2025年5月19日月曜日
備忘録(最新)
2025年5月4日日曜日
CMA、CFA心構え
若手職員の皆さんへ
証券アナリスト試験対策について、過去の経験を踏まえ、アドバイス(そんな偉そうなことを言える立場ではありませんが)を作ってみました。
自己流ですので、その点ご容赦下さい。皆さんのやり方をアレンジして、次世代に引き継いでいってもらえたらうれしいです。
心構え
①試験対策の目的は合格すること。業務に活かしたい、好奇心などの理由から枝葉の知識を追求しない(それは受かってからやる)
②基本的に問題演習で覚え、理解する。テキストはわからないところを調べる辞書だと思って扱う
③満点を取る必要無いので、完璧にする必要はない
④わからない問題に拘らない。何度か間違えるうちに理解できる。それでも理解できない問題は捨てるのも一手
⑤幅広く手を出すのは愚策の可能性。同じ問題集を何度も解く方が覚える。やっているテキストがカバーしてない問題が出たらどうしようという不安を抱くかもしれないが、満点を取る必要はないので、その点は拘らない
⑥ (試験当日)見たことある問題は確実に取れるようにする。計算問題はオアシス。標準問題は確実に取れるようにする
⑦答えを覚えるのも一手。暗記から入る理解もある。繰り返すことで、そのうち理解する。流石に最初から100%理解できるほど易しい内容ではない
⑧⑦について、応用力が身につかないと思うかもしれないが、基礎知識無くして応用力無し
⑨何度も問題を解こう。2回正解したら、それはもう覚えているor理解している問題なので、それ以上やらなくて良い。そうすることで問題集を3周目、4周目と解く際には、スピードアップができる
⑩試験3日前からは総復習。新しいことには手を出さない。ここからは加点を目指すのではなく、減点を防ぐステージ
論述対策
①満点を求めない。半分~7割取れれば良い。部分点を積み上げよう。ただし、計算問題の筆記は満点を目指す
②部分点を取るためには、武器が必要。過去問や問題集の答えを覚えよう。言い回しを含めて役に立つ。記述を書くためには材料が不可欠。
③問題を見た瞬間、この答えとこの答えを組み合わせて書けば良いと閃ければ合格ライン
④選択問題のトレーニングの中で、なぜこの答えなのか、一文で述べられるようにする訓練も有効
⑤試験は、実務と違って答えがある。出題者の意図も意識して、何を答えれば良いのか想像してみる
2025年5月1日木曜日
備忘録(25/5)
- 備忘録(2025/5/19)●海外企業決算●海外企業ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)(VOWG.DE), opens new tabが16日開いたオンラインの年次株主総会では、同社の企業統治体制を巡る不満があらためて噴出した。取締役会の独立性向上を求め、オーナー一族による経営支配を懸念する声が目立った。VWは議決権の大半がポルシェとピエヒ両一族の持株会社ポルシェSEに掌握されている。この日の総会で複数の主要株主は、VWのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)が傘下の高級スポーツメーカー、ポルシェのCEOを兼務している点を追求した。デカ・インベストメントのインゴ・シュパイヒ氏はブルーメ氏に対し「取締役会でのポストを1つ返上してほしい」と訴え、VWの統治構造が抱える利益相反が「深刻な評判の悪化と多大な金銭的損失」を招いていると主張した。VWの株価は過去1年間で25%近く下げている。ブルーメ氏とVW監査役会のハンスディーター・ペッチュ氏は、ブルーメ氏の両社CEO兼任がコスト削減に貢献していると反論した。しかしユニオン・インベストメントのジャンヌ・ワーニング氏は「株主の批判を毎年無視するのではなく、一目瞭然の統治不全についに取り組み、修復すべきだ。VWがさらに深い危機に陥る前に」と強調した。投資家4人は、電動化やデジタル化など重要な技術について取締役、監査役が専門性を欠いていることが業績の足を引っ張っていると主張。資産運用会社DWSのヘンドリック・シュミット氏は「市場ではなく権力がVWを支配しているという印象が強まっている」と直言した。ネット保険のゴーヘルス<GOCO>が下落。同社は継続企業としての存続の可能性に重大な疑念があると表明し、1-3月期(第1四半期)の四半期報告(10-Q)の提出を延期した。同社は米証券取引委員会(SEC)への提出書類で、契約条項の遵守を維持し、予定通りの元本と利子の支払いを履行できない可能性が極めて高いと表明している。同社の経営陣は流動性制約の可能性に備えるため、コスト削減や既存の債務再編を含む緩和策を策定している。【企業概要】独自のテクノロジープラットフォームを介して最適な保険選択の機会を提供する。主に、メディケアアドバンテージ・メディケアサプリメント・処方薬プランなどメディケアプランを提供し、加入希望者が医療保険の選択をする際に、個人のニーズに合ったプランを見つけるための選択肢とアドバイスを提供する。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、インフレや信用スプレッド、地政学リスクなど複数の懸念材料を指摘した上で、そうしたリスクを軽視する市場の慢心に警鐘を鳴らした。ダイモン氏は、インフレの高止まりやスタグフレーションに陥る可能性は市場の想定以上に高いと指摘。米国の資産価格は依然として割高な水準にあるとし、信用スプレッドは景気低迷の可能性を十分に織り込んでいないとの見方を示した。同行が19日開催した投資家デーで同氏は「現在の信用市場はリスクが大きい」と発言。「深刻な景気悪化を経験していない人々は、信用市場で何が起こり得るかについて理解していない」と述べた。二転三転するトランプ政権の関税政策を受け、市場にはリセッション(景気後退)懸念や米国資産に対する不安が広がった。ただ、トランプ氏が各国・地域との交渉進展を強調すると市場は反発に転じた。ムーディーズ・レーティングスは16日に米国の信用格付けを最上位から引き下げたが、週明け19日のS&P500種株価指数は下落後に持ち直し、小幅ながら6営業日続伸となった。「関税の影響がまだ表面化していないため、人々は楽観的になっている」とダイモン氏は指摘。「市場は10%下落したが、その後10%戻した。これは極端なまでの慢心の表れだ」と語った。トランプ政権は関税を巡り、日本や韓国、インド、欧州連合(EU)など引き続き交渉を行っている。ダイモン氏は、関税は一時的に引き下げられているとはいえ、依然として「極端な水準」にあると述べた。同氏は、各国・地域の対応は不透明であり、米国内での製造業復活にも時間を要すると指摘。企業の業績見通しは下方修正される公算が大きいとの見解を示した。JPモルガン<JPM>やゴールドマン<GS>、モルガンスタンレー<MS>など大手銀の一角に売りが強まる場面が見られた。JPモルガンの幹部が説明会で、現四半期の投資銀行業務の報酬が減少する可能性に言及したことが要因となっている。同幹部は「第2四半期の投資銀行部門の顧客からの報酬は、残りの期間の動向次第だが、前年比10%台半ば前後減少すると予想している」と発言。また、「受取手数料の総額が、金利がほぼゼロでFRBが流動性を供給していたコロナ前の水準に戻る可能性は低い」とも述べていた。●日本企業日本製鉄はトランプ政権が買収を承認した場合、USスチール<X>に140億ドルを投資する計画だと伝わっている。ロイター通信が関係者の話として伝えた。この投資には新たな製鉄所への投資、最大40億ドルも含まれる。報道によると、日鉄は2028年までにUSスチールのインフラに110億を投入する計画。このうち10億はドルは新規サイト(グリーンフィールドサイト)に充当され、今後数年間で30億に拡大する見込みだという。●トランプ関連●先進国中銀、金融当局●先進国経済指標●金融市場、先進国トピックス関税を巡る米中間の緊張緩和で各国・地域中央銀行に対する利下げ圧力が和らぐ中、キャリートレードが近い将来に再び活発化する可能性があると、バークレイズはみている。エリック・マルチネス氏らアナリストは18日付のリポートで、同行はドル、ブラジル・レアル、コロンビア・ペソ、インド・ルピー、メキシコ・ペソを選好していると指摘。関税がピークに達し、ドルの下振れリスクが後退する状況下で、ユーロを利用したキャリートレードに注目しているという。同行によると、金融当局は急ぐ必要はなく、データ重視の姿勢を維持できる。また、「世界経済は減速する可能性はあるが失速には至らない見通しで、こうした比較的安定した世界環境も、中銀が急いで緩和に動く必要性を低下させている」。キャリートレードとは、低金利国の通貨で資金を借り入れて、高金利の国に投資する手法。新興国市場の投資家はリターンを高めるため活用するが、市場の変動性が高まる局面では巻き戻しが急速に進むリスクがある。バークレイズは、変動性が昨年11月の米大統領選後から今年4月初めの関税発表前までの水準に落ち着くと予測しているが、各国・地域が中立金利に近づく中でキャリートレードの好機が続くとは限らないと警鐘を鳴らす。「関税を巡る不確実性が依然として世界経済成長の重しになる可能性が高い」と指摘した。ウォール街のパニックは、やってくるのと同様に消えるのも速かった。わずか数週間前、世界中のトレーダーがトランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争の影響に身構えていた。市場は巨額の価値を失い、米国の金融覇権はかつてないほど揺らいでいた。そうした投資の風景は、足元で様変わりしている。トランプ氏はほぼ毎日のように関税交渉の進展をアピールし、景気停滞と物価上昇が同時進行するスタグフレーションの懸念を和らげようとしている。リスク資産は急反発を見せ、S&P500種株価指数は先週、週間ベースで今年2番目の大幅高を記録。社債や仮想通貨の相場も再び上昇した。それでも懐疑派はこの流れに乗らない。ナスダック100指数に連動する世界最大の上場投資信託(ETF)のショート(売り持ち)ポジションは2月の最低水準に比べ3倍近くに膨らんでいる。ブラックロックのハイイールドETFのショートが6カ月ぶりの高水準に達するなど、社債市場でも弱気ポジションは拡大している。慎重な姿勢が続く状況には、4月のショックの記憶がまだ新しいことが影響している。株式や米国債、金、ハイイールド債などあらゆる資産の極端な値動きを追跡するバークレイズのモデルによれば、トランプ氏の政策によるショックにより、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)当時と同じくらい市場は脆弱(ぜいじゃく)な状態にある。ソコロ・アセット・マネジメントのマーク・フリーマン最高投資責任者(CIO)は相場の反発について「新たな楽観ムードによるものではなく、最悪の事態が回避されるといった安堵(あんど)感によるものだ」と分析。「投資家は依然として明確な見通しを持てず、それが明らかに信頼感に影響を与えている」と話した。米国の百貨店とディスカウントチェーンは、中国の格安オンライン通販「Temu(テム)」や「SHEIN(シーイン)」からの消費者離れの恩恵を受けている。こうしたプラットフォームは、これまで利用してきた米関税制度の抜け穴がふさがれたことで失速しつつある。調査会社コンシューマー・エッジ・リサーチは数百万件のクレジット・デビットカード取引からデータを集め、2025年1-2月にTemuやSHEINから少なくとも2回購入したものの、3-4月の購入回数がゼロだった消費者の支出データを調べた。メーシーズ傘下のブルーミングデールズやコールズといった百貨店に加え、ギャップ傘下のオールドネイビーなど格安アパレルブランドに消費者の「多額の」支出が流れたと同社は分析している。トランプ米大統領は4月、輸入申告額が800ドル(約11万6000円)以下の場合に関税を免除するいわゆる「デミニミス(非課税基準額)」ルールについて、5月2日以降は中国・香港に適用しないと発表。この制度を活用し、中国の工場やサプライヤーから直接仕入れた商品を米消費者に格安で提供してきたTemuやSHEINにとって、状況は一変した。その影響はすぐに顕在化した。コンシューマー・エッジによると、米消費者の支出の伸びは今年に入りTemuで50%、Sheinで30%に達した時期もあったが、4月は急激に落ち込んだ。両社から他の小売業者に流れた具体的な金額は記されていないが、買い物客の注文1回当たりの支出額は通常、Temuで約30ドル、Sheinでは約50ドルだったという。コンシューマー・エッジのインサイト担当バイスプレジデント、マイケル・グンター氏は、「関税に関連した消費者行動の変化を示す初期の兆候だ」と指摘。トランプ関税の発表前から米消費者の支出の伸びは鈍化していたとも述べた。TemuとSheinのサイトでの米消費者の閲覧時間も大幅に減少している。アプリ利用状況を調査するセンサー・タワーによると、Temuの1日当たり平均ユーザー数は今月に入り4120万人と、3月の5800万人から減少。Sheinでも3月の2920万人から2550万人に減った。米国の小売業者にとって、こうした消費のシフトは歓迎すべきニュースだ。中国から衣料品の約10%を調達するギャップは、通期に関し2%程度の増収を想定。メーシーズは好業績の店舗への投資を軸とした業績改善戦略の一環として、今後2年で86店舗を閉鎖する計画だ。コールズも店舗閉鎖を進めているほか、5月に解任した最高経営責任者(CEO)の後任探しに着手している。イタリアのメローニ首相は17日、厳格なグリーン政策が欧州の産業基盤を荒廃させる恐れがあると警告し、経済と社会の安定を守るため、エコロジー移行に対するより慎重なアプローチを求めた。ドイツのメルツ首相との会談後、欧州連合(EU)が進める自動車分野を中心とする電動化について、欧州大陸の製造業の強みを損なう危険性があると指摘。ローマで記者団に「私はよく、砂漠に緑はないと言っている」と語った上で、「何よりもまず、欧州産業の砂漠化に立ち向かわなければならない」と述べた。欧州の2大製造業国であるイタリアとドイツは競争力回復に向けた取り組みをリードすべきとも発言。自動車部門は2国間協力が決定的な影響を与えることができる分野の一つだと付け加えた。ムーディーズによる米国のソブリン格付け引き下げは、連邦債務上限という「時限爆弾」が迫る中で投資家の不安を一層募らせ、債券市場の「自警団」が米政府により厳格な財政規律を求める行動を起こす契機になるかもしれない。主要格付け機関としての米格付けの最上級からの引き下げはムーディーズが最後で、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は2011年に、フィッチは23年にそれぞれ格下げに踏み切っている。折しも米議会の上下両院で多数派を占める与党共和党は、2017年の第1次トランプ政権下で導入された「トランプ減税」の延長や各種歳出措置を盛り込んだ包括的な法案の可決を目指しており、成立すれば連邦債務はさらに数兆ドル(数百兆円)膨らむ恐れがある。トランプ大統領が打ち出した関税の行方については楽観的な見方も出ているが、この「大きく美しい一つの法案」に投資家は神経をとがらせている。16日に下院予算委員会が行った同法案の採決では、一部共和党議員の造反によって否決された。BMPプライベート・ウエルスのチーフ市場ストラテジスト、キャロル・シュリーフ氏は「債券市場は今年になってからワシントンで起きている事象には特に厳しい目を向け続けている」と語り、ムーディーズの格下げで投資家の警戒度はもっと高まると予想する。シュリーフ氏は、政府にお灸を据える目的で借り入れコストに途方もないプレミアムを要求する「自警団」と呼ばれる債券投資家たちは、大きく美しい一つの法案を巡る議会審議について財政運営の責任という面で不快感を持っており、今後も峻厳(しゅんげん)な姿勢を保つだろうとの見通しを示した。トロウ・キャピタル・マネジメント創業者のスペンサー・ハキミアン氏も、ムーディーズの格下げで「最終的に米国では官民双方のセクターで借り入れコストが増大する」と警告した。TDセキュリティーズの米金利戦略を統括するジェナディ・ゴールドバーグ氏によると、最上位格付け証券のみに投資できる大半のファンドはS&Pの米格下げ後に投資指針を改定したので、今回の動きで米国債売りを強いられる公算は乏しい。しかし米議会で現在協議中の法案と財政政策に関して市場は改めて強い関心を向けそうだという。<タームプレミアムが上昇>ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのチーフ投資ストラテジスト、スコット・クレモンス氏は、財政の諸原則が犠牲にされつつある現状に対して今後議会でどの程度揺り戻しが出てくるかというのが一つの疑問だと述べた。大盤振る舞いの歳出を盛り込んだ法案は、長期国債のエクスポージャー拡大意欲を低下させかねない、というのが同氏の見解だ。中立的で非営利のシンクタンク「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」は、現在の減税措置が延長された場合、連邦債務は2034年までに約3兆3000億ドル増加してもおかしくないと試算している。ムーディーズは16日、歴代政権は財政赤字と利払い費用増加の流れを逆転させるのを怠り、足元で検討中の財政面の提案が赤字を大幅に減らす結果をもたらすとは思われないと指摘した。債券市場の値動きからも懸念が浮かび上がってきた。リーガル・アンド・ゼネラル・インベストメント・マネジメント・アメリカの債券戦略責任者を務めるアンソニー・ウッドサイド氏は、投資家が長期債保有リスクの対価として要求する「タームプレミアム」が、直近の米10年国債で上昇しており、これは市場の根底に米財政を巡る不安が存在する証拠だと説明した。ベセント財務長官はこれまで、トランプ政権は10年国債利回りの抑制に注力していると発言してきた。足元の利回りは4.44%とトランプ氏の2期目就任前をおよそ17ベーシスポイント(bp)下回っている。ただナティクシス・インベストメント・マネジャーズ・ソリューションズのポートフォリオストラテジスト、ギャレット・メルソン氏は「既にかなり大きな財政赤字を抱えている局面では、さらなる相当な赤字拡大に利回りが反応する可能性があるのは確かだ」と話した。ホワイトハウスのフィールズ副報道官は「専門家連中は、トランプ氏の関税がもたらす影響についてもそうだったように間違っている。関税は数兆ドルの投資を呼び込んで記録的な雇用の伸びにつながり、インフレは存在しない」と反論する。スティーブン・チャン広報部長に至っては、16日のソーシャルメディアへの投稿でムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏を名指しし、彼はトランプ氏の政敵だと言い放った。ムーディーズ・アナリティクスは格付け部門とは別組織。ザンディ氏はコメントを拒否した。<持続不能の道筋>さまざまな「期限」が近づいているため、事態は切迫している。共和党下院トップのジョンソン下院議長は、大きく美しい1つの法案を26日のメモリアルデーより前に本会議で可決させることを目指している。一方ベセント氏は議会に対して、7月半ばまでに連邦債務上限引き上げに合意するよう訴えてきた。ベセント氏は、議会が何らかの手を打たなければ、8月までに政府の手元資金が枯渇し、支払いを履行できなくなる可能性があるとしている。投資家も心配し始めており、8月に満期を迎える財務省短期証券(Tビル)の利回りは、その前後が満期のTビルよりも高い。共和党内ではトランプ減税延長については合意できているものの、その穴埋めとなる歳出削減の具体的方法でなお意見がまとまっていない。グッゲンハイム・パートナーズ・インベストメント・マネジメントのアン・ウォルシュ最高投資責任者は、政治の世界で歳出レベルを大幅に見直す取り組みに本格的な進展がない限り、米財政の道筋において意義のある改善は見込めそうにないと述べ、現在たどっている道筋は持続不能だと強調した。ブリッジウォーター・アソシエイツ創業者のレイ・ダリオ氏は月曜日、ムーディーズによる米国債の信用格付けの引き下げは米国債への脅威を過小評価していると警告し、同格付け機関は連邦政府が債務返済のために単に紙幣を印刷するリスクを考慮していないと述べた。「信用格付けは政府が債務を支払わないリスクのみを評価するため、信用リスクを過小評価していることを知っておくべきだ」とダリオ氏はソーシャルメディアプラットフォームXへの投稿で述べた。「これらの債券には、債務国が債務返済のために紙幣を刷り、債券保有者が受け取るお金の価値の減少(受け取るお金の量の減少ではなく)によって損失を被るという、より大きなリスクが考慮されていない」とブリッジウォーターの創業者は述べた。ムーディーズは金曜日、連邦政府の財政赤字の膨張と債務利息の急増を理由に、米国の信用格付けをAaaから1段階引き下げ、Aa1とした。同社は主要3社の中で、最高格付けから米国の格付けを引き下げたのは最後となった。ムーディーズによる格下げを受けて、 30年国債利回りが4.995%に急上昇し、10年国債利回りも4.521%に上昇したため、米国株は月曜日に下落した。「言い換えれば、自分のお金の価値を気にする人にとって、米国債のリスクは格付け機関が伝えているよりも大きい」とダリオ氏は語った。米株式相場は、ドナルド・トランプ大統領の関税政策に伴う当初の打撃を吸収し、関税発表後の下げ幅を解消した。だがその結果、「一般的な指標で見ると、現在の株価は非常に割高」という年初の懸念が再燃している。ここ数年の大幅な株高を受けて一部のアナリストは2025年に入り、バリュエーションが高水準なため米経済に問題の兆しが浮上した場合に株価は特に崩れやすくなっている、との懸念を示していた。そして、株式の年初来リターンは債券をやや下回っている。株価が最近、反発したというのにだ。現在の株価がいかに割高で、それが今後のパフォーマンスにどのような影響をもたらす可能性があるかを検証する。株価収益率株式の投資尺度は数多くある。最もよく知られているのは株価収益率(PER)だ。PERの一般的な使い方は、株価を、企業の過去12カ月の利益、アナリストが予想する今後12カ月の利益、あるいは「景気循環調整後利益(過去10年間の年間平均利益をインフレ調整したもの)」と比較することだ。S&P500種指数全体で見ると、これら三つの指標はいずれも、投資家が1株利益(EPS)に対して、これまでよりも高い価格を支払っていることを示している。「株式益回り」対「米国債利回り」ウォール街のアナリストの間では、PERの逆数である「益回り」がよく使われる。パーセントで表示され、投資家が長期的に期待できる年間リターンの目安として使われることがある。投資家は株式益回りと米国債利回りを比較できる。これにより、超安全な米国債に比べてリスクが高い株式を保有することで、どの程度の見返りを得られるかが分かる。米経済学者ロバート・シラー氏のデータによると、景気循環調整後利益に基づくS&P500種指数の益回りは現在約2.8%で、インフレ調整後の10年債利回りを1.4ポイント上回っている。この差(「超過CAPE利回り」とも呼ばれる)は過去平均を大きく下回っており、投資家が株式を買い急ぐあまり、損失リスクに対する上乗せリターンの縮小を受け入れていることを示唆している。経験則株価がこれらの指標で割高に見えるからといって、近いうちに急落するというわけではない。米国の1920年代の好況期や90年代のITバブル期など、過熱相場は数年にわたって重力に逆らい続けた。とはいえ、これらの上昇は最終的に終わりを迎え、株価は数年にわたって下落した。その結果、バリュエーションと、株式の過去の長期(10年間など)リターンとの間には、かなり密接な関係がある。超過CAPE利回りなどの相対的バリュエーション指標は、特に株式と債券の相対的パフォーマンスを予測するのに優れている。超過利回りが小さいほど、その後10年間の債券に対する超過リターンは小さくなる傾向がある。一方、超過利回りが大きいほど超過リターンも大きくなった。益回りの欠点ニューヨーク大学スターン経営大学院のアスワス・ダモダラン教授は金融業界で「バリュエーションの第一人者」として広く知られている。同氏はS&P500種指数の標準的な益回りの欠点の一つとして、将来の利益成長を考慮しておらず、株式を事実上、毎年一定の利払いがある債券のように扱っている点を挙げる。相場がいつ変動するかを予測する上でバリュエーションが有効だという証拠は、ほとんど目にしたことがないという。ダモダラン氏は、株式のリスクプレミアム(債券利回りに対する上乗せリターン)について、独自の推計方法を考案した。これにはアナリストによる企業利益の成長予想が組み込まれている。現在、この計算方法は他の指標と比べて、株価がより妥当な水準にあることを示唆している。ただし同氏は、これは個別株の評価に使用するツールであり、指数全体の売買の指標としては使用していないと述べている。実践的活用投資戦略にバリュエーション指標を活用することを歓迎する向きもある。投資顧問会社エルム・ウェルスの創業者であるビクター・ハガニ氏は、バリュエーションは将来のリターンを予測する合理的な指標の一つだと指摘する。投資家はこれを活用することで、リスク許容度に合わせたポートフォリオを構築し、時間とともに調整を加えられるという。若年層なら株式100%でも良いかもしれないが、キャリアの中盤に差し掛かると、ほとんどの人はより変動の少ない投資を望むようになる、と同氏は述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がシラー氏のデータを分析したところ、税金を考慮しない場合、約60年前にS&P500種指数に1ドルを投資した投資家は、超過CAPE利回りが特に低い水準に落ち込んだ時に10年債に完全にシフトすることで、市場全体を上回るパフォーマンスを上げることができたことが分かった。例えば、超過CAPE利回りの月間平均が1.75%を下回った月の後に債券に投資し、それ以外は株式に投資した場合、実質年率リターンは6.6%となり、株式を保有し続けた場合より0.5ポイント高くなった。中国とインドはいずれも14億人の人口を抱えている。だが中国本土では「ルイ・ヴィトン」の店舗数が60店を超える一方、インドはわずか3店にとどまる。デザイナーブランドがインドで苦戦していることは、新たな成長市場を見つけることがいかに難しいかを示している。高級品業界の二大需要国である中国と米国では景気への不安が漂っており、新市場開拓の必要性が一段と高まっている。中国と米国の消費者を合わせると、高級品セクターの売上高の約半分を占める。だが中国の消費者需要は低迷が4年間続いている。バークレイズ・プライベート・バンクによると、中国では不動産バブル崩壊を受けて家計資産は30%減少し、高級品の購買意欲が低下した。米国の高級品販売は2022年初めにピークを付けた後、減少傾向にある。昨年終盤に見られた消費の緩やかな回復は関税戦争によって芽を摘まれた。売上高で世界最大の高級ブランドグループ、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは、1-3月期(第1四半期)に米国での売上高が前年同期比3%減少したと発表した。同社は中国の数字を個別に公表していないものの、アジアでの売上高は減少率が1割を超えた。2025年は高級品業界にとって失われた1年となる公算が高まっており、世界の売上高は2%減少すると予想されている。ブランド各社と株主は20年にわたる安定した年率6%の成長に慣れっこになっていた。このため、当然ながら次の有望市場を見つけようと躍起になっている。だが高級ブランドが中国と米国の消費者への依存度を低下させることは簡単ではない。高級ブランドの経営者が自社製品の理想的な市場を一から構築できるとすれば、その地域経済は急成長を遂げているはずだ。そこでは非常に裕福な消費者層が形成される。バーンスタインのアナリスト、ルカ・ソルカ氏は「(高級品ブームに必要な)要素は常に同じだ」とし、「富を蓄積し続ける上位層の消費者グループは、大衆と一線を画したいと考えて高級品を購入する」と語る。ただ、富の格差が広がりすぎるのは望ましくない。中間層の消費者も裕福になると、一部は周囲と張り合ってデザイナーグッズを購入しようとする。上位ブランドは超富裕層向けのイメージがあるが、世界の高級品売上高の50%以上は、高級品への年間支出が2000ユーロ(約33万円)を下回る中間層数億人の購買によるものだ。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のマネジングディレクター、フィリッポ・ビアンキ氏は「二つの市場は共生関係にある」と話す。支出は超富裕層ではある程度安定している一方、「下位半分ではGDP(国内総生産)や人々の給与の動向に左右される」という。これは、中国が高級品業界にとって特別な市場になった理由と関係している。中国経済は2009年から19年にかけて年平均8%成長した。中国で富裕層がさらに豊かになり中間層が拡大するにつれ、いずれのグループもより高い社会的地位を示すために欧米の高級品に目を向けた。UBSによると、世界の高級品売上高に占める中国人顧客の割合は2000年には1%だったが、現在では約4分の1となっている。中国では急速に都市化も進み、高級ブランドは数千万人の都市住民に向けて商品を効率的に宣伝し、販売できるようになった。また、中所得層が超富裕層に追いつこうとする中でステータスへの欲求が強まった。一方、インドでは都市部に暮らす人口の割合は3分の1程度に過ぎない。高級ブランド業界のアナリストの間ではインドに対する見方が大きく分かれる。インドは数年にわたり世界でも有数の経済成長を遂げており、シャネルのハンドバッグやカルティエのブレスレットへの購入意欲が中間層で高まるのは時間の問題と予想する高級ブランド企業もある。だがインド市場はこれまでのところ期待に応えていない。個人主義が強い文化ではないことや、衣料品や宝飾品の現地ブランドの存在感が大きいことなどがその原因として挙げられている。コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーのシニアパートナー、フェデリカ・レバト氏によると、インド国内での高級ブランドの売上高は10億ドル(約1500億円)で、中国本土の450億ドルを大きく下回る。業界各社の販売にとって小売りインフラは重要な要素となる。インドでは高級ブランドは現在、五つ星ホテルのロビーで商品を販売している。だがロンドンのボンドストリートやニューヨークの五番街に匹敵し、旗艦店を開設できるような商業地は主要都市にはまだ形成されていない。「The Road to Luxury(ラグジュアリーへの道)」の共著者であるアショク・ソム氏によると、インドでは人口14億人に対し、高級ショッピングモールは8カ所しかない。また輸入関税が高水準であり、有名デザイナーのバッグなどの商品価格には約50%が上乗せされる。このため、富裕層は国外で高級品を購入する傾向がある。インドの中間層が国内で高級品を大量に購入し始めない限り、高級小売り分野への投資は活発化しないとみられる。これがさらに消費の足かせとなっている。欧州の高級ブランドは地元の消費を喚起するという手もあるものの、欧州の消費者はぜいたくを楽しむ気分ではない。バーンスタインのソルカ氏は「中国や米国と比べ、欧州経済は長年停滞してきた」とし、「消費者は『今日たくさん使っても、明日はもっと豊かになれる』と思える場合にしか高級品を買わない」と話す。高級ブランド各社が注目している市場にはサウジアラビアも含まれる。同国では今後10年間で50万平方メートルの高級小売りスペースが開発される予定となっている。地元の人々はロンドンやパリよりも自国で高級品を購入するようになり、また、消費が旺盛な外国人や観光客が流入してくるという楽観的なシナリオが描かれている。たとえそれが計画通りに進んだとしても、サウジアラビアの高級品売上高はドイツと同規模にとどまるとボストン・コンサルティング・グループは予測している。中国と米国に代わる有力な市場が見当たらない中、ブランド各社は成長の再加速に向け、両市場の中間所得層の顧客を呼び戻そうとするかもしれない。ベインのリポートによると、高級品業界は2022年以降に5000万人の顧客を失っており、その一因は、大幅な値上げによって商品が多くの顧客の手の届かないものになったことだった。イタリアの高級ブランド「グッチ」の米国ウェブサイトでは、レディーススニーカーの価格は最近は最も安いもので790ドルだった。インターネットアーカイブ「ウェイバックマシン」によると、2020年には550ドルで販売されているものもあった。成長を巡る高級ブランド業界の問題解決の鍵を握るのは、おそらく新たな新興国市場ではない。ブランド各社が真に必要としているのは、米国と中国における中間層の消費回復だろう。●ロシア、ウクライナ、中東情勢トランプ米大統領は先週の中東歴訪の際、サウジアラビアの首都リヤドでシリアのシャラア暫定大統領と会談し、イスラエルが「スーツを着たテロリスト」と呼ぶシャラア氏と握手を交わして「彼には可能性がある。真のリーダーだ」と持ち上げた。イスラエルのネタニヤフ首相の孤立をこれほどくっきりと映し出す光景はこれまでなかった。わずか4日間でサウジ、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)を回ったトランプ氏の今回の歴訪は、利益目的の投資で彩られた単なる外交ショーではなかった。地域の情報筋3人と西側外交筋2人は、「抵抗の枢軸」と呼ばれる親イラン勢力が崩壊したことを背景に中東でスンニ派主導の新たな秩序が台頭したことを決定づけるもので、イスラエルは脇に追いやられたとの見方を示した。ガザでの停戦を拒否するイスラエルの姿勢に対して米政府がいら立ちを強める中、トランプ氏は中東訪問でネタニヤフ氏に対して明らかに冷淡な態度を取っていたという。ネタニヤフ氏は今年1月のトランプ氏の大統領就任直後、最初に訪米した外国首脳だったが、立場は一変した。複数の情報筋によると、トランプ氏の態度が示すメッセージは明確だった。イデオロギーから距離を置き、成果を重視するトランプ流中東外交のビジョンにおいて、ネタニヤフ氏はもはや自身の右派寄り政策に対して米国から無条件の支援を当てにできないとの見方が出ている。ジョージ・W・ブッシュ政権下で中東担当国務次官補を務めたデービッド・シェンカー氏は「トランプ政権はネタニヤフ氏に非常にいら立っており、その不満は表に出ている。トランプ氏らは取引重視の姿勢が非常に強く、ネタニヤフ氏は今、彼らに何も与えていない」と述べた。情報筋によると、米国がイスラエルを見捨てることはない。イスラエルは今も米国にとって重要な同盟国で、議会も超党派で支援している。しかしトランプ政権は、米国は中東において独自の利益を有しており、それを妨げるネタニヤフ氏を快く思っていないというメッセージを伝えたかったのだと、情報筋は解説した。米政府の不快感を強めているのは、ネタニヤフ氏がガザでの停戦をかたくなに拒否していることに加え、核開発問題を巡る米国とイランの協議にも反対しているからだと、事情筋は証言した。中東と欧米の情報筋6人によると、トランプの中東歴訪以前から米国とイスラエルの間には緊張が高まりつつあった。発端はネタニヤフ氏が4月に再び訪米し、イランの核施設への軍事攻撃への支持をトランプ氏に求めたところ、同氏が外交的解決の道を選択していたことだった。ネタニヤフ氏は会談の数時間前に初めてこの方針を知り、完全に不意を突かれた。トランプ氏はその後の数週間でイエメンのフーシ派との停戦を宣言し、シリアのイスラム主義指導部と和解。さらには中東歴訪でイスラエルを意図的に迂回し、これまで長期にわたり強固だった米イスラエル関係に亀裂が生じたことが明らかになったと、複数の情報筋は述べた。米シンクタンク、ワシントン近東政策研究所のデービッド・マコフスキー特別研究員は「米国とイスラエルはもはや大きな問題に関して、トランプ政権の最初の100日間のようには足並みがそろっていないように見える」と述べた。<分断の象徴ガザ>トランプ氏は選挙運動中、ガザでの停戦と人質の解放を大統領復帰前に実現したいと述べていた。だが政権発足から数カ月が経過したが、ネタニヤフ氏は停戦要請を無視し続け、むしろ攻勢を拡大。1年7カ月に及ぶ紛争の出口戦略や戦後計画を一切示していない。トランプ氏が今回の中東訪問を通じて和平仲介者としてのイメージを確立し、ガザ戦に終止符を打つ合意を発表すると期待する声もあったが、実現しなかった。それどころかネタニヤフ氏はイスラム組織ハマス壊滅という目標に固執し続けている。トランプ氏の中東訪問の終盤の16日、イスラエルはガザで新たな攻勢を開始。同氏は重要課題として、1期目にイスラエルとアラブの関係正常化を仲介した「アブラハム合意」の拡大を目指しているが、これもネタニヤフ氏の強硬姿勢によって行き詰まっている。トランプ氏自身は、公の場ではイスラエルとの亀裂を否定している。ただその一方で、ネタニヤフ氏抜きで政策を進めており、自己の利益をむき出しにして、サウジを中核とした裕福なスンニ派諸国との関係再構築に向けて米国の外交方針を転換させている。ある中東の高官は、今回の訪問がサウジをスンニ派アラブ世界の指導的立場に押し上げたと指摘した。対照的にシーア派の代表的勢力であるイランはイスラエルからの攻撃で勢いを失っている。「以前はイランが(中東の)主役を務めていたが、今やサウジが経済、資金、投資という別の手段で台頭してきた」という。<スンニ派の台頭>新たな中東秩序はサウジ、カタール、UAE主導で形作られつつある。これら湾岸諸国はイランや親イラン勢力からの攻撃に備えて高度な兵器を手に入れ、米国から最先端半導体や人工知能(AI)技術を確保することを強く望んでおり、外交政策と一族の利益との関係が曖昧になりがちなトランプ氏なら手を組めると見定めている。中東訪問の2カ国目であるカタールでトランプ氏は豪華な装備のボーイング747型機を提供され、君主にふさわしい豪華なファンファーレで歓迎された。トランプ氏は式典で、ハマスに多額の資金援助を行ってきたカタールを「イスラエルの人質危機解決に向けて努力している」と称賛。この発言は、カタールをハマスの資金源とみなすエルサレム当局者の神経を逆なでした。米政府の推計によると、トランプ氏の今回の中東訪問で米経済向けに2兆ドル超の投資が確約された。ロイターの集計によると総額は約7000億ドル近くだ。トランプ氏はサウジで1420億ドルに及ぶ過去最大規模の武器契約に合意。同時にイスラエルとの国交正常化に関して「サウジ側が望むタイミングで進めてよい」と裁量を認めた。スンニ派諸国も外交課題への独自の取り組みを進めている。トランプ氏は今回の中東歴訪中にシリアへの制裁解除を突然発表したが、これはサウジの要請を受けたもので、イスラエルの反対を押し切った形だった。昨年12月にシャラア氏がアサド政権を打倒するまで、米政府は同氏に1000万ドルの懸賞金をかけていた。湾岸諸国は、イラン主導の「抵抗の枢軸」を構成するイエメンのフーシ派との停戦をトランプ氏が実現したことにも拍手を送っている。イスラエル国家安全保障会議でイラン・湾岸問題の元調整官を務めたヨエル・グザンスキー氏は「米国が地域の再編を目指す中で、イスラエルは今や、米国ばかりか国際社会にとって『邪魔者』になりつつある。アサド政権やヒズボラの崩壊、そしてガザ戦争終結の可能性という流れの中でイスラエルは障害になっている」と述べた。ネタニヤフ政権は今回のトランプ訪問について沈黙を守っているが、イスラエルのメディアでは最重要同盟国である米国との関係が損なわれつつあると懸念の声が相次いでいる。野党は旧来の同盟関係が再編されつつある中でイスラエルが脇に追いやられていると、ネタニヤフ氏を非難している。政界復帰を目指すベネット元首相はⅩで「中東では目の前で地殻変動が起きており、われわれの敵勢力はますます力を増している。だがネタニヤフ氏とその一味はまひし、無為無策で、まるで存在していないかのようだ」と厳しく批判した。ドナルド・トランプ米大統領が2期目の最初の訪問先をリヤドに決めたのは、単なる外交上のジェスチャーではなく、地政学的なステートメントだった。サウジアラビアにとって先週の訪問は、国際システムにおける同王国の中心性が高まっていることを力強く確認するものであり、ワシントンが同王国を地域の安定と影響力の重要な錨と見なし続けていることを明確に示すものだった。この訪問はまた、旧来の絆を再確認すると同時に、相互の利益と戦略的整合性に根ざした二国間関与のための現実的な枠組みの到来を告げるという、具体的な利益をもたらした。欧米のメディアで騒がれていることに反して、サウジとアメリカの関係は、しばしば描かれるような単純な意味での取引ではない。エネルギー安全保障、地域の安定、テロ対策など、何十年にもわたる戦略的連携の上に成り立っている。トランプ大統領の訪米が達成したのは、今日の多極化した世界の中で、このパートナーシップをリセットすることだった。トランプ大統領は外遊の出発点にリヤドを選んだことで、サウジアラビアが地域の力学と世界市場の両方に影響を与えるユニークな存在であることを認めた。これは、変貌を遂げた王国を認めるものだった。かつての受動的なレンティア国家はもうない。今日のサウジアラビアは積極的で改革主義的であり、自国の利益を明確にするために堂々と自己主張している。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の発案による「ビジョン2030」は、サウジアラビアの軌道を根本的に変え、完全な石油依存から、より多角的で競争力のある経済へと舵を切った。トランプ大統領の訪問と、それに同行したハイテク業界のトップリーダーを含むハイレベルのビジネス・防衛代表団は、アメリカがこの新しいサウジアラビアを顧客ではなくパートナーとして見ていることを確認した。今回の訪問で最も変革的で前向きな成果のひとつは、人工知能にスポットライトが当てられたことだ。最も重要な発表のひとつは、AMDとサウジアラビアの合弁事業で、急速に拡大する同王国のデータインフラをサポートするハイエンドAIチップを供給することだった。このパートナーシップにより、サウジアラビアは世界的なAI競争の最前線に立つことになり、次の世紀を定義する技術において、能力だけでなくリーダーシップも構築する意向を示している。この取引はまた、サウジアラビアがイノベーションの消費者から、その生産者、実現者へと進化していることを反映している。AMDとのパートナーシップは、チップ以上のものであり、データセンター、人材パイプライン、研究機関、地域のイノベーション・ハブといったエコシステムを構築するものである。そうすることで、サウジアラビアは資本の供給国として、また先端技術投資の目的地として、その地位を確立しようとしている。このイニシアティブに伴い、より広範な経済統合が行われた。半導体、グリーン水素、フィンテック、観光インフラなど、さまざまな分野で主要な投資協定が発表された。これらの取引は、資本が双方向に流れ、サウジアラビアが世界的な投資家としてだけでなく、世界で最もダイナミックな新興投資先の1つとしてますます見られるようになった、成熟しつつある経済関係を表している。安全保障協力は、常に二国間関係の礎石であり、改めて強調された。武器売却が話題になることが多いが、真の話題は国防の自給自足へのシフトだ。今回の訪問で発表された合意には、技術移転、共同生産イニシアティブ、より機動的な調達枠組みなどが含まれる。サウジアラビアは単に武器を購入しているのではなく、能力、インフラ、国内の専門知識を構築しているのだ。これはサウジの広範な戦略の一部であり、不安定さを増す地域で信頼できる抑止力を維持する一方で、単一の外部パートナーへの依存を減らすというものだ。トランプ政権はこのニュアンスを理解しているようで、それに従って米国の防衛政策を調整している。協力は継続されるだろうが、サウジの主権と戦略的自主性を尊重する条件でだ。サウジアラビアの外交的影響力は、地域ダイナミクスの変化の中にある今回の訪問のタイミングによって強化された。トランプ大統領の出席は、中東における中心的な召集機関としてのリヤドの役割を強化した。サウジアラビアの特使団が地域の近隣諸国と建設的に関与し、紛争を管理し、対話を促進している今、トランプ大統領の支持、特に皇太子のシリア制裁解除の要請に対する肯定的な反応は、この地域がリーダーシップを求めるとき、サウジアラビアがワシントンの最初の呼びかけ相手であり続けることを強調した。今回の訪問は、イラン、海洋安全保障、非国家主体に関する問題など、地域の脅威に関するリヤドとワシントンの連携強化に役立った。サウジアラビアは地域の緊張の平和的な解決を求め続けているが、安全保障の保証が必要であることに変わりはない。トランプ大統領の訪問は、サウジアラビアの広範な地域支援活動を支援しつつ、その安心感を提供した。正式な合意にとどまらず、今回の訪問には象徴的な価値があった。特にサウジアラビアが国際的なイメージの再定義を進めている中で、オプティックスは重要だ。サウジアラビア王国はもはや単なる商品輸出国ではなく、野心的で革新的、そして文化的活性化を目指す拠点なのだ。リヤドで米国大統領を迎えることは、サウジアラビアがこの地域の単なるプレーヤーではなく、将来の中東の重要な立役者であることを示すものだ。要するに、トランプ大統領の2025年訪問は、サウジアラビアが最も望んでいたもの、すなわち戦略的価値の再確認、経済的検証、そして世界に向けて新たなアイデンティティを発信するプラットフォームを提供したのである。それは、サウジアラビアの戦略的価値の再確認であり、経済的な検証であり、世界に向けて新たなアイデンティティを発信する場であった。それは、利害が重なり合う(しかし同一ではない)2つの主権国家間の、再調整されたパートナーシップを反映したものだった。そして、大国間競争と地域再編の新時代において、サウジアラビアはジュニア・パートナーとしてではなく、自信に満ちたかけがえのない同盟国としてこの訪問から立ち去ったのである。11日前、トランプ米大統領がウクライナでの30日間の停戦を呼びかけ、ロシアへの新たな制裁を警告したことで、欧州の指導者らは希望を抱いた。しかし、19日に行われたロシアのプーチン大統領との電話会談で、その期待は裏切られたことが明らかになった。プーチン氏との2時間に及ぶ電話会談後、トランプ氏は自身のSNSで「ロシアとウクライナは、即時に停戦に向けた交渉を開始する」と投稿。ただ、米国の関与は見られず、制裁の警告も、期限に関する要求も、プーチン氏に対する圧力もなかった。トランプ氏は電話会談後に欧州各国の指導者らと連絡を取ったが、すでに幾つかの政府から失望の声が上がった。数カ月にわたりプーチン氏を和平合意に導けなかったことを受け、トランプ氏が戦争終結への取り組みを放棄し、ウクライナとその同盟国を見捨てるのではないかと欧州各国は危惧している。欧州高官の1人が非公開協議だとして匿名を条件に語ったところによると、トランプ氏が外交努力から手を引こうとしていることを各国指導者は懸念しているという。また、別の高官は、トランプ氏は制裁を科すつもりがないことに加え、自らの停戦呼びかけからも退いていることを明確にしたと語った。米ワシントンに本部を置くシンクタンク、ジャーマン・マーシャル財団の「ジオストラテジー・ノース」プログラムのマネジングディレクター、クリスティン・ベルジナ氏は「プーチン氏が自身および自国軍にさらなる時間を稼いでいるという、より長期的なシナリオに戻ったようだ」とし、「プーチン氏が新たな機会を得た一方、停戦や解決はますます遠のいているように見受けられる」と話した。●その他エマージング●プロファイ、インフラ、自然災害●その他米国の企業は競うように人材を獲得してきたが、最近は彼らについて厳しい発言をしている。経営者が会社で最も価値のある財産として労働者を称賛していたのはそう昔のことではない。十分な仕事もないのに採用していた経営者もいたほどだ。しかし経済に大きな懸念が生じた今、経営者は容赦なく「もっと頑張れ」「文句を言うのも大概にしろ」「まだ仕事があることに感謝しろ」と従業員に伝えている。「ワークライフバランスはあなたたちの問題だ」。補正下着ブランド「SKIMS」の共同創業者で、衣料品ブランド「グッドアメリカン」の最高経営責任者(CEO)であるエマ・グリード氏は今月こう述べた。また、最近1000人超の人材削減を行ったスターバックスのブライアン・ニコルCEOは、残された管理部門の従業員はもっと頑張って「この会社が成長するかどうかに責任を持つ」必要があると述べた。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOは内部会議で、出社義務を不満に思う従業員に対してどうでもいいと激しい口調で語った。「こんなことはもううんざりだ」とダイモン氏は述べた。「コロナ流行以降、私は週に7日働いている。出社しても誰もいやしない」企業はホワイトカラーの労働者を削減しており、経営者の発言の変化は力関係の変化を示す。仕事が見つかりにくくなる中、多くの労働者は特典を失い、不満は無視されている。ウーバーは先月、全社会議を開催した。1カ月間の有給長期休暇の取得要件を勤務5年から8年に変更したばかりだった。週2日だった出社義務を3日以上に引き上げたことについても不満の声が上がった。ダラ・コスロシャヒCEOは、これらの変更に不満がある社員は現状を受け入れるべきとの姿勢を示した。「これら変更の一部に不満が出るであろうことは承知している」とコスロシャヒCEOは述べた。「これはわれわれが取ると決めたリスクだ」。同氏の発言は最初にCNBCが報じた。経営者の従業員に対する強気な発言はどこまで許されるのだろう。2023年に炎上した例を見てみよう。家具会社ミラーノルのアンディ・オーウェンCEOがビデオ会議で、ボーナスを心配する従業員に「同情を求めずに前に進む」ように言うと、発言はたちまち拡散。メディアに大きく報じられ、労働者は反発した。CEOはすぐに謝罪し、発言は無神経だったと述べた。一方、ウーバーの全社会議の後、最高人材活用責任者(CPO)のニッキ・クリシュナムルティ氏は、不満を表明した際に敬意を欠いた態度を取った一部の従業員と話をすることを明らかにした。労働者は新たな権力の力学を感じ取っている。最近までテクノロジーサービス企業で働いていたドニー・ドンセルマンさん(47)もその一人だ。テクノロジー関係の新しい仕事に応募しているドンセルマンさんは、多くの企業が応募者に非常に多くの業務を担当させたがっていることに気づいた。一つの職で「三つの仕事」をこなすことが求められているという。「どの企業もそれを望んでいる」とドンセルマンさんは話した。ケンタッキー州レキシントン近郊に住むドンセルマンさんは仕事を探す際、企業の文化を調べるようにしている。経営者たちの高圧的な発言が気になるからだ。「彼らは人々を怖がらせているだけだ。それでいい結果は得られない」ニューヨーク大学の客員教授(応用心理学)でエグゼクティブコーチのマイケル・マッカーチョン氏によると、経営者のぞんざいな発言の背景には、従業員と経営幹部の間の認識のずれがあるという。従業員の中には、労働力が不足し、退職者が急増していたおかげで要求を言うことができた2021年のときのように動いている人もいると、マッカーチョン氏は指摘する。だが今は経営者が世界的な貿易戦争と消費意欲の低下に直面し、より多くの従業員に逆境に耐えるよう求めなければならないと感じている。「これは現実主義の問題だ」とマッカーチョン氏は言う。連邦政府職員の削減に取り組むトランプ大統領と大統領顧問で富豪のイーロン・マスク氏が、こうした強気ムードに一役買っている。「代わりはいくらでもいる」。トランプ氏は大統領就任後まもなくこう話した。マスク氏は2月、連邦職員に対し、前週に行った仕事をメールで報告するよう要求したことについて、職員がちゃんと仕事をしたか確認するためだったと述べた。生成AI(人工知能)の進歩も関係している。ショッピファイのトビ・リュトケCEOは最近、従業員に対し、その仕事がAIにできないと管理職が証明できなければ、新規採用を行わない述べた。AIをもっと利用しなければ悪い結果を伴うと従業員にほのめかす経営者もいる。「AIが仕事を奪いにやって来る。私の仕事もだ。これは警鐘だ」。フリーランス向けのマーケットプレース「ファイバー」のミハ・カウフマンCEOは先月、従業員宛てのメモにこう記した。「目が覚めず、新しい現実をすぐに理解しない人は、残念ながらおしまいだ」スタンフォード大学のチャールズ・A・オライリー教授(経営学)は、従業員にはまたいつか良い時が訪れると話す。「市場が好転し、雇用機会が十分にあれば、CEOは従業員がどれだけ大事かをもっと語るようになり、従業員もその恩恵を受けるだろう」とオライリー氏は話した。だがしばらくは、管理部門の社員は少ないほうが会社を効率的に経営できると言う経営者もいる。デートアプリのヒンジやティンダーを運営するマッチ・グループは8日、管理職を大幅に削減すると明らかにした。管理職をおよそ5人に1人減らす予定で、スペンサー・ラスコフCEOは投資家に対し、経費を削減し、製品に集中するため組織を変更する取り組みを強化していると述べた。「チームにハッパをかけた」とラスコフ氏は話した。●市況(ChatGPTによる要約版)### ■為替市場* **ドル下落**:米国債の格下げ(ムーディーズが「Aaa」→「Aa1」)や貿易摩擦の懸念により、ドルは円・スイスフラン・ユーロなどに対して1週間ぶりの安値を記録。* **ドル/円**:一時144.665円まで下落、5月8日以来の安値。* **ユーロ/ドル**:0.6%上昇し、1.1232ドル。* **ポンド/ドル**:英国とEUの関係見直し合意により、0.6%上昇し1.3355ドル。### ■債券市場* **利回り上昇**:ムーディーズの格下げや、トランプ前政権の減税政策による債務拡大懸念が背景。* **10年国債利回り**:3bp上昇し4.469%、一時4月以来の高水準に。* **30年債利回り**:3.7bp上昇し4.934%、一時5.037%まで上昇。### ■株式市場* **ほぼ横ばい**:格下げの影響でセンチメントが弱まったが、S\&P500は6連騰。* **セクター別**:ヘルスケアや公益事業などが上昇、一方でエネルギーなどが下落。* **個別銘柄**:* TXNMエナジー:ブラックストーンによる買収報道で7%上昇。* ノババックス:ワクチン承認で15%急騰。### ■商品市場* **金**:安全資産として買われ、1.45%上昇(1オンス=3233.50ドル)。* **原油**:イラン核合意期待の後退などから小幅上昇。WTI6月物は62.69ドル。全体として、米国の信用力低下に対する警戒が為替・債券・株式市場に影響を与え、安全資産への資金流入が目立ちました。### ■ロンドン株式市場* **FTSE100種指数**:3日続伸し約2か月ぶり高値。英国とEUの新たな協定締結(安全保障や貿易規制緩和など)が好感された。* **FTSE250種指数**:0.05%下落。ムーディーズによる米国債格下げで慎重ムードも。* **貴金属株指数**:金価格上昇を受けて1.58%高。* **個別銘柄**:* **ディアジオ**:コスト削減発表も0.9%安。### ■欧州株式市場* **全体**:小幅続伸。旅行関連株が好調。DAXは終値で過去最高。* **背景要因**:米中関係改善への期待やECB利下げ観測。* **旅行関連**:ライアンエア4.8%高、ルフトハンザ2.6%高。* **金融株**:BNPパリバが自社株買い発表で3.4%高。* **高級品株**:中国の小売データ悪化で売り。LVMH、モンクレールなどが下落。### ■ユーロ圏債券市場* **序盤**:米債利回り上昇に追随し上昇。* **終盤**:米中貿易への懸念強まり、安全資産買いで利回り低下。* **ECB動向**:* ドイツ10年債利回り:1bp低下の2.576%* ドイツ2年債利回り:1.5bp低下の1.84%* ECB関係者が「政策金利は2%をやや下回る水準に下げる可能性」と発言。* **イタリア10年債利回り**:1bp低下の3.596%、独伊格差は99.7bp。全体として、英国とEUの協定や欧州中央銀行の利下げ期待が株式市場を支える一方で、米国債格下げと米中摩擦が慎重姿勢を呼んでいます。
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備忘録(2025/5/16-18)●海外企業決算●海外企業ゼネラル・モーターズ(GM)はこれまで電気自動車(EV)に全力を傾けてきたが、今では米国で最も積極的なEV義務化の施策を覆すべく急いでいる。GMは先週、ホワイトカラー従業員数千人に送った電子メールの中で「あなたの助けが必要だ」と書いた。「市場の現実に即さない排出基準は、消費者の選択肢と自動車の買いやすさを損なうことで、私たちのビジネスの深刻な脅威となる」米国でEV販売最大手の一つであるGMは、同社が提案する論点に基づいて上院議員に働きかけるよう、従業員に推奨している。目的は「2035年までにガソリン車とトラックの新車販売を禁止する」という2022年のカリフォルニア州の規制を無効にすることだ。この規制はその後、同州以外に11州が採択している。上院は早ければ今週にも、カリフォルニア州が独自により厳しい自動車排出基準を設定できるようにする権利放棄を撤回する投票を行う可能性がある。GMは、2035年までにほぼすべてのガソリン車の販売を終了するという独自の社内目標を設定し、当初はカリフォルニア州の目標を支持する一方、全米一律の基準を提唱していた。しかし、EV市場は一転した。3年前、米国の自動車メーカーはEV需要に追いつけなかったが、今ではその販売に陰りが見え始めている。値引きはなくなり、自動車購入者は低価格の代替品を求め、議会は長年にわたってEV販売の原動力となってきた税控除を撤回しようとしている。アメリカのEV市場のリーダーであるカリフォルニア州でさえ、販売台数は州独自の目標を下回っている。同州の規制では、2026年にはゼロエミッション車の販売台数が全自動車販売台数の35%を占めることになっている。現在、同州の自動車市場に占めるEVの割合は20%だ。調査会社モーター・インテリジェンスの推計によると、4月のEV販売台数は5%減少したが、米国自動車市場全体では10%増加した。現在、EVは米国市場の7%を占めている。GMは、2024年半ばまでに40万台のEVを製造するという自主目標を断念した。昨年には新型ビュイックのEV計画を延期し、EVトラック工場の開設を延期すると発表している。フォード・モーターや他の自動車メーカーも同様に計画を縮小している。一方、GMはEVに多額の投資を続け、新モデルを次々と発表しているという。GMの広報担当者によると、同社は以前から、米国は排ガス規制を一本化すべきであり、いかなる規制も市場の需要を考慮に入れるべきだと主張してきた。「GMは顧客の選択肢を重視しており、市場で最も優れた幅広い車種ラインアップを提供することに引き続き注力していく」と広報担当者は述べた。広報担当者によると、GMが従業員の行動を促したメールは、ミシガン州と影響を受ける州の従業員に送られた。ミシガン州では、何人かの議員事務所の職員がGMの従業員から電話を受けたと述べている。GMは、クライスラーの親会社であるステランティス、フォード、トヨタなどの自動車メーカーを代表する自動車技術革新同盟と共に、「こうした達成不可能な規制を課されることで避けられない雇用と製造業への打撃を防ぐ」よう議会に呼びかけた。●日本企業振り返れば、グローバリゼーションのピークは2018年1月24日だったのかもしれない。当時、日産自動車、ルノー、三菱自動車の3社連合を率いていたカルロス・ゴーン氏はスイス・ダボスでブルームバーグテレビジョンに出演し、政権1期目のトランプ米大統領による洗濯機および太陽光パネルへの関税賦課について「保護主義が著しく急激に強まるような事態にはならない」と述べた。販売実績で世界最大の自動車グループになったことに自信を深め、単一企業体制への統合を視野に入れていた同氏にとっては懸念材料ではなかったようだ。しかし、地殻変動はすでに始まっていた。日産の社内では数週間もたたないうちにゴーン氏の逮捕につながる内部調査が開始され、19年には日本からの劇的な逃亡劇が展開された。その後、連合はフランスと日本の分離を試みるも、ほぼ10年にわたり成功していない。こうした中、日産が今週発表した24年度決算では6709億円の当期純損失を計上。同時に車両生産工場について27年度までに現在の17から10に削減すると確約した。世界有数の自動車メーカーだった日産は終焉(しゅうえん)に近づいているのかもしれない。投資家らも同様の判断を下している。日産のPBR(株価純資産倍率)は約0.25倍で推移しており、社債も主要格付け3社全てからジャンク級と評価されている。時価総額は1兆3000億円程度とネットキャッシュの約1兆5000億円を下回っている。仮に1975年から日産株を常に購入し続けていた場合、現在は含み損を抱えていることになる。ホンダとの共同持ち株会社設立交渉が頓挫したことなどを受けて辞任した内田誠氏の後任として最高経営責任者(CEO)に就任したイバン・エスピノーサ氏は、わずか数カ月で再建計画を打ち出した。日産の再建計画は過去5年間で3度目だ。もっとも、この計画は内田氏が6カ月前に発表した前回の取り組みの焼き直しに過ぎず、出血を止めるには不十分だろう。この問題を解決する機会は、内燃エンジンの黎明(れいめい)期以来、世界の自動車業界が最も劇的な変革を遂げていた過去7年間にあった。しかし日産はその期間、ゴーン氏追放を発端とする社内での対立や混乱の対応に追われていた。現在でも2024年度決算短信でゴーン氏の事件を巡る記述が2ページにわたって記されている。その結果、日産の事業は過去からいまだに前進できていない。ゴーン氏は18年の「世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)」で世界最大の電気自動車(EV)メーカーを率いていると主張していたが、日産のEV販売はそれ以降、ほとんど伸びていないのが実情だ。エスピノーサ氏が打ち出した中国事業の再建計画も悪い冗談のように思える。中国市場での販売は19年以降でおよそ半減している。エスピノーサ氏はプラグインハイブリッド車(PHV)への注力により立て直そうとしているが、日産はあまりにも後れを取っており、存在感はほとんどない。日産が中国で昨年販売したEVおよびPHVの台数は1万2641台に過ぎず、中国市場でのシェアは0.1%にも満たない。米自動車メーカーは、過去10年の混乱を自国市場への撤退で乗り切ったが、日産にそれは通用しない。依然として過度なグローバル体制が現在の保護主義的な競争環境への対応を難しくしている。名目上は日本企業であり、従業員の45%、製造拠点の約35%を国内で占めているにもかかわらず、国内販売はわずか16%だ。売上高の半分以上は北米で、国内工場で生産された車両の約30%が同市場に輸出されている。トランプ政権による25%の自動車関税は、この取引からの利益を完全に消し去るのに十分だ。ゴーン氏がもたらした1999年以降の日産の復活は、グローバリゼーションによる成功の象徴だった。ゴーン氏自身もダボスで毎年開催されるダボス会議に集まる億万長者「ダボスマン」の体現者とされていた。しかし、その裏でナショナリズムが消え去ることはなかった。日産の失墜には、純粋な事業の失敗に加え、日仏政府間の代理戦争的な側面も大きく影響した。競合企業にとっても、沈みゆく日産の姿を喜ぶ余裕はない。主要な自動車メーカーが自国市場に閉じ込められるような世界は、中国企業以外の主要メーカーにとって厳しいものとなる。中国だけが規模、生産技術、EV分野での技術的優位性を確保し、他を圧倒する可能性があるためだ。この猛攻を食い止める最良の方法は国境を越えて協力することだったが、グローバリゼーションによる成功の象徴だった日産の失墜は、その未来への希望を完全に消し去った。旧勢力が無駄な争いに明け暮れているうちに新たな強国が覇権を握っていくのが世の常だ。国家と同様、自動車メーカーにおいても、このパターンが再び展開されている。●トランプ関連●先進国中銀、金融当局欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのカザークス・ラトビア中銀総裁は16日、ECBの利下げが終わりに近づいている可能性があるが、不確実性が高く、事態が急変しやすいため、政策見通しも変わる可能性があると述べた。CNBCに「われわれは、おおむね(インフレが2%前後で落ち着くという)基本シナリオの範囲内にある」とし「この基本シナリオが維持されれば、すでにターミナルレート(金利の最終到達点)に比較的近いところにいると考えている」と発言。「あと2回の追加利下げは(可能かもしれないが)、重要なのは貿易交渉と貿易動向がわれわれをどこへ導くかを見極めることだ。当然、それに応じて行動する」と述べた。ECBのシュナーベル専務理事は利下げを停止すべきだとの考えをすでに示している。ECB理事会メンバーのビルロワドガロー仏中銀総裁は追加緩和の余地があると指摘している。 もっと見る市場は現在、6月5日の利下げを約90%の確率で見込んでいるが、その後は年内にもう1回の利下げしか織り込んでおらず、中銀預金金利が1.75%で利下げ打ち止めになる可能性を示唆している。ビルロワドガロー氏は、世界的な貿易戦争の激化が重要なリスクだが、ECBがユーロ相場に影響を及ぼすために金利を使うことはないと発言。そのようなことをすれば貿易戦争が通貨戦争になると述べた。同氏は16日付の複数の仏地方紙に掲載されたインタビューで「残念ながら貿易戦争のリスクはある。ただ、通貨戦争とは、各国が積極的に金利を活用して経済的優位を得ようとする状況を指す。現時点ではそうした状況にはない」と述べた。「現在の為替動向は経済予測の修正を反映している側面が強い」との認識も示した。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、ユーロが対ドルで最近上昇していることについて、トランプ米大統領の一貫性を欠く政策の結果であり、欧州にとっては好機だとの見解を示した。ラガルド総裁は「通常であればドルが大きく上昇するはずの不確実性の時期に、その反対が起きていることは印象的だ。ユーロは対ドルで上昇した」と指摘。「直感に反するが、金融市場の一部に見られる米国の政策に対する信頼喪失と不確実性によって正当化される」と仏紙ラ・トリビューン・ディマンシュに語った。ラガルド氏は17日に掲載された同紙とのインタビューで、「これは脅威というよりも、むしろチャンスだ」との見解をあらためて示し、欧州連合(EU)「首脳は深化プロセスを加速させるべきだ」と主張した。「米国で法の支配や司法制度、貿易ルールに対する疑問が生じ、不確実性が常態化し日々更新されている。その一方で、健全な通貨と独立した中央銀行を持つ欧州は、安定した経済・政治地域として正しく認識されている」と語った。ラガルド氏は、デジタルユーロと単一資本市場について触れ、「私がこの職に就いてからの6年間で見た中で最も力強いうねりが、両分野において起きている」と指摘。「銀行分野で調和のとれた監督体制を実現したように、同様のことを達成する必要がある」とした。今年に入ってから投資家のドル離れが続いており、ブルームバーグが追跡する主要通貨すべてに対しドルは下落している。米経済に打撃を与えかねない関税政策の迷走や連邦準備制度の独立性に対する脅威など、米国の政策運営への懸念が理由だ。ECBのデギンドス副総裁も、欧州が統合努力を強化すれば、ユーロがドルの代替となる準備通貨になり得ると述べている。シュナーベル理事も17日、「ユーロの国際的役割をさらに強化するための歴史的な機会が訪れている」と強調した。トランプ氏による連邦準備制度への攻撃についての質問に対し、ラガルド氏は金融当局の独立性を脅かす行為への警鐘を鳴らした。「中央銀行の独立性は、国家あるいは国家群における金融の健全性にとって必須だ」と述べ、「財政当局に支配された中央銀行が過去にうまく機能した例はない」と指摘した。欧州経済の現状に関しては「全く悲観していない」と述べ、「雇用は維持されており、購買力は改善し、インフレは低下している。たとえ米政権の発表によって生じる不確実性が信頼感に影響し、回復ペースを鈍らせたとしても、消費と投資は上向くはずだ」と語った。●先進国経済指標米ミシガン大学が16日発表した5月の消費者信頼感指数(速報値)は50.8と、4月確報値の52.2から低下し、2022年6月以来の低水準となった。市場予想の53.4も下回った。一方、1年先の期待インフレ率は1981年11月以来の水準に急上昇し、トランプ米大統領が強硬に進める予測不能な貿易政策の経済的影響を巡る懸念が続いていることを示唆した。また今回の調査では、共和党支持者の意欲が大幅に低下していることが判明し、トランプ米大統領の支持基盤にさえ広範囲な関税政策への懸念が出始めていることが示唆された。共和党支持者の信頼感が低下したのは、トランプ氏が昨年11月5日の大統領選で勝利して以来初めて。FWDBONDSの主任エコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「消費者は明らかに不安を抱いており、行間から価格上昇だけが不安材料でなく、関税政策により数カ月以内に財(モノ)不足が発生し、多くの商品が入手不可能になる可能性が懸念されていることが分かる」と述べた。1年先の期待インフレ率は7.3%と、前月の6.5%から上昇。民主党・共和党のいずれも、短期的なインフレ率の上昇を予想した。長期的な期待インフレ率も4.6%と、前月の4.4%から上昇し、91年3月以来の高水準となった。共和党支持者の間で大幅に上昇した。消費者調査ディレクターのジョアン・スー氏は「関税政策について自発的な言及があったのは消費者の約4分の3に上り、前月の約60%から増加した」とした上で、「貿易政策を巡る不確実性は、依然として消費者の経済を巡る懸念事項となっている」と指摘。「信頼感は無党派層で小幅に上昇したものの、共和党支持者では7%低下した」と述べた。●金融市場、先進国トピックス米格付け会社ムーディーズ・レーティングスは、米国の信用格付けを最上位から引き下げた。世界で最も信用力の高い国債発行国の信認に一石を投じる象徴的な動きとなる。ムーディーズは16日、米国の長期発行体格付けと無担保優先債格付けを最上位の「Aaa(トリプルA相当)」から「Aa1(ダブルAクラス)」に1段階引き下げたと発表した。フィッチ・レーティングスとS&Pグローバル・レーティングに続き、世界一の経済大国がトリプルA格付けを失った。米国の債務と財政赤字の急増により、国際資本の投資先としての優位が損なわれ、政府の借り入れコストが増大するとの不安が格下げの動きに反映された。トランプ政権と米議会は、2017年に時限措置として成立した「トランプ減税」の恒久化を含む税制パッケージの協議を進めているが、歳出ペースの抑制は見通せず、格下げは逆風となり得る。グローバルな「関税戦争」の影響で米景気が減速すれば、政府支出の増加に伴い財政赤字がさらに拡大する恐れがある。ムーディーズは1年余り前、米国の格付け見通しを「ネガティブ」に変更したが、今回の格下げ後の見通しは「ステーブル(安定的)」とした。米連邦財政赤字は国内総生産(GDP)比6%超の年間2兆ドル(約291兆円)近くに膨らみ、総債務残高は経済規模を既に上回っている。同社は格下げの理由について「歴代の米政権と議会は、巨額の年間財政赤字と金利負担の増加傾向を反転させる措置で合意できなかった」と指摘。「米国が持つ経済・財政の著しい強さは認識しているが、これらの強みだけで財政指標の悪化をもはや完全に埋め合わせることはできない」と認識を示した。ムーディーズの発表後、米国債相場は下げを拡大し、10年国債利回りは一時4.49%に上昇。16日の時間外取引でS&P500種株価指数に連動する上場投資信託(ETF)の価格は0.6%下落した。ベッセント米財務長官は今月に入り、連邦財政が持続不能な軌道にあると警戒感を示した。下院歳出小委員会での証言で、「債務の数字は実に恐ろしい」と述べ、危機に陥れば「経済が急停止し、信用が消失する」と発言。「それが起きないよう力を注ぐ決意だ」と語った。ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、トレーシー・チェン氏は「今回の格下げは、投資家が米国債利回りの上昇を求める見通しを暗示する」と分析。過去にフィッチとS&Pが最上位から格付けを引き下げた際、米国の資産価格は反発したが、「米国債とドルの安全資産としての性質が幾分不確かになったとも考えられ、市場が異なる反応を示すかどうかまだ分からない」と見解を明らかにした。一方、トランプ政権1期目の国家経済会議(NEC)で勤務した経験を持ち、現在はSMBC日興セキュリティーズ・アメリカのチーフ米国エコノミストを務めるジョゼフ・ラボーニャ氏は、議会が重要法案に対応する中での今回の格下げについて、タイミングが「非常に奇妙だ」と疑問視する。GDP比100%という債務水準も世界的には「珍しくない」という。米国は先進工業国で成長率と1人当たりの生産性が最も高く、格下げは納得がいかないと同氏は主張した。ホワイトハウスはムーディーズによる米国の信用格付け引き下げを政治的決定だと強く非難した。スティーブン・チャン広報部長は、X(旧ツイッター)への投稿で、ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、マーク・ザンディ氏を名指しし、政権の政策を長年批判してきた人物だと糾弾した。「彼の『分析』を真に受ける者などいない。何度も誤りが証明されてきた」とチャン氏は強調した。ムーディーズ・レーティングスはムーディーズ・アナリティクスとは別組織だ。ザンディ氏に16日夜にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。日本国債市場で金利が高騰し、急激にイールドカーブ(利回り曲線)のスティープ(傾斜)化が起きている。とりわけ超長期ゾーンの上昇ピッチの速さは低金利に慣れ切った投資家の行動を変容させると共に、日本の金融政策や財政政策にも影響を及ぼす可能性がある。米国債に次ぐ約1137兆円規模の日本国債市場で、長らく安定していた金利が米国やドイツなど主要国を上回るペースで上昇し始めた。償還期間が長い年限ほど上昇傾向が鮮明で、30年金利の水準は既に10年債の約2倍に達し、40年に続き過去最高水準が目前と青天井の様相を呈する。金利急騰の背景にあるのは主要な買い手の不在だ。追加利上げを視野に入れる日本銀行は昨年から国債の買い入れを段階的に縮小。利回りの上昇で投資魅力は増しているが、大手生命保険会社など国内機関投資家は慎重姿勢を崩していない。流動性が乏しい超長期債は特に売り圧力にさらされやすく、評価損リスクへの警戒に加え、米国の関税政策を巡る不透明感も手控え要因となっている。みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは「イールドカーブのスティープ化は、単なるグラフ上の変化にとどまらず、金融政策と財政の潮流が転換期にあることを物語っている」と言う。日本で起きた金利形成の異変は金融政策にも影響を及ぼす公算が大だ。日銀は今後、景気を下支えするために追加利上げを見送るか、インフレ抑制を優先して利上げに踏み切るか、二者択一を迫られるためだ。急激な金利の上昇は、政府の財政運営にとっても足かせになる。主要先進国で最大の債務残高を抱える日本にとって、金利負担の増加は防衛費の拡充や財政出動の判断を難しくする。さらに、インフレ期待の高まりを反映するイールドカーブの傾斜化は、日銀の利上げ継続を後押しする材料ともなり得る。日興アセットマネジメントでチーフグローバルストラテジストを務めるフィンク直美氏は、超長期ゾーンの利回り上昇は「インフレ期待を日銀が過小評価すべきではないという明確なメッセージだ」と指摘。さらに、財政政策に対するメッセージにもなっており、市場は経済のプラス成長を維持する程度の支出は許しても、「過剰な財政出動は受け入れられないかもしれない」と話す。海外市場でも国債利回りは上昇しているが、日本の変化が目立っており、10年債と30年債の利回り格差は4月以降に約50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大。これは米国やドイツ、英国を大きく上回り、日本の10年債利回りは中国債を上回る可能性も出ている。30年債利回りは16日に一時2.985%と過去最高の3.03%に接近し、40年債は15日に3.47%と最高水準を更新した。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「30年債で3%、40年債では3.5%が上昇のめどだと思っていたが、いずれも通過点という位置付けになりつつある」との認識だ。足元の金利上昇は、遅れて企業向けの融資や個人の住宅ローンにも影響が広がる。長年現金や預金で資産を保持してきた家計にとっては、インフレ加速による資産価値の実質的な目減りも懸念材料だ。一方、銀行は預金と貸出金利のスプレッド(格差)拡大により、収益改善の可能性が高まっている。もっとも、超長期金利の急騰は一時的で、米関税政策をきっかけに世界的に混乱した相場が落ち着き、日銀が段階的な追加利上げを再開すれば、金利は安定に向かうとの見方もある。りそなアセットマネジメントの藤原貴志チーフファンドマネジャーは、超長期金利上昇の主因は米関税政策によるボラティリティーの上昇で流動性が低下したことだとし、「今がピークで、落ち着ついていく方向にある」と指摘した。足元の流れが続くかどうか、鍵を握るのは引き続き生命保険会社だ。大手生保は世界的な貿易摩擦や日銀の金融政策方針がより明確になるまで日本国債の購入を慎重に進める姿勢を維持している。保有債券を今売却した場合、損失確定リスクが高まることも二の足を踏む要因の一つだ。バークレイズ証券の為替債券調査部長の門田真一郎氏は「30年債の価格を安定させるには生保の買いが不可欠だが、明確な購入意欲は確認されていない」と分析する。第1四半期に日本国債の保有額を過去最大規模で増やしたと推計される海外投資家の動向が最近注目を集めたが、それでも国債市場での存在感は依然として限定的。長期的で安定的な買い手として存在感を発揮する状況には至っていない。野村証券の宍戸知暁シニア金利ストラテジストも、海外投資家や年金勢が「生命保険会社に代わるような安定的な超長期国債の買い手になることは考えにくい」との見方だ。償還額から新規発行額を差し引いた超長期債のネット供給額も増加傾向にあり、構造的に利回りの上昇圧力が続く可能性が示唆されている。みずほ証の大森氏は、日本はインフレや財政、世界の金利変動という中でバランスを取りながら、金融の安定維持に注意を払い、この荒波を乗り越えていくことになるだろうと述べた。格付け会社ムーディーズ・レーティングスは16日、膨らみ続ける36兆ドルの債務の持続性に懸念があるとして、米国債の格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に引き下げた。見通しは「安定的」とした。ムーディーズは主要格付け3社の中で最後まで最上位の「Aaa」を維持していたが、米国の財政赤字の拡大と利払いの増加を理由に2023年後半に見通しを引き下げていた。ムーディーズは「歴代の米政権と議会は、年間の巨額財政赤字と金利コスト増大の傾向を逆転させる措置で合意できていない」と指摘した。トランプ大統領の経済アドバイザーを務めた保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のスティーブン・ムーア氏はロイターの取材に「言語道断」とコメントした。「米政府が裏付けする国債がトリプルAでないとしたら、何がトリプルAなのか」と語った。ホワイトハウスのスティーブン・チャン広報部長はソーシャルメディアに投稿し、ムーディーズのエコノミストのマーク・ザンディ氏を批判。トランプ大統領の政敵だとした上で、「彼の『分析』を真に受ける者はいない。彼は何度も間違っていることが証明されている」とした。この日はトランプ大統領が推進する包括的な税制法案が下院予算委員会で採決されたが、21人の共和党議員のうち5人が反対票を投じ、重要な手続き上の障壁を乗り越えることができなかった。ムーディーズは、現在検討されている財政案によって義務的な歳出が複数年にわたり大幅に削減されるとは考えにくいとし、米国の財政状況は過去と比較して、また他の高格付け国と比較しても悪化する可能性が高いとの見方を示した。連邦政府の債務負担の対国内総生産(GDP)比は24年の98%から35年までに約134%に上昇すると予測した。民主党上院のチャック・シューマー院内総務は「ムーディーズの米国債格下げは、トランプ大統領と議会共和党に対し、財政赤字を拡大させる税制優遇策の無謀な追求をやめるよう警鐘を鳴らすもの」とする声明を出した。「残念ながら、期待はしていない」とした。ムーディーズによる格下げは、フィッチ・レーティングに続くもの。フィッチは23年8月、財政悪化が予想されること、政府の支払い能力を脅かす債務上限交渉が繰り返されていることを理由に、米国債の格付けを最上位から引き下げた。S&Pグローバル・レーティングは11年に引き下げている。ボストンカレッジのブライアン・ベスーン教授(経済学)は、「彼ら(共和党の議員)は財政赤字を削減軌道に乗せるような、信頼できる予算合意をしなければならない」と話す。ムーディーズの格下げを受け、終盤の債券市場で米国債は利回りが上昇した。ミシュラー・ファイナンシャルのマネージング・ディレクター、トム・ディ・ガロマ氏は、格下げのタイミングを予期していなかったとした。米国の信用格付けをムーディーズ・レーティングスが最上位から引き下げた。政府債務と金利負担の増大が問題視された。これに反応し、16日の米株相場は値下がりし、米国債利回りは上昇した。S&P500種株価指数に連動する上場投資信託(ETF)は時間外取引で1%下落。インベスコQQQトラスト・シリーズ1ETFは1.3%下げ、米国債先物はこの日の安値で取引を終了した。ムーディーズは米政府債務の拡大を格下げの理由に挙げており、世界で最も信用力の高い国債発行体である米国の信認に影を落とす格好となった。トランプ米政権の関税政策が経済見通しに既に重くのしかかっており、米国市場が直面する複合的リスクが今回の格下げでさらに増す。S&P500種指数は4月の急落から持ち直しているものの、企業・消費者の信頼感への関税の悪影響が今後数カ月の経済指標に表れる恐れがあり、多くのウォール街の専門家は株価の騰勢になお懐疑的だ。米国の格下げへの投資家や市場ウオッチャーの主な反応は次の通り。スチュワード・パートナーズ・グローバル・アドバイザリーのマネジングディレクター、エリック・ベイリー氏:これは警告サインだ。米株相場の歓迎すべき回復は、その後頭打ちとなりつつある。ムーディーズによる格下げは、過去1カ月の大幅高を受け、資金運用主体に利益確定売りを促すことになりかねないティグレス・ファイナンシャル・パートナーズのアイバン・ファインセス最高投資責任者(CIO):米国債は世界で最も安全な投資対象と見なされている。米国の信用格付けが引き下げられれば、同国がベンチマークであるという理由で、他の国・地域のソブリン債への影響はさらに悪くなる恐れがある。今後数週間で株式市場にどう影響するかまだ分からないが、最近の株高で警戒感が出てもおかしくないラウンドヒル・ファイナンシャルのデーブ・マッツア最高経営責任者(CEO)ムーディーズがついに格下げを正式決定したが、市場は米国の信用プロフィル悪化をしばらく前から察知していた可能性が高い。2011年8月のS&Pによる格下げの衝撃と異なり、財政の機能不全と関税リスクを市場が警戒する中での格下げであり、株価への影響は当初のヘッドラインが示唆するより抑えられたものになるかもしれないヘッジファンド・テレメトリーの創業者トーマス・ソーントン氏:米国市場全体にとって好ましい材料ではない。S&Pが11年にトリプルAから格下げした際は、既に不安定だった市場に衝撃を与えたが、今回は状況が異なる。債券市場ではこの日の終盤に利回りが上げており、一層急激な金利上昇こそ私が最も警戒してきたリスクだフランクリン・テンプルトンの副CIO、マックス・ゴクマン氏:財源の裏付けに乏しい財政支出は、議会で調整中の減税案も含め加速するばかりであり、米国債の格下げは驚くに当たらない。大口投資家のソブリンと機関投資家の両方が、米国債から他の安全資産に徐々に乗り換え始めることで、債務返済コストがじりじりと上昇を続けるだろう。米国債利回りが(長期金利が短期金利より大幅に上昇する)ベア・スティープナーの危険な悪循環に陥り、ドルへの下押し圧力が高まり、米株の魅力が低下することもあり得る。●ロシア、ウクライナ、中東情勢ドナルド・トランプ米大統領が4日間にわたる中東歴訪で、ペルシャ湾岸の君主国を重視する姿勢を示した。米国は数十年にわたり、イスラエルとの関係を同地域の中心に据えてきたものの、両国関係は少なくとも一時的には弱まった形となる。トランプ氏はサウジアラビア、カタール、そしてアラブ首長国連邦(UAE)の指導者らと交流を深める一方で、ここ数カ月で距離を置くようになったイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と今回は会わなかった。またトランプ政権は同氏が中東入りする前から、ガザで拘束されている最後の米国人人質の解放を巡り、イスラム組織ハマスと一方的に合意。イスラエルは蚊帳の外に置かれ、同国にとって予想外の展開となった。これらを背景に、米イスラエルは中東最大の火種を巡り、足並みが完全にはそろっていないことが浮き彫りとなっている。一連の動きは、トランプ氏とジョー・バイデン前米大統領との違いも際立たせている。バイデン氏はネタニヤフ氏に接近し、ガザでの戦争を停止させるための実りの少ない外交に数カ月を費やし、就任前には「のけ者の国家」と呼んだサウジアラビアとの関係修復に時間を費やしていた。イスラエルからの転換を巡っては、トランプ氏は今後これを戦術的なものにとどめるかが問われている。米国は依然としてイスラエルの最も近い同盟国である他、主要な武器供給国でもある。またガザでの戦争によって損なわれたとはいえ、米連邦議会はイスラエルを支持しており、いかなる政権にとっても両国関係を大幅に格下げすることは不可能に近い状況にある。トランプ氏は長年にわたり、ネタニヤフ氏とは用心深く関係を築いてきた。ネタニヤフ氏は2020年の大統領選でのバイデン氏の勝利を公に祝福。関係者らによれば、トランプ氏はこのことをまだ根に持っている。ただしアナリストらには現在の両氏の意見の相違について、長期的な対立が原因ではなく、トランプ氏のアジェンダが関係するものだと述べている。外交問題評議会の中東専門家、スティーブン・クック氏は、「意見の相違は実在し、緊張関係も実在する」と指摘。だが「今回イスラエルが訪問先から外れたことを大きな問題にしすぎている」とし、ネタニヤフ氏はトランプ氏とすでに2回会談している他、イスラエルの指導者らは米国のカウンターパートらと緊密な接触を保っていると述べた。一方で中東諸国の政府にとって、一時的なものであっても、自国への傾斜は歓迎すべきものとなっている。クウェート大学のペルシャ湾岸・中東問題専門家のベイダー・アルサイフ氏は、「米国への道はイスラエルを通じてしかないと考えていた湾岸諸国にとって、今や米国に直接アクセスできる道が開かれた。ナンバーワンの人物にアクセスできる。彼は耳を傾けてくれる」とトランプ氏について述べた。またトランプ氏が国務省の中東担当トップに指名しているジョエル・レイバーン氏も、15日の上院公聴会で、湾岸諸国は「選ばれるパートナーになりつつある」と発言。トランプ氏の訪問は「湾岸諸国との関係を安全保障から繁栄へと拡大する時期が来たことを証明している」と付け加えた。トランプ氏はリヤド滞在中、「米サウジ関係は安全保障と繁栄の基盤だ」と発言。「これまで以上に強力になっており、この状態が維持される」と述べている。米国のトランプ大統領は17日、ウクライナでの戦争の終結に向けて、19日にロシアのプーチン大統領と電話会談を行うと発表した。トランプ氏は同日、SNS「トゥルース・ソーシャル」に「電話会談の議題は、1週間にロシア軍とウクライナ軍合わせて平均5000人以上が命を落としている『血の海』を止めることと、貿易だ」と投稿した。今回の発表の前には、ウクライナとロシアの代表団がトルコで、対面での協議を行っていた。両国がいかなるレベルでも直接協議したのは3年ぶりだった。トランプ氏はこれまで、プーチン氏と直接対話するまで和平交渉に大きな進展は望めないとの見方を示してきた。トランプ氏は先に、記者団に対し、自身とプーチン氏とが直接顔をあわせるまでは、「何も起こらないと」などと語っていた。トランプ氏は、プーチン氏との会談後、ウクライナのゼレンスキー大統領や北大西洋条約機構(NATO)の加盟国首脳らとも会談する意向だ。トランプ氏はSNSに「生産的な一日になることを願う。停戦が実現し、この非常に暴力的な戦争、本来起こるべきではなかった戦争が終わることを期待している」と投稿した。ロシアのペスコフ大統領報道官は同日、ロシア国営タス通信に対し、プーチン氏とトランプ氏との電話会談に向けた準備が進められていると認めた。ウクライナとその支援国は、ロシアに対し、30日間の停戦を受け入れるよう求めていたが、プーチン氏はこれを拒否。その代わり、トルコでの直接協議を提案し、トランプ氏もゼレンスキー氏に受諾を強く促した。しかしゼレンスキー氏は、プーチン氏自身が出席する場合のみ参加すると表明。ロシアは「低レベル」と見なされた代表団を派遣し、プーチン氏は姿を見せなかった。ロシアとウクライナは16日、和平合意に向けて3年ぶりとなる高官級の直接協議を行った。ロシアが停戦の前提条件として自国軍が制圧していない大規模なウクライナ領土を要求したため、ほとんど進展は見られなかった。だがウクライナの代表者によると、双方はそれぞれ1000人の捕虜を交換し、最終的な停戦に向けて接触を続けていくことで合意した。暫定合意した捕虜交換は過去最大規模となる。交渉は2時間弱続いた。ウクライナ当局者によると、ロシアは自国の制圧していないザポリージャ、ヘルソン、ドネツク、ルハンスクの各地域から撤退するようウクライナに要求した。ウクライナ側が無条件停戦を求めたのに対し、ロシアのウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官は前提条件としてウクライナがこれら4州を引き渡す必要があると主張。ウクライナ当局者によると、この要求を拒否した場合、ロシアは将来的に別のウクライナ領土を要求する方針を示した。ただ、ウクライナ側はこうした要求を予期しており、冷静さを保った。メジンスキー氏は協議終了後、ロシア代表団は「全体的に結果に満足しており、接触を継続する用意がある」と短くコメントした。ウクライナがウォロディミル・ゼレンスキー大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の直接対話を求めたことについては「分かった」と述べ、双方が停戦に向けて詳細案を書面で提示することで一致したと付け加えた。ウクライナ代表団を率いるルステム・ウメロフ国防相は、和平交渉の進展にはロシアとウクライナの直接対話が不可欠だと主張。「次のステップは首脳会談の開催だ」と述べ、「ウクライナは平和を望んでいる」と語った。ドナルド・トランプ米大統領はウクライナ和平を望んでいるが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は米国を振り回し続けている。トルコのイスタンブールで15日に始まる予定だったウクライナとの直接協議にプーチン氏が欠席するという恥ずべき行為に注目してほしい。実態を明らかにすることになった今回の出来事は、欧州主要国の指導者たちが先週、「公正で永続的な和平を協議する時間的余裕を確保するため、30日間の完全かつ無条件の停戦」を提案したことから始まった。それはウクライナとトランプ氏の目標でもあるが、プーチン氏は再び強硬な否定の「ニェット」で応じた。プーチン氏は逆に、ウクライナとロシアの直接協議を提案した。トランプ氏はその後、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領にこれを受け入れるよう求めた。しかしプーチン氏は15日、ゼレンスキー氏、マルコ・ルビオ米国務長官、そしてトランプ氏の中東担当特使スティーブ・ウィトコフ氏に待ちぼうけを食わせた。ロシア大統領府は代わりに下級の代表団を派遣したが、これは2022年に真剣さを欠いた協議のためにプーチン氏が派遣した代表団と同様のものだ。中東訪問中のトランプ氏は当初、和平交渉が行われるなら自身もトルコに立ち寄るかもしれないと述べていた。だが、プーチン氏の欠席表明を受けて、トランプ氏は「プーチン氏と私が共に参加しない限りは何も起こらない」と述べ、きまり悪さを取り繕おうとした。「プーチン氏が、自身が出席して交渉に臨む気になるような要因があると感じない限り何も起こらない」と言う方が現実に近い。プーチン氏の不参加は、ロシアが本気でこの戦争を終わらせようとしていない証拠を改めて示すものだ。驚くほどのことではない。プーチン氏は、トランプ氏がウクライナを見捨てる可能性があり、そのためにウクライナの領土を奪い続けるのが容易になるかもしれないと考えている。シンクタンク「戦争研究所」の集計によると、プーチン氏はトランプ氏の大統領就任以降、ウクライナに向けてミサイルを346発と、本物、またはおとりのドローンを1万3000機発射している。先月下旬、ロシアの攻撃でキーウの民間人が死亡した際には、トランプ氏がソーシャルメディアで「ウラジーミル、やめろ!」と訴えた。プーチン氏はやめなかった。先週のキーウへの攻撃でも民間人が死亡した。夏が近づく中、ロシアは新たな攻勢の準備を進めているように見える。ロシアは冬の間にウクライナ東部で支配地域を一部拡大したが、それには大きな犠牲が伴った上、戦略的な突破口を開いたわけではなかった。しかし、プーチン氏は、ウクライナが保持している米国製の武器弾薬の在庫が何週間かで底を突くことを知っている。戦争終結に向け仲介役になろうとするトランプ氏の試みは真剣なものだった。しかし、和平を口にしながら戦争を継続する手法をプーチン氏がとる期間が長くなれば、その分だけトランプ氏に対する印象は悪くなる。トランプ氏は、自身がロシア政府に懇願しているようだと世界からみられたくない。和平への最善の道は、ロシア政府に対して圧力を高めることだ。ロシアからエネルギーを輸入する国に2次制裁を科すことが、トランプ氏にとって圧力強化の最初の策になり得る。米財務省のチーフエコノミストを務めた経験を持つエリック・バン・ノストランド氏は今週、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)への寄稿の中で、ロシアの石油輸出の4分の1を市場から排除すれば、ロシアの石油収入が20%減るとの見方を示した。世界の石油生産量が十分な水準にあるため、こうした措置を取っても米国のガソリン価格が大幅に上昇することはないという。トランプ氏はまた、対ウクライナで軍事支援拡大を発表することもできる。その後、最終的にトランプ氏とプーチン氏の会談が実現すれば、ウクライナとトランプ氏は、以前よりずっと強い立場で交渉に臨める。それはかつて誰かが、「力による平和」と呼んだものだ。●その他エマージング中国が3月に米国債保有を減らし、外国・地域による米国債保有2位の座に英国が就いた。米国債市場が混乱した4月を前に、外国勢による米国債購入は2カ月連続で拡大し過去最高を更新。その保有残高は2331億ドル増加し9兆500億ドルとなった。米財務省が今月16日公表したデータで分かった。ブルームバーグがまとめたデータによると、中国が最後に米国債保有でトップだったのは日本が首位に入れ替わった2019年。英国が中国を抜いたのは20年以上ぶりとなる。3月は英国のほか、日本とカナダ、ベルギーなども米国債の保有を増やした。英保有額は7793億ドルに達し、中国の7654億ドルを上回った。中国の保有減少は、期間長めの米国債の純売却276億ドルが一因。日本の保有は3カ月連続で増加し、1兆1300億ドルに達した。カナダは201億ドル増の4262億ドル。外国勢の米国債需要は、トランプ大統領が貿易相手国・地域を非難し関税を大幅に引き上げた時期から市場で注目されてきた。米国を「食い物」にしてきた国・地域からの「解放記念日」だとトランプ氏が4月2日に上乗せ関税を発表し、同月の米国債やドル、株式は激しく売られた。元米財務省高官で現在は米外交問題評議会に所属するブラッド・セッツァー氏は中国の動きについて、「ドル離れというより、デュレーションを短くする動き」とみているとX(旧ツイッター)に投稿。「ポートフォリオの満期を短くしている十分な証拠は見える」と続けた。●プロファイ、インフラ、自然災害●その他(サマリー)筆者は旅行時の荷造りを「スーツケースを上に乗らずに閉められるか」というゲーム感覚で楽しむ。旅行者たちは、機内持ち込みサイズのスーツケースに必要な物を入れるため、何を持ち、何を諦めるかを慎重に選ぶ。必需品には個人の快適さを高めるアイテムが多く含まれる。例として、LCCブリーズ・エアウェイズのCEOは愛用の枕を持参し、筆者自身は大きなヘアドライヤーを優先して詰める。他にも、衣類スチーマーや口腔洗浄機、ポータブル・ブレンダー、スピーカー、保温ポットなどが挙げられ、各人のこだわりが反映されている。また、ホテルの照明対策にアイマスク、化粧品の液漏れ防止にコンタクトレンズケースの活用、服のコーディネートは靴から決めるなどの工夫も紹介された。子どものぬいぐるみを持参し、旅先で写真を送って絆を保つというエピソードも含まれており、それぞれが自分らしい旅の快適さを追求している。●市況(ChatGPTによる要約版)### 為替市場* **ドルが上昇**:米経済指標の強さと日本のマイナス成長(GDP年率-0.7%)を受け、ドル/円は145.89円まで上昇。週初から0.4%高。* **米輸入物価指数**が予想外に上昇、**消費者信頼感指数**は低下(50.8、予想53.4)。1年先のインフレ期待は1981年以来の高水準(7.3%)。* **ドル指数**は0.36%上昇の101.13。### 債券市場* **ムーディーズが米国格下げ(AAA → AA1)**。これにより米10年債利回りは4.487%、2年債は4.006%に上昇。### 株式市場* **米中の関税引き下げ合意**でリスク選好が高まり、主要株価指数は5日続伸。* S\&P500:週5.3%上昇* ナスダック:7.2%上昇* ダウ:3.4%上昇* **セクター別**:ヘルスケアが最も上昇、エネルギーのみ下落。* 個別銘柄では、ユナイテッドヘルスが6.4%上昇、アプライドマテリアルズは決算不振で5.3%下落。### 商品市場* **金先物**は利益確定売りで反落(1.22%安、週間では4.69%下落)。* \*\*原油先物(WTI)\*\*は米イラン情勢を背景に3日ぶりに反発(1.41%高、週間で2.41%上昇)。## ■ ロンドン株式市場* **続伸**:FTSE250は0.61%上昇、米中合意による貿易摩擦懸念の緩和で投資家心理が改善。* **週間騰落率**:FTSE100は+1.52%、FTSE250は+2.28%。* **セクター別動向**:* **上昇**:* 製薬・バイオ(+1.74%)、アストラゼネカ+1.9%* 石油・ガス(+0.85%)、BP+1.2%(原油高が支援)* **下落**:* 貴金属(-1.93%)、鉱業(-1.55%)は金・銅価格の下落を反映### ■ 欧州株式市場* **全体的に続伸**:DAX(独)+0.30%、STOXX600指数は週間で+2.10%(5週連続上昇)* **米中合意**による関税緩和が追い風* **注目銘柄とセクター**:* **上昇**:* 高級品(+2.27%)、リシュモン+6.9%(販売好調)* 個人・家庭用品(+1.24%)、ヘルスケア(+1.19%)、ノバルティス+1.3%* **下落**:* 資源株(-1.18%)、テクノロジー株(-0.52%)### ■ ユーロ圏債券市場* **利回り低下**:米経済指標の弱さとリスク選好の後退で、安全資産需要が再浮上* ドイツ10年債:-4bpsで2.58%* イタリア10年債:-4bpsで3.599%、独伊スプレッドは99bpsに縮小* **ECB利下げ観測はやや後退**:12月の預金金利予想は1.72%(5月初より上昇)* **米金利も低下**:米10年債は4.42%(-3.3bps)全体として、**米中合意が市場を支える一方で、商品価格や弱い経済指標が一部セクターに影響を与える複合的な相場展開**となった。20日(火)ホーム・デポ(3.59)21日(水)ロウズ(2.88)ターゲット(1.67)ズーム(1.31)22日(木)ラルフローレン(2.01)
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備忘録(2025/5/15)●海外企業決算●海外企業米司法省がメディケア(高齢者・障害者向け公的医療保険)詐欺の疑いで、医療保険・管理医療サービス大手ユナイテッドヘルス・グループに対する刑事捜査を行っていることが分かった。事情に詳しい関係者らが明らかにした。捜査は司法省刑事部門のヘルスケア詐欺対策ユニットが指揮しており、少なくとも昨夏から積極的な動きがみられているという。ユナイテッドヘルスが受ける可能性のある刑事告発に関して、正確な内容は不明だが連邦捜査はメディケア・アドバンテージ事業の慣行に焦点を当てていると関係者らは述べた。ユナイテッドヘルスからは今のところコメントは得られていない。司法省の報道官はこの件についてコメントを控えた。同社は独占禁止法違反の疑いや、医師のオフィスを含むメディケアの請求慣行に関する民事捜査など、連邦政府から複数の捜査をすでに受けている。ユナイテッドヘルスは業績内容や、今週に入りアンドルー・ウィッティ最高経営責任者(CEO)が突然交代したことから株価が暴落し、立て直しを図っている。CEOには同社の会長で元CEOのスティーブン・ヘムズリー氏が就くが、株価はここ1カ月で約50%下落している。同社は昨年にはIT部門がハッキングを受け、米国の多くの医療機関への支払いが数カ月にわたって混乱したほか、保険部門のトップが殺害される事件も発生した。一方でトランプ政権や議会は、連邦政府による医療支出の削減を目指している。ユナイテッドヘルスにとって、これら支出は成功のカギを握っている。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)はユナイテッドヘルスなどメディケア・アドバンテージ制度の保険会社の慣行に関する調査結果を報道。上院議員らはこれを受け、メディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)のメフメト・オズ長官の3月の承認公聴会で、ユナイテッドヘルスなどの慣行を追及し、オズ氏は調査を実施すると述べていた。今回の刑事捜査は株主、規制当局、そして顧客からの信頼を失っているユナイテッドヘルスにとって、さらに大きな課題をもたらす可能性がある。司法省刑事部門のヘルスケア詐欺対策ユニットは、メディケアとメディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)の支払いを増加させるキックバックなどの犯罪に焦点を当てている。検察官らはニューヨークの詐欺対策ユニットのオフィスから、ユナイテッドヘルスに対する刑事捜査を行っていると事情に詳しい関係者らは述べた。詐欺対策ユニットは長年にわたり、政府の医療プログラムや保険会社に過剰な請求を行う医師、研究所、そしてサービス提供者の摘発に焦点を当ててきた。だが現在はメディケア・アドバンテージ制度の保険会社に焦点を移している。メディケア・アドバンテージ制度の保険会社は、より病状の重い患者をカバーすることで追加の支払いを受けており、保険の適用を受ける患者の診断を記録するインセンティブが生まれている。WSJの報道によると、ユナイテッドヘルスによる疑わしい診断により、納税者が負担するコストが数十億ドル増加した例もある。同社はWSJの調査報道について、「不正確で偏向している」と主張。メディケア・アドバンテージは従来のメディケアよりも「数百万人の高齢者にとってより良い健康上の成果と手頃な価格のヘルスケアを提供している」と反論した。医療保険最大手のユナイテッドヘルス<UNH>が大幅安。メディケアに関連する不正行為の疑いで刑事捜査を受けていると報じられた。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が関係者の話として伝えた。米司法省は少なくとも昨年夏から同社のメディケア・アドバンテージ部門に関する捜査を進めているという。これに対して同社は「司法省から報道されているような捜査について通知は受けていない」と説明。「メディケア・アドバンテージ・プログラムの誠実性には自信を持っている」とした。同社は今週、ウィッティCEOが突然の辞任を発表し、ヘムズリー会長がCEOに復帰する人事を発表していた。また、医療費が予想を上回るとの見通しから、2025年の見通しを一旦取り下げると発表している。投資家にとっては、今週2度目のネガティブ・サプライズとなり、最近では失速感も出ているメディケア中心の戦略を巡る疑念がさらに強まっている。米議員らは、製薬大手ファイザーが新型コロナワクチンの臨床試験(治験)結果の公表を2020年の米大統領選が終わるまで待ったかどうかを調査している。下院司法委員会の新たな書簡によると、ファイザー元社員の科学者が実験を「意図的に遅らせる」取り組みへの関与を認めたとする新たな疑惑が浮上した。同委員会は、ファイザーと科学者のフィリップ・ドーミツァー氏に情報提供を求めている。ドーミツァー氏は2024年、転職先の英製薬大手GSKでワクチン治験結果の公表に自身が果たした役割を調査されることへの懸念を同僚に伝え、カナダへの異動を求めたとされている。ドーミツァー氏はその後、自身とファイザー関係者が治験結果の公表を遅らせようとしたことを否定。21年に転職したGSKでの同僚への発言が誤解されたとしている。GSKが24年末、同氏の発言をニューヨーク州の連邦検察に初めて報告したことで、ファイザーによる結果公表のタイミングを巡る調査が始まった。下院委へのGSKの説明によると、ドーミツァー氏は24年、GSKの複数の同僚に、ファイザー研究開発部門の最上級幹部3人が「その年の大統領選の結果が判明する前に臨床試験が終わらないように、意図的に遅らせる決定に関与していた」と話した。これらGSK従業員によれば、ドーミッツァー氏は「すでに出た結果の開示を遅らせたのではなく、開示が必要になる前に結果(が出ること)を遅らせたという状況だったことを明確にした」GSKが下院委に提出した報告書によると、ドーミッツァー氏はカナダへの異動を求めた際に「明らかに動揺」しており、人事担当者に対して結果公表のタイミングが「偶然ではなかった」と伝えたとされる。ドーミッツァー氏はその後、GSKを退職した。同氏の弁護士にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。ファイザーの広報担当者エイミー・ローズ氏は、同社が書簡を受理しており、「委員会に直接回答する」と述べた。また、コロナワクチンの開発プロセスについて「20年当時、科学に基づき、米食品医薬品局(FDA)の指導を受けていた」とし、「これに反対する説は真実ではなく、ねつ造されたものだ」と付け加えた。GSKの広報担当者はコメントを控えた。米小売りチェーン大手ウォルマートは15日、今月から初夏にかけて値上げに踏み切ることを明らかにした。関税の影響を受けた商品が店頭に並び始めるのに伴い、一部のコストを価格に転嫁する。ジョン・デービッド・レイニー最高財務責任者(CFO)はインタビューで「これほどの規模とスピードのコスト増には前例がない」と述べた。また、2-4月期(第1四半期)は特売品や迅速な配送が消費者に支持されて着実な増収を果たしたが、貿易摩擦が消費にもたらす打撃は今後本格化するとの認識を示した。競合他社より価格を低く抑えるために関税コストを一部負担する可能性があることから、足元の四半期の利益予想は提示しなかったと説明した。ウォルマートは仕入れ先にコスト上昇分を転嫁されたため、すでに一部の値上げを実施した。米政府が今週に入り対中追加関税を一時的に145%から30%に引き下げたことについて、レイニー氏は、30%は145%よりは良いが、ほとんどの消費者には依然として価格の大幅上昇を意味する、と語った。著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイが15日公表した第1・四半期末の株式保有開示情報によると、同社は酒造メーカーのコンステレーション・ブランズの持ち高を2倍強増やした一方、シティグループ株保有をゼロにするなど金融セクター向け投資を縮小したことが分かった。3月末時点で保有していたコンステレーション株は、昨年末時点の560万株から約1200万株に増加し、22億ドル相当に達した。これによりコンステレーションにおけるバークシャーの持ち分は6.6%になった。バークシャーが3年間続けてきたシティグループ株の保有は解消され、バンク・オブ・アメリカ(BAC.N), opens new tabの保有は昨年7月の10億3000万株から6億3200万株に減少。キャピタル・ワンの持ち高も減らされた。第1・四半期中のバークシャーによる株式購入総額は31億8000万ドル、売却総額は46億8000万ドルと、10期連続の売り越し。3月末の現金・流動資産残高は3477億ドルだった。保有する個別株で最も評価額が大きいのは引き続きアップルで、666億ドル相当だった。バークシャーは日本の5大商社の持ち高も増やしている。欧州の小売業大手企業とオンライン通販大手企業が欧州連合(EU)欧州委員会に対し、米国のクレジットカード大手、ビザとマスターカードの2社の高額とされる手数料を引き下げさせるように要請する書簡を送った。ビザとマスターカードはユーロ圏でのクレジットカード決済の約3分の2を占めている。テレサ・リベラ欧州委上級副委員長(競争政策担当)、ドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)、マリアルイス・アルブケルケ欧州委員(金融サービス担当)に宛てた13日付の書簡は、「(ビザやマスターカードの)国際カードスキーム(ICS)は競争上の課題や規制当局の監視を受けることなく、手数料を引き上げることができた。ICSの手数料やルールのシステムはあまりにも複雑かつ不透明であるため、取引業者は自分が何に、なぜ支払っているのかを理解することはおろか、異議を唱えることもできない」と訴えた。また、ブラトル・グループが2024年に発表した報告書を引用し、18年から22年までの間にICSの手数料がインフレ率に上乗せして33.9%(年平均で7.6%)上昇したと指摘。それにもかかわらず、EU加盟国にある加盟店や消費者に対するサービスの改善策はなかったと問題視している。これに対し、ビザは手数料は欧州の金融機関、加盟店、消費者に対するサービスの価値を反映していると主張。広報担当者は「これには極めて高水準のセキュリティーと不正防止、完璧に近い運用の強靱さと信頼性、消費者と加盟店のニーズに応える幅広い消費者保護、高品質で革新的な商品とサービスが含まれている」とコメントした。マスターカードはコメントの要請に応じなかった。●日本企業●トランプ関連トランプ米大統領は15日、米国がイランとの核合意に非常に近づいており、イランが条件に「ある程度」合意していると述べたAFPの代表取材によると、トランプ氏は湾岸諸国歴訪中に「長期的な和平に向けてイランと非常に真剣な交渉を行っている」と述べた。一方、交渉状況に詳しいイラン筋によると、米国との交渉ではなお埋めなければならない溝がある。イランとしては譲歩と考える提案をする用意があるものの、「問題は米国がそれと引き換えに主要な制裁を解除する気がないこと」だという。同筋は保管されている濃縮ウランの削減について、「イラン側は何段階かに分けて除去することを望んでいるが、米側は同意していない」と説明。また、高濃縮ウランの移転先についても意見が分かれていると付け加えた。当局者によると、両国の協議は11日にオマーンで終了したが、さらなる交渉が予定されている。●先進国中銀、金融当局米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は15日、2020年の新型コロナウイルス禍以降に物価と金利の見通しが大きく変化したことを踏まえ、FRBが金融政策設定の包括的な枠組みの調整を進めていると明らかにした。首都ワシントンのFRB本部でのイベントで「経済情勢は20年以降で大きく変わった。FRBの再検討は、そうした変化の評価を踏まえたものになる」と話した。FRBは現行の枠組みを5年前に導入。今年に入り、再点検に着手した。この見直しがFRBの金利設定の手法に影響を及ぼす公算は小さい。パウエル氏は以前、FRBは8月か9月までに見直しを終え、結果を公表する可能性があるとしていた。この日のパウエル氏の発言を踏まえると、FRBは5年前に導入した主な変更点を撤回しそうだ。パウエル氏は、20年のコロナ禍以降の実質金利の上昇によって、FRBの既存の枠組みを構成する要素が意味をなさなくなったことを示唆した。実質金利の上昇は「危機のはざまにあった10年代より、今後はインフレが一段と激しく変動する可能性を反映」しているかもしれないとの認識を示した。また「供給ショックがさらに頻繁に起き、さらに長引く期間に入りつつあるのかもしれない。これは経済と中銀にとって難しい課題だ」と語った。さらに、FRB当局者が先週の連邦公開市場委員会(FOMC)で、インフレ率を期間平均で目標値に近づけることを目指す「平均インフレ目標」を見直す必要があるとの結論に達したと明らかにした。FRBはこの手法を5年前に導入していた。インフレを目標値より「意図的に、緩やかに超過させるという考えは、FRBの政策協議に意味がなく、今日までそうあり続けていることが分かった」と話した。だが今回の見直し後も、2%のインフレ目標や、FRBがインフレを低位安定させると国民に確信させる上で担う重要な役割など、政策枠組みの中核は変わらない見通しだ。当局者は、こうしたインフレ期待が自己実現的で、失業率が著しく悪化することなく、過去2年でインフレ率が低下したことに大きく寄与したとみている。●先進国経済指標米商務省が15日発表した4月の小売売上高(季節調整済み)は前月比0.1%増加した。米関税措置発表前にみられた自動車購入前倒しの動きによる効果が薄れ、伸びは前月から減速した。経済見通しの不確実性の高まりを背景に家計が支出を抑制していることも影響した。エコノミスト予想は横ばい。3月は1.7%増と、当初発表の1.5%増から上方改定された。小売売上高はトランプ米大統領の関税導入の発表を受け、年初来から大きく変動している。米中が12日、追加関税率の大幅引き下げで合意したものの、今後の動向を巡っては依然として不透明感が残る。RSM・USのエコノミスト、トゥアン・グエン氏は「関税政策が経済に及ぼす一次的な影響を、われわれは支出の減少という形で目の当たりにしている」と指摘。「米中の追加関税引き下げにより、向こう12カ月間の景気後退(リセッション)は基本シナリオではなくなったが、米経済が今後数四半期にわたり成長低迷に陥る可能性は高まっている」と述べた。コアの小売売上高(自動車、ガソリン、建築資材、食品サービスを除く)は0.2%減。エコノミスト予想は0.3%増だった。3月は0.5%増と、当初発表の0.4%増から上方改定された。業種別では、自動車販売店の売上高は0.1%減と、前月の5.5%増からマイナスに転じた。スポーツ用品、趣味用品、楽器は2.5%減、その他小売店も2.1%減少した。オンライン販売は0.2%増。サービス部門として小売統計に唯一含まれる飲食店は1.2%増。前月は3.0%増だった。5月のニューヨーク連銀製造業景況指数は3カ月連続で縮小圏にとどまった。一方で仕入れ価格指数は2022年7月以来の高水準に上昇。トランプ政権による関税政策の影響が浮き彫りとなった。製造業景況指数は1.1ポイント下げてマイナス9.2ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値はマイナス8前月はマイナス8.1指数はゼロが活動の拡大と縮小の境目仕入れ価格指数は8ポイント余り上昇の59。6カ月先の仕入れ価格見通しも上昇した。半面、販売価格指数と販売価格見通しは低下しており、製造業者の利益率が圧迫されるリスクを示唆している。製造業セクターは、原材料価格上昇やトランプ政権の通商政策を巡る不確実性に直面。企業は輸入やサプライチェーンの見直しを進めている。また、関税や税制の方向性が一段と明確になるまで投資を控えようとする顧客への対応にも苦慮している。需要は堅調に推移しており、新規受注と出荷はいずれも上昇した。今回の調査は、米国と中国が相互の関税率を一定期間引き下げることで合意する前に5月2-9日に実施された。米住宅建設業者の業況感を示す住宅市場指数は5月に大きく下がり、2023年11月以来の低水準となった。関税の影響で住宅価格の設定が難しくなり、先行き不透明感から消費者も購入をためらっていることが背景にある。指数を構成する3項目全てが低下。6カ月先の販売見通し指数は18カ月ぶりの水準に低下。販売の現況指数は22年12月以来、購買見込み客足指数は1年半ぶりの低水準となった。NAHBのバディ・ヒューズ会長は「春の住宅購入シーズンは出足が鈍い。金利の高止まりや政策の不透明感、建築資材のコスト要因が建設業者の景況感低下につながった」と指摘。5月は全米の4地域の全てで景況感が低下した。NAHBは、トランプ関税が住宅1戸あたり約1万900ドル(約160万円)のコスト増をもたらすと試算。ただ、NAHBのチーフエコノミスト、ロバート・ディエツ氏は、米英貿易協定や、米中の関税率引き下げ合意は「歓迎すべき進展だ」としている。同氏によると、建設業者の約80%が、資材価格の先行き不透明感で住宅の価格設定が難しいと報告している。5月には、建設業者の34%が価格引き下げを報告。この割合は2023年12月以来の大きさとなる。販売促進策を提供している業者の割合は61%で前月から変わらなかった。●金融市場、先進国トピックス日本の超長期国債の値下がり局面を、一部の外国勢は買い時と捉えている。世界貿易の混乱が収束すれば、相場が反発すると見込んでいるためだ。30年債利回りは今週、3%に接近し約25年ぶり高水準となった。関税を巡る不透明感で投資資金がより短期の国債に流れており、超長期債利回りは一段と上昇するとの見方もある。しかし、バンガードやRBCブルーベイ・アセット・マネジメントなどのファンドは超長期債を買い増す好機だと見なしている。これらのファンドは米国との関税を巡る緊張が緩和に向かい、日本銀行が利上げを再開できる公算があると考えている。そうなれば、期間が短めの日本国債から資金が流れ、超長期債が持ち直す可能性がある。バンガードの国際金利責任者アレス・クートニー氏は「ここで3%が妥当とは考えにくい」と指摘。「30年債利回りが再び3%に近づけば、引き続き日本国債を買い増す予定だ」と述べた。こうした見方は市場で一定の支持を得ているようだ。13日に実施された30年債入札では、高くなっていた利回りが買い手を呼び、堅調な需要が示された。入札後、利回りは一時低下したものの、15日には再び2.98%に上昇した。4月前半の低水準からは約75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の上昇であり、米30年債に見られた65bpより大きい。一般的に超長期債市場を主導する日本の大手保険会社や年金基金の買いが減退していることや、日銀が全般的に国債買い入れを縮小し続けていることが背景にある。トランプ政権が日本に対し防衛費の増額を求めるとの観測も、超長期債利回りを上昇させる要因だ。短期金融市場で年内の利上げ予想は後退しているが、クートニー氏は貿易摩擦の緩和が金融政策引き締めの一因になるとみている。スワップ市場は7月までの0.25ポイント利上げ確率を15%未満と示唆するものの、日銀が夏に動くと同氏は予想。「われわれはイールドカーブがフラット化すると想定している」と話し、ここ数週間で30年債を買い増す一方、7-10年債を「アンダーウエート」としていると明らかにした。ブルーベイのマーク・ダウディング最高投資責任者(CIO)も、30年債のロング(買い持ち)を増やした。米国債との比較で、日本の10年債と30年債の利回りスプレッドのゆがみに着目している。日本の10年債と30年債の利回り格差は現在約145bpで、米国の3倍近い。ダウディング氏は、日本における適正水準は恐らく75bp程度で、現行水準は「本当にミスプライシング」だと述べている。市場が注目するのは、日本の機関投資家が再び超長期債に買いを入れるかどうかだ。みずほ銀行のシニアストラテジスト、中島將行氏は30年債利回りが3%を超えて上昇する可能性も否定できないとの見方を示し、現在の混乱が投資家の回避行動を招く恐れがあるとみる。30年債を今買うのは落ちるナイフをつかむようなものだという。これに対しダウディング氏は、貿易戦争の不安が和らげば、日本の大口投資家は4月の年度初めに割り当てられた新たな資金を運用する必要に迫られ、戻って来るとみている。「ボラティリティーが落ち着けば、スプレッドはゆっくりと戻ると思う」と語った。日本と台湾の生命保険会社が、数十億ドル規模の含み損に直面している。トランプ米大統領の政策がもたらした市場の混乱で打撃を被った。台湾では急激な台湾ドル上昇が、保険会社が保有する23兆台湾ドル(約111兆円)の外国資産を圧迫。日本では超長期国債の利回りが数十年ぶりの高水準に急上昇し、その影響が保険各社に及んでいる。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、スティーブン・ラム氏は「日本と台湾の保険会社は、為替と利回りという2つの市場リスクに常に対処してきた。他の地域の保険会社はそうした負担が小さい」と指摘した。ゴールドマン・サックス・グループは台湾の保険会社だけで約180億米ドル(約2兆6000億円)の含み損を抱えている可能性があると警告。潜在的な損失は生保各社に外国債投資を再考させ、為替変動に対するヘッジ活用を促す可能性がある。台湾の南山人寿保険などは資産を分散化し、柔軟性を維持すると表明している。台湾ドルは、今年アジアで最も値上がりした通貨の一つだ。投資家が貿易戦争の中で米ドル売りに回った。一方、日本の30年国債利回りは、ほぼ25年ぶりの高水準に達したが、相場の変動が激しく保険各社は様子見を余儀なくされている。超長期国債の利回り上昇は、保険会社の神経を逆なでし、30年債入札にも影響を与えている。マングループのアジア太平洋保険ディレクター、マックス・デイビス氏によれば、日台の保険会社は現地の公社債市場が十分に大きくないため、資産のかなりの部分を海外に投資している。ゴールドマンのアナリストらは8日のリポートで、台湾の生保は3月までに約7100億米ドルの外国投資を積み上げ、そのうち約28%(約2000億米ドル)は通貨スワップやフォワードといった伝統的な手段でヘッジがなされていないと説明した。デイビス氏によると、ヘッジのない通貨が過去に良好なリターンをもたらしたことも多かったが、最近の台湾ドル急上昇は、世界経済が変化する中で通貨の不安定さを浮き彫りにしているという。ゴールドマンは、台湾ドルが米ドルに対し10%上昇すると、地元の保険会社に約180億米ドルの未実現為替損失が発生し、2024年の税引前利益が吹き飛び、通貨の相場変動に備え積み上げた準備金が失われる可能性があると分析。また、今年および来年の通貨ヘッジコストも上昇し得るという。もろ刃の剣監督当局も警戒している。台湾ドル急伸を受け、台湾の金融監督管理委員会は6日、主要保険会社の支払い能力に問題はないと確認。台湾の中央銀行も同日、資金流入が投機ではなく投資目的であることを確認するため銀行に対する検査を実施すると発表した。当局は保険会社がヘッジされていない通貨エクスポージャーを持つことに対して実質的にペナルティーを科すリスクベースの資本制度を導入しており、これにより通貨スワップやフォワードによるヘッジ採用が増える可能性もある。HSBCアセットマネジメントのニコラ・モロー最高経営責任者(CEO)は5月の金融フォーラムで、日本と台湾、韓国の保険会社からの通貨ヘッジ需要が高まっていると述べていた。デイビス氏は、日本の生保各社は投資資産の約25%を国際市場、主に米国の企業クレジットに投資しており、そのうち約30%の通貨エクスポージャーは歴史的にヘッジされていないと説明している。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのシニア債券ストラテジスト、駱正彦氏は、22ー23年の米利上げサイクル中に日本の保険会社が外国債券ポートフォリオを大幅に売却したと話している。特に日本の30年・40年国債利回り上昇により含み損を抱えている生保各社が直面する課題は複雑だ。米国の関税措置は世界的な経済成長を鈍化させ、日本銀行の近い将来の利上げ見通しを後退させる。一方、関税はインフレを加速させる恐れもある。投資家は超長期国債を保有するにあたり、より高い利回りを要求するかもしれない。30年債の流動性の低下とボラティリティーの高まりについても懸念がある。次にどう対応すべきかについて、日本勢の意見は割れている。明治安田生命保などは国内債投資を減らす方針だ。日本生命保険の最高投資責任者(CIO)河﨑圭助執行役員は最近のインタビューで、利回り急上昇を踏まえ、利回りが低めの債券と置き換えるため、超長期の国内債を購入していると語った。富国生命保険と太陽生命保険、大樹生命保険、大同生命保険も、円建て債の保有を増やす計画だ。超長期国債の利回り上昇は保険会社にとって、もろ刃の剣(つるぎ)だ。保有債券を満期前に売却すれば評価損が発生する可能性がある一方で、「過去の国債投資に比べ、より高い利回りを得られる可能性がある」とデイビス氏は述べ、この点が日本の保険会社にとって好材料だとしている。世界は中国のレアアース(希土類)に依存しており、中国はそれを貿易戦争の報復手段として繰り返し利用してきた。こうした依存から脱却する方法があるとしたらどうだろうか。期待が高まっているのが、レアアースの主な用途である電気モーターの分野だ。新たな種類の電気モーターはレアアースを全く必要としない。日常的に使用される鉄から作られた磁石を使用し、安価で製造が容易なモーターを開発する米新興企業コニファー(Conifer)は特に注目に値する。コニファーの技術責任者、ヤティーンドラ・デシュパンデ氏は長年、新興電気自動車(EV)メーカーの米ルーシッドの高級車に搭載されるモーターなど、世界最先端の電気モーターの設計に関わってきた。失敗に終わった米アップルのEV開発プロジェクトにも参加した。コニファー共同創業者のアンキット・ソマニ氏は、米IT大手のオラクルやグーグルでデータセンターの設計に携わった。共同でコニファーを立ち上げた両氏が見据えていたのは、既存の機械に組み込む数十億個の小型モーターに対する需要であり、現在、数十億人の主要な移動手段であるガソリン駆動の輸送車両を電動化する需要という、潜在的に巨大な市場だった。シリコンバレーを拠点とするコニファーで最高経営責任者(CEO)を務めるソマニ氏は「バッテリー分野には多くのエネルギーが投入されてきたが、電動パワートレインや電気モーターにはそれほどでもなかった」とし、「はるかに優れたものを生み出せるかどうか、一から見直してみたかった」と語る。コニファーはコスト・簡易性・調達に徹底的にこだわる必要があった。高級ハイブリッドスーパーカーに見られる設計を採用し、サイズと部品構成を縮小することがその解決策となった。同社のモーターはレアアースを用いた磁石の代わりに、普通の鉄を基にした永久磁石を使用している。コニファーが行っていることは大きなリスクを伴う。同社が試している技術は従来と用途が全く異なっており、歴史的に製造面の困難が付きまとってきた。一方、鉄磁石は従来は出力が十分ではなかった。ただ、コストと簡素な製造プロセスをうまく組み合わせれば、同社のモーターは無数の用途において、低コストの主要動力源となる可能性がある。安価で製造が容易であり、大半の国が国内で見つけられる材料のみで作れる電気モーターがあれば、EVからロボットに至るまであらゆるモノの製造業者にとって夢のような話だ。関税の影響も受けない。モーターやその他の電子機器の磁石として使われるレアアース鉱物は、その世界供給量の90%を中国が支配していることを考えると、そうしたモーターが今ほど求められている時はない。「ラジアルフラックス」型と「アキシャルフラックス」型筆者は多くの読者と同様に工学の学位は持っていないが、電磁気学的な話を少ししてみたい。一般的な電気モーターは「ラジアルフラックス」型であり、磁石が取り付けられた中心の軸の周りに銅線のコイルが巻かれている。電流を流すと、コイルでは軸に対して直角に磁場が発生し、回転し始める。銅線と鉄くぎを使って行った家庭での実験を思い浮かべればイメージがつかめるかもしれない。これに対し、コニファーのモーターは「アキシャルフラックス」型だ。複数の鋼板を重ねた構造になっており、一部は静止し、他は軸に取り付けられて自由に回転する。鋼板には磁石が配置され、磁場は軸と平行になる。ラジアルフラックスモーターと同様に、アキシャルフラックスモーターの歴史は何世紀も前にさかのぼる。ただ、現代のアキシャルフラックス型は性能が大きく向上している。それは電流のオン・オフを毎秒数百回切り替えられる高速スイッチングのパワーエレクトロニクスに負うところが大きく、回転速度の変化に応じて周波数を滑らかに調整できるようになった。ただし、アキシャルフラックス型は製造が難しく、一般的に精度やソフトウエア制御で一定の水準を必要とするため広く普及するには至っていない。新興技術分析会社IDTechExの調査ディレクター、ジェームズ・エドモンドソン氏はそう話す。それでも、アキシャルフラックス型は潜在能力を示し始めているという。いずれのタイプのモーターも通常はレアアースの混合物で作られた磁石を必要とする。ネオジムは磁石の大部分を構成し、ジスプロシウムは高速回転や高温に耐えられるよう補助する役割を果たす。コニファーのエンジニアたちは、アキシャルフラックス型の設計にチャンスがあると考えた。技術責任者のデシュパンデ氏によると、磁石を増やし、それを回転する鋼板のより外側に配置し、通常よりも高速で鋼板を回転させた。これにより、コニファーは従来よりも弱い鉄系磁石を使えるようになったという。コニファーの最初の控えめな目標は、「ベスパ」のような電動スクーターに搭載される既存モーターの代替品を作ることだ。同社はすでに、空調システムや家電製品など他の機器に適合するさまざまなサイズのモーターも開発している。この技術はEV用にスケールアップできる可能性がある。コニファーのモーターを搭載した小型ながら高速道路を走行可能なEVは4年以内に実現する可能性があるとデシュパンデ氏は語る。「二輪車版テスラ」ロサンゼルスを拠点とする新興企業ライラ・エナジー(Lyra Energy)は、高級価格帯で独自の充電ネットワークを備えた「二輪車版テスラ」を発展途上国向けに生産することを目指している。同社はコニファーのモーターを使用している。ライラのクリスウェル・チョイCEOは「サプライチェーン(供給網)の柔軟性は、特に事業規模を拡大していく上で常に重要になる」とし、「長期的にはコニファー製を使うことでシステム全体のコスト削減が期待できる。レアアースへの依存度が低下するのであれば、なおさらだ」と語る。ライラが足がかりとするインドネシアを含め、同社が展開するタイプの車両の世界市場は巨大だ。アジアだけでも年間4500万台が販売されており、マッキンゼーの2023年のリポートによると、二輪車の世界市場は2029年までに2180億ドル(約31兆3000億円)に拡大すると予想されている。チョイ氏によると、コニファーのインホイールモーターは従来のものと同程度の価格だった。さらに利点として、従来型よりも20%効率が良く、それに伴い航続距離が伸びる可能性がある。この同じモーター技術は四輪EVの動力源としてスケールアップすることが可能なものの、レアアース磁石なしで出せる出力には限界がある。コニファーのモーターを使うには、EVの設計変更も必要となる。大半のEVは、中央に配置された電気モーターが車輪に動力を伝達する仕組みとなっている。コニファーのモーターは車輪の内側に配置される。インホイールモーターを搭載したEVを製造することは一部の自動車設計者にとって長年の夢でもあった。効率とトラクションの全体的な向上が期待できるためだ。既存のEVメーカーにとって、新たなタイプのモーターやパワートレインの導入といった多くの変化を一度に行うことは、すぐには着手できない。だがスタートアップ企業はそうした機会を生かすかもしれない。関税に伴うコスト増加が喫緊の課題となれば、なおさらだ。アキシャルフラックス型のモーターやレアアース不使用のモーターが市場に占める割合はこれまでごくわずかだったが、コニファーのモーター、あるいはライバル社による類似の設計が競争力を持つ可能性があるとIDTechExのエドモンドソン氏は話す。コニファーの簡素化された製造プロセスは金属のプレス加工を必要とせず、また、バッテリー業界から着想を得た銅線巻きの工程を取り入れている。このため、熟練労働者の不足も問題になりにくい。1世紀以上にわたって主流となってきた設計をメーカーが捨てる意思があれば、選択肢は増える。ベンジャミン・フランクリンの発想を下敷きにしたものさえある。中国が支配するサプライチェーンに依存しない新種の電池や、米国内での半導体製造、そして増加する米国のEVスタートアップを加えると、米国製、あるいは少なくとも北米製で完全に成り立つ輸送手段の未来が見えてくる。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、リセッション(景気後退)に陥る可能性は依然残っているとの見方を示した。関税の影響は引き続き世界経済を揺るがしていると指摘した。ダイモン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「それが回避できることを望むが、現時点でそれを排除しない」と述べ、「リセッションになる場合、それがどれほど大きく、どれほど長く続くかは分からない」と続けた。インタビューは15日、JPモルガンがパリで開いた年次のグローバル・マーケッツ・カンファレンスに合わせて行われた。トランプ政権の関税政策で、金融市場は動揺が続いている。このボラティリティーが理由で、一部の顧客は投資を控えているとダイモン氏は明らかにした。ダイモン氏は、最近の米中の緊張緩和が続くことに期待感を表明。「それが正しいことだと思う。つまり、一部の措置の撤回であり、継続的な対話だ」と述べた。トランプ大統領が数十カ国に対する関税を発表し、「解放の日」と呼んだ4月2日に世界の市場は大混乱に陥った。その数日後、合意を模索するため関税導入を90日間停止するとトランプ氏は方針を変更した。ダイモン氏はベッセント財務長官に交渉を主導するよう繰り返し呼び掛け、先月の株主向け書簡では不透明性の早期解消を求めていた。ダイモン氏によると、ボラティリティーは最近まで高止まりし、JPモルガンは結果として高水準のトレーディングを続けている。「良いボラティリティーと悪いボラティリティーがあるという例を目の当たりにしたのではないか。今回はたまたま良いボラティリティーだった。次回もそうなるとは限らない」と語った。また、関税を巡る混乱の影響で、米国への投資が減少する恐れにもダイモン氏は言及した。「それは少しあるだろう。米国は多くの人を怒らせている。そういう人に自分が会うと、米国製のバーボンは買わないって言われる」と話した。ただ、その影響が広範囲に及ぶとは限らないとし、「では、米国は悪い投資先だろうか。そんなことはない。もし全資産を一国につぎ込むとしたら、投資先はなお米国だろう」とダイモン氏は語った。●ロシア、ウクライナ、中東情勢●その他エマージング●プロファイ、インフラ、自然災害●その他●市況(ChatGPTによる要約版)### 【為替市場】* **ドル安**:4月の米経済指標が軟調(小売売上高や卸売物価指数、製造業生産指数の低下)で、**ドル指数は0.11%安の100.89**、**ドル/円は0.73%安の145.68円**。* **パウエルFRB議長**:雇用とインフレに関する政策評価を見直す必要性に言及、金融政策そのものには踏み込まず。### 【米国債券市場】* **利回り急低下**:景気減速を示す指標を受け、FRBの年内利下げ観測が強まり債券が買われた。* **10年債利回り**:-7.9bpで4.449%* **30年債利回り**:-5.2bpで4.915%* **2年債利回り**:-9.2bpで3.961%### 【米国株式市場】* **まちまちの展開**:* **シスコ**:AI需要増で業績見通しを上方修正し、+5%。* **ユナイテッドヘルス**:米司法省による刑事捜査報道で-11%急落。* **ウォルマート**:既存店売上は好調も、関税リスクで利益予想を非開示に。-0.5%。* **アマゾン**:トランプ関税の影響懸念で-2.4%。### 【商品市場】* **金先物**:経済指標の悪化とドル安で買いが入り反発。**+1.20%(\$3226.60)*** **原油先物(WTI)**:米・イラン核合意観測で需給緩和が意識され続落。**-2.42%(\$61.62)**### ロンドン株式市場(イギリス)* **株価上昇**:GDPが予想を上回る成長(前期比+0.7%)を示し、FTSE250指数は0.12%上昇。* **主な上昇銘柄**:* **ヒクマ・ファーマ**:売上目標好感で+7.4%* **ナショナル・グリッド**:決算が好調で+3.0%* **JDスポーツ**:米同業買収報道を受けて+1.4%* **石油・ガス株は下落**:米・イランの核合意観測で原油価格下落し、関連指数は-2.13%### 欧州株式市場* **全体的に反発**:防衛関連銘柄が買われ、DAX指数は+0.72%* **主な上昇セクター**:* **防衛(+2.33%)**:ヘンソルト(+8.8%)、ラインメタル(+5.7%)、レオナルド(+4.0%)* **公益事業(+1.90%)**:エンジー(+3.6%)* **通信(+2.00%)**:ドイツテレコム(+2.8%)* **下落セクター**:* **石油・ガス(-0.88%)**:原油価格の下落による* **資源株(-0.85%)**:工業用金属価格の下落による### ユーロ圏債券市場* **債券利回り低下**:米経済指標の軟化により、FRBの利下げ観測が強まり、欧州債利回りも連動して下落。* **ドイツ10年債**:-5.5bpで2.638%* **ドイツ2年債**:-6bpで1.884%* **イタリア10年債**:-5.5bpで3.659%、独伊格差は99bpと低水準* **ECB**:年内に合計50bpの利下げが織り込まれており、6月に25bpの利下げが予想されている。
- 備忘録(2025/5/14)●海外企業決算●海外企業スイスの製薬大手ロシュは、トランプ大統領の薬価決定命令が500億ドルの米国投資を脅かすと述べている。スイスのヘルスケア大手ロシュは、ドナルド・トランプ米大統領が最近発表した医薬品の価格設定に関する大統領令により、米国内での投資拡大が妨げられる可能性があると警告した。トランプ大統領は月曜日、 米国内の一部の医薬品の価格を海外の大幅に安い価格に連動させることで医薬品コストを大幅に削減することを目的とした物議を醸している政策を復活させた 。「提案されている大統領令が発効すれば、ロシュが米国でこれまで発表してきた大規模な投資に資金を提供できるかどうかが疑問視されるだろう」と同社は声明でCNBCに述べた。ロシュは先月、今後5年間で米国に500億ドルを投資すると発表した。新たな研究開発拠点や製造施設の建設も含まれ、推定1万2000人の雇用を創出する。ロシュは声明で、「全体として、この大統領令により、世界をリードする医薬品・ヘルスケアのエコシステムとしての米国の地位が損なわれるとともに、経済成長が鈍化し、米国における雇用喪失につながることを懸念している」と述べた。「この大統領令で提案されている『外国第一主義』は、医薬品に費やされる米ドルの半分が保険会社、病院、製薬会社の利益管理者に流れてしまうという重大な市場の歪みに対処しない一方で、将来の米国の医薬品研究開発および製造投資の数千億ドルの削減につながるだろう。」この声明は、医薬品業界に重くのしかかる輸入医薬品に対する米国の関税をめぐる不確実性の中で出されたものだ。ファイナンシャル・タイムズが入手した文書によると、フランスのLVMH傘下のワイン・スピリッツ大手モエ・ヘネシーは、積極的な値上げと不運な買収攻勢が同高級品グループの飲料事業に打撃を与え、2019年の10億ユーロの現金創出から昨年は15億ユーロの資金を浪費した。シャンパン「ドン・ペリニヨン」やコニャック「ヘネシー」を手掛けるモエ・ヘネシー・グループは、世界的なアルコール飲料販売の低迷によって大きな打撃を受けている。しかし、モエ・ヘネシーの事業に詳しい関係者によると、2025年初頭にグループを去ったフィリップ・シャウス前CEOの下で行われた戦略的決定が、問題を悪化させたという。複数の関係筋やフィナンシャル・タイムズが閲覧した文書によると、これらの要因には、価格を上げて収益性を維持しようとする決意、一連の取引の当たり外れ、消費者への直接販売への赤字の進出などが含まれていた。モエ・ヘネシーは長年、LVMHのドル箱企業だった。しかし、フィナンシャル・タイムズが報じた昨年2月のプレゼンテーションでは、予算が逼迫する中、このワイン・スピリッツグループの上級管理職は「現金を節約しなければならない!」という厳しい警告を受けた。同社に近い関係者によると、パンデミック時代の高級品ブームで売り上げが急増したが、その後の落ち込みに経営陣は十分な対応ができなかったという。「モエ・ヘネシーは何をやってもダメだと思えるほどになってしまった」と関係者は語った。「それが彼らを苦しめたんだ」モエ・ヘネシーの苦戦の結果は今月明らかになった。同部門の新任幹部が社員に対し、コスト削減策の一環として約1,200人の雇用を削減すると告げ、売上はすぐには回復しないだろうと警告したのだ。LVMHは4月、第1四半期のワインとスピリッツの売上高が有機ベースで9%減少したと発表した。これは、事業全体の売上高が3%減少したのとは対照的だ。モエ・ヘネシーの経常利益は昨年、36%減少し、13億5000万ユーロとなった。しかし、過去2年間、酒類事業は売上高の伸びという点ですでにLVMHの中で最も業績の悪い部門となっていた。業績不振を受けて、経営陣の交代が相次いでいる。2月には、LVMHの元最高財務責任者(CFO)であるジャン=ジャック・ギオニー氏が、シャウス氏の後任としてモエ・ヘネシーのCEOに就任した。支配株主ベルナール・アルノー氏の息子で、元宝飾品大手ティファニーの上級幹部であるアレクサンドル・アルノー氏が、ギオニー氏の副CEOに就任した。業績回復の使命を帯びた新幹部たちは、部門ポートフォリオの見直しに加え、直販事業など業績不振の事業の見直しを進めている。また、プライベートセールス事業もアレクサンドル・アルノー氏の直轄下に置かれる。LVMHとモエ・ヘネシーはコメントを控えた。ギオニー氏は今月、従業員向けのプレゼンテーションで、最近の価格上昇の程度について言及した。ギオニー氏は、価格が「かなり高騰」しており、一部の人にとっては「受け入れ難い」状況にあることを認めた。情報筋はフィナンシャル・タイムズに対し、小売業者は2021年と2022年の両方で2桁の割合で値上げを行った後、モエ・ヘネシーが押し付けた値上げに難色を示し始めたと語った。関係者によると、ポートフォリオ全体の価格は2019年以降、平均で3分の1以上上昇しており、一部のマネージャーが利益率の維持は不可能だと懸念を示したものの、利益率の維持は社内の合言葉になっているという。フィナンシャル・タイムズが入手した昨年のプレゼンテーションで、モエ・ヘネシーの当時の世界販売責任者、ジャン=マルク・ラカーヴ氏は、営業利益率を維持することが「極めて重要」だと述べ、スタッフに対し「できれば事業を減らして30%以上を維持したい」と語った。しかし、モエ・ヘネシーは昨年、利益率が23%に達したと報告しました。価格を大幅に引き上げたにもかかわらず、売上高は2019年の水準に近づき、大幅な販売量の減少を示唆しています。ラカーヴ氏は年初にグループを去りました。スピリッツ部門の苦境は、前CEOのシャウス氏の下で行われた一連の買収を消化している最中に起きた。これらの買収は、当時売上高の80%以上を占めていたコニャックとシャンパンへの依存を減らすことを目的としていた。シャウス氏はLVMHで様々な上級職を歴任し、20年以上にわたりベルナール・アルノー氏の側近の一人としてグループに在籍しました。2012年には経営委員会に加わり、5年後にはモエ・ヘネシーの会長兼最高経営責任者(CEO)に任命されました。20億ユーロ近い買収ラッシュには、2021年のジェイ・Zのシャンパンブランド「アルマン・ド・ブリニャック」の株式50%買収(偶然にも、この取引はアメリカ人ラッパーと親しいアレクサンドル・アルノーが仲介した)のほか、2023年のプロヴァンスのロゼブランド「ミニュティ」、2022年のナパバレーのワインメーカー、ジョセフ・フェルプスの買収も含まれている。シャウス氏はこの件についてコメントを控えたが、ボルカン・テキーラやキューバ産ラム酒ブランド「エミネンテ」を含む新製品の発売も承認した。LVMHは通常、最高財務責任者に報告する中央チームを通じて取引のほとんどを管理しています。しかし、シャウス氏とそのチームには、特に小規模な取引において、取引に関する決定権が広く与えられていたと、社内体制に詳しい2人の関係者は述べている。しかし、事情に詳しい別の関係者はこれに異議を唱え、重要な買収はすべてLVMHの通常のチャネルを通じて行われていたと述べた。これまでのところ、いくつかの取引は利益を生むことができていない。その実績に詳しいある情報筋によると、ミヌティの買収と他のロゼワイン生産者との少数の取引を除き、これらの取り組みは「複雑さを増し、利益率を低下させ、現金を流出させた」という。ギオニー氏は今月、モエ・ヘネシーのポートフォリオ、特に「ここ数年で追加された」ブランドを見直しているとスタッフに伝えた。先週、アレクサンドル・アルノー氏は父親と共にホワイトハウスを訪問した後、ナパバレーでカリフォルニアのワイナリーを訪問していた。ギオニーは今月、社員に対し、買収したブランドの大半は維持できるものの、成長計画は縮小され、コストは大幅に削減されると述べた。「これらの事業は、今日では非常に実現が難しい野心によって推進されてきた。我々は同時に多くの地域での展開を計画してきたが、これは間違いだったと私は考えている」と同氏は語った。シャウス氏の指揮下でモエ・ヘネシーは消費者への直接販売への取り組みも加速させ、中国にヘネシーの店舗をオープンし、パリの百貨店プランタンにヴーヴ・クリコのアウトレットをオープンしたほか、ドン・ペリニヨンとヴーヴ・クリコのケースをオンラインで販売した。フィナンシャル・タイムズが入手した関係者や文書によると、この取り組みは現在、年間数百万ユーロの損失を出しており、見直しの対象となっている。関係者によると、2021年にカンパリと設立されたeコマースの合弁会社「タンニコ」も失敗に終わったという。カンパリはコメント要請に応じなかった。「なぜこのような決定がなされたのかは分かりませんし、今は疑問視するつもりもありませんが、今後こうした活動に関して何をすべきか検討していきます」とアレクサンドル・アルノー氏は今月のスタッフ向けプレゼンテーションで述べた。モエ・ヘネシーの売上が昨年落ち込んだにもかかわらず、LVMHの幹部は、2024年の目標に対して予想される9000万ユーロの営業利益不足を補う方法を見つけるよう同部門のマネージャーに圧力をかけた。「目標を引き下げる立場にはありません」と、フィナンシャル・タイムズが入手したメールの中でシャウス氏は述べ、各チームにコスト削減を促した。「各チームには目標を引き下げるべき正当な理由がたくさんあることは承知していますが、今日、私たち全員がこの課題に立ち向かう必要があります」ある情報筋は、LVMH傘下の事業が前年を下回る見通しを提出したのは「非常に珍しい」とし、「何が何でも成長、成長だ」と付け加えた。「(モエ・ヘネシーの)業績がさらに悪化していくことは明らかでした」と関係者は語った。「しかし、ベルナール・アルノーはそれを聞きたくなかったのです。」●日本企業●トランプ関連米国と中国は週末の交渉を経て関税を巡る合意を発表した。エバーコアISIによると、ドナルド・トランプ大統領の就任前から適用されている関税を含め、米国の対中関税は実質的に39%となる。この税率は主要国の中で最も高く、貿易協定を巡り米国と先週合意した英国が対象の実質8%をはるかに上回る(基本の関税率は10%であるものの、除外措置により実質的にはそれを下回る)。米国が中国と達した合意は高関税の90日間停止であり、一方、英国との合意は最終合意の枠組みとなる。それでも現時点では、この二つのケースは上限と下限を示している。中国が上限であることは理にかなっている。中国は地政学的な敵対国であり、産業における大規模な過剰生産能力によって世界市場にモノをあふれさせ、競合他社を廃業に追い込み、重要技術を支配してきた。米国では、中国のサプライチェーン(供給網)に依存することは危険であり、断ち切る必要があるという超党派のコンセンサスがある。スコット・ベッセント米財務長官は12日、週末の交渉に至るまでに145%に達した対中関税は行き過ぎとの認識を示し、「禁輸措置に等しい」と述べた。「中国との全般的なデカップリング(分断)は望んでいない」とも語った。デカップリングという表現が適切かどうかは別として、現在の関税が維持されれば、トランプ氏が大統領1期目に課し、ジョー・バイデン前大統領が強化した関税措置による中国からのサプライヤー流出は加速するだろう。トランプ氏の他の施策もこの流れを後押ししている。例えば、人工知能(AI)向け先端半導体の輸出規制や、先週の英国との合意に含まれた第三国経由での中国製品の米国向け出荷を制裁対象にすることなどだ。ただ、たとえ12日に発表された合意がトランプ氏の対中政策の論理的な到達点だとしても、そこまでの道のりは論理的とは言い難いものだった。トランプ氏の戦術は自身の主張の論拠を弱めることが少なくなく、一方で米国の一部同盟国よりも中国を優遇するような一面もあった。4月2日に発表された当初の「相互」関税は、米国の貿易赤字に比例して各国を罰することを意図していた。そのため中国に対する税率は主要経済国の中で特に高い34%となった。英国は最低水準である10%の「一律」関税の対象となった。開放的な市場を持つ強力な同盟国である英国に関税を課すことは、今年までは考えられなかった。しかも英国は昨年、対米で120億ドル(約1兆8000億円)の赤字を計上し、中国は2950億ドルの対米黒字だったにもかかわらず、公式には中国と同じ10%の相互関税がかけられることになった。確かに、中国には10%の関税が課されるだけではなく、数カ月前に導入された20%が上乗せされる。ただし、その20%は合成麻薬フェンタニルの中国から米国への流入における中国の役割と関連付けられている。トランプ政権当局者らは、中国がフェンタニル問題への対応に前向きな姿勢を示していると話す。一方、すでに対応を取っているカナダとメキシコには25%の追加関税が課されている。もう一つの矛盾は、トランプ氏が報復措置を取る国に対してはさらに関税を引き上げると約束したことだ。中国は報復し、トランプ氏は最終的に相互関税を125%まで引き上げた。だが今回、それを10%まで引き下げた。それは中国による譲歩の結果ではなく、米国内での影響拡大によるものだった。株式・債券市場で動揺が広がると、トランプ氏は中国を除く大半の国に対し、相互関税を巡る態度を軟化させた。中国に対する関税の大半についても方針を緩和した。品不足やコンテナ輸送量の激減、中小企業の倒産といった事態が深刻化するとの懸念が高まったことが背景にあった。ここには皮肉がある。中国への依存は長年、潜在的な国家安全保障上の脆弱(ぜいじゃく)性として指摘され、関税で対応することが正当化されてきた。だが、その依存こそが、たとえ穏やかなものであっても、デカップリングを痛みを伴うものにしている。トランプ氏の関税に関する方向転換は、米国民が耐えられる痛みには限界があることを示している。●先進国中銀、金融当局欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル独連邦銀行(中央銀行)総裁は14日、米国の政策が不安定であるため、中央銀行にとっては不確実性が新常態となっているが、ECBは依然として2%のインフレ目標を達成できそうだと述べた。総裁はマドリードで講演し「目標の2%に近づいている可能性は高い」と発言。今後の政策対応については言及しなかった。総裁は、たとえ貿易摩擦が緩和しても、不安定な政策が続く可能性があり、ECBはこうした状況を受け入れて政策を決定しなければならないと述べた。「この不確実性が新常態だと思う。私たちは多かれ少なかれ、これに対処しなければならない。この不確実性を管理するためにできることをする必要がある」と語った。独連邦銀行(中央銀行)のナーゲル総裁は14日、世界の準備通貨として米ドルの役割を強調した上で、今後数年間でユーロも同様の機能が強まるとの見方を示した。欧州中央銀行(ECB)理事でもある同総裁は「ドルは世界の金融システムにとって非常に重要で、依然として強いドルが必要だ」と述べた。貿易摩擦や米政策への懸念から、ここ数カ月でドルへのエクスポージャーを減らす動きがでている。米当局者は世界各国と貿易交渉を行っているが、通貨政策に関する約束を合意内容に盛り込もうとはしていないと、事情に詳しい関係者が明らかにした。トランプ政権がドル安を志向し、貿易交渉を利用してその目標を達成しようとする恐れがあるとの懸念から、為替市場では警戒感が広がっている。14日には米国と韓国の政府高官が通貨政策を協議したとの報道で、韓国ウォンが対ドルで一時2%近く急伸、円も上昇した。今月初めには、台湾ドルが数十年ぶりの大幅高となったこともあった。関係者によると、トランプ政権の経済チームでこれらの問題への対応を担っているのはベッセント財務長官ただ1人で、貿易相手国・地域との通貨政策の協議を他の政権高官に委ねることはしていない。こうした問題はベッセント氏が出席する場でのみ交渉されると、関係者は続けた。米財務省の報道官はコメントを控えた。この一報が伝わると、円はドルに対する上げを縮小。1ドル=147円台前半まで売られる場面もあった。トランプ大統領の就任以来、ドルは主要通貨に対しておよそ8%下落。トランプ氏は、とりわけアジアの国々が米国に対して貿易上の優位性を得るために意図的に通貨安を誘導していると長年にわたって批判してきた。トランプ政権は世界の大半の国・地域に関税を課したが、現在は複数の国と交渉を進める中で、関税率引き下げの可能性をちらつかせている。アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「市場が不安定になっているのは間違いない」と指摘。「現在の極端なボラティリティーは貿易を巡る不確実性が原因だ」と語った。ベッセント氏は、米国が意図的に為替レートを引き下げようとしているとの懸念を払拭しようとしてきた。強いドル政策を引き続き「維持」していると2月以降繰り返し表明し、トランプ氏が4月2日に上乗せ関税を発表して米国資産が一時売られた後も、その姿勢に変わりはない。「最優先の投資先」先月にワシントンで開催された国際通貨基金(IMF)の会合でも、ベッセント氏はその点を強調。ミルケン研究所グローバルコンファレンスでの講演では、米国は世界資本にとって「最優先の投資先」だと述べていた。先週末に中国との貿易協議に参加した後は、中国側と「通貨に関する議論はなかった」と語った。関係者によれば、米国は各国との貿易協議でこうした立場に沿った話をしている。トランプ政権は貿易相手に対し、自国通貨を不当に引き下げるような操作を行わないよう求めているが、今後の各国とのディールでそうした方針を盛り込む計画はないという。関係者は機微な内容について話しているとして匿名を条件に語った。ベッセント氏が、強いドルは強い経済を反映するとの考えを公に繰り返している一方で、トランプ氏やその側近の一部の過去の発言からは、別のアプローチの可能性が浮き彫りとなる。トランプ氏がホワイトハウスの大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に起用したスティーブン・ミラン氏は、政権発足前の昨年11月のリポートで、ドルが世界の準備通貨であることに伴う「負担」を軽減するための方策について、アイデアを提示していた。こうした状況も一因となり、たとえ通貨政策が正式にどう位置づけられたとしても、貿易赤字縮小や米製造業復活といったトランプ氏の政策目標を踏まえれば、ドル安志向の論理展開になると、市場関係者は結論づけていると考えられる。カロバール・キャピタル(シカゴ)のハリス・クルシッド最高投資責任者(CIO)は「米国が貿易協議に通貨問題を正式に含めるかどうかにかかわらず、既に市場ではドル安が暗黙の了解であるかのように取引が行われている」と述べた。14日のアジアの外為市場での相場変動は、最近の動きの一部に過ぎない。台湾ドルが先に1988年以来の大幅上昇となった動きの全容はまだ明らかになっていないものの、台湾当局が米国との貿易合意に向けて通貨高を容認するとの思惑が一因となったと、市場関係者の間ではみられている。米財務省の外国為替報告書では台湾、日本、中国がすでに為替慣行に関する「監視リスト」に含まれており、昨年11月には韓国も追加された経緯がある。加藤勝信財務相は13日の閣議後会見で、来週カナダで開かれる主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で、ベッセント氏と為替について協議することを検討していると発言。加藤財務相はG7会合に出席する方向で調整しているとした上で、会合の場を活用して二国間会談を行い、「引き続き為替についての協議を進めることも追求していきたい」と話した。●先進国経済指標●金融市場、先進国トピックスコバルト協会は14日、コバルト市場が昨年の供給過剰から2030年代初めに供給不足に転じるとの見通しを示した。コバルトは電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池などに利用される。短期的には、世界最大の産出国であるコンゴ民主共和国(DRC)の動向が市場を左右する見通し。同国は2月下旬、供給過剰に対応するため、コバルトの輸出を4カ月間禁止すると発表。これを受け、コバルト価格は2月末から60%上昇した。同国の禁輸措置を巡る不透明感の影響を除くと、世界のコバルト供給は今後数年間でCAGR(年平均成長率)が5%になる見通し。インドネシアが急ピッチで生産を拡大しており、ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスに委託した調査によると、30年にはDRCの市場シェアが昨年76%から65%に低下し、インドネシアのシェアが12%から22%に上昇する見通しだ。一方、政府の備蓄を除いたコバルト需要は、主にEV市場の拡大により、CAGRが7%となり、30年代初めに40万トンに達する見通し。昨年の需要は22万2000トンだった。30年にはEVがコバルト需要の57%を占める見通し。昨年は43%だった。携帯電話、ノートパソコン、超合金など工業部門のその他の用途は伸びが鈍化する見通しだ。昨年のコバルト市場は3万6000トン(需要の15%)の供給過剰。23年は2万5000トンの供給過剰だった。米国と韓国は5月初めに為替政策を協議し、協議を継続することで合意したと、事情に詳しい関係者が明らかにした。この報道を受け、アジア時間14日夕方の取引で韓国ウォンは急伸。これに連動し、円も対ドルで上昇している。トランプ政権がドル安を否定せず、今後の貿易協議で為替が議論されるとの臆測が広がった。この関係者によると、韓国企画財政省の崔志栄・国際経済管理官と米財務省のカプロス次官補(国際金融担当)が5日にミラノで会談した。関係者は公に話す権限がないとして匿名を要請した。崔氏とカプロス氏は為替市場に関する見解を共有し、通貨政策について対話を継続することで一致したと、関係者は述べた。報道を受けて、韓国ウォンはドルに対し一時2%近く上昇。この会談は韓国がウォンの対ドル上昇を阻止しないようにすることが意図され、今後の米韓貿易協議では為替が議論されるとの見方を投資家は強めた。この連想から円にも買いが入り、一時1.3%高の1ドル=145円61銭を付けた。ダンスケ銀行のアナリスト、モハメド・アルサラフ氏は、米韓協議の報道は「トランプ政権はドル安志向なのかもしれないとの市場の懸念を強めた」と指摘した。韓国企画財政省の報道官は会談が行われたことを認めたが、詳細を明らかにすることは控えた。米財務省に通常の業務時間外でありながらコメントを要請したが、直ちには応答はなかった。BNYのアジア担当マクロ・投資戦略責任者、アニンダ・ミトラ氏は「かなりの意味を持ち、トレーダーがウォンに強気のポジションを組む理由が増える」と述べた。ドルの全般的な弱さもあり、ウォンは年初から対ドルで約6%上昇している。韓国は昨年11月、日本や中国などとともに米財務省から為替操作の「監視対象」に指定された。ブルームバーグのマクロストラテジト、ベン・ラム氏は「トランプ米政権が今や貿易から為替レートに焦点を移しつつあるとの兆しが増えるなら、今月のドルの堅調は危うくなるかもしれない。強い通貨に起因する経済的な不均衡を是正するために、トランプ政権が各国にドル安への協力を求める政策を追求するとの懸念がある」との見解を示した。米国で4月に卵の価格が、前月に付けた最高値から18%下落した。鳥インフルエンザの影響を受けていた供給が回復し、消費者に一定の安心感が広がった。米労働統計局の13日の発表によると、4月のLサイズ卵の平均消費者価格は1ダース当たり5.122ドル(約750円)。前月は2カ月連続で高値を更新し、6ドルを超えていた。卵のより広範な価格を示す指数は月間としては1984年以来最大の値下がりとなり、4月の米消費者物価指数(CPI)の予想を下回る伸びに寄与した。鳥インフルエンザの発生が鈍化し、採卵用鶏の数が回復した中で卵価格は軟化。これまで見られたパニック買いも収まり、需要もある程度正常化した。卸売価格は3月、最高値から既に下げていたものの、小売業者は供給不足への懸念から値下げに慎重だった。供給の増加は、通常イースター休暇時期に強まる需要を一部相殺する形となった。ブルームバーグ・グリーン・マーケッツのアナリスト、ジャスティン・バーラップ氏は、卵の価格が5月にさらに下落すると予想する。卵の需要は通常、夏季に最も低下する傾向がある。この時期、消費者は卵よりも肉のグリルを選ぶ傾向がある。ただ消費者価格は歴史的に高水準のままで、通常以上の購入を促すには高過ぎる水準だと米農務省は週間リポートで指摘している。経済学者バートン・マルキール氏は株式市場を「ランダムウォーク」と呼んだ(株価はランダムに動き、新たな情報をすぐに織り込むため、市場を打ち負かそうとしても無駄だという考え方)が、投資家は少なくとも企業の業績見通しを道しるべにできた。だが今や、彼らはおおむね手探りの状態だ。ドイツの高級車大手BMW は先週発表した1-3月期決算で、2025年12月期の業績見通しを3月半ばに示した水準で維持した。ただそれはトランプ政権による最近の関税引き上げが7月から部分的に引き下げられるとの前提に立っている。BMWのオリバー・ツィプセ会長は7日のアナリスト会議で、一定の時間はかかるものの、米国・メキシコ・カナダ間の自由貿易は「再び復活する」との見方を示した。「誰にとってもデメリットが大きすぎる」からだ。米国は中国と大半の関税を一時停止することで12日に合意しており、先週には英国との間で通商合意が発表されたことから、ツィプセ氏の楽観的見方には一定の根拠があるのかもしれない。だがドイツ銀行の株式アナリストは、BMWの決算発表後、そこまで確信を持てずにいた。顧客向けリポートでは「当然ながらBMWの楽観論を誰もが共有しているわけではない」と指摘した。非伝統的な手法とはいえ、BMWが示した予測は、数カ月後の経済がどうなるか誰にも分からないという事実への一つの対処法だ。米フォード・モーターや、ジープなどを傘下に持つ欧州ステランティス、米デルタ航空、米宅配・航空貨物大手UPSは別の方法を採り、2025年の通期業績見通しを完全に取りやめた。米ゼネラル・モーターズ(GM)、米飲料大手ペプシコ、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などは目標を下方修正し、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は業績見通しから関税の影響を除外した。ユナイテッド航空は安定した環境の場合と景気後退入りした場合の双方のシナリオを提示した。ウォール街の現時点の予想中央値では、S&P500種指数のEPS(1株当たり利益)は今後12カ月で8.9%の伸びが予想され、その通りならば予想株価収益率(PER)は20.6倍となる。歴史的には高水準だが、過去5年の平均とほぼ一致する。そこに問題がある。アナリストは今や意味のない数字を算出する企業幹部の予想を手がかりにしている。実際には、S&P500種指数は見かけに比べてはるかに割高かもしれない。ゴールドマン・サックスが米英・米中の合意前に示した最新予想では、今後12カ月に景気後退が起きる確率を45%としていた。だが4月8日に弱気相場入り寸前までいったS&P500種指数は2月下旬以降初めて、年初来でプラスに転じた。確かに、1カ月前に比べて景気悪化の可能性は小さくなっている。ドナルド・トランプ大統領は貿易摩擦を緩和させ、「軟調」な調査指標が示唆していた状況とは裏腹に、4月の公式統計では雇用市場に大幅な悪化は見られなかった。加えて、アナリストも先々のリスクを完全に度外視しているわけではない。1-3月期決算が好調で、4-6月期業績見通しを引き上げる企業が平均以上に多かったにもかかわらず、証券会社は4月に4-6月期予想を2.4%引き下げた。通常よりずっと大きな引き下げ幅だ。また1年先以降の予想でも下方修正を拡大している。歴史的にこれは景気冷え込みに先行する妥当な手がかりとなってきた。そのため、投資家は景気後退または少なくとも深刻な景気減速の可能性をある程度織り込みつつ、同時に、米国の消費者と企業(いずれも財務状況は依然として堅調)が今後数カ月の混乱を乗り越えた後に起きる経済回復の可能性を見比べている、とも考えられる。だが実際、それは理にかなっていない。たとえ経済の不確実性自体が最終的にマイナスの影響を与えることはないとしても、トランプ氏の通商合意では、最近発表された関税の多くが今後も維持されることが確認されており、それは輸入コスト上昇を意味する。企業は間もなく利益率低下を受け入れるか、値上げするかの二者択一を迫られ、売上高にも響くことだろう。重要なポイントは、貿易戦争が始まる前からすでにS&P500種指数(中でもテクノロジー株)の利益予想が下方修正されていたことだ。参考までに言うと、景気後退局面では利益が通常20%以上減少する。EPSの伸び率が過去5年平均の7.9%に低下し、予想PERが近年推移する水準の中で最も高い22倍に上昇するという非常に安全なシナリオを想定した場合、S&P500種指数の上昇余地は約6%にとどまり、キャッシュ(現金・現金同等物)の利回りが4%であることを考えると大きくない。一方、投資家は揺れ動く予想に注目するよりも、むしろ「リアルな数字である過去の利益に目を向け始めるかもしれない」。ノースウェスタン・ミューチュアルの株式担当チーフポートフォリオマネジャー、マット・スタッキー氏はそう述べた。投資家はすでに一定程度それを実行しているかもしれない。割安な「バリュー株」は過去15年間、シリコンバレーの超大型グロース株に比べて不人気だったが、今年に入ってアウトパフォームしていた。ただ12日に流れが変わり、テック株主導の株価急騰が起きた。「バリュー株に大きな期待が織り込まれることはない。だが期待と違って、割安なバリュエーション(投資尺度)は緩衝材の働きをする」。M&Gインベストメンツのファビアナ・フェデリ氏はこう述べた。だが、人工知能(AI)の有望さが引き続き米国の投資の根拠になっていることを考えると、最終的に市場全体がかなりの弱気相場に向かう可能性がある。過去のPERを信じるならば、バリュエーションは極めてフロス(泡)的で、ドット・コム・バブルの時代とあまり変わらない水準にある。ウォール街のベテランストラテジスト、ジム・ポールセン氏は別のルールを提示する。第2次世界大戦の終結以降、S&P500種指数のリターンは対数チャートのラインに沿って上昇してきた。現在の上方へのかい離は1999年ほど大きくないが、今後1年間でトレンドラインに戻るとすれば、約20%の下落を意味する。恐らく投資家は、可能な限り分散投資を行い、極端な結果に耐えられるバランスシートなどの強みを持つ「クオリティー企業」に軸足を置くべきだろう。それは中国との関わりが大きい米アップルのような銘柄を避け、会員制倉庫型量販店コストコ・ホールセールやメタ・プラットフォームズ、クレジットカード大手マスターカードなどの人気銘柄を信じ続ける根拠になるかもしれない。それでも、現在の先行き不透明な投資方法のうち、特に大きな利益につながるものは何一つないという可能性もある。米中が相互の関税率を90日間引き下げることで合意したことで、貿易戦争は最悪期を脱したとの楽観論が再び台頭している。しかし筆者には、これが「突破口」となるようには思えない。米連邦準備制度理事会(FRB)が対応しきれないほどの経済的打撃が及ぶ余地は依然として大きい。まず、今回の関税一時停止が持続する保証はなく、全体の流れを変えるものでもない。関税率は依然として高く、インフレを助長し、成長を阻害する水準にある。イェール大学予算研究所によれば、平均実効関税率は17.8%に達しており、トランプ政権2期目の開始時点の約2.5%から大幅に上昇している。その影響で物価水準が約1.7ポイント、失業率が約0.35ポイント上昇する可能性があるという。次に、90日間の関税停止は、トランプ政権の政策を巡る先行き不透明感をかえって長引かせるだけだ。その結果、企業は支出や投資、雇用の意思決定を先送りすることになる。さらに、FRBは今後も、インフレ抑制と成長支援という難しい判断を迫られ続ける。短期的には、政策金利を据え置いたままインフレ期待を注視する忍耐強さが求められるが、その結果、景気悪化への対応が遅れるリスクもある。利下げを求めるトランプ氏の不満も招くだろう。実際、FRBに選択の余地はほとんどない。今のようにリスクがどちらに偏っているか分からない状況では、さらなる情報を待つしかないのだ。仮に現時点で大きな措置を講じても、それが成功する確率はせいぜい五分五分だろう。2021年以降にインフレ率が当局目標の2%を上回り続けていることを踏まえれば、FRBが置かれている状況はなおさら厳しい。成長を優先しようとすれば、インフレ期待の抑制が難しくなり、制御不能な価格上昇スパイラルを引き起こすリスクが高まる。これはFRBが取ることのできない非対称リスクだ。ただ、忍耐強さもリスクを伴う。失業率の動向から景気後退を判断する「サーム・ルール」の提唱者、クラウディア・サーム氏が指摘するように、労働市場の弱さは自己増幅的な性質を持っている。解雇が消費を抑制し、それがさらに企業の収益を圧迫し、追加の解雇を招くという悪循環が起きやすい。歴史的な傾向を見ると、失業率が0.5ポイントを超えて上昇すると、景気後退に陥る可能性が高まる。昨年は例外で、失業率が上昇したのは雇用の弱さではなく、労働市場に参加する人が増えたためだった。しかし今回は状況が異なる。雇用の伸びが鈍化しており、強制送還や国境での取り締まりによって労働力人口の増加も抑えられている。では、FRBは今後どう動くのだろうか。インフレ率や経済成長見通し、通商政策の方向性が明らかになるのは、おそらく9月以降になるだろう。その時点で利下げが必要となれば、労働市場の悪化を食い止めるために積極的に動くことが求められる。特に、関税による供給ショックが金融政策の効果を弱める可能性を考えるとなおさらだ。米経済がリセッションに陥った場合には、200-300ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)程度の利下げが必要になるだろう。現時点でFRBに非はない。新型コロナ禍の局面ではインフレ対応が後手に回ったが、が、今回は状況が異なる。金融政策では対応できない通商政策の影響に直面しているのが実情だ。FRBが経済を安定成長させ続けるための適切な対応方針が早期に明確になることを願うしかない。ウォール街のクレジットアナリストの間では、今年の予測を見直し、より前向きな予測を示す動きが相次いでいる。米中貿易協議の進展で社債市場に楽観的なムードが広がった。ゴールドマン・サックス・グループやバークレイズのストラテジストは、リスク資産全般の急上昇で社債価格が急速に押し上げられ、多くの企業が社債発行に向かったことから、一段と強気になった。ブラッドリー・ロゴフ氏らバークレイズのストラテジストは14日の最新予測で「先週末の貿易戦争緩和は、経済状況を大きくかつ持続的に変えたとみている」とした上で、「短期的には(スプレッド)縮小が自然な流れだと考えている」と指摘した。現時点で同行アナリストは投資適格債について、年末時点のスプレッド(米国債に対する上乗せ利回り)が下限で95ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と予測。これは3月時点の想定より25bp低い。高利回り債に関しても、低く見積もって325bpと、従来予想より75bp小幅だ。バークレイズは米貿易相手国に対するトランプ米大統領の関税が、米政権が先月示唆した内容より緩やかになると予測。これにより、インフレや失業率への圧力が緩和され、今年の経済成長率はプラスを維持するとみている。また、企業のバランスシートは比較的健全であり、なお高水準にある利回りも引き続き社債需要を下支えする見通しという。ゴールドマンは年末のスプレッド水準について、3月時点の予測より米投資適格債で約20bp、ハイイールド債で約100bpそれぞれ低下させた。いずれの見通しも、現在の水準とほぼ変わらないことを示している。同行のチーフクレジットストラテジスト、ロトフィ・カルイ氏は13日のリポートで「ここ数週間の動きから分かることは明確だ。当初スプレッドを押し上げていた政策シフトは緩和され、事実上のブレーキ役として作用している」と分析した。トランプ米大統領が「解放の日」と呼んで発表した上乗せ関税の大半について90日間の停止を明らかにした際、米企業(資産総額1兆ドル超=約146兆円)はかつてない規模で短期の米国債を購入した。投資分析会社クリアウォーターが明らかにした。企業は過去18カ月間にわたって現金や安全な証券の保有期間を延ばしてきており、こうした米国債の購入はより広範な動きの一環であることが、クリアウォーターが追跡したデータでは示された。主に非金融系の米企業800社余りを対象としている。それによると、トランプ氏が株式について「今が買いの好機」だと述べた4月9日、企業の財務担当者らは1-3年満期の米国債を約50億ドル相当購入し、保有高をさらに増やした。クリアウォーターの調査責任者、マシュー・ベガリ氏は「過去約1年にわたって、デュレーションが長期化する傾向が見られている」と指摘。「この種の企業投資家は利回り上昇局面を好機と捉え、買いに動いている。全体として、彼らはマネー・マーケット・ファンド(MMF)から資金を移している」と説明した。クリアウォーターの顧客は4月にMMFから約310億ドルを引き揚げたことがデータでは示された。こうした満期を延ばす動きの背景には、企業の財務担当者が米利下げサイクルの前およびサイクル中に高い利回りの確保に努めていることがある。トータルリターンベースでは、米国債市場は今月に入ってそれほど好調とはいえず、12日に米国と中国が関税戦争の一時休戦を発表したことを受け、利回りが上昇。利下げ観測の後退に伴い、米2年債利回りは4%をやや上回る水準で推移している。「企業にとっては、こうした証券を保有することによるデュレーションリスクはそれほど大きくない。債券価格が急落したとしても、結局は満期まで保有するだけだからだ」とベガリ氏は話した。高配当株への投資は特に効果的な投資戦略の一つだが、そのリターンを簡単に高められる方法がある。「時間とともに配当を着実に増やしている企業は、長期的に最高の市場パフォーマンスを上げる」という考えに基づき、何十本ものファンドの運用資金や保守的な投資家の何千億ドルもの資金が投資されている。配当成長は時として本末転倒になることがある。例えば、S&P500配当貴族指数(69銘柄)は、S&P500種指数の構成銘柄のうち25年以上連続で増配している企業で構成されるが、経営陣が1セントでも配当を増やせないと判断すれば「罰」を受ける。製薬大手ファイザー、ゼネラル・エレクトリック(GE)、通信大手AT&T、ドラッグストアチェーン大手ウォルグリーンズ・ブーツ・アライアンスは、いずれも配当貴族の称号を失った。石油大手エクソンモービルは5年前、その称号を失いかけたが、かろうじて維持した。配当の重要性はこの数十年間で低下しているが、配当自体は今なお活発に行われている。ネッド・デービス・リサーチのエド・クリッソールド氏は、S&P500種構成企業の5分の4超が配当を支払っており、324社が過去1年間に増配あるいは配当を開始したと指摘する。意図的ではなかったものの、同社が数年前に行った調査が配当成長株ブームをあおる形になった。この調査で、古くからある一般的な方法でリターンを計算したところ、特にこの種の株式が優れた結果を示したのだ。同社の「業界の変化を反映した追加的な手法」によると、配当成長株は好調だったが、より収益性の高い戦略は、単純に配当利回りに注目することだという(ただし、この戦略はボラティリティーと売買回転率が高くなる)。1973年以降、利回り上位半分の銘柄のパフォーマンスは、強気相場でも弱気相場でも配当成長株を上回っている。ただし、利回りだけに注目するのは要注意だ。マイケル・オヒギンス氏が1991年の著書「ダウの犬投資法:プロにも株価指数にも勝つ『単純』戦略」で広めた「ダウの犬」は、うまくいったかと思えばそうでもなかったDIY手法だった。同書は、ダウ工業株30種平均の構成銘柄のうち配当利回り上位10銘柄を毎年買うことを推奨していた。ある工夫を考えてみよう。バンク・オブ・アメリカのストラテジスト、サビタ・スブラマニアン氏は最近の議論で、ポッドキャスト番組の司会者メッド・フェイバー氏から、株式を選ぶ際の簡単なスクリーニング方法として推奨できるものがあるか聞かれた。スブラマニアン氏は、大型配当株を利回り水準で五つのグループに分けることが第一歩だと述べた。ただし、買うべきはその最上位グループではない。なぜなら、株価急落前のウォルグリーンズのように、本当に「犬(だめな銘柄)」である可能性があるからだ。代わりに、2番目に利回りの高いグループを買うべきだという。「これはまさに『堅実』戦略のようなものだ。(中略)インターネットでデータを無料で入手でき、毎月自分で実行できる。面白くはあるが、同時にとても退屈で地味な戦略であるものの、ほとんどの市場環境で機能しているようだ」とスブラマニアン氏は述べた。どれほどの効果があるのか。ハートフォード・ファンズの情報によると、1930年にS&P500種指数(またはその前身の指数)に1000ドル(現在のレートで約14万6000円)を投資した場合、2024年には860万ドルに増えていたはずだ。同指数構成銘柄のうち利回りが2番目に高いグループに投資した場合は、3100万ドルになっていた計算になる。さらにリターンを高めることはできるだろうか。前述のフェイバー氏は本業として、株主利回り(配当、自社株買い、負債削減という三つの手段を通じた投資家への現金還元の比率)という概念に注目する一連のファンドを運用している。同氏率いるカンブリア・インベストメントのカンブリア株主利回りETF(上場投資信託)を、モーニングスターが追跡する自社株買い・配当ファンド188本(2013年5月の同ETF設定以降に存在するもの)と比較したところ、23年末時点でのパフォーマンスは同ETFが1位だった。その優位性は、実際には過小評価されている可能性がある。配当以外の目的で余剰現金を使用することは、課税口座ではより効率的だ。これこそが、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが約60年間配当を支払っていない大きな理由だ。バークシャーは決して配当貴族にならないが、それでもうまくいっているようだ。欧州中央銀行(ECB)の監督当局が、域内の一部銀行に対し、緊迫した状況における米ドル需要を検証するよう求めていることが分かった。トランプ政権下で米連邦準備理事会(FRB)の資金援助に頼れなくなるシナリオを想定しているという。協議に詳しい関係者3人が明らかにした。ユーロ圏の銀行の資金調達ニーズの約5分の1は米ドル建てとなっている。金融機関は短期資金を市場で調達しているが、金融危機時にはこうした市場が突然閉鎖される可能性がある。欧州の中央銀行は過去に、この不足分を補うためにFRBからドルを借り入れていた。FRBは、世界の準備通貨の不足を緩和し、金融ストレスが米国に波及するのを防ぐため、ECBや他の主要中央銀行と融資協定を結んでいる。ECBの監督協議に詳しい関係筋2人は、FRBが今回を含め、こうしたバックストップを守らないと示唆したことは一度もないと述べた。それでも、トランプ米大統領が欧州の同盟国との長年の防衛・貿易協定に疑問を呈したことで、同盟国が不信感を募らせており、FRBの方針が変わる可能性が懸念されているという。そのためECBの監督当局は、域内の金融機関に対し、負債を返済するのに十分な、あるいは信頼できるドル建て資金を保有しているかなど、バランスシートのギャップを検証するよう緊急に要請。一部銀行に対しては、場合によってはドル資金へのエクスポージャーを減らすために業務の一部変更を検討するよう要求しているという。ECBとFRBはコメントを控えた。ホワイトハウスもコメント要請に応じなかった。FRBはホワイトハウスから独立しているが、トランプ大統領はパウエル議長を頻繁かつ公然と批判しており、将来FRBの独立性が低下する可能性を懸念する声も上がっている。現時点ではドル資金調達市場にストレスはかかっていないものの、予防的な監督要請は米国の最も近い同盟国の間でどれほど不安が広がっているかを示している。ある欧州最大手銀行の一つは、FRBの融資が受けられない可能性があるシナリオは、数カ月前はゼロ%だったが、現在は5%のリスクがあるとみているという。関係者は、このリスクレベルは「かなり大きい」と述べ、エクスポージャーの削減や代替策の模索などドル不足への対処法が、今後の銀行のリスクに関する協議の一部となるとの見通しを示した。●ロシア、ウクライナ、中東情勢ロシア経済は、戦時体制への切り替えや西側諸国の制裁によって足場が弱まり続けている――。スウェーデンのストックホルム移行経済研究所(SITE)は13日、欧州連合(EU)財務相会合向けにまとめた報告書を公表し、こうした見解を示した。報告書は、ロシア経済はまだ比較的安定しているものの、底堅く見えるのは表面上だけで、基調的な不均衡と構造的なもろさが拡大を続けていると分析。「戦争に伴う財政刺激が短期的に経済を浮揚させ続けている。しかし不透明な資金繰りや資源配分の歪み、財政バッファーの縮小が、長期的な(経済の)持続を不可能にしている」と述べた。ロシアの国内総生産(GDP)は2023年が3.6%増、24年が4.3%増と、西側の制裁は効果がないかのように堅調だった。ただ報告書提出者のトルビヨン・ベッカー氏は、ロシアのGDPの数値は信用できないと主張し、物価上昇率が実態より低めに公表され、実質GDPが過大に報告されていると指摘した。ベッカー氏は、ロシアの財政赤字も公式統計の最大2倍に上るはずだと見積もっている。EU欧州委員会のドムブロフスキス委員(経済担当)は、欧州委としてSITEの報告書の意見に賛同すると述べた。ドムブロフスキス氏は「この分析はロシアの統計に信頼性がなく、ロシア経済は公式統計が示すほど良好ではないことを明らかにしている」と語った。●その他エマージングメキシコのエブラルド経済相は13日、米国、カナダとの貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の見直しを始める時期について、消費者と投資家に明確にするため今年後半に前倒しするのが望ましいと述べた。エブラルド氏は、国内の金融ハイテク企業との省内イベントの合間に、「協議は今年後半に開始されるとみている。できるだけ早く実現し、早期に合意に達するよう期待している」と記者団に述べた。USMCAは来年に見直しが行われる予定だが、トランプ米大統領は前倒しを求めている。エブラルド氏は、早期見直しにより三国間の貿易政策が消費者と投資家双方にとって「より容易で明確」になる可能性があると指摘。その上で、メキシコは鉄鋼、アルミニウム、自動車、トマトの対米輸出でより有利な条件に向けた交渉に取り組んでいると説明した。中国の4月の新規人民元建て融資は予想以上に急減した。4月は例年、融資が低迷するが、米国との貿易戦争が長引き、融資需要が一段と減少した。中国人民銀行(中央銀行)が14日発表した統計に基づくロイターの算出によると、4月の新規融資は2800億元(約388億7000万ドル)。ロイターがまとめた市場予想の7000億元を下回った。3月は3兆6400億元、前年4月は7300億元だった。キャピタル・エコノミクスは「銀行融資の伸びは再び減速したが、国債発行急増を背景に幅広い信用の伸びは引き続き加速している。金融緩和で民間信用需要は今後数カ月押し上げられるとみているが、緩やかな増加にとどまると予想している」との見方を示した。4月の融資残高は前年比7.2%増と過去最低を記録した。3月は7.4%増、市場予想も7.4%増だった。中銀は月次データを公表していないため、1ー4月と1-3月のデータ基づきロイターが算出した。1-4月の新規融資額は10兆0600億元。前年同期の10兆1900億元から減少した。中国の銀行は質の高い顧客を獲得し、市場シェアを拡大するため、年初に前倒しで融資を行うため、通常4月の融資は低調となる。ロイターの算出によると、住宅ローンを含む家計融資は4月に5216億元減少した。3月は9853億元増だった。法人向け融資はは2兆8400億元から6100億元に減少した。全体としては、長引く不動産危機、地方政府の負債、デフレ圧力によって借り手の信頼は損なわれている。4月は米国との貿易戦争がエスカレートし、融資需要が一段と減少。家計や企業の間に広がっていた慎重ムードがさらに強まった。4月のマネーサプライM2の前年比伸び率は8.0%。ロイターがまとめた市場予想は7.3%、3月は7.0%だったM1の前年比伸び率は1.5%。3月は1.6%だった。広義の与信・流動性を示す社会融資総量残高は前年比8.7%増で13カ月来の高水準となった。3月は8.4%増だった。景気支援を目的とした国債発行の拡大が寄与した。台湾の指導者たちは、2027年までに中国の侵攻を受ける可能性を見据え、防衛体制の緊急改革に着手した。その目的は、米国の救援が到着するまで持ちこたえることだ。しかし、その改革が抜本的なものであるため、台湾がわずか2年で防衛体制を整えられるかどうか疑問視する声は多い。台湾は、通常戦争に備えた装備を重視する従来方針を転換しようとしている。代わりに、新たな非対称防衛力の構築を急いでいる。はるかに強力な軍事力を持つ中国に、攻撃を思いとどまらせることが狙いだ。それが失敗した場合は、米国に支援を求める間、中国に十分な打撃を与えて進軍を遅らせることを目指す。中国が台湾侵攻を決断するかどうか、そして台湾占領に成功するかどうかは、台湾の軍事力強化のスピードにかかっている可能性がある。米シンクタンク、民主主義防衛財団(FDD)のシニアディレクターを務めるマーク・モンゴメリー元海軍少将は「台湾は政策・調達・人員の3分野で軍事態勢を改善している」と指摘する。「しかし、これは5~6年かかるプロセスであり、それぞれの分野で極力早く取り組む必要がある」中国の侵攻を探知・抑止・撃退するための台湾の装備の一部を以下に挙げる。軍事専門家の間では、中国はまだ、侵攻に伴う地理的・軍事的障害を克服できる段階にないとの声が多い。しかし、中国は最近、台湾封鎖を想定した演習を実施し、台湾に衝撃を与えた。台湾は、この演習が攻撃の前触れとなる可能性を懸念している。一方、ドナルド・トランプ米大統領が台湾は自衛を強化する必要があると述べたことを受けて、台湾の指導者たちは、中国から攻撃を受けた際に米国の軍事介入を受けるにふさわしい努力をしていることをトランプ氏に示したいと考えている。台湾国防部(国防省)は、外国からの軍事支援は防衛能力構築を加速させる方法の一つであり、唯一の選択肢ではないと述べた。「(台湾は)われわれの国であり、自分たちで守る」としている。非対称戦争台湾は現在、水陸部隊による侵攻を阻止するための沿岸防衛網の構築を目標としている。例えば、新兵器の備蓄や、それらを使用できる軍の拡大・訓練などだ。台湾海軍は沿岸司令部を設置し、制海権重視から攻撃阻止重視へと転換している。この包括的なアプローチは「ヤマアラシ戦略」として知られる。より大きな敵を抑止し痛みを与えるため、台湾全土に抵抗拠点を設置するというものだ。台湾の顧立雄国防部長(国防相)は3月に発表した国防計画の中で、「非対称的アプローチを通じたこの強固な軍事力構築」により、中国は「台湾侵攻の試みが多大なコストを伴うだけでなく、徒労に終わることを学ぶだろう」と述べた。より安価で迅速に配備できる兵器の使用が、中国の侵攻を阻止する鍵となる。英ロンドン大学キングス・カレッジの東アジア戦争・戦略担当教授、アレッシオ・パタラーノ氏はそう話す。台湾のアプローチは、ウクライナがロシアの侵攻阻止で一定の成功を収めたことも影響している。台湾はウクライナの国産ドローン(無人機)メーカーの事例を参考に、台湾企業から5年間で3200機以上のドローンを購入し、域内生産を増やす計画だ。ドローン業界は現在、中国が支配している。台湾軍は昨年、兵士にドローンの操縦を教えるアカデミーを開設した。ウクライナから得たもう一つの教訓は、兵器と弾薬が急速に枯渇する可能性があるということだ。台湾は四方を海に囲まれているため、中国に包囲されれば補給が困難になる。台湾外交部(外務省)の陳明祺政務次長は現職就任前の昨年12月、「対艦・防空ミサイルの備蓄をさらに増やす必要があるのは明らかだ」と述べていた。新戦略には大きな障害がある。文民から選ばれた異例の国防部長である顧氏は、1世代にわたって通常戦争への準備に専念してきた軍組織と向き合わなければならない。トランプ氏の大統領返り咲きも台湾への圧力を高めている。同氏と政権メンバーは台湾に、域内総生産(GDP)の10%相当を軍事費に充てるよう求めている。同比率が2%前後で推移してきた台湾にとって、これは難しい注文だ。非対称戦争に向けてより小型で安価な兵器を購入することで、台湾がそうした要求を満たすことは一段と難しくなりそうだ。台湾の頼清徳総統は3月、軍事費を年内にGDPの3%まで引き上げると表明したが、同案は立法院(国会)で、中国との友好を重視する野党の抵抗に遭っている。キングス・カレッジのパタラーノ氏は、台湾軍の準備態勢と熟練度は、台湾の民衆と政治エリートが望むレベルまでしか達しないと述べる。軍の構築台湾軍が直面する特に大きな障害の一つは人員確保だ。約21万5000人規模の軍事力を目標としているが、それでも中国の200万人規模の軍事力には及ばない。国防部によると、昨年末時点で台湾軍の定員充足率は78%だった。経済成長と非軍事化の時代に育った、教育水準の高い若者層から人材を集めることに苦労している。一方、台湾は世界有数の低出生率国であり、徴兵対象者は減少している。台湾の淡江大学で教える防衛アナリストの揭仲氏は「戦闘部隊では既に志願兵が不足している」とし、戦闘準備と戦力構築の要求が高まることでこの問題は悪化すると述べた。台湾では昨年、兵役期間が従来の3倍の12カ月に延長された。軍は入隊の魅力を高めるため、給与を3%(月額最大400ドル=約6万円)引き上げ、宿舎も改修した。軍は採用キャンペーンを展開中で、台北中心部を走るバスの車体に、制服姿の士官候補生3人の写真と「祖国を守り、非凡な人生を築こう」というメッセージを載せた広告を出している。軍は予備役の強化も目指しており、特にその迅速な動員能力の向上に取り組んでいる。訓練の方向性は戦略の見直しに合わせて転換された。徴集兵はこれまで、基地を離れて訓練することはほとんどなく、高度な兵器も扱わなかった。現在は、台湾防衛時に配置されると予想される場所で、ドローンや地対空ミサイル「スティンガー」といった、より高度な兵器の使用訓練を増やしている。米国との連携台湾軍が中国の侵攻を阻止する体制を整えるには、危機時に米国と協力する方法も把握しておく必要がある。米国と台湾は戦闘計画の調整をまだ学んでいる段階で、共同作戦を実施できる状態からは程遠いと、防衛アナリストの揭氏は言う。「台湾は米国とより緊密に協力することが必須だ」と外交部の陳次長は述べた。「台湾は戦争した経験がほぼないため、最も経験のある国から学ばなければならない」台湾との軍事協力に関して米国防総省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。台湾は米軍が救援にやって来るかどうかも把握する必要がある。台湾の政府当局者らは、トランプ氏が米国のウクライナ向け支援を打ち切ったことで警戒を強めていたが、米中対立が深まる中で、自分たちはトランプ氏の支持を得ているという確信を強めている。ドナルド・トランプ米大統領の関税引き上げに対し、中国は一連の報復措置で対抗した。4月4日には他の措置とともに、米国の防衛、エネルギー、自動車産業にとって不可欠な17種類のレアアース(希土類)の一部と、磁石類の一部の輸出を停止した。その事態を受けたメディアの論説で、欧米が抱える脆弱(ぜいじゃく)性に対する深い不安が露呈した。米紙ニューヨーク・ポストは、中国が「米産業の膝を撃ち抜いた」と非難した。英BBCは、共産主義の中国が「アメリカに大打撃を与えた」と大々的に報じ、英誌エコノミストは、中国によるレアアースの支配は「米国を傷つける可能性のある武器」だと警告した。こうした論説には一理ある。国際エネルギー機関(IEA)によれば、中国はレアアースの生産で約61%、加工で92%の世界シェアを持っている。しかし米メディアが苦悶(くもん)に満ちた反応を見せたことで、多少の忘れっぽさも露呈してしまった。実際には、米国は以前にも同じ状況に置かれていたのだ。中国は15年前、日本と中国が互いに領有権を主張する海域を巡り日本と論争になった後、日本に対してレアアースの輸出停止措置を取るとともに、日本を除く世界全体に割り当てるレアアース輸出枠を40%削減した。中国の動きは、先進国全体に警鐘を鳴らすものだった。レアアース価格は急騰し、2010年1月に1キロ当たり4.15ドル(約600円)だったセリウムは、2011年7月には150.55ドルまで高騰した。米防衛アナリストは、中国は戦略面での脆弱(ぜいじゃく)性に付け込んでいると警告した。米製造業者は、風力タービンから精密誘導ミサイルまであらゆるものに重要な役割を果たすレアアースの代替品を求めて奔走した。このパニックは当然のことにみえた。当時、中国は世界のレアアース生産の93%を占め、最も希少な重希土類の99%超を支配していた。米議会は中国のレアアース市場独占に関して公聴会を開き、ドン・マンズーロ下院議員(共和、イリノイ州)は、中国の行動が「何万人もの米国人の雇用を脅かす」と述べた。権威主義的な大国である中国が、豊富な鉱物資源を地政学的な武器として振りかざし、資源をあまり持たない西側諸国を自国の言いなりにしてきたという同議員の主張には説得力があった。しかし現在では、戦略面の災難とされたこの出来事を覚えている人はほとんどいない。市場のメカニズムが資源をてこにしようとする中国の試みを損なった。2010年代初めに、中国以外からの供給の伸びが加速したのだ。米レアアース生産会社のモリコープが米カリフォルニア州、豪同業ライナスがオーストラリアで既に開発を始めていたプロジェクトが加速し、生産能力は何万トンも増えた。2014年までには、レアアース市場における中国のシェアが90%超から約70%に低下した。中国の輸出割当制度にも、驚くほどの穴があることが判明した。生産者は抜け穴を利用し、制限の対象外である最小限の加工を施した合金を出荷した。一方で、生産量の推計15~30%は近隣諸国を通じてこっそり持ち出された。中国政府が何千にも及ぶ小規模の採掘業者を取り締まれなかったことで、禁輸措置は致命的な打撃を受けた。メーカーは目を見張るほどの適応能力を示した。精錬業者は一時的に代替的な触媒を使い、磁石メーカーはレアアースの使用量を減らせるよう合金を調整した。新たな技術に完全移行するメーカーさえあった。この「需要崩壊」によって、新たな供給態勢の本格稼働が可能になる前に、危機の影響が小さくなった。2011年に急騰していた価格は、急速に危機前の水準に戻った。この2010年のエピソードは、原材料を地政学的な武器として使う試みの根本的な制約をあらわにした。中国はレアアースのかなりの市場シェアを維持しているものの、米防衛産業はその依存度を最低限(世界需要の0.1%未満相当)に減らした。武器計画用の在庫は一時的な供給混乱の影響を軽減できる水準で維持されている。レアアースは、レア(希少)という名にもかかわらず、極めて豊富に存在する。セリウムは、地球上で25番目に多い一般的元素だ。重量にして地殻の100万分の68を占めているセリウムは、銅よりも埋蔵量が多い。レアアースがレアである理由は、地球化学的に見て少量ずつに分散化されていることだ。レアアースは、単独の鉱物のかたまりではなく、他の鉱物の中に均等に混在している傾向が強い。レアアースはまた、抽出するのが難しい。レアアースが通常、放射性物質であるトリウムやウランを含むことが多い幾つかの鉱物と結び付いているからだ。こうした要因でレアアースは比較的希少な鉱物資源になっている。そのため有用なレアアースを抽出する工程で環境問題が発生する恐れがある。だが、時にはこうした懸念よりも国家安全保障を重視せざるを得ない。同時に、レアアースの大規模生産を進めるカナダのような同盟諸国との自由貿易と友好関係は、国家主権や不法移民をめぐる非現実的で非生産的な争いよりも重視されるべきだ。米国が半導体、重要鉱物、医薬品原料などのサプライチェーン(供給網)に関する新たな懸念に対処する中で、われわれがより広い視点から思い起こすべきなのは、実態がなかったレアアース危機が、経済的圧力行使の試みに対して、グローバル市場と人類のイノベーションが抵抗できるという証明になったことだ。●プロファイ、インフラ、自然災害●その他●市況(ChatGPTによる要約版)### 為替市場(ドル):* ドルは序盤下落後、**小幅反発**。* **米中貿易摩擦の緩和期待**がドルを支援。* 韓国とのドル/ウォン協議を受けて、**対ウォンでは1週間ぶり安値**。* ただし、**米国は為替政策に関与せず**との報道でアジア通貨は落ち着いた。* **対円では0.52%安の146.71円**。### 米国債券市場:* **国債価格下落・利回り上昇**。* 10年債利回り:**4.536%(+3.7bp)** → 6週間ぶり高水準。* 2年債利回り:**4.059%(+4.2bp)** → 3月下旬以来の高水準。* 要因:* **米中貿易摩擦の緩和** → 景気後退懸念が後退。* **FRBの利下げ観測が後ずれ**。* **米予算・減税案を巡る議会対立**がリスク要因。### 米国株式市場:* **S\&P500種は小幅続伸**。* 米中貿易休戦とインフレ鈍化で**全体的に堅調**。* 大型株・成長株が買われる。* **エヌビディア(+4%以上)**、\*\*AMD(+4.7%)\*\*が上昇(AI提携や自社株買い発表)。* トランプ大統領はサウジとの**6000億ドルの投資確約**と**1420億ドルの武器売却で合意**。### 金先物市場:* **金価格は1.83%下落**(1オンス=3188.30ドル)。* 原因:* **利益確定売り**。* **米金利上昇**による金の魅力低下。* 米中貿易合意による安全資産需要の後退。### 原油先物市場(WTI):* **5営業日ぶり反落**。* WTI6月物:**63.15ドル(-0.82%)**。* **原油在庫の予想外の増加**が売り材料に。### ロンドン株式市場:* **FTSE100指数は下落**、**FTSE250指数は0.29%上昇**。* **金価格の下落**により貴金属株が売られ、FTSE350貴金属株指数は**2.51%安**。* **インペリアル・ブランズ**はCEO退任発表で**7.3%下落**。* **コンパス**は業績見通し据え置きで**2.5%下落**。* **バーバリー**は人員削減計画発表で**17%急騰**。* ゴールドマン・サックスは、**FTSE100の予想を8,500→8,800に上方修正**。### 欧州株式市場:* **5日ぶり反落**。企業決算が低調。* 投資家の間で**利益確定売り**が出た。* **ヘルスケア株指数は1.51%安**(アルコンが7.6%下落)。* **工業株指数は0.42%安**(アルストムが17.3%急落)。* **TUIは10.9%下落**(夏季予約の減少が影響)。* 一方で、**ユーロ圏銀行株指数は1.43%上昇**。### ユーロ圏債券市場:* **独10年債利回りは横ばい(2.678%)**。* **米中関税引き下げ合意**により市場は慎重姿勢。* ECBは**6月利下げの確率95%**、\*\*7月追加利下げは10%\*\*と見込まれる。* **独伊10年債利回り格差は99bp**(前日は約94bpで2021年以降最低)。
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備忘録(2025/5/13)●海外企業決算●海外企業医療保険最大手のユナイテッドヘルス<UNH>が大幅安。取引開始前にウィッティCEOが個人的な理由により辞任することを受け、ヘムズリー会長がCEOに就任する人事を発表した。ヘムズリー氏は以前の2006年から2017年までCEOを務めていた。なお、ウィッティ氏はシニアアドバイザーとして残る。また、同社は医療費が予想を上回るとの見通しから、2025年の見通しを一旦取り下げると発表。2026年には成長軌道に戻る見通しだとしている。アナリストからは2025年の見通し取り下げは驚きだったとの指摘も出ている。「見通し取り下げは今後の見通しと評価に重大な影響を及ぼす可能性が高い」と指摘。さらに、CEO交代が前CEOのヘムズリー氏への移行については、「最近の事業動向と投資家の信頼感悪化を考慮すると、特に驚くべきことではない」と付け加えた。「恐らく今回の見通し取り下げは、ヘムズリー氏がCEOの勘を取り戻し、トレンドを把握し、投資家コミュニティとの信頼回復プロセスを開始するための時間的猶予措置の可能性がある」とも述べている。米医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループは13日、アンドルー・ウィッティ最高経営責任者(CEO)が同日付で辞任し、スティーブン・ヘムズリー会長がCEOを引き継ぐと発表した。また医療費支払い負担の急増を理由に通期の業績見通しを停止した。17日に同社が公表した第1・四半期の利益は予想に届かず、通期の利益見通しも引き下げられていた。これらを受け、株価は約18%急落して4年ぶりの安値に沈んだ。年初来の下落率は38%を超えている。ウィッティ氏(60)の辞任は個人的理由によるとされ、同社はそれ以上詳しい説明をしていない。ヘムズリー氏は2017年までCEOを務めており、今回再登板となる。ヘムズリー氏は投資家との電話会議で「われわれが達成すべき目標や期待される商機の前に立ちふさがる多くの問題は総じて対処可能だ」と強調した。同社によると、2026年には成長軌道に復する見通しだ。ただ過去1年間で同社は、傘下の医療決済サービス企業に対するサイバー攻撃や、医療保険不正請求疑惑、想定外の医療費増大といったさまざまな問題への対応に苦戦を強いられてきた。ヘムズリー氏のCEO就任については、一時的な措置との見方も出ている。ノベア・キャピタル・マネジメントのシニアバイスプレジデント、ジェームズ・ハーロー氏は「ウィッティ氏辞任は非常に急な事態で、何か計画があったようには見受けられない。ヘムズリー氏の起用はとりあえずの対応ではないかと思う」と述べた。トランプ米政権は12日、デンマーク製薬大手ノボノルディスクの「ウゴービ」や米製薬大手イーライ・リリーの「ゼップバウンド」のような肥満症治療薬について、薬価引き下げを推進する対象として特に重点的に取り組む方針を示した。トランプ大統領は12日、薬価引き下げに向けた大統領令に署名した。製薬会社に対し他国と同水準まで値下げするよう求めており、価格は59─90%引き下げられる可能性がある。 もっと見るトランプ氏は調印式で「ロンドンでは88ドルだったのに、ニューヨークでは1300ドルも払った」と、米国での減量治療がいかに高額かを嘆く友人の実業家の話を紹介した。ホワイトハウス関係者は12日、記者団に対し、大統領令は「格差が最も大きく、支出も最も大きい医薬品に特に重点を置く」と述べた。「(ウゴービやゼップバウンドなどが該当する)GLP─1がその両方のカテゴリーに当たることを考えれば、焦点になると予想するのが妥当だろう」とし「これらの薬価は下がるべきであり、もし下がらないならば、強制的に下げるために使用できるさまざま政策手段を検討することになる」と語った。●日本企業ソフトバンクグループが13日に発表した2025年1―3月期の連結純損益(国際会計基準)は5171億円の黒字だった。10―12月期は3691億円の損失。一方、25年3月期の通期の最終損益は1兆1533億円の黒字で、21年3月期以来4年ぶりの黒字となった。IBESがまとめたアナリスト5人のコンセンサス予想では、1─3月期の連結純損益の平均値は268億円の損失だった。ソフトバンクGは通期の業績見通しを開示していない。AI(人工知能)関連企業に投資する傘下のビジョン・ファンド(VF)の1─3月期の投資損益は1772億円の利益(前年同期は575億円の損失)で、10─12月期の3527億円の損失から改善した。中国系短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社である字節跳動(バイトダンス)などの評価額が上昇した。通期実績について後藤芳光・最高財務責任者(CFO)は会見で、「4年ぶりの黒字はうれしいこと」だと述べた。同社が最も重要視する経営指標である時価純資産(NAV)、保有株式価値から純有利子負債を差し引いたものは、3月末にはハイテク株の下落を受けて25.7兆円に減少した。ただ、その後の株価回復により現在は前年度末と同水準の27兆円まで回復しているという。VF全体では、米オープンAIや国内決済アプリを展開するPayPay(ペイペイ)を含めた新規株式公開(IPO)を目指すレイトステージの企業の公正価値が約360億ドル規模に上ると試算する。ペイペイについては、後藤CFOは上場準備に入るだけの企業としての準備は整ったとしつつ、「今年になるのか来年になるのか3年後になるのか」と述べ、上場時期は環境やIPO市場の動向などに合わせて決めていくとの認識を示した。SBGは、AIへの投資を加速している。25年1月に米AIインフラの合弁事業「スターゲート」を公表、3月にはAI向け半導体を設計する米アンペア・コンピューティングを65億ドル(約1兆円)で買収、4月には対話型AI「チャットGPT」を手掛ける米オープンAIへの最大400億ドル(約6兆円)の追加出資を発表した。SBGによると、オープンAIへの追加出資については、初回出資100億ドルのうち18.4億ドルが集まっている。オープンAIは今月5日、営利企業への移行計画を断念することを正式に発表したが、後藤CFOは「悪い方向には行っていない。投資しているところは(非営利団体の下の)事業ビークルであり、営利会社として成長していけば、投資価値が十分にある」との考えを示した。後藤CFOはスターゲートにも触れ、現在100件以上の案件について提案を受け、精査・議論を重ねているという。特にテキサス州で第1号から第3号案件までが立ち上がる見込みで、金融機関との交渉はこれからと説明。トランプ米政権による関税措置の影響についても「計画が大きくスタックするような状況にあるとは考えていない」と話した。日本生命保険は、企業への融資を束ねて証券化した海外のローン担保証券(CLO)への投資対象をこれまでのAAA格から、AA格にも広げることを検討している。信用力が一段下がることで相対的な投資リスクは高まるものの、AA格を組み入れることで投資利回りの向上につなげたい考えだ。最高投資責任者(CIO)の河﨑圭助執行役員がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。現在は最上位格のAAA格しか保有していないが、「チャンスがあればAA格もやっていきたい」と説明。新たな格付けへの投資を行う際に必要となるリスク管理面などでの社内手続きは既に終えており、河﨑CIOの判断で投資できる準備を整えたという。国内生命保険会社は過去数年、米利上げに伴う為替ヘッジコストの上昇を受けて、ヘッジ付き外国債券の残高を減らすなど同コストに影響されにくいポートフォリオ作りを進めてきた。日本生命は金利上昇による利回り向上が期待できる変動金利資産を拡充する一環として2024年度からCLOへの投資を開始した。日本生命の3月末時点の有価証券残高(一般勘定)は約78兆円と生保業界で最大。CLOの投資残高は開示していない。「AAA格で十分なスプレッド(上乗せ金利)を確保できない局面が出てくるかもしれない」として、AA格へのCLO投資に備える。CLOは低格付け企業向けの貸付債権を証券化したもので、利回りは比較的高い。ブルームバーグのデータによると、米5年国債の利回り4.1%に対して、CLO流通市場での現在のAAA格の利回りは5.2%前後、AA格は5.6%前後、A格は6%を超える。一方、日本銀行が昨年10月に発行した金融システムリポートによると、大手行などの国内金融機関が保有するCLOのほとんどがAAA格。先行きの海外経済を巡る不確実性は大きい状態が続いているとして、リスク管理の継続的な向上が必要とも言及。農林中央金庫は昨年12月末時点で8兆2000億円の残高を抱える世界有数のCLO投資家だが、投資対象はAAA格に限定している。トランプ米政権による上乗せ関税の影響を考慮し、足元ではリスクの高い企業債務への投資を減らす動きも出ている。今年4月初旬にはAAA格のCLOに投資する200億ドル(約2兆9000億円)規模の上場投資信託(ETF)から約6億ドルの資金が1日で引き出された。ブルームバーグの集計データによれば、1日の流出額としては20年のスタート以来で最も大きかった。●トランプ関連トランプ米大統領は13日、中東歴訪を開始し、最初の訪問先であるサウジアラビアに到着した。トランプ大統領は首都リヤドでムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談し、両国の戦略的経済パートナーシップ協定に署名した。サウジ国営テレビによると、エネルギー、鉱業、防衛に関する協定が含まれる。ホワイトハウスによると、サウジは米国に6000億ドルを投資する見通しで、同盟国間で過去最大規模となる約1420億ドル相当の防衛関連の販売契約も含まれるという。トランプ大統領はサルマン皇太子との会談で「われわれは本当に互いのことが好きだと確信している」と語った。メキシコのエブラルド経済相は12日、米国、カナダとの3カ国間で結んでいる貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の再検討を始める時期について「私が予想している時期は今年後半だ」と語り、予定されている2026年から前倒しになるとの見通しを明らかにした。トランプ米大統領が1期目に北米自由貿易協定(NAFTA)の撤廃を要求し、代わりに2020年に導入されたUSMCAは発効6年後に3カ国が共同で内容を見直すことを義務付けている。トランプ氏はUSMCAについて前倒しで再交渉するよう公に働きかけ、米国がカナダ、メキシコより優位な貿易条件を引き出すように要求している。トランプ氏は輸入品に対する関税を強化する強硬手段に乗り出しており、米国と世界経済の減速を引き起こすことが懸念されている。一方、USMCAはメキシコから米国への鉄鋼や自動車などの輸出などで依然として効力を持っている。エブラルド氏はUSMCAの再検討が「わが国にとって都合が良い可能性がある」とし、その理由として「世界の他地域と比較して(協定が)どのように機能するかが明確になるためだ」と指摘した。エブラルド氏は、メキシコが鉄鋼、アルミニウム、自動車、トマトの米国への輸出で有利な条件を引き出すために米国との貿易交渉に取り組んでいることも明らかにした。経済政策が、ドナルド・トランプ米大統領の「解放の日」の関税措置ほど大幅かつ迅速に撤回されたことはめったになかった。しかも今回の撤回はトランプ氏自身の手によって行われた。12日に、中国に対する懲罰的な関税の規模を縮小するという合意があった。トランプ氏の大きな後退は1週間足らずで2回目だ。これは経済的現実にとっての勝利であり、米国の繁栄にとっての勝利だ。現実にとっての部分的勝利といったところだろう。トランプ政権は4月2日以降に中国製品に課した145%の関税の大半を撤廃することに同意した。残りは、トランプ氏が新たに課した世界各国一律10%の関税と、合成麻薬フェンタニルの貿易における中国の役割を口実にした20%の関税で、合わせて30%だ。中国はそれと引き換えに、報復関税を125%から10%に引き下げる。交渉は続いており、この合意は90日間有効だ。この関税の一時停止を投資家は歓迎している。貿易の「相互確証破壊(MAD)」から一歩後退するからだ。ストラテガスのダン・クリフトン氏の推計によると、トランプ氏の貿易措置撤回によって減免される関税額は約3000億ドル(約44兆円)に上る。これは大きな課税猶予措置だ。関税率30%は、主要貿易相手国に対するものとしてはこれでも異例の高さだが、米中は90日の猶予期間のおかげで、差し迫っているように思われた経済危機を免れることができる。米国の消費者は大規模な品不足に直面し、中国は失業の増加を懸念していた。先週に英国と合意したこれより小幅な関税引き下げと同様に、今回の中国とのディール(取引)はトランプ氏にとって勝利というより降伏に近いものだ。関税は引き下げたものの、米中はいずれも、両国関係に重くのしかかる実質的な貿易問題についてより広範な譲歩を発表しなかった。これらの問題には、特にデジタルや金融などのサービスに中国が設けている米企業の参入障壁や、常習的な知的財産の窃取などがある。こうした好ましくない中国の貿易慣行の多くは、習近平国家主席の強権的な経済運営の下で悪化している。自分の首を絞めるようなトランプ氏の米国第一主義が招いた悲劇の一つは、中国の重商主義に対し各国が結束して共同戦線を張る好機を逸したことだ。同盟国を関税の標的にしたことで、トランプ氏は米国の経済的・政治的信用を失墜させた。中国政府はまた、利点として、共産党を安心させるための具体的な経験を得られた。中国が台湾を封鎖ないし侵略するといった危機が生じても、米政府は経済制裁を科すのに苦労するとみられることが分かったのだ。関税を巡る失態に希望の光があるとすれば、それは、真の軍事抑止力について再度真剣に考えるべきだと、適切なタイミングで米議会に気付かせたことだ。少し離れて眺めてみると、トランプ氏の保護主義が始まってから4カ月近くを経たわれわれは、今どのような状況にあるのか。トランプ氏は最初の関税に関する発表以降に、以下の譲歩を行った。まず、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の条件に沿ってカナダおよびメキシコで製造された物品を対象から除外した。中国以外の国に対する相互関税を90日間停止した。「iPhone(アイフォーン)」などの電子機器を対中関税の対象外にした。英国と小規模な協定を結んだ。そしてこのほど90日間にわたる対中関税の引き下げに同意した。見えてきた着地点は、世界に10%、中国にそれより高い(ただし145%ではない)関税を課すというものだ。相互関税が停止されている間に何十もの国々と行われているとみられる交渉によって、米企業にとっての市場開放に何らかの小さな進展が見られる可能性はある。だが現段階では、トランプ氏が約束しているような大型の通商合意が結ばれる兆しはわずかしかない。何週間かにわたった市場の混乱の後、米経済には貿易コストの上昇や企業経営の不確実性の高まりがもたらされた。しかし少なくとも、「(世界恐慌を増幅させた)スムート・ホーリー関税法」の再来のような状況は緩和された。投資家、企業、一般家庭は恐らく、トランプ氏の当初の計画よりかなり好ましいこうした結果を歓迎するだろう。しかしそれでも、世界各国に対する一律10%の関税率は、トランプ氏が大統領に就任する前の米国の平均関税率の4倍だ。米政府と太いパイプを持つ業界・企業の特別扱いの要望に対するドアは、引き続き開かれている。こうした要望は経済的・政治的打撃をもたらすものであり、厚遇されない他の全ての者が犠牲になる。高率関税で守られる米企業は、他国の企業に対する競争力を徐々に失っていく。こうした混乱の中に希望の兆しがあるとしたら、それはトランプ氏が市場の圧力に負けて、熱に浮かされた夢からの後退を強いられたことだろう。その夢とは、高率関税が新たな「黄金時代」の幕開けにつながるというものだった。その黄金時代は2カ月も続かなかった上、黄金と言うより鉛のような時代だった。失敗に終わった「解放の日」のお膳立てでトランプ氏と共に中心的役割を果たしたピーター・ナバロ大統領上級顧問(貿易・製造業担当)は、信頼を失った。トランプ氏は認めたくないだろうが、彼は(古典派経済学の創始者で自由貿易の重要性を説いた)アダム・スミスに貿易戦争を挑んで敗北した。こうした教訓を得ることになった大統領は、トランプ氏が初めてではない。世界の各首脳やロビイスト、企業幹部らがドナルド・トランプ米大統領の機嫌を取ろうとする中、トランプ氏はこうした対応を快く受け入れる場合も多い。長年の慣習では、米軍の最高司令官は個人的な利益のために権力を行使している印象を避けようとしてきたが、同氏はこれを意に介していない。トランプ氏は就任直前には暗号資産事業を立ち上げ、数十億ドルを稼ぐ可能性があると言及していた。また米メタ・プラットフォームズなど政府が規制する企業に対しては、数百万ドルで自身との訴訟で和解するよう圧力をかけている。さらに政敵とみなす人物と関係のある法律事務所には、自らが支持する活動に10億ドル(約1480億円)相当の法律サービスを無償で提供するよう要求している。米コロンビア大学のティム・ナフタリ上級研究員は「トランプ氏は反発に直面しておらず、支持率も気にしていないため、こうしたことは自身を豊かにするための行為の始まりに過ぎない」と述べた。トランプ氏は今後数日のうちに中東地域を訪問し、家族がビジネスを展開する国の政府トップらと会談を行う予定。ここ1年間ではトランプ一族ブランドの住宅向けタワーがサウジアラビアで複数建設されているほか、カタールでは国営プロジェクトにトランプ・ブランドのゴルフリゾート建設が計画されている。またアラブ首長国連邦(UAE)のファンドは最近になり、トランプ氏が関与する暗号資産企業ワールド・リバティ・ファイナンシャル(WLFI)に20億ドルを投資した。ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は「国民はトランプ氏が国益のために行動すると信頼しているからこそ、再びホワイトハウスに選出した」と先週発言。「同氏が個人的な利益のために何かをするなどと言うのは、率直に言ってばかげている」と付け加えた。カタール政府は大統領専用機(エアフォースワン)として、トランプ氏に航空機を贈与することを検討しているが、同氏がこれを受領した場合は憲法上の問題が生じる可能性もある。外国からの報酬に関する条項として知られる規定では、連邦政府の公職者が議会の同意なしに外国政府から贈り物や称号を受け取ることが一般的に禁じられている。トランプ政権は、カタールとの取引は合法だと弁護士らが結論付けたと主張。司法省もパム・ボンディ司法長官が署名した覚書の中で、カタールから提案された取り決めを承認したと報道官は述べている。米大統領やその他の政府高官は法律上、外国の高官から受け取った高額な贈り物を米国政府に引き渡すことが通常求められる。場合によって、米高官がそれらを購入することもできる。だがバラク・オバマ元大統領がノーベル平和賞を受賞した際、賞金は報酬条項の対象外と判断したものの、同氏は約140万ドルを慈善団体に寄付した。トランプ氏を長年にわたり注視してきた関係者らは、カタール政府からの贈り物を受け入れようとする姿勢について、職務の他の側面にも適用される同氏の取引的なアプローチと一致していると指摘。共和党のストラテジストのケビン・マッデン氏は「彼はビジネスマンだった大統領ではなく、たまたま大統領になったビジネスマンだ」とし、「そのことを支持者にも批判者にも臆することなく伝えてきた」と付け加えた。12日の取引で米国株が急騰したのは、対中関税の引き下げだけが理由ではない。米中関税交渉が始まり、相互に課していた3桁の関税率の引き下げが決まったことで、米経済が一気にスタグフレーションに陥るとの懸念が一掃された。これは極めて好ましいニュースだ。これは投資家が可能だと考えていた以上の内容だった。ドナルド・トランプ米大統領が9日、80%の関税が「適切だろう」と発言していたことを踏まえればなおさらだ。今回の合意で、米国は対中追加関税を30%に引き下げる。米中とも税率を10%に引き下げるが、米国側は合成麻薬フェンタニルへの対策強化を促すため、20%の関税も維持する。だが、S&P500種指数が3.3%高と急反発(金価格は3.1%下落)した理由としてより好ましいのは、スコット・ベッセント米財務長官が通商政策を主導しているように見えることだ。簡単に言えば、大人がその場にいるということだ。筆者は9日、ここ1カ月間の米株式相場の上昇は見た目通りではないと書いた。ドル安による底上げ効果があったためだ。S&P500種指数の価値をドルではなく金(ゴールド)で計ってみると分かりやすい。12日に状況は一変した。ドルは上昇し、金は急落した。これは米国への信頼回復の表れだ。S&P500種は現在、トランプ氏が「相互」関税で投資家を仰天させた4月2日の「解放の日」以前と同じ量の金を購入できるまでの価値に戻った。だが期待しすぎないほうがよい。関税がトランプ政権以前の水準に戻る可能性は低い。トランプ氏は就任後まもなくメキシコとカナダに関税を課し、その後撤回した際、自身の成果を誇示した。ベッセント氏は、中国をはじめ他国から譲歩を引き出す手段として関税を支持しているが、トランプ氏のように目先の成果を望んでいるわけではない。ベッセント氏の狙いは中国経済の抜本的な改革だ。中国を重商主義的な輸出国から消費国に転換させ、より均衡の取れた貿易を実現することだ。これは仮に中国共産党が同意したところで、控えめに言っても困難だ。だがもしも実現し、ドイツなど他の輸出志向の国もそうなれば、貿易にとって最良の結果となる。つまり、米国の貿易赤字が輸入減ではなく輸出増によって縮小する。中国は国内総生産(GDP)に占める消費の割合を高めることにかねて言及してきたが、進展はほぼ見られない。ドイツは個人消費促進策をあまり講じていないが、フリードリヒ・メルツ新首相は軍事とインフラへの政府支出を増やす方針で、これは早期に効果が出るはずだ。両国の恒常的な貿易黒字が解消されれば、米国の恒常的な貿易赤字も解消されるか、少なくとも赤字が縮小するかもしれない。一方で、外国人が消費を増やせば貯蓄から米国に回す分が減るため、米国人が直接、または財政赤字縮小を通じて貯蓄を増やす必要が出てくる。トランプ氏をはじめ米政権が関税を推進する理由はさまさまだ。米国の軍事力やドルの基軸通貨としての地位という世界的な公共財を提供している対価を得ることや、所得減税の財源確保などが挙げられる。議会には、戦略上の競争相手である中国の発展を抑制するために関税を使うべきとの声もある。少なくとも、トランプ氏が自称「タリフマン(関税男)」というだけの理由で関税を課すのではなく、外国市場を開放させるためであれば、市場にとってはるかに好ましい。投資家はベッセント氏がかじ取り役を担い続けてくれるよう祈るべきだ。●先進国中銀、金融当局米連邦準備理事会(FRB)が12日に発表した第1・四半期の銀行融資担当者調査(SLOOS)によると、企業や消費者の融資需要が多くの種類のローンについて弱まったことが分かった。昨年第4・四半期には融資需要が大幅に高まっていた。中小企業について、商工業ローン(C&Iローン)の需要減退を報告した銀行の数は、需要拡大を報告した銀行の数をここ1年で最も大きな幅で上回った。大企業の融資需要は、昨年第3・四半期以来で最も弱かった。昨年第4・四半期には、銀行はあらゆる規模の企業によるC&Iローン需要の純増を報告していた。調査によると、銀行はまた、ビジネスローンに対する貸出基準を厳格化。第1・四半期に基準を厳格化したと報告した担当者の純増加率は、大企業で1年半ぶり、中小企業では1年ぶりの高水準となった。家計向け融資については、貸出基準はほとんど変化しなかった。住宅用不動産やクレジットカード、その他の種類の消費者ローンに対する「需要の弱化」が指摘されたが、自動車ローンに関してはおおむね変化がなかった。●先進国経済指標4月の米消費者物価指数(CPI)は比較的穏やかな伸びにとどまった。だが関税の影響による値上げが今後数カ月の間に物価を押し上げる可能性がある。米労働省が13日発表した4月のCPIは季節調整済みで前月比0.2%上昇した。このデータについてアナリストらは、夏以降に顕在化する可能性のある高関税の影響など悪いニュースが明確にならなかったことから、良いニュースとして受け止めた。前月比の上昇率はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)がまとめたエコノミスト予想と一致した。BNPパリバのエコノミスト、アンディ・シュナイダー氏は「このリポートであまり安心することはできない」とし、「インフレが今後強まることを示す懸念材料が多い」と述べた。前年同月比のCPI上昇率は2.3%で、4年ぶりの低水準となった。伸び率はWSJがまとめたエコノミスト予想(2.4%)を下回り、3月から鈍化した。変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアのCPIの前年同月比上昇率は2.8%で、エコノミスト予想と一致した。●金融市場、先進国トピックス欧州では極右ポピュリストが保守政党の優位を脅かし、戦後最大規模のうねりとなって政界再編を迫っている。中道右派は生き残りをかけた模索が続く。ドイツでは、2013年に結成された極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が初めて一部の世論調査で支持率トップとなり、これまで20年近く政治を動かしてきた中道右派が守勢に立たされている。英国では保守党が昨年の総選挙で労働党に敗れ、いまや右派勢力にも抜かれかねない状況となっている。中道右派政党は欧州の多くの地域で政権を維持しているものの、急進新興勢力に支持と人気を奪われている。背景には、移民増加や経済成長鈍化に対する不満がある。フランスでは、極右政党「国民連合」が単独では国民議会(下院)で第1党となり、中道右派の共和党グループは577議席中48議席にとどまった。イタリアでは22年、ジョルジャ・メロー二氏が自身のポピュリスト政党「イタリアの同胞」の支持を受けて首相に就いた。右派ポピュリストは現在、オランダ、ベルギー、フィンランド、スウェーデン、クロアチア、スロバキア、およびハンガリーで政権与党を務めるか与党連合に加わっており、昨年から伸長が目立つ。昨年の欧州議会選挙でも大きく躍進した。英保守党と独キリスト教民主同盟(CDU)も支持率で追い上げられており、戦略を巡って迎合か対立か協力かで揺れている。成果はまだ見えてこない。ポピュリスト右派の台頭は、「議会や政府といった民主主義制度への信頼が徐々にむしばまれてきた表れだ」。独世論調査会社フォルザの責任者マンフレート・ゲルナー氏はこう指摘する。ドイツでは、前政権が短命に終わるなど政治が不安定化したことで、信頼低下が進んだ。一部の国の中道右派は、反体制的な政策や言説を取り入れてこの課題に向き合おうとしたが、裏目に出るケースが多い。デービッド・キャメロン英元首相は16年、保守党の欧州懐疑派をなだめるために欧州連合(EU)残留の是非を問う国民投票を実施し、失脚につながった。保守党はそれから10年近く党首交代を繰り返し、いまや右派ポピュリスト政党「リフォームUK」に押されるまでになり、存続の危機に直面している。英ユーガブの先週の世論調査で、新興のリフォームUKの支持率は29%、保守党は17%だった。29年に予定されている次期総選挙までこの支持率が続けば、これまで選挙では欧州屈指の強さを誇ってきた保守党が壊滅寸前に追い込まれると世論調査機関は予想する。欧州懐疑派の筆頭ナイジェル・ファラージ氏率いるリフォームUKは、移民や気候問題への強硬姿勢が保守党支持者の引きはがしに成功している一方、鉄鋼業の国有化など介入主義的な経済政策を掲げ、従来の左派も取り込んでいる。先の地方選では、保守党と中道左派・労働党の両方に勝利した。保守党は、右派政策でリフォームUKを打ち負かすか、ファラージ氏と手を組むかという難しい選択を迫られている。マンチェスター大学のロブ・フォード教授(政治学)はこう指摘する。保守党が昨年下野した後、ケミ・ベーデノック党首は党のブランド再構築には時間が必要だと述べた。リフォームUKとの連立は選択肢にないとし、反移民政策の具体案に踏み込んだ。保守派ストラテジストは、ファラージ氏の右派路線の後追いには慎重で、カナダのピエール・ポワリエーブル氏やオーストラリアのピーター・ダットン氏の例を挙げる。両氏はポピュリスト的な政策を掲げて選挙に敗れ、自身の議席も失った。他国の中道政党は、極右の主張を取り入れるのではなく中道同士で連立を組み、穏健な政権を発足させてきた。だがこうした寄り合い所帯はイデオロギーの違いから結束しきれず、政権運営が不安定で支持率が低下した。ドイツでは、CDUのフリードリヒ・メルツ党首が議会で首相に選出されるまで投票を2回行った。連立を組む中道左派の社会民主党とCDUを合わせた議員数は過半数を超えているにもかかわらず、1回では選ばれなかった。2回の投票を要したのは第2次世界大戦後で初めて。メルツ氏はこれからAfDに対峙(たいじ)することになる。AfDは、欧州債務危機時にユーロ加盟国の救済に反対する財政保守派の抗議運動として誕生し、急進的な極右政党の先鋒(せんぽう)に変貌した。移民に強く反対し、ドイツのEU離脱を望み、ロシアとの関係改善を呼びかけている。メルツ氏はAfDの主張を取り入れるのではなく、同党の支持率上昇の背景にある問題に目を向け、まずは移民問題に取り組む必要がある。デュッセルドルフにあるハインリヒ・ハイネ大学のステファン・マルシャル教授(政治学)はこう指摘する。メルツ氏は就任初日、亡命希望者を含む不法移民の送還を開始する方針を示し、中期的に移民を半減させると表明した。マルシャル氏は「政治家は不満がある分野に取り組む必要がある」と述べた。「それに成功すれば、来年の今頃はAfDの支持率が低下しているかもしれない」英保守党のウィリアム・ヘイグ元党首も同じ意見だ。ポピュリスト右派が脅威となるのは保守党に対してだけでなく、生活水準の向上や移民管理、公共サービスの改善に失敗した歴代政権の全ての主流派政党にとってだと指摘する。保守党は過去の過ちを認めるべきだとヘイグ氏は主張。亡命希望者に対する規制を強化する一方、経済を後押しする合法的な移民の受け入れを進め、リフォームUKの躍進を阻むべきだとした。また、停滞する経済の活性化にも焦点を当てるよう訴えた。「これは主流派政党に対する最後通告だと思う。今こそ変わるべきだ」米経済が中国と関係を断ちつつあるとあなたが思っているなら、考え直すべきだ。「双方ともデカップリング(切り離し)は望んでいない」とスコット・ベッセント米財務長官は12日、対中関税を大幅に引き下げる暫定合意を発表する際に語った。ベッセント氏によれば、米国は中国との「長期にわたる持続的な通商協定」を目指している。今回のリセットにより、米経済はモノの主要消費国として慣れ親しんだ軌道に戻り、リセッションのリスクが低下するとエコノミストたちはみている。この新たな合意で、関税のショック療法を使って製造業大国としての米国の地位を回復しようとする試みも一時中断する。4月に貿易を巡る報復合戦が展開された中で、米国の中国製品に対する公式の関税率は145%まで引き上げられた。UBSエコノミストの試算では、90日間の猶予により、輸入業者が実質的に支払う関税は約35%になる。報復合戦で米中両国間の貿易が実質的に停止状態に陥り、輸入依存型企業のコストが大幅に押し上げられ、最悪の場合にはこうした企業が廃業に追い込まれる可能性があったが、今回の合意でそうした懸念は取り除かれる。先週の英国との通商協定に続く今回の合意の根底にあるメッセージは、ドナルド・トランプ米大統領が米経済を危険にさらしていた容赦ない貿易戦争を徐々に沈静化させることを目指しているというものだと、バンク・オブ・アメリカの元チーフエコノミスト、イーサン・ハリス氏は指摘する。「この二つの合意は、正真正銘のグッドニュースだ」とハリス氏は述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が4月初めにまとめた時点で、エコノミストは向こう12カ月でリセッション(景気後退)入りする確率を45%に引き上げていた。中国との全面的な貿易戦争で多大な影響を受けるとの懸念が主な理由だった。多くのエコノミストは、中国の物品に課される関税が単純に高過ぎて、米経済がそれを乗り切れず、結果として関税が引き下げられると予想していた。しかし、深刻なダメージを避けられるほど早期にそれが実現しない可能性がわずかながらあることが、懸念材料となっていた。12日にその懸念が後退した後、調査会社オックスフォード・エコノミクスはリセッション入りの確率を、それまでの50%強から35%に引き下げた。オックスフォードはまた、2025年通年の国内総生産(GDP)伸び率の予想を0.1ポイント引き上げ、1.3%とした。関税とサプライチェーン(供給網)にかかる圧力と不確実性のすべてが、経済成長が潜在成長率に届かない状況につながるだろうと指摘した。オックスフォードのチーフエコノミスト、ライアン・スウィート氏は調査ノートで、「来年の経済は、規制緩和・財政刺激策・政策の不透明感の後退など良いことが予想されている」と述べた。UBSは、対中関税の引き下げで今年の成長率が0.4ポイントほど押し上げられる可能性があると述べた。ネーションワイド・ミューチュアルのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は、貿易紛争の緊張緩和のおかげで、米国が控えめながらプラス成長を記録して今年を終えるとの見方を示し、景気が停滞するとのこれまでの予想を修正した。パンテオン・マクロエコノミクスの米国担当エコノミスト、サミュエル・トゥームズ氏は、米中が互いに関税を引き上げた4月初めの時点でも、米経済はなんとか切り抜けられると予想し、リセッション入りの可能性を3分の1程度としていた。同氏は現在、その可能性が5分の1ほどに低下したようだとしている。それでもトゥームズ氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)が好むインフレ指標である食品・エネルギーを除いたインフレ率が、関税によって年内に最終的に1ポイント程度押し上げられる可能性があるとみている。同氏は依然、米景気の減速を予想している。しかし同氏によれば、そんな状況下でもFRBはインフレ懸念を受けて利下げに一段と慎重になる見込みだという。同氏は以前、FRBの次の利下げ時期を6月の会合時と予想していたが、最近それを7月に修正した。米経済は依然、逆風にさらされている。中国やその他の国々に対する関税率が最終的に落ち着く水準は、一時より下がるとは言え、トランプ氏の大統領就任前と比べるとかなり高くなりそうだ。それは企業の利幅を圧縮し、消費者が支払う輸入品の購入価格を押し上げる可能性がある。中国からの輸入品に対する関税は、今回の交渉で新たな水準に引き下げられたが、ベビー用品メーカー「ラロ」の共同創業者マイケル・ウィーダー氏によれば、それでも元の水準と比べると「大幅な調整になる」という。ラロは製品の90%を中国から輸入している。同氏は「コスト面で厳しい状況は全く変わっていない」と語った。「今回の一時停止措置は、輸入の確保には間違いなく役立つが、収益性に影響を与える」とウィーダー氏は指摘する。関税に関する不確実性が続くことで、企業は新たな工場・設備への投資や雇用拡大に慎重になる可能性がある。移民の取り締まり、政府予算削減や職員解雇、学生ローンの返済再開といった政府の最近の動きに絡んで米国が直面するリスクについても、エコノミストらは懸念している。これまでのところ、関税の主な経済的影響は、価格上昇を見越した企業による前倒し輸入の急増だ。1-3月期の米GDPは、年率換算で前期比0.3%縮小した。FRBのアドリアナ・クーグラー理事は12日に行った講演で「貿易政策は変化しており、直近では今朝のように、変更が続く可能性がある」とした上で、「とはいえ、関税が現在発表されている水準付近にとどまったとしても、大きな経済的影響が見込まれる。関税を巡る不確実性は、前倒し輸入やセンチメント、見通しという形で、既に経済に影響を及ぼしている」と述べた。エコノミストの中には、中国に対する関税引き下げによって、製造業における雇用の国内回帰が少なくなるとともに、関税収入が減る公算が大きいとの見方もある。INGのチーフ・インターナショナル・エコノミスト、ジェームズ・ナイトレー氏は、顧客向けメモの中で、「米中双方が関税による経済的な痛みを感じており、関税の引き下げが互いに有益であることが示唆されている」と述べている。ニューヨーク連銀が13日発表した四半期報告書によると、1〜3月期の米国の家計債務残高は全体で18兆2000億ドル(約2700兆円)と前年同期から2.9%増加し、データを遡れる2003年以降で最高となった。学生ローンの支払いを延滞しても不履行扱いとならない特例が解除され、学生ローンの延滞率が5年ぶりの高水準を記録した。債務別でみるとクレジットカードの債務残高が前年同期比で6%増と増加幅が大きく、1兆1820億ドルとなった。前期比では減少したものの「年末商戦での支出を返済するという典型的な季節要因にすぎない」(ニューヨーク連銀)と見られる。自動車ローンは前年同期比1.6%増の1兆6420億ドル、学生ローンは2.3%増の1兆6310億ドルとなった。家計債務全体の7割を占める住宅ローンの残高は、2.9%増の12兆8000億ドルに膨らんだ。負債全体の延滞率も上がった。1〜3月に新たに支払いが30日以上遅れた割合は同0.99ポイント上昇し、4.87%となった。約10年ぶりの高水準となった。90日を超える深刻な延滞に移行した割合も0.91ポイント上昇し、2.45%となった。特に学生ローンの延滞率が急伸し、新たに支払いが30日以上遅れた割合は7.21ポイント上昇の8.19%、90日を超える深刻な延滞に移行した割合は7.24ポイント上昇の8.04%となった。いずれも、新型コロナウイルス流行初期の20年1〜3月期以来の高水準を記録した。23年に米連邦最高裁がバイデン前米政権による学生ローン返済の一部免除措置を認めない判断を下したが、その後同政権は返済が遅れた人が最高で12カ月間は債務不履行になったり信用情報が損なわれたりしないようにする措置をとっていた。今回この措置が解除されたことが延滞急増の原因とみられ、ニューヨーク連銀の調査担当者らは「コロナ禍前の通常な水準に戻った」と指摘した。他の債務支払いに影響を与える可能性については依然不透明で、今後数カ月の検証が必要としている。●ロシア、ウクライナ、中東情勢ウクライナのゼレンスキー大統領は13日、トルコ・イスタンブールで15日に予定されるロシアとの協議について、プーチン大統領との直接会談のみが停戦を確保し紛争終結を実現する唯一の方法という認識を示した。ゼレンスキー大統領は記者団に対し、ロシアでは「全てがプーチン氏次第」のため、30日間の無条件停戦について対面で協議したいと強調。「プーチン氏が停戦に応じる用意があると発言すれば、紛争終結に向けたあらゆる要素について議論する道が開かれるだろう」と述べた。15日の協議に出席するかどうか明言していないプーチン大統領については、自分との直接会談を「恐れている」と非難。協議が実現しなければ、ロシア側に外交の準備が整っていないことを浮き彫りにし、米国や欧州連合(EU)による「強力な制裁」に直面するだろうと述べた。ゼレンスキー大統領はまずトルコの首都アンカラに向かい、エルドアン大統領と会談し、プーチン大統領が直接協議に出席するのであれば、イスタンブール入りすると述べた。これに先立ち、 ウクライナのポドリャク大統領府顧問は13日、「ゼレンスキー大統領は、プーチン氏以外のロシア代表団とは(トルコの)イスタンブールで会わないだろう」と述べた。また、ウクライナはトランプ米大統領を15日の協議に招待しているものの、出席の確認はまだ取れていないとした。トランプ大統領は12日、中東歴訪中にイスタンブールでの協議に参加することを示唆した。一方、ロシアはプーチン大統領がトルコを訪問するかどうかについて明らかにしていない。ペスコフ大統領府報道官は13日、プーチン氏出席を求めるゼレンスキー氏についての質問に「ロシア側は交渉の準備を続けている」とし、「これ以上コメントするつもりはない」と述べた。 もっと見る●その他エマージング●プロファイ、インフラ、自然災害再生可能エネルギー大手のレノバは13日、2031年3月期までの中期経営計画を発表した。31年3月期までに小型の太陽光発電や蓄電池などに約3400億円を投じる。中計を策定したのは創業以来初めて。投資する分野や計画を示し、拡大路線を鮮明にする。主に小型太陽光、蓄電池、陸上風力の開発や海外事業に投資する。資金の多くをプロジェクトファイナンス(事業融資)で調達する。31年3月期の売上高にあたる売上収益は25年3月期の約1.9倍の1300億円、営業利益は約6.1倍の250億円を目指す。同社が重視するEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は約2.6倍の600億円を見込む。レノバは12年に始まった国の固定価格買い取り制度(FIT)を使った大型の太陽光発電所やバイオマス発電で規模を広げてきた。ただバイオマス発電所のトラブルなどが響き、24年4〜9月期に上場以来初めて最終赤字に転落した。今後はFITを使わず需要家に直接電気を売るコーポレートPPA(電力購入契約)などを活用し、収益を拡大する。環境省と経済産業省は13日、太陽光パネルのリサイクル義務付けに関する法案の今国会への提出を見送る方針を明らかにした。内閣法制局から他の関連法令との調整などを求められた。事業者のリサイクル費用の負担手法などを再検討する。両省の大臣が閣議後の記者会見で言及した。同法案では、太陽光パネルの製造者がリサイクル費用を負担する仕組みの導入を検討してきた。新設するパネルには対応しやすい半面、既設パネルの製造者に費用負担を求めるのが難しいという。浅尾慶一郎環境相は「太陽光パネルのリサイクルは喫緊の課題。可能な限り早期の法案提出を目指す」と述べた。他のリサイクル関連法も参考に内容を改める。国内の太陽光パネルは、撤去後に大半が埋め立て処分されている。現在設置しているパネルの多くが2030年代に耐用年数を超える見通しで、大量廃棄の懸念がある。ドイツの再保険大手ミュンヘン再保険とハノーバー再保険は13日、米ロサンゼルス近郊で今年発生した大規模な山火事に関連する保険金請求額が、合計で17億ユーロ(約18億9000万ドル)に達したと明らかにした。この結果、両社は第1・四半期に大幅な減益となったが、通期の利益予想は据え置いた。ミュンヘン再保険が発表した第1・四半期決算は、純利益が10億9400万ユーロと、前年同期の21億1500万ユーロから減少した。アナリスト予想の平均(11億1200万ユーロ)をわずかに下回った。ただ、同社は2025年の純利益が前年の57億ユーロから60億ユーロへ増加するとの見通しを維持した。一方、ハノーバー再保険は、山火事関連の保険金請求が6億3100万ユーロに上ったことなどから、第1・四半期の純利益が前年同期の5億5800万ユーロから14%減少し4億8000万ユーロとなったと発表した。アナリスト予想(4億4700万ユーロ)をわずかに上回った。ノルウェーの石油大手エクイノールは米東部ニューヨーク州沖で進めている大規模洋上風力発電施設「エンパイア・ウィンド」について、トランプ米政権が出した建設中止命令を巡って向こう数日中に何らかの解決策に到達できなければ、プロジェクトを取りやめると警告した。エクイノールの米国再生可能エネルギー部門のモーリー・モーリス社長はインタビューで、プロジェクトを存続させるために同社は1週間当たり5000万ドルを支出していると説明。「現時点で状況は持続不可能だ」と述べた。モーリス氏によると、建設中の海域に停泊している11隻の船舶には100人の労働者が待機し、作業再開の指示を待っている。バーガム米内務長官は4月17日に同風力発電施設の建設中止を命令。バイデン前政権が十分な環境分析を実施せずに事業を認可したことを示す情報があると主張した。モーリス氏は、建設中止命令は米海洋大気局(NOAA)が策定した報告書に基づいて出されたが、エクイノールはこの報告書を見ていないので、具体的にどのような問題が提起されたのかは分からないと話した。トランプ大統領は急拡大する国内のエネルギー需要を満たすため、エネルギー事業の認可を加速するよう関連省庁に指示している。だが風力発電は、この取り組みの対象から外れている。トランプ氏は大統領就任初日に風力発電事業の認可と事業区域リースの停止を命じている。●その他●市況(ChatGPTによる要約版)#### ■ 為替市場* **ドル安**:4月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回り、ドルは前日の急上昇分の一部を失う。* CPIは前年比+2.3%で、2021年2月以来の低水準。* ドル指数:**101.05(-0.67%)*** ユーロ:**1.1177ドル(+0.81%)*** ドル/円:**147.6円(-0.57%)**#### ■ 債券市場* **10年国債利回りが小幅上昇**:CPI鈍化で一時下落も、FRBの利下げ慎重姿勢が意識される。* 10年債利回り:**4.479%(+2.2bp)*** 2年債利回り:**4.006%(横ばい)*** 利回り格差:**46.9bpに拡大**#### ■ 株式市場* **S\&P500・ナスダック上昇**:CPI鈍化と米中関係改善期待で楽観継続。* **ダウは下落**:ユナイテッドヘルスの業績見通し停止とCEO退任で株価が急落(-17.8%)。* **セクター動向**:* 上昇率トップ:**情報技術(+2.25%)*** 下落率トップ:**ヘルスケア(-2.97%)*** **個別株**:* コインベース:**+24%**(S\&P500採用が好感)#### ■ 商品市場* **金先物**:買い戻しで反発、**1オンス=3247.80ドル(+0.61%)*** **原油先物**:米中の関税引き下げ期待で上昇継続、WTI6月物は**63.67ドル(+2.78%)**(約3週間ぶり高値)#### ■ ロンドン株式市場* **FTSE100種**:**0.02%安**、横ばい圏で終了。* **FTSE250種**:**0.64%上昇**。* 米CPIや英労働統計を受け、金融政策の見通しに注目が集まる。* 米CPIは前月比+0.2%に転じ、インフレ再加速への警戒感あり。* 英国では労働市場の減速が示され、インフレ圧力の後退が意識される。* セクター別:* **鉱業株**:**+1.38%**(銅価格上昇)* **石油・ガス株**:**+1.05%**(原油高)* **シェル**:**+1.2%*** **DCC(販売・マーケ)**:**-6.5%**(業績未達)#### ■ 欧州株式市場* **小幅上昇、4日続伸**:米中関税引き下げ合意で貿易摩擦緩和への期待継続。* 米CPIの伸びは鈍化したが、関税影響が今後現れるとの慎重な見方も。* **ユーロSTOXX50ボラティリティ指数**:**16.56**(2月以来の低水準)* 主な個別銘柄:* **バイエル(独)**:**+2.8%**(予想以上の業績)* **ベスタス(デンマーク)**:**+9.2%**(米気候法案が懸念以下)#### ■ ユーロ圏債券市場* **利回り上昇**:米中摩擦の緩和でECBの利下げ観測が後退。* **独10年債利回り**:**+2.5bp(2.66%)**(一時2.68%、1カ月ぶり高水準)* **独2年債利回り**:**+1bp(1.93%)*** **独30年債利回り**:**+3.5bp(3.12%)*** **伊10年債利回り**:**+2bp(3.69%)*** **独伊10年債スプレッド**:**100bp*** 市場は\*\*6月のECB利下げを95%\*\*織り込み、**7月の追加利下げは20%未満**。* ゴールドマン・サックスは**ユーロ圏の成長予想を上方修正**。
備忘録(2025/5/12)
●海外企業決算
[SPG] サイモンプロパティーグループ 1Q増収減益 売上高2%増14.7億ドル、営業益1%減7.27億ドル、EPS1.27ドル - 株探(かぶたん)|米国株
[DVA] ダヴィータ 1Q増収減益 売上高5%増32.2億ドル、営業益9%減4.38億ドル、EPS2.00ドル - 株探(かぶたん)|米国株
●海外企業
医薬品株が揃って時間外で下落=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
トランプ氏、薬価下げへ大統領令署名-業界は最悪シナリオ回避 - Bloomberg
トランプ米大統領は12日、米国内の医薬品価格に向けた措置に署名した。より低価格で販売されている外国の水準に近づけることを目指す。
トランプ氏は、製薬会社を交渉の場に引き出すことで薬価引き下げを図る構えだ。今回の大統領令では、製薬各社に対して自主的に値下げを求め、応じなければ規制措置を講じる可能性を示した。
だが、大統領令は製薬業界が懸念していたほど厳しい内容ではなく、詳細が明らかになるにつれ、製薬株は総じて値上がりした。トランプ氏が11日夜にソーシャルメディアへの投稿で薬価引き下げに向けた措置を予告すると、製薬株は軒並み安となっていた。
ジェフリーズのアナリスト、マイケル・イー氏は「大統領令は実行に向けた具体策に乏しく、曖昧だ」とリポートで指摘。株式市場の反応については「懸念していほど悪くないとの解釈が広がり、好感された」との見方を示した。
米国株式市場ではイーライリリー、ファイザー、ブリストル・マイヤーズスクイブ、メルクなどが軒並み高となった。
米国民が支払う医療費は世界で最も高く、それがイノベーション(技術革新)を促し、製薬業界の成長を後押しした側面もある。
トランプ氏はホワイトハウスで「これはつまり、米国民が外国の医療制度を実質的に補助しているということだ」と述べた。
これに先立ち行われた政府関係者の説明によると、今回の大統領令ではメディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)や減量薬に焦点を当てる。保険市場全体においても薬価の引き下げを実現したい考えだという。
トランプ政権はまた、製薬会社に対する交渉力を高める手段として、医薬品の輸入を拡大する可能性もある。米国では原則として国外からの医薬品輸入は違法とされているが、個人使用に限って例外が認められており、多くの米国人がカナダから薬を購入している。業界側が十分な価格交渉に応じない場合には、他国からの輸入も選択肢に含まれると政府関係者は述べた。
トランプ氏は米国の薬価を引き下げるべきだとの主張に加え、他国・地域がより多く支払うべきだとの考えも示した。大統領令では、米国外での薬価抑制につながる不合理または差別的とみる政策に対処するよう、通商代表部(USTR)と商務省に指示した。
トランプ氏はまた、製薬会社と保険会社の間を取り持つ仲介業者である薬剤給付管理(PBM)にも矛先を向けた。大統領令では、製薬会社がより低価格で患者に直接販売できる方法を模索するよう、厚生省に指示した。ただ、具体的にどう実現するかについては明らかにされていない。
これを受けて、シグナやCVSヘルスなどPBMサービスを手がける企業の株価が値下がりした。
Trump to sign most favored nation drug pricing order
ドナルド・トランプ大統領は月曜日、米国の一部医薬品の価格を海外の大幅に安い価格に連動させることで医薬品コストの大幅削減を目指す物議を醸している政策を復活させた。
トランプ大統領は、「最恵国待遇」政策として知られるこの取り組みを再開するための複数の措置を含む大統領令に署名した。特定の国には言及しなかったものの、「追加支援を必要とする国もいくつかあり、それは構わない」として、他の先進国も対象にすることを示唆した。
「基本的に、我々がやっているのは平等化だ」とトランプ大統領は月曜日の記者会見で述べた。「我々は世界で最も低い価格を支払うことになる。誰が最も低い価格を支払うか、それが我々が得る価格だ」
ホワイトハウス当局者は、今回の命令がどの医薬品に適用されるかは明らかにしなかったが、メディケアとメディケイドに加え、民間市場にも影響を与えると述べた。また、月曜日の発表は、トランプ大統領が最初の任期中に推進しようとした同様の政策(メディケア・パートBの医薬品のみに適用)よりも広範なものになると述べた。
当局者はさらに、政権は「最も大きな差異と最も大きな支出」を伴う医薬品に特に重点を置くと付け加えた。これには、GLP-1薬と呼ばれる人気の減量薬や糖尿病治療薬が含まれる可能性がある。
この政策が患者の負担軽減にどれほど効果的かは不明だ。トランプ大統領は月曜日のソーシャルメディア投稿で、薬価が「59%以上も引き下げられる」と主張した。
しかし、トランプ大統領は記者会見で、薬価はさらに59%から80%、あるいは「90%も下がるのではないか」と主張した。
ウォール街のアナリストや他の専門家の中には、この政策が実行可能かどうか疑問視する者もいる。
JPモルガンのアナリストは月曜日のメモで、この政策は議会の承認が必要になる可能性が高く、法的ハードルにぶつかる可能性があるため、「実際に実施するのは困難」だと述べた。
これはトランプ大統領が米国の処方薬価格を抑制しようとする最新の取り組みだ。公共政策シンクタンクのランド研究所によれば、米国の処方薬価格は他の先進国に比べて平均で2~3倍高く、一部の国では最大10倍も高いという。
製薬業界最大のロビー団体であるPhRMAは月曜日の声明で、他国が「公平な負担をしていない」と批判したトランプ大統領を称賛した。
それでも、PhRMAのCEOであるスティーブン・ユーブル氏は、「社会主義国から外国価格を輸入することは、米国の患者と労働者にとって不利な取引となるだろう」と述べた。なぜなら、製薬業界が新たな治療法を患者に提供する能力が損なわれるからだ。一部の専門家は、この命令は製薬業界から法廷で異議を唱えられる可能性があると指摘している。
この命令にもかかわらず、米国の製薬会社の株価は月曜日に上昇した。メルク
の株価は4%以上上昇し、ファイザーは
アムジェン
2%以上上昇
米国の高齢者を支援するAARPは月曜日の声明で、大統領令の発令に対して感謝の意を表した。
「大手製薬会社は長きにわたり、アメリカの高齢者を搾取してきた。命を救う処方薬に世界最高額を請求し、アメリカ人の命を犠牲にして利益を水増しし、高齢者に経済的に余裕のない薬の服用を控えさせてきた」とAARPのチーフ・アドボカシー・エンゲージメント・オフィサー、ナンシー・レモンド氏は声明で述べたこの命令の一部は、製薬会社と薬価を引き下げる交渉力が大きい海外諸国をターゲットにしている。
「今日から、米国はこれまで行ってきたように、外国の医療費を補助することをやめる」とトランプ大統領は述べ、「米国は大手製薬会社による不当利得や価格つり上げをこれ以上容認しない」と付け加えた。
同氏はさらに、「率直に言って、大手製薬会社が本当に快適に感じていたかどうかわからないことを強制したのは、実際には各国だった」と付け加えた。
この命令は、米国通商代表部と商務省に対し、海外での医薬品価格を「抑制」する諸外国の「不当かつ差別的な政策」を取り締まるよう指示するものだと当局者は述べた。
「各国が製薬会社との交渉において不公平な扱いを受けないよう、我々は取り組んでいくつもりだ」とある当局者は述べた。製薬会社は、通常、国全体と薬価の値引き交渉をしなければならないため、「こうした交渉において、耐え難い状況に置かれている」と「絶えず不満を漏らしている」と当局者は付け加えた。
米国と異なり、いくつかの国では政府が唯一の支払者となる国民皆保険制度を提供しており、医薬品の価格交渉や設定において政府が大きな影響力を持っている。
ホワイトハウス当局者は、トランプ政権が海外での価格問題に対処するために講じている措置に「報いる」ため、製薬会社が全面的に値引きを行うと予想していると述べた。
トランプ大統領の命令はまた、保健福祉省長官に対し、米国の患者が中間業者を介さず、最恵国待遇で医薬品を製造業者から直接購入できる仕組みを確立するよう指示している。
「我々は仲介業者を排除し、最も有利な価格でアメリカ国民に直接医薬品を販売することを促進するつもりだ」とトランプ氏は述べた。
当局者らによると、保健長官は30日以内に、全米市場における価格引き下げの明確な目標を設定する必要がある。これにより、保健福祉省と製薬業界の間で一連の交渉が開始されるだろうと当局者は述べたが、交渉の内容については具体的な詳細は明らかにしなかった。
これらの価格目標に向けて「十分な進展」が見られない場合、保健福祉長官ロバート・F・ケネディ・ジュニアは規則制定を通じて医薬品に最恵国待遇価格を課すことになる。
この大統領令は、食品医薬品局(FDA)に対し、カナダ以外の先進国からの輸入拡大を検討するよう指示している。トランプ大統領は 4月、FDA に対し、薬価引き下げに向けた措置の一環として、各州がカナダから低価格の医薬品を輸入するための申請手続きの改善を指示する別の大統領令 に署名した。
月曜日の命令はまた、司法省と連邦取引委員会に対し、米国で価格を高値に維持する「反競争的行為」を積極的に執行するよう指示している。
商務省はまた、「海外での価格低下を促進し、それを可能にする」輸出規制も検討する。
患者、企業への影響
製薬会社は、最恵国待遇政策は自社の利益を損ない、最終的には新薬の研究開発能力を損なうと主張している。
ホワイトハウス当局者は、製薬会社が「米国だけではイノベーションに資金を投じることはできない」と認識し、海外での追加収入を得るために価格を引き上げれば、価格引き下げ後も利益を上げ続けると主張した。
製薬会社は「他国や医療制度に提供している価値に見合った金銭的報酬を得られる取引を追求すべきだ」と当局者の1人は述べた。
「他国も研究開発費を負担すべきだ。それは彼らの利益になる」とトランプ大統領は月曜日に付け加えた。
製薬業界は、トランプ大統領の最初の任期中にも同様の計画に反対するロビー活動を展開しました。トランプ大統領は任期最終数ヶ月間、この政策の推進を試みましたが、製薬業界からの訴訟を受けて連邦裁判所が阻止しました 。その後、バイデン政権はこの政策を撤回しました。
ホワイトハウス当局は当初、共和党議員に対し、今後数ヶ月以内に成立させる予定の主要な和解法案に最恵国待遇条項を盛り込むよう圧力をかけたが、この政策は特にメディケイドの薬剤費を標的とするものになるとポリティコが今月初めに報じた。共和党議員の中にはこの措置に反対する者もいた。
業界最大の業界団体であるPhRMAは、トランプ大統領のメディケイド提案により、製薬会社は10年間で最大1兆ドルの損害を被る可能性があると 推定した。
保健政策の専門家の中には、最恵国待遇の医薬品政策は医薬品のコストを下げるのに効果がないかもしれないと指摘する者もいる。
例えば、USCの専門家は、この政策は「世界の医薬品市場の基本的な経済を覆すことはできない」と述べ、世界の製薬業界の利益の70%は米国から来ている。
「米国での価格大幅引き下げか、収益性の低い海外市場を失うかの選択を迫られ、多くの企業ができるだけ早く海外市場から撤退すると予想される」と専門家は4月の報告書で述べた。
その結果、米国人は医薬品に同じ金額を支払うことになり、製薬会社の利益は減り、将来の患者の世代はイノベーションの恩恵を受けられなくなるだろうと研究者らは述べた。
「結局のところ、誰もが損をするのです」と専門家は語った。
たとえ製薬業界が法廷でトランプ大統領の大統領令に抵抗したとしても、政権には薬価を引き下げる別の手段がある。それはメディケアの薬価交渉だ。
これはインフレ抑制法の重要な条項であり、メディケアに史上初めてメーカーと特定の処方薬の価格を交渉する権限を与えるものである。
トランプ大統領は先月、製薬会社が長らく求めてきたこの政策の見直しを提案した。低分子医薬品と生物学的製剤を区別する規則の改正を提案するこの案は、与野党の議員の双方に受け入れられる可能性がある。
トランプ大統領は先週、今後2週間以内に米国への医薬品輸入に対する関税を発表する予定だと述べた。これらの関税は、国内の医薬品製造を促進することを目的としている。
イーライリリーを含む製薬会社
ファイザー
は、潜在的な関税に反対している。トランプ大統領の就任以降、 既に複数の企業が米国への新たな製造・研究開発投資を発表していることから、関税の必要性を疑問視する声も上がっている。
それでもトランプ大統領は先週、医薬品製造の国内回帰に向けた取り組みを一層強化した。彼は、製薬会社が新たな生産拠点を建設するための手続きを簡素化する大統領令に署名した。
トランプ米大統領、薬価を59%引き下げると表明 | ロイター
戦争が進化する中、防衛関連も新たな局面入りとの指摘=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
アップル、新型iPhoneの値上げ検討 関税は理由にせず - WSJ
米アップルは今年秋に発売するiPhone(アイフォーン)について、新たな機能の追加やデザインの変更を行い、それに伴って価格を引き上げる方向で検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
関係者によると、アップルは中国製品に対する関税引き上げを理由に値上げすると受け止められかねないシナリオを、なんとしても避けたいと考えている。アップルのデバイスは大半が中国で組み立てられている。
米国と中国は12日、お互いに極めて高い水準に引き上げていた関税の大半を一時停止することで合意した。ただ、ドナルド・トランプ米大統領が当初、中国からの合成麻薬フェンタニル流入を理由に課していた20%の対中関税は継続され、中国で生産されているスマートフォンも影響を受けることになる。
トランプ氏は中国製品に別途課している「相互関税」の対象からスマホや一部のエレクトロニクス製品を除外していたが、12日の合意により、それらの関税は125%から一時的に10%に引き下げられる。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、アップルが今年秋に発表する新型iPhoneには超薄型のデザインなど、一部のデザインや機能の変更が施されると伝えていた。
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、米中の貿易戦争によってアップルのサプライチェーン(供給網)が脅かされていることを受け、米国向け製品の生産拠点を中国からインドに移行する考えを表明しており、5月初めには、4-6月に米国に出荷されるiPhoneの大半はインドで生産されると述べていた。
アップルのサプライチェーンに詳しい関係者によると、アップルにとって最も収益性が高い上位機種の「Pro」や「Pro Max」は、引き続き中国工場が生産の大半を担う予定。インド工場でも「Pro」を生産できるが、インドのインフラや技術力は、中国で可能なほどの大量生産を支えるには力不足だという。
サプライチェーンに詳しい関係者によると、アップルはサプライヤーにさらなるコスト削減を求めるだけでは中国製品の関税コストをまかなえず、値上げできなければ利益率が打撃を受けることになるという。
また、アップルの幹部は、値上げを関税のせいにしたくないと考えている。米アマゾンが関税の影響を消費者に示す方針であることが報じられた際、ホワイトハウスからそれが敵対的行為だと批判されたことで、アマゾンはその計画は「決して承認されておらず、実行されることはない」と釈明せざるを得なくなったからだ。
そうしたことを踏まえ、アップルはサプライチェーンの関係者が言う「最も害の少ない選択肢」を検討している。それは、利益率を維持するため新型iPhoneの価格を引き上げ、関税以外の理由を見つけ出すことだ。アップルが値上げを正当化するためにどのような新機能を追加するかはまだ決まっていないという。
●日本企業
ソフトバンクGのAI構想、資金調達に減速感-米関税政策も重荷に - Bloomberg
ソフトバンクグループが、米国で人工知能(AI)インフラに1000億ドル(約15兆円)を投じる計画に減速感が漂い始めた。トランプ大統領の関税政策を背景に米景気の不透明性が増す中、資金調達協議が失速していると複数の関係者が明らかにした。
事情に詳しい関係者らによると、年初に始まったみずほ銀行やJPモルガン、アポロ・グローバル・マネジメントやブルックフィールド・アセット・マネジメントなどとの予備的協議は、足踏みが続いているという。不安定な経済やAIサービスの低価格化で、金融機関がデータセンターの評価を見直しているため、交渉が滞っているとしている。
ソフトバンクGの孫正義社長と米オープンAI共同創業者のサム・アルトマン氏は1月にスターゲートプロジェクトを発表。直ちに1000億ドル(約15兆円)を投じ、今後4年でデータセンターなどに少なくとも5000億ドルを費やすと表明した。ただ、いまだに資金調達のスキームは策定されておらず、銀行やプライベートエクイティ、資産運用会社との本格的な協議にも至っていない。
その理由の一つが、トランプ氏の強硬な関税政策だ。貸し手や出資者がリスクの高い投資を敬遠し、資本コストが上昇。また世界的な景気後退がデータセンター需要を縮小させるとの不安や、中国のAIスタートアップDeepSeek(ディープシーク)の台頭も、プロジェクトに水を差している。
ソフトバンクGの広報担当者からのコメントは現時点で得られていない。オープンAIの広報担当者は、コメントを控えた。
一方、スターゲートの資金調達を主導するソフトバンクGでは、ビジョン・ファンドのスタートアップ投資部門内に同プロジェクトに従事する20-30人のチームを編成していると関係者らは話す。チームには、米州マネージング・パートナーで自動化やエンタープライズソフトウエア投資をリードしてきたヴィカス・パレク氏も在籍しているという。
スターゲートには、米オラクルやUAEの政府系投資ファンドムバダラ系のMGXも名を連ねる。ソフトバンクGの役割は銀行や年金基金に個別プロジェクトごとにアプローチすることで、同社自身は各プロジェクトに10-20%程度出資し、残りをメザニン債やシニアローンなどで賄う計画だ。
投資家はデータセンターの建設が過剰になることへの懸念を深めている。米マイクロソフトが世界各地のデータセンター計画を縮小し始めたと報道された。投資コストの増大も頭の痛い問題だ。TDカウエンのアナリスト、マイケル・エリアス氏らは、トランプ氏の関税政策でサーバーラックや冷却装置、半導体などの価格が上昇し、データセンターの建設コストは5-15%引き上がるだろうと述べる。
一方、オープンAI側で続く混乱も不確実性を高める原因の一つになっている。アルトマン氏はオープンAIを営利企業に再編しようとしたが、元社員や学者、共同創業者のイーロン・マスク氏らの反発で断念した。ソフトバンクGはオープンAIへの300億ドルを追加出資する意向を示したが、主要出資者であるマイクロソフトは同社の組織再編に慎重姿勢を崩していない。
それでもソフトバンクGが関与する前から始まっていたスターゲートの一部の計画は前進している。アルトマン氏は、テキサス州アビリーンで初となるデータセンターを訪れたことを明かし、オラクルが開発中のこの施設は「世界最大のAI訓練施設」になると議会で証言した。発電から半導体に至るまで網羅するサプライチェーンの構築を支援するとも語った。
孫氏にとって市場の混乱や投資家の懸念は取るに足らない問題で、AI需要の爆発的成長と高リターンの可能性を確信していると、関係者らは話す。
コムジェスト・アセット・マネジメントのポートフォリオ・マネジャー、リチャード・ケイ氏は、ソフトバンクGがスターゲートに出資分の500億ドルを投じた場合、5-6年でコスト回収した後に15-20%のリターンが期待されると分析する。同時に、それにはある程度のデータセンター利用率など、複数の条件を必要とするとも話す。
ケイ氏は「今後2四半期で、全ての資金がどこに使われるかを正確に言えれば素晴らしいことだが、それは今のところ誰にもわからない。おそらく孫氏自身もまだ決めていないだろう」と話す。
第一生命HD、英キャプラをグループ化 出資比率15%に上げ | ロイター
日産が追加で1万人超の人員削減へ、従来分含め2万人規模-NHK - Bloomberg
3メガバンク純利益4兆円規模 25年3月期、2年連続最高 - 日本経済新聞
●トランプ関連
Donald Trump seeks bromance and billions as he heads to Gulf
ドナルド・トランプ大統領は今週、ホワイトハウス復帰後初の公式外遊としてサウジアラビアを訪問し、数十億ドル規模の取引を次々と成立させるという大きな期待を背負っている。しかし、最大の取引は実現しそうにない。
米大統領は、石油資源の豊富な湾岸諸国からのオイルマネー誘致が今回の訪問の最大の動機であることを隠そうとはしていない。今回の訪問では、カタールとアラブ首長国連邦にも立ち寄る予定だ。イーロン・マスク、サム・アルトマン、マーク・ザッカーバーグ、ラリー・フィンクなど、米国の有力企業幹部の多くもリヤドに向かうと予想されている。
しかし、ガザ地区でのハマスとの19か月に及ぶ戦争が激化し、地域が混乱する中、トランプ大統領が切望する目標、すなわちサウジアラビアとイスラエルの関係正常化につながるような大規模な妥協は実現しそうにない。
「サウジアラビアは、今回の訪問を二国間関係の焦点に据えておきたいと考えている」と、王室に近いサウジアラビアの評論家アリ・シハビ氏は述べた。「イスラエルがサウジアラビアが望むような真剣な行動、つまり戦争の終結とパレスチナ国家の樹立を示さない限り、国交正常化は棚上げになる。そうでなければ、何も進まないだろう。」
この不協和音は、華やかな取引の渦中にいるトランプ大統領が、2017年のサウジアラビアへの前回の訪問以来、中東の力学がどのように変化してきたかを知ることになるだろうということを強調している。
こうした取引は、現実的で意欲的なものも含め、伝統的に共和党大統領を支持し、世界最大級の政府系ファンドを運用し、豪華な式典でトランプ大統領を祝福する湾岸諸国から生まれることになるだろう。
独裁国家は、大統領の予測不可能な行動や貿易戦争の影響を警戒しながらも、彼の取引的なスタイルを歓迎し、人権を軽視する姿勢を歓迎している。「彼は湾岸諸国の端から端まで大喜びするだろう」と、元米国外交官のアーロン・デイビッド・ミラー氏は述べた。「そして、トランプ1.0とは違い、はるかに実質的な内容が盛り込まれている」
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子はすでに、リヤドが今後4年間で米国に6000億ドルを投資することを約束している。UAEもこれに続き、10年間で1兆4000億ドルを投資することを約束している。また、カタールもトランプ大統領のドーハ訪問中に数千億ドル相当の投資を約束するとみられている。
アナリストらは、原油価格の低下に苦しみ国内プロジェクトに注力しているサウジアラビアを含む湾岸諸国がどのようにしてこの期間内にこれほどの巨額の資本を展開できたのか疑問視している。
米国はまた、トランプ大統領がエアフォースワンの代替としてドーハから4億ドルのジャンボジェット機を受け入れることについてカタールと協議しており、この動きは大統領の支持者と反対者から批判を浴びている。
米財務省は木曜日、「米国企業への同盟国からのさらなる投資を促進するためのファストトラックプロセス」を設立すると発表した。これは米国における人工知能投資を加速し、米国製半導体へのアクセスを容易にするために湾岸諸国がロビー活動を行ってきたものである。
トランプ大統領は先月、一部の武器販売に関する規制を緩和し、調達手続きを迅速化する大統領令を発令したが、これは米国の武器の最大の買い手である湾岸諸国も求めていたものである。
トランプ大統領が「アメリカ第一主義」の投資政策を掲げる中、訪問中のアメリカの最高経営責任者らは火曜日に開催される米サウジ投資フォーラムに出席する予定だ。同フォーラムはテクノロジー、AI、エネルギーに重点が置かれ、一連の投資発表で締めくくられる予定だ。
「これは地政学的な訪問ではなく、この地域の戦略的ビジョンに基づいた訪問です」と、もう一人の元米国外交官、デニス・ロス氏は述べた。「最初の任期では、大規模な取引や投資、そして米国の大規模な武器売却に関する発表に注力していました。今回も同じような展開になると思います。」
しかし、トランプ大統領は暗雲を無視することはできないだろう。2023年10月7日のハマスによる攻撃への報復として開始されたイスラエルによるガザ攻撃は、アラブ諸国の指導者たちを激怒させている。彼らは、この虐殺によって若い世代が過激化することを恐れているのだ。
戦争勃発前には米国との3者合意でイスラエルとの関係正常化に近づいていたムハンマド皇太子は、イスラエルのガザでの行為を「ジェノサイド」と表現し、パレスチナ国家が樹立されるまでリヤドはイスラエルと外交関係を持たないと主張している。
これにより、トランプ大統領が最初の任期中に仲介し、2020年にUAEと他のアラブ諸国3カ国がイスラエルと国交を正式化するきっかけとなった、いわゆるアブラハム協定を拡大するという希望は挫折した。しかし、スンニ派イスラム世界のリーダーであるサウジアラビアは、常に最大の目標であり、他のアラブ諸国やイスラム諸国に追随させるための鍵と考えられてきた。トランプ大統領はまた、中東で新たな戦争勃発の危険を懸念する湾岸諸国の指導者らが、イランの核開発計画拡大をめぐり米国にイランとの合意を迫っていることにも気づくだろう。
トランプ大統領の2017年の訪問中、イランがバラク・オバマ政権および他の世界大国と署名した核協定から米国を離脱させる準備をする中、生意気な若いムハンマド皇太子とUAEの指導者シェイク・ムハンマド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーンはトランプ大統領の最大の応援団の中にいた。
今回は、サウジアラビアとUAEがイランとの緊張緩和を目指していることに気づくだろう。その理由の一つは、トランプ政権の最初の任期中に、2019年にサウジアラビアの石油インフラへのミサイルとドローン攻撃の責任をイランに押し付けられた際に、トランプ政権がイランに対して「生ぬるい」とみなす対応を取った経験にある。
リヤドとアブダビでは、これは米国の予測不可能性と安全保障への疑わしいコミットメントのさらなる証拠と受け止められた。大統領がテヘランとの協議を開始したものの、外交交渉が失敗に終わった場合にはイスラエルと共に軍事行動も辞さないと警告したことを受け、両国は今や核危機終結に向けたイランとの新たな合意を支持している。
「サウジアラビアとUAEは、イランが本当に脅威にさらされ攻撃されれば、反撃の犠牲者になることを認識している」と、プリンストン大学の近東研究教授、バーナード・ヘイケル氏は述べた。「ですから、サウジアラビアは非常に重要な仲介役を果たしてきたし、トランプ陣営との緊張を和らげる役割も果たしてきたと私は考えています。」
サウジアラビアは米国とロシアの協議も促進しており、カタールは米国とエジプトとともにイスラエルとハマスの間の仲介を行っている。
外交官らは、ガザをはじめとする地域危機が議題に上がると述べている。しかし、危機グループのマイケル・ワヒド・ハンナ氏は、合意形成が活発に行われている中で、湾岸諸国の指導者たちがこれらの問題にどれほどの政治的資本を費やす意思があるのか疑問視している。
「彼らはそれを無視することはできない。しかし、どれほど重要な問題になるのだろうか?」と彼は言った。「主要な問題は経済であり、彼らはそれを弱めるような激しい対立を望んでいないだろう。」
ワシントンは、いまだ生存していると思われる最後の米国人、エダン・アレクサンダー氏を含むハマスに拘束されている残りの59人の人質のうち少数の解放を確保するため、ガザでの戦争の短期停戦を強く求めてきた。
ハマスは日曜日、米国と直接交渉した後、アレクサンダー氏を釈放すると発表した。これはトランプ大統領の訪問を前にした善意の表明とみられる。調停団は新たな停戦合意の確保に向けて引き続き尽力している。
これはイスラエルが攻撃を拡大し、同地帯の完全占領に踏み切ると脅している中での出来事であり、新たな停戦合意がなければトランプ大統領の訪問後に占領を開始するとしている。
「ガザについての話は避けられないが、焦点は経済協定に置かれるだろう」とある外交官は語った。
米中貿易協議の主なポイント - WSJ
米中両国が12日発表した貿易協議における合意の主なポイントは以下の通り。
・米国は中国製品に対する125%の「相互」関税を10%に引き下げる。
・中国も同様に、米国製品に対する報復関税を125%から10%に引き下げる。
・合成麻薬フェンタニル関連の中国製品に対する米国の20%関税は維持される。
・引き下げは90日間継続し、その間に両国は交渉を続ける。
・中国は対米報復として導入した非関税措置を停止または撤廃することに同意する。
米中、互いの製品への関税の大半を一時停止で合意 - WSJ
米国と中国は12日、今後さらなる貿易交渉を続ける間、互いの製品に対する関税の大半を停止することで合意したと発表した。
米国は、中国製品に対する「相互」関税を125%から10%に引き下げると発表。また、中国は米国製品に対する関税を125%から10%に引き下げると述べた。
フェンタニルなどに関連する米国の関税は据え置きとなる。
両国は、「経済・貿易関係に関する協議を継続するためのメカニズムを確立する」と述べた。
今回の発表は、世界最大の経済大国である2国間の貿易をめぐる緊張緩和を目的とした、スイスでの2日間にわたる協議を締めくくるもの。
ドナルド・トランプ米大統領は2期目をスタートさせて以来、中国製品に145%の関税をかける一方、中国政府は米国からの輸入品に125%の関税をかけて反撃してきた。その結果、2国間の貿易は減少、米国ではインフレ圧力が高まる一方、中国の成長を支える輸出エンジンが脅かされている。
トランプ氏、薬価引き下げへ大統領令署名 最大90%値下げも | ロイター
トランプ米大統領は12日、薬価引き下げに向けた大統領令に署名した。製薬会社に対し他国と同水準まで値下げするよう求め、価格は59─90%引き下げられる可能性がある。
トランプ大統領は記者会見で、自身が進める薬価引き下げに向けた政策に従わない国に対し、追加関税を課すとも表明した。
医薬品販売における仲介業者を排除するほか、他国と協力し、製薬会社を支援するとした。
政府当局者によると、今後30日以内に製薬会社に価格の目標を提示し、6カ月以内に「顕著な進展」がみられなければ、追加措置を講じる計画。
米国の処方箋薬の価格は高く、他の先進国の約3倍に達するケースもある。
中国国家主席と今週末に会談する可能性=トランプ氏 | ロイター
トランプ氏、対中関税「145%に戻らず」 90日停止後も | ロイター
トランプ氏、薬価引き下げで大統領令署名-国際価格との連動目指す - Bloomberg
トランプ米大統領は12日、米国内の医薬品価格に向けた措置に署名した。より低価格で販売されている外国の水準に近づけることを目指す。
これに先立ち行われた政府関係者の説明によると、今回の大統領令では米国外での薬価抑制につながる不合理または差別的とみる政策に対処するよう、通商代表部(USTR)と商務省に指示する見通し。これにはメディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)や減量薬への対応が含まれるという。
今回の大統領令は第1次トランプ政権時代の薬価引き下げ提案を超えるもので、トランプ氏が長年主張してきた薬価政策を寄せ集めた内容とみられる。製薬業界に対して交渉の席に着くよう迫る圧力も含まれているが、大幅な価格引き下げを回避するために業界側が何を求められるのかは不明だ。
政府関係者によると、厚生省は製薬業界との間で薬価に関する交渉を開始する。薬価引き下げに向けた十分な進展が見られない場合には、同省が最恵国待遇と呼ばれる政策を導入するとしたが、詳細には言及していない。
米国民が支払う医療費は世界で最も高く、それがイノベーション(技術革新)を促し、製薬業界の成長を後押しした側面もある。制度改革が行われれば、収入が減り、寿命と生活の改善に寄与するはずの画期的治療法の開発を阻害すると医薬品業界は主張してきた。
トランプ政権はまた、製薬会社に対する交渉力を高める手段として、医薬品の輸入を拡大する可能性もある。
米国では原則として国外からの医薬品輸入は違法とされているが、個人使用に限って例外が認められており、多くの米国人がカナダから薬を購入している。業界側が十分な価格交渉に応じない場合には、他国からの輸入も選択肢に含まれると政府関係者は述べた。
トランプ氏は11日夜、ソーシャルメディアへの投稿で薬価引き下げを目指し大統領令に署名する方針を明らかにしていた。
トランプ氏、習氏との今週末の会談の可能性に言及-関税協議受け - Bloomberg
トランプ米大統領は、米国と中国が貿易摩擦の緩和に向けた協議で相互の関税率を一定期間引き下げることで合意したことを受け、今週中に習近平国家主席と話す可能性が高いとの認識を示した。
トランプ大統領は12日、「習主席と話すつもりだ。恐らく週末になるだろう」とホワイトハウスで語った。
米中両国は10、11日、スイスのジュネーブで貿易協議を開催。合意によれば、米国は中国に対する関税率を今月14日までに145%から30%に引き下げる。これには違法薬物フェンタニルの流入に絡む関税も含まれる。また中国は米国産品に対する関税率を125%から10%に引き下げる。いずれも期間は90日間。
トランプ氏は「ジュネーブでの協議は非常に友好的に進んだ。関係は非常に良好だ。われわれは中国に打撃を与えようとしているわけではない。中国は深刻な打撃を受けていた」と主張した。
さらに中国が「非金融障壁の全面停止・撤廃」に同意したと大統領は発言。「彼らは中国を完全に開放することに同意した。われわれにとって素晴らしいことになると思う」と述べた。
トランプ氏の発言は、中国政府が国外からの投資を困難にしている数々の規制や輸出制限、所有権規則の緩和に応じる可能性を示唆するものだ。ただ今回の非公開協議で中国側が撤廃に同意した障壁について、同氏は具体的な詳細を明らかにせず、今後の協議がさらに複雑になると認めた。
トランプ政権が包括的関税措置を公表した4月2日以降に中国が導入した非関税対抗措置について、同国は12日の共同声明で、停止ないし撤回すると表明した。7種のレアアース(希土類)を輸出管理リストに加えたことを指すと考えられる。それらの制限撤廃は、複数の産業への影響を緩和したい米政府にとって優先事項だった。
トランプ氏はまた、今後90日間の協議で合意を確実にできなかった場合は、関税率は30%を超える可能性があると指摘。同水準を「大きく上回る」こともあり得ると語った。ただし、米国が中国に対する関税を再び合計145%に引き上げることはないとも付け加えた。
暫定合意の報道を受け、S&P500種株価指数は12日に3%余り上昇し、債券や金、避難通貨といったディフェンシブ資産は下落した。ドルは昨年11月の大統領選後以来となる大幅高を記録。ハイテク株の急騰でナスダック100指数は再び強気相場入りした。
習主席の強硬姿勢、劇的な関税引き下げもたらす-トランプ政権が譲歩 - Bloomberg
中国の習近平国家主席は関税問題でトランプ米大統領に対して一歩も引かない姿勢を貫き、好結果を得た。
週末にスイスで2日間にわたって行われた閣僚協議を経て、両国は大幅な緊張緩和にこぎ着けた。綿密に調整された共同声明によれば、米国は中国製品に課す関税を145%から30%に、中国は米国製品への関税率を10%にそれぞれ引き下げる。期間はいずれも90日間。
劇的とも言える大幅引き下げは、中国側の予想を上回った。ドルや株式相場は大きく上昇し、トランプ氏が待ち望んでいた市場を安堵(あんど)させるための材料となった。中国株も大幅に上昇した。
中国側の主な要求は今回の協議でほぼ全て満たされた。中国は米国に対し、大統領による支持を受けた交渉責任者を起用することを求めていた。米国はベッセント財務長官率いるチームを派遣し、それに応えた。
両国は違法薬物フェンタニルの米国への流入阻止に向け、「積極的な措置」を講じることで合意。これにより、中国に対して課している追加関税20%が将来的に撤廃される可能性もある。
調査会社トリビアム・チャイナの共同創業者トレイ・マカーバー氏は「今回の結果は米国が譲歩したという点で、中国が望み得る最良のものだったと言ってよいだろう」と指摘。
「今後、中国側はいかなる交渉においても、米国に対して主導権を握っていると自信を持つことになるだろう」と述べた。
習主席は世界の他の指導者とは対照的に、トランプ大統領からの度重なる電話会談の呼び掛けを拒否してきた。
ランド研究所中国研究センターのアソシエートディレクター、ジェラード・ディピッポ氏は「経済力がものを言うというのが今回の教訓だ」と分析。「中国にとっては戦略的な正当性が証明された。製造業と自立に重点を置く習主席の戦略に対して、少なくとも経済安全保障の観点からは異論を唱えることが一段と困難になった」と述べた。
トランプ大統領は12日、習主席と今週末にも話す可能性があるとし、中国との関係は「完全にリセットされた」と述べた。
ドイツ銀行のストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏は、今回の緊張緩和は周到に演出されており、トランプ氏が米中歩み寄りについてソーシャルメディアで先に発信しなかったことも注目に値すると指摘。
「交渉がより融和的で互いに敬意を払う段階へと移行しつつある明確なサインだ」とし、それも中国が要求していたことだと述べた。
●先進国中銀、金融当局
FRB政策対応の必要性低下、米中関税引き下げで=クーグラー理事 | ロイター
FRB利下げ期待後退、年内50bp予想に 米中関税引き下げ受け | ロイター
●先進国経済指標
「アメリカを買え」、世界市場は「解放の日」の悪夢を忘れられるのか - Bloomberg
米国債のCDSスプレッド、2年ぶりの高水準に拡大 | ロイター
信用リスクのヘッジに使われる米国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の1年物および5年物のスプレッド(リスクプレミアム)が、債務上限問題を巡ってデフォルト(債務不履行)の危機に瀕していた2023年5月以来、約2年ぶりの高水準に拡大した。トランプ米政権の政策を巡る不確実性と、債務上限問題が再燃していることが背景にある。
バークレイズは顧客向けのメモで、市場規模や取引量が最近増加しており、一般的にニッチと考えられている商品が投資家の関心を集めていることを示していると指摘した。
PGIMフィクストインカムのグレッグ・ピーターズ共同最高投資責任者(CIO)は数年前までは米国のデフォルトに備えた商品は不人気だったが、最近は米政府の政策が不確実なため状況が変わってきたとして「現在は債務上限問題や他の諸々の事柄が進行しており、誰もそのオプションをショート(ポジション)にはしたがらない」と指摘した。
米国債のCDSのスプレッドは短期ゾーンにとどまらず、全体にわたって拡大している。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、今月9日のスプレッドは1年物が60ベーシスポイント(bp)、5年物が56bpとなった。
トランプ米大統領が貿易相手国に対する「相互関税」を発表した4月2日以降、スプレッドの拡大が加速している。ピーターズ氏は「4月2日以降、リスクプレミアムが実際に上昇している」と話す。
数日間にわたって売りが続いた米国債は、トランプ氏が大部分の貿易相手国の「相互関税」について国・地域ごとに設定した上乗せ部分を90日間停止すると発表したことで価格が上昇した。長期金利の指標となる10年物の利回りは4.36%と、関税が一時停止された4月11日に付けた水準から約20bp低下した。
米政府は連邦債務が法定上限を突破してもデフォルトに陥るリスクを回避するため、今年1月に「特別措置」を始めた。
バークレイズのアナリストらは顧客向けのメモで、米政府の財政資金が枯渇する「Xデー」は8月下旬または9月上旬になる可能性が高いものの、景気減速が財務省の財務内容を圧迫すれば前倒しになる可能性があるとの見解を示した。
ベセント財務長官は今月、債務上限問題について「警戒すべきコースをたどっている」としつつ、政府がデフォルトに陥る事態を招かないと強調した。
●金融市場、先進国トピックス
米新車販売価格、4月は前月比+2.5% 関税影響し通常の倍超 | ロイター
欧州復興銀総裁「米国が増資払わず」 ウクライナ支援に影響も - 日本経済新聞
●ロシア、ウクライナ、中東情勢
プーチン氏、ウクライナとの和平交渉に真剣=クレムリン | ロイター
振り返る: サウジとアメリカの80年にわたる関係|ARAB NEWS
リヤド:過去80年以上にわたり、サウジアラビアと米国の関係は、防衛、貿易、教育、観光などを含む多面的なパートナーシップへと発展してきた。
ドナルド・トランプ大統領の2期目最初の公式外遊先が、UAE、カタールと並んでサウジアラビアであることは偶然ではない。
1974年以来、6人のアメリカ大統領が王国を訪問しているが、これはサウジアラビアが不安定な地域の安定化勢力として永続的な影響力を持っていることの証である。
マイケル・A・ラトニー駐サウジアラビア大使は、昨年9月22日付のアラブニュースに寄稿し、「今日、米国とサウジアラビアの関係はかつてないほど強固なものとなっている」と述べた。
そして「この強さは、安全保障、商業、文化、あるいはスーダンやイエメンなどにおける地域紛争を解決するための共同の努力など、我々の幅広い協力関係から感じ取ることができる」と付け加えた。
国防やエネルギーに関する初期の協力から、教育、技術、観光、芸術における現代の協力に至るまで、二国間関係は、地域的な出来事、世界的な変化、共通の利益によって形作られながら、時代とともに深まってきた。
特にアブドゥラー国王奨学金プログラムを通じて、何千人ものサウジアラビア人学生を米国に送り出してきた。マディーナのイスラム大学やフルブライト・プログラム、アリゾナ州立大学とサウジアラビア教育省との提携などの交流イニシアティブを通じて、アメリカの学生もサウジアラビアを訪れている。
近年では、ビジョン2030がサウジとアメリカの協力関係に新たな活力を吹き込み、知識交流の道を開き、数十億ドルの相互投資を誘致している。
米国と同様、サウジアラビアはイノベーションの国であり、起業家精神と技術進歩を重んじる。トランプ大統領の2017年訪問や「ビジョン2030」が、サウジアラビアとの関係を大きく前進させたと見る向きも多い。しかし、その基礎は何十年も前に築かれていた。
1932年にアブドルアジーズ国王がナジュドとヒジャーズの部族を統合し、サウジアラビアを建国した。
第二次世界大戦が終わりに近づいた1945年2月14日、フランクリン・D・ルーズベルト大統領は、ヤルタ会談の後、エジプトのグレート・ビター・レイクにあるUSSクインシー号でアブドルアジーズ国王と会談した。この会談は歴史的な転換点となった。ルーズベルト大統領はアブドルアジーズ国王にヨーロッパからのユダヤ人難民問題についての助言を求め、サウジアラビアを戦後秩序形成の重要な担い手として期待した。
ルーズベルト大統領は、第二次世界大戦が終わりを迎えようとしているときでも、その背後では新しい世界秩序が形成されつつあり、サウジアラビアはアメリカが友好を深めるべき国であることを知っていた。両首脳は相互に尊敬の念を抱くようになった: 同大統領はサウジアラビア国王にDC-3旅客機を贈呈し、その後2機が贈られ、サウディア航空設立への道が開かれた。
ルーズベルト大統領はその2ヵ月後に死去したが、「クインシー会談」は永続的な関係の基礎を築いた。1953年、両国は相互防衛援助協定を通じて軍事関係を正式に結んだ。
1957年、サウード国王はサウジ初の君主として訪米し、ワシントン・ナショナル空港でドワイト・D・アイゼンハワー大統領と会談した。この訪問では、地域の課題に対する永続的な解決策の必要性が強調され、サウジアラビア軍の強化が約束された。
初期の協力関係はインフラにも及び、1958年にはアメリカ人建築家のミノル・ヤマサキがダーラン民間航空ターミナルを設計した。1960年代から1970年代にかけても外交訪問は続き、二国間の結びつきはより強固なものとなった。
1966年、ファイサル国王はリンドン・ジョンソン大統領を公式訪問し、1971年にはリチャード・ニクソン大統領を公式訪問した。
1974年には、産業開発、教育、技術、農業に焦点を当てた米・KSA合同経済委員会が設立され、経済関係が深まった。この年、ニクソン大統領は歴史的なサウジアラビア訪問を行い、パートナーシップの拡大を確認した。
1982年には、ジョージ・H・W・ブッシュ副大統領がリヤドを訪問し、ハーリド国王の死去を悼んだ。
軍事協力は1990年から91年にかけての湾岸戦争で激化し、サウジ軍はクウェート解放のためにアメリカ軍と連合軍に加わった。米軍がサウジアラビアに派遣されたことで、地域防衛における王国の戦略的役割が強調された。
2002年、アブドゥラー国王がテキサス州クロフォードにあるジョージ・W・ブッシュ大統領の牧場を訪問した際、サウジ・アメリカ戦略対話が開始された。この対話は、テロ対策、エネルギー、教育、経済問題での協力を強化することを目的としていた。
この協力の精神は2005年にも続き、サウジアラビアの人的資本への投資を目的としたアブドゥラー国王奨学金プログラムが開始された。試験段階では、9,000人を超えるサウジアラビアの学生が米国に留学した。
2007年にはローラ・ブッシュ大統領夫人がサウジアラビアを訪問し、2009年にはバラク・オバマ大統領が初めて大統領としてサウジアラビアを訪問した。
2012年にはGCC-米国戦略フォーラムが設立され、当時のヒラリー・クリントン国務長官がリヤドで開催された第1回閣僚会議に出席し、米国の地域戦略における湾岸協力会議の役割を高めた。
2017年、トランプ大統領が1期目の任期中にリヤドを訪問したことで、パートナーシップはさらに飛躍した。この訪問では、アラブ・イスラム・アメリカ・サミット、米国・サウジアラビア二国間サミット、米国・GCC協力会議サミットの3つの注目度の高いサミットが開催された。これらの会議では、軍事・商業関係の拡大に焦点が当てられた。
王国が「ビジョン2030」を通じて経済と世界との関わりを再構築する中、米国のパートナーシップは、エネルギー転換、クリーンテック、デジタル・トランスフォーメーションなどの分野で不可欠なものとなっている。
月曜日のトランプ大統領の再訪は、2期目に入って初の公式外遊であり、投資、技術革新、人と人との新たなつながりに焦点を当て、こうした取り組みを強化することが期待されている。
1945年のルーズベルト大統領とアブドルアジーズ国王の歴史的会談から戦略的協力の新時代に至るまで、サウジと米国の関係は戦争、経済変動、政治的変化を乗り越えてきた。両国が将来を見据えるとき、そのパートナーシップは世界の安定と機会を支える重要な錨であり続けている。
クルド武装組織が解散決定、「歴史的使命完了」 トルコで長年闘争 | ロイター
トランプ氏、ウクライナ・ロシア停戦交渉に参加も-トルコ訪問に言及 - Bloomberg13日から中東を歴訪するトランプ米大統領は、15日にウクライナ停戦協議が予定されているトルコに立ち寄ることを検討していると述べた。ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領による直接協議に自身も加わる構想を示唆した。
トランプ氏は12日、ホワイトハウスで記者団に対し「現地に向かうことを考えている」と発言。「多くの会議があり、15日にどこにいるかはまだ分からない。だが、実際に立ち寄ることを考えていた。事態が動くと判断すれば、その可能性はある」と述べた。
ゼレンスキー氏はこれを受けて、トランプ氏がトルコの協議に参加することを望むと表明。「これは正しい考えだ。多くのことを変えることができる。トルコのエルドアン大統領は高官級協議を主催できる」と述べた。その上で「ロシア側がこの会談を回避しないことを望む」とした。
ゼレンスキー氏と欧州諸国の首脳らは10日、ロシアに対して12日から30日停戦に応じなければ追加制裁を科すと迫り、その後プーチン氏が15日のトルコでの直接交渉を呼びかけていた。トランプ氏はプーチン氏が停戦の呼びかけを拒否する中でも、ウクライナはロシアと協議すべきだと主張。これを受けて、ゼレンスキー氏はトルコでの協議に出席する考えを示していた経緯がある。
トランプ氏はロシアに対する追加制裁について「合意を実現するうえで重要だと感じれば」検討するとの考えを示した。
Trump could join Russia-Ukraine peace talks in Turkey
トランプ大統領は以前、モスクワとキエフの直接交渉の見通しについて「ロシアとウクライナにとって素晴らしい日になる可能性がある」と述べていた。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米国のこの提案を歓迎し、声明の中で「トルコでのこの会合にトランプ大統領が同席してくださるなら、ウクライナ国民全員が感謝する」と述べた。「これは正しい考えだ」とゼレンスキー大統領は続け、「私たちは多くのことを変えることができる」と付け加えた。
大統領による協議参加の申し出は、週末にキエフで高官級会合が相次ぎ、ウクライナ戦争の停止に向けた外交努力が加速する中で行われた。また、ウクライナ軍の指導者やアナリストによると、ロシア軍は1,000キロに及ぶ前線沿いの複数の重要地点で攻勢を強化している。
ゼレンスキー大統領とドイツ、英国、フランス、ポーランドの首脳が土曜日にキエフで会談した後、同盟国はロシアに対し、月曜日から始まる30日間の無条件停戦に同意するか、そうでなければ「大規模な」新たな制裁に直面すると要求した。
この立場はトランプ大統領のウクライナ特使キース・ケロッグ氏も日曜日に支持したが、トランプ大統領自身はこの問題に関する公のコメントではより慎重な姿勢を保っている。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は日曜日にこれに対し、モスクワとキエフは今週木曜日に「いかなる前提条件もなしに」イスタンブールで直接会談を行うべきだと述べた。プーチン大統領が直接会談に出席する予定があるかどうかは不明である。
プーチン大統領は、西側諸国による停戦要求を「最後通牒」と呼び、一蹴したようだ。ロシア外務省は声明で、停戦に関するいかなる協議も、ロシア・ウクライナ紛争の根本原因に関する協議が先行しなければならないと述べた。
トランプ大統領はロシアの交渉提案に対し、「ウクライナは直ちにこれに同意すべきだ」と応じた。
「少なくとも、合意が可能かどうかを判断できるだろう」と彼はTruth Socialに書いた。「もし合意が成立しない場合でも、欧州の首脳陣と米国は現状を把握し、それに応じて行動できるだろう!」
トランプ氏はまた、「ウクライナがプーチン大統領と合意するかどうか疑い始めている」と不満を述べた。
ゼレンスキー大統領はその後イスタンブールでの会談に同意し、両者が直接会うのは2度目となるこの会談にロシア首脳が出席するよう要求した。
「今週の木曜日にトルコを訪問します」とゼレンスキー大統領は述べた。「プーチン大統領が今回は、来られない理由を探さないことを願っています。私たちはこの戦争を終わらせるために話し合う準備ができています。」
プーチン大統領とゼレンスキー大統領が2019年12月にパリで初めてそして唯一会談した際、両氏は2014年に始まったウクライナ東部ドンバス地方でのクレムリン主導の武力紛争を終結させる和平案で合意できなかった。
クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は月曜日、プーチン大統領が自身の提案する会談に出席する予定があるかどうかについては明言を避けた。しかし、報道官は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が日曜日にプーチン大統領と電話会談を行い、イスタンブールで会談を開催することで合意したと付け加えた。
しかしペスコフ氏は、30日間の停戦という条件は受け入れられない最後通牒だと述べた。
「このような最後通牒のような表現はロシアにとって受け入れられない。不適切だ。ロシアとこんな形で交渉することはできない」と彼は述べた。
ゼレンスキー大統領府はフィナンシャル・タイムズ紙に対し、プーチン大統領の出席の有無に関わらず、ウクライナ大統領はトルコを訪問すると述べた。アンドリー・イェルマーク大統領首席補佐官はウクライナメディアに対し、「ウクライナはロシアに和平プロセスを妨害していると非難する口実を与えない」と述べた。
トルコは、ロシアによる西側隣国への全面侵攻開始からわずか数週間後の2022年に、ロシアとウクライナの当局者による交渉を主催した。
しかし、ロシア軍がキエフ近郊のブチャで民間人を虐殺したことが明らかになり、会談は決裂した。ゼレンスキー大統領はこの行為を戦争犯罪として非難した。
エルドアン大統領がウクライナに対する「バランスのとれた」アプローチと呼ぶものの一環として、トルコは両国と良好な関係を維持している数少ない国の一つであり、モスクワとは貿易・外交関係を維持しながら、キエフには軍事物資も提供している。
最新の和平交渉は、ロシア軍がウクライナ東部のポクロフスク、トレツク、ハシフ・ヤルといった戦略都市を攻撃するなど、春季攻勢が再開される中で行われた。国防省と関係のあるウクライナの分析グループ「ディープ・ステート」は、ロシアが5月8日から10日まで実施していた一方的な「停戦」期間中、同国軍は4月の同時期よりも1日あたりの攻撃回数が増加したと指摘した。
3日間にわたって毎日約155件の個別の攻撃が記録された。
「いかなる戦線でも停戦は行われなかった」と同グループは述べた。
ウクライナ和平交渉、トランプ氏に参加要請=ゼレンスキー氏 - WSJ
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日、ドナルド・トランプ米大統領に対し、トルコで今週開催予定の和平交渉に参加するよう要請した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に停戦で合意するよう圧力を強めた格好だ。
ゼレンスキー氏はソーシャルメディアへの投稿で「プーチン氏との直接交渉というトランプ大統領の提案を私は支持した。面会の用意がある。トルコに行く」と表明。「ウクライナの全国民は、トランプ大統領に同席してほしいと願っている」と書き込んだ。
プーチン氏は10日、紛争当事者間の直接交渉に先立ち、30日間の停戦に応じるよう求めたウクライナ側の要請を拒否。その代わりに和平交渉の再開を提案していた。プーチン氏はまた、一時的な停戦に向けた協議を15日に再開することについて、2022年に前回の和平交渉を仲介したトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領と話し合った。
就任以来、戦争の早期終結を訴えてきたトランプ氏は、ウクライナは直ちにこの提案を受け入れるべきだと投稿した。これを受けてゼレンスキー氏は11日、トルコでプーチン氏を待つと表明。プーチン氏本人は、協議への出席の可否を明言していない。
ゼレンスキー氏は、トランプ氏を和平交渉に招くことで、プーチン氏こそ和平を阻む真の障害だという構図を描こうとしているようだ。トランプ氏は交渉への参加意思を問われると、「役立つと判断すれば、飛んでいく」と答えた。
Trump heads to Middle East with oil, arms, nuclear ambitions in focus
ドバイ、アラブ首長国連邦 — ドナルド・トランプ米大統領は5月13日にペルシャ湾地域(大統領は近くアラビア湾と呼ぶかもしれない)に到着し、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦を訪問する公式訪問を行う。
地政学的緊張が高まる中での訪問となるため、その重要性は極めて高い。議題には、イスラエルとガザ地区の停戦交渉、石油、貿易、投資協定、そして先端半導体輸出と核開発計画における新たな政策展開の可能性などが含まれる。
「多くの発表があると予想しています。それも幅広い分野にわたるものになると思います」と、アブダビ商業銀行のチーフエコノミスト、モニカ・マリク氏は金曜日、CNBCのダン・マーフィー氏に語った。彼女は、トランプ大統領が課したアルミニウムと鉄鋼への10%の関税が撤廃される可能性を指摘した。これは湾岸諸国にとってプラスとなるだろう。なぜなら、これらの金属は湾岸諸国のGDPに占める割合はわずかだが、一部の国は米国に輸出しているからだ。
トランプ大統領は長年にわたり湾岸アラブ諸国、特にUAEとサウジアラビアと良好な関係を築いてきた。両国ではトランプ大統領の子息たちが複数の事業を展開し、不動産プロジェクトも計画している。こうした関係は、新たな貿易協定の交渉において両国の立場を強化する可能性がある一方で、批判者の間では利益相反の可能性を懸念する声も上がっているが、トランプ一家はこうした疑惑を否定している。
大統領就任後最初の任期中、最初の外遊先はサウジアラビアだった。サウジアラビアは現在、トランプ大統領がロシア・ウクライナ戦争の終結を期待する交渉の場となっており、ワシントンにとってサウジアラビアの重要性はますます高まっている。一方、カタールはイスラエルとハマス間の停戦と人質解放交渉において中心的な役割を果たしてきた。
湾岸諸国のウォール街とAI
大統領の訪問は、ウォール街やシリコンバレーの有力者たちをサウジアラビア王国に引き寄せている。今週発表されたばかりのサウジ・米国投資フォーラムは、5月13日にリヤドで開催予定で、ブラックロックのラリー・フィンクCEO、パランティアのアレックス・カープCEO、シティグループなどの大手企業のCEOなどがゲストとして参加する。
IBM、クアルコム
アルファベット
フランクリン・テンプルトンなど。ホワイトハウスのAI・暗号資産担当責任者であるデビッド・サックス氏も出席予定。
「多くの投資契約が発表されることを期待しています」とマリク氏は述べた。「UAEはすでにAI、エネルギー、アルミニウムなどの分野で米国への投資を数多く発表していますが、米国企業にとっても投資を増やす機会があると考えています。」
サウジアラビアとUAEは、AI技術の世界的ハブとなることを目指し、AIインフラに多額の投資を行ってきました。そのため、両国の指導者にとって最大の関心事は、米国製半導体輸出の将来でしょう。中でも最先端技術への輸出は、国家安全保障上の懸念からこれまでアクセスが制限されてきました。しかし、状況は間もなく変化するかもしれません。
トランプ政権は水曜日、バイデン政権時代に導入された「AI普及ルール」を撤回する計画を発表した。このルールは、先進的なAIチップに対し、米国に友好的な国に対しても厳しい輸出規制を課していた。このルールは「米国のイノベーションを解き放ち、米国のAI優位性を確保する、はるかにシンプルなルール」に置き換えられると、米国商務省報道官は水曜日に述べたが、新ルールの詳細はまだ明らかにされていない。
UAEに拠点を置くAI企業G42は、中国企業からの投資撤退やマイクロソフトとの提携など、米国の規制に準拠するための努力を行ってきた。
同社は昨年、G42に15億ドルを投資した。
核への野望
トランプ政権は、イランの核開発計画をめぐる協議に積極的に取り組んでおり、UAEとサウジアラビアもこの協議への支持を表明している。こうした熱意は、オバマ政権時代に両国が米国とイランのいかなる取引に対して示した態度とは著しく対照的である。
同時に、サウジアラビアは独自の民生用核開発計画を望んでおり、米国にその承認と支援を求めている。サウジアラビアの核開発計画に対する米国の支援は、これまでサウジアラビアが米国の同盟国であるイスラエルとの外交関係を正常化することを条件としていたが、事情に詳しい関係筋を引用した メディア報道によると、今回の訪問で状況が変わる可能性があるという。
米国のクリス・ライトエネルギー長官は4月にサウジアラビアを訪問した際、サウジアラビアと米国は民生用原子力協定への「道筋」にあると述べたが、さらなる発表はトランプ大統領自身から行われるだろうとした。
イスラエルとガザの交渉
もう一つの重要な議題はガザ地区の将来だ。トランプ大統領は戦争終結を誓う一方で、戦争で荒廃したガザ地区を「重要な不動産」と呼び、米国が支配権を握る可能性を示唆するなど物議を醸しており、この発言はアラブ諸国の指導者たちから強い非難を浴びた。
米国は停戦協定の締結を強く求め続けており、最近では21日間の戦闘停止と人質の一部解放を提案した。一方イスラエルは今週、ガザ地区での戦闘と領土支配の拡大を承認した。
「アラブ世界からはまだ包括的な計画を聞いていない」と、UAEに拠点を置くブランチ・グローバル・キャピタル・アドバイザーズの創業者グレッグ・ブランチ氏は金曜日、トランプ大統領の今後の訪問について議論する中でCNBCに語った。
「もしアラブ主導の対応策が見られるとしたら、それはおそらく今しかない」とブランチ氏は述べた。「水面下では非常に慎重に扱われるだろう…おそらく、目先のマクロリスクというよりも、長期的な地政学的リスクの方が大きいだろう」
石油と資金調達
ブランチ氏は、シリアの新政権下での米国による制裁解除についても議論される可能性があると示唆した。一方、トランプ政権がペルシャ湾をアラビア湾に改称すると発表したとの報道は、アラブ諸国からは熱烈に歓迎されるだろうが、イランとの繊細な核交渉が続く中、イランの激しい怒りを買う可能性もある。
原油価格も焦点となるだろう。トランプ大統領は長年、サウジアラビアを筆頭とするOPEC加盟国に対し、米国の消費者向け価格を引き下げるため、原油生産量の増加を強く求めてきた。サウジアラビアは様々な理由からまさにその通りの行動を取っているが、価格が低迷し続け、サウジアラビアの歳入に打撃を与えれば、今後数ヶ月で方針転換を迫られる可能性がある。
ADCBのマリク氏によると、その意味で、トランプ大統領の訪問中、資金調達はサウジにとって重要な議題となるだろう。
サウジアラビアは11月、トランプ政権下で米国に6000億ドルを投資すると約束したが、自国が掲げる「ビジョン2030」に基づく投資計画にも莫大なコストがかかる。世界的な原油価格の下落と大型公共投資プロジェクトは、リヤドの財政赤字の拡大を招いている。
「原油価格が現状のままであれば、サウジは投資計画の進展を目指すとともに、アメリカからのさらなる資金援助を検討するだろう」とマリク氏は述べた。
●その他エマージング
フィリピンのドゥテルテ前大統領、市長選で当選確実 国内不在のまま - 日本経済新聞
中国経済はどれほど悪化? 分析に必要なデータが消失 - WSJ
数年前までは誰でも中国の広範な公式データを詳しく調べることができたが、今やそのデータが消え始めている。
土地(使用権)販売指標、外国投資データ、失業統計などがここ数年で公表されなくなった。火葬件数や企業信頼感指数、さらには公式のしょうゆ生産報告の発表さえ打ち切られた。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の分析によると、中国当局は、研究者や投資家がこれまで利用してきた数百のデータの公表を停止した。
ほとんどの場合、中国当局はデータの公表を終了したり、差し控えたりする理由を説明していない。しかし、こうしたデータの消失は、世界第2位の経済大国である中国が、過剰債務や不動産市場の崩壊といった問題の重圧に苦しむ中で起きており、当局が情報を強引にコントロールしようとしていることがうかがえる。
中国国家統計局はここ数年で、都市部の失業に関連する一部データの公表を停止した。統計局のウェブサイト上で匿名ユーザーが、これらのデータの一つが消えた理由を尋ねたところ、統計局は、当該データ提供元の省庁がデータの共有を停止したとだけ答えた。
データの消失により、この重要な時期に中国で何が起きているのかを把握することが難しくなっている。米中貿易戦争が中国に大きな打撃を与え、世界経済の成長を鈍らせると予想される中、中国では対米貿易の急減によってすでに生産停止や人員削減が起きている。
中国の経済成長の実態を把握することは以前から難しかった。多くのエコノミストは長年、中国の国内総生産(GDP)統計の信頼性に疑問を呈しており、最近ではその懸念が強まっている。公式統計では、2024年のGDP成長率は5%、23年は5.2%とされているが、中国政府が成長率を2~3ポイントも水増ししているとの推計もある。
エコノミストらは、より現実的な成長率をはじき出すために、映画の興行収入、夜間光の強度を示す衛星データ、セメント工場の稼働率、主要電力会社の発電量など、代替的な指標に目を向けるようになった。中国のIT大手、百度(バイドゥ)などの民間企業が運営する地図サービスの位置情報データを分析して、企業活動を把握しようとするエコノミストもいる。
あるエコノミストは、ジムや美容サロンのオーナーが突然店を閉め、利用者の会費を持ち逃げしたというニュース記事の数を数えることで、中国のサービス業の業況を判断していると語った。
中国経済の状況
中国のGDP統計を疑問視する声は何年も前からある。李克強前首相が遼寧省トップだった2007年に米国大使に対し、同省のGDPデータは「人為的に操作」されており、信頼できないと語った話は有名だ。この会話は、米外交公電の内容が流出したことで明らかになった。李氏はその代わりに、電力消費量、鉄道貨物輸送量、新規銀行融資を指標として注視していたという。
同公電によると、李氏は、公式のGDP統計は「参考程度」だと大使に打ち明けた。李氏は2023年10月に死去している。
中国の2024年の公式GDP成長率(5%)は、前年に政府が設定した目標値と完全に一致した。エコノミストらは内心では、実際の成長率はこれほど高くないと考えている。あるエコノミストはWSJに対し、当局がもっと低い数字を発表していれば信ぴょう性が高まっていたはずだと語った。小売売上高や建設活動などのデータはかなり弱い状況を示しているとエコノミストらは指摘した。
フィンランド銀行(中央銀行)と英キャピタル・エコノミクスは中国のGDP成長率について、おおむね公式統計よりも変動が大きいと判断している。それぞれが示す直近数四半期の推定成長率は公式統計の水準を下回っている。
昨年12月、中国国有のSDIC証券に所属する著名な中国人エコノミスト、高善文氏が米首都ワシントンでの会議で、中国の経済成長率は「ここ数年は2%程度かもしれない」とし、「われわれは中国の成長率がいったいどれくらいなのか本当の数値を把握していない」と述べた。
中国の習近平国家主席は高氏を処分するよう命じ、高氏は公の場での発言が禁止(期間は不明)された。中国証券業協会(SAC)は昨年12月下旬に証券会社に対し、自社のエコノミストが投資家の信頼性を高める上で「前向きな役割」を果たせるよう確実にすべきだと述べた。
国家統計局はデータの取り扱いに問題はないとの認識を示し、データの質は年々向上している上、正確性の確保や収集時の不正行為調査に取り組んでいると述べている。
ゴールドマン・サックスは今年2月、中国の経済成長率を測る別の方法を考案した。輸入データなどの数値を分析し、国内支出の代替的な指標として読み取るというものだった。この考え方の背景には、貿易データは頻繁に公表される上、中国の貿易相手国も同様のデータを報告するため、ごまかしにくいという点があった。
この手法によると、2024年の中国の経済成長率は平均3.7%だった。別の手法を用いた米調査会社ロジウム・グループは、24年の成長率は2.4%に近いと述べた。
消えるデータ
「安定」というイメージを示すことは中国共産党にとって最重要事項だ。多くの中産階級の中国人が将来に不安を抱き、中国が米国との競争で未知の領域に突入している現状では、なおさらだ。
消えるデータは、中国政府にとって非常に敏感な分野、あるいは頭痛の種となる分野のものであることが多く、不動産セクターもその一つだ。不動産市場の崩壊は、ここ数年で家計の富を数十億ドル吹き飛ばし、住宅購入者による抗議デモを引き起こした。
好況期には、中国の開発業者が地方政府から土地を法外な価格で買いあさった。その結果、地方政府の財政が潤い、今後の開発計画が中国経済の重要な原動力となることが示唆された。
不動産不況が始まったのは2021年で、中国政府が同セクターを対象にした信用引き締め策を講じたことがきっかけだった。住宅販売が落ち込み、不動産開発業者が経営破綻する中、中国のシンクタンクである貝殻研究院は22年の報告書で、中国28都市の平均住宅空室率が米国などの地域の平均を上回っていると指摘した。これは供給過剰の兆候だった。
中国は公式の空室率を発表していないため、この報告書は注目を集め、不動産アナリストらは開発業者の住宅建設がどれほど過剰だったかを突き止めようとした。その数日後、貝殻研究院は報告書を撤回し、一部のデータに誤りがあったと謝罪した。アナリストらは同院が政府の圧力でデータを取り下げたと考えている。
公式データも消失している。
統計によると、2022年の土地販売額は48%も減少した。これは多額の債務を抱える地方政府にとって大きな問題だった。給与の支払いやインフラ開発事業の継続に必要な資金が突然足りなくなったからだ。23年初め以降、このデータは公表されていない。
土地販売に関しては、公式記録から個々の土地取引情報を集める民間調査会社がまだ存在する。
2023年半ばまでは、国内の話題の多くは若者の厳しい雇用情勢に集中していた。大学を卒業する学生の多くは就職先がなく、角帽・ガウン姿の学生たちが地面に動かず横たわっている様子がソーシャルメディアで拡散された。これを無言の抗議行動と受け止める人は多かった。
その頃、公式の若年層失業率は21.3%と過去最高を記録した。北京大学のエコノミストである張丹丹氏は、実際の若年層失業率は46.5%に達している可能性があると述べ、話題を呼んだ。
中国当局は2023年8月、計算方法を再検討する必要があるとして、若年層失業率の公表を停止すると発表した。
その5カ月後、中国政府は新たな若年層失業率の発表を開始し、実際の失業率は14.9%だとした。
新たな若年層失業率では約6200万人が対象外となった。これらは全日制の大学生であるため、失業者にカウントすべきでないと当局は説明した。だが、エコノミストらはこの説明に納得しなかった。統計は通常、積極的に仕事を探している人(全日制の学生含む)を全て失業者としてカウントするからだ。
投資家が逃避
中国では2024年4月、経済への懸念が深まる中、株式市場が危機に瀕(ひん)していた。外国人投資家は2週間で20億ドル(約2900億円)超の中国株を売却し、国内の個人投資家を不安にさせた。
中国の二大取引所である上海証券取引所と深圳証券取引所は、外国人投資家の資金流出入に関するリアルタイムデータの公表を停止すると突然発表した。上海証取所は声明で、特定の投資家グループのリアルタイム取引データを開示していない他の国際市場の慣行に合わせたと述べた。
当局が5月半ばにリアルタイムデータの公表を停止した後、CSI300指数は4カ月連続で下げ続けた。当局が9月に一連の景気支援策を発表すると、ようやく下げ止まった。
一部のデータは現在も公開されているが、入手しづらくなっている。中国では2021年制定の法律により、情報サービス会社が企業登記データや衛星画像などの一部情報にアクセスできる地域は中国本土のみとなった。
中国の金融情報サービス大手、万得信息技術(ウインド)は2023年初め、オンライン小売販売額や土地競売記録などの一部データへの国外ユーザーのアクセスを制限し始めた。香港の外資系銀行エコノミストはWSJに対し、データをダウンロードするために、隣接する中国本土の深圳を週末に定期的に訪れるようになったと語った。
ここ数年で消えたデータには、中国の有料道路運営会社の債務残高(年末時点)や株式市場の新規投資家数に関する公式統計もある。
中国政府は、新型コロナウイルスを封じ込める狙いで導入し物議を醸した「ゼロコロナ」政策を2022年末に終了し、その後、全国の火葬データの公表を停止した。一部のアナリストは、この政策の終了により130万~210万人の死者が出る可能性があると推定していた。政府はまた、新型コロナの影響に関するソーシャルメディア上での議論を検閲した。
中国の低出生率は大きな経済的負債となっており、それを示す一部のデータも消えている。2000年代半ば、易富賢氏というエコノミストが中国の人口データの正確性に疑問を呈し、中国では全ての新生児に結核の予防接種が義務付けられているため、人口の伸びを示す指標としては出生数よりも結核ワクチン接種数の方が優れていると主張した。
中国の民間シンクタンク「フォワード・ビジネス・アンド・インテリジェンス」がまとめたデータによると、2020年には540万回の結核ワクチン接種が行われたと報告されている。中国当局は同年の出生数を1210万人と発表した。
その1年後、中国食品医薬品検定研究院(NIFDC)は結核ワクチンの週間接種数データの公表を、他のワクチンデータと共に中止した。
消えたデータの中には説明がつかないものもある。小学校のトイレ面積を推定するデータは2022年に公表が停止されたが、今年2月に再開された。公式のしょうゆ生産データは21年5月に公表停止となり、現在も再開されていない。
投資適格のルーマニア、政治混乱で格下げの可能性高まる=S&P | ロイター
トランプ氏停戦にインドは怒り、パキスタンは祝福-今後に危険な禍根 - Bloombergインドとパキスタンの対立は、過去約50年間で最悪の戦闘に発展した。核戦争の危機すら懸念されたが、戦闘開始から4日後の10日、トランプ大統領が両国は「完全かつ即時の停戦」に合意したと宣言した。
だが、インド政府高官の多くはトランプ氏の投稿に憤慨している。投稿は寝耳に水だったと、事情に詳しい関係者が明らかにした。関係者は非公表の情報だとして匿名を要請した。
インド当局者を不快にさせたのは、緊張緩和に向けた米国の取り組みそのものではなかった。インドとパキスタンは互いの軍事施設を無人機(ドローン)やミサイルで攻撃し合い、1971年の戦争以来最も激しい戦闘を行う中でも、舞台裏では交渉が続いていた。
問題は、モディ首相の存在を脇へと追いやり、カシミール問題を二国間の交渉を通じて解決するというインドの長年の方針をトランプ氏が無視したことだった。さらにインドにとって許せなかったのは、経済成長で自信を深める同国が宿敵のパキスタンと同列に扱われたことだ。
モディ氏の強力な支持者の一人である右派系放送局の司会者、アルナブ・ゴースワミ氏は、この怒りを代弁した。「これはトランプ氏の典型的な越権行為だ。カシミールで起きたテロ行為と、その後に起きたことを、トランプ氏はどうして同列に扱えるのか。明らかに出過ぎた行為だ」とソーシャルメディアに投稿した動画で主張。この動画はインドで急速に人気化している。
戦闘のきっかけとなったのは、インドが管理するカシミール地方のパハルガムで、観光客26人が殺害された事件だった。インドはパキスタンによる犯行だと非難する一方、パキスタンは関与を否定している。
金融市場はいかなる停戦であっても歓迎しそうだが、それが持続するかは定かではない。トランプ氏の発表からわずか数時間後、カシミールの事実上の国境となっている実効支配線を越えたドローンの攻撃があったと双方が報告。11日は停戦が守られている様子だったが、インドはパキスタン経済にとって死活的に重要なインダス川の水利用を定めた協定の復活をなお拒否している。同協定は数十年にわたり履行されてきたが、戦闘開始後にインドが一方的に停止した。
また、停戦が成立した経緯自体が、今後の戦闘激化を引き起こす恐れもある。
米国に対して怒りを感じ、今回の結果を敗北に等しいと感じているインド人は多い。それがモディ首相には、将来の攻撃に対して強力な反撃を求める圧力となっている。一方パキスタンでは、停戦合意のニュースが花火で祝われ、同国軍は勝者として称賛された。
さらに懸念されるのは、今回の戦闘で従来のレッドラインが破られたことだと事情に詳しい当局者は指摘。これにより将来の衝突は事態の予測が難しく、制御しづらくなる。
両国が領有権を争うカシミールにほぼ限定されていたこれまでの戦闘とは異なり、インド洋にまで伸びる国境線全域が今や攻撃対象で、主要都市近郊にある軍事施設もそれに含まれると、当局者らは述べた。より高度で殺傷力のある兵器が使用されるようになり、自爆型ドローンや中国製戦闘機は予想以上の効果を発揮した。
「次の危機はとりわけ危険なものとなる要素がそろっている。双方が従来の規則はもはや当てはまらないことを示したがっているためだ」と、ニューヨーク州立大学アルバニー校の政治科学准教授でワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターの客員研究員であるクリストファー・クラリー氏は指摘。
「インドは対パキスタンの交戦ルールを再設定したいと考えている。インドが迅速かつ決定的にパキスタンに打撃を負わせた場合のみ、パキスタンが厄介な行為をやめるとみているからだ。一方、インドのそうした試みを危険で、高い代償を伴うものにしようというのがパキスタンの考えだ」とクラリー氏は論じた。
米中関税合意、中国内に懐疑的見方 国営メディアが評価の一方で | ロイター
米国と中国が12日発表した関税引き下げなどに関する貿易協議での合意に関し、中国国営中央テレビ(CCTV)は「均衡がとれており両国に利益となる」と評価した。一方、中国ソーシャルメディアでは懐疑的な見方が投稿され、同調する意向が多く示された。
ベッセント米財務長官は、ジュネーブで中国の何立峰副首相と協議した後、両国が互いにかけ合う高関税を90日間停止することで合意したと発表した。中国の交流サイト(SNS)微博(ウェイボ)の利用者は「トランプ米大統領はいつでも考えを変える可能性がある」と投稿。別の利用者も「アメリカ人は信頼できない。気まぐれに注意すべきだ」と書き込んだ。どちらの投稿にも多くの賛同が寄せられた。
第2次トランプ政権は、中国からの輸入品に対する関税率を引き上げて145%とし、中国は対抗して125%の関税を課した。これは、第1次トランプ政権時に課した関税や、バイデン前政権が課した制裁関税に追加された措置だ。
中国側の事情に詳しい当局者3人によると、中国の貿易相手国がいち早く米国との協議を始める中、中国当局者は関税による経済への影響と孤立化のリスクを懸念していたという。
CCTVはSNSの微信(ウィーチャット)に「協議は率直で、建設的なものだった。実質的な進展がみられ、重要な合意に達した」と記した。
JPモルガン、中国GDP予想を上方修正 対米関税引き下げ合意で | ロイター
●プロファイ、インフラ、自然災害
Spain power outage sparks a blackout blame game over green energyスペイン、ポルトガル、南フランスの大半を襲った壊滅的な停電により、再生可能エネルギーとエネルギー安全保障の役割が注目を浴びている。
4月28日、記憶に残るヨーロッパ史上最悪の停電の一つが突然の広範囲にわたる停電となり、イベリア半島全域を襲った。
数時間続いた停電により、地域の大部分が暗闇に包まれ、何千人もの列車の乗客が立ち往生し、何百万人もの人々が電話やインターネットが使えなくなり、ATMから現金を引き出せなくなった。
スペイン当局はその後、サイバー攻撃が原因かどうかの調査を含む、事件の根本原因を究明するための複数の調査を開始した。
スペインの野党だけでなく、一部の外部観測者は、特にスペインとポルトガルの両国が電力網を風力と太陽光に大きく依存していることを踏まえ、再生可能エネルギーとネットゼロ排出目標が停電の原因である可能性を指摘している。
「ポルトガルとスペイン、そしてそこに住む多くの人々に起こったことを見るのは非常に悲しいが、天候に頼るのは危険な試みに他ならない」と、クリス・ライト米エネルギー長官は4月28日、 CNBCの「パワーランチ」で語った。
スペインのペドロ・サンチェス首相と同国の送電網運営会社レッド・エレクトリカ・デ・エスパーニャ(REE)はともに、停電の原因は再生可能エネルギーの記録的レベルではないと述べた。
一方、欧州連合(EU)のエネルギー担当高官ダン・ヨルゲンセン氏は、停電当時、電力系統に電力を供給していたエネルギー源に「異常はなかった」と述べた。
「したがって、停電の原因は、再生可能エネルギーなどの特定のエネルギー源に還元することはできない」と彼は付け加えた。
「欧州はもっとエネルギーを必要としている」
欧州のエネルギー技術企業は、当局からの正式な説明がないまま、観測者らが独自の結論を出すのを控えるよう求めた。
デンマークの風力タービンメーカー、ヴェスタスのCEO、ヘンリック・アンダーセン氏
スペインの政策立案者が調査を続けている中、停電に関しては「ある程度の政治手腕」を発揮するよう促すと述べた。
「まず第一に、エネルギー安全保障とは、停電に悩まされることなく社会を運営できることを意味します。これは当然のことです」とアンダーセン氏は火曜日、 CNBCの「スクワーク・ボックス・ヨーロッパ」で語った。
「誰もが原因を急いで特定して互いを責め合っているが、私はただ、そこに行き着きたくない。スペインとポルトガル全土で電力網が機能不全に陥る根本原因が分かるまでは、推測したり、サイバーセキュリティの責任を誰かに押し付けたり、個々のエネルギー源を責めたりするのはやめよう」と同氏は付け加えた。
「ヨーロッパはより多くのエネルギーを必要としており、おそらくより強力な電力網も必要でしょう。言うまでもありません」とアンダーセン氏は述べた。
シーメンス・エナジー
一方、CEOのクリスチャン・ブルッフ氏は、ドイツのエネルギー技術グループが停電を受けて関係する送電会社や公益事業会社と協議を行っていると述べた。
「エネルギーシステムを構築する際には、太陽光、風力、ガスなどの発電について考える必要があるが、送電網側のシステム全体がどのように機能し、それをどのように安定させるかについても考える必要がある」とブルック氏は木曜日にCNBCに語った。
「これは時々その複雑さが過小評価されており、そのため、これらのバランスをとるために、当社のグリッド安定化製品が現在需要があるのです」と彼は続けた。
「解決は可能ですが、投資が必要で、簡単ではありません。太陽電池とバッテリーを数個用意するだけで済むわけではありません。もう少し複雑なのです」とブルッフ氏は述べた。
「現金が突然本当に重要になる」停電時に現場にいた人々にとって、電力不足はデジタル社会の課題を浮き彫りにした。
「現金が急に本当に重要になってきました」と、スペイン南部の都市マラガに住むロザンナさんはCNBCに語った。正午過ぎに停電が起きた時、手元にはたった40ユーロ(45.16ドル)しかなかったという。
「もちろん現金を引き出すことも、カードで支払うこともできないので、常にポケットに少しの現金を入れておくことは重要です」と彼女は続けた。
「私たちはすべてデジタル化しましたが、電気がなければシステムは台無しになってしまいます」とロザンナさんは言いました。
●その他
プロ野球:松井秀喜氏が語る2畳の孤独の尊さ 一人の練習こそ大成への道 - 日本経済新聞
「麻薬潜水艇」で密輸拡大、急増するコカイン取引 - WSJ
●市況(ChatGPTによる要約版)
NY市場サマリー(12日)ダウ1160ドル高、ドル急伸・利回り上昇 | ロイター
欧州市場サマリー(12日) | ロイター1. **米中の関税緩和が好感され株価上昇:**
米国と中国が90日間の追加関税停止で合意し、互いに大幅な関税引き下げを発表。これにより貿易戦争への懸念が和らぎ、株式市場は全面高となった。
2. **ロンドン株式市場:**
* 中型株FTSE250は0.60%上昇。
* 鉱業株は銅価格上昇を受けて大幅高(+4.87%)。グレンコア +6.1%、アングロ・アメリカン +5.5%。
* フェレクスポ +8.2%(ウクライナ・ロシア会談期待)。
* 原油高で石油・ガス株も上昇。BP +2.2%、シェル +1.4%。
* 一方、金価格は下落し、貴金属株は5.45%下落。
3. **欧州株式市場:**
* 資源株指数は+4.98%と大幅上昇。
* プーマ +6.5%、アディダス +3.8%、マースク +11.2%、ハパックロイド +13.0%。
* DAX指数は+0.29%。
* ヘルスケア株はトランプ大統領の薬価引き下げ発表で一時売られたが、最終的に+0.53%。
* ウニクレディトは好業績で+4.2%。
* 航空宇宙・防衛株はウクライナ・ロシア首脳会談期待で1.35%下落。
4. **ユーロ圏債券市場:**
* 米中合意と地政学リスク緩和で国債利回りが上昇。
* ドイツ10年債利回りは2.64%(+9.2bp)、2年債は1.93%(+14.4bp)。
* イタリア10年債も3.68%に上昇。
* ECBの利上げ見通しが織り込まれつつある。
- 備忘録(2025/5/9-11)●海外企業決算
- ●日本企業
- Trump heads to Middle East with oil, arms, nuclear ambitions in focus
- トランプ氏、対中関税は80%が「適切だろう」 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は9日、中国に市場開放を求めるとともに、新たな関税率に言及した。
- トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「中国は米国に市場を開くべきだ。それは彼らにとって非常にいいことだ!!!!閉ざされた市場はもはやうまくいかない!!!」と投稿した。
- しばらく後にも別の投稿で「中国に対しては80%の関税が適切だろう!スコットB(ベッセント財務長官)次第だ」と述べた。
- 米中貿易交渉、中国公安トップが参加へ 麻薬対策も主題か - WSJ
- 中国の習近平国家主席は、スイスで米政府との貿易交渉に当たらせる代表団の一員として王小洪国務委員・公安相を派遣する。複数の関係者が明らかにした。合成麻薬「フェンタニル」の問題が両国関係の重大課題になっていることを浮き彫りにする動きだ。
- 何立峰副首相率いる中国代表団は10、11の両日に米国のスコット・ベッセント財務長官およびジェミソン・グリア通商代表部(USTR)代表との会談を予定している。習氏の側近の王氏も協議に参加することになる。
- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先に、フェンタニルの流通に中国が果たす役割について、習氏がドナルド・トランプ大統領の懸念への対応を協議する窓口に王氏を指定したと報じていた。
- トランプ政権は自国の薬物危機対策として、フェンタニルの原料になる化学物質の生産・輸出の打ち切りを中国政府に要求してきた。
- 首都ワシントンのシンクタンク、スティムソンセンターの中国プログラム担当ディレクター、ユン・サン氏は「王氏の存在が意味するのはただ一つ、フェンタニルが米中貿易交渉の議題に上っているだけでなく、この段階の協議の主な議題だということだ」と語った。また「中国が協力にどれほど前向きかが、貿易合意への意欲のほどを示すだろう」と話した。
- トランプ氏は大統領2期目に入り、中国からの輸入品に145%の高関税を課し、中国政府も125%の関税で応酬した。だがトランプ氏は9日、対中関税を80%に引き下げる用意があることを示唆した。これは摩擦を和らげつつ、正常な二国間貿易を阻むような水準だ。
- トランプ氏は「中国に対する関税は80%が適切だろう。スコット・B(ベッセント財務長官)次第だ」と述べた。
- ホワイトハウスはこのところ、フェンタニル原料の密輸を取り締まる数々の方法をまとめたリストを中国に提出。そうした化学物質の密輸に関与する犯罪者に強い警告を発することなどを提案した。複数の関係者の話では、スイスで交渉に臨む中国代表団はトランプ政権の具体的な要求に対応を示す見込みだ。
●トランプ関連- Chinese goods hit by Trump 145% tariffs begin arriving at U.S. ports
- 【社説】トランプ氏、貿易戦争で後退 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は自ら仕掛けた貿易戦争を徐々に後退させ続けており、市場はそれを歓迎し続けている。これが、米英両国が新たな貿易協定で合意したと8日に発表されたことの主な意味である。
- 多くの詳細を詰める必要があるが、今回の合意によってトランプ氏は、4月2日の「解放の日」に発表した関税措置からまた後退したことになる。トランプ氏と彼の顧問らは発表当時、例外を設けないと約束していたが、市場は反乱を起こした。トランプ氏はその後、米国と世界を貿易戦争の淵から引き戻す取引(ディール)を行うため、中国を除く全ての国に対して90日間の猶予期間を与えた。
- 英国との協定はその中で初めての取引であり、経済的にも政治的にも合理性がある。両国は多くの点で相性が良く、2国間貿易の多くはモノではなくサービスの取引だ。両国間の協定に関する交渉は第1次トランプ政権下で始まったため、既にある程度進展していた。米国は英国に対して貿易黒字となっており、これは世界の他の多くの国との関係とは異なる。キア・スターマー英首相も景気減速への対策として貿易協定を必要としている。
- 8日に協定の概要が明らかにされた限りでは、前進のように見える。英国には依然、トランプ氏がすべての国からの輸入品に課す10%の新関税が残る。だが産業別の関税では、鉄鋼(25%)と自動車(27.5%)の高い関税率を免れることになった。自動車に対する関税率は、英国から米国へ輸出する車のうち毎年10万台までは10%に引き下げられる。10万台の枠は英国車の実際の輸出台数とほぼ一致する。英国産の金属の関税はゼロになる。
- その見返りとして、英国は米国産エタノールへの輸入障壁を引き下げ、英国の航空会社は100億ドル(約1兆4600億円)相当の米ボーイング製航空機を購入する。両国は牛肉製品の相互貿易拡大でも合意した。
- この合意によって、米国産牛肉に対する英国の衛生・安全基準が緩和されることはないようだ。こうした基準は長年、米国の牧場経営者にとって主な障害になっている。英国は塩素洗浄によって殺菌された米国産鶏肉の輸入を健康リスクがないにもかかわらず禁止しているが、これも合意の対象外となった。鶏肉のほか、デジタルサービスの取引や米ハイテク大手への課税といった問題については、これまで通り継続協議となる。
- しかし今は、合意の詳細より米国の通商政策の方向性の方が重要だ。市場の明るい反応がそれを示している。1カ月前、世界は1930年代のような貿易システム崩壊の瀬戸際にあるように見えていた。
- 現在、その可能性は低くなったようだ。トランプ氏は関税の泥沼から引き返そうとする中で、今後さらに多くの貿易協定が結ばれることを約束している。一方、スターマー氏がこの機会を認識し、トランプ氏が誇示できる解決法を示したことは高く評価できる。他国の首脳もそこから教訓を得られるはずだ。
- トランプ氏と保護主義者たちは、関税政策の変更はもともと計画されていたことだと言うだろう。まるでドルからの逃避や米国株の急落、米国債利回りの急上昇が予想されていたかのように装うはずだ。トランプ氏は関税そのものを好んでいる。4月2日を解放の日と宣言したのはそのためだ。しかし、関税による経済的な打撃の拡大が政治的に対処不能なほど大きなリスクになることが分かってきた。共和党がこの政策後退を天才的な作戦に見せかけたいとしても、打撃が緩和される限り、われわれは構わない。
- ただ、今回の合意によって貿易への損害が終わるわけではない。90日の猶予期間後の大混乱を回避することにより消極的な国もあるかもしれないが、米国は引き続き各国と交渉しなければならない。最大の懸念は中国であり、米中貿易のほぼ全面停止が差し迫っていることだ。
- トランプ氏は既に、アップルなどのハイテク企業を対象に対中関税の例外措置を講じている。しかしこうした措置では、小売店の空っぽの商品棚を満たしたり、重要部品を調達できなくなった中小企業を助けたりすることはできない。トランプ氏が145%の対中関税を来週中に50%に下げるかもしれないとの情報を、米政府が8日にリークしたことに驚きはない。市場にとってさらなる朗報だ。
- 自らの関税攻撃による損害を緩和するためにトランプ氏が進むべき道のりはまだ長い。こうした損害の一部は、高率の関税や物価高という形で永続的なものになるだろう。とはいえ英国との協定は、面目を保ちながら部分的に後退するための「ひな型」となる。トランプ氏がそれを受け入れるならば、であるが。
- 米鉄鋼業の浮揚狙うトランプ関税、大手クリフスに逆効果 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領の鉄鋼製品に対する輸入関税は、米国産鋼材の需要を押し上げ、鉄鋼産業を保護する狙いがある。だが今のところ、国内有数の鉄鋼メーカーが工場を閉鎖し、業界の支配的地位を目指す戦略から撤退するのを食い止められていない。
- 米自動車メーカー向け鋼板の供給量でトップのクリーブランド・クリフスは、ここ数カ月、複数の工場や鉄鉱石鉱山の操業を休止している。今夏にはペンシルベニア州とイリノイ州の特殊鋼工場3カ所を閉鎖する予定だ。事業拡大計画を棚上げしているほか、8日に経営陣は資産を一部売却する可能性があると述べた。
- 同社の事業後退で、鉄鋼市場の厳しさが増していることが注目される。自動車産業がけん引する米製造業セクターはこの1年間低迷し、買い手が鉄鋼の購入を控える中、価格は押し下げられた。2024年の米鉄鋼各社の業績は約10年ぶりの水準に悪化した。
- トランプ関税を目前にした駆け込み需要で、鉄鋼価格は上昇したものの、すでに頭打ちとなっている。需要家は保有する鉄鋼で事足りており、米国経済の先行き不透明感を背景に、大口の発注を避けているためだ。
- 「長期的にみれば、米鉄鋼産業やクリーブランド・クリフスにとって良いことだと分かっている」。ローレンソ・ゴンカルベス最高経営責任者(CEO)は8日のアナリスト会議でトランプ氏の関税計画についてこう述べた。「だが短期的には、当社のコスト競争力を維持するため、可能な限りの手を尽くす必要がある」
- 米国2位の鉄鋼生産量を誇るクリフスの株価は、過去6カ月間に3分の1余り下げており、競合他社と比べても下落率は大きい。今週発表した1-3月期決算(第1四半期)では純損失が4億8300万ドルだったと明らかにした。3四半期連続の赤字となった。
- 生産減と事業運営の変更で約2000人の雇用に影響が出る見通し。クリフスは年間3億ドル(約438億円)のコスト削減を見込んでいる。ゴンカルベス氏は、主力事業の自動車向け鋼板の供給に一段と注力できるようになると述べた。
- ゴンカルベス氏は、輸入車に課す関税で米国内の自動車組み立てが増え、ボンネットやフェンダーなど車両部品に使われる同社の軽量鋼材への需要が高まることに依然として期待を寄せている。同氏によると、クリフスは顧客の自動車メーカーから発注増の確約を得ており、利益を押し上げる見込みだ。
- ブラジル出身の同氏は5年前、鉄鉱石採掘会社のクリフスを鉄鋼メーカーに転換させる大胆な戦略に着手した。鉄鋼を生産する工場や企業を格安で買収し、自社採掘の鉄鉱石を用いて鉄鋼製品を完成させる企業へと成長させた。
- だが年月を経るごとに問題が表面化。クリフスはいくつかの業績不振事業と、運営コストのかかる老朽化した工場群を抱えることになった。中には今後多額の投資を必要とするものもある。
- 今後は工場や設備への支出を前年比20%以上削減する予定で、一部の事業計画を先送りにした。
- この夏には3工場を閉鎖する。鉄道用レールと厚鋼板を生産するペンシルベニア州東部の2工場と、イリノイ州シカゴ近郊の特殊鋼薄板の工場だ。ゴンカルベス氏は特にレール工場で業績が振るわなかったと述べ、日本製鉄が米国内でレールを、関税があるにもかかわらず大幅な割引価格で販売していると非難した。
- 「日本製鉄には限度というものがない」と同氏は述べた。
- 日本製鉄にコメントを要請したが、今のところ回答を得られていない。
- またクリフスは、昨年閉鎖されたウェストバージニア州ウィアトンの缶用鋼材工場で、変圧器を製造する計画も断念する。パートナー企業の「考えが変わった」ためだとゴンカルベス氏は説明した。
- クリフスはUSスチールに買収提案をしたが失敗に終わり、日本製鉄によるUSスチール買収の阻止も試みたが、その後は北方に目を向け、カナダの鉄鋼最大手ステルコ・ホールディングスを25億ドルで買収した。米国の貿易相手国に対する積極的な関税活用を公約に掲げたトランプ氏が大統領に返り咲くほんの数日前、この買収は完了した。
- カナダ産鉄鋼への25%の関税は3月に発効した。関税導入前はステルコの年間売上高の約3分の1が米国向けだったが、現在クリフスは同社の販売をカナダ向けに限定している。
- ゴンカルベス氏は、他のカナダ製品を対象にした米国の広範な関税が鉄鋼需要に悪影響を及ぼすことや、米国とカナダの関係が悪化することは予想していなかったと述べた。
- 「当社には想定外の事態だ。カナダが友好国の扱いを受けないと分かっていれば、ステルコの買収にそこまで熱心にならなかっただろう」
- トランプ氏、高所得者への増税に再び意欲 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は限界税率の引き上げを見送ることを決めた15日後に、再び引き上げに意欲を示している。
- トランプ氏は4月23日、年間所得100万ドル(約1億4600万円)以上のミリオネアに対する所得税率の引き上げ案に反対した。しかし、事情に詳しい複数の関係者によると、現在は年間所得250万ドル以上に課す所得税率の上限を37%から39.6%に戻す税制の支持を検討しているという。
- 共和党は数日中に財政法案を発表し、月内の下院通過を目指しているが、トランプ氏の減税に関する提案内容の盛り込みに苦慮している。ただ、今回の動きは同党に一定の猶予を与える可能性がある。最高税率が上がれば上がるほど、共和党はメディケイド(低所得者向け公的医療保険制度)の大幅な削減を回避しつつ、他の税金を削減することが容易となる。また、富裕層への減税の財源として共和党は社会保障を削減しようとしているという民主党の非難をかわすこともできる。
- ただ、共和党議員の多くは最高税率の引き上げに反対しており、議席が僅差の上下両院においてトランプ氏が支持を取り付けるためには反対派のほぼ全員の賛成を得る必要がある。共和党にとって最高税率は触れることができない問題で、30年以上にわたり引き上げに一部反対の立場をとってきた。
- 最高税率の引き上げは、他の租税措置と相互作用する。たとえば、共和党は法人と37%の税率を支払っている個人の税負担を均衡化させるべく、個人の申告を通じて納税している非公開企業に対し20%の税控除を設けている。しかし、最高税率が引き上げられた場合には、そのバランスが崩れることとなる。
- また、州税なども勘案すると最終的に支払う税金が50%を超える人々が増えることとなる。
- 米財務長官、債務上限で7月中旬までの対応要請 8月の資金枯渇警告 | ロイター
- ベセント米財務長官は9日、議会指導部に対し、7月中旬までに連邦政府債務の上限引き上げか債務上限の停止を決めるよう要請した。措置を講じなければ8月に財政資金が枯渇する「合理的な可能性」があると警告した。
- ベセント氏は書簡で「債務上限の一時停止や引き上げに失敗すれば、わが国の米金融システムが大混乱に陥り、安全保障と世界的指導的地位は低下する」と述べた。
- 米国の債務残高は現在36兆2000億ドルで、1月に議会が設定した36兆1000億ドルを上回っている。財務省はデフォルト(債務不履行)回避に向け一時的な措置を取っているが、ベセント氏は、そのような措置でいつまでもしのげるわけではないと警告した。
- トランプ氏、富裕層増税「問題ない」 共和党に政治的影響も警告 | ロイター
- トランプ米大統領は9日、共和党議員に対し、富裕層への課税強化がもたらす政治的影響について警告しつつ、最高税率の引き上げについて「問題ない」との認識を示した。
- トランプ氏は自身のソーシャルメディアへの投稿で、「共和党はおそらく(課税引き上げ上げを)すべきではないが、そうしたとしても私は構わない!」と表明。さらに、民主党は富裕層向けのどんな「わずかな」増税でも政治的に利用するだろうとも述べた。
- トランプ氏は7日、ジョンソン下院議長に個人的な電話をし、富裕層向けの増税に向けて動くよう促した。トランプ氏は単身で250万ドル、世帯合計で500万ドル以上に課す所得税の税率を37%から39.6%に引き上げたい意向という。
- 米中貿易協議は初日の会合終了、「大きな進展があった」とトランプ氏 - Bloomberg
- 米中両国は10日、関税問題を巡る閣僚級協議を行った。協議はスイス・ジュネーブで2日にわたり実施される予定で、初日の会合は非公開形式で数時間続いた。両国が貿易戦争の緊張緩和を模索する機会として注目されている。
- 協議はベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相が主導。トランプ米大統領が中国に145%の関税を課し、中国が報復として米国製品に125%の関税措置などを講じて以降、両国高官による対面協議が公に行われるのは今回が初めてとなる。
- トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に「スイスで中国と非常に良い会合を行った」と投稿。「多くのことが議論され、合意された。友好的かつ建設的な雰囲気の中で完全なリセットについて交渉した。中国と米国双方のために、中国が米企業に解放されるのを見てみたい。大きな進展があった」と発言した。
- 初日の会合は現地時間午前11時ごろに始まり、グリア通商代表部(USTR)代表も参加。匿名を条件に語った関係者によると、協議は夜にいったん終了したが、11日に再開される見通し。
- 米中双方ともに自国が主導権を握っているという姿勢を打ち出そうとしているが、合意に至らずに現状を維持し続けることには大きなリスクが伴う。
- 報復関税合戦は金融市場を動揺させ、米国では製品不足や物価上昇への懸念も高まっている。トランプ米大統領も習近平国家主席も、対立を解消する道を見つけるよう圧力を受けている。
- 中国国営新華社通信は、協議中に発表した論評で、スイスでの会談は問題の「解決に向けた重要な一歩」だとした一方、最終的な解決には十分な忍耐と決意、さらに国際社会の支援が必要だと指摘。また国益を守り、国際貿易秩序を維持するという中国の決意を改めて示した。
- トランプ氏は今回の協議で何を目指しているのかについて、これまで矛盾したメッセージを発信している。中国が譲歩しない限り関税を引き下げるつもりはないと主張してきた一方で、9日には対中関税は80%が適切だとの見解も口にした。
- ●先進国中銀、金融当局
- トランプ政策になお不確実性、影響見極めに時間必要=クリーブランド連銀総裁 | ロイター
- 関税は生産性を低下させインフレを助長=クックFRB理事 | ロイター
- ECBは利下げ停止すべきとシュナーベル氏、インフレリスク指摘 | ロイター
- FRBバランスシート縮小なら利下げ可能=ウォーシュ元理事 | ロイター
- ケビン・ウォーシュ元米連邦準備理事会(FRB)理事は9日、政策金利引き下げへの道筋を示唆した。ウォーシュ氏はトランプ米大統領がFRB次期議長に指名すると有力視される人物。
- ウォーシュ氏はスタンフォード大学のフーバー研究所の金融政策パネルで、膨大な規模のバランスシートは頻繁に拡大することもあり、短期金利の設定というFRBの主要な金融政策と相反する働きをすると指摘。「バランスシートを拡大しないようにすれば、政策金利を引き下げることができる」と説明した。
- また、FRBが掲げる物価安定と雇用の最大化という2大責務について、どちらかを犠牲にしなければならないという「残酷な選択」は存在せず、双方を両立することが可能との考えも示した。
- FRBの利下げを巡っては、トランプ氏がパウエル現FRB議長に繰り返し求めてきたものの、6─7日の連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが決定された。
- 独立したFRBの構造、経済の安定を強化 維持されるべき=ウォラー理事 | ロイター
- 石破茂首相がチリ大統領と会談 鉱物分野の供給網で協力、米関税も議論 - 日本経済新聞
- ニューアーク空港の空域で再び通信障害-90秒にわたりレーダー消失 - Bloomberg
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- プーチン氏、ウクライナとの「直接交渉」求める - BBCニュース
- ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は11日、ウクライナとの「直接交渉」を呼びかけ、「遅滞なく、5月15日にも開始する」べきだと述べた。 これに先立ち欧州諸国の首脳は、ロシアに30日間の無条件停戦に同意するよう求めていた。
- プーチン氏は11日未明に大統領府で記者団を前に、「我々は真剣な協議を求めている。紛争の根本原因を取り除き、永続的で強固な平和に向けて動き始めるためだ」と述べた。
- プーチン大統領は、両国の協議はトルコ・イスタンブールで行われるべきだと提案。ロシアとウクライナが協議する中で、「新たな停戦、新たな休戦に合意できる可能性」を「排除しない」と述べた。
- プーチン氏は詳細について協議するため、11日にトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会談する予定だと話した。
- これに先立ち、イギリスのキア・スターマー首相やフランスのエマニュエル・マクロン大統領を含む欧州各国首脳はウクライナを訪れ、ロシアに30日間の無条件停戦に同意するよう求めていた。
- 欧州首脳の要請についてロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシア政府として「よく検討する必要がある」としながらも、「我々に圧力をかけるのは全く無駄だ」と警告していた。
- 欧州諸国の呼びかけは、フランス、ドイツ、イギリス、ポーランドの首脳らがウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と並んで立った、いわゆる「有志連合」の会合で行われた。
- ウクライナを含む欧州の首脳たちは、ドナルド・トランプ米大統領とこの計画について電話で協議した後、ロシアへの停戦呼びかけを公表した。トランプ氏はこれまで、無条件停戦を提案していた。
- 欧州首脳は、ロシアが応じなければ「非常に大規模」な制裁を科すと警告した。
- これに対してクレムリンは、提案を検討中だが圧力には応じないと述べた。
- 協議後の共同発表でスターマー英首相は、「ここにいる私たち全員とアメリカは、プーチンに対応を要求している。もし彼が平和について真剣ならば、これがそれを示す機会だ」と述べた。
- ゼレンスキー大統領は「私たちを応援してくださって、皆さんに感謝します」としたうえで、「本物の永続的な安全保障をいかに構築し、保証するかに注力していく」と付け加えた。
- この数時間後の11日午前1時過ぎという異例の時間帯に、プーチン大統領はクレムリン内の広間に集まった記者団を前に、声明を発表した。
- 「これは長期にわたる永続的な平和への第一歩になる。ウクライナ軍が新しく兵器と人員を獲得し、塹壕(ざんごう)を熱心に掘り、新しい司令拠点を設置した後に、さらに武力衝突が続く事態への序章などではなく」と大統領は述べた。
- 「(後者のような)平和など、誰が必要とするものか」ともプーチン氏は述べた。
- プーチン大統領はまた、ロシアが今年に入ってから3回にわたり停戦を提案したにもかかわらず、ウクライナが応じなかったと非難。ロシアはエネルギーインフラへの30日間の攻撃停止、イースター(復活祭)停戦、さらには先週の第2次世界大戦の記念式典に合わせた3日間の停戦を呼びかけていた。
- ウクライナはその都度、ロシアは停戦を提案しつつ戦闘を続けたと非難。ロシアもウクライナについて同様に非難していた。
- プーチン氏は「いろいろなことがあったものの、我々はキエフ(キーウのロシア語読み.ウクライナ政府の意味)の当局に対し、いかなる前提条件も付けずに交渉再開、直接協議の再開を提案している」と述べた。
- 両国間の直接会談は、3年以上前の2022年2月にロシアがウクライナ全面侵攻を開始した直後に行われたのが最後。
- ●その他エマージング
- 中国4月CPI3カ月連続下落、PPI下落加速 貿易戦争が一段のデフレ圧力に | ロイター
- 中国国家統計局が10日発表した4月の消費者物価指数(CPI)は前年比で3カ月連続小幅に下落し、生産者物価指数(PPI)は過去6カ月で最大の下落率となった。住宅市場低迷や雇用不安を背景とする個人消費減退に加え、米国との貿易戦争も影を落とした。
- CPIは前年比0.1%下落で3月と変わらず。ロイターがまとめたエコノミスト予想と一致した。前月比では0.1%上昇で、3月(0.4%下落)から上昇に転じた。
- 変動の激しい食品と燃料価格を除いたコアインフレ率は、3月と同じくプラス0.5%だった。
- PPIは前年比2.7%下落。3月(2.5%下落)から下げが加速した。エコノミスト予想は2.8%下落だった。
- 上海保銀投資管理(ピンポイント・アセット・マネジメント)のチーフエコノミスト、張智威氏は「依然、デフレ圧力が続いている。輸出の減速が見込まれ、デフレ圧力は今後数カ月で高まる可能性がある」と述べた。
- 米中は10日からスイスで貿易を巡る高官協議を行う。
- 帳氏は「中国と米国の貿易交渉が進展し関税が下げられたとしても、4月以前の水準に戻る可能性は低い。内需を押し上げ、デフレ問題に対処するためには、より積極的な財政政策が必要だ」と指摘した。
- 中国政府は、さまざまな景気刺激策を打ち出している。7日には人民銀行(中央銀行)が銀行の預金準備率引き下げなどの景気支援措置を発表した。
- しかし、ゴールドマン・サックスなど有力投資銀行は米中貿易戦争の影響を踏まえ、今年の中国成長率予想を政府目標の5%前後を下回る水準に引き下げている。
- 韓国大統領選、前首相の韓悳洙氏が撤退 与党の公認調整失敗 - 日本経済新聞
- インドとパキスタンが停戦合意、米国が仲介-履行には早くも暗雲 - Bloomberg
- インドとパキスタンは、米国の仲介を通じて即時停戦に合意した。核保有国同士による4日間にわたる対立がいったん落ち着いた格好だが、早くも双方が相手側による停戦違反を非難し合っている。
- トランプ米大統領は10日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「米国が仲介した夜を徹しての協議の結果、インドとパキスタンが完全かつ即時の停戦に合意したと発表できることをうれしく思う」と述べた。ルビオ米国務長官はXで、両国政府が幅広い課題について中立地帯で協議を開始すると記した。
- これより先、インドとパキスタンの間では軍事衝突が激化し、全面戦争に近づきかねない情勢となっていた。双方の側で数十人の民間人が死亡したことを受け、中国やサウジアラビア、主要7カ国(G7)などは、インドとパキスタン両国に対話を促していた。
- 即時停戦で合意には至ったものの、インドのビクラム・ミスリ外務次官は10日遅くの会見で、パキスタンによる度重なる停戦違反を非難。「国境や実効支配線(LOC)沿いで違反が繰り返された場合には断固たる対応」を取るようインド軍は指示されていると警告した。
- 一方、パキスタン側は停戦違反を否定。同国外務省は声明で「パキスタンは合意された停戦を誠実に履行することに引き続き尽力している」とし、「一部地域でインドによる違反が発生しているが、パキスタン軍は責任と自制をもって対応している」と主張した。
- 緊張が最初に高まったのは4月22日。ジャム・カシミールで武装勢力が民間人を襲撃し、26人を殺害した。インドはこれをテロ行為と非難し、パキスタンの関与を主張。ただパキスタン側は関与を否定している。
- 今週に入り、インドがパキスタン領内の「テロリストの拠点」に対して軍事攻撃を実施し、事態は急激にエスカレートした。攻撃は9カ所の標的に対して行われ、パキスタン軍は31人の民間人が死亡したと発表。パキスタンはその後、報復としてインド機5機を撃墜したと明らかにした。また両国とも、互いの領土に向けてドローン(無人機)やミサイルによる攻撃を行った。
- インドのジャイシャンカル外相はXへの投稿で停戦を確認し、「インドは一貫して、あらゆる形態のテロに対して断固たる姿勢を維持してきた。今後もそれを継続していく」と述べた。その後の記者会見でインド軍は、保有するロシア製ミサイル防衛システム「S400」がパキスタンの中国製戦闘機によって損傷を受けたとの一部報道を否定。その上で、インド軍はパキスタン側の複数の資産を破壊したと述べた。
- パキスタンのダール副首相も停戦を確認し、「パキスタンは、自国の主権と領土保全に妥協することなく、常に地域の平和と安全に取り組んできた」と記した。シャリフ首相は10日、国民に向けて演説を行う予定。
- オブザーバー研究財団のフェロー、マノジ・ジョシ氏は「双方とも国内向けには勝利を主張するだろう」としつつ、「実際に何が起きたのかを知るのは難しい」と述べた。
- インドのミスリ外務次官は声明で、同国とパキスタンの軍事作戦部長が12日正午に再度協議すると述べた。
- インドとパキスタン、停戦合意後に互いが「違反」と非難 - BBCニュース
- アングル:ロス山火事、鎮圧後にくすぶる「鉛汚染」の懸念 | ロイター
- フェンウィックさん一家は幸運だった。1月に米西部カリフォルニア州ロサンゼルスの北東部で猛威を振るった山火事で、一家4人は真夜中の避難を強いられた。火災が落ち着いて自宅に戻ってみると、自宅は焼けずに残っていた。
- しかしそれから4カ月後、フェンウィックさん一家や、ロサンゼルス東部イートン地区の火災の焼け跡近くに住む数千人もの住民たちは「鉛汚染」という新たな脅威に直面している。
- フェンウィックさん一家は先週、ロサンゼルス郡公衆衛生局(DPH)が設けた無料の移動検査場で、血中に含まれる鉛を調べるための血液検査を受けるために数百人の行列に並んだ。
- ミシェル・フェンウィックさんは、夫のダーシーさんが1歳半の女児のリリーちゃん、5歳の男児を抱きかかえる傍らで「私が一番心配しているのは鉛中毒だ。特に1歳半の娘は現在、あらゆる物を口に入れる時期だからだ」と話した。
- 災害対応を担う連邦緊急事態管理庁(FEMA)は2月、山火事の被害があった土地の土壌検査を拒否。被害がなかった土地を検査する計画もないと説明した。
- これに対してロサンゼルス郡は土壌のサンプル検査を発注し、4月上旬にイートン地区と隣接する土地の土壌から州の許容レベルを超える鉛を検出したと発表した。
- 米疾病対策センター(CDC)によると、鉛汚染は長期にわたる暴露で神経毒性や臓器障害を引き起こす可能性がある。
- 子どもの体内に鉛が蓄積する主な原因は手を使って口に入れる行為で、専門家らは学習の問題や発達の遅れ、行動上の問題を引き起こす恐れがあると指摘する。
- DPHのチーフ医療アドバイザー、ニコル・クイック博士は4月10日のオンラインでの住民との対話集会で「鉛は危険な神経毒であり、体内の濃度が低くても、特に子どもの場合は長期にわたって害を及ぼす可能性がある」とし、血液検査で異常値を示した住民はいなかったものの「あらゆる量の鉛は安全ではない」と訴えた。
- 鉛は時間の経過とともに血中に蓄積され、症状が出るまでに数週間から数カ月かかる。このためDPHは「山火事の発生時期と現在の検査結果を踏まえると、著しい暴露があった場合は一般的には今頃は数値が上昇していると見込まれる」とし、「血中の鉛検査を継続的に実施することで、遅れたり、継続中だったりする暴露を見逃さないようにする」と説明した。
- DPHによると、検査で鉛の陽性反応が出た人には3日以内に電話で連絡する。それ以外の人には郵送で結果を伝える。
- <地価への影響>
- フェンウィックさん夫妻は、子供たちを守るために推奨されている全ての手順を踏んだ。
- ミシェルさんは「いかなる暴露も防ぐように掃除し、人工芝を敷き、土を覆い、腐葉土で泥を覆った」と話す。
- しかし検査の結果次第ではより恒久的な解決策を考えるかもしれないと打ち明けた。それは引っ越しだ。
- もっとも、山火事の被害区域がイートン地区と高級住宅地のパシフィックパリセーズ地区の計4万エーカーを超え、少なくとも27人が死亡し、1万2000棟を超える建造物が破壊された後、自宅をいくらで買い取ってもらえるかはまた別の問題だ。
- 不動産データ企業のランドアップによると、あらゆる種類の土壌汚染は「地価を著しく低下させる」可能性があると指摘する。
- イートン地区の鉛の主な原因は、1世紀以上前に建てられた古い住宅だ。1978年より前に建てられた住宅は、ほぼ間違いなく鉛をベースにした塗料で覆われ、しばしば鉛管を備えていた。
- 多くの住民にとって、引っ越しという選択肢はない。火災発生直後には賃貸価格が高騰し、地価を押し上げるとの見方もあったものの、その後価格は下がった。
- 一方、山火事の被害を受けて避難を余儀なくされた数千人もの住宅需要は、被災地の住宅供給をはるかに上回っている。
- 血液検査の列に並んでいた元保護観察官のパトリシア・ローチさんは「どこに行けばいいのか」と問いかけた。
- ロサンゼルス郡は環境コンサルティング企業、ルークスと契約し、被災地の風下1マイル以内にある367カ所の土壌検査を実施した。
- その結果、ローチさんとフェンウィックスさんが住む地域では、検査サンプルの大半が州の定める鉛の許容レベルを超えていることが判明した。
- <コストがかさむ土壌浄化>
- 別の疑問は、土壌浄化が必要な場合、その費用を住宅所有者が負担しなければならないのかということだ。
- 被災地の所有者は、FEMAが指示しているように、陸軍工兵隊(USACE)から汚染土壌の上部6インチの検査と除去を受ける権利がある。
- だが、火災被害を受けていない家の所有者は受けられない可能性がある。
- DPHは、FEMAに山火事の影響をさらに評価するための支援を求めている。ところが、トランプ政権下で連邦政府のコスト削減が進められている中で、FEMAが支援するのかは不透明だ。
- ロサンゼルス郡管理委員会のキャサリン・バーガー委員長の事務所はトムソン・ロイター財団に宛てた声明で、郡は土壌検査の費用を負担しているものの「住民には、保険会社に対して浄化のための金銭的支援を要求するように推奨している」と説明した。
- ルークスの主任科学者、アダム・ラブ氏は住民との対話集会で、州の基準レベルを超える化学物質の蓄積は「浄化の必要性を意味するものではない 」とし、追加の精査が必要だということを意味するかもしれないと言った。
- 郡当局者は、血液検査で高濃度の鉛が検出された住民は、自分の土地をさらに検査し、土壌の除去を求める可能性があるとの見方を示した。
- 検査会場では、リリー・フェンウィックちゃんの小さな腕に看護師が採血用の注射針を刺す様子を、両親は苦悶の表情で見守っていた。
- フェンウィックさん夫妻は他の人たちにも検査を受けるように勧めている。
- 母親のミシェルさんはこう促す。「採血を受けなさい。それが本当のことを知ることができる唯一の方法なのだから」
- ●市況(ChatGPTによる要約版)
●先進国経済指標●金融市場、先進国トピックス●プロファイ、インフラ、自然災害●その他- NY市場サマリー(9日)ドル下落、利回り横ばい 株ほぼ変わらず | ロイター
- ### 【為替市場】
- * **ドルは下落**したが、**米中貿易協議への期待**から週足では円・ユーロ・スイスフランに対してドルは上昇の見通し。
- * **ドル/円**:145.36円(0.39%安)だが、週では3週連続上昇見通し。
- * **ユーロ/ドル**:1.1250ドル(0.17%高)だが、週では3週連続下落見込み。
- * **ポンド/ドル**:1.3306ドル(0.5%高)、週でもドルに対して上昇見通し。
- * **ビットコイン**:10万3023ドル(0.38%高)、リスク選好の反映。
- ### 【米国債券市場】
- * 利回りは**全体的に横ばい**。ただし週足では10年債・30年債は上昇。
- * 10年債:4.374%(週で5.6bp上昇)
- * 30年債:4.833%(週で4.3bp上昇)
- * 2年債:3.885%(1bp低下)
- * **FOMCの利下げ期待**はやや後退(7月利下げ確率:70%→60%)。
- ### 【米国株式市場】
- * 株価は**ほぼ横ばい**。投資家は**米中協議の行方**と**トランプ発言**を注視。
- * S\&P500:0.47%下落(週)
- * ナスダック:0.27%下落(週)
- * ダウ:0.16%下落(週)
- * **セクター別**:エネルギーが1.1%上昇(原油高)、ヘルスケアが1.1%下落
- * **エクスペディア**:業績不振で7.3%下落
- ### 【商品市場】
- * **金先物**:ドル安と安全資産需要で3日ぶり反発、1.15%高の3344ドル/オンス(週で3.1%高)。
- * **原油先物**:貿易摩擦緩和期待でWTIが続伸、61.02ドル/バレル(週で4.68%高)。
- 欧州市場サマリー(9日) | ロイター
- * **ロンドン株式市場**は、石油株や貴金属株の上昇に支えられ、上昇して取引を終了。
- * FTSE250は0.23%上昇し、週では1.30%高(5週連続の上昇)。
- * FTSE100は週間で0.48%下落。
- * **石油大手BP**が4.7%上昇。買収報道が材料視された。
- * **金価格上昇**で貴金属株指数も上昇。
- * **建設資材大手トラビス・パーキンス**が新CEO指名で6.9%高。
- * **欧州株式市場**も続伸。
- * ドイツのDAX指数は0.63%上昇し終値ベースで過去最高。
- * STOXX600指数は週間で0.29%高(4週連続の上昇)。
- * 自動車・部品株、資源株、石油・ガス株が上昇。
- * コメルツ銀行は好業績で4.4%高。
- * **要因:米中貿易協議への期待感**
- * トランプ米大統領が対中関税の引き下げ可能性を示唆(80%が妥当との発言)。
- * 米英間の貿易合意成立を受け、他国との合意期待も高まる。
- * **債券市場:**
- * 独10年債利回りは2.588%まで上昇(4月以来の高水準)。
- * 安全資産からリスク資産への資金移動が背景。
- * トランプ氏の発言により、貿易摩擦緩和の期待が市場心理を改善。
- * ただし専門家は、輸入物価の上昇など今後のリスクにも注意喚起。
- 備忘録(2025/5/8)●海外企業決算
- [CROX] クロックス 1Q微減収営業減益 売上高微減9.37億ドル、営業益2%減2.22億ドル、EPS2.83ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [KVUE] ケンビュー 1Q減収増益 売上高4%減37.4億ドル、営業益1%増5.58億ドル、EPS0.17ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TPR] タペストリー 3Q増収増益 売上高7%増15.8億ドル、営業益24%増2.53億ドル、EPS0.95ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CG] カーライルグループ 1Q増収最終増益 売上高41%増9.73億ドル、純利益98%増1.30億ドル、EPS0.35ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- 武田薬品工業、米国に5年で4兆円超投資 製造や研究開発 - 日本経済新聞
- ニデックが牧野フライスTOB撤回 経済損失を回避、M&A戦略変えず - 日本経済新聞
- 日本生命、団体年金配当率引き上げ 最大0.4ポイント - 日本経済新聞
- トランプ氏、貿易協定の枠組み巡る英国との合意発表へ - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は、英国との貿易協定の枠組みを8日に発表する見通し。事情に詳しい関係者らが明らかにした。ホワイトハウスは各国に対し一連の関税を課しているが、英国に続いてその他の政府とも合意に達することに期待を寄せている。
- トランプ氏は7日夜、「大国で、非常に尊敬されている国」との発表を行うとトゥルース・ソーシャルに投稿。今回は関税調整を含む協定の枠組みになると予想される。
- 国際貿易弁護士のティム・ブライトビル氏は「今回の発表は、今後数カ月間で議論される問題について枠組みを特定し、交渉を開始することについて合意するだけにとどまる可能性が高い」と述べた。また「関税率、非関税障壁、デジタル貿易が全てリストに含まれると考えられるが、これらはいずれも難しい課題を含んでいる」とも付け加えた。
- ホワイトハウスや首都ワシントンの在米英国大使館からは今のところコメントは得られていない。
- 英国との貿易協定が結ばれれば、トランプ氏にとって2期目で初めての合意となる。政府高官らは、インドや日本とも緊密な協議を行っているとしている。また、トランプ氏は来週の中東訪問に向けて準備を進めている。
- 米中貿易交渉、関税率引き下げと緊張緩和を目指す-米商務長官 - Bloomberg
- ラトニック米商務長官は8日のCNBCとのインタビューで、中国との貿易交渉におけるトランプ政権の目標について、緊張緩和と関税率の引き下げだと述べた。
- ラトニック氏は「彼らはわれわれと取引したいと考えており、われわれは彼らと問題の解決を図りたい」と語った。
- 米国が貿易赤字を抱える国・地域にとって、10%というベースライン(基本)関税率は「最善の策」との認識を示し、「恐らくもっと高くなるだろうが、最善は10%だ」と発言。10%の関税は「低い税率」であり、各国・地域が「市場を開放すれば」交渉できるかもしれないと指摘した。
- さらに8日公表した英国との合意に続き、今後数週間ないし1カ月程度で数十の貿易協定を順次発表していく見通しを明らかにした。
- 一方、ラトニック氏はFOXビジネスとのインタビューで、トランプ政権が幾つかの大国との間で次の貿易合意の成立に力を注いでいると述べ、「アジアの大国との合意を確実にしたい」と話した。
- トランプ氏、中国との交渉に楽観的 関税引き下げ示唆 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領は今週末にスイスで予定している米中協議に楽観的な見方を示した。この協議の後に中国の習近平国家主席と会談する可能性があるとし、「中国との週末は良いものになるだろう」と話した。
- また、交渉が順調に進めば関税を引き下げる可能性があることを示唆した。「どうなるか見てみよう。(対中関税は)今は145%と、これ以上は上がらない水準にある。だから下がることは分かっている」と語った。
- 米中どちらが先に接触したかという外交上の駆け引きについては「誰が最初に電話をしたか、しなかったか(中略)それは重要ではない」と話し、「その部屋で何が起きるかだけが重要だ」と強調した。
- ●先進国中銀、金融当局
- FRBが他の中銀の利下げに同調しなかった理由 - WSJ
- 米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は7日、ドナルド・トランプ大統領の関税政策に伴う景気減速を抑えるためにFRBが利下げを見据えている、との印象を打ち消した。
- パウエル氏は記者会見で「wait(待つ)」という言葉を22回も使用し、FRBが利下げを急いでいないことを強調した。「さらに様子見するコストは非常に低いと考えているため、そうしている」
- FRBはこの日、政策金利の据え置きを決めた。パウエル氏は会見で、トランプ氏の予測不能で気まぐれな貿易関連の発表が、米国と他の先進国の間で金融政策の乖離(かいり)を生み出したことを明らかにした。
- こうした乖離の理由は単純だ。他の先進国は輸入品に対する関税を大幅に引き上げていない。その結果これらの国では、需要鈍化と労働市場軟化の影響は見られるものの、FRB高官らが年内に直面する可能性のある物価上昇の影響は見られない。
- さらに、米経済が高インフレの厳しい時期を経たばかりであるため、FRB高官らは、雇用情勢の悪化を見越した予防的利下げを行うリスクは取れないと考えている。そうした利下げは短期的に物価上昇圧力を一段と高めてしまう恐れがある。
- これは2019年とは異なる。FRBは当時、トランプ氏の第1次対中貿易戦争を受けて景況感が悪化した米経済を支えるために、利下げを3回行った。パウエル氏は7日、「予防的に行動できる状況ではない。より多くのデータを見るまでは、どのような対応が適切であるかが実際に分からないからだ」と述べた。
- 結果として、FRBは欧州やカナダ、英国の中央銀行とは異なる立場にある。パウエル氏は、米経済が急激に減速している証拠が得られれば利下げするーー恐らく即座に利下げするーーことを示唆した。
- FRBは2024年後半、インフレ率が低下し失業率が上昇したことを受け、政策金利であるフェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標を1ポイント引き下げた。同年12月以降は同目標を4.25~4.50%に据え置いている。
- 一方、欧州中央銀行(ECB)は4月までの1年間に中銀預金金利を7回(計1.75ポイント)引き下げ、2.25%とした。英イングランド銀行(中央銀行)は8日、現在4.5%の政策金利を少なくとも0.25ポイント引き下げると投資家やエコノミストは予想している。同行は昨夏以降、0.25ポイントの利下げを3回行っている。
- ルネサンス・マクロ・リサーチの経済調査責任者、ニール・ダッタ氏は「(欧州)経済は元々それほど強くなかったので、成長への影響を心配する余地が相対的に大きい」と語る。
- ECBによる4月の利下げの直前に、トランプ氏は利下げが遅すぎるとしてパウエル氏を厳しく批判し、FRBはECBの例に倣うべきだと述べていた。
- ダッタ氏はトランプ氏のこうした不満について、「関税の影響が欧米で異なることを誰も彼に説明していないようだ。(ECBは)関税によるインフレの影響を心配する必要がないが、FRBはその必要がある」と述べた。
- 一部のFRB高官は、景気減速を予防するための利下げが短期的に物価上昇圧力を増幅する可能性があるとの懸念を強調している。
- 企業が人員削減に動きさえすればFRBは利下げする、というのがダッタ氏の見方だ。関税に伴うインフレリスクによって、FRBが労働市場のリスクに対して過度に楽観的になっていることが懸念されるという。
- JPモルガン・チェースのエコノミストはFRBが9月に利下げすると予想している。ゴールドマン・サックスはFRBが7月に利下げを再開し、年内に3回利下げするとみている。ECBについては、9月まで0.25ポイントの利下げを続け、中銀預金金利を1.5%にするとの見方を示す。
- ユーロ圏の4月のインフレ率は2.2%で、米国の3月のインフレ率は2.3%だった。ECBとFRBは共に2%のインフレ率を目標としている。
- ゴールドマンのチーフエコノミスト、ヤン・ハチウス氏によると、ECBが同社の予想を超える利下げに踏み切ることもあり得る。米国の対中関税により、中国から欧州への輸出が大幅に増える可能性があるからだという。これにより欧州のコアインフレ率(変動の大きい食品とエネルギー除く)は0.5ポイント低下する可能性がある。
- 「これはかなり大きな数字だ。(インフレ率が)2%をやや上回る状態から、やや下回る状態になるほどの違いだからだ」とハチウス氏は言う。欧州のインフレ率が2%を下回ることになれば、「(ECBの)タカ派メンバーの多くを説得して、さらなる利下げを行うことが可能になる」
- 英中銀(BOE)、2会合ぶり利下げ 米関税で経済の不確実性を警戒 - 日本経済新聞
- 英中銀、0.25%利下げ 関税が成長・インフレに影響 | ロイター
- ●先進国経済指標
- プライベートクレジット、個人投資家参入にリスク=ムーディーズ | ロイター
- 格付け会社ムーディーズは7日公表したリポートで、ファンドなどが直接融資する「プライベートクレジット」に個人投資家が資金を投じることで、米経済に及ぶリスクが高まっていると警告した。
- ムーディーズによると、新型コロナの大流行以降、世界の信用市場では伝統的な銀行融資などから、プライベートクレジットを専門とする運用会社への資金シフトが進んでいる。これらの運用会社の運用資産総額は、市場が本格的に拡大し始めた2014年以降2兆ドル以上に達している。
- 個人投資家によるプライベートクレジット分野への資金流入が加速している背景には、購入や換金がしやすいオープンエンド型の「エバーグリーンファンド」の増加がある。これらのファンドは従来のクローズドエンド型ファンドに比べて規制が緩い。
- プライベートクレジットに特化した上場投資信託(ETF)の人気も高まっている。ムーディーズは、こうしたETFの増加が「プライベート市場へのアクセスを根本的に変える」可能性があると指摘する一方で、そのためには適切な保護措置が不可欠だと強調した。
- 個人投資家向けのETFやエバーグリーンファンドが投資資金の受け入れや償還において、クローズドエンド型ファンドよりもはるかに柔軟性が高い点を指摘した。この高い柔軟性が、昨年シリコンバレー銀行(SVB)や他の米地方銀行が経験した預金流出のようなリスクを伴うと警鐘を鳴らした。
- ムーディーズのアナリストは「(ファンドが提供する)流動性の条件と投資家の期待との間にミスマッチが生じれば、ファンド運用会社への信頼が損なわれる可能性がある」との見方を示した。
- また、エバーグリーンファンドの融資契約で貸し手と借り手に対する契約条項や制限が緩いことリスク要因になるとした。
- 「個人投資家の資金はプライベート市場を大幅に拡大させる可能性があるものの、長期的な成功には流動性の管理と透明性の確保が極めて重要になるだろう」と結論付けた。
- 明治安田社長「為替かなり気を使う」と警戒、トランプ関税下の運用戦略 - Bloomberg
- 明治安田生命保険の永島英器社長は、米トランプ政権の関税政策を受けてさらなるドル安・円高が進む可能性に警戒感を示した。今年度の資産運用方針の前提としている為替相場の見直しを迫られる可能性もあるという。
- 永島社長はブルームバーグとのインタビューで、トランプ大統領が米国の貿易赤字を問題視する中でドル高是正を図る動きに注視しているとした上で「為替はかなり気を使う」と言及。機動的な為替ヘッジなどで対応する構えだ。
- 4月に発表した今年度の運用方針では、前提として1ドル=138円までのドル安・円高進行を見込むとした。ただ、足元の変動は大きく、さらなる円高方向に見直す可能性も示唆した。円相場は4月に一時1ドル=139円89銭と140円の節目を突破し、昨年9月以来の高値を更新。138円を割り込めば2年ぶりの円高水準となる。
- 2025年度の運用方針は、外国の債券やプライベート・エクイティー(PE、未公開株)などを中心に積み増す内容。昨年12月末時点での有価証券残高約39兆7000億円のうち外国証券が35%を占める。為替見通しがぶれれば、投資の時期や規模など実際の運用に影響が出かねない。
- 永島社長は、トランプ政権の関税政策が日本や世界経済に与える影響は不透明で、先行きの不確実性は高まっていると指摘。日本銀行による利上げペースが緩やかになるものの、米国の利下げペースは速まるとして、内外金利差縮小の方向に変わりはなく、基本的にドル安・円高を見込むと説明した。
- また、トランプ大統領による関税政策によって最適な拠点での生産が制限されれば、経済の非効率性は増すとして「確実に世界全体の成長は下がる」と述べ、地域に関わらず「株式も慎重に見なくてはいけない」と語った。
- 4兆円目標を1年前倒しへ
- 資産運用ではトランプ政権に対する警戒が必要だが、保険ビジネスへの影響はあまりないとみる。国内では金利上昇を受け、資産形成に向けた機運が高まっているとして、予定利率の引き上げに伴う貯蓄性保険商品の販売拡大や海外M&A(企業の合併・買収)効果などにより、保険料等収入4兆円の目標時期を1年前倒しして今年度中の達成を目指す考えを明らかにした。
- 同社は2月、英金融大手リーガル・アンド・ジェネラル・グループ(L&G)から米保険事業を約3500億円で買収することで合意。30年の保険料等収入の目標5兆円に占める海外保険事業の割合を35%程度(23年度末は15%)に高める目標を掲げる。海外M&Aについては「常にショートリスト、ロングリストを調査している」と述べた。
- サマーズ氏、台湾ドル急伸は資本流入減のリスク示唆-赤字縮小の帰結 - Bloomberg
- サマーズ元米財務長官は、5日に台湾ドルが急伸したことについて、資本流入の減少リスクという、トランプ政権がいまだ対処できていない重要な問題を浮き彫りにしたと指摘した。
- 台湾ドルが1988年以来の大幅高となった原因はまだ完全には分かっていない。だが、市場関係者によると、台湾当局がトランプ大統領との貿易合意を目指す一環として、通貨高を容認するとの観測が広がっていたことが一因とされている。米国が貿易赤字を抱える相手国・地域の中で、台湾はトップ10に入る。
- サマーズ氏は「台湾の事例は、資本流入と貿易赤字を巡る一段と広範な問題の一端を示している」とブルームバーグテレビジョンで発言。「単純に計算上、米国の貿易赤字は外国からの資本流入を減らさずには解消できない」と述べた。
- 経済理論では、貿易赤字は資本収支の黒字によって相殺されるとされる。米財務省のデータによると、昨年の外国からの対米証券投資は約1兆1000億ドル(約160兆4400億円)の純流入となっており、これは年間の財の貿易赤字(約1兆2000億ドル)にほぼ匹敵する。
- サマーズ氏は「貿易赤字を憎みつつ、資本流入を歓迎するという矛盾について、政権がきちんと認識しているとは思えない」と語った。
- ベッセント財務長官は今週、米国が国際金融で中心的な役割を果たしていると称賛し、世界の投資マネーをさらに呼び込むような魅力的な市場にする方針を示した。
- これに関連してサマーズ氏は、「政権が掲げる貿易赤字縮小に取り組みつつ、金利抑制に不可欠な資本流入をどう維持するのかという根本的な問題について、長官が慎重に向き合っているのを聞いたことがない」と述べた。
- 外国人投資家は米国債のおよそ30%を保有しているほか、社債など他の証券にも広く投資している。こうした外国人投資家の存在感が薄まれば、米国の借り入れコストには上昇圧力がかかる。アジアの国・地域は米国にとって多額の貿易赤字を抱える相手である一方、資本流入の主要な供給源でもある。
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- 中ロ首脳、「鋼の友情」確認 米国の影響力に断固対抗 | ロイター
- 中国の習近平国家主席は8日、訪問先のモスクワでロシアのプーチン大統領と会談した。西側諸国との対立が高まる中、両首脳は協力関係を新たな段階に引き上げ、米国の影響力に「断固として」対抗していくと表明。新たな世界秩序の擁護者としての立場を鮮明にした。
- 習主席は対ドイツ戦勝80周年記念式典に出席するためにモスクワを訪問。テレビ放映されたプーチン氏との会談で、中国とロシアは「百の試練を経た、鋼鉄のような真の友人だ」とし、共に国際的な公平性と正義を守ると表明。両国は協力関係の基盤を強固にし、「外部からの干渉を排除する」と述べた。
- プーチン氏は、中ロ関係の全ての重要な要素を習氏と自身が個人的に監督するとし、2030年までに貿易と投資の大幅な拡大を目指すと表明した。
- 両首脳は共同声明で、軍事面を含む全ての分野での関係を深め、「ロシアと中国に対する米国の『二重の封じ込め』政策に断固として対抗するために連携を強化する」と表明。ロシア・ウクライナ戦争については、「根本的原因」を取り除くことでのみ解決できるとの見解を示した。
- プーチン氏と習氏はこれまでに数十回の会談を行い、22年2月には「制限なき」戦略的パートナーシップに署名。中国はロシア最大の貿易相手国で、ロシアが西側諸国の制裁措置に対応するにあたり経済的な支援になっている。
- 会談に先立ち、プーチン大統領は習主席をクレムリン(大統領府)で出迎え、戦勝記念式典参加に感謝の意を示した上で、両国は「ネオナチズム」に共に立ち向かっていると述べた。 習氏の式典出席はウクライナでの戦争を当初から現代のナチスとの闘いとして位置付けているプーチン氏にとって大きな後押しとなる。
- プーチン氏は習氏に「莫大な犠牲を払って達成されたファシズムに対する勝利は永続的な意義を持つ」と語りかけ、「中国の友人と共に、われわれは歴史の真実をしっかりと見張り、戦時の出来事の記憶を守り、ネオナチズムと軍国主義の現代的な発現に対抗する」と話した。
- 習氏は米国を念頭に、両国が協力して「単独主義といじめ」に対抗していくと表明。「第2次世界大戦の正しい歴史観を共同で推進し、国連の権威と地位を守り、中国、ロシア、そして大多数の発展途上国の権利と利益を断固として守り、平等で秩序ある、多極的で包摂的な経済のグローバル化を推進するために協力する」と語った。
- 両首脳はカメラの前で握手を交わした後でそれぞれ発言。互いに「親愛なる友人」と呼んだ。
- インドネシア外貨準備高、4月は5カ月ぶり低水準 市場介入受け | ロイター
- ルーマニア大統領選、決選投票は極右シミオン氏優勢=世論調査 | ロイター
- 決算:福岡国際空港の25年3月期、経常益初の黒字 旅客数が過去最高 - 日本経済新聞
- 福岡空港を運営する福岡国際空港(福岡市)が8日発表した2025年3月期の単独決算は、経常損益が5億円の黒字(前の期は8億円の赤字)だった。19年4月の民営化以降、経常段階で初の黒字となった。旅客数が2712万人と過去最高を更新し、インバウンド(訪日外国人)による免税店収入の伸びが寄与した。
- 25年3月にリニューアルオープンした国際線旅客ターミナルビルの工事に伴う撤去費や除却損を計上したため、最終損益は10億円の赤字(前の期は24億円の赤字)となった。最終赤字は6期連続。売上高にあたる営業収益は前の期比15%増の588億円、営業利益は14%増の74億円でともに過去最高だった。
- 旅客数の内訳は国際線が20%増の850万人、国内線が4%増の1861万人だった。福岡国際空港の田川真司社長は「インバウンドによる国際線の1本足打法だったところから、下期には国内線も伸びた」と話す。円安で日本人の海外旅行控えがあった半面、沖縄や北海道など国内のレジャー需要が高まったことが影響したとみられる。
- 26年3月期の最終損益は17億円の黒字になりそうだ。25年3月に運用開始した第2滑走路が旺盛なインバウンド需要を取り込み、民営化後初めて最終黒字に転じる。営業収益は前期比14%増の671億円、営業利益は23%増の91億円となる見通しだ。
- ●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(8日)株続伸、ドル上昇、利回り上昇 | ロイター
- ### 【為替】
- * 米英の貿易協定を受け、**米ドルは円・スイスフランに対して上昇**(リスク回避後退)。
- * **ドル/円は146円台に上昇(4週間ぶりの高値)**、**ドル/スイスフランも上昇**。
- * 一方、**英ポンドはBOEの利下げ発表を受けて上昇幅を削る**。
- ### 【債券】
- * **米国債利回りが上昇**。10年債・2年債ともに数週間ぶりの高水準。
- * 米英貿易協定で世界的な通商緊張の緩和が期待され、**債券から株式へ資金移動**。
- * 一部アナリストは米英合意に楽観的見方、他のアナリストは限定的な成果と指摘。
- ### 【株式】
- * **米株は続伸**。米英貿易合意と米中協議への期待が背景。
- * ロールスロイス製部品の関税除外を受け、**航空株が急伸**。
- * **デルタ航空が7.2%上昇**、**ボーイング株も3.3%上昇**。
- ### 【金(先物)】
- * **金価格は続落**。安全資産としての需要が後退。
- * FRBが金利据え置きを継続し、「急ぐ必要はない」と発言 → **早期利下げ観測が後退**。
- * 米金利上昇も金相場の重しに。
- ### 【原油(先物)】
- * **米英貿易協定を好感して原油相場は反発**。
- * 株高・リスク選好の流れが原油市場にも波及。
- * ただし、**OPECプラスの供給増合意**と**米中対立の不透明感**が上値を抑制。
- 欧州市場サマリー(8日) | ロイター
- **ロンドン株式市場**はまちまちの展開。
- * **FTSE100種指数**は続落。
- * 一方、**中型株中心のFTSE250種指数**は**0.59%上昇**。
- * 米英間の貿易合意が注目され、一部の英国製品への関税が引き下げられる見込み。
- **個別銘柄:**
- * アストン・マーティンが**13.9%高**で中型株を押し上げ。
- * **ロールスロイス**は米国による航空機部品の関税免除期待で**3.7%上昇**。
- * イングランド銀行は市場予想通り利下げを決定も、見通しに不透明感。
- **欧州株式市場**は反発。
- * 米英貿易合意を好感。
- * **航空宇宙・防衛株**が上昇、ラインメタルは欧州からの需要増で**4.1%高**。
- * シーメンス・エナジーは好業績で**3.3%上昇**。
- * 一方、**公益・ヘルスケア株**は下落。
- **ユーロ圏債券市場**では国債利回りが上昇。
- * 米英貿易合意と英中銀の利下げが材料。
- * 安全資産から株式へ資金が流入。
- * 英2年債利回りは**3.93%(+12bp)**。
- * ドイツ10年債利回りは**2.51%(+4bp)**。
- [JLL] ジョーンズ・ラング・ラサール 1Q増収営業増益 売上高12%増57.4億ドル、営業益5%増1.20億ドル、EPS1.14ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [NI] ナイソース 1Q増収増益 売上高28%増21.8億ドル、営業益30%増7.59億ドル、配当0.560ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [DIS] ウォルトディズニー 2Q増収最終黒字転換 売上高7%増236億ドル、純利益32.7億ドル、EPS1.81ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [EMR] エマソンエレクトリック 2Q増収最終減益 売上高1%増44.3億ドル、純利益3%減4.85億ドル、EPS0.86ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [BG] ブンゲグローバル 1Q減収最終減益 売上高13%減116億ドル、純利益18%減2.01億ドル、EPS1.48ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- ノボ、通期予想下方修正も株価上昇-肥満症治療薬の販売増期待 - Bloomberg
- デンマークの医薬品メーカー、ノボノルディスクは7日、2025年通期業績見通しを下方修正した。肥満症治療薬「ウゴービ」の販売が、1-3月期(第1四半期)に予想を下回った。ただ、同社の株価は、ウゴービの販売が今年後半に回復するとの期待から上昇している。
- ノボは、為替レートが一定の場合、通期の売上高が最大21%増、営業利益は最大24%増加するとの見通しを発表した。以前は、売上高最大24%増、営業利益27%増との予想だった。
- 見通しの下方修正にもかかわらず、ノボの株価は7日の取引開始直後から上昇し、一時6.9%上昇した。
- 急成長する肥満治療薬市場で、ノボはライバルのイーライリリーと優位を競っている。一方、米国では、一部の米国薬局が製造する安価なジェネリック医薬品に患者を奪われている。カルステン・ムンク・クヌーセン最高財務責任者(CFO)は、これまで調剤薬局の複製品との競争が緩和され、下半期に業績が回復するとの予想を示した。
- 米国では、医薬品が不足している場合や、アレルギーなどの理由で患者が薬の変更を必要とする場合、薬局や病院は食品医薬品局(FDA)が承認した処方薬を複製することが認められている。
- だが、FDAが2月、ウゴービと、同じくノボの糖尿病治療薬「オゼンピック」が不足状態ではなくなったと発表し、複製は終了することになった。FDAは大規模調剤業者に対する取り扱い期限を5月22日としたため、ノボは4-6月期(第2四半期)からこの恩恵を受ける見込みだ。
- クヌーセン氏は、10-12月期(第3四半期)にウゴービの効果として脂肪肝疾患の治療を追加する可能性があり、薬の利用拡大の可能性があると述べた。また、米ヘルスケア企業CVSヘルスとの新規契約により、7月1日から販売量が増える見込みだとしている。
- ウゴービは、肥満症治療薬市場に先駆けて発売されたにもかかわらず、リリーの肥満症治療薬「ゼップバウンド」にシェアを奪われている。
- アナリストの多くは、ノボの長期的な見通しは、特に4月に有望な治験結果を示した経口薬「オルフォルグリプロン」など、リリーの次世代肥満症治療薬との競争力次第と考えている。
- 一部投資家は同社の長期的な可能性を疑問視しており、ノボの株価は7日に急騰したものの、年初からは25%下落している。プレボアのファンドマネージャー、ファレス・ヘンディ氏は、ノボの業績について「株式の売却機会となる」との見方を示し、「肥満分野で優位性を持ち、よりグローバルで多角化が進んでいると考えられるリリーへの投資を維持する」と述べた。
- [FTNT] フォーティネット 1Q増収増益 売上高14%増15.3億ドル、営業益41%増4.53億ドル、EPS0.56ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [OXY] オクシデンタルペトロリアム 1Q増収増益 売上高14%増68.4億ドル、営業益68%増11.9億ドル、配当0.24ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- 英アームが決算受け時間外で8%安 新ライセンス契約を踏まえ、予想について慎重=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- 英アーム、さえない売上高見通し示す-予測に慎重と説明 - Bloomberg
- ●海外企業
- 製薬業界、1兆ドルの収入減と反発-トランプ氏の新たな薬価設定方針 - Bloomberg
- トランプ米大統領が打ち出した薬価設定に関する新たな方針について、製薬業界は10年間で最大1兆ドル(約143兆円)の収入減につながる可能性があると試算している。
- ホワイトハウスは先週、この方針を示した。寝耳に水だった製薬業界はそれを受け、ロビー活動を精力的に進めている。
- 10人ほどの業界ロビイストやコンサルタントによれば、医薬品業界の複数の幹部が今週、連邦議会議員の元に出向く準備をしている。公に話す権限がないとして匿名を条件に語った。
- ホワイトハウスは下院共和党に対し、メディケイドにおける医薬品の価格を、海外でのより安価な価格に連動させるよう求めた。これにより製薬会社は多額の収入を失うことになる。トランプ氏は以前にも同様の提案をしたことがあったが、低所得者や障害者向けのこの医療保険制度を対象としたことに業界内では動揺が広がっている。
- ロビイスト数人によると、業界団体の米国研究製薬工業協会(PhRMA)は4日に理事会メンバーと緊急の電話会議を行い、対応策を議論した。世界的な医薬品会社の幹部らは今週ワシントンに集い、対面で理事会を開催する。理事会自体は以前から予定されていた。
- 「国際参照価格制度」と呼ばれるこの政策に関し、製薬業界が議会共和党やホワイトハウスに対してどの程度影響を及ぼすことができるかが試されることになる。
- PhRMAの広報担当者アレックス・シュライバー氏は「政府による価格設定は、いかなる形であれ米国の患者にとって有害だ。メディケイドに海外の参照価格制度を導入しても、患者にとっては節約にならず、実際には負担が増える可能性がある」と書面で指摘した。メディケイドでは大半の患者が支払う医薬品価格が低く抑えられている。
- メディケイドにおける医薬品価格は、病院向けの別の薬価割引プログラムと連動している。
- バイオテクノロジー業界団体BIOの広報担当者は、国際参照価格制度を導入すれば特に中小の革新的バイオテクノロジー企業にとって大打撃となると述べた。
- トランプ政権1期目にホワイトハウスで内政を担当したジョー・グローガン氏は、トランプ氏の1期目や選挙キャンペーンでの行動を見れば、医薬品価格の引き下げや米国内での医薬品生産に関する同氏のこだわりは驚きではないと指摘。
- 「トランプ氏は本気ではないとの考えが業界内にあったとしたら理解に苦しむ。これ以上ないほど明確にしていたはずだ」と述べた。
- 製薬業界、10年で最大1兆ドルの収入減 トランプ大統領の薬価設定=米国株個別 - 株探(かぶたん)|米国株
- トランプ大統領が打ち出した薬価設定に関する新たな方針について、製薬業界は10年間で最大1兆ドルの収入減につながる可能性があると試算している。ブルームバーグが関係者の話として伝えた。ホワイトハウスは先週、この方針を示した。寝耳に水だった製薬業界はそれを受け、ロビー活動を精力的に進めている。
- ホワイトハウスは下院共和党に対し、メディケイドにおける医薬品の価格を、海外でのより安価な価格に連動させるよう求めた。これにより製薬会社は多額の収入を失うことになる。トランプ大統領は以前にも同様の提案をしたことがあったが、低所得者や障害者向けのこの医療保険制度を対象としたことに業界内で動揺が広がっているという。
- ●日本企業
- ペイペイの上場準備を開始、米国市場も視野=LINEヤフー | ロイター
- トヨタ創業家などの陣営が野村証FAに、11月にもTOB開始-関係者 - Bloomberg
- トヨタ自動車や同社の豊田章男会長などが豊田自動織機に提案した買収・非公開化を巡り、買収提案を行っている特別目的会社(SPC)の財務アドバイザー(FA)に野村証券が選ばれたことが7日、分かった。複数の関係者が匿名を条件に明らかにした。
- 関係者らによると、買収提案を受けた豊田織はSMBC日興証券をFAにつけた。買収提案を精査するために豊田織が設置した特別委員会は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券を採用。経済産業省の合併・買収(M&A)に関する指針では、買収提案を受けた場合に特別委設置を推奨している。
- 関係者らによると、SPCは全株取得を目的とした株式公開買い付け(TOB)を実施する意向で、既存株主への説明などを経て11月にも開始する予定だ。買収資金は豊田氏やトヨタなどによる出資に加え、大手銀行からの融資を活用する方向だ。融資を取り仕切るリードアレンジャーは三菱UFJ銀行が務めている。
- 買収は6兆円規模に上る可能性があり、実現すれば国内で過去最大の非公開化案件となる。セブン&アイ・ホールディングスの創業家は昨年、経営陣が参加する買収(MBO)を計画したものの実現しなかった。次なる超大型案件を成功に導こうと、国内で投資銀行業務を手掛ける大手証券がしのぎを削っている。
- トヨタと豊田織、野村証、SMBC日興、三菱モルガン、三菱UFJ銀の広報担当者はコメントを控えた。
- 豊田織の半期報告書によると、トヨタが豊田織株の24.2%を保有するほか、豊田氏が会長を務めるトヨタ不動産が5.32%を持つ。時価総額は7日終値ベースで約5兆5000億円だった。一方トヨタの半期報告書によると、豊田織はトヨタ株を9.07%保有する。
- トランプ氏の暗号資産事業巡り米議会で緊張高まる | ロイター
- トランプ米大統領の暗号資産(仮想通貨)事業を巡り米連邦議会で6日、緊張が高まった。暗号資産に関する法案を審議する公聴会の開催に民主党の有力議員が異議を唱えたためだ。
- 下院の金融委員会と農業委員会は暗号資産に関する法案を審議する公聴会を6日に予定していたが、民主党のウォーターズ下院議員が公聴会の開催に異議を唱え、法案の成立へ向けた動きは一時的に停止した。
- 法案は当初、今年内に議会を通過するとみられていた。だがトランプ氏と同氏の一族が、自分たちの所有する暗号資産事業を推進したことを受け、民主党は反発姿勢を強めている。
- トランプ氏の暗号資産事業には「$トランプ」と称する仮想通貨や「ワールド・リバティー・フィナンシャル」と呼ばれる事業が含まれる。
- こうした事業は、政府倫理の専門家や政界の対立勢力からは利益相反の可能性があるとの批判が出ている。特にトランプ氏が昨年の大統領選で暗号資産業界から献金を受けた上、暗号資産の規制を緩和すると表明していることが問題視されている。
- ウォーターズ氏は声明で「共和党議員がトランプ氏の職権乱用に歯止めをかけない上、職権乱用を認めさえしない状況下では、暗号資産の市場構造について協議する公聴会の開催に誠意を持って同意することはできない」と主張した。
- 米財務長官と通商代表、中国と貿易で閣僚級協議へ-スイスで今週会談 - Bloomberg
- ベッセント米財務長官とグリア米通商代表部(USTR)代表が今週スイスを訪問し、中国当局と貿易協議を行う。米財務省と中国外務省が発表した。米中の通商対立が双方の経済を直撃しかねない現状を受け、緊張の緩和に動く。
- トランプ米政権が中国製品に合計145%の追加関税を課し、中国側も報復関税の税率を125%に引き上げた後、米中の閣僚級の正式協議開催が確認されるのは今回が初めて。
- 中国外務省は7日、同国を代表し対米貿易交渉に臨む何立峰副首相が9日から12日の日程でスイスを訪問し、ベッセント財務長官と会談すると発表した。
- ベッセント氏はFOXニュースとのインタビューで、10、11日に中国側と会談を予定していると明らかにした。貿易の大きなディールではなく、緊張緩和が焦点になると同氏は述べ、「前進する前に緊張を徐々に緩和する必要がある」と発言した。
- 米中の関税の応酬は製造装置だけでなく、多くの米国民が必要とする衣料品や玩具など手頃な商品の価格を押し上げる恐れがあり、市場を動揺させた。予定される協議は、関税引き下げへの投資家の期待を後押しする可能性がある。
- 中国商務省は米側との会談の予定が公表された後、米国は今後の協議で誠意を示すとともに誤った対応を是正し、「対等な話し合い」を通じて双方の懸念を解決すべきだと声明で主張した。商務省によれば、米側からの話と国益を評価した結果、会談に同意したという。
- ベッセント氏は「中国はこれまでの交渉で欠けていた部分だ。緊張緩和について話し合うことになるだろう。米中には共通の利害がある」とインタビューで指摘。「145%、125%というのは禁輸措置も同然だ。持続可能ではない。われわれが望むのは、中国とのデカップリング(経済分断)ではなく、公正な貿易だ」と語った。
- 米中協議の開催が確認されると、貿易を巡る米中の緊張緩和に期待が広がり、アジア時間7日午前の取引で、米株価指数先物とドル相場が上昇し、米国債先物は下落した。S&P500種株価指数先物は一時1.1%、ナスダック100指数先物は1.3%それぞれ上げ、円の対ドル相場は一時0.5%安の1ドル=143円23銭となった。
- 中国商務省は声明で、「言行不一致、あるいは協議を装って強要と脅迫を継続しようとすれば、中国は決して合意に応じない。ましてや原則的立場と国際的な公平・正義を犠牲にして合意を追求することは決してない」とけん制した。
- ベッセント財務長官は「戦略的な不確実性」というトランプ政権の手法について、交渉で米国に有利に働く一方、市場を不安にさせる恐れがあると認めた。トランプ大統領がどのような条件なら受け入れるか自分と大統領は理解しているが、それらの詳細を公にするつもりはないと説明した。
- トランプ氏はここ数日、対中関税をいずれ引き下げる用意があると発言。しかし、今週に入ると中国と取引しなくても米国が「失うものは何もない」と語った。中国との通商関係の再調整に向け、米消費者は、価格上昇や選択の余地が狭くなる状況を受け入れるだろうと述べていた。
- トランプ米大統領、AI半導体輸出規制を撤回する方針-関係者 - Bloomberg
- トランプ米政権は、バイデン前政権が打ち出した人工知能(AI)向け半導体の輸出規制強化策である「AI拡散規則」を撤回する方針だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。ハイテク大手や外国政府から強い反発を受けてきた半導体輸出規制全体の見直しの一環だという。
- 前政権が1月に公表したAI拡散規則はエヌビディアなどの半導体の輸出先を三つのカテゴリーに分けて制限を課す内容。関係者によると、トランプ政権は5月15日の発効を見送る方針とされる。
- トランプ大統領が中東訪問の準備を行う中で方針変更が進められている。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)を含む中東諸国はAI向け半導体の輸出規制に反発してきた。
- 方針変更が非公表だとして関係者が匿名で明らかにしたところでは、トランプ政権の当局者は対外的な半導体輸出管理を強化する新ルールの策定を進めている。
- 7日の米株式市場ではブルームバーグの報道を受けて半導体株が上昇。エヌビディアは3.1%高で通常取引を終えた。フィラデルフィア半導体指数は1.7%上昇した。
- 関係者の一人によると、方針変更は早ければ8日にも発表される可能性があるという。
- AI拡散規則は、中国が第三国経由で先端AI技術を入手することを防ぐ目的に加え、米国の先端技術へのアクセスに安全保障要件を設定することで、より多くの国々を影響圏に引き入れる狙いもあった。
- 米商務省産業安全保障局(BIS)は報道官の声明で、「バイデン政権のAI規則はあまりに複雑かつ官僚的で、施行されれば米国の技術革新を阻害する」とし、「われわれは米国の技術革新を促進し、AI分野における米国の優位性を確保する、よりシンプルな新規則に置き換える」と説明した。
- ただ、関係者によれば、商務省は新規則策定中も現行の半導体輸出規制は厳格に運用する方針だという。なお、今回のAI拡散規則撤回の狙いの一つは、中国への半導体の迂回(うかい)輸出が指摘されているマレーシアやタイなどに対し、個別の輸出規制を課すことだと関係者の一人が語った。
- AI向け半導体最大手のエヌビディアは、米国の規制強化に繰り返し異議を唱えてきた。同社は第三国への規制はこれらの国を中国に接近させるだけだとして、AI拡散規則の全面撤廃を求めている。同社のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は今週、中国のAIチップ市場は今後数年で500億ドル(約7兆1900億円)規模に達する可能性があり、米企業にとって同国にアクセスできることが極めて重要だとの見方を示していた。
- 一方で、トランプ政権は中国の技術的野心を標的にした規制を強化しており、米国の輸出規制に準拠しつつ中国向けに設計されたエヌビディアのAIアクセラレータ「H20」製品の中国向け輸出を事実上禁止。エヌビディアはこれにより第1四半期(2-4月)に約55億ドルの費用を計上する見通しだと明らかにした。
- エヌビディアにコメントを求めたが、すぐには返答はなかった。
- 米、対中関税から子ども用品の除外を検討=財務長官 | ロイター
- ●先進国中銀、金融当局
- FRB金利据え置き、インフレと失業率上昇リスクを指摘 | ロイター
- 米連邦準備理事会(FRB)は6─7日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25─4.50%に据え置くとした。決定は全会一致。
- インフレと失業率の上昇リスクが高まっているとしたほか、トランプ政権の関税の影響に対応する中で、経済見通しが一段と不透明になっているとの認識を示した。
- FRBは声明で、経済は全体として「引き続き堅調なペースで拡大している」と指摘。関税導入を前にした駆け込み輸入の記録的な増加が第1・四半期の生産の低下に寄与したとの見方を示した。
- 労働市場は引き続き「堅調」で、インフレ率は依然として「幾分高止まり」していると、3月の前回声明と同じ文言を繰り返した一方、今回の声明では今後数カ月でFRBに困難な選択を迫る可能性のあるリスクも強調された。
- 声明は「経済見通しを巡る不確実性は一段と高まった」と指摘。「FRBは二重の使命に対するリスクに注意を払っており、失業率とインフレ率の上昇のリスクが高まっていると判断した」と述べた。
- トランプ大統領の関税措置の影響を見極める中、FRBは昨年12月以降、政策金利の据え置きを維持。3月に公表した金利・経済見通しでは、年末までに政策金利を50ベーシスポイント(bp)引き下げる可能性が高いとの予想を示した。
- FOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長は、不確実性が経済政策の決定に影響を及ぼしていると認める一方、経済は依然として好調だと改めて強調。「国民や企業が非常に悲観的な感情に覆われているとはいえ、経済は依然として健全だ」と述べた。
- その上で「現在の金融政策のスタンスは、潜在的な経済動向にタイムリーに対応できる態勢を整えていると考えている」とした。
- パウエル議長はまた、貿易政策が依然として不確実性の源であり、FRBが様子見姿勢を取る必要があることを裏付けていると指摘した。「この状況がどうなるかは予測できない。大きな不確実性があると思う」とした。
- こうした不確実性により、「より多くのデータを見るまでは、適切な対応が何なのか実際には分からないため、先手を打てる状況ではない」と述べた。
- ただ「経済の動向次第で」、見通しには利下げまたは金利据え置きが「含まれる可能性がある」とも述べた。
- ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの公的投資部門最高投資責任者アシシュ・シャー氏は「当面、FRBは不確実性が解消されるのを待ち、政策を据え置いている」との見方を示した。「4月の米雇用統計が予想を上回ったことがFRBの政策据え置き姿勢を裏付けている。今後は、緩和サイクルの再開をもたらすほど労働市場が弱まるかどうかに左右される」と述べた。
- トランプ米大統領がFRB批判を強めていることに関連し、パウエル氏は、大統領との面会を求めたことは一度もなく、これまでに行われた面会は全て大統領側から要請があったものだと言明。「私はこれまで一度も、そしてこれからも、どの大統領とも面会を求めることはない。私から面会を求める理由は一切ない。常に先方からの要請だった」とした。
- FRB、金利据え置き 関税巡る不確実性に警鐘 - WSJ
- 米連邦準備制度理事会(FRB)は7日まで開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを全会一致で決定した。また、米国経済は失業率悪化やインフレ上昇のリスク増大に直面していると警戒感を示した。
- ジェローム・パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「これまでに発表された大幅な関税引き上げが維持された場合、インフレ上昇、経済成長の鈍化、失業の増加をもたらす可能性が高い」と語った。
- FRBは政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現行の4.25~4.50%に維持することを決めた。
- FOMC声明は「経済見通しを巡る不確実性はさらに増した」とし、「委員会は(中略)失業率とインフレの上昇リスクが高まったと判断している」と記した。ドナルド・トランプ大統領が先月、関税を突然発動してから初めてのFOMCだった。
- この日の金利据え置きは広く予想されていたため、6月の次回会合での利下げの可能性を探ろうと、パウエル議長の記者会見に注目が集まった。
- パウエル氏は会見で「現行の金融政策のスタンスは、潜在的な経済の動向にタイムリーに対応するのに好位置を維持している」と語った。
- また、経済情勢をさらに見極めるまで様子見することの代償は「かなり小さい」と当局者がみているとも言明。これを受け、FRBが6月の会合で利下げに動くとの観測は後退した。
- パウエル氏は「急ぐ必要を感じていない。忍耐強い姿勢が適切だと感じている」とし、事態が展開したときには、適切であれば迅速に対応できると話した。
- 投資家の間では、FRBが今年後半に利下げに踏み切るとの観測が広がっている。
- ドイツ国防相、600億ユーロ超への国防予算増額目指す=関係筋 | ロイター
- 世界債務、過去最大の324兆ドル 年初来のドル安影響 | ロイター
- 国際金融協会(IIF)が6日発表した「グローバル債務モニター」によると、2025年3月末時点の世界の債務残高は324兆ドル余りに膨らみ、過去最高を更新した。25年第1・四半期(1―3月)に外国為替市場でドルが下落したことから、非ドル建て債務がドル建て換算では膨らんで見えることが大きな要因。
- 同四半期の増加幅は約7兆5000億ドルに及んだ。IIFは22年末以降の四半期平均1兆7000億ドルの4倍以上と指摘した。
- ドル下落は米国の主要貿易相手国の通貨に対して目立ったことから、中国とフランス、ドイツの債務が世界全体の残高増加に最も大きく影響した。一方で、カナダとアラブ首長国連邦(UAE)、トルコはドル換算の債務残高が減少した。
- 世界全体の国内総生産(GDP)に対する債務残高比率は緩やかに低下し続け、325%をわずかに上回る水準となった。
- ただ、新興国では債務残高が過去最高の106兆ドル以上に膨らみ、対GDP比は245%と、過去最高を更新した。第1・四半期の債務の増加幅は3兆5000億ドル超。IIFによると、このうち中国だけで2兆ドル超を占めた。中国債務の対GDP比は93%で、年末までに100%に達する見通しだ。
- 中国を除く新興市場の債務もドル換算額で過去最高を記録した。ブラジルやインド、ポーランドの債務が最も大きく増えた。ただ、中国を除く新興国の債務対GDP比は180%を下回り、過去最高水準より約15%ポイント低かった。
- 今後に重要となるのが債券償還と借入金返済。25年末までに新興国では過去最高となる7兆ドル、先進国では19兆ドル近くに及ぶ。
- トランプ米大統領が世界に貿易戦争を仕掛けており、市場でボラティリティーが高まっているものの、新興国全体で見ればドル安が緩衝材の役割を果たして悪影響を抑制している。
- しかし、IIFはトランプ政権の政策の先行き不透明感が長期化する場合に言及し「特に米国との貿易関係が強い国では財政政策を一段と拡張的にする必要があるかもしれない」と指摘した。
- さらにIIFは米国債について、巨大な債務残高水準に加え、「トランプ減税」の動きを背景に資金調達需要が膨らんでおり、米国債利回りに及ぼす影響に懸念を表明。「米国債の供給が急増すれば利回りに上昇圧力がかかり、政府の利払い費が大きく増えることになる。こうした見通しの場合、米インフレリスクも高まる」と予想した。
- 超長期債の買い手不在は深刻、10年と30年債利回り差が過去最大に - Bloomberg
- 日本国債市場で10年国債と30年国債の利回り格差が過去最大に広がっている。日本銀行の早期利上げ観測の後退で中長期債金利が低下する半面、買い手がいない超長期債金利の上昇が鮮明になっているからだ。
- ブルームバーグのデータによると、10年と30年債の利回り格差は7日、155ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、30年債の発行が始まった1999年9月に以降で最高に達した。
- 期間が長いほど金利の上昇幅が大きくなり、利回り曲線の傾きが急になるスティープ化は金融市場にさまざまな影響を及ぼす。企業にとっては超長期債の発行や運転・投資資金の借り入れ時に金利負担が増し、個人も住宅ローン金利が引き上げられるなど資金調達面でコストアップにつながる可能性がある。
- 明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、日本銀行が1日に開催した金融政策決定会合がハト派的な結果となったため、中長期債が買いやすくなり、スティープ化しているので超長期債は買いづらいと述べた。「10年以下の中長期債と、超長期債は別の商品のように値動きが違う印象だ」と言う。
- 日本の30年債利回りは7日に2.865%と2004年以来の高水準を付けた。3%付近のドイツや3.1%程度のオランダの水準に接近し、2%を割り込む中国の利回り水準を一段と引き離している。新発40年債利回りは3.25%と大幅上昇し、過去最高を更新した。
- 明治安田アセットの大﨑氏は、13日に行われる入札の結果がかなり悪ければ、30年債の「利回りが3%に上昇する可能性がある」と警戒感を示している。
- みずほ証券の大森翔央輝チーフ・デスク・ストラテジストは、4月から30年債や40年債の発行が減額されているが、「買い手不在が意識されて超長期債の利回り上昇が続いている」と説明。「生命保険会社が安定的な買いを見せ始めるまで、他の国内投資家は様子見だ」と話した。
- 新発40年物国債利回り、過去最高に 3.250%に急上昇 - 日本経済新聞
- 「米国抜き」の自由貿易を強化する世界 - WSJ
- 米国はドナルド・トランプ大統領の下で自由貿易から後退しているが、世界の他の国々の大半はそうではない。
- トランプ氏が大統領に選ばれてから、他国の間で通商関係を強化しようとする動きが活発化している。各国は相互間の貿易拡大によって米国の追加関税による痛みを一部相殺したいと考えている。
- 英国とインドは6日、数年間行き詰まっていた貿易協定の締結を発表した。また、欧州連合(EU)はインドと独自の貿易協定について交渉を進めているほか、南米のメルコスル(南米南部共同市場)との自由貿易協定でこのほど合意した。カナダとアジア諸国も、古い貿易協定を引っ張り出してきている。12カ国で構成される通商グループ「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)」は、コスタリカ、インドネシアなどの新規加盟申請国について検討中だ。
- こうした動きは、トランプ氏の再選以降に加速している。背景には、たとえ米国が世界の経済生産の26%を占めるとしても、世界の輸入に占める割合は13%であり、他の国々が互いに取引する余地はたくさん残されているという考えがある。
- 「米国は、他の国々が互いに関税を引き下げる反応促進剤の役割を果たしている」。世界貿易機関(WTO)の元事務局次長で、現在はピーターソン国際経済研究所の上級研究員を務めるアラン・ウルフ氏はこう指摘する。同氏によると、EUやカナダなどは、米国市場の信頼性が低下したことを受け、他のパートナーとの貿易を促進しようとしている。
- 英サセックス大学包括的通商政策センター(Centre for Inclusive Trade Policy)のアチュート・アニル研究員によると、多くの国々は米国による一律の関税に直面し、2方面の戦略を取りつつある。関税の一部撤回を目指してトランプ氏と合意を結ぼうとする一方で、巨大な米国市場へのアクセスが大きく損なわれた場合に備え、他国との協力を促進して痛みを緩和する戦略だ。
- アニル氏は「一つ確実なことは、各国が米国以外の市場を活用して耐え抜く力が必要だと認識しつつある点だ」と述べた。
- グローバル化した世界は現在、米国による一律10%の関税と、自動車や鉄鋼、アルミニウムの輸入に課される特定分野への関税から打撃を受けている。
- WTOが先月発表した推計によると、世界のモノの貿易量は今年、前年比0.2%減少すると見込まれている。昨年は2.9%増だった。
- しかし、シンクタンク「欧州国際政治経済センター」の通商問題専門家デービッド・ヘニグ氏によると、貿易を容易にしようとする米国以外の国の動きは、そうした国々がグローバル化をまだ諦めていないことを示している。同氏は「グローバル化の再構築に関する話は大いになされている」とした上で、「これらの貿易協定はそれとは逆方向へと促している」と語った。
- インドと英国の貿易協定は、英国が2021年にEUを離脱した後に合意した貿易協定の中で最も注目されるものの一つで、英国産のウイスキーや自動車などに対するインドの関税が大幅に削減されることになる。同協定によって、両国間の貿易額が向こう数年で255億ポンド(約4兆9000億円)増加すると英政府は予想している。英政府によると、インド側は全物品の90%について関税引き下げを受け入れており、今後10年以内にはこれらのほとんどがゼロになるという。これに対し英国側は、履物、宝石といったインドからの輸入品の関税を引き下げるとともに、料理人やヨガ講師などインド人専門職の英国での就労を容易にすることに同意した。
- 英国は2022年からインドとの貿易協定締結を目指してきたが、インド人学生向けビザの優遇条件や、インドでの知的財産権の扱いなどの問題を巡って交渉が行き詰まっていた。しかし、トランプ政権の関税措置が注目され始めた今年2月になって、英印両国は交渉再開で合意した。レイチェル・リーブス英財務相は4月、米国の関税措置発動を受けて英国は「世界の他の国々との貿易交渉を加速させつつある」と語った。
- コンサルティング会社フリント・グローバルの通商問題専門家サム・ロウ氏は、トランプ氏が明らかに英印貿易協定の促進役になったと述べている。
- 東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国に中国、日本、韓国を加えたASEANプラス3は今週の財務相・中央銀行総裁会議で「地域内の貿易拡大」を通じて現在の世界的貿易ショックの相殺に努める方針を確認した。中南米では、ブラジルが米中両国への輸出拡大を図っている。
- また世界の多くの国々は、米国との関係強化を断念してはいない。カナダのマーク・カーニー新首相は6日、ホワイトハウスを訪れた。同首相はトランプ氏との間で、貿易問題を含むさまざまな案件について協議するとみられていた。
- 英当局者は米国との貿易協定で関税率を下げたいと依然として考えている一方、今月行われる英・EUの当局者会合で、英国にとって最大の市場であるEUとより緊密な通商関係を構築することを望んでいる。
- これまで、英国とトランプ米政権との取引はなかなかまとまらなかった。英政府はEU離脱後、当初は米国と自由貿易協定を結ぶことを望んでいた。だが、農業や製薬といった米国の大きな産業が英国市場への優先的アクセスを得ることになるという見通しに、英当局者が二の足を踏み、協定は実現しなかった。
- EUも他の国・地域との貿易促進に努めている。EUは昨年12月にメルコスルを構成する4カ国(ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ)と貿易協定で合意し、今年1月にはメキシコとの協定刷新を発表した。
- EUは他の国々との協議も活発化させている。EUの執行機関である欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は2月、欧州委の他の幹部とともにインドを訪れ、EUは年内にインドとのFTAの締結を完了させるつもりだと述べた。
- マレシュ・シェフチョビッチ委員(通商担当)は6日の欧州議会で、EU当局者が先週、アラブ首長国連邦(UAE)と通商協議を開始し、現在進めているインドネシア、フィリピン、タイ、マレーシアとの交渉もスピードアップしていると述べた。EUは「引き続き、世界のパートナーとの貿易・投資関係を多様化させていく」。
- 欧州国際政治経済センターのヘニグ氏は「率直に言って、トランプ氏は威勢のいいことを言っているが、他のすべての国の貿易に与える実際の影響はかなり限定的だ」と語っている。
- 【社説】ドイツ新首相、何とか選出されたが - WSJ
- 世界中で政治的混乱の度合いは増しており、長年安定していたドイツでさえも予想外の事態が相次いで起きている。6日の出来事は特に大きかった。ドイツ連邦議会でフリードリヒ・メルツ氏が首相に選出されるために2回目の投票が必要になったのだ。このことは、欧州最大の国であるドイツが依然、深刻な分断状態にあることを示している。
- メルツ氏が1回目の投票で獲得した票数は首相選出に必要な316票に6票足りなかった。同氏が率いる中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派の社会民主党(SPD)は新連立政権の樹立で合意しており、その議席数は計328だ。つまり、連立予定の政党の全議員のうち、18人がメルツ氏の下での新政権樹立に賛成しなかったことになる。無記名投票のため、どの議員が造反したのかや、その理由は、本稿の執筆時点で明らかになっていない。
- メルツ氏は数時間後に行われた2回目の投票で何とか首相に選出された。これは戦後ドイツの歴史において前例のない事態だ。メルツ氏とSPDは、2月の総選挙後、何週間もかけて連立のための詳細な政策課題について交渉し、各省庁の閣僚ポストを分け合った。1回目の投票は形式的なもののはずだった。明らかに水面下で政治的不満の泉が湧き出ている。
- 2月の総選挙では、有権者が大きく分断されていることが明らかになり、その状況が反映された議会が誕生した。大半の有権者は何らかの形で右派寄りの政権を望んでいた。だが票は割れ、メルツ氏率いるCDU・CSUが得票率28.6%、自由市場主義を掲げる自由民主党(FDP)が4.3%(議席獲得に必要な得票率に満たない)、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が20.8%となった。AfDはネオナチ過激派と非難されている党内勢力の一掃を拒否しているため、他の政党がAfDと連立を組むのは難しい。
- このためドイツは不安定な右派・左派連立政権を繰り返さざるを得ず、有権者の失望が続くことになる。メルツ氏は経済の再生と厳格な移民規制を掲げて選挙戦を戦った。選挙後のSPDとの連立合意では、移民規制についてはある程度主張を通せたものの、税制改革や規制緩和、エネルギー政策などでの進展は限定的だった(しかも遅れた)。それでもSPDは移民政策にいら立っており、同党が福祉改革を強行しなくてはならなくなることに一部の党所属議員は不満を抱いているかもしれない。
- そのような政権が困難に直面することは目に見えており、6日の議会での醜態はそれをかつてない形で表面化させた。メルツ氏が最終的に勝利する可能性は以前から高かった。再び総選挙となれば主流政党は前回より悪い結果に見舞われると思われ、議会解散を望む者はいなかったからだ。しかし、それでは議員からの力強い支持があるとは言えず、有権者からの支持についてはなおさらだ。
- 根本的な問題は、移民や経済、気候変動関連の政策を巡る停滞感からドイツを脱却させる方法として、主流政党がAfDの破壊的手法に代わる魅力的な選択肢を有権者に提示できていないことだ。メルツ氏にもそれが示せなければ、6日の騒動は彼にとって最後の不快な政治的サプライズにはならないだろう。
- バフェット氏が成功と失敗から学んだこと - WSJ
- 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は投資でも企業買収でも比類のない実績を残した。ただ、中には大失敗もある。
- バフェット氏の下でバークシャー・ハサウェイが投資した企業は時価総額で世界上位となり、同氏はバークシャーの成功から恩恵を受けた株主以外にも多くの信奉者を得た。だが自身が指摘しているように、同社を率いた伝説的な60年間に行った全ての投資が、米アップルへの賭けほどうまくいったわけではない。そして同氏の言葉通り、そうした失敗からしばしば貴重な教訓が得られる。
- バフェット氏の最大級の成功と失敗を見てみよう。
- 成功:コカ・コーラ
- バフェット氏は1988年に初めてこの清涼飲料メーカーに投資した時、同社株を長期保有する意向をバークシャーの株主に伝えた。同年の株主宛て年次書簡で、「優れた経営陣を持つ優れた企業を所有する場合、われわれが好む保有期間は永遠だ」と説明していた。
- この言葉通り、40年ほどたった今もコカ・コーラ株を保有し続けている。2024年末時点で、保有株の価値は約250億ドル(約3兆6000億円)に達していた。数十年にわたって毎年増配を続けているコカ・コーラの配当金は、24年だけでバークシャーに約7億7000万ドルをもたらした。
- コカ・コーラ株はバークシャーとその株主にとって、単なる安定した収入源以上のものを意味するようになった。バフェット氏はコカ・コーラの筆頭株主だった。かつては取締役も務め、ぶれないセールスマンでもあった。チェリーコークを1日5本飲むと、よく公言していた。こうした献身ぶりが知れ渡り、バークシャーの年次株主総会のために数千人のファンがネブラスカ州オマハに集結する一因となった。
- バークシャーはほかにも、米クレジットカード大手アメリカン・エキスプレス(アメックス)やアップルなどの大手企業に投資した。このことから、バフェット氏の投資哲学が、割安株の目利きだった初期から進化したことがうかがえる。株価が適正水準の優良企業に目を向けるよう彼に促したのは、長年ビジネスパートナーだったチャーリー・マンガー氏だ。
- 失敗:ソロモン・ブラザーズ
- バークシャーは1987年に投資銀行大手ソロモン・ブラザーズの優先株を購入した。だが91年に同行トレーダーによる国債入札の不正操作が発覚。バフェット氏は会長として混乱の収拾に当たらざるを得なくなり、同社は政府の調査を受けた。
- ソロモンは完全に立ち直ることなく、97年に金融サービス会社トラベラーズ・グループ(後のシティグループ)に身売りした。この取引でバークシャーの投資は難を逃れたものの、傷跡を残した。その後の数十年間、バフェット氏とかつてソロモンの取締役だったマンガー氏は、たびたびこの出来事を教訓として引き合いに出し、ウォール街を警戒する理由にも挙げていた。
- バフェット氏は2010年のバークシャー株主宛て書簡で、「私は悪いニュースには対処できるが、それが悪化してから対処するのは好きではない」と語った。「悪いニュースにすぐに向き合うのを躊躇(ちゅうちょ)したことで、簡単に片付くはずだったソロモンの問題が、従業員8000人を抱える企業を崩壊寸前にまで追い込むことになった」
- 成功:比亜迪(BYD)
- バフェット氏は、当時ほぼ無名だった中国バッテリーメーカーの比亜迪(BYD)を見いだし、同社の株式10%を購入するよう2008年にバークシャーに促したのは、マンガー氏の功績だと認めている。2億3000万ドルの投資の価値は2年足らずで20億ドル近くになった。
- 電気自動車(EV)需要を追い風に、BYDの株価は22年まで上昇を続けた。バークシャーは同年から持ち分を減らし始めた。
- 失敗:USエア
- バークシャーは1989年に3億5800万ドルを支払い、米航空会社USエアの優先株を取得した。バフェット氏は90年代半ばまでにその評価額を75%引き下げ、失敗を認めた。
- 「英ヴァージン・アトランティック航空のオーナーで富豪のリチャード・ブランソン氏は、百万長者になる方法を聞かれ、『簡単だ。億万長者としてスタートし、それから航空会社を買えばいい』と即答した」。バフェット氏は1996年の株主宛て書簡にこう記した。「ブランソン氏の信条をうのみにできなかったあなたの会長は、1989年にUSエアの優先株9.25%に3億5800万ドルを投資して検証することにした」
- バフェット氏は、米航空業界の規制緩和がUSエアの事業にどれほどの混乱をもたらすかを甘くみていたことを認めた。USエアは1990~94年に計24億ドルの赤字を計上した(USエアはUSエアウェイズとなった後、アメリカン航空と合併した)。
- 成功:ミッドアメリカン・エナジー
- バフェット氏は1999年、長年の友人ウォルター・スコット氏の勧めで、アイオワ州デモインの公益会社ミッドアメリカン・エナジーの株式75%を取得した。スコット氏は80年代後半にバークシャーの取締役に就いていた。
- ミッドアメリカン・エナジーは後にバークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)となった。配当は行わず、買収と設備投資を通じて利益を事業に再投資することで成長した。BHEは保険事業、鉄道事業、アップル株とともにバークシャーの4本柱となり、年間営業利益は2000年の1億2200万ドルから40億ドル近くに増えた。
- ミッドアメリカン・エナジーの買収に伴い、グレッグ・アベル氏がバークシャー・ハサウェイに加わった。バフェット氏は年末に最高経営責任者(CEO)の座を同氏に譲る意向だ。
- 失敗:バークシャー・ハサウェイ
- 経営難に陥っていた繊維メーカー、バークシャー・ハサウェイのトップは1964年5月、1株11.375ドルでの株式買い取りを株主に提案した。大株主だったバフェット氏は11.50ドルを希望していた。バークシャーのシーバリー・スタントン氏がそれより低い価格を提示したことで、「私はスタントン氏の態度に腹が立ち、応じなかった」。バフェット氏は2014年の書簡にそう記した。
- これは「途方もなく愚かな判断だった」。
- バークシャーはニューイングランドの繊維業界とともに衰退し続け、工場を閉鎖し、赤字が膨らんでいった。それでもスタントン氏に腹を立てていたバフェット氏は、同社の暗い見通しを無視して株を買い続け、1965年5月までに同社を完全取得した。同氏はこれを今でも後悔している。
- 「8分の1ポイントなんて私たちのどちらにとっても大したことではなかったのに、シーバリーと私の子供じみた振る舞いのせいで彼は職を失い、私は(バフェット・パートナーシップの)資本の25%以上を、自分がほぼ何も知らないひどい事業に投資してしまった」。バフェット氏は2014年の書簡にこう記した。
- バフェット氏は繊維事業を何年も続けた。「だが、頑固さ(愚かさ?)にも限りがある」と同氏。「1985年、私はついに負けを認め、事業を閉鎖した」
- US companies plot $500bn share buyback spree
- プライベートクレジット業界、混乱の中に「黄金の機会」見いだす - Bloomberg
- 大手プライベートクレジット会社の多くは、トランプ米大統領の関税政策によって生じた混乱の中に収益機会を見いだそうとしている。
- ただ、ボラティリティーは透明性に乏しい市場が抱えるリスクも高める。
- アレス・マネジメントのマイク・アロゲティ最高経営責任者(CEO)は6日ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「この混乱のすぐ先に、実は絶好の機会が形成されているように感じる。バリュエーション(評価額)が大きく修正された今、より大きな資金を投入できるタイミングが近づいているのではないか」と語った。
- ロサンゼルスのビバリーヒルズで開催のミルケン研究所グローバルコンファレンスでは、トランプ米政権の政策が拡大中のプライベートクレジット市場に与える影響が議論された。
- アロゲティ氏を含む業界リーダーは、企業が資金調達を拡大する中で利益を享受できる可能性と同時に、警戒心の薄い貸し付けによって損失を被るリスクも指摘。
- ブルー・アウル・キャピタルの共同創業者マーク・リプシュルツ氏は別のインタビューで「重要なのは、嵐の中をどう航海するかだ」と述べ、TCWグループのケイティ・コッチCEOも「規律ある貸し出しと無秩序な貸し出しの違いが鍵になる」と強調。
- オークツリー・キャピタルの共同会長ハワード・マークス氏も「良い会社への貸し付けこそが鍵だ」と述べた。
- 銀行が融資を手控える中でプライベートクレジット市場は拡大を続けてきたが、市場の不安定と経済の先行き不透明の中でリスクが高まることが見込まれている。
- コッチ氏は、業界では「楽観的」過ぎる融資が多く行われてきたと指摘。「この資産クラスで今後、事故が見られ始めるだろう」と警鐘を鳴らした。
- 韓国製アメ車の悲劇、トランプ関税でGM大打撃-トヨタより輸入多く - Bloomberg
- 輸入車といえば外国車を指していた時代はとおの昔に過ぎ去った。米ゼネラル・モーターズ(GM)ほど、この事実を如実に表しているメーカーは他にない。
- 調査会社グローバルデータによると、GMが昨年米国で販売した自動車のうち、約半数に当たる123万台を外国から輸入した。これは日本のトヨタ自動車を上回る規模だ。これには韓国で製造される「シボレー・トラックス」や「ビュイック・エンビスタ」といった価格競争力のあるスポーツタイプ多目的車(SUV)が多く含まれている。
- だが、トランプ大統領が発動した25%の自動車関税により状況が一変。GMは主要メーカーの中で最も大きな打撃を受けるとみられている。GMは関税により最大50億ドル(約7200億円)の影響を受ける恐れがあるとし、通期利益見通しを下方修正した。
- ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのエリック・ゴードン教授は「かつてはトヨタ車は日本製、シボレーは米国製というのが一般的だった」と指摘。「だが、今ではトヨタも一部は日本製、一部は米国製だ。シボレーを買っても外国製かもしれない」と話す。
- GMの株価は関税と経済の先行き不透明感が重しとなり、年初来で14%余り下落。米自動車大手メーカーの中では、関税リスクの最も小さいフォード・モーターの株価のみがプラス圏にとどまっている。
- GMは価格転嫁ではなくコスト削減によって関税の影響の3割を吸収する計画で、ピックアップ・トラックなど一部のモデルを米国内の工場へ生産移管する方針だと、ポール・ジェイコブソン最高財務責任者(CFO)は先週、記者団に語った。韓国との間で新たな貿易協定が締結されれば、影響は幾分和らぐとの見方もある。GMは韓国で3工場を構える。
- GMは輸入戦略についてはコメントできないと述べた。
- だが、GMは低価格モデルの世界輸出拠点として重要な役割を果たしている韓国事業に今後も注力する方針だ。同社幹部が匿名を条件に述べた。
- GMの韓国事業は50年以上にわたる歴史を持つ。2002年に大宇自動車の資産を取得したことで、同国で第3位の自動車メーカーに躍り出た。現在ではトラックスや「シボレー・トレイルブレイザー」など、2万5000ドル未満の低価格モデルを世界に供給する中核生産拠点となっている。
- GM、フォード、クライスラーを傘下に持つステランティスの3社は昨年、合計で220万台を米国に輸入しており、全輸入車の約28%を占めた。同3社は関税緩和を求めてトランプ大統領に強く働きかけ、4月29日には自動車部品に対する関税を2年間で段階的に導入する猶予措置を勝ち取った。加えて、鉄鋼やアルミニウムなどの原材料に対する追加関税も免除された。
- GMがトランプ関税により大きな逆風を受ける理由は、輸入量の大きさだけではない。国外工場の立地にも起因する。
- 韓国からの完成車は、4月3日から適用されている25%の関税が全面的に適用される。またGMは昨年、中国からも約5万5000台を輸入しており、中国からの輸入は現在145%の高関税が課せられている。
- 一方、カナダやメキシコで生産する車両については、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠していることを条件に軽減措置の適用をトランプ氏が認めたため、より低い関税が課されている。
- グローバルデータの調査部門でかつてバイスプレジデントを務めたジェフ・シュスター氏は、米国市場で販売する自動車メーカーは関税の影響で競争力がそがれるため、低価格モデルを中心に150万台の生産を停止する可能性があると予想する。米国の平均新車価格は5年前から21%上昇し、すでに4万8000ドルを超えており、実際に同氏の予想通りになれば、消費者にとって新車はさらに手が届かなくなりそうだ。
- 「トランプ氏の関税はエントリーレベルの市場を奪うものだ。これらの購買層が影響を受けるのは明らかで、その二次的な影響はおそらく想定以上に大きい」とシュスター氏は話した。
- 米ドルからの大量資金流出、360兆円の通貨「雪崩」にも-ジェン氏 - Bloomberg
- アジア諸国が保有する米ドル資産を減らし始めれば、2兆5000億ドル(約360兆円)規模の「通貨の雪崩」が発生し、米ドルに深刻な下押し圧力がかかる恐れがある。投資会社ユリゾンSLJキャピタルが指摘した。
- スティーブン・ジェン、ジョアナ・フレイレ両氏は7日のリポートで、アジアの輸出企業や投資家は長年にわたり、米ドル建て資産を「極めて多く」積み上げてきたとみられると指摘。
- 「アジアの輸出企業や機関投資家による米ドル保有は非常に巨額で、2兆5000億ドル規模に達している可能性がある。これがアジア通貨に対する米ドルの下落リスクを高めている」と両氏はリポートに記した。
- 米国主導の貿易戦争が激化する中、一部のアジアの投資家は資金の一部を本国に還流させたり、ドル安への備えを強化したりする可能性がある。こうした動きが、米ドルからの大規模な資金流出を引き起こす恐れがあるという。
- トランプ米大統領による世界貿易秩序再構築の試みにより、投資家が「米国例外主義」の投資戦略を見直しつつある中で、米ドルの長期的な魅力が揺らいでいる。
- 5日に台湾ドルが急騰したことも、アジアの政策当局が米国との貿易交渉を成功させるために自国通貨高を容認する用意があるとの見方に拍車をかけた。
- ブルームバーグ・ドル指数は2月の高値から約8%下落。全てのアジア通貨は過去1カ月に対米ドルで上昇している。
- 「ドル・スマイル理論」で知られるジェン氏は以前、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを実施すれば、中国企業が保有するドル建て資産を売却することで、約1兆ドルが中国本土に還流する可能性を指摘していた。
- 今回、数兆ドル規模の資金移動を加速させる要因としてジェン氏は、アジア諸国にまん延する「ネーキッド・ドルロングポジション」を挙げる。これは市場変動リスクに対するヘッジをしていない米ドル資産の保有を意味し、中国、台湾、マレーシア、ベトナムなど、米国に対して貿易黒字を持つ国で広く見られるという。
- 「世界には、米ドルを脆弱(ぜいじゃく)な立場に追いやる重要な不均衡が存在している」とジェン氏はリポートで指摘した。
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- ウクライナに「テロの傾向」、モスクワ無人機攻撃で=ロシア | ロイター
- ●その他エマージング
- 「ニセコバブル」崩壊の前兆か、中国系高級リゾートが経営破綻 チャイナマネーに陰り(産経新聞) - Yahoo!ニュース
- 北海道ニセコで最大級となるリゾート開発を手掛けた中国系企業が経営破綻した。近年、ニセコエリアは海外資本の流入で地価や人件費の高騰が止まらず、街は様変わりした。ただ、チャイナマネーの大型案件が頓挫し、外国資本がもたらすリスクも表面化。地元では「バブル崩壊の前兆か」との懸念が広がっている。
- スキーヤーが愛してやまない上質のパウダースノーに魅了され、世界的リゾートに成長したニセコ。その中心地の一つ、ニセコ町に建設が途中で止まり、シートで覆われた建物がある。
- 今年4月、東京地裁から破産手続き開始の決定を受けた「ラ・プルーム・ニセコリゾート特定目的会社」(東京)が手掛けるコンドミニアム棟。昨年秋から建設がストップした。計画では219の客室と5つのプライベートヴィラを備えた、ニセコ最大級の宿泊施設になる予定だった。関係者によると、工事を請け負った道内の建設会社への支払いが滞り、建設が3割程度進んだところで工事が中断したという。
- ■負債は数十億円の見通し
- 破産管財人の代理人弁護士によると、ラ・プルームは令和2年12月に設立。中国系企業の日本現地法人が用地を取得し、開発を進めていたが、資金繰りが行き詰まり、計画は頓挫した。負債総額は数十億円に上る見通し。債権者である建設会社が裁判所に申し立て、破産手続きの開始が決まったという。
- アイヌ語で「切り立った崖」を意味するニセコは2001年の米中枢同時多発テロ後、北米を避けたオーストラリアのスキー客に注目され、急速に発展した。中でも外国人富裕層によるニセコ投資はブームとなり、高級スノーリゾートとして世界中に知られるようになった。ただ、新型コロナ禍以降、豪州資本は落ち着き、代わって中国や香港、韓国からの投資が台頭した。
- 一向に冷めない投資熱に押される形で地価も高騰する。国土交通省が発表した令和7年の地価公示では、ニセコ地域の倶知安町の住宅地は前年比9・7%増の18万1千円。商業地も「ひらふ坂」周辺では1平方㍍辺り50万円超の土地もあり、10年前の2倍以上に跳ね上がった。令和2年の地価公示では住宅地、商業地ともに同町の上昇率が全国一になった。
- ■平均時給は2千円
- 訪日客数も増加の一途だ。倶知安町によると、ニセコ地域の外国人宿泊者数は令和5年度、延べ73万8800人。統計が残る平成18年以降、過去最多を記録した。
- 一方、訪日客を受け入れるホテルや飲食業などのスタッフ人件費は「爆上がり」が続く。冬季のハイシーズンともなれば、アルバイトの平均時給が2千円を超えることも珍しくない。これは東京よりも高い。
- ニセコ地域で飲食店を営む男性は「英語が話せる人なら時給3千円もざらにある。当然ながら、人件費の負担分はメニューの値上げで賄わざるを得ない」と話す。
- ■「カレーライス物価」
- 「味噌ラーメン2千円」「ハンバーガー3千円」。冬季のニセコでは、こんな価格帯のメニューが並ぶ飲食店も多い。折からの円安も加わり、増加の一途をたどる訪日客数に伴い、物価高を揶揄した「ニセコ価格」というワードがSNS上では飛び交う。
- そんなイメージを払拭しようと、ニセコ町ではカレーライスを作るのに必要な費用を計算し、家庭の食卓への影響を指数で示す「カレーライス物価」のニセコ版を試算した。試算によると、今年3月のカレーライス物価は382円。全国平均より25円も安い。町は「地域の生活実態と乖離した情報が広まっている。誤った情報の訂正は容易ではないが、今後も適切な情報を発信していく」としている。
- 人口が1万7千人の倶知安町は定住者の2割を外国人が占める。「ニセコバブル」とも呼ばれる現象が続く中で発覚した中国系高級リゾートの計画頓挫。建設が中断したホテルが廃墟と化せば、人気リゾートのイメージ悪化にもつながりかねず、地元では不安が広がる。
- ラ・プルーム破産管財人の代理人弁護士は産経新聞の取材に「既に現地確認も行ったが、このまま放置されることがないよう関係各所と協議を続けている。事業の規模や計画は今後変わるかもしれないが、どんな形であれ、事業の継続は模索していきたい」と説明した。
- 首都圏マンション、NVIDIAより割高か 「PER」は30倍 - 日本経済新聞
- Z世代はタンス預金より投資、バフェット氏慕う高校生も-資産形成変化 - Bloomberg
- ●市況(ChatGPTによる要約版)
- NY市場サマリー(7日)株反発、ドル上昇、利回り低下 | ロイター
- ### 【為替(NY外為市場)】
- * **ドルは主要通貨に対して上昇**。
- * FRBは**予想通り金利据え置き**、経済拡大は堅調とする一方、**不確実性とリスクの増加**を指摘。
- * ドル円は**1%高の143.84円**、4営業日ぶり上昇。
- * マーケットはFRBの**ややタカ派的な姿勢**と受け止めた。
- ### 【米債券市場】
- * **米国債利回りは低下**:
- * 10年債:**4.725%(-4.3bp)**
- * 2年債:**3.781%(-1bp弱)**
- * 30年債:**4.773%(-4bp)**
- * FRBは金利据え置きも、**インフレと失業率の上昇リスク**に言及。
- * 利下げ再開には**労働市場の軟化が条件**と専門家は分析。
- ### 【米株式市場】
- * **株式市場は反発**。
- * **半導体輸出規制の緩和報道**を受け、半導体株が上昇(フィラデルフィア半導体指数 +1.7%)。
- * FOMC後も不安定な取引が続くが、終盤は上昇基調に転じた。
- ### 【金(NY貴金属市場)】
- * **金先物は反落(4営業日ぶり)**:
- * **ドル高で割高感**が意識され売り。
- * 一方、中国が**6カ月連続で金保有量を増加**させたことが支えに。
- * 相場は3400ドル付近で横ばい推移。
- ### 【原油(NY原油先物)】
- * **原油は反落**。
- * 米中貿易協議(10~11日予定)への期待で一時堅調も、**進展期待の後退とガソリン需要懸念**で下落。
- * **ガソリン在庫が市場予想に反して増加**したことも重しに。
- * FOMC声明の「経済見通しの不透明感」も原油需要への懸念を強め、相場を圧迫。
- [KLG] WKケロッグ 1Q減収減益 売上高6%減6.63億ドル、営業益57%減2000万ドル、EPS0.20ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [WEC] WECエナジー 1Q増収増益 売上高18%増31.4億ドル、営業益15%増9.37億ドル、配当0.8925ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [ADM] アーチャーダニエルズ 1Q減収最終減益 売上高8%減201億ドル、純利益60%減2.95億ドル、EPS0.61ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [ZTS] ゾエティス 1Q増収最終増益 売上高1%増22.2億ドル、純利益5%増6.31億ドル、EPS1.41ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [FIS] フィデリティナショナルインフォメーション 1Q増収減益 売上高3%増25.3億ドル、営業益2%減3.47億ドル、EPS0.15ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [DUK] デュークエナジー 1Q増収増益 売上高8%増82.4億ドル、営業益19%増23.4億ドル、EPS1.76ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- トランプ政権、未返済学生ローン回収で大学に圧力 - WSJ
- 米教育省が5日に送付した通知によると、トランプ政権は、卒業生の学生ローン返済が滞っている大学に対して、連邦学生ローンの提供を停止できる規則を発動する。
- 政府は以前から、返済しない学生があまりにも多い場合、連邦学生援助を制限する権限を持っていた。これは、卒業生の収入につながらない学位の費用を政府が負担しないようにするための措置だ。大学が連邦援助の資格を失えば、学生募集に壊滅的な打撃となり得る。
- 新型コロナウイルス禍による返済一時猶予の終了後も、多くの学生が返済を再開しなかったため、ローン停止のリスクに直面している大学の数が増えた。教育省によると、約1000万人の借り手がすでにデフォルト(債務不履行)に陥ったか、その間際にある。数カ月以内に、全米の借り手の約4分の1がデフォルトに陥る可能性がある。デフォルトとは、少なくとも9カ月返済が滞っている状態を指す。
- 多くの借り手が突如返済を迫られるというのは、バイデン前政権が学生ローンの大規模な返済免除を試みたのとは対照的だ。
- 5日、教育省はデフォルトした学生ローンを債権回収に回し始めた。場合により、借り手は賃金の差し押さえや、連邦所得税還付金および社会保障給付金の支給停止を受ける可能性がある。
- 教育省によると、過去3年間で学生の30%超、または直近1年間で40%がデフォルトに陥った場合、大学は連邦学生援助から除外される可能性がある。コロナ禍前は、デフォルト率がそれほど高いところはほとんどなかった。
- 教育省は大学に対し、過去5年間の卒業生に連絡を取り、返済が滞っていないか確認するよう指示している。
- 米財務長官と通商代表、中国当局と貿易交渉開始へ-今週スイスで会談 - Bloomberg
- ベッセント米財務長官とグリア米通商代表部(USTR)代表が今週スイスを訪問し、中国当局と貿易交渉を開始する。米財務省と中国外務省が発表した。
- トランプ米政権が中国を含む貿易相手国・地域に課す広範な関税を公表後、米中協議の開催が確認されるのは今回が初めて。
- 中国外務省は7日、同国を代表し対米貿易交渉に臨む何立峰副首相が9日から12日の日程でスイスを訪問し、ベッセント財務長官と会談すると発表した。
- 米財務省は、ベッセント氏が経済問題で中国側の首席代表を務める当局者と8日にスイスで会談を行うと明らかにした。
- 今回予定される協議は、米中貿易に深刻な打撃を及ぼす恐れのある関税の引き下げを望む投資家らの期待を後押しする可能性がある。トランプ政権は中国製品に合計145%の追加関税を課し、中国側も報復関税の税率を125%に引き上げた。
- カナダ首相、トランプ氏前に「51番目の州」を一蹴 - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領とカナダのマーク・カーニー首相は6日、ホワイトハウスの大統領執務室で和やかに会談し、両国の友好関係に尽力すると表明した。ただ、トランプ氏はカナダが米国の51番目の州になるべきだとの主張をあらためて強調した。
- カーニー氏は首相就任後初めてトランプ氏と会談した。この会談が自身の任期を決定づける対米関係の基盤になると位置づけ、両国間の経済・安全保障関係の再構築を目指している。
- トランプ氏は会談前、厳しい交渉を迫るとほのめかしていた。自身のソーシャルメディアに「われわれは彼ら(カナダ)の自動車も、エネルギーも、木材も、彼らの持つものは何も必要としていない。ただし友情は別だ。これは常に維持したい」と投稿していた。
- トランプ氏は会談中、カナダが51番目の州になるべきだと自説を繰り返したが、これまでより柔らかい口調だった。米国が併合すれば米軍の保護下に入ることができ、カナダ国民には減税に当たると主張した。
- カーニー氏はトランプ氏に対し、不動産開発業者として、売却対象にならない場所があることを知っているはずだと述べた。「過去数カ月間の選挙運動中にカナダの所有者(有権者)と会ってきたが、わが国は売却対象ではない。今後も決して売却されることはない」
- これに対しトランプ氏は「決してないとは言えない」と述べた。
- トランプ政権1期目に締結した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)は、2026年に3カ国の政府が見直す予定だ。カナダから米国への輸出品の大半がUSMCAの対象品目で、おおむね関税を免れてきた。
- トランプ氏はUSMCAを「暫定的な手段」だと位置づけた。カーニー氏は、両国間の幅広い交渉の一環としてUSMCAを再検討する意向を示し、「協定の一部は変更しなければならない」と語った。
- ●先進国中銀、金融当局
- ベッセント氏、米債務上限「警戒ゾーン」と再警告-時期言明せず - Bloomberg
- ベッセント米財務長官は6日、連邦債務の上限枠内での借り入れ能力が尽きるまでの「警戒ゾーン」に入っていると改めて述べたが、具体的な時間枠への言及は避けた。
- 同長官は下院歳出委員会で証言。財務省がすべての債務を期日通りに払えなくなる、いわゆる「Xデー」が近づいていると「われわれが判断すれば、議会に報告する」と、質疑応答で述べた。財務省ではまだ、最新の納税申告に基づく税収を集計しているところだと続けた。
- 米連邦債務の法定上限は1月初めに適用が再開された。米財務省は特別会計措置を活用することで上限を上回らないように債務支払いを継続している。財務省は8月から10月にかけて、債務上限の引き上げ、もしくは適用の一時停止を議会に求めざるを得なくなるとウォール街のアナリストらはみている。
- 「今は警戒ゾーンにある」とベッセント氏。米政府によるデフォルト(債務不履行)は決してないと強調し、債務上限を迂回(うかい)するための「小細工」は財務省は用いないと誓約した。
- 米政府の特別会計措置による資金繰りがいつまで持つのか、財務省は5月前半中に新たな見通しを示すと先週表明した。超党派の機関である米議会予算局(CBO)のスウェーゲル局長は5日、連邦政府の歳入は当初予想通りに推移している模様だと述べ、「夏の終わり頃、8月から9月にかけてまで」持ちこたえられると示唆した。
- 上限引き上げ
- 議会共和党はこの夏、債務上限を5兆ドル引き上げて約41兆ドルにすることを目指し、それを盛り込んだ税制・歳出削減パッケージ法案を作成中だ。上限引き上げは新規の歳出を認可するものではなく、国債保有者や退役軍人、社会保障受給者への支払いなど、すでに発生している義務の履行を可能にする。
- ベッセント長官はさらに、連邦財政は持続不可能な軌道にあるとも指摘し、広く共有されている認識を改めて指摘した。しかしいつの時点で金融市場が「反旗を翻す」のか、タイミングを「見極めるのは非常に難しい」と述べた。
- 「債務の数字は実に恐ろしい」とベッセント氏。危機に陥れば「経済が急停止し、信用が喪失する」と述べ、「そのようなことが起きぬよう力を尽くす決意だ」と語った。
- 関税
- 貿易相手国との交渉について質問され、ベッセント長官は一部で「非常に良い」オファーの提示を受けたと回答。早ければ今週中にも合意の発表があり得るとした政権の見方を踏襲した。
- 「18カ国の重要な貿易相手国のうち、17カ国と現在交渉中だ」と述べ、中国が唯一の例外だと指摘した。「米国に課されている関税が大きく引き下げられ、非関税障壁は緩和されると期待している」と述べた。
- 一部の交渉は「非常に順調に進行している」と述べたが、相手国は明らかにしなかった。「米国に対して非常に良いオファーを持ちかけてくる貿易相手国は多数ある」と述べた。
- 合意の時間枠については「年内に80-90%以上がまとまるのは確実だと考えている」と述べ、「早ければ今週にも、主要な貿易相手国の一部と通商合意を発表できるだろう」と続けた。
- ●先進国経済指標
- ●金融市場、先進国トピックス
- EU、1000億ユーロ相当の米国製品を関税標的に-交渉決裂なら - Bloomberg
- 欧州連合(EU)は、対米通商交渉の結果に納得しない場合、約1000億ユーロ(約16兆2000億円)相当の米国製品を対象に追加関税を課す計画だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。
- 計画が非公開だとして匿名を条件に語った関係者によると、新たな報復案は7日にもEU加盟国に伝えられる。1カ月にわたって協議を行い、最終的な関税対象リストをまとめるという。その間にリスト内容が変更される可能性もある。
- ブルームバーグはこれより先、EUの行政執行機関である欧州委員会は週内に米国側に文書を提出し、交渉再開に臨む見通しだと報じた。EUの提案には、貿易および非関税障壁の引き下げや、欧州の対米投資の拡大などが含まれるとみられている。
- EUと米国の通商交渉は先月、本格的に始動したものの進展に乏しく、米国の対EU関税は大部分が維持される可能性がある。EUは6日、トランプ米政権の通商調査によって、関税対象となるEU製品の規模は5490億ユーロに拡大するとの見方を示した。
- 欧州委員会の報道官はコメントを避けた。
- 今回の対抗措置は、トランプ大統領による25%の鉄鋼・アルミニウム関税への報復としてEUが既に関税標的にした210億ユーロ相当の米国製品に追加される形となる。EUはその後、米国が関税措置に対する姿勢を軟化させたことを受け、報復措置を90日間停止している。
- インドと英国がFTA締結で合意、トランプ関税への対応急ぐ - Bloomberg
- 三井住友銀行、プライベートクレジット分野で提携-米豪の2社と - Bloomberg
- 三井住友銀行は米モンロー・キャピタルとオーストラリアのMAファイナンシャル・グループの資産運用部門と提携し、成長が著しいプライベートクレジット市場で17億ドル(約2400億円)規模の融資に共同で取り組む。
- 幹部らによると、提携では米国の中堅企業をターゲットに据える。今月から第一順位担保権付シニアローンの提供を開始する。需要に応じて規模を拡大する可能性もある。
- 三井住友銀行の米州部門でプライベートクレジットを統括するトーマス・バーゲン氏はインタビューで、「われわれ3社はこの提携を拡大可能な長期パートナーシップにすることにかなり注力している」とし、「クレジットと投資に対し共通の方針」を有していると語った。
- 銀行とプライベートクレジット会社は融資提供で競合関係にあると長らく考えられてきたが、両者が結束の動きを強める中でウォール街と資本市場で再編が進みつつある。銀行は自己資本の多くをリスクにさらすことなく規制に抵触しない形で、手数料収入を安定的に確保することを目指している。
- 一方、プライベートクレジット企業は銀行の顧客基盤を活用した新たなビジネス機会を模索している。調査会社プレキンによると、プライベートクレジット企業の運用資産は約1兆6000億ドル。
- 3社とも、今回の事業で投資可能な資本を提供する予定で、MAファイナンシャルは運用するファンドから資金を拠出する。
- 今回の提携では、三井住友銀行のプライベートクレジットおよびスポンサーファイナンス、モンローのダイレクトレンディング、MAファイナンシャルのクレジット・共同融資における専門性を組み合わせる形となる。
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- 中国、7日に「金融政策パッケージ」発表へ-人民銀など金融当局 - Bloomberg
- 中国人民銀行(中央銀行)、国家金融監督管理総局、中国証券監督管理委員会(証監会)の当局者は、7日現地時間午前9時、「市場と期待を安定させる金融政策パッケージ」について発表する。中国政府が6日発表した。
- トランプ米大統領が145%の関税を課し、中国国内の経済見通しに対する懸念が拡大する中で、中国政府が経済を安定させ、信頼感を高めるための新たな措置を発表するとの見方が強まっている。
- これまで以上に強力な経済刺激策が講じられなければ、中国経済の成長は4-6月期(第2四半期)から鈍化し、政府が今年目標とする約5%の成長が危ぶまれる。政府幹部は技術、貿易、国内消費など主要分野への新たな金融手段や融資支援を導入する方針を示しており、市場は新たな政策ツールの兆しを見極めようとしている。
- 中国人民銀行の潘功勝総裁が、成長促進と市場支援を目的とした大規模な金融緩和措置を昨年9月に発表した際は、市場心理の改善を後押しし、株式市場の急騰を引き起こした。この記者会見も今回同様、直前に開催の通知があった。
- 中国政府はこれまでのところ、米国との貿易戦争については抑制的な対応を取っている。当局者が引き続き十分な手段を保有していると強調する一方、大規模な景気刺激策は回避してきた。政策当局者は、関税の影響を評価する時間を確保すると同時に、状況が悪化した場合に備え、柔軟性を維持しようとしているとみられる。
- 習近平国家主席率いる共産党中央政治局は4月25日の会議で、高まる外部ショックに対処するための緊急計画を「万全に準備する」と表明した。
- 7日の発表に向けては、市場の関心は金融緩和に集中している。人民銀は9月以降、市場の期待に反し、市中銀行の預金準備率を引き下げていない。9月の準備率引き下げは、政策金利の引き下げと同時に行われた。人民銀はこの数カ月間、国内外の経済・金融情勢に応じ、金利と準備預金率を引き下げる方針を示している。
- 習主席、米国への対抗でEUに協力求める-関係50年記念メッセージで - Bloomberg
- 中国の習近平国家主席は、欧州連合(EU)に宛てたメッセージの中で、米国のトランプ大統領が世界秩序を塗り替えようとする動きを暗に批判し、中国と共に反対姿勢を示すよう、EU首脳らに求めた。米国との関係が悪化する中、中国はEUとの関係改善に意欲を示している。
- EUと中国の関係樹立50周年を記念し、習氏は欧州委員会のフォンデアライエン委員長、コスタ欧州理事会議長(EU大統領)へのメッセージで、中国とEUは互いの違いを「適切に調整」し、戦略的対話を深化させる必要があると呼びかけた。
- 国営新華社通信は6日、習氏が「中国とEUは多国間主義を堅持し、公平と正義を守り、一方的ないじめに対抗すべきだ」と発言したと伝えた。
- 中国は6日、一部の欧州議会議員に科している制裁措置の一時停止についても、初めて公に認めた。制裁措置の撤回は先週、欧州議会のメツォラ議長が確認していた。
- 中国外務省の林剣報道官は6日の定例記者会見で、中国とEUの関係は「紆余(うよ)曲折」はあったものの、新たなページをめくる時が来たと述べた。
- 中国国営中央テレビ(CCTV)によると、林氏は「現在の状況下、中国とEUは対話と協力を強化することが非常に重要と認識している。中国とEUの交流が完全に再開されれば、双方の対話と理解が深まるものと信じ、期待している」と述べた。
- 中国は、トランプ氏がEUを孤立させようとする中、より信頼できるパートナーとして接近し、EUとの関係修復を図っている。
- 新華社通信は、林氏の発言を引用し、中国政府はコスタ氏とフォンデアライエン氏が「適切な時期」に、新たな2国間協議のため訪中することを歓迎すると報じた。
- 中国大型連休の国内旅行支出8%増、1人当たりはコロナ禍前下回る | ロイター
- 中国文化観光省は6日、労働節(メーデー)に伴う5連休の国内旅行支出が前年同時期と比べて8%増の1802億7000万元(249億2000万ドル)だったと発表した。
- 国内旅行者数は6.5%増の延べ3億1400万人だった。
- 政府データに基づくロイターの算出では、1人当たりの支出額は1.5%増の574.1元。コロナ禍前の2019年の水準(603.4元)を依然として下回っている。
- 中国で人気の決済アプリ「微信支付(ウェイシンペイ)」を利用した取引件数は10%超増加。飲食店での支出が顕著に増加した。
- 一方、映画興行収入は7億4700万元と、昨年の15億3000万元の半分程度にとどまった。
- 連休中の出入国者数は1090万人で、24年比で28.7%増加した。新華社によると、このうち外国人は43.1%増の110万人。
- ルーマニア首相が辞任表明、やり直し大統領選で極右に敗北 連立からも離脱と - BBCニュース
- ルーマニアで4日、やり直しの大統領選挙の第1回投票が実施され、極右政党「ルーマニア人統一同盟(AUR)」を率いるジョルジェ・シミオン氏が40%超の得票率で首位となった。これを受け、与党・社会民主党のイオン=マルチェル・チョラク首相は5日、辞任を表明した。また、同党が親欧州の連立政権から離脱するとした。
- ルーマニア第一主義を公約に掲げる、欧州懐疑派のシミオン氏は4日、やり直しの大統領選挙の第1回投票で40.9%の票を獲得。18日の決選投票でも勝利が予想されている。
- 決選投票では、第1回投票で社会民主党の候補を僅差で破った、リベラル派のブカレスト市長ニクショル・ダン氏と対決する。
- ルーマニアは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の中で東側の最前線に位置する。4日の開票結果は、そのルーマニアをさらなる政治的混乱に陥れた。チョラク首相は連立政権がその目的を果たせず、「正当性がない」ため、政権から手を引くべきだと同僚らに語った。
- シミオン氏が今回首位に立った大きな要因は、ルーマニアの憲法裁判所が、昨年11月に行われた大統領選の第1回投票を無効としたことへの民衆の不満だ。シミオン氏は決選投票で勝利すると予想されており、欧州各国だけでなくウクライナの政府も、その行方に神経をとがらせている。
- シミオン氏はかねてから、強固な主権国家からなる欧州連合(EU)を望んでいると述べている。同氏率いる極右政党AURは、ロシアによる侵攻が続くウクライナへの武器供与に反対している。
- チョラク首相は今後、イリエ・ボロジャン暫定大統領に辞表を提出し、ボロジャン氏が暫定首相を任命するとみられる。
- 「ルーマニアは、マルチェル・チョラク氏の辞任後、最大45日間の政治的不安定に直面する」と、同国の独立監視団体「ファンキー・シチズンズ」のエレナ・カリストル氏は警告している。
- 「ルーマニアが安定したリーダーシップを最も必要としている時に、これは危険な権力の真空を生み出すことになる」
- 連立政権は失敗に終わったと
- チョラク首相は連立を組む3党について、統一候補の擁立と、議会の過半数獲得を目指して集まったのだと、同僚らに語った。
- 「二つの目的の一つは失敗に終わった」とし、「4日の投票結果を見て、現在の連立政権には、このようなかたちではもはや正当性はないことを物語っていると感じた」と述べた。
- 「いずれにせよ、新大統領は私にとって代わるはずだ。そうなると、メディアが報じているのを見聞きしている。新しい連立政権が樹立されるだろう」
- 連立を組むリベラル政党・国民自由党のカタリン・プレドィウ党首は、「現在の課題に対処できる」首相を探していると述べた。
- 一方、ブカレストの北東に位置するブザウの市長(社会民主党)は、社会民主党党首のチョラク氏を厳しく批判。「我々は恥をかいた。それは指導部の長きにわたるお粗末な判断のせいでもある」とした。
- シミオン氏とは
- シミオン氏はアメリカのドナルド・トランプ大統領を称賛する立場を示してきた人物。
- 昨年11月の大統領選挙の第1回投票で勝利した極右のカリン・ジョルジェスク氏が、やり直し選挙への立候補が禁止されたことで、シミオン氏は大統領選挙の最有力候補に躍り出た。
- ジョルジェスク氏は、北大西洋条約機構(NATO)懐疑派で、過去にロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛したことがある。第1回投票は、ソーシャルメディアでの国外発の大規模な影響工作があったとされ、憲法裁が無効とした。
- シミオン氏は4日、ジョルジェスク氏と並んで投票。有権者に対し、選挙は「うそをつかれ、無視され、辱めを受け、それでもなお自分たちのアイデンティティーと権利を信じて守る強さを持ち続ける、すべてのルーマニア人のものだ」と語った。
- シミオン氏はルーマニアの領土を、かつての範囲(現在のモルドヴァやウクライナが含まれる)にまで拡大することを提唱している。同氏は現在、モルドヴァとウクライナへの入国を禁止されている。
- 政治アナリストのラドゥ・アルブ=コマネスク氏は、4日の投票結果は「現在の政治体制に対する敵意の過激な現れ」だと、ルーマニアの公共ラジオに語った。
- シミオン氏は今回、外国に移住した有権者から特に支持され、スペインでは73%超、イギリスでは65%近くの支持を集めた。
- ウクライナ難民に対するルーマニアの財政支援に対する国民の憤りは、シミオン氏の選挙運動の中心になっているが、同氏は自分は親ロシア派ではないとしている。
- 「ロシアはルーマニア、ポーランド、バルト三国にとって最大の脅威であり、この戦争がどこにも拡大しないかどうかが問題だ」と、シミオン氏はBBCに語った。
- 決選投票で対決するシミオン氏とダン氏はともに、現体制反対派の候補として立場を確立しているが、掲げている解決策は大きく異なる。前出のカリストル氏は、ルーマニアは注目すべき政治的転換期を迎えていると指摘する。
- 「反体制的な感情が必然的に反欧州的な立場に結びつくのか。それとも、ルーマニアが変革への願望を、建設的な民主的刷新へと導くことができるのか。選挙結果で明らかになるだろう」と、カリストル氏はBBCに語った。
- インド、パキスタンの「テロリストのインフラ」を攻撃 3人死亡 | ロイター
- ポーランド、「ロシアによる選挙干渉に直面」と副首相 18日に大統領選 | ロイター
- ポーランドのガフコフスキ副首相兼デジタル相は6日、大統領選の第1回投票が5月18日に迫る中、ポーランドはロシアによる前例のない選挙干渉の試みに直面していると述べた。
- ガフコフスキ氏は防衛関連の会議で「ポーランドの大統領選はロシアによる選挙介入という前例のない試みに直面している」とし、重要インフラに対する攻撃と偽情報の拡散を組み合わせて実施し、国家の正常な機能を麻痺させようとする試みがあると指摘。水道、下水道会社や発電所などのほか、国家行政機関が攻撃を受けており、今年に入ってからロシアによるこうした攻撃への関与が2倍以上に増加していると述べた。
- ポーランドはウクライナに対する支援の拠点。隣国ルーマニアでロシアによる選挙介入が疑われる中、憲法裁判所が昨年11月の大統領選の投票を無効としたことを受け、警戒を強めている。
- ロシアは選挙干渉の疑惑を繰り返し否定している。
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
- NY市場サマリー(6日)株続落、ドル下落 利回り低下 | ロイター
- ### 為替市場(NY外為市場)
- * **ドルは円や主要通貨に対して下落**。理由は、トランプ政権の貿易協定が進展しないことへの懸念。
- * **ユーロは上昇**。ドイツでCDUのメルツ党首が首相に選出された影響。
- * **ドル/円は0.86%安の142.44円**、**ユーロ/ドルは0.50%高の1.1371ドル**。
- * **カナダドルも上昇**(+0.39%)。カーニー首相がトランプ氏と会談。
- ### 米債券市場
- * **米国債利回りは低下**。10年債入札が好調で需要の強さが示された。
- * **最高落札利回りは4.342%**、応札倍率は**2.60倍**と良好。
- * \*\*ディーラーの落札比率が8.9%\*\*と低く、投資家の需要が強かったことを反映。
- ### 米株式市場
- * **米株は続落**。トランプ政権の関税方針が不透明で、市場に不安感。
- * 財務長官は**一部貿易合意の可能性に言及**したが、具体性はなし。
- * **3月の米貿易赤字は14.0%増(過去最大)**。企業の駆け込み輸入が影響。
- ### 金市場(NY金先物)
- * **金は3営業日続伸**。FRBの政策決定前にリスク回避の動き。
- * **高関税政策や世界経済への影響懸念**が金買いを後押し。
- * **中国市場の再開**も金の買いを強めた要因。
- ### 原油市場(NY原油先物)
- * **原油は3営業日ぶりに反発**。ドル安による割安感と中国の買いが支援。
- * **中東情勢の緊張やEUのエネルギー政策も地合いを支えた**。
- * ただし、**FRBの金融政策発表を前に、60ドル突破はならず**。
- [CMI] カミンズ 1Q減収営業増益 売上高3%減81.7億ドル、営業益23%増11.3億ドル、EPS5.96ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [TSN] タイソンフーズ 2Q減益 売上高横ばい130億ドル、営業益68%減1.00億ドル、EPS0.02ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [BRK.A] バークシャーハサウェイ 1Q微減収最終減益 売上高微減897億ドル、純利益64%減46.0億ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [L] ロウズ 1Q増収最終減益 売上高6%増44.9億ドル、純利益19%減3.70億ドル、EPS1.74ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- 米欧石油大手決算、各社で明暗 自社株買いに反映 | ロイター
- 米欧石油大手4社が2日までに発表した2025年1─3月期決算では、原油価格が4月に4年ぶり安値に落ち込んだことを受けた、業界の景気悪化を乗り切るのに必要な体力で各社の明暗が分かれた。
- 投資家は各社が自社株買いを減らすかどうかに注目。原油価格の下落で自社株買いの資金が減るためだ。石油業界では自社株買いと配当が投資家の関心を集める。
- 米エクソンモービル(XOM.N), opens new tabと英シェル(SHEL.L), opens new tabが自社株買いのペースを維持した一方で、米シェブロン(CVX.N), opens new tabと英BP (BP.L), opens new tabは4─6月期に自社株買いを減らすと表明した。
- この違いは各社の景気の違いを浮き彫りにする。
- エクソンモービルは南米ガイアナで権益を持つ大規模油田の豊富な生産が業績を支える。米国有数のシェールオイル産地・パーミアン盆地でも操業するエクソンの産油量は前年同期比20%増だった。
- ウッズ最高経営責任者(CEO)は、いずれの産油地でも利益率は高く、操業コスト削減に取り組んでいると説明。「この不透明な市場で、株主は当社がこれに耐えられることを知って自信を持てるだろう」と語った。
- 一方、シェブロンの1─3月期の石油・ガス生産は前年同期並みだった。カザフスタンとパーミアン盆地の生産増は、資産売却に伴う生産減で相殺された。同社は今年に入り、事業整理とコスト削減の一環として最大20%の人員削減を発表した。
- シェブロンは市場の状態を反映し、自社株買いを1─3月期の39億ドルから4─6月期は20億─35億ドルに減らす方針を示した。
- 英シェルの1─3月期利益はアナリスト予想を上回った。同社は4─6月期に35億ドルの自社株買いを行うと発表。30億ドル以上の水準は14期連続となる。
- BPの1─3月期の利益は48%減の14億ドルに落ち込み、同期の自社株買いは約18億ドルから7億5000万ドルに縮小した。 BPは、低炭素エネルギー事業への転換を同業他社より積極的に進めていたがうまくいかず、石油・ガス事業に再び注力する戦略転換のさなかにある。
- [CLX] クロロックス 3Q減収最終黒字転換 売上高8%減16.6億ドル、純利益1.86億ドル、EPS1.50ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- フォードが通年見通し撤回、トランプ関税で15億ドルの影響見込む - Bloomberg
- トランプ大統領、今週中にも一部の国と貿易合意の可能性と示唆 - Bloomberg
- トランプ米大統領は4日、一部の国との貿易合意が今週中にまとまる可能性があると示唆した。米国の高関税を回避したい貿易相手国にとっては事態打開の兆しとなる。
- トランプ氏は、今週中に何らかの貿易合意がまとまる見込みはあるかとの記者団の質問に対し、「その可能性は十分にある」と答えた。具体的な国名には言及しなかった。
- 「多くの国々と交渉しているが、最終的には私自身が取引をまとめることになる。相手が決めるのではなく、私が決める」と、大統領専用機エアフォースワンの機内で発言。「あなた方は『いつ合意するのか』と同じ質問を繰り返すが、それは私次第であり、彼ら次第ではない」と語った。
- トランプ氏はまた、政権当局者が自身の貿易政策の最大の標的となっている中国と交渉を行っていることも示唆した。
- アジア諸国との交渉進展や米中間の緊張が緩和に向かう兆しを背景に、金融市場はこの2週間で落ち着きを取り戻しつつある。
- トランプ氏の関税政策は中国に照準を定めている。現在、中国製品には最大145%の関税が課されている。これに対抗して中国も報復関税を課している。最近、中国側から歩み寄りの兆しも見られており、トランプ氏は4日に放映されたNBCのインタビューで、対中関税をいずれは引き下げることに積極的な姿勢を示した。
- トランプ氏はエアフォースワン機内での記者団の質問に対し、中国の習近平国家主席と今週中に話し合う予定はないと述べた。
- 中国商務省は先週、米国との通商協議の可能性を現在検討しているとの報道官談話を発表。米国との貿易交渉が行われていることを初めて公式に認めた。トランプ氏の側近らは既に複数の国と協議を進めているが、米政府高官らは、最終的には相手国に対して関税を課す意向であることを引き続き示唆している。
- トランプ氏は4日、「ある時点で、私が一定の関税率を定めることになる」と発言。「今後2-3週間以内に私が取引をまとめることになるだろう」と述べた。
- トランプ氏の広範囲の関税政策は、ここ数週間で世界の金融市場を混乱させ、景気後退への懸念を引き起こすとともに、ドルを圧迫している。
- 先週発表された米国の1-3月(第1四半期)国内総生産(GDP)速報値は2022年以来のマイナス成長となった。
- バンス副大統領は先週のFOXニュースのインタビューで、インドが最初に貿易協定を結ぶ国の一つになる見込みだと発言。日本と韓国、そして「欧州の人々」との交渉も進行中だと話した。
- 【寄稿】トランプ流、経済成長へ3つの方法=ベッセント氏 - WSJ
- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の読者なら誰よりもよく知っているだろう。過去40年間、ウォール街が歴史的な成功を収めてきたことを。1980年以降、S&P500種指数は5500%超上昇している。米国の資本市場は世界の羨望(せんぼう)の的であり、ドナルド・トランプ大統領はそれをさらに強化する意向だ。
- トランプ大統領は、アメリカンドリームに資金を提供する上でウォールストリート(ウォール街)が果たす重要な役割を認識している。しかし、今度はメインストリート(労働者や中小企業を指す)が繁栄を分かち合う番だ。これが大統領の大胆な経済政策を貫く信念だ。
- 最近の経済成長では多くの労働者家庭が取り残されたが、今度はそうならないようにしたいと大統領は考えている。トランプ氏の大統領就任後100日間で、われわれは世界貿易の再均衡化、米国の産業基盤の回復、そしてウォールストリートとメインストリートが共に成長できる経済の構築に向けた基盤を築いた。
- このような経済再均衡の緊急性を理解するには、そもそもなぜそれが必要なのかを理解することが重要だ。2000年代初めは新自由主義の絶頂期で、専制政治が民主主義と自由貿易に取って代わられる「歴史の終わり」だった。中国が2001年に世界貿易機関(WTO)加盟後、世界の商取引で台頭した時期と重なることも偶然ではない。エコノミストのデービッド・オーター、デービッド・ドーン、ゴードン・ハンソンの3氏は、2016年に発表した貿易自由化の不均衡な影響に関する論文で「チャイナ・ショック」を明らかにした。米国民370万人が職を失い、中国への生産拠点の移転が米製造業における雇用喪失の59.3%を占めていた。これら労働者のほとんどが長期失業に陥った。
- こうした破壊的な政策の支持者は、まるで補助金がアウトソーシングによって打撃を受けた家庭やコミュニティーを癒やせるかのように、富の再分配によってその損失を補うべきだと主張した。究極の侮辱として、一部の学者はこれを「敗者への補償」戦略と呼んだ。それは、ひどい失敗に終わった。
- 消費財の価格は下がったものの、住宅、教育、医療保険のコストが急騰し、生活費は上昇した。多くの米国民が実質所得の減少を経験した。トランプ氏が登場するまで、主要な政治家は誰一人として、グローバル化によって引き起こされた国家の分断に目を向けなかった。
- 貿易によって分断された国を再びどう結束させるのか。国家安全保障を強化しながら、すべての米国民が今後成功できるようにするにはどうすればよいのか。こうした問いは新政権にとって最重要課題だ。われわれの経済政策はそれに答えようとしている
- トランプ氏は米国史上最も繁栄した10年間をもたらそうとしているが、それは労働者階級の名誉や尊厳を犠牲にして成し遂げるつもりはない。政権は経済の新たな方向性を示している。それはメインストリートとウォールストリートの両方を押し上げるものだ。以下の三つの方法でこれを実行している。
- 第一に、国際貿易の再交渉である。関税は国際貿易のバランスを取るための効果的な手段だ。他国の貿易障壁を減らし、米国の生産者にもっと多くの市場を開放すると同時に、製造業の雇用を大量に取り戻す。
- 経済安全保障は国家安全保障である。コロナ禍は、米国のサプライチェーン(供給網)のぜい弱性と重要な製造業で他国に依存するリスクを浮き彫りにした。関税は供給を国内に戻すことで米産業の生産能力を高め、国家安全保障を強化できる。また、相当な増収が期待できる。
- 第二に、2017年の減税・雇用法を恒久化し、大統領が優先する新たな税制措置を導入することだ。チップや残業代、社会保障給付金への課税をなくす。トランプ氏の税制改革は、無謀な通商政策の被害を受けた米国民の生活の質を向上させるだろう。これらの改革を進め、2017年の減税を恒久化することで、個人と企業に確実性をもたらし、経済成長を加速させる。労働者と中小企業は、成長を促すトランプ政権1期目の税制政策から最も恩恵を受けた。下位50%の世帯は、上位10%よりも純資産の増加率が高かった。政権は現在、これらの措置が2025年末に失効しないよう議会と緊密に取り組んでいる。大統領経済諮問委員会(CEA)は、トランプ減税の延長に失敗すれば、子ども2人の中所得世帯で4000ドル(約58万円)超の手取り収入が失われると推定している。
- 今年の税制法案は、設備投資の100%即時償却を復活させ、再工業化を加速するために新工場建設にも優遇措置を拡大する。大統領が提案する米国製自動車のローン控除は、より多くの生産、雇用、減税を促進する。
- 第三に、規制緩和だ。米国の産業を再び構築しなければならないが、それには住宅や工場だけでなく、半導体、発電所、AI(人工知能)データセンター、その他の未来のテクノロジーも含まれる。産業の生産能力を再び呼び覚ますことは、労働者階級と中産階級の雇用と賃金を引き上げる鍵であり、中国と技術的・軍事的優位性を競う唯一の方法だ。
- 政府は米国産業の邪魔をしないようにする必要がある。そのため、意欲的な規制緩和策を政権は採用している。有害な規制を撤廃することで、国の債務を軽減し、個人や企業にとっては節約につながる。トランプ氏はすでにバイデン前政権の規制を撤廃しただけで、平均的な4人世帯に2100ドルの節約をもたらしている。米国民の節約に寄与するだけでなく、地域の金融機関やその他の小規模銀行への過度なコンプライアンス負担を軽減することで、資本へのアクセスを強化したいとわれわれは考えている。これらの金融機関は自動車・住宅ローンを提供し、メインストリート経済において重要な役割を果たしている。
- また、規制緩和策においては、エネルギー支配を確立することも不可欠だ。エネルギーは米国の製造業再生を加速させる。大統領は国家エネルギー非常事態を宣言し、アラスカ州で153万エーカー(約6191平方キロ)のエネルギー開発を開放し、バイデン政権が行った液化天然ガス(LNG)ターミナルの一時停止を解除した。ガソリンの平均価格は1年前より50セント低下している。
- トランプ氏の経済政策を批判する者は政策を個別に攻撃する。このような都合の良いやり方は、これらの政策がいかに相互に関連しているかを無視している。貿易、減税、規制緩和は独立した措置ではなく、経済成長と国内製造業を推進するよう設計されたエンジンの連動する部品なのだ。
- 減税と規制緩和によるコスト削減は、家計や企業の実質所得を引き上げる。関税は所得税を軽減し、再工業化のインセンティブを生み出す。規制緩和は、エネルギーと製造業への投資を促すことで関税を補完する。
- エンジンはすでに始動している。2日発表された4月の雇用統計では、非農業部門就業者数は前月比17万7000人増となり、2カ月連続で予想を上回った。1月以降、民間部門の雇用は50万人超増えている。さらに、インフレ率は低下している。消費者物価はコロナ禍以来、初めて下落した。
- これはまだエンジンのシリンダーが動き始めたばかりの状態だ。米国民は2025年下半期にエンジンが動き続けるのを期待していいだろう。すべてのピストンが動き出せば、より多くの雇用と製造業が生まれ、成長が加速し、国家の防衛は一段と強固になる。賃金が上昇する一方で税金は下がり、規制による負担も減る。エネルギー価格は低下し、国の債務は減る。中国への依存も低下する。強いドルを維持しながら、これらすべてが実現するのを目にすることになるだろう。
- これこそが、労働者階級を回復させ、米国を再び産業大国として確立し、偏った通商政策の過ちを正す方法である。これこそが、メインストリートを並走させながら、この先40年にわたりウォールストリートが成功する道を開く方法である。これこそが、すべての米国民のために米国を再び偉大にする方法である。
- トランプ米大統領、中国と「公正な貿易協定」望むと表明 | ロイター
- トランプ米大統領は4日、貿易協定を巡り中国を含む多くの国と協議しており、中国に関する最優先事項は公正な取引を確保することだと述べた。大統領専用機内で記者団に語った。
- 中国の習近平国家主席と今週会談する予定はないものの、米政府高官が中国政府高官とさまざまな問題について協議していると述べた。
- 週内に何らかの貿易協定が発表されるかとの質問には「大いにあり得る」と答えたが、詳細は明らかにしなかった。
- ベッセント財務長官、米国は世界資本にとって「最優先の投資先」 - Bloomberg
- ベッセント米財務長官は5日、米国は世界資本にとって「最優先の投資先」だと述べ、トランプ政権の政策はその地位を確固たるものにすると主張した。先月に顕在化したいわゆる「米国売り」に対抗する発言。
- 「米国は国際資本にとって最優先の投資先だ」とベッセント氏はカリフォルニア州ビバリーヒルズで開催されたミルケン研究所グローバルコンファレンスで講演。トランプ大統領の貿易、税制、規制緩和の政策は「いずれも同じ目標に向かっている。 世界資本の受け皿としての米国の地位を確固たるものにすることだ」と語った。発言は講演原稿に基づく。
- 先月にはトランプ氏が主要貿易相手国への大幅な上乗せ関税を発表したことを受け、米国株が売られ、ドル建て資産の国際的な魅力に対する懸念が顕在化していた。通常の動きとは異なり、米国債も急落し、これまでのような「安全資産」としての役割を果たすことができなかった。ドルも下落した。
- イエレン前米財務長官はこうした動きについて、「米経済政策への信認の低下」という憂慮すべき兆候だとの見方を示していた。
- ベッセント氏は、トランプ氏の政策は米国への長期的な投資を推進する「エンジンの相互に連動した部品だ」と説明。貿易政策の目的は「米国の労働者と企業にとって公平な競争環境を整えること」だと改めて強調した。
- ●先進国中銀、金融当局
- ●金融市場、先進国トピックス
- ドル安でアジア通貨急伸、中銀が相次ぎ介入-米国売りの余波広がる - Bloomberg
- アジア通貨はドル安を背景にかつてない高値に達しており、域内の中央銀行は行き過ぎた通貨高を抑制するため介入を余儀なくされている。
- 香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)は2日、香港ドルと米ドルとのペッグ(連動)制の防衛に向け、過去最大規模の米ドル買い介入を実施。台湾ドルが1988年以来の大幅高を記録したことで、台湾中銀も介入に踏み切った。オフショア人民元は昨年11月以来の高値を付けた。
- こうしたボラティリティーは、トランプ米大統領による関税政策の変動で米国のリセッション(景気後退)懸念が強まる中、世界の準備通貨であるドルからの資金流出の影響が金融市場全体に波及する可能性を示している。投機的トレーダーは先週、ドルに弱気なポジションを昨年9月以来の高水準に積み上げた。投資家の間で米国資産の保有に消極的な姿勢が広がっていることがうかがえる。
- 「米国売り」の流れの中で、円や人民元を含むアジア通貨は、レパトリエーション(自国への資金回帰)に伴う買いと代替投資需要の恩恵を受けている。米中両国の政府は貿易戦争を巡る姿勢を軟化させているように見えるものの、この戦略自体は依然として維持されているようだ。中国は、米国側との通商協議の可能性を検討中だとしている。
- ジェフリーズの外国為替グローバル責任者、ブラッド・ベクテル氏は「ドルの価値が下がれば、今回の貿易摩擦の多くは自然と和らぐだろう。したがって、アジア通貨のドルに対する若干の下落に備えることは理にかなっているかもしれない」と指摘した。
- 2日のアジア外為相場は急伸し、ブルームバーグ・アジア・ドル指数は2022年以来の上昇率を記録。MSCI新興国通貨指数は終値ベースで過去最高値を更新した。
- 新興国の通貨が上昇すれば、外国資本の流入を促し輸入コストを押し下げる一方で、輸出企業にとっては自社製品の世界的な競争力が低下するリスクがある。
- ゴールドマン・サックス・グループのカマクシャ・トリベディ氏らアナリストはリポートで、「ドルが圧迫される中、米国で景気後退リスクが高まり、金利が低下する可能性もあるため、アジアの輸出企業にとって、ドル預金を維持するリスクリワードのバランスはこれまでと大きく異なっている」と指摘。人民元と台湾ドル、マレーシア・リンギットなどの通貨が上昇する可能性が高いとの見方を示した。
- 加藤勝信財務相、米国債の売却「日米関税交渉の手段とは考えていない」 - 日本経済新聞
- 加藤勝信財務相は4日(日本時間5日)、イタリア・ミラノでの記者会見で、日米関税交渉について「米国債の売却を日米交渉の手段とは考えていない」と述べた。日本は外貨準備として多くの米国債を保有しているとみられている。
- 加藤氏は2日のテレビ東京番組で、日本がもっている米国債を安易に売らないとの発信手段があるかと問われて「交渉カードとしてはある」と発言していた。「カードを切るか切らないかは別の判断だ」と付言もしていた。
- 4日のイタリアでの会見では、これらの発言に関して「(保有する米国債の)売却に言及したものではない」との考えを強調した。
- 財務省によると、3月末時点の外貨準備高は1兆2725億ドル(およそ185兆円)だった。為替介入の原資などになっており、証券の多くを米国債で運用しているとみられる。日本は米国債の最大の保有国とされている。
- 欧州が構築急ぐ「軍産複合体」 投資家にも好機 - WSJ
- 米国の巨大な軍産複合体には多くの批判がある。だが今の欧州にとってそれは目指すべきものだ。
- ドイツは欧州再軍備5カ年計画の一環として、防衛投資を支出規則の適用除外とする緊急条項を発動するよう、欧州連合(EU)に要請した。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータによると、2024年の世界防衛支出は前年比伸び率が少なくとも冷戦終結以降で最大になった。主に欧州での増加が寄与した。アナリストの推計によると、北大西洋条約機構(NATO)加盟国は2030年までに軍事費をさらに7000億~2兆ユーロ(約115兆~328兆円)積み増す可能性がある。
- もちろん恩恵の多くはロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・ダイナミクスなどの米防衛大手に流れることだろう。だがEUは欧州における軍事調達の少なくとも50%を域内企業が引き受けることを望んでいる。それを実現するには大規模な産業改革が必要だ。米国の成長シナリオが輝きを失う中、投資家はこのチャンスに乗じたいと熱い視線を送る。
- 欧州各国は冷戦終結後、米国と比べて大幅に軍事予算を削減したため、域内の防衛企業はニッチで取扱量が少なく、製品単価の高い生産者となった。欧州航空・防衛大手エアバスの軍事部門は2024年の売上高が120億ユーロ(約2兆円)となり、売上高の半分を米国が占める英BAEシステムズを除き、欧州最大だった。これに対し、米ロッキードの売上高は710億ドル(約10兆3000億円)に達した。
- これにより負のフィードバックループが生まれ、NATO加盟国はすぐ使える製品の購入を、次第に大規模生産が可能な米防衛企業に頼るようになった。EUの執行機関である欧州委員会によると、ロシアのウクライナ侵攻以降、EUの調達増加分のわずか22%しか欧州で購入されていない。
- これを解決するための確かな第一歩は、欧州がすでに製造できる弾薬を生産拡大することだ。EUがウクライナに100万発の大砲の砲弾を2023年3月までに供給できず、11月までかかったことを受け、域内の当局は生産能力増強のため5億ユーロの予算を割り当てた。その4分の1はドイツのラインメタルに投入された。同社は27年までに年間110万発の155mm砲弾を生産し、30年には年間売上高を3倍の300億ユーロにする目標を掲げている。
- ラインメタルは米国式の総合防衛企業に進化したい考えだ。最近、米軍用車両部品メーカーのロック・パフォーマンスや不発弾回収を手がけるシュタシャイト、ソフトウエア開発の「blackned」を買収した。独鉄鋼・工業製品大手ティッセンクルップの軍艦部門の買収も持ちかけたが、それは拒否され、スピンオフ(分離・独立)が選択された。
- だが投資家の熱狂で、ラインメタルの予想PER(株価収益率)は6カ月前の17倍から43倍に押し上げられた。そのような極端なバリュエーションは分散投資の必要性を意味するが、産業基盤が国境にまたがり無駄に細分化される中で、他の明確な勝者を見いだすのは難しい。
- ドイツは主要な戦車製造国だが、米国には主力戦車エイブラムスやブラッドレー歩兵戦闘車、ストライカー装甲車があるのに対し、欧州は複数の競合モデルが各戦車クラスに存在する。フリゲート艦、潜水艦、航空機についても同様だ。
- 戦闘機の分野では、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の支援するユーロファイター・タイフーンが、フランスのラファールやスウェーデンのグリペンと競合する。だが欧州のNATO加盟国で最も人気を集めるのは米ロッキード・マーチン製のF35で、優れたステルス性能を持ち、生産速度は3倍だ。そのおかげで欧州各国は今後20年間、米国のシステムに縛られる。次世代戦闘機の開発も二陣営に分かれている。一方は仏ダッソーとエアバス、もう一方はBAEシステムズ、伊レオナルド LDO 1.14%increase; green up pointing triangle、三菱重工という顔ぶれだ。
- 理想を言えば、これらの企業が2社の巨大企業に統合され、それぞれ統一契約に入札し、最終的に1種類の戦闘機が開発されるのが望ましい。ボーイングとロッキードが米空軍機F47の開発プロジェクトでそうしたように。
- だが実際には、トップ企業同士の合併は依然としてハードルが高い。防衛企業の大半は政府の出資を受けており、政府は支配権を手放そうとはしない。
- 現実路線のモデルとなるのが、ミサイルメーカーのMBDAだ。エアバスとBAEシステムズ、レオナルドが共同で所有し、国別子会社を維持しながら一企業として機能している。これが複雑さを解消することにつながった。同社の対空ミサイル「アスター」は、ウクライナで重要性が立証された米国のパトリオット防空システムに使われる「PAC-3 MSE」に欧州で最も近い迎撃能力を持ち、従来の防空システム(クロタルやマズルカ、スパーダ、アスピーデ、シーダート)に取って代わった。MBDAは今年、2023年の2倍に生産量を拡大する予定だ。
- このモデルは他の分野に広がるかもしれない。ラインメタルはレオパルド2の後継となる新型戦車KF51「パンター」を開発中で、同戦車のイタリア向け開発に関してレオナルドと協力している。海軍向け造船事業ではBAEや仏ナバル・グループ、独ティッセンクルップ、伊フィンカンティエリ、オランダのダーメンが統合される可能性がある。
- 投資家は上場企業に分散投資し、各分野に特化した子会社のネットワークから恩恵を受けることを期待できる。
- とはいえMBDAのモデルは、国ごとに分断された状況には依然として脆弱(ぜいじゃく)だ。例えば、MBDAのドイツ子会社とフランス子会社は競合する空対地巡航ミサイルを製造している。タウルスKEPD 350(5年間の生産中断後に再開)とSCALP EG(ストームシャドー)だ。合併前の遺産を反映しているのだが、古い製品ラインを残したまま規模を拡大することの難しさを浮き彫りにする。オスロ大学のファビアン・ホフマン氏は、両社の年間生産能力が合計100発にとどまると推計する。これはロッキードの巡航ミサイルJASSM-ERの年産700発をはるかに下回る。
- 一方、欧州には米国の「THAAD」やイスラエルの「アロー3」のような高高度ミサイル防衛システムがなく、これらの開発には20年かかる可能性がある。またソフトウエアや衛星情報も米国に依存している。
- 「まず調達システムを修正し、次に企業を互いに競争させ、どこが勝者となるかを見極めて統合を進めるのが最善策だ。ラインメタルはそうだった」とホフマン氏は述べた。
- 実際、EUは買い手の力を集約させた米国防総省のやり方を再現しようとする。共同軍事調達に利用できる融資枠1500億ユーロを用意し、2030年までに購入の40%を協力的に行う目標を設定した。それでも十分でないかもしれない。
- だが、たとえEUの支援があっても多くの国が防衛支出に気が進まない中、より小規模な防衛取引の資金供給に介在するさまざまな資本が存在する。非上場企業が所有する資産の場合は大抵そうだ。
- ティケオー・キャピタルやウェインバーグ・キャピタル・パートナーズなどのプライベートエクイティ(PE)投資会社は現在、安全保障関連の中小企業に注目しており、CVCキャピタル・パートナーズのようなPE大手はさらに多くの取引を行う絶好の位置につけている。
- また、ベンチャーキャピタル(VC)は、EU当局が明らかにした無人機(ドローン)や人工知能(AI)、サイバー戦など「能力ギャップ」の一部に対処するのに役立つはずだ。モデルとなるのは現在、米国防総省の契約を争っているアンドゥリル・インダストリーズ、パランティア・テクノロジーズ、シールドAIといったシリコンバレーの防衛関連技術企業だ。
- 2023年にNATOが立ち上げた10億ユーロの「NATOイノベーション基金」の最近の報告書によると、欧州VCによるこの分野への資金供給は昨年、過去最高を記録した。必要に迫られて設立されたウクライナの小型ドローンメーカーが成功したことも、進むべき道を指し示している。
- このトレンドに乗る簡単な方法がもう一つある。BNPパリバやドイツ銀行など欧州の主要投資銀行は、合併・買収(M&A)や事業再編の助言、事業拡大のための株式・債券発行という形で手数料の恩恵を受けられる。
- 欧州の軍産複合体が近々米国に肩を並べることはないだろう。だが長い眠りから目覚めれば、利益を呼び込むチャンスが生まれる。
- Private equity’s best days are over, says Egyptian billionaire Nassef Sawiris
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- 訂正 NY市場サマリー(5日)利回り小幅上昇、ドル下落 株反落 | ロイター
- ### ■ 為替
- * **ドル安が進行**:円やユーロを含む主要通貨、台湾ドルや豪ドルなどアジア通貨に対してドルが下落。
- * **背景**:
- * トランプ大統領の関税政策による経済の不確実性。
- * FRBの利下げ観測(ただし5月のFOMCでは据え置き見通し)。
- * 中国・台湾で為替政策への注目が高まる。
- ### ■ 債券市場
- * **米国債利回りは小幅上昇**:4月のISM非製造業指数が堅調で、インフレ圧力が意識される。
- * **イールドカーブがスティープ化**:2年債と10年債の利回り差が拡大。
- * **取引量は低調**:日本や英国、中国などが休場。
- ### ■ 株式市場
- * **S\&P500が反落**:トランプ大統領の外国映画への関税発表やFOMC前の警戒感から。
- * **特定銘柄が下落**:ネットフリックスやアマゾンなどテック系、タイソン・フーズも決算悪化で下落。
- * **取引量は平均以下**:市場全体に様子見ムード。
- ### ■ 商品市場
- * **金価格が上昇**:米中摩擦の不透明感から安全資産として買われる。
- * **原油価格が続落**:OPECプラスの増産により供給過剰懸念が強まる。
- [TROW] Tロウプライス 1Q増収営業増益 売上高1%増17.6億ドル、営業益2%増5.96億ドル、配当1.27ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [WEN] ウェンディーズ 1Q減収営業増益 売上高2%減5.23億ドル、営業益2%増8312万ドル、配当0.14ドルへ減配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [ETN] イートン 1Q増収最終増益 売上高7%増63.7億ドル、純利益17%増9.64億ドル、EPS2.45ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [APO] アポログローバルマネジメント 1Q減収最終減益 売上高21%減55.4億ドル、純利益70%減4.18億ドル、配当0.5100ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [XOM] エクソンモービル 1Q減収最終減益 売上高2%減811億ドル、純利益6%減77.1億ドル、EPS1.76ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [CVX] シェブロン 1Q減収最終減益 売上高2%減476億ドル、純利益36%減35.0億ドル、EPS2.00ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [DD] デュポンドヌムール 1Q増収最終赤字転落 売上高5%増30.6億ドル、最終赤字5.82億ドル、EPSマイナス1.33ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- ●海外企業
- トランプ氏、イラン産石油購入国に制裁の構え 中国が狙い - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領はイラン産の石油や石油化学製品の購入国に対し、米国との取引を禁止する構えを示した。中国を事実上の標的としながら、核開発を巡りイランに対する圧力も強化する動きだ。
- トランプ氏は1日付のソーシャルメディアへの投稿で、イランの石油・石化製品の購入を直ちにやめない国は二次制裁の対象にすると述べた。欧州からインドに至るまで、主な購入国が制裁を踏まえて相次いで撤退したため、イラン産原油・石油製品の輸入では中国が他を圧倒する最大の買い手になっている。
- トランプ政権は同日、他にもイランへの厳しいメッセージを矢継ぎ早に繰り出した。マルコ・ルビオ国務長官はイランにウラン濃縮の停止を求めた。ピート・ヘグセス国防長官は、イランがイエメンの武装組織フーシ派を支援していることに対し、代償を払うことになると警告した。フーシ派は紅海を航行する船舶へのドローン(無人機)攻撃やミサイル発射を繰り返している。
- 【オピニオン】トランプ氏の貿易戦争、中国が勝つ可能性も - WSJ
- 中国は貿易戦争ですでに負けつつあると考える人がいるかもしれない。しかしそうはなっていないし、少なくとも短期的には、中国は何とか勝つことさえ可能だろう。
- ドナルド・トランプ米大統領が発動した145%の対中関税の影響が出始めており、4月30日には中国の産業活動が急激に減速したことを示す統計が発表された。企業の現在の活動と短期的な計画に関する調査結果を示す政府の公式統計である製造業購買担当者景況指数(PMI)は、4月に1年4カ月ぶりの大幅な低下となり、生産活動の落ち込みを示唆した。中国では工場の減産のほか、労働者のレイオフや一時帰休の具体例が数多く報告されており、経済が危機に陥っていることが明らかとなっている。
- 一見したところ、これは世界貿易というポーカーでは米国が決め手のほとんどを握っているとするトランプ政権当局者らの主張の正しさを示しているように見える。その一人、スコット・ベッセント財務長官は4月2日、「貿易の歴史を振り返り、われわれが赤字国であることを忘れてはならない。赤字国は有利な立場にある。彼らは黒字国だ。伝統的に、貿易を巡っていかなる類いのエスカレーションが起きても、損害を被るのはいつも黒字国だ」と語っていた。トランプ氏が「(米国)解放の日」と銘打ち、相互関税措置を発表したのを受けた発言だ。
- ベッセント氏の発言には一理ある。貿易戦争が長引くほど、中国経済の状況は悪くなる。トランプ氏が求める水準の関税率は米中のデカップリング(切り離し)を意味しており、中国経済には少なくとも3000億ドル(約44兆円)の穴が開く可能性がある。米国の保護主義的傾向を持つ政治家やエコノミストらは、過去数十年にわたる米政府の判断が自国の経済を中国に対してより脆弱(ぜいじゃく)にしてきたと認識しており、彼らはその判断に不満を抱いている。だが、この脆弱性は双方向のものだ。中国は自国の輸出先として、ときには「モノプソニスト(独占的買い手)」のようにも思われる消費者を失う可能性があり、米国の絶大な経済力は、その穴を他国への新たな販売で埋めるのが難しいことを意味する。
- この理論の問題点は時間で、しかもその問題点は大きなものだ。中国には時間がある。トランプ氏にはない。
- 奇妙なことにトランプ政権は、貿易戦争で米国の「レバレッジ」を使えるようにするためには、不満を持つ米国の消費者があらゆるものに今よりも高い価格を支払わざるを得ないことを、全く意識していなかったようだ。市場はすぐにこれを織り込んだ。トランプ氏が、就任から100日間のS&P500種株価指数のパフォーマンスが過去50年間の歴代政権の中で最低という不名誉な立場に立たされている理由も、これで説明がつく。
- 民主主義国では、経済が先行し、政治はそのすぐ後ろを追うのが常だ。つまり、有権者は自分たちがインフレ抑制のために選んだ男がなぜ、物価上昇を約束するのかと疑問に思う中で、貿易戦争にしびれを切らし始めるとみられる。2026年中間選挙で岩に衝突しないよう船を方向転換させるため、共和党に残された時間は、18カ月を切っている。
- それと対照的に、習近平国家主席が有権者と向き合う場面に備えるような状況は、永遠に起こり得ない。中国共産党による統治の正当性を示す根拠は弱く、一層の繁栄の約束を支配正当化の理由とする度合いが強いことを考慮すると、同氏に国民を永続的に貧困状態にしておけるほどの余裕はない。だが、彼が10年かけて強化してきた政治的な抑圧システムは、少なくとも米国の中間選挙が終わるまで、貿易戦争を乗り切れる。
- 他の点でも、時間は習氏の味方になるとみられる。まだ行われていないのは、中国経済に対する追加の「刺激策」だ。それは、消費喚起のため、借り入れを元手に家計や企業に給付を行うか、企業の倒産回避やより多くの公共建設事業の資金確保のために信用をさらに拡大するといった形で行われる。すでに何千億元もの規模に達しているこうした歳出パッケージは近年、中国政府が経済「成長」を実現するための主な手法となっている。貿易戦争が長引けば、さらなる刺激策の実施は避けられないとみられる。
- そのような政策では、中国の輸出品が米国の需要を喪失した打撃を、永遠に埋め合わせることはできない。それが可能になるのは、中国経済が国家主導の疑似資本主義から、生産的な民間企業主導の体制に本格的に転換した場合だけだが、現在の中国指導部の下でそんなことは起きない。しかし、米国の政治システムが貿易面の現実に気付くまでの時間よりもずっと長い間、自国経済を支えられるだけの財政余力が中国政府には間違いなくある。国内の資本と信用供与を厳しく管理することで中国の政策立案者らは、企業の経営破綻といった経済的苦境の一般的兆候を、自分たちに都合がいいと思えるだけの期間抑え込める。
- こうした我慢比べのゲームで中国政府は対処能力面の優位性を持つが、これは戦略的なものではなく、戦術的なものにすぎない。現在の中国が直面している大半の経済問題の原因はまさに、共産党がおかしな政治・経済システムを作り上げてしまったことだ。このシステムでは、政策面の失敗に関する迅速なフィードバックを実現したり、それを活用したりできない。米国が有する最大の優位性は常に、市場経済の厳しさと、政策ミスに対する有権者の不寛容さのレベルが相対的に高いことだった。
- しかしトランプ大統領は、戦略的ではなく、戦術的な通商政策を追求する道を選んでしまった。そうすることで彼は、まさに中国政府の術中にはまってしまったのだ。
- 【寄稿】ペンス元副大統領が見たトランプ氏の100日 - WSJ
- 昨年11月の米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利は、現代米国史上でも類を見ない政治的復活劇だった。トランプ氏はそれを評価されてしかるべきだが、この選挙は単なる同氏の個性に依存した以上のものだった。多くの米国民にとって今回の投票は、第1次トランプ政権を成功に導いた理念と政策への回帰を意味していた。
- トランプ氏は、国境の移民危機、40年ぶりの高インフレに苦しむ経済、2021年1月よりも危険になった世界を引き継いだ。それから100日が経過し、わが国は多くの面で軌道を修正したが、その結果は明らかに功罪相半ばする。初期の進展は苦労して得られ、遅すぎたものだったが、現在の政権が第1次トランプ政権を導いた伝統的な原則から離れれば、簡単に失われる可能性がある。
- まずは良いニュースから始めよう。トランプ氏が就任した際、米国南部の国境は地図上には存在したが、現実にはないに等しかった。わずか3カ月で政権は不法移民を90%以上削減した。新しい法律は作っていない。ただ、自分の仕事をし、米国を安全に保つ気骨のある大統領がいただけだ。
- 海外では、トランプ氏は中東で米国のリーダーシップを再び主張した。バイデン政権がほぼ見捨てていた地域だ。紅海では、イランの支援を受けたフーシ派武装勢力が世界の通商を恐怖に陥れていた。トランプ政権は即座に断固たる力でフーシ派を抑え込み、平和は力を通じて最もよく維持されることを世界に思い出させた。
- インフレ調整後の国防費が何年間も削減された後、トランプ氏は初の1兆ドル(約146兆円)規模の国防予算で軍を再び強力な戦闘力を持った組織に変えると約束した。時間を無駄にせずに、軍内の実力主義を基盤とする文化を回復した。何年も新兵不足が続いていたが、今では全軍が四半期ごとの採用目標を上回っている。トランプ氏はまた、反ユダヤ主義を黙認した大学が数十億ドルの連邦資金を失うことをはっきりと示した。
- だが、一部の分野で米国の力が回復する一方で、他の分野では後退の兆しが見られる。トランプ・ペンスの第1次政権はウクライナに殺傷力の高い軍事援助を提供したが、今回の政権が行っている不安定なウクライナ支援はロシアを大胆にさせ、停戦交渉の拒否と民間人への攻撃拡大に至った。過去100日間で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が欲しているのは平和ではなくウクライナだと、疑いの余地なく証明された。われわれの親密なパートナーであるウクライナに米国の軍事支援を再開することだけが、公正で永続的な平和への希望をもたらす。
- 同様に、イランの宗教指導者たちとの交渉に関する報道は、バラク・オバマ大統領の失敗した核合意にますます似てきている。平和と、われわれの大切な同盟国であるイスラエルの利益のために、イランの核計画は検証可能な形で解体されるか破壊されねばならない。
- 国内のインフレは記録更新を止め、米国の家庭は少し楽になっている。しかし、経済の警告サインは点滅している。2025年1-3月期の米経済は、政権開始時としてはリチャード・ニクソン大統領の時以来、史上2番目の落ち込みとなった。原因は何か。敵・味方の区別なく課された広範な関税という政策の大規模な失敗だ。大統領が「解放の日」関税を発表して以来、米国が解放されたのは数兆ドルの投資からだけだ。
- トランプ氏が提案した関税は、米国史上最大の平時の増税となり、消費者に打撃を与え、インフレを加速させるだろう。広範な関税は大衆迎合には有効かもしれないが、保護主義経済は、原則に基づく保守主義の代替にはならない。トランプ政権は、中国などの敵対国に対する標的を絞った関税を維持しつつ、自由な国々との自由貿易を通じて経済を軌道に戻すことができる。自由な国々を罰する代わりに結集させるべきだ。欧州や太平洋の同盟国ではなく中国を孤立させる貿易協定を結び、民主主義世界を団結させるのだ。
- トランプ・ペンス政権の減税を全て延長することも、直ちに優先すべきだ。そうしなければ、現代史上最大の中間層増税となり、数百万人の米国人が雇用を失う。また、議会は最高税率引き上げを求めるポピュリスト(大衆迎合主義)的な要求に抵抗すべきだ。これは農家や製造業者を含む中小企業経営者に大きな負担を課すことになる。
- イーロン・マスク氏率いる政府効率化省(DOGE)の有望な取り組みを巡る興奮にもかかわらず、より広範な財政状況は不透明なままだ。連邦支出は昨年比8.5%増加している。大統領と共和党議員が控えめな社会保障制度改革からさえ後退する中、マスク氏が数十億ドルの無駄を削減することに成功しても、国の債務を大幅に削減する見込みはほとんどない。
- トランプ大統領が精力的で効果的なスタートを切ったことは評価されるべきだ。安全保障と強さ、主権に関する彼の直感はこれまでと同様に鋭い。しかし、この国を本当に再び偉大にしたいのなら、時間をかけて検証された保守主義の原則をポピュリスト的な決まり文句に代えてしまうことはできない。われわれは同盟国と共に立ち、敵に立ち向かう必要がある。税金と関税を引き下げ、強力な軍に十分な資金を持たせ、世界の舞台でリーダーシップを発揮する必要がある。
- 力強い最初の100日間は基盤となる。しかし、われわれの政権を導き、大統領の1期目に平和と繁栄を達成した保守主義の原則に立ち返ることだけが、この政権が何か永続的なものを築くことを保証するだろう――大統領の遺産のためにも、米国の未来のためにも。
- トランプ氏、米国経済は長期的には「大丈夫」 短期的な景気後退に陥っても - CNN.co.jp
- トランプ米大統領は2日、米NBCニュースのインタビューに応じ、短期的に景気後退(リセッション)に陥ったとしても、長期的には米国経済は大丈夫だとの認識を示した。
- トランプ氏はインタビューで、いったんは景気後退入りの懸念を一蹴。「ウォール街には、史上最高の経済になると言っている人もいる。彼らの声を取り上げてはどうか。歴史上最も素晴らしい出来事が起きると言っている人もウォール街にはいるのだから」と指摘した。
- その後、長期的な目標を達成するためなら短期的な景気後退を容認するか問われると、トランプ氏は「イエス」と返答。米国は「素晴らしい」結果を出すとの認識を示した。
- 「いいか、万事大丈夫だ。私が言ったように、これは移行期であり、我々は素晴らしい結果を出すと思う」としている。
- 今週発表された経済指標は強弱まちまちの内容だった。労働統計局が2日公表したデータによると、4月の米雇用者数は17万7000人増という予想外に強い数字で、3月の18万5000人増(下方修正後)からの減速度合いはわずかだった。一方、商務省は今週、トランプ氏の大幅な政策変更が消費者と企業を動揺させる中、米経済が2022年以来となる低調な四半期を記録したと発表した。
- 二転三転のトランプ関税に「72時間ルール」、投資家が防御に知恵絞る - Bloomberg
- 二転三転するトランプ米大統領の関税政策に振り回された経験から、クレジットトレーダーの間で独自の対策に乗り出す動きが出ている。
- トランプ氏が方針を転換するかどうか見極めるため3日待ってから取引を行う、あるいは大統領が起きてソーシャルメディア投稿を始める前に取引を完了させるといった具合だ。
- ブルームバーグが取材した十数名の業界関係者はいずれも、トランプ氏の発言を真に受けて損失を被った経験から、防衛的な行動に追い込まれていると明かした。多くは匿名を条件に取材に応じた。
- 事情に詳しい関係者によると、トランプ氏が欧州産ワインに200%の関税を課すと投稿した際、複数の投資銀行が影響を受け得る企業を対象に市場価格を下回る価格で店頭取引を開始し、先手を打とうとした。これには包装資材メーカーのアルダフ・グループや容器メーカーのベラリア、イタリアのラベルメーカーであるフェドリゴーニの債券が含まれていた。
- ところが数日後には、これらの債券価格は完全に回復。関税が正式に発表された際、ワインに関する言及は一切なかったことが判明したためだ。カナダ産鉄鋼に50%の関税を課すとの脅しも、すぐに撤回された。
- 72時間ルール
- こうした中、一部の銀行や投資家は「72時間ルール」を採用し始めているという。これはトランプ氏の発言後、72時間経っても方針が変わらなければ、その政策が実際に実行される可能性があると見なすという考え方だ。
- インサイト・インベストメントのポートフォリオマネジャー、キャサリン・ブラガンザ氏は「すぐには動かないようにしている。常に朝令暮改のリスクがあるからだ。われわれもこうした事態に一定の免疫がついてきていると思う」と話す。その上で、4月初旬に数年ぶりの大幅な下げを記録した欧州のジャンク債市場がほぼ完全に下げを埋めた点に言及した。
- 起きる前に先手
- 米国外のタイムゾーンにいることは、トランプ氏による場当たり的な対応を乗り切る一つの手段となり得る。欧州では債券売却の手続きを前倒しし、トランプ氏が目を覚まして投稿を始める前に取引の詳細を確定、実行しようとする動きが出ている。これは地合いを悪化させかねない米国市場の乱高下に先手を打つための方策でもある。
- 「誰もが常時ニュースが飛び込んで来るリスクを強く意識している。とりわけ米国の営業時間はその頻度が高まる」。こう語るのはモルガン・スタンレーの欧州・中東・アフリカ(EMEA)投資適格債シンジケート共同責任者、マッテオ・ベネデット氏だ。「ニューヨーク市場が始まる前に取引を終えるのが間違いなく賢明だ」という。
- 高格付け企業ですら、この状況を免れない。フランスの高級ブランドグループ、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは、19億ユーロ(約3100億円)規模の2本立て債券発行に関する最終条件を、現地時間午後1時前に決定した。米国市場が開く前に条件を確定するためだ。通常であれば、こうした優良企業がこれほどの切迫性を持って動く必要はない。
- トランプ予算案、非国防費23%カット-定例の経済・金利見通しは省略 - Bloomberg
- トランプ米大統領は2026会計年度(26年9月終了)予算案の概要を議会に提出し、国内機関の大幅な支出削減と軍事費の大幅増強を要求した。非国防支出は5570億ドル(約80兆5600億円)と、現行水準から1630億ドル削減される一方、安全保障関連の支出は1兆100億ドルと、13%の増額となる。
- 予算案は大枠だけで詳細を欠いた「スキニーバジェット」と呼ばれるもので、大統領の行政ビジョンを文書で示す最初の機会。トランプ氏のスキニーバジェットは歴代大統領のものよりも簡素で、通常盛り込まれる経済や金利の基本的な見通しさえ示されていない。
- 詳細は共和党が進める大型減税法案がまとまり次第、年内に公表される。減税法が成立すれば、財政赤字は数兆ドル規模で膨らむと見込まれる。経済成長の鈍化やリセッション(景気後退)の可能性が高まる中、歳入減と景気悪化に伴う自動的な支出増で財政への圧力が高まると懸念されている。最終的な歳出計画は議会の承認を必要とし、野党民主党は上院で影響力を行使できるまれな機会を得る。
- トランプ氏の予算案には米史上最大の国防費が盛り込まれており、ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」や艦船建造、核戦力の強化、国境警備などを最優先項目に指定。軍人の給与は3.8%引き上げられる。
- 不法移民の摘発・強制排除といったトランプ氏の優先アジェンダを実行する国土安全保障省は、65%の大幅な予算増加が見込まれている。国内支出に関しては、トランプ氏は2025年度予算の22.6%削減を提案している。バイデン前政権の看板政策であるグリーンエネルギー法の予算から、150億ドル相当の取り消しも議会に要求した。
- ホワイトハウスはこの予算案をトランプ政権の「社会政策文書」と位置付け、早期教育や住宅、科学、対外支援の予算削減を「ウォーク(リベラル思想)予算のカット」と説明。難民支援の35億ドル削減は「国境開放への資金停止」、気候・環境関連予算の大幅削減は「グリーン・ニュー・スキャム(詐欺)の終了」と銘打った。
- 税制案とバンドル
- 行政管理予算局(OMB)高官によれば、防衛および国土安全保障省の歴史的な規模の予算増強は、民主党が阻止できない税制パッケージに盛り込むことで確保された。
- 特に削減率が大きいのは厚生省の26%や、中小企業庁の33%、住宅都市開発省の44%、環境保護庁の54%、科学財団の56%だ。国立公園局の9億ドル削減案は、小規模な公園の州移管を伴う。米航空宇宙局(NASA)も有人宇宙探査を除いてほとんどのプログラムが大幅に削減されるが、トランプ氏の右腕であるイーロン・マスク氏が関与する月・火星探査には6億4700万ドルの予算が追加される。
- 教育や医療では予算が削減される一方、チャータースクールには6000万ドルが増額される。感染症とメンタルヘルスへの予算は削減されるが、「アメリカを再び健康に」のイニシアチブには5億ドルが充当される。地方の小規模空港の予算は削られるが、航空管制システムの近代化は進められる。
- 対外援助とDEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムは、廃止もしくは大幅削減の対象とされた。世界銀行を通じた最貧国向け援助は、バイデン政権が約束した40億ドルから、32億ドルに引き下げられる。ホワイトハウス高官は国際非政府組織(NGO)への援助も縮小するべきだと論じる。国立科学財団の予算は50億ドルの削減が提案された。米海洋大気庁(NOAA)の助成金も一部取り消される。
- 米平和研究所は完全に閉鎖され、マイノリティー支援機関やボイス・オブ・アメリカ(VOA)、地域金融機関基金なども廃止される。マスク氏の「政府効率化省(DOGE)」は議会の明示的な承認なしに、契約打ち切りや連邦職員の解雇、機関解体を進めている。同氏は当初、2兆ドルの支出削減を目指していたが、この目標を150億ドルに縮小した。
- 赤字削減の誤算
- DOGEの取り組みが最終的に大幅な赤字削減につながらないことを、予算案は浮き彫りにした。全体的な支出削減は、自然災害の対応費用といった緊急支出に吸収される。また金利上昇で国債の利払い費が膨らみ、政府機関の予算や人員の削減では赤字の削減に限界があることが明確になった。
- 超党派の組織、責任ある連邦予算委員会(CRFB)のマーク・ゴールドワイン氏は、これを「出発点」と位置付けつつ、「一方で一年で1600億ドルの削減を語り、一方で5兆8000億ドルの赤字拡大を語っている」と、矛盾を指摘した。
- 【コラム】トランプ岩盤支持層に亀裂、揺らぐ忠誠心-ヘンダーソン - Bloomberg
- ドナルド・トランプ氏がホワイトハウスに返り咲く際、大きな後押しとなったのが有力ポッドキャスターやインフルエンサーの存在だった。一部は就任式にも姿を見せ、政権中枢への特別なアクセスを得てきた。しかし、こうした熱狂的なトランプ支持層の一部は今、政権運営への不満をにじませ始めている。混乱や方針転換、公約の不履行が続いているからだ。忠誠心の高い支持基盤に走る小さな亀裂は注目に値する。
- トランプ氏は、保守系メディア空間で影響力を持つジョー・ローガン氏を含む著名インフルエンサーの期待を複数の政策分野で裏切った。
- 登録者257万人を抱える「PBDポッドキャスト」では、MAGAブラザーズと称されるグループが、トランプ政権の実績不足を厳しく批判。経済運営や外交、汚職撲滅といった分野で成果が乏しいとして、政策遂行力に疑問を呈した。
- 「解放の日(関税措置発表の日)で5兆ドル(約725兆円)の国富が消し飛んだ。誰も予期していなかった」と語るのは、同ポッドキャストの共同ホスト、アダム・ソスニック氏だ。同氏はトランプ氏の評価をCプラスとし、「解放の日で何をしようとしたのか意図が理解できない」と疑問を呈した。
- ポッドキャスト名の由来でもあるパトリック・ベット・デイビッド氏は「現時点での評価はCマイナスだ」とさらに厳しい。「初日にはロシアとウクライナの和平が実現すると聞かされていたが、100日経っても成果は見られない。何らかの合意があると思っていた」と語った。
- 過去3回の選挙でいずれもトランプ氏に投票してきた同氏は、イランに対する強硬姿勢が成果に結びついていない点や、通商合意の不在についても批判を強めた。
- スポーツ系メディア「バーストゥール・スポーツ」創業者のデイブ・ポートノイ氏も、関税政策で多額の損失を被ったとしてトランプ氏に怒りをぶつけている。「株式市場はトランプ氏の就任後100日間をそのまま映し出している」と、ポートノイ氏はソーシャルメディアに投稿。トランプ氏は、株価を下落させた弱い経済データの責任をバイデン前大統領になすり付けていた。
- 登録者422万人を誇るトランプ支持派のインフルエンサー、キャンディス・オーウェンズ氏も、ハーバード大学との対立を「言論の自由への攻撃」と見なし、トランプ氏を強く批判している。「今の政権にはもはや共感できず、何が起きているのか理解できない」とまで言い切る。
- トランプ氏の政策運営に疑問を呈しているのは、右派系のポッドキャスターやインフルエンサーだけではない。保守系主流メディアからも批判の声は出ている。それには、通常は共和党寄りの論調で知られるウォール・ストリート・ジャーナル紙の論説も含まれる。同紙の社説では、「史上最も愚かな貿易戦争」など辛辣な見出しが並ぶ。
- ウォール・ストリート・ジャーナルと同じくルパート・マードック氏の傘下にあるFOXニュースは、トランプ政権に好意的な報道姿勢を維持している。しかし一方で、支持率の低下を示す世論調査も実施しており、番組内では一部キャスターやゲストがトランプ氏の政策に批判的な意見を示す場面も見られる。
- MAGA支持層での懐疑的な見方は世論調査の結果とも一致している。トランプ氏は共和党支持層の間では依然として高い人気を誇るものの、かつての圧倒的な支持には陰りが見え始めている。3月のCNNの調査では共和党支持者の92%がトランプ氏を支持していたが、直近では86%と6ポイント下がった。
- もう一つ注目すべきデータがある。2月時点では、共和党支持層の44%がトランプ氏の今後の任期に「期待している」と回答していたが、現在ではその割合が33%に低下している。2期目のトランプ政権は、熱心な支持者が抱く1期目への郷愁には応えられていない。特に経済分野では、掲げた公約が果たされていないとの不満が根強い。
- トランプ氏のコア支持層や彼らの意見を形成し拡大するインフルエンサーは、トランプ氏の態度やリベラル派への攻撃的な言動を好意的に受け止めている。しかし、トランプ氏はそれ以上の成果を約束してきた。
- インフルエンサー層がトランプ氏を完全に見放す可能性は低いものの、その熱気には陰りが見え始めている。かつては揺るぎない応援団だった支持層にも、今や少なからぬ疑念が生まれている。その疑念が、今後1000日にわたる政権運営に影を落とす可能性がある。とりわけ、大言壮語が繰り返され、実行が伴わない状況が続くようであればなおさらだ。
- 米FRB、大手銀行の非公開格付け見直しへ - WSJ
- ドナルド・トランプ米大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)の銀行監督担当副議長に指名したミシェル・ボウマン理事は、昨年大手銀の3分の2が、非公開の格付けで健全性が「不十分」とされたことを批判し、大手銀行の非公開格付けの見直しを求めている。
- トランプ氏がFRBの銀行監督担当副議長に指名したミシェル・ボウマン氏は、上院が就任を承認すれば、銀行規制を緩和すると予想されている。2月の講演で同氏は、FRBの最近の監督格付けに疑問を呈し、大手銀行の財務状況に関するFRBの見解と、昨年多くの銀行に与えた「不十分」という格付けとの間に「奇妙な不一致」があると指摘した。
- 事情に詳しい関係者らによると、FRBは通常3月末までに非公開で格付けを通知している。だが今年は、資産1000億ドル(約14兆円)以上の米銀行持ち株会社に対する新たな監督格付けをまだ知らせていない。一部の関係者らは、FRBはボウマン氏の上院承認を待つ方針だと述べた。
- この遅れは異例のことだ。格付けは既にFRB内で何段階もの審査を経ている。
- ファラージ氏率いる野党「リフォームUK」が大躍進 英下院補選と地方選 - BBCニュース
- 独情報機関、最大野党AfDを右翼過激派に指定 トランプ米政権から反発の声 - BBCニュース
- エネルギーとインフラがAIの未来を握る|ARAB NEWS
- 人工知能の急増の中心にあるのはインフラだ。AIの急速な進歩は、データセンターに対する記録的な需要を牽引している。しかし、信頼性の高い電力の不足が大きなボトルネックとなりつつあり、エネルギーとデジタルインフラの両方に対する投資の世界的な波が巻き起こっている。
- 今日、AIは一過性のトレンドではなく、電気やインターネットのように、新たに不可欠なユーティリティと見なされるようになってきている。
- 民間市場もこの楽観主義の波に乗っている。AI関連の取引は現在、全取引の約3%を占めているが、投資総資本の15%という高率を占めている。
- 同時に、ベンチャーキャピタルは目まぐるしいペースでAIアプリケーション・プラットフォームに資金を投入しており、投資バブルの可能性の初期兆候を示している。AIプラットフォームへの資金提供は以前の10倍にまで急増し、評価額は一般的なベンチャーキャピタルの投資額の5倍にも達している。
- これらのAI企業の資金調達倍率の中央値は売上高の約25倍で、トップ企業では40倍にも達する。こうした目を見張るような数字は、将来の成長と利益に対する強い期待を反映している。
- また、大手テクノロジー企業は世界経済との結びつきをますます強めており、現在では約15兆ドル、世界国内総生産の約15%を占めている。
- この勢いが続けば、この数字は35兆ドル、AIの影響力が拡大し続ければ50兆ドルにまで膨れ上がり、世界GDPの約35%を占めるようになるかもしれない。
- こうした成長を支えるには、大規模なインフラの拡張が必要だ。当初のインターネット・ブームの際、米国は16年間で約2ギガワットのデータセンター容量を構築した。クラウド・コンピューティングの時代には、これは6ギガワットまで増加した。
- 現在、AIのおかげで、米国では毎年2~7ギガワットの容量が追加されており、その半分はハイパースケール企業が牽引している。
- 一方、中東は手ごろな価格で豊富なエネルギーを持つため、AI時代を活用するのに最適な場所にある。
- 世界的な投資会社KKRは最近、UAEを拠点とするデータセンター企業Gulf Data Hubに50億ドルを投資すると発表した。300メガワットの新たなキャパシティは、LEAPで発表されたサウジアラビアでの大規模な拡張を含め、GCC全体でAIの成長を後押しすることを目的としている。
- AIのコンピューティング・パワーへの渇望は、グラフィックス・プロセッシング・ユニットへの大規模な投資にも拍車をかけている。
- 過去6~8年の間に、AIモデルのトレーニングに使用されるプロセッサー・クラスタの規模は20~40倍に爆発的に拡大し、最大100万個のプロセッサーを搭載する巨大な「ギガ・キャンパス」の台頭につながっている。
- しかし、このような拡大には2つの大きな疑問がつきまとう。資本の流れは追いつくことができるのか?そして、インフラ・プロジェクトは十分なスピードで拡大できるのだろうか?
- KKRは、将来を形作る可能性のある2つの世界的なメガトレンドを指摘している: それは、今後15年間でインフラ投資に必要とされる推定100兆ドルと、2050年までに世界全体でネット・ゼロ・エミッションを達成するために必要とされるさらに200兆ドルである。
- 結論はこうだ: AIの可能性は非常に大きいが、それをサポートするために必要な電力とインフラを構築することは、世界最大の課題のひとつとなるだろう。
- 日本、米関税による中国からの輸入急増を警戒=財務相 - WSJ
- 加藤勝信財務相は、米国の関税によって売れ残った中国製品が世界の市場に流れ出し、日本への輸入が急増した場合、対策を講じる考えを示した。加藤氏の発言は、ドナルド・トランプ米大統領の貿易戦争による影響が波及することへの懸念拡大を示す兆候だ。
- 加藤氏は、関税を巡る2回目の日米協議が首都ワシントンで行われた後、2日に東京でインタビューに応じた。為替は日米貿易交渉に含まれておらず、為替相場は市場原理に委ねるべきだと指摘した。トランプ氏は、日本が円相場を押し下げ、輸出を拡大する政策を追求しているとの批判を繰り返している。
- 日本は他国に先駆けてトランプ政権と関税交渉を開始し、鉄鋼や自動車に対する関税の撤回や、7月に発動される全ての日本製品に対する関税引き上げの取り消しを目指してトランプ政権を説得しようとしている。
- 加藤氏は「日本としては、まずは米国の一連の関税措置の見直しを求めるとともに、この機会に日米双方にとってウィンウィンの関係を作っていくという観点に立って協議を進めていきたいと考えている」と述べた。
- さらに、日本は米貿易赤字の抑制を目指すトランプ氏の取り組みがもたらす幅広い影響を留意していると指摘した。同氏は貿易相手国・地域の不公正な取引慣行で米国の貿易赤字が拡大したと主張している。
- 加藤氏は、米国が中国からの輸入品に100%を超す関税を課せば、安価な中国製品が他の市場に向かいかねないと懸念していると述べた。そうなれば国内産業が打撃を受け、日本は長期にわたるデフレとの闘いが後退しかねないと指摘した。
- さらに「中国の生産能力が国内需要に対してかなり過剰で、価格をある程度度外視をする形で輸出されているのではないか」とした上で、日本はモノの流れを注視し、適切に対応していくと述べたが、詳細は語らなかった。
- 世界各国は中国からの輸入を食い止めるため、反ダンピング(不当廉売)関税などの措置を講じている。日本は3月、中国から輸入する電極に95%の反ダンピング関税を課すことを決めた。
- 米国が交渉で、中国との経済関係を制限するよう日本に圧力をかけているかとの質問に対しては、日本はいかなる国であっても素材や部品を1カ国に依存することのリスクを認識しているとして、米国からどんな要求があろうとも「日本は日本独自としてわが国の経済安全保障」を考え適切な対応をとっていく、と答えた。
- 日本側の交渉責任者である赤沢亮正経済再生相によると、日米の貿易協議は、貿易の拡大、非関税障壁の縮小、経済安全保障の強化に焦点が置かれている。次回の交渉は5月半ばにも行われる予定だという。
- 為替問題を担当している加藤氏は、スコット・ベッセント米財務長官との協議では「プラザ合意2.0」は議題に上がらなかったとし、「為替相場は基本的にマーケットによって決まるんだというのだけが原則だと思っている」と述べた。1985年のプラザ合意は対ドルでの急速な円高につながった。
- ドル安は米国の輸出にとって追い風となる可能性がある。ただインフレを加速させるため、米国にとってそれほど有利にならないかもしれないとエコノミストは指摘する。
- 米予算教書、FBIや麻薬取締局の予算削減と関係筋 重大犯罪対応に影響 | ロイター
- トランプ米政権は2日に議会に提出する2026会計年度(25年10月1日からの1年間)予算教書で、麻薬取締局など司法省の複数の法執行機関の予算を削減する。関係筋が明らかにした。
- 予算が削減されるのは、麻薬取締局(DEA)、アルコール・たばこ・火器爆発物取締局(ATF)、連邦捜査局(FBI)。
- ATFの予算は、現在の約16億2500万ドルから約12億ドルに減額される。これは少なくとも2016年以降で最も少ないという。
- DEAは現在の26億ドルから25億ドルに、FBIは106億ドルが101億ドルに削減される。
- 司法省は、ATFをDEAと統合させる案を検討しているが、両機関の職員や銃の権利団体や規制団体が反対している。
- 法執行機関の予算削減は、トランプ大統領の重大犯罪取り締まり強化という公約の実現を阻む可能性もある。
- 司法省の報道官は、「アメリカを再び安全にするために、われわれの資源が効果的に配分されるようにする」と述べた。
- ホワイトハウス、DEA、ATF、FBIはコメント要請に応じていない。
- ホワイトハウスの行政管理予算局の報道官は、ロイターの報道は「虚偽」と指摘した。
- 日本との関税協議「率直かつ建設的」、米財務省が声明発表 | ロイター
- 日銀は2日、1日に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の全文を公表し、その中で米国の高関税政策が日本の経済や物価にどういう経路で影響をもたらすのか整理した。特に、高い関税率となっているアジア各国に対し米相互関税の上乗せ部分が発動された場合、日本とサプライチェーンの結びつきが強い東アジア地域の貿易活動に悪影響が及ぶことに警戒感を示した。
- 経済への影響については、不確実性が急激に高まったことで世界的に設備投資需要が停滞し、日本の資本財輸出にマイナスの影響をもたらすとともに、国内需要にも耐久財消費や設備投資の先送りによる下押し圧力が加わると指摘。また、米国の関税引き上げが日本の輸出品の米国産品に対する価格競争力を悪化させると言及。日本企業が現地での販売価格を変えずに採算悪化で吸収する場合にはその企業の収益を直接的に下押しする一方、現地価格に関税の影響を転嫁する場合、他国の製品にシェアを奪われれば日本からの輸出数量が減少するとした。
- さらに、関税政策による世界経済の減速や貿易活動の縮小が日本からの輸出数量の減少を招くと指摘した。特に、一律の相互関税に加えて、半導体などの分野別関税や、高い関税率となっているアジア各国への相互関税上乗せ部分が今後発動されれば、日本と密接な関係にある東アジア地域の貿易活動やITサイクルへの悪影響を通じて「わが国の輸出が下押しされるリスクにも注意する必要がある」とした。関税引き上げや世界的な貿易縮小により、海外現地法人の収益も下押しされる可能性が高いとも説明した。
- 物価面への影響については、関税政策で「為替相場が大きく変動すれば、輸入物価を通じた影響を受ける」と指摘。また、輸出や設備投資などの需要減退は物価の下押し効果を持つとした。一方で、サプライチェーンに混乱が生じれば輸入物価の上昇を通じて物価を押し上げる可能性もあるとの見解も示した。
- 日銀は今回の展望リポートで、米関税政策の影響を織り込み、成長率や物価の見通しを引き下げた
- 欧州不動産販売、第1四半期11%減 トランプ関税影響で1年ぶり悪化 | ロイター
- MSCIが1日発表した欧州の資本動向リポートによると、欧州の不動産販売総額が2025年第1・四半期(1―3月)に前年同期比11%減の410億ユーロ(470億ドル)に落ち込んだ。マイナスは4四半期ぶり。
- トランプ米大統領が1月20日に2期目に就任して以降、国際経済秩序を揺るがし始め、景気の先行き不透明感が強まったことが要因。欧州不動産市況は新型コロナウイルス危機後に緩やかに改善し、昨年4月以降は3四半期連続で不動産投資家の資金を着実に引きつけていたものの、1年ぶりに期待が途切れる形となった。
- MSCIはリポートで「景気減速のどん底にあった際、合い言葉として頻繁に引用されたのが『25年までは耐え抜け』だった。だが、その年に到達した現在、問われるのは『ここからどこへ向かうのか』だ」と懸念を示した。
- 今後の見通しでは、投資家の関心が米国不動産から逸れて他の地域に移り、欧州不動産にプラスの影響をもたらす可能性があるという。ただ「地政学的および経済の不確実性は軽視できず、債券市場のボラティリティーによって債務コストが高止まりしている」とも指摘した。
- 国別の第1・四半期販売額は、英国が依然、欧州で最も好調だったものの、ユーロ換算では26%減の106億ユーロとどまった。一方、最近の欧州で最も落ち込んでいたドイツは回復を見せ、59%増の96億ユーロに達した。
- カタールエナジー、LNG長期契約で日本企業と交渉 | ロイター
- 関税の完全撤廃が「一貫した立場」、赤沢再生相が対米交渉から帰国 - Bloomberg
- 米中に雪解けの兆し、通商協議始動へ期待高まる-進展にはなお障害 - Bloomberg
- 「バフェット指数」に買いシグナル点灯、株式相場の反発に余力示唆 - Bloomberg
- 著名投資家ウォーレン・バフェット氏(94)が重視するバリュエーション指標は、米国株が相対的に割安なことを示唆しており、力強い反発はまだ続く余地があるとの見方を裏付けている。
- 「バフェット指数」は米株価指数「ウィルシャー5000指数」に基づく米企業の時価総額を、ドル・ベースでの米国内総生産(GDP)で割ったもの。最近の急激な株高にもかかわらず、この指標は昨年9月上旬以来の低水準にある。
- 米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイを率いるバフェット氏は、企業の評価水準を測る「最も適切な指標」は米上場企業の時価総額とGDPの比率だとしている。この指標は昨年末に記録的な高水準に上昇し、2021年の相場ピークや2000年のドットコムバブル崩壊前と同様の警告シグナルを発した。
- バフェット指数は現在180%。前回この水準だったのは昨年、円キャリートレード解消に伴い、米国株が短期的にかつ激しく売られていた時だ。S&P500種株価指数はその後、年末までの数カ月間で大幅に上昇した。
- 50パーク・インベストメンツの創業者、アダム・サーハン氏は「これは重要な指標だ。トレーダーが資金投入や株式購入のタイミングを判断するのに役立つ」と評価。大手ハイテク株に積極的に投資しているサーハン氏は「グローバルな貿易戦争への懸念は依然残るが、現在はバリュエーションがより合理的な水準にあるため、トランプ氏が関税で強硬に出ないのであれば、投資家は一斉に買いに走るだろう」と述べた。
- 評価額「50セント台」も、プライベートクレジットに広がる持ち分売却 - Bloomberg
- プライベートクレジットファンドの投資家は、米経済が一段と悪化するリスクを見越して、大幅に評価額を切り下げて持ち分を売却している。オークツリー・キャピタル・マネジメントのロバート・オリアリー共同最高経営責任者(CEO)が明らかにした。
- オークツリーは、こうしたファンドの出資者が自らの投資家に資金を還元するため、流動性の乏しい持ち分を売却するセカンダリー・マーケットや継続ファンドにおいて、割安となった資産を取得する機会が増えるとみている。オリアリー氏は電話インタビューで、こうした動きはこれまでプライベートエクイティー(PE、未公開株)業界で顕著だったが、現在ではクレジット投資家の間でも拡大していると語った。
- オリアリー氏は2日のブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「現在、ファンド持ち分の評価額は額面1ドルに対して90セント程度から始まり、場合によっては50セント台まで下がっている」と述べた。リミテッド・パートナー(LP)と呼ばれるファンド出資者の多くは本格的な下落の前に持ち分を手放したいと考え、自発的に売却に動いているという。
- 同氏は、現時点でのこうした評価額の下落には信用の質の低下はあまり織り込まれておらず、今後経済状況が一段と悪化すればさらにディスカウントが進む可能性があると指摘。「これまでのところ、売却を迫られる事態は発生しておらず、流動性の深刻な逼迫(ひっぱく)も起きていない」としつつ、「今後、出資者が先行きに不安を感じ、売却が増える局面に入れば、ファンド持ち分の評価額はさらに下がるだろう」と語った。
- プライベートクレジット市場はここ数年で急速に成長し、1兆6000億ドル(約232兆円)規模に達した。この急拡大と相対的な規制の緩さが、景気悪化時のプライベートクレジットローンの質への懸念を高めている。
- オリアリー氏を含むオークツリーの幹部は、景気の一段の悪化と、それに伴うクレジットファンドの苦境に備えて準備を進めている。同社は現在、流動性の高いクレジット市場に投資する一方で、より大きな投資機会に備えて資金を温存しているという。
- 「誰も工事を引き受けない」 市街地再開発、相次ぐ異変 - 日本経済新聞
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- 自動車用半導体で米に依存の中国 貿易戦争で浮き彫りに - WSJ
- 「完全な国産ソリューションを提供」、「中国製チップを使い、中国製チップを愛そう」――。中国の半導体企業が上海で最近開催された電子機器展示会に参加し、このようなスローガンを掲げた。だがこれは理想に過ぎず、同国は実際のところ、自動車やその他の工業製品に不可欠な半導体は今も特定の米国製のものを必要としている。
- こうした脆弱(ぜいじゃく)性は、中国政府が4月下旬に関税125%の対象から米国製半導体に関連する8部門を除外したことからも浮き彫りとなった。こうした関税はドナルド・トランプ米大統領との貿易戦争を受け、中国側が米国製品を対象に導入していた。
- 米国製半導体を除外する判断は、中国自動車メーカーによるロビー活動を受けたものだったと業界関係者らは述べている。
- 米中の貿易戦争により、互いに依存する双方の弱点が露呈した。トランプ氏は、主に中国で生産されているiPhone(アイフォーン)や電子機器を主要な関税対象から速やかに除外。一方で中国は、サプライチェーン(供給網)を握る特定のレアアース鉱物の輸出制限で米国産業に打撃を与える能力を誇示した。
- これに対して米国も中国側の弱みを握っている。米国製の半導体は、中国が輸入する半導体のごく一部を占めるに過ぎないが、自動車に使用される重要なチップが含まれている。この中には小型コンピューターのようなマイクロコントローラーユニットや、信号を処理するアナログチップなどがある。これらの製品は対米関税の免除リストに含まれており、中国が米国から輸入するこれら半導体の90%以上の関税が撤廃されている。
- 中国税関のデータによると、2024年の同国の半導体輸入額は前年比10%増の4120億ドル(約59兆8000億円)に達した。習近平国家主席が率いる指導部は、国内調達を推進しようとしたにもかかわらず、半導体の輸入は過去10年間で増加し続けている。
- 自動車用半導体は米テキサス・インスツルメンツ(TI)や欧州のインフィニオン・テクノロジーズ、NXP、STマイクロエレクトロニクスに加え、日本のルネサスなどが業界を支配してきた。一般的に、ハイエンドのスマートフォンや人工知能(AI)アプリを動かすほど高度なものではないが、自動車はこれらなしでは走行できない。
- またデジタルディスプレーや音声コマンド、自動運転機能など、ドライバー周辺の技術の台頭により、エヌビディアやクアルコムの半導体チップも人気を集めている。
- 事情に詳しい関係者らによると、中国政府は国内自動車メーカーに対し、今年から車両に搭載するチップの少なくとも4分の1を中国製にするよう求めている。ただ昨年末時点でこの割合が約15%だったことを考えると、目標達成は困難だと関係者らは指摘している。
- 中国の自動車産業の主要規制当局である工業情報化省から今のところコメントは得られていない。
- 半導体の設計には一般的に1年半から2年かかる。だが業界の事情に詳しい関係者らによれば、自動車の場合はより厳しい安全要件のため、さらに2~3年のテストと検証期間が必要となっている。
- またグローバルな大手半導体企業は通常、自動車メーカーに対してフルラインの製品ポートフォリオを提供する傾向がある。自動車メーカーは一つまたは数種類の製品しか持たない未検証の地元半導体メーカーに依存することをためらうケースが多い。
- それでも中国の自動車メーカーは現在、選択の余地がほとんどないとしている。ある国有自動車メーカーのサプライチェーン責任者は、「関税を巡る戦争は明確なメッセージを打ち出している。システムから米国製部品を置き換えるペースを加速する必要があるということだ」と述べた。
- 事情に詳しい関係者らによれば、一部の中国自動車メーカーは最近、TIやNXPなどの欧米の半導体企業と協議。中国向けにより多くの半導体を現地生産することについて話し合ったという。
- Here's how China could retaliate against U.S. tariffs
- 香港金融当局、過去最大規模の米ドル買い介入-ペッグ制防衛で - Bloomberg
- 韓国大統領選、保守系与党の公認候補に金文洙・前雇用労働相 - Bloomberg
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
- NY市場サマリー(2日)ドル下落、株式続伸 利回り上昇 | ロイター
- ### ■ 為替・金融市場の動向:
- * **ドルは下落**したが、強い米雇用統計を受けて**円やユーロに対する下げ幅は縮小**。
- * **4月の米雇用統計**では非農業部門雇用者数が市場予想(13万人増)を上回る**17.7万人増**。失業率は**4.2%で横ばい**。
- * この結果、**FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ開始時期は6月から7月へ後ずれ**との観測が強まり、市場が織り込む6月利下げ確率は**58%→35%に低下**。
- ### ■ 債券市場:
- * 雇用統計を受けて**米国債利回りは上昇**。
- * 10年債は4.326%、2年債は3.841%まで上昇。
- * **FRBの利下げに対する緊急性は後退**したとの見方。
- ### ■ 株式市場:
- * **米株は続伸**。経済の強さと米中貿易摩擦の緩和期待が支えに。
- * トランプ政権が一部関税を撤回し、**ナスダックは反発**。
- * アップルは自社株買い縮小とコスト増見通しで**約4%下落**。
- * メタ、エヌビディアなど**テック株は上昇**。アマゾンは小幅下落。
- * **テイクツーは新作ゲーム延期で約7%下落**。
- ### ■ 商品市場:
- * **金先物は反発**(1オンス=3,243.30ドル)。ただし週では1.67%安。
- * **原油先物は反落**(WTIは58.29ドル)。OPECプラスの増産懸念が重し。
- 全体として、**強い雇用統計がFRBの利下げ観測を遅らせ、金融市場に一定の安心感をもたらした**一方、**貿易問題や原油・金価格など不確定要因も多く、市場は依然として神経質な状況**です。
- マクドナルド、米売上高がコロナ禍以来の落ち込み-消費者心理が悪化 - Bloomberg
- [LLY] イーライリリー 1Q増収増益 売上高45%増127億ドル、営業益47%増36.9億ドル、配当1.50ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [MA] マスターカード 1Q増収増益 売上高14%増72.5億ドル、営業益15%増41.4億ドル、EPS3.59ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [APD] エアープロダクツ&ケミカルズ 2Q微減収赤字転落 売上高微減29.1億ドル、営業赤字23.2億ドル、EPSマイナス7.77ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AAON] エーオン 1Q増収減益 売上高23%増3.22億ドル、営業益25%減3511万ドル、配当0.10ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [FTV] フォーティブ 1Q減収減益 売上高3%減14.7億ドル、営業益23%減2.33億ドル、EPS0.50ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [D] ドミニオンエナジー 1Q増収増益 売上高12%増40.7億ドル、営業益47%増12.2億ドル、EPS0.75ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [LIN] リンデ 1Q微増収増益 売上高微増81.1億ドル、営業益4%増21.8億ドル、配当1.50ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [ICE] インターコンチネンタルエクスチェンジ 1Q増収増益 売上高15%増32.2億ドル、営業益15%増12.2億ドル、EPS1.38ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- LSEG、第1四半期収益は予想上回る 市場部門が好調 | ロイター
- [ED] コンソリデーテッドエジソン 1Q増収増益 売上高12%増47.9億ドル、営業益11%増11.2億ドル、EPS2.25ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AMGN] アムジェン 1Q増収最終黒字転換 売上高9%増81.4億ドル、純利益17.3億ドル、配当2.38ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- [AMZN] アマゾン 1Q増収増益 売上高9%増1556億ドル、営業益20%増184億ドル、EPS1.59ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AEE] アメレン 1Q増収増益 売上高15%増20.9億ドル、営業益16%増4.30億ドル、EPS1.07ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [AAPL] アップル 2Q増収増益 売上高5%増953億ドル、営業益6%増295億ドル、配当0.26ドルへ増配 - 株探(かぶたん)|米国株
- アップル、関税で今四半期9億ドルコスト増 1─3月業績は予想上回る | ロイター
- [X] USスチール 1Q減収赤字転落 売上高10%減37.2億ドル、営業赤字1.22億ドル、EPSマイナス0.52ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [JNPR] ジュニパーネットワークス 1Q増収黒字転換 売上高11%増12.8億ドル、営業益8940万ドル、EPS0.19ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [SYK] ストライカー 1Q増収減益 売上高12%増58.6億ドル、営業益14%減8.37億ドル、EPS1.69ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- [DTE] DTEエナジー 1Q増収増益 売上高37%増44.4億ドル、営業益21%増6.24億ドル、EPS2.14ドル - 株探(かぶたん)|米国株
- ●海外企業
- トランプ大統領、関税の政治的リスク認める-取引は急がないとも発言 - Bloomberg
- 日韓印とのディール急がず、トランプ氏「われわれは有利な立場」 | ロイター
- トランプ米大統領は30日、インド、韓国、日本との貿易交渉を巡ってディール(取引)の可能性があると述べた。その上で、自身が課した関税の恩恵を米国が享受しているため、ディール締結を急いでいないとの姿勢を示した。
- テレビネットワーク「ニュースネイション」のタウンホールでこれら3カ国との合意をいつ発表するのかと質問されると、「ディールの可能性はある」と回答。「私はあなた方ほど急いでいない。われわれは有利な立場にいる。これらの国はわれわれを必要としている。われわれにはそれらの国は必要ない」と語った。
- マスク氏、FRBへDOGEチーム派遣を検討=報道 | ロイター
- ブルームバーグニュースは1日、米実業家イーロン・マスク氏が、自身が率いる「政府効率化省(DOGE)」のチームを連邦準備理事会(FRB)に派遣することを検討していると報じた。首都ワシントンのFRBの建物の改修工事を潜在的な政府の無駄遣いの一例として挙げた。
- 報道によると、マスク氏は4月30日にホワイトハウスでブリーフィングを行った。
- DOGEの活動は2026年7月4日までに完了する予定だが、アクシオスによると、マスク氏はDOGEが28年末まで連邦政府の支出削減の監督する可能性があると述べた。
- 米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=財務長官 | ロイター
- ベセント米財務長官は1日、米債券市場は連邦準備理事会(FRB)が利下げすべきだというシグナルを送っていると述べた。2年債利回りがフェデラルファンド(FF)金利より低い点を指摘し、FRBに利下げを求めた。
- FOXビジネス・ネットワークの番組で長官は「2年物金利はFF金利を下回っており、FRBは利下げすべきという市場のシグナルだ」と語った。
- 前営業日の2年債利回りは約3.57%で、前日比約5ベーシスポイント低下し、日次の実効フェデラルファンド金利4.33%を下回った。FRBは昨年12月以降、政策金利の水準を4.25%─4.50%としており、トランプ大統領の新たな政策、特に広範な関税がインフレや需要、雇用市場にどのような影響を与えるか見極めるため様子見の姿勢を取っている。
- 金融政策の方向性を予測する債券市場の指標である、FRBの政策金利と2年国債利回りのスプレッドは、この2カ月間で着実に拡大している。これは、トランプ関税の影響で景気が弱まり、FRBが今年1%ポイントの利下げを行うとの見方が大勢になりつつあることによるものだ。
- またベセント長官は、10年国債の利回りが著しく低下している点にも言及。同利回りは家計や企業のローン金利に直接的な影響を与えるため、自身とトランプ政権は一層注意を払っていると述べた。
- トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を事実上の更迭-国連大使に指名 - Bloomberg
- ●先進国中銀、金融当局
- 植田総裁、通商政策や海外経済巡る不確実性「極めて高い」-政策維持 - Bloomberg
- 日本銀行は1日の金融政策決定会合で政策維持を決めた。トランプ関税で高まる世界経済の不確実性を踏まえ、2%の物価安定目標の実現時期を1年程度先送りした。
- 植田和男総裁は記者会見で、各国通商政策の今後の展開やその影響を受けた「海外経済・物価を巡る不確実性は極めて高い」と指摘。金融為替市場や国内経済・物価への影響を十分注視する必要があると語った。中心的な見通しの不確実性は「従来以上に大きい」とも説明。各国政策の帰すうや企業・家計の対応次第で見通しが大きく変化しうる点には注意が必要だと述べた。
- 会合では政策金利の無担保コール翌日物金利を0.5%程度に据え置くことを全員一致で決定。日銀の経済・物価見通しが実現していけば、利上げで金融緩和度合いを調整する方針は維持した。ブルームバーグが4月16-22日に実施したエコノミスト調査では、今回会合での追加利上げ予想はゼロだった。
- 新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、基調的な物価上昇率が物価目標とおおむね整合的な水準で推移する時期を、2025-27年度の「見通し期間後半」と記述。見通し期間が24-26年度だった1月リポートでも見通し期間後半とした目標実現時期は後ずれした。25、26年度の経済・物価見通しも引き下げた。
- トランプ関税が世界・日本経済を下押すことが確実視される中、日銀は今回の展望リポートで物価目標の実現時期を先送りし、経済・物価見通しを下方修正した。植田総裁も今後の見通しを巡る不確実性の大きさを強調したことで、日銀の追加利上げペースは鈍化するとの見方が市場で広がりそうだ。
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、今年度の経済成長率について「かなり思い切った下げ幅。相当危機感を持った数字」とし、大幅な下振れで当面は利上げは見送らざるを得ないことを示唆しているとみる。いったん利上げを停止した上で、「景気が回復してくれば利上げを再開というイメージ」としている。
- 円は下落
- 今後の金融政策運営では、実質金利が極めて低い水準にあるとの従来の認識を踏襲。経済・物価の見通しが実現していけば、それに応じて政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整していく姿勢を堅持した。もっとも、米関税政策の影響を巡る不確実性を踏まえ、見通しが実現していくかは経済・物価情勢や市場動向などを確認し、「予断を持たずに判断していく」という。
- 総裁は基調的物価が2%付近に収束するタイミングは「やや後ずれしている」としつつ、それに合わせて「必ず利上げの時期が同じように後ずれするかは必ずしもそうではない」と語った。見通し期間の途中に関税政策の影響で足踏みする可能性があるとも指摘。どの段階で見通しの実現確度に自信が持てるか分からないとし、基調的物価が伸び悩んでいる時に「無理に利上げをすることは考えていない」と述べた。
- 会合結果の発表後、円相場は一時1ドル=144円台前半まで下落。日銀が経済・物価の見通しを引き下げた上で下振れリスクが大きいと指摘したことで、利上げが先送りされるとの見方が強まった。総裁会見中には、一時144円74銭まで円安に振れた。
- みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは、展望リポートの中期的な物価見通しは2%を維持しているとし、トランプ関税による「足元の警戒感を示しつつ、中期的な利上げ路線とも矛盾のないような形にうまく仕立てている」と指摘。経済・物価見通しの下方修正はハト派の印象だが、中期的な見通し自体は変えていないので「おおむねニュートラル」との見方を示した。
- 経済・物価見通し下方修正
- 新たな経済・物価見通しでは、25年度と26年度の実質国内総生産(GDP)の前年比を0.5%増、0.7%増にそれぞれ下方修正。消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は2.2%上昇、1.7%上昇に引き下げた。初めて示した27年度は実質GDPが1.0%増、コアCPIが1.9%上昇となった。
- 経済・物価見通しのリスクに関しては、25年度と26年度は共に「下振れリスクの方が大きい」とした。各国の通商政策などの今後の展開やその内外経済・物価に及ぼす影響については、不確実性が極めて高い状態にあるとした。
- 今回の中心的なシナリオは、米関税自体の最終的な着地点が不透明な中で、各国間の交渉がある程度進展することや、グローバルサプライチェーンのき損が回避されることなどを前提に置いた。
- 足元までのコアCPIは、日銀の目標である2%を大幅に上回って推移している。食料の値上がりなどを受けて、全国コアCPIは3月まで4カ月連続で3%台と、主要7カ国(G7)で最も高い水準となっている。
- ブルームバーグ・エコノミクスの見方
- 「詳細を見ると、日銀は追加利上げに踏み切る構えであることがうかがえる。2027年度の新たな物価見通しでは2%前後を維持する方針を示しており、関税が日本の物価上昇の勢いを妨げる可能性について、日銀が過度に懸念していないことを示唆している」
- ●先進国経済指標
- 米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで5カ月ぶり低水準 | ロイター
- 米供給管理協会(ISM)が1日発表した4月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は一段と低下し、48.7と5カ月ぶりの低水準を付けた。低下は2カ月連続。トランプ米政権が掲げる関税措置で供給網が圧迫され、投入コストが高止まりしている実態が浮き彫りになった。
- 市場予想は48.0。3月は49.0に低下し、3カ月ぶりに拡大・縮小の分岐点となる50を割り込んでいた。
- 今回の統計はトランプ大統領が4月2日に大規模な相互関税措置を発表した後の期間が対象。製造業は輸入原材料に大きく依存しているため、規制緩和と利下げへの期待で底上げされていた回復は短命に終わった。
- 構成指数では、先行指標となる新規受注が47.2と、前月の45.2から改善。前月は2023年5月以来の低水準を付けていた。
- ただ、供給業者の納入ペースは悪化。供給業者の納入を示す指数は55.2。前月は53.5だった。同指数は50を超えると納入が遅延していることを示す。
- 納入ペースが鈍化する中、支払い価格は69.8と、前月の69.4から上昇し、22年6月以来の高水準を付けた。
- 雇用指数は46.5と、前月の44.7から改善。拡大・縮小の分岐点となる50はなお下回っているものの、雇用縮小ペースが緩和したことが示された。
- 4月は輸入を示す指標が昨年12月以来、初めて低下。関税措置を回避するための輸入の前倒しが続いた兆候はみられなかった。
- 商務省が前日発表した第1・四半期の実質国内総生産(GDP)速報値は年率換算で前期比0.3%減。トランプ大統領が打ち出す関税措置を前に、企業による大量の駆け込み輸入があったことが響き、22年第1・四半期以来のマイナス成長に陥った。
- 米新規失業保険申請1.8万件増の24.1万件、2カ月ぶり高水準 | ロイター
- 米新規失業保険申請件数は増加、2月以来の高水準-市場予想上回る - Bloomberg
- 英4月製造業PMI改定値は45.4、米関税懸念で輸出受注が低迷 | ロイター
- 豪住宅価格、4月は過去最高 関税リスクで販売は減少=コタリティ | ロイター
- イエレン氏、米景気後退リスクは「大幅に」上昇-トランプ関税で - Bloomberg
- 米景気後退は年内に、関税の影響を市場は過小評価-MLIV調査 - Bloomberg
- 4月28-30日にかけて実施された最新のブルームバーグ「マーケッツ・ライブ(MLIV)パルス」調査では、248人の回答者の82%が、トランプ米大統領の関税がもたらす中国からの輸入減少による影響を市場はやや、または著しく過小評価していると回答した。
- また、関税によって今年中に米国が景気後退に陥るだろうと予想する声が86%を占めた。
- トランプ氏が4月上旬に対中関税を145%に引き上げたことを受けて、中国発の貨物は急減した。
- ただ、中国から米西海岸への輸送には約30日かかるため、関税導入前に出港した貨物が米国にはまだ届き続けている。
- 米企業は正式発表のはるかに前から関税を覚悟しており、2025年1-3月(第1四半期)には米国で輸入が急増し、国内総生産(GDP)は減少した。
- ハーバー・キャピタル・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、ジェーク・シュアマイヤー氏は「GDPは一時的な需要の前倒しを反映しているに過ぎないが、更新頻度の高い港湾貨物データは、関税による今後の需要崩壊のリスクを示唆している」と解説。
- 「実質的に米中貿易が禁輸に近い状態になっているとすれば、これは当然とも言える」と述べた。
- 関税の影響、5月後半に表面化か
- エコノミストは、貿易赤字の急拡大が次の四半期には反転するだろうと予測しているが、同時に関税による供給ショックのリスクに警鐘を鳴らしている。
- 大幅な貨物減少の影響が米国民に見え始めるのはいつかという質問に対し、回答者の49%が「5月後半」と回答、約3分の1は「6月以降」と予想した。
- たとえ貿易戦争の緊張が和らいだとしても、その影響はすでに波及している。ロサンゼルス港港湾局長のジーン・セロカ氏によると、既に貨物の流れが鈍化している。調査回答者の3分の2以上が、中国からの供給ショックによる影響が最も大きいのは小売りセクターと答えた。テクノロジーを挙げたのは12%に過ぎなかった。
- サプライショックが深刻化し米資産が大きく売られた場合、最も可能性の高い政策対応は何かとの問いには、関税の大幅な軽減だと3分の2近くが回答した。
- トランプ氏は4月2日に世界的な高関税パッケージを発表した1週間後にその一部を一時停止しており、同氏が引き下がることへの期待もある。
- ただ、ABNアムロのエコノミストは「最近の関税停止は世界経済に対するテールリスクの一部を緩和したものの、依然として非常に大規模な関税パッケージが維持され、リスクが残っている」と指摘。
- 「通商政策をめぐる異常な不確実性自体が、既に経済成長に害を与えている」と分析した。
- モルガンS、中間富裕層にPE市場を開放-ファンド新設で裾野拡大 - Bloomberg
- 米国債諮問委員会、連邦債務上限の撤廃を提言 | ロイター
- 米財務省に国債発行について助言する借り入れ諮問委員会(TBAC)は29日に開いた四半期会合で、連邦債務上限の撤廃を提言した。国債返済コストを増加させて市場の変動を高め、ドルの基軸通貨としての地位を損ないかねないためだとしている。30日に公表された議事要旨で分かった。
- TBACは、米国債プライマリーディーラーらで構成している。議会で審議されている債務上限に関し、政府のキャッシュバランスや政府短期証券の発行を大きく変動させ、米国債と市場参加者にボラティリティーリスクをもたらしていると指摘した。
- その上で債務上限は「財政規律を向上させるどころか米国の信用格付けを損なっており、米国の準備資産という地位に影響しかねない」と切り込み、「政府の義務を果たすのに必要なだけの資金を借り入れる幅広い権限を、議会は政権に委ねる」のが望ましいとの意見を表明した。
- 米議会の共和党はここ数年、債務上限審議の膠着状態を利用して歳出に関する譲歩を引き出そうとしてきた。
- ベセント財務長官は1月に長官就任の承認を巡る議会公聴会で、債務上限撤廃案について「微妙な」問題だとしつつ、トランプ大統領が望むなら議会と協力して撤廃すると述べていた。
- サブプライムローン崩壊を当てた富豪、28年に金5000ドル予想 - 日本経済新聞
- サウジアラビア産原油価格、トランプ関税懸念で4年ぶり低水準 4月積み6.6%安 - 日本経済新聞
- 【社説】関税で縮む米経済 - WSJ
- 4月30日に発表された1-3月期の米経済の落ち込みは、リセッション(景気後退)の前兆ではないかもしれないが、大半のエコノミストが予想していた水準以上だった。この統計全体を通して読み取れる主なストーリーは、ドナルド・トランプ大統領の関税が経済成長を人質に取っているというものだ。
- 米商務省経済分析局(BEA)が発表した実質GDP(国内総生産)速報値は、季節調整済み年率換算で前期比0.3%減少した。悪化分の大半は輸入の急増によるものだ。1-3月期のモノとサービスの輸入は41.3%増加し、モノだけでは50.9%増加した。トランプ氏が導入したさまざまな国境税(関税)の発動を前にした企業の駆け込み需要が背景にある。輸入はGDPを5.03ポイントも押し下げた。
- このことは、関税がいかにデータを歪(ゆが)めたかを示しており、1-3月期のデータがトレンドなのか外れ値なのかの見極めを難しくしている。1-3月期の民間投資が21.9%の大幅増となったのも同様で、これは通常なら将来の成長の良い兆しとなる。だが、設備投資が22.5%増えたことから、これが関税発動前の企業の駆け込み行動のもう一つの例だと分かる。事業継続に必要な部品の価格が上昇する前に、今購入しておこうという動きだ。
- GDP成長率への寄与度は、民間国内投資が3.6%、在庫投資は2.25%だった。これは、輸入の急増と連邦政府支出の小幅な減少の影響を相殺した。政府支出の減少もGDP成長率を押し下げるが、バイデン前政権の大盤振る舞いの政府支出は持続不可能な形で成長を押し上げていた。
- 分析する上で難しいのは、これら全てが今年末まで続くのか、またどの程度の規模で続くのかの判断だ。今回のGDP発表に先立ち、トランプ氏が関税措置を緩和するとの楽観的な見方が出ていただけに、発表後の投資家の反応は良くなかった。その理由はおそらく、関税を巡る騒動と、それによって生じている不確実性の影響が個人消費に波及しているように見えることだ。
- 個人消費支出は1-3月期に1.8%しか増えず、GDP成長率への寄与度は1.21%にとどまった。これは、消費者信頼感の低下を示す最近のさまざまな指標と一致している。年内に景気後退入りする場合は、消費意欲の後退がその原因の一つになるだろう。
- 今後の状況悪化を示す兆候は増えている。来週ロサンゼルス港に到着する貨物が35%減ると見込まれていることもその一つだ。中国の輸出受注は4月に急減した。トランプ氏はそれを喜んでいるかもしれないが、小売店が品不足に見舞われれば、また違った感情を抱くかもしれない。
- 関税による混乱のさなかにあっても、米国の民間経済が、干渉せずに任せておけば素晴らしい仕組みであるということを忘れてはならない。人工知能(AI)はハイテク業界のみならず、経済全体に生産性向上の波を起こしている。米国は、連邦政府が価格・制度面の規制で邪魔をしなければ、バイオ技術革命の最先端を走る国だ。
- だが、トランプ氏の関税措置ほどの規模の増税と生産活動へのショックは、必ず経済的打撃をもたらすはずだ。その打撃がどの程度になるか予想するのは困難だが、米国の国境税の平均水準を2.4%から20%超へ引き上げたことが、企業のサプライチェーン(供給網)や、投資先・投資額に関する自信に及ぼす影響は極めて大きい。
- トランプ氏は、関税によって「若干の混乱」が起きると予想した際に、こうした展開を全て想定していたのだろうか。それは「若干の」をどう定義するか次第だ。同氏は少なくとも内々には、経済への打撃を認識しているように思われる。関税に関する当初の野心的目標を後退させているからだ。しかし、トランプ氏が設けた例外・軽減措置は不公平で恣意(しい)的なため、それ自体が不透明感をもたらしている。そして同氏が約束している貿易面での新たな大規模なディールの実現には、本人が宣伝しているよりも長い時間がかかるかもしれない。
- 1-3月期GDPの減少という警鐘への最善の対処策は、トランプ氏が関税措置を全面撤回することだろう。次善の策は、全ての国々に対する10%の関税だけを残して幕引きを図ることだ。こうした後退があまりにも大きくて受け入れられないならば、共和党は成長を促進する減税法案を可決するとともに、規制緩和を加速させる必要がある。それは、関税によって人質に取られてしまった米経済の解放に向けて共和党に残されたチャンスの中で、最善のものだろう。
- 遠のく「黄金時代」、米景気減速でトランプ離れも-責任転嫁は裏目に - Bloomberg
- トランプ米大統領は景気減速の兆しが浮上する中、国民に忍耐を求める一方、その責任を前政権に転嫁する姿勢を示している。揺れ動くトランプ氏の姿勢は、経済改善を期待して投票した有権者の支持を失う恐れがある。
- トランプ政権の包括的な上乗せ関税の発表により、世界の金融市場は混乱。足元で消費者信頼感は急低下している。トランプ氏はこれまで「黄金時代」の復活に向けて短期的な痛みに耐えるよう国民に呼びかけていた。
- ところが、第1四半期(1-3月)の国内総生産(GDP)は、関税導入を前にした輸入急増で2022年以来のマイナス成長に陥った。トランプ氏とホワイトハウスはデータの発表を受けて、その責任をバイデン前大統領に転嫁した。
- それでも、トランプ氏の支持派と批判派の双方から、米経済はバイデン氏ではなく、完全にトランプ氏の手にあるとの認識が広がっているとの指摘が上がっている。トランプ氏が関税政策を通じて、世界経済の再構築を図る取り組みを強化していることが背景にある。米経済の健全度を測る上で、2日には4月の雇用統計が発表される。
- 政治的リスク
- トランプ氏の支持者の中には、政策が成果を生むまで待ち、経済状況がどれほど悪化してもトランプ氏を支え続ける層が存在する。こう指摘するのは、反トランプ派のサイト「ザ・ブルワーク」を運営し、有権者のフォーカスグループ調査を行っているサラ・ロングウェル氏だ。
- しかし、2020年の大統領選でバイデン氏を支持し、24年の選挙ではトランプ氏に投票した人を中心に、トランプ氏は有権者の支持を失いかねない状況にあると同氏は指摘する。特にトランプ氏支持に乗り換えた有権者は、商才を兼ね備えたトランプ氏や共和党が物価を下げ、景気を良くしてくれると期待していたためだ。
- 同氏は、一部の有権者はそれほど気長に待ってくれないという点だけでなく、経済運営に優れているというトランプ氏に対するイメージに疑問を投げかけるという点においても、トランプ氏は脆弱性を抱えていると話す。
- 世論調査からはすでに、トランプ氏の経済手腕にして有権者の支持が失われ始めている兆候がうかがえる。米ピュー・リサーチ・センターによると、関税引き上げ、連邦機関の予算削減、DEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムの廃止など、就任後100日間の主要な施策に対して、大多数の成人が不支持を示している。
- 共和党のストラテジスト、アレックス・コナント氏は「トランプ氏がすぐに状況を好転させるとは誰も期待していないが、悪化させることは許されない」と指摘。「関税は非常に不人気だ」と述べた。
- リセッションの足音
- エコノミストは、4-6月(第2四半期)には貿易赤字の縮小により、米経済が持ち直すと予測している。しかし、ブルームバーグが実施した調査によれば、今後1年に景気後退が起きる確率は45%と見込まれている。まずは2日に発表される4月の雇用統計を皮切りに、トランプ関税を起因とする経済の混乱や不透明感が指標に表面化し始めるかもしれない。
- 有権者や企業、投資家の不安が高まる中で、2026年の中間選挙は確実に近づいている。上下両院でかろうじて多数派を維持している共和党にとっては危うい状況だ。
- 共和党の世論調査担当員ウィット・エアーズ氏は、GDPなど不利な統計についてトランプ氏と側近らがバイデン氏に責任転嫁している点を問われると、トランプ氏が上乗せ関税を発表した「解放の日」以来、「多くの米国人の目には、この経済の責任は完全にトランプ氏にあると映る」と述べた。
- 米GDPより雇用統計に注目せよ - WSJ
- 米国の1-3月期の実質国内総生産(GDP)は減少したが、これが経済の実態について教えてくれることはほぼ何もない。実際、経済は3月まで好調だった。
- ドナルド・トランプ米大統領の関税や連邦政府の歳出削減、移民取り締まりの広範な影響についてGDPから分かることはさらに少ない。知りたければ4月のデータを待つ必要がある。まずは2日に発表される4月の雇用統計だ。
- 4月の雇用統計は、トランプ氏が関税を発表した4月2日以降で初の「ハード」データ(実績値)だ。イーロン・マスク氏率いる政府効率化省による連邦政府の人員削減や、不法移民の強制送還も本格化し、国境を越えた人流が急減した。雇用統計が弱い内容なら反トランプ派の主張が裏付けられ、強ければ少なくとも当面は批判がやむだろう。
- だが筆者の考えでは、どのような数字が出ようと、トランプ氏の影響について分かることは多くない。確かに企業は頻繁に関税に言及しているが、値上げや生産計画変更の大きな動きはない。連邦政府の人員削減や強制送還も、マクロ経済に大きく影響するほどではないだろう。 では、1-3月期の実質GDPが前期比年率換算で0.3%減少したのは、関税のせいではないのか。違う、関税のせいではない。統計上のゆがみがいくつか重なった影響だ。
- GDPは、企業・家計・政府の支出に、米国の輸出品に対する外国の支出を加え、輸入を差し引くことで、米国の生産物への支出を算出する。
- 輸入は確かに関税の影響を受けた。企業が関税の発動に先んじて在庫を積み増したためだ。この急増した輸入がGDPから差し引かれた。本来なら輸入と同じだけ在庫が増え、関税前の駆け込みの影響は相殺されるはずだった。奇妙なことにそうならなかった。米商務省経済分析局による3月の在庫推定値が速報値を上回っていたにもかかわらずだ。もし上振れしていなければ、GDPは0.3%ではなく1.5%減少していた。S&Pグローバルのエコノミスト、ベン・ハーゾン氏はそう試算する。
- つまり、国内生産が異常に弱かったか、データから何かが抜けていたかのどちらかだ。米シンクタンク、外交問題評議会(CFR)のブラッド・セッツァー氏は、製薬会社が関税に先駆けて国外工場から急いで仕入れた高額特許薬について、在庫データに実際より少なく反映されていると指摘した。 通常と異なる輸入の影響のほか、特殊要因も1-3月期の合計を押し下げた。家計消費は1月に前月比0.4%減少。厳冬だったこととロサンゼルスの山火事が原因だ。2月は0.1%増、3月は0.7%増と堅調だった。
- 3月は関税導入を控え、自動車などの駆け込み購入が数字を押し上げた可能性がある。一方、サービスへの支出は単月で0.4%、12月からの年率換算では2.4%それぞれ増加しており、過去2年間のペースと一致している。
- 雇用データも同様の傾向を示している。民間部門雇用者数の伸びは1月は弱く、2月はまずまず、3月は堅調だった。月平均の伸び率は過去2年間の平均と一致した。
- 一般的に米大統領による経済への影響は、自身や批判者が考えるほど大きくない。これはトランプ氏の最初の数カ月間にも当てはまる。
- 4月にはこれが変化するだろうか。おそらくそうはならない。関税を巡る議論はかまびすしいが、価格にはまだほとんど転嫁されていない。小売業者は今のところ価格を据え置こうとしている。おそらく、トランプ氏が関税の一時停止や免除を拡大することを期待しているのだろう。価格が影響を受けていないのなら、支出も影響を受けていないはずだ。
- もしかすると、当初の関税と追加関税の見通しが雇用にブレーキをかけるかもしれない。だがその兆候はまだ全くない。新規失業保険申請件数は、ニューヨーク特有の要因で先週押し上げられたものの、依然として低水準だ。インディード・ハイヤリング・ラボのオンライン求人広告指数は1月前半から低下傾向にあったが、4月は目立った加速は見られなかった。
- 4月の米就業者数のエコノミスト予想は前月比13万3000人増で、伸びはここ数カ月より小幅とはいえ、かなり健全な数字だ。給与計算代行サービス大手ADPは独自集計を基に、民間雇用の伸びをわずか6万2000人と試算している。だがADPの予測はいつも的外れだ。仮にこの通りだとしても、弱いのはもっぱら医療と教育分野だ。パンテオン・マクロエコノミクスが指摘するように、両分野は関税の影響をあまり受けず、求人件数も多い。
- 市場や世間はトランプ氏の政策が経済に影響を及ぼしている形跡を探しているが、2日発表される雇用統計には出てこないかもしれない。
- ●ロシア、ウクライナ、中東情勢
- 韓国最高裁、野党大統領候補の李在明氏の無罪判決を破棄 - Bloomberg
- ●プロファイ、インフラ、自然災害
- NY市場サマリー(1日)ダウ・S&P8連騰、ドル・ 利回り上昇 | ロイター
- **為替市場**
- * トランプ政権の関税政策に対する交渉が進展するとの楽観的な見方から、ドルが買い戻された。
- * 日銀は成長率・物価見通しを引き下げ、政策金利は据え置き。物価目標2%達成時期は後ろ倒し。
- * 円は対ドル・対ユーロで下落し、約4週間ぶり・4カ月ぶりの安値を更新。
- **債券市場(NY)**
- * 米4月の製造業PMIは48.7と予想を上回るが、依然低水準。原材料価格は高止まり。
- * 米10年債利回りは一時低下後に上昇、4.231%で終了。2年債利回りも3.705%に上昇。
- **株式市場(米国)**
- * マイクロソフトとメタの好決算によりAI投資への懸念が後退。
- * ダウ・S\&P500は8連騰、マイクロソフト株は7.6%、メタは4.2%上昇。
- **商品市場**
- * 金はドル高や米中貿易摩擦緩和への期待を背景に3日続落し、3週間ぶりの安値。
- * 原油は安値拾いの買いにより4営業日ぶりに反発。
- 欧州市場サマリー(1日) | ロイター
- **ロンドン株式市場 概要**
- * **FTSE100指数**は横ばいながら**14営業日続伸**、**FTSE250指数**は**1.26%上昇**し**7営業日続伸**。
- * **旅行関連株が好調**で相場を押し上げ、**米中貿易摩擦緩和への期待**も投資家心理を支援。
- * **ロールスロイス**:2025年の業績見通し維持で**1.7%高**。
- * **ウィットブレッド**:予約好調と自社株買い発表で**5.8%上昇**。
- * **フェレクスポ**:米ウクライナの鉱物資源協定を受けて**22.2%急騰**。
- * **ロイズ銀行**:減益決算を嫌気され**2.6%下落**。