備忘録(2023/6/30-7/2)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米銀大手モルガン・スタンレーは30日、四半期配当を10%増やす計画を発表した。JPモルガン・チェースなど他の金融大手も同日、増配計画を明らかにした。自社株買いも続ける。米連邦準備理事会(FRB)による健全性審査(ストレステスト)を通過したことで、株主還元策の公表が相次いだ。
モルガン・スタンレーは2023年7〜9月期以降の四半期配当を従来の1株あたり77.5セントから85セントに増額すると発表した。JPモルガンは同1ドルから1ドル5セント、ウェルズ・ファーゴは30セントから17%増の35セントに引き上げる。
ゴールドマン・サックスは10%の増配で、同2.50ドルから2.75ドルに引き上げると発表した。シティグループは51セントの配当を53セントに増やすとした。
モルガン・スタンレーは22年6月、複数年で最大200億ドル(約2兆8900億円)の自社株買いを実施する計画を発表済みだ。同社は30日、このプログラムを更新し、自社株買いを継続する方針を明らかにした。JPモルガンやゴールドマンも既存の計画に沿って自社株買いを実施する。
JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ(Wファーゴ)、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどの米銀大手が30日、増配を発表した。
米連邦準備理事会(FRB)が28日に公表した2023年の銀行ストレステスト(健全性審査)で、米銀大手が深刻な景気低迷を乗り切るための資本を十分有していることが示され、全行が合格したことを受けた。
米当局者らは金融システム全体の改革案の一環として、大手銀行を対象に連邦住宅貸付銀行(FHLB)からの借り入れを制限する方向で検討している。
1兆6000億ドル規模の金融システムにとって数十年来の抜本的な規制改革が協議されており、これはその一部を成すもの。事情に詳しい複数の関係者によれば、勧告は今後数カ月で発表され、米連邦住宅金融局(FHFA)はそれまでに計画を調整する余地がある。大手銀行の借り入れ能力を抑えるには、議会での行動も必要になる可能性がある。
連邦政府の支援を受けているFHLBが、今年破綻したシリコンバレー銀行(SVB)やシグネチャー・バンク、ファースト・リパブリック銀行に多額を融資していたことが火種となっている。大恐慌の時代に住宅金融を支える目的で創設されたFHLBは、当初の役割が薄れ、今では加盟行の救済機関へと姿を変えた。
FHFAのサンドラ・トンプソン局長は5月、貸出規定の見直しについては9月末までに報告を出すと議会で述べていた。報告書には議会への勧告とFHFAが実行可能な変革が含まれるという。
「FHFAは9月末までに報告書を提出する約束に引き続きコミットしている。報告書には広範にわたるトピックに関する勧告が含まれる」とFHFAのアダム・ラッセル氏は電子メールで述べた。
米地方銀行と金融会社による消費者ローン債権の売却が増えている。資金調達の厳しさとコスト高が背景にある。プライベートクレジット会社やヘッジファンドには、こうしたローン債権を割り引いての売り込みが大量に来ている。
キャニオン・パートナーズやキャッスルレーク、ハイランド・ヒルなどに来るローン債権の売り込みは、昨年末の2倍に増えていると、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。レンディングポイントやベストエッグ、アップスタート・ホールディングスといった金融会社のほか、地銀からも自動車ローンや個人融資などが売りに出されているという。
金融会社や地銀が消費者ローン組成の意欲を失うにつれ、ヘッジファンドやその他の投資会社には利益を得る機会が増える可能性がある。しかしこの状況は消費者の借り入れコストを押し上げると、アリーナ・インベスターズのダン・ズワーン最高経営責任者(CEO)は指摘する。
「消費者金融では資金を調達するコストが上昇し、手数料負担が増えている。この状況は消費者が負担する金利の上昇、あるいはすでに高金利を払っている消費者が受けられる融資の減少につながる」と述べた。
かつて消費者ローン債権では地銀が最大の買い手だったが、今ではバランスシートを整理し資本要件を下げるためこうしたローン債権を売りに出すケースが増えている。部外秘情報が含まれるとして関係者らは匿名で話した。パックウェスト・バンコープは今週、35億ドル(約5000億円)相当の資産担保ローンポートフォリオを米資産運用会社のアレス・マネジメントに売却した。
シリコンバレー銀行(SVB)などの破綻を受けて、消費者や企業は小規模の銀行から預金を引き出し、マネーマーケットファンド(MMF)など利回りの高い商品に乗り換えるにつれ、地銀などの資金コストが上昇している。こうした銀行の多くは消費者や中小企業への融資に力を入れており、預金は重要な資金源となっている。
連邦準備制度理事会(FRB)のデータによれば、上位25行を除いた米銀では昨年12月末から今年6月中旬にかけて、季節調整ベースで2150億ドル(31兆700億円)余りの預金が失われた。
米金融大手ゴールドマン・サックスがアップルとの個人向け金融サービス事業の提携解消を検討していることが30日、分かった。アップルの顧客向けに提供するクレジットカードや預金のサービスをカード大手のアメリカン・エキスプレスに譲渡する交渉を進めている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)など複数の米メディアが報じた。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
欧州連合(EU)首脳会議が6月30日、2日間の日程を終えて閉幕した。合意した中国との関係に関する新たな方針文書では、経済安全保障を重視する方針を明記した。ただ重要な貿易相手だとの考えも盛り、対抗と協調のバランスに苦慮する現状も浮き彫りにした。
米連邦最高裁は30日、バイデン政権による学生ローン返済の一部免除措置を認めない判断を下した。約4300万人とされる対象者だけでなく、返済免除を公約に掲げてきたバイデン大統領の再選戦略にも影響を与える。
保守派判事6人が返済免除措置を違法とし、リベラル派判事3人が判断に反対した。ロバーツ長官による多数派意見は「教育省が一方的に米経済を大きく変える措置を取る前に、議会が明確に意志を表明する必要がある」とし、議会の承認を受けない大規模な返済免除措置は政権の権限を逸脱していると断じた。
バイデン氏は2022年8月、連邦政府が提供する学生ローンの借り手に1人当たり1万ドル(約144万円)の返済を免除すると発表。年収12万5000ドル未満の借り手が対象で、低所得者向けの奨学金を利用している人にはさらに1万ドルを免除するとした。
中西部ミズーリ州など6州と、学生ローンの借り手2人が措置の差し止めを求めて訴訟を起こし、下級審が差し止めを命じた。政権が最高裁に上訴していた。最高裁は州による訴訟について判断を下した。
米連邦最高裁は30日、バイデン米政権による学生ローン返済の一部免除措置を認めない判断を下した。3年以上、延長してきた学生ローンの支払い猶予措置も8月末で打ち切られる。若者を中心とする借り手は返済再開を迫られ、消費支出を減らすとの見方が多い。学生ローンの延滞も再び急増する可能性がある。
バイデン大統領は2022年8月、連邦政府が提供する学生ローンの借り手に1人当たり1万ドル(145万円)の返済を免除すると打ち出した。年収12万5千ドル未満の借り手が対象で、低所得者向けの奨学金を利用している人にはさらに1万ドルを免除するとした。ホワイトハウスの試算では、対象となる4000万人以上の借り手のうち約2000万人は支払いが全額免除される見通しだった。
最高裁が否認した返済免除とは別に、猶予措置も8月末でなくなる。返済猶予は新型コロナウイルス禍初期の20年3月にトランプ前大統領が打ち出し、バイデン政権でも繰り返し延長してきた。共和党からの反対は根強く、米政府の債務上限問題を巡る与野党協議により、打ち切りが決まった。
学生ローンを抱えている若者からは不満の声が上がる。ニューヨーク市在住の25歳男性は「応募していた免除プログラムが無効になったのは残念だ。今後は支出を削って生活する必要がある。ニューヨークは特に物価が高いので、支払い猶予も助かっていた」と話す。現時点で約1万ドルのローンが残っているという。
米モルガン・スタンレーの調査によると、年収5万ドル未満の人の47%は「毎月の学生ローンをきちんと返済できなくなる」と回答した。インフレや金利高などの逆風も重なり「特に若年層は学生ローンの支払いで一気に負担が増えたと感じるだろう」(ミラー・タバックのマシュー・マリー氏)。
英バークレイズの試算では、平均的な学生ローン保有者は返済の再開で今秋から毎月389ドルの家計負担が増える。米国全体では毎月90億ドルの支出減につながるという。
若年層の購買意欲がどう変化するかは株式市場でも焦点になっている。学生ローンの借り手のうち、5割強は34歳以下の若者が占めている。
バークレイズは、同世代の支出が相対的に多いアメリカン・イーグル・アウトフィッターズなどのアパレル企業で売り上げ減の逆風が強まると予想する。一方、大卒未満の低所得層やより高い年齢層からの支持が強い小売店などは返済再開の影響を受けにくいとみる。
学生ローンの延滞は一連の減免措置によって大幅に減っていた。ニューヨーク連銀によると、90日以上の延滞率は23年1〜3月期に0.67%と記録的な低水準を記録した。返済再開後は反動で延滞がコロナ禍前の水準に急増する恐れもある。
学生債務危機センターのコーディ・フーナニアン氏は「延滞とデフォルト(債務不履行)の波が来る」と警戒する。学生ローンで深刻な滞納があれば信用スコアが低下するため、将来、住宅ローンやカードローンを借りにくくなる可能性もある。
バイデン氏は最高裁の決定後に、支払いが滞っても債務不履行や信用低下を避けることができる12カ月間の猶予期間を設定すると発表した。
米労働市場は依然として底堅く、賃金も増加基調が続く。返済再開による激変緩和措置も加われば「消費に深刻な影響を与える可能性は低い」(LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏)との声もある。
6月のユーロ圏の消費者物価指数は、伸び率が前年同月比5.5%と2カ月連続で鈍化した。価格変動の大きい食品やエネルギーを除くと5.4%と3カ月ぶりに加速し、インフレ基調は根強い。欧州中央銀行(ECB)は7月も連続利上げに動く構えだ。
3大都市のパリ、リヨン、マルセイユの警備を強化するため約4万5000人の警察官が配備され、特殊精鋭部隊や装甲車、ヘリコプターも投入された。
2日午前1時45分(日本時間午前8時45分)時点で、それまでの4夜に比べて状況はやや落ち着きを取り戻した。ただ、パリ中心部では緊張が見られ、南部のマルセイユ、ニース、東部ストラスブールなどでは散発的な衝突も起きた。
マルセイユでは警察が催涙ガスを使用し、夜遅くまで市中心部で若者らと路上で衝突した。パリではシャンゼリゼ通りに集まるよう呼びかけるSNS(交流サイト)への投稿があったとして警備が強化された。
内務省によると、6月30日夜に拘束されたのは1311人と、前夜の875人から増加したが、暴力は前夜ほど激しくなかったという。警察は1日に全土で200人近くを拘束したと明らかにした。
全国各地の地方当局はデモ禁止を発表し、公共交通機関の夜間運行停止を指示。一部では夜間外出禁止令も出された。
米連邦準備理事会(FRB)は30日に発表した論文で、金融セクターは2008年の世界金融危機以来「最も厳しい状況」にあるとの見解を示した。
この論文は、様々な金融要因が経済活動全体に与える影響を測定するための新たな金融状況指数の作成に向けた作業の一環として発表された。
最新の調査結果に基づくと、「金融情勢は今後1年間、国内総生産(GDP)成長率に対しおよそ0.75%ポイントの引き下げ要因になると推定される」という。さらに、FCI-G(Financial Conditions Impulse on Growth)と呼ばれる指標は、世界経済を崩壊寸前まで追い込んだ08年の世界金融危機以来「最も厳しい水準」にあるとした。
論文の筆者らは、21年末以降、株価の下落や金利の大幅な上昇、ドル高が金融条件の引き締めをもたらしたと指摘。22年後半にかけて、「将来の成長に対する最大の逆風」は短期および長期の金利とドルによって生じているとする一方、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の間に記録された住宅価格と株式価格の調整は「経済の成長に対する追い風であり続けている」と述べている。
米商務省が30日発表した5月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比、前月比ともに伸びが鈍化した。一方、借り入れコストが上昇する中、自動車など耐久財への消費が抑制され、5月の個人消費は停滞。第2・四半期の経済成長の勢いが大幅に失われたことを示唆した。
ただ、基調的なインフレ圧力が根強いため、米連邦準備理事会(FRB)は来月の会合で利上げを迫られる可能性がある。
PCE価格指数は前年比3.8%上昇と、伸びは前月の4.3%から鈍化し、2021年4月以降で最小となった。前月比では0.1%上昇と、0.4%から鈍化した。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は前年比4.6%上昇と、前月の4.7%から鈍化。前月比では0.3%上昇と、0.4%から鈍化した。
個人消費支出は前月比0.1%増加。予想は0.2%増だった。4月は0.6%増と、従来の0.8%増から下方改定された。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、サル・グアティエリ氏は「個人消費が足元で失速し、インフレ率がやや改善したとのニュースは、FRBが今月利上げを見送った判断を正当化する。コアインフレは引き続き粘り強いものの、7月に再び金利を据え置く可能性はありそうだ」と述べた。
コンファレンス・ボード(ワシントン)のチーフ・エコノミスト、ダナ・ピーターソン氏は「インフレが根強いことに加え、堅調な労働市場と実質所得の上昇などで個人消費が継続的に下支えされることを踏まえると、少なくともあと1回の利上げが実施され、さらなる利上げの可能性も残されると予想している」と述べた。
クレディットサイツは、7月25、26両日の次回FOMC会合での0.25ポイント追加利上げの確率を五分五分と予想するとともに、2024年には毎会合で0.25ポイントずつの利下げを見込んでいる。
一方、JPモルガン・チェースの金利ストラテジストは米国債相場の強気見通しを撤回した。また、ダドリー前ニューヨーク連銀総裁は10年債利回りのピークについて、4.5%は「控えめな見積もりだ」との見方を示した。
みずほセキュリティーズのマクロ戦略責任者、ドミニク・コンスタム氏は「米金融当局が現行の引き締めサイクルを本当に打ち止めとする上で、軟化が必要な部分として市場は労働市場を非常に注視している」と分析。当局は「政策がインフレ抑制に十分景気抑制的ではないと懸念しているのは明らかだ」と話した。
ロバーツ最高裁長官は判決文で、政府が学生ローンの返済4000億ドル余りを免除しようとするのは「立法が持つ権力を掌握する」行為だと説明した。
バイデン大統領はこの判決を受け、学生ローン返済免除を目指し新たな法的手段を試すと発表。「きょうの最高裁判断により一つの道は閉ざされた。われわれは別の道を進むつもりだ。私はあなた方のために闘うことを決してやめない。利用できる全ての手段を使って学生ローン返済免除を実現し、あなたの夢をかなえる」とホワイトハウスで話した。
教育省は高等教育法に基づく返済免除を目指し、新たな法的プロセスを開始。学生ローンの借り手がデフォルト(債務不履行)に陥るリスクを減らすため12カ月間の「オン・ランプ返済プログラム」を設定する。
同プログラムは2023年10月1日から24年9月30日まで運用され、この期間中に月次の支払いができなかった財政的に脆弱(ぜいじゃく)な借り手は滞納者と見なされず、信用調査機関に報告されない。またデフォルトを宣言されることもなく、債権回収機関に付託されることもない。
しかし学生ローンの返済を免除する法案の取りまとめには数カ月を要する見通しで、今回と同じく法的な異議申し立てを招くのは確実だ。
学生ローンの返済義務は3年間の執行停止期間を終えて8月に再び発効する。返済を履行できない借り手は数百万人に及ぶ可能性がある。
ミシガン大の消費者調査ディレクター、ジョアン・シュー氏は「全般的にみて、この著しい上昇が反映しているのは債務上限を巡る危機が今月解決したことによるセンチメントの回復と、インフレ軟化に対するポジティブな受け止め方の広がりだ」と発表文書で解説した。
耐久財の購入環境に関する指数は、ほぼ2年ぶりの高い水準に上昇した。一方で家計の現状に対する見方は低い数字にとどまった。
現況指数は4カ月ぶり高水準の69。期待指数は61.5と、これも2月以来の高い水準だった。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ルビーラ・ファルキ氏は4-6月(第2四半期)に家計支出が減速することを今回の統計が示唆していると指摘。
「消費の伸び鈍化は米金融当局にとっては歓迎すべきことだろう」とした上で、「金融政策のごく短期の軌道がこれで変わる公算は小さい。当局者は政策金利を一段と引き上げ、より景気抑制的なスタンスにする必要があるとの見解にコミットしている」とリポートに記した。
ブルームバーグ・エコノミクスのスチュアート・ポール氏、イライザ・ウィンガー氏らは「5月の個人所得・支出データは、所得の伸びとインフレの関係が徐々に緩んでいることを示す。最新のドット・プロット(金利予測分布図)で示唆されたように、さらに50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の米利上げが必要かどうかは疑わしい」と分析した。
実質可処分所得は前月比0.3%増。4月は減少していた。インフレ調整前では0.4%増(市場予想0.3%増)。賃金・給与が0.5%増と、今年1月以来の大きな伸びとなった。
貯蓄率は4.6%で、22年1月以来の高水準となった3月と同じ水準。消費者が支出への慎重姿勢を強めていることが示唆される。
インフレ加速に見舞われている英国では今年1ー3月(第1四半期)に生活水準が再び悪化した。家計は貯蓄を切り崩し、住宅ローンの返済を急いだ。
英政府統計局(ONS)が30日発表したデータによれば、インフレ調整後の1人当たり実質可処分所得は第1四半期に0.9%減少した。生活水準はこれで過去6四半期のうち5四半期で悪化した。昨年第4四半期は政府からの光熱費補助金により、可処分所得が一時的に増加していた。
金利上昇に伴い、家計は住宅ローンの返済を加速。1-3月の返済額は52億ポンド(約9500億円)と、四半期ベースで最多となった。貯蓄は統計を開始した1987年以降で初めて減少した。貯蓄率も8.7%と、前四半期の9.3%から低下。この低下は増税も一因で、資金は金利の高い定期預金口座に移っている。
1-3月期の国内総生産(GDP)改定値は前期比0.1%増で速報値と同じだった。主要7カ国(G7)のうち新型コロナウイルス流行前の経済規模を回復できていないのは英国とドイツだけだ。
●中国・アジア・ロシア・東欧
米国家防諜安全保障センター(NCSC)は30日、中国で7月1日から施行される改正「反スパイ法」について、中国で活動する米国や他の外国企業による通常のビジネス活動が中国当局から罰則を受ける可能性があると警告した。
中国全国人民代表大会(全人代、国会)常務委員会は4月、スパイ行為の摘発を強化する「反スパイ法」改正案を可決した。国家の安全に関わるあらゆる情報の移転を禁止し、スパイ行為の定義を拡大する。
NCSCは、改正反スパイ法は「米企業が中国で保有するデータにアクセスし管理する法的根拠を拡大する」と指摘。さらに、中国は国外へのデータ流出を国家安全保障上のリスクとみなしており、外国企業が現地で採用する中国人社員に対し中国の情報収集活動を支援するよう強制する可能性があるとした。
また、改正反スパイ法で示されている定義が「曖昧」で、「あらゆる文書やデータ、資料、物」が中国の国家安全保障に関連するとみなされる可能性があり、ジャーナリストや学者、研究者も危険にさらされると警告した。
こうした中、米国務省は30日、中国への渡航に関する勧告を更新。「不法な拘束のリスク」などを警告し、中国への渡航再考を促した。
民間不動産調査大手の中国指数研究院(CIA)が1日発表した調査によると、中国100都市の6月の新築住宅価格は前月比0.01%下落し、2カ月連続のマイナスとなった。
5月も0.01%下落していた。6月に価格が下落したのは45都市だった。
上半期の平均価格は前年比0.01%上昇した。
CIAは「第1・四半期は蓄積した需要が集中的に解き放たれたことから市場の信頼感が徐々に戻り、価格が回復しているように見えた」と指摘。一方、第2・四半期については「回復が減速し、価格上昇につながる十分なモメンタムがなかった」とした。
その上で「政策による支援が限定的となれば、買い手の信頼感回復は難しい」との見方を示した。
中国共産党は1日、中国人民銀行(中央銀行)党委員会書記に潘功勝副総裁が就く人事を決めた。これまで党委書記を務めていた郭樹清氏、党委副書記の易綱総裁が党委の職務を外れることも決まった。潘氏の「総裁への道を開く」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)との見方も出ている。
●中東
●中南米・アフリカ
現在、メキシコ・ミチュアカン州南部の主要港湾都市ラサロ・カルデナスの南約80キロに位置し、北西方向に向け進んでおり、メキシコでは大雨や洪水、土砂崩れなどが発生するおそれがあると警告した。
ただ、メキシコ国営石油会社ペメックスの主要施設がある地域は通過しないとみられている。
中南米金融市場では、MSCI中南米通貨指数とMSCI中南米株価指数の23年上半期の上昇率がそれぞれ17.4%、15.8%となり、新興国市場全体をアウトパフォームした。
同期間のMSCI新興市場指数は3.6%上昇、MSCI新興国通貨指数は約1%上昇にとどまった。
コロンビアペソが上半期で約14%上昇と域内通貨の上昇をけん引。ブラジルレアルは年初来で約9.5%高。メキシコペソも上半期で約12%上昇した。
南米コロンビアの中央銀行は6月30日、金融政策決定会合を開き、政策金利を13.25%で据え置くと決めた。委員が全員一致で決めた。前回4月会合まで14会合連続で利上げしていた。足元でインフレ率は下落基調に転じ、経済が低調なことを受けて利上げを停止した。
●市況日経先物33400、ダウ先34643、債先148.63、米3.841、独2.3930、仏2.928、西3.381、伊4.063、英4.4300、波5.760、原油70.45、銅8,317、ドル円144.30、ユーロドル1.0912
※6/30 NY引け値
備忘録(2023/6/28-29)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ゴールデンツリーはクレディ・スイスの救済に伴い同行のAT1債170億ドル相当が無価値になった後の数日に、さまざまな銀行のAT1債を割安価格で約3億ドル相当購入した。事情に詳しい関係者が明らかにした。
●その他産業
●決算関連
売上高は5%増の128億2500万ドルだった。回復が遅れていた重要市場の中華圏の売上高は18億1000万ドルと16%増えた。特にアパレル部門は25%増え、全体の回復をけん引した。
最大市場の北米では、5%増の53億5500万ドルと堅調だった。
売上高は堅調な一方、粗利率は1.4ポイント減の43.6%だった。製造コストの上昇や物流費の高騰などが利益を圧迫した。
24年5月期通期はインフレによるコスト上昇も予想しつつ、価格設定の見直しや運搬費用の交渉などを行い、採算が向上する見通しだ。売上高の増加率は1桁台半ばになるとしている。
●先進国、グローバル、金融市場
議会予算局(CBO)は28日公表した長期予算見通しで、米国の債務水準が2029年度までに国内総生産(GDP)比率で107%と、第2次世界大戦直後の1946年度を上回り、過去最高になるとの予想を明らかにした。その上で、高債務水準は「財政危機のリスクを高める」と警告した。
CBOは今回の試算で、今月3日に成立した、2年間の国防費以外の支出抑制を盛り込んだ「債務上限停止法」の影響も考慮した。財政赤字のGDP比率は27年度にかけて一時低下するが、その後は金利負担や高齢化に伴う社会保障費の増加により上昇。これに合わせて債務も膨張し、53年度にはGDP比で181%に達する。
CBOは「連邦債務が増え続ければ、財政危機の可能性は増大する」と明言。投資家が米国の財政状況に懸念を抱き、米国債の価格が下落するほか、ドルの急落を招きかねないなどの懸念を列挙した。
さらに、財政赤字や債務の増大は政策当局者の選択肢を狭める恐れがあると指摘。「国際的な危機に備えたり、対応したりする支出増に慎重になれば、米国の地政学的な役割を弱める可能性がある」と言明した。米国は、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し巨額支援を行っている。
米国内で相対的に規模の大きい23の銀行を対象にしたストレステスト(健全性審査)の結果を公表した。個人や不動産向け融資の焦げ付きが膨らむ厳しい不況下では計5410億ドル(約78兆円)の損失が生じうると試算した。それでも全行が規制上必要な自己資本の水準を維持し、家計や企業への融資を継続できると評価した。
ストレステストは年に1回の頻度で実施している。仮想の不況シナリオのもとで銀行にどの程度の損失が生じ、損失を吸収する自己資本をどれだけ維持できるかを測定する。今回は今後2年間で商業用不動産や住宅の価格がそれぞれ約4割下落し、足元で3.7%の失業率がピーク時に10%まで跳ね上がるような不況を想定した。
こうした厳しいシナリオでは商業用不動産向け融資や住宅ローンの貸倒損失が23行合計で1000億ドル規模で生じるほか、家計の資金繰り悪化でクレジットカード向けの損失も約1200億ドルに達する。全体では5410億ドルの損失が発生し、普通株などの中核的な自己資本比率は2022年10〜12月期の実績から2.3ポイント低下して10.1%に落ち込む。その場合も23行すべてが規制上で最低限必要な資本要件を上回るという。
ストレステストはJPモルガン・チェースなどの大手銀行のほか、PNCフィナンシャル・サービシズ・グループといった大手地銀、英バークレイズなど海外の金融大手の米国法人を対象に実施した。資産1000億〜2500億ドルの中堅銀行は2年に1度の実施になるため、今年の対象行は昨年の33行より少なかった。邦銀も含んでいない。
米国では3月以降にシリコンバレーバンクなどの地銀が相次ぎ破綻し、銀行システムの健全性に不安が広がった。FRBなどの米金融当局は今回のストレステストの結果とは別に、大手行や中堅行に自己資本のさらなる上積みを求める規制強化を検討している。ストレステストの対象拡大なども視野に入れる。
FRBのバー金融監督担当副議長は声明で「我々は銀行が様々な経済シナリオや市場ショック、その他のストレスに対して強靱(きょうじん)であることを保証するための作業を継続すべきだ」と表明した。
米ウォール街の1兆4000億ドル(約200兆円)規模のジャンク級(投資不適格)ローン市場が減速し、利息負担の増加を受け入れるか、借り入れ計画を断念するかの選択を迫られる企業が増えている。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は29日に行った講演で、インフレ率を当局目標の2%に押し下げるには、年内に少なくともあと2回の追加利上げが必要になる公算が大きいとの見解を示した。
さらに、政策金利を決める連邦公開市場委員会(FOMC)会合について、複数回連続での行動を検討することも「排除していない」としている。
パウエル議長は「FOMC参加者の大多数は、年末までに金利を2回もしくはさらに多く引き上げるのが適切であろうと予想している」と述べ、「インフレ圧力は高いままであり、インフレ率を2%に押し戻すプロセスはまだ先が長い」と指摘した。
パウエル議長は「住宅や投資をはじめとする金利動向に最も敏感な経済セクターの需要に対し、当局の政策引き締めの効果が顕在化している」としながらも、「特にインフレに対し、金融の景気抑制効果がフルに発揮されるには時間がかかるだろう」と発言した。
議長は講演後の質疑応答で見通しは「特に不透明」だとし、「われわれのコミットメントは利上げの特定の回数に対するものではなく、インフレ率を2%に戻すのに十分に景気抑制的な政策スタンスへのものだ」と説明。「さらなる利上げがあるとして、そのタイミングと程度は経済の進展次第だ」と話した。
また、取り組みが行き過ぎもしくは足りな過ぎとなるリスクは「まだ均衡状態にない」と指摘し、「ある会合で行動しない可能性も、それからある会合で行動する可能性もある。連続での行動を検討することをわれわれは排除していない」と語った。
米国が新型コロナウイルス禍以前の低金利環境に戻るかどうかの質問に対しては、それは「かなりの長期間」ないだろうとし、この質問に対する長期的な回答は現時点で持ち合わせていないと答えた。
インフレ率がドイツで再び加速した一方、スペインでは大幅に低下した。ユーロ圏のインフレ低下が一様に進んでいるとは言えず、欧州中央銀行(ECB)は追加的な金融引き締めに注力する姿勢を維持しそうだ。
ドイツの6月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比6.8%。同国政府は前年同月に超格安の鉄道運賃を提供していた。スペインの同月のCPI上昇率は1.6%と、ECBが目標とする2%を下回った。
同2カ国のインフレ統計は、20カ国から成るユーロ圏で物価動向が大きく異なることを示す。ECB当局者はさらなる行動をとると約束し、7月の利上げをほぼ確約。9月についても現在議論に上っている。
スペイン統計局が29日発表した6月の消費者物価指数(CPI、欧州連合=EU=基準)は前年同月比1.6%上昇と、ここ2年余りで最も低いインフレ率となった。5月は2.9%上昇だった。
株式
29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は反落し、前日比269ドル76セント(0.8%)高の3万4122ドル42セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)が28日公表したストレステスト(健全性審査)の結果を受け、JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスが買われた。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は小幅反落した。
債券
ニューヨーク債券市場で長期金利の指標となる10年物国債利回りは前日比0.13%高い3.84%で終えた。朝方発表の経済指標が米経済の強さを示し、景気悪化への懸念が和らいだ。金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは前日比0.15%高い4.86%で終えた。一時は4.89%と3月上旬以来の高水準となった。
為替
ニューヨーク外国為替市場で円相場は3日続落し、前日比30銭円安・ドル高の1ドル=144円75〜85銭で取引を終えた。米景気の底堅さを示す経済指標の発表を受けてFRBによる利上げの長期化観測が高まり、米長期金利が上昇。日米金利差の拡大から円売り・ドル買いが優勢だった。円は対ユーロでも続伸した。
商品
原油先物相場は続伸した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の8月物は1バレル69.78ドルで取引を終えた。前日に発表された米原油在庫が大幅に減少したことを材料とした買いが続いた。
ワンポイント
FRBが年に1回の頻度で実施するストレステストでは、対象となる23行すべてが不況シナリオのもとでも規制上必要な自己資本の水準を維持し、家計や企業への融資を継続できると評価しました。金融システム不安を巡る警戒はいったん和らいだ格好ですが、市場ではさらなる銀行破綻の可能性を懸念する声は消えていません。銀行など金融株が一方的に買われる展開とはならなさそうです。
商業用不動産ローンの借り手支援を金融機関に要請する共同声明を発表した。支払い猶予や部分返済など、短期融資で便宜を図ることを求めた。不動産の担保価値の下落や金利上昇で資金繰りが詰まる借り手が増えている状況に対応する。
FRBのほか、米連邦預金保険公社(FDIC)と米通貨監督庁(OCC)、全米クレジットユニオン管理庁(NCUA)が発表した。声明は2009年に監督当局が発表した指針を更新するもので、金融環境に負荷がかかった際に「金融機関が信用力のある借り手と用心深くかつ建設的に協力する」ことを求めた。
商業用不動産の市況は悪化が続いている。不動産調査会社グリーン・ストリート・アドバイザーズによると米国の商業用不動産の価格指数は5月に前年同月比14%低い水準となった。特に厳しいのがオフィスだ。在宅勤務の定着や景況感悪化に伴うテナントの撤退・縮小により、都市部のオフィスビル空室率は上昇傾向にある。
シリコンバレーバンクなど3月以降に地銀の破綻が相次ぎ、多くの金融機関は不動産融資に慎重になっている。利上げに伴う金利水準の上昇もあり、不動産運用会社など借り手は資金の借り換えに苦慮する。返済を諦め債務不履行(デフォルト)を選択し、担保物件を手放すケースも増えてきた。
ムーディーズ・アナリティックスの5月時点の集計によると米国の商業用不動産ローン、約1兆4000億ドル(約203兆円)分が23〜24年に償還を迎える。借り換えが滞りデフォルトが頻発すれば貸し手である金融機関も痛手を負う恐れがある。監督当局による借り手支援の要請は、不動産の苦境を通じて金融不安が再燃する悪循環を防ぐ狙いがある。
失業保険申請件数の減少にもかかわらず、労働需要は緩やかに弱まってきている。1年余り続いた利上げの影響が経済に波及している。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は今週、労働市場は米金融当局が望んでいたような形で鈍化しつつあるとの考えを示した。こうした動きが持続すれば、雇用喪失がこの先抑制される可能性がある。
失業保険申請のデータは週によって変動が大きくなりやすい。特に祝日の前後ではその傾向が強く、今回はジューンティーンスの祝日が含まれていた。より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は25万7500件に増加し、21年終盤以来の高水準となった。
7月4日の独立記念日の祝日や自動車メーカーが年次の設備更新で稼働を停止するのに伴い、今後数週間は特にノイズが入る可能性もある。パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェファードソン氏は工場稼働停止の「時期変更や期間」などに伴い、失業保険申請データの季節調整が難しいとリポートで指摘。
「新型コロナウイルス禍後の生産回復は、操業停止が通常ほどの規模にならない可能性が高いことを意味すると考える。従って、失業保険申請件数の基調的なトレンドは引き続き増加方向だが、向こう数週間はならして見ると小幅減少するというのが妥当な見方だと考える」と記した。
申請件数は季節調整前ベースでは23万3048件に減少した。州別では、前週に大きく増加していたカリフォルニアでの減少が目立った。テキサスでも減った。
イライザ・ウィンガー氏らブルームバーグ・エコノミクスのエコノミストは「労働市場の軟化という進展は今のところ、全米一様ではない」と指摘した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国当局は現在、人民元の中心レート経由で通貨安に歯止めをかけようとしているが、元に対する悲観論の抑え込みに本腰を入れるなら、新たな政策手段を今後講じる必要があるかもしれない。
中国人民銀行(中央銀行)は29日、元の中心レートを市場予想よりも元高水準に設定。予想に比べて元高水準となるのは今週3度目だったが、7カ月ぶりの安値圏に沈む元相場を浮上させるには至っていない。
中国の景気回復ペースが予想より鈍くなり、刺激策が講じられても控えめな規模にとどまることを示す証拠が増える中で、対ドルでの元安圧力が強まっている。
中心レートの設定は、人民銀が期待を誘導する上で単純明快かつコストもかからない手段だが、極めて弱気な地合いではパンチ不足が否めない。元高方向で中心レートを設定し続けても、当局が満足するような形で元安が止まらないようなら、ドルの流動性緩和や資本規制強化など一段と積極的な措置が講じられる可能性はある。
調査会社ギャブカル・ドラゴノミクスの中国担当エコノミスト、ホー・ウェイ氏は「中心レートの主な調整以外、人民銀は積極的な手段を用いておらず、使用可能なツールは残っている」と指摘。「中国政府は刺激策の強化に消極的と受け止められており、人民元は当面弱いままということもあり得る」と話す。
人民銀の潘功勝副総裁は今月、「豊富なマクロプルーデンス手段」を通じたショックへの対処という点で、中国には「これまで積み重ねてきた経験」があると強調した。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況日経先物33075、ダウ先34331、債先148.58、米3.846、独2.4115、仏2.941、西3.3|6、伊4.115、英4.4025、波5.803、原油69.74、銅8,581、ドル円144.82、ユーロドル1.0867
※6/30 8時55分頃
備忘録(2023/6/27)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米制御機器大手のパーカー・ハネフィンの株価が上昇している。26日には377.95ドルの上場来高値を付けた。5月末比の上昇率は18%に達する。買収を重ねて急成長しており、2022年9月に買収した航空・防衛システムの英メギットとのコストシナジーも想定を上回っている。顧客となる米製造業の業績底打ちも買い材料となっている。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
株式
27日の米株式市場でダウ工業株30種平均は7営業日ぶりに反発し、前日比212ドル03セント(0.6%)高の3万3926ドル74セントで終えた。27日に発表された米経済指標が軒並み市場予想を上回り、米景気悪化への懸念が和らいだ。ダウ平均は前日まで下げが続き、主力銘柄に値ごろ感からの買いが入りやすかった。中国経済の回復期待も投資家心理を改善させた。
債券
27日のニューヨーク債券市場で長期債相場は3営業日ぶりに反落した。長期金利の指標である表面利率3.375%の10年物国債利回りは前日比0.04%高い(価格は安い)3.76%で終えた。米景気の底堅さが示されるなか、米連邦準備理事会(FRB)が7月に利上げに動くとの見方も一段と強まり、債券売りにつながった。
為替
27日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前日比60銭円安・ドル高の1ドル=144円05〜15銭で取引を終えた。一時は144円18銭と2022年11月上旬以来の円安・ドル高水準を付けた。27日発表の米経済指標が全般に市場予想を上回り、米長期金利が上昇した。日米の金利差拡大や金融政策の方向性の違いが意識された。
商品
27日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は反落した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の8月物は前日比1.67ドル(2.4%)安の1バレル67.70ドルで取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)が金融引き締めを続けるとの観測が一段と強まり、世界で原油需要が細るとの見方から売りが優勢となった。
ワンポイント
ECBが主催する国際金融会議「ECBフォーラム」でラガルド総裁は27日、「見通しに重大な変化がなければ7月も利上げを続ける」と述べ、インフレ抑制へ金融引き締めの継続を強調しました。足元の米景気は堅調さを示しており、FRBが利上げを再開するとの観測を強めています。最終日の28日には日米欧英の中銀トップが意見を交わします。今後の金融政策に具体的に言及するかが注目されます。
4月のS&Pコアロジック・ケース・シラー指数では、全米の住宅価格が前年同月比0.2%下落し、2012年4月以来、11年ぶりの下落となった。前年前半まで続いた価格上昇の反動や住宅ローン金利の高止まりで、足元の取引価格に下落圧力がかかっている。
米PNCフィナンシャル・サービシズのエコノミストは「高金利により当面需要は厳しい状況が続くだろう。米経済も悪化するなか住宅市場の落ち込みが続き、23年は前年比で価格が5%下落するとみる」と指摘した。
一方、前月比では3カ月連続で上昇しており、住宅市場の見方は分かれる。S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズのクレイグ・ラザラ氏は「価格は22年6月をピークに23年1月まで下落したが、現在は回復傾向にある」と解説している。中古住宅市場では物件の供給不足が続いており、価格の下落局面では購入意欲が戻るとの見方もある。
米連邦住宅金融庁(FHFA)が同日発表した4月の全米住宅価格指数(季節調整済み)は、前年同月比3.1%上回った。上昇率は鈍化しており、12年7月以来の小幅な伸びにとどまった。
民間調査によれば、新型コロナウイルス禍で大幅に上昇していた賃貸物件の家賃は下げに転じた。不動産物件情報を提供するリアルター・ドット・コムによると5月の全米主要50都市の家賃の中央値は1739ドルと前年同月から0.5%下落し、2020年に調査を開始して以来初めて前年を下回った。
同社は「家賃の高止まりを受け、借り手は新規の契約を避けてもともと住んでいる賃貸物件の契約を更新する傾向が強まっている」と分析する。一方で「家賃は依然として高水準で推移している」と述べ、需給の調整には時間がかかる可能性があると指摘した。
6月の米消費者信頼感指数は、前月の改定値から7.2ポイント上昇して109.7となった。3カ月ぶりに前月を上回り、指数は2022年1月以来の高水準となった。足元の景況感と短期的な見通しを示す指数の両方が上昇した。景気後退への懸念も前月から和らいだ。
内訳をみると、足元のビジネスや労働市場の景況感を示す「現況指数」が155.3と前月から6.4ポイント上昇し、21年7月以来の高水準となった。雇用に対する見方も改善し、雇用機会が「豊富にある」と答えた消費者の割合は46.8%と前月から3.5ポイント増えた。
所得や労働環境の短期的な見通しを示す「期待指数」も79.3と前月から7.8ポイント上昇した。同指数が80を下回ると、景気後退リスクの高まりを示すとされる。6カ月連続で80を下回ったものの、指数は22年12月以来の高水準となった。
景気後退への懸念も和らいだ。回答者の69.3%が今後1年間に景気後退が起こる可能性が「ややある」または「非常にある」と答え、5月の73.2%から低下した。
コンファレンス・ボードのチーフエコノミスト、ダナ・ピーターソン氏は「労働市場が引き続き好調であることを示した。短期的な見通しも大幅に改善し、将来の景況感や雇用に対する自信の高まりを反映した」と解説した。
ドイツ連邦債10年物の利回りは上昇し、英国時間16時時点は、前日の同時点より0.025%高い(価格は安い)2.348%で取引されている。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が27日、インフレの持続性に警戒感を示し、金融引き締めを続ける考えを強調したのを受け、ドイツ国債に売りが出た。
ポルトガルのシントラで開いているECB主催の国際金融会議「ECBフォーラム」でラガルド総裁は27日、「中央銀行が近い将来に金利がピークに達したと自信を持って断言できる可能性は低い」と指摘。「ユーロ圏のインフレ率は高すぎ、あまりにも長い間その状態が続いている」との認識も示した。
一方、ECB理事会メンバーであるベルギー国立銀行(中銀)のウンシュ総裁は27日、欧州メディアとのインタビューで、ECBがインフレ率を2%に回復させる能力に限界があることを受け入れるべきだとの考えを示したと伝わった。「インフレ率が2.3%で経済が弱体化するなら、これ以上の金融引き締めをすることはないだろう」と語ったという。金融引き締めによる景気悪化への懸念は根強く、ドイツ長期債の売りの勢いは限定的だった。
5月の耐久財受注(季節調整済み、半導体を除く)は前月の改定値から1.7%増えた。伸び率はダウ・ジョーンズ集計の市場予測(1.0%減)を大きく上回った。3カ月連続で増加した。
特に民間航空機・同部品の受注が32.5%増加し、全体をけん引した。自動車・同部品(2.2%増)も堅調だった。変動の激しい輸送関連を除くと0.6%、同様に変動の激しい国防関連を除くと3.0%それぞれ増加した。
一方、軍用航空機・同部品の受注は35.4%減り、コンピューター・関連機器の受注も2.3%減少した。
企業の設備投資の先行指標とされる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)の受注は0.7%増加した。
調査会社パンテオン・マクロエコノミクスのエコノミスト、キーラン・クランシー氏は市場予測を上回る耐久財受注額の増加に関し「(市場が見込む)統計データと(実際の)調査結果に相違が生じている」と分析した。
サンタンデールUSキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏はリポートで、「市場のコンセンサスは数カ月後から始まるリセッションを引き続きかたくなに予想している。しかしこれら経済データは現在、全く別のシナリオを示唆している」とした上で、「強靱さが引き続きキーワードだ」と指摘した。
これらデータは向こう1年以内に景気後退入りする可能性を排除していないものの、景気下降が既定の結論でないのはもちろん、間近に起こることはないとの見方の根拠にもなる。直近の米小売売上高やインフレ調整後の個人消費支出(PCE)、雇用統計もこうした見方を裏付けている。
27日発表の経済データは米経済成長にとってもプラスのシグナルだ。 実際の支出の目安となる非国防資本財出荷は3.4%増と20年末以来の大幅な伸びとなった。これは4-6月(第2四半期)の米国内総生産(GDP)にとって良い兆しだとBMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、ジェニファー・リー氏は分析する。
リー氏は27日のリポートで、「米リセッションは遅れる(そのこと自体は実際に起きるまでは悪いことではない)との見方はこの数週間で賛同者が増えた」とし、「最新の経済データは圧倒的に堅調だった」と説明した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
●中南米・アフリカ
●市況
日経先物32672、ダウ先34174、債先148.75、米3.767、独2.2565、仏2.874、西3.313、伊3.964、英4.4225、波5,765、原油67.89、銅8,354、ドル円143.84、ユーロドル1.0956
※6/28 8時45分頃
備忘録(2023/6/26)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
買収額は46億ドル(約6580億円)で全額を現金で支払う。アプティオのサービスを取り込み、クラウド事業の強化を目指す。
買収手続きは規制当局の承認などを経て、年内には完了する予定だという。
米西部ワシントン州を拠点とするアプティオは2007年創業の新興企業だ。企業向けに財務や支出管理を支援するソフトを開発している。19年にビスタ・エクイティ・パートナーズが買収した。アマゾンやマイクロソフトなどの大手テック企業を含む1500社以上にサービスを提供している。
IBMのアーヴィンド・クリシュナ最高経営責任者(CEO)兼会長は20年の就任以来、人工知能(AI)とクラウド事業に経営資源を集中させる戦略を推し進めてきた。アプティオ買収はその一環となる。23年はすでに6社の関連企業を買収し、クラウドサービスの拡充を図ってきた。
クリシュナCEOは声明で「テクノロジーは我々が経験したことのないスピードでビジネスを変化させている。こうした変化を生かすには、より大きな事業価値につながる最適な投資が不可欠だ」とコメントした。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
株式
米株式市場でダウ工業株30種平均は6日続落し、前週末比12ドル72セント安の3万3714ドル71セントで終えた。米国の利上げ継続観測などを背景に一部ハイテク株に売りが出た。一方で、下げが目立っていた景気敏感株や消費関連株に買いが入り、相場全体の下げは小幅だった。
債券
長期金利の指標となる10年物国債利回りは前週末比0.01%低い(価格は高い)3.72%で終えた。ドイツの景況感悪化が意識され欧州国債の利回りが低下し、米国債も買われた。ロシア情勢を巡る不透明感も買いにつながったとの見方もあった。
為替
ニューヨーク外国為替市場で円相場はドルに対し上昇し、1ドル=143円台半ばで取引を終えた。前週末にかけて円安・ドル高が進んだことから、持ち高調整を目的とした円買いの動きがみられた。
商品
米原油先物相場は反発。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近物は1バレル69ドル台で取引を終えた。ロシア情勢の不安定化が同国の原油輸出に影響する可能性が意識された。半面、主要な中央銀行の利上げで世界の景気が悪化するとの見方から上値は重かった。
ワンポイント
民間軍事会社の武装蜂起が起きたロシアの情勢不安が、一部マーケットで意識されました。欧州を中心に先進国で景気減速が懸念されるなか、新たな相場材料の一つとして引き続き注目されそうです。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国で銀行へのクレームが急増している。国家金融監督管理総局が発表した1〜3月の苦情の件数は前期比5割増え、初めて10万件を上回った。住宅ローンの繰り上げ返済を望む人が増え、金利収入の落ち込みを警戒する銀行が受け付けを制限していたのが一因とみられる。
プリゴジン氏は今回の音声メッセージで、ワグネルの戦闘員がロシアの首都に近い地域で市民の支持を受けたと主張。「市民はわれわれを歓迎した」と語った。一方で安全保障当局幹部に対する批判をなお続け、ワグネルはたいした抵抗にも遭わずにロシア内を24時間で780キロ進むことができたと指摘。自身の所在は明らかにしなかった。
政治コンサルティング会社Rポリティクの創業者タチアナ・スタノワヤ氏は、「プリゴジン氏は撤収したが、いまや全くスケールの違う人物になった」とし、「プーチン氏はこれに何らかの対応をせざるを得ない。自身の信奉者や支持者から否定的な反応が出るリスクとバランスを取る必要がある」との見方を示した。
ロシア大統領府の説明によると、事態収拾に向けた取引の一環として、当局が刑事訴追に向けた手続きを取り下げる代わり、プリゴジン氏はベラルーシに出国することに合意した。だがロシアの複数のメディアは26日、同氏に対する検察当局の捜査は継続しており、訴追手続きは取り下げられていないと報じた。
バイデン米大統領は26日、プリゴジン氏の反乱について初めて公の場で言及し、米国と北大西洋条約機構(NATO)は全く関与していないと言明。「ロシアの体制内の争いの一部だ」とホワイトハウスのイベントで述べた。
また、影響を判断するのは時期尚早との認識を示し、「この全ての影響はまだ分からない。だが次に何が起ころうと、同盟国やパートナー国と緊密に歩調を合わせ、事態を把握し対応していく」と発言。「週末に発生した事態の影響と、これがロシアとウクライナに及ぼす意味合いの分析を継続する。これがどう展開するのか、確定的な結論を導くのはまだ早い」と語った。
ドイツのベーアボック外相は同日、欧州連合(EU)の定例外相会合出席に際して記者団に対し、プリゴジン氏の反乱は「ロシア内の権力闘争で、われわれは関与しない」とコメント。「ロシア指導部が内部抗争を強めている」と続けた。
プーチン氏との関係を強化し、米国主導の制裁に加わっていない中国は、国内の安定を維持するロシアの措置を支持すると表明。中国外務省は短い発表文の中で、週末の事態をロシアの「内政問題」だと表現した。
ニューヨークでもロンドンでも、オフィスタワーのオーナーは債務を返済するよりも物件を差し押さえられることを選んでいる。サンフランシスコのダウタウンで最大のショッピングモールの家主たちもこの物件を見捨てた。香港の新築の高層ビルは4分の1しか埋まっていない。
限界点が近づいている。全米抵当貸付銀行協会(MBA)によると、米国だけでも今年と来年に1兆4000億ドル(約200兆円)相当の商業不動産向けローンが満期を迎える。
不動産オーナー大手のブラックストーンやブルックフィールド、パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は既に、一部の保有物件について債務の支払いをやめた。現金やリソースのより良い使い道があるからだ。
資金難の不動産物件についての再交渉を手掛けるキーンサミット・キャピタル・パートナーズのニューヨーク責任者、ハロルド・ボードウィン氏は「強いストレスがある。希望がなく既に物件価値が落ち込んでいると認識していない限り、オーナーはそう簡単に所有物件をあきらめたりはしないものだ」と話した。
不動産の売買件数は急減しており、売買が成立しても物件の評価額下落は目を見張るものがある。オフィス復帰の比率がアジアと欧州より低い米国では企業向けのオフィスビルの価格が、金利が上昇し始めた2022年3月に比べ27%下落している。データ分析会社のグリーン・ストリートが推計した。住宅用ビルは21%、ショッピングモール物件は18%値下がりした。
欧州ではオフィス物件価格が底を打つまでに25%余り下げ、アジア太平洋地域では約13%下落すると、米プルデンシャル・ファイナンシャル傘下のPGIMリアル・エステートは予想している。
PGIMのアナリストらが言うところの価値の「グレートリセット」は悲痛なほどゆっくりと進むだろう。2008年の金融危機の中心は住宅用不動産だったが、それでも危機後にオフィス物件の価格が回復するのに6年を要した。CBREグループの世界チーフエコノミスト、リチャード・バーカム氏は「今回は10年かかる」とみている。
商業用不動産を巡る問題は今年の米地銀危機で既に動揺している金融システムへのさらなる圧力となるだろう。落ち込みが深まるに伴い、空のビルを抱え不動産税収入が減少している一部の都市にも大きな変化をもたらすかもしれない。
問題は、商業用不動産の調整が経済全体を不安定化させるほどの規模になるかどうかだ。不動産セクターへの逆風は広範なものの、不動産は地域限定のビジネスだ。都会の高層ビルばかりでなく、小さな町のショッピングセンターや郊外の集合賃貸住宅、倉庫施設なども含まれる。
PGIMリアル・エステートの投資調査担当マネジングディレクター、ピーター・ヘイズ氏(ロンドン在勤)は「都市の事情はそれぞれ異なる」として、「投資家は立地についてこれまで以上によく考える必要があるだろう」と述べた。
アダムズ市長はより多くの従業員がオフィス勤務に戻るよう促し、ウォール街の銀行に対面での働き方を強化するよう働きかけた。ニューヨークのオフィス物件空き室率は今年、過去最高の22.7%に達する見込みだが、ニューヨーク市では通常、オフィスが不動産税収の約20%を占める。
ニューヨーク大学とコロンビア大学の研究者が行った共同研究は、ニューヨークのオフィス物件がリモートワークの影響で29年までにパンデミック前の価値の44%を失うことを示した。
不動産ブローカー、ウォートン・プロパティー・アドバイザーズのルース・コルプヘーバーCEOは、「家主は今、本当に最悪の状態にある。全方面から問題にとりかこまれている」とし、「有力オーナー企業が持つ最高のビルは何とかしてこの状況を乗り切るだろうが、空き室が多く大規模な改修が必要なビルが経済的に成功することはないだろう」と述べた。
ロンドンの不動産市場に覆いかぶさるもう一つの問題は、数百棟のビルが英国の環境基準に適合せず使えなくなることだ。不動産はそのエネルギー効率によって「A」から「G」にランク付けされており、2030年までには「B」を下回るランクの商業用ビルを賃貸することは違法になる。オーナーは経費を負担し改修するか、空きビルにしておくしかなくなる。
スウェーデンの不動産市場では問題は空きオフィスではなく、不動産のオーナー企業が低金利時代に膨らませた巨額の債務だ。その借り入れの多くが短期の変動金利債券によるもののため、債券の利回りと利払い負担が急上昇するのは必至だ。スウェーデンの不動産オーナーは向こう5年間に420億ドルの債務を借り換える必要があり、そのほぼ3分の1が来年満期を迎える。
Ifo経済研究所が26日発表した6月の独企業期待指数は83.6と、前月の88.3(改定値)から急低下し、今年最低となった。ブルームバーグが集計したエコノミストの予想全てを大きく下回った。6月の現況指数も低下した。
Ifoのクレメンス・フュースト所長は発表資料で、「製造業部門の低迷がドイツ経済を波乱へと向かわせている」と指摘した。
中国の需要減退に伴う先進国の工業低迷が、ユーロ圏全体の経済成長を促す原動力であるドイツの製造業にいかに重くのしかかっているかが鮮明になっている。
ボリオ氏は「インフレ率を押し下げる作業のうち『容易な成果』は既に刈り取られた」とし、エネルギーと食品の価格変動を除いたコアインフレは「より持続的」で、「高水準で安定しているか、加速しつつすらある」と主張。従って、インフレとの闘いで次の段階は「より困難」で、「あらゆる努力を必要とする」と同紙に語った。
こうした動きの理由は、一つにはインフレが長期間続くと人は一段のインフレに対して行動を調整し、それが高水準でのインフレ定着につながってしまうためだと説明。これは特に、物価と賃金の上昇の関連性に影響すると指摘。
また、こうした状況ではインフレを再び抑制された状況に戻すために各国政府は予算の面で貢献する必要があり、公共投資を減らすことで総需要への圧力が減り、中央銀行がインフレと闘う上で助けになるだろうとボリオ氏は説明した。
●中東
●中南米・アフリカ
中道左派の野党、国民希望党(UNE)のサンドラ・トーレス候補(67)が得票率15.6%で首位だった。中道左派の新興政党、セミージャ運動のベルナルド・アレバロ候補(64)は得票率11.9%で2位だった。
故コロン元大統領の夫人だったトーレス氏は事前の世論調査の支持率で首位を維持しており、本命候補の一人だった。グアテマラ国会議員のアレバロ氏は事前の世論調査では支持率で上位に入っておらず、決選投票に進む可能性は低いとみられていた。
グアテマラは台湾と外交関係がある13カ国の中で最も経済規模が大きい。トーレス氏は事前の日本経済新聞の書面取材で台湾との外交関係を維持する考えを示した。事前の世論調査で上位だった他の候補も台湾を重視する考えを明らかにしていた。
一方でアレバロ氏は選挙活動の中で台湾と中国のどちらを重視するかと問われた際に「どちらでもない」と答えたことがある。トーレス氏に比べると、台湾との外交関係の維持に消極的だとみられる。アレバロ氏が決選投票で当選すれば台湾との関係が不透明になる可能性がある。
●市況
日経先物32570、ダウ先34017、債先148.97、米3.721、独2.3020、仏2.831、西3.268、伊3.940、英4.3285、波5.764、原油69.52、銅8,372、ドル円143.51、ユーロドル1.0908
※6/27 9時00分頃
備忘録(2023/6/23-25)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
業界側が特に懸念しているのは、クレジットカードや投資銀行サービスの手数料など、非金利収入にかかる資本要件の強化だ。非金利収入の比率が高い銀行のリスクを当局が過大に見積もっているとして、内容の緩和を要求。具体的には、新たな資本要件の適用対象となる資産の比率に上限を設けるよう求めている。
バーゼル委員会が基準に合意したのは何年も前だが、米当局は地銀の破綻が相次いだ3月の銀行危機後に規制案の策定を始めた。資本規則の抜本的見直しに着手したバーFRB副議長(金融規制担当)の下、最初の主要な規則案となる。
ブローカー企業BTIGのアイザック・ボルタンスキー氏は、提案は「昨年末にはだれも予想しなかったほど懲罰的なものになりそうだ」と述べた。
業界幹部らは、銀行破綻は経営の失敗や流動性問題に起因するものであり、金融システム全体の資本は既に潤沢だと訴えている。また、投資家が銀行業界や経済全体の健全性に不安を募らせている現状で資本規制を厳格化すれば、かえって銀行を圧迫して貸し出しが阻害されるとの懸念もある。
FRBは通貨監督庁(OCC)および連邦預金保険公社(FDIC)と協力して規則案を策定中。関係者らによると今月中に案を公開したい意向だったが、7月にずれ込む見通しとなっている。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
6月のユーロ圏の購買担当者景気指数(PMI、速報値)は総合で50.3と前月比2.5ポイント下がった。5カ月ぶりの低水準で、製造業の悪化に加えてサービス業が失速した。景気持ち直しに息切れ感が出てきた。
市場予想の52.5を大きく下回った。好不況の分かれ目である50は6カ月連続で上回ったものの、低下は2カ月連続になる。
製造業は43.6と1.2ポイント落ち込み、3年1カ月ぶりの低水準になった。全体をけん引してきたサービス業も52.4と2.7ポイント低下し、5カ月ぶりの水準まで下がった。サプライチェーン(供給網)の改善でコスト増は緩和に向かうものの、新規受注が減少し、雇用も伸び悩んでいる。
国別の総合PMIはドイツが50.8、フランスが47.3だった。フランスは2年4カ月ぶりの低水準で、製造業とサービス業がそろって50割れになった。
欧州経済の不透明感は強まっている。ユーロ圏は1〜3月期まで2四半期連続のマイナス成長と、機械的に景気後退とみなすテクニカルリセッションに転落した。
ハンブルク商業銀行のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は4〜6月期の経済成長率も「再びマイナスに転じる可能性は高まっている」との見方を示す。
とりわけ厳しいのが欧州最大の経済大国であるドイツだ。キール世界経済研究所は2023年の経済成長率をマイナス0.3%と従来のプラス0.5%から大幅に下方修正した。
英政府は23日、住宅ローンの返済支援策を発表した。返済を滞納しても担保物件の差し押さえを1年間は猶予し、固定金利の契約期間の終了後も半年間は同じ条件で借り続けられるようにする。英イングランド銀行(中央銀行)が政策金利の利上げ幅を再拡大するのを踏まえ、家計の金利負担増の影響を軽減する。
英ハント財務相が英国の主要銀行と金融行為監督機構(FCA)と合意した。半年間は元本分を免除して利息のみの支払いにとどめるほか、返済期間の延長で月々の支払額を減らすといった柔軟な条件変更もできるようにする。
財務省の神田真人財務官は26日朝、為替相場を巡り「足元の動きは急速で一方的だ。高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きには適切に対応していく」と語った。円買い介入の可能性を問われ「どんなオプションも排除しているわけではない」とも強調した。
「為替相場はファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいことは言うまでもない」と指摘した。足元の為替相場の動きについて「必ずしも合理的ではない動きがあるという声もある」との見方を示した。
「水準ではなく、過度な変動があった場合に経済の主体が対応できなくなり、迷惑になる。投機的な動きで経済活動が邪魔されることはよくない」と述べた。
ブリンケン米国務長官は25日、米ABCテレビのインタビューでワグネルの反乱について「(ロシア内部に)深刻な亀裂が生じている」と述べた。ロシア国内の混乱でウクライナ侵攻の継続が難しくなる可能性があり「ウクライナにとって戦場での後押しになり得る」との認識を示した。
バイデン氏は24日に英独仏の首脳と電話協議し、ウクライナの自国防衛に必要な支援の継続を確認した。
金利スワップ市場の動向によると、米利下げ期待は来年に後ずれし、米政策金利は成長を抑制する上で十分に高い水準で維持されるとみられている。このことは金融当局が、景気活性化を図るのではなく、インフレ抑制に注力する見通しであることを意味する。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ロシアで武装反乱を起こした民間軍事会社ワグネルの部隊がロシア空軍と交戦し、多大な損害を与えた可能性が25日高まった。創設者プリゴジン氏は、ロシア軍がワグネル部隊をミサイルなどで攻撃し多くの兵士が殺されたため「正義の行進」を始めたと主張したが、反乱は事前に準備されていたとの見方が強まっている。
米シンクタンクの戦争研究所は24日、ワグネル部隊が移動中、ロシア軍のヘリコプター7機と軍用機1機を撃墜したもようだと指摘。13人の乗組員を殺害し、ロシア空軍にとってウクライナ侵攻後、最多の死者を出す日になったと推定した。
戦争研究所は、ワグネル部隊がモスクワまで330キロに迫ったことを確認。「行動の速度や調整状況を見ると、プリゴジン氏が事前に計画していたのはほぼ確実だ」と見なした。ロシア国家親衛隊は反乱に対処できず、プリゴジン氏が撤退を命じなければ、部隊はモスクワ郊外に到達した可能性が高いと分析した。
また、モスクワに向かう幹線道路で確認されたワグネル部隊の車列には、戦車や装甲車、歩兵戦闘車、移動式防空システム「パンツィリ」など重兵器40〜50両が含まれ、兵員は最大4千人に上るとの情報があるとした。
プリゴジン氏は24日、ウクライナ側から越境しロストフ州に入ったと表明。ウクライナ侵攻の指揮を担う州都ロストフナドヌーの南部軍管区司令部をあっさり占拠した。
ウクライナ東部ルガンスク州からも別部隊とみられる車列が24日午前、国境を越えてロシア・ボロネジ州に入ったとみられる。いずれも、国境検問所の要員らはほぼ無抵抗だったもようだ。
住民もワグネルの反乱に目立った抵抗は示さなかった。南部軍管区司令部からワグネル部隊の車列が撤収する際の動画には、住民らが手を振り「よくやった」と歓声を上げる様子が写っていた。
ベラルーシ国営ベルタ通信によると、協議では両者がロシア国内で流血の事態に至ることを避けることで合意した。ルカシェンコ氏がロシア国内でのワグネル武装勢力の移動停止と、緊張緩和のためのさらなる措置を提案し、プリゴジン氏が受け入れたという。ワグネル戦闘員の安全保証などが議論されたもようだ。
ベルタ通信などによると、両者の協議に先立ってロシアのプーチン大統領はルカシェンコ氏と協議し、ワグネルの武装蜂起への対応について議論した。両首脳は共同で問題解決にあたることで合意したという。
トルコ大統領府の声明によると、エルドアン氏はプーチン氏に事態を収拾するため「トルコとしての役割を果たす用意がある」と表明した。「常識に基づいた行動が重要」だと指摘し「誰もこの事態を利用すべきではない」とも述べた。
ロシア大統領府によれば、事態収拾に向けた取引の一環として、プリゴジン氏の隣国ベラルーシへの出国を認め、同氏とワグネル戦闘員に対する反乱罪での刑事訴追に向けた手続きを取り下げるとプーチン大統領が自ら保証したという。ロシアのペスコフ大統領報道官は「これ以上の犠牲を伴わず、緊張のレベルをさらに高めることなく、事態を収拾することができた」とコメントした。
プリゴジン氏がベラルーシに向かっていることを示す兆候は、現時点で見られない。また、プーチン大統領は24日のテレビ演説以降、公の場に姿を現していない。
ベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介したとロシア政府が公表した合意について、プリゴジン氏側はこれまでのところ確認していない。ショイグ国防相と総司令官の更迭を求めるプリゴジン氏の要求にプーチン大統領が同意したかどうか説明はなく、タス通信によると、ルカシェンコ氏との24日の交渉で、この問題は協議されなかったとロシア大統領府は指摘した。
プリゴジン氏のテレグラムへの投稿の少し前、ルカシェンコ氏は、プーチン氏からの要請でプリゴジン氏と交渉を行い、進軍を止めることで合意したと述べていた。
ベラルーシの国営ベルタ通信によると、ルカシェンコ氏は25日午前にもプーチン氏と電話で会談を行った。詳細は伝えておらず、ロシア当局者からはこの会談について確認が取れていない。
ウクライナのゼレンスキー大統領は25日にバイデン米大統領と電話会談し、防空や長距離兵器を含む「防衛協力の一層の拡大」について議論したことを明らかにした。「国際秩序が回復するまで、世界はロシアに圧力をかけなければならない」とゼレンスキー氏は自身のツイッターで指摘した。
武力衝突の回避に成功したとはいえ、プリゴジン氏の劇的な「反乱」により、政治的に全権を掌握しているというプーチン氏のイメージが揺らいだ。
罪に問わないままプリゴジン氏の出国を許せば、「プーチン大統領のシェフ」の異名を取る男が先導した反乱に大統領が屈せざるを得なかった印象を与える危険がある。
政治コンサルタント会社Rポリティクの創業者タチアナ・スタノワヤ氏は「われわれはプリゴジン氏を過小評価したが、プーチン氏を過大評価してきたことは今や明らかだ。今回の出来事は、彼にとって非常に痛い敗北だ」とテレグラムへの投稿で分析した。
主要7カ国(G7)外相はロシアで急展開する事態について電話で協議。米当局者はロシア軍にとってプリゴジン氏が邪魔になっていたことは明らかだとしつつ、同氏に並ぶ効果的な戦いができる者はロシア側にいないと指摘。プリゴジン氏をその地位から引きずり下ろすことができるとしても、犯罪者を含む完全に異質な軍事集団を管理するという難しい仕事にロシア軍は直面するだろうと語った。
プーチン大統領はベラルーシのルカシェンコ大統領に電話し、状況を伝えた。ベラルーシの国営通信社ベルタが報じた。
プーチン大統領はまた、カザフスタンのトカエフ大統領とも電話会談を行い、ロシアの状況について説明した。カザフスタン大統領府が発表したもので、トカエフ氏は「現在の出来事はロシアの内政問題だ」と指摘した。
ロシア大統領府によると、プーチン大統領は24日、トルコのエルドアン大統領とも電話で会談。エルドアン氏はワグネルの反乱に対してロシア当局が取る措置を「全面的に支持」すると伝えたという。トルコのアナドル通信は、ロシアが速やかかつ平和的な解決策を見いだせるようトルコは役割を果たす用意があると、エルドアン氏がプーチン氏に述べたと報じた。
イラン外務省報道官はロシアの法の支配をイランは支持するとしつつ、ロシアで進行中の出来事は「内政問題」だとの認識を示した。
英国防省はロシア情勢について、ロシアの治安部隊、特に国家親衛隊の忠誠心が「危機の行方の鍵になる」と分析。「この状態は、最近のロシア国家にとって最も重大な試練だ」とツイッター上で指摘した。
●中東
モディ氏は訪米の帰途にエジプトの首都カイロを訪れた。エジプト大統領府は声明で、首脳会談では「貿易や戦略物資の交換の拡大、インドによる投資の発展」を議論したと明らかにした。インドメディアによると、防衛や再生可能エネルギーも議題になった。
インドは肥料の調達先の多様化を目指しており、肥料の生産力を増強しているエジプトからの調達拡大を求めているもようだ。一方、エジプトはインドの軍事技術や小麦への関心が高い。インドは国産の戦闘機「テジャス」や地対空ミサイル「アカシュ」などを売り込んでいる。
エジプトは外貨不足に直面しており、資金支援や投資の呼び込みを急いでいる。両首脳は、エジプトのスエズ運河経済特区にインド専用区画を設置する計画についても議論した可能性がある。
ヨルダンやサウジアラビアなどのアラブ諸国がシリア産の麻薬の流入に頭を悩ませている。長引く内戦による経済的疲弊を背景にシリアでの麻薬製造が活発になり、政府側として内戦に加わる武装組織やアサド政権自体の関与を疑う見方も出ている。シリアは12年ぶりにアラブ連盟に復帰したが、その背景には麻薬問題を解決したい周辺国の思惑もあったとみられる。
●中南米・アフリカ
●市況
日経先物32560、ダウ先33977、債先148.79、米3.737、独2.3630、仏2.881、西3.328、伊3.978、英4.3720、波5.817、原油69.50、銅8,418、ドル円143.73、ユーロドル1.0895
※6/23 NY引け値
備忘録(2023/6/22)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
パウエル氏は22日、上院銀行委員会での証言で、大手銀行は資本要件の約20%引き上げを課される可能性があると発言。詳細はまだ流動的で、変わる可能性もあると付け加えた。
「資本要件は大手8行に極めて傾斜したものになる」と同氏は説明。「他の銀行にとっても一定の引き上げとなる可能性はある。資産規模が1000億ドル(約14兆2000億円)を下回る銀行には影響は及ばないだろう」と続けた。
ドイツ銀行が経費削減策の一環として、ドイツのリテール部門で今後数年間に従業員約1万7000人のうち10%を削減する計画を策定していることが分かった。関係筋が22日、明らかにした。
人員削減は、プライベートバンキング事業として知られるリテール部門のトップにクラウディオ・デ・サンクティス氏が就任するのに伴う準備作業として計画を進めている。関係者によると、実施には労働組合や労働者代表との協議が必要となる。具体的な実施時期は分かっていない。
ドイツ銀行は過去に人員削減を発表しながら実現しなかったことがある。2019年には大規模なリストラ策の一環として1万8000人の従業員を削減すると発表したが、業績が再び回復したため最終的にはそこまで削減しなかった。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
スウェーデンの金融当局は22日、不動産会社SBBの会計処理が適切かどうか調査を始めるとの声明を公表した。同社はおよそ80億ドル(約1.1兆円)の負債の借り換えが不安視され格下げが続いている。経営再建に向けてさらなる打撃となりそうだ。
スウェーデンの商業用不動産危機の渦中にあるSBBが会計規則違反の有無を巡り監督当局から調査を受けている。
22日の発表文によれば、スウェーデン金融監督庁(FSA)は、SBBが2021年の財務情報をまとめた際に特定の規則に違反したかどうか判断する。
FSAのトロネン報道官は電子メールで「違反があったと判断した場合、是正命令か制裁措置のいずれかを取ることができる」と説明したが、詳細については言及を避けた。
米労働省が22日発表した失業保険統計(季節調整済み)によると、6月11〜17日の週間の新規失業保険申請件数は26万4000件だった。2000件上方修正された前週の改定値から横ばいだった。ダウ・ジョーンズ集計の市場予想(25万6000件)を上回った。
4週間移動平均は500件上方修正された前週の改定値から8500件増え、25万5750件となった。
6月4〜10日の週間の総受給者数は前週の改定値から減り、175万9000人となった。
新規申請件数(季節調整前)が1000件以上増えた州では、南部テキサス州(7327件増)が「飲食・宿泊サービス、物流サービス、医療・福祉サービスなどで解雇があった」と報告。中西部ミネソタ州(3653件増)は「教育サービスで解雇があった」と報告した。
英イングランド銀行(中央銀行)は22日、利上げ幅を3会合ぶりに0.5%に拡大し、政策金利を4.5%から5%に引き上げると発表した。欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)後の人手不足が深刻で、インフレ圧力がいっこうに弱まらないためだ。カナダやオーストラリアがいったん停止した利上げを再開するなど、各国が粘着インフレへの対応に苦慮している。
21日まで開いた金融政策委員会で13会合連続の利上げを決定した。2月までの2会合で利上げ幅を0.5%としていたが、3月に通常の0.25%に戻していた。政策金利が5%以上となるのは、2008年以来15年ぶりだ。
大幅利上げに再び踏み切ったのは、物価高の主役が石油やガスといったモノの価格から、賃金上昇の影響を受けやすいサービス価格に移り、インフレが想定以上に長引きかねないことへの危機感があるためだ。
声明文では「直近の指標は大きく上振れして、よりしつこいインフレのプロセスを示している」と懸念。賃上げが幅広い物価上昇を引き起こす「二次的効果」についても「解消に時間がかかりそうだ」として警戒感をあらわにした。
5月の英消費者物価指数は前年同月比8.7%上昇と、市場予想に反して伸び率が鈍化しなかった。エネルギーや食品などを除くコア指数の上昇率は7.1%上昇と1992年3月以来の高水準だった。賃上げを求めてストライキが頻発し、4月の平均賃金の伸び率は6.5%と2カ月連続で上昇した。
ブレグジットによる人手不足が労働需給の逼迫をもたらす一因だ。英国の失業率は3%台後半と1974年以来の低水準が続く。22年にEU域内から英国に入った移民の数から同国を離れた人数を引いた純移民数は前年比マイナス5万1000人とブレグジット後の20年から3年連続の純減だ。18年には18万人だった。
イングランド銀行が利上げを継続するとの見方は強い。リフィニティブの市場予想では、12月までの残り4会合すべてで利上げするとの見通しが出ていた。
いったん停止した利上げ再開の動きも広がっている。カナダ銀行(中央銀行)は7日、3会合ぶりに利上げして政策金利を4.5%から4.75%に引き上げた。コア指数の上昇率が4%台にとどまっていることから「超過需要が続き、消費者物価指数の伸び率が2%を大きく上回って推移する懸念が強まっている」とした。オーストラリア準備銀行(豪中央銀行)も4月に一旦利上げを停止してから、5月に利上げを再開した。
各国中銀は景気の失速を避けながらインフレを抑える軟着陸を狙ってきたが、想定外のインフレの根強さがそのシナリオを揺るがしつつある。
ベイリー総裁率いるMPCは、金利がさらに高水準へ向かうとの従来のガイダンスを維持。金利が来年序盤に6%前後でピークを付けるとの市場予想を否定しなかった。
ベイリー総裁は「経済は予想より堅調だが、インフレは依然あまりに高く、これを何とかする必要がある」と語った。住宅ローンやその他のローンを抱えた人が不安になるのは理解できるとしながらも、「金利を今引き上げなければ、将来にさらに悪い結果になり得る」と論じた。
総裁はハント財務相に宛てた書簡で、物価「圧力がさらに持続する証拠があれば、一段の金融政策引き締めが必要となる」とし、「インフレを押し下げることがわれわれの絶対的な最優先課題だ。MPCはインフレ率を目標の2%に戻すため必要な措置を取る」と付け加えた。
ハント氏は「高インフレはわれわれが対処しなければならない最大かつ喫緊の経済的課題だ」と応じ、中銀がインフレを2%に戻す取り組みには政府の「完全な支援」があると強調した。
6月会合の議事録は「国内の物価と賃金動向の二次的影響の解消には、出現した時よりも時間がかかる公算が大きい」としている。さらに「引き締まった労働市場と底堅さが続く需要を背景とした、より持続的なインフレプロセス」について警告した。
サービス価格のインフレもコアインフレ率も「予想より強く」、賃金も予想以上のペースでの上昇が続いたと、議事録は指摘した。
MPCで反対票を投じたのはディングラ委員と、今回が最後の会合となるテンレイロ委員だった。両氏はこれまでの利上げがまだ完全には経済に浸透しておらず、エネルギー価格下落が予測対象期間の終わりまでにインフレ率を目標以下に押し下げるだろうと論じた。
議事録も、消費者物価インフレが年内に「大きく低下する」との見通しを示した。英中銀は次回8月3日の会合で、最新の成長およびインフレ予測を公表する。
スイス国立銀行(中央銀行)は22日、政策金利を0.25%引き上げて1.75%にすると発表した。利上げは5会合連続で、上げ幅は前回3月の0.5%から縮小した。公表した金融政策報告書では、インフレの抑制へ「さらなる利上げが必要になる可能性は排除できない」と盛り込んだ。
市場では0.5%の大幅利上げに動くとの見方もあった。スイスの5月の消費者物価指数は前年同月比の伸び率が2.2%だった。年初の3%超と比べて鈍化したものの、2%未満の物価目標を上回る状況が続いている。
新たに公表した物価見通しでは、2023年と24年のインフレ率を2.2%とした。スイス中銀は「必要に応じて外国為替市場に積極的に関与し続ける」との姿勢を示し、当面のインフレ鈍化の一因としてエネルギー価格の下落とスイスフラン高を指摘した。新たな政策金利は23日から適用する。
講演で「金融政策を巡る環境の変化は労働市場の逼迫が持続することによって生じる可能性がある。労働者の交渉力が強まることで賃金が上昇し、インフレ圧力が持続する可能性がある」と指摘。各国政府はパートタイム雇用の女性がより長く働けるよう、より強力なインセンティブを与えなければならず、そのためには育児面での改善が必要としたほか、高齢者にも働くインセンティブを与え、定年引き上げも検討すべきと主張した。
現在の金融政策については、政策金利はまだピークに達しておらず、いったんピークに達すれば、ECBが高インフレの解消を確信するまで長期にわたって高水準を維持しなければならないと改めて強調。「インフレを打破するには精力的な行動と忍耐が必要だ」とした。
ノルウェー中央銀行は22日、インフレ抑制のため、主要政策金利を50ベーシスポイント(bp)引き上げ3.75%とした。政策金利は15年ぶりの高水準となった。8月の追加利上げも示唆し、今秋に政策金利が4.25%に達すると予想した。
ロイター調査ではエコノミスト32人中24人が25bpの利上げ、8人が50bpの利上げを予想していた。
中銀のバーチェ総裁は「政策金利を引き上げなければ、物価と賃金が急上昇し、インフレが定着する可能性がある」との声明を発表した。
ノルウェーのコアインフレ率は5月に6.7%と、過去最高を記録。中銀の予想の6.0%も上回った。
中銀は「インフレ率を目標水準に引き下げるため、これまで示唆していたより高い政策金利が必要」と指摘。「クローネが想定より弱含んだり、経済の圧力が続いた場合には」政策金利は予想よりも上昇する必要があるかもしれないと警告した。
過去の利上げの効果はまだ、経済に完全に表れていないともした。
一方「インフレ率がより急速に低下したり、ノルウェー経済がより顕著に減速したりすれば、政策金利は現在の想定よりも低くなる可能性がある」とした。
米国株は今年、コラノビッチ氏の弱気な予想に反して大きく値上がりしている。だが、同氏は、事業環境の悪化や個人消費の減速といった要因はこの先の景気低迷を示唆しており、株高が反転する可能性があるとの見方を改めて示した。
同氏は顧客に向けた半期に一度の市場見通しで「米金融当局のドット・プロット(金利予測分布図)では年内2度の追加利上げが示唆されているが、米国株については、当局による予防的な緩和がなければ下期はマクロ環境を巡る逆風が強まると想定している」などと記した。
米国株のリスク・リワードは妙味が薄れていると指摘したほか、リセッション(景気後退)リスクを前にした「高まる投資家の慢心」を懸念材料にあげた。
ウォール街では悲観的な見方を後退させる動きがある一方、リスク回避姿勢を維持する向きもあり、市場の先行きを巡っては意見が割れている。
2023年度に入ってサムライ債の発行が5年ぶりのハイペースで増加している。日本銀行による金融緩和策の維持を背景とした国内金利環境の安定感に加えて、投資家の旺盛な債券需要が海外発行体を引き付けている。
フランス電力は22日、4本立て総額330億円のサムライ債の発行条件を決めた。今年度に入って海外の発行体によるサムライ債の起債はこれで5件目。ブルームバーグのデータによると、年度明けから足元までのサムライ債発行額は4506億円と、同期間で比較した場合、18年以来の高水準となっている。
みずほ証券プロダクツ本部執行理事の小出昌弘副本部長は、 日米欧の金融政策を背景とした「金利観」の相違を基に、調達市場の分散を図る海外発行体にとって、安定感のある日本市場が選択されやすくなっていると説明する。
また、小出氏は、安定した金利環境の下で債券投資が活況となる中、アロケーションが十分に確保できていない投資家の需要がサムライ債などに向いている面もあり、海外発行体と国内投資家の双方のニーズが相まって、今後も発行の増加傾向が続くとみる。
株式
米株式市場でダウ工業株30種平均は小幅に続落し、前日比4ドル81セント安の3万3946ドル71セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化し、景気が悪化懸念が重荷となった。半面、ディフェンシブ株やハイテク株に買いが入り、下値は限られた。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反発した。
債券
ニューヨーク債券市場で長期債相場は下落した。長期金利の指標となる10年物国債利回りは前日比0.07%高い(価格は安い)3.79%で終えた。FRBのパウエル議長の議会証言や英イングランド銀行(中央銀行)の大幅利上げを受け、米国の金融引き締めが長期化するとの観測が強まったことから債券に売りが出た。金融政策の影響を受けやすい2年債の利回りも上昇した。
為替
ニューヨーク外国為替市場で円相場は一時1ドル=143円台前半まで円安・ドル高が進んだ。2022年11月以来、約7カ月ぶりの円安水準。米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを続ける方針であるのと対照的に日銀は金融緩和を維持し、日米の金利差が拡大するとの観測から円売り・ドル買いが進んでいる。
商品
米原油先物相場は反落した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は1バレル69ドル台半ばで取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)による利上げ長期化が米景気を冷やし、原油需要が伸び悩むとの見方が根強く、原油先物は売りが優勢となった。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間の石油在庫統計では、原油在庫が市場予想以上に減少したものの、相場の反応は限られた。ニューヨーク金先物相場は続落した。米長期金利が上昇し、金利の付かない資産である金先物の投資妙味が薄れたとみた売りが出た。
バイデン氏は会談後の共同記者会見で米国とインドの関係について「世界で最も重要な関係の一つであり、いまは歴史上で最も強固かつ緊密でダイナミックだ」と言及した。「無限の可能性を持つ将来をともに切り開く」と断言した。
共同声明によると、インドは米国から無人航空機シーガーディアン(MQ-9B)を購入する。海や国境付近で情報収集能力を向上させる。インドで組み立て作業を実施し、インドの防衛基盤の強化にもつなげる。
ゼネラル・エレクトリック(GE)と印国営ヒンドゥスタン・エアロノーティクス社は、インド国産戦闘機向けのエンジン製造に関する覚書を結んだ。両首脳は「協調して迅速に前例のない共同生産や技術移転を推進していく」と断言した。
5月の中古住宅販売価格(中央値)は39万6100ドル(約5650万円)で前年同月比3.1%下落し、2011年12月以来の大きな下落率を記録した。販売件数(季節調整済み、年率換算)は3カ月ぶりに前月比プラスとなり、前年同月比でも減少率が縮まった。
住宅価格は3カ月連続で下落した。住宅ローン金利の上昇が続いた影響で、住宅価格を引き下げないと取引が成立しにくくなっている。その半面、価格下落が住宅需要を刺激し始めており、販売件数は前月比0.2%増と小幅に増加した。販売件数はダウ・ジョーンズまとめの市場予測(425万戸)も上回った。前年同月からは20.4%減ったが、減少率は22年夏ごろの水準まで縮小した。
住宅ローン金利が一時よりは多少落ち着いた水準で推移していることも販売件数を下支えした。「住宅ローン金利が比較的安定しているため、販売件数も一定のペースを保っている」とNARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は指摘する。21日発表の米抵当銀行協会(MBA)の調査によると、30年固定の住宅ローン金利(週平均)は足元で6.73%となった。ローン金利は22年10月に一時7.16%と01年以来の高水準を記録したが、ここ1カ月ほどは6%台後半で推移している。
とはいえ、販売件数の水準は低迷している。米連邦準備理事会(FRB)が大幅利上げに踏み切る前の22年初と比較すると3割強少ない水準にある。米PNCフィナンシャル・サービシズのエコノミストは「低金利下で組んだローンを手放したくない人が多く、その結果需給のバランスが崩れている」としたうえで、米住宅市場は当面弱含みで推移するとの予測を展開した。
米商業不動産業界では問題が広がりつつあり、不良資産の総額は2023年1-3月(第1四半期)に10%増加し640億ドル(約9兆1400億円)近くに膨らんだ。調査会社MSCIリアル・アセッツの最新のリポートで明らかになった。
同リポートによれば、近い将来に問題となり得る商業用不動産は1550億ドル近くに上る。
借り入れコスト上昇が商業不動産業界に打撃となっており、価格が下落し、デフォルト(債務不履行)を選択する所有者もいる。問題となり得る資産の大半は借り換えが必要なビルに関連している。複数の地銀破綻を受け、銀行は与信を引き締めつつある。
ジム・コステロ、アレクシス・マルティン両氏らMSCIリアル・アセッツの調査担当者は「こうした潜在的なディストレスが本格的な問題に発展すれば、不良資産売却の増加と価格下落は避けられないだろう」と指摘した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ロシアは来年、ウクライナ経由の欧州への天然ガス供給を停止する可能性があると、ウクライナのハルシチェンコ・エネルギー相が英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に語った。
戦争が続いていることを踏まえれば、ウクライナ経由でのガス供給契約更新でウクライナとロシアが合意する公算は小さく、契約が切れる2024年末までにロシア産ガスの供給が止まるかもしれないと同相は指摘。ウクライナは供給停止に備えていると明らかにした。
ブルームバーグはウクライナのエネルギー省ヘの取材を一般的な業務時間外に試みたが、連絡は取れなかった。
ロシア大統領府によれば、クリミアとヘルソンのロシアが占拠した地域を結ぶ複数の橋がミサイルで攻撃されたという。
米国はロシアの侵攻によって壊滅的な被害を受けたウクライナの復興を図るため、追加で13億ドル(約1840億円)を供与すると発表した。
フィリピン中央銀行は22日の金融政策決定会合で、政策金利の翌日物借入金利を年6.25%で据え置くと発表した。据え置きは2会合連続。消費者物価指数(CPI)の急激な上昇が収まりつつあることを理由に挙げた。
インドネシア中央銀行は22日、主要政策金利を5会合連続で据え置いた。5月の消費者物価指数(CPI)上昇率が1年ぶりに中銀の目標レンジの上限に下がったことを受けた措置。
中銀のペリー・ワルジヨ総裁は記者会見で「5.75%に据え置くとの決定は、インフレ率を2023年の残りの期間、3.0%(プラスマイナス1%)の目標レンジ内に抑制するという金融政策スタンスと一致する」と述べた。
「金融政策の一貫性と政府との調整」により、インフレ率が予想より早く目標に戻ったと指摘。年内は引き続き目標レンジ内で推移するとの見通しを示した。
5月のCPI上昇率は前年比4%に鈍化し、中銀の目標レンジ(2─4%)の上限に戻った。昨年は6%近くまで上昇していた。
インドネシア中銀は昨年8月以降、合計225ベーシスポイント(bp)の利上げを実施した。
総裁は、ルピアの安定維持に政策の焦点を当てるとした。ルピアは今年、対ドルで4%超上昇し、アジア通貨で上昇率が最高となっている。
総裁は、ルピア相場は引き続き「コントロール下」にあり、中銀の安定化措置に沿って推移していると指摘。経常黒字や資本流入に支援され、ルピアは今後も上昇し続けるとの見方を示した。
中銀は先月の会合で、今年の経済成長予測を4.5─5.3%で据え置いたが、4月声明に盛り込んだ「上限方向へのバイアス」との文言は削除した。きょうの会合でもこの成長率予想を維持した。
ストは中銀が金融緩和の検討を開始する可能性があると指摘している。
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ガレス・レザー氏は「中銀は次の措置を明確にしなかったが、為替が対ドルで底堅さを維持すれば、比較的早く利下げを開始するだろう」とし、早ければ10月にも利下げがあると予想した。
INGのエコノミスト、ニコラス・マパ氏はルピアの動向が今後の政策を左右する可能性が高いとし「ルピアに対する圧力が解消され、インフレが引き続き抑制される場合にのみ、最終的な利下げへの転換を検討できるのではないか」と述べた。
●中東
トルコ中央銀行は22日、金融政策決定会合を開き、主要政策金利(1週間物レポ金利)を年8.5%から15%に引き上げると決めた。通貨リラ安やインフレに対応するため、6月に就任したエルカン新総裁の下でこれまでの緩和方針を転換した。利上げは2年3カ月ぶり。
トルコ中央銀行は22日、政策金利の1週間物レポレートを8.50%から650ベーシスポイント(bp)引き上げ15.0%とした。エルドアン大統領が強く求めていた低金利政策からの転換となる。
今回は、エルドアン氏の大統領選勝利後に任命されたエルカン新総裁にとって最初の政策決定会合。利上げは2021年初め以来となる。
中銀は、利上げは「できるだけ早期にディスインフレの軌道を確立しインフレ期待を安定させ、価格決定行動の悪化を制御するため」と説明。「インフレ見通しの大幅な改善が達成されるまで、適切なタイミングで緩やかに、金融引き締めが一段と強化される見通しだ」と表明した。
●中南米・アフリカ
中米グアテマラの大統領選挙に出馬している中道右派のカバル党、エドモンド・ムレット候補は日本経済新聞の取材に応じ、「台湾との関係は対米外交にとって重要だ」と述べた。25日に1回目の投票を予定する大統領選で当選すれば、4年間の任期中は台湾との外交関係を維持する考えを示した。
中銀の5人の委員が全会一致で据え置きを決めた。中銀は据え置きの理由について22日の資料で「前回の会合からインフレ率が下がっているが、まだ高止まりしている」と指摘した。
米シティグループ系のバナメックスは20日のリポートで23年末時点の政策金利は11%になるという見通しを示した。中銀が民間銀行など36機関の予測をまとめて1日に公表した調査では23年末時点の政策金利の見通しは11%だった。5月に公表した見通し(11.25%)から下方修正した。
メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)が22日発表した6月前半の消費者物価指数は、前年同期比で5.18%上昇した。農畜産物とエネルギー価格を除くコアインフレ率は6.91%だった。
コアインフレ率に含む「(農畜産物を除く)食料品と飲み物、たばこ」は前年同月比で10.67%上昇した。コアインフレ率に含まない「果物と野菜」は同3.67%の上昇にとどまった。
●市況日経先物33412、ダウ先34236、債先148.65、米3.797、独2.4810、仏3.013、西3.434、伊4.122、英4.4145、波5.924、原油69.38、銅8,582、ドル円143.03、ユーロドル1.0956
※6/23 8時35分頃
備忘録(2023/6/21)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
イングランド銀行(英中央銀行)の金融政策委員会は22日、政策金利を発表する。利上げ終了時期を探っていたが、消費者物価指数が見通しから上振れし続けるなど誤算は尽きない。市場では利上げの織り込みが進むが、過剰な金融引き締めは企業や家計を必要以上に圧迫しかねない。利上げの終了時期が見通しにくいなか、英中銀は政策運営や市場との対話で難しい判断を迫られている。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は21日、米連邦議会下院での議会証言で、2回の追加利上げを示唆した米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の経済見通しについて「かなり良い予想だ」と見解を示した。市場に広がった懐疑論をけん制する形となった。
株式
21日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続落し、前日比102ドル35セント(0.3%)安の3万3951ドル52セントで終えた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言を受け、利上げ継続観測が改めて広がった。高PER(株価収益率)のハイテク株を中心に売りが優勢となった。
債券
21日のニューヨーク債券市場で長期債相場は横ばいで終えた。長期金利の指標である表面利率3.375%の10年物国債利回りは前日と同じ3.72%で終えた。パウエル議長が同日の議会証言で利上げ継続を示唆したことが債券売りを誘った。一方、警戒していたほどタカ派な姿勢を示さなかったと受け止められ、相場は上げに転じる場面があった。
為替
21日のニューヨーク外国為替市場で円相場は反落し、前日比45銭円安・ドル高の1ドル=141円85〜95銭で取引を終えた。米利上げ継続観測から円が売られ、一時は142円37銭と昨年11月中旬以来の円安・ドル高水準を付けた。米長期金利が前日終値近辺に水準を切り下げたため、円は下げ渋った。
商品
21日のニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で原油先物相場は上昇した。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で8月物は前日比1.34ドル(1.9%)高の1バレル72.53ドルで取引を終えた。パウエル議長は21日の米下院の議会証言で、インフレ抑制を重視する姿勢を改めて示した。ただ、市場が警戒していたほどタカ派的な発言が目立たず、次第に買いが入った。
クック理事は中小銀行に関し、「大手行と同じ要件を課されるべきでなく、多大な規制の負担なしでこうしたコミュニティーで繁栄すべきだ」とし、規模に合わせた規制の調整に「同意する」と話した。
バーFRB副議長(銀行監督担当)は銀行規制を見直し中で、年内に一部規則の改正を提案する見通し。
ジェファーソン理事は公聴会で、「資本要件について考える場合、私は常に銀行の強靱化・健全化と与信の得やすさとの間のトレードオフを考慮する。資本の適正水準の設定に際し、この2つの事項のトレードオフに常に取り組む必要があると考えられる」と語った。
ハーベイ氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、今の相場は1999年と2000年のハイテクブームの様相を呈していると指摘した。この時は当局が一段の引き締め策を講じて株式相場に影響が及ぶまで、過熱した状態が続いた。
同氏は「一番の問題は景気に亀裂が入らない限り、テクノロジーが転落することはないということだ。これこそ1999年に起きたことであり、今回もそうなる可能性が高い」との見方を示し、「米連邦公開市場委員会(FOMC)がより積極的に動かなければ経済に亀裂が入ることはないだろう。相場下落はあるだろうし、大手テクノロジー株も売られることはあるだろうが、総じてテクノロジー株の上昇というテーマは続いており、経済に打撃が及ぶまで、そのトレンドが崩れることはないと考える」と述べた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
欧州連合(EU)は21日、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに対する新たな制裁パッケージ案で合意した。軍事転用できる製品や技術が第三国経由でロシアへ流出することを阻止するため、リスクのある国への輸出を制限できるようにする。
インドの魅力は世界経済が減速する中で際立っており、とりわけ新型コロナウイルス禍からの回復失速や西側との関係悪化に悩む中国との対比でさらに輝きを増している。
TDセキュリティーズの新興市場ストラテジスト、ミタル・コテチャ氏は「インドの明るい成長見通し、相対的に若い人口に加え、(中国に加え別の国にも生産拠点を確保する)『チャイナプラスワン』戦略を重視するトレンドが全般的にインド投資を後押ししていることは明らかだ」と指摘。外国人投資家によるインド債券の買いは今年下期も継続するとの見方を示した。
中国は地方政府が抱える債務を把握するため、新たな全国調査に乗り出した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。当局が重大な財政リスクに対処するため、具体的な措置を講じる準備をしていることが示唆された。
情報の非公開を理由に匿名を条件に語った同関係者によれば、指導部は政府の全レベルの債務をより正確に把握することを目指しており、地方当局はいわゆる「隠れ債務」の公表を余儀なくされる見通しだ。関係者の1人によると、この取り組みは財政省が主導している。
中国政府はバイデン米大統領が中国の習近平国家主席を「独裁者」と呼んだことに反発し、「公の場で政治的挑発」を行ったと非難。ブリンケン米国務長官の訪中を通じ米中関係の安定化が図られたばかりだが、両国間の緊張が再び高まる可能性もある。
中国外務省の毛寧報道官は北京で21日開いた定例記者会見で、バイデン氏の発言について「でたらめで、極めて無責任だ」と批判。「基本的な事実と外交儀礼に反しており、中国の政治的尊厳を著しく損ね、公の場での政治的挑発に相当する」と主張し、「中国は強い不満と反対を表明する」と語った。
バイデン氏は20日、偵察用とされる中国の気球が米領空に今年飛来し飛行コースを逸脱したことについて、この出来事が国際問題に発展するまで習主席は知らなかったと述べた。
バイデン氏はカリフォルニア州マリン郡での政治資金集めのイベントで、「偵察機器を満載した気球を撃ち落としたとき、習氏が非常に動揺した理由は、それがそこにあることを知らなかったからだ」と指摘。
強権的な習氏を独裁者になぞらえ、「独裁者たちにとっては、何が起こったのか知らないというのは大きな恥だ」と語った。
バイデン氏はまた、ブリンケン長官の北京訪問を踏まえ、中国が米国と「再び関係を持ちたい」と考えていると説明した上で、そうした外交関係の改善には「時間がかかる」との見方を示し、「非常に重要なのは習氏が今、再び関係を持ちたいと考えている状況だ」と述べた。
18日に北京入りし、19日に習氏と会談したブリンケン氏はここ5年で中国を訪問した最も高位の米政府高官となった。
今回のブリンケン氏訪中は、米中双方が成功だったと評価している。ただ、当初は2月に予定されていたもので、中国の気球が米国の本土上空を飛行していたことが大問題になり、延期されていた。
●中東
●中南米・アフリカ
政策委は声明で、インフレが予想通りに推移しない場合に利上げを再開するとの文言を削除したが、今後の金利決定には「忍耐と冷静さ」が求められるとあらためて指摘した。
「政策委はディスインフレの過程が定着し、インフレ期待が目標前後に落ち着くまでやり通すことを強調する」とした上で、「金融政策の今後の措置は、金融政策や経済活動の影響をより受けやすい分野などのインフレ動向に加え、長期を中心とするインフレ期待、インフレ見通し、需給ギャップ、リスクバランスに左右される」と説明した。
●市況
日経先物33470、ダウ先34250、債先148.66、米3.727、独2.4295、仏2.939、西3.335、伊4.023、英4.4430、波5.971、原油72.45、銅8,585、ドル円141.69、ユーロドル1.10
※6/22 9時05分頃
備忘録(2023/6/20)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米製薬大手イーライリリーは開発中の免疫疾患向け経口治療薬を取得するため、ダイス・セラピューティクスを約24億ドル(約3400億円)で買収する。
両社が20日発表した資料によれば、イーライリリーはダイスに1株当たり現金48ドルを支払うことで合意。ダイスの16日株価終値に42%上乗せした額となる。買収は7-9月(第3四半期)に完了する予定。
カナダの銀行規制当局は国内大手6行に対する自己資本要件を厳格化した。経済・金融リスクに対する当局の懸念を示唆している。
カナダ金融機関監督庁(OSFI)は、国内安定バッファーをリスク加重資産の3%から3.5%に引き上げる。同バッファーは将来的に問題が生じた場合に銀行を保護する仕組みとして期待されている。OSFIは昨年12月にも同じ幅で引き上げており、要件の厳格化はここ半年ほどで2度目。
これにより、カナダ大手6行はリスク加重資産の少なくとも11.5%の普通株等ティア1(CET1)保有を義務付けられる。現時点で6行はいずれも要件を満たしており、最低水準に最も近いのはカナディアン・インペリアル・バンク・オブ・コマース(CIBC)だ。
OSFIは声明文で「家計や企業の債務水準の高さや債務コストの増大といった現在の脆弱(ぜいじゃく)性、および財政・金融政策を巡る世界的な不透明感の高まりといった状況に加え、カナダ金融セクターが冬から春にかけて力強さを示したことで、OSFIにとってはシステムを一段と強靱(きょうじん)にする機会が生まれた」と説明した。新たな資本要件は11月1日から適用される。
家計が今後数年に金利上昇による影響に耐えられるかといった懸念に加え、オフィスの空室率が高止まりしていることで、商業用不動産ローンの焦げ付きリスクも警戒されている。
●その他産業
中国ネット通販最大手のアリババ集団は20日、張勇(ダニエル・チャン)会長兼最高経営責任者(CEO)が9月10日付で退任すると発表した。後任の会長には蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)副会長、CEOには傘下の淘天集団の会長を務める呉泳銘(エディー・ウー)氏がそれぞれ就任する。
蔡氏と呉氏はどちらも創業メンバーで、経営支配権を実質的に握る「パートナー」を務めている。アリババは成長鈍化に直面しており、双頭体制で再成長を目指す。退任する張氏は重点分野に位置付けるクラウド事業のトップに専念する。
楽天グループ株が低迷している。20日の東京株式市場で6日続落し、一時前日比4%安の493円50銭と節目の500円を割った。株式分割を考慮したベースで500円割れは2009年5月以来14年ぶりだ。赤字が続く携帯事業への懸念が強く、売りが止まらない。携帯の新プランや公募増資で立て直しを図るが、株価、社債価格ともに下げ止まりがみえない。
KKRは、ペイパル・ホールディングスの後払い決済サービス「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」の融資債権を最大400億ユーロ(約6兆2000億円)取得することで合意した。ペイパルは調達した資金を自社株買いの拡大に充てたい考えだ。
発表文によると今回の合意は、ペイパルがフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国で組成した融資を、KKRが運営するプライベートクレジットファンドとアカウントが取得できるようにする融資コミットメント(30億ユーロ相当)の一環。ペイパルは今回の取引で18億ドル(約2550億円)を調達し、年内に追加で10億ドル相当の自社株買いが可能になるとみている。
BNPLは特に若者の間で人気が高く、ペイパルは2020年の参入以降、世界で消費者3000万人余りに対して2億件を超える融資を手掛けている。
発表文によると、KKRのプライベートクレジットファンドおよびアカウントは、欧州におけるペイパルのBNPL既存債権と将来の適格融資の「実質上」全てを取得する。ペイパルは引き受けや債権回収といった業務については引き続き担当する。
●決算関連
2023年3〜5月期決算は、売上高が前年同期比10%減の219億ドル(約3兆1000億円)となった。純利益は2.8倍の15億4000万ドルだった。長引くインフレによる個人消費の減退やネット通販大手との競合で、物流需要は曲がり角を迎えている。コスト削減など収益改善を急ぐ。
●先進国、グローバル、金融市場
世界最大の資産運用会社、米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は日本経済新聞の取材に応じ、中国株から日本株への資金シフトについて「投資家の間で中国の経済成長が大幅に鈍化すると警戒されている」と述べた。一方、米国経済の見通しについては、財政出動効果で2023年中の景気後退入りはないと見方を示した。
オーストラリアで中国を安全保障上の脅威と考える人の割合が低下している。豪シンクタンクのロウイー研究所が20日発表した世論調査の結果では、「脅威」と回答した割合が52%と前年から11ポイント下がった。一部の貿易正常化など経済分野での関係改善が影響した可能性がある。
4月の議会選で第1党となった中道右派の国民連合や、欧州連合(EU)懐疑派で移民に厳格な政策を掲げるポピュリスト政党のフィン人党など4党による連立政権が発足した。首相には国民連合のペッテリ・オルポ党首が就任した。公共放送YLEが報じた。
ロシアと国境を接するフィンランドは4月、北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟した。ロシアのウクライナ侵攻に伴い安全保障環境が厳しくなる中、NATOとの連携方針は維持する見通し。新政権は、移民・難民の受け入れ規制強化など右派的な政策を打ち出す方針だ。
YLEによると、外相にはバルトネン氏、国防相にはハッカネン氏がいずれも国民連合から起用された。フィン人党のプーラ党首は財務相のポストを得た。
極右的主張を唱えるフィン人党は気候変動対策などEUの政策に批判的。移民の受け入れ制限を巡っても、EUとの間であつれきを招く可能性がある。
議会選では、NATO加盟を主導したマリン前首相の中道左派、社会民主党は敗北。国民連合を中心とした政権発足に向けた協議が続いていた。
米住宅着工件数は5月に2016年以来の大幅増となった。建設許可件数も増えて、住宅建設が経済成長押し上げに寄与する軌道にあることが示唆された。
一戸建て住宅の着工件数は18.5%増加し、11カ月ぶり高水準。アパートなど集合住宅の着工は27%余り増えた。
今回の数字は、住宅市場が安定化の兆しを示しているとするパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の先週の発言を裏付けるものだ。需要の底堅さや資材コストの低下、サプライチェーンの圧力緩和を背景に、住宅建設業者は楽観を強めている。
住宅着工データは4-6月(第2四半期)国内総生産(GDP)への住宅建設の影響に関するエコノミスト予想に反映される。
ただし、高い住宅ローン金利は値ごろ感を損なっており、住宅需要のモメンタムは限られていることが示唆される。
完工件数は年率152万戸に増加。建築中の一戸建て住宅は69万5000戸でほぼ変わらず。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のブロック副総裁は20日、インフレ率が中銀の目標レンジに戻るには失業率が現在の3.6%から4.5%程度まで上昇し、経済が「トレンドを下回るペース」で成長する必要があるとの見方を示した。
豪中銀が先月公表した四半期報告では、ヘッドラインインフレ率が目標レンジ(2-3%)上限に戻るのは2025年半ばで、失業率はそれまでに4.5%に上昇する見通しが示された。既に鈍化している経済成長率は、24年まで2%を下回る水準で推移するとみられる。
ブロック副総裁は講演で、「われわれの目標は、労働市場(および財・サービス市場)を完全雇用とより一致した水準に戻すことだ」とし、それは中銀見通しの終点部分のような水準だと指摘。「雇用と経済がしばらくの間トレンドを下回るペースでおおむね成長すれば達成可能だと考えている」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのブイチッチ・クロアチア中銀総裁は20日、ユーロ圏のコアインフレ圧力は根強いとの認識を示し、ECBは政策を実施しすぎることと、実施しなさすぎることのコストを比較検討しなければならないと述べた。
ブイチッチ総裁はロンドンで開催されたイベントで、ECBはインフレ率を目標の2%に引き下げることができると確信していると指摘。同時に、経済への打撃を避けるために時間をかけてインフレ率をこの水準に引き下げていく行う必要があるとし、「インフレ率の引き下げは、科学というよりむしろ芸術だ」と述べた。
その上で、中央銀行は理想的には経済のソフトランディング(軟着陸)の実現を望んでいるが、必ずしも可能ではないとの考えを示した。
欧州中央銀行(ECB)銀行監督委員会のアンドレア・エンリア委員長は20日、ノンバンク⾦融仲介機関(NBFI、影の銀行)がユーロ圏で急速に拡大しており、金融システム全体のリスクが高まっていると指摘、銀行に対しNBFIと取引する際はリスク管理を強化するよう求めた。
投資ファンド、保険会社などNBFIは現在31兆ユーロ(33兆9000億ドル)の資産を保有。これは監督対象の銀行部門の資産の80%に相当するが、NBFIは規制が緩く、リスクの高い取引に関与することが少なくない。
同委員長は「金融政策ではインフレ率を目標に戻す取り組みが続けられており、NBFIのリスクが今後数カ月で高まる可能性がある」と指摘。リスクが「大きく」積み上がっていると述べた。
NBFIは負債が急増しているほか、資産と負債のデュレーションに大きなミスマッチがあり、多額の流動性が必要になった場合の準備が不十分なことを示す形跡があるという。
「NBFIは流動性バッファーを主に銀行預金として保持し、レポ市場で銀行と取引を行っているため、NBFIからの資金調達がシステミックリスクの最も重要な波及経路の1つになる可能性がある」と指摘。
NBFIはシステム上重要な銀行と取引することが多いため、NBFIにストレスが生じれば、欧州の一部の大手行が打撃を受ける可能性が高いと述べた。
同委員長は、新たな規制を導入することが理想的だが、協議や施行に時間がかかるため、短期的には銀行の脆弱性が残ると指摘。このため、現時点で最も重要な安全対策は、銀行がNBFIと取引する際にリスクを認識し、積極的にリスクを管理することだと述べた。
パウエルFRB議長は21日に下院で、22日に上院で証言する。政策金利を据え置いた前週の米連邦公開市場委員会(FOMC)後では初めて公の場で発言する機会となる。同FOMCでは政策金利見通しが年内2回の利上げを見込む水準に引き上げられた。パウエル議長が金融引き締めに積極的なタカ派的な姿勢を示すとの懸念があり、売りが優勢となった。
20日には中国人民銀行(中央銀行)が政策金利の引き下げを決めた。中国の景況感が落ち込む中で利下げが想定されていたものの、小幅な利下げにとどまった。景気の下支えには物足りないとの見方があり、米株相場を押し下げた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
経済危機に陥っているパキスタン政府は、南部にあるカラチ港ターミナルをアラブ首長国連邦(UAE)に譲渡する方向で本格的な検討に入った。緊急資金を調達するためにパキスタンで2022年制定された法律に基づく最初の「政府間取引」となる可能性がある。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況日経先物33085、ダウ先34349、債先148.59、米3.729、独2.4055、仏2.924、西3.342、伊4.010、英4.3615、波5.961、原油70.94、銅8,566、ドル円141.33、ユーロドル1.0920
※6/21 8時40分頃
備忘録(2023/6/19)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
米半導体大手インテルは、ドイツ東部に建設する半導体製造施設向けに同国政府から100億ユーロ(約1兆5500億円)相当の補助を受けることで双方が合意したと、事情に詳しい関係者が明らかにした。
ドイツ政府は19日の電子メールで、ショルツ首相とパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)がベルリン時間午後2時45分から行われる合意の署名式に出席すると説明した。
インテルは当初、68億ユーロの政府支援を受けてマグデブルクに半導体施設を建設することで合意していたが、経済的な逆境を理由に工場建設の着工を延期していた。
関係者によれば、今回強化された合意内容には補助金という従来形式の支援に加え、エネルギー価格の上限設定が含まれる。
同社の発表資料によると、伊藤忠商事と丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事の5社分を合計した株式の価値は米国以外でバークシャーが保有するどの国の上場企業の株式の価値も大きく上回るという。
5社のいずれについても9.9%まで出資比率を引き上げる可能性があるが、投資先の取締役会の特別な承認がなければそれ以上の投資に関しては行う予定はないとしている。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
全米ホームビルダー協会(NAHB)とウェルズ・ファーゴが発表した6月の住宅市場指数は55と、11カ月ぶりの高水準となった。中古住宅の在庫不足により、新築物件に対する買い意欲が引き続き高まっている。
指数の上昇は6カ月連続。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想をすべて上回った。全米4地域すべてで改善した。
NAHBのチーフエコノミスト、ロバート・ディエツ氏は発表文で「建設業者の景況感が年初から引き続き緩やかに改善しており、一戸建て住宅の建設は底入れしつつある」と指摘。「米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めサイクルが終盤にさしかかっていることも、住宅ローン金利、および建設・開発業者の資金調達コストの点において、市況の先行きに明るい材料を提供する」と述べた。
見通し指数は62(前月は56)となり、昨年5月以来の水準に上昇。現況指数と購買見込み客足指数はいずれも11カ月ぶりの高水準となった。
販売押し上げに向けて住宅価格を引き下げたとの回答は25%と、ピークをつけた昨年11月の36%から低下。需要の緩やかな改善を示した。
欧州の銀行監督当局は、今年のストレステスト(健全性審査)の初期段階を無事に乗り切った銀行に、最終結果はより厳しくなる可能性があると警告した。
欧州中央銀行(ECB)は金利上昇の恩恵を受けている銀行に、より信頼性のある結果を出すための調整の準備をするよう示唆したと、事情に詳しい関係者が匿名を条件に明らかにした。
多くのバンカーは当局に同意せず、当局が業界に圧力をかけるためにストレステスト結果を悪くしようとしていると反論していると、一部の関係者が述べた。
テスト結果は衝撃に対する銀行の備えの度合いを示し、資本要件に影響する。健全であることが認められれば、景気の不透明性が増す中でも大型の株主還元に道が開ける。
ECBと欧州銀行監督機構(EBA)の報道官はコメントを控えた。EBAがまとめるストレステストは7月末までに完了する予定。
今年のテストはこれまでで最も厳しい経済シナリオを採用したとされているが、金利上昇と貸倒引当金の減少で昨年の利益が押し上げられた銀行は、問題なく審査の初期段階を乗り切った。これを受けて一部当局者は、昨年の状況からの事態悪化が十分に織り込まれていないのではないかと懸念を示した。
銀行は2025年まで3年間の逆境シナリオとより穏やかな基本シナリオについて審査を受ける。
健全な結果は逆境への耐性を高める具体的な取り組みを反映したものだと銀行は主張し、成果の報奨を得るべきだと論じる。一方、当局は審査が緩かった結果として銀行が過度な株主還元で資本を目減りさせ、その後で環境が悪化する事態を懸念している。
当局は恐らく、銀行自身の予測が当局の判断と大きく乖離(かいり)し、銀行がその差を説明できない場合、当局の計算方法を採用するよう求めると関係者は述べた。「クオリティー・アシュアランス」と呼ばれるテストのこの段階は、それ以前の段階よりも恐らく厳しいという。
当局者らは内々に、銀行に自行の再評価を求めるのはより現実的な結果を求めているためであり、試験の手法と基本シナリオは変わっていないと話す。しかし銀行と業界団体は、ECBとEBAが単により悪い結果を求めているとの見方を示している。
スウェーデンの不動産セクターが再び打撃に見舞われた。商業用不動産保有大手のSBBに続き、同業のファストパートナーもジャンク(投資不適格)級に格下げされた。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは16日遅く、ストックホルムに本社を置くファストパートナーの格付けを「Ba1」と、1段階引き下げたと発表。
財務を立て直せなければさらなる格下げの可能性もあるとし、格下げは「急激な金利上昇とそれに伴い厳しさを増した資本市場環境を反映した」とムーディーズは説明した。
同社株は19日のストックホルム市場で一時6.6%安。ブルームバーグのデータによれば、変動利付債(2025年5月償還)は若干値下がり。
スウェーデンの不動産業界では、SBBが先にジャンク級に格下げされていた。低金利時代に借り入れを膨らませてきた不動産各社だが、金利上昇と不動産値下がり見通しの中で投資適格の格付けを失う企業が出ている。
ロンドンの住宅の売り手は、6月に同国のどの地域よりも値下げしていたことが調査で示された。借り入れコストの急上昇により、国内で最も不動産価格が高いロンドンでは値ごろ感が損なわれている。
不動産ポータルサイト、ライトムーブによると、ロンドンの住宅売却希望価格は5月から1.6%下落。全国的には総じて前月比変わらずで、前年比は1.1%上昇にとどまった。
19日の米株式市場は休場。英国のFTSE100種総合株価指数、ドイツ株価指数(DAX)、フランスCAC40はそろって下落した。英フィナンシャル・タイムズが、製薬大手アストラゼネカが中国事業を切り離し、香港または上海での株式上場を選択する可能性を検討していると報じた。地政学的リスクへの警戒からアストラゼネカ株が下落した。
債券
欧州債券市場で、英国の2年債利回りが一時5%台に乗せ、2008年夏以来ほぼ15年ぶりの高水準を付けた。今週、5月の英消費者物価指数(CPI)のほか、イングランド銀行(英中央銀行)の金融政策委員会が政策金利を発表する。インフレや賃金上昇の圧力の強さから、英中銀が利上げを継続せざるを得ないとの見方が強まっており、英国債を売る動きが出ている。
為替
19日のロンドン外国為替市場で円は対ドルで下落。一時142円台まで下落し、2022年11月以来約7カ月ぶりの円安・ドル高水準を付けた。円は対ユーロでも下落した。大規模な金融緩和を維持する日銀と、利上げ継続方針を示す米欧との金融政策の違いが意識され、円売りが優勢となっている。
商品
19日の原油先物相場は反落した。米WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は1バレル=71.29ドルで取引を終えた。中国景気の先行きに対する不透明感が上値を抑えた。米国が祝日のため、商いは薄かった。
ワンポイント
半導体世界大手の米インテルが19日、ドイツ東部に半導体工場を新設すると正式決定しました。公的支援をめぐるドイツ政府との交渉の末、当初予定の1.5倍にあたる100億ユーロ(1兆5500億円)弱の補助金交付で合意したもようです。インテルは16日にポーランドの新工場計画を発表したばかりです。中国に頼らない半導体のサプライチェーン(供給網)構築が課題となるなか、日米欧の誘致合戦も激しくなっています。
ニューヨーク原油先物相場はアジア時間20日午前の時間外取引で下落し、1バレル=71ドル台前半で取引された。中国の景気支援策も需要を喚起するには不十分と受け止められた。
英イングランド銀行(中央銀行)は19日、金融システム全体のリスク分析を初めて実施すると発表した。銀行のほか、既存の金融規制外の年金基金やヘッジファンドなどのノンバンクも対象とする。市場急変時の資産売却の仕組みや影響を予測し、2022年の英国債暴落といった金融システム混乱の再発防止を狙う。
フロリダ州の一戸建て住宅価格は、過去3年で5割近く上昇した後、2011年以来初めて前年同月比で横ばいとなった。同州への転入の動きは鈍化しつつある。住宅ローン金利や保険料の高騰で、同州の魅力の一つである「手の届きやすさ」が損なわれている。
不動産サービス会社レッドフィンのチーフエコノミスト、ダリル・フェアウェザー氏は「フロリダ州が高額になりつつあるという事実は、住宅購入者にとって魅力後退につながる」と話す。
オンライン住宅販売サイト、リアルティーホップがまとめた所得に対する住宅所有関連コストのデータ(5月)によると、ニューヨーカーが南部への移住を考える際の有力な選択肢の一つであるマイアミは、今や米国で費用面で最も手の届かない都市圏となっている。
資産家のベンチャーキャピタリスト、ピーター・ティール氏は先月、フロリダ州の住宅価格があまりにも高騰しているため、カリフォルニア州シリコンバレーから事業を移転させることをためらうと述べていた。
しかし、フロリダ州には州所得税がないため最も利益を受けるのは富裕層だ。中間所得者層にとっては、損害保険など他のコストが足かせとなる。気候変動に特に脆弱(ぜいじゃく)なこの地域の保険料は、全米で最も高い部類に属する。
デサンティス州知事が来年の大統領選への立候補を表明し、物議を醸す「禁書」やLGBTQ問題をめぐる論争など、フロリダ州は政治の面でも震源地となりつつある。
フロリダ州タンパの不動産エージェント、バネッサ・チャールズ氏によると、新型コロナは、マスク着用義務や犯罪、所得税から逃れてより自由度の高い州に移ろうとする人々を同州に殺到させたが、最近は政治が顧客を不安にさせている。「フロリダ州を見る目が変わってきている。引っ越してきた家族の多くが『ここにはいられない』と電話してきた」と同氏は説明した。
フロリダ州の住宅市場のハードルが購入者にとって高くなりつつあるのは確かだが、パンデミックでブームになった他の都市に比べ回復力があることも示されている。フロリダ州には、金融やテクノロジー業界のオフィス移転に伴う力強い雇用や、1年を通じて降り注ぐ陽光が在宅勤務者や自国の混乱から逃れた中南米の富裕層を引き付ける魅力がある。
不動産業界団体フロリダ・リアルターズのチーフエコノミスト、ブラッド・オコナー氏によれば、フロリダ州は裕福な退職者に引き続き人気があり、彼らは現金払いのため住宅ローン金利の高騰を心配する必要がない。オコナー氏は「今も非常に活発な住宅市場だ。州外から買い手の流入が続き、高コストの他の州と比較すると良い取引であることに変わりはない」と主張する。
ただ、変調の兆候もある。フロリダ・リアルターズによると、4月は州全体の一戸建て住宅価格が前年同月比で横ばいとなった。熱狂的なブームがもたらした空前の値上がりを経て、市場は転換点に差し掛かっている。
全てのタイプの住宅を対象とするレッドフィンのデータによれば、今月11日までの4週間で、タンパの住宅価格は前年同期比3.9%、ジャクソンビルは同2%それぞれ下落した。フロリダ州の複数の都市圏では市場に売り出し中の物件が一時28%急増し、売れ残る時間は昨年の同じ時期より長くなっている。この間に価格が8.9%上昇したマイアミですら、勢いが失われつつあるという。
フロリダ州の住宅価格の高騰は、一部の買い手を別の場所に誘う要因にもなっている。タンパを振り出しに住宅を探しているテキサス州のある夫婦は、アラバマ州の物件に傾きつつある。担当不動産エージェントのドナ・デービス氏が明らかにした。損害保険が重要な検討事項という。
米国保険情報協会(III)によると、フロリダ州の保険業界は、壊滅的な悪天候と相次ぐ不正請求の結果、住宅向け損害保険の平均年間保険料が全米平均の4倍近い6000ドルに上昇し危機に陥っている。同州の平均保険料は過去3年で倍になった。
熱狂が冷め、住宅の買い手を見つけるのに時間がかかるようになっても、オコナー氏はフロリダ州で住宅の需要や価格が急激に落ち込むとは予想していない。パンデミック初期に購入した人たちは低金利の住宅ローンを手放して、より条件の悪いローンを組むことに抵抗があり、在庫はタイトな状況が続いている。同氏は「価格の大幅下落についてそれほど心配していない。過去の値崩れと異なり、供給がないためだ」と述べた。
レーン氏は19日、9月の政策決定について判断するのは時期尚早だとし、「9月は9月に判断する」とマドリードで発言。「7月は追加利上げが適切になりそうな様子だ。そこで基本的に9月に見極めることになる。9月はまだ先で、現時点からそれまでにあらゆるデータが出てくる。最新の経済見通しも発表される」と続けた。
リトアニア銀行(中銀)のシムカス総裁は、秋に入ってからも利上げを継続するかどうかの決定を急ぐ必要はないとの認識を示した。
シムカス氏はビリニュスで記者団に対し、「7月の利上げは間違いない」としつつ、「あらゆる不確実さやリスクを考慮すると、9月に利上げが必要かを判断するにはまだ早過ぎる」と語った。「しかしわれわれは、利上げ終了に近いか、近づきつつある」とも指摘した。
さらにカジミール・スロバキア中銀総裁は同中銀のウェブサイトに掲載した声明で、7月の追加利上げは必要だが、9月については「オープンで、どうなるかまだ分からない」と表明。「9月を待って、ECBの全ての政策措置がインフレと経済に及ぼした累積的な影響を分析し、より包括的な見解を打ち出したい」と述べた。
これに対し、シュナーベル氏は最近のタカ派委員の論調と歩調を合わせた。インフレ見通しを懸念し、「引き締め不足よりは引き締め過ぎる方向に間違うべきだ」と主張した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
か
ブリンケン米国務長官は「両国の今後のより良いコミュニケーションと関与が可能になることが私の望みであり期待だ」と語った。「これは米国と中国の国益であり、その意味で世界の利益だ」と述べた。
「ここ数日にその方向へ前向きな一歩を踏み出したと思う」と付け加えた。
習主席は先に、今回のブリンケン氏の訪問中に米中関係の安定化に進展が見られたことは「非常に良い」との認識を示していた。米国務省によると、習主席は「幾つかの点で進展し合意に達した」とも述べたという。
一方でブリンケン氏は「この関係の難しさについて幻想を抱いてはいない」とし、「双方の考えが深く異なり強く相反する問題も多い」と語った。
中国がウクライナの和平に向け「建設的な」役割を果たそうとしていることを歓迎すると習主席に伝えるとともに、中国の民間企業がロシアを支援していることを懸念しているとして中国政府の取り締まり強化を望む考えを伝えた。北朝鮮についても中国が影響力を行使できる立場にあると強調した。
米国は中国の経済発展を抑制しようとしてはいないとも述べた。
中国外務省の声明によると、習主席は「今回の訪中を通じ、長官が中米関係の安定化により前向きな役割を果たすと期待している」と述べた。
習氏は国営中央テレビが投稿した映像で、「中米両国は幾つかの具体的な問題で進展があり、一致を見た。これは非常に良いことだ」と話した。
また国営新華社通信によると、習主席は米国に、合理的で実際的な姿勢を採用し、中国と同じ方向で取り組むよう呼び掛けた。
習主席は、米中両国がさまざまな困難を乗り越え、相互への敬意と平和的共存に基づき共に進む正しい道を見いだせると信じていると語ったという。
中国は常に、健全で安定した対米関係を望んでいると発言。中国は米国に挑戦し、その座を奪おうとはしていないとも述べた。
両国が引き続き、共通の理解にコミットしていくことが必要だと付け加えたという。
一方、ブリンケン氏は米中には両国関係を管理する「義務と責任がある」とのバイデン大統領のメッセージを習氏に伝えた。
ブリンケン氏は、米国はこれにコミットしており、それが米国と中国の国益および世界の利益にかなうと述べたという。
ブリンケン氏が習氏と会談したことで、米中首脳による年内の対面会談の地ならしが進んだことになる。
ブリンケン長官は同日、中国外交トップの王毅共産党政治局員とも会談した。中国外務省によると、王氏はブリンケン長官に対し、今回の訪中は「重大な」岐路で実現したと指摘。「対話か対抗か、協力か衝突かを選択する必要がある」とした上で、米国に対し「中国脅威論」を誇張したり、中国のテクノロジー発展を抑圧したりすることはやめるよう求めた。
米国務省のマシュー・ミラー報道官は声明で、ブリンケン長官と王氏は「率直かつ生産的な協議」を行ったと説明。ブリンケン氏は「競争が衝突に至らないよう、開かれた意思疎通のチャンネルを通じ、米中間の競争を責任ある形で管理する重要性を強調した」という。
北京に到着した18日には秦剛国務委員兼外相とも会談し、米中双方は「率直な」意見交換だったと説明。計7時間半にわたる協議となり、当初の予定時間を大幅に上回ったと当局者は述べた。
米中が人権からテクノロジー、貿易、台湾への武器売却に至るまで多くの問題を巡って対立する中で、ブリンケン氏は中国を訪問。秦外相は18日、台湾問題は中国の「核心的利益の中の核心」であり、米中関係で「最も突出したリスク」だと主張した。
ブリンケン氏の訪中は当初、2月の予定だったが、米国が中国の偵察気球だとする物体が米上空を飛行したことを受け、延期されていた。
中国の国営メディアは19日、ブリンケン長官の訪中を大きく扱っておらず、共産党機関紙・人民日報は米中外相会談を3面の隅で報じた。人民日報系の環球時報では、李強首相による欧州歴訪開始の方が大きく報道されている。
●中東
●中南米・アフリカ
チリ中央銀行は19日、主要政策金利を約20年ぶり高水準に据え置いたが、賛否が分かれる予想外の結果となった。景気低迷の中で、政策立案者は金融緩和サイクルの開始が差し迫っていることを示唆した。
理事会メンバーは賛成3、反対2で、政策金利を5会合連続で11.25%に維持することを決定。理事2人が0.5ポイントの利下げを主張した。
ブルームバーグのエコノミスト調査では、1人を除き全員が金利据え置きを予想。1人は0.25ポイント利下げを予測していた。
●市況日経先物33340、ダウ先34511、債先148.31、米3.823、独2.5130、仏3.028、西3.438、伊4.111、英4.5345、波6.026、原油71.33、銅8,536、ドル円141.94、ユーロドル1.0920
※6/20 8時30分頃
備忘録(2023/6/16-18)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
航空機の長期需要が増加している。米ボーイングと欧州エアバスは18日までに、今後20年間の航空機長期需要予測を発表した。両社ともに2022年時点の長期需要予測から上方修正した。アジアでの需要増がけん引する。航空機の脱炭素への要請が強まっていることを受け、燃費の良い最新世代の機体に置き換わる需要が増えることも寄与する。
仏ガス大手のエア・リキードは2035年をメドに世界の空港で水素を供給する。同年には欧州エアバスが水素を燃料に使った航空機の商業運航を目指している。航空産業は温暖化ガス排出量を50年に実質ゼロにする目標を掲げている。水素航空機も有力な手段となる可能性もあり、先行してインフラを整えて需要の取り込みを狙う。
同社の民間航空機部門の責任者スタン・ディール氏が18日に明らかにした。同社は引き渡しの遅れに招いているサプライヤー問題への対処で前進しているという。
ディール氏は月間38機の生産ペースが「近い将来」実現するとの見通しを示した。業界最大の展示会「パリ航空ショー」に先立ち、パリで発言した。23%の生産拡大はボーイングの収入押し上げにつながる見込み。生産の加速が今月末までに実現するか、あるいは7-9月(第3四半期)になるかについて、ディール氏は言及を控えた。
ボーイングの4-6月(第2四半期)決算は、生産上の問題が同社工場での作業を混乱させたことや787ドリームライナーの引き渡しの遅れが重しとなる見込み。同社にとって737、787とも重要な収益源だ。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
6月の消費者態度指数(速報値)は63.9と、前月の確報値である59.2から4.7ポイント上昇した。ダウ・ジョーンズまとめの市場予測(60.2)を上回り、2月以来、4カ月ぶりの高水準となった。1年先と5年先の物価見通しを示す予想インフレ率もそれぞれ前月から低下した。
消費者態度指数は、過去最低を記録した2022年6月から13.9ポイント改善した。短期的な物価見通しを示す1年先の予想インフレ率は3.3%と前月から0.9ポイント低下し、21年3月以来の低水準となった。5年先の予想は3.0%と前回から0.1ポイント小幅に低下した。
同大の調査分析担当のジョアン・シュー氏は「インフレ圧力が緩和傾向にあり、米連邦政府の債務上限問題も決着したことで、消費者に楽観的な見方が広がった」と指摘した。
「現在の景況」を示す指数が68.0で3.1ポイント、「今後の見通し」が61.3で5.9ポイントそれぞれ前月から上向いた。シュー氏は「消費者心理は上昇基調となっていく可能性があるものの、収入への期待は下がっており、歴史的に見れば依然として低水準で推移している」と解説。消費者の大多数は、今後1年間で経済的に厳しい状況を迫られることを予想しているという。
4月のフィンランド議会選で第1党となった中道右派、国民連合のペッテリ・オルポ党首は15日、新政権で極右「フィン人党」などと連立を組むと表明した。同党は欧州連合(EU)の環境、移民政策に批判的で、加盟国間の議論に影響を与えるかが注目される。
米金融規制当局は16日、銀行の商業用不動産へのエクスポージャーについて、調査を強化していることを明らかにした。
金融安定監視評議会(FSOC)は発表資料で、延滞率は低いものの、オフィスの空室率が上昇傾向にあると指摘。世界金融危機後に設立されたFSOCのメンバーには、財務省、連邦準備制度理事会(FRB)、証券取引委員会(SEC)などのトップが含まれる。
「規制当局はリスク管理を強調し、規制対象金融機関の商業用不動産ローンへのエクスポージャーを調査するなどの措置を講じている」とFSOCは説明した。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、3月の銀行破綻を受けた米国の信用状況の引き締まりが経済成長の重しとなる可能性があると指摘。また、追加の金融引き締めの程度については今後入手するデータに左右されるとの認識を示した。
FRBは16日公表した半期に一度の金融政策報告で、「連邦公開市場委員会(FOMC)は、インフレ率を時間とともに2%へと戻すのに適切と考えられる追加の政策引き締めの程度について、会合ごとに判断する。判断は、入手するデータと、それらが経済活動とインフレの見通しに対して持つ意味合いの全体像を考慮して行われる」と説明。
また「インフレ率を2%に戻すには、経済成長が潜在成長率を一定期間下回ることや、労働市場環境の幾分かの軟化が必要になる可能性が高い」と記した。
金融政策報告は21日に予定される下院金融委員会でのパウエルFRB議長の証言に先立ち、FRBのウェブサイトで公表された。議長は22日にも上院銀行委員会で証言する。
報告でFRBは「銀行セクターでの最近のストレスとそれに関連して生じた預金流出と資金調達コストを巡る懸念が、一部銀行において融資基準・条件の厳格化および厳格化見通しにつながったことを示唆する証拠が存在する」と記した。
その上で、与信の引き締まりは「商業用不動産や中小企業といった銀行の与信に強く依存するセクター」でより大きい可能性があると指摘した。
米財務省は16日発表した外国為替報告書で、中国を含む7カ国・地域が為替の慣行に関する「監視リスト」の対象になっていると明らかにした。一方、貿易相手国に対する為替操作国の認定は見送った。
議会への提出が義務づけられている同報告書は、競争上の優位性を得るために自国通貨レートを人為的に押し下げていると見なされる貿易相手国に圧力をかけることが目的。しかし、昨年は米金融引き締めに伴い、ドルが上昇した。
イエレン米財務長官は同報告書に添付された文書で、「米国の貿易相手国が昨年に行った為替介入の多くは、ドル売りという形だった。これはこうした国の通貨高に作用した」と指摘。「しかし、財務省は各国の通貨慣行や政策設定、および力強く持続可能かつバランスのとれた世界的成長との整合性への警戒を続ける」と表明した。
財務省は2022年12月までの4四半期に、不公平な優位性を得るために「為替レートを操作した主要な米貿易相手国はなかった」と説明。為替操作国に認定される3基準全てを満たした国もなかったと明らかにした。スイスは同基準の1つを超えたとしており、3基準のどれをも満たさなくなるまで「スイスの綿密な分析」を続ける意向だとした。
中国と韓国、ドイツ、マレーシア、シンガポール、スイス、台湾は「為替慣行とマクロ経済政策を注視するに値する」国・地域を対象とする同省の「監視リスト」に指定された。昨年11月に公表された前回の報告書で同リストに指定されていた日本は、今回除外された。
英債券市場は転換点に差し掛かりつつある。英債券利回りが2008年以来の高水準に達する中、今週のインフレ指標発表とイングランド銀行の(英中央銀行)の政策決定がトレーダーの見通しを左右しそうだ。
21日朝から30時間に予定されるこの2つのイベントは、金利上昇の勢いに歯止めをかける可能性がある。インフレ率は1年2カ月ぶりの低水準に減速すると予想されているが、英中銀は賃金上昇圧力を抑制するため、13会合連続の利上げを実施すると投資家は織り込んでいる。
ブラックロックとインベスコ・アセット・マネジメント、ロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメントは既に英国債市場に戻っている。彼らは多くのエコノミストとともに、トレーダーが英中銀の追加利上げを実際に実施される可能性より多く想定していると主張。先進国で最高の債券利回りの一部を確保する機会だと受け止めている。
インベスコのファンドマネジャー、アレクサンドラ・イワノバ氏は、「英中銀があと5回利上げを行うと市場は織り込んでいるが、その可能性は極めて低い」と指摘。「英中銀には市場予想を実行できない多くの制約がある。成長もその一つであり、インフレが構造的な問題であることはほぼ間違いない」と分析した。
英国は主要7カ国(G7)の中で最悪のインフレ問題を抱えているが、電気・天然ガス価格の急落や食品価格の伸び鈍化などにより、見通しは改善しつつある。
エコノミスト予想では5月の消費者物価指数(CPI)上昇率が8.4%と、4月の8.7%から減速したと見込む。英中銀当局者らは今年いっぱいはインフレ率がさらに鈍化すると見ている。
同統計は22日に金利決定を控える金融政策委員会(MPC)の判断に大きくな影響を与える。ブルームバーグ調査の中央値では、政策金利は0.25ポイント引き上げられ08年以来の高水準の4.75%に達する見込み。
モルガン・スタンレーのエコノミスト、ブルーナ・スカリカ氏は、「英中銀の短期的なメッセージは、インフレ率に大きく左右されるだろう」と指摘。0.25ポイント利上げを想定しているが、経済予測を示す8月のMPCを前に「過度にタカ派的なメッセージ」は予想していない。
プラビーン・コラパティ氏らストラテジストは16日のリポートで、投資家は急激な成長減速がより急速な物価圧力の緩和につながると推測し、商品先物相場が織り込む水準よりもエネルギー価格に弱気になる傾向があるかもしれないと分析。ストラテジストらは、こうしたことが物価を押し下げる力は限定的だとした上で、市場はヘルスケアセクターなどの「遅発性のインフレ」の可能性を無視していると説明した。
ストラテジストらは「われわれはこれからインフレが一段と低下すると予想するが、低下のペースに関して市場はわれわれよりもかなり楽観的なようだ」とリポートに記した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
制裁で凍結したロシアの資産をウクライナ支援に使う検討が欧米で進んでいる。欧州連合(EU)は資産が生む利子の活用を検討する。米議会の超党派の議員は資産を没収しウクライナに譲渡する法案を提出した。他国の資産に手を付けるのは国際法の壁がある。50兆円を超える必要額の確保と法順守の両立を探る。
ブリンケン米国務長官は18日、中国の首都・北京で秦剛国務委員兼外相と会談した。対立する両国の高官による意思疎通で偶発的な軍事衝突を防ぐ環境づくりをめざす。2021年1月に発足したバイデン政権の閣僚が訪中するのは初めて。
●中東
イランのライシ大統領が12日から15日にかけてカリブ海のキューバなど中南米3カ国を訪問した。いずれも反米的な政権で知られ、米国からの制裁を受けている。イランも核開発などをめぐり米国と対立を深めており、米国の圧力に対して結束して対抗する狙いがある。
サウジアラビアのファイサル外相は17日、イランの首都テヘランを訪問した。2016年に両国が断交して以来、外相の相手国訪問が明らかになったのは初めて。3月に中国の仲介で外交正常化を発表後、両国は関係改善を加速している。
●中南米・アフリカ
ブラジル中央銀行がインフレ鈍化に苦慮している。表面上の物価上昇率は下落基調にあり、ルラ大統領からの金利引き下げ圧力が強まっているためだ。中銀はインフレの実態は数字ほどは落ち着いていないと判断しており、世界で有数の「タカ派」中銀として警戒を緩めていない。
●市況日経先物33765、ダウ先34604、債先148.32、米3.767、独2.4525、仏2.957、西3.363、伊4.023、英4.4435、波6.055、原油71.44、銅8,581、ドル円141.85、ユーロドル1.0943
※6/16 NY引け値
備忘録(2023/6/15)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
朝発表の5月の小売売上高が個人消費の底堅さを示し、米景気への過度な悲観が薄れた。米長期金利が低下したことも高PER(株価収益率)のハイテク株の買いを誘った。上げ幅は一時500ドルを超えた。
欧州中央銀行(ECB)は15日の理事会で、8会合連続の利上げを決めた。米国も金融引き締め局面にあるが、「人工知能(AI)などの投資テーマがある米国株に欧州株から資金が移ってきている」(インガルズ・アンド・スナイダーのティム・グリスキー氏)との指摘が聞かれた。
米債券市場では、長期金利が前日終値(3.79%)から3.7%台前半に水準を切り下げた。金利の低下で相対的な割高感が薄れたハイテク株に買いが入った。ダウ平均の構成銘柄では、ソフトウエアのマイクロソフトとスマートフォンのアップルが買われ、いずれも上場来高値を更新した。
工業製品・事務用品のスリーエム、建機のキャタピラーなど景気敏感株が上昇。前日に急落した医療保険のユナイテッドヘルス・グループも高かった。一方、スポーツ用品のナイキとクレジットカードのアメリカン・エキスプレスは小幅安だった。
中国の景気刺激策への期待が強く、同国の原油需要が伸びるとの観測につながった。これまで経済が想定ほど回復していないとの懸念が相場の重荷となっていたため、買いが入りやすかった。
中国では5月の石油精製量が前年同月比で大幅に増えたと伝わった。中国人民銀行(中央銀行)は15日、市中銀行に1年間の資金を融通する中期貸出制度(MLF)の金利を引き下げた。中国当局が追加の景気刺激策に動けば「原油需要を押し上げると見込んだ買いが入った」(ストラテジック・エナジー・アンド・エコノミック・リサーチのマイケル・リンチ氏)との声が聞かれた。
欧州中央銀行(ECB)は15日の理事会で8会合連続の利上げを決め、ラガルド総裁は7月も利上げを継続する姿勢を示した。ドルがユーロなどに対して下落。ドル建てで取引される原油先物の値ごろ感からの買いを後押しした。米株式相場が上げ幅を広げ、株式と同様にリスク資産とされる原油先物に買いが波及した面もあった。
ラガルド総裁は記者会見で「まだやるべきことがある」と指摘。利上げ停止は「考えていない」と述べ、次回7月会合も「利上げを続ける可能性が高い」と強調した。
公表した声明文では「一部で緩和の兆しもあるものの、基調的な物価圧力を示す指標は依然として強い」と明記した。一方、銀行が急激な利上げで融資基準の引き締めに動くなか「インフレ率はさらに低下すると予想される」とも説明。今後の利上げペースは「データ次第」で判断する方針を維持する。
今回の理事会では最新の経済・物価見通しもまとめた。インフレ率は23年が5.4%、24年は3.0%と想定した。25年は2.2%と従来から小幅な上振れを見込む。経済成長率は23年が0.9%、24年は1.5%とした。
ユーロ圏は1〜3月期まで2四半期連続のマイナス成長と、機械的に景気後退とみなすテクニカルリセッションに転落した。かねてECBの理事会内部では、景気後退が深刻なレベルに至らなければ、金融引き締めの継続を求める意見がある。物価上昇率が中期的に2%に戻るまで利上げを続ける構えで、景気より物価の安定を優先課題とする。
市場では次回7月の利上げで打ち止めとの見立てが広がっていたが、金融引き締めに積極的なタカ派メンバーは次々回9月の追加利上げも視野に入れ始めた。FRBが年内あと2回の利上げを示唆したことで、ECBの金融引き締めも長引くかが焦点になる。
コア売上高は0.2%増加した。前月は0.6%増だった。個人消費はGDPの約3分の2を占める。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ルビーラ・ファルキ氏はコア売上高について「家計支出は増加を維持するものの、第2四半期に減速することを示唆している」とリポートで指摘した。
NY連銀製造業景況指数はプラス6.6
前月のマイナス31.8から38.4ポイント上昇
ブルームバーグ調査の予想中央値はマイナス15.1
景況指数は前月から38.4ポイント上昇-過去3年で最大
仕入れ価格指数と販売価格指数はともに大幅な低下
今回の統計では、インフレ圧力が引き続き緩和していることも示された。仕入れ価格指数と販売価格指数はともに、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)直前と「実質的に変わらない」水準に下がった。
仕入れ価格指数は約3年ぶりの低水準となり、販売価格指数は2020年4月以来の大幅な低下となった。
新規受注の指数は31.1ポイント上昇してプラス3.1となり、出荷の指数もプラス22に急回復。景況指数の見通しは約1年ぶりの高水準に改善した。
経済省経済事務局は、今年のインフレ率を2.3%と予測。これは2022年の2.8%より低く、3月時点での見通し(2.4%)を若干下回る。24年のインフレ率予測は1.5%で維持した。
経済成長率見通しは23年が1.1%、24年は1.5%で据え置いた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
台湾の中央銀行は15日、2021年以来となる政策金利の据え置きを決めた。政策当局の軸足がインフレ抑制から、低迷する経済の下支えにシフトしていることが示唆された。
政策金利は1.875%に維持され、ブルームバーグが調査したエコノミスト24人のうち20人の予想通りとなった。金利据え置きは21年12月以来。
声明によれば、台湾の今年の経済成長率見通しは1.72%。従来予想の2.21%から引き下げられた。輸出と投資の低迷が理由で、景気の先行きに懸念を示した。
●中東
サウジアラビアのファイサル外相が17日にイランの首都テヘランを訪問すると伝えた。長年対立してきた両国は、3月に中国の仲介で外交正常化を発表。6月6日にはイランが在サウジ大使館を再開するなど、関係改善を進めている。
イランのタスニム通信によると、ファイサル氏はテヘランでイラン政府関係者と会談する見通し。イランのアブドラヒアン外相らと両国関係の強化について協議するとみられる。サウジの在イラン大使館の再開に向けた動きも進む可能性がある。
●中南米・アフリカ
●市況
日経先物33345、ダウ先34682、債先147.94、米3.7420、独2.4945,仏3.009、西3.430、伊4.101、英4.4305、波6.046、原油70.59、銅8,562、ドル円140.28、ユーロドル1.0946
※6/16 9時00分頃
備忘録(2023/6/14)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
英シェルは14日、2030年まで液化天然ガス(LNG)の増産や石油生産量を維持する方針を発表した。化石燃料の世界需要が旺盛なためだが、脱炭素化にとっては逆風になりそうだ。
シェルはカナダなど各地でLNGプラントを建設し、30年まで生産能力を年1100万トン増やす。世界最大の輸入国である日本の需要の約15%に相当する量だ。
シェルの石油生産量は足元で日量約150万バレル。30年までメキシコ湾で海底油田の開発を続けることなどで、この水準を維持する。19年の生産量は日量約190万バレルだったが、投資撤退などで2割削減し、当初掲げていた目標を達成したという。
これまで欧州メジャーは太陽光発電や風力発電、電力の小売事業に進出する一方、化石燃料の生産量を削減すると標榜。米国メジャーに比べて脱炭素に積極的とされてきた。だが、化石燃料の需要の底堅さや利益率の高さ、ウクライナ紛争でエネルギー安全保障への注目が高まったことをきっかけに、方針を修正している。
英BPは2月、30年の石油・天然ガスの生産量を19年比で25%削減すると発表し、従来目標(同40%削減)から削減幅を縮小した。
上流部門を率いてきたワエル・サワン氏が1月にCEOに就任し、転換を図っている。同社は14日、電力事業について「投資先を絞り込む」と表明。数年前まで標榜していた「世界最大の電力会社を目指す」という目標は事実上取り下げている。
欧州の電力・ガスの小売事業からは撤退する方針だ。サワン氏は14日、日本経済新聞などに「太陽光や風力発電は成長分野だが、シェルに強みはないので差別化できない。強みとする事業をより強くすべきだ」と話した。
米国の石油メジャーのエクソンモービルはLNGや海底油田、シェール開発を成長の3本柱に据え、脱炭素の流れのなかでも着実に化石燃料を開発する「逆張り投資」を続けてきた。
金融市場はエクソンの方を評価している。シェルと英BPの株価はウクライナ紛争が始まる直前の22年1月に比べて4割上昇したものの、米エクソンモービルは7割も上昇した。
化石燃料の需要が旺盛なうちに本業に見切りをつければ、収益の柱を失いかねない。もっとも、エネルギー転換の波に乗り遅れれば、経営は行き詰まる。石油業界の経営者は脱炭素化に向けて走り出すタイミングを慎重に見極めようとしている。
サワンCEOは14日、50年までにシェルが「温暖化ガスの排出ゼロ」を達成する目標に変更はないと強調した。二酸化炭素の回収や水素といった化石燃料のノウハウがいかせる新規事業に投資し、来るべきエネルギー転換の波に備える。
●その他産業
欧州委員会は14日、米アルファベット傘下のグーグルにインターネット広告事業で競争法(独占禁止法)違反の疑いがあると警告した。ネット上の広告サービスにおける支配的地位の乱用を指摘した。今後は広告部門の一部売却を要求する可能性がある。
英通信大手ボーダフォン・グループは14日、香港の複合企業の長江和記実業(CKハチソンホールディングス)と、傘下の携帯事業会社の経営統合で合意したと発表した。英国の携帯3位と4位の統合となり、新会社の企業価値は150億ポンド(約2兆7千億円)と、同国市場で最大の事業者が誕生する。
ボーダフォン・グループ傘下で3位のボーダフォンUKと、CKハチソンホールディングス傘下で4位のスリーUKが統合する。誕生する新会社への出資比率はボーダフォンが51%、CKハチソンが49%を見込む。一連の手続きは株主や規制当局の承認を経て2024年末までに完了する計画だ。
新会社の顧客数は2800万件となり、現時点で首位のEEや2位のO2を抜き、英国で最大となる。両社は30年までに年間50億ポンドの統合効果を見込むほか、今後110億ポンドを投じ、高速通信規格「5G」のネットワークを整備する考えだ。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
最近の指標は経済活動が緩やかなペースで拡大し続けていることを示している。ここ数カ月、雇用の増加は堅調で、失業率は低水準にとどまっている。インフレ率は依然として高い水準にある。
米国の銀行システムは健全で回復力がある。家計や企業の信用状況の悪化は、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼすとみられる。これらの影響の度合いは依然として不透明だ。FOMCはインフレリスクを引き続き注視している。
FOMCは最大雇用とインフレ率2%を長期的に達成することを目指している。これらの目標を支えるため、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.0〜5.25%で維持することを決めた。金利据え置きによって、FOMCは今後入ってくる情報と、金融政策への影響を評価することが可能になる。
インフレ率を長期的に2%に戻すのにどの程度の追加の政策が適切であるかを決める際、FOMCは金融政策の累積的な引き締めや、経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する。さらに、以前発表した計画に示されているように、国債、機関債、住宅ローン担保証券の保有量の削減を継続する予定だ。FOMCはインフレを2%目標に戻すことに強く注力している。
金融政策の適切なスタンスを評価する上で、経済指標が見通しに与える影響を引き続き注視する。目標達成を妨げる可能性のあるリスクが出現した場合、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある。労働市場の状況やインフレ圧力とインフレ期待、金融および国際情勢に関する広範な情報を考慮に入れる。
FOMC参加者による最新の経済・金利予測では、中央値で政策金利が年末までに5.6%に上昇すると予想されていることが示された。前回の予測では5.1%だった。今回の予測では、FOMC参加者18人のうち12人が5.5-5.75%の中央値レンジ、ないし同レンジを上回る予想を示し、インフレ抑制のため追加引き締めが必要との考えで大半の当局者が一致していることが示された。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は会合終了後の記者会見で、インフレを鈍化させるためには2023年中に「幾分か」の追加利上げが適切になると、ほぼ全ての政策当局者が予想していると説明。7月にも追加利上げがあり得るかについては明言を避けた上で、7月は会合をしてみないと結果が分からない「ライブ」なFOMC会合になると強調した。
また「インフレ圧力は高い状態が続いており、インフレ率を2%に戻すプロセスにはまだ長い道のりが残されている」と語った。
その上で、これまでの速いペースでの利上げを踏まえ、FOMCは今会合で金利を据え置くことが「賢明と判断した」とし、利上げ停止は政策措置のペース鈍化の継続だと説明した。
「われわれの政策は広い領域をカバーしたが、引き締めの十分な効果はまだ実感されていない」と議長は述べた。
インフレについては、議長自身を含めた当局者はリスクが上方向に傾いているとなお考えていると指摘。ただ対応が少な過ぎるリスクと多過ぎるリスクは「均衡の取れた状況に近づきつつある」と述べた。
利下げはインフレが顕著に鈍化してからのことなので、「2年ほど先」になる可能性が高いとの認識を示した。
政策金利を引き上げるペースと水準に関する記者の質問に対し、「それら2つを別々の変数だと考えた場合、今回のスキップ(利上げの一回見送り)は、いやスキップと呼ぶべきではなく、この決定は理にかなっている」とパウエル議長は述べた。
北米企業の信用リスク指標であるマークイットCDX北米投資適格指数のスプレッドは、ニューヨーク時間14日午後3時18分(日本時間15日午前4時18分)時点で、1.16ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大した。ジャンク級(投機的格付け)社債の指標、マークイットCDX北米ハイイールド指数の価格は、クレジットリスク増大に伴い 0.27セント下落し、102.20セントを付けた。
中国外務省は14日、ブリンケン米国務長官が18〜19日に中国を訪問すると発表した。国務長官の訪中は2018年10月にトランプ前政権のポンペオ氏が訪れて以来、約5年ぶり。2月に米本土へ中国偵察気球が飛来したのを受けて悪化する米中関係の安定をめざす。
2024年の世界の石油需要見通しを日量1億310万バレルと初めて公表し、23年(1億230万バレル)を上回って過去最高となるとの予想を示した。2年連続で需要が供給を上回るが、景気減速で前年比の伸びは鈍化しそうだ。
24年の需要の前年比の増加率は0.8%と、23年の2.5%から縮小する見通しだ。中国やインドの消費拡大が伸びをけん引するものの、金融引き締めによる先進国の景気減速や新型コロナウイルス禍からの反動が一巡する影響があるとみる。
24年の供給も日量1億230万バレルと、23年の1億130万バレルを上回って過去最高を更新すると予想する。前年比の増加率は1.4%から1.0%に鈍化する。主要産油国で構成する石油輸出国機構(OPEC)プラスが24年までの延長を決めた協調減産による減少を、米国のシェールオイルの増産などで補う形だ。
同日には2028年の世界の石油需要見通しを日量1億570万バレルと発表した。25年からの伸び率は1.5%と、それ以前の3年間の4.3%から大きく鈍化する。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに脱炭素技術の導入が進んだ影響が大きい。28年の石油供給見通しも日量1億570万バレルとなり、需給が均衡するとみている。
IEAが14日発表した中期見通しによれば、石油消費の2024年増加率は前の2年間の半分にとどまる。電気自動車(EV)の普及で自動車のガソリン使用が減少することから、今後10年以内に需要は最終的なピークを迎えると予想した。一方で生産能力はなお拡大しており、市場は2028年まで「十分に供給された」状態が続くと指摘した。
IEAは「世界の石油需要は向こう数年に伸びが減速し、ほぼ停止状態になる」と予想。「クリーンエネルギー経済への転換か加速しつつあり、世界石油需要のピークは今後10年以内に訪れる見通しだ」と記した。
IMFは14日、ニュージーランド経済の年次審査のための4条協議終了に当たって声明を発表し、NZ中銀がこれまでに急ピッチで進めたオフィシャル・キャッシュレート(OCR)の引き上げは「適切」で、消費者物価の伸び鈍化に寄与していると評価した。
「ただ、非貿易財のインフレは持続し、OCR引き下げの余地は長期間にわたりほとんどない」と指摘。「不十分な財政再建などによる需要再燃や、目標を上回る水準でのインフレ高止まりなどがあれば、金融政策の一層の引き締めが求められるだろう」と論じた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の地方財政が厳しさを増している。地方政府傘下の投資会社、融資平台が抱える「隠れ債務」の残高は2022年末に1100兆円を超えた。新型コロナウイルス流行前の19年から5割増えた。過剰な借金でインフラ開発などを進めてきたことが要因となる。
出席者によると、当局高官は最近数週間に実業界との協議会を少なくとも6回開催。経済の活性化や民間セクターの信頼回復、不動産業界再生の方法について、考えを求めたという。
これに対し、実業界幹部やエコノミストらは政府に政策修正を急ぐよう促し、計画主導型ではなく一段と市場寄りの成長へのアプローチをとるよう主張したと、関係者らは述べた。
出席者の1人によると、約2週間前に開かれた会合の一つでは、金融政策と財政政策のよりよい協調が必要だとの見解で当局幹部と10人前後の出席者が一致した。景気刺激策が打ち出される場合の時期や内容を巡る不透明性について差し迫った懸念があることも、全ての出席者が認めた。
数回の会合に出席した2人によると、中国経済が重大な局面にあることを当局者らは認め、以前に見せたこともないほど躍起になって解決策を求めていたという。
また、規制当局や他の政府機関の高官は最近北京で実業界幹部と会談し、民間企業や外国の投資家の中国回帰や中国事業拡大を促す方法について助言を仰いだと、事情に詳しい関係者1人が語った。
●中東
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は14日、北京でパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談した。イスラエルとの緊張緩和などを話し合い、中東和平への関与を広げる意向を表明した。中国国営中央テレビ(CCTV)が報じた。
トルコのエルドアン大統領は、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題について、ストックホルムでの反トルコデモを阻止しなければ来月のNATO首脳会議でも加盟不支持の姿勢は変わらないと述べた。13日にアゼルバイジャンから帰国する飛行機の機内で記者団に語った。
エルドアン氏は、ストックホルムで「テロリスト」が抗議している間は、スウェーデンのNATO加盟に前向きに取り組むことはできないとし、14日にアンカラで行うスウェーデン政府関係者との会談でその立場が改めて明らかにされると語った。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物33552、ダウ先34288 、債先148.16、米3.797、独2.4620、仏2.983、西3.421、伊4.073、英4.4180、波6.009、原油68.54、銅8,520、ドル円140.03、ユーロドル1.0842
※6/15 8時50分頃
備忘録(2023/6/13)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のモデルによると、過去のエルニーニョは世界のインフレ率に著しい影響を与え、非エネルギー商品価格の上昇率を3.9ポイント、原油価格については3.5ポイント押し上げた。また、特にブラジルやオーストラリア、インドなどの国内総生産(GDP)伸び率を押し下げる要因となった。
気候変動の加速による異常気象や温暖化と重なり、気象学者が記録を取り始めて以来、世界で最もコストのかかるエルニーニョ周期の舞台が整っている。また、景気縮小でもインフレが高止まりするスタグフレーションといった恐ろしいリスクも加わる。インド準備銀行(中央銀行)はエルニーニョを注意深く見守っていると説明。ペルーは3月、気候変動や天候の影響への対策として今年10億ドル(約1390億円)余りを費やす方針を発表した。
BEのロンドン在勤エコノミスト、バルガビ・サクシベル氏は「世界が高インフレとリセッション(景気後退)のリスクに直面する中、エルニーニョの到来はまさにタイミングが悪い」と指摘。政策介入は需要をコントロールする傾向があるが、エルニーニョは通常、供給に影響を与えるため、「中央銀行にできることは、より限られている」と述べた。
例えばチリでは、エルニーニョが豪雨を誘発し、世界の銅の30%近くを供給する同国鉱山へのアクセスが制限される可能性がある。生産量の減少や出荷の遅れは、コンピューター用チップや自動車、家電製品などに使われる銅の価格に影響を与える恐れがある。
中国では、うだるような暑さが既に家畜に被害を及ぼし、送電網を疲弊させている。昨年の夏には干ばつにより、共産党当局が国内の多くの工場への電力供給を2週間近く停止させた。アップルやテスラなど大手メーカーへの部材供給に支障を来した。当局はこの夏も電力不足を予想している。
影響は何年も続く恐れがある。米ダラス連銀のエコノミストらは2019年、エルニーニョの周期による被害は「生産の伸びに持続的な悪影響を及ぼす公算が大きい 」とし、「所得の軌道を恒久的に変化させる可能性」もあると分析した。
気候研究者らは複合的な経済的影響も発見した。ダートマスの科学者らは、1997-1998年のエルニーニョによって、その後5年間のGDPは5兆7000億ドル失われたと推定。これら科学者のモデルでは、エルニーニョによる今世紀末までのGDP喪失額は約84兆ドルに上ると推定している。
こうしたリスクは熱帯地域や南半球で最も深刻だ。BEのモデルによれば、インドとアルゼンチンではエルニーニョによって年間GDP成長率が0.5ポイント近く押し下げられ、ペルーとオーストラリア、フィリピンでも約0.3ポイント押し下げられる可能性がある。
その影響は、急激な物価上昇でさらに悪化し得る。2000年当時でさえ、国際通貨基金(IMF)は、強いエルニーニョが商品価格のインフレ率を4ポイント押し上げると警告していたが、それは現在の気候変動の影響を考慮する前の数字だ。
気温の上昇は気候現象の影響を増幅させる。海面水温が「低い」ラニーニャの20年から23年までのこの3年間は、15年以前の全てのエルニーニョの年よりも暑かった。世界気象機関(WMO)は、温室効果ガスの蓄積とエルニーニョの再来が重なることで、地球の気温は今後5年間がこれまでで最も高くなり、未知の領域に押し上げられる可能性が98%あると試算している。
英グランサム気候変動環境研究所の上級講師、フリーデリケ・オットー氏は「エルニーニョはより暑い熱波、より深刻な干ばつ、より激しい山火事など、既に経験されている気候変動の影響をさらに悪化させるだけだ」と指摘した。
●その他産業
インテルはアームの技術を使った受託生産を始めるとも発表しており、投資が実現すればさらに関係性が強まることになる。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
石油輸出国機構(OPEC)は13日公表した月報で、2023年の世界の石油需要見通しを事実上据え置いた。年後半の世界経済の減速に懸念を示したが、4カ月連続でほぼ同水準の需要予測を維持した。
月報は23年の世界需要について前年比日量235万バレル増の1億191万バレルと予測した。中国を小幅に上方修正したが欧州は引き下げ、合計で5月時点で見込んでいた1億190万バレルからほぼ変えなかった。
OPECは月報で「高インフレや利上げ、労働市場の逼迫のなかで23年後半の経済成長を巡る不確実性が増している」とした。ロシアのウクライナ侵攻を念頭に「地政学的な紛争がいつどう解決されるかが不透明だ」とも指摘した。
総合、コアともに前年同月比の上昇率が4月を下回った。総合CPIの前年比4%上昇は、2021年3月以来の低い伸びとなった。
コアCPIの前月比は3カ月連続で0.4%上昇。総合CPIの前月比(0.1%上昇)には、ガソリン価格の低下が影響した。
調査会社インフレーション・インサイツ創業者のオメイア・シャリフ社長は「来月からコアCPIが大幅に軟化する公算が大きいことを示唆している点で、かなり良い統計だ」とリポートで指摘。その上で「現状からすると、7月利上げの確率を低下させるほど弱いコアCPIが示されるかどうかは疑わしい」と付け加えた。
5月に前月比で上昇した項目は住居費や中古車、自動車保険など。一方、航空運賃や家庭用調度品などは低下した。
ブルームバーグの計算に基づくと、エネルギーと住宅を除いたサービス価格は前月比0.2%上昇。コロナ禍前に見られた伸び率並みとなった。前年同月比では4.6%上昇と、昨年後半に付けたピークからの鈍化傾向が続いた。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン氏とジョナサン・チャーチ氏は5月CPIについて、「6月のFOMC会合に利上げ見送りの余地を与える。だが、コアインフレの鈍化ペースが緩慢なことは、米金融当局が年内に利下げする可能性がいかに低いかを浮き彫りにしている」と指摘した。
サービス分野の最大項目で総合CPIの約3分の1を占める住居費は、前月比0.6%上昇と、伸びが再び加速した。家賃の高止まりやホテル宿泊費の上昇が全体を押し上げた。
ガソリン価格は同5.6%低下。食品は小幅に上昇。3、4月は低下していた。外食の伸びは加速した。
食品とエネルギーを除いたコアの財価格は0.6%上昇と、2カ月連続で同じ伸び。
CPIと別に発表された統計によれば、インフレ調整後の実質平均時給は5月に前月比0.3%増加と、今年最高の伸び。前年同月比では0.2%増と、この2年余りで初めての増加だった。
英中銀の金融政策発表日程にリンクしたスワップ金利によると、短期金融市場は年内に合計1.25ポイントの追加利上げがあり、政策金利が5.75%に達することを完全に織り込んでいる。さらに来年2月に0.25ポイントの追加利上げがある確率も約50%とみている。この金利見通しは昨年にトラス前政権が財源の裏付けのない大型減税を発表した当時以来の水準だ。
2-4月の失業率は3.8%に低下。予想は4%への上昇だった。ボーナスを除く平均所得の伸びは7.2%に加速し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期以外で過去最高となった。
ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が13日発表した6月の期待指数はマイナス8.5と、前月のマイナス10.7から上昇。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想中央値はマイナス13.5への悪化だった。現状指数は前月から低下した。
ZEWのバンバッハ所長は発表文で「専門家は下期の経済状況の改善を見込んでいない」と述べる一方、景気の落ち込みは「総じて、特段の警戒が必要な状況だとはみられていない」と続けた。
5月の鶏卵価格は前月比で14%近く下落。食肉や乳製品の価格も落ち着き、食品インフレの伸びを抑えた。13日公表された米労働省のデータで明らかになった。米インフレの鈍化は今週の利上げ休止観測の論拠を支えている。
異常気象による自然災害が多発している米国で、大手保険会社が住宅向け損害保険の引き受けから相次ぎ撤退している。山火事の規模が拡大する西部カリフォルニア州では、大手2社が新規の引き受けを停止した。6月にはカナダで大規模な山火事が起きた。気温が高まる夏に各地で火事が頻発する懸念もあり、災害リスクへの対応が焦点になっている。
NFIBが13日発表した5月の中小企業楽観度指数は89.4と、10年ぶりの低水準を記録した前月から0.4ポイント小幅に上昇した。先行き不安は依然として強く、業況や売り上げなどの見通し悪化が引き続き重荷となった。
項目別に見ると、今後6カ月の事業環境について「悪化する」から「改善する」を差し引いた割合は50ポイントを上回った。前月から1ポイント高まり、2022年12月以来の高水準となった。今後3カ月の売り上げ見通しは「減少」が「増加」を21ポイント上回り、22年7月以来の高水準となった。
資金調達環境の見通し悪化も報告された。今後3カ月間の銀行借り入れの厳しさを示す指数は12年12月以来の高水準となった。NFIBは「中小企業の事業者は全体的に不況ムードで、業況の先行きに大きな不安を抱いている。インフレ鈍化の兆しが見え、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを緩和すれば見通しは改善するだろう」と指摘した。
今後3カ月間の新規雇用に関する指数はやや上昇した。「埋められない求人がある」と回答した事業者の割合は44%と前月から1ポイント減少した。
英2年物国債の利回りは一時前日比約0.3%上昇し、財政不安をきっかけとした2022年秋の「トラス・ショック」(約4.8%)を超えて2008年以来の高水準となった。10年物国債の利回りも一時約4.5%と8カ月ぶりの高さとなった。
きっかけは英統計局が発表した4月の平均賃金の前年同期比の伸び率が2カ月連続で加速して6.5%となったことだ。HSBCのクリス・ヘア・シニアエコノミストは「賃金の伸び率が再び跳ね上がってほとんど記録的な数字となった。(中央銀行の政策にとって)明確にタカ派の数字だ」とする。
リフィニティブ集計の市場予想では一時、イングランド銀行が12月まで5会合連続で利上げを進め、そのうちの1回は通常の2倍の利上げ幅の0.5%とする見通しが有力となった。その場合、政策金利は現在の4.5%から6%まで上昇することになる。前日は11月まで4会合連続の0.25%利上げで、政策金利は5.5%に至るとの見通しだった。
4月の英消費者物価指数(CPI)はエネルギーや食品などを除くコア指数が前月比0.6ポイント高い6.8%と1992年3月以降で最高だった。賃上げがさらに幅広い品目の物価上昇を招く「二次的効果」が懸念されている。
●中国・アジア・ロシア・東欧
提案の柱の一つは、不動産市場の下支えだ。住宅ローン残高にかかるコストを引き下げ、政策銀行を通じた再貸し付けの増加で住宅の引き渡しを確実にしたい狙いが当局にはあると、関係者の1人が説明した。
計画は最終決定しておらず、変わる可能性もある。国務院は政策について16日にも協議する可能性があるが、発表や実施の時期は不透明だと、関係者は語った。刺激策の中身に関して、これ以上の詳細は今のところ明らかでない。
マッコーリー・グループの中国経済担当責任者、胡偉俊氏は、中国人民銀行(中央銀行)による13日の金利引き下げは当局の姿勢が景気支援を強化する方向に動いていることを示唆すると指摘。この方向でさまざまな政策がとられるだろうと語った。
経済に対する消費者信頼感と企業の景況感が弱い中で、「流れを変えられるのは政策だけだ」と胡氏は述べ、「13日の金利引き下げは今後数カ月の政策が景気支援寄りになるという明らかなシグナルで、4月以降景気刺激策の段階的な縮小が続いていたのと比べて大きな転換だ」と話した。
中国人民銀行(中央銀行)は13日、短期金融市場における公開市場操作(オペ)の金利を引き下げた。市場関係者の間には、人民銀行が事実上の政策金利と位置づける最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を引き下げる布石との見方が出ており、利下げ観測が強まっている。
●中東
ベネズエラの反米左翼マドゥロ大統領は12日、同国を訪問したイランのライシ大統領と会談、両国は投資拡大など25の協定に署名した。ライシ師は記者会見で、両国の貿易額を約30億ドル(約4200億円)から100億〜200億ドルに引き上げるのが目標だと述べた。
世界有数の産油国である両国は、共に米国による経済制裁を受ける。ライシ師は両国が「共通の敵」と相対しているとして米国を批判、ベネズエラとの絆を強調した。マドゥロ氏はベネズエラとイランが「新たな世界秩序」をつくる準備ができていると述べた。両国は中国やロシア、インドなどで構成する新興5カ国(BRICS)への加盟にも意欲を示している。
イラン外務省報道官は12日、核開発などをめぐって米国から科されている制裁に関し、オマーンを仲介に米側と接触していると明らかにした。イランへの制裁解除を巡っては、欧州連合(EU)の仲介で実施されてきた間接協議が2022年秋以降、行き詰まっている。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物33410、ダウ先34141、債先148.09、米3.822、独2.4480、仏2.961、西3.391、伊4.045、英4.4715、波5.957、原油69.25、銅8,438、ドル円140.19、ユーロドル1.0789
※6/14 8時30分頃
備忘録(2023/6/12)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米地銀への楽観的見方が株式市場で強まりつつあるが、これらの金融機関はかなりの圧力に引き続き直面している。
資産家で著名投資家のジョージ・ソロス氏のファミリーオフィス、ソロス・ファンド・マネジメント(SFM)のドーン・フィッツパトリック最高投資責任者(CIO)は先週開催された「ブルームバーグ・インベスト」会議で、信用収縮について「必ず起きる」と発言。「水面下にもっと多くの問題が存在する」状況で、さらに銀行が破綻すると予想した。
比較的小規模な金融機関や地銀のプレゼンスが最近数年で拡大している商業用不動産分野が、業界にとってさらなる震源になりそうだ。
リモートワークの影響でオフィスの価値が下がる中で、米国の商業用不動産関連の貸し付け約1兆5000億ドル(約209兆円)相当が2025年末より前に返済期限を迎える。その一方で、金利上昇も多くの不動産の価値低下を招いた。
アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は顧客宛てのメールで、「米銀は商業用不動産価格の下落にはるかに脆弱(ぜいじゃく)になった」との見方を示す。
米連邦預金保険公社(FDIC)の預金保険対象の米銀は3月末時点で約4700行だが、スロック氏によると、06年の商業用不動産ローン集中に関するFDICの指針を700行が上回っている。2年前はその半分に届かなかった。FDICはコメントを控えている。
一部の銀行は商業用不動産へのエクスポージャー縮小に既に動く。米地銀持ち株会社パックウェスト・バンコープは流動性の補強を目的に不動産建設ローンの債権ポートフォリオ26億ドル相当を売却することで合意した。
フィッチ・レーティングスのグローバル金融機関リサーチ責任者モンスール・フセイン氏はウェビナーで、小規模金融機関が「エクスポージャーの大部分」を占めると指摘。「CRE(商業用不動産)エクスポージャーは彼らの総資産の14%程度だが、40%を超えることもあり得る」と分析した。
スイス金融大手UBSは12日、クレディ・スイス・グループの買収が完了したと発表した。470兆円の投資資産を抱える大手が誕生し、富裕層向け事業でシェアを伸ばす。ただクレディ・スイスの「負の遺産」の処理を巡る市場の疑念は晴れておらず、米銀との差も大きい。統合作業の巧拙が巨大金融機関の行方を左右する。
●その他産業
米格付け会社S&Pグローバルは12日、日本製鉄の長期格付けを「トリプルB」から「トリプルBプラス」に1段階引き上げたと発表した。世界的に景気減速への懸念が強まるなかでも、構造改革を進めてきた効果と鋼材の値上げで高水準の利益を安定的に稼ぎ出せるとみている。
●決算関連
2023年3〜5月期決算は売上高が前年同期比17%増の138億3700万ドル(約1兆9300億円)だった。クラウドコンピューティングサービスの成長が続き、クラウド基盤とソフトウエアを合計した増収率は54%に達した。
営業利益は8%減の41億4000万ドル、純利益は4%増の33億1900万ドルだった。調整後の1株利益は1ドル67セントで、売上高とともに市場予想を上回った。
クラウド基盤と、統合基幹業務システム(ERP)などクラウド経由で提供するソフトの売上高は54%増の44億ドルだった。特にクラウド基盤の増収率が76%と急拡大した。
従来型事業であるソフトなどのライセンスの売り切りは売上高が15%減、サーバーなどのハードウエアは1%減だった。22年に約283億ドルで買収した医療IT(情報技術)企業、サーナーの事業の売上高は3〜5月期に15億ドルで、年間を通じて横ばいだった。
6〜8月期の見通しについて、売上高は8〜10%増、クラウド事業の増収率は29〜31%になるとの予想を示した。米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や米マイクロソフトなど競合する大手クラウドサービスの伸びが鈍るなか、オラクルは規模が小さいものの、同事業の高い成長率を維持している。
サフラ・キャッツ最高経営責任者(CEO)は同日の決算会見で「支出を抑えながらクラウドでより多くのことをする需要に応えており、いくつかの顧客が競合から当社に移っている」と強調した。8日にはカナダの人工知能(AI)新興企業コーヒアへの出資が明らかになっており、AIの普及によるクラウド需要の伸びを取り込む考えを示した。
●先進国、グローバル、金融市場
欧州中央銀行(ECB)の利上げ長期化観測を積極的に織り込むような新規の経済指標などの発表がなく、ドイツ長期債には押し目買いが優勢となっている。市場は、ECBが15日開く定例理事会で0.25%の利上げを決めると確実視している。
英国の10年債利回りはイングランド銀行(英中央銀行)の利上げ長期化観測が強まり、朝方から売りが優勢だった。英中銀のハスケル金融政策委員が12日のスコットランドメディアへの寄稿文で、「インフレ率は依然高すぎる」、「一段の利上げを排除することはできない」との見解を示した。
上海から南米や中東などに向かう航路のコンテナ船運賃が3月末と比べ2〜3割上昇した。荷動きが堅調なほか、コンテナ船各社による減便で需給が引き締まった。環境規制への対応などで、米国向けなど輸送量の多い主要航路へ船腹が移っている影響もありそうだ。
米国の商業用不動産市場でオフィス物件を中心に逆風が強まっている。三菱地所の米不動産投資子会社、TAリアルティのマネジングパートナー、ジェームズ・ラシディス氏はオフィス市況回復は「2025年まではないかもしれない」とみる。一方で「物流、集合住宅は投資の魅力が増している」と語る。不動産投資で高利回りを上げるカギを聞いた。
オンラインショッピングは割安なパソコンや家電を見つけるのに適した手段だが、食料品の価格は依然として速いペースで上昇している。
アドビのデータによると、米国で5月にオンラインで販売された消費財の価格は前年同月比で2.3%下落。9カ月連続のマイナスとなり、下落率は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来の大きさだった。裁量的な分野の急落が主な理由。
一方、食品やペット用品、パーソナルケアといった必需品では根強いインフレが見られている。オンラインでの食料品価格は前年同月比で8.2%上昇。ただ、インフレのペースは昨年9月に付けたピークの14.3%から和らいでいる。
米消費者の裁量的な購入は過去1年にサービスへとさらにシフトしており、家庭用品への支出が減っている。
家電製品のオンライン価格は5月に前年同月比7.9%下落し、2014年までさかのぼるアドビのデジタル価格データで最大の落ち込みとなった。パソコンのオンライン価格は16.5%、電子機器は12%それぞれ下げた。
アドビ・デジタル価格指数は、オースタン・グールズビー氏がシカゴ連銀総裁に今年就任する以前に、同氏の協力を得て開発された。
利上げの継続で景気が冷え込むとの警戒感は和らいでおり、航空機のボーイングや工業製品・事務用品のスリーエムなど景気敏感株の上昇が目立った。半導体のインテルも大幅高だった。スマートフォンのアップルとソフトウエアのマイクロソフトも上昇した。
半面、石油のシェブロンは下落した。原油先物相場が大幅に下落し、収益への影響が懸念された。プロクター・アンド・ギャンブルや製薬のメルクなどディフェンシブ株も下げた。
NY連銀が12日発表した5月の消費者期待調査によると、1年先のインフレ期待(中央値)は前月から0.3ポイント下げて4.1%と、2021年5月以来の低水準。3年先のインフレ期待は3%、5年先は2.7%となり、共に0.1ポイント上昇した。
今回の調査では、消費者が自身のファイナンスに対して不安を強めていることも示された。1年後の所得の伸びに関する期待は2.8%と、前月の3%から下げた。
またファイナンスが1年前より悪化したと回答した家計の割合が増加。将来の見通しも悪化し、1年後の状況改善を予想した回答は減少した。
与信へのアクセスについては、1年前より厳しさが増したと指摘する消費者が増えた。また、1年後に信用環境が現在より引き締まるとの回答が増加した。
フィラデルフィアで発生した州間高速道路95号線(I-95)の一部崩落について、夏季旅行シーズンが始まる地域に「大規模な混乱」をもたらすとの見方を示した。
同長官は首都ワシントンで12日開催された会合で、運輸省として資金面と技術面で復旧を支援すると述べた。
東海岸を南北に結ぶ州間高速道路としては最も長いI-95では11日、タンクローリーの火災で一部が崩落。ペンシルベニア州のシャピロ知事によると、車線は数カ月閉鎖されると見込まれる。
当局者らによると、崩落した区間は1日当たり約16万台が利用。長距離トラック輸送および通勤の重要なルートの一部となっている。
●中国・アジア・ロシア・東欧
CPI全体の半分近くを占める食品価格の伸び率は5月に2.91%と、4月の3.84%から鈍化した。
ただ、エルニーニョ現象による高温・乾燥がアジア全体の農場での収穫に脅威を与えかねない兆候が出ており、雨不足で今後数カ月のうちに食品価格の上昇圧力が強まるとの懸念が高まっている。
エコノミストは、前年同月も高水準だったベース効果によって5月のインフレ率が鈍化した点も指摘した。
米ゴールドマン・サックスのアナリストは中国の不動産セクターについて、何年にもわたって「持続的な弱さ」に悩まされ、同国の経済成長の足かせになるとの見方を示した。
顧客向けリポートで民間開発業者の資金調達と中小都市の弱さが顕著と分析した。不動産業界への経済・財政的依存を減らすことを政策当局は望んでいるようだと指摘した。
「このため、不動産セクターについては今後数年間『L字型』回復しか想定していない」と記した。
「政策の優先順位は数年にわたる減速を管理することのようだ」とし、2015─18年に低所得の都市部で実施したリノベーション支援措置を再び行うとは予想していないとした。
住宅購入者に対する信用条件の緩和、住宅ローン金利や頭金比率の引き下げ、大都市における住宅の購入・転売制限緩和などの追加措置が打ち出されるだろうとした。
●中東
トルコリラが12日朝方の取引で一時1ドル=23.77リラまで下落し、最安値を更新した。
同国では新たな中央銀行総裁に米ファースト・リパブリック・バンクで共同最高経営責任者(CEO)を務めたハフィゼ・ガイ・エルカン氏が任命され、利上げ観測が浮上しているが、投資家は政策の行方を見守っている。
JPモルガンはエルカン氏の総裁就任後初めて行われる6月の政策決定会合で、政策金利が8.5%から25%へ引き上げられると予想した。必要に応じてより小幅な追加利上げを示唆するフォワードガイダンスを示す可能性があるとした。
イランの最高指導者ハメネイ師は11日、同国の核兵器保有について、西側諸国に「止めることはできない」と述べた。一方で、「宗教上の信念から(保有を)求めていない」とも語った。ロイター通信がイラン国営メディアを引用する形で伝えた。
イランは最近、濃縮ウランの保有量を大幅に増やしているとされる。発言はイランを脅威とみなすイスラエルなどを一段と刺激しそうだ。
ただ、ハメネイ師は、米欧との核合意再建交渉について「われわれの核関連産業の基盤に悪影響を及ぼすのでなければ、問題はない」と指摘。協議継続の意思を示した。また、国際原子力機関(IAEA)の査察への協力も一定の範囲内で続けるべきだという考えを示した。
●中南米・アフリカ
メキシコの与党・国家再生運動(MORENA)は12日までに、2024年6月の大統領選に向けた与党連合の公認候補を9月6日に決定すると発表した。与党連合は民間の調査機関と連携して世論調査を実施し、支持率が高い候補を選ぶ。シェインバウム・メキシコシティ市長など6人の候補が公認を争う見通しだ。
与党連合の選出プロセスに参加するには、閣僚や地方政府のトップを辞任する必要がある。主要候補のシェインバウム氏は12日、首都メキシコシティの市長を16日に辞任すると発表した。もう1人の主要候補であるエブラルド氏は6日、12日に外相を辞任すると表明していた。
メキシコのロペスオブラドール大統領は約6割の支持率を保っている。メキシコでは大統領の再選が禁じられているため、与党連合は後継候補を選んで政権の維持を狙う。野党は汚職のイメージで人気が低迷しており、大統領選では与党連合の候補が当選する可能性が高い。
●市況日経先物32635、ダウ先34068、債先148.13、米3.736、独2.3550、仏2.891、西3.309、伊4.043、英4.3805、波5.913、原油67.39、銅8,289、ドル円139.55、ユーロドル1.0767
※6/13 8時55分頃
備忘録(2023/6/9-11)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病新薬レカネマブ(商品名レケンビ)は9日、米食品医薬品局(FDA)の諮問委員会による支持を得た。保険適用の拡大につながるFDA完全承認への道が開かれた。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストによると、FDAの完全承認が得られれば、レカネマブの米国での売上高は年間20億ドル(約2800億円)を超える見通し。FDAは諮問委の勧告に従う義務はないが、その通りの決定を下すことが多い。
●その他産業
穀物メジャーの米ブンゲはグレンコア傘下の同業バイテラの買収で合意に近づいている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。合併が実現すれば米カーギルやアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)に対抗し得る巨大な穀物取引企業が誕生する。
非公表情報を理由に関係者が匿名で明らかにしたところでは、買収合意は12日ないし13日にも発表される見込み。ブンゲの株主は、合併で誕生する新会社の株式を過半数保有することになるという。関係者の1人はブンゲの支払いの約70%が同社の株式になると話した。
関係者によると、最終的な決定はまだ下されておらず、取引の時期と構造はなお変わる可能性がある。ブルームバーグは5月に両社が合併交渉を進めていると報じていた。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
昨年3月に現行の利上げキャンペーンを開始した米金融当局について、来週の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で1年3カ月ぶりに引き上げを停止すると、ブルームバーグが調査したエコノミストの大多数は予想している。
底堅い景気とインフレ高止まりが続く状況にあって、当局は13、14両日の会合でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5-5.25%に維持した後、7月は一段と難しい判断を迫られるものの、12月まで金利を据え置くと見込まれている。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は先月、引き締めキャンペーンの一時停止を示唆。これまでの利上げの遅延効果や一連の地銀経営破綻が与信に与える影響について、一息入れて検証したい考えを示していた。
FOMCが14日の会合後に公表する最新の四半期経済予測では、ドット・プロット(金利予測分布図)で示される年末時点のFF金利見通しが中央値で5.1%と、3月の前回予測と一致すると、エコノミストは見込んでいる。
金融市場はこれに対し、金融当局が7月に0.25ポイントの追加利上げに踏み切った後、12月に同規模の利下げを行う可能性を織り込んでいる。調査はエコノミスト46人を対象に、今月2-7日に実施した。
ノムラ・セキュリティーズの雨宮愛知、ジェレミー・シュワルツ、ジェイコブ・マイヤーの3氏は調査への回答で、「6月のFOMC会合では、利上げは選択しないものの、四半期経済予測を通じて追加利上げ見通しのシグナルを発する形で、タカ派的一時停止が予想される」と指摘した。
その上で、「インフレ圧力の緩和や雇用情勢の鈍化、与信減少に伴う逆風などを受けて、FOMCは後になって利上げ再開を決めることがなくなり、今回のサイクルでは結局、5月の利上げが最後のものになるとわれわれは予測している」と論じた。
米金融当局がピーク金利に達したかどうかを巡っては、エコノミストの間で意見が分かれており、約3分の1は7月に0.25ポイントの追加利上げがあると予想する。
ネーションワイド・ライフ・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は「予想よりも力強い内容のデータに直面して、FOMCの主要な当局者は、6月には利上げを一回見送る方向に傾いているものの、7月の引き締めの可能性を排除しないと示唆している。当局のガイダンスは曖昧で市場に混乱を与えている」とコメントした。
資産家イーロン・マスク氏が米ツイッターのオフィス賃料を支払うことを拒否したことも影響し、ゴールドマン・サックス・グループの商業用不動産ローンの延滞が1-3月(第1四半期)に急増したと、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が報じた。
ツイッターが昨年11月に賃料の支払いを停止したほか、マスク氏は従業員に対し、家賃の支払いを再開したり、滞納分を負担したりする考えはないと伝えたと、FTが訴訟を引用して伝えた。賃料未払いを巡り、ツイッターを提訴しているコロンビア・プロパティーは2月にローンの不履行に至った。
FTが届け出に基づいて報じたところでは、ゴールドマンの商業用不動産向け融資の支払い延滞額は第1四半期に612%増の8億4000万ドル(約1170億円)。米銀行業界全体では30%増の120億ドル超だったという。
<債券> 米債利回りが上昇した。米連邦準備理事会(FRB)は来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、積極利上げを一時停止するものの、高インフレに対する警戒感からタカ派姿勢を維持するとの見方が背景。
カナダの5月の雇用者数が予想外に減少したことを受け、米債利回りは一時的に低下した。今週はオーストラリアとカナダの中央銀行が予想外の利上げを行ったため、今回の雇用統計は米市場を動揺させた。
<株式> 小幅続伸。電気自動車(EV)大手テスラが上昇し、相場を押し上げたものの、5月米消費者物価指数(CPI)の発表や米連邦公開市場委員会(FOMC)を来週に控え警戒感が強く、S&P総合500種はこの日の高値から押し戻されて取引を終えた。
ディスカウント大手ターゲットは3.26%安。シティが投資判断を「ニュートラル」とし、売上高が今年さらに減少する可能性があるという見通しを示したことを嫌気した。
<米原油先物> エネルギー需要先行き懸念や対ユーロでのドル高に押され、続落した。米国産標準油種WTIの中心限月7月物は前日清算値(終値に相当)比1.12ドル(1.57%)安の1バレル=70.17ドルだった。8月物は1.11ドル安の70.33ドル。
ロシア第2位の銀行VTBのアンドレイ・コスティン最高経営責任者(CEO)は、中国人民元が上昇し、ウクライナ問題でロシアを屈服させようとした西側の試みの失敗の危険性が世界で認識される中、米ドルの支配の終わりは近いとの考えを示した。
コスティン氏はモスクワにあるVTBのオフィスビルでロイターのインタビューに応じ、中国が世界最大の経済大国になりつつある中、危機により世界経済に大きな変化がもたされ、グローバリゼーションは弱体化すると予想。世界は新たな冷戦に入ったと考えているかとの質問に対し、冷戦よりも危険な「熱い戦争」に突入していると述べた。
また、多くの国が米ドルとユーロ以外の通貨を決済に利用し、中国が通貨規制の撤廃に向けて動いていることから、米国と欧州連合(EU)は数千億ドルに上るロシアの公的資産の凍結により損失を被ると予想。「米ドルの支配という長い歴史的な時代は終わりを告げようとしている」と述べた。
ウクライナを巡っては「すでに熱い戦争に突入している」とし、「西側からこれほど多くの兵器が供与され、多くの西側の軍事顧問らが関わっているため『冷たい』戦争ではない。冷戦時代よりも悪く、極めて憂慮すべき状況にある」と述べた。
コスティン氏はオーストラリアや英国などに駐在経験がある元外交官。ソ連崩壊直後に銀行業に転じた。米政府は2018年に同氏を制裁対象に指定している。
世界的な供給増加と需要不振を背景に原油価格予測を再び引き下げた。同行は原油見通しについて最も強気な銀行の一つ。
同行は北海ブレント原油12月見通しを1バレル=86ドルとし、従来の95ドルから下方修正した。以前は100ドルとの強気の予測を掲げていたが、その後の半年間で原油見通しを3回引き下げたことになる。ブレント8月限は9日に74.79ドルだった。
ゴールドマンによれば、ロシアやイラン、ベネズエラといった制裁を受けている国からの供給増が原油価格予測引き下げの主な理由。特にロシアの供給量は西側諸国からの制裁にもかかわらず「ほぼ完全に回復」した。
ジェフ・カリー、カラム・ブルース両氏らアナリストはリポートで、金利高が価格上昇の「持続的な逆風」になりそうだとし、リセッション(景気後退)懸念も価格の重しになりつつあると指摘した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ロシア中央銀行は9日、1─5月の経常黒字は前年同期比81.6%減の228億ドルとなったと発表した。輸出とエネルギー収入の減少が重しになった。
1─5月の石油・ガス収入は前年同期比49.6%減。財務省はウラル原油の価格低下と天然ガスの輸出量の減少が響いたとしている。
2023年の経常黒字について、中銀は660億ドル、経済省は866億ドルと予測。いずれも22年の2270億ドルから大幅な減少となる。
中国人民銀行(中央銀行)の易綱総裁は第2・四半期の成長率について、ベース効果などにより前年同期比で「比較的高い」伸びになるとの見方を示した。消費者物価指数(CPI)の上昇率は12月までに1%を超えると予想した。
7日に上海を訪れた際の発言が9日に公表された。人民銀の声明によると、中国経済は現在新型コロナウイルスの影響からの回復途上で、企業のバランスシートは修復されつつあると述べた。
「第2・四半期の国内総生産(GDP)の前年比伸び率は(主にベース効果により)比較的高くなる見込みだ」とし「CPIは下半期に徐々に持ち直し、12月までには前年比1%を超えると予想される」と述べ語った。
輸出の急速な悪化や高い若年失業率、不動産市場の低迷、内需の不振など、中国経済はさまざまな課題に直面している。しかし易氏は、中国は今年の成長目標を達成する自信と能力があると述べた。
人民銀の声明は、引き続き穏健な金融政策を維持しながらカウンターシクリカルな調整を強化、実体経済を支援し、金融の安定を守るとしている。
易氏はまた国境を越えた貿易や投資で企業が人民元を使うことをより容易にすると表明した。
●中東
ゴールドマンは、経済の安定には為替相場の大規模調整が必要だと指摘。現時点で金融政策の枠組みに関する指針は欠けているが、「完全にオーソドックス(伝統的)な政策当局者」が為替相場の調整を容認し、国内金利を安定させる水準にまでレポ金利を引き上げるだろうとした。
ゴールドマンのクレメント・グラフ氏は顧客向けノートで「これは、オーソドックスな政策当局者が現行の預金金利水準である40%まで金利を引き上げる可能性を示している」と説明した。
その上で、為替相場とインフレ期待が安定すれば金利は速やかに引き下げられ、年末までに25%にまで下がる可能性があるとした。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物32290、ダウ先33909、債先148.09、米3.743、独2.3735、仏2.915、西3.348、伊4.104、英4.2825、波5.893、原油70.35、銅8,338、ドル円139.39、ユーロドル1.0749
※6/9 NY引け値
備忘録(2023/6/8)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
中央銀行による政策金利の引き上げが続く中で、欧州地域の銀行の業績が堅調に推移している。主要銀行22行の2023年1~3月期決算は純利益が前年同期比84%の増益と、11年以降で2四半期連続の過去最高を更新した。利ざやの改善が収益を押し上げた。欧州景気の先行きの不透明感を前に貸し出しは慎重姿勢だが、厳しい規制の下でリストラを続けてきた効果も出てきている。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
1〜3月期のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)は2四半期連続のマイナス成長に沈んだ。急激なインフレは峠を越えたものの、ドイツが景気後退に陥るなど先行きは見通しにくい。欧州中央銀行(ECB)は物価と景気の安定両立へ難しい判断を迫られる。
欧州連合(EU)加盟27カ国のうち20カ国が参加するユーロ圏の1〜3月期の実質域内総生産(GDP)は改定値で前期比0.1%減となった。年率換算でマイナス0.4%。マイナス成長は2四半期連続で機械的に景気後退とみなすテクニカルリセッションとなった。
EU統計局が8日発表した。市場予想は前期比ゼロ%で速報値は0.1%増だった。資源高による所得流出など急激なインフレが重荷になり、ウクライナ侵攻の影響が色濃く出た。2四半期連続の明確なマイナス成長は、新型コロナウイルスの感染が広がった2020年4〜6月期以来だ。
国別のGDPはドイツが前期比0.3%減で、フランスが0.2%増と明暗が分かれた。南欧のイタリアは0.6%増でスペインは0.5%増。EU全体では0.1%増だった。
特に目立ったのが欧州の経済大国ドイツの低迷だ。ユーロ圏全体と同様にテクニカルリセッションに転落した。個人消費が冷え込み、値上がりが続く食料品や衣料品で買い控えが広がった。
ショルツ政権は高騰する光熱費を抑えるため、家計や企業の負担軽減策を段階的に導入してきた。巨額の財政措置を講じてもプラス成長に届かなかった。
先行きは緩やかな景気持ち直しが続く見込みだ。欧州委員会は23年のユーロ圏の実質成長率を1.1%と想定する。5月の消費者物価指数は伸び率が前年同月比で6.1%と2カ月ぶりに鈍化した。ドイツは6.3%、フランスは6.0%で両国とも峠は越えた。スペインは2.9%と2%台に低下する国もじわり増える。
2カ国の中央銀行による今週のサプライズ利上げを受けて世界の債券は値下がりしている。トレーダーは中銀のインフレとの闘いが終わりには程遠いという現実を再認識させられた。
期間が短めの米国債の利回りは3月以来の高水準に近い。オーストラリアでは利回りが10年余りで最高に達した。カナダ中銀がオーストラリア準備銀行に続いて追加利上げで市場を驚かせたことで、国債売りが再燃した。
ロベコのマルチアセット戦略責任者、コリン・グラハム氏は、豪中銀が「エコノミスト予想を覆して今週追加利上げを決めたことは欧州中央銀行(ECB)と米連邦準備制度、日本銀行、イングランド銀行への圧力を高めるかもしれない」と述べた。米国については「7月の予想が利下げから利上げにシフトした」とコメントした。
ブラックロックのグローバルファンダメンタル債券戦略責任者、マリリン・ワトソン氏は「来週に向けてすべての関心は消費者物価指数(CPI)に集まる」と指摘。「インフレはなおもFOMCの目標を大きく上回っている。利上げ停止であれ、一回休みであれ、言い方は異なっても、今後はもう利上げがないという約束ができあがったわけではない」と述べた。ブルームバーグテレビジョンに語った。
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ダイアナ・イオバネル氏は「インフレが予想以上に根強いと分かったため、従来の想定よりも高く、かつ長い引き締め政策を予想している」とリポートで説明した。
ソシエテ・ジェネラルなど何社かは米政策金利が既にピークに達した可能性があるとみているが、これは欧州については全く当てはまらない。トレーダーらは向こう3カ月の間にあと0.5ポイントのECBによる利上げを織り込んでいる。
ソシエテの債券調査責任者、ガイ・スティア氏は「ECBはインフレ圧力という点でも金利という点でも出遅れている。利上げを続けるしかない」とブルームバーグテレビジョンに語った。
シティグループのエコノミストは、「他国の金融政策は、早まった利上げ一時停止がもたらす経済的な危険性と、インフレの再燃が『サプライズ』利上げを誘発する可能性の両方を示している」と指摘。「FOMCが利上げを停止すれば、米国も同様の経験をするリスクがあり」、「政策金利が十分に引き締め的ではないことが明らかになれば、(FOMCを含め)中銀は近い将来利上げで対応するかもしれない」と予想した。
シティの基本ケースは、FOMCが来週0.25ポイントの追加利上げを行うことを示している。
サンタンデールUSキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は統計発表後にリポートで、「メモリアルデーの祝日のために通常より営業日が短かったことを反映している。今回の急増は何らかのシグナルというよりノイズであったとの疑念を抱かせるはずだ」と指摘。「来週発表されるデータを見てから結論を導き出したいと強く思っている」と記した。
今回の統計は労働市場がおおむね堅調なものの、冷え込みの兆候も見え始めたことを浮き彫りにした。米企業が発表したレイオフの件数は、今年最初の5カ月で既に昨年通年の規模を上回った。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「新規失業保険申請件数が急増し、2021年10月以来の高水準となったことは、われわれの分析と整合的だ。われわれはレイオフ急増の可能性に注意を促していた。失業率は米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の予想中央値で年末までに4.5%となっているが、その水準に達する可能性はますます高くなっている」と述べた。
フィッツパトリック氏は、ニューヨークで開催された「ブルームバーグ・インベスト」会議で、「水面下により多くの問題が存在する」と語った。
幾つかの米地銀が破綻に至る過程で、預金者は一斉に資金を引き出し、「大き過ぎてつぶせない」と考えられる大手金融機関に移した。
一連の経営破綻に伴い、金融規制・監督当局が公的管理下に置くかなりの資産ポートフォリオ売却に動いたことが、テクニカルな環境を助長する方向に働いたと同氏は述べた。
フィッツパトリック氏はその一方で、エージェンシーMBS(不動産ローン担保証券)について、他にはない興味深い投資機会との認識を示した。
S&Pグローバル・レーティングはスウェーデンの商業用不動産保有大手SBBを再び格下げし、「BB-」とした。同社は5月にジャンク級に転落していたが、さらなる格下げで資金調達がますます困難になる。
S&Pはまた、SBBを一段の格下げ方向で見直す「ウォッチ・ネガティブ」に設定した。格付けが下がるほど借り入れコストは高くなり、投資適格級への復活はさらに遠のく。同社は約80億ドル(約1兆1200億円)の債務を抱える。
S&Pは発表資料で「借り換えと流動性に高いリスクが見られる。過去数週間に投資家の信頼感もさらに低下した」と説明。SBBが市場の信頼を回復できず資産売却もできない場合、さらに格下げする可能性があると付け加えた。
金利上昇でビジネスモデルが通用しなくなり、SBB株は2021年終盤に付けたピークから90%余り下落した。超低金利時代に負債を膨らませたのは同社だけではないが、同社はスウェーデンやその他の国の不動産会社の苦境の象徴になった。
数日前に交代したレイブ・シネス新最高経営責任者(CEO)は保有不動産の投げ売りはしないと表明し、再度のライツイシュー(新株予約権無償割当)も否定したが、金利上昇を受けてスウェーデンの商業用不動産取引は低迷。売り手と買い手が価格で同意できず、今年これまでの取引は前年比65%減で10年ぶり低水準となっている。
朝発表の米雇用指標が労働需給の緩和を意識させた。米債券相場では長期金利が低下し、日米金利差縮小をみた円買い・ドル売りが優勢だった。
朝方発表の週間の新規失業保険申請件数は26万1000件と、ダウ・ジョーンズ通信がまとめた市場予想(23万5000件)を上回り、2021年10月以来の高水準となった。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの懸念が後退し、米長期金利が低下。日米の金利差縮小観測から、円買い・ドル売りが進んだ。
8日発表の経済指標が労働市場の軟化を示したと受け止められた。米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締め長期化への懸念が和らぎ、金利が低下したことで株式の買い安心感が広がった。
今週に入ってオーストラリアやカナダの中央銀行が相次いで利上げを決めたことからFRBの金融引き締め継続への警戒が高まっていたが、ひとまず落ち着いた。
顧客情報管理のセールスフォースやスマートフォンのアップルが上昇した。航空機のボーイングや半導体のインテルも買われた。半面、化学のダウやクレジットカードのビザは下落した。
ロンドンを拠点とする中東メディアが米国とイランが米のイランに対する経済制裁の緩和で暫定的な合意に近づいていると報じた。イランがウラン濃縮などを一部停止するのと引き換えに、イランに最大日量100万バレルの原油輸出の再開を認める内容だという。原油供給が増える可能性が意識され、相場の重荷となった。
原油相場は上げる場面もあった。サウジアラビアの7月からの追加減産が目先の需給の引き締まりにつながるとの見方を手がかりとした買いが入った。
暖冬だった欧州では天然ガス在庫が積み上がり、先物価格も比較的安定しているが、今後は気温次第で変わり得ると指摘した。また、LNG供給側のトラブルも時折発生していることから、「何が起こるか分からない」として警戒感を示した。
ガス価格は、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などで昨年夏に高騰した後、暖冬で消費が抑制され大きく下落している。ただ、ゼロコロナ政策を撤回した中国の需要増やLNG生産設備のトラブルが厳冬と重なるなどすれば、状況は一変する恐れがある。
世界の主要中央銀行によるバランスシートの圧縮がもたらす影響は近く表面化し始め、市場から大規模な流動性を吸収し、リスク資産に打撃を与えるだけでなく、債券利回りとドルを押し上げることになる。仏銀BNPパリバが予想した。
世界の流動性が10%減少した場合、株式相場は4%の下落、ドルは2%以上の上昇、米10年債利回りは当初10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を超える伸びとなるだろうと、BNPのストラテジストがリポートで述べた。
米金融政策当局はここ1年ほど、利上げだけでなく量的引き締め(QT)も行ってきた。欧州中央銀行(ECB)もQTを進めている。ただ米国での債務上限を巡る問題など複数の要因が重なり、典型的な流動性引き揚げは見られていない。
同行マクロ戦略グローバル責任者のサム・リントンブラウン氏らはリポートで、こうした圧縮は資産に影響を及ぼすまでに時差があり、過去を見ると市場へ影響が完全に浸透するまでには約10週間かかると述べた。
リントンブラウン氏らの見通しによれば、9月末までに流動性は最大9%減少し、年末には最大11%減少する。さらに極端なケースでは世界の流動性が最大16%減少する可能性もある。
同氏は「世界の流動性はさまざまな資産にとって重要なけん引役だ」と述べ、「現在の利上げ局面の経済への影響は広く想定されていたよりも小さい。その主な理由の一つは、世界的な流動性拡大である可能性が高い」と指摘した。
しかし、同氏のチームは「その風向きは変わろうとしている」として、「流動性の引き締めは資産に大きな影響を及ぼす可能性がある」とみている。
まず国債利回りが上昇し、借り入れコストの上昇が他の資産に打撃を与えた後で、安全資産への投資に絡む需要から米国債利回りは低下する公算が大きいとBNPは分析した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
米国と中国の地政学的な緊張の高まりや景気減速を背景に投資家は中国に対する資産配分を見直す必要がある。米ブラックロックのフィリップ・ヒルデブラント副会長が指摘した。
ヒルデブラント氏は8日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、人口動態の変化を要因として、中国の成長率は2030年末までにわずか3%に減速する可能性があると述べた。また、対米関係の変化も投資家に追加リスクの織り込みを促しており、中国資産の配分縮小につながる可能性がある。
同氏は「これまで『中国の配分を引き上げる必要がある』という見方が当たり前だったかもしれないが、今は別な計算が働いている」と述べ、「中国への配分をどうするのか、われわれは見直す必要がある」と続けた。
リセッション(景気後退)リスクや地政学的緊張が世界の市場を揺るがす中で、投資家は資本の投下先を判断する難しさに直面している。米国の消費減速を中国の支出回復が相殺するとの期待もまだ現実にはなっていない。
ヒルデブラント氏は「中国は景気循環的および構造的両方の理由で減速している」と指摘。「短期的には、この種の分断の問題を考える必要があるが、それに加え人口動態による大きな問題があり、この先数年間の中国の成長がさらに低下することは避けられない」との見方を示した。
中国の国有大手銀行は8日、一斉に預金金利を引き下げた。預金コストの軽減で収益力を高める狙いがある。景気の回復力に陰りが見えるなか、大手銀の預金金利の引き下げが中国人民銀行(中央銀行)による追加利下げにつながるとの観測が広がった。
●中東
ロシアのプーチン大統領とサウジアラビアの実力者ムハンマド皇太子は7日、電話協議した。ロシアのタス通信によると、両者は原油など世界のエネルギー市場の安定を確保するための課題について検討した。2国間貿易や投資の拡大についても話し合った。
●中南米・アフリカ
5月の消費者物価指数は、前年同月と比べて5.84%上昇した。2021年8月以来、1年9カ月ぶりに6%を下回った。メキシコではインフレの減速が続いており、市場ではメキシコ銀行(中央銀行)が当面は政策金利を据え置くという見方が出ている。
●市況日経先物31875、ダウ先33830、債先148.00、米3.719、独2.4155、仏2.950、西3.398、伊4.178、英4.2860、波5.958、原油70.89、銅8,367、ドル円138.81、ユーロドル1.0785
※6/9 8時50分頃
備忘録(2023/6/7)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
FDAは9日に外部アドバイザーとの諮問委員会を予定している。これを控えて7日に掲示された説明文書は、治験の結果、レカネマブに「一貫して好ましい」治療効果がみられたと示唆している。治療に伴うリスクについては、「処方情報に記載することが可能であり、従来式の承認を否定するものではないようだ」という。
諮問委は治験結果に基づき、アルツハイマー病治療薬としてレカネマブを使用する是非を採決する。採決結果はFDAによる決定を拘束しない。レカネマブはアルツハイマー病の進行を遅らせることが示された最初の治療薬で、諮問委の支持とFDAの承認を得られるとアナリストはみている。
米当局は先週、レカネマブのようなアルツハイマー病治療薬が規制当局の承認を受け次第、メディケイドの適用対象になることを確認した。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、マーク・エンゲルスゲルド氏とサム・ファゼリ氏によれば、レカネマブは現在、必要な人々に速やかに薬を届けるための迅速承認のみ受けているが、米国での年間売上は20億ドル(約2800億円)を超える可能性があるという。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
カナダ銀行(中央銀行)は7日、政策金利である翌日物金利の誘導目標を4月時点から0.25%引き上げ、4.75%にしたと発表した。量的引き締めも継続する。カナダ経済は底堅く、労働需給の逼迫が続く。サービス価格を中心に物価が高止まりするリスクを考慮し、利上げでインフレ抑制を優先する。
市場予想の大半は据え置きだったため、予想外の利上げとなった。カナダ銀は3月、主要7カ国(G7)の中銀で初めて高インフレに対応する継続利上げを停止した。4月も据え置いており、利上げは3会合ぶりとなる。
カナダ銀は声明文で利上げを決めた理由について「需給の均衡を取り戻し、インフレ率を持続的に2%目標に戻すには、今の金融政策(環境)は十分に引き締まっていない」とつづった。今後の方針について「インフレ動向と見通しを評価し、特に過剰な需要や期待インフレ率、賃金の伸びなどがインフレ目標と合うかをみる」と述べ、明言を避けた。
経済協力開発機構(OECD)は7日公表した最新の経済見通しで、持続的インフレと主要国・地域の中央銀行による景気抑制的な金融政策が影響し、今年と来年の世界経済の回復ペースが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以前の勢いを取り戻せず、ロシアのウクライナ侵攻に伴うショックからの回復も弱いと予測した。
OECDによれば、今年の世界経済の成長率は2.7%、来年は2.9%とパンデミック前7年間の平均(3.4%)にいずれも届かない。今年は3月時点の2.6%から上方修正した。日本は今年が1.3%と3月の1.4%から引き下げ、来年は1.1%に据え置いた。米国(1.6%、1%)とユーロ圏(0.9%、1.5%)、中国(5.4%、5.1%)も相対的に緩慢な回復を予想する。
OECDのチーフエコノミスト、クレア・ロンバルデリ氏は「グローバル経済は難局を脱しつつあるが、力強い持続可能な成長達成の道のりは長い。各国・地域の政策担当者は、一連の負の衝撃が世界経済に及ぼす影響を和らげる必要があり、その過程で複雑な課題に取り組まなければならない」との認識を明らかにした。
同氏は記者会見で、「もちろん中銀は警戒を怠らず、双方向のリスクに留意しなければならない」とした上で、「成長に必要以上の大きな影響を与えるほど引き締め過ぎてはならないことは明らかだ。これは中銀にとって微妙なバランスだが、現時点では、インフレが持続的に目標水準に戻る証拠が得られるまで中銀は景気抑制的な金融政策を維持する必要があるというのがわれわれの見解だ。総合インフレ率とコアインフレ率の両方について話している」と語った。
世界銀行も6日発表した経済予測で、世界経済が不安定な状態に置かれており、利上げ効果の浸透に伴い、年内にかなりの成長減速に向かうと警告した。
金利スワップ市場では、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合とリンクしたレートが5.33%に上昇。現在の実効フェデラルファンド(FF)金利5.08%を25bp上回る。6月13-14日のFOMCを控えて、6月のスワップ金利は9bpの引き締めを示唆。FOMCはこれまで連続で実施してきた利上げをいったん停止するとの見方に、トレーダーらが傾いていることがうかがわれる。
一方で12月FOMCにリンクしたレートは9bp上昇の5.08%と、現行の実効金利水準と一致した。7月レートを25bp程度下回っており、年末までに0.25ポイントの利下げが予想されていることを意味する。
ブラックロックのグローバルファンダメンタル債券戦略責任者、マリリン・ワトソン氏は「来週に向けてすべての関心は消費者物価指数(CPI)に集まる」と指摘。「インフレはなおもFOMCの目標を大きく上回っている。利上げ停止であれ、一回休みであれ、言い方は異なっても、今後はもう利上げがないという約束ができあがったわけではない」と述べた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
ブリンケン米国務長官は6日、サウジアラビア西部ジッダで同国の実力者ムハンマド皇太子と会談した。国務省によると、ブリンケン氏は両国の関係を強化するにはサウジの人権状況を改善する必要があると強調した。
●中南米・アフリカ
7日の外国為替市場でトルコ・リラが1年余りで最大の下落となり最安値を更新した。複数のトレーダーによると、国営銀行がリラ防衛のためのドル売りを停止した。新政権がコスト負担の大きい為替介入を断念する兆候とみられている。
リラは一時約7%安となり、1ドル=23.1734リラを付けた。イスタンブール時間午前11時45分(日本時間午後5時45分)時点では6.5%安で、12営業日続落している。
エルドアン大統領が新政権の財務相に起用した元メリルリンチのストラテジストのシムシェキ元副首相は中央銀行に対し、国営銀行を通じた為替市場への介入を緩和するよう要請したと、事情に詳しい関係者が7日、ブルームバーグに明らかにした。部外秘の内容だとして関係者は匿名を要請した。
関係者の1人によると、1日のリラの下落率が6%を超える場合には、財務省はドル売りの再開を容認した。中銀と財務省はコメントを控えた。
トルコ大統領選挙の決選投票が行われた5月28日以降にリラはドルに対して13%余り下落している。
トルコの国営銀行は外為市場への介入についてコメントしないが、2020年に元中央銀行総裁が国有銀行は規制の枠内で取引を行い、為替市場での活動を続ける可能性があると述べていた。
リラが下落する一方で、他のトルコ市場は前向きな政策転換への期待を示唆している。7日の市場で主要株価指数のイスタンブール100指数は一時4%を超える上げとなり、選挙後の上昇率を21%に伸ばし年初来の下げを反転させた。ドル建てトルコ国債も上げを拡大。JPモルガン・チェースの指数によると、米国債に対して投資家がドル建てトルコ国債に要求する上乗せ利回りは、今週に入り44ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)縮小した。
トルコ中央銀行の次回政策会合は今月22日の予定。中銀総裁交代を巡る臆測が高まる中で、利上げが予想されている。カブジュオール現総裁はエルドアン大統領とともに低金利を志向し、インフレ率が24年ぶりの高水準に上昇する中でも在職中に主要政策金利を19%から8.5%に引き下げた。
ゴールドマン・サックス・グループのアナリストは3日、リラへの圧力が増すことを理由にドルの対リラ相場予想を引き上げ、1年内に1ドル=28リラと予想し従来の22リラから修正した。
オプション市場では現在、3カ月以内に1ドル=25リラまでリラ安が進む可能性を約80%、27リラを付ける可能性を60%とそれぞれ織り込んでいる。
日本のリテール投資家の動きが7日のリラ急落の一因かもしれないと、フジトミ証券の山口哲也チーフテクニカルアナリストが述べていた。
備忘録(2023/6/6)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米製薬大手メルクは6日、米インフレ抑制法(IRA)によって公的医療保険に薬価交渉の権限が与えられることをめぐり、米国政府を提訴した。同社は交渉を通じて治療薬が大幅に値下げされることを懸念しており、IRAの薬価交渉に関連する部分が米憲法違反だと主張している。
メルクが問題視しているのはIRAのもとで、2026年から高齢者向け公的医療保険「メディケア」が薬の価格交渉をできるようになることだ。交渉に応じない企業に対する罰則も科されるようになる。メディケアが設定した価格は民間保険会社の多くが参考にしており、事実上の標準薬価になっている。
メルクは「これは交渉ではなく、恐喝に等しい」と訴え、「正当な補償なしに私有財産を公共のために徴収しない」と定める米国憲法修正第5条の違反だと主張している。交渉後に設定された価格が「公平である」とする文書に署名する必要があるのは言論の自由を保障する米国憲法修正第1条も違反しているという。
今後、薬価交渉の対象にメルクの糖尿病治療薬「ジャヌビア」やがん免疫薬「キイトルーダ」が含まれる可能性が高く、同社は「強制的に治療薬を25〜60%安く売ることになる」と批判している。キイトルーダはメルクの22年12月期の売上高の35%を占め、価格減は収益に大きな影響を及ぼしかねない。
これまで製薬会社と直接交渉ができなかった米政府は医療費の削減をめざしている。米ホワイトハウスの分析では、約6400万人いるメディケア加入者のうち、500万〜700万人が普段使う処方薬のコストを低減できるという。
9月に価格交渉の対象となる薬の第1弾が発表される見通し。だが、製薬業界から薬価交渉をめぐる不満の声は後を絶えず、今後はメルク以外の製薬会社も訴訟を起こすと予想されている。
●その他産業
主要な半導体メーカーで構成する世界半導体市場統計(WSTS)は6日、2023年の半導体市場が前年比10.3%減の5150億ドル(約71兆円)になるとの見通しを発表した。従来予想(4.1%減)からマイナス幅を広げた。スマートフォンやパソコンなど民生品向けの需要が低迷している。
WSTSは昨年11月の予想で23年は前年比4.1%減の5565億ドルとしていた。しかし、世界的なインフレなどで個人消費は振るわず「下押し要因が当面は続く」(WSTS)と見ている。
落ち込み幅が大きいのは市場の2割に相当するメモリーで、22年比17%減から35.2%減まで引き下げた。地域別では中国などを含むアジア市場が7.5%減から15.1%減となったほか、微増を見込んでいた米国市場も9.1%減に見直した。
WSTSは同日、24年の市場見通しも公開した。23年比11.8%増の5759億ドルで22年実績(5740億ドル)を上回ると予想している。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は6日の理事会で、政策金利を0.25%上げ、年4.10%にすると決定した。利上げは2会合連続で、上げ幅は5月の前回会合と同じだった。4%台になるのは2012年4月以来、11年2カ月ぶり。インフレ率を目標の2〜3%に近づけるには追加利上げが必要と判断した。
世界経済は不安定な状況にあり、著しい成長減速に向かっていると、世界銀行が指摘した。急激な利上げで活動が打撃を受け、低所得国の脆弱(ぜいじゃく)性が表面化するとしている。
世銀は6日、最新の世界経済見通し(GEP)を公表。世界経済について、2023年早期においては予想を上回る底堅さを見せたとしつつ、金融引き締めと、パンデミックに伴う根強い悪影響、ロシアのウクライナ侵攻が相まって長期的な低迷に向かうと予想した。
2023年の世界成長率見通しについては、最近のモメンタムの強まりを背景に2.1%と、1月時点での予想(1.7%)から上方修正。一方で24年については2.4%と、従来予想(2.7%)から下方修正した。見通しへのリスクは依然下方向だとしている。
世銀は「世界の成長は今年下期に顕著に減速し、低迷は24年も続くと見込まれる」と指摘。「より広範な銀行混乱発生や金融引き締めの可能性があり、そうなれば世界の成長は一段と鈍化しかねない」と記した。
借り入れコスト上昇による影響は「次第に明白になりつつある」と世銀は指摘。信用状況が一段と制限される中、影響は時間差を伴って今後さらに拡大すると予想した。
新興国市場と途上国の見通しは特に「憂慮すべき」状況にあることが分析で示されていると、世銀は説明。米金融当局のタカ派姿勢によってもたらされる利上げにより、そうした国々が金融危機に見舞われる可能性は顕著に高まっているとした。信用状況に制約が生じていることから、4分の1は債券市場へのアクセスを事実上失っているとも記した。
金融危機の波及リスクを軽減する上で、中央銀行は見通しの急激な変化を回避するため「可能な限り早期に、そして明確に」意図を伝達する必要があると、世銀は指摘した。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は6日の政策決定会合で、政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートの誘導目標を3.85%から4.1%に引き上げることを決定した。4月にいったん停止後、5月に続き0.25ポイントの利上げを継続し、インフレ高止まりや労働コスト上昇を背景に追加引き締めもあり得ると示唆した。
今回の追加利上げに伴い、オフィシャル・キャッシュレートの誘導目標は2012年4月以降で最も高くなった。昨年5月以降の利上げ幅は4ポイントに達した。
豪中銀の予想外の決定を受け、豪ドルの対米ドル相場は一時0.8%上昇し、1豪ドル=0.6671米ドル。豪州株の指標S&P/ASX200指数は下落し、1.2%安。豪州3年債利回りは一時11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上げ、 3.67%を付けた。
ロウ総裁は声明で、「インフレ率はピークを過ぎたが、なお高過ぎる」とした上で、「適正な時間枠でインフレ率を確実に目標に戻すには、金融政策の一定の追加引き締めが必要かもしれない」との認識を示した。
さらに「特に経済の生産余力が限られ、失業率がなお非常に低い状況を考えれば、高インフレ持続の期待が物価と賃金の両方にとって、より大幅な押し上げ要因になるリスクを政策委員会は引き続き警戒する」と説明した。
ゴールドマン・サックスの豪州担当チーフエコノミスト、アンドルー・ボーク氏は「インフレの上振れリスクが今回の利上げ決定に作用したことは明らかだ」と指摘した。7月にもう1回の0.25ポイント引き締めが決まり、ターミナルレート(利上げの最終到達点)は4.35%になると同氏は予測している。
銀行セクターのストレスが和らいだことや、米債務上限適用停止についての超党派の合意を踏まえ、予想を変更した。
米ニューヨーク連銀は6日、5月のグローバル・サプライチェーン・プレッシャー・インデックス(GSCPI)がマイナス1.71と、4月改定値のマイナス1.35から低下したと発表した。
世界的な高インフレの主因であった供給網への圧力が一段と弱まったことを示している。
医療保険のユナイテッドヘルス・グループや製薬のメルクなど、ディフェンシブ株が売られた。主力中型機「787」に不具合が見つかり、出荷が遅れているとの報道で航空機のボーイングも下げた。前日に上場来高値を更新したスマートフォンのアップルは小幅続落で終えた。株価が高値圏で推移するソフトウエアのマイクロソフトにも利益確定売りが出た。
主要ハイテク株の上昇に出遅れてきた化学のダウや建機のキャタピラーなどに値ごろ感からの買いが入り、相場の下値を支えた。米連邦政府の債務上限問題が前週に決着し、「投資家心理は悪くない」(シーミス・トレーディングのジョゼフ・サルッジ氏)との声があった。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国当局は、ここ1年弱で少なくとも2回目となる預金金利の引き下げを国内の大手銀行に要請した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。景気の押し上げに向けた取り組みを強化する。
匿名を条件に話した関係者によると、中国銀行や中国工商銀行、交通銀行など国有銀行が先週、さまざまな預金の金利を引き下げるよう勧告を受けた。要求払い預金の金利は5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、3年物と5年物の預金は少なくとも10bp引き下げる内容で、中国人民銀行(中央銀行)の市場金利決定自律メカニズムを通じた要請だったという。
関係者によれば、銀行側は今回の求めに対する評価を進めており、今週にも金利の調整に踏み切る可能性がある。この要請は強制ではないという。大手銀行は現在、要求払い預金で年率0.25%、3年物と5年物の預金金利をそれぞれ2.6%、2.65%に設定している。
人民銀はすぐにコメントしなかった。預金金利は昨年9月にも引き下げられていた。
預金金利が引き下げられれば、銀行の資金調達コストは下がり、時間の経過とともに貸出金利の引き下げも可能になる。消費者や企業にとっては借り入れの妙味が増す一方、預金金利の低下で銀行に現金を寝かせておく魅力は落ちることになる。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況日経先物32552、ダウ先33629、債先148.06、米3.665、独2.3670、仏2.902、西3.345、伊4.141、英4.2325、波5.937、原油71.77、銅8,324、ドル円139.60、ユーロドル1.0695
※6/7 8時35分頃
備忘録(2023/6/5)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米当局が策定中の新規制案で、大手米銀は平均20%の資本要件引き上げに直面する可能性がある。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。今年に入り小規模銀行が相次ぎ破綻し、業界の財務体質の強化を促す声が強まっている。
WSJが関係者を匿名で引用して報じたところによれば、資本要件の改定は6月にも提案される可能性があり、具体的な引き上げ幅は銀行の活動内容による。大規模なトレーディング事業を抱える金融機関は特に大きな影響を受ける見通しで、手数料収入への依存度が高い銀行も大幅な資本増強を求められる可能性があるという。
米連邦準備制度理事会(FRB)のバー副議長(銀行監督担当)は以前、米当局者が銀行の資本要件を見直しており、国際的な資本規制「バーゼル3」に沿った厳格な規制を導入する意向を示していた。
WSJによれば、新規制は資産1000億ドル(約14兆円)以上の銀行が対象となる可能性がある。米規制当局が現在最も厳格な規制の対象としているのは資産2500億ドル以上の銀行で、新規制ではこの基準を引き下げることになる。
●その他産業
●決算関連
業績悪化には小売業界で深刻化する万引き被害の影響も指摘されている。
●先進国、グローバル、金融市場
保守与党「法と正義(PiS)」による強権的な政治に抗議する大規模なデモが行われた。ポーランド元首相で中道野党「市民プラットフォーム」を率いるトゥスク欧州連合(EU)前大統領が呼びかけ、同党は推計で約50万人が参加したと明らかにした。
ポーランドメディアは警察の非公式情報として、参加者は約15万人だったと報じた。同国では秋に総選挙を控えている。欧米メディアによると、デモ参加者は「自由」や「民主主義」などと書かれた横断幕を掲げて行進した。
PiSが率いる現政権は、ロシアのウクライナ侵攻後は対ロ強硬姿勢で支持を集めたが、一方でメディア規制や、LGBTなど性的少数者に対する差別的な政策などへの反発が高まっている。
5月末にはロシアの影響を受けた個人を調査する委員会を設置する法律が成立。調査対象は2007年から22年で、影響を受けたと判断された政治家らは最大10年間、公職に就くことが禁じられる。総選挙でトゥスク氏ら野党候補者の立候補を妨げる狙いがあるとみられ、EUや米国も懸念を表明した。
欧州の天然ガス先物が5日に20%上昇。液化天然ガス(LNG)市場逼迫(ひっぱく)の兆しや潜在的なアジア需要拡大見通しを背景に、今年3月以来の大幅高となった。
欧州の天然ガス指標価格であるオランダ期近物は一時20%高のメガワット時当たり28.46ユーロ。先週は2年ぶりの低水準を記録していた。英国の天然ガス先物は一時21%余り上昇した。
欧州の在庫は通常水準より多い。例年より暖冬だったことや記録的なLNG輸入、鈍い需要が背景にある。
そうした中でもトレーダーは、ロシアからの供給が一段と減少する可能性やLNGを巡るアジアとの争奪戦など根強いリスクを意識している。
原油市場の影響もある。サウジアラビアは4日、原油相場てこ入れのため7月に追加減産を行うと表明した。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、パトリシオ・アルバレス氏は「原油相場が大きく動いた後に欧州ガス価格が上昇したことは、相場上昇が加速する可能性を示す兆しだ」と述べた。
2023年5月の米非製造業(サービス業)景況感指数は前月から1.6ポイント低い50.3となった。好不況の分かれ目となる50をかろうじて上回ったが、22年12月分以来5カ月ぶりの低水準。新規受注は鈍り、受注残も縮小するなど需要面の弱さが目立った。
同指数は22年12月に節目の50を下回った後、23年1月、2月分は55超まで回復していた。以降、再び低下基調にある。5月分は52近辺を見込んでいた市場予想を下回った。
項目別では新規受注が3.2ポイント低下し、52.9になった。受注状況は宿泊・飲食サービス、運輸・倉庫など11業種で改善し、個人消費の底堅さを示唆する一方、改善業種数は前月分の16よりも減った。
企業が支払うコストを示す価格指数は3.4ポイント低い56.2となった。エネルギー価格の低下を反映している可能性がある。雇用環境を映す指数は1.6ポイント低下して49.2になった。インフレ圧力の根本にある労働市場の需給逼迫が和らいでいる状況を示唆した。
前週末に701ドル高と急伸した反動で、主力株の一部に利益確定売りが広がった。景況感指標の悪化も景気懸念につながり、相場の重荷だった。スマートフォンのアップルは上場来高値を更新したが、下落して終えた。
アップルは下落して終えた。年次開発者会議「WWDC」が始まる前は買いが先行し、上場来高値を更新した。だが、新製品であるゴーグル型ヘッドマウントディスプレーが発表されると次第に売りが優勢となった。映画・娯楽のウォルト・ディズニーはアップルの新製品で動画配信サービスを提供することが明らかとなり、上昇に転じた。
半導体のインテル、工業製品・事務用品のスリーエム、スポーツ用品のナイキが下げた。一方、バイオ製薬のアムジェン、小売りのウォルマートが上昇した。
ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は3営業日ぶりに反落した。前週末比11.337ポイント(0.1%)安の1万3229.429で終えた。半導体のエヌビディア、交流サイトのメタプラットフォームズが売られた。
WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の7月物は前週末比0.41ドル(0.6%)高の1バレル72.15ドルで取引を終えた。4日に主要産油国が協調減産の延長を決め、サウジアラビアは7月に独自減産すると表明した。供給減による需給の引き締まりを見込んだ買いが優勢になった。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国で構成する「OPECプラス」は4日に閣僚級会合を開いた。OPECの一部が5月から実行中の自主減産を2024年末まで延長すると決めた。サウジは単独で7月に日量100万バレルの減産を追加し、場合によっては延長する。4日に一時は1バレル75.06ドルと期近物としてほぼ1カ月ぶりの高値を付けた。
今回のOPECプラスの会合を巡っては、24年にアラブ首長国連邦(UAE)が増産する方針やアフリカ勢の不満なども伝わり、加盟国の足並みの乱れもみられた。市場では「今後の一段の減産の可能性は低そうだ」(オアンダのエドワード・モヤ氏)との見方があった。
プライベートクレジット市場はPE事業者に対応する形で始まったが、世界金融危機の後で銀行が後退すると急成長し、その規模は2015年から約3倍拡大し1兆5000億ドル(約209兆円)となった。
ただ、以前に比べて各社の資金調達はより困難になりつつある。
プライベートクレジット業界の運用資産額は25年には2兆ドルに達すると従来予想されていたが、調査会社プレキンは需要が冷え込みつつある兆しがあるとして市場規模の見通しを1兆8000億ドルに下方修正した。
ブラックロックのプライベートクレジット事業で欧州ミドルマーケット債責任者、ステファン・カロン氏は電話インタビューで「資金調達は前よりも減速している。投資家が一段と慎重になっていることが主な理由だ。資産運用会社にさらなるデューデリジェンス(適正評価)を求める声などが高まっている」と指摘した。
プレキンのリポートによると、23年1-3月に33のファンドが調達した資金は319億ドルと、前年同期から約10%減少。一方、同四半期に閉鎖したファンドは少なくとも17年以降で最少となった。
米サンフランシスコ有数の大型ホテル2件に関連したローンの履行が停止された。リモート勤務によるオフィス不動産の低迷や、治安問題に揺れる同市中心部に追い打ちとなった。
客室1921室を抱えるヒルトン・サンフランシスコ・ユニオン・スクエアと、パーク55サンフランシスコ(同1024室)を所有するパーク・ホテルズ&リゾーツは、7億2500万ドル(約1020億円)のローンについてサービサー(債権回収会社)と今後の対応を検討していると、5日の文書で明らかにした。いずれは両ホテルを手放す見通しだという。
トーマス・ボルティモア最高経営責任者(CEO)は「サンフランシスコ復活への道は依然として視界不良で、大きな問題を抱えて長引いているとの見方をわれわれは今まで以上に強めた」と文書で説明。「記録的なオフィス空室率や治安の問題、他都市より低いオフィス復帰率、2027末まで大規模な会合が予想ほど決まっていないこと」を挙げた。
ホテル業界にとって、この数年は波乱の時期だった。特に新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)は大きな打撃となった。レジャー目的の旅行需要は堅調に回復している一方、ビジネス目的の出張は戻りが鈍く、都市部の大型ホテルへの圧迫が強まっている。
特にサンフランシスコのホテルはダメージが大きい。リモート勤務が普及したハイテク企業では、オフィススペースが縮小され、オフィス占有率が急降下。スタートアップ企業は資金調達に不安を感じている。市の財政も悪化し、住民の過半数がサンフランシスコの将来を不安に思っている。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は5日、インフレ圧力はなお根強く、それに対処するため金利を一段と引き上げる必要があるとの認識を示した。
利上げの累積効果がまだすべて実体化していない中で、基調的なインフレがピークに達したことを示す明確な証拠は見られないとの考えを改めて強調。食料品のインフレは高止まりしていると述べた。
ラガルド氏は欧州議会で「物価圧力は依然強い」とし、今後の金融政策決定では「中期で2%のインフレ目標に速やかに戻すため、政策金利を十分に景気抑制的な水準へと確実に導き、必要な限りその水準に据え置く」と表明した。
足元の銀行問題を巡っては「ユーロ圏の金融安定はこれまでのところ堅固であることが明らかになっているものの、広範な指標を勘案して潜在リスクを引き続き精査していく」と指摘。「域内の金融安定と物価安定との間にトレードオフは見られない」とした。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
イラン外務省のナセル・カナニ報道官は5日、今週中にサウジアラビアにある在外公館を再開すると発表した。
報道官によると、首都リヤドのイラン大使館や第二の都市ジッダの総領事館などを、6日以降順次正式に再開する。
両国関係は2016年ごろから悪化していたが、3月に中国を仲介役として外交関係の正常化と大使館の再開で合意していた。
●中南米・アフリカ
メキシコで4日に投開票された中部メキシコ州の知事選で、与党・国家再生運動(MORENA)のデルフィナ・ゴメス氏の当選が確実になった。90年以上続いてきた野党・制度的革命党(PRI)の地盤を与党が破った。左派与党が2024年の大統領選に向けてさらに勢いを増しそうだ。
メキシコ州は有権者数が約1270万人とメキシコの州の中で最も多い。同州知事は大統領への登竜門の一つとされている。
4日には北部コアウイラ州の知事選も投開票された。こちらは野党連合として出馬したPRIのマノロ・ヒメネス氏の当選が確実となった。開票率が70%時点でヒメネス氏が57%と他の候補を引き離した。
今回の州知事選は24年の大統領選の前哨戦とされる。メキシコ州知事選で当選したゴメス氏はロペスオブラドール大統領のもとで教育相を務めた。野党の地盤を破った今回の結果は、現政権に対する信認の高さを改めて示した。一方、野党連合にとってはPRIの長年の地盤で1勝1敗という結果は痛手となる。
経済紙フィナンシエロの世論調査では、MORENAの大統領選の候補としてシェインバウム・メキシコシティ市長の支持率が34%とエブラルド外相の18%を上回る。メキシコ州知事選での勝利を受け、与党内の大統領候補選びでロペスオブラドール氏と関係が近いシェインバウム氏がさらに優勢になりそうだ。
PRIは国民行動党(PAN)、民主革命党(PRD)と野党連合を組んでいる。今回のメキシコ州とコアウイラ州の知事選にはPRIから候補を出した。メキシコ州で敗れたPRIは野党連合内での発言力が下がり、大統領選の候補選びでPANが影響力を増す可能性がある。
PRIは長く政権を担った実績があり、PANも2000年から2代連続で大統領を輩出している。野党連合は今回の選挙後に大統領選の候補の選出方法を決める見通しだ。PANのクリール下院議長やテジェス上院議員らの名前が挙がる。
24年には大統領選のほかに複数の州知事選や上下院議会選も同時に行われる。今回の州知事選の結果を受け、24年のほかの選挙でも左派与党のMORENAが勢力を拡大する可能性がある。
メキシコの現政権は最低賃金の引き上げや社会保障の拡充に取り組んでおり、低所得者層を中心に人気が高い。一方でPRIやPANは汚職のイメージが強い。フィナンシエロの世論調査によると、4月時点でMORENA率いる与党連合の支持率は54%と野党連合の34%を大きく上回った。
中南米では18年にメキシコで現政権が発足して以降、ブラジルやチリなど主要国で左派政権の誕生が相次いでいる。24年のメキシコ大統領選で与党候補が当選すれば、中南米の左派傾斜が続くことになる。
●市況日経先物32045、ダウ先33590、債先147.83、米3.690、独2.3815、仏2.924、西3.378、伊4.069、英4.2595、波5.930、原油71.92、銅8,331、ドル円139.47、ユーロドル1.0709
※6/6 8時30分頃
備忘録(2023/6/2-4)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米政府債務の上限を停止する法案が議会を通過して債務不履行(デフォルト)が土壇場で回避され、金融市場では安堵が広がる。不安心理を映す指数は約3年4カ月ぶりの水準に低下した。政府の資金繰りで綱渡りが続いた余波が今後、銀行システムへの負荷を高めかねないとの警戒感もくすぶる。
デフォルトという最悪の事態は避けられたが、金融市場では早くも別の問題を指摘する声が相次ぐ。今後は、底をつきかけた政府資金を穴埋めするため短期債の大量発行が確実視されている。
個人投資家などが短期債投資に動けば銀行預金を取り崩すことになり「銀行システムから資金を吸い出しかねない」(モルガン・スタンレー)。3月以降に相次いだ米地銀破綻の直接の原因は預金の取り付けだった。足元では預金減少圧力は和らいでいるが、短期債の大量発行に伴い再燃する懸念が指摘される。
格付け会社の動向もリスク要因だ。米ブルームバーグ通信は2日、大手格付け会社フィッチ・レーティングスが中期の米財政予測や今回の混乱がもたらした影響の分析が終わるまで、米国の格付け見通し「ネガティブ」を改めない見通しだと伝えた。
フィッチは合意前の5月24日、格付け見通しを「ネガティブ」とし、最上位とする現在の格付けを引き下げる可能性があると警告していた。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は4日、ウィーンで閣僚級会合を開き原油生産計画を協議する。原油相場は世界景気の減速懸念から下落基調で、下支えのため追加減産に踏み込むかが焦点となる。
サウジアラビアやイラク、アラブ首長国連邦(UAE)などOPECの一部は5月、合計で世界需要の1%強に当たる日量116万バレルの自主減産を始めたばかり。このため今回会合は現状を維持するとの見方が広がったが、追加減産の可能性もにわかに浮上した。ロイター通信は2日、最大で100万バレルの追加減産が検討課題になっているとするOPECプラス関係者の話を伝えた。
国際指標の北海ブレント原油先物は1バレル76ドル台と、世界景気減速への懸念から4月の高値より1割以上安い。サウジなどが自主減産を4月初めに表明した直後に急騰したが、その押し上げ効果が短期間で帳消しになった。
閣僚級会合に先立つ5月23日、OPECを主導するサウジのアブドルアジズ・エネルギー相は「4月に(減産発表で)痛い思いをしただろう」と述べ、原油価格の下落で利益を得る「空売り」を仕掛ける投機筋に警告していた。ただイラクやUAEなどは5月に相次いで追加減産はないとの見通しを表明。始めたばかりの自主減産の効果を見極めるとの観測の根拠になっていた。
国際通貨基金(IMF)の推計では、今年のサウジの財政収支を均衡させる原油価格は1バレル80.9㌦、イラクは75.8㌦。UAEのように50ドル台の国もあるが、下落基調が長引くのはどの産油国にも望ましくない。
原油需要の回復が見通しにくくなっている事情もある。5月には最大の原油消費国、米国の政府債務上限問題が難航し、金融市場が一時動揺した。第2位の消費国、中国は5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が48.8と2カ月連続で好調・不調の境目である50を割り込んだ。中国経済の回復が鈍いとの見方が広がった。
半面、国際エネルギー機関(IEA)は5月の月報で、OPECプラスが現行の減産を続ける場合でも世界の原油需給は4〜6月に供給不足に転じ、年末にかけて不足が拡大すると予測している。在庫水準が低下すれば、価格が上がりやすくなる。こうしたなかでさらに追加減産を決めれば米国など消費国が反発する可能性がある。
OPECプラスはこれまでも相場下支えのために供給を絞っており、2022年10月に200万バレルの協調減産を決めた。これとは別にウクライナ侵攻で西側の制裁を受けるロシアが23年2月に50万バレルの減産を表明していた。サウジなどの自主減産116万バレルと合わせると減産幅は366万バレルと、世界需要の4%弱に当たる。
米連邦準備理事会(FRB)は13〜14日に開く次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げの一時停止を議論する見通しだ。5月の雇用統計発表後も市場では一時停止の予想が主流のままだが、統計の解釈は分かれる。今後は年内の政策金利の「到達点」が焦点で、市場では水準引き上げも警戒されている。
米投資ファンド、ローンスター創業者のジョン・グレイケン会長は日本経済新聞の取材に対し、米景気は後退局面に入る可能性が高いとして「不良債権の投資機会が出てくる」と述べた。日本市場は割安感や安定性から投資先としての魅力が増しているといい、投資拡大に向けて人員を増やす方針も明らかにした。
ダウ平均の構成銘柄では、スポーツ用品のナイキ、建機のキャタピラーや化学のダウが高い。一方、通信のベライゾン・コミュニケーションズ、医療保険のユナイテッドヘルス・グループが下げている。
米連邦債務上限の適用を停止する法案にバイデン大統領が3日署名し、同法が成立した。これを受けて米財務省は減少していた手元資金を拡充するため、大量の債券を発行しようとしている。
銀行にある預金がこの購入に充てられ、流動性がさらに低下する見込みだが、金融機関は市場に準備ができていないと警告している。
これによる負の衝撃は米債務上限を巡る前回の危機の後遺症をはるかに上回る恐れがある。米連邦準備制度の量的引き締め(QT)プログラムが既に銀行の準備金を減少させている上に、資産運用会社はリセッション(景気後退)に備えて現金を抱え込んでいるからだ。
JPモルガン・チェースのストラテジスト、ニコラオス・パニギリツオグル氏は、米国債の洪水がQTの影響に加わり、株式と債券を合わせた今年のパフォーマンスを約5%押し下げるだろうと予想した。
シティグループのマクロストラテジストらも同様の見方を示し、大規模な流動性低下後の2カ月にS&P500種株価指数が平均で5.4%下落し高利回り債のスプレッドは37ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大し得ると試算した。
5日に始まる米国債発行は既に縮小しているマネーサプライを吸い上げ、全ての資産クラスに影響する見込みだ。JPモルガンは広義の流動性指標が2023年初めの約25兆ドル(約3498兆円)から1兆1000億ドル減少すると見積もっている。
パニギリツオグル氏は「これは大幅な流動性縮小だ」と指摘。「これほどの縮小が見られるのはリーマン危機のような重大な衝撃の時だけだ」と述べた。
米連邦準備制度の引き締めと相まってこのトレンドは流動性指標を年率6%のペースで縮小させるとJPモルガンは試算している。過去10年の大半では拡大していた。
米連邦債務上限問題が決着したことを受けて、米国債の大量発行が始まるが、一部の金融機関は7-9月(第3四半期)末までに発行高が1兆ドルを超える可能性があるとみている。米財務省は5日に合計1700億ドル余りの財務省短期証券(TB)の入札を実施する予定。
TBの買い手には銀行のほかにマネー・マーケット・ファンド(MMF)や大まかに「ノンバンク」と分類される家計や年金基金、企業の財務部門などがある。銀行が買わない場合でも、顧客が銀行預金から米国債へと資金を移せば混乱を引き起こし得る。
シティは影響を試算する際、銀行の準備金が12週間に5000億ドル減った過去のケースをモデル化した。シティグループ・グローバル・マーケッツのグローバルマクロ戦略責任者、ダーク・ウィラー氏は「銀行の準備金の縮小は常に逆風だ」と話した。
5月の米雇用統計では、雇用者数の伸びが加速する一方で失業者数も急増。平均時給は鈍化した。強弱入り交じる内容で、米金融当局が利上げを休止する根拠が増えた格好だ。
5月は広範囲の業種で雇用が増加。特に専門職・ビジネスサービスや政府部門、ヘルスケアでの伸びが目立った。
失業率は前月からの上昇幅が2020年4月以来の大きさとなった。金融当局者はこの上昇にも注目するとみられる。失業者数は5月に前月比44万人増加。新型コロナウイルス禍が始まった直後に記録的に急増した時期があったが、それに次ぐ大きさだった。
5月雇用統計が強弱まちまちの内容となったことで、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が示唆する利上げ休止姿勢が正当化される可能性がある。他の当局者からも、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では政策金利を据え置き、7月に引き締めを再開する余地を残す考えを支持する見解が聞かれる。
家計調査の詳細を見ると、労働市場に加わる人が職探しに苦労していることや、以前雇用されていた人が失業するケースが増えていることが分かる。
一方、事業所調査では堅調さが示された。雇用者数は1年2カ月連続で市場予想を上回り、労働力人口の大半を占める非管理職の賃金は0.5%増と、6カ月ぶりの大きな伸びとなった。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン氏らは「5月雇用者数の驚くほど力強い伸びは、ブルームバーグが実施したエコノミスト調査の最高値をも上回り、労働市場の読み取りが困難であることを浮き彫りにした。われわれの見解では、労働市場はヘッドラインの数字が示唆するより弱い。家計調査で示された就業者数は5月に実際のところ減少した」と指摘した。
平均時給は前年同月比では4.3%増。今年3月と並び、2021年半ば以来の低い伸びにとどまった。市場予想は4.4%増。4月は4.4%増だった。
労働参加率は62.6%で変わらず。25-54歳の労働参加率は上昇し、07年以来の高水準。上昇分を女性が占めた。
需要に関して気掛かりな兆候も見られた。週平均労働時間が34.3時間に若干減少し、20年4月以来の低水準となった。景気が弱まり始めると、雇用主は人員を削減するよりまず労働時間を減らす傾向がある。
景気の弱さを示す兆候が広がる中で、最もリスクの高い社債が値下りしている。デフォルト(債務不履行)や破綻が増えそうだ。
ジャンク級の中でも最低の格付け「CCC」クラスの社債の価格は5月に8カ月ぶり大幅下落となった。中国の債券が23%安と下げの中心だった。欧州と中国、米国の経済が減速する中で、低格付け債には金利上昇と業績悪化、資金調達難からの圧力が続く見込みだ。
イントレピッド・インカム・ファンドのポートフォリオマネジャー、ハンター・ヘヘイズ氏は「CCC格付け債を今買うのは火遊びだ」とし、CCC債発行体の「ほとんどは問題に直面することが必至だ」と述べた。
高リスク債は今年これまでの大半、アウトパフォームしてきた。投資家は中央銀行が近くインフレとの闘いに勝利すると期待し低格付け債を購入した。しかし米連邦準備制度と欧州中央銀行(ECB)の当局者らは金利の高水準が長く続くと発言している。
金融引き締めは資金調達コストを上昇させるが、財務の弱い借り手ほどその影響を大きく受ける。引き締めは消費者および経済全体への逆風にもなり、あらゆる企業の売上高の足かせになる。
高格付け債の投資家も、ジャンク級に近い「BBB」格付け債を敬遠し、より安全な債券にシフトしている。
UBSグループのクレジットストラテジスト、マシュー・ミッシュ氏は「CCC債への投資を引き揚げるべき時だ」として「7月下旬から8月にかけて4-6月(第2四半期)の決算が発表された後に、格下げの波が大きくなるだろう」と話した。
同氏はCCC債の投資リターンが年末までに1桁台前半のマイナスになると予想している。今年これまでは5%以上のプラス。
フィッシュ・アセット・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、カイル・クロック氏(チューリヒ在勤)によれば、CCC債はリセッション(景気後退)からの影響が最も大きく、その発行体企業は新たな借り入れで最も苦戦する見込みだ。
同氏は「2022年初め以降の金利急上昇で企業の借り換えは既に困難になっている」と指摘。「今がポートフォリオのリスクを高めるべき時でないのは確かだ」と述べた。
最低格付けの社債は債務不履行と破産申請の確率が最も高い。フィッチ・レーティングスは最近、米ジャンク債の今年のデフォルト確率見通しを最高5%に引き上げた。与信環境のタイト化と銀行業界の問題による資金アクセスの縮小を理由に挙げた。
CCC債保有者にとってのもう一つの問題は、売ろうとしても買い手が見つかりにくいことだ。これはしばしばボラティリティーを高める。高リスクジャンク債の市場は小さめで、流通市場の流動性は例年夏に低下するため、売却はますます難しくなる。
「7月と8月にリスク資産を売るのは本当に難しいだろうと思う」とUBSのミッシュ氏は述べた。
世界のCCC格付け債の平均利回りが14%を超えていることを踏まえると、利回り追求の投資家はなお引き付けられるかもしれない。
ただ、イントレピッドのヘイズ氏はディストレスト債とされる水準である1000ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を超えてスプレッドが拡大しなければ魅力的には見えないと話す。
バークレイズのストラテジスト、ブラッドリー・ロゴフ氏も「現時点でCCC債を買うことはしない。スプレッドが拡大する時期が年内に訪れるだろう」と話した。
金利上昇と物件価値下落に見舞われた欧州の不動産オーナー企業の株価下落で時価総額1480億ドル(約20兆7000億円)が失われたが、株主はさらなる痛みに直面している。
これらの不動産会社は2026年末までに1650億ドル相当の社債が満期を迎える。しかし銀行は業界への投融資を減らしており、借り入れコストは金融危機以来の高水準。こうした中で一部の不動産会社はジャンク級に格下げされるリスクがある。そうなれば借り入れコストはさらに高くなる。
ロンドンの金融街シティーからベルリンまで、各地でオフィス物件の価値が急落し、バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査によれば不動産業界は3カ月連続で、ファンドマネジャーらが最も敬遠するセクターとなった。
膨れ上がった負債を抱える多くの不動産オーナー企業は、さらなる逆風が予想される将来に備え、資産売却や配当減額、株主割り当て増資などが必要になる見込みだ。
チャタム・フィナンシャルの欧州・中東・アフリカ(EMEA)責任者、ジャッキー・ボウイ氏は「満期の壁が、何らかの取引が起こるきっかけになり得る。借り換えができなければ退場するしかないからだ」とし、「より多くの資産がディストレスト水準の価格で売却されると思う」と付け加えた。
苦戦組の代表例がスウェーデンの大手不動産会社SBBだ。同社株は最高値から90%以上下落した。
2000件余りの不動産を所有する同社の債務は80億ドルに上り、低金利時代の終了とともに大きな負担になった。同社資産にカナダの資産運用会社、ブルックフィールド・アセット・マネジメントなどが関心を示していることが分かり2日に株価は上昇した。
スウェーデン不動産大手SBBにブルックフィールドなど関心
同社は既にジャンク級に格下げされ増資を断念したが、市場は同業他社も同じ道をたどることを織り込んでいる。ブルームバーグのクオンツモデルによると、ユーロ建て高格付け債の指数に含まれる不動産会社債の半分以上がジャンク並みの価格で取引されている。
9兆円の高格付け不動産社債がジャンク級の扱い、業界ストレスあらわ
ジャンク級に格下げされたいわゆる堕天使企業が債務を圧縮するか、金利が再び下がるかしない限り、各社は借り換え時に金利負担の上昇に直面するだろう。
BNPパリバのクレジット戦略世界責任者、ビクトル・ヨルト氏は、不動産業界の発行体には投資適格級を維持する強い動機があると指摘している。
しかし、一部の不動産会社のハイブリッド債は流通市場で暴落しており、格付け維持は難しいかもしれない。
我慢できなくなった運用会社は、スウェーデンのハイムスタデン・ボスタッドやドイツを中心に事業展開するアラウンドタウンなどの発行体企業に、社債を買い戻させている。高格付けのユーロ建て不動産会社債は22年初めに比べほぼ2割値下がりしているので、市場価格で買い戻せるならば利点は大きい。
それ以外の企業は、株主割り当て増資や他の高金利の借り入れによって負債を圧縮しようとするだろうが、これらは長期的に収益を圧迫するだろう。
こうした見通しを織り込み、不動産会社の一角の株価純資産倍率(予想ベース)は08年の金融危機以来の低さとなっている。
◎ウィン・シン氏(ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨戦略グローバル責任者):
ヘッドラインの雇用者数はすごい数字だったが、悪魔は細部に宿る。失業率が予想外に上昇したのは、家計調査で何かがあったに違いない。ただ全体としては、連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの一回見送りについての発言を後悔するだろう。
◎ニール・ビレル氏(プレミア・ミトン・インベスターズの最高投資責任者):
この1カ月、利上げをめぐる予想はころころ変わった。5月は雇用者数が予想外に大きな増加となった。これで市場は利上げ確信モードに戻るかもしれない。FRBのタカ派陣営には強い支援材料となるに違いない。
◎シーマ・シャー氏(プリンシパル・アセット・マネジメントのチーフ・グローバル・ストラテジスト):
追加利上げを予想している。ここで大事なのは、7月会合まで待てるのか、あるいはモンスター級の雇用者数増加を受けて連邦公開市場委員会(FOMC)で緊急性が再燃したのかが重要な問題だ。統計の詳細に目を向けると、失業率が上昇し平均時給の伸びが減速している。恐らく7月決定に軍配が上がりそうだ。しかし全体的にみて、これは減速中の労働市場を指す統計ではない。そして減速していないのなら、インフレは2%に下がらない。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国は不動産市場を支える新たな一連の措置を検討している。事情に詳しい関係者が明らかにした。これまでの対策では不動産セクターの持続的な持ち直しにはつながらなかった。
非公表の情報だとして関係者が匿名を条件に述べたところによると、当局は主要都市の中心部以外で物件の手付金比率を引き下げることや、仲介手数料の減額を検討している。国務院の指針下での住宅購入における制約が一段と緩和される可能性もあるという。
中国当局が昨年打ち出した16項目の救済パッケージに含まれる政策の一部をさらに調整し、拡張する考えもあると関係者は説明。ただ、こうした方針はまだ最終決定されておらず、変更もあり得るという。
住宅都市農村建設省にコメントを求めたが返答はない。外国為替市場では、この報道を受け、中国人民元が上昇。本土での取引では人民元がドルに対し0.5%以上上げ、ここ2カ月余りで最大の上昇率となった。
中国の住宅セクターは崩壊を免れたものの、引き続き経済の足かせとなっている。
中国房産信息集団(CRIC=克而瑞)によれば、不動産開発会社大手100社の新築住宅販売額は5月に前年同月比6.7%増となったが、前2カ月の29%を超える伸びからは減速し、新たな軟化の兆候が示されている。
●中東
5月の大統領選で続投を決めたトルコのエルドアン大統領は3日、財務相にシムシェキ元経済担当副首相を充てる人事を発表した。金融市場の評価が高く、エルドアン氏が掲げる特異な金融政策が修正されるかが注目される。
シムシェキ氏はロンドンやニューヨークの投資銀行で勤務した経験があり、2018年、政権を去るまでの副首相時代も市場との対話姿勢に定評があった。
経済成長を重視するエルドアン氏は「金利は悪の根源」と主張し、経済学の定石とは逆に物価の上昇局面でも利下げを強行した。リラは過去5年でドルに対して4分1以下の価値に下落し、5月には通貨防衛のための介入で中銀の純外貨準備高が約20年ぶりのマイナス圏に沈んだ。
エルドアン氏が選挙後、緩和重視の金融政策を転換するかは不明で、人事に注目が集まっていた。シムシェキ氏の登板は、政策金利の引き上げなど市場重視の伝統的な経済・金融政策への回帰を意味する可能性がある。
ただ、エルドアン氏は19〜21年に自らの意向に従わない中銀総裁を3度更迭したことがある。シムシェキ氏が市場を重視する考えだとしても、金利を下げたいエルドアン氏がどこまで我慢できるかは不明だ。
英ブルーベイ・アセット・マネジメントのティモシー・アッシュ氏はシムシェキ氏の就任が有力と報じられた際の顧客宛てメールで、市場は半信半疑だとしたうえで「在任期間と、彼にどれだけ経済政策の自由が与えられるか」が問題だと指摘した。
5月、大統領選とともに行われた議会選ではほぼ全閣僚が議員として立候補し、当選したため、兼職禁止の規定に基づいて内閣の顔ぶれが一新する。
トルコのエルドアン大統領が大統領選の決選を制した。すでに20年を超えた政権が、さらに長期化する。激しいインフレや2月の大地震の被害など逆風が吹く中で、エルドアン氏はダイバーシティー(多様性)否定ともいえる戦術で保守層の支持をつなぎ留めた。経済の安定と国内の分断状態の修復が、今後の大きな課題になる。
●中南米・アフリカ
メキシコ大統領選まで2日で1年となった。左派のロペスオブラドール現政権は約6割の支持率を維持し、大統領選でも左派与党が優勢だ。与党有力候補は現政権の政策の踏襲を明言していて、外国企業は保護主義的な政策の継続を警戒する。
●市況日経先物31525、ダウ先33818、債先148.07、米3.698、独2.3240、仏2.861、西3.313、伊3.969、英4.1910、波5.966、原油71.87、銅8,248、ドル円139.97、ユーロドル1.0708
※6/2 NY引け値
備忘録(2023/6/1)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
米連邦準備理事会(FRB)が次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとの観測が強まった。米長期金利の低下を受けた日米金利差の縮小が円買い・ドル売りを誘った。
米長期金利が前日比0.05%低い(価格は高い)3.59%で終え、金融政策の影響を受けやすい2年債利回りも低下した。FRBのジェファーソン理事の5月31日の発言が次回FOMCでの利上げ見送りを支持したと受け止められた。7月の利上げ再開の可能性は残るものの、金融引き締め効果で米景気は次第に減速感が強まるとみられている。市場では「追加利上げの可能性が低下した」(スコシア・キャピタルのショーン・オズボーン氏)との声があった。
同日発表の米経済指標の一部がインフレ圧力の緩和を示したのも、FRBの利上げ局面の終わりが近いとの見方につながった。5月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は市場予想とほぼ一致したが、個別項目の価格指数が大幅に低下した。1~3月期の労働生産性指数の改定値では単位労働コストが速報値から下方修正された。
ダウ平均の構成銘柄では、クレジットカードのアメリカン・エキスプレス、建機のキャタピラー、ホームセンターのホーム・デポが上げた。一方、前日に2〜4月期決算を発表した顧客情報管理のセールスフォースが下落。バイオ製薬のアムジェン、金融のゴールドマン・サックスが売られた。
ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数は反発し、前日比165.697ポイント(1.3%)高の1万3100.982で終えた。2022年8月中旬以来およそ9カ月半ぶり高値。半導体のエヌビディア、交流サイトのメタプラットフォームズが上げた。
ADPが1日発表した5月の全米雇用リポートによると、非農業部門の雇用者数(政府部門を除く)は前月から27万8000人増えた。ダウ・ジョーンズ集計の市場予測(18万人)を上回った。米民間調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスの調査では企業などの5月の人員削減計画は前月から20%増えた。業容や業種によって雇用にばらつきが目立ってきた。
ADPのエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は「転職者の年収の伸び率が2カ月連続で1ポイント下がった」と指摘。「年収の上昇率は大きく鈍化し、積極的な採用活動が続いても賃上げ圧力によるインフレ加速を心配する必要はなくなってきた」と分析した。
チャレンジャー社のシニアバイスプレジデント、アンドリュー・チャレンジャー氏は「消費者信頼感は6カ月ぶりの低水準となり、採用も横ばいだ。企業は(米経済の)鈍化を警戒し採用活動を抑え始めている」と説明した。
1日発表の5月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)速報値は上昇率が前年同月比6.1%と金融情報会社リフィニティブがまとめた市場予想(6.3%)を下回った。インフレが鈍化に向かうとの見方からドイツ債に買いが入った。
ドイツ債相場は上値の重さも意識された。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は1日、ユーロ圏のインフレ率は依然高すぎるとの認識を示した。ロイター通信によれば、インフレ率が2%の目標に回帰しそうだと確信できるまで「利上げサイクルを継続する必要がある」と述べた。金融引き締めが長期化するとの見方はドイツ債の売りを促した。
5月のユーロ圏の消費者物価指数は伸び率が前年同月比6.1%と、4月の7.0%から鈍化した。エネルギー価格が下落に転じた一方、食品などは10%以上の高い伸びを維持した。インフレ基調は衰えておらず、欧州中央銀行(ECB)は粘り強く利上げを続ける構えだ。
市場予想の6.3%を下回った。伸び率の鈍化は2カ月ぶりで、2022年10月につけた過去最高の10.6%から鈍化基調にある。
品目別では食品などの伸び率が12.5%と10カ月続けて2桁を記録した。サービスも5.0%と3カ月連続で5%台で高止まりした。エネルギーは1.7%下落し、3月以来となるマイナスに転じた。価格変動の大きい食品やエネルギーを除くと5.3%でインフレの基調はなお強い。
国別の伸び率はドイツが6.3%で、フランスが6.0%だった。イタリアは8.1%で、スペインは2.9%。ユーロ圏20カ国のうち、伸び率が鈍化したのは18カ国だった。ラトビアやスロバキアは12.3%と高止まりしたものの、ベルギーなどでは2%台まで低下した。
同日公表した4月のユーロ圏の失業率は6.5%と3月の6.6%から改善し、過去最低水準を更新した。ドイツなどでは賃上げを求めるストライキが交通機関や小売業などで相次いでおり、労働需給の逼迫から賃金の上昇圧力が高まりやすくなっている。
●中国・アジア・ロシア・東欧
北大西洋条約機構(NATO)が同国の安全を一定期間「保証」する案を議論している。短期間でのNATO加盟は事実上難しい。米欧が軍事支援への継続的なコミット(関与)を明示することで抑止力を確保する構想だ。
●中東
●中東
サウジ産原油9.4%安、5月積み 1年5カ月ぶり低水準
●中南米・アフリカ
●中南米・アフリカ
ブラジル1〜3月GDP、4%増 主力の穀物生産拡大
●市況
日経先物31305、ダウ先33142、債先148.91、米3.604、独2.2420、仏2.803、西3.279、伊3.992、英4.1635、波5.944、原油70.09、銅8,230、ドル円138.74、ユーロドル1.0761
※6/1 8時55分頃
●市況
日経先物31305、ダウ先33142、債先148.91、米3.604、独2.2420、仏2.803、西3.279、伊3.992、英4.1635、波5.944、原油70.09、銅8,230、ドル円138.74、ユーロドル1.0761
※6/1 8時55分頃
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