●海外企業決算
●海外企業
新しい仕事に就いて2週間というのは、確かに十分な時間ではない。だが、リップブー・タン氏には時間の猶予があまりない。
タン氏は3月18日、名声はあるが苦境にあえぐ米半導体大手インテルの最高経営責任者(CEO)に就任し、同社のビジョンを少しずつ示し始めている。27日に年次報告書とともに提出された株主向けの書簡では、人工知能(AI)関連の重要市場でインテル製品の競争力を高めるためには「さらなる努力が必要」と述べた。また、ファウンドリー(受託製造)事業の拡大にも「同様に注力している」とした。
つまり、インテルの前CEOが達成しようとしていたことと同じだ。タン氏は31日に開催されたイベント「インテル・ビジョン」の基調講演でも改めて同じことを話した。AI戦略の強化や特定のコンピューティング作業向けのカスタムチップへの取り組みといったいくつかの抱負を除けば、タン氏の戦略は前任者のものとほとんど区別がつかなかった。人型ロボットに関するインテルの計画については、「乞うご期待」と聴衆に語った。
在任期間が短いということは、タン氏はもっと大きな変化を念頭に置いている可能性があるということでもある。だが、インテルには同じことを繰り返すという選択肢はないだろう。
タン氏の前任者、パット・ゲルシンガー氏は事実上の解任だった。それまでの数年間、インテルの半導体設計を改善し、製造プロセスを台湾積体電路製造(TSMC)と同等レベルに引き上げるという野心的な取り組みを行っていた。
そうした取り組みはうまくいっていない。あるいは、少なくともまだ成果は出ていない。インテルの年間売上高は過去4年間で33%減少した。かつては潤沢な資金を保有していたが、2022年以降は現金の流出が続いている。いまだにファウンドリー事業はインテルが設計したチップの生産が中心で、昨年は134億ドル(約2兆円)の赤字だった。
タン氏が示唆した変化の一つは、インテルのコスト構造にさらに切り込むことだ。同社は昨年、従業員を13%削減したが、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータによると、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)を構成する他のどの企業よりもはるかに多い従業員を依然として抱えている。
その結果、相対的に効率が低下している。インテルの従業員1人当たりの年間売上高は、昨年は約48万8000ドルで、米マイクロン・テクノロジーや米グローバルファウンドリーズといった他の半導体メーカーを下回る。また、TSMCでは2023年(同社の従業員数が入手可能な直近の年)に従業員が1人当たり90万6000ドルを稼いだのと比べても、はるかに低い水準となっている。
顧客の声にもっと耳を傾けることも、タン氏が示唆した変化になる。これは企業の常とう句のように聞こえるが、インテルにとっては意味がある。数十年にわたる技術的成功と、パソコン用チップの事実上の独占によって傲慢(ごうまん)な企業文化が育まれた。技術学校を出たゲルシンガー氏がインテルに入社する際、面接した採用担当者は「やや傲慢」と評し、「うまく溶け込めるだろう」と記していた。
タン氏はもう少し野心的な目標も示唆している。株主向けの書簡で同氏は、AIに特化したコンピューティング機器の巨大なキャビネットの設計で米半導体大手エヌビディアと競い合うことになると述べた。インテルが出遅れていることを考えると、コストがかかる上、リスクも高いとみられる。エヌビディアは昨年からそうした装置の設計を始めており、現在は生産段階に入っている。
これまでのところ、タン氏の戦略に欠けているのはインテルの事業の根本的な転換だ。ゲルシンガー氏を指導したインテルの伝説的経営者、アンディ・グローブ氏なら現在のAIの波を、決断を下すべき時である「戦略的変曲点」と呼んだだろう。1980年代にインテルが半導体メモリーの製造から撤退した時のようにだ。当時、日本のメーカーが低コストで半導体メモリーを製造していたため、インテルにとっては採算が合わなかった。そこでインテルは、黎明(れいめい)期だったパソコン用プロセッサーの市場に参入した。
アナリストの間では現在、インテルは長年の業界トレンドに従い、製造を半導体の設計やマーケティングから分離すべきとの意見がある。製造部門に外部の投資家を呼び寄せれば、多くの資本を調達することができる。これに関しては、同社はすでに協議を行っている。
投資家はこれまでのところタン氏を歓迎しており、同氏の3月の就任以来、インテルの株価は10%上昇している。だが、ゲルシンガー氏の戦略とは明確に一線を画し、かつ期待が持てる新たな方向性を近いうちに示さなければ、市場の忍耐は尽きるかもしれない。
●日本企業
日本製鉄が買収提案しているUSスチールの将来を左右する重要な人物として、ラトニック米商務長官が浮上してきた。同氏は過去1週間、日鉄やアクティビスト(物言う株主)と会合を重ねてUSスチールへの投資などを競わせている。
事情に詳しい複数の関係者によると、日鉄は141億ドル(約2兆1000億円)でのUSスチール買収が完了した場合、追加で70億ドルの投資を行うと申し出ている。非公開情報であることを理由に関係者は匿名で述べた。
ラトニック氏はまた、USスチールの株式1%を保有し、同社の取締役会を刷新して新たな最高経営責任者(CEO)を指名しようとしているアクティビストのアンコラ・ホールディングス・グループとも会合を持った。アンコラは、日鉄との取引が破談になった場合にUSスチールに60億-70億ドルの投資を行う意向を示しているという。
トランプ大統領はこれまで、USスチールが米国企業として残ることを望むと繰り返し述べている。USスチールを巡る問題でラトニック氏を政権内のキーパーソンに据えたことは、ディールメーカーでありたいというトランプ氏の強い意欲を示唆している。
ホワイトハウスと商務省はコメントの要請に応じなかった。USスチールからのコメントは現時点で得られていない。日鉄とアンコラはコメントを差し控えた。
関係者によると、トランプ氏からUSスチール問題の責任者を任されて以降、ラトニック氏は日鉄の森高弘副会長、USスチールのデービッド・ブリットCEOと会談した。森氏は1日午後に再びラトニック氏と会い、先週に提示した案をさらに引き上げる可能性があるという。
セマフォーは3月27日、日鉄がトランプ政権との協議の一環として、USスチールの製鉄所への最大70億ドルの投資を提示したと報じていた。
協議に詳しい関係者の話では、状況はまだ流動的であり、こうした動きがトランプ氏の考えを変えるかどうかは定かではない。
●先進国政治動向
トランプ米大統領は3月30日、3期目を目指すことは冗談ではないと語ったものの、2期を超えて大統領を務めることを禁じている合衆国憲法をどのように回避するかについては説明しなかった。
以下はトランプ氏が直面する法的な課題。
<憲法上の規定>
合衆国憲法修正第22条は「何人も2回を超えて大統領に選出されてはならない」と定めている。
この修正条項は1951年、ジョージ・ワシントン以来の大統領が自らに課してきた2期という制限をフランクリン・D・ルーズベルト大統領(民主党)が初めて破った後に批准された。
ルーズベルト氏は世界大恐慌と第2次世界大戦の最中に大統領を務め、3期目を終えて、4期目に入った数カ月後の45年に死去した。
キニピアック大のウェイン・アンガー教授(法学)は、憲法は大統領の任期を2期以内で1期4年と定めているとして「最高裁は(大統領任期は)1期4年の2期なのは明らかだ、ドナルド・トランプ氏は3期目に立候補することはできないと言うだろう」と語った。
<トランプ派議員による憲法改正の試み>
野党民主党とトランプ氏が率いる共和党との政治的分断が激しくなっている現在、3期目を務められるようにするための憲法改正の可能性は極めて低い。
憲法改正には議会上下両院で3分の2以上の支持を得て、州議会の3分の2以上が憲法制定会議を招集して提案しさらに50州のうち38州以上の議会が承認する必要がある。
共和党は下院で218議席と民主党の213議席に迫られ、上院で53議席と民主党の47議席をわずかに上回って多数派になっている。共和党は28州の議会で優勢になっている。
南部テネシー州選出の共和党所属の下院議員で、トランプ氏の強力な支持者であるアンディ・オグルス氏は今年1月、合衆国憲法修正第22条を変えて大統領を非連続ならば3期務められるようにする法案を出した。
トランプ氏の2017年からの1期目と、25年からの2期目の任期が連続していないため、法案が可決されれば29年から3期目を務めることが可能になる。
<副大統領として出馬の可能性は>
トランプ氏は米NBCテレビのインタビューで、バンス副大統領が28年の大統領選に出馬し、トランプ氏を副大統領候補とすることが可能性の一つになると語った。
バンス氏が勝利し辞任することでトランプ氏が大統領に復帰する道が開かれるというもの。
しかし合衆国憲法修正第12条には「大統領職に就く資格がない者は副大統領職の資格も有さない」と記されており、トランプ氏は副大統領に立候補することはできない。
米フロリダ州で1日、連邦下院議会選の補欠選挙が行われる。トランプ大統領の政権運営を巡り、共和党の牙城である同州の有権者がどのような反応を示すのか注目されている。
争われるのは、トランプ氏から大統領補佐官(国家安全保障担当)に起用されたマイク・ウォルツ氏と、同様に司法長官に指名されたものの、スキャンダルで指名辞退に追い込まれたマット・ゲーツ氏の2議席だ。ゲーツ氏は指名後に、議員を辞職していた。
ウォルツ氏は昨年11月の選挙で、民主党候補を30ポイント以上の大差で退けた。だが、今回の補欠選で共和党候補のランディ・ファイン氏と民主党候補の教師ジョシュ・ウィール氏は接戦の様相をみせている。先週の世論調査では、ファイン氏のリードが5ポイント未満にとどまった。
フロリダ州のロン・デサンティス知事ら共和党関係者からは「本来なら楽勝のはずの選挙を、接戦にしてしまった」との批判が漏れる。
今回の補欠選は、関税や移民に関するトランプ氏の政策、さらにはイーロン・マスク氏による連邦行政改革に対して、有権者がどのような審判を下すのか、初の試金石となりそうだ。
ファイン氏は選挙戦の初期段階からトランプ氏の支持を受けていた。仮に敗北、あるいは僅差での勝利となれば、トランプ氏にとっては警告サインとなるだろう。
米下院の勢力図は共和党が218議席、民主党が213議席を占めており、その差はわずかだ。今回の補欠選挙で共和党が敗北すれば、辛うじて維持している議席数のリードがさらに縮まる。トランプ氏は下院の多数派維持するために、すでにエリス・ステファニク下院議員の国連大使指名を撤回すると発表した。
ゲーツ氏の議席に関しては、フロリダ州の財務トップ、ジミー・パトロニス共和党候補と、銃暴力反対を唱える活動家ゲイ・バリモント民主党候補が争う。同選挙も、共和党が望むよりはるかに接戦となっている。
「大統領の意向を無視するわけにはいかない」。JD・バンス米副大統領は、グリーンランド北西部にあるピツフィク米宇宙軍基地に駐留する米兵たちにこう語った。副大統領に当てはまることは、本欄のコラムニストにも当てはまる。事が関税であれ、領土拡大、対ロシア関係、米国の同盟関係の将来、中東のパワーバランスであれ、ドナルド・トランプ大統領が本当は何を望んでいるのかを理解することが、この嵐のような、運命を決する年に米国の外交政策がどこに向かっているのかを分析するための鍵だ。
トランプ氏の真意を解明するのは難しい。フランクリン・D・ルーズベルト以来の極めて精力的な動きを示すホワイトハウスを中心に外交・内政の施策が乱発されていることや、トランプ政権の政策の多くが極端に型破りなことが、この政権の分析を著しく困難にしている。分析的というより直感的で、ポスト冷戦時代の主流派のコンセンサスをほぼ否定する知的・道徳的基盤に基づいているトランプ氏の政治手法が、この作業をより複雑なものにしている。
衝撃と怒りを政治的な道具として意識的に利用するトランプ政権のやり方は、冷静で分別のある評価を一層難しくする。挑発して敵が自滅的で極端な反応をするように仕向けるトランプ氏の超人的な才能は、同氏が一躍のし上がった要因として軽視できない。
そこで話はグリーンランドとそれを「手に入れる」ことへのトランプ氏の欲望に戻る。グリーンランドに対するトランプ氏の関心を見くびってはいけない。この地域が手に入れば、トランプ氏は歴史書に名を残すことになる。この問題を巡っては、まさにトランプ氏が好む形で意見が二分化され、同氏を批判する人々の間で嘲笑と怒りの発作が起きているが、国内の世論はおおむねトランプ氏に好都合な方向に動く可能性がある。
超党派の政治エリート層だけでなく、米国の対外政策には同盟関係の維持や国際法の尊重、倫理への正しい配慮が反映されるべきだと考えるほぼすべての人々にとって、トランプ氏のグリーンランド政策は政治的にばかげた話であり、道徳的に極めてひどいものだ。トランプ政権は平和的で民主的な同盟国デンマークから自治領を奪うために軍事力の行使をちらつかせることで、北大西洋条約機構(NATO)と、大西洋を挟んだ米欧の外交コミュニティーが世界平和の礎として長年依拠してきた国際法・規範の枠組み全体を、両方とも台無しにしようとしている。
さらに悪いことに、デンマークは、米国がグリーンランド駐留軍を増やすためのほぼどんな要請にも応じる構えを見せている。トランプ氏に批判的な人々から見れば、NATOおよびルールに基づく秩序の基盤となるものへの米政府の攻撃は不当であり、関係悪化や同盟関係の弱体化というコストは全く払う必要のないものに思われる。
FOXニュースが3月に実施した世論調査によると、トランプ氏のグリーンランド取得計画を支持した回答者は26%にとどまった。しかし米国の歴史は、国民が最終的には支持に回ると信じられる理由を、大統領とその仲間に示している。ラシュモア山に顔が刻まれている4人のうち3人は領土の拡張に動いた(ジョージ・ワシントンはカナダ征服を試み、トーマス・ジェファーソンはフランスからルイジアナの広大な土地を購入し、セオドア・ルーズベルトはパナマの運河地帯の権利を取得した)。エイブラハム・リンカーンでさえ、南北戦争の際に英国に中立を維持させるための暗黙の圧力として、米国がカナダを攻撃する可能性を利用した。デンマーク領西インド諸島に対するデンマークの支配力低下を懸念していたウッドロー・ウィルソンは1917年、現在米領バージン諸島と呼ばれる島々を2500万ドルで購入した。
人口が少ないものの戦略的に重要なグリーンランドは、米国人が歴史的に併合を望んできた類いの場所だ。(北米大陸に初めて到達したヨーロッパ人とされる探検家)レイフ・エリクソンの出身地で、米本土の約4分の1の面積を持つこの土地を取得できれば、ルイジアナ購入を約9000平方マイル(約2万3000平方キロ)上回り、米史上最大の領地取得となる。グリーンランドの人口約5万7000人は、ジェファーソンが取得したルイジアナの推定人口の約半分だ。グリーンランドは長い間、米国の関心の的になってきた。ルーズベルト政権は第2次世界大戦中にグリーンランドが保護領だと宣言して、同地域を支配しようとする英国・カナダと枢軸国の動きをかわした。トルーマン政権は1946年、1億ドルでのグリーンランド購入をデンマークに打診した。
米国の提案に対するグリーンランド住民の反発は、トランプ氏を批判する人々が期待するほどの影響を、米国民の意見に及ぼさないかもしれない。主にアフリカ系カリブ人のバージン諸島民には、人種分離主義者のウッドロー・ウィルソンを積極的に支持する人はほとんどいなかった。米先住民やフレンチ・クレオール(ルイジアナの初期フランス系移民の子孫)は、米国によるルイジアナ買収を歓迎していなかった。メキシコの割譲、帝政ロシアからのアラスカ購入、ハワイの併合にも、影響を受ける人々のすべてとは言えないまでも多くが反対した。
米国のグリーンランド取得に反対する人々の主張には、重みと説得力がある。デンマークは動きが鈍いこともあるが忠実なNATO同盟国であり、同国への侵略をちらつかせることだけでも、その影響が今後数十年続く過激な動きだと言える。ロシアにとってNATOの弱体化がいかに歓迎すべきことであっても、同国が米国のグリーンランド取得を敵対的行為とみなすのは確実だ。それはウラジーミル・プーチン大統領を中国の盟友から引き離したいトランプ氏の望みを損なうことになる。しかし、トランプ支持者と浮動票層の立場から見ると、グリーンランド併合に反対する論拠は決定的なものではない。
トランプ政権を批判する人々が効果を高めるためには、非難を抑え、もっと考える必要がある。
ドナルド・トランプ米大統領は3月31日、今週発表予定の最新の関税に関する計画を決定したと述べたが、その内容は明らかにしなかった。トランプ氏の経済チームは米国の貿易戦略の再構築を巡り意見をまとめるのに苦心していた。
トランプ氏は大統領執務室で「解放の日」の計画を決定したかと尋ねられ、「決めたよ、うん」と答えた。解放の日は、自身に課した関税発表期限の4月2日を指す。
トランプ氏のチームは、事実上全ての輸入品に20%のグローバル関税を課すことを含め、他国に関税を課す方法についていくつかのアイデアを提案してきた。事情を知る複数の関係者によると、31日を通じて一部の側近は、トランプ氏が特定の方針にコミットしていないとの印象を持っていた。関係者によると、協議は流動的な状況が続いており、方針を決定したとのトランプ氏の発言は一部のホワイトハウス顧問の不意を突いた。
非公開での議論では、トランプ氏の優先事項の矛盾が浮き彫りになった。最大の問題は、関税で歳入を増やすと同時に、他国に関税引き下げや他の政策変更を促す材料として関税を利用したいという点だ。だが関税が交渉の対象となり、時間とともに引き下げられる可能性があれば、関税導入によってどれだけの歳入が最終的に見込めるかについて疑問が生じる。また、トランプ氏のチームは同氏の選挙公約を後退させているように見られたくないが、一部の側近は関税が物価に与える影響を懸念している。
全ての目がトランプ氏の決定に注がれる。事実上全ての米国の貿易相手国に対して全輸入品に最大20%の一律関税を適用するのか、それとも交渉の対象となる可能性のある全ての国に個別の関税率を課す、いわゆる相互関税アプローチを採用するのかだ。
トランプ氏は大統領選挙運動中、一律関税を支持していたが、ここ1カ月で公に国別アプローチに方向転換した。4月2日の期限を目前に控えそれぞれの派閥が、「米国第一」の貿易政策にとって自分たちの好む方法がより良いとトランプ氏を説得しようと競い合っている。
トランプ氏と側近らは関税を、製造業の米国回帰に利用するとともに、トランプ氏の看板政策である減税の更新の財源に充てると述べている。一律関税の支持者であるピーター・ナバロ大統領上級顧問(通商・製造業担当)は最近、関税によって年間6000億ドル(約90兆円)の歳入を確保でき、所得税引き下げに充てることができると述べた。
またトランプ氏と側近らは関税を交渉の道具としても利用できると述べている。他国に関税引き下げを迫ったり、移民問題や麻薬不正取引の対策など通商以外の政策変更を求めたりする際に活用できるという。ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長は国別に相互関税を課す計画の主要な提唱者だとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じている。
だがこれらの目標は矛盾する可能性があり、ここ数日間、今後の進め方を巡り政権内で意見が分かれている。
相互関税が交渉の対象となれば、グローバル企業は米国への新規投資に消極的になる可能性がある。関税が長期的に維持されるかどうか不確実なためだ。
逆に、長期的な一律の関税率を設定すれば、各国政府が通商、税制、規制政策について米国と交渉するインセンティブが低下する可能性がある。
政権は公には、歳入を増やすと同時に関税を交渉の道具として利用できると主張している。一律関税支持者が想定するように、一部の関税が恒久的に維持されるとしても、トランプ氏は個別の産業や国に追加関税を課すことに意欲的だ。これは同氏が選挙運動中に提案していた計画で、ほぼ全ての国に最大20%の一律課税をした上で、特定の産業や中国などの敵対的な国に対してはさらに高い関税を課すというものだった。
第一次トランプ政権で上級経済顧問を務め、関税に懐疑的なスティーブン・ムーア氏は、一律関税ではなく相互関税制度の下では、トランプ氏は「関税を引き上げるのではなく、引き下げる制度を創設する可能性が十分にある」と述べた。
中間的なアプローチとしては、多くの国に低い関税を課す一方で、一部の国に高い関税を課すことが考えられる。この税率は個別に設定するか、グループとして課すことができる。政権は以前、低・中・高の3段階の関税を検討したが、その後、個別の税率を設定する計画に変更した。
米アラスカ州のマイク・ダンリービー知事(63)は3月、自宅のテレビでドナルド・トランプ大統領の議会演説を見守っていた。そこで耳にしたのは、国内有数の野心的なエネルギー計画が直ちに盛り上がりそうな言葉だった。ダンリービー氏はアジア歴訪に繰り出した。
トランプ氏はアラスカの「巨大な天然ガスパイプライン」について、「本当に素晴らしいものになる」と持ち上げた。さらに、認可はすでに下りて準備は整っており、「日本、韓国、その他の国々」が主要な投資パートナーになりたがっていると述べた。
ダンリービー氏は今や、トランプ氏の宣言を実現する役割を担う。託されたのは、米国でも特にカネのかかるエネルギー計画だ。アラスカ州の北端から天然ガスをパイプラインで運び、液化して輸出するには440億ドル(約6兆6100億円)の投資が必要となる。だが完成すれば、米国のアジア向け輸出が大きく伸びる。
共和党員でトランプ氏と近い関係にあるダンリービー氏は、米国のパートナーである台湾、タイ、韓国、日本を回る12日間の歴訪に臨んだ。いずれも対米貿易黒字が世界上位だ。
トランプ氏が貿易不均衡の解消を掲げる中、神経をとがらせるアジアのパートナーに対し、ダンリービー氏はアラスカの計画に大規模投資すれば不均衡を縮小できると訴え、共同投資やガスの大口購入を持ちかける。アジアの政府関係者や産業界への売り文句は「米国からガスを調達するのは常に良いこと」だ。
同州の「アラスカLNG(液化天然ガス)」計画は、全長約1300キロのパイプラインを通じてLNGターミナルにガスを運ぶというものだ。しかし、ターミナルはまだ建設されておらず、構想は10年以上前からあるものの、着工にも至っていない。アジアへの供給が始まるのは早くて4年後だ。
中国に次ぐLNG輸入国である日本と韓国はこれまで、アラスカのプロジェクト参画には否定的で、代わりにメキシコ湾岸のベンチャー・グローバルやシェニエール・エナジーなどと契約していた。
今は状況が異なる。ダンリービー氏の訪問中、台湾の国営エネルギー会社はパイプラインへの投資とLNG購入に関する拘束力のない合意を結んだ。韓国の通商相はダンリービー氏と会談し、アラスカの「無限の成長可能性」を称賛し、協力を約束した。石破茂首相は2月にホワイトハウスを訪問し、アラスカ産LNGの輸入は日本にとって本当に素晴らしいと述べた。
トランプ氏は再就任初日、バイデン前政権が敷いたアラスカの環境規制の多くを撤廃し、エネルギー開発の障壁を取り除く大統領令を発した。議会演説の数日前、ホワイトハウスの夕食会でトランプ氏と「世界最大の計画」について話し合ったとダンリービー氏は語る。トランプ氏は「実現させよう、話して終わりにするのではなく」と述べたという。
ガスパイプラインの1日当たり最大輸送能力は約9340万立方メートルとなる見通しで、これはアラスカの天然ガス生産量の約3分の1に相当する。LNGターミナルの年間輸出能力は2000万トンで、メキシコ湾岸にある米最大級のターミナルに匹敵する規模だ。
開発にはアラスカの過酷な環境が立ちはだかる。買い手がトランプ氏を喜ばせるためにLNG購入を増やしたければ、選択肢は米国内の他の場所にもいくつもある。トランプ氏はバイデン前政権が決めたLNG新規輸出の一時停止を解除した。
メキシコ湾岸などは豊富な天然ガスの採掘が比較的容易だが、こうした好条件の地域でさえ、開発業者は労働コストの上昇やトランプ氏の25%の鉄鋼・アルミニウム関税といった逆風にさらされている。機械設備と鉄鋼は通常、LNGプラントの建設コストの約3分の1を占める。
シェニエールのジャック・フスコ最高経営責任者(CEO)は、LNGプロジェクト全般について「商業化、資金調達、建設のめどをつける必要がある。コストが下がることはない」と述べた。
アラスカのプロジェクトを進める動機の一つは州内の需要だ。アンカレジ一帯向けの暖房用ガス田はほぼ枯渇している。パイプラインができれば州内の消費者にもガスを供給できる。
連邦政府から融資保証を取り付けることができれば、開発業者にとって大きな後押しになる。政府保証がなければ多額のリスクは貸し手が負うことになり、資金調達のハードルが上がる。アラスカLNGは約300億ドルの政府保証を申請できる。同州議員は3月、元石油会社幹部でLNG推進派のエネルギー長官クリス・ライト氏に申請の支援を要請した。
アラスカLNGの計画が浮上したのは2014年で、米エクソンモービル、英BP、米コノコフィリップスなどの大手企業が支持した。だが各社は数年で撤退し、計画は州の手に委ねられた。17年に中国の出資者と契約に至ったものの、その後破談となった。
ダンリービー氏は知事選に出馬した18年当時、プロジェクトには「完全に懐疑的」だった。だが新型コロナウイルス禍が収束してサプライチェーン(供給網)が再編され、ウクライナと中東で戦争が続き、人工知能(AI)ブームで電力需要が高まるにつれ、考えが変わった。「以前は希望にすぎなかった」とダンリービー氏は言う。「わずか数年で世界が一変した」
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
米供給管理協会(ISM)が1日発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.0に低下し、3カ月ぶりに拡大・縮小の分岐点となる50を割り込んだ。製造業におけるインフレの指標となる支払い価格も約3年ぶりの水準に急上昇した。トランプ米政権の関税措置の影響を巡る懸念の高まりを示唆した。
PMIの市場予想は49.5。2月は50.3だった。
構成指数では、先行指標となる新規受注が45.2と、前月の48.6から低下し、2023年5月以来の低水準となった。
支払い価格は69.4と、前月の62.4から上昇。22年6月以来の高水準となり、モノの価格の上昇が続き、物価上昇圧力が高まる可能性を示唆した。
供給業者の納入を示す指数は53.5と、2月の54.5から小幅低下した。50を超えると納入の遅延を示す。
雇用は前月の47.6から44.7に低下した。
3月は繊維、一次金属、コンピューター・電子製品を含む9業種が拡大。一方、機械、木材、化学製品を含む7業種が縮小した。
電気機器や電化製品など複数のメーカーが、需要増加の証拠はなく、「関税措置の影響とその対策戦略が日常的な話題になっている」と指摘。また機械メーカーは「事業状況は急速に悪化している」と報告した。
トランプ大統領は4月2日に「相互関税」の発表を予定する。トランプ氏は、関税は減税を相殺して歳入を増やし、長らく衰退傾向にある米産業基盤を復活させる手段とみている。
一方、エコノミストらは、輸入関税はインフレ高進を招き、経済に悪影響を及ぼすと批判的な見方を示す。
LPLフィナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は、「物価が上昇する一方で景気が停滞していることは、経済がスタグフレーションに陥る可能性があることを示唆している」と指摘。
「企業と消費者の不安定な信頼感が支出を減速させ、単なる景気鈍化以上の事態を引き起こす可能性があるため、連邦準備理事会(FRB)は厳しい立場に置かれている」と述べた。
●金融市場、先進国トピックス
世界トップ企業の時価総額が第1・四半期に減少し、約3年ぶりの大幅な落ち込みとなったことが分かった。トランプ米大統領が打ち出す関税措置の影響で、経済成長や企業収益を巡る不確実性が増大していることが背景。米景気後退懸念が強まる可能性がある。
LSEGのデータによると、トップ10企業の第1・四半期末時点の時価総額は13.2%減の18兆6400億ドル。2022年6月末時点以来の大幅な減少となる。
米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O), opens new tabの時価総額は35.7%急減し、8335億9000万ドルとなった。半導体大手エヌビディア(NVDA.O), opens new tabは19.59%減の2兆6400億ドル、同業ブロードコム(AVGO.O), opens new tabも27.56%減の7872億5000万ドル。
ナスダック総合(.IXIC), opens new tabは10.42%値下がりし、22年6月末時点以来の大幅な下げを記録。ナスダックは過去2年間、約84.5%高騰していた。
ゴールドマン・サックスは、関税、成長鈍化、インフレ加速を理由に、25年のS&P総合500種(.SPX), opens new tab構成企業の1株当たり利益(EPS)伸び予想を従来の7%から3%に下方修正した。
カナダに市場を抱える米消費関連企業にとって、トランプ米大統領の政策への反発を背景にカナダで広がる国産品購入運動(「バイ・カナディアン」)が新たな懸念要素として浮上しつつある。
カリフォルニア州に拠点を置く紙おむつメーカーのパラソルは今年1月以来、ある卸売業者と手を組み、カナダ国内のコンビニなどへの販路拡大に取り組んできた、とジェシカ・ハン最高経営責任者(CEO)は語る。
ところが3月上旬になって、この卸売業者がカナダでの反米感情の高まりを理由に仕事から手を引いてしまった。ハン氏は「卸売業者はある小売業者から米国ブランドの発売を中止するよう指示され、われわれに市場環境が許せば再検討すると伝えてきた」と明かした。
ハン氏は「この種の混乱は全く想定していなかった。今までこのような事態が起きたのを聞いたことがない。かなりの逆風であるのは確かだ」と顔を曇らせる。
2024年にはカナダへ3500億ドル弱相当の米国製品が輸入されていただけに、小売店の棚に並ぶ品ぞろえが愛国的な消費行動に基づいてがらりと変われば、影響は大きい。
原因はトランプ氏にある。カナダは米国の51番目の州になるべきだといった発言や、カナダからの鉄鋼・アルミニウムへの25%の追加関税、またその他全てのカナダ製品に関税を適用すると脅していることなどから、カナダの多くの消費者の間で米国製品でなく国産品を買おうとの気運が高まっている。
ハン氏の話では、パラソルはカナダの消費者向けに商品のラベル表示をフランス語にする作業を進めていた。また、ご破算になった卸売業者と共同での販路拡大作戦に投入する商品の選別を開始していたという。
ケベック州サン・ジャン・シュール・リシュリューに住み、母親として医療保険業界で働くレベッカ・アスランさんは、自身が行ってきた国産品を探す取り組みをソーシャルメディアで披露している。
アスランさんはロイターに対し、最近になって子どもの紙おむつを、カナダの数少ないメーカーであるアービング・パーソナル・ケアの商品に切り替えたと話した。「私はこれまで紙おむつがどこで製造されているか考えもしなかったが、明らかにカナダ製紙おむつは入手が難しい。こうした買い物は私たちにとって大きな変化だ」と付け加えた。
アービング・パーソル・ケアは、国内各地の小売業者から販売量を増やしたいとの問い合わせを受けていると説明。事業運営担当副社長のジェーソン・マカリスター氏は「カナダで製造された唯一のブランド化された紙おむつとして、われわれの週当たりの出荷量は4倍になった」と胸を張った。
<進出計画白紙化も>
こうした現象は紙おむつだけにとどまらず、アルコール飲料や柑橘(かんきつ)系果実にも及んでいる。ウイスキーの「ジャックダニエル」を手がける米ブラウン・フォーマン(BFb.N), opens new tabは3月上旬、米国製のバーボンやウイスキーがカナダの酒店から撤去される事態は、カナダ政府による報復関税よりも痛手で、トランプ関税がもたらす不釣り合いなほど大きな副作用だと訴えた。
米カリフォルニア州における柑橘系果実の輸出事情に詳しい関係者は同じく3月上旬、カナダの小売業者が発注を取り消したとロイターに語った。
発酵飲料であるコンブチャの「シナジー」を販売し、米ロサンゼルスに本社を置くGT‘sリビング・フーズは、ウォルマート・カナダを含めたカナダの小売業者が、関税を巡る不透明感を理由に発注を減らしていると明らかにした。
幹部のダニエル・ブコフスキ氏によると、ウォルマート・カナダやロブロー(L.TO), opens new tab、メトロ(MRU.TO), opens new tabなどに商品を卸している業者から、トラック2台分ではなく1台分の購入にとどめると連絡があった。関税問題の展開を見極めているためだという。
米ペンシルベニア州の香水メーカー、ディメーター・フレグランシズは、年内に計画していたカナダ市場への進出を取りやめた。マーク・クレームズCEOは、カナダ国民の気持ちが米国製品から離れてしまっていると指摘。「市場進出は無駄な努力に思えるため、計画を単純に破棄した」と説明した。
ウォルマート・ストアーズ(WMT.N), opens new tabやコストコ(COST.O), opens new tabなど米小売り大手と、こうした企業に商品を納める中国の製造業者は、トランプ米政権による相次ぐ対中関税引き上げでいずれも苦境に立たされている。追加関税の負担を相殺したい米国の発注元は製造業者に値下げを迫るが、製造業者は既に利幅を限界まで縮小しており、発注元の要求に応えるのは難しい。多額の債務を抱える中国の地方政府が支援に動くのも困難で、関係業界の打撃はトランプ第1次政権が貿易戦争を繰り広げた2018年当時よりも深刻だ。
中国広東省・東莞で米小売り大手向けにクリスマス用装飾品を製造するリチャード・チェン氏は米国の対中追加関税で注文が昨年の半分に落ち込み、生き残りに必死だ。「もう値下げの余地はないが、注文を取るために下げざるを得ないこともある。(中略)選択の余地はない」と苦しい立場を明かした。値引きの詳細には触れなかったが「赤字だ」という。
トランプ政権は2月以降、対中追加関税を矢継ぎ早に発動。4月2日にはさらに「相互関税」の詳細を発表する予定だ。
しかし米小売り大手を顧客に抱える中国の低価格帯の製造業者は既に利幅が極めて薄い。
中国製造業者によると、2018年の米中貿易戦争開始以降、労働者の賃金は2-5%上昇し、一部業界では原材料コストも上がった。海外勢との競争も激化し、第2次トランプ政権の追加関税は低価格帯の製造業者にとって「とどめの一撃」となっている。
一方、米ニューヨークのブルックリンに拠点を置くゴミ箱メーカー、シティビンの創業者兼最高経営責任者(CEO)、リズ・ピカラッツィ氏は、中国で製造する製品の関税が52.5%になり、もう中国では生産が続けられなくなったと述べた。「長期的な関税率を7.5%と想定するビジネスモデルだった。本当にショックだ」と肩を落とす。こうした事態をある予測していたが、45%もの追加関税を吸収できる企業はないという。
中国の製造業者や輸出業者10社、および中国のサプライチェーンを利用する米国小売業の幹部2人への取材によると、米国の小売業者は10%の値下げを求めている。しかし今進んでいる交渉では、サプライヤー側が提供できる値引きは平均3-7%程度にとどまっているという。
アジアを拠点とする製造請負業者ゲニメックス・グループを率いるジョナサン・チタヤット氏も「正直に言って、10%もの値下げ余地がある企業はほとんどない。1、2回の注文なら可能かもしれないが、大半の企業にとっては7%が限界だ」と話した。
中国の製造業者は、2018年の貿易戦争時で米国の顧客が関税引き上げ後に代金支払いを拒否するケースが相次いだ経験を踏まえ、今回は代金「前払い」条件を厳格化している。これまでは出荷後30―90日以内の支払いが一般的だったが、現在は「全額前払いでなければ取引不可」という対応を取る企業が増えている。
中国の製造業者と中小企業をつなぐリヤ・ソリューションズの最高ソリューション責任者、ドミニク・デマレ氏はトランプ氏が再選されるやいなや、米国の顧客に今後の支払い条件は100%前払いだと伝えた。「関税の悪夢が来ることは分かっていたからだ」と説明する。
<雇用減の恐れも>
今回の追加関税は中国の工業地帯に深刻な影響を与えており、工場の閉鎖や縮小が進めば大規模な雇用削減につながる可能性があると、アナリストや製造業関係者は警鐘を鳴らす。
オーストラリア・モナシュ大学のホー・リン・シー教授(経済学)によると、中国の製造業者はさまざまな圧力に屈し始めており、「既に多くの企業が事業閉鎖を決断している」という。
スタンフォード大学の2018年の研究によると、関税が1%引き上げられるごとに中国の製造業者の利益率は0.35%低下した。またダートマス大学の推計に基づくロイターの試算によると、2018年の貿易戦争では中国で約350万人の製造業労働者が職を失った。
今回の影響がどの程度になるかは、まだ予測が難しいとアナリストたちは指摘する。
一部の米企業は中国政府が自国の製造業を支援するために、新たな税還付や家賃・光熱費の補助を提供すると見込んでいる。2018年の貿易戦争時にはこうした支援が行われた。
しかしロイターが取材した複数の中国の業者によると、現時点では新たな支援策は確認されていない。
シー教授は、中国政府の支援を疑問視。地方政府の多くは不動産危機の影響で既に莫大な債務を抱えており、以前のように大規模な補助金を提供するのは難しいという。
トランプ政権の関税政策の目的の1つは、製造業を米国に呼び戻すことだが、シティビンのピカラッツィ氏は、コストや品質の観点から現実的ではないと見ている。既に生産拠点を100%ベトナムに移行する準備を進めており、顧客には値上げを覚悟するよう伝えている。「これは米政府が米企業と消費者に押し付けた、極めて不公平な措置だ。米企業を破綻させることは愛国的ではない」と憤った。
シティグループとJPモルガン・チェースを含む銀行団は、カナダの自動車部品メーカー、ABCテクノロジーズ・ホールディングスによるTIフルイド・システムズ買収に向けた債務パッケージを自己資金で賄うことを余儀なくされる可能性がある。
買収完了の期限である4月15日が迫る中、9億ドル(約15億円)のレバレッジドローンには投資家の需要が十分集まっておらず、13億2500万ドルのジャンク債の募集も開始されていない。
トランプ政権が課す関税がTIフルイド・システムズの事業に影響を与えるのではないかという懸念があるためだ。
アポロ・グローバル・マネジメントが出資するABCテクノロジーは昨年11月に、TIフルイド・システムズ買収で合意した。
ABCテクノロジー、TIフルイド、アポロ、シティグループ、JPモルガンの担当者はコメントを控えた。
4月3日に発効する自動車への25%関税は、5月3日までにエンジンやトランスミッションシステムなどの主要な自動車部品にも拡大される。TIフルイド・システムズは自動車用の熱および流体システムソリューションを製造している。
この案件に限らず、クレジット投資家は最近、輸入関税の引き上げや個人消費の低迷の影響を受けやすい企業の案件には参加しない姿勢を見せている。
関係者によると、シティグループはABCテクノロジー向けのレバレッジドローンの組成を主導しており、JPモルガンはジャンク債起債を担当している。
ローンは担保付翌日物調達金利(SOFR)に5.5ポイント上乗せ、額面1ドルに対し95-96セントという比較的高い割引価格で検討されていると関係者の1人は述べた。ローン契約の期限は3日。
銀行は通常、買収が完了する前にコミットした資金をシンジケートローンや債券によって調達し自社バランスシートから切り離す。それができないと、貸し付け債権が銀行の帳簿に残ったままの「ハングデット」の状態になる。
米国では、複数の世代が同居できる住宅を購入するケースが増えている。
全米不動産業者協会(NAR)のリポートによると、昨年の住宅購入の17%が「多世代住宅」で、2021年の11%から上昇。データでさかのぼれる2012年以降で最も高い割合となった。
全年代の購買層のうち、36%が費用節約を多世代住宅購入の最大の理由に挙げた。 45-59歳前後の「ジェネレーションX」世代が多世代住宅を購入する可能性が最も高く、高齢の両親の世話をする必要があることや、成人した子供が家を出ていかないか、戻ってくることを理由に挙げている。
多世代住宅は新しいコンセプトではないが、人気が高まっている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、インフレが家計を圧迫し、住宅価格の高騰が購入を困難にしているためだ。
NARの次席エコノミスト、ジェシカ・ラウツ氏は「同居して節約する方法を模索する家庭もある。住宅ローンや家計のため資金をプールすることは、一部の人にとっては現実的な方法かもしれない」と述べた。
不動産価格の高騰と住宅ローン金利の上昇が相まって、初めて住宅を購入するのが困難になっている。パンデミックで家賃も急騰し、成人した子供が一人暮らしをするのも難しくなっている。
住宅価格の高止まりが予想されるため、多世代同居のトレンドは今後も継続する可能性が高いと、ラウツ氏は指摘。「住宅の値ごろ感を巡る問題は、一夜にして解決するものではない。住宅を購入したい人はこれまでとは異なる方法でアプローチする必要があるかもしれない」と述べた。
あれもだめ、これもだめ、さあどうしよう。株価が落ち込んでも資産が守られるよう投資を組み立てておけば、心の平穏も守られ、お気に入りの銘柄も手放さずに済む。
だが、そのような保険を見つけるのは難しくなっている。米国債だけでなくおそらくドルでさえも、資産を保護するかつての効能を失っている。金価格がこれほど上昇しているのも不思議ではない。
根底にある問題は、投資が保険になるかどうかは他人の反応次第、ということだ。二つ目の問題はとりわけ米国債にとって重要で、インフレ感応度が新時代に入った、ということだ。
S&P500種指数がピークを付けた2月半ば以降の相場の弱さは、本来起こるべきこととそうでないことを示唆している。米国債は予想通りに動き、株安でリターンを出した。ドルはそうはならず、株に連れ安した。金は両方の動きを見せ、株に連れ安した後で急騰した。
当然ながら、数週間のリターンから何かを導き出せるわけではない。ここでは、数十年にわたって米国債がどのように資産価値を保護してきたかを調べ、ドルと金についても論じる。
米国債は1990年代後半以降、株価下落に対して実質的に無料の保険を提供する、いいとこ取りの投資だった。好況時には債券利回りが低下し、価格は上昇した。不況時には米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げし、債券価格はさらに上昇した。市場がパニックに陥ると米国債に資金が殺到し、債券価格は上昇した。さらに、短期的には債券利回りと株価が連動する傾向があったため、米国債は株式ポートフォリオのボラティリティーを抑制し、リターンが大きく目減りするのを防ぐ効果があった。
投資家がインフレに無頓着でいられた時代は終わり、常にインフレ圧力がある時代になったことで、米国債と株式の動きが変化した。インフレ懸念は債券利回り上昇と株価下落を同時進行させる要因になるため、利回りと株価は同方向に動きにくくなった。投資家が2022年に身をもって学んだように、株安時でも米国債で損失を出しかねない。
1970年代から90年代後半までは米国債利回りと株式が反対方向に動いていたが、その後は必ずしもそうではなくなった。株安時の米国債はもはや格好の投資先ではなくなった。
だからといって米国債が無駄なわけではない。利回りは10年物で4.3%と、まずまずの水準に戻った。2020年のような換金売りが起きない限り、市場がパニックに陥った時は需要が集まるはずだ。ただ、かつてその妙味だった長期リターンや、上乗せ料金なしでの短期資産の保護を期待できなくなっただけのことだ。
ドルには別の問題があるが、根本的な原因は同じで、人気がありすぎる、ということだ。米国人にとってドルは単なる自国通貨で、投資対象と見なされることはあまりないデフォルト(初期設定)の選択肢だ。しかし、それはもはや賢明な選択肢ではないかもしれない。
ドルは長年、優れた保険だった。ユリゾンSLJキャピタルのスティーブン・ジェン最高経営責任者(CEO)はかつてこれを「ドル・スマイル」と呼んだ。米国が好景気の時は利益を求めて資金が流入するため、ドルが強くなる。不景気の時は、米国の安全資産を求めて資金が流入するため、やはりドルが強くなる。
このところ好景気の時は非常にうまくいっていたが、おそらくうまくいき過ぎだった。主要貿易相手国通貨に対するドルのインフレ調整後為替レートは1月、ドル高是正を狙った1985年のプラザ合意以降で最も高い水準を付けた。米経済が極めて好調で、米国市場が刺激的なテック大手や人工知能(AI)関連株の本拠地だったため、国外投資家は米国を選んだ。
景気が低迷しても資金は流入するだろうか。危険なのは、「米国例外主義」の取引が広がりすぎたことだ。ドナルド・トランプ氏の大統領再選が駄目押しとなった。もし米国が苦境に陥れば、マネーは安全を求めるのではなく、流出するだろう。
通常はパニックが起きると、投資家の資金が株式市場から本国に逆流する一方、安全とされる米国債に資金が流入して相殺される。だが現在は、米株式市場に流入する外国資金が以前より大きく増えている一方、国外市場に流出していて引き揚げ可能な米国の資金が減っている。
ルファーのファンドマネジャー、マット・スミス氏は、「外国資金が流入し、米国の資金を消費支出や政府借り入れに回せた」と指摘する。これが逆転すれば、ドルはスマイルどころではなくなるだろう。
トランプ陣営の一部から聞こえてくる、ドルを保有している外国人を罰する「マールアラーゴ合意」の構想も、ドルの敬遠につながりかねない。
金はすでに大きな恩恵を受けている。外貨準備をドル建てにすることに懸念を抱く各国の中央銀行が金を買い増すとの思惑から、1年強で価格が50%上昇した。これは問題かもしれない。米国債やドルとは異なり、金はインフレ圧力が高くなった新時代でも好調だろう。だが米国債やドルと同様に、すでに多くの資金が流入している。パニックが起きたらどうなるだろう。
金は2008年3月までの12カ月間にも今回と同程度、上昇した。当時は金融不安への懸念が高まっていた。だが、米証券大手ベアー・スターンズに次いでリーマン・ブラザーズも破綻すると、金価格は1トロイオンス当たり1000ドル超から700ドル強に急落した。現金が必要になった投資家が売却したためだ。
現金は短期的には最も安全な資産で、今はそこそこ利回りもある。だが不況時に価値が上がるわけではないため、長期投資よりは投資のタイミングを計りたい時に向いている。
安全資産を選ぶ際は、資産そのものの性質と同じくらい、誰がそれを保有しているかが重要になる。パニック時に誰もが手放そうとするものは、急いで売らざるを得ない場合、価値が大きく減ることになる。それでも筆者は米国債を好み、手元の現金を通常時より増やすだろう。ただ、どの選択肢も以前に比べると妙味ははるかに薄い。
大手自動車メーカー各社が1日発表した第1・四半期の米自動車販売は増加した。トランプ大統領が予定する自動車関税の発表を控え、ピックアップトラックやSUVの販売台数が前年同期比で伸びた。関税措置により車両の価格は数千ドル上昇する可能性がある。
米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N), opens new tabは17%急増し、メーカー別で首位となった。韓国製のシボレー・トラックスなど手頃な価格のクロスオーバーSUV(多目的スポーツ車)の需要に支えられた。
フォード・モーター(F.N), opens new tabの販売台数は1.3%減少した。一部の車種の生産中止などが響いた。
一方、トヨタ自動車の北米部門トヨタモーター・ノースアメリカ(TMNA)(7203.T), opens new tabは約1%増加。
他のアジア勢でも、韓国の現代自動車(005380.KS), opens new tabのほか、マツダ(7261.T), opens new tab、ホンダ(7267.T), opens new tabが増加した。
米電気自動車(EV)大手テスラは2日に、第1・四半期の納入台数の減少を発表するとみられる。
調査会社コックス・オートモーティブは、第1・四半期の米国の新車販売台数が全体で0.6%増の379万台になると予測している。
こうした中、オークションサイトのオーナー、ダグ・デムーロ氏は関税について「多くの車両の価格がほぼ必然的に一夜にして大幅に上昇するだろう。そしてそれが売り上げの減少を招くことは間違いない」と指摘。
コックスは、自動車関税の発効によりインフレが上昇する可能性があり、これが「2025年の新車販売台数の抑制につながる公算が大きい」と述べた。
●中東情勢
●エマージング
中国の一部銀行が消費者向け融資の金利を引き上げ始めた。先月過去最低水準まで引き下げたばかりだったが、不良債権の増加懸念から方針を転換した。景気浮揚に取り組む政府に逆風となるとみられる。
銀行関係者やウェブサイトの情報によると、中国建設銀行(601939.SS), opens new tab、中国招商銀行(600036.SS), opens new tab、中国銀行(601988.SS), opens new tab、華夏銀行(600015.SS), opens new tabなどは、消費者向け融資の金利を少なくとも3%に引き上げた。1日から適用される。
中国政府は米国との貿易摩擦が激化する中、消費者信用を拡大し需要を押し上げようとしており、銀行は先月、貸出金利を過去最低となる2.5%程度に引き下げていた。
中国では消費者信頼感が依然として脆弱であり、金利上昇は借り入れ意欲を抑制する可能性があるとアナリストは警告している。
しかし国営銀行のある融資担当者は、低金利にはマイナス面もあると指摘し、資金繰り難に陥っている借り手が借り入れを増やして返済が滞れば、銀行の資産の健全性が損なわれる恐れがあると述べた。
また、一部の借り手は低金利の消費者向け融資を消費に回さず、高金利の住宅ローンの借り換えに利用しているとの懸念もあるという。
ナティクシスのシニアエコノミスト、ゲイリー・ウン氏は「政府は消費拡大を推進しているが、純金利マージンの急速な縮小と資産の質の悪化など、金融の安定性を懸念しているようだ」と述べた。
<不良債権の増加>
中国の主要国有銀行における総融資額のうち、個人向け消費者ローンの割合は2%程度に過ぎないが、不良債権は増加傾向にある。2024年末時点の個人向け融資の不良債権比率は、中国工商銀行(601398.SS), opens new tabで2.39%、中国農業銀行(601288.SS), opens new tabは1.55%と、いずれも20年以来の高水準となった。
渤海銀行では消費者ローンの不良債権比率が24年末時点で、前年の4.44%から12.37%に急上昇している。
中国交通銀行(601328.SS), opens new tabの幹部は先月の決算会見で、昨年から個人向け融資の返済不能リスクが全体的に高まっており、銀行の資産健全性に対する圧力は今年も続くと予想していると述べた。
INGの中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は、中国の高い貯蓄率に言及し、家計にお金があるものの支出に慎重になっているとの見方を示した。「より重要な要素は家計の信頼を回復することであり、そのためには健全な賃金上昇と資産価格の安定が第一歩となる」と述べた。
中国の民間不動産調査会社の中国指数研究院が1日に発表した3月の国内100都市の中古住宅価格は平均で前月比0.59%下落し、下落率は2月の0.42%から拡大した。新築住宅の価格は小幅ながら上昇したものの、不動産セクターの問題の根深さがうかがえる結果となった。
同じ100都市における新築住宅価格は0.17%上昇した。
中古住宅価格は前年比では7.29%下落した。2月は7.3%の下落だった。
中国の不動産政策が「下落を食い止める」ことに重点を置いているにもかかわらず、不振は続いている。3月上旬に発表された李強首相の政府活動報告では、不動産市場を安定させるための持続的な対策の必要性が強調された。
指数研究院は、一線都市を含む大都市が下落を食い止める努力を主導する可能性が高いと指摘。その上で、大都市圏と中小都市の格差は続くかもしれないとした。
フィッチ・レーティングスは3月29日付のリサーチノートで「中国の住宅不動産市場は、最近の幾つかの回復にもかかわらず、人口動態の変化、高水準の売れ残り在庫、住宅の手に入れにくさを背景に、継続的な課題に直面する可能性がある」との認識を示した。
●プロファイ、インフラ、自然災害
世界最大規模の政府系投資基金であるノルウェー政府系ファンドは31日、デンマークとドイツで建設が進む洋上風力発電プロジェクト2件の権益49%を14億ユーロ(約15億ドル)で取得したと発表した。
ノルウェー銀行(中央銀行)投資管理部門(NBIM)が独エネルギー大手RWE(RWEG.DE), opens new tabの二つの風力発電プロジェクトの株式を取得する。2025年7─9月期の初めには完了する見通し。建設と運営は独企業が担う。
RWEによると、両プロジェクトの発電能力は計2.64ギガワット(GW)。ドイツとデンマークの260万を超える世帯へ十分な電力を供給できる。
アナリストによると、これによりRWEの発電プロジェクトに対する権益の割合は約40億ユーロ縮小する一方、財務上は約1億5000万ユーロの利益獲得になるという
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
円が対ドルで上昇。米国の製造業・労働市場の悪化や、トランプ大統領の関税措置への警戒感から、安全資産とされる円が買われた。トランプ氏は輸入品に対する「相互関税」を発表予定で、米国経済への悪影響が懸念されている。
債券市場では、金利低下。トランプ政権の関税発表を控え、リスク回避の動きが強まった。株式市場はまちまちで、S&P500とナスダックは上昇、ダウは下落。EV大手テスラやハイテク株が上昇したが、ヘルスケア株が下落した。
金先物は利益確定売りで反落、原油先物も景気減速懸念で下落した。
ロンドン株式市場と欧州株式市場は反発。米政権の相互関税発表を控え、下落していた相場の買い戻しが進み、航空宇宙・防衛株や貴金属株が上昇。英FTSE250は0.59%高、ドイツDAXは1.70%高。
トランプ政権が輸入品に20%の関税を課す案を起草したとの報道がある中、英政府は経済連携の合意による関税撤回を期待。欧州株では銀行やテクノロジー株が上昇し、ユーロ圏の消費者物価指数(HICP)が鈍化したことで、ECBの利下げ観測が高まった。
ユーロ圏債券市場では国債利回りが低下。インフレ鈍化を受け、ECBの4月利下げの可能性が強まり、ドイツ10年債利回りは2.659%、イタリア10年債利回りは3.768%まで低下した。EUは米国の関税措置に対し、報復措置を準備していると警告した。