備忘録(2025/5/23-25)
●海外企業決算
●海外企業
●日本企業
日本製鉄は、ドナルド・トランプ米大統領がパートナーシップと表現したUSスチール買収について、条件付きで承認を得た。
取引の重要な側面についてはまだ詰める必要がある。だが、トランプ氏の発表により、日本製鉄が最終的に米国の鉄鋼市場に参入し、141億ドル規模のUSスチール買収合意時に想定した大規模投資を実行できる可能性が示された。
トランプ氏は合意をパートナーシップと定義したが、これは23日午後、両社に混乱を引き起こした。取引協議に関与する複数の関係者が明らかにした。日本製鉄とUSスチールは、日本製鉄がどの程度の持ち分を最終的に得られるのかについて、政権からの詳しい指針を求めていた。
トランプ氏は23日、トゥルース・ソーシャルへの投稿で、両社のパートナーシップにより少なくとも7万人の雇用が創出され、米国経済に140億ドルをもたらすと述べた。投稿によると、投資の大半は今後14カ月以内に実施される。
「長年にわたり、『USスチール』という名前は偉大さの象徴だった。そして今、再びそうなる」とし、本社はピッツバーグに残ると述べた。トランプ氏は5月30日、ピッツバーグのUSスチールの施設で集会を行う予定だ。
ホワイトハウスの当局者らは、取引条件に関する問い合わせについて今のところコメントしていない。
今回の発表は、トランプ氏とジョー・バイデン前大統領が反対していた物議を醸す国際的な取引にとって、注目すべき転換点となった。この取引は米国の鉄鋼業界を再編する可能性があり、長年の損失と設備投資の先送りで打撃を受けた古い工場を抱えるUSスチールに、潤沢な資金を持つ支援者をもたらすことになる。
トランプ氏が言及した日本製鉄の投資計画は、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などの報道を裏付けるものだった。すでに約束された主要プロジェクトには、インディアナ州ゲーリーとピッツバーグ近郊の工場の設備更新が含まれる。場所は決まっていないが、同社は新しい製鉄所を建設することも約束している。
事情に詳しい関係者によると、日本製鉄とトランプ政権は今後数週間で国家安全保障に関する合意を完了させる方向で作業を進めている。
日本製鉄は、北米事業を監督する別の取締役会を設置する予定。同社がトランプ政権に行った提案に詳しい複数の関係者が明らかにした。取締役会の過半数は米国市民で構成され、トップ経営陣も米国人となる。連邦監視官が任命され、支出に関する約束事項やその他の日本製鉄への要件を定めた国家安全保障合意の順守状況を監督する。
投資家はこの発表で大きな障害が取り除かれたと受け止めた。USスチール株は23日の米株市場で21%余り上昇した。同社株は数カ月にわたり、規制上の障害を巡る懸念から、日本製鉄の1株55ドルという買収提案価格を大幅に下回って取引されていた。
USスチールのライバル企業の株価は下落した。クリーブランド・クリフスは7%安、スチール・ダイナミクスは3.5%安、ニューコアは2%安となった。
日本製鉄の経営陣は、USスチールの完全子会社化を求めてきた。設備や製鉄技術への大規模な支出は、会社全体を所有しなければ不可能だと主張していた。
それでも、トランプ氏の発表は取引に近い関係者らにとって「良いニュース」と受け止められた。トランプ氏が避けたかった買収という表現を使わずに、日本製鉄が取引完了に一歩近づいたと述べた。
日本製鉄とUSスチールは別々の声明で、米国の労働者と産業を保護するトランプ氏の取り組みを称賛。USスチールは声明で「トランプ大統領は、米国、米国の労働者、米国の製造業にとって最良の取引を実現する方法を知っている大胆なリーダーであり、実業家だ」と述べた。
トランプ氏はこれまで、日本製鉄による買収案に反対し、USスチールは国内所有のままであるべきだと述べていた。今年に入り、USスチールの所有権ではなく投資に関して日本製鉄に前向きな姿勢を示していた。
ここ数カ月間、日本製鉄の経営陣は計画や支出に関する約束について説明するため、ワシントンでトランプ政権の当局者らと数回会談した。
日本製鉄は今回の大型買収提案で、競合他社を上回る内容を示した。それ以来、日本製鉄は懐疑的な労働組合幹部、市長、政治家らの支持を得るため、USスチールの工場への投資を約束してきた。
全米鉄鋼労働組合(USW)は一貫して取引に反対してきた。USWは日本製鉄が数十年にわたり、不当に安価な輸入品を販売することで米国の鉄鋼市場を損なってきたと非難している。
USWのデーブ・マッコール委員長は23日、「われわれの懸念は引き続き、長年にわたり貿易法に違反してきた外国企業である日本製鉄が、国内の製鉄能力をさらに低下させ、数千人の良質な組合員の雇用を危険にさらすことだ」と述べた。
日本製鉄は、2026年までの労使協約期間中はUSスチールと労働組合の合意を尊重し、解雇や工場閉鎖を控えることを約束した。
総務省は23日、一部の地域で第5世代(5G)移動通信システムの基地局開設とサービスの提供が計画より遅れているとして、楽天モバイルを行政指導した。遅延を取り戻すための計画をまとめ、早期に基地局の開設やサービス提供するよう求めた。
総務省によると、楽天モバイルは関東や東海、近畿以外の1.7ギガヘルツ帯の5Gについて、2024年12月に基地局を運用し、25年3月ごろにサービスを開始する計画だった。3月時点で基地局の運用もサービスも提供されておらず遅れがみられた。工程管理が不十分だったと説明しているという。
楽天モバイルは「体制の見直し、強化を図ることで計画順守の徹底に取り組む」とのコメントを出した。取り組み状況についても毎月報告する
5G基地局の開設遅れを巡っては、総務省はソフトバンクやKDDIにも行政指導したことがある。
日本生命保険が23日発表した2025年3月期の決算は、グループ全体の本業のもうけにあたる基礎利益が前の期比32%増の1兆109億円だった。基礎利益が1兆円を超えるのは初めてで、過去最高となった。金利上昇や株高を受け運用によって得られる利差益が拡大し、業績をけん引した。
利差益は94%増の5512億円で、過去最高となった。日本生命は24年度から3カ年の中期経営計画で、35年度までに基礎利益を1兆4000億円ほどに拡大する目標を掲げる。同日記者会見した赤堀直樹副社長は「良いペースで来ている」としつつ「運用環境はボラタイル(変動が大きい)なので、手放しで喜ばしいことではない」と述べた。
売上高にあたる保険・サービス収益は6%減の8兆3895億円だった。市場縮小で金融機関の窓口を通した保険販売が落ち込んだほか、主力の営業職員チャネルでの販売も減った。傘下の大樹生命保険では外貨建て一時払い商品の販売が減少し減収となったほか、再保険収入が減少したニッセイ・ウェルス生命保険も減収となった。
日本生命は同日、26年度から新たに長期継続配当を始めると発表した。契約後10年から、5年ごとに配当を支払う。まずは原資として100億円を準備する。養老保険や終身保険などの契約者が対象となる。
●トランプ関連
ドナルド・トランプ米大統領は23日、欧州連合(EU)からの輸入品に50%の関税を課す可能性があると警告した。また、国外で生産されるiPhone(アイフォーン)などのスマートフォンに新たな関税を課すことも辞さない姿勢を示した。
トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、EUは貿易において「対応が非常に難しい」と述べた。その約30分前には、アップルと同社のティム・クック最高経営責任者(CEO)に対し、国外で生産されるiPhoneに少なくとも25%の関税を課すと警告していた。
トランプ氏は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に、「かなり前からアップルのティム・クック(最高経営責任者)に、米国で販売されるアイフォーンはインドでも他の国でもなく、米国で生産されることを期待すると言ってきた」と投稿。
そのうえで、「そうでなければ、アップルは米国に少なくとも25%の関税を支払わなければならない」と続けた。
トランプ氏は大統領執務室で23日、関税は「サムスンやその製品を製造する全企業に適用されるだろう。そうでなければ公平ではない」と述べた。トランプ氏は国外でスマートフォンを製造する企業に言及しているようだった。関税は6月後半に課される可能性が高いとした。
こうした発言は、より多くの製造業を米国に移転するよう最高経営責任者(CEO)に圧力をかけ、ホワイトハウスが不公平だと主張する通商政策を持つ同盟国を罰するというトランプ氏の取り組みの一環だ。ホワイトハウスの当局者によると、クック氏は今週、ホワイトハウスでトランプ氏と面会した。
ホワイトハウスからは今のところ追加のコメントは得られていない。アップルはコメントを控えた。EUの代表者もコメントを控えた。アップル株は23日の米株市場で3%下落した。
トランプ氏は当初、EUから輸入品に20%の関税を課したが、その後、交渉の余地を残すため90日間停止された。10%の一律関税は維持され、自動車など一部のEU製品には高い関税率が適用されている。
トランプ氏は長年、欧州諸国の通商政策を批判しており、23日午前のソーシャルメディアへの投稿で、EUとの通商協議はほとんど進展していないとし、「協議は行き詰まっている!」と述べた。また、50%関税が6月1日に発効するとした。
トランプ氏は大統領執務室で記者団に「ディールを求めているわけではない」と語った。数分後、EUは関税を回避するため合意を望んでいるだろうとし、「どうなるか見守るが、現時点では6月1日に発効するだろう」と述べた。トランプ氏は、欧州の非関税障壁、規制、米企業に対する訴訟を、この警告の主因として挙げた。
欧州当局者らは、ここ数日間、協議は進展しているとの慎重ながらも楽観的な見方を示していた。ただ、双方の立場には依然として大きな隔たりがあることを認めていた。
EUは、トランプ氏の要求の一部、特に付加価値税に関して譲歩する意思はない。トランプ政権は付加価値税は不公平な通商慣行とみなしているが、欧州委員会のバルディス・ドムブロフスキス委員(経済・生産性担当)は交渉の対象外だと述べている。
トランプ氏が中国製品に対する関税を引き上げた後、アップルは米国向けiPhoneの大半をインドで製造する取り組みを加速させた。そうすればインドを「原産国」として申告し、同国に適用される低い関税を支払えばいいことになる。
スコット・ベッセント財務長官は23日のFOXとのインタビューで、トランプ政権がアップルに対し、米国で半導体を製造するよう説得を試みていると述べた。
「われわれの最大の脆弱(ぜいじゃく)性の一つは、特に半導体における国外生産だ。アップルの部品の大部分は半導体だ」とし、「アップルには半導体のサプライチェーンをより安全にするのを手伝ってもらいたい」と語った。
ベッセント氏は、今週に入りクック氏と会談したと述べた。
テクノロジーの専門家らは、一部のiPhone製造を米国に移転することは可能だが、iPhone部品の全てを米国で製造し組み立てることは、困難でコストがかかると指摘。iPhoneには多くの国から調達された高度な部品が使用されており、主に中国で組み立てられている。米国には中国で発展したインフラに匹敵する施設がなく、その規模でiPhoneを組み立てる熟練労働力もいない。
アップル株の下落幅は市場全体よりもやや大きかったが、国外製造のiPhoneに25%関税が課されるとの投資家の懸念を示すほどではなかった。モフェット・ナサンソンのアナリスト、クレイグ・モフェット氏は「市場は明らかに、これは単なる交渉だと結論付けている」と指摘した。
同氏は、アップルにとって最終的な結果は、一部の部品を米国で追加製造することになるだろうが、iPhone本体は米国では製造しないと予想している。
ドナルド・トランプ米大統領が欧州連合(EU)に対して突如、追加関税をちらつかせた背景には、EUの税制、規制、対中国の姿勢を巡り、政権内の経済チームの不満が高まっていることがある。
事情に詳しい複数の関係者によると、トランプ氏の顧問らは、EU加盟国の貿易に関する優先順位の違いが協議を遅らせているとして、欧州当局者らに非公式にいら立ちを示していた。また、協議に対するEUの慎重な姿勢や、ストリーミングサービスの手数料、付加価値税、自動車規制、独占禁止法違反での米企業への制裁金など、米国の懸念に対する具体的な提案を示すことに消極的な姿勢についても不満を漏らしていた。
関係者によると、トランプ政権当局者らは対中圧力を強めることを目指しているが、EU首脳からは中国に対して新たな関税を課すというコミットメントは今のところ得られていない。米国との個別の貿易交渉の一環として、英国は中国製鉄鋼に関税を課す方向で合意し、これが今月、トランプ氏が発表した米英貿易協定につながった。EUの姿勢に詳しい関係者によると、EU当局者らは中国のような非市場経済に対処する意思を示している。
米国とEUの緊張は23日午前に沸点に達し、トランプ氏は欧州からの輸入品について、6月1日から50%関税を課すことも辞さない姿勢を示した。
トランプ氏は23日、大統領執務室で、少なくとも現時点ではこの脅しを実行に移す意向を示唆し、EUとの「取引は求めていない」と述べた。
トランプ氏は長年、公の場でも非公式な場でも欧州に対する怒りをあらわにしており、米国の一部の敵対国以上に欧州首脳をたびたび激しく非難してきた。
トランプ氏の強硬な交渉戦術は、加盟国と協議を重ねてプロセスを重視するEU首脳のアプローチとは対照的だ。
トランプ氏がソーシャルメディアに投稿した脅しのような内容は、ここ数日間、貿易協議が進展し始めたことに楽観的な見方を示していたEU当局者や外交官らにとって予想外だった。
事情に詳しい関係者によると、EUと米国は最近、貿易協議での議論の可能性がある点を記した文書を交換し、一部の欧州外交官はこれを前向きな進展と捉えていた。また、EUは非公式に、中国の主要産業に対する補助金に対処するため米国と協力する用意があることを示唆していた。
マロシュ・シェフチョビッチ欧州委員(通商担当)は、トランプ氏のソーシャルメディアへの投稿後、米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表やワード・ラトニック商務長官と電話会談した。
シェフチョビッチ氏は電話会談後、EUは米国との貿易協議に全面的に関与しているが、自らの利益を守る用意もあると述べた。同氏はソーシャルメディアへの投稿で、米国とEUの貿易は他に類を見ないとしつつ、「脅しではなく、相互の尊重に基づくべきだ」と述べた。EU当局者は23日、中国は米国とEU間の協議における主要な懸案事項ではないと述べた。
EUとトランプ政権は貿易協議に対する基本的なアプローチが異なる。トランプ氏は早期の協定締結発表を望んでいる。
欧州委員会は貿易政策を担当する執行機関だが、加盟27カ国と定期的に連絡を取り、アプローチについて合意を得るようにしている。こうしたプロセスのため、EUの動きは遅くなりがちで、これがトランプ政権の大きな不満の源となっている。米当局者によると、スコット・ベッセント財務長官は今週、カナダで開かれた財務相会合でEU当局者らに貿易協議のペースに関する懸念を表明した。
EUはこれまでトランプ氏の要求の一部に対して断固とした姿勢を示している。当局者らは、トランプ政権が批判し、EUや多くの経済圏が非差別的とみなしている付加価値税を変更する予定はないと述べている。また、保健・デジタル規制も変更しないとしている。
EUの外交官は23日、トランプ氏が関税の脅しを実行に移すつもりなのかを同氏の投稿から判断するのは難しいと述べた。「トゥルース・ソーシャルの投稿に基づいて政策を決めることはできない」と述べた。
ベッセント氏は23日のFOXニュースのインタビューで、50%関税の脅しが「EUに火をつける」ことを期待すると述べた。
●先進国中銀、金融当局
ベッセント米財務長官は23日、銀行の米国債取引に制約を与えてきた規則について、今夏にも当局が緩和する可能性があると述べた。
ベッセント氏は、いわゆる補完的レバレッジ比率(SLR)について、見直しに「非常に近づいている」とブルームバーグテレビジョンとのインタビューで発言。米連邦準備制度理事会(FRB)、通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)がこの問題に取り組んでおり、「夏にかけて何らかの動きがある可能性がある」と述べた。
その上で、SLRが緩和されれば「米国の市民や機関による債券購入が増える可能性がある」とし、米国債の利回りが数十ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下するだろうとの見方を示した。
銀行の自己資本規制の一つであるSLRから国債が除外されれば、銀行は中核的自己資本比率に影響を与えずに、より多くの国債を購入できる。
新型コロナ禍の局面ではSLR規制は一時的に停止されていたが、その後、再び適用が再開された。ベッセント氏とパウエルFRB議長は、これまでにも同規則の見直しを支持する姿勢を示している。
米国債は下落が続いている。指標10年債利回りが4.5%を上回っているほか、30年債利回りも5%を超えている。
ベッセント氏は、市場の動向について「特に心配していない」とし、国債利回りの上昇は日英独などでも見られる「世界的な現象だ」と述べた。
同時に最近の米債利回りの上昇は米税制法案を巡る懸念によるものだとの見解を一蹴。「この法案は成長を生み出す」とし、「米債務の動向について心配していない。なぜなら成長の軌道が変わればその多くが解決するからだ。来年の今頃には(GDP成長率が)3%を超えているだろう」と語った。
さらに米国債に対する海外からの需要は依然として堅調だと指摘。自身がアクセスできるデータによれば、外貨準備運用当局や政府系ファンド(SWF)、年金基金など国家的な海外機関が最近の入札でより多くの米国債を購入していると明かした。
ドル安などの外為市場の動きについては、日独の経済政策に反応しているとし、「ドルが弱くなってるというよりも、他国の通貨が強くなっているということだと思う」との見解を示した。
欧州中央銀行(ECB)は6月の次回理事会でも主要政策金利の追加引き下げを決める見通しだ。しかし、経済が懸念されるよりも持ちこたえていることや、インフレ率の拡大が忍び寄り始めているため、さらなる追加利下げは見送られるとの見方が強まっている。
ECBはここ1年、消費者物価指数(CPI)の高騰をほぼ収束させ、トランプ米大統領が輸入品への関税を引き上げたことを受けた世界的な貿易戦争、トランプ政権の不安定な政策、欧州連合(EU)加盟国に深く根付いた非効率性によって低迷した経済成長の押し上げに焦点を移し、金融緩和を急速に進めてきた。
ECBは過去8回の理事会のうち7回にわたって利下げを決定し、経済に息抜きの余地を与えた。しかし、今になって経済の短期的な見通しと長期的な見通しの乖離の調整を迫られている。
欧州のインフレ率は今後数カ月間にわたってさらに縮小し、ECB目標の2%を下回る可能性もある。
一方、より長期的には政府支出の急増、グローバル化、貿易障壁、生産年齢人口の減少による労働市場のストレスなどが全て物価の押し上げ要因となる公算が大きい。
ECBが次回理事会で利上げを決定することは予想に十分織り込まれているため、理事会メンバーはより長期的なリスクを考慮したその後の数カ月についてのシグナルを発している。
ECBのタカ派のシュナーベル専務理事は「関税は短期的にはディスインフレをもたらすかもしれないが、中期的には上昇リスクをもたらす」とし、ECBが利下げを一時停止すべきとの見解を明確に示した。その上で「仮にEUが(トランプ関税への)報復措置を取らなかったとしても、世界のバリューチェーンを通じて生産コストが上昇すれば外需の減少によるディスインフレ圧力が相殺され、関税は全体としてインフレにつながる可能性がある」と訴えた。
ECB理事会メンバーとしての在任期間が最長のクノット・オランダ中銀総裁も「需要減は即時的なショックをもたらすため、短期的にはインフレ率の鈍化につながるだろう」としつつ、「しかし供給ショックは中長期的にインフレ率拡大につながる可能性がある」と警鐘を鳴らした。
これは貿易障壁があらゆる人にとって価格上昇をもたらし、本質的にコストのかかる生産の細分化につながるという指摘だ。
特に米国と中国が極めて高い関税を互いに停止する合意に達した後のこの数週間で、長期的な期待インフレ率がじりじりと上昇している。
これはECBにとってはコミュニケーション上の問題を引き起こす。
エネルギー価格の下落、経済の低成長、為替相場でのユーロ高、米国での関税引き上げに直面する製造業者によるダンピングにより、2026年にさしかかってインフレ率が2%を下回るようなことがあれば、ECBが金融緩和策を講じることを期待する向きも出てくるだろう。
<一時停止の場合>
この背景には金融政策が物価に影響を与えるのは1年―1年半先になるため、目先のことについてはほとんど無力と考えられているからだ。
ソシエテ・ジェネラルは顧客向けのメモで「問題はECBがこのアンダーシュート期をあえて『見通す』のか、それともインフレ率がさらに縮小するのに伴って期待インフレ率の固定化に対する懸念が高まるかだ」とした上で、「貿易戦争の緊張が緩和し、経済指標が堅調なため(ECBは)7月に利下げする必要性に確信が持てず、より多くの情報を収集するために6月の(理事会)後は(利下げを)一時停止する可能性が高まっている」との見方を示した。
投資家らもECBが6月の理事会で利下げを決定後は一時休止し、2025年末までに主要政策金利である預金金利をさらに25ベーシスポイント(bp)引き下げて1.75%にすると予想している。
理事会メンバーは金融政策の明確なシグナルを出したがらないが、フランソワ・ビルロワドガロー・フランス中銀総裁、オッリ・レーン・フィンランド中銀総裁、ピエール・ウンシュ・ベルギー中銀総裁ら複数のメンバーがハト派的なシグナルを発信しており、6月の次回理事会で利下げを決めるとの観測が強まっている。
また、オフレコで話す他のメンバーらは、6月の利下げ決定は大方決まっており、本当の焦点は7月以降のことだと訴える。彼らは今こそ利下げを一時停止するのが必要であることを明らかにしようとしている陣営が既に目につくと指摘している。
仮に7月の理事会で利下げを見送っても、貿易戦争が既に打撃を与えているため、理事会メンバーは今年後半に金融緩和をさらに進めるバイアスを維持する公算が大きい。
TSロンバードは「ECBの金融緩和バイアスは健在だ」との見解を示している。
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
米国の格付け会社2社が、保険会社のプライベート・クレジット投資のスコアの信頼性をめぐり、異例の公の論争に巻き込まれている。
この論争は、小規模格付け会社が、大規模で実績のある会社よりもプライベート・クレジット投資に高いスコアを付与しているという調査(その後、発表者は撤回)をめぐるものだ。クロール・ボンド・レーティング・エージェンシーは、フィッチ・レーティングスがこの調査を根拠に格付けの質に疑問を投げかけ、市場参加者に誤解を招いたと非難した。
フィッチは月曜日、全米保険監督官協会(NAIC)が2024年に発表した調査に基づき、クロールをはじめとする格付け会社を批判する報告書を発表した。
フィッチの広報担当者は報告書の内容を支持し、保険監督官のグループが以前の調査でも同様の結論に達していると主張した。「(協会が)新たな情報を提供すれば、分析を更新します。」
この異例の露骨な争いは、急成長を遂げ利益率の高い1兆6000億ドル規模の民間信用業界における、縄張り争いの激しさを浮き彫りにしている。これは貸し手間だけでなく、市場の不透明な投資商品の信用力を審査するために報酬を得ている団体間の競争で
もある。「保険業界にはリスクが蓄積しており、適切に監視されていない担保付き融資セクターにもリスクが蓄積している可能性がある」と、ムーディーズの元シニアアナリストで現在は格付け会社クレジットスペクトラムのCEOを務めるアン・ラトレッジ氏は述べた。「この不透明性とリスクは、いずれもSEC(証券取引委員会)の規制下にある現在の信用格付け業界の基盤に亀裂が生じていることに起因している」
保険会社やその他の投資家は、公開格付けがない場合に、プライベートレター格付けと呼ばれるこの種の格付けを使用します。大手格付け会社は歴史的に、プライベート信用商品に対するこの種のスコアの発行を避けてきたため、市場は小規模な格付け会社によって支配されています。
JPモルガンのアナリストは最近のレポートで、プライベートレター投資は「透明性の欠如と潜在的な格付けインフレを考慮すると、本質的にリスクが高い」と述べ、「プロセス、分析、情報のいずれの部分も外部から透明ではないため、外部から信用力を評価することは本質的に難しい」と付け加えた。
世界金融危機後に設立され、既存の信用格付け機関にいち早く挑戦したクロールは、大手のライバルが「統計的に根拠のない」調査を誇張していることに懸念を表明した。同社は、フィッチの批判は自社の市場支配を後押しする狙いがあるように見えると述べた。
「プライベートクレジットの市場シェア拡大を目指して関連性を追求する中で、フィッチは格付け機関にとっての2つの基本原則である誠実性と分析の厳格さを軽視したようだ」とクロール氏は声明で述べた。
NAICの調査は、2023年末時点で総額約3,500億ドルに達した保険会社のプライベートクレジット投資に対するプライベートレター格付けの上昇に焦点を当てた。
小規模な格付け会社が非公開で発行した格付けは、協会独自の証券評価機関によるスコアから乖離する傾向が高く、平均的に著しく高いことが判明した。当初の報告書によると、クロールのような小規模な格付け会社は協会の内部スコアより3段階高い格付けを提供する傾向があったのに対し、フィッチのような大手格付け会社は約2段階高い格付けを提供していた。
この調査では、米国の保険会社が保有する民間格付けの証券の数が2019年の2,850件から2023年には8,152件に増加し、イーガン・ジョーンズ、クロール、モーニングスターなどの中小規模の信用格付け会社によって格付けされた証券の割合が2023年には86%に増加したことも明らかになった。
報告書はまた、フィッチが米国の三大格付け機関の中で、S&Pグローバル・レーティングやムーディーズ・レーティングを上回り、プライベートレター格付けのトッププロバイダーであると指摘した。
しかし今月初め、保険協会は「提示された分析を明確にするためにさらなる編集作業を行う」ため、ウェブサイトからレポートを削除すると発表した。
同保険協会は、名前は伏せたものの、「我々が国民に提供する情報がどのように誤解されるか、あるいは不適切に利用される可能性があるかを評価する」と述べた。
NAICはコメントの要請を拒否した。
米国債の入札はトイレの配管のようなものだ。何か異常があるときにだけ注目される。21日は入札の不調をきっかけに相場が急落したが、これは2023年終盤以来のことだった。スピルオーバー(漏出)を懸念すべき正当な理由がある。
今回の入札自体は平穏無事に終わるはずだった。およそ160億ドル(約2兆3000億円)相当の20年債の入札で、それほど注目を集めるはずのものではなかった。しかし、通常よりも需要が少なく、入札前の予想と比べて価格が下がったため、政府の借り入れコストが上昇した。
需要の低迷はそれ自体、良いことではない。ただ、より広範な市場の反応はひどいものだった。株価は1.5%下落し、債券利回りは急上昇した。そして最悪なのは、利回りが上昇したにもかかわらず、ドルが下落したことだ。30年債利回りは22日、2023年の水準を上回り、2007年以来の高水準となった。配管工を呼ぶときが来た。
今起きている大きな三つのことについて述べようと思うが、まず1点注意してほしい。それは、今回の入札で米政府が資金を調達できなかったわけではなく、政府が発行する債券の購入が拒否されたわけでも、米国債市場が崩壊したわけでもないということだ。投資家がリスクに対して、より高い利回りを要求しているということであり、これは悪い兆候だ。
一つ目に、投資家は米国の借り入れが制御不能になっているのではないかと懸念している。22日に議会下院を通過したドナルド・トランプ大統領の減税法案は、既に巨額の政府債務を今後10年間で何兆ドルも増やすものだ。これは、米国債が先週、唯一残っていた最上位の「AAA」の格付けを失った理由の一つだ。米経済が既にフル稼働に近い状態にある中で借り入れが増えれば、インフレ圧力が高まり、連邦準備制度理事会(FRB)がより高い金利をより長く維持することにつながる可能性がある。投資家は埋め合わせのために、より高い利回りを求める。金利コストの増加は、結果として、さらなる借り入れにつながる。そして、政治家は赤字を抑制できるほど十分な歳出削減や増税を行うことに消極的なように見える。
二つ目は、トレーダーたちが常に、資金の流れに関する調査やデータを追跡しながら他の投資家の見方を予想して動いているということだ。しかし、国債入札で応札が低調だったことは、長期債への需要がトレーダーらの予想より少ないことを明確に示した。経済学者ジョン・メイナード・ケインズは、市場を「美人コンテスト」に例えるという素晴らしい発想を提供した。このコンテストで重要なのは、自分が一番美しいと思う存在を選ぶことではなく、自分以外の審査員がどの出場者を一番魅力的に感じて選ぶのかを予想することだ。今回の国債入札でトレーダーたちは、他の投資家が利回り5%未満の長期債に魅力を感じると考えていたが、その予想は外れた。
そして三つ目は、インターコンチネンタル取引所(ICE)のドル指数が下落していることだ。同指数はやや値を戻したものの、0.6%安で終わった。長期債利回りが大幅に上昇したにもかかわらず、それがドル買いにつながらなかった。筆者は今週、ABUSAトレードについて書いた。ABUSAとは「Anywhere But U.S.A.(米国以外ならどこでも)」の略で、21日にはこうした取引が活発になった。
ある意味、市場は水漏れを直すため独自に配管工を手配する。利回りが上昇すれば、その債券の買い手が増える。ドル相場が下落すれば、外国人投資家にとってこうした高利回りの債券の魅力がさらに高まる。しかし、国債利回りが上昇すれば、企業の借り入れが難しくなったり、住宅ローン金利が上昇したりする。また、ドル相場の下落は、買い手がさらに買い得な水準になるのを待つ中で、本当に必要とされる以上のペースで進みかねない。
米国の状況をより困難にしているのは、日本でも長期国債利回りが同様に上昇していることだ。今週行われた日本国債の入札は非常に低調で、30年債利回りは四半世紀前に発行が開始されてから最も高くなった。日本は最大の米国債保有国で、その大半は政府の外貨準備のためだが、日本の国内市場がより魅力的に見え始めれば、投資家は利回りを求めて米国債に向かう必要性を感じにくくなるだろう。
2023年に利回りが急上昇したとき、当時のジャネット・イエレン財務長官は長期国債の発行ペースを落とした。これは一時的に安心感をもたらしたものの、過剰債務という根本的な問題を解決するものではなかった。スコット・ベッセント現財務長官はかつてイエレン氏の短期国債依存を強く批判していたが、同氏の手法を継続することに決めた。盛んに論じられている銀行の自己資本規制の緩和は、金融機関に国債の保有拡大を促すことになり、利回り上昇圧力も緩和するかもしれない。
2023年のように、すべてが丸く収まる可能性がある。当時はインフレ率の低下や経済成長を受けて株高が加速し、外国人投資家の参入が増えたことで、過剰債務の症状はなくなった。だが、根本的な問題は残っており、政治家たちは痛みを伴ってもこの問題を解決する価値があるということをまだ受け入れていない。事態の収拾がつかなくなる前に、彼らはその問題を解決すべきだ。
ドイツのサンダルメーカーのビルケンシュトックやデンマークの宝飾品企業パンドラなど、一般消費者を相手に世界で事業を展開する企業は、トランプ米大統領の関税引き上げに伴うコスト上昇を分散させるため各国で値上げを検討している。米国だけで大幅に値上げすれば、米国での売り上げが打撃を受ける可能性があるからだ。
消費者物価がようやく安定し始めた欧州連合(EU)や英国のような市場でもインフレをあおる可能性があるため、中央銀行は警戒を強めている。
ビルケンシュトックの最高財務責任者(CFO)は先週、世界全体で「1桁台前半」の値上げをすれば米国の関税引き上げの影響を相殺できるとの見方を示した。
パンドラのアレクサンダー・ラシク最高経営責任者(CEO)は世界的に値上げを実施するか、同社にとって最大市場の米国でより大きく値上げするかを協議していると明らかにした。
ドイツ西部ボンにあるコンサルティング会社サイモン・クチャーのパートナー、マーカス・ゴラー氏は「企業は関税の配分を真剣に考えている」とした上で、「米国外のメーカーは、米国市場での製品価格をそれほど上げられないため米国で少し値上げし、欧州や他の市場でも少し値上げしようと言うかもしれない」と指摘した。
トランプ氏は全ての輸入品に一律10%の基本関税を課した上で、貿易相手国に応じた「相互関税」も適用すると脅している。
米小売大手のウォルマートが関税強化のために値上げを余儀なくされると説明すると、トランプ氏はソーシャルメディア(SNS)に「(ウォルマートは)関税を食べろ(吸収しろ)」と投稿した。
企業が米国以外の市場で値上げを発表することは、トランプ氏から同じような反発を受けることを避けるための方法かもしれない。
米シカゴ大学経営大学院のジャンピエール・デュベ教授(マーケティング論)は「米国に入ってくる製品が関税の対象になるのであれば、米国内で値上げをしなければならないのは算数で明らかだ」としつつ、「しかし米国の関税のためだけに値上げをしたとホワイトハウスから非難されることを避けたいので、どこの国でも値上げしていることを証明できれば(中略)一種の盾になる」と言及した。
米ミシガン州立大のジェイソン・ミラー教授(供給網運営論)は、小売企業は消費者があまり価格を気にしない商品や特定の市場で値上げし、価格に敏感な商品や国では値上げを抑えることができると指摘。「米国だけで展開する企業は価格を12%引き上げなければならないかもしれない。しかし、グローバル企業であれば他の市場での価格設定で勝負できるため、8%の値上げで済む」と解説した。
英イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は今月、「グローバル企業が(関税率の)違いを区別せず、世界中に通用する価格ソリューションを適用する」ことの問題を指摘して「私たちはそれを注意深く見守る必要があると思う」と述べた。
<インフレの不確実性>
ユーロ圏のインフレ率は、欧州中央銀行(ECB)目標の2%にようやく近づいてきた。ECBが3月下旬に実施した欧州企業に対する調査によると、小売部門の物価上昇率は低水準に抑えられた。しかし、それはトランプ氏が4月2日に「相互関税」を発表し、中国からの輸入品の関税を145%に引き上げる前のことだ。
米国の対中関税は先週、30%へ引き下げられたため、欧州の企業の一部は以前より安く商品を調達できるようになった。
欧州17カ国で衣料品を販売するタッコファッションのマルティーノ・ペッシーナCEOによると、米国の小売企業が中国のメーカーからの注文をキャンセルしたため、中国のメーカーはより安い価格を提示して輸送コストも下がったと説明する。その上で「私たちには分からないのは、米国でインフレが起こるかどうかと、そのインフレが欧州に波及するかどうかだ」と話す。
一部の大手企業は、米国外での値上げを否定している。ドイツのアディダスのビョルン・ガルデンCEOは4月下旬の決算発表後、投資家に対して「米国の関税のために米国外で値上げする理由はない」とし、「関税に関する議論は米国内だけのものだ」と語った。
しかしECBのシュナーベル理事は今月の講演で、米国の関税が今後インフレをもたらすかもしれないとして「投入コストへの打撃を補うため、企業は関税の影響を直接受けない商品の価格も引き上げる傾向がある」と言及した。
米ユタ大のハル・シンガー教授(経済学)は「企業の顧客にとって製品の総コストのうち関税が適用されるのはどの部分なのか、あるいは適用される関税率さえも知ることは非常に困難だ。このような情報の非対称性は、新型コロナウイルス禍の期間と同じように悪用されやすい環境を生む」との見解を示した。
米国の消費者の1年先の期待インフレ率は4月に6.7%と、1981年以来の高水準に跳ね上がった。ユーロ圏でも、消費者の期待インフレ率が上昇している。
ミシガン州立大のミラー教授は「消費者がインフレを見込んでいるのならば、企業にさらに少しの値上げ余地を与えることになる」と説明した。
人工知能のブーム、データセンター増設の切迫した必要性、そして特に交通機関におけるエネルギー転換の話題は、いずれも電力需要を刺激しており、既存の電力インフラはそれに追いつくのに苦労している。
専門家はCNBCに対し、新たな需要地の出現により電力供給許可申請が前例のないほど増加しているため、企業は老朽化し逼迫した欧州の電力網への接続に5~8年もの待ち時間に直面していると語った。IEAによると、世界のクリーンエネルギープロジェクトのうち少なくとも1,500ギガワットが送電網接続不足のために停止または遅延しており、各国が環境目標を達成するには約7,000億ドルの送電網投資が必要だという。
マッキンゼーのパートナーであるディエゴ・エルナンデス・ディアス氏は、データセンターはコンピューティングプロセス用のサーバーを収容し、しばしば膨大な量の電力を必要とする大規模施設であり、電力網への接続をめぐる競争の激化の「主役」であると述べた。
同氏はCNBCに対し、顧客からは送電網への接続に最長8年かかるとの報告があると語った。
「ヨーロッパには、既に2人、3人、あるいはそれ以上の人が同時に同じノードに接続しようとしているという状況に直面している送電事業者が存在します。…個々の接続ポイントには、誰が最初に接続できるかを競う文字通りの待ち行列ができています」と彼は説明した。
電気集約型産業を専門とするヘルナンデス氏は、過去18ヶ月間、ほぼ全ての業務がデータセンターに集中していたと述べた。同氏は、この分野が今後6年間で年率20%の成長率で成長すると予測している。巨大テクノロジー企業がAI市場を席巻しようと競い合う中、大規模言語モデル(LLM)の学習に必要な設備の需要は今後も指数関数的に増加すると予想されている。
エネルギー管理会社シュナイダーエレクトリック
1月の報告書では、エネルギーが制約されている地域では送電網接続に3年から5年の待ち時間があり、欧州は差し迫った電力危機に直面していると警告した。
「一種の競争のようなものです」と、シュナイダーエレクトリックのAIとデータセンター担当チーフアドボケートのスティーブン・カルリーニ氏はCNBCに語った。「多くの企業が可能な限り多くのキャパシティを展開しようとしています。しかし、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の数、利用可能な電力、そして許可によって制約を受けています。」
「一部の国では、年間に(送電網に接続するための)申請が1件か2件だった状況が、今では1,000件にまで増えています」とカルリーニ氏は述べた。
マッキンゼーのディアス氏は、この問題解決の鍵となるのは、必要な投資額だけでなく、それをどれだけ迅速に展開できるかだと述べた。また、高電圧送電網運用者の業務がますます複雑化していること、そして年間400キロメートルの送電線建設を2,000キロメートルにまで拡大する必要があるドイツの例を挙げた。
ディアス氏は、送電網への接続をめぐる競争は2025年には「維持されるか、あるいは激化する」と予想している。
海底ケーブルメーカー、ネクサンスのイノベーション担当副社長、ジェローム・フルニエ氏は、同社には70億ユーロから100億ユーロ(72億8000万ドルから104億ドル)という「膨大な」受注残があると述べた。ネクサンスのケーブルは、風力発電所や太陽光発電所で発電された電力を送電し、家庭や企業に電力を供給するために使用されている。
「誰もが考えている。我々の計画にはまだ他のプロジェクトを製造する余地があるだろうか?」と彼は語った。
フルニエ氏はCNBCに対し、ネクサンスのような企業は、洋上風力タービンの相互接続といった小規模プロジェクトのための枠も確保しておくべきだと述べた。「計画の負荷、収益性、そしてこの種の電化の間で適切なバランスを取る必要があります」と彼は述べた。
新しい電力エコシステム
シュナイダーエレクトリックのカルリーニ氏によると、電力制約により、データセンター運営者は独自の「電力バックアップのエコシステム」を開発する必要に迫られている。
将来的には、データセンターがグリッドエコシステムの中心となることが予想されており、特に小型モジュール原子炉(電気を生み出す小型原子炉)を使用して独自の電力を生成できるようになると予想されます。
カーリーニ氏は、バッテリーストレージと戦略的充電もますます重要になっていると述べた。これらのシステムは、電力網からの電力を一時的に貯蔵し、追加のバックアップを提供することを可能にする。
電力ソリューションプロバイダーAVKのCEOベン・プリチャード氏は、一部の欧州諸国はこれまでに見たことのない規模の100メガワットの大規模な送電網接続の要請に直面していると語った。
彼は、独立した独立電力システムであるマイクログリッドの使用など、移行に関連したエネルギーソリューションを提唱しています。
シンクタンク、エンバーのシニアエネルギー・気候アナリスト、ベアトリス・ペトロヴィッチ氏によると、ノルウェーでは、顧客が一定の条件に基づいて電力網への接続を制限する柔軟な接続契約を試験的に導入している。これにより、顧客は特定の時間帯における電力網の状況に応じてエネルギー使用量を調整できるようになる。
エンバーはまた、 「先見的な」送電網投資に関する規則の導入も求めた。ペトロヴィッチ氏は、これにより電力網運営者は、再生可能エネルギーや蓄電池の成長といった主要技術の市場動向を考慮し、将来を見据えた計画を立てることができるようになると説明した。
AVKのプリチャード氏は、企業が完全に脱炭素化されたエネルギースタックを持つことを可能にする法律の改善を進める国々が「競争の勝者」となり、データセンター周辺にもっと「優しいエコシステム」を提案するだろうと述べた。
結局のところ、電力網のボトルネックは「人々の考え方を変えるよう促し、人々が考え方を変えるよう促されると、異なる解決策に対してよりオープンになります。これが、市場を大きく変化させるきっかけになると思います」とプリチャード氏は述べた。
EUの緩やかな成長
一部の新興産業や発展途上産業からの電力需要が増加しているにもかかわらず、電力需要の伸びに関しては、ヨーロッパは依然として世界の他の地域に遅れをとっています。高騰する電力価格と運用コストが地域全体の需要を阻害し、市場の細分化を招いています。
国際エネルギー機関(IEA)は今月、「電力の新時代」の到来を歓迎し、世界の電力需要予測を引き上げて、2025~2027年の成長率は3.9%と近年で最速の成長率になると予測した。
しかし、ヨーロッパの予測はより控えめです。エネルギーシンクタンク、エンバーの1月のレポートによると、2年間の電力需要の急激な減少の後、同地域の2024年の電力需要はわずか1%の増加にとどまると予想されています。
「2024年は電力需要の転換点となる」と、報告書の著者の一人であるエンバーのペトロヴィッチ氏は述べた。「私たちが目にしたのは、長年の減少の後、たとえ小規模なものであったとしても、初めての回復であり、それは地域全体に広がっていた」
マッキンゼーのディアス氏は、ロシアのウクライナ侵攻とそれに続く制裁によって引き起こされたエネルギー危機以降、電力価格は1メガワット時あたり60~80ユーロ程度に落ち着いていると説明した。しかし、これは過去20年間の価格と比べると依然として50~100%高い水準だ。
その結果、消費者のコストが急騰し、ヒートポンプや電気自動車の需要に減速の兆候が出ていると彼は述べた。
ディアス氏はさらに、欧州の製造業者にとって、エネルギー要件は「世界の他のどの地域よりも高く、潜在的にコストが高くなるだけでなく、より困難な状況になる可能性もある」とヘルナンデス氏は述べた。
データセンターの「前例のない」成長は「全体の曲線をほんの少し押し上げているが、他のすべてがそれに逆らっている」とヘルナンデス氏は語った。
資産運用担当者は年初来の多くの時期にわたり楽観的な見方を抱き、社債を買い入れた。その結果、そのバリュエーションはますます割高水準に達した。だが今や、ウォール街の重鎮は事態がどれほど悪化しかねないか目を向けるべき時だと指摘している。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)や、シックスス・ストリート・パートナーズ共同創業者のジョシュ・イースタリー共同最高投資責任者(CIO)は、クレジット市場がリスクを十分織り込んでいない可能性があると警告している。
そして、ジャンク債の中でも格付けが最も低い部分は、米経済が近く成長減速やインフレ高進、リセッション(景気後退)に直面する可能性があるとの警戒シグナルを発している。
CCC格付けのジャンク債のリスクプレミアムは今年に入り1.56ポイント拡大し、直近1週間でも0.4ポイント拡大。スプレッド差はCCC格付けとその一つ上のB格付けとの間で年初来および過去2週間で拡大しており、最も脆弱(ぜいじゃく)な債券が他よりも劣後していることを示唆している。
ウェリントン・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、コナー・フィッツジェラルド氏は、CCC債のスプレッド拡大とパフォーマンス悪化は重大な警告サインだと話す。
「現時点でハイイールド債に大きく投資するのは勧められない。スプレッドはタイトであり、リセッション懸念があるなら、デフォルト(債務不履行)関連の損失リスクがある」とフィッツジェラルド氏はインタビューで語った。
米国の住宅バブル期にいち早く住宅ローン市場のリスクに気づいたダイモン氏は19日、クレジットスプレッドが潜在的なリセッションの影響を織り込んでいないと指摘した。また、インフレ高止まりやスタグフレーションのリスクは人々が思っているよりも高いと述べ、米資産価格は引き続き割高だと論じた。
それでも一部の投資家は依然としてジャンク債を購入している。人工知能(AI)向けクラウドサービスを手掛ける米コアウィーブは21日に5年債20億ドル(約2850億円)を発行し、当初予定の15億ドルから規模を拡大した。また米投資適格債市場では、過去1週間に350億ドル超の社債発行があり、250億ドル前後としたディーラーの予想を上回った。
U.S.バンクの債券セールス・トレーディング責任者ブレア・シュウェドー氏は、社債市場が4月の激しい相場変動以降回復してきた一因として、証券の償還資金がクレジット市場に再投資されたことを挙げる。しかし、地政学的緊張や関税を巡る不透明感が社債需要に悪影響を及ぼし、スプレッド拡大を招く可能性がある。
市場のセンチメントは急速に変化する。トランプ米大統領が4月に過去100年で最も急激な関税率引き上げを発表した数日後、スプレッドは2020年3月以来の水準にまで拡大したが、それからまもなく再び縮小した。
今後も多くのリスクが控えている。トランプ氏は23日、欧州連合(EU)からの輸入品に6月1日から50%の関税を課すと表明し、貿易戦争の沈静化にはほど遠いことを示唆した。米金融当局の今後の金利政策の道筋も不透明であり、経済指標がいつ、実際に悪化の兆しを示し始めるかも不確かだ。
シックスス・ストリートのイースタリー氏は成長や貿易、地政学を巡る不確実性に関し、「現在のクレジット市場ではリスクが適切に織り込まれていない」とした上で、特に変動金利債に懸念を示した。
中国から米国に商品を輸入する企業は、実際に商品を販売するまでトランプ米大統領の関税を支払わずに保管しておけるよう、「保税倉庫」の確保を急いでいる。
保税倉庫は、関税を直ちに払うことなく輸入品を保管しておける倉庫で、米国には現在1700以上ある。中国からの輸入品には現在30%の関税が課されているが、保税倉庫から商品が出荷された時点で関税を支払えばよい仕組みになっている。このため、貿易政策が極めて不安定な現在、企業はより効果的な資金管理が可能になる。
一部の企業にとって保税倉庫の確保は、トランプ政権による関税引き上げが一時的に終わるとの予想に基づく賭けだ。
業界関係者4人によると、保税倉庫の多くは現在満杯で、利用料金は急騰。企業は米税関・国境取締局(CBP)に保税スペースの拡大を申請している。
物流企業LVK・ロジスティクスのマギー・バーネット最高経営責任者(CEO)は、「関税対応」としてユタ州の倉庫を保税化するための手続きを進めていると明かした。手続きには3―4カ月かかる見込みだという。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのサプライチェーン研究チームを率いるクリス・ロジャース氏は「ほぼどこでも保税化は可能だ。資金と時間がかかるが、大手企業で関税が長期化すると見込む場合、既存のスペースを保税倉庫に転換できる」と語った。
物流調査会社ウエアハウスクオートのソリューション部門担当副社長、クリス・ヒューワルト氏は、CBPへの申請手続きは昨年であれば数カ月で完了していたが、現在は最大6カ月超も滞っていると指摘する。
同氏によると、保税倉庫としての認定を取得するコストは「数千ドルから6桁まで」で、倉庫の所在地や企業の財務状況などによって異なる。
トランプ氏が関税政策を二転三転させているため、保税倉庫の持つ柔軟性は企業にとって魅力的だ。
トレード・フォース・マルティプライヤーの出荷コンサルタント、シンディー・アレン氏は、中国から輸入する多くの企業は保税倉庫を活用してキャッシュフローを支えていると説明。「倉庫から商品を出荷する際には関税を支払う必要があるため、コスト削減になるとは限らない。ただ、販売の都度、小口で関税を支払うことが可能になる」と述べた。
CBPは、新たな規制や大統領令を遵守するために保税倉庫を利用することへの関心が高まっていることは承知しているとした。
ホワイトハウスはコメント要請に即座に応じなかった。
<前例のない倉庫ラッシュ>
ウエアハウスクオートのデータによると、2024年早期には保税倉庫の賃貸料は標準的な倉庫の約2倍だったが、今年に入ると標準的な倉庫の4倍に跳ね上がった。
トレード・フォースのアレン氏は「キャッシュフローを円滑にするために保税倉庫に殺到する現象は前例がない」と語った。
トランプ政権1期目に、多くの企業は中国への関税をそのまま受け入れた。しかし、結果として企業は多額の関税支払いが長期間続くと同時に、中国に代わる供給元への投資を余儀なくされた。輸入業者は「過去の過ちを繰り返したくないのだ」とアレン氏は話す。
新たな保税倉庫の設置はリスクを伴う。米政府は90日間の猶予期間終了後、高関税政策に戻る可能性があるからだ。
保管会社カーゴネストの共同創業者、ウラジミール・デュルシュペク氏は、米国の関税交渉が完了するまで第3の保税倉庫を追加すべきかどうか検討している。「避けたいのは、急いで容量を増やしてその後状況が変わることだ」
保管会社DCL・ロジスティクスは、保税倉庫に関する計画を決めかねている。最高収入責任者のブライアン・トゥ氏は、「需要がこのまま高水準を維持するかどうか定かではないからだ」と話す。
ウエアハウスクオートのマーケティングディレクター、ジェイコブ・ローズバーロウ氏は「多くの倉庫が保税ステータスを取得できるころには、追加関税が撤回され、保税スペースの需要が無くなっている可能性もある」と述べた。
●ロシア、ウクライナ、中東情勢
●その他エマージング
●プロファイ、インフラ、自然災害
太陽光発電業界のCEOたちは、共和党の選挙区に投資した数十億ドルが、最終的には再生可能エネルギーへの連邦政府の支援を打ち切るというドナルド・トランプ大統領の脅しから自社の業界を守ってくれると信じていた。
しかし、彼らの予測は悲惨なほど間違っていたかもしれない。投資銀行ジェフリーズのアナリストは顧客向けメモの中で、下院共和党が今週可決した税制改革法案は太陽光発電にとって「懸念されていたよりも悪いシナリオ」だと指摘した。
この法案は、業界の成長を支えてきた主要な税額控除を廃止するものであり、木曜日には太陽光発電関連株の広範な売りを引き起こした。この法案はまだ上院を通過する必要があるが、ジェフリーズは上院で「実行不可能な」条項が撤廃されると予想している。
しかし、現状のままでは、この税法案はジョー・バイデン大統領のインフレ抑制法に事実上「大打撃」を与えるものだと、ジェフリーズのアナリストは指摘する。ロビー団体太陽エネルギー産業協会のアビゲイル・ロス・ホッパーCEOは、この法案は「歴史的な米国製造業の復興をもたらしたこの国の経済成長を覆す」ことになるだろうと述べた。
ホッパー氏は、この税法案は米国の消費者や企業の電力需要を満たす上で太陽光発電と蓄電池が果たしている役割を「故意に無視している」と激しく非難した。
「この法案が成立すれば、アメリカはAI競争で事実上中国に屈し、全国のコミュニティが停電に直面することになるだろう」と彼女は警告した。
サンラン
メアリー・パウエルCEOは木曜日のCNBCのインタビューで、この法案は25万人の雇用喪失と消費者の電気料金上昇につながる可能性があると述べた。屋上太陽光発電システム設置業者である同社は木曜日、過去最悪の業績を記録し、株価は37%下落した。
一方、トランプ大統領は上院に対し、「一つの、大きく、美しい法案」と呼ぶ法案をできるだけ早く可決するよう求めた。「無駄にする時間はない」と大統領は木曜日、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で述べた。
クリーンエネルギーブームは崩壊する可能性
マサチューセッツ工科大学とロジウム・グループによると、IRAが2022年に可決されて以来、企業は大規模な太陽光発電および蓄電池プロジェクトに1610億ドル以上を投資している。
米国エネルギー情報局によると、太陽光発電と蓄電池は米国で最も急速に成長しているエネルギー源であり、2025年に電力網に追加される予定の電力の81%を占めるという。
しかし、この税法案は、太陽光発電の急増に最も貢献してきた2つの税額控除を実質的に廃止することになる。法案成立後60日以内に建設を開始する、または2028年以降に稼働を開始するクリーンエネルギー施設に対する投資控除と電力生産控除が廃止される。これは、米国で成長が鈍化している風力発電にも適用される。
「これにより、送電網に追加されるクリーンエネルギーの量が大幅に減少するだろう」と、ロジウム・グループのエネルギー・気候プラクティス担当アソシエイトディレクター、ベン・スミス氏は述べた。ロジウムによると、送電網へのクリーンエネルギーの導入は今後10年間で57%から72%減少する可能性がある。
クリーンエネルギープロジェクトは、禁止されている外国企業から「物質的支援」を受けている場合、来年早々に税額控除を申請できなくなる。キング氏によると、これは主に、太陽光パネル用のガラスやバッテリー用のコバルトやリチウムなど、中国から基礎材料を調達するプロジェクトが対象となっている。
「これは、早ければ来年にも事実上、税額控除が廃止されることを意味すると我々は見ています」と彼は述べた。ファースト・ソーラーのような企業を支えてきた製造業向け税額控除は、
外国法人規制の対象ではあるものの、2031年まで有効となります。
グッゲンハイムのアナリスト、ジョセフ・オシャ氏は顧客に対し、この税法案は屋上設置型太陽光発電業界にとって「壊滅的」だと述べた。サンランのような太陽光発電設備を顧客にリースしている企業への税額控除は打ち切られる。オシャ氏によると、住宅用太陽光発電業界の約70%はリース契約を利用しているという。
共和党上院議員が法案を修正する可能性
しかし、共和党上院議員の中にはこの法案に反対する者もおり、業界にとっては、法案の最も厳しい条項が緩和されるという期待が高まっている。バージニア州選出のシェリー・ムーア・カピト上院議員は、ポリティコに対し、この税制法案は税額控除を全面的に撤廃するようなものだと述べた。
「状況は変わると期待している」とカピト氏は5月13日、ポリティコに語った。「こうした税額控除によって雇用が創出されてきた」
実際、税額控除が打ち切られた場合、最も大きな打撃を受けるのは共和党の選挙区となるだろう。支援団体E2のデータによると、IRA投資の約81%が共和党の選挙区に流れている。
太陽光発電の導入減速は、人工知能データセンターの建設、再工業化、経済のより広範な電化により電力需要が増加するのと同時に起こるだろう。
接続リクエストを追跡する組織Interconnection.fyiによると、太陽光、蓄電池、風力は、送電網への接続を待っている発電プロジェクトの 92% を占めているため、再生可能エネルギーは現在、需要を満たすために最も迅速に導入できます。
米国でも天然ガス需要は急増しているが、今注文しても新しいタービンの納入には5~6年かかると、コンサルティング会社ライスタッド・エナジーのアナリスト、リード・ラムダスシン氏は述べた。成長は鈍化する可能性があるものの、代替手段がないため、太陽光発電と蓄電池の導入は継続されるだろうとラムダスシン氏は述べた。
「エネルギー需要は確かに存在します」と彼は述べた。「ガス発電では短期的にこの需要を満たすことはできません。今後数年間で必要となるガス発電に代わる最大の選択肢は、再生可能エネルギーです。」
●その他
●市況(ChatGPTによる要約版)
**トランプ大統領の関税発言が市場に波紋を広げ、ドルが全面安となった。**
* **為替市場:**
トランプ米大統領が、EUからの輸入品に50%の関税を課すと表明し、iPhoneが米国内で製造されていない場合、アップルに25%の関税を課すと警告。これにより貿易摩擦懸念が再燃し、ドルが売られた。
ドルは円に対して2週間ぶり安値、ユーロに対しても下落。ドル指数は3週間ぶりの安値に。
* **債券市場:**
トランプ発言で経済成長の減速懸念が高まり、長期金利が低下。10年国債利回りは4.517%に下落。
* **株式市場:**
米株式は下落。関税発言による不透明感が広がり、S\&P500、ダウ、ナスダックすべてが週間で2%以上下落。特にアップルが3%安。VIX指数(恐怖指数)は2週間ぶりの高水準に。
* **商品市場:**
金価格は安全資産として買われ反発、週で5.6%上昇。原油は3連休前の買い戻しで小幅反発。
**■ ロンドン株式市場:**
* **株価動向:**
続落で終了。トランプ米大統領の関税発言を受けた貿易摩擦懸念が主因。
* FTSE100は週間で0.38%上昇(2週連続プラス)
* 中型株指数FTSE250は週間で1.26%下落(7週ぶりのマイナス)
* **個別銘柄:**
* ゲームズ・ワークショップは関税コスト増で2.8%安
* 金価格上昇を受け貴金属株指数は3.46%上昇
* AJベルは好決算で8.4%高
* **背景:**
英国はEU離脱済みかつ米と貿易協定あり。他欧州市場より下げ幅は限定的。英4月小売売上高は堅調。
**■ 欧州株式市場:**
* **全体動向:**
貿易摩擦懸念で大幅続落。
* STOXX600指数は週間で0.75%下落(6週ぶりマイナス)
* DAX(独)1.54%安、CAC40(仏)1.65%安
* **主な下落セクター:**
* 自動車株:3.10%安(関税影響大)
* 銀行株:1.78%安
* 高級品株:2.60%安
* 投資家不安を示すV2TX(ボラティリティ指数)は3週間ぶり高水準
**■ ユーロ圏債券市場:**
* **債券利回り:**
トランプ発言を受け、ECB利下げ期待が強まり利回り低下。
* ドイツ10年債:7.5bp低下(2.54%)
* ドイツ2年債:7bp低下(1.76%)
* イタリア10年債:5.3bp低下(3.61%)
* 独伊10年債格差は100.9bpに拡大
* **その他材料:**
* 市場は6月のECB理事会での利下げをほぼ織り込み済み
* ドイツのQ1 GDP改定値は+0.4%と改善(リセッション懸念の後退)
備忘録(2025/5/22)
●海外企業決算
●海外企業
●日本企業
●トランプ関連
ドナルド・トランプ米大統領が19日の欧州首脳との電話会談で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領にはウクライナ戦争終結の用意がないと伝えていたことが分かった。事情に詳しい3人の関係者が明らかにした。プーチン氏は自身が勝利していると考えているという。
欧州首脳はプーチン氏がそのような考えであると以前から理解していたものの、トランプ氏が同様の見解を示したのは初めてとなる。またトランプ氏はこれまで、プーチン氏は本心から平和を望んでいると公に発言してきたものの、これとは異なる見方を示したことにもなる。
ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は電子メールでこうした情報を否定し、「(トランプ氏は)プーチン氏が戦争に勝利していると考えていると述べたが、『プーチン氏は戦争を終結させる準備ができていない』とは一度も言っていない」と述べた。その上で、トランプ氏は欧州側に「プーチン氏は和平を望んでおり、戦争の終結を望んでいると考えている」と伝えたと説明した。
トランプ氏は、プーチン氏が和平に前向きでないという考えを受け入れたとみられる。一方で欧州首脳やウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がロシアとの戦いを強化するべきだと主張する中で、そのような行動は見せていない。
トランプ氏はプーチン氏と2時間の電話会談を行った前日の18日、欧州首脳とも電話で協議した。その際、プーチン氏が停戦を拒否した場合は制裁を科す可能性があると示唆していたと事情に詳しい関係者らは述べている。
だが19日になるとトランプ氏は再び考えを改めて、制裁には踏み切らない意向を示し、代わりにバチカンでのロシアとウクライナの実務者協議を迅速に進めたいと述べた。
19日の電話会談にはゼレンスキー氏、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相、イタリアのジョルジア・メローニ首相、そして欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)のウルズラ・フォンデアライエン委員長が参加した。欧州首脳はトランプ氏がプーチン氏に圧力をかけることを目的とし、10日前から外交攻勢を仕掛けており、会談はその集大成でもあった。
この取り組みは結果的には、トランプ氏に追加制裁を打ち出させることには成功しなかったが、欧州側は協議からいくつかの成果を得た。今回のプロセスを通じては、プーチン氏には現段階で戦争を止める意思がないことが、トランプ氏を含む全員に明確に示された。さらに欧州側にとっては、ウクライナ支援は主に自分たちが担うべきだということも浮き彫りになった。関係者らによれば、欧州首脳は欧州またはウクライナが支払いを続ける限り、トランプ政権が米国の武器輸出を続けるとみている。
トランプ氏は19日、プーチン氏との電話会談後に、「これはわたしの戦争ではない」と記者団に発言。「われわれは関与すべきでないことに巻き込まれてしまった」と語った。
トランプ氏は18日に行った欧州首脳との電話会談では、バチカンでの開催が予定されている協議について、マルコ・ルビオ国務長官とウクライナ・ロシア担当特使キース・ケロッグ氏を派遣すると示唆していた。18日の電話会談には欧州側からはマクロン氏、メルツ氏、メローニ氏、そして英国のキア・スターマー首相が参加していた。
だが19日になると、トランプ氏は米政府が果たす役割について明確な態度を示さなかったと、事情に詳しい関係者の1人は述べている。
19日の電話会談で、欧州首脳の一部は、バチカンでの協議の結果は無条件の停戦でなければならないと主張。これに対してトランプ氏は再び難色を示し、「無条件」という言葉が好きではないと述べた。トランプ氏は自分がその言葉を使ったことがないと述べたが、5月8日にトゥルース・ソーシャルに投稿した30日間の停戦呼びかけの際には使用している。だが欧州側は最終的に、「無条件」という形容詞にこだわることを取り下げたという。
バチカンでの協議は6月中旬に開始される見通しとなっている。
トランプ政権は中国の孤立化が目標だと明確にしている。しかし、果たして大統領本人もそれを望んでいるのだろうか。
米中の経済戦争が新たな冷戦に発展しかねない中、トランプ氏が中国との取り引きについて繰り返し言及していることから、多くの人がこの疑問を抱いている。
先週末にもトランプ氏は記者団に対し、自身は中国に対して関税を引き上げ続けることは望まず、中国側は合意に向けての交渉を求めてきたと述べた。また、習近平国家主席との関係を改めて強調し「習主席とは非常に良好な関係にある」と語った。「それは続くと思う」
チャイナウォッチャーの中にはこうした発言を市場を落ち着かせるためのトランプ氏の手法だと一蹴する人もいるが、トランプ氏が根本的に側近の対中強硬路線に同調していないことを示していると見る向きもある。トランプ氏自身は閣僚ほど対中タカ派ではなく、中国に戦略的優位を築く時間と外交的余地を与えるのではなく、デカップリング(経済分断)を推し進めようとする側近とは異なるという。
チャイナウォッチャーたちは、トランプ氏は真に中国に政策を変更させ、対米貿易黒字を劇的に縮小させることを望んでいると考えている。
「トランプ政権がある。その一方で、トランプ氏がいる」とは、ある米企業幹部が最近私に語った言葉だ。
要するに、こうしたチャイナウォッチャーたちによれば、現在の米中デカップリングの流れに歯止めをかけうる取り引きの実現にとって、最大の望みはトランプ氏自身ということだ。
「トランプ氏が中国とどのような関係を望んでいるのか、まだ結論は出ていない」。オバマ政権で対アジア政策に関わった、米外交問題評議会のマシュー・グッドマン氏はこう述べた。
グッドマン氏を含む他のアナリストらは、米中双方が課している現在の関税が持続不可能なレベルに達しており、両国は真剣な協議に向かわざるを得ないだろうと考えている。トランプ氏は対中関税を合計145%に引き上げ、中国は125%の報復関税を米国に課している。
「転換点に達した」とグッドマン氏は述べた。「早晩、何らかの交渉プロセスを確立する必要がある」
どちらが連絡するのか
そうしたプロセスを設けるには、トランプ氏と習氏がまず話す必要がある。トランプ氏は習氏に対して連絡するよう繰り返しサインを送っているが、習氏は応じていない。
中国側に言わせれば、それは中国のやり方ではないということだ。近年、中国の指導者が米国の指導者に連絡を取った唯一の例は、2001年9月11日に当時の江沢民国家主席がジョージ・W・ブッシュ大統領に米国でのテロ攻撃を受けて弔電を送った時だった。両者は翌日に電話会談をしたが、中国の公式発表によれば、その時でさえ会談を要請したのは米大統領の方だった。
私が取材した第1次トランプ政権下の対中貿易戦争では、習氏に連絡を取ったのは常にトランプ氏だった。トランプ氏は当時、そのことを不満に思っていると側近にこぼしていた。私は中国当局者になぜ習氏から連絡を取らないのかと尋ねたが、彼らの回答は常に「それはわれわれのやり方ではない」というものだった。
習氏は権力の座に10年以上居続ける中で、これまでの慣習を打ち破る姿勢を示してきた。しかし、中国指導部として対米強硬姿勢を取る中、習氏はそうしないことを選択した。
私の同僚のブライアン・スピーゲル記者が報じたように、中国当局による国民向けの最近のメッセージは、朝鮮戦争を想起させるものになっている。当時、中国軍は米国が支援する韓国と戦う北朝鮮を支援したが、今日の関税戦争を貿易だけでなくイデオロギーをめぐる闘争として描いていると。
これは、共産党、そして自身の地位がこの戦いにかかっていると習氏が見ていることを示唆している。米国の圧力に屈することは中国指導部にとって政治的自殺行為となるだろう。
したがって、真剣な交渉を始めるには、トランプ氏が電話をかける必要があるかもしれない。そして、たとえトランプ氏と習氏が会談したとしても、いかなる合意への道筋もこれまで以上に困難なものになる可能性が高い。トランプ氏の言葉がどれほど楽観的に聞こえようとも。
●先進国中銀、金融当局
●先進国経済指標
●金融市場、先進国トピックス
日本や米国など、世界主要国の長期国債利回りが上昇している。大規模な財政赤字を賄うことができるのか、投資家の間で疑問が広がっていることが背景にある。
米国の30年債利回りは今週に入り5%を超え、2007年以来の高水準に近づいている。日本の30年債は1999年の入札開始以降で最高の利回りに達した。両国の国債入札では低調な需要が続いている。
英国やドイツ、オーストラリアなども長期債が売り圧力にさらされている。
市場が発しているのは、とりわけ貿易を巡る緊張が高まり、根強いインフレで金融当局が劇的に政策を関する見通しが後退した現在、金利がゼロ付近だった頃と同じようなペースでの借り入れを各国は続けることができないというメッセージだ。債券市場から中央銀行や年金基金が手を引いていることも、信頼できる買い手がますますいなくなったことを意味する。
オンライン証券会社XTBの調査ディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「持続不可能な財政赤字を続ける世界主要国への資金提供に、投資家が不安になるのも無理はない」と指摘。優良企業の社債の方が、よほど魅力的に映るとの見方を示した。
現在の状況は、1990年代初めの米国、2010年代のユーロ圏、22年の英国に似ている。いずれも、いわゆる債券自警団が国債利回りを大きく押し上げ、政府に支出抑制を強制した。ちょうど先月、債券市場が「騒いでうるさい」とトランプ米大統領は述べつつ、関税措置を弱めた。
利回り上昇の影響は債券市場にとどまらない。21日の米30年債利回りの急騰は米国株の猛烈な売りを引き起こし、S&P500種株価指数は1.6%安と、1カ月ぶりの大幅下落に見舞われた。
企業や家計にも影響は伝わる。借入金利が上昇し、借り入れや支出の能力が抑制されるからだ。これは税収の減少につながり、財政赤字をさらに膨らませるという悪循環を生む。中銀も注意をインフレから経済成長へと移せるかどうか、判断を迫られる。
世界最大の借り手で、財源のない新たな減税が議論され、ムーディーズ・レーティングスが格付けを最上位から引き下げた米国には、厳しい目が注がれている。
米議会予算局(CBO)によれば、米国債残高は2007年に4兆5000億ドル(約650兆円)だったが、現在は約30兆ドルに上る。国内総生産(GDP)比では約35%から100%へと急増した。
市場では、米長期債を保有するリスクの対価として投資家が求めるプレミアムの上昇が鮮明だ。財政政策を巡る懸念は、ドルにも表れている。利回りが上昇すれば、その国の通貨も上昇することが多いが、ドルは今回売られている。
日本の長期債の下げも急激だ。インフレが加速する中で日本銀行は購入を縮小させ、その穴を国内生保など伝統的な買い手が埋め切れていない。
ブルームバーグのマクロストラテジスト、サイモン・ホワイト氏は「高いインフレ期待が定着するようになる中で、日本国債市場の流動性は悪化を続けている。日本国債利回りの無秩序な上昇は、米国や世界の資産価格を下落させやすくする」と論じた。
もっとも、他国・地域の長期債の需要には一定の明るい兆しも見られ始めた。英国が20日発行した40億ポンド(約7700億円)の2056年償還債には730億ポンドの注文が集まり、落札利回りは5.40%前後だった。
英国では伝統的に長期債の主要な買い手だった年金基金の需要後退に対応し、債務管理庁(DMO)は発行を長期債から他の年限へと既に移している。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストらは、需要動向の変化に合わせ、他国も同様に発行する債券の年限を短期化させるとみている。
トランプ米大統領は、共和党内の激しい対立を乗り越え、「一つの大きく美しい法案」と名付けた大型税制・歳出法案の下院可決にこぎつけた。
支持基盤の弱い激戦州出身の議員と歩み寄り、保守強硬派による造反も土壇場で回避した格好だ。しかし、この法案を上院で通過させるには、さらに厳しい要求を突きつける相手に向き合わざるを得ない。膨張する米国債を購入する投資家だ。
米30年債利回りは21日、再び5%を上回った。投資家はトランプ氏の財政運営に対して厳しい現実を突きつけた格好だ。先週にはムーディーズ・レーティングスが、財政赤字拡大などを理由に米国の信用格付けを最上位から引き下げた。ムーディーズは連邦政府の債務が10年以内に国内総生産(GDP)の約134%にまで膨らむと予想している。
これは、トランプ氏が3月の議会演説で掲げた「近い将来の均衡予算」とは大きくかけ離れる。下院で可決された法案には、チップ収入非課税化など、主要なトランプ支持層を意識した新たな減税措置が多数盛り込まれた。
ベッセント財務長官ら政権幹部は、この法案が企業のセンチメントを押し上げ、支出や投資の活性化につながると主張している。トランプ氏に近い議員らも同法案を共和党の立法課題の中核と位置づけており、トランプ氏の場当たり的な関税政策がもたらす不透明感を和らげる役割を担うと見込んでいる。
しかし、債券市場の見方は異なる。
BTGパクチュアル・アセット・マネジメントのマネジングパートナー、ジョン・ファス氏は「人々はうんざりし始めている。ワシントンには大人がいないことは明らかだ。説明責任もまったく果たされていない」と指摘。「だとすれば何が事態を動かすことになるだろうか。それは金融市場の動きだ」と語った。
その動きはすでに表れている。トランプ氏が税制法案への支持を下院議員に迫っていた21日には20年債入札で需要が振るわず、国債相場は軒並み下落。米国の財政見通しに対する投資家の懸念が強まる中、この日は米国債だけでなく株式市場も下落した。
こうした動きは、先月にトランプ氏が債券市場と対峙し、最終的には譲歩を迫られた局面を思い起こさせる。トランプ氏が上乗せ関税措置を発表すると米国債利回りは急上昇し、株価低迷には動じなかったトランプ氏も債券市場の反応には目を向けざるを得なかった。
トランプ氏は上乗せ関税の一時停止を発表した際、「債券市場は非常に厄介だ」と述べ、「人々が少し不安になっている様子が見られた」と語っていた。
当時とは異なり、今回はトランプ氏がホワイトハウスで税制法案を交渉していた際、その傍らにベッセント財務長官の姿はなかった。ベッセント氏は現在、カナダで主要7カ国(G7)財務相会合に臨んでいる。債券市場が警戒シグナルを発した際、関税の一時停止をトランプ氏に助言したのがヘッジファンド出身のベッセント氏だった。
そのベッセント氏は先月、米国債下落について、一部の市場参加者によるレバレッジ解消の影響だとして深刻視しない姿勢を示していた。直近の市場の動きについて、ベッセント氏からの発言は22日午前の時点で出されていない。
ジュネーブで成立した米中の貿易休戦は、両国が新たな冷戦に向かっているという事実を変えるものではない。
つり上げられた高い関税を一時停止するという米中合意により、世界の2大経済大国間の物流が再開された。しかしその裏で、両国は相手に対する防衛強化の取り組みを続けており、すでに進行している経済・外交面の分断がさらに深まっている。
中国では先週、最も注目すべき政治イベントの一つが「国内循環」の促進に焦点を当てたハイレベル会合だった。国内循環とは、中国共産党が国内生産と国内市場への依存を強める方向へのシフトを意味して使う言葉だ。これがなぜ重要かと言えば、中国はこれまで国内循環を「国際循環」(要するに外国市場との関わり)と併せて言及し、対外開放へのコミットメント(積極的な関与)に対する疑念を払拭しようとすることが多かったからだ。
経済的自立に真正面から取り組む今回の会合は、貿易休戦にもかかわらず、米中の現在の関係が根本的にリセットされることはないという習近平国家主席の考えを示している。むしろ90日間の交渉期間は、中国経済を緊急に保護する必要性を浮き彫りにしているだけだ。
習氏が登用した李強首相は、中国の意図を取り繕おうとさえしなかった。李氏はこの会合で、対外的な不確実性(米国との不安定な関係を意味する)を相殺するため、国内循環を中心とした「新たな発展パラダイムの構築を加速する」よう求めた。
影響力めぐる争い
一方、ホワイトハウスでは先週、中国には焦点が当たっていないように見えた。ドナルド・トランプ大統領は週の大半をサウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)訪問に費やした。だが、この中東歴訪にも中国に関わる要素があった。
トランプ氏は4日間にわたる中東歴訪の最後に応じたFOXニュースとのインタビューで、新たな燃料の輸入元を必要とする中国が積極的に同地域に近づいていると述べた。「彼らは中国に向かい、中国が彼らの『親』になるところだった」。典型的なトランプ流の表現で語り、「もうそうはならない」と続けた。
アラブ諸国が中国から離れるかどうかは、時がたてば分かるだろう。だがトランプ氏の発言は、同盟国とパートナーを巡る中国との競争が、冷戦時代における米ソの覇権争いの際と同様に健在であることを示している。
中東歴訪では、トランプ氏がアラブ諸国をいかになびかせようかと考えていることも垣間見えた。
トランプ氏はエヌビディアやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などの米企業がUAEとサウジアラビアに半導体を販売する大型契約を締結する一方、同氏の政権はバイデン政権時代のAI(人工知能)規制を撤廃した。同規制は、中東のこうした国々を含む大半の国に最先端AI半導体の販売を制限するものだった。
この動きはワシントンでも物議を醸している。トランプ政権のAI責任者デービッド・サックス氏をはじめとする一部の人たちは、湾岸諸国が米国製の半導体を入手できなければ中国のサプライヤーに向かうと主張している。その一方で、国家安全保障に関わる人たちの中には、高性能プロセッサーがアラブ諸国の市場から中国に流れることを心配する向きもある。中国はすでに中東を技術の供給源として活用し、米国の規制をくぐり抜けようとしている。
双方の主張に正しい部分があるのかもしれない。現時点で明らかなのは、かつての米ソ対立とは異なり、米中の対立はミサイルや核兵器ではなく、最先端技術を巡る競争によって特徴づけられる可能性が高いということだ。
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のバルディス・ドムブロフスキス委員(経済・生産性担当)は、米国主導の主要貿易相手国との一連の合意について、ビジネス界と金融市場の高まる不確実性を軽減する可能性があるが、「次善の」解決策だと述べた。
ドムブロフスキス氏は、こうした合意はドナルド・トランプ氏が米大統領として今年ホワイトハウスに復帰する前に比べ、モノとサービスへの関税を高水準で定着させることになると述べた。個々の合意は「経済的には次善の結果だが、少なくとも明確さはある」とした。
カナダのアルバータ州バンフで先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる中、ドムブロフスキス氏は、各国政府高官が世界的な不均衡やウクライナ支援などについて建設的な議論をしており、共同声明の合意は「射程圏内にある」と述べた。だが特に貿易に関して緊張が残っている。
「米国と他のG7メンバーの間で見解に明らかな違いがあり、特に米関税とそれによる経済への影響について、微妙な議論となっている」という。
ドムブロフスキス氏は22日、G7財務相・中央銀行総裁会議の終了前に、スコット・ベッセント米財務長官と会談する予定だ。「こうした貿易問題と、EU・米国間の交渉の進展の重要性について提起する」とした。
ドムブロフスキス氏は、G7メンバーは既存の関税について詳細な議論をしなかったと述べた。「ある意味で、われわれはほぼ全ての国が現在、米国との二国間の議論や対話を通じて解決策を見いだそうとしている」とした。
米中貿易関係において、かつては考えられなかったことが今や最善のシナリオとなっている。
ドナルド・トランプ氏は昨年の大統領選挙運動中、中国からの輸入品に最大60%の関税を課すことを公約した。当時、多くの投資家やアナリストはその水準をありえないとして退けた。しかし大統領就任から3カ月足らずで、トランプ氏は自身が掲げた目標をはるかに上回る145%の関税を中国製品に課した。中国が米国製品に125%の関税で報復したことで、世界の2大経済大国間の貿易は激減した。
12日に発表された米中間の「休戦」により、トランプ氏の新たな対中関税は30%に引き下げられる。既存の関税があるため、多くの中国製品はそれを大幅に上回る関税に直面し続けることになる。一部のエコノミストは、合意後の対中関税はトランプ氏が公約した水準に近い40~50%になると試算している。
貿易は正常化に向かい、両政府は合意に向けて3カ月の猶予を得た。世界市場は、つい最近までほぼ最悪のシナリオと考えられていた事態を歓迎した。
しかし、その歓迎ムードには慎重であるべきだ。関税をめぐるこの騒動が示すのは、二つの大国が相手の優位性と弱点を見誤るということがいかに容易かということだ。そうした誤算は1期目のトランプ政権時の対中貿易戦争でも見られ、2期目で再び浮上している。
2018年と2019年の米中貿易戦争の際、トランプ氏は自身が仕掛けた関税引き上げの度に報復する習近平国家主席の決意を過小評価し、結果的に市場と経済からの圧力で撤回を余儀なくされることが多かった。
習氏も、時間は中国側にあるという信念に度々頼りすぎた。2019年に両国間で合意された暫定的な貿易協定を守らなかったことで、中国は米国からより大きな関税を課され、二国間関係は長期的な打撃を受けた。(詳細については、米中関係と第1次貿易戦争に関する2020年刊行のボブ・デービス氏と私の共著「Superpower Showdown」を参照されたい。)
合成麻薬フェンタニルめぐる誤算
誤算は再び起きている。米国のフェンタニル危機における中国の役割を理由に、トランプ氏が1月と2月に合計20%の関税を課した際、習氏は反抗的な姿勢を示した。習氏と側近らはこれを米政権が中国に圧力をかけるための口実と見なし、トランプ大統領側との対話を拒否した。中国はすぐに報復したが、ある程度の抑制は示した。
トランプ氏はさらに強く反撃し、気付くと対中関税は145%まで引き上げられていた。これは中国と世界市場に衝撃を与えた。
ここでも第1次貿易戦争と同様、トランプ氏は強硬なナショナリストである習氏の報復への決意と能力を過小評価した。習氏は関税だけでなく、米国の痛いところを狙った手で報復した。半導体や防衛関連製品の製造に米企業が必要とするレアアースなどの鉱物の輸出規制や、米企業のブラックリスト化などだ。
トランプ氏が関税を通商上の武器として選んだ一方、習氏は中国との関係に頼っている米国市場と企業に打撃を与える方法を練っている。習氏からすると、いずれもトランプ氏のアキレス腱を狙ったものだ。
その後の報復の応酬は双方に打撃を与え、世界市場の下落を招き、米国のインフレ圧力を高めている。そして、中国経済をさらに低迷させる恐れがある。最終的に、米中双方に交渉再開への道を探る動機が生まれ、それがスイスでの週末の協議と休戦につながった。
トランプ氏が大統領に就任してからのわずか数カ月で期待は様変わりした。ありえないとされたことの基準が変わってしまった。しかし第1次貿易戦争時と同様、双方のさらなる誤算は起こりそうで、持続可能な合意への道のりは極めて不透明だ。
ここまで状況が一変するとは。ほんの数週間前までは、ドナルド・トランプ米大統領やその側近らとの接触に苦労していたのは中国側だった。今や関税問題でやり合うため電話の前で待っているのは米国側のようだ。
問題は、トランプ氏がすぐにボクシングの試合をやりたがっているのに対し、中国の習近平国家主席は太極拳を行っていることだ。
先週、市場からの圧力が高まる中、トランプ氏は電話会談の呼びかけや、米中双方が法外な関税を引き下げるとの自らの発言に対して習氏が反応しないことに焦りを見せているようだ。
22日のタイム誌とのインタビューで、トランプ氏は習氏に先に連絡を取ることはないが、習氏から電話があったと述べた。ただし、その時期については明かさなかった。以下はその内容だ。
タイム誌:習主席から電話がない場合、自ら電話されますか?
トランプ氏:しない。
タイム誌:しないのですか?
トランプ氏:そうだ。
タイム誌:習主席からすでに電話がありましたか?
トランプ氏:あった。
タイム誌:いつ電話があったのですか?
トランプ氏:彼から電話はあった。それは彼の弱さの表れだとは思わない。
25日にも、トランプ氏は習氏と「何度も」話をしたと述べたが、時期を特定することは改めて拒否した。
太平洋の向こう側では、トランプ氏と閣僚らが両国間の会談について発言するたびに、中国当局者がはっきりと否定している――両政府間の交渉は行われていないと。さらに中国側は、そのような協議を行うには、まず米国が対中関税を大幅に引き下げる必要があると明言している。
中国の正しさ
習近平指導部がトランプ政権よりも信頼できるとは信じがたいが、現実はそうなっている。
われわれの取材によると、中国側は、習氏がトランプ氏に電話をするよう、あるいは王毅外相がマルコ・ルビオ国務長官に連絡を取るようにというトランプ政権からの提案を繰り返し拒否している。
先週、中国の財政・中央銀行当局者の代表団が国際通貨基金(IMF)と世界銀行の春季会合のためワシントンを訪れた際、中国側は米国側と二国間協議を行わなかった。米中それぞれの事情に詳しい関係者らが私に語ってくれた。IMFが主催する多国間協議の中で両国間のやり取りはあったが、交渉には至らなかったという。
この立場逆転の背景には、市場の急落や、企業から寄せられる店頭での品不足についての警告といったトランプ氏が感じている圧力がある。習氏と違い、トランプ氏は有権者に向き合い、対応しなければならない。
これは習氏の計算通りだ。トランプ氏が話し合いに熱心な様子を見せたことは、中国側の様子見姿勢が功を奏していることを示唆しており、自らのやり方が正しいことを証明するものだ。圧力が蓄積され、トランプ氏が対中関税を引き下げる方法を見いだすのを待つだけでよい。そうなって初めて、中国側はそれに見合った対応を取るだろう。
しかし、トランプ氏はそのような行動を取り、弱く映るリスクを冒すだろうか。時が答えを教えてくれるだろう。それまでは、米中間のコミュニケーションの停滞が続くとみられる。
今のところ、より落ち着いて、より戦略的に見えるのは習氏の方だ。まさに太極拳の真の実践者のようだ。
中国は米国債の大口保有国だが、米国への報復として米国債を売却するだろうか。
これは、先週のニュースレターでの私の「何でも聞いてください」という呼びかけに対し、フロリダ州のダニエル・ウィル氏を含む多くの読者から寄せられた質問だ。
端的に言えば、答えはノーだ。
理由は単純だ。中国は自国で金融危機を引き起こすことなく、保有する大量の米国債を売却することはできない。
先週、中国政府の顧問を務める人物がわれわれに語ったように、習近平国家主席は毛沢東的な考え方を採用し、米国との長期的な闘争に備えようとしているが、「習氏にとって重要なのは、大きな危機であっても自身の権力掌握を危険にさらすことがあってはならないということだ」。中国が保有する巨額の米国債を清算すれば、金融危機は確実に起こるだろう。
中国は現在、約8000億ドル(約115兆円)の米国債を保有しており、日本に次ぐ第2位の保有国となっている。これらの資産を売却すれば、米国債価格の暴落を招き、現在3兆2000億ドル相当の中国の外貨準備に大きな損失をもたらし、通貨管理と成長支援の能力を著しく弱めることになる。そのため、中国政府は「核オプション」(最後の手段)を行使して米国債を清算することはないだろう。
しかし、これは中国が時間をかけて保有する米国債を減らそうとしないということではない。実際、中国当局は何年も前からまさにそうしている。他の資産への投資を増やしてリターンを改善したり、米中関係の緊張に対応したりするためだ。
中国の米国債保有額は、ドナルド・トランプ大統領1期目の最後の年である2020年に約1兆2000億ドルでピークに達した。
だが、中国にとって米国債から資産を分散させることは容易ではなかった。米国債ほど発行額が大規模で流動性が高く、今なお比較的安全な資産が世界にほとんどないためだ。
ブッシュ氏からの電話
中国は過去に、より良いリターンを生み出すために日本株、欧州債、米国の社債や株式への投資を増やそうとしてきた。中国当局は投資手法を隠そうとするので、実際の数字を把握するのは難しいが、今日に至るまで米国債は中国の対外保有資産の象徴となっている。
それでも、中国が保有する米国債の額が非常に大きいため、中国による潜在的な売却への懸念は続いている。
2008年の世界金融危機の際、リーマン・ブラザーズが破産申請をしてからちょうど1週間後、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は中国の胡錦涛国家主席に電話をかけた。中国が保有する米国債を売却しないよう要請したのだ。仮に中国がそうしていたら、米国の金利は上昇し、すでに苦境に立たされていた米国の家計や企業をさらに圧迫していただろう。胡氏はブッシュ氏の要請に応じた。
米中両陣営は共に、貿易協議を開始するために敵対関係から抜け出す方法を探っているようだ。しかし、トランプ大統領と習主席は話せる間柄とはとても言えない。したがって現在、中国人民銀行の鄒瀾氏の次の発言だけが手がかりとなる。最近の価格下落を受けて、自国が保有する米国債について懸念しているかという質問に対する回答だ。
「単一の市場や単一の資産の変化が(中国の保有に与える)影響は限定的だ」と鄒氏は4月28日に述べた。
言い換えれば、中国は米国債を売却していないということだ。
米国債には常に買い手がいる。問題はその価格水準だ。この点で21日の市場は不快なサプライズをもたらした。重要なのは、米政府がそこから正しい教訓を得ることだ。
額面で総額160億ドル(約2兆3000億円)の20年物米国債の入札は普段通りに進むはずだったが、需要低迷を背景にちょっとした混乱が起きた。利回りは最近の入札で基準になってきた約4.6%の水準を大きく上回り、市場予想を若干上回る5.014%となった。30年物国債の利回りは、今週2回目となる5%超の水準を記録した。10年債の利回りも若干上昇し、4.6%近くに達した。
これは金融危機ではない。利回りの上昇幅は総じて小さかった。それでも株式投資家は注目した。債券市場の動きと、小売企業のまちまちな収益見通しを受けて、主要株価指数は下落した。
この市場の混乱を米政府の責任にするのは最近の流行であり、こうした批判には理由がある。だが、市場を悩ませていると思われる最大の問題をまず認識する必要がある。それは経済成長だ。消費者心理を浮揚させ、政府支出を賄うのに十分な歳入を生み出す成長はどこからやってくるのか。
この疑問を心に留めておいてほしい。コメンテーターや一部の政治家は、債券相場の急落を共和党が多数派を占める議会のせいにしようとしている。非難の対象は、議会で審議中の予算案が財政赤字を今後10年でさらに3兆3000億ドル拡大させることだ。この浪費が債券投資家を我慢の限界に追い込んでいるというのである。
こうした議論は共和党にとって、わなだ。確かに議会で審議中の法案は望ましいものとは言い難い。この法案には給付金制度の改革がほとんど盛り込まれておらず、税制を通じて特定利益層への恩恵が施されることになる。
ただ、この法案にはバイデン政権下の民主党がこれまで行ったことのない規模の歳出抑制も盛り込まれている。また、2017年の税制改革の延長は、経済成長に向けてこれまで政治家が示してきたジェスチャーの中で最大のものだ。現行法のほぼ延長に過ぎない法案が突然、投資家の米国資産離れの原因になるという主張はばかげている。
ばかげてはいるものの、ケインズ主義の左派と多額の財政支出を求める右派の動きは止まらないだろう。2022年の英国での出来事がそのひな型だ。金融政策の失敗とリズ・トラス首相が示したやや野心的な減税案に対する市場の反応が悪く、年金基金の間で小規模な金融パニックが起きた。この時も実際の財政政策に驚くべき点はなく、投資家はそれが発表されることを何週間も前から知っていた。だが、この政策は、自ら良いアイデアが示せないことを恥じる政治家やメディアのコメンテーターのスケープゴートになった。
共和党にとっての教訓は、経済成長を促す政策を引っ込めてはならないということだ。予算案から給付金支出を減らしたい人がいるのなら、好きにすればいい。より望ましいのは、ドナルド・トランプ大統領が相互関税をやめ、通商政策のアドバイザーであるピーター・ナバロ氏を解任し、米国を世界のビジネスに向けて開放することだ。少なくとも、予算案を可決しないことで米経済に4兆5000億ドルの増税を課すことは避けなければならない。
トラス氏の辞任後、英国は高税率・高支出・高インフレによる低迷状態に陥り、まだ回復できていない。もしあなたが、世界の投資家は共和党の予算案を嫌っていると依然考えているなら、それが可決されなかった場合に何が起こるかを見てみるといい。
平日の毎日午前6時、安全靴を履いたがっしりした体格の男たちがクエーカー・シティー・キャスティングス(QCC)の小さな工場に出勤する。砂型を作り、溶けた金属を流し込み、鉄や鉄鋼の鋳物を研磨する。
骨の折れる仕事であり、デスクワークにはない危険が伴う。人材確保も容易ではない。誰かを雇うことができても、定着させるのは難しい。政治家はこうした仕事を称賛するが、一般の米国人は敬遠することが多い。
「こんなに大変なところで働きたくないという人が多い」。QCCで働いていた友人の紹介で鋳造の仕事に就いたザカリー・プチャイダさん(25)はそう話す。
こうした仕事は、ドナルド・トランプ大統領が米国を製造業大国として復活させるために必要だと考えている、根気と体力が必要な労働の典型といえる。
トランプ氏の関税政策を受け、外国からではなく米国内で部品を調達する動きがすでに出てきており、国内の一部中小メーカーでは受注が増加している。
米労働省によると、国内の製造業では約50万件の求人が埋まっていない。全米製造業協会(NAM)が今年実施した調査では、製造業の企業の約半数が、人材の採用と定着が最大の課題だと回答した。
製造業では通常、企業は勤務時間を厳格に定めたシフト制を採用している。米労働統計局(BLS)によると、賃金は民間部門全体の平均を7.8%下回る。1980年には製造業の賃金は3.8%高かった。組合組織率の低下もこうした変化に影響している。
アップジョン雇用研究所のエコノミスト、スーザン・N・ハウスマン氏は、工場の雇用主が直面する逆風は他にもあるとし、工場労働は全て汚くて危険だという誤解や、1990年代から2000年代初めにかけて工場が国外に移転した際の大量解雇の記憶が残っていることなどを挙げた。「人々は自分たちの地域で何が起きたかを目の当たりにしてきた。(工場で働くことは)安定雇用だと考えないかもしれない」
製造業における労働力開発に焦点を当てる非営利団体のマニュファクチャリング・インスティテュートで代表を務めるキャロリン・リー氏は、生産規模を即座に拡大することは人手不足のために難しくなっているとし、「ただ工場を建てただけで奇跡的に人が現れることは期待できない」と語った。
労働者を引き付けるためには、製造業は新たな手段を必要としているとリー氏は述べた。例えばその一つは勤務時間の柔軟性を高めることで、ホワイトカラーだけではなくブルーカラーの労働者の間でも要求は高まっている。
QCCのデーブ・ローディ社長によると、新たな関税が導入されてから同社では受注が一時的に25%急増した。この傾向が再び強まれば、シフトの2交代制を取り入れる必要があるという。
製造業では、社員の採用だけではなく定着も課題だと考える企業が多い。新入社員は相対的に負担が少なかったり給与が高かったりする仕事に転職することが多い。
QCCは新型コロナウイルス禍以降に平均給与を30%引き上げた。それにもかかわらず、「20人採用しても、そのままキャリアを積もうとするのは2、3人に過ぎず、他は数週間か数カ月で辞めてしまう」と同社のオーナーであるジョセフ・コルフ氏は話した。
プチャイダさんはQCCでの就職を選んだ理由として、地元のゴルフクラブでの前職より時給が2ドル(約290円)高かったことを挙げた。鋳造という仕事には強い労働倫理が必要であることを建設作業員の父親から学んだという。
ただ、同世代の中で自分は例外だと考えている。最近の若者について、「多くのものを与えられてきたことが大きな問題だと思う」と話した。
QCCが求めるような経験を持つ労働者は見つけにくい。ほとんどの職務は現場で習得するのが最適な技術的スキルを必要とするものの、設計図の寸法に合わせて木型を準備するなど、一部の作業には工学的スキルが求められる。
作業員は温度がカ氏3000度(セ氏で約1650度)にも達する溶融金属の近くで働き、時には重い機材を運搬する。炎や粉じんから身を守るため、ヘルメットやフェースシールド、呼吸用保護具を着用する。
QCCで成形を専門にするシングルマザーのシンシア・ジョーラーさん(36)は「数日や数カ月で辞めていく人を見てきた」と話した。ジョーラーさんは同社で数少ない女性従業員の1人で、3年間の勤務を経て、たくましい女性を意味する「ブラック・ウィドウ」というあだ名が付いた。
彼女は昨年、重いプラスチック製の型枠が落ちて足を骨折し、2カ月間歩行用ブーツを着用した。けがのことは冷静に受け止めたという。医療費と休業補償は、QCCが加入する州の労災補償制度でカバーされた。同社での仕事については、「本当に気に入っている」と話した。
QCCの工場がある地域はかつて製鉄所が地元経済の柱だった。地元の高校の生徒や教師、最近の卒業生らによると、若者の間では技能職に対する前向きな姿勢が強まっている。
ただ、どの技能職も同じように関心を集めているわけではない。ビーバー・ローカル高校のスクールカウンセラー、マイク・アグニュー氏によると、生徒の間では建設や溶接のようにイメージしやすかったり、すでに知り合いがいたりする分野に興味を抱く傾向が強い。
QCCは主に口コミで応募者を見つけているが、オンラインの求人広告も利用している。地元の製造業は同社の工場のほかにも、自動車工場や浴室設備工場、金属加工施設などがある。
工場での仕事は豊富にあるものの、地元住民の間で人気が高いわけではない。セーラムに住むジェイコブ・ワイブッシュさん(25)は高校時代に職業訓練を受け、10代の頃に近くのプラスチック工場で働いた。だが給与が低い、臨時労働者には福利厚生がない、肉体的にきついといったことで嫌になったという。「立ちっぱなしで、一日が終わる頃には足が痛くなった」
ワイブッシュさんは現在、友人の自動車修理店で働いている。午前10時から午後6時まで時給15ドルで働く。この仕事は長期的に続けたいという。
ウェストブランチ高校2年生のスティーブン・ペイジさんは、電気技師になる計画を立てている。工場の中に一日中閉じ込められるよりも、柔軟性と自由がある職業だと思っている。工場勤務というと、「組み立てラインに立って、モノが流れてきて、全員がそれぞれ違うものにスタンプを押している」といった様子がアニメのワンシーンのように頭に浮かぶという。
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●市況(ChatGPTによる要約版)
### ■ 為替市場の動き
#### ● ドル高の要因
* **トランプ大統領の大型減税を含む税制・歳出法案**が下院で可決されたことが、ドル買い材料に。
* \*\*米PMI速報値(52.1)\*\*が市場予想を上回り、ドル買いを後押し。
* 結果、\*\*ドル円は143.75円(+0.1%)\*\*に上昇。
#### ● ユーロ安の要因
* \*\*ユーロ圏PMI(49.5)\*\*が予想外に低下。景況感の分かれ目である「50」を下回り、ユーロ売りが加速。
* \*\*ユーロ/ドルは1.1293ドル(-0.3%)\*\*に下落。
#### ● その他通貨
* **ドル指数は99.905(+0.3%)**
* **ドル/スイスフランは0.8286フラン(+0.5%)**
### ■ 暗号資産市場:ビットコイン最高値更新
* **ビットコインは11万1965.62ドルへ上昇(+3.4%)**
* 背景にあるのは「**投資家のリスク分散ニーズ**」と「**伝統的資産への不安感**」。
* デジタルアセットへの資金流入が急加速していると報道。
### ■ 債券市場の動き
#### ● 初期は利回り上昇、その後低下
* 減税・歳出拡大で**連邦債務の膨張懸念(+3.8兆ドル)** → 一時利回り上昇。
* その後、高利回りを求めた買いが入り利回りは低下。
#### ● 債券利回りの詳細
* **2年債:3.999%(-1.9bp)**
* **10年債:4.551%(-4.6bp)**
* **30年債:5.063%(-2.6bp)**
* **10年債入札の応札倍率:2.36倍**
#### ● FRB関係
* ウォラーFRB理事は「関税政策次第で利下げも検討」と示唆。
* 市場は**9月の利下げ期待**を織り込みつつある。
### ■ 株式市場の動き
#### ● 市場全体
* **ほぼ横ばい**。米国債利回りの低下で下げが一服。
* 不安定ながら主要3指数は小幅変動:
* S\&P500:ほぼ変わらず
* ダウ:ほぼ変わらず
* ナスダック:小幅上昇
#### ● セクター別
* 値下がり:公益、ヘルスケア、エネルギー、消費財
* 値上がり:情報技術、通信、一般消費財
#### ● 個別銘柄
* 上昇:エヌビディア、アマゾン、テスラ、アルファベット
* 下落:アップル、ファースト・ソーラー(減税法案で補助金打ち切り懸念)、アナログ・デバイセズ
#### ● 金(Gold)
* **4日ぶり反落**:1オンス=3,295ドル(-18.5ドル、-0.56%)
* ドル高により金の割高感が台頭し利食い売りが発生。
#### ● 原油(WTI)
* **続落**:1バレル=61.20ドル(-0.60%)
* 世界的な供給過剰懸念が背景。
## 📉 **ロンドン株式市場**
* **主要因:** 米英両国の財政悪化懸念が重しに。
* **FTSE250指数:** 0.72%下落。
* **セクター別:**
* **原油安** → 石油・ガス株指数 -1.52%。シェル、BP共に1.5%安。
* **航空** → イージージェット -2.6%(中間決算発表後)。
* **不動産** → ブリティッシュ・ランド -5.4%(業績見通し悪化)。
* **化学** → ジョンソン・マッセイ +30.7%(一部事業をハネウェルに売却)。
## 🇪🇺 **欧州株式市場**
* **総括:** 債券利回り上昇+ユーロ圏PMI低下で続落。
* **ユーロ圏PMI:** 49.5(前月50.4から悪化)→ サービス業の需要減が影響。
* **業種別:**
* **家庭用品指数:** -1.26%
* **自動車・部品指数:** -1.58%
* **化学株指数:** ほぼ横ばい(+0.01%)
## 💶 **ユーロ圏債券市場**
* **米国発の影響:**
* 米国の大型減税法案→財政悪化懸念→米債利回り上昇。
* ドイツなど欧州債にも波及。
* **ドイツ債:**
* 30年債利回り:3.172%(2か月ぶり高水準)
* 10年債利回り:2.648%(+0.5bp)
* 2年債利回り:1.83%(-4bp)
* **イタリア債:**
* 10年債:3.67%(+2bp)
* 30年債:4.54%(+4bp)