備忘録(2025/9/12-15)
●企業
スイス金融大手UBS(UBSG.S), opens new tabが、同国政府による新資本規制への対応として、米国へ拠点を移すことを検討している。米紙ニューヨーク・ポストが14日報じた。
同紙によると、UBS幹部がトランプ米政権高官と面会し、米金融機関の買収や合併を含む戦略の転換を準備している。
UBSのセルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)は11日、米ブルームバーグTVのインタビューで「われわれはスイスに拠点を置く成功したグローバル銀行として業務を継続したい」と強調。スイスや世界中の顧客に多くを提供できると説明した。
一方、エルモッティ氏は政府による新規本規制は懲罰的でやり過ぎだと批判し、株主やステークホルダーの利益をどう保護するかを考える必要があると述べた。「だが、いかなるシナリオやわれわれの対応についてもコメントするには時期尚早だ」とも語った。
スイス政府は6月、UBSによるクレディ・スイス買収を受け、新規制を提示。UBSは、260億ドル超の中核的資本を上乗せする必要が生じる可能性がある。ロイターは7月、関係者の話として、資本規制への対応でUBSがスイスからの本社移転を検討する必要性が高まっていると報じた。 別の関係者は、ロンドンも候補地だとしている。
解熱鎮痛剤「タイレノール」の製造元である米コンシューマーヘルスケア大手ケンビューのカーク・ペリー暫定最高経営責任者(CEO)は今週、ロバート・ケネディ・ジュニア厚生長官と緊急で非公開会合を開き、「タイレノールと自閉症の間に明確な関連性はない」というメッセージを伝えた。
事情に詳しいある関係者によると、ペリー氏は、厚生省が近く公表する報告書でタイレノールを自閉症の考え得る原因の一つに挙げないようケネディ氏に働きかけた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、ケネディ氏が子どもの自閉症を引き起こし得る原因に、タイレノールの有効成分アセトアミノフェンの妊娠中の服用を挙げる予定だと報じた。厚生省は今月中に自閉症の原因についての報告書を公表する見通しだ。
WSJの報道後、ケンビューの株価は1日で9%下落し、幹部らの間に懸念が広がった。
関係者によると、ケネディ氏との会合で、ペリー氏とキャロライン・ティレット最高科学責任者(CSO)はアセトアミノフェンと自閉症に明確な関連性はないと主張。妊婦用の解熱剤としてアセトアミノフェンに代わる安全な選択肢はほとんどないと訴えたという。
中国の市場監督当局、国家市場監督管理総局(SAMR)は15日、予備調査の結果、米半導体メーカーのエヌビディア(NVDA.O), opens new tabが独占禁止法に違反していることが判明したと発表した。
中国は昨年12月、独禁法違反の疑いがあるとして、エヌビディアの調査を開始した。
国家市場監督管理総局は、エヌビディアがどのように独禁法に違反したかは明らかにしていない。一方で、エヌビディアによるイスラエルの半導体設計会社メラノックステクノロジーズ買収を2020年に条件付きで承認した際にエヌビディアが約束した内容に関し違反があった疑いがあると指摘した。買収承認では、エヌビディアが画像処置半導体(GPU)アクセラレータを中国市場に引き続き供給することが条件の一つになっていたが、バイデン前米政権時の輸出規制により、最先端アクセラレータの販売が中止に追い込まれている。
同局は調査を継続するとした。エヌビディアのコメントは得られていない。
中国の独占禁止法によると、違反した企業は前年の年間売上高の1─10%の制裁金を科される可能性がある。エヌビディアの最新の年次報告書(1月26日までの1年)によると、中国売上高は170億ドルで全体の13%を占めた。
予備調査の結果は、米中が貿易摩擦や中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業を巡るスペインでの閣僚協議の2日目を開始したタイミングで発表された。アナリストからは、中国が交渉を優位に立とうという意図が透けるとの指摘が出ている。
戦略コンサルティング会社グリーンポイントのマネジングディレクター、アルフレド・モンチュファル・ヘル氏は「米中は、より有利な立場で交渉するためのレバレッジをかけているようだ。ただ双方とも利害を理解しており、非常に計算した行動を取っている」と述べた。
中国が最先端の人工知能(AI)半導体チップにどの程度アクセスできるかは、技術覇権をめぐる米中戦争における最大の争点の一つだ。
罰金以外に中国当局の決定の影響は現時点ではっきりしないが、ジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)が、米規制を順守する形で改良した先端半中国に供給し続けるという戦略が試練に直面する可能性がある。
●マクロ
米ミシガン大学が発表した9月の消費者マインド指数(速報値)は5月以来の低水準となった。一方で5-10年先のインフレ期待は2カ月連続で上昇。労働市場と物価に関する懸念が景気見通しを圧迫する格好となった。
9月のミシガン大消費者マインド指数(速報値)は55.4
エコノミスト予想の中央値は58.0
8月は58.2
1年先のインフレ期待は4.8%
予想と一致
8月も4.8%
5-10年先のインフレ期待は3.9%
予想は3.4%
8月は3.5%
今回の統計では、雇用の先行きや家計の状況に対する消費者の不安が浮き彫りになった。
ミシガン大の消費者調査ディレクター、ジョアン・シュー氏は「消費者が想定する自身の失業確率は今年に入って急上昇し、9月もさらに上昇した。労働市場でマイナスの動きがあれば、自分自身が影響を受けかねないと消費者が懸念していることを示す」と発表文で指摘。「さらに消費者は物価の高止まりにも負担を感じている」と付け加えた。
最近公表された経済指標は、労働市場の減速と根強いインフレを示した。8月雇用統計では非農業部門雇用者数の伸びが大きく鈍化し、失業率は2021年以来の高水準に上昇した。8月消費者物価指数(CPI)では総合指数が前月比0.4%上昇と再び加速した。
関税への根強い懸念もセンチメントを押し下げる要因となっている。調査対象の消費者の約6割が関税に関するコメントを自発的に寄せた。
現況指数は8月の61.7から61.2に低下。期待指数も55.9から51.8に下がった。
支持政党別では、共和党支持層と無党派層の消費者マインドが4カ月ぶりの低水準に落ち込んだ一方、民主党支持層ではわずかに改善した。
調査は8月26日から9月8日にかけて実施された。
9月のニューヨーク連銀製造業景況指数は急低下した。需要の落ち込みが原因。新規受注や出荷の減少がこれを裏付けている。
製造業景況指数はマイナス8.7に低下
ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値はプラス5
全ての予想を下回る
前月はプラス11.9
指数はゼロが活動の拡大と縮小の境目
新規受注と出荷の指数はいずれも2024年4月以来の低水準となった。
トランプ大統領による不安定な通商政策や移民取り締まりの影響が続く中、製造業は依然として苦戦し、同部門の雇用は4カ月連続で減少している。全米供給管理協会(ISM)の製造業指数も8月に6カ月連続で縮小を示した。
ニューヨーク連銀の製造業景況指数は、8月に9カ月ぶりの高水準に上昇したが、それ以前はマイナス圏に落ち込む局面が目立った。
一方、仕入れ価格と販売価格の指数はやや低下したものの、依然として高止まりした。
雇用指数は5月以来初めて縮小を示し、週平均就業時間に関する指数もマイナス圏に落ち込んだ。
6カ月先の製造業活動を示す見通し指数は、足元の状況と比べてやや明るさを見せているが、ニューヨーク連銀は「楽観的な見方は依然として抑制されている」と指摘した。
今回の調査は2日から9日にかけて実施された。
中国の経済活動が8月も減速し、指標は軒並み予想を下回った。投資も急速に伸び悩んでおり、当局が成長率目標の達成に向けて刺激策を強化する可能性が高まっている。
国家統計局が15日発表した8月の小売売上高は前年同月比3.4%増加。ブルームバーグ調査の予想中央値は3.8%増だった。7月は3.7%増加していた。8月の工業生産は前年同月比5.2%増と、昨年8月以来の小さな伸びにとどまった。予想は5.6%増加だった。7月は5.7%増えていた。
1-8月の固定資産投資は前年同期比0.5%増と、2020年の新型コロナウイルス禍を除けば、同期間としては最も悪い数字となった。
みずほセキュリティーズアジアの中国担当シニアエコノミスト、周雪氏は「7-9月(第3四半期)の国内総生産(GDP)成長率は著しく減速する公算が大きい」と指摘。「10-12月(第4四半期)も比較対象となる前年同期の水準が高く、成長率は恐らくさらに大きく鈍化するとみられ、大規模な景気刺激策が講じられなければ、政府が掲げる5%前後の成長目標の達成が脅かされることを示唆している」と分析した。
輸出の勢いが鈍る中、多くのアナリストや投資家は上期(1-6月)に5.3%成長を記録した中国経済が年末にかけて減速すると予想している。中国の景気減速がどの程度になるかは、トランプ米政権の関税措置による影響で圧迫される脆弱(ぜいじゃく)な世界経済にとって、大きな意味を持つ。
ピンポイント・アセット・マネジメントの張智威チーフエコノミストは「10月に7-9月のGDP統計が発表された後、当局は政策を微調整する可能性がある」と述べた上で、「5%の成長目標達成が困難にならない限り、大型の刺激策が打ち出されるとは見込んでいない」とコメントした。
トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席と19日に話すと述べた。米中は今週、高官による貿易協議を実施。協議では、字節跳動(バイトダンス)が展開するTikTokの米国内での運営を維持するための枠組みで合意した。
トランプ氏は15日、ソーシャルメディアに「習国家主席と金曜日に話す。米中関係は依然として非常に強固だ!!!」と投稿した。
ベッセント米財務長官は、マドリードでの協議終了後、記者団に対し、TikTokを米国内で運営し続けるための枠組みに合意したと説明。トランプ大統領と習主席が会談し、合意を完了させると述べた。具体的な条件については明らかになっていない。
「トランプ大統領と習主席は金曜日に会談し、合意を完了させる。だがTikTokに関する合意の枠組みは既に存在する」とベッセント氏。「TikTokを米国の管理下に置かれた所有形態に切り替える枠組みだと考えている」と述べた。
TikTokは、米国での事業売却の猶予期間締め切りが今週に迫っている。トランプ氏は既にこの期限を複数回延長し、TikTokの継続を認めてきた。
関税の停止
米中の高官協議は9月に入り活発化。10月末に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)にはトランプ氏と習氏が共に出席する見通しで、直接会談の可能性がある。先週には、ルビオ国務長官とヘグセス国防長官が中国側のカウンターパートと会談した。
両国は互いに課した高関税措置を一時停止しており、最新の期限は11月中旬となっている。
米通商代表部(USTR)のグリア代表は15日に記者団に対し、11月の期限到来時に関税停止措置をさらに延長する可能性を示唆した。
「協議が今後も前向きに進めば、さらなる措置を検討する用意がある」とグリア氏は述べた。
次のラウンド
ベッセント氏とグリア氏はマドリードでの協議について、焦点はTikTokに絞られ、他の議題は事実上先送りされたことを明らかにした。ただ中国側は、米国による輸出規制への懸念を提起したという。
14日の協議を前に、中国は米国の半導体分野を対象に2件の調査に着手した。それより先に米国は、半導体メーカーを含む中国企業23社を、「米国の国家安全保障や外交政策上の利益に反する活動に携わっている」と見なされた企業のリストに追加していた。
ベッセント氏は15日、記者団に対し、「約1カ月後に別の場所で再び貿易協議を行う」と述べた。ベッセント氏はこれまで5月にジュネーブで、6月にはロンドンで中国の何立峰副首相と協議している。韓国でのAPEC前に米中間で貿易合意に至ることができるかは「まだ不透明だ」と、ベッセント氏は語った。
「われわれはTikTokに非常に注力し、中国側にとって公正であると同時に米国の国家安全保障上の懸念を完全に尊重する合意であることを確実にすることに重点を置いた。その点は確実に合意に達した」とベッセント氏は説明した。
過去最多のプライベートエクイティー(PE)ファンドが今年、いわゆるゾンビファンド化する見通しだ。新規の投資家資金の調達が難航しているためだと、アークトス・パートナーズの共同創業者でマネジングパートナーのイアン・チャールズ氏が語った。同氏はゾンビファンドを「7年間にわたり機関投資家から資金を調達できていないファンド」と定義している。
チャールズ氏は11日のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「資金調達環境は非常に厳しい」と述べ、今年は新たに設立されるPEファンドの数も減少するとの見方を示した。「現在、各社は成長軌道を維持するのに本当に苦労している」と指摘した。
アークトス・パートナーズの共同創業者でマネジングパートナーのイアン・チャールズ氏Source: Bloomberg
プライベートエクイティー業界はM&A(企業の合併・買収)や新規株式公開(IPO)の低調が3年目に入り、その結果、ファンド運用会社や投資家の利益が圧迫され、新規ファンドの資金調達も冷え込んでいる。
ベイン・アンド・カンパニーのリポートによると、世界で1万8000本以上のプライベートキャピタルファンドが投資家から資金を集めようとしており、需給関係は1ドルの供給に対して3ドルの需要がある状況だという。
買収ファンドが破綻することはほとんどないが、人員を減らして既存投資を少額の資金で運用するだけで新規投資を行えないゾンビファンドとなるリスクを抱えている。
チャールズ氏は「成長を失い始めると、優秀な人材も失い始める」と指摘し、新規資金を集められずゾンビ化するファンドが「今後2年の間に現れてくるだろう」と述べた。
他の大手買収ファンドからも同様の懸念が示されている。業界が直面する課題を幹部が率直に語っている。
アポロ・グローバル・マネジメントのジム・ゼルター社長は今週ブルームバーグテレビジョンに対し「PE業界でダーウィン的な進化が起こるだろう」と述べ、つまり淘汰の時代に入るとの見方を示した。
KKRのロバート・ルーウィン最高財務責任者(CFO)も最近、取引低迷が長引くなかでPEファンドが消滅し始めるとの見通しを示した。
世界の国債市場で利回りが上昇しているのは、金利が高止まりするとの見方を反映しているのであり、財政危機への懸念ではないと、ブラックロックは指摘した。
米国や英国からフランス、日本に至るまで、今年は長期国債の利回りが急上昇。利回り曲線は数年ぶりの水準までスティープ化が進んでいる。こうしたリプライシングの動きは、政府の巨額借り入れや財政赤字に起因するとされることが多いが、ブラックロックの投資・ポートフォリオソリューション責任者、アレックス・ブラジエ氏は異なる見解を示している。
「この世界的な動きは財政状況への懸念を反映したものではないと思う」と同氏は指摘。「むしろ、市場が考える金利の中立水準を反映している。さらに、短期ではなく長期債の購入を促すためのプレミアムも織り込まれている」と続けた。ブラジエ氏はブルームバーグのロンドンオフィスでインタビューに応じた。
中立金利は、景気を刺激も抑制もしない金融政策を指す。ブラックロックはこの中立金利が過去よりも高くなっているとみており、その背景には緩和的な財政政策に加え、特に人工知能(AI)分野での旺盛な投資支出などがあるとしている。
「これらの要因すべてが、経済を安定的に維持するために必要な金利水準を押し上げている」とブラジエ氏は説明した。
債券市場は長らく続いた低金利時代を経て、依然として新たな均衡点を模索している。ドイツの30年国債利回りはわずか4年前にはマイナス圏にあったが、現在は3.25%近辺で推移。英国の同年限利回りは最近、1990年代後半以来の高水準に達した。
2022年に当時のトラス英首相が打ち出した大型減税案に対する反応など、一時的に変動が生じた局面はあったが、利回り調整はおおむね秩序立って進んでいる。さらに、新規発行債には数十億ドル規模の需要が集まり、投資家の関心の強さを裏付けている。
財政改革への支持を得られず今週初めに首相が辞任したフランスでさえ、国債消化に苦労していない。長年にわたる放漫財政の結果、フランスの財政赤字はユーロ圏で最大となり、債務残高は1秒当たり5000ユーロ(約86万円)のペースで増え続けている。
それでも、フランスで先週実施された国債入札では、国民議会(下院)での信任投票を控えていたにもかかわらず旺盛な需要が確認された。ドイツ国債との10年物利回りスプレッドは、1月以来の高水準だった直近ピークの83ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)から78bpに縮小した。
ブラジエ氏はこうした動きについて、投資家が「最終的にはフランスが財政状況を立て直す」と見込んでいることの表れだと語った。
ロシア人の妻の殺害犯アザマト・イスカリエフ受刑者(37)にとって、戦争は刑務所を脱出するための片道切符だった。
この男は2021年夏、離婚を望んだ妻を自分が所有する車内で刺殺し、殺人罪で9年の刑を受けた。刑期のまだ3分の1も服役していなかったが、ウクライナで戦うという見返りに釈放されて恩赦を受けた。
6カ月の戦場経験でも、自分を拒絶した女性たちに対する暴力的復讐心は和らげられず、民間生活に戻った後の昨年10月、口説いたのを拒んだ元恋人の女性を勤務先の店内で60回以上ナイフで刺した。そして7月、この残虐な殺人の罪で19年以上の刑を言い渡された。
イスカリエフ受刑者の事件を、サラトフ市の裁判記録と公判を追った地元報道を突き合わせて考えると、ロシアが今後直面しうる深刻な社会問題が見えてくる。戦争が終われば、恩赦を受けた受刑者を含む数十万の兵士が帰還するからだ。
国際組織犯罪対策グローバル・イニシアチブ報告書でロシア政府の動員解除後の難題について書いた英国のロシア専門家マーク・ガレオッティ氏は「25年初めの時点で合計して、おそらく150万人以上のロシア人の男性と女性が戦争に参加していた」と述べた。
「ますます多くの動員解除が始まるにつれて、ロシアは戦争の心理的影響を抱えた帰還兵の波に直面するだろう」と述べた。
クレムリンの消息筋3人によれば、この懸念は最高指導部にも届いている。プーチン大統領は、軍の一斉復員を潜在的なリスクと見なし、社会と自らが築いた政治体制を不安定にしないよう、慎重な対応を探っている。
ある消息筋は、狙いはソ連のアフガニスタン侵攻終結後に起きた社会的混乱の再現を避けることだと明かす。当時、帰還兵は組織犯罪の拡大を助長し、1990年代のソ連を荒廃させた。
同じ消息筋は続ける。民間生活に戻った兵士の多くは、いま受け取っている高額の給与のようには稼げず、不満が高まるだろう。たとえば、モスクワ出身の新兵はウクライナ戦争に参加した最初の年に、少なくとも520万ルーブル(約960万円)を得られる。うち、契約一時金は190万ルーブルで、モスクワの平均年収にほぼ匹敵する額だ。
大統領府、国防省、司法省はいずれも、ウクライナから帰還する部隊がもたらすリスクについてコメントの要請に応じなかった。
イスカリエフ受刑者は2件の殺人を認めて現在は重警備刑務所で服役しており、ロイターは接触できなかった。
帰還兵の管理は、ロシアだけの課題ではない。米退役軍人省によれば、ベトナム戦争に出征した米国人約270万人のうち、「かなりの少数派」が心理的・社会適応の問題に苦しんだという。
ウクライナ戦争には、他の多くの紛争と決定的に異なる点がある。両陣営が受刑者を前線に送っていることだ。
ロシア矯正当局とウクライナ情報機関のデータによれば、ロシアは2022年の侵攻開始以降、12万ー18万人の受刑者を兵士として採用した。
これまでに帰還した兵士の中心は、受刑者、重傷者、そして戦うには年齢が高いと見なされた人々だ。一方で、プーチン大統領は約70万人がウクライナで戦闘中だと述べる。大多数はなお前線にいる。
国防省は23年の規則改定で、イスカリエフのような受刑者をもはやウクライナから6カ月で動員解除して社会に戻さないようにした。政府当局者は犯罪者が一般の志願兵よりも有利な条件を受けているのは不公平だと述べる。現在は受刑者出身の兵士も通常の契約兵と同様に、戦争終結まで従軍を続ける必要がある。
<帰還兵が殺害した民間人>
ロシアの独立系メディア「ベルストカ」によると、昨年10月時点で約500人の民間人がウクライナ戦争の帰還兵の被害者となった。
ベルストカは報道やロシアの裁判記録を基にした軍事犯罪に関する公開情報を活用した。その結果、少なくとも242人が殺害され、227人が重傷を負ったと計算した。ロイターはこれらの数字を独自に確認できなかった。
ロシア当局は23年12月、プラハに拠点を置く出版社のベルストカを外国のエージェントに指定。ベルストカがウクライナでの軍事作戦に反対し、ロシアの政策について信憑性のない情報を流布しているとの見解を示した。ベルストカはこうした主張に対し、報道内容については、事実を徹底的に確認しており、100%確証のない情報は掲載しないと述べた。
消息筋の別の1人によると、ロシア政府は大量の兵士の帰還が厳しく統制された政治体制に及ぼす影響を恐れているという。
プーチン氏は既に、自らがウクライナで解き放った軍事勢力が国内で引き起こすかもしれない混乱の危険を経験している。23年6月、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者の故プリゴジン氏が、陸軍首脳に対し反乱を起こした事件だ。
別の情報筋によると、クレムリンはプーチン大統領の指示のもと、潜在的な問題を抑え込むため、複数の政策やプログラム、人事を総動員してきた。具体的には、昨年の地域選挙で退役軍人の参加を後押しし、来年の連邦議会選挙では彼らを候補として擁立する方針を進めているという。
プーチン氏は、ウクライナで戦った「戦士」を「真のエリート」の一員と呼び、彼らに栄誉ある職を約束した。またプーチン氏は民間部門の指導者を育てるための「英雄の時代」と呼ばれる指導者養成プログラムに個人的な関心を示している。
プーチン氏は6月の会合で「祖国に奉仕しようと意識的に決断し、その結果として個人的成功を収めた人々は徐々に一定の地位を占めていくべきだ」と述べた。
<アフガン帰還兵との相違>
1990年代の「アフガン帰還兵(アフガンツィ)」と呼ばれる帰還兵たちとの比較については意見が分かれる。彼らの多くは心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患い、一部は薬物やアルコールに対する依存に苦しみ、犯罪を増加させる一因となった。
息子をウクライナで失ったあるロシア人は、現在「ウクライナ帰還兵(ウクラインツィ)」と呼ばれる帰還兵たちは、国家の支援があるためアフガン帰還兵のような問題を避けられるだろうと語っている。
同様の見解を示す政府筋は、1989年のアフガン戦争終結が2年後のソ連崩壊につながり、権力と治安の空白が混乱を招いたと振り返る。ただ、今は事情が異なるという。政治体制も治安組織も強固になっているからだ。ただ、受刑者は特別なカテゴリーであり、リスクは当然ながら一段と高いとは認めた。
一方で、ウクライナ帰還兵はアフガン帰還兵よりも深刻化な問題をもたらす可能性があると主張する人たちもいる。
ソ連のアフガン侵攻を扱った著書「大いなる賭け」の著者、グレゴリー・ファイファー氏はロイターに対し、ウクライナ戦争は、ソ連の公式戦死者数が約1万5000人だったアフガニスタンより、はるかに多くの犠牲者を出した紛争になったと語った。
動員解除の難題を論じた報告書を執筆したガレオッティ氏も懸念を示す。帰還兵問題は「1990年代のような混乱の度合い」には達しないだろうとしつつ、「ウクライナ帰還兵は人口比でアフガン帰還兵よりもはるかに多い。深刻な問題が顕在化する恐れがある」と警告した。
トランプ米大統領が財政赤字を抑え込むために打ち出した最も具体的な措置である大規模な関税引き上げが、法的に覆されるリスクに直面している。米国の財政基盤が一段と不安定になりかねない。
トランプ氏とベッセント財務長官ら政権幹部は、共和党による減税、規制緩和、企業や海外からの大型投資が経済成長を押し上げて歳入を増やすことで、今後数年で連邦政府の借り入れ需要が縮小すると主張している。
多くのエコノミストはこうした見通しに懐疑的だが、関税引き上げが実際に財務省に新たな資金流入をもたらしている点については異論が少ない。
米財務省が12日発表した統計によると、2025会計年度(24年10月-25年9月)の米関税収入は1カ月を残した時点で1650億ドル(約24兆4000億円)に達した。前年度からおよそ950億ドル増加したことになる。
増加分の大半は、トランプ氏が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて発動した関税によるものだと、ブルームバーグ・エコノミクスの分析は示している。しかし、8月29日の連邦控訴裁判所判決は、この措置の合法性に疑義を投げかけた。
トランプ氏は最高裁に上告しているが、有利な判断が示されなければ、政府が巨額の資金を返還する必要が生じる可能性があるとベッセント氏は警告している。同氏は最高裁がホワイトハウスの主張を支持すると確信を示している。
関税収入は年間ベースで3000億ドル以上に上るとベッセント財務長官は予測しおり、これは米国内総生産(GDP)の実質1%に相当する。
この水準の収入は、GDP比6%を超える財政赤字を10年間で3%程度に減らすというベッセント氏の目標に寄与するはずだ。それが失われれば、米国の借り入れ需要を和らげる根拠は、経済成長や生産性向上への期待だけなると債券投資家やエコノミストはみている。
ライトソンICAPのチーフエコノミスト、ルー・クランドール氏は「裁判で財務省側が敗れた場合、赤字拡大を望まない政権は何らかの政策対応を取るだろうが、それが何かは分からない」と語った。
不透明感は企業や経済全体のコストを重くするだろう。景気減速や労働市場の軟化が進めば歳出増と歳入減を招き、財政赤字を一段と拡大させかねない。
エール・バジェット・ラボの推計によると、問題となっているIEEPAに基づく関税が無効と判断されれば、今後10年間で約1兆5000億ドルの歳入が失われ、残る関税収入は4960億ドルにとどまる見込みだ。
多くのエコノミストは長期的に米国の関税収入が従来想定を大きく上回るとみているものの、最高裁が一部関税を無効とし、大規模な返還を命じれば、債券投資家に米財政全体の進路を改めて意識させるリスクがある。
関税は借り入れ増の抑制要因と受け止められている。S&Pグローバル・レーティングは先月、米国のソブリン格付けAA+を維持した際、新たな関税収入の推移を考慮に入れたと明らかにした。
ジェナディー・ゴールドバーグ氏らTDセキュリティーズのストラテジストは今月のリポートで「市場は、多額の関税返還が財務省の財政を圧迫する可能性に神経質になるかもしれない。特に、関税収入が長期的な米政府債務の改善につながると複数の格付け会社が最近指摘していることを踏まえればなおさらだ」と記した。
保守派活動家チャーリー・カーク氏は、JD・バンス氏に大きな期待を寄せていた。
「私はJDが素晴らしい大統領になると考えていることに何の疑いも抱いていない」。カーク氏は4月、これまで未公開だったインタビューでウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)にこう語った。
2人は10歳の年齢差を越えて友情を育み、それがバンス氏を副大統領の座へと押し上げる一助となった。カーク氏はいずれはバンス氏に大統領になってもらいたいと考えていた。
2人の関係は2017年に始まった。バンス氏がFOXニュースの番組に出演した後、カーク氏がソーシャルメディアでバンス氏にメッセージを送ったことがきっかけだった。その後数年間、カーク氏は自らの持つ大きな影響力を駆使してバンス氏の上院議員就任という新たな野望を後押しし、ドナルド・トランプ氏の副大統領候補としての地位を確固たるものにした。
その過程で、カーク氏とバンス氏は強い絆を築いた。2人は定期的に連絡を取り合い、家族について話したり、グループチャットで冗談を言い合ったりした。
2021年、バンス氏が激戦が予想されていたオハイオ州上院予備選への出馬を検討していた際、最初に連絡を取った人物の1人がカーク氏だった。
カーク氏は自らが設立した政治団体が主催したイベントで、バンス氏を献金者らに紹介した。「彼には私にそんなことをする理由もなければ、私が成功するとの期待があったわけでもない」とバンス氏はXへの投稿で振り返った。「彼がそうしたのは、私たちが友人だったからであり、彼が善良な人物だったからだ」
カーク氏は、バンス氏の支持率が1桁だった時期に支持を表明した最初の著名人の1人だった。これが上院予備選の流れを変え、バンス氏の当選につながった。
カーク氏はバンス氏を、共和党員と無所属層に効果的に語りかけることができ、従来は民主党に投票してきた労働者階級の有権者の心をつかむことができる人物だとみていた。「彼は普通で地に足がついているのに、才能があり知的なんだ」とカーク氏は4月のインタビューで語った。
昨年、トランプ氏の副大統領候補の最終候補者の名前が取りざたされ始めると、カーク氏はバンス氏を援護した。トランプ一族との個人的な会話でバンス氏を推し、公の場でも支持を表明したと、元選挙運動スタッフは語った。
10日、銃撃事件の報道が流れると、バンス氏のグループチャットはカーク氏の無事を祈るメッセージであふれた。ホワイトハウスで会議中だったバンス氏は、そこで事件を知ったという。
午後3時少し前、トランプ氏がカーク氏の死去を発表した。
「友よ、よく頑張った」とバンス氏は述べた。「ここからは私たちの番だ」
スウェーデンのクラーナ
欧州で最も価値の高いフィンテック企業の一つである同社は、大規模な新規株式公開(IPO)の基盤を築き、欧州の取引所に目を向けず、ニューヨークに目を向けた。
クラーナの動きは、株式公開で見られる乖離を象徴しており、急成長する米国とアジアが、分裂した欧州を置き去りにしている。
ファクトセットのデータによると、今年これまでに北米での新規株式公開は153件で177億ドルを調達したが、欧州では57件の上場からわずか55億ドルしか調達していない。
この乖離は世界的な現象でもあります。「アジアは今年、非常に活発な動きを見せ、当社の強みとリーダーシップの原動力となっています」と、UBSの株式資本市場(ECM)グローバル共同責任者であるトミー・ルーガー氏は述べています。「欧州にも活況を呈する地域があり、今年後半から2026年にかけて活動が加速すると予想していますが、年初来では北米とアジア太平洋地域の新規発行が牽引しています。」
JPモルガンのグローバル・キャピタル・マーケット責任者ケビン・フォーリー氏も同様の見解を示しており、同氏は年内に米国で30件を超える取引の強力なパイプラインを予測する一方で、欧州市場は「低調」と述べている。
なぜヨーロッパは遅れをとってしまったのでしょうか?
欧州のIPO市場の健全性は、同地域の証券取引所、投資銀行、アドバイザー、金融報道機関、そして株式公開市場への参入を検討している企業の幹部にとって懸念材料となっている。
不安定な市場における上場までの道のりの長さと予測不可能性こそが、大きな不満の原因となっている。
「IPOのプロセスはかなり長く、その過程で市場リスクを負う可能性がある」と、みずほ証券のEMEA地域ECM共同責任者で、欧州企業とアジアの投資家をつなぐ役割を担う東京での講演で語ったジョナサン・マレー氏は述べた。
上場プロセスは、企業の上場準備状況に応じて、3ヶ月から12ヶ月かかる場合が多い。この長期にわたる期間中、市場全体の変動や、同業他社の株価急落によって取引が頓挫する可能性があり、投資家を動揺させ、評価指標を一夜にして変える可能性がある。
例えば、MSCIフランス指数は今年、わずか4.5%しか上昇していません。他の主要な欧州指数は、春に急落した後、8月以降ようやく回復したばかりです。「米国、中国、日本が高値を更新する中、欧州はAI支援の不在と地政学的な懸念から、レンジ相場で推移しています」と、バークレイズの株式ストラテジスト、エマニュエル・コー氏は指摘しています。
みずほ証券のマレー氏によると、欧州企業の上場に大きく貢献するプライベートエクイティファームにとって、M&A取引の確実性は、土壇場で失敗する可能性のある上場のリスクを負うよりもはるかに魅力的であることが多いという。これは特に、IPOで完全に撤退せず、そのため株式のアフターマーケットでのパフォーマンスを非常に懸念しているスポンサーにとって当てはまる。
しかし、一部の銀行家は、欧州での新規株式公開(IPO)の不足は、公の精査に耐えうる適切な企業の不足が原因かもしれないと考えている。
ジェフリーズのEMEA地域ECM共同責任者、ルカ・エルピチ氏によると、市場は2021年の活況期に比べ、上場できる企業を「引き続き厳選している」という。
「市場は秩序ある状態にあると考えています」とエルピチ氏は述べた。「市場に出てくるものに対して、質の高いフィルターをかけることが重要です。ハードルは依然として高いものの、(第4四半期には)大型案件がいくつか出てくるでしょう。2026年と(2027年)に向けて、強力なパイプラインが構築されつつあります。」
この「品質フィルター」こそが、PE支援によるIPOのパイプラインが停滞している主な理由です。エルピチ氏によると、PEポートフォリオに含まれる多くの企業は、上場市場には適していません。上場市場は「上場市場が求めるリターンの一貫性」を求めているからです。四半期ごとに安定したリターンを得られなかった企業は、非上場市場の方が適していると言えるでしょう。
例えば、ヨーロッパ最大のPEファームの一つであるEQTは、スキンケア会社ガルデルマの2024年上場を成功させ、この傾向に逆らった。
株価はIPO以来125%以上上昇しており、EQTは今年さらに53億スイスフラン(66億ドル)相当の株式を売却することができ、高品質資産が依然として成長可能であることを証明した。
今後については、取引データルームプラットフォーム「データサイト」によると、今年上半期のIPO予定取引数は世界全体で昨年同時期比2%増加しており、今後6~9カ月間に発表される可能性のある取引量が示されている。
しかし企業と資本は米国に流れている
最近デジタル資産会社イーサ・マシンを買収したSPACスポンサーのアンドレイカ・ベルナトヴァ
25億ドルの取引で株式を公開した同氏は、米国市場の優位性は「厚みと流動性」に支えられている、と述べた。
「流動性が鍵です」とベルナトヴァ氏は述べた。「取引の流動性がなければ、上場しても意味がありません。」
一方、欧州は規制の断片化に悩まされています。米国にはニューヨーク証券取引所やナスダックなど複数の取引所がありますが、それらはすべて証券取引委員会( SEC)の監督下にある単一のシームレスな規制枠組みの下で運営されています。欧州では、各国の規制当局がバラバラに存在しているため、複雑さと摩擦が生じ、投資家と企業の足かせとなっています。
ベルナトバ氏は、AIやエネルギー転換など将来の資本集約型産業は、成長に必要な「数百億から数千億」の資金を調達するために米国市場を活用する以外に選択肢がないと示唆した。
ジェフリーズのエルピチ氏も概ね同意したが、クラーナのような強力な企業は自国市場を含めどこでもIPOを成功させることができると述べた。
同氏は、スウェーデン企業のニューヨーク上場は、欧州で上場できないものの代替案というよりも、長期的な成果を最適化するためのものだと述べた。「自国で成功できない企業にとって、米国は解決策ではない」
先週は、消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、そして雇用者数の年次修正という、市場を動かす3つの経済指標が発表され、来週のFOMC会合に向けた投資家の期待形成に影響を与えました。全体として、データは引き続き経済環境の弱まりを示唆しています。総合CPIは前月比0.4%上昇し、年率では2.9%に上昇しましたが、その上昇は主にサービス業に留まりました。食品とガソリンが上昇に大きく寄与し、住宅費は堅調に推移しましたが、前月と比べると若干減速しました。住宅費はCPIの42%を占めることから、住宅市場全体の弱さが続く中で、インフレ率が現在の水準から上昇するリスクは低いと考えられます。
生産者物価指数はより微妙な様相を呈した。8月の生産者物価指数(PPI)はわずかに下落したものの、 食品、エネルギー、貿易を除いた「コア」 PPIは依然として0.3%上昇し、年率換算で2.8%の上昇となった。このデータは、特定の財や貿易マージンにおける需要の弱まりが顕著である中、生産者が関税を吸収し続けていることを反映している。さらに、両指標ともインフレが正常化を続けており、懸念されていた水準よりは改善しているものの、政策当局が望む水準にはまだ達していないことを示している。
労働市場データは、さらに大きな影響力を持っていました。先週の #BullBearReportで指摘したように、8月の非農業部門雇用者数はわずか2万2000人増で予想を大きく下回り、失業率は4.3%に上昇しました。しかし、今週のレポートでより重要なのは、暫定的な基準改定であり、 過去12ヶ月間で 91万1000人の雇用が減ったことです。この改定は、雇用増加数が月平均約7万1000人となり、以前の推定約14万7000人から減少したことを意味します。 雇用は消費者の経済需要の増加を可能にするため、このデータは見逃すべきではありません。企業利益率と経済成長率の現在のギャップを考えると、今後数ヶ月で投資家が失望するリスクが高まっています。
見通し:やや強気/慎重に建設的 – インフレ率は依然として理想よりも堅調だが、労働市場の脆弱性がFRBの政策判断を歪めている。国債利回りの急低下は、債券トレーダーが経済成長の鈍化を予想していることを裏付けており、株式市場には短期的な安心材料となるものの、長期的には経済の持続性に関する懸念が高まっている。
📈技術的な背景
前述の通り、市場は、堅調ながらも鈍化しているインフレと雇用の軟化を、9月のFOMCでの利下げを支持する材料と捉えました。株式市場は夏の上昇を持続し、S&P 500は過去最高値付近で推移しました。カーソン・リサーチの調査によると、市場は4月の安値から30%の上昇を記録しており、これは史上最速水準の一つであり、今後数ヶ月間のさらなる上昇を示唆しています。
しかし、最も劇的な反応は米国債市場からのものだった。利回りは全般的に急落し、特に 連邦準備制度理事会(FRB)の政策変更に先行する傾向がある2年国債は、 9月17日の25ベーシスポイントの利下げだけでなく、年末にかけての追加緩和の可能性の高まりも織り込んだため、週ベースで20ベーシスポイント 近く下落した。2年国債の利回りは、FRBが約80ベーシスポイントの利下げで出遅れていることを示唆している。
投資家が今後の成長鈍化を予想する中、 10 年債利回り も低下し、逆イールドカーブのフラット化が進んだ。このハト派的な利上げは、労働市場の状況が悪化した際にFRBの期待がいかに急速に変化するかを示すものであり、マクロ経済指標の弱まりに対する最初の反応者としての債券市場の役割を浮き彫りにしている。
テクニカル的には、株式市場は持ちこたえているものの、株価疲労の兆候が強まっている。S&P 500は、最近の抵抗線に接近し、それを突破した後、20日、50日、200日といった主要移動平均線を上回って推移している。例えば、50日移動平均線は着実に上昇しており、反落を支えている。また、200日移動平均線は長期トレンドを支え続けている。短期的には、ここ数日のローソク足は小幅な値動きと日中の反転の増加を示唆しており、高値圏での強気派の攻勢が弱まっていることを示唆している。
先週、市場が史上最高値を更新する中、モメンタム指標は引き続きマイナスの乖離を示しています。過去数週間にわたりこうした乖離は確認されていますが、市場トレンドは概ね強気です。ストキャスティクス・オシレーターは短期的には買われ過ぎの状況を示し、時折反落も見られますが、まだ大きな 「売りシグナル」は 見られません。一方、幅の広さは依然として懸念材料です。52週高値の更新数は全銘柄と比較して少なく、多くの中小型株は引き続きリードする大型株/メガキャップ銘柄に後れを取っています。言い換えれば、市場は上昇をますます少数の銘柄 (多くの場合、グロース株/AI関連またはテクノロジー関連銘柄)に依存している状況です 。
サポートとレジスタンスレベル: S&P 500の短期的なサポートは20日移動平均線(約6,500)にあります。 50日移動平均線はおおよそ約 6,400付近ですが、前回の反落と関連して、約6,200 付近にはより深いサポートがあります 。レジスタンスは直近の高値である 6,600~ 6,700 付近 (50日移動平均線から2~3標準偏差上)にあります。注目すべきは、 VIXで測定されるボラティリティが 比較的低調に推移していることです。
見通し:中立/やや強気(ガードレール付き) – トレンドは依然として上昇傾向にあり、テクニカル面でも健全です。しかし、モメンタムは減速しつつあり、幅は依然として脆弱な状況です。トレーダーは反落や値固めの可能性を想定する必要があります。引き続きリスク管理を徹底してください。
💰 カバードコール戦略の暴走
2021年以降、コールオプションの投機は爆発的に増加しました。景気刺激策に沸き立ち、手数料無料のプラットフォームを利用する個人投資家は、短期オプションに殺到しました。ゲームストップやAMCといったミーム銘柄は、レバレッジをかけた取引の場となりました。2022年までに、週次コール取引量は過去最高を記録しました。トレーダーはもはや株式を買うのではなく、上昇局面の買いに転じました。投資の考え方はギャンブルへと変わり、ゼロデイオプションの大量取引や、短期的な動きを狙った3倍のレバレッジ取引が行われました。最近の #BullBearReportでは、これがオプションの爆発的な増加であると指摘されています 。
さらに、ミーム関連銘柄のオプション取引量は過去最高を記録しており、短期の0DTE(満期日ゼロ日)契約がS&P500オプションの1日あたりの取引量の61%以上を占めています。そのうちの半分から60%は、個人投資家による「ミーム市場」の取引量です。この感覚は、投資というよりギャンブルに近いと感じます。
この行動は市場を歪めました。コール取引量の多い銘柄は、ディーラーがエクスポージャーをヘッジしたため、不自然な上昇を見せました。ボラティリティは急上昇しましたが、それは恐怖からではなく、貪欲からでした。この力学は今日でも市場に影響を与えており、コールオプションは依然として投機の手段として好まれています。しかし、注目すべきは、0-DTEオプションだけでなく、コールオプション全般に当てはまるということです。
しかし、これらのコールオプションの多くは投機家が上昇リターンに賭けているのに対し、カバードコールの売りは今や 投資家にとって「人気のスポーツ」となっています 。何が起こっているのかをより深く理解するには、まずコールオプションとは何か、そしてどのように機能するかを理解する必要があります。
コールオプションは、特定の期日までに特定の価格(権利行使価格)で株式を購入する権利(義務ではありません)を購入者に与えます。購入者はその権利に対してプレミアムを支払います。株価が権利行使価格を上回れば、購入者は利益を得ます。そうでなければ、オプションは無価値となり、失効します。購入者にとってのリスクはプレミアム(つまり、投資額全額)を失うことですが、その一方で、リターンはコストを差し引いた無制限の利益となります。
この取引のもう一方の側は、「カバードコール」と呼ばれるものです 。
この場合、投資家は(売り手が)既に保有している株式のコールオプションを売却します。「売り手」が原資産となる株式を保有している場合、そのポジションは「カバードコール」状態となり、これが「カバードコール」と呼ばれます。この場合、売り手はカバードコールの売却プレミアムを受け取りますが、株式は合意された特定の権利行使価格で売却することに同意します。
実質的に、カバードコールはポートフォリオの保有資産を収益化します。このオプション戦略を採用する投資家は、原資産となる株式を保有し続け、それに対するコールオプション契約の売却からインカムを得ます。言い換えれば、投資家は現在のインカムと引き換えに、キャップドゲインを受け入れることになります。この戦略のリスクは、原資産となる株式が急騰した場合、プレミアムを受け取ることで上昇余地を放棄してしまうことです。しかし、株価が下落した場合、プレミアムは下落を若干緩和しますが、元本を完全に保護することはできません。
アウトライト・コールの買いとは対照的に、カバード・コールは、既存の株式エクスポージャーから利回りを引き出すことを目的とした、構造化されたルールベースのツールであるため、より保守的であると考えられています。これは通常、長期投資家、インカムゲインを求める人、そして未実現利益を抱え、売却せずにリスク管理する方法を探している人に適しています。投機がニュースの見出しを独占する今日の市場において、カバード・コールは、オプションを実際の投資計画の一部としてより冷静に活用する方法を提供します。
しかし、よくあることですが、ウォール街は人気が出た戦略を喜んで収益化します。問題は、提供される商品が、期待されるほど収益性が高くない可能性があることです。
カバードコールETFの登場
歴史的に、カバードコールのポートフォリオと戦略は投資の世界においてニッチな存在でした。どの市場においても、希少性は価値を生み出し、普及は投資成果を希薄化させます。2021年以降、コールオプションの急増に伴い、投資家は市場から利益を得るためのあらゆる方法を模索し始めました。高バリュエーション市場における利回り追求は、オプションベースの戦略への巨額の資金流入を促しました。ウォール街はこれらの戦略への需要増加を目の当たりにし、 「チャンスを逃したくない」という思いから 、様々なデリバティブ・インカムETFを市場に投入し、現在では運用資産残高(AUM)は1,500億ドルを超えています。これらのカバードコールに特化したETFとSMAは、今年2兆7,500億ドルから3兆1,500億ドルに増加すると予測されています。
当然のことながら、個人投資家や機関投資家がこの戦略を採用しています。特に、ハイテク株の旧来の保有者、企業内部関係者、さらにはヘッジファンドが、即時のキャピタルゲイン税を課すことなく株式ポジションを収益化するためにカバードコールを活用していることが挙げられます。この戦略によって得られるインカムは、ポートフォリオのボラティリティを低下させ、レンジ相場におけるリターンの向上に貢献します。
しかし、個人投資家にとっての魅力は、税効率やカバードコールのインカム創出ではなく、高利回りの代替投資への関心にある。JEPI、QYLD、XYLDといったETFは爆発的な成長を遂げている。JEPIのポートフォリオは、株式へのエクスポージャーと株式連動債を活用し、10%近くのインカムを分配している。QYLDはナスダック100の月次コールオプションを販売しており、利回りは12%を超えている。SPYIも同様の構造でS&P 500をターゲットとしている。こうした利回りを考えると、債券利回りが停滞し、株式市場が過去最高値に達する中で、投資家がこれらのファンドに資金を投入するのは当然のことだ。
しかし、S&P500指数を購入するよりも良いリターンを得ているのでしょうか?下のチャートは、JEPI、QYLD、XYLDをS&P500指数の純パフォーマンスと比較したものです。この場合、パフォーマンス・リターンには配当 (配当再投資)が含まれています。
次のグラフは同じ分析ですが、配当金を除外して、基礎となる保有資産の生のパフォーマンス (配当金は再投資されません)を示しています。
古い諺にもあるように、 「ウォール街にタダのランチはない」。
投資家は、 S&P 500のカバードコール戦略でS&P 500のパフォーマンスと10~12%の配当利回りの両方を得られると 「考えている」 はずです。しかし、実際にはそうではなく、投資家はS&P 500指数のみに投資した方が得策だったでしょう。
言い換えれば、カバードコールETFの問題点は、 「高利回り」を売り文句に販売されていることであり、健全な投資というよりはむしろ「心理的」な投資 となっている 。当然のことながら、市場の上昇は高バリュエーションへの不安を煽り、投資継続を望む投資家を利回り追求へと駆り立てた。しかし、彼らはこれらの商品によって、認識していた以上に大きなリスクを負っている可能性が高い。
常にそうであるように、 「リスク」 とは単に元本の損失だけでなく、長期的な機会損失も意味します。カバードコールは、完全なエクスポージャーなしで利回りが得られる中間的な選択肢のように思えるかもしれませんが、結果とパフォーマンスの差は大きく開く可能性があります。 重要なのは、これらの商品は、安定したボラティリティと低いドローダウンを前提としているため、市場が安定していることを前提としている点です 。どちらかが変化すれば、インカムは蒸発し、価格は急落する可能性があります。これでは投資元本の減少を防ぐことはできません。むしろ、プラスになるどころか、足かせになりかねません。
これらのETF戦略への追随は、かつては保守的だった投資戦略をリスク商品へと変貌させました。今日のリスクは、現在の行動を駆り立てている高い自己満足感が、何も問題が起きないという前提に立つことで、投資家にとってより投機的な結果を生み出していることです。
残念ながら、歴史的に見て、こうした仮定は常に間違っています。
あまり語られていないカバードコールETFのリスク
高バリュエーション市場における利回りへの需要は、単純なインカム戦略を全く別のものに変貌させました。当初は保守的な増分リターン獲得戦略として始まったものが、今では市場への参入は望んでいるものの下落リスクを懸念する投資家向けに、高利回り商品としてパッケージ化され販売されています。
しかし、前述の通り、投資家がカバードコールETFに期待するパフォーマンスと、実際に期待されるパフォーマンスの間には乖離があります。さらに重要なのは、これらのETFは回復期に出遅れるだけでなく、下落期には大きく下落する傾向があることです。下のチャートは、2022年の弱気相場におけるJEPIとSPYの推移を示しています。ETFは下落期には市場をわずかに上回りましたが、回復期の大幅な出遅れにより、近年では30%のパフォーマンス格差が生じています。
投資家は、こうしたカバードコール戦略が投資の「聖杯」 であると信じ込まされてきた 。しかし、時が経つにつれ、純粋な株式エクスポージャーに追いつかなくなり、強気相場ではアンダーパフォームし、急回復局面でも出遅れる。さらに重要なのは、弱気相場では下落してしまうことだ。
それでも投資家は買い続ける。バランスや分散投資のためではなく、利回りを追い求めているからだ。もはやリスク管理ではなく、投機の仮面を被った行為だ。
ボラティリティは低く、インカムは安定しているというこの慢心こそが真の危険です。それが変化した瞬間、これらの戦略はインカムを生み出すものからポートフォリオの足かせへと変貌します。その仕組みは以下のとおりです。
市場の調整によりNAVは下落します。カバードコールETFは株式のロングポジションを維持します。市場が下落すれば、ETFも下落します。
プレミアムは消え去ります。実際の景気後退では、オプション価格は混乱をきたします。誤った理由でボラティリティが急上昇しても、高い利回りは得られません。
コールは反発を抑制します。市場が急回復した場合、反発の機会を逃し、保有株はコールされ、傍観者となることになります。
流動性が問題となります。資金の流れが逆転すると、ファンドマネージャーはプレッシャーを受けてオプションをロールオーバーするか、ポジションを売却せざるを得なくなります。これにより摩擦が増し、強制売却につながる可能性があります。
行動上の罠が出現する。投資家はこれらの商品を債券のように扱い、損失が発生するとパニックに陥る。そして、間違ったタイミングで売却し、悪い結果を確定させてしまう。
防御戦略が高利回りの売り文句に変わると、このような事態が発生します。構造やリスクを理解せずに収益を追い求めると、ヘッジではなく、何も壊れないことに賭けていることになります。
しかし、市場は崩壊する。これまでもそうだったし、これからもそうだろう。
ここでの真のリスクは、元本損失だけではありません。機会損失です。 もう一度読んでみてください。時間の経過とともに、上昇余地が制限されると、市場の複利効果は低下します。したがって、最悪のドローダウンを回避できたとしても、依然として出遅れてしまいます。上昇局面を逃すことによる複利効果は、急落と同じくらい大きなダメージを与える可能性があります。
カバードコールETFの台頭は、利回りによる安全感という心理的錯覚を生み出しました。 しかし、安全とは保証ではなく、保全に関するものです。
これらの商品は、実際のボラティリティでのパフォーマンスではなく、価格に基づいて販売されています。 この乖離は次の景気後退期に顕著になるでしょう。そうなると、カバードコールに安心感を求めていた投資家は、もはや必要のない、そして完全に理解していなかった商品を保有していることに気づくかもしれません。
ウォール街は 「タダ飯」を売りつけてきた。 しかし、請求書が届いた時、利回りではそれをカバーできないだろう。
🔑 来週の重要な触媒
市場はFRBの利下げを改めて織り込み始めており、今週は影響力の大きい経済指標とFOMCの決定に注目が集まります。市場は非常に楽観的で、今週のFRB利下げ期待から上昇傾向にありますが、FOMCがよりタカ派的な姿勢に傾けば、価格は下落する可能性があります。
見通し: 短期間で高レバレッジイベントが多数発生しているため、ボラティリティリスクが高まっています。FRB (水曜日)のイベントが今後の動向の 支点となります。リスク市場は、 9月の「ドットプロット」が据え置きまたは下方修正される 「十分にハト派的な」利下げを歓迎するはずです。 しかし、インフレ率 (特にコアインフレ率) が低迷を続ける場合、または雇用統計が予想外の上振れとなる場合、レジスタンスゾーンは維持される可能性があり、サポートライン(6,500 / 6,350~6,400)への反落が予想されます 。トレーダーは、利回り曲線、幅、そしてオプション市場構造全体にわたるシグナルに注意する必要があります。防衛筋が、大幅な変動を織り込み始める可能性があります。
両陣営の一部の評論家は、これが第三次世界大戦につながる可能性があると考えています...
NATO軍は、今週初めにロシアの無人機の一部がポーランドに進路を変えた後、特別 作戦 開始以来初めてロシアの無人機を直接迎撃したが 、この前例のない事件は、ここで説明されているように、NATOの妨害によるものであると主張されている 。
両陣営の一部のコメンテーターは、これが第三次世界大戦につながる可能性があると指摘しているが、NATOがロシア(カリーニングラードだけでも)やベラルーシへの爆撃といった物理的な対応をするとは考えられていないため、これは非現実的なシナリオだ。最も可能性の高い5つの結果は以下の通りだ。
* 「EU防衛線」が「ドローンの壁」に
新たな鉄のカーテンとして機能する「 EU防衛線」として総称される「バルト防衛線」とポーランドの「東の盾」は、欧州 委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長の示唆通り、近々最先端の対ドローン能力を備える可能性がある。フォン・デア・ライエン委員長は、 バルト諸国が長年望んでいた「ドローンの壁」ともなる「東方側面監視」の構築について語り、この計画をポーランドとフィンランド の双方に拡大することは理にかなっていると述べた 。
* ポーランドはバルト諸国における軍事的影響力を拡大している
中央ヨーロッパで最も人口が多く、繁栄した旧共産主義国であり、 NATO加盟国で既に第3位の軍隊を擁するポーランドは、「対ロシア防衛」を口実に、この地域における軍事的影響力を容易に拡大することができる。カロル・ナヴロツキ新大統領は 今夏、「三海構想」がその実現手段となることを 示唆し、 最近のリトアニア訪問の際には「我々はバルト諸国を含む中央ヨーロッパ全域に責任を負っている」と明言した。
* 米国はポーランドでの軍事プレゼンスを拡大
ポーランドは長年にわたり米軍の増派を求めており、トランプ大統領は 先月のナヴロツキ外相のポーランド訪問時に「彼らが望むなら、もっと派遣する」と 発言し、この要請に応じる意向を示した。水曜日に「さあ、始めよう!」とツイートした のも、まさにこのことを念頭に置いていたのかもしれない。今年初めに「ポーランドは再び米国の最大のパートナーになるだろう」と「トランプ大統領が中央ヨーロッパから米軍を全軍撤退させたり、NATO第5条を放棄したりする可能性は低い」と評価されたように、これは可能性としてあり得る。
* ポーランドがNATOのスカイシールドの一部をホスト…
可能性は低いものの、ポーランドがNATOのスカイシールドの一部を担う可能性も依然として残されている。これは、 NATOの東側を守るため 、あるいは この傘をウクライナ西部にまで拡大するためであり、後者は 提案されている安全保障上の保証と整合する。 ポーランドに駐留する1万人の米軍は、 ロシアがこれらの資産を意図的に標的にすることを抑止するだろうという安心感を与えるかもしれない。ましてや、さらに増派されればなおさらだ。しかし、 世論は 、このシールドをウクライナと共有するのではなく、ポーランドに集中させ続けるかもしれない。
* …しかし、対応はここまでだ
前述のシナリオがどうなろうとも、ポーランドはウクライナへの派兵といった更なる措置を取るつもりはない。ナヴロツキ氏はこれを 否定している 。 時折憶測が飛び交うものの、ポーランドは復讐心を抱いていない。数百万人に及ぶ超国家主義的なウクライナ人がポーランド軍に対してテロ攻撃を仕掛ける可能性もあるため、ポーランドはそうした事態への責任を負いたくないからだ。ポーランドは既に、 援助資金の回収 、ひいては利益を得るために土地や港湾の賃貸を検討しており 、ロシアとの熱戦を含め、そのようなリスクを冒す必要はない。
全体的に見て、ポーランドは先週の事件の後、任務拡大の罠を回避すると予想されている。ウクライナ紛争への関与を今以上 にエスカレートさせることで得られる潜在的利益は リスクに見合わないと、かなり以前に結論づけているからだ。
ポーランドが期待していたのはせいぜいNATOのスカイシールドの一部を受け入れることくらいだが、戦時中あるいは戦後にウクライナへの拡大は米国がポーランドに安全保障の保証を与えた場合にのみ実現する可能性が高く、トランプ大統領はそれに興味がないようだ。
米国国勢調査局が火曜日に発表した新たなデータによると、米国の高齢者の貧困率は2024年に上昇する見込みだ 。
アンナ・フレックが下のグラフで示しているように、昨年、米国の65歳以上の成人の9.9%が貧困を経験しており、2023年の9.7%から増加しています。
インフォグラフィック:2024年、米国の高齢者の貧困率は上昇傾向 | Statista
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貧困 率は18歳未満が最も高かったが、このグループの状況は2023年の15.3%から2024年には14.3%にわずかに改善し、18歳から64歳の間でもこの期間に10%から9.6%に減少した。
このグラフは、税引き前の現金収入に基づいており、長期にわたる広範な国家経済の動向を追跡するためのベンチマークとして引き続き使用されている公式の貧困指標を示しています。
2009年には、補足的貧困指標(SPM)と呼ばれる追加指標が導入されました。公式指標とは異なり、税引き後のSPMは、食料や住宅の補助金、医療費の自己負担額といった要素を考慮し、実際の支出を反映した貧困ラインと比較します。また、住宅費の地域差も考慮に入れます。2024年には、高齢者のSPM率は、過去2年間の14%から15%に上昇しました。この指標によると、65歳以上の高齢者は全年齢層の中で最も高い貧困レベルを示しました。
この増加は、パンデミックの終息に伴う支援プログラムとインフレが一因となっている。
人権団体の全米高齢者評議会(NCOA)は火曜日の統計を見て、削減が続けば米国の高齢者に深刻な悪影響が出るだろうと警告する声明を発表した。
「パンデミックの間、個人や家族を支援した結果 、高齢者の貧困率は9.5%まで低下しました。しかし、支援がなくなると貧困率は上昇しました」と、同団体のラムジー・アルウィン会長は述べた。
補足栄養支援プログラム(SNAP)、メディケア貯蓄プログラム(MSP)、メディケイドといったプログラムは、切実に必要とされる支援を提供しており、今後も継続していく必要があります。しかし、最近施行されたSNAPの削減は、高齢者の飢餓を増大させ、またメディケイドの削減は、高齢者の病状悪化につながるでしょう。
NCOAは、メディケアの低所得受給者が医療費や処方薬を買えるようにする「患者と医療提供者のためのメディケア改善法(MIPPA)」を再認可し、全額資金を提供するよう議会に求めている。
アメリカの大都市はかつて繁栄と文化の象徴でした。しかし今、多くの都市が犯罪の急増と企業の撤退によって、大きな経済的代償を払っています。ある論説記事の一節はこう述べています。「犯罪にはバランスシートがある。しかし、リーダーシップが欠如している都市では、そのバランスシートは日々赤字を垂れ流している。」
フォックスニュースのテッド・ジェンキン氏の論説によると、小売業が最も大きな打撃を受けている。全米小売業協会(NRF)は、米国の小売業者が窃盗で2022年に1120億ドルの損失を被ると報告した。これは2021年の940億ドルから増加している。2019年から2023年の間に、万引き事件は93%増加し、損失額は90%上昇した。大手チェーンは撤退している。ターゲットは今年の追加損失を5億ドルと予測し、ウォルグリーンはサンフランシスコ全域の店舗を閉鎖し、ノードストロームはダウンタウンから完全に撤退した。
「これほど多くの小売店が、逮捕される心配がないと知りながら、商品の多くを施錠して保管しなければならないのは、正気の沙汰ではないと思えますか?」と記事は問いかけている。その影響は、空き店舗と市の予算削減に如実に表れている。サンフランシスコのダウンタウンの空き店舗率は34.8%に達し、雇用、税収、そして歩行者数が減少している。
被害は小売業だけにとどまりません。シカゴでは、暴力犯罪と露天の麻薬市場が高級マンションの価格を下落させ、学校やインフラ整備の財源となる固定資産税収入を減少させています。ニューヨークでは、収監費用は受刑者1人あたり1日925ドル、年間33万7000ドルに上り、ニューヨーク市警の残業代は急増しています。しかし、批判的な人々は、経営陣がコストのかかる「逮捕、釈放、そしてその繰り返し」という悪循環を繰り返していると批判しています。
コラムによると、観光業も低迷している。今年のニューヨークへの海外からの観光客は約200万人減少すると予想されており、この減少により2025年にはニューヨーク市は40億ドルの損失を被る可能性がある。コンベンションや観光客は安全ではないとされる目的地を避けており、ホテル、レストラン、そして地域経済の疲弊につながっている。
結局のところ、犯罪のコストは棚から盗まれたものよりもはるかに大きい。それは失業、不動産価値の下落、増税、そして評判の低下といった形で現れる。記事は「真の犯罪は街頭で起こっているだけではない。リーダーシップの欠けた民主党支持の都市の予算の中にあり、混乱のコストは数十億ドル規模に上る」と結論づけている。
フランスのフランソワ・バイルー首相は議会の信任投票で否決され、政権は終焉を迎えた。市場は概ね落ち着いた状態を保っているものの、これはフランスの債務危機が先送りになったことを意味するものではない。
エマニュエル・マクロン大統領の第4次政権は、就任からわずか9ヶ月で崩壊した。フランソワ・バイルー首相は、月曜日夜に行われた緊縮予算に対する信任投票で、364対194の僅差で敗北した。バイルー首相は火曜日に辞任を発表した。
バイルー氏は事態の深刻さを認めた
バイルー首相はフランスの財政状況の深刻さを責任転嫁し、財政再建策の実施を試みた。公的債務がGDPの114%に達し、今年の純借入額が5.4%と予測される中、計画には440億ユーロの歳出削減、年金凍結、そして2つの祝日の短縮が含まれており、苦境に立たされた経済の救済策として意図された。
議会の大多数とフランス社会の広範な層は、改革プログラムに根本的に反対しており、新たなゼネストがすでに迫っている。
バイルー氏の辞任により、動揺するエマニュエル・マクロン大統領は、2年後に5人目の首相を任命するという難題に直面している。2027年4月の選挙までは、構成に関わらず、どの政権でも同じ問題に直面することになるだろう。いかなる財政再建策も、既得権益を持つ派閥によって阻まれるだろう。フランスは政治的行き詰まりに陥っており、債務整理は不可能に思える。
破滅への道
この奇妙な状況は、フランスの政治エリート層、そして債務圧力に晒されているEU加盟国全体が、もはや経済的必要性をイデオロギー対立よりも優先できないことを示している。信任投票の失墜はEUの棺に打ち込まれた新たな釘であり、投資家がフランスの政治的無力さに気付くにつれ、まもなくユーロ圏全体の問題として市場に顕在化するだろう。
最近、バイルー氏はフランスのライフスタイルを公然と批判し、福祉国家こそが根本的な問題だと指摘した。彼は今、無秩序に広がる福祉制度の数々の特権に異議を唱える者は、政治的に容赦なく処罰されるという現実を身をもって体験している。フランスは、この姿勢が財政破綻に直結するにもかかわらず、給付型社会を国家の聖域として擁護している。
ヨーロッパの感染リスク
金融市場にとって、パリでの出来事は良いニュースではない。フランスのOAT(財務省債)は、政府の崩壊に対してすぐにはほとんど反応を示さなかった。しかし、ソブリン危機の深刻化を受け、ここ数週間は圧力が高まっていた。利回りは上昇し、欧州の指標国債であるドイツ国債とのスプレッドは最大90ベーシスポイントまで拡大し、リスクを示唆した。
フランス国債は現在、英国債と同様に、大幅なリスクプレミアムを伴って取引されています。市場がスペイン、イタリア、ギリシャといった他の高債務国に流れれば、ユーロ圏に波及リスクが迫り、過去のソブリン債務危機を彷彿とさせる連鎖反応を引き起こす可能性があります。
フランスは依然として混乱状態にある。金曜日には、もう一つの重要な試練が待ち受けている。フィッチが信用格付けを発表するのだ。
出典
フランスは既にAA-(ネガティブな見通し)であるため、即時の格下げは考えにくいものの、シングルA格への格下げは現実的な可能性となっている。そうなれば、機関投資家はフランス国債の売却を余儀なくされ、借り換えコストがさらに上昇し、フランスの債務スパイラルが深刻化するだろう。フランスは、ユーロ圏の「準リスクフリー」ベンチマークとしての地位を徐々に失っていくだろう。
リスクを価格に織り込む
為替市場でも同様の傾向が見られ、ユーロは対米ドルでわずかに上昇しました。国家債務危機の兆候は貴金属からも現れている可能性があります。金と銀は月曜日の夜に一時史上最高値を更新し、世界中の中央銀行の需要に支えられた着実な上昇傾向を裏付けました。
個人投資家と機関投資家は留意すべきです。18ヶ月前の深刻な市場ショック以来、差し迫った国家危機への意識が高まっています。金はカウンターパーティリスクのない安全な避難先を提供します。
ECBは難しい綱渡りを強いられている。新たな介入を行う場合、インフレ抑制と金融安定を天秤にかけなければならない。スプレッドの拡大は金融政策の波及効果を歪め、金融引き締め政策を完全に放棄することなく、的を絞った流動性供給策を講じざるを得なくなる可能性がある。市場コメンテーターは、ユーロ圏のスプレッドにとって「不安定な秋
」となることを警告している。 出典
対決は避けられない
ユーロ圏のパニック的な国債売りに対する最後のバックストップである欧州中央銀行(ECB)は、月曜日も姿を現さなかった。信任投票否決後の落ち着いた取引と、フランス国債およびユーロの利回りの安定は、ECBが選択的な支援策として密かに介入した可能性を示唆している。中央銀行の取引内容を明らかにする次のTCIレポートで、数週間以内に確認されるだろう。
それまでは、リークが時期尚早に表面化しない限り、憶測は続く。
懐疑的な人は、市場はフランスのドラマに慣れきっており、流動性問題を含む可能性のある次の局面を待っているだけだと主張するかもしれない。全体として、世界市場における長期国債の緩やかな売りは続いている。フランスは、進行中の政治的混乱と未解決の財政問題により、依然として厳しい監視下に置かれています。
債券市場の大混乱は暗雲のように立ち込め、公的債務の容赦ない蓄積は遅かれ早かれ深刻な嵐を巻き起こすだろう。世界の金融構造は脆弱な基盤、すなわちインフレ的に流通する国債を基盤とする不換紙幣制度の上に成り立っている。
シンガポールの鉄鉱石先物は、ピークシーズンの在庫補充を促す中国の需要回復の兆候や、製鉄所の供給削減、来週の米国の25ベーシスポイントの利下げ期待などの他の要因に支えられ、6か月ぶりの高値近辺で週を終えた。
UBSのアナリスト、キャサリン・ゴードン氏は今週初め、顧客に対し、「この熱狂的な相場のさなか、UBSゴールドマイナーズバスケット{UBXXGOLD}への需要が堅調であるとチームは認識している。鉄鉱石は、傍観者の投資家の間で最も議論されていない」と述べた。
鉄鉱石価格が1年以上1トンあたり100ドル前後で推移しており、ウォール街の金融デスクでは鉄鉱石市場は忘れ去られ、忘れ去られたままになっているのだろうか?
可能性はある。UBSのアナリスト、マイルズ・オールソップ氏は、鉄鉱石のボラティリティが15年ぶりの低水準にまで低下したと指摘した。今後のトレンドが見通せず、価格が100ドル前後で推移しているため、鉄鉱石はUBSの顧客の間で最も話題に上らない商品の一つとなっている。まあ、今のところは。
オールソップ氏はこのボラティリティの急落についてさらに詳しく説明した。
鉄鉱石価格: ボラティリティが過去 15 年間で最低レベルにあるのはなぜでしょうか?
鉄鉱石価格の変動性は、業界が2008/09年にスポット価格設定に移行して以来最低水準にあり、価格は2024年半ば以降狭いレンジで取引されています(平均約100ドル/トン、最安値90ドル/トン、最高110ドル/トン)。当社の見解では、この安定性の主な要因の1つは、広範な不確実性とバランスの取れた市場ファンダメンタルズに支えられた、中国における購買行動の変化です。中国政府は、需要の集中、価格交渉、戦略的な在庫管理を通じて鉄鉱石市場の安定化を図ることを目的として、2022年7月に中国鉱産資源集団(CMRG)を設立しました。現在、CMRGは世界のサプライヤーとの交渉において中国の鉄鋼メーカーの50%以上を代表しており、交渉の影響力は鉱山会社から中国の製鉄所へと根本的に移行し、鉄鉱石市場のダイナミクスを変えています。また、大規模な戦略的在庫保有を構築することで、市場における投機的な活動を抑制しています。今後は、価格変動の低さが新たな常態になると予想しており、これはコスト予測の改善を通じて鉄鋼メーカーに利益をもたらす一方で、金融参加者の取引機会は減少するでしょう。また、CMRG の購買力が集中することでマージンが圧迫される可能性が高いものの、需給ファンダメンタルズが引き続き市場価格の動向全般を左右すると予想しています。
鉄鉱石価格は需給バランスと在庫の安定により持ちこたえている
鉄鉱石価格は先週、軍事パレード後の経済活動の回復とセンチメントの改善(中国事業計画とFRBの利下げ期待による)を背景に、約$105/tまで上昇した。注目すべき重要なシグナルは以下のとおり。1) 中国の港湾(図24)および製鉄所(図26)の鉄鉱石在庫は前週比で概ね安定している。2) 従来市場からの鉄鉱石出荷量(図2)は回復を続け、ブラジルは年初来+3%(> Access Dataset)となっている。3) CISAデータによると、中国の鉄鋼生産は8月上旬に加速したが(図10)、MySteel稼働率データは概ね横ばい(図14)。4) 中国からの鉄鋼輸出は、貿易制限の強化にもかかわらず、8月に約106Mtpaと堅調に推移している(図19)。宝鋼は、中国の鉄鋼輸出は2025年には100Mtを超え続けると予想しているが、第4四半期は減少する5) 大連油田のポジションは徐々にマイナスに転じ、現在ネット契約数は-200万トンとなっています(図37)。Vale、RIO、BHPのレーティングは中立、FMGとKIOのレーティングは売りです。2026年のスポットFCF利回りは、BHPが4%、RIOが8%、Valeが15%と推定しています(インタラクティブモデル)。
一方、ゴールドマンのアナリスト、ジェームズ・マギオック氏は、鉄鋼原料の価格がここ数週間で6か月ぶりの高値に急騰した理由について、さらに詳しく説明した。
ゴールデンウィーク前の在庫補充(10月1日のゴールデンウィーク)に入り、国内の反応は良好です。8月の輸入量は1億500万トンと好調です。トレーダーは依然として100~105ドルのレンジを予想しており、消費者は100ドルで買い、生産者は105ドルでヘッジしています。注目すべきは、金曜日にCMRG(中国グループ)が価格を落ち着かせるために売却したというニュースです。価格は今後も下落する見込みです…
鉄鉱石市場の圧縮が長引けば長引くほど、最終的な変動は大きくなります。大きな疑問は、上昇へのブレイクアウトのきっかけとなるのは何かということです。中国の景気刺激策、米国の利下げ、それとも中国政府による製鉄所への生産抑制圧力でしょうか?
地球は今世紀末までに「人口ピーク」を迎えるだろう。
25年以内に、世界の先進国のほとんどが急激な人口減少に直面することになり、高齢化が進む人口を支える若者の労働人口は減少するだろう。
原因は飢饉でも戦争でも疫病でもありません。私たちは、 存在すらしない問題に対して、一連の過酷な解決策を作り出し、自らこの事態を引き起こしたのです。
恐怖は常に社会統制のための最良の手段であり 、人類に対する恐怖は、 統制に執着する左派の「思想家」たちによって何世代にもわたって利用されてきた。
最も明白なのは、ポール・エーリッヒが 1968年に著書『人口爆発』の中で、驚くほど恐ろしく、そして完全に 誤った予測をしたことだ。
「全人類を養う戦いは終わった。1970年代には世界は飢饉に見舞われるだろう。今どんな緊急対策を講じても、何億人もの人々が餓死するだろう。今となっては、世界の死亡率の大幅な上昇を阻止できるものは何もない…」
「あと数年はインド全土に飢饉が広がるのを防げるかもしれない。しかし、1980年までにさらに2億人を養うことは不可能だ。1970年代にインドで数千万人が亡くなったことを防ぐことは不可能だ…」
「ではイングランドはどうか?もし私がギャンブラーなら、2000年にはイングランドは存在しないだろうと賭けるだろう。」
PJオルークは1994年の著書『All the Trouble in the World』の中で、何が起こっていたのかを次のように説明している 。
「ドレッドと喧嘩による市民へのいじめは旧石器時代から続いています。地球温暖化を題材にしたグリーンピースの募金活動は、月食を題材にした部族の魔法使いたちの活動と大差ありません。『ああ、ナイトウルフが月の聖母を食べている。銀をくれれば、吐き出させてやる』」
家族計画と国家の介入
しかし、ここでは騙されやすい人を騙す以上のことが起こっている。1960年代と70年代の人口過剰ヒステリーは世界を変えるほどの結果をもたらしたが、その影響は今になってようやく明らかになりつつある。エーリッヒを責めるのは(面白いことではあるが)公平ではない。真実は、人口増加は繁栄への脅威だという疑似科学から、本格的な家族規模のパニックが生まれたということだ。影響力のある組織は、非常に懸念を抱く人々によって設立された。 人口評議会 と 国際家族計画連盟は どちらも1952年という早い時期に設立された。発展途上国は、西側諸国の政府や国際機関からの多大な支援、時には強制的な圧力を受けながら、積極的な家族計画を推進し始めた。
国連、世界銀行、および二国間援助国、特に米国はUSAIDを通じて、 人口管理を対外援助プログラムにますます組み込んでいった。アジア、アフリカ、ラテンアメリカで特に高い出生率は、単なる人口動態の傾向としてではなく、 マルサスの考えに基づく 近代化、貧困削減、世界安全保障の障害とみなされた。 中国は1979年に悪名高い「一人っ子政策」を実施し、強制不妊手術 や中絶 などの強制的な手段を 講じた。インドは、特に非常事態期(1975~1977年)に、配給カードの差し押さえなど、武力や極端な社会的圧力を用いることが多い 大規模な不妊手術キャンペーンを実施した。 東アジアの 多くの国では、 人口増加を迅速かつ恒久的に抑制するために、疑問の残る強制的な方法を用いようとする、 積極的な国家統制プログラムが実施され、その多くは世界銀行 の資金提供を受けた 。
もちろん、 避妊が利用可能であることは、実際には女性が子供を少なく産む という選択を自由に行える手段であったケース も少なくありません。しかし、この選択が国家による強制と結びついたことで、より多くの子供を望んでいた女性、あるいは社会的な圧力がもっと賢明に活用されていればもっと多くの子供を望んでいたであろう女性でさえ、複数の子供を持つという個人的な夢を諦めざるを得なくなってしまったのです。
もしそれが物語の終わりなら、それは十分に悪いでしょう。しかし、それは始まりに過ぎません。科学主義の聖域は、 現実の人口危機を生み出し、それは今後数十年にわたって世界に影響を与えるでしょう。一部の国は、少なくとも現状のままでは、決して回復できないかもしれません。その危機とは、人口爆発です。
縮小する地球:どの国がいつピークを迎えるのか?
入手可能なデータを用いて、ざっと計算してみました。私が計算しようとしたのは、データが十分に信頼できる26カ国について、人口がピークを迎える予測年です。この予測は、合計特殊出生率、移民、そして死亡率(平均寿命)の動向に基づいています。これらの推定値は、厳密に比較できないデータもあるため、せいぜい近似値に過ぎません。しかし、私が入手したデータは、 国連の世界人口予測、 OECD統計報告書、そして 各国の人口動態データに基づいています。
人口ピークの年は、国連世界人口予測(PDF)の 中位推計 に基づいており 、欧州・北米諸国のほとんどが2030年代後半にピークを迎えると指摘する地域別報告書によって裏付けられています。日本は既に2008年頃にピークを迎えており、韓国 は2025年頃にピークを迎えています。また、イスラエル(合計特殊出生率 3.0近く)は 今世紀にはピークを迎えない可能性があります 。
表の最後の行に示されているように、平均寿命の傾向を考慮し、純移民がないと仮定すると、合計出生率の置換率は約 2.10 になり ます 。
ここで疑問が浮かび上がります。もしこれらの国々全てでTFRが人口置換水準を下回っているとしたら、世界の人口は実際にはどうなっているのでしょうか?答えは簡単ですが、これまであまり議論されてきませんでした。世界人口はピークを迎え、その後減少に転じます。地球上の総人口は近い将来に減少し始めるでしょう。ピークの正確な時期は、 特定の仮定に基づいているため推測の域を出ませんが、 推定では2060年(現在のTFRが一定と仮定)から2080年(TFRがわずかに上昇し、寿命が延びた場合)の間とされてい ます。
皆さん、こんなことが起こる必要は全くありませんでした。オーストラリア、カナダ、あるいはアメリカを夜間に飛行したことがある方ならご存知の通り、地球には十分な空間があります。空き地がたくさんあるのです。
思考実験をしてみましょう。現在、地球上には81億人の人々がいます。もし全員がアメリカ合衆国テキサス州に住んでいたとしたらどうでしょう(これを読んでいるテキサスの皆さん、私たちはまさにその方向に進んでいるように思われるかもしれませんね。ダラスの交通渋滞は驚くべきものです!)。テキサス州の面積は676,600平方キロメートルです。では、現在の傾向が続き、文字通り全世界がテキサス州に移住したとしたら、どうなるでしょうか?
81億人÷67万6600人というのは、1平方キロメートルあたり約1万2000人ということに なります。これはニューヨークの5つの行政区 (1平方キロメートルあたり約1万1300人)よりわずかに人口密度が高いですが、パリ(2万人)よりははるかに少なく、マニラ(約4万4000人)と比べると大幅に少ないです。ニューヨークとパリはかなり混雑していますが、そこに住んでいて、時には自発的に訪れる人もいます。たとえ現在の世界人口全員がテキサスに移住したとしても、ラッシュアワーのマンハッタンよりわずかに迷惑な程度でしょう。
つまり、過去数十年間の人口ヒステリーには、何の根拠もなかったということです。以前の記事でも述べたように 、当時の予測は当時からして馬鹿げていました。そして、「人口爆弾」の再来を心配する必要はありません。たとえ人口が再び増加し始め、私たち全員がテキサスに移住せざるを得なくなったとしても、まだ十分な余地があるからです。
人口減少の影響は、 韓国や日本などの国ですでに感じられ始めています。平均年齢が上昇するにつれ、40歳未満の人口の絶対数が減少し始めます。何かが変わらない限り、世界人口全体、そして多くの特定の国々は、これまでは壊滅的な疫病や残忍な戦争の際にしか見られなかった状況、すなわち空き家だらけの家々、廃墟となった都市、そして自活能力のない高齢者の大群に直面することになります。しかし、今回の場合の違いは、私たちが飢餓や戦争に苦しんでいるわけではないということです。 アントニー・デイビスが指摘したように、現在の世界文明の崩壊は、人間が私たち が持つ最も貴重な 資源であるという認識を著しく失った結果です。
過去1世紀の大半、アメリカ合衆国のみならず他の国々においても、人々が地方や町からますます大都市、特にニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコ、シアトルといった活気ある中心街を持つ大都市へと移住するという避けられない流れがありました。多くの未来像は、依然として都市中心部が生産、消費、文化の揺るぎない中心地であり、地方、小都市、郊外は近代化の僻地とみなされています。
RealClearInvestigationsの分析によると、私たちは新たな時代の瀬戸際にいる可能性がある。都市中心部は縮小を始め、まず郊外に、そしてさらにその先の準郊外に、そして今や小さな町や地方にまでその座を奪われつつある。19世紀以来初めて、アメリカの成長パターンは、かつては不人気と思われていたオレゴン州ポートランドではなく、ノースダコタ州ファーゴのような小規模都市圏に有利となっている。
この変化は、人口統計学者が都市中心部を中核とする大都市圏について論じることが多いため、検知が難しい場合がある。しかし、この分類方法では、成長の多くがこれらの地域の周縁部で起きているという傾向が見えにくくなる。最も急速に成長している大都市のほぼすべてにおいて、拡大の大半を経験してきたのは、最近まで農村地帯であった郊外のさらに外れた地域である。歴史の大半を静かな州都であったノースカロライナ州ローリーは、引き続き全米から移住者を引き付けているが、最も爆発的な成長は都市中心部ではなく、土地と落ち着いた田舎の環境に加え、近代的なアメニティも利用できる周辺の「田舎町」である アペックス、 フキー・バリナ 、 ゼブロンで起きている 。
2010年から2020年の間に、主要都市圏の郊外と準郊外地域では200万人の国内移住者が純増した一方、都市中心部の郡では270万人の移住者が減少した。 パンデミックにより リモートワークが常態化し 、人々が距離を置くことが奨励されたことで、より小規模で混雑が少なく、より安価な住宅市場への移住者の動きが加速した。この10年間の最初の4年間で、主要都市圏の都市中心部の郡(人口100万人以上)では325万9000人の国内移住者が純減しており、これは過去10年間の減少率の3倍に相当します。一方、主要都市圏外への国内移住者は230万人に上ります。
メディアはこうした変化を軽視し、あるいはほぼ全面的にパンデミックのせいにしてきた。その結果、小さな町や田舎には、病気や犯罪から逃れられる安全な避難場所以外に、ほとんど何も提供できないという印象が植え付けられている。パンデミック前の2018年、「アメリカの田舎は救えるか?」という記事で、ニューヨーク・タイムズは 、特に中央部にある小さな都市や町が「高齢化」し、「容赦ない経済衰退」に直面していると報じた。
データは正反対のことを示唆している。つまり、アメリカ人は 土地への回帰に向かっている ということだ。都市部の住宅価格の高騰と、誰もがどこでもほぼ何でも手に入れられるアマゾン経済は、プライバシー、空間、そしてマイホームへの根深い欲求を再び燃え上がらせている。
新しい人口統計
地理的再編の第一段階は2000年までに形を整え始めました。労働者は、サンベルト地帯や中西部の低コスト州への進出を加速させていた米国企業と外資系企業の両方に追随しました。それ以来、最も都市化が進んだ2つの大州、カリフォルニア州とニューヨーク州は、それぞれ400万人以上の国内移民の純減を経験しました。さらに、移民の減少 と、特に大都市に住む人々の出生率の低下という 2つの傾向が、これらの州の都市人口の再補充を困難にしています。
ダウンタウンを再活性化させる多くの取り組みは 、少なくとも一時的には新規参入者を誘致するのに役立った ものの 、ほとんどの人々は周辺部に移動しました。 2010年から2020年までの米国の都市部全体の増加の約90%を郊外が占めており、最も増加したのは遠方の準郊外です。最も顕著な拡大は、ニューヨーク市やシカゴのような巨大都市の周辺ではなく、より小さな都市圏とその周辺で発生しています。2015年から2023年の間に、国内の人口増加の2倍を超える成長を記録した地域には、テキサス州のキリーンとシャーマン、ジョージア州のサバンナとジェファーソン、サウスカロライナ州のスパルタンバーグ、アラバマ州のダフニ、フロリダ州ネイプルズ、サウスダコタ州のスーフォールズ、メリーランド州のヘイガーズタウン、テネシー州のクラークスビルが含まれます。
このプロセスはまだ初期段階にあるのかもしれない。ミレニアル世代と移民の急増が原動力となっている。都市アナリストで中西部出身のアーロン・レン氏は、これまで 中西部の都市成長の多くは沿岸部ではなく、地域内の小規模な町からの移住によるものだと指摘する。例えばインディアナポリスやコロンバスといった都市の人口動態は、主に周辺の大都市圏や地方からの流入によるものだ。
しかし今、国内外の巡礼者がこれらの小さな町にますます惹きつけられていることで、状況は変わりつつあります。私たちは、前世紀の現実とは一変した世界を目の当たりにしています。20世紀の成長の最大の典型であったロサンゼルス郡でさえ、現在では人口が減少傾向にあり、州の推計によると、2070年までにさらに 100万人が減少する と見込まれています。一方、多くのロサンゼルス市民(とその両親)が元々出身地である南部や中西部など、比較的小規模な地域では、人口動態の回復が見られるようになっています。
住宅費が大都市圏からの大規模な流出を促進
この変化は、何よりも住宅費の高騰を反映しており、 高価な大都市圏と全国平均の生活費の 差の約88%を占めています 。RCIが以前に報告したように、この追加コストの多くは、多くの大都市圏で価格を押し上げてきた厳格な周辺の土地規制に起因しています。住宅価格の高騰は当初、カリフォルニアからオレゴン、ワシントン、コロラドなどの場所への移住者を後押ししました 。しかし現在、これらの州は同じ規制スキームを採用し始めており、 雇用の伸び悩み、住宅建設率の低迷、景気の悪化、国内からの移住の急増という同じ結果を招いています。これが、 大都市を悩ませている 住宅所有率の低下と国内からの移住の急増の主な要因です 。より小規模な都市圏への人口移動には、より安価な住居を求めて移住した 高齢アメリカ人 や、多くのアフリカ系アメリカ人の南部回帰など、様々な要因があるが、おそらくより重要なのは若い世帯の移動だろう 。ここで鍵となるのは、富を築き中流階級入りするための伝統的な手段である住宅所有である 。しかし、住宅所有は半世紀にわたって減少傾向にある 。それは、住宅所有への欲求という点ではなく、住宅所有の可能性という点においてである。
パンデミック以降、米国の住宅価格は大幅に上昇し、住宅購入のしやすさが著しく低下しています。「手頃な価格」と定義される市場では、「中央値倍数」(住宅価格の中央値を所得の中央値で割った値)が3以下となります。現在、全米平均は4を超えていますが、 一部の市場ではさらに高く 、サンノゼ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴでは10以上、サンディエゴ、マイアミ、ニューヨーク、シアトルでは7以上となっています。
当然のことながら、住宅は通常、小規模市場や地方の方が手頃です。アメリカン・コミュニティ・サーベイのデータによると、米国には住宅価格の中央値が3.0以下の大都市圏が約120あります。2024年には、ピッツバーグ(3.2)、クリーブランド(3.3)、セントルイス(3.5)、ロチェスター(3.6)といったかつての工業地帯に、より手頃な大都市圏が多く見られるでしょう。Zillow によると、初めて住宅を購入する人にとって最もお得なのは、ウィスコンシン州ウォーソー、メリーランド州カンバーランド、インディアナ州テレホート、イリノイ州ブルーミントンなど、住宅価格の中央値が3.0以下の小規模市場です。
この動きは、アラバマ州、オクラホマ州、アーカンソー州、メイン州、ニューハンプシャー州、サウスダコタ州などの州における国内純移民数の大幅な増加につながりました。米国経済分析局によると、ニューハンプシャー州を除くこれらの州は、いずれも生活費が全国平均よりも低くなっています。
小規模な場所の急増
最も都市化が進んだ地域や州からの人口移動は、 雇用増加によっても促進されている。近年、雇用増加はアイダホ州、ユタ州、テキサス州、ノースカロライナ州、モンタナ州といった、都市化が進んでおらず人口密度の低い州へと決定的に移行している。対照的に、ニューヨーク州、カリフォルニア州、イリノイ州、マサチューセッツ州といった大都市圏は、雇用増加率の低い地域に位置している。この傾向は、 アーカンソー州フェイエットビル、サウスカロライナ州グリーンビル、ノースダコタ州グランドフォークス、ユタ州オグデンといった比較的小規模な都市圏にも当てはまり、これらの地域では雇用増加率が最も急激に伸びている。
同時に、シアトル、デンバー、ポートランドといったかつて活況を呈していた大都市圏では、物価 上昇と経済機会の変化に伴い 、国内からの純移住が減少しています。国内からの移住者は、より小規模な大都市圏へと向かう傾向が強まっています。かつて「人気」だったこれらの大都市圏では、ワシントン州のスポケーン、セントラリア、シェルトン、コロラド州のグリーリー、グランドジャンクションといった小規模な市場への移住が、国勢調査局のデータに基づく当社の分析で明らかになっています。
これは、大都市圏への国内純移住が最も増加しているという、1世紀にわたる力強い傾向の逆転を示しています。RCIによる国勢調査局データの分析では、2010年から2015年の期間と比べて、劇的な変化が見られました。この期間には、人口25万人未満のコミュニティのすべてのカテゴリーにおいて、移住者数が移住者数を上回っていました。
2024年までの新たなデータは、この以前の傾向の大きな逆転、つまり少なくとも1世紀にわたって存在してきたパターンからの転換を反映しています。人口100万人以上の各カテゴリーでは2015年以降、国内純移民が減少しましたが、それより人口の少ないカテゴリーでは国内純移民が増加しました。
ミレニアル世代は 小さな場所へ移住する
家賃の支払いさえも困難で、ましてや家を買うとなると、人々の住む場所の選択は大きく変わってきています。特に、家族を持ったり、中流階級のライフスタイルを実現したいと考えている人々にとって、その傾向は顕著です。「(ニューヨークでは)素晴らしい仕事と素敵なアパートに住んでいましたが、それが将来、家を持つことやワークライフバランスの実現につながるとは思えませんでした」と、 イースト・ナッシュビルにあるバー「ウォルデン」の共同オーナー、ケイティ・マクラクランは説明します 。「億万長者でもない限り、ニューヨークにはそういった選択肢がないように感じていました。」
これは、ミレニアル世代は必然的に沿岸部の大都市に集まり、中小都市は 時代遅れで退屈で偏見に満ちているとする主流メディアの信念からの劇的な逆転を示している。しかし、ミームを繰り返したところで真実にはならない。ニューヨークなどのより大きな中核都市は、2020年以降、25歳から39歳の若者を含め、実際には両方の人々を失っている。全国メディアで広く宣言された、エリートによる沿岸部の大都市の優位と 中小都市の衰退の時代は、すでに賞味期限が過ぎているのかもしれない。実際、過去半世紀の大半で25歳から44歳までの移住者の大部分を引き付けてきた 大都市圏の割合は 、2010年以降減少している。一方、特に人口25万人未満の地域などの中小都市圏の魅力が急上昇している。
これらの移民たちは、移住によって生活環境が改善されたことを実感しています。ブルッキングス研究所の研究員 マーク・ムロ氏 が指摘しているように、19州からなるアメリカのハートランド地域の賃金は、生活費調整後で 全国平均を上回っています。別の調査によると、生活費調整後の所得が最も高い10地域のうち8地域がハートランドにあります。対照的に、 調整後の所得が最も低い地域は すべて沿岸地域でした。
全体的に見て、給与の高い都市圏の多くは、中高年や家族にとって魅力がはるかに低いようです。人口25万人以上の全米185都市圏のうち、生活費調整後の給与が最も高いのは、テキサス州ブラウンズビル・ハーリンジェン、アーカンソー州フォートスミス、そしてウェストバージニア州、ケンタッキー州、オハイオ州の3州にまたがるハンティントン・アッシュランド地域です。平均給与が最も高い10都市圏はすべて 中小規模の市場であり 、人口が100万人を超える都市はありません。そのほとんどはアメリカの中心部に位置しており、物価の高い州にあるのは、カリフォルニア州セントラルバレーにあるバイセリア・ポータービルとモデストの2都市のみで、州内の高価な海岸部からは遠く離れています。
この変化は、ミレニアル世代の成熟とも一致しています。若者は家庭を持ったりマイホームを持ちたがらないというメディア報道があるにもかかわらず、ほとんどの調査では、 30代のアメリカ人の大多数が 中流階級の生活の基盤 を築きたいと考えている ことが示されています。毎年約 100万人のミレニアル世代 が母親になっています。多くの人が、昔ながらのメインストリートの近くに住み、新鮮な農産物を提供する農場からもそれほど遠くない、より小規模な都市部に惹かれているようです。こうしたライフスタイルは「アーバリズム」と呼ばれ、大都市圏や空港に近い環境にありながら、依然として大部分が田舎暮らしであるという特徴を併せ持っています。
全国的に、住宅所有者の平均年齢は上昇傾向に あり、1980年の30代前半から現在は56歳だ。しかし、35歳未満の人が新規住宅所有者の最大の割合を占める場所は 、圧倒的に中西部、ユタ州プロボ、コロラドスプリングス、カリフォルニア州ベーカーズフィールドだ。全米不動産業者協会の最近の調査を執筆したナディア・エヴァンジェロウ氏は、「データを見れば、彼らは(大都市圏を)離れていることがわかります」と話す。「彼らには住宅を買う余裕がないので、おそらくその理由で離れているのでしょう」。ある調査による と、新興テクノロジーセンターであるサウスダコタ州スーフォールズなどの場所では、35歳未満の人の20%が持ち家を所有しているのに対し、サンノゼでは同じ割合はわずか3.5%だ。
移民がパレードに参加
国内からの移民が前世紀初頭に大都市圏から流出するにつれ、海外からの移民がその損失を補った。ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴの各都市圏では、国際移民の純流入は継続したものの、2020年以降は現住民の流出がそれを上回った。しかし今、開拓時代以来初めて、コロンバス、インディアナポリス、デモインといった中規模都市圏は、 ロサンゼルス、サンフランシスコ・ベイエリア、ニューヨークといった伝統的な中心地よりも高い割合 の外国人移民を受け入れている。
例えば、ネブラスカ州オマハは人口100万人の大台を突破したばかりです。オマハは民族的に多様化が著しく、2010年から2019年にかけて外国生まれの人口が28%と急増しました。これは国勢調査局のデータによると、全国平均の13%の2倍以上です。ネブラスカ州民のわずか7%が外国生まれですが 、オマハ地域には外国生まれの人口が20%を超える地域が広く存在し、多くの人が自宅で外国語を話しています。世紀の変わり目のローワー・イースト・サイドの復活とまでは言えないかもしれませんが、これはほとんどの人が予想していなかった民族的変化を象徴しています。
アメリカの新しい保育園
高齢者の避難所ではなく、今やアメリカの主要な子育て地域となっているのは、小規模都市圏と農村部です。ノースダコタ州、オクラホマ州、カンザス州、ネブラスカ州、アイオワ州、アーカンソー州、サウスダコタ州など、中西部と南部の州は、2000年から2023年にかけて高齢化の進行が最も緩やかな10地域のうち7地域を占めています。かつては絶望的な高齢化地域と見られていたノースダコタ州は、2000年以降、全州の中で最も高齢化が進んでいません。
こうした傾向の多くは出生率と関連しています。全体的に見て、低密度地域(手頃な価格の住宅、安全な道路、そして強いコミュニティ文化を持つ地域)は、人口密度の高い都市部よりも家族にとって住みやすい環境です。最も若い10大都市圏のうち8つは、特に郊外や、南部、中西部、山岳地帯の国勢調査地域にある小規模都市圏に位置しています。これらの低密度地域は、人口が減少・高齢化していく運命にある地域ではなく、国の子育ての場となりつつあります。
出生率が最も高かった6州のうち4州は、ノースダコタ州、サウスダコタ州、カンザス州、ネブラスカ州でした。一方、出生率が最も低かった15州のうち14州は、北東部と西海岸に位置していました。
大都市圏で平均より出生率が低かったのは、ロサンゼルス、ニューヨーク、ポートランド、シアトル、ボストン、ミルウォーキー、シカゴ、デンバー、サンフランシスコ、オーランド、プロビデンスなどです。対照的に、 出生率が最も高かった のは人口25万人未満の都市で、人口5万人から10万人の都市ではピークに達しました。上位には、ウェストバージニア州ホイーリング、ワイオミング州シャイアン、カリフォルニア州クリアレイク、ノースカロライナ州ジャクソンビル、イリノイ州ディケーター、ニューメキシコ州ホッブズといった小規模な都市が名を連ねています。
未来は分散している
こうした家族形態の変化は、未来について多くのことを物語っている。出生率の低い社会――現在、ヨーロッパ、東アジア、そしてサハラ以南のアフリカを除くほぼすべての地域で見られるように――は、必然的に一種の文化的停滞に陥る。住宅などの製品だけでなく、アイデアに対する需要も低下する傾向がある。 経済学者ゲイリー・ベッカーは、若者は革新的な経済にとって不可欠であり、米国では、若者の多くが内陸部から来る可能性が高いと指摘している。
この動きをアメリカンドリームの否定と捉えるのではなく、むしろアメリカンドリームの強化、つまりこの広大な大陸全体に機会を広げてきた大移動の反響と捉えるべきです。この新たな分散は、国家の衰退や大都市の終焉を意味するものではありません。しかし、全体的な小規模化と大都市圏の復活は、アメリカ人がより良い生活を求めて飽くなき探求を続ける原動力となっている「幸福の追求」の、常に変化する性質を浮き彫りにしています。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
●その他
備忘録(2025/9/11)
●企業
●マクロ
先週分の米新規失業保険申請件数は大幅に増加し、2021年10月以来、ほぼ4年ぶりの高水準となった。雇用の伸びが急減速する中、レイオフの動きが強まっている可能性がある。
キーポイント
新規失業保険申請件数(9月6日終了週)は前週比2万7000件増の26万3000件
ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は23万5000件
前週は23万6000件(速報値23万7000件)に修正
失業保険の継続受給者数(8月30日終了週)は193万9000人で横ばい
市場予想は195万人
前週は193万9000人(速報値194万人)に修正
週間の失業保険申請件数は、祝日を挟む時期に変動しやすく、今回の統計にはレーバーデーの週末が含まれていた。週ごとの変動をならした新規申請件数の4週移動平均は24万500件と、6月以来の高水準となった。
テキサス州での大幅な申請増が全体の押し上げ要因となった。同州は季節調整前で1万5304件増。2番目に大きかったのはミシガン州で、2980件増加した。一方、大半の州では申請件数が減少した。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「9月第1週の新規失業保険申請件数の急増は主にテキサス州によるもので、大半の州では申請が減少した。労働市場の弱さが増す中で、こうした悪化には注意が必要だが、より広範囲で申請件数が増加していれば、はるかに深刻な懸念材料となっていただろう」と述べた。
16~17日に連邦公開市場委員会(FOMC)会合が予定されており、今回の統計は米労働市場に関する最後の重要なデータとなる。FOMCは今年これまで利下げを見送ってインフレリスクに備えてきたが、雇用情勢への懸念が高まる中で、利下げを再開するとの見方が広がっている。
米労働省の労働統計局(BLS)が11日発表した8月の消費者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇した。前月の2.7%上昇から加速、1月以来の大幅な伸びとなった。
ただ、労働市場が下振れ傾向にある中、スタグフレーションを巡る懸念を高めかねず、米連邦準備理事会(FRB)が来週の会合で利下げに動くという見方を支える内容となった。
物価の「瞬間風速」を反映する前月比は、住居費や食料価格の上昇を背景に0.4%上昇し、前月の0.2%上昇から加速。伸びは前月比でも1月以来の高さとなった。
ロイター調査によるエコノミスト予想は、前年比2.9%、前月比0.3%上昇だった。
プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフグローバルストラテジスト、シーマ・シャー氏は「予想を幾分上回ったが、FRBに来週の利下げをちゅうちょさせることはないだろう」と述べた。
トランプ関税の影響は緩やかだが、関税前の企業による在庫積み上げは尽きつつあり、物価上昇は加速するとみられている。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.3%上昇、前年比3.1%上昇で、伸びはともに前月と変わらず。
項目別では、帰属家賃が前月比0.4%上昇、ホテルなどの宿泊費が2.3%上昇、航空運賃が5.9%上昇、中古車・トラックが1.0%上昇した。
金利先物市場では、FRBが来週16ー17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を含め、年内残り3回の会合でそれぞれ0.25%ポイントの利下げを実施すると見込まれている。
また、来年1月の会合で4回連続で利下げに踏み切る確率も50%に迫っている。
サブプライム(信用力の低い個人向け)自動車ローン会社の米トライカラー・ホールディングスは、連邦破産法第7条に基づく会社清算を申請した。テキサス州ダラスに本社を置く同社は10日、南西部などで不法移民を中心にローンを提供していた。
同社の申し立て文書には、債務は10億ドルから100億ドル(約1500億円から1兆5000億円)の間と記載されている。第11条と異なり、第7条では債務再編が困難な企業の資産が裁判所指定の清算人によって売却される。
申し立て文書にはJPモルガン・チェースやフィフス・サード・バンコープ、バークレイズなどの大手銀行を含む、2万5000もの債権者が記載されている。これらの銀行は総額で数億ドル規模の損失を見込んでいると、ブルームバーグが9日に関係者情報として報じた。
申請の理由はダラスの連邦破産裁判所に提出された文書に明記されていない。同社による不法移民へのローン提供は今年、当局の調査対象となっていた。トランプ米大統領の不法移民取り締まり強化を背景に、同社のビジネスモデルが抱えるリスクが高まったと、投資家から懸念の声が上がっていた。
同社はウェブサイトで、社会保障番号や信用履歴がなくても融資の申し込みは可能だと案内していた。
クロール・ボンド・レーティング・エージェンシーが3月に発表したリポートによれば、トライカラーが昨年実行した自動車ローンは10億ドルを超える。他のノンバンク系自動車ローン会社と同様、トライカラーも顧客へのローン債権を資産担保証券(ABS)として組成して、投資家に販売することで貸し付け原資を調達していた。
ブルームバーグがまとめたデータによれば、トライカラーが2022年より後に販売したABSは20億ドル相当に近く、その多くがまだ償還されていない。最新では6月に2億1700万ドル相当の証券を販売した。
事情に詳しい複数の関係者によれば、JPモルガンとバークレイズ、フィフス・サードは、トライカラーの「ウエアハウスレンダー」として同社に自動車ローン原資を融資していた。
米国では基調的なインフレ率が8月に予想通りの上昇となった。一方、先週分の米新規失業保険申請件数は大幅に増加し、2021年10月以来、ほぼ4年ぶりの高水準となった。市場は9月の利下げに加えて、年内あと2回の利下げを見込んでいる。
米消費者物価指数(CPI)と米失業保険申請件数に関する市場関係者のコメントは以下の通り。
◎ノースライト・アセット・マネジメントのクリス・ザッカレリ氏:
門を閉ざしていた最後のかんぬきが外れた。利下げという馬がまさに厩舎(きゅうしゃ)を飛び出そうとしている。先週の雇用統計発表前までは9月に利下げがあるかどうかが焦点だったが、今や9月に利下げがあるのは確実だとして、その後に何回利下げがあるかという議論に一気に移ったのは驚きだ。
◎リーガン・キャピタルのスカイラー・ウィナンド氏:
インフレが比較的落ち着いていることが明らかになった。これにより、FRBは労働市場の軟化を食い止めることに、より重点を置けるようになる。来週に0.25ポイントの利下げが行われ、その後さらに年内2回、0.25ポイントずつの利下げが実施されるだろう。
◎モルガン・スタンレー・ウェルス・マネジメントのエレン・ゼントナー氏:
現時点でインフレは重要な副次的テーマではあるが、主役は依然として労働市場だ。この日発表されたCPIは、前日のPPIを相殺するように見えるかもしれないが、雇用情勢の軟化という状況からFRBの目をそらすほど強い数字ではなかった。これは来週の利下げにつながる。さらにその後も利下げは続く可能性が高い。
◎グローバルXの投資戦略責任者スコット・ヘルフスタイン氏:
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は今年、物価安定と完全雇用へのリスクはほぼ均衡しているとの認識を示してきた。先週の雇用統計で大幅な修正があったことを受け、完全雇用へのリスクが物価へのリスクを今や上回っていると、多くがみている。FRBも恐らく同様の認識を持っているが、この日のインフレ指標は大幅利下げでなく、0.25ポイントの小幅利下げを支持する内容となった可能性が高い。
◎ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズのジョン・カーシュナー氏:
FRBは今や、完全に身動きが取れなくなっている。パウエル議長は労働市場の明らかな減速に対抗するため利下げを断行しようとしているが、一方でFRBのもう一つの責務である物価の安定、つまり2%のインフレ目標を無視している。コアCPIはすでに4年半にわたり目標を大きく上回っており、今後もその傾向が強まっている。
◎プリンシパル・アセット・マネジメントのシーマ・シャー氏:
この日の米CPIは新規失業保険申請件数にかき消された。むしろ失業保険申請件数の急増がFRBの判断に一層の緊急性を与えるだろう。パウエル議長は連続利下げを示唆する公算が大きい。
中国の地方政府が民間企業に対して抱える巨額の債務を処理しようと、中央政府が動き出している。事情に詳しい関係者が明らかにした。そうした未払い金は1兆ドル(約148兆円)を超えるとの推計もある。
政府は地方当局が滞納分を支払えるよう、国家開発銀行などの政策銀行や国有銀行に融資を要請する案を検討している。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。
検討中の措置の下で投じられる資金は、まず民間企業への滞納金少なくとも1兆元(約20兆7400億円)の穴埋めに充てられる見通しだ。関係者によれば、これは長期的な取り組みの第1段階で、当局は2027年までに完了させたい考え。
習近平国家主席は2月の演説で、公的セクターによる企業への支払い遅延は国民の政府に対する信頼を損なう恐れがあると警告。
滞納金が苦境にある民間企業をまひさせ、さらに社会全体に悪影響を及ぼしていると述べ、中央政府がこの問題を重く受け止めている姿勢を強調した。この演説は先月公表された。
提案されている支援策は、公共事業などを請け負った民間企業に救済をもたらす一方で、すでに不良債権が膨らんでいる国有銀行にさらにリスクを移転することになる。
国家発展改革委員会(発改委)と国家金融監督管理総局(NFRA)、国家開発銀はいずれもコメント要請に応じなかった。
ドイツ卸売・貿易業連合会(BGA)は11日、今年のドイツの輸出が2.5%減少するとの見通しを示した。
世界の需要減退、国内コストの上昇、保護主義の高まりといった「甚大な圧力」に直面していることが理由。
BGAのディルク・ヤンドゥラ会長は、BGAの貿易景況感指数が依然として大幅なマイナス圏にあり、多くの企業が売上高の停滞または減少を報告していると述べた。
ヤンドゥラ氏は「状況は依然として脆弱だ」とし「今、政策当局者が断固として行動しなければ、貿易はわが国経済の原動力であり続けることはできない」と語った。
BGAは今年の輸入が4.5%増加するとも予測している。
ヤンドゥラ氏は、米中の貿易摩擦、関税引き上げ、サプライチェーン規則の厳格化、輸出管理の強化が、競争力低下とコスト増加の原因になっていると指摘。
米国の関税率の多くは非常に高いため、一部のドイツの輸出業者は事業が「不可能」になっており、事実上、米国市場から締め出されていると述べた。
BGAによると、調査対象企業の約60%が、関税によって直接的または間接的に悪影響を受けたと答えた。
また、調査対象企業の67%が、報告義務の負担を指摘しており、ヤンドゥラ氏は、こうした負担が欧州の競争力を徐々に破壊していると述べた。
ドイツ連邦統計庁が11日発表したところによると、今年上半期に登録されたドイツ企業の倒産件数は、前年同期から12.2%増加した。
上半期に地方裁判所に登録された倒産件数は合計1万2009件だった。
上半期の債権者の債権額は推定で約282億ユーロ(329億7000万ドル)。前年同期の324億ユーロから減少した。
倒産件数が増加する一方で、債権額が減少したのは、前年同期に相対的に大手企業の倒産が多かったことが背景。
速報値によると、8月の倒産件数は前年同月比11.6%増加した。
ドイツ商工会議所(DIHK)のチーフアナリスト、フォルカー・トライアー氏は「危機は続いており、日々、雇用や価値創造、起業家の力が失われている」とし、2年連続のマイナス成長で多くの企業の資金繰りが逼迫していると述べた。
DIHKは、今年の企業倒産件数が、2015年以来の高水準だった昨年の2万1812件を上回り、2万2000件を超えると予想している。
倒産手続きの多くは倒産が登録される3カ月前に始まる。先行指標は、9月に倒産件数がわずかに増加し、10月には高水準で推移することを示唆している。
IWHの倒産調査責任者シュテフェン・ミュラー氏は「先行指標は秋に多数の倒産を示唆しているが、労働市場への影響は穏やかにとどまるだろう」と述べた。
ドイツの失業者は10年ぶりに300万人に達した。
イスラエルがカタールの首都ドーハでイスラム組織ハマス幹部を標的に空爆した。カタールでは6月、当地にある米軍基地に対するイランのミサイル攻撃があったばかりだ。地域の経済拠点としての発展と仲介国としての外交的地位の強化の両立を目指すカタールにとって、一連の攻撃により安定したビジネス拠点としてのイメージが揺るぎかねない事態となっている。
ガザ戦争の仲介役として外交的な役割を果たそうとするカタールは、既により広範な中東紛争に巻き込まれている。イランは6月、米国のイラン核施設に対する空爆の報復としてカタールにあるアルウデイド米軍基地を攻撃し、発射されたミサイルの大半がドーハ上空で迎撃された。9日にはイスラエルがハマスの政治指導部を標的として空爆し、カタールは再び攻撃対象となった。
カリジ・エコノミクスのディレクターでグローバルソース・パートナーズの湾岸アナリストであるジャスティン・アレクサンダー氏は「カタールは数カ月の間にイランとイスラエルの両方から攻撃されたという特異な立場にある」と述べた。
「イランによる攻撃の影響はほとんど目に見えなかったが、その攻撃が繰り返されるようになればリスク認識は変化するかもしれない」という。
ドーハ駐在の西側大手企業の幹部は匿名を条件にロイターに対し、自社がまだ状況を評価している最中だが、空爆のあった翌日はビジネスがまるで何ごともなかったかのように通常に戻ったと語った。
6月のイランの攻撃は事前に予告されており、カタールは防御準備を整える十分な時間があり、死傷者はなかった。
しかしイスラエルの攻撃はドーハを不意に襲い、カタール治安部隊の1人とハマスのメンバー5人を含む少なくとも7人が死亡した。
カタールに暮らす約300万人の大多数は、世界有数の富裕国でのビジネス機会を求めて世界各地から集まった外国人居住者た。
サッカーの2022年ワールドカップ(W杯)の開催地となったカタールは、光り輝く高層ビル群や新たに整備された10車線の高速道路、未来的な姿の地下鉄を誇っている。しかし、カタールは湾岸諸国で化石燃料に対する依存度が最も高い国の一つであり、経済の多様化の面でアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアに後れを取っている。政府は経済的な優先課題を改めて設けることで、こうした状況を変えようと模索している。
カタールは長年、同盟国である米国で重要なビジネス上の利害を保有してきた。
国営のカタールエナジー(QE)はイランと共有する巨大規模の「ノースフィールド」で液化天然ガス(LNG)生産の野心的な拡張計画を進めている。米石油メジャーのエクソンモービルやコノコフィリップスが主要な提携企業として事業に参加する。この事業が完成すればカタールのLNG生産量はほぼ倍増する見込みだ。
QEとエクソンモービルが共同出資する「ゴールデンパス」は米テキサス州サビーンパスで大規模なLNG輸出施設を建設中で、今年後半に輸出開始を予定している。
カタール投資庁(QIA)はトランプ米大統領の湾岸歴訪中、今後10年間で米国に5000億ドルを投資すると表明した。トランプ氏はこの訪問中に署名された防衛関連の購入契約額が420億ドルに上ったと述べた。
カタール航空はまた、GEエアロスペース製のエンジンを搭載したボーイング機160機を契約額960億ドルで発注した。これはボーイングの大型機として過去最大の受注契約だ。
アナリストたちは、こうした経済関係が注視されており、状況が一段と不安定化すれば新規投資が疑問視される可能性があると指摘する。
英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のニール・クィリアム准研究員は「攻撃がさらに続けば、カタールと米国の企業はリスクを再評価し、適切なリスク緩和策を取らざるを得なくなるだろう」と述べた。
<ボイコットの教訓>
カタールは2017年に始まり3年以上続いた湾岸諸国との断交危機を莫大な原油と天然ガスがもたらす富によって乗り切った。サウジアラビア、UAE、バーレーン、オマーン、エジプトはカタールがテロ組織を支援していると非難し、交通や物流を遮断してカタール経済を締め付けた。カタールはこうした嫌疑を否定した。
カタールは当時、禁輸措置に対抗して国内の酪農業を立ち上げるために飛行機で乳牛を運び込むなど巨額の資金を費やした。
そのような極端な対策は現時点で必要とされないように思われる。
金融市場はイスラエルの空爆を無視したかのように見え、カタール国債や債務不履行リスクを保証する投資手段のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)にネガティブな反応がなかった。
湾岸諸国の市場が動揺していないその他の兆候として、サウジアラムコは10日にドル建てイスラム債の売り出しを予定通り進めており、ロイターは30億―40億ドルを調達する可能性があると報じた。
カタールのドーハ銀行は9日、イスラエルの空爆直後にもかかわらず債券発行で5億ドルを調達した。
安全保障のトップ専門家によると、「反西側同盟」から生じる潜在的な脅威は不安なレベルに達しており、アナリストらはワシントンとその同盟国は中国、北朝鮮、インド、ロシア間の関係改善の重要性を過小評価すべきではないと警告している。
ミュンヘン安全保障会議財団評議会のヴォルフガング・イッシンガー会長は、金曜日にイタリアのチェルノッビオで開催されたアンブロセッティ・フォーラムの傍らでCNBCのスティーブ・セジウィックに対し、中国で最近開催された世界各国首脳の会合を「憂慮すべき」と述べた。
先週、中国の習近平国家主席は北京で行われた軍事パレードに20名以上の外国首脳を迎え入れた。その中には、北朝鮮の金正恩委員長やロシアのウラジーミル・プーチン大統領も含まれていた。習近平国家主席は、中国でプーチン大統領やインドのナレンドラ・モディ首相と笑顔で交わす姿も撮影された。
「これらの写真を見て心配しています」とイシンガー氏はCNBCに語った。「インドと中国の間に完全な調和がないことは承知していますが…世界は間違った方向に進んでいるのです。」
イシンガー氏は、欧州外交評議会やワシントンDCの大西洋評議会など、外交政策に重点を置いた役職を数多く務めており、以前は駐米ドイツ大使を務めていた。
同氏はCNBCに対し、懸念は権威主義体制の台頭や民主主義の衰退から、全体主義指導者がどの程度協力する意思があるかへの懸念へと移っていると語った。
「少なくとも、ある種の反西側同盟が構築され、私たちが好む秩序ではなく、権力、軍事力、抑圧的な体制に基づいた、異なる世界秩序が生み出される可能性があるという事実を受け入れる必要があると思う」とイシンガー氏は述べた。
「それは我々の利益にならないシナリオだと思います。ですから、中国から送られてきたこれらの写真は心配です。」
月曜日、中国、インド、ロシアはBRICS諸国のバーチャル首脳会議に再集結した。BRICSにはブラジルと南アフリカも含まれており、ドナルド・トランプ米大統領から「反米政策」との非難を浴びている。
BRICS首脳会議中、各国の代表はホワイトハウスの関税体制を批判し、同盟内での貿易関係を深める方策について語った。
北京は「新たな世界秩序を追求する」
ジョージ・H・W・ブッシュ米中関係財団のシニアフェローでハーバード大学アジアセンター研究員のソンヒョン・リー氏は月曜日に発表した記事の中で、北京、北朝鮮、ロシアの間に正式な同盟関係がないことを理由にこうした絆の強化を否定する人々は「深く機能するパートナーシップの本質を見逃している」と警告した。
「(先週の)首脳会談とパレードは、中国の戦略的姿勢の根本的な転換、すなわち西側諸国との深い『心理的分離』を公に示したものだ」と彼は述べた。「北京は、ワシントンとの戦略的和解はもはや実現可能な目標ではないと結論づけ、今や新たな世界秩序の構築を積極的に推進している」
リー氏は習近平国家主席、プーチン大統領、金正恩氏の「三頭政治」を「この新たな態勢のハードパワーの中核」と呼んだ。
「ワシントンとその同盟国が犯しうる最も危険な過ちは、この課題の本質を誤診することだ」と彼は述べた。「正式な同盟関係の欠如に固執することは、過去の戦争に備えることに等しい。脅威とは…国際法の隙間を縫うように動き、曖昧さと否認可能性を巧みに利用する、流動的で適応力のあるネットワークなのだ。」
しかし、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究所ヘンリー・A・キッシンジャー国際問題センターの客員研究員、エフゲニー・ロシュチン氏は、同盟が現在の形よりさらに発展できるかどうかは疑わしいと述べた。
ロシュチン氏は先週中国で起きた出来事について、「SCO首脳会議は伝統的な軍事同盟ではなく、おそらく今後もそうなることはないでしょう」と語った。
同氏はCNBCへの電子メールで、両国間の関係についての懸念は「根拠がある」とし、特にロシアが関与している懸念は、モスクワとの継続的な貿易がロシアの戦時経済を支えていたためだと語った。
しかしロシュチン氏は、北京はロシアへの軍事支援を約束しておらず、中国とインドの両国はロシアの核に関する発言に不安を表明していると指摘した。
「首脳会談で明らかになったのは、まとまりのあるブロックというよりは、明確な野心を持つ国々の集まりであり、特定の領域で戦術的に連携することはできるものの、NATO型の第5条の枠組みの下で期待されるような統一されたコミットメントは欠いているということだ」と彼は述べた。
「中国は…そのような結束を築く意図が見られない。政治的連帯や共通の価値観に基づく同盟を築くのではなく、柔軟で多層的な関与を推進している。つまり、利害が一致する分野では協力を促し、それ以外の分野では関与を断つ余地を残しているのだ。」
しかしロシュチン氏は、中国がこうした同盟を長期戦略の一環として捉えており、国連のような多国籍の場で自国の利益を推進するための新たな「拠点」を確立できる可能性があると認めた。
「習近平国家主席が一貫して国連への強い支持を表明しているのは偶然ではない」と彼は述べた。「この新たな極の影響力は、世界の統治における中国の立場へのより広範な支持につながる可能性がある」
アメリカのトップ金融サービス幹部の中には経済について警告を発し始めている者もいる。
多くのCEOは、来週の連邦準備制度理事会の決定と、今週の米労働統計局による雇用統計の下方修正を前に、「軟化」または「弱体化」の兆候が見られると述べ、意見を述べている。
水曜日のCNBCのインタビューで、ゴールドマン・サックスは
デビッド・ソロモンCEOは、経済は「依然として順調に推移している」ものの、兆候は異なる方向を示している可能性があると述べた。
「多くのCEOが経済の軟化について語っており、それは疑いの余地がありません」と彼は述べた。「雇用統計からも、景気がいくらか軟化していることが示唆されています。」
労働統計局(BLS)は火曜日に発表した暫定報告で、2025年3月までの1年間の非農業部門雇用者数データを改訂し、当初の推定値から91万1000人の大幅な減少を示した。この改訂値は昨年より50%以上高く、過去20年以上で最大の変動となり、経済への懸念の高まりを一層強めている。
BLSはドナルド・トランプ大統領からも非難を浴びており、大統領は8月初旬に同局長を解任し、データ収集方法を批判している。
ソロモン氏は、現在のインフレ状況には「まだ改善の余地がある」と述べ、関税が経済成長に影響を与えているものの、現段階ではそれを定量化するのは難しいと指摘した。経済が秋に向かうにつれ、ソロモン氏は政策金利が若干変更されると予想しており、来週のFRBによる25ベーシスポイントの利下げも含まれると述べた。
トランプ大統領はFRB(連邦準備制度理事会)にも批判的で、金利引き下げを訴え、ジェローム・パウエルFRB議長を批判している。連邦公開市場委員会(FOMC)は2024年12月に政策金利を前回引き下げ、それ以来、政策金利を4.25%から4.5%の目標レンジに据え置いている。
JPモルガン・チェース
ジェイミー・ダイモン 最高経営責任者(CEO)は火曜日、 CNBCに対し、FRBは来週の会合で「おそらく」金利を引き下げるだろうが、「経済への影響は大きくないかもしれない」と語った。
ディモン氏はまた、BLSの報告書は米国経済が減速していることを裏付けていると考えていると述べた。
「経済は弱まっていると思う」とダイモン氏はCNBCのレスリー・ピッカー氏とのインタビューで語った。「景気後退に向かっているのか、それとも単に弱まっているだけなのか、私には分からない」
しかし、ダイモン氏は、最終的には、消費者の弱体化を考えると、国は経済がどのように進展するかを「ただ待って見る」しかないと述べた。
同様に、ウェルズ・ファーゴ
チャールズ・シャーフ最高経営責任者(CEO)は水曜日、 CNBCに対し、大企業が好調に見えるにもかかわらず、同行は低所得のアメリカ人が経営を維持するのに苦労している状況に直面していると語った。
「高所得層と低所得層の消費者の間には大きな二分法が存在し、それが今も続いており、現実的な問題となっている」とシャーフ氏は語った。
シャーフ氏はBLSの数字についてコメントし、アメリカの納税者間に格差が存在することは「否定できない」とし、アメリカ経済には「さらなる下振れ」があると考えていると述べた。
8月の雇用創出も弱さの兆候を示しており、BLSは先週、 同月の非農業部門雇用者数はわずか2万2000人の増加にとどまったと報告した。
モルガン・スタンレー
CEOのテッド・ピック氏はCNBCに対し、アメリカのCEOやCFOは、新型コロナウイルスや2度のトランプ政権など、この国の最近の浮き沈みを通して、回復力をつける必要があったと考えていると語った。
「政策の不確実性の一部が実際に定量化され始めているところだと思う」と彼は語った。
それでもピック氏は、逆風が吹いているのを目にしており、政策の不確実性は若干縮小している可能性があると考えていると述べた。
「確かに、少し減速するかもしれない」とピック氏は語り、すべてがどうなるか見守ると付け加えた。
バークレイズ
最高経営責任者(CEO)のCS・ベンカタクリシュナン氏は火曜日のCNBCで、労働市場の軟調さもあってFRBは利下げに踏み切るだろうと考えていると述べた。
トレーダーはFRBによる利下げも予想している。FRB 先物取引に基づくCME Fedwatchツールによると 、トレーダーは現在、FRBが少なくとも0.25ポイントの利下げを行うことはほぼ確実とみており、さらに0.50ベーシスポイント(0.5%ポイント)の利下げを予想する声もある。
ベンカタクリシュナン氏は、インフレ問題がまだ具体的に現れていないとしても、現在の経済はCEOたちが長期的な視点を持つべきであることを示唆していると述べた。
「まだ目撃していないが、心配しなければならない」と彼は語った。
PNCファイナンシャルサービス
CEOのビル・デムチャック氏もこの波に乗り、火曜日にCNBCに対し、労働者の雇用、労働力不足、賃金圧力などにより「我々の経済には根深い圧力がある」と語った。
デムチャック氏は、BLSの改訂報告書を裏付ける証拠を目にしていると述べ、消費者支出が「経済を牽引している」にもかかわらず、FRBが今後金利を引き下げる理由はその証拠にある可能性が高いと考えている。
デムチャック氏は「関税がいつか解消されるからといって、経済内部に消えるかどうか分からない圧力が存在している」と語った。
フランスでは、すでに首相が議員によって解任され、後任が就任しており、今週は全国的に抗議活動が行われている。
投資家の注目は今、フランスの経済状況を示す注目の指標、すなわち一連の信用格付け更新の最初のものへと集まっている。これは、国債への投資に伴うリスクを評価するものだ。エコノミストらは、格下げはフランス国債の利回りで測られるフランスの借入コストに連鎖的な影響を及ぼす可能性があると警告している。
3大格付け機関のうち、フィッチが金曜日に最新格付けを発表し、続いてムーディーズが10月24日、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が11月28日に発表する。
フランスの債務負担は既に深刻化している。昨夏の議会選挙で過半数議席を獲得できなかった後、次年度予算をめぐる論争の中で二つの政権が崩壊し、フランスの財政が持続不可能な軌道に乗っているのではないかという懸念が再燃している。フランスの財政赤字は2024年に国内総生産(GDP)の5.8%に達し、ユーロ圏で最高水準となる。
セバスティアン・ルコルニュ新首相が今後どのように政策を進めるのか、また、フランソワ・バイルー前首相が提案した440億ユーロ(515億ドル)の歳出削減と増税の提案を堅持するかどうかについては、依然として大きな疑問が残る。バイルー前首相の提案には、2つの祝日の廃止、年金や福祉給付の凍結、地方自治体への資金削減といった不人気な措置が含まれていた。
一方、格付け機関は、春から格付けを上げるか、据え置くか、下げるかを検討している。これは、いくつかの機関が同国をネガティブな見通しとした一方で、信用リスクが低く、投資適格級の範囲内に十分収まっていることを示す「ダブルA」のステータスを維持したことを受けてのことだ。
ジェフリーズの欧州担当チーフ金融エコノミスト、モヒット・クマール氏はCNBCの「ヨーロッパ・アーリー・エディション」で、「フランスが切望するダブルA格付けを失うことになれば、機関投資家の債券保有者に深刻な影響を与えるだろう」と語った。
「フランス国債は、特にアジアの機関投資家からの需要が非常に高いが、彼らはダブルA格債の保有に非常に厳しい基準を設けている」と同氏は続けた。
クマール氏は、政治的混乱が3~6カ月以上続き、格付け機関がフランスの格付けを引き下げるシナリオは「フランス債務にとって最悪のシナリオ」になると述べた。
債券市場の売りは利回り(投資家に支払われる金額)を押し上げ、既存の債務の返済と将来の成長のための資金調達が困難になるため、経済に連鎖的に悪影響を及ぼす。
「危機一髪」
フランスの借入コストの動向は今週、比較的落ち着いている。最近の政治情勢の多くは市場で広く予想されていた。2年債利回りは
不透明な見通しにもかかわらず、10年債と30年債は、最近の高値と過去の高値の両方を下回ったままです。
ドイツ銀行のエコノミストらは火曜日のレポートで、国債格付けの一部引き下げリスクはすでに債券市場に織り込まれているとし、格付けの更新は「微妙な判断」になると付け加えた。
「シングルA格付けへの移行が格付け機関のうち1社のみによって適用される場合、それ自体が強制売却を誘発する可能性は低いだろう」と彼らは述べた。
しかし、フランスの財政赤字の超過、政治的不確実性、財政再建の必要性、そして来年の地域防衛費の増加とドイツの財政拡大による波及効果がいくらか期待できるにもかかわらず、状況は「不利」であると彼らは続けた。
ドイツ銀行は、短期的には最近の混乱により個人や企業が支出や投資を遅らせ、経済にさらなる圧力をかける可能性があると指摘した。
ベレンバーグの主任エコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は火曜日、格下げは「あり得る」が「大きな驚きではない」と述べた。
シュミーディング氏はメモの中で、「自己強化的な悪循環(利回り上昇=財政赤字拡大=利回りさらなる上昇)を伴う真の金融危機は、当面極めて可能性が低い。経常収支がほぼ均衡しているフランスは、金融危機に陥りやすい国ではない」と述べた。
「もちろん、完全に排除することはできない」と彼は付け加えた。シュミーディング氏は、債券にとって最もリスクの高い状況は、極右の国民連合かフランス社会党が政権を握る早期の議会選挙が行われる場合だと指摘した。
「もし急進派が資金調達不可能な政策を実行しようとすれば、債券投資家は最終的にフランスへの資金提供を拒否する可能性がある」と同氏は述べ、そうなれば財政の慎重化を迫られる可能性があるとした。
フォービス・マザールのチーフエコノミスト、ジョージ・ラガリアス氏は、ユーロ圏全体に波及する恐れのある危機シナリオに対して、欧州中央銀行がある程度保護策を提供していると述べた。
同氏は電子メールでCNBCに「フランスの元財務大臣が率いるECBは、需要が低迷し借入金利が急上昇している地域で需要改善に動く可能性が高いため、市場が壊滅的な状況になることを過度に心配することはないだろう」と語った。
しかし、ECBだけではフランス経済を立て直すことはできません。近い将来、政府は不人気な緊縮財政措置を講じ、年金制度の赤字是正に取り組まざるを得なくなる可能性が高いでしょう。したがって、ECBは短期的な市場の変動を緩和する可能性が高いと私たちは考えていますが、市場はフランスに、より痛みを伴う財政調整を強いる可能性は依然としてあります。
ヨーロッパで過ごしたことのないアメリカ人は、旧世界がいかに火薬庫と化しているかを十分に理解していないかもしれない。
アメリカ合衆国における社会関係が今どれほど悪化しているかはさておき、大西洋の向こう側では少なくとも一桁以上悪化している。ヨーロッパの自己嫌悪は伝統的な文化的絆を崩壊させている。大量移民は長年の対立を激化させている。
ヨーロッパは爆発寸前だ。
ヨーロッパは永遠の戦場です。 私たちの祖先の多くは、何世紀にもわたって続いた宗教的、経済的、そして文化的な紛争から逃れるために、故郷を後にしました。こうした歴史的な恨みは、平和な時代にもくすぶり、やがて暴力へと転じ、世代から世代へと受け継がれてきました。現代のヨーロッパ諸国は、2000年にわたる国境と同盟の変遷の産物であり、先住民のヨーロッパ人は、古代の領土が今日の政治的に描かれた地図にきれいに収まらない地域部族にまで遡る家系を辿ることができます。
アメリカの地理的なアクセントのせいで、ミシシッピ州やミネソタ州出身の人がブロンクスの英語話者とうまくコミュニケーションをとるのが難しいと思うなら、ヨーロッパには約300もの母語があることを考えてみてください。スイスには4つの公用語があり、その中にはローマ帝国のラテン語口語に由来するロマンシュ語も含まれます。多様な先住民の言語、方言、語彙、アクセントのおかげで、小さな町の住民は「よそ者」をすぐに見分けることができます。さらに驚くべきことに、彼らはたいてい、ただ聞くだけで、見知らぬ人の祖父母がかつて住んでいた町を言い当てることができます。
ヨーロッパで勃発し、甚大な被害をもたらした二度の世界大戦は、20世紀半ばに国境の撤廃を求める政治運動を牽引した。ヨーロッパ 大陸で勃興しつつあった国際官僚機構の創設メンバーとなったヨーロッパの知識人たちは、ヨーロッパの惨禍を国家の誇りのせいにし、「ナショナリズム」を事実上汚名に変えた。
奇妙なことに、この時代はフランスやイギリスといった崩壊しつつある帝国が、旧植民地の国家独立を少なくとも控えめに支持していた時代でもあった。同様に、ソ連の鉄のカーテンの背後に閉じ込められたヨーロッパ諸国における民族革命を奨励する、半世紀にわたる米国主導のキャンペーンの始まりでもあった。そこで西側の権力者たちは、ナショナリズムをムッソリーニのファシズムやヒトラーの国家社会主義に匹敵する、一種の容認できない精神と位置づけ、中央ヨーロッパ、アフリカ、アジアの旧国家あるいは原始国家に対し、それぞれの帝国からの離脱を促した。西側諸国の指導者たちは、個々のヨーロッパ諸国を単一の「連合」に統合することを推進する一方で、すべての人間には自決の自然権があるという論理の下、民族独立運動も促進した。
欧州統合プロジェクトが本格的に始動してから80年が経ちましたが、これらの潜在的な矛盾は、ヨーロッパを第一次世界大戦と第二次世界大戦以前よりもさらに大きな自己破壊の潜在エネルギーを秘めた火薬庫へと変貌させました。 官僚支配階級は、先住ヨーロッパ人の歴史的アイデンティティを積極的に抑圧する一方で、外国人には自らの文化的アイデンティティを保持するよう奨励し、大陸に外国人を氾濫させてきました。こうして、自国の独自の伝統を称揚するハンガリー人、ポーランド人、デンマーク人は「極右民族主義者」と非難され、アフリカや中東からの移民にヨーロッパの生活様式への同化を主張するフランス人は「人種差別主義者」や「偏屈者」と非難されるのです。
この反ヨーロッパの怪物は意図的に作り出された。ヨーロッパ人の国民的アイデンティティの抑圧と外国人の保護が同時に行われ、一種の「多文化主義ダイナモ」が生まれ、ヨーロッパ人を異質なものへと変貌させる。固有の宗教、文化、歴史的慣習を剥奪され、西洋文明の空白に根付いた外国の宗教、文化、慣習を称賛するよう強制されたヨーロッパ人は、事実上、自らの領土に同化させられる。ヨーロッパ人は自らの文明を軽蔑し、ヨーロッパ国内に外国文明を模倣しようとする者たちに屈服するよう教えられている。ヨーロッパの官僚支配階級は、外国人を利用してヨーロッパ人からヨーロッパらしさを奪い取ろうとしている。
英国では、一般の英国人による草の根運動「オペレーション:レイズ・ザ・カラーズ(旗を掲げよう)」が始まりました。 その戦略はシンプルです。英国国民に、聖ジョージ十字章とユニオンジャックの旗を目立つように掲げ、振るよう呼びかけるのです。
イングランドと英国の国旗を掲揚することに、一体何の不快感や危険性があるというのでしょうか?何も。
しかし、グローバリストの体制側は正気を失いつつある。左翼は、 国旗はもっと「多文化的」なものに置き換えるべきだと 主張し、愛国心から国旗を掲げるほど卑劣な行為をするのは「極右の人種差別主義者」だけだと主張する。 国境開放派の政治家たちは、 国旗を振り回す人々を「過激派」「憎悪に満ちた」「白人至上主義」と非難している。言い換えれば、英国民は英国の「エリート層」に、英国への忠誠心などなく、ただ反感を抱いているだけだと認めさせようとしているのだ。
このどちらかといえば無害な形態の政治演説は、グローバリズムの自殺的な伝染を暴露するのに驚くほど効果的であることが証明されている。ロンドンでは、いわゆる「ゲイ・プライド」旗、「パレスチナ」旗、パキスタン国旗、イラン国旗、そして現在英国の海岸に市民を下ろすほとんどすべての第三世界の国の国旗を目にするのはまったく普通のことだ。英国市民が、首都中に厚かましくも外国の国旗がはためいているという事実に憤慨したとしたら、警官は、想像上の「ヘイトスピーチ」で起訴すると脅して、率直な「違反者」を黙らせるだろう。しかし、驚くべきことに、これらの同じ卑劣な暴君たちは、生粋の英国人が自国の歴史的な旗を「掲げる」勇気があると、癇癪を起こすのだ。
同様の運動が勢いを増している。10年前は、バルカン諸国の街頭や、バスク地方をはじめとするヨーロッパ各地で国家承認を求める独立パレードのさなかで、こうした愛国的な行動を目にするのが一般的だった。しかし今日では、国境を越えると、オランダ、デンマーク、ドイツ、イタリア、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ハンガリー、ポーランド、チェコ、ギリシャといった国の国旗が掲げられた海に偶然出会うことは珍しくない。欧州連合(EU)が大陸帝国の構築を開始してから80年が経ち、これらの「植民地」は自決権の回復に意欲を燃やしているようだ。
官僚支配階級がヨーロッパの残骸を破壊し、その残骸を外国の征服者に引き渡していく中、一般のヨーロッパ人はもはや黙っていられない、と言っても過言ではないでしょう。 西洋文明が何千年にもわたって約束してきたことに絶対的な忠誠を誓うアメリカ人として、こうした愛国的な復活は、 私たちの死を望むグローバリスト体制へのタイムリーな反論だと感じて います。
ウェールズの詩人ディラン・トーマスの言葉が、ヨーロッパの多くの母国語の一つに翻訳されているのを、私は何度目にしたか分からない。 「穏やかにその良い夜に消えてはならぬ」や「消えゆく光に抗い、怒りを燃やせ」といった言葉が、まるで心電図にかすかな鼓動が流れるように、掲示板に現れる。 ヨーロッパでは多くの人が死にたくない。生きるためには、戦わなければならないのだ。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
ダグ・バーグム内務長官は今週イタリアで開かれたエネルギー会議で、トランプ政権下では米国における電力発電源としての洋上風力の将来性はないと述べた。
「現政権下では、洋上風力発電は高価すぎる上に信頼性も低いため、将来性はない」とバーグム氏は水曜日、ミラノで開かれたガステック会議で聴衆に語った。
これはトランプ政権の高官によるこれまでで最も明確な発言であり、大統領は米国の新興洋上風力産業を閉鎖することを目指している。バーグム氏は内務省長官として連邦領海内の洋上風力発電所のリースと許可を監督している。
ドナルド・トランプ大統領は就任初日、「暫定的」とされる大統領令により、洋上風力発電所の新規リースを禁止した。トランプ大統領はまた、許可の見直しも命じたが、業界は建設中のプロジェクトが前進することを期待していた。
しかし、バーグム内務大臣は水曜日、プロジェクト名を挙げずに、米国ですでに建設中の5つの洋上風力発電所を内務省は「綿密に検討している」と述べた。
建設中の洋上風力発電所は、ロードアイランド沖のレボリューション・ウィンド、マサチューセッツ沖のヴィンヤード・ウィンド1、コースタル・バージニア・オフショア・ウィンド、ニューヨーク沖のサンライズ・ウィンド、同じくニューヨーク沖のエンパイア・ウィンドである。
「確かに許可はされたが、非常に急速なイデオロギー主導の許可手続きを経て移転させられた」とバーグム氏はイタリアでの会議で述べた。
内務省は8月22日、国家安全保障上の懸念を理由に、デンマークの再生可能エネルギー企業オーステッド社に対し、レボリューション・ウィンドの建設を中止するよう命じた。オーステッド社によると、同プロジェクトは既に許可を取得しており、数十億ドルの投資が行われ、80%が完成している。
内務省は4月にエンパイア・ウィンド社に対して工事停止命令を出していたが、新たな天然ガス生産能力に関する合意に達したとみられ、最終的に5月に同プロジェクトの建設再開を許可した。
バーグム氏は今週、CNBCのブライアン・サリバン氏に対し、トランプ政権はレボリューション・ウィンドについてオーステッド州知事およびニューイングランド州知事らと協議中だと語ったが、プロジェクトの作業が再開されるかどうかについては明言を避けた。
「これらのプロジェクトの中には、経済的に見て文字通り大惨事になるものもあるので、確かなことは言えません」とバーグム氏はCNBCに語った。「もし完成させれば、何十億ドルもの納税者のお金が固定され、それがヘッジファンドに流れてしまうかもしれないのです。」
再生可能エネルギー企業の幹部らは8月、トランプ政権による太陽光や風力への攻撃は電力不足を引き起こし、電気料金の上昇につながるだろうとCNBCに語った。
●その他
備忘録(2025/9/10)
●企業
●マクロ
米ジョージア州のバッテリー工場で先週、数百人の韓国人労働者が拘束された。トランプ政権下での査証(ビザ)審査の厳格化が、積極的な対米投資にどのような影響を与えるかが問われている。
移民当局が9月4日に実施した抜き打ち査察では、韓国の現代自動車とLGエナジーソリューションの合弁事業が対象となった。約300人の熟練エンジニアや下請け業者が拘束された。
数週間前にトランプ米大統領と韓国の李在明大統領がワシントンで首脳会談を開き、同盟関係の強化と通商合意のとりまとめを確認したばかりだった。
韓国政府は米国向けに総額3500億ドル(約52兆円)規模の投資パッケージを表明しているが、今回の事態でその実現に不透明感が漂い始めた。
ビザを巡るトラブルや入国管理の強化が、プロジェクト立ち上げに不可欠な韓国人労働力の投入を阻む可能性があるためだ。
バッテリー工場の韓国人労働者はどのようなビザを持っていたのか
当局によれば、大半の労働者は90日間のビザ免除プログラム(ESTA)か「B1」ビザで米国に滞在していた。
数十億ドル規模の工場建設には数百人規模の外国人エンジニアや下請け業者が必要となるが、現代自動車やLGエナジーのような企業はトランプ政権下で就労ビザの確保に苦労してきたと事情に詳しい関係者は話している。
特に下請け業者については、ビザ取得の遅れが長引き、渡航調整や現場での重要な技術的な業務の遂行が難しくなっている。
B1ビザとは
B1ビザは短期の非移民ビザで、会議出席や契約交渉、市場調査といった商用目的に適用される。契約に明示されている場合に限り、プロジェクトの監督や設備設置といった特殊業務も限定的に認められる。しかし、直接的な労働や建設作業、米国法人での雇用は認められていない。
なぜ問題になったのか
企業は熟練労働者を速やかに投入するため、取得に時間を要する「H1B」「L1」「E2」などの長期ビザではなく、B1ビザやビザ免除を活用するケースが多い。
ただし、B1で許可範囲を超える技術作業や実務を行えば違反となり、拘束や送還につながる可能性がある。不法就労と見なされた場合、数年間の再入国禁止や将来のビザ取得への支障も生じ得る。
韓国政府は外交ルートを通じ、こうした制裁の回避や緩和を米国に求めている。
拘束された労働者の今後は
拘束された最大300人の韓国人労働者は9月10日に釈放され、大韓航空のチャーター便で帰国する予定。
韓国外務省は「自主的出国」の形での早期釈放に向け米当局と交渉している。趙顕外相は9日にワシントン入りし、10日にはホワイトハウスでルビオ米国務長官と会談し、帰国者が将来的に米国に再入国する際に入国禁止措置を受けないよう保証を求める見通しだ。
バッテリー工場の意義
摘発された工場は「HL-GA Battery Company LLC」。現代自動車とLGエナジーが2023年に折半で設立した合弁会社だ。年間30ギガワット時の電気自動車(EV)用バッテリーを生産する能力を持つ。
建設に総額43億ドルが投じられたこの工場は現代自動車の新しいEV工場「メタプラント」の敷地内にある。
製造されたバッテリーセルは現代モービスによりパッケージ加工が施され、米国で組み立てられる現代自動車および起亜自動車のEVに供給される。韓国企業による対米投資の中でも最大級の案件だ。
対米投資への影響
今回の査察は、韓国が約束した巨額の対米投資に影を落としかねない。企業は技術者や下請け労働者を送り込むためのビザ確保に苦慮しており、プロジェクト遅延やコスト増加が懸念される。入国管理の厳格化が進めば、必要不可欠な韓国人労働者への依存を控える動きが広がる可能性もある。
実務的な課題にとどまらず、今回の事態は米国の政策環境の安定性に対する投資家の信頼を揺るがしかねない。
企業にとっては、政治的および規制面でのリスクが利点を上回るのかどうかが問われている。
李大統領にとっても、6月の就任後で最大の外交上の打撃となった。10月末に予定されるトランプ氏訪韓と慶州でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を控え、難しい局面を迎えている。
中国の国債価格が10日、急落した。生産者物価デフレの緩和と活況な株式市場が背景。
市場関係者は株式ファンドへの資金流入を促す政府の対策も、国債下落の一因と指摘している。
国債価格は軒並み下落し、特に長期債が大きく売られた。30年物国債先物は一時0.9%下落し、4カ月ぶりの安値を記録。2年間続いた強気相場が終了した。
Shanghai Anfang Private Fund Coのクレジット調査ディレクター、Huang Xuefeng氏は「預金や理財商品から株式へと段階的に資金が流入している。債券市場は買い意欲がほとんどない。売り一色で、資金流出が続いている」と指摘。
「中国経済の傷が癒えている兆候があり、水面下でリフレ期待が浮上している。これは債券の悪材料だ」と述べた。
国家統計局が10日発表した8月の生産者物価指数(PPI)は前年比2.9%下落と、マイナス幅が前月の3.6%から縮小した。主要産業で過当競争や値下げを抑制する当局の取り組みが実を結び始めていることを示唆した。
中国証券規制当局は5日、株式ファンドへの投資を促す規則の草案を公表した。手数料の引き下げが盛り込まれている。
米金融大手JPモルガン・チェース(JPM.N), opens new tabのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、関税や地政学的な逆風が及ぼす影響はまだ完全には表れていないとして、米国経済の見通しについて慎重な姿勢を示している。
ポッドキャストのインタビューで「(米国への経済的影響については)注意した方がいいと思う。人々はこれらのことがすぐに起こると考えているが、実際にはまだ起こっていないことが多い」と語った。
9日のCNBCの別のインタビューでは、経済は弱まりつつあり、予想される米利下げは重要ではないと述べた。
また、銀行部門の統合が進むと予測。「われわれは米国内で銀行買収は認められていない。やろうと思えば海外でもできるが、おそらくやらないだろう」と付け加えた。
自身の最終的な引退時期については再び明言を避けつつ、後任は社内から登用される可能性が最も高く、自身は会長職に就くとの見方を示した。
大きな物語
米国との技術競争が激化する中、中国は人工知能に対して無駄のない、かつ徹底的なアプローチを取っている。
米国では、企業と政策立案者が巨額の投資を求めている。OpenAIは2029年までに1150億ドルの資金が必要になると警告しており、ワシントンはAppleとMetaによる数十億ドル規模の国内支援を含む派手な発表を行っている。
対照的に、北京は支出を抑え、実用的なユースケースに重点を置いている。今年初め、北京はひっそりと600億6000万元(84億2000万ドル)規模の国家AI基金を立ち上げ、ここ数週間で「AI+」と呼ばれる広範な取り組みの一環として、AI技術を経済と社会全体に統合するための包括的な計画を発表した。
中国は「何か大きなことを成し遂げようとエネルギーを結集している」と政府系政策シンクタンク、国家情報センター所長のシャン・ジーグアン氏は火曜日、記者団に語った。
中国は先進的なチップでは遅れをとっているが、人間レベルの汎用人工知能を追求している米国とは異なる道を歩んでいるとシャン氏は考えている。
中国のチップは「使える」ので十分だとシャン氏は述べた。彼は情報産業発展部門を監督している。
今週、政府は電力網と石炭部門にAIを統合する計画を発表しました。これは、産業から消費、国際協力に至るまで、6つの優先分野にわたってAIを推進するという、8月に発表されたより広範な計画に基づいています。
‘機知’
これまでのところ、米国が中国によるNvidiaの最高性能チップへのアクセスを制限しているにもかかわらず、DeepSeekや他の中国企業が競争力のある、そして多くの場合より安価な生成AIモデルを開発するのを阻止できていない。
S&Pグローバル・レーティングのディレクター、クリフォード・クルツ氏は、「AI技術競争における中国のアプローチは、機知と適応力に特徴づけられる」と述べた。「現在、先進的なハードウェアでは遅れをとっているものの、中国は豊富な資金、人材、そして既存のインフラを活用して、これらの課題を克服しようとしている。」
クルツ氏は、公式の詳細はまだほとんどないものの、中国の80億ドルのAI基金が当初は中国のAIチップ生産に重点を置くと予想している。
中国のビジネスデータベース「天眼茶」によると、AIファンドの主要株主は国家集積回路産業投資基金IIIで、中国財政部、中国開発銀行、中国タバコ、および複数の国有銀行の支援を受けている。
「これは、米国ホワイトハウスのAI行動計画の中国版のようなものだ」と、ニューヨーク大学ロースクールの非常勤教授、ウィンストン・マー氏は述べた。「AI競争が始まったのだ。」
AIファンドを通じてかどうかは別として、国家資本が中国のスタートアップ企業に流入している。
例えば、ヒューマノイドロボットのスタートアップ企業であるXスクエア・ロボットは、最新の投資ラウンドにおいて、国営大手のCDBキャピタルとCASインベストメントを支援者に挙げていると、最高執行責任者のヤン・チエン氏が述べている。Xスクエア・ロボットは月曜日に、ロボット工学向けのオープンソースAIモデルをリリースし、アリババクラウドが主導する約1億ドルの資金調達を発表した。
中国の新興企業への外国からの投資は減速しているが、地方政府が支援するファンドはすでにハードウェア関連の企業への投資を増やしており、これはアプリやソフトウェア中心だった以前の投資からの大きな方向転換だ。
結果はまちまち
中国では、投資を奨励し補助金を出すという政府の政策は以前にも行われてきた。電気自動車に関しては、企業詐欺に10億元以上が浪費されたことを中国政府さえ認めているにもかかわらず、この政策は功を奏したようだ。
中国の初期の半導体産業への野望は、それほど成功しなかった。10年以上前、マッキンゼーは、1990年代以降、中国政府が半導体産業育成に取り組んだ初期の試みの一つが「資金計画とインセンティブがビジネスよりも研究・学術界に重点を置いていたため、結果はまちまちだった」と指摘した。
2014年に国家半導体政策が再び試みられたが、特にハイエンド技術力と完全な自給自足において、最も野心的な目標は達成できなかった。
表面上は、中国の技術投資家や開発者はそれ以来長い道のりを歩んできた。
6月下旬に終了した上海米国商工会議所の調査によると、現在、中国に進出している米国企業の40%以上が、AI導入において現地の競合他社が先行していると回答している。中国の検索エンジン大手、百度(バイドゥ)も火曜日、高齢者向けのAIツールを発表した。
しかし、アナリストたちは過剰建設から生じる問題について警告している。
「AIの進歩は無限の計算能力ではなく、アルゴリズムの革新によって推進されると考えているため、当社はAIチップや上流のサプライチェーン(データセンターなど)を含むAIインフラの過剰能力のリスクに重点を置いています」と、クレジットサイツのアジア戦略責任者であるゼルリーナ・ゼン氏は述べ、よりスマートなアルゴリズムが同じハードウェアをさらに進化させることができることに言及した。
「これは、高度なチップへのアクセスが制限された状態で競争力のある基礎モデルを提供することにDeepSeekが成功したことから明らかです」とZeng氏は述べた。
DeepSeekやOpenAIが注目を集める以前から、中国は2017年の政策でAIに関する野心を打ち出し、2030年までに世界のAIイノベーションセンターになることを目指していた。
残り5年となった今、中国が成功できるかどうかはまだ分からない。しかし、三度目の正直かもしれない。
シノロジーの創設者アンディ・ロスマン氏は、中国経済に対する楽観的な見方が高まっていると述べた。
上海アメリカ商工会議所の会長は、不確実性が高まる中で、多国籍企業が中国でビジネスを行うためにどうすればより良い立場を築くことができるかについて語った。
サファナードの主任投資ストラテジスト、ジョン・ラトレッジ氏が「ファスト・マネー」に出演し、中国から米国への輸出の急減と中国貿易の将来について語った。
知っておくべきこと
米国向け輸出は33%急減した。中国は東南アジアや欧州への輸出を増やしているが、米国の輸出抑制により、先月の中国全体の輸出は2月以来の低水準にとどまった。
中国製EVがヨーロッパに上陸。ドイツのIAAモビリティショーでXpeng
CEOの何小鵬氏はCNBCに対し、同社は来年、大衆市場向けのモナブランドを世界展開する予定だと語った。このブランドは既に国内出荷を大きく押し上げている。
中国証券監督管理委員会の元委員が捜査対象に。当局は土曜日、易慧満氏が捜査対象となっていると発表した。中国の経済ニュースサイト「財新」は関係筋の話として、国有銀行の中国工商銀行(ICBC)に関連する汚職捜査である可能性が高いと報じた。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
ソフトウエアメーカー、米オラクルの株価が時間外取引で急伸し、過去最高値に上昇した。同社は6-8月(第1四半期)決算発表で大幅な受注増を明らかにするとともに、クラウドインフラ事業について強気の見通しを示した。
米国時間10日早朝の時間外取引では、前日終値から30%上昇。この上げが通常取引まで維持されれば、オラクルの時価総額は約2000億ドル(約29兆5000億円)増加する。半導体メーカーのエヌビディアやアジアのサプライヤーなど他のAI関連株も上昇している。
9日の発表資料によると、受注の指標である残存履行義務(RPO)は第1四半期末時点で4550億ドル。前四半期末時点では1380億ドルだった。
データベースソフトで知られるオラクルは近年、競争の激しいクラウド市場で実績を積み上げている。今夏にはオープンAIと、4.5ギガワット規模のデータセンター契約を結んだ。これは米国で数百万世帯の消費電力に相当する規模。また、中国の字節跳動(バイトダンス)傘下のTikTokやエヌビディアといった企業をクラウド顧客に持つ。
サフラ・カッツ最高経営責任者(CEO)は発表資料で、最近の受注や今後の契約によって、同社のクラウドインフラ事業は今後数年で急拡大すると指摘。この分野の売上高は今年度に77%増の180億ドルに拡大し、2030年5月期までに年間1440億ドルに達する見通しという。これはウォール街の予想を上回る水準だ。
株価は年初来で9日終値までに45%上昇しており、S&P500種株価指数の上昇率の4倍に達する。
オラクルの好調を受け、時間外取引でエヌビディアの株価は一時2%高。エヌビディアの日本と韓国のサプライヤー企業の株も買われ、アドバンテストは3.3%高、SKハイニックスは5.6%高で10日の取引を終えた。
カッツCEOは「オラクルのクラウドインフラ事業にとって驚異的な四半期だった。需要は引き続き高まっている」と語った。同社は6-8月期に3社と計4件の大型契約を締結し、今後数カ月にさらに複数の顧客と契約する見通しという。これによりRPOは5000億ドルを超える見込みだ。
クラウドインフラ部門の売上高は55%増の33億ドルとなり、アナリスト予想の53%増を上回った。一方、一部項目を除く1株利益は1.47ドルで、予想平均1.48ドルをやや下回った。
米アルファベット傘下グーグルのクラウド部門責任者は、同部門の既存契約のうち未履行の受注残が最大1060億ドル(約15兆6000億円)に上ると明らかにした。
グーグル・クラウドのトーマス・クリアン最高経営責任者(CEO)は9日、その少なくとも55%に当たる580億ドルがサービス提供に伴い、向こう2年間で売り上げに計上されるとの見通しを示した。その上で、同部門の売上高も伸びているが、履行を果たしていく受注残もそれを上回るペースで増えていると述べた。
アルファベットは人工知能(AI)処理需要の高まりに対応するため、データセンターの処理能力強化を急ぐIT大手の一社。
クリアン氏はサンフランシスコで開かれたゴールドマン・サックス・グループ主催の技術関連会議で、急拡大するクラウドコンピューティング・AI市場におけるグーグル・クラウドの戦略に関して発言。AIインフラや生成AIモデル、データ処理における同部門の優位性を支えているのは自社開発チップやソフトウエアの専門知識だと語った。
世界のクラウドサービス市場シェアで、グーグル・クラウドはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、マイクロソフトのAzureに次ぐ3位だが、検索市場が成熟する中でアルファベットの成長を牽引(けんいん)する重要部門とみなされている。同部門はグーグルのAI分野への巨額投資の恩恵を受けており、AIの専門知識を武器に新興AI企業を中心に顧客を獲得している。
アルファベットの7月の決算報告によると、クラウド部門の4-6月(第2四半期)売上高は前年同期比32%増の136億ドルだった。アルファベットのスンダー・ピチャイCEOは同報告で、クラウド部門の年換算売上高(ランレート)が500億ドルを超えたと述べた。
米国当局は、充電器、道路脇の気象観測所、交通カメラなど、太陽光発電を利用した高速道路のインフラについて、バッテリーやインバーター内に隠された無線機など、不正なデバイスが仕込まれていないか検査するよう指示した。米政府は、インフラなどに使用された中国の技術が中国当局の遠隔操作などに利用されるリスクを懸念し、中国製品を排除する動きに出ている。
運輸省連邦高速道路局が先月下旬に出したセキュリティーノートと呼ばれる文書をロイターが閲覧した。4ページの文書は「特定の外国製電源インバーターとバッテリー管理システム(BMS)」において仕様にないセルラー無線が発見されたとしている。そうした製品がどこから輸入されたか明記していないが、インバーターの多くは中国製だ。
文書は、インバーターやバッテリーの内部で発見された「非正規の携帯無線」について、連邦レベルや州レベルの報告を引用し、国家レベルの評価でリスクがあると判断したとしている。
それらは、標識、交通カメラ、気象観測所、太陽光発電のビジターエリアや倉庫、電気自動車の充電器など、米国の高速道路インフラの電源として使用されており、一斉停電やデータの盗み見などのリスクがあると指摘した。
文書は関係当局に対し、高速道路システム全体のインバーターの在庫目録の作成、スペクトラム分析技術によるデバイスのスキャン、非正規無線の無効化または削除、ネットワークの適切なセグメント化を行うよう要請した。
この文書について、運輸省は、関係各機関が実践的な対策を実施できるよう、公開された報告および機密扱いになっていない報告を要約したものだと説明した、
在ワシントンの中国大使館は声明で、「エネルギー・インフラ分野における中国の業績を歪曲し、中傷することに反対する」と述べた。
●その他
備忘録(2025/9/9)
●企業
●マクロ
オーストラリアの政府系ファンド(SWF)フューチャー・ファンドは、米市場への投資を縮小したことを明らかにし、トランプ米大統領による米連邦準備制度理事会(FRB)への圧力を注視しているという。
米資産は依然として、同ファンド保有資産の最大部分を占めると、ラファエル・アーント最高経営責任者(CEO)が9日の記者会見で述べた。
運用資産2520億オーストラリア・ドル(約24兆5000億円)の同ファンドの6月まで1年間のリターンは12.2%だった。
アーント氏は、米国への投資配分をやや引き下げたことについて「ポートフォリオの分散を図るための調整」と説明。相対的に割安感のあるドイツや日本といった市場に重心を移していると述べた。
また、FRBに対するトランプ氏の圧力にも言及。クック理事の解任を求めたり、利下げを要求したりする動きがあるものの、「現時点ではFRBは独立して運営されているように見える」と述べた。
「非常に注目度の高いテーマであり、われわれだけでなく、多くのヘッジファンド運用者の関心事となっている」と語った。
9日に公表された最新の報告書によると、フューチャー・ファンドは、ポートフォリオの約3分の1を先進国および新興国の株式に配分している。年間リターンは前年の9.1%を上回った。
アーント氏によると、市場の変動にもかかわらず株式投資が堅調なリターンをもたらした。インフラ資産は「非常に良好な」成績を収め、ヘッジファンド投資のポートフォリオも高い利益を上げたという。
フランスのバイル首相は9日、前日の国民議会(下院)での不信任決議を受け、正式に辞任した。マクロン大統領は、数日以内に新たな首相を任命するとしている。新たに指名される首相は内閣を組み、分裂状態にある下院で予算案の可決を目指さなければならない。
マクロン氏にとって、首相職を引き受ける人物を見つけること自体は難しくないが、議会内の各会派との接点を見いだせる人選となると、容易ではない。バイル氏は、新首相が決まるまで暫定首相として職務にとどまる。
ジョージ・ワシントン大学でフランス研究を専門とするキャスリン・クレッピンガー教授は、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「一体どの政党から人を登用できるというのか。同じことの繰り返しになると懸念している」と述べた。
フランス債は9日の債券市場で上昇し、10年債利回りは3.47%となった。フランス株の代表的な指標CAC40指数は、現地時間午後3時45分時点で0.2%高だった。
後任候補
次期首相は、過去2年足らずで5人目となる。フランスの政治が修復困難な分裂状態にあることを反映している。
フランスメディアで後任候補として取り沙汰されている人物の多くは、バイル政権の閣僚で、首相交代後も中道派以外の政党への支持拡大には限界がある。
候補には、前回の内閣改造時にも有力視されたルコルニュ国防相や、ヴォートラン労働・保健・連帯・家族相が含まれる。2025年予算案の可決に向けて社会党との橋渡し役を担ったロンバール経済・財務相の名前も挙がっている。
マクロン氏周辺以外では、社会党党首のオリビエ・フォール氏が首相就任に意欲を示している。オランド社会党政権下で首相を務めたベルナール・カズヌーブ氏や、現在の会計検査院トップのピエール・モスコヴィシ氏の名も上がっている。
いずれの政治家も打開策とならない場合、マクロン大統領は、純粋な実務家とみられる人物を首相に据える可能性もあるが、政治が機能不全に陥ったことを事実上認める格好となる。
不信任決議の可決を受け、社会党は即座に政権運営への意欲を示した。フォール氏はTF1テレビの番組で「左派が再びこの国を率いる時が来た。過去8年間に実施されてきた政策とは決別すべきだ」とマクロン政権の路線を批判した。
一方、フランス2テレビでは、退任予定の内務相で、中道右派・共和党を率いるブリュノ・ルタイヨー氏が、社会党首相による政権には参加しないと明言した。同じ番組で、極左「不屈のフランス」を率いるジャンリュック・メランション氏も、フォール氏が率いる政権なら支持しない考えを示した。
極右・国民連合(RN)のバルデラ党首は、9日のRTLラジオの番組で「われわれにとっては、解散総選挙しかない。マクロン氏が指名するどんな首相も、失脚することになる」とけん制した。
財政赤字
バイル氏は、提案する予算案への支持を得るべく、信任投票を呼びかけ、敗れた。同氏は26年の財政赤字を今年の見積もりの5.4%から4.6%に縮小させることを目指し、総額440億ユーロ(約7兆6000億円)規模の歳出削減・増税を提案していた。コスト削減のため、祝日2日の削減も呼びかけ、反発を呼んだ。
フランスはユーロ圏で最大の財政赤字を抱えており、バイル氏によると、債務は1秒あたり5000ユーロのペースで増加している。また、債務の利払い費用が来年には750億ユーロに達するという。
フランスでは労働組合のストライキが18日に予定されており、マクロン氏にそれまでに新政権を発足させるよう、圧力となっている。別のの抗議活動も10日に計画されている。
フィッチ・レーティングスは12日、フランスの信用力評価を更新する予定だ。
フランス国民議会(下院)で8日に行われたバイル首相率いる内閣の信任投票が反対多数で否決され、内閣は総辞職する見通しになった。これによってフランスは貧弱な成長と借り入れコスト上昇の泥沼にはまり、債務返済負担が欧州最悪クラスに膨れ上がる道筋をたどりつつある。
バイル内閣に不信任が突きつけられたことで、ユーロ圏最大となっているフランスの財政赤字を来年大きく削減できるとの期待は崩れ去った。
内閣が打ち出した来年に440億ユーロ(520億ドル)の予算を圧縮する提案は野党各党に成立を阻まれ、マクロン大統領が指名する後任の首相が誰になっても、財政規律が大幅に緩和されるのは避けられそうにない。
ピクテ・ウエルス・マネジメントのマクロ経済調査責任者を務めるフレデリック・デュクロゼ氏は「上向きのシナリオは無い、逃げ道は無い、同じ規模で財政再建が進む信頼に足るシナリオは全く存在しない」と言い切った。
ロンバール経済・財務相も、10月7日までに策定が必要な来年予算案について、次期政権は財政タカ派として知られたバイル氏ほど財政再建に野心的な姿勢にならないだろうと認めている。
下院最大勢力の左派連合に属し、次期首相が選出される可能性がある社会党が超富裕層に対する150億ユーロの増税を要求していることもあり、次期政権は財政赤字削減のために歳出カットよりも増税に頼ろうとする公算が大きい。
しかし金融市場は、特に幅広い層を対象とした増税は好意的に受け止めないだろう。既に英国で懸念されているように、増税は成長を阻害しかねないからだ。
RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ラッセル・マシューズ氏は「ますますはっきりしてきたのは、大幅な財政赤字を減らす実現可能な手段としての増税路線に、市場参加者が与したがっていないことだ。その路線の信頼性は低下しつつある」と述べた。同社はフランス国債の値下がりに賭けている。
<欧州の問題児に>
マクロン氏は現時点で、下院の解散総選挙の意向は示していない。各種世論調査でも、総選挙を経てどこか特定の党が過半数を握り、今の膠着(こうちゃく)した各会派の勢力関係に変化をもたらすとは限らないことが分かる。
フランス国内の政局が混乱し、財政運営の方針が揺れ動く中で、家計や企業は既に支出や投資を手控えている。
消費者と企業はいずれも、将来が明確になるほど支出や投資が増えるというのが専門家の見方だ。
そうした支出・投資減少による成長鈍化は、フランスのような多額の借金を抱える国にとってとりわけ問題が大きい。なぜなら、フランスの場合、6月時点で公的債務は3兆3000億ユーロと国内総生産(GDP)の114%に達しており、この苦境を脱出する手段として経済成長を当てにできなくなるからだ。
フランスの公的債務のGDP比は、ギリシャの153%やイタリアの138%よりは低い。ただ両国はフランスと異なり、利払いを除く財政収支が相当な黒字を計上している。
昨年590億ユーロだったフランスの債務返済負担は、成長が減速するか財政赤字削減の取り組みが緩めば、2029年までに1000億ユーロ超に増加し、単一の歳出項目として最大になる、とフランス会計検査院は今年警告している。
一方ドイツの財政が長年の緊縮路線から積極的な歳出拡大に転じたことも、フランスの肩身を狭くしている面がある。
オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、レオ・バランクー氏は「フランスは『醜いアヒルの子』になっている」と指摘。金融市場にとって、これまでは恒常的な鈍い成長率と膨大な債務を抱えるイタリアが欧州の問題児だったが、「今は明らかにフランスがそうなろうとしている」と付け加えた。
<リスクプレミアム高止まり>
ユーロ圏最大規模のフランス国債市場はかつて、投資家からドイツ国債に代替する一番安全な資金の振り向け先と見なされてきた。
ところが昨年、マクロン氏が下院の解散総選挙に踏み切って以来、フランス国債利回りのリスクプレミアムは高止まりしている。
足元のリスクプレミアムは、2011年のユーロ圏債務危機の震源地だったギリシャやスペインを上回っており、イタリアとほぼ同水準。昨年初め段階では、イタリア10年国債利回りは、フランス10年国債より1ポイント以上も高かった。
経済研究機関OFCEのエコノミスト、マチュー・プラーヌ氏は、フランスにとって政治停滞に陥った中で永続的に高いリスクプレミアムの支払いを迫られるのが最大のリスクだと分析。「将来の成長を生み出せるイノベーションや教育など全ての分野に関する長期的な決断がほとんどできなくなってしまう」と警告した。
2025年3月までの1年間の米雇用者数の伸びは、従来の発表値よりはるかに低いものだった可能性が高い。9日に発表された年次ベンチマーク(基準)改定の推計値で明らかになった。米金融当局に対する利下げ圧力が強まりそうだ。
米労働統計局が発表した推計値によれば、3月までの1年間の雇用者増は91万1000人下方修正されそうだ。1カ月当たりでは7万6000人近い下方修正となる。確報値は来年2月の発表が予定されている。
ベンチマーク改定の発表前の段階では、雇用者数は3月までの1年間に約180万人増(季節調整前)だった。月平均では14万9000人増。
今回の改定は、より緩やかな雇用増加が長期間続いた後、ここ数カ月に労働市場が減速したことを示唆しており、来週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合からの一連の利下げにつながる可能性がある。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は最近、雇用市場におけるリスクの高まりを認めており、7月会合では理事2人が利下げを支持していた。
市場では、9月会合で利下げが決定されると広く予想されている。
ベンチマーク改定は毎年行われるが、今年は特に、労働市場が当初発表のデータより速いペースで冷え込んでいることを示唆するシグナルが出ていないかと、市場やFRBウォッチャーが注目していた。データ改定は政治にも影響している。トランプ大統領はこれまで、雇用統計の改定を強く批判している。
フランスは今週、予算の行き詰まりが続いた後にまたもや首相が解任され、さらなる政治的混乱に陥った。
フランソワ・バイルー首相と中道少数派政権は月曜日の信任投票で敗北した。議員364名が政府に反対票を投じ、賛成はわずか194名だった。
バイルー首相が、2024年に国内総生産(GDP)の5.8%に達する同国の膨大な財政赤字の削減を目的とした2026年度予算案で政敵からの支持を得られなかったことから、今回の政権崩壊は広く予想されていた。
バイルー政権は、2026年までに財政赤字をGDPの4.6%に引き下げるため、来年度の予算で約440億ユーロ(520億ドル)の削減を目標としていた。
フランスの金融市場は、最近の政治的混乱に対し冷静に反応し、CAC40指数は0.25%上昇して寄り付きました。フランスの指標10年債利回りは火曜日の朝、2ベーシスポイント上昇の3.4755%となり、パリ発の政治的および経済的不確実性の新たな一因に対する不安を反映しています。
バイルー氏は火曜日にフランスのエマニュエル・マクロン大統領に辞表を提出し、新たな政府と首相が「数日中」に指名される予定だ。
マクロン氏が利用できる選択肢はどれも彼にとって魅力的ではない。
マクロン大統領は、2年足らずで5人目の首相となる新首相を選出するか、テクノクラート政権を樹立するかの選択を迫られるが、どちらの案も予算削減に対する同様の政治的反対に直面する可能性が高い。大統領は再度の総選挙を命じる可能性もあるが、これも決着のつかない結果に終わる可能性があり、極右の国民連合や極左の「屈しないフランス」に議席をさらに与える可能性もある。
マクロン氏は政府を率いる人物としてまた別の中道派の同盟者を選ぶ可能性が高いとみられているが、合意形成を図り、異なる政治的立場や要求を統合できる候補者を見つける必要があるだろう。
ドイツ銀行のマクロストラテジストらは火曜朝の分析で、「極右の国民連合と極左の屈しないフランスが早期総選挙を要求していることから、中道左派の社会党が予算案に反対票を投じないようにするとともに、現在の中道右派連合を維持できる首相が必要になるだろう」と述べた。
JPモルガンのシニアエコノミスト、ラファエル・ブルン・アゲール氏は、今後数日間のマクロン大統領と各党との交渉を注視する必要があると指摘した。
「新たな下院選挙の可能性も排除できないが、マクロン氏は大連立政権の樹立を推し進めるだろう」と彼は付け加えた。
いずれにせよ、バイルー政権後の政府は来年、ある程度の財政再建を検討する可能性が高いとブルン=アゲール氏は強調し、「次期政権がこの問題から逃れることは難しいだろう」と指摘した。
問題は財政再建にどう取り組むかということだ。
「フランスの財政状況が深刻であることについてはほぼすべての政党が同意しているが、この問題を福祉改革で解決すべきか、増税で解決すべきかをめぐっては政派が大きく分かれている」とテネオの調査担当副部長カーステン・ニッケル氏は月曜日にメールで述べた。
フランスでは、「同棲」として知られる構造の下、大統領と首相が異なる政治家一族出身であるという経験があるが、国会におけるいわゆる「大連立」は、この国の政治文化には含まれていない。
「このことは、国の財政問題に対する両方のアプローチを混ぜ合わせることになる大きな妥協点の模索を複雑にしている」とニッケル氏は付け加えた。
即時の混乱
新首相は、提案されている支出削減と改革に対して国民の怒りを買うことになるだろう。労働組合は9月10日と18日に全国的な緊縮財政反対の抗議行動を呼び掛けている。
それでも、フランスの財政赤字を削減する必要性は依然として優先課題であり、今週、フィッチ・レーティングス・エージェンシーが欧州第3位の経済大国フランスについて、現在「AA-」の格付けで見通しがネガティブな最新情報を発表するにつれ、フランスに緊迫感が植え付けられる可能性がある。
ベレンベルグ銀行のチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は火曜日に電子メールで送ったコメントの中で、「フランス国債の格下げはあり得る」とし、フィッチが金曜日に格下げしても「大きな驚きではない」と指摘した。
しかし、シュミーディング氏は、債券利回りの上昇が財政赤字の拡大と借入コストのさらなる上昇につながるという「自己強化的な悪循環を伴う真の金融危機」は「当面、極めて可能性が低い」と警告した。
「フランスは経常収支がほぼ均衡しているため、金融危機に陥る可能性は低い。もちろん、完全に否定することはできない。もし、深刻な分裂を抱える議会で勢力均衡を保っているフランス社会党が、常識を無視し、資金調達不可能な要求を主張し続けるならば、リスクは高まる可能性がある」と指摘した。
米国は、政治環境とドル高により外国人旅行者の訪問が引き続き阻まれており、今年の国際観光収入が約300億ドル減少する見通しだ。
2025年初頭、米国旅行協会は今年の海外旅行支出が2,008億ドルに増加すると予測した。
しかし、世界旅行ツーリズム協議会は5月、旅行者数の「急激かつ広範囲にわたる」減少を指摘し、今年の海外旅行者支出は1690億ドルに減少すると予測した。
旅行者が他の目的地を探したり、自国や地域に留まることを決めたりするため、失われた収入は他の国々、特にカナダやラテンアメリカに利益をもたらすことになるだろう。
近隣諸国
米国国際貿易局によると、2025年上半期に米国を訪れたカナダ人の数は前年比で約18%減少し、175万人以上の訪問客が減った。
不動産データプロバイダーのCoStarによると、多くのカナダ人が国内旅行に目を向けており、7月のホテル稼働率は2019年以来の高水準となる77.6%に達した。政府が今週発表した報告によると、国の強さと団結を祝う夏の観光促進策「カナダ・ストロング・パス 」が、カナダの博物館、史跡、国立公園への訪問者数の増加につながったという。
調査会社ツーリズム・エコノミクスによれば、他のカナダ人はアメリカに向かうのではなく、上空を飛んで南へ旅を続けているという。
同社のアダム・サックス社長は「メキシコ、ラテンアメリカ、カリブ海諸国へ向かうカナダ人が増えている」と語った。
ブッキング・ホールディングスのデータによれば、旅行先としてメキシコを選ぶカナダ人が増えていることも示されていると、同社の代表者はCNBCトラベルに語った。
コンサルティング会社アクセンチュアによると、ラテンアメリカはヨーロッパからの旅行者にとっても魅力的な地域となっている。カリブ海諸国と同様に、この地域はアメリカに代わる旅行先を探しているヨーロッパ人を惹きつけていると、ある担当者は述べた。
「新しい旅行回廊」
ブッキング・ホールディングスの代表者はCNBCへの電子メールで、米国へのインバウンド旅行が減少するにつれ、欧州人の間で欧州内およびアジアへの旅行が増加していることを指摘し、「新たな旅行経路」が出現していると同社は述べている。
ツーリズム・エコノミクスのサックス氏は、特に西欧人が中東だけでなく地域内を旅行するケースが増えていると付け加えた。
エクスペディア・グループのアジア太平洋市場管理担当副社長マイケル・ダイクス氏は、今年はヨーロッパや中東への旅行を検索するアジアからの旅行者も増えていると述べた。
ミリュー・インサイトが東南アジアの海外旅行者6,000人を対象に実施したCNBCの調査によると、米国への旅行を再検討している人のうち、ほとんどが東南アジアまたは東アジア内の旅行を計画していると答え、次いでヨーロッパとオセアニアが続いた。
シンガポール人旅行者のラフル・ジェイン氏はCNBCトラベルに対し、今年すでにオーストラリア旅行を予約しており、現在はイギリスかフランスに行くことを検討していると語った。
「ヨーロッパは今でも魅力的だ」と彼は言った。しかし、アメリカは「私の選択肢から外れている」と付け加えた。
旅行者数が1,300万人減少
政府のデータによると、2025年上半期に米国を訪れる海外からの観光客は、2024年の同時期と比べて約100万人減少した。
しかし、2019年と比較すると、年末までに海外からの訪問者数は1,300万人減少する見込みだとサックス氏は述べた。
同時に、他の国への旅行者数も増加しています。
「2019年と比較して海外旅行者数の最大の増加が見込まれる国はスペイン、サウジアラビア、トルコだ」と彼は述べ、それぞれ1650万人、1450万人、1400万人の旅行者増加が見込まれるとした。
サックス氏は、他の市場が発展し、新たな市場が参入するにつれ、世界の海外旅行に占める米国のシェアは1996年の8.4%から2024年には4.9%に減少したと述べた。
ツーリズム・エコノミクスのデータによると、国境を越えた旅行に占める米国のシェアは2000年代初めに減少し、その後横ばい状態となり、ドナルド・トランプ大統領の最初の任期中に再び打撃を受けた。
サックス氏は、今年は再び減少すると予想しており、世界の国際観光客到着数に占める米国のシェアは4.2%に低下すると予測していると述べた。また、 今後10年間はこの水準で推移すると予測している。
「米国は2025年に再びシェアを失っています」とサックス氏は述べた。「当社の予測期間内にシェアが回復するとは予想していません。」
一方、フランス、ギリシャ、メキシコ、イタリアなど他の主要観光地への訪問者数は今年増加すると予想されている。
これは「競合する目的地と比べて、米国にとっていかに悲惨な状況であったか」を示しているとサックス氏は述べた。
クレジットカード残高が2ヶ月連続で減少したことを受け、米国消費者は資金繰りに窮しているようだと報じた1ヶ月後、FRBはつい先日、最新の月次消費者信用データを発表しました。そして、またしても少々衝撃的な内容でした。数ヶ月にわたる信用創造の低迷の後、7月は2025年で2番目に高い月次増加を記録し、総額160億ドルに達しました。これは、6月の修正値96億ドル(修正前は74億ドル)のほぼ2倍に相当し、中央値102億ドルを大きく上回りました。
いつものように退屈な非回転式クレジット(基本的には自動車ローンと学生ローン)の伸びは鈍化し、3回連続で100億ドルかそれよりわずかに少ない額を記録した後、7月の55億3,400万ドルの増加は2月以来の最小となり、合計は3兆7,490億ドルという過去最高を記録した。
第3四半期末まで2つの構成要素の詳細な内訳はわかりませんが、第2四半期の増加は学生ローン(+81億ドル)と自動車ローン(+61億ドル)によるほぼ同数の貢献によるものであることを読者に思い出させてください。
いつものように、驚きだったのは、クレジットカード負債の大幅な増加と、最近の減速からの突然の反転だった。7月には、クレジットカード負債は6月の上方修正された8億700万ドル(以前はマイナスの数字だった)から105億ドルも急増した。
そして、2025年2月から始まって5月(修正前は6月)に大幅な減少につながったクレジットカード負債の急激な減速(完全には減少していないまでも)は、2025年のクレジットカード負債の月間最大増加のおかげで終わりを迎えました。これにより、クレジットカード残高が大幅に減少した2024年11月以来の最高レベルにクレジットカード負債が押し上げられました。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
●その他
備忘録(2025/9/8)
●企業
●マクロ
米国の雇用者数の伸びは、政府が現在発表している数字よりもはるかに鈍かった可能性が高い。夏に見られた採用減速よりも前から、労働市場が勢いを失っていたことを示すことになる。
ウェルズ・ファーゴ、コメリカ銀行、パンテオン・マクロエコノミクスのエコノミストは、米労働統計局が9日に発表する年次ベンチマーク(基準)改定の速報値によって、3月時点の雇用者数が現在推計されているよりも約80万人少なかったことが分かると予想している。月平均で約6万7000人の下方修正に相当する。
野村証券、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、ロイヤル・バンク・オブ・カナダは、基準改定での修正幅が100万人近くに達する可能性もあるとみている。
労働統計局は年に1回、3月時点の雇用者数を見直す。ベンチマーク改定は、速報性に欠けるものの正確性の高い「四半期雇用・賃金調査(QCEW)」を基に行われる。QCEWは州失業保険税の記録を基に作成され、全米の雇用者の大部分をカバーする。ベンチマーク改定は毎月の雇用統計で行われる通常の改定とは別のものだ。
ベンチマーク改定での修正は過去の雇用動向を示す古いデータに過ぎないが、大幅な下方修正となれば、昨年の労働市場の勢いが予想以上に弱かったことが浮き彫りになり、米連邦準備制度理事会(FRB)による一連の利下げへの観測を後押しすることになる。
コメリカ銀行のチーフエコノミスト、ビル・アダムズ氏は「2025年3月までの雇用者の伸びに大幅な下方修正があったとしても、直近数カ月のデータの場合に比べ、金融政策への影響は限定的だろう」としつつ、「経済の全体像を把握する上では重要な材料になる。他の条件が同じであれば、雇用の下方修正はFRBに金融緩和を促す圧力になる」と指摘した。
また、昨年に続き雇用統計が大幅に修正されることになれば、米国の労働統計の正確性に疑問を呈してきたトランプ米大統領の批判を再び招く可能性もある。
パンテオン・マクロエコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、サミュエル・トムズ氏は、3月までの1年間についての「改定の大半は、トランプ政権以前の雇用動向を反映している。従ってトランプ氏は、自身が引き継いだ経済が想定よりもはるかに弱かったと主張することができる」と述べた。
エコノミストや政策担当者は、今回のベンチマーク改定の数字を基に、労働市場の減速ペースを見極めようとしている。改定の確報値は、25年のより完全なデータとともに、来年2月に公表される予定。
ロイヤル・バンク・オブ・カナダのエコノミスト、キャリー・フリーストーン氏は、昨年のデータが大きく修正されれば労働市場を見極める出発点が見えてくるが、「FRBが最も気にかけるのは労働市場が勢いを失いつつあるという事実であり、労働市場が既に転換点を迎えていた可能性が高いという事実だと思う」と語った。
格付け会社S&Pグローバル・レーティングによると、災害発生時に一次保険会社の損失を支える再保険業界は近年、嵐や洪水などの激甚災害による財務リスクから自社を守る措置を強化している。
世界の主要な再保険会社19社は過去5年間で、保険が適用される自然災害による損失へのエクスポージャーを半分以下に減らした。今後も歴史的な水準より小さな負担に抑える見込みだと、S&Pの保険格付け部門チーフアナリティカルオフィサー、サイモン・アシュワース氏が述べている。
「この流れが近いうちに元に戻るとは考えていない」とアシュワース氏はインタビューで語った。
再保険業界は近年、大きな損失を免れつつ投資で資本を蓄え、厚いバッファーを築いてきた。S&Pによると、主要な再保険会社は現在、1年の間にハリケーン「カトリーナ」級の災害が3回発生し約3000億ドル(約52兆)相当の損害が生じても、既存の信用格付けを維持できるだけの資本力を有しているという。
「注目すべきことだ」とアシュワース氏は述べた。
リスクモデリング会社ベリスクによれば、今年の自然災害による保険金支払いは、1500億ドルを超える見通しで、過去10年の平均を大きく上回る水準となっている。一次保険会社がコスト負担に苦しむ中で、再保険会社に料金引き下げと補償範囲拡大を求める圧力が強まっている。
S&Pは再保険料について「穏やかな下落傾向」にあるとみており、アシュワース氏は「一次保険会社の負担軽減に一定の効果があるだろう」と話す。一方、補償範囲については再保険業界は「契約条件の維持に向けて強硬な姿勢を崩さない」見通しだという。
S&Pによると、昨年の再保険業界による自然災害損失の引き受け割合は全体の10%強にとどまり、2019年の約25%から大きく低下、過去平均の20%も大きく下回った。
フィッチ・レーティングスは最近のリポートで「多くの再保険会社は収益性を成長よりも重視し、リスクとリターンの基準を厳格化した結果、それを満たさない案件は引き受けなくなってきている」と分析。「特に米国の損害保険分野でその傾向が顕著だ」と付け加えた。
ムーディーズ・レーティングスは、自然災害の頻度が高まる中で、長期的には激しい気象現象が再保険業界にとって「重要な課題」になると指摘する。1970年代には年間およそ50件だった極端な気象災害が、直近10年間では年間200件近くに増えているという。
中国税関総署が8日発表した8月の貿易統計によると、輸出はドル建てで前年同月比4.4%増と予想以上に鈍化し、半年ぶりの低い伸びとなった。米国との関税を巡る休戦による一時的な押し上げ効果が薄れた。ただ、米国以外からの需要は当局者にとって一定の安心材料となった。
輸入は1.3%増だった。ロイターがまとめた市場予想では、輸出は5.0%増、輸入は3.0%増とみられていた。7月実績は輸出が7.2%増、輸入は4.1%増だった。
輸出の伸びが鈍化したのは、前年同月の水準が比較的高かったことが一因とみられる。昨年8月は貿易相手国からの関税を回避しようと製造業者が輸出を前倒しした。
エコノミスト・インテリジェンス・ユニットのシニアエコノミスト、 Xu Tianchen氏は「数字は依然としてまずまずで、輸出の底堅さはわれわれの予想より確実に長く続いた」と述べた。「財政刺激策の見通しは明らかにかなり暗い。しかし、中国には政策銀行による融資や金融緩和といった経済対策がまだ残されており、5%(の成長率目標)達成には十分かもしれない」との見方を示した。
米中は8月11日、関税を巡る休戦をさらに90日間延長することで合意し、米国が中国製品に課す関税率は30%、中国が米国に課す関税は10%に維持された。ただ、両国は現在の休戦期間後の道筋を描くのに苦戦しているもようだ。
ユーラシア・グループの中国担当ディレクター、ダン・ワン氏は「輸出は今のところ順調に持ちこたえている」とし、「米国への輸出は減少しているものの、他のルートは昨年よりも好調だ」と指摘。また「多くの輸出は中国の工場が海外に移転し、中国から原材料やその他資材を輸入していることにも関連している」と述べた。
税関データによると、8月の対米輸出は前年比33.12%減少した。一方、東南アジア諸国への輸出は22.5%増加した。
8月の貿易黒字は1023億ドル。7月の982億4000万ドルから拡大したが、それでも6月の1147億ドルを大きく下回った。予想は992億ドルだった。
キャピタル・エコノミクスの中国担当エコノミスト、Zichun Huang氏はエネルギーの輸入が増加する一方で、半導体や工業用金属の輸入が減少したと指摘。「これは建設活動の継続的な減速を反映している可能性が高い」と分析した。
資本の調達が困難になる中、ディールメイキング活動がかろうじて回復に向かう中、プライベートエクイティ大手や投資銀行は人材獲得のために世界規模の争いを繰り広げている。
マゼラン・アドバイザリー・パートナーズの最新レポートによると、プライベートエクイティ分野の採用は2025年上半期に加速し、資金調達、投資家向け広報、マーケティングといった職種が牽引役となった。投資分野全般の採用も、2年間の停滞または減速の後、回復した。
この採用ラッシュは、金利上昇と市場のボラティリティによって取引が停滞し、プライベートエクイティ部門が近年停滞状態に陥っていたことを受けて起きた。ファンドマネージャーたちは、売却できない企業のパイプラインが拡大し、出口戦略が先送りされている状況に陥っていた。
ベイン・アンド・カンパニーによると、2025年第1四半期には買収活動が活発化したものの、関税をめぐる混乱で投資家の不安が高まり、取引パイプラインが停滞したため、次の四半期には勢いが急速に衰えた。ベインの分析によると、4月の世界の買収取引額は第1四半期の月平均を24%下回り、取引件数は22%減少した。
「取引の流れは循環的だが、資本を確保する必要性は永続的だ。企業は時代を先取りして投資している」と、世界的な幹部人材紹介会社ジェンセン・パートナーズの創業者兼CEO、サーシャ・ジェンセン氏は語った。
ジェンセン氏は、現在のリミテッド・パートナーの流動性が逼迫している状況において、資金調達分配チームは「生き残りを左右する」と述べている。リミテッド・パートナーの流動性とは、年金基金、政府系ファンド、ファミリーオフィス、富裕層個人などを含むリミテッド・パートナーが新規ファンドに投入できる新規資本の額を指す。
「企業は資金調達の才能を持つ人材に高額の報酬を支払うことに満足しています」と、ジョンソン・アソシエイツのプリンシパル、クリストファー・コナーズ氏は述べた。「企業にとっては大きな出費になるかもしれませんが、彼らがもたらす収益の額を考えれば、企業にとって良い行為と言えるでしょう。」
資金調達は困難を極めているものの、多くの大手米国企業は依然として1兆ドル近くの未活用資金、いわゆるドライパウダーを抱えていると、ピッチブックのカイル・ウォルターズ氏は指摘する。さらに、金利引き下げへの期待から、これらの企業はより豊富な人材を確保し、景気回復に向けて態勢を整えているとウォルターズ氏は指摘する。
世界的な人材獲得
世界的な投資会社が取引や資産増加の波に乗るために市場にさらに多くのリソースを投入する中、プライベートエクイティの巨人アポロは日本での足跡を拡大し、アジアの資産運用部門の雇用を拡大していると報じられている。
同様に、ウォーバーグ・ピンカスとカーライルも、日本が取引を行う数少ない明るい地域の一つとして浮上する中、新規採用を通じて日本での存在感を高めている。
CNBCが取材した業界専門家は、日本以外にも採用活動があらゆる地域で活発化していると指摘した。マゼラン・アドバイザリー・パートナーズによると、東南アジアとインドでも採用活動が活発化しており、シンガポールとムンバイに新オフィスが開設された。
ワシントンの政策の不確実性にもかかわらず、北米での全体的な採用は2022年半ばと2023年の水準を上回っており、米国の多くのメガファンドや成長株投資会社は2026年入社の1年目のアナリストの面接を行っている。
「これは北米でトップクラスの若手人材の需要が減っていないという現実を反映している。企業は採用競争に参加しなければ機会を逃すと恐れている」とエグゼクティブサーチ会社は報告書で述べた。
欧州のプライベートエクイティ業界も、利下げサイクルの開始といったマクロ経済の変化に支えられ、人材採用の勢いが強まっている。例えばイングランド銀行は昨年8月以降、5回にわたり金利を引き下げており、この動きは取引、エグジット、資金調達、そしてプライベートエクイティ全体の「フライホイール」を刺激すると予想されると、ピッチブックのウォルターズ氏は述べている。
「国際的な拡大は共通のテーマであり、米国の企業がアジアに進出し、その逆もまた同様です。同様に、英国のプライベートエクイティファームは、アジアに進出する前に、まず米国をターゲットにすることが多い」と、ロバート・ウォルターズの北米、アイルランド、英国の採用担当CEO、クリス・エルドリッジ氏は指摘する。
これらの企業の多くは、採用候補者が大学を卒業する前から採用活動を開始しており、受動的な採用活動から脱却しつつあることを示している、と彼は付け加えた。
才能戦争?
しかし、規模の大きい企業と業界の嵐を乗り切るための武器を持たない企業との間には隔たりがある。
「(マルチ戦略を展開し)規模の経済性によって採用できる余裕のある大手ファームと、そうでないファームとの間には明確な二極化があると思います」とコナーズ氏は述べた。「一方、一部の小規模ファームは資金調達に苦戦しており、ほとんど採用を行っておらず、中には規模を縮小しているファームもあります。」
大手企業が採用活動に躍起になるなか、投資銀行との人材争奪戦に突入している企業もある。
プライベートエクイティ会社は長年、ウォール街のアナリストプールを襲撃することで悪評を買っており、最近では投資銀行がさらに厳しい制限を設けなければならなくなったほどだ。
2025年半ば、ゴールドマン・サックスとJPモルガンは、プライベート・エクイティ・ファームによる人材引き抜きを抑制するため、厳しい新規則を導入したと報じられました。JPモルガンは、プライベート・エクイティ・ファームから将来の日付で提示された求人を18ヶ月以内に受け入れたアナリストは解雇すると警告し、面接のための研修を欠席したアナリストは解雇すると警告しました。
優秀な人材を確保するため、ゴールドマンはアナリストからアソシエイトへの昇格期間を現行の3年から2.5年に短縮した。一方、ゴールドマンは四半期ごとに「忠誠誓約」を導入し、アナリストに対し外部からのオファーがないことを確認することを義務付けた。ただし、開示しても解雇にはつながらない。
ジェンセン・パートナーズのジェンセン氏は、ジュニアレベルでは、従来の投資銀行アナリストのパイプラインが早期採用の変化によって混乱していると述べた。
「ゴールドマン・サックスやJPモルガンのような銀行は人材の流動性を厳しく制限しており、プライベート・エクイティ会社は社内研修プログラムを構築することで対応している」と彼女は語った。
こうした動きは、プライベート・エクイティ会社が数年先を見据えてジュニアバンカーを確保しようとする採用競争が、さらに激化する可能性があることを示唆している。
コナーズ氏は、プライベートエクイティ業界でのキャリアは、キャリード・インタレスト(年俸をはるかに上回るファンドの利益の一部で、キャピタルゲイン税率が低い)のせいで、投資銀行業界よりも有利かもしれないと説明した。
両業界のジュニアレベルの報酬は似通っているように見えるものの、シニアアソシエイトやバイスプレジデントといった中堅レベルからキャリード・インタレスト(利益分配)の受け取りが始まるのが一般的だと、彼は付け加えた。シニアレベルではその差は歴然としている。マネージングディレクターは給与とボーナスで150万ドルから200万ドルの報酬を受け取る可能性があるが、ファンドの運用成績に連動するキャリード・インタレストは、長期的には2000万ドルから3000万ドルの利益をもたらす可能性がある。
「これは、優秀な人材をこの分野に惹きつける重要な経済的手段です」と彼は述べた。「これは、投資銀行業界にも、伝統的な資産運用業界にも存在しない経済的手段です。プライベートマーケット業界に特有のものです」と彼は述べた。
8月の米国雇用統計で労働市場の弱体化が示されたことを受け、金曜日の米国債利回りは低下した。米国10年国債利回りは8.5ベーシスポイント低下の4.08%で取引を終えた。オーストラリアとニュージーランドの10年国債利回りは、それぞれ5ベーシスポイントと4.5ベーシスポイント低下し、今朝は上昇を牽引している。
OIS先物は現在、9月のFRBによる利下げを事実上の既成事実として織り込んでおり、2025年の残りの期間で少なくとも1回(ほぼ2回)の利下げ(そして50bpsの利下げの確率は10%)が織り込まれている。しかしながら、米国株は金曜日に下落して取引を終えた。デュレーションに連動するナスダック指数が最も好調だった一方、「本日の決算」を反映するダウ平均株価は最も低調で、0.48%安で取引を終えた。
金価格は、先週4%以上上昇して史上最高値を更新した後、今朝の取引開始直後から再び上昇している。米国の雇用統計が軟調だったことを受けて短期金利が圧迫され、市場は今週後半の消費者物価指数(CPI)発表を控えており、ジェローム・パウエル議長が昨年までは考えられないと発言していたスタグフレーションのシナリオを裏付ける可能性がある。そのため、実質金利の低下見通しが上昇の要因となることは間違いない。
米国の5年5年インフレ・スワップは4月の独立記念日以降上昇している一方、2年国債利回りは5月中旬以降低下している。FRBの政治化が、この異常な価格変動の要因となっていることは間違いない。短期債の名目利回りは、アドリアナ・クーグラー氏が8月1日にFRB理事を辞任すると発表した後、大幅に低下し、トランプ大統領が8月21日にリサ・クック氏を解任すると発表した後にも再び低下した。どちらの場合も、長期債の実質利回りは比較的良好な水準を維持しており、グラフにワニの顎のような効果を生み出している。
トランプ大統領は先週末、金融政策の主導権を握ろうとするキャンペーンをさらに強化した。ADP、JOLTS、そして週次失業保険申請件数も低調だったことを受けて、雇用統計の発表が低調だったことを受け、ジェローム・パウエル議長はとっくの昔に利下げすべきだったと「真実」を主張し、パウエル議長の後継としてケビン・ウォーシュ、ケビン・ハセット、クリストファー・ウォーラーの3名をFRB議長に指名した。当然のことながら、3名ともフェデラルファンド金利(FF金利)の引き下げに意欲を示している。
他の市場での出来事も、長期金利カーブにおける構造的な借入コストの上昇を示唆している可能性があります。まず、石破首相が退陣を発表しました。石破氏は財政タカ派であり、後任については未だ明確な方針が示されていませんが、後任が誰であっても、財政緊縮路線への傾倒は弱まり、日銀の金融引き締め政策にも消極的になるでしょう。前回の自民党総裁選で石破氏に次ぐ2位となった高市早苗氏は、より景気刺激的な財政政策を支持、次期首相の有力候補となる可能性があります。
同様に、フランスのバイルー首相も本日後半に信任投票に臨み、失職する可能性が高い。バイルー首相は、危機に瀕するフランスの財政再建を目指し、今後12か月で440億ユーロの緊縮財政措置を提案しているが、その計画は左右両派から強硬な反対に直面している。バイルー首相が信任投票に敗れた場合(その可能性が高いと思われる)、マクロン大統領は新首相を任命するか、国会を解散して再選挙を実施するか、自ら辞任するかのいずれかの道を選ぶ可能性がある。後者の可能性は極めて低く、後者の道を選ぶと、さらに受け入れ難い議会構成になるリスクがある。我々は、マクロン大統領が新首相を任命し、財政緊縮計画は厳しい運営環境によって必然的に縮小されるというシナリオが最も可能性が高いと考えている。完全な分析は、こちらで閲覧できる。
そしてついに、英国は先週末、アンジェラ・レイナー氏が海辺のマンション購入時に税金を過少納付し、大臣の行動規範に違反していたという報道を受け、副首相(住宅大臣も兼務)を失った。スターマー首相は包括的な内閣改造を発表したが、既に動揺している英国債市場の落ち着かせようと、苦境に立たされているレイチェル・リーブス財務大臣が現職に留任することを強調した。
市場が英国の財政状況の軌道に対する信頼を失ったため、30年国債利回りは先週、1998年以来の高水準に達した。利回り上昇と生産性の下方修正予測は、リーブス財務相が前回予算で自らに残した「財政余地」を帳消しにし、数百億ポンド規模の財政節約策を講じなければならない状況に追い込まれた。しかし、リーブス財務相は、自身のバックベンチ議員の反対がほぼ確実だ。
救済策が成立しなければ、英国国債の利回りはさらに上昇する可能性が高い。ガーディアン紙によると、労働党幹部がキール・スターマー首相に「間違いを犯すのはやめろ」と助言したという。英国(そしてフランスも!)は、万が一ロシアと戦わなければならない事態に備え、軍備増強のための資金も確保する必要があることを忘れてはならない。
中央銀行による金融緩和への期待から短期金利は低下しているものの、長期的な視点で見ると状況はやや複雑だ。経済に打撃を与えることなく肥大化した財政状況を改善し、同時に支出の優先順位付けに必要な資金を確保するという政策パラドックスが生じている。もはや「手遅れ」なのだろうか?それとも、斬新な経済思考によって解決策を見出せるのだろうか?
フィナンシャル・タイムズ紙によると、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領はブエノスアイレス州で大敗を喫した。同州では、ペロン主義派の「フエルサ・パトリア」連合が47%の票を獲得し、同大統領率いる「リベルタッド・アバンサ」は34%の票しか獲得できなかった。
選挙前の予測では接戦になると予想されており、ミレイ氏はそれが10月26日の中間選挙に向けて勢いを増すことを期待していた。
「ブエノスアイレス州は伝統的にペロン主義的な傾向が強いが、今回の差は予想以上に大きい」とNWIマネジメントのアルベルト・アデス氏は述べた。アデス氏は、市場は債券と株式の下落、そしてカントリーリスクの上昇という形で反応すると警告した。
フィナンシャルタイムズ紙によると、今回の後退は、ミレイ氏が議会で苦戦を強いられている中で起きた。議会では最近、拒否権が覆され、妹のカリーナ氏に関連する録音の流出や賄賂疑惑を含む汚職スキャンダルも発生している。ミレイ氏の支持率は40%を下回っている。「今日、我々は紛れもなく明確な敗北を喫しました」とミレイ氏は認めた。「しかし、我々が選挙で目指した経済路線は変わりません。我々は財政均衡を死守し続けます」
アナリストのアナ・イパラギレ氏は「この結果は主にミレイ政権に対する否定的なメッセージだ」と述べ、財政混乱が有権者の不満を深める可能性があると警告した。
市場はすでにストレスにさらされている。短期ドル建て債券は7月以降15%、株式は34%下落し、債券スプレッドは2ポイント近く拡大して9%となっている。ペソ防衛のため、ミレイ総裁は利上げ、準備金の引き締め、ドル売りを実施しているが、エコノミストは景気後退を懸念している。
「ブエノスアイレス州選挙でハビエル・ミレイ大統領率いる自由民主党が大敗したことで、市場の最悪の懸念が裏付けられ、価格下落、好ましくない政策変更、そして10月の中間選挙に向けてさらに悲観的な見通しという悪循環が引き起こされるだろう」とブルームバーグのエコノミスト、ヒメナ・ズニガ氏は述べた。
グリット・キャピタルのウォルター・ストッペルワース氏は「政府はペソを守るため高金利で急激な景気後退を仕組んだが、ブエノスアイレスの有権者はインフレを少しでも抑えることよりも雇用の方が重要だと言っている」と述べた。
この打撃にもかかわらず、世論調査では依然としてミレイ氏率いる連立政権が議会で議席を獲得すると予測されている。ただし、両院とも得票率は15%未満にとどまっている。しかし、この結果は、野党で台頭するペロン派のアクセル・キシロフ知事にとって追い風となるだろう。
現地取引開始時点でペソは7%下落し、1米ドル=1,450ペソと取引帯域の上限付近まで下落した。
最も取引量の多い2035年満期ドル債は5.56セント下落して56.09となり、利回りは12.6%に上昇し、新興国市場全体の下落を牽引した。
「ここはペロン主義の牙城だった。総選挙は様相が変わるだろう」とブラックトロのフェルナンド・マレンゴ氏は述べた。「焦点は合意形成に移るべきだ。法令で実行できる改革はすでに完了しているのだ。」
ブルームバーグによると、ブエノスアイレスでの敗北後、アルゼンチンの国債は急落した。
投資家らは、ミレイ氏が5ポイント以上負ければ株が売られると覚悟していたが、14ポイント差は10月の中間選挙を前に懸念をさらに強めた。
モルガン・スタンレーは、日曜日の結果により「市場が改革継続の可能性に疑問を抱き、将来の外部資金源をめぐる不確実性が高まるという下振れシナリオ」のリスクが高まると警告し、1週間前に発表したアルゼンチン資産の買い推奨を速やかに終了したと、エコノミストのフェルナンド・セダノ氏とストラテジストのサイモン・ウェイバー氏は述べた。
連邦議会の予算委員会は金曜日、今年の連邦予算について合意に達した。結局、記録的な債務は依然として残り、会計上のトリックと期待に満ちたレトリックによって公然と隠蔽されている。フリードリヒ・メルツはドイツを債務スパイラルへとさらに深く陥れつつある。
ベルリンにおける政治的混乱、特に早期選挙や予算交渉の失敗により、今年の連邦予算の成立は遅れました。金曜日、連合各党は予算委員会において社会民主党と最終予算で合意に達しました。ドイツは年間で5025億5000万ユーロを支出する見込みで、財政記録の更新を目指して活動を続けており、毎年、政治の駆け引きによって支出額は増加の一途を辿っています。
民間部門の深刻な経済不況にもかかわらず、緊縮財政や国家財政の構造的健全化については議論されていない。それでも金曜日には、連立政権関係者の間で予算に関して「ゲームチェンジャー」という言葉が飛び交った。
最高の予算
経済危機の真っ只中にあるこの巨額予算を見て、これは状況を変えるものだと語り、債務予算を最上級の予算と呼んだ連合党の同僚クリスチャン・ハーゼ議員の熱意に呼応したのは、社会民主党(SPD)のトルステン・ルドルフ議員だった。
そして実際、彼らの言うことは基本的に正しい。現実的に計算し、特別基金に隠された債務を公的債務に加えると、今年の総額は1400億ユーロとなり、GDPの3.3%に相当する純新規債務となる。ドイツは現在、マーストリヒト条約の基準を全て違反しており、EUの中央計画立案者と国家主義者によって、財政婉曲表現という永遠の狩場に静かに葬り去られている。
政府高官たちは、当初900億ユーロだった国防予算の増額、そして今後数年間で1500億ユーロへの増額を特に誇らしげに強調した。ハーゼ氏は、これが世界中の敵対勢力に最も強力なシグナルを送ることになると確信していると述べた。「ドイツは再び自国の防衛力を強化している」と。こうした支出への熱狂と並行して、狂信的なパラノイアが渦巻いている。ドイツは財政難のどん底に突き落とされ、今にも沸騰しそうな状況に陥っているのだ。
軍需産業におけるシャンパンの泡
一方、ドイツの軍需産業はおそらく祝杯を挙げているだろう。ベルリンは、既に失敗に終わったグリーン計画経済に加え、第二の人工経済を精力的に構築している。政府関係者は、ロシアを潜在的な侵略国としてプロパガンダ的に描写することで、国民の支持を取り付け、自国の軍需経済構築に必要な資源を搾取するのに十分な効果を上げていると考えているようだ。
まさにこれが現状の方向性です。あらゆる財政赤字は将来の納税者に負担を転嫁し、インフレや増税という形でブーメランのように跳ね返ってくるのです。
ほとんど信じられないことだが、ドイツの昨年の防衛予算は総額約780億ユーロで、GDPの約2%に相当した。
もし最先端の防衛技術に戦略的に投資されていたならば、同盟国と友好国に囲まれた国の防衛を十二分に支えることができただろう。しかし、ブリュッセルでもベルリンでも、国家は人為的に需要を創出することで経済の構造的な弱点を克服しなければならないという考え方が支配的だ。これは使い古されたケインズ主義の処方箋であり、後に残るのは債務の増大と貧困の拡大だけだ。
スパイラルを続ける
今後数年間、債務の暴走は続くと見込まれます。ラース・クリングバイル財務大臣は2026年度予算を5,205億ユーロと計画しており、これはさらに4%の増加となります。
一方、繰り返しになりますが、民間部門は縮小を続けており、必然的に税収は減少します。そのため、ベルリンの財政計画はすべて砂上に築かれ、あまりにも楽観的な前提に頼っています。クリングバイル氏と予算担当者が依然として直面している状況と比べれば、2025年度と2026年度の予算編成はほぼ楽勝と言えるでしょう。
すでに、莫大な資金ギャップが生じている。2027年には約340億ユーロが不足しており、同省は2028年には638億ユーロの「対策が必要」と指摘し、2029年には740億ユーロのギャップが迫っている。
原因の一部は国内で発生している。連邦政府は州税の不足分を補填し、当初の計画より1年前倒しで母親年金を拡充し、同時にコロナ禍での巨額の債務返済を行っている。クリングバイル氏は、ドイツの歴史上、連立政権が300億ユーロの財政赤字に直面したことはないと強調する。そのため、副首相は例年より数ヶ月早く次期予算の策定に着手している。
「ゲームチェンジャー」は実はアクセラレーター
社会予算の格差は、今後数ヶ月、数年で劇的に拡大するだろう。その根底には、政策の行き過ぎたイデオロギーが深く根付いている。それに続く増税騒ぎは既にメディアで準備されており、国民は多かれ少なかれそれを予感している。現在50%である国家のGDPに占める割合は、今後数年間でフランス並みの57%以上にまで達するだろう。
ドイツはこうして社会主義へと不可避的に突き進んでいる。したがって、連邦予算は「ゲームチェンジャー」ではなく、むしろ火に油を注ぐものなのだ。
今後数年間に債券市場が劇的に上昇する利回りを通じて強引な財政再建を強いない限り、フリードリヒ・メルツ首相は、第二次世界大戦後初めて国を債務スパイラルに陥れた指導者としてドイツの歴史に名を残すことになるだろう。
そうなれば、ベルリンの誰も経済状況を過小評価していたと主張できなくなるだろう。ドイツの崩壊は、最も明るい日のまばゆいばかりの光の中で展開する。
ドイツ連邦共和国は進化論的に政党国家へと退行し、政治カルテル間の致命的なコンセンサスが経済危機克服の戦略を左右するようになった。危機を引き起こしたまさにその癌――イデオロギー的規制と残忍な国家主義――が、今や人為的に転移を促されている。ドイツは、他の深刻な問題を抱えた患者たちに囲まれているにもかかわらず、再びヨーロッパの病人となっている。
ボリビアで エボ・モラレス 率いる社会主義運動(MAS)を選挙で倒すのに20年かかった 。
この地域では、20年にわたる政治的な争いと、いわゆる「文化戦争」が深く根付いている。
MASはウゴ・チャベスからの資金援助によって権力を掌握 した 。チャベスはベネズエラの莫大な石油収入を武器に、 南米のほぼすべての国で選挙活動に資金を投入した 。長きにわたり、チャベスとその同盟国はコロンビアを除く南米を事実上掌握していた。
しかし、ベネズエラ危機は彼らを危険にさらした。政治キャンペーンの資金が枯渇しただけでなく、 チャベスとマドゥロによる社会主義の悲劇的な事例――より良い生活を求めて900万人 以上の 人々が国外に逃亡した ―― は、国家 が経済を規制・統制する システムがもたらす混乱に対する、最も厳しい警告となった 。
8月17日、ボリビアで左派が権力を失ったのは、それだけではなかった 。最も衝撃的だったのは、それがいかに壊滅的な形で起こったかということだ。国内要因に加え、予期せぬ外的影響も影響を与えた。 アルゼンチンにおけるハビエル・ミレイの台頭だ。
社会主義の選択肢の選挙での崩壊
ボリビアの次期大統領は未だ決まっていない。野党のロドリゴ・パス氏とトゥト・キロガ氏は、10月19日に予定されている決選投票に進出した。一方、与党MASは 歴史的な敗北を喫した。同党の候補者は得票率4%に届かず、議会では社会党の議席が 75議席からわずか1議席にまで減少した 。この崩壊は、党内の対立も一因となった。
同党の歴史的指導者であるエボ・モラレスは、当初ルイス・アルセを支持していた。しかし、就任後、アルセはモラレスから距離を置き始めた。これは、モラレスによる 政府の決定への 干渉と、アルセ自身に対するエフェボフィリア(性的虐待)の疑惑が一因 となっている。アルセは最終的にこれらの容疑で有罪判決を受けたが、現在も自由の身であり、自らが 「土着の親衛隊」と呼ぶ部隊に守られている。
しかし、MASの崩壊は政治だけでは説明できない。ボリビアは 数十年ぶりの最悪の経済危機に見舞われていたのだ 。
次のような多くの要因が影響しました:
エネルギー部門の崩壊:国の主な収入源であるガス生産量は、 2014~2015年の1日当たり6,000万立方メートルから2025年にはわずか2,800万立方メートルに急落した。不適切な管理とメンテナンス不足により輸出量が大幅に減少し、対外貿易も減少した。
枯渇した外貨準備:ボリビアは2014年に150億ドルの外貨準備高を保有していましたが、2025年には20億ドルを下回りました。これにより、政府は補助金の維持や燃料の輸入を正常に行うことが不可能になりました。
軽油とガソリンの不足:ガソリンスタンドの66%が軽油の販売を停止し、38%がガソリンの販売を停止しました。多くの都市では、 11時間以上も行列が続きました。この危機は農業と交通に深刻な打撃を与え、政府は 燃料輸入のための暗号通貨による決済を認可しました。
食糧危機とインフレ: 米、肉、魚などの主食の価格は1年間で最大58%上昇しました。2025年6月には年間インフレ率が23%に達し、 食料インフレ率は17~24%で推移しました。
蔓延する貧困:世界銀行によると、ボリビア人の35%以上が現在貧困状態にあり、極度の貧困は約 11%に上ります。多くの世帯では、1日3食だった食事が1食にまで減っています 。
債務と財政赤字:公的債務は 2024年末に GDPの95%に達し、財政赤字はGDPの7%を超え、財政余地は残っていない。
一般のボリビア国民は、この崩壊を身をもって体験した。ガソリンスタンドの長蛇の列、食料価格の高騰、そして自国通貨の価値が下落したことでドルが入手できなくなった。こうした状況が重なり、MASへの支援は残っていた限りなく失われた。
ミレイ・ファクター
一方、隣国アルゼンチン――数年前に同様の危機に直面した国――では、髪を振り乱した自由主義者が国を 新たな方向へと導こうとしていた。彼はチェーンソーをシンボルに掲げ、公共支出、公務員給与、そして国家による経済統制の削減を誓い 、「自由万歳、ちくしょう!」と叫んで選挙運動を展開した。
当初、彼を真剣に受け止める人はほとんどいませんでした。しかし、2年後には国際的な現象となりました。 ミレイはあらゆる困難を乗り越えて大統領選に勝利し 、国家の縮小と経済の自由化という公約をまさに実行に移しました。
ミレイ大統領は、2023年12月に年間インフレ率211.4%を記録したアルゼンチンを引き継ぎました。2025年5月までに消費者物価指数はわずか1.5%の上昇にとどまり、過去 5年間で最低の水準となりました。貧困率は52.9%から 38.1%に低下しました。かつてハイパーインフレと貧困の瀬戸際と見られていたアルゼンチンは、急速に回復し始めました。
ボリビア国民はこれに気づきました。決選投票に進出したロドリゴ・パス氏とトゥト・キロガ氏の両候補は、公共支出の削減と国家規模の縮小を公約しました。この変化はすでに地域の潮流となっています。
ラテンアメリカの右傾化
ボリビアでMASが敗北する前、エクアドルはダニエル・ノボアを 大統領に選出していた。彼は米国寄りで 、この地域の社会主義体制からは距離を置いていた。ほぼ同時期に、アルゼンチンのハビエル・ミレイも勝利を収めた。今度はボリビアだ。この地域の政治地図は一歩一歩、変化しつつある。
今後数ヶ月のうちに、 チリとホンジュラスで大統領選挙 が行われます。両国とも左派政権です。 両国の世論調査 では、現在、中道右派の候補者が勝利する可能性が高いことが示されています。これらの候補者は、社会主義を公然と拒否し、国家の過剰な介入を批判し、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアにおける残虐行為を非難し、 中国、ロシア、イランではなく米国との戦略的パートナーシップを主張しています。
彼ら全員が「リバタリアン」や、ミレイ氏のようなハイエクの経済思想の信奉者と言えるわけではない。しかし、彼らは、この地域が近年陥っている国家主義、抑圧、麻薬密売カルテルへの巻き込みからは程遠い存在である。また、地域の安全保障、移民問題、経済問題に関して、ワシントンとの協力にも意欲的であるようにみえる。
注目すべきは、アルゼンチンの現象がいかにして地域の力学を変化させたかということだ。
政府からの援助に長らく慣れ親しんできたラテンアメリカでは、大統領候補者たちはもはや補助金や社会保障制度の拡充を競うのではなく、より大幅な歳出削減、政府の縮小、そして個人の自由の拡大を約束することで競い合っている。
「自由万歳、くそっ!」という叫びはブエノスアイレスで始まり、ラパスに響き渡り、ラテンアメリカの残りの国々は今、大陸の政治情勢を一変させつつある自由主義の波に加わるために投票箱で順番を待っている。
インフレ率は2021/2022年の最高値9%からは大幅に低下しているものの、依然として 2.7%とやや高い水準にある。
しかし、もっと重要なのは、人々が依然としてインフレ危機の永続的な影響に対処するのに苦労していることだ 。
Statistaのフェリックス・リヒター氏が次のグラフで示しているように、 2025年6月と7月に実施された新しい消費者インサイト調査によると、米国の成人の49%が、 生活費の高騰が 現在直面している最大の課題の一つであると回答しており、これが圧倒的に最も一般的な回答となっています。
インフォグラフィック:生活費はアメリカ人が直面する最大の課題 | Statista
Statistaでさらに多くのインフォグラフィックをご覧ください
インフレが落ち着くと物価が下がるというのはよくある誤解ですが、実際にはインフレが高かった時期は 物価の高騰という負の遺産を残します。
労働統計局によると、米国の消費者物価は2021年1月以降22.7%上昇しており、一部のカテゴリーではそれよりもさらに急激な値上がりが見られています。
食料品価格は25パーセント上昇し、家賃はほぼ27パーセント上昇し、交通費は28パーセント上昇しました。
しかし、名目賃金は2021年1月以降わずか21.8%しか伸びておらず、 多くの人々の生活は ほぼ5年前よりも悪化している。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
ロンドン — 急増する電力需要により原子力エネルギーへの関心が再燃しているが、巨額の資本要件と不確実な政治・規制環境により、原子力部門の財政能力に疑問が生じている。
テクノロジー大手は、エネルギー集約型データセンターに電力を供給し、AIへの野望を実現しようと、原子力エネルギーへの投資に資金を注ぎ込んでいる。
AIとデータセンターは「炭鉱のカナリア」だと、世界原子力協会(WNA)のサマ・ビルバオ・イ・レオン事務局長は会議に先立ちCNBCに語った。「私たちはようやく、電力とエネルギー全般の需要は増加の一途を辿ることを認識した。しかし現実には、経済のあらゆるセクターがより多くの電力を必要とすることになるだろう。」
レオン氏は、AIに加えて、できるだけ早く電化を目指している冶金産業向けの原子力エネルギーから、化学、海洋、船舶輸送部門まで、応用範囲は幅広いと述べた。
先週、世界最大のウラン・原子力企業の最高経営責任者、専門家、投資家らがロンドンのロイヤル・ランカスター・ホテルで開かれた世界原子力協会(WNA)の年次シンポジウムに集まり、増大する世界の電力需要をいかに満たすかという問題が中心的な議題となった。
会議での議論を開始したレオン氏は歓迎の挨拶で出席者に対し、このイベントは単なる会話の域を超えようとする「実務サミット」であると語った。
モルガン・スタンレーの推計によると、2025年までの原子力バリューチェーンへの投資は2.2兆ドルに増加すると予測されており、これは2024年の予測である1.5兆ドルから増加している。この投資水準は、政府、銀行、その他の金融機関が十分な財政能力を提供する上で果たす役割について疑問を投げかけている。
投資上の課題
原子力エネルギーは、より断続的な再生可能エネルギーと比較して、より信頼性の高い24時間365日供給可能なエネルギー源であると言われています。小型モジュール炉(SMR)の開発は、その規模により、より拡張性の高い電力ソリューションを提供します。IEAによると、 SMRへの投資回収期間は、大規模プロジェクトで通常20~30年かかる期間の半分です。
しかし、SMRはまだ商業段階に達しておらず、計画されているプロジェクトのほとんどは2030年まで稼働しない。多額の資金が約束されているものの、米国では過去15年間、新たな大規模原子力プロジェクトは実施されていない。
「原子力に関して金融セクターがまず好ましい状況にあるのは、彼らが原子力への融資に前向きであることです」と、市場・商業アドバイザリー会社オールド・エコノミーの創業者マヘシュ・ゴエンカ氏はWNAの傍らでCNBCに語った。「数年前、多くの銀行が原子力プロジェクトへの関与をためらっていた頃は、そうではありませんでした。しかし、状況は変わりました。今、残る疑問は、彼らが原子力プロジェクトへの融資にリスク許容度を持っているかどうかです。」
課題としては、予算の超過、建設のリードタイムの長さによるプロジェクトの納品の遅れ、取り組みの技術的な複雑さ、ライセンスの取得の難しさなどが挙げられます。
ゴエンカ氏は西側諸国を中国と比較した。中国の金融機関は、原子力プロジェクトが予定通りに予算内で完成し、他のインフラプロジェクトよりも高い利益率が得られるため、喜んで融資する。一方、西側諸国では長らく新規原子炉の建設が進んでおらず、学習速度はまだ十分ではないとゴエンカ氏は述べた。
米国の原子力発電設備のほぼ全ては、1967年から1990年の間に建設された原子炉によるもので、2013年にジョージア州のボーグル原子力発電所の建設が開始されるまで、新規の建設はありませんでした。一方、英国で最後に建設された原子力発電所は、1995年に稼働を開始したサイズウェルBです。
BNPパリバのエネルギー・資源・インフラ担当マネージングディレクター、マーク・マルダウニー氏は、原子力への投資は「本質的に政治的なプロジェクト」だと述べた。顧客は原子力への投資にかなり前向きになっているものの、コストと建設期間をめぐる不確実性は依然として残っているとマルダウニー氏は指摘した。
「プロジェクトファイナンスのような技術が単独で大規模な原子力プロジェクトの資金調達に使えるようになるまでには、まだ何年もかかるだろう」と同氏はパネルディスカッションで語った。
「たとえ請負業者にその意思があったとしても、そして概してそうではないとしても、これらのプロジェクトに伴うリスクによって破産するでしょう。つまり、政府かその国の電力消費者が責任を負うことになるでしょう。場合によっては、電力会社が仲介役を務める可能性もあります。」
政府の支援は依然として必要
原子力発電所は、最も資本集約的な資産の一つです。例えば英国は、サフォーク海岸に2基の原子炉を備えた巨大な原子力発電所の建設を承認しました。この発電所は3.2ギガワットの電力を発電する予定です。政府によれば、これは600万世帯分の電力を賄うのに十分な量です。しかし、政府が過半数所有するこのプロジェクトの費用は380億ポンドにまで跳ね上がり、当初の目標額200億ポンドを上回っています。
他の大規模プロジェクトも同様の問題に直面しています。ジョージア州ウェインズボロのボーグル原子力発電所は、計画が数年遅れ、開発中に予算が2倍以上に膨れ上がりました。英国のヒンクリーポイント原子力発電所は、初期段階でセキュリティリスクに関する多くの懸念に直面し、予算は推定400億ポンドにまで膨れ上がりました。
エスコムの企業金融アドバイザリー部門の上級幹部、トレバー・マイバーグ氏は、民間部門が「特効薬」となって原子力エネルギーへの資金調達問題を解決することはできないと強調した。
マイバーグ氏は水曜日のパネルディスカッションで、原子力開発において官民連携が「極めて重要」になるだろう、特に新興国においてはそうだと述べた。
スイス(現在は原子力発電所の新規建設を禁止しているが、この動きを撤廃する法案を起草している)やドイツなど一部の欧州諸国は依然として原子力エネルギーに反対しているが、英国、フランス、米国などの政府はこのエネルギー源に傾倒している。
ドナルド・トランプ米大統領は今年初め、原子炉の開発を加速させ、 2025年までに原子力発電能力を4倍にすることを目的とした一連の大統領令に署名した。
トランプ政権のこのような行動は、原子力エネルギー政策に積極的な姿勢を「強化」したとウラン・ロイヤルティ・コーポレーションのスコット・メルビーCEOは述べた。
「この政権は、小型モジュール炉、先進炉、大型原子炉の建設だけでなく、核燃料サイクルの推進も促進するために、実に具体的な措置を講じている」とメルビー氏はWNA出席者らに語った。
投資家のアルファ・カラニ氏は、新興企業、特に原子力関連技術を提供する企業で機会を見つけることに対する投資家コミュニティの関心が高まっていると指摘した。
特に英国政府は、クリーンテクノロジー分野の投資家を確保するスタートアップ企業の創業者を支援するために、より「実践的な」アプローチを採用していると彼女は述べた。
「規制は自ずと解決されなければなりません。もはや『どこから資金を調達するか』という問題ではありません。なぜなら、今やそれは突如として国家安全保障、世界的権力、そして世界的支配の問題となったからです」と彼女はCNBCに語り、AIと原子力への資金提供に対する米国のコミットメントは「解決不可能と思われていた問題が突如として解決可能になることを意味し、これは原子力にとって非常に喜ばしいことです」と付け加えた。
●その他
備忘録(2025/9/5-7)
●企業
コンシューマーヘルス製品のケンビュー<KVUE>が大幅安。ケネディ米保健福祉省長官が「アセトアミノフェン」と自閉症の関連を発表する予定だと伝わったことが嫌気されている。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)によると長官は、妊婦による市販鎮痛薬「アセトアミノフェン(タイレノール)」の使用が自閉症と関連する可能性があると発表する予定だと伝えている。同社はタイレノールのメーカー。
ケネディ長官はまた、葉酸由来の薬剤が一部の人において自閉症の症状治療に利用できることも示唆する見込みで、報告書は今月中に公表される予定だという。
タイレノールの製造元ケンビューの株価は、ロバート・F・ケネディ・ジュニア副大統領が、市販の鎮痛剤を妊婦が使用することと自閉症との関連がある可能性があると発表する予定であり、その発表では葉酸由来の薬が一部の人の発達障害の症状を治療するのに使用できる可能性も示唆するとのウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道を受けて急落している。
「事情に詳しい人々」が情報源としており、保健福祉省から今月中に発表される予定のこの報告書は、重要なビタミンである葉酸の低レベルや、1955年以来大量生産されているタイレノールの妊娠中の摂取、その他自閉症の潜在的な原因について強調するものとみられる。
関係者によると、ケネディ氏の保健省はまた、2022年に米国で8歳児のおよそ31人に1人が罹患する自閉症の症状を軽減する方法として、葉酸の一種であるフォリン酸、またはロイコボリンを特定する計画もあるという。
アセトアミノフェンを有効成分とするタイレノールは、数十年にわたり広く使用されている鎮痛剤であり、妊婦にも広く使用されています。これまでのいくつかの研究では胎児の発育へのリスクが示唆されていますが、他の研究では関連性は認められていません。米国産科婦人科学会(AOCG)は、タイレノールは妊娠中の使用は安全であるとしていますが、他の薬剤と同様に、妊娠中の女性は使用前に医師に相談することを推奨しています。
タイレノールは、ケンビューの一部門であるマクニール・コンシューマー・ヘルスケア社によって製造されており、他の企業も同様のアセトアミノフェンベースの製品を製造している。
「当社にとって、製品を使用する人々の健康と安全以上に重要なものはありません」と、ケンビュー社の広報担当者はウォール・ストリート・ジャーナル紙に語った。「当社は科学的根拠を継続的に評価しており、妊娠中のアセトアミノフェン使用と自閉症の間に因果関係はないと考えています。」
もちろん、金曜日の夜遅くに突拍子もない出来事が起こっても誰も驚かない市場では、KVUE の株価は急落し、12% の価値を失った。これは、RFK Jr.、ロングヒル、ショートタイレノールのペア取引がここ数十年で水浸しになっていたためだ。
●マクロ
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は5日、第1次トランプ政権下の2019年に、米海軍特殊部隊SEALS(シールズ)が北朝鮮に上陸し、盗聴装置を設置する極秘作戦を試みたものの失敗したと報じた。作戦の過程で北朝鮮の民間人数人が射殺されたという。
トランプ氏が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との歴史的な会談に臨んでいた時期と重なる。同紙は現職および元軍当局者を含む関係筋の話として、トランプ氏が作戦を承認していたと伝えた。
この報道について問われたトランプ氏は「何も知らない。初めて聞いた」と述べた。
NYTによると、北朝鮮の民間人は貝類を採っていたところ、夜間に海岸へ上陸したシールズの部隊と遭遇したとみられる。隊員が発砲し、小型漁船に乗っていた全員が死亡したという。犠牲者の数は明らかにされていない。
トランプ氏と金氏による首脳会談は決裂し、その後、北朝鮮は核兵器およびミサイルの開発計画を推進している。
メキシコ北部、米テキサス州エルパソの国境対岸にあるシウダーフアレス。装飾用リボンをつくるデザイン・グループ・アメリカズの工場で、ファビオラ・ガリシアさんは現場の生産ラインから11年かけて昇進し、30人を率いるマネジャーになった。流れは突然変わる。今年6月、勤務は週3日に減らされた。8月、同社は破産保護を申請し、担当者は工場の閉鎖を決めた。職を失ったのは彼女ひとりではない。約300人が一度に仕事を失った。
会社は裁判所への提出書類で、業績不振の一因としてトランプ米大統領が課した関税を挙げた。ガリシアさんの耳にも担当者の言葉が残る。「関税が会社に響いた」。同社で働いていた夫も解雇された。人員削減についてのコメント要請に、同社は応じていない。
世界各地から原材料をほとんど無関税で仕入れ、仕上げた製品を米国へ送り出す。そんなシウダーフアレスの組立工場が、今、危機にある。賃金上昇に加え、左派の与党・国家再生運動(MORENA)による改革に対する投資家の警戒が強まる中、トランプ氏の世界規模の貿易戦争がさらに追い打ちをかけた。
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マキラドーラとして知られるこの種の工場は、シウダーフアレスの雇用の約60%を支える。メキシコ有数の製造拠点として長年走り続けてきたこの都市は近年、「ニアショアリング」の波に乗ってきた。中国製品への米国関税を避けるため、多国籍企業がメキシコへ移る動きだ。だが、好況は終わり、現場では人減らしが進む。工場を畳む例も出はじめた。
メキシコ国家統計地理院によれば、2023年6月から2025年6月までの2年間で、フアレス市の工場雇用は6万4000超減った。うち約1万4000は今年上半期に集中する。
<チェリー・オン・トップ>
米国との自由貿易に依存するメキシコ経済の脆さが、今回の大量解雇であらわになった。トランプ氏が断続的に関税を発動する中、企業は事業継続に苦慮する。2025年の実質GDP成長率の見通しは1%を割り込んで停滞している。
マキラ協会インデックス・フアレスの副会長、マリアテレサ・デルガド氏は「業界は危機的状況にある」と言い切る。彼女とビジネスの有識者6人は、解雇の背景に複合的な要因を挙げる。
連邦政府による最低賃金引き上げの後、工場の利幅は縮んだ。メキシコ北部の最低賃金は2019年の時給22ペソ(約172円)から、現在は52.48ペソに上がった。23年には、前大統領が任命制の判事を公選制に改める大規模な司法改革を打ち出し、司法の独立が揺らぐとの懸念から海外マネーは足踏みし始めた。改革は今年、施行された。
決定打はトランプ氏の貿易戦争だったと、デルガド氏は言う。メキシコの輸出の多くは無関税で米国に入るが、自動車、鉄鋼、アルミニウム、一部の繊維には高関税がのしかかる。「トランプ氏の関税は、とどめの一撃だった」
資金の流入も細る。2025年1ー3月のメキシコへの海外直接投資は前年比21%減。シウダーフアレスのあるチワワ州では、製造業への海外直接投資が8億ドルから3億4800万ドルへと56%も落ち込んだ。州のイノベーション・経済開発庁トップのウリセス・アレハンドロ・フェルナンデス氏は言う。「不確実性がビジネスの空気を変えている。通商政策の行方が見えるまで、企業は意思決定も新規投資も遅らせている」
すでにシウダーフアレスから撤退した企業も出ている。賃金の安い国へと生産を移したり、関税回避のため米国内に投資する動きが進む。
今年初め、自動車部品製造のリア・コーポレーションは、一部の生産ラインをシウダーフアレスからホンジュラスへ移すと発表した。需要の変化と北部国境地域での賃上げに対応し、コストを削る広い戦略の一環だ。仏の電子機器メーカー、ラクロワは年内にこの地での操業をやめる計画を明らかにし、北米撤退の主因に、継続的な損失と通商の不確実性を挙げた。
地域の企業連合「ボーダー・ブロック・トレード」を率いるソル・サライアンディア氏も、くぎをつくる自社の金物工場で人員を削った。2023年に約90人いた従業員は、今や20人に減った。「顧客はコストを切り詰めている。昨日は注文があったが、今日は無し、だ」
株価の下落に苦しむ米国の医療保険会社は、過去15年間で最大の保険料値上げを実施しており、米国の消費者が高額な保険料負担に苦しんでいるのではないかという懸念が高まっている。
保険会社の一つ、ユナイテッドヘルスは、値上げの理由としてドナルド・トランプ大統領の貿易戦争による関税を挙げている。
マーサーの報告書によると、企業の従業員向け健康保険プランの費用は2026年に平均6.5%上昇すると予想されており、これは過去15年間で最大の増加幅となる。非営利の医療政策研究団体KFFによると、政府の保険取引所で医療保険に加入している人の場合、2026年の平均上昇率は18%で、昨年の7%上昇の2倍以上となる。
これらの保険料の値上げは、アメリカ人が家計支出の増加に直面している中で起きている。全米独立企業連盟(NFIB)の7月の報告書によると、企業の3分の1が値上げを計画しており、これは昨年3月以来の最高値である。米国の公益事業会社は290億ドルの値上げを求めており、これは前年同期比で142%の増加となる。8月の米国消費者物価指数は来週発表される。
S&P500種株価指数構成銘柄の中で今年3番目に低いパフォーマンスを記録しているセンテネは、コスト増加を理由にアーカンソー州知事サラ・ハッカビー・サンダース氏から批判を浴びている。サンダース氏は今月初め、同社が健康保険料を最大54%引き上げる提案を行ったことを激しく非難した。
「アーカンソー州民は、数十億ドル規模の保険会社から法外な請求書を受け取ることにうんざりしている」とサンダース氏は述べ、州の保険長官にセンテネ社の値上げを拒否するよう求めた。
ユナイテッドヘルスは、メリーランド州とオレゴン州において、関税に関する不確実性と医薬品生産の米国回帰コストを考慮し、特定の保険料をそれぞれ2.4%と2.7%引き上げると発表しました。また、オハイオ州では、関税リスクを考慮して保険リスクマージンを0.5%引き上げています。
関税の不確実性により、保険会社は保険料の引き上げを余儀なくされており、「その結果、消費者はその追加費用を負担せざるを得ない」とKFFの政策アナリスト、マット・マクガフ氏は述べた。「この不確実性のツケを払うのは保険会社だ」
人々は関税が医療費に反映されるとは思っていないかもしれないが、「保険会社の示す兆候は、そのことを示している」と彼は述べた。
ミネソタ州に拠点を置くユナイテッドヘルスはコメントを控えた。同社の株価は年初来で38%下落しており、S&P500指数構成銘柄の中でもパフォーマンスが最も低い銘柄の一つとなっている。同社の今年の規制当局への提出書類では、関税をリスクとして言及していない。その代わりに、医療費の高騰が収益を圧迫していると主張している。また、同社はメディケアの請求慣行をめぐり刑事捜査を受けている。
ユナイテッドヘルスの料金関連コストの増加は、2010年に制定された医療費負担適正化法(通称オバマケア)に基づく保険に関連しています。今年、約2,400万人のアメリカ人が医療保険としてACAを利用しましたが、ACAの保険料を補助する税制優遇措置は今年末に終了します。KFFの報道によると、その結果、米国の保険会社は健康な患者を失い、高額な医療を必要とする人々の医療費を負担せざるを得なくなることを懸念しています。
センテネはコメント要請に応じなかった。同社の株価は2025年には52%下落する見込みだ。
米国の公的年金基金は、引受基準の緩和と信用リスクの増大を懸念し、民間の信用投資に配分する資本を減らしている。
フィナンシャル・タイムズが公開記録を分析したところ、米国の主要公的年金基金70社が、今年上半期のプライベート・クレジットへの配分が前年同期比で18%減少したと報告している。公的年金は同セクターにとって主要な資金源となっているが、金融データプロバイダーのプレキンによると、北米における資金調達は今年上半期に全体で40%減少した。
州および市の年金基金はフィナンシャル・タイムズに対し、今年初めから新たな民間信用管理会社に対する監視を強化し、資金配分を一時停止していると語った。
この引き下げは、民間投資ファンドが中小企業への主要融資者となったことで生じた好景気に対する機関投資家の不安の高まりを浮き彫りにしている。
投資コンサルタント会社マーサーの米国チーフ投資ストラテジスト、ジェイ・ラブ氏は、民間クレジットへの資金流入について「流入する資金が増えれば増えるほど、魅力的な案件に配分できる割合は低くなる」と述べた。
近年、民間融資は、資本規制の厳格化やシリコンバレー銀行などの地域金融機関の逼迫により中小企業向け融資から手を引き、その空白を埋める形で繁栄している。
この資産クラスは、限定的なリスクで1桁から2桁の高いリターンを提供することで投資家を惹きつけています。連邦準備制度理事会(FRB)の推計によると、米国のプライベート・クレジット・ビークルの運用資産総額は、2024年には5年前の2倍以上となる1.4兆ドルに達する見込みです。
これまで、公的年金基金は好景気の牽引役として重要な役割を果たしてきた。昨年11月に全国公務員退職年金制度協議会が438の公的年金基金を対象に実施した調査によると、民間債務への平均配分は3年前の0.7%から4.1%に急増した。
しかし、民間信用の暴走が機関投資家から個人投資家にまで広がるにつれ、年金基金は縮小し始めている。
公的記録によると、総額440億ドルのアイオワ州公務員退職年金制度は、今年最初の5か月間で1億ドルを拠出した後、年間5億5000万ドルの民間信用枠の割り当てを一時停止した。
6月の取締役会で、最高投資責任者のスリラム・ラクシュミナラヤナン氏は、ファンドは翌月に新たな民間信用融資のコミットメントを再開するが、将来の投資には「かなり高い」ハードルを設定したと述べた。
24億ドルの資産規模を誇るシンシナティ退職年金制度も、新たな民間信用管理担当者の採用計画を棚上げした。「今後6ヶ月で何が起こるか、様子を見たい」と、最高投資責任者(CIO)のジョン・サルストロム氏は述べた。
こうした慎重な姿勢から、多くのファンドはプライベートクレジットへの配分を当初の計画よりも減らしました。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスが70以上のファンドを対象に行った調査では、6月に目標未達率が66%に上り、1月の63%から上昇しました。
多くのプランがトランプ大統領の関税戦争と税制改革法案が投資成果に与える影響の測定に苦戦する中、一部の運用会社は政策の不確実性を要因として挙げている。
アイオワ州公的年金基金のシニア投資責任者、パット・ラインハート氏は、6月の理事会で、トランプ大統領による4月の包括的関税発表後の市場ボラティリティを理由に、プライベートクレジットへの投資を一時停止したと述べた。「更なるコミットメントを進める前に、一歩下がって状況を見守るのが最善だと判断した」とラインハート氏は述べた。
年金基金側も、民間信用ファンドの急増により融資基準が弱まり、債務不履行リスクが高まる可能性を懸念している。
460億ドルのテキサス市町村退職年金制度の最高投資責任者(CIO)であるヤップ・キム氏は、小売業の急増が資本の過剰供給につながり、「契約条件、構造的保護、引受基準の緩和」につながる可能性があると述べ、こうした傾向は最終的には年金にも影響を及ぼすだろうと警告した。
「個人投資家の資金が流入するたびに、彼らの期待するリターンやリスク・リターンは、100年以上の歴史を持つ金融機関の期待に見合わない可能性がある」と同氏は語った。
運用資産850億ドルのアラスカ・パーマネント・ファンド・コーポレーションのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ロス・アレクサンダー氏は、長期にわたる高金利と不透明な米経済見通しによって、民間債務不履行が「必然的に」増加する可能性があり、問題がさらに悪化していると述べた。
アレクサンダー氏は、アラスカは資産回収の経験を持つ民間の信用管理会社と協力し、ファンドの収益が「より良く保護される」ようにしたいと述べた。
「民間信用市場で起きている事態を鑑みると、債務整理と、何か問題が起きた時に何が起こるかに焦点を当てることが、これまで以上に重要になる。なぜなら、問題は必ず起こるからだ」と同氏は付け加えた。
こうした懸念にもかかわらず、一部の年金基金は、慎重な計画によって過度のリスクなしに超過収益を生み出せると考え、依然として民間信用枠の拡大に熱心である。
運用資産2,950億ドルのニューヨーク市退職年金制度の最高投資責任者(CIO)スティーブン・マイヤー氏は、同基金は今後数年間で投資適格級および資産担保型プライベートクレジットを追加することで、6月までの12か月間で9.5%の利回りとなったプライベートクレジットへの配分を「数パーセントポイント」増やすことを検討していると述べた。
「我々はプライベート・クレジットに全面的に注力しています」と彼は述べた。「流動性の低さと複雑さを犠牲にしてでも、より高いリターンを得る覚悟です。」
おかえりなさい。景気後退とは何でしょうか?一般的にはよく使われる、しかしあまりにも単純化された表現は、2四半期連続の経済成長がマイナスになることです。しかし、米国では、全米経済研究所(NBER)のテクノクラートによって決定された、より洗練されたアプローチが採用されています。
「景気後退とは、経済全体に広がる経済活動の大幅な低下が数か月以上続くことです」と民間非営利団体は述べている。
米国のGDPは、第1四半期の縮小後、今年第2四半期に年率換算で増加しました。これは、米国が基本的な定義によれば景気後退を回避したことを意味します。NBERのより広範な基準でも同様の結果が見受けられます。
どのように定義されるにせよ、この号では、不況というレッテルが、特に世界最大の経済大国に当てはめられた場合には、特に意味をなさない理由を概説する。
NBER が景気後退の始まりを判断するために使用する主な 6 つの指標を下のグラフに示します。
5月は6つの指標すべてが前月比で縮小、もしくは縮小に近づいた。ここ数ヶ月はいずれも弱い状況が続いているが、NBERの基準を満たすほど悪くはないかもしれない。
しかし、カリフォルニア大学サンタクルーズ校の経済学教授パスカル・ミシャイヤット氏は、研究機関のアプローチに頼ることには2つの大きな欠点があると指摘する。
「失業率や空室率を軽視しすぎている」と彼は言う。「また、データや修正を待つため、景気後退は始まってから数ヶ月後に宣言されることがよくある」
全米経済研究所(NBER)の研究員でもあるミシャイヤット氏は、1世紀にわたる広範な労働市場データで訓練されたリアルタイムの景気後退検知アルゴリズムを使用し、米国経済が5月にすでに景気後退に入っていた確率は71%だと推定している。
「NBERの他のデータは役に立つように見えるかもしれませんが、労働市場はより根本的な現実を反映しています。求人数の減少と失業率の上昇は、私の見解では、広範な経済危機のより信頼性の高い指標です」と彼は述べています。実際、7月には求職者数が求人数を上回りました。これは2021年以来のことです。
多くのアメリカ人はミシャイヤット氏の評価に同意するだろう。エコノミスト誌とユーガブが8月初旬に行った世論調査では、回答者のほぼ半数が米国経済は「悪化している」と回答した。約3分の1は米国はすでに景気後退に入っていると考えており、28%は確信が持てないと回答した。NBERの任務は明らかに困難で主観的であり、データの複雑さも伴う。(私は昨年、FTアルファヴィル紙にアメリカの不透明な雇用統計について寄稿した。)
そもそも、景気後退という用語自体があまり役に立たない。購買力平価ベースで他のG7諸国の合計よりも大きい米国経済の規模では、多くの州、産業、そして世帯が景気後退に直面する一方で、他の地域では景気拡大が経済活動全体を押し上げている可能性がある。
すると、もっと有益な疑問は、いくつかの国家レベルの指標が弱体化しているにもかかわらず、米国が浮上し続けているのはなぜか、ということだ。
ドナルド・トランプ米大統領の2期目において、経済の回復力は主に、少数の州、人工知能、医療、富裕層という4つの限られた源から生まれてきた。
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は、全米経済研究所(NBER)と同様の手法を用いて、米国のGDPの約3分の1を占める州が景気後退に陥っているか、または景気後退の危険性が高いと結論付けている。
「景気後退に見舞われている州は全米に広がっています」と彼は言う。これには中西部やラストベルト(ラストベルト地帯)の一部も含まれる。「カリフォルニア州、テキサス州、ニューヨーク州は、合計で米国のGDPの約3分の1を占めており、持ちこたえています。これらの州の安定は、米国経済が景気後退を回避するために不可欠です。」
産業の地理的分布は、米国の各地域のパフォーマンスを決定する重要な要素です。
ザンディの計算によると、農業、製造業、建設業は景気後退に陥っており、農村部や工業地帯の州にも打撃を与えている。これらは、トランプ大統領の関税と貿易相手国の報復措置の影響を最も受けやすい財生産部門である。
政府の歳出削減と関連した連邦政府部門の低迷も、ワシントンDCの経済を減速に追い込んだ。
「ヘルスケア、テクノロジー、不動産は拡大している一方、金融サービス、小売、ホスピタリティは停滞している」と彼は付け加えた。
関連して、AI ブームは特定の州や産業に活気をもたらしました。
「AIは主に大都市のオフィステクノロジーです。そのスーパースターやスターハブの多くは、カリフォルニア州の沿岸都市、テキサス州のビジネス都市、そしてボストンからワシントンD.C.までの回廊地帯にあります」と、ブルッキングス研究所のシニアフェロー、マーク・ムロ氏は述べています。「データセンターの建設も全米で活況を呈していますが、これは建設活動の短期的な急増に繋がるだけです。」
パンテオン・マクロエコノミクスは、AI関連の支出がなければ、米国のGDPは上半期に年率わずか0.6%、つまり実際の成長率の半分しか伸びなかっただろうと推計している。
AI関連の支出の急増以外にも、金利上昇と不確実性の重圧により、米国経済の他の分野での民間投資は今年縮小し始めている。
パンテオンは最近の調査ノートで、第2四半期の民間固定投資総額は前年同期比で約3%増加したが、AI関連の要素を除けば約1.5%減少していただろうと述べている。
データセンター建設の年間ペースはトランプ大統領の2期目を通じて増加したが、住宅、製造業、その他の商業ビル建設は減少した。
ザンディ氏の研究が示唆するように、ヘルスケア業界も経済を牽引している。
金曜日に発表された8月の非農業部門雇用者数は、わずか2万2000人の増加にとどまったが、この部門がなければマイナスになっていただろう。トランプ政権2期目に入ってからこれまでに59万8000人の雇用が創出されている。そのうち86%にあたる51万5000人が医療・社会福祉関連の仕事だ。
4月以降、労働統計局の民間部門雇用者数DIは50を下回り、雇用者数の増加よりも雇用削減の方が多くの部門で増加していることを示しています。これは景気後退期以外では珍しいことです。
このニュースレターの5 月 18 日号で述べたように、ヘルスケア関連の仕事は業界の活況を反映しているというよりは、病気を反映していると言えます。
実際、昨年の米国GDPの12%を占めた医療費に対する家計支出は、第1四半期の実質消費者支出の年間成長率がマイナスになることを防いだ。
より広い視点で見ると、米国の年間GDPの約3分の2を占める実質消費者支出は今年に入って減速している。
モーニング・コンサルトの新たな消費者健康指数は、労働市場の動向と消費者心理を組み合わせて短期的な支出の尺度を提供するもので、医療費以外では高所得世帯が支出を牽引し、低所得層からの需要が減退していることを示唆している。
これは、低所得世帯が高金利や低成長セクターの影響をより多く受けていることを反映している部分もある。AIブームと関連した米国株式市場の上昇も、主に富裕層に波及している。
「『解放記念日』関税発表後の資産効果は、消費の足かせとなっていたが、S&P500が史上最高値に迫る中で、消費を押し上げる方向に転じるだろう」と、オックスフォード・エコノミクスの米国主任エコノミスト、バーナード・ヤロス氏は述べている。「高所得の裕福な世帯は、このプラスの金融資産効果の恩恵を受けるだろう。」
したがって、NBER が最終的に米国の景気後退を宣言するかどうかは、結局のところ技術的な問題です。
今のところ、広く減速している経済を、少数の限られた成長エンジンが支えている。
これはアメリカの経済の多様性と集団的な回復力を浮き彫りにするものであるが、全国的に公式に景気後退の判断がなされていないからといって、国の大部分が景気後退のような状況から逃れられるわけではないことも示している。
米国経済のように広大で複雑かつ不均衡なシステムにおいては、二者択一の判断は明らかにするものよりも隠すものの方が多い。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
米メタ・プラットフォームズがルイジアナ州に建設中の大規模データセンター向けに260億ドル(約3兆8300億円)を資金調達する案件で、主幹事の座を巡り激しい競争が繰り広げられた。その一因はメタが提示した特別な投資家保護策だった。
資金調達は複雑なスキームで行われる。データセンター「ハイペリオン」は合弁会社が建設・保有し、メタは20年間のリース契約で利用する。そのためメタ本体のバランスシートに債務は計上されず、人工知能(AI)分野への積極投資に向け財務余力を確保できる。
メタはさらに好条件を提示した。事情に詳しい関係者によると、同社がリース契約を途中で打ち切るか、更新しないことを選択し、データセンターの価値があらかじめ定めた水準を下回った場合は、投資家の損失を補填(ほてん)するという保証だ。
こうした契約は「残存価値保証」と呼ばれ、対象資産の価値が下落した際に投資家を保護するものだ。ただ、これほど大規模なデータセンターで適用されるのは前例がなく、新たな先例になると関係者は指摘する。AI向けのインフラ構築には数年を要する一方、技術革新によってデータセンターが時代遅れになる可能性もあるため、メタは多額の資金拠出を投資家に促す狙いで、この保証を提示した。
ニュー・マウンテン・キャピタルでネットリース不動産戦略を率いるテディ・カプラン氏は「この種のデータセンターは、その特殊性と建設コストの高さにおいて前例がない」とし、「将来的に技術革新が進めば、これらの施設が利用価値を失ったり、場合によっては使えなくなる可能性も極めて高い」と指摘した。同氏はメタの案件には関与していない。
モルガン・スタンレーが主導した1カ月の選定プロセスを経て、メタは260億ドルの資金調達スキームの主幹事としてパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO=ピムコ)を選んだ。合弁会社にはブルー・アウル・キャピタルが30億ドル出資する。
メタとPIMCO、ブルー・アウル、モルガン・スタンレーはいずれもコメントを控えた。
今年初め、アブダビの人工知能企業がフランスの巨大なデータセンターへのアクセスを希望した際、取引の仲介役として元子役で現在は投資銀行家である人物を頼った。
ブティック型コンサルティング会社ダルマ・キャピタルの創設者ザカリー・セファラッティ氏は、オープンAIの最高責任者サム・アルトマン氏や中東の有力政治家を含む多様な人脈を活用し、湾岸諸国のデータセンター、仮想通貨マイニング、テクノロジーグループの目立たないフィクサーとなっている。
37歳のデュロフ氏の顧客には、アラブ首長国連邦の有力王族シェイク・タヌーン・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン氏が会長を務めるAIグループG42、アブダビ首長国の政府系投資会社ADQ、そして暗号化ソーシャルメディアネットワークのテレグラムなどが含まれる。テレグラムの創設者パベル・デュロフ氏はドバイ在住で、昨年フランスで拘束され起訴された。
セファラッティ氏との取引に携わった幹部らによると、カリフォルニア州出身の同社は、AIを実行するためのさらなるコンピューティング能力への飽くなき欲求と、新興技術に資金を提供したいという湾岸諸国の欲求という2つの新たなトレンドから利益を得ている数少ないニッチなディールメーカーの1社だという。
「ただ波に乗っているだけではないと思っています」とセファラッティ氏はフィナンシャル・タイムズ紙に語った。「全くの偶然ではありません。こうしたことについて考え、研究することに多くの時間を費やしています。多くの投資銀行家のように、テクノロジーに深く関わっているわけではありません。」
「彼はデータセンターの目に見えない大物だ」とドレイパー・アソシエイツのパートナー、アンディ・タン氏は語った。
ダルマ氏はG42グループ傘下の企業に対し、「ティア1ハイパースケーラーとの提携」を含む様々なアドバイスを提供しました。マイクロソフトは昨年、アブダビに拠点を置く同社の株式を15億ドルで取得しました。また、セファラッティ氏は、G42の子会社であるCore42とフランスのDataOneとの間で締結されたフランスのデータセンター取引の仲介も行いました。この取引は今年完了しました。
ダルマ氏は今年5月、ジェフリーズが主導したテレグラムの17億ドルの債券発行の共同アレンジャーを務めた。セファラッティ氏は以前、テレグラムとアブダビの投資家との会合を手配していた。
セファラッティ氏にとって、UAEがAIハブとなることに賭けるのは自然な流れだ。「AIは膨大なエネルギーを消費し、非常に資本集約的です」。そうなれば、UAEは「知能の輸出国」となることができる。
セファラッティ氏のドバイオフィスには、ビットコインの入った袋を持った象のババールの彫刻が飾られている。これは、ドバイの不動産王でデータセンター投資家のフセイン・サジワニ氏の娘からの贈り物だ。セファラッティ氏は、バイナンスの創業者でUAE在住で、米国で服役したチャンポン・ジャオ氏を友人と呼んでいるという。
AIブームは、チェファラッティ氏がキャリアのどん底を味わった後に到来した。2019年から2023年にかけて、彼は金融センターの監督機関による調査を受けた。監督機関は
、ドバイの投資会社アブラージが監督下で破綻したことを受けて、より厳格になっていた。彼は規制当局を欺いた罪で起訴され、16万2500ドルの罰金と2年間の上級役員としての職務禁止処分を受けた。ドバイ金融サービス局は、2016年にダルマの代理で、同ファンドに雇用されていない人物が行った取引について、「虚偽、誤解を招く、欺瞞的な情報」を提供したとして、チェファラッティ氏を告発した。
「私が犯した大きな過ちは、それを真剣に受け止めなかったことだと思います」とセファラッティは言った。「ずっと昔の些細なことのように思えたんです。」
セファラッティの初期のキャリアは、スタートレック:ディープ・スペース・ナインなどの番組に出演する子役としてであり、祖母は彼に稼いだお金を債券や株式に投資するよう奨励した。
2009年、彼は父親の介護のために大学を中退し、医療費を賄うために小さな健康保険仲介業を始めた。その後、大学に戻り、ヘッジファンドの設立を目指す学生たちに加わった。彼らは「クルーレス・キャピタル」と揶揄された。
金融を専攻するこの学生は、スイスのフランクリン大学の教授陣に強い印象を残した。チェファラッティは「忘れられない学生の一人」だったと、元教授のロベルト・コルドンは語り、午前4時にチェファラッティからメールが届くほどだったと語った。
セファラッティ氏は2012年末に湾岸諸国に向かった。「(ドバイが)売り込んでいたものを買ったんだ」と彼は言った。「たぶん、少し早すぎたんだ」。彼が設立したばかりのヘッジファンド、ダルマ・キャピタルの運用資産はわずか「数百万ドル」で、現地からの投資は実現しなかった。
セファラッティ氏は方向転換し、高額なドバイ国際金融センターのライセンスを、暗号通貨ファンドを含む他のファンドのプラットフォームとして利用し、後に投資会議を立ち上げた。
2018年、彼はダルマをアドバイザリー部門に拡大することを決定し、モルガン・スタンレーから投資銀行家を雇いました。
「膨大な余剰電力を保有し、収益化を模索している組織から、問い合わせが殺到していました」とセファラッティ氏は振り返る。こうした顧客にはADQ社も含まれており、セファラッティ氏は同社をビットコインマイニング(電力を暗号通貨に変換する手段)へと導いた。
ほぼ同じ頃、セファラッティ氏はドレイパー・アソシエイツと知り合いになりつつあり、同社からは2023年に正式にベンチャーパートナーに任命されたという。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中、他の都市がロックダウンを続ける中、ドバイは経済再開に賭け、急成長を遂げた。セファラッティ氏は、自身の事業もようやく軌道に乗り始めたと語った。ベンチャーキャピタルの用語で言えば、「製品と市場の適合が一致した瞬間だった」と彼は語った。
2022年、彼は投資銀行Moelisと共に、自動運転企業Pony.aiをサウジアラビアで資金調達ロードショーに導いた。その後、ギガプロジェクトNEOM傘下の投資ファンドが、この中国グループへの1億ドルの投資を発表した。その後、G42などとの協業が続いた。
ダルマの従業員はわずか21人だ。しかし、チェファラッティ氏によると、彼は不足している人材を補っているという。資金調達を希望する顧客は、大手銀行に依頼するだけで済むかもしれない。しかし、「顧客とテクノロジーを必要とする、多層的な複雑な取引をまとめる必要がある場合、それをワンストップで行える銀行は多くない」のだ。
●その他
備忘録(2025/9/4)
●企業
野村証券は4日、2025―26年度の主要企業業績予想について、26年度の営業利益を前回集計から1.7%ポイント引き上げ、前年比12.3%増になるとの見通しを公表した。為替前提を円安方向に見直した。
野村証券のシニア・エクイティ・ストラテジスト、元村正樹氏は「26年度は米国の追加関税の影響が(25年度に比べて)薄れ、金融、電気・精密、自動車が3本柱となり、多くの業種で増益を見込んでいる。マクロの前提としては、グローバルベースの景気拡大が緩やかに続く」と話している。
Russell/Nomura Large Cap(RNL)指数の構成企業243社(うち金融23社)を対象に集計した。前回集計は6月2日だった。売上高は0.6%ポイント下方修正し2.7%増を予想する。
ドル/円の前提レートは、前回予想では25年度、26年度とも140円としていたが、今回は25年度144.87円、26年度145円とした。
業種別では、19業種中16業種で経常増益と、大半の業種で増益を予想。金融、電気・精密、自動車などの増益寄与が大きいと見込んでいる。
<25年度は関税影響で減益の予想>
一方、25年度の売上高は1.4%ポイント引き上げ同0.5%増、営業利益は1.5%ポイント引き上げ同0.5%減を予想する。為替前提を見直した。
25年度は、米関税の影響など不透明要因が残るとしつつも、世界景気の拡大が続くと予想。19業種中12業種で経常増益、7業種で経常減益を見込む。
業種別で増益寄与が大きいと予想するのは、金融、医療・ヘルスケア、食品、電気・精密など。金融は、国内金利の上昇により、大手行を中心に銀行セクターが一段と伸びると見込む。医療・ヘルスケアは、医薬品・医療機器の販売増を予想するほか、24年度に計上した減損損失がはく落するという。
半面、減益寄与が大きい業種は自動車、運輸、通信などと予想している。
日経平均株価は、25年末で4万2000円を予想。レンジの上限は4万5000円を想定している。元村氏は「企業業績が減速するタイミングでは、一時的にPER(株価収益率)が切り上がるのはよくみられる事例」だと指摘し、足元のPER(9月3日時点で17.41倍)は一時的には許容されるのではないか、と述べた。
配当性向は43.2%と、24年度(36.2%)から上昇する見通しで、前回集計時(42.2%)から小幅に引き上げられた。
●マクロ
コンサルティング会社マーサーの調査によると、雇用主ベースの医療保険に加入している米国民は2026年に毎月の保険料が6─7%上昇する可能性が高い。「スペシャルティ薬」のさらなる価格上昇や、医療サービスの利用増が背景という。
同社によると、医療費増加の要因としては全般的な経済のインフレ、医療従事者に支払われる賃金の上昇などが挙げられ、調査では約59%の雇用主がコスト削減に努力すると回答し、前年の48%から上昇した。
マーサーの報告書は6月11日から8月12日の間に1700の米雇用主を対象に行われた調査に基づいている。
米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)がフルタイム労働者を対象に実施した調査によると、個人負債の増加や家計の健全性に関する不安が増していることが明らかになった。回答者の約77%が経済情勢を懸念していることも示された。
家計に余裕があると答えたのは47%で、年初の52%から減った。
何らかの負債を抱えている人の割合は約85%。緊急時に備えた貯蓄や債務返済、全般的な家計の健全性などが不十分だと感じている人は26%と、2023年の13%から増えた。
今後3年間の家計の先行きに対し、約7割がより楽観的である一方、楽観度は向こう1年については弱まっている。
足元で米労働市場は減速傾向にある。信用スコアモデルを提供しているバンテージスコアは、最高水準の信用スコアを持つ米消費者でも債務返済に遅れが出始めているとする報告を発表している。
今回の調査は計1000人以上を対象に、今年5月まで実施された。
カーライル・グループは、老朽化したプライベート・エクイティ株を年金基金などの投資家から割引価格で取得するため、200億ドルを調達した。
プライベート・キャピタル・グループは木曜日、傘下のアルプインベスト部門が最新の旗艦セカンダリー・ファンドのために150億ドルを調達したと発表した。これは、2020年に前身となるファンドが調達した90億ドルのほぼ2倍に相当する。
他のグループやリテールファンドからの共同投資を含めると、アルプインベストは総額200億ドルを調達し、カーライルで最も速いペースで資産を増やしている。
アルプインベスト部門の急速な拡大は、バイアウトのパイオニアであるカーライルのハーベイ・シュワルツCEOによる成長回復の取り組みを後押ししている。
プライベート・エクイティ・グループが新規株式公開(IPO)や企業への売却を通じて投資からの撤退に苦戦する中、セカンダリー戦略は近年急成長を遂げている。
コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーによると、低迷する市場環境により、古いプライベートエクイティ株の積み残しが3兆ドルに達している。セカンダリー取引の総額は今年2,000億ドルを超える見込みだ。
アルプインベスト、アーディアン、レキシントン・パートナーズといった専門グループは近年、ファンド株の買収に記録的な額を調達しており、プライベートキャピタル企業とその投資家にとって、ますます一般的な出口戦略となっている。
「現在、投資家の帳簿には過剰な資産が存在している。これは、資金調達が好調だった時期と過去4年間の流動性不足によって生じたものだ。この状況は今も続いている。つまり、市場には十分な投資家がいるということだ」と、カーライル・アルプインベストのセカンダリー部門責任者、クリス・ペリエロ氏はフィナンシャル・タイムズ紙に語った。
アルプインベストの分配可能利益(アナリストがキャッシュフローの代理指標として好む指標)は、今年上半期に2024年の同時期と比較して倍増し、資産も同時期に15%増加したため、カーライルで最も好調な事業ラインとなっている。
アルプインベストの資金調達額は、カーライルが2023年に主力の米国プライベートエクイティファンドのために調達した148億ドルを上回っている。このファンドは、最高経営責任者(CEO)のキューソン・リー氏の予想外の退任と、一部の買収取引の失敗に投資家が動揺し、目標額の220億ドルを大きく下回った。
近年、カーライルは利益の大半を占めるプライベートエクイティ事業の成長に苦戦している。対照的に、アルプインベストは近年、資産と手数料を年率10%以上で成長させている。
シュワルツ氏は、4,650億ドルの資産規模を誇る投資グループ全体の簡素化を主導し、アルプインベスト、その信用・不動産事業、そして地域別・セクター別に特化したプライベート・エクイティ・チームといった事業を牽引し、好業績を上げてきた。
ペリエロ氏は、セカンダリーバイヤーにPE投資の売却を依頼する投資家は「切羽詰まっている」わけでも「投げ売り状態」にあるわけでもなく、むしろ高いリターンが見込めると考える新しいファンドへの投資を目的としたポートフォリオ運用を行っていると述べた。
カーライルは2011年に、かつて2つの大手オランダ年金基金の傘下であったアルプインベストを買収したが、アルプインベストは独自のブランドで独立して運営されていた。
しかし、シュワルツ氏は、カーライルの各事業部門に対し、投資・資金調達の機会を発掘し、利益率向上のためのコスト削減を図るため、より緊密に連携するよう要請している。
カーライルの株価は今年26%上昇し、業界全体の低迷を覆し、同グループが近年、より大きなライバルであるブラックストーン、アポロ、KKRに大きく遅れをとっていた状況から好転した。
本日発表されるJOLTは、例年通り月次雇用統計(金曜日発表)より1か月遅れて発表されるが、市場は主に、前月の雇用統計の修正がどの程度下方修正されるかを示す指標としてJOLTに注目していた(ちなみに、7月と6月はコロナ以降で最大の2か月間の雇用統計の修正下方修正となり、パウエル議長はジャクソンホールで完全なハト派姿勢に転じた)。
さて、少し前にBLSは、7月の求人数が下方修正された735万7000人(当初743万7000人)からさらに17万6000人減少して718万1000人になったと報告しましたが、これはコンセンサス予想の中央値738万8000人を大きく下回り、ブルームバーグが調査した29人のエコノミストによる28人の予想も下回っただけでなく…
...しかし、これはコロナ危機以来2番目に低い値で、9月24日にさらに下がった。
読者の皆様は、2024年9月に雇用市場の急激な悪化という裏付けが必要だったもう一つの注目すべき出来事を覚えていらっしゃるでしょう(覚えていない方は、こちらの記事「雇用統計の大幅な下方修正に備え、9月に50bpsの利下げを承認」をもう一度お読みください)。そうです。選挙のわずか2ヶ月前に「非政治的」なFRBが「予想外に」50bpsの巨額利下げを実施し、労働市場の崩壊がその隠れ蓑となったのです…まさに今、まさにその状況が続いています。
今日の報告に戻ると、BLS によると、求人数は医療および社会扶助 (-181,000)、芸術、娯楽およびレクリエーション (-62,000)、鉱業および伐採 (-13,000) で減少しました。
上記の業界のうち、政府部門が目立った。下のグラフが示すように、寄生虫の需要が消えたため、政府部門の求人数はコロナ以前の水準にまで落ち込んだ。
より広範な雇用報告の文脈では、米国の労働市場が4年間危機を回避した後、運が尽きた可能性があるようです。6月には労働市場は依然として供給が制約されており、求人数は米国の雇用数を34万2千件上回っていましたが、7月にはついに需要が制約され、求人数は失業者数を5万5千件下回っています。これは、2021年4月以来のこのシリーズの最初のマイナス数値です。
以前議論したように、米国は求人数が失業者数を上回った時期(つまり、雇用市場が供給制約状態にあった時期)に景気後退に陥ったことはありません。現時点では、もはや供給制約ではなく、需要制約状態にあることが分かっています。
言い換えれば、7月には失業者に対する求人数はようやく1.0倍を下回った。
求人データは非常に悪く、今後の景気後退の最初の前兆となる可能性があったが、雇用面ではより正常化しており、新規雇用者数は1年で最低の数字から4万1千人増加して530万8千人となり、同時に離職者数は320万8千人で変化はなかった。
労働市場のこの継続的な悪化をどう理解すればよいのでしょうか?
これは、先月トランプ大統領が解任した前長官を失った労働省が、不法移民が支配する影の労働市場の崩壊と、不法移民を合法な家事労働者に置き換えることで労働市場が需要抑制の不均衡に陥っていることを考慮に入れ始めたことに関係している可能性が高い。問題は、これが予想よりもはるかに弱い雇用統計の数字として現れるまでにどれくらいかかるかだ。早ければ今週金曜日に8月の雇用統計の完全版が発表され、さらに重要なのは、そのわずか数日後の9月9日に発表される通期の改定値でわかるだろう。この改定値で、私たちの予想が正しければ、実際には存在せずバイデン労働省が単に想像しただけの60万~90万人の雇用がさらに示されることになり、その過程で25bpsの利下げだけでなく、おそらくは1年前と同じように50bpsの大幅な利下げが承認されることになる。
13年前、当時の欧州中央銀行(ECB)総裁マリオ・ドラギ氏は、ユーロ圏の崩壊を防ぐため、流動性の供給を一気に開始しました。それ以来、構造的な問題は未解決のままです。私たちは今、大まかに修復された債務危機の新たな章に直面しています。ECBは緊急時の対応策を準備すべき時です。
ここしばらく、世界の金融市場では憂慮すべき傾向が見受けられます。長期国債が売り圧力にさらされているのです。米国、日本、英国、そして特にフランスといった主要経済国の国債でさえも売り圧力にさらされています。その結果、利回りが上昇し、既に多額の債務を抱える国の借り換えコストも上昇しています。
金融アーキテクチャが深刻なダメージを受ける
政策当局と中央銀行の両方を警戒させているのは、いわゆるイールドカーブの長期部分です。世界の金融構造の安定は、米国、日本、そしてユーロ圏の長期国債に支えられています。銀行、政府系年金基金、そして保険制度は、このセグメントの債券売りによって既に大きな痛手を負っています。金融構造は著しく弱体化し、欧州は今、新たな債務危機に直面しています。
もはや無視できない事態だ。かつては安全でプラスの実質利回りをもたらすと考えられていた長期国債は、今や大きな信頼を失っている。フランスの政治的混乱と英国の衰退を見れば、高齢化と移民問題に悩まされる欧州社会において、毎年の財政赤字が拡大し、社会システムが崩壊する中で、債務スパイラルから脱却することは極めて非現実的であることが浮き彫りになる。
その結果、これらの証券を保有する法的義務のない人は皆、それらを売却し、貴金属や現金(多くの場合米ドルやスイスフラン)などのいわゆる安全資産へと逃げている。これは、厳しい時代になると必ずと言っていいほど起こるパターンだ。
照準を定めたヨーロッパ
英国10年国債の利回りは火曜日の午後、2009年以来の高水準となる5.7%を超えたが、フランスの危機は劇的に深刻化している。9月8日には、フランソワ・バイルー首相の緊縮財政に対する信任投票が予定されているが、否決される見込みだ。フランスは政治的混乱と計画されているゼネストに直面しており、移民の影響を受けた分断された社会の悲しい伝統に従い、バンリュー地区では激しい路上衝突に発展する可能性が高い。
フランスは長い間統治不能な国家となっており、今や次のユーロ圏債務危機の発端となる危険にさらされている。
ヨーロッパに暗雲が立ち込めており、ドイツもその影響を免れることはできないだろう。かつては保守的な財政政策で称賛されていたドイツだが、1兆ユーロ規模の債務プログラムによって深刻な市場混乱の扉を開いてしまった。社会システム危機の解決と一時的な解決策のためにドイツが信用力を犠牲にすれば、EU加盟国を窮地に追い込むことになるだろう。通貨統合開始以来、市場はEU加盟国の信用力をドイツの信用力と密接に結び付けてきた。
過剰規制、エネルギー危機、移民問題の混乱など、ヨーロッパの危機はどれも効果的に制御されたことがなく、今や大陸は新たな債務危機に見舞われている。
ECBの活動
次の債務危機は、15年前の前回のパターンを辿る可能性が高い。つまり、国から国へと伝染が広がり、各国は債券売却の波によって安定性と回復力を試される。フランスで発生した危機は、最終的に重債務を抱える南欧諸国を経由してドイツに波及するだろう。問題は、ECBが当時緊急対策を講じたように、状況を安定化させることができるかどうかだ。
あらゆる国家債務危機は、同時に銀行危機でもある。国債の相当部分は商業銀行のバランスシート上に保有されており、時価の急落は金融セクター全体に危険な過剰債務をもたらすリスクがある。これを緩和するため、ECBは緊急対策の中核となる流動性・安定化策を整備した。これには、LTRO(長期リファイナンスオペレーション)とTLTRO(対象を絞った長期リファイナンスオペレーション)が含まれ、銀行に長期・低金利の融資を提供することで流動性を確保し、企業や家計への信用フローを維持する。
高レバレッジ法定信用
緊急流動性支援(ELA)も存在します。これは、深刻な圧力にさらされている金融機関のための一種の安全弁であり、通常は国債やその他のいわゆる「高品質資産」によって担保されます。このツールキットは、フォワードガイダンスと金利政策によって補完され、期待を誘導し、金利市場の安定化を図ることを目的としていますが、その効果は物質的というよりは心理的な側面が強い場合が多いです。
ここに、中央銀行制度の根本的な欠陥と論理的矛盾が存在する。「高品質」とみなされた資産こそが、危機の一因となったのだ。金やエネルギーに裏付けられていない、レバレッジが高く、事実上無担保の法定通貨による信用は、金融システムをポンジー・スキームのような構造に変え、必然的に巨額の信用拡大を招いた。
この文脈には、ドイツの巨額債務プログラム、そしてEUの政策担当者によると進行中のウクライナ代理戦争も含まれる。信用供給が滞れば、トランプ政権の砂上の楼閣は崩壊する。
金利操作に焦点を当てる
ECBの主眼は、危機時に最も脆弱なセクターである国債市場の安定化に依然として置かれている。ブリュッセルのEUの権力中枢と深く結びついたECBは、事実上流動性供給部門のような役割を果たしている。債券市場にパニックが襲来すれば、ECBは15年前と同じように、利回り操作と市場清算を開始するだろう。
緊急プログラムには、流動性を高めるために国債を購入する公的部門購入プログラム(PSPP)と、影響を受ける国が改革にコミットした場合にのみ発動されるアウトライト金融取引(OMT)が含まれます。新たに導入されたのは、ECBが加盟国間の過度な利回り格差を縮小し、金融政策の波及効果を確保するため、債券を購入することを可能にするトランスミッション・プロテクション・インストルメント(TPI)です。このインストルメントは大部分が秘密裏に運用されており、市場介入は必ずしも即座に目に見えるものではなく、市場パニックを回避するために、代理アクターを介して段階的に実施される場合もあります。
ECBの政策は簡潔にまとめられる。差し迫る債務崩壊に先立ち、その任務は利回り曲線全体を下方操作し、公的債務が管理されているという幻想を維持し、民間投資家のパニックを防ぐことである。ECBの粘り強い政策運営は、長期国債がここしばらく辿ってきた利回り推移に明らかである。
透明性?事実上存在しない。ECBと主要資本プールとの密室取引は日常茶飯事だ。市場は積極的に管理・操作されており、自由市場と金利上昇による規律の力(債券自警団)はもはや存在しない。
緊急用パッチと鎮静剤
結局のところ、ECBの政策手段の名称は無意味だ。その中核的な機能は、短期的な市場変動を平滑化し、政策当局に拡大し続ける国家運営のための操作余地を継続的に提供することだ。ECB自体がユーロシステムにおいて悪質な勢力となっている。政策当局がECBのバックストップに頼ることができる限り、市場に基づく改革は不可能だ。グリーンな気候変動対策であれ、軍備増強であれ、その他の疑わしいプロジェクトであれ。
EU委員会とECBは、統一された債務メカニズムを構築し、各国の債務を委員会の傘下に統合し、市場安定化のための流動性プールとしてECBを統合することを目指しています。このように、ヨーロッパはECBを重要な推進力として、中央集権型社会主義へと舵を切りつつあります。
システム危機が発生した場合、ユーロ圏の主要国であるフランス、イタリア、ドイツは下降スパイラルに巻き込まれるだろう。ECBによる信用供給と短期的な流動性供給策のみで状況を安定させることができると考えるのは、ナイーブすぎるだろう。
急上昇する債券利回りは金価格の高騰と同様にここ数日大きな話題となっているが、両者の間には完全な逆相関関係はないものの、通常、利回りの上昇は金塊の輝きを奪う傾向がある。
安全資産の流入をめぐる争いでは、投資家が従来の安全資産の運用方法を再考する中で、金が勝利を収めつつあるようだ。アナリストらは、主要経済国の財政政策や金融政策の方向性に対する投資家の懸念が高まっていると指摘している。
米国では、30年国債の利回りが水曜日に7月以来初めて5%を超えた一方、日本の30年国債の利回りは、持続的なインフレ、マイナスの実質金利、政情不安を背景に今年100ベーシスポイント上昇し、過去最高を記録した。
英国では今週、30年債利回りが1998年以来の高水準に上昇した。一方、フランスでは、政治的混乱により財政赤字削減計画が頓挫する恐れが出ているため、30年債のリスクプレミアムが2008年以来の水準に達した。今年初めには安全資産としての需要の恩恵を受けていたドイツ国債でさえ、この売りに巻き込まれ、30年債利回りは14年ぶりの高水準に達した。
一方、金価格は記録的な上昇を続け、水曜日には3,578.5ドルの新たな高値を記録した。
「日本、フランス、そして英国における財政の行き過ぎや債務危機の可能性に対する懸念がある」と、ヤルデニ・リサーチの社長、エド・ヤルデニ氏は述べた。「明らかに、安全資産として、また金融不安に対する防御策として、ポートフォリオに金を追加する投資家が増えている。」
利回りの上昇は、通常、金は利息を生まないため、金保有の機会費用が上昇し、魅力を低下させる。しかし、インフレヘッジとしての役割が、金に独自の魅力をもたらしていると、市場ウォッチャーは指摘する。
金に有利な状況に傾いている要因の一つは、金融政策の政治化だ。「大きな動きは、トランプ大統領と、彼による連邦準備制度の独立性への介入にある」と、ワイカト大学会計・金融・経済学部のマイケル・ライアン講師は述べた。連邦準備制度の独立性が損なわれれば、インフレ抑制の取り組みが危うくなる可能性がある。
最近、ドナルド・トランプ米大統領は、住宅ローン詐欺の疑いを理由に連邦準備制度理事会(FRB)のリサ・クック理事を解任するという前例のない措置を取り、同時にジェローム・パウエル連邦準備制度理事会議長に金利引き下げを圧力をかけた。
「インフレが今や新たなリスクとなっている状況だ…そして金が唯一の選択肢だ」とライアン氏は語った。
一方、債券監視団は「多くの国の財政・金融政策に不満を抱いている」ため先進国の債券利回りを押し上げているとヤルデニ氏は述べ、国債から金に資金を移す投資家が増えていると指摘した。
「投資家は勢いのあるところに投資する傾向があり、今は金がその勢いを持っています。しかし債券はそうではありません。」
より安全な避難場所?
アナリストによると、金の魅力の一つは、その独立性にある。債券は将来の元本の返済を約束し、インフレ懸念を相殺するために高い利回りを要求する必要があるが、金は財政運営の失敗や政治的介入によって価値が下落することのない実物資産である。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのシニアストラテジスト、アンジェラ・ラン氏は、両者は伝統的に安全資産と考えられているが、根本的に異なると述べた。
「国債は金融負債です。将来のキャッシュフローを受け取るという約束を保有しており、その価値は政府によって裏付けられています。一方、金は負債ではありません。金は変色したり、錆びたり、浸食されたりしない物理的な資産であり、固有の価値を持つ天然の希少元素であり、世界中の多くの中央銀行や機関によって準備資産に指定されています。」
みずほ銀行の経済戦略部長、ビシュヌ・バラサン氏は、投資家が米ドルに裏付けられた法定通貨制度の前例のない価値下落を恐れる中、金は「究極の価値保存手段」としても求められていると述べた。
投資家は、過剰な政府債務、世界的な緊張の高まり、そして中央銀行がもはや独立して行動できないかもしれないという懸念によって、米ドルをはじめとする紙幣が弱体化していると懸念しているようだ。金融当局が紙幣増刷によって政府債務の資金調達を続けるよう圧力をかけられれば、これらの通貨の価値は大きく下落するだろう。
利回りの上昇により、投資家が再び長期債の購入を始めるのに十分なプレミアムだと感じるまで、利回りはどの程度まで上昇するのかという疑問が生じている。
バラサン氏は、特にFRBがこれまで予想されていたよりも速いペースで利下げを行うとの期待が高まり、投資家がより高い利回りを「確保」しようとするようになれば、利回りが戻ってくるのもそう遠くないかもしれないと述べた。
「しかし、持続不可能な債務、地政学的経済的混乱、米ドルと法定通貨の価値下落リスクといった構造的なリスクには注意が必要であり、投資家は短期および短期の利回りを好む可能性がある」と同氏は述べた。
インタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は、利回りが単純に上昇傾向にある場合、買い手が参入する傾向があると述べた。「しかし、フランス、あるいはある程度は日本でも見られるように、危機や財政赤字の補填が不可能になる懸念がある場合、そうした支援策を見つけるのはより困難になる可能性がある」とソスニック氏は付け加えた。
来週に迫った信任投票を前に、フランスは予想外にも、かつては政治的混乱と経済的脆弱性で知られていたイタリアと比べて不利な評価を受けている。
フランスの主要政党間の継続的な争いや2026年度予算をめぐる未解決の論争、そしてここ数年の首相の入れ替わりにより、経済学者たちは「フランスは新たなイタリアなのか?」と疑問を抱いている。
「現時点でフランスの財政見通しはイタリアよりも悪い」と野村の欧州調査アナリストは火曜日のレポートで述べた。
フランスの債務残高は2024年時点でGDPの113%に達し、イタリアは135%だった。しかし、同期間における両国の財政赤字を見ると状況は一転した。この指標で見ると、イタリアの財政赤字は国内総生産(GDP)の3.4%だったのに対し、フランスは5.8%だった。
フランスのフランソワ・バイルー首相は先週、9月8日に信任投票を実施すると発表し、約440億ユーロ(513億ドル)の歳出削減を含む物議を醸している2026年度予算の成立を目指している。目標は、2026年度のフランスの財政赤字を4.6%まで削減することだが、これは依然としてEUの財政赤字規制を大幅に上回る水準だ。
バイルー氏は来週月曜日の信任投票をフランスにとって存亡の危機と位置付け、水曜日にBFMTVに対し、状況は「重大かつ緊急」だと語った。
もし彼と彼の少数派政権が投票で勝利しなければ、前任者のミシェル・バルニエ氏の短命政権が崩壊してから1年も経たないうちに政府は崩壊し、フランスのエマニュエル・マクロン大統領によって新たな首相(2年足らずで5人目)が選ばれることになる。
フランスの状況は、イタリアと比べて不利な立場にある。イタリアは、2022年にジョルジャ・メローニ現首相が選出され、欧州連合第3位の経済大国として安定期を迎えるまで、長期間の政治的混乱と経済的不安定を経験してきた。
フランスとイタリアはともに、欧州委員会の「過剰赤字是正手続き」の対象となっている。これは、欧州委員会がEU加盟国を、国の公的債務がGDPの60%を超えず、財政赤字がGDPの3%を超えてはならないというEUの財政規則に再び従わせるために用いるメカニズムである。
野村は、イタリアは財政赤字の抑制に向けて進展が見込まれる一方、フランスではその兆候が見られないと述べた。
「しかし、フランスの財政赤字の軌道は脆弱であり、バイルー政権の崩壊の可能性は、フランスが支出抑制で直面する課題を浮き彫りにしている」と野村のエコノミストらは電子メールによる分析で述べた。
「哀れな公共の見せ物」
現在、フランスの隣国は、バイルー首相が、昨年の決着のつかなかった選挙後、自分たちが政権を握るべきだと感じている左派(新人民戦線同盟)と右派(国民連合)のライバル政党とわずか数日で予算の妥協点を見出そうとしているのを見守っている。
予算案、歳出削減案、増税案をめぐる長引く議論の後、政治的スペクトラムの両陣営は、月曜日の信任投票で中道政権を支持しない意向を示した。フランスで2つの祝日を削減する案も、不評だった。
「バイルー政権の崩壊が見込まれ、議会が今年中に2026年度予算を可決しない可能性が高いことから、2025年度予算は名目ベースで凍結される可能性が高く、そうなれば2026年度の対GDP比の赤字は欧州委員会の予測よりわずかに高くなるだろう」と野村は指摘し、フランスの債務持続可能性は「重大な懸念事項」だと付け加えた。
フランスで再び政権が崩壊する可能性があり、2026年度予算をめぐって意見の相違が続くことは、アナリストにとって不愉快なことだ。
「フランスはすでに金融市場から前例のない圧力に直面しており、来週は悲惨な姿を国民に見せることになるだろう」とユーラシア・グループの欧州担当マネージング・ディレクター、ムジタバ・ラーマン氏は火曜日にメールで送った分析でコメントした。
ユーラシア・グループの基本シナリオは、バイルー氏が信任投票で敗北することだが、ラーマン氏はこの敗北を「バイルー氏が勝つ見込みのない賭け」と表現した。
「マクロン氏は当面、新たな議会選挙の実施を否定し、21カ月以内に5人目の首相を任命するだろう。ほぼ確実に、中道および中道右派連合の中から選出されるだろう」と指摘し、後任候補としてセバスティアン・ルコルニュ国防相、ジェラール・ダルマナン法相、エリック・ロンバール財務相の名前を挙げた。
フランスの政情不安をめぐる金融市場全体の不安を反映し、 フランスの30年 債利回りは火曜日に4.5%を超え、2008年以来の高水準に達した後、水曜日には4.48%まで小幅低下した。他の主要国も、財政を巡る広範な懸念から、今週は借入コストの上昇に直面している。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
●その他
最近、コーヒーを飲む人の体内で急上昇しているのはカフェイン濃度だけではない。
アナリストによると、コーヒー価格は、ブラジルやベトナムなど主要生産国でのコーヒーの収穫量を減少させた不安定な天候の影響で急騰している。
労働統計局のデータによると、米国の挽いた焙煎コーヒーの価格は7月に1ポンドあたり8.41ドルに達し、過去最高値となり、前年比で33%上昇した。
世界のコーヒー価格は2月に記録した50年ぶりの高値付近で推移している。
米国では、コーヒー全種類(焙煎コーヒー、インスタントコーヒーを含む)の価格が7月に前年同月比14.5%上昇した。これは消費者物価指数( CPI)によると、卵に次いでCPIカテゴリーの中で2番目に高い年間インフレ率である。
バーンスタインのシニアリサーチアナリスト、ダニロ・ガルギウロ氏は、価格圧力は短期的には「緩和するはずだ」と述べた。
しかし、国際コーヒー機関の8月の報告書に よると、トランプ政権がブラジルに課した50%の関税はコーヒー価格に「上昇圧力」をかける恐れがある。
「降雨による急激な変化」で供給が圧迫される
すべての商品と同様に、コーヒーの価格は需要と供給によって決まります。
バーンスタインが3月に発表したレポートによると、コーヒーの栽培と収穫量は「環境に非常に左右される」ため、天候の不安定さはおそらくコーヒーの供給と価格を支える「最も重要な」短期的要因である。
ブラジルの昨年の夏季の深刻な干ばつにより、収穫は「壊滅的な打撃」を受けたとバースタインのアナリストらは記している。
ブラジルは世界最大のコーヒー生産国であり、世界の約40%を供給していると報告書は述べている。世界最大のコーヒー輸入国である米国は、その供給量の大部分(32%)をブラジルから調達しているという。
バーンスタインによると、世界第2位のコーヒー供給国であるベトナムは干ばつの被害を受け、2024年のコーヒー生産量は20%減少した。
コーネル大学名誉教授で「変わるメニュー:気候変動と私たちが愛し必要とする食品」の主著者であるマイク・ホフマン氏は、その後に激しい暴風雨が続き、生産にも支障をきたしたと述べた。
この「降水量の急激な変化」により、農作物の収穫量が減少すると彼は述べた。
「通常のシーズンとは違っています」とホフマン氏は述べた。「干ばつがコーヒーの木にストレスを与え、水が過剰に供給されると、豆、つまり実の品質と量に影響が出ます。」
さらに、コーヒーの価格が上昇するにつれ、スターバックスなどの企業は、高価なコーヒー豆を公開市場で購入するのではなく、既存のコーヒー在庫を減らすことを選択したとガルギウロ氏は述べた。
バーンスタインのアナリストは、ここ数年の在庫は「過去の水準を大幅に下回って」減少したと指摘した。在庫が多い時は市場は比較的うまく供給不足を乗り切ることができるが、需要や供給に新たなショックが生じた場合、在庫が少ないと価格が急騰する可能性があるとアナリストは指摘している。
価格がコーヒー愛飲者に及ぼす影響
ガルギウロ氏は、消費者がコーヒーの価格上昇を異なるように感じるかどうかは、自宅で淹れるコーヒーを食料品店で買うのか、それともレストランやコーヒーチェーン店など外食で飲むのかによっても異なるだろうと指摘する。
食料品売り場におけるコーヒーの価格は、商品価格の変動に大きく左右される傾向があり、一般的に価格変動が大きいと彼は述べた。コーヒー価格が上昇すると、食料品店はより迅速に店頭価格を引き上げ、コーヒー価格が下落すると、消費者に割引を提供する可能性があると彼は述べた。
しかし、コーヒーなどの食料品の価格は一般的に周期的に変動しており、天候の改善や生産性向上のための設備投資は、今後価格が下がる可能性が高いことを示しているとガルギウロ氏は述べた。
さらに、ブラジルの関税の「影響」は大手コーヒーチェーンから購入する消費者にとってはある程度限定的かもしれないとガルジウロ氏は述べた。
例えば、ブラジルへの関税のコストを全額回収するには、スターバックスが価格を0.5%以下に引き上げる必要があるだろうと彼は見積もっている。
アナリストらは、長期的には消費者は平均より高い価格に備えるべきだと述べた。
コーヒーの収穫に悪影響を与える異常気象は今後さらに頻繁に発生すると予想され、世界のコーヒー消費量は引き続き増加し、需要を押し上げるだろうと研究者らは述べた。
「私の考えでは、価格は上がり続けるだろう」とホフマン氏は語った。
「気候変動は消え去ることはない」と彼は言った。「干ばつや洪水の深刻さは、さらに悪化するだろう。コーヒーだけの問題ではなく、食料供給全体に影響する」
備忘録(2025/9/3)
●企業
米投資会社エリオット・インベストメント・マネジメントは2日、米食品・飲料大手ペプシコ(PEP.O), opens new tabの株式約40億ドル分を取得したことを明らかにした。スナック菓子などでの消費者の嗜好の変化を踏まえ、ペプシコが健康飲料に着目する中、成長回復と株価上昇に向け、経営への圧力を強める構えだ。 食品業界は、原材料価格の上昇や嗜好の変化が売り上げの逆風となる中、分割や合併を通じて事業の再構築を図っている。エリオットの主要投資先の一つとなっているペプシコ株は、2023年5月に最高値を付けて以降、約25%下落している。ただ、大量の株式保有が伝わった朝方の取引では一時6%上昇した。 エリオットはペプシコの北米飲料部門が、戦略的な誤りのほか、市場シェア低下、新ブランド・新製品投入に伴う重点の分散が原因で、成長や利益率が競合他社に後れを取っていると指摘。ライバルのコカ・コーラ(KO.N), opens new tabに倣い、ボトリング事業で再フランチャイズ化の可能性を検討すべきだとも求めた。 エリオットは書簡で「適切な方針と意欲的な再生計画があれば、ペプシコは再生し、大きな株主価値を提供可能なチャンスがある」とし、「マーケティングやイノベーションの強化によって炭酸飲料という中核事業を守りつつ、成長分野を厳選して拡大していくべきだ」と言及した。 約10年前、米著名アクティビスト(物言う投資家)として知られるネルソン・ペルツ氏が、ペプシコに対し、苦戦する飲料部門を堅調なスナック菓子事業から分離するよう求めたものの、実現しなかった。
●マクロ
トルコの最大野党・共和人民党(CHP)は3日、イスタンブールでの抗議行動を呼びかけた。トルコの株式市場では2日、同党に不利な裁判所の判決を受けて民主主義に対する懸念が高まり、92億ドル(約1兆3700億円)が吹き飛んだ。
CHPのオゼル党首は2日夜、テレビのインタビューで、「全イスタンブール市民、イスタンブールの全民主主義者に、この巨大な不正義に対して行動するよう呼びかける」と語った。集会への参加人数は不明だが、過去には同様の地域的な抗議が大規模化し、国内の他の地域にも広がった例がある。
トルコの裁判所は2日の暫定判決で、CHP指導部を選出したイスタンブール支部大会を無効とした。この動きは、トルコ全域の野党指導部の崩壊につながる恐れがある。
判決により、2日のトルコ市場では政治的リスクや投資家の不安が改めて表面化した。この流れは3日にも続き、主要株価指数は一時2.4%下落し、トルコ2年債利回りは96ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、7月以来の高水準となった。8月のインフレ率が市場予想を上回ったことも、下落に拍車をかけている。
トルコ・リラは小幅な下落にとどまった。国営系の商業銀行が外国為替市場で大きな存在感を持ち、動揺が生じても通貨は比較的安定しやすいためだ。
デニズ・インベストの調査部副ゼネラルマネージャー、オルクン・ゴデク氏は「9月中は、他の法的手続きが投資家の注目を集め続けるとみている」と述べた。
今月予定されている一連の裁判の中で、次の焦点はCHP党大会の合法性を巡る15日の審理だ。無効と判断されれば、オゼル氏はCHP党首の座を失う。その後、エルドアン大統領にとって比較的脅威が少ないとされる、オゼル氏の前任者が再び党首に据えられる可能性が高い。
英国市場を財政問題が再び揺るがしている。景気を損ねることなく財政を立て直せるのか、投資家の不安が高まっている。
こうした緊張感の高まりを受けて、英国は最終的に国際通貨基金(IMF)の金融支援が必要になる可能性すらあるとの見解を示すエコノミストも現れた。これは行き過ぎかもしれないが、投資家が英国の長期国債を売り浴びせ、利回りが今世紀最高の水準に上昇しているのが現実だ。
これは国債の利払いにかかる費用がいっそう膨らみ、リーブス財務相の限られた財政余地を一段と圧迫し、政治的に厳しい判断をさらに困難にすることを意味する。利払い費用だけでも、前回の財政発表があった3月以降で80億ポンド(約1兆6000億円)の追加負担が生じている。
英財務省は3日、11月26日にリーブス財務相が来年度予算を明らかにすると発表した。リーブス氏は最大510億ポンドの財政不足を埋め合わせ、100億ポンド弱でしかない財政的な余裕を回復するため、増税か支出削減を迫られると、エコノミストらはみている。
リーブス氏は同日の動画メッセージで、自ら設定した財政規則を守ると強調。「財政規則に交渉の余地はない。これを通じて日々の支出を厳しく管理し、インフレと借り入れコストを抑制する必要がある」と主張した。
この発言後、朝方に再び上昇し、数十年ぶりの高水準を再び更新した英国債利回りは低下へと転じた。
英国市場には、2022年に当時のトラス首相が打ち出した「ミニ予算」をきっかけに発生した危機の記憶がなお強く残る。これ以降、金融市場は財政政策に強力な拒否権を持つようになった。
しかし、リーブス氏にとってのリスクは、市場の信頼を維持するための行動が、英国を財政の悪循環に陥らせる可能性だ。増税が需要と成長を抑制し、それによって税収が減り、市場の不安が強まって、一段と厳しい財政引き締めを強いられるという展開が懸念されている。
ブルームバーグ・エコノミクスの試算では、リーブス氏が自身の財政規則において確保していた財政余地を取り戻すためには、最大350億ポンドが必要になる。
リーブス氏に「英国債投資家は警告を発し続けている」と、ハーグリーブス・ランズダウンのマネー&マーケッツ責任者スザンナ・ストリーター氏は指摘。「不安視されているのは、財政不足を埋められるかだけではなく、それが成長を犠牲にして達成され、悪循環に陥る恐れがあることだ」と語った。
世界的にも、一部の長期債利回りは10年余りで最高の水準に達している。国債の供給増加を踏まえ、投資家はこれまで以上に高いプレミアムを要求している。
英国では今週、30年債利回りが5.7%を突破し、1998年以来の高水準を記録。10年債利回りも今年1月以来の水準を付けた。ポンドは2日に1.5%下げたのに続き3日朝方も売られたが、リーブス氏の発言後は上昇に転じた。
トランプ米大統領は2日、ロシアのプーチン大統領に「非常に失望している」と述べ、ロシア・ウクライナ戦争の死者を減らす何らかの措置を取る計画だとした。「スコット・ジェニングス・ラジオショー」での発言。
「プーチン大統領には非常に失望している。われわれは人々が生きることができるよう何かするつもりだ」と語った。詳細には踏み込まなかった。
中国とロシアによる対米国枢軸形成について「全く懸念していない」とも述べた。「われわれは断然、世界最強の軍隊を持っている。彼らがわれわれに対して軍事力を使うことは絶対にない。信じてほしい」とした。
中国を訪問中のプーチン大統領は2日、習近平国家主席と北京で会談した。 同様に中国入りした北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記を含め、習氏は一部の西側アナリストによって「動乱の枢軸」と呼ばれるグループにおける外交的影響力を誇示するとみられる。
中国は3日、北京中心部の天安門広場で抗日戦争勝利80年記念式典を行った。
トランプ氏はトゥルース・ソーシャルに「習主席と素晴らしい中国国民にとってすてきで永続的な祝賀の日となることを願う。米国に対して陰謀を企てる中、プーチン氏と(北朝鮮の)金正恩氏に心からの敬意を伝えてほしい」と書き込んだ。
トランプ米大統領は2日、自身の健康状態が悪化しているというソーシャルメディア上のうわさを「フェイク(偽)」と一蹴し、健康不安説を否定した。
トランプ氏は記者団に対し、レイバーデーの連休は自身のゴルフ場を訪れ、メディアのインタビューに応じるなど、精力的に行動していたと強調した。
トランプ氏は1月、米史上最高齢で大統領に就任。現在は79歳。
トランプ氏の健康状態に関する憶測は週末にソーシャルメディアのXで飛び交い、トランプ氏が先週後半に公の場に姿を見せなかったことや、米紙USAトゥデイが8月28日に掲載したバンス副大統領のインタビュー記事に関する投稿があった。
バンス氏はインタビューで、最高司令官の役割を引き受ける準備はできているかと質問され、トランプ氏の健康状態は「良好」と確信していると答えたが、大統領に何かあった場合には自身が引き受ける用意もあると示唆した。
トランプ氏が2日以前に記者団と長時間やりとりしたのは、1週間前の閣議が最後だった。トランプ氏は8月26日、3時間以上に及ぶ閣議を開催。大統領としてカメラの前で最も長い時間発言した。
レーバーデーの連休には、記者団は毎日ホワイトハウスを出てゴルフ場を訪れるトランプ氏の姿を目撃した。
トランプ氏は4月11日、ワシントン郊外のウォルター・リード軍医療センターで詳細な健康診断を受けた。ホワイトハウスが発表した公式結果によると、健康上の大きな問題はなかった。
ホワイトハウスのレビット報道官は7月、トランプ大統領が足首のむくみと右手のあざのために医師の診察を受けたと明らかにし、足のむくみは「一般的な」慢性静脈不全によるもので、手のあざは頻繁に握手をしたためにできたという主治医の所見を発表した。
それ以来、ホワイトハウスは足の問題がどのように治療されているのか詳しく説明することなく、トランプ氏の健康状態に関する懸念を重視しない姿勢を示している。
3日の東京市場では、債券安、円安、株安のトリプル安の商状となった。現時点では本格的なリスクオフとまではみられていないが、国内政局や金融政策への思惑も意識されており、リスク回避ムードが強まらないか警戒感はくすぶっている。
この日の市場では、新発30年債利回りが3.285%と過去最高水準に大幅上昇(価格は下落)した。為替は148円後半へと円安に振れ、日経平均は一時400円超安となった。
端緒の一つは、自民党の森山裕幹事長ら党四役が辞意を表明したことだ。石破茂首相は続投の意向を改めて示したが、債券市場では政権基盤の揺らぎが警戒された。
仮に退陣となる場合、誰が次の総裁に選ばれるかは現時点で不透明なため、財政拡張的な候補者への思惑もくすぶらざるを得ない。「そうした不透明感自体が、投資家の買い手控えにもつながっている」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは指摘する。
為替市場では、円売りが進んでいる。超長期金利の上昇を受け「悪い金利上昇の思惑もあるだろう」と、あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは話す。
前日夕には、ドル/円の上昇が加速する場面があった。欧州がトリプル安となる中でドル買いが同時並行的に進んでいた局面でもあったが、森山氏の辞意表明が「上昇に弾みをつけた」と諸我氏は指摘する。
円安となれば輸出株を中心に株価には支援材料となるのがセオリーだが、3日の東京市場では、円安の中でも自動車株や機械株は軟調だった。「政局になる可能性が高まり、政治の不透明感から積極的には株を買いにくくなってきた」と三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは話す。
<株式と債券「異なる関心事」>
現時点で債券安から円安、株安といった連鎖が強まっているとまではみられていない。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「市場の動きだけをみるとトリプル安だが、その言葉が与える印象ほど相場はネガティブでもない」とみている。
株式と債券とでは、相場の関心事が異なるとの見方が背景にある。足元で日本株は米株の動向に左右されやすい環境下にあり「米ハイテク株が大崩れしなければ、本格的な株安は生じそうにない」(井出氏)という。日本株は、自社株買いなど需給面からの下支えも意識されている。
仮に財政拡張なら景気が刺激されるとの思惑から「むしろ株高材料になり得る」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンド・マネージャー)との見方もある。
もっとも、金利上昇は株価にネガティブと受け止められやすい。欧米でも金利上昇が進む中、政局不安で国内の金利上昇が加速すれば株価にも影響を与えかねない。「株式市場も金利動向に目配りが必要な局面になってきた」と、しんきんAMの藤原氏は話している。
利回りが過去最高の水準にある30年債は入札をあすに控えており、市場の関心が寄せられている。
リーブス英財務相は3日、11月26日に年次予算を発表することを明らかにした。インフレと借り入れコストの抑制を図るため、公共支出の「厳しい管理」を重視すると表明した。
英国の20年物、30年物国債利回りは、財政に対する懸念を背景に1998年以来の高水準に上昇している。
リーブス氏はビデオメッセージで「英国経済は壊れていない。だが、働く人々にとって十分に機能していないことは分かっている」とした上で「譲れない財政ルールを通じて日々の支出を厳しく管理し、インフレと借入コストを抑制する必要がある」と述べた。
政府は経済成長を促す措置も推進したい考えだ。
イングランド銀行(英中銀)のベイリー総裁は3日、米連邦準備理事会(FRB)の独立性に対するいかなる脅威も「非常に深刻な」問題という認識を示した。
ベイリー総裁は英議会財務委員会の公聴会で「FRBは独立性と意思決定において非常に高い評価を築いてきた」と指摘。中銀の独立性を政府の決定とトレードオフすることは「極めて危険な道」とし、「非常に深刻な状況で、懸念している」と述べた。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の調査によると、米ホリデーシーズンの個人支出はパンデミック以降で最大の落ち込みとなる見通し。
経済の不確実性を背景に、特に「Z世代」が支出を控える見込みという。
調査は6─7月に米国の消費者約4000人を対象に実施した。
消費者の今年のホリデーシーズンの平均支出予定額は1人当たり1552ドルで、昨年から5.3%の減少となった。2020年以降で最大の減少となる。20年の平均支出額は7.6%減の1187ドルだった。
消費者の約84%が、今後6カ月間に支出を抑制すると回答。特に衣料品、高額商品、外食への支出を抑制する予定。半数以上は、物価上昇がホリデーシーズンの決定に影響を及ぼす可能性が高いと答えた。
米国ではトランプ政権の通商政策に伴う物価・経済への悪影響を背景に消費者が裁量的な支出に慎重になっている。
PwCは「消費者はホリデー支出に慎重になっており、何が最も重要か、何を削減するか、何にお金をかける価値があるかを考えている」と指摘した。
調査によると、ギフトへの支出が最も大きく減り、平均支出額は昨年の814ドルから11%減の721ドルとなる見通し。Z世代の予算は23%縮小する見込みで、24年の37%増から減少に転じる。
PwCのパートナー、ケリー・ペダーセン氏は「Z世代の来店客数は増加している。彼らは店舗での体験を求めているが、必ずしも店舗内で購入しているわけではない」と述べた。
PwCは、関税を巡る不確実性が7月以降緩和していることに触れ、実際の購買行動は今後も変化する可能性があると指摘した。
米国債は、利子収入と安全性を求める人々にとって依然として定番の投資先だ。それでも金融の専門家たちは、債券市場の他の分野で投資家が検討すべき投資対象があると指摘する。それらはより高い利回りを提供しているのに、比較的安全だという。
米資産運用大手バンガードの金利部門グローバル責任者を務めるロジャー・ハラム氏は「足元の利回り水準は絶対水準としても、過去20年間の大半に債券が提供してきた利回りと比較しても、魅力的だ」と述べた。債券利回りは数年前よりはるかに高く、より魅力的だという。
例えば、10年物米国債利回りは現在4.329%で、4年前の1.259%より高い。
最小限のリスクでより多くの収益を得られる分野として、専門家は以下の三つを挙げる。
1. 地方債
地方債は今年、債券市場全体に後れを取っている。S&P地方債指数は8月19日までほぼ横ばいとなっており、ブルームバーグ米国総合債券指数のリターン(4.5%)を下回っている。
米調査会社ファクトセットによると、「トリプルA」格付けの10年物地方債の利回りは約3.2%だ。しかし地方債の利払いに関しては、連邦税のほか、場合によっては州税や地方税も免除されることを覚えておきたい。
連邦税の限界税率が37%の場合を想定すると、州税や地方税の免除を除いても、3.2%の利回りは課税相当利回りベースで5%前後となり、10年物国債の利回り4.329%を上回る。
これに加え、地方債全体の信用度が高い状態が続いていると、米資産運用会社ヌビーンの地方債部門責任者を務めるダン・クローズ氏は指摘する。「(地方自治体の)三大収入源である資産税・所得税・売上税の収入が過去最高を記録している自治体が多い」
2. エージェンシーMBS
連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)や連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)といった準政府機関が発行する「エージェンシーMBS(住宅ローン担保証券)」は事実上、連邦政府に保証されている。大半の投資家は政府が両機関を破綻させることはないと考えているため、国債とほぼ同じくらい安全だ。
ブルームバークのデータによれば、8月17日時点で平均残存期間が約8年のエージェンシーMBSの利回りは5%をわずかに下回る水準だった。これは、10年物米国債や同等の投資適格社債の利回りを上回っている。
LPLファイナンシャルのチーフ債券ストラテジスト、ローレンス・ギラム氏は「社債と同程度の利回りが得られるが、金利リスクは低い」と述べている。
この市場に関して長期的に考慮すべき点は、ファニーメイとフレディマックが最終的に民営化される可能性があることだ。連邦政府の保証がなくなった場合には、両機関は投資家を引き付けるためにMBSの利回りを引き上げざるを得なくなる。しかし当面は、エージェンシーMBSは比較的安全な資金逃避先のように見える。
3. 優先株
優先株はエージェンシーMBSのような政府保証付き債券ほど安全ではないが、企業の資本構成上、普通株より上位にある。このため発行企業が破綻した場合には、優先株主は普通株主に優先して分配を受けられる。
ただ経営破綻のずっと前の段階でも、優先株には多くの利点がある。
米資産運用会社コーヘン&スティアーズでシニア・ポートフォリオマネジャーと債券・優先株部門責任者を兼務するエレーン・ザハリスニカス氏は「優先株は税制上有利な収益を提供し、その発行体は総じて信用度の高い企業だ」と指摘する。
発行体の大半は銀行や保険会社で、基盤が安定した業界だ。投資適格優先株の利回りは6~6.5%程度となっている。
さらに同氏によれば、優先株から得た収益は多くの場合「適格配当所得」として扱われる。つまり、税率は投資家の限界税率に応じて最高20%となり、通常の収益よりも優遇される。
優先株には二つの区分がある。一つは個人投資家向けに証券取引所で売買される額面25ドルの株。もう一つは機関投資家向けに店頭市場で取引される額面1000ドルの株だ。個人投資家は投資信託を通じて優先株を買うこともできる。
額面25ドルの優先株の配当利回りは、全期間または一定期間にわたり固定されるのがより一般的だ。一方、店頭市場では利回りが変動する銘柄が多数ある。
ヌビーンによると、額面25ドルの優先株市場の動きを示すICE BofA指数の年初来上昇率は8月15日時点で2.5%、利回りは6.25%だった。上昇率は額面1000ドルの優先株市場の動きを示す指数の5.3%(利回りは6.02%)を下回った。
ノルウェーの2兆ドルの政府系ファンドは、ニューヨーク市のオフィスビルに5億ドル以上を投資する予定だ。これは同社の世界有数の不動産への最新の大規模投資となる。
このファンドは、同種のものとしては世界最大規模であり、ノルウェー国民を代表してノルウェー銀行投資運用(NBIM)によって運用されている。
NBIMは火曜日、1177 Avenue of the Americas(別名Sixth Avenue)にあるオフィス物件の株式95%を5億4,260万ドルで取得すると発表した。
この買収は、不動産投資会社ビーコン・キャピタル・パートナーズとの合弁事業となります。ビーコンの子会社が建物の株式の5%を取得し、ビーコンが100万平方フィート(約90万平方メートル)の資産運用を統括します。
この取引は不動産価値を5億7110万ドルと評価しており、今年の第3四半期に完了すると予想されている。
NBIMとビーコンは、現在合弁事業としてオフィスビルを所有しているカリフォルニア州教職員退職年金制度とシルバースタイン・プロパティーズからこのオフィスビルを購入する予定だ。
ノルウェーの石油・ガス産業の余剰収益を投資するために1990年代に設立された同国の政府系ファンドの価値は19兆8000億ノルウェークローネ(1兆9800億ドル)以上である。
このファンドの主な投資対象は世界株式であり、アップル株も含まれている。
半導体メーカーTSMCの投資の1.9%は不動産だ。
同社のポートフォリオには既にニューヨークのビルが12棟以上含まれており、マンハッタンの一等地にも投資している。タイムズスクエア・タワーの株式45%を保有するほか、ニューヨーク市マディソン街、ブロードウェイ、そしてアベニュー・オブ・ジ・アメリカスに隣接する物件にも投資している。
NBIMの不動産保有は米国全土に広がっており、ボストン、サンフランシスコ、ラスベガスなどの主要都市の不動産にも投資しているが、その不動産ポートフォリオは世界に焦点を当てている。
6月30日現在、NBIMの不動産保有は15カ国に及び、米国では160億ドル以上の価値を持つ486件の不動産投資を行っている。
今年初め、同ファンドはロンドンの高級住宅街コベントガーデン地区の不動産ポートフォリオの25%を購入するために7億4000万ドルを投資すると発表された。
NBIMはまた、今年初め、スペインとフランスで学生向け・共同生活用物件を所有・運営するプラットフォームを保有するAXAライフスタイル・ハウジングの株式40%を2億4000万ユーロ(2億7900万ドル)で取得することに合意した。
今年上半期、同ファンドは非上場不動産投資で4%の収益を上げた。
世界中で長期借入コストが再び圧力にさらされているが、アナリストらは、その一因として多くの主要経済国における財政政策と金融政策の行方に対する投資家の幅広い不安を挙げている。
債券市場は今年、関税から「大きくて美しい税法案」に関連する米国の財政赤字への懸念に至るまで、ホワイトハウスの政策決定に起因する大幅な上昇と下落を繰り返すなど、不安定な動きを見せている。
今週の動きはより慎重なものとなった。しかし、いくつかの利回りが注目すべき節目を迎え、国債の機会とリスクに関する議論が再燃した。
米国30年国債
最近の判決を受けて関税収入の将来に疑問が投げかけられる中、水曜日の朝、利回りは7月以来初めて5%を超えた。日本の30年国債利回りは
水曜日には過去最高値となり、今年は高インフレ、実質金利の低下、政治的不確実性により100ベーシスポイント上昇した。
英国の30年債利回り
火曜日に、数ヶ月以内に発表される予定の予算発表を前に、1998年以来の高値に達し、水曜日早朝にはさらに4ベーシスポイント上昇した。フランスの30年国債のプレミアムは
政府が崩壊の危機に瀕し、国の財政赤字削減計画が危険にさらされる中、国債は2008年以来の水準を突破した。
今年初めの安全資産への逃避の恩恵を受けたドイツ国債も暴落に加わり、30年国債利回りは14年ぶりの高値を記録した。
レート圧力
ピール・ハントの主任エコノミスト、カラム・ピカリング氏は、債券市場に危機はないものの、政府が支払っている高価格と高金利が先進国全体の経済問題となっていると述べた。
「(高金利は)政策選択肢を制約し、民間投資を締め出し、半年ごとに金融不安に直面するのではないかと不安にさせる。これは民間部門にとって本当に、本当に悪い」とピカリング氏は水曜日、CNBCの「スクワーク・ボックス・ヨーロッパ」で語った。
「私は今、緊縮財政は景気刺激策になると考えている。なぜなら、緊縮財政は市場に自信を与え、債券利回りを低下させ、民間部門は安堵のため息をつき、バランスシートの強さの一部を分配し始めるからだ。」
キャピタル・エコノミクスの副主席市場エコノミスト、ジョナス・ゴルターマン氏は、長期国債利回りの世界的な上昇には、財政懸念、金融政策、需給動向などの期間プレミアム効果という3つの要因が重なり合っているようだと述べた。
同氏は火曜日のメモで、英国とフランスの両国は「難しい予算計算」に直面しており、「公的財政を持続可能な状態に維持し、債券市場を味方につけるためには、増税と支出削減の組み合わせが必要だ」と述べた。
一方、市場の動向は、中央銀行の「中期的にインフレを抑制できる能力と意欲」に対する信頼が揺らいでいることを示唆しているとゴルターマン氏は続けた。ただし、中央銀行の独立性に対する懸念が深刻化している米国債の利回りは比較的堅調であると指摘した。
最後に、債券発行の増加と、金利上昇とインフレのリスク、そしてリスクオフの感情と債券利回り低下の間の典型的なつながりの弱まりにより、長期債の伝統的な買い手からの需要の低下が相まって、利回りを押し下げる「特効薬」が登場する可能性は低くなっているとゴルターマン氏は述べた。
最後に、債券発行が増加している一方で、長期債の伝統的な買い手からの需要は減少しているとゴルターマン氏は続けた。リスクオフのセンチメントと債券利回りの低下を結びつける典型的な関係は今年弱まっており、トレーダーは金利上昇とインフレのリスクを慎重に検討している、と彼は述べた。
INGのストラテジストらは、ドナルド・トランプ大統領が他国からの輸入品に課している関税の大半は違法とする控訴裁判所の判決に関連した米国の関税をめぐる不確実性が今週の国債売りの引き金となったとの見方を軽視した。
「不確実性はない。関税は今後も残るだろう」と彼らは火曜日のメモで述べ、トランプ政権は手段を選ばず「関税によるマクロ経済政策に全力を注いでいる」と述べた。
「財政懸念と中央銀行の独立性に関する懸念が入り混じる中、利回り曲線の長期部分は引き続き上昇圧力にさらされている」と彼らは述べ、特に「リサ・クック事件」(トランプ大統領による連邦準備制度理事会(FRB)理事解任の継続試みを指す)を受けてその傾向が強まっているとした。
「特定の日に誰がリードするかは、供給活動によって左右されるようだ」と彼らは付け加えた。
大企業の倒産申請が過去15年間で最速のペースで進んでいるという事実は、経済にとって良い兆候でしょうか、それとも悪い兆候でしょうか?皆さんは既に答えをご存知なので、この質問に私が答える必要すらありません。そして、後ほどご覧いただくように、他の種類の倒産も急増しています。我が国はまさに債務に溺れており、今やバブルが崩壊しつつあります。これから起こることへの備えをしっかりしていただければ幸いです。これから数ヶ月は厳しい時期となるでしょうから。
ニューズウィーク誌によると 、今年の最初の7ヶ月間で446社の大企業が破産を申請しました。これは2010年以来の最高記録です。
最近の報告によると、米国では7月に企業破産申請件数が急増し、コロナ後のピークに達し、2025年には昨年の合計を上回る見込みとなっている。
信用格付け会社の調査・データ部門であるS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによると、大手上場企業および非上場企業による破産申請件数は先月、6月の66件から71件に増加し、2020年7月以来の月間最多を記録した。 一方、2025年に入ってからこれまでに446件の破産申請があり、この7カ月間では2010年以来の最多となっている。
2010 年、私たちは世界的な金融危機の終焉を経験していました。
ですから、当時、多くの大企業が倒産したのには、十分な理由があったのです。
私たちが今目撃している出来事には、どんな理由があるのでしょうか?
もちろん、 驚くほどの数の倒産をしているのは大企業だけではありません…
2025年6月30日までの12か月間で、個人および企業の破産申請件数は 前年比11.5%増加した。
米裁判所行政局が発表した統計によると、 2025年6月までの1年間の破産申請件数は54万2,529件で、前年の48万6,613件から増加した。
2025年6月30日までの1年間で、企業の破産申請件数は22,060件から23,043件へと4.5%増加した。非企業の破産申請件数は前年の464,553件から11.8%増加して519,486件となった。
おお。
破産件数がそこまでひどいとは知りませんでした。
わずか1年で破産申請が11.5%増加したことは、実に憂慮すべき兆候だ。
そして、米国における農場の破産件数も 急増していることが判明しました…
アーカンソー大学の新しいデータによると、高金利と労働力不足に見舞われ、破産を申請するアメリカの農家が増加している。
研究者らは、2024年4月から今年3月の間に250以上の農場が連邦破産法第12章の適用を申請し、農業部門全体で財政難が急増していることを明らかにした。
「第1四半期の全国的な申請件数ではすでに昨年を上回っています」と、同大学の経済学者ライアン・ロイ氏は述べた。「全国レベルで見ると、2018年と2019年に見られたような財政的圧力が再び現れ始めていることを明確に示しています。」
世の中には経済に実際に何が起きているのかを否定する人が大勢います。
私たちは何年も前例のないほどの借金漬けの生活を送ってきましたが、今、その結果を経験し始めています。
何百万人ものアメリカ人が手に負えない状況に陥っており、簡単に抜け出す方法はありません。
現時点では、借金を抱えているアメリカ人の約3分の2が 「借金を最小限に抑えたり、他人に隠したりしている」と認めています…
Self Financialが1,078人の成人を対象に行った調査は、国民が借金だけでなく、それに伴う羞恥心にも溺れていることを浮き彫りにしました。借金を抱えている人の66.3%が、借金を軽視したり、他人に隠したりしていると認めました。内訳は、28.1%が自分の状況について完全に嘘をつき、20.8%が実際の状況を軽視し、17.4%が借金について全く触れないことです。
私たちは経済的な苦境を他人から隠したいかもしれませんが、自分自身からそれを隠す方法はありません。
アメリカ人は経済的な問題にあまりにも執着するようになり、常にそれについて考えるようになりました …
支払わなければならない請求書、関税のニュース、インフレの懸念の間で、お金はアメリカ人の心の中では無料で暮らしている。
金融サービス会社Empowerの新しい調査によると、人々は平均して1日4時間近くもそれについて考えているという。
言うまでもなく、それは健康的ではありません。
財政について絶えず心配していると、自分を苦しめることになります。
しかし、これが昨今の多くの人々の日常生活なのです。最近の調査によると、アメリカ人の53%が 「かつてないほど深刻な」経済的なストレスを感じていることが明らかになりました…
調査対象となった2,206人の成人のうち、54%と半数強が昨年よりも経済的なことを考えていると回答しました。実際、6月の調査では、アメリカ人の53%が「これまで以上に経済的ストレスを感じている」と回答しており、これにはジェネレーションX世代の62%、ベビーブーマー世代の41%が含まれています。
アメリカ人が経済的ストレスを感じている最大の原因の一つは、平均して 収入の42%を住宅費に費やしていることです…
アメリカ人の半数以上が住宅費に払いすぎていると述べており、平均的な人は収入の42%を住宅費に費やしている。
一方、私たちが日常的にお金を使う他のほとんどすべてのものは、ますます高価になってきています。
たとえば、 牛肉の価格は 、次々と新たな記録を更新し続けています…
食料品の価格が上昇しており、特に多くの家庭の主食である牛肉は記録的な高値を記録している。
消費者にとって通常は安価な選択肢である牛ひき肉の価格が、過去最高値を記録しました。2020年7月時点では、1ポンドあたり6.25ドルと、1年前の5.49ドル、5年前の4.26ドルから上昇しています。
牛肉ステーキの平均価格は、7月時点で1ポンドあたり11.87ドルに達しました。これは、2024年7月の10.85ドル、2020年7月の8.69ドルから上昇しています。
そしてコーヒーの価格は 過去1年間で30%以上上昇しました…
コーヒーの小売価格が前年比で30%以上上昇したのは驚くべきことだ。飲料大手2社の合併により、高騰するコストをより適切に管理できる企業が誕生する見込みだが、消費者が当分の間、安堵感を得られる可能性は低い。
もし私たちが頭を砂に突っ込んで「すべてうまくいく」と繰り返したら、状況は良くなるでしょうか?
もちろん違います。
この非常に厳しい経済環境を切り抜けるためには、何が起きているのかを認識し、それに応じて計画を調整する必要があります。
まず、もし今良い仕事に就いているのであれば、絶対にやらなければならない場合を除いて、それを辞めないでください。
全国各地で大量解雇が行われていますが、またもやその一例が ニュースになりました…
クローガーは従業員を解雇しない意向を以前に発表していたが、約1,000人の社員が職を失うことになる。
この人員削減は、食料品店が2026年末までに業績不振の店舗60店以上を閉鎖することを決定したことを受けて行われた。
クローガーは、アルバートソンズとの250億ドルの合併が失敗に終わった後、コスト削減の手段として店舗閉鎖を開始した。
悲しいことに、今後数か月でさらに多くのアメリカ人が職を失うことになると思います。
そして、最近では国民のほとんどが給料日前には生活費が尽きてしまうため、職を失った人はすべてを失うリスクにさらされています。
いつまでも借金を積み重ねていくことは不可能でした。
我々の物語は今や「バブルが崩壊しつつある」章に到達しており、それは決して楽しいものではないだろう。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
●その他
備忘録(2025/9/2)
●企業
ウォーレン・バフェット氏は火曜日、クラフト・ハインツの株価に失望しているとCNBCに語った。
この分裂は、彼が10年前に主導した大規模な合併の大部分を解消するものである。
バークシャー・ハサウェイはクラフト・ハインツの株式27.5%を保有する筆頭株主である。同社は2015年の合併で食品コングロマリットが誕生して以来、同社の株式に手を付けていない。
バフェット氏の発言を受けて同社の株価は5%以上下落した。
バフェット氏は火曜日、CNBCのベッキー・クイック氏に対し、合併は素晴らしいアイデアではなかったが、会社を解体しても問題が解決するとは思っていないと語った。
バフェット氏によると、年末にバフェット氏からバークシャー・ハサウェイの経営を引き継ぐグレッグ・アベル氏は、クラフト・ハインツに対して失望感を表明したという。
クラフト・ハインツは、この取引に関するバフェット氏の立場についてのコメント要請に直ちには応じなかった。
火曜日に発表された分割により、クラフト・ハインツは再び2つの会社に分割される。1つはソース、スプレッド、常温保存可能な食品に特化し、もう1つはオスカー・マイヤー、クラフト・シングル、ランチャブルズなど北米の定番商品を扱う会社である。
バークシャー・ハサウェイは2015年、プライベートエクイティファームの3Gキャピタルと提携し、クラフトフーズとHJハインツを合併させた。3Gキャピタルは、クラフト・ハインツの経営不振を受け、長年にわたり定期的に保有株を減らしてきたが、2023年にひっそりと同社への投資から撤退した。
オスカー・マイヤーやベルビータといった象徴的なブランドを擁するクラフト・ハインツですが、合併からわずか数年で米国での売上は減少しました。健康志向の強い消費者は加工食品の購入を減らし、スーパーマーケットの周辺で買い物をするようになりました。一部のアナリストは、クラフト・ハインツが最も必要としている時期にブランドへの投資を怠ったコスト削減策が、同社の低迷の原因だと指摘しています。
クラフト・ハインツは事業立て直しを目指し、プランターズナッツやチーズ部門の一部など、ポートフォリオの一部を売却しました。また、ランチャブルズやカプリサンといったブランドへの投資も進めています。5月、クラフト・ハインツの幹部は、戦略変更と潜在的な買収を検討していると述べました。
2015年に取引が完了して以来、クラフト・ハインツの株価は金曜日の終値時点で70%近く下落し、同社の時価総額は330億ドルにまで下落した。
他の投資家がクラフト・ハインツへの信頼を失っているにもかかわらず、バフェット氏は同社を支持し続けている。ただし、2019年の悲惨な四半期の後、バークシャー・ハインツはクラフトに高すぎる金額を支払ったとCNBCに語った。
クラフト・ハインツへの投資家としてのバークシャーの将来について、バフェット氏は火曜日にCNBCに対し、バークシャーは同社の利益のためにあらゆる手段を講じると述べた。バフェット氏によると、バークシャーが株式売却を持ちかけられた場合、他の株主が同様の提案を受けない限り、バークシャーは一括買収に応じることはないという。
●マクロ
英国の長期債利回りは2日、1998年以来の高水準に上昇した。スターマー首相率いる政府に対して、市場の信認を取り戻すための対策を講じるよう一層の圧力がかかっている。
英30年債の利回りは一時8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、5.72%。10年債利回りは6bp上昇して4.81%と、1月以来の高水準を付けた。
ポンドは対ドルで一時1.5%安の1.3340ドルとなり、主要通貨のうち下落率が最も大きい。英国株の代表的な指数であるFTSE100も下げている。
2日は長期債を中心に国債が世界的に売られているが、英国の場合は供給面の圧迫もある。政府はこの日、シンジケート団を通じて2035年償還債を発行。RBCキャピタル・マーケッツのストラテジスト、メガム・ムヒッチ氏によると、発行価格は市場が見込んだよりもやや低かったため旺盛な需要が集まり、10年債としては過去最高の140億ポンド(約2兆8000億円)を調達した。
英国の10年債利回りは、主要7カ国(G7)の中で最も高い。借り入れコストの上昇は、秋に予定されている予算案発表を前にリーブス財務相が直面する財政問題を悪化させる恐れがある。
ブルームバーグ・エコノミクスの試算によると、財務相は歳出削減または増税で350億ポンドの財政不足を埋める必要がある。与党議員の反対で政府は社会福祉改革の撤回を迫られた前例があるだけに、財政不足を埋める措置は政治的に困難を極める可能性がある。
アリアンツのルドビック・スブラン最高投資責任者(CIO)は「英国の状況は現時点で極めて危うい。『債券自警団』が戻ってきたからだ」と指摘。
「インフレ再来が英国債に織り込まれるまでにこれほど長い時間がかかったことの方が印象的だ。財政面のフォワードガイダンスが必要だろう」と続けた。
英国の超長期債の売りは、確定給付型年金ファンドなど伝統的な買い手の需要後退や、構造的なインフレ高止まりに対する懸念が背景にある。英債務管理庁(DMO)は既に超長期債の発行を過去最低に減らすと発表したが、一段の減少を求める声もある。
エコノミストは、英国が自ら課した財政規律を守るには、近く増税が必要になると予測している。
英30年債利回りは年内に6%を超えると、フランクリン・テンプルトンは予想。英国の厳しい財政見通しが同国債を圧迫し続けるだろうと指摘した。
同社の欧州債券責任者デービッド・ザーン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、スターマー首相が首相官邸内の人事変更を1日行ったことに触れ、「スターマー氏は官邸内に新たなスタッフを招き入れたが、財政を実際担当しているのは誰なのかという疑問を抱かせる」と述べた。
その上で、「政府はこれからも何とかやり過ごそうとし、問題に真正面から取り組むことはしないと思う。しかし、利回りが高くなり過ぎれば、最終的に歳出削減を含む、はるかにもっと抜本的な対応を強いられるだろう」と語った。
英国のパレス首相報道官は2日、「特定の市場の動き」についてコメントを控えるとしつつ、「しっかりとした財政規則を守るというわれわれの固い意思は変わらない」と強調した。
ポンドの下落
2日は英国債の取引開始時から、ポンドも売り圧力にさらされた。オプション市場の持ち高状況は、ポンドの1カ月先の対ドル相場が、7月以降で最も弱気に傾いている。
クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「先進国全体の財政見通しに広範な懸念がある」との見方を示し、「ポンドは今一度、投資家の不安のはけ口と見なされている」と語った。
満期までの期間が10年を超える超長期国債にとって、9月は厳しい月となる公算が大きいと過去のデータが示している。
ブルームバーグがまとめたデータによると、過去10年間で世界各国の超長期国債は、9月に中央値で2%の値下がりを記録しており、これは1年間で最も悪い月次パフォーマンスとなっている。
各国政府が歳出に向けて借り入れを拡大するとの懸念から、超長期債がすでに期間が短めの国債に後れを取っており、過去のこうした傾向は債券投資家にとって不安材料となる。
さらに日本の根強いインフレやフランスの政局不安に加え、トランプ米大統領の利下げ圧力により米国内の物価圧力が強まるとの懸念などを背景に状況が悪化する可能性がある。
ファイブスター投信投資顧問の下村英生シニアポートフォリオマネジャーは、9月は金融政策が急転換することが多く、それを見越したポジション調整が顕在化しやすいと述べた。
2日には超長期債が再び売り圧力にさらされた。米国の30年債利回りが5%に迫り、英国では1998年以来の高水準に達した。フランスの30年債利回りも6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、4.51%となった。
ドイツ銀行のグローバルマクロ調査・テーマ戦略責任者ジム・リード氏はリポートで「市場が秩序を保っている状況でも、ゆっくりと進行する悪循環が見られる。債務への懸念が利回りを押し上げ、それが財政状況を悪化させ、さらに利回りを押し上げる」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)のシュナーベル理事はロイター通信とのインタビューで、世界的に金利が予想より早く上昇し始める可能性があるとの見方を示した。各国の政府支出の高水準を主な要因の一つとして挙げた。
注目材料は5日に発表される8月の米雇用統計だ。米金融当局による9月の利下げの可能性を見極める上で、短期的なリスク要因となる。
加えて、ユーロ圏のインフレ指標も市場の注目を集めている。来週の欧州中央銀行(ECB)政策委員会では政策金利の据え置きが見込まれている。
一方、フランスでは政局が緊迫しており、債券利回りが上昇。バイル仏首相は8日に予定されている内閣の信任投票に向け、支持固めを急いでいる。
超長期債が9月に季節的に下落しやすい要因の一つとして、ペッパーストーン・グループの調査責任者クリス・ウェストン氏は、国債発行の増加を指摘する。
ジェフリーズ・インターナショナルのチーフ欧州ストラテジスト、モヒト・クマール氏もこの見方に同意し、9月の季節的な傾向は「主に発行に関係している」と分析。「7、8月は発行が少なく、11月中旬以降もそれほど多くない」と話した。
みずほインターナショナルのマルチアセットストラテジスト、エブリン・ゴメスリヒティ氏は、想定以上に強い米経済指標や日本銀行がタカ派に転じる可能性などが今月、国債市場にさらなる下押し圧力をかけるとし、「数多くのリスクを乗り越えなければならない」と語った。
2025年は米国の関税に起因する波乱や財政赤字懸念、フランスの政治危機が欧州債市場を既に動揺させたが、さらに約2兆ユーロ(約345兆円)規模の激変に見舞われかねない。
欧州連合(EU)最大のオランダ年金制度の改革が、その震源地だ。不安を背景に長期債利回りは既に上昇し、ヘッジに用いるユーロスワップ市場のボラティリティーにトレーダーは備えている。流動性が低下する年末年始に大規模な資金の移行が見込まれ、動揺が激しくなる恐れがある。
オランダの退職基金はこれまで、将来の年金の支払いを確保するため、長期スワップに大きく依存してきた。ライフサイクル投資への移行に伴い、より若い勤労者が株式などリスク資産に比重を移すことで、長期ヘッジの需要が減る。年齢がより高い層は債券など安全資産を重視すると予想されるが、付随するヘッジ期間は短くなる。
年金改革は高齢化と労働市場の変化に対応する狙いがある。オランダ経済はユーロ圏全体の7%を占めるに過ぎないが、同国の年金制度は市場プレーヤーとして突出し、欧州中央銀行(ECB)のデータによれば、域内年金貯蓄の半分以上を占める。欧州債保有額は約3000億ユーロに達する。
来年1月1日には約36の基金が新制度への移行を予定し、残りは28年1月まで半年ごとに切り替えを行う。最初のヘッジ解消の大波が流動性の低い時期に集中すれば、投資銀行とブローカーが売り手と買い手をさばききれず、システムが機能不全に陥る危険がある。
長期スワップの需給不均衡は既に顕著だ。スワップポジションの解消が必要な年金基金が待機する一方、ヘッジファンドなど利益を狙う市場参加者がこの動きの展開を待って、取引の反対側に立つこともあり得るだろう。
バークレイズの欧州金利リサーチ責任者ローハン・カンナ氏によると、それが利回り曲線の急速なスティープ化を招く可能性もある。1月にどのような動きになるか誰も読めないが、「そうした状況では、市場は流動性が低下するか、非常に神経質になりかねない」という。
ABNアムロの推計では、年金セクターはドイツ債とフランス債、オランダ債へのエクスポージャーが最も大きい。ABNのストラテジストによれば、需要減少に伴い、各国政府がより短期の国債への切り替えを迫られることも考えられる。借り換えの頻度が増し、金利変動にさらされやすくなると懸念される。
オランダ国債のイールドカーブは、10年国債と30年国債との利回り格差が年初来で50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く拡大し、EU加盟国で最もスティープ化した。
オランダ中央銀行は今年に入り、金融安定に対するリスクを警告した。制度の基本的な仕組みが複雑なため、混乱の規模を見極めることは難しい。
最近数週間を見ると、30年物ユーロスワップの将来の変動を反映する指標が上昇し、INGグループのストラテジストは年金制度の移行が影響している可能性が高いと分析する。ユーロの資金調達コストにも波及しつつある。
米ブラックロックやアビバ・インベスターズを含む資産運用会社は利回り曲線のロングエンド(長期ゾーン)に慎重になるよう勧め、より短期の債券を選好。JPモルガン・アセット・マネジメントなどは、今回の問題が欧州の国債に対し、米国債の魅力を高める一因になっていると指摘する。
バンガード・アセット・マネジメントの国際金利責任者アレス・クートニー氏は「未知数と変動要因があまりにも多い。事が起きると皆分かっているが、最終的な結果がどうなるか誰にも分からない。皆精いっぱい備えている」と説明した。
日本銀行の氷見野良三副総裁は2日、日銀の経済・物価見通しが実現していけば、引き続き利上げを行うことが適切との見解を改めて示した。追加利上げ時期を示唆するような発言はなかった。
氷見野氏は北海道釧路市での講演で、経済・物価のメインシナリオが実現していけば「経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適切だ」と語った。経済と物価には上下双方向のリスクが考えられるとし、「予断を持たずにみていきたい」とした。
政策判断で重視する基調的なインフレ率は「賃金と物価の相互参照のメカニズムが働いて2%にかなり近づきつつある」などと説明。米関税政策の影響によって足踏みはあっても、いずれ2%の物価安定目標とおおむね整合的な水準で推移するとの見方を示した。
米関税政策の影響が懸念される中でも日本の経済・物価はしっかりした推移が続いており、市場の年内追加利上げ観測は次第に強まりつつある。氷見野氏は関税政策の影響に対する警戒感を維持しつつ、基調的なインフレ率の上昇基調などを背景に、利上げ路線継続の必要性を改めて示した形だ。
日本経済の先行きに関しては、米関税政策の影響がいずれ顕在化し、海外経済の減速に伴って日本企業の収益も下押しされると指摘。当面は関税政策の影響が「大きくなる可能性の方に、より注意が必要ではないか」と語った。
午後の記者会見では、仮に米関税政策の影響が顕在化しなければ、利上げ方向の要因になるとし、判断する上で最も早く入手できるのはヒアリング情報だろうと述べた。利上げに際しては、経済・物価に上下双方向のリスクがある中で、「先走り過ぎにも、後手にも回らないようにしなければいけない」との見解を示した。
氷見野氏から早期利上げに向けて踏み込んだ発言がなかったことなどを受けて、東京外国為替市場の円相場は下落した。講演前の1ドル=147円30銭付近から、午後には一時148円台まで円売り・ドル買いが進んだ。
日銀は7月の前回会合で政策金利(0.5%程度)を据え置く一方、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比見通しを2025年度中心に上方修正した。植田和男総裁は記者会見で、直前の日米関税合意を大きな前進と評価しつつ、金融政策が後手に回るリスクが高いとは思わないとの認識を示した。
翌日物金利スワップ(OIS)から算出した、12月会合までの0.25ポイントの利上げ確率は足元で6割程度。18、19日に開かれる9月会合については10%未満にとどまっている。
ベッセント米財務長官は先月13日、ブルームバーグのテレビインタビューで、日銀の金融政策運営について、私見としつつ「日銀は後手に回っており、利上げするだろう」と語った。こうした発言も年内利上げ観測の背景にある。
フランス極右政党、国民連合(RN)は1日、バイル首相が率いる内閣への不信任案可決を見越し、総選挙の可能性に備える方針を明らかにした。
バイル氏は8月25日、国民議会(下院)で9月8日に内閣の信任投票を実施すると発表した。2026年予算案に不人気の政策を盛り込む計画を進めるのが目的で、1日から早速野党側との協議に入った。
ただ左派の社会党のフォール党首は8月31日、党として内閣信任に反対することは「確定的」だと発言。信任反対を表明している野党の票数を合計すれば、不信任案が成立する見通しになっている。
こうした中でRNのバルデラ党首は1日、国民議会の解散による総選挙を含めたいかなる事態にも対応する必要があり、実際に対応できると主張し、既に候補者の85%を選定していると付け加えた。
RNの事実上の指導者マリーヌ・ルペン氏は、同氏とバルデラ氏が2日にバイル首相と先方の要請で会談する予定だと明らかにしたが、この会談で何も成果は生まれないだろうとの見方を示した。
バイル内閣の不信任案が成立した場合、マクロン大統領には即座に新たな首相を指名してバイル氏に当面暫定的に政権を委ねるか、解散総選挙を決定することになる。内閣の信任投票実施が発表される前の時点では、マクロン氏は早期の総選挙を否定していた。
マクロン氏が昨年6月に踏み切った解散総選挙は、結果的に自身の基盤を弱めて、国民議会の分断を加速させた政治的失策との評価が大勢。直近の世論調査を踏まえると、現在総選挙を行えば再びどの政党も国民議会の過半数を確保できない見込みだが、RNの勢力は強まる公算が大きい。
2日の欧州債券市場でフランスの30年物国債利回りが約16年ぶりの高水準に急上昇した。
財政への懸念が背景。バイル首相は政権崩壊を回避するため、各政党との協議を開始した。
極右政党、国民連合(RN)は1日、内閣不信任案可決を見越し、総選挙の可能性に備える方針を明らかにした。
仏30年物国債利回りは6.5ベーシスポイント(bp)上昇し4.513%と、2009年6月以来の高水準をつけた。
超長期国債利回りは、ドイツの投資計画やユーロ圏各国の国防支出増加が債務増大につながるとの見方で、売り圧力に見舞われている。
2日の市場では、独30年物連邦債利回りも米国債利回りの上昇に追随し、一時14年ぶりの高水準を付けた。英国の30年物国債利回りも27年ぶりの高水準を記録した。
スペインの30年物利回りは5bp上昇し4.29%。一時23年11月以来の高水準となる4.297%を記録した。
イタリアの30年物利回りは4.661%と、4月以来の高水準に達した。
英国の長期借入コストは火曜日、約30年ぶりの高水準に達した。これは世界的な債券利回りの上昇と、英国債市場を悩ませている特定の懸念の組み合わせを反映している。
30年英国国債の利回り
ギルト債と呼ばれる国債は、ロンドン時間午後1時56分(東部時間午前8時57分)時点で7ベーシスポイント上昇し、5.709%となり、1998年以来の高水準となった。短期国債の利回りも上昇し、2年国債は
10年債利回り
それぞれ4ベーシスポイントと7ベーシスポイント上昇しました。
これは、労働党政権による複数の上級顧問ポストの人事異動を投資家が評価する中で、英ポンドが対米ドルで1.5%下落したのと時を同じくする。これらの動きは、今秋後半に発表される待望の予算案への準備であり、政治的圧力と低迷する経済成長の中で、景気回復を促す試みと解釈されている。
英国債は、保有者の構成(特に外国のヘッジファンド)により、ニュースやリスク許容度に非常に敏感になる傾向がある。今年4月の世界的国債売りの際、30年債利回りが30ベーシスポイントまで急騰したことからもそれが明らかだ。
火曜日の動きはそれほど劇的ではなかったが、30年債が1998年の新たな高値(今年初めにも達成された節目)にゆっくりと戻ったことで、債務の持続可能性をめぐってレイチェル・リーブス財務大臣へのさらなる圧力についての議論が再燃した。
リーブス氏は、英国の対GDP比債務を削減し、歳入で日常的な支出を賄うことを目的とした、自らに課した一連の「財政ルール」の遵守に自身の信頼性を託しており、さらなる増税が広く予想されている。借入コストの着実な上昇が、その状況をさらに複雑化させている。
ナインティワンのマルチアセット・ポートフォリオ・マネージャー、ジェイソン・ボルボラ・シーン氏は電子メールでCNBCに対し、英国は経常収支と財政赤字の両方を抱え、財政状況が悪いと語った。
「リーブス氏の断固たる姿勢と、増税と支出削減を含むより厳しい政治決断は、長期的には景気後退を抑制するだろう。短期的な成長は多少犠牲になる可能性が高いが、最終的にはより強靭な長期的アプローチを示すことになるだろう」とボルボラ・シーン氏は述べた。
世界の情勢
投資家の財政懸念に関連した長期金利の上昇に直面しているのは英国だけではない。米国債利回りは火曜日、関税収入の将来への懸念から急上昇した。
一方、ドイツ、フランス、オランダの30年債利回りは2011年以来の高水準にあるとドイツ銀行のジム・リード氏は火曜日に指摘し、この傾向を「債務懸念の高まりが利回りを押し上げ、債務動向が悪化し、それが再び利回りを押し上げるという、ゆっくりと進行する悪循環」と表現した。
しかし、英国30年債は、フランスや米国など他の経済大国に比べると相対的に高い水準にある。フランスは 予算をめぐる対立で政権崩壊の危機に直面しており、米国は連邦準備制度の独立性についてドナルド・トランプ大統領から圧力を受けている。
過去数年間、世界の大部分は高インフレと経済成長への懸念に悩まされてきたが、英国のインフレとの闘いはここ数ヶ月、ユーロ圏や米国よりもさらに激しくなっている。
これにより、イングランド銀行が今年さらに利下げを行うとの期待は低下し、短期金利に影響を及ぼしている。
信用格付け分析会社KBRAのソブリン担当シニアディレクター、ケン・イーガン氏はCNBCに対し、英国の長期国債はさらに「深刻な」課題に直面していると語った。
「今年の追加防衛予算投入以前から財政状況は逼迫しており、市場は今や債券供給の増加と投資家層のシフトに直面している」とイーガン氏はCNBCに語った。かつて長期国債の「長期的なアンカー」として君臨していた国内年金基金や保険会社の撤退は、財政懸念と供給増加を吸収するために高いプレミアムを要求するヘッジファンドや海外投資家に取って代わられたとイーガン氏は述べた。
同氏は「海外勢の過剰投資は需要が強い時にはプラスに見えるかもしれないが、国債に対する見方が不利に転じれば無秩序な売りにつながるリスクがある」と付け加え、数カ月にわたるネガティブなニュースの流入が「政府の借入額に数十億ドルを追加し、税収全体を帳消しにするほどの額になる」という潜在的なシナリオを示唆した。
イーガン氏はさらに、国債入札自体は「一貫して高いカバー率と満期期間全体にわたる旺盛な需要」を伴い依然として堅調であり、国債管理局が今年発行をより短期の満期にシフトさせたことで、市場の円滑な機能が今後も維持されるはずだと述べた。
アポロ・グローバルによると、民間市場と民間融資の革命は、上場株式から代替投資への投資家の大規模なシフトの舞台を整えている。
株式市場がパッシブ投資とインデックス運用にますます牽引され、少数の巨大テクノロジー株に支配されるようになると、分散投資を求める投資家は急速に拡大するプライベート市場に目を向け始める必要があるだろうとローワン氏はCNBCに語った。
「(投資は)破綻していると思います」と彼は言った。「40年前は、民間投資はリスクが高く、公的投資は安全だという考え方がありました。もしそれが根本的に間違っていたらどうでしょう?」
ローワンとアポロは、投資環境における構造的な変化の最前線に立っており、公的市場と私的市場の境界線が曖昧になり、急成長する民間信用融資事業がアメリカ企業の成長におけるますます大きな割合を占めるようになっている。
現在、少数の巨大プライベートエクイティ会社が銀行や株式市場を押しのけて、何兆ドルもの融資を行い、投資家にとって新たな機会(とリスク)を生み出している。
運用資産総額は現在、合計で2兆6000億ドルを超え、10年前の4倍以上に増加している。アポロ単体でも運用資産は8400億ドルで、2008年の400億ドルから増加しているとローワン氏は述べた。
「これを優れた経営のおかげだと言いたいところですが、それは違います」とローワン氏は述べた。「答えは、プライベートマーケットを再編し、成長させている根本的な要因があるということです。」
これらの要因は、銀行融資を抑制し、民間信用市場が介入して大企業の借り手に長期(多くの場合、よりリスクの高い)融資を提供することを可能にした金融危機後の規制から始まります。
投資クラスとしてのプライベート・クレジットは、まず基金、政府系ファンド、年金基金の間で、そして後にファミリーオフィスや富裕層投資家の間で拡大しました。最大15%以上のリターンにより、数千億ドルもの資金がプライベート・クレジット・ファンドに流入しました。
同時に、株式と債券の60対40のポートフォリオの有効性は時代遅れになっているとローワン氏は述べた。上場投資信託(ETF)やインデックス投資の台頭により、ほとんどの投資家は保有する個別銘柄についてほとんど調査を行わなくなっている。インデックスでさえ、今では少数の巨大テクノロジー銘柄によって動かされている。そして、株式と債券の相関性が高まっている今、分散投資の定義を見直す必要がある。
ローワン氏は、上場企業数が1990年代の8,000社から現在は約4,000社に減少していることは、投資家が実際にはアメリカ経済の投資利益を享受できていないことを意味すると述べた。
「S&P500を保有しているからといって、本当に500を保有していると言えるのだろうか?」と彼は言った。「現在、10銘柄が指数の40%を占めている。米国市場の力強さ、いや、率直に言って、あらゆる市場の力強さを反映した投資をする能力を失ってしまったのだ。」
その代わりに、投資家は債券や株式ポートフォリオのより多くの部分を民間投資に配分し始めるだろう、と彼は述べた。
プレキンによれば、民間信用会社は投資に約4500億ドルの資金を保有している。
そして、今日の民間信用融資には、大規模な上場企業が関与することが多い。メタプラットフォーム
例えば、ブルー・アウル・キャピタルが率いるグループから290億ドルの資金調達を確保したばかりだ。
ルイジアナ州のデータセンターについてはパシフィック・インベストメント・マネジメント社に委託した。
大手銀行ではなく、アポロに融資を依頼する企業が増えています。投資家や企業は、市場の潜在的規模にようやく気づき始めたとローワン氏は言います。
「プライベート・クレジットが直接融資、レバレッジ融資、投資適格未満のものであれば、市場規模は約1.5兆ドルです」と彼は述べた。「プライベート・クレジットが投資適格で、投資適格未満のものであれば、現在では40兆ドルの市場規模になります。現在、私たちが行っている業務の大部分は投資適格であり、これは常に人々を驚かせています。」
プライベートクレジットへの投資リスクはよく知られているものの、ローワン氏はそれがしばしば誤解されていると指摘する。例えば、メタへのローン投資は、インデックスを通じて同社の株式を購入するよりもリスクが高いと考えるべきではない。
「もし民間の債券が安全かつリスクがあり、公的な債券が安全かつリスクがあり、ただ流動性のレベルが違うだけだとしたらどうなるだろうか?」と彼は言った。「それが私たちが今生きている世界だと思う」
オルタナティブ投資が機関投資家からファミリーオフィス、そして最終的には個人投資家へと投資階層を下り始めるにつれ、個人投資家が退職後の貯蓄の一部を流動性の低い資産に投資するのではないかという懸念が高まっています。実際、ハーバード大学、イェール大学、その他の基金は、必要な資金を調達するために、プライベートエクイティ投資やオルタナティブ投資の一部を割引価格で売却するのに苦労しています。
ローワン氏は、プライベート・クレジット市場が成熟するにつれ、新たなファンド、マーケットメーカー、そしてETF商品の台頭によって流動性は高まるだろうと述べた。しかし、より高いリターンを得るには、ある程度の流動性の低さも重要だと付け加えた。
「もし今、アポロと取引していて、100%プライベート投資適格の債券を保有したいなら、30日ごとに資金の100%を引き出すことができます」と彼は述べた。「投資家として、30日間の流動性不足に耐える余裕がないのであれば、プライベート市場に投資すべきではありません。」
トランプ政権は先月、401(k)プランにおけるオルタナティブ投資と暗号資産の活用を拡大する大統領令を発令した。ローワン氏は、このプロセスには時間がかかるものの、オーストラリア、イスラエル、メキシコなど、国の退職年金制度においてより多くの代替投資を認めている国々の経験は、米国の投資家にとって良い兆しとなると述べた。
アクセスの拡大は、最終的には手数料の引き下げ、パフォーマンスの向上、そして依然として不透明だと広く見られている投資分野における透明性の向上にもつながるだろう。
「透明性と市場開放によって、アクセスの改善、価格の低下、そして無能な経営者の淘汰がもたらされなかった市場は世界中に存在しない」と彼は語った。
香港の多国籍企業は、過去10年間で最低の賃貸料率を利用して、オフィスの拡張やアップグレードを行っている。不動産会社や地主は、アジアの金融の中心地である香港の主要オフィス市場が底入れするかもしれないという期待を抱いている。
不動産業者や業界幹部によると、賃料が2019年のピーク時からほぼ半分に下落したことから、プライベートエクイティ・グループのジェネラル・アトランティック、ヘッジファンドのポイント72、法律事務所エイキンなどの企業はここ数カ月、より中心部に位置する新しい施設への移転を計画している。
香港を拠点とする保険会社FWDは水曜日、今年香港で「最大のオフィスリース」を締結したと発表した。スワイヤー・プロパティーズのタイクー・プレイスにある33万平方フィートの10年契約だが、賃貸条件は明らかにしていない。
同市の不動産市場は、パンデミックに伴う厳しい規制や、2020年に始まった北京による政治的反対意見の取り締まりにより外国人駐在員や外国企業が大量に流出し、需要が低迷している。
市場に次々と建設される新しいオフィスビルが、供給過剰を悪化させている。商業不動産会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによると、香港金融街の主要オフィスビルの月額平均賃料は、2019年の1平方フィートあたり166香港ドルから、6月には約90香港ドル(約12米ドル)に下落した。
「賃料が底値圏にあるため、多くのテナントはこの機会を捉えたいと考えています」と、香港の不動産会社コリアーズでテナントサービス責任者を務めるフィオナ・ガン氏は述べた。「(より良い立地の)賃料が現在のオフィスと同水準になっていることを考えると、『なぜ移転してオフィスをグレードアップしないのか?』と考えるでしょう。」
香港のJLLでオフィス賃貸アドバイザリー部門の責任者を務めるサム・ゴーレイ氏は、ヘッジファンド、クオンツファンド、資産運用会社が市場で最も活発に活動していると述べた。
取引に詳しい関係者によると、貿易会社ジェーン・ストリートは6月、 22万3437平方フィートの港湾フロントオフィスを月額400万ドルで賃貸契約し、香港でのプレゼンスを2倍以上に拡大した。
ゼネラル・アトランティックとポイント72は、今年中に市内で最も新しい超高層ビルの一つであるザ・ヘンダーソンに移転する予定だと、賃貸契約に詳しい関係者が明らかにした。エイキン・ガンプも、ザハ・ハディド・アーキテクツが設計した豪華なビルに移転し、「この地域への長期的な投資」を表明した。カナダ・ナショナル銀行は、「この地域におけるビジネス活動の活発化」を理由に、より大規模な施設への移転を決めたと述べている。
不動産取引の動きは、香港株式市場の回復と、コロナ禍後の低迷からの中国からの投資流入が記録的な水準に達した時期と重なっている。今年に入って香港上場を申請した企業は200社を超え、その多くは海外展開のためのオフショア資金調達を求める中国企業グループだ。
アナリストらは、株式市場の活発な動きが中国本土企業による優良オフィスの賃貸を促進すると予想している。中国のインスタグラムのようなソーシャルメディアプラットフォーム「小紅書」は最近、香港に7,000平方フィート(約640平方メートル)のオフィスを開設した。同社は香港での上場を希望していると、フィナンシャル・タイムズ紙は以前報じている。
公式データによれば運用資産総額が4.5兆ドルに達するとされる富裕層・資産運用部門の成長により、金融グループや法律事務所で新たなオフィスの拡張が進むと予想されると担当者らは述べた。
公式データによると、主要オフィスビルの空室率は昨年末に過去最高の17.4%を記録した。クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドのデータによると、6月までの3ヶ月間で新規賃貸可能面積は2019年以来の高水準に達した。
最近の市場動向は、ビルオーナーに希望を与えている。香港セントラル地区で最大級の不動産オーナーである香港ランドは、7月の決算発表で、「主要オフィス賃料の安定化の兆しが見え始めた」と述べた。
スワイヤーは、ここ数カ月で高級オフィス物件への問い合わせが「かなり増加」しているものの、「短期から中期的には」賃料は依然として圧力を受けると予想していると述べた。
CBRE香港のリース部門責任者アダ・フォン氏は、新築ビルの完成に伴い、今年末までに主要オフィスの平均賃料がさらに5~10%下落する可能性があると警告した。
「供給過剰を無視することはできません」と彼女は述べた。「空室圧力により、家賃がさらに下がる余地はまだあるかもしれません。」
ジェーン・ストリート、ジェネラル・アトランティック、ポイント72はコメントを控えた。シャオホンシュウはコメント要請に応じなかった。
スコット・ベセント財務長官は労働者の日にワシントン・エグザミナー紙に対し、トランプ政権は住宅価格高騰の危機に対処するため、今後数ヶ月以内に国家住宅緊急事態を宣言する可能性があると述べた。ベセント長官の発言は、予想される利下げサイクルの直前に行われたものであり、2026年の中間選挙を前に重要な議題の一つとなることが予想される住宅価格高騰の危機への対応に向けた政権の緊急の取り組みを強調するものである。
ベセント氏は月曜日、労働者の日にマクリーン・ファミリー・レストランでワシントン・エグザミナー紙の朝食会に出席した。同紙に対し、トランプ大統領は「手頃な価格」をアメリカ・ファースト党の2026年中間選挙の政策綱領の重要な柱に据える計画だと語った。
「秋には全国的な住宅危機を宣言するかもしれない」とベセント氏はワシントン・エグザミナー紙に語った。
住宅ローン金利の上昇と住宅価格の記録的高騰という有害な組み合わせが、この世代で最悪の住宅購入困難危機を引き起こし、多くの労働者階級の人々が住宅所有から遠ざかっている。
「我々は何ができるかを考えている。州や郡、地方自治体の業務に介入するつもりはない」とベセント氏は述べ、「あらゆることが検討対象になっていると思う」と付け加えた。
財務長官はトランプ大統領が取ることができる具体的な措置については詳しく述べなかったが、政権当局者が地方の建築・ゾーニング規制を標準化し、決済コストを削減する方法を検討していることに言及した。さらに、住宅資材の一部に対する関税免除の可能性も検討すると付け加えた。
「2026年には経済が大きく回復すると思います」とベセント氏は続けた。「このレストランを32年間経営している、とてもとても素敵な若い女性が、『チップ税免除』制度によって多額の税金還付を受けられるんです。ですから、2026年は良い年になるでしょう」
トランプ政権が住宅供給の拡大を目指しているもう一つの方法は、連邦住宅支援プログラムから不法移民を除外することです。さらに、犯罪が蔓延し民主党が支配する都市における法と秩序の回復に向けた取り組みも、住宅供給の活性化につながる可能性があります。
アメリカ・ファーストとは、グローバリストが何十年にもわたってこの国を築いてきた労働者階級を削り取ってきた後、中流階級を再建することです。住宅所有、家族、そして国家を「再び偉大にする」という考え方が、今日、特にインターネット上では大流行しているようです。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T), opens new tabが不動産運用事業を拡大している。グループで不動産運用を手掛ける中核会社の三菱UFJ不動産投資顧問(MUREAM)の内田直克社長はロイターとのインタビューで、1000億円規模の国内不動産に投資するファンドを新たに立ち上げることを明らかにした。「金利ある世界」の到来で高まる投資家の需要を取り込み、運用資産の拡充を強化する。
新設するファンドは、空室や老朽化など課題を抱える不動産を取得し、改修・リーシング・運営改善で収益力と資産価値を高め、賃料の上振れや売却益で、より高いリターンを狙うバリューアッド型。同商品を扱うのは初めてで、内田社長は「金利ある世界で、投資家のリターン目線が高まっている」と説明する。
国内の生命保険会社や銀行、事業法人などの機関投資家から約300億円をエクイティとして調達する計画で、すでにマーケティングを開始、「投資家の感触は良い」という。借入金を含む投資総額は1000億円を見込む。
投資対象は、東京・関西・名古屋を中心とする中規模オフィス、賃貸レジデンス、ホテル。外資系ファンドの参入などで調達競争が激しくなる中、案件ソーシングの要はグループ連携だ。グループの持つ信用力とネットワークを背景に、ディールのソーシングや資金調達力で優位性を持つとし、CRE(企業不動産の戦略活用)を起点に市場外案件の掘り起こしも進める。
MUFGは成長戦略の重点分野の一つにアセットマネジメント事業を位置づけ、23年10月に不動産運用の体制を再編。2024年4月には三菱UFJ信託銀行の不動産私募ファンドに関する取得・運用・管理機能を統合し、新生MUREAMが本格始動した。
MUREAMは25年8月末時点で預かり資産5000億円超。次期中期経営計画の最終年度である30年3月末までに1兆円(インオーガニック含まず)を目標に掲げる。内田社長は「市場での存在感を示す上では達成しておかないといけない水準」と述べた。
27年3月までの現中計は「土台づくり」と位置づけ、1兆円体制に向けて「人材がボトルネックになり得る」との認識から人員の拡大を加速している。本格始動後に既に倍増し、現在約70人の人員を、今後は約90人まで増やすという。
商品ラインナップも拡充しており、バリューアッド型ファンドの投入はその一環。内田社長は現在有していない上場REIT(不動産投資信託)について関心を示し「事業拡大には必要で、買収も検討したい」と語った。
MUFGとしては4月、これとは別の不動産ファンドの立ち上げも発表。今後3年間で1000億円を投じるとしている。
コリアーズの最新レポートによると、マンハッタンのオフィス賃貸面積は8月に7月比20%以上増加し、370万平方フィート(約3億7千万平方メートル)となり、過去10年間の月平均である272万平方フィート(約2億7千万平方メートル)を大きく上回りました。2025年の残りの期間も需要が同ペースで推移すれば、マンハッタンの年間賃貸面積は2019年以来初めて4,000万平方フィート(約4億7千万平方メートル)を超えることになります。
過去25年間、年間平均約3,200万~3,300万平方フィート(約2,400万~3,600万平方フィート)の賃貸が行われてきました。2024年、マンハッタンは2020年のパンデミック開始以来初めて、この平均水準に戻りました。
「需要の面では非常に強い市場だ」とコリアーズの調査・事業開発担当執行役員マネージングディレクターのフランクリン・ウォラック氏は語った。
「オフィスへの復帰は確かにその一因であり、失業率の低さも影響しています。また、パンデミックの時期には少し低調だった主要産業の再興も見られます。完全に消滅したわけではありませんが、特にテクノロジー業界が思い浮かびます」とウォラック氏は述べた。
同氏は、2024年11月以降だけでアマゾンがマンハッタンのオフィスを100万平方フィート以上リースしていると指摘した。これは、建物の購入に加えて、リース、サブリース、WeWorkのようなコワーキングスペースとの企業契約の形で行われた。
法務部門もまた好例です。2023年、マンハッタンでは法律事務所の賃貸活動が過去最高を記録し、400万平方フィート(約450万平方メートル)を超えました。昨年は若干減少しましたが、それでも2019年の水準を上回っています。
「質への逃避も顕著でした。ワン・ヴァンダービルト、ハドソン・ヤーズ、マンハッタン・ウェストといった新築物件では、供給が非常に逼迫しています」とウォラック氏は述べた。
その結果、新築オフィススペースの供給量、いわゆる「空室率」は、戦前の古いビルの17%と比べて6.7%に低下しました。マンハッタン全体の空室率は15%に低下し、2021年1月以来の最低水準となりました。また、空室率は18ヶ月連続で横ばいまたは逼迫しています。
マンハッタンの3つのオフィスサブセクターのうち、ダウンタウンでは安定したものの、ミッドタウン、ミッドタウンサウス、マンハッタン全体では8月の空室率が引き締まりました。
8月末のマンハッタンのオフィスの平均募集賃料は1平方フィートあたり74.73ドルで、7月から1%上昇しました。しかし、2020年3月と比較すると、賃料は依然として6%低い水準にあります。
「月間で1%の増加があれば、それは大きな動きです。平均価格以上のスペースが市場に出回っていることも一因ですが、既存のスペースの価格を引き上げる家主も増え始めています」とウォラック氏は述べた。
オフィスの転換も供給と価格の両方に大きな影響を与えています。コリアーズは、過去4年間でマンハッタン市場から約900万平方フィートのオフィススペースが削減されたことを追跡しています。これは供給だけでなく、需要と価格にも影響を与えます。
「平均すると、転換予定のオフィスビル100万平方フィートごとに、そのビルからテナントが出て別のビルに移転するため、平均27万平方フィートの賃貸活動が発生することが分かっています」とウォラック氏は述べた。
さらに、改装中の建物は、転貸スペース(これも同様に低価格)を含め、平均価格を下回るスペースであった可能性が高いため、これらの建物の撤去はマンハッタン市場全体の平均価格を上昇させる可能性があります。
●その他
備忘録(2025/9/1)
●企業
●マクロ
トランプ米大統領が、利下げに前向きな経済学者を米連邦準備制度理事会(FRB)に送り込もうとする動きが、大きな注目を集めている。しかし、金融政策や債券市場、米経済の中長期的な見通しには、より深刻な懸念がある。
背景にあるのは、米国が欧州やアジアの多くの国々と同様に高齢化の進行に直面し、債務の増大と成長率の鈍化という二重の課題を抱えていることだ。この難局を打開する方法は、米国の投資家や退職者が望まない代償を伴う可能性がある。
ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で発表された新たな論文は、楽観的なシナリオを提示している。論文によれば、高齢化が進む国々は、むしろより多くの国債を発行できる。高齢者層が新たに発行される国債を積極的に購入するため、需要が供給を上回る可能性すらあるというのだ。
金利が上昇しなければ、米国は国内総生産(GDP)比250%の債務水準を維持可能だと試算している。これは日本に近い水準であり、日本は一応は持ちこたえている。
ただ、この試算が正しいとしても、それは高齢者が本質的に債券の買い手であるからではない。債券需要は、個人投資家からのものも含め、基本的には政府の政策と規制に左右される。米国も日本と同様に、金利を低水準に抑える金融抑圧的な体制に依存せざるを得なくなる可能性がある。
論文では、過去数十年にわたって債務水準が上昇していたにもかかわらず金利が低下した理由として、米国債への需要が供給よりも速く伸びたことを挙げている。その主因は外国からの買いだった。しかし、最近ではこうした需要は弱まりつつあり、貿易の縮小とともに今後さらに低下するとみられている。
もう一つの大口債券購入者であるFRBは現在、量的緩和(QE)の縮小に向かっている。今後需要の拡大が見込まれる主な買い手は、個人投資家を中心とする投資信託、証券会社、そして「その他」に分類される企業などだ。
論文が予測するように、今後は米国内の個人投資家が米国債市場でより重要な役割を担うことになるのは、ほぼ確実とみられる。経済学者たちはこれまでも、高齢化の進行は金利低下の要因になると指摘してきた。理論によれば、高齢者は若い世代よりも多くの資産を保有しており、年を重ねるにつれてより安全な資産を好む傾向がある。
しかし実際のところ、人口高齢化と金利低下の間には必ずしも明確な相関関係があるとはいえず、場合によっては逆相関になる可能性すらある。高齢者が年齢とともに米国債の保有比率を高めるとは限らない。多くの人は、退職後の資金運用口座を除けば、米国債を直接購入することはほとんどない。米国では大半の人が、こうした退職後資金の口座に資産を預けているのが現状だ。
退職口座が導入された当初、加入者は自ら投資先を選ぶ必要があったが、年齢を重ねるに伴い債券への投資が増える傾向は見られなかった。
しかし2006年の法律により、企業年金制度は加入者の自動登録と、投資先の自動選択を義務付けられることになった。この規制を背景に普及したのが「ターゲットデートファンド」だ。
これらのファンドは、加入者の年齢に応じてリスク資産から債券などの安全資産へと段階的に移行する仕組みとなっており、投資先は時間とともに「リスクを軽減すべき」との規制を満たす設計になっている。多くの加入者はこの初期設定のままの運用を継続するため、結果として高齢者が債券に多く投資する構図が生まれている。
このようなターゲットデートファンドの運用設計が十分に急勾配であれば、将来的に米国債の需要が十分に増える可能性もある。ただし、ここで重要なのは、こうした債券購入が高齢者が自発的に債券を好むからではなく、政府の規制によって促された結果であるという点だ。
もちろん、こうした規制が正当化される余地はある。高齢者は退職後に安定した収入を得ることが難しく、リスクに直面している。年金を購入したり長期債に投資したりすれば、収入は安定しやすくなる。
そのために、年金を運用する保険会社または退職者本人が、債券を購入することになる。しかし、このような投資行動を促すにはさらなる規制の見直しが必要だ。そうなると、債券需要を人為的に押し上げる「金融抑圧」と、投資家を保護するためのルールとの線引きは極めて曖昧になる。
ジャクソンホールで発表された論文の執筆者たちは、日本を肯定的な事例として挙げている。高齢化社会であっても、債券需要さえ十分にあれば多額の政府債務を維持できることを示しているからだ。
しかし同時に、日本の例は金融抑圧から抜け出すことがいかに難しいかを物語ってもいる。日本では長年にわたり、年金基金による国債購入や、近年の量的緩和(QE)政策により、超低金利が維持されてきた。これは金利が低下し、債券価格が上昇していた局面では機能していたように見えた。
しかし、インフレが進行し、政府がもはや国債を買い支えられなくなり、債券価格が下落し始めると、その構図は簡単に崩れかねない。日本が長年続けてきた高水準の政府債務を維持できる体制も、もはや限界を迎えている可能性がある。仮に限界に達していないとしても、日本の経済運営の経験は、決して他国が模範とすべきものではない。
教訓は明確だ。確かに、規制によって債券購入を促し、金利を低水準に維持することは理論上可能だが、それは極めてリスクの高い金融戦略でもある。
仮に米国がこうした方針を採用すれば、投資リターンの低下を招く可能性がある。その場合、米経済は本来達成できたかもしれない規模に届かず、投資家の資産形成も思うように進まないだろう。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は1日、フランスは現時点で国際通貨基金(IMF)の支援を必要とする状況ではないとの認識を示した上で、ユーロ圏の政権が倒れるリスクは「懸念すべきことだ」と述べた。
ラジオ・クラシックの番組で、フランスでは財政規律が依然として不可欠であり、仏国債の利回り差を非常に注意深く見守っていると語った。
バイル首相は8日に国民議会(下院)で信任投票を実施すると発表したが、主要野党3党は支持しない意向を示しており、政権は崩壊の危機に直面している。これを受けてフランスの株式市場と債券市場が打撃を受けた。
ラガルド氏は「フランスの銀行システムは十分に資本を備えており、(2008年の)金融危機時よりも良好な状態にあり、組織がしっかりしており、適切に監督され、責任ある関係者がいると確信している」と述べた。
「銀行システム自体が現在のリスクの原因であるとは全く考えていないが、市場はこのような状況下では必ずリスクを織り込む」と指摘した。
日本株が高値圏で推移する中、高級ブランドの販売がふるわない。「ルイヴィトン」や「ディオール」を傘下に持つLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)(LVMH.PA), opens new tabの2025年4ー6月期の日本の売上は約3割減少し、足元でも減速傾向が続く。昨年の値上げ前に生じた駆け込み消費の反動減が主な要因だが、停滞は一過性ではなく長期化する恐れもある。
LVMHは前年同期(24年4-6月期)に57%の増収を記録していただけに、業績に急ブレーキがかかった格好だ。「グッチ」や「サンローラン」を展開するケリング(PRTP.PA), opens new tabも25年4ー6月期の日本での売上が29%減と苦戦。北米の10%減と比べても下げ幅が大きい。人気バッグ「バーキン」を擁するエルメス(HRMS.PA), opens new tabのように堅調な企業もあるが、海外ブランド全体としては販売減が目立つ。
背景には、インバウンド消費の変調が挙げられる。訪日リピーターの割合が増えたことで、ブランド品を大量購入する「爆買い」が一巡。中国経済に先行き不透明感が強まっていることもあり、25年4-6月期の訪日外国人1人当たりの旅行支出額では、中国人は前年同期比で約13%減少した。中国人はインバウンド消費の約2割を占めるため、各社の業績への影響は小さくない。
日本人の消費動向について、UBS証券の風早隆弘シニアアナリストは「株価や不動産価格の上昇を背景に富裕層の購買意欲は堅調だが、昨年の値上げラッシュ前に発生した特需の反動が出ている」と指摘する。各社は円安進行による地域間の価格差を是正するほか、資材費などのコスト高を反映し、相次ぎ値上げを実施。
UBSの調査によれば、高級ブランドの価格指数はフランスを100とした場合、日本は25年4月に111まで上昇した。すでに米国(108)や韓国(103)と比べても高い水準だ。
別の民間調査によると、24年の高級ブランド衣料の値上げ幅は、フランスが前年比7%増、米国が9%増だったのに対し、日本は21%増に達した。日本の中間層にとっては手が届きにくい価格帯となり、ブランド離れが一部で広がりつつある。日本市場の割安感は無くなっていることから、訪日客の消費が「昨年のように活発化するのは今後も難しいだろう」(風早氏)。
<世界市場、昨年は15年ぶり縮小>
世界のラグジュアリー市場全体も曲がり角に差し掛かっており、24年の売上高は前年比2%減の約3630億ユーロへと縮小した。新型コロナウイルス禍に伴うロックダウン(都市封鎖)が各地で実施された20年を除けば、15年ぶりのマイナス成長となった。
調査を手がけたコンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーは「消費者の支出が、モノから旅行などの体験型へと移行している」と分析。物価高による「値上げ疲れ」が加わり、25年も前年比2-5%の減少を予想する。トランプ政権の高関税政策による米国内でのコスト上昇が、日本を含む他国にも一部転嫁されれば、市場全体のさらなる冷え込みも懸念される。
大和総研の林正浩主席コンサルタントは「Z世代の若者を中心に購買判断においてサステナビリティ(持続可能性)を重視する人が増えており、環境や社会に配慮したエシカル商品に力を入れて、ブランドへの共感を醸成することが状況打開の鍵を握るだろう」と話した。
米国の失業率は4.2%と、歴史的な低水準となっている。だが、黒人労働者は異なる現実に直面し、失業率は7.2%に急上昇している。これは労働市場が依然として新型コロナウイルス流行からの回復途上にあった2021年10月以来の高い水準となる。
雇用減少は労働市場における警戒サインであり、コロナ流行中やその後の黒人労働者の雇用改善を崩壊させる恐れもある。
失業率(季節調整済み)は、大学教育を受けた黒人労働者とそうでない黒人労働者の両方で大幅に上昇。これは労働市場全体の減速と一致する動きで、多くの労働者が数カ月間にわたり労働市場から締め出されている状況を示している。エコノミストらはこの低迷の影響を最も受けているのが黒人労働者であり、根深い人種間格差を反映するものだと指摘する。
黒人労働者は白人労働者よりも低技能やジュニアレベルの職に就く可能性が高く、レイオフの影響も受けやすい。また労働市場で長年の差別に直面しており、ここ数カ月のように全体的に採用活動が減速する中では、これがより顕著になることもある。
さらに黒人の大学卒業者の失業率が最近上昇していることは、連邦政府による雇用削減の影響も浮き彫りにする。連邦政府の労働力には黒人労働者が多く含まれている。
昨年12月に厚生省の契約職員としての職を失い、職探しを続けているケニヤ・ジェンキンスさん(52)は、「今、人生最大の戦いをしている」と説明。ヒューマンサービスと公衆衛生学の修士号を持つジェンキンスさんは、メリーランド州の集合住宅を退去せざるを得なくなり、ニュージャージー州の親戚の家に移り住んだという。また元の家主に対する未払い家賃が1万2000ドル(約176万円)あると述べた。
米国全体の失業率は依然として低いものの、採用がほとんど止まっているため、労働市場にはほとんど余裕がない。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は最近、労働市場は9月の利下げを正当化する可能性があるほど冷え込んでいると示唆した。
黒人労働者は歴史的に見ても、労働市場全体が減速する初期段階で職を失うことが多い。
米コネティカット大学のエコノミスト、ケネス・カウチ氏は、「これから起こるかもしれないことを示す、炭鉱のカナリアのようだ」と説明。労働省は8月の失業率を5日に発表する予定となっているが、前回の発表では5月、6月、7月の雇用者数の伸びが比較的少なかったことが示されていた。
ダラスに本拠を置く非営利団体(NPO)でフルタイムの広報として働いていたキルステン・ブラッドフォードさん(29)は、1月に職を失い、新たな仕事を見つけられずに苦戦。すでに数百件の求人に応募したものの、散発的に面接に呼ばれるのみで、採用には至っていないという。
ブラッドフォードさんはダラス中を車で回り、銀行支店を訪れては履歴書を手渡しながら銀行業界への就職を目指していると述べた。だが唯一得られたのは入浴用製品などを手掛けるバス・アンド・ボディー・ワークスの店舗での仕事だけで、時給14ドルで顧客がボディースプレーやバスボムを選ぶのを手伝う作業だと説明。現在もNPOで月20時間だけ働き続けているとした。
約10万ドルの学生ローンについて債権者から連絡が続く中、ブラッドフォードさんと8歳の息子は最近になり、実家に戻ったと説明。「自分が正しいことをしてきたと思っていたし、未来のためにすべての行動をしてきたと思っていたのに、こんな結果になるなんて本当に腹立たしい」とし、「こんなはずじゃなかった」と述べた。
2023年に失業中の黒人労働者の割合は4.8%に低下し、労働省が1972年にデータを追跡し始めて以降で最低水準となった。同年には黒人と白人の失業率の差は記録上で最も小さくなり、黒人労働者は数年間にわたり賃金の伸びが上回っていた。当時は労働力不足で仕事がより容易に見つけられるようになったほか、2020年に発生した警察によるジョージ・フロイドさん殺害事件を受け、一部の企業が労働力の多様化に努めたことも背景にある。
リベラル系シンクタンク「経済政策研究所」の労働エコノミスト、バレリー・ウィルソン氏は、トランプ政権からの圧力を受けて多様性推進の取り組みを縮小している企業が、今後はさらに黒人の失業率を押し上げる可能性があると予想。「それは確実に人々の雇用獲得に影響を与える」と述べた。
労働省のデータに基づくハーバー・アナリティクスの調査によると、25歳以上の大卒の黒人の失業率(季節調整済み)は、7月には5.3%に達した。これは2月の2.7%、5月の3.9%を上回る(労働省は全体の失業率の数字とは異なり、これらの数字を月ごとの季節変動に合わせて調整していない)。
7月の失業率は、高校卒業資格のみを持つ白人労働者の失業率よりも1.7ポイント高く、1992年にこの指標の記録が始まって以降で最大の差となった。影響は全国で幅広く見られており、雇用サービスなどを手掛けるNPO「グッドウィル・オブ・ノース・ジョージア」では、初めて職探しの支援を求める黒人が過去3カ月で41%増加。白人の新規求職者の増加率の23%を上回った。
黒人労働者は連邦政府職員の18.7%を占めており、全体の労働力の約13%と比較しても多い。これは連邦政府の採用における強力な反差別規則と、首都ワシントンに黒人の人口が多いことが一因だと米労働総同盟産別会議(AFL・CIO)のチーフエコノミスト、ダリック・ハミルトン氏は述べた。
州および地方政府の仕事への人材紹介を手掛ける労働力開発NPO「ワーク・フォー・アメリカ」のエグゼクティブ・ディレクター、ケイトリン・ルイス氏は、「何十年もの間、政府の仕事は米国の黒人にとって中産階級への道だった」と説明。「そして民間部門が門戸を閉ざしていた時には、年金や差別からの保護を提供する数少ない場所の一つだった」と述べた。
トランプ政権は最近、連邦政府の雇用数について、今年1年間で30万人減少するとの見通しを示した。
フランスの債務危機は、漸進主義は決してうまくいかないこと、国家主義は常に破滅に終わること、そして政府拡大と増税に賭ける国は常に停滞、債務不履行の危険、社会不安に陥ることを私たちに思い出させる。
フランスの政府債務対GDP比は114%を超えています。しかし、ユーロスタットによると、未積立の年金債務はGDPの400%に達しています。今年の財政赤字は5.4%と発表されていますが、市場コンセンサスは5.8%と予想しています。5年間の信用デフォルトリスクは12ヶ月で20%上昇しました。フランスの2年国債の利回りはスペイン、イタリア、ギリシャを上回り、ドイツに対するリスクプレミアムは80ベーシスポイントに達し、スペインを20ベーシスポイント上回っています。
ユーロ圏の問題は、政府が巨額の政府支出、公共部門の雇用、そして移民によってGDPを膨らませると、主流派がことごとく拍手喝采し、慢性的な財政不均衡と生産性の伸び悩みを隠蔽してしまうことです。さらに、ケインズ派のアナリストたちは、民間部門のクラウディングアウトや、高税率が長期的な公共会計の持続可能性に及ぼす悪影響を無視しています。
私は、ギリシャが巨額の政府支出と公共部門の雇用によってGDPを膨らませていた当時、主流メディアがギリシャをユーロ圏の成長の原動力と称賛していた時代を覚えているほどの年齢です。2005年と2006年には、IMFと欧州委員会の出版物において、ギリシャは「高い経済成長を支えている」そして「ユーロ圏の回復を牽引している」と称賛されました。見出しや政策報告書は、ギリシャの経済的成果をユーロ圏における強力なリーダーシップの例として広く認めていました。2008年に何が起こったかは、誰もが知っています。
欧州中央銀行が政治家に支出の増加と財政不均衡を維持し拡大させるための誤ったインセンティブを生み出すことに尽力してきたことを忘れてはならない。
欧州中央銀行(ECB)は過去10年間、ユーロ圏の安定確保を目的とした前例のない規模の政策ツールキットを展開してきた。これには、度重なる利下げ、マイナス名目金利、物議を醸した分断防止策、そして事実上の債務マネタイゼーションなどが含まれる。しかし、安定性と独立性を謳うレトリックとは裏腹に、これらの措置は財政の無謀さを助長する強力なインセンティブを生み出し、欧州の通貨の信頼性の根幹を揺るがし、現在のフランス債務危機を含む今日の国家債務危機の種をまいた。
ECBの政策金利は、かつては国債と民間債務の両方を規律する役割を果たしていましたが、2008年の4%超からマイナス圏に急落し、実質ベースでは長年マイナス圏にとどまっています。さらに、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)やアウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)といった施策の下、危機時に拡大されたECBの資産購入プログラムは、債券市場を中央銀行マネーで飽和させ、巨大なクラウディングアウト効果を生み出しました。その結果、家計や企業への融資が抑制され、公的セクターの発行体の支払い能力問題が隠蔽されています。
中核国と周縁国の債券間の「スプレッド」を抑制するために設計された分断防止策は、この問題をさらに深刻化させている。ECBは、無制限の介入を約束することで、事実上いかなる代償を払おうとも国債を担保すると市場に保証し、かつては浪費的な政府に課されていたリスクプレミアムの規律を弱めている。実際、これは財政遵守の低い国に利益をもたらし、債務と赤字を抑制する国にペナルティを与えるため、浪費を助長する手段とみなされる可能性もある。
これらの介入は市場を即座に落ち着かせる一方で、政府に無関心の心理を植え付け、支出を着実に増加させる。そのため、スペインをはじめとする多くの政府は、不均衡の拡大と財政悪化にもかかわらず、低金利と債務分散を誇示している。分断防止策とマイナス名目金利は、無謀な財政政策に対する重要な警告となるべき市場メカニズムを破壊している。加盟国は、低利の資金調達とECBからの無限の支援を保証されているため、特に選挙で大きな損失が生じる場合には、肥大化した予算を改革したり、財政赤字を抑制したりするインセンティブがほとんどない。ドイツの政策担当者が警告してきた、ECBの行動が高債務加盟国の「財政フリーローディング」を助長しているという根強い脅威は、現実のものとなりつつある。
最も劇的な事例はフランスだ。フランス政府の債務は2025年にはGDPの114%を超えるまでに膨れ上がったが、その一因はECBの傘下で安価に賄われている慢性的な巨額赤字にある。財政再建の試みは常に慎重で、そのため永続的な規律を達成することができず、ECBによる支援は常に安全策として背後に控えている。その結果、ソブリンリスクプレミアムが増大している。フランス国債は、近代ユーロの歴史で初めて、同等の格付けのスペイン、ギリシャ、イタリア国債の利回りを上回っており、ECBによるバックストップ時代においても、市場がフランスの債務の軌道に不安を抱いていることを示している。このスプレッドの上昇が、大規模な景気刺激策(次世代EU)と利下げの最中に起きているという事実は、さらに憂慮すべき事態である。
危機封じ込め手段として意図された、いわゆる「分断防止手段」は、本質的に「共同管理のない共同責任」のメカニズムである。この手段は、規律あるユーロ加盟国を、規律の緩いパートナーの財政選択に縛り付け、リスクを社会化する一方で、利益を国有化する。この手段によって、市場はもはや効率的な差別化を行えなくなり、かつては必要な改革を促した債務持続可能性への不安は、解決されるどころか抑制される。さらに、これは実質的な義務を伴わない債務の相互化とも言える。
ECB首脳らが賞賛する「必要なことは何でもやる」という哲学は、今や諸刃の剣となっている。説明責任を依存に置き換え、財政の緩みを助長しているのだ。
中央銀行による債券購入と名目金利のマイナス領域への抑制は、定義上、債務マネタイゼーションの最悪のケースです。ECBは、極めて割高な債券であっても購入しているため、赤字を計上しています。IERFによると、ECBの資産購入プログラムにおける未実現損失の累計は8,000億ユーロと推定され、資本を大幅に上回っています。
これらの政策は、緊急支援という文言を装っているにもかかわらず、債務超過の問題を覆い隠している。これは、政府の過剰支出に対する究極の抑止力、すなわち資金コストそのものを失わせることになる。長期的な結果として、ユーロ圏の政府は、困難な時期であっても低コストでの借り換えが保証されていることを認識しているため、債務をますます積み増す状況となり、ユーロ圏は信認、インフレ、あるいはガバナンスにおける些細なショックに対しても脆弱になる。こうした状況は、ドイツがフランスと同じ罠に陥った場合、将来的にユーロに悪影響を及ぼす可能性が高い。最近の政策発表を踏まえると、そのシナリオは起こり得るように思われる。
フランスの新聞を読めば、この歪んだインセンティブが如実に表れていることがよく分かる。持続不可能な支出経路について議論する代わりに、多くの人が中央銀行によるさらなる購入と刺激策を求めている。さらに、より積極的な金融政策を実施するために、デジタルユーロの導入を加速させるべきだと主張する者もいる。
進行中のフランス債務危機は、こうした政策の直接的な副産物です。フランスの支出は経済成長を継続的に上回っていますが、ECBによる恒久的な支援の約束によって、その顛末は先延ばしにされてきました。今、リスクプレミアムが上昇し、市場がECBの決意を試す中、ユーロ圏はモラルハザードと財政規律の崩壊を特徴とする政策時代の苦い結末に直面しています。
ECBの積極的な政策は一時的な安定をもたらすかもしれないが、その長期的なコストは明らかである。すなわち、債務の増大、民間セクターの弱体化、通貨の下落、そして責任ある政策立案へのインセンティブの低下である。欧州が中央銀行による恒久的な景気刺激策への依存を見直し、市場規律のメカニズムを回復しない限り、今日のフランス危機は、今後起こりうる多くの財政危機の一つに過ぎないかもしれない。ユーロが準備通貨として成功したのは、財政の慎重さと責任という柱の上に成り立っていた。財政規律の欠如は常に通貨にとってリスクを意味する。
中央銀行は支払い能力のある紙幣を発行することはできず、構造改革の欠如と過剰な金融緩和政策は最終的にユーロを崩壊させる可能性がある。
ドイツでビールの消費量が減り続けている一方で、ノンアルコールビールの人気がかつてないほど高まっている。
ドイツ連邦統計局によると、ノンアルコールビールの販売量は、2013年に対して109%増とこの10年ほどで2倍以上に増加している。一方、ビール全体の販売量は過去30年以上で最低水準となっている。
今年は統計を開始して以来初めて、半年間の販売量が40億リットルを下回った。
2025年上半期のドイツ国内におけるビール販売量は、前年同期比で6.3%(2億6200万リットル)減少し、約39億リットルだった。
独南部ミュンヘン近郊にあるエルディンガー醸造所は、1880年代からビールを製造している。同社のステファン・クライス最高経営責任者(CEO)は、飲酒習慣が変化しており、現在では生産量の約25%がノンアルコールビールだと語った。
●プロファイ、インフラ、自然災害、不動産
対話型人工知能(AI)「ChatGPT」を展開する米オープンAIは、ソフトバンクグループおよび米オラクルと進めている「スターゲート」プロジェクトの一環として、インドで少なくとも1ギガワット規模の巨大データセンターを建設することを検討している。アジアのAIインフラを強化する。事情に詳しい関係者が明らかにした。
オープンAIは現地パートナーを探しながら用地調査を進めており、人口世界一のインドにおける事業展開の大きな一歩となる可能性がある。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。同社の担当者はコメントを控えた。
具体的な施設の場所や稼働時期は明らかになっていない。関係者によれば、サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が今月、インドを訪問する際に発表する可能性もあるが、予定は流動的だという。
オープンAIはインドでの事業拡大を目指すが、米国とインドの間には通商を巡る緊張が走っている。トランプ米大統領は、インドの貿易障壁やロシア産原油の購入を理由に、同国からの輸入品に50%という高関税を課しており、数十年にわたる米国の対インド関係強化の努力を揺るがしている。
カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くオープンAIは、国内外でAIインフラ向けの大型投資を加速。米国内ではスターゲート構想に基づき合わせて約4.5ギガワット規模のデータセンターを建設するプロジェクトが進行中。これまでに類を見ない大規模な事業とされ、トランプ米大統領からも称賛された。
オープンAIはまた、米国政府との協力を通じて「オープンAI・フォー・カントリーズ」というグローバル展開の構想下で民主主義の価値観に基づくAIインフラの構築も推進している。米国が世界的にAI開発を主導し、中国の動きに対抗しようとする取り組みの一つだ。
同社はあらゆる地域を対象に、まず10カ国のパートナー国を模索しており、これまでに30カ国以上が接触してきたという。これまでに、ノルウェーで進められている最大520メガワットの電力消費規模を持つデータセンター計画にアンカーテナントとして参画する意向を明らかにした。またアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビでは、さらに大規模な5ギガワット級データセンターが計画されており、このうち1ギガワット分のコンピューティングパワーをオープンAIが利用できる予定だ。
オープンAIのインドでの利用者数は現在、世界で2番目の多さ。首都ニューデリーにオフィスを開設する予定で、現地チームの採用も拡大する。さらに、より多くの利用者を取り込むため、月額5ドル(約735円)の有料プランも導入した。
トランプ米政権は29日、12の洋上風力発電プロジェクトに対する6億7900万ドルの連邦政府助成金を取り消すと発表した。取り消し対象には4億2700万ドル規模のカリフォルニア州の事業も含まれる。
洋上風力発電はバイデン前政権の気候・エネルギー政策の中心だった。ダフィー運輸長官は、前政権下で交付されたこれら助成金は「海事産業の活性化のために使われるはずだった資金」の無駄遣いと述べた。
運輸省は昨年、カリフォルニア州ハンボルト郡に洋上風力タービンの建設とメンテナンスを支援する新しい海上ターミナルを建設するため4億2700万ドルを給付した。ニューサム・カリフォルニア州知事の報道官は助成金取り消しについて、トランプ政権が「クリーンエネルギーとインフラプロジェクトを攻撃し、地方でのビジネスに打撃を与え雇用を奪い、わが国の経済の未来を中国に譲り渡す」一例と批判した。
このほか、メリーランド州ボルチモア港近くの洋上風力物流・製造ハブに対する4700万ドルの助成金や、2022年に付与されたニューヨーク州スタテン島の洋上風力ターミナルプロジェクトに対する4800万ドルの助成金なども取り消される。
豊田通商の再生可能エネルギー子会社、ユーラスエナジーホールディングス(東京・千代田)は1日、北海道池田町で送電線につないで充放電を通じて電気の需給バランスを調整する「系統用蓄電池」の建設工事を始めたと発表した。蓄電池の容量は2万7420キロワット時で、2027年10月に営業運転を始める予定。
同社が道内で系統用蓄電池を設置するのは今回が初めて。投資金額は約25億円でうち8億円ほどは国の補助金でまかなう。電力の調整力を売買する需給調整市場や、卸電力市場などでの取引を想定する。
アイオワ州シーダーラピッズの北西にあるデュアン・アーノルド原子力発電所は、2020年に経済的理由により閉鎖された後、10年末までに再稼働する計画を推進している。
この原子炉は、米国で3基目、そしておそらく最後の休止中の原子炉であり、米国の増大する電力需要を支えるために再稼働する態勢が整っている。
デュアン・アーノルド原子力発電所は、原子力規制委員会の承認を条件に、ミシガン州のパリセーズ原子力発電所とペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で計画されている同様の再稼働に追随することになる。両発電所はそれぞれ今年後半と2027年に再稼働する予定だ。
連邦エネルギー規制委員会は先週、ネクストエラ・エナジーからの要請を承認した。
デュアン・アーノルドのオーナー、
原子力発電所を電力網に再接続するためだ。FERCへの提出書類によると、NextEraはデュアン・アーノルド原子力発電所の運転再開は早くても2028年第4四半期になると見込んでいる。
「施設を再開するまでにはまだ相当な作業が必要だが、FERCの決定はそのプロセスにおけるもう一つの前向きな一歩だ」とネクストエラの広報担当者ニール・ニッサン氏はCNBCへの声明で述べた。
電力購入契約
大手テクノロジー企業が、人工知能(AI)の訓練用に建設中の電力を大量に消費するデータセンターに電力を供給するため、より多くの原子力発電を送電網に供給することを検討している中、フロリダに拠点を置くNextEraは、デュアン・アーノルド原子力発電所の再稼働に向けて、有利な電力購入契約の獲得を目指している。例えば、スリーマイル島原子力発電所は、マイクロソフトとの電力供給契約による財政支援を受けて再稼働している。。
「デュアン・アーノルド原子力発電所の再稼働は、アメリカの主要企業から大きな商業的関心を集めている」と、再稼働プロジェクトを担当するネクストエラの幹部、ギャレット・ゴールドフィンガー氏は7月下旬のFERCへの提出書類で述べた。
デュアン・アーノルドは、40万世帯以上の電力需要に相当する600メガワット以上の電力を送電網に戻すことになる。
「デュアンを前倒しすることに成功すれば、その施設の周囲にデータセンター活動の活発化が生まれるのは明らかだ」とネクストエラのジョン・ケッチャムCEOは7月の決算説明会で投資家に語った。
「ユニコーンのチャンス」
デュアン・アーノルド、パリセーズ、スリーマイル島の3基は、原子力発電が安価な天然ガスや再生可能エネルギーとの競争に苦戦したため、過去10年間に閉鎖された米国の原子炉10基のうちの3基である。
これらの原子力発電所の再稼働は、長年の財政難を経て原子力産業が復活しつつあることを示す最も具体的な兆候である。
「原子力発電所の新規建設コストがかからないため、これはまたとないチャンスです」とケチャム氏はネクスエラの決算説明会で述べた。「まさにユニコーン企業のようなチャンスです」
米国最大の再生可能エネルギー開発企業であるネクストエラは、アイオワ州の低コスト電力の需要に応えるため、同社が開発中の複数の太陽光発電所にデュアン・アーノルドの送電網接続を分割していた。
しかし、米国では産業とデータセンターからの電力需要が前例のないほど増加したため、昨年市場は再び大容量原子力発電に傾き始めたとネクストエラはFERCへの提出書類で述べた。
NextEra社は、連邦エネルギー規制委員会(FERC)の承認を取得し、デュアン・アーノルド発電所向けにこれらの太陽光発電グリッド接続を単一のグリッドに統合する作業を進めています。ゴールドフィンガー氏はFERCに対し、「これにより、商業的および財務的な確実性が確保され、再稼働に向けた取り組みを支援し、デュアン・アーノルド発電所におけるクリーンで信頼性の高い運転再開を加速させることができます」と述べました。
資本集約型
ネクストエラ社は、デュアン・アーノルド原子力発電所の再稼働は「非常に資本集約的なプロセス」になると述べた。同社は連邦エネルギー規制委員会(FERC)への提出書類の中で、このプロジェクトに2025年だけで最大1億ドルを費やす計画を明らかにした。
ネクスエラは、発電所の閉鎖時に撤去された変圧器の交換用として、新しい変圧器を発注しましたが、サプライチェーンに大きな制約があり、納入までには約3年かかる見込みです。発電所の冷却塔、管理棟、研修センターも解体されており、交換が必要です。
ゴールドフィンガー氏は、原子力業界はプロジェクトの遅延の長い歴史があり、例えば変圧器の納入が遅れればデュアン・アーノルド原子力発電所の再稼働は予想よりも長くかかる可能性があると警告した。
リスクはあるものの、デュアン・アーノルドはフロリダ・パワー&ライトの親会社であるネクステラにとって、財務上の好機となる可能性がある。電力需要の増加にもかかわらず、同社の株価は今年ほとんど動いていない。これは、株価が18%上昇した2024年とは大きく異なる。1月の就任以来、ドナルド・トランプ大統領による再生可能エネルギーへの度重なる攻撃は、太陽光発電と風力発電に対する投資家の信頼を揺るがしている。
太陽光発電と風力発電プロジェクトは2027年以降、2つの主要な税額控除の対象外となり、再生可能エネルギーへの需要が減退すると予想されています。ケッチャム氏は7月の決算説明会で、デュアン・アーノルド発電所が2028年に再稼働すれば、税額控除の段階的廃止による収益の減少の一部を相殺できる可能性があると述べました。
「デュアン・アーノルド氏を加えることは、私たちが将来的に事業を成長させ続けるために必要な多くの方法のうちの1つです」とケッチャム氏は語った。
●その他
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