後、習氏からの「電話はあった。それが弱さの表れだとは思わない」と語った。詳細には触れなかった。
- 中国は米国との交渉が進行中であることを否定している。
- トランプ氏は今月初め、60カ国以上の貿易相手国に対する関税引き上げを発表。ただしその直後、交渉のための3カ月間の猶予措置を設け、暫定的に10%の関税率を維持すると表明した。
- これを受けて外国政府の使節団が次々とワシントンを訪問し交渉を希望する一方、中国は強硬姿勢を崩していない。
- ベッセント財務長官とラトニック商務長官が関税の延期を進言したと報じられているが、トランプ氏はこれを否定。「彼らが言ったわけではない。私が決めた」と明言。また、「債券市場がびくついていたが、私はそうではなかった」と語った。
- インタビューでトランプ氏は、ウクライナ情勢についても発言。ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟については、その希望を捨てるべきだとの政権の姿勢をあらためて表明し、「ウクライナがいつかNATOに加盟できるようになるとは思わない。私は当初から、戦争が始まったのはウクライナがNATO加盟を口にし始めたからだと考えている。もしそのような話が持ち上がらなければ、戦争が起きなかった可能性はずっと高かっただろう」と論じた。
- トランプ政権は一貫性必要、予測可能性が不可欠-保険会社トップ - Bloomberg
- クリミアは「ロシアにとどまる」、トランプ氏が米誌に | ロイター
- トランプ政権、通商交渉のロードマップ策定=関係者 - WSJ
- 米政府当局者らは、多くの貿易相手国・地域との交渉に共通の条件を設定する新たな枠組みを用いて、通商交渉を段階的に進める計画だ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
- ドナルド・トランプ大統領の「相互関税」を巡る交渉を効率的に進めるため、当局者は米通商代表部(USTR)が作成した枠組みを用いる計画だ。この枠組みは、関税と割当制、米国製品に対する規制などの非関税障壁、デジタル貿易、製品の原産地規則、経済安全保障およびその他の商業問題など、交渉における広範な項目を提示している。交渉条件の概要書の草案について知る関係者が明らかにした。
- 関係者によると、米当局者はこれらの項目内で個別の国・地域に対する要求を具体的に示す構え。ただし、政権はより多くの意見を参考にし、文書を修正する可能性があると強調した。
- USTRの報道官は「USTRは体系的かつ厳格な枠組みの下で作業し、交渉に前向きな貿易相手国・地域と迅速に協議を進めている」と述べた。その上で、「トランプ大統領とUSTRは米国の目標を明確にしており、貿易相手国・地域はそれぞれが個別に提示できる内容をよく理解している」と述べた。
- 関係者によると、米国は今後2カ月間にわたり、新たな枠組みの下で約18の主要貿易相手国・地域と順次交渉することを検討している。当初の計画は、1週目に6カ国、2週目に6カ国、3週目に6カ国と交渉を行い、計18カ国を1サイクルとして7月8日の期限まで交渉を繰り返すもの。7月8日は相互関税の90日間停止措置が終了する期限だ。その時点で合意に至らなかった国・地域には相互関税が課されることになる。ただし、トランプ氏が一時停止措置を延長する可能性もある。
- 関係者の1人によると、協議が難航した場合、交渉スケジュールが遅れる可能性もある。キャロライン・レビット大統領報道官は今週、政権は貿易相手国・地域から18件の通商提案を書面で受け取り、検討中だと述べていた。
- どの国・地域がUSTRの枠組みに基づいた交渉に参加するのか、あるい異なる交渉の道筋をたどるのかは不明。ただ、インドなど一部の国は、大半の貿易相手国よりも交渉が進んでいるようだ。JD・バンス副大統領が今週、インドの首都ニューデリーを訪れた際、インド政府は貿易協定に向けた交渉について大枠で合意していた。
- 米国の2大貿易相手国であるメキシコとカナダは、相互関税の適用対象外だったため、新たな枠組みを用いた通商交渉には参加しない可能性が高い。米国の第3位の貿易相手国である中国も、トランプ氏が名指しして少なくとも145%の高関税を課していることから、異なる道筋をたどる公算が大きい。
- 米中、関税協議巡り主張に食い違い 不確実性高まる | ロイター
- 米中貿易戦争への懸念が払しょくされない中、トランプ米大統領は25日に公開されたインタビューで、中国との関税交渉が進行中と主張した。ただ、中国はいかなる協議も行われていないと改めて否定。相反するシグナルが続いていることで、トランプ氏が掲げる関税措置を巡る不確実性が一段と高まっている。
- トランプ氏は22日に行われた米誌タイムのインタビューで、中国と関税協定を結ぶために協議しており、中国の習近平国家主席から電話があったと主張。関税を巡る交渉は3ー4週間ほどで終わらせるとも語った。
- 中国はこれを改めて否定。在米中国大使館によると、中国外務省は声明で「中国と米国は関税についていかなる協議や交渉も行っていない」と反論。「米国は混乱を生み出すのをやめるべきだ」とした。
- トランプ氏が今月初めに発表した大規模関税措置に対し、中国だけでなく他の多くの国も米国と交渉を実施。今週開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行春季会合に参加するために米首都ワシントンを訪れた各国の当局者と米当局者との間で活発な協議が行われた。
- ベッセント財務長官を含むトランプ政権高官は、迅速な進展の兆しでているとの認識を示しているが、多くの国は慎重な姿勢を表明。アイルランドのドナフー財務相はロイターに対し「世界中の雇用、成長、生活水準に対し何がリスクになっているのかという明確な認識をもってこの会議を後にする」とし、「向こう数週間、数カ月のうちに、この不確実性を軽減するためにあらゆる手段を尽くす必要があると改めて認識した」と述べた。
- こうした中、米中貿易戦争の緩和を示す兆候も出ている。複数の企業が明らかにしたところによると、中国政府は米国からの輸入品に対する125%の関税について、一部品目を対象から除外することを認め、対象となり得る品目について企業側に意見を求めている。 もっと見る
- 関係筋によると、商務省の作業部会が関税免除の対象になり得る品目のリストを作成しており、企業側に要望を提出するよう要請。経済誌「財新」は25日、関係筋の話として、中国政府はメモリーチップを除く半導体関連8品目を対象に含める準備をしていると報じた。
- このほか、トランプ氏はこの日、記者団に対し、日本との関税を巡る合意は「極めて近い」段階にあると表明。 もっと見る
- 米政府は関税措置を巡る日本との交渉を最優先に位置づけており、日本との交渉は他の国との交渉の「試金石」と見なされている。一部では、石破茂首相とトランプ氏が6月にカナダで開催される主要7カ国(G7)首脳会議で顔を合わせる際に協定を発表するとの見方も出ている。
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
- 円債、入れ替え中心で残高横ばい 国内株はリスク削減で圧縮=第一生命・25年度運用計画 | ロイター
- 第一生命保険は25日、2025年度の一般勘定資産の運用について、円建て債券は責任準備対応債券の入れ替えを中心に取り組み、残高はおおむね横ばいになるとの計画を示した。一方、国内株はリスク削減のため、前年度に続き残高を圧縮する。
- 市村直人運用企画部長が資産運用計画説明会で明らかにした。
- 市村氏は、第一生命では上場企業の傘下にある保険会社として、資本コストを上回る資本効率の安定的な実現に向けて継続的に取り組んでいると説明。その上で「市場リスクのうち金利リスクについては足元までに相当程度圧縮できた。目先は株式リスクの削減が大きな焦点」との考えを示した。
- 資産別の計画のうち円債については、足元は資産と負債の規模がおおむねマッチしている状況で、年限別のキャッシュフローを踏まえた責任準備債券の入れ替えが中心となり、残高はおおむね横ばいと見込む。
- 「大きな部分で言えば、30年と40年が買い目線になり、それより手前の短いところは資産が超過している状況で売り目線になってくる。実際には、より細かい年限で区切って売買を行う。入れ替えの規模は24年度の約7000億円とおおむね同水準になる」(市村氏)という。
- 第一生命では日銀の金融政策について、経済情勢を見極めつつ、早ければ10月以降、半年に1回程度のペースで利上げを再開し、ターミナルレートは1.5%程度になると想定。また足元で2.7%近辺にある30年金利については、年度末の水準を2.8%と予想し、ここからの上昇余地は限定的で、日本国債のイールドカーブはフラット化するとの見方を示した。
- 外国債券のうち「円債代替」である為替ヘッジ付き外債は、円金利上昇で円債の妙味が増してきた中、残高横ばいを見込む。オープン外債は前年度に続いて残高を減らす。
- 第一生命では24─26年度の中期経営計画で、資本効率の改善に向けて国内株を3年間で1.2兆円削減する方針を掲げており、今年度も国内株式の残高を減らして株式リスクの縮減を図る。一方で外国株式は、リスク許容度や株価水準次第だが残高はおおむね横ばいとする方針。
- オルタナティブ資産については、前年度に続き積極的な積み増しを計画。「特にリアルアセット、プライベートデットの領域には非流動性プレミアムによる投資妙味があり、保険会社の運用にマッチしている」(市村氏)という。不動産も、用途分散を目的とした新規投資や入れ替えにより、残高を増加させる。
- 第一生命の一般勘定の資産残高は、12月末時点で34兆1075億円。うち外貨建て資産は4兆4995億円(13.2%)。
- 2025年度の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。
- 日本国債10年物利回り 1.00―2.00%(年度末1.75%)
- 米国債10年物利回り 2.50―5.50%(同4.00%)
- 日経平均株価 2万5000―4万4000円(同4万円)
- NYダウ 3万─4万7000ドル(同4万4000ドル)
- ドル/円 120―160円 (同135円)
- 円建てシフト継続、市場急変には柔軟対応=朝日生命・25年度運用計画 | ロイター
- 朝日生命保険は2025年度の一般勘定資産運用で、円建て資産への移行を緩やかに進める方針を決めた。円金利上昇リスクをにらみ大規模な積み上げは行わないが、金利上昇局面で保有銘柄の入れ替えなどを進める。機動的な為替ヘッジで外債投資も継続する。
- 資産運用企画部長の内村伸明氏が取材に応じ、明らかにした。
- 国内債は償還が多いため450億円減少する計画だが、金利上昇局面では利率の高い銘柄へ入れ替えて、収益力を向上させる。内村氏は「まだ円金利は上昇する可能性があると見ているので、変更は徐々に進める。残高は減少予想だが、結果的に横ばい程度になる可能性もある」としている。
- 外債は1000億円積み増す予定だが、為替ヘッジの判断は「相場動向次第」。ドル/円の変動に合わせて、ヘッジ比率を5割から8割程度まで機動的に上下させることで、リスクの最小化を狙う。
- 年始以降、円相場の変動が大きくなっていたことから、前期末時点のヘッジ比率は7割弱へ上昇した。ヘッジ比率が高まれば、得られる金利収入は減少するため「しばらく守り(の運用)になるかもしれないが、そこは止む無しという判断だった」という。
- 今年度も金融市場は米トランプ政権の下で波乱の出足となっているが、内村氏は「一時的な(米国などの景気)減速はあるかもしれないが、大きなクラッシュに至ることはないだろう。関税政策や市場変動がある程度落ち着けば、巡航速度に戻るのではないか」と話している。
- 今年度の株式投資は国内が50億円程度の増加で、外国株は横ばい。投信やオルタナは100億円増を見込んでいる。相場見通しは以下の通り。
- 前期実績は国内債が200億円減、外債が800億円減だった。
- 銀行の融資格付け柔軟に、赤字でも成長力評価を 金融庁が新指針 - 日本経済新聞
- アメリカ国債の市場機能低下、金利変動大きく FRB報告 - 日本経済新聞
- 米連邦準備理事会(FRB)は25日に公表した金融安定性報告(FSR)で、金融資産の売買のしやすさを示す流動性が米国債と米株市場の双方で悪化していると指摘した。4月前半に米金利の急上昇(債券価格の急落)や株価の急落が生じたように、市場変動が大きくなりやすいことに警鐘を鳴らした。
- FSRは年に2回公表し、金融機関や家計・企業など資金の借り手、市場の健全性とリスクを点検している。
- 米国債市場では4月前半にトランプ米政権の相互関税をめぐる混乱で売り圧力が強まり、金利が急上昇する場面があった。FSRは取引の厚みを示す指標が「歴史的な基準よりも低い水準にあり、4月に入ってさらに悪化した」と指摘した。
- 流動性が減るとショック時の価格変動が大きくなり、資産を高速売買する事業者などが価格の提示に慎重になるため、流動性がさらに細ると言及した。4月前半の米国債市場は「過去のストレス局面にみられた深刻な緊張を示すことなく機能し続けた」と評価したが、市場機能がもろい状態にあることへの警戒をにじませた。
- 株式市場の流動性も2000〜10年代と比べて20年代は細った状態が続き、足元でさらに小幅に悪化したと指摘した。米株相場は2月の直近高値から4月前半にかけて急落したが、「調整が緩やかな企業収益見通しに比べると株価はまだ高い」と分析した。
- ニューヨーク連銀による2〜4月の市場関係者ら22人への聞き取り調査(複数回答)では、今後1年〜1年半の間に金融の安定を脅かす要因として「世界貿易のリスク」を挙げる人が73%と最多だった。半年前の調査(33%)から大幅に増え、歯止めなき貿易戦争への警戒感を映した。
- 政策の不確実性やインフレの持続、リスク資産の価格調整、米国債市場の機能低下といった項目でも回答者の割合が高まった。
- 米包括的国防支出に1500億ドル、ゴールデンドーム構想含む | ロイター
- アングル:米政権の貿易戦争、世界の企業が警戒 値上げや業績予想引き下げ | ロイター
- トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争がコストを押し上げ、サプライチェーン(供給網)を揺るがし、世界経済への懸念をかき立てる中で、さまざまな業界の企業が価格を引き上げ、業績予想を下方修正し、不確実性の高まりを警告している。
- 24日に決算を発表した米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)(PG.N), opens new tabのアンドレ・シュルテン最高財務責任者(CFO)は、トランプ氏が導入を表明した関税強化によるコスト上昇の影響をカバーするために商品を値上げする計画を発表。シュルテン氏は会見で「コスト構造と損益の中で関税の影響を軽減するために、あらゆる手段を講じなければならない」とした一方、「短期的な調達の変更や原材料の変更はしたくない」として、状況が確実になった後に対応を検討すると表明した。
- 米食品・飲料大手のペプシコ(PEP.O), opens new tabと、医療機器メーカーのサーモフィッシャーサイエンティフィック(TMO.N), opens new tabは貿易摩擦を理由にして年間利益見通しを下方修正した。アメリカン航空(AAL.O), opens new tabは2025年通期決算の業績見通しを撤回した。
- ペプシコのジェイミー・コールフィールド氏は決算発表後の電話会見で「3カ月前と比べて消費者の動きに良い印象を持っていない」と語った。
- ネスレ(NESN.S), opens new tabのローラン・フレイシェ最高経営責任者(CEO)とユニリーバ(ULVR.L), opens new tab、米チポトレ・メキシカン・グリル(CMG.N), opens new tabはいずれも米国の消費マインドが弱まっていると指摘した。
- ロイターの分析によると、過去2週間に世界の30社弱が業績予想を撤回または下方修正した。その中には建築用品企業のマスコ(MAS.N), opens new tab、米航空会社のデルタ(DAL.N), opens new tabとサウスウエスト(LUV.N), opens new tabも含まれる。
- イーロン・マスク氏が率いる米電気自動車(EV)メーカー、テスラ(TSLA.O), opens new tabは貿易政策による打撃や、トランプ氏の側近として政府職員の解雇を進めてきたマスク氏への反感による不買運動の打撃を受けており、3カ月以内に業績予想を見直すと表明した。
- 株価の大幅下落など市場に激震が走った後、トランプ氏は貿易相手国に対する「相互関税」の上乗せ部分を7月8日まで90日間停止した。一方で米国への輸入品に対する10%の基本関税と、アルミニウム、鉄鋼、自動車に対する関税は引き続き適用される。
- 情報筋は23日にロイターに対し、米国は中国との貿易交渉が終わるまで中国からの輸入品に対する関税の引き下げを検討すると明らかにした。一方で中国は提案を拒絶し、トランプ氏が導入を表明した全ての関税を交渉前に撤回するように要求している。
- トランプ氏が一部の関税適用を撤回する可能性を示唆したため、米株式市場はここ数日間安定している。トランプ政権は日本や韓国、それら以外の国々との貿易交渉を進める構えだ。S&P500種株価指数は24日に上昇したものの、今年に入ってからは7.5%下落している。
- <投資のシフトも>
- 韓国の現代自動車(005380.KS), opens new tabは関税に対応するためのタスクフォース(作業部会)を立ち上げ、クロスオーバー車「ツーソン」の一部の生産をメキシコから米国へ移したと発表した。
- 現代自動車は「貿易戦争の激化や、その他のさまざまな予測不可能なマクロ経済要因のため、厳しい事業見通しが続くと予想している」として年間業績目標を据え置く中で、一部の米国向け自動車の生産を韓国から他地域へ移すかどうかも検討していると表明した。
- 現代自動車は傘下の起亜(000270.KS), opens new tabと合わせた販売台数が自動車メーカー世界第3位となっており、世界販売台数の約3分の1を米国市場が占めている。また、米国での自動車販売台数の約3分の2を輸入が占めている。
- 大手製薬会社数社は、米国での医療費の削減や食品医薬品局(FDA)の職員の大量解雇を懸念しながらも、既に多くの医薬品メーカーが進出している米国に追加投資すると表明している。
- 米ブリストル・マイヤーズ・スクイブのデビッド・エルキンスCFOは「当社にとっての懸念は、技術革新に影響を与えるようなこと」または「患者の医薬品へのアクセスを制限するようなことだ」と言及した。
- 中国の電子商取引(EC)大手、京東集団(JDドット・コム)(9618.HK), opens new tabは今月11日に発表した今後1年で輸出企業から少なくとも2000億元(273億5000万ドル)相当の商品を購入する販売支援策について、既に3000社近くから問い合わせを受けていると明らかにした。
- 歴史的ゴールドラッシュ、金投資は市場から街中にも - WSJ
- 金ビジネスが活況を呈している。ウォール街と西47丁目の宝飾店街で。
- たった一つのブロックに何十もの宝飾品取引業者がひしめくマンハッタンのダイヤモンド街で金販売業を営むアーロン・アキオンさんは、店の陳列ケースをのぞき込む客からチェーンや指輪についてひっきりなしに尋ねられるため、二つの文を言い終えるのさえ難しいありさまだ。
- アキオンさんは「さっきはもっと忙しかった。この2カ月は、過去1年半よりも忙しい」と語った。
- アキオンさんによると、金価格が急上昇している中で彼の店「ジュエルズ・オブ・NYC」を訪れる客が増えている。高値に乗じて持っている宝飾品類を売ろうとしている人もいれば、過去数カ月間で価値を失っていない数少ない投資先の一つに資金を投じたいと考えている人もいる。
- ドナルド・トランプ米大統領の貿易戦争が世界経済や金融市場にもたらした衝撃波は、金への投資急増を促した。金は市場で最も実績がある資金の逃避先の一つだ。金相場は22日に1オンス=3500ドルを超え、取引時間中の最高値を更新した。インフレ調整後のベースでも、1980年に付けた最高値に迫りつつある。
- 金相場は、幅広い購入者のグループによって突き動かされている。コストコのような小売店で購入する個人、金ETF(上場投資信託)に投資するトレーダー、外貨準備の多様化を目指す国際的な中央銀行だ。
- 金相場上昇の影響は金融市場にとどまらず、ニューヨークの金、宝飾品、宝石の取引の中心地である西47丁目の宝飾店街にまで及んでいる。結婚指輪を買い求める人々や警備員は、ショーウインドーや「金買います」の表示が並ぶ歩道に集まっている。店内では買い手が腕時計の価格交渉をしたり、売り手が時折、金庫から金の延べ棒を出したりしている。
- 宝飾品取引業者によると、金の売買はここ数週間で急増した。彼らは最近の市場の不安定さがそれに大いに関係しているとみている。
- 「人々は手探りの状態にある。彼らは、経済にこれから何が起きるのか分からなくなっている」とファンタジー・ダイヤモンズで金販売を担当するデービッド・ガブリエル氏は語る。
- ガブリエル氏は、顧客の間では延べ棒、コインの形で純金を購入したいとの要望が高まっていると指摘。「彼らは金を投資対象と見ている」と語った。
- 投資家たちはずっと以前から、経済見通しが不透明な時期に、安全な資金逃避先として金を購入してきた。しかしここ数週間は、乱高下する株式市場からの数少ない資金逃避先としても、金の注目度が高まっている。最近の各種相場の急落局面では、米国債などの伝統的な資金逃避先も、株とまったく同様に値を下げていた。
- 株価の下落局面では上昇する傾向が強かったドル相場も、今回は急落している。
- 「金は比類するものがほとんどないほどの安全性を提供してくれる」と、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズで金市場の主任ストラテジストを務めるジョージ・ミリングスタンレー氏は指摘する。「金は伝統的に、マクロ経済の混乱に対するのと同様に地政学上の混乱に対しても、一定の安全を提供する資産だと考えられてきた。そして私たちは現在、この二つの混乱に事欠かない状況にある」と語った。
- 機関投資家は金市場に注目している。バンク・オブ・アメリカが実施したファンドマネジャー調査では、半数近くが4月初旬に最も盛んだった取引として金投資を挙げた。こうした過熱ぶりのリスクは23日に明らかになった。金価格は、1日の下落率としては約4年ぶりの大きさとなる3.6%超の下げを記録した。
- スタンダードチャータード銀行で貴金属調査部門のエグゼクティブディレクターを務めるスキ・クーパー氏によると、最近の金価格上昇ではその要因の多くが、金ETFに資金が大量に流入していることだ。金ETFに投資すれば、投資家は現物のコインや地金、宝飾品を購入せずに、ファンドの証券を購入して金をポートフォリオに組み入れられる。
- 調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、2025年1-3月期に世界の金ETFの資金流入額は史上2番目の大きさで、流入額は210億ドル(約3兆円)だった。
- ただ、金現物への関心も高まっていると、オンライン売買サイト「マネー・メタルズ」のステファン・グリーソン最高経営責任者(CEO)は話す。
- グリーソン氏によれば、同サイトで金を売買する人の数は今年2月に増え始めた。これは、株価の長期的下落が始まったタイミングだ。そして、トランプ氏が「解放の日」として世界各国・地域に対する関税引き上げを発表した後の1週間で、取引量が2倍になったという。
- 「株式の代替的投資対象は、もはや債券ではない。金だ」とグリーソン氏は語った。
- 金相場に乗り遅れたら「銀」を狙え - WSJ
- 金(ゴールド)はまたしても金融市場の混乱に対するヘッジとしての真価を発揮した。過去の例を見れば、上昇余地はまだあるかもしれない。だが金は間もなく、人気ではそれよりも劣る別の貴金属に輝きを奪われる可能性がある。
- 金を巡っては投資家の間で議論が絶えず、熱烈な支持者もいれば、価値を認めない向きもいる。しかし、過去のデータを冷静に見れば明確な結論が導き出される。金は超長期的には株式のリターンを大きく下回るものの、事態が悪化すると長期にわたって株式を上回る傾向がある。金に遅れながらも、銀も上昇することが多い。
- 金は1970年代と今世紀最初の10年間、S&P500種指数を上回るリターンを示した。最初のケースではインフレから、その次のケースではドットコムバブル崩壊から金融危機に至る景気の全般的な低迷から投資家を守った。
- この偉業は繰り返されるかもしれない。ファクトセットによると、2020年代に入ってから金は113%のリターンを記録しており、S&P500種指数の配当込みのリターン78%を上回っている。
- とはいえ、金を買い込もうと考えている投資家が少し不安を感じても無理はない。金は今週、ドル建てで過去最高値を付けた後、ドナルド・トランプ米大統領が貿易や連邦準備制度理事会(FRB)を巡る問題で態度を軟化させたことを受けて反落した。それでも過去12カ月間で約41%上昇している。
- 幸いなことに、歴史を振り返ると銀は金に追随する可能性が高い。銀は過去1年間で約23%上昇しており、リターンは金には及ばないものの、同期間のS&P500種指数の6%を大きく上回る。
- これは銀の二面性に関係していると思われる。銀は貴金属として金と同様に、インフレや戦争、社会不安などの中でも価値を保つという、資金の安全な逃避先としての魅力を持つ。
- 銀はその一方で、金と比べ電子機器や太陽光パネルなど工業用としての需要が大きく、景気の影響を受けやすい。そのため市場が景気悪化を懸念し始めると、少なくとも当初は銀よりも金のほうが魅力が高まりやすい。]
- ハードアセットを好む投資家らは、金相場が過熱しているかどうかを判断するため、金と銀の価格比率を注視する。23日時点で1オンス当たりの金の価格は銀の98倍となっており、今週初めの100を超える水準から低下した。
- この「金銀比価」は過去30年間で平均68倍だった。この間、現在ほど平均から大きく乖離(かいり)したのは2020年3月の新型コロナウイルス流行による当初の混乱期のみで、その時は113倍に達した。
- その後の12カ月間で銀価格は73%上昇した一方、金価格の上昇はわずか8%にとどまった。
- 世界金融危機の際に金銀比価は100倍を超えることはなかった。とはいえ、2008年6月に53だった倍率は11月には80へと大きく上昇した。
- これもまた、銀の力強い上昇を予告するものだった。その後の12カ月間で銀は81%上昇した一方、金の上昇率は44%にとどまった。2016年初めの市場混乱の際も、金銀比価は80倍を超えた。やはりこの時も、その後の銀のリターンは金を上回った。
- 今回、何がこのパターンを崩す可能性があるだろうか。銀が景気に敏感であることを考えると、世界の貿易が深刻な混乱に陥ることかもしれない。ただ、世界金融危機によって引き起こされた不況でさえ2009年6月までに終息し、銀の保有者はFRBの金融緩和と工業用需要の循環的拡大の両方の恩恵を受けた。
- 最悪のシナリオに備えるヘッジとしては、金が依然として銀よりも優れている。そこまで悪くない場合であれば、投資家は金を保有しつつも、新たな貴金属をポートフォリオに加えるべき時なのかもしれない。
- 貿易戦争で「時間は米国の味方、中国の敵」-アックマン氏 - Bloomberg
- 資産家でヘッジファンド運用者のビル・アックマン氏は、中国は米国との貿易合意を速やかにまとめる必要があると述べた。長引く貿易戦争は、中国経済に深刻な打撃を与えるため同国に勝ち目はないという。
- アックマン氏はX(旧ツイッター)への投稿で、中国政府は「貿易合意をできるだけ早急に結ぶ強い動機を持つべきだ」と指摘。高関税が長引くほど中国は、経済的に合理的な条件で製品を調達または生産できる市場という企業からの信頼を失う可能性が高まると述べた。
- 早期に合意が成立しない場合、「中国にサプライチェーンを置くすべての企業が、インドやベトナム、メキシコ、米国といった国に拠点を移す」と予想した。
- さらに、「中国がプライドや感情的な問題から交渉を拒否し続けるなら、もっと深刻で永続的な経済的ダメージを受ける」とし、「この交渉において時間は米国の味方であり、中国の敵だ」と述べた。
- トランプ米大統領は就任以来、大半の中国製品に145%の関税を賦課しており、中国も報復措置を講じていることから、世界の二大経済大国間の貿易は大きく縮小しかねない状況にある。そうした中、中国政府は米国に対する125%の報復関税で一部製品を対象から除外することを検討しているとブルームバーグ・ニュースは25日に報じた。
- アックマン氏は、関税による経済的ダメージを考慮すると、中国も米国も関税を「より現実的な」10-20%程度の水準にできるだけ早く引き下げる十分な理由があると指摘。これを妨げている唯一の要因は「両国の指導部が弱腰と受け止められるのを恐れている点だ」と付け加えた。
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- イランの商業港で大規模爆発、少なくとも14人死亡-ホルムズ海峡近く - Bloomberg
- 米イランの核協議に進展の兆し、次回は近日中に欧州で - Bloomberg
- 米国とイランは26日、イランの核開発を巡る高官協議を中東のオマーンで開き、進展の兆しが見られたことを明らかにした。
- 米政府高官はトランプ大統領のホワイトハウス復帰後3回目の協議について、前向きで生産的だったと説明。近日中に欧州で再び協議することで合意したと述べた。双方の発表によると、まだ多くの作業が残されている。米国側からはウィトコフ中東担当特使らが出席した。
- 仲介役を務めたオマーンのバドル外相はX(旧ツイッター)への投稿で、「中核となる原則、目標、技術的な懸念がすべて取り上げられた」と述べた。
- イラン側の交渉チームを率いたアラグチ外相は、オマーンの首都マスカットで開かれた協議後に国営テレビに対し、「今回の協議は以前よりはるかに真剣だった。徐々に詳細な技術的な議論に入ってきた」とコメントした。
- その上でアラグチ氏は、重大な相違点が依然残っているとの認識も示し、「時には意志の力だけでは不十分で、相違点が非常に重大で合意に至れない可能性もある」と述べた。
- イラン外務省報道官によると、同国の核開発に関する信頼構築や原子力の平和利用の権利保障、制裁緩和の実現を焦点にした協議に経済や銀行、核問題の専門家が参加した。
- ヒズボラを平和的に武装解除するよう説得できるか?|ARAB NEWS
●その他エマージング
- アングル:外需に過剰依存、中国企業に米関税の壁 国内市場は薄利 | ロイター
- 中国東部で衣料品工場を経営するエノ・チアン氏は、海外販売で1点あたり20元(約2.74ドル)の利益を得ているが、国内販売の利益はその10分の1にとどまる。彼女の事業は関税の影響を被るものの、国内販売への移行は「現実的ではない」と頭を抱える。
- 米国は中国製品への輸入関税を145%に引き上げると発表し、中国製品にとって米市場は凍結状態になった。このため中国政府は輸出企業に対し、米国に代わる市場として国内で買い手を探すよう呼びかけを強めているが、転換は困難だと企業側は懸念を示す。
- 輸出に依存する製造業の多くは中国市場について、内需低迷、価格競争、利益の低さ、支払い遅延、返品率の高さといった問題を指摘する。
- チアン氏は、薄利と「キャッシュフローのリスク」を理由に「国内販売は追求しない」ことに決めた。中国の小売業者は支払いが遅れたり返品を要求したりするが、「外国のビジネス相手はもっと安定感がある」という。
- こうした問題は、中国が経済成長を輸出に過剰依存している実態と、消費者の所得を早急に増やす必要性を浮き彫りにしているとアナリストは指摘する。
- 財政刺激策で内需を刺激しない限り、中国市場で製品の供給が増えれば事業が圧迫されてデフレ圧力が強まり、裏目に出るだけだという。
- 豪モナシュ大学経済学のヘリン・シー教授は「中国では激しい競争ゆえに利益率が極めて薄く、時にはゼロに近い。このため輸出企業の一部は、国内市場に軸足を移せば倒産する恐れがある」と述べ、倒産が増えれば人々の収入も減って悪循環に陥るとの懸念を示した。
- 中国商務省は今月、トランプ米大統領による関税引き上げの影響を緩和するための主要戦略の一つとして、輸出企業による国内販売拡大を支援すると表明した。
- 同省はその後、北京、広州、海南島など各地で「マッチング」イベントを開催し、製造業者と電子商取引(EC)プラットフォーム、スーパーなどの小売業者を結び付けようとしている。
- また地方政府は、輸出企業の「国内市場への不慣れ、運営経験の不足、ブランド認知度の低さ」などの問題を解決するためのタスクフォースを設置しつつある。
- <必要なのは景気刺激策>
- EC大手、京東集団(JDドット・コム)(9618.HK), opens new tabは、今後1年間に輸出企業が国内販売を拡大できるよう2000億元(273億5000万ドル)の基金を設立すると発表した。同社によると、既に約3000社から問い合わせがあった。これは外国貿易を行う中国企業の約0.4%に相当する。
- 料理宅配アプリ大手、美団(3690.HK), opens new tabも輸出企業に対しマーケティング支援などを行うと表明した。
- しかしチアン氏は、本当に必要なのは「税制や補助金」面での支援だと言う。彼女は米国の関税の影響で売上高の30%を失い、従業員の削減に追い込まれており「最悪の場合、工場を閉鎖しなければならないかもしれない」と厳しい口調だ。
- 中国南部で下着工場を経営するデイビッド・リアン氏は、国内市場は「価格に極めて敏感で、販売促進コストが高く、頻繁に返品がある」と語る。外国の顧客は大量の卸売注文を入れるが、中国市場は「小売りと小口」が中心だとし、今は中東、ロシア、中央アジア、アフリカで新規顧客を探していると明かした。
- 一方、寧波の工場から照明関連製品を輸出するリュウ氏は、国内販売を推進するためには人を雇って専用のチームを作る必要があると指摘。「うちは零細企業で、そんな余力はない」と切り捨てた。
- 中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会は今月会議を開く見通しで、国営メディアは討議内容について、特に輸出企業の国内シフト支援策を大きく伝えそうだ。
- ただ、モナシュ大のシー教授は、会議は国内向けに強さをアピールするとともに、米国への抵抗姿勢を示すのが狙いだと指摘する。エコノミストらが注目するのは、より具体的な内需刺激策だ。
- 中国の昨年の小売売上高は43兆2000億元(5兆9200億ドル)で、対米輸出3兆7000億元の11倍余りに相当した。
- キャピタル・エコノミクスのアナリスト、ジュリアン・エバンズプリチャード氏の推計では、今後2年間で米国向け販売が2兆ドル減少しても、同期間に消費が4%増加すれば理論的には影響を相殺できる。
- しかし同氏は、消費者は経済見通しに自信を持てない限り、もしくは政府がより手厚い社会保障措置を約束しない限り、貯蓄を切り崩すことはないと話す。あるいは賃金が急増する必要があるが、雇用主が関税の打撃を被ることを考えれば、このシナリオは可能性が低い。
- グローバルデータ・TSロンバードAPACのシニアエコノミスト、ミンシオン・リャオ氏は「社会保障セーフティーネットに関連する措置、中でも、何年も遅れている年金・財政改革が鍵になる」と述べた。
- 韓国大統領選挙、野党候補に李在明氏 国益最優先の外交政策掲げる - 日本経済新聞
- 韓国の最大野党「共に民主党」は27日、6月3日投開票の韓国大統領選の公認候補に李在明(イ・ジェミョン)前代表を選出した。国益最優先の外交政策を掲げる。汚職疑惑などをめぐり刑事裁判を抱えるが、党内で圧倒的な支持を得た。
- ソウル近郊の京畿道高陽市で予備選の結果が発表され、李氏は党所属の国会議員や地方議員、党員から9割の票を得た。選出後の演説で「必ず勝利して政権を奪還する」と力を込めた。
- 世論調査会社、韓国ギャラップの4月第4週の調査で、「将来の政治指導者として好ましい人物」との質問で李氏は38%の支持を獲得しトップを独走する。与党「国民の力」は支持が分散し各候補10%以下にとどまっている。
- 外交については国益を最優先する「実用主義」だと主張する。15日公開のユーチューブ番組で「韓米同盟を尊重し、韓日米3カ国の協力体制をしっかり構築しつつ、ロシアや中国との関係も適切に管理する必要がある」と説明した。
- 日本との関係については「大局的にみれば協力しないといけない関係だ」と言及した。「歴史や領土問題と、経済や社会・文化的側面とは分けて対応しなければいけない」と強調した。
- 李氏はこれまで日本や米国に対して批判的な発言が目立っていた。熱狂的な支持者が多い一方で、反感も受けていた。李氏は大統領選への出馬を表明して以降は、現実主義者としてのイメージを打ち出し過激な言動は抑えている。
- 共に民主党の党内予備選には李氏のほか金東兗(キム・ドンヨン)京畿道知事と金慶洙(キム・ギョンス)前慶尚南道知事も立候補した。両氏は文在寅(ムン・ジェイン)元大統領と距離が近いとされる。文氏は24日に、特定犯罪加重処罰法違反(収賄)罪で在宅起訴されている。
- 李氏は市長時代の都市開発を巡る汚職など複数の刑事裁判を抱える。3月に公職選挙法違反に問われた刑事裁判で、一審の有罪から逆転して無罪判決となったが、韓国最高裁の担当判事らの見解が割れ、判事全員が参加する全員合議体での審理が続いている。
- 中国から米国へ向かう貨物輸送が減少 - WSJ
- 中国から米国に向かう貨物のキャンセルが加速度的に増加する中、衣料品や電子機器、家具などを積んだ船舶の数が急減している。
- こうした運航中止は、ドナルド・トランプ政権が中国に対する関税を引き上げる一方、他地域の大半に対しては懲罰的な関税を3カ月間猶予したことを受けたものだ。
- 中国からの輸入品の主要な玄関口の1つである米ロサンゼルス港でエグゼクティブディレクターを務めるジーン・セロカ氏は24日、港湾当局者に対し、2週間後には輸入量が35%減少するだろうと述べた。「中国からの大手小売業者やメーカー向け出荷が事実上全て停止したためだ」という。
- 米中貿易戦争により、小売業者やメーカーは供給ラインを切り替え、ベトナムやマレーシアなどアジアの他の地域から急いで製品を出荷している。小売業者が新学期や秋冬の休暇シーズン向け商品を仕入れる夏のピークに向けて、各企業は輸入に関する迅速な決断を迫られている。
- サンフランシスコを拠点に世界各地で法人貨物輸送を支援するフレックスポートの海上貨物部門ディレクター、ネイサン・ストラング氏によると、トランプ氏が4月9日に145%に達する一連の対中関税を課した後、中国からの予約は過去1週間で60%減少した。
- 中国から出航し、今後数週間で米国の港に到着する予定だった数十便が運航中止となった。デンマークの海事調査会社シーインテリジェンスのアラン・マーフィー最高経営責任者(CEO)によると、中国から米西海岸への貨物需要は来週28%減少し、東海岸の港湾への需要はその翌週に42%急減する可能性があるという。
- アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上が喫緊の課題に | ロイター
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
- アングル:ミャンマー特殊詐欺拠点、衛星通信利用で「停電作戦」での摘発困難に | ロイター
- バングラデシュは国内繊維産業が生み出す膨大な廃棄物について、自国の低い処理能力をいつまでもそのままにしておくことはできないだろう。世界中のアパレル産業が、環境汚染を減らす取り組みを迫られているからだ。
- 衣料品製造で世界第2位のバングラデシュは、繊維廃棄物のうちリサイクルするのはごくわずかで、残りは海外に持ち出されるか、放置されて環境汚染につながっている。
- 一方で衣類のリサイクル比率を高める規制を導入する国が増える中で、アナリストや事業主らは、バングラデシュもリサイクル能力を向上させて2027年までに94億ドル(約1兆3400億円)規模に達するとされる世界の繊維リサイクル市場から生じる需要に対応しなければならないと指摘する。
- 欧州連合(EU)は今月、繊維産業が引き起こす環境公害を減らす項目などを盛り込んだ製品の持続可能性に関する新たな基準を達成するためのロードマップを初めて公表。これによってバングラデシュなどの衣料品輸出国はリサイクル比率の引き上げや、ほとんど非正規労働者が占める繊維産業の労働環境改善が必要になると英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のパトリック・シュレーダー上席研究員は解説した。
- シュレーダー氏は「今後数年でリサイクルを求める声が広がり、ファストファッションが時代遅れになっていくのに伴って、数百万人の雇用が影響を受ける。バングラデシュは先を見据え、変化に乗り遅れないような取り組みを強化しなければならない」と述べた。
- <非正規業者が大半を処理>
- バングラデシュの繊維工場から出される廃棄物は年間で最大57万7000トンに上ると推計されている。
- EUとフィンランド政府が支援する循環型高付加価値経済移行プロジェクト「スイッチ・トゥ・サーキュラー・エコノミー・バリュー・チェーンズ」の報告書によると、大半は海外に送られ、残った分は水路の妨げや土壌汚染をもたらすか、土地の埋め立てに使われたり、焼却されて有毒ガスを発生させたりする。
- 廃棄物選別・取りまとめのほとんどは非正規の業者が請け負っていて、マットレスや枕、クッションといった低価格製品の材料に回るケースもある。
- 首都ダッカで国連工業開発機関(UNIDO)のプロジェクトコーディネーターを務めるアサドゥン・ヌーア氏は、繊維工場から出た廃棄物を誰が引き取り、どういった価格設定をするか決めるのは政治家や影響力を持つ有力者だと指摘。「非常に不透明なプロセスで、衣料ブランドとサプライヤーにとって廃棄物のバリューチェーンの視認性を限定している」と付け加えた。
- 廃棄物はダッカ周辺のほとんど正規登録をしてない業者に渡され、そこで洗浄した後、品質や色などに基づいてまとめられる。
- 数万人に達する働き手の7割は女性で、昨年の国連児童基金(ユニセフ)による調査では毎日10-12時間も選別作業をしている。
- 労働者の話によると、きつい仕事に対する賃金は安く、重要な安全確保の措置は講じられていない。飲料水の提供や有給休暇、ハラスメント防止策もない。
- ダッカに近いナラヤンガンジの処理業者で250人の仲間の女性とともに働くサブラ・ベグムさん(30)は「月給は約80ドル。家族を養うのは容易ではない」と明かした。
- こうした業者で選別された廃棄物のごく一部だけがバングラデシュ国内のリサイクル工場に出荷され、大部分はインド、フィンランドといった外国にリサイクル目的で輸出される。これらの国のリサイクル施設はより大規模で、技術力も高い。
- 外国へ輸出された廃棄物で再生された繊維の一部はバングラデシュに戻り、再び衣類になる。
- スイッチ・トゥ・サーキュラー・エコノミー・バリュー・チェーンズは、国内でのリサイクルを拡大すれば、バングラデシュは年間でおよそ7億ドルの輸入コストを節約できると提言した。
- <前向きな動きも>
- バングラデシュ企業の一部は競争力向上を目指し、適正な労働基準導入に動きつつある。
- 2017年には起業家アブドゥル・ラザク氏が新会社「リサイクル・ロー」を立ち上げ、今ではバングラデシュ最大級の廃棄物処理業者になった。
- ラザク氏は「われわれは相応の賃金を提示し、基本的な労働基準を尊重しており、大半が女性の働き手のために飲料水や空調、安全を確保しているので、他社よりもずっと人が集まり、定着している」と述べた。
- 生産ライン強化に投資するリサイクル企業もあるが、ファッションブランドや開発金融機関の支援を伴う形でのケミカルリサイクルのような技術への大規模投資が必要になっている、とダッカ近くのアシュリアに拠点を置くリサイクル企業ブロードウェイ・リジェネレーテッド・ファイバーのアブドゥラ・ラフィ最高経営責任者(CEO)は強調した。
- ただラフィ氏は、投資家が期待するのは常に廃棄物が供給されることで、現在の不透明な引き渡しの仕組みは撤廃しなければならないと強調。「今われわれに必要なのはブランドやサプライヤー、廃棄物処理業者、リサイクル業者間でより資金を融通し、協力して処理能力を拡大することだ」と話している。
●市況(ChatGPTによる要約版)
**為替市場**
- ドルが小幅高。中国が一部対米関税を免除し、米中貿易摩擦緩和への期待が高まった。
- ドルは3月中旬以来の週間上昇見通し。
- トランプ大統領は中国との関税交渉が3〜4週間で終わる見通しと発言。
- 市場では「緊張緩和は見えるが、ドル回復を祝うのは時期尚早」との声も。
- 主要通貨に対してドルは小幅上昇、ドル円は143.555円。
**債券市場**
- 国債利回り低下。
- 米中貿易緩和の兆しと、FRBの利下げ観測が背景。
- 消費者信頼感指数が低下し、景気後退懸念が続く。
- 10年債利回りは4.266%に低下。
**株式市場**
- 主要株価指数が4日続伸、週間でも上昇。
- ハイテク大手「マグニフィセント・セブン」が株価を押し上げ。
- 小型株も大幅上昇。
- S&P500採用企業の73%が予想を上回る決算を発表。
- アルファベットは好決算で上昇、インテルは見通し悪化で下落。
**商品市場**
- 金先物は、貿易摩擦懸念の後退で反落(週間0.9%安)。
- 原油先物は続伸、米中貿易不安が一服し買い戻し優勢。
**ロンドン株式市場**
- 米中貿易摩擦緩和への期待でFTSE100は10営業日続伸、週間1.69%高。
- 中型株指数FTSE250も週間1.87%高と3週連続上昇。
- 防衛株(バブコック)が好調、一方モビコは米事業売却額低迷で急落。
- 英3月小売売上高は増加、4月消費者信頼感指数は低下。
**欧州株式市場**
- 欧州株も続伸、STOXX600指数は約3週間ぶり高値、週間2.77%高。
- 資源株・自動車株が関税緩和期待で大幅上昇。
- サフランやアコーなど好決算企業が株価押し上げ。
**ユーロ圏債券市場**
- ドイツ10年債利回りが上昇(2.475%)、週間でも小幅上昇。
- 米中貿易摩擦の緩和期待がリスク志向を高めた。
- ジェフリーズは「トランプ氏が最終的に撤退する」との見方を示す。
- 短期市場はECBの年末金利を1.62%と予想。
備忘録(2025/4/24)
●海外企業決算
- [PEP] ペプシコ 1Q減収減益 売上高2%減179億ドル、営業益5%減25.8億ドル、EPS1.33ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [XEL] エクセルエナジー 1Q増収 売上高7%増39.0億ドル、営業益微減6.77億ドル、EPS0.84ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PCG] PG&E 1Q増収減益 売上高2%増59.8億ドル、営業益4%減12.2億ドル、EPS0.28ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [ALLE] アレジオン 1Q増収増益 売上高5%増9.41億ドル、営業益14%増1.96億ドル、配当0.51ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [CNP] センターポイントエナジー 1Q増収営業増益 売上高11%増29.2億ドル、営業益5%増6.49億ドル、配当0.22ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [DOV] ドーバー 1Q増収営業増益 売上高2%増18.6億ドル、営業益17%増2.96億ドル、EPS1.73ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CMS] CMSエナジー 1Q増収増益 売上高12%増24.4億ドル、営業益20%増4.94億ドル、EPS1.01ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [MRK] メルク 1Q減収最終増益 売上高2%減155億ドル、純利益7%増50.7億ドル、EPS2.01ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [KDP] キューリグドクターペッパー 1Q増収増益 売上高5%増36.3億ドル、営業益5%増8.01億ドル、EPS0.38ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CBRE] CBREグループ 1Q増収増益 売上高12%増89.1億ドル、営業益35%増2.76億ドル、EPS0.54ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TSCO] トラクターサプライ 1Q増収減益 売上高2%増34.6億ドル、営業益5%減2.49億ドル、配当0.23ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [AMP] アメリプライズファイナンシャル 1Q増収最終減益 売上高5%増43.5億ドル、純利益41%減5.83億ドル、EPS5.83ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [NDAQ] ナスダック 1Q増収増益 売上高25%増20.9億ドル、営業益33%増5.47億ドル、EPS0.68ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [BMY] ブリストルマイヤーズスクイブ 1Q減収最終黒字転換 売上高6%減112億ドル、純利益24.5億ドル、EPS1.20ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [FI] ファイサーブ 1Q増収増益 売上高5%増51.3億ドル、営業益18%増13.9億ドル、EPS1.51ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CMCSA] コムキャスト 1Q減収減益 売上高1%減298億ドル、営業益3%減56.5億ドル、EPS0.89ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [DOW] ダウ 1Q減収最終赤字転落 売上高3%減104億ドル、最終赤字3.07億ドル、EPSマイナス0.44ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PG] P&G 3Q減収営業増益 売上高2%減197億ドル、営業益2%増45.5億ドル、EPS1.54ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [UNP] ユニオンパシフィック 1Q売上高横ばい60.2億ドル、営業益横ばい23.7億ドル、EPS2.70ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [EMN] イーストマンケミカル 1Q減収最終増益 売上高1%減22.9億ドル、純利益10%増1.82億ドル、EPS1.57ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [RSG] リパブリックサービシズ 1Q増収増益 売上高4%増40.0億ドル、営業益10%増8.04億ドル、EPS1.58ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [GILD] ギリアドサイエンシズ 1Q微減収黒字転換 売上高微減66.6億ドル、営業益22.3億ドル、配当0.79ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [INTC] インテル 1Q微減収営業赤字縮小 売上高微減126億ドル、営業赤字3.01億ドル、EPSマイナス0.19ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TMUS] TモバイルUS 1Q増収増益 売上高7%増208億ドル、営業益20%増48.0億ドル、EPS2.58ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [GOOG] アルファベット 1Q増収増益 売上高12%増902億ドル、営業益20%増306億ドル、配当0.21ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- ●海外企業
- 焦点:米鉄鋼産業の復活へ、鍵はトランプ関税ではなく労働力の確保 | ロイター
- トーマス・ライジンガーさん(55)は、米アーカンソー州ブライスビルにある広大な鉄鋼加工工場で働くため、片道約1時間半かけて通勤している。
- さらに遠方から通う同僚もおり、そのうち1人は平日キャンピングカーで暮らして週末だけ帰宅する生活だ。ここには、そうした労働者顧客向けのRVパーク(車中泊用の駐車場)が点在している。
- 輸入関税を通じて米中西部の製造業を大幅拡大するというトランプ米大統領の構想を実現するには、こうした労働者が大幅に増える必要がある。鉄鋼はトランプ氏が思い描く産業の代表例であり、同氏は貿易戦争の第1撃として鉄鋼輸入に25%の関税を課した。
- しかし外国企業との競争は、鉄鋼価格を圧迫するのは確かだが、この地域の鉄鋼企業にとって最大の課題ではない。最大の課題は労働力の確保だ。
- ブライスビルがあるアーカンソー州ミシシッピ郡のスローガンは「鉄鋼の土地」だが、これは決して過言ではない。経済分析会社チュムラ・エコノミック&アナリティクスの調査によると、郡内の雇用2万人のうち約25%は鉄鋼大手ニューコア(NUE.N), opens new tabとUSスチール(X.N), opens new tabが所有する広大な製鉄所や、それらに隣接するパイプ製造会社や金属加工会社など、関連企業で占められている。
- ミシシッピ郡経済開発財団の会長、クリフ・チットウッド氏の推計では、製鉄所が直接雇用する労働者の9%が、平日にRVパークや安アパートで暮らさざるを得ないほど遠方から通っている。
- <長時間シフトと長時間通勤>
- チットウッド氏は「これらの労働者の多くは12時間のシフトを4日間続け、その後4日間休むシフトを組んでいるため、一部は5、6時間も離れた場所で生活できている」と説明。一部の労働者は、逆のシフトで働く労働者と勤務日用の住居を共有していると言い添えた。
- この地域の労働市場の逼迫は、地方と全国でみられる傾向の縮図だ。
- 米国は数十年前に工場労働者の大量訓練を中止した。しかも退職と移民取り締まりによって労働力のプールは枯渇している。グローバル化によって多くの国内工場が閉鎖を余儀なくされたため、国民は製造業を不安定な仕事だと見なすようになった。
- 米国勢調査局の最近のデータによると、フル稼働できなかったと回答した全米の工場の20%以上が、労働力不足や特定のスキル不足を主な理由に挙げた。
- ホワイトハウスのデサイ報道官は製造業のスキル不足について問われ、米国では若年成人の10人に1人以上が、無職または教育や訓練を受けていて職に就いておらず、製造業セクターを拡大するための潜在的な労働力は不足していないと述べた。
- ミシシッピ郡は鉄鋼産業が繁栄したにもかかわらず、数十年にわたって経済が衰退し、生活の質が低下してきた。
- <過半数が郡外居住>
- 現在、この地域で鉄鋼業に従事する労働者の過半数は郡外に住んでいる。給与は良く、通勤費や一時的な住居の費用をまかなうのに役立つ。
- 給与は確かに高い。チュムラの調査によると、郡内の金属関連産業は労働者の平均年収が11万6000ドルを超え、郡の産業全体の平均6万9000ドルを大幅に上回る。大規模な製鉄所で働く労働者はボーナスが生産量に連動するため、さらに高い給与を得ている。
- しかし郡内を車で回ると、繁栄の兆候はほとんど見られない。かつて綿花農場が広がったミシシッピ川沿いの広大な平野であるこの郡の人口は、1940年に約8万8000人でピークに達し、現在はその半分に満たない。
- 他の製造業は、鉄鋼ほど好調ではない。その象徴的な存在が、町の郊外にあるレンガ造りの建物だ。かつては活気あるシャツ工場だったビルの窓には板が張られ、庭は荒れ、正面扉には「この建物はブライスビルの産業繁栄に捧げられた」と刻まれたプレートが掲げられている。
- 荒廃したかつての市街地には空き店舗が点在する。地元の高校は生徒数が減り、学区は州内で最も成績の評価が低い。国勢調査局によると、郡の貧困率は21%で、州平均の15.7%を大幅に上回る。
- ブライスビルのメリサ・ローガン市長は「住宅問題がわれわれの最大の危機だ。ここは住宅砂漠だ」と認めた。
- <住宅建設を支援>
- 問題があまりに深刻なため、鉄鋼メーカーを主な資金提供元とする住宅建設支援プログラムが導入された。新たに住宅を建てて勤務のために4年以上住む労働者に住宅価格の一部を支援する仕組みだ。
- 繁栄する鉄鋼産業と地域経済の衰退というコントラストは、製造業基盤を建て直したいと願う全ての地域が直面する問題を浮き彫りにしている。
- 国民を工場労働に就かせる上で最大の壁は国民の認識、すなわち、いくら製造業がきらびやかな新工場に投資しても、不況になればあっさり縮小または閉鎖されるとの認識だ。これは概ね当たっている。
- ブライスビルの工場で働くライジンガーさんの同僚、グレッグ・ガルブレイスさんは、テネシー州から1時間かけて通勤している。ブライスビルは「良い地域ではない。何もないし、犯罪率も高い」という。
- この地域の鉄鋼労働者は労働組合に加入していないため、解雇された場合の保護が少ない。この傾向は全米で強まっている。労働省の統計によると、米労働者のうち組合員は10%未満と、1983年の20%超から低下した。
- 米鉄鋼最大手ニューコアの広報担当者は「すべての製造業者が人材不足に直面している。当社だけの問題ではない」と語った。
- トランプ政権は米国債の信用力に配慮を、シタデル創業者が忠告 | ロイター
- 米ヘッジファンド大手シタデル創業者兼最高経営責任者(CEO)のケネス・グリフィン氏は23日、トランプ政権は米国債の信用力が損なわれるリスクに注意する必要があると警鐘を鳴らした。
- セマフォー主催のイベントで「われわれは(米国債の)ブランドを危険にさらした」とし、「大統領、財務長官、商務長官はブランドを持つ以上、そのブランドを尊重し強化するような行動を取るべきだと熟慮する必要がある。ブランドに傷をつければ、修復に一生かかる可能性があるためだ」と述べた。
- 米国債市場ではこのところ、関税をきっかけに混乱が広がり、7日の週には売り圧力が強まる中、利回りが週間で2001年以来の大幅上昇を記録した。
- グリフィン氏は関税に反対ではないとしつつ、貿易戦争は「無意味な状況」に陥っていると指摘。「人々は米国に製造業を構築しないだろう。政策の不安定さによって、達成しようとしている目標そのものが損なわれるためだ」と述べた。
- トランプ政権発足から100日が近づく中、これまでの成果はまちまちだとし、関税を巡る混乱を批判する一方、「政府効率化省」(DOGE)によるコスト削減の取り組みや、南部国境における移民対策は称賛した。
- 【分析】トランプ関税の混乱、すでに経済に打撃 修復には遅すぎる可能性 - CNN.co.jp
- トランプ米大統領が経済に関する過激な姿勢を一部後退させたようだ。トランプ氏は政権の看板である関税政策でまたも方針転換しつつあり、場当たり的な手法がすでに経済に深刻な打撃を与えたとの懸念が再燃している。
- トランプ氏は22日、ウォール街の悪夢となっていた二つの重要な問題について立場を軟化させた。対中関税の緩和に前向きな姿勢を示唆し、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を解任する「考えはない」と表明した。
- だが、この唐突な姿勢の変化は、ホワイトハウスに端を発する混乱が米国のみならず、他国の経済まで景気後退(リセッション)へ追い込む可能性を改めて浮き彫りにした。
- 関税そのものより深刻なのは、ホワイトハウスが生み出した不確実性だ――。米ブルッキングス研究所のウェンディ・エデルバーグ上級研究員はCNNとのインタビューでそう語り、「方針がぶれている状況は終わっていない。むしろ、今回も新たなぶれにすぎない」と指摘した。
- ここ数週間の落ち込みの後、米国株は22、23両日に急騰した。145%の対中関税は持続不可能との経営者や側近の警告に大統領が耳を傾け始めた、という安堵(あんど)感がウォール街に広がった兆候だ。22日に行われた大統領執務室での取材でも、トランプ氏はパウエル氏への攻撃を手控えた。(最近のトランプ氏はパウエル氏を「負け犬」と呼んでおり、自制するのは異例だ。23日夜には再び威圧的な口調に戻り、「電話するかもしれない」と述べた)とはいえ、米国株はトランプ氏の1月の大統領就任時点から11%下落したままだ。背景には世界貿易を根本から変え、経済成長に急ブレーキをかけかねない関税方針をめぐり、ホワイトハウスがほぼ絶えず方針転換と矛盾した発信を繰り返していることがある。
- ファクトセットのデータによると、株価は最近反発しているものの、S&P500はわずか2カ月前の過去最高値から7兆ドル以上の時価総額を失った。
- 現時点では、トランプ氏が関税を撤回したり、FRBの独立性を守る数十年来の慣例を尊重したりする兆しが少しでも見えれば、少なくとも一時的にはウォール街にとって勝利となるだろう。
- ミシガン大学のジャスティン・ウォルファーズ教授はCNNに対し、「市場はトランプ氏が愚かなことしでかすのではないかと恐れているし、へまをしなければ大喜びする」と指摘した。
- 一方で、ウォルファーズ氏ら経済学者は、すでに発生した損害について懸念を示した。
- 「経済が減速するのは明らかだ」とウォルファーズ氏は述べ、「問題は減速の程度だ」としている。
- 専門家はおおむね、年内に景気後退入りするリスクが高まっており、その確率はおそらく50〜70%に上ると指摘する。トランプ氏が絶えず関税政策を変更しているため、可能性は流動的というのがほぼ全員に共通する見方だ。
- ペンシルベニア大学ウォートン校のケント・スメッターズ教授によれば、仮に「トランプ関税2.0」が今日すべて解除されたとしても、政策の不確実性だけでGDP(国内総生産)の少なくとも1%が失われる見込みだ。「すべての関税が実施されれば、最終的にGDPが5%下落すると予測している」という。
- ただ、これは明確にしておきたいが、トランプ政権は他の関税の解除については一切公に言及していない。これだけでも極めて攻撃的だ。トランプ氏によれば、対中関税は下がるかもしれないが「ゼロにはならない」。10%の一律関税と、自動車や鉄鋼、アルミ、一部のメキシコ・カナダ製品への25%の関税は依然として残る。
- ホワイトハウス高官が米紙ウォールストリート・ジャーナルに語ったところによると、現在145%の対中関税は「およそ50〜65%」の水準に引き下げられる可能性がある。
- それでも、大きな混乱は避けられないだろう。
- トランプ関税がもたらす悩みは財政上のコストだけにとどまらない。明確な方針が示されないため、企業経営者だけでなく、米国の一部の主要同盟国や貿易相手国も身動きが取れなくなっている。
- 「米政権の場当たり的な関税政策は信用の危機を招いた」。EYのチーフエコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は23日の報告書でそう指摘した。
- 失われた信用の回復には時間がかかるとみられる。特に米国の関税はいつ上下するとも分からず、多くの場合ほとんど、あるいは全く予告なしに実施されるだけになおさらだ。
- 「企業は暗中模索の状況だ」とエデルバーグ氏。FRBの調査で75%の企業が「今後半年間、設備投資を増やさない」と回答したことを指摘し、「どの政策が明日の法律になるか分からず、皆が息を潜めている」と語った。
- こうした不安は23日に発表されたFRBの地区連銀経済報告(ベージュブック)にも表れている。業種を問わず多くの企業が、状況が明確になるまで採用を停止あるいは減速していると報告した。
- 一方で、米国ブランドは国内外で打撃を受けている。米国の一部の主要同盟国や貿易相手国でさえ、トランプ氏の貿易戦争に合理性を見いだせずにいる。
- 「米国とカナダの貿易関係は深刻な打撃を受けた。永遠に修復不能だろう」「カナダが米国寄りの姿勢を取ることは政治的に不可能になった。損害はすでに確定している」(ウォルファーズ氏)
- IMFと世銀、基本回帰でトランプ政権の信頼得る必要=米財務長官 | ロイター
- ベッセント米財務長官は23日、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事と世界銀行のバンガ総裁はともに優れた指導者だが、トランプ政権の信頼を得るには本来の使命に再び焦点を合わせる必要があると述べた。
- また、昨年バイデン前大統領が承認した40億ドルの拠出を進めるかどうかについては何も決定していないと語った。
- 記者団に対し、その決定は米国の予算協議と世界銀行の開発成果への改善の進捗、つまり「基本への回帰」に左右されると述べた。
- 長官は両機関が気候変動やジェンダー、社会問題などの取り組みに過剰な時間と資源を費やしていると批判。これらは本来の目的から外れているとして、マクロ経済の安定と発展という中核的使命に再び焦点を当てるよう求めた。
- 両機関が国際金融システムで果たしている重要な役割を認める一方で、「ミッション・クリープ(使命の拡大)」に異議を唱えた。
- ベッセント氏はゲオルギエワ氏とバンガ氏と会ったことを明らかにしている。
- 「彼らは優れた指導者だと思う。今後数カ月以内に行動を通じて米政権の信頼を獲得することを期待する」と述べた。
- トランプ氏、2~3週間以内に新たな関税措置講じる可能性に言及 - CNN.co.jp
- トランプ米大統領は23日、2、3週間以内にも一部の国に対し再び「相互」関税を課す可能性があると述べた。発動されれば世界的な貿易戦争を再度大幅に激化させかねない。関税措置はすでに米国および世界経済の景気後退懸念を引き起こしている。
- 「最終的には、我々は素晴らしい合意に達するだろう。ちなみに、企業や国と合意に至らない場合は、関税を設定することになる」とトランプ氏は大統領執務室で述べた。「おそらく今後2、3週間のうちになるだろう。2、3週間のうちに、関税率を設定することになる」
- トランプ氏は今月9日、いわゆる大規模な相互関税を一時停止した。この猶予期間は、各国が米政権との交渉を可能にする90日間の予定だった。政権当局者らは、約90~100カ国が交渉を申し出ていると述べており、担当者は限られた時間で新たな約束を取り付けるという極めて困難な作業に直面している。
- 協定が成立しない場合、トランプ氏は各国に対し、最大50%にも上る関税を課す可能性がある。
- 今後数週間で米国と妥結できない国々に対し、トランプ氏が新たにどのような関税を課すのかや、これらの関税が一時停止されている相互関税と恒久的に置き換わるのか、それとも交渉が継続される間の暫定的な関税としてのみ機能するのかは不明。一方、米国はほぼすべての輸入品に10%の一律関税を維持しており、特定の品目についてはより高い税率を適用している。
- 米市場に長期の資本逃避リスク、トランプ氏が変心でも - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領が貿易戦争の手を緩める可能性が浮上し、市場は上昇したものの、米国資産の信頼性が恒久的に失われる可能性は消えていない。これまでは資本逃避への懸念が米国債に集中していたが、米国株とドルへの影響の方が深刻になる可能性がある。
- 23日、米政府が中国からの輸入品に対する関税の大幅引き下げを検討しているとの報道を受け、米国株・米国債・ドルに再び資金が流れ込んだ。投資家が一斉に安堵(あんど)したのは無理もないが、不安定な経済政策や米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性が脅かされていることへの懸念が簡単に消えることはなく、今後、米国資産は「リスクプレミアム」の適用が妥当になるかもしれない。
- 国際的な投資フローの反転は、これまでの一方向への流れがいかに巨大だったかを考えると、相当な規模になりそうだ。バンク・オブ・アメリカの昨年12月のグローバルファンドマネジャー調査では、米国株をオーバーウエートしている割合とアンダーウエートしている割合の差はプラス36ポイントとなり、過去最高を記録した。
- この差は2~3月の調査で過去最大の下げ幅を記録し、先週発表された4月調査ではマイナス36ポイントと、大幅なアンダーウエートとなった。回答者は新たなリスクとして「外国投資家の買い控えによるドル暴落」を挙げた。
- 投資家は特に米国債について不安視しており、米国が、それぞれ国内総生産(GDP)の6.2%と4.1%に相当する財政赤字と経常赤字を賄う必要性が浮き彫りとなっている。中国の米国債保有額は、公式には2月時点で7840億ドル(約112兆円)だったが、オフショア口座を含めると最大1兆5000億ドルに上る可能性がある。関税への報復としてその一部が売却された形跡はほぼないが、そうしたリスクは大きくなっている。
- だが、外国資金への依存度を高めてきたのは、むしろ株式市場と言えるだろう。公式データによると、2011年12月以降、外国投資家による米国株保有額は3兆8000億ドルから18兆6000億ドルに増加し、米国の株式時価総額に占める割合は4分の1から3分の1に上昇した。
- 一方、外国投資家が保有する米国債の割合は、市場全体の44%から4分の1に低下した。
- さらに公式データによれば、外国投資家は米国債が好調な時期に売却し、下落時に購入することが多い。これは、債券が通常、巨額のリターンを生み出すために購入されるのではなく、ポートフォリオの安定化(例えば60/40戦略)や流動性準備として機能するためだ。米国債利回りは2014年以降、過去最低水準に達した。これは中国が米国債保有額を縮小し始めた時期と重なる。
- 確かに、外国投資家は今回、市場を動揺させることに成功しており、米国債の安全性が低いと見なせば、恒久的なディスカウントを適用する可能性がある。
- しかし、債券は実際の売買に対する感応度が株式よりも低い。株式では、外国投資家の買越額とリターンの間に一貫して正の相関が見られる(ただし、リターンが資金フローを大幅に上回っている)。
- これは奇妙に聞こえるかもしれない。というのも、価格が上下する有価証券は、(買い手や売り手が)提示する価格(気配値)で取引する相手が必要だからだ。しかし、気配値が大量の注文フローに反応している必要はない。気配値は主に、市場が今後のリターン見通しを修正するような情報に影響されている可能性がある。
- 債券の場合、利回りは米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利に連動している。これは特に、外国投資家が主に注目する短期債に当てはまるが、長期債も例外ではない。たとえFRBが独立性を失い、より高いインフレ率を容認したとしても、極端にスティープ化したイールドカーブ(利回り曲線)は裁定取引者を引き寄せ続けるだろう。
- 本当に懸念されるのは、トランプ政権や議会がデフォルト(債務不履行)を容認するという極端なシナリオだが、その可能性は依然として低い。現時点では、米国債を巡る騒ぎにもかかわらず、10年債利回りは2月の水準を下回ったままだ。
- 株式には、米国債市場のような自己修正力の多くが欠けている。確かに、投資家はバリュエーション(投資尺度)に注目しているが、根本的価値は誰にも分からない。2月の時点では、S&P500種指数の予想株価収益率(PER)は22倍で、妥当な水準と考えられていた。長期的な見通しが悪化した現在、これは18.7倍に低下した。どちらも過去の水準から見れば高く、無差別な買いが長年続いたことを理論的に説明している面があるかもしれない。
- 「株式はセンチメント(市場心理)により大きく反応し、このことは資金フローにより大きく反映される。債券保有者は価格感応度がはるかに低い。例えば、中央銀行はドルを保有し、それを安全な場所に置いておきたいだけだ」。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの欧州投資戦略・調査責任者、アルタフ・カッサム氏はそう語る。
- 米国債市場に関する懸念は主に、FRBには完全にコントロールすることができない為替レートを通じて表出する可能性がある。過去には、債券の資金フローとドル相場が連動していた時期もあり、ドル安に関連して米国債購入が増えた時期もあった。
- 実際、2000年代初頭以降、ドルは資金フローよりも金利や株式リターンの見通しに影響されているように見える。これは為替リスクをヘッジする投資家がいるからでもある。つまり、資産運用会社が米半導体大手エヌビディアから欧州の防衛関連株にシフトすることによる機械的な影響よりも、貿易戦争がエヌビディアの利益に及ぼす打撃の方が、ドルへの重しとなる可能性が高いということだ。
- そうした状況が続けばドル安が急速に進む可能性がある。外国投資家が投資配分の見直しに何年もかける中でドルが徐々に下落していくという展開ではない。株式にとっては、外国からの資金流入がなければ超高水準のバリュエーションを回復するのは難しいかもしれない。
- 【社説】トランプ氏の関税政策転換はあるか - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は当初の関税攻勢を後退させ続けており、市場は喜んでいる。連邦準備制度理事会(FRB)議長を解任するつもりはないし、自身の関税で最も高率の対中関税を引き下げる可能性が高いとのトランプ氏の発言を受けて、23日に市場は再び上昇した。これはトランプ氏にとって「ミッテラン的な転機」なのだろうか。
- 一定の年齢の読者は、社会主義者のフランソワ・ミッテラン氏が、民間経済を政府が統制するという極左的政策をフランス大統領選の公約に掲げ、1981年に圧勝して政権の座に就いたことを思い出すだろう。このときの市場の反応は痛烈だった。ミッテラン氏は1年以内に社会主義をいったん封印し、1983年までにはそのほとんどを放棄した。彼は大統領を2期務めた。
- このような歴史的な政策転換を思い起こすのは、トランプ氏が自ら打ち出した関税政策を段階的に後退させているからだ。トランプ氏はまず、メキシコとカナダを相互関税の対象から除外した。次に、中国以外のすべての国への相互関税を90日間停止した。その後、米税関当局はアップルやエヌビディアといった大手エレクトロニクス企業に例外措置を適用した。そして今度は、トランプ氏が中国に対する145%の関税率を大幅に引き下げるかもしれないという話だ。
- ピーター・ナバロ大統領上級顧問とハワード・ラトニック商務長官が関税率の変更はないと宣言してから3週間で、かなりの変わりようだ。金融市場の厳しい反応や、リセッション(景気後退)や物価上昇への懸念がある中、さらに友好国か敵対国かを問わず世界各国から強い反発を受ける中で、こうした動きを後退ではないと考えるのは難しい。
- 良いニュースは、少なくともトランプ氏がようやく現実に耳を傾けるようになっていることだ。米小売り大手のウォルマート、ホーム・デポ、ターゲットの最高経営責任者(CEO)は今週、ホワイトハウスを訪れ、関税の影響拡大に伴い、物価は近いうちに上昇し、店舗の棚がすぐに空っぽになるかもしれないとトランプ氏に伝えた。これは、トランプ氏が一連の関税措置を最初に発表したときに警告した「ちょっとした混乱」以上のものになるだろう。
- 金融市場も影響を及ぼした。新たな関税や、FRBのジェローム・パウエル議長を解任しようとするトランプ氏の計画について新たなニュースが報じられるたびに、金融市場は乱高下した。過去3週間の動きは、われわれが社説で警告していた経済的なダメージをこれ以上ないほど明確に示す市場のテストになった。トランプ氏の関税を戦略的に非常に優れていると称賛していたMAGA(米国を再び偉大に)メディアのエコーチェンバー(共鳴空間)は、いまでは愚かに見える。
- もう一つの厳しい現実は、中国がトランプ氏のはったりを見抜いて対抗し、今回は勝利したとみられることだ。トランプ氏が1期目に中国に関税を課した際、習近平国家主席は控えめな報復措置を取り、通商合意に向けて交渉するため代表団を派遣した。
- 習氏は今回、「目には目を」戦略で報復し、経済・外交分野における自身の反米レバーをすべて押した。重要なレアアース(希土類)への米国のアクセスを遮断し、ボーイング製ジェット機の受け取りを中止させ、食料品や天然ガスの米国以外からの輸入を模索したほか、規制当局による米国企業の締め付けを強化した。
- 中国政府はさらに各国に対し、中国を排除する形で米国との通商合意を結ばないよう強く警告している。米国の友好・同盟諸国さえもトランプ関税の猛威にさらされる中、中国の脅しはかつてないほど重く受け止められている。米外交の影響力は弱まっている。
- 今後の問題は、トランプ氏がこうした経済的・政治的な教訓を学んでいるのか、それとも貿易戦争を次の機会まで一時停止しただけなのかだ。その答えはトランプ氏自身も知らないのではないかとわれわれはみている。彼の決定の多くがあまりにも場当たり的だからだ。いずれにせよ同氏は、すべての国に対する一律10%の関税は維持するだろう。
- もしトランプ大統領が政治的助言を求めているならば、ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたマーク・ペン氏とアンドリュー・スタイン氏の寄稿で示されている世論調査を参考にするのも悪くないだろう。同調査によれば、米国民はトランプ氏の関税に総じて反対しており、関税がもたらす打撃はトランプ氏の大統領としての立場を危うくしかねない最大の要因になっている。トランプ氏は世論調査と、自由貿易を支持したアダム・スミスの主張に耳を傾け、ミッテラン氏が取ったのと同様の政治的サバイバルへの道を選ぶべきだろう。
- トランプ氏は本当に市場に屈したのか - WSJ
- 投資家にとって重要な問いは次の通りだ。ドナルド・トランプ米大統領が関税と米連邦準備制度理事会(FRB)を巡って譲歩したのは、市場が主導権を握ったからなのか。混乱の裏に何か壮大な計画があるからなのか。あるいは、ただ単に誰か別の人物と話をしたからなのか。
- はっきり言えば、筆者には分からない。めまぐるしい政策転換を説明できるような壮大な計画を見いだすことはできないが、市場の自警団と、ある特定の日にどの顧問がホワイトハウスの大統領執務室に出入りできるといった細かい動きを読み取る「クレムリノロジー」の両方が、もっともらしい説明のように思える。
- 22日と23日に市場は大きく好転した。株価とドルが上昇し、米国債利回りは低下(債券価格は上昇)、金価格は下落した。トランプ氏がFRBのジェローム・パウエル議長を解任しないと述べ、政権が対中関税の一部を半分以下に引き下げる可能性があるとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたことで米国資産の売りが一服した。要するに、トランプ氏が屈したということだ。少なくとも今のところは。
- トランプ氏が市場の反応を受けて考えを変えたという解釈は容易に成り立つ。これは2週間前の方針転換の繰り返しだ。その時は、金融市場に深刻な問題の兆しが現れた後、トランプ氏はいわゆる相互関税を一時停止した。今回は、債券利回りが急上昇したにもかかわらず、ドルは3年ぶりの安値を付け、金は最高値を更新した。市場はトランプ氏のFRBに関する発言や関税を巡る行動を好感せず、トランプ氏は市場の反応を好まなかった。
- 投資家にとって、この解釈は安心できるものだ。最も愚かな政策には限界があることを示しているからだ。2022年に英首相だったリズ・トラス氏を、レタスがしなびるよりも早く首相の座から追い出した「債券自警団(ボンド・ビジランテ)」の反応に似ている。
- 市場の力は魔法ではない。資産価格は多くの人々が経済の見通しと将来のリターンを評価し、中国に対する145%の関税もトランプ氏が金利設定に介入することも、いずれも良くないと結論付けた結果にすぎない。市場は資金によるリアルタイムの世論調査なのだ。
- その意味で、市場の動向はトランプ氏にとって重要だ。しかし彼が市場に支配されるという保証はない。国にとって最善の策が、株式にとって悪い場合(増税)や、債券にとって悪い場合(減税)、あるいはドルにとって悪い場合(例えば利下げや戦争など)もある。
- だがこれら三つが組み合わさると状況は変わってくる。株式、債券、ドルの全てに悪影響を与えながらも、議論の余地はあるが少なくとも国にとって良いと考えられる政策は、新たな感染症の大流行によるロックダウン(もう御免だが!)くらいしか思い浮かばない。その場合でさえ、財政・金融支援が大きな相殺要因となるはずだ。トリプル安は通常、資本逃避が進行中であることを意味し、どの政府も歓迎すべきではない。
- 英国は1976年にこれを経験した。株式、債券、ポンドがすべて下落し、新首相が財政危機を止めるために国際通貨基金(IMF)の支援を要請するに至った屈辱的な年だった。資本逃避を無視し続ける国は最終的に孤立し、貧しくなる。ベネズエラやジンバブエを考えてみればよい。
- 米国はこのような惨事に見舞われるには程遠いが、市場がトランプ氏の行動に一定の制限を課したと筆者は期待している。これは投資家にとって良いことだが、三つの大きな注意点がある。
- 第一に、トランプ氏が相場の下支えをしたと考えないことだ。今月初めにS&P500種指数が4835ポイントの安値を付けたこと、インターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数が100を下回ったこと、30年物米国債の利回りが5%に接近したことが鍵だったわけではない。市場が方針転換を強いたのだとすれば、それは恐らく資本逃避の兆候と、同時に生じた損失によるものであり、株式における(トランプ氏が市場を株価下落から守ろうとする)「トランプ・プット」や特定の債券利回りへの感応度が要因ではなかっただろう。
- 第ニに、これはトランプ氏が方針を転換する前にどれほどのリスクを取る覚悟があるかを示している。FRBの独立性を攻撃すれば市場に打撃を与えることは明らかなはずだが、それでも彼は実行した。最大の物品供給国に145%の関税を課せば市場に打撃を与えることは明らかなはずだが、それでも彼は実行した。市場に友好的でない計画を次に発表する場合、その計画を撤回する前に価格が大幅に下落しなければならないとすれば、下落局面の投資家にとっては効果のない慰めにしかならない。
- 第三に、これは全てトランプ氏が市場の動きを理由に方針転換したという前提に基づいているが、それが真実かどうかは定かではない。トランプ氏は次回は別の顧問に相談するかもしれないし、あるいは場当たり的に行動しているのかもしれない。投資家は、大統領に対する自分たちの影響力が強いと思い込んで、自己満足に陥るべきではない。
- トランプ氏、FRB議長解任を思いとどまった事情 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は今週、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を解任するつもりは全くないと述べ、彼がパウエル氏をたたきのめそうと躍起になっているとの誤ったストーリーをメディアが押しつけていると批判した。
- しかし、ホワイトハウス内には、パウエル氏の解任についてトランプ大統領が最近公の場で示した考えを真剣に受け止めた高官もいる。事情に詳しい人々によると、ここ1週間でトランプ氏がパウエル氏への批判を強めた中で、ホワイトハウスの弁護士たちはパウエル氏の排除を試みるための法的な選択肢について内々に検討した。FRB創設時の法律には、FRB理事について、正当な理由がある場合に限り任期終了前に解任できると書かれてあり、裁判所は一般的に、正当な理由とは違法行為あるいは不適切な言動を意味すると解釈してきた。パウエル氏を解任する口実が見つかっていれば、ホワイトハウスはFRBとの劇的な対立に近づいていただろう。
- こうした話し合いは今週、トランプ氏がパウエル氏の解任を求めないと側近に述べたことで、ストップした。事情に詳しい人々によると、トランプ氏は、スコット・ベッセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官からの忠告を踏まえて判断を下した。両長官は解任を目指す動きが広範囲にわたる市場の混乱の引き金になり得ることと、厄介な法廷闘争につながり得ることをトランプ氏に警告した。前出の人々の1人によると、ラトニック氏はまた、FRB理事会の他のメンバーがパウエル氏と同様に金融政策を推し進める公算が大きいため、FRB議長を解任しても、金利が実際に変更される状況につながらない可能性が高いとトランプ氏に進言した。
- トランプ氏は22日午後、この問題を当面収束させる対応を取った。同氏は大統領執務室に集まった記者団に対し、パウエル氏を解任する「意図はない」と述べ、わずか1日前に繰り返していた厳しい発言のトーンを和らげた。トランプ氏は「今は金利を引き下げるのに最適だ。彼がそうしないなら、もう駄目なのか。いや、そのようなことはない」と述べた。
- ホワイトハウスのテイラー・ロジャース報道官は「大統領は数多くの話題について彼に助言する素晴らしいアドバイザーのチームを抱えているが、最終判断を下すのは大統領だ」と述べ、トランプ氏の私的な会話に関するコメントを差し控えた。財務省と商務省の報道官にコメントを要請したが、返答はなかった。
- トランプ大統領の以前の過激な発言を受けて神経質になっていた投資家たちは、今週の同氏のコメントで落ち着きを取り戻した。トランプ氏は相場の上下動に一喜一憂しないと述べていたが、今回の一連の動きは、トランプ氏の政策に対するウォール街と主要企業の反応を、同氏とそのアドバイザーらが注視していることを示した。ある米政府高官によると、トランプ氏は引き続き市場の動きにしっかりと目を配っているという。
- トランプ氏は21日にホワイトハウスで、ターゲット、ウォルマート、ホーム・デポなど小売り分野の米最大手企業の幹部らと会談した。会談の内容を知る人物によると、これら幹部はトランプ氏に対し、彼が導入した関税、特に対中関税が消費者物価を押し上げる恐れがあると伝えたという。
- その翌日にトランプ氏は記者団に対し、145%という対中関税は「極めて高い」ため「大幅に引き下げられる」だろうと語った。詳しい状況を知る人々によると、米政府当局者は現在、関税の引き下げ幅について協議している。
- 大半のウォール街アナリストは、トランプ氏がパウエル氏を任期切れ前に解任しようとしても、それによってトランプ氏が望む利下げが実現することはないと考えていた。参加者のうち12人が投票権を持つ連邦公開市場委員会(FOMC)が、現時点での利下げを支持していないからだ。FRBの政策金利の水準に関する決定はFOMCの場で下される。FRBは昨年中に合計1.0%の利下げを実施した。それはインフレ率が低下したことと、不必要なリセッション(景気後退)を招くリスクを避けたいとの考えによるものだった。
- こうしたFRB当局者らの動きを止めたのが関税だった。彼らは、関税によって物価が上昇し、インフレ再燃のリスクが高まることを懸念した。関税はその後、消費支出と雇用に悪影響をもたらし、経済を悪化させる可能性があるにもかかわらず、FRBはインフレ懸念の方を重視した。
- トランプ氏がFRBに金利を引き下げさせるのが難しいことを示す一つの例がある。トランプ氏は先月、自身が1期目に任命したFRB理事のミシェル・ボウマン氏を銀行監督担当副議長に昇格させた。ボウマン氏は、時期尚早な、あるいは急速過ぎる利下げのリスクについて最も声高に警告してきた当局者の1人だ
- FRBの運営の自律性、つまり独立性は、ウォール街の債券投資家から長い間、神聖不可侵なものと見なされてきた。米政府がFRBに金利設定について指示することで高水準のインフレ率を容認すると一部の外国投資家が懸念した場合、彼らは米国債をあまり購入しなくなる可能性があり、そうなれば金利上昇につながる。
- トランプ氏は2019年にも、FRBに対して今回同様の脅しを繰り返し行っていたが、投資家はここ最近のいさかいを、二つの点からそれとは別格だとみている。一つ目は、トランプ氏の制度的・法的規範にあらがおうとする傾向が1期目よりもはるかに強くなっていることだ。司法省は「90年前の判例(ハンフリーの遺言執行者判決)」を覆そうとしているが、この判決はFRB当局者の任期切れ前の解任を防ぐための最も強力な根拠と多くの法曹関係者が考えているものだ。
- 二つ目は、今回トランプ氏が発動した関税が1期目に課した関税と比べて規模も範囲もはるかに大きいため、今年はインフレがより大きな問題となる可能性があることだ。このことは、近年インフレ対策として金利を20年ぶりの高水準に引き上げたFRBにとって、より難しい二律背反的な判断を迫るものとなっている。
- 日本、トランプ政権による対中貿易包囲網の構築には抵抗の構え - Bloomberg
- 日本は、中国に対抗する経済圏に参加するよう求める米国の動きに対し、抵抗する意向を示している。日本政府の現職および元当局者が明らかにした。
- 多くの国・地域と同様、日本も自動車や農業など二国間貿易の分野で米国の懸念に対応することで、トランプ大統領による関税措置から免除を得ようとしている。匿名を条件に語った複数当局者によると、日本は90日間の一時停止措置が期限切れとなる前に米国と合意にこぎ着けたいと考えており、6月開催の主要7カ国(G7)首脳会議の前後で合意を最終決定したい意向を示しているという。
- 一方で、日本としては米国が中国に対する貿易圧力を最大化するためのいかなる取り組みにも巻き込まれることを望んでいないと、当局者らは語った。中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、原材料などの重要な供給源でもある。
- 日本の外務省にコメントを求めたが、現時点で返答は得られていない。
- 米国は中国に関する具体的な要請を日本に対して行っていないが、そのような状況が発生した場合、日本は自国の利益を優先させるだろうと当局者らは語っている。当局者の1人によれば、日本はこれまで複数回にわたり、半導体関連の輸出や規制について米国と完全には足並みを揃えていないことを中国側に伝えている。
- 日本を含む各国との通商交渉で主導的な役割を担っているベッセント米財務長官は今月に入り、まず同盟国と貿易協定を結び、その基盤を築いてから中国に対して不均衡な貿易構造を是正するよう集団でアプローチするとの構想を示した。その後にブルームバーグは、トランプ政権が貿易相手国との関税交渉を利用して中国への圧力を強める準備をしていると報じた。
- 断固として反対
- 対米交渉を担う赤沢亮正経済再生担当相は近く再び訪米し、米当局者との2回目の協議に臨む予定だ。
- 一方で中国政府は21日、米国と交わす貿易協定が中国の利益を損なうものであってはならないと各国に警告。同国商務省は声明で「他国が米国との貿易紛争を解決する取り組みを尊重するが、中国の利益を犠牲にするような合意には断固として反対する」と強調。そのような事態となれば「決して受け入れず、断固とした報復措置を講じる」と付け加えた。
- 自民党の河野太郎衆院議員は、米国との通商協議を進める前にトランプ氏が抱いているいくつかの誤解をただす必要があると指摘。ブルームバーグテレビジョンとの23日のインタビューで河野氏は「中国に関連する経済安全保障問題とサプライチェーンについては、極めて注意深く対応する必要がある」と話した。
- 日本は対中貿易を縮小するのではなく、中国が停止した日本産水産物などの輸入再開に向けた働きかけを進めている。そうした取り組みの一環として、複数の政府代表団がすでに中国を訪問しているか、今後訪問を予定している。
- 公明党の斉藤鉄夫代表は23日、中国共産党序列4位の王滬寧・人民政治協商会議(政協)主席と会談。斉藤氏は石破茂首相から習近平国家主席宛ての親書も渡した。
- 日本企業が中国市場を重視している姿勢の表れとして、トヨタ自動車は今週、2027年に上海に新工場を設立することで同市と合意。同工場には約20億ドル(約2850億円)の投資が予定されているという。
- 日本は安全保障面では米国に、貿易面では中国に大きく依存していることから、米中間で綱渡りのような外交対応を強いられている。トランプ政権から中国との経済関係を縮小するよう求められれば、日本経済にとっては深刻な打撃となりかねない。
- トランプ氏、対中関税「大幅」引き下げ示唆-中国は全面撤廃求める - Bloomberg
- 金融市場の混乱を背景に、トランプ米政権から対中強硬姿勢を和らげる可能性が示唆されている。
- 米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は23日、ホワイトハウス当局者の間で対中関税の引き下げが検討されていると報じた。国家安全保障上の脅威と見なされない品目には35%の関税、脅威と見なされる品目には少なくとも100%の関税が検討されており、今後5年で段階的に下げていく案が話し合われているという。
- 当局者の1人は同紙に対し、この結果として中国に対する全体的な関税率はおよそ50%から65%の間になるだろうと述べた。
- トランプ氏は23日午後(日本時間24日午前)、中国に対する新たな関税率を今後2-3週間に発表する可能性があると明らかにした。トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室で記者団に対し、米政権として対中追加関税率を現行の145%からいつ変更するかは中国次第だと語った。
- ホワイトハウス当局者は、トランプ氏が関税を一方的に引き下げることは検討していないが、中国側との協議と連動して引き下げる可能性があり、政権としてはその協議の再開を目指していると語った。
- 中国商務省の何亜東報道官は24日の記者会見で、米国が問題を解決したいのであれば、一方的な対中関税を全面的に撤回すべきだと主張。関税について米中は協議に入っていないとし、交渉を望むなら、米国は誠意を示す必要があるとの認識を示した。
- 2-3年かかる
- ベッセント米財務長官は23日、ワシントンで記者団に対し、トランプ氏が対中関税引き下げを一方的な形で提案したことはないと説明。中国については関税だけでなく、非関税障壁や政府補助金など複数の要因にトランプ政権として目を向けていると指摘した。また、米中関係で最も強固なのは首脳間だが、両社の対話時期について決まったものはないと述べた。貿易の完全なリバランスには、2-3年かかるとの見方も示した。
- ホワイトハウスのレビット報道官は同日、トランプ大統領は中国に対するスタンスを軟化させているわけではないと述べた。
- ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレーロ氏は「トランプ氏は市場の急落と依然として高水準にある米国債利回りでパニックに陥っている」と指摘。「トランプ氏は早急に合意を必要としている。このような状況で中国が大きな譲歩をする必要はないだろう」と語った。
- トランプ氏は22日、米国は「中国とうまくやっている」とし、「厳しい交渉」になるとは考えていないと発言していた。中国に対する追加関税率は現行の145%から「大幅」に下がるだろうがゼロにはならないとの見通しも示した。
- 中国は他国への働きかけを強めており、中国の利益を損なうような貿易取引を米国と結ばないよう警告さえしている。習氏は23日にアゼルバイジャンのアリエフ大統領と会談し、貿易戦争が全ての国の正当な権益を損なうものだと改めて強調した。
- また王毅外相は、英国およびオーストリアの外相との会談で、中国の対米姿勢は「自国の利益を守るだけでなく、国際秩序と多国間貿易システムを守ることも目的としている」と述べた。複数のメディアによると、李強首相は今週、石破茂首相に親書を送り、トランプ関税に対する協調的な対応を呼びかけていた。
- 米、対中関税引き下げを検討 緊張緩和へ - WSJ
- 米トランプ政権は中国からの輸入品に対する高関税の引き下げを検討している。一部の関税は半分以下に引き下げられる可能性がある。中国との貿易摩擦が世界の貿易と投資に混乱をもたらしており、緊張を和らげたい狙いだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
- それによると、ドナルド・トランプ大統領はまだ最終判断を下していない。協議はまだ流動的で、いくつかの選択肢が検討されている。ある政府高官は、トランプ大統領が一方的に行動することはなく、関税を引き下げるためには中国政府が何らかの行動を起こす必要があると述べた。
- あるホワイトハウス高官の話では、対中関税は50~65%程度に引き下げられる可能性が高い。政権は、昨年終盤に下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」(中国特別委員会)が提案したような段階的なアプローチも検討している。下院の法案は、国家安全保障上の脅威とみなさない品目の関税率を最低35%にし、戦略的に重要とみなす品目には少なくとも100%の関税を課す内容。これら関税を5年にわたり段階的に導入することを提案していた。
- ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は「トランプ大統領は、中国は米国とディール(取引)を行う必要があると明言してきた。関税に関する決定が下される場合は、大統領から直接下される。それ以外は単なる臆測に過ぎない」と述べた。
- その後、スコット・ベッセント財務長官は記者団に対し、トランプ大統領は中国に対する米国の関税を一方的に引き下げるとは申し出ていないと語った、とブルームバーグ・ニュースが報じた。
- トランプ氏は22日、中国製品に対する関税を引き下げる用意があると語り、大統領2期目に課した145%の対中関税率が低下するとの見通しを示した。「だがゼロにはならない」とも述べた。ホワイトハウスの強硬な動きに懸念を深めていた投資家にとってこれは歓迎すべきニュースとなった。
- 中国は23日、米国との通商協議に前向きな姿勢を示す一方、ホワイトハウスが威圧的な態度を続ける限り交渉に応じる考えはないと警告した。中国当局者に近い関係者によると、トランプ氏の22日の発言は政策立案者らの間で譲歩の兆しと受け止められた。
- トランプ大統領が中国からの輸入品に対する関税を半分に引き下げることを決めたとしても、その水準では、米国市場は電気機器やその他の製品を製造する多くの中国メーカーに対して全面的に閉鎖されることになる。一部のアナリストは、こうした高水準の関税が続けば数カ月以内に両国間の貿易が干上がる可能性があると見積もっている。
- 政権に近い人たちの中には、トランプ大統領は中国への関税を引き下げる余地があり、引き下げたとしても世界第2位の経済大国・中国と米国の「デカップリング」という政権の目標に向かって努力できると言う人もいる。「実際には何もせず、圧力弁を開放するようなものだ」と、ある関係者は語った。
- 貿易摩擦が激化する中、トランプ氏は習近平国家主席に電話をかけてきてほしいとの意向を示している。この問題に詳しい複数の人物によると、トランプ政権当局者は中国の外交官に対し、王毅外相がマルコ・ルビオ国務長官に連絡を取るよう働きかけているという。これまでのところ、中国はいずれも拒否している。
- 藍仏安財政相や中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁ら中国高官の代表団は今週、世界銀行・国際通貨基金(IMF)春季会合のためにワシントンを訪れている。
- 関係筋によると、今のところ、彼らは米政権との会談を予定しておらず、24日にワシントンを発つ予定だという。だが米政府関係者との会談が実現すれば、予定が変更される可能性もあるという。
- トランプ米政権、自動車産業を対象とした関税の軽減検討-関係者 - Bloomberg
- トランプ米政権は自動車産業を対象とした特定の関税軽減を検討している。自動車メーカー幹部らは、こうした関税措置が利益や雇用に深刻な打撃を与えると警告していた。
- 事情に詳しい複数の関係者によると、検討されている措置の中には、すでに関税対象となる自動車・部品を、鉄鋼・アルミニウム輸入に対する追加関税から除外するというものがある。これにより、いわゆる関税の「スタッキング(重複)」が解消されることになる。
- また別の選択肢として、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠する自動車部品を全面的に適用除外とする案も検討されていると、関係者の一部は述べた。これらの部品は現在、関税には直面していないが、トランプ政権は当初、カナダやメキシコからの部品で米国製以外の部分に関税を課す計画だった。完全な除外となればその方針は撤回されることになる。
- 英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、トランプ政権が自動車部品への関税軽減を検討しており、合成麻薬フェンタニルを巡る問題で中国に適用している20%関税から自動車部品を除外する可能性があると報じていた。
- 情報が公になっていないとして匿名を条件に話した関係者によれば、一連の案や選択肢はなお検討段階で、トランプ大統領が承認したわけではない。トランプ政権の関税政策は急に変わることが多く、政策検討の流動性が際立っている。だが、こうした議論は、自動車産業に影響する関税の範囲を狭める方策が模索されていることを示唆している。
- この変更が実施されれば、トランプ関税によって車両価格の上昇、生産縮小、潜在的な雇用喪失など多大な影響が生じると警鐘を鳴らしてきた自動車メーカーにとっては大きな救済となる。自動車産業は北米全体に広がるサプライチェーンに依存しており、米国内で販売される自動車の製造にも大きく関わっている。
- ホワイトハウスは23日夜時点でコメント要請に応じなかった。
- 加藤財務相、「為替水準の目標」話題にならず 米財務長官と会談 | ロイター
- 加藤勝信財務相は米国時間24日、ベッセント米財務長官との会談後に会見し、「為替水準の目標や、それに対する、管理する枠組みとか、そういった話はまったくなかった」と語った。為替レートは市場で決定され、過度な変動や無秩序な動きは経済・金融に悪影響とする国際合意を再確認したとし、「引き続き緊密かつ建設的に協議を続けていくことで一致した」と述べた。
- 両財務相はワシントンで24日午後3時から同50分まで会談した。対面での会談は今回が初めて。
- 加藤財務相は冒頭、ベッセント財務長官に対し、米国の一連の関税措置について「極めて遺憾」だと伝達した。日米貿易協定との整合性に対する懸念も伝え、関税措置の見直しを強く申し入れたという。
- その上で日米双方の諸問題について協議。加藤財務相は、日本企業の賃上げ状況や物価動向を含む経済状況を伝えた。「生産的な議論を行った」と会談後、報道陣に説明した。
- 今回の会談の焦点だった為替に関しては、「市場において決定されること、為替の過度な変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与えることなどについて、認識を再確認した」と述べた。
- 為替を巡り、日本に何か要求するものはあったか、との問いに対しては「やり取りの中身について具体的なコメントは控える」と回答。ただ、米側から為替水準の目標などへの言及はなかったとした。
- 会談に先立ち、ベッセント長官はロイターなどの取材に応じ、為替水準の具体的目標設定は求めないと言及。自国に有利な通貨切り下げを念頭に置いた為替操作をしないとする国際合意を尊重すべき、としていた。
- 一方、米国の貿易赤字削減を目指すトランプ米大統領は、円安にたびたび不満を示している。
- 日本政府は「通貨安政策は取っていない」とする立場を崩していない。
- 【コラム】トランプ氏が取り組む6つの戦争、全て敗色濃厚-ブランズ - Bloomberg
- トランプ米大統領は、2期目の就任演説で自らを世界の「平和の使者」と称した。しかしそれから3カ月が経ち、トランプ氏はあらゆる対立にからめ捕られている。同氏が乗り越えるべき対立とは、現在進行している3つの戦争のほかにも、冷戦と潜在的な戦争、貿易戦争がある。今後数カ月は、トランプ氏が後世に名を残せるかどうかの分かれ目となる重要な時期だ。
- 残念なことに、トランプ氏はスタートから自ら引き起こした障壁につまずいている。同氏の決断に同盟国は困惑し、米国の経済力は弱体化、さらに戦略的な力量が疑問視されている。
- トランプ氏が取り組む第1の戦争は、終結に最も自信を見せてきたウクライナでの戦争だ。同氏はロシアに制裁をちらつかせ、ウクライナに奪われた領土を諦めさせることで和平を築けると簡単に考えていた。しかしロシアのプーチン大統領の妥協のない野心的な目標と、徐々に勝利を手にしていくという信念を前に和平合意の達成はかなり難しくなっている。
- 今後数週間でトランプ氏は選択を迫られるだろう。つまり、より厳格な石油関連の制裁や経済的な抑圧、さらにウクライナへの支援継続を通じて、ロシアに圧力をかけていくのか、それとも手を引き、戦争の成り行きに委ねるかという選択だ。前者の選択は、ロシアにおもねり、ウクライナを軽視することが多いトランプ氏にとっては望ましくない。ただ、後者はウクライナの敗北リスクを高めることになり、欧州の安全保障と北大西洋条約機構(NATO)の未来に破滅的な結果をもたらす恐れがある。
- 第2の戦争は中東だ。米国はイエメンの親イラン武装組織フーシ派を激しく攻撃しているが、まだ抑止には至っていない。この戦争は、イスラエルがイスラム組織ハマスの壊滅を目指して再び攻勢に出ている第3の戦争と並行して激化している。
- しかしいずれの争いも、イランの核開発が絡む潜在的な大規模戦争の序章に過ぎない可能性がある。トランプ氏は、イランに核兵器開発を思いとどまらせるだけの最小限のアプローチか、イラン核開発プログラムの根絶を目指す要求を矢継ぎ早に突きつけるかという、両極端の選択肢の間で揺れている。前者はイランにとって受け入れ可能だとみられるが、後者はイラン側の拒絶を招き、さらには衝突のリスクをはらんでいる。
- 時間はない。夏半ばまでに合意が成立しなければ、トランプ氏はイスラエルか米国、または両国連携での軍事攻撃を認めるかどうかの決断を迫られるだろう。また、長年の優先事項とする「イランの核兵器保有の阻止」と「新たな中東戦争の回避」という2つの緊張関係を解決する必要がある。
- 中国との新たな冷戦にも直面している。政権2期目が始動した際に、中国ではトランプ氏が長く約束してきた大型合意への期待が高まっていた。しかし現在、両国の対立は激化。中国は最後まで闘う姿勢だ。
- 一方、台湾を巡る問題も深刻化している。中国が台湾に対して軍事的な目を光らせる中、トランプ氏の選択肢は、商業紛争から後退して弱さを示すか、より緊迫化した全面的な対立を覚悟するかだ。
- 最後に、広範にわたる貿易戦争も忘れてはいけない。トランプ氏は4月上旬に全方位的に商業対立を仕掛けた後で、ほぼすべての国・地域に対する高水準かつ破滅的な関税の導入を中国を除いて延期した。しかしその延期も、世界経済に対する90日間の執行猶予に過ぎないかもしれない。トランプ氏がより長期的な緊張緩和をもたらし得る通商合意をまとめることができるのか、それともベッセント米財務長官が示唆したように、対中経済競争を見据えて米国の友好国を味方に付ける方法を見つけ出すのか。今後数週間が鍵を握る。
- いずれも問題も非常に重要だ。ユーラシア大陸における主要地域の和平・安定だけでなく、世界経済の健全性、さらに民主主義の結束にまで影響が及ぶ。これはどの政権にとっても手強い課題となるだろう。だがトランプ氏は、この試練の時を迎えるにあたり、自ら招いた2つの弱点を抱えている。
- まず同氏は、米国の強さを支える核心的な要素を無駄にした。理想を言えば、米国は活況な経済と同盟国との堅固な関係を備えて、困難に立ち向かうべきだった。しかし同氏は株価を暴落させ、資本流出を招き、米国を回避しがたいリセッション(景気後退)の方向へと追い込んでしまった。
- 次に、危機管理はどれだけ優秀な人にとっても困難だが、トランプ氏のチームはそれとは程遠いようだ。国防総省の混乱ぶりは、他の大統領なら到底受け入れがたいだろう。トランプ氏が関税政策を打ち出したり、引っ込めたりする姿は、世界の国々の経済的運命を軽率に扱っていることを示している。国家安全保障会議(NSC)は、メッセージアプリ「シグナル」を通じて機密情報を共有している時以外は、ほとんど機能していないように見える。
- ただ、トランプ氏はすべての決定を自分で下すと主張していることから、こうした混乱もどこ吹く風といったところなのかもしれない。しかし今、トランプ氏は大統領としての手腕が問われており、国際システムの運命が決定付けられる時期に突入している。トランプ氏が早急に動かなければ、米国と世界は高い代償を払うことになる。
- ●先進国中銀、金融当局
- 日本国債の残高9年ぶり圧縮、低利回り債入れ替えポートフォリオ強化=日本生命・25年度運用計画 | ロイター
- 日本生命保険は2025年度の一般勘定資産運用計画で、円金利資産の柱である「国内債券等」の残高を圧縮する。日本国債についても、日銀のマイナス金利導入を受けた2016年度以来9年ぶりの残高減となる。超低金利の時期に投資した低利回りの債券を売ってより高い利回りの債券に入れ替え、ポートフォリオの強化を図る。
- 都築彰執行役員・財務企画部長が24日、運用方針説明会で明らかにした。
- 今年度の新規資金は、円債の入れ替えで売却損が出る関係で例年より少ないが、24年度実績(速報ベースで6100億円)とおおむね同程度を見込む。
- このうち、円金利資産の軸となる「国内債券等」には30年物日本国債をメインとする国内債券のほか、通貨スワップでキャッシュフローを円建てに固定した外国社債が含まれるが、いずれも残高を圧縮する。
- 日銀の金融政策正常化を背景とした金利上昇を受け、過去の利回りが低い(価格が高い)時に購入した債券を売却し、代わりにより利回りの高い(価格の安い)債券を買うため、日本国債については簿価ベースの残高は減るものの、時価ベースで見れば残高は増える。
- 「保有する国債の償還分は全て再投資するのに加え、新規にアロケーションで増やす分もある。入れ替えをして売却損が出ればその分簿価が下がるためマイナスとなるが、トータルの投資行動として売りと買いのどちらが大きいかと言えば、買いの方が大きい」(都築氏)という。
- 日銀の金融政策については、国内の経済・物価の情勢や金融市場の動向を慎重に見極めた上で、年度内に0.75%への利上げを行うと想定。その後も政策金利1.0%への追加利上げがあるとのシナリオを描いている。
- また国内金利の上昇余地は大きくなく、年度末の10年金利を1.4%(足元は1.3%)、30年金利は2%台半ば(足元は2.7%)とおおむね横ばい圏での推移を見込む。
- 超長期債の購入ペースについて、都築氏は「基本は平準的なペースだが、足もとの金利は水準的には魅力的で、4月前半だけで言うと多めに買っている。今後はマーケットの動き次第だが機動的に、流動性も勘案しながらペースを調整していく」と述べた。
- また外国債券のうち、「円債代替」である為替ヘッジ付き外債についても、残高増加を見込む。ヘッジコストの変動に耐性を持つ変動金利資産を拡充するほか、中長期の視点で妙味のあるソブリンや社債にも投資する。
- 一方、オープン外債については、為替や金利水準次第だが、残高は横ばいから増加を見込む。通貨オプションを用いた為替リスクをヘッジした取り組みが中心となる。
- このほか、国内株式の残高はやや減少、外国株式は利回り向上と分散投資の観点からオルタナティブを増やす。国内不動産は物件のリニューアルに投資するなどして残高は横ばいの見込み。
- 日本生命の一般勘定の資産残高は、12月末時点で82兆7216億円。うち外貨建て資産は22兆6227億円(27.3%)。
- 2025年度の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。
- 日本国債10年物利回り 0.90―2.00% (年度末1.40%)
- 米国債10年物利回り 3.00―5.00% (年度末3.80%)
- 日経平均株価 3万1000―3万9000円 (年度末3万6000円)
- NYダウ 3万6000─4万7000ドル(年度末4万3000ドル)
- ドル/円 130―155円 (年度末140円)
- ユーロ/円 145―175円 (年度末160円)
- 日本生命、25年度は9年ぶりに国債残高を削減-入れ替えを積極化 - Bloomberg
- 日本生命保険は2025年度に日本国債の残高を削減する。削減は16年度以来9年ぶり。前年度に続き低利回り債の入れ替えを積極的に行う。
- 執行役員財務企画部長の都築彰氏が24日の運用説明会で明らかにした。「国内債券等」は24年度に9000億円削減したのに続き25年度も削減する。通貨スワップを用いて円金利化した外国社債などを除いた「日本国債」の残高は24年度は増加したが、25年度は減少の計画。24年度に2兆円規模で行った低利回り債の入れ替えを継続し、入れ替えの規模が24年度を上回ることも「可能性としてはある」と言う。
- 4月の債券相場は、トランプ米大統領の関税政策や財政拡張懸念から値動きが激しく、買い手不在で流動性が低下している。国内金利の上昇を受けて一部の生保が外債から円債シフトを表明したが、日本生命と明治安田生命保険の大手2社は円債を削減し、外債を積み増す。大手では第一生命保険と住友生命保険がこれから計画を発表する予定。安定的な買い手とされる生保の出動は期待外れとなる可能性もある。
- 日本生命によると、24年度の国内債券の売却簿価は約1兆9900億円、売却損は約3200億円に達した。都築氏は25年度の国債投資について「入れ替えを時価で行っているため、売却により簿価が減少するが、時価ベースでは残高は増加する」と説明した。
- 投資対象は30年債が中心。「金利水準は魅力があるものの、市場は非常に不安定で投資家の目線が定まっていない」と都築氏は指摘。4月前半は「割と多めに買っている」とした上で、基本は平準ペースで買い入れ、市場動向次第で機動的にペースを調整していくと言う。
- 運用計画を公表した生保7社のうち、T&Dホールディングス傘下の太陽生命保険と大同生命保険は外国債券と内外株式を売却して3000億円規模で円債を積み増す。かんぽ生命保険は償還が多いため円債の残高は減るが、外債からのシフトで最大1兆円規模の買い入れを表明。富国生命保険も3000億-4000億円買い入れる。
- 日本銀行の利上げ継続による金利先高観から24年度は生保にとって待ちの状態が続いた。日本証券業協会によると、国内の保険会社は3月に超長期債を過去最高となる6458億円売り越した。対照的に海外投資家の買越額は過去最高を記録した。
- SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、新年度が始まったばかりでボラティリティーが高いため生保は投資を先送りしているものの、金利水準に妙味を感じており、「市場が落ち着けば買いに入ってくるのではないか」と語る。生保の需要を測る上で5月13日の30年債入札が試金石になり、「需要が確認されれば相場全体に安心感が出る」とみる。
- ノルウェー政府系ファンド、第1四半期は400億ドルの損失 | ロイター
- 米国債に「絶大な」投資機会、市場が利下げ過小評価-JPモルガン - Bloomberg
- JPモルガン・アセット・マネジメントは、米国債は欧州債に比べて大きな上昇余地があるとみている。
- 市場は米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを進める可能性を過小評価している一方で、欧州中央銀行(ECB)の利下げはある程度織り込まれているためだという。
- グローバル総合戦略責任者のマイルズ・ブラッドショー氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「トランプ米大統領による関税政策は、インフレよりも成長に打撃を与える可能性が高い」とし、FRBは最終的により積極的な利下げを迫られるだろうとの見方を示した。
- 「米金利が今後数年間、中立金利である3%を上回る水準にとどまることが市場に織り込まれている。そのため、絶大な投資機会があると考えている」とブラッドショー氏は述べた。
- パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)なども、トランプ氏の関税政策に起因する米国債売りが一巡し利回りが上昇したため、再び米国債に投資妙味が出てきたと考えている。
- 24日の取引では米国債全体で利回りが低下し、特に短期債の利回りは一時4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。「欧州債にも値上がり余地はあるが、米国債ほど顕著ではない」とブラッドショー氏は述べた。
- 現在、市場ではECBによる年内の0.25ポイント利下げほぼ3回が織り込まれ、中銀預金金利は1.5%まで低下するとみられている。一方、FRBについては少なくとも3回の利下げでフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が3.75となることが見込まれている。4回目の可能性も視野に入っている。
- 最近、トランプ氏が米中貿易合意に前向きな姿勢を示し、パウエルFRB議長に対する批判をトーンダウンさせたことで、市場にはひとまず安心感が広がった。
- 23日には長期米国債の利回りが低下し、5年債入札にも強い需要があった。「短期的には悪材料がやや後退し、不透明感もやや和らいでいる」とブラッドショー氏は述べ、 「今後の展開を決める本質的な要因は、やはり成長とインフレだ」と強調した。
- ドル、米資産離れで2014年以来の水準まで下落へ-ドイツ銀が予想 - Bloomberg
- ドイツ銀行は、構造的なドル下落トレンドにより、今後数年間で米国通貨は対ユーロで過去10年以上の最安値水準まで下落すると警告している。
- 同行のストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏とティム・ベイカー氏は、ドイツの財政強化や米国の世界での役割の変化に加え、米国の関税の悪影響により、投資家が米国資産を手放し、ドル相場は下落に転じると指摘した。
- 米国の政策に対する不透明感が高まり、世界の基軸通貨としてのドルの地位が疑問視される中、ドルは今週前半、16カ月ぶりの安値まで下落した。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は4月に入り4%近く下落し、過去2年間で最悪の月となった。
- ドイツ銀行のストラテジストらは、リポートで「ドルの大きな下落トレンドが始まる前提条件が整った。ここ数カ月の歴史的な展開を考慮すると、ユーロ・ドル相場は長い下降サイクルに入ると予想している」との見方を示した。
- ドイツ銀行は現在、ユーロが2027年末までに1ユーロ=1.3ドルまで上昇するとみている。過去にこの水準を付けたのは2014年で、ブルームバーグがまとめた予想中央値1ユーロ=1.15ドルを大きく上回る。同行は円も1ドル=115円と、2022年以来の円高水準になると見ている。1カ月前の同行の予想は、ドイツ銀行はそれぞれ1ユーロ=1.15ドル、1ドル=125円だった。
- ストラテジストらは、ユーロは「安全な逃避先への資金流入」や、欧州への投資拡大を目指す外貨準備マネジャーの恩恵を受けるとしている。ユーロは今月5%以上上昇しており、今週、1ユーロ=1.15ドルを超えた。
- ゴールドマン・サックスのグローバル外為・金利・新興市場戦略責任者のカマクシャ・トリベディ氏も今週、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで、ドル安が「今後も続く」との見解を示した。
- 米景気映す54兆円の広告市場、トランプ関税で黄信号 - 日本経済新聞
- 米スーパー富裕層19世帯、昨年は143兆円の富を創出 - WSJ
- 米国の最富裕層はさらに豊かになり、国全体の富に占める割合は過去最大に達している。新たなデータによると、2024年には米国の最上位層19世帯だけで1兆ドル(約143兆円)の富を創出した。これはスイスの経済規模をも上回る。
- カリフォルニア大学バークレー校とパリ経済学校(PSE)の経済学者であるガブリエル・ズックマン氏の分析によると、米国の家計資産全体のうち上位0.00001%の富裕層が保有する割合は、1982年(当時は11世帯)の0.1%から2023年の1.2%へと拡大するのに約40年を要した。
- だが1年後の2024年末に、上位0.00001%(現在は19世帯)が米国の家計資産全体に占める割合は1.8%まで急拡大。金額にして約2兆6000億ドルとなった。ズックマン氏によると、1年間の伸びとしては過去最大だという。
- 2024年末時点の米国の家計資産の総額は、ズックマン氏が用いた指標によると約148兆ドルだった。これは連邦準備制度理事会(FRB)が推計する家計資産から家電など高額商品の価格と未積立年金を差し引いて算出する。
- 1990年7-9月期以降、米国経済の成長に伴い、あらゆる層で平均純資産は増えているが、最富裕層は他の全ての層に比べてはるかに伸びが大きくなっている
- 「徐々に増加していたが、ごく最近は、超富裕層の資産のシェア拡大が劇的に加速している」とズックマン氏は述べた。同氏の分析は、米国の「金ぴか時代」に含まれる1913年から、2024年までの富の分配を対象としている。ズックマン氏と同僚の経済学者エマニュエル・サエズ氏による研究は、バーニー・サンダーズ上院議員(無所属、バーモント州)やエリザベス・ウォーレン上院議員(民主、マサチューセッツ州)が2020年の大統領選の党候補指名争いで富裕層増税を主張する際に引用していた。
- 資産運用会社によると、2024年の米国株急騰が、前年すでに大きく増えていた最富裕層の富の創出にいっそう拍車をかけたとみられる。2年単位で見ると、S&P500種指数は23~24年に四半世紀ぶりの好調なパフォーマンスを示した。(ただドナルド・トランプ米大統領が世界的な貿易戦争を仕掛けて以降、相場は大きく下げている。これは超富裕層の資産の不安定な性質を劇的に表している。その富の多くは株式市場と連動しており、彼らの純資産は数十億ドル単位で日々揺れ動く可能性がある)
- ズックマン氏の研究にある米国の上位0.00001%は、1世帯当たり少なくとも450億ドルの資産を持ち、その中には起業家イーロン・マスク氏や、アマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏、メタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)、マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏、著名投資家ウォーレン・バフェット氏、プライベートエクイティ(PE)投資会社を運営するスティーブン・シュワルツマン氏が含まれる。他の研究者は同規模の資産を持つ人々を「スーパービリオネア」と呼んでいる。
- 富裕層の資産増加は、世界中で億万長者を生み出し、特に米国で顕著となっている。
- JPモルガン・チェースのプライベートバンク部門の推計によると、資産が10億ドルを超える米国の「ビリオネア」の数は2024年は約2000人に達し、データを取り始めた21年の約1400人から増加している。一方、米調査会社アルトラータは、最新データがある23年のビリオネアの数を1050人と推計。21年の975人から増えている。アルトラータは23年にはビリオネアの総資産が4兆9000億ドルに迫っていたとみている。
- 「世界不平等データベース」によると、2023年時点で米国の上位1%の富裕層は米国の家計資産全体の34.8%を保有していた。これに対し、英国の上位1%は家計資産の21.3%を保有、フランスでは27.2%、ドイツでは27.6%だった。
- 1990年時点で資産が多かった世帯ほど、その後の富の蓄積は速くなっている。米国では上位1%が家計資産全体に占めるシェアが増える一方で、他の全ての層はシェアが低下している。
- セントルイス・ワシントン大学の経済学者スティーブン・ファザーリ氏がFRBのデータを分析したところ、上位0.1%の富裕層(4630万ドル以上の資産がある約13万3000世帯)は1990年7-9月期以降、2024年のドル換算で年平均340万ドルの富を蓄積した。これに対し、残る上位1%の富裕層(1120万ドル以上の資産がある約120万世帯)は、1世帯当たり年平均45万ドルの富を増やした。
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- ●その他エマージング
- 低所得国の債務問題、不確実性が逆風に 円卓会議開催 | ロイター
- 低所得国の債務問題を話し合う「世界ソブリン債円卓会議」が23日、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合に合わせて開催された。
- 共同議長を務めたIMF、世銀、20カ国・地域(G20)議長国の南アフリカは、債務再編プロセスの改善に向けたさらなる取り組みと債務国の支援が必要だと表明。債務再編の手続きを整理した新たな指針を公表した。
- 円卓会議には債権者、債務国、民間部門の代表、債務の専門家、金融・法律アドバイザーが参加。返済遅延が発生していない国でも、公的二国間債権者との債務再編手続きに入れば、返済猶予が可能となる点を確認した。
- IMFの幹部は、新興国・途上国の債務の安定性に対するリスクはおおむね抑制されているが、貿易摩擦の激化で基本シナリオを巡る不確実性が「著しく」高まっていると指摘。「多くの逆風」があり、特に、輸出依存度が高く、米国の関税や商品価格の下落、金融環境の引き締まりなどの影響を受けやすい国が課題を抱えていると述べた。
- その上で、重い返済負担への対処が急務であり、状況は現在の環境下で一段と深刻化しているとの認識を示した。
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
- 「データセンター銀座」千葉・印西、駅前建設で物議 市は対応苦慮 - 日本経済新聞
- 「データセンター(DC)銀座」と呼ばれる千葉県印西市の北総線駅前で、新たな建設事業が物議を醸している。日照権などを巡り住民から反対の声が上がるなか藤代健吾市長も懸念を表明したが、民有地での事業に市が取れる方策は限定的だ。DC誘致で税収を増やしてきた印西だが、人口が増える中でまちづくりの転換点を迎えている。
- 「この場所にはふさわしい施設はDCではない」。印西市の藤代市長が自身のX(旧ツイッター)で断じたのは北総線千葉ニュータウン中央駅の北口で建設予定が明らかになったDCだ。3日、駅から徒歩5分ほどの駐車場跡地に掲示された標識板には地上6階、延べ床面積約3万平方メートルのDCについて書かれている。工期は2026年1月から28年2月末までを予定する。
- 集合住宅やイオンモールなどの商業施設、ホテルに囲まれたまちの中心とも言える場所だ。高さ52.7メートルのDCは地域住民によると隣接するマンションよりも高く、「日当たりが悪くなる」と懸念の声が上がる。管理組合として市に対応を求める方針という。
- 三井物産などが出資する印西ファイブ特定目的会社(東京・千代田)を事業者とし、コルトデータセンターサービス・ジャパン・オペレーティング合同会社(東京・港)が運用する。コルトは市内で4棟のデータセンターを運用している。
- 市には景観や騒音などを懸念する声が21日までに50件ほど寄せられた。担当者は「民間事業者による民間所有地での開発事業であり、止めるすべがあるかと言われると難しい」と話す。計画の企画を請け負うトーワ綜合システム(同)は「市とも計画当初からやり取りしている。地域貢献策も検討しながらDC事業としてうまく調整したい」とコメントした。
- 人工知能(AI)やクラウドの普及に伴い一層の重要性を帯びているDCには投資の対象としても注目が集まるが、窓のない無機質で巨大な構造物が住民の不安を生む側面もある。東京都江東区が周辺環境を守るためDCの建設に対し独自の対応方針を策定するなどの動きもある。
- 印西市では地盤の固さ、東京や成田空港へのアクセス性などを背景に、前市長の板倉正直氏がグーグルなどのDCを積極誘致し税収増につなげてきた。一方の藤代氏は雇用創出を念頭に「物流やDC以外の産業誘致が私の一番の仕事だ」とDCの一本足打法に慎重な姿勢も示す。子育て世代からの人気が高く全国でも例外的に人口の自然増が続くが、いずれ訪れる人口減少局面を見据え職住近接への方向転換を視野に入れる。
- 藤代氏も生活圏に隣接するエリアでの開発行為に市独自のルールを設定する考えを示す。この一件をめぐる市の対応は今後のまちづくりの試金石になりそうだ。
- 大阪カジノ構想、日本初IRついに着工-提案から25年、アジア最大へ - Bloomberg
- 岡山大学、15年で未昇任は研究職以外に 若手ポスト確保 - 日本経済新聞
- 都営大江戸線延伸2040年ごろ開業想定 東京都、23区内の鉄道空白地を解消 - 日本経済新聞
- プロ野球:小山正明さんが死去 320勝投手、「精密機械」 - 日本経済新聞
●市況(ChatGPTによる要約版)
- 欧州市場サマリー(24日) | ロイター
- ### 【ロンドン株式市場】
- - **続伸**。銅価格上昇で鉱業株が買われ、業績好調な企業の株価も上昇。
- - **FTSE100**は小幅高、**FTSE250**は0.11%高。
- - 鉱業株指数:+1.04%、銀行株指数:-1.64%。
- - **ASOS**:好調な見通しで+2.1%、**ユニリーバ**:-0.5%。
- - **インチケープ**:関税懸念で-6.8%。
- - **FRB議長解任の意向撤回**、米中関税を巡る先行きに不透明感。
- ### 【欧州株式市場】
- - **続伸**。米国が関税姿勢を緩めたことが投資家心理を支援。
- - 自動車株と資源株が上昇。
- - **ルノー**:+4.4%、**アディダス**:+2.5%。
- - 銅価格上昇で資源株指数:+0.99%。
- - 一方、銀行株と通信株は下落。
- - **BNPパリバ**:-2.2%、**ノキア**:決算不振で-9.5%。
- - **ケリング**:販売減で-1.0%。
- - **ドイツ政府**:2025年成長率見通しを0%に下方修正。
- ### 【ユーロ圏債券市場】
- - **国債利回りが低下**。米中進展への懐疑や安全資産需要が背景。
- - **ドイツ10年債**:2.46%(-4bp)、**2年債**:1.68%(-6bp)。
- - 米国債よりパフォーマンス劣る。
- - **イタリア10年債**:3.55%(-8bp)、**フランス10年債**:3.16%(-7.5bp)。
- - **ECB**政策金利、12月には1.6%程度との市場予測。
- 全体として、**貿易摩擦の不透明感と経済見通しの下方修正**が投資家心理に影響しつつ、**個別企業の決算や資源価格の動向**が株価に反映された一日でした。
備忘録(2025/4/23)
- ●海外企業決算
- [BA] ボーイング 1Q増収営業黒字転換 売上高18%増194億ドル、営業益4.61億ドル、EPSマイナス0.16ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [GD] ゼネラルダイナミクス 1Q増収増益 売上高14%増122億ドル、営業益22%増12.6億ドル、EPS3.66ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [NEE] ネクステラエナジー 1Q増収営業増益 売上高9%増62.4億ドル、営業益12%増22.5億ドル、EPS0.40ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PM] フィリップモリス 1Q増収増益 売上高6%増93.0億ドル、営業益16%増35.4億ドル、EPS1.72ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CME] CMEグループ 1Q増収増益 売上高10%増16.4億ドル、営業益15%増11.0億ドル、EPS2.62ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AVY] エイブリーデニソン 1Q微減収最終減益 売上高微減21.4億ドル、純利益4%減1.66億ドル、EPS2.09ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [BSX] ボストンサイエンティフィック 1Q増収増益 売上高21%増46.6億ドル、営業益36%増9.21億ドル、EPS0.45ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [T] AT&T 1Q増収営業減益 売上高2%増306億ドル、営業益2%減57.5億ドル、EPS0.61ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TEL] TEコネクティビティ 2Q増収営業増益 売上高4%増41.4億ドル、営業益8%増7.48億ドル、EPS0.04ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [OTIS] オーチスワールドワイド 1Q減収減益 売上高3%減33.5億ドル、営業益24%減4.11億ドル、EPS0.61ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TMO] サーモフィッシャー 1Q微増収増益 売上高微増103億ドル、営業益3%増17.1億ドル、EPS3.98ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [PKG] パッケージングコープオブアメリカ 1Q増収増益 売上高8%増21.4億ドル、営業益43%増2.80億ドル、EPS2.26ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [EW] エドワーズライフサイエンス 1Q増収増益 売上高6%増14.1億ドル、営業益13%増3.94億ドル、EPS0.62ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CSL] カーライル 1Q減益 売上高横ばい10.9億ドル、営業益19%減1.83億ドル、EPS3.13ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [LUV] サウスウエストエアラインズ 1Q増収赤字縮小 売上高2%増64.2億ドル、営業赤字2.23億ドル、EPSマイナス0.26ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [IBM] IBM 1Q増収最終減益 売上高1%増145億ドル、純利益34%減10.5億ドル、EPS1.12ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [NOW] サービスナウ 1Q増収増益 売上高19%増30.8億ドル、営業益36%増4.51億ドル、EPS2.20ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [LRCX] ラムリサーチ 3Q増収増益 売上高24%増47.2億ドル、営業益48%増15.6億ドル、EPS1.03ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [NEM] ニューモント 1Q増収最終増益 売上高25%増50.1億ドル、純利益11倍18.9億ドル、EPS1.68ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TXN] テキサスインスツルメンツ 1Q増収増益 売上高11%増40.6億ドル、営業益3%増13.2億ドル、EPS1.28ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- GEベルノバが上昇 電力需要の急増でガスタービンの納期が大幅に延びる=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- 決算:「グッチ」のケリング、1〜3月14%減収 欧州高級ブランドに明暗 - 日本経済新聞
- ●海外企業
- 石破首相、プラザ合意時と比べ日米経済関係は変化-通貨政策で討論 - Bloomberg
- 石破茂首相は23日午後の党首討論で、ドル高是正のための「プラザ合意」があった1980年代と比較し、米国の貿易赤字に占める日本の割合は低下しているとし、投資拡大も含めて米政権に日本の現状を説明していくべきだとの認識を示した。
- 立憲民主党の野田佳彦代表は、日米関税協議を巡り、ドル安誘導の「第2プラザ合意」を米国が考えているなら「間違っていると言わなければならない」と主張。米国債についても、最大の保有国である日本が市場を支え続けるが、「激変が起こるとそういうことにならないかもしれない」との姿勢を示すよう促した。
- これに対し、石破首相は「非常に機微な問題だ。ご示唆は承りました」と述べた。その上で、米貿易赤字に占める日本の割合が低下した理由として対米投資の拡大を挙げ、日本の努力を「はっきりと数字にして米国や世界に対して訴えていくべきことだ」とした。
- 日米は米ワシントンで今週開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の機会に加藤勝信財務相とベッセント財務長官との会談を行う方向だ。ベッセント氏は日本との関税交渉で為替の問題も取り上げる考えを示している。この日の発言は首相経験者でもある野田氏が米側をけん制するよう求めたのに対し、石破首相は明言を避けつつも、日米の経済関係の変化を米側に説明する方針を強調した形だ。
- G20、米との信頼関係基礎に臨む
- 日米交渉では、石破首相は「どっちが得してどっちが損するということではなく、米国と一緒に日本はどのようにして国を発展させていくか」、さらに「いかにして世界に利益をもたらすか」という話をする必要があると述べた。G20会議でどのようなメッセージを発するかという問いには、「米国との信頼関係を基礎に置いた上で臨まなければならない」と語った。
- 米国は日本に対する上乗せ税率を24%に設定。その後、他国と同様に90日間の停止措置を講じているが、10%の基本税率に加え、自動車や鉄鋼、アルミニウムには25%の関税がすでに導入されている。交渉役を担う赤沢亮正再生相は月内にも2回目の対米協議を行う見通しだ。
- 党首討論の開催は政権発足直後の昨年10月9日以来。同月の衆院選で与党が過半数割れしてからは初めて。与野党は今国会中の4月から6月までの間、毎月1回開催することで合意している
- 石破首相の他の発言
- CPTPP事務局の日本設置、真剣に考えたい
- 自由貿易でEUと連携する意義は極めて大きい
- ガソリン暫定税率廃止の財源、恒久的に示さないと無責任な話だ
●日本企業
●先進国政治動向
- トランプ米政権、薬価引き下げで国際価格参照制度を検討=関係筋 | ロイター
- トランプ米政権が薬価を他の先進国水準に引き下げる検討に着手したことが分かった。他国の薬価と比べ適正水準を探る「国際価格参照制度」と呼ばれる仕組みで、製薬企業関係者2人が当局から事前警告を受けたことを、匿名を条件にロイターに明らかにした。
- 同関係者2人は、この問題が業界にとって最重要懸念事項となっており、厚生省のメディケア・メディケイド・サービス・センター(CMMI)が発表する見通しと述べた。
- 関係者のうち1人は、政府の厚生省高官から直接、そうした薬価政策の導入を検討していると告げられたと明らかにした。薬価引き下げ策をいくつか検討していると話したという。同関係者は、CMMIは国際価格参照制度に基づいた薬価算定の仕組みを試験的に導入するだろうと述べた。
- 国際価格参照制度の導入は、薬価を引き下げたいトランプ政権の検討策の中では中程度の優先度に位置づけられるという。ただ、「製薬業界と米バイオサイエンスのイノベーションにとって存亡に関わる過去最大の脅威だ」と警戒感を示した。
- 関係者2人は、輸入医薬品への関税を含む他の政府の政策発動よりも製薬業界には大きな懸念材料だと述べた。
- 米国では医薬品に対して世界で最も高額な支出がなされており、その額が他の先進国の約3倍に上ることが頻繁にある。トランプ大統領は、こうした価格差を縮小する意欲を表明しているものの、具体的な方法は明らかにしていない。
- トランプ大統領は1期目に国際価格参照制度を掲げたが、裁判所によって阻止されたという経緯がある。当時は納税者にとって7年間で850億ドル以上の節約、国内で年間計4000億ドル以上の医薬品支出削減を目指していた。
- トランプ氏は2期目の大統領に就任後、同制度の構想を公表していない。ただ、保守系シンクタンクのアメリカ・ファースト政策研究所(AFPI)が制度に言及している。先月発表の論文の中で、高齢者や障害者向け公的医療保険制度メディケア向け薬価交渉の中で導入される可能性があると指摘している。
- 一方、専門家らは、トランプ政権が対象を限定した導入を提案したとしても実施には困難を伴うとの見方を示している。膨大なマンパワーが必要となる作業だが、担当職員数がそもそも限られている上、ケネディ厚生長官の陣頭指揮で厚生省で大型リストラ計画が進行中のためだ。
- また、国内で承認された医薬品は数千種類あり、その一部は他の参照国では保険適用されていないか、まだ販売されていない。さらに、一部の国では薬価確定までに時間がかかるため米国が価格を参照しようにも時間差ができてしまうという。
- M&A業界を悩ませるトランプ政権の独禁政策 - WSJ
- 巨額のM&A(合併・買収)案件が米銀行規制当局の承認を得た。
- 米クレジットカード大手キャピタル・ワン・ファイナンシャルが同業ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズを350億ドル(約5兆円)で買収する計画が承認されたことは、状況が違えばM&A市場にとって強気のシグナルとなるはずだ。しかし、今年に入ってから大型案件が少ないことを考えると、M&A業界はトランプ政権の反トラスト規制に対する姿勢をまだ完全には理解できていないようだ。
- ドナルド・トランプ大統領の関税戦争、そしてジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任をほのめかす発言(注:トランプ氏は22日、パウエル氏解任の「意図はない」と述べた)が市場の重荷となっており、4月に入ってもM&A動向に冷や水を浴びせている。市場が落ち着いたとしても、M&A案件が承認されるか不透明な状況が続くと業界関係者は話している。
- 米連邦取引委員会(FTC)のアンドルー・ファーガソン委員長は今月、首都ワシントンで企業経営者やM&A関係者を前に、米実業界がM&Aの「オープンシーズン」に戻るべきだとは考えていないと述べた。会合の録音によると、同氏はテック大手を中心とした大企業が「一般の米国民とその家族に被害を与えない」ことを確実にするのが自身の仕事だと語った。
- この発言は一部のM&A関係者を動揺させた。特にファーガソン氏と司法省の反トラスト局長であるゲイル・スレーター氏が、反トラスト専門家の年次春季会合をスキップし、ワシントンでのイベントに出席したことが背景にある。「彼らはM&Aそのものに反対しているわけではないが、実力に基づく競争が重要だと考えていると明確に表明した」。司法省の元反トラスト法(独占禁止法)担当者で、現在はコミュニケーション会社FGSグローバルに勤務し、同イベントの調整に関わったジョシュ・ズカー氏はそう語る。
- 大型案件が不在
- 米金融関係者の多くは、規制が緩和されると予想し、M&A件数が落ち込んだ責任はバイデン前政権と前FTC委員長のリナ・カーン氏にあると非難していた。
- しかし、M&A関係者らはまだ政権の新しい顔ぶれに適応している段階だ。また、グーグルやメタ・プラットフォームズなどのテック大手が成長のために用いた戦術(買収など)に対する圧力も、M&A市場の逆風となっている。
- LSEGのデータによると、2月は100億ドルを超える案件が世界各国で1件も発表されなかった。これは2年1カ月ぶりのことだ。
- 3月には米国で2件の大型案件が発表された。グーグルによるサイバーセキュリティー新興企業Wiz(ウィズ)の320億ドルでの買収と、投資会社シカモア・パートナーズによるドラッグストアチェーン大手ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの買収だ。また過去1週間には、決済サービス大手グローバル・ペイメンツが同業ワールドペイを240億ドル超で買収すると発表した。
- しかし4月は静かな状態が続いており、米国の1~4月(21日まで)のM&A案件は金額ベースで前年同期比1%減、件数ベースで45%減となっている。
- ビル・クリントン元大統領の経済政策顧問を務め、現在はM&Aアドバイザーのジョン・オーザグ氏は「新政権の発足時には、企業は自分たちが直面する状況を理解しようとする。反トラスト法に関わり得るM&A活動が一時的に停滞するのは珍しいことではない」と述べた。
- オーザグ氏は、米国の関税政策に関する確実性が高まれば、年内にM&A案件が増加すると予想している。同氏は最近、企業買収や他の政策問題に関する反トラスト法の問題に焦点を当てる経済コンサルティング会社、エコニック・パートナーズの立ち上げを支援した。エコニックは今月、コンサルタント会社Compass Lexeconの元社長であるマーク・イスラエル氏を採用し、陣容を強化している。
- 「新政権が反トラスト政策をどのように実施するかは時間とともに明らかになり、企業にとって確実性が高まるだろう」とオーザグ氏は語った。
- 是正措置を模索
- ウィズ買収をはじめとする案件が試金石となるはずだ。M&A関係者らは、トランプ政権は大型M&Aを最終的にまとめる解決策を見いだす際、より柔軟に対応すると予想している。
- 法律事務所フレッシュフィールズの米国M&A担当共同責任者、ダミアン・ズーベック氏は「両機関(FTCと司法省反トラスト局)は是正措置にもっとオープンになるはずで、M&Aプランナーは案件を成立させるためのオプションが前政権よりも増えるだろう」と語った。
- 企業は、M&Aによって市場支配力が強まることを懸念する規制当局の理解を得るために、是正措置(資産売却のケースが多い)を提案する。
- しかしスレーター氏は今月、ワシントンの聴衆に対し、司法省は「くだらない同意審決」を聞くつもりはないと述べ、10年前にレンタカー会社2社が合併を成立させるために事業の売却に同意した例を挙げた。合併の数カ月後、売却された事業は経営破綻した。(スレーター氏は社名を挙げなかったが、ハーツによるダラー・スリフティの買収を指している)
- 事情に詳しい関係者によると、バイデン前政権下の司法省当局者は、キャピタル・ワンのディスカバー買収案について、特に新規の借り手への影響に関して懸念があると銀行規制当局に伝えていた。しかし、トランプ政権下では司法省が、それだけでは買収案を阻止するには不十分だと判断したという。銀行規制当局は先週、条件付きで承認した。
- 中国の輸出依存脱却「米国が支援」=ベッセント氏 - WSJ
- スコット・ベッセント米財務長官は23日、中国が輸出主導から消費主導への経済モデルに移行するのを米国は支援したいと語った。
- 国際金融協会(IIF)で「中国の現行の経済モデルは、輸出によって国内経済の問題を回避することに基づいている。それは持続できないモデルであり、中国だけでなく世界全体に害を及ぼしている」と話した。
- その上で「中国は変わる必要がある。同国をはじめ誰もが、その必要性を認識している」と語った。
- 米、対中関税引き下げを検討 緊張緩和へ - WSJ
- 米トランプ政権は中国からの輸入品に対する高関税の引き下げを検討している。一部の関税は半分以下に引き下げる可能性がある。中国との貿易摩擦が世界の貿易と投資に混乱をもたらしており、緊張を和らげたい狙いだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
- それによると、ドナルド・トランプ大統領はまだ最終判断を下していない。協議はまだ流動的で、いくつかの選択肢が検討されている。ある政府高官は、トランプ大統領が一方的に行動することはなく、関税を引き下げるためには中国政府が何らかの行動を起こす必要があると述べた。
- あるホワイトハウス高官の話では、対中関税は50~65%程度に引き下げられる可能性が高い。政権は、昨年終盤に下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」(中国特別委員会)が提案したような段階的なアプローチも検討している。下院の法案は、国家安全保障上の脅威とみなさない品目の関税率を最低35%にし、戦略的に重要とみなす品目には少なくとも100%の関税を課す内容。これら関税を5年にわたり段階的に導入することを提案していた。
- ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は「トランプ大統領は、中国は米国とディール(取引)を行う必要があると明言してきた。関税に関する決定が下される場合は、大統領から直接下される。それ以外は単なる臆測に過ぎない」と述べた。
- その後、スコット・ベッセント財務長官は記者団に対し、トランプ大統領は中国に対する米国の関税を一方的に引き下げるとは申し出ていないと語った、とブルームバーグ・ニュースが報じた。
- トランプ氏は22日、中国製品に対する関税を引き下げる用意があると語り、大統領2期目に課した145%の対中関税率が低下するとの見通しを示した。「だがゼロにはならない」とも述べた。ホワイトハウスの強硬な動きに懸念を深めていた投資家にとってこれは歓迎すべきニュースとなった。
- 中国は23日、米国との通商協議に前向きな姿勢を示す一方、ホワイトハウスが威圧的な態度を続ける限り交渉に応じる考えはないと警告した。中国当局者に近い関係者によると、トランプ氏の22日の発言は政策立案者らの間で譲歩の兆しと受け止められた。
- トランプ大統領が中国からの輸入品に対する関税を半分に引き下げることを決めたとしても、その水準では、米国市場は電気機器やその他の製品を製造する多くの中国メーカーに対して全面的に閉鎖されることになる。一部のアナリストは、こうした高水準の関税が続けば数カ月以内に両国間の貿易が干上がる可能性があると見積もっている。
- 政権に近い人たちの中には、トランプ大統領は中国への関税を引き下げる余地があり、引き下げたとしても世界第2位の経済大国・中国と米国の「デカップリング」という政権の目標に向かって努力できると言う人もいる。「実際には何もせず、圧力弁を開放するようなものだ」と、ある関係者は語った。
- ベッセント米財務長官、日本との通商交渉で「通貨目標」求めず - Bloomberg
- ベッセント米財務長官は23日、トランプ政権が日本との通商交渉において為替レートの具体的な目標を追求するつもりはないと述べた。日本に対しては主要7カ国(G7)の長年の合意を順守するよう改めて求めた。
- ベッセント氏は、日本との通商交渉で為替水準の直接的な是正を促す目標を求めるのかとの質問に対し、「通貨目標は一切ない」と言明。「G7合意を尊重することを日本には期待している」と語った。ワシントンで開かれた国際金融協会(IIF)のイベントで基調講演を行った後、記者団の質問に答えた。
- 日米は米ワシントンで開催の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の機会に、加藤勝信財務相とベッセント財務長官との会談を行う予定となっている。トランプ大統領が米国の製造業を活性化させるためにドル安を望んでいるとの見方がある中で、同協議で為替にどう言及されるか市場では注目が高まっている。
- イエレン前財務長官も日本の為替政策について問われた際には、「市場で決定される為替レート」に関するG7の合意を引用していた。
- ベッセント氏の発言を受けて円は対ドルで下げ幅を拡大し、ニューヨーク時間午後の取引で一時、約1.4%安の143円49銭を付けた。
- 「関税と非関税貿易障壁、通貨操作、労働力や設備投資に対する政府補助金など、われわれは複数の要素に目を向けている」とベッセント氏は説明。「従ってこれはすべて一体の交渉だ」と述べた。
- ●先進国中銀、金融当局
- 日銀、海外ノンバンクによる邦銀への影響警戒-市場などのショック時 - Bloomberg
- 日本銀行は、国内外の金融市場で存在感を増す海外ノンバンク向けの投融資が拡大している日本の金融機関について、海外金融資本市場などのショックの影響が及ぶ可能性が高まっていると警鐘を鳴らした。金融システムリポートを23日に公表した。
- 同リポートによると、日本の金融機関はこれまでの国内の低金利環境を背景に相対的に高利回りの海外向け投融資を拡大。海外ノンバンク向けでは投資信託やファンドへの貸し出しを増やしている。多くの投資ファンドと相関の高いポートフォリオを持つ金融機関も増えており、海外市場やノンバンク部門に生じたショックが過去と比べて「広範に伝播する可能性が高いことに注意する必要がある」とした。
- 海外ノンバンクの対内証券投資残高も増え、株式・国債市場で一定のプレゼンスを占めるようになった。特に2022年以降、先物などオフバランス取引が多いヘッジファンドが投資を急拡大。24年8月に市場が大きく変動し、投資家のリスク心理が悪化した局面では、先物での株式売りなど「ヘッジファンドのポジションの巻き戻しが本邦金融市場や資産価格に相応の影響を与えたとみられる」と分析した。
- トランプ米政権の関税政策などを受けて先行き不確実性が高まる中、国際金融資本市場も不安定な状況が続いている。現時点で金融問題にまで発展する可能性は小さいとみられているものの、日銀では海外ノンバンクの動向を含め、日本の金融機関、金融システムの状況を引き続き丁寧にモニタリングしていく考えだ。
- 安定性を維持
- リポートでは、日本の金融システムの現状について「全体として安定性を維持している」との認識を据え置いた。貸出金利が上昇する中でも、金融仲介活動に大きな不均衡は認められないという。マクロ・ストレステストを踏まえ、日本の金融機関はリーマンショック級のストレスにも耐え得る、「充実した資本基盤と安定的な資金調達基盤を有している」と評価した。
- 日銀は、4月30日と5月1日に開く金融政策決定会合で新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)について議論し、金融面の不均衡なども点検する。
- 【コラム】FRBが慎重姿勢を崩さない4つの理由-ダドリー - Bloomberg
- 現在の市場価格は、米連邦準備制度理事会(FRB)が6月中旬の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で短期金利の引き下げを開始し、年末までにフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げ1%とすることを織り込んでいる。
- しかし先週、パウエルFRB議長はこの見通しを否定した。トランプ政権による関税政策は物価を押し上げる一方で成長を抑制し、完全雇用と物価安定という2大目標からFRBを乖離(かいり)させる恐れがあるという。「今年の残り期間は、われわれの目標から乖離していくことになるだろう」と同氏は述べた。
- FRBが利下げに慎重である理由は、次の4点に集約される。
- (1) 経済見通しの不透明
- 米国による関税の急激かつ想定外の引き上げは前例のないもので、対応が困難だ。通商政策の方向性が定まらない中では金融政策の見通しも立てにくい。
- さらに、関税の引き上げを見越して家計や企業が購入を前倒しすることで、短期的に成長が押し上げられる可能性がある。3月の自動車・部品販売は前月比5.3%増となり、2年で最大の伸びを記録した。
- (2) 潜在成長率の急激な低下
- 通商政策の転換は、米国の潜在成長率を短期・長期の両面で損なう。輸入物価の上昇により、製造業はサプライチェーンの再構築を迫られ、短期的に非効率が生じる。長期的には、比較優位に欠ける保護主義市場向けの生産にシフトし、中国など報復関税を課す国への輸出が減少する。
- また、労働力人口の減少が経済活動を抑制する。国境での拘束件数の急減は、移民流入の実質的な停止を示唆しており、高水準の強制送還も生産性に悪影響を及ぼす。特に建設や農業など、移民に大きく依存する産業では顕著だ。
- GDP成長率が低下しても、労働市場に十分な緩みが生じない可能性があるため、追加の金融緩和が実施されにくくなる。今四半期には実質GDP成長が急低下すると予想されているが、失業率は4.2%と昨年夏とほぼ同水準にとどまっている。
- (3)インフレ期待のアンカリング維持
- インフレ率がFRBの目標である2%を5年連続で上回る見通しの中、インフレ期待の制御が効かなくなる事態は何としても避けなければならない。インフレ期待が解き放たれれば、インフレ抑制にかかるコストは極めて高くなる。ミシガン大学の調査によれば、長期的なインフレ期待は急上昇しているが、ニューヨーク連銀の調査やインフレ連動債(TIPS)に基づく期待インフレ率は安定しており、全体としてはまだコントロール可能な状況にある。しかし、FRBの行動はインフレに直接影響を及ぼすため、対応には慎重さが求められる。
- (4) FRBの独立性に対する政治的圧力
- トランプ大統領によるFRB批判も、慎重姿勢の一因となる。もしFRBが利下げに動き、それが政権の圧力に屈したと市場に解釈されれば、連邦準備制度の信頼性が損なわれ、インフレ期待が上昇する恐れがある。
- 金融当局が政治的圧力を受けている状態は、市場に不安をもたらす。政策変更が経済見通しに基づく正当な判断か、政権からの圧力によるものか、投資家は疑念を抱くことになる。
- 年内のFRB行動見通し
- FRBの動きは市場の予想よりも鈍くなる可能性が高い。通商政策を含めた不確実性が高いため、物価安定と雇用支援のどちらを優先すべきかの判断が難しく、しばらくは様子見が続くだろう。
- ただし、雇用情勢が急激に悪化した場合、FRBは25bpの利下げでは不十分と判断し、より大胆な措置を取る可能性がある。注目すべき指標は雇用者数ではなく「失業率」であり、これが4.5%を上回れば、失業率が過去1年における最低値から0.5ポイント以上上昇した場合、景気後退入りを示唆するという「サーム・ルール」が発動され、景気後退の警告となる。
- サーム・ルールは昨年は誤作動だったとされたが、当時は労働力人口が急増していたことが失業率上昇の原因だった。今年は労働力人口の伸びがほとんどなく、失業率の上昇は雇用減と解雇増によると考えられるため、より信頼性の高いシグナルになる。
- 結論として、今年の金融政策は「当面何もしない」か「年後半に大幅な緩和」のいずれかであり、6月からの段階的利下げという見方は楽観的に過ぎる。
●先進国経済指標
- 仏総合PMI、4月速報47.3に低下 サービス業が悪化 | ロイター
- ユーロ圏総合PMI、4月速報50.1に低下 サービス業が50割れ | ロイター
- 独総合PMI、4月は再び50割れ 関税の影響はこれから | ロイター
●金融市場、先進国トピックス
- かんぽ生命、外債からシフト含め円債最大1兆円購入-償還多く残高減 - Bloomberg
- 円債は償還多く残高減も「買い目線」、長期・超長期債に投資=かんぽ・25年度運用計画 | ロイター
- 日本郵政グループのかんぽ生命保険(7181.T), opens new tabは23日、2025年度の一般勘定資産の運用計画を公表した。円債は長期・超長期の国債などに幅広く投資するが、保有する債券の償還が多いため残高は減少するとの見通しを示した。タイミングを見て、為替ヘッジ付きの外債から円債への資金シフトにも取り組む方針。
- 野村裕之執行役員・運用企画部長が資産運用方針説明会で明らかにした。
- 総資産の7割を占める円債の投資スタンスは「買い目線」で、20年物を中心とした長期・超長期国債に幅広く、「グロスで5000億円程度」の買いを想定している。ただ保有債券の償還が1兆3000億円程度あって投資額を上回るため、残高は減少する見込み。
- また米金利が低下する中、タイミングを見てヘッジ外債からバリューのある円金利資産への資金シフトにも取り組む。「状況次第だが、資金シフトによる円債購入が積極的にできれば、グロスの買いはトータルで1兆円近くになる可能性もある」(野村氏)という。
- 日銀の金融政策については、年度内に1回か2回の追加利上げがあると想定。野村氏は「政策金利は1%くらいまでを視野に入れて(利上げを)続けるのではないか。市場が落ち着いて景気の持ち直しがあれば、年度内に何とかできるのではないか」との見方を示した。
- かんぽ生命では「国内超長期金利は景気対策への思惑や海外の超長期金利上昇につれて一旦高止まりするものの、ピークを迎える可能性がある」とみて、年度末の20年金利を足元(23日時点で2.2%)よりやや高い2.4─2.5%と予想。
- 野村氏は「今の金利のレベルは魅力的。保険の販売動向にもよるが、買い入れを予定している分は比較的淡々と購入していいレベルだと思う。円債にバリューがある状況で、現在は投資を淡々と進めている」と述べた。
- 外貨建て債券は、為替ヘッジ付きについてはヘッジコスト控除後利回りの低下を背景に売却して残高は減少から横ばいの方向で、為替リスクをとるオープン外債は「円高見通しの中、相場変動時に慎重目線」で取り組み、残高は微増を見込む。
- リスク性資産の株式は「慎重なリスクテイク」を基本姿勢とし、国内株式・外国株式いずれも残高は横ばいの計画。
- オルタナティブ資産は、引き続き安定的に積み上げる。プライベートエクイティについては先行して残高が積み上がったため、前年度と同様、インフラエクイティや国内不動産に注力する方針。
- かんぽ生命の一般勘定の総資産残高は、昨年12月末時点で60兆4718億円。うち外貨建て資産は4兆2130億円(7.0%)。
- 2025年度の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。
- 日本国債10年物利回り 1.00―2.00%(年度末1.70%)
- 米国債10年物利回り 3.50―4.70%(同4.00%)
- 日経平均株価 3万―4万1000円(同3万8000円)
- NYダウ 3万3000─4万6000ドル(同4万2000ドル)
- ドル/円 130―150円 (同138円)
- ユーロ/円 145―165円 (同157円)
- 外債から円債にシフト継続、超長期債中心に残高増加=太陽生命・25年度運用計画 | ロイター
- T&Dホールディングス(8795.T), opens new tab傘下の太陽生命保険は、2025年度一般勘定資産運用計画で、外国債券から金利上昇に伴い投資妙味がでてきた円債へ引き続きシフトしていく方針を示した。超長期国債や事業債を中心に円債を積み増す一方、外国債券と内外株式は残高を減少していく。
- 取締役常務執行役員の清友美貴氏が17日、ロイターなどに対して述べた。
- <利回り上昇で円債の魅力増す>
- 国内債券は残高の増加を予定している。24年度は、想定通り円金利が上昇したことを背景に外債から円債へのシフトを進め、円建て資産の残高は増加した。
- 「ヘッジコストは以前よりも下がってきたものの、利回り対比ではヘッジ付き外債よりも円債の方が魅力的に映る」(清友氏)。国債投資は、20年債など超長期債が中心だ。足元の新発20年債利回りは2%を超えて推移し、同社の負債コストを上回る水準となったことから、より買いやすくなった。10年ゾーンを中心とした事業債の残高の積み増しに伴い、期間のマッチングなど状況に応じて20年債以外の年限の選択肢もある。
- また日銀の利上げに伴う金利上昇で減損リスクへの懸念から、低金利時代に購入した国債の入れ替えを一定程度進め、ポートフォリオを改善していく。
- 今年度の日本国債10年債利回りのレンジは0.80―1.80%と想定。日銀の金融政策については、今秋にあと1回の追加利上げを想定しており、「年初から見られた金利上昇の勢いは落ち着いてくる」(清友氏)として、26年3月末時点は1.40%を予想している。
- 足元で金利上昇が目立った超長期債についても落ち着いてくるとし、年度末時点で20年債は2%、30年債は2.3%を想定。日本の財政拡張への懸念が再浮上した場合や日銀の国債買い入れの段階的な減少は金利上昇につながるものの、「景気減速などファンダメンタルズ面が金利上昇圧力を抑える」(清友氏)とみる。
- <外債・内外株式の残高削減を継続>
- 外国債券は、ヘッジコストの高止まりを背景に残高を削減する。償還に伴う再投資については円債に振り向けていく。24年度は残高を減少した。
- 仮にヘッジコストが下がったとしても為替動向次第となり、外債投資に慎重な姿勢を示す。今年度のドル/円の想定レンジは130─155円で、年度末は135円を予想。日米金利差縮小に加えて「トランプ米大統領が過度な円安を望まない姿勢を示しており、(ドルが)150円を超える可能性は下がった」(清友氏)とみる。
- 上乗せ金利(スプレッド)が付くことで、ヘッジコストを賄える米国や欧州の事業債には引き続き投資していく。
- 米10年債利回りのレンジは3.0%─5.0%で、年度末は4.0%を想定。米連邦準備理事会(FRB)の金融政策については年内3回程度の利下げ実施を見込んでいる。
- 外貨エクスポージャーは横ばいの見通しだが、市況動向に応じて機動的に対応していく。24年度は残高は若干増加した。
- 株式については、国内、海外ともに残高を中期的に圧縮させていく見通し。政策株からの振替銘柄を中心に削減する。24年度は内外株式の残高をいずれも減少させた。
- オルタナティブは増加する見通しで、超過収益の獲得を目的に残高を拡大していく。
- 25年度の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。
- 日本国債10年物利回り 0.80―1.80%(年度末1.40%)
- 米10年債利回り 3.00─5.00%(同4.00%)
- 日経平均 29000─41000円(同38000円)
- 米ダウ 33000─46000ドル(同44000ドル)
- ドル/円 130―155円(同135円)
- ユーロ/円 145―172円(同150円)
- ピムコCIO、米国債に投資妙味「5-10年債に魅力見え始めている」 - Bloomberg
- ECB賃金トラッカー、上昇ペースの大幅鈍化予測-利下げに追い風 - Bloomberg
- 世界の公的債務、30年にGDP比99.6% 関税でコロナ禍超え=IMF | ロイター
- 国際通貨基金(IMF)は23日公表した「財政モニター」で、米政府の関税措置が景気減速と貿易の停滞を招き、政府予算を圧迫する結果、世界の公的債務総額が2030年に域内総生産(GDP)比99.6%に達すると予測した。
- 新型コロナウイルス流行時の水準を上回る見通し。
- 25年の予測はGDP比で2.8%ポイント増の95.1%。
- 世界の公的債務総額は新型コロナが流行した20年に、支援策の導入に向けた多額の借り入れや生産縮小を背景にGDP比98.9%に達した。
- IMFは「米国による大規模な関税発表、他国の報復措置、極めて高い政策の不確実性が、経済見通しの悪化とリスクの高まりにつながっている」と指摘。防衛費・社会保障費の増額ニーズやインフレに伴う利払い費増加のリスクが財政を圧迫しているとの見方を示した。
- 25年の財政赤字総額はGDP比5.1%の見通し。24年は5.0%、22年は3.7%、20年は9.5%だった。
- また「関税引き上げや経済成長見通しの悪化により、歳入と経済生産が現時点の予測を大幅に下回る」非常に厳しいシナリオでは、27年の公的債務総額がGDP比117%を超え、第2次世界大戦後で最大となる可能性がある。
- 国別では、米国の財政赤字がやや改善する見通し。25年の予測はGDP比6.5%、26年は5.5%。24年は7.3%だった。関税収入の増加と経済成長の持続が背景。
- 中国の財政赤字は25年にGDP比8.6%に急増する見通し。24年は7.3%だった。26年の予測は8.5%。
- IMFは各国に対し、公的債務の削減を優先し、将来の経済ショックに備えて財政余力を確保するよう求めた。
- 【寄稿】米国はこうして製造業を失った - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は、目玉が飛び出るような高関税を課すことで、製造業を米国に戻したいと考えている。しかし、政権が見落としているのは米産業界の責任だ。米企業が方向転換できるかどうかは議論の余地がある。
- それをやろうとしたのがロナルド・レーガン大統領だ。レーガン政権は1980年代にさまざまな方法を用いて鉄鋼と自動車の輸入を制限し、手ごわい外国勢の猛攻撃にさらされていた国内メーカーに自らを改革するための時間を与えた。
- だが米国のメーカーは難局にうまく対処できず、惨敗した。筆者は米製造業衰退の最も重要な時期に、工業地帯を取材するウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記者としてその様子を目の当たりにした。
- 米メーカーの失敗は、現在、国家的懸念となっているものを予兆していた。すなわち、わが国の安全保障や経済に極めて重要な産業において、外国での生産に異常なまでに依存するようになったことだ。昨年の米貿易赤字1兆2000億ドル(約170兆円)のうち、鉄鋼、自動車、機械、電気機器、医薬品が占める割合は合計77.5%だった。自動車産業を例に取ろう。昨年に米国内で販売された新車のうち、国内で生産されたものは約半分だけで、それらの多くに輸入部品が使われていた。
- 1980年代、工業分野で米最大の企業であるゼネラル・モーターズ(GM)がくしゃみをすれば、米国全体が風邪を引くとよく言われたものだった。鉄鋼など多くの産業が、自動車産業の健全性に依存していた。米国の多くの労働者や消費者も同様だ。しかし、外国からの脅威が高まる中で、米メーカーは現実から目を背けているように思われた。自分たちの優位性が失われることは決してあり得ないと考えていたように見え、根本的な経営方法をほとんど変えなかった。
- 労働組合は助けにならなかった。全米鉄鋼労組(USW)と全米自動車労組(UAW)は米国の輸入制限を、単に自分たちの雇用と、当時日本の2倍だった賃金を守るための手段としか見ていなかった。両労組はまた、時代遅れの職務区分を見直して従業員1人の作業の中に複数の業務を組み入れるという企業の生産性向上のための取り組みにも抵抗した。経営者は、労組と企業の将来を輸入製品の影響から守るための有望な基本計画を示したが、労組を味方につけることはできなかった。企業は明確な計画を打ち出すことができなかったようだ。
- 自動車メーカーはむしろ、外国企業との競争に関して紛らわしいメッセージを発していた。各社は労働者に犠牲を求める一方で、敵と手を結んだ。GMは日本のいすゞ自動車、スズキと両社の車を米国に輸入する契約を結び、続いてトヨタ自動車と合弁会社を設立した。他の米自動車メーカーも、米国での生産に関する提携など、同様の契約を日本のライバル企業と結んだ。GMはその後臆面もなく、同社が日本車を輸入できるよう輸入数量割当枠の拡大を働きかけた。こうした米自動車メーカーは、日本から学んだ上で、新たなハイテク工場を自社で立ち上げたいと公言していた。
- 善意をもって解釈しても、これは間違った判断だった。米自動車メーカーはやがて、ヘンリー・フォード時代の生産工程を作り直すために、新たな技術とオートメーションに何十億ドルも投資することになる。GMは自社の冒険的事業を「サターン」と名付けた。フォード・モーターでは「アルファ」、クライスラーでは「リバティー」だった。各社は、自動車1台を生産するのに使われる部品と労働力を大幅に削減し、コスト面で優位に立つ日本勢との1台当たり2000ドルという差を縮めることを目指した。各社はそれを約4年で達成する計画だった。
- GMは1986年、デトロイトの東側に位置するミシガン州ハムトラムクに6億ドルかけて建設した工場を披露した。高い技術を見せつけるつもりだったが、ロボットは壊れやすく、ミスをしがちで、間違った継ぎ手を溶接したり、車体に塗料を吹き付ける時に塗り残しができたりした。ロボット同士がスプレー塗料を吹き付け合うこともあった。作業員はプログラム可能な指示と電子センサーを使って複雑なマシンに連携を取らせたり、次の工程に任務を引き継がせたりすることができなかった。筆者が工場を訪問した際、ロボットが選んだ部品をボルトで留めていた作業員は「バンパーの間違いが50回あった。オールズにキャデラックのもの、ビュイックにオールズのもの、キャデラックにビュイックのものを取り付けた」と話した。
- 米自動車メーカーにとって最後の一撃は、日本のメーカーが米国各地に工場を開設したことだった。デトロイトのすぐ南にあるマツダの工場は、米国の土地で米国人を雇用していながら、GMより25%少ないコストで車の生産を始めた。
- 米自動車産業の死は、他の国内製造業に波及した。デトロイトの自動車産業とへその緒でつながっている鉄鋼メーカーは、海外との競争にあまり考えが及ばないまま自動車メーカーの先導に従ってよろよろと進み、後戻りできない状態になった。時代遅れになった溶鉱炉の近代化や、スクラップから安く鉄鋼を生産する電気アーク炉といった新技術や生産手法の採用について、経営陣が話し合うことはほとんどなかった。1980年代初め、缶や家電、自動車部品などを製造する米国内の顧客は、より有利な価格とより良い品質を求めて外国のサプライヤーに目を向けるようになった。
- フォードは労組を理由に、ミシガン州ディアボーンにあるルージュ・スチールを売却した。それに続いて、鉄鋼生産事業は閉鎖されたり統合されたり、あるいは従業員が聞いたこともないような企業に吸収されて姿を消したりした。ベスレヘム・スチール、ジョーンズ・アンド・ロックリン、ナショナル・スチール、リパブリック・スチールといったメーカーは、広大な敷地に広がる巨大な溶鉱炉と圧延工場で鉄鉱石から鉄鋼を生産し、米国の工業力の強さの象徴だった。
- かつては世界最大で、このような偉大な米鉄鋼メーカーで唯一残るUSスチールは今、生き残りのために戦っている。同社は2023年、日本製鉄による買収に同意した。
- 一方、米自動車メーカー各社のロボット導入の試みは途中で行き詰まった。米国の産業用ロボット開発会社ユニメーションは生産をやめた。この分野に積極的に参入したウエスチングハウス、ゼネラル・エレクトリック(GE)なども撤退した。米国からライセンスを取得した日本企業は、韓国、中国の企業と共に、今やロボット製造の主役になっている。
- 「われわれの基本的アプローチは間違っていた」。ウエスチングハウスの先進技術部門責任者は1990年、筆者にこう語った。「それは、起業家精神にあふれた組織と比較的動きの遅い米大企業との合体という旧式の試みだった」
- 米自動車各社はこうした失敗から学ぶどころか、外国企業との競争が激化する中で同様の失敗を繰り返した。GM、フォード、クライスラーは1990年代初め、電気自動車(EV)開発に何十億ドルもの資金を投じた。GMは96年、同社初となる商業ベースのEVを発表した。しかし米自動車メーカーは、将来性がないとの理由から最終的にEV事業に見切りをつけた。ある業界幹部は「それはまるで、ヘンリー・フォードがガソリンの登場前にモデルTを製造してしまったようなものだった」と嘆いた。
- 当時GMの会長を務めていたロジャー・スミス氏は1986年、技術によって製造業を根本から一気に変えられると信じたのは失敗だったと認めた。何千もの小さなイノベーション(技術革新)は、自動化とは無関係であっても、試行錯誤を通じて有効活用できるようになる。これは産業界で「継続的改善(CI)」と呼ばれているものだ。コスト削減と品質向上を目指すこのような技術革新は、時間をかけて進化していく。このプロセスの原動力は技術ではなく、人だ。スミス氏は、将来的に「人間同士のしっかりした連携が、ハイテクシステム構築の基盤になる」と断言した。
- 米メーカー各社は国内製造再構築の道が困難であることを常に認識していた。それには、労働者側の譲歩や、新たなスキル獲得に向けた労働者トレーニングへの投資、現場レベルでの創造性と技術革新を育てる工場文化、そして競争に立ち向かうための長期的視点に立った投資などが必要になる。だが生産拠点を海外に移転することで、これら課題への取り組みを避けてきた。稼げると思えばどこにでも事業を移した。株主がそれを求めたのだ。米企業が貿易収支の不均衡に悩んで眠れぬ夜を過ごすことなどなかった。今さらそんな心配をするだろうか。
- ナイキのスニーカー製造、ロボットにはなぜ困難か - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は、アジアなどの低コスト国に高関税を課すと脅すことで、米企業に製造業と雇用の国内回帰を促すことができると見込んでいる。
- しかし、米国の労働コストは高いため、企業は労働者を機械に置き換える方法を見つける必要がある。一部の産業では、それが予想外に難しいことが明らかになっている。
- 例えば、米スポーツ用品大手ナイキは、数年前から生産の一部を中国やインドネシア、ベトナムから北米に移転しようとしてきたが、米国のブランドが柔軟かつ低コストの委託製造業者から脱却することの難しさが浮き彫りになっている。これらの製造業者は大量の労働力を使って米国の消費者向けに多様な製品を生産している。
- ナイキは2015年、それまで非常に労働集約的だった業界で生産を部分的に自動化する野心的な取り組みに数百万ドルを投じ始めた。当時は、中国での労働コスト上昇や3Dプリンティングなどの製造技術の進歩を受けて、より少ない人数で靴を生産する新たな方法を見いだそうという機運が高まっていた。
- ナイキは、米アップルがデスクトップパソコン「Mac Pro(マックプロ)」を製造する複雑な工場をテキサス州で立ち上げた際に協力した米製造業者フレックスに目を向けた。目標は、2023年までにメキシコ中部グアダラハラの新しいハイテク製造拠点で数千万足のナイキのスニーカーを作ることだった。
- 新工場には依然として数千人の労働者が必要となるものの、アジアで同じ数のスニーカーを製造するのに必要な人数よりはるかに少ない。このプロジェクトに関わった複数の関係者によると、成功すれば米国での生産のモデルケースとなる可能性があった。
- ナイキの競合他社も、巨大なアジアの工場を中心とした製造モデルを見直す機会を感じ取った。これらの工場では、安価で熟練した大量の労働者が手作業で生地を縫い、靴底を接着している。
- 「近代的というより、フォードの『モデルT』の生産ラインと中世の靴職人の作業台を組み合わせたようだ」と語るのは、2015年当時、米スポーツ用品大手アンダーアーマーのイノベーション担当エグゼクティブ・バイスプレジデントだったケビン・ヘイリー氏だ。同氏はメリーランド州ボルティモアで靴の製造を自動化すると宣言し、この計画を「プロジェクト・グローリー」と呼んでいた。
- 同じころ、ドイツの同業アディダスは米アトランタとドイツのアンスバッハに「スピードファクトリー」を立ち上げた。ハイテク機械を導入し短時間で靴を生産する体制を整え、「靴作りの新時代」の到来を告げた。
- ナイキの取り組みが最も大胆だった。同社は10年以内に大規模な自動化生産を実現することを目指し、これにより人件費を削減し、新しい靴のモデルを米国の消費者により迅速に届けることができると説明していた。
- フレックスでこのプロジェクトを監督したトム・フレッチャー氏は、テキサス州オースティンでアップル向けの非常に複雑なMac Pro工場の建設を手掛けたばかりで、自信にあふれていた。当時、アップルは一部の製造を米国内に戻すことを検討していた。フレックスは生産ラインの再編と自動化の導入を推進し、人間の介在を最小限に抑える方法を可能な限り模索した。その経験は役立った。
- ナイキとフレックスは、電子機器製造でよく見られるが靴作りではまれな機械を使用する、新たな生産ラインを設置した。例えば、回路基板に部品を取り付けることで知られる「ピック・アンド・プレース」などだ。これらの機械は、靴の上部を組み立て、生地を編み、ロゴを付け、靴底を接着することになっていた。
- しかし、すぐに問題に直面した。
- ロボットは、靴作りに不可欠な、柔らかくふわふわとした伸縮性のある部品の扱いに苦戦した。また靴の素材は温度によって伸縮した。靴作りでは二つとして全く同じ靴底は存在しない。
- 人間はこうした課題に対応できるが、機械にとっては困難であることが判明した。
- 「非常に精密な作業をしようとしているのに、少し寒くなったり暖かくなったりすると材料が変化してしまう」とフレッチャー氏は述べた。「それは予想していなかった」
- 結果として、工場生産の自動化は当初想定していたほど進まなかった。靴の生産増加に伴い、従業員数は当初の計画の約2倍となる5000人に膨れ上がり、ベトナムの同規模の労働力よりもコストがかかった。靴底を靴上部に接着する細かい作業など、自動化が困難な作業が次々と明らかになった。
- フレッチャー氏は「正しい方法で接着しないと、靴に目立つねじれが生じ、見た目のずれから品質検査で不合格となってしまう」と述べた。
- ナイキが生産する靴の種類の多さも、主要な問題の一つだった。何十年もの間、米国の消費財企業はデザイナーに最もクールな製品を考案する自由をほぼ無制限に与え、アジアの製造業者にそうした製品の供給を頼ってきた。また、自動車や「iPhone(アイフォーン)」とは異なり、靴のモデルは常に変化する。
- だが製造を自動化するということは、機械が何度も繰り返し生産できる単純な製品を設計することを意味する。電子機器の製造では硬くて標準化された材料を使用するため、機械が同じ工程を何百万回も繰り返すことができる。
- プロジェクトを監督した元ナイキ幹部のマイケル・ニュートン氏は「デザインの方法から、使用する素材やモデルの複雑さに至るまで、妥協が必要になる」とした上で、「それは消費者が望むものに反する。彼らは非常に多種多様な商品を望んでいる」と語った。
- 2017年までに、フレックスの投資家らは同社のコスト上昇に難色を示すようになった。中には電子機器を製造する企業がなぜ靴作りに関与しているのか疑問を感じる投資家もいた。
- フレックスとナイキは2019年初めまでにプロジェクトを終了させた。アンダーアーマーは米国で靴を製造する「プロジェクト・グローリー」について投資家の前で言及しなくなっていた。同年、ロボットを使用した複雑な靴の生産で課題に直面していたアディダスも、アトランタとドイツでの生産を中止すると発表し、「スピードファクトリー」の技術をアジアのサプライヤーに移管した。
- これら3社は、新型コロナウイルス流行時の工場閉鎖で生産拠点の集中によるリスクが明らかになった後も、当初のオフショア拠点であるベトナム、中国、インドネシアにとどまった。
- アディダス、アンダーアーマー、ナイキは過去の米国回帰の取り組みについてコメントを控えた。ナイキとアンダーアーマーの担当者は、関税への対応を検討中だと述べた。
- 現在、中国、ベトナム、インドネシアはトランプ氏の関税の標的となっている。同氏は今月、ベトナムに46%、インドネシアに32%の関税をそれぞれ課したが、その後(基本税率の)10%に引き下げ、(上乗せ税率は)90日間にわたり停止すると発表した。一方、中国からの輸入品に対する関税は145%に引き上げられた。
- ハワード・ラトニック米商務長官は、トランプ政権としては労働集約型産業を米国に戻したい考えだと述べている。
- ラトニック氏は最近行ったCBSのインタビューで、「何百万人もが小さなねじを締めてiPhoneを作る」ことになると語っていた。
- アップルは実質的に全てのiPhoneを中国やインドなどの低コスト国で製造している。
- 新たな関税の脅威により、ナイキなどの企業はいずれ製造自動化と靴生産の米国回帰を再び検討せざるを得なくなるのではないか、という疑問が一部で浮上している。ニュートン氏とフレッチャー氏は、こうした取り組みは依然として実現可能ではあるものの容易ではないと考えている。
- フレッチャー氏は「十分な資金と忍耐が必要だ。すぐには実現しないからだ」とし、これまでの経験は「確かに謙虚な気持ちにさせられるものだった」と語った。
- 米コンサル大手、政府に契約額の大幅削減提案 最大2.8兆円 - WSJ
- 米国の大手コンサルティング会社の一部は、政府との契約額をさらに数十億ドル引き下げることを提案している。トランプ政権から、契約額で一段の譲歩をしなければ、契約解除につながる可能性があると通告されたことを受けたもの。
- 事情に詳しい関係者1人によると、政府との取引額上位10社のうち7社が、既存の契約の解除や連邦機関での業務範囲縮小を提案することで、契約額を削減すると申し出た。各社の削減を合計すると最大200億ドル(2兆8300億円)に達する。一部の企業は今では、人工知能(AI)サービスの無償提供などを追加提案している。
- 一般調達局(GSA)の当局者らは数週間にわたり、アクセンチュアやブーズ・アレン・ハミルトン、デロイト、IBMなどに対し、政府との業務の正当性を示し、大幅なコスト削減を提案するよう迫っていた。各社は先月、既存プロジェクトの削減案を期限までに提出したが、政権当局者はその後、提案された削減の規模と範囲に不満を示した。
- GSAで契約業者の審査を監督する調達責任者ジョシュ・グルンバウム氏が企業幹部に今月送った通知文書で、コンサルティング会社の提案における「誤った論理、金銭的な曖昧さ、駆け引き」を指摘した。
- グルンバウム氏は通知文書で、企業がさらに大幅なコスト削減を提案しなければ、契約を解除して競合他社に再入札を求める可能性があるとした。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は先に、通知文書について報じていた。
- 企業が当初提案した削減額は小規模だったが、一部の企業は現在、もっと大幅な削減を提案している。
- グルンバウム氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)宛ての発表文で、「幾つかの企業は真剣に取り組んでおり、2回目の提案にわれわれは感銘を受けた」とし、「国家財政の立て直し」のために削減が必要だと述べた。同氏は米プライベートエクイティ(PE)投資会社KKRの元ディレクター。
- IMF sees U.S. fiscal deficit dipping in 2025, citing tariff revenue
- 国際通貨基金は、貿易戦争の激化により米国の成長とインフレの見通しが悪化する一方で、米国の関税が2025年に同国の財政赤字を若干削減するのに役立つと予測している。
- 水曜日に発表された191カ国による財政モニター報告書は、米国の連邦政府の財政赤字は今年、国内総生産(GDP)の6.5%に低下し、2024年の7.3%から低下すると予測している。
- 報告書によると、支出と収入の差が縮まるのは「関税収入の増加に左右される」という。
- この水準は、4月4日時点の関税発表を反映するIMFの「基準点」予測に基づいて算出された。これには、4月2日に発表された米国の相互関税が含まれるが、高税率の90日間の一時停止や、スマートフォン、半導体、その他のテクノロジー製品への適用除外など、その後の導入は含まれていない。
- IMFによれば、こうした背景から、中期的には歳入が0.7%増加するにつれて、財政赤字はGDPの5.6%に減少すると予測されている。
- 不確実な収益
- 確かに、報告書は「関税収入の増加規模は極めて不確実である」と指摘している。
- 赤字削減予測における留意点の一つは、関税が米国への輸入にどの程度下押し圧力をかけるかという点であり、これは消費者が価格上昇にどう反応するかに大きく左右される。報告書は、これは製品によって大きく異なると指摘している。
- さらに、「関税スケジュール自体が不確実であり、重要な役割を果たしている」と報告書は続けている。
- IMFは、その予測にはもう一つのリスクがあることを認めた。それは、関税によって経済活動がより広範囲に減速し、所得税など他の税収分野の減少につながり、関税による増収分を相殺してしまう可能性があるというリスクだ。
- 同基金は「これらの予測は極めて不確実であり、議会で議論されている予算調整交渉中の措置を考慮に入れていない」と述べた。
- 関税引き上げの発表、インフレ予想の引き上げ、ドル安により、指標となる10年国債の利回りはここ数週間急上昇し、直近の取引では4.40%近辺で推移した。
- IMFは、米国政府の債務総額が今後も増加し続ければ、長期金利と債務調達コストが上昇すると考えている。
- 「具体的には、2024年から2029年の間に米国の公的債務がGDP比10%ポイント増加すると、5年先物金利から10年先物金利への60ベーシスポイントの上昇につながる可能性がある」とIMFスタッフは記している。1ベーシスポイントは100分の1%、つまり0.01%に相当する。
- ●中東情勢
●エマージング
- 米・ウクライナ代表、ロンドンで和平協議は「生産的」 具体的な進展ないもよう | ロイター
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
- GE Vernova CEO describes huge electricity demand in the U.S.
- 水曜日のCNBCのジム・クレイマーとのインタビューで、GEバーノバ
- スコット・ストラジック最高経営責任者(CEO)は、米国の電力需要の伸びは第二次世界大戦後の産業ブーム以来最大だと語った。
- 「1945年、第二次世界大戦終結の時に立ち返って、これから私たちが取り組むべきインフラ整備を考えなければなりません」と彼は述べた。「経済成長のためだけでなく、国家安全保障のためにも、電力システムの構築は必要でした。この両方の理由から、今、私たちはそれをやり直す必要があり、まさにそれを実行しようとしているのです。」
- ストラジック氏は、過去20年から40年にわたり、電力網に関わる技術革新は「常に勝者と敗者を生み出してきた」と主張し、一部の企業が他社に取って代わろうとしてきたと述べた。しかし、今回の電力網の整備は、新たな人工知能技術と共に、米国が必要とする経済成長を可能にするだろうと述べた。
- ゼネラル・エレクトリック(GE)から分離独立した電力会社GEバーノバは水曜日、市場予想を上回る四半期決算を発表し、株価は終値時点で3%強上昇した。同社はまた、関税が事業に及ぼす潜在的な影響にもかかわらず、通期業績予想を維持した。
- ストラジック氏はGEバーノバのガス部門について説明し、同社は2026年と2027年のガスタービンの受注を完売したと自慢した。同氏によると、ハイパースケーラーがデータセンターを建設し続ける中でガスは重要な役割を果たすだろうと述べ、同社には大量のデータセンター関連の受注があることを確認した。
- 「米国では、冷温ガスへの切り替えによって電力網の脱炭素化を実現しました。そして最終的には、ガスこそが風力発電と太陽光発電の建設を促進する力となるのです」と彼は述べた。「ガスなしでは、世界が求める再生可能エネルギーの普及率を達成することはできません。」
●その他
- Using BNPL for travel: More are using it — especially Gen Z travelers
- クリスティン・ハーマンさんは、マイアミへの直前旅行の支払いに「今買って後で支払う」サービスを利用したのは命の恩人のような気分だったと語った。
- 彼女によると、承認は迅速で前払い費用もかからなかったが、予定されていた支払いを誤ってスキップしてしまったという。
- 「リマインダーを1回忘れただけで手数料がかかった」と彼女はCNBCトラベルに語った。
- しかし、ラネ・テオさんは、インドネシアのバタム島で家族と週末を過ごす費用を分割するために、「今すぐ購入、後で支払う」(BNPL)プランを利用したと述べた。
- 費用を3ヶ月に分割して支払うことについて、彼はどう感じたか?「簡単で便利でした」と彼は言った。
- ハーマン氏とテオ氏は、BNPL サービスを利用して航空券、ホテル、クルーズの料金を分割払いする旅行者の増加の一翼を担っており、場合によっては利息や延滞料も発生しない。
- BNPL企業のKlarnaは9月、同社が処理した旅行予約額が過去1年間で50%増加したと発表し、一方Affirmは2024年第4四半期の旅行および発券取扱量が前年比38%増加し、10億ドルの大台を超えたと報告した。
- 個人金融ウェブサイトNerdWalletの3月のレポートによると、2025年にはアメリカ人旅行者のほぼ5人に1人が夏休みの支払いにBNPLサービスを利用する予定だと答えている。
- 中国でもBNPLサービスが普及しつつある。オンライン旅行プラットフォーム「フリギー」は1月、BNPLを利用した旅行の購入量が2023年から2024年にかけて20%以上増加すると発表。アリババグループの子会社である同社は、2025年も特に若い旅行者の間でBNPLの利用が拡大すると予測している。
- フリギーのプレスリリースによると、「注目すべきは、このモデルを選んだ消費者の約4分の1が1995年から1999年生まれ、いわゆるZ世代である一方、2000年以降に生まれた消費者の割合が最も急速に増加し、20%近くに達している点だ」という。
- 金融サービス会社ブレッド・ファイナンシャルによると、Z世代やミレニアル世代もライブイベントへの旅行にBNPLプランを利用する傾向があるという。
- ビルボード誌の報道によると、今月開催されたコーチェラ音楽フェスティバルの一般入場券購入者の約60%が分割払いを選択したが、これには41ドルの手数料が加算される。
- 1999年に1日50ドルだったチケットは、2026年には3日間パスが539ドルからとなる。
- そうすべきでしょうか、それともそうすべきではないでしょうか?
- 世界的なフィンテック企業ファイサーブの組み込み金融部門責任者、スニル・サッチデフ氏は、BNPLは「責任を持って使用すれば」休暇の資金調達に役立つツールになり得ると述べた。
- 同氏は、このサービスはここ数年で成熟しており、当初の懸念にもかかわらず、BNPL融資による債務不履行は広範囲に及んでいないと述べた。
- キャリントン・ラボのCEO、ジェイミー・トウィス氏も、BNPLが旅行費用を分散させる効果的な方法であることに同意しています。BNPLを利用した旅行購入の不履行率は他の購入よりも低いとトウィス氏は述べました。これは、BNPLを資金へのアクセス手段としてではなく、新しい支払い方法として利用する人が増えているためです。
- 「言い換えれば、口座にすでに費用を賄うのに十分なお金があるにもかかわらず、旅行にBNPLを使用する人の割合が高くなっている」と彼は述べた。
- しかし、NerdWalletの発表によると、すべての負債と同様に、BNPLローンも危険な状況に陥る可能性があるという。同発表では、2022年のBNPL借り手の63%が一度に複数のローンを抱えているとする消費者金融保護局の1月の報告書が引用されている。
- TheFinancialNewsletter.comの創設者アンドリュー・ロケナウト氏は、「スタッキング」はBNPLローンの問題点の一つに過ぎないと述べています。他にも、企業のカスタマーサービスへの連絡が困難になったり、失業や車の故障といった予期せぬ出来事の後にローンを返済するのが困難になったりするといった問題が挙げられます。
- 「BNPL旅行ローンの借金に苦しむ100人以上の顧客と仕事をしてきましたが、状況は決して楽ではありません」と彼は言った。「こうしたローンには全く柔軟性がなく、支払いを滞納すると延滞料が課せられ、信用スコアも下がります。」
- しかし、すべてのBNPL会社が同じように運営しているわけではない。 アファームは延滞料を請求せず、潜在的な顧客を審査し、拒否していると主張している。
- アファームの投資家向けページには、いわゆる「ペイ・イン・フォー」ローンは信用調査機関に報告されないと記載されているが、同社は4月1日からすべてのペイ・オーバー・タイム商品をエクスペリアンに報告し始め、5月1日からトランスユニオンにも報告すると発表した。
- 旅行代理店のプレシャス・キャロル氏は、BNPLは旅行資金に余裕がある場合のみ利用するよう顧客にアドバイスしていると述べた。しかし、BNPLは「お得なプランが見つかった場合、全額の資金がなくても旅行を予約できる」ため、非常に便利だと彼女は述べた。
- ディズニーのバケーションプランナー、ジャッキー・スティール氏は、ディズニー旅行の支払いにBNPLを利用する旅行者が増えていると語った。
- 「読者やクライアントから、急な旅行をうまく計画したり、豪華なリゾートに泊まるなど、贅沢な予算を組むことができたのは、この方法のおかげです、とおっしゃることがあります」と彼は語った。「とはいえ、特に若い世代や予算が厳しい家族には、月々の内訳にとらわれずに、もっと広い視野で考えるようにと、私はいつもアドバイスしています。」
- 特に直前の旅行は、旅行が終わると支払い意欲が薄れてしまうため、問題になりやすいです。旅行者は、BNPLの計画を早めに立て、旅行前に全額支払うことで、このような事態を回避できます。
- テキサス州に拠点を置く法律事務所「ヴァルギース・サマーセット」のマネージング・パートナー、ベンソン・ヴァルギース氏は、BNPL購入のせいで驚くほど多くの顧客が法的トラブルや財政難に陥っていると語った。
- 「特に旅行業界ではそうです」と彼は付け加えた。「クレジットカードのトラブルよりも頻繁に発生するようになったため、当社では金融リテラシー研修にこのガイダンスを取り入れています。」
- ロケナウト氏は、旅費にBNPLを使うかどうか検討している人に対して「物議を醸す見解」を持っていると述べた。
- 「休暇代金を全額支払うことができないのであれば、休暇を取るべきではないでしょう。」
●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(23日)ドル上昇、利回りまちまち 株続伸 米中貿易戦争緩和に期待感 | ロイター
- ### 💵 為替市場の動向
- - **ドル高進行**
- ドルは主要通貨に対して上昇。主な理由は以下の2点:
- 1. **トランプ前大統領がFRBのパウエル議長を解任しないと表明**したことで、市場の不安が後退。
- 2. **米中貿易戦争の緊張緩和の兆し**が見え始めたため、投資家心理が改善。
- - **ドル指数**:0.297%上昇し99.86を記録。
- - **ドル/円**:1.27%高の143.435円。
- - **ユーロ/ドル**:0.86%安の1.132ドル。
- - **ビットコイン**:2%上昇し93,705ドル。
- ### 🏦 債券市場
- - **米国債利回りはまちまち**:
- - 10年債:4.385%(わずかに低下)
- - 30年債:4.83%(5bp低下)
- - 2年債:3.859%(6bp上昇)
- - **イールドカーブ**:2年と10年債の利回り差は53bpで平坦化。
- - **市場への安心材料**:
- - トランプ氏のFRB批判後退。
- - 米中関税緩和の可能性。
- ### 📈 株式市場
- - **米株価は上昇**:
- - トランプ氏がパウエル議長の解任を否定。
- - 中国製品への関税引き下げを米政権が検討中。
- - 市場にとって好材料が出揃い、安心感広がる。
- - **個別銘柄**:
- - **テスラ**:5.3%上昇(CEOマスク氏の経営専念表明が好感)
- - **ボーイング**:6.1%上昇(予想より損失が小さい決算)
- - **ゼネラル・ダイナミクス**:3.3%下落(ビジネスジェットの受注減)
- ### 💰 商品市場
- - **金先物**:3.66%安の3,294.10ドル(景気不安後退による手仕舞い売り)
- - **原油先物(WTI)**:
- - 6月物:2.20%安の62.27ドル
- - 7月物:61.31ドル(供給過剰懸念が背景)
- 欧州市場サマリー(23日) | ロイター
- #### ロンドン株式市場
- - **FTSE100指数**が8営業日連続で上昇。銀行株・鉱業株がけん引。
- - **背景要因**:
- - 米中貿易摩擦の緩和期待
- - トランプ大統領がFRBパウエル議長の解任を否定し、市場心理が改善
- - **個別株動向**:
- - スタンダード・チャータード銀行:+6.4%
- - クローダ・インターナショナル(化学):+8.2%
- - **FTSE250指数**:+1.27%
- - **業種別指数**:
- - 銀行株指数:+4.89%
- - 鉱業株指数:+3.37%
- - 化学株指数:+5.25%
- - **マクロ指標**:4月の英総合PMIが50を下回り、景気減速の兆し
- #### 欧州株式市場
- - **STOXX600指数**が3週間ぶりの高値
- - **主要要因**:
- - 米中関係の改善期待
- - 好調な企業決算
- - **個別銘柄**:
- - SAP(独ソフト大手):+10.6%、予想上回る決算
- - テメノス(スイス):-7.2%、売上高が予想未達
- - **業種別指数**:
- - テクノロジー:+3.96%
- - 資源:+3.35%
- - 銀行:+3.81%
- #### ユーロ圏債券市場
- - 米中関税引き下げ報道を受けて**国債利回りが上昇**
- - ドイツ10年債利回り:+6bpで2.503%
- - ECB利下げ観測が後退、短期市場では12月預金金利が1.63%と見込まれる
- - **専門家の見解**:トランプ氏が中国・FRBに対し一時的に対立姿勢を緩和し、リスク後退で市場が安心感
備忘録(2025/4/22)
●海外企業決算
- [NTRS] ノーザントラスト 1Q増収最終増益 売上高18%増19.4億ドル、純利益83%増3.92億ドル、EPS1.90ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [GPC] ジェニュインパーツ 1Q増収最終減益 売上高1%増58.6億ドル、純利益22%減1.94億ドル、配当1.03ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [LMT] ロッキードマーチン 1Q増収増益 売上高4%増179億ドル、営業益17%増23.7億ドル、EPS7.28ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [KMB] キンバリークラーク 1Q減収減益 売上高6%減48.4億ドル、営業益10%減7.69億ドル、配当1.26ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [MCO] ムーディーズ 1Q増収増益 売上高8%増19.2億ドル、営業益6%増8.46億ドル、配当0.94ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [RTX] RTX 1Q増収営業増益 売上高5%増203億ドル、営業益9%増20.3億ドル、EPS1.14ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [VZ] ベライゾンコミュニケーションズ 1Q増収増益 売上高2%増334億ドル、営業益6%増79.7億ドル、EPS1.15ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [NOC] ノースロップグラマン 1Q減収減益 売上高7%減94.6億ドル、営業益47%減5.73億ドル、EPS3.32ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [DGX] クエストダイアグノスティクス 1Q増収増益 売上高12%増26.5億ドル、営業益15%増3.46億ドル、EPS1.94ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [MSCI] MSCI 1Q増収増益 売上高10%増7.45億ドル、営業益11%増3.77億ドル、配当1.80ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [ELV] エレバンスヘルス 1Q増収営業増益 売上高15%増488億ドル、営業益5%増31.7億ドル、EPS9.61ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [GE] GEエアロスペース 1Q増収最終増益 売上高11%増99.3億ドル、純利益29%増19.7億ドル、配当0.36ドル実施 - 株探(かぶたん)|米国株
- [MMM] 3M 1Q減収増益 売上高1%減59.5億ドル、営業益8%増12.4億ドル、EPS2.04ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [DHR] ダナハー 1Q減収減益 売上高1%減57.4億ドル、営業益3%減12.7億ドル、EPS1.32ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CB] チャブ 1Q増収最終減益 売上高3%増126億ドル、純利益38%減13.3億ドル、EPS3.29ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [BKR] ベーカーヒューズ 1Q微増収最終減益 売上高微増64.2億ドル、純利益12%減4.02億ドル、配当0.23ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [EQT] EQT 1Q増収増益 売上高23%増17.3億ドル、営業益2.7倍4.96億ドル、EPS0.40ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TSLA] テスラ 1Q減収減益 売上高9%減193億ドル、営業益66%減3.99億ドル、EPS0.12ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [COF] キャピタルワンファイナンシャル 1Q増収最終増益 売上高6%増100億ドル、純利益10%増13.2億ドル、EPS3.45ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [ISRG] インテュイティブ 1Q増収増益 売上高19%増22.5億ドル、営業益23%増5.78億ドル、EPS1.92ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [NVR] NVR 1Q増収減益 売上高2%増23.7億ドル、営業益16%減3.76億ドル、EPS94.83ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- ノースロップが決算受け大幅安 B-21ステルス爆撃機で損失が発生=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
●海外企業
●日本企業
- 「新冷戦」の懸念高まる、米中関係の断絶で - WSJ
- 中国と米国の関係が過去数十年間にどれほど盛衰を繰り返そうとも、貿易と投資は両大国を結びつける接着剤の役割を果たしてきた。
- だが今や両国の経済関係はその軌道を外れつつあり、米中関係は貿易という歯止めを超えて「冷戦」になりうる状況に向かっている。両国がそれぞれ独自の勢力圏を形成しようとする中、対立が深まり、軍事的緊張に発展する恐れさえある。
- 現在のシナリオは、かつては想像もできなかったものだ。ドナルド・トランプ米大統領の1期目は、米中双方が深く絡み合った関係を完全な混乱状態に陥れるのを控えていた。両国の最初の貿易戦争は2年間続いたが、頻繁に交渉を行い、対立激化への懸念を共有していた。
- だが今回、トランプ氏の2期目就任から3カ月もたたないうちに、両国は事実上の相互禁輸措置を発動し、経済戦争は新たな領域に足を踏み入れている。これにより今後長きにわたって世界全体の安全保障と経済の安定が危機にひんすることになる。
- 「米国と中国は経済的デカップリング(切り離し)の状態にある。貿易摩擦の激化が他のエリアに広がるのを防ぐガードレールは存在しないようだ」。カーネギー国際平和財団の中国センターを率いる元米外交官のリック・ウォーターズ氏はこう述べた。「新冷戦時代に突入していないと主張するのは難しくなっている」
- 中国の習近平国家主席にとっては、第1次トランプ政権の時から自身や側近らが準備してきた総力戦の幕開けを迎えている。トランプ氏が発表した関税規模の大きさに当初は衝撃が走ったものの、中国は今や完全報復モードに入り、「最後まで戦う」と誓っている。
- さらに米国への反撃手段は、報復関税や米企業を標的にしたブラックリスト、重要鉱物の輸出制限といった経済的武器にとどまらない。
- 中国当局者と情報交換している関係者によると、中国政府が最近、報復関税を打ち止めにすると表明したことは、他の非経済的な方法に移行する可能性を示唆する。
- 両国は次第に大胆さを増すサイバー攻撃を互いに非難している。中国の選択肢の一つは、米国の港湾や水道事業、空港などの標的となるコンピューターネットワークに長年侵入を繰り返して収集したデータや通話記録、その他の情報を活用することだと関係者は話している。
- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今月、昨年12月にスイス・ジュネーブで開かれたバイデン前政権との非公開会合で、中国当局者は米国のインフラを狙った一連のサイバー攻撃について(関与を認め)、米国の台湾支持政策と関連付けたと報じた。中国は台湾統一の達成を目指している。
- またトランプ政権によるインド太平洋地域の安全保障に対するコミットメントが疑問視されている中、中国は特に同地域で米国のパートナー国に対する戦略的威圧を強める可能性がある。
- 安全保障上の脅威
- 中国が発する安全保障上の脅威に対する警戒感はさらに強まっている。最新の報復関税の応酬が始まる前から、米国の政治的・軍事的支配層の間ではそうした懸念が高まっていた。
- 4月10日の上院公聴会で、米インド太平洋軍司令官のサミュエル・パパロ海軍大将は、台湾周辺で中国の軍事活動が増えていることに注意を喚起し、米国とその同盟国の安全保障が脅かされていると述べた。
- 米国側の動きでは、トランプ氏が米国の支援に依存する国々に対し、経済面で譲歩しない限り、安全保障上の連携継続を取りやめることも辞さない態度をみせている。
- 貿易を超えた対立激化の危険が高まる背景には、米中高官の間で有効なコミュニケーションが機能していないことがある。当初、中国政府は対話を望んでいたが、正式な外交儀礼にこだわる姿勢が、習氏の最側近、中でも党中央弁公庁主任として習氏の補佐役を務める蔡奇氏に交渉相手を絞りたいトランプ氏のチームの思惑とのずれを生んだ。蔡奇氏は要職を幅広く務め、米国の主な懸念であるサイバーセキュリティーも担当している。
- トランプ氏の関税攻撃に直面し、中国は沈黙を守っている。貿易を巡る緊張が悪循環に陥る中、ごく最近ではトランプ氏自身が、習氏からの電話を待っているとほのめかしている。事情に詳しい関係者によると、トランプ政権の当局者は中国の外交官らに対し、王毅外相からマルコ・ルビオ国務長官に連絡するよう提案した。今のところ、中国はいずれの行為も拒んでいる。
- 一方、関係者によると、中国政府の政策顧問らは、習指導部の政治的コストを最小限に抑える方法を探る中で、リー・シェンロン元シンガポール首相やサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子など、トランプ氏との仲介役を務める可能性がある人物の名を挙げている。ただこうした議論はさほど進展が見られず、いずれの側も交渉を急いでいる様子はない。
- トランプ氏は17日、記者団に対し、米国は中国と「取引を行う」つもりだと繰り返した。「これまで非常に良い話し合いをしてきた」と述べたが、詳細は明かさず、「時間はたっぷりあると思う」と続けた。
- こつこつ味方を増やす
- コミュニケーションの膠着(こうちゃく)状態が続く中、両大国は自陣に仲間を取り込もうと躍起になっている。トランプ政権は目下、中国の孤立化を目指して数十カ国から協力を取りつける取引を目指しており、その一方で、習氏と側近らはここ数日、貿易相手国を米国から離反させることに取り組んでいる。
- トランプ政権は70カ国以上に圧力をかけ、米国が発動した関税の削減と引き換えに、中国が自国を経由して米国市場に商品を輸出するのを禁止し、中国の投資を制限し、安価な中国製品が自国市場に流入するのを防ぐ考えだ。
- 端的に言うと、トランプ氏がスペイン語番組「フォックス・ノティシアス」のインタビューで先週語ったように、米国と中国のどちらかを各国に選ばせたいのかもしれない。
- だが双方にとって、有志連合を構築することは容易ではないだろう。
- 製造業を過剰に後押しする中国の姿勢は、大小さまざまな国の反感を買っている。だがその一部は完全に米国に軸足を移すのは困難だと感じている。特に貿易相手国としても対内投資の供給源としても中国の存在が大きいアジア諸国はそうだ。
- 習氏の最近の東南アジア歴訪は、米中対立の主戦場として同地域が注目されていることを浮き彫りにした。
- 習氏は14日にベトナムの首都ハノイに到着したが、その1週間余り前、ベトナムの最高指導者、トー・ラム共産党書記長はトランプ氏と電話会談を行い、両国間の関税撤廃に向けた協議を開始することで合意した。トランプ氏はこの会談を「非常に生産的だった」と述べた。中国と同じく共産党体制下にあるベトナムは近年、米国との経済関係の改善を模索している。
- この電話会談は、習氏が国賓としてベトナムを訪問する準備を進めていたタイミングで行われたため、中国の不興を買ったという。事情に詳しい複数の関係者が明かした。
- 習氏の訪問の最後に、中国とベトナムは戦略的パートナーシップの深化を約束する共同声明を発表したが、詳細な内容は含まれなかった。ベトナム政府がどちらか一方選ぶのではなく、選択肢をオープンにしていることがうかがえる。
- 中国が仕掛ける「ほほ笑み外交」のもう一つの焦点は欧州だ。欧州はロシアのウクライナ侵攻へのトランプ氏の対応の仕方に警戒心を抱いている。
- 中国は16日、商務省の国際貿易交渉代表に、世界貿易機関(WTO)の中国大使を過去4年間務めた李成鋼氏を新たに任命した。この人事は、世界的な貿易規範を守ることに熱心な欧州諸国との連携を重視する習指導部の意向を示している。トランプ氏はそうした貿易規範が米国以外の国々を利してきたと主張する。
- 李氏は米国を厳しく批判してきた。WTOの中国大使として米国を「一方的ないじめっ子」と呼んだこともある。
- 一方、両国のコミュニケーション不全が続く中、米政府は中国企業が米国の技術にアクセスするのをさらに制限する可能性が高く、現在進行している経済的デカップリングを阻止するのはますます困難になりそうだ。
- 米国務省で中国政策担当顧問を務め、現在はジョージタウン大学の非常勤教授であるライアン・フェダシュク氏は、米商務省がすでにリストに挙げた中国企業の子会社をブラックリストに載せることで、輸出規制を大幅に広げる可能性があると述べた。
- 「子会社をブラックリストに載せることで、米国の輸出規制の対象となる企業の数が大幅に増加し、関税で一気に進んだデカップリングが加速するだろう」とフェダシュク氏は話す。
- 外交政策の専門家によると、経済戦争が加速し続ければ、双方が互いに報復するための手段を拡大する可能性がある。
- 「いま目にしているのは、史上最大の貿易戦争だ」。米シンクタンク、スティムソン・センターの中国プログラム担当ディレクターを務める孫韻(ユン・スン)氏はこう述べた。「貿易戦争が他の領域に拡大していくリスクはかなり高い」
- 【エッセー】MAGAお気に入りの共産主義者グラムシ - WSJ
- クリストファー・ルフォ氏は、恐らく米国で最も有力な保守派活動家だろう。彼は昨年、ハーバード大学にクローディン・ゲイ学長の交代を迫る活動を主導した。高等教育における批判的人種理論やDEI(多様性・公平性・包摂性)に反対する彼の運動は、ハーバード大などのエリート大学に対するドナルド・トランプ米大統領の攻撃的な政策を形作っている。トランプ政権は14日、22億6000万ドル(約3220億円)の資金提供を凍結し、ハーバード大を狙い撃ちした。
- この1年間、ルフォ氏は「『新右翼』宣言」と彼が表現する著書「How the Regime Rules」の執筆に取り組んできた。同書の核心にあるのは、意外なインスピレーションだ。それは、米国の保守派にとって長年ブギーマン(気になる恐ろしい人物)だったイタリアの共産主義思想家アントニオ・グラムシだ。保守系シンクタンク、マンハッタン研究所のシニアフェローであるルフォ氏は「グラムシはある意味で、政治がどう機能するかや、知識人、制度、法律、文化、民間伝承といったさまざまな構成要素全ての間の関係を示す図を提供している」と述べた。
- グラムシは1937年に死去したが、今日の文化戦争の創始者と見なすことができる。イタリアのファシスト独裁者ベニート・ムッソリーニへの抵抗に力を注いだ彼は、人生最後の10年のほとんどを獄中で過ごし、そこで経済ではなく文化を階級闘争の中心に据えるという、政治に関する極めて影響力のある新しい考え方を生み出した。
- グラムシは自ら執筆した「獄中ノート」で、なぜこれほど多くのイタリア労働者階級の人々がムッソリーニの極右政党「ファシスト党」を支持しているのかについて考えた。それはマルクス主義の経済理論による予測と正反対のものだった。彼はその答えを彼が呼ぶところの「文化ヘゲモニー」に見いだした。それは権力の一形態で、本来であれば支持しないような考えや政策を一般市民に受け入れさせようとするものだ。
- 極右の著者の書籍を出版するパッセージ・プレスの創業者で編集長のジョナサン・キーパーマン氏はグラムシについて、「文化的な慣行を通じて、知的および道徳的な正当性がどのように維持・遂行されたかについての考察を提供した。それは有益だった」と述べた。
- グラムシはとりわけ、文化を形成する上での大学の重要性を強調した。これによって彼は、「批判的人種理論やトランスジェンダーのイデオロギー、とらわれた高等教育機関、DEIと戦っている」米保守派のモデルになったとルフォ氏は考えている。
- 左派の文化ヘゲモニーだと右派が捉えるものとの戦いは、トランプ氏の教育政策において、ますます重要になった。第1次トランプ政権で、当時のベッツィ・デボス教育長官は、チャータースクール(親や教員、地域団体などが州や学区の認可を受けて設立し、公費で運営される初等中等学校)の支援や営利大学に対する調査縮小など、イデオロギー色がそれほど強くない問題に力を注いだ。
- デボス氏の役割を引き継ぐことになったリンダ・マクマホン現教育長官は、教育省の職員の半数を解雇し、同省の閉鎖を指示することで、同省を骨抜きにしつつある。各大学は、政府からの助成金の削減を恐れて、ウェブサイトからDEI関連の内容を削除した。パレスチナ支持の抗議活動の中心となっていたコロンビア大学は、政府からの4億ドルの支給を取り消され、中東研究学科を学術管理下に置くようにとの要請に応じた。他の大学60校ほどが現在、同様の脅威に直面している。
- 米政府の標的は大学だけにとどまらない。政府は議会に対し、公共放送協会(CPB)への資金提供の停止を求めた。CPBは、政府からあまりにもリベラル派寄りだと見なされているニュース放送局のPBSとNPRに資金を出している。グラムシは、こうした米政府の手法と似たような姿勢を取り、イタリアのジャーナリストのことを権力者の代弁者だと非難していた。当時彼が権力者と見なしていたのはムッソリーニとローマカトリック教会だった。
- グラムシが見ていた政治の世界と、現在のわれわれの政治世界の間には、明らかな類似性がある。彼が著述活動をしていた1920年代と30年代には、技術、政治、文化面の大きな変化が世界中の政府を不安定化させ、世界のパワーバランスを流動的にしていた。グラムシは当時の世の中について「古い世界が死に、新しい世界が誕生に向け苦闘している」と記述。この時期のことを、インテレグナム(最高権力者の空白期間)と呼んだ。
- 新たな世界の誕生に向け苦闘している現在の状況は、グラムシが抱いていた当時の世界のイメージと重なる。昨年、ケンブリッジ大学出版局から出版された「World of the Rightt:Radical Conservatism and Global Order(右派の世界:急進的保守主義とグローバル秩序)」の著者の学者らは同書の中で、「アントニオ・グラムシほど、右派による流用に適していない人物はめったにいない」と記している。しかし、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、フランスの極右政党前党首のマリーヌ・ルペン氏、ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領といった右派の人々は皆、グラムシから影響を受けたと述べている。
- 右派リバタリアンのアルゼンチン大統領ハビエル・ミレイ氏は2023年のインタビューで、テレビ司会者タッカー・カールソン氏に対し、左派の敵対勢力が「いとも簡単に国家の内部に入り込み、グラムシの手法を用いている。つまり、芸術家や文化、メディアを誘惑し、教育内容に干渉している」ため、自分は「日々文化戦争を仕掛けなくてはならない」と語った。
- 米国では、グラムシの影響力はよりゆっくりと拡大した。グラムシの名は、旧保守主義の思想家であるポール・ゴットフリード、トーマス・フレミング、サム・フランシス各氏の著作に登場する。1990年代にパット・ブキャナン氏が大統領選に出馬した背景には、こうした思想家の影響があった。トランプ政権より前の時代のグラムシの最大の支持者の1人は、「ブライトバート・ニュース」の創始者アンドリュー・ブライトバート氏だ。彼は 「政治は文化の下流にある」というグラムシの名言を引用した。
- また、JD・バンス副大統領に影響を与えたカーティス・ヤービン氏ら極右思想の作家が、文化戦争によっていかに政権を掌握するかについて述べている。ヤービン氏は2022年の著作で、「この戦争は、爆弾や銃で戦うものではなく、法律や裁判で戦うものですらない」と述べている。「この戦争は書物や映画や演劇や詩で戦うものだ。それでもやはり、残虐な戦いであることに変わりはない」
- ルフォ氏は今年3月、保守思想における著作と影響力を理由に、ブラッドリー賞(米国例外主義の理念を守ることを使命とするリンデ・アンド・ハリー・ブラッドリー財団から授与される賞)を受賞した。この戦略は既に一定の成功を収めており、同氏は継続するつもりだ。「私がこの5年間に行った仕事は、このアプローチが総じて有効であることを示すものであり、政治的右派やトランプ政権そのものにおける支配的なアプローチになっていると思う」とルフォ氏は述べた。
- 同氏はさらに、「右派にはグラムシの思想が必要だ。そして、私自身の野望は、新右派政治の設計者という同様の立場で貢献することだ」と語った。
- ●先進国中銀、金融当局
- 情報BOX:トランプ米大統領はパウエルFRB議長を解任できるか | ロイター
- トランプ米大統領は21日、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長に対する批判を強め、早期利下げを改めて要求した。これを受け、金融市場ではトランプ氏がパウエル氏の解任に動く可能性が懸念されている。
- <トランプ氏はパウエル氏を解任できるか>
- トランプ氏にその権限があるかどうかは不明だ。
- FRBを設立した1913年の連邦準備法では、大統領によって任命され、上院によって承認された任期14年の理事は「正当な理由」でのみ解任できると規定されている。これは長い間、政策上の意見の相違ではなく不正行為を意味すると考えられてきた。
- ただ、7人の理事のうちの1人であるFRB議長の4年の任期に関する記述からは、解任の制限に関する言及が省かれている。
- <未知の領域か>
- これまでにFRB議長の解任を試みた大統領はおらず、直接的な判例はない。しかし、トランプ氏による別の解任を巡る複数の裁判が現在進行中で、同氏が権限を持つかどうかの判断材料として注目されている。そのうちの1件は現在最高裁判所で係争中だ。パウエル議長解任の試みはほぼ確実に最高裁に持ち込まれることになるだろう。
- <パウエル氏解任は実際に何を意味するか>
- これは主にトランプ氏がパウエル氏をいかに解任するかに左右される。
- パウエル氏は、これまでの歴代議長と同様、FRB議長、理事会メンバー、そしてFRBの金利決定機関である連邦公開市場委員会(FOMC)の議長という3つの役割を担っている。
- <FRB議長職のみの解任は可能か>
- トランプ氏がパウエル氏をFRB議長としてのみ解任しようとした場合、パウエル氏は理事には任期満了となる2028年1月末までとどまる可能性がある。理事のポストは26年1月まで空席にならないため、その間、トランプ氏には他の現職理事から議長を指名する選択肢しかない。
- 残り6人のうちウォラー理事とボウマン理事の2人はトランプ氏が1期目に任命した。ボウマン理事は最近、金融監督担当のFRB副議長に指名された。両氏ともパウエル氏と同様にFRBの独立性について重要性を訴えており、トランプ氏が望む利下げを直ちに実施するかどうかは明らかではない。
- <FOMC議長からの解任は可能か>
- トランプ氏はFOMC議長の人選について直接的な権限を持っていない。FOMC議長は7人の理事と5人の地区連銀総裁の計12人で構成されるFOMCが毎年選出する。地区連銀総裁はニューヨーク連銀を除いて、4地区が持ち回りで参加する。
- FOMCは伝統的にFRB議長を議長に、ニューヨーク連銀総裁を副議長に選出する。しかし理論上はメンバーの誰でも選出することが可能で、パウエル氏が理事にとどまっていれば同氏を選ぶこともできる。
- <理事の解任は可能か>
- パウエル氏の理事解任は最も大きな影響を与えるだろう。
- もしこれが法廷闘争を耐え抜いた場合、トランプ氏は理事会と議長の空席を自らの指名で埋めることになる。また、トランプ氏が望むだけ他の理事を解任し、自身の意向に沿うと考えるFRBの指導者を幅広く任命する道も開かれることになる。
- <パウエル氏は異議を唱えることが可能か>
- パウエル氏は解任された場合、連邦裁判所で異議を申し立てる権利を有するが、個人的な資金で賄わなければならない。弁護士で、かつてプライベートエクイティ(PE)企業の幹部でもあった同氏は、そうした資金を調達できるだけの私財を保有している。
- パウエル氏は、自身の解任は法律で認められていないとの考えを繰り返し表明している。また最近では、トランプ氏による他の独立連邦機関の委員解任を巡り、現在裁判所で審理中の訴訟はFRBには適用されないという見解を示している。
- <実際に解任されるか>
- 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、トランプ氏がパウエル氏を解任し、06年から11年までFRB理事を務めたケビン・ウォーシュ氏を後任に起用することを検討していると報じた。
- 同紙によると、ウォーシュ氏はこれに反対し、26年5月までの任期を全うさせるべきだとトランプ氏に助言した。
- また、米国家経済会議(NEC)のハセット委員長も先週、パウエル氏解任について、政権内で検討されていると述べた。
- 【社説】パウエル氏「解任」巡る市場の急落 - WSJ
- 米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を解任したら市場がどんな反応を示すかをテストしたいとホワイトハウスが思っていたのなら、その望みは21日に実現した。ドナルド・トランプ米大統領が、再びパウエル議長を攻撃し始めたことを受けて、米国株とドルは急落し、米長期国債の利回りは上昇した。
- ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長は18日、パウエル氏の解任が法的に可能かどうかをホワイトハウスが検討中と発言。21日はこの発言を踏まえて市場が丸1日取引する最初の営業日だった。トランプ氏は同日、景気減速を回避するための「予防的」利下げの実施をパウエル氏に再び求めた。これをきっかけに株式・債券・ドルの相場が急落し、信頼低下を示すトリプル安が起きた。
- トランプ氏は、パウエル氏が公の場で関税がインフレ率の上昇と経済成長の鈍化につながる公算が大きいと述べたことに憤っている。大統領は21日、経済成長に関する指摘を認め、「ミスター・トゥー・レイト(遅過ぎる男)、大敗北者が金利を今引き下げなければ、景気は鈍化する可能性がある」と述べて、パウエル氏を非難した。
- 市場はトランプ氏が本当にパウエル氏を解任するのではないかと恐れているが、仮に解任してもトランプ氏には何の利益ももたらさない。連邦公開市場委員会(FOMC)を変えるには、パウエル議長以外のメンバーも排除する必要がある。FOMCは雇用の最大化と物価の安定というFRBの二つの使命を担い、金利を設定している。
- トランプ氏はFOMCのメンバーである地区連銀総裁を解任できない。また、FOMCの投票権のあるメンバー12人はいずれも、FRBの最近の政策に関する動きに同意しているように見える。パウエル氏を交代させれば、その後任は市場との信頼関係を構築する上でもっと厳しい状況に直面することになるだろう。
- 仮にトランプ氏が「影の」FRB議長を指名した場合も同様だ。その人物はパウエル氏の任期が終了する2026年5月まで、FRBのあらゆる動きについてコメントするだろう。それは市場の不透明感を強めるだけだ。投資家は誰のフォワードガイダンスに従うべきか。パウエル氏か、それとも「影の」FRB議長か。
- いずれにしても、パウエル氏率いるFRBの政策はどう見ても引き締め的ではない。同氏はFRBのバランスシート圧縮のペースを落とすことによって、量的引き締めを終了させるプロセスを進めている。これは金融緩和的な動きだ。パウエル氏が公に発しているメッセージは、関税はFRBが「二つの使命」を果たすことをより困難にするということだ。それは紛れもない事実である。
- 関税によって、対象物品の価格は少なくとも一時的に上昇するだろう。FRBが利下げで対応すれば、価格上昇は長引くかもしれない。関税は企業や消費者にとって不透明感も高め、景気と雇用を鈍化させるだろう。
- インフレ率は目標の2%を依然上回っているが、パウエル氏は、さらなる景気減速の兆候が見られれば利下げに踏み切る構えだ。FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数は今年2月に前年同月比で2.5%上昇し、食品とエネルギーを除くコア指数は同2.8%上昇した。これは、トランプ氏が21日にソーシャルメディアで述べたような「実質的にインフレはない」状況ではない。
- トランプ氏はどんな相手でも脅せば屈服すると考えている。しかし、市場の現実を扱うアダム・スミスの理論を脅しで動かすことはできない。市場は関税が税金であることを知っている。そして税金は経済成長を阻害する。トランプ氏の関税は過去数十年間で最大の経済失策だ。そのダメージは、2017年に導入された税制改革と規制緩和措置を延長しても埋め合わせできないかもしれない。
- トランプ氏が関税による世界貿易システムの再編に失敗した場合、米国債を保有する外国投資家に手数料を課すのではないかとの懸念も浮上している。この手数料は、米大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が提案したものだ。それは米国債保有で得られる利益を減らすため、米国の部分的なデフォルト(債務不履行)に相当する行為となる。いま米国債の利回りが上昇していると思うなら、ミラン氏の手数料が導入された場合にどうなるか、よく見ておくといい。
- これらすべての動きが経済を危険にさらし、金融市場での世界的な「米国売り」を促しつつある。ドルが売り圧力を浴びているのは、このためだ。賢明な大統領なら、市場のシグナルを注視して適切な対応を取るだろう。現在取るべき対応は、関税の集中砲火に早期に終止符を打つための交渉に入ることだ。幾つかの貿易交渉で勝利を宣言し、幕引きを図るべきだ。
- しかし市場はおびえている。トランプ氏が自分の衝動以外の声に耳を貸すかどうか、誰も知り得ないからだ。
- ユーロ圏インフレ率予想、今年と来年は若干上昇-ECB四半期調査 - Bloomberg
- 英中銀グリーン委員、米関税はディスインフレ的な影響もたらす可能性 - Bloomberg
- FRB議長解任、検討されていないこと強く望む=ECB総裁 | ロイター
- 中銀の独立性と信頼性維持は不可欠=IMFチーフエコノミスト | ロイター
- 国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は22日、インフレ抑制における信頼性を維持するために中央銀行の独立性は不可欠という認識を示した。
- トランプ米大統領によるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長への批判に関する質問に対し、グランシャ氏は、中銀には金利政策や予防的措置などさまざまな手段を持っているが、「信頼性」が極めて重要な役割を果たすと強調。「中銀は信頼性を維持する必要があり、その一部は中銀の独立性に基づいている。そうした観点からも、中銀の独立性を守ることは非常に重要だ」と述べた。
- とりわけ米国のように、トランプ大統領が打ち出す関税措置によってインフレが高進すると予想される国では、中銀はインフレ対応において極めて微妙な局面に直面していると指摘。「インフレ期待がしっかりと抑制され、中銀が秩序ある形でインフレを目標に回帰させるために必要な措置を講じると、誰もが確信し続けることが重要だ」と述べた。
- FRBの独立性、経済成果に「不可欠」=ミネアポリス連銀総裁 | ロイター
- ●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
- IMF、今年と来年の世界経済成長率予測を大幅に引き下げ - Bloomberg
- 国際通貨基金(IMF)は今年と来年の世界経済成長見通しを大幅に引き下げた。トランプ米大統領の関税措置が世界的な貿易戦争を引き起こすため、見通しはさらに悪化する恐れがあると警告した。
- IMFは22日、最新の世界経済見通し(WEO)を発表。今年の世界経済成長率を2.8%に引き下げた。1月の時点では3.3%成長を予測していた。予想通りとなれば、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となった2020年以来の鈍い伸びとなる。
- 来年の成長率見通しは0.3ポイント引き下げて3%とされた。
- 日本については2025年の成長率予想を0.6%とし、従来予想から0.5ポイント引き下げた。インフレ率を上回る賃金の伸びは家計の可処分所得を押し上げるものの、4月2日に発表された関税の影響に不確実性が加わることで、予想されている民間の消費拡大が相殺されるとしている。
- 米経済については貿易戦争に起因するサプライショックが物価を押し上げ、生産性を抑制するとIMFは分析。貿易相手国には関税率引き上げが需要ショックにつながり、生産と価格への打撃となるという。
- IMFは米関税の実効税率が100年来の高水準に跳ね上がったと指摘した。
- チーフエコノミストのピエール・オリビエ・グランシャ氏は「世界は新しい時代に入ろうとしている」と記者団への説明会で指摘。「過去80年に機能してきた世界の経済システムはリセットされつつある」と述べた。
- 今回の見通し引き下げが著しかったのは米国と中国だった。
- 米経済は今年が1.8%成長、2026年が1.7%成長の見通しで、それぞれ0.9ポイント、0.4ポイント引き下げられた。今年のインフレ率予測はおよそ1ポイント引き上げて、3%とした。
- 中国経済は今年と来年に4%成長の見通し。従来見通しからそれぞれ0.6ポイント、0.5ポイント下方修正された。
- IMFはただ、貿易の緊張が緩和され、一部諸国による非関税障壁や貿易をゆがめる措置に対する長年の懸念が対処されれば、世界経済の成長見通しは直ちに改善するとみている。
- それでも短期的には摩擦がさらに悪化するリスクがあり、それに伴って成長に影響が波及しかねないという。IMFは今年の世界貿易の成長率予測を1.5ポイント引き下げた。来年はわずかな回復にとどまる見通しだという。
- 「世界経済へのリスクは高まっており、その方向は明らかに下向きだ」とグランシャ氏は述べた。
- 「米国例外主義の終焉」予測したストラテジスト、米資産離れ続くと予想 - Bloomberg
- 「米国例外主義の終焉(しゅうえん)」をほぼ完璧なタイミングで言い当てたストラテジストによると、トランプ氏が通商政策を継続する限り、世界の投資家による米資産からの資金移動は今後数年続く見通しだ。
- ソシエテ・ジェネラルの資産配分責任者、アラン・ボコブザ氏は、2024年9月までは米資産に強気だったが、同月にバリュエーション(株価評価)に警戒シグナルが現れていると警告。25年2月に、米国株とドルへのエクスポージャー削減を顧客に勧めた。
- その後、S&P500種株価指数は15%下落し、ドル指数も約9%下げている。
- 「昨年9月時点で、米株のバリュエーションは懸念すべき水準にあり、大統領選が楽観的なシナリオを覆す可能性があると顧客に伝えていた」と、ボコブザ氏はパリでのインタビューで語った。「米新政権は、非常に高水準の不確実性をもたらした。米国からの大きな資金ローテーションは始まったばかりで、数年続く可能性がある」と続けた。
- 金融面での米国の支配は、ドルと米国債の人気後退とともに揺らいでいる。米国株は今年、世界の他の株式市場をアンダーパフォームしており、その背景には通商政策と関税が成長を妨げ、インフレを助長するとの懸念がある。
- ボコブザ氏はさらに 「長年、米国は成長の見られる唯一の場所だった。米株市場は完璧なシナリオを織り込んだバリュエーションになっていた。特にテクノロジー株への集中が顕著だった。しかし今や、そうした銘柄が関税の打撃を受けている」と指摘。
- 「ドルは過大評価されていた。この巻き戻しは、通商政策の不透明が続く限り、さらに進行する可能性がある」とも述べた。
- 「過去20-30年間、リスク回避局面ではドルが買われてきた。『逃避先』とされてきたからだ。しかし今回はその兆しが見られない」と語った。
- 「米資産すべてに適用されるリスクプレミアムが上昇しており、それこそが『例外主義の終焉』を示している」と説明した。
- ボコブザ氏はまた、金融政策からの支援も見込めないと指摘。米連邦準備制度理事会(FRB)は当面行動を起こさないと予想し「関税の影響が成長やインフレに表れる6月までは動かないだろう」と述べた。
- トランプ氏はパウエルFRB議長に利下げを迫り圧力をかけている。市場ではトランプ氏がパウエル氏を解任するのではないかとの懸念も高まっている。
- ボコブザ氏は「FRBの独立性への攻撃は市場をさらに不安定化させ、米資産のリスク評価を根本的に変える可能性がある。それが起きれば、ゲームチェンジャーになる。われわれは既にその瀬戸際にいる」と述べた。
- また「ポートフォリオが米資産に偏り過ぎたあまり、欧州、日本、中国にも優れた、しかも割安な企業があることを忘れていた」とも語った。
- 日米通商協議、1ドル=120円前後が目標で妥結か-シティ - Bloomberg
- 4月の米国債急落、日本や中国の売りではない-ステート・ストリート - Bloomberg
- 米資産運用会社のステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは4月上旬の米国債の急落(金利は急騰)について、市場の一部で観測が広がった日本や中国の投資家による売りではないとの見方を示した。
- 駱正彦シニア債券ストラテジストと北米ストラテジー・調査部門ヘッドのデーン・スミス氏は、アジア投資家による投げ売りが米国債相場の急落を招いた「可能性は低い」と指摘。日本の銀行の自己資本比率指標であるCET1(普通株式等Tier1)比率は比較的高水準にあり、そもそも米国債は自己資本規制上のリスクウエートはゼロになっているという。
- 中国勢についても、公表されているデータによると、保有するのは短期債中心であり、既に近年は保有を減らしてきていたと説明した。
- ステート・ストリートでは、今回の米国債急落を招いたのは短期投資家のストップロス(損失確定売り)に加え、商品投資顧問(CTA)や各資産のリスク割合を均等に保有する「リスクパリティー」系投資家の持ち高解消などが重なったために起きたと分析している。
- 今後の米国債の展望については、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを予測する半面、長期債利回りはタームプレミアム(期間に応じた上乗せ金利)の見直しで高水準にとどまると想定。今後もイールドカーブの緩やかなスティープニング傾向が続くとみている。
- 米教育省、学生ローン延滞者から回収再開 5月から | ロイター
- 米教育省は21日、5年以上中断していた学生ローン延滞者からの回収を5月5日から再開すると発表した。
- 教育省は声明で、回収再開で返済不履行の学生500万人余りが影響を受けるとし、さらに400万人の借り手の返済が遅れていると付け加えた。
- 学生ローンの返済は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に起因する経済不透明感が高まる中、2020年に救済策として一時返済が停止された。
- 債務不履行に陥ったすべての借り手が今後2週間以内に、教育省の連邦学生ローン事務局より電子メールによる連絡を受ける。夏の終わりには、債務不履行者の給与差し押さえを開始する通知の送付を始めるという。
- 学生ローンの減免措置は民主党のバイデン前政権の下でしばしば講じられ、トランプ大統領を含む共和党員から批判を受けていた。またバイデン大統領在任中に、この措置に反対して起こされた裁判で、減免措置を禁じる判決が出された。
- ドイツ政府、今年の経済成長予測をゼロに下方修正=関係筋 | ロイター
- 「資本戦争」勃発か ボラ上昇とドル安で懸念高まる - WSJ
- 金融市場は今月、世界の貿易をつくり替えようとするドナルド・トランプ米大統領の野心的で場当たり的な試みについて、不吉なメッセージを伝えている。願い事には気を付けろというメッセージだ。
- 米国債市場の乱高下と予想外のドル安は、通商紛争として始まったものがもっと危険な「資本戦争」に姿を変える可能性があることを示唆している。この衝突は、米国が長年維持してきた金融分野における優位性を損なうことにより、米国の借り入れコストを上昇させる恐れがある。この優位性が長期にわたり何兆ドルもの外国資金を米国に引き込んできた。
- グローバルデータTSロンバードの米国担当チームエコノミスト、スティーブン・ブリッツ氏は「資本フローの面を壊さずに貿易を壊せるという考えは幻想だ」と述べる。
- トランプ氏が4月2日に流動的で予測不能な通商政策を発表したことを受け、ボラティリティーは急激に高まった。ホワイトハウスは9日の関税発動の数時間後に、米国の最大級の貿易相手国の幾つかに対する関税引き上げを一時停止したが、その一方で対中関税を極めて高い水準に引き上げた。
- 米国債市場ではすさまじい価格急落が起き、入札がまずまず好調だったにもかかわらず、30年債利回りが週間で1987年以来の大幅な上昇を記録した。この急落はドル安が背景にある。通常、市場に緊張感(ストレス)が高まっているときにはドル高になる。債券安・ドル安という異常な組み合わせが起きたことを受け、一部のアナリストは米国からの資本逃避の気配について警鐘を鳴らした。
- こうした市場の混乱の一部は、ヘッジファンドや他の大口投資家が、利益の出なくなった特定の取引の解消を余儀なくされたことを反映したものだった。スコット・ベッセント米財務長官は、この急落が主に反映しているのはテクニカル要因であり、さまざまな資産の相関が予想外に変化したために「バリュー・アット・リスク(VaR、予想最大損失額)」といった投資家のリスク管理戦略によって突然、一時的な手じまいを強いられたことを反映しているとの見方を示している。
- ベッセント氏は今月、ブルームバーグテレビジョンで「これはトレーディング界で時々起きる『VaR』ショックと呼ばれるものの一つだ。多くの人が前のめりになり、レバレッジが大きくかかった状態になったのだと思う」と話した。
- また、一部のアナリストは、海外投資家が年初に米国の成長見通しに過度に熱狂的になったり、米国の「例外主義」を主張したりしていたことを踏まえ、急いで大きな結論を出すべきではないと警告していた。だが、そのような見方は消え去った。トランプ氏の通商政策が成長を冷え込ませることへの不透明感が広がる中、コストが押し上げられる恐れが出てきたからだ。
- 2018年から22年初めまで連邦準備制度理事会(FRB)副議長を務めたリチャード・クラリダ氏は、トランプ氏の関税発表後の数日間にわたる市場の不安定さは、株価が下落し続ける中で起こっていたら、もっと厄介だっただろうと述べた。
- ドルは1980年代以降で最も割高かもしれない状態で今年のスタートを切っており、米国債利回りは過去2年間にわたって取引レンジの中間にとどまっていたと、クラリダ氏は指摘した。同氏は現在、債券運用大手ピムコのシニアアドバイザーを務めている。
- ベッセント氏は1週間の市場の動きで判断を急ぐべきではないと警告し、強いドルを支持するという米政府の長期にわたる姿勢を再確認した。「われわれ(の通貨)は依然、世界の準備通貨だ。ドルは上昇することも下落することもある」
- だが、他のアナリストやエコノミスト、元政府当局者は、緊張した取引状況について、より根本的な懸念を反映している可能性もあると指摘する。
- 元FRBのシニアエコノミストで、現在はアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)に所属しているスティーブン・カミン氏は「投資家の行動が変わった。彼らは通常、危機の際にはドルを買っていたものだが、今はその代わりにドルを売っている。これは、投資家が米国債の安全性やドル資産の好ましさについて『懐疑的』になりつつあるかもしれないことを示唆している」と述べた。
- トランプ政権の当局者らは以前、消費者が関税引き上げのコストを負担することはないと主張していた。ドル相場が上昇するというのがその理由だった。しかしドルが下落すれば、米国の輸入業者と小売業者が輸入品の価格上昇分を消費者に転嫁せざるを得なくなる可能性が高まる。
- 「トランプ政権は、ドルの支配的地位を損なおうと躍起になっているように見える。意図的にそうしているのではないとは思うのだが」とカミン氏は語った。
- 世界の投資家たちは、トランプ氏の支離滅裂な貿易戦争以外に、米欧の財政赤字拡大の可能性や、米国の通貨政策の独立性が損なわれる可能性といった問題にも対処しようとしている。
- ヘッジファンド系の投資家らによると、ここ何週間かで人気が高まっている取引は、米短期国債と長期国債の金利差拡大に賭けるというものだ。財政赤字拡大に関する懸念やFRBへの利下げ圧力、米債務に対する海外投資家の不安感がその背景にある。
- 外国人投資家は、米国が貿易・通貨政策に取引のような対応を一段と強める可能性に加え、金利引き下げと財政赤字拡大を優先する傾向にも不安を抱いている。
- 独保険大手アリアンツのチーフエコノミスト兼最高投資責任者(CIO)であるルドビック・スブラン氏は「関税は氷山の一角だ。ドル相場が30%下落すれば、人々の対米投資の利益率はどうなるのか。誰もがその計算をしている」と話す。
- 米資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は今月のアナリストらとの電話会議で、米国は長年にわたり資本流入の「過大な配分」から恩恵を受けてきたとし、今後はより厳しい競争にさらされる恐れがあるとの見方を示した。外国資本が向かう先として、欧州の魅力が高まる可能性があると予想した。
- アリアンツ資産運用部門マルチアセットCIOのインゴ・マイネルト氏は、1カ月前から同社が米国の資産から欧州の資産へと投資対象をシフトさせていることを明らかにした。同氏は、対米投資リスクをさらに大幅に軽減したいという顧客からの電話に対応しているという。こうした希望の中には、米国株の比重が70%超になっているMSCIワールド指数のような指数から投資先を変更してほしいというものも含まれている。
- マイネルト氏によると、このプロセスには半年から1年かかるかもしれないという。顧客が自身の投資配分の見直しを完了する手続きがあるためだ。「主に米国外の市場では現在、これら米国資産の比重がかなり高い伝統的なベンチマークよりも良いものは何かについて、かなり議論がある」
- 米国債は本来、株式のリスクヘッジとして機能してきた。通常、株価が下落すると債券価格は上昇(利回りは低下)する。このため、米国債は投資家にとって、保有しない場合よりも保有する方がはるかに魅力的になった。だが、こうしたヘッジ機能が少しでも効かなくなれば、投資家が米国債を保有する理由が減ることになり、米国にとって懸念すべき事態になり得る。
- 米国が信頼できるパートナーと見なされない世界では、外国人投資家が徐々に保有資産をスイス・フランや金、円、ユーロに分散させていくのは理にかなっているとアナリストらは指摘する。
- バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)によれば、日本の個人投資家は4月4日までの1週間で175億ドル(約2兆4600億円)分の米長期債を売却した(日本の財務省データ)。これは海外勢による米債券売りとしては昨年11月の米大統領選直前以来の規模だという。
- 債券市場の乱高下や利回り上昇は必ずしも海外勢による米国債の売却を反映しているわけではなく、むしろ、貿易赤字拡大のペースに資本流入が追いついていないことを表している。バンカメによると、3月の米国債入札では、落札者に占める海外投資家の割合は低下した。
- 2007~21年にボストン地区連銀総裁を務めたエリック・ローゼングレン氏は「これが長引けば長引くほど、米ドルの準備通貨としての地位が低下する可能性がこれまでより高くなる。また、かなり大きな打撃をわれわれにもたらし始める可能性がある」と語った。
- 高級ブランド、ドル安と金価格高騰で逆風強まる - WSJ
- 関税の直撃だけでは、まるで災厄が足りないかのようだ。不安に駆られた投資家がドル売りや金(ゴールド)の買いだめに走っているため、米国人が高級ブランド店で買い物をすれば、以前よりも高くつく見通しが強まっている。
- ドルは4月2日以降、対ユーロで約5%下落した。投資家は景気見通しが悪化すると通常はドルを買うため、ドルの下落には意外感があった。ドナルド・トランプ米大統領が課した145%の対中関税が中国経済に与える影響への懸念から人民元も売られ、対ユーロで5%程度下落した。
- こうした動きは欧州の高級ブランド各社にとって問題となる。ドルと人民元が強く、ユーロが弱い時に事業は好調なためだ。
- 高級ブランドは商品をイタリアやフランスで生産しているため、コストはユーロ建てとなっている。ただ、販売先としては中国と米国の消費者が大きな割合を占めており、合わせて高級品業界の売上高の半分以上を生み出す。
- 一方、投資家と中央銀行は金の購入を活発化させており、高級ブランドのさらなる悩みの種となっている。金価格は先週、1オンス=3300ドル(約47万円)を突破した。高級時計・宝飾店メーカーは上昇する投入コストを顧客に転嫁せざるを得なくなる。
- 高級ブランド各社は利益率の悪化を防ぐため、米国と中国で値上げせざるを得なくなると思われる。トランプ氏は相互関税に関して90日間の発動停止を実施しており、欧州連合(EU)から米国への輸入品には現在、当初発表された20%ではなく10%の関税がかかっている。
- だが、税率が抑えられたことによる一時的な救済効果はドル安によって相殺されるとジェフリーズのアナリストは指摘する。
- シャネルやクリスチャン・ディオールなど、富裕層の中でも特に裕福な顧客を相手にする高級ブランドは、需要減退を招くことなく値上げを実施できるとみられる。エルメスは先週、5月1日に米国で価格を引き上げ、関税の影響を全て米国の消費者に転嫁する方針を明らかにした。グッチなど比較的下位のブランドは、値上げが顧客離れを招く可能性がある。
- 買い物客は休暇中に散財する気分にもなれないだろう。バーンスタインの高級品アナリスト、ルカ・ソルカ氏によると、米国の高級品購入層では購入の約20%が国外でのものとなっている。地域間の価格差と税金還付により、同じルイ・ヴィトンのハンドバッグでも、ニューヨークで買うよりパリで買う方が3分の1近く安くなることもある。
- ドルが下落すれば、米国人にとって国外での買い物は割高になる。そのため、ここ数年のように米国人観光客が欧州の高級店の売り上げを押し上げることはないだろう。
- 高級ブランドは新型コロナウイルス流行を受けて値上げを急いだあまり中間層の消費者の離反を招き、打撃を被った。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーの推計によると、2022年から24年にかけて販売された高級品の数は2割以上減少した。
- 金額に見合わない価値しか提供していないとみなされるようになった高級ブランド。金価格上昇とドル安で高級品が再び値上げを余儀なくされる中、こうした評判を払拭するのはさらに難しくなるだろう。
- トランプ政策の影響、経済指標には未反映 - WSJ
- ニュースやソーシャルメディアをチェックせず、経済指標だけを通して世界を観察していたとしたら、1月に米国で政権交代があったとは想像もつかなかっただろう。
- ドナルド・トランプ米大統領による移民の強制送還、関税、連邦政府の人員削減、資金提供の停止は絶え間なくニュースを生み出し、信頼感を損なったが、意外にも経済にはほとんど影響を与えていない。雇用、支出、インフレはジョー・バイデン前政権下とほぼ同じような状況に見える。
- 政策のニュースと経済データのこうした「ずれ」は大きな混乱を招く。ユナイテッド航空は、経済環境が「予測不可能」だとして、過去1週間に二つの業績見通しを発表した。景気後退を想定したものと、想定しないものだ。
- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が行った調査では、エコノミストは今年の雇用の伸びが大幅に鈍化し、インフレ率が急上昇すると予想している。しかし、現時点ではどちらの兆候もほとんど見られない。過去2カ月間の雇用者数の伸びは平均17万3000人で、その前の6カ月間とほぼ同水準だ。失業率は平均4.2%と、その前の6カ月間より0.1ポイント高い。総合インフレ率を示す消費者物価指数(CPI)と米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する基調的なインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数は、いずれも平均で0.1ポイント低下している。
- イーロン・マスク氏は以前、連邦支出を2兆ドル(約285兆円)削減できると述べていた。同氏が率いる政府効率化省(DOGE)は現在、より控えめな1550億ドルを削減したと主張している。しかし、第2次トランプ政権発足から80日間の連邦政府支出は、前年同期と比べて1540億ドル増加していたことが、WSJの分析で明らかになった。
- DOGEは連邦政府職員の最大10%(約24万人)の削減を目指していたが、2月と3月を通じて、郵便局を除く連邦政府の雇用は1万100人しか減っていない。元連邦職員による失業保険申請は2月下旬から3月上旬にかけて急増したものの、最近では1年前と比べて週平均で数百件多い水準にとどまっている。
- 一方、国境取り締まりの強化と不法移民の国外退去の推進にもかかわらず、外国生まれの労働者の数はここ数カ月で増加し続けている。ただし、この数字は労働省の月次サンプル調査に基づくもので、信頼性に欠ける可能性がある。
- トランプ氏の関税は、鉄鋼やアルミニウム、関連製品の卸売価格の上昇につながっているようだ。ただ消費者レベルではあまり変化が見られない。
- 国内総生産(GDP)は2024年に2.5%増加した後、25年第1四半期はほぼ横ばいか、あるいは縮小する可能性が高い。しかし、これは通常とは異なる輸入の動きと消費に対する天候の影響を反映しているようだ。
- 「ずれ」の背景
- こうした状況を全て踏まえると疑問が生じる。トランプ氏は本当に、われわれが、そして彼自身が考えているほど経済を変えているのだろうか。
- ニュースとデータが示す状況に違いが生じている明らかな理由の一つは時間差だ。カナダ、メキシコ、中国を対象としたトランプ氏による最初の関税は3月4日に発動し、3月12日には鉄鋼・アルミニウムへの関税が続いた。より大規模な10%の一律関税と145%の対中関税は4月初めに発動した。自動車への関税は4月初めに課され、部品への関税は来月発効する。これらの関税の影響は、5月に発表される4月のデータまで表れない。主要貿易相手国への高い相互関税は一時停止されている。
- また、輸入業者が関税導入前に在庫を積み増したため、新たに課された関税が最終消費者に転嫁されるまでには数カ月かかる可能性がある。外国生まれの労働力は、数カ月前に入国した移民によって引き続き増加することが見込まれ、退職を先送りした連邦職員は9月まで給与支給対象にとどまるかもしれない。
- もう一つの説明は、米国経済の規模が巨大だということだ。米国経済は数えきれないほど多くの影響を受けており、トランプ氏のように破壊的な大統領でさえ、その行動は必ずしも支配力を持たない。例えば、株式市場はトランプ氏の関税計画を嫌気して売られたが、年初から歴史的に割高な水準にあったため、いずれにせよ下落していた可能性がある。
- 昨年の株高の大部分は人工知能(AI)への期待を反映していた。16日の売りは、関税ではなく、バイデン前政権が講じた措置を踏まえてトランプ氏が中国向けのAI半導体輸出を新たに制限したことがきっかけだった。この売りは市場の期待が現実的なものに変わりつつあることを反映しているかもしれない。
- フィードバック・メカニズム
- 大統領の政策は、しばしば当初の刺激を相殺するフィードバック・メカニズムを引き起こす。そのフィードバックの一部は経済的なものだ。例えば、トランプ関税の脅威は世界経済の見通しを暗くし、世界の原油価格は急落した。石油輸出国機構(OPEC)が増産を決定したことも原油価格を押し下げている。トランプ氏は増産を求めてきた。
- 航空運賃は過去2カ月間で需要低下を受けて下落している。これはDOGEによる連邦政府職員への制限や、米国の出入国管理に対する外国人の不安を反映している可能性がある。ガソリンと航空運賃は、3月のCPI(季節調整済み)の伸びが前月比で予想外に下落したことに影響した。
- 一部のフィードバックは行動に関するものだ。トランプ氏は米国史上最大の強制送還を実施すると約束していたが、データの収集・分析・提供を行う超党派のトランザクショナル・レコード・アクセス・クリアリングハウス(TRAC)によると、3月初旬までの1日当たりの国外退去者数はバイデン氏が大統領だった24年度の水準を下回った。トランプ政権下で不法入国者数が大幅に減少し、また国内で弱い立場にある移民が当局との接触を一層避けようとしているため、国外退去の対象者が少なくなっている可能性がある。
- 関税による値上げを避けるため、一部の企業は特定製品の出荷を停止したり、事前に積み増した在庫を消化したりしている。
- 最後に、政治的なフィードバックがある。大統領が行動を起こすと、反対派はあらゆる方策を講じて抵抗する。ただ現在は一部の方策は機能していない。トランプ氏は共和党を完全に掌握しており、それゆえ議会も支配下に置いている一方で、民主党は混乱状態にある。トランプ氏による大統領権限の行使は、これまでの慣例を打ち破り、法的な制限も超えている可能性がある。
- しかし裁判所が介入し、一部の国外追放措置や連邦政府の人員削減を差し止めている。
- トランプ氏の政策のうち経済的に最も混乱を招く関税は、今のところ裁判所と議会からの反対に直面していない。だが投資家や企業を不安にさせており、彼らは自らの見解を表明している。ホワイトハウスは耳を傾けているようで、トランプ氏は多くの関税を一時停止したほか、スマートフォンなどの電子機器を関税対象から除外すると発表し、貿易相手国との交渉を開始している。
- このような方針転換は行動の変化をもたらす可能性が高い。企業は関税が結局それほど引き上げられないと考えれば、価格や調達先の変更をためらうかもしれない。一方、貿易相手国は交渉に期待が持てる間は報復措置は講じないだろう。
- トランプ氏はまだ経済に大きな影響を与えていない。だがこの状況が続くと考えるべきではない。トランプ氏は方針をよく転換するが、最終的な目標を変えることはない。
- 中古で「億ション」も当たり前に、23区の物件価格高騰-バブル警鐘も - Bloomberg
- 都心では今後、中古マンションでも1億円超えが当たり前になりそうだ。23区のマンション価格はこの1年で2000万円近く値上がりした。円安を背景に海外投資家からの人気が追い風となっているが、バブルの側面があると警鐘を鳴らす声もある。
- 不動産データ・コンサルティング会社の東京カンテイ(東京・品川)によると、東京23区の中古マンション価格(70平方メートル換算)は2月に9135万円となり、前年同月の7204万円から約3割上がった。特に昨年夏ごろからの伸び方が顕著だ。
- 同社の高橋雅之上席主任研究員はこのペースが続き、東京23区の中古マンション価格が「今年の夏ごろには1億円の大台に乗ってもおかしくない」と話す。以前からアジアの投資家の間で日本の不動産は人気が高かったが、昨夏の追加利上げの影響が限定的で「お買い得」の状況がしばらく続くと判断され、さらに関心が集まったという。国内投資家も海外マネーの流入につられた形だ。
- 特に活況なのが、転売を目的とした築浅物件だという。資材価格の高騰で供給が減る新築マンションに代わる受け皿となっている。人気エリアの新築は引き渡しまで数年かかることがあり、早期に転売したい投資家にとっては中古物件の方が流動性が高いメリットがある。
- ラストリゾート
- 豊洲や勝どきなど湾岸エリアを中心に不動産売買を仲介するFJリアルティの藤田祥吾社長も、一向に衰えない勢いを肌で感じている。中国の投資家や富裕層の意欲が特に高く、100平方メートルで10億円以内の良い物件があればすぐ買いたいといった依頼が舞い込む。最近も4億円近い物件をビデオ通話での簡単な内見で即決した顧客がいた。「都内の高級マンションが急速に投資商品化し始めている」と藤田氏は話す。
- 実需(居住用)での購入を検討する国内富裕層もいるが、手放した際の利益をにらんで築浅を求めることが多く、生涯住み続けるような従来型の実需層の割合は減少傾向にあるという。高騰の背景には規制の差も影響していると藤田氏は指摘する。
- 日本貿易振興機構(JETRO)によれば、シンガポールやオーストラリアでは外国人による不動産の所有に一定の制限が設けられている。藤田氏は国際的に規制が強まる傾向にある中でも日本は開かれているとし、「他国で規制により購入できない投資家がラストリゾート的に集まっている」と話す。
- バブルなのか
- 不動産市況は行き過ぎた熱狂の中にあるのか。有識者の見解は分かれる。
- 東京カンテイの高橋氏は一般的な所得帯の実需層から見れば到底手が届かないが、海外投資家から見ればいまだ割安な水準であり、「熱狂と言うよりも合理的に買われている」と述べた。藤田氏も「世界的に見たら日本の不動産はまだ安く、高騰も局所的なものだ。インフレの到来を先取りした感はあるが、人々が情報を得やすくなり、将来性のある物件やマンションに人気が集中しやすくなった影響だろう」と見る。
- 一方、不動産市場に詳しいオラガ総研の牧野知弘代表は、収益性への裏付けが怪しいままに投資するケースが多い点が1990年代のバブル崩壊前と似ているとして警鐘を鳴らす。
- マンション価格が高騰し、投資コストが上昇している一方、賃料が上がらなければ運用利回りは低くなってしまう。転売が繰り返され、価格が上がる度に新たな買い手のメリットは少なくなるため、すでに利益率はかなり低い水準だという。にもかかわらず、なぜ高騰が続くのか。
- 「次の買い手は自分よりもさらに低い運用利回りになるが、それでも買う人がいるに違いないと考える人が多い。もしくはインフレを受けて賃料が上がると信じている人。しかし、日本では借り主が法律で守られているので簡単に引き上げられない」。牧野氏は、投資家が利回り低下のリスクに挑む様を「不動産投資マーケットのチキンレース」と呼ぶ。
- 政策金利が引き上げられれば、不動産投資ローンの金利も上がる。日米金利差の縮小で円高に振れれば、海外投資家にとっての割安感も薄れる。
- トランプ政権の二転三転する関税政策がもたらした先行きの不透明さも、買い控えの引き金になりかねない。不動産市況アナリストの幸田昌則氏のもとには、足元で不動産購入のキャンセルが出ているとの声が不動産会社から寄せられているという。4月上旬の株価急落を受けて資産が目減りしたことが主な理由だ。
- 幸田氏によれば都心の優良物件の人気は今後も続くが、戸建てや土地も含めた国内不動産全体では調整局面に入りつつある。このため今後の投資はより「目利き力」が求められるという。
- 米国例外主義はピーク過ぎたの見方、「全く違う」-バンガードCEO - Bloomberg
- トランプ大統領の混乱した政策で「米国売り」に走る投資家もいるが、米国経済の基調的な強さを自分はなお信じていると、米資産運用会社バンガード・グループのサリム・ラムジ最高経営責任者(CEO)が述べた。
- ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、米国例外主義はピークを過ぎたのかと問われたラムジ氏は「全く違う」と回答した。
- 数十年続いた米国投資の優位性が終わりを迎えているとの見方で市場は一致しつつあるが、ラムジ氏の見解はこれに異を唱える。
- ソシエテ・ジェネラルの資産配分責任者、アラン・ボコブザ氏は22日、トランプ氏が多方面との貿易戦争を継続する限り、米資産からの資金移動は今後数年続く見通しだと述べた。
- S&P500種株価指数は今年に入り、トータルリターンベースで約10%下落し、トランプ氏が関税導入を発表したり停止してみたりで株式市場のほぼ全セクターを動揺させた今月初めには、弱気相場の領域に入る場面もあった。米国債とドルの相場も急激な変動に揺れ、安全資産としての伝統的な地位を脅かしている。
- 過去数週間に米国資産は幅広く売られているが、トランプ氏の通商政策が米経済の金融面の優位性に終わりを告げることにはならないと、ラムジ氏は主張した。
- 「当社の資金動向にも明確に表れている」とラムジ氏は述べ、「当社の顧客行動や自社の投資チームの信条にも、それは見て取れる」と続けた。バンガードは10兆ドル(約1412兆円)を超える資産を管理する。
- ブルームバーグがまとめたデータによると、バンガードの上場投資信託(ETF)は年初来で約1117億ドルの資金が流入。このうち990億ドルが米国株や米国債に重点投資するETFだった。一方で同社は、資産の分散も続けている。
- ラムジ氏は「顧客には常にバランスが必要だ。米国と米国以外、株式と債券の適切な配分を、当社は数十年にわたって訴えてきた」と語った。
- 欧州に資産再配分する「大規模な」動き、アムンディが顧客動向指摘 - Bloomberg
- 欧州最大の資産運用会社、フランスのアムンディは、関税戦争による市場混乱を受け、顧客が資金を米国から引き揚げ、欧州のファンドに移す大規模な資産再配分を進めていると指摘した。
- 同社の広報担当者はブルームバーグに対し、顧客が資産構成を国債の上場投資信託(ETF)と欧州株に傾ける「大規模な再配分」を実施していると述べた。こうした資金の流れは、関税発表を受けた「市場の広範なポジション調整」を反映していると説明した。
- モーニングスター・ダイレクトが株式ETFを基に集計した資金動向データでも、今月に入り米国ファンドからの資金流出が示されている。トランプ大統領の関税発表を市場が消化する中、アムンディやUBSグループ、ステート・ストリートが運用する米国ファンドからは、4月の最初の2週間だけで計39億ユーロ(約6300億円)が流出した。
- 一方、この期間にブラックロックの「iシェアーズ」やアムンディ、UBSが運用する欧州株ファンドには計24億ユーロが流入。主に国内投資家を引き付けているドイツとフランス籍のファンドには、ここ数週間に特に大きな資金流入が見られた。モーニングスターが示した。
- 同社の運用者調査部門責任者ケネス・ラモント氏は「欧州の二大経済大国であるドイツとフランスは、米関税の影響を特に受けやすい」とした上で、この点を踏まえると「資本が欧州に『愛国的』に再配分される動きが一部にあること」が資金フローのデータからうかがえると指摘した。
- 焦点:トランプ米政権、石炭増産うたう一方で労働者保護は骨抜きに | ロイター
- 22歳から米ウェストバージニア州にある炭鉱の地下深くで働き続けたジョシュ・コクランさんは、10万ドル台の年収を得て妻と2人で休日には狩りや釣りをする暮らしを送っていた。
- ところがそうした楽しい生活に終止符が打たれたのは2年前、コクランさんが43歳でじん肺(黒肺病)が進行していると診断された時だ。彼は肺の移植手術を待っているところで、酸素ボンベがないと呼吸ができず、妻の手を借りなければ身の回りの行動も不自由になっている。
- もっとも、コクランさんにとっての救いは、今なお生活費を稼げていることだ。鉱山安全衛生局(MSHA)と国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が運営する連邦政府のプログラム「パート90」のおかげで、じん肺と診断された時点で炭鉱内から同じ勤務先のトラック配車係に配置換えしてもらい、給与水準は維持された。
- パート90は、じん肺の診断を下された炭鉱労働者を即日、より安全な仕事に異動させることを義務化したものだ。コクランさんはロイターに「パート90の適用を受けられただけで、地下から脱出し、同じ賃金を支給され、解雇されずに済む」と語った。
- ただ、パート90やその他の炭鉱労働者をじん肺から守るための措置は、トランプ大統領と「政府効率化省」を率いる実業家イーロン・マスク氏が進める大規模な政府職員解雇と政府機関閉鎖のあおりを受け、機能しなくなりつつある。
- ロイターがこれらのプログラム関係者に取材したり、NIOSHの内部文書を確認したりした結果、少なくともここ数週間で3種類の連邦プログラムが停止したことが分かった。
- 例えば数十年にわたってNIOSHが運営してきた炭鉱労働者に対する肺の健康診断制度は停止され、これに関連する鉱山でのレントゲン検査プログラムも打ち切られた。またMSHAの施設の半数近くがリースを解約する状況で、新たに導入される炭鉱労働者の粉じん許容限度といった安全基準の監督主体も不明確になっている。
- NIOSHで40年勤務してきたアニタ・ウォルフ氏は「炭鉱労働者にとって壊滅的な状況だろう。誰も炭鉱の監視をしなくなる」と警告した。
- トランプ氏自身は、かねてから同氏を政治的に支持してきた国内の石炭産業振興を声高に唱えている。
- 今月ホワイトハウスで開催した石炭生産拡大を目指す大統領令署名式には炭鉱労働者を招き「われわれは炭鉱を稼働状態に戻す。彼らは偉大な人々で、偉大な家族を持ち、われわれが愛し、尊敬する地域からやってきた」と強調した。
- NIOSHを傘下に置く厚生省の報道官は、政府組織の簡素化により、同省は議会が付託した国民を守る取り組みを実行する上でより適切な態勢になるとコメントした。
- NIOSHの推計に基づくと、米国のアパラチア山脈中央部にある炭鉱地帯で現在働く労働者のうち、じん肺に苦しむ割合は20%と、過去25年で最も高い。長年にわたって採掘されてきた炭鉱で乏しくなった鉱脈に到達するため、岩盤を爆破しているためだ。労働省のデータによると、国内の石炭産業の雇用は約4万3000人に上る。
- <配置転換手続きも停滞>
- NIOSHの関係者3人によると、全米でおよそ1000人いるNIOSH職員のうち875人前後が契約を切られた。
- 今月4日付のNIOSHの内部メールには、このため炭鉱労働者のじん肺対策の柱となってきた「健康監視プログラム(CWHSP)」が停止されたと記されている。
- 複数の関係者は、CWHSPの下で炭鉱まで移動トレーラーを派遣し、労働者に対して行っていた検診も中止になったと明かした。車の燃料代がねん出できないことや、レントゲン写真を分析できる専門の疫学者がいなくなったのが原因だ。
- NIOSHのウォルフ氏は、多くの炭鉱労働者にとってはこの制度が唯一利用できる健康診断だと話す。
- さらに多くのNIOSH職員が解雇された影響で、じん肺を診断された労働者がパート90の適用を受けて配置換えの権利を得る手続きが滞っている。
- 炭鉱労働者はレントゲン写真をNIOSHに提出し、じん肺と認定されなければパート90の要件を満たすことができない。だが、ウェストバージニアでは、レントゲン写真を分析するNIOSHの疫学者全てが解雇されたという。そのような疫学者の1人であるスコット・ラニー氏が説明した。
- ラニー氏はロイターに対して「大統領令が出された結果、より多くの男性が炭鉱で働くようになるとすれば、どのような仕組みであってもそれに応じて彼らは保護されるべきだ」と語った。
- じん肺患者の代理人をしているウェストバージニアの弁護士は、じん肺のままで粉じんがひどい職場にとどまるリスクは極めて深刻な以上、配置転換は重大な意味を持つと訴えた。
- <安全犠牲に不満の声>
- MSHAは昨年、炭鉱労働者の結晶シリカ許容限度を半分に引き下げる新たな規則案をまとめたが、職員削減や施設閉鎖計画を受けて8月からの実施が危ぶまれている。
- バイデン前政権でMSHAを担当する労働次官補を務めたクリス・ウィリアムソン氏はロイターに対し、同氏が辞任する前の1月時点で、MSHAの鉱山検査官には20人の欠員があっって、既に90人の補充人員を内定していたが、トランプ氏が大統領に就任すると内定が全て取り消されたほか、120人前後が早期退職を勧告されたと述べた。
- じん肺の専門家は、こうした適切な人員や資源の欠如は、特に石炭採掘活動が拡大するようなら、じん肺がアパラチア山脈の炭鉱で一段とまん延しかねないと懸念している。
- 23年の検査でじん肺と診断された35歳の炭鉱労働者ケビン・ウィークルさんは、石炭増産を望みながら労働者の安全基準を後退させるトランプ政権の姿勢は合理性を欠いていると批判した。
- 「私は共和党員だが、石炭生産を増やし、安全を損なわないようなもっと賢い方法があると思う」と話した。
- IMF、金融安定リスク大幅拡大に警鐘 貿易巡る混乱で | ロイター
- 国際通貨基金(IMF)は22日、貿易政策や他の地政学的要因を巡る経済的不確実性の高まりが主な要因となり、世界の金融安定リスクが秋以降、大幅に高まっていると警鐘を鳴らした。
- 半期に一度の世界金融安定報告で、金融環境の引き締まりと不確実性の拡大が相まって、世界的に金融リスクが高まっていると指摘。
- 「こうした脆弱性はショックを増幅させ、金融環境の急激な引き締まりを引き起こし、経済の低迷を悪化させ、大規模な経済的コストをもたらす可能性がある」とした。
- 具体的には、今後の金融安定を圧迫する可能性のある3つの脆弱性を挙げた。1つ目は、一部の株式市場や社債市場では最近の価格下落後もバリュエーションが依然として高いままで、さらなる下落余地がある点だ。2つ目は、ヘッジファンドなどレバレッジの高い一部金融機関が不安定な市場で圧迫を受け、売りを悪化させる可能性がある点だ。3つ目としては、さらなる混乱が特に債務水準の高い国のソブリン債市場に重くのしかかる可能性があると指摘した。
- 関税を巡る混乱が銀行を圧迫する恐れがあるとも警告した。貿易ショックにより、損失に備えて引当金を増やす必要性に迫られ、資本市場が減速すれば非金利収入が減少する可能性があるほか、貿易金融も混乱する恐れがあるためだ。
- 「貿易金融は安定したキャッシュフロー、供給網、規制の枠組みに依存しているが、これら全てが突然の関税変更で混乱する可能性がある」とした。
- IMFはこうしたリスクへの対応として、国際的な資本規制「バーゼル3」の導入を含め、銀行の十分な資本と流動性を確保するよう世界各国の規制当局に求め、新たな資本規制の「完全かつ適時で一貫した導入」を呼びかけた。
- 銀行に対する「独立した集中的な」監督も求め、銀行とノンバンクの相互作用に重点を置く必要があると強調した。
- 「管轄区域間の相互関連性の高まりは、特定の管轄区域から生じるストレスが世界的な影響を及ぼす可能性があることを意味し、他の地域も備えが必要になる」とし、「これは金融リスクを迅速かつ効果的に軽減するために、多国間の監視と世界的な金融安全網の両方が果たす重要な役割を浮き彫りにしている」と指摘した。
- ●中東情勢
●エマージング
- ウクライナ大統領、トランプ政権の和平案退ける - WSJ
- ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は22日、停戦合意の一環として米政府がロシアによるクリミア半島併合を承認するという米国側の提案を退けた。ドナルド・トランプ大統領が目指すウクライナ戦争の早期終結への取り組みに疑問を投げかける動きだ。
- ゼレンスキー氏は記者会見で「ウクライナはクリミア占領を法的に認めることはない」と断じた。「(クリミア半島について)話し合うべきことは何もない。わが国の憲法に反する」と述べた。
- ゼレンスキー氏が米国側の提案を拒否したことは、ウクライナ戦争終結を目指すトランプ氏の戦略の大きな後退を意味し、ウクライナと米国の将来の関係に新たな不確実性をもたらす。
- 米当局者らは先週、クリミア併合に関する提案を含む戦争終結案をウクライナ当局者に提示。ロンドンでは23日、ウクライナ、米国、欧州の当局者による高官会議が開かれる予定で、ウクライナ側の回答に注目が集まっていた。
- ゼレンスキー氏は、ロシアはさらなる協議の前に停戦に合意すべきだとし、「子どもじみた姿勢ではなく、真剣な対応」を示すべきだと指摘。その上で、ロンドンでの23日の会合で欧米当局者と協議するウクライナ当局者は、部分的または完全な停戦について議論する権限を有すと述べた。部分的な一時停戦を巡っては、ウクライナが3月に同意の意向を示したが、ロシア政府は拒否していた。
- ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は19日、30時間にわたる「イースター(復活祭)停戦」を一方的に宣言していた。だがゼレンスキー氏は、ロシアは攻撃を中断しなかったと主張している。
- ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、スティーブ・ウィットコフ特使が今週中にロシアを訪れ、ウクライナ戦争終結に向けた協議を続ける予定だと述べた。
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
- データセンター冷却需要伸び予想、DeepSeek後も不変-三菱重は増産へ - Bloomberg
- 三菱重工業などの大手産業機器メーカーは、人工知能(AI)の利用拡大やデータセンターの増設が進む中でサーバールームの温度を冷却する設備や空調サービスの需要が高まると予測し、増産体制などを整備している。
- 冷却は、データセンターのエネルギー消費の約40%を占めるとされる。AIの技術進化によるデータセンター関連需要への影響が見通しにくい中、中国の新興AI企業DeepSeek(ディープシーク)が膨大な量のデータを高速で処理する画像処理半導体(GPU)の使用量が少ないAIモデルを開発した後も、各社は消費電力抑制に向けた効率化も含めた冷却需要への対応を急いでいる。
- 三菱重工の100%子会社で、ターボ冷凍機製造で国内シェア約7割を持つ三菱重工サーマルシステムズでは、データセンターや半導体工場からの需要が増えているため、ターボ冷凍機事業全体の売り上げを2026年度末までに23年度以前と比較して1.5倍に増やすことを計画。昨年9月に神戸製作所(神戸市)で新工場を稼働した。これまで同製作所の複数の工場で行っていた製造プロセスを集約・効率化し、増産体制を整えた。
- GPUは熱を放出し、高温状態が続くと部品の劣化や誤作動のリスクが高まる。現在主流の冷却方法は、オフィスビルやショッピングモール、工場などの冷房にも使用されるターボ冷凍機をデータセンターに設置し、生成した冷水を空調機に送り込んでサーバールームの空気を冷やすというものだ。
- 三菱重工サーマルシステムズの伊藤喜啓社長は、データセンター向けを中心に「北米の需要が増えている」とし、海外向けは国内と電源設備が異なり、そのための設備投資も必要になる可能性があると話す。
- 日本でも急成長
- フォーチュン・ビジネス・インサイトのリポートによると、データセンター向けを含むターボ冷凍機のグローバル市場は、24年の17億4000万ドル(約2500億円)から、32年までに21億7000万ドルに拡大する見通しだ。24年にはアジア太平洋地域が市場シェアの約45%を占めた。
- データセンター冷却需要は日本でも急成長が見込まれている。150カ国以上で空調やセキュリティー関連のソリューションを提供するジョンソンコントロールズインターナショナル(JCI)でも、日本国内のデータセンターからの受注件数が昨年、前年比で20-30%増加した。
- 昨年6月にグローバルでデータセンター事業に特化したソリューション事業部を設立。12月には日本の首都圏のデータセンター事業者向けに中国や欧州から輸入した同社の冷凍機や空調機の予備部品を保管するサービスセンターを茨城県に開所するなど対応を進めている。同社はグローバル規模のクラウド事業者へのサービス提供を強みとする。
- IT調査会社IDCジャパンによれば、日本のデータセンターサービス市場規模は、23年の約2兆7400億円から28年には5兆円を超えると予想されている。
- 技術進化と不確実性
- データセンターの増設に伴って消費電力も拡大が予想される。データセンターや半導体工場の新増設による影響として、全国の最大電力需要の24年度比の増加分は25年度に推計56万キロワットとなり、34年度には715万キロワットまで増えると電力広域的運営推進機関は予測しており、冷却向け電力消費の抑制も課題だ。
- JCIは、水を冷やす際にファンで空気を送り込む空冷式で、他のシステムと比較して年間電力使用量を約40%削減できるターボ冷凍機を23年に米国で発表。今年欧州や中東で提供を開始し、アジア市場への導入に向け準備を進めている。
- AIは技術進化が急速に進む分野であるため事業見通しには不確実性が伴う。ディープシークが1月に発表した新たなAIモデルは、これまでと比較してGPUの使用量が少ないため発熱量が減り、冷却を含むデータセンター関連サービスの需要や消費エネルギーの抑制につながるのではないかとの見方が広がった。
- JCIのグローバルデータセンターソリューション担当プレジデントのトッド・グラボウスキー氏は、ディープシークのようなAIモデルの開発はデータセンター業界への参入障壁を下げるものであり、冷却需要も増加すると予想。需要予測の想定内で、計画の変更などは予定していないと述べた。
- デロイトトーマツコンサルティングの執行役員、越智隆之氏は、データセンター関連の需要は基本的に伸びるとみられるが、技術進化によって需要の伸びがどれだけ抑制されるかは不確実性が高く、ディープシークショックのようなケースは今後も起こり得ると指摘。技術進化によりコスト面で選択肢が広がりユーザーやデータ量が増えれば、冷却を含む関連需要が拡大する可能性は十分にあるとの見方を示した。
●市況(ChatGPTによる要約版)
- 欧州市場サマリー(22日) | ロイター
- ### 【ロンドン株式市場】
- - FTSE100は7日続伸。生活必需品・銀行株が上昇。
- - 中型株FTSE250は小幅安。
- - IMFが英経済見通しを下方修正(1.6%→1.1%)。
- - 市場は英中銀の5月利下げを完全に織り込み。
- ### 【欧州株式市場】
- - 小幅反発。銀行株・資源株が支えた。
- - ロレアルが好決算で6.3%高。スイスの保険会社2社が合併報道で上昇。
- - ノボノルディスクは米競合の薬効報道で7.4%下落。
- ### 【ユーロ圏債券市場】
- - 利回り低下。米FRBの独立性懸念から欧州国債へ資金流入。
- - ドイツ10年債は2.45%、2年債は1.66%、フランスは3.22%、イタリアは3.62%。
- 全体として、米中関係の改善期待が市場を押し上げる一方、トランプ大統領のFRB批判が金利や安全資産市場に影響を及ぼしています。欧州では株式が堅調ながら、政治・経済リスクに対する慎重な姿勢も見られます。
備忘録(2025/4/21)
●海外企業決算
●海外企業
- 米小売大手、トランプ氏と「建設的」に会談-関税負担の軽減を要請 - Bloomberg
- トランプ米大統領は21日、小売大手の経営幹部らとホワイトハウスで会談した。関税措置が世界のサプライチェーンを不安定にし、消費者を動揺させている中、企業幹部らは負担軽減を求めている。
- 会談にはウォルマートとホーム・デポ、ロウズ、ターゲットなどの代表者が出席した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。トランプ政権は中国を除く貿易相手国を対象に上乗せ関税の適用を90日遅らせており、外国政府や企業は条件緩和の交渉を急いでいる。
- ターゲットの広報担当者は電子メールで、「トランプ大統領や小売業界の同業他社と貿易に関する今後の道筋について建設的な会談を行った。われわれは米消費者に価値を提供することに引き続き尽力していく」とコメントした。
- ウォルマートの広報担当者も会談が生産的だったと評価。ホーム・デポの広報担当者は、同社はホワイトハウスとの建設的な対話を継続していきたいとした。
- ロウズはコメントの要請に応じなかった。ホワイトハウスも会談に関するコメント要請に現時点で応じていない。
- トランプ政権の関税がもたらした混乱は、米経済の主要なけん引役である小売業界に難題を突きつけている。21日の金融市場では、トランプ氏がパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長を解任する可能性が懸念され、米資産が売りを浴びた。
- ホワイトハウスでの会談が報じられると、関連企業の株価は一時上昇したものの、ウォルマート、ホーム・デポ、ロウズは終値で下落。ターゲットは1%未満の上げにとどまった。
- 米国企業はこれまで、輸入関税が導入される今後数カ月で事業が伸び悩む可能性を警告している。関税自体は数年前からあるものの、その規模の大きさとめまぐるしく変わる政策で企業は異例の課題に対応せざるを得なくなっている。
- コーラvs.ペプシ、トランプ関税で一段と差開くか - WSJ
- 米国の「コーラ戦争」でペプシはすでに劣勢に立たされていた。ドナルド・トランプ米大統領の仕掛ける貿易戦争が、その形勢逆転に役立つわけでもなさそうだ。
- ここで問題になるのは、米飲料大手のペプシコとコカ・コーラがそれぞれ秘密のレシピである炭酸飲料の原液をどこで製造しているかだ。原液は特別な生産施設で作られ、ボトリング(瓶詰め)工場に出荷される。そこで水や炭酸、甘味料と混ぜ合わされ、炭酸飲料となる。
- ペプシコは50年余り前、アイルランドの低い法人税率を利用するため、同国で原液の製造を始めた。だがここにきてペプシコの節税策が裏目に出ている。米国で販売される「ペプシ」と「マウンテンデュー」の原液のほぼ全てが10%関税の対象となっている。
- コカ・コーラも数十年前からアイルランドで原液を製造し、世界中の市場に出荷してきた。だが同社の場合、米国向け炭酸飲料の原液は大半をジョージア州アトランタと米領プエルトリコで製造している。つまり、「コーラ」や「スプライト」などは関税の影響を比較的受けにくいということだ。
- 「アイルランドは長らく税制面で利点があった。関税が直撃するまでは」とHSBCのアナリスト、カルロス・ラボイ氏は話す。関税は誰も予見できなかったし、どのくらいの期間続くかも不明だが、今やペプシは明らかに不利な立場にある、と同氏は述べた。
- コカ・コーラとペプシコはいずれも、米国が3月に発動したアルミニウムに対する25%の輸入関税が痛手となりかねない。コカ・コーラは一部のアルミをカナダから輸入しており、関税発動の結果として飲料を値上げする可能性がある、と同社のジェームズ・クインシー最高経営責任者(CEO)は2月に述べた。ただ、プラスチック製ボトルの使用を増やしたり、米国産アルミを調達したりすることで影響を緩和できるとの考えも示した。
- 関税戦争はとりわけペプシコにとって悪いタイミングで起きた。ペプシの米国市場シェアはここ20年で急激に落ち込んでいる。昨年は最低記録を更新し、ペプシコーラは米国の炭酸飲料2位の座をドクターペッパーに奪われた。同社は食品やエナジードリンクに何年も注力してきたが、今や米国での炭酸飲料の売り上げ復活に取り組んでいる。新たな関税はそれを困難にする可能性がある。
- ペプシコは米テキサス州のほかウルグアイ、シンガポールでも原液を製造している。同社は関税の影響緩和のために取りうる手段についてコメントを控えた。関税がペプシやマウンテンデューなどの炭酸飲料の値上げにつながるかどうかも明言を避けた。
- 関税で形勢が一変したのは、炭酸飲料の世界だけではない。ジーンズの分野では、米リーバイ・ストラウス(リーバイス)が世界各国から原材料を調達しており、同社の製品は今のところ10%関税の対象となっている。一方、ラングラーの親会社は、ジーンズなどのパンツの4割を西半球で製造し、このうち7工場がメキシコにある。メキシコで製造するラングラーの製品は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠しており、そのため現在は今年発動されたメキシコからの輸入品に対する25%関税を免除されている。
- 激化する関税戦争は歯磨き粉メーカーも巻き込む恐れがある。米国で消費されるデンタルケアブランド「クレスト」の歯磨き粉は大半が国内で製造されているが、競合する「コルゲート」の歯磨き粉の場合、米国向け製品の一部をメキシコで生産している。
- 家族経営の会社が多いペプシコの独立系ボトリング業者は、ペプシの市場シェア低下で売り上げが減少していたが、貿易戦争がそれに追い打ちをかけている。
- ボトリング業者は小口注文の場合は55ガロン(約208リットル)のドラム缶で原液を受け取り、大口の注文ではタンクローリーで原液が届く。一部の独立系ボトリング業者は、原液に対する関税がコストを押し上げると予想。貿易戦争でペプシコが競合に太刀打ちできなくなる可能性を危惧する。
- ペプシコがアイルランドに最初の原液工場を開設したのは1974年だ。ペプシコは現在、アイルランド南部コーク市で、原液の世界本部と2つの原液工場、研究開発センターを運営している。また同社は最近アイルランドへの投資を強化し、2022年には同市の生産施設に1億6600万ユーロ(現在のレートで約260億円)を投入した。一方、同業のキューリグ・ドクターペッパーは2022年にアイルランドに原液工場を開設。米ミズーリ州セントルイスでも原液を製造している。同社は米国への輸入量について明言を控えた。
- 米企業利益の見通し引き下げ相次ぐ、異例の悲観レベル-ウィルソン氏 - Bloomberg
- モルガン・スタンレーのマイケル・ウィルソン氏によると、深刻な米景気悪化リスクを背景に、アナリストによる企業の利益見通し引き下げが相次いでいる。
- S&P500種株価指数構成企業の利益見通し修正の広がり(アナリストによる上方修正と下方修正のバランス)は、リセッション(景気後退)を伴わない局面としては異例の水準まで引き下げ方向に傾いていると同氏はリポートで指摘。
- 「企業は新型コロナ禍初期以来の大きな不確実性に直面しており、それが利益見通しの重しとなっている」と続けた。
- ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のデータによると、第1四半期(1-3月)におけるS&P500種企業の1株当たり利益(EPS)見通しは、年初時点の11.4%増から6.9%増へと大きく切り下がっている。
- ウィルソン氏は、雇用統計などのハードデータによって景気後退リスクが確認される、もしくは排除されるまで、S&P500種は5000-5500のレンジで推移する可能性が高いとの見方を示した。
- また企業利益見通しの下方修正は米国に追随する格好で世界にも広がっており、特に欧州と中国で調整が一段と進んでいると指摘。「米国と欧州の相対的な市場パフォーマンスは、相場が下落基調であっても、今後は再び米国優位に転じる可能性がある」と同氏は述べた。
- Tech earnings: Tesla and Alphabet facing tariff uncertainty
- (サマリー)
- テスラは火曜日にテクノロジー企業の決算シーズンを開始し、木曜日にはアルファベットがそれに続く。
- 大型企業はすべて、トランプ大統領の広範囲な関税措置に大きく影響を受けており、これは決算発表の主要議題となるだろう。
- トランプ大統領が新たな関税の大半を90日間停止し、一部部門を免除する可能性もあることから、企業は不確実性に陥っている。
- クロックス、関税の影響で一部商品の価格を倍にする必要=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- 米メガバンクの優位性、貿易戦争下でいつまで続く? - WSJ
- 米国は銀行業界のいわば中国のような存在だ。
- 米国は製造業では輸入が輸出を上回っているかもしれないが、金融サービスという重要分野では大幅な貿易黒字を計上している。米商務省経済分析局のデータによると、金融サービスにおける米貿易黒字は2024年に約1300億ドル(約18兆3000億円)に達した。
- この一因は世界的な資金フローの偏りにあり、米企業がオフショアファンドを手掛けていることが影響している。他にも取引仲介や引き受け業務、合併・買収(M&A)アドバイザリーなどのサービスを通じた黒字額が、24年には合計100億ドル近くに上った。
- これは取引や資金調達アドバイザリーの世界的順位にも如実に表れており、2008年の金融危機以降、米銀が上位を占めるようになった。調査会社ディールロジックによると、24年の投資銀行収入は米銀が世界5位までを独占し、上位10行のうち7行が米銀だった。
- このため世界的な貿易戦争が起きれば、米メガバンクが大きなダメージを受けかねない。欧州大手の多くがこの15年間で規模を縮小し、中国やアジアの主要行は域外事業を制限した。貿易戦争が長期化すれば、競争環境が変わり始める可能性がある。
- 顧客が貿易政策の行方を様子見していることで、米銀のディールメーキング活動はすでに減速が表面化している。成約目前の取引を外国勢に横取りされないとも限らない。
- 米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、1-3月期の決算説明会で「われわれは標的になるだろう。まさにそれが起きようとしている」と述べた。
- さらに「それは構わない。われわれは各国と深く関わっており、われわれを気に入ってくれている」とした上で、「だが一部の国や顧客は米銀に対して異なる感情を抱くようになると思う。それに向き合わざるを得ない」と述べた。
- こうした米銀大手はすでに国内市場で大きなシェアを握っており、世界に進出するのは箔(はく)をつけたいからではなく、成長の重要な原動力だからだ。
- JPモルガンによると、同行は160以上の国で120以上の通貨を扱いながら1日当たり合計10兆ドル余りの資金を動かしている。一方、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)は米国以外の法人向け融資が新規融資の過半数を占め、1-3月期時点で22年末比14%近く増えた。融資全体の伸びは6%にとどまった。
- バンカメのアラステア・ボースウィック最高財務責任者(CFO)は先週の決算説明会で、国外融資が過去15年間における成長の大きな部分を占めると述べた。「2007年当時と比べ、よりグローバルで国際的な企業になるにつれ、融資先を米国のみから国外へ多様化することが重要だった」と語った。
- この道が一夜にして閉ざされるわけではない。貿易紛争が短期間で収まるなら、企業は長年取引のある米銀から離れにくいかもしれない。
- 米銀のもう一つの利点は、厚みのある米資本市場へのアクセスを提供できることだ。これは以前から外国企業にとって魅力で、米銀と近い関係を維持するだけの価値があった。
- シティグループのジェーン・フレーザーCEOは先週のアナリスト向け説明会で、足元で顧客離れは起きていないと語った。グローバル企業が国境を越えた事業や資金フローを見直す必要に迫られれば、シティに頼る機会はむしろ増えるかもしれないとし、同行は「嵐の中の港」だと述べた。
- シティグループは長年グローバルバンキングを事業の中核に据え、94の国・地域に拠点を構えて日常的な財務サービスをはじめとする事業を行ってきた。
- フレーザー氏は「われわれは世界の多くの市場に1世紀以上前から存在してきた」と説明。市場によってはシティが「最初の銀行で、今でも唯一の国際銀行だ」。
- だが貿易戦争が長引けば、それだけ米銀が大きな脅威にさらされる可能性が高まる。
- 「外国企業は手数料の高い取引に米銀のグローバル部門を使う必要はない」。米シンクタンク、外交問題評議会(CFR)のブラッド・セッツァー上級研究員はそう指摘する。貿易摩擦など国境をまたぐ紛争のさかなにあっては「萎縮効果があるかもしれない。カナダ人が休暇で米国へ行くことを考え直しているようにだ」
- 世界貿易システムの再編が続けば、各国で長期的改革や脱米国依存の機運が高まるかもしれない。マリオ・ドラギ前欧州中央銀行(ECB)総裁は欧州連合(EU)に対し、欧州資本市場の資金調達力を強化するよう促している。
- そうなれば、欧州の銀行は財務がより安定して幅広い展開が可能になり、企業は米国市場に頼らなくてもよくなるかもしれない。結果的に米銀大手への需要は縮小するかもしれない。
- 米メガバンクは世界展開する仕組みを備えており、それが成長の糧にもなっている。だが世界が脱グローバル化すればそれも難しくなり、稼ぐ力も低下するだろう。
- ●日本企業
- 米最高裁の移民送還差し止め、保守派判事が批判 「性急で尚早」 | ロイター
- 米連邦最高裁が移民当局に拘束されている複数のベネズエラ人男性の強制送還を差し止めるようトランプ政権に命じた判断について、保守派サミュエル・アリート判事が19日、「性急で時期尚早」と批判した。
- 最高裁は19日未明、「政府には、本裁判所のさらなる命令があるまで(同様事案で集団訴訟の原告となり得る)いかなる被拘束人も米国から送還しないよう指示する」と命じた。アリート判事のほか、クラレンス・トーマス判事もこの決定に反対した。
- アリート判事は5ページにわたる反対意見で、「文字通り真夜中に、最高裁は下級裁判所に判断機会を与えることなく、相手の意見を聞くこともなく、申し立て受け取りから8時間もたたずに、前例のない、法的にも疑問のある救済を下した」と主張した。
- 最高裁は6対3で保守派メンバーが多いが、アリート氏とトーマス氏以外は差し止めの判断を支持した。
- 問題となっていたのは、テキサス州アンソンのブルーボネット拘置所に収容されているベネズエラ人男性数十人の処遇。アメリカ自由人権協会(ACLU)の弁護士は18日、最高裁を含む複数の裁判所に緊急要請書を提出し、一部の男性が既にバスに乗せられ、国外退去を告げられているとして即時対応を求めていた。
- トランプ氏が連邦職員の雇用区分変更、さらなる大量解雇を容易に | ロイター
- トランプ米大統領は18日にソーシャルメディアへの投稿で、数万人の連邦政府職員の雇用区分を変えることを明らかにした。230万人規模の連邦政府職員の雇用保護を剥奪し、さらなる大量解雇を容易にする道を開く措置となる。トランプ氏は連邦政府が最終的に「企業のように運営される」と訴えた。
- 一例として雇用区分の変更後、政策に携わるキャリア職員は「スケジュール政策/キャリア」に分類されると説明した。
- ミシガン大フォード公共政策大学院のドン・モイニハン教授は、「政策」に携わる職員を誰でも同じように「スケジュール政策/キャリア」に分類することで解雇される可能性のある職員の範囲が大きく広がると指摘。職員の解雇に先駆け、数十万人の雇用区分が変更される可能性があるとの見方を示した。
- 共和党のトランプ大統領は1期目の終盤、一部職員の雇用区分を「スケジュールF」と呼ばれる政治任用に切り替えると表明したが、バイデン前大統領(民主党)が2021年1月の就任初日に出した大統領令で撤回していた。当時はスケジュールFが導入された場合、少なくとも5万人の連邦政府職員の解雇が容易になると指摘されていた。広告 - スクロール後に記事が続きます
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- ロイターの集計によると、トランプ氏が25年1月に就任して以来、26万人を超える政府職員が既に解雇されたり、早期退職に追い込まれたり、雇用終了の対象になったりしている。
- トランプ氏と、側近の実業家イーロン・マスク氏が率いる政府効率省(DOGE)は連邦政府が肥大化し、無駄と不正に満ちていると主張して人員削減の大なたを振るっている。
- 約80万人の組合員を擁する連邦政府職員の最大の労働組合、米公務員連盟(AFGE)のエベレット・ケリー会長は「何万人もの連邦政府のキャリア職員の仕事を政治化しようとするトランプ氏の行動は、政府の実力主義の採用制度を侵食し、米国民が信頼するプロフェッショナルの公務員を弱体化させることになる」と反発した。
- 約9万人の組合員を抱える専門・技術労働者国際連盟のマット・ビッグス会長は、トランプ氏の動きは連邦政府職員を「実質的に自由意志の職員にする。つまり解雇しやすくなる」と指摘し、これを阻止するために闘う意向を示した。
●先進国中銀、金融当局
- 日銀は利上げ路線維持の見通し、シナリオ変更の必要性乏しい-関係者 - Bloomberg
- 日本銀行は、先行き2%の物価安定目標が実現していくシナリオを維持し、緩やかに利上げを進めていく従来の政策スタンスを継続する公算が大きい。複数の関係者への取材で分かった。
- 関係者によると、米関税政策によって先行き不確実性が高まる中で、金融政策は現状維持が決まる見通しだ。一方、物価目標の達成時期の後ずれも視野に議論が行われる可能性があるという。会合直前まで入手可能なデータや情報を精査して判断する。
- 米関税政策は米中間の貿易戦争の激化や、日本の輸出の減少などを通じて世界・日本経済の下押し要因になると日銀は分析している。上乗せ関税や対米交渉を含めて関税措置自体の前提条件によってさまざまなシナリオが想定されるが、現段階で物価目標実現シナリオの修正が必要な状況にはないという。
- 日銀は4月30日ー5月1日に開く会合でトランプ米政権による関税政策が、世界・日本の経済や物価に与える影響について集中的に議論する。見通し期間を2027年度まで1年延長する新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)に反映させる。
- ポイントは堅調に推移している賃金・物価への影響だ。現段階では人手不足を起点とした賃上げモメンタムや、基調的な物価上昇率の改善が腰折れするような状況までは想定しづらいと関係者は指摘した。関税の直接的な影響は製造業が中心であることに加え、リーマンショックやコロナ禍のように需要が大幅に減少するショックに発展する可能性は小さいとみられている。
- 物価見通し下振れも
- 新たな展望リポートでは、経済成長率(実質GDP)と消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の見通しについて、下方修正となる可能性があるという。足元までの消費者物価は、コメなど食料価格がけん引する形で日銀の想定よりも強めで推移しているが、米関税措置に伴う景気の下振れが需給の緩和に伴う物価の押し下げ要因になる。米関税措置を巡って進行している円高や原油安、4月からの高校授業料の実質無償化なども追加の下振れ要因になるという。
- 日銀は前回1月の同リポートで、実質GDPの前年比について25年度を1.1%増、26年度を1.0%増、コアCPIはそれぞれ2.4%上昇、2.0%上昇を見込んでいた。関係者によると、初めて示す27年度のコアCPI見通しは2%近辺になる可能性が大きいという。
- 会合では、中心的なシナリオ自体に大きな変更が想定されない中で、米関税政策によって拡大しているリスクについて、丁寧な説明が行われる可能性が大きい。経済・物価の下方リスクの強まりが意識される中、26年度までの見通し期間の後半としている現在の目標実現時期は、後ずれする可能性もあるという。
- ●金融市場、先進国トピックス
- 円債の残高減少、外債は為替ヘッジ付き中心に積み増し=明治安田・25年度運用計画 | ロイター
- 明治安田生命保険は21日、2025年度の一般勘定資産運用について、円建て債券は償還が買い入れを上回るとして残高減少を見込む一方、外国債券は為替ヘッジ付きのソブリンとクレジットを中心に積み増す計画を示した。
- 北村乾一郎執行役員・運用企画部長が運用方針説明会で明らかにした。
- 円金利資産の核となる円建て債券は、金利リスク削減と長期安定的な利配収入確保に向けて、従来通り20年債と30年債を軸とした超長期国債を中心に買い入れる。購入のペース配分は「平準買い」を基本としつつ、金利上昇局面をとらえて追加投資も検討する。ただ償還が買い入れを上回るため、残高は「昨年度の3900億円(簿価ベース)と同程度」減少するという。
- 日銀の金融政策については、早ければ7月会合での可能性も含めて年度内に2回、さらに26年度にも2回の追加利上げを行い、政策金利が1.5%まで引き上げられるとの想定を置き、国内金利は今後緩やかに上昇するシナリオを描く。
- 新発30年国債利回りは前営業日(18日)時点で2.7%。北村氏は「絶対水準は当社の負債コスト(1%台後半)をかなり上回って魅力的な水準だが、急がずゆっくりついて行くスタンスだ」と述べ、現時点では特に前のめりになっていないことを示唆。30年金利は年度末にかけて緩やかに上昇し、一時的に3.5%程度まで上昇する局面があるとみている。
- 同社では経済価値ベースのソルベンシー規制対応での負債と資産のデュレーション・マッチングはほぼ終了しており、「円債は必ず買わなければならないものではなく、グローバル債券の中で円債がトータルリターンでみて有利であれば買う」(北村氏)という。
- 外国債券のうちソブリン債は、為替の見通しやヘッジコストに留意しつつ、利回りの高い国を中心にヘッジ付きで積み増す一方、オープンでの投資も超過収益獲得のため通貨を分散しつつ残高をやや増やす方針。またヘッジ付きクレジット外債については、スプレッドの取れる米国の高格付け銘柄を中心に、インハウス運用で積み増す。その結果、外債の残高は「昨年度の1600億円(簿価ベース)と同程度」増加する見込み。
- 外国投信がメインとなる外国株式は、自社ニューヨーク拠点を活用してプライベート・エクイティやプライベート・デットを中心に積み増す計画。一方、国内株式については、トータルリターンの向上に向けた銘柄入れ替えを実施するが、残高は減少を見込む。
- このほか投資用不動産は、市況を見極めながら大都市圏を中心に優良物件を積み上げ、残高を増やす。
- 明治安田生命の一般勘定の資産残高は、12月末時点で46兆5228億円。うち外貨建て資産は15兆2472億円(32.8%)。
- 25年度の相場見通し(レンジと年度末中央値)は以下の通り。
- 日本国債10年物利回り 0.80%─1.55%(中央値1.30%)
- 米10年国債利回り 3.40%─4.90%(同4.00%)
- 日経平均株価 2万8000─3万8000円(同3万2000円)
- 米ダウ 3万5000─4万2000ドル(同3万8000ドル)
- ドル/円 138─158円(同145円)
- ユーロ/円 141─163円(同145円)
- 首都圏マンション、3月平均価格は2年ぶり1億円台=不動産経済研 | ロイター
- 不動産経済研究所が21日発表した2025年3月の首都圏(1都3県)新築分譲マンション市場動向によると、1戸当たりの平均価格は前年比37.5%上昇の1億0485万円と2カ月連続のプラスだった。1億円超えは、東京23区で大型・高額物件の発売があった23年3月(1億4360万円)以来で、単月では2回目となる。
- 東京23区は前年比19.7%上昇の1億4939万円。港区で「リビオタワー品川」が売り出された。23区以外は同21.3%上昇の6508万円、神奈川県は同14.6%上昇の6968万円、埼玉県は同24.2%上昇の6027万円だった。
- 首都圏の発売戸数は前年比9.8%減の2210戸。初月契約率は76.2%で昨年10月以来の70%超えとなった。4月の発売戸数は1500戸程度を見込んでいる。
- 24年度の首都圏発売は17.0%減の2万2239戸で、1973年度以降で最少の供給となった。平均価格は7.5%上昇の8135万円で4年連続で最高値を更新。労務費の上昇に加えて資材費や用地費も高騰した。東京23区の平均価格は1億1632万円で2年連続で1億円を超えた。
- スイスフラン10年ぶり高値、リスク回避鮮明 円一段高も | ロイター
- 超長期国債への海外資金流入が過去最高、リスク回避で安全資産需要 - Bloomberg
- 海外投資家の超長期国債の買越額が3月、過去最高を記録した。米国の関税政策によって投資家のリスク回避姿勢が強まり、日本国債の安全資産としての需要が増したようだ。
- 日本証券業協会が21日に発表した統計よると、海外投資家は超長期債を2兆1828億円買い越した。全年限での買越額は6兆252億円で、過去2番目の高水準だ。
- トランプ米政権の関税引き上げが市場のボラティリティー急騰につながった3月以降、日本国債の需要は増えている。財務省が発表する対外および対内証券売買契約等の状況によれば、海外からの国内債券への資金流入は4月に入っても高水準を維持している。
- ドル建ての場合、日本国債は4月に入ってから5%を超えるリターンを記録している。超長期国債の利回りが急上昇していても、全年限の平均で見ると国債価格は小幅に上昇し、かつ円高が進んだことが要因だ。
- 一方、国内の保険会社は3月に超長期債を過去最高となる6458億円売り越した。ブルームバーグがまとめたデータによると、30年債の利回りは同月半ばに2006年以来の高水準を付けた。日本銀行が超長期債の買い入れを減額し、米国債のボラティリティーも高止まりする中で、利回りはその後さらに上昇した。
- みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは日本の超長期債について、「買い手不在と、米国の長期金利と超長期金利の上昇が積極的な投資を妨げた」とリポートでコメント。会計年度末に当たる3月は投資家が通常、バランスシートを調整する時期だと指摘する。
- 国内生保が既に発表した今年度の運用計画を見ると、円債需要は強弱まちまちとなる可能性がある。
- 明治安田生命保険は前年度に続き国内債を削減し、外国の債券や株式を積み増す方針だ。大樹生命保険は、30年、40年債の利回りは魅力があるものの、「まだ市場が落ち着いておらず、金利上昇の見込みもあるので平準的に行う」としている。大同生命保険は超長期債の買い増しは前年度並みと想定。一方、富国生命保険は超長期債投資を積極化する見通しだ。
- ドイツ企業の3分の1が2025年に人員削減を検討-シンクタンク - Bloomberg
- 【社説】関税が米税制改革に与える打撃 - WSJ
- 一つの経済政策の誤りは、その誤りによる損害を埋め合わせるために必ずもう一つの誤りにつながる。その最新の例は、ドナルド・トランプ米大統領が導入した関税措置に外国が報復することで被害を受ける米輸出業者向けの税優遇措置を、トランプ政権が新設する可能性があるとの報道だ。米国内にいる多くの関税被害者に支払う費用が、最終的に関税による収入を上回ることになったとしても驚いてはいけない。
- 交渉を通じてトランプ関税の引き下げを目指す国もあれば、反撃に出ている国もある。中国はすべての米国製品に対し、トランプ氏による最新の対中関税に合わせて125%の関税を課しており、この関税により米国の対中輸出は事実上中断されるだろう。米自動車大手フォード・モーターは、ミシガン州で生産したピックアップトラックやスポーツタイプ多目的車(SUV)、スポーツカーの中国向け出荷を停止した。
- 中国政府はまた、中国の航空会社に対し、米航空機大手ボーイングの航空機の購入や米企業からの航空機部品の購入を停止するよう命じた。欧州連合(EU)は、トランプ氏が発動した25%の鉄鋼・アルミニウム関税への対抗策として、多くの米国製品に25%の関税を課すと脅している。カナダは、総額400億ドル(約5兆7000億円)超相当の米国からの輸入品に25%の関税を発動した。
- 貿易戦争がエスカレートすれば、トランプ関税によって、米国の輸出は輸入と同程度に減少する可能性がある。第1次トランプ政権は、中国の報復関税によって被害を受けた農家の支援に約230億ドルを支出した。現トランプ政権はこの措置を再び実施する予定だ。現在報じられているところによると、一部のトランプ政権当局者は、製造業者を支援するために輸出業者向けの新たな税控除も検討している。
- これは、報復関税で起きる輸出減の補償を米企業にするという構想だ。つまり、他国が米国産鉄鋼に関税をかけた結果として米鉄鋼メーカー・ニューコアの輸出額が30億ドル減少した場合、売り上げの減少分を相殺するために同社は税額控除(実質的には税制による政府からの給付)を受ける可能性がある。
- この税制を通じた補助金は、研究開発や半導体生産、グリーンエネルギー事業などを対象とした大半の企業向け控除とは異なり、政治的に優遇される投資や産業に見返りを与える仕組みではない。要は、米政府の見当違いの政策によって生じる損害を軽減するということだ。
- 最近のもう一つの例は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時の雇用継続税額控除だ。これは、政府が経済活動の停止を求めた後も従業員の雇用を維持した雇用主に対して実施された。この税額控除を巡っては、ロックダウン(都市封鎖)の影響を受けなかった企業が申請するといった不正行為が多発した。報復関税以外の理由で輸出が減った企業も税額控除の申請を行うと考えて間違いないだろう。
- より大きな問題は、この税額控除が2017年のトランプ氏の税制改革が掲げた目標と矛盾することだ。この税制改革は、さまざまな税優遇措置をなくすことによって、法人税法の仕組みを簡素化するものだった。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が最近の年次書簡で指摘したように、35%から21%に法人税率を引き下げた分の埋め合わせは、主にこの簡素化と課税基盤の拡大によって行われた。
- 新たな控除を導入すれば、税制は混乱し、法人税収は減少するだろう。共和党には財政運営上、法人税率の引き上げ圧力がかかり、増税が実施されれば米企業全体の国際競争力が低下することになる。共和党は既に、自動車ローンの利子を対象とする控除など、経済成長には何の役にも立たないトランプ氏の税優遇措置の財源として、法人税率と個人所得税の最高限界税率の引き上げを検討している。
- 関税は、影響を直接受ける事業者に経済的な打撃となるが、ロビイストが免除措置や補助金を求めることにより政治的な腐敗にもつながる。関税という最初の罪を埋め合わせるための過ちは、輸出補助金では終わらないだろう。
- トランプ関税の目標、その代償を払うのは誰? - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領が本当に望んでいるものを解説すること自体が一大産業化しているが、それが世に出るや否や間違っていることが判明する場合も多い。しかし、トランプ氏の関税政策について明らかなことが二つある。貿易赤字の削減と、米製造業再建のための投資を望んでいることだ。同氏がこれらの目標を達成できるかもしれないと考える真の信奉者は、その結果として他に何が必然的に起きるかをよく考えるべきだ。
- 出発点は国際収支だ。これは一国の経済における貿易と投資の最も広範な指標である。この二つの側面はバランスが取れていなければならない。すなわち、貿易の流れいくつかの項目を集計する経常収支と、株式や債券などを購入したり工場に投資したりするために流出入する資本や資金を測定する資本・金融収支とのバランスだ。
- 米国は長年にわたり、輸出をはるかに上回る輸入を行ってきた。これが貿易赤字だ。国際収支のバランスを保つには、赤字額に見合った資本の流入が必要となる。これは主に、株式や米国債などの資産を外国人が購入することによってもたらされてきた。
- トランプ氏の計画はこうした動きを混乱させるだろう。貿易赤字の縮小は、資本流入の縮小を意味する。
- トランプ氏が執着しているのは財の赤字であり、これを削減するには二つの方法がある。
- 第1の方法は、財とサービスの貿易赤字全体は変わらないものの、サービス――トランプ氏が関心を持っているようには見えないが、黒字を計上している――が、製造業のために犠牲になることだ。要するに、金融界とハイテク業界を傷つけて、工場労働者層に利益をもたらすことだ。しかし、これには国内の税制と規制の変更が必要となるだろう。
- 財の赤字を縮小させる第2の方法は、貿易赤字全体を削減することだ。それは国外からの資金流入が減少することを意味する(国際収支はバランスが取れなければならないことを思い出してほしい)。国外からの資金流入が減り、(関税によって輸入品の競争力が低下するため)製造業への投資が増加すると、米国は新たな組立工場やクリーンルーム、さらには低賃金で劣悪な労働環境の作業場に資金を供給すべく、より多くの貯蓄を提供しなければならなくなる。
- とはいえ、国内的にもバランスが取れなければならない。貯蓄の増加は消費の減少を意味する。米国が長年、外国人の貯蓄(投資)に依存してきたことは、裏を返せば、はるかに多くの消費が可能だったということだ。世界の他の国々は生計を立てるために働かなければならない一方で、米国はその全面的な信用と信認を約束する見返りに財を手に入れる。
- 「トランプ解説者」の仲間入りをするリスクを冒して言うなら、トランプ氏は消費者としてではなく労働者としての国民に焦点を当てている、と筆者は以前から考えてきた。現行システムは、消費者の欲求を満たすために財を提供することに焦点を当てており、雇用がどこに行き着こうと構わない。たとえそれが米国外であってもだ。国内で雇用を提供し、国内で生産された財だけを供給することに焦点を当てているのではない。
- 市場はこのシステムを覆すことの影響を理解しようとしている。以下に四つの影響を挙げる。
- 財の価格上昇と選択肢の減少。貯蓄の増加は消費の減少を意味する。関税は過去数十年で最大の増税に相当し、これは政府の「貯蓄」と見なされる。また、ほぼ全ての輸入品の価格を押し上げる。
- 金利の上昇。貿易赤字を相殺する資本流入は、政府借り入れの大部分を支えている。貿易赤字を削減すれば、国外資金の純流入は枯渇する。株式や社債の代わりに米国債を購入するよう国内の貯蓄者を引きつけるには、債券利回りが上昇する必要がある。そうなれば株価を直撃し、企業の借り入れコストは上昇する。
- 株価の下落。国外からの投資のうち、工場建設に向けられるのはごく一部だ。もし国外からの直接投資がもっと多ければ、製造業再建の少なくとも一部に資金を供給できるかもしれない。だがここではトランプ氏が貿易・経常赤字の縮小に成功すると仮定しているので、国外からの資金流入は減少する(国際収支のバランスを思い出してほしい)。したがって、工場建設への国外からの投資が増えた場合、外国勢による株式や債券の購入が減り、株価は下落することになる。
- ドル安。経済理論では、貯蓄と投資が均衡しない場合に変動するのはドルだ。米国の貯蓄が投資を賄うには少なすぎる場合、外国人にとって米国への投資をより魅力的にするためにドルは下落するはずだ。
- 実際には、ドルは外貨準備や貿易での使用、そして世界の貯蓄を安全に保管する場所として需要があった。これら三つすべてが今、疑問視されている。外貨準備保有者は自国の準備資産がロシアのように凍結される可能性があると懸念している。貿易は関税のせいで縮小する可能性が高い。また、投資家は米国の法律がもはや自らの資産の信頼できる保護者ではないかもしれないと心配している。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を巡る疑問や、トランプ氏によるジェローム・パウエルFRB議長への個人攻撃は、ドルと米国債の両方の買い手を遠ざける可能性がある。
- 米国経済の弱体化に伴い、ドルも下落するはずだ。米国は1世紀にわたりテクノロジーの最前線に立ち、低賃金・低生産性の産業を徐々に放棄し、半導体設計など複雑さを増す製品の生産や高付加価値サービスへと移行してきた。
- 生産性の低い雇用を取り戻すことは、関税が十分に高ければ可能だが、世界の他の国々に対する米国の経済的優位性を低下させるだろう。米国は本当にバングラデシュやカンボジアから縫製業の雇用を取り戻したいのだろうか。これらの国々にそれぞれ37%と49%の「相互」関税が設定されているのを見ると、そのように思える。だが他の条件が変わらなければ、生産性の低下は通貨安を意味するはずだ。
- これはやや単純化した話だ。金利、ドル、経済は複雑に作用し合うため、ドルと経済成長がどの水準にあっても金利は上昇する可能性がある。
- トランプ氏のエコノミスト陣がコーヒーを吹き出す前に言っておくと、非常に良い結果も想像できるが、私にはその可能性は極めて低いと思われる。特に需要を抑制してきた国々では、需要が高まり、米国の輸出が増加することで赤字が減少する可能性はある。トランプ氏の関税と防衛に対する極端なアプローチは、ドイツに緊縮財政の放棄を促した。また、中国の関税への対応の一部は、国内消費の喚起を図ることだ。
- ドイツと中国がすぐに消費主義を受け入れることに筆者は懐疑的だ。たとえそうなったとしても、彼らが米国の非常に競争力のあるサービス、エネルギー、農産物ではなく、米国の製品を購入したいと考える理由はない。ましてやこの3カ月間の無礼や信頼性低下を踏まえれば、米国産品をそもそも購入する気があるのか疑わしい。
- トランプ氏の関税が多くの製造業を米国に戻すとは思えない。もし実現すれば、投資家と消費者が苦しむことになるだろう。
●中東情勢
●エマージング
- ロシア、トランプ氏の「今週合意」発言にコメントせず | ロイター
- サイバー詐欺拠点が東南アジアから世界に拡大、国連「重大な岐路」 | ロイター
- 焦点:米チャイナタウンをトランプ関税直撃、中国製品軒並み値上がり | ロイター
- 原産国を韓国と偽る輸出が急増 大半が中国製、米関税回避狙いか | ロイター
- 中国、各国の対中貿易制限に警戒 米が貿易協定巡り圧力との報道で | ロイター
- 中国、国有企業に国際取引の元建て決済促す 元の国際化推進 | ロイター
- 愛国心あおる中国、米に貿易戦争の責任転嫁へ - WSJ
- 今月、米中の間で関税の応酬が激化する中、中国共産党の機関紙・人民日報は、米国との長期にわたる闘いに備えるよう国民に呼びかけた。中国の指導者らはこの闘いで勝利を約束している。
- 「米国の包括関税はわれわれに打撃を与えるが、『天が落ちてくることはない』」と、人民日報の1面の論評は述べている。中国は強く、党に信頼を置くことで「われわれは課題を機会に変える」という。
- 貿易戦争が激化する中、中国指導部は国民に愛国心を呼びかけている。この戦略は中国の経済問題の多くを米国のせいにしようとするものだ。
- この手法は党とその指導者の習近平国家主席の権力を強化する可能性がある。一方で裏目に出る可能性もある。
- 「これはもろ刃の剣だ」とシンガポール国立大学の政治学者、ジャ・イアン・チョン(莊嘉穎)准教授は述べた。困難な時期に党への政治的支持を集めることに焦点を当てれば、それでも状況が改善しない場合は「党が非難される」という。
- 指導者たちは、米国と痛みを伴うかもしれない長い闘いが待ち受けていると示唆する。彼らによると、この対決は約10年前から静かに進行しており、第1次トランプ政権時代に始まり、ジョー・バイデン前大統領の下で続き、ここ数週間でさらにエスカレートしている。
- 最近の主張には、朝鮮戦争を想起させるものもある。当時、中国軍は北朝鮮を支援し、米国が支援する韓国と戦った。今日の関税戦争は、貿易だけでなくイデオロギーを巡る闘争として位置付けられている。
- 中国が不当な米国の攻撃と見なすものに反撃する決意の裏には、いくつかのリスクがある。
- 第一に、ドナルド・トランプ大統領の最初の関税攻撃に報復したことで、中国はさらに高い関税を課され、不動産市場の崩壊や公的債務の増加、消費者信頼感の低下に直面する同国経済はさらなる圧力にさらされている。
- 愛国心の高まりは、習氏がトランプ氏と取引をする能力に影響を与え、それを複雑にする可能性もある。反米感情が高まれば、中国当局者らは圧力に屈したと見えないように、より強硬な姿勢を取らざるを得なくなるかもしれない。
- 最後に、貿易戦争をイデオロギー闘争として位置付けることで、一部ではあるにしても、中国共産党はトランプ氏との闘いに勝利することに自らの政治的正当性を賭けている。
- 「米国がまったく譲歩せず、経済が深刻な打撃を受けた場合、国民は本当にそれを受け入れるだろうか」とジョージア州立大学のマリア・レプニコワ准教授は述べた。同氏は中国の政治コミュニケーションを研究している。
- トランプ氏が最新の関税措置を取る前から、一部の学術調査では中国の回答者の75%ほどが米国に対して否定的な見方をしていると報告されていた。
- しかしこれは、全ての中国人がトランプ氏との緊張をエスカレートさせることに賛成しているというわけではない。中国当局者が「最後まで闘う」と誓う中、多くの人々が経済的な影響を警戒している。
- 「『自信』は政策ではなく、『安定』は成長ではない」と、人民日報の論評に対する反応として中国のオンラインに掲載されたコラムは述べ、党の主張を「妄想的な自己の物語」と呼んだ。このコラムはその後削除されたが、中国のインターネット検閲を追跡するカリフォルニア州のニュースサイト、チャイナ・デジタル・タイムズが保存している。
- 他の人々も人民日報への批判に同調した。「得意げな主張をすることには何の代償もないが、それを信じれば全てを失う可能性がある」と中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」に投稿したユーザーは述べた。これは中国の検閲当局が取り締まってきたソーシャルメディア上で比較的よく見られる意見だ。
- 中国政府のこれまでのアプローチは、国民からの批判はどんなものでも管理できると考えており、トランプ氏に対して弱腰に見られることの方が、米国との緊張をエスカレートさせることよりも大きな脅威だと信じていることを示している。
- 中国の国営メディアは、米国が多くの中国製品なしでは立ち行かないと述べており、トランプ氏が最終的には一部の関税を撤回せざるを得なくなる可能性を示唆している。
- 中国はまた、現在の自国経済は、トランプ氏が大統領に初めて就任した時よりも関税圧力に耐える力が強いとしている。中国国営メディアはここ数日間、同国の輸出に占める米国のシェアが昨年は約15%となり、2018年の19%から低下したことを強調している。
- しかし、輸出は昨年の中国のGDP成長率5%の約3分の1を占めており、中国からの過剰な輸出への抵抗は米国だけでなく、欧州などの地域にも広がっている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたところによると、トランプ米政権は他国との関税交渉を利用して中国を孤立させようとしている。
- 中国当局者は最近、政府がさらなる財政・金融刺激策を講じて国内消費を押し上げ、米国向け輸出の減少を相殺することは可能だとも述べている。しかし、指導部は長年、エコノミストが国民の消費を促すと指摘する積極策の導入をちゅうちょしてきた。代わりに国家の資金は国内製造業や産業に優先的に振り向けられている。
- 一方で、中国の当局者たちは反米の言説を強めている。16日の人民日報に掲載された別の論評は朝鮮戦争に言及した。この戦争は、中国では「抗米援朝戦争」として知られている。
- 同論評は「今日の環境と状況は(当時と)大きく異なる(中略)が、米国による過剰な関税の打撃、極端な圧力戦術、中国を屈服させるという妄想に直面して、中国人民は敗北を受け入れることも圧力を恐れることもない」としている。
- 中国共産党の主張の多くは米政府の信用失墜に焦点を当てており、トランプ氏については、関税に反対する米国民やビジネスと乖離(かいり)しているとする。
- 中国人は米国人を気の毒に思うべきだという主張もある。
- 国営放送CCTVの論評は、今月北京を襲った強風への北京市政府の対応を称賛する一方で、米政府が2005年にハリケーン「カトリーナ」への対応を誤った件に改めて触れた。
- 「同様の失敗が、今日見られる粗雑で無謀な関税にも十分に反映されている」と同論評は述べている。
- プーチン氏の戦争経済、トランプ貿易戦争の影響不可避 - WSJ
- ロシアはドナルド・トランプ米大統領が打ち出した「解放の日」関税を免れたが、それでもある理由から同氏の貿易戦争に危険なほどさらされている。それは石油だ。
- 石油産業はロシア経済の原動力であると同時に、脆弱(ぜいじゃく)性の主な原因でもある。石油・ガス産業からの収入が国家財政収入の約3分の1を占めるからだ。
- 世界の原油相場は今月、関税に伴うリセッション(景気後退)懸念の高まりを受けて急落し、今も不安定な状態にある。ロシア産原油の指標であるウラル原油価格は、1バレル=55ドルを下回る水準で推移している。これは今年の国家予算で目標とされる70ドル前後を大きく下回る。アナリストらによると、原油相場が低水準にとどまれば、ロシア経済はハードランディング(強行着陸)に直面する見通しだ。その場合、今年の財政赤字はほぼ倍増するだろうという。
- こうした状況の悪化は、ロシア政府にとって危うい時期に起きている。ロシア経済は原油相場が急落する前から既に減速していた上、政府はウクライナとの停戦を巡り米国と交渉中だ。ロシア政府は、戦場で優位に立つことでこうした協議で最大限の譲歩を引き出すことができると考え、和平交渉に消極的な姿勢を示している。
- 現在の原油相場の水準では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が軍事作戦の中止に追い込まれる公算は小さいが、さらに相場が下落すれば、同氏の計算が変わる可能性がある。一方、原油相場の急落によってロシア政府は痛みを伴う選択を迫られるとアナリストは指摘する。
- 米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所の非常駐シニアフェロー、エリーナ・リバコバ氏は「原油価格が安いままなら、彼らは危機を感じるだろうし、既にそうした危機を感じ始めている。これが続けば、軍事か経済かの選択を迫られるだろう」と話す。
- JPモルガンのアナリストは先週の顧客向けメモで、ロシアは制裁や国際関係の断絶によって世界的なトレンドの影響を受けにくくなっているものの、「米国の通商政策がもたらす津波に対して、無傷でいられることはなさそうだ」と述べた。
- プーチン氏の国家安全保障体制は多くの点で、石油がもたらす富の上に構築されている。1980年代の壊滅的な原油安は、ソ連の崩壊につながった。プーチン氏は1999年にロシア首相に指名されたが、同氏が権力の座に就くのを後押ししたのは、この年の原油価格の回復だった。このため、政府は原油安を国家安全保障上の脅威と捉えている。
- ロシア経済で石油が中心的な役割を果たす分野は、国庫にとどまらない。エネルギー業界の好調は、石油掘削業者が使用するパイプ用の鉄鋼や、製油所に関連するインフラの建設など、隣接するセクターにも波及する。これはエコノミストが乗数効果と呼ぶものだ。石油収入の縮小は、原油の採掘と精製を中心に構築され、それによって支えられているコミュニティー全体に連鎖的な影響をもたらす。
- ロシアの元エネルギー業界幹部で、現在はカーネギー・ロシア・ユーラシア・センターのシニアフェローを務めるセルゲイ・バクレンコ氏は、原油価格が10ドル下がるごとに、ロシアの年間収入が約250億ドル(約3兆5600億円)減ると推測している。
- 「従って、これは確かに歳入に影響を及ぼし、経済全体から資金が失われる」と同氏は述べた。
- それでもアナリストらは、原油価格の低迷が長期化しない限り、ロシアの戦争計画に影響が及ぶことはないと指摘している。ロシアは北朝鮮から重火器を調達し、戦車や機械用の鉄鋼は自国で生産している。中国は開戦以来ロシアを経済的に支援してきた。
- トランプ政権は発足後間もなく、原油価格の引き下げにつながる米国とサウジアラビアでの増産を呼び掛けることによって、ロシアに和平を受け入れさせようとする可能性を示唆した。キース・ケロッグ米大統領特使(ウクライナ・ロシア担当)は今年1月、原油価格が45ドルに下落すれば、戦争を終結させるには十分かもしれないとの見方を示した。
- トランプ氏が世界規模の関税引き上げ対象リストを発表した際、ロシアなど少数の国々はリストから除外された。トランプ政権は、多くの制裁措置によりロシアとの間では実質的に貿易取引が行われていないと説明した。
- ロシアは確かに、2008~09年の世界金融危機や新型コロナウイルス禍の時のように、より深刻な原油安を乗り切ってきた。ロシア政府は依然として国内銀行から借り入れを行うことができるし、インフラ、教育、医療といった非軍事支出の削減も可能だ。
- だが、3年を超える戦争の間、ロシア政府は所得を押し上げ、雇用を提供することで、この戦争の影響が国民に及ばないようにしてきた。景気が低迷すれば、ロシアの戦時社会契約の基盤が揺らぎかねない。
- ロシア当局はその危険性を分かっている。
- ロシア中央銀行のエリビラ・ナビウリナ総裁は今月、貿易戦争が続いた場合について、「これは通常、世界経済の縮小とわが国のエネルギー資源への需要減少につながるものだ」として、「従って、この状況にはリスクがある」と述べた。
- ロシア政府は「当局はロシア経済への影響を最小限に抑えるためにあらゆる手を尽くしている」と述べた。
- 金融市場はここ数日、米政府から発表される変更内容をトレーダーが消化しようとする中で乱高下している。一方、原油相場の見通しは、サウジアラビアなどの生産国からの供給増と中国の需要鈍化が重荷となっている。
- ゴールドマン・サックスは今週、北海ブレント原油について、今年の平均価格は63ドル、26年は58ドルとの予想を示した。ロシア産ウラル原油は、国際的な指標原油よりかなり割安な価格で取引されているため、この予想はロシア産原油の価格が50ドルを下回る可能性を示唆している。石炭や金属といった、ロシアが輸出する他のコモディティー(国際商品)もここ数週間、価格が下落している。米国の関税措置が引き起こす混乱によって中国の景気が減速すれば、これもまたロシア経済の足を引っ張る要因となるだろう。
- ロシアの投資銀行ルネサンス・キャピタルは最近発表した顧客向けメモで、原油相場の低迷はロシア経済のハードランディングの可能性を高めるとの見解を示した。今年のウラル原油平均価格が50ドルなら、国内総生産(GDP)の伸びは0.1%になりそうだという。
- これはロシア経済にとってショックとなるだろう。
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
- 米ニューヨーク・マンハッタン南部の中華街の一角、マルベリー・ストリートにある「スン・ビン食品店」では先週、袋入りせんべいが4.99ドル(710円)で売られていた。
- しかし今週、トランプ大統領による中国製品向け追加関税が発動されると、同じせんべいの値段は6.99ドルに改定された。
- 米国全土の中華街は、激化の一途をたどる関税戦争の影響を痛感している。伝統的な薬や乾麺、ヒスイの宝飾品など中国から輸入されるさまざまな製品の価格が既に上昇し始めたからだ。
- トランプ氏が打ち出した対中関税の累計税率は145%に達し、中華街で商売を手がける大半が家族経営の零細事業主を直撃している。多くの中国系移民は、他の品で代替できないような中国文化に必要な商品は中華街で入手している。
- スン・ビン食品店のマネジャー、ジャスミン・バイさんは「関税の影響は大きいだろう」と話す。この小さな店で販売される春雨や蓮の実のペーストといった商品は、原料を含めて大半が中国から輸入され、一般的な米国の食品店では滅多に見かけることができない。
- バイさんは「将来的には顧客が減って、購入量も少なくなるのではないか」と不安を口にした。
- ニューヨーク市の小規模事業者支援部門によると、マンハッタン南部の中華街の住人の年間小売り製品・サービス支出は11億5000万ドルで、中華街での取引の約80%を地場の企業が占めるという。
- <不確実性に翻弄>
- 二転三転するトランプ氏の関税政策は中華街の事業主らに混乱をもたらしている、と語るのは宝石で飾ったチェーンやペンダントがヒップホップアーチストから人気を集めているニューヨークの宝飾品店「ポピュラー・ジュエリー」を経営するエバ・サムさんだ。
- サムさんは「突然の政策変更やエスカレートする関税のせいで、客に一貫した価格を提示するのがほぼ不可能になる」と嘆く。
- ポピュラー・ジュエリーは24カラットの金や加工したヒスイを中国から輸入しており、サムさんは、既に輸入宝飾品の価格は10%引き上げざるを得なくなったと明かした。
- この店で働くサムさんの息子、ウィリアム・ウォンさんは「長期でも短期でも意思決定をするのが極めて難しい。なぜなら関税が恒久化されるのか、どの分野に適用されるのか、あるいはトランプ氏が今後撤廃するのか判然としないからだ」と述べた。
- ニューヨークの中華街の事業者支援に取り組む非営利団体「ウェルカム・トゥ・チャイナタウン」によると、この地域のほとんどの店が抱える在庫は1カ月か2カ月分しかない。
- 30年間中華街で働いてきた薬剤師ダニエル・デララッタさんの店も例外ではなく「後発薬の大半は向こう90日以内に価格が大幅上昇することになるだろう」という。
- 現像に使う素材などを中国から仕入れているという写真店「エリズ・デジタル」の店主も、長年値上げせず頑張ってきたものの、関税によって値上げはやむを得なくなるだろうと述べた。
- <最古の中華街にも逆風>
- 米国最古の歴史を持ち、住民や事業主同士のつながりが緊密とされる中華街があるサンフランシスコ。中華街商店連合会のエドワード・シュー会長は、事業主の間では不確実性が広がっており、今後生産的な米中交渉が行われることを期待していると話した。
- 40年間、地元で旅行代理店を営業してきたシュー会長は「多くの人は次に何が起きるか分からないと感じている。彼らは目下、とても心配し不満を感じている」と強調した。
- サンフランシスコ中華街の目抜き通り、グラント街でヒスイの宝飾品を販売している「リンダ・ブティック」の経営者セレナ・リーさんは、関税発動以降で商品の販売価格は3倍になったと語る。店の商品の原材料はミャンマー産だが、最終加工品は中国から輸入される。
- リーさんは「何か変えるとすれば、事業全体を変えなければならず、一筋縄ではいかない」と説明した。
- ストックトン・ストリートで小さな食品店を経営するメイ・チューさんは、在庫がなくなる事態を心配している。顧客が値上がりを見越して駆け込みで買い物しようとしているためだ。
- チューさんは「売り物が残っていない」と述べ、中国からは輸入していない塩まで多くの客が大量購入していると付け加えた。
- シュー会長は、米中両国政府に、彼らの政策によって自分のような中国系米国人の事業主が被る被害を考慮して欲しいと訴えた。「現時点で私たちは危険領域に入っている」
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(21日)ドル3年ぶり安値、長期債利回り上昇 株大幅安 トランプ氏のFRB議長批判で | ロイター
- **為替市場**
- - **ドルが主要通貨に対して大幅安**:トランプ大統領がFRBのパウエル議長を批判し、FRBの独立性が脅かされるとの懸念が強まった。
- - ドル指数は約3年ぶりの安値(97.923)、対スイスフランでは10年ぶりの安値。
- - ユーロ、ポンドともに上昇。
- **債券市場**
- - **長期金利上昇、短期金利低下**:トランプ大統領の利下げ要求強化で市場不安が増し、債券市場に影響。
- - 10年債利回りは4.403%、2年債は3.747%。
- - 6月の利下げ予想が高まる(確率63%)。
- - 財務省が今週1800億ドルの国債を入札予定。
- **株式市場**
- - **主要株価指数が大幅下落**:FRB独立性への懸念とトランプ大統領の発言が影響。
- - ダウは971ドル安、一時1300ドル超下落。
- - S&P500は最高値から16%下落。
- - ハイテク株や個別銘柄(エヌビディア、テスラ)も大きく値下がり。
- **商品市場**
- - **金価格が史上最高値更新**:安全資産としての需要が高まり、1オンス3425.30ドル。
- - **原油価格は反落**:米イラン協議の進展により供給不安が後退、WTIは1バレル63.08ドル。
備忘録(2025/4/18-20)
●海外企業決算
●海外企業
- 米FDAの人員削減、医薬品開発に遅れ生じる可能性も - WSJ
- 米食品医薬品局(FDA)の大規模な人員削減を受け、難治性疾患やその他の疾患向け医薬品を開発するバイオテック企業が臨床試験や薬剤試験の延期を余儀なくされている。
- 業界関係者らによれば、FDAでは臨床試験の修正承認や医薬品承認プロセスの指導など、中核的機能に大幅な遅延が発生。これが医薬品開発の妨げとなっているという。またこれらの遅延により、医薬品の臨床試験完了と患者への提供までの時間が長期化し、新たな治療薬候補の試験資金も圧迫されていると関係者らは述べている。
- 米カリフォルニア州に本拠を置くダレ・バイオサイエンスは今年、女性の性的興奮障害治療薬の後期試験を進める予定だったが、試験目標の測定方法についてFDAから最終承認を得られず、開始を無期限に延期せざるを得なくなったとサブリナ・マルトゥッチ・ジョンソン最高経営責任者(CEO)は述べた。
- 同社によればFDAは2カ月の間に2度、試験目標の測定方法に関するガイダンス提供日を延期。ダレ・バイオサイエンスは4月に入り回答を得たものの、その内容は簡潔で、試験を進めるには当局とさらに協議が必要だとジョンソン氏は述べた。同社はこれまでは、臨床試験とその目標に関する情報を予定通りに受け取っていたという。
- ダレ・バイオサイエンスは現在、今年後半に調剤薬として治療薬を販売する予定だが、最終的には臨床試験も実施する計画となっている。
- ジョンソン氏は「厳しい時期で制度が逼迫(ひっぱく)しているのは理解できる。だが停滞は受け入れられない」とし、「別の方法で製品を提供できるなら、正しいことをすべきだと考えている」とした。
- FDAによる遅延は、ロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官が厚生省の再編を目指したことによる新たな影響の一つだ。FDAでは約3500人が削減され、その中にはヒラリー・マーストン最高医務責任者(CMO)や新薬承認を監督していたピーター・スタイン氏も含まれる。またワクチンと生物製剤を監督していた主要ワクチン担当官のピーター・マークス氏も、削減の対象となった。
- FDAの広報担当者は、「FDAは再編期間中の業務継続を確保するよう積極的に取り組んでおり、重要なプログラムと試験の継続に引き続き尽力している」とした。
- 大手・中小を問わず製薬会社は、承認前の安全な実験室・動物試験の確保から、市販後の安全性モニタリングまで、医薬品の市場投入前後でFDAに大きく依存している。規制の専門家や業界関係者によると、医薬品開発はリスクが高く、ほとんどの薬剤が試験で失敗するため、規制当局は重要な役割を果たしているという。
- 中でもバイオテック業界は特に当局の遅延の影響を受けやすい。業界はここ数年にわたり厳しい市場環境にあり、複数の企業が破産申請や医薬品プログラムの中止に追い込まれている他、近年上場した企業は資金調達ができない状況に置かれている。規制上の障害は、試験と承認プロセスに数億ドルの費用をもたらす可能性があるため、製薬会社の財務をさらに圧迫する可能性がある。
- ●日本企業
●先進国政治動向
- トランプ米大統領の優先事項「はっきりしてきた」=赤沢再生相 | ロイター
- 日米関税交渉から帰国した赤沢亮正経済再生相は18日夜、自民党本部のネット番組に出演し、トランプ米大統領との協議では「自分の言葉で語る内容とメモを見る内容があり、大統領の優先事項がはっきりしてきた」と指摘した。
- ベッセント財務長官とグリア米通商代表部(USTR)代表の印象については「親日家だが、大変手ごわい」とも指摘した。閣僚らはいずれも「交渉を決めるのはトランプ大統領だ」と強調していたという。
- 赤沢再生相は、交渉は日米双方の提示する政策パッケージが釣り合わないと合意できないとして、議論の詳細は公表を避けたが、「米側の何が最重要なのか、想定していたが触れられなかったことは何かなどが分かり、貴重な情報だ」と説明した。
- 今回の協議で合意された月内の第2回会談の時期については明言を避けた。国内の「担当省庁に宿題を投げている」とし、「想定より良い内容でないと交渉は動かない」とも述べた。
- トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるFRB議長批判 | ロイター
- 米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は18日、ホワイトハウスで米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の解任が選択肢となっているかどうか記者団に問われ「トランプ大統領と関係者が検討を続けている」と述べた。
- トランプ氏は17日、パウエル氏が利下げを行わないことで「政治的な駆け引きをしている」と非難。パウエル氏を「速やかに」解任する権限があると主張した。
- ハセット氏は2021年の著書では、1期目の大統領在任中にトランプ氏がパウエル氏を解任した場合、FRBの独立性などの信認を損ない、ドルの信頼性が揺らいで株式市場が暴落する可能性があったと主張していた。
- ハセット氏は「当時、市場は全く異なる状況にあった。また、当時の法律的な分析について言及したものだ。新たな法律的な分析によって異なる見解が出る場合には、対応を見直す必要がある」と述べた。
- 新たな分析の内容に関しては明らかにしなかった。ただ、トランプ政権が独立行政機関である全米労働関係委員会の民主党系幹部2人を解雇した措置の妥当性を巡って連邦最高裁での審理中で、どのような判断が示されるかが注目されている。
- 一方、パウエル氏は、任期中の解任は法律上できず、トランプ氏から求められても辞任しないとし、26年5月の任期満了まで務める意向を表明している。
- トランプ大統領は18日もパウエル議長を批判、「自身が何をすべきか理解しているFRB議長なら金利は下がっているはずだ。議長は金利を下げるべきだ」と述べた。
- ハセット氏は、人柄ではなくFRBの政策措置に注目していると指摘。FRBがトランプ大統領の1期目に利上げを決定し減税をインフレ的とした一方、ハセット氏がインフレ的な典型とするバイデン前大統領による「暴走的な支出」を問題視しなかったことを挙げた。
- その上でハセット氏は、トランプ大統領の政策によって設備投資が促進され、雇用創出が増加する一方、インフレ率は低下していると指摘。財政支出の暴走に警告しなかったが関税によるインフレを騒ぐ向きを批判した。
- エバーコアISIはメモで、「FRBの独立性に対する脅威が突然明らかになれば、市場のストレスはさらに強まり、テールリスクの急激な増大とともにスタグフレーション方向へシフトする」との見方を示した。
- トランプ関税の一時停止、ナバロ氏不在の隙に2閣僚が提案 - WSJ
- 彼らは大統領が独りでいるときを狙う必要があった。
- 4月9日、金融市場は大混乱に陥っていた。スコット・ベッセント米財務長官とハワード・ラトニック米商務長官は、ドナルド・トランプ大統領に世界への関税計画の一時停止を求めようとしていた。しかし、そこには大きな障害があった。大統領執務室周辺には、関税推進派であるピーター・ナバロ米大統領上級顧問(貿易・製造業担当)がいたのだ。
- ナバロ氏は政策論争で引き下がるタイプではなく、企業幹部や他の顧問らが譲歩を求める中でも、関税維持を強く主張していた。
- このため、同日午前にナバロ氏がケビン・ハセット経済顧問とホワイトハウスの別の場所で会う予定だった際、ベッセント氏とラトニック氏は行動を起こした。複数の関係者が明らかにした。
- 2人は大統領執務室に急行し、ナバロ氏がいない間にトランプ氏に面会。一部の関税の一時停止を提案した。時間が限られていることは分かっていた。トランプ氏のスケジュールに2人との会合は入っていなかった。
- 両氏は、一部の関税を一時停止し、市場を落ち着かせるためこれを直ちに発表するという戦略についてトランプ氏を説得した。関係者の1人によると、彼らはトランプ氏がソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿するまでその場にとどまった。この投稿にナバロ氏は驚いたという。ベッセント氏とキャロライン・レビット報道官がこのほぼ直後にホワイトハウスの外でカメラの前に立ち、公式発表を行った。
- 「全員が足並みをそろえる必要があった」。事情に詳しいある人物はこう話した。
- 4月2日にトランプ氏の関税の一部が発効したことを受け、株式市場は急落していた。その翌週、さらに厄介な兆候が現れた。通常、市場が混乱している時の安全資産とされる米国債の価格が急落(利回りは急上昇)したのだ。
- だがトゥルース・ソーシャルへの投稿を受け、株式市場は急反発。国債市場の安定化にも寄与した。同日トランプ氏は金融市場が「不安になっている」ことと、債券市場からの警告サインを注視していたため、この決定を下したと述べた。その数時間前、トランプ氏はトゥルース・ソーシャルへの別の投稿で「冷静になれ」と呼びかけ、現状維持を示唆していた。
- ベッセント氏の報道官は「大統領のチームは米国民のために『米国第一』の通商政策課題を実行すべく懸命に取り組んでいる。通商問題で大統領のチームを分裂させようとする者は、勤勉な米国民の生活を向上させようとするわれわれ政権の目標を損なおうとしている」と述べた。
- ラトニック氏の報道官はトランプ氏のチームは協力しているとし「われわれがゴシップガールごっこをしているという考えは全くの間違いだ。トランプ大統領のビジョンを実行することに完全に集中している」と語った。
- ナバロ氏はコメント要請に対し、テキストメッセージで「通商チームを分断・征服しようとする匿名の情報源によるさらなる悪意ある行為だ」と回答した。
- ホワイトハウスのクシュ・デサイ副報道官は「トランプ大統領は、自身の『米国第一』政策課題を実行し、わが国の国家的な緊急事態である根強い貿易赤字に対処するため、オールスター級の通商・経済チームを結成した。トランプ政権の全メンバーは、わが国の労働者と産業のために競争条件を公平にし、米国の偉大さを取り戻すため、一つの戦略、すなわちトランプ大統領の戦略に従って行動している」と述べた。
- 今回のベッセント氏とラトニック氏の協力は、トランプ政権内で状況がいかに急速に変化し得るかを示している。トランプ氏が大統領に就任する前、2人は財務長官のポストを巡り激しい公の場で争いを繰り広げていた。
- ホワイトハウスには、通商に関して各自の意見や戦略を持つ高官が多数おり、その中にはトランプ氏の第1次政権時代にホワイトハウス内の駆け引きについて多くを学んだナバロ氏も含まれる。
- ナバロ氏はトランプ氏の周辺で特異な存在であることを証明してきた。長年にわたり顧問として関税を巡るトランプ氏の本能を導き、しばしば同僚をいら立たせてきた。ナバロ氏は昨年に服役したが、トランプ氏が大統領選で勝利すると貿易担当顧問として復帰した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、トランプ氏は周囲にナバロ氏は自分のために刑務所に入ったと語っている。
- ナバロ氏は第1次トランプ政権で意見の対立を生み、当時のゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長やスティーブン・ムニューシン財務長官としばしば衝突した。ある時、ムニューシン氏とナバロ氏は中国当局者と貿易問題を協議するため共に北京を訪問したが、両者の間の緊張は非常に高まり、協議の外で激しい応酬を繰り広げた。
- しかし、トランプ氏はナバロ氏を長年気に入っている。両者はより抜本的な変更を求める通商政策において妥協しない姿勢を共有している。ナバロ氏の共著「Death By China(中国による死)」には、中国に関してトランプ氏の見解と共通する点が多く見られる。
- ナバロ氏の対中強硬姿勢はトランプ支持層の大多数から支持を得るのに貢献してきた。その多くはウォール街に批判的な人たちだ。だが、そのために同氏は多くの金融業界幹部や財界人から疎まれる存在となっている。
- 石破首相、日米間で為替協議「フェアにやっていく」-NHK日曜討論 - Bloomberg
- 石破茂首相は、20日のNHK日曜討論に出演し、米国との為替相場を巡る協議について「フェアにやっていく」と述べた。
- 石破首相は「為替については予断を招くので発言しない。実際に取り扱うのは加藤財務大臣とベッセント米財務長官であり、真摯(しんし)な話し合いがなされる」と言及。米国が日本との関税協議で円安是正を求めた場合、対応は可能かとの問いに対し「そこはフェアにやっていくと言うことであって、向こうが何を求めているのか、私の立場で予断は持ってない」と語った。
- 経済対策で現金給付や減税を行う可能性については「その場しのぎではなく、次の時代にきちんとした経済が維持される、人口が減っていく中、日本がどうやって生きていくか、きちんと示すのが政府の責任だ」との考えを示した。
- 加藤勝信財務相が今週訪米し、ベッセント財務長官と為替分野について協議を行う方向で調整が進んでいる。
- 赤沢亮正経済再生相は訪米中のトランプ大統領との面会で、日本との協議を最優先で進める意向を示された。ベッセント財務長官らと可能な限り早期の合意を目指すことなどを確認。今月中に閣僚協議を再度実施するため、調整している。
- トランプ大統領は在日米軍の経費について、繰り返し不満を表明している。石破首相は「安全保障と貿易は違う分野の話であり、あまり絡めて議論することが正しいと思ってない」と発言。防衛力の強化は「日本として米国から言われたからということではなく、日本は日本を守る努力はきちんとやっていく」と語った。
- トランプ大統領が急きょ赤沢経済再生相と会談したことについては「意外だった。えーみたいな」と述べ、想定外だったことを明らかにした。「それだけ日米交渉を大事にしていると同時に、自分のリーダーシップで最後は決めるというメッセージだと思う」と分析。「向こうもオールキャストで、それだけ本気だということだ。私たちも総力戦で臨まなければならない」と語った。
- トランプ関税回避に走る各国、米国製品購入の表明続々 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領の関税措置が発表された「解放の日」から2週間が経過し、高関税の発動を米国に思いとどまらせたい貿易相手国が描く計画が明瞭になっている。それは、米国製品の購入を増やすということだ。
- 多くの国が米国との貿易不均衡の解消に向けて購入拡大を急ぐ一方、トランプ政権からの圧力をかわすため他国と連携しようとする動きもある。また、購入を増やすことができない、あるいはあえて増やそうとしない国もある。
- トランプ氏が4月2日に発表した高税率の「相互関税」について、米政府は70カ国以上を交渉の対象としている。トランプ氏は7月まで関税を一時停止することを決めた。
- トランプ氏は17日、米国市場へのアクセスと引き換えに欧州連合(EU)への関税を引き下げる合意を成立させることについて、「ほとんど問題はない」と述べた。また米国市場へのアクセスは「誰もが望むものである」とした。
- 「貿易協定は締結される、100%だ」とトランプ氏はEUについて語った。同氏はこの日、イタリアのジョルジャ・メローニ首相とホワイトハウスで会談。メローニ首相は、EU当局者と通商協議を行うためトランプ氏をイタリアに招いた。
- 対米貿易黒字が1200億ドル(約17兆円)を超え、「解放の日」に自国製品への関税が46%に引き上げられたベトナムの対応に、関税回避に向けた各国の切迫ぶりが表れている。ベトナムでは最近、米ボーイングの新型ジェット機を購入するための3億ドルの資金調達契約が交わされた。ベトナムはまた、トランプ氏の盟友イーロン・マスク氏が手がける衛星インターネットサービス「スターリンク」の認可を押し進め、トランプ氏の15億ドル規模のリゾート開発の承認手続きを加速させている。
- 米国のモノやサービスに対する需要は各地で膨らんでいる。タイではトウモロコシ飼料の需要が拡大。欧州は大豆の購入を増やす可能性を示唆した。韓国は近く米アラスカ州に代表団を派遣し、440億ドル規模の液化天然ガス(LNG)プロジェクトへの参加について協議する。トランプ氏が「本当に素晴らしい」と称賛したこのプロジェクトに、韓国はこれまで参加に否定的だった。
- 米国は各国との交渉を開始している。スコット・ベッセント財務長官は、英国やオーストラリア、韓国、インド、日本などとの交渉を優先する方針であることをウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週報じた。日本の通商担当者は首都ワシントンを訪れてトランプ氏と会談し、同氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で「大きな進展だ!」と述べた。JD・バンス米副大統領は英国との合意に向けた「明るい見通しがある」と語った。経済担当の韓国政府高官は来週ベッセント氏との会談を予定している。
- 以前であれば、米国製品を大量に購入するとの約束は貿易摩擦の緩和につながった。トランプ氏の大統領1期目に、中国は米国のモノやサービスの購入を2年間で2000億ドル増やすと約束し、米国との貿易戦争を食い止めた。
- 「もっと買う」戦略
- 現在焦点になっているのは、米国製品の購入を拡大し貿易不均衡の是正に取り組むことでトランプ氏を満足させられるのかどうかということだ。それは難しいかもしれない。中国はトランプ氏の1期目に交わした合意を履行せず、取り決めは有名無実化した。
- トランプ政権が狙っているのは単なるビジネスの拡大だけではないようだ。求めているのは、米国への巨額の投資、非関税障壁の撤廃、そして中国への対抗措置だ。米シンクタンクのアジア・ソサエティー政策研究所で副所長を務め、以前は米政府で貿易交渉を担当したウェンディ・カトラー氏はそう指摘する。
- カトラー氏は「大々的な購入発表は歓迎されるが、短命に終わることが多い」とし、「『もっと買う』戦略を実行することは、通商協定に通常含まれる構造的問題について交渉するよりも簡単だ」と述べた。
- だからといって各国は努力をやめることはしない。インドは現在の対米貿易額を約4倍の5000億ドルに増やすことを目指すと表明した。トランプ氏はインドに米国製防衛装備品の購入を拡大するよう促している。両国間の貿易交渉はトランプ氏の1期目に進展したものの、大きな成果につながらなかった。インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は今月、今回は違うとの認識を示し、「極めて高い緊急性を持って取り組む準備ができている」と語った。
- EUの当局者らは米国のLNGと大豆の購入拡大を検討している。トランプ氏は、EUが米国のエネルギー関連製品の購入を3500億ドル増やせば貿易戦争は中止できると示唆した。LNG輸入量のうち米国が45%を占めるEUは今週、エネルギー調達先をロシア以外へと多様化する一環として、米国からの輸入を拡大する考えを示した。EUの報道官は14日、「米国は間違いなく選択肢の一つだ」と述べた。
- アルゼンチンの主要穀物加工・輸出業者を代表する団体を率いるグスタボ・イディゴラス氏によると、同国の穀物生産者に対してタイ、ベトナム、マレーシアは最近、貿易不均衡を是正し、トランプ氏との関税交渉を有利に進めるために米国から穀物を購入する可能性があると伝えた。イディゴラス氏は「われわれにとっては大きなリスクだ」と述べた。
- 先週ホワイトハウスを訪れたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、74億ドルの対米貿易黒字を解消すると約束した。トランプ氏に対しては、「われわれにとって難しいことではない。実行する」と伝えたことを明らかにした。
- 米国製品を大量に購入できない一部の低所得国は、報復措置を取らないと約束したり、米国からの輸入品に対する関税を撤廃すると表明したりしている。ジンバブエの大統領は、米国との「相互に有益で前向きな関係」の構築を求め、米国製品に対する輸入制限を即時停止するとした。
- 「貿易戦争に勝者なし」
- 貿易不均衡を完全に解消することは非現実的なケースもある。例えば、衣料品や履物を輸出するカンボジアの対米貿易黒字は120億ドル超と、年間国内総生産(GDP)の4分の1以上に相当する。いずれにせよ、トランプ氏の貿易戦略は、米国の農産物に対する特定市場の開放や、米国のIT企業に恩恵をもたらすデータ規制の緩和といった他国の譲歩に多少なりともつながる可能性がある。
- 全ての国が購入を増やそうとしているわけではない。米国製品の買い手としてカナダとメキシコはすでに存在感が極めて大きい。中南米では米国との貿易では輸入が輸出を上回る国が多く、米政権が適用する関税率は全体として、最低水準である10%になっている。
- 「貿易戦争に勝者はいないことを歴史は教えている」。ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領は、中国当局者が出席した最近の経済会議でそう語った。
- オーストラリアや日本といった米国の同盟国の間では、トランプ氏の関税に対抗するため団結しようとする動きもある。石破茂首相は14日、世界全体の利益を念頭に置いて米国との交渉に臨むとし、性急に事を運ぶと失敗する恐れがあるとの考えを示した。
- トランプ氏の新たな関税措置は、すでに最終段階にあった一部の購入に影響を及ぼしている。米国は今月、フィリピンによるF16戦闘機の購入を承認したものの、フィリピンは関税の影響で購入資金が不足する可能性があると述べた。
- 米国の貿易相手国が相次いで米政府に譲歩を提案する中で、中国は例外となっている。米政権が中国を対象にした関税率は100%を超え、両国間で実質的な協議は行われていない。ただ、世界の貿易システムを再構築し製造業を米国に呼び戻すというトランプ氏の目標を達成する上で、世界の2大経済大国である米中の貿易不均衡の見直しは必須となる。中国は世界全体の貿易黒字が約1兆ドルに達する一方、米国は1兆2000億ドルの貿易赤字を抱える。
- オーストラリアのシンクタンク、ローウィー研究所で主任エコノミストを務めるローランド・ラジャ氏は、貿易を巡る混乱によって、中国は対米輸出に依存する国からビジネスを奪う機会を得ていると指摘した。その機会を生かすためには中国は外国企業に対して経済をさらに開放する必要があるという。
- ラジャ氏は「中国にとってチャンスだ」とし、「問題は彼らがそれを生かすかどうかだ」と述べた。
- ●先進国中銀、金融当局
- 焦点:ECBがハト派メッセージ、市場は利下げ幅拡大も視野に | ロイター
- 欧州中央銀行(ECB)が17日に発したメッセージを受け、市場参加者は追加利下げを確信し、貿易摩擦問題がユーロ圏経済に一段と打撃を与えるようなら利下げ幅が拡大するとの見方を強めている。
- ECBはこの日開いた理事会で、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げて2.25%とすることを決めた。既に低調で、トランプ米大統領が打ち出した関税措置がもたらす荒波に直面しつつあるユーロ圏経済をてこ入れする狙いだ。
- トレーダーがECBからハト派的なメッセージが出されたと受け止めため、ユーロは軟化し、ユーロ圏の国債利回りは軒並み急低下した。
- ECBは「際立った不確実性」を生み出した貿易摩擦に起因する経済見通しの悪化を強調するとともに、声明文から「引き締め的」という文言を削除した。
- こうした表現修正は通常なら利下げペースの減速とみなされるが、ラガルド総裁がそれを打ち消すような発言をした。経済的なショックに見舞われている間は、正確な計測が不能な中立金利に対するECBの政策スタンスを評価することに「意味はない」と述べたのだ。
- ラガルド氏は、数週間前であれば複数の理事会メンバーが利下げの一時休止を主張していただろうが、結果的に全会一致で利下げが決まったのは、政策担当者が経済成長に付随するリスクをいかに深刻にとらえているかの表れだと説明している。
- バークレイズのユーロ圏金利戦略を統括するローハン・カンナ氏は、これらの材料を総合すると、必要なことを積極的に実行しようとするECBの意思が見えてくると指摘した。
- LSEGのデータによると、トレーダーが見込む6月の利下げ確率は、理事会前の約60%から75%前後に切り上がった。ICAPで織り込まれた6月利下げ確率はおよそ90%に達している。
- 年末までに予想される政策金利引き下げ幅は、LSEGのデータで55bp弱から65bp前後まで広がっており、利下げ回数はあと2回ではなく3回になりそうだと想定されていることが分かる。
- 3月の前回理事会が終わった後では、ドイツの歴史的な財政政策転換がユーロ圏の経済成長と物価上昇率を押し上げるとの見方が広がり、ECBの年内利下げはあと1回弱にとどまると予想される局面もあった。
- 金融政策見通しを敏感に反映する2年国債利回りを見ると、ドイツは最大7bp低下し、イタリアでは2022年以来の低水準を記録した。
- <インフレは懸念されず>
- 米関税が物価に及ぼす影響は、成長への影響ほど明白ではない。ただトランプ氏が「相互関税」の詳細を発表して以降の市場動向は、ユーロ圏でディスインフレが一層進む展開を示唆している。
- まず2月に対ドルで等価近辺まで安くなっていたユーロは、3月初め以降で9%余り上がって足元は1.135ドルで推移しているので、輸入物価は抑制されるだろう。ユーロの実効為替レートは過去最高値で取引されている。
- 原油価格は今月に入って10%下落しているし、欧州の輸入において最大の比率を占める中国は関税による痛手が最も激しい。
- ユーロ圏のインフレは市場も懸念していないもようで、ECBが重視する長期の予想物価は3月の2.2%から、ECBが目標とする2%に鈍化している。
- さらに物価上昇率が2%を割り込むリスクを強調するエコミストもいる。例えばシティはこの日の理事会前に、来年の物価上昇率は1.6%、27年でも1.8%にとどまるとの見通しを示した。
- 一方でECBの政策金利に関する予想は非常に幅が広く、先行きの不確実性がいかに大きいかを物語る。
- 実際複数の関係者はロイターに、何人かの理事会メンバーは6月利下げの可能性が大きいとみている半面、別のメンバーはより多くの経済指標を確認するまでは到底判断できないという立場だと明かした。
- 市場関係者の間でも意見が分かれている。アビバ・インベスターズのポートフォリオマネジャー、スティーブ・ライダー氏は、現在市場が織り込む金融政策見通しには利下げ幅が予想より小さくなるリスクが反映されている点から、同社は欧州債に対して中立姿勢になっていると述べた。ノルデアは、ECBの追加利下げはあと1回、25bpだけになると予想する。
- しかしバークレイズは、ECBが10月までに政策金利を1.25%に引き下げるとの想定で、市場のコンセンサス以上に利下げが進むと主張している。
- ピクテ・ウエルス・マネジメントのマクロ経済調査責任者を務めるフレデリック・デュクロゼ氏は、ユーロ圏の景気後退入りは同氏の基本シナリオではないと断りながらも、本当に景気後退になればより大規模な対応が求められると警告した。
- SF連銀総裁、当面は政策金利の据え置き視野-インフレリスクが上昇 - Bloomberg
- 米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、インフレのリスクによって政策金利は従来想定よりも長く据え置かれる可能性があるとの見解を示した。ただ、年内に利下げが行われる可能性は依然残されていると述べた。
- デーリー氏は18日、カリフォルニア大学バークレー校での講演で「インフレに対するリスクは1年前よりも高まっている。そのため、想定していたよりも長く金融政策を引き締めた状態で維持しなければならない可能性がある」と指摘。「しかし、それが永遠の引き締めを意味するわけではない。最終的にはインフレは低下していくからだ」と語った。
- 同氏は、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者による3月の経済予測で示された「0.25ポイントの利下げを年内2回実施」という予測はなお適切だと考えているとし、インフレが低下した場合には「経済を過度に引き締めないよう段階的な利下げを実施する必要がある」と述べた。
- それでも、政策金利の調整を「焦る必要はない」と強調。「政策金利を時間をかけて調整する可能性は考えられるが、急ぐ必要はない。われわれには十分な時間があり、この状況を少し様子見する余裕がある」と語った。
- 米FRB、ストレステスト見直しへ 自己資本比率の算出方法変更 | ロイター
- 米連邦準備理事会(FRB)は17日、大手銀行を対象としたストレステスト(健全性審査)について、大幅な見直しを開始した。具体的には、銀行の財務状況を評価する際の基準となる自己資本比率について、過去2年間の審査結果を平均して算出することを提案した。
- 今回の見直しは、審査の透明性を高め、結果の変動を抑えることを目的としている。
- FRBは審査の結果必要とされた自己資本比率引き上げに対する対応期間を3か月延長することも提案した。これにより、6月に審査結果を受け取った銀行は従来の10月末ではなく、翌年1月まで対応が可能となる。
- FRBは審査で銀行から収集するデータについても簡素化を進めるとしているが、今回の変更が銀行に求められる自己資本比率を大きく変えるものではないと強調している。
- ストレステストには今年中にさらに変更が加えられる予定。FRBは審査で使用するモデルやシナリオを公開し、一般の人がコメントできるようにする方針を示した。これは銀行業界が以前から強く要望していた。
- しかし、これらの変更にはFRB内部からも反対意見が出ている。2月までFRB銀行監督担当副議長を務めていたバー理事は声明で、今回の見直しと検討中の他の変更によって、ストレステストが形骸化し、金融システムの安定性に対する誤った安心感を与える恐れがあると警告した。
- バー氏は審査内容を公開することで、銀行が審査の厳しい部分を避けたり、リスクを過小評価している部分を特定して結果を良く見せたりする可能性があると指摘した。また、FRBに定期的に意見を収集して反映することを義務付けると、FRBの担当者がさまざまなリスクを評価する方法を検討する時間が減り、テストの有効性が低下する懸念があるとの見解を示した。
- 一方、クーグラー理事は、今回の提案に賛成票を投じたものの、銀行が1年以上前に提出した財務諸表と最近の数値を同等に信頼することに懸念を示した。現在の経済状況を適切に反映させるため、より新しい数値を重視すべきかどうかについて、意見を求めたいとした。
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
- 債務再編を検討する国向けに手引書、近く公表へ=IMF専務理事 | ロイター
- 独企業、3割が今年の人員削減を予定=経済研究所調査 | ロイター
- 円債を1100億円積み増し、日銀の利上げ年度内2回想定=富国生命・25年度運用計画 | ロイター
- 富国生命保険は2025年度の一般勘定資産運用計画で、円建て公社債を1100億円積み増す方針だ。金利水準を見極めながら低金利の債券を売却しつつ、相対的に利回りの高い超長期債を積み増す計画。日銀の金融政策については年度内に2回の利上げを想定し、年度末の10年国債利回りは1.70%、20年債利回りは2.40%を予想する。
- 一方、外貨建て公社債は積み増しを行わず、償還再投資にとどめる計画。財務企画部長の森実潤也氏が16日、ロイターとのインタビューで述べた。
- 円建て公社債は、24年度(見込みベース、以下同)は100億円の減少となった。超長期債を中心とした日本国債(ソブリン)が350億円減少、クレジットは250億円増加となった。一方、25年度はソブリンを300億円、クレジットを800億円、それぞれ増やす計画。
- 森実氏は「異次元緩和の超低金利下では投資を控えてデュレーションマッチングも行っていなかったため、負債に比べて資産サイドのデュレーションが短く、公社債の含み損も相対的に小さい。超長期債を買い入れる余地は十分にある」と述べた。
- 日銀の利上げは年度内2回を想定する。米国の関税政策を受けて日銀は動きづらい状況だが、米関税が日本経済に与える影響を見極めながら日銀は利上げ時期を調整していくだろう、という。
- 外貨建て公社債は、24年度は100億円の増加となった。為替ヘッジは行わず、円高が進んでも収益性を確保できる米国の超長期債を積み増した。内訳は、ソブリンが200億円増加、クレジットが100億円減少となった。今年度は積み増しは行わず、ソブリンは300億円減らし、クレジットは300億円増やす見込み。ポートフォリオの収益性を高めるためソブリンの償還分の一部をクレジットに振り分けるという。
- 米国の金融政策については、年度内1回の利下げを想定する。トランプ米大統領は関税措置を取りつつも、米国の物価や消費に大きな打撃となる政策は避けるとみられ、現時点では米国の景気後退をメインシナリオとしていないという。
- 為替動向は年度末に1ドル=145円を予想する。瞬間的にドルが130円程度まで円高が進む可能性はある一方、日本の貿易収支の赤字など構造的に円安方向に振れやすい要因もあり、急激に円高に振れるリスクは低いと見込んでいる。
- エクイティ資産は、24年度に700億円増加した。内訳は国内株が400億円、PE(プライベート・エクイティ)ファンドなどのオルタナティブ資産が250億円、不動産が50億円それぞれ増加し、外国株は横ばいとなった。今年度は外国株を200億円、オルタナティブを300億円増やす計画。国内株は残高を横ばいとする予定だが、足元の株価下落を受けて日本株を買うチャンスもあるとして、「相場の変動に合わせて柔軟に対応し、内外株式合わせて200億円増やす予定」(森実氏)だという。年度末の日経平均は3万8000円を見込んでいる。
- 富国生命保険は1日、中期経営計画『THE MUTUAL ACT 2027』を策定し、27年度に利差益1000億円を目指す方針を示した。国内金利の上昇が見込まれる中でALM(資産・負債の総合管理)運用により収益を高めつつ、リスクテイクも継続し高収益が期待できる投資を推進するという。
- *25年度の相場見通し(レンジと年度末)は以下の通り。
- 日本国債10年物利回り 0.90―2.00%(年度末1.70%)
- 日本国債20年物利回り 1.60―2.80%(同2.40%)
- 米10年債利回り 3.40─5.60%(同4.60%)
- 日経平均 2万9000─4万5000円(同3万8000円)
- 米ダウ 3万4000─5万1000ドル(同4万4000ドル)
- ドル/円 130―162円(同145円)
- ユーロ/円 140―175円(同157円)
- 国内超長期債の増加幅は100億円程度、金利上昇で抑制=大樹生命・25年度運用計画 | ロイター
- 大樹生命保険は18日、2025年度の一般勘定資産運用計画で、国内超長期債の増加幅を100億円程度にする考えを示した。金利上昇を強めにみており、前年度の250億円増から伸びは半分以下となる見込み。日銀の利上げは秋口以降で年度内に計2回、ターミナルレートは1%を見込む。
- 同社の運用統括部長の為我井心氏が運用説明会で語った。国内債券は、資産と負債の一元管理(ALM)の推進を目的とした超長期債投資や利回り改善目的の入れ替えを計画する。保険負債の予定利率が2%超で30年債や40年債には妙味があるとみるものの、金利上昇が強めで超長期債は「平準よりは抑えて」(満田堅副部長)積み増す考え。
- 米FRB(連邦準備理事会)は10月以降、利下げを再開すると予想。年度内は計3回とみる。
- 為替をヘッジしないオープン外債は、外貨建保険の販売動向次第としつつ、増加幅は前年度の1700億円と同程度か、減少すると見込む。1000億円程度まで縮小する可能性を視野に入れている。ヘッジ外債は横ばいの見通し。
- 国内株投資は100―200億円程度の増加と、前年度の200億円から伸びが縮小方向になるとみている。国内・国外とも同程度の伸びを見込む。
- オルタナティブの増加幅は前年度の100億円から、150億円程度に増える見通し。
- 貸付残高は減少するが、利回りやESG(環境・社会・企業統治)を考慮した厳選投資を継続する。
- 2025年度末の市場見通し(レンジと中心)は以下の通り。
- 日本国債10年物利回り 1.40―2.00%(中心1.70%)
- 日本国債40年物利回り 2.70―3.50%(中心3.10%)
- 米10年債利回り 3.60─4.70%(同4.00%)
- 日経平均 3万2500─3万9500円(同3万6000円)
- 米ダウ 3万8000─4万6000ドル(同4万2000ドル)
- ドル/円 134―154円(同144円)
- ユーロ/円 147―167円(同157円)
- シティ、3カ月以内の金価格予想を3500ドルに引き上げ 中国の購入などで | ロイター
- 【コラム】米中軍事衝突、5つの黄信号が点滅-NATO元司令官 - Bloomberg
- 米国と中国が互いに関税措置を強化し、世界は「新たな冷戦」を巡る議論をすでに飛び越え、リアルな貿易戦争の緒戦に入った。
- 確かに、トランプ米大統領が繰り返し約束してきたように米中の「大きな、美しい」合意で終わる可能性もある。一方、世界1、2位の経済大国が対立を深めれば長く痛みを伴うデカップリング(切り離し)につながり得る。中国は米国に対抗する準備を整えているように見えるが、いずれどうなるか分かるだろう。
- だが、私がいつも受ける質問は貿易戦争についてではない。「中国との熱戦に突入する可能性はあるのか」という問いだ。私の短い答えは、もちろんそうならないことを願っているが、一段と懸念を深めているというものだ。
- 私は海軍キャリアの大半を太平洋で過ごしたが、中国との実際の武力衝突にこれほど近づいたことはなかったと感じている。
- 米中の武力衝突は本当に迫っているのだろうか。全面戦争を回避するため注目すべき最も重要な指標は何か。太平洋全体を眺めると、5つのシグナルが黄色に点滅している。赤に変わる可能性に備えて注視し続ける必要がある。
- サイバー攻撃
- 中国は、強力かつ攻撃的なテクノロジー能力を利用して米国の重要インフラを標的とした攻撃を強化している。最もよく知られているプログラムは「ボルト・タイフーン」だ。
- このプログラムは、米国の国家安全保障当局によってオープンに議論され、昨年12月に米中当局の非公開会合でも取り上げられたと報道された。攻撃の標的は「港湾、水道施設、空港」などインフラ施設だと米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は伝えている。
- 別の攻撃プログラム「ソルト・タイフーン」も中国発だ。米国の通信網を標的としていると報じられている。中国は高度なサイバー戦争を実施する能力だけでなく、その意思も示している。サイバー攻撃の規模と影響が拡大すれば、より広範な戦争のリスクも相応に高まる。
- 台湾ADIZへの侵入
- 中国人民解放軍の軍用機による台湾の防空識別圏(ADIZ)への侵入レベルを監視することは、中国が自国の「省」と見なす台湾の掌握をどの程度急いでいるのかを測る重要な指標となる。
- 昨年は3000件を超えるこうした侵入があり、2023年のほぼ倍に増えた。ハワイを拠点とする米インド太平洋軍のパパロ司令官はこうした中国軍の飛行について毎日報告を受けている。われわれも注意を払うべきだ。
- 南シナ海
- 中国は米本土の約半分に相当する南シナ海のほぼ全域について領有権を主張している。明代の武将で15世紀前半に活躍した鄭和の航海などをその根拠としている。
- だが、中国の主張はオランダのハーグにある常設仲裁裁判所で審理され、却下されている。それでも中国は自国の海軍基地として少なくとも7つの人工島の建設などを強行。これら人工島は「砂の万里の長城」と呼ばれ、沿岸国、特に米国の同盟国であるフィリピンに対する挑発行為に利用されている。
- フィリピンのマルコス大統領は、ドゥテルテ前大統領よりも米軍との協力を強化し、中国大陸に近いフィリピンの島々にある基地へのアクセスを米軍に認めている。従って、南シナ海中心部における中国の海軍と海警局の活動レベル、特に近隣諸国を脅かすような行動は潜在的な衝突を強く示す指標となる。
- 中国軍艦の建造
- 中国は年20-30隻のペースで軍艦を建造し、現在の艦隊規模はすでに米国を上回っている。中国の360隻余りに対し米国は300隻程度だ。軍艦400隻超の保有を目指す中国は、米国との戦争は主に海上で行われると想定している。中国の本格的な戦闘意図を測る指標として、造船所の製造水準に注目すべきだ。
- 関税と貿易紛争
- 最も危険な指標は米中両国が課す関税のレベルと範囲で、すでに悪化している。日本への重要資源、特に石油と鉄鋼、ゴムの供給を断つ貿易制裁がきっかけで始まった太平洋戦争を思い出してほしい。歴史家の多くは1941年12月の真珠湾攻撃は、10年に及ぶ経済紛争と挑発的な措置がピークに達したためだと指摘している。
- 中国は今、レアアース(希土類)や戦略的に重要な鉱物の供給を遮断し始めている。これらの鉱物について、中国は採掘において世界的な支配権を事実上握っている。精製セクターを牛耳っていることは、さらに重要だ。
- 米国の関税は中国経済に直ちに重大な打撃を与えるだろうが、真の懸念は中国の対応だ。これが、衝突が迫っているかを見極める5番目の重要指標となるだろう。
- 私は数年前、「2034 米中戦争」という小説を共同執筆した。米国と中国が破壊的な紛争に陥る可能性を描いたが、予言的なフィクションではない。警告の物語だ。
- 米中戦争は、南シナ海で数隻の船の間で起きた小競り合いが急速にエスカレートするところから始まる。私が執筆した当時、第1次世界大戦開戦直前の光景が脳裏に浮かんでいた。バルカン半島でオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子夫妻を殺害した弾丸が火種となり、欧州全域が戦火に巻き込まれた。
- 歴史は小さなきっかけで大きく変わる。われわれはサイバー攻撃と台湾への侵入、南シナ海、中国の軍艦建造、そしてエスカレートする貿易戦争という点滅する5つの黄信号に注意を払う必要がある。これらのシグナルが赤に変われば、世界中の明かりが消える可能性がある。
- 半導体業界、過度なAI依存があらわに - WSJ
- 半導体業界は人工知能(AI)ブームの恩恵を受け、米半導体大手エヌビディア NVDAや台湾積体電路製造(TSMC)といった企業の利益と株価は過去最高水準に押し上げられてきた。
- ドナルド・トランプ米大統領による関税の脅威と世界経済の減速の可能性が高まる中、AI向け以外の分野があまり好調ではないという事実を無視することが難しくなっている。
- 世界最大の半導体メーカーで業界の景気動向を占う存在であるTSMCは17日、業界がAIに過度に依存しているとの印象を強めた。同社は今四半期の力強い売上高見通しを示し、関税で混乱が生じかねないにもかかわらず設備投資計画を維持した。AI向け半導体の売上高は今年2倍になるとの見通しを示した。魏哲家・最高経営責任者(CEO)はアナリストとの電話会見で、今後数年間の売上高成長率は年平均で約45%になると述べた。
- 前日にはオランダの半導体製造装置大手ASMLホールディングが、関税によって不確実性が高まっていると述べた。同社が発表した第1四半期の受注額はアナリスト予想を下回り、投資家を不安にさせた。しかしクリストフ・フーケCEOはAIが「依然として市場の原動力」であると述べ、その状態が続けば今年の売上高は見通しの上限に達する可能性があると示唆した。
- こうした楽観的な見方はある意味で理解できる。メタ・プラットフォームズやアルファベット傘下のグーグル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなど、AIとそれを駆動する半導体に特に多く支出している企業が巨額の設備投資計画を維持しているためだ。
- 今年約1000億ドル(約14兆2400億円)の設備投資を計画しているアマゾンのアンディ・ジャシーCEOは先週の株主向け書簡で、AIに必要な「多額の設備投資」に言及した。アルファベットのスンダー・ピチャイCEOも今月、今年の750億ドルの支出計画に変更がないことを確認した。]
- TSMCは、エヌビディアが中国市場向けに開発した半導体の輸出をトランプ政権が最近規制したことを、自社の楽観的な業績見通しに織り込んでいると述べた。エヌビディアはこの輸出規制を受けて今週、55億ドルの費用を計上する見込みだと発表している。TSMCの魏CEOは17日、関税による顧客行動の変化はまだ見られないと述べた。予想される関税に先立って注文を前倒しする動きも、見通しが厳しいために注文を控える動きもないという。
- しかし、これは関税に関する明白な現実を反映しているかもしれない。つまり、最終的な形がどうなるかは誰にも分からないのだ。スタイフェルのアナリスト、ブライアン・チン氏はTSMCの決算に関するメモで、「この段階では、価格上昇に備える状況下で消費者と企業の購買行動はまだ決定されていない」と述べた。
- 一方、TSMCが依存しているAI向け支出の持続可能性について確信を持つことも難しい。世界経済が後退した場合、AI向け支出を支える企業の一部(特にメタ、グーグル、アマゾンの広告部門)の業績が悪化するかもしれないためだ。
- 半導体メーカーにとっては、需要の増加が新型コロナ流行時のように幅広い分野に広がっていれば、はるかに良い状況だっただろう。当時は自動車向けであれコンピューター向けであれスマートフォン向けであれ、誰もが十分な半導体を入手できなかった(AI向け半導体の市場はまだ巨大ではなかった)。それは十分に分散された需要に基づく成長だった。
- 今回は違う。米調査会社IDCは今年のスマホ出荷台数が2.3%増加すると予想している。これは、AI関連需要によって人々が新しいスマホを購入すると業界が期待していた時期としては、かなり低調な水準だ。
- パソコンも同様で、今年の出荷台数は3.7%増加にとどまると予想されている。電気自動車(EV)は数年前に思われていたような「黄金のチケット」ではなかった。産業向けやモノのインターネット(IoT)デバイス向けの半導体販売も、ここ数年弱い。
- AIブームはこれらの多くを覆い隠すのに役立ってきた。
- しかし関税と輸出規制が発動される中、より低迷している他の分野で落ち込んだ売上高の空白をAIが埋め続けられるかどうかについて、投資家と半導体メーカーは楽観すべきではない。
- 社債購入者の把握容易に NTTデータが企業向けサービス - 日本経済新聞
- ●中東情勢
- イスラエル、イラン核施設への限定的攻撃をなお検討=関係筋 | ロイター
- イスラエルがイラン核問題を巡り、米政権から外交交渉を優先する意向を伝えられたのにもかかわらず、今後数カ月以内にイランの核施設を攻撃する可能性を排除していないことが分かった。イスラエル当局者と事情に詳しい関係者2人が明らかにした。
- 米国とイランの交渉官らは19日にローマで2回目の核予備協議に臨む予定。
- イランの核武装阻止を目指すイスラエルは、ネタニヤフ首相がイランとのいかなる交渉も同国の核計画の完全廃棄につながるものでなければならないと主張している。
- イスラエル当局者によると、イスラエルはこの数カ月、トランプ政権に対し、イランの核施設への攻撃に関する選択肢を提示してきた。その中には、春の終わりから夏にかけて実施されるものも含まれている。攻撃案には空爆と特殊部隊による作戦の組み合わせが含まれ、その想定破壊規模はイランの核兵器化能力を数カ月から1年以上遅らせるものまで幅があるという。
- 米紙ニューヨーク・タイムズは16日、トランプ大統領が今月初めのホワイトハウスでの会談でネタニヤフ首相に対し、米政権はイランとの外交交渉を優先したいと考えており、短期的には同国の核施設への攻撃を支持するつもりはないと伝えたと報じた。
- しかし、イスラエル当局は現在では、当初提案した攻撃よりもはるかに小規模な攻撃であれば、米国の支援をあまり必要としないと考えているという。
- 焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏に空輸 | ロイター
- 2024年12月、シリア首都ダマスカスに反体制派の軍が迫り、24年にわたる自らの支配体制が間もなく終わりを告げる直前、アサド前大統領はプライベートジェットを駆使し、何度かに分けて現金や貴重品、自身の資産とつながる企業の詳細を記した機密情報などを国外に持ち出していた。
- ジェット機をリースによって手配し、アラブ首長国連邦(UAE)との間を4往復してこうしたアサド氏の財産や親族、側近、大統領府職員などを運ぶ作戦を主導したのは、同氏の筆頭経済顧問を務めていたヤッサル・イブラヒム氏だったことが、十数人の関係者をロイターが取材し、情報を総合して分かった。
- 大統領府の経済・金融担当部門を統括していたイブラヒム氏は、アサド氏がシリア経済を掌握するために使っていた組織のネットワークを構築する役割を担ったほか、アサド氏の窓口になっていたもようだ。
- 西側諸国はアサド氏が2011年に民主的な抗議行動を弾圧したことで制裁を科したが、イブラヒム氏に対してもその後、支配体制を支持しているとの理由で制裁対象に加えている。
- ロイターがフライト記録を確認したところ、アサド氏の「逃亡作戦」に用いられたジェット機は「エンブラエル・レガシー600」だった。登録国は西アフリカのガンビアだ。
- 4回目の飛行は昨年12月8日、シリアの地中海沿岸都市ラタキア近くでロシア軍が運営するフメイミム空軍基地が離陸地だったことが、フライト記録やシリア空軍情報部元高官、衛星画像などから判明している。同じ日にアサド氏はこの基地からロシアに逃亡した。
- ロイターが逃亡作戦の全容を知るために話を聞いたのは、空港職員や共和国防衛隊(大統領警護隊)元幹部、空軍情報部元高官、アサド氏のビジネスに関係していた人物など14人。またイブラヒム氏の部下のメッセージアプリ「ワッツアップ」上での会話や、衛星画像、航空会社の登録情報などからも、イブラヒム氏がアサド氏を安全に逃亡させる経路をどのように確保したかを分析した。
- 複数の関係者の証言やワッツアップの会話記録によると、ジェット機が運んだのは何の目印もない黒いバッグに入った少なくとも50万ドルの現金やノートパソコン、アサド氏が関与する複雑な企業ネットワークの呼び名として同氏やイブラヒム氏の部下たちが用いた「グループ」の重要情報などだった。
- ロイターは、体制崩壊直前に親しい家族にも居場所を秘密にしていた後、ロシアで亡命申請が認められたアサド氏か、イブラヒム氏への取材を試みたが成功しなかった。ロシアとUAEの外務省はいずれもこの作戦に関する問い合わせに回答していない。
- シリア暫定政府高官はロイターに、シャラア暫定大統領は旧政権崩壊に先立って国外に持ち去られた公的な資金を取り戻して経済支援に充てる決意だ、とロイターに語った。
- 同高官は、アサド氏逃亡の直前に資金が密輸されたと認めたが、具体的方法には言及せず、当局は資金がどこに行ったかなお探っていると付け加えた。
- この作戦に関してアサド氏が積極的な指示をしたかどうか、ロイターは独自には解明できなかった。ただ複数の関係者は、アサド氏の承認がなければ実現は不可能だったとの見方をしている。
- <空港関係者の証言>
- 昨年12月6日、反体制派がダマスカスに接近する中で、座席数13のエンブラエルのジェット機がダマスカス国際空港に着陸。迷彩服を着用した十数人の空軍情報部の隊員がVIPセクションや移動経路などの警備に動員され、共和国防衛隊所属とされる数台の車が警備エリアに到着したと現場にいた人々などが証言した。
- 関係者は、る和国防衛隊が関与していたことは、アサド氏の作戦命令があったという意味だと指摘。同防衛隊はアサド氏本人、ないし同氏のいとこで司令官のタラル・マフルール氏以外の命令には従わないという。
- その後空港の警備責任者は職員に、このジェット機の管制は空軍情報部が行うと伝えた。シリア・アラブ航空の地上オペレーションを統括する人物は、この責任者から「ジェット機が着陸するがわれわれが管制する。あなたはこのジェット機を目撃しなかったことになっている」と言われたと当時を振り返る。
- 複数の関係者は、警備責任者は大統領府から直接命令を受けたと話している。
- <シリアとアブダビを往復>
- フライトレーダー24のデータからは、このジェット機がシリアとアブダビのアル・バティーン・エグゼクティブ空港を往復していたことが分かる。同空港は要人が利用し、厳格なプライバシー保護が設けられていることで知られる。
- 最初にアブダビを飛び立ったジェット機は現地時間正午ごろにダマスカスに着陸し、その後アブダビに向かって午後10時過ぎにダマスカスに戻ってきた。
- ある関係者は、ジェット機がダマスカスに着くと急行してきた車が短時間とどまってすぐに去り、再びジェット機が離陸していったと語る。
- 空港警備責任者は空軍情報部のスタッフに、12月6日にダマスカスから離陸する初回と2回目の便には大統領府職員や未成年者を含むアサド氏の親族が搭乗する予定だと伝達したという。この便には現金も運びこまれた。
- 2回目の便は、絵画や小さな彫刻なども輸送したとされる。
- 翌7日にはダマスカスに午後4時ごろ戻ってきたジェット機が1時間後またアブダビに向かい、この便には現金やアサド氏の企業ネットワークに関する情報が保存されていたハードディスクドライブや電子機器も持ち出されたもようだ。
- 保存情報には、金融取引記録や議事録、企業や不動産の保有状況、海外口座や出入金の詳細などが含まれていた。
- <フライト記録の空白時間>
- 12月8日には反体制派がダマスカスに到達したため、アサド氏はまだ掌握していたラタキアにロシア軍の助けを借りて逃げ出さざるを得なくなった。ダマスカス空港の機能はストップした。
- この日の深夜、ジェット機はアビダビに向けて最後の飛行をしたが、フライトレーダー24によると、到着まで6時間ほどフライト記録が空白になっている。
- この間にジェット機はフメイミム空軍基地に降り立った、と空軍情報部の元高官は明かした。衛星画像でも、ジェット機がフメイミム基地の滑走路上で確認された。同高官などの話では、ここで合流したのはイブラヒム氏と緊密な関係にあるアフメド・ハリリ・ハリル氏で、50万ドルの現金を運んできたという。
- ハリル氏はその2日前、シリア国際イスラミック銀行の口座からこの現金を引き出してきたとされる。
- 同口座はダマスカスに拠点を置く投資会社の名義で、イブラヒム氏がこの会社の50%を保有している。
- 一連の輸送に使われたジェット機は、所有者が機体のみ貸し出し、パイロットや乗員、整備士、地上業務、保険などは手当てしない「ドライリース」方式で運営された。
- 貸し出したのはレバノンの実業家だという。この実業家はロイターの取材に、シリア往復のフライトには一切関与していないと述べた。また、この機体は時折ブローカーから借りることがあるが、所有はしていないと説明した。
●エマージング
- トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進展なく不満 | ロイター
- トランプ米大統領とルビオ国務長官は18日、ロシアとウクライナの和平合意が成立する明確な兆候が早期になければ、仲介から撤退する意向を示した。
- 大統領はホワイトハウスで、「何らかの理由でどちらかが合意を困難にしているなら、ただ見送るだけだ。そうならないことを願う」と述べた。
- パリで17日に欧州やウクライナの首脳と会談したルビオ長官はこれに先立ち、「この取り組みを何週間も何カ月も続けるつもりはない」と発言。和平合意が数週間内に成立するのか、数日中に見極める必要があるとした。「大統領はこの件に非常に強い思いを持っている。これまで多くの時間とエネルギーを費やしてきた。これは重要なことだが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に注目に値する重要なことがほかに数多くある」と述べた。
- トランプ氏は具体的な期限についての質問には答えなかった。またプーチン大統領が引き延ばしているのではとの問いには、「そうではないことを願う」と答えた。
- 関係筋によると、トランプ大統領は政権内部で交渉を続ける価値があるのかどうか疑問視していると明言した。
- 17日のパリでの協議では、米国の和平枠組み案に「前向きな反応」を得たと述べた。合意の一環として、ウクライナに対する米国の安全の保障問題が取り上げられたと述べたが詳細には踏み込まなかった。協議終了後、ロシアのラブロフ外相と会談し、パリでの協議が建設的だったと伝え、米国の和平枠組み案の「一部項目」を説明したという。
- ルビオ氏は、和平合意の成立が困難であることは明らかだが、早期の合意成立の兆しが必要だと指摘。「12時間以内にまとまると言う人はいない。しかし、どれほどの相違があって、その相違を埋めることができるのか、われわれが想定する期間内に進展を図れるのか、を確認したい」と述べた。
- バンス副大統領はローマでメローニ伊首相と会見し、「残酷な戦争」終結へ米国が手助けができると楽観視していると述べた。
- ウクライナ和平交渉、一定の進展も米とのやり取りは複雑=ロシア | ロイター
- ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官は18日、ウクライナ戦争を終結させるための和平交渉について、一定の進展があったとしつつ、米国とのやり取りはかなり複雑だと述べた。
- 記者団に「当然ながら、議題が簡単なものではないからだ」と説明。その上で「ロシアはこの紛争を解決し、自国の利益を確保することにコミットしており、対話にオープンだ。われわれはこれを続けていく」と語った。
- 米国が和平仲介から手を引く可能性があるのかとの質問に対しては、それはワシントンの問題だと答えた。
- これまでの進展については、エネルギー施設に対する攻撃の停止合意を引き合いに出した。
- ルビオ米国務長官は18日、ロシアとウクライナの和平合意が成立する明確な兆候が見られなければ、トランプ大統領が数日以内に合意仲介を断念することになると述べた。
- プーチン氏、ウクライナで30時間のイースター停戦を指示 - Bloomberg
- ウクライナ、ロシアは攻撃継続と主張 - WSJ
- ウクライナは、ロシア軍が攻撃を停止すれば、ロシアが提案した30時間の停戦を順守すると述べた。だが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がイースター(復活祭)の戦闘停止を呼びかけた後も攻撃は続いているとした。
- ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアの攻撃に対して防衛を続けると述べた。
- ロシアが発表した一時停戦の前日には、トランプ米政権がウクライナでの停戦努力から撤退する可能性を示していた。プーチン氏は軍最高司令官との会合で、停戦はモスクワ時間19日午後6時(日本時間20日午前0時)に発効し、20日午前0時(同午前6時)まで30時間続くとし、ウクライナがこれを順守することを期待していると述べた。
- ゼレンスキー氏は、ロシアが攻撃を続けているとの報告を受けたとし、ロシアが停戦を順守すればウクライナも順守するが、ロシアの攻撃が続けばウクライナは防衛するために攻撃で対応すると語った。「沈黙には沈黙を、攻撃には防衛的な攻撃を」とXに投稿した。
- ゼレンスキー氏は、復活祭期間中に実現する停戦を30日間に延長することを提案した。これは米国が3月に最初に提案し、ウクライナは同意したがロシアは拒否した停戦期間。
- 「それこそがロシアの真の意図を明らかにするだろう――なぜなら30時間は見出しを飾るには十分だが、真の信頼醸成措置としては不十分だからだ」とゼレンスキー氏は述べた。「30日間あれば、和平にチャンスを与えられるかもしれない」
- 短期間の停戦を提案することは、プーチン氏に難なく外交的勝利をもたらしたとアナリストは指摘。米国側の関与停止を防ごうとする姿勢を示すとともに、自身を最も和平を望む指導者として見せたという。
- カーネギー財団ロシア・ユーラシアセンターの上級研究員、タチアナ・スタノバヤ氏は「停戦の提案が非常に短期間であるならば、何もリスクを冒さず、真に和平を望む者として彼(プーチン氏)に有利に働く」と語った。
- 米国、クリミアに対するロシア支配を認める用意-関係者 - Bloomberg
- 米国はウクライナのクリミア地域に対するロシアの支配を認める用意がある。事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたもので、ロシアとウクライナの和平合意の一環だという。
- こうした譲歩の可能性は、トランプ米大統領が停戦合意をまとめたいとの強い意向を持っていることを新たに示している。トランプ氏とルビオ米国務長官は18日、早急に進展がなければ、米政府は和平に向けた仲介から手を引く構えであることを示唆した。
- クリミアは2014年、ロシアによる侵攻と、それに続く住民投票によって一方的に併合された。国際社会はこの違法な併合の正当化を避けるため、クリミア半島をロシア領とは認めていない。
- ロシア領と認めることになれば、武力による領土獲得を禁じた国際法や条約を損ねる恐れがある。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアへの領土割譲の考えは一切ないと繰り返し表明している。
- 一方、クリミアをロシア領と認めるよう国際的に求めてきたロシアのプーチン大統領にとっては、今回の動きは大きな追い風となり得る。プーチン氏は今のところ、トランプ氏の広範な和平案に同意していない。
- 関係者によると、この件について最終的な決定はまだ下されていない。ホワイトハウスと国務省にコメントを求めたが、返答はなかった。一連の交渉に詳しい米当局者はクリミア承認の可能性に関して質問を受けたが、協議の詳細についてコメントを控えた。
- ウクライナ難色も
- 米国は17日、ロシアとウクライナの和平合意の実現に向けた提案をパリで同盟国に提示。これには、戦闘の終結ならびに恒久的な停戦が成立した場合の対ロシア制裁緩和の条件に関する概要が含まれていたと、ブルームバーグは先に報じていた。
- 関係者によれば、同提案では前線がおおむね凍結され、ロシアが現在占領しているウクライナの多くの領土は事実上、ロシアの支配下にとどまる形となる。また、ウクライナが強く望んでいた北大西洋条約機構(NATO)加盟も議論の対象から外れるという。協議は機密だとして、これ以上の具体的な内容は明かされなかった。
- パリではマクロン仏大統領と米国のウィトコフ中東担当特使の会談が行われたほか、ルビオ氏とフランス、ドイツ、英国、ウクライナの国家安全保障顧問や交渉当局者との会合も開かれた。
- トランプ大統領は18日、ホワイトハウスでいら立ちをにじませた。ロシアとウクライナ双方が停戦に向けて前進することに期待を示す一方、いずれかに真剣さが欠けていると判断した場合には、米国は手を引く用意があると述べた。
- 「何らかの理由で当事者の一方が状況を非常に難しくするなら、『あなたは愚かでひどい人間だ』と言ってわれわれは手を引くだけだ。しかし、そうならないことを願っている」と記者団に語った。
- トランプ政権の提案は今後、欧州各国やウクライナとの間でさらに調整が必要になるとみられる。特にウクライナ側が難色を示す可能性がある。
- 当局者の1人は、米国の計画はウクライナ側とのさらなる協議が必要であり、最終的な合意を意味するものではないと指摘。また、欧州はロシアが支配するウクライナの領土をロシア領として認めることはないとの見方を示した。複数の当局者は、ロシアが戦闘の停止に同意しなければ協議は無意味になると強調。停戦の履行を確実にするため、いかなる合意にもウクライナに対する安全保障の提供が不可欠だとしている。
- トランプ米政権、中国製船舶に課す入港料を一部免除 | ロイター
- アングル:トランプ関税受けベトナムに生産移転も、中国SHEIN村に打撃 | ロイター
- 中国、関税打撃の輸出業者支援の方針-国内で販路開拓も難題残る - Bloomberg
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
- さよなら「一般職」、生保・銀行最大手で相次ぎ廃止-賃金格差是正へ - Bloomberg
- 新湾岸道路は東京〜千葉をつなぐ新ルート? 完成したらどうなるのか【いま気になる道路計画】| KURU KURA(くるくら) 公務員でも多彩なキャリア 敷かれたレールにとらわれず - 日本経済新聞
- ●市況(ChatGPTによる要約版)
- 来週の米主要企業決算 決算本格化 テスラ、アルファベット - 株探(かぶたん)|米国株
- 22日(火)
- テスラ(0.44)
- GEエアロ(1.27)
- ベライゾン(1.15)
- RTX(1.38)
- ロッキード・マーチン(6.31)
- 3M(1.77)
- 23日(水)
- IBM(1.42)
- AT&T(0.52)
- テキサス・インスツルメンツ(1.08)
- ボーイング(-1.19)
- 24日(木)
- アルファベット(2.04)
- P&G(1.53)
- メルク(2.13)
- インテル(0.01)
- サウスウエスト航空(-0.18)
- アメリカン航空(-0.69)
- 来週の欧州主要企業決算 24日にBNPパリバ - 株探(かぶたん)|米国株
BNPパリバ(2.47)
備忘録(2025/4/17)
●海外企業決算
- [UNH] ユナイテッドヘルス 1Q増収最終黒字転換 売上高10%増1095億ドル、純利益62.9億ドル、EPS6.85ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AXP] アメックス 1Q増収最終増益 売上高7%増169億ドル、純利益6%増25.5億ドル、配当0.82ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [BX] ブラックストーン 1Q減収最終減益 売上高11%減32.8億ドル、純利益27%減6.14億ドル、配当0.93ドルへ減配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [STT] ステートストリート 1Q増収最終増益 売上高5%増32.8億ドル、純利益39%増6.44億ドル、EPS2.04ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [SCHW] チャールズシュワブ 1Q増収最終増益 売上高18%増55.9億ドル、純利益44%増17.9億ドル、配当0.27ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- DRホートン、冴えない決算も株価上昇 警戒したほど悪くはなかったとの見解も=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- [KEY] キーコープ 1Q増収最終増益 売上高16%増17.7億ドル、純利益2.0倍3.70億ドル、EPS0.33ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- 仏エルメス、米で関税を価格転嫁へ 第1四半期は予想下回る7%増収 | ロイター
- フランスの高級ブランド、エルメス(HRMS.PA), opens new tabが17日発表した第1・四半期の売上高は市場予想をわずかに下回った。中国の販売が引き続き低迷した。
- 米国で関税の負担を全て消費者に転嫁する方針も表明。通常の値上げ(今年は6─7%前後)に加えて価格を引き上げることになる。
- 米国では5月1日から全ての事業部門で新たな関税を受けた値上げを実施し、関税の影響を「完全に相殺」する。
- 第1・四半期の売上高は、為替変動の影響を除くベースで7%増の41億ユーロ(46億6000万ドル)。HSBCによると、ビジブルアルファがまとめた市場予想は9.8%増だった。
- エリック・デュハルグエ最高財務責任者(CFO)は記者団に対し、米国ではまだ消費者の行動に大きな変化は見られないとした上で「当然、米国については慎重な姿勢を取っている」と述べた。米国の販売は2桁増だった。
- 中国については、大幅な改善の兆しは見られないが、消費喚起に向けた政府の取り組みは明るい兆候だと述べた。
- 欧州の販売は13.3%増。年初のドル高で米国人観光客が増えた。ただ、その後ドルが下落しているため、こうした明るい傾向は長続きしない可能性があるという。
- ●日本企業
- ●先進国政治動向
- 米中関税協議、中国が申し出 トランプ氏「ディール実現可能」 | ロイター
- トランプ米大統領は17日、米国が中国に対する大規模関税を発表して以降、中国側から協議の申し出があったと明らかにした。
- トランプ氏は記者団に対し、米国は中国と関税について協議を行っているとし、中国との「ディール(取引)」は実現すると思うと語った。
- その上で、中国製品に対する米国の関税は引き上げられない可能性があり、むしろ引き下げられる可能性があると述べた。
- また、中国との貿易問題が解決するまで、中国系短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米事業を巡るディールを延期すると明らかにした。
●先進国中銀、金融当局
- ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨 | ロイター
- 欧州中央銀行(ECB)は17日、主要政策金利の預金金利を予想どおり0.25%引き下げ2.25%とした。利下げは6会合連続で過去1年間で7回目となる。
- 理事会後のラガルド総裁の記者会見での発言は以下の通り。
- <制限性>
- (金融引き締め度合いを評価することは)意味がない。なぜなら、引き締め度を評価することは、政策金利と中立金利の比較に大きく依存しているからだ。中立金利は、測定の問題を除けば、ショックのない世界で機能する概念である。
- <関税の影響>
- 需要へのマイナスショックであることは承知している。経済成長に一定の影響を与えることは予想できるが、インフレへの純粋な影響は、時間の経過とともに明らかになるだろう。
- <全会一致の決定>
- 25ベーシスポイント(bp)の利下げは全会一致で決定されたことを確認できる。
- 選択肢は議論されたが、例えば50bpの利下げに賛成する者は誰もいなかったため、25bpの利下げは間違いなく、その場にいた全員が同意した利下げだった。
- <貿易の混乱>
- 世界的な貿易混乱の拡大は、ユーロ圏のインフレ見通しにさらなる不確実性をもたらしている。世界的なエネルギー価格の下落とユーロ高は、インフレに更なる下押し圧力をかける可能性がある。さらに、関税上昇によるユーロ圏からの輸出需要の減少や、過剰生産能力を抱える国からの輸出がユーロ圏に流入することで、この圧力はさらに強まる可能性がある。
- <世界的な貿易摩擦>
- 経済成長に対する下振れリスクは高まっている。世界的な貿易摩擦の激化とそれに伴う不確実性は、輸出を抑制しユーロ圏の成長を鈍化させる可能性が高く、投資と消費の落ち込みにつながる可能性がある。
- 金融市場のセンチメントが悪化すると、資金調達条件が引き締まり、リスク回避が高まり、企業や家計の投資や消費意欲が低下する可能性がある。
- <防衛力強化>
- 防衛費とインフラ支出の増加は成長に寄与するだろう。
- <緊急財政政策>
- 現在の政治環境においては、ユーロ圏経済の生産性、競争力、そして回復力を高めるための財政政策と構造政策が、これまで以上に急務となっている。
- <例外的な不確実性>
- 経済見通しは例外的な不確実性によって曇っている。
- トランプ氏、FRBに利下げ要求 パウエル議長解任「早いほど良い」 | ロイター
- トランプ米大統領は17日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の解任は「早ければ早いほど良い」と述べ、FRBに対し改めて早期利下げを要求した。
- トランプ氏は「パウエル議長は欧州中央銀行(ECB)のように、とっくの昔に金利を引き下げるべきだった。少なくとも今すぐにでも引き下げるべきだ」と自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に投稿。利下げを巡る自らの立場を改めて強調した。
- その上で、パウエル議長は「いつも対応が遅すぎ、間違っている」とし、パウエル氏が前日に行った講演について「典型的で完全な混乱だ!」と非難した。
- パウエル議長は16日にシカゴ経済クラブで行った講演で、最近の市場の変動はトランプ政権による関税政策の劇的な転換を論理的に消化しているためで、ストレスの兆候ではないとして介入に慎重な姿勢を表明。関税政策によってインフレ率と雇用がFRBの目標からさらに遠ざかるリスクがあると警告し、「政策スタンスの調整を検討する前に、より明確な状況が明らかになるまで待つことができる」と述べた。
- パウエル議長の任期は2026年5月まで。トランプ氏はこれまでもパウエル氏の解任を試みる姿勢を示している。
- 金融政策変更の差し迫った必要なし、関税の影響見据え=NY連銀総裁 | ロイター
- FRB、独立性低下の恐れも 最高裁に焦点 - WSJ
- 投資家はすでにドルと米国債の安全性を懸念している。米連邦最高裁判所の判断次第では、不安はさらに高まるかもしれない。
- 最高裁はある問題を取り上げようとしており、それは米連邦準備制度理事会(FRB)に直接関係するものではないものの、ドナルド・トランプ大統領がFRB議長を解任できるかどうかを左右する可能性がある。
- 最高裁判事がそうした権限をトランプ氏に与える兆候はない。仮に与えたとしても、トランプ氏自身が指名したジェローム・パウエルFRB議長を解任するとは限らない。
- ただ、トランプ氏に解任の権限を与えれば、議長を含むFRBの7人の理事を同氏は財務長官に対するのと同じように意のままに任命できることになり、FRBの独立性は事実上失われることになる。
- そうなれば投資家は、金融政策はもはやインフレや雇用、金融の安定性に関するFRBの判断だけでなく、トランプ氏の優先事項を反映すると結論付けることになるだろう。
- そして金融市場では不透明感と価格変動が劇的に増幅される可能性がある。そうした潜在的な帰結をここ数週間で垣間見ることができた。トランプ氏は関税を課したかと思えばその後一部を撤回し、株式、債券、ドルは乱高下した。また、関税によってインフレ見通しが強まる中、トランプ氏は「行動が遅い」FRBに利下げを求めた。
- 1935年の判例に対する挑戦
- FRB理事は大統領が指名し、議会上院による承認を経て14年の任期で就任する。そのうちの1人は4年の任期で議長を務める。理事の解任は正当な理由がある場合に限ると連邦準備法は定めている。学者らはこの原則が1935年に最高裁によって確立されたと考えている。最高裁はその年、フランクリン・ルーズベルト大統領が単に政治的な理由で連邦取引委員会(FTC)の委員を解任することを禁じ、FTCの委員は通常の行政府職員とは異なり準司法的な役割を果たしていることを根拠に挙げた。
- だがトランプ政権は2月、このいわゆる「ハンフリーの遺言執行者判決」について、行政府に対する大統領の統制権を侵害しているとして、最高裁に覆すよう求めた。トランプ氏はその後、この問題を巡り強硬な態度を示し、独立行政機関である全米労働関係委員会(NLRB)とメリットシステム保護委員会(MSPB)のそれぞれの民主党系委員を解任した。
- いずれの民主党系委員も解任は違法だとして訴訟を起こした。ジョン・ロバーツ最高裁長官は、最高裁がこの問題を検討する間は解任を無効にしない判断を示した。ロバーツ長官は訴訟の当事者双方に対し、22日までに意見書を提出するよう求めた。
- 最高裁判事はまず、原告らが職に復帰すべきかどうかについてのみ判断し、その後に訴訟の本質的な内容について判断を下す可能性がある。最高裁で多数派を形成する保守派判事は「ハンフリーの遺言執行者判決」に対して懐疑的な見方をしていることで知られている。
- 1935年の判例がなくても、FRB議長には解任に異議を唱える方法があるかもしれない。トランプ氏の関係者の中には対立を警戒している向きもあるようだ。ホワイトハウスが2月に独立機関への監視を強化した際、FRBの銀行規制は対象になる一方で金融政策は対象から外された。
- 学者の間では、最高裁判事はたとえ「ハンフリーの遺言執行者判決」を覆しても、FRBを保護する方法を見つけるとの見方がある。
- そうしなければ、最高裁判事はFRBを従来とは根本的にこれまでとは異なる機関に変えてしまうことになる。
- 客観的データに基づく決定
- 中央銀行に独立性が求められる理由は単純明快だ。選挙で選ばれた指導者はインフレへの対応よりも高い経済成長と低金利を優先する傾向がある。中銀の独立性が保たれている場合はインフレ率が低くなることが研究で示されている。顕著な例を挙げると、英イングランド銀行が1997年に独立性を与えられた際に債券投資家は予想インフレ率を約1ポイント引き下げ、英国債利回りの低下につながった。
- 中銀はたとえ独立していても、ミスを犯すことがある。FRBが2021年のインフレは一時的なものだと判断したのはその一例だ。また、中銀は政治的影響から完全に自由なわけでもない。リチャード・ニクソン大統領は1972年の再選に向けて、アーサー・バーンズFRB議長に低金利を維持するよう圧力をかけた。
- また、単に議長の地位が変わっただけでは、低インフレと完全雇用というFRBの使命は変わらない。
- とはいえ、金融政策には数え切れないほどの判断が伴い、自身の職を心配する議長は、職を守るために判断基準をゆがめることもありうる。
- ニクソン氏のように大統領が水面下で圧力をかけていれば、FRB議長は外見上は独立性を保つことができるだろう。だがトランプ氏は他の大統領とは異なる。同氏は独立性という概念そのものを否定し、連邦機関全体が自身の優先事項に従うことを期待している。そうした姿勢は自身の敵を弁護する法律事務所を罰することであろうと、家族や支持者のお気に入りである暗号資産(仮想通貨)の規制緩和であろうと一貫している。トランプ氏は自身の好みを公言するが、その際ソーシャルメディアを通じて表明することが多い。
- そのため、トランプ氏が公言する意見は、すぐに市場価格に反映されることが考えられる。同氏が金利引き下げを求めれば、市場はFRBが耳を傾けると結論付けるだろう。最初の反応として、短期債利回りが低下し、株価が上昇するかもしれない。だが投資家はインフレ率の上昇も見込み、長期債利回りは上昇するだろう。
- FRBは短期金利を低く抑えたり、債券を買ったりすることで債券利回りを抑えようとするかもしれない(債券は価格が上昇すれば利回りは低下する)。それでも「インフレそのものを抑制することはできないだろう」とハーバード大学のエコノミストで元FRB理事のジェレミー・スタイン氏は語った。
- FRB当局者の言動は世界の市場に影響を及ぼすため、新たな情報がどのように金融政策を左右するかを投資家が推測できるよう、当局者はインフレ率や失業率、金融関連の価格といった客観的なデータに基づいて決定を下すよう細心の注意を払っている。
- 「FRBの独立性がなくなれば、市場参加者の思考プロセスははるかに複雑になる。政治動向の強い影響を考慮する必要があるからだ」。ブルームバーグ・エコノミクスとピーターソン国際経済研究所に所属する元FRBエコノミストのデービッド・ウィルコックス氏はそう語った。
- 今はFRBにとって、政治に左右されていると映るのは非常に危うい時期だ。財務省は共和党の予算案で示された赤字を賄うため、今後数年にわたり数兆ドルの新規国債を発行しなければならない。そうした国債の価値をインフレが目減りさせることを従順なFRBは放置するとの疑念が生じれば、投資家は国債購入に二の足を踏むだろう。トランプ氏が仕掛けた貿易戦争を受けたドル安や、金価格・債券利回りの上昇から判断すると、一部の投資家はすでに米国への投資リスクを抑えようとしている。
- 最高裁の判断が米国民の生活に動揺をもたらすのは珍しいことではない。今回の件に関する判断は金融システムを揺るがすかもしれない。
- 米財務長官、ホワイトハウスに警告 FRB議長解任巡り=報道 | ロイター
- トランプ米大統領は数カ月にわたり、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の解任について私的に協議してきた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が17日、報じた。
- トランプ氏はケビン・ウォーシュ元FRB理事とこの件について話し合い、パウエル氏の後任としてウォーシュ氏を起用する可能性について言及したと報じている。
- WSJ紙によると、ウォーシュ氏はパウエル議長解任の試みに反対し、任期を全うさせるべきだとトランプ氏に助言した。
- トランプ大統領はこの日、自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、パウエル議長の解任は「早ければ早いほど良い」とし、FRBに対し改めて早期利下げを要求。その後、ホワイトハウスで記者団に対し、パウエル議長は「私が求めれば辞任するだろう」と述べた。
- パウエル議長の任期は2026年5月まで。
- トランプ氏、パウエルFRB議長解任をウォーシュ元理事と協議=報道 | ロイター
- ●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
- Taiwan Semiconductor says tariffs haven’t changed customer behavior as profit booms 60% - MarketWatch
- 中東欧地域はドイツ財政拡張の大きな恩恵受けられず=S&P | ロイター
- 中東欧地域(CEE)は伝統的にドイツ経済とのつながりが強いが、ドイツによる財政拡張の大きな恩恵は享受できない――。S&Pグローバルはロイターにこうした見方を示した。
- ドイツは先月、大規模に借り入れを増やす財政制度改革を承認し、景気刺激効果が期待されている。ただS&Pは、そうした効果は、トランプ米大統領の関税政策とそれに伴う不確実性によってある程度打ち消されると分析した。
- さらに「われわれはドイツの財政拡張が主として国内の幅広い投資と需要を後押しし、CEEの産業を直接支援するわけではないとみている」と述べた。
- S&Pが算出したドイツの財政支出による経済成長率押し上げ効果は今年が0.1ポイント、各種改革が遅滞なく実行されれば2028年までには0.9%まで次第に高まる。しかし米国の関税政策がもたらすさまざまな事象と、特に今年が大きくなる不確実性に足を引っ張られる見込みだという。
- 一方中東欧諸国のうち、ポーランドは経済規模が最大で国内市場も大きく自動車輸出への依存度が低いので関税リスクは相対的に小さいが、それでも米国の関税で経済成長率が0.4ポイント下がると見込んでいる。
- 輸出依存度がより高いチェコとハンガリーは、米関税で来年の成長率がともに0.5-0.6ポイント下振れすると試算した。
- ヘッジファンドのマン・グループ、資産56億ドル減少 関税巡る市場混乱で | ロイター
- 米国債の「安全資産」の地位、欧州保険監督当局トップが疑問視 - Bloomberg
- 欧州の保険監督当局のトップは、米国債の「安全資産」としての地位は最近の相場変動の大きさによって疑問が投げかけられていると述べた。
- 事情に詳しい関係者によると、欧州保険・企業年金機構(EIOPA)のペトラ・ヒールケマ議長は先週、欧州連合(EU)の金融監督当局を代表して行ったプレゼンテーションの中で、このような発言を行った。
- 非公開の会合での発言だが、長らく「無リスク資産」とされてきた米国債を巡り不安が広がっていることを示唆するものだ。欧州の規制当局が現時点で具体的な対応に踏み切った兆しはないものの、こうした発言は、過去数週間で米国債に対する世界の見方がいかに急速に変化したかを浮き彫りにする。
- 米国債市場はこのところ激しい値動きに見舞われている。特に先週は、トランプ米大統領が推し進める関税政策が世界貿易を混乱させ、米経済の景気後退(リセッション)を招くとの懸念から、10年債利回りは週間で2001年以来の大幅上昇となった。一方で投資家は金やドイツ債、ユーロなど代替資産に目を向けた。
- ミリオネア増税案、実現してもビリオネア無傷-割を食うのはバンカー - Bloomberg
- 関税ショック、米市場を英国や新興国のようにする恐れ-ピムコが警告 - Bloomberg
- ブルーベイ、日本国債30年物に強気に転じる-日銀利上げ急がずと分析 - Bloomberg
- IMF、経済成長予測を大幅に下方修正へ 世界的な景気後退は予想せず | ロイター
- 国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は17日、貿易摩擦や国際貿易体制の広範な変化を受けて、IMFの経済予測が大幅に下方修正されるとの見通しを示した。ただ、世界的な景気後退は予想しなかった。
- 来週のIMF・世界銀行の春季会合を控えて、ワシントンのIMF本部で行う講演の準備原稿で述べた。
- 貿易政策を巡る不透明感が「桁違い」のレベルに達しており、金融市場のボラティリティーが極端に高まっていると指摘。一部の国ではインフレ予測も上方修正されるとの見通しを示した。
- 特に最近の米国債利回りの変動は、警告と受け止めるべきだとし「金融環境が悪化すれば誰もが悪影響を受ける」と述べた。
- IMFは1月時点で今年と来年の世界経済成長率をともに3.3%と予測していた。22日に新たな「世界経済見通し」を公表する。
- 「大国同士が対立する中で、中小国が翻弄されている」とし、中国、欧州連合(EU)、米国は世界の3大輸入国・地域であり、金融環境の引き締まりにさらされやすい中小国に大きな影響が波及すると指摘した。
- <保護主義はイノベーションを阻害>
- 関税の引き上げは、まず経済成長に打撃を与えると主張。大国では関税引き上げが新たな対内投資を促し、雇用創出につながる可能性もあるが、これには時間がかかるとの見方を示した。
- 「保護主義は長期的に生産性を損なう。特に中小国ではそうだ」とし、産業を競争から保護すれば、起業家精神やイノベーションも阻害されるとの認識を示した。
- 各国に対し、機敏で信頼できる金融政策と強力な金融市場の規制・監督を維持しながら、経済・金融改革を継続するよう要請。
- 新興国については、為替の柔軟性を維持すべきであり、支援国は低所得国への援助をしっかり行うべきだと述べた。
- 「世界は分断ではなく、より強靭な経済へと進むべきだ」とし「深刻なショックが頻繁に起きる時代には、大小を問わず全ての国がグローバル経済を強化するため、それぞれの役割を果たすことができるし、果たす必要がある」と述べた。
- ●中東情勢
- ハマスが深刻な資金難、戦闘員への支払いにも苦慮 - WSJ
- イスラム組織ハマスが戦闘員への支払いに必要な資金の調達ができず、ガザで新たな問題に直面している。
- 中東地域やイスラエル、欧米政府の当局者らによれば、イスラエルは先月ガザ地区への人道支援物資の供給を遮断。ハマスはこうした物資を押収し、資金調達のために売却していたという。
- またイスラエル軍は新たな攻勢で、戦闘員への現金配布で重要な役割を果たしていたハマス幹部を殺害し、他の幹部らも潜伏を余儀なくされていると中東地域の情報機関当局者らは明らかにしている。
- イスラエル軍はここ数週間で、ハマスのテロ資金調達の要とされる両替商や、複数の政治幹部を相次いで殺害したと発表。ハマスはこれにより、深刻な資金難に陥っているという。
- 情報機関当局者らによれば、ガザ政府職員への給与支払いは多くの場合において停止しており、ハマスの上級戦闘員や政治スタッフは先月のラマダン(断食月)中旬から給与の約半分しか受け取っていない。一般のハマス戦闘員の給与は月額200ドル(約2万8500円)から300ドル程度とされている。
- 今回の資金不足は、ガザの現金経済においてハマスの組織全体に困難をもたらし、より攻撃的なイスラエル軍の戦略にも直面する中で、武装組織の機能不全が深刻化していることを示している。
- ガザ経済を調査するエヤル・オーファー氏は、ハマスが「たとえ大量の現金を保有していても、現時点での配布能力は非常に限られているだろう」と指摘。同氏によれば、ハマスは現金を運ぶ配達人を活用するか、場所を設定してこれまでは支払いを行ってきたが、現在はいずれもイスラエル軍の標的となる可能性があるとした。
- ハマスからは同組織の財政状況や、資金調達方法について、今のところコメントは得られていない
- ハマスは、戦争前はカタールから月額1500万ドルの現金送金を受けていた。また西アフリカ、南アジア、そして英国などから資金を調達し、その多くをトルコに保管して約5億ドルの資金を蓄えていたと欧米および中東の当局者らは述べている。
- だが戦争が始まると、イスラエルはガザへの現金の物理的な移動を厳しく制限し、米国指定のテロ組織であるハマスは制限を回避する方法を見つけざるを得なくなった。現職および元パレスチナ当局者らによれば、ハマスはパレスチナ銀行などの支店から1億8000万ドルが奪われた件などにも関与していた。
- 中東やイスラエル、欧米の当局者らによれば、ハマスは人道物資や商業物資の流れを利用して新たな収入源を構築。これには商人への課税、検問所でのトラックへの関税徴収、また転売のための物資の徴発などが含まれる。ハマスが国外の資金を使って人道物資を購入し、それをガザで再び販売して現金に換えることもあった。
- だが現在は支払いの減少により、ハマスは新たな戦闘員を勧誘することや結束力を維持することが困難になっている。またイスラエルがガザでより多くの土地を占領し、市民がハマスに対して戦争終結の失敗を非難する異例の抗議行動も起こすなど、状況は悪化している。
- ガザに残っている物理的な現金の正確な量を把握するのは困難だが、オーファー氏を含むアナリストらは、流通している紙幣が30億ドル程度あると推定している。現金不足があまりにも深刻であることから、パレスチナ人らの間では紙幣を洗浄し、テープで修復して再び流通させるための修理店も設けられているという。
●エマージング
- 中国企業株、114兆円の米投資家資金流出リスクに直面-ゴールドマン - Bloomberg
- 米国の投資家による中国企業株への投資ができなくなる「極端なシナリオ」の下では、米投資家が約8000億ドル(約114兆円)相当の中国企業株の売却を余儀なくされる可能性があると、ゴールドマン・サックス・グループが推計した。
- 劉勁津(キンガー・ラウ)氏らゴールドマンのアナリストは16日のリポートでで、中国企業の米国預託証券(ADR)の約7%が米機関投資家によって保有されていることを指摘。
- これらの機関投資家は香港での取引もできなくなる可能性があり、中国企業が米国での上場廃止を余儀なくされた場合、当該企業の株式を売却せざるを得ないことになるという。
- 米中貿易戦争の激化に伴い、米中の金融市場のデカップリング(分離)というかつては考えられなかった、投資家にとって最悪のシナリオの可能性が浮上している。
- トランプ大統領の1期目に議題となった米国の取引所が中国企業を上場廃止にすることについての懸念が再浮上している。ベッセント米財務長官は最近、中国との貿易交渉において「全ての選択肢が議論の対象だ」と述べた。
- ゴールドマンのアナリストは「世界の取引システムにおける極端な不確実性は、世界の資本市場に異常なボラティリティーを引き起こすとともに、世界的なリセッション(景気後退)と2大経済大国のデカップリングに対する懸念を高めている」と指摘。
- 強制的な上場廃止となった場合、中国企業のADRとMSCI中国指数が現水準からそれぞれ9%と4%下落する可能性があると試算した。
- ゴールドマンによると、米機関投資家は現在、中国企業のADRを時価総額の26%に相当する250億ドル程度保有している。香港株へのエクスポージャーは522億ドル(時価総額の16%)、本土株(A株)の保有割合は0.5%で、これらを合計すると中国企業株の保有は800億ドルを超える。
- 一方、同じシナリオ下で中国投資家は総額1兆7000億ドル相当の米金融資産の売却を余儀なくされる見込みで、その内訳は約370億ドルが株式、1兆3000億ドルが債券だという。
- 中国で高まる「国産」志向、揺らぐ米製品の優位 - WSJ
- 中国・四川省に住む3児の母、ツァオ・リリさんは、かつては世界中の製品を好んで使っていた。だが今では国産品を購入している。
- 数年前にホンダ車を手放し、中国・理想汽車(リ・オート)製の電気自動車(EV)に乗り換えた。激化する貿易戦争を受け、米アップルの「iPhone(アイフォーン)」ではなく、中国の華為技術(ファーウェイ)製のモデルを使うことを決めた。また今年に入り、中国のアニメ映画「ナタ 魔童の大暴れ」を劇場で2回鑑賞した。そのチケットの売り上げは、同作品が21億ドル(約3000億円)という記録的な興行収入を達成するのに貢献した。
- スマートフォンからファストフードに至るまで、主要な米国ブランドは、中国で地元のライバル企業に急速にシェアを奪われている。ツァオさんは、瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)、ファーウェイ、スポーツウエア大手の安踏体育用品(アンタ・スポーツ・プロダクツ)、ファストフードチェーンの蜜雪氷城(ミーシュエ)といった中国ブランドを次第に受け入れるようになった一人だ。これらの企業は、中国市場における米国ブランドの支配力を侵食している。
- 「もはや外国ブランドにこだわる必要はない」とツァオさんは語った。
- ドナルド・トランプ米大統領の中国との関税合戦の激化により、中国の消費者がさらに国内ブランドに向かう可能性がある。トランプ氏の関税発表後、福州を拠点とするスーパーマーケットチェーンの永輝超市は、中国企業に店頭の商品棚を占有するよう声明で呼びかけた。「『中国製』の星の光を集め、国内市場を照らす銀河系を作ろう」
- また中国は先週、米国からの映画の輸入を制限すると発表した。観客がすでに国内作品に傾倒しつつある中国市場で、ハリウッドにとって重要な夏の映画シーズンを前に締め付けを強化した。
- 激しい競争
- ナイキ、スターバックス、俳優のトム・クルーズなど、世界中で人気の高い米国ブランドの多くは、中国でより新しい企業との競争に直面している。これらの企業は米国ブランドと同じ土俵で勝負を挑み、長年にわたる米国の優位性とソフトパワーに食い込んでいる。
- ナイキは3月、中国での四半期売上高が前年比17%減少したと発表した。同月、テスラの中国国内販売台数は12%減少した。BMW、ポルシェ、アップル、スターバックス、ロレアルはいずれも、かつては四半期ごとに繰り返されていた中国での成長が売り上げ低迷に転じたと投資家に警告している。
- 「ナタ 魔童の大暴れ」が多くの人気映画の世界興収を上回ったことは、国産ブランドへの流れを浮き彫りにしている。同作品の成功は、政府が公務員向けに「集団鑑賞」を組織するなど愛国的なキャンペーンに後押しされた。あるイベントでは、観客は国歌斉唱を求められた。
- ハリウッド映画は米中間のサービス貿易の一部で、貿易戦争の新たな戦線だ。物品とは異なり、米国は中国に対してより多くのサービスを中国に輸出している。中国人の家族が米国の大学教育に費やす数十億ドルなど他のセクターに比べれば映画が貿易に占める規模ははるかに小さいものの、映画ほど象徴的な重みを持つセクターは少ない。
- これまでディズニーなどの大手スタジオを政治的な標的にしてきたトランプ氏は、不確実な先行きに直面する映画制作会社にほとんど同情を示さなかった。10日、中国による米国映画などの文化輸入の制限について尋ねられると、「もっとひどいことを聞いたことがある」と答えた。
- 事情に詳しい関係筋によると、米国映画の制限に関する情報が広まった直後、中国の映画当局は米国の業界幹部らに非公式に連絡を取り、この政策が映画スタジオの最も期待される作品に影響を与えるとは考えていないと伝えた。中国の映画館は、収益を維持し、映画館が入居するショッピングモールの集客を生み出すため、これらの作品の興収を必要としている。
- 中国政府の思惑を知る手掛かりはまもなく得られる。多額の予算が投じられた、レーシングを題材としたブラッド・ピット主演の新作映画「F1」が今週、共産党当局に審査のため提出される予定だ。
- ソフトパワーの喪失
- 米国映画はハリソン・フォード主演作「逃亡者」(1994年中国公開)のリリースとともに中国に流入し始め、西側のブランドに対する市場開放の一環となった。
- 2012年までに、映画スタジオは中国でトップクラスの作品が9桁(1億ドル以上)の興収を上げることを見込めるようになった。2019年には「アベンジャーズ/エンドゲーム」が6億300万ドルを稼ぎ出し、米国映画として中国市場における歴代最高興収を記録した。
- ただ、その興収には政治的な代償が伴った。制作会社は当局が問題視する内容の作品を検閲することに同意しなければならず、中国が映画を政治的な取引材料として利用することもあった。
- トランプ政権1期目に米中が非難の応酬を繰り広げた際、映画スタジオの幹部らは中国市場での米国作品上映が厳しくなっていることに気付いた。新型コロナウイルス流行時、中国当局は数カ月にわたって米国映画の公開を許可せず、中国の観客はさらに国産映画に流れた。
- エコノミストは、今回は貿易戦争の激化による影響で、中国の消費者が財布のひもを締め、国内ブランドを含めあらゆる商品の購入を控える可能性があると警告している。それでも、少なくとも今のところ、一部の消費者は楽観的な姿勢を続けている。
- 福建省在住のグラフィックデザイナー、クリス・ジアさん(29)は、生活のあらゆる場面で中国ブランドが浸透しているのを目にする。自宅で使う家電からジョギングの際に着用する(ファッションにアスレチックな要素を取り入れた)アスレジャーウエアまで、中国ブランドであふれている。ジアさんは米国と日本のアニメを見て育ち、今でも本棚に「トランスフォーマー」や「トイ・ストーリー」のキャラクターのフィギュアを飾っている。しかし、今年に入ってハリウッド映画は1本も見ていない。
- 「友人たちは皆、自分たちの生活は貿易戦争にそれほど影響されないと言っている。米国製品にあまり頼っていないから」とジアさんは話す。「考えてみると、彼らの指摘はもっともだ」
- 中国の若年失業率、3月は16.5%に低下 | ロイター
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
- ユナイテッド航空機のエンジンから出火、離陸時にウサギと衝突か 米 - CNN.co.jp AIが仕事を全て奪うわけではない理由 - WSJ
- ●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(17日)ダウ527ドル安、ドル持ち直し・利回り上昇 | ロイター
- ### 為替市場
- - ドルは主要通貨に対して下落後に持ち直し。
- - **ユーロはECBの利下げ**を受けて下落。取引はイースター前で閑散。
- - ECBは**預金金利を0.25%引き下げ2.25%に**。利下げは1年で7回目。
- - **ユーロ/ドル:1.1351ドル(0.41%下落)**
- - **ドル/円:142.54円(0.51%上昇)**、一時141.60円まで下落。
- ### 債券市場(NY)
- - **10年債利回り:4.331%(+5.2bp)**
- - **2年債利回り:3.807%(+2.1bp)**
- - 利回り格差は**52.5bp(前日48.9bp)に拡大**
- - グッドフライデーを控え、小動きで短縮取引。
- ### 米株式市場
- - **主要3指数はまちまち**
- - トランプ大統領が日本との関税協議に「大きな進展」と発言。
- - **金利見通し懸念が重し**
- - S&P500は上げ幅縮小、ナスダックは下落、ダウも下落。
- - **イーライ・リリーとアップルは上昇**し、下支え。
- ### 商品市場
- - **金先物:3日ぶり反落**(6月物終値は1オンス=3,328.40ドル、-18.00ドル)
- - **原油先物:続伸**
- - 米国の対イラン・中国政策で供給リスク意識。
- - **WTI5月物:64.68ドル(+3.54%、2週間ぶり高値)**
- - 週間では5.17%上昇し、3週ぶりプラス。
- 人工知能(AI)は人間の仕事を補完し、手助けをしてくれるのだろうか。それとも人間の仕事を自動化し、職を奪うのだろうか。ある経済学者は、それは人間次第だと主張する。そして、人間は間違った方向に進んでいるという。
- 米マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学者、センディル・ムッライナタン氏(53)は、AIは人間に降りかかってきたものではなく、人間が作り出しているものだと指摘する。AIがどのような技術になるかは人間が選択できるという。
- 2002年に「マッカーサー天才賞」を受賞したムッライナタン氏はキャリアの初期に、行動経済学の知見が貧困層にどのように役立つかを研究することに力を入れた。その集大成として、行動心理学者のエルダー・シャフィール氏との共著で「Scarcity: Why Having Too Little Means So Much(邦題:いつも「時間がない」あなたに:欠乏の行動経済学)」を2013年に出版した。ムッライナタン氏はその後、AIに焦点を当てた。
- アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏が1973年に米誌「サイエンティフィック・アメリカン」に掲載された図表を見て思いついたアイデアに、ムッライナタン氏は強い印象を受けた。その図表は、「自転車に乗った人間」は体重当たりで見ると他の動物よりもはるかに効率的に移動できることを示していた。ジョブズ氏は、コンピューターは「頭脳のための自転車」であるべきだと述べ、人間に備わる能力を増幅させるものとの認識を持っていた。
- ムッライナタン氏は、コンピューターは人間に取って代わるものではなく人間を助けるためのツールだという考え方を、改めて確認し、それをAIに適用する必要があるとみている。
- WSJ:AIは仕事にどのような影響を与えるかということを経済学者は議論してきた。AIは人間に取って代わるのか、高学歴の人々には便利だが低学歴の人々には不利に働くのか、あるいは全ての人々に恩恵をもたらすのか、といったことだ。だがあなたはそれを異なる視点で捉えている。
- ムッライナタン氏:人々はAIがさまざまなことを自動化すると想像しているが、自動化は単なる一つの道に過ぎないことを理解していない。機械学習やAIには本質的に、私たちがその道に進むことを決定づけるものは何もない。もう一つの道は補完であり、私にとっては「頭脳のための自転車」がそれを表している。
- 最終的に自分たちに取って代わるものを作るのか、それとも自分たちの能力を高めるものを作るのかということについて、私たちは影響を与えることができる。だが私も他の人々と同じように緊急性を感じている。自動化の道を進み続ければ、後戻りして物事をやり直そうとするのは非常に難しくなるだろう。
- WSJ:AIツールの開発と活用には何が問題があるのか?
- ムッライナタン氏:アンソロピック、オープンAI、あるいはグーグルが新たなモデルをリリースするたびに、彼らが必ず評価基準の向上を口にするのに気付くだろう。それが彼らのスコアの付け方だ。多くの面で評価基準は、こうしたモデルは何が得意であるべきかを決定づける。
- 私たちはある分野を選び、「人間と同じくらいにこなせるだろう?」と問いかける。つまり、自動化のための能力が高いアルゴリズムを構築しようとする。そして、ますます向上していると彼らが言う時には、自動化の能力がますます向上していることを意味している。標準的な評価基準を見ても、「ああ、これは人間の作業をより良くするための指標だ」と言えるようなものは何もない。
- WSJ:そうした補完の役割をAIが偶然にでも意図的にでも果たしている状況はあるのか?
- ムッライナタン氏:私のお気に入りの例の一つに、以前に教え子だったリンジー・レイモンド氏がエリック・ブリニョルフソン氏とダニエル・リー氏と共同で執筆した論文がある。彼らはコールセンターを対象にした(実際には人々がタイピングする「チャット」センターだが、ここではコールセンターと呼ぶ)。誰かがある問題にぶつかった場合など技術的な問い合わせが寄せられ、担当者がそれに回答する。
- AIチャットボットが導入され、担当者に提案を行う。(研究者は)ボットが担当者のパフォーマンスに与える影響を調べ、担当者はボットを使うようになるとパフォーマンスが向上することを発見する。また、最もパフォーマンスの低い担当者が最も恩恵を受けることが明らかになる。
- その後、このボットが1日ほどオフラインになった時に、担当者のパフォーマンスがどうなるかを調べる。ボットがないと担当者は当初は単に元の状態に戻ってしまうことが分かった。しかし数カ月後にボットを取り除くと、担当者はボットを使っている時と同じくらい良いパフォーマンスを示す。実際には何が起きていたかというと、このボットは単なる補助ボットではなく、教師ボットになっていたということだ。
- WSJ:「頭脳のための自転車」との関連でAIはどのように捉えられるか?
- ムッライナタン氏:仕事を探していて、どこに応募すべきかを決める手助けをするアルゴリズムの力を借りたいと仮定する。どこに応募すべきかという問いは、本質的に「頭脳のための自転車」の問題だ。それには、その人が知っていること(どんな仕事が好きか、どこに住む意思があるかなど)と、アルゴリズムの方が適していること(履歴書に基づくと、どこで面接を受けられる可能性が高いか、どこで内定をもらえる可能性が高いか)を組み合わせる必要がある。
- つまり、2種類の異なる情報がある。アルゴリズムは、あなたの履歴書を見て、どのような機会があるかを理解している。一方、あなたは自分の好みを理解している。何らかのコミュニケーションが行われれば、多くのことが生まれる可能性がある。
- WSJ:結局のところ、AIはデータの処理では人間よりもはるかに優れているがデータ以外に関しては役に立たない、ということにおおむね落ち着くように思われる。
- ムッライナタン氏:極めて多くの問題において、データに含まれていないものは、含まれているものと同じくらい重要性が高い。
- WSJ:労働者のためのより良いAIを設計するために、行動経済学のどのような知見を生かすことができるのか?
- ムッライナタン氏:補完の役割が特に有用な点として、人間が得意でない分野を手伝い、人間が優れている分野を伸ばす余地を残すことが挙げられる。行動経済学はそうした隠れた点を明確化することに役立ってきた。
- 履歴書による書類選考を例に挙げよう。ほんの一瞬で何かを読み通すということは私たちは全く得意ではない。履歴書の審査が終わった後、「あなたが通常は選ばないタイプの履歴書がここに10通あります。しかしもし選んだ場合は、実際にその人を採用したり、面接が良い結果になったりするようです。もう少し時間をかけてみてはどうですか」と提案するような製品がもし存在すれば、非常に興味深いことだ。
- WSJ:あなたの研究は、基本的に時間や金銭などの欠乏が精神的な能力を奪うことを示している。職場における欠乏の問題に対処するのにAIはどのように役立つのか?
- ムッライナタン氏:仕事の本質を根本的に変える製品とは、何を受け入れ、受け入れないかについて賢明な判断を行う手助けをするものだと考える。少し平凡に聞こえるかもしれないが、「Googleカレンダー」や自動スケジューラーがすでに存在する。こうしたツールはスケジュール調整の実用的な面を全て解決するが、誰にとっても重要な時間管理の問題を解決しない。重要な問題とは、この会議はここに入れることができる、といった類いのものではない。私たちは「余裕」をうまく管理できないことが問題になっている。「なんてことだ。これらの会議を全て入れてしまえば、手に負えなくなる」ということに考えが及ばない。
- ここには、すでに言及した二つの要素があることに注目してほしい。アルゴリズムは、カレンダー、過去の会議、心理的バイアスなどあなたに関連するさまざまなことを引き出すことができる。一方、あなたは自分が達成しようとしていること、自分にとって何が効果的で何が効果的でないか、何があなたを不安にさせるかをよく理解している。もしこの二つ組み合わせることができれば、時間管理に対する全く異なるアプローチを見つけることができるだろう。
備忘録(2025/4/16)
●海外企業決算
- ASMLの受注、大幅に予想下回る-関税で不確実性増大とCEO - Bloomberg
- オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディングが16日発表した1-3月(第1四半期)の受注は、市場予想を約10億ユーロ(約1618億円)下回った。最近発表された関税の影響を数値化する方法は分からないと警告した。
- 発表資料によると、1-3月の受注高は39億4000万ユーロ。ブルームバーグが集計したアナリストの予想平均は48億2000万ユーロだった。
- この発表を受けて株価は急落し、一時7.6%安を付けた。
- ASMLは台湾積体電路製造(TSMC)や米インテルなどを主要顧客に抱える。同社はアップルのスマートフォンやエヌビディアの人工知能(AI)アクセラレーターなど、さまざまな製品向けの高性能チップを製造する半導体企業が使う最先端リソグラフィー(露光)装置を手掛ける。
- 大手テクノロジー企業が半導体やデータセンターに数十億ドルを投資する中、AIブームの恩恵を受けているASMLは、2030年の売上高を440億ユーロから600億ユーロと予測している。しかし、一部の半導体メーカーの期待外れの業績見通しやアナリストの警告でAI需要の減速懸念が強まっている上、米国の関税措置も差し迫っている。
- クリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)は発表文で「最近の関税発表でマクロ環境における不確実性が増しており、当面は状況が流動的になるだろう」と予想。その上で、顧客との「これまでの会話」からは、AI投資をけん引役に25年と26年が成長の年になるという見通しが裏付けられていると述べた。
- ASMLは米国の関税が事業に影響し得るさまざまなシナリオを概説し、米国に輸入される新システムやツール、部品に対する追加関税の可能性に言及。他の国が「米国から出荷されるものに関税を賦課する」リスクも考えられるとロジャー・ダッセン最高財務責任者(CFO)は述べた。
- 同社で最も高性能な極端紫外線(EUV)露光装置の1-3月の純受注は12億ユーロ。
- 中国は純売上高の27%を占めた。ASMLにとって2番目に大きな市場だった。この割合は前四半期と同じだが、2024年の平均である41%に比べると低い。
- 2週間前にトランプ米大統領が米国への全輸出業者に対する関税措置を発表したことを受け、アナリストらは半導体需要やASMLの顧客の投資計画に影響が及ぶと警告していた。
- トランプ政権は先週、スマートフォンやコンピューター、半導体製造装置などの特定の製品を上乗せ関税の対象外としたが、米商務省は14日、関税措置を視野に入れ、「半導体および半導体製造装置の輸入」が米国の国家安全保障に与える影響について調査を開始したと発表した。
- ASMLは25年の総純売上高が300億-350億ユーロ、粗利益率は50ー53%になると引き続き見込んでいるとした。
- [PGR] プログレッシブ 1Q増収最終増益 売上高17%増202億ドル、純利益10%増25.6億ドル、EPS0.89ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CFG] シチズンズファイナンシャル 1Q減収最終増益 売上高1%減19.3億ドル、純利益12%増3.40億ドル、EPS0.77ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [USB] USバンコープ 1Q増収最終増益 売上高4%増69.5億ドル、純利益33%増16.0億ドル、EPS1.03ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TRV] トラベラーズ 1Q増収最終減益 売上高5%増118億ドル、純利益65%減3.95億ドル、配当1.10ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [ABT] アボットラボラトリーズ 1Q増収増益 売上高4%増103億ドル、営業益22%増16.9億ドル、EPS0.76ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- ●海外企業
- ●日本企業
●先進国政治動向
- トランプ大統領が関税協議参加へ、訪米の赤沢氏と-「良い結果」期待 - Bloomberg
- 焦点:米関税「見直し」求め閣僚協議へ、先陣切る日本 長期戦も視野 | ロイター
- 赤沢亮正経済再生担当相が訪米し、世界に先駆けて米関税措置の見直しに向けた交渉に臨む。米側が問題視する非関税障壁の見直しでは、交渉カードの乱発を避けたい考えを崩しておらず、結論を得るまでの曲折も予想される。日米首脳間での妥結に向け、7月の参院選をまたぐ長期戦となる可能性がある。
- <非関税障壁巡り「備え」>
- 「準備ができた。何が一番国益に資するのか、何が一番効果的かということを考え抜き、しっかり国益を守る」。訪米に先立ち、赤沢再生相は報道陣に語った。
- 日本時間17日にベッセント米財務長官、米通商代表部(USTR)のグリア代表と会談、初めての関税交渉に臨む。
- 初回会合では、これまでの米経済への貢献を改めて説明するのと併せ、「非関税障壁を柱とする米国の問題意識を共有し、要求があるなら明確にする」という狙いがあると、複数の交渉関係者は口をそろえる。
- 非関税障壁の見直しを巡り、農産品の市場開放や自動車規制の緩和、消費税の還付も含め、「テーブルに乗せられそうな課題への備えは準備した」と政府関係者の1人は語る。
- <先手交渉には慎重な声>
- とはいえ、今回の協議は「効果的にカードを切っていくためのスタート地点として、赤沢大臣の訪米がある」(経済官庁幹部)との位置付けで、日本が先行して交渉カードを切ることには慎重な声が多い。
- 「米国が何を求めてくるか、様々なケースを想定して準備を整えてきたが、相手の要求に過剰に応じるのは避けたい」と別の政府関係者は言う。
- 米国は相互関税を表明した直後に、時限的とはいえ措置を凍結した。政府内には「米国も混乱して苦しいし、思惑通りではない部分もあると思う。何に困っていて、日本に何ができるか探っていく必要もある」(閣僚経験者)との声が残る。
- 首相周辺によると、交渉妥結に向けては7月上旬がひとまずの区切りと位置付け、複数回の閣僚協議を想定している。ただ、交渉を重ねても「何をされるか分からないリスクは残る」(元経産省幹部)との指摘もあり、結論を得るまでの曲折も予想される。
- <党内融和に課題も>
- 焦点の一つとなる農産品の市場拡大では、党内の議論を集約できるかも課題となる。農業分野に支持基盤もある自民党内では、7月の参院選を前に、安易な妥結を警戒する声もくすぶる。
- 赤沢再生相の訪米に先立つ15日の党部会では、農産品を巡る議論も交わされた。
- 「90日の期限が切れるのはまさに参院選の直前。農林水産業は現状でもかなり厳しいし、特に地方に大きな影響がある」と、出席した議員の1人はロイターに語った。「選挙前ということもあるし、地方創生の文脈にも逆行する。農産品(の市場開放)は簡単に妥協できない」と、この議員は言う。
- 国内総生産(GDP)へのインパクトを考慮すれば「最優先事項は自動車関税の引き下げ」(与党幹部)との声がある中、対米交渉と同時に、石破官邸が党内融和を図れるかを不安視する声は強い。
- 米、中国の孤立もくろむ 各国との関税交渉通じ - WSJ
- トランプ米政権が貿易相手国と行っている関税交渉を通じ、中国との取引を制限するよう圧力をかける計画であることが分かった。事情に詳しい関係者らが明らかにした。
- 米政府は中国経済の孤立に向け、貿易パートナー国からコミットメントを引き出すことが狙いで、これと引き換えにホワイトハウスが設けた貿易や関税面の障壁を引き下げることを考えているという。
- 米政府当局者らは70カ国・地域以上との交渉で、中国が交渉国・地域を経由して商品を輸出すること、中国企業が米国の関税を回避するために交渉国・地域に拠点を置くこと、また中国の安価な工業製品を交渉国・地域の経済に取り込むことを認めないよう求める方針となっている。
- こうした措置はすでに不安定な中国経済に打撃を与え、ドナルド・トランプ大統領と中国の習近平国家主席との将来的な会談を前に、中国政府の交渉力を弱めることを狙っている。具体的な要求は、中国経済との関わりの度合いに応じて国・地域ごとに大きく異なる可能性がある。
- ホワイトハウスと財務省からは、今のところコメントは得られていない。
- 複数の関係者によれば、米当局者らは一部の国との初期段階の交渉で、この方針をすでに持ち出している。トランプ氏も15日にこの戦略に言及。FOXノティシアスとのインタビューで、パナマが中国の「一帯一路」構想への参加を更新しないことを決めたことについての質問に対し、米国と中国のどちらかを選ぶよう各国・地域に求めることを検討するとした。
- スコット・ベッセント財務長官は今回の戦略の立案者の1人で、同氏はトランプ氏が4月9日に中国を除くほとんどの国・地域に対する相互関税の90日間の一時停止を発表して以来、貿易交渉で主導的な役割を担っている。
- 関係者らによれば、ベッセント氏は4月6日にトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」で開かれた会合で今回の方針を提案。米国の貿易相手国から譲歩を引き出すことで、中国政府や中国企業が米国の関税や輸出規制、その他の経済措置を回避するのを防ぐことができると述べたという。
- この戦術はベッセント氏が推進する中国経済の孤立を目指すより大きな戦略の一部であり、ここにきてトランプ政権内では支持が広まっている。米政府による関税措置の範囲と厳しさについての議論は続いているが、当局者らは中国に対するベッセント氏の計画にはおおむね同意しているとみられる。
- 計画には関税措置で中国を米国経済から切り離し、さらには中国株を米国の取引所から排除する可能性も含まれている。ベッセント氏は最近のFOXビジネスとのインタビューで、政権が中国株の上場廃止を試みる可能性を否定しなかった。
- 一方で米政権の対中政策の最終的な目標はまだ明確ではない。ベッセント氏はこれまで、米中間の貿易協定に関する協議の余地はまだあると述べてきたが、そのような協議にはトランプ氏と習氏が関与する必要がある。またホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は15日の会見で、中国との取引が差し迫っていないことを示唆するトランプ氏の新しい声明を読み上げた。
- トランプ氏はその中で、「ボールは中国側にある。中国はわれわれと取引をする必要がある。われわれは彼らと取引をする必要はない。中国はわれわれが持っているもの、つまり米国の消費者を欲しがっている」とした。
- トランプ政権の反中国路線が、全ての国・地域との交渉に持ち込まれているかどうかも分からない。事情に詳しい関係者らによれば、一部の国・地域は米国の交渉担当者から中国に関連する要求を聞いていないとしている。ただし交渉はまだ初期段階にあり、トランプ政権がいずれ中国関連の要求を持ち出すとも予想されている。
- 一方で中国も独自の貿易外交を展開しており、習氏はトランプ氏の関税で大きな打撃を受けた米国の主要貿易相手国であるベトナムを今週訪問。ベトナム政府と貿易に関する数十の合意に署名している。
- トランプ米大統領、日本の代表団との間で「大きな進展」-SNS投稿 - Bloomberg
- トランプ米大統領は米東部時間16日午後(日本時間17日午前)、米国の関税措置を巡る初の日米交渉に関連し、日本の代表団との間で「大きな進展」があったと自身のSNSに投稿した。日本の代表団と貿易問題を巡り会談できて非常に光栄だとしている。
- トランプ氏は交渉のため首都ワシントンを訪問している赤沢亮正経済再生担当相率いる代表団と会談した。日本側は米国の関税措置の見直しを強く求める方針だ。
- トランプ氏はこれに先立ち、赤沢経済再生とベッセント米財務長官、グリア米通商代表部(USTR)代表らが行う交渉に自ら参加する意向を表明していた。
- 日本は米国に同措置の見直しを求める貿易相手国・地域の「列の先頭」(ベッセント氏)にあり、米国がその見返りにどのような譲歩を相手側に要求するか見極めようと、世界の注目が集まっている。
- 狙いは中国包囲網、トランプ政権は貿易相手国に関税妥協の見返り要求 - Bloomberg
- トランプ米政権は貿易相手国との関税交渉を利用して、中国への圧力を強める準備をしていると、複数の関係者が明らかにした。
- トランプ大統領が相次ぎ繰り出した歴史的な輸入関税を受け、数十カ国が税率引き下げや免除を求めている。米国はその見返りとして、中国製造業の能力を制限する措置を求める方針。中国が米関税を迂回(うかい)できないよう封じ込めることが狙いだという。
- このプロセスを知る関係者によれば、トランプ政権の経済顧問らは貿易相手国代表との会合で、中国と緊密な関係にある特定国からの輸入に関税を課す「二次的関税」の発動を協議している。他の関係者によれば、米政府は中国からの過剰な輸入品を受け入れないよう貿易相手国に求めてもいる。これらの他にも中国に関する関税譲歩案が議論される可能性があるという。
- メキシコ当局者らは中国から輸入する電気自動車(EV)の関税を引き上げるよう、米国から要求があるとみている。メキシコ政府に近い関係者が明らかにした。メキシコ経済省はコメントを控えた。
- ホワイトハウスにコメントを求めたが、返信はない。
- トランプ政権は長年のパートナー国を動員して中国を包囲し、経済慣行の変更を迫る圧力を強める構えだ。こうした試みが結実するかどうかは不明で、一部の外国当局者らは懐疑的な見方を抱いている。
- トランプ大統領自身も今週、FOXニュース・スペイン語放送とのインタビューで、中南米諸国に中国の「一帯一路」イニシアチブと米投資のどちらかを選択させる可能性について問われた際、この構想に言及。「そうすべきなのかもしれない」と述べた。
- トランプ氏はこれまでも、他国との交渉に直接関与してきた。16日の赤沢亮正経済再生担当相との交渉にも、自ら出席すると表明している。
- この構想を声高に支持する当局者の一人、ベッセント米財務長官は先週、一部のパートナー国について「軍事的な同盟国としては良好な関係にあるが、経済的な同盟国としては完全ではない」と発言。合意に達する見通しは有望だとみており、「そうなれば一丸となって中国にアプローチできるようになる」と述べた。
- 米国の「MAGA(米国を再び偉大に)」派に向けたポッドキャスト番組で、このところモスクワ在住のひげを生やした思想家がゲストとして引っ張りだこだ。彼はロシア兵がウクライナ領土を進軍し、同国の「ナチス政権」を打倒すべきだと主張する。ロシアの極右政治の重鎮であるアレクサンドル・ドゥーギン氏(63)は長年にわたり、欧米流の自由民主主義を拒否し、失われた帝国を復活させるべきだと主張。ウラジーミル・プーチン大統領がそうした政策を採り入れる前からロシア政府に働きかけてきた。アナリストの中にはドゥーギン氏を「プーチンの頭脳」と呼ぶ者もいる。だが彼はこのレッテルを否定し、プーチン氏に影響力を持つというのは誇張だと話している。ドゥーギン氏は目下、ドナルド・トランプ米大統領の支持者と共通の土台を築くことを目指し、この1年間、FOXニュースの元司会者タッカー・カールソン氏や陰謀論を掲げる政治評論家アレックス・ジョーンズ氏など、メディア界の親トランプ派とのインタビューに相次いで応じてきた。彼らの番組に出演し、「ウォーク(人種差別など社会的不公正の問題に高い意識を持つこと)」やトランスジェンダー活動家、著名投資家ジョージ・ソロス氏などを攻撃し、称賛を浴びている。ドゥーギン氏のMAGA派への接近は、米ロ関係が転換点を迎えたのと時を同じくする。トランプ氏はロシアとウクライナの戦争を終結させ、プーチン氏との関係を修復することを目指している。プーチン氏は2022年2月のウクライナ侵攻開始以降、国際社会からの孤立を深めている。欧州指導者や米民主党の政治家はトランプ氏の態度を見て不安に駆られている。彼らはプーチン氏を、ウクライナ人の多くの命を犠牲にする独裁者とみなしている。トランプ、プーチン両氏が地政学における米ロの距離を縮める一方、ドゥーギン氏は文化面で同じことを試みている。だが彼が、米国の保守派とプーチン氏のウクライナでの戦争を支持するロシア人との溝を埋められるかどうかは未知数だ。「私はトランプ氏とトランピズム(トランプ主義)に興味がある」。ドゥーギン氏は広報担当者を通じ、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に書面でこう伝えた。「トランプ支持者も多分、私の考えや理論、哲学・イデオロギー的探求に興味があるだろう」ドゥーギン氏に批判的な向き――ロシアや西側のリベラル派、ウクライナ当局者など――は、ジェノサイド(大量虐殺)が起きているウクライナの戦争をあおるのに同氏が一役買ったと指摘する。彼らはまた米国のメディア出演者がドゥーギン氏を米視聴者に近づける場を与えたと非難している。「彼はまさにロシアのファシストだ」とストックホルム東欧研究センターのアナリスト、アンドレアス・ウムラント氏は話す。「実に極端であり、有害と言ってもよい」2022年8月、ドゥーギン氏の娘ダリア氏が、モスクワ郊外で車の爆発によって死亡した。父親と一緒に祝祭行事に参加した直後だった。ロシアの捜査当局はウクライナの仕業だとし、一部のメディア報道でドゥーギン氏本人を狙ったことが示唆されている。米情報機関は、ダリア氏を殺害した作戦の背後にウクライナがいると結論づけた。米政府が把握しないまま作戦が実行され、ウクライナを非難したとWSJは報じている。ウクライナ当局者は関与を否定している。ダリア氏は父親のタカ派的な政治観を受け継ぎ、暗殺される前はロシア国営テレビへの出演も多かった。ドゥーギン氏はそれ以降、殺害された娘を殉死者として扱い、最近のインタビューでは娘の大きな白黒写真を横に置いて語っている。ドゥーギン氏はかねてロシア正教の伝統主義を広め、ロシア系住民を擁する旧ソ連圏諸国を再統一すべきだと提唱してきた。米国を世界超大国としての役割から退かせ、ロシアの勢力圏を復活させるのに、トランプ氏は役立つ存在だと考えている。ドゥーギン氏は2月刊行の新著「The Trump Revolution(トランプ革命)」の中で、トランプ政権による米国際開発局(USAID)解体を「グローバル化の本丸にミサイルを撃ち込んだ」と称賛している。ドゥーギン氏は昨年、動画共有サイト「ユーチューブ」とソーシャルメディアプラットフォーム「X」(旧ツイッター)で数百万人のフォロワーを持つ元FOXニュース司会者のカールソン氏と対談し、それを機に広範な米視聴者に接触する試みを始めた。この対談はモスクワで収録され、物議を醸したプーチン氏とのインタビューに続いて公開された。冒頭のカールソン氏の質問に対し、流ちょうだが特徴のある英語を話すドゥーギン氏は5分間の講義を繰り広げた。キリスト教の宗教改革から人工知能(AI)、LGBTQ運動まで話題は多岐にわたり、「最終的に、個人主義を優先すれば家族は壊れる」と述べた。「明らかに今そういうことが起きている。恐ろしい」とカールソン氏は答えた。ドゥーギン氏はここ2カ月間に、保守層に人気の高い動画共有サイト「ランブル」で番組を持つジャーナリストのグレン・グリーンウォルド氏や、FOXニュースの元法務アナリストで現在はポッドキャスト配信者のアンドリュー・ナポリターノ氏、Xで人気番組を持つマリオ・ノーファル氏から、長時間に及ぶインタビューを受けている。2014年にロシアがウクライナのクリミア半島を併合し、同国東部の武力衝突が活発化し始めた頃、ドゥーギン氏はウクライナの親欧米指導層とその支持者を壊滅せよと訴えた。「殺して、殺して、殺しまくれ。もはや議論の余地はない」。ロシアのオンラインニュースサービスとのビデオインタビューで彼はこう語った。この発言は猛反発を招き、ドゥーギン氏はモスクワ国立大学での職を追われた。ドゥーギン氏は現在、米右翼メディアでそうした考えをやや穏健な言い方で唱えている。2月に陰謀論で知られるジョーンズ氏が運営するサイト「インフォウォーズ」に登場した際、「グローバル主義者」がロシアとウクライナの仲を裂いていると非難した。「ウクライナ人とわれわれロシア人は同じ民族だ。同じロシア世界にいる。それを彼らが二つに分裂させた」ジョーンズ氏は理解できる様子だった。「ナポレオンもヒトラーもロシアを打ち負かせなかった。フン族だって、他の誰だって倒せなかった。ロシア人にロシア人を殺させるとは、何と天才的な計画だろう!」「いかにも」とドゥーギン氏は答えた。
- ●先進国中銀、金融当局
- 米小売売上高、2年ぶり大幅増-関税引き上げ前に自動車購入急増 - Bloomberg
- 米3月小売売上高1.4%増、約2年ぶり大幅増 関税前の駆け込み需要 | ロイター
- 米商務省が16日発表した3月の小売売上高(季節調整済み)は前月比1.4%増となった。自動車を中心に関税引き上げ前の駆け込み需要が寄与し、2023年1月以来の大幅な伸びとなった。ただ不確実性が高まる中で消費が抑制され、小売売上高は近く失速する可能性がある。
- 前月は0.2%増で改定されなかった。ロイター調査によるエコノミスト予想は1.3%増だった。3月は前年比では4.6%増加した。
- コアの小売売上高(自動車、ガソリン、建築資材、食品サービス除く)は前月比0.4%増。2月は1.3%増と前回発表の1.0%増から上方修正された。エコノミスト予想は0.6%増だった。
- INGのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は「第1・四半期はマイナス成長を回避できる可能性が高いが、経済成長率はかろうじてゼロ%を上回る程度にとどまると予想している。消費者信頼感が圧力にさらされているときに関税の影響が実感されるようになるため、第2・四半期に大きな反発は望めない」と述べた。
- <自動車5.3%増、トランプ関税で駆け込み需要>
- 3月は自動車メーカー各社が販売台数が大幅に増加したと報告。トランプ政権が掲げる関税措置を回避するための駆け込み需要で押し上げられたとみられる。他の多くのモノ(財)も関税措置の対象になるため、消費者の間で「買いだめ」の動きが加速した。
- 業種別では、自動車・部品が5.3%増。前月は1.6%減少していた。建材・園芸用品は3.3%増、スポーツ用品・趣味用品・楽器・書籍は2.4%増。
- サービス部門として小売統計に唯一含まれる飲食店は1.8%増。前月は0.8%減少していた。
- サンタンデール・US・キャピタル・マーケッツの米国チーフエコノミスト、スティーブン・スタンレー氏は「消費者信頼感が急落しているにもかかわらず飲食店での消費は堅調だった。トランプ大統領が4月2日に大規模関税措置を発表するまでは、家計に消費意欲があった」と述べた。
- 衣料品は0.4%、電子機器は0.8%、オンライン販売は0.1%、それぞれ増加。家具は0.7%減少した。
- 米鉱工業生産指数、3月は前月比0.3%低下-市場予想を下回る - Bloomberg
- 4月米住宅市場、「不調」水準続く 関税で見通し悪化 - 日本経済新聞
- 全米住宅建設業協会(NAHB)が16日発表した4月の住宅市場指数は40となり、2013年5月以来約12年ぶりに1年間連続して「不調」水準となった。トランプ政権による関税政策への懸念から、市場の販売見通しが悪化した。
- 住宅メーカーや販売会社などNAHB会員を対象に、現在の販売状況や6カ月先までの販売予測を聞いて指数化した。指数が50を上回ると事業者が新築住宅市場の状況を「好調」、下回れば「不調」とみていることを示す。前月から1ポイント上昇し、ダウ・ジョーンズまとめの市場予想(37)は上回った。
- トランプ政権による高率関税策への懸念が住宅市場にも広がり、指数を構成する「今後6カ月の販売見通し」は4ポイント下げて43となった。17カ月ぶりの低水準となった。
- 米調査会社パンテオン・マクロエコノミクスのシニア米国エコノミスト、オリバー・アレン氏は「関税により景況感が悪化していることが重荷となった」としたうえで「景気が減速し失業者数が増えれば住宅購入希望者は減る」と指摘した。
- 新築住宅への需要が減退すれば建設業者の雇用や建材発注が減るなどのマイナス影響が出かねないとも説明した。指数を構成する「現在の販売状況」は2ポイント上昇し45、「客足」は1ポイント上昇し25だった。
- ●金融市場、先進国トピックス
- アングル:日米関税協議、投機の円買い呼び込む 先高観に拍車 | ロイター
- 米のステーブルコイン政策、ユーロにとって関税より危険=伊経済財務相 | ロイター
- イタリアのジョルジェッティ経済財務相は15日、ドルに連動するデジタル通貨「ステーブルコイン」を巡る米国の政策について、欧州市民に国際決済の魅力的な手段を提供し、関税以上に欧州にとって懸念すべき事態を招く恐れがあるとの見方を示した。ミラノで開かれた資産運用に関する会合で語った。
- ジョルジェッティ氏は、欧州連合(EU)当局は国際決済におけるユーロの地位を強化するため、さらなる措置を講じるべきだと主張。EUの決済業界は足並みがそろっていないと非難した。
- トランプ米大統領は、暗号資産を厳しく規制していたバイデン前大統領の方針を転換し、規制を抜本的に見直すと表明している。
- ジョルジェッティ氏は「最近は貿易関税の影響が全般的に注目されているが、それより危険なのは暗号資産を巡る米国の新たな政策であり、特にドルに連動するステーブルコインの政策が危険だ」と述べた。
- 同氏は、ステーブルコインは預金者にリスクのない資産に投資する機会を提供するとともに、米国の銀行に口座を開設せずに国際決済する手段を与えると指摘。「このため(ステーブルコインは)通貨が不安定な国の市民にとって魅力的に映ることは容易に予想できるが、ユーロ圏の人々にとっての魅力を過小評価すべきではない」と訴えた。
- その上でジョルジェッティ氏は「欧州市民が基本的な決済サービスを利用するために外国の解決策に頼る必要性を最小限に抑えるため、デジタルユーロは極めて重要になるだろう」と付け加えた。
- Private equity goes ‘risk off’ as it pauses dealmaking
- WTO、25年貿易量予想を大幅下方修正 米関税受け0.2%減に | ロイター
- 世界貿易機関(WTO)は16日、2025年世界のモノの貿易の見通しを10月時点の3.0%増から0.2%減に大幅に引き下げた。トランプ米政権が発表した関税とその波及効果により、新型コロナウイルス感染拡大のピーク以来、最悪の落ち込みにつながる可能性があるとした。
- WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は「世界の商品貿易の伸びの縮小は大きな懸念だ」と語った。
- トランプ米大統領は、鉄鋼と自動車の輸入に追加関税を課したほか、より広範な相互関税を導入後、適用の一時停止を発表するなど方針が二転三転。中国との貿易戦争も激化しており、報復合戦によって互いの輸入品への関税率が100%を超える事態となっている。
- WTOは、トランプ大統領が広範な関税を全て導入した場合、物品貿易の伸びは0.6%ポイント低下すると予想。米国関連の貿易以外への波及効果によりさらに0.8%ポイント低下するとした。これらを合わせると最大で1.5%減と、2020年以来最大の減少となる見通し。
- オコンジョイウェアラ事務局長はまた、中国と米国経済のデカップリングが最大の懸念だとも指摘。WTOは両国間の物品貿易が81%減少すると推定しているが、スマートフォンなどの製品に対する免除がなければ減少幅は91%に達する可能性があるという。
- オコンジョイウェアラ氏は「もしデカップリングが、地政学的な境界線に沿って世界経済を二つの孤立したブロックに分裂させるようなことになれば、広範囲にわたる影響を及ぼすとみられる」と述べた。
- このシナリオでは、世界の国内総生産(GDP)は長期的に7%縮小する可能性があるという。
- 米国はいかに製造業大国の地位を失ったか - WSJ
- 1950年代、米国における民間部門の雇用の約35%が製造業だった。現在では米製造業の雇用は1280万人で、民間部門の雇用の9.4%に相当する。
- ドナルド・トランプ米大統領は、包括的な関税で製造業の米国回帰を目指すと表明している。エコノミストらは、関税でそれが実現可能か懐疑的で、関税がもたらす損害が利益を上回ることを懸念している。
- 米製造業が復活できるかどうかを理解するには、まず米国が世界の製造業大国としての地位を失った経緯を理解することが役に立つ。
- 米製造業の台頭
- 米国が製造業大国になった背景には、複数の要因が重なっていた。
- 1900年代初頭、米国は互換性部品の使用と大量生産に向けた工程の組織化を世界に先駆けて行った。ケース・ウェスタン・リザーブ大学のエコノミスト、スーザン・ヘルパー氏は、第2次世界大戦で米国の製造能力が大幅に増強された一方、競合国が壊滅的な打撃を受けたと指摘する。
- 戦後はより多くの米国人が中間層に加わり、自動車や新たに購入した住宅用の家電製品など、耐久消費財への支出が急増した。米国は自国製造業にとって最大の顧客だった。
- これらの製品の多くは当時としてはハイテクで、食器洗い機、テレビ、ジェット機などが含まれ、戦時中に開発された数々の革新的技術によってもたらされた。製品を他国ではなく米国で製造することは理にかなっていた。最先端の技術を維持するには、研究開発チームが工場現場と緊密に連携する必要があったからだ。
- 20世紀初めに始まった高校教育運動のおかげで、米国が世界で最も教育水準の高い労働力を有していたことも追い風となった。
- サービス部門が主導権を握る
- 50年代以降、米国経済における製造業の役割は低下し始めた。米国民がより裕福になり、旅行、レストラン、医療などのサービスへの支出を増やすようになったことが背景にある。
- 雇用は支出に追随し、ホテルや銀行、法律事務所、病院などのサービス部門で働く労働者が増えた。景気後退と回復を繰り返しながらも、60年代半ばから80年代初頭にかけて、製造業の雇用は実質的に横ばいとなる一方、サービス業の雇用は増加し続けた。
- 衣料品など米国人が購入する非耐久消費財の生産地にも変化があった。多くの生産が労働コストの低い南部の州に移った。
- この頃、労働コストがはるかに低い中南米やアジアの発展途上地域で非耐久消費財の製造が活発化し始めた。米国はこれらの品目の輸入をますます増やしていった。時間の経過とともに、調理用ミキサーなどの軽量耐久財でも同様のことが起こった。
- チャイナ・ショック
- 80年代に状況が変化し始めた。米国の非耐久消費財メーカーは、労働コストの低い国との競争が次第に困難になった。この状況は90年代に激しくなった。北米自由貿易協定(NAFTA)を受けてメキシコ製品の関税が引き下げられたことも一因だった。
- W・E・アップジョン雇用研究所のエコノミスト、スーザン・ハウスマン氏は、韓国などの発展途上国が鉄鋼産業を構築して世界に過剰生産能力をもたらした結果、鉄鋼メーカーでも雇用が失われたと指摘する。
- しかし80年代と90年代に起きたことは、2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟し、外国からの投資に門戸を開き、世界市場へのアクセスを獲得した後に起きたことに比べれば取るに足らない。
- ハーバード大学のエコノミスト、ゴードン・ハンソン氏は「突然、低賃金国に相当な生産能力が生まれ、大きな転換点となった」と述べた。
- 米国はそれまでも他国からの輸入品との競争に直面してきたが、人口で米国をはるかに上回る国との競争は初めてだった。また中国は日本などの国々と比べてはるかに速いペースで台頭してきた。中国の財の輸出額は1999年の時点では米国の約10分の1で、スウェーデンよりも規模が小さかった。しかし2008年には中国は米国を抜いて世界最大の財輸出国となった。
- 家具や小型家電などの低技術製品のメーカーが特に打撃を受けた。ハンソン氏はデービッド・オーター、デービッド・ドーン両氏と共に、安価な中国製品の流入が米南部・中西部の製造業に影響を及ぼし、労働者に打撃を与え
- 現在の状況
- 中国が商品の生産をさらに拡大すると、米国はサービスの生産にさらに長じるようになった。
- サービスの多くは世界的に取引が難しい。ロンドンに住む人がサンディエゴの歯科医に簡単に行くことはできない。しかし、ソフトウエアや他の知的財産など、一部は取引可能だ。例えば2023年、米国は240億ドル(約3兆4400億円)相当の広告サービスを輸出した。
- 米国のサービス輸出額は現在1兆ドルを超えており、他のどの国よりもはるかに多い。さらに、米国のサービス輸出は実際よりも少なく評価されている。企業が税務上の理由から、米国で開発された特許や商標などの知的財産権を国外に移しているからだ(主要な移転先であるアイルランドは、世界第4位のサービス輸出国とされている)。
- 米製造業は復活できるか
- エコノミストらは過去数百年にわたって関税の広範な使用に反対しており、それは今後も変わらないだろう。彼らの見方では、消費者や企業が支払う高い価格が、最終的には他の財やサービス――米国製も含む――への支出を削減することになる。この支出削減は、国内生産の拡大や歳入の増加がもたらす利益を大きく上回ってしまうため、一部の製造業者は恩恵を受ける可能性があるものの、ほとんどの米国民にとって状況が悪化するだろう。
- ハンソン氏は、製造業の雇用が30%増加しても、民間雇用に占める製造業の割合は12%程度にしか上昇せず、かつての水準に比べてはるかに低いと指摘する。
- アップジョン雇用研究所のハウスマン氏は、製造業の雇用は他の業種とは異なる形で他の雇用を生み出すと語る。また、米国は幅広い関税の適用よりも的を絞ったアプローチを取るべきだとし、コストはかかるものの、一部の製品をより多く国内で生産するために投資すべきだとの考えを示した。こうした主張を掲げるエコノミストは増えている。
- 半導体などのハイテク製品の国内生産を増やすことはその一例だとハウスマン氏は述べ、雇用を創出するだけでなく、経済的・軍事的安全保障上の理由からも重要だと説明した。こうした議論は多くの低コスト製品には当てはまらない。 「Tシャツを再び自国で生産し始めたいだろうか」とハウスマン氏は言う。「それはどれほど重要なのか」
- CAT債、関税ショック下で強い耐性-安全資産崩れても秩序保つ - Bloomberg
- 保険会社などが災害リスクへの対応で発行するカタストロフィー(CAT)債が、関税ショックに伴う相場急落時に強い耐性を示した。
- トランプ米大統領による2日の関税発表後、大半の市場が大きく売り込まれたのに対し、CAT債の投資家はほとんど影響を受けなかった。
- 保険会社や再保険会社は、自然災害関連のリスクを資本市場に移転するためにCAT債を発行。あらかじめ定められた災害が発生した場合、投資家は支払い義務を負うが、災害が発生しなければ高いリターンを得られる。
- 保険リンク証券(ILS)を専門とするヘッジファンド運営会社フェルマー・キャピタル・マネジメントは、CAT債市場では「秩序あるトレードが行われている」とし、CAT債を買った投資家は「利益を得ている」と指摘する。
- CAT債は、従来安全資産と見なされてきた市場がトランプ関税を巡るパニックで下落している中でも良好なパフォーマンスを上げた。
- 先週半ば時点でスイス・リーのグローバルCAT債パフォーマンス指数が年初来で約1%上昇しているのに対し、S&P500種指数は15%程度下げていた。
- フェルマーのように、CAT債市場を専門とする投資家は少数ながら増えている。
- CAT債の発行額は昨年、過去最高規模まで膨らんだ。気候変動による気象災害が深刻化したほか、都市化の進行で損害リスクが高まったことが背景にある。
- CAT債は他の市場と連動しにくいため、同債券特有のリスクを負うのをいとわない投資家に分散投資の手段として利用されることが多い。
- この機に乗じ、CAT債の相対的なリターンに顧客の関心を引こうとする動きは他にも見られる。
- イコサ・インベストメンツはリンクトインで、他の市場が下落している中でもCAT債は「穏やかで安定した環境」を享受し続けていると指摘した。
- 2025年に金融危機はあるのか、準備はしておくべきだ-社説 - Bloomberg
- 過去数日に投資家が学んだことがあるとすれば、それは米国が次に何をしでかすか、予想もつかないということだ。関税をかけると言ってみたり、取り下げてみたりを繰り返すトランプ政権は、市場に衝撃を与えるというまれに見る無謀な意思を示している。
- このような極度の不確実性にあって、金融危機があり得ないとは言えない。政策立案者は最悪の事態に備える必要がある。
- 原因は住宅バブルの崩壊や世界的なパンデミック、あるいは現在見られているような世界最大の経済大国による計画的な行動などさまざまだが、金融危機は似たようなパターンをたどる。
- 引き金を引くのは債務だ。投資家は借り入れを利用して、本来購入できる額の何倍もの資産を購入する。資産価格が急落すると、貸し手はより多くの現金担保を要求するか、貸した資金を完全に引き揚げようとし、借り手は資産売却を余儀なくされる。それがさらに価格を下落させるという悪循環に陥る。
- 資産価値が債務の全額を払い切るのに十分でない場合、貸し手は損失を被る。その損失が金融システムや経済全般を脅かすほどになれば、政府は税金を投じる救済措置を講じなければならなくなる。
- 理想を言えば、損失を吸収し、他社への波及を抑えられるだけの潤沢な資本を金融各社は持つべきだ。しかし、現実はそうではない。
- 世界で最も重要な市場の一つである米国債市場では、ヘッジファンドがレバレッジをかけ過ぎており、ボラティリティーが急上昇すればヘッジファンドは一斉に手じまいに動く恐れがある。金融システムにとって重要な銀行は、最悪のシナリオを自力で乗り切るために必要な自己資本を有していない。主な公的セーフティーネットである米政府自体、厄介なほど財政がひっ迫し、財政赤字の急拡大ですでに第二次大戦以来最大の規模となっているソブリン債の負担は増している。
- こうしたファンダメンタルズのぜい弱性は、すぐには是正できない。規制当局は、スタッフの5人に1人を削減しようとする政権の要求に苦しんでいる。資本や担保の要件を引き上げようという政治的な意欲はほとんどなく、いずれにしろ、そうすべきでもない。危機が迫りつつあるように見える中で、即座にさらなる措置を要求すれば、状況を悪化させる可能性がある。
- では、金融当局には何ができるだろうか。3つの優先事項を掲げるべきだろう。その3つとは、最も弱い部分を特定し、市場を可能な限りスムーズに機能させ、健全な企業が不要な資産売却や破綻に陥ることがないよう十分な資金アクセスを確保することだ。
- 不意を突かれた2008年の金融危機当時よりも、規制当局ははるかに多くの情報を持っている。詳細な取引データによって各社のポジションを把握し、危険なレバレッジの集中を特定することもできる。市場参加者の調査は、ストレスシナリオがどのように展開するかの理解に役立つ。例えば、2021年の米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻に関する研究は、規制当局がリスクの蓄積を事前に察知し、予防的な措置を取れたはずだったことを示した。
- 金融市場においては、資金調達の混乱が価格をゆがめないようにすることが目標だ。例えば、米国債市場では連邦準備制度の常設レポファシリティー(SRF)が、国債を担保に特定の銀行やディーラーの現金借り入れを常に可能にしている。しかし、ぜい弱ながらも米国債とそのデリバティブの価格調整に重要な役割を果たしているヘッジファンドは対象外だ。
- 従って、ヘッジファンドが撤退する場合に備え、その役割を連邦準備制度が担う用意を整えるべきだ。これはベッセント財務長官が提案した銀行の資本要件緩和よりも、はるかに優れた解決策だろう。
- 最後に、米国外の金融機関はドル建てで借り入れた資金でドル建ての資産を購入している。危機時にこの資金が枯渇しないよう、連邦準備制度は欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(英中央銀行)などと、米ドルを貸し出すための通貨スワップ協定を結んでいる。この活用は政治的な緊張を生む可能性もあるが、それが米国にとって最善の利益であると当局者は強調するべきだ。資金が枯渇してな投げ売りのような事態が発生すれば、米企業にも同様に害が及ぶ。
- このような自らが招く危機の想定をしなければならないのは残念だ。しかし、その可能性は真剣に考えられなければならない。全世界の当局が、できる限りの準備をするべきだ。
- イランはアラブ湾岸諸国の支持を得るチャンスがある|ARAB NEWS
- 今日のイランとの核交渉は、2015年のそれとは異なっている。オバマ政権との交渉は、制裁解除の見返りとしてウラン濃縮削減に限定されていた。今日、パレスチナがテーブルの上に載せられている。これは湾岸諸国とイランが手を組んでパレスチナ問題の解決策を見出す機会を生み出す。
- モハメド・サレー・サディキアンというイラン在住の専門家は、マスカットでの協議初日に、イラン代表団が米国特使のスティーブ・ウィットコフに提示した「交渉の枠組み」を公表した。この枠組みには10の項目が含まれていた。最後の項目には次のように記されている。「パレスチナ人の問題について解決策を見出し、被占領パレスチナ地域の占領状態を終結させるために国際社会および地域社会が取り組まない限り、パレスチナ人の大義は現在も、そして今後もこの地域の緊張の主な要因であり続けるだろう。」
- さらに、9番目の項目では、この地域の平和はイランだけでなく、「中東の安全保障、安定、平和に関わるすべての関係者」の責任であると指摘している。イランはトランプ氏に対して、中東非核化を提案するとみられている。これは、イスラエルが核兵器を解体することを意味する。
- これは、特にイスラエルの狂気じみた行動によって地域が混乱している現状を踏まえると、重要な進展である。アラブ諸国はイスラエルへの圧力を必要とし、歓迎している。サウジアラビアは、パレスチナ国家が樹立されない限り、正常化はないと主張し、立場を貫いている。エジプトとヨルダンは、いかなる人口移動にも断固反対の姿勢を維持している。しかし、イスラエルは気にも留めていないようで、米国もイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に圧力をかけていない。それどころか、トランプ氏が就任するとすぐに、イスラエルへの新たな武器パッケージに署名した。
- イスラエルが脅威であることは、この地域のすべての当事者にとって明らかである。イスラエルはガザ地区を平らにし、ヨルダン川西岸地区を徐々に破壊している。また、シリアに「開戦理由」なしに攻撃を仕掛け、シリア領土に侵入した。シリアのアフメド・アル・シャラア大統領は、1974年の撤退合意を遵守する用意があるとはっきりと述べているにもかかわらず、である。イスラエルはエジプトを脅迫し、シナイ半島の軍事インフラの解体も要求している。アラブ諸国は、イスラエルがイランを攻撃すれば、イランがさらに強化され、自分たちもより好戦的な対応を迫られる可能性が高いことを知っている。おそらく彼らは、ナクバ(大惨事)を再び経験することになり、その影響は今後何世代にもわたって続くことになるだろう。
- このような枠組みにおいて、イランは潜在的な敵ではなく、同盟国と見なすことができる。湾岸諸国は、今回の交渉においてイランの側に立つことができる。実際、今日のアラブ諸国の態度は2015年とは明らかに異なっている。サウジアラビア外務省は、オマーンによるイスラム共和国と米国の協議開催を歓迎する声明を発表した。アラブ首長国連邦(UAE)の外務大臣であるアブダッラー・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーンは、オマーンの外務大臣に電話をかけ、マスカット協議の進展について話し合った。これはイランにとって絶好の機会であり、米国に対する影響力を高めることになるだろう。
- 2015年、湾岸諸国は合意に反対していた。これは、イランの安全保障上の懸念を考慮することなくイランと合意を結んだオバマ政権に対する裏切り行為と見なされた。一方、湾岸諸国はイランから合意の障害と見なされていた。実際、合意と湾岸諸国に対するオバマ政権の傲慢で軽視した態度が、この地域に混乱を生み出した。
- しかし、パレスチナを交渉のテーブルにつけるだけでは、湾岸諸国の支持を獲得するには不十分である。イランは、湾岸諸国の安全保障上のニーズに応える必要がある。これは相互的なものでなければならない。湾岸諸国もまたイランに保証を与えるべきである。現在の環境下で、イスラエルの脅威が迫る中、アラブとイランの和解はこれまで以上に可能性が高い。イスラエルの計画に対抗するには、さまざまな当事者が団結し、不信感を克服する必要があるという認識が一般的になっている。イランとサウジアラビアは、中国が仲介した2023年3月の安全保障協定を締結しており、さらなる協力関係を築くことができる。
- 米国との核交渉と並行して、イランはサウジアラビアおよびその他の湾岸諸国と真剣かつ即時の交渉を開始すべきである。議論すべき問題は2つある。まず、関係各国を拘束する安全保障協定である。これは包括的なもので、湾岸諸国およびイランの安全保障上の懸念すべてに応えるものでなければならない。また、関係各国が互いに信頼を置けるような検証メカニズムの設定と併せて行うべきである。
- 次に議論すべき喫緊の課題は、パレスチナ問題について共通の立場をいかにして持つかということである。それは共同声明を超越し、イスラエルとそれを支援する米国に対する現実的な圧力へとつながる立場である。イスラエルは常に、地域内の相違点を利用し、同盟国を見つけようとしてきた。
- 当初、イスラエルはモハンマド・レザー・パフラヴィー国王の同盟国であったが、イスラム革命により関係は悪化した。イスラエルはトルコのケマル主義者と関係を築いたが、AK党がパレスチナを支援するようになったことで関係は変化した。最後に、湾岸諸国に近づくためにイランの脅威を煽り立てようとした。しかし、もしこの地域が団結すれば、イスラエルは追い詰められ、米国は圧力を受けることになる。米国はイスラエルにパレスチナ国家の承認を強制するだろう。これはイランと湾岸諸国双方にとって重要な機会である。この機会を無駄にしてはならない。そして、イラン人は、米国との交渉において湾岸諸国を自らの側に引き入れるチャンスがあることを理解すべきである。
- ●エマージング
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(16日)ダウ699ドル安、ドル下落・利回り低下 | ロイター
- **為替市場:**
- ドルは下落し、安全資産(円など)とリスク資産(ユーロなど)がともに上昇。トランプ政権による貿易協定の行方が注目される中、日本の赤沢経済再生相が訪米。トランプ大統領も関税・軍事支援費交渉の会合に出席予定。
- **パウエルFRB議長の発言:**
- ・関税回避のための前倒し輸入がGDPを圧迫し、米経済は減速傾向。
- ・インフレ抑制のためのFRB介入への期待は誤解。
- ・関税は一時的にインフレを高め、長期化する可能性も。
- **債券市場:**
- ・FRB議長の発言を受け、リスク回避で国債買いが進み、10年債利回りが低下(4.281%)。
- **株式市場:**
- ・ダウ平均は699ドル安。
- ・エヌビディアが中国向けAI半導体に対する輸出規制により55億ドルのコストを見込むと発表し、半導体株中心に大幅下落。
- ・パウエル発言も景気後退懸念を強め、売りが加速。
- **商品市場:**
- ・**金**:米中貿易摩擦懸念で安全資産需要が高まり、史上最高値更新(1オンス=3346.40ドル)。
- ・**原油**:米国によるイラン制裁の影響で供給混乱の懸念から反発(WTI原油62.47ドル)。
- 欧州市場サマリー(16日) | ロイター
- ### 🔹 **ロンドン株式市場:まちまち**
- - **FTSE100種指数**:上昇。3月CPI(消費者物価指数)の鈍化が安心感を生み、石油・ガス株がけん引。
- - **FTSE250種指数**:ほぼ横ばい(-0.01%)。
- - **注目銘柄**:
- - **エンデバー・マイニング** +6.4%、**ホックシールド・マイニング** +5.7%(金価格上昇による)。
- - **バンズル** -25.6%(業績見通し引き下げと自社株買い停止)。
- - **オックスフォード・インストゥルメンツ** +7.7%(通期見通しが市場予想通り)。
- ### 🔹 **欧州株式市場:反落**
- - **要因**:半導体株の下落が主因。ASMLが米関税の影響で業績見通しに不透明感を表明。
- - **主要指数動向**:
- - 欧州テクノロジー株指数:-2.04%
- - 石油・ガス株指数:+1.23%(原油価格上昇を受け)
- - **ハイネケン**:+5.0%(決算が予想上回る)
- ### 🔹 **ユーロ圏債券市場:国債利回りが低下**
- - **背景**:米国の関税措置による不透明感でリスク回避が進行、独連邦債などが買われる。
- - **ドイツ10年債利回り**:-4bp(2.505%)
- - **米独10年債利回り格差**:182bpに拡大(今月初旬は140bp)
- - **その他**:
- - イタリア10年債:3.696%(-3.3bp)
- - フランス10年債:3.265%(-4bp)
備忘録(2025/4/15)
●海外企業決算
- [C] シティグループ 1Q増収最終増益 売上高3%増215億ドル、純利益21%増40.6億ドル、EPS1.96ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- J&J、1-3月は利益が市場予想上回る-通期見通し据え置き - Bloomberg
- [PNC] PNCファイナンシャルサービシズグループ 1Q増収最終増益 売上高6%増54.5億ドル、純利益13%増13.9億ドル、EPS3.52ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [BAC] バンカメ 1Q増収最終増益 売上高6%増273億ドル、純利益14%増69.9億ドル、EPS0.90ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- 焦点:ルイ・ヴィトン、テキサスの生産苦戦 米拠点拡充で試練 | ロイター
- フランスの高級ブランドグループ、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)が米南部テキサス州で稼働させている傘下ブランド「ルイ・ヴィトン」のハンドバッグ工場は6年前、ベルナール・アルノー最高経営責任者(CEO)が第1次政権時代のトランプ大統領を招いて華やかな落成式を行った。
- それ以来、工場はさまざまなトラブルを抱えて生産能力がずっと限られた状態にあることが、ルイ・ヴィトンの元従業員11人の話で明らかになった。また、別の元従業員3人やある業界幹部の話では、同工場は他のルイ・ヴィトンの工場に比べて、常に著しく成績が悪いようだ。
- こうした事態は、欧州からの輸入品に高い関税を課すというトランプ氏の方針に対応するため、米国内の生産拠点を拡充させたいLVMHにとって、その道のりが険しいことも浮き彫りにしている。
- ルイ・ヴィトンの生産責任者を務めるルドビック・ポシャール氏は、テキサス工場を巡る問題についてロイターの取材に応じ「生産力増強はわれわれが想定していたより難しかった。これは真実だ」と語った。
- 3人の元従業員はロイターに、テキサス工場が苦戦を強いられている理由として、品質基準を満たせる製品を製造できる皮革加工技能を備えた労働者がいないことだと説明。このうちの1人は「『ネヴァーフル』のバッグで簡単なポケットを作ることができるまででも、何年もかかっていた」と述べた。
- テキサス工場では、裁断や組み立てなどの過程で生じた加工の失敗により、大型動物の分厚い皮革(ハイド)の最大40%が廃棄されていた、と内部事情を知る元従業員は証言する。業界の一般的な皮革製品の廃棄率は20%とされる。
- このような作業ミスが起きる背景として複数の元従業員は、毎日課せられるノルマの重圧を挙げた。生産量押し上げのため、工場の監督者は常に各種の手段を通じた不良箇所の隠ぺいを黙認し、場合によっては積極的に推奨したという。
- ポシャール氏も、過去にはそうした事例があったと認めたものの「これは2018年の件で(関与した)1人のマネジャーはもう会社にいない」と強調した。
- 売り物にならないほど出来が悪かったハンドバッグは現場で寸断され、トラックで運ばれて焼却処分されている、と2人の関係者は話す。
- テキサス工場にしばしば出張していた元生産監督者は、ルイ・ヴィトンがこの工場で生産していたハンドバッグは大半が低価格モデルで、最上位モデルは別の工場が作っていたと述べた。
- ポシャール氏は、設立から日が浅い工場についてルイ・ヴィトンは「忍耐強い」姿勢を取っているとした上で、テキサスで生産されたバッグの品質が欧州産の製品と何か異なるとは認識していないと付け加えた。
- <メイドインUSA>
- テキサス州の工場ではルイ・ヴィトンの「フェリーチェ」のポシェットや「メティス」のバッグの完成品と部材が「メイドインUSA」のタグを付けて生産されている。これらの製品の高級ブティックにおける販売価格はそれぞれ約1500ドルと3000ドルだ。
- ロイターが取材した元従業員は、同工場には「フェリーチェ」「キャリーオール」「メティス」「キーポル」「ネヴァーフル」の生産ラインがあったと述べた。
- 数年前に移民として米国に来たという元皮革加工従業員の女性は、フランスの高級ブランドに採用されたことを誇りに思ったが、一部の労働者は会社の品質基準や生産目標の達成に四苦八苦していたと話す。
- 2019年に工場を辞めたこの女性は「日々の目標実現を迫られる重圧は大きかった」と振り返った。
- また23年まで工場で働いていたという女性は、特に作業が難しい「ヴァンドーム・オペラ」バッグの加工でうまく出来上がらなかった部分を隠すため、皮革や布地を熱で溶かしたことがあったと明かした。
- 別の元従業員も、穴などの不具合部分を隠す目的で部材を溶かしている労働者を目撃したとしている。
- ルイ・ヴィトンの国際製造ディレクター、ダミアン・フェルブリッヘ氏は、テキサス工場では厳しい品質基準を守れず、配置転換されたり、退職したりした人がいたと認めた。
- 職人として採用され、数週間ないし数カ月の訓練を経ても、期待されて必要とされる水準に達しないと認識した人たちは流通など別の分野で働くことになるし、職人はさまざまな機転を要求される以上、退職を選んだ人もあると説明する。
- 3人のテキサス工場元従業員は、いずれも2─5週間の訓練を受けたと話す。ただ、現在フランスで働いているルイ・ヴィトンの従業員は、数週間だけの訓練というのは決して異例ではなく、仕事の大半は実際に生産ラインに入って、より経験豊富な先輩たちから学ぶものだと述べた。
- <人員増強計画>
- LVMHのテキサス工場は、同州ジョンソン郡から10年間の不動産税75%減免を含めた各種税制優遇措置を受けている。
- ロイターが情報開示請求に基づいて入手した2017年のLVMHの文書には、向こう5年で500人の雇用を目指すと記してあった。19年の工場落成式でアルノー氏は、5年間で約1000人の高技能職を創出すると表明していた。
- しかしフェルブリッヘ氏が確認したところでは、今年2月時点でも従業員数は300人に届いていない。
- ポシャール氏は、当初採用活動が難しかったのはコロナ禍による側面が大きく、地元の労働需要の低下も一定の影響があったと述べた。
- それでもLVMHはテキサスでの人員増強を進める計画だ。昨年秋、カリフォルニア州の同社工場に勤務していた従業員らは、工場は2028年に閉鎖する予定で、テキサス州への異動か退職かを選べと通告されたという。
- LVMH dethroned by Hermès as world's most valuable luxury stock after sales miss
- LVMHの株式
- 火曜日に株価は8%急落し、第1四半期の売上高が予想外に減少したことから、一時は世界最大の高級品企業としての地位をライバルのエルメスに明け渡す事態となった。
- LVMHは月曜日の市場が閉まった直後に発表した取引状況の更新で第1四半期の売上高が前年同期比3%減少したと報告し 、わずかな増加というアナリストのコンセンサス予想を下回った。
- この結果は、市場全体が上昇する中、午前中の取引でセクター全体を下落させた 。ケリング
- 株価は4.2%下落、バーバリー
- リシュモンは4.3%下落したが、
- 1.6%下落して取引された。
- LVMHの株価はロンドン時間午後2時7分時点で7.9%下落し、2020年3月以来の最悪の取引となる見込みだ。一方、エルメスの株価は0.8%の小幅な下落にとどまり、バーキンバッグメーカーの時価総額はLVMHを上回った。
- CNBCがLSEGのデータに基づいて計算したところ、午後の動きによりLVMHの時価総額は2440億ユーロ(2764億ドル)、エルメスの時価総額は2443億ユーロとなった。
- LVMHは、2021年以降、新型コロナウイルス感染症のパンデミック後の景気回復への期待から高級品銘柄が上昇し、数年間にわたり欧州で最も時価総額の高い企業として君臨してきました。しかし、2023年の最高値終値以降、時価総額は45%以上下落しています。
- デンマークの製薬会社ノボノルディスクに追い抜かれた。
- 2023年後半、減量薬オゼンピックとウィーゴビのメーカーである同社が、 2025年3月にドイツのソフトウェア企業SAPに買収される前のことだ。
- 第1四半期の落ち込み
- LVMHのワインとスピリッツ部門は、地政学的緊張に巻き込まれた人気のブランデーであるコニャックの米国と中国での需要が弱まっていることを指摘し、第1四半期の売上高が9%減と最も大きく 減少した。
- 2024年の利益の78%を占める主力のファッション・皮革製品部門は5%減少しました。時計の売上は横ばいでした。
- 欧州は唯一成長を記録し、有機ベースで2%増となった。日本を除くアジアは11%急落し、米国の売上は3%減少、日本の売上は1%減少した。
- シティのアナリスト、トーマス・ショーベット氏とマヘシュ・モハンクマール氏は月曜夕方のレポートで、「高級品業界の指標であるこのブランドには期待できる点はあまりない」とし、「売上高は全体的に最も保守的な買い手側の予想を下回っている」と述べた。
- また、米国および世界経済の不確実性が依然として高いことから、LVMHおよび高級品部門の第2四半期および第3四半期の収益の連続改善を予測することは困難だと付け加えた。
- 「構造的な成長の原動力は依然として存在しているものの、特に貿易摩擦や関税を考慮すると、短期的な見通しは非常に限られている。ファンダメンタルズは短期的には引き続き厳しい状況が続く可能性が高いため、LVMHおよび同セクターにとって次のプラス要因はマクロ経済のサプライズから生まれる必要があるだろう」とバンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのアナリストは報告書で述べた。
- 関税の影響
- 世界的なサプライチェーンと米国の消費者需要に依存している高級品業界は、 ドナルド・トランプ米大統領の不安定な貿易政策による多くの逆風に直面している。
- ルイ・ヴィトン、モエ・エ・シャンドン、ヘネシーなどのブランドを所有するLVMHは、トランプ大統領が世界の貿易相手国に対する相互関税を発表し、その後延期して以来、第1四半期の業績を発表する最初の欧州の大手高級品企業である。
- そのため、投資家は、関税が投入コストと消費者需要に及ぼす潜在的な影響に関する企業の将来的な指針の提示を熱望している。
- LVMHの最高財務責任者(CFO)セシル・カバニス氏は月曜日のアナリスト向け電話会議で、グループは第1四半期に「大きな傾向の変化」は見られず、過去6カ月間は引き続き堅調な成長が続いていると語った。
- ファクトセットの記録によると、カバニス氏は「意欲的な顧客層は、景気循環が好転せず不確実な状況では、常により脆弱になるというのは事実だ。ここ数週間は、ワインやスピリッツ、化粧品といった分野に、ある程度の影響があったかもしれない」と述べた。
- カバニス氏は第2四半期の価格設定について具体的なコメントを控えたが、インフレや通貨の変動を適度に相殺する水準として商品の価格再設定を検討すると述べた。
- 高級ブランドは関税の直接的な影響から他の小売業者よりも保護されると予想されており、高級ブランドは通常、追加コストを裕福な消費者に転嫁する能力が高い。
- それでもアナリストらは、関税によって引き起こされる経済の落ち込みの可能性が、特に米国と中国の主要市場で需要に大きく影響し、長期にわたる低迷からの回復がさらに遅れる可能性があると警告している。
- エヌビディアの米国回帰、アップルに続きトランプ流に追随 - WSJ
- 海運大手にコスト増の試練、米政権が中国船への入港料導入なら大打撃 - Bloomberg
- 自動車業界、米関税やEU規制でリスクに直面=ステランティス会長 | ロイター
- 欧米自動車大手ステランティス(STLAM.MI), opens new tabのジョン・エルカン会長は15日、激化する中国との競争や米政権の関税措置、欧州連合(EU)の排ガス規制によって自動車メーカーはリスクに直面していると述べた。
- エルカン氏は株主総会で「痛みを伴う関税措置と過度に厳格な規制という現在の流れにより、米国と欧州の自動車産業はリスクに直面している」とした上で、「雇用、革新、強固な社会の源泉である自動車製造にとって悲劇的だ」との見方を示した。
- エルカン氏は「中国は別の軌道に乗っている」と指摘。中国の自動車市場は、米国と欧州を合わせた規模を初めて上回ると見込まれている。
- エルカン氏は、米国では、自動車メーカーは輸入自動車に対する25%の関税のほか、「アルミニウムや鉄鋼、部品など幾重もの追加関税」に直面していると指摘した。ただ、トランプ米大統領が14日、メキシコやカナダなどからの自動車・部品輸入について何らかの関税猶予を検討していると明らかにしたことは心強いと語った。
- EUの二酸化炭素(CO2)排出規制に関しては、「市場の現実とかけ離れた、非現実的な電動化への道筋」を強いるものだと主張した。
- エルカン氏は、カルロス・タバレス氏が昨年退任した後の最高経営責任者(CEO)を探しながらグループの舵取りをしている。
- Trump signs healthcare executive order that includes a win for pharma companies
- ●日本企業
ドナルド・トランプ大統領は 火曜日、メディケアが処方薬の価格を交渉できるようにする法律を改正するために議会と協力するよう保健省に指示し、製薬業界がロビー活動してきた改革の導入を目指した。
製薬会社は、主に錠剤で医薬品の大部分を占める低分子医薬品について、価格交渉の対象となる期限を4年延期するよう求めてきた。
これは、より複雑なバイオテクノロジー医薬品がメディケアの価格交渉の対象となるまでの13年間の待機期間と一致する。
トランプ大統領が署名した広範囲にわたる大統領令は、医療費の削減を目的としている。これは、トランプ政権が 製薬業界に関する国家安全保障報告書を策定した翌日に発効したものであり 、これは特定セクターへの 関税導入の前兆となる。
ジョー・バイデン大統領のインフレ抑制法の一環として、メディケアが初めて特定の医薬品の価格を直接交渉できるようになりました。メディケアは6,600万人のアメリカ人をカバーしており、そのほとんどが65歳以上です。
製薬会社は、メディケアの交渉権の条件がイノベーションを阻害するとして不満を表明している。特に、製薬業界は大半の医薬品について交渉資格の取得期限を定めていることに反対している。
薬に競争相手がいない場合、現在の法律では、複雑な生物学的製剤、またはバイオテクノロジーによる医薬品については、市場に出てから13年を経過すると政府が価格交渉できるようになっているが、錠剤やカプセルとして服用する医薬品については、9年を経過すると交渉できなくなる。
交渉プロセスは法律で定められているためトランプ大統領は大統領令でこの変更を実施することはできないが、大統領令はロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官に議会と協力して変更するよう指示している。
ホワイトハウス当局者は署名前の電話会談で記者団に対し、交渉プロセスに提案されたその他の変更により、バイデン政権下での第1ラウンドで達成されたよりも多くの節約が実現するだろうと述べたが、詳細は明らかにしなかった。
バイデン政権は、メディケア制度にとって最もコストがかかるとみられる最初の10種の医薬品について、最大79%の値下げを交渉した。
トランプ政権は、ノボ ノルディスク社の大ヒット糖尿病・減量治療薬「オゼンピック」と「ウェゴビー」、ファイザー社の抗がん剤「イブランス」と「イクスタンジ」を含む第2グループの15種類の医薬品の価格交渉を行う予定だ。
トランプ大統領の大統領令はまた、メディケアの薬剤費の支払いを病院の薬費と同額にすることを目指しており、病院の薬費は35%安くなる可能性がある。また、患者がどこで治療を受けるかによって料金が異ならないように、場所をまたいで患者の支払い率を標準化することを求めている。この政策は「サイト・ニュートラル・ペイメント」と呼ばれる。
トランプ大統領は、最初の任期中に開始された医薬品輸入プログラムについて、各州からの申請をさらに奨励するよう食品医薬品局に指示した。
これまでに、FDAからカナダからの医薬品の直接輸入の認可を得ているのはフロリダ州のみだが、他にも複数の州が申請している。また、FDAは、ブランド医薬品のより安価なジェネリック医薬品やバイオシミラーの承認手続きを簡素化するよう指示している。
- エーザイの認知症薬レカネマブ、EU「厳しい」条件付きで承認 | ロイター
- 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は15日、エーザイ(4523.T), opens new tabと米バイオジェン(BIIB.O), opens new tabが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ(製品名レケンビ)」について、厳しい条件付きで初期段階における軽度認知障害の治療に使用することを承認した。
- 同薬はEU域内でアルツハイマー病の根本的原因に対処する初の治療薬となる。
- EUの医薬品規制当局は、リスクを最小限に抑える対策が講じられている限り、特定の患者集団において同薬の恩恵がリスクを上回ると結論付けた。
- アルツハイマー病治療薬を巡っては、EUの欧州医薬品評価委員会(CHMP)が先月、米製薬大手イーライ・リリー(LLY.N), opens new tabの治療薬「ケサンラ(製品名ドナネマブ)」の承認を見送っている。
- 中国、輸出入企業に市場の多様化呼びかけ 米関税に対抗 | ロイター
- ●先進国政治動向
- 【オピニオン】ベッセント氏、若き日の経済秩序回復を再現できるか - WSJ
- どんな成功者にもオリジンストーリー(起源の物語)があり、実話の場合もあれば作り話のこともある。ジョージ・ワシントンと桜の木や、カリブ海の島での極貧状態からニューヨークに向かったアレクサンダー・ハミルトンといった話だ。リンドン・B・ジョンソンが米副大統領だったとき、彼に敬服する1人の外国人から、丸太小屋で生まれたというのは本当かと尋ねられたことがある。「いいえ」とジョンソンは答え、「あなたは私とエイブ・リンカーンを混同している。私が生まれたのは飼い葉おけの中だ」と語った。
- スコット・ベッセント米財務長官は、ここまでの偉大さには達していない。しかし、彼には有名な、そして真実のオリジンストーリーがある。彼は(何と幾度かにわたり)著名投資家ジョージ・ソロス氏の薫陶を受け、イングランド銀行(英中央銀行)を破った男だ。イングランド銀行が1992年に通貨ペッグ(連動)制を防衛しようとしていた際、ベッセント氏らが主導したソロス・ファンド・マネジメントは同中銀に対抗する方に大きく賭けた。ソロス・ファンドが勝利し、英中銀が敗れたことはよく知られている。
- 鮮やかな成功を収めたこの取引が現在、改めて響き渡っている。まさにその時の報いを受けるかのように、ベッセント氏は自分が政府対市場の闘いの反対側に置かれていることに気付く。その経験から得られる貴重な教訓がある。
- 今と同じように1992年当時も、ある政府が悲惨なまでに誤った経済戦略にしがみつこうと苦闘し、それを維持するためにますます苦しまぎれの策を講じ、その中で信用を失墜させた。それは経済と政治に永続的な影響をもたらした。
- このストーリーは一般的に、ソロス氏らがイングランド銀行を打ち負かしたと語られているが、実際は、彼らが打ち負かしたのは新たに選挙で選ばれた政府の柱となる経済政策だった。当時、イングランド銀行に通貨政策における運営上の独立性はなく、同行は政治家が指示した内容を実施するだけだった。ジョン・メージャー首相率いる保守党は5カ月前に行われた総選挙で、予想を覆し政権を維持していた。この政権の経済戦略の最重要項目は、メージャー氏の前任のマーガレット・サッチャー氏が不本意ながら同意した、通貨ユーロの前身となる欧州通貨制度(EMS)の欧州為替相場メカニズム(ERM)への加盟を継続し、値動きが激しいことで悪名高い通貨ポンドを維持することだった。ERMでは、加盟する各国の政府が他の加盟国通貨に対して自国通貨の変動幅を小さく抑える必要があった。
- 1992年の夏には、この政策は破綻しかけていた。英国とドイツの経済状況の違いは、ポンドが極度に過大評価されていることを意味した。圧力が強まるにつれ、英政府はイングランド銀行に、何十億ポンド相当もの外貨準備を使ってこのペッグ制を防衛するよう指示した。9月16日の「ブラック・ウェンズデー(暗黒の水曜日)」には、ポンド売りが加速した。大規模な為替介入は失敗し、パニックに陥った英政府は、1日のうちに常軌を逸した政策転換の度合いを強め、金利を10%から12%に引き上げた。それが失敗すると、さらに15%に引き上げる方針を発表した。
- すべてうまくいかなかった。政府は夕方までに降参し、ERMから離脱した。翌朝、制限がなくなったポンドは急落した。金利の引き上げ分は取り消された。これはすべて、夏にメージャー政権のメンバーによる性的スキャンダルが明らかになった後の出来事であり、大衆紙サンは困惑して憤る国民のムードを、同紙の特徴である痛烈な1面の見出しで「われわれは内閣にめちゃめちゃにされた」と表現した。ロンドンに本拠を置くサンは現在、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の姉妹紙となっている。
- これを今回の混乱と比較するのは適切でない。英国は当時、中程度に重要な経済国でしかなかった。現在の米国は世界最大の経済国であり、ドルは世界の準備通貨だ。ペッグ制は経済構造の中の脆弱(ぜいじゃく)なピースであることが知られている。それにもかかわらず、ペッグ制は幅広く支持されていた。それは、ドナルド・トランプ米大統領とほんの少数の彼の信奉者とご機嫌取りしか支持していない風変わりな国際貿易理論より、はるかに幅広い支持を集めていた。
- しかし、そこには依然として重要な教訓がある。一つ目は、市場に決定権があることだ。今回もまた、資金を賭けている何百万人もの投資家の計算の方が、政策立案者の大胆な宣言より価値のあるものだと示された。
- 二つ目は、市場をなだめようとして段階的に政策を修正する試みはうまくいかないということだ。それは政策が失敗する運命にあることを強調するだけだ。金利を信じがたい水準に上昇させ、関税の正当性を損なうようなあらゆる類いの除外措置を発表し、それを撤回するというのは、その政策がいかにおかしいかを強調するだけだ。
- 三つ目の教訓は、経済の現実論として実行不能な政策に固執すれば、政府の信頼性が修復不可能なほど損なわれるということだ。メージャー首相の政権が信頼を取り戻すことはなかった。次の1997年の英総選挙では、保守党が史上最悪の惨敗を喫した(皮肉なことに労働党のトニー・ブレア氏の政権が最初に取った行動は、金融政策の権限を全面的にイングランド銀行に移すことだった)。
- 四つ目の教訓は、維持不能な政策の放棄が、政策の劇的改善につながったことであり、これは良いニュースだ。守り得ないものを守る義務から解放されたことで英保守党政権は適切な財政・金融政策に力を注ぎ、相場の動きは市場に委ねるという、現実的で賢明な経済運営の段階に進んだ。これによって経済成長が維持され、インフレ率が低く抑えられた。
- ベッセント氏は個人的に巨利を得たが、それと同時に英国民に大きな恩恵をもたらした。過去2週間の大混乱の後では、ベッセント財務長官をしても、トランプ氏の経済運営能力に関する評価を回復させるのは難しいだろう。しかしベッセント氏には、信頼に足る予測可能な経済運営、自由市場の重要性の確認、財政政策と国際政策の安定といった正常な状態に、米国を引き戻す取り組みを支えるチャンスが依然残されている。それは同氏の義務でもある。
- それによって生み出されるストーリーは結果的に、彼のオリジンストーリーよりも良いものになる可能性さえある。
- 【エッセー】旧友遠ざける米国、中国は取り込みへ虎視眈々 - WSJ
- 1999年、フランスのユベール・べドリーヌ外相(当時)は米国が歴史上どの国も成し遂げられなかった類いのパワーを手に入れたと述べた。米国は絶大な軍事力を有し、世界経済を意のままに操った。同氏によると、さらに重要なのは米国の世界的なソフトパワー、つまり「考え方や概念、言語、生活様式を支配したこと」だった。
- 絶頂期は長くは続かなかった。2003年のイラク占領で米国の軍事的耐久力の限界があらわとなり、2008年の金融危機では同国の金融システムのもろさが露呈した。そして世界における米国の優位性は今や、過去最大の試練に直面している。ドナルド・トランプ米大統領は軍事同盟を揺るがし、世界を相手に貿易戦争を仕掛け、ソフトパワーの重要な手段である対外援助を一方的に打ち切るなどしているからだ。
- こうした混乱は、台頭する中国にチャンスをもたらす。中国は長年、世界秩序の中心を占める米国に取って代わろうとしてきた。米政府の振る舞いが最近、明らかに常軌を逸するとは言わないまでもますます予測不能となる中で、中国は自らを安定性の柱として描き出している。「中国は世界の中で独自の優位性を確立することを目指している。トランプ氏は中国が経済的打撃を受けながらも、より広範な野心を達成するのを容易にしている」。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)中国研究所のスティーブ・ツァン所長はこう指摘した。
- 米国とその民主主義同盟国が共通の価値観を持っている感覚が壁となり、長年、中国はその間隙(かんげき)を突くのを阻まれてきた。だがトランプ氏は独裁国家ロシアとの関係改善を目指す一方で、グリーンランドやカナダ、パナマ運河を併合する可能性をちらつかせ、そうした本質的な絆は急速に消えつつある。オーストラリアのマルコム・ターンブル元首相は「トランプ氏はわれわれが80年余りの間、共和党か民主党かに関わらず彼の前任者全員と共有してきた価値観を共有せず、共有するふりさえしない」と述べた。
- 欧州諸国の世論調査では、米国はもはや同盟国どころか友好国とも認識されていない。JD・バンス米副大統領によると、トランプ氏は「欧州人がわれわれに何を叫ぼうが気にせず、米国市民の利益を第一に優先することを気にかけている」という。
- この危機に際して中国が伝えたいメッセージは、中国は「ウィンウィンの協力関係」と世界の繁栄にとって最大の希望であり、米国の「一方的ないじめ行為」(中国外務省)の対極にあるということだ。世界中の国々が中国共産党の意図に懐疑的ではあるものの、敬意に満ちた協力の呼びかけは、感謝や貢献を求める米政府の態度よりもはるかに受け入れやすい。例えば、トランプ氏は先週、「あちこちの国が私に電話をかけてきて(関税で取引するために)こびへつらっている」と述べた。
- 中国のシンクタンク、全球化智庫(CCG)の高志凱(Victor Gao)副主任は「中国は引き続き正しいことを行う。中国は全世界に対し、貿易は人類が全体として成功するのに欠かせないものであり、各国が独自の方法で発展する必要があることを伝えたい」と述べた。「誰も米国の排除を望まない。だが今、世界との絆を断っているのは米国自身だ」
- 市場がパニックに陥る中、トランプ氏は9日、発動したばかりの相互関税の一部を90日間停止し、交渉を続けると発表。一律10%の新たな関税は中国を除くほぼ全ての国に適用される。中国の関税率は今や145%に達している。
- 米国とその同盟国の関係悪化はすでに実際の影響を及ぼしている。同盟国の一部にはトランプ氏が最初に発表した大統領令で最も厳しい関税率が課された。米入国管理当局による嫌がらせ(ハラスメント)や拘束の話が広がる中、3月には米国の空港に外国から到着する人の数が11.6%減少した。また長らく米国の世界的影響力の主な源泉であった大学も、政府の研究助成金が削減され、苦境に立たされている。米国は何年も前から国際教育の場で市場シェアを失ってきたが、トランプ政権が突然、数千人の留学生の査証(ビザ)を取り消したことで、外国人の入学志願者はより温かい受け入れ制度がある英国やカナダ、オーストラリアなどに目的地を変えている。
- 米大学の外国人学生向け広報活動を担う業界団体「アソシエーション・オブ・インターナショナル・エンロールメント・マネジメント」のクレイ・ハーモン事務局長は「政府による気まぐれで恣意(しい)的な変更が彼らの身分を左右するようならば、米国に来ても多分安全ではないとのメッセージを確かに送っている」と述べた。
- 米国が内向きになる一方で、中国は米国の世界的な同盟システムを再現しようとはしていない。中国のアナリストらによると、過剰な拡大という米国の失敗から教訓を得ていることが一因だという。
- 中国人民解放軍の退役上級大佐で、現在は清華大学の上級研究員を務めるツォウ・ボー氏はこう述べた。「中国の活動範囲は間違いなく広がっているが、独自のやり方で徐々に責任を果たそうとするだろう。空白を埋めるのとは違う。埋めようとすれば、わなに落ちる」
- 世界の大多数の国々にとって中国はすでに最大の貿易相手国だ。中国は昨年12月、最も開発が遅れている43カ国(うち33カ国はアフリカ)からの輸入品に対する関税を撤廃した。これに対し、トランプ氏が最初に発動した関税の一部は、マダガスカルやレソトなどアフリカ最貧国の一部を標的にしていた。これらの国々は公衆衛生や栄養、教育の分野でUSAIDが資金を援助していたプログラムが突然停止されたことに当惑している。
- ナイジェリア屈指の起業家で複合企業ショアライン・グループの会長を務めるコラ・カリム氏は「とてつもない混乱だ。今度の貿易戦争の巻き添え被害はどこよりもアフリカで顕著になるだろう」と述べた。「もし1年後にこの大陸で紛争が起きたら、誰が米国の話に耳を傾けるだろうか。全てを切り捨てることで、米国は無関心だとのメッセージを送っている」
- 米国の援助停止と新たな関税で打撃を受ける世界の各地域と同様、アフリカの鉱物資源や港湾、海上交通路(シーレーン)は、米中の世界的競争にとって極めて重要だ。米アフリカ軍司令官のマイケル・ラングレー海兵隊大将は、最近開かれた上院公聴会で、USAIDが資金援助していた一部の重要プロジェクトで中国がすでに米国の代わりを務め始めていると証言。「それは米国が中国共産党に対し、戦略的優位を維持するために必要な能力だ」と警告した。
- マルコ・ルビオ米国務長官は、米国はアフリカなど各地で人道支援を削減する必要があるとし、なぜなら「われわれは世界の政府ではなく」、米国のリソースには限りがあるからだと述べた。ルビオ氏は、中国やインドといった他の豊かな国がこうした支援の費用を払うべきだとも述べた。
- 中国が大胆に財布のひもを緩める意思はほとんどない。そう指摘するのは、米国防総省高官を務め、現在はジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院教授(国際関係論)のハル・ブランズ氏だ。「だが彼らはグローバルサウス(新興・途上国)の発展に真の関心を持つ国だと見せかけることで、外交的な利益を引き出そうとしている」
- トランプ政権は、中国やロシアの公式プロパガンダ(宣伝活動)に対抗する米国のラジオやテレビの外国語放送を取りやめており、中国のメッセージはより伝わりやすいだろう。例えば、新疆ウイグル自治区での弾圧を明るみに出すうえで重要な役割を果たした米国の政府系放送局「ラジオ・フリー・アジア」は75%の人員削減が実施され、もう中国語での放送を行っていない。
- 同局のベイ・ファン社長兼最高経営責任者(CEO)は「われわれは暗闇の隅々に光を当て、中国共産党が国民や世界に示す物語に異議を唱えていた」と話す。「われわれの資金が打ち切られ、彼らは大喜びだ。彼らが最も恐れるのは国民が真実を知ることだから」
- トランプ氏が打ち出す政策の結果として、アジアや欧州の米同盟国が必ずしも中国側につくわけではないが、米国が新たなゼロサム思考と場当たり的政策で世界に対峙(たいじ)する中、すでに両にらみの作戦で対応しようとしている国は多い。
- 元米情報当局者で、ランド研究所の公共政策大学院教授を務めるデレク・グロスマン氏は「国際秩序を混乱させ、特に同盟国や友好国に動揺を与える道を進めば進むほど、彼らは代わりを探さざるを得なくなる」と述べた。「だが実際に代わりは極めて少なく、中国が主要な選択肢となる」
- トランプ氏の側近ら、対ロシアで強硬姿勢訴え - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領の複数の側近は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナとの停戦に真剣な関心を示していないとして、和平を望むとするロシアの姿勢に懐疑的になるようトランプ氏に助言している。
- 米政府関係者によると、マルコ・ルビオ国務長官やウクライナ・ロシア担当特使を務めるキース・ケロッグ氏を含む側近らは、プーチン氏との交渉により慎重な姿勢で臨み、領土割譲を求めるロシアに対し強硬な姿勢を示すよう促しているという。
- 一方、プーチン氏と2回にわたりモスクワで会談したトランプ政権のスティーブン・ウィトコフ中東担当特使は、プーチン氏が和平を望んでいるとの見方を示している。トランプ氏も依然としてウィトコフ氏の見方を支持している。
- ただロシアはトランプ氏の停戦の呼びかけを拒否し、戦場での成果を固めながら時間稼ぎをし、和平交渉で最大限の譲歩を引き出そうとしている。
- トランプ氏はプーチン氏に対していら立ちをあらわにすることもあるが、ロシアの原油輸出に新たな制裁を課すという脅しは実行に移していない。
- しかし、ウクライナ北部の都市スムイに対するロシアの弾道ミサイル攻撃で少なくとも34人が死亡、100人が負傷したことで、トランプ政権内でロシアに対する姿勢に温度差があることが浮き彫りとなった。
- トランプ氏は14日に大統領執務室で記者団に対し、ロシアの攻撃は「間違いだ」と語った。また、記者団から責任の所在について問われると、ジョー・バイデン前大統領が「戦争を引き起こした」と非難した。
- ケロッグ氏は13日の発表文で、ロシアの攻撃は「いかなる良識の一線も越えている」と述べ、ルビオ氏は「悲惨」で「悲劇的」だとした。
- 米国務省の元高官ダニエル・フリード氏は、国務省と財務省が対ロシア制裁の強化に向けた選択肢の準備を進めていると述べた。
- 両省はコメントを控えている。ケロッグ氏はコメント要請に対し、これまでのところ返答していない。
- ベッセント米財務長官、貿易巡る交渉で日本や韓国・英豪などを優先 - WSJ
- スコット・ベッセント米財務長官が新たな貿易協定を巡り、英国、オーストラリア、韓国、インド、そして日本などとの交渉を優先し重視していることが分かった。事情に詳しい関係者らが明らかにした。ドナルド・トランプ大統領はこれらの国を含む各国に新たな関税措置を発表している。
- ベッセント氏は関係者らに対し、これらの国々を優先対象としており、各国の当局者と連絡を取り合っていると伝えているという。
- 事情に詳しい関係者らによれば、日本の赤沢亮正経済再生相は16日からワシントンを訪れ、ベッセント氏や米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表と会談する予定。関係者らによれば会談は予備的な内容にとどまる見通しで、即座に合意に至らない可能性もある。
- 石破茂首相は14日、早期妥結のために譲歩することはないと発言している。
- ベッセント氏は貿易問題を巡りトランプ氏の重要な助言者となり、政府の交渉担当トップとして、少なくとも10%の関税を課された国々の当局者と迅速に接触を図る動きをみせている。
- 米財務省の報道官からは今のところコメントは得られていない。
- フォルケンダー米財務副長官、SLR規制緩和を検討-国債の扱い巡り - Bloomberg
- フォルケンダー米財務副長官は15日、米国債市場への補完的レバレッジ比率(SLR)規制の適用について協議していることを明らかにした。市場関係者からはSLRが取引の制約になっているとして、規制を見直すよう求める声が上がっている。
- フォルケンダー氏は投資信託協会(ICI)のイベントで「われわれはそれを調査し、話し合っている」と語った。
- 連邦準備制度理事会(FRB)はコロナ禍の間、SLRの条件緩和措置を導入したが、その後に打ち切った。多くの市場参加者はSLRの適用について、米国債のポジションに対して金融機関が準備預金を保有することを義務付けるため、主要ディーラーの値付け能力を損ない、流動性に悪影響を与えると発言している。
- フォルケンダー氏は「われわれが常に自問しているのは、市場が不安定な時期やストレス事象が発生した場合に、金融システムに十分な流動性があるかどうかだ」と発言。「つまり、ストレス時にSLRが不必要な制約になるのであれば、売買が著しく膨らんだ場合に、債券市場の対応能力を高める方法があるかを問うている」と話した。
- 米国債取引
- 先週の米国債市場では10年債利回りが週間ベースで2001年以来の大幅上昇となり、市場の流動性状況に注目が集まった。
- フォルケンダー氏は「債券市場では利回りが引き続き低下している。前日は10年債利回りが11-12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した」と述べ、14日に米国債相場が上昇したことを強調した。
- ベッセント財務長官は14日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、外国の投資家による米国債の「投げ売りはないと思う」と発言。必要に応じて「展開することができる大きなツールキット(道具箱)がわれわれにはある」と述べた。
- パウエルFRB議長と毎週行っている最新の会合で米国債市場を巡る懸念を話し合ったかとの質問に対し、ベッセント氏は「具体的にはブレーク・ザ・グラス(緊急時の対応)のようなものを議論したか、ということだ。それには程遠いと考える」と答えた。
- ウィズダムツリーの債券戦略責任者ケビン・フラナガン氏は変動が激しかった先週、同様の見解を示していた。
- 同氏は「資金調達市場ではいくつかの問題が生じているが、FRBが対応するほどではない」と発言。「SLRの条件緩和も手段だ」とも述べ、「恐らくFRBではなく規制当局から出てくるだろう」と話した。
- 米共和党、富裕層増税案に勢い-トランプ氏もオープンな姿勢 - Bloomberg
- 米共和党は現在、最富裕層に課す新たな税制をどのように設計するのが最善かについての分析を進めている。これは、トランプ大統領の下で同党が富裕層への増税を真剣に検討していることを示す動きだ。
- 事情に詳しい関係者によると、下院共和党の提案では、年間課税所得100万ドル(約1億4300万円)以上を対象に新たな税率を40%に設定することが示されている。上院およびトランプ政権の経済政策担当者も、この案の検討を進めているという。現行の最高税率は、年間課税所得が62万6350ドルを超える単身者に対して適用され、税率は37%となっている。
- 非公開の協議内容であることを理由に匿名を条件に語ったホワイトハウス当局者は、トランプ大統領も新たな最高税率を設ける考えにオープンだと述べた。ただ、高い税率が課される所得の基準は100万ドルを大幅に超えるべきだと同当局者は強調している。
- フォルケンダー米財務副長官は15日、首都ワシントンでのイベントで「さまざまな財源確保策の可能性について、調査を行いながら議会と協議を進めている」と発言。税制法案の総コストを抑えるために検討されているアイデアは「非常に数多く」あるが、「まだ何も決定していない」と続けた。
- ベッセント財務長官は14日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで、税制法案に関しては「あらゆる選択肢が検討されている」と述べていた。
- 上院財政委員会の報道官はコメントを差し控えた。ホワイトハウスおよび下院歳入委員会からのコメントも現時点で得られていない。
- 関係者1人によると、富裕層への税率引き上げは、州・地方税(SALT)税額控除の上限引き上げによるコストを相殺する手段となり得る。この控除は、ニューヨーク、ニュージャージー、カリフォルニア各州などの激戦区の共和党議員にとって、政治的に重要な税制措置となっている。
- 最高税率の引き上げはパススルー事業体の事業主の反発を招く可能性が高い。これら事業主は、税法上の個人税率に基づいて事業体の税金を納めているからだ。ティリス上院議員(共和)はパススルー事業体の課税額を減らすために議会は最高税率区分を制限すべきだと主張している。
- 新たな富裕層税制は、「増税反対」という共和党の長年の党是から外れることになる。
- トランプ氏の貿易戦争、ベッセント財務長官が挑む賭け - WSJ
- スコット・ベッセント米財務長官は、ドナルド・トランプ大統領に進言できる立場にあった。
- ベッセント氏はトランプ氏に対し、貿易相手国と合意を締結し中国を孤立化させるため、大規模な関税発動を一時停止するよう促し始めていた。フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅「マールアラーゴ」から首都ワシントンへ向かう機内で6日、大統領に「エンドゲーム(最終的な落としどころ)」を提案するよう助言した。
- トランプ氏は準備ができていなかった。しかし週が進むにつれ、株式市場の急落と、通常は危機の際の避難先である米国債の予想外の売りが組み合わさり、状況は無視できないものとなった。トランプ氏は多くの関税を90日間停止した。
- ベッセント氏は望んでいたものを手に入れたが、望んでいた方法とは程遠かった。
- 元ヘッジファンド運用者で62歳のベッセント氏は、難しい課題に直面している。MAGA(米国を再び偉大に)のポピュリスト的な経済政策と、金融業界における長年の経験から自身が支持してきた、より伝統的で保守的な政策(債務削減、減税、規制緩和など)を融合させるという課題だ。
- ベッセント氏は「マクロ」トレーダーとして名を成した。これは投資の世界で、主要な経済トレンドに大きく賭ける分野だ。同氏は財務長官として、トランプ氏の米経済再構築に対する一種のマクロ取引を成功させようとしている。
- これは現代の政治・経済史上、特にリスクが高く代償の大きい賭けの一つだ。トランプ氏の通商戦略が痛みを伴う景気後退を引き起こせば、同氏と共にベッセント氏も責任を負うことになるだろう。
- ベッセント氏の長年の友人である共和党のリンゼー・グラム上院議員(サウスカロライナ州)は「これが素晴らしい結果につながれば天才的だ」と語る。「そうでなければ、大きな間違いだったと見なされるだろう」
- この記事は、米国の金融市場が10日間の混乱に見舞われる中、ベッセント氏、トランプ氏、そして政権内の人物らに近い関係者10人以上との会話に基づいている。
- 今のところ、ベッセント氏の政権内での地位は高まっている。ある高官は同氏を「部屋の中の大人(冷静に責任感を持って対応できる人物)」と表現し、大統領の信頼を得ていると述べた。別の政権高官によると、トランプ氏は現在、ベッセント氏に各国との関税交渉で主導的な役割を与えている。
- グラム氏はベッセント氏について「政権のMVP(最優秀プレーヤー)の一人だ」と語った。「落ち着いていて論理的で、トランプ大統領のことを理解している」
- トランプ氏に引き寄せられる
- ベッセント氏は、伝統的な財界人からMAGAの重要人物、そしてトランプ氏の側近へと驚くべき変貌を遂げた。サウスカロライナ州の小さな町で育ち、イエール大学に通い、1991年に著名投資家ジョージ・ソロス氏のヘッジファンドに加わった。
- 翌年、ソロス氏が英ポンドの暴落を見込んで行った巨額かつ成功した賭けで、ベッセント氏は重要な役割を果たした。2011~15年にソロス氏の最高投資責任者(CIO)を務めた後、自身の会社を率いた。
- ベッセント氏は主に共和党候補に献金してきたが、一部の民主党候補も支援し、2000年にはハンプトンズ(ニューヨーク郊外の避暑地)の自宅でアル・ゴア氏の大統領選挙運動のための資金調達イベントを主催した。一方で同年、共和党でアリゾナ州選出のジョン・マケイン上院議員(当時)にも寄付を行った。
- ベッセント氏は友人らに対し、トランプ氏の2024年の大統領選挙運動に参加した理由の一つは、米国が巨額の債務を削減する時間が残り少なくなっていることを懸念したからだと語っている。
- 地位を高める中、ベッセント氏はサウスカロライナ州のヘンリー・マクマスター知事(共和党)という味方を得た。マクマスター氏は昨年秋、財務長官就任を目指すベッセント氏から推薦を依頼された後、同氏の適性を訴えるためにトランプ氏と選挙対策本部長に電話をかけたという。ベッセント氏の主な競争相手は、キャンターフィッツジェラルドのトップを長年務めてきたハワード・ラトニック氏だった。彼はラトニック氏に競り勝つため、数週間にわたりパームビーチのホテルに陣取った。ラトニック氏は最終的に商務長官に就任した。
- トランプ氏の側近らによると、同氏はラトニック氏よりもベッセント氏を気に入っていた。その理由の一つは、ベッセント氏の方がテレビ映えすると考えていたからだという。「彼はとても良い」とトランプ氏は先月、側近の一人に語った。ベッセント氏はホワイトハウスにあまり頻繁に現れないことでも好感を持たれており、またトランプ氏は彼の富と洞察力も評価している。
- ベッセント氏は、トランプ氏が4月2日にホワイトハウスのローズガーデンで新たな関税計画を発表した際に同席した。金融界の大半の人々が、関税はある程度限定的なものになると予想していたが、そうはならなかった。トランプ氏は、米国の輸入品に10%の基本関税を課し、貿易面で「悪質な行為者」と見なす国・地域にはさらに高い関税率を適用すると述べた。
- ベッセント氏は関税の影響を受ける国・地域に対し、即座に警告を発した。対抗措置を取らないよう求めたのだ。「どの国も慌てないよう勧告したい」とベッセント氏はブルームバーグのテレビインタビューで語った。「報復しようとしないことだ。報復しない限り、これが上限の数字になる」
- 夕食を楽しむ姿
- パニックに陥ったのは投資家たちだった。株価は2020年3月以来の大幅な下げを記録し、数日間で数兆ドルの時価総額が失われた。
- ベッセント氏は、少なくとも表面上は特に緊迫感を見せず、株安は実体経済に影響を与えないとホワイトハウス内部や公の場で主張していた。
- 関税計画発表後に初めて株価が下落した3日の午後6時30分ごろ、ベッセント氏はヘッジファンド界の同僚とワシントンの会員制クラブ「ネッズ・クラブ」でワインを飲みながらくつろいだ雰囲気で夕食を楽しんでいる姿が目撃された。その場にいた別の客が明らかにした。
- 中国が米国に対して報復関税を課し、その週の週末時点で米国市場はさらに神経質になっていた。投資家らはベッセント氏に助けを求めて電話をかけていた。同氏を知る一部の業界幹部らは、ベッセント氏がトランプ氏の計画を支持していることに困惑していた。彼らは単に金を失ったというだけでなく、経済全体の先行きを懸念していた。一部の金融界の幹部らは公に反対の声を上げ始めた。
- 拡大する同盟
- 日本の首相や韓国の大統領代行を含む新たな国・地域が、ベッセント氏と担当チームに接触してきた。インドはすでにアプローチしていた。ベトナムの代表団はベッセント氏のオフィスを訪れた。
- 9日になると、世界規模の包括的な関税が発効した。その時までに、トランプ氏のチームとベッセント氏は既に方針転換を検討していた。中国に対抗する同盟の構築だ。ベッセント氏は米国銀行協会(ABA)で演説し、トランプ政権の新戦略を示唆した。「同盟国との合意は恐らく可能だ」とベッセント氏は述べた。「そして集結して中国に対峙(たいじ)できる」
- その日遅く、ベッセント氏やラトニック氏と共に大統領執務室に座っていたトランプ氏は、わずか数時間前に発効したばかりの約100カ国・地域に対する相互関税の90日間停止を発表した。
- 方針の急転換により株価は急騰し、債券市場の問題も緩和された。しかし投資家らは、根本的な状況は変わっていないことをすぐに理解した。米国は依然として中国との経済戦争の最中にあった。
- 通商交渉の結果にかかわらず、世界経済は過去1世紀で最も高水準の関税に直面することが見込まれ、それが成長を抑制し、インフレ圧力をもたらす可能性がある。
- 11日までには、投資家は再び主要な米国債を売却し始めた。
- ●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
- 金ETFへの資金流入、中国が米国を上回る 需要増加で=WGC | ロイター
- 金の国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のデータによると、金現物を裏付け資産に持つ中国の上場投資信託(ETF)に流入した投資資金が今月に入って以降、現在までに第1・四半期全体の規模を上回り、米国上場ETFも超えた。
- 資金流入額の増加は金保有高の増加になって現れる。WGCのシニア市場ストラテジスト、ジョン・リード氏が14日、ソーシャルメディアで明らかにしたところでは、中国の金ETFは4月最初の11日間で保有高が29.1トン増加した。第1・四半期の増加幅は計23.5トンにとどまっていた。また、米国上場ETFの保有高は4月に入って以降27.8トン増えたが、増加幅は中国ETFを下回った。
- リード氏は「第1・四半期の増加理由は主に米国の関税(引き上げや上乗せ政策に)絡んだものと欧米のETF購入だったが、第2・四半期は中国の投資家による金への関心が膨れあがり、従来と一線を画す展開となる可能性がある」と述べた。
- 金は、地政学的・経済的リスクをヘッジする受け皿とされることが多い。米国と中国の高関税措置の応酬は先行き不透明感をもたらしており、金価格は年初以来22%上昇した。14日には1オンス=3245.42ドルを付け、過去最高値を更新しており、人民元が一時2007年以来の対ドル安値水準を付けたのと対照的だ。
- 国際価格に乗せる中国国内の「プレミアム」は前週、ロンドン価格の1%分となり、前々週の0.2%分から上昇した。ディーラーらによる実売価格は24─54ドルの上乗せがあった。
- ある金取引業者が匿名を条件に明かしたところによると、こうした高いプレミアムを背景に、貴金属取引部門を持つ複数の世界的銀行が先週、中国市場で「異例の活発さ」を見せ、大量の金を輸入していたという。
- ユーロ圏の銀行、企業向け融資を厳格化 経済見通し懸念=ECB | ロイター
- 欧州中央銀行(ECB)が15日公表した銀行貸出調査によると、ユーロ圏の銀行は第1・四半期に企業向けの融資を厳格化した。経済見通しに対する懸念が強まっており、今後も厳格化が続く見通しという。
- 過去1年はECBの利下げなどを背景に融資が総じて緩やかに増加していたが、足元では米国の通商政策を巡る不透明感で世界的に混乱が生じており、融資の増加余地は限られるとみられている。
- 第1・四半期はドイツなどで企業向け融資の審査基準が厳格化された。第2・四半期は全てのタイプの融資で一段の厳格化が予想されるという。
- 厳格化の程度は銀行が従来予想していたほどではなかったが、経済見通しに関するリスク意識が高まり、審査基準が厳格化された。
- 第1・四半期は企業向け融資の需要も減少したが、銀行は第2・四半期に需要が小幅に増加すると予想している。ただ、ドイツ、フランス、イタリアの銀行の間でリスク意識が高まっているという。
- 住宅ローンについては、引き続き需要の急増と審査基準の緩和が報告された。銀行間の競争激化が主因。住宅ローンの需要は第2・四半期も増加が見込まれている。
- 英労働市場に減速の兆し、企業の税負担増を前に 賃金は堅調維持 | ロイター
- 米国債のタームプレミアム上昇、10年ぶり高水準-米国債下落 - Bloomberg
- 15日の米国債は下落。一方、10年物米国債のタームプレミアムは約10年ぶり高水準に上昇した。トランプ政権の予測不能な関税政策が市場に影を落としている。
- 10年物利回りは14日に1月以来の大幅低下となった後、15日は前日比2ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.39%となっている。
- 短期債への再投資を繰り返す代わりに長期債を保有することに対して投資家が求める上乗せ利回りである「タームプレミアム」は、71ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に上昇した。ニューヨーク連銀のデータによると、これは2014年9月以来の大きさ。
- 米国の経済政策が予測しにくくなっているため、タームプレミアムは上昇傾向にある。トランプ米大統領が高関税を発表し、その後一部の関税を一時停止したことを受け、不確実性の指標は今月、過去最高に迫った。減税案や米国債の発行限度額引き上げの可能性も、米国債のタームプレミアムを押し上げている。
- ヤルデニ・リサーチ創業者のエド・ヤルデニ氏はリポートで「利回りを押し上げているのは根本的な懸念だ。単に、投資家がボラティリティーの中でポジションを解消しているということではない」と指摘し、「恐らく、財政赤字を拡大させるような新たな債務上限法案の可能性と政策の不透明性が、債券のタームプレミアムを押し上げているのだろう」との見方を示した。ベッセント財務長官は今月初め、連邦政府が早ければ5月か6月に資金不足により一部の支払い義務を期限通りに履行できなくなる恐れがあると示唆した。
- 先週は投資家が米国債とドルの安全資産としての地位に疑義を呈し、米国債は週ベースで2001年以来の大幅下落となった。11日には10年物利回りが一時4.59%と2月以来の高水準を付けた。米国債相場は14日に6営業日ぶりに上昇した。
- 米国債は長い間、外国人投資家からの旺盛な需要に支えられてきたが、その傾向が変化しつつある。シエテ・ジェネラルのストラテジストらはリポートで「米国債に対する外国からの需要の減少は、需要の力学におけるパラダイムシフトであり、最近の出来事はこの傾向を加速させる可能性がある」と指摘した。
- 世界の美術品の売り上げ、昨年は12%減 業界報告書 - CNN.co.jp
- 2024年の世界の美術品や骨董(こっとう)品の売り上げは2年連続で落ち込み、12%減の推計575億ドル(約8兆2000億円)だったことがわかった。アート・バーゼルとスイス金融大手UBSによる最新の年次報告書「アート・マーケット・リポート」で明らかになった。
- 「全体的にみて非常に厳しい1年だった」。報告書をまとめた調査会社「アーツ・エコノミクス」の創業者クレア・マクアンドリュー氏はアート・ニューズペーパーにそう語った。
- 報告書によれば、24年の落ち込みは過去15年で3番目に大きかった。世界的な景気後退のあった09年の36%減、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)となった20年の22%減に次ぐ規模となった。12年に記録した12%減と同水準でもあった。
- 地域別でみても、ほぼすべてで売り上げが減少しており、特に中国が33%減と大きかった。世界最大のアート市場である米国は9%減、フランスとイタリアはいずれも10%減、韓国は15%減だった。報告書によれば、「ブレグジット(英国の欧州連合離脱)に関連する課題」があるものの、英国はより緩やかな5%減にとどまり、世界第2位のアート市場の地位を維持している。
- 報告書によると、24年の落ち込みの構図は23年の動向とほぼ同様で、当時も「進行している地政学的な緊張や経済的圧力、購買行動の変化」が続く中、高価格帯が特に大きく影響を受け、世界全体の売り上げは4%減を記録していた。
- カナダ、自動車関税条件付きで免除-ホンダは生産移管検討せずと表明 - Bloomberg
- 日米関税協議の裏テーマは為替の可能性、アナリストらは円高容認読む - Bloomberg
- 赤沢亮正経済再生相が16-18日の日程でワシントンを訪れ、日本と米国の関税を巡る閣僚級協議が始まる。米国が為替問題も取り上げるとの読みから市場の注目は円相場の行方に集まっており、アナリストらは米国の対日貿易赤字の削減を間接的に支援するため、日本が円高・ドル安を容認すると予測している。
- トランプ米政権が4月から全貿易相手国に一律10%の関税を課す中、対米貿易黒字の多さから税率の上乗せを示唆している国や地域のうち、日本はトップバッターとして米国との交渉に臨む。日本の交渉役である赤沢経済再生相は11日、米側のベッセント財務長官から為替に関する議論が提起された場合、応じる考えを示していた。
- 米国は当初、上乗せ税率を適用する日本への関税率を24%に設定したが、9日に対象国・地域への上乗せ分の実施を90日間停止すると発表。さらに、米国に輸入される自動車への関税の一時免除も検討している。一方、米国は日本に対し、農産物や液化天然ガス(LNG)の輸入を巡り譲歩を求めている。
- ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリスト
- 円安に対して懸念を共有するようなヘッドラインが流れれば、円高圧力が一段と強まる可能性がある
- 日本は米製品に対する関税が元々低く、できることは円安是正とLNGなどの輸入拡大。目的は米貿易赤字の削減
- 国民も円安で物価上昇に苦しんでおり、円高への誘導はやりやすい。関税政策と金融政策を結び付けることはあってはいけないが、実際は日銀に利上げを促しやすい
- 野村証券の松沢中チーフストラテジスト
- 米政府は日本との貿易交渉をモデルケースにしようとしているのだろう。米国からの要求で、日本が急激な円高と債券市場のイールドカーブのスティープ化に直面するリスクがある
- 米経済に頼り切った世界経済が見直されており、自然な流れとして今はドル安が進みやすい環境
- 1カ月以内に1ドル=130円台に入っても全然おかしくない
- ラボバンクのストラテジスト、ジェーン・フォーリー氏
- 日本は円が適度に強くなることに問題はないという姿勢を明確にする可能性がある。ベッセント米財務長官が日本との貿易交渉を主導するとのニュースが流れた直後から、ドル・円の価値が交渉材料になるとの憶測が飛び交う
- 日本は現在の円の価値が低過ぎると譲歩する可能性はあるが、交渉チームは為替レートの変動を警戒しており、この点はあまり譲歩しない可能性が高い
- 今後数週間の間に円相場が下落する余地はあるものの、今年中にG10通貨の中で円が上昇首位の座を再び奪還する力を楽観視している
- 円は対ドルで年末の目標値145円を上回っており、今後数週間のうちにこの予測を修正する可能性もある
- ニッセイ基礎研究所の福本勇樹金融調査室長
- 日米関税交渉では為替の話になるというのがコンセンサス
- 日本政府が円高に誘導したいというのが市場の考えで、関税交渉が行われる前までは為替は円高方向、金利は高く、株価は下落するだろう
- とはいえ、投資家は不確実性に備え、どちらかにかじを切っているわけではない
- 今回の交渉の成否にかかわらず、米中関係の行き詰まりで世界経済が悪化し、最終的に日本が冷や水を浴びることもあり、最悪のシナリオは金融危機のような流動性危機が起こることだ
- SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長
- 交渉がうまくいけば、日本株にとってポジティブだろうが、 より重要なのは東南アジアの政府がどう頑張るかで、グローバルに関税がどういう姿になるかということだ
- ベトナムで商品を製造しているアシックスを含め、東南アジアに展開している日本企業は多く、東南アジアへの関税政策が特に注目される
- トランプ関税で世界貿易の再構築が起こる。日本の交渉が最初になり、日本は一番メリットを受ける国として浮上する可能性がある
- 野村証券の荻野和馬シニア・クレジット・アナリスト
- 金利や為替が議論され、その後日銀が利上げを促されれば、円金利は上昇するだろうとの予測が広まる
- 金利上昇前に発行体が社債を売りたい一方、投資家は購入を控えたいと考えており、社債の供給過剰につながり、クレジットスプレッドは拡大する可能性がある
- 円高になると株が下がり、金利が上がってしまうため、クレジット市場では金利リスクと信用リスクを抑えた保守的なアプローチを取るようになる
- 投資家は年限が短く、信用格付けの高い社債を購入する可能性が高い
- Venture Global debt deal wakes US junk bond market from tariff slumber
- 米国最大のエネルギー輸出国の一つは火曜日、米ジャンク債市場を通じて借り入れを行うことができた。ドナルド・トランプ大統領の関税戦争により1兆4000億ドルの高利回り債市場が凍結されて以来、初の取引となった。
- 事情に詳しい関係者によると、液化天然ガス生産会社ベンチャー・グローバルの子会社が売却で25億ドルを調達した。これは、リスクの高い企業債務に対する投資家の意欲を試すものとしてウォール街で注目されていた。
- これは、トランプ大統領が4月2日に「解放記念日」関税を発表し、世界市場の混乱を引き起こして以来、初の高利回り債発行となる。債券発行額は当初の15億ドルから増額され、銀行が償還期限が8年と10年の債券の一部に対する投資家の注文を補充した。
- ベンチャー・グローバルの今回の資金調達は、同グループが1月に上場してから約4ヶ月後に行われた。同社の株価は新規株式公開(IPO)以来、約65%下落している。
- この債務取引はLNG輸出業者にとっては成功だったが、銀行家や投資家は、この重要な資金源に資金を頼る他の借り手にとってはまだ万全の保証ではないと警告した。
- 複数の投資家は、プライベートエクイティ業界にとってより潤沢な資金源となるレバレッジドローンの発行が不足していること、また、既存の債務の返済に充てられるベンチャー・グローバルの債券発行の格付けが比較的高いことを指摘した。
- 投資家らは、4月初旬の大量売却の後、取引は落ち着いたものの、低格付けの借り手は市場への明確な道筋がまだ確立されていないと付け加えた。トランプ大統領の「解放記念日」後の1週間、債券ファンドとローンファンドは記録的な資金流出を記録した。
- ベンチャー・グローバルの高利回り債券取引は、モルガン・スタンレーやJPモルガン・チェースといった米国の大手銀行が直近の決算発表後に新規債券を発行したことを受けて、投資適格債券市場の回復を背景にしたものだ。銀行関係者は、リスクの高い発行体向けにプライマリー市場が再開される前に、高格付け企業が動き出すのを待っていた。
- 「(高利回り債の)動きは確かに顕著になっているように感じます」とある銀行員は語った。「ダブルB格付けの企業があれば、市場は閉鎖されるわけではありません。ただ、少し痛みは増しています。」
- 格付け会社S&Pグローバルのアナリストは、ベンチャー・グローバルの債務に投資適格より1段階低いダブルBプラスの格付けを付与した。ムーディーズとフィッチはより慎重な見方を示し、ダブルBの格付けとした。
- しかし、格付けはジャンク債の中では上位に近いため、ベンチャー・グローバルは新規10年債で約7.75%の利回りを確保できる。
- このLNG輸出業者の新たな提案は、メキシコ湾ルイジアナ州沿岸に位置するカルカシューパスプロジェクトで商業操業を開始するという同グループの発表と同時に行われた。
- ベンチャー・グローバルはコメントを控えた。ウォール街の十数行の銀行と共にこの取引を主導したみずほは、コメント要請に応じなかった。
●中東情勢
- 中国の地方都市「報奨金でベビーブーム」、実情は - WSJ
- 中国中部に位置する湖北省天門市は昨年前半、より多くの子どもを持つことを市民に奨励するため多額の報奨金の支給を開始した。支給額は子どもが2人目の場合は最大で約1万3000ドル(約190万円)、3人目は2万3000ドルだ。昨年1年間で同市の出生数は17%増加した。
- 中国当局は、指導部がまさに全国に期待しているベビーブームをつくった模範として、天門を挙げている。しかしこの出生増が潤沢な報奨金の成果か、他の要因によるものかははっきりしない。女性の中には、より多くの子どもを持つかどうかを考えるのに、出産報奨金はほとんど関係ないと話す人もいる。
- 中国指導部は人口の減少と高齢化を止めようと躍起になりつつある。年次政府活動報告は今年初めて、保育補助金に言及した。同じ手法を試みている国は中国だけでない。日本や韓国、ハンガリー、ノルウェーなども出生数の減少に歯止めをかけるために多くの資金を投じている。しかし一般的にこうした制度はほとんど成功していない。
- 中国では20を超える都市が出産関連の特典を提供している。天門が他と違うのは補助金の規模だ。一人当たりの年間可処分所得が5300ドルの天門では、この補助金があるとないとでは大違いだ。
- 公的メディアによれば、天門では昨年、病院の婦人科病棟が非常に忙しく、今年の春節(旧正月)の連休には医療スタッフはほとんど休む時間がなかった。天門の成功から学ぶため、100人を超える役人が同市を訪れたと報じた記事もある。
- 復活モード
- 現地を訪れると、天門が人口減からの復活に取り組んでいることが分かる。しかしそれまで出生数は6年連続で低下しており、人口危機を脱したとは決して言えないことも明らかだった。
- 市内の病院「天門婦幼保健院」の入り口の看板には、「子どもが多ければ、喜びも多い」と書かれていた。電子掲示板には出産補助金の申請方法の説明が表示され、バスには体外受精治療の新しいクリニックの広告が出ていた。赤い横断幕は「早い出産は有益だ。遅い出産は後悔する」と訴え、出産を先送りしないように呼びかけていた。
- 昨年の天門の出生数は7000人超で、2017年の1万8000人と比べると見劣りする。若者が他の地域で働くために流出し、天門はますます高齢化が進んでいる。国勢調査のデータによると、同市の人口に占める60歳以上の割合は、2010年には10%だったが、20年には25%超に急上昇した。
- 天門市は出産報奨金を支給することで複数の経済的目標を同時に達成することを期待している。目標とは、若い労働者が天門に戻って、家族を持つようにすること、住宅購入を増やすこと、全体的な消費を増やすことだ。
- 昨年生まれたほとんどの子どもは、出産報奨金の詳細が発表される前に既に母親のおなかの中にいたはずだ。またベビーブームの前には、物価が高い沿岸部の都市で働いた若者が相次いで天門に戻り、人口に占める親予備軍の割合が上昇していた。
- 天門の女性の中には、出産報奨金が子どもを産む決定的な要因ではなかったと話す人もいる。
- 「子どもを産みたければ、補助金があってもなくてもそうする」。市内の大型ショッピングセンターの外で2歳の息子と夫と一緒に座っていたケイティ・ワン(33)さんはそう話した。「子どもが欲しくなければ、補助金とは関係なく生まないだろう」
- ワンさんは北京など天門以外の場所で長く働いていた。夫婦は既に1人の子どもに多くのエネルギーと資金を割いており、2人目は考えていないとワンさんは話した。秋に息子が幼稚園に通い始めたら、また働くつもりだ。もしかすると、南部の広東省で仕事に就いて、息子と一緒に天門をまた離れるかもしれない。
- シエ・フェイさん(38)が同僚から出産報奨金のことを聞いたとき、3人目の子どもを妊娠してから既に半年たっていた。当時は天門から140キロメートルほど離れた武漢で働いていたが、出産のために天門に戻った。9月に息子が生まれたときに450ドルの報奨金が支給され、それとは別に子育てのため毎月約140ドルを受け取っている。
- 住宅補助金
- ただ、住宅購入支援の給付金の方が大きかった。出産から1カ月後、シエさんは2万5000ドル近い補助金を使って天門にマンションを購入した。購入費の総額の約3分の1を補助金で賄った。
- 「確かに政府の補助金の恩恵を受けている。補助金のおかげで、子育てのプレッシャーが和らいだ」という。半年間の産休のあと、武漢の職場に戻った。勤務先は中国化学工程第16建設という国有企業だ。ただ彼女は、戸籍に出身地として登録されている天門にいつか戻ることを考えている。「自分は天門出身で幸運だと思う」と話した。
- 天門と同様に、出産関連の住宅補助金を支給している市は他にもある。これは中国の不動産不況を受けてだぶついた売れ残りマンション対策としても役立つかもしれない。エコノミストによると、この住宅補助金は政策立案者にとって、用途に制限のない給付を避けながら消費を奨励する方法でもある。メイバンクのエコノミスト、エリカ・テイ氏は「地元当局者が支給する補助金に見合うものを手に入れようとしているのが分かる」と話した。
- 国営メディアによると、天門市は出産を奨励するためにこれまでに約800万ドルを投じた。3月以降はさらに、新婚カップルに8300ドルの住宅補助金を支給する。
- 多くの地方政府は資金不足に陥っており、一部のアナリストは中央政府が出産関連の制度の資金確保で中心的な役割を果たすとみている。
- 中国全体でも昨年は出生数が増加した。昨年の大半の期間が、中国で出産にとって縁起が良いと考えられている辰(たつ)年に当たっていた。しかし死亡数が出生数を上回り、人口は減少した。人口統計学者は出生数の増加を一時的な現象と受け止めた。
- 天門市はミニベビーブームを持続するため、沿岸部の都市からさらに多くの若者を呼び戻すことに力を入れている。この政策は、より多くの工場職を内陸の都市に移転させるという中国政府の目標と合致する。
- 国営の新華社通信によると、昨年は約8万人が天門に戻った。その多くは景気減速の中でより安い生活費を求めていた。
- 市内の複数の地区では、他の地方から戻った人々が小さな衣料品工場を開くため、空き店舗を引き継いでいる。その一つにいたワンさんという41歳の男性は約20年間、広東省広州市に住んでいたが、23年に天門に戻ったという。16歳の息子がいるワンさんは、出産報奨金は聞いたことがあるが、子どもをもう1人持つつもりはないと話した。
●プロファイ、インフラ、自然災害
- 東芝、特別ボーナス300万円 高い目標達成した社員に - 日本経済新聞
- 千葉・津田沼、イオン色一段と濃く 市庁舎跡にベルク - 日本経済新聞
- ●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(15日)ダウ155ドル安、ドル上昇 ・利回り低下 | ロイター
- ### 為替市場(NY外為市場):
- - **ドル上昇**:ユーロと円に対してドルが上昇。先週3%超下落したドル指数は回復の兆し。
- - **ユーロ**:0.70%安の1.127ドル(先週は一時1.1473ドルの高値)。
- - **ドル/円**:0.12%高の143.16円(先週の安値142.05円に近い水準)。
- - 市場は依然としてトランプ大統領の関税政策の影響に慎重な姿勢。
- ### 米債券市場:
- - **国債利回りは低下**:市場はパウエルFRB議長の講演や経済指標を前に様子見。
- - 10年債利回り:4.321%(4.3bp低下)
- - 2年債利回り:3.826%(0.6bp低下)
- - 30年債利回り:4.771%(2.7bp低下)
- ### 米株式市場:
- - **小反落**:関税の不透明感で消費者関連株とヘルスケア株が下落。
- - **好材料**:
- - バンク・オブ・アメリカとシティグループの好決算で株価上昇。
- - **懸念材料**:
- - トランプ政権の通商政策による個人消費へのリスクが指摘される。
- - ボーイング株が2.4%下落(中国が追加納入を停止との報道)。
- ### コモディティ市場:
- - **金先物**:不透明な関税政策への懸念から買われ反発。6月物は1オンス=3240.40ドル(+14.10ドル)。
- - **原油先物(WTI)**:米中貿易摩擦の影響で需要減退懸念が重し。5月物は1バレル=61.33ドル(-0.20ドル)、6月物は60.75ドル(-0.30ドル)。
備忘録(2025/4/14)
●海外企業決算
- 英下院、ブリティッシュ・スチールの政府管理を全会一致で可決 | ロイター
- 独当局、伊銀のコメルツ株取得計画承認 30%弱保有可能に | ロイター
- Pfizer scraps daily weight loss pill danuglipron after a liver injury
- (サマリー)ファイザー社は、臨床試験中に患者が同薬が原因と思われる肝障害を経験したため、実験的な毎日減量する錠剤の開発を中止すると発表した。
- ダヌグリプロンと呼ばれる経口GLP-1薬の服用を中止した後、患者の肝酵素は「急速に回復」した。
- ファイザー社の広報担当者はCNBCに対し、患者は肝酵素の上昇を示していたが、これは肝臓細胞の損傷を示唆するものだが、肝臓関連の症状や副作用は経験していないと語った。
- この発表は、食欲を抑制し血糖値を調整する腸内ホルモンを模倣するGLP-1の急成長市場のシェアを獲得しようとする同社の試みにおける一連の挫折に加わることになる。
- ●日本企業
- トランプ氏「外国企業がUSスチール支配すべきでない」、買収に難色 | ロイター
- ソフトバンクG社債、機関投資家向け10年超ぶり小規模-個人頼み鮮明 - Bloomberg
- インタビュー:円債投資は射程圏、上場・未上場株はまだ過少=農林中金・新理事長 | ロイター
- 農林中央金庫(NORB.UL)の北林太郎理事長はロイターとのインタビューで、「金利ある世界」の到来により日本国債が運用の「射程に入っている」として、投資のタイミングを計っていることを明らかにした。外債偏重の運用で巨額の損失を出した苦い経験から、円債や変動金利資産、非金利資産などへの幅広い分散投資を徹底する。現状では、上場・未上場株式への投資が少なすぎるとも指摘した。
- 農林中金では外国債券運用に伴う巨額損失の責任を受けてトップが交代、北林氏は4月に新たに理事長に就任した。
- <円債も投資対象、金利リスクには慎重に>
- ●先進国政治動向
- 農林中金の市場運用資産残高約45兆円のうち、北林氏によると、外債の占める割合を従来の5─6割から一段と低下させていく。投資先の配分比率はあらかじめ定めない考えで、「金融機関としての規制など制約がある中、既存ポートフォリオの入れ替えをしながらなので、特定の数値を置くよりも状況に応じてやっていきたい」と述べた。
- そうした中で、外債に代わる投資先としては円債を前向きにみている。昨年9月末時点では、農林中金が保有する債券の内訳は外債が全体の7割強、国内債が3割弱だった。
- 北林氏は「日本国債はマイナス金利・低金利の時はなかなか投資対象になり得なかったが、一定程度の金利が出てきた中で、投資対象の一つとしては当然カウントできる」と話す。為替ヘッジコストが高止まりしていることも、その考えを後押しする要因という。
- 一方で「採算性が上がったから円債ばかりに投資しようとなると(過去の失敗を)また繰り返すことになる」と述べ、金利リスクの取り方は慎重にあるべきとの考えを強調した。
- 北林氏は、裏付け資産からの収益が変動金利で支払われる証券化商品を増やす方針も示した。固定金利資産で大きな損失を被った教訓から、変動金利資産の割合を意識的に高めていく必要があると判断したためという。
- 今年に入って海外金利が上昇した局面では「金利資産と反対方向に動く資産の保有が少なかった」とも振り返り、上場・未上場株式などへの投資も増やす意向も示した。
- <運用は短期的な機会に「一喜一憂せず」>
- 農林中金では従来、米欧の国債を中心とした外債投資を軸に運用を行ってきたが、米連邦準備理事会(FRB)の利上げなどに伴い海外金利の上昇や為替ヘッジコストの高騰により収益性が悪化。2025年3月期に1兆9000億円の最終赤字を計上する見通しとなっている。
- このため、低利回り資産の売却を進めて損失を顕在化させる一方、外債に偏り過ぎた金利リスク資産を減らして非金利リスク資産を増やす方針に転換しており、26年度3月期については300─700億円の最終黒字化を見込んでいる。
- 北林氏は「昨年度に相当低利回り資産の売却を進めてネガティブ要素が減っているので、今期の黒字に向けては(米関税政策などを受け)混乱する中で慌てて投資をする環境にはない」とみている。米国の関税政策により増した不確実性を見極めた上で、商品や時間軸や地域をそれぞれ分散しながら運用を行う方針を示し、短期的な「買い場・売り場に一喜一憂せず」に中長期の視点から運用ポートフォリオの改善に取り組んでいくと語った。
- 農林中金では、外債の運用失敗で巨額損失を計上した責任を取る形で奥和登前理事長が3月末で退任。財務の立て直しに取り組んできた北林氏が、外債の整理と資本の増強が終わった節目でバトンを受け取った。役員体制の大幅な若返りも推進し、再起を図る。
- 海運支配望むトランプ氏、船員不足が障害に - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は国家安全保障の問題として、米国の商船隊を速やかに復活させたいと考えている。
- しかし、米国にはそれを実現するだけの十分な船員がいない。
- 戦時に米国産の車や燃料、食料を運搬するために招集できる商船隊は現在、200隻に満たない車両運搬船や石油タンカー、コンテナ船から成るが、トランプ氏はこれを迅速に拡大することを望んでいる。商船員の不足は、そうした同氏の野心的な計画にとって最大の障害の一つだ。
- ショーン・ダフィー米運輸長官は「米船籍の船を増やしたいと思うなら、もっと船員が必要だ。現時点では米船籍の船を大幅に増やしても乗組員が十分にいない」と述べた。
- 近年の民主党政権、共和党政権とも、特に中国が南シナ海での海軍力を誇示し、台湾を威嚇する中で、船舶不足を米国防政策の弱点として認識してきた。両党の議員たちは協力して、米国の造船と海運力を強化する法案に取り組んでいる。彼らの目標の多くは、国内造船業の復活と米船籍の商船への需要を刺激することを目的にトランプ氏が9日署名した大統領令に盛り込まれた。
- これらの商船に乗り組むのは米国人の船員でなければならない。船員の雇用と保持は、トランプ政権の戦略の重要な部分となるだろう。
- 民間船による輸送は、米国の商業のみならず、米軍にとっても不可欠だ。国防総省の軍事海上輸送司令部(MSC)は、平時および戦時の必需品の輸送を商船に頼っている。MSCは今年、戦闘兵たん部隊の約6%に当たる17隻の船を離脱させた。船員不足が理由だ。
- 米政府はずっと前から、必要な海上輸送の大半を民間セクターに委託してきた。現在、米国が米船籍の船の運航と維持を委託している会社の多くは、デンマークやフランス、ドイツなどに本社を置いている。米連邦海事局のプログラムには現在、およそ60隻が登録している。このプログラムでは、船で政府の荷物を運んだり、必要な時に国防総省が船を利用できるようにしたりすることを条件に、政府が船会社に1隻当たり年間530万ドル(約7億7000万円)を給付する。
- フランスの海運大手CMA CGMの最高経営責任者(CEO)で富豪のロドルフ・サーデ氏は3月、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談した直後に行われたウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の取材に対し、「われわれはもっと多くの船員を必要としているが、市場ではそれほど多くの船員を確保できない」と述べていた。
- 輸送能力で世界3位のコンテナ輸送会社を経営するサーデ氏は、バージニア州アーリントンに拠点を置く米子会社アメリカン・プレジデント・ラインズが既に米国船籍の船10隻を稼働させており、それにコンテナ船20隻を追加する予定だとトランプ氏に伝えた。サーデ氏によると、船員のローテーションが必要なため、通年で米船籍の船を新たに20隻稼働させるには最大1000人の船員が必要になるという。
- それは大きな課題になるだろう。米船籍の船を運航する企業は、現在稼働中の船に乗せる船員を探すのにも苦労しているからだ。
- 船員不足は、何年も前から問題になっていた。ドイツの海運会社の子会社でアトランタを本拠に米船籍の船を5隻運航しているハパックロイド・USフラッグのデービッド・ツィマーマンCEOは、新型コロナウイルス流行後に「退職や辞職をする人の増加と、新たに船員免許を取得する人の減少」で人員不足が深刻化したと話す。
- ツィマーマン氏は、商船員になる機会があると米国の若者たちに伝えるのが最も難しいことの一つだと指摘。「仕事があると知ってもらえれば、人を集めることができると思う」と語った。
- 元米海軍長官のカルロス・デルトロ氏によると、海軍は商船員の仕事を紹介する取り組みを支援しているという。同氏は海軍の貨物船の船上で昨年秋、MSCの役割を補助するために「われわれは、できる限り多くの商船員を確保することに総力を挙げている」と語った。この貨物船の船員は民間人で構成されていた。
- 商船員の報酬は高い。業界関係者らによると、海事大学の卒業生の船員としての初任給は9万~12万ドルだ。しかし、航海中の生活は厳しい。何カ月も友人や家族と離れて過ごし、時には荒れた海の上で、肉体的に厳しい作業に長時間従事しなければならない。孤独や退屈な時間に耐えなければならず、そして近年までは、インターネットへのアクセスが限られていたため、多くの船員が外界から切り離された状態に置かれていた。
- 米国には海事大学が7校あり、初級免許を持つ卒業生を毎年約800人輩出している。海運業界幹部や学校関係者によると、卒業生の中には船員ではなく陸上での仕事に就く者もいる。また、実際に船員になった者の中からもしばしば、給与が高くても、厳しい労働環境や、仕事と私生活のバランスを取ることの難しさに見合わないと判断する者が出てくるという。
- カリフォルニア海事大学で戦略・教育計画部門のトップを務めるグレアム・ベントン氏によると、同大学の卒業生は、約5年半を海上で過ごした後に陸上での仕事に転向する。ベントン氏は「孤独な職業だ」とし、「多くの駆け出し船員は戻りたがっている。家庭を持ちたがっている」と述べた。
- 米船籍の船に乗り組み可能な船員数についての公式データはない。政府・業界当局者の推計によると、米国の商船の船員数は1960年には約5万人だったが、現在は1万人未満となっている。
- 2017年に米下院に提出された報告書では、海事大学の卒業率が高いにもかかわらず、「資格を持ち、実際に海上での仕事に就いている船員の数は減り続けている」ことが明らかになった。
- 元商船員らは、何十年にもわたって米船籍の船が減少してきたことが船員不足の一因だと指摘する。船舶数の減少により、船員は陸上での仕事に流れたのだという。海運業界関係者によると、多くの米船籍の船が、低賃金でより少数の乗組員で航海できるよう、船籍を他国に移した。
- 実際に米船籍の船で職に就いても、海上での生活が年齢とともに魅力的でなくなることに気付く人々もいる。
- マット・マクマホンさんは2013年から米船籍のタンカーの乗組員として航海していた。2016年に結婚し、2019年に娘が生まれると、長期間家から離れることが負担になった。
- 「長期間留守にし、誕生日やホリデーのときに家族と一緒にいられないことが特につらかった」とマクマホンさんは語った。彼は2021年に商船の仕事を辞め、現在は海運業界のコンサルタントとして働いている。
- 船員であることは「旅が好きな人にはとても魅力的かもしれない」が、すぐに限界が来るとマクマホンさんは語った。「卒業時に同じクラスだった人の大半はもう航海をしていない」
- ベッセント米財務長官、国家による米国債売却の「証拠はない」 - Bloomberg
- ベッセント米財務長官は14日、国家による米国債売却の「証拠はない」と述べた。ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで語った。米国債の投げ売りはないとし、1週間単位で生じたことには見ないようにすることを学んだとコメントした。
- ベッセント氏はまた、次期連邦準制度理事会(FRB)議長人事について秋ごろの協議が視野にあると語った。秋ごろに次期議長候補のインタビューを開始するという。
- 米国債市場にさらなる不安定化のサインが見られた場合の財務省の対応能力に関する質問に対し、ベッセント氏は同省には大きな道具箱があるとし、「われわれがその気になれば」買い戻しを増やすことができると話した。
- トランプ米政権、半導体と医薬品の輸入品を調査-関税への一歩 - Bloomberg
- トランプ米政権は14日、半導体および医薬品の輸入品への関税賦課計画を前進させるため、商務省主導の調査を開始したと発表した。トランプ大統領の貿易戦争を拡大させる恐れがある。
- 商務省は連邦官報に2件の通知を掲載し、「半導体および半導体製造装置の輸入」と「完成医薬品を含む医薬品および医薬品原料」が米国の安全保障に与える影響について調査を行うと発表した。
- 今月1日に開始された調査は、通商拡大法232条に基づくもので数カ月間続く可能性がある。同法に基づき、商務長官は270日以内に調査結果を提出することが義務付けられているが、より迅速に完了する可能性をトランプ大統領や政府高官は示唆している。
- トランプ大統領は長らく、医薬品や半導体の海外生産を国家安全保障上の脅威と非難し、それらの製品の米国製造を復活させるため輸入品に関税を賦課する可能性を示唆してきた。だが、関税はサプライチェーンの混乱や米国民のコスト増加を招く恐れがある。
- 新たな関税措置が実施されれば、自動車や航空機、携帯電話などあらゆる製品に欠かせない半導体産業を混乱させかねない。 新型コロナウイルス禍による混乱の影響を依然として受けている半導体のサプライチェーンは、米国の関税による新たな重圧に直面する可能性がある。
- トランプ政権は今回の発表に先立ち、中国からの半導体と携帯電話、コンピューター、その他の電子機器の輸入品に対する145%の関税を一時適用除外とした。アップルやエヌビディアなどの大手テクノロジー企業にとって朗報と受け止められたが、トランプ大統領と側近はすぐに、除外措置は一時的なもので半導体には別途課税されると表明していた。
- また、輸入医薬品への関税が発動されれば、世界中に多数の製造拠点を展開しているメルクやイーライリリーなど世界の大手製薬会社にとっても打撃となる。
- トランプ氏、自動車への関税一時免除を検討-国内生産整備へ猶予 - Bloomberg
- トランプ米大統領は14日、輸入自動車・部品に対する関税の一時免除の可能性について検討していると明らかにした。自動車メーカーが米国内の製造体制を整えられるよう時間的猶予を与えるためとしている。
- 「自動車メーカーを支援する何らかの措置を検討している」と、トランプ氏は大統領執務室で記者団に対し発言。自動車メーカーは「今後、米国内で製造する予定なので、少し時間が必要だ」と述べた。
- トランプ氏はどのような短期的な除外措置を検討しているのかとの質問に対し、自動車関税の一時停止、または税率引き下げといった軽減措置がどの程度の期間適用され得るのかについて明言を控えた。
- トランプ氏の発言は、自動車関税に苦しむメーカーに一定の安心材料を提供する一方、関税政策に関して一段の不確実性をもたらすことにもなる。
- 発言を受けて、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーター、ステランティスの株価はいずれも値上がりした。
- トランプ政権は完成車に対して25%の関税を課しており、部品については5月3日までに関税を適用する方針を示している。カナダとメキシコに対する関税にはすでに、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の要件を満たす国内生産部品を搭載している車両に対しては例外規定が含まれている。
- トランプ氏は医薬品に対する関税も「そう遠くない将来」に導入する意向を示した。
- 大統領の関税政策の頻繁な方針転換は市場や企業、貿易相手国の混乱を招いてきた。トランプ氏は14日、電子機器に対する上乗せ関税の除外措置について、アップルにとって有益だと発言。またエヌビディアの米国投資を称賛した。
- トランプ氏は記者団に、「私は非常に柔軟な人間だ。考えを変えるわけではないが、柔軟性はある」とした上で、「私は最近、ティム・クック氏とその事業全体を助けた」と、アップルのクック最高経営責任者(CEO)に言及。「私は誰も傷つけたくはない。しかし、最終的に米国は偉大なる地位を築くことになるだろう」と語った。
- ただ、トランプ氏はこれらのハイテク製品に対しては最終的にセクター別の関税を課す方針だとしている。
- トランプ関税の迷走、交渉相手国さらに混乱-朝令暮改で企業は疲弊 - Bloomberg
- トランプ米政権が発表したスマートフォンなど電子機器に対する上乗せ関税の除外措置は、関税を巡って米国とどう交渉すべきかを模索している企業や貿易相手国にさらなる混乱を広げている。
- 11日遅くに発表された今回の上乗せ関税の除外措置では、中国からの輸入品への125%の関税およびほぼ全ての国・地域に対する基本税率10%の関税の対象から、一部の電子機器が外れた。中国から米国への輸入品1010億ドル超相当が対象外となり、アップルやエヌビディアにとっては大きな勝利だ。
- ただ、トランプ大統領は13日、除外措置は一時的かつ手続き上の措置だと主張。これらのハイテク製品に対しては最終的に、セクター別の関税を課す方針だと表明した。
- 週末にめまぐるしく変化した今回の動きは、関税が経済に与える影響を見極めようとする金融市場にとっては、トランプ政権の戦略の全体像をさらに見えにくくするものだ。ホワイトハウスは綿密な計画に基づくものだと主張しているが、取引重視で気まぐれな大統領の思いつきに過ぎないと批判する声もある。
- 交渉のために代表団をワシントンに派遣しようとしている国や地域の間では、そもそも対話自体が最善の策なのかという新たな疑問が生じている。
- ルールが一夜で変わるような不安定な環境での事業展開を強いられる多国籍企業にとっては、あえて動かずに静観することが最も安全な選択肢となりつつある。
- かつて米通商代表部(USTR)次席代表を務め、現在はアジア・ソサエティー政策研究所に所属するウェンディ・カトラー氏は「トランプ政権は、まず動き、必要に応じて調整するというアプローチを続けている」と指摘。「このやり方は投資家や貿易相手国にとって先行きの不透明感を一層強めるものであり、もはや米国との交渉を急ぐことが最善のアプローチだとは見なされなくなるかもしれない」と語った。
- トランプ氏は13日、不公正な貿易を巡り「誰一人として責任を免れることはない」と、自身のソーシャルメディア・プラットフォームに投稿。今回の除外措置については「単に別の関税カテゴリーに移行するだけだ」とし、これから行われる国家安全保障に関する調査で、「半導体や電子機器のサプライチェーン全体を精査する」と説明した。
- 疲れる企業は「様子見」に
- 週末に相次いだ慌ただしい政策転換で、トランプ関税を巡る状況は混乱に拍車が掛かっている。トランプ氏は国別の関税率については交渉の余地があると示唆してきたが、今や業種別の関税も交渉対象となるのかどうかという新たな疑問が浮上している。
- ラトニック米商務長官は13日、ABCの番組で「交渉の余地はない」と発言。しかし数時間後、トランプ氏は大統領専用機で記者団に対し、企業との協議にオープンな姿勢を表明し、「一定の柔軟を示さなければならない」と語った。
- ホワイトハウスが発信するメッセージは、米国への輸入に業績を大きく依存する企業にとって、さらなる不確実性を生み出している。
- 物流大手DHLグループのトビアス・マイヤーCEOは、各企業は米国の方針が絶えず変わる中で対応しようとしているが、「何かが発表されても、その2日後には変更されるかもしれないという不安がある」と述べた。
- マイヤー氏は14日のブルームバーグ・テレビのインタビューで、「製造業や流通業の意思決定者の間では疲れが見えてきている」とし、企業や消費者も「様子見の姿勢」を取るようになる可能性があると語った。
- 米国との交渉に乗り出そうとしてきた外交官や各国当局者の間でも、今後どのように対応すべきか戸惑いが広がっている。
- またCBSニュースが13日に公表した最新の世論調査では、トランプ関税が短期的に米国の物価を押し上げ、経済を悪化させると国民の大多数が予想していることが明らかになった。
- 不透明感は深まるばかり
- トランプ政権は現在、ベトナム、韓国、日本などとの交渉に焦点を当てている。米政府当局者は、トランプ氏が関税政策によって築いた交渉上の優位性を活かし、米国の輸出拡大や国内投資の促進につながる譲歩を引き出すことにあると説明している。これらの国に対しては、交渉を促進するために上乗せ関税率を一時的に10%に引き下げ、90日間の猶予を設けているが、再び引き上げる可能性も排除されていない。
- しかし、交渉がどれほど進展するかはまだ分からず、トランプ氏が具体的に何を求めているのか、また側近らが「最低ライン」として定めた10%の関税を本当に守るつもりがあるのかも不透明だ。
- トランプ氏の予測不能な言動、そして関税を経済的な武器とする姿勢へのこだわりは、今後の交渉の行方に影を落としている。
- 今月2日の関税措置発表を前にラトニック氏やグリアUSTR代表と協議を行った外交関係者らによると、彼ら閣僚自身でさえ「最終的な合意にはトランプ大統領の承認が必要であり、その反応は保証できない」と非公式に強調していたという。
- 米財務長官、中国との貿易協定に期待 関税は「冗談でない」と警告 | ロイター
- ベッセント米財務長官は14日、中国財政省がトランプ大統領の関税を「冗談」と呼んだことを非難した。同時に、中国と主要な貿易協定で合意する希望は残されているとし、そのためには過去の貿易協定などとは全く異なるアプローチが必要という認識を示した。
- ベッセント長官はブルームバーグTVとのインタビューで、米中間の交渉はトランプ大統領と習近平国家主席を含む「トップレベル」で行われる必要があると語った。
- さらに「これは冗談ではない。莫大な数字だ」とし、「誰もこれが持続可能とも、このままで良いとも思っていない。冗談にはほど遠い」と述べた。
- ●先進国中銀、金融当局
- ウォラーFRB理事、関税によるインフレへの影響は一時的と予想 - Bloomberg
- 米政権、今秋に次期FRB議長候補者の面接を開始=財務長官 | ロイター
- 足元の失業期間の長期化、景気後退の兆候の可能性=SF連銀調査 | ロイター
- 米サンフランシスコ地区連銀は14日、このところの米失業率は比較的緩やかな上昇にとどまっているものの、一部の雇用指標が景気後退(リセッション)リスクを示唆しているとの調査結果を発表した。
- トランプ米政権の大規模な関税措置による圧力を受け、これまで広く堅調とみられていた労働市場に隠れた弱点が存在することを示唆した。
- 同連銀が公表した経済論文で著者らは、過去の傾向として、失業者が仕事を見つけるのにより長い時間がかかる事象や、失業状態の長期化が景気後退に先立ってみられていた点を指摘。
- 足元の失業率は3月は4.2%と、ここ数年でみると緩やかな上昇にとどまっている。反面、新たな職を見つける失業者の割合は23年半ばから低下傾向にあり、過去の景気後退に先立つ傾向と一致した。
- 失業期間の中央値も、22年半ば以降、約8週間から10週間以上に上昇した。07─09年の世界金融危機のピーク時は10週間だった。
- 著者らは、足元の失業率の上昇幅は過去と比べると比較的小幅にとどまっているものの、「最近のデータの傾向は、景気後退リスク上昇の兆候について注意深く監視する必要があることを示唆している」と述べた。
- 米消費者の1年先インフレ期待が大幅上昇-雇用見通し悪化 - Bloomberg
- 米国の消費者は向こう1年間にインフレ率の上昇を予想しているほか、将来の雇用見通しについて不安を強めている。ニューヨーク連銀の月次調査で明らかになった。
- 3月調査の中央値によれば、1年先のインフレ期待は前月比0.5ポイント上昇し3.6%となった。1カ月の上昇幅としては過去2年で最大。一方、中長期のインフレ期待については安定を維持した。
- 3年先のインフレ期待は3%で変わらず。5年先は2.9%と、若干低下した。このところ、米金融当局者が相次いで長期インフレ期待の安定を維持することの重要性を強調している。
- これまで、中長期的なインフレに関する大半の指標はおおむね安定を維持しているが、注目すべき例外もあり、それはミシガン大学による消費者調査だ。11日に発表された4月調査の速報値では、米消費者の5-10年先のインフレ期待は4.4%に上昇し、1991年以来の高水準となった。
- トランプ米大統領による関税措置がより持続的な物価上昇を引き起こすかどうかを見極めるため、政策当局者らはさまざまな関連指標を注視している。多くのエコノミストは、関税が少なくとも短期的にはインフレを押し上げると予想しているが、NY連銀の調査では、消費者の長期的な見方は変わっていないようだ。
- 関税は成長に対してもリスクとなっており、一部エコノミストは向こう1年にリセッション(景気後退)に陥ると予想。そうした状況を背景に、米消費者の雇用に対する不安も高まっている。
- NY連銀の3月調査では、1年後に失業率が上昇する確率は急上昇し、新型コロナウイルス禍にあった2020年4月以来の高水準。懸念の高まりは、さまざまな年齢層や教育水準、所得層で見られた。今後1年間に職を失うと考える確率も上昇した。
- 調査対象となった世帯の3分の1近くが、1年後の家計について現在より厳しくなると予想した。この割合は2023年10月以来最大。将来の所得の伸びに関する期待は低下し、信用へのアクセスに対する見方も悪化した。ただ、今後3カ月に最低限の債務返済が滞ると考える確率は1ポイント低下して13.6%となった。
- 食品価格については、今後1年間に5.2%上昇すると予想。家賃の上昇率に対する予想については0.5ポイント拡大して7.2%となった。一方、ガソリン価格の上昇予想は3.2%に鈍化した。
- 米国の株価が1年後に上昇すると考える確率は2022年6月以来の水準に下げた。
- ●金融市場、先進国トピックス
世界貿易の構図を一変させようとするトランプ米大統領の計画によってドルの値動きが不安定化し、多額のドル建て資産を抱える投資家たちが過去数十年で初めて、ボラティリティーに対するヘッジ手段を本格的に模索し始める可能性が出ている。
- これまで長年にわたってドルへの信頼は微塵も揺るがなかったので、米国市場に投資された33兆ドルの外国資金のうち、変動幅拡大からポジションを守るヘッジ措置が講じられているのはごく一部に過ぎない。
- しかし歴史的にどの資産よりも安全な資金避難先とされてきたドルと米国債の立場が、トランプ氏の「相互関税」に起因する市場混乱の最大の犠牲者となって大きく揺らぎ、事態は変わった可能性がある。
- 11日までの週は米国内外の投資家が現金などに資金を逃避させた影響で、米国債利回りは急上昇(価格は急落)。ドルはユーロ、円、スイスフランをはじめほぼ全ての通貨に対して急速に値を下げ、主要通貨に対するドル指数は過去2年近くで初めて、100の節目を割り込んだ。
- イーストスプリング・インベストメンツのビス・ナヤル最高投資責任者は「米国は数十年間、確実性と安定性、中央銀行の独立性、法の支配を提供してきた。(だが)移民など米国例外主義をけん引してきた要素はかなり多くが消え去り、関税は増税と同一視されそうだ。そして米国には弱いドルの方が助かると感じる政権が登場した。これらはヘッジをしていない投資家にとって良い組み合わせではない」と指摘した。
- 米国市場は、その経済力以上にドルへの信頼が成り立っていたおかげで存在感を維持してきた。米国の国内総生産(GDP)が世界全体に占める比率は約26%だが、世界の株式投資の3分の1余りが米国株に流入しているのだ。
- 昨年末時点で外国人投資家がドル建てで保有していた株式と債券の総額は33兆ドル。うち14兆6000億ドルが債券で、残りが株式だった。
- 通常、高い利回りを得られる株式の投資家はヘッジをしない。しかしリターンが1桁か2桁台前半にとどまる債券投資家は、ヘッジなしの場合に通貨変動幅拡大で痛手を被りやすくなる。
- 荒っぽいドルの値動きが続けば、デリバティブを駆使して自国通貨に対してドルを売るか、単純に米国市場から資金を引き揚げる形でのヘッジを迫られるかもしれない。
- エグザンテ・データのアナリストチームは、投資家のヘッジ比率が1ポイント上昇すれば、最大で3200億ドル規模のドル売りにつながってもおかしくないと試算する。
- 現在のヘッジ比率の低さを考えれば、ドル安が止まらなければヘッジ比率が10-15ポイント切り上がるというのが複数のアナリストの見方で、これは数兆ドル規模のドル売りに相当する。
- <注目される日本勢>
- 日本の公的年金積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)や生命保険各社は、世界屈指の米国資産投資家だ。日本のドル建て市場投資額は23年末時点で約2兆ドルだった。
- これらの投資家にとって、過去3カ月で10%、4月だけでも6%弱という円高ドル安の進行は、最終的な円換算の資産額目減りにつながる以上、弊害が出てくる。
- 日本の生保各社はこれまでじりじりとヘッジ比率を引き下げてきたし、年金基金はほぼヘッジをしていない。
- 野村証券のアナリストチームは、生保各社が保有する約60兆円(4196億4000万ドル)の外貨建て資産のうちヘッジ済みは30%にとどまると見積もっているが、日銀が利下げすればヘッジ比率が上昇すると想定。「日本の投資家が米経済への懸念を強めれば、われわれが現在予想するより資金環流と通貨ヘッジをより積極的に進め、円相場は1ドル=135円近辺まで円高ドル安が進んでもおかしくない」という。
- 野村証券の市場戦略リサーチ部長、池田雄之輔氏は、日本の個人投資家の行動も為替レートを動かす要因で、毎月およそ1兆円が投資されていると試算。同氏によると、これらの投資家は一貫して米国株ファンドを買っているがヘッジはしておらず、もし彼らが同時に動けば大幅な円高をもたらす潜在力があるとみられるという。
- エグザンテ・データのアナリスト、シェカール・ハリ・クマール氏による暫定的な推計によると、外貨建て試算約7000億ドル相当を持つGPIFがヘッジ比率を10ポイント引き上げれば、およそ700億ドルの円買いにつながるという。
- クマール氏は「円高が継続し、GPIFがヘッジ比率を高めると、日本の投資家によるヘッジ取引のフローは1000億-2500億ドル規模になる可能性がある」と話す。
- 日本以外でも英国、オーストラリア、スイス、カナダなどの大手年金基金や、世界的な生保も米国債の大口投資家だ。
- 欧州ではドルと米国債の値下がり加速に伴って、金融監督当局が域内の銀行に外貨建て資産保有状況を調査する事態になった。
- 事情に詳しい関係者によると、欧州中央銀行(ECB)や各国の規制監督当局が銀行の米国債保有に関して問い合わせを行ったもよう。今まで全く問題視されなかった資産の価値への疑念や、米国の政策の影響波及を巡る懸念がいかに広がっているかが浮き彫りになった。
- エグザンテの試算を見ると、23年時点で年金基金や政府系ファンド(SWF)のヘッジ比率は各国で大きな違いがあったことが分かる。日本と韓国は比率がほぼゼロ、オーストラリアとオランダは40%前後、スウェーデンとスイスは約65%だった。
- 今後、オーストラリアでヘッジ比率が10ポイント上がるとすれば、年金基金とSWFによるドル売りは最大580億ドルに上るとみられている。
- ウェストパックの通貨戦略責任者を務めるリチャード・フラヌロビッチ氏は、オーストラリアが昨年第4・四半期に6560億豪ドル(4070億5000万米ドル)相当の外国株を買い越したが、ヘッジ比率は下がっていたと分析する。
- 全体的にヘッジ比率が1ポイント高まれば、87億豪ドル相当のヘッジ需要が生じ、豪ドルにとって大きな追い風になる、というのが同氏の見立てだ。
- 新発30年国債利回りが急上昇、21年ぶり高水準に-財政拡張を警戒 - Bloomberg
- ドル指数下げ止まらず、一時10月以来の安値-関税巡る混乱続く - Bloomberg
- 米国債は底を打った公算、海外からの需要は旺盛とJPモルガン - Bloomberg
- クレジット投資家、米中貿易戦争に機会-レバレッジドローンやHY債 - Bloomberg
- クレジット投資家は、米中貿易戦争に端を発する世界的金融市場の混乱から生じる投資機会を生かそうと狙っている。
- 米国のハイイールド債市場の平均スプレッドは約419ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、2023年後半以来の高水準で推移している。レバレッジドローン債権の価格はトランプ米大統領が中国製品への関税を145%に引き上げると発表して以降、額面1ドルに対して95セント以下に下落している。
- 特に小売りおよびエネルギーセクターで関税関連のコスト増にさらされるジャンク級企業のローンや債券は既に大幅に下落しており、さらに値下がりする可能性もある。
- 一部の運用者は選択的にリスクを取ろうとしている。TCWグループのグローバルクレジット共同責任者でクレジットトレーディング責任者のブライアン・ゲルファンド氏によると、同社はクレジットに投資する全てのポートフォリオでハイイールド債と高リスク銀行ローンへのエクスポージャーを増やしている。
- 「市場は関税関連のリスクのあるクレジット商品から逃避している」が、「中には生き残る企業があるだろう。それを見極め、より有利な価格で投資したい」と同氏は語った。
- ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)によると、同氏が対話したほとんどの企業経営者は米国が既に景気後退局面にあると考えている。4月のミシガン大学消費者マインド指数は過去2番目に低い数字を記録。ブルームバーグがまとめたデータによると、航空会社、食品会社、ドラッグストア、スーパーマーケットはここ数週間、いずれも売り上げ減を報告している。
- オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者ハワード・マークス氏は9日のリポートで、同社「最新のオポチュニスティック・デット・ファンドの投資を、通常よりも速いペースで進めることになるだろう」との見通しを示した。経営難に陥る企業の増加と苦境に立たされた企業からの資金需要の高まりで投資機会が増えると見込んでいる。オポチュニスティックファンドは安く買って高く売ることで利益を得ようとする。
- また、資産連動型ファンドおよび上場投資信託(ETF)から資金が引き揚げられたことで、幅広いローン債権や債券が市場に出回りアクティブ運用マネーマネジャーの選択肢が増えた。LSEGリッパーのデータによると、9日終了週にはレバレッジドローンファンドから65億ドル(約9300億円)が引き出された。米国の高利回り債ファンドでは96億3000万ドルが純流出した。
- トレーダーは市場の乱高下に翻弄されており、9日の価格上昇によって少なくとも一時的に買いのチャンスが失われたことに落胆する者もいた。
- しかし、オルタナティブ資産運用会社ソナ・アセット・マネジメントのパートナー、オウェイン・グリフィス氏によれば「投資機会は増えている」。現在は「資本を投入して状況に対応しようとしているところだ」という。「長期的には楽観視している。ドイツからの財政刺激策などを考慮すると、欧州に対して慎重ながらも楽観的になれる理由がある」と同氏は語った。
- 海底ケーブルなど重要5品、経済安保計画に追加 経産省 - 日本経済新聞
- 米景気後退確率が急上昇、トランプ関税で=WSJ調査 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領が就任して以降、エコノミストらは米国の経済成長率予想を大幅に引き下げる一方、インフレ率と失業率の予想を引き上げている。
- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が四半期ごとに実施しているエコノミスト調査によると、その主な理由は関税だ。
- 1月10~14日に実施した前回調査では、関税や移民制限、減税など、トランプ氏の政策の多くが不透明だとエコノミストらは回答していた。彼らは、その不確実性と、予想を上回り続けている経済のどちらを重視するか判断を迫られた。
- エコノミストらの見通しが変化した背景には、3カ月前にはほとんど誰も想像しなかった通商政策をトランプ氏が推し進めていることがある。
- 今回の調査は4月4~8日に64人の経済学者・企業エコノミストから回答を得た。トランプ氏は2日、その日を「解放の日」と呼び、輸入品に対する10%の基本関税と、より高い「相互関税」を発表。9日には、トランプ氏が相互関税を90日間停止し、10%の基本関税を維持しつつ、報復措置を取った中国に対する関税を145%に引き上げると発表した。11日にはスマートフォンなどの電子機器を相互関税の対象から除外すると発表した。
- 4月のWSJエコノミスト調査では、2025年10-12月期の米実質国内総生産(GDP)成長率が前年同期比で0.8%にとどまると平均的に予想されており、1月時点の予想(2%)から下方修正された。この予想通りとなれば今年の経済成長率は、新型コロナウイルス禍に伴い短期間だが深刻な景気後退(リセッション)に見舞われた20年以来の低水準となる。26年の成長率は1.8%との見方が示された。
- また、今後12カ月以内に景気後退に陥る確率は45%とされ、1月時点の22%から上昇した。
- 「景気後退と隣り合わせだ」。バンガードのチーフエコノミスト、ジョセフ・デービス氏はそう述べた。
- WSJの調査でエコノミストらがこれほど高い確率で景気後退を予想したのは、22~23年の大半の時期以来だが、当時は完全に間違っていた。
- しかし、トランプ氏の関税政策が二転三転しているため、現在は特に不確実性が高い。この関税の狙いは、何十年もかけて構築された複雑なグローバル・サプライチェーン(供給網)を急速に再編することにある。
- 最終的にどうなるかは誰にも分からず、トランプ氏自身も分かっていないだろう。スコット・ベッセント財務長官をはじめとする側近らは数カ月にわたり、関税は貿易相手国との交渉で米国に有利な立場を与えるためのものだとして金融市場を安心させてきた。トランプ氏自身は、関税を変更するつもりはないと示唆していたにもかかわらず、9日に相互関税を一時停止し、10日には記者団に対し、貿易に関するディール(取引)がまとまらなければ高関税が復活する可能性があると語った。
- その予測不可能性を反映して、エコノミストらの25年のGDP成長率予想の幅は異例の大きさとなっている。
- ACカッツ・アンド・アソシエーツのエコノミスト、エミー・クルーズ・カッツ氏は、2%のマイナス成長を予想している。消費者や企業の景況感が急激に悪化していることや、関税がすでにサプライチェーンに問題を引き起こしているという顧客の証言を踏まえたという。一方、イーコンフォーキャスターのジェームズ・F・スミス氏は、トランプ氏が「あまりにも法外な」関税をすぐに撤回すると想定し、3.1%のプラス成長を予想している。
- 「見事な外交術のように見える」とスミス氏は言う。「重要なサプライチェーンを持つ企業の大半は、短期的には十分な量の在庫を米国内の倉庫に積み上げているはずだ」
- 米カリフォルニア・ルーセラン大学の経済学者、マシュー・フィーナップ氏とダン・ハミルトン氏は「『解放の日』の関税率は交渉を通じて大幅に引き下げられる」との見方を示す。両氏の成長率予想は0.8%で、平均値と同じだった。
- 全体として、エコノミストらは25年の米国の平均関税率が約19ポイント上昇すると予想している。1月時点では10ポイントの上昇を想定していた。米国の独立税制調査機関タックス・ファウンデーションによると、昨年の平均実行関税率は約2.4%だった。
- エコノミストらはトランプ氏の新たな関税が25年のGDP成長率を1.2ポイント押し下げる一方、インフレ率を1.1ポイント押し上げると予想している。
- エコノミストらは現在、消費者物価指数(CPI)の25年12月の前年同月比上昇率を3.6%と予想しており、1月時点の2.7%から引き上げた。26年の予想はほぼ据え置きの2.6%で、関税が持続的なインフレではなく、一時的な物価上昇をもたらすとみている。
- 過去2回の景気後退時、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をゼロ近くまで引き下げた。しかし、大半のエコノミストと政策当局者はトランプ氏の関税が少なくとも短期的には物価を押し上げると予想しているため、FRBの利下げ見通しは不透明だ。WSJエコノミスト調査の予想中央値によると、FRBは25年12月までに0.25ポイントの利下げを2回、26年にさらに2回実施するとみられる。その場合、政策金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標は26年末時点で3.25~3.5%となる。
- エコノミストらは25年末の失業率予想も1月時点の4.3%から4.7%に引き上げ、26年末は4.6%とした。
- 英誌エコノミストのマイク・コスグローブ氏は1月時点で、トランプ氏の関税を交渉の道具と見なし、経済成長への影響はないと予想していた。それが今では、米国が景気後退を回避できれば幸運だと考えている。
- コスグローブ氏は「世界経済全体への大きな衝撃」だとし、トランプ氏は企業により多くの調整時間を与えるべきだったと述べた。「トランプ大統領が公平な競争環境を整えようとしていることは全面的に支持するが、そのやり方は支持しない」
- エコノミストらはここ数週間、米関税政策の朝令暮改に振り回されている。9日に相互関税が発動されたのを受け、ゴールドマン・サックスのエコノミストらは米国の景気後退確率予想を45%から65%に引き上げる一方、GDP予想を大幅に引き下げた。だが、トランプ氏が相互関税の90日間停止を発表すると、以前の予想に戻した。
- WSJが報じたところによると、トランプ氏は関税が景気後退を引き起こす可能性があることを非公式に認めているが、深刻な不況は避けたいと語っている。
- しかし、報復合戦の貿易戦争と同様、景気後退も予測不可能な形で進展し、景況感や支出、雇用、投資の悪化を増幅させるフィードバック・メカニズムが働きかねない。そのため、政策当局者は通常、景気後退を回避するためにあらゆる努力を惜しまない。
- 「人々の信頼を取り戻すのは難しい」とカッツ氏は述べた。
- 米国から逃避する投資マネー、3つのポイント - WSJ
- 市場のベテランたちが集まると、過去の印象的な暴落がよく話題に上る。2020年、11年、08年、1998年、あるいは年配者であれば87年に、自分がどこにいたかという話だ。先週の出来事もその仲間入りを果たすことになるだろう。投資家が米国市場から逃げ出した時、あなたはどこにいただろうか。
- 先週の市場の動きは取引をしようとした人々にとっては楽しいものではなかったが、振り返ってみれば興味深い出来事が満載だった。株式市場は、2日間の下落としては過去最大の下げ幅、そして1日の上昇幅としては史上まれにみる大きさを記録し、投資家を翻弄(ほんろう)した。一方、米ドルは急落し、米国債は一段と深刻な問題の警告サインを示した。
- しかし本当に目立ったのは、一連の動きの組み合わせ、つまり米国資産全般からの逃避だった。株式・債券・ドルがすべて同時に売られたのだ。
- 「トゥルース・ソーシャル」(ドナルド・トランプ米大統領のソーシャルメディア)への投稿を受けてデイトレーダーが売買するだけでなく、もっと多くのことが起きていた。将来に備えたい投資家は、今回起きたことの背景にある三つの要因について考える必要がある。それは貿易、債務、脱米国化だ。
- 貿易――というよりもむしろトランプ大統領による貿易への攻撃――が、売りの基本的な理由となった。中国以外の国々に対する奇妙な計算方法による追加関税の一時停止は、週の半ばに安堵(あんど)をもたらしたし、11日夜に発表したiPhone(アイフォーン)などの電子機器に対する相互関税除外は、一時的な安心感をさらに与えるだろう。しかし投資家は、太平洋を挟んだ貿易戦争の報復合戦による損害の算定作業にすぐに戻った。これは、米国が貿易黒字を計上している国々に対してさえ課す10%の基本関税に加えてのことだ。
- ウォール街のストラテジストが景気後退の確率を引き上げる中、株価は当然ながら下落した。S&P500種指数は週初めより高い水準で11日の取引を終えたが、前週の関税発表時の水準からは大幅に下落したままだ。注目すべきは、株価が反発する中でもドルと米国債の売りが続いたことだ。
- 米連邦準備制度理事会(FRB)は、関税がインフレにもたらす影響により、通常の景気低迷時ほど利下げに積極的ではないかもしれない。インフレ指標が予想を下回ったにもかかわらず、週末時点で先物市場が織り込んだ今年の利下げ回数は、週初と比べて減った。よりタカ派なFRBのスタンスは債券利回りの上昇を正当化する可能性があり、これが10年債利回りの上昇(および価格の下落)の背景にある。
- 債務問題が週の初めに浮上した。ヘッジファンドが金融システムの奥深くで取引の調整を開始する中、これは起こった。レバレッジをかけたポジションの解消により、通常は安定している「スワップ・スプレッド」と呼ばれる金利市場の一角の指標で大きな変動が生じた。これが米国債の大量売却につながり、利回りを押し上げ、さらなる売却が強いられる恐れが出てきた。
- 2020年のような債券市場のパニックが突如として現実味を帯び、自己実現的な売りのスパイラルが起こる可能性が投資家と規制当局の神経をとがらせた。トランプ氏は、最悪の事態を回避するために方針を転換した。
- しかし投資家は再び、ヘッジファンドによる1兆ドル近いポジション解消の危険性を認識している。それ自体が、少なくともヘッジファンドのポジションが整理されるまでは、米国債へのエクスポージャーを減らす理由となる。
- 脱米国化は、投資家がホワイトハウスの混乱した政策決定を注視する中で始まったが、それは米国が経済的な能力のオーラを失ったことだけが理由ではなかった。債券利回りの上昇にもかかわらず、ドルは大幅に下落している。ドル指数は11日に22年以来の低水準を付けた。
- 欧州と中国は景気刺激策を講じると予想され、関税による打撃の緩和につながるだろう。しかし、米国の巨額の関税は消費者への大規模な課税に等しく、先行き不透明感による打撃が及ぶ前から成長を鈍化させる。以前と比較して弱い米国経済は、弱いドルを意味するはずだ。
- トランプ政権が独立機関のトップを解任する権利を主張する中、FRBの独立性について懸念が浮上している。こうした解任を巡る問題は最高裁判所に持ち込まれる可能性が高い。ホワイトハウスの主張が認められれば、FRB理事を解任する権限を与えることになり、そうなれば、政治的に不人気な決定を下すFRB高官の意欲に疑問を投げかけるだろう。
- それに加えて、投資家らは米国経済が例外的に強いという考えに全面的に傾倒していた。そのため、米国資産から流出する海外資金は大量の規模となる。
- ブランディワイン・グローバルの債券ファンドマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「米国資産は安全資産としての地位を一部失いつつある」と述べた。「言い換えれば、米国例外主義はピークを迎えたということだ」
- 一部の大手外国人投資家は現在、米国資産を購入する際にプレミアムを求めている。米国が何らかの形で資本を没収するリスクがあるためだ。
- あるカナダの大手投資家は「関税戦略は目標を達成できず、資本の修正に戻らざるを得なくなる可能性がある」と指摘した。かつては想像もできなかった外国資本フローへの課税や投資の本国送金を、今や考慮に入れなければならなくなったと語った。
- 米大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長は過去に、米国債で保有される外貨準備に利用料を課す「マールアラーゴ」合意を提案したことがある。これは事実上のデフォルト(債務不履行)に相当する。
- 代わりにミラン氏は7日、同盟国が関税への報復を避けるか、単に米国に小切手を切って米軍とドルの準備通貨としての地位に対する支払いを行うことを提案した。これはフランスのような国では支持されそうにない。彼らは正しくも、ドルの特別な地位が、低コストでの借り入れを通じて米国に不公平な優位性を与えていると考えており、これはミラン氏の見解とは正反対だ。
- これら三つの問題がそれぞれ市場にどれだけの打撃を与えたかを把握するのは難しい。過去1週間の動きのほとんどは、経済への関税ショック、ヘッジファンドによる巨額のレバレッジポジションの解消、そしてドルに過剰な外国資金が流入していた状況が組み合わさったことによるものだと筆者は考える。
- しかし、ドル下落の一因は少なくとも米国への信頼喪失にある。この状況が続けば、外国勢力が逃避するのに伴い米国市場はさらに大きく下落する可能性がある。
- Billionaire Ray Dalio: 'I'm worried about something worse than a recession'
- (サマリー)ブリッジウォーターの創業者レイ・ダリオ氏は日曜日、世界通貨システムが崩壊することを懸念していると述べた。
- ダリオ氏は、ドナルド・トランプ大統領の関税政策と米国の債務増大が新たな一方的な世界秩序の形成に寄与していると述べた。
- ダリオ氏は、債券市場の混乱による影響は、2008年の金融危機よりも金融システムにとって深刻なショックとなる可能性があると述べた。
- FRBが国債購入で介入も、米10年債利回り5%突破なら-アムンディ - Bloomberg
- Risky corporate borrowers shut out of bond market since Trump’s tariff blitz
- ドナルド・トランプ大統領の関税攻勢以来、米国のリスクの高い企業借り手は債券市場から締め出されており、その冷え込みはウォール街全体に波及し、取引の一時的な回復を脅かしている。
- トランプ大統領が今月初めに発表した一連の関税で市場の混乱を引き起こし、米国の景気後退懸念を高めて以来、低格付け企業は1.4兆ドル規模の米国ハイイールド債市場で債券を全く売却できていない。
- ジャンク債市場の凍結は、買収資金を同市場に頻繁に依存しているプライベートエクイティファームに打撃を与える恐れがある。また、買収企業が債券市場で長期資金を確保する前に、こうした取引に短期融資を提供する銀行のリスクも高まる。
- 「すべてが停止状態だ」と、投資会社シェンクマン・キャピタル・マネジメントのマルチアセット・クレジット責任者、ボブ・クリチェフ氏は述べた。「このような環境では、誰も取引価格を算出しようとしていない。」
- トランプ大統領の積極的な貿易政策は、投資家のリスクの高い取引への投資意欲を冷やす効果をもたらしており、4月2日の関税発表後の1週間で、ハイイールド債券ファンドは記録的な資金流出に見舞われた。
- HIGによるコンバージ・テクノロジー・システムズの買収資金、およびアポロ・グループが支援するABCテクノロジーズによるTIフルイド・システムズの買収資金を調達するための債券発行は、市場の混乱により今月停止された取引の一部である。
- トランプ大統領が「相互関税」を発表して以来、銀行は買収資金としてバイアウト顧客に提供する融資条件を変更し、損失を回避するために金利を引き上げている。
- 関係者によると、シティグループ、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースなど、一部の銀行は、ハイイールド投資家がこれまで伝統的な債券市場で投資に消極的だった債券およびローンによる資金調達取引を停止したという。
- ウォール街の銀行は、ジャンク債投資家が最終的に債務を引き受けると見込んで、数十億ドル規模の短期融資を約束していたが、損失の可能性に直面している。
- しかし、銀行は、提供することに合意した金利が市場水準と大きく異なる場合、不利な状況に陥る可能性がある。これは、ストレス時に起こり得る。
- 今回の株式売りは、プライベート・エクイティ業界、そして長年その取引で利益を上げてきた銀行が、迫りくる景気後退の脅威の中で、取引件数の減少と再生への期待の薄れに苦しんでいる中で発生している。
- 投資会社キャニオン・パートナーズの最高投資責任者(CIO)であるジェフ・キヴィッツ氏は、「既存のコミットメントの一部は銀行のバランスシートに滞留する可能性がある」と述べ、銀行は「ボラティリティの高騰の中で、新たなコミットメントの兆候を示すことに消極的になっているようだ」と付け加えた。
- 新規投資適格債市場も低迷しており、4月2日の「解放記念日」から先週水曜日に大統領が90日間関税を停止する命令を出してからの期間に、新規発行された債券はわずか1件にとどまっている。
- 銀行家やファンドマネージャーは、いわゆるクレジットスプレッドの急上昇を注視している。クレジットスプレッドとは、米国政府債務と比較した企業の借入コストの増加を示す指標であり、リスク選好度の指標でもある。
- ICEバンクオブアメリカのインデックスデータによると、ハイイールド債のスプレッドは先週、約2年ぶりの高水準となる4.61パーセントポイントに達した後、トランプ大統領が一部関税の停止に同意したことを受けて若干低下した。
- ゴールドマン・サックスは先週、ハイイールド債とレバレッジドローンの借り手による今年の債務不履行率の予想を、それぞれ3%と3.5%から5%と8%に引き上げた。
- 「これらの予測は、典型的な景気後退水準よりは低いものの、長期平均をはるかに上回っており、レバレッジド・ファイナンス市場への複数の逆風が同時に発生していることを反映している」と、ゴールドマンのチーフ・クレジット・ストラテジスト、ロトフィ・カルーイ氏は述べた。
- LSEGのデータによると、今月これまでに発行されたハイイールド債とローンの額はわずか130億ドルで、2021年以降の月初来平均である525億ドルを大きく下回っている。
- ジャンク債市場の冷え込みを示すもう一つの兆候として、シティグループは、プライベート・エクイティ会社ペイシェント・スクエア・キャピタルによる歯科・獣医医療会社パターソン・カンパニーズの買収資金として、従来の債務運用会社を通じて20億ドル以上のハイイールド債とローンを調達する取り組みを一時停止した。
- 関係者によると、同行は現在、プライベート・クレジット・ファンドからの資金調達を試みているが、損失につながる可能性があるという。
- プライベート・クレジット・ファンドは、リスクの高いローンに投資する傾向があり、その結果、借り手にはリスク増加分として高い金利を課すことになります。
- JPモルガン、シティ、モルガン・スタンレー、HIG、ペイシェント・スクエア、ABCテクノロジーズはコメントを控えました。パターソンとコンバージ・テクノロジーはコメント要請に応じませんでした。
- イラン、経済的苦境が核合意結ぶ理由に - WSJ
- 米国による軍事介入の脅威を受け、イランは核合意に向けた交渉の席に着いたが、自国経済が低迷しているため今後も協議の場にとどまる可能性が高い。
- イランの通貨リヤルは世界で最も弱い通貨の一つとなっている。インフレ率は依然として30%を大きく上回っている。また、若者は仕事を見つけるのに苦戦しているうえ、不満を抱える中間層はもはや輸入品を買う余裕がない状況に陥っている。
- これらの問題は、イランの核開発計画を抑制し核兵器開発を阻止するため「最大限の圧力」キャンペーンを再開した第2次トランプ政権の下、さらに深刻化する見通しとなっている。専門家やアナリストらは、制裁に加えまん延する汚職によってすでに深刻な打撃を受けているイラン経済がさらに悪化すれば、国民を追い詰める可能性があると指摘する。
- 英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中東・北アフリカ担当責任者サナム・バキル氏は、「経済制裁や長期にわたる誤った管理体制、また汚職の圧力の下で、イランはギシギシと音を立てている」と指摘。「彼らが最終的に求めているのは持続可能な制裁解除であり、バイデン前政権にはできなかったことをドナルド・トランプ氏なら実現できるかもしれないと考えている」と述べた。
- 米国とイランの当局者らは12日、オマーンの首都マスカットで数年ぶりの最高レベルの協議を行い、対話を継続することを確認。米政府はトランプ氏が1期目に破棄した以前の合意に代わり、制裁解除と引き換えにイランのウラン濃縮を抑制する新たな合意を望んでいる。
- トランプ氏は2018年、オバマ政権下でイランと他国が合意した2015年の包括的共同行動計画(JCPOA)から離脱。これを受けて石油や金融など重要分野を標的とする壊滅的な対イラン制裁の波が続いた。トランプ氏はホワイトハウス復帰後も、イランと取引する中国の港湾施設や船舶運航会社に対する追加制裁で圧力を強めている。
- ただ、米国とイラン双方における不信感は大きいものの、それぞれが交渉を成功させたい理由を抱えている。
- トランプ氏にとっては、ウクライナとガザの戦争終結に向けた進展がほとんど見られない中、イランと合意を結べば平和構築者としての実績を高められることになる。一方のイランは長年の経済低迷を放置すれば最高指導者アリ・ハメネイ師の独裁体制を脅かす恐れがあるが、制裁が緩和すれば状況は一転する可能性がある。
- 政治的に微妙な時期の中、イラン政府が混乱が広まることに不安を抱えている兆候も見られる。85歳のハメネイ師には病歴もあり、体制は静かに指導者交代に向けた備えを進めている。一方で同国軍事力の及ぶ範囲は国外で縮小しており、イスラエルの攻撃によって政府が支援する武装勢力はガザ地区とレバノンで打撃を受けた。さらにシリアでの革命を受けて、イランは親密な同盟国も失っている。
- 米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の中東プログラムディレクター、ジョン・アルターマン氏は、イランの経済問題が転換点に近づいている可能性があると言及。「国民の大半は徐々に貧困化している中、政府高官の子どもたちが想像を絶するぜいたくな生活を送っているのを目にしている」とした。
- 米国・イラン関係を専門とするユーラシア・グループのシニアアナリスト、グレゴリー・ブリュー氏は2018年以降の対イラン制裁について、経済を一気に崩壊させはしなかったものの、経済活動を緩やかに抑圧していると述べた。化粧品、衣類、そして宝飾品などの欧州製品に慣れ親しんだイランの消費者は、貿易が中国やロシアに向けて再編される中で、嗜好(しこう)を調整せざるを得なくなっているという。
- また多くの一般のイラン国民にとっても、日々の生活はますます困難になっている。イランの金融アドバイザー、モスタファ・パクザド氏は、他の都市の住民よりは裕福な傾向にある首都テヘランの市民でさえ、物価上昇への対処に苦労していると説明。政府から無料で入手した薬を売って米やパンなど必需品の購入費を稼ぐ者もいると述べている。
- Why Trump's nuclear talks with Iran could be far more successful than Biden's
- (サマリー)オマーンにおけるテヘランの核開発計画をめぐる米イラン協議は、楽観的な見通しと相互尊重の表明が目立ったまま終了したと両国の代表が明らかにした。
- イランは、交渉で成果を上げることができなかったジョー・バイデン前大統領の任期中よりも、はるかに脆弱な立場に置かれている。
- 両者の間には依然として根深い不信感が残っており、特に米国の同盟国であるイスラエルなどのイラン強硬派は交渉が行われていることに不満を抱いている。
●エマージング
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
- 若者は大学院を目指す、経済不確実性で就職氷河期に-学士号は無意味 - Bloomberg
- 不況時の典型的な動きだ。就職市場の見通しが暗い場合、大学院への進学が増える。世界金融危機後の状況がまさにそれであり、現在の兆候からすると、再び同じことが起こりそうだ。
- 入学願書やエッセイ、試験対策などを学生に指導する入学相談員は、大学院進学への関心が急速に高まっていると話す。正式な数字は数カ月後にならないと出ないが、カプラン、アイビー・コーチ、VYコーチ、アイビーワイズ、トップ・ティア・アドミッションズ、ケンブリッジ・コーチングなどの企業はいずれも、今年は大きな年になるだろうと予想している。
- 「大学院進学を考えている学生に影響を与える第一は、景気後退と経済不安定だ」とアイビー・コーチの入学相談シニアコンサルタント、ジェイソン・ワインガルテン氏は言う。進学を考える学生たちは「就職市場が回復し始めた時期にキャリアを再始動させることができると考えている」と同氏は説明した。
- 米国の雇用に関する総合的な数値は依然として堅調だが、「採用も解雇も少ない」就職市場により、若い労働者が職を見つけるのが難しくなっている。20-24歳の失業率は先月7.5%と、2023年4月の底から2ポイント上昇。若者たちの不安は高まっている。
- 多くの人が、人工知能(AI)がホワイトカラーの仕事を不要にしているのではないかと不安を抱いている。また、トランプ米大統領の貿易戦争により経済が不況に陥った場合、学位しか持たない人材が余る可能性も懸念される。
- ルイジアナ州立大学(LSU)のオンライン経営大学院(MBA)で学ぶサラ・ソーントン氏は「修士号を取得することが、新入社員の必須条件になりつつある」と述べた。同氏は23年にコースト・カロライナ大学を卒業した後、ほぼ1年を費やし50以上の職に応募したが結局、より就職に有利になると思われる会計学へと専攻を変更し、LSUに入学した。
- 応募先企業からは「電話すらもらえず、行き詰まりを感じた」と同氏は語った。
- 凍結
- インフレ、金利、経済に対する不確実性により雇用主が新規採用を控える中、労働市場の凍結という現状が若い労働者を直撃している。大学卒業後、数年間働いて履歴書を充実させ、その後大学院への進学を希望する人も多いが、卒業後すぐに大学院進学を目指すことも理にかなっていると、トップ・ティア・アドミッションズの大学院入学担当ディレクター、クリステン・ウィルモット氏は述べた。
- ニューメキシコ州立大学の大学院生、シャイアン・マルティネス氏(25)は、大学院に進学した目的の一つはAIの進歩に先んじることだと語る。
- ソーシャルメディアコーディネーターとして経験を積んできたにもかかわらず、同氏はマーケティングの新しい役割を得るのに苦労し、原因がAIの台頭にあるのではないかと疑うようになったという。
- 「われわれは今、AIと競争している。企業は経費削減を望んでおり、AIを採用した方が安上がりだ」と話した。
- 負債
- それでも、大学院進学は金銭的なリスクが伴う。特に、借金が絡む場合はリスクが大きい。
- ロースクールやビジネススクールの学費のために、10万ドル(約1400万円)を超えるローンを抱えることになりかねない。また、大学院の学費ローンは金利が高い場合がある。24-25年度の大学院ローン金利は最高9.08%だった。学部ローンは6.53%だ。
- 教育サービス企業カプランのエグゼクティブディレクター、アミット・シュレジンガー氏は「長期にわたる明確な計画を立てることが非常に重要だ」と言う。
- とはいえ、他に選択肢がないと感じている人も多い。
- クレア・スペレデロッツィ氏(26)は、22年にマサチューセッツ大学ボストン校を卒業後、何年もコミュニケーション関連の仕事に就こうと努力したという。
- しかし、ウェイトレスの仕事しか見つけられなかったため、ビンガムトン大学で公共考古学の修士号を取得するために約3万ドルのローンを組むことを決意した。その後は文化資源管理の仕事に就きたいと考えている。
- 「初任者向けの仕事でも、何年もの経験と、大学を卒業したばかりの人間が持っていないスキルセットが求められる。学士号を持っていても意味がない」と同氏は語った。
●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(14日)ダウ312ドル高、利回り低下・ドル軟調 | ロイター
- **為替市場:**
- ドルは対ユーロで横ばい、先週の3年ぶり安値付近で推移。トランプ前大統領の関税政策による不確実性で、ドルへの信頼が低下し、円に対しても下落(ドル/円は0.39%安の142.93円)。FRBのウォラー理事は、関税政策が経済に悪影響を及ぼす可能性があり、景気後退を避けるために利下げを示唆。
- **債券市場:**
- 米国債利回りが低下。先週の急上昇(50bp)から反落し、10年債は4.368%、30年債は4.798%、2年債は3.835%。市場の不安感は依然として残る。
- **株式市場:**
- 主要3指数が上昇。スマホやPCが関税の対象外となり、アップル株が買われた。一方で、半導体への新たな関税導入の懸念も残る。
- **商品市場:**
- - **金:** 利益確定売りにより、5営業日ぶりに反落(1オンス=3226.30ドル)。
- - **原油:** 関税懸念がやや後退し、小幅上昇(WTI原油5月物=61.53ドル)。
- 欧州市場サマリー(14日) | ロイター
- ### 【ロンドン株式市場】
- - 米政権がスマホやPCを関税対象から除外したことで、市場に安堵感が広がり、株価が上昇。
- - **FTSE250指数**は2.50%高、銀行株が特に上昇し、**スタンダード・チャータード**と**バークレイズ**が約5%高。
- - **カイノス・グループ**は通期予想が好感され6.5%上昇。
- - ただし、**トランプ前大統領はスマホや半導体への関税を今後発表予定**と発言しており、予断は許さない。
- ### 【欧州株式市場】
- - 米の関税除外発表を受けて全面高。**DAX指数(独)2.85%高、CAC40(仏)2.37%、IBEX(西)2.64%**と、貿易敏感株が主導。
- - 銀行株が目立って上昇(**STOXX銀行株指数 3.88%高**)。
- - 半導体関連も上昇(**ASML, BESI, インフィニオンなど**)。
- - 一方で、**ゴールドマン・サックスは欧州株の予想を下方修正**(STOXX600予想値を570→520に)。
- ### 【ユーロ圏債券市場】
- - 債券利回りはまちまち。
- - **独10年債利回り:2.521%(1bp低下)**
- - **独2年債利回り:1.778%(2bp上昇)**
- - **イタリア10年債利回りは11bp低下の3.693%**。S&Pがイタリアの信用格付けを引き上げたことが好材料。
- - **独伊10年債の利回り格差**は116bpに縮小。
- 全体として、米国の一部関税除外措置が欧州市場に安心感をもたらし株高を誘発したが、依然として先行き不透明感は残っている状況です。
備忘録(2025/4/11-13)
●海外企業決算
- JPモルガン、結局上昇して始まる 通期NIIの見通しを上方修正=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- ウェルズ・ファーゴは決算受け下落 NIIが予想下回る=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- モルガン・スタンレーが決算 好調な決算も株価は上値重い=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- [BK] BNYメロン 1Q増収最終増益 売上高6%増47.9億ドル、純利益21%増11.4億ドル、EPS1.58ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [BLK] ブラックロック 1Q増収 売上高12%増52.7億ドル、営業益微増16.9億ドル、配当5.21ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
●海外企業
- ステランティス世界出荷、第1四半期は前年比9%減の120万台 | ロイター
- 第1・四半期の世界出荷台数について、前年同期比9%減の120万台になったとの推計値を公表した。2024年は12%減だった。
- 北米での生産減に加え、欧州での製品移行やバン販売の減少が主因。北米で20%減、「拡大欧州」で8%減だったという。
- 半面、南米では19%増加した。
- 発表文では米国の関税に触れていない。
- ステランティスは来週に年次株主総会を開催し、30日に第1・四半期決算を発表する。
●日本企業
●先進国政治動向
- トランプ氏こだわる米中首脳会談、見込み薄く-習氏は徹底抗戦の構え - Bloomberg
- トランプ米大統領は今回の貿易戦争が始まって以降、複数回にわたって中国の習近平国家主席との首脳会談の可能性に言及している。だが実のところ、実現する見込みは遠のいているだろう。米中による関税の応酬がピークに達したかに見えてもだ。
- 貿易を通じて中国に痛みを与えても、習氏を交渉の場に引き出せる可能性は低い。中国当局はむしろ、米国よりも多くの経済的・政治的困難に耐えられると証明しようとしているかのようだ。
- 中国政府は11日、米国からの全輸入品に対する関税を84%から125%に引き上げると発表した。一方で、これ以上関税を賦課しても経済的な意味はないとして打ち止めを示唆しつつ、他の措置を使って「最後まで闘う」と表明した。
- キャピタル・エコノミクスの中国経済責任者ジュリアン・エバンスプリチャード氏は、「中国当局が再び関税を引き上げて米国に対抗したことは、トランプ政権との交渉を急いでいないことを示している」と話す。
- 中国が交渉の場につくには、トランプ氏が他の貿易相手国・地域に与えた90日間の猶予以上のものを要求するだろう。これまでも対等な立場での、相互尊重に基づいた対話を求めてきた。トランプ氏は中国からの報復に対しては常にさらなる関税の上乗せで応酬しており、米中の対立は長期化の様相を呈している。
- 調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベドー氏は「中国側にとっての不満は、トランプ政権の要求に一貫性がないことだ」と指摘。「相手が何を求めているのか分からず、また要求がコロコロ変われば、交渉するのは難しい」と述べた。
- もっとも、トランプ氏は習氏との交渉を楽観視している。ここ1週間に習氏を「友人」と呼び、「多大なる敬意を持っている」と発言。交渉の初期段階であっても、トランプ氏が首脳同士の直接協議を好むことを浮き彫りにしている。また報復ではなく対話を選んだ他の貿易相手国・地域については称賛しており、中国にも同様の対応を望んでいることをうかがわせる。
- 「中国も合意を強く望んでいるが、どう始めたらいいかわからない。私たちは彼らからの電話を待っている。いずれ起こるだろう」と、トランプ氏は今週ソーシャルメディアに書き込んだ。
- トランプ政権高官は、高水準の関税が最終的には習氏を交渉のテーブルに引き出すとの立場だ。ハセット国家経済会議(NEC)委員長は「中国への圧力が非常に強まっていることから、交渉は時間の問題だ」と述べている。
- 習氏は11日、激化する貿易戦争について初めて公に発言。中国はいかなる「不当な抑圧」も恐れず、外部環境がどう変わろうとも自国の道を進み続けると表明した。
- パンテオン・マクロエコノミクスの中国担当チーフエコノミスト、ダンカン・リグレー氏は「米中双方とも現時点で交渉する意思はなく、国内で痛みが表面化するまで交渉は始まらないだろう」と指摘。その上で「米国では市場の動向と、特にトランプ支持層への影響が鍵を握る。中国側では輸出や雇用への経済的影響がポイントになるだろう」と語った。
- 中国は依然として、関税以外にも米国への圧力を強める手段を有している。 10日には、トランプ米大統領による中国製品への関税発動を受け、米国映画の輸入を減らすと発表。米国が対中で数少ない貿易黒字を維持しているサービス分野を狙い撃ちし、貿易戦争の新たな戦線を開いた格好だ。
- ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミストであるアリシア・ガルシア・エレーロ氏によれば、中国にはさらなる元安誘導、あるいは米国債売却の臆測をあおるといった選択肢がある。
- 「中国はまだ多くのレバレッジ(交渉上の切り札)を持っている」と同氏。「とりわけ今年後半に米経済が弱含めば、その影響力は減るどころか、むしろ増すだろう」と指摘した。
- 【社説】トランプ氏に対中通商戦略はあるのか - WSJ
- 全てが計画通りに進んでいるとホワイトハウスは言う。ドナルド・トランプ米大統領が今週、関税の一部を停止したことを勝利として売り込もうとするこうした情報操作には、ほとんど笑うしかない。現実には、それはトランプ氏が場当たり的に考え出しているもので、特に中国に対しては、実際の戦略があれば助けになるだろう。
- 株価は9日に安心感から上昇したが、翌日には再び下落した。投資家が分かっているのは、貿易戦争が終結には程遠く、打撃が続いているということだ。90日間の停止措置があっても、それ以外の今も継続している関税だけで1982年以来の大幅な増税だ。1993年のビル・クリントン大統領による増税や1990年のジョージ・H・W・ブッシュ大統領による増税よりも大規模なものだ。税金は成長を阻害する。
- それに加えて、世界2位の経済大国である中国との貿易戦争がエスカレートした。ホワイトハウスは10日、中国の全ての対米輸出品に米政府が課す関税が145%になると発表した。米国は2024年に中国から4390億ドル(約63兆円)相当の物品を輸入した。それに145%を適用すれば、米国の消費者や企業が受ける打撃の見当がつくだろう。
- スコット・ベッセント財務長官は、米国の貿易面の目標は最初から、中国を主要な違反国として孤立させることだったと述べている。しばしば略奪的な貿易慣行があったことを考えると、中国に他と異なる対応を取ることには正当な理由がある。米国の企業や政府に対するサイバー攻撃、知的財産の窃取、中国での米国企業に対する不平等な扱い、新型コロナウイルスを巡る数々のうそなどだ。
- だが、トランプ、ベッセント両氏が中国に何を望むのか、そしてそれを達成するためにどんな戦略を取るのかは明らかでない。世界1、2位の経済大国である米中の完全なデカップリング(切り離し)を望んでいるのか。145%という関税水準は、それを示唆している。しかしそれは、短・中期的に経済的な大混乱が起きることも意味する。米中がざっと6000億ドルに上る両国間の貿易取引を失うか、他の調達先および行き先を探すかの選択を迫られるからだ。重要な物品について戦略的にデカップリングする方が理にかなっている。
- もっともそれはトランプ氏が望むと言っていることではない。彼は9日、依然中国との貿易ディールを望んでいると述べた。この場合、関税は中国の習近平国家主席を交渉のテーブルに着かせるための手段にすぎない。問題は、関税が粗悪な武器のようなもので、中国の輸出業者が受けるのと同程度の打撃を米国人も受けることだ。市場の動きは米経済も打撃を受けることを示している。
- また、トランプ氏の他の中国問題への対応との矛盾もある。米議会は動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の事業を運営会社である中国の字節跳動(バイトダンス)から強制的に売却させる法律を可決したが、トランプ氏はその執行を拒むことで習氏に便宜を図っている。トランプ氏は先週、中国が成立間近だった取引から手を引いたことを受け、TikTokの売却期限をさらに75日間延長した。トランプ氏はまた、ロシアから石油を購入することで結果的にロシアの軍事機構を支援している中国企業への制裁を拒否している。こうした決定によってトランプ氏は、中国の不当行為に本気で対処するつもりはないというメッセージを習氏に送っている。
- トランプ氏が本気なら、最善の策は中国の重商主義との戦いという大義の下に同盟国を集結させることだろう。だが、トランプ氏はそれにも関心を示していない。同氏は自身の大統領1期目に、中国が参加していなかった環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、貿易面で中国を孤立させるための絶好のチャンスを無駄にした。中国はその後、米国から冷遇されていた国々の多くと協定を結んだ。
- 今の任期に入ってからトランプ氏は、一致団結した対中戦略のために必要な同盟国をあからさまに痛めつけている。カナダとメキシコに関税を課し、カナダの国家としてのプライドを傷つけた。また、日本に24%、韓国に25%、欧州連合(EU)に20%の関税を課した。ベトナムには46%の関税を課したが、トランプ氏が1期目に対中関税を発動して以降のベトナムの好調な対米輸出は、中国の犠牲の上に成り立っている。
- これら関税の適用は90日間停止されているが、対象とされた国々は、トランプ氏がいつでも関税を課してくる可能性があることを知っている。トランプ氏はまた、日本製鉄が米製造業への何十億ドルもの投資を約束していたにもかかわらず、同社によるUSスチール買収を認めないことで日本を侮辱した。人工知能(AI)分野での中国の台頭を遅らせるために米国の同盟・友好諸国の団結が必要だとトランプ氏が訴えたとしても、現状でこれらの国がトランプ氏を信頼すべき理由があるだろうか。これらの国は、米国市場にアクセスできない場合、中国市場を必要とするかもしれない。
- トランプ氏の思考回路の問題、ないしそうした問題の少なくとも一つは、米国が貿易赤字を計上している相手が友好国か敵対国かにかかわらず、赤字解消にこだわっていることだ。貿易赤字は経済的観点から問題視されるものではない。そして、同盟国との間に通商問題があったとしても、それは2国間、あるいは多国間のディールで解決できる。
- 国際貿易システムの最大の問題は、中国の権威主義的政権による自由貿易ルールの悪用だ。トランプ氏の場当たり的で、手当たり次第の関税政策は、この問題の解決につながらない。これまでのところトランプ氏は、中国共産党に打撃を与える以上に、自身の掲げる大義と米国を痛めつけている。
- 中国とEU、共に関税に対抗すべき 習主席がスペイン首相に訴え | ロイター
- 中国の習近平国家主席は11日、北京でスペインのサンチェス首相と会談した。中国と欧州連合(EU)はグローバル化を守り、協力して「一方的な脅迫行為」に対抗する必要があると呼びかけ、トランプ米大統領の関税政策を批判した。
- 習氏はいかなる貿易戦争にも「勝者はいない」と指摘した。また、世界経済の安定を維持する上でEUが重要な役割を担っていると語った。
- トランプ氏が先週、「相互関税」について発表して以来、習氏がこの問題について公の場で発言したのは初めて。
- サンチェス氏は会談後、事態の解決に向けて中国と米国が協議する必要があるとの認識を示した。EUと中国がよりバランスの取れた関係になることを望むとも述べた。
- 交渉を通じて見解の相違を解消し、共通の関心事について協力すべきだとしている。
- 習主席は、サンチェス氏の訪中は過去3年で3度目だと強調。現在の国際情勢で二国間関係を強化すれば、平和と安定と繁栄につながると述べた。
- 新華社通信によると、習氏は「中国は常にEUを多極化した国際社会における重要な極の一つとみなし、EUの結束と発展を強く支持している」と語った。
- 「中国とEUは国際的な責任を果たし、経済のグローバル化の流れと国際貿易環境を共同で守り、一方的な威圧行為に共に反対すべきだ」と訴えた。
- 世界第2位の経済大国である中国と第3位のEUは、トランプ政権の関税に対抗する能力があると強調した。
- 「勝者なし」
- 習主席はトランプ氏や米国を名指しせずに、「関税戦争に勝者はいない」と発言した。これに対しサンチェス氏は「貿易戦争は好ましくない。世界は中国と米国の対話を必要としている」と述べた。
- 今回のサンチェス氏の訪中は、トランプ氏の関税政策が世界に波紋を広げる中、中国との経済・政治関係を強化することが狙い。中国とEUの対話を仲介し、中国から投資を呼び込みたい考えだ。
- サンチェス氏は会談の冒頭、スペインは中国をEUのパートナーと考えていると発言。「共通の関心事に取り組み、貿易と投資をバランス良く促し、それぞれのビジョンから両国の発展に利益をもたらしたい。両国社会がより緊密な絆で結ばれることを望む」と述べた。
- 昨年3000億ドルを超えたEUの対中貿易赤字に言及し、「関係を深める機会があると確信しているが、中国がよりバランスのとれた関係を求める欧州の要求に配慮を示すことが重要だ」との見解を示した。
- サンチェス氏はスペイン大使館での記者会見で、両国が科学技術、教育、映画産業に関する協定に加え、豚肉とサクランボの輸出に関する議定書にも署名したと明らかにした。
- 新華社によると、習氏はスペインと中国は新エネルギー、ハイテク製造、スマートシティなどの分野で協力の可能性を模索すべきとの考えを示した。
- アングル:豪総選挙でガザ問題が争点化、与党にイスラム系・ユダヤ系双方から不満も | ロイター
- トランプ関税停止、世界が悩む「作戦か、狂気の沙汰か」 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領が9日に世界的な相互関税の一部を一時停止したことで、翌日には世界中に安堵(あんど)が広がった。だがこの方針転換を受け、市場に屈した米国の指導者をなだめるために貿易面で大きな譲歩が必要だろうか、という疑問が浮上した。
- 一部のエコノミストによると、トランプ氏がここ数日の市場の混乱を受けて即座に方針転換したことで、世界各国の首脳は、同氏が耐えられる痛みの上限という貴重な情報を得た。これにより、各国首脳は本格的な交渉が始まればより強硬な姿勢をとる可能性があるという。
- ドイツのシンクタンク、キール世界経済研究所(IfW)のモリッツ・シュラリック所長は「(トランプ氏の)交渉人としての信頼性が低下したと誰もが結論付けるだろう」と話す。「次回は、人々は彼をさらに信用せず、どの時点で再び屈するかを考慮しそうだ。米国にとって交渉が容易になったとは言えない」
- フランスのエリック・ロンバール財務相は10日、挑戦的な姿勢を示し、関税は非常に低い水準にとどめるべきであり、非関税障壁(安全基準など輸入品に制限を設ける規則)に関しては、その多くが民主的な決定の結果であるため交渉の余地はほとんどないと述べた。
- ドイツ国際安全保障研究所(SWP)の米州部門ディレクター、ローラ・フォンダニエルズ氏は「内部の緊張、政権内の分裂、これら全てが明らかになった」とし、この追加情報によって他国の交渉上の立場は改善するだろうと述べた。
- ドイツの中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」を率い、同国の次期首相に就任する見通しのフリードリヒ・メルツ氏は9日遅くのテレビインタビューで、トランプ氏の予測不可能性が「米国に最大限の不確実性をもたらした。トランプ氏は今、共和党内と財界から大きな批判に直面している。だからこそ、われわれは欧州レベルで、これまで以上に信頼性があり、明確で、優れた対応をする必要があるのだ」と述べた。
- 米国の関税に対し、対抗措置を保留・延期したり穏当な措置のみを発表したりしてエスカレートするのを避けた国・地域は、米国が折れたように見えたのを受けて、慎重なアプローチが奏功したと受け止めている。
- 欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は10日、米国に対する報復関税の発動を90日間保留すると発表した。EUはトランプ氏が関税停止を発表する前、米国の鉄鋼・アルミニウム関税に対して約210億ユーロ(約3兆3700億円)相当の米国製品に関税を課すと述べていた。しかし、先週トランプ氏がEUからの大半の製品に課した20%の全面的な関税や、それ以前に発表した25%の自動車関税への対抗措置はまだ打ち出していなかった。
- 「交渉にチャンスを与えたい」。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長はEUの関税停止を発表する際にそう述べ、交渉が満足のいくものでなければ関税が発動されると付け加えた。EUは可能な追加報復措置に関する準備作業を続けており、全ての選択肢が検討されているという。
- SWPのフォンダニエルズ氏は、関税が停止されトランプ氏が中国との対立に再び焦点を当てたことで、EUは対応策を整理する貴重な時間を得たと指摘する。「欧州人は幸運だった」とし、EUが意図的にゆっくり動いたのではなく、27の加盟国との対応の調整が本質的に遅いのに対し、トランプ氏が貿易戦争を開始するために援用した法令では瞬時に方向転換できたからだと説明した。
- エコノミストらは、関税が90日間停止されたものの不透明感は非常に高いままであるため、今後の投資・経済成長・インフレ期待に悪影響を与えるだろうと強調した。
- 格付け会社モーニングスターDBRSのグローバル・ソブリン格付けマネジングディレクター、ニコラ・ジェームズ氏は10日のメモで、「債券市場の規律が再び、政府のアプローチを方向転換させる強力なツールであることを示した」としながらも、「だが実際には、米国が基本的な政策を放棄したのではなく、それを達成するための別の道筋を示したに過ぎず、そうした環境下では企業にとって有害な不確実性が続いている」と述べた。
- トランプ氏の側近らは、この方針転換は最初から計画されていたと公言している。だが、債券市場の乱高下に加え、企業経営者やロビイスト、外国政府首脳から関税の影響を懸念する声が相次いだことが、トランプ氏に再考を促す重要な役割を果たした。
- キャピタル・エコノミクスの北米チーフエコノミスト、ポール・アシュワース氏は9日のメモで、「市場の反応におびえたトランプ氏が『一時停止』を繰り返し延長し、結果的に同氏が選挙戦で主張した10%の普遍的関税に似たものになるというのが、われわれの現在の作業仮説だ」と述べた。「見返りに、他国は自国の関税と貿易慣行に関して小さな譲歩をするだろう」
- 過去1週間の出来事が作戦だったのか、狂気の沙汰だったのかはともかく、トランプ氏から特に高い関税を課された国々はこの一時停止を、関税の脅威を恒久的に取り除く合意について交渉を急ぐ機会として捉えた。
- ベトナムの副首相は、米通商代表部(USTR)代表や米議員らと会談するため、関税停止のニュースが流れた9日にすでにワシントン入りしていた。世界の製造業者にとって中国に代わる安価な生産拠点となっているベトナムは、先週米国から46%の関税を課されたが、当面の関税率は他の大半の国と同様に10%となる。
- アフリカ有数の経済国である南アフリカは、関税停止を受けて米国とのさらなる協議を求めていると述べた。同国のパークス・タウ貿易・産業・競争相は現地のラジオ局で、「われわれのチームは米大使館員と接触する予定だ」と述べた。「再び貿易を正常化するために彼らとの協議を求めていく」
- トランプ氏は南アフリカからの輸入品に31%の関税を課していた。南アフリカにとって米国は中国に次ぐ貿易相手国だ。
- 米国と協議する一方で、各国政府と企業はこの関税停止期間を利用して、期間終了後に貿易戦争が再燃した場合の備えを強化する可能性が高い。
- フォンデアライエン氏は声明で、「欧州は引き続き貿易パートナーシップの多様化に焦点を当て、世界貿易の87%を占める国々と協議している」とし、EUは域内市場に残る貿易障壁の撤廃にも取り組むと述べた。
- オーストラリアのリチャード・マールズ副首相はスカイ・ニュースに対し、EUや英国、インドとの貿易関係を強化していくと述べた。一方で、米国に対抗して中国と手を組むよう求める中国大使の呼びかけは拒否した。「われわれは中国と手を取り合うことはない」
- トランプ関税は「最悪の自傷行為」=イエレン前財務長官 - WSJ
- トランプ氏の「関税男」 ナバロ氏なお健在 - WSJ
- ウォール街は彼を嫌っている。彼の政策提言は米共和党議員の頭痛の種だ。イーロン・マスク氏は彼を愚か者だと考えている。
- ドナルド・トランプ米大統領が9日に新たな相互関税の多くを一時停止したため、大統領が「私のピーター」と呼ぶ男は苦境に立たされているかもしれない。しかし、それでも彼は健在だ。
- 世界を揺るがす関税と最も強く関連付けられるのは、トランプ氏を除けば、ピーター・ナバロ大統領上級顧問(貿易・製造業担当)以外いない。彼は強硬な貿易タカ派で、トランプ氏の悪評高い相互関税の設計を手伝った。彼はトランプ氏の信頼を得ている。大統領が最近、大統領執務室でそこに居合わせた人々に語ったように、ナバロ氏は彼のために刑務所に入ったのだ(2024年に連邦議会乱入事件に関連した議会調査を拒み、議会侮辱罪で数カ月間服役)。
- 市場が混乱し景気後退懸念が高まる中でも、ナバロ氏(75)は揺るぎない影響力を持ち続けている。トランプ氏の関税政策の立案を手伝い、政権内の穏健派からそれを守ってきた。元大学教授でカリフォルニア州の民主党員だったナバロ氏は、2016年の米大統領選挙でトランプ陣営の中国問題のアドバイザーとして無名の存在から抜擢された。彼の見解は長年にわたり大統領に影響を与えてきた。
- 「ピーターが生き残ってきたのは、大統領と同じことを信じているからだ。米国は救う価値のある国であり、この国の労働者は世界最高であり、グローバリズムを信じる者は間違っていて悪だと」。トランプ氏の盟友で経済ポピュリストのスティーブ・バノン氏はこう語る。バノン氏はナバロ氏への批判を「実質的にトランプ大統領への隠れた攻撃だ」と言う。
- ナバロ氏の影響力とその限界は、ここ数日間で明らかになった。彼はトランプ氏の相互関税措置の設計で中心的な役割を果たした。この措置は、9日午後にトランプ氏が一時停止するまで、第2次世界大戦以前にさかのぼらなければ見られなかったレベルにまで米国の関税を引き上げるものだった。この突然の方針転換は事実上、ナバロ氏の強硬路線を否定するものだったが、株価を急騰させ、ウォール街とワシントンの気持ちを落ち着かせた。
- ナバロ氏はトランプ氏と同様、これを勝利だとし、簡単なインタビューで「米国の貿易史上で最高の日だ」と述べ、トランプ氏のアプローチを正当化した。「ウォール街やメディア、ビジネス界の臆病者たちは、起こったことから教訓を学ぶべきだ」
- ナバロ氏を支持する人たちは彼の仕事について、いつもの選択肢を提示することだと言う。つまり、取引を成立させるか、最悪の事態に直面するかだ。ナバロ氏は「常にトランプ大統領に最も厳しく、タフな選択肢を提示する。それが交渉力を生む」とバノン氏は述べた。批評家たちはナバロ氏を第一線から外したがっているが、トランプ大統領は対立する意見を好むため、彼は攻撃犬としての役割を続けそうだと、大統領に近い人々は語る。
- ナバロ氏は、相互関税率を計算する公式の立案を主導したと、議論を知る人々は語った。この公式により、関税は主に対象となる国々との間の米国の貿易赤字に基づいて設定された。トランプ氏は最終的に、経済諮問委員会(CEA)と米通商代表部(USTR)が出したもっと洗練された計算式ではなくこのアプローチを選んだと、ある関係者は語った。ただし、こうした機関の長はやがてナバロ氏のアプローチに同調し、ハワード・ラトニック商務長官もこれを推進した。
- 9日の相互関税の一時停止に先立ち、多くの共和党議員は公然とトランプ氏に、できるだけ早く他国との取引を成立させ、関税を引き下げるよう促していた。これはナバロ氏の立場とは対照的なもので、同氏は今週の英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿で、関税には交渉の余地がないと書いていた。政権当局者によると、75カ国が貿易合意の可能性について、ホワイトハウスに接触してきた。
- 「政権内には、取引に合意するのではなく、『関税を経済の長期的で恒久的な特徴として維持したい』と言う声がある。それは間違いだと思う」。テッド・クルーズ上院議員(共和・テキサス州)は8日夜、FOXニュースでこう語った。9日にナバロ氏のことを指しているのかと尋ねられると、「特定の誰かを非難するのは生産的ではないと思う」と述べた。クルーズ氏は、世界的に最小限の関税を望むと述べたマスク氏を称賛した。
- ケビン・クレーマー上院議員(共和・ノースダコタ州)は、関税に関するナバロ氏の確信に不安を感じると述べた。「すべてに確信を持っている人間は信用しない」とし、第1次トランプ政権でナバロ氏と付き合った経験から心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったと冗談を言った。
- クレーマー氏は、今週初めにナバロ氏がCNBCで語ったことと、ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長がFOXニュースで語ったことが、相反するメッセージを発信していたのを見て笑いが止まらなかったと語った。ナバロ氏は保護主義的な貿易政策と恒久的な関税を主張した一方、ハセット氏は関税が最終的に関税と障壁を引き下げるための交渉ツールだと述べていた。
- 「デルタ航空の機内で大笑いしていたので、周りの人は『ビジネスニュースを見ているのに、まるでアニメを見ているようだ』と思ったに違いない」とクレーマー氏は語った。
- ランド・ポール上院議員(共和・ケンタッキー州)は、トランプ氏の関税に反対しており、ナバロ氏はトランプ氏に悪いアドバイスをしていると述べた。「彼は間違っている。彼は歩く経済的誤りのような人物だ」とポール氏は語った。
- 民主党議員も、ナバロ氏がトランプ氏の関税計画の立案者だとして批判している。チャック・シューマー上院少数党院内総務(ニューヨーク州)はナバロ氏について「関税が何であり、何をするのか、そして米国民にどれほど有害かについて、まったく正気を失っている。それなのに彼が仕事を取り仕切っているかのようだ」と述べた。
- トランプ氏の盟友の中では、マスク氏が最も厳しい批判を行っている。彼はナバロ氏のハーバード大学博士号の学歴をからかい、経済の実務経験が不足していることを示唆した。「彼は何も作っていない」とマスク氏は5日、自身が所有するソーシャルメディアのXに投稿した。ナバロ氏は反撃し、テスラの経営者であるマスク氏を「車の組み立て業者」と呼び、トランプ氏のビジョンよりも自社の利益を優先しているとほのめかした。
- 「ナバロ氏は本当に愚か者だ」。マスク氏は8日にこう応じ、「レンガの袋よりも頭が悪い」と述べた。マスク氏はナバロ氏に「Ron Vara」に相談するよう勧めた。これはナバロ氏の著書で引用されている架空の専門家を指している。この名前はナバロ(Navarro)氏のアナグラムで、同氏は2019年にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、「長年にわたって純粋に娯楽目的で使用してきた気まぐれなペンネームであり、実際の情報源ではない」と語っていた。
- トランプ氏は2人の口論を気にかけていないと側近たちは語った。「男性はいつになっても少年なので、彼らの公開スパーリングは続けさせよう」とホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は記者団に語った。
- マスク氏はコメントを控えた。ホワイトハウスのクッシュ・デサイ副報道官は声明で、ナバロ氏の「優れた洞察力は、米国の慢性的な貿易赤字という国家的緊急事態にようやく取り組むトランプ大統領の歴史的な努力にとって重要な資産だ」と述べた。
- ナバロ氏は第1次トランプ政権でも、しばしば激しい政策論争の中心にいた。当初、ゴールドマン・サックス元幹部でNEC委員長を務めたゲーリー・コーン氏などのアドバイザーたちはナバロ氏の影響力を制限し、重要な貿易会議から彼を締め出していた。ナバロ氏が大統領執務室に近づくたびに、スタッフは首席補佐官に電話するよう指示されていた。
- それでも、ナバロ氏はトランプ氏に近づく方法を見つけた。保護主義的な欲求を満たしたい大統領は、「私のピーターはどこだ?」と言ってナバロ氏を会議に呼び出した。トランプ氏は鉄鋼とアルミニウムの輸入に関税を課し、中国と最初の貿易戦争を開始した。ナバロ氏はまた、北米自由貿易協定(NAFTA)から離脱すると脅しをかけるよう大統領に助言した。その後、この協定の再交渉がなされた。トランプ氏は自身を「タリフマン(関税男)」と呼ぶようになり、当時の当局者によると、ナバロ氏は1800年代終盤に米国の国内産業を促進するために保護関税を引き上げたウィリアム・マッキンリー大統領の肖像画を彼に贈呈した。
- ナバロ氏は歴史的な形で忠誠心を証明した。2021年1月6日の米議会議事堂襲撃事件を調査する下院特別委員会の調査を妨害したとして、ホワイトハウス高官として初めて法廷侮辱罪で投獄された。ナバロ氏は4カ月の刑を言い渡され、マイアミ連邦刑務所に服役。トランプ氏のMAGA(米国を再び偉大に)運動の英雄となった。
- 昨年、ナバロ氏は出所した日にミルウォーキーに飛び、共和党全国大会の舞台に登場した。「1月6日(の事件を調査する)委員会は、自己保身のためにドナルド・ジョン・トランプを裏切るよう要求した」と、満場の拍手の中で語った。「私は拒否した」
- トランプ氏、メキシコに制裁・関税警告 「水を盗んでいる」 | ロイター
- トランプ米大統領は10日、メキシコが両国間で水資源を分配する条約に違反し、「テキサス州の農家から水を盗んでいる」として、同国に対する制裁や関税を警告した。
- メキシコは1944年の条約に基づき、5年ごとに175万エーカーフィートの水をリオグランデ川から米国に送る必要がある。1エーカーフットはオリンピックプールの約半分の容量。
- 現在の5年サイクルは今年10月に終了するが、国際境界・水委員会によると、メキシコが送った水は規定量の3割に満たない。
- トランプ氏は「メキシコは1944年の水条約に基づき、テキサスに130万エーカーフィート分の水の借りがあるが、残念ながら条約の義務に違反している」とトゥルース・ソーシャルに投稿。
- 「ロリンズ農務長官はテキサスの農家のために立ち上がっている。メキシコが条約を守り、テキサスに送るべき水を提供するまで、関税、場合によっては制裁も含め、(違反の)結果をエスカレートさせる!」と書き込んだ。
- メキシコは歴史的な干ばつで義務を果たせないとしている。条約はこうした状況について、未供給分を次の5年間に繰り越すことを認めている。
- 条約は米国がコロラド川から毎年150万エーカーフィートの水をメキシコに送ることも義務付けている。米国は義務をほぼ果たしてきたが、深刻な干ばつで最近の供給量は減少している。
●先進国中銀、金融当局
- 欧州市場は機能、必要に応じて手段提供へ 為替注視とECB総裁 | ロイター
- 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は11日、世界的な混乱にもかかわらずユーロ圏金融市場は機能しているとし、必要に応じて金融安定維持へ金融手段を展開する用意があるとの見解を示した。
- 総裁はワルシャワでの会見で、「欧州、特にユーロ圏では、市場インフラと債券市場が秩序だって機能している」と述べた。
- きょうの市場ではドルが全面安となったが、ラガルド氏はECBは特定の為替レートを目標とはしていないが、インフレに影響するほか経済モデルに組み込む必要があるため、為替動向には注意を払っていると語った。
- 市場では来週のECB利下げを確実視している。総裁はECBは常に行動の準備ができており、必要に応じて新しい手段を立案してきた確かな実績があると指摘。「ECBは監視しており利用可能な手段を用いる用意がある。過去にも、物価と金融の安定を確保するために必要な適切な手段や手段を講じてきた」と述べた。
- 米国債市場、介入正当化するほどの変調ない-ミネアポリス連銀総裁 - Bloomberg
- 米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は11日、米国債市場について、連邦準備制度理事会(FRB)の介入が正当化されるようなストレスの兆候は見られないとの認識を示した。
- 「大きな市場の変調は見られない。多少のストレスはあるが、市場はこれまでうまく調整しているようだ」と米経済専門局CNBCのインタビューで述べた。
- その上で、FRBは必要なら対応する手段を有しているが、これは極めて深刻な状況に限られると指摘。「FRBや財務省の介入は真に必要な状況においてのみ、仕方なく行われるべきだ」とした。
- ドルと米国債は通常なら、市場の混乱時に安全資産として買われる傾向にあるが、ここ数日は同時に売られている。
- カシュカリ氏は2008-09年の金融危機時に、米財務省が実施した緊急資金供給策である「問題資産購入計画(TARP)」の監督を担当した。
- 同氏はまた、関税がもたらす潜在的なインフレ圧力を踏まえると、景気が弱含んでも、FRBは利下げに踏み切りづらいだろうとの見解を改めて示した。足元では、複数のFRB高官が同様の見解を示している。
- ECB、ノンバンク起因の金融リスク警告 市場ストレス下で | ロイター
- 欧州中央銀行(ECB)銀行監督委員会のドナリー委員は10日、市場のストレス発生時にノンバンクから通常の金融機関に金融ストレスが広がることを特に懸念していると述べた。
- 講演で「ここ数日に見られたように、地政学的な不透明感により、急速な資産価格調整が起こる可能性は依然として大きい」と指摘し、「ノンバンクも地政学的ストレスを感じる可能性があるため、銀行とのつながりが特に懸念される」と述べた。
- 問題は銀行が融資や投資を通じてノンバンクに直接エクスポージャーを持つことが多く、ノンバンク部門に起因する衝撃の影響を受けやすいことだとした。
- 「ノンバンク部門の一部の活動が複雑で不透明なため、リスクの集中がさらに不明瞭になり、銀行のリスク管理を複雑にしている」とも述べた。
●金融市場、先進国トピックス
米株式市場でS&P500種株価指数が9日に8分間で7%急騰した際、コロンビア・スレッドニールの金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏はニューヨーク市マンハッタンにあるオフィスを離れた。
偽情報ではなく本物のトランプ米大統領によるSNS投稿がきっかけとなり、アルゴリズムが全てを支配し、全ての市場で買い注文が猛烈な勢いで殺到したため、「何もできなかった」ためだ。
S&P500種は10日に再び下落。さらに大きなことは、トランプ氏が株価が急騰したからこそ、米国に報復措置を講じていない日本などの国・地域に対し上乗せ関税の90日間停止を承認したと述べた後も、米国債利回りが急上昇していたことだ。
債券市場は混乱しており、財務省や連邦準備制度が介入するまでは収まりそうにない。「私は実際、リセッション(景気後退)について懸念していない。心配しているのは金融危機だ」とアルフセイニ氏は言う。
11日終了週の市場全体を見れば、トランプ氏が仕掛けた貿易戦争によって米国の資産が打撃を受けたことに気付かない人がいてもおかしくない。
S&P500種は週間ベースで5%余り上昇し、米国債相場は2月の水準を維持。パッシブ投資家はさらに多額の資金を投入し、暗号資産(仮想通貨)のビットコインは値上がりした。
隠されているのは、投資家やトレーダー、アナリストの間で起きている根本的な変化だ。最近までリスクを重視する業界がうらやんでいた米資産保有の是非について今、深刻な疑念が生じている。
熱狂的な動きの中で、主要な取引パターンは新興国市場とかすかに似てさえいる。トランプ氏が進める世界貿易の条件を書き換える試みは、金融システムにおける米国の特権的地位を危険にさらすリスクがあるという懸念が広がっている。
損失
ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのクロスアセット戦略マネジングディレクター、チャーリー・マケリゴット氏は、「正直なところ、自分が何かを見間違っているような気が時々する。価格が急速に変動しているため、グラフのスケールを確認する必要がある」と語る。
同氏によると、「今、デスクには警告音やポップアップが絶え間なく表示されている。リスク限度やリスク警告などの自動メッセージだ。最大限の過剰刺激、最大限のドーパミン飽和状態だ」という。
「トランプ関税」が引き起こしたボラティリティーの中で、チューダー・インベストメントの債券トレーダー、アレクサンダー・フィリップス氏は約1億4000万ドル(約200億円)の損失を4月に被ったと、事情に詳しい関係者がブルームバーグ・ニュースに明らかにした。
同氏は今も160億ドルを運用しているチューダーに勤務し、損失分を回収しようと努めているという。
米国債はセーフヘイブン(安全な避難先)と見なされているが、米国債とドルの大きな相場変動はそうした評価にも影響を及ぼしている。
トーズ・アセット・マネジメントのフィリップ・トーズ最高経営責任者(CEO)は「全てを変えるような形で債券が大きく混乱する可能性を考慮しなければならない」と指摘する。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、ボストン連銀のコリンズ総裁は11日、金融市場が混乱状態に陥った場合、連邦準備制度は間違いなく市場の安定化を支援する準備があると説明。「市場は引き続き良好に機能している」とし、「全体として流動性への懸念は見られない」と述べたという。
確かに、米国資産の需要を測定することは決して正確な科学ではないし、相場が常に資金の流れを反映しているわけでもない。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)が引用したEPFRグローバルによる9日まで1週間のデータによると、米国債を購入するファンドは188億ドルという記録的な資金流入となった。
しかし、米国に焦点を絞った外国籍ファンドでは65億ドルの流出だった。少なくとも2020年以来2番目に大きな資金引き揚げだ。
1600億ドルを運用するマニュライフ・インベストメント・マネジメントのネイサン・スフト氏は「米国以外の国々では、株式・債券・為替全般で米国資産の質やリーダーシップに対する信頼が損なわれている」と分析。
「問題は、これが一時的な打撃なのか、それとも長期的な変化なのかということだ。われわれは引き続き一時的と考えているが、代替の安全資産や分散投資先を探している大口の資産保有者がいるという事実は否定できない」と話している。
米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、米国債市場で「混乱」が生じ、それが連邦準備制度理事会(FRB)の介入を促すことになると予想した。
「あらゆる規制やルールを要因に、米国債市場では混乱が起こるだろう」とダイモン氏は11日、決算発表に伴う電話会見で発言。そうなれば、FRBは介入するだろうと述べた。ただ、「彼らが少しパニック」にならない限りは、動かないだろうと付け加えた。
トランプ米大統領の関税政策が二転三転し、市場が混乱する中、今週は特に長期債の利回りが急上昇した。
新型コロナウイルス禍が世界を襲った2020年3月、投資家が急速にポジションを解消したことで米国債市場は機能不全に陥った。FRBは介入を余儀なくされ、巨額の債券購入とレポ市場への緊急資金供給を約束した。ダイモン氏は、こうした事態の再発を防ぐためには銀行規制の見直しが必要だと指摘した。
「市場が非常に不安定で、スプレッドが大きく、米国債の流動性が低い状況では、他のすべての資本市場に影響を及ぼす」と指摘。「だからこそ規制の見直しが必要だ。銀行を優遇するためではない」と同氏は述べた。
トランプ米大統領の気まぐれな政策を見極めようと投資家が苦慮する中で、ウォール街の銀行が発表した1-3月(第1四半期)のトレーディングは好調だった。しかし、業界のリーダーらは将来に対し明確な答えも楽観的な見通しもほとんど持っていない。
米大手銀行の決算シーズンが11日に始まり、米銀最大手JPモルガン・チェースなどが3行が業績を説明すると、「不確実性」や「未知数」、「混乱」といった言葉が何度も繰り返された。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は電話会議で、不透明で予測不可能なのは経済だけではないと述べた。欧米の経済的関係および軍事同盟が今後も維持されるのかという、より重要な疑問がある。
ダイモン氏はJPモルガンが貸倒引当金を9億7300万ドル(約1400億円)積み増したと報告。アナリスト予想より40%余りを多く、驚きが広がった。
同行は必要資本よりも多くの資本を保有しており、ダイモン氏は「どんな荒波にも耐えられるだけの流動性を十分に備えている」と語った。
トランプ氏が発表した無秩序な関税や政府機関の縮小・閉鎖は、貿易やインフレ、失業、それにリセッション(景気後退)の可能性を巡る懸念を強めた。銀行幹部によると、各企業はウォール街が関与する企業の合併・買収(M&A)を含め事業拡大を一時停止している。
「多くの人々が何もせず、様子を見ようとしている」とダイモン氏は言う。
ウォール街のベテランアナリスト、マイク・メイヨー氏がJPモルガンなどの国際的な米企業は貿易戦争に巻き込まれることを懸念すべきなのとダイモン氏に尋ねると、同氏は「われわれはその的に入るだろう」が「問題ない」と答えた。
JPモルガンのジェレミー・バーナム最高財務責任者(CFO)は「労働市場が引き続き非常に好調なら、消費者クレジットは恐らく良好だろう」と述べた上で、「そうでない場合は、これまでと同じように影響が表れる」と予想。
アナリストらは、トランプ氏が一部関税の停止を決めた要因とされる国債市場のボラティリティーについても質問。バーナム氏がもちろん注意深く見守っていると話すと、ダイモン氏は「一瞬一瞬」だと付け加えた。
モルガン・スタンレーのテッド・ピックCEOは、投資家が24時間常に経済の将来に対する評価を変えていることを株式・債券・為替市場が示しているとアナリストらに伝えた。
「われわれは過去3年間、歴史の終わりについて語ってきた。つまり、グローバル化に向けた政治・経済的調整の長い期間の終わりについてだ。今、歴史は再び始まる。そして、それに伴い、見通し予測が難しい調整期間が訪れる」と述べた。
米国債相場は11日に総じて下落(利回り上昇)。米国資産から資金を引き揚げる動きが続いており、このままいけば10年債利回りは、週間ベースで1980年代以来の大幅上昇で今週の取引を終えることになる。
10年債利回りはこの日、一時16ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4.6%近くを付けた。先週末からは50bp余りの上昇。30年債利回りは一時、前日比12bp上昇して5%に迫った。
米国が仕掛けた貿易戦争で世界の市場が揺さぶられ、米国債市場は混乱。今週は米国株の下落と同様に米国債が下げ、安全な逃避先としての米国債の世界的地位に疑問が生じている。
UBSグループのチーフストラテジスト、バーヌ・バウェジャ氏は「非常に恐ろしい。われわれは世界のリスクフリーレートを定義し直しているところだ。世界のリスクフリーレートにボラティリティーを組み込んでしまったら、全ての市場がひっくり返る」と述べた。
チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「市場が直面している問題は米国の政策に対する信頼感喪失だ」と指摘。「関税政策が突然変更されたことで、レバレッジを効かせた取引はうまくいかなくなり、買い手は様子見に回っている」と述べた。
米国債相場の下落と同様に、ドルも大幅に下げている。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は11日に一時1.3%下落。週間ベースでは2%余り下げ、2022年以来の大幅安を一時記録した。
ドナルド・トランプ米大統領がここ数週間で激化させた貿易戦争に伴う株価暴落は十分に不安をかき立てるものだった。同時に進行したドル安と米国債利回りの上昇(価格は低下)はまさに不吉な兆候だった。トランプ氏が少なくとも一時的に方針を転換し、9日に一部の関税発動を先送りしたのはその兆候があまりに不吉だったためかもしれない。
投資家は今回のように不安が高まると、通常は安全を求める。そして、ドルと米国債ほど安全なものはない。
だがリセッション(景気後退)への懸念が強まっているにもかかわらず、通常見られるような安全資産への逃避は起きていない。それにはいくつかの理由があり、インフレリスクなど比較的表面的なものもあれば、もっと根本的なものもある。
ここ数年、米国は経済成長の速度、テクノロジーの進歩、そして安価なエネルギー供給といった点で他のほぼ全ての主要経済国を上回ってきた。世界中の投資家が「米国例外主義」に群がり、米国の資産を買い入れた。
米国は依然として例外的な存在であるものの、以前よりも予測しにくい国になり、また、攻撃的な姿勢や孤立する傾向が強まっている。外国人投資家にとってそれは、米国の安全性が弱まったことを意味する。
米株式市場でS&P500種指数は2月19日に過去最高値を付けたが、トランプ氏がカナダ、メキシコ、中国に対する関税や、アルミニウム、鉄鋼、自動車への関税を発動し始めると下落に転じた。トランプ氏が4月2日、大半の国に「相互関税」を課すと発表すると中国は報復措置で応じ、市場では売り圧力が強まった。S&P500種の下落率は9日の午前中までに19%に達した。同日、トランプ氏は中国を除く貿易相手国に対する相互関税を90日間停止すると発表。主要16通貨のバスケットに対するドルの価値を示すウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)ドル指数はこの間に4.5%低下した。
米国債利回りは2月19日以降わずかに低下しているが、4月2日以降では0.25ポイントほど上昇している。トランプ氏が関税の一時停止を発表する直前の8日夜から9日朝にかけて利回りは急上昇した。「人々は少し不安になっていた」と同氏は話した。
相場のこうした動きは異例だ。S&P500種が同程度かそれ以上に下落した過去7回のケースでは、ドルは上昇した。直近のケースの2022年1~6月は米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために短期金利を大幅に引き上げていた時期だったため、国債利回りは上昇した。
現在の状況はインフレと関係しているかもしれない。関税は需要と経済成長を圧迫し、通常であればFRBは利下げに動くだろう。だが関税はインフレ率を少なくとも一時的に押し上げるため、利下げは正当化しにくくなる。
それでもなお、景気後退リスクが急速に高まる中でトレーダーらはFRBが今年利下げに踏み切るとの見方を強めている。つまり、国債利回りの上昇の主因はFRBではない。
テクニカルな要因が影響している可能性もある。ヘッジファンドは売買ポジションが不利になったため保有債券の整理を余儀なくされ、また、ディーラーはボラティリティー(変動率)を平準化するために動きが鈍ったのかもしれない。
ただ、国債とドルが数週間前から奇妙な動きを見せ始めた理由はテクニカル要因だけでは説明できない。もっと根本的なことは、世界の投資家が米国に対する見方を変えつつある可能性だ。
ドルは長年、世界の基軸通貨としての地位を保ってきた。投資家や各国の中央銀行は自国通貨の防衛や、輸入代金の支払い、債務返済、緊急時の対応にドルを使っている。あらゆる国の企業が国境を越えてドルで取引を行っている。こうしたこと全てがドル保有への巨大な需要を生み出している。ドルは通常、米国債に投資される。
ドルは主要準備通貨としての地位によって、本来よりも高い水準で維持され、その結果、米国では輸出は割高に、輸入は割安になり貿易赤字の一因となっている。米大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長は今週の講演で、防衛の傘と準備通貨を提供する米国の負担を他国は分担すべきだと述べた。その方法の一つとして、関税の支払いを挙げた。
ミラン氏は政権入りする前、他国は「マールアラーゴ」合意を通じてドルの抑制に協力できるとの考えを報告書の中で示し、米国は他国が協力しない場合に保有米国債に手数料を課すこともありうるとしていた。同氏は9日の電子メールで、当時こうしたアイデアを積極的に提唱していたわけではなく、現在も政権はどちらも検討していないと表明。「準備資産の提供者としての米国の地位はわれわれの最大の経済的強みの一つであり、大統領はそれを維持するために断固として行動し、それを損なおうとする試みに強く反対する考えを非常に明確に示してきた」と述べた。
それでもなお、そうした可能性を排除することを投資家はためらうかもしれない。トランプ氏は既存の法律を強引に拡大解釈し、あらゆる相手に高関税を課してきた経緯があるためだ。
米プライベートエクイティ(PE)投資会社カーライル・グループのグローバルリサーチ責任者、ジェイソン・トーマス氏は、金(ゴールド)のパフォーマンスは2022年初めから米国の物価連動国債を大きく上回っており、安全資産としては今や金が選好されているとの見方を示した。
トーマス氏は、ロシアがウクライナへの侵攻を開始した後、米国と同盟国はロシア中央銀行の外貨準備を凍結したと指摘。また、ここ数カ月のトランプ氏の政策が示唆していることとして、米国が世界貿易において果たしてきた中心的な役割の低下や、輸出入の決済におけるドルの重要性の低下を挙げた。結果として、「国際社会と中央銀行の準備金管理者は米国債へのエクスポージャーを増やすことをややためらうようになっている」とトーマス氏は述べた。
このことはトランプ氏にとって間接的なメリットがある。ドル高が関税の効果を打ち消すという状況は起こりにくくなる。
しかし、それはコストを伴う。ドル建て資産への需要が減少すれば、米国の巨額の借り入れを賄う資金調達が難しくなる。
貿易赤字が減少すれば、米国は赤字を埋め合わせるために外国人に資産を売却する必要性が低下する。
ただ、そうした投資家の動向が及ぼす影響は依然として大きい。外国人投資家が保有する米国債は昨年6月時点で7兆ドル(約1010兆円)だったが(その半分は中銀など公的機関が保有)、これは市場で流通している米国債の約3分の1に相当する。連邦政府の財政赤字は年間約2兆ドル、つまり国内総生産(GDP)の7%に達している。議会で上院共和党が可決した予算決議案では、巨額の赤字が当面継続することが示唆されている。
このため米国は、外国人投資家を必要としている。彼らが保有する米国債の償還額を継続して借り換えるため、また新規国債を購入し続けてもらうためにだ。たとえ小規模でも資金の引き揚げが起きれば、米国債利回りは急上昇する可能性がある。
JPモルガン・チェースのグローバル金利戦略責任者、ジェイ・バリー氏は、外国の公的機関の米国債保有高が3000億ドル減少するごとに、0.3ポイント超の利回り上昇が起きると試算している。
中国がトランプ氏の関税への報復措置として、保有する米国債の一部を売却するとの懸念が広がっている。そうした動きを示す証拠はないものの、その可能性が意識されていることで、米国は貿易戦争が金融戦争に発展するリスクを抱えていることが浮き彫りになった。
2022年、英国の首相に就任したばかりのリズ・トラス氏は大規模な減税を提案した。英国債利回りは瞬く間に急上昇し、減税案は撤回され、トラス氏は辞任した。ドルの基軸通貨としての地位はこうした事態から米国を守るものと長らく想定されてきた。ここ数週間の出来事は、トランプ氏がそれを当然のことと考えるべきではないことを示唆している。
米国のトランプ大統領は、自らの関税計画を戦略的勝利と位置づけている。一方で、市場や企業幹部らに見えるのは、この先のさらなる混乱だけだ。
長期間にわたる貿易戦争が世界経済を損なうとの懸念が、投資家の間で再燃し、株式市場は10日、急落した。トランプ氏が上乗せ関税を一時停止すると発表した9日、ウォール街で半日だけ起きた高揚は、全て吹き飛んだ。
ホワイトハウスが11日、中国からの輸入品に対して賦課している関税は合計で少なくとも145%に上昇すると明確にしたことで、トランプ大統領の貿易戦争の規模が改めて浮き彫りとなった。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)によると、他の貿易相手国に対する一時的な救済措置があったとしても、対中関税の税率により、米国の平均関税率は歴史的水準まで上昇している。
市場の混乱が続く中、11日はドルと共に米国債も下落した。経済不安はウォール街だけにとどまらなかった。ミシガン大学が発表した4月の消費者マインド指数(速報値)によると、米国の消費者信頼感は約3年ぶりの低水準に落ち込み、インフレ期待は数十年ぶりの高水準に急上昇した。
トランプ氏は10日、「移行上の問題」を認めたものの、自身の手法に自信を示し、「最終的には素晴らしいものになるだろう」と記者団に述べた。株価の急落について尋ねられた際には、詳細を見ていないと述べ、ベッセント財務長官に記者からの質問に答えるよう指示した。
ベッセント氏は、「2日下落、1日上昇なら悪くない割合だ。90日後には、関税についてかなり明確になるだろう」と述べ、株価の急落については重視しない態度を示した。
トランプ氏の顧問らは、関税を巡る転換を、本人が示唆したような市場のパニックによる後退ではなく、意図的な交渉戦略と主張としている。
トランプ氏は、貿易相手国との関税に関する最初の合意は「間近」だと述べ、ラトニック商務長官はトランプ氏の行動があったからこそ、各国が「これまで決して出さなかった提案をしている」と強調した。
不透明
米中の対立は沈静化する兆しもなく、6900億ドル相当の通商関係を壊滅させる瀬戸際に来ている。ブルームバーグニュースは、米ネット通販大手のアマゾン・ドット・コムが、中国や他のアジア地域からの注文をキャンセルし始めたと報じた。
トランプ氏は以前、関税は米国の生産や雇用の押し上げにつながると主張し、米国は長期的な利益のために、短期的な痛みを耐えなければならないと主張していた。同氏による方針の急転換は、その決意に疑問を投げかけるものだ。
関税の一時停止により、投資家たちは少なくとも数時間は浮き足立ったが、多くの経営者はこの動きを一時的なものと指摘した。トランプ氏は再び方針を変えかねないためだ。
中国の習近平国家主席も譲らない姿勢を見せており、米中間の何らかの合意の見通しは不透明なままだ。中国は10日、ハリウッド映画なども含め、報復の範囲を拡大した。さらに11日、中国財政省は米国からの全輸入品に対する関税を、12日に84%から125%に引き上げると発表した。
トランプ氏が他の国々と合意に達するかどうかも不透明だ。同氏は10日、「私たちに好ましい合意をしなければならない」と述べたが、合意を受け入れる具体的な条件については詳細を明かしていない。
米アパレル・フットウエア協会(AAFA)のスティーブ・ラマー会長は、トランプ氏の「場当たり的な関税政策」に懸念を表明。一時停止を歓迎はするものの、「米国の雇用を支える投資を促したいのであれば、包括的で予測可能、持続的な政策が必要であり、その第一歩に過ぎない」と述べた。
トランプ氏は、特定の企業に対する免除措置の可能性に言及しているほか、基本の10%の関税についても交渉を検討すると発言。一方で交渉が不調に終わった場合は7月初旬までに高い関税に戻す意向を示すなど、さらなる不確実性をもたらしている。
続く重荷
トランプ氏は、状況を評価し、「何よりも直感的に」決定を下すつもりだと述べた。
60カ国近い貿易相手国に対する関税引き上げが停止されたものの、トランプ氏は、その他の国々に対しては上乗せ関税を進める意向を示している。また、医薬品、木材、半導体、銅、さらにおそらく重要鉱物に対しても、関税引き上げを計画している。
全米小売業協会(NRF)の政府関係担当副社長のデビッド・フレンチ氏は、90日間の停止を評価する一方、一律10%の関税が経済に打撃を与えると話す。
フレンチ氏は、「世界的な関税は依然として有効で、輸入品に対する大幅な増税だ」と述べた。また、「中国との対立激化も懸念事項で、特に調達先を変更できない企業にとっては深刻だ。より良い貿易の必要性には同意するが、そのためには関税以外の手段を用いる必要がある」と訴えた。
他の業界団体は沈黙を守っている。米国商工会議所、全米製造業者協会は、9日のトランプ氏の発表以来、新たな公式声明を出していない。両団体は以前、トランプ関税の影響について警告していた。
一方、政権は引き続き団結した姿勢を見せている。ロリンズ農務長官は、政権は中国の報復措置の影響を「刻一刻と」監視していると述べた。同氏は「今後、市場がさらに動き、調整されるだろう」と予測したが、必要であれば、トランプ氏の重要な支持基盤である農家への支援を行う用意があると強調した。
米企業の間では、「トランプ関税」の名目で顧客向け料金に上乗せする動きが出ている。値上げの原因を明確に示そうとするものだが、政治的関心の高まりを利用したマーケティング手法でもあり、一部のニッチなブランドにとっては収益機会となる可能性がある。
こうした責任転嫁的な値上げは顧客離れを招く恐れもあるため、広く普及する可能性は低いとみられている。しかし一部の事業者は、価格上昇の理由を消費者に率直に伝える方が良いと考えている。
フィルター機能付きシャワーヘッドを製造するジョリー・スキンのライアン・バベンジエン氏は「私たちは透明性が最も重要だと考えている。この関税を全米の消費者に課すと決めたのはトランプ氏であり、全責任は彼にあると考えている」と語った。
バベンジエン氏によると、同社は来週から「トランプ解放関税」と名付けた追加料金を導入する方針だ(訳注:トランプ氏は関税措置発表の日を「解放の日」と呼んだ)。150ドルのシャワーヘッドに対してどの程度の追加料金を課すか、同社では現在も計算中だという。
追加料金を明示することは、販売価格が必ずしも事業者の裁量だけでは決まらないことを消費者に示す一つの方法だ。特に、燃料費や輸送費といったコストが急騰する場面では、その傾向が顕著になる。今年に入って卵の価格が急上昇した際、一部の飲食店がメニューに追加料金を加えたケースもあった。
大手の小売業者やブランドは、サプライチェーン全体で追加コストをどう吸収するかの対応に追われている。一方、中小企業には値上げ以外の選択肢がない可能性がある。
Eマーケターのアナリスト、スカイ・カナベス氏は「関税に関する不確実性が高まる中、関税による追加料金を明示する手法は消費者の理解を得られる可能性があり、より多くのブランドで普及が進めば定着していくかもしれない」と語った。
トランプ米大統領が9日に「相互関税」の一部を90日間停止すると発表したが、混迷を極める米貿易政策によるコスト高騰、受注減少、サプライチェーン(供給網)混乱への企業幹部の懸念は和らいでいない。
中国からドイツまで複数の国々にまたがる複雑なサプライチェーンを広げる企業は、関税の影響を見極めようと奔走しており、相互関税停止はその混乱に拍車をかけただけだ。
ドイツのファッションブランド、ヒューゴボス(BOSSn.DE), opens new tab は声明で、米国の関税と、それに対する欧州連合(EU)その他の対抗措置は「極端に動きが激しく不安定だ」とし、「特に資材調達と価格設定への潜在的な影響に関して」状況を分析中だと説明した。
企業は今、90日の停止期間の終了後に何が起こるかを思案している。イェール大学のエコノミスト、アーニー・テデスキ氏はXへの投稿で、相互関税停止後でも米国の実効輸入関税率は平均約23%になるとの試算を示した。
ドイツの化学大手BASF(BASFn.DE), opens new tab は10日、貿易環境は急激に変化していると指摘。同社は現地生産比率が高いため米関税の直接的影響が限られるが、貿易戦争による需要への影響は推計しづらいとした。
キルター・インベスターズのマーカス・ブルックス最高投資責任者は「多くの消費者と企業は、何らかの確信を持って計画を立てることができなくなっており、いずれにせよ景気後退に見舞われるかもしれない」と話し、「支出と投資は削減される可能性があり、トランプ氏が達成したいと言っている事全てに対し、完全な逆風が吹くだろう」と続けた。
米アップル(AAPL.O), opens new tabはトランプ氏の関税政策への対応策として、貨物機をチャーターしてインドから600トン(150万台相当)の「iPhone」を空輸した。iPhoneの部品は中国からの輸入に大きく依存しているため、高関税により米国内の価格が急騰しかねないとアナリストは予想している。
米マイクロソフト(MSFT.O), opens new tab と、グーグルの親会社、米アルファベット(GOOGL.O), opens new tab は人工知能(AI)サービスのためのデータセンター建設に数十億ドルを投資しており、関税によって顧客が財布のひもを締めるとの懸念が高まる中でも設備投資計画を維持している。
ハイテク企業のコンサルタント会社、バロワールのレベッカ・ウェッテマン最高経営責任者(CEO)は「ビッグテック(巨大ハイテク企業)の意思決定サイクルは既に減速しており、現在の不透明感はマイナスになるだろう」と話した。
<大きな不透明感>
米アルコール飲料企業、コンステレーション・ブランズ(STZ.N), opens new tab は10日、トランプ氏が移民取り締まりを強めているため、米主要州におけるヒスパニック系消費者の需要が減ってビール販売が打撃を被っていることを公表した。ビル・ニューランズCEOによると、ヒスパニック系顧客は飲み会などを減らしている。
米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N), opens new tab、独同業ポルシェ、同メルセデスベンツ(MBGn.DE), opens new tabなどは、関税を回避するために米国内の在庫を増やしている。しかし先行きが不透明なため、今年この先の見通しは暗い。
既に米国では消費者信頼感が弱まってスニーカーなどへの裁量的支出に悪影響が及んでいる。業界団体「米靴製品卸売小売協会」の週間統計によると、トランプ氏の大統領就任以来の11週間で、靴の店舗販売は前年同期比9.5%減少した。
スウェーデンの家具大手イケアの広報担当者は、関税により手ごろな価格を維持するのが難しくなったと強調。「関税がわが社の製品価格にどの程度影響するかを言うのは尚早だが、われわれは状況を注視しており、今後の展開を見極め続けていく」と述べた。
来週から仏高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)(LVMH.PA), opens new tabやオランダの半導体製造装置メーカーASML(ASML.AS), opens new tab、仏化粧品大手ロレアル(OREP.PA), opens new tabなどを皮切りに決算発表シーズンが始まるが、見通しは益々暗くなっている。
米ロードアイランド州ウォリックに住むクリス・シアンシさん(51)は米スポーツ用品大手ナイキの株式を800株以上売却した。カンザス州ウィチタのケン・ワグノンさん(86)は相場下落時に押し目買いをした。コロラド州デンバー郊外のダグ・ジョンソンさん(53)は、自身の投資ポートフォリオをチェックした後、家族旅行の選択肢を調べ続けた。
ドナルド・トランプ米大統領の包括的な関税計画、その突然の一時停止、そして中国との貿易戦争の激化により、市場はジェットコースターのようになっている。ここ数日間で、米国株式市場は7兆7000億ドル(約1100兆円)もの驚異的な損失を被った後、急激に上昇し、10日には再び下落した。長期米国債の急激な売りは、アナリストや投資家を特に警戒させた。米国債は歴史的に市場混乱時の投資の避難場所となってきたからだ。
この混乱は、市場で最大の個人投資家である米富裕層を動揺させている。富裕層顧客を担当するファイナンシャルアドバイザーらは、過去1週間で顧客からの電話が殺到したと語り、2008~09年の金融危機や20年3月の新型コロナウイルス流行開始時の混乱を思い起こさせると述べている。顧客らは安心材料を求めたり、さまざまな関税シナリオや市場シナリオでの戦略を練ろうとしたりしているという。
1億ドル以上の資産を持つ富裕層家族に投資アドバイスを提供するパートナーズ・キャピタル(本社・ボストン)のリッチ・スカリンチ氏は、多くの顧客との会話が同じ疑問を中心に行われていると述べた。米国の例外主義は終わったのかという問いだ。
米国株、特に大手上場企業の成長株は過去10年以上にわたり、欧州経済が低迷し中国の成長が鈍化する中、世界中の投資家に優れたパフォーマンスをもたらしてきた。スカリンチ氏は、グローバル化が減速し、米国が人材を引き付けるのを妨げる障壁が高まった場合、そうした優位性がどれほど続くのか疑問を抱き始めている。
「その世界秩序が問われており、今後代わりになるものが必要となるはずだ。これは超富裕層を含む投資家が考えている最重要の問題だと言える」とスカリンチ氏は述べた。
JPモルガンのプライベートバンク部門のグローバル投資機会グループ責任者モニカ・ディセンソ氏は、自身のチームが担当する一部の家族が、ポートフォリオをさらに分散させるために欧州や日本、外国通貨への投資を追加するなどの選択肢について尋ねていると述べた。「長期的に見て米国に過度に投資し続けるのが最適とは限らない、と人々は言っている」とし、これは過去数年間とは大きく異なると指摘した。通常2億5000万ドル以上の資産を持つ家族に助言するディセンソ氏は、債券などの投資機会を検討する時期だと顧客に伝えている。
ロードアイランド州の投資家シアンシさんは、日々のニュースを気にしない長期投資家を自認している。しかし、数年前にマーケティング事業を売却したこの起業家は、トランプ氏の関税体制は米国と世界の関係を根本的に変えると感じたという。米国のインフレ加速と経済成長の停滞を懸念しており、そのような環境ではほとんどのポートフォリオがうまくいかないと考えている。
彼はリスク軽減のためにポートフォリオの約10分の1を売却した。関税引き上げで打撃を受けると考えたナイキや半導体製造装置大手アプライド・マテリアルズなど15銘柄を売却し、北米のソフトウエア企業に投資するiシェアーズETF(上場投資信託)も売却した。その現金をマネーマーケット口座に入れた。これで少なくともポートフォリオの一部が激しい変動から守られると考えた。
米国が世界での地位を失うことを望んでいるわけではないが、さらなる分散のために一部の資金を米国外の市場に投資することを検討していると彼は述べた。
「以前は米国経済のメカニズムや構造を信頼していた。今は彼を支持するしないにかかわらず、個人の手にポートフォリオがあると感じる」と、シアンシさんはトランプ氏に言及しながら述べた。また、雇用統計などの指標の発表で株式市場が動いていた頃を懐かしそうに振り返った。「それは最近起きたことに比べれば小さな話だ」
市場の混乱に対する個人の反応は、リスク許容度と手元資金、政治的見解によって形作られるとファイナンシャルアドバイザーらは述べている。株式市場以外に大きな投資資産を持つ一部の富裕層は、相場の混乱をほとんど気にしていない。S&P500種指数が8日の終値時点で2023年と24年の上昇分を依然維持していたことを指摘する人もいる。両年は同指数にとって四半世紀で最高の2年間だった。
デンバー郊外に住む元株式ブローカーで富裕層向け信託業務の経験もあるダグ・ジョンソンさんは、家族の投資ポートフォリオに手をつけておらず、妻のジェニファーさんと共に子どもたちとの夏の旅行計画を検討していると述べた。「世界で起きていることは私たちに影響を与えていない」。これはポートフォリオの分散性と、富裕層の会員制ネットワーク「タイガー21」での活動によるものだという。タイガー21では、メンバーが定期的に自分のポートフォリオについて発表し、その妥当性を説明する。
それでもジョンソンさんは国内外の投資機会を探っており、現在割安になっている米国株のほか外国政府債や世界株に注目している。「米国は最も流動性が高く、法の支配があり、自分たちが住んでいる場所なので、まだ米国中心に投資している。しかし富の保全のためには、あらゆる機会に幅広く取り組む必要がある」
スイスの金融大手UBSは最も裕福な顧客に投資を続けるよう促している。1945年以降、S&P500種指数が高値から20%下落した局面は12回あったが、その5年後に同指数は100%の確率でプラスのリターンを記録したという。平均リターンは約53%だった。
カンザス州のケン・ワグノンさんにとって、市場の混乱は買いの好機を意味した。
ワグノンさんはピザハットのフランチャイズ加盟事業者を引退しており、近年は自家用飛行機や複数の別荘を売却して生活を簡素化している。先週、トランプ氏が関税を課す国のリストを発表するのをテレビで見て、気分が高揚した。「長いリストになることは分かっていたが、これほど長いのはうれしい誤算だった。それは影響がどれほど大きいかを示している」。ワグノンさんは大統領選でトランプ氏に3回投票している。
翌朝、彼は株式市場の惨たんたる状況に動じることなく、ネット証券大手チャールズ・シュワブの担当者に電話をかけ、数十年間保有してきた米国企業の株式数銘柄を買い増す注文を出した。銘柄は明かさなかったが、耐久消費財やテクノロジー企業を含むという。週明け7日の朝にもさらに買い増した。
「株式市場は過剰反応する」。運用成績を数週間や数カ月ではなく数年以上の期間で見る長期投資家を自認するワグノンさんは、こう話した。「株式市場で起きたのは、株を買う本当に良い機会を得たということだけだ」
大半の国に対する関税の90日間の一時停止は「非常に賢明」だとも話した。各国により多くの交渉時間を与えるからだという。彼は7日以降、ポートフォリオを動かしていない。
(ChatGPTによる要約)Redfinの新しいレポートによると、2025年に最も人気のあったアメリカの地域は、都市部へのアクセスと郊外の魅力を兼ね備えた場所が多くランクインしています。特に中西部の郊外が注目されており、トップ10のうち5つが中西部の地域でした。
Investors are growing concerned about a U.S. asset exodus as Treasuries and the dollar decline(CNBC)
(サマリー)金曜日、債券価格の下落により、指標となる10年国債の利回りは、わずか1週間前の3.99%から一時4.5%を超えた。
ICE米ドル指数は3年ぶりの最低水準を記録した。
ドイツ銀行のストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏は金曜日の顧客向けメモで「市場は世界の準備通貨としてのドルの構造的な魅力を再評価しており、急速な脱ドル化の過程にある」と述べた。
(サマリー)トランプ政権は土曜日、iPhone、PC、半導体などのテクノロジー製品を中国が最近課した関税の多くから除外すると発表した。
しかし、米国のほとんどの企業では、中国からの注文がキャンセルされ、中国から出荷される貨物が放棄される可能性がある。
小売業の専門家によると、中国との貿易戦争がより広範囲に停止しなければ、家具、玩具、衣料、履物、スポーツ用品などを含む米国企業にとって損害はまもなく「取り返しのつかない」ものとなるだろう。
米国の消費者はトランプ政権の輸入関税による価格上昇に備え、経済的ストレスの兆候を強めており、米国経済の重要な原動力に対する懸念が高まっている。
JPモルガンは第1四半期決算で、クレジットカード事業における回収不能とみなされる融資の割合が13年ぶりの高水準に達したと発表した。
業界全体で、貸倒償却率は新型コロナウイルス感染症の流行前の水準を上回っており、消費者が政府の景気刺激策の恩恵を受けたパンデミック中のクレジットカード決済が好調だった時期とは一転しています。
消費者支出は米国経済の基盤であり、長年にわたる力強い成長の後、米国人の経済力の源泉が衰えつつある兆候が強まっています。これは、物価上昇と金利上昇が続く中で、米国経済が今後12ヶ月で景気後退に陥るのではないかという懸念が高まる中で、経済成長にとってリスクとなります。
JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、非常に不確実な時期には「さまざまな結果が起こる可能性がある」と述べ、景気後退の可能性は五分五分だとする同行のエコノミストらの見解に同調した。
ドナルド・トランプ米大統領が計画している輸入品への10%の課税と中国からの購入品への145%の関税に関連して、価格上昇によるさらなる負担が消費者に課されるのではないかとの懸念がある。
JPモルガンのジェレミー・バーナム最高財務責任者は「4月のデータを見ると、特に関税の影響で価格が上昇する可能性のある品目において、支出が前倒しされているようだ」と述べた。
ミシガン大学は金曜日に発表した予備調査で、米国の消費者心理は「貿易戦争の展開に対する懸念の高まり」により12月以降急落していると述べた。今後1年間で失業率が上昇すると予想する回答者の割合は、2009年以来の高水準となった。
携帯電話からの位置信号を集約するPlacer.aiの店舗来客数データによると、米国の買い物客が3月最終週に低価格の倉庫型店舗に殺到したことが示唆されており、新たな関税導入を前に買いだめしている可能性もある。
ハイパーマーケットと倉庫チェーンの両方を持つ米国最大の小売業者ウォルマートの最高財務責任者、ジョン・デビッド・レイニー氏は今週、消費者心理が悪化するにつれ、「週ごとに、そして率直に言って日ごとに、売上高の変動がやや大きくなる」と指摘した。
しかし同社は、4月期の米国での純売上高が3~4%増加するとの見通しを維持した。
連邦準備銀行フィラデルフィア支局が今週初めに発表した報告書によると、米国のクレジットカード借り手のうち、最低限必要な支払いのみを行っている人の割合が2024年末に12年ぶりの高水準に達した。
フィラデルフィア連銀は、30日、60日、90日延滞しているクレジットカード口座の割合も第4四半期に増加したと発表した。
「総合的に見て、これらの傾向と、リボルビングカード残高の過去最高記録は、消費者のストレスが高まっていることを示している」と中央銀行フィラデルフィア支店は記した。
JPモルガンのバーナム氏は消費者信用について依然として楽観的な姿勢を示し、同行の「データは消費者が基本的に順調であるという見方と一致している」と述べた。
同氏は、低所得層の消費者の現金バッファーは比較的弱いものの、その層は苦境の兆候を見せていないと述べた。
この見解は、資産規模で米国第4位の銀行であるウェルズ・ファーゴによって裏付けられた。
ウェルズ銀行のクレジットカードポートフォリオはJPモルガンよりもはるかに小さいが、今四半期の同銀行の純貸倒償却率は低下した。
ウェルズの最高財務責任者マイク・サントマシモ氏は「クレジットカードやデビットカードでの支出を含め、顧客動向は四半期を通じて安定しており、引き続き堅調だ」と述べた。
ディモン氏は、融資損失の決定的な判断基準は現在約4.2%の 失業率になるだろうと述べた。
「信用はほぼ常に雇用と関連しています」とダイモン氏は述べた。「皆さんは失業率に注目しており、失業率が変化すれば(信用の質も)変化します。」
●中東情勢
トランプ米政権の中東担当特使を務めるスティーブ・ウィットコフ氏は、イランの核兵器開発の可能性を排除することがトランプ政権の「レッドライン(譲れない一線)」だと述べた。翌日に迫る核協議を前に、イランへの譲歩の余地を示唆した。
イランの核開発を何らかの形で継続させるような合意は、米政権にとって後退を意味する。また、信頼に足る合意には米国の監督下でのイラン核施設破壊が含まれるべきとするイスラエルの主張にも及ばないこととなる。
ウィットコフ氏は12日、米国を代表してオマーンでの協議を主導する。同氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、米政権がまず要求するのはイランの核開発放棄だが、合意に達するには妥協が必要になる可能性もあると認めた。
ウィットコフ氏は「われわれの要求はまずイランの核開発計画の解体から始まると私は考えている。それが現在のわが国の考えだ」と、イラン当局者へのメッセージを要約した。「だが、両国間で妥協点を見出す他の方法を探らないという意味ではない」と説明した。
「われわれのレッドラインは、イランの核能力が兵器化されることはあり得ないということだ」と同氏は付け加えた。
ウィットコフ氏の発言は、トランプ政権の最高レベルでの考えをうかがわせるものであり、また、今後数カ月間に同政権が迫られる難しい選択を浮き彫りにもしている。つまり、イラン核開発の抑制のためには軍事力が必要なのか、あるいは外交で十分かという選択だ。
同氏は、イランが核開発計画の放棄を拒否した場合、今後の対応を決定するためトランプ氏に問題を提起すると述べた。そうなれば米政権はイランの核開発をどれほど容認できるかという難しい問題に直面する。
●エマージング
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
### 📉【為替市場】ドル全面安
- **ドルは主要通貨に対して下落**し、スイスフランに対しては**10年ぶりの安値**、ユーロに対しても**3年ぶりの安値**を記録。
- 背景には**米中の関税応酬**があり、**ドルの安全資産としての信頼が低下**。
- 中国が米国製品に最大125%の関税を発表(トランプ政権の145%関税に対抗)。
- ユーロ/ドルは1.25%上昇し、**2022年2月以来の高値**。
- ドル指数は**99.958と2022年4月以来の安値**に。
- スイスフラン、人民元、ユーロなどに対してもドル安が進行。
### 💹【債券市場】金利急騰
- **10年米国債利回り**は4.478%に上昇し、**週ベースでは2001年以来の最大の上昇幅**。
- **30年債・2年債**も大幅上昇。ヘッジファンド等の売りが要因。
- 短期金利は相対的に低く、**利下げ観測**が根強い。
- **2年債と10年債の利回り差**は52bpに縮小。
### 📈【株式市場】反発して終了
- **ダウ平均は619ドル高**で終了し、主要3指数ともに大幅上昇。
- **米大手銀行(JPM、MS、WFC)決算が好調**、FRB当局者の発言も安心材料に。
- 全セクターが上昇し、素材とハイテク株が特に強い動き。
### 🪙【金市場】史上最高値を更新
- 安全資産としての金が買われ、**金先物は4日続伸**。
- **中心限月6月物:1オンス=3,244.60ドル**(+2.11%)と**連日で過去最高値**を更新。
- **週間では6.90%高**。
### 🛢️【原油市場】反発
- 米関税政策に対する不透明感が一服し、**WTI原油先物は反発**。
- **5月物:1バレル=61.50ドル(+2.38%)**、ただし**週間では0.79%の下落**。
全体として、米中の貿易摩擦が市場全体に大きな影響を及ぼしており、ドル安・金高・債券売り・株高という複雑な動きが見られています。
## 🇬🇧 **ロンドン株式市場:まちまちの展開**
- **FTSE100種株価指数**:貴金属株の上昇に支えられ**上昇(週間では1.13%安)**
- **FTSE250種指数**:米中貿易摩擦への懸念で**0.01%安(週間では0.81%上昇)**
- 英2月の**GDPは前月比+0.5%**と予想を上回り、利下げ期待が後退
- **金利敏感株の銀行株**(FTSE350種銀行株指数)は+0.81%上昇
- **貴金属株(Fresnillo、Endeavour Miningなど)**:金価格高騰により平均+6.93%上昇
- **鉱業株**:銅価格上昇で+2.73%
- **石油・ガス株**:業績懸念から-1.36%、BPが2.9%下落
## 🇪🇺 **欧州株式市場:全体的に反落**
- **STOXX欧州600種指数**:**週間で1.92%安**(3週連続下落)
- 米政権の関税政策に振り回され、景気への懸念が強まる
- 一方で、米国の「相互関税」90日停止措置により、貿易協議への期待も
- ドイツDAX:-0.92%、英FTSE100は+0.64%
- **不動産株**(金利敏感):+2.04%
- **工業株**:-1.25%
- **ステランティス(自動車大手)**:出荷減の見通しで-3.8%
## 💶 **ユーロ圏債券市場:ドイツ国債利回り低下**
- **ドイツ10年債利回り**:2.53%(-5bp)
- **ドイツ2年債利回り**:1.74%(-7.5bp)
- **米独10年債利回り格差**:195bp(30年ぶりの拡大幅、週で+40bp)
- **ECB(欧州中央銀行)**:4月17日の理事会で**0.25%の利下げ確実視**
- **イタリア10年債利回り**:3.81%(+0.5bp)、独伊格差は127bpに拡大
全体として、欧州市場は米中貿易摩擦や米国の関税政策に大きく左右され、金や不動産など安全資産が買われる一方、エネルギーや工業などは売られる傾向が強まりました。英国の強いGDP統計は英中銀の利下げ観測を後退させ、金融関連株を支える要因となっています。
14日(月)ゴールドマン
15日(火)ジョンソン&ジョンソン、バンカメ、シティグループ、ユナイテッド航空
16日(水)トラベラーズ
17日(木)ユナイテッドヘルス。アメックス、ラスベガス・サンズ、ネットフリックス
備忘録(2025/4/10)
●海外企業決算
●海外企業
米アマゾン・ドット・コム(AMZN.O), opens new tabは、米国の都市部や地方に約80の物流施設を新設するため、150億ドル規模の倉庫拡張計画を検討していると、ブルームバーグ・ニュースが関係者の話として9日に報じた。
それによると、アマゾンは資本パートナー候補に提案書の提出を求めているという。また、これらの施設は主に配送拠点となる見込みだが、一部にはロボットを備えた大規模なフルフィルメントセンターも含まれるという。
アマゾンによると、これらのプロジェクトは現在検討中で、最終決定に至っていない。アマゾンの広報担当者スティーブ・ケリー氏は「資本パートナーとのこのようなミーティングは日常的なもので、将来的なプロジェクトの可能性を検討する際の通常のデューデリジェンスプロセスの一環だ」と述べた。
ブルームバーグはまた、今月2日のトランプ米大統領による相互関税発表後にアマゾンが中国などアジア諸国で製造された複数の製品の注文をキャンセルしたと報じた。事前の通知がなかったことから業者は関税への対応とみているという。
●日本企業
ファーストリテイリングは10日、今期(2025年8月期)の営業利益予想を従来の5300億円から5450億円に上方修正した。米トランプ大統領が進める上乗せ関税の影響は、在庫で対応できる下期までは限定的とする一方、粗利益率の低下は避けられない見通しだ。
発表資料によると、上方修正は主に24年9月-25年2月期の進捗を反映したためだ。上期の国内ユニクロ事業は、気温に合わせて戦略的に商品とマーケティングを展開し、通年商品や防寒衣料を中心に販売が好調だった。
海外ユニクロ事業も、東南アジア・インド・豪州地区や北米、欧州などで大幅な増収増益となった。同事業は下期も好調に推移するとしている。
2-3%の影響
米国の追加関税の影響について、2日に発表された税率がすべて適用され、下期に商品価格の値上げを行わないと仮定した場合の試算を公表。グループの下期事業利益に対して約2-3%のインパクトがあるとした。
トランプ政権は5日、米国への全輸出国に基本税率10%の関税を賦課する措置を発動した。9日には約60カ国・地域に上乗せ税率を適用し、アパレルの工場が多いベトナムは46%に、バングラデシュは37%に設定された。ただ上乗せ税率は発動から半日足らずで90日間の停止となるなど混乱が続いている。
ファストリは前提が変わる場合は、業績見通しを変更する可能性があるとしている。
決算会見に登壇した柳井正会長は、米国の関税政策について、国際情勢を鑑みると「続かないと思う」と指摘。米国が孤立する要因になるほか、関税合戦の継続は途上国にとって大災害になると述べた。
一方、米国が国ごとに税率を変える手法については、「生産地はいくらでも変更できる」として想定するほどの効果にならないとの考えを示した。仮に関税の影響があったとしても、28年8月期をめどととする売上高5兆円やその先の10兆円の目標は達成可能だと自信を示した。
トランプ関税のファストリ業績への影響については、UBS証券のアナリストの風早隆弘氏が7日付メモで、本格化する26年8月期でも、事業利益に対する関税コストの影響は6%にとどまるとの試算を出している。
同氏は、輸入依存が大きい米国の衣料品市場において、同業他社も同じ状況にあると指摘。むしろ市場シェアが0.5%に満たない「ユニクロ」が、関税コストの影響を織り込んだ後に再評価され、中期的に事業機会が広がるかが注目点になるとする。
中国と欧州
一方、前四半期に続いて第2四半期は中国大陸の販売が振るわなかった。市場全体で消費意欲が低下していることに加え、過去に比べて地域間の気温差が激しい中、各地のニーズに合った商品構成への対応が不十分だったと分析している。同地域のテコ入れは今後の課題になりそうだ。
欧州事業については、下期も好調が持続し、大幅な増収増益を見込んでいる。決算と同時に、欧州事業の中期的な拡大に向けて戦略投資や資金管理を行うため、英国の完全子会社に約650億円の増資を決めたと発表した。
同社が発表した24年12月-2月期(第2四半期)の営業利益は、前年同期比33%増の1467億円と、市場予想の1253億円を大きく上回った。好調な業績を背景に、今期の年間配当予想については、従来の1株当たり450円を480円に修正した。
米鉄鋼大手USスチール(X.N), opens new tabは10日、日本製鉄 (5401.T), opens new tabとともに「重要な投資を確保するため」、トランプ米政権と緊密に連携していると発表した。
トランプ大統領は9日、USスチールについて「日本に渡るのは望んでいない。われわれは日本を愛しているが、USスチールは非常に特別な企業だ。日本や他の国に渡るのは望んでおらず、関係者と協力している」と述べ、日鉄による買収を支持しない考えを示唆した。
●先進国政治動向
米国の貿易相手国・地域を広く対象とする上乗せ関税が米時間9日午前0時すぎに発動されると、トランプ大統領は債券市場を注視した。
米長期金利は急騰し、10年国債利回りは3営業日としては2001年以来の大幅上昇を記録。最悪のシナリオにトランプ氏は直面していた。インフレを嫌気して同氏のホワイトハウス返り咲きを実現させた有権者らは、今や物価と借り入れコスト両方の上昇という二重苦に見舞われた。
「人々は少し不安な気持ちになっていた」とトランプ氏は認めた。
トランプ大統領は関税プログラムを全面的に推進すべきかどうか、数日にわたり検討を重ねていた。ホワイトハウス・ローズガーデンでの2日の発表直前まで、経済担当補佐官らと内容について詰めの協議を行った。
そのトランプ氏が、9日の包括的上乗せ関税発動から14時間以内というタイミングで、歴代大統領では最大級の経済政策転換を公表することになる。中国を除く貿易相手国・地域への上乗せ関税を90日間停止する今回の決定は、2日の発表後に急落していた株価を回復させた。一方で中国への関税率は125%に引き上げた。
ホワイトハウス当局者らは大統領の決定について、入念に調整した政策を巧みに実行したと表現した。上乗せ関税の回避を目指し、米政権に最近接触してきた同盟国や貿易相手国から提案を引き出したと説明した。
しかしトランプ氏は9日午後、上乗せ関税一時停止の決定が金融市場の混乱に大きく左右されたことを認めた。「人々は少し神経質になって、ちょっと怖がっていた」などと語った。
同氏の長年の協力者であるリンゼー・グラム上院議員は8日夜の段階で、関税の影響を巡る懸念を大統領に電話で伝えている。
グラム氏は「あなたは4年間話してきた公正な競争条件を実現しようとしており、それを実行する手段が存在する。あなたがやったことに人々は反応している。彼らと話し合い、どんな取引が可能か確かめてみようではないか」と促したという。
9日朝になると、企業の幹部やトレーダーらが警鐘を鳴らした。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)はFOXビジネスの番組で、「貿易が不公平だったという意見は完全に理にかなっている」とした上で、トランプ政権の関税政策はリセッション(景気後退)を招く可能性が高いとも指摘。「市場は必ずしも正しいとは限らないが、時として正しいことがある」と述べた。
昨年の大統領選に向け、トランプ氏の選挙運動を支援したヘッジファンド運営会社パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントのビル・アックマンCEOも最近数日、貿易相手国・地域とのディール(取引)に道を開くため、上乗せ関税を90日間停止するアイデアを提案していた。
ラトニック商務長官は貿易相手国から「正しい類いの提案」が相次いだことも影響したと指摘する。「電話の量が本当に信じられないほどだった」という。
最終的にトランプ氏の心は動き、上乗せ関税は一時停止に至った。
米国のハセット国家経済会議(NEC)委員長は10日、米CNBCとのインタビューで、関税を巡る貿易相手との交渉はすでにかなり進んでおり、先週時点でほぼ合意に達しているものもあると述べた。
ハセット氏は具体的な国名は明かさず、「非常によく進んだ交渉が数件ある」と述べた。
その後、ハセット氏は記者団に対し、米通商代表部(USTR)から「約15カ国」が「明確な提案をし、私たちはそれを検討した上で、トランプ大統領に報告するのに十分かを判断する」と知らされたと述べた。
トランプ氏が10日に発表した上乗せ関税の90日停止については、停止するかどうかを巡り、議論があったという。ハセット氏は「私たちが現在進めている戦略に真剣に取り組んでいることを市場に示す」ため、複数の交渉が最終段階にあると発表する意見もあったと述べた。報復しない国々に対する課税を一時停止し、中国を除外するという決定は「大統領が選んだ」と語った。
ハセット氏はFOXビジネスとの別のインタビューで、プレッシャーが「極めて」強いため、トランプ氏と中国の習近平国家主席は、いずれ話し合うと予想していると述べた。ただ、米中間で関税について、具体的な協議が行われているとは把握していないとした。
トランプ米大統領が関税政策で中国の孤立化を図った。米国との貿易戦争激化に伴う悪影響を懸念する中国にとって、緊張緩和に向けた即効性のある選択肢が狭まっている。
トランプ氏は9日、米国に報復措置を講じていない日本などの国・地域に対して、上乗せ関税を90日間停止することを承認したと明らかにした。一方、中国に対しては関税率を125%に引き上げた。
このニュースを受け、同日の米株式市場でS&P500種株価指数は2008年以来の大きな上げとなった。一方、10日の中国本土市場では、人民元が対ドルで下落し、07年以来の安値を付けた。
トランプ政権は米国に次ぐ世界2位の経済大国である中国に最大限の圧力をかけつつ、同盟・友好国の協力を得て中国に対抗しようとしていることを示唆している。
米国の関税強化は中国経済に打撃を与えるとみられ、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストらは10日、2025年の中国成長率見通しを4.5%から4%に引き下げた。
ベッセント米財務長官は9日、関税を巡り最終的には「同盟国と合意に達することができるだろう」述べ、「彼らは軍事面では良い同盟国だが、経済面では完璧な同盟国ではない。その後、グループとして中国にアプローチすることができるだろう」と話した。
対応策
中国の政府系経済紙、証券日報は10日、中国人民銀行(中央銀行)が政策金利と市中銀行の準備預金率を引き下げる適切な時期だと主張する論説を1面に掲載。
緩和策は「突然の外部ショックを効果的に和らげ、強力な政策シグナルを発信し、社会の信頼を高め、市場の期待を安定させる」と論じた。
事情に詳しい関係者によれば、中国指導部はトランプ政権の追加関税に対応し、景気刺激策の強化に向けた協議する会合を10日に開催する見通し。
トランプ政権が今回示した戦術は、中国と衝突する道を歩むことを意味する。中国政府はいかなる対立においても「最後まで闘う」と誓っており、自国の貿易相手国との関係を強化してトランプ氏に対抗しようとしている。
同氏は関税について中国からの「連絡を待っている」と述べていたが、中国側は今のところトランプ氏と接触しようとする明確な兆しを見せていない。
貿易を巡る緊張は経済の枠を超えて広がっている。中国は米国への渡航や留学を自国民に控えるよう警告。
北京にある清華大学戦略・安全研究センターの達巍主任は「信頼が失われた」と述べ、「経済発展と経済安全保障のバランスを考える場合、常に安全保障を重視することになる。これは長期的な変化だ」との見方を示した。
中国当局は対話の意思を繰り返し表明しているが、その前提条件となる「相互尊重」の欠如が、意味のある米中協議の実現を難しくしている。
ASEAN
東南アジア諸国連合(ASEAN)は10日、トランプ政権の通商政策に「深い懸念」を示し、米政府との協議を求める意向を示した。
10カ国から成るASEANの経済担当相はオンライン会合後の共同声明で、米国の関税政策は「不確実性を生み出し、ビジネス、特に零細・中小企業、そしてグローバルな貿易の力学に大きな課題をもたらす」と指摘。「貿易に関する懸念に対処するため、米国と率直かつ建設的な対話を行うという共通の意思を表明する」としている。
ベッセント米財務長官は9日、最近の円高ドル安傾向について懸念していないことを示唆した。日本当局が円安に歯止めを掛けるために行った為替介入が、今後予定されている日米間の貿易協議の障害にはならないことが示唆される。
ベッセント氏はFOXビジネスに「日本では円高が進行しているが、これは日本経済の強い成長とインフレ期待上昇の結果だ」と述べた。堅調な経済指標の結果として「日本銀行は金利を引き上げており、全ては自然なことだ」と付け加えた。
ベッセント氏の発言時に円は対ドルで約半年ぶり高値で推移していた。トランプ米大統領の関税一時停止に関するニュースが流れた後、相場は反転した。
ベッセント氏のコメントからは、日銀が昨年3月以来3回の利上げを実施していることについてほぼ満足していることがうかがわれる。
三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、米国が日本の「金融政策に対して口出ししてくる、その伏線のような感じもしなくはない」と述べ「日銀に利上げを促して、円安を改めなさいと婉曲(えんきょく)に言っている」ような印象を受けると語った。
円は今年に入って対ドルでおおむね上昇している。トランプ氏が予想を大幅に上回る税率の関税を世界各国に課すと当初発表した4月初め以降は、さらに円高が進んでいる。
日本が最後に円安是正のために為替介入を行ったのは、1ドル=160円前後となっていた昨年7月だった。10日午後は1ドル=146円前後で推移した。
トランプ大統領は3月に、日本が通貨安政策により不当な利益を得ていると非難。石破茂首相をはじめとする日本の当局者はこれを否定した。
ドナルド・トランプ米大統領がついに譲歩した。
包括的な関税計画の主要部分をトランプ氏が90日間停止するまでに1週間を要した。株式・債券市場の急落に加え、経営者や議員、ロビイスト、外国首脳らによる継続した働きかけを受けてのことだ。
大統領は、関税に対する反応が少し「神経質(yippy)」になってきた――緊張するあまり実力を発揮できない選手のように――とし、自らの直感に頼って方針を転換したと述べた。債券市場が急落し、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)を含むビジネス界のリーダーが景気後退(リセッション)への懸念を表明するのを見聞きしながらの判断だった。この一連の出来事はトランプ氏の典型的な行動パターンだった。まず大胆な行動を取り、その反応を注視し、顧問や同盟国に戸惑いを生じさせた後、方針を転換した。
この異例の方針転換は、相互関税が正式に発効してからわずか数時間後、トランプ氏のソーシャルメディアを通じて発表された。スコット・ベッセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官と共に大統領執務室に座り、投稿をつづった。一方、中国に対しては関税をさらに大幅に引き上げた。
トランプ氏の投稿直後、市場が急騰する中、ベッセント氏はホワイトハウス西棟の入り口の外に立ち、一部関税の停止について、6日に大統領と面会した際に議論したと説明した。「彼と私は長い話をした」とベッセント氏は記者団に述べた。「これは当初から彼の戦略だった」
週末に市場関係者らから懸念の電話が相次いだベッセント氏は、相互関税の一時停止が必要だとトランプ氏を説得しなければならないと強く感じた。ベッセント氏は、多くの取引(ディール)が見込まれるため、これは降伏ではないと主張した。
トランプ大統領とそのチームが9日午後まで停止発表を待った理由について、ベッセント氏は公にはほとんど明かさなかった。トランプ氏は9日の朝に決定したと述べている。ベッセント氏は、75カ国以上が関税緩和の取引を求めて米政府に接触してきており、日本が「列の先頭に立っている」と語った。
方針転換の鍵の一つは、トランプ氏が通商問題のアドバイザーの中でベッセント氏により大きな権限を与えたことだと、協議に詳しい関係者は述べた。また6日の話し合いも重要だった。ベッセント氏は6日にフロリダに向かった後、取引について公に発言する権限を与えられた。これは、財務長官であるベッセント氏が打開策を見いだせると考えていたトランプ氏の側近の多くを勇気づけた。2人が6日にエアフォースワンで首都ワシントンに戻った際、ベッセント氏はトランプ氏に交渉に集中するよう促したと、会話の内容を知る関係者は語った。
トランプ氏はまた、株式市場の動向や、関税発動を巡って企業幹部らが相次いで懸念を表明していたことにも影響を受けた。スージー・ワイルズ大統領首席補佐官に近い人物によると、企業幹部やロビイストらはここ数日間、同補佐官に電話をかけ続けていた。ホワイトハウスの補佐官は、大統領の代わりに首席補佐官が電話を受けるのは通例だと指摘した。
トランプ氏は胸の内を明かさなかった。7日に同氏と話をした人物によると、トランプ氏は「痛み」を受け入れる用意があると側近に語った。自身の通商政策が景気後退を引き起こす可能性があることを私的に認めたが、深刻な不況を引き起こさないようにしたいと述べたという。会話の内容を知る複数の関係者が明らかにした。
事情に詳しい複数の関係者によれば、政権当局者に対する自らの影響力不足にいら立つ銀行幹部はこの数日間、関税を巡りトランプ氏にロビー活動を行うよう共和党議員に働きかけていたという。彼らのメッセージは、トランプ氏が経済を破壊しようとしているというものだった。
トランプ氏はまた、聞き役に回っていた。同氏はここ数日、友人や高官らに市場について尋ね、市場を注視していると示唆していた。ホワイトハウスで9日、米ネット証券大手創設者で投資家のチャールズ・シュワブ氏と昼食を共にしたほか、ミシガン州の自動車業界全体がすでに影響を受けていると警告していた同州のグレッチェン・ウィットマー知事(民主党)と会談した。トランプ氏が決定を下した後に行われたものだが、こうした事例は同氏が幅広く意見を集めていることを物語っている。
トランプ氏は8日夜、急落する債券相場の悪いニュースを知ったと述べた。「昨晩、人々が少し不安になっているのを見た」。同氏は9日、債券市場についてこう語った。
ケーブルテレビのニュースをよく見るトランプ氏は、9日朝にFOXビジネスでダイモン氏のインタビューを目にしたという。インタビューの中でダイモン氏は、景気後退は新たな関税プログラムの「起こりうる結果」だと述べると同時に、貿易を改善する方法として関税をある程度かけるという考え方を擁護した。ダイモン氏は大統領に対して、ベッセント氏に取引をまとめる時間を与えるよう求めた。「私は冷静に見ているが、事態はさらに悪化する可能性がある」とダイモン氏は述べた。
事情に詳しい関係者らによると、ダイモン氏はトランプ氏と何年も実質的に会話を交わしていない。FOXビジネスの番組出演は以前から決まっていたが、ダイモン氏はトランプ氏とその側近らがFOXをよく見ていることを知っており、自分のメッセージは彼らに届くだろうと考えていた、と関係者の一人は言う。
トランプ氏は9日、記者団に対し、ここ数日間「関税の一時停止について考えていた」とし、「おそらく今朝早く、かなり早い時間にまとまった」と語った。発表の文言について弁護士に相談したことはなく、代わりにベッセント氏とラトニック氏の意見を参考にしたという。「私たちは心を込めて書き上げた」とトランプ氏は話した。「傷つける必要のない国を傷つけたくはないし、どの国も交渉を望んでいる」
長年トランプ氏を見てきた人々は、今回の出来事に驚かなかった。
トランプ氏は9日朝、ソーシャルメディアで株式市場を励ますようなコメントを発信した。午前9時33分(米東部時間)に「落ち着いて!すべてうまくいく」と投稿。続けて、午前9時37分に「今が買い時だ!!!DJT」と投稿した。ある政権当局者は、その時点ではまだ何も決まっていないと述べていた。
ベッセント氏ら政権の高官はトランプ氏の動きについて、世界を交渉のテーブルに引きずり出すために最大限のアプローチをとった交渉戦略の一環だと位置づけた。
関税について懸念を抱いていた外部の人たちは、ホワイトハウスの新たなメッセージにすぐに食いついた。
「これは@realDonaldTrumpによる見事な作戦だった」。最近トランプ氏を批判していた著名投資家ビル・アックマン氏はこう述べた。「これぞ『交渉術』だ」
ドナルド・トランプ米大統領が9日、大半の国に対して相互関税の適用を90日間停止すると発表したとき、常識が勝利した。トランプ氏がディールメーカーになると決意したのは、米国と自分自身の政治的立場にとって良いことだ。トランプ氏が多くの機会を手に入れたのは間違いない。同氏は7日、関税引き上げの結果「非常に多くの国が(中略)ディールの交渉にやってくる」と記者団に語ったとき、そうした機会の活用を望んでいるように聞こえた。スコット・ベッセント米財務長官は8日、一部の非常に大きな国々がしっかりした提案を携えて交渉のテーブルに急いで着くだろうと述べ、トランプ氏に同調した。
「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ氏は、世界貿易のバランスを取り戻したいと考えている。彼はなぜ、相互に関税を削減し、非関税障壁を撤廃することによって、それを実現すべきなのだろうか。貿易の増加はとりわけ米国にとって、より良いことだという事実から説明しよう。
米国の国内市場規模は十分ではない。世界人口に占める米国人の割合は4%強だ。米国の潜在的な顧客の96%近くは米国外の居住者だ。国際通貨基金(IMF)によると、米国の国内総生産(GDP)は世界全体の27%という大きな割合を占めるが、それでも世界経済の大半は米国外が占めるということだ。米国が繫栄した国であり続けるためには、世界の他の国々を締め出すわけにはいかない。
商品やサービスを輸出する企業で働く米国人は、国内のサプライヤーと同様、このことを理解している。農業や農業関連産業に従事している人々も同様だ。米国の農家や牧場主は皆、世界市場への販売が生計を立てる上で極めて重要なことを知っている。
米国人は、貿易戦争によって生じるサプライチェーン(供給網)の問題が、自身の職場の売り上げや利益、給与を脅かすことを理解している。彼らはまた、他国が報復関税を導入した場合、米国企業が多額の関税の支払いを避けるために国外工場の開設を迫られる可能性があることも分かっている。
確定拠出年金(401k)に加入している米国人は株式市場の「日々の変動には目を向けない」とベッセント氏が主張するのは勝手だが、危機の際は彼らも心配になる。われわれは今、そのような状況にある。米国民の61%を占める株式保有者が8日までの4営業日で、S&P500種指数が12%安という大幅な下落を経験したのは当然であるかのように、JD・バンス副大統領はそれを「行き過ぎた株高」のせいだと片付けるのは勝手だが、それは当然のことではない。
リアルクリアポリティクスが集計した世論調査の平均によると、貿易戦争への懸念が高まったことを理由に、53%の米国人は大統領の経済への対応を評価しないと回答した。この数字は関税のニュースが話題を独占する期間が長くなるほど悪くなり、トランプ氏の広範な関税によって米国人が購入するすべての物品の価格が上がればさらに悪くなるだろう。それには国内で生産される物品も含まれる。多くの米国のメーカーは一部を海外の部品に頼っており、部品の価格が上がれば、完成品の価格も高くなる。海外のライバル勢が高関税の打撃を受けるのを見た米企業は、その機に乗じて自社商品の価格を引き上げるだろう。
米国民はまた、どのような「経済的緊急事態」によって、高関税が正当化されるのか疑問に思うかもしれない。関税は、ワカモレの材料であるメキシコ産アボカドや、冬にチリ、ペルーやエクアドルから輸入している生鮮果物および野菜、コロンビアから輸入しているコーヒーや、カナダから安く輸入している水力発電による電力などに課される。
人々は比較優位の原則を直感的に理解している。それを最初に主張したのは、18世紀のスコットランド人哲学者アダム・スミスだった。自国で生産するよりも安く外国が生産物を供給できる場合は、自国が得意なことで得たお金を使ってそれを買ったほうがいいと述べている。
今のポピュリスト的な災難を予言する人たちと違い、この自明の理は米国に良い影響をもたらしてきた。なぜなら、米国民は発明とものづくりが非常に得意だからだ。2000年当時の米国の1人当たりGDPは現在のドル換算で3万6330ドル(約530万円)だったが、世界全体の数値が入手可能な直近の年である23年には8万2769ドルに増加した。つまり、米国人1人当たりで4万6439ドル増えたということだ。
これに対し、同じ期間の世界の1人当たりGDPの増加幅は、現在のドル換算で7675ドル、中国の場合は同1万1655ドルにすぎない。バンス副大統領が主張しているように、米企業が「安い労働力」に依存していることによって、米国が世界中の国々からぼったくられているならば、米国の1人当たりGDPの増加幅が世界全体の6倍になるはずがない。
確かに一部の国は、米国から輸入する物品とサービスに高い関税を課したり、米経済に対する非関税障壁を設けたりしている。トランプ氏はこうした国々の対応をまねることなく、これら障害の解消に向けて交渉すべきだ。
中国は特別なケースだ。だが米国にとって、中国の真の経済的脅威は安価なおもちゃや衣料品ではなく、知的財産の窃盗行為だ。開発途上諸国を中国経済圏に引き入れ、これら諸国の市場と資源への米国のアクセスを遮断しようとする中国の試みもまた、真の脅威の一例だ。いずれの脅威に対しても、米国は過去8年間、ほとんど何の対応も取ってこなかった。米国の高関税と好戦的な姿勢は、知的財産の盗用を阻止する上で何の役にも立たず、開発途上諸国を中国の影響下に追いやる要因になるだけだ。
支持率の低下、消費者信頼感の低下、株価の下落、リセッション(景気後退)突入懸念の高まりといった事象はすべて、トランプ氏の大統領就任から100日を経ずに起きている。同氏が関税を使ったディールへとかじを切ることで方向転換を図ったのは賢明だった。そうしていなかったら、世界的な経済危機が起き、米中間選挙で共和党が大敗する事態を招くことになっていたかもしれない。
ドナルド・トランプ米大統領が数十カ国・地域を対象とする関税を一時的に停止する一方、対中関税は引き上げたことで、中国との対立が重大な局面を迎えた。世界的な混乱が数週間にわたって続く中、トランプ氏は同国に圧力をかけ、メンツを保てるような譲歩を引き出そうとしている。
だが今のところ、中国の習近平国家主席が圧力に屈服する兆しは見られない。
トランプ氏は9日、対中関税が125%に引き上げられるとソーシャルメディアに投稿。「米国や他国を食い物にする時代がもはや持続不可能であり、容認されないことに関して、近々中国が気付くことを願う」とした。
中国政府は米国が関税を引き上げるたびに対抗措置を取り、米国製品の関税を引き上げて米企業を標的にしている。
米中の衝突は、米国の消費者にとってよりコスト負担増を意味し、世界の2大経済大国は即座に明確な出口が見えない異常な対立に陥ることになる。
トランプ氏が相互関税プログラムの大部分を一時停止した決定は、経済に対する同氏の懸念の高まりを浮き彫りにしている。中国に対しては態度を強めることで、関税政策から完全に撤退することを避けた形になったが、最後まで標的として残った同国を相手に後退することはさらに困難になったとアナリストらは指摘する。
アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のシニアフェロー、デレク・シザーズ氏は、「中国はこの点を理解しており、交渉が役立たないのではないかとの疑念がますます強まっている。トランプ氏は中国に対しては、勝利を収めなければならない」と述べた。
一方で習氏にとって、このような圧力の下で米国に屈服することは論外だと中国政府高官らと協議する複数の関係者は述べている。同氏は事態をエスカレートさせるトランプ氏に対し、強硬な姿勢で対応し続けるとみられ、対立が長期化する可能性は高い。
米国務省の元高官で、現在はアジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)に所属するダニエル・ラッセル氏は、「中国が戦略を変更する可能性は低い。トランプ氏が強く出すぎるまで断固とした姿勢を維持し、圧力を吸収するだろう。中国政府はトランプ氏に関し、譲歩を弱さの表れとみなしていると考えており、譲歩すればさらなる圧力を招くだけだとの考えだ」とした。
ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)中国研究所のスティーブ・ツァン所長は「悪循環に陥っている」と表現し、「一度始まってしまうと、非常に強い意志を持つ2人の個人間の争いになる」と述べた。
トランプ氏と習氏の間では、トランプ氏の方が9日にはより融和的な発言を行い、習氏が友人であり「とても賢明な人物だ」と述べた。また習氏と対面や電話で会談する予定はあるか問われた際、トランプ氏は「もちろんそうするだろう」と回答している。
だがトランプ氏の就任以降、2人の会談を設定する試みは初期段階では前向きな兆候が見られたものの、現在は停滞している。トランプ氏は中国と交渉する際は、強い立場から挑まなければならないと考えていると側近らは話す。
米政府はアジアを含む他国とより有利な貿易条件を結ぶことで、中国を孤立させることを狙う可能性もあり、トランプ氏が数十カ国・地域に対する高関税を一時停止した決定がその動きを後押しする可能性がある。
オバマ政権下で国家安全保障政策にかかわり、現在はジョージタウン大学の教授であるエバン・メデイロス氏は、「これは中国にとって悪いシナリオだ。他の全ての国が米国と取引を結び、米国との貿易を続ける」とし、「中国は孤立して、さらなる圧力に直面する」と述べた。
この数日間、アメリカのドナルド・トランプ大統領も、ホワイトハウスも、数十カ国を対象とする徹底的な「相互」関税を課すことに全力を挙げていると主張してきた。一部の関税措置の90日間停止を検討しているとの報道が8日に出て、株式市場が一時急騰してもなお、トランプ氏らはこの報道を嘲笑してみせた。
ところが今、いくつかの顕著な例外を除いて、高率関税の一時停止は現実のものとなっている。世界経済秩序の再編成は保留となり、トランプ氏が約束した米製造業の黄金時代の到来には「待った」がかかった。
個々の国や地域との交渉に入る前に、派手な関税を仕掛け、一時停止ボタンを押す――。これは当初からの計画だったのだと、ホワイトハウスは主張している。
トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で9日、「相互関税」に報復措置を行わなかった国々を対象に、引き上げ措置の一部を90日間停止し、「10%の相互関税」の適用を認めると発表した。
発表から間もなく、スコット・ベッセント米財務長官は記者団に対し、「75カ国以上から連絡があった。今日以降もさらに増えるだろう」と述べた。
ホワイトハウスのこうした語り口には、当然のことながら驚きはない。そして、今回のトランプ氏の発表前に、投資家がパニックに陥り、証券市場が暴落し、共和党からの批判と世論の反対が強まる一方だったことは、見過ごすことはできない。
では、関税措置の一時停止は、予想外の抵抗に直面した中での戦略的後退なのだろうか。それとも、トランプ氏の「取引の技術」の新たな一例なのだろうか。
軟化を側近らは称賛
トランプ氏の側近たち、つまりトランプ氏は決して引き下がらないと言っていた人たちの多くは、すぐさま大統領の動きを称賛した。
ピーター・ナヴァロ貿易顧問は、関税をめぐるトランプ氏の状況は「まさに、あるべきかたちで展開した」と述べた。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、「トランプ大統領が何をしているのか、あなたたちは明らかに見えていなかった」と、集まった記者団に語った。「全世界がアメリカ合衆国を求めている」。
トランプ氏がトゥルース・ソーシャルで発表した「相互関税」の停止は、詳細が明らかではなかった。そのため、さまざまな疑問が浮上した。高関税の発動の停止は、欧州連合(EU)にも適用されるのか? すでに一部製品に25%の関税がかかっているため、基本関税の10%を回避できていたメキシコとカナダはどうなるのか? そして、特定の分野をターゲットにした関税は影響を受けるのか?
最終的に、ホワイトハウスはこれらの疑問について、ある程度明確な答えを示した。しかし、それまでの数時間、アメリカの貿易相手はトランプ氏の投稿を精査したり、記者の質問に対する米政府の回答から詳細を探るほかなかった。
トランプ氏は9日午後、市場が「かなり落ち込み」、「人々を少しばかり不安な気持ちにさせている」ことを認めた。この発言は、トランプ氏がこの1週間みせてきた強気な態度をいささか覆すものであり、関税措置の方針を転換した本当の理由を示唆している。
トランプ氏はこれより先に、トゥルース・ソーシャルで、「冷静になれ!」と人々に呼びかけ、「すべてはうまくいく」と誓っていた。7日にも、トランプ氏は自分の取り組みに耐えられない「弱くて愚かな人々」を厳しく非難していた。こうした人々をトランプ氏は「パニカン」(panicans)と呼んでいる。
しかし結局、突然の方向転換をしたのはトランプ氏の方だった。
それでも、関税の発表はしなければならないものであり、経済的混乱は米経済を悪化させてきた病気を映し出すものなのだと、トランプ氏は主張した。
一方で野党・民主党は、それほど楽観的ではなかった。チャック・シューマー上院少数党院内総務は、トランプ氏の「混乱による統治」を非難した。
「(トランプ氏は)動揺している。後退している。これは良いことだ」と、シューマー氏は述べた。
市場は持ち直したが
結局のところ、トランプ氏の決断の背後にある思考プロセスは、あまり重要ではないのかもしれない。
アメリカは今、報復貿易の砲火を浴びせていた国々に愛想良く、あるいは少なくとも以前よりは感じ良く接している。これが現実だ。しかし、トランプ氏は依然として10%の基本関税を課したままだ。これは、ほんの数週間前なら大きなニュースになっていたであろうものだ。
とはいえ、「相互関税」の90日間の停止は、株式市場が持ち直すには十分な後退だ。トランプ氏は同時に、中国との貿易戦争へと傾きつつある。中国がアメリカの輸入品への関税を84%に引き上げると発表したことを受け、トランプ氏は中国からの輸入品に対する関税を125%に引き上げた。
この動きは、世界経済に影響を及ぼすだろう。だが、ジョー・バイデン前政権を含む近年の米政権がとってきた、中国の野心を抑制しようとする外交政策に沿ったものではある。
この1週間のトランプ氏の行動は、同盟関係にある国々を慌てさせ、確立された世界秩序を脅かした。いま大きな疑問となっているのは、そうした行動が、アメリカの対中国戦略の遂行を難しくするのかということだ。
そして、90日間の関税の停止期間が終わるころには、この1週間に起きたような経済をめぐる劇的な出来事や不確実性が、再び始まるかもしれない。
ドナルド・トランプ米大統領は水曜日、関税政策の一部を撤回し、貿易相手国と金融市場に猶予を与えた。
4月2日に発表された最新の国別関税率は、対象となるほとんどの国と地域との交渉のための時間を稼ぐため、90日間10%に引き下げられた。
水曜日にウォール街で歴史的な上昇が見られ、木曜日にはアジア市場と欧州市場にも波及したことで、市場は安堵のため息をついた。しかし、アナリストらは、経済と市場へのダメージは既に大きく、回復は困難かもしれないと指摘している。
「昨日の朝に我々が指摘した極端な市場状況の後、トランプ・プットの証拠が再び現れたことで当然の安心感があったが、政策の予測不可能性に関してはまだ謎が残る」とドイツ銀行リサーチのエコノミストとストラテジストのグループは木曜日のメモで述べた。
残りの10%の関税は、過去数十年間で最大の関税引き上げとなり、米国が交渉でどのような貿易協定を受け入れるかの兆候はほとんどなく、不確実性が続くと付け加えた。
一方、モーニングスターの米国エコノミスト、プレストン・コールドウェル氏は、市場がトランプ大統領の発表に過剰反応したと示唆し、大統領の関税政策がさらに転換されない限り、経済に悪影響が出ると警告した。
コールドウェル氏は木曜日のメモで、「トランプ大統領が追加関税の引き下げを発表し、将来的な報復関税の引き上げを確実に控えない限り、市場は今日、過度に楽観的に反応している」と述べた。
「現在の平均関税率は依然として約20%で、中国に対する関税率は約125%と事実上の禁輸措置となっている」と述べ、経済予測には若干の修正があるだろうとしたものの、依然として「インフレの大幅な上昇」と経済減速を予想していると付け加えた。
株価、経済、ドル
不確実性によって引き起こされたダメージと、頻繁な政策変更によって生じた目まぐるしい変化の感覚は、米国経済全体や世界秩序における米国の立場から、株式市場やドルまで、あらゆるものに影響を及ぼすとアナリストらは指摘した。
ドイツ銀行リサーチのエコノミストとストラテジストはメモの中で、S&P500が水曜日の取引で9%以上上昇したにもかかわらず、「それでもS&P500は4月2日の相互関税発表前の水準を3.77%下回った」と指摘した。
S&P 500先物はロンドン時間午前9時44分時点で2.1%下落した。
特定国向け関税導入後に売り込まれた米ドルも、水曜日のトランプ大統領の発表後に反発した。その後、再び下落している。ドル指数
直近では102.41で、今年1月に記録した110前後の高値を大幅に下回った。
INGのグローバル市場責任者、クリス・ターナー氏はメモの中で、ドル指数は「102.00~103.50の変動の激しいレンジで取引される」と予想していると述べた。
「相互関税ショックが米国の消費者と企業の分野のハードデータにいくらかのダメージを与えたように見える場合、今後数週間で再び低下する可能性がある」と彼は付け加えた。
ドイツ銀行の外為調査部門グローバルヘッド、ジョージ・サラベロス氏は水曜日のメモで、トランプ大統領の行動は米政権が企業や市場からの圧力に少なくともある程度は反応していることを示唆しているものの、より広範なマクロ経済への影響もすでに現れていると述べた。
「たとえ関税が永久に停止されたとしても、政策の予測不可能性が永続的に続くことで経済にダメージが及んでいる」と彼は述べた。
「より構造的な観点から言えば、ここ数週間の出来事は、今後の貿易交渉において、そして実のところ今後何年にもわたって、世界の経済パートナーの間で反響を呼ぶことになるでしょう。あらゆる面で米国からの戦略的独立性を高めたいという願望は、今後も続くでしょう。」
「私たちはこの状況から立ち直れる」
一方、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのポートフォリオ・ソリューション・グループの最高投資責任者ジム・キャロン氏などは、市場は最終的には回復すると考えている。
「この状況から立ち直れるはずだ」と、彼は木曜日にCNBCの「スクワーク・ボックス・ヨーロッパ」で語った。「少し時間と信頼回復が必要になるだろう」
キャロン氏は、トランプ大統領が徐々に関税政策の一部について「より冷静で、より慎重なアプローチ」を取り、 交渉を通じて「勝利」を収めるだろうと予想していると述べた。市場のボラティリティは、ホワイトハウスが計画とその意味について十分な情報発信をしなかったことが原因だったと同氏は示唆した。
「つまり、今回のダメージは、本質的には信頼感への衝撃であり、人々は特定の資産の購入に大幅な値引きを要求するようになりました。それは債券でもあり、株式でもあり、まさに今私たちが直面している状況です」とキャロン氏は強調した。「しかし、時間の経過とともに ― 過去にも市場でショックを経験してきましたが ― こうした資産は混み合い、自然治癒していく性質があるのです。」
●先進国中銀、金融当局
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、ますます厄介な課題に直面している。
エコノミストや企業経営者、投資家は、ドナルド・トランプ大統領が突如発表した大規模な関税引き上げが不確実性をもたらし、それによって雇用や支出が弱まり、景気後退(リセッション)に近づくと予想している。そのため、景気鈍化を和らげるための利下げが必要ということになる。
一方、関税引き上げの規模が大きいため、多くの輸入品(国内メーカーが使用する原材料含む)の価格が大幅に上昇する可能性が高い。そのため、FRB高官らはインフレを警戒し、経済や労働市場へのリスクが高まる中でも政策金利の据え置きを主張する可能性がある。
元FRB理事のローレンス・マイヤー氏は「FRBは板挟み状態」と指摘する。
米議会はFRBに対し、インフレ率を低位で安定させつつ、健全な労働市場を維持するよう命じている。大統領の政策によって、FRBの「二大使命」の間にこれほど深刻な対立関係が生じかねない状況に陥ったのは、少なくとも40年ぶりのことだ。
「この政権はFRBにとって最悪のショックを引き起こしており、今のところFRBにできることは何もない」。FRBの元エコノミストで、現在はスイスのコンサルティング会社アンダーライイング・インフレーションを率いるリカルド・トレッツィ氏はそう語る。
パウエル氏は先週、FRBとして利下げを「急ぐ必要はない」と述べ、5月6~7日に開催される次回FOMC(連邦公開市場委員会)では利下げが検討されないことを示唆した。「月日がたつにつれて(中略)より多くのことが分かるだろう。いつ分かるかを正確に言うのは難しいが、その学習プロセスは確実に進行中だ」
今のところ投資家はFRBが年内に利下げすると見込んでいる。関税が経済成長に悪影響を及ぼし、企業の価格決定力が著しく弱まれば、当初急上昇したインフレ率が鈍化するとみられるためだ。
だがFRBとしては、そうしたインフレの減速を先取りして利下げするのは難しいだろう。それが景気の弱さを打ち消すことに成功すれば、インフレの上昇がより長期化する恐れがあるからだ。FRB高官らは、労働市場が本格的に悪化するのを確認するまでは、過去のケースよりも利下げに慎重になる可能性があると示唆している。
BNYインベストメンツのチーフエコノミスト、ビンセント・ラインハート氏は「空中ブランコの演技者なら、パートナーが踏み台を離れたことを確認するまで自分の踏み台を離れない」と語る。
経済の減速と失業率の上昇を確認してから利下げするのは政治的に難しい。トランプ氏がすでにパウエル氏に利下げを求めている状況ではなおさらだ。(利下げを)待たなければならない理由を「FRBが国民に説明するのは非常に難しい」と元FRB理事のマイヤー氏は言う。
FRB高官らは、消費者や投資家、企業が今後数年間のインフレ動向をどう予想しているかに特に注意を払っている。そうした期待は自己実現的になり得ると考えているからだ。
FRBの問題はある意味、サッカーのゴールキーパーの問題と似ている。キーパーは相手選手がペナルティーキックを蹴る際に、左に飛ぶか(インフレに対処するか)、右に飛ぶか(成長鈍化に対処するか)を決めなければならない。
「運が良ければ、FRBは二大使命のうち一つを選び、結果的に正しい選択をしたことになるかもしれない」とトレッツィ氏は述べた。
中小企業の買収・管理を手掛けるコンパス・ダイバーシファイド・ホールディングスのエライアス・セイボー最高経営責任者(CEO)は、関税による不確実性と顧客に転嫁せざるを得ないであろう価格上昇によって販売が急減する可能性に備えるよう、傘下企業に指示している。
「(傘下企業の)CEOたちにコスト削減や採用凍結を指示している。これは関税の影響とは別に、経済にとって悪い兆候だ」とセイボー氏は言う。
ここ数年、低所得層の消費はインフレによって圧迫されてきたが、高所得層は株価高騰による資産効果もあって気前良くお金を使い続けている。景気減速が続けば、こうした層も支出を控える可能性がある。
さらに懸念を高めているのは、トランプ政権の通商政策目標に対して困惑が広がっていることだ。最終的な目標は、関税を撤廃または引き下げるディール(取引)をまとめることなのか(これは米国への生産回帰のインセンティブを減らし得る)、それとも米国への生産回帰に向けて高関税を維持することなのかがはっきりしない。
一方、関税の一部が残り、米国への生産回帰に成功すれば、インフレはより持続的なものになるだろう。
新型コロナウイルス禍は、一時的な物価上昇でさえ、予想よりもはるかに長く続く可能性があることを示した。BNYインベストメンツのラインハート氏によると、その教訓の一つは、物価ショック後のサービス価格の上方調整は時間がかかるということだ。例えば、2021年と22年の自動車価格の大幅な上昇は、その後の自動車保険料の値上げにつながった。
さらに、企業は関税対象品目の価格上昇コストを幅広い商品・サービスに転嫁する可能性が高く、これがFRB高官らの判断をさらに難しくしている。
「FRBは当然、景気後退リスクを認識しているが、この時点でのインフレリスクは無視できない。正直なところ、非常に大きなリスクだ」とトレッツィ氏は述べた。
FRB高官らは最後の課題に直面している。それは、いま利下げしても、企業を悩ませている不確実性の主因は解決できないということだ。FRBは昨年9~12月の時点では、過度な金融引き締めが労働市場を弱める可能性があるとの懸念に対処するため、計1ポイント(100ベーシスポイント)の利下げを行っていた。
「この不確実性を背景に、現時点で50~100ベーシスポイントの利下げを行っても、状況はそれほど変わらない」とセイボー氏は述べた。
金融政策はまた、トランプ氏の貿易戦争によって浮き彫りになった、より広範な懸念(貿易戦争がいとも簡単に資本戦争に発展し、最終的には米国が経済的優位性を失うという懸念など)に対処する上でも無力かもしれない。
9日の米国債市場では10年債利回りが4.410%となり、今週の上げ幅が約0.4ポイントに拡大した。これは世界的な景気減速リスクが高まった際によく見られる「安全逃避」とは逆の動きだ。米国債は長年、究極の安全資産と見なされてきた。
アナリストらは米国債が売り込まれた理由として、関税に伴うインフレによってFRBが大幅利下げに踏み切れなくなるとの懸念や、米国資産へのエクスポージャーからの世界的な撤退などを挙げている。長期債と株式の価格急落は「非常に懸念される」とトレッツィ氏は述べた。
また、利下げは通常、住宅や自動車など金利に敏感な経済セクターの需要を刺激することで機能する。しかし、これらのセクターも関税の影響を大きく受ける可能性があり、数回の利下げでは関税による景気減速を和らげる効果がほとんどないかもしれない。
FRBのシニアエコノミストを務めたラインハート氏は、FRBの景気刺激策は金融市場経由で金利に敏感な経済セクターに作用するが、「それらの市場が混乱していると作用しづらい」と述べた。「これは期待を変えられると考える限りにおいて有効だが、期待は0.25ポイントの利下げや利上げで変えられるものではない」
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
トランプ米大統領による上乗せ関税の90日間停止措置に伴い、9日の株式相場は急伸した。ただ米企業は、貿易戦争がもたらした混乱を受けリセッション(景気後退)に既に備え始めている。
デルタ航空やウォルマートなどの経営首脳は、需要を圧迫して先行きの予測を困難にする悲観ムードの広がりに警戒感を示している。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は9日、景気悪化に伴い債務不履行(デフォルト)が増えそうだと指摘。また自動車メーカーは、関税の影響を恐れる消費者に対応し、値引きを提供したり価格据え置きを打ち出したりしている。
今の不安感を象徴するのが、デルタのエド・バスティアンCEOの発言だ。
米国がリセッションに向かっているとは考えていないと先月言及したことを巡り、同氏はCNBCのインタビューで、状況が変わったと認め「われわれはリセッションに突入するかのような行動を取っている」と語った。
トランプ氏は、経済成長促進や米経済強化を掲げ大統領に就任した。だが現実には、市場やビジネスに混乱を巻き起こしている。
同氏は9日、米国に報復措置を講じていない日本などの国・地域に対して、高水準の上乗せ関税を90日間停止することを承認したと明らかにした。一方、中国に対しては関税率を125%に引き上げた。世界56カ国と欧州連合(EU)に対する高水準の関税が発動された約13時間後というタイミングでの方針転換となった。
どの国が停止の対象となるかすぐには明らかにならなかったが、トランプ氏の発表を受け株式相場は急伸した。
ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは、今回の発表を受け米経済のリセッション(景気後退)予測を撤回している。
だがオレゴン州のアパレル企業、パロマ・クロージングの共同創業者、マイク・ローチ氏は、「リセッションは既に始まっている」と指摘。売上高は前年比11%減となり、3種類の値引きを同時に実施し、夏の採用削減も検討しているという。
上乗せ関税の一時停止について「今日に関しては良いことだ。相場は上がるだろう」とコメントする一方、「現実として、われわれは依然として非常に不確実な環境に置かれている」と語っている。
米経済にはトランプ政権の関税圧力で「構造的変化」が生じており、市場にとって極端なシナリオが増えるとグッゲンハイム・インベストメンツの最高投資責任者(CIO)アン・ウォルシュ氏はみている。
同氏は9日の電話インタビューで、「テールリスクが際立つようになった」と指摘。テールリスクとは発生確率は低いものの、いったん発生すれば甚大な影響が及ぶリスクだ。
「関税はインフレとリセッション(景気後退)のどちらを招くだろうか。両方だろうとみる人もいる。しかし、私はインフレよりもリセッションにつながる可能性がはるかに高いと思う」と述べた。
トランプ大統領は9日、米国に報復措置を講じていない国・地域に対する上乗せ関税を90日間停止すると発表。中国に対する関税率は125%に引き上げた。これを受け、4営業日続落していたS&P500種株価指数は急反発。投資適格級債や高利回り債が売り浴びせに遭っていた信用市場も回復した。
しかし、懸念はなお残る。高格付け債の知覚リスクを示す指数は、地銀危機の余波で市場のストレスが高まった2023年に記録した高水準付近にとどまっている。
運用資産3300億ドル(約48兆4000億円)余りのグッゲンハイムは、25年の米経済リセッション入りリスクを35%と予測している。
ウォルシュ氏は、ささいな出来事でこの確率が50%に上がり得ると分析。トランプ氏による製造業回帰の取り組みは、レーガン政権以来の全面的な米市場再編成を示唆しているとの見方を示した。
また、グッゲンハイムは様子をうかがうため、「アンダーウエート」としている一部分野の証券を購入し始めているが、より大きなチャンスを狙っているとし、「ファンダメンタルズの裏付けがない大幅な社債スプレッド拡大や、テクニカル要因による大量売りが見られた場合、われわれは大きな取引に出るだろう」と語った。
ウォルシュ氏は今年の米利下げ回数を2回ないし3回と予想。また米10年国債利回りは3%台半ばから4%台後半のレンジにとどまるとみているものの、「それを変え得るのは深刻なリセッションだ。われわれの基本シナリオにはないが起こる可能性がある」と話した。
米金融当局者は、労働市場がさらに軟化した場合でも、トランプ大統領の関税による持続的なインフレ高進リスクを最小限に抑えるため、政策金利を据え置く構えだ。
幾人かの当局者は公の発言やインタビューで、関税が招く景気減速への保険として利下げする可能性を排除する明確なシグナルを発している。
むしろ、インフレと米国民の物価上昇期待を抑制する方針を強調しており、失業率が大幅上昇しない限り、静観する姿勢を見せている。
ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は9日午前に公表された寄稿文で「長期のインフレ期待の抑制が極めて重要であり、関税が近い将来にインフレを押し上げる可能性が高いことを踏まえると、たとえ経済が弱含み、失業が増加する状況になったとしても、利下げのハードルは高くなる」と指摘。「関税により、フェデラルファンド(FF)金利を上下いずれかに動かすハードルは高くなった」とコメントした。
連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4日、トランプ氏の目まぐるしく変化する通商政策の影響を評価する中で、当局が政策行動を急ぐ必要はないとの見解を示した。
トランプ氏は2日の関税措置発表以降に金融市場が動揺したのを受け、9日午後に多くの貿易相手国・地域対する上乗せ関税の適用を90日間停止した。
クリーブランド連銀のハマック総裁は同日午後のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、自身も辛抱強くあることに専念していると述べた。
「今後の動向を見極める必要があるというのは当局にとっては実に積極的な選択だ」と述べ、「間違った方向に急ぐよりも、正しい方向に進むために待つ方がはるかに望ましい」と語った。
セントルイス連銀のムサレム総裁とクーグラーFRB理事は、インフレ重視の必要性を強調している。当局者はそれと同時に労働市場のモニターを続けていくと述べており、労働市場は今のところ堅調だと受け止めている。
トランプ氏の方針転換
トランプ氏の最新の関税計画では、大半の国は10%の基本税率が適用され恒久的なディール(取り決め)を交渉する余地が与えられた。このニュースを受け米株式相場は急伸した。
しかし、トランプ氏は中国製品に対しては関税率を125%に引き上げて高い障壁を維持。輸入品に対する関税の全体的影響はほとんど変わらないようにした。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の推計では、中国に対する関税を125%に引き上げ、それ以外の国々に対する関税を10%に引き下げることで、米国の平均関税率は27%から24%に低下するという。
BEのラナ・サジェディ氏らは、「われわれの理解が正しければ、今回の発表により各国の関税率は大幅に変化することになるが、米国の平均関税率はわずかに低下するにとどまり、依然として歴史的高水準にとどまる」と分析した。
米金融当局の様子見姿勢には複数の要因があり、関税に関連したインフレ加速が長引く可能性に備えたい考えだ。パウエル議長は関税がインフレ率を一時的に上昇させる公算が大きいとしながらも、影響はより持続的なものとなる恐れがあると述べている。
調査会社LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏は、「パウエル氏は持続的な物価安定という目標に集中しているのだろう。実際にはリセッション(景気後退)入りしていないのに、安全網を敷くつもりはもちろんない」と指摘した。
タン氏は年内の米利下げはないと予想し、「中長期のインフレ期待はかなり安定しているが、問題は価格ショックが起きたときに、どれだけ長く安定を保つことができるかという点だ」と付け加えた。
米金融業界の首脳らは、トランプ米大統領が仕掛けた関税戦争への報復として、米国の投資銀行が欧州から締め出されることを覚悟している。さらには反米感情の背景とした顧客のボイコットや、最悪の場合は厳しい規制の対象になるとも懸念している。
10人弱の銀行幹部やアドバイザーはロイターに対し、欧州連合(EU)の政府や企業が自国の金融機関との取引を拡大し、市場シェアが急激に低下する可能性に備えていると明らかにした。
2人の関係者によると、2つの銀行業界団体は欧州が地域での米銀の活動を制限するためにどのような行動を取る可能性があるかについて議論しており、少なくとも2つの大手銀行も内部で協議している。
EUが行使できる武器の1つとなるのが、経済的威圧をかける国に対して発動できる2021年策定の「反威圧措置」(ACI)だ。EUが外国の金融サービス企業に対して制限を加え、アクセスを制限することを可能にする。
一方、フランスのマクロン大統領は、トランプ氏が関税の大幅な引き上げを公表したのを受け、欧州企業に対して米国で計画している投資を中止するように呼びかけた。
JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は今月2日のFOXビジネスの番組で、顧客からの反米感情が見られるかとの質問に「当社は既にいくつかの債券取引を失った。彼らは単に、米銀行と取引するよりも地元の銀行と取引したほうがいいとだけ言っている」と答えた。
EU欧州委員会は9日、トランプ米政権の鉄鋼・アルミニウム関税に対する対抗措置の第1弾を15日に発動すると表明し、中国やカナダに続いて報復に動いた。
これらの発表を受けてトランプ氏は、中国からの輸入品に対する関税をさらに引き上げる一方、多くの国に課すと表明した相互関税を一時停止すると発表。
EUのセフチョビッチ欧州委員(通商担当)は7日、あらゆる報復措置を検討する用意があるとして「単一市場を守るためにあらゆる手段を使う用意がある」と訴えた。
一方、欧州中央銀行(ECB)の当局者らは、ユーロ圏の経済が安定し、十分な資金が確保されるように全力を挙げていると強調した。
米銀を欧州の金融システムから切り離すのは容易なことではない。米銀の欧州での融資や預金に占める割合はごくわずかだが、デリバティブ(金融派生商品)といった証券取引の一部では支配的な地位にある。
2008年の金融危機後、米銀は欧州企業に多額の投資をしており、英国のEU離脱(ブレグジット)後にさらに増やした。ブレグジットの際、EUは米銀に対して追加資本と現地従業員の増加によるEUでの拠点強化を要求し、数千人の雇用創出につながった。
米銀は収益の地域別内訳を公表していない一方で、JPモルガンの米国外での国別収益ではドイツが首位、英国が2位、フランスが4位となっている。
LSEGのデータによると、JPモルガンが25年第1・四半期に欧州で得た投資銀行業務手数料は約5億1400万ドル(約771億円)と、全体の8.2%を占めた。
この問題に詳しい別の情報筋は、欧州は複雑なブレグジットを乗り越えた経験を生かすことができると指摘する。その上で米金融企業への規制は部分的になる可能性があるとの見方を示す。
<失われつつある優位性>
ある金融機関幹部は「米銀の優位性は失われつつある」と話す。
別の情報筋は、顧客は証券取引で米銀から欧州の取引先に乗り換えるべきかどうか議論しているとし、これまではこのような議論はなかったと解説した。
EUに拠点を置くアドバイザーの一部は、取引で地元の銀行を採用することが既に増えていると指摘する。
金融が貿易戦争の武器に利用されかねないという米金融業界の懸念は、欧州の同盟相手も共有している。彼らはクレジットカードへのアクセスや、銀行へのドル供給が制限されることを懸念している。
ロイターは3月、欧州の一部の政府関係者が、市場にショックが起きた時に米連邦準備理事会(FRB)がドル資金を供給してくれるのかどうかに疑問を抱いていると報じた。
1人の情報筋は「欧州にとっては、その国の主要企業を好むのかどうかという話になる」と言及した。欧州の投資銀行は米銀に比べてバランスシートが小さく、米銀ほど懐が深くない。
ある金融機関幹部は「無差別な反米主義が見られるが、それは長くは続かない。このような感情の高まりは瞬間的で、企業は合理的な経済的利益に立ち戻るようになるだろう」との見方を示した。
米経済研究所の政治エコノミスト、サミュエル・グレッグ氏は英国やEUで事業展開している米金融機関に規制を設けた場合、欧州にとって自傷行為になると警告する。その上で「米国の関税引き上げが欧州経済にもたらすであろう損害に拍車をかけるだろう」との見解を示した。
●中東情勢
●エマージング
同盟国には親切にすべきだと、米国の駐中国大使を退任したニコラス・バーンズ氏は言っていた。米国が世界の覇権争いで中国に勝つにはどうすべきかという質問に対する答えだ。アジアで米国が影響力を維持したいのであれば、トランプ大統領はこの助言に従うべきだ。
アジアの国々は今のところ「トランプ関税」を回避するための交渉に臨もうと躍起だが、長期的にはアジア各国同士で協力関係を強化する方向に動くだろう。
また、新たな関税で罰したりしない中国に再び接近することのメリットも検討するだろう。ただし、インド太平洋地域における拡張主義的な言動によって中国の魅力は損なわれている。米政府は、中国の行動に対してこの地域が抱く不安をうまく捉える機会を逃している。
トランプ氏は貿易相手国が米国に与えたと認識しているダメージを是正しようとしており、中国のようなライバル国を追い詰めることは理にかなっている。しかし、その他の幾つかの決定は不可解だ。
トランプ関税はほとんどの国がその影響を免れることはできない。オーストラリアやインド、日本、韓国といった同盟国でさえ例外ではない。
そして、インドネシアや台湾、ベトナム、シンガポール、フィリピンなど米国がこの地域における中国の台頭に対抗する上で、重要な役割を担ってきた国・地域を関税の標的とすることは逆効果だ。
以前のコラムで指摘したように米国への信頼が一夜にして損なわれることはないが、トランプ関税の影響は今後数十年にわたり続くことになるだろう。
どの国と貿易を行うか、どの国と安全保障同盟を結ぶか、どの国から武器を購入するか、どの国に開発援助を求めるか、どの国と情報を共有するかといった決定に、その影響が表れることになる。
米国は、こうした結び付きから最大の恩恵を受けてきた。米海軍大学校のサリー・ペイン教授によれば、米国は海洋大国として開かれた国際貿易と海上交通路を維持することで自国経済を発展させた。そしてそのことが世界の安定に貢献してきたという。
米国とその同盟国は豊かになり、同時に全体としてより安全になった。このことが、インド太平洋地域における米国の戦略的優位性を維持するのに寄与してきた。これは、最近アジアを訪れたヘグセス国防長官も認めている。
米国は今、この優位性を失うリスクに直面している。
トランプ関税が発表される前に実施されたシンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所が東南アジアの2000人余りを対象とした最近の調査が、この問題を浮き彫りにしている。
同調査では、米国と中国のどちらかを選ばざるを得ない場合、米国を選ぶとの回答が多かった。これは昨年とは逆の結果だ。主に南シナ海などにおける中国の軍事力誇示に対する懸念が背景だ。
だが、もし今、同じ質問を投げかければ、かなり異なる回答になる公算が大きい。アジア各国はすでに選択肢を検討している。10カ国から成る東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済担当相は今週、クアラルンプールでの会合で協調的な対応策を探る予定だ。
マレーシアやシンガポールなどはグローバル化から大きな恩恵を受けており、米国の関税賦課による悪影響についてすでに懸念を表明している。
シンガポールのウォン首相は、「1930年代」のような、より危険な世界になる可能性を警告。「貿易戦争が武力衝突にエスカレートし、最終的に第2次世界大戦へとつながった」時代に入り得るとの懸念が浮上している。
中国の攻勢
トランプ政権と対照的に、中国は友人たちへの対応の仕方を心得ていることを示している。昨年12月には外交関係を持つ全ての途上国から輸入する特定品に対する関税をゼロに引き下げた。
中国は地域的な包括的経済連携(RCEP)の推進役も担う。RCEPは15カ国から成る世界最大級の自由貿易協定(FTA)で、2022年のデータに基づくと世界全体の国内総生産(GDP)で29%相当を占める。米国が進める経済政策の影響を和らげるために、さらに多くのアジアの国々が参加を希望する可能性が高い。
中国は今、攻めに出ている。3月末に開かれた日本と韓国との3カ国の経済貿易担当閣僚会合では、開放的かつ公平な貿易をあらためて呼びかけ、経済関係を深めると誓った。
何か取り決めが結ばれたわけではないが、歴史認識や対米関係の違いにもかかわらず、会合が開催されたという事実自体が日中韓が関係強化に意欲的であることを示す兆しだ。
米国に代わる市場はない。23年の米家計支出は19兆ドル(約2790兆円)に達し、欧州連合(EU)の倍、中国の3倍近い規模だ。そうした中で、中国は世界貿易の変化を乗り切るために切羽詰まった国々に必要なものをまさに提供しつつある。
アジア各国はさらなる経済的打撃から自国を守るため、米国との関係を維持しながら、より緊密に協力していく以外に選択肢はないだろう。
アジアでは米国との同盟・協力が所得と生活水準の向上に寄与してきた。そのため、現在は予測不可能な状況であるにもかかわらず、各国はこれを続けていきたいと考えている。
米国の気まぐれな政策の影響を受けているEUのような他のパートナーと手を組むことも、共通の不満を踏まえれば賢明な策だ。防衛・軍事関係も再調整できるだろう。すでに日本と北大西洋条約機構(NATO)は情報共有と防衛産業協力の強化について協議している。
トランプ氏の貿易戦争は始まったばかりだ。米中という2つの超大国が共に悪あがきをする中で、そのはざまに立たされた国や地域は損失を最小限に抑えようとしている。
アジア各国は何とかこの状況を切り抜けようと模索しているが、長期的には中国を視野に戦略的優先順位の再編が行われるだろう。世界貿易を巡る対立が招いたトランプ関税が、インド太平洋地域における地政学の地図を中国を中心に塗り替える可能性がある。
中国指導部は、トランプ米政権が中国からの輸入品に対する上乗せ関税を大幅に引き上げたことに対応し、追加の景気刺激策を協議する会合を10日に開催する見通しだ。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
非公開情報を理由に関係者が匿名で語ったところでは、今回の臨時会合は、住宅と個人消費、技術革新への支援が焦点になる見込み。関係者によれば、金融規制・監督当局を含む他の政府機関も、景気浮揚および市場安定化策を話し合うために集まる。日程は変更もあり得るという。
追加刺激策を検討する臨時会合の開催は、米中貿易摩擦拡大で生じる打撃に対し、中国当局が懸念を強める様子を浮き彫りにする。
中国政府は米国の上積み関税への報復措置として、同国からの全ての輸入品に84%の追加関税を課すと発表し、10日に発動した。トランプ米政権は、中国を除く貿易相手国・地域への上積み関税を90日間停止する一方、中国への関税率を10日から125%に引き上げた。
国務院新聞弁公室にファクスでコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。
中国指導部による会合開催の見通しをブルームバーグ・ニュースが伝えたことを受け、10日の外国為替市場では、オーストラリア・ドルと中国人民元が対米ドルで上昇。豪ドルは一時0.2%高の1豪ドル=0.6168米ドルで取引された。一方、米ドル・人民元は一時1ドル=7.3433元に下落した。
刺激策への期待が高まる中で、中国本土株と香港株の指標は10日、米上積み関税の90日間停止を好感した世界的株高の流れに加わった。
中国の政策担当者らが週末にかけ、消費刺激策のほか、トランプ関税より前に計画していた幾つかの施策を前倒しするかどうか協議したとブルームバーグが先に伝えていた。
ドナルド・トランプ米大統領が中国との第1次貿易戦争を始めて以来、中国政府は米国の痛いところを突く「武器」を蓄えてきた。今はそれらを全面的に展開する準備を整えている。
中国は米国からの全ての輸入品に対する関税を84%に引き上げた。これは9日に発動された米国の対中関税(累計104%)への対抗策だ。さらに、防衛・航空宇宙関連企業のシールドAIとシエラ・ネバダといった米企業6社を「信頼できない企業リスト」に加え、アメリカン・フォトニクスやBRINCドローンズなど米企業12社に輸出規制を課した。
この幅広い対抗措置はトランプ氏をますます挑発したようだ。同氏は9日、数十カ国に対する高関税を一時停止する一方で、中国だけさらに大きな関税を課すと発表し、対中関税を即時に125%に引き上げると述べた。米中は今や全面的な経済戦争に向かっている。
トランプ氏が関税を貿易武器の選択肢として重視する一方、中国の戦略は、独自の関税を課すだけにとどまらず、「米企業にとっての中国市場の魅力」を武器にしている。その計算の中心にあるのは、世界第2位の経済大国との関係に依存する企業にどのように苦痛を与えるかだ。
中国政府がすでに使用し、今後拡大する可能性が高い手段には、米企業が半導体や防衛関連製品を製造するのに使用する重要材料の輸出規制、米企業を威嚇し罰するための規制上の調査、米企業の中国への販売を禁止するブラックリストなどがある。さらに当局は、米企業に知的財産権という重要資産を放棄するよう圧力をかける新たな方法を準備している。従わなければ中国市場へのアクセスを失うというものだ。
このように多様な手段があるということは、中国の習近平国家主席は米国との経済戦争を長く続けることが可能だということだ。これはまた、米中が分断に向かっているように見える中で、中国で事業を展開したり投資したりする米企業、あるいは単に中国と取引する米企業にとってのリスクが一段と高まっているという意味でもある。
「中国は、自国の代償を最小限に抑え、米国への打撃を最大化するための新しい『武器庫』を組織的に構築してきた」。オバマ政権下で国家安全保障会議(NSC)の高官を務め、現在は米ジョージタウン大学教授であるエバン・メデイロス氏はそう話す。「貿易戦争で非対称的な優位性を得られるよう準備している」
中国の政府と国営メディアは挑戦的な姿勢を取っており、商務省は「米国が自分勝手なやり方を貫くなら、中国は最後まで戦う」と述べている。
中国外務省は9日、政府として国益を守るために強力な措置を講じると述べたが、「平等、尊重、互恵」の条件が満たされるなら交渉に応じる余地を残した。中国商務省は、米国は長年サービス貿易で対中貿易黒字を享受しており、2023年には266億ドル(約3兆9000億円)に達したと指摘した。
自国の代償が大きくなりかねないため、中国が当面控えそうな選択肢もある。人民元の大幅な切り下げや、中国が保有する米国債の大量売却などだ。いずれも中国自身の金融市場を不安定にし、他国との貿易関係を強化するという戦略的目標を損なう可能性がある。
事情に詳しい関係者らによると、例えば、中国当局者らはここ数週間、カンボジアやラオス、タイなど東南アジアの一部の国々に働きかけ、これら諸国との貿易や人民元建て貿易決済を促進しようとしている。
これらの議論の中で中国当局者らは、元建て貿易の拡大という「脱ドル化」目標を進めるために、元相場をおおむね安定させようとしていることを示唆したという。
中国指導部は当初、トランプ政権との交渉に期待を抱いていたが、それは今や不満と怒りに変わっている。
中国の最新の対抗措置によって、同国が特にハイテク業界の米企業を標的にする姿勢を強めていることが浮き彫りになった。米国との激しい戦いの中、中国は国内経済が最近低迷しているにもかかわらず、「企業にとっての中国市場の魅力」を武器にし続けている。同時に技術競争での勝利も目指している。
外国から中国への新規直接投資は過去2年間で急減しているが、最近のいくつかの調査によると、自動車メーカーから製薬会社、半導体メーカーに至る多くの多国籍企業が中国との関係を維持することを選択している。
それでも多くの企業は、中国がもたらすリスクに自社が一段と脆弱(ぜいじゃく)になっていることに気付いている。米商工会議所財団の委託で作成された新たな報告書によると、過去2年間に調査対象となった米企業約200社の大半が、最大の地政学リスク要因として中国を挙げた。
中国が自らの地政学的目標を推進するために利用頻度を増やしている手段の一つが独占禁止法だ。例えば、米半導体大手インテルによるイスラエルの半導体受託生産会社タワーセミコンダクターへの買収提案など、米企業に利益をもたらす可能性のあるいくつかのM&A(合併・買収)案件は、中国当局が承認を引き延ばした結果、断念を余儀なくされた。
トランプ氏の最近の関税措置に対抗して、中国は先週、米化学大手デュポンの中国事業について独占禁止法違反の疑いで調査を開始したが、詳しい説明はなかった。同社は昨年の売上高の19%を中国本土と香港で上げている。
中国の独禁当局は、パナマ運河の港湾の運営権を、香港の富豪・李嘉誠氏の一族が支配する長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)から、米資産運用大手ブラックロック率いる投資家連合に移転する案件も審査している。関係する企業・資産が中国本土にないにもかかわらず、中国当局の審査は取引を遅らせる恐れがあり、米中間の火種となっている。
中国が開発したもう一つの強力な貿易武器は「信頼できない企業リスト」で、米国の「エンティティー・リスト(EL)」に相当する。ELは、国家安全保障上の利益を損なうと判断された外国企業・個人が米企業と取引することを制限している。
中国は2019年、米国が中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)をELに掲載したのを受けて、このリストを作成した。中国が「信頼できない企業」に指定した企業は、中国への投資や中国企業との取引が禁止され、主要従業員の入国禁止などの制限が課される。
ジョージタウン大学のメデイロス氏と調査会社トリビウム・チャイナの共同創設者アンドリュー・ポーク氏による新たな学術論文によると、中国は最近まで「信頼できない企業リスト」を慎重に活用していた。
中国がこの手段を使い始めたのは2023年で、台湾への武器売却に関与したとして米防衛大手のロッキード・マーチンとレイセオン・ミサイル&ディフェンスを同リストに掲載した。もっとも、それによる両社への影響は限定的だった。両社とも中国本土で防衛関連事業をほとんど行っていなかったからだ。レイセオンの商業子会社の中国事業はリスト掲載による影響を受けていない。
しかし、米学術誌ワシントン・クォータリーに今週掲載されたメデイロス氏とポーク氏の論文によると、2024年秋から25年初めにかけて中国当局は「信頼できない企業リスト」の使用を頻度と範囲の両面で拡大した。
中国は最近、トランプ氏の関税攻撃への対抗措置として、同リストに掲載する米企業の範囲を拡大し、防衛関連企業だけでなく、カルバン・クラインやトミーヒルフィガーなどのブランドを傘下に持つPVHや、バイオテクノロジー企業イルミナもリストに追加した。PVHは米国法を順守するために新疆綿(新疆ウイグル自治区で栽培されている綿)の使用を中止すると発表した後に、中国政府の怒りを買った。一方、イルミナは中国の競合他社を米市場の一部から排除するようロビー活動を行っていると中国当局は考えている。
メデイロス氏とポーク氏によると、今週初めまでに中国は米企業38社をブラックリストに掲載しており、米国との幅広い競争の一環として、さらに多くの米企業を標的にする可能性が高い。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
### 【為替】
ドルは主要通貨に対して下落。特にスイスフランに対しては10年ぶりの安値を記録。前日の反発から一転、ポジション調整が進んだ。
- ドル/円は2%下落(144.79円)
- ドル/スイスフランは3.6%下落(0.8263フラン)
- ユーロ/ドルは2.47%上昇(1.1221ドル)と、2022年以来の大幅上昇
### 【債券】
米債券市場では利回りが低下。30年債入札も好調で、投資家の不安がやや緩和。
- 利回り急上昇による混乱が続いていたが、安定化の兆し
- 中国などの保有国による米債売却懸念もある中、入札は堅調
### 【株式】
米株式市場は大幅反落。関税戦争による経済への悪影響が懸念されている。
- ダウ:1014ドル安
- S&P500:3%超下落
- ナスダック:4%超下落
- CPIは前年比+2.4%で鈍化、FRB政策の不透明感も影響
### 【金】
金価格は3日続伸。ドル安と貿易戦争激化によるリスク回避から、安全資産として買いが集中。
### 【原油】
原油価格は反落。
- 米中貿易摩擦の激化と世界経済の減速懸念が背景
- EIAが石油需要の伸び鈍化を予測したことも売り要因
全体として、市場はトランプ大統領の関税政策と米中貿易戦争の影響に神経質な反応を見せており、為替・債券・株式・商品市場に波及している状況です。
### <ロンドン株式市場>
- **FTSE100種指数は+3.04%上昇**。関税停止発表で安心感。
- 全業種が上昇。金属・鉱業株が特に強い。
- テスコは減益見通しで▲6.1%安。
### <欧州株式市場>
- ドイツDAX+4.53%、スペインIBEX+4.32%、フランスCAC40+3.83%と**全面高**。
- 銀行株や資源株が特に好調。
- バリーカレボーはカカオ価格高騰で▲21.5%と急落。
### <ユーロ圏債券市場>
- 国債利回りは**ほぼ横ばい〜やや上昇**。
- 米関税一時停止で景気懸念がやや緩和。
- **ドイツ2年債利回りは+10bp(1.819%)**、10年債は小幅上昇(2.585%)。
全体として、**トランプ政権の関税停止発表が市場に一時的な安心感を与えたものの、米中貿易摩擦の激化による景気後退懸念が依然根強い**という状況です。
備忘録(2025/4/9)
●海外企業決算
●海外企業
欧州製薬企業は8日、欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長に対し、米国の関税は業界の欧州から米国への移管を加速させると警告した。
製薬大手の独バイエル(BAYGn.DE), opens new tab、スイスのノバルティス(NOVN.S), opens new tab、デンマークのノボノルディスク (NOVOb.CO), opens new tabなどが加盟する業界団体である欧州製薬団体連合会(EFPIA)は、フォンデアライエン氏に米国への「流出リスク」を軽減するために「迅速かつ抜本的な措置」を講じるよう求めたと明らかにした。
医薬品は、先週トランプ大統領が発表した米国の輸入品に対する広範な関税の対象から除外されたが、大統領は別途関税を課すとしている。
EFPIAはこれまでも、EUが製薬業界を規制する法律の改正案を修正しなければ、欧州の製薬業界は米国、中国、新興市場との競争激化を勝ち抜けないと繰り返し警鐘を鳴らしてきた。
EFPIAは声明で「関税の脅威による不確実性が生じた今、EUに投資するインセンティブがほとんどなく、米国へ移転する大きな原動力となっている」と訴えた。その上で、米国の関税が世界のサプライチェーン(供給網)や欧州における医薬品の供給に影響を及ぼす広範な影響や、EU域内の規制障壁について「強い懸念」を表明した。
さらに臨床試験、欧州医療システムのデジタル化、知的財産の保護手続きの簡素化も要請した。
欧州と米国は医薬品のサプライチェーンで相互につながっている。米国は数千億ドルの売り上げをもたらす欧州で一部生産された医薬品に頼っている。
EU統計局(ユーロスタット)の最新データによると、2023年のEUから米国への医療・医薬品輸出は総額約900億ユーロ(970億5000万ドル)に達した。
米小売り大手ウォルマート(WMT.N), opens new tabは9日、第1・四半期(2─4月)の営業利益伸び率見通しを示さず、事実上撤回した。トランプ大統領の関税措置によって不確実性や景気後退を巡る懸念が高まっていることが背景にある。
2月時点では、2─4月の調整後営業利益が0.5─2.0%増になるという見通しを示していた。
同四半期期の売上高見通しは据え置いたほか、2026年1月期(25年2月─26年1月)の売上高と調整後営業利益についても、2月に示した見通しを据え置くとした。
通期の売上高見通しは前期比3─4%増、調整後営業利益見通しは3.5─5.5%増。
ウォルマートは、特にアジア諸国に対する関税措置の影響を受けるリスクが高い。23年11月のロイターの報道によると、ウォルマートの輸入品の約60%は中国からが占めている、ベトナムも主要供給国の1つとなっている。
ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)はテキサス州ダラスで8─9日に開催した投資家会合で「混乱の時期を乗り切る方法を学んできた」と述べた。「何が起きるか全てを把握しているわけではないが、われわれの優先事項と目的は分かっている。できるだけ低価格を維持することに努める」とし、「在庫とコスト管理に重点的に取り組む」と説明した。
●日本企業
商船三井(9104.T), opens new tabの橋本剛社長はロイターとのインタビューで、ブラジルから中国への穀物輸出が増加するなどトランプ米政権の関税政策で物の流れが変わる可能性があるとし、変化の波に乗り遅れないよう状況を注視していく考えを示した。関税の影響を見極めつつ、株主還元を前倒しで強化することを検討していることも明らかにした。
橋本社長は「低い関税の国から(米国へ)の貿易量が増え、高い国からの貿易量が減る、といった流れにおそらくなってくる。米国の製造業がすぐに国内で生産できるようになるとは考えにくいので、そうしたトレードパターンの組み替えを丁寧に注意深く見ていく」と語った。
5日に発効したトランプ大統領の「相互関税」は、自動車や鉄鋼など一部を除くすべての輸入品に一律10%をかけた。9日からは東南アジア諸国や日本、インド、欧州連合(EU)など、対米貿易黒字額が多い国・地域ごとにそれぞれ税率を上乗せした。
各国が税率の引き下げや除外を求めてトランプ政権との交渉を模索しており、橋本社長は「交渉の結果、比較的高い関税の国と、低い関税の国が出てくる」と予想。情報収集などに力を入れる考えを示し、ワシントンに事務所開設を検討していることを明らかにした。
第1トランプ政権時も荷主の間で貿易ルートを組み替える動きはみられ、関税を引き上げられた中国からの対米輸出が、ベトナム経由になるなどの変化があったという。また、中国が報復関税をかけたことで米国からの大豆輸入が2018年に急減し、代わってブラジルからの輸入が増加したことも世界銀行のデータから見て取れる。
橋本社長は当時を振り返り、「北米の西海岸から中国へ運ぶのに比べると、ブラジルからは2倍くらい距離がある。船会社にはかなり需給好転の要因になった」と述べた。
足元はまだ荷主の対応に目立った変化はないという。橋本社長は「実際に高い関税を課せられ、高い物が売れないとか物が動かないといったことが現実化してくるのは、おそらく今月末や来月になってからだろう」と話した。
関税が自社の業績にどう影響するかは、現時点で「読み切れない」とした。2036年3月期まで続く現在のグループ経営計画は27年3月期から第2フェーズに入る。高水準が続いたコンテナ船運賃の追い風などで財務指標が目標を上回って推移し、自己資本が厚くなったことから、橋本社長は第2フェーズから計画していた配当性向の引き上げを1年前倒すことを考えていると明らかにした。一方、「関税のマグニチュードを見極めたい」とも語った。
このほか橋本社長は、トランプ大統領が自国の造船業復興策として提案している中国製船舶の米国への入港料徴取に言及した。規制対象が中国製の船なのか、中国製の船舶を使う海運会社の船すべてなのか不明確ながら、後者であれば非常に大きな影響があるとした。商船三井が運航する船舶941隻(25年3月末見込み)のうち、中国製は約5%。
定期船の業界団体、世界海運評議会は中国製コンテナ船のみを対象とした試算として、米国の消費者に年間300億ドルのコスト負担になるとしている。
●先進国政治動向
トランプ米大統領は9日、米国に報復措置を講じていない日本などの国・地域に対して、高水準の「相互関税」を90日間停止することを承認したと明らかにした。一方、中国に対しては関税を125%に引き上げた。
世界56カ国と欧州連合(EU)に対する高水準の相互関税が発動された約13時間後というタイミングで突如、トランプ氏は方針を転換した。相互関税の発動を受けて金融市場がさらに混乱し、リセッション(景気後退)懸念も強まり、トランプ政権に対しては経済界や投資家から政策を見直すよう求める圧力が強まっていた。
トランプ氏はホワイトハウスで方針変更の理由を巡る記者団の質問に対し、「国民が少し行き過ぎていると思った」とし、「彼らは少し興奮し、また少し恐れていた」と語った。
トランプ氏の発表を受け、米株式相場は2008年以来の大幅高となり、S&P500種株価指数が9.5%高、ナスダック100指数は12%高で取引を終了。外国為替市場では円がドルに対して下げに転じた。ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは米リセッション予想を撤回した。
トランプ氏はその後に大統領執務室で、「見ての通り、株式市場は記録的な好パフォーマンスとなっている。それが続くよう願う」と話した。
一方で米国債市場では、トレーダーの間で年内の米利下げ見通しが後退したのを受け、2年債利回りが一時30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇して4%を上回るなどした。
関税の決定に際し債券市場を見ていたとするトランプ氏は「債券市場は非常に厄介だ」と述べた上で、「今見てみると今の債券市場は美しい。しかし、昨夜は人々が少し不安になっている様子が見られた」と話した。
ホワイトハウス高官によると、9日に上乗せ税率発動の対象となった中国を除く国・地域は、それ以外の国・地域と同様に5日発動の10%の基本税率の対象となる。鉄鋼・アルミニウム関税や自動車関税は現行水準に維持する。
カナダとメキシコからの輸入品に対する10%あるいは25%の関税は、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の対象品目以外、現行のままとする。EUについては、鉄鋼・アルミ関税への報復措置を表明したもののまだ実施されていないことから、10%の税率を適用するという。
トランプ氏は米東部時間9日午後1時18分(日本時間10日午前2時18分)ごろの自身のSNSへの投稿で今回の決定を発表した。「75カ国余り」が貿易問題を巡り米国との交渉を申し入れ、「私の強力な呼び掛けにより、いかなる形でも報復していない」と指摘。「90日間の一時停止を承認し、この期間中の相互関税を大幅に引き下げて10%とする。即時発効する」と表明した。
一方でトランプ氏は、中国が交渉を拒否しているとして関税を引き上げると説明。「世界の市場に対する中国の敬意の欠如を踏まえ、米国は中国に課す関税を125%に引き上げる。即時発効だ」とSNSでコメントした。
投資家らの関心は今後、中国にシフトし、同国が再び対米関税率を引き上げるか、それとも交渉にオープンな姿勢を示唆するかに向かいそうだ。トランプ氏は中国に交渉に応じるよう強いるため、対中関税率をさらに引き上げる必要性に関し、「それは想像できない。もっとやらなければならない状況は考えられない」との考えを示した。
トランプ氏が先に発表したいわゆる「相互関税」は米東部時間9日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に予定通り全面的に発動。これに対し、中国も報復措置を発表。中国政府は米国から輸入する製品に対する関税を84%に引き上げると発表した。
ベッセント米財務長官は今回の方針転換をトランプ氏の勝利と位置づけ、他国との協議において「大統領は最大限の交渉力を生み出した」と記者団に述べた。今後数日以内にベトナム、日本、インド、韓国の当局者と会談する予定であることも明らかにした。
「この瞬間まで方針を貫くには大きな勇気が必要だった。これは最初からトランプ氏の戦略だった」とベッセント氏は語った。
ドナルド・トランプ大統領は方針を劇的に転換し、中国を除くすべての貿易相手国に対する国別関税を一律10%に引き下げた。
ホワイトハウスは、中国の関税率は即時125%に引き上げられると発表した。
ホワイトハウスの顧問らは、方針転換は最初から戦略だったと主張し、巨額の市場損失を引き起こした先週の大規模な関税措置はすべて見せかけだったと示唆した。
中国政府は4月10日から米国製品に84%の相互関税を課すと発表した。
中国は自国民に対し、米国への渡航に関する新たな警告を発した。
カナダとメキシコには10%の追加関税は課されない、ホワイトハウスが明言
ホワイトハウス当局者はCNBCに対し、トランプ大統領のいわゆる相互関税政策の見直し発表の結果、カナダとメキシコは10%の追加関税に直面することはないと語った。
当局者によれば、カナダとメキシコからの輸入品に対する米国の現行関税構造(USMCAとして知られる三国間貿易協定の対象外の品物に対する25%の関税)は変更されないという。
「冷静に」:トランプ大統領は方針転換前に関税に固執した3回
大統領は市場の混乱や投資家、有権者、同盟国からの反発にもかかわらず、関税は撤廃されないと数日間主張している。
以下に 、トランプ氏が方針転換の数日前に抵抗した3つの例を挙げる。
「落ち着いて!すべてうまくいく。アメリカはかつてないほど大きく、より良くなる!」関税による経済への影響が増大する中、トランプ大統領は関税一時停止発表の数時間前にTruth Socialに書き込みました。
トランプ大統領は月曜日、ホワイトハウスから関税の一時停止は「検討していない」と述べた。「検討していない」
「強く、勇気を持って、忍耐強くあれ。そうすれば偉大さが生まれるだろう!」トランプ大統領は月曜日、市場が開く直前にトゥルース・ソーシャルに書いた。
トランプ氏:ダイモン氏は「関税については何か対策を講じる必要がある」と述べた
トランプ大統領は同日早朝、JPモルガンのCEOジェイミー・ダイモン氏のインタビューを見たと述べ、その中で同氏は関税の結果として景気後退が「起こりうる結果」だと語っていた。
トランプ氏は、ダイモン氏はインタビュー中「非常に良かった」とし、「関税と貿易に関して何らかの対策を講じる必要がある」と述べたと述べている。
「彼は非常に頭が良く、金融の天才で、銀行で素晴らしい仕事をした」とトランプ氏は言う。
ホワイトハウスは関税交渉を申し出た国のリストを公表しないと表明
ホワイトハウスはNBCニュースに対し、トランプ大統領のいわゆる相互関税をめぐってこれまで米国との交渉開始を申し出てきた国々のリストは公表しないと伝えた。
トランプ大統領は、90日間の関税停止を発表したTruth Socialの投稿で、「75カ国以上」が新たな貿易協定の締結を求めて米国当局に電話をかけてきたと述べた。
「ちょっと騒々しい」:トランプ大統領、関税計画の転換を説明
トランプ大統領は、国民が「少し怒り始めている」ため、多くの国に対する高関税の導入を一時停止したと述べた。
「まあ、人々は少し行き過ぎていると思った」とトランプ大統領はホワイトハウスで記者団に語った。
「彼らは興奮し始めていた。ほら、彼らは少し興奮し始めていたし、少し怖がっていた。チャンピオンたちとは違ってね。我々にはやらなければならない大きな仕事があるからね」と大統領は自動車レースのチャンピオンたちと並んで立ったまま語った。
「私がしたことは、他のどの大統領もできなかっただろう。他のどの大統領もできなかった」と彼は言った。「そして、そうしなければならなかったのだ。」
トランプ氏はその後、「政策には柔軟性が必要だ」と述べた。
関税撤回後、小売株が急騰
トランプ大統領の関税政策転換を受けて、さまざまな小売株が急騰した。
主要企業の中には、ベトナムでかなりのシェアを生産している企業もある。ベトナムからの輸入品には、トランプ大統領が提案していた46%ではなく、今後90日間10%の関税が課されることになる。
ウェイフェア
株価は20%近く急騰し、リーバイ・ストラウス
18%以上急上昇した。デッカーズ
クロックス
株価はそれぞれ14%と12%上昇した。
ナイキ
の株価は10%上昇し、ウォルマートの株価は
そしてターゲット
それぞれ8%以上上昇しました。
トランプ大統領の関税撤回で米国原油価格が急騰
トランプ大統領が中国を除く国々に対する関税率の引き下げを発表したことを受け、米原油先物は4%以上上昇し、2024年10月以来の高値となった。
米国のベンチマーク
2.77ドル(4.65%)上昇し、1バレル62.35ドルで取引を終えた。一方、世界の指標であるブレント
1バレルあたり2.48ドル(3.95%)上昇し、65.30ドルとなった。
中国がトランプ大統領の関税措置への対抗措置として米国製品への84%の関税を発表したことを受け、米国産原油は取引開始早々に日中安値55.12ドルをつけた。中国の関税は4月10日に発効する。
しかし、トランプ大統領が貿易戦争の方針を劇的に転換したことを受け、原油市場は反転し、安値から13%以上上昇した。大統領は、中国を除く各国に対し、90日間10%の低関税を適用すると述べた。
ベッセント米財務長官は9日、米国債の売りは「正常なデレバレッジ」の課程だとし、システム的な要因は働いていないとの考えを示した。
また、米国の関税引き上げに対する報復措置として、中国が人民元の為替レート切り下げを試みないようにと警告した。
「市場では今起こっているのは、よく見られるデレバレッジの動きの一つだ」とFOXビジネスの番組で述べた。ヘッジファンド運用者としてのキャリアにおいて、こうした状況を何度も目撃してきたと付け加えた。
「債券市場には、非常に大きなレバレッジをかけた取引をしていたプレーヤーがおり、こうした投資家が損失を被り、デレバレッジを余儀なくされている」と解説した。
米国債市場ではここ数日、長期債が大きく売り込まれた。株式市場が下落している中での債券売りは、安全資産としての米国債のな役割に反する動きだ。30年物米国債利回りは今週に入ってから約50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇している。
ベッセント氏は「債券市場で起きているのは、システム的なものではなく、不愉快ではあるが正常なレバレッジ解消だと私は考えている」と述べた。
中国が米国による中国製品への関税引き上げに対する報復措置を発表したことについては、「中国がするべきでないのは、切り下げによってこの状況を打開しようとすることだ」と警告した。
トランプ米大統領は9日、米国民に冷静さを保ち、投資を継続するよう呼びかけた。ホワイトハウスが予定通り発動した大規模な相互関税に対する市場の反応を注視していることを示唆している。
トランプ氏は「今は買いの好機だ」と自身のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」への投稿で述べた。
また別の投稿では「落ち着いて。すべてうまくいく」とし、「米国ははこれまで以上に大きく、素晴らしい国になるだろう」と語った。
トランプ氏の投稿後、S&P500種株価指数とナスダック100指数はプラスに転じた。
トランプ氏はさらに、朝方FOXビジネスに出演したJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)の発言に言及。ダイモン氏が関税や貿易の問題に対処することを称賛したと強調した。一方、ダイモン氏がトランプ氏の関税政策の結果として「リセッション(景気後退)はあり得る」との見方を示した点については言及しなかった。
ホワイトハウスがソーシャルメディアに投稿した動画で、トランプ大統領はアメリカンドリームを破壊した「外国のハイエナども」を打ち負かすために関税を導入する英雄として描かれ、喝采を浴びている。
ヘルメットをかぶった作業員やブルーカラーの制服を着た人々から称賛され、最新のアクション映画にふさわしいサウンドトラックが流れる中、メッセージは明確だ。つまり、米国はルールを破棄するという宣言だ。
一方、中国外務省が発信した動画は、緊張感のある音楽から始まり、米国の覇権主義や強欲、搾取、関税、その他の悪が語られる。そして、ジョン・レノンの「イマジン」が流れ、中国が主導する安全と平等、正義、そして「障壁が橋に変わる」世界の穏やかなイメージが映し出され、「あなたはどんな世界で暮らしたいですか」と問いかける。
この2つの動画に欠けているのは、パニックに陥った投資家や外国首脳の反発、そして悩める企業経営者らだ。そして、今や明らかになっている現実、すなわち、世界中が世界1、2位の経済大国である米中の衝突に対処しなければならないという事実だ。ほとんど誰も無傷で済むことはないだろう。
「トランプ・ショック」とは、米国の利益のために世界貿易のルールを書き換えるというあからさまな試みだ。
トランプ政権が「解放の日」と呼ぶ2日に発表した関税計画がそのまま実施されれば、サプライチェーンは混乱し、投資戦略は見直され、輸入品の価格は急騰。同盟国およびライバル国との通商・安全保障関係は再構築されることになる。
実際、トランプ氏が「米国の黄金時代」を実現しようとしている大胆な賭けは、こうした激変にかかっている。
米国は少数派
米国発のショッキングな危機は、過去四半世紀にわたり世界経済を変え、いまだに弱まる兆しを見せずにじわじわと進行する「中国ショック」と交差する。
世界の製造業をリードする中国が新たな市場で販売を拡大し、電気自動車(EV)などの未来の産業分野でも優位性を強める中で、中国共産党の習近平総書記(国家主席)は中国をルールに基づく貿易制度を擁護する国として描こうとしている。
トランプ氏は7日、中国が米国製品に対する34%の報復関税を撤回しない場合、「50%の追加関税を課す」と警告。米中間の板挟みになっている国々にとっての疑問は、どの国がどの国の経済に最も大きな打撃を与えるのかということだ。
貿易の流れと経済関係に関するブルームバーグ・エコノミクス(BE)の分析によると、中国は米国で失うことになる市場を他国で補うため、輸出先を大きく変える公算が大きい。
対中関税を発動したトランプ政権1期目は、中国以外の国々が中国離れを進めたが、今回は中国が動く番だ。
中国からの輸出増加が各国にもたらすリスクは、米国の輸入減少の影響よりも小さい可能性が高いが、「トランプ関税」はこうした中国ショックを増幅させることになり、保護主義の波が次々と押し寄せる恐れもある。
東京で5日閉幕した国際通貨基金(IMF)の会議に出席していたエコノミスト、リチャード・ボールドウィン氏は、「米国ショックがより深刻な中国ショックにつながるだろう。そして、他の主要国が中国に対して関税を課す可能性も十分にある。これは、ほぼ確実なシナリオだと思う」と他の貿易専門家らと共に警鐘を鳴らした。
同氏によると、世界経済にとっての救いは、米国が世界貿易の15%程度しか占めていないこと、そして中国を含む残りの85%を占める国々が現行の通商制度を維持したいと考えていることだという。
トランプ氏の関税政策に対する一次的な反応として従うか反発するかに世界が二分されるとしても、中国や欧州連合(EU)を中心に、貿易自由化に向けた独自の動きが広がる可能性があるとボールドウィン氏はみている。
不確実性の時代
数十年かけ国境をまたぎ複雑なサプライチェーンを構築してきた企業にとって、トランプ関税はビジネスモデルの根幹を揺るがす脅威だ。米アップルのスマートフォン「iPhone」をはじめとする消費者向け製品の価格も上昇するだろう。
世界中の投資家にとって、こうした状況は、米中の将来像の対立によってあおられた不確実性の時代に、経済的ダメージを推測しながらリスクを再評価することを意味する。
トランプ関税がいつまで続くかを決めるのは、米国内でどれほどの痛みが引き起こされるかが最大の要因となる可能性がある。JPモルガン・チェースのエコノミストは現在、米国が2025年にリセッション(景気後退)に陥る可能性があると予測。
ブルームバーグ・ニュースのエコノミスト調査では、関税がリセッションの可能性を高めると92%が述べている。そして、金融市場の動きも重要だ。多くの米国民が退職後に備えて貯蓄している資金の行方を左右する。
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスの貿易専門家テレサ・フォート氏は、「トランプ関税が米国の生産、そして世界にどれほどの打撃を与えることになるか、人々は過小評価している」と主張。「企業による意思決定に多くの不確実性がもたらされるため、多くのダメージが長引く」との見方を示した。
BEによる世界貿易データの新たな分析は、トランプ氏の関税が各国に重要な貿易・投資関係を見直すことを強いている状況を示している。
こうした関税措置が続き、対象国が米国からの輸入品に半分の関税を課して報復するシナリオに基づけば、30年までに米国の輸入品は、関税が見直されなかった場合よりも約3割減少する。中国は対米輸出が85%も落ち込み、最も大きな打撃を受ける。
日本や韓国といった中国以外の主要貿易相手国からの米国の輸入は50%余り減少する一方で、EUやインドからの輸入額はほぼ40%減となる。トランプ氏の計画では10%という低めの関税が課される英国やブラジルといった国でも、15%程度の減速が見込まれる。
中国の優位性
米中対立の中で中国に代わる重要な製造拠点として浮上したベトナムは大打撃を被る経済となりそうだ。BEのモデル予測によると、対米輸出は30年までに75%近く減少する見通し。
トランプ関税の規模と広がりは、中国の供給過剰よりも世界経済に大きなリスクをもたらし得るが、これら2つの力学が組み合わさることで、その影響が及ぶ経済は大打撃を受けるとアジア開発銀行のチーフエコノミスト、アルバート・パーク氏は警告する。
「多くの国が米国の関税引き上げに対処している状況で、他の国々が中国製品の輸入増加を吸収するのは難しいだろう」とパーク氏は言う。
中国は1970年代に開放政策を始めて以来、世界の工場へと変貌。現在では世界の製造総生産の約3割を占め、160カ国以上に対し貿易黒字を計上している。
台湾の鴻海精密工業は、今もなお世界で販売されるiPhoneの大半を中国で委託生産している。それだけでなく、中国企業自らが世界を席巻する勢いのEVや風力タービン、バッテリーなどを含め、ハイテク製品の新市場を探っている。
中国の貿易政策を研究しているシンガポール経営大学のヘンリー・ガオ教授によれば、トランプ関税は衝撃的だが、世界経済にとってより重要なのは中国製造業の優位性増大だという。
ガオ氏は「2つのショックのうち、トランプ・ショックは、ここ数日で目にしたように短期的な変動と混乱という形で、即座に痛みを伴う」と説明。
その上で、トランプ関税は「中国による国家資本主義が世界経済秩序に及ぼす根本的な脅威という、根本的な問題に対処する症状だ」と論じた。こうした根本的な問題が解決されない限り、同様の対応は米国だけでなく、他の国々からも出てくるとみている。
「良き世界市民」
現在見られる中国の輸出急増は永遠に続くものではない、あるいはすでにピークに達しているという見方もある。
同様に、トランプ関税を巡り交渉の可能性はほとんどないように思われるとしても、トランプ氏が一部の国に対しては関税を引き下げる可能性もあるため、その真の影響は依然として未知数だ。
HSBCホールディングスのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏は中国について、「消費を大幅に増やすには成長モデルを大きく転換する必要がある。これは経済的にも、政治的にも、またイデオロギー的にも非常に困難な課題だ。だが、自由主義的な世界秩序を維持し、経済的リーダーシップを引き継ぐためのユニークな機会にもなる」と述べた。
「世界経済にとっての真のリスクは、米国が発端となり世界中に波及する関税の連鎖」だという。
トランプ関税は中国にとって好機だ。信頼できる経済パートナーとして自らを位置付ける扉を再び開いてくれたからだ。
中国外務省の動画が示すように、中国はこれを逃すまいとしている。習氏は4月にベトナムとマレーシア、カンボジアを訪問すると報じられている。米国の関税により大きな打撃を受ける3カ国との関係を強化する機会となる。
「中国が大きな勝者となるだろう。なぜなら、各国は『さて、今なら誰と取引できるだろうか。米国は全く予測不可能だ』と言うためだ」と米外交問題評議会のシニアフェローで国際貿易の専門家エドワード・オールデン氏は指摘。「皮肉なことだが、中国は現時点で比較的、良き世界市民のように見える」と話した。
多くの途上国にとって、中国に輸出できる農産物や原材料、その他の物資を見つけることは魅力的な答えかもしれない。
一方、トランプ氏の関税政策はアフリカやアジアの一部貧困国にとって、米国際開発局(USAID)や多くの米国の対外援助プログラムを廃止するという同氏の決定による経済的打撃にさらに追い打ちをかけるものに過ぎない。
米財務省で働き今はシンクタンク、グローバル開発センター(CGD)に所属するカレン・マティアセン氏は「何千万人もの人々を貧困から救い出すことに、自由貿易は他のどんなことよりも大きな責任を担っていた」が、トランプ関税を「非常に悪質なものにしている一因は、世界でも最も貧困層が多い国々や、数百万人を雇用する事業を展開している国々を標的にしていることだ。それらの国々は一夜にして競争力を失うことになる」と批判した。
トランプ氏がかつて神聖視されていた米国を中心とする安全保障の枠組みを自らの重商主義と結び付ける意向を示していることから、米中両国が引き起こしている2つの経済ショックは、多くの国々にとってより広範なジレンマとなっている。
日本やカナダ、韓国、そして欧州の国々では首脳らが経済と安全保障の両面での対外関係を検証するとともに、そうした見直しで生じ得る混乱を乗り切る方法を探っている。
筆者が1990年代に東京で働いていたとき、ある日本人の同僚が、米国人の特質をよく物語る彼女の父親の体験について話してくれた。
日本の降伏で第2次世界大戦が終結した後の時期に、幼い少年だった彼は小さな町に住んでいた。米軍が日本を占領しようとやってきたとき、パニック時の恐怖のようなムードが漂っていた。日本人は彼らの指導者たちから、勝利を収めた米国人が殺人やレイプ、略奪をするだろうと聞かされていた。それは日本軍が打ち負かした敵に対して行ったことと同じだったが、もちろん日本の人々はそのことを知らなかった。
やがて米国のトラックが町にやって来た。彼は家族と家の中に隠れ、残虐なことが行われるのは避けられないと身構えていた。彼らは米兵たちが車から飛び降り、道に重い箱を並べ始めたのを見ていた。最初、箱の中には恐ろしい兵器、つまり毒ガスや仕掛け爆弾などが入っていると思っていた。しかし、米兵たちが去って箱が残り、好奇心が旺盛で勇気のある子どもたちが思い切って箱を開けると、中にはチョコレートバーやキャンディーなど、飢えに苦しんでいた日本人が何年も目にしていなかったお菓子が、たくさん詰まっていた。
この記憶は終生、彼に残った。筆者はこの話にとても感動した。筆者は世界各地を旅する中で、自分が米国人であることに誇りを持つようになった。これは、米国が経済力や軍事力のみならず、米国の価値観が持つ偉大な力を使っていかに利益を推進してきたかを示すエピソードの一つだ。それは人間の尊厳、自由と正義のために米国がコミットしてきたことを示す例でもある。それはソフトパワーをなおさら鮮明に映し出している。米国が史上最も恐ろしいハードパワーを使って何万人もの日本人を焼き尽くしてから何週間もたたないうちに、その日本人の子どもたちが米軍に救われていたからだ。
このハードパワーとソフトパワーの適切なバランスが恐らく、戦後長く続いている平和な時代において、米国のリーダーシップが残した最も偉大な功績だろう。筆者は、米国の戦略が素晴らしい新世界を描く中で、われわれがそれを破壊しつつあることを心配している。
理想の上に築かれ、何世紀にもわたって磨き上げられてきた米国の名声は、これまでに創造された地政学的ブランドの中で最も偉大なものだ。だが、先週ある人が筆者に言った通り、われわれは現在、史上最大のブランド価値破壊行為を目撃しているのかもしれない。ブランドには真の価値がある。計算するのは必ずしも容易ではないが、携帯情報端末の「ブラックベリー」やビールの「バドライト」などのブランドを所有していた企業は、そのブランドの価値を失ったときに、そのことを理解した。地政学的なブランド価値の破壊も、甚大な影響を及ぼしかねない。
世界があまりにも長い間、米国とそのほぼ寛容なリーダーシップを利用してきたというドナルド・トランプ米大統領の不満は間違っていない。日本がまさにその典型だ。日本は保護主義的な通商政策を進めながらも、米国の安全保障の傘の下で守られている。だが、この不公平を是正する上で必要なのは、強力な新政策だけではない。的を絞った繊細な外交が必要だ。
同盟国(カナダ、デンマーク、ポーランドなどの忠実な親米友好国)が不機嫌になり、憤り、おびえている。長い間米国のパワーをうらやみ、弱体化を狙っては失敗してきた敵対勢力は大喜びしている。
先週発表された輸入関税措置は一つの好例だ。筆者は、関税措置によってもたらされるという経済的な変革については納得していないが、産業が相対的に衰退し、多額の貿易赤字を抱えるようになった何十年もの間にその代償を強いられてきたことは容易に認められる。また、一部の国には米国に対する差別的な貿易慣行があり、それを是正すべきだというのも、その通りだ。
しかしトランプ氏が先週示した行動は、そうした問題を正すものではなかった。スイスやシンガポールになぜ追加関税を課す必要があるのだろうか。輸入品に対するスイスの関税は実質ゼロだ。韓国と日本に対して、両国の関税やその他の貿易障壁を基準としない計算方式で関税を課して、痛みを与えることで何を成し遂げようしているのか。加えて、オーストラリア領のハード島とマクドナルド諸島の不運なペンギンたち(これらの島には人は住んでいない)に関税を課すとはどういうことか。そんなことをすれば米国は、意地悪なだけでなく、愚かな国に見えるだろう。
外交政策についても同様のことが言える。トランプ氏の直感はここでも正しい。同盟諸国はあまりにも長い間、米国の安全保障の毛布にくるまれて甘やかされてきた。しかし、ウクライナを罰することで一体何が得られるのか。グリーンランドを併合するという脅しに、何の意味があるのだろうか。
こうした行動による打撃は、世界における米国の道徳的立場以外にも及ぶ。それは具体的な悪影響を生じさせる。グリーンランドは米国の圧力に屈しないだろう。われわれは最終的に何らかのディールをまとめられるだろう。しかしそれが、脅しに頼らない交渉で得られたであろうディールよりも悪い内容になることは、ほぼ間違いない。そしてその過程で、一つの同盟・友好国との関係が悪化することになる。
トランプ政権は、米国内でも同様の不必要な打撃をもたらす政策を進めている。トランプ大統領は、制御不能状態にあった不法移民の流入を阻止するとの公約で米国民の支持を得た。不法移民排除のプロセスが心地良いものに見えることはあり得なかった。だが、米国の価値観に反する(法律にも違反する)手法で進めれば、このプロセスのメリットの一部が損なわれる。
トランプ氏は今のところ、こうした挑戦的な外交全体に満足しているかもしれない。しかし、自由、尊厳、法の支配を重んじる国としての米国の評価を台無しにすることは、米国のブランドを損なう。そしてその打撃は、長期的に生じるものだけにとどまらない。
古代ローマ人の格言には「彼らがわれわれを恐れている限り、われわれを憎ませておけばよい」というものがある。しかし、われわれの強大な力の一部は、尊敬されることからも生じている。ローマ人たちが気付いたように、米国民は最終的に、もはや周囲から恐れられなくなった段階でも憎まれ続けているという状況を望まないはずだ。
米国のハワード・ラトニック商務長官は数カ月にわたり、ドナルド・トランプ大統領の通商政策を米企業に売り込もうとしてきた。だが企業経営者らは、ラトニック氏が何を望んでいるのかよく分からないことが多いと話す。
ラトニック氏はトランプ政権発足後の数カ月間、大車輪の働きぶりを見せてきた。関税協議を主導し、数十人の企業経営者と会談。テレビにも出演し、トランプ氏の隣に立っていることも多い。
米金融サービス大手キャンターフィッツジェラルドの最高経営責任者(CEO)だったラトニック氏は今や、企業経営者や政権高官をいら立たせるようになった。彼らはラトニック氏との対話後に怒りを覚えることがあったと、同氏と話した十数人は明かしている。
企業経営者らとの非公開会合で、ラトニック氏はトランプ氏の関税を支持するよう経営者らを威圧する一方、時には同情を示し、各社を支援したいと伝えている。ラトニック氏は主要な問題で矛盾した立場を取っており、それは特定の輸入品を関税から除外すべきかどうかについても同様だと経営者らは話す。
63歳のラトニック氏は、株式市場を揺るがし世界各国政府を不安にさせている、トランプ氏の破壊的で好戦的な通商政策の最前線に立っている。トランプ氏が先週、広範囲に及ぶ関税を発表した際、ホワイトハウスのローズガーデンで同氏の隣に立っていたのはラトニック氏で、数十カ国に対する懲罰措置を説明する大きな図表を手にしていた。トランプ氏の側近らによると、同氏の通商政策が米国を景気後退(リセッション)に陥らせるとの見方が広がる中、経済的な影響を管理しようとしているのもラトニック氏だという。
株式市場が急落する中、ラトニック氏に対する不満が表面化している。トランプ氏の支持者であるヘッジファンドマネジャーのビル・アックマン氏は、ソーシャルメディアでラトニック氏を批判した。同氏に対するいら立ちは、政策を土壇場で覆すことで知られる大統領を代表することの難しさを反映している面もある。
政権高官らによると、ラトニック氏は政権の特に型破りな構想(政権スタッフの審査を受けていないものもある)の一部について責任を負っている。同氏のテレビ出演はホワイトハウス関係者にとって頭痛の種となっており、3月には出演を控えるよう求められたという。
ラトニック氏と話をした人々によると、同氏は公職に立候補したいとの考えを隠そうとしない。
顧問らによると、トランプ氏は、なぜラトニック氏がこれほど頻繁にホワイトハウスに来ているのかと尋ねたことがある。ラトニック氏にいら立ちを覚えることもあり、同氏がホワイトハウスでの会合で感情的になった時は特にそうだという。ホワイトハウス関係者らによれば、ラトニック氏は他のどの閣僚よりもホワイトハウスを訪れている。
ホワイトハウスのクシュ・デサイ副報道官は「ラトニック長官は常にトランプ大統領の米国第一政策の強力な擁護者であり、民間部門での卓越したキャリアを持ち、大統領の通商・経済チームの不可欠なメンバー兼コミュニケーターとなっている」と述べた。「トランプ政権全体が同じ戦略、つまりトランプ大統領の戦略に従って、金融業界から経済全体に至るまで米国の偉大さを取り戻そうとしている」
ラトニック氏を担当するベンノ・キャス報道官はコメントを控えた。
金融業界時代にトランプ氏と長い付き合いがあったラトニック氏は、その関係性をよく自慢している。同氏の発言を聞いた関係者らによると、かつてマンハッタンのスタジオ54で遊び歩いたと仲間内で話しているという。ホワイトハウスの顧問の一部は、ラトニック氏がトランプ氏との親密さを誇張していると話す。
ラトニック氏はハンプトンズ(ニューヨーク市民の避暑地)でトランプ氏の資金集めパーティーを主催した。また、トランプ氏の政権移行チームの共同代表を務め、政府全体の数百のポストの人選を支援した。トランプ氏が就任する数週間前、ラトニック氏は財務長官の座を目指してロビー活動を行ったが、投資家のスコット・ベッセント氏に敗れた。政権移行の期間中、ラトニック氏はトランプ氏の上級顧問の一部と水面下で衝突したと、事情に詳しい関係者らは話す。
ラトニック氏はトランプ氏のように話すことが多く、思ったことを口にするというニューヨーク流の厚かましさを持つ。ラトニック氏は先週、CNNの番組で、米国は「この世界の相撲取り」であるため、他国に脅されることはないと述べた。
共和党のストラテジストを長年務めるケビン・マッデン氏は、「ラトニック氏は『トランプ氏が発するあらゆるメッセージを増幅し、トランプ・ブランドの大使として公衆に奉仕する』というメッセージを発信している。より広い見方をすれば、ラトニック氏はトランプ氏を抑制するのではなく増強しているのだ」と述べた。
それはうまくいっているかとの質問には、「今日のダウ(工業株30種平均)の動きを見てほしい」と答えた。
マンゴーとユリ
企業経営者らはラトニック氏との対話後、同氏がトランプ氏の考えを十分に理解しているかどうか疑問に思った。ラトニック氏は3月、石油会社の経営者らと会談した。経営者らは関税がどのように設計されるかを懸念し、石油が除外されることを望んでいた。しかし、ラトニック氏は業界別の除外措置を望まないと述べたと、会合に出席した人々は話す。同氏は、それはユリ畑から1本のユリを選ぶようなものだと語ったと、出席者の1人は明かした。
出席者らによると、同じ会合でラトニック氏は、国内生産量が内需を満たすのに十分でない製品の輸入は関税対象から一部除外されると述べ、具体例としてマンゴーを挙げた。トランプ氏が2日に関税計画を発表した際、マンゴーを関税対象にする一方で、石油を対象外とした。
ラトニック氏は3月、トランプ氏との電話会談を控えた米自動車メーカーの経営者らに対し、トランプ氏を支持する必要があり、その政策を批判したり、敵対的な質問をしたりすることは控えるよう伝えた。電話の内容を知る関係者らはそう話す。ラトニック氏は今年初め、大手自動車メーカーのCEOらとの会合を延期した後、ビデオ通話に参加するよう求め、自身がトランプ氏と大統領専用機「エアフォースワン」に同乗している姿を見せようとした。この通話の内容を知らされた関係者らはそう明かした。
業界関係者によると、ラトニック氏は、自身が関税政策を所管しており、他の政権メンバーと交渉する必要はないと、企業経営者らに繰り返し伝えている。同氏は長々と持論を展開し、通話を支配することが多いと、通話に参加した関係者らは語る。複数の経営者によれば、ラトニック氏は通話で攻撃的になることもあった。
ラトニック氏はある時、鉄鋼会社の経営者らに、鉄鋼大手USスチールが外国企業に買収されるようディール(取引)を後押ししたいと伝えた。しかし後に、もはやその後押しはできないと述べ、一部の関係者をいら立たせたと、事情に詳しい関係者らは話す。
ラトニック氏を注視する人物らによると、彼には人々が聞きたいことを伝える才能があると話す。
商務長官指名人事が承認される前に行われた上院議員らとの会合で、ラトニック氏は時折、通商について矛盾したメッセージを伝えていた。関係者によると、ある議員が関税や国内産業への悪影響に懸念を示すと、ラトニック氏は心配無用だと伝えた。関税は限定的に使用され、的を絞って適用されるだろう、と。トランプ氏に近い上院議員らとの会合では、関税を称賛し、その重要性を強調したと、会合の内容を知る関係者らは明かした。
ラトニック氏は仲間内で、トランプ大統領を助けたいという思いから政権に加わったと話している。すでに莫大(ばくだい)な富を築いているため、民間部門の高級職を辞めることができたという。
商務長官指名人事が承認された日の夜、ラトニック氏はワシントンの豪邸でパーティーを開いた。ゴルフのパッティング・チッピング用のグリーン、温水プール、床から天井までのワインディスプレー、スパを備えたこの邸宅は、FOXニュースのアンカー、ブレット・ベイヤー氏から2500万ドル(約37億円)で購入したものだ。
「マッキンリー大統領のように」
ラトニック氏は3月に開催された企業経営者らとのレセプションで、政府効率化省(DOGE)のアイデアを思い付き、トランプ氏に「(第25代米大統領の)マッキンリー大統領のように」より拡張主義的になるよう促したのは自分だと述べた。ラトニック氏の発言を聞いた関係者はそう話す。トランプ氏はデンマーク自治領グリーンランドの取得、パナマ運河の管理権奪還、カナダを米国の51番目の州にすることについて考えを巡らせている。
3人のホワイトハウス関係者によると、ラトニック氏は、事前に精査されていない構想をトランプ氏に提案することがよくあり、トランプ氏の側近らの不興を買っている。
ラトニック氏がテレビに出演し、年収15万ドル未満の人々の所得税を撤廃するよう呼びかけた際、ホワイトハウスの補佐官らはいら立ちを覚えた。関係者らによると、ラトニック氏がトランプ氏とのプライベートな夕食会でこのアイデアを披露し、トランプ氏がそれを気に入ったもようであることを、政権スタッフは後に知った。ホワイトハウスには議員からの質問が殺到した。「これは新しい政策になるのか?」との質問に対し、ホワイトハウスの補佐官は「そうならない」と請け合った。
政権スタッフらは、ラトニック氏が2月にFOXニュースに出演し、政権が内国歳入庁(IRS)の廃止を望んでいると述べた際にも驚いた。トランプ氏の複数の側近はラトニック氏について、確定申告期間中に商務長官がIRSの廃止を呼びかけることを国民がどのように解釈するかを十分に考えていなかったようだと話した。
ラトニック氏は「ゴールドカード」構想を推進している。これは裕福な外国人に500万ドルで米国の永住権を与えるというものだ。同氏は、このアイデアはトランプ氏と投資家のジョン・ポールソン氏、そして自身との電話会談から生まれたと述べている。ホワイトハウス関係者の一部は、この構想は実行不可能、あるいは法律に違反する可能性があるとの懸念を内々に表明している。だがトランプ氏は、自身の顔が描かれたゴールドカードを気に入っている。このカードはすでに販売されているとラトニック氏は言う。
政権高官らによれば、ラトニック氏は商業以外のテーマについても意見を述べており、特に移民問題について発言している。
トランプ氏は今のところラトニック氏を支持しているようだ。先週末、トランプ氏が大統領専用機でフロリダに向かう際に記者との質疑に応じると、その場にラトニック氏も同席していた。
トランプ氏は「関税は交渉力を高めてくれる」と述べた。「常にそうだ」
ラトニック氏はその前日のテレビインタビューで別の表現をしていた。「大統領は引き下がらない」
ドナルド・トランプ米大統領はまたしても、新しい壁を作った。そして、その費用を払うのはアメリカ以外だと考えている。しかし、アメリカに入るほぼ全ての製品に少なくとも10%の関税を広く課すという決定は要するに、移民を締め出すためではなく、国内に仕事と雇用を留めておくために設計された壁だ。
この壁の高さは、歴史的な文脈で考える必要がある。保護主義という意味では、アメリカは約100年前に戻ることになる。この壁によって、アメリカは関税収入という意味では主要7カ国(G7)や主要20カ国(G20)諸国を一気に上回り、セネガル、モンゴル、キルギスと同水準になる。
今の事態は、アメリカが世界貿易戦争を始めたとか、株式市場の暴落を引き起こしたとか、そういう限られた事柄ではない。世界の超大国が、これまで自ら推進してきたグローバリゼーションのプロセスに、きっぱり背を向けたことを意味する。しかも、自分たちがもう何十年も、そのプロセスから多大な恩恵を得てきたにもかかわらず。
そして、ホワイトハウスのローズガーデンで大統領が大々的に掲げた各国への関税率と、その根拠となった方程式を通じて、アメリカ政府は従来の経済と外交の基本原則にもきっぱりと背を向けたのだ。
自由貿易の大論争
トランプ大統領は関税発表の中で、1913年をしきりに話題にした。1913年とは、アメリカが連邦所得税を創設し、関税を大幅に引き下げた転換点だった。
これ以前のアメリカ政府は建国当初から、主に関税で資金を調達していた。初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの戦略に基づいて、あからさまな保護主義政策をとり続けた。
今のホワイトハウスは、このことから基本的な学びをいくつか得ている。つまり、高関税がアメリカを作り、高関税が初めてアメリカを「偉大」にしたという学びを。そして、高関税を課す限り、連邦所得税は必要ないということを。
他方、大西洋のこちら側には、グローバリゼーションと自由貿易の根底として、19 世紀イギリスの経済学者デイヴィッド・リカードの理論がある。特に、1817 年の比較優位論だ。
比較優位論にも方程式はあるが、その基本はかなり明快だ。つまり、各国は自国の天然資源と国民の創意工夫に基づいたさまざまなものを作るのが上手だというのが、この理論の基本だ。
そして大まかに言えば、誰もが自分の得意分野に特化し、自由に貿易を行えば、世界全体と各国がより豊かになるというのが、リカードの理論だ。
ここイギリスでは、この理論こそが政治と経済を結びつける基礎であり続けている。世界の大半の国は今なお、比較優位を信じている。これこそが、グローバリゼーションの理論的な核心なのだ。
しかし、アメリカは当時から、この理論を完全には受け入れていなかった。比較優位論に対するアメリカの根本的な消極姿勢は、決して消えなかった。そしてその消極性は今回、ひとつの数式によって形になった。トランプ氏が掲げた大きなボードに並んだ関税率一覧の数字をはじき出すため、米国通商代表部(USTR)がひねり出した、想像力豊かな方程式のことだ。
「相互」関税を支える理屈
「相互」関税と呼ばれるものの論理的な背景を解明するのは、意味のあることだ。ホワイトハウスが示した関税率は、対象各国で公表されている関税率と、ほとんど似ても似つかないだけに。
ホワイトハウスは、官僚主義と通貨操作を考慮して税率を調整したのだと述べた。だが一見複雑そうに見えた数式を詳しく見てみると、単にその国の対米貿易黒字の規模を測るだけの式だと分かった。ホワイトハウスは、貿易赤字の額を輸入額で割っていたのだ。
記者会見の1時間前、ホワイトハウス高官は次のように率直に説明していた。
「関税率は国別に調整されていて、経済諮問委員会(CEA)が計算した。(中略)CEAが使った計算モデルは、この国の貿易赤字は不当な貿易慣行の総計、つまり(外国による)ずるの合計だという概念に基づいている」
これは本当に大事なことだ。ホワイトハウスによると、アメリカが外国にモノを売るより多くのものを、その国がアメリカに売ることは「ずる」で「不当」なのだ。なのでその国が、この不均衡を是正するために計算された関税を課されるのは仕方がないことだと。
人がめったに訪れないペンギンだらけの島々にアメリカが関税をかけるという現実離れした話は、だからこそ重要なのだ。これによって実際の手法が明らかになるからだ。
この関税政策を通じたトランプ政権の長期的目標は、1.2兆ドルの貿易赤字をゼロにすることだ。赤字総額の中で占める割合が特に大きい相手国との赤字をゼロにすることも目標にしている。そのため、税率を計算する方程式は単純に、アメリカに対して貿易黒字を持つ国々を狙い撃ちするよう作られていた。目にも明らかで、数量化できる貿易障壁を設けている国ではなく。そして、貧しい国、新興経済国、アメリカの貿易赤字削減に全く影響しないような小さい島も、その対象にされた。
この二つの要因は別物だ。重複するものの、同じではない。
一つの国がアメリカに対して貿易黒字になり、別の国が赤字になる理由はさまざまだ。そもそも、貿易収支がゼロになるべき理由はない。国が違えば作るのが得意な製品は違うし、天然資源や人的資源も国によって違う。これこそまさに、貿易の基本だ。
このことをアメリカはもはや信じていないようだ。同じ話をサービス貿易に限ってするなら、アメリカは金融サービスやソーシャルメディア技術などの分野で2800億ドルもの黒字を抱えている。
しかしサービス貿易は、ホワイトハウスのあらゆる計算から除外されていた。
「チャイナ・ショック」と波及効果
ここにはもっと大きな何かがある。J・D・ヴァンス米副大統領が3月に演説したように、トランプ政権に言わせると、グローバリゼーションは失敗だったのだ。なぜなら、トランプ政権がグローバリゼーションに求めていたのは、「富裕国はますます付加価値の高いものを提供し続け、貧しい国は単純なものを作る」世界だったからだ。
しかし、現実はそうはならなかった。特に中国がそうだった。そのため、アメリカはきっぱりと、この世界から遠ざかろうとしている。
アメリカにとって大事なのはデイヴィッド・リカードではなく、「チャイナ・ショック」という表現を生んだ米マサチューセッツ工科大学(MIT)の経済学者デイヴィッド・オーター氏だ。
2001年、世界が9月11日の米同時多発攻撃の影響に気をとられている間に、中国は世界貿易機関(WTO)に加盟し、アメリカ市場への比較的自由なアクセスを獲得し、やがて世界経済を変革した。
アメリカの消費者向けに輸出品をますます安く作るため、中国の労働者は農村から沿岸部の工場へと移住した。そしてアメリカでは生活水準、経済成長率、利益、株式市場が急成長した。これは、「比較優位」がいかに機能するかの典型的な例だった。中国は何兆ドルもの資金を生み出し、その多くは米国債の形でアメリカに再投資され、金利を低く抑えるのに役立った。
誰もが勝者だった。まあ、必ずしもそうでもない。要するに、アメリカの消費者は全体として安価な商品で裕福になったが、その見返りとして、製造業のかなりの部分を東アジアにもっていかれた。
オーター氏の計算によると、この「チャイナ・ショック」のために、アメリカでは2011年までに製造業で100万人、全体では240万人分の雇用が失われた。この打撃は、地理的には米中西部から大西洋岸中部にわたる「ラストベルト(赤さび地帯)」と南部に集中していた。
失われた雇用と賃金に対する貿易ショックの影響は、驚くほど長続きした。
オーター氏は昨年、さらに分析を更新し、トランプ氏は大統領として第1期目にも関税保護を試したが、経済への実質的な影響はほとんどなかったと指摘した。しかし、影響を受けた地域では民主党の支持が弱まり、2020年大統領選挙では同じ地域でトランプ氏への支持が上昇していた。
そして、時間を今年4月2日へ早送りすると、自動車業界や石油・ガス業界の労働組合の労働者たちが、ホワイトハウスで関税を祝っていた。
つまり、そういう業界での雇用がラストベルトだけでなく、アメリカ全土に戻ってくると政府は約束しているわけだ。確かに、ある程度はそうなるだろう。大統領は外国企業に対して、工場をアメリカ国内に移転して関税を避けるよう、明確に通告している。ジョー・バイデン前大統領が差し出したアメとそれに続くトランプ氏のムチが確かに、この点に関しては特に、実質的な成果を生む可能性は十分にある。
しかし、トランプ大統領は過去半世紀の貿易自由化がアメリカを「強奪した」と発言した。たとえ自由貿易の拡大が、アメリカの特定の地域や産業部門や住民グループにとって良い結果をもたらさなかったのだとしても、アメリカが「強奪」され続けたというのは、明らかに全体的な実態を反映していない。
過去半世紀、アメリカのサービス部門は繁栄し、ウォール街やシリコンバレーから世界を圧倒した。アメリカの企業ブランドは、中国や東アジアにまでつながる実に効率的なサプライチェーンを活用し、憧れのアメリカ製品を世界中で販売し、莫大な利益を上げた。
アメリカ経済は過去半世紀、とても好調だったというのが本当のところだ。問題は単純に、その富がすべての部門に均等に分配されなかったことだ。アメリカに欠けていたのは、富を国全体に行き渡らせるための、多層的な再分配と適応の仕組みだった。これは、アメリカの政治的選択を反映している。
SNSで展開する初の貿易戦争
アメリカが今や、保護主義をいきなり強化して製造業を国内に回帰させようとする中、ほかの国は今後、アメリカを裕福にしてきた資本と貿易の流れを今後も維持するのかどうか、選ぶことができる。
世界中の消費者には、選択の余地があるのだ。
極めて効率的な東アジアのサプライチェーンを基盤に、モノを安く作り、魅力的な憧れのブランドの商品として世界中に売るという金もうけの仕組みを構築したアメリカの大手優良企業が、今では大きな問題に直面している。それは不思議でもなんでもないことだ。
トランプ大統領は、こうした各社のサプライチェーン戦略をぼろぼろにした。そればかりか、世界の消費者の間で各社のブランドイメージを大きく損なうリスクがある。だからこそ、アメリカの大手企業の株価が、特に打撃を受けているのだ。
結局のところ、これはソーシャルメディア時代に繰り広げられる初の貿易戦争だ。米電気自動車(EV)テスラの販売不振や、カナダ国民がアメリカ製品に強く反発するのを目にした経験は、他にも伝染する可能性がある。それは、どんな対抗関税にも匹敵するほどの威力を持つだろう。
アメリカの消費者のための工場になろうとする国々も、貿易について選ぶ余地がある。予測しづらい不安定なアメリカを排除しようとする国々は、新しい協力関係を作り、それを強化していくだろう。
トランプ大統領は、この点を重々承知している。そのことは、欧州連合(EU)とカナダが手を組んでアメリカに報復するならば、ますます関税を引き上げると脅したことからも明らかだ。これは悪夢のシナリオになる。
貿易戦争におけるゲーム理論では、信頼性が重要だ。アメリカには他に追随を許さない軍事力と技術力がある。それはアメリカを助ける。しかし、あまりにもあからさまに、ばかげた解につながる適当な公式を使って世界の貿易体制を一変させようとするなど、相手に抵抗してくれと頼んでいるようなものだ。そのばかげた解に、ペンギンがいようといまいと。
アメリカ以外の全世界が、トランプ大統領が持つ弾の入った銃は実は本人の足元に向いている考えている状況では、なおさらそうだ。株価がどこよりも急落したのはアメリカだった。インフレ率がどこよりも上がるのはアメリカになるだろう。アメリカで景気後退が起きる可能性は5割以上だと計算しているのは、今やウォール街なのだ。
本当の狙いはドル安を招き、アメリカの借入コストを下げることだという説には、もしかすると一理あるのかもしれない。
とりあえずアメリカは今のところ、自らが作り上げた世界貿易体制から脱退しようとしている。それがなくてもアメリカは続く。しかし離脱の移行期間は、実に面倒で厄介なものになずだ。
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
貿易戦争の激化で米国債の安全資産としての信頼性に疑念が広がる中、米長期国債相場が急落し、世界的に長期債売りが加速している。
米30年国債利回りは一時25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、2023年11月以来の水準に上昇。今週の上げ幅は50bpを超えた。これを受け、世界の多くの先進国市場で国債売りに拍車がかかり、オーストラリアやニュージーランド、日本の指標国債利回りも急上昇。フランス国債先物価格は下落した。
米国債は伝統的に、混乱期における最も安全な資産の一つとされてきたが、関税発動による物価上昇が米金融当局による利下げを阻むと懸念され、資金避難先の立場を失いつつある。投資家が現金と同等の商品に注目していることや米国スワップ市場の混乱、外国勢による米国債売却の臆測も、債券安の理由に挙げられている。
「米国債の投げ売りだ」とヘッジファンドのブルー・エッジ・アドバイザーズでポートフォリオマネジャーを務めるカルビン・ヤオ氏は指摘。20年物から30年物の米国債先物を売却しているという同氏は、「山火事の中で氷彫刻をするようなものだ。1秒前に大丈夫そうだったものがもう消えている」と語った。
貿易戦争は9日、新たな局面を迎えた。トランプ米大統領がこの日、相互関税の上乗せ税率の発動に踏み切り、世界経済に衝撃が走るリスクが高まった。対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域に対し税率を上乗せするとともに、中国に対しては計104%という高率の関税を適用した。
投資家の間では、トランプ氏の通商政策による世界経済への重大な影響を踏まえ、中国などの国などが外貨準備として保有する米国債のポジションを見直している可能性があるとみる向きもある。そうした動きが出てくれば、米国債はもはや従来のような安全な資金避難先ではないという強いシグナルとなるが、そうした取引はリアルタイムで伝えられることはまれだ。
少なくとも公式データによると、中国と日本はしばらく前から米国債保有高を減らしている。
明治安田生命の北村乾一郎執行役員・運用企画部長は、中国が関税への報復措置として米国債を売却している可能性に言及。米国債は需給よりも政治的な要因で動いているため当分は様子を見る考えを示した。
トランプ米大統領が先に発表したいわゆる「相互関税」が、米東部時間9日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に予定通り全面的に発動した。これに対し、中国も報復措置を発表した。貿易戦争の激化が、世界経済に大打撃を及ぼそうとしている。
米国への全輸出国・地域に基本税率10%の関税を課す措置が5日に発動後、今回は対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象とした上乗せ税率が適用されるもので、日本への関税率は24%、中国に対しては計104%となった。米国の関税率としては、100年強ぶりの高水準だ。
中国以外のアジア諸国も大幅な上乗せ税率の適用対象となり、カンボジアは49%、ベトナムは46%となっている。欧州連合(EU)からの輸入品には20%の関税が課される。
相互関税の全面発動を受けて、米国債相場は下げ幅を拡大。30年債利回りは一時25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、5.018%を付けた。アジア市場の株価は中国株など一部を除き9日までの5営業日で4度目の下落となり、S&P500種株価指数やナスダック100指数などの米株価指数先物も下げた。
報復
中国政府は9日、米国から輸入する製品に対する関税を84%に引き上げると発表した。対抗措置は4月10日より発効する。
報復関税の発表に先立ち、中国政府は米国との通商に関する「白書」を発表し、中国には「最後まで闘う」意思と手段があり、米国は「自らがまいた種の報いを受ける」ことになるとしていた。緊張激化で習近平国家主席との電話会談の可能性は遠のき、世界の二大経済大国間の貿易戦争長期化のリスクが高まっている。
中国に対する関税率104%は、合成麻薬フェンタニルの米国への流入に関連して先に課した20%と、9日から賦課する34%の相互関税に加え、米国産品に対する中国の報復関税(34%)に対抗する50%の追加関税から成る。
中国の報復措置発表を受け、米株価指数先物は2%余り下落。欧州株は4%余り下落した。
米国のベッセント財務長官は9日、FOXビジネスとのインタビューで、中国の報復措置について「残念なこと」とし、中国に人民元の切り下げを行わないよう促した。ベッセント氏は「中国は実のところ交渉しようともしていない。彼らこそが、国際貿易システムに対する最大の攻撃者だからだ」と述べた。
カナダは9日の米相互関税発動と同時刻に、3日に発動した米国の25%の自動車追加関税に対抗し、米国製自動車に同率の輸入関税を課す報復措置に踏み切った。欧州ではフランスとドイツが米国への強硬な対応を主張している。
トランプ氏は、日本や韓国などの主要同盟国が関税措置の軽減を要請して米国との交渉に入ることには歓迎の意向を示している。「オーダーメード」方式のディール取りまとめの協議に向けて「非常に順調に」進展していると語った。
批判の声
トランプ氏はさらなる関税措置も予定している。8日にワシントンで開催された共和党下院議員の資金調達パーティーでは、かねて計画していた医薬品への輸入関税を「近く」発表すると表明。同氏はこのほか、木材や半導体への関税賦課の方針も示している。
トランプ氏が2日に相互関税を発表して以降、ホワイトハウスはウォール街や複数のエコノミスト、共和党議員の一部などからの批判への対応を迫られている。関税が米経済の繁栄をもたらし、国内の製造業を復活させるとの同氏の主張に対し、消費者物価の上昇や景気鈍化につながると懸念の声が上がっている。
今後の路線を巡るトランプ政権のメッセージも明確さを欠く。米国が関税を賦課することで、軽減を望む貿易相手国・地域が交渉で対米貿易障壁の削減に応じ、トランプ氏もそれを受けて米関税率の引き下げを認めることになるだろうと、一部の当局者は指摘する。
他方で、ナバロ上級顧問(貿易・製造業担当)は、トランプ氏が単に交渉の道具として関税を利用しているとの見方を繰り返し否定している。
ローン担保証券 (CLO)市場に不安の兆しが表れている。レバレッジドローンと呼ばれる低格付け企業向け貸付債権を証券化し、元利金を裏付けに発行される。
トランプ米政権が貿易相手国・地域に課す関税政策による混乱がさまざまな資産クラスに波及し、ボラティリティーが高まっている。
最高格付けのCLOに投資する200億ドル(約2兆9000億円)規模の上場投資信託(ETF)「ジャナス・ヘンダーソンAAA・CLO・ETF(ティッカーJAAA)」から約6億ドルの資金が7日に引き出された。ブルームバーグの集計データによれば、1日の流出額として2020年のスタート以来で最も大きい。
資金流出に伴い、7日のJAAAの取引価格終値は、ポートフォリオのCLOの価値を1.1%下回り、記録的なディスカウントとなった。
売り圧力が強まる中で、CLO・ETFは解約に応じるため、保有資産の一部清算を余儀なくされている。事情に詳しい複数の関係者によると、JAAAは7日に約2億2000万ドル相当のCLOを売却し、4日にもかなり処分した。
CLOは通常変動金利であり、従来の想定より速いスピードで金利が低下しそうな局面では、投資リターンが悪化する。借入金を活用した企業買収、レバレッジドバイアウト(LBO)向けの貸付債権を担保とすることもあって、信用リスクにもさらされる。
石破茂首相はトランプ米大統領と7日に行った電話会談を踏まえ、関税を巡り米政府との本格的な交渉に乗り出す方針だ。一方で、米国側をどう説得すればいいのか、石破氏が考えあぐねている様子もうかがえる。
その理由はトランプ氏らから出た最近の発言を聞けば容易に理解できる。同氏は先週、トヨタ自動車は「米国で100万台の外国製自動車を売っているが、ゼネラル・モーターズ(GM)は日本ではほとんど売れない」と関税政策に触れながら述べた。
「フォードはほとんど売れない。わが国の企業はどこも外国に進出できない」と付け加え、日本など各国が「非金銭的制限」を設けていると非難した。
トランプ氏のアドバイザー、スティーブン・ミラー氏によるXへの投稿はさらに強烈な不満を発している。
「なぜ米国の道路は欧州や日本の車であふれているのに、彼らの道路に米国車が1台も走っていないのか」と疑念を呈し、日本のような国は「自国市場をわれわれの車に閉ざす一方で、われわれの市場は彼らの車であふれている」とコメントした。
GMとフォードが日本でほとんど売れていないのは事実だ。GMの販売台数は前年度で約1000台、フォードは200台以下だった。しかし、不公正な貿易慣行が問題であるという考えは誤りであるだけでなく、いつまでも消えない神話の一つだ。
売れない理由
米国が日本に課している自動車輸入関税は2.5%だ。日本はトランプ政権以前からもっと低い関税率を米国車に適用していた。
実際には何パーセントか。答えはゼロだ。日本政府は1978年以降、自動車輸入関税を課していない。確かに過去に障壁があったが、それはもう何年も存在していない。他の障壁も取り払われている。
市場アクセスを巡る米国の不満について、日本の国会議員たちは何世代にもわたり頭を抱えてきた。米国車が売れない理由は実際にはもっと単純なことだ。つまり、米国車に魅力がないのだ。
米国の自動車メーカーが、単に日本人が好む車を造ることができなかっただけの話だ。日本のドライバーは安全性と信頼性に優れ、コストパフォーマンスの高い小型で燃費の良い車を求めている。
もちろん、こうした要望に応えるのは、米国勢のみならず多くの国内メーカーにとってさえ難しい。だからこそ、日本で売れる車の2台に1台はトヨタ製なのだ。
さらに、日本国内では販売台数の3分の1が軽自動車で占められている。米国のメーカーはこのカテゴリーの車は製造していない。
一方、米国で最も人気のある車は、日本の道路や駐車場には大き過ぎる。米国で長年トップセラーとなっているフォード「F-150」の一部モデルは、あまりにも大きく、日本の普通免許では運転することさえできない。
日本で外国車もよく見かけるが、それは国内メーカーが提供できない何かがあるからだ。それが、日本の高級車市場で外国ブランドが存在感を示している理由だ。
メルセデス・ベンツグループは昨年、5万台以上を日本で販売。BMWやフォルクスワーゲン(VW)も成功を収めている。欧州車が高級イメージをアピールできている一方で、米国車の評判は良くない。
米国勢が努力を惜しまなければ、その評価は変わるかもしれないが、そうする米メーカーはほとんどない。日本でも富裕層が住む地域で目にする機会が増えているテスラは、その例外の一つかもしれない。同社は日本の販売データを公表していない。
ミラー氏のような苦情から判断すると、多様性・公平性・包摂性(DEI)やその他の「目覚めた」とされるイニシアチブへの反対で知られるトランプ政権は、アクセスにおける平等を望んでいないように思えるのは何とも皮肉だ。
むしろ、平等な結果という形での公平性を求めているのがトランプ政権だ。
文化的基盤
日本市場へのアクセスが制限されているという主張が最も長く続いている例は自動車かもしれないが、対日批判はそれだけで終わらない。
トランプ氏はかつて日米安保条約を批判する発言の中で、日本の消費者は日本製のテレビを好むと考え、「もしわれわれが攻撃されたら、日本がわれわれを助ける必要は全くない。ソニーのテレビで見ていればいい」と2019年にやゆしていた。
しかし、こうした固定観念はもはや当てはまらない。現在、日本で販売されるテレビの半分以上は中国製だ。かつては低品質とされていた中国ブランドは、コストパフォーマンスの高さで国内の消費者を魅了し始めている。今やソニー製テレビの国内シェアは10%以下に落ち込み、海信家電集団(ハイセンス)やTCL科技集団にリードを許している。
携帯電話市場でも同じことが起きた。2000年代初頭に日本で短い間事業を展開していた英ボーダフォン・グループの経営陣は、他の国々では成功を収めていた戦略が日本で消費者に受け入れられなかったことに困惑。
当時よく指摘されていたのはボーダフォンが日本人の好みを理解していなかったことではなく、日本製端末に対する非論理的な愛国的な選好というものだった。
だがその論理は数年後、アップルがスマートフォン「iPhone」で日本のほぼ全ての端末サプライヤーを駆逐したことで破綻。日本市場投入から15年余りを経た今、iPhoneは円安で非常に高価になっているが、それでも依然として5割のシェアを占めている。
経営陣や政治家が「非関税障壁」や「非金銭的制限」と呼ぶものの表面を少しはがしてみると、その裏にあるのは単に、厳しい国内市場で消費者のより微妙な好みを理解しているライバル企業に対するフラストレーションだというのはよくあることだ。
顧客の要求は非常に厳しく、その選択はグローバルなトレンドとは異なることが多いが、これは、欧米とは全く異なる文化的基盤を持つ先進的な大規模経済圏では驚くことではない。
しかし、ウォルト・ディズニーやLVMH、マクドナルドから動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」に至るまで、日本の消費者は外国の製品やサービスを購入することに何の抵抗もない。
これらの企業が受け入れられているのは、何十年にもわたって、国内市場の好みに合うよう努力してきた結果だ。ただ、石破氏がトランプ氏にその点を理解してもらえるかどうか、あるいは論理的に議論して説得できるかどうかは全く別の問題だ。
米国の株式市場はこの1週間、投資家に極度のストレスをかけている。だが債券市場も平静を保てるような状況ではなかった。
8日にはS&P500種株価指数が4日続落する中、米長期国債の価格も下落した。価格と逆の動きをする利回りは急上昇した。
とりわけ予想外だったのは、それに先立つ数日間、株価が急落しても長期国債の価格が通常のように上昇しなかったことだ。混乱が起きると国債が安全資産になるという考えはもはや通用しなかった。
なぜ米国債利回りがこのような動きをしたのかは大きな疑問だ。
その答えは債券トレーダーが反射的に最も単純なシナリオを織り込んでいるからかもしれない。つまり短期的な経済ショックの後は、急速に現状を回復するということだ。また債券は二つの異なる方向に引っ張られている。景気後退懸念が強まる一方で、関税によってインフレの加速や高止まりの見込みも高まっている。
二つの相反する力がいかに作用するかは、株式投資家にとって重要だ。
株式相場は急落し、S&P500種指数は7日に弱気相場入りする水準付近に達した。それでもまだ割安ではない。株価は下げたものの、ウォール街の利益予想も引き下げられ、S&P500種指数の予想益利回りは5.5%にとどまる。株式益利回りは株価収益率(PER)の逆数で、債券利回りと比較しやすい尺度となる。
米10年債利回りは4.3%付近に回復している。これは8日にも起きかけた株価反発のブレーキになりかねない。株式アナリストが高まる景気後退リスクを十分織り込んでいないだけに、そのリスクは特に大きい。
長引く景気悪化が現実のものとなれば、特に株価のバリュエーションが引き続き高い場合、通常は米国債が大勝利を収めるはずだ。
もちろん、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は景気後退に直面しても金利を動かさないため、利回りは下がらないとの見方もできる。これは妥当な懸念だ。トランプ氏が発動する関税はFRBを苦境に追い込む。たとえ消費者や企業が支出を減らしても、輸入価格は高騰するだろう。
だが市場は金融引き締めをあまり織り込んでいない。CMEのFedWatchツールによると、デリバティブ(金融派生商品)市場はFRBが年内に1ポイントかそれ以上金利を引き下げる確率を76%とみている。
実際、米国債1年物と2年物の利回りは長期債と違って低下している。FRBが近々金融緩和に動くことへの期待の表れだ。
インフレ連動債をみると、さらに明確に分かるだろう。今後1年間の見通しでは、債券利回りに二つの方向への力が働いている。投資家は関税によるインフレ率急上昇を予想する半面、景気減速とそれに伴う金融緩和(インフレ調整後の実質ベースで)も予想している。
2年先になるとインフレのショックは収まるようだが、FRBは依然として経済を支援するとみられている。それ以降、債券市場はインフレ調整後金利がトランプ氏の関税発表前に予想された水準と同程度の高さになると予想。一方でインフレ率自体は低下するとみている。
後者は奇妙な予想ではある。トランプ氏の保護主義は、長期的にも生産性低下とインフレ高進を招く可能性が高まっている。
恐らく投資家の見立ては、FRBが現在の引き締め的な姿勢を景気悪化にも適用して対応するということだろう。そうであれば平均的な物価上昇は抑えられるだろう。
だがより可能性が高いのは、トレーダーが現在の混乱を踏まえ、長期的な経済予測を断念してしまったことだ。
アクサ・インベストメント・マネージャーズのインフレ担当共同責任者、エリダ・レナルズ氏は7日、「市場は平均に回帰する習慣がある。パラダイムの変化に対応する準備ができていない」と指摘。また、ここ数日のボラティリティーで取引が突然巻き戻されたことにも市場は動揺していると続けた。
恐らく他の要因も作用している。一部の投資家は債券から株の押し目買いや現金へと資金をシフトさせている。最近のドル急落は、特に外国人投資家などの資金引き揚げを示す可能性があり、また今月発行される新規米国債への期待もあるだろう。
最も恐ろしい可能性は、米政府が37兆ドル(約5480兆円)の債務を借り換える能力に市場が懸念を示していることだ。米国の財政赤字はすでに国内総生産(GDP)比6%を超えており、景気後退で税収が減り、失業給付金が増えれば、赤字はなお拡大する。
だがそうした懸念は、短期金融市場の混乱という形で現れるはずだ。同市場は主に米国債の安全性を前提に構築された金融システムの活力源だからだ。2007年とは異なり、そうした混乱は起きていない。最終的には、米国は自国通貨を発行できるため、債務不履行(デフォルト)を回避できる。FRBには外国の大規模な保有者が国債を売却する際の影響を緩和する手段もある。
要するに、最悪のシナリオをヘッジしたい人は、債券価格に織り込まれた予想とは逆のポジションをとればよい。
年内利下げが行われる予想に基づき短期債は上昇しているが、その足元が揺らぐ可能性もある。FRBは2022~23年に、物価高騰が供給主導の場合も、景気よりもインフレ対策を優先する姿勢を示した。
逆に言えば、米物価連動国債(TIPS)10年物が提供する2.1%の利回りは、将来、経済成長が緩やかになり、世界的なサプライチェーン(供給網)が分断される可能性がある中で、非常に魅力的に見える。
株式にとっては不利なことだが、投資家には結局、逃げ場があるのかもしれない。
ドナルド・トランプ米大統領による約100カ国・地域への追加関税が、9日に発動した。米国の関税は第2次世界大戦以来で最も高い水準に達し、対象となった国・地域は米国との貿易取引の条件を再交渉しようと急いでいる。
今回の関税はトランプ氏が「相互関税制度」と呼ぶものの一環で、政権は貿易上の悪質な行為者とみなす国・地域を標的にしている。
新たな関税ではベトナム、ラオス、カンボジアなどが45%以上の関税を課されるなど、多くの東南アジア諸国が最も大きな打撃を受ける。中国に対しては84%の関税引き上げが適用され、トランプ政権の対中国輸入品全体への関税は104%に達する。
トランプ氏の2期目以前から課されていた特定製品への関税を含めると、対中国の平均関税率は約125%になると推定されている。
トランプ政権のチームは各国・地域が関税を引き下げ、米国製品に対する非関税障壁を撤廃すれば、より低い関税率を交渉できる可能性があるとしているものの、現時点で合意に至った国・地域はない。
いわゆる相互関税の金額は多くの場合で簡単な算式に基づいているとみられ、米国との貿易不均衡の規模を、米国がその国から輸入する金額で割ったものとなっている。
アメリカのドナルド・トランプ大統領が打ち出した「相互関税」の上乗せ分が9日(日本時間同日午後)、発動となった。これによりアメリカは、中国からのほとんどの輸入品に104%という驚くほど高い税率の関税を課し、日本製品にも税率24%を適用する。アメリカへの報復関税を発表している中国は「最後まで戦う」と宣言しており、世界2大経済国の激しい対立が、世界経済にとって大きな懸念となっている。沈静化の兆しが見られないこの貿易戦争は、今後どうなるのか。複数の専門家に見解を聞いた。
アメリカ政府がこの日発動した関税は、トランプ氏が「最悪の違反者」だとする約60カ国を対象にしたもので税率の幅は11~50%。発動を受け、アジア各地の株式市場は下落傾向が続いている。
こうした中、米中の対立が大きな焦点となっている。専門家らは厳しい見方を示している。
「中国が折れて、一方的に関税を撤廃すると考えるのは間違いだ」。米シンクタンク「コンファレンス・ボード」の中国センターのシニアアドバイザー、アルフレド・モントゥファー=ヘル氏はこう指摘する。
「もしそうなれば、中国は弱腰に見られるだけでなく、アメリカにいっそうの要求を許すことにもなる。状況は行き詰まっており、長期の経済的な痛みにつながる可能性が高い」と同氏は言う。
米首都ワシントンのシンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」の米中貿易専門家、メアリー・ラヴリー氏は、「私たちが目にしているのは、どちらがより痛みに耐えられるかのゲームだ。何が利益になるかという話は、もうしなくなっている」とBBCの番組「ニューズアワー」で話した。
同氏は中国について、経済が減速しているものの、「『アメリカの攻撃』に屈するのを避けるためなら、痛みに耐えてみせようとする可能性は高い」とも述べた。
中国は、長引く不動産市場の危機や失業率悪化の影響で、国民の消費が足りていない。地方政府も負債を抱え、投資の拡大や社会的セーフティネットの拡充に苦慮している。
「今回の関税は、この問題を悪化させる」。米ハーヴァード大学ケネディ・スクールのモサヴァー・ラーマニ・政治経済センターのアンドリュー・コリアー上級研究員はこう言う。
中国は、輸出が打撃を受ければ、重要な収入源が損なわれる。輸出は長年にわたり、中国の爆発的成長の要因となってきた。ハイテク製造業の成長や国内消費の拡大で経済の多角化を図ってはいるが、輸出は中国経済の重要な原動力であり続けている。
コリアー氏は、関税の影響がいつ出るのかを正確に言うのは難しいが、「おそらく近い内に」現れると推定。「経済の減速と資源の減少で、(習近平国家主席は)ますます難しい選択に直面している」と付け加えた。
アメリカにも影響
貿易戦争の影響を受けるのは中国だけではない。
アメリカがすぐに、中国製品に代わる製品をどう見つけるのかは明らかではない。
米通商代表部によると、アメリカは昨年、4380億ドル(約63兆5700億円)相当の製品を中国から輸入した。一方、アメリカから中国への輸出は1430億ドルで、アメリカの貿易赤字は2950億ドルだった。
シンガポール「ヒンリッヒ財団」の貿易政策部門トップ、デボラ・エルムス氏は、米中両国の現状について、「多くの面で経済的に絡み合っており、双方向で多大な投資が行われ、多くのデジタル貿易とデータの流れがある」と説明。「関税をいつまでかけ続けられるのか、その期間には限界がある」と言う。
ただ同時に、「両国が互いに打撃を与え合う方法は他にもある。これ以上悪くはならないとの見方もあるかもしれないが、悪くなり得る方法はたくさんある」と話す。
同氏はまた、米市場から締め出される中国製品について、東南アジアなどの市場に行き着くだろうと予測。「そうした場所にも独自の関税があるので、どこで売ることができるのか、考えなくてはならない」、「つまり、私たちはまったく異なる世界、先行きがとても見にくい不透明な世界にいる」とした。
最終的にどうなるのか
オーストラリアのシンクタンク「ローウィー国際政策研究所」の首席エコノミスト、ローランド・ラジャ氏は、現在の状況について、トランプ政権1期目と違い、「何がこの関税の原動力になっているのかが不明で、ここから先、事態がどうなるか予測するのは非常に難しい」と言う。
同氏はまた、中国には自国通貨の切り下げや米企業への締め付け強化など、報復のための「幅広いツール」があると指摘。「ポイントは、中国がどの程度抑制的になるかだろう。メンツを保つために報復に出ることもあれば、あらゆる手段を講じるという対応を取る場合もある。中国がそうした道を望んでいるかは定かではない。ただ、その可能性はある」とする。
一部の専門家は、米中が非公開の協議を行う可能性があるとみている。トランプ氏は、政権に復帰して以降、まだ中国の習主席と話をしていないが、中国は繰り返し、対話の意思があることを示している。
ただ、あまり期待はもてないとする専門家もいる。
前出の「ヒンリッヒ財団」のエルムス氏は、「アメリカは強く出過ぎていると思う」と分析。アメリカは中国にとって、そしてどの国にとっても、非常にもうけの大きい市場なので、最終的にはどの国もアメリカに屈する――という、トランプ氏の考えには懐疑的だ。
「どのような結末が待っているのかは、誰にもわからない」とエルムス氏は言う。「私は変化のスピードと激化を懸念している。先行きはもっと厳しいし、リスクも非常に高い」。
(サマリー)水曜日、関税による市場の混乱がさらに進む中、米国債が売られるなか、投資家は短期の欧州債に目を向けた。
「従来であれば、ボラティリティの高い時期には米国に投資していたかもしれないが、これは米国の話だ。ドイツは質の高い資産への逃避の広がりから恩恵を受けている」と、信用格付け分析会社KBRAのソブリン部門シニアディレクター、ケン・イーガン氏はCNBCに語った。
一方、TSロンバードの経済学者は、米国政府の借入コストの急上昇を、2022年の英国の「ミニ予算」危機に例えた。
(サマリー)欧州の自動車大手株価は水曜日に下落し、ドナルド・トランプ米大統領が数十カ国に対して課した大規模な関税が発効したことで最近の下落が拡大した。
アナリストらは、米国の貿易措置の影響を最も受ける可能性が高いのはドイツの自動車メーカーだと警告している。
特にサプライチェーンの高度なグローバル化を考慮すると、貿易戦争の激化は世界の自動車産業に深刻な影響を及ぼすことが予想される。
●中東情勢
●エマージング
ドナルド・トランプ米大統領は東部時間9日、中国への関税を追加で84%引き上げる予定だ。中国からの輸入品に課す関税は合計で104%に達する。
トランプ氏はすでに、合成麻薬フェンタニルを巡る問題を理由に20%の追加関税を課していた(2月に10%、3月に10%上乗せ)。
トランプ氏は先週、相互関税として中国産品に追加で34%の関税を課すと表明。これにより合計は54%になった。
だが中国が報復措置を取ると発表したため、トランプ氏は今週、9日に発効する「相互関税」でさらに50%を上乗せすると発表した。合計すると、中国からの全輸入品に課される関税は104%となる。
ただ実行税率はさらに高くなる。104%の関税は、第2次トランプ政権開始時に適用されていた関税に上乗せされるためだ。トランプ氏は1期目に中国から輸入する幅広い製品への関税を引き上げており、一部はジョー・バイデン前大統領がさらに引き上げた。ピーターソン研究所によると、これらの措置により、第2次トランプ政権開始前の平均関税率は約20.8%となっていた。ただし、商品により税率は異なる。
中国からの全輸入品に賦課される104%の関税は、従来の商品別関税に上乗せされるため、中国産品への平均関税率は合計125%近くに達することになる。
ベッセント米財務長官は9日、中国が米国に対し84%の報復関税を課すと発表したことは遺憾だとし、中国にとって負け戦になるとの考えを改めて示した。 もっと見る
ベッセント長官はFOXビジネス・ネットワークのインタビューで「国際貿易システムの最大の違反者である中国が交渉の席に着こうとしないのは遺憾だ」と述べた。
その上で、中国の貿易政策の再均衡化を巡り、米国の同盟国は米当局と協議することを望んでいるとし、「これは大きな勝利だ。米国は製造を増やす方向に向け再均衡化を試みている。中国は消費を増やす方向に向けた再均衡化が必要だ」と語った。
同時に、中国に対し新たな関税に対応するために自国通貨の切り下げを試みないよう警告。「中国が通貨切り下げを始めれば、全世界に対する『税金』となり、その影響を相殺するために関税を引き上げ続けなければならなくなる。このため、中国に対し、こうしたことは行わず、交渉の席に着くよう強く呼びかける」と述べた。
また、米国の証券取引所に上場している中国企業の上場廃止も排除しないとし、全ての選択肢が考えられると語った。
中国政府は9日公表された対米通商白書で、対米貿易黒字は不可避だとし、トランプ米大統領が中国製品に関税をかけ続け、黒字幅を縮小させようとするならば、中国にはその戦いを続ける「決意と手段」があると警告した。
白書は、米政権による累計104%の対中国追加関税が発動された後に公表された。
政府は白書の中で「中国が意図的に貿易黒字を追求しているわけではない」とし、「中米間の商品貿易の不均衡は、米経済の構造的問題の必然的な結果であると同時に、両国間の比較優位と国際分業の結果でもある」と指摘した。
米国勢調査のデータによると、中国の対米貿易黒字は2023年の2791億ドルから昨年は2954億ドルに拡大した。物品貿易の赤字は18年の4180億ドルでピークを迎えたが、これは第一次トランプ政権が中国製品に関税を課した年だった。
中国商務省は白書とともに公表した声明で「貿易戦争に勝者はいない。中国は貿易戦争を望まないが、政府は国民の正当な権利と利益が傷つけられたり、奪われたりすることを決して許さない」と表明。
同省報道官は「米国は利己的な利益のために最大限の圧力をかける道具として関税を使っている。これは古典的な単独行動主義、保護主義、経済的いじめだ」と語った。
新華社によると、中国はこの白書の中で、トランプ政権が中国製品への関税を引き上げたことを受け、対抗措置を取ることを改めて表明した。
中国政府は白書で、世界第1位と2位の経済国が経済・貿易協力において相違や摩擦があるのは普通のことと考えており、それを解決するために米政府と意思疎通を図りたいとした。
米政権の「相互関税」導入発表を受け、貿易相手国と世界の金融市場は激しい衝撃に見舞われている。トランプ大統領の猛攻は続いているものの、南米ブラジルやインドなど、ごく一部は恩恵を受ける可能性のある国として浮上しつつある。ただ、世界は景気後退のリスクに直面しており、恩恵は限定的になる見通しだ。
相互関税措置では、長年同盟関係にある欧州連合(EU)や日本、韓国などは重い関税率を課され打撃は深刻。一方で、ブラジルやインド、トルコ、ケニアは一筋の光明を見出している。
ブラジルの場合、相互関税率は最も低い10%。農業大国だけに追い風となっている。中国が対米報復関税を発動すると表明したことで、ブラジルの好敵手である米国の農産物輸出業者は、対中輸出で従来よりも厳しい条件に置かれるためだ。
トランプ氏の仕掛ける貿易戦争は全世界が対象だが、主要ターゲットは中国など対米貿易収支が黒字の国。このため、ブラジルなど赤字国は相互関税を逆手にとることができる。北アフリカのモロッコやエジプト、トルコ、シンガポールも同様だ。
「米国はエジプトだけに関税を課したわけではない」。こう話すのはエジプト・トルコ合弁企業T&Cガーメンツのマグディ・トルバ会長だ。「米国は他の国々にはるかに高い関税を課した。エジプトの成長に好機が到来した」と意気盛んだ。
トルバ会長は、エジプトの繊維産業の主要な好敵手として中国やバングラデシュ、ベトナムを挙げた。いずれも高い関税対象となった国だ。会長は「チャンスは目の前にある。我々はそれをつかみさえすればよい」と言い切った。
トルコの場合は、以前は鉄鋼とアルミニウムの対米輸出で重い関税を課され痛手を負ったが、今や恩恵を受ける立場にある。他の世界の貿易業者がトルコよりも高い関税にあえいでいるためだ。ボラト貿易相は、他の多くの国に課せられた関税を考慮すると、トルコ製品に対する関税は「一番ましだ」と述べた。
<マイナス要因も>
米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいるモロッコも、EUや以前は勢いのあったアジアの主要輸出国と比較すれば有利になる可能性がある。
匿名を条件に語った元政府当局者の1人は「対モロッコ相互関税が比較的低い10%であることを考えると、対米輸出を図る外国資本をモロッコに引き付けるチャンスだ」と述べた。
ただ、マイナス要因も残っており、手放しでは喜べない。例えば中国による最近の対モロッコ大規模投資がトランプ氏の目に留まりかねないためだ。
さらに首都ラバトの独立系シンクタンクのエコノミストによると、自国の航空宇宙産業や肥料産業が打撃を受ける可能性は消えていない。
「米国はモロッコの輸出先として主要な市場ではないため、直接的な影響は限定的と思われるが、関税が引き起こす(世界への)衝撃波や景気後退の影がモロッコの経済成長に影響を及ぼす恐れがある」と語った。
アフリカ東部ケニアの場合、特に繊維メーカーは、関税の影響がより大きい国々の競合相手に対し比較優位を得られることを期待している。ただ、モロッコ同様に相互関税が逆風となる可能性がある。
<勝者がいない貿易戦争>
恩恵と損害の両面の影響を受けかねないとの見方はシンガポールでも広がっている。
同国株価指数のストレーツ・タイムズ指数(STI)は7日7.5%下落し、2008年以降で最大の下落を記録し、8日も値を下げた。
しかし、シンガポール金融大手オーバーシー・チャイニーズ・バンキング・コーポレーション(OCBC)のエコノミスト、セレナ・リン氏によると、製造業者が分散化を求めて投資資金の一部をシンガポールに振り向ける可能性がある。ただ、シンガポールは製造業規則や現地調達要件が厳しく、その影響は受ける見通しという。
リン氏は「米国または世界経済が完全に動きを止めたり、景気後退に陥ったりすれば、貿易戦争の『勝者』は皆無となる。全てが(他国と比べてみればどうか、という)相対的な話にすぎない」と突き放した。
インド製品は26%の関税が課されているが、アジアの競合国が受ける打撃よりはさらに深刻。そうした中でインドは危機打開の機会を模索している。
ロイターが入手したインド政府の内部資料によると、米国が輸入する繊維と衣料、履物などの分野ではインド製シェアの拡大が見込める。米政府の相互関税措置の発表直後、商工省は「米国の通商政策における今回の新たな展開によって生じる可能性のある各種の機会を調査中だ」との見解を表明した。
インドは中国よりも関税率が低い措置を受けた。このため、米アップルのiPhone(アイフォーン)製造シェアでは中国を引き離して拡大することを期待しているが、対インド関税は26%に及ぶため、米国ではアイフォーンが大幅に値上がりする恐れがある。
南米では、輸出が銅から穀物に至るまで一次産品に集中している中、米国の関税による混乱で、長年停滞していた南米関税同盟メルコスル(南米共同市場)と欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)交渉が再び勢いづくとの期待が出ている。
メキシコも相互関税措置では、他国に比べれば傷は浅い。RBCブルーベイの新興市場担当上級ストラテジストによると、貿易の大半が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)によって守られているためだ。
ただ「メキシコ関連の資産は他国の資産に比べて厳しい状態だ。メキシコは米経済の影響を大きく受けるためだ」と話した。その上で「結局のところ、トランプ氏の貿易政策は回り回って米経済を痛めつけている」と切って捨てた。
トランプ米政権が中国からの輸入品、さらに中国から調達した部品を加工している国から輸入品に対する関税を引き上げたことを受け、中国は経済的な消耗戦に備えようとしている。
米国は先週、ほぼ全世界に10%以上の輸入関税を課すと発表。うち中国企業が生産拠点を移しているベトナムなどにはさらに高い関税を適用することを公表した。中国は米国からの輸入品に報復関税を課すと表明し、トランプ大統領は中国製品への関税をさらに引き上げると脅した。
中国の政策顧問は「先に降伏した方が被害者になる」とし、「どちらがより長く持ちこたえられるかの問題になる」との考えを示した。
とはいえ、中国に「大きな有効打」と言えるような選択肢はない。自国製品の輸出先をアジアや欧州、その他の市場に振り向けようとしているものの、逃げ道にはならないかもしれない。
こうした国々は米国よりもはるかに小さな市場しか持っておらず、同じくトランプ関税で地域経済が打撃を受けるからだ。また、安価な中国製品をさらに受け入れることに警戒感を抱いている国も多い。
国内的には、通貨人民元の切り下げが関税の影響を和らげる最も簡単な方法となるが、これは資本流出を引き起こす可能性がある。中国はこれまで、非常にわずかな人民元の下落しか容認していない。
さらなる補助金や輸出品への減税といった景気刺激策も考えられるが、こうした施策は企業の設備過剰に拍車をかけ、デフレ圧力をさらに強めるリスクもある。
アナリストらは長年にわたり、中国が内需を大きく押し上げる政策を実施するように提唱してきた。
中国政府は低迷する個人消費の喚起を呼びかけているものの、個人消費を実質的に増加させる施策はほとんど実施されていない。大胆な政策転換が必要であるにもかかわらず、短期的には製造業を混乱させる可能性があるからだ。
中国の米国へのモノ(物品)の輸出額が、輸入額約1600億ドルの約3倍であることを踏まえると、中国が独自の関税や輸出規制で反撃することはあまり効果的ではないかもしれない。しかし、中国が自分たちの方が米国よりも痛みに対する限界点が高いと信じ込んでいるのならば、それが唯一の選択肢かもしれない。
米国が中国からの輸入品に34%の追加関税を課すと先週発表したのに対し、中国も同様の措置で対抗すると表明した。トランプ氏が関税をさらに50%引き上げるとけん制すると、中国は「最後まで戦う」と宣言した。
調査会社ガベカルの調査責任者、アーサー・クローバー氏は「中国は米国に対して大きな貿易黒字を抱えており、レアアース(希土類)を除けば輸出規制で失うものの方が大きいため、中国が受けるほどの痛みを米国に与えることはできない」と指摘。その上で「中国政府の動きから読み取れるのは、米国が支配しようとしているのを押し返し、経済的な消耗戦に陥っても全く構わないという姿勢だ」との見方を示した。
<「精密な攻撃」>
中国は米国に対して関税措置に加え、戦略的な物資や企業の一部に対する支配力を行使することで米国の最大の痛みを突くことができる。
中国は今月7日、米国の防衛・ハイテク分野が大きく依存している資源の供給を制約する動きとして、7種類の希土類を輸出規制リストに追加した。中国は他に10種類の希土類にも適用を広げるか、米国への輸出を全面的に禁止する選択肢を残している。
中国は米企業を制裁の対象としたり、現在は台湾に武器を売却している大手企業が含まれている「信頼できない企業のリスト」に加えたりすることもできる。中国から電池を調達していた米国の無人機メーカー、スカイディオは中国の制裁に直面している企業の一つだ。
復旦大米国研究センターの呉新波所長は「わが国の攻撃方法は『精密な攻撃』だ」とし、「主な優先事項は自制を維持することであり、次に非対称的な方法を用いること」としてその中には輸出規制も含まれると説明した。
米国と中国は互いに痛みを増大させようとしている中で、他の国々も貿易戦争の巻き添えとなっており、歯止めをかけて収束させていくのは想像しにくくなっている。エコノミストらは一方が世界有数の生産国であり、もう一方が世界最大の消費国であることを考えると、トランプ氏が目指す中国との貿易の均衡は短・中期では実現不可能だと指摘する。
中国を拠点とするコンサルティング会社プレナムのパートナー、Bo Zhengyuan氏は「中国は、米国の措置が交渉のための適切な雰囲気を作るのに役立つとは考えていない」と語った。
交渉が難航した場合には政治的な意思のぶつかり合いになり、中国が優位に立つと考えるアナリストもいる。
先週末には数千人ものデモ参加者が米首都ワシントンなどの都市に集まり、トランプ氏に抗議した。トランプ関税が引き起こした世界市場の混乱に対しては、米金融界も反発している。
厳しく統制された中国では同じような抵抗に直面する可能性は低く、必要になれば今年後半に金融・財政刺激策を打ち出して社会的ストレスを幾らか緩和することも可能だ。
香港大ビジネススクールのジウ・チェン教授は「最終的にはどちらの国がより効果的に自国民を管理し、この貿易戦争による経済的影響を制御できるかというゲームになる」と言及。「トランプ氏と少なくとも共和党の政治家は、選挙による大きな圧力に直面しなければならなくなる」とし、「よってトランプ氏が中国と政治的に戦う能力はそれほど高くはないと思う」との見解を示した。
ドナルド・トランプ米大統領による第1弾の関税措置と貿易を巡る脅しを受けてメキシコは守勢に立たされた。だがトランプ氏は今や世界中を標的にしており、メキシコは突如として、ライバルの製造拠点よりも優位に立つことになった。
メキシコはトランプ政権が9日に発動する関税を逃れる一方、メキシコと同様に低コストの労働力を持つ世界的な輸出大国の中国とベトナムは標的になった。非米国製の自動車部品への25%の新たな関税など、一部の関税はメキシコも対象だ。しかし、メキシコの対米貿易の大半は米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の下で関税の適用除外になっている。
「新たな関税はメキシコの競争力を高めるものだ」。米国とメキシコの国境沿いで十数カ所の工場を運営する米ニアショア・カンパニーの共同最高経営責任者(CEO)、ホルヘ・ゴンサレス・ヘンリクセン氏はそう話した。
生産や供給の拠点を米国に近い地域に移転するいわゆる「ニアショアリング」を検討する企業にとってメキシコは格好の場所であり、トランプ氏の新たな関税政策でも当面はメキシコのそうした地位に変化はない。フォーリー・アンド・ラードナー法律事務所のパートナー、グレッグ・ヒュージアン氏は、米中貿易戦争の範囲が狭く製造業の移転も限定的だった第1次トランプ政権時代と比べ、今回米国が貿易障壁をさらに拡大すれば、メキシコへのニアショアリングは活発化することが考えられると語った。
中国は米政権による既存の関税に加えて34%の追加関税の対象になっている。中国が報復措置を発表したことを受け、トランプ氏はさらに50%の追加関税を課す考えを表明した。ベトナムには46%の関税がかけられる。
トランプ氏が大統領1期目の2018年に署名したUSMCAの下で、メキシコは米国への財の供給元として最大になった。比較的低い労働コストや米国との文化的親和性を持つ技能労働者、米国との地理的な近さ、そして関税がほぼ免除されていることなどがメキシコを有利にしている。
米国による世界全体の鉄鋼とアルミニウムへの25%の関税、また、米国製部品を除く自動車に対する25%の関税はメキシコも対象となる。さらに、USMCAに適合しない財にも25%の関税がかかっている。これはメキシコが米国への薬物と移民の流入を阻止するための十分な対策を講じていないという理由で課されており、十分な防止策が講じられているとトランプ政権が判断すれば、USMCAの非適合品への12%の関税に置き換えられる可能性がある。
ゴールドマン・サックスのエコノミスト、アルベルト・ラモス氏は、メキシコ全体の関税率は約8%になると予想しており、「それは良いことだろうか。 いや、良くはない。だがメキシコにとって世界の終わりかというと、そうでないことは明らかだ」と述べた。
メキシコは関税に関して有利な点があるものの、それが景気悪化による打撃の緩和や、政策を巡る不透明感で保留されている数十億ドル規模の投資再開につながるかどうかはまだはっきりしない。
メーカーの間ではすでに、関税を巡る新たな環境への対応が見られる。欧州自動車大手ステランティスはカナダとメキシコの一部の組立工場の生産を一時停止した。電池メーカーの米エナーシスは、メキシコ北部の工業都市モンテレイにある工場を閉鎖し、生産を米ケンタッキー州リッチモンドに移転すると発表した。
米政府のデータによると、米国の財の総輸入額に占めるメキシコのシェアは2018年の13.6%から24年には15.5%に上昇した。一方、中国のシェアは21.2%から13.4%に低下。同期間に米国の輸入市場におけるベトナムのシェアは2倍以上の4.2%に拡大した。
米首都ワシントンに本部を置く金融機関の業界団体、国際金融協会(IIF)でラテンアメリカ調査責任者を務めるマーティン・カステラーノ氏は、メキシコは中国からの輸入に依存する北米の状況を改善する可能性を持っている一方で、ベトナムにはそのような地理的アクセスやサプライチェーン(供給網)の統合が欠けていると指摘する。
貿易・投資コンサルティング会社AOMアドバイザーズのアントニオ・オルティスメナCEOはメキシコとカナダについて、関税や中国からの投資の審査に関して米国と緊密に協力できるとし、中国絡みの問題への両国の関与は他国にはまねのできないほど深く、強いものになるとの見方を示した。
エコノミストの見解によると、メキシコの輸出業者の大半はUSMCAの要件に適応・準拠する能力がある。これにより地域的な製造活動が活発化する可能性がある。こうした対応は現在、メキシコで事業を展開する企業にとって重要な関心事項となっている。
「われわれはこれまで行ってきたことを強化しているだけだ」。シカゴを拠点とするコンサルティング会社ネパノアのマネジングディレクター、アルベルト・ビジャレアル氏はそう述べた。同社は、メキシコで事業を展開する企業や同国に進出する企業向けにサービスを提供しており、顧客企業がUSMCAの要件を満たしているかどうかを確認するためのサプライチェーン分析などを手がける。
USMCAの交渉でメキシコ政府代表団を率いた貿易コンサルタントのケネス・スミス・ラモス氏はメキシコが直近の米関税措置から除外されたことついて、トランプ氏と対立することを避けたクラウディア・シェインバウム大統領のアプローチが奏功したと語った。
メキシコへの関税は2月に決定したが、その後2度延期された。シェインバウム氏はメキシコによる報復措置の概要を示すことを先送りし、米国との協議を続けることを優先してきた。
シェインバウム氏は先週、「これはメキシコ政府と米国政府の間で築いてきた尊重に基づく良好な関係によるものだ」と述べた。また、自動車、鉄鋼、アルミニウムに対する関税が解除または引き下げられるようにすることがメキシコの最優先事項になるとの認識を示した。メキシコは中国からの輸入品に対する関税の見直しも計画している。
メキシコの製造業の輸出の3分の1を占める自動車分野は米国との大きな争点となっている。メキシコは自動車の生産で世界5位、自動車の輸出で6位だ。昨年は米国に300万台近くの自動車を輸出し、米国の自動車部品の40%を供給した。メキシコの自動車産業では約200万人が働いており、昨年の輸出額は2000億ドル(約30兆円)近くに達した。
パーキンス・クイ法律事務所の国際貿易分野の責任者、マイケル・ハウス氏は「高度に統合されたサプライチェーンと製造ネットワークを持つ北米の自動車メーカー各社が現在、調整すべき点を綿密に検討していることは間違いない」とした上で、「そうした調整がメキシコにとって必ずしも有益でない可能性がある」と述べた。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
### ■全体概要
米トランプ大統領が**貿易相手国への追加関税(相互関税)の一部を90日間停止**すると発表したことを受け、**為替・債券・株式・商品市場が大きく反応**した。
### ■為替市場
- ドルは**円やスイスフランといった安全通貨に対して上昇**。
- 初めはドル安で始まったが、関税停止のニュースで**ドル/円が反発し148.80円まで上昇**。
- 市場は不確実性がある一方で、一時的な安堵感が広がった。
### ■債券市場
- **米10年債入札が好調**。最高落札利回りは4.435%。
- トランプ氏の発表により、**10年債利回りは一時上昇するも終盤は落ち着く**。
- 市場関係者は「短期的な安定」を評価。ただし、「関税政策の不確実性」は依然として残ると指摘。
### ■株式市場
- トランプ氏の関税一時停止発表を受けて、**米株は急騰**。
- **S&P500は9.5%上昇**し、2008年以来の大幅高。
- 一方で「90日後の不透明感」がリスク要因として意識されている。
### ■金先物市場
- 貿易摩擦懸念で**金は大幅上昇**。
- しかし、関税停止のニュースを受けて**リスク回避姿勢が後退し、金の上昇はやや縮小**。
### ■原油先物市場
- 米中間の報復関税激化を受けて**原油価格は一時急落**(55ドル台まで)。
- だが、**関税停止の発表により一転して買い戻しが入り、63ドル近くまで回復**。
- 株価上昇と合わせてリスク資産としての原油にも資金が流入。
【ロンドン株式市場】
- ロンドン市場は反落し、FTSE250が2.50%下落。
- トランプ大統領の医薬品に「大幅な」関税を発表するとの発言で、製薬・バイオ株が大幅に下落(FTSE350製薬・バイオテクノロジー株指数は6.06%安。アストラゼネカは6.8%、GSKは5.7%下落)。
【米中・国際の関税応酬】
- 中国は米国からの輸入品にかかる追加関税率を34%から84%へ引き上げ、10日に発動予定。
- 米国の関税措置に対し、カナダやEUも対抗措置を表明。イングランド銀行は、英国が世界経済への打撃リスクにさらされる可能性を指摘。
【その他の銘柄・市場の動向】
- 安全資産需要の高まりから金価格が上昇し、貴金属株指数は2.29%上昇。一方、他の主要業種は下落。
- 個別銘柄では、JDスポーツが9.5%上昇し、通年利益見通しが好材料として評価。
【欧州株式市場】
- 欧州全体でも反落。特にヘルスケア株が下落を主導(STOXX欧州600ヘルスケア株指数は5.79%安、ロシュは5.8%、ノバルティスは6.4%、ノボノルディスクは6.9%下落)。
- 銀行株は3.14%下落しており、ECBが来週の理事会で利下げを決定するとの見方が根強い。
- 原油関連・資源株もそれぞれ約4.98%、3.72%下落し、ドイツのDAX指数は3.00%安となった。
【ユーロ圏債券市場】
- ユーロ圏の国債は利回りが低下(ドイツ10年債は5bp下げで2.58%に)。
- 一方、米国の関税影響で米債利回りは大幅上昇し、独米10年債利回り格差は約182.73bpに拡大。
- また、短期金融市場では、17日に開催されるECB理事会で25bpの利下げが行われるとの見方が85%に達している。
備忘録(2025/4/8)
●海外企業決算
●海外企業
米金融大手が今週から順次、2025年第1・四半期(25年1-3月期)決算を発表する。今年は各行が貸倒引当金の大幅な積み増しを迫られるとみられる中、米政権による関税強化措置発表で市場が大幅下落したことを受けた経営幹部の経済情勢を巡る発言に注目が集まりそうだ。
ウェルズ・ファーゴのアナリスト、マイク・メイヨ氏は、今後数四半期における関税の影響として「景気後退の可能性が高まるにつれ、貸倒引当金が増える」と指摘した。
各行は今後数四半期にわたり、貸し倒れに備えて数十億ドルを積み立てるとみられる。
米金融大手JPモルガン・チェース(JPM.N), opens new tabのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、世界的な貿易戦争によってインフレや景気後退(リセッション)などの悪影響が長期化する恐れがあるとの認識を示した。
アーガス・リサーチの金融機関担当ディレクター、スティーブン・ビガー氏は「銀行は経済を反映する。経済が悪化すれば、銀行の業績もそれに連動する」とし、貸倒引当金を積み増すほか、リスクの高まりに伴う融資の抑制も予想している。
バークレイズのアナリスト、ジェイソン・ゴールドバーグ氏は「資本市場の活動や企業の合併・買収(M&A)は通常、不安定な時期には停滞するため、投資銀行の手数料収入は低下が予想される」と言及した。
関税措置発表後の市場混乱の影響は現在も分析が続いている。株式での損失は資産運用部門にとっては重荷となる一方、取引業務は活発化して収益が拡大する可能性もある。
●日本企業
●先進国政治動向
昨年11月、トランプ氏が米大統領選に勝利すると株式市場は急伸した。S&P500株価指数は史上最高値を更新し、選挙翌日では過去最大の上昇を記録した。
後に財務長官に就任する投資家スコット・ベッセント氏を含め、市場の専門家たちは幸せな日々が再び訪れると予測した。ベッセント氏は当時、「市場がトランプ2.0の経済ビジョンを明確に受け入れていることの証だ。市場は、より高い成長、より低い変動性とインフレ、そして米国全体の経済活性化への期待を示している」と歓迎して見せた。
当時のこうした想定は、典型的な保守派とは言い難いトランプ氏も、市場や経済に対する従来の手法を受け入れるとの見通しに基づいていた。規制緩和、活発な取引、減税が実現すれば、バイデン前大統領時代の好景気を超える成長が約束される。少なくとも、そう主張する声はあった。
トランプ氏は大統領選の期間中、米国の主要貿易相手国に対して高率の関税を課すと常々主張していた。この脅しを真剣に受け止めたアナリストらは、同氏の政策が経済成長を抑え、個人所得を減らすことになるとの試算を発表した。一方で一部のウォッチャーやトランプ氏の支持者は違う考え方を支持した。同氏の混沌とした政策手法、つまり、まず新たな関税の期限を設定しつつ、突然それを撤回するといったやり方を見て、実際には関税政策を本気で実行する気はないのではないかと受け止めたのだ。要するに、関税のかけ合いは他の国々を屈服させるための偉大な交渉人による演出に過ぎないという見方だ。
ところが状況は変わった。トランプ氏は先週、世界規模の「相互関税」を発表し、その後の株式相場急落により、2日間で時価総額5兆4000億ドル(約799兆円)が吹き飛んだ。ウォール街の一部の人々は、トランプ氏の関税計画と未来の姿を、より明確に捉えたわけだ。
「これは紛れもなく愚かな行為だ」と、インフラストラクチャー・キャピタル・アドバイザーズのジェイ・ハットフィールド最高経営責任者(CEO)は週末にブルームバーグ・ニュースに語った。ハットフィールド氏はトランプ氏がホワイトハウスのローズガーデンで発表した関税率一覧を「死のチャート」と呼び、「これは大変な緊急事態だ。貿易戦争を引き起こしていい理由など何もない」と訴えた。
トランプ氏が考えを改めて方針転換することを期待している人々は、自分たちが向き合っている嵐の強さを見直した方がいいだろう。トランプ氏は生涯を通じ、自らの行動の結果から隔絶されてきた。自ら作り出した経済の崩壊に、ほとんど関心がないように見える。週末にはゴルフを楽しんでいる自身の動画を投稿している。
ワシントン・ポスト紙は、あるホワイトハウス関係者のコメントとして、トランプ氏は就任からの3カ月、悪名高いほど負担の重いはずの職務をあまり深刻に受け止めていないと語った。同関係者は「もはや何を言われても気にしないという境地に達している。悪いニュース?それがどうした。彼は選挙戦で公約したことを実行するつもりだ」と話す。
同紙によると、トランプ氏は先週、相互関税を世界に向けて発表する約3時間前まで、計画を最終決定していなかった。
トランプ氏本人は、批判の的となっている関税について、世界が必要とする薬に例えている。自身のソーシャルメディアであるトゥルース・ソーシャルには「手術は終了した!患者は生き延び、回復している」と投稿。「予後、患者はこれまで以上にずっと強く、大きく、良くなり、回復力も増すだろう。米国を再び偉大に!」と自画自賛した。
トランプ氏の世界観を考えると、「戦略」についてあれこれ思いを巡らすのは無駄であり、「政権は何を達成しようとしているのか」と問うのも間違っている。戦略などないのだ。トランプは戦略不在の領域で活動している。ただし、同氏には明白で長期的な目標がある。
彼の主な目的は、世界に対する不満を訴えることであり、実質的あるいは合理的な公共政策を策定することではない。彼の目標の多くは、自己顕示欲や自己保全に関わるものだ。その他にも、パフォーマンス的で支離滅裂な行動が数多くある。また同氏が抱く野望の多くは、自分自身や米国、あるいは自らの支持者を不当に利用したと考える人々、機関、組織への復讐を含んだものが相当数ある。
トランプ氏は自分が間違っていることを認めるよりも、自分の家が燃え落ちるのを何十年も許してきたのだから、この貿易戦争は改善する前に悪化するだろう。そうならないことを願うが。
内部で対立が絶えない共和党は、関税を巡り、トランプ氏へ立法的な対抗措置を取るほどの資質と強さを示せずにいる。トランプ氏は上級顧問の意見もほとんど聞かないが、仮に耳を傾けたとしても、彼らの多くはすでに関税政策を強く支持しているため、違いは生まれないだろう。
財務長官となったベッセント氏は週末のインタビューで、景気後退の兆候は見られないと語った。また、関税は、対象となった国々が米国を長年利用してきたことが理由であり、自分も政権も、こうした国々と新たな合意を急いで結びたいわけではないと述べた。
トランプ政権は、アナリストや批評家を回避しようと、見せかけの数学的公式や行き当たりばったりの歴史的根拠、洪水のようなニュースの発信を今後も続けるだろう。
だが、時が経てば全てが明らかになるだろう。強気なメッセージを発信してもリセッションを食い止めることはできない。トランプ氏が独断的かつ不必要に引き起こした可能性のある景気低迷は、来年の中間選挙までに有権者の生活や仕事、政治的選択に深く影響を及ぼすことになるだろう。
トランプ氏はゴルフをしている間、それを心に刻むべきだ。
ドナルド・トランプ米大統領は、中国政府に対して強硬姿勢を示す一方で、他国とは関税引き下げに向けた交渉の余地を残した。貿易戦争を巡る一連の動きを受けて多くの国が新たな関税による打撃を避けようと奔走する中、世界各地で混乱が広まっている。
関税が恒久的なものか、あるいは交渉の余地があるのか問われたトランプ氏は、「その両方とも事実だ」と述べた。
トランプ氏の発言を受け、各国政府や産業界は9日の期限を前に自力での対応を迫られている。9日には中国、日本、ベトナムなどの国々に高関税が課される予定で、米政府当局者らによれば、50カ国以上の政府がこれを前にホワイトハウスと接触。トランプ氏との取引を模索し、各国政府は同氏をなだめようとしている。
米政府は5日、事実上全ての国からの輸入品に一律10%の関税を課した。今週予定されている追加関税は、貿易面で問題があると政権が見なす国々を標的にしている。一方でトランプ氏に近い補佐官らは、関税引き下げ交渉の可能性について相反するメッセージを発している。
ピーター・ナバロ米大統領上級顧問(通商・製造業担当)は7日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に寄稿し、トランプ氏による相互関税について「これは交渉ではない」と述べた。一方でスコット・ベッセント財務長官は、日本との「交渉を開始する」とツイートした。
経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長は、「相反する見解が出てくるのは、誰もが意見を持っているからだ」と説明。「問題はない。意見の相違は集団思考を避ける方法だ」と述べた。ミラン氏は関税引き下げ交渉の可能性については明言を避けた。
ある大手テクノロジー企業の関係者は、企業や特定製品を関税から除外するような兆候は見られないとし、救済措置があるとすれば他国との2国間交渉を通じてになるだろうと述べた。だがこの見通しも不透明で、米国との交渉を模索する外国政府は、協議の在り方やその構造を把握できていないと事情に詳しい関係者は述べている。
トランプ氏は「公平な取引はまとまる」とし、先週の関税発表以来、多くの外国首脳がホワイトハウスに接触してきたと言及。ただし90日間の一時停止案が検討されているとの7日の誤った報道については、その内容を否定した。
トランプ氏は各国政府について、「彼らはわれわれが求めようとも思わなかったようなことを提案してきている」とし、「わたし以外の誰もこれをやらないだろう」と述べた。
中国には9日に34%の関税が課される見通し。また、トランプ氏は中国が米国に課した報復関税を撤回しなければ、さらに50%上乗せすると述べている。さらに、「中国との会談要請に関するすべての協議を打ち切る」と警告している。
トランプ氏が中国への関税攻撃を大幅に強化すると脅したことで、同国と近い将来に交渉が実施される可能性はほぼ排除された。中国政府高官らは数カ月にわたり米政権との会談を模索してきたが、ほとんど成果はなかったとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はこれまでに報じている。また中国政府当局者らと協議している複数の関係者によれば、中国側も交渉への期待が次第に反発に変わってきており、譲歩する可能性は低くなっている。
首都ワシントンの在米中国大使館の報道官は、「中国に圧力をかけたり脅したりすることは、われわれと関わる正しい方法ではないと、われわれは何度も強調してきた」と述べた。
トランプ氏は一方では、日本やイスラエルなど対米貿易黒字の削減に前向きな国々との協議の余地を残した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は大統領執務室でトランプ氏の横に座り、米国とイスラエルの貿易赤字を完全に解消したいと言及。トランプ氏は貿易赤字を非難し、各国の対米貿易不均衡に基づいて相互関税率を算出している。
ネタニヤフ氏は「われわれは非常に迅速にそれを行うつもりだ。それが正しいことだと考えている。また貿易障壁も撤廃する」と発言。さらに「イスラエルは同じことをすべき他の国々のモデルになれると思う」と述べた。
ドナルド・トランプ米大統領が場当たり的に急ぎまとめた関税計画を受け、世界各地の金融市場は気絶しそうになっている。その計画によって、民主党が実現できなかった二つの現象が起きた。一つは関税がトランプ氏を2期目の政権で初めて真の危機に陥らせたこと、二つ目は大統領として適任なのかという疑問を米国の有権者に抱かせたことだ。
しかし、トランプ大統領の政権あるいはMAGA(米国を再び偉大に)運動の死亡記事を準備するのは、かなり時期尚早だ。トランプ氏が2015年にトランプタワーのエスカレーターを降りて(大統領選への出馬を表明して)以来、教訓が一つあるとすれば、それはこの男を見くびるべきでないということだ。犯罪容疑者としての顔写真を大統領の肖像画に変えることのできる男は、決して軽視されるべきではない。そして、トランプ氏ほどの才能がない人物ならつぶされてしまいそうな災難に見舞われても、彼は平然としている。
われわれが今見ているのは典型的なトランプ氏の姿だ。同氏は自分自身、そして自身の中核にある直感と信念を信じて疑わない。自分に反対するアナリストや政策立案者を愚かで弱いと思っている。抵抗に遭ったときの彼の本能的な反応は、妥協や再考ではない。自身のやり方に拍車をかけ、感情的な反応をあおり、大胆な一撃と厳しい脅し文句で相手を威嚇することだ。トランプ氏に「ゴルディアスの結び目(解決が難しい問題)」を見せれば、一刀両断する。
トランプ氏は、自身の政策が国内外で抵抗――時にそれは相手の頑固さだけでなく、事実の揺るぎない性質に基づく――に遭うと、ますます強硬な姿勢になる。過去にはこのやり方が通用した。そして今も通用すると思っている。
トランプ氏の不変の目的は自身の個人的な権力を最大化することであって、通商問題を扱うエコノミストとの議論に勝つことでも、株価を上げることでもないように思われる。国内的には、米国の関税政策を完全に掌握することで得られる政治力によって企業を威圧し、自身を支持させることができると同氏は信じている。また、支持者との絆は経済の難局を乗り越えて存続すると思っている。
国際的には、トランプ氏は衝撃と畏怖に基づく自身の関税戦術によって、自らと米国の力と名声が強化されることを望んでいる。同氏は米国市場へのアクセスが、核爆弾に匹敵する最も強力な武器だと信じている。米国の同盟・友好国と敵対国いずれにも、自身の力を認識させて優先順位に従うことを強制したいと考え、米国の経済力をまざまざと見せつけている。そのようなことは恐らく、ドワイト・アイゼンハワー元大統領が1956年に、英ポンドへの攻撃をちらつかせることで英国にスエズ運河での軍事作戦からの撤退を余儀なくさせて以来のことだ。
これをただの力の誇示と呼ぶのは、控えめな表現だろう。トランプ氏は米国との貿易が、多くの国にとって繁栄のために不可欠なだけでなく、安定のためにも不可欠なことを分かっている。米国による安全の保証が世界の大半の安全を下支えしていることに気づいている。貿易の規則と安全の保証が自らの意思のみに依拠していると世界に告げることによって、握れる最大限の権力を自らに集中させている。見境がなく、恣意(しい)的なトランプ氏の関税スケジュールは、彼の判断に対して他者がいかに脆弱(ぜいじゃく)かを浮き彫りにする一方で、国内にその力を制限するものがないことを見せつけている。
トランプ氏は手に入れられるすべての力を手に入れる必要があるだろう。政権が直面する国際的な危機は日ごとに大きくなっており、その危険度は増すばかりだ。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナで本当の譲歩に向けた一歩を踏み出すことさえできていない。それどころか中国に取り入っている。
中国の習近平国家主席も強硬姿勢を示し、米国の直近の関税攻勢に独自の報復関税で対抗した。同時に、台湾への軍事進攻に向けた準備を強化している。中東では、米軍がイエメンの親イラン武装組織フーシ派の拠点を爆撃したものの、戦略的な突破口は今のところまだ見えていない。そしてイランとフーシ派への米国の圧力が強まり、中東での新たな紛争勃発の可能性が高まる中で、ロシアと中国は、傷つき弱体化したイランの友人たちへの支援から手を引こうとはしていない。
トランプ氏に常に付きまとう疑問は、彼が自分自身に集中させてきた権力をどのように行使しようとしているのかという点だ。より公平な国際貿易システムを求めているのか、それとも同氏の気質は純粋に重商主義的なのか。あるいは、欧州の人々にショックを与え、分別のない行動を控えさせることで、北大西洋条約機構(NATO)をより効果的な存在にしたいのか、それともNATOの解体を真に目指しているのか。政府組織の改革を望んでいるのか、それとも事業利益を規制する政府の力を弱めることが政府効率化省(DOGE)創設の目的なのか。政策のことを本当に考えているのか、それとも彼の政界でのすべての行動は、利己主義と親族の将来の経済的利益への配慮を反映しているのか。そして、本当にカナダ征服を目指しているのか。
トランプ氏自身も、こうした問いへの答えを知らないのかもしれない。だがいずれにしても、今後数カ月に示す行動が、彼の歴史上の位置付けを決めることになる。良くも悪くもそれは極めて大きなものになるだろう。
米中西部オハイオ州に、「デルタ」という小さい町がある。そこを車でさっと周ると、アメリカの星条旗と同じくらいドナルド・トランプ大統領を支持する旗がたくさん目に入る。
オハイオ・ターンパイク(優良高速道路)に近いガソリンスタンドでは、前政権の名残りが給油ポンプに残っている。「バイデンに投票した人は全員、私にガソリン代によこせ!」と書いてあるのだ。
ここはトランプ氏の支持基盤だ。昨年11月の大統領選挙では、共和党の正副大統領候補がほぼ2対1の差で、民主党に楽勝した。そして、トランプ氏が世界各国に大規模な関税を課すと発表して以来、株価をはじめとする世界の市場は混乱しているが、ここデルタをはじめとする中西部の何百もの町では、実に多くの住民が今も大統領の計画を支持している。
ほぼすべての国に10~50%の関税を課すというトランプ政権の計画は、世界貿易に大混乱をもたらしている。そして、アメリカの消費者にとっても、間もなく物価が上昇しかねないと警告されている。一方でトランプ大統領は、この措置が不当な貿易不均衡に対処し、アメリカの国内産業を活性化させ、歳入を増やすと主張している。
デルタに住む一部の人は、公平性についての大統領の主張に共感している。
「ほかの国の人たちに苦労してほしいわけじゃないです。本当です」
町の中央通りで菓子店「デルタ・キャンディ・エンポリアム」を経営する、メアリー・ミラーさんはこう言う。
「でも、公平な競争の場が必要なんです」
ミラーさんはこれまで3回、 トランプ氏に投票した。ミラーさんは、他国は貿易で公正な対応をしていないと考えている。そしてここにいる多くの人と同様、彼女もアメリカ製の商品を買うことを好んでいる。
「デルタ・キャンディ・エンポリアム」が扱う色とりどりのお菓子の多くは、アメリカ製だ。自分の店の品ぞろえを眺め、新しい輸入税がどう影響するのか考えながら、ミラーさんは数十年前のことを思い出していた。お気に入りブランドの一つが、工場を国外に移転すると聞いた時のことだ。それ以来、彼女はリーバイスのジーンズを買っていない。
新しい関税は、アメリカ国内の物価上昇につながると、多くのエコノミストが警告する。しかし、ミラーさんは気にしていない。
「反対側にたどり着くには、時に火の中を歩かなくてはならないこともある」と、ミラーさんは話した。
「関税のおかげで、この町に住んでいるような、勤勉なアメリカ人のところに企業や事業が戻ってくるなら、関税は有意義だ」
デルタは、デトロイトから南に160キロ足らずの場所にある、人口約3300人の町だ。そして関税について、ミラーさんと同じような感想を多くの人が口にする。同じ中西部でもほかの町村は、関税の打撃に身構えているのだが。
自動車業界は、世界中に広がる複雑なサプライチェーンによって成り立っている。それだけに、新しい関税の打撃を受けやすいように思える。現にデルタから北にあるミシガン州、西にあるインディアナ州の企業はすでに、工場閉鎖や人員削減を発表しているのだ。
しかし、デルタ郊外には1990年代から続く鉄鋼関係の企業が集まっている。アメリカ保護主義の新時代に、そうした企業は有利な立場なのかもしれない。
そのうちの一社、ノーススター・ブルースコープは、トランプ大統領に鉄鋼とアルミニウムを対象にした関税を拡大するよう要請している。しかし同時に同社は、スクラップ金属など自社が必要とする原材料については、関税の免除を求めている。
ノーススター・ブルースコープはBBCの取材申し込みに応じなかった。しかし、4月4日早朝には近くにあるバーン・レストランの奥の部屋で、夜勤を終えたばかりの地元の鉄鋼作業員が数人、ビールを飲んでいた。
匿名を希望したこの人たちは、今月2日にトランプ大統領がホワイトハウスで発表した大々的な新関税について尋ねると、ほとんどが笑って肩をすくめた。
関税に関するニュースのせいでこの人たちの週末が台無しになるなど、おそらくあり得ない。それはかなり、はっきりしていた。
レストランを出ると、輸入税には利点もあり得ると考える住民もいた。
「誰も慌てていない。誰も、関税のせいで眠れなくなったりしない」。農業関連の仕事を数十年続けているジーン・バークホルダーさんは話した。
バークホルダーさんは、多少の株は持っているものの、どれも長期的な投資なのだという。なので、大統領の発表から株価が急落し続けたことも、あまり気にしていないのだそうだ。
「もし資金が多少余っているなら、むしろ株価が安いうちに株を買うのがいいかもしれない」
同じバーン・レストランの少し離れたテーブル席では、ルイーズ・ギルソンさんが息子のロブさんと一緒に朝食を終えたところだった。ギルソンさんは静かな声で、自分は本当はあまり大統領を信用していないのだと話した。
けれどもギルソンさんは、この町の多くの人と同様、自分も政府には行動してもらいたいとも強調した。
別の客が、「トランプは間違ってるかもしれない。でも少なくとも、なんとかしようとしてる」と言うと、それにギルソンさんは熱心に同意した。
「これがほかの人たちなら、まったく何もしなかったはず」だと、ギルソンさんは言った。ほかの人たちとは民主党のことだ。
この地域の大手企業はだいたいのところ、地元住民を大事にしてきたと、ギルソンさん親子は二人とも同じ意見だった。町の産業発展には多少の問題はあったし、住民が受ける経済的恩恵は平等ではないかもしれないという心配もあるものの、地元の大企業はだいたいのところ、地域経済や慈善団体や地域のコミュニティー全般に貢献しているのだそうだ。
親子はデルタの町の歴史を語り、生活の質が次第に劣化してきたと話した。そしてだからこそ、トランプ氏の関税計画には明らかに危険が伴うとエコノミストがいくら言っても、その計画に賭けてみようと期待する人が大勢いるのだと。
「ここは、子どもが育つには良い小さな町だった」。息子のロブ・ギルソンさんそう振り返りつつ、自分が育った1960年代や70年代に比べると、今は前ほど安全でないし、親しみやすい町でもないように思うと続けた。
「アメリカの心がなくなってしまった、そんな感じがする」
デルタでは「住民の25%か30%が、何かしら自分の中に問題を抱えて苦しんでいる」のだと、母のルイーズさんは付け加えた。
そういう各自の問題は関税とはほとんど関係がない。しかし、デルタのような町の人たちは、何かしら難しい問題に直面している。そしてだからこそ、遠く離れたウォール街で市場がいくら暴落しようと、この町では多くの人がトランプ大統領に対してそこまで否定的ではないのだ。
トランプ米大統領は8日、韓国の大統領権限を代行する韓悳洙首相と電話会談を行い、貿易を巡る韓国とのディールは「順調に見える」と述べた。包括的な関税措置の発動を控えて主要同盟国との交渉を進める一方、中国との土壇場での合意成立への期待は遠のいている。
トランプ氏は「両国にとって素晴らしいディールが成立する可能性と枠組みがある」とソーシャルメディアに投稿。「韓国のトップチームが飛行機で米国に向かっており、状況は順調に見える。同様に、われわれは他の多くの国々とも交渉を進めており、どの国も米国との取引を望んでいる」とした。
トランプ氏は貿易や関税だけにとどまらず、他の多くの課題でも各国・地域と交渉する意向だと述べ、「美しい効率的なプロセス」を実現させると表明。しかし、中国が貿易戦争から一歩も引かない姿勢を見せる中で、同国からの輸入品に対する高関税賦課という脅威は後退する兆しが見えない。
104%関税に前進
FOXビジネスはこの日、ホワイトハウスのレビット報道官の声明を引用し、米国は9日から中国製品に計104%の関税を賦課すると報じた。トランプ氏は先に、中国が米国製品に対する34%の報復関税を撤回しない場合、「50%の追加関税を課す」と警告。50%の追加関税は、中国からの全輸入品に対して9日から課す34%の相互関税、および合成麻薬フェンタニルの米国への流入に関連して先に課した20%の関税に上乗せされることになる。
トランプ氏は「中国も切実に取引を望んでいるが、どう始めればいいのか分かっていない。われわれは連絡を待っている。必ず実現する!」と述べた。
ただ、中国側は譲歩する姿勢を一切見せておらず、習近平国家主席が早期の解決を図って米国に歩み寄ることは現時点で考えにくい。
中国外務省の報道官は「貿易戦争や関税戦争に勝者はおらず、保護主義は何も生まない。中国は争いを望む国ではないが、困難が立ちはだかった時にひるむことはない。威圧や脅迫、恐喝によって中国と向き合うのは正しいやり方ではない」と述べた。
この日も米株式市場は荒い値動きとなっており、S&P500種株価指数とナスダック100指数はそれぞれ一時4%を超える上昇となっていたが、中国への計104%関税の報道が伝わると下げに転じる場面もあった。
友好国との交渉優先
韓国との協議では「韓国の非常に大きく持続不可能な貿易黒字、関税、造船業」や、米国産の液化天然ガス(LNG)「大規模購入」について話し合ったとトランプ氏は説明。また「アラスカ・パイプラインでの合弁事業や、米国が韓国に提供している大規模な防衛支援の対価」についても言及したとしている。
ベッセント米財務長官は前日、日米首脳の電話会談を受け、米国と関税交渉を求める約70カ国・地域の中で、日本は優先的なステータスを得る可能性が高いと指摘していた。
これに関連してハセット米国家経済会議(NEC)委員長はFOXニュースのインタビューで、トランプ氏は友好国との交渉を他国より優先させるよう明確な指示を出していると発言。「中国と話すかどうか、またいつ話すかは大統領が決めることだが、現時点では、日本や韓国のような同盟国や貿易相手国を優先するよう指示を受けている」と語った。
イタリアのメローニ首相も、トランプ大統領と直接交渉するため米国を訪問する予定となっている。
トランプ氏は、米・欧州連合(EU)間で工業製品の関税を互いに撤廃することを求めたEUの提案を拒否。対EUの相互関税20%は9日に発動することになる。EUは来週前半、米国による自動車関税や相互関税に対する報復措置について、加盟国や業界との調整を始める。
米国通商代表部(USTR)のグリア代表は8日、トランプ大統領の広範な関税に対する免除措置は短期的には想定されていないと言明した。また、製造業の雇用を国内に戻すには企業に多少の痛みも必要だとした。
グリア代表は上院財政委員会で証言し、「トランプ大統領は、免除や例外を設けるつもりは当面ないと明確にしている」と述べた。貿易相手国との交渉については、特定の期限はないとした。
中国については「残念ながら、長年にわたり市場アクセスに関して独自の道を選んでいるようだ」とし、「中国は報復措置を発表することを選んだ。他国は相互性への道を見いだしたいという意向を示しているが、中国はそうではない」と述べた。
<各国との交渉>
グリア氏は、トランプ政権は50カ国以上と交渉しており、適用除外措置を得るためには貿易相手国が関税および非関税障壁を引き下げ、対米貿易をより均衡させる必要があると指摘。ほとんどの貿易相手国が報復措置を取らないことを選択したことは「良いニュース」だと述べた。
貿易交渉のスケジュールを明らかにすることは拒否したが、USTRは夜間や週末も含めて迅速に作業を進めていると明らかにした。「貿易赤字は何十年もかけて形成されてきたものであり、一夜にして解決できるものではない」と語った。
<関税への不満>
関税を巡っては、民主党議員からグリア氏に厳しい声が上がった。農業州出身の共和党議員らも関税を批判した。
ニューメキシコ州選出のベン・レイ・ルジャン議員(民主党)は、関税導入は物価上昇と株価下落を通じて家庭や企業に打撃を与えることを認めるようグリア氏に迫った。
グリア氏はこれに対し、懸念はウォール街よりもむしろメインストリート(金融以外の産業あるいは米国各地)にあると反論。「これまでと同じことを続けることはできない。企業がサプライチェーンの調整に苦労しているなら、われわれは対処しなければならない」と語った。
ベッセント米財務長官は8日、トランプ米政権の対中関税措置に対し中国が対抗措置を表明したことは「大きな間違い」との考えを示した。また、米政府による関税措置を巡る交渉は対象国の要請に応じたもので、金融市場の下落に対応したものではないと述べた。
ベッセント長官はCNBCのインタビューで「中国によるエスカレーションは大きな間違いだと考えている」とし、「貿易赤字を抱えているのは米国だ。中国が米国に対する関税を引き上げても、米国は何も失うものはない。米国の対中輸出は中国の対米輸出の5分の1にすぎない。中国にとって負け戦になる」と語った。
その上で、トランプ大統領が通商交渉に自ら関与すると表明した。
欧州連合(EU)は付加価値税を含む非関税障壁を引き下げる必要があるかとの質問に対しては、何も排除されておらず、米国は貿易相手国からの提案を検討すると言及。
日本と韓国が米アラスカ州でのエネルギー事業への融資に関心を示していることを例に挙げ、「米国内で多くの雇用を生み出すだけでなく、貿易赤字の縮小にもつながるため、検討可能な代替案になり得る」と語った。
●先進国中銀、金融当局
トランプ米大統領が打ち出した関税政策による市場の大混乱を受け、安全通貨とされるスイスフランが高騰しているため、スイス国立銀行(SNB、中央銀行)は政策金利を再びマイナス圏まで引き下げることを迫られる事態に直面している。既に物価上昇率がゼロ近辺にとどまっている上に、通貨高は物価を一段と押し下げかねないからだ。
トランプ氏が2日に相互関税の詳細を発表して以来、市場関係者の間でSNBが追加利下げに動くとの予想が増え続けている。
SNBは、マイナス金利はできるなら避けたいが、物価安定の維持に必要ならば実行する用意はあると繰り返し表明してきた。
先週SNBのチュディン理事は「マイナス金利をわれわれは喜ばしく思わない。しかし物価安定に必要な場合、それは実際に役立つ手段だ」と認めた。
現在の政策金利は0.25%で、物価上昇率は0.3%と、SNBが掲げる目標圏(0─2%)の下限に近い。
スイスフランは7日、対ドルで6カ月ぶり、対ユーロでは2024年末以来、対ポンドでは24年8月以来の高値を付けた。
さらにトランプ氏が明らかにした相互関税上乗せ分のスイスへの適用税率は欧州連合(EU)や英国より高く、エコノミストのスイス経済成長見通し引き下げにつながっている。
経済の勢いが弱まれば、通貨高とともに物価を押し下げる公算が大きい。
こうした中でLSEGのデータによると、市場がSNBは追加で25ベーシスポイント(bp)の利下げに動くことを織り込みつつある。
EFGのエコノミスト、ジャンルイジ・マンドルツァット氏は、既にほぼゼロの物価上昇率について、原油安の影響を挙げて一時的にマイナスとなるリスクは高まり続けていると分析。「デフレリスクは高まっており、だからこそ政策金利が再びマイナスとなる可能性も相当増大してきた」と述べた。
SNBは2014年から22年までマイナス金利政策を続けていた。
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、エイドリアン・プレテジョン氏は、SNBが次回6月会合で政策金利をゼロにするとともに、さらに引き下げることもためらわないだろうとみている。
同氏は、SNBの政策運営リスクは、臨時会合での前倒し利下げ、あるいは想定より大幅な利下げとマイナス金利復活の方向に傾いているとの見方を示した。
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
トランプ米大統領は近いうちに経済だけでなく金融市場の根幹すら壊しかねないとの懸念がウォール街で広がっている。
アジアと欧州の株式市場が3営業日連続で下落した後、米S&P500種株価指数は7日、わずか0.2%安にとどまり、2020年の新型コロナウイルス禍以降で最大の下げ局面にひとまず歯止めがかかった。
ただ、水面下では不安が続いている。市場全体で異常な値動きが観測され、株式や債券の指標は大きく変動。リセッション(景気後退)懸念と金融市場の混乱を背景にトランプ氏が方針を転換するとの期待が交錯している。
ニューヨーク時間午前10時前には株価が切り返し、数分のうちに安値から8%余り上昇。トランプ氏が関税を延期するとのうわさがウォール街に駆け巡ったためだが、うわさが誤りだと判明するや否や、株価は下げに転じた。
一方、国債市場では不可解な値動きが続き、利回りは終日上昇。米10年債利回りは約20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し4.19%を付けた。
入札における海外投資家の買い控え懸念、貿易停滞による政府債務急増への警戒感、投資家が資金需要を満たすために流動性の高い資産を積極的に売却する「キャッシュへの駆け込み(dash-for-cash)」の兆候などさまざまな説が飛び交った。
こうした中、投資家らは短期金融市場に異変が起きていないか神経をとがらせており、大手銀行やディーラーがダメージを受けるリスクも意識されている。
マクロ・インテリジェンス2パートナーズの共同創業者ジュリアン・ブリグデン氏は「この市場で取引するのは非常に難しい。ストレスが大きく、非常に厄介だ」と指摘。「今や世界が変わってしまったという考えを人々はまだ受け入れられていない」と警鐘を鳴らした。
世界の株式市場では過去3営業日で約10兆ドル(約1475兆円)の時価総額が消失。市場では世界金融システムに対する差し迫ったリスクは小さいとみられているものの、世界全体の経済見通しが急速に悪化するにつれ、社債発行の見送りやデフォルト(債務不履行)リスクを示す指標の急上昇など市場にかかるストレスの兆候は積み上がっている。
トランプ氏は7日、数十カ国に対する広範囲な上乗せ税率の適用計画を一時停止することは考えていないが、交渉には応じる余地があると示唆した。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの北米マルチアセットソリューション責任者、ジョシュア・クティン氏は、投資家はトランプ氏から何らかの前向きなシグナルが出ることを期待していると言及。
「これは、市場が関税に関するニュースをいかにうまく消化できていないかを反映しているだけではない。解決への道筋を見つけるのが難しい限り、うわさやコメントによって、ボラティリティーが高く、大きく変動し続ける可能性が高いだろう」と述べた。
モルガン・スタンレーが追跡している世界のヘッジファンドはトランプ米大統領による関税発表を受けた先週の市場急落で損失が拡大し、年初来のパフォーマンスはマイナス3%となり、ネットレバレッジも低下した。
モルガンSの推計によると、年初に50%超だった米国のロング・ショートファンドのネットレバレッジは4日引け時点で「歴史的低水準目前の」37%まで急速に低下した。
これとは別にJPモルガンのノートでも、ヘッジファンドのネットレバレッジは2023年終盤以来の低水準付近に低下したとされている。
ネットレバレッジは、ファンドの借り入れを含めた保有価値に対してロングポジションとショートポジションの差額を測定したもので、低いほどポジションが保守的となる。
投資家は関税の不透明感からリスク資産のボラティリティーが当面大きくなると予想しており、リスクオフのスタンスを続けることを示唆している。
トランプ米大統領が2日発表した「相互関税」など一連の政策で「貿易戦争」が起こり、世界の金融市場は混乱している。これに伴い、欧州中央銀行(ECB)が16、17の両日開催する理事会で政策金利を追加で引き下げる根拠は固まった。従来の予測を超える利下げペース加速論にも追い風が吹いている。
エコノミストらによると、米国が輸入品に課す高関税政策が引き起こすと予想されるユーロ圏景気の減速は、市場のボラティリティによる影響と相まって、ディスインフレ圧力となる可能性が高く、欧州連合(EU)の対米報復措置により生じるインフレ圧力を上回ると見られている。
市場で現在ほぼ織り込まれているのは、4、6月の理事会での25ベーシスポイント(bp)の連続利下げ。さらには年末までの計3回あるいは4回の利下げも視野に入っており、ユーロ圏の市場金利の指標であるドイツ10年物国債利回り(長期金利)は7日、改めて低下した。1240GMT時点で3bp低下し、2.59%を付けた。ユーロ圏景気の後退とそれに対応する金融緩和強化が織りこまれたためだ。
ECBの政策メンバーらは、市場混乱の長期的意味について見方は各種各様だが、来週の利下げ決定はほぼ確実な情勢だ。年内に政策金利水準が従来想定をかなり下回る可能性があるが、インフレを再燃させてECB目標の2%が危うくなることはないだろう。
市場混乱は深刻で、ユーロ圏の景気後退が現実味を帯びつつある。インフレ率は過去4年間、ECB目標を上回ってきたものの、ECBは経済成長支援に軸足を置く可能性がある。
ピクテ・ウェルスマネジメントのフレデリック・デュクロゼ氏は「先行きの不確実性という一点だけが理由であってもECBは理事会ごとに利下げを決定する必要がある。長期的に見てインフレ圧力が高まる兆候はない」と指摘した。
ECBのチポローネ専務理事やフランス銀行(中央銀行)のビルロワドガロー総裁、ギリシャ中銀のストゥルナラス総裁らECBの有力政策メンバーは、足元の環境下では一段の金融緩和が必要と主張している。インフレ警戒が強い(タカ派)主要メンバーからも反対の声は出ていない。
一部の政策メンバーは非公式の場で、米国による高関税とEUの報復関税の影響で2025年の域内国内総生産(GDP)成長率は0.5%ポイント押し下げられるだけだとするECBの公式予想に疑問を呈し、その影響はより大きいだろうと主張した。
市場動向を見ると、原油相場が7日に大幅下落した。金も値を下げた。国債は買われて利回りが低下した。長期的なインフレ期待も低下した。これらを一括りで見れば、市場の景気後退懸念がうかがわれる。
しかし、ECBタカ派の中でもインフレ警戒がさらに強いメンバーらは非公開の場で、ECBは高関税の応酬が物価を押し上げる影響を過小評価しており、短期的な影響にとどまるという予測も的を外している可能性があると主張する。
こうしたタカ派によると、関税は貿易量の減少に加え、企業がサプライチェーン(供給網)を組み替え、製品やサービスの付加価値創出の流れ(バリューチェーン)を作り直す必要性が出てくることや、コスト上昇をもたらす。これらは全て長期的に基調的なインフレ率の上昇につながり、東西冷戦終結に伴う経済のグローバル化前の数十年間と似た状況だという。
<危機対応の資金供給も>
ECBは長らく、景気対応の主要な政策手段は利下げだと主張してきたが、同時に、市場混乱が全面崩壊へと悪化した場合には、即座に発動可能な非伝統的手段も幅広く備えている。
今後、銀行の融資機能に支障が出る場合のほか、ユーロ圏各国間の国債利回り格差が行き過ぎた水準に広がったり、投資適格債の利回りが急騰したりすれば、ECBは警戒色を強めることになるだろう。
今回の「貿易戦争」はこれまでの危機と大きく異なる。トランプ氏が今後の展開を決める主導権を握っており、一筆書くだけで混乱を終わらせることも、逆に一段と悪化させることもできるという点だ。
INGのエコノミスト、カーステン・ブリゼスキ氏「現在は深刻な調整局面にあり市場崩壊とはなっていないが、今後は全面崩壊に至る可能性もある」と述べた。同氏は全面崩壊の際にECBが取る手段は「通常の危機対応策に戻ることだろう。例えば、国債購入やTLTRO(貸し出し条件付き長期資金供給オペ)、LTRO(長期資金供給オペ)による流動性供給や、そして恐らくドルスワップ枠の拡大などだ」と予想した。
TLTROは過去10年間、銀行に低金利で長期資金を供給し、銀行が実体経済への貸し出しを維持するインセンティブを与えるために実施された。
ECBはまた、銀行が市場でのドル調達に困った場合に備え米連邦準備理事会(FRB)との間で、ドル調達の常設ファシリティを有している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の際に同ファシリティを活用し毎営業日に週ベースのターム物オペを実施したことがある。
現時点では、こうした事態の兆候はない。商業銀行は現在2兆8000億ユーロ(3兆0700億ドル)の過剰流動性を保有しており、ECBが7日に市場通知した流動性供給入札(毎営業日実施)ではドル調達を急ぐ需要がなかった。
景気が悪化すれば、人々はクローゼットの中から何を選ぶだろうか。たいていは、地味で保守的な服だろう。高級ブランドは独創性に力を入れることで販売不振の長期化から抜け出すことを狙っていたが、ドナルド・トランプ米大統領に大きく足を引っ張られることになった。
ホワイトハウスが仕掛けた関税戦争によって、2025年に世界的なリセッション(景気後退)が起きる確率は60%に上昇したとJPモルガンはみている。景気が悪化すれば人々の間で富をひけらかすことへの抑制が働き、控えめなデザインの方が売れ行きが良くなることが多い。派手なファッションは景気が回復して初めて売れるようになる。
これは高級ブランドにとって頭痛の種となる。ファッション業界では2019年以降、高品質だが地味な服に消費者が大金を使う「静かなぜいたく」が広がってきた。
米テクノロジー業界の大富豪もこの流行を取り入れた。アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏はイタリア・ミラノに上場するブランド「ブルネロ・クチネリ」のファンだ。同ブランドは650ドル(約9万5000円)の無地のカシミヤニット帽や9000ドルのボンバージャケットを販売する。フェイスブックなどを運営するメタ・プラットフォームズのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は今年初め、ソーシャルメディアのファクトチェック機能廃止を発表する際に、茶色い無地の革ベルトが付いた90万ドルのスイス製腕時計「グルーベル・フォルセイ」を着用していた。
ただ、買い物客は「静かなぜいたく」に飽きている。エルメス、ブルネロ・クチネリ、ロレックス、パテック・フィリップといった保守的なブランドは、グーグル検索やソーシャルメディアでのフォロワー数、ウェブサイトのトラフィックに基づく人気度のスコアが低いことがバンク・オブ・アメリカの追跡ツールで示されている。派手なブランドは昨年10-12月期と比較したオンライン上のエンゲージメントが改善の兆しを見せており、販売面での明るい兆候といえる。
高級ブランドは1年以上続く売り上げ低迷から脱却するため、目を引くデザインを打ち出す必要に迫られている。新型コロナウイルス流行時に売上高を押し上げようと値上げに頼りすぎたことが響き、現在はその反動に苦しんでいる。コンサルティング会社ベインの推計によると、大幅な値上げが中所得層の消費者を遠ざける結果を招き、2022年から24年にかけて世界の高級品販売量は2割以上減少した。
現在成長を見せているのは、安全策に走っていない一握りのブランドだ。
イタリアの高級ブランド、プラダ傘下の「ミュウミュウ」は高級品を購入する若年層へのアピールを狙って流行を意識したな商品をデザインし、昨年は売上高が90%以上増加した。フランスの高級ブランド、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン傘下の「ルイ・ヴィトン」がアーティストの村上隆氏とのコラボレーションで発表した新作は今年すでに完売した。このカラフルなハンドバッグは、中古サイトで小売価格の2倍の値段で売られているモデルもある。
高級ブランドは消費者を取り戻すため、斬新さを打ち出そうとしている。最近では少なくとも13のトップ高級ブランドが新たなクリエーティブディレクターを起用した。シャネルやボッテガ・ヴェネタ、ヴァレンティノ、グッチなどを含むこれらのブランドは年内に新たなコレクションを発表するとみられる。
タイミングは悪い。トランプ氏は欧州連合(EU)からの輸入品に20%の関税を課すとしており、米国の消費者が高級品に払う金額は増加することになる。UBSによると、新たな関税を相殺するためには、米国で欧州の高級品の価格は平均6%上昇する必要がある。
貿易戦争が世界的な景気減速を引き起こせば、高級ブランドにとって重要な他の市場でも需要が打撃を受けとみられる。中国の消費者は、中国製品を対象としたトランプ氏の合計54%の関税が景気低迷を招けばデザイナーブランドに散財する気分にはならないだろう。
消費者は控えめなデザインのブランドに飽きているとはいえ、投資家は当面そうしたブランドを重視したほうが賢明と思われる。
2008年にさかのぼると、ハンドバッグの「バーキン」などを展開するフランスの高級ブランド、エルメスのような控えめなブランドの株は結果的に最もディフェンシブな銘柄となった。エルメスの株価はその年16%上昇する一方、LVMHや英バーバリーの株価は下落率が40%を超えた。
高級ブランドは価格にさほど敏感ではない超富裕層の顧客が多く、関税の負担を消費者に比較的転嫁しやすい面がある。だが株は決して割安ではない。エルメスとブルネロ・クチネリの予想株価収益率(PER)は45倍という極めて高い水準にある。
業界の代表的存在であるLVMHはトランプ氏と密接な関係を維持してきたものの、それが関税の影響緩和にはつながらなかった。同社のベルナール・アルノーCEOはトランプ氏の大統領就任式に出席した唯一の高級ブランド業界の大物だったが、関税を巡るニュースを受けて同社の株は売りにさらされた。
高級ブランドの新たなコレクションに取り組むクリエーティブチームは、最初からやり直す必要があるかもしれない。販売急増への期待をかけていた大胆なデザインは、景気が停滞すればはるかに厳しい状況に直面するだろう。
米金融業界の重鎮たちが公私を問わず、ドナルド・トランプ米大統領にあるメッセージを伝えようとしている。それは「この狂気をやめろ」だ。
金融業界の幹部らはこの数週間、トランプ氏の包括的な関税計画の輪郭が明確になったり不明確になったりする中で、それぞれ懸念するところはあったとしても口にはしなかった。しかし今、3日間に及ぶ株価急落で米国株の時価総額が数兆ドル吹き飛んだことを受けて、一部の幹部が声を上げ始めており、トランプ氏の熱心な支持者もその輪に加わった。
ヘッジファンド「パーシング・スクエア」を率いる著名投資家ビル・アックマン氏は、他国と交渉するために関税発動を90日間停止すべきだとし、そうしなければ「自ら招いた核の冬が経済に訪れる」と警告した。
同氏はXへの投稿で、「われわれは、貿易相手国として、ビジネスを行う場所として、そして資本を投資する市場としての米国の信頼を損ないつつある」と述べた。
米国の金融業界や政界では、現在の計画は誤った方向に進んでおり、取り返しのつかない損害を引き起こすとの見方が増えている。理論上は関税を支持する人たちも同様の見解を示す。大手銀行幹部からは、排除され説教されているように感じるとの声も上がる。
7日朝、アックマン氏が提案したような関税発動の一時停止をトランプ氏が検討していると報じられたことで、金融業界幹部らの声が一時的に聞き入れられたように思われた。これを受けて市場は急騰したが、ホワイトハウスがこの報道を否定すると、株価は再び急落した。
トランプ氏と側近らは週末に関税計画の正当性を主張し、最終的に米国が恩恵を受けると述べ、景気後退(リセッション)懸念を一蹴した。
金融業界の幹部だけでなく、トランプ氏の顧問であるイーロン・マスク氏さえも批判的で、米欧間の自由貿易協定を求める一方、Xへの投稿でピーター・ナバロ大統領上級顧問(貿易・製造業担当)の「エゴと脳みそ」を批判した。
銀行業界の重鎮である、金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は7日の年次書簡で、トランプ氏の関税が米国の長期的な経済同盟にどのような影響を与えるか懸念しており、それは国の弱体化につながると述べた。「経済は長年の接着剤であり、『米国第一』は良いことだが、それには『米国孤立』にならない限りとの条件が付く」
資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンクCEOは7日、他の経営者たちの話から、彼らがすでに景気後退を実感していることが分かると述べた。さらに、関税について「大統領が焦点を当てている分野は、短期的に強いインフレ圧力をもたらし、経済を不安定化させる分野だと思う」と語った。
著名投資家で生粋の共産党員のスタンレー・ドラッケンミラー氏は6日、めったに行わないXへの投稿でトランプ政権の関税計画に反対する立場を明確にした。「10%を上回る関税は支持しない」。同氏は、著名投資家ジョージ・ソロス氏のヘッジファンドでスコット・ベッセント財務長官の上司を務めた。
さらに、資産運用大手オークツリー・キャピタル・マネジメントのハワード・マークス共同会長、ヘッジファンド運営会社D1キャピタル・パートナーズを率いる、めったに発言しないダン・サンドハイム氏、ヘッジファンド「サード・ポイント」を率いるダン・ローブ氏も、トランプ氏の計画を公然と批判した。
非公開での協議もあまりうまくいっていなかった。
ダイモン氏、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン氏、バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)のブライアン・モイニハン氏、ウェルズ・ファーゴのチャーリー・シャーフ氏といった銀行のCEOたちは、トランプ氏が関税計画を発表した先週、業界会合のために偶然ワシントンにいた。
CEOたちはハワード・ラトニック商務長官と会談したが、その際のメッセージは関税計画に従えというものだったと、協議内容に詳しい関係者らは述べた。トランプ政権は関税が慢性的な財政赤字の解決と製造業の米国回帰に役立つとの立場だ。一部のCEOは不満を抱いて会合を後にしたという。
関係者の1人は「この会話は『言っておくが、何も変わらない』という調子で始まった」と述べた。
それでも一部の金融業界幹部は、スーザン・ワイルズ大統領首席補佐官、JD・バンス副大統領、ベッセント氏、国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長といった他のホワイトハウス高官らに関税への懸念を伝えたと、関係者は述べた。トランプ政権はこれらの会話では聞く姿勢だったという。
金融業界幹部の一部は、共和党議員らが、米国と関税引き下げ交渉をしている国々への関税発動を延期するようトランプ政権に圧力をかけることに期待していた。
一方で、投資家の大きな損失をトランプ氏のせいにするのは間違いだとの声もある。
ジョーンズトレーディングのチーフ市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏は「トランプ政権は、市場の泡を絞り出す責任はあるが、それを市場にもたらした責任はない」と述べた。「トランプ政権の政策アプローチは選挙前からよく宣伝されていた」
だが金融関係者の多くは、週末に政権メンバーの一部が株価の急落をあまり気にしていないように見えたことに困惑していた。
ヤルデニ・リサーチ創業者のエド・ヤルデニ氏は6日夜に顧客向けメモで、「われわれは金融業界と経済全体が共に繁栄し、共に衰退すると信じている」と述べた。「トランプ政権はそれに同意していない」
ドナルド・トランプ米大統領が2日に約束したのと同じくらい劇的な関税引き上げを米国が前回実施したのは、1930年のことだった。
大半の歴史家は、同年にハーバート・フーバー大統領が署名してスムート・ホーリー法を成立させた後に起きたことを説明できる。世界貿易は崩壊し、恐慌に陥りかけていた世界の流れに追い打ちをかけた。
トランプ氏の発表と中国の報復措置を受けた株価暴落は、同じような結果を予感させる。無理もない。トランプ氏の関税は1930年代に実施されたものより引き上げ幅がはるかに大きいのだ。
だが、世界が必然的に1930年代を繰り返す運命にあるわけではない。今回の貿易戦争への支持は極めて限られている。これまでのところ中国を除けば報復は抑制されている。たとえ米国が内向きになりつつあるとしても、大半の国々には貿易と開放に代わる選択肢がないからだ。
米国内でさえ、主な関税支持勢力は、1987年以来貿易戦争がしたくてうずうずしていたトランプ氏だけだ。世論は関税を支持しておらず、市場や経済への打撃が大きくなれば反発が高まる公算が大きい。議会共和党も関税に消極的だ。こうした状況が示唆するのは、2日の関税発表後に起きた混乱にもかかわらず、最悪の事態を想定するのは時期尚早だということである。
トランプ氏の関税が経済にもたらす衝撃は、スムート・ホーリー法の時より大きい。当時の米国は既に平均関税率が36%に達する高関税の国だった。「Clashing Over Commerce: A History of U.S. Trade Policy(米国通商政策史)」の著者ダグ・アーウィン氏によると、関税率は同法によって6ポイント上昇しただけだった。上昇幅はその後19ポイントに拡大したが、これは関税が金額で固定されており、恐慌で物価が下落したことで関税の比率が高くなったためだ。
トランプ氏は約2%の平均実効関税率を引き継いでおり、複数のエコノミストの試算によると、それが新たな関税によって23%に上昇する。消費に輸入品が占める割合がより大きいため、新関税は1930年代より多くの経済活動に打撃を与えるだろう。
スムート・ホーリー法は恐慌の主な要因ではなく、恐慌の根本的な原因は金融面にあった。欧米の銀行が破綻したが、当時は金本位制だったため、各国の中央銀行はその結果生じたマネーと信用の収縮に適切に対応できなかった。
一方で、同法は国際的なビジネスと協力体制の崩壊を加速させた。アーウィン氏によると、それは「世界経済にとって重要な時期に制定され、貿易障壁の拡大を制限しようとする多国間の脆弱(ぜいじゃく)な取り組みを損なう一因となった」。
現在との著しい類似点の一つは、4月28日に総選挙を控えるカナダが、1930年にも選挙を実施していたことだ。スムート・ホーリー法はカナダで関税推進派の政党が勝利するのを後押しし、同党は数カ月後に関税を引き上げた。その2年後に英国とその旧植民地は、米国を除外した「英帝国特恵関税制度」を導入して低関税率のブロックを形成した。
しかし、全ての関税引き上げが貿易戦争を引き起こすわけではない。1971年にはリチャード・ニクソン大統領が輸入品に10%の課徴金を課した。一方で他の諸国がすべきことを明確に示した。各国通貨を米ドルに対して切り上げることだ。各国はこの求めに応じ、課徴金は撤回された。
つまり、国際貿易が1930年代のように崩壊するのか、それとも1970年代のように継続するのかは、次に何が起きるかに懸かっていると言える。交渉か報復か、ということだ。
トランプ政権の当局者らは先週末、50以上の国々が交渉を求めていると語った。しかし、今回の関税が発表される前にも交渉が数週間続いたが、トランプ氏が関税回避のために取引を成立させることはなかった。
欧州のある当局者は「われわれには常に交渉の用意があるが、カナダとメキシコの当局者らと同様に米国に最終目標を尋ねても、ホワイトハウスは答えを示せない」と語った。
安全保障面で米国に依存しているイスラエルや日本のような一部の国は、報復措置を取る可能性が低い。
カナダと欧州諸国は報復措置の第1弾を発表または実施してきたが、その後の対応に関しては慎重な姿勢を見せている。こうした国々はトランプ氏がさらに強硬姿勢を取ることを恐れている上、米国からの輸入品に関税をかければ自国の経済が打撃を受けることを知っている。カナダと欧州の経済は、自由貿易と国際的なサプライチェーン(供給網)の基盤の上に成り立っている。
多くの国にとって大きな謎は、米国が自ら作ったグローバルな貿易システムに完全に背を向けてしまったのか、それとも一時的に退いただけで、トランプ政権が終われば元に戻るのかという点だ。
米国内でさえ、貿易戦争はあまり人気がない。共和、民主両党が自由貿易に幻滅していることは確かだが、それは主に中国に対する幻滅を反映している。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がトランプ氏の発表直前に実施した調査では、登録有権者の54%が関税に反対と答え、賛成は42%にとどまった。賛成したのはほとんど共和党員で、特に「MAGA(米国を再び偉大に)」運動の支持者だった。
共和党議員の態度は、関税を交渉手段として擁護するか、トランプ氏に従うか、または話題を減税や規制緩和にすり替えるかだ。彼らが関税自体を称賛することはめったにない。
反対する議員も出始めている。4人の共和党上院議員はトランプ政権に書簡を送り、どのような条件ならカナダとメキシコへの関税を撤回するのか明らかにするよう要求した。チャック・グラスリー上院議員(共和、アイオワ州)とマリア・キャントウェル上院議員(民主、ワシントン州)が提出した、関税に関する一部権限を大統領から取り上げるための法案に名を連ねた議員もいる。
この両方の動きに参加したトッド・ヤング上院議員(共和、インディアナ州)は、関税撤回のために各国ができることを明確にしてほしいとの考えを示した。「私の選挙区の有権者の多くは、交渉による解決がなく関税が続いた場合に予想される、少なくとも短期的には困難なトレードオフについて知らされていないと思う」
今のところ、トランプ氏に方向転換を迫る政治的圧力はほとんどない。問題は、経済・金融におけるさらなる混乱がその状況を変えるかどうかだ。ビジネス界の支援者であるイーロン・マスク氏やヘッジファンドマネジャーのビル・アックマン氏が既に関税反対の立場を表明している。報復は貿易戦争を深刻化させるリスクはあるが、それによってトランプ氏が交渉により前向きになれば、ひょっとすると貿易戦争が短期間で終わる可能性もある。
「トランプ大統領に軌道修正をさせられるのは、地球上で米国民だけだ」。カナダのメラニー・ジョリー外相は先週、同国が報復措置に踏み切った理由を説明した際、こう述べた。「米国民は今、関税が自分たちへの税金であることを理解している」
投資家は自動車の後部座席にいる子どものように問いかけている。「もう着いた?」と。米株式市場で史上まれに見る急落が起き、7日はS&P500種指数が一時、2月の日中高値から20%超下落し、弱気相場入りする場面があった。果たして今は買い時なのか。
愚問に聞こえるかもしれない。ドナルド・トランプ大統領が発動した関税は、米経済に打撃を与え、世界的な景気後退を引き起こすことが懸念される。恐らくもっと悪いのは、関税対象に無人島が含まれ、算出方法の不備で実際は「相互的」でない関税があるなど実施する際に無能さを露呈し、米国の政策立案への信頼を傷つけたことだ。恐怖がまん延する中で、株式を買おうとする者はいない。
もちろん逆張り投資家はその限りではない。だが実際、恐怖はまん延しているのだろうか。そして同じくらい重要なのは、何が反発のきっかけになるかということだ。
筆者は3週間前、底値が近いサインを見極めるポイントを示した。当時は一部の指標が「買い」を強く勧めていたが、筆者は慎重姿勢を崩さなかった。今や事態ははるかに悪化している。
個人投資家の間にどれほどパニックが広がっているかを示したのが、先週、米個人投資家協会(AAII)が公表した(科学的ではない)週間調査だ。米株に「弱気」だと答えた投資家は、2008年に株価が底打ちした週以来となる多さだった。
「通りが血で染まっている時こそ買いを入れろ。たとえそれが自分の血であろうとも」――これは伝説の銀行家ネイサン・メイアー・ロスチャイルドが言ったとされる格言だ。
機関投資家のセンチメントも悪化している。安全な米国債に逃げ込み、プットオプション(売る権利)を購入している。プットオプションと強気のコールオプション(買う権利)の取引量を比較したプット・コール・レシオなどの指標は確かに悪いが、まだ真に恐ろしい状態には至っていない。
ヘッジファンドは借入金を減らすことに躍起となっており、デレバレッジ(債務圧縮)主導の底値が近づいているとの筆者の感覚につながっている。
とはいえ、株価下落はかなり整然と進み、ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)の落ち込みと一致している。投資家は、関税が世界貿易を打ち砕き、産業再編を余儀なくさせ、それが生産性低下と利益減少につながるとみて、景気後退の可能性を今までよりずっと高く織り込んでいる。
最も明白な株価反発のきっかけは、この見方を変える出来事だ。
第一は、トランプ氏が譲歩すること。関税の影響を軽減するための口実は山ほどある。同氏はそれが理にかなうと言い繕うか、勝利と見なすことさえできる。
関税交渉の膨大な量だけでも――50カ国以上が交渉を望んでいるという――発動延期を正当化するし、一部の国々の関税を完全に撤廃する口実として控えめな譲歩も利用できる。
第二に、相手国が譲歩することだ。各国が報復する判断を下さなければ、世界的な貿易戦争はそれほど深刻にならないだろう。さらに米国に通商条件の改善を申し出て、トランプ氏が関税撤廃で応じるならば、貿易障壁が緩和され、市場も好感するだろう。中国はすでに報復措置を発表し、他の国々も報復を検討しているが、譲歩も選択肢となる。
第三に、米連邦準備制度理事会(FRB)の介入だ。最近起きた市場パニックは、FRBが住宅ローンや社債などのリスク資産を買い入れ、市場と経済を再浮揚させることで終息した。FRBは景気減速に伴う利下げを恐らく行うだろう。ただ関税がインフレを誘発した場合、やや慎重になるかもしれない。
だが米政府の意図的な政策の影響から市場を救うために、FRBは何か対策を打ち出すだろうか。筆者はそうしないと考える。FRBの独立したイメージを損なうからだ。
市場は7日、反発のきっかけを実際に試す場となった。関税の90日間停止が検討されているという不正確な報道を受けて、株価は6%近く急騰。ホワイトハウスが「フェイクニュース」と否定すると、元の水準まで下落した。その後、トランプ氏が対中関税をさらに50%引き上げる計画を示しても、株価はほとんど動じなかった。関税が思ったほど悪くないという兆しに買い手は飛びつく態勢ができている一方で、関税悪化の際に売り手は姿を現さない。これは市場が反発に向けた準備を整えていることをうかがわせる。
投資家は過敏になっており、株価反発のきっかけがあれば、それは大幅な反発になる可能性がある。過去に2日続落が同程度以上の下げ幅で起きた際、株価はその後1カ月でプラス圏に戻している場合がほとんどだ。
ただし反発は必ずしも長続きしない。弱気相場では、とんでもない急騰が一時的に起きることが多く、長期的な下落チャートでみるとほぼ目立たなくなる。短命に終わった2008年11月からの反発局面では、S&P500種指数が09年1月までに27%上昇。その後反落し、3月に底を打つまでに時価総額が3分の1近く吹き飛んだ。
きっかけがなくても株価はいずれ底値を見つけるだろう。だが景気後退入りする前に底を打つことはほぼない。従って長期的な株価回復には、景気後退が回避されることを示すものが必要だ。
今週相次ぐ決算発表では、最高経営責任者(CEO)が関税のもたらす悪影響を警告する見込みが高く、売り込まれるきっかけとなる可能性もある。
それでも今や悪材料は相当織り込まれており、勇気ある投資家は市場に徐々に戻り始めてもよいだろう。関税が維持され景気後退を招いた場合、株価がいつ急落してもおかしくないことを理解している限りは。
米国の貿易相手国に巨額の関税を課す計画をめぐり、世界中の株式市場で損失が膨らむ中、億万長者のビジネスリーダーらが相次ぎトランプ米大統領に反発を示している。
2024年の大統領選でトランプ氏の出馬を支持した億万長者の投資家ビル・アックマン氏は6日、新たな関税の推進は「経済的な核戦争」を始めるに等しいと警告。X(旧ツイッター)への投稿で、もし新たな関税が実際に発効すれば「企業投資は停止し、消費者は財布のひもを締めるだろう」と批判。米国の他国からの評判は著しく傷つき、回復には数年、場合によっては数十年かかるとの見方を示した。この投稿は1060万回閲覧されている。
同氏はまた、「経済的な核戦争のさなかに、我が国で長期にわたる大規模な経済的責務を落ち着いて果たすことのできる最高経営責任者(CEO)や取締役会がどこにいるだろうか」「大統領は世界中のビジネスリーダーの信頼を失いつつある」と断じた。
すでに米国への全輸入品に対する10%の基本関税は5日に発効しており、数十カ国には9日からさらに高い関税が課されようとしている。
経済への影響に対する恐怖が市場を揺るがす中、ここ数日間でトランプ氏の関税政策を公然と批判する億万長者やビジネスリーダーが相次いでいる。
JPモルガン・チェースのジェームズ・ダイモンCEOは7日、関税は価格を引き上げ、世界経済を低迷させ、米国の世界的地位を低下させる恐れがあると警鐘を鳴らした。
フィッシャー・インベストメンツの創業者兼会長のケン・フィッシャー氏はXで次のように語った。「トランプ氏が(先週)2日に発表した内容は愚かで、間違っていて、傲慢(ごうまん)なほど極端だ。貿易に関して無知であり、問題ではないことに見当違いの方法で対処している。しかし、私の見立てでは、それは次第に弱まり失敗するだろうし、恐怖のほうが問題よりも大きい。ここからみれば強気材料だ」
フィッシャー氏は、大統領の行動について通常は公にコメントすることはないとしながらも、「関税についてトランプ氏はまったく常軌を逸している」と述べた。
トランプ氏の一番の取り巻きであるイーロン・マスク氏でさえ、6日に欧州と米国の間で「関税ゼロの状況」が実現することを望んでいると述べた。
コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスの次席グローバルエコノミスト、サイモン・マカダム氏もアックマン氏に同調。関税政策の「まったくの不確実性」を主な理由に企業は投資を控える可能性が高いと述べた。
同氏は「中規模企業だけでなく、大企業であっても、何をすべきか非常に躊躇(ちゅうちょ)するだろう」と指摘。数カ月後に関税が再び引き下げられるとしたら、米国で数億ドル規模の新工場に投資するのは時間の無駄になるからだという。
アックマン氏は投稿で、新たな関税が「大規模」かつ「不均衡」で、自分たちは賛成していないと述べた。同氏は、トランプ氏が貿易相手国と交渉して「不公平な非対称関税協定を解決」するための90日間の「タイムアウト」を求めている。
投資家は明らかにトランプ氏の計画が賢明だとは納得していない。2日の関税発表を受け、アジアと欧州の株式市場は7日に急落。先物は米国株の続落を示唆した。
金融市場で数年ぶりに質への逃避が加速する中、米国債以外にも信頼できる代替資産が出てきたとの認識が投資家の間で広がりつつある。
米10年債利回りは年初来で約40ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。最近では一時4%を割り込んだ。背景には、トランプ米大統領の関税政策がリセッション(景気後退)リスクを高めるとの見方がある。
一方、欧州と日本の10年物国債利回りもリスク回避の影響で低下しているものの、年初来ではなお上昇している。国防支出拡大に伴う国債増発見通しから、独10年債利回りは足元で2.67%程度。長年ゼロ近辺に張り付いていた日本の10年債利回りも、日本銀行の利上げ観測から1.25%程度に切り上がっている。
いずれの利回りも米国債と比べるとかなり低いが、ドル建て資産を購入する際に為替ヘッジを行う欧州や日本の投資家にとっては、米国債よりも魅力的に見える水準にある。そのため、政策見通しがより安定している本国市場に資産配分をシフトさせる投資家が増える可能性がある。
ドイツ銀行の米金利分析責任者、マシュー・ラスキン氏は「トランプ政権のさまざまな政策が米国債に対する外国勢からの需要を損なう恐れがあるとの見方がじわり浸透しつつある」と話す。これは「米国例外主義」がもはや市場の支配的なテーマではなくなりつつあるとの見方を改めて浮き彫りにするもので、長期的に重大な影響をもたらす恐れがある。ドイツ銀行は「ドルへの信認危機」を警告する一方、UBSグループは世界の通貨におけるユーロの地位向上につながり得ると指摘している。
もっとも、実際にそうしたシフトが実体化するまでは慎重な姿勢で臨む必要がある。2023年半ばにも独連邦債が現在と同じように妙味を増したかに見えたが、激しい売り浴びせで米10年債利回りが5%まで跳ね上がると、金利差における欧州の優位性は失われた。米国の関税政策がインフレを再燃させれば、米国債利回りが再び上昇することもあり得る。
一方で、7日に米国債が大きく下落したことは、米国債が持つ「安全資産としての魅力が薄れつつある」兆候だとの見方も出ている。
シティグループのG10金利トレーディングデスク部門ストラテジスト、ベン・ウィルトシャー氏は「米国債が売られたことは、もはやリスクオフ局面で米国債は世界の国債における資金の逃避先ではなくなるという、いわば構造的な転換を示す兆候なのかもしれない」と述べる。
注目すべき点として、外国勢による米国債保有の大部分は長期債に集中していることが、政府データから分かっている。そのため外国人投資家の需要が低下すると、米国のイールドカーブのスティープ化につながる可能性があると、バンガードの国際金利部門責任者、アレス・カウトニー氏は話す。つまり、短期金利に対して長期金利が相対的に上昇することになる。
世界的な利回りの変化に投資家がどう対応しているかを知る上で、初期の手掛かりが近く得られるかもしれない。日本では新会計年度が始まったばかりで、企業は通常、この時期に資産配分戦略を見直すことが多い。日銀による長年の超低金利政策を受けて、日本の投資家は高い利回りを求めて国外市場に資金を振り向けてきた経緯があり、日本勢は世界の債券市場において重要な存在だ。
ファイブスター投信投資顧問の下村英生シニアポートフォリオマネジャーは、欧州の金利の方が魅力的なので、日本の投資家の資金フローに変化が生じるかもしれないと指摘。「一般的にはそうなっていく可能性はもちろんある」と述べた。
一方で、トランプ政権下の政策は不安定な印象を与えており、米国債の魅力を損なう恐れがある。BNPパリバのシニアマルチ戦略アナリスト、マーク・ハワード氏は「どのような原則が支持され、それが将来の想定リターンの確実性にどのような影響を与えるのか、国際市場は困惑している」と指摘する。
「より国家主義的な投資プロセスへの段階的回帰」を予想する同氏は「欧州や日本での利回り上昇が、そうした国家的な志向を満たすだろう」と述べた。
ベッセント米財務長官は8日、米アラスカ州で見込まれているエネルギー投資案件に日本と韓国、台湾が関与する可能性を示した。トランプ大統領が打ち出した大規模な相互関税措置を受け、各国・地域は米国との交渉を求めている。
ベッセント氏はCNBCとのインタビューで、交渉が進むのに伴い「貿易相手国からどういった提案があるかを見極める」と述べ、その例として「アラスカでの大型エネルギー案件を巡る話がある。それには日本と恐らく韓国、台湾による大型オフテイク(引き取り)契約の可能性がある」と述べた。アラスカで生産されたエネルギーを日本と韓国、台湾が購入する可能性についての言及とみられる。
同氏はさらに、日本などが「取引に向けてファイナンスを提供することもあり得る。これが代替案となるかもしれない」とも述べた。その理由については「米国民に多くの雇用をもたらすだけでなく、貿易赤字を縮小することにもなるからだ」と説明した。
トランプ米大統領は8日、韓国の大統領権限を代行する韓悳洙首相と電話会談を行い、貿易を巡る韓国とのディールは「順調に見える」と、自身のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」で述べた。この会談ではアラスカでのパイプライン合弁事業についても話したという。
通商の枠超えた一括交渉
ベッセント氏は、米国が主要貿易相手国から有利な通商協定を引き出せる可能性があると期待を寄せる。
同氏によれば、ホワイトハウスが電話協議を行う相手国・地域のリストは「膨大な数」に上る。前日に同氏は、米国に対して早期に交渉を求めたほか、軍事的・経済的に米国と重要な結び付きがあるとして、日本が交渉で優先的なステータスを得る可能性があると述べていた。
さらに交渉にはトランプ氏が直接関与するとあらためて述べ、米国が目指す通商合意は、エネ案件を盛り込むなど、商業上の障壁撤廃を目指すような従来の通商協定とは性質が異なるだろうとも述べた。トランプ氏も通商の枠を超えた交渉を歓迎する姿勢を見せた。
米大統領経済諮問委員会(CEA)のミラン委員長は、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、取引を成立させる上で、「関税率だけに焦点を当てるだけでは不十分だ」と述べた。
ミラン氏によれば、米国との取引では防衛も交渉対象となり得る。同氏は、米国が「防衛の傘」を提供し、各国の安全保障と国際貿易制度の安全を支え、繁栄をもたらしていると主張。これを認識する一部の国は、米国がもたらす後ろ盾を支えるべく「コストを分担し、米国に資金を提供することを」決断するのではないか、とも述べた。
トランプ氏はトゥルース・ソーシャルで「韓国の場合と同様に、貿易や関税ではカバーされていない他の問題も取り上げ、交渉するつもりだ」と述べ、ワンストップショッピング(一括取引)は「素晴らしい効率的なプロセスだ!!!」と投稿した。
昨日、私たちのメインFTの同僚が、最近の米国債市場の奇妙な動きに関する重要な記事を掲載しましたが、残念ながら、他のニュースの絶え間ない雪崩にすぐに埋もれてしまいました。
幸いなことに、これは、さらなる悪い関税の見出しで株式市場が再び下落しているにもかかわらず、米国債が今日再び大きな打撃を受けている理由を説明するのにも役立ちます。月曜日の記事から、以下はアルファヴィルの強調です。
ウォール街の激しい混乱が3日続く中、ヘッジファンドが戦略上のリスクを削減し、投資家が現金へのシフトを続けたため、米国債は月曜日に急落した。
ブルームバーグのデータによると、指標となる10年国債利回りは月曜日に0.19パーセントポイント上昇し4.18%となり、2022年9月以来の大きな日次上昇となった。30年国債利回りは0.21パーセントポイント上昇し、2020年3月以来の最大の動きとなった。
投資家やアナリストは、特に「ベーシス取引」と呼ばれる、国債と関連先物契約の価格のわずかな差を利用したヘッジファンドを指摘した。債券市場の大手プレーヤーであるこれらのファンドは、リスクを削減してこれらのポジションを解消し、国債の売りを促した。
「ヘッジファンドは米国債ベーシス取引を猛烈に売却している」とあるヘッジファンド・マネジャーは語った。
売り圧力は火曜日も続いており、ピクセルタイムで10年国債利回りは4.29%上昇している。これは1日で13ベーシスポイントというかなり大きな動きであり、10年国債利回りは4月4日の安値から42ベーシスポイント上昇している。「リスクオフ」が依然として支配的な感情であることを考えると、これはかなり顕著だ。
ビスポーク・インベストメント・グループのジョージ・ピアケス氏は本日のレポートで次のように書いている。
本日の株式市場の歴史的な反転は懸念すべきもので、市場は高値で4%以上上昇した後、安値近くで1.5%以上下落して引けたが、債券市場のうわさははるかに問題であるように感じられる。過去2日間で、30年物米国債利回りは35ベーシスポイントも急上昇した。これは史上最高のものではないが、長期国債利回りの2日間の動きの上位0.4%に入る極めて異例な数字だ。
さらに異常なのは、債券利回りのこの大幅な上昇が株価の下落と並行して起きているという事実です。実際、これは 1982 年以来、同じ期間に株価が少なくとも 1.5% 下落した中で 30 年債利回りが 2 日間で最大に上昇した事例です。
市場の原動力を解明するのは常に困難であり、国債売りの背後には、3年債の入札の弱さや国債スワップスプレッド取引の解消など、複数の原因があると思われる。しかし、米国債ベーシス取引は、米国債市場の亀裂の背後にある大きな要因であるようだ。
多くのアルファヴィル読者がご存知のとおり、私たちは国債ベーシス取引に並々ならぬ関心を持っており、2020年3月にそれが私たちを恐怖に陥れて以来ずっとそうでした。初心者のために、国債ベーシス取引とは何か、そしてなぜそれが潜在的に問題となるのかを簡単に説明します。
国債先物契約は通常、デリバティブ契約を満たすために引き渡すことができる国債よりも高い価格で取引されます。これは主に、国債先物契約が投資家にとってレバレッジをかけた国債エクスポージャーを得る便利な方法だからです (購入する名目エクスポージャーに対して初期証拠金を支払うだけで済みます)。その結果、資産運用会社は主に国債先物をネットロングしています。
しかし、このプレミアムはヘッジファンドに逆の立場を取る機会を与える。彼らは国債先物を売り、国債を購入してヘッジし、数ベーシスポイントのほぼリスクのないスプレッドを獲得する。通常、ヘッジファンドのマネージャーはほんの数ベーシスポイントのために起き上がることはないが、国債は非常に堅実であるため、取引を何倍にもレバレッジすることができる。
たとえば、国債に 1,000 万ドルを投じ、同額の先物を売却するとします。すると、国債を担保として、たとえばレポ市場で 990 万ドルの短期ローンを組むことができます。次に、さらに 990 万ドルの国債を購入し、同額の国債先物を売却し、このプロセスを何度も繰り返します。
ヘッジファンドが国債ベーシス取引に使うレバレッジの典型的な額を正確に把握するのは難しいが、アルファヴィルは、50倍程度が普通で、100倍までになることもあると推測している。言い換えれば、わずか1,000万ドルの資本で、10億ドルもの国債購入を支えることができるのだ。
では、全体としての取引はどの程度重要なのでしょうか。まあ、多くの理由から不完全な尺度ではありますが、全体の規模を最もよく表す指標は、ヘッジファンドの国債先物のネットショートポジションです。これは現在 8,000 億ドルを超えており、資産運用会社はロングポジションでその逆の比率となっています。
問題は、国債市場に異常なほどのボラティリティがある場合、国債先物市場とレポ市場の両方で、はるかに多くの担保が要求されることだ。そして、ヘッジファンドが担保を支払えない場合、貸し手は担保である国債を差し押さえ、それを市場に売り渡すことができる。
その結果、金融システムの防空壕に相当するはずの市場の内部に大きな危険が潜んでいる、とアポロのトルステン・スロック氏が本日指摘した。
なぜこれが問題なのでしょうか? 現物先物ベーシス取引は不安定性の潜在的な原因となるからです。外生的ショックが発生した場合、ヘッジファンドによる現物国債の高レバレッジロングポジションは急速に解消されるリスクがあります。そのような解消は、短期的には、それ自体が資本制約のあるブローカーディーラーによって吸収される必要があります。これは、国債の流通市場への流動性の提供やレポ借入および貸出市場の仲介など、ブローカーディーラー企業の市場機能に大きな混乱をもたらす可能性があります。
2020年3月、この潜在的な脆弱性がどのようにしてシステミックリスクに変化するかを私たちは目の当たりにした。投資家の資金引き出しに圧倒された外国の中央銀行と債券ファンドが、保有する最も売却可能な資産である米国債を手放さざるを得なくなったのだ。その結果、途方もないレバレッジをかけた国債ベーシス取引を行っていたヘッジファンドが打撃を受け、国債の混乱した清算が壊滅的な金融危機に変わる恐れがあった。
連邦準備制度理事会(FRB)の並外れた努力(バランスシートがわずか1か月で1.6兆ドル拡大)によってのみ、この危機は阻止された。
金曜遅くから月曜にかけて起きたことは、2020年3月に起きたこととは全くかけ離れている。当時、世界金融システム全体の基盤である米国債市場は、1週間以上にわたって崩壊寸前だった。しかし、同僚が指摘したように、ボラティリティは高く、昨日の急激な売りは、少なくとも一部のレバレッジをかけた米国債取引が強制的に清算されたことを強く示唆している。
それ以来、多くの規制当局や政策立案者は、FRBの行動が事実上の国債ベーシス取引戦略の救済策となったこともあり、国債ベーシス取引を懸念してきた。ベーシス取引が2020年3月以前よりもはるかに大きく膨れ上がったことで、当然ながら懸念はさらに高まった。
残念ながら、米国政府の借入コストがすでに膨れ上がっている時期に、ベーシス取引が国債市場を支える大きな柱となっているため、これに対して何らかの強力な措置を講じることは困難である。
シタデルのケン・グリフィン氏が2023年に指摘したように(当時SECの長官だったゲイリー・ゲンスラー氏がこの戦略を狙っていた)、国債ベーシス取引を廃止すれば「新規債務の発行コストが増加し、米国の納税者が年間数十億ドルから数百億ドルを負担することになる」。
今のところ、ベーシス取引の清算が国債市場に大きな混乱をもたらしているようには見えない。2020年に怖かったのは、利回りが下がるべきときに上がってしまったことと、今日では1日あたり約1兆ドルの取引が行われることが多い資産クラスで取引が完全に行き詰まったことの両方だ。
今日のようなリスク回避の日に国債利回りが上昇するのは少し不安ではあるものの、これまでのところそのようなことは起きていないようだ。しかし、ブルームバーグの国債市場流動性指数(注意!)は最近少しおかしくなってきているので、これは注目に値する。
●中東情勢
●エマージング
中国商務省は8日、米国が中国に対し50%の追加関税を課すといった脅しを実行に移した場合、中国は自国の権利を守るために必要な措置を講じると表明した。世界の二大経済大国による貿易戦争が激化する恐れがある。
トランプ米大統領は7日、中国が米国製品に対する34%の報復関税を撤回しない場合、「50%の追加関税を課す」と警告。これについて中国商務省は断固として反対するとした。
商務省は「中国に対し関税を引き上げるという脅しは誤りであり、米国の脅迫体質を再び露呈するものだ」とし、「米国がその方針を変えなければ、中国は最後まで闘い抜く」とした。
同省はさらに、米国が一方的な関税措置を中止し、中国の経済と貿易を抑制することをやめ、対話を通じて対立を適切に解消するよう強く求めるとした。
在米中国大使館の劉鵬宇報道官は、米国の追加関税に関する質問に対し、「『互恵』の名の下に行われる米国の覇権的な行動は、他国の正当な利益を犠牲にして米国の私利を追求するものであり、『米国第一』を国際ルールよりも優先させている」と指摘。
「中国は自国の正当な権利と利益を断固として守る」としたが、具体的な対応措置には言及しなかった。
中国はバイオテクノロジーで優位に立とうと急速に動いており、米国は向こう3年間に行動を起こさなければ永久に後れをとるリスクがあると、米議会の委員会が指摘した。
新興バイオテクノロジーに関する国家安全保障委員会(NSCEB)は8日の報告書で、議会はバイオテクノロジー研究を支援するため向こう5年間で少なくとも150億ドル(約2兆2000億円)を投資し、米国内での製造を強化するための他の措置を講じ、企業が中国のバイオテクノロジーのサプライヤーと協力することを禁止すべきだと述べた。
目標を達成するには、連邦政府と米国を拠点とする研究者が世界中の同盟国やパートナーとも協力する必要がある。
委員会は「中国は20年間バイオテクノロジーを戦略的優先事項としてきたため、急速にバイオテクノロジーの優位性を高めている」とし、米国は迅速な行動をとらなければ「後れを取るリスクがあり、二度と取り戻せない後退となる」と述べた。
この調査結果は、中国の急速なバイオテクノロジーの進歩が米国の国家安全保障を脅かすという米政府の懸念の深さを示している。だがこの懸念を具体的な行動に移すのは難しいかもしれない。
昨年、下院は圧倒的な超党派の支持を得て、バイオセキュア法と呼ばれる法案を可決した。この法案は、米政府から資金を受け取ったり米政府と契約したりする企業が、懸念される中国の組織や企業と取引することを禁止するものだ。だがこの法案は上院を通過しなかった。
一方、委員会は外国の組織や研究者との協力を呼びかけ、多額の新規投資を求めているが、連邦政府は外国での公衆衛生活動への助成金や医療費を削減している。
中国政府はドナルド・トランプ米大統領が2期目に就任してからの数カ月間、新政権の対中アプローチを理解しようとしたが、失敗に終わった。期待に反して、米国との意思疎通ラインを構築できなかった。
トランプ氏が相互関税を発表し、その通商攻撃の規模が明らかになると、中国政府の対話への期待は怒りに変わった。
これまで中国政府の対応は抑制的だった。だが4日、トランプ氏が中国に34%の追加関税を課すとしたことに対抗し、全ての米国製品に同率の関税を課すと発表した。例外を設けないのは初めてだった。さらに、一部のレアアース(希土類)の輸出を制限し、複数の米企業を貿易ブラックリストに追加したほか、米化学メーカーのデュポンの中国事業に対し反トラスト法(独占禁止法)に基づく調査を行うと発表した。
中国の報復に対するトランプ氏の反応は、事態がさらに悪化することを示唆していた。同氏はソーシャルメディアに、「中国は間違った対応をし、パニックに陥った。彼らにはそんなことをする余裕はない!」と投稿した。
米中間のコミュニケーション不足には改善の兆しが見られない。今後予想されるのは報復の応酬であり、交渉を早期に始めることさえ難しくなるだろう(訳注:トランプ大統領は7日、中国が報復関税を撤回しなければ50%の追加関税を課すとの意向を示し、中国政府はこれに対する報復措置を取ると表明した)。
中国政府はトランプ政権の発足当初、慎重ながらも楽観的だった。習近平国家主席はトランプ氏の就任式に特使を派遣し、それが実りある意思疎通のきっかけになるかと思われた。トランプ氏は選挙戦の期間中、中国に関税をかけると脅していたが、就任初日はそれを控えた。就任演説で中国に言及したのは、パナマ運河の支配権を中国から取り戻すと語った場面のみで、警戒感を抱かせるものではなかった。
トランプ氏は中国との取引に前向きであることを示唆していた。一方の中国は、同国として応じられるもの(米国製品の購入拡大や米国への投資増大など)を中心とした取引を模索しようとしていた。
しかしその後の数週間、中国高官は何度かトランプ政権と接触を試みたが、扉は開かれなかった。
中国政府高官と意見交換をしている関係者らによると、王毅外相は2月、国連の会合に出席するために訪米した際、マイク・ウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)との会談を要請した。前任者のジェイク・サリバン氏との間にあった意思疎通ラインを復活させようとしたが、トランプ政権との接触はかなわなかった。
トランプ政権1期目の全面的な貿易戦争を受けて習氏は、新たなトランプ式の攻撃に耐えられるよう中国を強化するという決意を強めた。それにもかかわらず、トランプ政権と接触できない間は様子見姿勢を取ることにした。
バイデン政権当局者との交流でよく見られた中国当局者の自信に満ちた態度は消えていた。トランプ氏が中国製品に対する10%の関税を2回課した際、中国の報復は抑制的だった。
そして4月2日、トランプ氏が中国に追加で34%の関税を課したことは衝撃だった。これにより、中国製品に対する米国の平均輸入関税は76%になる。これは2018年にトランプ氏が最初の対中貿易戦争を始める前の20倍超だと、ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、チャド・ブラウン氏は述べる。
中国のあるシニアエコノミストは、トランプ政権1期目に米通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー氏の言葉を引用し、「これは中国との『戦略的デカップリング(分断)』宣言に等しい」と述べた。「このような最大限の圧力の下で、交渉への道筋を見いだせるだろうか?両国間のコミュニケーション不足がそれを難しくするかもしれない」
中国の政策顧問らによると、政府関係者らはトランプ氏が追加関税を発表したことに唖然(あぜん)としていた。そのため、中国政府はトランプ氏と効果的な交渉を行って中国経済への圧力を緩和することができるのか、そして米国とのさらなる分断を防ぐことができるのか、という疑問が浮上している。
「トランプ政権が主導権を握っている」。オバマ政権の国家安全保障会議(NSC)メンバーで、現在は米シンクタンク「ブルッキングス研究所」の中国センター所長を務めるライアン・ハス氏はそう話す。「中国政府の姿勢はほぼ完全に反応的だ」
一部の外交政策・貿易アナリストは、中国が様子見をしたのは賢明だったと述べている。トランプ氏が伝統的な同盟国や主要な貿易相手国への輸入関税も大幅に引き上げたことで、世界的な反発を招き、中国を利するのではないかとの懸念が高まったためだという。
中国高官と意見交換をしている関係者らによると、中国政府が守りの姿勢を取っている主な理由は、トランプ氏との貿易ディール(取引)がまだ可能かどうかを探る一方で、習氏が「熱心すぎる求愛者」に見られたくないことにある。
米シンクタンク「民主主義防衛財団」のシニアフェロー、クレイグ・シングルトン氏は「トランプ氏と習氏は圧力とメンツのパラドックスに陥っている」と指摘する。「トランプ氏の戦略は最大限の圧力と性急な外交的アプローチを組み合わせている。彼はレバレッジとエンゲージメントは補完的なものとみている。対照的に、習氏は方法論的かつリスク回避的で、先延ばしと自制に重きを置いている」
習氏が歩み寄るタイミングが早すぎれば、弱く見えてしまう恐れがある、とシングルトン氏は言う。
トランプ氏は「遠くない将来」に習氏との会談が実現する可能性を示唆していた。しかし、米国からの圧力が高まっていることを考えると、習氏が近いうちに米国を訪問する可能性は低いと、中国の当局者らは米企業幹部らにほのめかしている。
中国のシンクタンク「中国金融40人論壇」は3日のリポートで、トランプ氏の新たな関税措置は市場と各国政府の予想を上回ったとし、中国の対米輸出が半分以上減少するとの見方を示した。
裏ルートが途絶える
中国の政治システムは、トランプ氏のようなリーダーに機敏に対応できるようには作られていない。中国指導部は、敵対国との裏ルートなど、外部世界と関わるための確立された方法に大きく依存している。
トランプ政権1期目には、当時の崔天凱・駐米中国大使がトランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏との関係を構築し、それが米中間の交渉促進に役立った。第2次トランプ政権との間にそのようなチャンネルは確立されていない。
関係者によると、現在の駐米中国大使である謝鋒氏は、トランプの顧問イーロン・マスク氏への接触を試みたが、実現しなかった。中国政府は、自社車両の半数を中国で製造する米電気自動車(EV)大手テスラの経営者であるマスク氏が、トランプ政権の対中強硬派の影響力を抑えることに期待していた。
中国指導部が苦しい時によく頼ってきた、米国の他のビジネスリーダーたち(金融業界の幹部など)は現在、中国政府の仲介役を務めることにほぼメリットはないとみている。ある米企業幹部は「そのような役割を担いたい人などいない」と述べた。
中国政府が正式な外交儀礼以外を考えられないことは、習氏の最側近たちのみに関わろうとするトランプ政権とのミスマッチを浮き彫りにしている。中国政府の考えに近い関係者らによると、トランプ政権側が習氏の最側近たち(例えば、習氏の補佐役となる党中央弁公庁主任を務める蔡奇氏)と話したいと提案しても、中国側は、そのような即興的行動に伴う政治的リスクは受け入れがたいと考え、そうした会談に尻込みしてしまう。
一方、中国の王文濤商務相は2月、ハワード・ラトニック米商務長官と米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表に書簡を送ったが、成果はなかった。代わりにグリア氏は3月下旬、王商務相の上司で習氏の信頼する側近である何立峰副首相と初のビデオ通話を行った。
失われたカード
トランプ氏が就任演説でパナマ運河について中国に警告していたにもかかわらず、中国指導部は香港の複合企業「長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)」の発表に不意をつかれた。同社はパナマ運河の港湾の運営権を、資産運用大手ブラックロック率いる米国の投資家連合に売却すると明らかにしたのだ。
中国高官との協議に参加している関係者らによると、中国が同運河を運営しており、米国がそれを取り返すというトランプ氏の発言は、指導部内でほとんど議論されなかった。売却を事前に阻止するためにCKハチソンに連絡を取ろうとは誰も考えなかったという。指導部はむしろ、すぐに始まると予想されたトランプ政権との交渉で、パナマ運河の港湾の問題を交渉材料として使えると考えていた。
今や中国は八方ふさがりの状態で、CKハチソンの取引に対する反トラスト法審査を通じて「交渉カード」を取り戻そうとしている。しかし、何らかの形でこの取引に干渉すれば、中国がパナマ運河を支配しているというトランプ氏の主張を裏付けることになりかねない。
人気動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業を中国の親会社バイトダンスから分離する案をトランプ氏が検討する中、中国の当局者らはCKハチソンを巡る過ちを繰り返すわけにはいかず、対米カードとなり得るものを手放さないよう躍起になっている。
事情に詳しい複数の関係者によると、中国当局者は最近の会合で米国のビジネスリーダーらに対し、中国政府はあらゆる「商業的略奪」に断固として反対しており、中国がTikTokのアルゴリズムの支配権を失うような売却には特に反対していることを暗に伝えた。
関係者によると、現時点ではまだTikTokについても貿易・経済問題についても米中間の交渉は行われていない。中国側は、何らかの妥協案で合意するための、あるいはそもそも交渉を開始するための「出口」に期待するだろうと関係者の1人は話した。出口とは例えば、トランプ氏が関税を引き下げざるを得なくなった場合だ。トランプ氏が世界各国への相互関税を打ち出した後、世界中の市場が下落したが、最も大きく下げたのは米国だった。
今のところ、米中関係という自動車の運転席に座っているのは中国政府ではない。
オフショア人民元は8日のニューヨーク市場で、史上最安値を更新した。貿易を巡る米国との対立が激化する中、中国当局が元安を容認しているとの見方から売りが加速した。
オフショア人民元はドルに対して一時0.94%下落し、1ドル=7.4141元を付けた。中国人民銀行(中央銀行)は同日、人民元の中心レート(基準値)を1ドル=7.2038元と、2023年9月以来の元安水準に設定した。
中心レートが7.20元より安い水準に設定されたのは、トランプ氏が昨年11月の米大統領選を制して以降で初めて。この水準は当局が緩やかな「レッドライン」と見なしているとして投資家が注目していた。オンショア人民元は23年9月以来の安値を付けた。
ウェルズ・ファーゴのマクロ戦略・新興国市場担当マネジングディレクター、アループ・チャタジー氏は「人民元の下落ペースはここから加速するとみている」と指摘。中国当局は中心レート設定で「柔軟性を高めることを示唆している」と述べた。
同氏はまた、オフショア人民元が7.50元かそれを超える水準まで下落する可能性があるとの見方を示した。
元安への誘導は輸出競争力を高めるために中国当局が取り得る選択肢の一つとみられている。しかし急激な元安の容認は中国経済に対する弱気な見方を増幅し、資本流出を拡大させる恐れがある。また、米国との関係を一層悪化させ、貿易交渉の見通しを暗くする可能性もある。
トランプ米大統領は7日、中国が米国製品に対する34%の報復関税を撤回しない場合、「50%の追加関税を課す」と警告。中国商務省は反発し、「米国がその方針を変えなければ、中国は最後まで闘い抜く」と表明した。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
### 為替市場:
- **ユーロが上昇**:ドイツで連立政権樹立の報道が材料に。ただし、関係筋は否定。
- **米ドルは軟調**:主要通貨に対して下落。
- **人民元が過去最安値**:オフショア人民元は1ドル=7.423元、一時最安値を記録。
### 債券市場:
- **米10年国債利回り上昇**:4.243%に。トランプ政権の貿易交渉への楽観が背景。
- **政権関係者の発言**:関税交渉は市場対応ではなく対象国の要請に基づくと説明。
### 株式市場:
- **S&P500が5000ポイントを割り込む**:関税延期や譲歩への期待が後退。
- **ホワイトハウス**:約70カ国が交渉開始を希望も、トランプ氏は関税発動に前向き。
- **投資家心理**:業績発表前に不安感が増し、慎重姿勢。
### 金先物:
- **反発**:4日ぶりの上昇。交渉進展期待で換金売りが一服。
- **トランプ氏の投稿**:交渉の即時開始を示唆、イスラエル・インド・ベトナムとの進展も報道。
### 原油先物:
- **4日続落**:米中の貿易摩擦への懸念が影響。
- **60ドルを割り込む**:トランプ政権が相互関税の上乗せを示唆、中国は反発。
- **米イラン協議も注目**:核問題が焦点。協議が決裂すれば制裁強化の可能性も。
### ロンドン株式市場:
- **反発上昇**:FTSE100は2022年3月以来の大幅上昇。FTSE250も3.29%高。
- **背景**:米国の関税交渉への期待感が高まり、安心感が広がった。
- **注目銘柄**:
- 航空宇宙・防衛株が急騰(ロールスロイス +6.8%、BAEシステムズ +4.6%)
- 貴金属株も金価格上昇を受けて上昇(+3.03%)
- **債券市場**:売りが優勢で英30年債利回りは約3カ月ぶり高水準。
### 欧州株式市場:
- **反発(5営業日ぶり)**:STOXX欧州600種指数は2022年11月以来の大幅上昇。
- **ドイツDAX指数も+2.48%**。
- **要因**:
- 関税問題に対する欧州の交渉姿勢(米との協力路線)
- ECBの利下げ予想(今後4会合連続)
- 欧州株の割安感とドイツの財政刺激策への期待
- **セクター別**:
- 航空宇宙・防衛(+5.13%)、銀行(+2.31%)、保険(+4.08%)
- 個別株ではASML(+4.3%)、アストラゼネカ(+3.2%)が好調
### ユーロ圏債券市場:
- **国債利回りが小幅上昇**:米の貿易交渉期待でリスク選好がやや回復。
- **EUの対応**:
- 関税撤廃に向けた交渉姿勢を強調(工業製品の関税ゼロ協定に意欲)
- 対抗関税として一部米製品に25%の関税提案
- **具体的動き**:
- ドイツ10年債利回り:+8bpで2.643%
- ドイツ2年債利回り:+8bpで1.89%
- イタリア10年債は横ばい(3.861%)
備忘録(2025/4/7)
●海外企業決算
●海外企業
●日本企業
トランプ米大統領は7日、日本製鉄(5401.T), opens new tabによる米鉄鋼大手USスチール(X.N), opens new tabの買収案件を巡り「さらなる措置が適切かどうか判断するため」に、対米外国投資委員会(CFIUS)に対し新たな審査を行うよう指示した。声明から明らかになった。
日鉄はこの報道に満足しているとし「われわれは当初からUSスチールとの提携案を客観的な事実に基づいて検討すれば、それが米国経済と国家安全保障を強化することになると確信していた」と述べた。
USスチールの広報担当者は「この重要な投資を最終決定するために、トランプ大統領および政権と引き続き緊密に協力していきたい」と述べた。
市場はこれを、トランプ政権がUSスチール買収承認を検討している可能性を示唆したものと受け止め、USスチールの株価は16%超上昇した。
トランプ政権とUSスチール、日鉄はこの日、バイデン前政権による合併阻止を巡り両社が起こしていた訴訟について、CFIUSが提案を再審査する間、6月5日まで一時停止するよう控訴裁判所(高裁)に要請した。このプロセスにより、両社の主張が「完全に解決」する可能性があるとしている。
富国生命保険は2025年度以降、オルタナティブ(代替)資産を中心に投資する高収益運用に特化した投資枠を新設する。毎年の保険料収入などから得られる運用原資の3分の1程度を投じる。財務基盤の充実にめどがつき、かじを切る。
1日に就任した渡部毅彦社長は日本経済新聞のインタビューで、「資産運用をもう一段ギアチェンジしたい。M&A(合併・買収)ではなく、高収益投資で本業以外の収益の底上げを図る」と強調した。渡部社長は運用関連部門の経験が長い。大手が海外のM&Aを通じた業容拡大にかじを切る中、運用戦略の見直しで収益基盤を手厚くしたい考えだ。
富国生命の代替資産への投資残高は足元で900億円程度にとどまる。新設する「高収益投資枠」で、25年度は年間350億円程度を見込む。投資先はプライベートクレジット(ファンドによる直接融資)やヘッジファンド、LBO(レバレッジド・バイアウト)ローンといった代替資産を軸とし、5%を超えるリターン確保を目指す。
代替資産への投資はリスクも大きい。富国生命は25年の新資本規制への対応も見据え財務基盤を手厚くしてきた。自己資本はリーマン・ショック後の09年度末比3倍の1兆円超まで積み上がり、高収益投資にかじを切る体制を整えた。
富国生命は各社が規制対応を見据えて超低金利下で国債購入を進めるなか、金利上昇を警戒して国債購入を抑制するなど、独自の運用戦略を進めてきた。渡部社長は「運用で『最良』の保険会社になりたい」と強調した。
●先進国政治動向
ドイツ次期首相への就任が見込まれるキリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首は7日、トランプ米大統領が発表した相互関税を受けて株式市場が急落していることに対応するため、ドイツの競争力確保に向けた速やかな行動が必要との認識を示した。
メルツ氏はロイターに宛てた電子メールで「国際的な株式・債券市場は劇的な状況にあり、今後さらに悪化する恐れがある。このため、ドイツの国際競争力をできる限り早く回復することが、かつてないほど急務になっている」と指摘。
「この問題を連立交渉の中心に位置づける必要がある」とし、減税、官僚主義の是正、エネルギー価格の引き下げを目指す同党の方針を改めて示した。
ルビオ米国務長官は4日、米国は世界の人道援助の大部分をもはや負担しないと述べ、他国も貢献すべきだと訴えた。
ブリュッセルで記者団に「われわれは世界の政府ではない。他国と同様に人道援助を提供し、最善の努力をする」と述べる一方、「他のニーズとのバランスを取る必要がある」とも強調した。
世界の人道援助の6─7割を米国が負担することを期待するのは公平ではないとも指摘。世界には援助に貢献すべき「豊かな国」が多数あるとし、中国やインドを名指しした。
ミャンマーで3月28日に発生した大地震を受けて米国が発表した支援は200万ドルと控えめな額にとどまった。3人の調査チームを現地に派遣することも発表したが、軍事政権によるビザ発給の問題で到着が遅れている。以前は津波や地震など世界中の災害に対し、熟練の救助要員を迅速に派遣してきた。
ルビオ氏は、対外支援を担う米国際開発局(USAID)が実質的に解体されたため地震への対応が遅れたとの批判を否定した。
石破茂首相は7日午前、米国による一連の関税措置について日本としての対応方針をパッケージにまとめ、トランプ大統領との直接交渉に臨む考えを示した。電話会談や早期の訪米などを通じて、税率引き下げを強く求める構えだ。参院決算委員会で答弁した。
石破首相は、米国の措置は極めて不本意で遺憾だとして、関税引き下げを「強く言っていかなければならない」と説明した。既に調整中の電話会談に関しては「早ければ早い方がいい」とする一方、自らの訪米については最もふさわしいタイミングで行い、日本の対応を「パッケージ」として示して「1回で話をつけなければいけない」と述べた。
検討分野としては農産物、エネルギー、造船、自動車などを挙げ、「多岐にわたる」と指摘。具体的には、米国産のエタノールやアラスカの液化天然ガス(LNG)にも言及した。
日本の非関税障壁については精査中として、見直す場合は社会的な安全の確保を前提に「米国に応えられるものがあるのだろうか」検討するとした。米国の雇用創出と日本の国益の両立が必要とした上で、公正、フェアが「日本国のあるべき姿だ」との考えも明らかにした。
トランプ関税への対応は、内閣支持率が低迷する石破政権にとって最大の政策課題に浮上している。首相は先週、与野党党首会談を開き、各党に協力を要請。参院決算委では「この国難に何としても打ち勝たねばならない」とし、「国家一体となって臨みたい」と野党議員に改めて協力を呼び掛けた。当面、対米交渉と中小企業支援など国内対策を並行して進めることになる。
石破首相は7日昼に開かれた政府与党連絡会議では、トランプ大統領が目指す米国の雇用創出に対し「日本でも協力できることはあり、そのためにも関税は撤廃、引き下げを強く求めたい」と語った。公明党の斉藤鉄夫代表は国内対策に関し、「この国難を乗り越えるために、できることは全てやるとの政府の決意が伝わることが重要だ」と十分な対応を求めた。
FNNによると、石破首相は7日夜にもトランプ大統領と電話会談する方向で調整しており、今後の協議の進め方を確認することになるとみられるという。
他の国会での首相発言
コメに700%の関税かかっていない-事実誤認がある
誤りを正しておかないとこれから先の議論にならない
最後は大統領でないと判断できない-米関税政策
あらゆる選択肢は当然考えている-米関税措置への対応
日本は米国に投資し雇用も創出、他国と同一に取り扱うことは認められない
報復関税には否定的
これに先立ち、石破首相は5日、読売テレビの番組で、米国に報復関税を課すか問われ、「売り言葉に買い言葉みたいなことをやるつもりはない」と否定的な姿勢を明らかにした。米側の指摘に対する日本の対応に関して「小出しにするようなことはだめだと思う。一つのセットにする、パッケージにするということで 持っていかないと心を打たない」とも述べていた。
米国の関税措置を受け、政府は全国約1000カ所に特別相談窓口を設置。中小・小規模事業者向けの資金繰り支援などの国内対策を実施している。与野党からは追加の経済対策を求める声が出ており、共同通信は7日、補正予算案の編成を検討していることが分かったと報じた。
トランプ政権は3日の自動車関税25%に続き、米国への全輸出国に基本税率10%の関税を課す「相互関税」を5日に発動。日本を含む約60カ国・地域を対象とした上乗せ税率についても、9日午前0時1分(同日午後1時1分)に適用し、日本の税率は24%となる。自動車と自動車部品は相互関税の対象からは除外される。
市場動揺
トランプ大統領の関税政策による「貿易戦争」への不安から、7日の日本市場では日経平均株価が史上3番目の値下がり幅を記録し、2023年10月以来の安値となった。主要な株価指数先物は、取引が一時停止されるサーキット・ブレーカーが発動された。
林芳正官房長官は午前の記者会見で、株価の動向については直接コメントを避けたが、関係省庁と連携し、「内外の経済・金融市場の動向について緊張感を持って注視するとともに、経済財政運営に万全を期したい」と語った。また、石破首相から加藤勝信金融相らに6日、市場や投資家の動向を関係閣僚らと連携し、注視し、適切に対応するよう指示があったとも説明した。
加藤金融相は7日、「足元の金融市場は世界的にも不安定な動きがみられる」とした上で、投資家に冷静な判断を要請。金融政策については、「基本的にこれまで同様、日本銀行において対応される」と述べるにとどめた。国会内で記者団に語った。
JNNが4月5,6両日に行った世論調査で、石破内閣の支持率は前月から7.8ポイント下落し、30.6%と昨年10月の就任後で最低となった。米国の相互関税に対しては、57%の人が「対抗措置をとるべきだ」と回答した。
トランプ米大統領は6日、「相互関税」の発表を受けた先週の米株価急落について、意図的に下落をあおっているわけではないと述べた。過去2営業日で5兆4000億ドル(約793兆円)もの時価総額が消失しても、関税措置を見直す用意は一切示唆しなかった。
トランプ氏は大統領専用機で記者団に対し、米国の関税賦課の対象となる国・地域に関税率軽減を認めるディール(取り決め)に向けては、米貿易赤字の解消につながる必要があるとの考えを示した。
「われわれは再び豊かな国になる。かつてないほど豊かにだ。アドバンテージは全てわれわれにあり、マーケットのことは少し忘れてほしい」と同氏は話した。
アジア時間7日の市場では、米株価指数先物が急落し、円が急伸するなど米関税措置を受けた市場の混迷が深まっていることが鮮明となっている。だが、トランプ氏は「私は何も下落を望んでいないが、何かを修復するには薬を用いなければならないケースも時々ある」と語った。
トランプ氏は具体名は示さなかったが、幾人かの各国首脳と話したと発言。関税の目的は2国間貿易赤字を完全に解消することだと繰り返した。ただ、個人消費支出や安価な物品が米経済成長の原動力である点を踏まえると実現は極めて困難と言える。
貿易相手国・地域についてトランプ氏は、「彼らは必死でディールを取りまとめようとしている。私は『あなたの国との間で赤字を抱えるつもりはない。私にとって赤字は損失だからだ。私たちは黒字を出すか、最悪でも収支を均衡させるつもりだ』と話した」と明らかにした。
トランプ政権の経済担当閣僚も、各国に対する米国の関税発表が引き起こした金融市場の混乱について一切釈明せず、景気の好転は間近だと強気の姿勢を示している。
トランプ氏の関税発表を受け、世界の株式市場は先週後半に急落したが、ベッセント財務長官、ラトニック商務長官らは6日、市場がどう反応しようとトランプ氏は関税政策を貫く方針だと明言した。
インフレ問題視せず
トランプ氏は特に、中国との間の「米貿易赤字の解消が必要だ」とコメント。「その解決を望んでいる」と語り、対中物品貿易赤字の削減につながらない限り、ディールに応じるつもりはないとの姿勢を示した。
関税措置が先行き新学期の買い物に影響を与えることはないかとの記者団の質問に対し、トランプ氏は「インフレが大きな問題になるとは思わない」と答えるとともに、「中国から鉛筆を買うという特権のために1兆ドルを失うつもりはない」とも話した。
トランプ氏が2日に署名した大統領令に基づき、米国への全輸出国・地域に基本税率10%の関税を課す措置が5日に発動された。対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象とした上乗せ税率については9日に適用され、日本への関税率は24%となる。
トランプ氏は欧州に対しても批判の矛先を向け、「彼らは話し合いを望んでいるが、現在だけでなく過去の分も含めて、年単位で大金を支払ってもらわなければ協議に応じることはない」と、過去の赤字の補償さえも望んでいることを明らかにした。
トランプ政権1期目でペンス元副大統領の首席補佐官を務めたマーク・ショート氏は5日のインタビューで、政権が最終的に市場の流れに「降伏」すると見込む一方、それはすぐのことではなく、そうした場合でも政権としては「勝利」として位置付けようとするだろうとの見方を示した。
アメリカ政府が打ち出した関税政策によって世界の株式市場が大きく揺れる中、アメリカのドナルド・トランプ大統領は6日、「何かを治すには、時には薬が必要だ」と記者団に述べ、自らの政策の正当性を力説した。アジア各地の株式市場では7日、前週の下落傾向が続いた。
トランプ氏が2日に新たな関税措置を発表して以来、世界中で株式市場が大きく揺れている。
アジアでは7日午前、東京株式市場の日経平均が、前週末の終値比で6.5%低い2188円74銭安の3万1591円84銭と大幅続落。午後も下落が続き、前週末終値より2644円(7.83%)安の3万1136円58銭で取引を終えた。
中国、オーストラリア、韓国、台湾、シンガポールの各市場でも7日の取引開始から下落。香港のハンセン指数は13.22%下げて取引を終えた。AFP通信によると、これは1997年のアジア通貨危機以来の下落幅という。
日本時間7日午後から開いた欧州の株式市場も続落し、ドイツのDAX指数は一時10%下げた。フランスのCAC40指数は7%、イギリスのFTSE100指数も6%近く、一時下落した。
米株式市場は先週4日、主要3指数がすべて5%以上急落した。S&P500種は6%近く下落。同市場にとって先週は、2020年以降で最も大きく下落した週となった。週明けも、不安定な状況が続くと予想されている。
日曜日も取引があるサウジアラビアの株式市場は6日、7%近く下落。国営メディアによると、1日の下げ幅としては、新型コロナウイルスの世界的な流行以来、最大となった。
「何かを治すには薬が」とトランプ氏
こうした中、トランプ氏は6日夜、大統領専用機の機内での記者団とのやりとりで、ヨーロッパやアジアの国々が「取引をしたがっている」と主張した。
アメリカの消費者の間で物価高騰や景気後退への懸念が高まる中、「痛みに対する閾値(いきち)」についてどう考えるかと記者に問われると、「その質問はとてもばかげていると思う」、「私は何も下がってほしくはない。だが、何かを治すために、薬を飲まなければならないこともある」と答えた。
トランプ政権の経済閣僚らも、関税政策を維持すると強調している。
スコット・ベッセント財務長官は6日、米テレビ各局のインタビューに応え、株価の下落は大したことではないと主張。景気後退を予想する「理由はない」とし、「これは調整の過程だ」と述べた。
ベッセント長官はNBC番組「ミート・ザ・プレス」に出演した際には、トランプ氏が「最大限の影響力を自ら作り出し、50カ国以上が非関税貿易障壁の引き下げや、関税の引き下げ、為替操作の停止について米政権に打診している」と力説した。
ハワード・ラトニック商務長官もこの日、テレビ番組に出演。相互関税は予定通り発動されると強調した。
CBSニュースの番組では、すべての輸入品を対象にし、5日に発動となった10%の「基本関税」について、「数日、数週間はそのままになる」と発言。税率の高い相互関税に関しても、まだ予定どおりだと述べた。米政府が「最悪の違反者」と呼ぶ約60カ国にかける高率の関税は、9日に発動の予定となっている。
また、ペンギンしか住んでいない南極の小さな2島に関税が課されることについては、中国などによって貿易に利用されないよう「抜け穴」をふさぐのが目的だと主張した。
米経済に関してトランプ氏に助言する立場の側近のケヴィン・ハセット氏もこの日、50カ国以上がアメリカとの交渉開始を望んでいるとの主張を繰り返した。
ただ、ハセット氏もベッセント氏も、どの国から接触があったのかについては明らかにしなかった。
インドネシアと台湾は報復せず
米政府が32%の関税を課すとしているインドネシアと台湾は先週末、アメリカに報復関税をかけることはしないと発表した。
ヴェトナムは、46%の関税を「少なくとも45日間」延期するよう、トランプ氏に書簡で要請した。AFP通信と米紙ニューヨーク・タイムズが、この書簡を見た。
一方、中国は4日、アメリカからのすべての輸入品に対し、34%の関税を10日から課すと発表した。
イギリスのキア・スターマー首相は5日、「私たちが知っていた世界はなくなった」と警告。英政府として、関税の一部を回避できるような経済協定を求め続けていくと述べた。
首相官邸の報道官によると、スターマー氏はカナダのマーク・カーニー新首相と電話で協議し、「全面的な貿易戦争は誰の利益にもならない」という見解で一致したという。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7日、米首都ワシントンでトランプ氏と貿易交渉をする予定となっている。
アメリカでは5日、各地の都市で「反トランプ」のデモが行われた。トランプ氏が1月に大統領に復帰して以来、最大の抗議活動となった。
ボストン、シカゴ、ロサンゼルス、ニューヨーク、首都ワシントンなどで、数十万人が参加。社会問題から経済問題まで、トランプ氏の政策に対する不満を訴えた。
株式市場の混乱をめぐっては、トランプ氏は米国民に「頑張る」よう呼びかけている。
米国のトランプ大統領が先ごろ発表した関税政策をめぐり、政権内からは矛盾したメッセージが発信されている。今回の取り組みは経済の仕切り直しに必要なものと位置づけられ、市場の激しい変動と不確実性は軽視されている。
トランプ氏は以前から自身について「ディール(取引)」の達人を自認しており、各国との関税をめぐる取引の可能性を残している。しかし、経済に対処する政権幹部が6日に発したメッセージによって、関税の緩和に向けた可能性は、より不透明なものとなった。
トランプ氏は先週、全ての国に対して一律に10%の関税を課す措置を発表した。60の国・地域の「最悪の違反者」にはさらに関税を上乗せするとしている。関税の一部は5日に発動し、相互関税については9日に発効する予定となっている。
当局者は6日、関税についての発表後、これまでに関税引き下げの協議に向けて50カ国以上から接触があったと明らかにした。
ラトニック商務長官はCBSニュースの番組で、各国は米国をだましていたことを自覚しており、それを終わらせる日が来たと語った。
トランプ氏はこれまで、交渉の余地を残すために関税の発効を一時停止してきたが、ラトニック氏は、9日に発効予定の関税を徹底する考えを明らかにした。
一方、トランプ氏は6日夜、週末にIT企業の幹部や世界各国の指導者から関税に関する電話を受けたと述べた。
トランプ氏は、各国が米国の貿易赤字に対処するなら、交渉に応じる意向を示した。「私は中国や欧州連合(EU)、その他の国々との間の赤字問題を解決したい。彼らはそれをやらなければならない。もし、彼らがそのことについて話し合いたいのなら、私は話し合う用意がある」
CNNは先に、トランプ政権がイスラエルやベトナム、インドとの関税に関する交渉の可能性について活発に協議を行っていると報じていた。
だが、ナバロ大統領上級顧問(通商・製造業担当)は、ベトナムの件や関税撤廃について質問を受けると、政権は交渉を行っていないと述べた。
ナバロ氏はFOXニュースの番組で「これは、交渉ではない。これは、不正な行為によって制御不能になった貿易赤字に基づく国家非常事態だ。我々は耳を傾ける用意がある。トランプ氏の得意技だ」とし、「しかし、私は世界に向けて言いたい。もし我々と話をしたいのならば、関税を下げて終わりにしたいなどと言わないでほしい」などと言い添えた。
ロリンズ農務長官も、関税が今後も続くのか、あるいは交渉の余地があるのかどうかについて、明言できなかった。
ベッセント財務長官は、トランプ氏が「自身のために最大限のレバレッジ(てこ)をきかせた」と語った。「数日や数週間交渉して解決できるようなものではない」
政府効率化省(DOGE)を率いる起業家のイーロン・マスク氏からは、米国と欧州の間で「関税ゼロの状況」を望んでいるとの発言も出ていた。
石破茂首相は7日夜、トランプ米大統領と電話会談を行い、関税措置を巡って担当閣僚を指名した上で二国間で協議することを確認した。両首脳が会談後、明らかにした。
石破首相は電話会談後、記者団に概要を説明した。大統領に対し、関税措置により日本企業の投資余力が減退することを強く懸念していると伝えたという。今後は双方が担当閣僚を指名し、「率直かつ建設的」な協議を続けることを確認。日本として関税措置の見直しを強く求める方針を明らかにした。
これに対し、トランプ大統領は相互関税に関する交渉を巡り、「厳しくも公正な枠組みが設定されつつある」とソーシャルメディアに投稿した。
その上で、「石破氏は交渉のためにトップチームを派遣する。日本は貿易で米国を非常に不公平に扱ってきた。われわれの車は受け入れないのに、われわれは日本車を何百万台も受け入れている。農産物についても同様で他にも多々ある。すべてを変える必要があるが、特に中国に関してだ」と主張した。
ベッセント氏ら対日交渉を担当
ベッセント財務長官は日米首脳の電話会談を受けて、グリア通商代表部(USTR)代表とともに日本との交渉を開始するよう、トランプ大統領から指示されたと明らかにした。
ベッセント氏はその後、米国と関税交渉を求める約70カ国・地域の中で、日本は優先的なステータスを得る可能性が高いと指摘。日本は協議を早く開始することで優位に立つだろうと、FOXビジネスで述べた。
日本は「非常に高い」非関税障壁を維持しているが、かなり生産的な交渉になると予想していると話した。
またトランプ大統領が石破首相と極めて生産的な協議を行ったとし、トランプ氏も対日貿易交渉に直接関与すると語った。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相と同日ホワイトハウスで会談したトランプ氏は、とりわけ米国製の自動車と農産物に関して日本は市場を開放する必要があると指摘。その上で、日本との素晴らしい関係を今後も維持して行きたいとの考えを示した。
トランプ政権は3日に25%の自動車関税、5日に米国への全輸出国に基本税率10%の関税を課す「相互関税」を発動した。電話会談は日本を含む約60カ国・地域を対象とした上乗せ税率が9日に適用されるのを前に行われたが、交渉の枠組みでの合意にこぎつけるにとどまった。上乗せにより、日本への税率は24%となる。
大統領から「率直な認識」-石破首相
石破首相は、会談で今後の日米関係について「一方的な関税ではなく、投資の拡大を含め、日米双方の利益になる幅広い協力のあり方を追求すべきだ」との考えを示した。大統領からは、国際経済で米国が現在置かれている状況について「率直な認識」が示されたという。
記者団から自身の訪米について問われ、石破首相は閣僚協議の推移を踏まえ、最も適切な時期に行い、大統領と直接会談する考えも明らかにした。
米国の関税措置を受け、政府は全国約1000カ所に特別相談窓口を設置。中小・小規模事業者向けの資金繰り支援などの国内対策を実施している。与野党からは追加の経済対策を求める声が出ており、共同通信は7日、政府・与党が補正予算案の編成を検討していると報じた。政府は8日朝、全閣僚が参加する総合対策本部を開催し、今後の対応を協議する。
CFIUSに再審査命じる
日本製鉄によるUSスチール買収提案を巡っては、トランプ氏は対米外国投資委員会(CFIUS)に新たな審査を命じた。バイデン前大統領が下した買収阻止の決定を修正する道が開かれた。
トランプ大統領はCFIUSに対し、「この件でのさらなる行動が適切となり得るかどうか、私が判断するのを助ける」ため、日鉄による「USスチール買収問題に関して見直しを行う」よう指示した。ホワイトハウスが7日に声明を発表した。CFIUSは45日以内に報告書を提出しなければならない。
トランプ氏は長くこの買収案に反対し、日鉄がUSスチールの過半数株式を取得することはできないと主張してきた。しかし、少数株式の取得は容認する可能性を示唆している。
トランプ米政権の当局者らは、輸出業者向けの税優遇措置を新たに設けることの是非を検討している。ホワイトハウスの関税政策が米企業に与えかねない悪影響を暗に認めていることをうかがわせる。
事情に詳しい関係者によると、米国の製造業を後押しする狙いがあり、輸出企業が直面するであろう報復関税の影響を緩和する目的で年末の還付が検討されている。
税優遇制度は議会の承認が必要で、財だけでなくサービスを輸出する企業にも適用される可能性がある。協議の非公開を理由に関係者が匿名を条件に明らかにした。
関係者によれば、トランプ大統領もベッセント財務長官も、この計画の正式な説明は受けておらず、政権の経済チーム内の見解も分かれているという。
財務省は声明で、「特定の対策を巡る協議はまだ初期の段階だが、ベッセント財務長官の税制に関する全ての考えは、トランプ大統領の『米国第一の経済政策」への全面的支持に支えられており、いかなる提案も最終的に支持するかどうかはこれに基づいて判断される」と説明した。
ホワイトハウスの報道官にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。
トランプ氏に近い当局者らは相互関税発表に伴う影響の抑制を目指している。輸出業者向け税優遇措置はなお不透明だが、こうした政権内の議論を反映する動きといえる。一部の大統領経済顧問がトランプ氏の通商政策の健全性に納得できない様子もうかがえる。
関係者によると、この税優遇措置は報復関税発動時に困難に直面する米輸出企業を支援する補助金の役割を果たすことになる。だが米国の新たな関税措置で最も直接的な影響を受けるのは、輸入品のコスト増を負担せざるを得ない輸入業者の方だ。
関係者によれば、大統領経済顧問らは輸入業者にも恩恵が及ぶような仕組みにするかどうか検討している。それは一層難しい作業になると関係者はみている。
ハセット米国家経済会議(NEC)委員長はFOXニュースに対し、50カ国余りが米国に接触し、そのうちのいくつかは米国の関税に対する「素晴らしい」取引を提案していると語った。米銀JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)による関税政策への批判については、トランプ政権の政策は米国経済をより強くしていると反論した。
ハセット氏はその取引が米国の政策を転換するのに十分かどうかを判断するのはトランプ大統領だと付け加えた
ハセット氏は歳出削減やもっと賢明な税制、関税により貿易収支の不均衡は縮小するだろうと述べた
ヘッジファンド界のビル・アックマン氏が関税政策について「経済的な核の冬」を引き起こすとコメントしたことに対しては、少し発言を控えるべきだと応じた
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は7日、トランプ米大統領による鉄鋼・アルミニウムへの関税に対抗するため、一連の米国製品に25%の対抗関税を課すことを提案した。ロイターが文書を入手した。
それによると、対象品目はダイヤモンド、卵、デンタルフロス、ソーセージ、鶏肉など多岐にわたる。一部品目に対する関税は5月16日に、アーモンドや大豆など他の品目は年内12月1日に発効する。
シェフチョビッチ欧州委員(通商担当)は、報復関税の影響は、以前発表された260億ユーロ(284億5000万ドル)より小さいとの見通しを示した。
バーボン、ワイン、乳製品は同委が3月に検討していた当初のリストから削除された。
トランプ米大統領は7日、貿易相手国と関税を巡る交渉を進めるために関税措置を一時停止することは検討していないものの、日本や中国、その他の国々と協議すると述べた。
トランプ大統領は記者団に対し、関税の一時停止に前向きかという質問に対し「考えていない」と応じた上で、「多くの国々がわれわれと交渉する構えを示しており、それは公平な取引となるだろう」と述べた。
さらに、中国が対米報復関税を撤回しない限り、中国からの輸入品に対し50%の追加関税を課すという考えを再表明した。
中国は先週、米国の相互関税への対抗措置として10日から全ての米国製品に34%の追加関税を課すと発表した。
トランプ米大統領の広範な関税措置を巡り、これまでに世界の50カ国近くが協議に向けて米通商代表部(USTR)に接触してきたもよう。グリアUSTR代表の上院財政委員会向け証言原稿をロイターが確認した。
グリア氏は「アルゼンチンやベトナム、イスラエルなどの複数国は、関税と非関税障壁の引き下げを示唆してきた」とし、「明らかに歓迎すべき動きだ。米国の抱える大規模かつ持続的な貿易赤字は30年以上かけて積み上がったもので、一夜にして解決できない。しかし、全ては正しい方向に向かっている」と述べた。
米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は、トランプ大統領が打ち出した相互関税を巡る経済的な懸念を打ち消し、各国が米国にとって有意義な提案をすれば大統領は耳を傾けるだろうと述べた。
ハセット氏はFOXニュースで「大統領は自身で効果があると分かっている取り組みを強化しており、その行動を続ける。だがわれわれの貿易相手の言い分には聞く耳を持つ。彼らが米国の製造業と農家に有益な取引を持ちかければ、きっと大統領は聞いてくれる」と語った。
その上でハセット氏は、トランプ氏はこの週末を通じてずっと世界各国の指導者と協議をしていたと強調。取引をしようとする諸国が列を成していると付け加えた。
米大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長は7日、米国が発表した「相互関税」の見直しを求める場合にはトランプ大統領に要請するように促した。ミラン氏は「さまざまな改善が施される可能性があるが、最終的には大統領が決定者であり、決めることになる」と訴えた。
シンクタンクのハドソン研究所が主催するイベントでミラン氏は、米国が強い優位性を持つサービス業も重要な一方、製造業に関してはバランスを崩していると主張。トランプ氏がベッセント財務長官に日本との交渉を指揮するように求めたのかや、新たな関税が発効する今月9日の前に見直し交渉が可能なのかどうかを尋ねられると、その前に取引が可能なのかどうかは言えないとの回答にとどめた。
ミラン氏は、ナバロ米大統領上級顧問(貿易・製造業担当)らトランプ政権の主要メンバーが関税強化のプロセスについて「交渉ではない」との見解を示していたことを認めつつ、認識の違いは大きな問題ではないと言及。「相反する話が出てくるのは誰もが意見を持っているからであり、それはかまわない」とし、「意見の食い違いがあるからこそ議論を深めることができる」と訴えた。
ミラン氏はイベント終了後に記者団に対し、経済の調整にはいくらかの時間がかかるとしながらも、具体的な時期の見通しについては明言を避けた。
規制緩和や減税の立法化が必要となり、それには時間を要するとして「政権は最初の数カ月だけで歴史的な進歩を遂げたが、実際にはまだ膨大な作業が残っている。ルール作りの過程で従わなければならない。あらゆる法律があり、それには時間がかかる」と語った。
ドナルド・トランプ米大統領の顧問の中でも特に影響力の大きさが目立つ実業家のイーロン・マスク氏が、ホワイトハウスの通商政策に対して暗に批判を展開している。トランプ氏が表明した広範囲に及ぶ関税を巡り、政権内部で広がるあつれきが露呈した格好だ。
マスク氏は7日午前、経済学者ミルトン・フリードマン氏が自由貿易を称賛する有名な動画を投稿した。動画では、1本の鉛筆でさえも各部品が複雑なサプライチェーン(供給網)を必要とすることを説明している。
これに先立ち、マスク氏は週末にピーター・ナバロ大統領上級顧問(通商・製造業担当)を批判。厳格で広範囲にわたる貿易障壁を求める同氏の主張が的外れだと示唆していた。
マスク氏は、ナバロ氏の学歴を称賛するXユーザーに対し、「ハーバード大学の経済学博士号は良いことではなく、悪いことだ」と投稿。電気自動車(EV)大手テスラを含め複数の企業を率いるマスク氏はまた、ナバロ氏に経済での実践的な経験がないことを示唆し、「彼は何も作っていない」と書き込んだ。
ナバロ氏は7日、CNBCの番組で、まだマスク氏とは話をしていないが、7日中にホワイトハウスで話し合う予定だと述べた。「イーロンとの関係は全て順調だ」とし、歳出削減に向けた同氏の取り組みを称賛した。
さらに、マスク氏のコメントを重視しない姿勢を強調し、通商政策はマスク氏の担当分野ではないと示唆した。政権内では、マスク氏の考えは「自動車メーカー」および「自動車組み立て業者」のものとみなされていると説明した。
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
米金融大手JPモルガン・チェース(JPM.N), opens new tabのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は7日公表した株主への年次書簡で、米国の関税と世界的な貿易戦争に伴う混乱で米経済の成長が鈍化し、インフレが進行する可能性があると指摘、悪影響が長期化する恐れがあるとの認識を示した。
同氏は関税が米国の長期的な経済同盟関係にどのような影響を及ぼすのか懸念を表明。
「経済は(地政学を含め)かなりの混乱に直面している。税制改革や規制緩和という潜在的なプラス要因と、関税や『貿易戦争』、根強いインフレ、多額の財政赤字、依然としてかなり高い資産価格といボラティリティーといったマイナス要因がある」と述べた。
「インフレという結果につながる可能性が高い。関税が景気後退を引き起こすかは依然不明だが、成長は鈍化する」との見方も示した。
ダイモン氏は他国による報復の可能性を指摘し、関税は経済への信頼感、投資、資本フロー、企業利益、ドルに影響を与える可能性があると述べた。
「この問題は早く解決すればするほど良い。悪影響は時間とともに累積的に増大し、元に戻すのが難しくなるからだ」との認識も示した。
関税で金利の方向性を巡る問題も浮上するとし、最近はドル安で金利が低下しているが、成長の鈍化とリスク選好度の低下が見込まれ、金利が上昇する可能性もあるとし、1970年代のスタグフレーションに言及した。
ソフトランディングが軌道を外れる可能性もあると指摘。
「私たちは、株価や債券価格が最近の下落後も依然として高水準にある中で、この不確実な時代に突入する。市場はまだ、かなりソフトなランディングが続くという前提で資産価格を評価しているようだが、私はそこまで確信できない」と述べた。
トランプ米大統領の関税発表が招いた貿易戦争で何兆ドルもの市場価値が消失し、一部のヘッジファンドは借り入れによる取引の縮小を迫られ、保有株式の全てあるいは大半を売却しているファンドもある。
トランプ大統領がほぼ全ての国に対する広範な相互関税を発表した後の3日間の取引で、世界の株式市場は急落、債券が資金の逃避先となった。市場はトランプ大統領就任前の想定から一転、連邦準備理事会(FRB)の利下げを見込んでいる。
米金融市場の暴落は、米国の例外主義と経済力に賭けていた投資家が市場から逃げ出すという悪循環に陥っている。
米S&P総合500種指数(.SPX), opens new tabは2日間で10.5%下落し、約5兆ドルの市場価値が消失した。上海と深センの株式市場に上場する有力企業300銘柄で構成するCSI300指数(.CSI300), opens new tabは7日に5%超下落、STOXX欧州600種指数(.STOXX), opens new tabは3月3日終値の最高値から12%近く下落し、調整局面にある。
上海拠点のあるヘッジファンドの会長は、現在の地政学的状況は混乱しており、世界的な景気後退のリスクが高まっているため、保有する株式ポジションを全て清算したと説明。4日の祝日前の3日に中国株と香港株を売却したという。
ブローカーによると、株式ロング・ショート戦略を追求するヘッジファンドは、市場のボラティリティー(.VIX), opens new tab急上昇で特に大きな打撃を受けている。
JPモルガンのアナリストは、ヘッジファンドのネット・レバレッジ(借り入れ)は先週、前週比で5─6%ポイント低下し、2023年後半以来の低水準になる可能性があると推定した。
同行は4日、ボラティリティーをターゲットとするポートフォリオが、リスク削減のためにポジションを解消するため、数日間で250億─300億ドル相当の株式を売却すると発表した。
ヘッジファンドは通常、プライムブローカーから現金を借りて市場取引を行うマージン口座を利用している。
この口座の保有資産の価値がブローカーが要求する証拠金を下回ると、ブローカーは投資家に対し、マージンコールを通知し、証拠金の追加注入、あるいは保有する株式や債券の売却を求めることができる。
こうした現金需要により、2日のトランプ関税発表以来、通常は危機時の安全資産とされる金さえも急落している。
北京拠点のあるヘッジファンドは、中国株へのネット・エクスポージャーを1月時点の100%から現在は25%に減らしたという。責任者は「中国市場のボラティリティーはまだ始まったばかりかもしれない。ポジションはかなり込み合っており、急落中の資産に手を出そうとする人もいる」と語った。
中国の投資家は、今年初めに市場が大きく上昇したため、マージンコールの影響を受ける可能性はやや低い。
中国の信用取引残高は3日現在で1兆9000億元(2600億ドル)と、依然として高水準だ。
一方、株式空売りが今月解禁されたばかりの韓国では、韓国金融投資協会(KOFIA)のデータによると、4月1─3日の間にマージンコールをきっかけとした株式売却が合計280億ウォン(約1915万ドル)相当あった。3月の売却額は115億ウォンで、23年9月以降で最大だった。
パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生した際にはテレビに出演して経済への最大限の支援を約束するなど、必要だと思えば強力なメッセージを発してきた。
しかし、パウエル氏もFRBも、トランプ米大統領が経済をどうするつもりなのか、世界中の人々と同じように推測。「FRBプット(FRBによる株価下支え)」を発動する時ではないと示唆した。
パウエル氏は4日、「われわれも含め様子見が続いている。不確実性が高まっている今、それは正しい行動に思える」と述べ、FRBが利下げを急がない姿勢を示した。
米労働省が4日発表した3月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は22万8000人増加し、エコノミスト予想の13万5000人増を大幅に上回った。
ただ、パウエル氏はトランプ氏による関税発表前に集計された数字であることに注意を促し、「現時点で金融政策の適切な道筋は明確になっていない」、「これがどうなるかを見守る必要がある」と語った。
FRBの元副議長で現在はプリンストン大学教授を務めるアラン・ブラインダー氏は、現時点でパウエル氏の仕事はFRBが急いで金利を大幅に引き下げようとしているという見方を取り除くことだと指摘。「だからといって、FRBが今の事態に対して利下げをしないというわけではない。これが景気後退に発展すれば、おそらく利下げするだろう」と話した。
ヘッジファンド界の重鎮、ビル・アックマン氏とスタンレー・ドラッケンミラー氏は、トランプ米大統領による世界各国対象の相互関税発動を非難した。この決定で、金融市場は大混乱に陥っている。
米投資会社パーシング・スクエアの創業者でトランプ氏を積極的に支持してきたアックマン氏は、トランプ氏が打ち出した新たな貿易体制は「間違い」だとX(旧ツイッター)に投稿した。
ドラッケンミラー氏もXに投稿を寄せ、1月のインタビューで言及した政策批判をさらに展開した。同氏はジョージ・ソロス氏の元まな弟子で、財政規律を重視する「財政タカ派」として知られる。
ドラッケンミラー氏は6日の投稿でCNBCとの先のインタビューに言及し、「私は10%を超える関税には賛成しない。そのことは引用されたインタビューでも十分明確にしていた」と説明した。同氏によるソーシャルメディアへの投稿はまれで、ブルームバーグ・ニュースは発言内容を独自には確認できなかった。
トランプ氏は2日、米国への全輸出国に基本税率10%を賦課し、対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域には上乗せ税率をそれぞれ適用すると発表。世界一律10%の関税は5日に発動。上乗せ税率は9日に適用される。
親トランプ派のアックマン氏らからも批判が寄せられる中、トランプ氏は関税措置を見直す考えを一切示唆していない。
アックマン氏はXへの投稿で、9日の上乗せ税率導入について、「全世界に対して、われわれが課されている水準を大幅に上回る関税を賦課するのは間違いだと確信している」と表明した。
さらに、トランプ氏が米国にとって不公平だとかねて批判してきた「世界貿易の状況を慎重かつ戦略的に打開する」時間を確保するために、90日間の猶予が必要だとの考えを示した。
また、自身とパーシングについて、市場が暴落した場合に流動性問題を引き起こすような信用取引などのレバレッジを一切行っていないと言明。相場が急落した場合、時価評価による損失が発生する可能性はあるものの、「下落相場での売り手」にはならないとした。
パーシングのポジションで関税の直接的な影響を受けるのは、ナイキのコールオプションのみで、同社ポートフォリオに占める割合は1.5%だという。
アックマン氏は、相場が急落する中でディールをまとめようとするトランプ氏の試みは、交渉における同氏の立場を強めることにならないとも指摘。「大統領にそのような提言をしている人物は、直ちに解任されるべきだ」と付け加えた。
トランプ米政権の関税措置に伴う世界的なリセション(景気後退)懸念が強まる中で、トレーダーは今年の米利下げ観測を強めている。次回5月会合より前に利下げに踏み切るとの見方も出ている。
オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)動向によれば、短期金融市場は年末までの米金融政策当局による利下げを一時125ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と織り込んだ。これは0.25ポイント利下げで5回に相当する。先週時点では3回の利下げが完全に織り込まれていた。
スワップ動向はまた、米連邦公開市場委員会(FOMC)が来週までに0.25ポイント利下げする確率も約40%織り込む。次回の政策金利発表は5月7日。
急速な織り込み加速は、世界市場を覆う不安を反映している。トランプ大統領は先週発表した強気な関税措置を緩和させる姿勢はほとんど見せていない。トランプ氏は6日、記者団に対し、「マーケットのことは少し忘れてほしい」と述べた。
米運用会社のブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントは、米国の相互関税発動をきっかけに世界的な貿易戦争が深刻化し、今年の円相場は対ドルで現状から8%程度上昇するとみている。日本の投資家や企業による本国への資金還流が強まれば、1ドル=130円突破の可能性もあると言う。
トランプ米大統領の関税政策が世界の金融市場を混乱に陥れる中、円は最も有望な逃避先通貨だとブランディワインでは分析。ポートフォリオマネジャーのキャロル・ライ氏はブルームバーグのインタビューで、日米金利差の縮小と米景気の後退リスクを材料に円は今年対ドルで135-138円まで上昇すると予想した。
ライ氏は「世界の貿易秩序は変わってしまった」と指摘。為替相場は「今のところ全体的には円高傾向にある」と話し、トランプ氏が関税計画を少し譲歩したとしても、「いずれ日本銀行が政策金利を引き上げ、円高を後押しする」との見方を示す。
中国が米輸入品に対する報復関税の実施を発表したことで貿易戦争激化への懸念が高まった7日、投資家のリスク回避姿勢から円は対ドルで一時144円82銭と1%以上上昇。4月に入り円の上昇率は3%を超えており、G10通貨のうち、1通貨を除く全てに対し円高が進んでいる。
ライ氏は、今年に入り日本の10年国債利回りが1.4-1.5%程度まで上昇(価格は低下)した際、日本国債を購入した。日銀が再度政策金利を引き上げれば、10年債利回りは3月に付けた08年以来のピーク(1.59%)を更新する可能性はあるものの、足元は世界的な金融市場の混乱を受けて日銀がいったん利上げを停止するとみられ、1%程度までの低下もあり得ると言う。
ライ氏は日銀の追加利上げについて「もしあるとすれば、9月が最有力候補だろう。そうでなければ、12月になる可能性が高い」と語った。
ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは、トランプ米政権の相互関税発表を受け、米国のリセッション(景気後退)確率を引き上げるとともに、次回の米利下げ開始時期の予想を前倒しした。
6日付の調査リポートによれば、ジャン・ハッチウス率いるエコノミストは、10-12月(第4四半期)で比較した2025年の国内総生産(GDP)成長率見通しを1%から0.5%に下方修正。この1年間のリセッションの可能性を35%から45%に引き上げた。
「金融状況の急激な引き締め、海外消費者の不買運動、政策の不確実性の高まりによって、設備投資が従来の想定よりも大幅に落ち込む可能性が高い」とエコノミストらは分析した。
エコノミストらは基本シナリオの予想が、依然として米国の実効関税率が計15ポイント上昇するとの想定に基づいていると説明。しかし、この想定には9日に発効予定の関税が大幅に引き下げられることが必要となる。
関税の大半が同日に実際に発効された場合、実効関税率は20ポイント上昇するだろうとエコノミストらは分析。「もしそうなれば、われわれは予測をリセッションに変更する見通しだ」と指摘した。
現在のリセッションに陥らない基本シナリオにおいて、ゴールドマンのエコノミストらは、米金融当局が6月から3回連続で25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の「保険的な利下げ」を決定し、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを3.5-3.75%に引き下げるとの見通しを示した。従来は7月の利下げ開始を予想していた。
「リセッションのシナリオの場合、われわれは向こう1年間に200bp前後の利下げを予想している」とエコノミストらは指摘。リセッション確率引き上げを反映した「確率加重予想」は現時点で、年内の130bp利下げを示唆。これは従来予想の105bpを上回るが、市場が4日の取引終了時点で織り込んだ利下げ幅と同水準だという。
世界的に株式相場の下落が加速する中で、米国がその中心になっている状況を市場のボラティリティーを示す指標が裏付けている。
米株式市場の「恐怖指数」として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー指数(VIX)は先週、急上昇。インドや韓国、オーストラリアの同じような指標に対する相対的な水準が2020年の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期以来の高さとなっている。
また欧州のVストックス指数のほか、香港で取引されている中国大手企業を対象したHSCEIボラティリティー指数とのVIXの相対的な水準も、年初来で最高を記録した。
VIXは非常に短期間で上昇し、VIX先物(2カ月物)との比較では足元で20年3月以来の高水準にある。BTIGのテクニカルストラテジスト、ジョナサン・クリンスキー氏は6日付リポートで、投げ売りの兆候だと指摘した。
同氏は投げ売りのゾーンに入った場合に「多くの人が考える以上、または想像できる以上に市場が動くことが多い」とし、米国株相場が7日に一段と下落する可能性が高いとの見方を示した。
またVIXがVIX先物より高い水準となっている状況について、「これ以上極端になる可能性は常にあるが、現時点でパニックゾーンにある」との見方を示した。
トランプ米大統領の関税が世界的な貿易戦争を招き、株価は急落。家電や自動車、スニーカー、食料品などあらゆる商品が値上がりする恐れがある中、消費者や個人投資家は自分のお金について、今何をすべきだろうか。
ここ数週間、S&P500種株価指数が2月に付けた最高値から下落する中、一般的な考え方は、海外資産をポートフォリオに加えるべきだというものだった。
また、関税が発動される前に急いで自動車などの大きな買い物をすべきだという助言もあった。
消費者にとっては難しい選択だ。値上がりする前に今購入するか、年内にリセッション(景気後退)が訪れる可能性を踏まえて貯金すべきか。
トランプ氏の関税と中国からの報復関税で、株価は世界的に急落し、市場には身を隠す場所がない。S&P500種は4日に6%下落し、ナスダック100指数は弱気相場入りした。
バンガード・グループなどのファイナンシャルアドバイザーは投資家に、自分自身でコントロールできることに集中し、パニックに駆られて慌てて判断を下さないよう助言した。
しかし、関税発表後に続いた相場下落の規模を無視することは困難だ。
GMOの資産配分共同責任者ベン・インカー氏は「これは市場が狂気じみた行動を取っているという問題ではない。世界が変わったのだ」と語った。「難しいのは、非常に高いレベルの不確実性があるからだ。この状況がいつまで続くのか、確実なことは何もない」と指摘した。
専門家によれば、個人が資産を守るためにまず行うべきなのはポートフォリオの確認だ。まだ行っていない場合は、自分が具体的に何に投資しているのかを確認しよう。
ここ数年、米国での投資はかなり単純だった。S&P500種は多少の変動はあったものの、おおむね上昇し続けた。
エンパワー・インベストメンツのチーフ投資ストラテジスト、マータ・ノートン氏は「長期にわたって分散投資が期待外れに終わっているため、多くの人が『必要なのはS&P500種だけだ』と言うが、分散投資は、今日の投資家にとって本当に有効だ」と話す。
分散投資
アドバイザーらが勧める分散投資先は以下の通り。
米国外の株式
FBBキャピタル・パートナーズの調査ディレクター、マイク・ベイリー氏は、欧州、日本、カナダの株式を推奨
ズマ・ウェルスの創業者テリー・スパース氏は、上場投資信託(ETF)を通じドイツと日本への投資を検討するよう勧める
高品質の債券
ジョン・ハンコック・インベストメント・マネジメントの共同最高投資戦略責任者、エミリー・ローランド氏は投資適格社債と住宅ローン担保証券への投資を推奨
有望分野
ツインフォーカスのマネジングパートナー、ジョン・パンテキディス氏は、米国および欧州の防衛株と原子力産業に収益機会があるとみている
買いだめ
自動車からノートパソコン、スポーツ用品に至るまで、幅広い消費財の価格が上昇する可能性が高い。カリフォルニア大学デービス校の経済学教授、キャサリン・ラス氏は、関税により米国の世帯は平均で少なくとも年間数千ドルの負担増になると試算した。
ノースカロライナ州立大学でサプライチェーンマネジメントを研究するロバート・ハンドフィールド教授は、値上げの全容が買い物客の目に触れるまでには少し時間があるだろうと言う。つまり、無理のない範囲であれば、今買い物をするのは良い考えかもれない。
ただ、ロック・ウェルス・マネジメントの創業者ベン・ラファリー氏は、金利はまだ高いのでローンを組む必要がある品目には注意が必要だとくぎを刺した。
この15年間、貯蓄を投資し続けた米国人が、ほぼ遭遇したことのない状況がある。構造的なドル安に見舞われることだ。ドナルド・トランプ米大統領が宣言した「米国解放の日」の予期せぬ影響を考えると、これに慣れる必要はあるかもしれない。
先週の相互関税発表を受け、ドルが主要通貨に対して急落したことで、ウォール街は不意を突かれた。市場には保護主義のせいで世界金融危機以降の米国の経済的優位が終焉(しゅうえん)を迎えるのではないかとの懸念が広がった。
国際的な資産運用会社は、これまで米国資産の偏重が目立っていたが、高リターンをもたらす別の収益源を探す必要に迫られている。米国人投資家は長らく外国株を無視しても平気だったが、そのぜいたくはもう許されないだろう。
「今後5年間にドルがさらに10~15%下落する前提で対応している」。スイスの資産運用大手ピクテ・アセット・マネジメントのチーフストラテジスト、ルカ・パオリーニ氏はこう述べた。
資産運用会社が大抵、景気後退のリスクから身を守る短期的・防御的な動きを行っているのは確かだ。それは超大型IT株「マグニフィセント・セブン」――アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、メタ・プラットフォームズ、テスラ、エヌビディアの7銘柄――から資金が流出するという、トランプ氏とは必ずしも関係のない理由で起きていた傾向に沿うものでもあった。
これらの企業は米国株が過去10年半に生み出した異例のリターンの原動力となった。だが7銘柄合わせた株価収益率(PER)は昨年12月に46倍という驚異の水準に達しており、ここからは下落するのもたやすい。
だがマグニフィセント・セブンを除いても、ファクトセットによると、米国人がS&P500種指数の残りの構成銘柄を15年前に購入した場合、約380%のトータルリターンを得ていた。また欧州の人々が為替ヘッジなしで同じことをした場合、約490%のリターンを得ていた。ドルが対ユーロで20%余り上昇したためだ。
逆のことも言える。ユーロ圏の株式はユーロ建てで約220%のリターンがあったが、ドル建てでは150%にとどまる。日本株も似たような状況だ。日経平均株価は円建てで300%上昇したが、ドル建てでは160%の上昇だ。米国人がこれらの株式を確定拠出年金「401k」に急いで追加しなかったのも不思議ではない。
注目すべきは、ドル高の場合、外国で得る利益のドル建て価値が減じるため、機械的に米国の株式は不利になり、外国の株式を支援するはずだという点だ。歴史的にみると、ドル安の局面でS&P500種指数を買う方がパフォーマンスは良くなっている。過去5年間はそれが当てはまり、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げがドル高を招く一方、株式のパフォーマンスは損なわれた。
だが新型コロナウイルス流行前の7年間、ドルと米国株は同調した動きをしていた。その頃は「米国例外主義」トレードが全盛で、米国資産はテック株だけでなく幅広くアウトパフォームした。資本財・サービスなどの為替感応度の高いセクターもそうだった。
二つの要因がこれを後押しした。第一に、フラッキング(水圧破砕法)によるシェールブームだ。米国はエネルギー自給をほぼ達成し、企業のコストが削減され、ドルを一種の「石油通貨」に変えた。投資家は2014年、原油価格が急落すると米経済は実際に悪影響を受けかねず、原油価格上昇がプラスに働く可能性があるという、直感では捉えがたい教訓を学んだ。
第2の要因は、ガソリン価格が上昇した時でさえ米消費支出の勢いが衰えないことだった。何年もの間それを支え続けたのは、政府の赤字財政支出や、世界に大規模なサービス輸出を続けるテック業界、活況を呈する米株市場の資産効果だった。
今やその大半に逆回転リスクがあり、投資家はドル安と株安が同時に進行する見込みに直面している。
トランプ氏は財政赤字を減らすと約束しており、それがドル安を招くのはほぼ間違いないとみられる。一方、同氏が始めた「関税戦争」は株価を急落させ、中国の報復関税発動を引き起こしており、欧州が米巨大テックに厳しい対抗措置をとる可能性が生じる。
この新体制は2000年代初めの状況に似ているかもしれない。ドットコム・バブル崩壊後、投資家はテック業界にも米国株にも背を向けた。当時、資本はBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)諸国に流入しており、ドルはやはり米国株と正の相関関係にあった。
クリアブリッジ・インベストメンツのジェフ・シュルツ氏は4日の顧客向けリポートで、S&P500種指数のパフォーマンスが低下した場合、従来はその代役を外国株が務めてきたと指摘。そうしたケースで、米国とカナダを除く先進国株式市場を対象としたMSCI EAFE指数とMSCI新興国市場指数は、S&P500種指数を年率平均でそれぞれ2.0ポイントと12.1ポイント上回っていた。
ドル安はそれ自体が発展途上国の金融面の強じんさを支える働きをする。一方、欧州連合(EU)に対しては、景気刺激策や産業政策、エネルギー自立を通じ、米国との経済格差を埋められるとの投資家の期待感が再び高まっている。
だが一方、2000年代とは全く違った状況だとも言える。米国の比較的閉鎖的な経済に比べ、世界の他の地域は、はるかに多くの貿易機会にさらされており、中国が大量に有り余った安価な製品をそうした地域に送り込むことに対処しなくてはならない。
そう考えると、投資家のもう一つの選択肢は、米国株を保有し続け、為替リスクをヘッジする(ただしコストは高い)か、割安な「バリュー株」に投資対象を広げ、長期的に勝者となる銘柄を見極めようとすることだ。
トランプ氏による経済の再構築は、投資が増え、消費が減ることを意味する。生産の国内回帰で利益を出す唯一の方法は、それがナイキの靴であれ、ゼネラル・モーターズ(GM)のスポーツタイプ多目的車(SUV)であれ、労働者ではなく機械を活用することだ。そのため最終的に資本財メーカーが恩恵を受ける可能性がある。ただ、そうした企業は世界的サプライチェーン(供給網)を今襲っている無差別な混乱で特に打撃が大きい業種でもある。
先行きが全く見通せない状況を考えると、依然として長期的な株価上昇を求める人々にとって唯一の解決策は、これら全てを同時に行うことかもしれない。目下、分散投資は単なる戦略ではない。まさに頼みの綱だ。
米株式市場の大幅続落を受けた6日の先物市場は、週明け7日にさらなる修羅場が起きることを示唆していた。3日と4日に見られたような急落後には通常、いくぶん値を戻す動きが期待される。たとえそれが「デッドキャット・バウンス(死んだ猫でも高いところから落とせば弾む=相場急落後の一時的反発=)」のような反応であっても、だ。しかし、関税という炭坑のカナリア(炭坑の有毒ガスの発生を人間より先に察知し、警告する)たちは、今後に訪れる経済的苦境を警告している。
ジャンク債市場での投げ売りは、そうしたカナリアの一つである。新型コロナウイルス流行が起きた2020年以来の大きさだった。ICE・BofAのインデックスで見ると、高リスクの社債を購入する際に投資家が求めるプレミアム(米国債利回りと比べた上乗せ幅)は、ドナルド・トランプ米大統領の関税引き上げ攻勢を受け、先週末の遅い段階で1ポイント拡大し4.5ポイントに達した。
これは少なくとも、投資家が損失を回避しようとしている兆候だ。最悪の場合、関税とその影響によってデフォルト(債務不履行)が起きかねないとの不安を示すシグナルだ。スコット・ベッセント財務長官は10年物米国債利回りの低下を望んでいたが、現在その通りになった。ただし、米10年債利回りはインフレ率の低下だけでなく、成長鈍化の見通しから低下することがある。財務省で誰かが社債市場を注視していることを期待したい。
第2のカナリアは、米ドルからの逃避だ。通常、不確実性が高まっているときには安全資産への逃避が起きる。その場合の安全資産とはドル建ての資産を意味することが多い。今回、ドルは対ユーロ、円、英ポンドで下落している。4日にドルは反発したが、一段のドル安は不吉な前兆になるだろう。
第3のカナリアは、ウォール街でのリセッション(景気後退)リスクに対する見方の変化だ。エバーコアISIの友人らは、関税が成長への「相当な足かせ」になるとみている。彼らは今年の国内総生産(GDP)伸び率の見通しを1%に引き下げ、年内にリセッション入りする確率を40%に引き上げた。
JPモルガンのエコノミスト陣は現在、軽度ではあるものの、リセッションを予想している。成長率はマイナス0.3%になり、失業率が3月時点の4.2%から5.3%に上昇するとみている。ホワイトハウスの上級顧問であるピーター・ナバロ氏の下で働く者を除くすべてのエコノミストは、トランプ氏の関税措置を受けて多かれ少なかれ成長率予想を引き下げた。これはトランプ氏が労働者階級の有権者に約束したブームではない。
ウォール街のコンセンサスが間違ったことはこれまであるし、運命があらかじめ決まっているわけでもない。貿易の報復措置が懸念されていたほど厳しくない可能性も、トランプ氏が方針転換する可能性もある。しかし、政策立案者は危険を覚悟で市場からのシグナルを無視している。
「今回は違う」。偉大な投資家サー・ジョン・テンプルトンがよく口にしたように、これは投資において特に代償が大きい言葉の一つだ。
「今回も同じだ」という言葉も、同様に代償が大きい可能性がある。
ドナルド・トランプ米大統領が数十年に及ぶグローバル化の流れを一変させ、世界の貿易ルールを無視しようとしているため、市場が混乱しているのは当然だ。何も変わっていないと考えるのは愚かで、この混乱をただ無視することはできない。
この混沌(こんとん)を乗り越えるには、多くの投資家――そして政策立案者ーーが感情的に混乱している時に、論理的に考える必要がある。
強い不確実性は自動的に人間の脳に恐怖とストレスを引き起こし、生存に不可欠な原始的反応である「闘争・逃走反応」を引き起こす。恐怖を抱くと、ネガティブなものばかりに注意が向かう。社会的シグナルにひどく敏感になり、ワーキングメモリー(作動記憶)に支障が出て、柔軟に考えられなくなる。
トランプ氏の猛烈な関税攻撃のような、ほとんどの投資家の人生において前例のない出来事は、恐怖とストレスを強める。
「誰もこのような状況に遭遇したことがないので、どう反応すべきか分かる人がいない」。ハーバード大学の神経科学者で、感情と意思決定について研究しているエリザベス・フェルプス氏はそう話す。
通常、投資家は過去のデータを参照して、暴落する市場を客観的に捉え、恐怖を和らげることができる。だが、トランプ氏が仕掛ける貿易戦争のようなものは1世紀近く起こっていない。つまり現在の投資家は「拠り所(よりどころ)となる経験がなく、心を落ち着かせられない」とフェルプス氏は言う。
だからこそ、現時点で論理的に考えることは、かつてないほど難しいだけでなく、かつてないほど重要なのだ。
その第一歩は、自身のポートフォリオへのダメージに執着するのをやめることだ。代わりに、単純なピラミッドを想像すべきだと、米トゥルサード・キャピタル・マネジメントのジョナサン・トゥルサード氏は言う。このピラミッドは3層から成り、各層によって後悔する可能性が異なることを示している。
最下層は、いま下しても後で後悔する可能性が極めて低い「決定」だ。
2番目の層は、後で多少の後悔を感じる可能性のある「行動」で構成されている。
最上層は、取り返しのつかないほどではないが、取り返しが困難な「極端な決定」で構成されており、将来的に激しい後悔の対象となる可能性が高いものだ。
最下層には、家計を引き締めるなどの行動が該当する。支出を減らし、貯蓄を増やすことで、市場の嵐を乗り越えやすくなる。また、税務上の損失(欠損金)の活用も検討できる。購入価格よりも突然値下がりした株式やファンドを保有していないだろうか?税務アドバイザーに相談して、それを欠損金に転換できるかどうか確認しよう。それらを売却し、売却代金を低コストの分散ファンドに投じることで、税金やリスクを抑えつつ、現在の新たに安くなった価格で株式へのエクスポージャーを維持できる。
2番目の層(いつか少なくとも多少は後悔するかもしれない行動)には、やや大きな決定が該当する。
株式やファンドの配当を現金で受け取り、それを株式の追加購入には充てない、ということを検討しよう。この余剰流動性は、さらなる損失に対する心理的なクッションとなる。
S&P500種指数が下げたことに不安を感じるなら、一部の資金を米国以外の株式や債券(特に米物価連動債=TIPS)に移すことを検討すべきだ。TIPSは最近値上がりしているが、投資妙味はまだ十分にある。また、上昇した銘柄を一部売却し、下落した銘柄をより多く購入するリバランスも有効だ。
トゥルサード氏は、ピラミッドの下2層をやり尽くした後にのみ、最上層を検討すべきだと言う。最上層は、保有株を全て売却したり、価格の反発に大きく賭けたりするようなリスクの高い決定で構成されている。
この意思決定ピラミッドの力は、下2層にとどまれば、トランプ氏の貿易戦争が最終的にどのような展開になるかを正しく予測する必要がないことにある。最も簡単な決定から始めることで、将来の後悔を最小限に抑えられる。ピラミッドの下2層で多くの簡単な行動を取ることができるため、頂点にある、はるかに難しい(そして後悔する可能性がある)決定に取り組む必要性をあまり感じずに済む。
要するに「極端な思考をすることは、可能であり必須だ」とトゥルサード氏は言う。「極端な行動は取るべきではない」
ここから何が起こるか分からない状況では、それも当然だろう。
グローバル貿易システムへの信頼は崩れ、その修復には痛みと忍耐が必要だ。インフレや景気後退(リセッション)、あるいはさらに悪い事態が起こる可能性もある。しかし、うれしい驚きも起こり得る。
それに対してポートフォリオ全体を見直すなら、市場が次にどうなるかだけでなく、トランプ氏が次に何をするかを知っているかのように行動することになる。前者は「ほぼ不可能」で、後者は「不可能」だ。
短期的に確実なことは何もないが、長期的にはいくつかのことが実現する可能性が高い。
「最終的に関税のコストが認識され、関税は撤回されるだろう」。何世紀にもわたる金融データを収集・分析している米調査会社フィ二オンのチーフエコノミスト、ブライアン・テイラー氏はそう指摘する。
「過去を振り返ると、最終的に市場は回復する。なぜなら、時間とともに論理が勝るからだ」と同氏は言う。
IFAインスティテューショナルの金融アドバイザーであるマーク・ヒギンズ氏は、著書「Investing in U.S. Financial History(米金融史への投資)」で1790年から現在までの市場動向を記録した。
ヒギンズ氏は「現在の市場は狂っていると思うかもしれないし、実際にそうだ」とし、「ただ、230歳の人間のように考えれば、それほど驚くことではない」と言う。現在のほとんどの投資家は「過去のこの国の金融市場が、むしろサーカス同然だったということを知れば驚くだろう」
その上で同氏は、「どの世代も全てが崩壊すると考えている。これは痛みを伴うだろうが、乗り越えられるはずだ」と述べた。
ドナルド・トランプ米大統領がこの1世紀余りで最も高率の関税を発表したことを受けて先週の米株式市場は崖から落ちるような急落を演じ、2日間で6兆ドル(約880兆円)超の富を消失させた。
実体経済がそれに続くかどうかは分からない。ただ、リスクはその方向に傾きつつある。
入手可能な証拠は、米経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が3月までは強さを維持していたことを示唆している。雇用の伸びは加速していた。非農業部門就業者数は前月比22万8000人増加し、失業率は4.2%と低水準で、賃金は健全なペースで上昇し、レイオフはまれだった。
しかし、トランプ氏が「解放の日」と呼んだ今月2日に世界は一変した。トランプ氏はほぼすべての国に対して大規模な関税を課すと発表した。JPモルガンによれば、米国が実施した増税としては実質的に1968年以来の大規模なものだという。3日の米株式市場は2020年以来の大幅安となり、S&P500種指数は4.8%下落した。4日には中国が米国からのすべての輸入品に34%の追加関税を課す報復措置を取り、S&P500種指数はさらに6%下落した。
株価下落やそれと並行して起きたジャンク債の投げ売り、関税コスト、報復関税による輸出減少の見込みといったことすべてが経済見通しの重荷となっている。
JPモルガンの経済調査責任者ブルース・カスマン氏は「There will be blood(血を見ることになる)」と題したリポートで、世界的なリセッション(景気後退)が起きる確率を40%から60%に引き上げた。また、今年10-12月期の米国内総生産(GDP)が前年同期比で0.3%縮小すると予想している。以前の予想は1.3%増だった。失業率は来年5.3%に達するとみている。
「米国の通商政策が持続した場合、それがもたらす影響の規模と破壊度は、まだ健全な状態にあった米国と世界の経済成長をリセッションに傾かせるのに十分なものとなる」とカスマン氏は指摘する。「関税の衝撃は、それがセンチメントにもたらす影響や、世界のサプライチェーン(供給網)に生じる恐れがある混乱を通じて増幅されるとみられる」
ノムラのチーフエコノミスト、デービッド・セイフ氏は、明確なリセッションを予測するのに十分なデータは確認できていないと述べた。リセッションはしばしば、GDPが2四半期連続で縮小することと定義される。
だがそれは、そのように感じないという意味ではない。
セイフ氏は「実際の消費は極度に鈍化する可能性があり、人々にとってはGDPの数字が示す以上に悪い状況に感じられる可能性がある」と述べる。10-12月期のGDP伸び率が前年同期比0.6%になると同氏はみている。
トランプ氏は、自らの課す関税によって米国の雇用が海外から戻ってくるだろうと述べている。この点については激しい議論が交わされているが、それが本当であったとしても、GDPの70%を占める家計支出の勢いが弱まる公算が大きい。
中道左派の政策研究所「イエール大学予算研究所」によると、トランプ氏が4月2日に発表した関税によって、米国の平均実行関税率は2024年の2.5%から22.5%前後に上昇する。これにトランプ氏が2月と3月に課した、より小幅の関税を含めると、物価は短期的に2.3%押し上げられる。これは平均的な世帯の購買力が3800ドル減ることに相当する。同研究所の経済担当責任者アーニー・テデスキ氏は、これにより10-12月期のGDP伸び率が前年同期から約0.9ポイント削られるとの見方を示した。
予想できないのは、これによって生じる不透明感がどう行動に影響するかだと同氏は述べる。
世界の貿易システムは米国を不利にするよう不正に操作されてきた、とトランプ氏は1980年代から主張している。それでも、ウォール街の人々の大半は先週まで、トランプ氏が関税措置を永続的なものではなく、一時的な交渉戦術の一つとして捉えていると期待していた。その理由の一つは、トランプ氏や、スコット・ベッセント財務長官ら一部の側近が発していたメッセージにあった。
ベッセント氏は6日、NBCの番組で、トランプ氏が交渉を計画しているのかとの問いに対し「他の国々がどんな提案をするのか、そしてそれが信用できるものなのかを見極める必要がある」と答えた上で、「リセッション入りを予想すべき理由は何もない」と語った。
ゴールドマン・サックスが3月20日に公表した投資家を対象とする調査結果によると、市場では米国の平均関税率が2025年を通じて8.6ポイント上昇するとの見方が示されていた。だが4月2日の時点で、トランプ氏は既に平均関税率を20ポイント近く引き上げている。
トランプ氏は先週ソーシャルメディア上で、自身の政策が変わることはないと語り、交渉の余地がないことを示唆した。しかし4日には、ベトナムからディールの見返りとして自国の関税を廃止するとの提案があったと語った。市場がこの発言を、交渉に前向きな姿勢を示すものと受け止めたため、ベトナムで生産するナイキの株価は急上昇した。
エコノミストによると、こうした不協和音によって不透明感が強まる中で、企業は主要な投資判断を下すのに消極的になっており、それが総需要をさらに低下させているという。テデスキ氏は「今から1時間後に関税がどう変わっているのか企業が予測できないからこそ、市場はこれほど混乱している」と語った。
米経済は近年、世界の羨望(せんぼう)の的になっていた。2022年以降、米経済の成長率は平均で3%近い水準を維持し、他の先進諸国を上回ってきた。こうした状況は、米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な利上げがリセッションを招くとみる人たちを沈黙させた。
そのため、現在の状況がリセッションにつながると予想するのをためらうエコノミストもいるようだ。デービッド・シュルマン氏は「われわれは皆、オオカミが来ると警告してきたが、実際にはオオカミは現れなかった」と述べている。
しかし、リセッション懸念が示された直近のケースである2022年終盤から23年までの状況と比べると、現在の労働市場は軟化している。低所得世帯の家計は何カ月も前から圧迫されており、ローン延滞率は徐々に上昇している。
また政府による救済の見込みも、過去の経済ショックのときより低い。新型コロナウイルスの流行で2020年初めに経済活動の多くが停止に追い込まれた際、議会は何兆ドルもの支援策と景気刺激策を承認し、FRBは金利を引き下げて融資を支援した。
だが最近は、イーロン・マスク氏率いる政府効率化省(DOGE)が連邦政府職員を減らし、業者との請負契約を停止している。議会共和党は、財政赤字を縮小しながら減税するという目標の両立に苦戦している。大幅な財政赤字削減は、景気へのさらなる足かせになりかねない。
また、ほとんどの景気後退局面では、成長鈍化が物価上昇圧力の緩和につながり、FRBにとっては利下げしやすくなる。
だが、1970年代の石油ショックや現在の関税のように、ショックの原因が物価上昇の場合は、景気が悪くなってもインフレが高進する可能性がある。その結果、スタグフレーションとなって、FRBは金利をどちらに動かすべきかの判断に確信が持てなくなる。
インフレへの打撃が一時的なものであり、インフレ率がFRBの目標である2%に向かって再び低下し始めるのであれば、政策立案者は利下げによって経済を危機的状況から回復できるかもしれない。だが、消費者や企業がインフレ率の上昇が続くと見込んでいる場合、軟化の明らかな兆候が現れるまで利下げを回避するとみられる。しかしこうした兆候が出てからでは、リセッションを食い止めるには遅すぎる恐れがある。
「FRBはどうすることもできず、金融政策による支援の可能性があるとは思わない」。ティー・ロウ・プライスの米国担当チーフエコノミスト、ブレリナ・ユルシ氏はこう指摘した上で、「年内のリセッションを回避したいのなら、米消費者の打たれ強さと今回のショックを受け止める力に頼らざるを得ないと思う」と語った。
(サマリー)ドナルド・トランプ米大統領は先週、新たな全面関税を導入した後、「時には罰を覚悟しなければならない」と述べ、積極的な貿易政策を倍増させたようだ。
欧州の防衛関連株は、地域的な戦略的独立を求める動きの中でここ数カ月急騰していたが、取引時間を通じて同部門の売り圧力が和らいだため、下げ幅を縮小した。
ドイツの防衛大手ティッセンクルップの株価は6.4%下落し、ドイツのレンク・グループは3.3%下落、フランスのタレスは4%下落した。
(サマリー)「日本円は貿易摩擦や米国の景気後退から逃れるための良い、そしておそらく最良の候補となるだろう」とアブソリュート・ストラテジー・リサーチの金利戦略責任者、エブラヒム・ラハバリ氏は語った。
さらに興味深い問題は、伝統的な安全資産以外にもっと「エキゾチックな」ヘッジ手段があるかどうかだとラバリ氏は述べ、選択肢としてブラジルレアルを挙げた。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者は、世界的な貿易戦争により米国経済が不況に陥り、物価が上昇する恐れがあり、同時に米国の長期的同盟関係が損なわれると警告した。
ダイモン氏は、月曜日に発表され広く読まれた株主への年次書簡の中で、ドナルド・トランプ米大統領が先週発表した関税は「インフレを加速させる可能性が高く、多くの人々に景気後退の可能性が高まると思わせている」と述べた。
「この問題は早く解決すればするほど良い。なぜなら、いくつかの悪影響は時間の経過とともに累積的に増大し、元に戻すのは困難だからだ」とダイモン氏は書いている。
同氏は、他国からの潜在的な報復措置や、それが企業の信頼感、投資、資本の流れに与える影響など、計画されている関税には依然として多くの不確実性が残っていると述べた。
「交渉後、長期的な影響が米国にとって何らかのプラスの利益をもたらすことを期待している」とダイモン氏は付け加えた。「私の最も深刻な懸念は、これが米国の長期的な経済同盟にどのような影響を与えるかだ」
2006年よりJPモルガンを率い、ウォール街で最も影響力のある発言者の一人であるダイモン氏のコメントは、トランプ大統領の関税がもたらす可能性のある経済的損害に対する米国企業全体の懸念の高まりを反映している。
同氏は、関税は短期的には米国にインフレをもたらすだろうと述べ、「関税メニューが景気後退を引き起こすかどうかは疑問だが、成長を鈍化させるだろう」と付け加えた。
ダイモン氏は、米国経済は「不安定な状況」にもかかわらず依然として堅調であり、最近は若干の弱まりが見られるものの、企業は健全に見え、消費者は依然として支出を行っていると述べた。
ダイモン氏は、かつては自身を民主党員と称していたが、近年は党とは見解が異なっており、1年以上にわたり地政学的リスクの高まりを警告してきた。
同氏は2024年に株主に対し、ロシアとウクライナの紛争や中東での暴力が第二次世界大戦以来見られなかったレベルのリスクを生み出していると語った。
ダイモン氏はホワイトハウスの関税計画を批判する一方で、国境の安全確保に向けた取り組みへの支持を表明し、共和党が企業を擁護し、政府の過度な介入を制限し、「不必要で、退屈で、雇用を奪う規制を削減」するのは正しいと述べた。
月曜日に世界の株価は急落し、木曜日と金曜日に米国株から 5兆ドル以上が失われた暴落がさらに深刻化した。
トランプ政権が世界からの輸入品に課す関税によって米国経済が打撃を受けても、連邦準備制度理事会(FRB)が救済に動くことは期待しない方が良い。今や問題は、被害がどれほど深刻になるかだけだ。
トランプ氏による自由貿易への攻撃は、その範囲と規模、細かい配慮の欠如という点で、まさに異例と言える。加重平均関税率は今年、従来の3%未満から25%に上昇する公算が大きい。この増加は、トランプ氏が1期目に行った関税措置の10倍余りに相当する。
その影響は壊滅的なものになろう。今後6カ月で年率換算のインフレ率は5%近くまで上昇する可能性が高い。関税が輸入品の価格を押し上げるだけでなく、競争から保護される国内生産者もその状況に便乗して値上げを行うとみられるからだ。
一方で需要は減退することになる。関税がどのくらいの期間や範囲で続くのか、諸外国・地域からの報復措置はどの程度になるのかが不透明な中、企業は投資を先送りするだろう。関税措置は実質的に6000億ドル(約88兆8000億円)超の増税に相当するが、それに対応するため消費者も支出を控えることになる。こうした状況は、たとえ議会が減税措置で打撃を緩和しようとしても避けられそうにない。なぜなら、減税効果が表れるまでに相当なタイムラグがある上、低中所得層では関税による打撃の方が減税による恩恵を大きく上回るからだ。
さらに悪いことに、他の要因で経済の成長力そのものが損なわれる見通しだ。強制送還や移民の急減によって労働力の供給が弱まる一方、生産性の伸びは鈍化するとみられる。これにより、実質国内総生産(GDP)の成長率は昨年の2.5-3%から、およそ1%にまで落ち込むことになるだろう。
以上を踏まえると、スタグフレーション(景気停滞とインフレの同時進行)はむしろ楽観的なシナリオであり、より可能性が高いのは、インフレ加速を伴う本格的なリセッション(景気後退)に米経済が陥るという展開だ。
そうした中、金融当局に何かできることはあるのだろうか。通常であれば利上げによってインフレと闘うが、それでは不況を深刻化させることになる。パウエルFRB議長は、物価上昇が一時的なものであり、将来のインフレ期待に影響を与えないのであれば、利上げの必要はないかもしれないと示唆している。議長のこうした姿勢は投資家に一定の安心感を与えた。
しかし、FRBがその姿勢を続けられるかどうかには疑問の余地が大いにある。まず第一に、インフレ率は長期にわたって目標の2%を上回って推移している。仮に5年連続でインフレ率が当局目標を上回り、さらに加速するようであれば、インフレ期待が制御不能になるという重大なリスクが生じることになる。
次に、ショックの性質が問題だ。トランプ関税のように生産性を損なうタイプのショックは、インフレとインフレ期待により長期的な影響を及ぼす恐れがある。1970年代の2度のオイルショックを考えてみよう。2度のリセッションにもかかわらず、インフレは根強く残った。最終的に当時のFRBはボルカー議長の下、政策金利を20%に引き上げ、経済を深刻な景気後退に陥らせることでようやくインフレを抑え込むことができたのだ。
FRB自身の行動がインフレ期待に影響を与えるという点も重要だ。FRBがインフレ圧力を無視して経済成長ばかりを重視していると受け止められれば、その認識だけでインフレ期待は上昇することになる。
インフレ期待は、実際のインフレと闘うためのコストを左右するうえで極めて重要な役割を果たす。過去5年間と同様にインフレ期待がしっかりと固定された状態であれば、当局はあまり失業率を上昇させることなくインフレを管理することが可能だ。しかしインフレ期待が上昇してしまえば、犠牲率は急激に高まることになる。例えば1970年代のオイルショックのような状況では、インフレ率を1ポイント下げるためには、失業率が長期的な水準よりも2ポイント高まってもやむを得ないという厳しい調整が必要になる。言い換えれば、景気後退がFRBにとって唯一の選択肢になるということだ。
この非対称性は、米国経済が苦境に陥る中でFRBが非常に慎重な対応を迫られることを意味する。インフレ期待を刺激するような金融緩和を行えば、後になってより厳しく、より高コストな金融引き締めを余儀なくされることになるだろう。だからこそ筆者は、金融当局による救済について投資家は楽観的に過ぎると考えている。それどころか、リスクバランスと経済的不確実性の高さを考慮すると、当局の一段と慎重な対応こそが正当化されるのではないか。
成長鈍化、インフレ加速、動かないFRBという組み合わせは、株式市場にとって好ましい状況ではない。まさに勝ち目のない状況だ。企業が輸入コストの上昇分を消費者に転嫁すればインフレはより長期化し、金融当局はタカ派色を強めることになる。半面、価格転嫁ができなければ企業の利益率は縮小し、業績が圧迫される可能性が高くなる。諸外国・地域からの報復関税のリスクは言うまでもない。
債券市場で焦点となるのは短期金利の動向だ。現在、市場では年内100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の緩和が織り込まれている。それが現実的になるのは(かつ正当化されるのは)、実際に景気減速が起きた場合に限られると筆者は考えている。今は2019年とは違う。当時はインフレ率が当局目標を下回っており、リセッションに対する「保険」として先回りの利下げを行う余地があった。現在、世界で最も影響力のある中央銀行であるFRBでさえ、対応の余地はほとんどない。
世界中の市場でパニックが広がる中、各国・地域の首脳らはこの週末、トランプ米大統領に対して自国の関税を引き下げると申し出た。
しかし問題は、トランプ氏が具体的に何を受け入れ可能と考えるのかが明確でない点、あるいはそもそもディールを望んでいるのかさえ分からない点にある。同氏は6日夜、記者団に対し、いかなる合意も二国間の貿易赤字解消を伴うことが必要になるだろうと述べ、ハードルを高く設定した。
「私にとって赤字は損失だ」。大統領専用機エアフォースワンの機内でトランプ氏は記者団にこう述べ、「黒字にするか、最悪でも収支を均衡させるつもりだ」と語った。
トランプ氏の要求が明確さを欠いていることが、フラストレーションを増大させている。同氏が「解放の日」と称して世界に課した関税措置のうち、上乗せ税率は9日に適用される。
相互関税でなく貿易赤字に応じて関税率が設定されることになるなら、各国政府は打撃を避けるために具体的に何ができるのか見当が付かなくなる。
ホワイトハウス報道官にコメントを求めたが、現時点で返答はない。
46%の高い関税率を課されたベトナムは、米国からの輸入品に対する全ての関税を撤廃すると提案した。しかし、トランプ政権のナバロ上級顧問(貿易・製造業担当)は6日、それでは十分でないとして拒否した。
こうした中で注目を集めているのは、7日に行われるトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の会談だ。イスラエルは残っている対米関税全てを撤廃すると表明したにもかかわらず、17%の関税を課された。
両国の間で何らかの取引がまとまれば、他国・地域にとっては同様の合意を得るためのモデルケースとなり得る。あるいは少なくとも、どういった条件なら米国が受け入れ可能かが幾分理解しやすくなるかもしれない。トランプ氏の目指す地点が不明瞭な中で大幅に下落している世界の株式相場にも、一定の安心感を与える可能性がある。
ヒンリッヒ財団で通商政策責任者を務めるデボラ・エルムズ氏は、海外の全ての政府にとって、何をしてもトランプ氏の関税計算式が導く結果を変えられないことが問題だと指摘。
「全てを満たすことは文字通り不可能な、全く首尾一貫しない要求をわれわれは突き付けられている」と述べた。
資産運用世界最大手、米ブラックロック(BLK.N), opens new tabのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は7日、トランプ大統領の関税政策を背景に、株価がさらに20%値下がりする可能性があると述べた。
さらに「私が対話する大半のCEOらは、現時点で景気後退に陥っている可能性があると言うだろう」という認識を示した。
同時に、インフレ見通しを踏まえ、米連邦準備理事会(FRB)が年内に4─5回の利下げを実施する可能性は想定していないと述べた。
大幅な落ち込みとなっている株式市場の動向については、長期的には「売りの機会よりも買いの機会」で、システミックリスクをもたらすものではないという認識を示した。同時に「とはいえ、現時点からさらに20%下落する可能性も否定できない」と述べた。
トランプ米大統領の関税強化による影響を軽減するため、企業に米国での事業拡大や工場建設を検討する動きがある。
計画の一部は以下の通り。
◎コンパル・エレクトロニクス(2324.TW), opens new tab
台湾のノートパソコン受託製造メーカーであるコンパルは対米投資を検討し、米南部の複数の州と協議中だと、アンソニー・ピーター・ボナデロ最高経営責任者(CEO)が1月に発言。テキサス州が有力候補だが未決定としている。
◎ホンダ(7267.T), opens new tab
ホンダは主力車種「シビック」の新型ハイブリッド(HV)について、当初計画していたメキシコではなく米インディアナ州の工場で生産する方針を固めた。3月に、事情を知る関係者3人が明らかにした。
◎現代自動車(005380.KS), opens new tab
韓国の現代自動車は米国での生産比率を拡大。ジョージア州の新工場でHV車の生産計画を発表した。
◎インベンテック(2356.TW), opens new tab
米半導体大手エヌビディア(NVDA.O), opens new tabの半導体を搭載した人工知能(AI)サーバーを製造する台湾企業、インベンテックのジャック・ツァイ社長は1月、米国の投資先の選定作業を開始し、メキシコに近く電力インフラが整っているテキサス州を候補地として挙げた。
◎LG電子(066570.KS), opens new tab
韓国のLG電子は、冷蔵庫の製造をメキシコから、洗濯機・乾燥機を製造しているテネシー州の工場に移すことを検討していると、韓国紙が1月に報じた。
◎日産自動車 (7201.T), opens new tab
日産自動車は米国向け車両の一部の生産を国内から米国に移管することを検討していると、4月5日に日経が報じた。
◎サムスン電子 (005930.KS), opens new tab
韓国のサムスン電子は、乾燥機の生産に関してメキシコの工場から米サウスカロライナの工場に移管することを検討していると、1月に韓国紙が報じた。
◎ステランティス(STLAM.MI), opens new tab
米旧クライスラーを傘下に持つ欧米自動車大手ステランティスは、米イリノイ州ベルビディアで新型の中型ピックアップトラックを生産する計画を進めると1月に発表した。
◎台湾積体電路製造(TSMC)(2330.TW), opens new tab
半導体受託生産の大手、台湾積体電路製造(TSMC)の魏哲家CEOは3月、米国への投資を拡大し、今後数年間で5つの半導体工場を新たに建設する計画を発表した。
◎フォルクスワーゲン(VW)
ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のアントリッツ最高財務責任者(CFO)は1月、米国での生産を増やす方針を明らかにした。VW傘下の高級車部門アウディは北米での生産拡大に向け、年内に拠点を決定する予定だと、経営トップが2月に述べた。
◎ボルボ・カー(VOLCARb.ST), opens new tab スウェーデンの高級車メーカー、ボルボ・カーは、米政権の関税措置に応じて一部の生産を米国に移す可能性があると、ローワンCEOが3月に述べた。
4月2日、アメリカ人は解放されたと感じたのだろうか?具体的に何から解放されたのかを判断するのは難しい。ドナルド・トランプ大統領は、アメリカが 「近くて遠い国々から、強奪され、強姦され、略奪された」とはどういう意味だったのか?
明確でなかったのは、異常な一律関税賦課の動機だけではない。発表のすべてが不透明で、混乱を招き、逆効果だった。
あらゆる経済は、突然の株価暴落を引き起こすショックに備えなければならないが、これほど大きな金融被害を自ら招いた行為は記憶にない。
これは小さな出来事ではない。世界最強のリーダーが、第二次世界大戦後、ブレトンウッズ、関税貿易一般協定、世界貿易機関(WTO)の時代から続いてきた世界経済の秩序を破壊したのだ。それはグローバリゼーションの死を意味し、1930年代以来の保護主義への回帰を意味する。それは多くの意味で、アメリカ経済を地球上で最もダイナミックで、最も競争力があり、最もパワフルな国へと押し上げてきた経済秩序そのものを破壊するものだった。
しかし、トランプ・ホワイトハウスの意思決定の性質を考えると、不確実性は残っている。ローズガーデンで打ち出されたことが実際に実現するのかどうか、いまだに多くの人が疑問を抱いている。トランプ氏は株価下落の影響を免れない。トランプ政権は、関税を含め、政策の突然の転換や撤回を好まない。
仮にこれがすべて実行された場合、どのような影響があるだろうか?米国とのビジネスについて疑問が生じるのは確かだ。企業は安定を求め、先を見越した計画を立てることを望むが、このような形の意思決定でそれが可能なのだろうか?投資家は資金を他に移すかもしれない。
アメリカはかつての同盟国との間に悪縁を作るリスクを負っているのだろうか?これはアメリカ経済に打撃を与えるだろうが、世界的な不況、さらには恐慌を招く危険性もある。米国にこのようなことを求める指導者はほとんどいなかった。今も貿易戦争を望んでいる人は少ないが、それは避けられないようだ。ただ、その程度が問題なのだ。
以前課された20%の関税に加えて34%の関税を課された中国は、その影響を考えるのを待たなかった。おそらくEUも対応するだろう。一時停止ボタンを押している国もある。例えば英国は、現段階では報復措置を取らず、米国との貿易協定を推進することを決めた。他の国も、最悪の影響を相殺するために米国との貿易取引を模索するかもしれないが、どのような条件で?
変則的なことはたくさんある。インド洋に浮かぶレユニオンは、フランスの一部であり、EUの関税率は20%であるにもかかわらず、10%の関税を課された。ダイヤモンドを主な輸出品とするレソトのような国も大打撃を受けたが、これはアメリカの消費者がダイヤモンドをより高く買わなければならないことを意味するだけだ。
また、米国が数十年にわたって制裁してきたシリアに41%の関税を課すことに何の意味があるのだろうか?2024年、アメリカは危機的状況にあるシリアからわずか1,100万ドルしか商品を輸入していない。
イスラエル国民は、偉大な同盟国であり保護者である米国が、なぜ自国の製品に17%の関税を課すことにしたのか、説明を求めるかもしれない。ひどい地震に見舞われたばかりのミャンマーは、45%もの関税をかけられた。
おそらく最も奇妙なのは、リストに含まれていない数少ない国のひとつであるロシアである: ロシアは制裁対象国だが、2024年の米ロ貿易額は35億ドルに上ると政府高官は述べた。
不測の事態は他にもある。EUは一律20%の関税をかけられたが、英国は10%の関税しかかけられない。Brexite派はこれを英国離脱の素晴らしいメリットだと主張するが、現実には、英国がEUと米国の両方と貿易することは、Brexit前よりも難しく、より高価になっている。しかし、よりやっかいなのは北アイルランドで、北アイルランドは南のアイルランド共和国よりも関税が低い。これは、ブレグジット協議を悩ませた国境問題全体を蒸し返すことになる。
これは政治が経済政策を決定しているのだ。アメリカの経済支配を押し付けようとしているのだが、それがうまくいくかどうかには重大な疑問がある。
この結果、誰が勝つのだろうか?ほとんどのエコノミストは、インフレはスパイラルに陥るだろうと言う。トランプは生活費の削減を約束して政権に就いたが、連邦準備制度理事会(FRB)によれば、これは成長を鈍化させる。トランプ大統領を支持する富裕層でさえ、COVID-19パンデミック以来最悪の株式市場の暴落で大打撃を受けるだろう。ドルについてはどうだろうか?世界最強で最も安定した通貨としての地位は揺らいでいるのだろうか?
今のところ、世界は貿易戦争と保護主義に直面しなければならないような気がする。そのような状況下では、「ハッチにバトンタッチ」することになるだろう。
●中東情勢
●エマージング
週明け7日の中国株式市場は、米相互関税に中国が対抗措置を発表したことを受けた貿易戦争懸念で急落。「国家隊」と呼ばれる公的資金が相場下支えに入った。
中国政府系ファンド(SWF)、中国投資(CIC)傘下の中央匯金投資は7日、中国株の保有を増やし、市場の安定を守ると表明。「中国資本市場の発展見通しを強く楽観しており、A株の現在の投資価値を十分に認識している」とした。上場投資信託(ETF)を通じて中国上場株式の保有を増やしており、「資本市場の円滑な運営を守る」ため、今後も保有株を増やすと述べた。
これを受け、中国株は下げを縮小。中央匯金投資が選好するETFは軒並み、1年ぶりの大商いとなった。
中央匯金投資は2024年春の株急落時もETFを通じて買い支えた。昨年末時点のETF保有残高は国信証券によると1兆元(1370億ドル)。
クオンツサービス会社Yingzhiliang Hangzhou Technologyの株式トレーダーは、公的資金の支援や、金融緩和や消費喚起措置が取られる可能性を考えると、下げ余地は限られていると述べた。
一方、Spring Mountain Pu Jiang Investment Managementは、支援措置を講じても貿易戦争激化の影響を相殺できないと指摘。今、押し目を拾うのは危険で状況が少し落ち着くまで現金を保持する方針を示した。
中国外務省の林剣報道官は7日の定例記者会見で、トランプ米大統領の関税は「典型的な単独主義と保護主義であり、経済的いじめだ」と表現した上で、脅しと圧力は中国と付き合う正しい方法ではないと述べた。
米国の「相互関税」は他国を犠牲にして自国の利益を図るものでしかないとも訴えた。
「米国による関税の乱用はグローバルサウス(新興国・途上国)を中心とする各国の発展の権利を奪うに等しい」と指摘。全ての国々は「真の多国間主義」を堅持すべきだと語った。
また、国連と世界貿易機関(WTO)の価値観に従い、あらゆる形の単独主義と保護主義に反対し、国際システムと多国間貿易システムを守るよう各国に呼びかけた。
トランプ米大統領の関税発表に伴い景気後退懸念が金融市場全体に波及する中、アジアの信用市場が7日、揺らぎ始めた。企業や国家の債務不履行(デフォルト)に対する保険料が上昇した。
S&Pグローバルのデータによると、ソブリン債と社債で構成されるマークイット算出のItraxx Asia指数(日本除く)の5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドは約26ベーシスポイント(bp)上昇し、昨年8月以来の高水準となった。
中国、ベトナム、インドネシア、タイ、マレーシアのソブリンCDSスプレッドも拡大。インドネシアとタイは2022年以来の水準を付けた。
関税発表を受け、アジアを含めた世界的な株式の急落に追随してクレジット市場が揺らいでいる。みずほ証券(シドニー)のオーストララシア債券資本市場責任者サイモン・ウォード氏は「株式市場だけではない。信用スプレッドが大幅に拡大し、投資家が現金や他のコモディティーへの投資に動いている」と指摘。債券市場はおそらく様子見モードに入り、ボラティリティーが急上昇しているため、取引は一時停止されるだろうと述べた。
米国債とICE BofA米投資適格債指数(.MERC0A0), opens new tabのスプレッド(利回り差)はトランプ氏の関税発表以来、約20bp拡大、ハイイールド米国債(.MERH0A0), opens new tabとのスプレッドは約96bp拡大した。
トランプ米政権が各国への関税攻撃を打ち出したことを受け、経済再均衡を目指す世界第2位の経済大国である中国は、国内消費の拡大がさらに急務となっている。
米政府は中国からの輸入品に34%の追加関税を課すと発表。ただこれ以前から、中国政府は経済を強化し、成長軌道を維持するためのより大きな取り組みの一環として国内消費を強化するとしていた。
エコノミストらは、ドナルド・トランプ大統領が世界の貿易環境に新たな混乱を生じさせる中、中国が経済成長の原動力として輸出に代わる選択肢を見つけることがこれまで以上に重要になったと指摘する。
中国政府が公式に発表した同国の昨年の国内総生産(GDP)成長率は5%だが、政府データによれば輸出はこの3分の1近くを占め、1997年以来の高い水準となった。中国は再び5%前後のGDP成長率を目標に掲げており、一部のアナリストはこの野心的な目標達成にはより強力な政府支出が必要だと述べている。
調査会社の龍洲経訊(ガベカル・ドラゴノミクス)のトーマス・ガトリー氏とウェイ・ヘ氏は、トランプ氏が関税計画を明らかにした後、「これは中国にとって最悪の貿易シナリオだ」と言及。「中国の政策当局は対応として、景気刺激策を強化する必要がある」と述べた。
トランプ氏がいわゆる「解放の日」に示した包括的な関税パッケージは、中国の製造業セクターに複数の側面から打撃を与える見通しとなっている。トランプ氏やジョー・バイデン前大統領がすでに課した関税に追加される新たな関税により、中国からの輸入品に対する平均関税率は約70%に上昇するとエコノミストらは推計する。
中国の製造業者は、米国のバイヤーにとって魅力的な価格を維持するためにコストを吸収することがますます困難になっている。さらに中国企業は近年になり東南アジアに工場を設立しているが、中国から部品を輸入するこれら東南アジアの多くの国からの製品も、米政府による高い関税の対象となる見通しとなっている。
さらにトランプ氏の幅広い関税によって世界経済の成長が鈍化すれば、世界の他の地域からの中国製品への需要も抑制される可能性もある。
中国のような輸出志向の経済にとって、これらの関税は悪い知らせとなる。米金融界の一部の調査会社は今回発表された関税により、中国の今年の経済成長率が1~2ポイント程度低下する可能性があると推計している。
中国政府は4日、全ての米国製品に34%の新たな関税を課すなどの報復措置を取ったが、トランプ氏は中国が「間違った対応をした」と述べ、激化する両国の貿易戦争の早期解決はますます見込めない状況となった。
TSロンバードの中国担当チーフエコノミスト、ローリー・グリーン氏は、関税に対する中国の迅速な対応は「国内の経済活動を支える取り組みが急速に行われることを示唆している」と指摘。「われわれは、国内需要が輸出の打撃を相殺できると考えている」とした。
中国政府は数十年にわたり、製造業とインフラへの投資によって急成長する経済を支えてきた。だが米国や他の国々が中国製品に対する貿易障壁を設けているため、この戦略はリスクが高くなっている。そのため中国政府の指導部は経済を活性化させる他の方法を模索している。
中国政府に対し、政府顧問や、世界銀行や国際通貨基金(IMF)を含む外部のエコノミストらは長年にわたり、米国に近い消費主導型の経済へのシフトを求めてきた。だがこうした助言に対して中国の習近平国家主席は冷ややかな反応を示し。最先端技術における中国の支配的地位を築きたいという願望に突き動かされ、引き続き製造業を優先させてきた。
中国の輸出に対する抵抗が高まり、経済成長が圧力にさらされる中、同国の政策当局は先月、国内消費の促進を優先事項とすると宣言した。
エコノミストらは中国の国内需要が低迷している理由について、各世帯が将来をより懸念していることがあると説明。数十年にわたる急速な経済成長の後、多くの人々が不動産市場の大暴落により貯蓄の価値が打撃を受けるのを目の当たりにしてきた。また消費者は失業や経済の低迷を懸念し、ここ数年で支出に慎重になっており、企業経営者も多くが利益率の縮小に苦しむ中、コスト削減モードにある。
ただし中国政府としては消費拡大以外に、トランプ氏の新たな関税に対応できる施策がほとんどない。
トランプ1次政権では、中国政府は人民元安を容認し、これにより輸出品の価格が引き下げられて中国製品に対する海外需要が支えられた。しかしエコノミストらは、中国政府が今回、通貨を大幅に切り下げることに消極的だろうと述べている。その理由としてトランプ氏のさらなる怒りを買うことや、中国からの資本流出を加速させる可能性が高まること、そして国内金融システムにより広範な不安定性がもたらされることを挙げた。
エコノミストらは中国政府が打ち出す可能性がより高い選択肢として、利下げや流動性を高めるための債券購入の増加、さらに国内経済を活性化するための財政支出の拡大などを挙げている。
ドナルド・トランプ米大統領が中国製品に高関税を課したことで、貿易を巡ってすでに圧力を受けている世界経済がさらなる問題に直面する可能性がある。4000億ドル(約58兆円)相当の中国製品が代替市場を求めて世界中にあふれるという問題だ。
米国の消費者と企業は2日、中国からの輸入品にかかる関税が9日から平均約70%になると告げられた。トランプ氏が「解放の日」の貿易攻勢の一環で、中国に厳しい追加関税を課したためだ。米国では家電製品からおもちゃ、機械、製造業に欠かせない部品に至るまでさまざまなモノの価格が上昇するだろう。
関税の壁が高くなれば、すでに中国製品であふれている世界市場に、従来は米国向けだった輸出品の一部が流入する可能性がある。そうなれば、各国が反発している「中国ショック」が激化する恐れがあるとエコノミストは指摘する。米国が輸入を減らせば、ベトナムや韓国、日本なども輸出先を変更せざるを得なくなり、輸出障壁の高まりに直面する可能性がある。
貿易戦争はこうした連鎖反応によって急速にエスカレートするとエコノミストは指摘する。報復の応酬で防御的な障壁が増え、より多くの国が巻き込まれることになる。
「本当の火花はこれからだ」。世界貿易について著作がある北京大学のマイケル・ペティス教授(金融)はこう述べた。
トランプ氏は2日、貿易相手国が輸出を拡大する一方で自国の輸入障壁を高く維持し、米国を不利に追い込んでいるとして、各国に課す関税率を明らかにした。
トランプ氏の側近の多くが地政学上の一番の敵とみなす中国は、34%という特に厳しい税率を課された。同国は第1次トランプ政権とバイデン前政権でも一連の関税を課され、今年2月に10%、3月にはさらに10%の関税を課されていた。エコノミストによると、これらを合わせると中国からの輸入品に対する平均関税率は約70%になる。
巨大な米国市場に向かっていた中国の輸出品を他国が吸収するのは難しいだろう。米国勢調査局のデータによると、米国の中国からのモノの輸入額は2024年に約4400億ドルに達した。国連と世界貿易機関(WTO)の共同機関である国際貿易センターのデータによると、米国の23年の輸入品に占める中国製品の割合は鉄鋼製品が5分の1、電子機器が4分の1以上、履物が3分の1、おもちゃが4分の3、傘が91%だった。
中国からの輸入品が一夜にしてゼロになることはおそらくない。中国製ではない代替品が見つかるものもあれば見つからないものもあるだろう。製造業者は生産の多くを中国の工場に委託している。国内で製造している場合でも、他では見つけにくい部品や基本材料を中国から輸入していることが多い。
米国が中国製品への支出を減らせば、売れ残ったモノは他へ行かざるを得なくなる。だが、中国の輸出急増はすでに主要国との間で摩擦を生んでいる。輸出業者が出荷先を米国から他国へ変えようとすれば、摩擦が激化しかねない。
スイスを本拠とする非営利の通商政策監視機関グローバル・トレード・アラートによると、トランプ氏が貿易戦争を開始した2018年以降に中国が受けた反ダンピング(不当廉売)認定と調査件数はほぼ500件に上る。
中国の習近平国家主席は不動産市場と個人消費の落ち込みを受け、先端技術と成長を促進するために製造業への財政支援を行った。その結果、企業は国内でさばききれない商品の販売先として国外に目を向け、輸出が急増。中国の貿易黒字は昨年1兆ドルを記録した。各国は安価な中国製品との競争から国内産業を守るため、相次ぎ対策を講じている。
昨年だけで、ブラジルは中国から輸入する注射針、光ファイバー、ネブライザー、ポリエステルメッシュについてダンピング調査を開始した。メキシコとカナダはアルミニウム、鉄鋼、化学品の調査に着手。英当局は、中国からの掘削機の輸入急増を受け、最大84%のアンチダンピング関税を課すよう勧告した。欧州連合(EU)は、中国の自動車メーカーが多額の補助金を受給しているとの調査結果を受け、同国製電気自動車(EV)への関税を引き上げた。
米国を除くと、「中国の巨大な製造能力を容易に吸収できる大きな市場は存在しない」。米シンクタンク、外交問題評議会(CFR)の上級研究員で元米財務省高官のブラッド・セッツァー氏はそう指摘する。
エコノミストによると、中国が国内での支出を拡大すれば貿易摩擦が和らぐ可能性がある。支出が増えれば生産した工業製品を吸収でき、輸入も増えるかもしれない。
中国政府は、借り入れと支出を増やして成長と消費を支える方針を示している。ただ、トランプ関税が予想以上の規模だったことを踏まえると、さらなる対策が必要だとエコノミストは指摘する。利下げやより大規模な政府借り入れ、長引く不動産不況を終わらせて消費者信頼感を回復させることなどが選択肢になるという。
シティの中国担当チーフエコノミスト、ユ・シャンロン氏は、追加の刺激策を講じなければ、関税引き上げで中国の今年の成長率は0.5~1ポイント押し下げられるとの見通しを示した。
トランプ米大統領の相互関税に対し、中国の習近平国家主席が即座に報復措置を取ると決定したことは、世界に明確なメッセージを発した。米国が貿易戦争を望むなら、中国は戦う用意ができているということだ。
習氏は国内の経済成長を促すため、潜在的な消費を「全面的に実体化させる」取り組みを提唱。消費の再活性化、国内需要の拡大、投資効率の促進が国家の最重要課題と述べた。中国中央テレビ(CCTV)が7日、習氏がいつ、どこでこうした発言をしたかには触れず、報じた。
数週間に渡り限定的な措置で応じ、対話を呼びかけてきた中国は、4日に全面的な関税と輸出規制を打ち出し、強硬姿勢に転じた。中国共産党機関紙、人民日報は7日の社説で、中国政府は交渉の余地は残しておくものの、もう米国と合意するという「幻想にしがみつく」ことはないと述べた。
今回の中国の対応は貿易戦争の長期化を連想させ、世界の市場を揺らした。7日には、トランプ米大統領が中国が米国製品に対する34%の報復関税を撤回しない場合、「中国に50%の追加関税を課す」と警告。米中の対立がさらに激化した。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)によると、米国の関税の引き上げは、2国間貿易の大半を消滅させる水準に達している。米国の追加関税は不可避との現実に直面し、中国政府は自国経済を押し上げようとしている。ブルームバーグ・ニュースは、中国の政策当局者が週末、北京に集まり、消費を刺激できる景気対策を加速する計画について話し合ったと報じた。
プレッシャーとプライド
上海の復旦大学米国研究センターの吴心伯理事長は、「相手側が戦うことを望んでいる以上、交渉の席に着く前に戦わなくてはならない」というのが中国の立場だと説明。トランプ氏と習氏の電話会談の可能性については、「今平手打ちをされた状況で、自ら電話をして許しを請うようなことはしない」と述べた。
貿易戦争が世界経済にもたらす影響を懸念し、株式市場は急落している。アジア市場は2008年以来最悪となった。香港市場に上場している中国株で構成するハンセン中国企業株指数は弱気局面入りし、ハンセン指数は1997年以来の大幅な下落幅となった。
米中間の緊張が高まり、首脳同士の電話会談が近く行われる見通しは後退している。トランプ氏は大統領2期目が始まってから習氏と話していない。米国の大統領が就任以来中国首脳とこれほど長期間会談しないのは、過去20年で初めてだ。
ワシントンのシンクタンク「民主主義防衛財団」(FDD)のクレイグ・シングルトン上席研究員は「トランプ氏と習氏は、プレッシャーとプライドの間で板挟みの状況に陥っている。習氏が関与を拒めば米国の圧力が激化し、早急に関与すれば弱腰との印象を与えかねない」と指摘した。
習氏はデフレに直面する経済を支えつつ、国内向けには強さを示さなければならないという、難しい状況にある。中国では住宅市場の低迷で家計の富の大部分が失われ、落ち込んだ消費者の信頼を回復することが大きな課題となっている。
UBSグループ、ゴールドマン・サックス・グループ、モルガン・スタンレーといった複数の世界の大手銀行は、米国の急激な関税引き上げによる経済底割れのリスクを警告した。4%という控えめな成長予想もすでに出ている中で、中国の成長率見通しをさらに押し下げる可能性があるとしている。
増える武器
ただ、米中間の緊張がさらに高まっても、中国は複数の手段に訴えることができる。過去の行動に照らすと、関税の影響を相殺するために人民元を切り下げたり、重要な鉱物資源の輸出規制を強化したり、中国で事業を展開する米国企業への圧力を強めたりすることが考えられる。
同時に、中国は他の地域とより強固な経済関係を構築することで、外交的な影響力を拡大する可能性もある。日中韓3カ国は先月、経済貿易担当閣僚会合を開き、世界貿易機関(WTO)のルールに基づく自由で公正な貿易体制を支持すると表明。先ごろブリュッセルを訪問した中国財政省の廖敏次官は、欧州連合(EU)と協力し、多国間貿易システムを守る意思があると表明した。
今月末に予定されている習氏の東南アジア訪問は、さらに重要な意味を持つ。中国当局は関税の軽減を期待してカンボジア、マレーシア、ベトナムといった国々が米国にどのような提案を行うか、また、そのような動きが中国の利益を損なう可能性があるかどうかを注視しているとみられる。
ISEASユソフ・イシャク研究所のリー・スーアン氏は「中国にとってより厳しい対応を迫られる可能性があるのは、安価な中国製品の大量流入から自国産業を守るために、他の経済圏が保護主義的な措置を次々と講じる場合だろう」と述べた。
ただ、圧力が増しているにも関わらず、中国側からは、米国と完全にデカップリング(切り離し)するという明確な兆しはない。その代わりに、中国は将来的な対話の選択肢は残したまま、長引く対立に向けて態勢を整えてているように見える。
中国の通商政策を研究しているシンガポール経営大学のヘンリー・ガオ教授は、「中国は米国に対し、脅しには屈せず、自らの立場を堅持する意思があると伝えたいと考えている。大きなダメージを与えるというよりも、圧力をかけて対話を促すことが目的であるようにみられる」と述べた。
トランプ米大統領は7日、中国政府が先週発表した報復関税を受け、同国に新たに50%の関税をかける用意があると明らかにした。市場を揺るがしている世界的な貿易戦争のさらなる激化を示唆した形だ。
中国が8日までに34%の報復関税を撤廃しなければ、追加関税は今週半ばに発効するとトランプ氏は述べた。
また、中国が要求していた会議はキャンセルされるが、他の国々はすぐに貿易交渉を始めるだろうと述べた。
トランプ氏は自身のSNS、トゥルースソーシャルへの投稿で「昨日、私の警告にもかかわらず中国は34%の報復関税を発動した。すでに記録的な関税、非金銭的関税、企業への違法な補助金、長期にわたる大規模な為替操作に加える形での発動だ。私はわが国に対してすでに長期にわたって関税を乱用していながら、それ以上の追加関税を発動して米国に報復するいかなる国に対しても、最初に設定した関税以上の追加的かつ大幅に高い関税を即座に課すと警告していた」と述べた。
「したがって、もし中国が明日8日までに、すでに長期にわたって行ってきた貿易の乱用を上回る34%の関税引き上げを撤回しなければ、米国は9日から中国に50%の追加関税を課すことになる」
「さらに、中国が要求している我々との会談に関するすべての協議は打ち切られる! 会談を要求している他の国々との交渉は、直ちに開始される」(トランプ氏)
1月に政権に復帰して以来、トランプ氏はすでに2回にわたり、すべての中国からの輸入品に10%の追加関税を課していた。ホワイトハウスはこれについて、違法薬物フェンタニルの中国からの流入を阻止するために必要な措置だとしている。
先週、トランプ氏はすべての中国製品に34%の追加関税を課すと発表した。もし50%の追加関税を課すという最新の脅しが発動されれば、米国に到着する中国製品は事実上104%の関税を課せられることになる。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
**為替市場:**
ドルはスイスフランに対して0.44%下落し、一時6カ月ぶりの安値を記録。一方、円に対しては0.53%上昇。EUが報復関税を発表したことで、為替市場は不安定に。
**債券市場:**
米10年国債利回りは15.8ベーシスポイント上昇し、4.149%に。トランプ大統領の関税政策に関する報道とその否定が利回り変動の要因。市場は関税政策の緩和への期待と景気後退懸念の間で揺れる。
**株式市場:**
ダウとS&P500は続落。一時上昇も、ホワイトハウスが関税停止報道を否定し再び下落。VIX(恐怖指数)は一時60を超え、投資家心理の不安定さを示す。
**金先物:**
ドル高の影響で金相場は3日続落。トランプ政権の関税政策による市場の混乱と、金の割高感が売りを誘発。長期金利の上昇も金価格に重し。
**原油先物:**
原油は3営業日続落。米中貿易戦争激化への懸念から売りが続く。誤報に反応して一時価格が上昇したが、その後反落。不安定な値動きが続く。
全体として、**トランプ大統領の関税政策が市場全体に大きな影響を与え、為替・株式・債券・商品すべてに不安定さをもたらしている**ことが読み取れます。
### **ロンドン株式市場:**
- ロンドン市場は続落。**FTSE100は2024年3月以来の安値**を記録し、**FTSE250は3.27%下落**して2023年11月以来の水準に。
- **製薬・バイオ関連株は6.72%下落**。アストラゼネカが7.0%安。
- **原油安の影響で石油・ガス株も大きく下落(4.84%)**。シェルはLNG生産見通し引き下げで4.5%安。
- トランプ大統領が中国への50%追加関税を示唆し、**米中貿易戦争の激化懸念が市場に影響**。
- 英中銀による**5月の利下げ予想がほぼ確実視される状況**に。
### **欧州株式市場:**
- 欧州株も**4営業日続落**。STOXX欧州600種指数は2024年1月以来の安値。
- **ドイツDAXは一時20%以上の下落で弱気相場入り**も、最終的には4.13%安。
- **ボラティリティ指数(V2TX)は46.72**と2022年以来の高水準。
- 一時、トランプ氏による関税停止報道で株価が回復しかけたが、**ホワイトハウスが報道を否定し再び下落**。
- **インフレ加速と経済成長鈍化への懸念**から、ECB・FRBの**利下げ観測が高まっている**。
- バークレイズは**STOXX600年末予想を580→490に引き下げ**。
### **ユーロ圏債券市場:**
- 債券利回りは**序盤下落→終盤上昇**という展開。
- ドイツ10年債利回りは2.657%へ4bp上昇。一時2.479%まで低下。
- ドイツ2年債利回りは1.801%へ6bp低下。
- **イタリア10年債利回りは3.865%、独伊利回り格差は117bp**。
- EUは**「ゼロ対ゼロ」の工業製品関税撤廃協定**の交渉準備があると表明。
総じて、**トランプ政権の関税強化方針が欧州全体の株安・債券市場変動・政策期待に大きく影響を与えている**状況です。
備忘録(2025/4/4-6)
●海外企業決算
●海外企業
トランプ米大統領による2日の相互関税発表前、スイスは負担が軽く済むと予想していたかもしれない。同国は規制が比較的緩いほか、欧州連合(EU)に懐疑的な見方を示しているためだ。
しかし、ふたを開けてみるとスイスにはEUや英国よりも高い関税が課されることになり、主要産業に懸念が広がっている。
スイスの関税率は32%と、EUの20%を大きく上回る。また、同じくEU非加盟国である英国の10%の3倍余りとなる。
スイス政府は今回の措置について「理解しがたい」とコメント。企業は対応策や事業防衛を急がざるを得ない。
工作機械部品メーカーのレゴフィックスでは、パスカル・フォアー最高経営責任者(CEO)が米子会社の社員と夜中に電話会議を開いた。スイスで商品を製造しており、同CEOは顧客との難しい値上げ交渉の準備を進めている。
フォアー氏は「関税そのものより米経済の減速を懸念している。米国の業界が投資を止めれば、その影響は当社の売上高にも表れ始めるだろう」と述べた。
今のところ医薬品は相互関税から外れるが、精密機器やチョコレート、高級品などさまざまな製品が関税対象となる。
相互関税によって米国の腕時計需要は大幅に減少し、各ブランドが価格の見直しを迫られる可能性があると、オッドBHFのストラテジストらは指摘。そうなれば、ロレックスやパテック・フィリップ、スウォッチ・グループなどが影響が受ける見込みだという。
スイス政府は、経済成長が先月見込んだばかりの水準を下回る可能性を指摘。ケラーズッター財務相は記者団に対し、現時点では報復措置を計画していないと述べた。
スイス株の指標、SMI指数は3日に2.5%安。電子機器メーカーのロジテック・インターナショナルがストックス欧州600指数の構成銘柄で最大の下げとなった。同社は売上高全体に占める米国の割合が大きい一方で、中国やベトナム、タイ、メキシコなどから製品を調達している。
米銀キャピタル・ワン(COF.N), opens new tabはクレジットカード大手ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズ(DFS.N), opens new tabの買収案について司法省から承認を獲得した。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が3日、事情に詳しい関係者の話として報じた。
この後、米通貨監督庁(OCC)と連邦準備理事会(FRB)が、司法省の意見を聞きながら合併について検討する。
報道によると、司法省はFRBとOCCに書簡を送り、調査を終了し、取引を差し止めるほどの懸念は見当たらないと判断したと伝えた。
キャピタル・ワンの広報担当はロイターに対し「ディスカバー・ファイナンシャルとの取引は銀行の合併に関する法律を順守しており、承認を得るための態勢は整っている」と述べた。
合併計画は総額350億ドル規模で、2024年2月に発表された。実現すれば資産残高でクレジットカード会社として全米首位、銀行では6位になる見通しだ。また、キャピタル・ワンはディスカバーの決済ネットワーク(全米第4位)の支配権も手に入れることになる。
ドナルド・トランプ米大統領が半導体を相互関税の対象から除外したことは、歓迎すべき一時的な救済のように聞こえた。しかし、半導体を組み込んだ消費財は増加の一途のため、業界としてはほとんど安心できない状況にある。
この「救済」も長続きしない可能性がある。トランプ氏は3日、大統領専用機「エアフォースワン」の機内で、半導体に対する措置が間もなく取られる可能性があると述べた。
少なくとも現時点では、昨年約820億ドル(約12兆円)に上った米国の直接的な半導体輸入は相互関税適用の対象外となっている。
しかし、半導体輸入の大半は間接的だ。半導体は通常、米国外で製造され、そこでパッケージングされ、世界中に出荷される電子機器に組み込まれる。米国に輸入される際には最大49%の関税が課される。米国製の半導体でさえ、多くは最終組み立てのために台湾や中国、東南アジアに送られてから、最終顧客に再輸出される。
こうした間接性があることから、関税が半導体業界にもたらす影響を正確に把握するのは難しい。確実なのは、打撃が大きいということだ。
バーンスタイン・リサーチの分析によると、米国は昨年、機械を約5210億ドル、電子機器を約4780億ドル、自動車を約3860億ドル輸入した。これらの製品には大量の半導体が使用されることが多く、価格上昇を受けて消費者が購入を控えれば半導体の売り上げは落ち込む。最終的に半導体メーカーの収益と成長率の低下につながり、利益や株価を圧迫する可能性がある。
バーンスタインのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏は「全体として、半導体グループ(あるいは率直に言ってどの分野でも)にポジティブな感情はあまり見られない」とメモで指摘した。
大手半導体株が3日に急落したのも無理はない。フィラデルフィア半導体株指数は10%近く下げた。主要な半導体購入企業の株価も下げ、アップルは9.3%安、デル・テクノロジーズは19%安で終えた。
明るい材料を見つけるのは難しい。関税は半導体メーカーにとって、米国内での製造を増やす新たなインセンティブとならない。半導体メーカーの製品は通常、アジアのサプライチェーン(供給網)に輸出された後、関税対象品の中に組み込まれて米国に戻ってくるからだ。
テキサス・インスツルメンツやアナログ・デバイセズなど、すでに米国内に大規模な拠点を持つ企業も優位性を得られない。外国の競合他社が半導体関税の適用除外となるためだ。両社の株価は3日に大幅に下げた。
ウルフ・リサーチのアナリスト、クリス・カソ氏はメモで、半導体メーカーとその顧客が価格上昇による消費者需要の低迷を見込み、サプライチェーンを通じて発注キャンセルの波が起きる可能性が高いとの見方を示した。これは2020年の新型コロナウイルス流行時のロックダウン(都市封鎖)で起きた状況と類似している。
カソ氏は、家電製品が最も大きな打撃を受ける可能性が高いとした上で、関税は、米半導体大手エヌビディアが提供する需要の高い人工知能(AI)サーバーのコストも引き上げると指摘した。結果として、業界全体の第2四半期の業績見通しに疑問が生じる可能性が高い。
「これらの影響から逃れられる場所は単純にないと考えている」と同氏は述べた。エヌビディアの株価は3日に7.8%安となった。
半導体企業は今のところ業績見通しを下方修正していない。どの程度の影響が及ぶのかはっきりしないためだ。業界は影響を抑えるためにトランプ政権と交渉し、最も打撃の大きい分野での関税引き下げや、半導体が組み込まれる電子機器などの製品に対してさらなる適用除外を求める可能性がある。
最良のシナリオは、トランプ政権が最も打撃の大きい関税の多くを撤回することで対応し、3日の株価下落が買いのチャンスとなるというものだ。
しかし、トランプ氏が譲歩するのではなく強硬姿勢を強める傾向があることを考えると、逆のシナリオ――さらなる関税の追加――の可能性が高いように思われる。
トランプ米大統領が打ち出した相互関税により、アップル(AAPL.O), opens new tabの「iPhone(アイフォーン)」の価格が間もなく急上昇する可能性が出てきた。
相互関税の詳細を分析した複数のアナリストによると、最も影響が大きいのはアイフォーンなどの消費財で、アップルがコストを消費者に転嫁するつもりなら、価格は30─40%程度上昇する可能性がある。
年間で2億2000万台以上が販売されているアイフォーンの大半はなお中国で生産されており、中国に適用される税率は54%。この水準が続けば、アップルは追加コストを自ら吸収するか、顧客に転嫁するのか厳しい選択を迫られる。
ローゼンブラット・セキュリティーズのアナリストチームが試算したところでは、最新機種の「16」は米国での最低価格は799ドルだが、アップルがコストを消費者に転嫁できるとすれば、43%上がって最高で1142ドルになる恐れがある。
高価格機種の「16プロマックス」も現在の1599ドルから2300ドル弱に高騰してもおかしくないという。
トランプ氏は1期目にも中国からの幅広い輸入品に関税を発動したが、アップルは幾つかの製品で適用を免除された。しかし今回そうした例外措置は今のところ講じられていない。
ローゼンブラットのアナリスト、バートン・クロケット氏は「中国(製品)全部に関税が課すという展開は、米国の象徴であるアップルは前回同様に優遇されるというわれわれの想定とは完全に違っている」と述べた。
2月に発売された生成人工知能(AI)機能搭載の低価格版「16e」も43%の値上げになれば、599ドルから856ドルになる。
カウンターポイント・リサーチ共同創業者のニール・シャー氏は、アップルは少なくとも平均で30%値上げして関税コストを相殺する必要が出てくるとみている。
サムスン電子(005930.KS), opens new tabがある韓国は、米国で販売する全てのアイフォーンが生産されている中国よりも米国が適用する関税率が低いため、サムスンがアップルに対して競争面で有利になることもあり得る。
医療研究者は世界的なパンデミックの抑制に貢献した。しかし、ワシントンから急速に広がる経済的な問題には対応が難しいかもしれない。トランプ政権の大幅な予算削減は、研究資金を提供し新薬を承認する機関も直撃している。これには、ワクチン接種に懐疑的なロバート・ケネディ・ジュニア氏が率いる保健福祉省も含まれる。直近の影響は小さく見えるが、長期的にみて治療法の開発が遅延したり進まないリスクは大きい。
米国は他のどの国よりも多くの資金を研究開発に投入している。国立科学財団によると、2021年のその額は8000億ドル(約120兆円)を超え、これは第2位の中国より約20%多い。米国政府が直接負担したのは約1600億ドルだが、その責任ははるかに大きい。営利を追求する資金提供者は、短期的な見返りが不明瞭な基礎研究や初期段階の研究への投資には消極的だ。米国の納税者はこの支出の40%を負担している。
米国の保健機関で計画されている1万人の解雇には、食品医薬品局(FDA)や疾病対策センター(CDC)のトップ科学者が含まれる。トランプ政権はさらに、研究助成金の承認をほぼ停止したほか、科学的発展を支えるための国立衛生研究所(NIH)の予算の10%にあたる40億ドルの凍結に動いた。州や大学、その他の団体はこの決定を阻止するために訴訟を起こしている。
初期の犠牲者は実験器具や備品の販売業者だ。遺伝子配列解析機器の専門企業であるイルミナ(ILMN.O), opens new tabは、11月の大統領選挙以来、軟化する実験への需要と貿易戦争の激化による中国の制裁の影響で市場価値の半分を失った。バイオ関連企業サーモフィッシャーサイエンティフィック(TMO.N), opens new tabのような多角化した企業も影響を受けたが、それほどではなかった。医療テクノロジー企業のベクトン・ディッキンソン(BDX.N), opens new tabは、売却しようとしている大規模なバイオサイエンスおよび診断事業の価格を割り引かざるを得ないかもしれない。
しかし、より広範囲にわたる痛みはこれからだ。米国政府の基礎研究支援が枯渇すれば、その多くは補填されないだろう。最近の研究によると、2010年から19年の間に販売が承認された医薬品の99%以上にNIHの資金が投入されていた。
科学界からの警告も厳しい。元FDA長官のロバート・カリフ氏は、FDAは空洞化が進み、「我々が知っていた組織はもはや存在しない」と警告した。ワクチン承認部門を率いたピーター・マークス所長は辞表の中で、ケネディ長官は単に「自身の誤情報と嘘をそのまま受け入れてもらいたいだけ」だと書いた。
彼の辞任とコメントだけで、メッセンジャーRNA技術の開発を主導するバイオ医薬品会社モデルナ(MRNA.O), opens new tabの市場価値は9%減少した。しかし、より重大なリスクは、資金難が常態化してライフサイエンス業界全体が衰退してしまうということだ。
米国の消費者は、カクテルやシャンパン、外国産ビールの価格上昇に直面し、バーのメニューからリキュールブランドが消える可能性がある。その結果、大西洋を挟んで米国と欧州の両方で雇用が失われるだろう。飲料業界団体やアナリストは、トランプ米大統領の相互関税政策の影響をこう予測している。
トランプ大統領の最新の関税措置の対象は、イタリアのカンパリ(CPRI.MI), opens new tabをベースにした人気のネグローニカクテルから、世界最大の蒸留酒メーカーであるディアジオ(DGE.L), opens new tabが製造するギネススタウトにまで広範に及んでいる。また、すべてのビールの輸入に25%を課税し、既存のアルミニウム関税の対象にビール缶を追加したことで、メキシコ製のコロナ(STZ.N), opens new tabやオランダのハイネケン(HEIN.AS), opens new tabのブランドが影響を受ける。しかし、メキシコ産テキーラやカナダ産ウイスキーに25%の関税を課すとの宣言は実行されなかったため、ディアジオやカンパリなど一部の酒類会社の株価は上昇した。欧州のアルコールに対する200%の関税も当面は先送りされた。
それでも業界団体によれば、米国の消費者に大きく依存しているこのセクターにとって、3日に発表された関税は深刻な影響を与えるのに十分な水準だという。
欧州の酒造メーカーでつくる業界団体スピリッツ・ヨーロッパによると、欧州の蒸留酒の米国向け輸出額は2024年だけで29億ユーロ(4770億円)に達し、この貿易が米国で多くの雇用を生み出している。
フランスの団体や当局は、主に米国と中国に輸出されるコニャックなどの産地では、売上高が20%減少し、大量解雇が発生すると警告。スペインワイン協会は、米国での売上減少は、他の市場では補えないだろうと表明した。
<勝者と敗者>
イタリア業界団体フェデルヴィーニのミカエラ・パリーニ会長は声明で、「消費地であるアメリカ現地の生産では代替できない多くの銘柄が米国の消費者の食卓から消え、イタリアと欧州には深刻な生産・雇用危機が迫っている」と述べた。
日本の飲料メーカー、サントリーホールディングスは、関税の影響の対応として、蒸留酒を生産した国での販売に注力すると述べた。
その他の大手酒類・ビール製造会社はコメントを控えたり、影響を評価中だと述べた。
金融機関UBSのアナリストらは、上場している大手酒類メーカーは関税を賄うために価格を2%から5%引き上げるか、あるいはコストを自ら負担して、その分営業利益が減少する可能性があると推定した。
米国大手酒類販売会社リパブリック・ナショナル・ディストリビューティング・カンパニーの商業金融担当上級副社長タミー・カーティス氏は、関税率が公表されたことを受け、価格に関する真剣な議論が行われていると述べた。
「勝者と敗者が生まれるだろう」と彼女は述べ、サプライチェーン全体でより多くの関税を吸収できる製品はよりうまく対応できるだろうと付け加えた。
米国ではワインやコニャックなどの製品の売り上げがすでに落ち込んでいる。フランスとスペインのワイン生産者はロイターに対し、米国の消費者は関税コストの一部を負担しなければならなくなるだろうと語った。米国ワイン貿易連盟は、これは外国のワイン業界よりも米国のワイン業界に打撃を与えるだろうと付け加えた。
<どこへも行けない>
ボルドーワイン業界団体の会長アラン・シシェル氏は、トランプ大統領の最初の任期中に試みられた、ワインを大量輸送するような関税緩和戦略は、今回の包括的な関税には役立たないだろうと述べる。
製造やその一部、例えば瓶詰め作業を移転できる生産者もいるかもしれないが、フランスのシャンパンやスコッチウィスキーのような製品は特定の国や指定された地域で製造されなければならず、生産を移転することはできない。
アイルランド・ウイスキー協会のエオイン・オ・キャセイン会長は、アイルランドのウィスキーセクターは、生産の40%を米国に輸出しており、これが成長を促進し、他の市場での拡大を支えると述べる。企業は今、特に不確実性が高まる中で、事業の焦点を他の地域に移すかもしれないと彼は続けた。
欧州はトランプ大統領が課すと脅した200%の関税を免れたが、欧州の報復措置がバーボン・ウイスキーなどの米国産酒類に及んだ場合には、それが課される可能性もある。
「もし200%まで上昇したら、ゲームオーバーだ。米国市場は終わりだ」。シャンパンメーカー、ルクレール・ブリアンのCEO、フレデリック・ザイメット氏は語った。
●日本企業
千代田化工建設は4日、オーストラリアの石油ガス開発会社、パイロットエナジーが計画する二酸化炭素(CO2)サプライチェーン(供給網)構築に向けた調査事業を同社から受注したと発表した。中間原料のアルミナ生産時に排出されるCO2の回収から輸送、貯蔵までの供給網構築への実現性を検討する。
パイロット社が主導し、西オーストラリア州のアルミナ生産設備から排出される年約70万トンのCO2を回収・貯蔵する計画の実現性を検討する。CO2を液化し、輸送して海上の枯渇油田に埋めることを目指す。必要なエネルギーを削減できる効率的な手法を検討する。
千代田化工がCO2の圧縮設備、パイプライン、液化装置の費用や設計について検討する。海上輸送については日本郵船関連会社のクヌッツェン・エヌワイケイ・カーボン・キャリアーズ(KNCC)が担当する。調査期間は2025年1〜5月で受注額は非公表。
●先進国政治動向
トランプ米大統領は4日、自身のソーシャルメディアへの投稿で「私の政策は決して変わらない」と言明。米国からの関税に中国が報復措置を発表したことを強く非難した。世界貿易戦争に発展する見通しが経済を混乱させている。
中国はこれより先、米国からの輸入品全てに34%の関税を課すなど、一連の報復措置を発表。トランプ氏がしかけた貿易戦争が報復の応酬でエスカレートし、世界経済にリセッション(景気後退)が迫る恐れが生じている。
「中国はしくじった。パニックに陥ったからだ。彼らにとってやってはいけないことをやってしまった」とトランプ氏はトゥルース・ソーシャルに投稿した。
トランプ氏はさらなる措置で中国に対応する計画は発表しなかったが、報復で米国への関税が引き上げられれば米国もそれに応じると過去に公言している。
別の投稿では、「米国に来て大量のマネーを投資する多くの投資家に告ぐ。私の政策は決して変わらない。今はお金持ちになる好機だ。これまでにない富が手に入るだろう!!」とトランプ氏は述べた。
一連のコメントは関税の規模や範囲を巡り外国政府や企業経営者と交渉するトランプ氏の意欲について、首尾一貫しないメッセージの最新例となった。つい3日には、「驚くべき」ものが提示されれば、関税引き下げにオープンであると語ったばかりだ。
米共和党は、富裕層に課す所得税の最高税率を引き上げることを検討している。2017年に成立した減税の恒久化など、現在取りまとめている税制法案の一部コストを相殺することが目的。増税に長年反対してきた同党にとって大きな方針転換となる。
事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に明らかにしたもので、年間課税所得100万ドル(約1億4600万円)以上を対象に新たな税率区分を設け、39-40%前後を適用する案が検討されているという。
また、現行の最高区分である年間課税所得62万6350ドル超の単身者に適用される税率37%を39.6%に引き上げる案も検討している。これはオバマ政権下で定められた税率に戻ることを意味する。この案についてはニュースサイトのアクシオスが先に報じていた。
関係者によれば、増税案は確定しておらず、今後変更される可能性がある。トランプ政権当局者と、政権に近い議員らは向こう数カ月以内の議会通過を目指し、包括的税制法案の草案策定に着手している。
財務省の声明によると、ベッセント長官は議会に対し、第一次トランプ政権下で成立した減税の恒久化に向け、税制法案に迅速に取り組むよう促している。
ホワイトハウスの担当者にコメントを求めたが、すぐには返答はなかった。
富裕層が対象だとしても、増税案は共和党内で論争を引き起こす可能性が高い。共和党はかつて党員に増税反対のスタンスを事実上義務付けていたが、トランプ政権下でよりポピュリスト的立場を受け入れるようになった。
上院は数日内に、税制法案の大枠を定める予算決議案を採決する予定。同案は4兆ドル規模のトランプ減税の延長に加え、1兆5000億ドルの追加減税に道を開くものとなる。
欧州連合(EU)加盟国のうちフランスなど11カ国が3日、南米の関税同盟メルコスル(南部共同市場)とEU加盟国間の自由貿易協定(FTA)の締結に向けて協議に入った。11カ国は従来、FTAに反対していたが、トランプ米大統領が2日に発表した相互関税措置の影響を相殺する手法として、一転して締結の検討に乗り出したシグナルとも読み取れる。
フランスのバンジャマン・アダッド欧州担当相が3日、オンライン会議を呼び掛け、10カ国政府高官が参加した。
アダッド氏の事務所の報道担当者はロイターの取材に「参加者全員が貿易パートナーシップの多様化がいかに重要かという点で意見が一致した」と話した。
EU欧州委員会は昨年、ブラジルやアルゼンチンなどが加盟するメルコスルとFTAを締結することで最終合意したと発表していたが、フランスなどが農家保護のため反対していた。オランダやオーストリア、アイルランド、ポーランド、ハンガリーなどはFTAに反対するフランスを支持していた。
だが今回の協議では、フランス主導で計11カ国がFTA賛同に向けて建設的な妥協点を探り始めたとみられる。トランプ氏の関税措置を踏まえた現在の状況下では、EU域内の輸出業者には南米が米国に代わる有望市場となる可能性が出てきた。
フランスなどは従来、ブラジルやアルゼンチンなど環境規制がEUよりも緩い国で生産された牛肉や穀物など農産物が国内に流入するのを警戒。このためFTA交渉は農家保護を巡ってEU内で長く意見対立が起きていた。
3日のオンライン会議でアダッド氏は、輸入量が規定上限を超えた際に自動的に発動するセーフガード(緊急輸入制限)条項をFTAに盛り込む案を支持した。
ただ、ある政府高官はロイターの取材に「協定案には既に一般的なセーフガード条項が含まれているものの、発動条件が厳しすぎるため危機発生時には役に立ちそうにない」と述べた。さらに「農家を保護しない不均衡な協定は受け入れられない」と話した。
1月の就任以降、矢継ぎ早に関税措置を出してきたトランプ米大統領。米国の同盟国も容赦しない措置に、すでに世界は十分振り回されているが、トランプ氏は自身の政策実現のためにさらなる難題を貿易相手国・地域に突きつけると専門家は予想する。
金融の中心地があり基軸通貨を発行する国の統治者として、トランプ氏にはクレジットカード、外国銀行へのドル供給など、切り札はまだある。こうした非伝統的な「武器」の使用は、米国自身が多大なコストを負い裏目に出る可能性もあるが、究極のシナリオも排除すべきでないという。
特に警戒しなければいけないのは、関税が米貿易赤字の縮小につながらない場合だ。労働力不足のためあり得ると多くのエコノミストが考えている。「トランプ氏がいら立ちを募らせ、論理的根拠がなくても突飛なアイデアを実行しようとすることは十分考えられる」とカリフォルニア大学バークレー校のバリー・アイケングリーン教授(経済学・政治学)と話す。
<マールアラーゴ合意>
トランプ米政権の「公然の秘密」の計画は、ドルを弱くして貿易の不均衡を是正することだ。その方法の一つが、外国の中央銀行を巻き込んでドルの価値の再評価をすることだ。
米経済諮問委員会(CEO)委員長に指名されたスティーブン・ミラン氏による昨年11月の論文によると、これはトランプ氏のフロリダ州の私邸と1985年のプラザ合意にちなんで名付けられた「マールアラーゴ合意」の一環で起こる可能性がある。ミラン氏は論文で、米国が関税賦課と安全保障支援などをテコに諸外国に自国通貨の対ドル相場押し上げを促すという考えを示した。
しかし経済学者は、現在の経済的・政治的状況は40年前とは大きく異なるため、欧州や中国が応じる可能性は低いとみる。
ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、モーリス・オブストフェルド氏も「ありそうにないシナリオ」と述べた。すでに関税は発動されているため新たな交渉カードにはならず、安全保障についても、ウクライナ問題を巡る対応で分かるように国際的な枠組みから米国は後退していると指摘。ユーロ圏、日本、英国の中央銀行は、金利を引き上げて不況のリスクを取らされる「取引」に応じる可能性は低いとも述べた。
TSロンバードのチーフエコノミスト、フレイヤ・ビーミッシュ氏は、中国当局にとって人民元の押し上げはリフレの取り組みに反すると指摘した。
円買い介入を実施してきた日本も、最近ようやく終了宣言した25年にわたるデフレの記憶が円高への意欲を弱める可能性がある。
<ドルの後ろ盾>
要求が通らない場合、トランプ政権は、ドルの基軸通貨としての地位を利用するなどして、より攻撃的な戦術を試みる可能性がある。
オブストフェルド氏や中央銀行関係者が挙げるのが「ドル資金の融通」だ。危機時にドル流動性を供与する、米連邦準備理事会(FRB)と外国中央銀行の通貨スワップ協定の打ち切りを交渉カードに使う可能性があるという。非常時にドルの融通を受けられないとなれば、米国外のドル調達メカニズムが機能不全を起こし、英国や欧州、日本の銀行が大打撃を受ける。
通貨スワップ協定を所管するFRBを掌握したいとトランプ氏は示唆していないが、最近の規制当局での幹部人事などの例があり不安視されている。
コンサルティング会社シン・アイス・マクロエコノミクスの創業者スピロス・アンドレオポウロス氏は「より大きな交渉の中で、これが核の脅威のように機能する可能性はもはやゼロではない」と述べ、そのような動きは長期的には、信頼できる国際通貨としてのドルの地位を下げるとの見方を示した。
<クレジットカード>
米国にとってもう一つの切り札は、資金決済だ。日本や中国では独自の電子決済が浸透しているが、ユーロ圏ではビザ(V.N), opens new tabとマスターカード(MA.N), opens new tabがカード決済の3分の2を占める。アップル(AAPL.O), opens new tabやグーグルなどが提供するスマートフォンアプリによる支払いは、小売り決済の約1割に相当する。
ビザとマスターカードは、ロシアがウクライナに侵攻した直後にロシア向けサービスを停止した。欧州が同様な脅威に直面すれば混乱は必至だ。
欧州中央銀行(ECB)は、トランプ政権を念頭に欧州が「経済的圧力と威圧」リスクにさらされており、デジタルユーロがその解決策になる可能性があると指摘しているが、導入を巡る議論は進んでいない。トランプ政権の不合理な措置に、米銀の欧州業務の規制などで対抗することも可能だが、逆に欧州銀行の米国業務で報復される可能性があり、強硬な措置は取りづらいのが実情だ。
米上院共和党は、トランプ大統領が掲げる減税方針と債務上限引き上げの実現に向け前進した。大統領の関税政策で混乱に陥っている金融市場に、わずかながらも確実性をもたらす可能性がある。
上院は5日早朝、長時間に及ぶ修正案の採決を経て、予算決議案を賛成51、反対48で可決した。全民主党議員に加え、共和党からコリンズ議員とポール議員の2人が反対票を投じた。
この決議により、議会共和党は、第1次トランプ政権下の2017年に成立した個人・法人減税を延長する法案を策定することが可能となる。同減税措置は2025年末に期限切れとなる。
また、今後10年間で1兆5000億ドル(約220兆円)の追加減税を認めるとともに、財務省が今夏に債務上限に達する事態を回避できるよう、連邦政府の借入限度額を5兆ドル引き上げることも盛り込まれている。
共和党は、減税措置を関税に続くトランプ大統領の経済政策第2段階と位置づけている。大統領に近い関係者らは、新たな減税で市場が活性化し、確実性を与えることで企業の投資を後押しすると主張している。ただ、この税制パッケージの規模が、投資家の間で広がる関税への懸念を相殺できるかどうかは不透明だ。
議会共和党は、トランプ政権1期目に導入された減税措置のうち期限を迎える部分を延長することが、来年の米家計の税負担増を回避する上で不可欠だと訴えている。
トランプ米大統領は2期目に入って以来、ビジネス界や政界、メディアから同盟国まであらゆる方面で「敵対勢力」と見なす個人や団体に対し、自身の意思に従わせようとさまざまな権力を行使してきた。こうしたやり方をした近代の米大統領は前例がない。
トランプ政権は、抗議行動に参加した学生の拘束と強制送還、大学への連邦予算拠出停止、政敵とつながりのある法律事務所の排除、裁判官への脅迫、報道関係者への圧力行使などを進めている。連邦政府のリストラを通じて同氏の意向に従わない可能性がある職員も解雇した。
このような措置の中心的手段になったのは大統領令だが、政敵を標的にして大統領令を出す例は今までなかった。トランプ氏は堂々と、訴訟や公然とした脅し、連邦政府の予算配分によって相手を服従させようとしている。
ニューヨーク大のピーター・シェーン教授(法学)は「あらゆる取り組みに共通するのは、MAGA(米国を再び偉大にする)政策課題と自らの権力にとって抵抗源になりそうな全ての勢力を黙らせたいというトランプ氏の欲求だ」と指摘した。
標的になった人々の一部は急いでトランプ氏の怒りをなだめにかかった。敢然と立ち向かおうとする向きもわずかにいるが、大多数はまだどう対応すべきか思案を続けている。トランプ氏の行動のスピードがあまりに速く、範囲も広いため、野党民主党や公務員労組、各企業トップ、法曹界などは一様に不意打ちを食らった形になっている。
一方、トランプ氏の支持者らには、一連の動きは同氏が選挙で掲げた公約を達成するために大統領としての権限を全面的に行使しているに過ぎないと映っている。
<社会秩序変革も狙う>
トランプ氏の狙いは政治の分野にとどまらず、強力な行政部門を頂点に米国社会の秩序を再構築したいという願望がうかがえる。議会上下両院は与党共和党が支配し、連邦最高裁判事も保守派が多数を占めるだけに、他の大統領に比べてトランプ氏はブレーキをかけられずに権力を行使できる余地が大きい。
そしてトランプ氏はこれまでに、コロンビア大や大手法律事務所、メタやウォルト・ディズニーといった巨大企業などから譲歩を引き出すことに成功している。彼らはいずれも圧力に耐え忍ぶより政権と和解する道を選び、その代わりにある程度の独立性を放棄し、「悪しき」と評価され得るような前例を作った。
トランプ氏の怒りを先んじてかわそうとする動きも広がっている。ゴールドマン・サックスやグーグル、ペプシコを含めた20を超える大手企業・金融機関は、トランプ氏が目の敵にしている多様性プログラムを撤回している。
3つの大手法律事務所は、所属弁護士が機密文書や連邦政府の建物へのアクセスを遮断されないように政権側と取引した。
トランプ氏の大統領令は、ベネズエラの犯罪組織のメンバーとされる不法移民に対する厳密な審査なしの強制送還や、貿易相手国への関税発動にも使われている。
さらに同氏は複数の米メディア企業を提訴し、政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」を所管する組織の規模縮小を指示。博物館や研究施設などを運営するスミソニアン協会に「反米的思想」の排除も命じた。
ウクライナ政府に対しては軍事支援の停止をちらつかせて米国が権益を持つ形の鉱物資源開発協定の締結を迫り、北大西洋条約機構(NATO)に加盟する同盟国デンマークには、自治省グリーンランドを売り渡せと脅したほか、カナダの併合を主張したり、パナマ運河の管理権奪還を訴えたりしている。
<権力の使い方を学習>
連邦政府に対する内部告発者の代理人で、自身もトランプ氏から機密情報へのアクセスを禁止された弁護士のマーク・ザイド氏は、30年仕事をしてきてトランプ氏のような振る舞いは見たことがないと話す。
「大統領令が報復ないし復讐目的で個人や非政府関係者を明確な標的として策定されたことはこれまで一度もなかった」と強調した。
ホワイトハウスやトランプ氏の側近らは、トランプ氏の行動は復讐が動機ではないと反論する。
フィールズ大統領報道官は「非伝統性こそ、まさにトランプ氏を大統領に当選させた国民が票を投じた理由だ。大統領は根を張った官僚組織をひっくり返そうと強く決意している」と述べた。
1期目のトランプ氏は、2016年の大統領選へのロシア介入疑惑に関する調査や、側近の経験不足、議会で野党民主党の力がより大きかったことなどさまざまな足かせに悩まされてきた。
しかし、それらが一掃された今、トランプ氏は就任直後からどうすれば自分の望みをかなえる上で権力手段をより効果的に駆使できるのか学習済みであることを証明して見せた。
共和党ストラテジストのリナ・シャー氏は「トランプ氏は1期目に比べて、権力の使い方がよく分かっている」と話す。
チャールストン大のクレア・ウォフォード教授は、トランプ氏が大統領令を政策課題実現だけでなく、支持者へのメッセージとして有効利用しているとの見方を示した。トランプ氏の戦略性のみならず、大統領令の新しい使い方をしている点に強い印象を受けるとしている。
●先進国中銀、金融当局
トランプ米大統領の輸入関税強化による世界経済へのリスクなどを背景に、世界の中央銀行が外貨準備高に占める米ドルの割合を低下させる一環で金を購入し、価格上昇を支えるとの見方が強まっている。
ロシアによる2022年のウクライナ侵攻は、中銀による金購入の大きなきっかけとなった。それ以降に年間1000トンを超える金を購入しており、10年代の年間平均の約2倍で推移している。
3日の取引で金スポット価格は1オンス=3167.57ドルと過去最高値を更新した。25年に入ってから19%上昇し、22年末と比べると71%上がった。
産金業界団体ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の推計によると、トランプ氏が米大統領選で勝利した24年第4・四半期に中銀の金購入量は前年同期比54%増の333トンに膨らんだ。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のコモディティー(商品)ストラテジスト、マイケル・ウィドマー氏は「新興国の中銀は現在、資産の約10%を金で保有している。本当は資産の30%を金で保有すべきだ」と指摘。そのためには中銀の金保有を1万1000トン増やす必要があるとした上で、米経済政策の不確実性は今後数年間続くとして「中銀の観点からは、(不確実性は)国債をポートフォリオに加える動機を弱め、実際にドル離れを進める動機を強めることを意味する」と言及した。
米国債と、購入のために必要となるドルは、これまでは安全資産の地位を金と争ってきた。
しかしながら、トランプ氏が打ち出した関税政策と世界的な貿易戦争、ウクライナでの戦闘へのアプローチ、数十年来にわたる欧州との同盟関係の軽視と懐疑は世界秩序を根底から覆した。
中銀への金売却に携わっている情報筋は「金の保有量が(少ない)中銀は、さらに金を増やそうとするだろう」とし、「今年の中銀からの需要は過去数十年間で最高になるかもしれない」と言及した。
企業が利幅を守るために米国の輸入関税の増加分を消費者に転嫁することや、労働者の賃上げ要求によってインフレ圧力が急上昇するとの懸念も、金が価値と富を蓄える役割を後押ししている。
マッコーリーのアナリストらは最近の顧客向けのメモで「今日までの金価格の強さと、それが今後も続くとの私たちの予想は、主に投資家や公的機関が信用リスクや、取引相手の信用リスクの対策として金を購入する意欲が高まっていることに起因している」とコメントした。
金の需要部門別で中銀は首位の宝飾品部門、投資部門に次いで3番目となっており、世界の消費量の23%を占めている。通常ならば中銀は価格に敏感で、価格が下落すると購入し、価格が上昇すると購入を抑える。
アナリストらは金価格が着実に上昇するとの見通しの中で、中銀が金の購入を先延ばしする可能性は低いとしている。
一方、トランプ氏はドル離れを積極的に進めているとみられる国々に関税をかけると脅しているため、中銀は購入量を公表しない方法を選ぶかもしれない。
国際通貨基金(IMF)に報告された中銀による24年の金の総需要量は、WGC推計の34%しか反映されていない。
WGCによると、中銀は今年1―2月に金保有を正味44トン増やしており、国別ではポーランドと中国が最大となった。
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、ドナルド・トランプ大統領が今週発表した関税率が予想より高かったため、米国経済は数週間前に予測されていた以上に物価が上昇し、成長ペースが鈍化する期間に直面する可能性が高いとの見方を明らかにした。
4日の講演原稿で、FRBは様子見姿勢に満足しており、関税強化後に見込まれる物価上昇ペースは和らぐと国民に請け合うことを最優先する意向を示した。
経済成長が減速する「下振れ」リスクが増したことを認めつつも、世界貿易の縮小による打撃を緩和するために、FRBが政策金利をどのように調整するかを語るには時期尚早だと述べた。
「不確実性は高いままだが、関税の引き上げ幅が予想よりかなり大きいことが明確になり始めた」とした上で、物価上昇と成長減速による経済への影響も予想より大きくなりそうだと述べた。
トランプ氏が2日発表した関税措置を踏まえ、今年はインフレ率が少なくとも1ポイント上昇すると、エコノミストらは予測している。パウエル氏は、物価がいったん上昇し、その後もある程度は高止まりするリスクに言及した。
「関税は少なくとも一時的にインフレを上昇させる可能性が非常に高い。また、その影響が長引く事態もあり得る」と指摘。そうした事態を避けるための対策は、物価の上昇幅や、それを経済が吸収するのにかかる時間といった要因に左右されるとした。
「われわれの責務は、長期的なインフレ期待を十分に安定させ、一時的な物価上昇が持続的なインフレ問題にならないようにすることだ」と語った。
インフレに焦点を当てた講演内容からは、関税がもたらす景気低迷を未然に防ぐことは難しいとのFRB当局者の見方が透ける。つまり、当局者は失業率が悪化したり、消費が冷え込んだりしてから、その打撃をいかに和らげるかに焦点を当てる可能性がある。言い換えれば、FRBはいかなる景気低迷にも対処するが、先回りして対策を講じることはあまりできないということだ。
●先進国経済指標
米労働省が4日発表した3月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は22万8000人増加し、エコノミスト予想の13万5000人増を大幅に上回った。しかし、トランプ米大統領の関税措置によって企業や消費者の信頼感は揺らいでおり、労働市場が今後も勢いを維持できるかが注目される。
失業率は4.2%と前月の4.1%から上昇、予想は4.1%だった。
2月の雇用者数は15万1000人増から11万7000人増に下方改定された。
フィッチ・レーティングスの米経済調査責任者オル・ソノラ氏は「不確実性の大海に落とされた一滴の朗報だ」としつつも、トランプ大統領の相互関税発表前のデータであることを踏まえ、「来月の雇用統計がより重要な意味を持つ」と述べた。
業種別では、病院や介護施設など医療関連が5万4000人増、社会福祉関連で2万4000人増。
小売は2万4000人増、運輸・倉庫は2万3000人増。
春に向けて寒さが和らぐ中、建設は1万3000人増。レストラン・バーも2万9800人増。
製造は1000人増、金融は9000人増。
ストを行っていたスーパーマーケットの従業員約1万人が職場に復帰したことも雇用者増に寄与した。
政府部門は4000人減。2月の1万1000人減から減少幅は縮小した。実業家イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化省(DOGE)」が連邦政府職員の大規模削減を実施しているものの、有給休暇中もしくは継続的に退職金を受け取っている場合は雇用状態とみなされることが背景にあるもよう。
サンタンデール米国キャピタルマーケッツのチーフ米国エコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は、DOGEによる政府職員削減が騒がれているものの、「実際には、連邦政府職員の規模は今後1─2年で緩慢なペースで縮小する見通しで、労働市場全体の軌道を根本的に変えるほどの影響はない」という見方を示した。
時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇。2月は0.2%上昇していた。前年比では3.8%上昇と、前月の4%から伸びは鈍化した。
3月は23万2000人が労働市場に参入した。
トランプ大統領は2日、貿易相手国に対する相互関税を発表。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。
相互関税の影響は、来月発表される4月の米雇用統計で明らかになる可能性があると見込まれている。シティグループのエコノミスト、ヴェロニカ・クラーク氏は「すでに減速しつつあった労働市場が、新たな不確実性の増大や関税コストの上昇、政府の支出・人員削減、企業や消費者の信頼感低下といった新たな衝撃に耐えるには不十分であることを示す証拠が相次いでいる」と指摘。「4月のデータは少なくともやや軟調となり、5月以降から夏にかけ、より顕著なぜい弱性が示されることになるだろう」と述べた。
●金融市場、先進国トピックス
米大統領選直後、親ビジネスとみられるトランプ大統領への期待にウォール街が沸いていた頃、BCAリサーチのチーフ・グローバル・ストラテジスト、ピーター・ベレジン氏は警鐘を鳴らしていた。
ベレジン氏のチームは昨年12月、第2次トランプ政権では一方的に広範な関税が導入され、第1次政権を上回る規模になるとみていた。相互関税の発表を受けた今週の金融市場の動揺は、ベレジン氏に先見の明があったことを示している。この先の予想についても同氏が正しいとすれば、米国株はまだ底入れから程遠いことになる。
S&P500種株価指数については、年末までに4450まで下落すると同氏は予想。これは現在の水準を約18%下回る。一方で、原油価格は「需要の減少」という悪い理由によって、現在の1バレル=約63ドルから50ドルに下がり得ると述べた。
米国は早ければ4-6月(第2四半期)にもリセッション(景気後退)に陥る可能性があると同氏は話す。米経済はすでに今年に入る前から弱含んでおり、具体的には、求人件数の減少、コロナ禍の貯蓄枯渇、空室率の上昇、自動車ローンや学生ローンの延滞増加といった兆候に表れていたという。そこにトランプ氏による関税拡大が「とどめを刺す」と同氏はみている。
「リセッションは経済が脆弱(ぜいじゃく)になり、その後にショックが加わることで起こる傾向がある」とベレジン氏。「状況は良くなるどころか、むしろ悪化する。今後は報復が起こり、貿易戦争は激化する」と続けた。同氏はリセッションに陥る確率を75%とみている。
ウォール街は年初の段階で、米国株と米経済に強気だった。当時ブルームバーグが調査した19人のストラテジストのうち、S&P500種が6000を割り込むとの予想はゼロだった。
ベレジン氏はまた、トランプ政権が財源の裏付けのない減税を実施するかもしれないとし、今後数カ月にわたり米国債利回りは高止まりする可能性があると述べた。
「我々は目下、極めて悲惨な負の連鎖に陥る瀬戸際にある。雇用見通しへの不安が買い控えを招くという自己実現的な悪循環だ」とベレジン氏は説明。「消費が落ち込めば、企業は採用を控え、雇用が減少。所得が減って、さらに支出が減るという流れになる」と続けた。
米関税を巡る懸念が米国株を直撃する中、伝説的な投資家ビル・グロース氏は、押し目買いを狙う投資家に対し、様子見を続けるよう勧めた。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の共同創業者で最高投資責任者(CIO)も務めたグロース氏は3日にS&P500種株価指数を大きく押し下げた今回の売り浴びせについて、解消の兆しが見えない「深刻な市場イベント」だと指摘。
「投資家は『落ちるナイフをつかもう』とするべきではない。これは即座に悪影響が表れたという点を除き、1971年の金・ドル本位制の終焉(しゅうえん)に似た壮絶な経済・市場イベントだ」と電子メールで述べた。
トランプ大統領の相互関税発表を受け、3日にはS&P500種の時価総額約2兆ドル(約291兆円)が消失。米10年債利回りは一時、節目の4%を割り込んだ。
エコノミストはトランプ氏の政策が短期的に米国内の物価上昇と成長鈍化に加え、リセッション(景気後退)を招く可能性が高いと指摘している。グロース氏は「トランプ氏は当分撤回できないだろう。マッチョ過ぎるからだ」と述べた。
また、利下げ環境において比較的安全な配当を提供するAT&Tやベライゾン・コミュニケーションズなどの国内企業だけにチャンスがあると指摘。ただ「これらの銘柄にも注意が必要だ。『買われ過ぎ』の領域に近づいているからだ」と述べた。両銘柄ともプラスで3日の通常取引を終えた。
JPモルガン・チェースは、トランプ政権が米国の貿易相手国に対して課すと発表した相互関税が変更されることなくこのまま発動されれば、2025年に米国、引いては世界経済をリセッション(景気後退)に陥れる可能性が高いとの見方を示した。
チーフエコノミストのブルース・カスマン氏は「世界経済が今年リセッションに陥るリスクは、40%から60%に上昇した」と3日のリポートに記した。関税は米国内の家計および企業に対する1968年以来の大幅増税に相当すると指摘した。
「この増税効果は報復措置、米企業の景況感悪化、サプライチェーン混乱などによって増幅される可能性が高い」と、「There will be blood(血を見ることになる)」と題したリポートで分析した。
トランプ米大統領が世界各国からの輸入品に大幅な関税を課すと発表した後、3日にはウォール街の複数の企業が米国の景気後退を警告し、何社かはそれを基本シナリオとした。
JPモルガンは、関税の影響は大きいとしながらも、経済予測を修正する前に様子を見る姿勢を示している。
トランプ氏は3日、貿易相手国が「驚くべき」ものを提示することができれば、関税引き下げにオープンだと発言した。
カスマン氏はリポートで「予測を即座に変更するつもりはなく、まずは初期の実施と交渉プロセスを見守りたい」としている。
リポートは「発表された政策が完全に実施されればマクロ経済への大きな衝撃になるとみられ、その場合は米経済、引いては世界経済が今年中に景気後退に陥る可能性が高い」と強調している。
トランプ米政権が発表した「相互関税」に対して、ドイツでは各種業界団体から産業への影響を懸念する声が相次ぎ、一部ではドイツ経済への打撃を2000億ユーロとする試算も出ている。
ドイツ連邦統計庁によると、米国とドイツの財の貿易高は2024年に2530億ユーロで、米国はドイツにとって最大の貿易相手国。
ドイツ卸売・貿易業連合会(BGA)のディルク・ヤンドゥラ会長は「率直に言って、(米相互関税の)影響を感じることになるだろう。関税分を価格に転嫁せざるを得ず、多くの場合、それは売り上げの減少を引き起こす」と述べた。
また、ドイツ産業連盟(BDI)のウォルフガング・ニーダーマルク理事は「発表された相互関税は、国際的な貿易システム、自由貿易、グローバルなサプライチェーンに対する前例のない攻撃だ」と世界貿易への影響を危惧した。
独自動車工業会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長は「ルールに基づく国際貿易秩序の拒絶であり、世界の価値創造、成長、繁栄の基盤が崩れる」と指摘。「これは『アメリカ・ファースト(米国第一)』ではなく、『アメリカ・アローン(米国孤立)』」であり、関税の影響は全世界に波及し、雇用の喪失につながると警告した。
ドイツのIW経済研究所はトランプ氏の4年間の大統領任期中に今回の関税措置によってドイツ経済が被る損害を2000億ユーロと試算した。
「景気後退(リセッション)」のつづりは今やT-A-R-I-F-F(関税)なのか。
ドナルド・トランプ米大統領が2日発表した関税によって世界的な貿易戦争の脅威が高まったのを受け、市場のムードは景気後退懸念一色となった。米国債利回りは急低下、米国株先物とドルも急落した。
これは単なる市場の行き過ぎた反応ではない。3日、S&P500種株価指数は4%超下落し、ドルも1%超下落した。これは過去に6度しか起きていない現象だ。投資家は通常、資金の安全な避難先となるはずのドルがその役割を果たさなかったことに衝撃を受けた。
だが市場の修羅場はまだ始まったばかりかもしれない。少なくとも1950年代以降で最大となる米国の「増税」が景気を冷え込ませるならば、米国株と米国債利回りはまだ大いに下がる余地がある。
景気後退が本格化すれば、消費が落ち込み、貯蓄者はより安全な資産に切り替えることになり、株価は利益減少とバリュエーション低下の両面から打撃を受ける。食品や生活必需品などのディフェンシブ銘柄は売上高が落ち込みにくいため、高級品や自動車といった裁量的支出に関わるシクリカル銘柄(景気敏感株)をアウトパフォームする。
S&P500種指数が2月半ばにピークを迎えた後、投資家は景気敏感株を売り、ディレンシブ株に乗り換える動きを加速させている。筆者が用いる景気敏感セクター指標(超大型株によるゆがみを避けるため、各セクター内で均等加重したもの)は、2020年3月の新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)以降、これほど短期間でディフェンシブ株に大きく差をつけられたことはない。
景気の悪化で債務不履行(デフォルト)の可能性が高まる、最も格付けの低いジャンク債も大きな打撃を受けており、米国債に対するスプレッド(上乗せ金利)は2ポイント以上も拡大した。同様の短期間にこれほど急拡大したのは、エコノミストが景気後退は間近だと確信していた2022年以来のことだ(この時結局、景気後退は起こらなかった)。
だが、市場は景気後退確率の高まりを急速に織り込んでいるものの、完全に備えができている状況ではない。S&P500種指数は過去最高値から12%下落し、昨年9月の水準に戻ったに過ぎない。通常の景気後退局面では、株価は最終的に20%以上下落し、7カ月よりはるかに長期間の上昇分を失うことになる。またS&P500種指数の予想PER(株価収益率)は依然として20倍近くある。景気後退時にこのような水準を維持できないのは確かだ。
ジャンク債にも同じことが言える。発行額の大半を占める質の高いジャンク債は、今のところほぼ影響がなく、デフォルトに最も近いCCC格以下の債券でさえ9月の水準に戻った程度だ。スプレッドはさらに拡大するだろうが、実際の景気後退時にはデフォルトが急増するとみられ、スプレッドが現在の2倍に達することもあり得る。そうなれば多大な損失を生じかねない。
より詳細に見てみよう。ピムコが用いる指標によると、株式オプション市場が織り込む1年先の景気後退確率は約15%となり、2日の関税発表前の10%から上昇している。この指標はPERが15倍を下回る確率を尺度とする。金利デリバティブ(金融派生商品)は2年後の金利が1.75%を下回る確率を尺度にすると、景気後退確率を約18%と見込む。どちらも確実な指標ではない。ドットコム・バブル崩壊後、景気後退を経てバリュエーションが正常な水準に戻るまでには数年を要した。関税に誘発されたインフレが、景気悪化に際した米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ余地の足かせになる可能性もある。
米国債利回りは実際それほど大きく低下していない。10年債利回りは今年の高水準から0.76ポイント低下した。これほど短期間に今回より大幅に低下したことは過去2年間に3度あり、そのうち2度は下げ幅が最終的に1ポイントを超えた。
通常、景気後退局面では3ポイントかそれ以上の利下げが行われる。景気後退が確実視される場合、利回りのはるかに大幅な低下が必要となる。もちろん、景気後退と物価上昇が同時進行するスタグフレーションがFRBの利下げを妨げなければ、の話だ。その場合は米経済と米株市場、米社債市場がさらなる痛手を被るだろう。
市場は今のところ、FRBが今回の関税を静観し、たとえ物価を押し上げたとしても利下げを行うとみている。ジェローム・パウエルFRB議長が2022年のインフレに使った「一時的」という表現を繰り返すとは思えないが、インフレ期待が大幅に上昇しない限りは、関税を1回限りの出来事として扱う可能性は十分にある。
市場が予想するシナリオは次のようなものだ。CMEのFedWatchツールによると、新たな関税発表を受け、来月の利下げ確率は2倍の24%に上昇。また年内利下げは3回以上を見込んでいる。
1930年のスムート・ホーリー関税法を超える高関税への回帰が景気後退を招くと考える投資家は、年内のさらなる大幅な株価下落と債券利回り低下に身構えるべきだろう。
他の国々が真剣には報復せず、トランプ氏が関税率引き下げ交渉に直ちに応じると考える投資家は、物価が依然として高止まりしても平気かもしれない。ただそうした投資家でさえ不透明感が長引くことで経済に悪影響が及ぶことを警戒する必要がある。
ドナルド・トランプ米大統領は、自身が課した関税で「ちょっとした混乱」が起きるだろうと述べたが、「ちょっとした」の定義は何なのだろうか。株式市場は3日、米政府がロックダウン(都市封鎖)を実施した2020年3月以来のひどい1日を経験した。心配は無用だ。関税には最終的にその痛みに耐えた分の見返りがあると、ホワイトハウスは述べている。しかし、それで安心できるのか。
トランプ氏が2日に1世紀ぶりの大規模な関税引き上げを発表したことに反応して、S&P500種指数は4.8%、ナスダック総合指数は6%それぞれ下落した。市場で最大の犠牲者となったのは、アップル(9.3%安)、ナイキ(14.4%安)、ギャップ(20.3%安)といった小売業者や製造業者だ。原油相場や米ドル相場、10年物米国債利回りも下がっており、経済成長が鈍化するとの見通しを示唆した可能性が高い。
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世界各国市場の3日の動きは、トランプ氏が貿易に課した税の歴史的な大きさを反映するものになった。エバーコアISIの推計では、2日に発表された関税により、米国の実行関税率は24%に上昇し、さらにトランプ氏が医薬品、銅などに課すと約束している分野別関税の実施に踏み切った場合は27%になる。この税率は1930年の「スムート・ホーリー関税法」施行後の税率を上回る。
さらに悪いのは、個々の国・地域に対する関税率を米政府が奇妙でいいかげんな方法で計算したことだ。すべての国・地域に一律10%の関税を課した上で、米政府はそれぞれに上乗せする税率を算出する際に、その国・地域に対する貿易赤字額を対米輸出額で割る手法を使ったように思われる。そして、ほとんどの国・地域に対してこの税率を半分にした。トランプ氏によると、半分にしたのは、「ディスカウント」だという。このため、イラン(10%)やベネズエラ(15%)など米国の敵対国への税率が、欧州(20%)や日本(24%)、台湾(32%)といった友好国より低くなるという不協和音を生みそうな結果になっている。
トランプ氏は以前から貿易赤字に固執しており、それが「ゼロサムゲーム」だと考えている。米国に貿易赤字をもたらしている国や地域は、何かずるいことをしているはずだ。だがそれなら、対米貿易赤字を計上している英国やオーストラリアはどうなのだろう。なぜ両国に10%の関税を課すのか。
貿易収支は国の比較優位など多くの要素を反映している。米国は、得意分野であるサービスやハイテク製品を販売し、国外でより安く作れるものを購入している。また、米国では貯蓄額より支出額が多い。これは資本収支が流入超になっていることを意味する。このことは国際収支において貿易赤字を埋めているのが何かを示している。そのため、貿易赤字が縮小すると、資本の流入は減る。
だがトランプ氏は、自身が導入する関税がきっかけとなって新たな投資が殺到すると主張している。それならなぜドル相場は下落し、1日の下げ幅が過去2年間で最大となったのだろうか。われわれの推測では、投資家が米国の経済政策決定を信頼しなくなっているからだ。
大統領は外国による為替操作や消費を抑制する税制、非関税障壁に不満を示している。だが、他国に米国の輸出品をもっと受け入れてほしいと思うのなら、交渉は可能だろう。環太平洋連携協定(TPP)から離脱しなければ、日本の非関税障壁は低減されていたはずだった。
トランプ氏の関税は皮肉にも、中国から東南アジアの国々に生産拠点を移した企業を罰することになる。第1次トランプ政権は企業に対し、そうした移転を促した。ナイキの靴のおよそ半数は今やベトナムで製造されている。中国での生産比率は18%だ。
トランプ氏はベトナムに46%の関税を課す。これは、ナイキが利益率の低い靴の生産拠点見直しを迫られることを意味する。トランプ氏はそうした靴を米国で生産すべきだと考えているようだ。トランプ氏の関税は、米国がAI(人工知能)に投資すべきときに、靴生産分野の雇用創出に投資を振り向けることを強いる可能性がある。こうした資本の不適切な配分は、中国に対する米国の競争力向上につながらないだろう。
われわれに見える唯一の希望の光は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠している場合、カナダとメキシコからの輸入品は関税対象から除外されることだ。それでも、両国で組み立てられた乗用車とトラックは、米国製でない部品に25%の関税を課されることになる。
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また、非常に小さな問題とは言えない、法の支配に関する問題もある。トランプ氏は、1977年に成立した国際緊急経済権限法(IEEPA)の緊急事態を宣言する権限を根拠に今回の関税を正当化した。この法律を使って関税を導入した大統領は、トランプ氏を除き誰もいない。トランプ氏が法律を拡大解釈する度合いは、ジョー・バイデン前大統領が学資ローンを帳消しにした際と同程度だ。
米議会は、関税に関する(通商法上の)大統領の権限を制限してきた。このため大統領権限で関税を課せるケースは、輸入品が国家安全保障上の脅威になっている場合(根拠法は通商拡大法232条)か、「巨額で深刻な」貿易赤字への対応が必要な場合(通商法122条)、輸入の急増が米国の産業に被害を及ぼしている場合(同201条)、相手国の貿易慣行が差別的な場合(同301条)に限られている。
この条項はどれも、すべての国からのすべての輸入品に対し、勝手な計算方式による関税を課す権限をトランプ大統領に与えていない。通商法122条は、貿易赤字への対処策として最大15%の関税を課す権限を大統領に与えているが、関税導入の150日後に議会による承認が必要となる。トランプ氏の権力乱用を止めるため、誰かが訴訟を起こすべきだ。
トランプ氏が課した一連の関税は世界の貿易システムにとって、リチャード・ニクソン大統領が1971年にブレトンウッズ体制を崩壊させて以来最大の、米国の政策に伴うショックとなった。ニクソン氏が決断を下した時と同様に、トランプ氏は自身の関税政策がもたらす打撃についてほとんど理解せずに行動している。トランプ氏が言う関税による「混乱」は、彼が想定しているほど小さくないかもしれない。
ドナルド・トランプ米大統領は常々、ドル安が望ましいと主張してきたが、投資家の間では同氏の政策はドル高を招くとの見方が大勢だった。結果的にトランプ氏は正しかったが、ドル安になった理由は恐らく最悪だった。
トランプ氏が「解放の日」に一連の懲罰的関税を発表したことを受け、3日に米国・欧州・アジアで株価が急落した。もっと予想外だったのは、ドルが大半の主要通貨に対して急落したことだ。主要16通貨のバスケットに対するドルの価値を示すウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)ドル指数は年初来で5.9%余り下落しており、米大統領選後にドル高に振れる前の昨年11月5日の水準を下回っている。
これはウォール街のアナリストたちのひどい無能ぶりを示している。彼らの大半は2日の関税発表のまさにその瞬間まで、保護主義的な政策はドル相場を押し上げるとの見方を投資家に伝えていた。これは、国外の物品の購入が減れば貿易赤字が縮小し、米国の外貨需要が機械的に減るという考えだ。また、米国の経済成長率はユーロ圏の成長率を上回っており、これが歴史的にドル高要因になってきた。
ところが米商品先物取引委員会(CFTC)のデリバティブ(金融派生商品)取引データによれば、投機筋のポジションはドルの大幅な売り越しに転じている。
この急激な変心の理由が、関税によってリセッション(景気後退)のリスクが高まったことであるはずはない。ドル相場は通常、好景気の時だけでなく、不況期にも上昇する。投資家がドルに資金を逃避しようすることで、いわゆる「ドル・スマイル」の状態が生じるからだ。
市場はなぜ、誤った理解をしたのだろう。ドルはインフレ調整後ベースでかなり割高な水準にあったため、いつ下落してもおかしくない状態だったのかもしれない。もしくは、一部の投資家が主張しているように、米国の同盟諸国に対する経済的攻撃によって、ドルの「世界の準備通貨」としての立場が損なわれているのかもしれない。
後者なら、トランプ政権にとっての勝利となる。現在大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めるスティーブン・ミラン氏は2024年、米国に資産を置いている外国の中央銀行と財務当局を罰することで、貿易赤字に対処する必要性を強調した。これは、逃避先としての需要によってドルが過大評価され、米経済に「法外な負担」がかかっているという考え方に合致している。
だが、それには経験に基づく裏付けがない。なぜなら、外国当局によるドル購入の増加は、ドル安と同時に起こる傾向にあるからだ。国際通貨基金(IMF)のデータによると、ドルが2018年以降に16%上昇する中、世界のドル準備高は横ばいで推移した。
より良い答えは、トランプ氏にとってうれしい言葉ではないが、米国経済の長期的な潜在成長力への信頼が失われつつあるというものだ。
為替トレーダーは、債券利回りの差を短期的に追い求めるかもしれない。だが、5年という期間で見ると、米国株と欧州株の株主資本利益率(ROE)の差は、2001年以降のドル・ユーロ相場の変動と70%の相関を示している。
こうした状況は、ドルの強さのかなり部分が、経済の生産性の伸びを反映した投資に支えられていることを示唆している。そしてその生産性の伸びの大半は、シリコンバレーのハイテク企業が巨額の利益を稼ぎ出し、米国をハイテク分野の製品とサービスの一大輸出国にしていることによるものだ。その中でも特にサービスの輸出が大きい。
市場は現在、もう一つの構造的変化を予想しているのかもしれない。米国の成長ストーリーが、保護主義と、人工知能(AI)分野で競争相手となる中国企業の台頭によって損なわれる一方、欧州では軍備増強の動きが経済再生への期待を高めている。
中国の台頭そのものが、教科書通りの自由貿易の欠点を浮き彫りにしているのは確かであり、米政府が主要産業の育成に努めるべきだということも間違いないだろう。コストカットを目的とした生産施設の国外移転は、労働者の不利益となり、サプライチェーン(供給網)の弱体化を招き、企業の技術革新への意欲をそぐことが多い。インテル、ボーイングといった巨大企業の苦境がその証明だと言えるかもしれない。
問題は、トランプ氏による関税導入の決定が突然で、一貫性に欠けることだ。2日に示された貿易相手国別の「相互関税」リストは、そうした問題の典型例と言える。それは、このリストが何らかの経済的合理性のある計算に基づいていないからだ。こうした政策は、目的に応じた段階的アプローチによる生産拠点の移転を企業に促すのではなく、企業の投資意欲をそぐ可能性が高いだろう。こうした政策は、アジア諸国に経済発展の奇跡をもたらしたものよりも、中南米での欠陥だらけの「輸入代替工業化」実験に似ている。
確かに、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターには、組み立て作業をメキシコから米国内に戻すメリットがあるかもしれない。だが、繊維製品やワイヤーハーネスといった安価なものを含む全ての部品で同じことをすれば、米国の自動車産業が極めて非効率的になるだけだ。それ以前に、他国からの報復関税の可能性や、バイデン前政権から引き継がれた中国の電気自動車(EV)に対する100%の関税がある。
米自動車メーカーは、国内消費者の目が特に肥えているトラックやスポーツタイプ多目的車(SUV)といったセグメントを得意とする。だが、米自動車メーカーは価格が2万5000ドル(約365万円)未満の車の生産には苦戦しており、それは関税が課される前からの話だ。テスラも高級車ブランドの一つだ。
もし米国市場が孤立すれば、トヨタ自動車や現代自動車のような低価格モデル市場を支配する外国企業は、米国工場での技術革新を他国の工場よりも減らすかもしれない。
これは1950年代~80年代にブラジルとアルゼンチンで起きたことだ。両国は国内自動車産業を育成しようとして、外国との競争から企業を保護した。そしてこれは、保護主義と外国市場での競争の両方によって世界トップクラスの自動車メーカーを作り上げた日本・韓国・中国のやり方とは対照的だ。
貿易赤字に焦点を合わせ過ぎると、貿易の対象となる米国製品の競争力と収益性がドル相場を大きく左右してきたという事実を見落としてしまう。今まさに、それが問題になろうとしている。
米国の新規株式公開(IPO)市場が近く復活するとのかすかな期待が打ち砕かれている。事情に詳しい複数の関係者によると、チケット販売サイト運営のスタブハブと、後払い決済(BNPL)サービスを手掛けるスウェーデンのフィンテック企業クラーナが、来週開始する予定だったIPOロードショー(投資家向け説明会)を延期した。
関係者によると、フィンテック企業の米チャイム・ファイナンシャルも規制当局への財務情報の提出を先送りしており、IPOを延期した。ヘルスケアサービスの米ヒンジ・ヘルスは、4月下旬に予定しているIPOを前に、市場の動向を注視している。
ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」を発行するサークル・インターネット・フィナンシャルは、IPOを巡る次のステップに近づいていた。だが関係者によると、現時点では状況をみてから対応を決めようとしている。
米株式相場は3日に急落し、4日も大量の売りが出ている。そのため上場を控えていた企業が続々とIPO計画を延期している。
米国への全輸出国に基本税率10%の関税を課す措置が米東部時間5日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)に発動された。トランプ大統領が2日、世界の貿易相手国に対する相互関税として発表していた。輸入関税を回避したい企業に米国への投資を促す戦略を突き進めるものだ。
対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象とした上乗せ税率については、9日午前0時1分(同日午後1時1分)に適用される。日本への関税率は24%となる。
各国は新たな関税にどのように対応するか検討している。今回の措置によって、米国の関税はこの100年余りで最も高い水準に引き上げられる。トランプ氏が不公平だと長年批判してきた第2次世界大戦後の世界貿易体制への大きな打撃となる。
トランプ氏の2日の発表を受け、S&P500種株価指数は11カ月ぶりの安値を記録。週末までの2営業日で5兆4000億ドル(約793兆円)の時価総額が消失した。2日間の下げは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が米国を直撃した2020年3月以来の大きさだった。
諸外国の首脳や企業幹部の対応を困難にしているのは、関税の規模縮小に向けた交渉について、トランプ氏自身がまちまちなシグナルを送っていることだ。トランプ氏は3日、他国が「何か驚くべきもの」を提示すれば、関税を引き下げる用意があると示唆した。
石破茂首相は5日の読売テレビの番組で、トランプ大統領との電話会談を「来週のうちにはやりたいと思っている」との考えを示し、トランプ氏が掲げる米国の製造業復活のために日本の貢献がどれほどプラスになるのか、「きちんと理屈で話していかないといけない」と語った。
報復関税の可能性に関する質問には「あらゆる選択肢はある」としながらも、「日本の利益を考えれば報復関税よりも、どうすればもっと米国の雇用が作れるか、どうすればそれが日本の利益にもなるのかを話していく」と述べた。
一方、中国国営中央テレビ(CCTV)に関連する微博(ウェイボ)アカウント「玉渊谭天」への5日の投稿によると、中国は国際ルールに反する一方的ないじめ行為に対して断固として最後まで戦う方針を示した。
株式や債券、商品などあらゆる市場からトランプ米大統領に明確なメッセージが同時に発せられている。大統領が仕掛けた貿易戦争は世界的なリセッション(景気後退)を引き起こす恐れがあり、しかもそれは急速に現実になりつつあるといったものだ。
トランプ氏による2日の関税発表から48時間もたたずに中国は報復措置を発表。トランプ氏が引き下がる様子を見せないことから、トレーダーは悪循環を織り込み始めている。
トランプ氏の決定で引き起こされた2日間の激しい売りでアジアや欧州、新興国の株式も大きく下落。投資家は国債など安全資産への逃避を急いだ。
影響は特に米国市場で顕著で、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が4日、「関税引き上げは想定よりもかなり大幅になることが明らかになりつつある」と発言し、インフレが加速する可能性もあると言及したことで懸念はさらに強まった。成長鈍化とインフレ加速の同時進行は、利下げによる米金融当局の対応を難しくする恐れがある。
S&P500種株価指数は4日に6%下落。この2日間の下げは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が米国を直撃した2020年3月以来の大きさで、約5兆ドル(約730兆円)の時価総額が消失した。ハイテク株比率の高いナスダック100指数も大きく下げ、2月中旬のピークからの下落率が20%を超えた。
影響は株式市場にとどまらない。原油価格は需要が減退するとの観測で急落。投資適格債のデフォルトリスクをヘッジするコストは、23年の米地銀危機以来の大幅上昇となった。その一方で国債には買いが集中した。
アカデミー・セキュリティーズのマクロ戦略責任者、ピーター・チア氏は「われわれは急速にリセッションに向かっている」と分析。「世界は『相互関税』をある程度想定していた。ローズガーデンで発表されたものは大惨事だ。主に米国にとってだが、世界経済に対してもだ」と述べた。
関税計画はトランプ氏が示唆していたほど過激なものにはならないとの観測で、米株式市場は週初、堅調なスタートを切っていた。
しかしそうした期待は2日に打ち砕かれた。トランプ氏は米国への全輸出国に基本税率10%を、中国や欧州連合(EU)など対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象に上乗せ税率をそれぞれ適用すると発表。国際貿易の拡大は数十年にわたり世界経済を支えてきたが、大きな後退することになる。
米国が世界中のほぼ全ての国と対立することを意味し、膨張し続ける米国債の供給を海外投資家に吸収してもらう必要がある同国にとって重大なリスクとなる。
ウォール街のストラテジストやエコノミストは、これまで驚くほど堅調だった米経済に衝撃を与える可能性があると指摘し、経済成長率などの予測を下方修正。4日発表の米雇用統計では雇用者数が予想を上回る伸びとなったが、こうした好材料も無視された。
かつてはトランプ氏の保護主義政策の恩恵を受けると期待されていた小型株さえも、景気後退懸念が高まる中で売られた。恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は急騰し、20年以来の高水準で終了した。
「VIXが示すように市場に恐怖があるときには全てが売られる」とフリーダム・キャピタル・マーケッツのジェイ・ウッズ氏は指摘。「空が落ちてきそうな感覚だ」とし、米政権の「気まぐれに振り回されているため今回は非常に異なるシナリオだ」と述べた。
トランプ氏は株価急落を重大視しない姿勢を示している。4日には自身のソーシャルメディアプラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、米国に巨額の投資を行う外国人投資家に対し「私の政策は決して変わらない」との考えを示し、今はかつてないほど富を築く絶好の機会だと述べた。
その後の投稿ではパウエルFRB議長に非難の矛先を向け、「金利を引き下げるには今が絶好のタイミングだ。議長はいつも『遅れて』いるが、今ならそのイメージを覆し、素早く行動できる」と主張した。
トランプ氏は4日、ベトナムの最高指導者共産党書記長との電話会談に言及し、同氏から「米国と合意できるのであれば、ベトナムは関税をゼロまで引き下げたいと言われた」と投稿。これを受け、ベトナムに主要生産拠点があるナイキとルルレモン・アスレティカの株価は急伸した。
●中東情勢
●エマージング
中国で屋外用家具メーカーを経営するジン・チャオフェンさんは、米国の関税引き上げに備えて昨年7月にベトナムに工場を設立したが、今ではこの工場を閉鎖するつもりになっている。トランプ米政権が中国ばかりかベトナムなど多くの国に高い関税を課したためだ。
「これまでの努力が全て水の泡になった」と語るジンさんは、輸出事業は需要不足に苦しむ国内市場と同じように「非常に利益の薄い」ビジネスになりそうだと不安を隠せない。
トランプ米大統領は、対米輸出が年4000億ドル強と世界最大の中国に34%の相互関税を上乗せすると発表。中国の輸出業者が貿易戦争の影響を和らげるために採ってきた2つの主要な戦略――生産の一部海外移転と米以外の市場の販売てこ入れ――の根幹が直撃を受けた。
米相互関税は世界的な需要に長期的な打撃を与える恐れある。中国は経済成長を輸出に依存しているだけに、他のどの国よりも貿易縮小のリスクが大きい。開源証券は米相互関税によって中国は対米輸出が30%、輸出全体が4.5%以上それぞれ減少し、経済成長が1.3%ポイント押し下げられる可能性があると試算した。
「これは中国に対する全方位的な封じ込めだ」と、瀧滔資産(ウォーター・ウィズダム・アセット・マネジメント)のユアン・ユウェイ氏は指摘。中国株と香港株についてはショートポジションにし、金は強気見通しだと話した。
中国メーカーの多くはトランプ氏が昨年11月の選挙で勝利する前から東南アジアなどに生産拠点を移し始めていた。しかし相互関税の税率はベトナムが46%、タイが36%で、その他の国でも最低10%に設定された。
トランプ氏が2月と3月に対中関税を20%引き上げた際に中国メーカーの営業チームはアジア、中南米などで新たな輸出市場の獲得競争を繰り広げた。しかしこうした経済圏も相互関税の影響にさらされ、購買力が低下して中国製品の需要が減退する可能性が高まっている。
アナリストは米相互関税によって、経済成長を図りデフレを抑える中国の取り組みが頓挫しかねないと見ている。香港大学ビジネススクールのチーウー・チェン教授(ファイナンス)は「これでは5%の成長目標の達成は不可能だ。中国は今のデフレ状況からすぐには抜け出せないだろう。今回の関税引き上げは間違いなく状況を悪化させる」と悲観的だ。
中国では外需の衝撃が国内にも波及し、生産者はコスト削減圧力にさらされている。
中国で鋳鉄製バスタブ製造工場を経営するジェリー・ジャオ氏は既に「従業員の一部を解雇し、管理コストを削減しながら、さまざまな支出を抑えている」
広州にある衣料品工場の責任者、リー・ジャオロン氏も国内受注に頼る必要があるとしつつ、需要の低迷を懸念。「以前は1人で1つのケーキを食べていたが、今は5人が欲しがる状態」だという。
<貿易障壁高まるリスク>
ジェフリーズの調査によると、2023年には対中貿易が対米貿易を上回った国が約145カ国となり、2008年からほぼ50%増加した。これは中国が数十年にわたり、米国が築いた世界貿易秩序のもとで競争力ある産業を育ててきた成果だ。しかし米国は今ではこの貿易秩序を「不公平で米国の安全保障を脅かすもの」と見なしている。
中国の貿易政策顧問は「われわれは引き続き輸出市場の多様化を進めつつ、輸出を支援し、企業が国内販売にもっと注力するよう促す必要がある」と述べた上で「全世界が不況に陥るリスクは現実のものだ」と警戒感を示した。
中国にとってもう1つのリスクは貿易相手国が、中国の輸出業者が価格競争を強めていると受け止め、自国産業保護のために貿易障壁を設ける可能性が高まること。S&Pグローバルのアジア担当チーフエコノミスト、ルイ・クイーズ氏によると「これは欧州だけでなく多くの新興市場国にも当てはまる」という。
さらに中国の対外貿易てこ入れ策にとって国内要因も課題になる。多くのアナリストは、中国の輸出力は政府政策によって家計が不利な立場に置かれてきた結果でもあり、それが製造業の生産能力過剰、低調な国内消費、無駄なインフラ建設などの不均衡を招いたと指摘している。
ファゾム・コンサルティングの上級顧問のシャミク・ダー氏は「中国の重商主義は家計を金融面で抑圧し、貯蓄に対して低いリターンしか与えず、産業を優遇して安価な資金を供給する仕組みを生み出した。こうした政策は急速な経済成長を促した一方、誤った資本配分、不動産バブル、金融セクターの脆弱性も生んでしまった」と分析した。
<追加刺激策は不可避か>
アナリストは中国政府が追加の景気刺激策を打ち出すと予測し、その際には政策金利の引き下げや流動性の注入、輸出業者向けの税還付、不動産市場の支援のほか、3月の全国人民代表大会(全人代)で示された水準を超える財政赤字と国債発行が導入される可能性もあるとみている。
トニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所の中国専門家、ルビー・オスマン氏は、中国が先月発表した景気刺激策が控えめだったのは計算されたもので「中国政府は意図的に余力を温存した」と述べた。
中国の別の政策顧問も第2・四半期には銀行の預金準備率の引き下げや貸出金利の低減が優先され、第3・四半期により積極的な財政刺激策が打ち出される可能性があると述べた。その上で「この『プランB』なしでは中国が今年おおよそ5%の成長目標を達成するのは難しいだろう。さらに言えば、もしトランプ氏が対中関税をさらに引き上げた場合に備えて、財政省は『プランC』も準備すべきだ」と付け加えた。
しかし中国が成長とデフレのリスクを緩和する鍵は消費喚起策にあるとアナリストは見ている。中国は10年余りにわたり投資主導から消費主導経済モデルへの転換を公言。先の全人代でもこの方針が強調されたが、具体的な構造改革の道筋は示されなかった。
世界的な貿易の混乱で内需型経済への転換は一段と差し迫った課題になっているが、その困難さを考えると大規模な構造改革への期待は薄いというのがアナリストの見立てだ。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのアジア担当主席エコノミストでグローバル貿易担当責任者のニック・マロ氏は「中国政府は外需の衝撃に備えて国内需要を促す取り組みを倍加させるだろう。しかしできることには限界がある」と懐疑的だ。
中国では毎年夏、数百万人が4年制大学を卒業するが、最近では大学を出ても良い仕事に就けない若者が多い。配達ドライバーやライブストリーマー、あるいは実家に戻って両親に小遣いをもらいながら家事を手伝う新卒者も珍しくない。
一方、製造業やIT(情報技術)、医療などの分野では有資格者の不足により、数千万ものポストが今年、埋まらない見通しだ。
「単純労働の製造業の仕事は自動化できるが、コードを書いたり、工作機械を操作したりできる熟練したブルーカラーの働き手は深刻な人手不足だ」とユーラシア・グループの中国担当ディレクター、ダン・ワン氏は言う。
このミスマッチにより、中国指導部は若者たちに大学進学を目指す代わりに職業訓練校に通うよう強く勧めている。
職業訓練校では3年で修了証を取得でき、機械技術者やオペレーター、ロボット工学エンジニア、看護師など、さまざまな職業に必要な技能を習得できる。
中国指導部は工場を稼働させ続けるため熟練労働者を確保する必要に迫られている。一方で、若者の6人に1人が失業していることから、社会的な不満の高まりにも直面している。
就職情報サイトの智聯招聘によると、ほとんどの企業が新卒採用を終了する4月までに内定を得た2024年度の大学新卒者はわずか45%だった。
職業訓練校卒業生の場合、その数字は57%に上昇する。多くの職業訓練校は企業と提携し、インターンシップの受け入れや就職あっせんを行っている。
パンテオン・マクロエコノミクスのアナリスト、ケルビン・ラム氏は「労働市場と教育の間に構造的なミスマッチがある」と指摘し、「新卒者は工場に戻りたくない」と話す。
中国では義務教育の一般的な最終学年である初級中学の3年生になると、進学を目指す多くの学生らの視野には大学受験が入る。就職組は実習に重点を置き、多くの場合、職業訓練校に進むことになる。
中国当局は3年前、技能を重視する教育の評判を高めようと両方のコースの学生が高等教育や就職において平等な機会を得られるべきだと呼びかけた。しかし実際には、多くの企業が依然として、より地位の高い役職には学士号を求めている。
中国の大学1300校には約2000万人の学生が在籍しており、1500校以上の職業訓練校では1700万人が学んでいる。
政府は職業訓練校を増やそうとしており、この分野で35年までに「世界トップレベル」に立ちたい考えだ。2つの教育コースの学費にはほとんど差がなく、公立校では年6000元(約12万円)程度で、私立校では通常、その倍以上だ。
職業訓練校は、成績の良くない生徒が選ぶ選択肢という汚名を長年着せられてきた。そのため、子どもを職業訓練校に通わせるよう親たちを説得するのは難しい。
中国では数千年もの間、学問の目的は「科挙」に合格して公務員になることだった。現在、大学進学を目指す十代の若者たちは、「高考」と呼ばれる試験に備え高校時代のほとんどを過ごす。高考は数日続く過酷な大学入試だ。
高得点者は一流大学に進学するが、得点の低い学生はあまり名が知られていない大学、あるいは職業訓練校に入ることになる。
また収入の面でも差が出てくる。教育コンサルティング会社マイコスによれば、大学卒業後3年目の平均月収は23年には1万168元で、職業訓練校卒業生より3割程度多い。
中国共産党の習近平総書記(国家主席)は1990年代に福建省福州市の党委員会書記として職業訓練校を監督していたこともあり、より多くの志願者を集めるために技能教育を推進している。 習氏は職人を国家の礎と呼び、職業訓練校の権威を高めるよう努めてきた。
しかし、考え方の変化は遅々として進んでいない。中国政府は2021年、営利目的の学士号取得機関の一部を職業訓練校と統合することを提案したが、この動きに対し、大学生らは各地で抗議活動を行った。南京のある大学では、学生たちが統合により学位の価値が下がると恐れ、学部長を30時間拘束。警察が出動して、救出に動いた。
国内で一流の4年制大学に匹敵するほどの評価を得ることに成功している職業訓練校もある。香港に近い深圳職業技術大学は、「小さな清華大学」という愛称で呼ばれることが多い。北京にある清華大は、習氏をはじめとする多くの中国指導者が卒業した名門校だ。
華為技術(ファーウェイ)など地元企業との緊密な関係を築いていることや学生の起業を支援しているという評判が、一流大学を選ぶこともできた学生を呼び込み、深圳職業技術大の成功の一因となっている。
同校の学生ゾエ・チェンさんは「ここの学生は起業し、教師は独自の研究プロジェクトに取り組んでいる。最終的に自分が望むような人生を送るためには、高度な学位は必要ないことに気付いた」と述べ、大学で修士号を取得するという計画を考え直していると明かした。
●プロファイ、インフラ、自然災害
米マイクロソフトが、世界各地でデータセンタープロジェクトから撤退しつつある。人工知能(AI)を動かす高性能サーバー群の計画について、同社がより厳しい見方をし始めたことを反映した動きだ。
事情に詳しい複数の関係者によると、マイクロソフトはこのところ、インドネシア、英国、オーストラリアのほか、米イリノイ、ノースダコタ、ウィスコンシン各州で、データセンタープロジェクトの検討を停止したり、開発を延期したりしている。
対話型AIのChatGPT(チャットGPT)を開発した米オープンAIと関係が深いことから、マイクロソフトはAIサービス商業化を主導する存在とされてきた。投資家は、クラウドやAIサービスへの消費者の長期的需要を見極めようと、同社の支出計画を注視している。
このところの計画後退が、どれほどの需要縮小を反映しているのか、または建設資材や電力の不足といった一時的な課題によるものなのかを判別するのは難しい。投資家の中には、現状のAIサービスの購入予測では、マイクロソフトのサーバー施設への巨額支出を正当化できないことを示していると解釈する向きもある。
こうした懸念がここ数週間、データセンター関連支出の大半を占める半導体を手がける米エヌビディアのような、大型ハイテク株の重しになっている。マイクロソフトの株価も、今年に入り2日までに約9%下落している。
マイクロソフト広報は「AIの需要が引き続き拡大し、当社のデータセンターの存在が拡大し続ける中で実施した変更は、当社の戦略の柔軟性を示したものだ」と強調する。
交渉に詳しい関係者によると、マイクロソフトは最近、ロンドンとケンブリッジ間の用地を借りる交渉から撤退した。エヌビディアの先端半導体を設置できる環境として売り出されていた土地だ。この関係者は、非公開情報であることを理由に匿名を条件に語った。
別の関係者によると、マイクロソフトは米シカゴ近郊のデータセンター用地の交渉も中止した。
AI向けクラウドサービスを手がける米コアウィーブのマイケル・イントレーター最高経営責任者(CEO)はインタビューで、マイクロソフトがクラウドコンピューティングのリース拡大を取りやめたと明かした。影響を受けたプロジェクトの数や所在地については言及しなかったが、コアウィーブは別の新たな買い手を見つけたという。
ジャカルタでは、データセンター建設に遅れが見られる。事情に詳しい関係者によると、ジャカルタから1時間ほどの距離にある、マイクロソフト所有のデータセンター・キャンパスの一部で作業が中断されている。
別の関係者によると、同社はバイデン前大統領が在任中に訪問したウィスコンシン州マウントプレザントの複合施設の一部でも、計画されていたセンター拡張工事を保留している。ブルームバーグが入手した資料によると、同州のプロジェクト開発の最初の6カ月で、マイクロソフトは建設に2億6200万ドル(約384億円)を費やした。コンクリートだけで4000万ドル近くが使われている。
マイクロソフトは、6月末までの本会計年度中に約800億ドルを投じてデータセンターを構築することに引き続き取り組んでいるとしている。同社は以前、今年7月から始まる会計年度には新規インフラへの投資を減速し、新規建設から既存の施設へのサーバーやその他の機器の設置に重点を移すとしていた。
中国のAIスタートアップ企業DeepSeek(ディープシーク)が1月、米国の大手企業よりも少ない資金で競争力のあるAIサービスを開発したと発表して以来、アナリストらはデータセンターへの投資をより厳しく精査するようになった。長期的に見れば、新しいエンジニアリング技術により、AIの処理は以前考えられていたよりも少ない演算量で済むようになる可能性がある。
マイクロソフトが米国と欧州で計画していた、計約2ギガワット規模の新データセンタープロジェクトを断念したというTDカウエンの先週のリポートも、大手ハイテク企業の投資計画を巡る懐疑論に拍車をかけた。同社のアナリストは、この動きは「現在の需要予測に比べてデータセンターが供給過剰になっている」ことを示している可能性が高いと指摘した。
業界情報会社データセンター・ホークのディレクターであるエド・ソシア氏は、クラウド企業はコストの削減と、より早くに稼働できるプロジェクトの優先化を目指して、サーバー施設の計画を微調整していると述べた。
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
### ■為替市場
- **ドルが主要通貨に対して反発**:パウエルFRB議長の講演が材料視される。
- **パウエル議長発言**:トランプ大統領の新関税措置は「予想以上に大きく」、インフレや成長への影響も大きい可能性に言及。
- **為替の動き**:
- ドル指数:0.98%上昇(103)
- ドル円:0.58%高(146.92円)
- ユーロドル:0.95%安(1.10947ドル)
- 豪ドル・NZドルともに急落(豪ドルは5年ぶり安値)
### ■債券市場
- **米国債利回りが大幅に低下**:中国の報復関税で「安全資産」需要が高まる。
- **雇用統計の影響で低下幅はやや縮小**。
- **10年国債利回り**:3.972%(8.3bp低下)
- **2年債利回り**:3.605%(8.3bp低下、2022年9月以来の水準)
- **BEI(期待インフレ率)**:5年物2.383%、10年物2.168%
- **市場予想**:FRBは年内に91bpの利下げを織り込み
### ■株式市場
- **米株急落(2日連続)**:貿易戦争激化懸念でパニック売り
- **ダウ**:2231ドル(5.5%)安、調整局面入り
- **ナスダック**:5.8%安、ベアマーケット入り(最高値から22.7%下落)
- **VIX(恐怖指数)**:8カ月ぶり高水準に急上昇
- **取引量**:過去最多(約268億株)
- **中国関連株やエネルギー株が特に大きく下落**
### ■商品市場
- **金先物**:2.76%安(1オンス=3035.40ドル)、換金売りが加速
- **原油先物**:7.41%安(1バレル=61.99ドル)、4年ぶり安値、需給緩和懸念
### ■ ロンドン株式市場
- **続落**:中国が米関税への対抗措置として34%の追加関税を発表し、景気後退懸念が強まった。
- **FTSE100**は4.95%下落(2020年3月以来の大幅下落)、週間では6.97%安。
- 銀行、エネルギー、鉱業、防衛株などが軒並み大幅下落。
- **BP**は経営改革を求める動きで売られた。
### ■ 欧州株式市場
- **全体的に続落**。**STOXX欧州600種指数**は12%下落し調整局面入り、週間では8.44%安。
- **DAX**は4.95%、**スペインIBEX**は5.83%、**フランスCAC40**は4.26%、**イタリアFTSE MIB**は6.53%下落。
- 銀行株や中国依存度の高い企業(LVMH、ケリングなど)が特に下げた。
- **ユーロ圏の景気後退懸念**と中国のレアアース輸出規制が重しに。
### ■ ユーロ圏債券市場
- **債券利回りは大幅に低下**:安全資産への逃避が進行。
- **ドイツ10年債利回り**は2.555%(-8.6bp)、**2年債**は1.822%(-12bp)と低水準。
- **フランス、イタリアの債券利回りも低下**。
- 米関税政策が**欧州の成長見通しを圧迫**。
- ECBは今月の理事会で**利下げが予想される**(25bp、確率70%超)。
備忘録(2025/4/3)
●海外企業決算
●海外企業
ナイキ<NKE>57.78(-7.18-11.05%)
デッカーズ<DECK>102.39(-15.59-13.21%)
ルルレモン<LULU>254.13(-28.63-10.12%)
ナイキ<NKE>やデッカーズ<DECK>、ルルレモン<LULU>など靴や衣料品のメーカーの下げが目立っている。トランプ関税の発表が影響している。トランプ大統領はベトナムに46%、カンボジアに49%、中国に34%、インドネシアに32%の相互関税を課すことを公表したが、上記の企業のサプライチェーンに打撃を与える可能性が指摘されている。
ナイキは近年、ベトナムでの生産を拡大しており、同社の靴の約半分を生産。ルルレモンはベトナム製が40%、カンボジア製が17%となっている。
本日の株式市場はトランプ関税の世界経済に与える影響を警戒し、波乱の状況となっているが、その影響でマイクロソフト<MSFT>も下落。また、取引開始前に同社が世界各地のデータセンター計画を縮小すると伝わった。
前日のトランプ関税の発動を受けて、きょうの米株式市場は混乱している。そのような中、大手銀株の下げがきつい。2023年3月の米地銀危機以来の最悪の1日となっている状況。KBW銀行株指数は最大9.1%下落し、地銀危機以来の最大の下落率を記録する勢いとなっている状況。
アナリストからは「金融機関は関税に直接的に晒されているわけではないが、広範囲に渡る関税引き上げが経済や活動レベルに間接的に及ぼす影響に伴う不確実性とそれに続く市場の変動が、短期的には銀行株を支配する可能性が高い」とのコメントも出ている。
銀行株は代表的な景気敏感株の位置づけがあるが、アナリストは「銀行は短期的に手数料収入の減少と消費マインドの低迷の影響を受ける可能性がある」と指摘している。
同アナリストは、手数料収入の見通し低下と信用損失に伴う引当金の増加を理由に、大手11行の第1四半期および通期の1株利益の見通しを下方修正している。
●日本企業
セブン&アイ・ホールディングスが5月に開催する予定の定時株主総会に関して、3月末の締切までに株主提案を出した株主がいなかったことが分かった。同社の広報担当者がブルームバーグの取材に対し明らかにした。
5月27日の株主総会の議案は開示されていないが、例年通りであれば会社側が提案する取締役選任案などが諮られる見通しだ。セブンは井阪隆一氏に代わり、社外取締役のスティーブン・デイカス氏が社長に就任することを表明している。3月には複数の取締役が退任していた。
物言う株主の1社である米資産運用会社アーチザン・パートナーズ・アセット・マネジメントも株主提案を出さなかった。同社はかねてセブンにカナダのコンビニエンスストア大手アリマンタシォン・クシュタールとの買収交渉にきちんと臨むよう求めるなど圧力をかけてきた。
3月にはデイカス氏の取締役選任について、セブンの対応によっては反対票を投じる可能性が高いことを表明。その後相次いで取締役の退任が発表された際も経営陣の責任追求を株主に呼び掛けただけに、動向が注目されていた。
セブンは4月中に開く取締役会で議案の内容を固め、招集通知を出す方向だ。株主提案がない場合は会社提案について株主は検討することになるが、株主総会当日に修正動議が出される可能性は残る。
2年前の株主総会では取締役選任を巡りアクティビスト(物言う株主)の米バリューアクト・キャピタル・マネジメントが株主提案で独自の候補者を立てたが否決された。
●先進国政治動向
トランプ米大統領は3日、各国からの輸入品に対して「相互関税」を課すと発表し、米国にとって「解放の日」になると訴えた。しかし、経済改革の公約が実現しなければ、共和党への逆風となり、有権者に経済的な苦痛を与える可能性がある。
専門家によれば、トランプ氏が関税によって達成できると主張する製造業の再活性化やサプライチェーンの再構築、生産拠点の国内回帰には数年を要する見込みだ。
その一方で、米国の同盟国は米製品に報復関税を課すとみられ、消費者は物価上昇に直面し、経済は下降局面に入る可能性がある。トランプ氏はこれを「一時的な混乱」に過ぎないと主張するが、来年の中間選挙を控え、有権者がこうした痛みを受け入れるかどうかは不透明だ。
共和党は関税政策により中間選挙で敗北し、連邦議会上下院の一方もしくは両方を失う可能性がある。
トランプ氏の1期目で広報部長を務めたマイク・ダブケ氏は、トランプ氏は困難な状況に対する耐性が高いとしながらも、中間選挙の結果次第では本当の困難に直面する可能性があると語る。「懸念されるのは、トランプ氏と側近らが期待する成果がいつ現れるかだ。中間選挙まで18カ月しかない」と指摘した。
ロイター/イプソスの世論調査によると、米国民の70%が関税引き上げにより食料品や消費財の価格が上昇すると予想している。この割合は共和党支持者でも62%に達する。
関税引き上げは利益よりも害をの方が大きいと答えた人は約53%、利益の方が大きいとの回答は31%だった。また、輸入品に関税を課すことで米国の労働者が利益を得るとの見方に同意したのは31%にとどまり、48%が同意しないと答えた。
フーバー研究所の研究員で、共和党の重鎮であるミット・ロムニー、マルコ・ルビオ両氏の顧問を務めたランヒー・チェン氏は関税について、「主要リスクは経済関連だ。まず物価に対する差し迫ったリスクがあり、それがインフレ対策を掲げて当選した大統領にとって何を意味するかだ」と指摘。もうひとつの問題がリセッション(景気後退)に陥る恐れだと述べた。
<選挙を巡るリスク>
共和党内ではトランプ氏に対する不満の兆候が見え始めている。
2日に行われた南部フロリダ州での連邦議会下院の2つの補欠選挙は、いずれも共和党候補が勝利したが、対立候補との得票率の差はトランプ氏が大統領選で勝利した時よりもはるかに小さかった。
また、大統領選の激戦州である中西部ウィスコンシン州の最高裁判事を選ぶ選挙は、トランプ氏や実業家イーロン・マスク氏が支持した保守派候補がリベラル派候補に破れた
連邦議会上院はカナダに対する追加関税を撤廃する法案を可決した。共和党から4人が賛成に回った。
相互関税を発表を受け米株式先物は急落した。株価が幅広く下落すれば、確定拠出型年金401kで運用されている資産に打撃を与えることになる。
元共和党議員側近は「米企業と消費者のお金を解放してしまうのが『解放記念日』のようだ」と皮肉った。「航空母艦は急には止まれないし、世界経済を1日で作り変えることもできない」と話した。
トランプ氏はバイデン大統領から堅調な経済を引き継いだ。2024年の成長率は約3%、失業率は約4%、インフレ率は3%未満だった。
しかし、経済はほころびの兆しを見せている。トランプ氏が関税政策について言及し始めてから2カ月で、家計や企業の経済見通しに対する信頼感は下降傾向にある。昨年11月の大統領選後に見られた楽観的な状況とは様変わりしており、政治リスクが高まるとの見方がでている。
一方で、トランプ氏はこれまでも有権者の間で大きな不安を引き起こしてきたが深刻な事態に陥ることはなかった、と指摘するのはグリネル大学(アイオワ州)の政治学教授バーバラ・トリッシュ氏。「今度こそ最後の一撃となり(どんな批判も跳ね返す)テフロンが傷つくと言われたことが何度もあった。しかし現実はそうならなかった」と述べた。
中小企業経営者の関税に対する評価は分かれる。
マーリン・スチール(ボルチモア)のオーナー、ドリュー・グリーンブラット氏は、顧客が米国製品にシフトしており、トランプ氏の関税はすでに受注増に貢献していると語った。
一方、品ぞろえの3分の2を欧州産ワインが占めるワシントンのワインショップ「DCanter」のオーナー、ミシェル・リム・ワーナー氏は「本来25ドルのワインに75ドルも払う人がいるだろうか」と先行きに懸念を示した。
経済産業省は、米国が自動車関税や相互関税を打ち出したことに対して、省内に「米国関税対策本部」を立ち上げ、3日午後に会合を開いた。会合の冒頭、武藤容治経産相は「今後国内産業にも広範囲に及ぶ影響が出る可能性がある」とし「関係部局が一丸となって、今回の関税措置からわが国の産業・雇用を守り抜く必要がある」と述べた。
短期的な企業への対策としては、1)約1000カ所の特別相談窓口の設置、2)資金繰り・資金調達支援としてセーフティーネット貸付の要件緩和や官民金融機関への相談呼び掛け、3)中堅・中小自動車部品サプライヤーの事業強化の3点を打ち出した。中長期的な対応策は、今後どのような影響が出てくるかを精査しながら考えることになる。
武藤経産相は「自動車産業は日本の産業の大黒柱でもあり、部品メーカーも含め広範なサプライチェーンを有していることから、影響を特に注視する必要がある」と指摘。副大臣や政務官に対して、自動車産業が集積している地域を訪問することを求めた。
また、サプライチェーンにおいて適切な価格転嫁が行われるよう、業界団体に要請を行う。武藤経産相は「私からも来週、直接自動車業界のトップに対し要請を行う」と述べた。
トランプ米大統領は2日、日本を含む全ての貿易相手国・地域を対象とする相互関税措置を発表した。世界の貿易システムを揺るがす相互関税のポイントを以下にまとめた。
<主要貿易相手国に高関税、ロシアは除外>
相互関税は、貿易相手国・地域の為替操作など米国製品に不利な貿易障壁をなくすことが目的とされる。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国・地域の関税や非関税障壁を考慮し、税率を上乗せした。
税率は欧州連合(EU)が20%、日本は24%。
2024年の対米貿易黒字が2950億ドルと最大だった中国の税率は34%。中国に対しては、米国のフェンタニル問題を巡り2月に20%の関税を発動しており、これと合わせると54%に達する。トランプ大統領は昨年の大統領選で、中国製品に60%の関税を課すと表明していた。
このほかアジアではベトナムが46%、タイが36%、台湾32%、インド26%、韓国25%となっている。
昨年、対米貿易収支が赤字だった英国、ブラジル、シンガポールも基本税率の10%が課される。米政権当局者は、政策がより公正なら多くの国で対米貿易赤字が拡大すると指摘した。
ただ、24年の対米貿易収支が25億ドルの黒字だったロシアは相互関税のリストに含まれていない。
<メキシコとカナダに猶予>
中国と同様、フェンタニル問題で25%の追加関税を発動しているカナダ、メキシコも当面は相互関税の対象から外れる。25%の追加関税措置が撤廃された場合は、12%の相互関税を適用する。
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の基準を満たす輸入品の関税免除は無期限で継続される。米自動車メーカーにとっては歓迎すべき「救済措置」となる。
<金属や自動車は対象外>
自動車・自動車部品、鉄鋼、アルミニウムといった1962年通商法第232条に基づく分野別関税を課している品目も相互関税の対象外とした。
銅、木材、半導体、医薬品など通商法232条に基づく調査を実施中、または実施する可能性のある品目も対象外になる。近日中に発表される付帯文書で、重要鉱物、エネルギー、エネルギー製品なども対象外とする見通しだ。
<発動日、法的根拠>
10%の基本税率は米東部時間5日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)に発動し、上乗せ税率は9日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)に発動する。
法的根拠は、2月のフェンタニル問題を巡る中国、メキシコ、カナダへの追加関税と同じく国際緊急経済権限法(IEEPA)。トランプ大統領は、24年に40%超拡大し1兆2000億ドルに達した「大規模かつ持続的」な貿易赤字を「国家の非常事態」と認定。大統領令で「貿易赤字は、貿易関係の非対称性が国内生産能力、特に米国の製造業と防衛産業基盤の萎縮につながっていることを反映する」と指摘した。
<中国からの小包免税措置を廃止>
トランプ大統領は2日、中国からの小口輸入品に対する関税免除措置(デミニミス・ルール)を廃止する大統領令にも署名した。この免税措置は、「Temu(テム)」や「SHEIN(シーイン)」といった中国eコマースが米国で人気化するのに一役買ったとされている。トランプ政権はフェンタニル問題に関連してこの免税措置を廃止しようとしたが、関税徴収手続きの負担などを考慮し見送っていた。
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は3日、トランプ米大統領が発表した各国に対する関税は世界経済に大きな打撃になると懸念を示した。また、EUは交渉が不調に終われば対抗措置を取る用意があると述べた。
「われわれは鉄鋼関税に対する第1弾の対抗措置を既にまとめている」とした上で、「現在、交渉が失敗した場合にわれわれの利益と企業を守るためのさらなる対抗措置を準備している」と述べた。今後の措置の詳細は明らかにしなかった。
EUは3月12日に発効した米国の鉄鋼・アルミニウム関税への対抗措置として、最大260億ユーロ(284億ドル)相当の米国製品に関税を課す計画だ。
トランプ氏は2日、貿易相手国に対する相互関税を発表。全ての輸入品に最低ラインとして一律10%の関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮して国・地域別に税率を上乗せする。EUの税率は20%となる。
フォンデアライエン氏は米国の措置を非常に遺憾とした上で、最も高い関税が課される脆弱な国々を含め、世界経済に「甚大な影響」が及ぶと警告した。
「不確実性が高まり、さらなる保護主義の台頭につながる」とし、消費者にとって食料品や医薬品、輸送費が上昇するほか、企業に混乱をもたらすと指摘した。
他国が世界貿易ルールを不当に利用しているというトランプ氏の主張に理解を示し、改革の取り組みを支持する用意があるとも表明。「交渉を通じて懸念に対処するのはまだ遅くない」と述べた。
ドナルド・トランプ米大統領が2 日に発表した関税が世界経済に与える影響は非常に大きい。
その影響は、アメリカの関税収入が100年ぶりの水準に跳ね上がる様子を示すチャートの線で測定できる。これは、1930年代の強い保護主義の時期を超えるものだ。
ほかにも、特にアジアの株式市場の急落でも測定できる。
しかし真の尺度となるのは、長年の世界的な貿易手段の大幅な変化だろう。
その中心にあるのは、すべてのアメリカへの輸入品に対する10%の一律の関税で、これは4日夜に導入される。さらに、「最悪の違反者」の国々には、対米貿易で黒字を出していることに対する相互関税が課される。
アジア諸国に対する関税は非常に注目すべきもので、数千の企業や工場、さらには国全体のビジネスモデルを破壊する可能性がある。
世界最大の企業によって構築された一部のサプライチェーンは瞬時に崩壊するだろう。その不可避の影響は、こうした企業を確実に中国に向かわせることになる。
これは単なる大規模な交渉なのか? アメリカ政府は関税収入を、計画された減税のために利用すると主張しているようだ。迅速な調整の余地は限られているように見える。あるホワイトハウスの高官は率直に、「これは交渉ではなく、国家の緊急事態だ」と述べた。
この政策の目的は、アメリカの貿易赤字を「ゼロに戻す」ことだ。これは世界経済の完全な再構築を意味する。
しかし、工場の移転には数年かかるだろう。特に東アジアに対する30~40%の規模の関税は、衣料品やおもちゃ、電子機器の価格をはるかに素早く引き上げることになる。
今、問われているのは、世界がどのように対応するかだ。
欧米の一部の消費者には、衣料品や電子機器の安価な別ルートの貿易から利益を得る機会がある。内向きになった世界最大の経済圏の外では、他の大経済圏が、より緊密な貿易の統合を選ぶかもしれない。
米電気自動車(EV)テスラの販売不振が示すように、政府の対応が関係するのは、この話の一部だけでしかない。今や消費者も反撃できる時代になった。これは新しい形のソーシャルメディア貿易戦争かもしれない。
ヨーロッパは、世界中で愛されているアメリカ生まれの消費者ブランドを、買い続けないことを決定するかもしれない。
アメリカのテック大手によるソーシャルメディアサービスの独占が揺らぐ可能性もある。
そして米当局は、避けられないインフレ高騰に対抗するため、金利を引き上げる必要があるかもしれない。
混乱した世界貿易戦争は避けられないようだ。
ドナルド・トランプ米大統領の政治姿勢は、数十年にわたって人々に注目されながら活動する中で、大きく変化してきた。しかし、1980年代から一貫していることがある。関税は米経済を活性化させるうえでの有効手段だという信念だ。
そして今、大統領の座を賭けて、それが正しいと示そうとしている。
トランプ氏は2日、ホワイトハウスのローズガーデンで、友人や保守派の政治家、閣僚らに囲まれながら、新たな関税措置を発表した。同盟国、競合国、敵対国を問わず、幅広い国々を対象にするものだった。
祝福と自賛が入り混じった演説の中で、トランプ氏は所々で聴衆から拍手を受けながら、長年にわたって関税を支持してきたことに言及。同時に、北米自由貿易協定(NAFTA)のような自由貿易の取り決めや、世界貿易機関(WTO)には批判的だったと振り返った。
また、今後数日間は「グローバリスト」や「特別な利害関係者」らの反発が起こるだろうが、それでも自分の直感を信じてほしいと、国民に要望。
「忘れてならないのは、私たちと対立する人々が過去30年間に出した貿易に関する予測はすべて、完全に間違っていたということだ」と述べた。
トランプ氏は大統領2期目の今、同じような考えをもつ側近らに囲まれ、議会両院を支配する共和党内で圧倒的な力を持っている。その状況を背景に、新たにアメリカ中心の通商政策ビジョンを現実のものにする立場にある。そうした政策が100年以上前にアメリカを豊かな国にしたし、これからもそうすると、トランプ氏は話した。
そして、「何年もの間、勤勉な米国民たちは、他の国々が富み、強くなっていくのを傍観させられてきた」、「今日の措置によって、私たちはついに、アメリカを再び偉大な国にすることができる。かつてないほど偉大にだ」と述べた。
だが、トランプ氏にとってリスクはかなり大きい。
あらゆるエコノミストが、この大規模な関税はやがてアメリカの消費者に転嫁され、物価を上昇させ、世界的な不況を招くと警告している。計画では、中国に53%、欧州連合(EU)と韓国に20%、そしてすべての国に一律10%の関税を、それぞれ課すとしている。
国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストのケン・ロゴフ氏は、世界最大の経済大国のアメリカが景気後退に陥る可能性が、この日の発表で50%に高まったと、BBCワールドサービスの取材で予想。「彼はたった今、世界の貿易システムに核爆弾を落とした」とし、アメリカの輸入品にこれほどの関税をかけることの影響は「気が遠くなるほどだ」と述べた。
トランプ氏の今回の措置には、アメリカが他国との貿易戦争をエスカレートさせ、関係強化を図ってきた同盟国を遠ざけてしまうリスクもある。例えば、アメリカは日本と韓国を、中国の膨張主義的野心に対する防波堤とみなしている。ところがそれら3カ国は最近、アメリカの貿易政策への対応で協力していくと発表した。
もしトランプ氏が成功すれば、第2次世界大戦の焼け跡からアメリカが中心となって築き上げた世界経済秩序を、根本から再構築することになる。トランプ氏は、そうすることでアメリカの製造業を再建し、新たな収入源を生み出し、アメリカをより自立させるとともに、新型コロナウイルスの世界的流行の時期に大打撃をもたらしたグローバルサプライチェーンのショックから守ると約束している。
困難な目標であり、多くの人が非現実的だと考えている。しかし、戦争を終わらせ、地理的な名称を変え、新たな領土を獲得し、連邦政府のプログラムと労働力を解体することなどによって、自分の歴史的評価を確立しようと固執しているように思われる大統領にとって、これは最大かつ最も意味のある目標だ。
それは、トランプ氏が言うところの、アメリカの「解放の日」なのだ。
はっきりしているのは、2日の発表をトランプ氏が実行に移すなら、歴史的な変化を生むことはほぼ確実だということだ。問題は、それが業績として歴史に刻まれるのか、それとも悪評として歴史に残るのかだ。
トランプ氏は演説で勝ち誇っていた。彼の措置が米経済と自らの政治的地位にもたらす可能性のある高いコストを隠すものだった。
だがトランプ氏は、その価値はあると言った。演説の最後の最後で次のように述べて、大統領としての疑念の小さな影を、虚勢を通してのぞかせてはいたが。
「この日が、何年か後に人々が振り返って、『彼は正しかった』と言うような日になることを願っている」
ドナルド・トランプ米大統領の関税政策の翌日の木曜日、世界の市場、企業、そして長年の地政学的関係は混乱に陥った 。そして、ヨーロッパもこの混乱から逃れられなかった。
欧州連合は 20%の関税を課せられたが、英国は 米国とのよりバランスの取れた貿易関係の恩恵を受け、より低い10%の関税を課せられた 。政策立案者がどこまで対応に踏み切るか、そして紛争がどこまで深刻化するかに注目が集まる。
経済的な観点から見ると、予想される成長の減速と貿易関係の崩壊によって経済的恩恵を受ける国はほとんどいない、あるいは全くないというのがアナリストの大半の意見だ。
それでも、木曜日には欧州資産にいくつかの明るい兆しが浮かび上がったが、一方で非常にネガティブな兆しもいくつか現れた。
高級品
欧州のストックス・ラグジュアリー10指数はロンドン時間午後2時45分までに4.8%下落した。バーバリーの株価は8%以上下落し、LVMHは4.8%、グッチの親会社ケリングは5%下落した。
高級品は欧州で製造され米国に輸出されることが多いため、トランプ大統領の相互関税の直接的な標的となっている。
シティのアナリストらは木曜日のメモで、ドイツの靴メーカー、ビルケンシュトックが
, イタリアのファッションブランド、ブルネロ・クチネリ。
デンマークの宝飾品大手パンドラは、米国への売上高の依存度が最も高い業界企業の一つで、米国での売上高は各社の31~47%を占めている。
高級品コングロマリットLVMH
グッチのオーナー、ケリング
カルティエの親会社リシュモン
また、シティは、これらの企業はすべて米国での売上高の少なくとも20%を生み出したとも指摘した。
食品・飲料メーカー
EUは、米国をワイン、ビール、蒸留酒、チョコレート、チーズ、オリーブオイルなどの食品や飲料製品の「主要な輸出先」と位置付けている。
世界最大のビール会社であるABインベブの株価は木曜日に0.6%下落し、ペルノ・リカールは
ハイネケン
それぞれ2.5%と1.3%低下した。テイト&ライル
世界最大級の製糖工場を運営する同社は2.6%下落した。
「大西洋を挟んで両国の産業は高度に統合されており、酒類の共通貿易は製造、流通、農業、小売、接客業など双方の多くの雇用を支えている」と業界団体スピリッツ・ヨーロッパは木曜日の声明で述べた。「EUと米国の生産者双方の継続的な成長を支える環境への回帰を確実にしたい」
ドイツ
ドイツは昨年、EUから米国への最大の輸出国だった。このヨーロッパの国には、BMW、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、ポルシェなど、EU域内最大の自動車メーカーがいくつか拠点を置いている。
これらすべてには現在25%の輸入関税が課せられています。
ドイツ銀行リサーチのチーフエコノミスト、ロビン・ウィンクラー氏は木曜日の顧客向けメモで、「昨夜の関税発表がドイツ経済にとって悪いニュースであることは間違いない」と述べた。
「しかしながら、ネガティブなサプライズは関税の直接的な影響というほどではない」と同氏は述べ、市場は相互の20%関税を予想していたと指摘した。
「しかし、米国がアジアからの輸入品に50%以上というはるかに高い関税を課したことは、本当に驚きであり、我々やほとんどの観測者が予想していたよりも世界貿易ショックが深刻であることを意味している」とウィンクラー氏は述べた。「間接的に、これはドイツにとってもマイナスのショックだ」
ドイツの卸売・貿易・サービス連盟(BGA)は木曜日の声明で、トランプ大統領の相互関税を「世界貿易への正面攻撃」と非難した。
「米国大統領は、100を超える貿易相手国に対する大幅な関税引き上げで、米国のEU離脱をめぐるあからさまな貿易戦争に世界を突入させようとしている」とBGA会長のダーク・ジャンドゥラ氏は電子メールによる声明で述べた。「この紛争はわが国の経済成長に重大な影響を及ぼすだろう。長引けば長引くほど、米国を含むすべての国にとって痛みが増すことになる」
小売り
衣料品、靴、家庭用品、電化製品などを販売する多くの小売業者は、アジアを拠点とするグローバルサプライチェーンを持っています。カンボジア、ベトナム、インドネシア、バングラデシュ、スリランカなどの南アジアと東南アジアの国々には、H&Mやアディダスなどの企業向けの衣料品や製品を生産する工場が密集しています。
そして、最近発表された米国の相互関税の中でも最も高い税率のいくつか、多くは40%を超える税率を課せられ、物議を醸した。
「多くの輸出業者にとって、(新たな関税は)利益と損失を分けるものだ。企業は、米国の顧客に利益を上げながらサービスを提供し続けることができるかどうかをじっくり検討する必要がある。もしそれができないなら、貿易協定がすでに存在するような、より友好的な新しい市場に焦点を絞る必要がある。そして、必要なら、製造を他の製品に多様化する必要がある」と、コンサルティング会社クロウのVAT・関税担当ディレクター、イアン・ワース氏は電子メールで述べた。
「米国到着時ではなく輸出時に関税を課す動きは、多くの問題を引き起こす可能性がある」とワース氏は付け加えた。
配送
経済成長と貿易の足かせになるとの予測が広がる中、世界経済の健全性に結びついている物流・海運会社は影響を受けることになるだろう。
デンマークの海運大手 マールスク は木曜日、ホワイトハウスが発表した関税計画により、経済環境がより不安定になる中で、顧客の間でより慎重な姿勢が強まるだろうと述べた。
「現在の形では、(関税は)世界経済、安定、貿易にとって明らかに良いニュースではない」と同社は声明で述べた。
欧州の海運・物流会社の株価は木曜日、全般的に下落し、マールスクは9.5%、 ハパグ・ロイド は8%、 DSVは 6.5%それぞれ下落した。
銀行
木曜日、銀行セクターは欧州で最もパフォーマンスの悪いセクターの一つとなり、地域のストックス銀行指数は4.52%急落し、2年ぶりの大幅な売り圧力が高まった。
このセクターは、世界経済の成長鈍化や、潜在的な景気後退や広範囲にわたる貿易戦争への懸念にも敏感だ。
英国の銀行スタンダード・チャータード
アジアへのエクスポージャーが高いHSBCは10%下落した。
7.5%低下しました。
自動車
トランプ大統領の外国からの自動車輸入に対する25%の関税が木曜日に発効し、世界の大手自動車メーカーの多くが最近の損失を拡大することになった。
ドイツのフォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ・グループ、BMWはいずれも木曜日の午後に2%以上下落したが、ミラノ上場のステランティスは
ジープ、ダッジ、フィアット、クライスラー、プジョーなど有名ブランドを所有するトヨタの株価は3.5%下落した。
サプライチェーンの高度なグローバル化と、特にメキシコをはじめとする北米全域の製造拠点への依存度が高いことを考えると、激化する世界貿易戦争は自動車業界に多大な影響を及ぼすことが予想されます。
地域通貨
欧州通貨は木曜日に上昇した地域内の数少ない資産クラスの一つであった。ユーロ
そしてイギリスポンド
6ヶ月ぶりの高値を記録し、スイスフランは
10月中旬以来のドルに対する最高値に上昇した。
トランプ大統領のいわゆる解放記念日関税発表に先立ち、市場関係者はCNBCに対し、米国の新たな輸入関税が発効したことでユーロとポンドが上昇する可能性があると語った。
みずほ欧州・中東・アフリカのFICC戦略責任者、ジョーダン・ロチェスター氏は木曜朝のメモで、ユーロは短期的には1.12ドルまで上昇する可能性があると述べた。木曜ロンドン時間午後3時までに、ユーロは2.2%上昇し、1.108ドルで取引された。
「ネットネット為替は実質利回り均衡を追いかけており、これはユーロ/米ドルが1.11、あるいは1.12になることを示唆している。当社の年末予想だが、このペースだと来週には実現するだろう」とロチェスター氏は木曜日のメモで述べた。
しかし、同氏は「ある時点で米ドルの売りには限界がある」と付け加え、金曜日までにユーロが1.11ドルの閾値を超えた場合、ユーロが売り始める可能性があると予測した。
医薬品
医薬品と製薬製品はEUから米国への最大の輸出品の一つだ。同業界は水曜日、トランプ大統領の広範な相互関税から猶予を与えられたが、ホワイトハウスのリーダーは、製薬業界は他の業界とともに調査の対象となる可能性があり、最終的には関税につながる可能性があると述べた。
欧州のストックス医薬品・バイオテクノロジー指数は木曜日に約1.9%下落し、英国勢のGSKが下落した。
アストラゼネカ
それぞれ2.7%と1.5%上昇した。デンマークの大手ノボノルディスクは横ばい圏内で推移した。
ユーティリティ
木曜日、投資家がトランプ大統領の広範囲な関税に反応して市場全体が売り込まれる中、欧州の公益事業株が上昇を主導した。
公益事業株は、市場混乱時に伝統的に防御的な銘柄であるが、午後の取引では直近2.6%上昇した。フランスのエンジーとスペインのイベルドローラは同セクターで最も好調な銘柄で、両社とも約2.7%上昇し、後者は52週間ぶりの高値を更新した。
ドナルド・トランプ米大統領によるこれまでで最大の関税攻勢は、米国内外の企業に明確なメッセージを送っている。「グローバル化の時代は終わった」ということだ。
新たな関税措置に関するトランプ氏の「解放の日」計画は、数兆ドル規模の輸入品に包括的な関税を課すもので、米消費者向け製品を米国の工場で生産することを望む政権の姿勢を示している。これは数十年にわたり世界経済をけん引してきたグローバル化への米国の支持に幕を下ろすものだ。
新関税には外国からの輸入品に対する10%の基本関税と、貿易相手国・地域と同水準に関税を引き上げる「相互関税」が含まれる。中国は合計で54%、ベトナムは46%、欧州連合(EU)は20%の関税が適用される。
トランプ大統領は2日にホワイトハウスのローズガーデンで行った演説で「雇用と工場がわれわれの国に急速に戻ってくるだろう。それはすでに起きている」と述べた。不満を持つ企業や国に対しては「関税率をゼロにしたいなら、ここ米国で製品を作ればいい」と語った。
トランプ氏のメイド・イン・アメリカの野心は、ベトナムのような低コストの製造拠点や、韓国や日本といった米国の同盟国にここ数年注がれていた投資の大きな流れが枯渇することを意味する。企業は投資先として最適な場所を再検討している。
「米国はグローバル化の中心だった」。ブリュッセル自由大学の経済学教授で元EU高官のアンドレ・サピア氏はそう述べた。「今、その中心である米国が離脱しようとしている」
トランプ氏の2期目就任から数週間で、米アップル、韓国の現代自動車、米医薬品・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)や米製薬大手イーライリリーなどの企業による新たな発表が相次いでおり、多国籍企業がトランプ氏の関税に対応して米国で事業拡大を準備していることを示している。
しかし、トランプ氏が望むような形で世界のサプライチェーンを解体し、米国に生産拠点を移転することは、コストを考えると困難な課題だ。また、トランプ氏が他国から貿易面での譲歩を引き出すために関税を引き下げるリスクもあると経営幹部らは指摘する。エコノミストらは、企業が貿易戦争の不透明感が晴れるまで様子見を続けることで、世界が成長を阻害する投資不足に直面する可能性があると警告している。
トランプ氏が期待しているのは、高関税の壁により、米国全土で工業生産が花開き、製造業の雇用が豊富で広範な繁栄をもたらす黄金時代が到来することだ。同氏は中国やEU、その他の米国の貿易相手国による略奪的な貿易慣行が雇用と産業を国外に流出させた原因だとし、それらを取り戻したいと考えている。
トランプ氏は今回の発表で中国に特に高い関税を課した。中国は製造拠点の米国外移転(オフショアリング)から最大の恩恵を受け、玩具や衣類から始まり、今日では先端技術を駆使した自動車、機械、電子機器を製造する工場を数十年にわたり築き上げてきた。今日、中国は世界の製造業を支配し、昨年の貿易黒字は約1兆ドル(約150兆円)に達した。
中国に対する新たな34%の追加関税は、合成麻薬フェンタニルの取引における中国の関与を背景としてトランプ政権が発動済みの20%の関税に上乗せされる。つまり、4月9日以降、中国からの輸入品に対する関税率は54%になる。
結果として、米国は中国からの輸入は減った一方、ベトナムやメキシコ、その他の国との貿易赤字は拡大した。米国の経常赤字は2024年に1兆1000億ドルに達し、トランプ氏や同氏の側近らにとって世界貿易の抜本的な見直しが必要であることを浮き彫りにした。
トランプ氏はホワイトハウス復帰後、対立国と同盟国の双方に対して貿易戦争を仕掛けている。これらの国々が第2次世界大戦後に米国が育んだグローバルな貿易システムを利用して、輸出を押し進め輸入を制限していると非難している。こうした政策が確かに米国の貿易赤字を引き起こしていると指摘するアナリストもいるが、主流派エコノミストの大半は、巨額の貿易赤字の主な要因として米国の恒常的な財政赤字と低い貯蓄率を挙げている。
トランプ氏の戦略が効果を上げている兆しがある。ロビー団体のドイツ機械工業連盟(VDMA)が昨年11月に行った調査によると、ドイツのエンジニアリング企業の約半数が、関税と市場規模の両方を理由に対米投資を増やしたいと考えている。VDMA幹部のアンドリュー・アデア氏は、ほとんどの会員企業が「米国を成長の機会と見ている」と述べた。
ドイツの総合電機大手シーメンスは3月、最大の市場である米国への投資を100億ドル増やすと発表した。これには、テキサス州フォートワースとカリフォルニア州ポモナに新設する電気製品の製造施設が含まれ、同社によると熟練工900人以上の雇用が創出される見通しだ。
またファウンドリー(半導体受託製造)最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は3月、今後数年間で少なくとも1000億ドルを米国の半導体製造工場に投資する計画だと明らかにした。トランプ氏は今回、台湾に32%の関税を課すと述べたが、半導体は免除される。
しかし、このような計画にもかかわらず、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した企業投資意欲に関する指標は、関税を巡る不確実性を背景に、米国経済全体で企業の支出計画が縮小されていることを示している。
もう一つの問題は、米国の製造業が先端技術に特化しており、国外でより安価に生産できる基本的な材料や部品の国内供給が整っていないことだ。すでに米国の製造業者はねじ、ナット、ボルトのコスト上昇に苦しんでおり、グローバルなサプライチェーン(供給網)への容易なアクセスの必要性が浮き彫りになっている。
「関税をかけてスイッチを入れれば、突然米国が再び工業国になるというわけにはいかない」。ミネソタ州セントポールを拠点とするミスコ・スピーカーズのダン・ディグレ社長兼最高経営責任者(CEO)は、こう述べた。同社は遊園地や医療機器、宇宙船で使用される音響システムを製造している。
ミスコは生産の半分程度を米国内で行っているが、振動板や銅製ボイスコイル、その他のスピーカーの重要部品を国外の工場に依存しており、その多くは中国にある。
2018年以来、約1400万ドルの関税を支払ってきたというディグレ氏は、ベトナムなどアジアの他の地域で代替となるサプライヤーを探し回っていると語った。しかし、広範囲にわたる新たな関税が迫る中、「何をすべきか判断するのは非常に難しい」と述べた。「安全な場所はどこにもない」
ドナルド・トランプ米大統領は2日、新たな「解放の日」関税を発表した。古くさい保護貿易主義時代の新たな始まりに向け、また大きく踏み出したことになる。この政策が続くと仮定すると(われわれはそうならないことを望んでいるが)、この取り組みは米経済と世界貿易システムを作り替える試みに等しい。
本稿執筆時点で全容は明らかになっていないが、トランプ氏の関税は、「相互」とは名ばかりのようだ。まず、トランプ氏は世界の全ての国に対して、米国市場で物品を売るための10%の「基本」関税を課す。彼が「悪質な行為者」と見なす国々については、当該国が米国製品に課している関税率に、「為替操作」や非関税障壁のコストについての恣意(しい)的な推計値を足し合わせている。その上で合計を出し、その半分を関税として、当該国から米国への輸出品に適用する。
トランプ氏は中国からの輸入品には34%の関税を課すが、同盟国である日本も24%という同様に高率の関税を払うことになる。欧州連合(EU)には20%、インドには26%の関税が適用される。われわれは今後さらに詳細を評価するが、きょうのところはこの新たな保護主義時代に既に明らかになりつつある影響の幾つかについて考えよう。
新たな経済リスクと不透明感
トランプ氏が集中砲火のように課す関税が経済全体に与える影響は、知る由もない。その大きな理由は、各国がどのような反応を示すか分からないことだ。各国が米国に関税引き下げを求める交渉を試みるなら、ダメージは軽減される可能性がある。 だが、各国が報復措置を取る動きが広がれば、その結果、世界貿易の縮小や経済成長の鈍化、リセッション(景気後退)、あるいはさらに深刻な事態が生じかねない。
米国の消費者と企業にとっては、確実にコストが上昇するだろう。関税は税であり、何かに課税すれば、対象となる物品の供給が減る。自動車価格は、米国車を含め、何千ドルも上がるだろう。トランプ氏は、高関税の壁によって競争から守られた企業・労働者へと消費者から富を移転させることを意図的に決定しようとしている。
これはやがて、米国の競争力が徐々に低下することを意味するだろう。競争を鈍らせる関税は、利益の独占を招く一方で、イノベーション(技術革新)の必要性を低下させる。これは、1950年代および60年代の米国の鉄鋼・自動車産業の状況と同じだ。その後、グローバルな競争によって両業界の問題点が明らかになった。
米国の輸出への打撃
米通商政策の長年の目標の一つは、米国の製品・サービスの市場を拡大することだった。そのために、共和、民主両党の歴代政権は2国間および多国間での貿易協定締結を推進してきた。アポロ・グローバル・マネジメントによると、S&P500種指数構成企業の売上高の41%は国外から得られている。
トランプ氏の一方的な関税はこうした取り決めを破壊し、報復を招く。米国の輸出は報復関税から直接の打撃を受ける。他国が米国以外の国の企業を優遇する貿易協定を結べば、米国の輸出は間接的にも打撃を受けるだろう。トランプ氏が1期目に対中関税を課したことで、ブラジルが大豆で大もうけしたことを考えれば分かる。
より大きくなるワシントンの沼
関税は、企業が避けたいと思うコストを企業に課す。ひいては、これはワシントンのロビイストにとって思いがけないチャンスとなる。企業や国々はどんな国境税の対象からも除外されることを望むからだ。
トランプ氏は関税に例外は設けないと述べている。だが、その約束が消えていかないか、注視する必要がある。政治家はトランプ氏を含め、例外措置のことを選挙の時に企業に献金させるための手段と考えているからだ。解放の日は、(特権階級やロビイストの)沼にとっては「もう一つのヨットを買う日」なのだ。
米国が世界経済を主導する時代の終わり
英国は第1次世界大戦中にこの役割を担ったが、戦争であまりにも痛めつけられたために、その役割を担い続けられなかった。米国がその役割を受け継いだのは、大恐慌と第2次世界大戦が終わってからだった。米国がリーダーシップを発揮し、自由貿易を広めるという判断を下したことはその後70年間にわたり、国内外に一層の繁栄をもたらした。世界の国内総生産(GDP)のうち米国が占める比率は、産業の盛衰があったにもかかわらず、何十年にもわたって約25%に維持されてきた。
こうした時代は今や、トランプ氏がより重商主義的な貿易のビジョンと米国の国益を重視する政策を選ぶ中で、終わりつつある。その結果、各国は自国のために動くようになる公算が大きい。各国が市場の効率性のためではなく、政治的利益のために世界市場を奪い合おうとするようになるからだ。最悪の場合、世界の貿易システムは、1930年代のような近隣窮乏化政策に退化する可能性がある。
米国の影響力低下による痛手はかなり大きくなるだろう。トランプ氏は、米国の市場と軍事力には、自身の意向に他国を従わせるための十分な魅力があると考えている。しかし、ソフトパワーも重要だ。ソフトパワーの中には「米国の言葉は、頼りになる同盟国・貿易相手国としての言葉」だという信用力も含まれる。トランプ氏は、同盟諸国を罰し、自身が1期目の政権下でまとめた米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を壊すことで、こうした信用を台無しにした。
中国にとって絶好の機会
トランプ氏の関税の皮肉な側面として際立つのは、同氏が関税を中国に対抗するための外交手段の一つとして正当化していることだ。しかし第1次トランプ政権は、中国を除外したアジア太平洋地域の貿易協定から離脱した。中国はその後、この協定に参加した多くの国々との間で、独自の通商合意をまとめてきた。
トランプ氏の新たな関税による猛攻撃は、中国に新たな好機をもたらしつつある。それは、中国が自国の巨大な市場を武器に、米国の同盟諸国を自陣に引き込むための好機だ。中国のこうした戦略の最初の標的になるのは、韓国と日本だ。しかし、中国のリストには欧州諸国も載せられている。米市場へのアクセスに疑念を抱いたこれら同盟諸国は、中国との貿易関係を強める。その場合これら諸国は、ハイテク技術の対中輸出制限だけでなく、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に続き、他の中国企業の製品も使用禁止となるケースでも、米国に同調する可能性が低くなる。
ここに示した悪影響のリストは、全てを網羅してはいない。しかしわれわれは、トランプ氏が自ら構築しつつある新たな保護主義的世界についての判断材料として、このリストを読者に提供する。世界経済の再構築は、大きな影響をもたらす。そしてその総合的影響は、トランプ氏が新たな「黄金時代」と宣伝しているような状況にはつながらないかもしれない。
ドナルド・トランプ米大統領は2日、新たな関税体制を発表した。米国の貿易政策が、第2次世界大戦直後の時期以降見られなかった規模で根本的に見直された形となる。
米国は全ての輸入品に10%の一律関税を課し、トランプ政権が貿易における悪質な行為者と見なす国々にはさらに高い税率を適用する。これらの関税は、トランプ氏が既にカナダ・メキシコ・中国からの多くの製品に課した関税や、鉄鋼・アルミニウムに対する関税に加えて導入される。
トランプが関税を課す根拠は、関税が米国の製造業を再生させ、米国の貿易赤字を削減し、政府の債務削減に役立つというものだ。批判的な人々は、関税が世界貿易を混乱させ、インフレ率を上昇させる可能性があると指摘している。トランプ氏の最新の発表について知っておくべきことは以下の通り。
トランプ氏はどのような関税を課したのか?
4月5日から米国の全ての輸入品に10%の追加関税が課される。国によっては4月9日から、さらに関税が上乗せされる。例えば、中国からの輸入品には34%、欧州は20%、日本は24%の追加関税が課される。
トランプ氏は後者を「割引相互関税」と呼び、多くの国が米国製品に課している関税率の半分を米国が課すと説明した。
トランプ氏は2日の発表で、4月3日から外国製自動車に25%の関税を課すことを確認した。
米国の関税とは何か、誰が支払うのか?
関税は米国に輸入されるものに課される輸入税であり、外国の業者から輸入品を直接購入する米国企業などが最初の負担を負う。しかし、サプライチェーン(供給網)上の企業が新しい価格と自社の需要を考慮する中で、最終的な負担者は変わる。
関税の影響を抑えたい輸入業者は価格を引き上げ、関税負担を米国内の消費者や他の企業に事実上転嫁できる。ただ、米国の輸入業者は新たに関税が課された物品の注文を減らすかもしれず、外国の供給元も痛みを感じる可能性がある。
どのような品目や国が影響を受けるのか?
輸入企業は、メキシコ製のシリアルのような日常的に消費する小さな製品から、ドイツ製のフォルクスワーゲン車のような大型で高価な製品まで、米国に輸入する全ての品目に10%の追加関税を支払わなければならない。
関税は国によって異なるため、一部の製品は他と比べてはるかに大きな影響を受ける。
ベトナム、スリランカ、ラオスは、それぞれ46%、44%、48%という最高レベルの「相互関税」を課される。米国の最大の貿易相手国の一つである中国は34%だ。
1日に行われた米ウィスコンシン州最高裁判事選での手痛い敗北を受けて、ドナルド・トランプ大統領と共和党は、イーロン・マスク氏について重大な決断を下さなければならなくなった。全米の舞台でマスク氏の名声と財産を利用し続けるのか、それとも同氏に舞台裏にとどまるよう丁重に頼むのかという決断だ。
同選挙にマスク氏が金銭的および個人的に深く関与したことは、共和党にとっては政治的にマイナス材料だった。2年前の同様の選挙と比べ、共和党よりも民主党の方が得票数を大きく伸ばした。
マスク氏は2024年の選挙サイクルにおける最大の献金者で、トランプ氏や他の共和党員を支援するために3億ドル(約450億円)近くを寄付した。共和党は、世界一の富豪であるマスク氏の財産を選挙資金に活用することを今も強く望んでいる可能性があるが、今回のような表看板の役割を同氏が演じるのを見るのはあまり楽しいことではないかもしれない。
複数のトランプ政権当局者によると、マスク氏は特別政府職員としてホワイトハウスで働いており、この雇用状態の期間満了時点で退任する見込み。今年夏までに期間満了となる公算が大きいという。
トランプ政権や共和党内には、自分たちにとって選挙でマスク氏がマイナス要因になり続けるのではないかとの懸念を内々に示す者もいる。マスク氏の社会保障制度批判に共和党議員たちは恐れを抱いている。また、頭上にチェーンソーを掲げる同氏の画像は、民主党の広告制作会社が2026年に使う可能性が高い。
共和党系の世論調査専門家ウィット・エアーズ氏は「連邦政府職員はイーロン・マスク氏よりはるかに人気がある」と話した。エアーズ氏は最近、連邦政府職員についてや、マスク氏が連邦政府の規模・権限縮小のために果たしている役割について、どう思うかを尋ねる調査を実施した。「チェーンソーを使うようなマスク氏のアプローチは全く不人気だ」という。
共和党のストラテジスト、ジェーソン・ティールマン氏は、1日の選挙結果から多くの結論を導き出し過ぎないよう注意を促した。「大統領選や中間選挙のない年の選挙は、大統領選や中間選挙がある年に何が起こるかを示すものではない。ウィスコンシン州最高裁判事選の結果をイーロン・マスク氏のせいにしようとすることは、この上なくばかげている」
ティールマン氏は、マスク氏が政府効率化省(DOGE)で行っている歳出削減の仕事について、「まさにMAGA(米国を再び偉大に)運動の支持者を勢い付ける大胆な行動の類いだ」と述べた。
MAGAをスローガンとするトランプ氏の支持者たちの間でマスク氏の人気が高いことは間違いない。3月30日にウィスコンシン州グリーンベイで開かれたイベントにマスク氏が姿を見せた際には、ある牧師が同氏のために祈ることを申し出て、聴衆がそれを静かに聞く場面があった。
しかし、今回ウィスコンシン州で行われたような総選挙型の戦いでは、マスク氏の受けはあまり良くないようだ。今回の選挙では、リベラル派のスーザン・クロフォード判事が保守派のブラッド・シメル判事に勝利した。
1日の選挙の投票数は2023年の同州最高裁判事選と比べて52万4000票余り多かったが、勝者と敗者の得票率の差はほぼ同じだった。23年の結果と比べると、リベラル派から保守派に、あるいは保守派からリベラル派に勝者が入れ替わった郡はほぼなかった。
ミルウォーキーにあるマーケット大学ロースクールが実施した世論調査の責任者チャールズ・フランクリン氏は「双方が大幅に得票数を伸ばした。だが、マスク氏が得票率の差にもたらした影響は最小限だった。2023年は11ポイント差でリベラル派が勝利し、今回は10ポイント差でリベラル派が勝利した。2500万ドルを投じたにしては、それほど大きな動きはなかった」と述べた。
最新の開示情報によると、マスク氏と同氏に関連するグループは、今回の選挙に2300万ドル余りを投じた。民主党側でも富豪らが選挙戦に関与したが、マスク氏が投じた額は他を大きく引き離して最大だった。民主党側で最大の寄付を行ったのは著名投資家のジョージ・ソロス氏(200万ドル)で、イリノイ州知事のジェイ・プリツカー氏(150万ドル)がこれに続いた。
今回の選挙に投じられた資金は、全体で1億ドルを超えるとみられる。これは米国の司法分野の選挙に投じられた額としては、これまでの記録を大きく上回っている。アドインパクトのデータによると、選挙広告に投じられた資金は7800万ドル超で、このうちクロフォード氏とその陣営が使った額が4360万ドル、シメル氏とその陣営が使った額が3440万ドルだった。
投票の際に写真付き身分証明書の提示を義務付けている現行法を強化するための同州憲法修正案の是非を巡る投票では、同案が大差で承認された。これは、同案を提出した共和党側の勝利を意味する。
フロリダ州の2選挙区で実施された連邦下院補欠選挙では、共和党が議席を維持した。ただし、伝統的に共和党支持が強固な選挙区での戦いでありながら、得票差は以前より縮小した。しかしこの日に行われたさまざまな選挙の中で最も重要だったのは、ウィスコンシン州の最高裁判事選だった。この選挙は、第2次トランプ政権の最初の主要な試金石となった。
マーケット大学が2月下旬に実施した世論調査によると、ウィスコンシン州の無党派層有権者の58%は、マスク氏に批判的だった。この比率は、民主党支持の有権者の間では97%に達した。マスク氏に好感を持っていた有権者の比率は、全体の41%にとどまった。マスク氏は最近、二極化をあおるような言動をとっているが、それ以前に行われた調査でさえ、こうした結果になっていた。
クロフォード氏の上級選挙アドバイザーを務めたパトリック・グアラシ氏は、マスク氏が(共和党候補への)マイナス要因になったと述べ、(その根拠として)ウィスコンシン州ブラウン郡を挙げた。同郡は昨年11月にトランプ氏が7.5ポイント差で勝利した激戦区で、マスク氏は3月30日に同郡を訪れた。4月1日はクロフォード氏が約3ポイント差で勝利した。
グアラシ氏は「マスク氏がこの選挙を自身に関するものにしてしまい、彼らはその代償を支払った」と語った。
マスク氏はここ数日、自身のイメージを和らげようと、主に友好的なインタビュアーを相手に幾つか取材に応じている。3月30日にウィスコンシン州で開催されたタウンホールイベントでは、人工知能(AI)からDOGEへの自身の取り組みに至る、あらゆる質問を受け付けた。
ウィスコンシン、フロリダ両州において、共和党は引き続き、トランプ政権で彼らが向き合っている中心的な課題の一つに直面することになった。それは、トランプ氏が選挙に出ていないと、同氏を支持する有権者は投票所にあまり来ないという問題だ。
マスク氏は、ウィスコンシン州での選挙を4月1日に行われる最も重要な選挙と位置付け、結果につながるよう自らが責任を取る覚悟でいるとして、「私はこの選挙をおざなりにしていない」と語った。
これはトランプ氏とは対照的だった。トランプ氏は最近、同州に呼び掛けたものの、選挙前に訪問はしなかった。トランプ氏以上に同氏の支持層を盛り上げられる人物は誰もいないが、トランプ氏はほとんど首都ワシントンとフロリダのリゾートにこもっている。
トランプ氏と共和党が、より目立たずに職務を果たすようマスク氏に求めることにしたとしても、世界の舞台で注目を集めることに味をしめるようになってしまった派手好きな大富豪にそれを受け入れさせるのは容易ではないかもしれない。
トランプ氏は3月31日、マスク氏を「素晴らしい」と評したが、DOGEを率いるマスク氏の役割はいずれ終わると述べた。「彼は大企業を経営しているため、いつかは戻ることになるだろう」とトランプ氏は語った。
ラトニック米商務長官は3日、トランプ大統領が諸外国に対する新たな関税を軽減するには、それらの国々が米国製品への輸入規制や障壁に対処する必要があるとの考えを示した。
ラトニック長官はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「これらの非関税貿易障壁はモンスターであり、退治しなくてはならない」と発言。「われわれは今日、すべての主要な貿易相手国と話し合っている。彼らはこれまでいかにわれわれを不当に扱ってきたか、どうすればそれを是正できるか、胸に手を当てて考えるべきだ」と述べた。
同氏は非関税障壁の具体的な例を挙げ、欧州連合(EU)では一部の国が20%の付加価値税を自国の製造業者への補助金に充当していると述べた。
経済諮問委員会(CEA)のエコノミストや米通商代表部(USTR)のスタッフは数十年にわたって外国の貿易障壁を精査しており、その分析が2日にトランプ大統領が発表した課税の基礎となったと、ラトニック氏は述べた。
2012年の韓国との貿易協定の例も挙げ、韓国が米国の農産物を輸入することに同意した代わりに、米国が韓国製自動車の市場参入を認めたと説明した。しかしマクドナルドがポテトの原産地を証明できなかったため、韓国側はフライドポテトを輸入できなかったと同氏は語った。
トランプ大統領が相互関税を2日午後に発表して以来、株式が売り込まれていることについては、大統領の関心は「米国が数十年にわたって被ってきた経済的苦痛」への対応にあるとラトニック長官は述べた。
同長官は中国に対する新たな34%の追加課税が、合成麻薬フェンタニルの中国での製造疑惑を理由にトランプ大統領が今年初めに課した20%の関税に上乗せされることを確認した。
「習近平国家主席がトランプ大統領に電話をかけ、フェンタニルの生産をやめると伝えればよいだけのことだ」とラトニック氏は述べ、習近平主席に責任を転嫁した。「そうすれば、税率は20%下がるだろう」と続けた。
トランプ米大統領は3日、仮に他国・地域が何か「驚くべき」ものを提示することができれば、関税引き下げにオープンであると語った。一部高官の主張にもかかわらず、ホワイトハウスに交渉の用意があることを示唆した。
トランプ氏は大統領専用機で、株価急落にもかかわらず自身の関税プログラムを総じて弁護。金利が低下していることをうれしく思うとともに、経済の乱調が収まると考えていると語った。
「関税はわれわれに交渉のための偉大な力を与える」と述べた上で、「あらゆる国がわれわれに接触してきている」と語った。
それは譲歩を考えているという意味かとの質問に対し、トランプ氏は「状況次第だ」と返答。「もし誰かが、何か驚くべきものを提示すると言って、彼らが何か良いものを与えてくれる限りはだ」とコメントした。
トランプ氏が2日、世界の貿易相手国・地域に対し相互関税を課すと発表したのを受け、米景気悪化の懸念が広がって3日の米株式相場は急落。S&P500種株価指数は4.8%安と2020年6月以来の大幅下落となった。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は1.5%の低下。
トランプ氏は「米国の市場は活況を呈すると思う。チャンスを与えなければならない。少し時間を与えなければならない」とも指摘。エネルギー価格下落と米10年債利回りの低下に言及し、それらをプラス材料と評した。
「私が望ましいと考えることの一つは金利が下がることだ。食料品価格、卵の価格が下がるのも好ましい。そして非常に重要なのはガソリン価格が下がっていることだ」と論じた。
トランプ氏はまた、字節跳動(バイトダンス)傘下の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業売却を中国が承認すれば、同国に関税軽減措置を提示する用意があるとあらためて表明した。
トランプ氏は1月の就任直後、売却の期限を当初の1月19日から4月5日に延長した。同氏がTikTok買収合意の取りまとめを促すため、期限を再延長するかどうかが焦点となる。
「ディール(取引)に非常に近づいている」と同氏は語った。ただ、中国側が関税とTikTokに絡んだアプローチを追求するかは「分からない」としている。
このほかトランプ氏は、関税の軽減を求める関係者と一日中協議したことを示唆。3日には自動車メーカー経営首脳のほか、イスラエルのネタニヤフ首相と話したことを明らかにした。経営首脳の名前は明かさなかった一方、ネタニヤフ氏が来週訪米する可能性があると話した。
トランプ米大統領がほぼ全ての国・地域に高水準の関税を課す決定を下したことは、中国経済に打撃を与える。だが同時に、習近平国家主席にとっては、米国の主要同盟国と関係強化を図るというまたとない機会が到来している。
トランプ氏の関税発表後、中国当局者はすぐさま他国との連携を図る姿勢を鮮明にした。
財政省の廖岷次官は3日、ロンドン証券取引所で開催された中国初のソブリン環境債発行イベントで、今回の発行は「中国が国際市場との統合深化に取り組んでいることの証し」だと主張。「保護主義は機能しない。解決策にはならない」とし、「中国と英国は、強固な協力関係が基盤となっているグローバル化の恩恵を理解している」と述べた。同次官は第1次トランプ政権下の貿易戦争で中国側の交渉担当者の一人。
「絶好の機会」
リヨン経営大学院上海校のフランク・ツァイ非常勤教授は「(トランプ氏の言う)解放の日は米国を世界から孤立させるものだ。米国以外の国・地域が米国を避けて互いに貿易を行うインセンティブを生み出している」と指摘。「中国は今、米国の手法を利用して逆に米国を打ち負かすという絶好の機会を手にしている」と述べた。
習主席は不動産危機やデフレ圧力に直面する中国経済に配慮し、第1次トランプ政権時代に比べて米国の関税措置に対して慎重な対応を取ってきた。今回の相互関税で対中関税率は平均65%以上に引き上げられており、中国政府は報復を示唆している。選択肢としてはアップルなど米主要企業を標的にする、重要鉱物の対米輸出を制限するといった対応が考えられる。
南京大学国際関係学院の朱鋒執行院長、朱鋒氏によれば、中国当局は他国の反応を見極めた上で動く可能性が高い。
中国にとっては「世界がどう反応するか」が問題であり、「中国は報復措置を急ぐつもりはない」と同氏は述べた。
習主席は今月、今回の相互関税で大きな打撃を受けるカンボジアとベトナムに加え、マレーシアを訪問する予定だと伝えられている。トランプ氏の政界復帰後初の外遊先で、地域での影響力をさらに拡大する機会となる。
中国への懐疑論も
中国を専門とする調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベドー氏は、中国を信頼できるパートナーとして売り込む試みは欧州の一部で懐疑的に受け止められる可能性が高いとみている。
「その主張がどれだけ効果を持つかは、まだ評価が定まっていないと」とベドー氏は指摘。「欧州の当局者は、たとえトランプ氏と意見が対立していても、中国の経済政策に対して深刻な懸念を抱いていることを非公式な場で率直に語ることが多い」と述べた。
穏健派として知られるスペインのサンチェス首相は、来週中国とベトナムを訪問する予定だ。
また、中国政府は新興市場国との関係構築でも慎重な対応が求められる。一部の国では中国製品の大量流入によって、縫製などの産業で自国の雇用が奪われているとの懸念が根強いためだ。しかし、世界が米国との貿易戦争への対応に追われる中、中国に新たな関税を課す動機は低下している。
北京にある政策調査グループ、全球化智庫(CCG)を創設した王輝耀氏は、トランプ氏の関税政策は最終的に、米国が犠牲になる形で他の貿易相手国を結束させることになると指摘する。
「トランプ氏の動きは、世界の人口または経済の8割が相互貿易を増やす流れを生み出し、米国を孤立させることになる」と王氏。「長期的には、各国間の協力関係を加速させる結果を招く」と語った。
イーロン・マスク氏は、トランプ米大統領の臨時顧問としての130日間の任期が終了すれば、「政府効率化省(DOGE)」を率いる役割から退く見通しだ。しかし、退任後も連邦政府のコスト削減には引き続き大きな影響力を持ち、トランプ氏の側近としての立場も維持するとみられる。事情に詳しい複数の関係者が語った。
マスク氏は現在、年間最大130日の勤務が可能な特別政府職員という立場にある。この日数をトランプ大統領の就任日から数えると、任期は5月30日に終了することになる。ただ正式な退任日はまだ設定されておらず、マスク氏が130日間勤務したかどうかを判断する責任はホワイトハウス法律顧問室が担っているという。非公開の協議内容であることを理由に関係者は匿名で述べた。
一方で複数の関係者によれば、連邦政府機関での大規模人員削減などを急速かつ波乱含みで進めてきたDOGEは今後も存続する見通し。DOGEの職員は、さらなるコスト削減と人員削減を求めて引き続き各機関にとどまるという。
マスク氏はここ数日、政治的にもビジネス面でも逆風にさらされた。ウィスコンシン州最高裁判所の判事選挙では、マスク氏が支援していた保守派は民主党系の候補に敗れた。また同氏が最高経営責任者(CEO)を務めるテスラは、1-3月(第1四半期)の販売台数が前年同期比で13%減少し、ほぼ3年ぶりの低水準となった。そこにはマスク氏の政治活動も影響しているとみられる。
トランプ氏の顧問の1人によれば、トランプ氏はマスク氏がどのような肩書きを持っているかには関心がなく、今後もマスク氏はホワイトハウスに頻繁に姿を見せる可能性が高いという。
ホワイトハウスにコメント求めたが、返答は得られていない。
トランプ大統領自身も、マスク氏による政府コスト削減活動の終わりについては公の場で言及している。トランプ氏は先週、「今後1-2カ月でDOGEによる削減には満足できるだろう」と発言。また「DOGEの改革は必ずしも人気のあることではない」とも語り、この取り組みが政治的リスクを伴うものであることを認めた。
関係者によると、トランプ政権の上級補佐官や閣僚、共和党議員らは、手続きや慣例を無視するマスク氏の強引なやり方に嫌気が差している。事前承認を得ずに改革が進められていることも少なくないため不満が高まっているという。
それでも、マスク氏は2つの重要な役割を担っていると関係者は口をそろえる。1つは、トランプ氏の物議を醸す行動から世間の目をそらす「代理キャラクター」のような存在であること。もう1つは、トランプ陣営が資金面でマスク氏に大きく依存しているという点だ。
トランプ氏の側近たちは2026年の中間選挙に向けてマスク氏を引き続き大口献金者として確保しておきたいと考えているため、同氏を批判することには慎重になっているという。
マスク氏は先週のFOXニュースのインタビューで、自身の任期が130日間に限られていることを認めた上で、その期間で1兆ドル規模の削減を実現できると信じていると語った。ただ、2024年度の国防を除く裁量的プログラム支出は1兆8000億ドルであり、マスク氏の意欲的な削減目標はこの半分強に相当する。
トランプ米大統領は3日、関税導入の決定を受けて金融市場が大荒れとなったことは「想定されていた」と述べた。一連の関税措置は、「病んでいる」経済の回復に向けた必要な措置という認識も示した。
トランプ米大統領は2日、貿易相手国に対し相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。
3日の取引で米国株式市場は急落し、ダウ工業株30種は1679ドル値下がりした。 外為市場ではドルが円とユーロに対し6カ月ぶりの安値を付けたほか、米債利回りは大幅に低下した。
トランプ大統領はさらに、他国が「素晴らしい」提案をすれば、関税を巡る交渉に応じる用意があると述べた。
米国は自ら構築した世界貿易秩序を破壊し、不確実な新時代を開こうとしている。
ドナルド・トランプ米大統領の2日の発表は、世界の経済関係を作り変えようとするいちかばちかの賭けだ。米経済は他の先進国がうらやむほどうまく新型コロナウイルス禍を切り抜けたが、トランプ氏の目には米国が数十年間にわたり、世界から搾取されてきたと映る。
同氏の関税を巡る動きはスタグフレーションの可能性を高めるものだ。物価が上昇すると同時に、米国をはじめ多くの国がリセッション(景気後退)に陥るリスクにさらされる。
トランプ氏は主要貿易相手国に対する関税引き上げを発表し、市場に衝撃を与えた。全輸入品に一律10%の関税をかけた上で、国ごとに相互関税を課し、関税率は欧州連合(EU)が20%、中国が34%となる。JPモルガン・チェースによると、全体の加重平均関税率は昨年の2.5%、発表前の10%から23%に上昇し、ここ100年余りで最も高い水準となる。
トランプ氏の政策転換がこのまま実施されれば、その影響は1971年にリチャード・ニクソン大統領が決めた金1オンス=35ドルの固定相場制の廃止に匹敵する可能性がある、とエコノミストは指摘する。
モルガン・スタンレーの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲイペン氏は「米国の税制・貿易構造を根本的に再構築しようとする試みとしては、1970年代初頭にニクソン氏が金本位制を廃止して以降でおそらく最大規模だ」と述べた。
ゲイペン氏によると、モルガン・スタンレーは関税リスクに関する市場の見通しが甘いと顧客に助言していたが、2日の発表は「われわれの予想をも上回る規模だった」。
トランプ氏の貿易計画は気まぐれで無秩序だ。これまでに中国製品に20%、自動車に25%、カナダ・メキシコからの輸入品については既存の貿易協定の対象外である製品に25%の関税を課し、企業投資と消費者信頼感を押し下げた。
グローバルデータTSロンバードの米国担当エコノミスト、スティーブン・ブリッツ氏は「発表された関税の大幅引き上げは主に企業に対するものだが、大半の法人税がそうであるように、価格に転嫁されて消費者が負担することになるだろう。増税すると経済は成長しない」と述べた。
今回の関税が徹底しているのは、通常は非課税となる国内生産量の少ないコーヒーや紅茶、バナナなど、全体の3分の2に相当する輸入品目も対象となる点だ。ダートマス大学の貿易経済学者兼歴史学者ダグラス・アーウィン氏はそう指摘する。
今回は、トランプ氏の2019年の対中貿易戦争より対象品目がはるかに幅広い。米スポーツ用品大手ナイキは靴の半分をベトナムで生産している。ベトナムは46%の関税を課される。中国、台湾、韓国のあまねく家庭用電子機器メーカーは、少なくとも25%の関税に直面する。石油、ガス、石油製品は適用を除外される。
関税引き上げでインフレ調整後の個人所得が大きな打撃を受け、米経済が今年リセッション入りするリスクが高まる。KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏はそう指摘する。事前の予想に比べ、発表された内容は「最悪のシナリオ」だったという。
また、貿易相手国の対応を見通せないため、不確実性は当分高いままかもしれない。スウォンク氏は「企業をここ(米国)に移転させるのが目的なら、これでは達成できない。工場が完成する3~5年後も関税が続いているかどうか分からないからだ」と述べた。
2024年の米経常赤字が1兆1000億ドル(約160兆円)に達したことで、トランプ氏と側近らは、世界貿易を再編する必要があるとの確信を強めた。
関税は新たな収入をもたらす可能性がある一方、金融市場が大きなコストを負うことになりかねない。米国の資産価格がこの2年間に上昇したのは、米経済が他国より優位にあると投資家が見込んでいたためで、テクノロジーの進歩やソフトランディング(軟着陸)への期待が背景にある。
トランプ氏が引き継いだ経済は、成長が安定しインフレ率が低下しつつある一方、住宅セクターの冷え込みや労働市場の軟化、割高な株価といったぜい弱性を抱えていた。
同氏はかねて貿易赤字を経済の弱さの印とみなしていた。トランプ政権は赤字縮小を目指しているものの、各国は米国債の購入を減らすかもしれず、米国の株式・不動産・社債市場に投資する余力も減るかもしれない。
ブリッツ氏は「真の痛みは、資本フローに関する他国との合意が崩れることだ」と指摘する。「貿易を壊しても資本フローは壊れないというのは幻想だ」
UBSのエコノミストの試算によると、関税が長期化すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視するインフレ指標は2月の2.5%から上昇し、年末には4.4%に達する可能性がある。その後は低下し、2027年末までに3%になるとみている。
このシナリオでは、米経済成長は今年停滞し、来年1-3月期と4-6月期にマイナスとなり、リセッション入りしたとみなされる。失業率は2月の4.1%から上昇し、来年には5.5%程度に達するとされる。
成長鈍化・停滞と物価上昇が同時進行すると、FRBは難しい立場に立たされる。米経済は高インフレを脱したばかりであるだけになおさらだ。当局者は、インフレと失業率上昇のどちらのリスクをより警戒すべきか、つまり金融を引き締めるべきか緩和すべきかの判断を迫られることになる。
問題となるのは、中央銀行は負の供給ショックにどう対処すべきかだ。石油価格の急騰はその一例だ。負の供給ショックが起きると、経済がモノやサービスを生産する能力が制限される。一部の生産者で価格が急騰しても、インフレ調整後の所得の目減りによって相殺され、全体的な経済成長は圧迫される。
一般的な金融政策理論に従うなら、こうしたショックによる価格上昇が局所的で一時的であると予想される場合、政策当局はショックを「やり過ごす」のが望ましい。つまり、ショック以前に計画していた金利政策を変えるべきではない。
だが現実は紙の上ほど単純ではない。関税による価格上昇をきっかけに世界的生産体制の再編が始まれば、数年単位の流れとなり、当局が価格上昇を一時的と断定するのは難しいかもしれない。
結果的にFRBは様子見を決め込み、経済活動鈍化と失業率上昇が確認されるまで、需要への打撃を緩和するための利下げには踏み切らないかもしれない。
UBSのエコノミストは、FRBがまずインフレ対策の予防的利下げを段階的に開始するとみている。失業率上昇と成長鈍化が起きたら追加利下げし、来年末には短期金利が現在の水準を2ポイント余り下回っていると予想する。
●先進国中銀、金融当局
トランプ米大統領が2日(日本時間3日)発表した相互関税などを踏まえた日本銀行の金融政策運営について、想定よりも厳しい内容で日本経済に深刻な影響が及ぶ可能性があるとし、追加利上げの時期は先送りされるとの見方がエコノミストの間で広がっている。
農林中央金庫総合研究所の南武志主席研究員は、国内総生産(GDP)を0.5%程度かそれ以上押し下げる可能性があり、「日本経済に深刻な影響を及ぼし得る」と指摘。日銀が30日と5月1日に開く次回の金融政策決定会合までに関税の影響を見極めるのは困難とし、「5月利上げの可能性は低下した」と語った。
長い目でみた日本経済の成長力を映し出す潜在成長率は、日銀が3日に発表した昨年10-12月期の推計では0.66%。昨年の実質GDP成長率は0.1%とかろうじてプラス成長を4年連続で維持したが、米関税措置を受けた輸出減や企業行動の慎重化によって、日本の実体経済の下振れ懸念が強まる恐れがある。
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストも、今後の日米交渉次第としながらも、日本経済への下押しは大きくなる公算が大きいとし、「5月の利上げは正直難しいだろう」と語った。メインシナリオは7月の利上げを維持しつつも、場合によっては秋まで遅れる可能性もあるとの見方を示した。
植田和男総裁は政策を維持した3月会合後の記者会見で、賃金・物価は想定通りとする一方、海外発の不確実性に懸念を表明した。2日には、米関税政策の範囲や規模次第では各国の貿易活動に大きな影響が及ぶ可能性を国会答弁で指摘。想定より厳しい措置を受けて政策正常化に向けてより難しい判断を迫られそうだ。
今回の相互関税では、米国への全輸出国に基本税率10%が課される。対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域には上乗せ税率が適用され、日本は24%、中国は34%、欧州連合(EU)は20%など。米政府が先に発動を決めた輸入自動車への25%追加関税は3日から適用が始まるが、相互関税から除外される。
モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅日本チーフエコノミストらは3日付リポートで、事前の想定よりも厳しい内容とし、適用除外の交渉にも時間がかかる可能性を指摘。米国を含む世界経済の減速を背景に、日本の成長がさらに減速するリスクが高まったとし、日銀が利上げ路線をしばらく停止するリスクが出てきたとみる。
9月までの利上げ確率低下
ブルームバーグのデータによると、米相互関税の発表後、金利スワップ市場で5月会合での利上げの予想確率は2日時点の14%から1ケタ台に低下。92%だった9月までの予想確率も70%台となった。ブルームバーグの3月会合前の調査では、次の利上げの予想は7月が48%と最多で、6月が15%、5月と9月が13%だった。
3日の東京株式市場では、日銀の利上げ観測の後退から、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの3メガバンクを含む銀行株が大幅に下落。TOPIX銀行業指数は一時前日比8.5%安まで下げた。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは3日付リポートで、想定以上の相互関税の内容を受け、日銀が影響を見極める時間は長期化するだろうと指摘。ただ、非関税障壁として日銀の低金利政策(円安誘導)が強く考慮されているとすれば、日銀が利上げをすべきであるという話につながっていく可能性があるとの見方も示した。
今後のポイントは、日銀が経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示している2%物価目標の実現シナリオへの影響だ。日銀は経済・物価が想定に沿って推移すれば利上げで緩和度合いを調整していく方針だが、見通しが大きく下振れれば正常化路線が修正を迫られる可能性がある。5月会合で議論する展望リポートでは、新たに示される2027年度を含めて、米関税政策の影響がどう反映されるのかが焦点となる。
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
トランプ米政権が発表した日本への相互関税が24%となった。日本が米国に対し46%の関税をかけていると主張する根拠は不明瞭で、欧州連合(EU)を超える税率となったことに政府関係者からは困惑の声が上がる。日本政府は米経済へのこれまでの貢献をアピールし、譲歩を引き出す考えを崩していないが、解決の糸口は見えていない。
<想定上回る税率>
「EUを上回る税率となったことに驚いた」。ある経済官庁幹部は相互関税の発表を受け、戸惑いを隠さない。
日本政府は、トランプ政権が発足した直後から閣僚級の協議を重ね、関税措置の対象に日本を含めないよう申し入れてきた。ところが、1)鉄鋼・アルミ関税、2)相互関税、3)自動車関税のいずれも対象となり、相互関税に至っては公表された税率が「想定を上回るものだった」という。
米側は、日本が米国に対し46%の関税を課していると主張しているが、税率の算出根拠もあいまいで「どう計算すればそうなるのか」と別の政府関係者は首をかしげる。
相互関税の公表に先立ち、武藤容治経済産業相は3月10日に訪米。ラトニック商務長官、グリア通商代表、ハセット国家経済会議委員長とそれぞれ会談した際は「おおむね好感触との受け止めだった」(経産省幹部)とされる。
ただ、思惑通りに進まない現状に「日本側の意向がうまく伝わっていない。経産(省)、外務(省)が中心となって打開を図ってきたが、立て続けに押し込まれている」(別の経済官庁幹部)との声もくすぶる。
<対話姿勢崩さず>
とはいえ、報復関税の応酬は「双方の利益にならない」(複数の経産省幹部)との声が、政府内ではなお根強い。
国際ルール上は、重大な損害を救済する緊急関税制度(セーフガード)に基づき対抗する選択肢もある。ただ、今のところ日本政府は世界貿易機関(WTO)への申告を行っていない。
措置が先行した鉄鋼・アルミでは5月中旬までに申告期限を迎えるが、当面の間は「粘り強く対話を続けるしかない」(経産省幹部)との声が残る。
相互関税の公表に先立ち、対応策を協議した自民党の「日米関係の深化に関する総合戦略本部」では、出席者から「今回の措置が中期的にみて米国の利益にならないことを伝えていくべき」との声が上がった。
政府内では「急いで新たな交渉カードを切れば朝貢外交となる」(前出の経済官庁幹部)と警戒する声もある。数カ月もすれば米経済が痛み「関税措置が撤回されることもあり得る」と別の関係者は言う。
<国内対応も課題>
自動車関連への追加措置では、自動車部品への関税も段階的に課されることが想定され、与党からは「日本経済の大きな危機になる」(小野寺五典政調会長)との声が聞かれる。
経産省がまとめた資料によると、米国での自動車販売台数1600万台(2023年)のうち、日系企業は560万台に上る。
輸出台数は日本に加え、メキシコやカナダからの輸出も含めると300万台に迫り、関税分を値上げで吸収した場合は「米国市場の縮小、日本からの輸出台数減による国内経済への影響」があるとしている。
自民党の森山裕、公明党の西田実仁両幹事長は1日、政府に対し外交と内政両面で対策を求めることで一致した。基幹産業の不振は景気の腰折れに直結しかねず、外交と並行して政府がどう対策を講じるかも今後、課題となる。
米国のトランプ政権が貿易相手国の関税や非関税障壁を踏まえ関税を課す「相互関税」の詳細を発表した。米国を最大の輸出相手とする日本の企業からは米国内での物価上昇や今後の事業運営のあり方などについて懸念が広がっている。
サントリーホールディングス(HD)の鳥井信宏社長は3日のインタビューで、鳥井氏は選択肢として米国以外への輸出を増やす可能性を示唆した。「響」や「山崎」など国際的に高い評価を受けているサントリー製品を含め、関税が日本産ウイスキーの米国でのさらなる値上げの引き金になりかねないためだ。
創業家出身の6代目社長として3月に就任した鳥井氏は、アジアなどでも需要はあるとして「売り先を変えるという手はある」と述べた。国内でも供給不足の声が挙がっているといい、日本を含めて米国以外の市場への配分を増やす可能性を示した。
一方で商機もある。仮に報復関税の応酬となればサントリーが現地生産するバーボンなどの競争力が高まり、米国市場をより強化できる可能性があるとした。欧州から輸入されるシャンパンやメキシコから入るテキーラの価格競争力がなくなれば、米国で製造する商品にとっては追い風となるという。
トランプ米大統領は2日(日本時間3日)、関税の詳細を発表し、日本に対しては24%の税率を設定するとした。米国は日本にとって最大の輸出相手国。これとは別に25%の自動車関税の追加関税もあり、日本経済や産業界に大きな影響を与える恐れが出ている。
日本郵船の広報担当者は取材に対し、関税により米国内の物価上昇と消費低迷を招き、荷動きが減速する懸念があると回答した。関税引き上げにより、他国が原材料や穀物などを米国ではなく他の国からの輸入に切り替えるような動きも考えらえれ、荷動きの変化を見極め、迅速かつ柔軟に対応していきたい、と続けた。
三菱商事の広報担当者は範囲が広く、影響については今後の政府間の交渉進捗(しんちょく)も踏まえて慎重に精査するとした。その上で自動車関連事業の一部に短期的な影響が出てくる可能性があるが、米国への輸出ビジネスは大きくなく全体への影響は限定的だとの見方を示した。
伊藤忠商事は自動車関連事業に一定のマイナス影響が見込まれる一方、米国内での取引が堅調に推移することも予想され、全体としては影響を最小限に抑えられると考えているとした。
三菱重工業は一部の部品は日本から供給しており、具体的な関税の内容によっては影響があるかもしれないとし、今後状況を注視しつつ対応するとした。
トヨタ自動車の広報担当者は、同社はこれまでも米国企業の一員として、顧客ニーズに応えられるよう取り組んできたと強調。関税の影響については引き続き状況を注視するとして、それ以上のコメントを控えた。
同社を巡ってはトランプ氏が2日、主要な自動車産業を有する日本と韓国を批判する中で、100万台の外国産自動車を米国で販売をしているなどとして名指ししていた。
マツダの広報担当者は米国の関税措置は日本の産業全体や同社の事業活動に、大きな影響を及ぼすと受け止めているとコメント。影響を最小限にすべくあらゆる対応策を検討しており、価格変更は、拙速に判断するのではなく、市場の動向や競合環境を慎重に分析した上で判断したいとした。
日系自動車メーカーへの影響度合いは米国の現地生産体制の比率や米国事業への依存度によって変わってくるとみられている。ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは利益規模に対する影響度合いは日産自動車、マツダ、SUBARU(スバル)で大きいとみる。日産は米国販売における米国産車の割合は低くないが、利益の絶対額が小さいとし、マツダは利益額の低さに加えて、米国産車の割合が低いと吉田氏は指摘する。
トランプ米大統領が2日発表した貿易相手国・地域に課す相互関税の税率は、主に既存の貿易収支に基づいて算出されていた。他国の関税率や貿易障壁を加味するとの当初の方針とは異なっている。
2日夜に公表された相互関税の算出方法に関する説明の中で、米通商代表部(USTR)は2024年の米国勢調査局のデータに基づき、当該国の対米貿易黒字をその国の総輸出額で割る計算式を提示。そして、その数字を2で割って相互関税の税率を出した。
例えば、中国の昨年の対米貿易黒字は2950億ドル(約43兆3400億円)で、輸出額は4380億ドルだった。トランプ政権の計算式に従い、中国の対米貿易黒字を輸出額で割ると68%程度。これを2で割ると、関税率は34%になる。この計算でいくと、日本や韓国など他国の関税率もほぼ同じ結果となった。
米国が貿易黒字を計上している国にも一律10%の税率が適用される。
USTRの声明によると、実際の障壁に対する税率を計算することは技術的には可能だが、今回の方法は貿易赤字を是正するというトランプ大統領の目標を達成するものになっているという。
「各国の何万もの関税や規制、税制、その他の政策の貿易赤字への影響を個別に計算することは、不可能ではないにせよ複雑だ。一方、二国間の貿易赤字をゼロにするのに整合的な関税水準を算出することで、それらの複合的な影響を代用することができる」と、署名のない声明で指摘した。
トランプ大統領は2日、ホワイトハウスのローズガーデンで「米国に課されている関税」に基づく一連の関税率と、その半分に相当する「割引相互関税」が記載されたボードを持ちながら、相互関税について説明した。
同関税の算出方法は、トランプ大統領の発表時までほとんど知られていなかった。さらに混乱を招いたのは、トランプ氏が発表した関税率が、大統領令に添付された付属文書に記載されたものと若干異なっていたことだ。例えば、韓国の場合はトランプ大統領のボードでは25%、付属文書では26%と記載されていた。
トランプ政権は相互関税の税率について、関税と非関税障壁の両方を考慮した計算になるとしていた。そして、トランプ氏のボードには、「為替操作と貿易障壁を含む米国に課される関税」と題されたカテゴリーの下に税率が表示されていた。
実際に使用された計算式は、ホワイトハウスが当初示唆していた計算方法とは異なる。
トランプ政権の計算式には、輸入需要の価格弾力性と関税に関する輸入価格の弾力性という2つのパラメーターが含まれ、これらは事実上相殺される数値に設定された。
市場の注目は、ドナルド・トランプ米大統領の政権が水曜日に発表した米国輸入品に対する広範な関税の根拠となる数字をいかに導き出したかに向けられている。この関税により世界の金融市場は暴落し、世界中で懸念が巻き起こった。
トランプ大統領とホワイトハウスはソーシャルメディアで、他国が米国に課していると主張する関税率の詳細を示す一連のグラフを共有した。これらの関税率には、各国の「通貨操作と貿易障壁」が含まれているとされている。
隣の列には、各国および欧州連合に対する米国の新たな関税率が表示されます。
これらの税率は、ほとんどの場合、各国が米国に「課した」とトランプ政権が主張する額のおよそ半分である。CNBCは、これらの関税に関する米国政府のデータを独自に検証できなかった。
市場観測者がその計算式を逆算してみるのに時間はかからなかったが、 結果は混乱を招いた。 ジャーナリストで作家のジェームズ・スロウィッキ氏を含む多くの人々は、米国は貿易赤字を特定の国からの輸入で割って各国の関税率を算出したようだと述べた。
こうした方法論は、関税を計算する従来の手法とは必ずしも一致せず、米国が物品の貿易赤字のみを考慮し、サービスの貿易を無視していたことを意味する。
例えば、米国は中国が67%の関税を課していると主張している。公式データによると、2024年に米国は中国に対して2,954億ドルの赤字を計上し、輸入品は4,389億ドル相当だった。2,954億ドルを4,389億ドルで割ると、結果は67%だ!ベトナムについても同じ計算が成り立つ。
「この方式は、関税レベルや非関税レベルの歪みという意味での相互関税ではなく、米国との貿易不均衡に関するものです。ベンチマークは米国への輸出よりも多くの米国製品を購入することであるため、アジア、特に貧しいアジア諸国にとって、短期的に関税を引き下げたいという米国の要求を満たすことは非常に困難です」と、ナティクシスの新興アジア担当シニアエコノミスト、トリン・グエン氏は述べている。
「米国製品ははるかに高価であり、最高レベルの関税の対象となっている国の購買力は低いことを考えると、このような選択肢は最適ではない。例えば、ベトナムは米国との貿易黒字が4番目に大きいことで際立っており、関税発表に先立ち、猶予なく米国に対する関税をすでに引き下げている」とグエン氏は述べた。
米国はまた、貿易黒字が出ている地域に対して10%の課税を課したようだ。
米通商代表部はウェブサイトでそのアプローチを示したが、それはいくつかの違いを除けば、サイバー探偵たちがすでに解明していたものと多少似ているように見えた。
「各国の関税、規制、税金、その他の政策の数万件の貿易赤字への影響を個別に計算することは、不可能ではないにしても複雑であるが、それらの複合的な影響は、二国間貿易赤字をゼロにすることと一致する関税レベルを計算することによって近似することができる。関税および非関税政策とファンダメンタルズが原因で貿易赤字が持続する場合、これらの政策とファンダメンタルズを相殺するのと一致する関税率は相互的かつ公平である」とウェブサイトには書かれている。
USTRはまた、輸入価格に対する輸入の弾力性、つまり外国製品の需要が価格にどの程度敏感であるか、および関税の上昇が輸入品の価格上昇に転嫁されるかどうかについての推定値も含めた。
USTR ウェブページのこのスクリーンショットには、使用された方法論と計算式がより詳細に示されています。
一部のアナリストは、米国政府の手法により合意に達する余地が広がる可能性があると認めた。
野村のグローバル・マクロ調査責任者、ロブ・サブバラマン氏は「関税の数字をめぐる不透明性は、取引を行う上である程度の柔軟性をもたらすかもしれないが、米国の信頼性を犠牲にする可能性があるとしか言えない」と述べた。
ドナルド・トランプ米大統領の衝撃的な追加関税発表を受けて木曜日に欧州株式市場が急落する中、スポーツウェアから宝飾品まで幅広い商品を販売する大手小売店の株価は最も低迷した。
欧州企業が米国の消費者に販売する多くの商品は、東南アジアで製造されているか、東南アジアの工場を経由している。東南アジアは、トランプ大統領の最高関税の一部によって予想外の打撃を受けた、発展途上国で輸出依存型の経済圏を含む地域である。
カンボジアでは、同国の輸出の約70%を生産する衣料品や履物工場で100万人近くの人々が働いており、49%という最も高い関税率を課せられた。
一方、ラオスからの米国輸入品に対する関税は48%、ベトナムは46%、タイは36%、インドネシアは32%に設定された。トランプ政権の関税算出方法は、サービス貿易と最高関税の対象となる国の低い購買力の両方を無視しているとして、厳しく批判されている。
シティのアナリストらは、スリランカとバングラデシュも、関税が「予想よりもはるかにひどい」と指摘した工場拠点の一つだ。
このニュースを受けて欧州の小売株は急落した。
宝飾品メーカーのパンドラの株価は木曜日に11%急落した。同社の製造・精製拠点は東南アジアのほか、中国、日本、インド、南米、北米、ヨーロッパに広がっている。
ドイツのスポーツウェアメーカー、プーマ
アディダス
一方、それぞれ11%と9.7%減少した。英国のJDスポーツ
靴メーカーのドクターマーチンは5.5%下落した。
5.9%下落し、英国の高級ブランドバーバリーは6.2%下落した。
「トランプ関税が企業の利益とキャッシュフローに与える影響は、関税がどのくらいの期間続くか、そして問題となっている企業と業界に大きく左右される」とAJベルの投資ディレクター、ラス・モールド氏はCNBCに電子メールで語った。
「最大の課題を抱える企業は、総売上の大部分が米国向けで、サプライチェーンの大部分がアジアに拠点を置いている企業かもしれません。衣料品小売業者は、この点を非常に注意深く見守るでしょう。サプライチェーンを再編成できるかもしれませんが、時間がかかるでしょう。」
米国と同様に、小売業者が極めてグローバルなサプライチェーンを持つ場合が多いため、企業利益は圧迫され、消費者はより高い価格を支払うことになると予想されます。
「アジアはスポーツウェアの主な調達拠点だが、事業コストは急騰している。市場や小売パートナーの在庫が消費者への影響を若干遅らせるだろうが、それは数カ月だけだ」とキルター・シェビオットの消費者裁量アナリスト、マムタ・ヴァレチャ氏は語った。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのグローバルエコノミスト、ケイリン・バーチ氏は木曜日、専門小売ブランドが将来計画を立てるのはより複雑になるだろうとCNBCに語った。
「今回の関税は予想よりも高かった。その内容については不確実性が大きい」と彼女は述べ、トランプ大統領が将来的に関税を引き上げることも引き下げることもできると説明した。
「つまり、政権はすでに、これらの数字が最終的にどうなるかについて留保を付けている。しかも、これは市場からの圧力が来る前の話だ。だから、6カ月後や4年後に関税がどうなるか全く分からないのに、企業はどこで商品を生産し、販売し、売り出すか、どうやって確実に考えることができるのか?」
バーチ氏は、パンデミックによるインフレショックの間、消費者は概ね価格上昇に追いつくことができたが、これは価格上昇が政府の景気刺激策、堅調な労働市場、賃金上昇と相まってのことだったと述べた。
「今回は需要面が追いつくとは思えない」と彼女は語った。
●中東情勢
●エマージング
トランプ米大統領が強化している関税政策は、政権1期目に仕掛けた貿易戦争よりも中国経済に大きな打撃を与えそうだ。
シティグループによると、トランプ政権2期目で打ち出された中国からの輸入品に対する計54%の関税は、2025年の中国国内総生産(GDP)成長率を2.4ポイント押し下げる可能性がある。中国側が講じるとみられる景気対策は考慮していない。
BNPパリバやソシエテ・ジェネラル、オーバーシー・チャイニーズ銀行、ING銀行のエコノミストらは、1-2ポイントの成長率下押しを想定。中国政府は先月、今年のGDP成長率目標を5%前後に設定したと発表している。
モルガン・スタンレーの邢自強氏らエコノミストは「米国の関税ショックは、18-19年よりもはるかに大きく、広範囲に及ぶ」とリポートで指摘。
「中国の対米輸出への直接的な関税ショックに加え、米国が他の貿易相手国に対して広範囲にわたる関税引き上げを実施することで世界貿易が減速するため、間接的な影響も顕著になる」と予想した。
大幅な景気減速は中国当局にさらなる景気刺激策の実施を促す可能性が高い。一部のエコノミストは、数兆元規模の追加政府支出や銀行への流動性供給という形の対策になるとみている。
中国政府の高官は、外部からの衝撃を打ち消す行動を起こす用意があると繰り返し示唆。中国政府は3日、米国の関税政策を非難し、報復すると表明。ただ、具体的な措置は示していない。
みずほセキュリティーズアジアの周雪シニアエコノミスト(中国担当)は「必要であれば中国はさらに1兆-2兆元(約20兆-40兆円)の特別国債を発行することは十分あり得る」との見方を示した。
政府はすでに、今年1兆3000億元の超長期特別国債を発行し、そこで得た資金を消費財の購入補助に充てる計画を立てている。
金融政策
中国経済は今年に入り安定しつつあった。その矢先に米国の関税政策による影響が及び得る。ただ、これまでのところ、米国が先に引き上げていた関税による打撃の兆候はほとんど見られていない。
少なくともモルガン・スタンレーやシティ含む7つの国際的な銀行がここ1カ月で中国の25年GDP成長率予測を上方修正したが、その見通しもリスクにさらされている。中国政府が追加の刺激策を打ち出さなければ、今年の成長率目標は達成できない可能性もある。
シティの余向栄氏らエコノミストは3日のリポートで、「関税の影響は25年4-6月期から顕在化し始める可能性がある」と分析。
「追加の刺激策が実施されるかどうかはまだ分からないが、GDP成長率予測4.7%に対して50-100ベーシスポイント(bp、1bp=0。01%)の下振れリスクがあるとみている」とコメントした。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は中国の金融政策について、今月中に市中銀行の預金準備率が0.25ポイント引き下げられ、5月には7日物レポ金利が10bp引き下げられると予想。年内に預金準備率が計100bp低下し、金利は計30bp引き下げられると見込んでいる。
クレディ・アグリコルCIBの治暁佳チーフエコノミスト(中国担当、香港在勤)は「流動性を注入し市場心理を支える必要性があることを踏まえると、4月に預金準備率が引き下げられる可能性が高まっている」との考えを示した。
中国政府は3日、米国に対し最新の関税措置を直ちに撤回するよう求めるとともに、自国の利益を守るために対抗措置を取ることを宣言した。
トランプ米大統領は2日、貿易相手国に対し相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、各国の関税や非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。中国は発動済みの20%に加え、34%を上乗せする。
中国商務省は、米国の動きは長年にわたる多国間貿易交渉での利益バランスを損なうものであり、米国が国際貿易から多大な利益を得てきた事実を無視していると主張。「中国はこれに断固として反対し、自国の権利と利益を守るために対抗措置を講じる」とした。
一方、ケンブリッジ大学で中国開発を専門とするウィリアム・ハースト教授は「トランプ大統領の関税は確かに中国企業の助けにはならず、一部の分野では現実的な痛みをもたらすだろうが、中国経済に決定的な打撃を与えることはない」と指摘。「対米輸出は中国にとって重要性が低下している。関税は、中国が欧州や東南アジア、アフリカなど他の地域との貿易を拡大することにつながるだろう」と述べた。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
### **■ 為替市場**
- **ドルが主要通貨に対して下落**。
→ **円・スイスフランに対して6カ月ぶりの安値**。
→ **ユーロも対ドルで1.74%上昇(6カ月ぶり高値)**。
- **円は対ドルで1.95%高の146.445円**。
- **市場は米雇用統計(4日発表)とパウエルFRB議長の講演に注目**。
### **■ 債券市場**
- **米10年債利回りは14.6bp低下の4.049%**(一時4.004%まで低下)。
- **米2年債利回りは18.7bp低下の3.717%**(一時3.69%まで低下)。
- **安全資産として国債に資金が流入**。
→ **景気後退懸念が強まり、債券価格が上昇(利回り低下)**。
### **■ 米国株式市場**
- **株式市場は急落**(貿易戦争・景気後退懸念)。
- **ダウ:1,679ドル安(20年6月以来最大の下落率)**。
- **ナスダック:約6%安(20年3月のコロナ暴落以来の急落)**。
- **S&P500:約5%安(時価総額2.4兆ドル喪失)**。
- **ハイテク株が大幅安**。
- **アップル:9.2%安(5年間で最悪のパフォーマンス)**。
- **エヌビディア:7.8%安**。
- **アマゾン:9%安**。
### **■ 金先物市場**
- **金価格は1.41%下落し、1オンス=3,121.70ドル**。
→ 前日に**史上最高値を更新**も、**利益確定売りが発生**し反落。
### **■ 原油市場**
- **米原油(WTI)先物は6.64%安の1バレル=66.95ドル**。
→ **米関税政策の影響+主要産油国の増産決定が売り材料に**。
### **■ 全体まとめ**
- **米国の「相互関税」発表を受け、リスク回避の動きが加速**。
- **ドル安・円高・国債利回り低下(債券高)・株価急落**の流れに。
- **市場は今後のFRBの金融政策や経済指標を注視**。
### ■ロンドン株式市場
- **FTSE100指数**が下落(2024年8月以来の大幅安)。
→ **米国の相互関税導入**による**貿易戦争懸念**と**景気後退懸念**が影響。
- **ポンド高**が輸出企業にマイナス材料。
- **FTSE250指数**も2.23%安。
- **銀行株(FTSE350銀行株指数)**は7.65%安。
→ HSBC(8.9%安)、バークレイズ(8.7%安)。
- **個人用品株指数**は10.59%急落、バーバリー10%安。
- **鉱業株指数**は銅価格下落で5.26%安。
### ■欧州株式市場
- **STOXX600指数**が8か月ぶりの大幅安(1月中旬以来の安値)。
- **ドイツDAX**:3.01%安、**イタリアFTSE MIB**:3.60%安、**スペインIBEX**:1.19%安。
- 投資家の不安心理を示す**ユーロSTOXX50ボラティリティ指数**は25.54に上昇。
- **欧州銀行株指数**は4.94%安、資源株や石油・ガス株も4%台の下落。
- 個別銘柄:
- **アディダス**:11.7%安、**プーマ**:11.2%安(関税懸念)。
- **LVMH**(ルイ・ヴィトンなど):5.6%安(EU・スイスへの関税懸念)。
### ■ユーロ圏債券市場
- 国債利回りが低下(安全資産へ資金流入)。
- **ドイツ10年債利回り**:2.636%(9bp低下)。
- **ドイツ2年債利回り**:1.93%(11bp低下)。
- **ECB利下げ観測**が高まったが、後半にはやや後退。
- **米独10年債利回り格差**:141bpに拡大。
- **イタリア・ドイツ間の格差**:112bp、**ドイツ・フランス間**:72bp。
全体として、**米国の保護主義的関税政策**が世界的に株安・債券高・通貨高(ポンド)という**リスク回避の動き**を引き起こした状況です。
備忘録(2025/4/2)
●海外企業決算
●海外企業
●日本企業
●先進国政治動向
トランプ米政権は「相互関税」の詳細発表を米東部時間2日に設定したが、新たな関税の規模と範囲について、政権チームの最終調整がぎりぎりまで続いているもようだ。
事情に詳しい関係者によれば、米東部時間2日午後4時(日本時間3日午前5時)の発表を控え、政権チームは1日の会合で、取り得る選択肢の詳細な議論を引き続き行った。それでも確固とした結論に至っていない。トランプ大統領は今週に入り、関税のアプローチは決定済みと述べていた。
貿易相手国・地域の関税率と非関税障壁に応じて10%ないし20%の税率を一律に適用する2段階の関税制度や、相互関税を各国・地域の状況に合わせ個別に調整する案を含む複数の選択肢が検討されているという。
米東部時間2日の発表まで24時間を切る状況で、首都ワシントンとウォール街ではさまざまなうわさが飛び交った。
全ての国・地域からの輸入品に20%のユニバーサル関税を一律に適用するトランプ大統領の当初案に戻ることも協議されている。FOXニュースによれば、トランプ氏自身も一律20%のグローバル関税を検討している。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると、米通商代表部(USTR)は一部の国・地域に限定し、一律関税を賦課する三つ目の選択肢を用意しており、20%のユニバーサル関税ほど高くならない公算が大きいと同紙は伝えた。
一連の臆測にもかかわらず、ホワイトハウスは1日、関税プランの詳細について沈黙を守った。
一方、ベッセント財務長官は今後提示される関税率について、最も高い税率を反映する上限になると議員らに語った。CNBCが伝えた。各国・地域はその上限から税率を引き下げるための措置を講じることができると発言したという。
2段階のアプローチでは、実際の関税と簡単に定量化できる非関税障壁の観点から最大の違反国・地域に対し、最も高い関税率が適用される。ホワイトハウスのレビット大統領報道官は3月31日、欧州連合(EU)や日本、インド、カナダの貿易慣行に不満を表明した。
もう一つのアプローチは、貿易相手国・地域の関税や非関税障壁の現状に合わせ、個別に設定した相互関税を適用する。このアプローチは数週間にわたり公に示唆されてきたが、もはや主な焦点でない様子が最近の一部協議からうかがえる。
レビット大統領報道官は1日昼に記者団に対し、トランプ大統領は「米国民と労働者にとって最善の取引になるよう確実を期すため、貿易・関税チームと詰めの作業を行っている」と説明した。
トランプ氏が最終的にどのアプローチを選択するにせよ、対米貿易で不均衡が生じていない国・地域にも広く適用される可能性があり、米国史上最大の新たな輸入税の一つに数えられる見込み。
各国・地域との新たな交渉窓口が今後開かれると予想されるが、多くが発表に先立ちトランプ政権当局者と既に協議を行っており、今後数週間から数カ月で関税率が変わってくることもあり得るだろう。
トランプ米大統領は米国時間2日に発表した「相互関税」の対象に日本も含め、税率を24%にすると明らかにした。米国は日本にとって最大の輸出先。財務省の貿易統計によると、2024年の対米輸出は
21兆2947億円で全体の約2割を占めた。
具体的な対象品目は現時点で明らかになっていない。トランプ大統領はホワイトハウスの演説で、日本が平均で46%の関税を課していると理由を説明。コメにも言及し、日本が米国産の輸入に700%の関税を課しているとした。
相互関税の発表を受け、日経平均先物は大阪取引所の夜間取引で急落し、心理的節目の3万5000円を下回って3万4830円に下落した。為替はドルが148円後半に水準を切り下げたほか、時間外取引の米株先物も下落した。
トランプ大統領は親密な関係を築いた安倍晋三元首相とのやり取りを振り返り、「日米間の貿易が不均衡だ、何とかしなければならないと伝えた。彼は分かっていると答え、われわれは取引をまとめた。もっと良い取引になっていただろう」と語った。「素晴らしい人物だった。残念ながら暗殺によってわれわれから奪われてしまった」と述べた。
相互関税は、非関税障壁を含めて相手国と同じ水準まで米国への輸入税率を引き上げる措置。トランプ大統領は税率の最低ラインを10%とし、国・地域ごとに適用する税率に差をつけた。カンボジアは49%、中国は34%、台湾は32%、韓国は30%、欧州連合(EU)は20%、英国は10%などとした。「完全な相互関税ではなく、親切な相互関税だ」と述べた。
米国は日本にとって最大の対米輸出品目である自動車にも25%の追加関税を課すことも決めており、日本時間3日午後に発効する。エコノミストらは、自動車関税が日本の国内総生産(GDP)を0.2%程度下押しすると試算する
トランプ米大統領は2日、貿易相手国に対する相互関税を課すと発表した。全ての輸入品に対し一律10%の関税を課した上で、各国の関税および非関税障壁を考慮し、国・地域別に税率を上乗せする。
国・地域別の関税率は日本が24%、中国が34%、欧州連合(EU)が20%、英国が10%などとなっている。
トランプ大統領はホワイトハウスのローズガーデンで行ったイベントで「これはわれわれの独立宣言だ」と述べた。
さらに「われわれはついに米国を第一にする」とし、「貿易赤字はもはや単なる経済問題ではない。国家緊急事態だ」という認識を示した。
トランプ大統領がイベントで示した国・地域別の関税率の表によると、ほぼ大半が、米国に対し課している関税の約半分の水準にとどまる。
トランプ大統領は「これは完全な相互関税ではなく、親切な相互関税だ」と述べた。
輸入車に対する新たな25%の関税は3日発効すると表明した。
ドナルド・トランプ氏の弁護士、ボリス・エプスタイン氏は2023年後半の会合で大胆な主張をした。トランプ氏の大統領任期は必ずしも2期に限定されないというものだった。
同年10月、エプスタイン氏はある関係者と首都ワシントンの中心部で話をした際、トランプ氏は24年の大統領選で勝利してもレームダック(死に体)になるとの考えに反論した。その人物によると、エプスタイン氏は法律を研究し、トランプ氏が28年に再び出馬する方法を見つけられると信じていると語った。
当時その関係者は、エプスタイン氏が本気だったとしても、同氏の発言は笑える話だと考えていた。その関係者はワシントンで人々にエプスタイン氏の発言を伝え、同氏はトランプ氏がまだ24年の共和党予備選に勝つ前から、すでに大統領3期目の計画を立て始めていたと冗談めかして話した。だがそれから1年半が経過し、その関係者は当時の会話を振り返り、不安を覚えている。トランプ氏は最近、任期終了後も政権にとどまり続ける可能性を公然とほのめかしているからだ。
現在トランプ氏の外部顧問を務めているエプスタイン氏は、本記事へのコメントを控えた。ホワイトハウス広報部長のスティーブン・チャン氏は3期目について考えるのは「あまりに時期尚早」と述べた。
トランプ氏は先週末、現在の任期が終了する29年1月の後も在職し続けることについて、「冗談を言っているのではない」と述べた。ワシントンでは、3期目を目指すトランプ氏の本気度を巡って長く続いていた議論が一気に加速した。同氏はNBCニュースとのインタビューで、さらに4年の任期を勝ち取るための「方法」があると主張した。トランプ氏は2期目が終了すれば82歳になる。
16年に初めて大統領選に勝利して以来、トランプ氏は2期を超えて在職し続けることについて、思いを巡らせたり、冗談を言ったり、ほのめかしたりと、さまざまな形で言及してきた。同氏が深刻な話題を持ち出す際のざっくばらんな態度によって、3期目という考えはトランプ流の「ロールシャッハテスト」と化している。トランプ氏を恐れ、嫌っている人々は危険信号を感じ取り、崇拝する人々はたいてい受け流すか一緒に笑い飛ばしている。
トランプ氏の顧問の間では同氏の発言に対する批判者の懸念を一蹴する姿勢も見受けられ、トランプ氏は冗談を言っていると主張したり、メディアやリベラル派を挑発していると論じたりする。一方、トランプ氏に近い関係者の中には、政権高官らのチャットを巡る問題から注目をそらすためだとの見方もある。この問題では、機密性の高い軍事攻撃について高官らが議論するグループテキストチャットに国家安全保障担当補佐官がジャーナリストを加えていたことが明るみに出た。トランプ氏は最近、3期目に関する発言について友人に対し、「メディアを混乱させる」ために行ったと話したという。この人物がウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に語った。
ただ、共和党幹部の中にはトランプ氏の言葉を額面通りに受け止めており、同氏は政権にとどまろうとする可能性があると内々に語る人たちもいる。インタビューでこうした幹部らは、法律事務所や大学、企業、議員などはトランプ氏の2期目の政策にこれまでほとんど抵抗を示していないと指摘。今後トランプ氏が権力を強め続けるなら、同氏を阻止することはますます困難になる可能性があると語った。
エプスタイン氏が3期目に関して人々と話し合ったという事実は、トランプ氏の最側近の一部もこの考えを検討したことを示している。
トランプ氏は憲法上、3期目の選出は禁じられている。憲法修正第22条は、大統領が2期を超えて選出されることはできないと定めている。
トランプ氏1期目の副大統領マイク・ペンス氏の首席補佐官を務めたマーク・ショート氏は、トランプ氏が3期目を目指すとは思っていないと述べた。ただショート氏は、自身が否定してきたトランプ氏の他のアイデアが実現したことを認め、「私は以前に『彼にはできない』と言ったことがあるが、彼はそれを実行する能力があることを示してきた」と語った。
ショート氏は、共和党支持者の間でトランプ氏の支持率が高止まりしている間は、共和党はトランプ氏に立ち向かうことはないとの見方を示した。「大統領の政策が経済的な影響を及ぼし支持率が低下すれば、もっと多くの共和党員が声を上げるだろうが、それまではそうしたことは起きない」と同氏は述べた。
トランプ氏に近いある人物は、同氏の発言を真剣に受け止めるべきではないと話した。トランプ氏のとっぴなアイデアで行き詰まった類似の例を尋ねると、その人物は即答した。グリーンランドの購入だという。ただ、デンマーク自治領のグリーンランドを取得するというアイデアはトランプ氏の大統領1期目では実現性の低い同氏の気まぐれに過ぎなかったものの、2期目では米外交政策の重要課題となった。
トランプ氏の3期目という話題は大衆文化にまで広がっている。ポッドキャスト「All In」の司会者ジェイソン・カラカニス氏は3月中旬、ゲストに挑発的な仮定の質問を投げかけた。トランプ氏が3期目を目指して立候補し、対抗馬が現在カリフォルニア州知事を務める民主党のギャビン・ニューサム氏の場合、どちらに投票するかというものだった。トランプ氏1期目に首席戦略官を務めたスティーブ・バノン氏は同月、米メディアのニュースネーションに対し3期目に関する計画について、「われわれは取り組んでいるところだ」と語った。
トランプ氏が3月30日に3期目に関する発言をして以来、記者らは同氏に発言を明確にするよう求めている。最初のインタビューが公開されてから数時間後の同日夜、トランプ氏は「今は3期目について話したくない」と述べた。31日には大統領執務室で、「調べたことはない。可能な方法があるとは聞いているが、私はそれについては分からない」と話した。
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は31日、「われわれが実際に考えていることではない」と述べた。
トランプ氏と側近らから発せられる一貫性を欠くメッセージは、オンライン上やワシントンのパーティーの場などで臆測を呼んでいる。一説によると、トランプ氏はJD・バンス副大統領、あるいは別の人物を大統領候補に立て、自身は副大統領候補として出馬する可能性がある。その後、大統領は辞任し、トランプ氏が再び大統領になるというシナリオだ。だが、これは憲法修正第12条に抵触する。同条は「大統領職に就く資格を憲法上有しない者」は、副大統領に就く資格もないと定めている。
アンディ・オグルス下院議員(共和、テネシー州)は、憲法修正第22条を改正する法案を提出した。連続しない2期を務めた大統領は3期目を目指すことが可能になる内容で、この条件に当てはまるトランプ氏にはさらに4年間の任期が与えられることになる。ただ、憲法改正はそう簡単ではない。オグルス氏の案が採択されるには、連邦議会の上下両院で3分の2以上の賛成を得て、米国の4分の3の州の承認を得る必要がある。
トランプ氏は20年の大統領選に向けた準備期間中、3期目についてたびたび言及していた。19年6月のNBCニュースとのインタビューでは「3期目はないだろう」と述べ、3期目の可能性を否定したように思われていた。
翌20年の6月、トランプ氏は息子のドナルド・トランプ・ジュニア氏によるインタビューを受け、その様子はトランプ陣営のユーチューブチャンネルで放映された。ジュニア氏は質問を始めようと、「3期目に出馬しないのであれば」と切り出した。
トランプ氏はジュニア氏を称賛し、「良いインタビューをしている」と答えた。
2024年の選挙活動中にトランプ氏はこの話を時折持ち出し、3期目、さらには4期目の可能性について言及した。
民主党はトランプ氏のそうした発言などを問題視し、民主主義の擁護を2024年の大統領選の主要テーマとしたがうまくいかなかった。
オハイオ州選出の元民主党下院議員、ティム・ライアン氏は民主党について、「2016年以降と同じ対応をすれば、16年以降と同じ結果になるだろう」と語った。その上で、「彼(トランプ氏)は経済を台無しにし、政府のあらゆる権力を掌握している。(人々は)なぜそれ以外のことについて話したいと思うだろうか」と述べた。
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
アクティビスト(物言う株主)が2025年第1・四半期に世界中の企業に要求した提案件数は前年同期比17%増の70件に上り、米国企業向けは46%増の41件に膨らんだことが英銀行バークレイズの最新データで分かった。
エリオット・インベストメント・マネジメントやマントル・リッジ、スターボード・バリューといったアクティビストが、英石油大手BP(BP.L), opens new tabや米配車大手リフト(LYFT.O), opens new tabなどに経営変革を迫った。
バークレイズの株主アドバイザリー部門グローバル責任者ジム・ロスマン氏は「現在アクティビストはあらゆる不確実性を利用している。前年同期よりも企業との対立が増加したが、合意に至るケースやアクティビストによる取締役ポストの獲得数も増えた」と話した。
こうした背景には、昨年に記録的な数のアクティビストが世界の企業を標的にした流れが今年初めに及んでいることがある。また、トランプ米大統領の高関税政策と連邦職員の大規模リストラ、米景気後退への懸念が重なり、市場が不安定な状況になって、アクティビストが企業に働きかける好機となっている。
要求項目の約4分の1が経営戦略および業務改善に関するもので、この割合は昨年とほぼ同じだ。事業部門の売却や企業売却など企業の合併・買収(M&A)要求は依然、優先順位が低い。世界のM&A件数が過去最高を記録した21年の約半分となっている。
しかしロスマン氏によると、アクティビストは成功も実感している。成功の指標となることが多い取締役ポストの獲得数は約34%増の51に急増した。
こうした動きを受け、先行き不透明であっても収益を上げたい新設ファンドや、これまでアクティビスト活動と一線を画してきたファンドが「新規参入者」となっている。
データによると、第1・四半期の新規参入数は11に上った。前年同期との比較データはないが、昨年を通じては計47だった。
バークレイズの担当者は、今年はさらに多くの企業が株主からの要求に直面し、その多くが米国企業に集中すると予測している。
今年第1・四半期はアクティビストの日本での活動も活発化し、前年同期比45%増の16件に急増した。一方で欧州では活動が低調で、18%減の9件にとどまった。
世界で最も活発な金融市場であり、あらゆる国・地域間の交易条件を決定する外国為替市場には、システム全体の危機に発展しかねない欠陥が存在する。
主要プレーヤーらは直観的にそう感じているが、恐らく手遅れになるまで証明できそうにない。
グローバル外為市場の1日当たりの取引額は7兆5000億ドル(約1120兆円)と、他の全ての主要資産クラスを合わせた額より多く、絶えず変動を繰り返す巨大なキャッシュプールのようだ。しかし最近になって、シティグループやドイツ銀行、XTXマーケッツなど主要プレーヤーが、プールの実際の深さを心配し始めた。
取引プラットフォームの乱立と、自動化の普及により市場の厚みに錯覚が生じ、大手金融機関の撤退で実際には流動性が失われたと懸念される。取引拒否の増加や主要プラットフォームの取引量減少、買い手と売り手が提示する価格の差の変動といった兆候が挙げられるが、微妙で捉えにくい。いずれも「流動性の蜃気楼(しんきろう)」と呼ばれる現象を暗示し、市場参加者にとってリスクが知らずに高まることも考えられる。
シティの外為電子取引責任者マーク・メレディス氏は「表面的には流動性がかなり潤沢に見えるかもしれないが、極端な状況下において、ますます脆弱(ぜいじゃく)になっている」と分析する。
ウォール街にとって、こうした蜃気楼は初めての経験ではない。かつて米国債市場を悩ませ、外為市場に出現したこともよく知られている。中央銀行や企業、年金資産の運用主体、ヘッジファンドのリスク管理や資金業務になくてはならない為替市場では、特に不安心理が広がる恐れがある。
トランプ米大統領の関税を巡る発言が揺れ動き、あらゆる資産がそれに翻弄(ほんろう)されている。予測不能なこの政権を考えると、脆弱な外為市場の流動性がより広範な市場危機にいつか発展しないとも限らず、気掛かりだ。
シティのメレディス氏は「為替市場の水面下に潜む危険を垣間見るには、昨年8月5日に起きたドル円の急落を振り返ればよい」と指摘する。
円建てで借り入れ、高いリターンが期待できる日本以外の資産に資金を投じていたグローバル投資家は、7月末の日本銀行の利上げをきっかけに円相場が急上昇するとポジションの解消に一斉に動き、一方向に大きなフローが生じた。8月5日に円相場は一時3.4%上げ、この日までの5営業日は2008年以降で最も激しい騰勢を経験した。
輸出業者を円高が直撃するとの懸念が広がり、日本株は1日としては1987年以来となる急落に見舞われた。キャリートレードから投資家が撤退し、ナスダック総合指数は一時6.4%の大幅安となった。日銀は結局、「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と示唆せざるを得なかった。
円相場の変動幅とそのスピードは、最近数年で外為市場の流動性が改善されたという想定を裏切るものだ。取引プラットフォームの急増は、流動性を促進する電子取引執行の普及と相まって、日々の為替変動を抑え、平均的な取引コストは大きく低下させる一因となった。
しかし、別の観点から見ると、12年の20から90余りに増えたプラットフォーム乱立で取引活動が断片化した。さらに電子外為取引で執行可否の決定前に確認を行う「ラストルック」と呼ばれる慣行により、多くのプラットフォームで同じ流動性が提示可能となり、市場の厚みに対する錯覚を生んだ。
流動性の低下はある意味で、大量の売りが招くあらゆる相場急落の顕著な特徴だ。特定の水準で取引しようとする人が減ると、価格は下落する。昨年8月のキャリートレードの事例は、流動性が関わる通貨危機の様相を示す有用なモデルと言えるが、市場の断片化や電子取引が、円相場の動きにどの程度影響したかは判断できない。
脆弱な流動性そのものが突発的動きの原因というわけではない。ドラマを引き起こす外的要因が必要であり、マクロ的流れが8月の円高の誘因だった。
米国の関税や対抗措置に関するニュースが続く中で、一部の資産運用主体の間では、「ボイストレード」に復帰する動きが最近顕著だ。シティによれば、より直接的な取引手段の流動性はかなり潤沢で、顧客が今年に入り移行しているという。
ソシエテ・ジェネラルの外為グローバル責任者ジョン・エストラーダ氏は、市場が壊れているとは思わないとしながらも、「ボラティリティーが米大統領選以降、高まっている。流動性は以前と比べ確かにやや潤沢さを欠く」と認識を示した。
●中東情勢
米国防総省は1日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する空爆を継続し、イランへの圧力を強める中、中東での米軍の展開を急拡大していると明らかにした。
ドナルド・トランプ大統領はここ数日、イラン政府が核プログラムを縮小する合意を結ばなければ同国を爆撃すると脅していた。だが当局者2人は、現在の米軍の展開の目的について、イエメンでの米国の作戦を強化し、イランを抑止することだと述べた。この展開は差し迫ったイラン攻撃への準備ではないという。
計画に詳しい複数の米当局者によると、この展開拡大にはF-35戦闘機が含まれており、B-2爆撃機や無人機「プレデター」と共に中東地域に配備される。
米国は間もなく二つの空母打撃群を中東地域に配備する。昨秋から中東で活動している「ハリー・S・トルーマン」と、通常はアジアに配備されている「カール・ビンソン」で、後者は2週間以内に到着する見込みだ。
トランプ政権は3月15日にフーシ派に対する空爆を開始し、イエメンの首都サヌアなどで攻撃を続けており、フーシ派の指導者らや軍事資産を標的にしている。
●エマージング
チリのボリッチ大統領は2日、トランプ米大統領を「まるで皇帝気取り」だと皮肉った。かつて学生運動を指揮した左派系のボリッチ大統領は、米政府による関税発表を数時間後に控え、トランプ氏を痛烈に批判した。
インドを公式訪問中のボリッチ大統領は、トランプ氏の就任式に言及し、「新皇帝気取りの人物」がジェフ・ベゾス氏やマーク・ザッカーバーグ氏、イーロン・マスク氏ら富豪に「表敬訪問されていた」と述べた。
ボリッチ氏はさらに、「相互の合意に基づくルールを考えもせず、一方的に」設ける貿易障壁を批判。「国際貿易の原則をないがしろにするものだ」と述べた。
「一部の国々にどのような条件を突きつけるのか、予測できないような発表があるだろう」と同氏は述べた。
トランプ氏は米東部時間午後4時に、ホワイトハウスのローズガーデンで関税計画を明らかにする。関係者によれば、貿易相手国・地域の関税率と非関税障壁に応じて10%ないし20%の税率を一律に適用する2段階の関税制度や、相互関税を各国・地域の状況に合わせ個別に調整する案を含む複数の選択肢が検討されている。これとは別にトランプ政権は、チリ最大の輸出品目である銅に対する関税を数週間内に発動する可能性がある。当初は数カ月後に期限を設定していた。
●プロファイ、インフラ、自然災害
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
**為替市場:**
ドルは対円・対ユーロで下落。トランプ米大統領が「相互関税」を発表し、日本に24%、EUに20%の関税を課す方針を示した。これにより貿易戦争激化への懸念が高まり、ドルは軟化。終盤の取引でドル円は0.2%下落の149.255円、ユーロドルは0.3%高の1.0828ドルとなった。
**債券市場:**
米国債利回りは低下。トランプ氏の関税発表によるインフレ懸念や経済成長鈍化への警戒感が背景。10年債利回りは2.9bp低下の4.127%、30年債利回りは1.8bp低下の4.497%。
**株式市場:**
値動きが荒い展開となるも、米株式市場は上昇。テスラは5.3%上昇し、一般消費財セクターが2%上昇。アマゾンはTikTok米事業買収に名乗りを上げ、2%上昇。
**商品市場:**
- **金:** 安全資産需要が高まり、0.64%上昇の1オンス=3,166.20ドル。史上最高値を更新。
- **原油:** ドル安や株価上昇を背景に反発。WTI原油5月物は0.72%高の1バレル=71.71ドルと1カ月半ぶりの高値。
ロンドン株式市場はまちまちの動きとなり、FTSE100は反落、中型株中心のFTSE250は0.30%上昇した。米政権の相互関税発表を控え警戒感が強まり、ポンド高もFTSE100の重荷となった。航空宇宙・防衛株や製薬株が下落する一方、オンラインスーパー大手オカドの上昇が中型株を支えた。
欧州株式市場も反落し、ヘルスケア株が下落要因となった。フランスの大臣は米国の関税強化に対抗する方針を示し、ECB総裁は世界経済への悪影響を指摘。ドイツDAX指数は0.66%下落した。
ユーロ圏債券市場では国債利回りが小幅上昇したが、依然として低水準を維持。市場はECBが4月に25bpの利下げを行う可能性を80%と織り込んでいる。
備忘録(2025/4/1)
●海外企業決算
●海外企業
新しい仕事に就いて2週間というのは、確かに十分な時間ではない。だが、リップブー・タン氏には時間の猶予があまりない。
タン氏は3月18日、名声はあるが苦境にあえぐ米半導体大手インテルの最高経営責任者(CEO)に就任し、同社のビジョンを少しずつ示し始めている。27日に年次報告書とともに提出された株主向けの書簡では、人工知能(AI)関連の重要市場でインテル製品の競争力を高めるためには「さらなる努力が必要」と述べた。また、ファウンドリー(受託製造)事業の拡大にも「同様に注力している」とした。
つまり、インテルの前CEOが達成しようとしていたことと同じだ。タン氏は31日に開催されたイベント「インテル・ビジョン」の基調講演でも改めて同じことを話した。AI戦略の強化や特定のコンピューティング作業向けのカスタムチップへの取り組みといったいくつかの抱負を除けば、タン氏の戦略は前任者のものとほとんど区別がつかなかった。人型ロボットに関するインテルの計画については、「乞うご期待」と聴衆に語った。
在任期間が短いということは、タン氏はもっと大きな変化を念頭に置いている可能性があるということでもある。だが、インテルには同じことを繰り返すという選択肢はないだろう。
タン氏の前任者、パット・ゲルシンガー氏は事実上の解任だった。それまでの数年間、インテルの半導体設計を改善し、製造プロセスを台湾積体電路製造(TSMC)と同等レベルに引き上げるという野心的な取り組みを行っていた。
そうした取り組みはうまくいっていない。あるいは、少なくともまだ成果は出ていない。インテルの年間売上高は過去4年間で33%減少した。かつては潤沢な資金を保有していたが、2022年以降は現金の流出が続いている。いまだにファウンドリー事業はインテルが設計したチップの生産が中心で、昨年は134億ドル(約2兆円)の赤字だった。
タン氏が示唆した変化の一つは、インテルのコスト構造にさらに切り込むことだ。同社は昨年、従業員を13%削減したが、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)を構成する他のどの企業よりもはるかに多い従業員を依然として抱えている。
その結果、相対的に効率が低下している。インテルの従業員1人当たりの年間売上高は、昨年は約48万8000ドルで、米マイクロン・テクノロジーや米グローバルファウンドリーズといった他の半導体メーカーを下回る。また、TSMCでは2023年(同社の従業員数が入手可能な直近の年)に従業員が1人当たり90万6000ドルを稼いだのと比べても、はるかに低い水準となっている。
顧客の声にもっと耳を傾けることも、タン氏が示唆した変化になる。これは企業の常とう句のように聞こえるが、インテルにとっては意味がある。数十年にわたる技術的成功と、パソコン用チップの事実上の独占によって傲慢(ごうまん)な企業文化が育まれた。技術学校を出たゲルシンガー氏がインテルに入社する際、面接した採用担当者は「やや傲慢」と評し、「うまく溶け込めるだろう」と記していた。
タン氏はもう少し野心的な目標も示唆している。株主向けの書簡で同氏は、AIに特化したコンピューティング機器の巨大なキャビネットの設計で米半導体大手エヌビディアと競い合うことになると述べた。インテルが出遅れていることを考えると、コストがかかる上、リスクも高いとみられる。エヌビディアは昨年からそうした装置の設計を始めており、現在は生産段階に入っている。
これまでのところ、タン氏の戦略に欠けているのはインテルの事業の根本的な転換だ。ゲルシンガー氏を指導したインテルの伝説的経営者、アンディ・グローブ氏なら現在のAIの波を、決断を下すべき時である「戦略的変曲点」と呼んだだろう。1980年代にインテルが半導体メモリーの製造から撤退した時のようにだ。当時、日本のメーカーが低コストで半導体メモリーを製造していたため、インテルにとっては採算が合わなかった。そこでインテルは、黎明(れいめい)期だったパソコン用プロセッサーの市場に参入した。
アナリストの間では現在、インテルは長年の業界トレンドに従い、製造を半導体の設計やマーケティングから分離すべきとの意見がある。製造部門に外部の投資家を呼び寄せれば、多くの資本を調達することができる。これに関しては、同社はすでに協議を行っている。
投資家はこれまでのところタン氏を歓迎しており、同氏の3月の就任以来、インテルの株価は10%上昇している。だが、ゲルシンガー氏の戦略とは明確に一線を画し、かつ期待が持てる新たな方向性を近いうちに示さなければ、市場の忍耐は尽きるかもしれない。
●日本企業
日本製鉄が買収提案しているUSスチールの将来を左右する重要な人物として、ラトニック米商務長官が浮上してきた。同氏は過去1週間、日鉄やアクティビスト(物言う株主)と会合を重ねてUSスチールへの投資などを競わせている。
事情に詳しい複数の関係者によると、日鉄は141億ドル(約2兆1000億円)でのUSスチール買収が完了した場合、追加で70億ドルの投資を行うと申し出ている。非公開情報であることを理由に関係者は匿名で述べた。
ラトニック氏はまた、USスチールの株式1%を保有し、同社の取締役会を刷新して新たな最高経営責任者(CEO)を指名しようとしているアクティビストのアンコラ・ホールディングス・グループとも会合を持った。アンコラは、日鉄との取引が破談になった場合にUSスチールに60億-70億ドルの投資を行う意向を示しているという。
トランプ大統領はこれまで、USスチールが米国企業として残ることを望むと繰り返し述べている。USスチールを巡る問題でラトニック氏を政権内のキーパーソンに据えたことは、ディールメーカーでありたいというトランプ氏の強い意欲を示唆している。
ホワイトハウスと商務省はコメントの要請に応じなかった。USスチールからのコメントは現時点で得られていない。日鉄とアンコラはコメントを差し控えた。
関係者によると、トランプ氏からUSスチール問題の責任者を任されて以降、ラトニック氏は日鉄の森高弘副会長、USスチールのデービッド・ブリットCEOと会談した。森氏は1日午後に再びラトニック氏と会い、先週に提示した案をさらに引き上げる可能性があるという。
セマフォーは3月27日、日鉄がトランプ政権との協議の一環として、USスチールの製鉄所への最大70億ドルの投資を提示したと報じていた。
協議に詳しい関係者の話では、状況はまだ流動的であり、こうした動きがトランプ氏の考えを変えるかどうかは定かではない。
●先進国政治動向
トランプ米大統領は3月30日、3期目を目指すことは冗談ではないと語ったものの、2期を超えて大統領を務めることを禁じている合衆国憲法をどのように回避するかについては説明しなかった。
以下はトランプ氏が直面する法的な課題。
<憲法上の規定>
合衆国憲法修正第22条は「何人も2回を超えて大統領に選出されてはならない」と定めている。
この修正条項は1951年、ジョージ・ワシントン以来の大統領が自らに課してきた2期という制限をフランクリン・D・ルーズベルト大統領(民主党)が初めて破った後に批准された。
ルーズベルト氏は世界大恐慌と第2次世界大戦の最中に大統領を務め、3期目を終えて、4期目に入った数カ月後の45年に死去した。
キニピアック大のウェイン・アンガー教授(法学)は、憲法は大統領の任期を2期以内で1期4年と定めているとして「最高裁は(大統領任期は)1期4年の2期なのは明らかだ、ドナルド・トランプ氏は3期目に立候補することはできないと言うだろう」と語った。
<トランプ派議員による憲法改正の試み>
野党民主党とトランプ氏が率いる共和党との政治的分断が激しくなっている現在、3期目を務められるようにするための憲法改正の可能性は極めて低い。
憲法改正には議会上下両院で3分の2以上の支持を得て、州議会の3分の2以上が憲法制定会議を招集して提案しさらに50州のうち38州以上の議会が承認する必要がある。
共和党は下院で218議席と民主党の213議席に迫られ、上院で53議席と民主党の47議席をわずかに上回って多数派になっている。共和党は28州の議会で優勢になっている。
南部テネシー州選出の共和党所属の下院議員で、トランプ氏の強力な支持者であるアンディ・オグルス氏は今年1月、合衆国憲法修正第22条を変えて大統領を非連続ならば3期務められるようにする法案を出した。
トランプ氏の2017年からの1期目と、25年からの2期目の任期が連続していないため、法案が可決されれば29年から3期目を務めることが可能になる。
<副大統領として出馬の可能性は>
トランプ氏は米NBCテレビのインタビューで、バンス副大統領が28年の大統領選に出馬し、トランプ氏を副大統領候補とすることが可能性の一つになると語った。
バンス氏が勝利し辞任することでトランプ氏が大統領に復帰する道が開かれるというもの。
しかし合衆国憲法修正第12条には「大統領職に就く資格がない者は副大統領職の資格も有さない」と記されており、トランプ氏は副大統領に立候補することはできない。
米フロリダ州で1日、連邦下院議会選の補欠選挙が行われる。トランプ大統領の政権運営を巡り、共和党の牙城である同州の有権者がどのような反応を示すのか注目されている。
争われるのは、トランプ氏から大統領補佐官(国家安全保障担当)に起用されたマイク・ウォルツ氏と、同様に司法長官に指名されたものの、スキャンダルで指名辞退に追い込まれたマット・ゲーツ氏の2議席だ。ゲーツ氏は指名後に、議員を辞職していた。
ウォルツ氏は昨年11月の選挙で、民主党候補を30ポイント以上の大差で退けた。だが、今回の補欠選で共和党候補のランディ・ファイン氏と民主党候補の教師ジョシュ・ウィール氏は接戦の様相をみせている。先週の世論調査では、ファイン氏のリードが5ポイント未満にとどまった。
フロリダ州のロン・デサンティス知事ら共和党関係者からは「本来なら楽勝のはずの選挙を、接戦にしてしまった」との批判が漏れる。
今回の補欠選は、関税や移民に関するトランプ氏の政策、さらにはイーロン・マスク氏による連邦行政改革に対して、有権者がどのような審判を下すのか、初の試金石となりそうだ。
ファイン氏は選挙戦の初期段階からトランプ氏の支持を受けていた。仮に敗北、あるいは僅差での勝利となれば、トランプ氏にとっては警告サインとなるだろう。
米下院の勢力図は共和党が218議席、民主党が213議席を占めており、その差はわずかだ。今回の補欠選挙で共和党が敗北すれば、辛うじて維持している議席数のリードがさらに縮まる。トランプ氏は下院の多数派維持するために、すでにエリス・ステファニク下院議員の国連大使指名を撤回すると発表した。
ゲーツ氏の議席に関しては、フロリダ州の財務トップ、ジミー・パトロニス共和党候補と、銃暴力反対を唱える活動家ゲイ・バリモント民主党候補が争う。同選挙も、共和党が望むよりはるかに接戦となっている。
「大統領の意向を無視するわけにはいかない」。JD・バンス米副大統領は、グリーンランド北西部にあるピツフィク米宇宙軍基地に駐留する米兵たちにこう語った。副大統領に当てはまることは、本欄のコラムニストにも当てはまる。事が関税であれ、領土拡大、対ロシア関係、米国の同盟関係の将来、中東のパワーバランスであれ、ドナルド・トランプ大統領が本当は何を望んでいるのかを理解することが、この嵐のような、運命を決する年に米国の外交政策がどこに向かっているのかを分析するための鍵だ。
トランプ氏の真意を解明するのは難しい。フランクリン・D・ルーズベルト以来の極めて精力的な動きを示すホワイトハウスを中心に外交・内政の施策が乱発されていることや、トランプ政権の政策の多くが極端に型破りなことが、この政権の分析を著しく困難にしている。分析的というより直感的で、ポスト冷戦時代の主流派のコンセンサスをほぼ否定する知的・道徳的基盤に基づいているトランプ氏の政治手法が、この作業をより複雑なものにしている。
衝撃と怒りを政治的な道具として意識的に利用するトランプ政権のやり方は、冷静で分別のある評価を一層難しくする。挑発して敵が自滅的で極端な反応をするように仕向けるトランプ氏の超人的な才能は、同氏が一躍のし上がった要因として軽視できない。
そこで話はグリーンランドとそれを「手に入れる」ことへのトランプ氏の欲望に戻る。グリーンランドに対するトランプ氏の関心を見くびってはいけない。この地域が手に入れば、トランプ氏は歴史書に名を残すことになる。この問題を巡っては、まさにトランプ氏が好む形で意見が二分化され、同氏を批判する人々の間で嘲笑と怒りの発作が起きているが、国内の世論はおおむねトランプ氏に好都合な方向に動く可能性がある。
超党派の政治エリート層だけでなく、米国の対外政策には同盟関係の維持や国際法の尊重、倫理への正しい配慮が反映されるべきだと考えるほぼすべての人々にとって、トランプ氏のグリーンランド政策は政治的にばかげた話であり、道徳的に極めてひどいものだ。トランプ政権は平和的で民主的な同盟国デンマークから自治領を奪うために軍事力の行使をちらつかせることで、北大西洋条約機構(NATO)と、大西洋を挟んだ米欧の外交コミュニティーが世界平和の礎として長年依拠してきた国際法・規範の枠組み全体を、両方とも台無しにしようとしている。
さらに悪いことに、デンマークは、米国がグリーンランド駐留軍を増やすためのほぼどんな要請にも応じる構えを見せている。トランプ氏に批判的な人々から見れば、NATOおよびルールに基づく秩序の基盤となるものへの米政府の攻撃は不当であり、関係悪化や同盟関係の弱体化というコストは全く払う必要のないものに思われる。
FOXニュースが3月に実施した世論調査によると、トランプ氏のグリーンランド取得計画を支持した回答者は26%にとどまった。しかし米国の歴史は、国民が最終的には支持に回ると信じられる理由を、大統領とその仲間に示している。ラシュモア山に顔が刻まれている4人のうち3人は領土の拡張に動いた(ジョージ・ワシントンはカナダ征服を試み、トーマス・ジェファーソンはフランスからルイジアナの広大な土地を購入し、セオドア・ルーズベルトはパナマの運河地帯の権利を取得した)。エイブラハム・リンカーンでさえ、南北戦争の際に英国に中立を維持させるための暗黙の圧力として、米国がカナダを攻撃する可能性を利用した。デンマーク領西インド諸島に対するデンマークの支配力低下を懸念していたウッドロー・ウィルソンは1917年、現在米領バージン諸島と呼ばれる島々を2500万ドルで購入した。
人口が少ないものの戦略的に重要なグリーンランドは、米国人が歴史的に併合を望んできた類いの場所だ。(北米大陸に初めて到達したヨーロッパ人とされる探検家)レイフ・エリクソンの出身地で、米本土の約4分の1の面積を持つこの土地を取得できれば、ルイジアナ購入を約9000平方マイル(約2万3000平方キロ)上回り、米史上最大の領地取得となる。グリーンランドの人口約5万7000人は、ジェファーソンが取得したルイジアナの推定人口の約半分だ。グリーンランドは長い間、米国の関心の的になってきた。ルーズベルト政権は第2次世界大戦中にグリーンランドが保護領だと宣言して、同地域を支配しようとする英国・カナダと枢軸国の動きをかわした。トルーマン政権は1946年、1億ドルでのグリーンランド購入をデンマークに打診した。
米国の提案に対するグリーンランド住民の反発は、トランプ氏を批判する人々が期待するほどの影響を、米国民の意見に及ぼさないかもしれない。主にアフリカ系カリブ人のバージン諸島民には、人種分離主義者のウッドロー・ウィルソンを積極的に支持する人はほとんどいなかった。米先住民やフレンチ・クレオール(ルイジアナの初期フランス系移民の子孫)は、米国によるルイジアナ買収を歓迎していなかった。メキシコの割譲、帝政ロシアからのアラスカ購入、ハワイの併合にも、影響を受ける人々のすべてとは言えないまでも多くが反対した。
米国のグリーンランド取得に反対する人々の主張には、重みと説得力がある。デンマークは動きが鈍いこともあるが忠実なNATO同盟国であり、同国への侵略をちらつかせることだけでも、その影響が今後数十年続く過激な動きだと言える。ロシアにとってNATOの弱体化がいかに歓迎すべきことであっても、同国が米国のグリーンランド取得を敵対的行為とみなすのは確実だ。それはウラジーミル・プーチン大統領を中国の盟友から引き離したいトランプ氏の望みを損なうことになる。しかし、トランプ支持者と浮動票層の立場から見ると、グリーンランド併合に反対する論拠は決定的なものではない。
トランプ政権を批判する人々が効果を高めるためには、非難を抑え、もっと考える必要がある。
ドナルド・トランプ米大統領は3月31日、今週発表予定の最新の関税に関する計画を決定したと述べたが、その内容は明らかにしなかった。トランプ氏の経済チームは米国の貿易戦略の再構築を巡り意見をまとめるのに苦心していた。
トランプ氏は大統領執務室で「解放の日」の計画を決定したかと尋ねられ、「決めたよ、うん」と答えた。解放の日は、自身に課した関税発表期限の4月2日を指す。
トランプ氏のチームは、事実上全ての輸入品に20%のグローバル関税を課すことを含め、他国に関税を課す方法についていくつかのアイデアを提案してきた。事情を知る複数の関係者によると、31日を通じて一部の側近は、トランプ氏が特定の方針にコミットしていないとの印象を持っていた。関係者によると、協議は流動的な状況が続いており、方針を決定したとのトランプ氏の発言は一部のホワイトハウス顧問の不意を突いた。
非公開での議論では、トランプ氏の優先事項の矛盾が浮き彫りになった。最大の問題は、関税で歳入を増やすと同時に、他国に関税引き下げや他の政策変更を促す材料として関税を利用したいという点だ。だが関税が交渉の対象となり、時間とともに引き下げられる可能性があれば、関税導入によってどれだけの歳入が最終的に見込めるかについて疑問が生じる。また、トランプ氏のチームは同氏の選挙公約を後退させているように見られたくないが、一部の側近は関税が物価に与える影響を懸念している。
全ての目がトランプ氏の決定に注がれる。事実上全ての米国の貿易相手国に対して全輸入品に最大20%の一律関税を適用するのか、それとも交渉の対象となる可能性のある全ての国に個別の関税率を課す、いわゆる相互関税アプローチを採用するのかだ。
トランプ氏は大統領選挙運動中、一律関税を支持していたが、ここ1カ月で公に国別アプローチに方向転換した。4月2日の期限を目前に控えそれぞれの派閥が、「米国第一」の貿易政策にとって自分たちの好む方法がより良いとトランプ氏を説得しようと競い合っている。
トランプ氏と側近らは関税を、製造業の米国回帰に利用するとともに、トランプ氏の看板政策である減税の更新の財源に充てると述べている。一律関税の支持者であるピーター・ナバロ大統領上級顧問(通商・製造業担当)は最近、関税によって年間6000億ドル(約90兆円)の歳入を確保でき、所得税引き下げに充てることができると述べた。
またトランプ氏と側近らは関税を交渉の道具としても利用できると述べている。他国に関税引き下げを迫ったり、移民問題や麻薬不正取引の対策など通商以外の政策変更を求めたりする際に活用できるという。ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長は国別に相互関税を課す計画の主要な提唱者だとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じている。
だがこれらの目標は矛盾する可能性があり、ここ数日間、今後の進め方を巡り政権内で意見が分かれている。
相互関税が交渉の対象となれば、グローバル企業は米国への新規投資に消極的になる可能性がある。関税が長期的に維持されるかどうか不確実なためだ。
逆に、長期的な一律の関税率を設定すれば、各国政府が通商、税制、規制政策について米国と交渉するインセンティブが低下する可能性がある。
政権は公には、歳入を増やすと同時に関税を交渉の道具として利用できると主張している。一律関税支持者が想定するように、一部の関税が恒久的に維持されるとしても、トランプ氏は個別の産業や国に追加関税を課すことに意欲的だ。これは同氏が選挙運動中に提案していた計画で、ほぼ全ての国に最大20%の一律課税をした上で、特定の産業や中国などの敵対的な国に対してはさらに高い関税を課すというものだった。
第一次トランプ政権で上級経済顧問を務め、関税に懐疑的なスティーブン・ムーア氏は、一律関税ではなく相互関税制度の下では、トランプ氏は「関税を引き上げるのではなく、引き下げる制度を創設する可能性が十分にある」と述べた。
中間的なアプローチとしては、多くの国に低い関税を課す一方で、一部の国に高い関税を課すことが考えられる。この税率は個別に設定するか、グループとして課すことができる。政権は以前、低・中・高の3段階の関税を検討したが、その後、個別の税率を設定する計画に変更した。
米アラスカ州のマイク・ダンリービー知事(63)は3月、自宅のテレビでドナルド・トランプ大統領の議会演説を見守っていた。そこで耳にしたのは、国内有数の野心的なエネルギー計画が直ちに盛り上がりそうな言葉だった。ダンリービー氏はアジア歴訪に繰り出した。
トランプ氏はアラスカの「巨大な天然ガスパイプライン」について、「本当に素晴らしいものになる」と持ち上げた。さらに、認可はすでに下りて準備は整っており、「日本、韓国、その他の国々」が主要な投資パートナーになりたがっていると述べた。
ダンリービー氏は今や、トランプ氏の宣言を実現する役割を担う。託されたのは、米国でも特にカネのかかるエネルギー計画だ。アラスカ州の北端から天然ガスをパイプラインで運び、液化して輸出するには440億ドル(約6兆6100億円)の投資が必要となる。だが完成すれば、米国のアジア向け輸出が大きく伸びる。
共和党員でトランプ氏と近い関係にあるダンリービー氏は、米国のパートナーである台湾、タイ、韓国、日本を回る12日間の歴訪に臨んだ。いずれも対米貿易黒字が世界上位だ。
トランプ氏が貿易不均衡の解消を掲げる中、神経をとがらせるアジアのパートナーに対し、ダンリービー氏はアラスカの計画に大規模投資すれば不均衡を縮小できると訴え、共同投資やガスの大口購入を持ちかける。アジアの政府関係者や産業界への売り文句は「米国からガスを調達するのは常に良いこと」だ。
同州の「アラスカLNG(液化天然ガス)」計画は、全長約1300キロのパイプラインを通じてLNGターミナルにガスを運ぶというものだ。しかし、ターミナルはまだ建設されておらず、構想は10年以上前からあるものの、着工にも至っていない。アジアへの供給が始まるのは早くて4年後だ。
中国に次ぐLNG輸入国である日本と韓国はこれまで、アラスカのプロジェクト参画には否定的で、代わりにメキシコ湾岸のベンチャー・グローバルやシェニエール・エナジーなどと契約していた。
今は状況が異なる。ダンリービー氏の訪問中、台湾の国営エネルギー会社はパイプラインへの投資とLNG購入に関する拘束力のない合意を結んだ。韓国の通商相はダンリービー氏と会談し、アラスカの「無限の成長可能性」を称賛し、協力を約束した。石破茂首相は2月にホワイトハウスを訪問し、アラスカ産LNGの輸入は日本にとって本当に素晴らしいと述べた。
トランプ氏は再就任初日、バイデン前政権が敷いたアラスカの環境規制の多くを撤廃し、エネルギー開発の障壁を取り除く大統領令を発した。議会演説の数日前、ホワイトハウスの夕食会でトランプ氏と「世界最大の計画」について話し合ったとダンリービー氏は語る。トランプ氏は「実現させよう、話して終わりにするのではなく」と述べたという。
ガスパイプラインの1日当たり最大輸送能力は約9340万立方メートルとなる見通しで、これはアラスカの天然ガス生産量の約3分の1に相当する。LNGターミナルの年間輸出能力は2000万トンで、メキシコ湾岸にある米最大級のターミナルに匹敵する規模だ。
開発にはアラスカの過酷な環境が立ちはだかる。買い手がトランプ氏を喜ばせるためにLNG購入を増やしたければ、選択肢は米国内の他の場所にもいくつもある。トランプ氏はバイデン前政権が決めたLNG新規輸出の一時停止を解除した。
メキシコ湾岸などは豊富な天然ガスの採掘が比較的容易だが、こうした好条件の地域でさえ、開発業者は労働コストの上昇やトランプ氏の25%の鉄鋼・アルミニウム関税といった逆風にさらされている。機械設備と鉄鋼は通常、LNGプラントの建設コストの約3分の1を占める。
シェニエールのジャック・フスコ最高経営責任者(CEO)は、LNGプロジェクト全般について「商業化、資金調達、建設のめどをつける必要がある。コストが下がることはない」と述べた。
アラスカのプロジェクトを進める動機の一つは州内の需要だ。アンカレジ一帯向けの暖房用ガス田はほぼ枯渇している。パイプラインができれば州内の消費者にもガスを供給できる。
連邦政府から融資保証を取り付けることができれば、開発業者にとって大きな後押しになる。政府保証がなければ多額のリスクは貸し手が負うことになり、資金調達のハードルが上がる。アラスカLNGは約300億ドルの政府保証を申請できる。同州議員は3月、元石油会社幹部でLNG推進派のエネルギー長官クリス・ライト氏に申請の支援を要請した。
アラスカLNGの計画が浮上したのは2014年で、米エクソンモービル、英BP、米コノコフィリップスなどの大手企業が支持した。だが各社は数年で撤退し、計画は州の手に委ねられた。17年に中国の出資者と契約に至ったものの、その後破談となった。
ダンリービー氏は知事選に出馬した18年当時、プロジェクトには「完全に懐疑的」だった。だが新型コロナウイルス禍が収束してサプライチェーン(供給網)が再編され、ウクライナと中東で戦争が続き、人工知能(AI)ブームで電力需要が高まるにつれ、考えが変わった。「以前は希望にすぎなかった」とダンリービー氏は言う。「わずか数年で世界が一変した」
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
米供給管理協会(ISM)が1日発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.0に低下し、3カ月ぶりに拡大・縮小の分岐点となる50を割り込んだ。製造業におけるインフレの指標となる支払い価格も約3年ぶりの水準に急上昇した。トランプ米政権の関税措置の影響を巡る懸念の高まりを示唆した。
PMIの市場予想は49.5。2月は50.3だった。
構成指数では、先行指標となる新規受注が45.2と、前月の48.6から低下し、2023年5月以来の低水準となった。
支払い価格は69.4と、前月の62.4から上昇。22年6月以来の高水準となり、モノの価格の上昇が続き、物価上昇圧力が高まる可能性を示唆した。
供給業者の納入を示す指数は53.5と、2月の54.5から小幅低下した。50を超えると納入の遅延を示す。
雇用は前月の47.6から44.7に低下した。
3月は繊維、一次金属、コンピューター・電子製品を含む9業種が拡大。一方、機械、木材、化学製品を含む7業種が縮小した。
電気機器や電化製品など複数のメーカーが、需要増加の証拠はなく、「関税措置の影響とその対策戦略が日常的な話題になっている」と指摘。また機械メーカーは「事業状況は急速に悪化している」と報告した。
トランプ大統領は4月2日に「相互関税」の発表を予定する。トランプ氏は、関税は減税を相殺して歳入を増やし、長らく衰退傾向にある米産業基盤を復活させる手段とみている。
一方、エコノミストらは、輸入関税はインフレ高進を招き、経済に悪影響を及ぼすと批判的な見方を示す。
LPLフィナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は、「物価が上昇する一方で景気が停滞していることは、経済がスタグフレーションに陥る可能性があることを示唆している」と指摘。
「企業と消費者の不安定な信頼感が支出を減速させ、単なる景気鈍化以上の事態を引き起こす可能性があるため、連邦準備理事会(FRB)は厳しい立場に置かれている」と述べた。
●金融市場、先進国トピックス
世界トップ企業の時価総額が第1・四半期に減少し、約3年ぶりの大幅な落ち込みとなったことが分かった。トランプ米大統領が打ち出す関税措置の影響で、経済成長や企業収益を巡る不確実性が増大していることが背景。米景気後退懸念が強まる可能性がある。
LSEGのデータによると、トップ10企業の第1・四半期末時点の時価総額は13.2%減の18兆6400億ドル。2022年6月末時点以来の大幅な減少となる。
米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O), opens new tabの時価総額は35.7%急減し、8335億9000万ドルとなった。半導体大手エヌビディア(NVDA.O), opens new tabは19.59%減の2兆6400億ドル、同業ブロードコム(AVGO.O), opens new tabも27.56%減の7872億5000万ドル。
ナスダック総合(.IXIC), opens new tabは10.42%値下がりし、22年6月末時点以来の大幅な下げを記録。ナスダックは過去2年間、約84.5%高騰していた。
ゴールドマン・サックスは、関税、成長鈍化、インフレ加速を理由に、25年のS&P総合500種(.SPX), opens new tab構成企業の1株当たり利益(EPS)伸び予想を従来の7%から3%に下方修正した。
カナダに市場を抱える米消費関連企業にとって、トランプ米大統領の政策への反発を背景にカナダで広がる国産品購入運動(「バイ・カナディアン」)が新たな懸念要素として浮上しつつある。
カリフォルニア州に拠点を置く紙おむつメーカーのパラソルは今年1月以来、ある卸売業者と手を組み、カナダ国内のコンビニなどへの販路拡大に取り組んできた、とジェシカ・ハン最高経営責任者(CEO)は語る。
ところが3月上旬になって、この卸売業者がカナダでの反米感情の高まりを理由に仕事から手を引いてしまった。ハン氏は「卸売業者はある小売業者から米国ブランドの発売を中止するよう指示され、われわれに市場環境が許せば再検討すると伝えてきた」と明かした。
ハン氏は「この種の混乱は全く想定していなかった。今までこのような事態が起きたのを聞いたことがない。かなりの逆風であるのは確かだ」と顔を曇らせる。
2024年にはカナダへ3500億ドル弱相当の米国製品が輸入されていただけに、小売店の棚に並ぶ品ぞろえが愛国的な消費行動に基づいてがらりと変われば、影響は大きい。
原因はトランプ氏にある。カナダは米国の51番目の州になるべきだといった発言や、カナダからの鉄鋼・アルミニウムへの25%の追加関税、またその他全てのカナダ製品に関税を適用すると脅していることなどから、カナダの多くの消費者の間で米国製品でなく国産品を買おうとの気運が高まっている。
ハン氏の話では、パラソルはカナダの消費者向けに商品のラベル表示をフランス語にする作業を進めていた。また、ご破算になった卸売業者と共同での販路拡大作戦に投入する商品の選別を開始していたという。
ケベック州サン・ジャン・シュール・リシュリューに住み、母親として医療保険業界で働くレベッカ・アスランさんは、自身が行ってきた国産品を探す取り組みをソーシャルメディアで披露している。
アスランさんはロイターに対し、最近になって子どもの紙おむつを、カナダの数少ないメーカーであるアービング・パーソナル・ケアの商品に切り替えたと話した。「私はこれまで紙おむつがどこで製造されているか考えもしなかったが、明らかにカナダ製紙おむつは入手が難しい。こうした買い物は私たちにとって大きな変化だ」と付け加えた。
アービング・パーソル・ケアは、国内各地の小売業者から販売量を増やしたいとの問い合わせを受けていると説明。事業運営担当副社長のジェーソン・マカリスター氏は「カナダで製造された唯一のブランド化された紙おむつとして、われわれの週当たりの出荷量は4倍になった」と胸を張った。
<進出計画白紙化も>
こうした現象は紙おむつだけにとどまらず、アルコール飲料や柑橘(かんきつ)系果実にも及んでいる。ウイスキーの「ジャックダニエル」を手がける米ブラウン・フォーマン(BFb.N), opens new tabは3月上旬、米国製のバーボンやウイスキーがカナダの酒店から撤去される事態は、カナダ政府による報復関税よりも痛手で、トランプ関税がもたらす不釣り合いなほど大きな副作用だと訴えた。
米カリフォルニア州における柑橘系果実の輸出事情に詳しい関係者は同じく3月上旬、カナダの小売業者が発注を取り消したとロイターに語った。
発酵飲料であるコンブチャの「シナジー」を販売し、米ロサンゼルスに本社を置くGT‘sリビング・フーズは、ウォルマート・カナダを含めたカナダの小売業者が、関税を巡る不透明感を理由に発注を減らしていると明らかにした。
幹部のダニエル・ブコフスキ氏によると、ウォルマート・カナダやロブロー(L.TO), opens new tab、メトロ(MRU.TO), opens new tabなどに商品を卸している業者から、トラック2台分ではなく1台分の購入にとどめると連絡があった。関税問題の展開を見極めているためだという。
米ペンシルベニア州の香水メーカー、ディメーター・フレグランシズは、年内に計画していたカナダ市場への進出を取りやめた。マーク・クレームズCEOは、カナダ国民の気持ちが米国製品から離れてしまっていると指摘。「市場進出は無駄な努力に思えるため、計画を単純に破棄した」と説明した。
ウォルマート・ストアーズ(WMT.N), opens new tabやコストコ(COST.O), opens new tabなど米小売り大手と、こうした企業に商品を納める中国の製造業者は、トランプ米政権による相次ぐ対中関税引き上げでいずれも苦境に立たされている。追加関税の負担を相殺したい米国の発注元は製造業者に値下げを迫るが、製造業者は既に利幅を限界まで縮小しており、発注元の要求に応えるのは難しい。多額の債務を抱える中国の地方政府が支援に動くのも困難で、関係業界の打撃はトランプ第1次政権が貿易戦争を繰り広げた2018年当時よりも深刻だ。
中国広東省・東莞で米小売り大手向けにクリスマス用装飾品を製造するリチャード・チェン氏は米国の対中追加関税で注文が昨年の半分に落ち込み、生き残りに必死だ。「もう値下げの余地はないが、注文を取るために下げざるを得ないこともある。(中略)選択の余地はない」と苦しい立場を明かした。値引きの詳細には触れなかったが「赤字だ」という。
トランプ政権は2月以降、対中追加関税を矢継ぎ早に発動。4月2日にはさらに「相互関税」の詳細を発表する予定だ。
しかし米小売り大手を顧客に抱える中国の低価格帯の製造業者は既に利幅が極めて薄い。
中国製造業者によると、2018年の米中貿易戦争開始以降、労働者の賃金は2-5%上昇し、一部業界では原材料コストも上がった。海外勢との競争も激化し、第2次トランプ政権の追加関税は低価格帯の製造業者にとって「とどめの一撃」となっている。
一方、米ニューヨークのブルックリンに拠点を置くゴミ箱メーカー、シティビンの創業者兼最高経営責任者(CEO)、リズ・ピカラッツィ氏は、中国で製造する製品の関税が52.5%になり、もう中国では生産が続けられなくなったと述べた。「長期的な関税率を7.5%と想定するビジネスモデルだった。本当にショックだ」と肩を落とす。こうした事態をある予測していたが、45%もの追加関税を吸収できる企業はないという。
中国の製造業者や輸出業者10社、および中国のサプライチェーンを利用する米国小売業の幹部2人への取材によると、米国の小売業者は10%の値下げを求めている。しかし今進んでいる交渉では、サプライヤー側が提供できる値引きは平均3-7%程度にとどまっているという。
アジアを拠点とする製造請負業者ゲニメックス・グループを率いるジョナサン・チタヤット氏も「正直に言って、10%もの値下げ余地がある企業はほとんどない。1、2回の注文なら可能かもしれないが、大半の企業にとっては7%が限界だ」と話した。
中国の製造業者は、2018年の貿易戦争時で米国の顧客が関税引き上げ後に代金支払いを拒否するケースが相次いだ経験を踏まえ、今回は代金「前払い」条件を厳格化している。これまでは出荷後30―90日以内の支払いが一般的だったが、現在は「全額前払いでなければ取引不可」という対応を取る企業が増えている。
中国の製造業者と中小企業をつなぐリヤ・ソリューションズの最高ソリューション責任者、ドミニク・デマレ氏はトランプ氏が再選されるやいなや、米国の顧客に今後の支払い条件は100%前払いだと伝えた。「関税の悪夢が来ることは分かっていたからだ」と説明する。
<雇用減の恐れも>
今回の追加関税は中国の工業地帯に深刻な影響を与えており、工場の閉鎖や縮小が進めば大規模な雇用削減につながる可能性があると、アナリストや製造業関係者は警鐘を鳴らす。
オーストラリア・モナシュ大学のホー・リン・シー教授(経済学)によると、中国の製造業者はさまざまな圧力に屈し始めており、「既に多くの企業が事業閉鎖を決断している」という。
スタンフォード大学の2018年の研究によると、関税が1%引き上げられるごとに中国の製造業者の利益率は0.35%低下した。またダートマス大学の推計に基づくロイターの試算によると、2018年の貿易戦争では中国で約350万人の製造業労働者が職を失った。
今回の影響がどの程度になるかは、まだ予測が難しいとアナリストたちは指摘する。
一部の米企業は中国政府が自国の製造業を支援するために、新たな税還付や家賃・光熱費の補助を提供すると見込んでいる。2018年の貿易戦争時にはこうした支援が行われた。
しかしロイターが取材した複数の中国の業者によると、現時点では新たな支援策は確認されていない。
シー教授は、中国政府の支援を疑問視。地方政府の多くは不動産危機の影響で既に莫大な債務を抱えており、以前のように大規模な補助金を提供するのは難しいという。
トランプ政権の関税政策の目的の1つは、製造業を米国に呼び戻すことだが、シティビンのピカラッツィ氏は、コストや品質の観点から現実的ではないと見ている。既に生産拠点を100%ベトナムに移行する準備を進めており、顧客には値上げを覚悟するよう伝えている。「これは米政府が米企業と消費者に押し付けた、極めて不公平な措置だ。米企業を破綻させることは愛国的ではない」と憤った。
シティグループとJPモルガン・チェースを含む銀行団は、カナダの自動車部品メーカー、ABCテクノロジーズ・ホールディングスによるTIフルイド・システムズ買収に向けた債務パッケージを自己資金で賄うことを余儀なくされる可能性がある。
買収完了の期限である4月15日が迫る中、9億ドル(約15億円)のレバレッジドローンには投資家の需要が十分集まっておらず、13億2500万ドルのジャンク債の募集も開始されていない。
トランプ政権が課す関税がTIフルイド・システムズの事業に影響を与えるのではないかという懸念があるためだ。
アポロ・グローバル・マネジメントが出資するABCテクノロジーは昨年11月に、TIフルイド・システムズ買収で合意した。
ABCテクノロジー、TIフルイド、アポロ、シティグループ、JPモルガンの担当者はコメントを控えた。
4月3日に発効する自動車への25%関税は、5月3日までにエンジンやトランスミッションシステムなどの主要な自動車部品にも拡大される。TIフルイド・システムズは自動車用の熱および流体システムソリューションを製造している。
この案件に限らず、クレジット投資家は最近、輸入関税の引き上げや個人消費の低迷の影響を受けやすい企業の案件には参加しない姿勢を見せている。
関係者によると、シティグループはABCテクノロジー向けのレバレッジドローンの組成を主導しており、JPモルガンはジャンク債起債を担当している。
ローンは担保付翌日物調達金利(SOFR)に5.5ポイント上乗せ、額面1ドルに対し95-96セントという比較的高い割引価格で検討されていると関係者の1人は述べた。ローン契約の期限は3日。
銀行は通常、買収が完了する前にコミットした資金をシンジケートローンや債券によって調達し自社バランスシートから切り離す。それができないと、貸し付け債権が銀行の帳簿に残ったままの「ハングデット」の状態になる。
米国では、複数の世代が同居できる住宅を購入するケースが増えている。
全米不動産業者協会(NAR)のリポートによると、昨年の住宅購入の17%が「多世代住宅」で、2021年の11%から上昇。データでさかのぼれる2012年以降で最も高い割合となった。
全年代の購買層のうち、36%が費用節約を多世代住宅購入の最大の理由に挙げた。 45-59歳前後の「ジェネレーションX」世代が多世代住宅を購入する可能性が最も高く、高齢の両親の世話をする必要があることや、成人した子供が家を出ていかないか、戻ってくることを理由に挙げている。
多世代住宅は新しいコンセプトではないが、人気が高まっている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、インフレが家計を圧迫し、住宅価格の高騰が購入を困難にしているためだ。
NARの次席エコノミスト、ジェシカ・ラウツ氏は「同居して節約する方法を模索する家庭もある。住宅ローンや家計のため資金をプールすることは、一部の人にとっては現実的な方法かもしれない」と述べた。
不動産価格の高騰と住宅ローン金利の上昇が相まって、初めて住宅を購入するのが困難になっている。パンデミックで家賃も急騰し、成人した子供が一人暮らしをするのも難しくなっている。
住宅価格の高止まりが予想されるため、多世代同居のトレンドは今後も継続する可能性が高いと、ラウツ氏は指摘。「住宅の値ごろ感を巡る問題は、一夜にして解決するものではない。住宅を購入したい人はこれまでとは異なる方法でアプローチする必要があるかもしれない」と述べた。
あれもだめ、これもだめ、さあどうしよう。株価が落ち込んでも資産が守られるよう投資を組み立てておけば、心の平穏も守られ、お気に入りの銘柄も手放さずに済む。
だが、そのような保険を見つけるのは難しくなっている。米国債だけでなくおそらくドルでさえも、資産を保護するかつての効能を失っている。金価格がこれほど上昇しているのも不思議ではない。
根底にある問題は、投資が保険になるかどうかは他人の反応次第、ということだ。二つ目の問題はとりわけ米国債にとって重要で、インフレ感応度が新時代に入った、ということだ。
S&P500種指数がピークを付けた2月半ば以降の相場の弱さは、本来起こるべきこととそうでないことを示唆している。米国債は予想通りに動き、株安でリターンを出した。ドルはそうはならず、株に連れ安した。金は両方の動きを見せ、株に連れ安した後で急騰した。
当然ながら、数週間のリターンから何かを導き出せるわけではない。ここでは、数十年にわたって米国債がどのように資産価値を保護してきたかを調べ、ドルと金についても論じる。
米国債は1990年代後半以降、株価下落に対して実質的に無料の保険を提供する、いいとこ取りの投資だった。好況時には債券利回りが低下し、価格は上昇した。不況時には米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げし、債券価格はさらに上昇した。市場がパニックに陥ると米国債に資金が殺到し、債券価格は上昇した。さらに、短期的には債券利回りと株価が連動する傾向があったため、米国債は株式ポートフォリオのボラティリティーを抑制し、リターンが大きく目減りするのを防ぐ効果があった。
投資家がインフレに無頓着でいられた時代は終わり、常にインフレ圧力がある時代になったことで、米国債と株式の動きが変化した。インフレ懸念は債券利回り上昇と株価下落を同時進行させる要因になるため、利回りと株価は同方向に動きにくくなった。投資家が2022年に身をもって学んだように、株安時でも米国債で損失を出しかねない。
1970年代から90年代後半までは米国債利回りと株式が反対方向に動いていたが、その後は必ずしもそうではなくなった。株安時の米国債はもはや格好の投資先ではなくなった。
だからといって米国債が無駄なわけではない。利回りは10年物で4.3%と、まずまずの水準に戻った。2020年のような換金売りが起きない限り、市場がパニックに陥った時は需要が集まるはずだ。ただ、かつてその妙味だった長期リターンや、上乗せ料金なしでの短期資産の保護を期待できなくなっただけのことだ。
ドルには別の問題があるが、根本的な原因は同じで、人気がありすぎる、ということだ。米国人にとってドルは単なる自国通貨で、投資対象と見なされることはあまりないデフォルト(初期設定)の選択肢だ。しかし、それはもはや賢明な選択肢ではないかもしれない。
ドルは長年、優れた保険だった。ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)はかつてこれを「ドル・スマイル」と呼んだ。米国が好景気の時は利益を求めて資金が流入するため、ドルが強くなる。不景気の時は、米国の安全資産を求めて資金が流入するため、やはりドルが強くなる。
このところ好景気の時は非常にうまくいっていたが、おそらくうまくいき過ぎだった。主要貿易相手国通貨に対するドルのインフレ調整後為替レートは1月、ドル高是正を狙った1985年のプラザ合意以降で最も高い水準を付けた。米経済が極めて好調で、米国市場が刺激的なテック大手や人工知能(AI)関連株の本拠地だったため、国外投資家は米国を選んだ。
景気が低迷しても資金は流入するだろうか。危険なのは、「米国例外主義」の取引が広がりすぎたことだ。ドナルド・トランプ氏の大統領再選が駄目押しとなった。もし米国が苦境に陥れば、マネーは安全を求めるのではなく、流出するだろう。
通常はパニックが起きると、投資家の資金が株式市場から本国に逆流する一方、安全とされる米国債に資金が流入して相殺される。だが現在は、米株式市場に流入する外国資金が以前より大きく増えている一方、国外市場に流出していて引き揚げ可能な米国の資金が減っている。
ルファーのファンドマネジャー、マット・スミス氏は、「外国資金が流入し、米国の資金を消費支出や政府借り入れに回せた」と指摘する。これが逆転すれば、ドルはスマイルどころではなくなるだろう。
トランプ陣営の一部から聞こえてくる、ドルを保有している外国人を罰する「マールアラーゴ合意」の構想も、ドルの敬遠につながりかねない。
金はすでに大きな恩恵を受けている。外貨準備をドル建てにすることに懸念を抱く各国の中央銀行が金を買い増すとの思惑から、1年強で価格が50%上昇した。これは問題かもしれない。米国債やドルとは異なり、金はインフレ圧力が高くなった新時代でも好調だろう。だが米国債やドルと同様に、すでに多くの資金が流入している。パニックが起きたらどうなるだろう。
金は2008年3月までの12カ月間にも今回と同程度、上昇した。当時は金融不安への懸念が高まっていた。だが、米証券大手ベアー・スターンズに次いでリーマン・ブラザーズも破綻すると、金価格は1トロイオンス当たり1000ドル超から700ドル強に急落した。現金が必要になった投資家が売却したためだ。
現金は短期的には最も安全な資産で、今はそこそこ利回りもある。だが不況時に価値が上がるわけではないため、長期投資よりは投資のタイミングを計りたい時に向いている。
安全資産を選ぶ際は、資産そのものの性質と同じくらい、誰がそれを保有しているかが重要になる。パニック時に誰もが手放そうとするものは、急いで売らざるを得ない場合、価値が大きく減ることになる。それでも筆者は米国債を好み、手元の現金を通常時より増やすだろう。ただ、どの選択肢も以前に比べると妙味ははるかに薄い。
大手自動車メーカー各社が1日発表した第1・四半期の米自動車販売は増加した。トランプ大統領が予定する自動車関税の発表を控え、ピックアップトラックやSUVの販売台数が前年同期比で伸びた。関税措置により車両の価格は数千ドル上昇する可能性がある。
米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N), opens new tabは17%急増し、メーカー別で首位となった。韓国製のシボレー・トラックスなど手頃な価格のクロスオーバーSUV(多目的スポーツ車)の需要に支えられた。
フォード・モーター(F.N), opens new tabの販売台数は1.3%減少した。一部の車種の生産中止などが響いた。
一方、トヨタ自動車の北米部門トヨタモーター・ノースアメリカ(TMNA)(7203.T), opens new tabは約1%増加。
他のアジア勢でも、韓国の現代自動車(005380.KS), opens new tabのほか、マツダ(7261.T), opens new tab、ホンダ(7267.T), opens new tabが増加した。
米電気自動車(EV)大手テスラは2日に、第1・四半期の納入台数の減少を発表するとみられる。
調査会社コックス・オートモーティブは、第1・四半期の米国の新車販売台数が全体で0.6%増の379万台になると予測している。
こうした中、オークションサイトのオーナー、ダグ・デムーロ氏は関税について「多くの車両の価格がほぼ必然的に一夜にして大幅に上昇するだろう。そしてそれが売り上げの減少を招くことは間違いない」と指摘。
コックスは、自動車関税の発効によりインフレが上昇する可能性があり、これが「2025年の新車販売台数の抑制につながる公算が大きい」と述べた。
●中東情勢
●エマージング
中国の一部銀行が消費者向け融資の金利を引き上げ始めた。先月過去最低水準まで引き下げたばかりだったが、不良債権の増加懸念から方針を転換した。景気浮揚に取り組む政府に逆風となるとみられる。
銀行関係者やウェブサイトの情報によると、中国建設銀行(601939.SS), opens new tab、中国招商銀行(600036.SS), opens new tab、中国銀行(601988.SS), opens new tab、華夏銀行(600015.SS), opens new tabなどは、消費者向け融資の金利を少なくとも3%に引き上げた。1日から適用される。
中国政府は米国との貿易摩擦が激化する中、消費者信用を拡大し需要を押し上げようとしており、銀行は先月、貸出金利を過去最低となる2.5%程度に引き下げていた。
中国では消費者信頼感が依然として脆弱であり、金利上昇は借り入れ意欲を抑制する可能性があるとアナリストは警告している。
しかし国営銀行のある融資担当者は、低金利にはマイナス面もあると指摘し、資金繰り難に陥っている借り手が借り入れを増やして返済が滞れば、銀行の資産の健全性が損なわれる恐れがあると述べた。
また、一部の借り手は低金利の消費者向け融資を消費に回さず、高金利の住宅ローンの借り換えに利用しているとの懸念もあるという。
ナティクシスのシニアエコノミスト、ゲイリー・ウン氏は「政府は消費拡大を推進しているが、純金利マージンの急速な縮小と資産の質の悪化など、金融の安定性を懸念しているようだ」と述べた。
<不良債権の増加>
中国の主要国有銀行における総融資額のうち、個人向け消費者ローンの割合は2%程度に過ぎないが、不良債権は増加傾向にある。2024年末時点の個人向け融資の不良債権比率は、中国工商銀行(601398.SS), opens new tabで2.39%、中国農業銀行(601288.SS), opens new tabは1.55%と、いずれも20年以来の高水準となった。
渤海銀行では消費者ローンの不良債権比率が24年末時点で、前年の4.44%から12.37%に急上昇している。
中国交通銀行(601328.SS), opens new tabの幹部は先月の決算会見で、昨年から個人向け融資の返済不能リスクが全体的に高まっており、銀行の資産健全性に対する圧力は今年も続くと予想していると述べた。
INGの中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は、中国の高い貯蓄率に言及し、家計にお金があるものの支出に慎重になっているとの見方を示した。「より重要な要素は家計の信頼を回復することであり、そのためには健全な賃金上昇と資産価格の安定が第一歩となる」と述べた。
中国の民間不動産調査会社の中国指数研究院が1日に発表した3月の国内100都市の中古住宅価格は平均で前月比0.59%下落し、下落率は2月の0.42%から拡大した。新築住宅の価格は小幅ながら上昇したものの、不動産セクターの問題の根深さがうかがえる結果となった。
同じ100都市における新築住宅価格は0.17%上昇した。
中古住宅価格は前年比では7.29%下落した。2月は7.3%の下落だった。
中国の不動産政策が「下落を食い止める」ことに重点を置いているにもかかわらず、不振は続いている。3月上旬に発表された李強首相の政府活動報告では、不動産市場を安定させるための持続的な対策の必要性が強調された。
指数研究院は、一線都市を含む大都市が下落を食い止める努力を主導する可能性が高いと指摘。その上で、大都市圏と中小都市の格差は続くかもしれないとした。
フィッチ・レーティングスは3月29日付のリサーチノートで「中国の住宅不動産市場は、最近の幾つかの回復にもかかわらず、人口動態の変化、高水準の売れ残り在庫、住宅の手に入れにくさを背景に、継続的な課題に直面する可能性がある」との認識を示した。
●プロファイ、インフラ、自然災害
世界最大規模の政府系投資基金であるノルウェー政府系ファンドは31日、デンマークとドイツで建設が進む洋上風力発電プロジェクト2件の権益49%を14億ユーロ(約15億ドル)で取得したと発表した。
ノルウェー銀行(中央銀行)投資管理部門(NBIM)が独エネルギー大手RWE(RWEG.DE), opens new tabの二つの風力発電プロジェクトの株式を取得する。2025年7─9月期の初めには完了する見通し。建設と運営は独企業が担う。
RWEによると、両プロジェクトの発電能力は計2.64ギガワット(GW)。ドイツとデンマークの260万を超える世帯へ十分な電力を供給できる。
アナリストによると、これによりRWEの発電プロジェクトに対する権益の割合は約40億ユーロ縮小する一方、財務上は約1億5000万ユーロの利益獲得になるという
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
円が対ドルで上昇。米国の製造業・労働市場の悪化や、トランプ大統領の関税措置への警戒感から、安全資産とされる円が買われた。トランプ氏は輸入品に対する「相互関税」を発表予定で、米国経済への悪影響が懸念されている。
債券市場では、金利低下。トランプ政権の関税発表を控え、リスク回避の動きが強まった。株式市場はまちまちで、S&P500とナスダックは上昇、ダウは下落。EV大手テスラやハイテク株が上昇したが、ヘルスケア株が下落した。
金先物は利益確定売りで反落、原油先物も景気減速懸念で下落した。
ロンドン株式市場と欧州株式市場は反発。米政権の相互関税発表を控え、下落していた相場の買い戻しが進み、航空宇宙・防衛株や貴金属株が上昇。英FTSE250は0.59%高、ドイツDAXは1.70%高。
トランプ政権が輸入品に20%の関税を課す案を起草したとの報道がある中、英政府は経済連携の合意による関税撤回を期待。欧州株では銀行やテクノロジー株が上昇し、ユーロ圏の消費者物価指数(HICP)が鈍化したことで、ECBの利下げ観測が高まった。
ユーロ圏債券市場では国債利回りが低下。インフレ鈍化を受け、ECBの4月利下げの可能性が強まり、ドイツ10年債利回りは2.659%、イタリア10年債利回りは3.768%まで低下した。EUは米国の関税措置に対し、報復措置を準備していると警告した。
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