備忘録(2023/3/31-4/2)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
INGのクレジットストラテジスト、ティモシー・ラヒル氏は「銀行が近い将来に新たなAT1債を発行できるのか疑わしい」とリポートで指摘。「AT1債市場は宙に浮いたままで、同商品やひいては他の負債構造の実際の価値を巡る疑問は残る」と記した。
欧州の銀行が発行したAT1債の指数の利回りは28日時点で13.5%。クレディ・スイスの同債が無価値となった後に付けた過去最高水準からは小幅に低下。2月には一時7.8%まで下がっていた。
AT1債を発行している銀行は債権者と株式保有者、規制当局それぞれの利益のバランスを取るという難しい判断を迫られている。借り換えコストが高いことを踏まえると、ファーストコール日(発行体が満期前に繰り上げ償還できる最も早い日)を見送り、発行済み債券のクーポンを支払う方が割安かもしれない。
ケプラー・シュブルーのクレジット調査責任者、セバスチャン・バルテレミ氏は「波及しないにせよ、ストレスや懸念は続く」と指摘。「市場がクレディ・スイスの件を消化し、完全に安心するにはしばらく時間がかかる」と話した。
22日時点の中小銀行の預金残高は前の週から58億ドル(7700億円、0.1%)増加し、5兆3860億ドルとなった。シリコンバレーバンク(SVB)の破綻をきっかけに過去最大の預金流出を記録した15日から1週たち、ひとまず落ち着きを取り戻した。
大手銀行や米国外の銀行も含めた全体でみると、16〜22日の週の預金残高は前の週比で0.7%減少した。減少は9週連続となる。銀行全体から預金が減っているのは、より利回りの高い金融商品に資金がシフトしているためだ。その代表格がMMF(マネー・マーケット・ファンド)だ。
米投資信託協会(ICI)によると、MMF残高は29日時点で5兆1980億ドルと、3週連続で増えた。直近3週間では3000億ドル以上(約6%)増え、新型コロナウイルス禍の2020年春以来の急増ぶりをみせている。
航空業界の事業環境が改善してきた。世界42社の2022年12月期決算を見ると、半数にあたる21社で売上高が新型コロナウイルス禍前の19年12月期を超えた。米国や中南米を中心に航空需要が回復し、人手不足などによる座席の需給逼迫もあって運賃が上昇している。一方で燃料費や人件費などのコストはかさみ、本業の損益が改善したのは13社にとどまった。
シリコンバレー銀行(SVB)破綻につながった投資損失は程度の差こそあれ、米金融システム全体に存在する問題だ。低利回り債券への投資で米銀行業界の帳簿上の未実現損失は昨年末時点で計6200億ドル(約82兆円)だった。
投資上の保有債券は、米銀行システムの昨年末時点の資産23兆6000億ドルの4分の1未満。SVBとは異なり、銀行の預金者は通常多岐に渡り、一斉に資金が必要になる公算は小さい。中でも大銀行のリスクはさらに小さい。大きすぎてつぶせないと見なされているためだ。
さらに、最近の米国債相場の上昇で帳簿上の6200億ドルの損失は縮小しつつある。皮肉にも、相場上昇は銀行業界の健全性に対する不安に起因している。
それでも預金者による段階的な資金引き出しや、マネーマーケット・ミューチュアル・ファンド(MMMF)などへの投資シフトが続けば、銀行は苦境に直面する。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期に行った低利回り債券投資からの収入が限られる中、資金調達コストは上昇。それによって、銀行の消費者や企業への貸し出し能力が抑制され、景気を鈍化させることになり得る。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の元債券アナリストで、リッチモンド連銀で銀行の検証に携わった経験を持つスタン・オーガスト氏は「預金に対する支払いが増えているのに、債券のもうけは一定。それが銀行圧迫の原因だ」と述べた。
金利の上昇局面ではいつでも、債券投資では損失を被るリスクがある。しかも、銀行の2022年の債券保有は通常よりも多かった。米金融当局と政府が経済に注いだ資金が銀行システムに流れ、金融機関には巨額の投資資金が与えられた結果となったためだ。SVBの国内預金は例えば、20年3月末から昨年末までに150%余り増えた。
銀行の預金がパンデミック期に拡大し始めると、金融機関は当初、「売却可能」の会計処理方法を用いて債券投資にさらなる資金を投じた。この手法では、債券の価値変化はバランスシートに影響を与えるものの、損益計算書には与えない。もちろん、損失が大きくなりすぎれば、銀行は資本水準を上げるよう迫られる。
21年に入ると、米金融当局が間もなく利上げ局面に入ると確信する銀行が増え、こうした金融機関は債券投資を満期保有に切り替え始めた。
カンビア・インベスターズの投資プリンシパル、アニア・アルドリッチ氏は「この業界を20年以上カバーしているが、こんな状況は見たことがない」と述べ、「これまでのストレステストでも、少なくとも主要銀行はこうした状況への耐性を検査されたことはない」と続けた。
●その他産業
中西部オハイオ州で化学物質を積んだ列車の脱線事故を巡り米貨物大手ノーフォーク・サザンを提訴したと発表した。司法省は同社が違法に化学物質を放出し汚染につながったと主張。罰金のほか、危険物運搬の安全性向上と再発防止に向けた措置を講じるよう求めた。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
サンチェス氏は「ウクライナ危機の政治的解決における中国の建設的な役割を高く評価する」と述べた。中国国営中央テレビ(CCTV)が伝えた。
スペインは今年下半期の欧州連合(EU)議長国を務める。習氏は中国とEUの協力拡大に向け積極的な役割を果たすよう呼びかけた。サンチェス氏は「尽力する」と答えた。
2月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比で5.0%上昇した。伸びは1月の5.3%から鈍化した。エネルギーと食品を除く上昇率は4.6%となり、市場予想を0.1ポイント下回った。
総合指数は前月比の伸びは0.3%で、1月の0.6%から鈍った。エネルギー・食品を除いても0.3%の上昇で、やはり1月から鈍化して市場予想をやや下回った。
「24年以降は米企業が大規模な資金借り換えを迫られ、企業活動が著しく鈍る」として、23年後半から株式相場は下落基調を強めるとみる。
3月のユーロ圏の消費者物価指数は前年同月比6.9%上昇した。資源価格の下落で伸び率は5カ月連続で鈍化した半面、価格変動の大きい食品やエネルギーなどを除くと5.7%と最高を更新した。欧米で金融不安がくすぶるなか、欧州中央銀行(ECB)は利上げ継続へ難しい判断を迫られる。
市場予想の7.1%を下回った。2月は8.5%だった。インフレ率は2022年10月の10.6%をピークに鈍化基調が続き、22年2月以来の水準まで下がった。
品目別ではエネルギーが0.9%下落し、21年2月以来のマイナスに転じた。一方、食品などは15.4%、サービスは5.0%とそれぞれ加速した。エネルギー以外の工業製品も6.6%と高止まりした。
欧米で金融不安がくすぶるなか、ECBはインフレ抑制を優先して利上げを続ける構えだ。ECBの見通しでは、ユーロ圏のインフレ率は23年に5.3%、24年も2.9%で推移する。ラガルド総裁は物価が中期的に2%に戻るまで利上げを続ける姿勢を示してきた。
市場ではインフレ基調が今夏まで加速するとの見方も出ており、次回5月の理事会では0.25%の利上げが有力視されている。ドイツで大規模なストライキが広がるなどユーロ圏で賃上げ機運も高まっており、インフレの高止まりに警戒を解けない。
ラガルド総裁はイタリアのフィレンツェで学生らに対し、ECBは中期的に2%のインフレ率へと戻すために「すべきこと」がまだあると語った。ただ、昨年7月以降に実施した合計3.5ポイントの利上げが「効果を表しつつある」とも述べた。
最近の金融市場に見られるストレスがインフレとの闘いを妨げることはないとの見解も繰り返し、クレディ・スイス・グループの転落とドイツ銀行が比較されるべきではないとも指摘した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
国務院(政府)ではなく共産党が金融行政を直轄する方針に改め、監督当局の職員給与を引き下げるなど金融関係者の待遇を厳しく管理する。腐敗撲滅を徹底して金融リスクを抑える狙いだが、外資金融が中国を敬遠する可能性もある。
ロシアのプーチン大統領が3月31日に大統領令で承認した外交政策の指針で、米国など西側諸国への対抗姿勢を鮮明にした。ウクライナ侵攻が長期化するなか、中国を筆頭に対ロ制裁に参加していない国との外交を強化する方針も示した。
世界の多極化が進んでいるとも説明し、中国が参加するBRICSや上海協力機構(SCO)との連携を一段と強める考えを示した。
米シンクタンクの戦争研究所は31日の分析で外交政策概念について、ロシアによる反欧米ブロックの形成強化が目的と考えられると指摘した。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況日経先物28245、ダウ先33524、債先147.81、米3.473、独2.2780、仏2.778、西3.285、伊4.072、英3.4930、波6.043、原油75.70、銅8,995、ドル円132.76、ユーロドル1.0842
※3/31 NY引け値
備忘録(2023/3/29-30)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
トランプ政権がストレステストの頻度を毎年から2年に1回に減らし、1000億ドル以上の規模になった銀行が最初にテストを受けるまでの期間も長くしたとも批判した。SVBは基準に達してから最初のテストまで3年間かかることになっていたと指摘。「銀行の急成長に伴うリスクへの対応を検討すべきだ」と主張した。
イエレン米財務長官も30日の講演で「規制緩和が行き過ぎたかどうかを検討し、最近のショックで明らかになった規制関連の亀裂を修復する」と強調した。「規制は企業に対してコストを課すものだが、金融危機の悲劇的なコストとは比較にならない」と強い規制の必要性を訴えた。
米連邦預金保険公社(FDIC)によると、SVBは2022年末時点で1754億ドル(約23兆円)の預金を抱えていた。破綻前日の3月9日に420億ドルの預金流出があり、10日には1000億ドル規模の流出が見込まれたことから、同日に当局が事業停止を決めてFDICの管理下に入った。
デジタル時代の大口預金の流出が当局の想像を超える大規模なものになった一方、SVBの経営を巡ってはリスク管理の不備などにFRBがたびたび注意喚起をしていたことも明らかになっている。29日の公聴会でも当局の監督責任を問う声が相次いだ。バー氏は監督側の責任も認めたうえで、改善策を探る考えを示した。
一連の変更には、資産規模1000億-2500億ドル(13兆2500億-33兆1000億円)の銀行を対象とした各規則の復活を含む。流動性要件やストレステスト強化、「生前遺言」(経営破綻時の事業整理計画)などだ。この規模には破綻したシリコンバレー銀行(SVB)も該当する。
クレディ・スイスは14年、数千人の米国人の脱税をほう助したことを認め、米メディアによると26億ドルの和解金を支払った。財政委員会はクレディ・スイスに対し、米国の大口顧客で2000万ドル以上の残高を有する申告漏れの口座情報を要求した。その結果、14年の合意後にも23件の申告漏れ口座が見つかり、隠蔽された資産総額は7億ドル以上になるという。
財政委員会のロン・ワイデン委員長は声明で「この司法取引でクレディ・スイスは米国を欺くビジネスから手を引くと誓った。その約束を果たさなかったことが分かった」と合意違反を指摘。米司法省の捜査を促した。
報告書によると、見つかった23の申告漏れ口座のうち、13件は報告書が出る数日前に開示された。スイス金融大手UBSが19日にスイス政府の後押しでクレディ・スイスの救済買収で合意した後だったとみられる。具体的な脱税手段として、米国と中南米の二重国籍者を利用してスイスなど米国外の口座に資金を移すといった事例を挙げた。クレディ・スイスはさらに調査を進めていると委員会に報告した。
米報道によると、米司法省はUBSとクレディ・スイスに対し、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)による制裁逃れを手助けしていないかどうかを調査している。クレディ・スイスはロシアの富裕層顧客を多く抱えることでも知られる。米国でクレディ・スイスに対する風当たりがさらに強まることになる。
クレディ・スイスの広報担当者は「報告書は10年前のレガシー(遺産)が記載されている」と述べた。和解以来「大規模な(脱税対策の)強化を実施した」と強調した。「残されたレガシーな行動や懸念に対処するため、司法省を含む当局と連携している」と述べた。詳細は明らかにしていないが、脱税ほう助の継続を許すような体制ではないとの主張だ。
電気自動車(EV)などに使い、大きな電流を制御して省電力につなげる「パワー半導体」など、車載向けでも一部は依然として供給が安定せずに納期も長めとなっている。「供給が改善しているものと不足している部品が分かれてきた」(半導体商社)
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
バイデン氏は28日、ホワイトハウスで記者団に司法制度改革に関し「撤回を望んでいる」と語った。同日に南部ノースカロライナ州でもネタニヤフ氏をホワイトハウスに招待するかと質問されると「近い将来はない」と述べて距離を置いた。
ネタニヤフ氏は反発した。ツイッターに「バイデン氏を40年以上知っているし、イスラエルへの長年の関与に感謝する」と書き込んだうえで「イスラエルは親友を含む外国の圧力ではなく、国民の意思に基づいて決断をする主権国家だ」と断言。バイデン氏の撤回要請を一蹴した。
バイデン氏とネタニヤフ氏はもともと中東政策で隔たりが大きかった。ネタニヤフ政権のもとでイスラエル軍はパレスチナ武装勢力への急襲作戦を重ね、暴力の連鎖に拍車がかかった。占領するヨルダン川西岸では国際法違反のユダヤ人入植地の建設を推進した。
イランをめぐっては、バイデン政権が発足当初からイラン核合意への復帰を目指した。欧州諸国を介してイランと間接協議を進めて一時は復帰間近とみられていた。ネタニヤフ氏は以前からイラン核合意に反対の立場をとっていた。
ネタニヤフ氏は核合意が原因で民主党のオバマ政権とも不仲になった過去がある。2015年の米議会演説は共和党の招待で実現した。ホワイトハウスに相談せずに演説を決めたためオバマ政権は強く反発した。当時、副大統領で上院議長を兼ねたバイデン氏は外国訪問を理由に演説を欠席した。
米国とイスラエルの対立は中東で影響力を強めるイランを勢いづけるリスクがある。米国防総省は3月下旬、イランとつながる組織が無人機を使って米軍のシリア駐留拠点を攻撃し、7人が死傷したと明らかにした。米軍が報復措置を講じると、さらにロケット弾攻撃を受けたという。
●中南米・アフリカ
事前の市場予想では0.25%の利上げを見込む声が大半だった。米シティグループ系のバナメックスが21日に公表したリポートによると、調査に回答した市場参加者の9割超が0.25%の利上げを予想していた。メキシコ大手銀バノルテも24日、リポートで0.25%の利上げ予想を示した。
●市況
日経先物28058、ダウ先33079、債先148.07、米3.553、独2.3715、仏2.862、西3.382、伊4.212、英3.5320、波6.052、原油74.28、銅9035、ドル円133.29、ユーロドル1.0905
※3/31 9時10分頃
備忘録(2023/3/28)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
ソシエテ・ジェネラルやBNPパリバなどの銀行が配当に関連する税逃れやマネーロンダリング(資金洗浄)を巡りフランス検察当局から調査を受けており、計10億ユーロ(約1415億円)超の罰金を科される可能性がある。
当局によると、英HSBCホールディングスや仏ナティクシス、BNPのエクサン部門も捜査対象になっており、罰金にはペナルティーと未払い利息が含まれる。今回の捜索に関連する予備捜査は2021年12月に開始されたという。
捜査は配当のアービトラージ戦略に関連するもので、この戦略では株主が配当課税を回避するために海外に拠点を置く投資家に短期間株式を譲渡する仕組みだ。
24日の世界的な市場混乱をあおった疑いがあるとして、ドイツ銀行のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)に絡む単一の取引に複数の当局が注目している。
事情に詳しい複数の関係者によると、ドイツ銀行の劣後債に関わるCDSで、およそ500万ユーロ(約7億1000万円)の取引があった。当局者がこの取引について市場参加者らに話したという。CDSの取引は流動性に乏しく、単一の取引が大きな動きを引き起こすこともある。ドイツ銀行の広報担当者はコメントを控えた。
スイス議会は今後数週間以内に臨時議会を開催し、統合後の新会社の市場規模などについて議論する。財界寄りのスイス自由民主党はスイス事業の株式公開を求める一方、UBSのコルム・ケレハー会長は同事業を維持する意向を示した。
スイスに本部を置く食品大手ネスレのマーク・シュナイダーCEOはスイスのテレビ局テレズーリとのインタビューで、買収合意で安定を取り戻したものの、同社は国際的な金融機関との関係を含めた銀行との関係の再構築を検討していくことになると語った。特殊化学メーカーのクラリアントや鉄道車両製造のシュタッドラー・レールなど国内企業からは競争への悪影響を懸念する声が出ている。
ヘルフェンシュタイン氏は、「クレディ・スイスだけでなくUBSにとっても、スイス事業には大きな戦略的重要性があることをわれわれは認識する必要があり、だからこそ極めて慎重に統合を進めていく」と語った。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
自動車業界の主張を受けたドイツ政府の意見を踏まえてエンジン車の部分容認に方針転換した。EUは今後、合成燃料の利用に向けた制度設計に乗り出すが、燃料の基準や利用条件などを巡って難航する可能性もある。一方でEUはバイオ燃料を利用した車については35年以降の販売を認めない方針だ。
エンジン車の販売禁止は昨秋に欧州理事会と欧州議会、欧州委員会が合意に達した。その後、フォルクスワーゲン(VW)など自動車大手を抱えるドイツが合成燃料の容認を強く主張し、内容の修正を迫られた。
EUは50年までに域内の温暖化ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げる。電気自動車(EV)への移行を進めるための目玉政策に例外を設け、エンジン車が併存する形となった。最終合意の手前でこれまでの協議内容を覆したドイツへの他国の反発は強く、今後の他の政策でのあつれきにつながるおそれもある。
EU関係者は28日「EVへの移行をめざすEUの基本方針は変わらない。多くの自動車メーカーはEVを選んでいる」と語り、合成燃料を利用した車の販売は将来も一部にとどまるとの見方を示した。
別の関係者は「合成燃料のみで車を走らせる仕組みをつくるには技術的な挑戦がいる」と述べ、関連産業全体の技術革新が必要になると指摘した。
合成燃料は二酸化炭素(CO2)と再生可能エネルギーによる電気分解で得た水素からつくる。ガソリンと成分は同じだが、現状では生産コストが高く、乗用車向けで商用化されるかは見通せない。
独ポツダム気候影響研究所の調査では、35年までに世界で計画されている合成燃料の工場は60カ所にとどまる。航空や船舶など早期の電動化が難しい移動手段で優先的に使われ、乗用車向けの供給量は限られるとの分析もある。
1月の全米住宅価格指数(季節調整済み)は、前年同月比で5.3%上昇した。2022年3月から連続でプラス幅が縮んでおり、伸び率は20年5月以来の低水準だった。前月からは0.2%上がった。需要低迷を受けて価格上昇圧力は弱まっている。
同日発表の米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズによるS&Pコアロジック・ケース・シラー指数(季節調整済み)では、全米の住宅価格は前月比0.2%下落した。米PNCフィナンシャル・サービシズのエコノミストは「米連邦準備理事会(FRB)による積極的な利上げを受けて住宅市場は減速が続いている」と指摘した。
米銀の経営破綻に伴う金融システム不安の波及も不安視されている。銀行の経営悪化で、住宅ローンや建設業者向けの融資を抑制するとの懸念があるためだ。「金融システムの混乱がさらに広がれば、融資基準が厳しくなり、借り入れコストがさらに上昇する可能性がある」(PNCフィナンシャル・サービシズ)との声は強まっている。同社は23年に住宅価格が前年比10%下落すると予想している。
ブラックロック・インベストメント・インスティチュートのストラテジストはリポートで、金融当局は銀行セクターの問題によってインフレとの闘いが止まることはないと表明していると指摘した。
「リセッション入りすると中央銀行が慌てて経済の救済に動くというのは古いやり方だ」とし、「今後はインフレ抑制の新たなより繊細な段階に入るとみている。闘いの厳しさは弱まるが、利下げはまだない」との見方を示した。
「労働市場の逼迫(ひっぱく)によるインフレの持続性を当局は過小評価している」可能性があると指摘。ニューヨーク連銀の研究はインフレが従来の想定よりも長く持続することを示唆した。
また、ブラックロックのストラテジストは「米連邦準備制度が、市場が想定しているような利下げを実施できるのは、より深刻な信用収縮が広がり予想以上にひどい景気後退を招いた場合だけだと考える」との見方を示した。
TDセキュリティーズとダブルライン・キャピタルはこれとは異なる見解で、景気後退のリスクが高まる中で利上げ継続が必要だとする金融当局は間違っていると論じる。複数の米銀の破綻とクレディ・スイス・グループ救済は世界的な金融政策見通し再考を促すとともに、10年余りで最大の米国債利回りの変動を引き起こした。
FRBのバー副議長(銀行監督担当)は上院銀行委員会の公聴会で、「SVBの破綻は、銀行システムのレジリエンス改善に向けた取り組みを前に進める必要性を浮き彫りにした」と証言。
FDICのグルーエンバーグ総裁も同公聴会で、SVBやシグネチャー・バンクの破綻は「1000億ドル(約13兆円)を超える資産を抱える銀行が金融安定に及ぼし得る影響を明確に示した。こうした機関のプルデンシャル規制は特に資本や流動性、金利リスクに関して一段の注意を払うに値する」と発言した。
月例のエコノミスト調査によると、向こう12カ月に景気後退に入るとの予想は全体の65%と、2月の60%から上昇した。シリコンバレー銀行(SVB)を含む複数の銀行が破綻する中で48人が回答した。
INGのチーフ国際エコノミスト、ジェームズ・ナイトリー氏は「これまでのところ問題が封じ込められているように見えても、最近の事象による影響はまだ全て表れていない」と指摘。「銀行のストレスに伴う借り入れコストの上昇とクレジットへのアクセス低下は、米経済がハードランディングする可能性がより高いことを意味する」と語った。
同調査によると、エコノミストは5月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ポイントの追加利上げが決定され、政策金利が5-5.25%になるとの予想を維持した。米当局がインフレ抑制に取り組む中、年内はこの水準で政策金利は維持されるとみている。
個人消費支出(PCE)価格指数の伸びについて、エコノミストは24年7-9月(第3四半期)まで全四半期の予想を引き上げた。23年は年率で平均3.9%と先月予想の3.4%から上昇し、FRB目標の約2倍になるとみている。今年と来年の消費者物価指数(CPI)予想も引き上げた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
ネタニヤフ氏が立法手続きを強行すれば混乱はいよいよ深まるが、断念すれば推進派の連立与党が離反しかねない。極右政党の党首ベングビール国家治安相は閣僚辞任をちらつかせて延期に反発した。27日になって容認したのは、同氏の希望に沿って国家治安省の下に新たな防衛組織を置くという見返りを引き出したからだ。
ネタニヤフ氏が立法手続きを延期すると表明したことを受け、対立する野党のラピド前首相は「真に立法措置が止まるなら対話を始める用意がある」と一定の評価を示した。他の野党には懐疑論も強く、労働党のミカエリ党首は「民主主義を犠牲にした時間稼ぎだ」と断じた。一方のベングビール氏は「改革は成立する」と断念はしない姿勢を改めて明確にした。
ネタニヤフ氏は司法と無関係の取引で極右政党をなだめ、連立政権の瓦解は防いだものの、肝心の立法手続きの推進で反対派との溝を埋める糸口はみえない。同氏はヘルツォグ大統領が与野党の主張を踏まえて15日に示した仲裁案を一蹴している。
国会審議が近づけばまた同様の混乱に陥る可能性は高い。一連の騒動は、29日に発足3カ月を迎えるネタニヤフ政権の危うさを改めて浮き彫りにした。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物27277、ダウ先32636、債先148.47、米3.573、独2.2870、仏2.796、西3.325、伊4.144、英3.4900、波6.063、原油73.74、銅8,956、ドル円131.04、ユーロドル1.0840
※3/29 8時45分頃
備忘録(2023/3/27)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
経営破綻したシリコンバレーバンク(SVB)について、米東部ノースカロライナ州地盤の銀行持ち株会社、ファースト・シチズンズ・バンクシェアーズグループが買収することで合意したと発表した。FDICは競争入札でSVBの引受先の選定を進めていたが難航し、中堅地銀が引き受けることとなった。
持ち株会社の傘下に中堅地銀ファースト・シチズンズ・バンクを持つ。1898年創業で、全米21州に500超の支店網を持つ。米連邦準備理事会(FRB)によると、2022年末の総資産は1091億ドル(約14兆円)で、全米で30位だった。
ファースト・シチズンズによると、SVBのローン約720億ドルを含む1100億ドルの資産と、預金など936億ドルの負債を引き受ける。資産を約165億ドル割り引いて購入することとなる。FDICはファースト・シチズンズ社の普通株の評価権も取得する。商業ローンについては、SVBを管理するFDICとファースト・シチズンズの間で損失を分担する契約を結んだ。
FDICはSVBの破綻後すぐに入札を始めたが、大手銀や地銀大手は手を挙げなかったもよう。20日に入札の締め切りを24日まで延長し、引き受け手探しを進めていた。FDICはSVB破綻に伴う預金保険基金の負担を約200億ドルと見積もっている。
スイス金融大手クレディ・スイス・グループの救済から1週間あまりが経過した。金融市場で強まったのが救済過程で無価値となったAT1債への警戒感だ。欧州銀を中心に利回りが急上昇(債券価格は下落)。世界全体の平均的な動きを示す代表的指数は一時10%に乗せ、欧州銀の信用リスクに対する警戒が広がる。一方、邦銀のAT1債の利回りは安定している。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
8年あまり党首を務めたスタージョン氏の後任にハムザ・ユーサフ氏(37)を選出した。スタージョン氏が掲げた英国からの分離・独立を目指す路線を継続する。28日に予定されるスコットランド議会での投票を経て、地方政府(行政府)首相に就く見通しだ。
ウィルソン氏は27日、「過去数週間の事象を受け、見通しは一段と非現実的に映りつつあると考えている。ハードデータの変化がある以前に、株式市場ははるかに低い見通しを織り込みに行くリスクが増している」とリポートで述べた。
今月に入ってからの株価と債券の市場動向の乖離(かいり)も、同氏は理由に挙げた。一連の米地方銀行の破綻後にリセッション(景気後退)の可能性が想定され、債券のボラティリティーが急上昇したのに対し、株価は政策当局者の介入を見込んで下げを取り戻した。S&P500種株価指数は2四半期連続の上昇を記録する勢いだ。
今の注目は4月半ばからの1-3月(第1四半期)決算発表シーズンだ。今年下期の利益急回復が見込まれていることを考慮すれば、高止まりするインフレ率が利幅に及ぼすリスクはまだ「過小評価されている」とウィルソン氏は指摘した。
Ifo経済研究所が27日発表した3月の独企業期待指数は91.2と、前月の88.4から上昇。ブルームバーグが調査した全てのエコノミスト予想を上回った。予想中央値は88.3だった。現況指数も前月から上昇した。Ifoのクレメンス・フュースト所長は発表文で「一部の大手銀行の混乱にもかかわらず、ドイツ経済は落ち着きつつある」と述べた。
今世紀を速いペースの成長軌道でスタートした世界経済は、インフレを引き起こさずに達成できる長期成長率の上限に相当する「制限速度」が、2022-30年に年間2.2%に落ちる見通しだと、世銀は27日のリポートで明らかにした。
「世界経済としては失われた10年となり得る」と世銀のチーフエコノミスト、インダーミット・ギル氏は同リポートの添付資料で指摘。「根強い貧困や所得の乖離(かいり)、気候変動といった時代特有の試練が拡大しており、継続的な潜在成長率の低下はこうした試練への世界的な対応能力に深刻な影響を及ぼす」と記した。
潜在成長率は最高で2.9%に達する可能性があるという明るい面も指摘。政策当局者らが生産性や労働力供給の押し上げ、および投資のてこ入れで適切な方策を講じる場合は、成長が加速するとしている。
米連邦預金保険公社(FDIC)のグルーエンバーグ総裁やブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は最近、監視強化を呼び掛けるコメントを発表した。
世界的な金融危機後に銀行規制が強化される中で、プライベート・エクイティー(PE、未公開株)投資会社などは安価な融資を積み上げることができた。だが懸念されるのは、その債務がどう相互に結び付き得るかに関して監視が不十分であったことだ。
英オックスフォード大学のルドビック・ファリッポー教授(金融経済学)は「金利のわずかな上下の振れが一部企業のデフォルト(債務不履行)につながる」と指摘。「これによりプライベートデットの供与機関に問題が生じ、さらにレバレッジを提供している銀行にも影響が及ぶ」と語った。
銀行とは異なり、PE投資会社やクレジットファンドは投資家から長期の資金を預かることで危機を回避している。ただ、シャドーバンキング(影の銀行)が金融システムにもたらす潜在的な問題や脆弱(ぜいじゃく)さが認識されていないことが監督当局を不安にさせると、別の元イングランド銀当局者が語った。
事情に詳しい別の当局者によると、最近の混乱は、PE投資会社や保険会社、退職基金によって行われた信用供与を含む世界的なシャドーバンキングに対する調査の強化につながる可能性が高い。これは金融危機後に銀行のバランスシートから切り離されたリスクの終着点を特定することを意味する。監督当局はオルタナティブ(代替)資産ブームのさなかに銀行がバイアウト企業に行った融資に伴う信用リスクに関しても精査したい考えだという。
講演原稿によると、ベイリー氏は27日ロンドンで、英国には「強固なマクロプルデンシャルの政策枠組みがある」と主張。「金融行政委員会(FPC)が金融の安定保証に取り組んでいるため、MPCはインフレ率を目標に戻すという重要な責務に集中できる」と語った。
この発言は、英中銀の2つの中核的な役割である金融政策と金融安定が切り離されてそれぞれ運営されることをこれまでで最も強く示唆している。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国経済は3月に景況感や住宅市場は改善したが、金融市場の混乱で世界的な見通しが悪化し、まちまちの状況となっている。
早めに発表される8つの指標をまとめたブルームバーグの最新総合指数は、2月と同じ4と7段階中の真ん中だ。自動車販売の落ち込みと世界需要の低迷が主要な足かせとなっている。
中国が約3年間にわたる厳格な新型コロナウイルス規制を解除したことで、消費者が戻り企業も通常営業を再開し、景況感が高まった。景気の大きな足かせとなっていた住宅市場の落ち込みも、最近になって販売と価格が回復し、底打ちの兆しが見えてきた。
一方で、欧米の主要中央銀行はインフレ抑制のために利上げを継続。銀行危機が投資家の不安をあおっており、グローバル環境は引き続き不透明だ。世界経済の軟化は、最近数カ月ですでに急減している中国輸出需要のさらなる下降を意味する。
スタンダードチャータードの調査によると、中小企業の景況感は3月に2021年7月以来の高水準に上昇。サービス業では不動産と金融、IT企業のセンチメントに著しい改善が見られる一方、飲食・宿泊業は経済本格再開後の消費ブームが一段落し景況感が低下した。
幾つかの指標は景気の弱さを示唆している。世界需要のバロメーターである韓国の貿易統計は一層の輸出不振を示し、3月1-20日の輸出は前年同期比で平均23.1%減少した。
中国自動車工業協会(CAAM)の週次データによれば、販売台数は3月も前年割れが続いている。鉄鋼在庫は3月に増加しており、需要にとって不吉な兆候だ。
●中東
サウジ・ナショナル・バンク(SNB)は27日、アンマル・フデイリ会長が辞任したと発表した。フデイリ氏は3月、経営難のクレディへの追加出資を否定。発言がきっかけの一つとなりクレディ株の下落が加速した。
フデイリ氏は15日、米メディアのインタビューでクレディへの追加出資を問われ「あり得ない」などと否定した。クレディは前日に過去の財務報告の内部管理に「重大な弱点」があったと発表しており、フデイリ氏の発言が追い打ちをかけるかたちで欧州株式市場でクレディ株が過去最安値を更新。経営不安が強まった。
その後、スイス政府の主導でスイス金融大手UBSがクレディを買収することで合意した。救済に伴う株式交換で保有するクレディ株の価値が毀損し、SNBは出資額の8割に相当する12億ドル(約1600億円)の損失を被った。
イスラエルのネタニヤフ首相は26日、政権が目指す司法制度改革の中断を求めたガラント国防相を更迭した。改革に反対する市民の抗議は一層激化し、27日も続いた。対立と内政の混迷が深まるなか、ネタニヤフ氏は改革の立法化を凍結するかの判断を迫られている。
ネタニヤフ氏は「真の対話のための機会を与える」と述べた。週内を目指していた関連法案の国会採決について、イスラエルメディアによると4月末までの国会休会後に延期する。立法の手続きをいったん凍結することで、抗議行動の鎮静化を狙う。
推進派の極右政党「ユダヤの力」は党首のベングビール国家治安相が閣僚辞任をちらつかせて中断に反発していたが、最終的に受け入れた。見返りに、同氏が求める民間防衛組織をつくり国家治安省の下に置くことにネタニヤフ氏が合意した。同党が明らかにした。
政権が目指す司法制度改革案は一院制の国会が最高裁の判断を覆せるようにし、裁判官の任命で政府の関与を拡大する内容だ。三権分立を危うくするとして野党や法曹、市民が批判し、1月から毎週末に大規模デモが続く。軍の予備役の一部も反対し、ガラント国防相が25日に一時中断するよう公然と求めていた。ネタニヤフ氏は26日にガラント氏を更迭した。
サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは27日、中国の民営化学大手の栄盛石化に出資すると発表した。同社の発行済み株式の10%を取得する。出資額は246億人民元(約4600億円)。アラムコは26日にも中国での製油所建設を発表しており、同国での事業拡大を進めている。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物27340、ダウ先32681、債先148.22、米3.532、独2.2225、仏2.763、西3.302、伊4.079、英3.4090、波6.034、原油72.97、銅8,991、ドル円131.24、ユーロドル1.0807
※3/28 8時55分頃
備忘録(2023/3/24-26)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
企業に対し、サプライチェーン(供給網)の人権侵害のリスクを調べる「デューデリジェンス(DD)」を義務付ける動きが欧州で広がっている。ドイツでは2023年1月、国内に一定の規模の拠点を構える企業に人権DDを義務付ける法律が施行した。今後は欧州全域に人権DDの義務化が広がる公算が大きい。
●その他産業
「FSOCは銀行セクターの現状を議論し、一部機関はストレスを受ける状況になったが、米銀行システムは引き続き健全かつ強靭(きょうじん)だと指摘した」との声明を米財務省が発表。「FSOCは金融動向を監督するために加盟機関が現在進めている取り組みについても議論した」としている。
ショルツ氏は訪問先のブリュッセルでの記者会見でドイツ銀を巡る状況について質問され、同行は「根本的に現代化されており、事業モデルを再編成した。非常に収益性の高い銀行だ」と答え、「何も心配する必要はない」と述べた。
またアンドルー・クームス氏ら米シティグループのアナリストはリポートで「今回は市場の理不尽な動きを受けた展開だとみている」と分析、「さまざまな報道によって、預金者の心理に連鎖反応が起きるかどうかがリスクだ」と指摘した。
フランクフルト株式市場でドイツ銀の株価は一時15%安と、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期の2020年3月以来の大幅下落。同行のユーロ建て優先債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は取引が開始された2019年以降で最高の水準に上昇した。
ドイツ銀以外にも企業融資へのエクスポージャーが高い銀行は売られ、独コメルツ銀行は一時10%安、仏ソシエテ・ジェネラルも8.8%安まで下落した。
規制当局や企業幹部は欧州金融業界の健全性についてトレーダーを安心させようと努めているものの、欧州の銀行に対する圧力は強まっている。ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の制裁回避を金融専門家が助けたかどうかを巡り、クレディ・スイス・グループやUBSグループなど複数の金融機関を米司法省が調査しているとのブルームバーグ報道もあった。
ドイツ銀の米商業用不動産に対するエクスポージャー、大規模なデリバティブ取引を投資家は懸念していると、オートノマス・リサーチのアナリスト、スチュアート・グラハム氏はリポートで指摘。ただ、いずれも「よく知られている」話で、「あまり驚くことではない」と述べた。
24日のドイツ銀行の株価は前日比で9%安、2月末比で28%安の8.54ユーロまで下落した。銀行株は軒並み売られており、仏ソシエテ・ジェネラルが27%安、英スタンダードチャータードは25%安、オランダのINGグループは22%安となった。欧州の主要600社で構成される株価指数ストックス600の5%安を大きく下回っている。
米モルガン・スタンレーの株式ストラテジスト、グラハム・セッカー氏は「今後数週間のうちに根拠を伴わない信用問題の発生が予想される」と指摘する。経営実態などと関係なく、不安が不安を呼ぶかたちで危機が生じることへの警戒が高まっている。
ドイツのショルツ首相は24日、ドイツ銀行について「非常に収益性の高い銀行だ。心配する必要はない」と発言した。同行の普通株などの中核的自己資本(CET1)比率は22年末に13.4%と、目標の12.5%を上回る。経営再建も比較的順調に進んでいるが、それでも収まらない売りの勢いに、当局は焦りを募らせている。
同相はスイス紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)とのインタビューで「クレディ・スイスは月曜を生き延びられなかっただろう」とし、「解決策がなければ、スイス国内でのクレディ・スイスとの決済トランザクションに大きな混乱が生じ、崩壊していたかもしれない」と語った。
クレディ・スイスが無秩序に破綻した場合の影響はスイスの国内総生産(GDP)の2倍に上った可能性があると、ケラーズッター氏が専門家の試算を引用して述べた。さらに幅広く「世界の金融危機も想定された。クレディ・スイスの破綻は他の銀行を底なしの闇に突き落としただろう」と語った。
スイス政府が仲介したUBSグループによるクレディ・スイス救済買収は、投資家の権利を完全に無視し次の危機の際にスイスの納税者に巨額の負担を強いることになるものだとして批判を浴びた。しかしケラーズッター氏は、他の選択肢はさらに悪い結果を招いたと指摘した。
「他の選択肢は全て、スイスにとってのリスクがより大きかった」とし、クレディ・スイスを一時的に国有化すればその状態が望ましいよりもはるかに長く続いた恐れがあるとし「過去の経験は、国が銀行の持ち分を全て放出するには数年、あるいは数十年がかかり得ることを示している」と説明した。
秩序立った整理という方法も除外されたという。大きなダメージが想定されたことに加え、その方法を取れば「世界のシステムにとって重要な銀行を政府が整理する最初の例になるところだった。実験をしていられる時でないことは明らかだった」と話した。
ケラーズッター氏は、UBSによる買収が実際は政府による救済だったという見方を否定し、「連邦政府から銀行に流れた資金はない」と述べた。ただ、預金保証は保険契約のようなもので、「間接的な政府支援」になると認めた。
米当局は銀行向け緊急融資ファシリティー拡張などさらなる銀行支援策を検討している。ファースト・リパブリック・バンクにバランスシート修復の時間を与えることを念頭に置いたものだと、事情に詳しい関係者が明らかにした。
当局者らはファースト・リパブリックを支援する場合にどのような方法を取るかをまだ決定しておらず、米連邦準備制度理事会(FRB)のファシリティーは現在検討されている複数の選択肢の一つ。
シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンク破綻後の処理が当局にとってより差し迫った課題であり、ファースト・リパブリック支援についての検討はまだ初期段階だという。
また、ファースト・リパブリックは当局が直ちに介入しなくても、アドバイザーとともにバランスシートを修復する合意を探る間、営業を続けられる程度には安定していると当局は考えていると、関係者が協議内容は部外秘だとして匿名を条件に述べた。
破綻した3行と同様の危機にさらされるとの懸念からファースト・リパブリック株は今月に入り90%以上下落。3行は急激な預金流出の中で価値が目減りしていた資産からの損失が膨らみ破綻した。
当局はファート・リパブリックの財務健全性とその進展を注視し、不意に状況が変化した場合に備え警戒しているが、水面下では同行の預金が安定しつつあり、SVBのような突然で急激な預金流出に見舞われる可能性は低いと結論付けた。
ファースト・リパブリックはバランスシートに構造問題を抱えているが、顧客の要請に応じるのに十分な手元資金があると関係者が述べた。米大手銀が今月同行に預金した300億ドル(約3兆9000億円)もある。
合成燃料はガソリンの2〜5倍と高額で、船舶・航空など限定的な利用にとどまる公算が大きい。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
ゲオルギエワ氏は低金利環境から、インフレを抑え込むために必要な高金利への「急速な移行」が「(金融部門への)圧迫と脆弱(ぜいじゃく)性をもたらしている」と分析。「一部先進国の銀行部門における最近の動向」に懸念を示した。米国発の信用不安は欧州に飛び火し、スイス金融大手UBSによるクレディ・スイスの救済買収など、動揺が広がっている。
ブラード氏は同日の講演で、銀行破綻に対する米財務省などの対応を「迅速で適切だった」と評価した。破綻したシリコンバレーバンク(SVB)は特殊なケースだったと強調した。ロイターなどによると、講演後に記者団に対して「春から夏にかけて好調な経済への対処がもっと必要になる」と説明し、従来の主張より0.25%高い5.5〜5.75%まで利上げが必要になると主張した
リッチモンド連銀のバーキン総裁も米CNNで、金融機関への影響より高インフレへの警戒のほうが強いと説明した。「需要は後退していない。今回の利上げの根拠は極めて明確だった」と話した。
イエレン米財務長官や米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長らは24日もオンラインで米金融安定監視評議会(FSOC)を開いた。米財務省によると会議では「一部の金融機関がストレスを受けているものの、米国の銀行システムは健全で強靱(きょうじん)である」と指摘があった。金融情勢を監視するための連携についても議論された。
18日に終わる週のクレジットカードの支出は前年同時期から10.3%減少した。減少幅は前週の6.8%から拡大し、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年4月以来の落ち込み幅になったという。米銀破綻による金融システムの混乱で消費者が警戒感を強めた可能性がある。
内訳をみると、工具店やガーデニング用品店などでの支出は前年同時期から18.4%減と、減少幅が前週(8.8%減)より広がった。そのほか靴や電子機器の消費の落ち込み幅も大きかった。食品を除いた全体の支出は13%減った。
シティはリポートで「(米銀破綻を受けた)金融システムの混乱を反映した最初のデータであり、実際に消費者に影響を与えていたことが明らかになった」と指摘した。
3月の購買担当者景気指数(PMI、速報値)は総合が3カ月連続で上昇し、10カ月ぶりの高水準になった。サービス業の新規受注の拡大を反映した。同日発表のユーロ圏の3月の景況感も改善が続いた。足元では米欧の銀行の経営不安が融資の縮小につながるとの懸念もあり、景気の先行きへの警戒感も高まっている。
米国の総合PMIは53.3と前月比で3.2ポイント上昇した。2022年5月(53.6)以来の高水準で、好不況の分かれ目になる50を2カ月連続で上回った。
目立ったのはサービス業の指数の改善で、53.8と3.2ポイント上がった。堅調な消費や売り上げの増加を映し、サービス事業者の新規受注は22年9月以来の増加を記録した。サプライヤーの納期の改善などを追い風に製造業のPMIも49.3と2ポイント上昇したが、節目の50は5カ月連続で下回った。
サービス業では需要の強さから販売価格が引き上げられ、雇用の拡大も進んでいるという。賃金上昇によるコスト負担増を訴える企業の声も根強い。
ユーロ圏の総合PMIは54.1と2.1ポイント上昇し、米国と同様に10カ月ぶりの高水準になった。サービス業が55.6と2.9ポイント上がり、全体の改善をけん引。賃上げ機運が高まるなか、旅行業などを中心に個人消費が持ち直しているもようだ。
製造業は47.1と1.4ポイント低下し、節目の50を下回る状態が続いた。サプライチェーン(供給網)の混乱は自動車業界で改善に向かうものの、製造業全体では新規受注が減少するなど需要の落ち込みが目立つ。
調査会社キャピタル・エコノミクスのアリアン・カーチス氏は「PMIは先進国が1〜3月期の景気後退を回避するだけでなく、企業活動の見通しも改善していることを示唆した」と指摘する。
ただSVBなどの相次ぐ米銀破綻やスイスの金融大手UBSによるクレディ・スイス・グループの救済買収など、最近の金融システム不安の影響を企業はまだ織り込み切れていない可能性もある。S&Pグローバルのクリス・ウィリアムソン氏は「最近の利上げによる金融環境の引き締まりや銀行業界のストレスから生じる不確実性が、需要の回復力に与える影響を見極めることが重要になる」と指摘する。
特定のFOMC会合の結果を予測するスワップ市場では一時、5月会合での0.25ポイント利上げの織り込みが完全に消えた。スワップレートによれば、引き続き年末までに計1ポイント余りの利下げ幅が織り込まれている。FOMCは22日に9会合連続となる利上げを発表。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は発表後の記者会見で、利下げは基本シナリオではないと述べていた。
JPモルガン・アセット・マネジメントの債券ポートフォリオマネジャー、ケルシー・ベロ氏はブルームバーグテレビジョンで「今回の局面で利上げはこれで終わりとなる可能性を考えている」と述べ、「2年債利回りがそのシナリオを物語っている」と続けた。
米5年債、30年債の利回り差は1年ぶり高水準の37.4bp。利回り差のスティープ化は、近く利下げへの方針転換があると投資家がみていることを示唆する。
昨年7月から断続的に逆イールドが発生している米2年債、10年債の利回り差も大きくスティープ化した。2年債利回りは10年債利回りを約35bp上回っている。3月8日には111bpまで拡大した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ホンジュラスでは2021年、親中派とされるカストロ氏が大統領に当選したのを機に、風向きが変わった。22年1月に開いた大統領の就任式には、ハリス米副大統領と台湾の頼清徳副総統をそろって招待し、当初こそ米台に配慮をみせた。だが、カストロ氏の親中姿勢はその後も変わらなかった。米台連携による必死のつなぎ留めにもかかわらず、今回、中国の攻勢に米台が敗れる形となった。
対中強硬路線をとる民主進歩党(民進党)の蔡政権が16年にスタートして以降、中国は台湾と外交関係のある国に対し、攻勢に出た。台湾に代えて中国と国交を樹立するよう呼びかけ、急ピッチで動いた。
台湾が外交関係を維持するのは南米パラグアイなど世界で残り13カ国となった。蔡政権発足後の約7年間で9カ国減った。
●中東
サウジはイランとの外交関係を7年ぶりに復旧すると明らかにした。「イラン包囲網」のもくろみは外れた。イスラエルでは野党が「外交政策の危険な失敗だ」(ラピド前首相)と政権を批判した。サウジが目指す脱石油の改革にイスラエルの先端技術は有用で、両国が水面下で築いた関係がご破算になるとの見方は少ない。しかしイランがサウジのイスラエル接近に横やりを入れる可能性は高い。
さらにイスラエル外交に影を落とすのが、ネタニヤフ政権の政策や閣僚の言動によるパレスチナとの緊張だ。極右政党の閣僚もアラブ諸国の嫌悪を呼ぶ。スモトリッチ財務相が19日に「パレスチナ人など存在しない」といった暴言を連発すると、サウジなどが相次いで非難声明を出した。
国交を持ち経済協力を深めるUAEも例外ではない。イスラエルメディアによると23日、UAEのハルドゥーン・ムバラク大統領上級顧問がイスラエルを訪問し、ネタニヤフ氏と会談。「イスラエル政府の方向性はアブラハム合意に完全に反している」などと苦言を呈した。
中東で長く孤立してきたイスラエルにとって周辺アラブ諸国との融和は、後ろ盾の米国が中東への関与を減らすのを補う価値がある。しかし、ネタニヤフ氏は連立相手の極右政党が主張する対パレスチナ強硬論を無視しきれない。政権維持を優先するあまり外交成果を損ねる自縄自縛に陥る可能性がある。
国内でもネタニヤフ政権は最高裁の権限を制限する司法制度改革を進め、市民の大規模な抗議デモが続いている。妥協策を巡る駆け引きが政権の最大級の懸案となっており、内政に足を取られるうちに、中東情勢や国際社会への対応が二の次になりかねない。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物27170、ダウ先32434、債先148.85、米3.372、独2.1445、仏2.653、西3.198、伊4.010、英3.3075、波6.003、原油69.20、銅8,943、ドル円130.70、ユーロドル1.0760
※3/24 NY引け値
備忘録(2023/3/23)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
欧州銀が発行する劣後債の一種AT1債は6月に償還可能日を控える銘柄で、利回りが20〜30%程度に跳ね上がった。償還が見送られれば経営体力の弱さを突かれ、一段の利回り上昇(価格は下落)を招く恐れがある。投資家の銀行経営への警戒感がにじむ。
ロシアのオリガルヒ(新興財閥)による制裁逃れを手助けしていないかどうか、米司法省がスイスの金融大手UBSとクレディ・スイス・グループを調査していると報じた。クレディ・スイスはロシアの富裕層を多く顧客に抱えることで知られる。調査の行方次第では米当局から巨額の罰金を課される可能性がある。
今週は多額のAT1債がディーラー間で取引され、最低1セントから5-7セント付近まで上昇したと、同関係者の一部は取引は非公開だとして匿名を条件に語った。
いかなる訴訟の計画も、その進展には何年も要する可能性がある。リーマン・ブラザーズの劣後債は昨年まで裁判の対象だったが、破綻したポルトガルの銀行バンコ・エスピリト・サントの債券は、破綻から約9年が経過した今でも投資家が買いあさろうとしている。
マラソンやレッドウッドのようなヘッジファンドは、ディストレスト債を中心に購入。両社は共に、中国不動産危機の象徴となっている中国恒大集団の債券を購入した。ジョン・アイルワード氏率いるソナのクレジットヘッジファンドは昨年、ディストレスト債関連の取引で25%のリターンを上げた。
●決算関連
電気自動車(EV)事業の調整後EBIT(利払い・税引き前利益)が2023年12月期に30億ドル(約3900億円)の赤字になるとの見通しを明らかにした。赤字幅は22年12月期の21億ドルから拡大する。販売台数の増加に伴い収益は改善し、26年12月期には事業利益率が8%に達するとの見通しも示した。
開示資料によると、22年12月期のEV事業の販売台数(卸売りベース)は9万6000台。販売台数がなお少ないなかで、開発・生産拡大に向けた投資負担が収益に響く。
26年までに世界で年200万台のEVを生産するという従来目標は据え置いた。生産・販売台数の増加に加えてコスト削減を進め、収益を改善するとしている。
22年12月期の全社の調整後EBITは104億ドルだった。EV事業で赤字を計上する一方、ガソリン車などの「ブルー」事業で68億ドル、商用車の「プロ」事業で32億ドルを稼いだ。23年12月期の調整後EBITは90億〜110億ドルと見込んでおり、引き続き、この2つの事業の利益がEV事業の赤字を補うと予想している。
●先進国、グローバル、金融市場
政策金利は前回に続いて0.5%引き上げ1.5%とした。スイスの物価上昇率は2月に前年同月比3.4%と加速しており、2%未満の物価目標に向けて引き続きインフレ抑制を重視する姿勢を示した。
ジョルダン総裁は記者会見で「インフレ圧力はさらなる金融引き締めが必要であることを示していた。様子見をして何も決定しないよりも、利上げした方がいい。スイス中銀は物価安定のための判断をしていく必要がある」と話した。
クレディ・スイスの救済については、15日以降に「預金の急激な流出や他の金融機関による取引制限」がクレディ・スイスの流動性を直撃したと指摘。19日の日曜夜にUBSによる買収合意を発表したことについて「週明けにアジア市場で取引が始まる前に、早急に解決策を見つける必要があった」と振り返った。「クレディ・スイスが破綻すれば、内外の金融システムの安定性とスイス経済に深刻な影響を与えただろう」との認識を示した。
AT1債の元本毀損について、スイス金融市場監督機構(FINMA)の所掌だとした上で「(事態は)極めて脆弱だった」と説明。金融商品の設計として「想定しなければならない」と、資本安定へ一連の対応に理解を求めた。
スイス金融市場監督機構(FINMA)は23日、スイス金融大手クレディ・スイス・グループの劣後債の一種「AT1債」の価値をゼロとする決定は同債券の条項に従ったものだと発表した。同社のAT1債の目論見書には発行体の「存続に関わるイベント」が起き、政府が特別支援を実施する場合は無価値にするとの規定があると説明した。
FINMAは同時に無価値となるクレディ・スイスのAT1債の一覧も発表した。2013年から22年に発行した13本が該当する。
一般的に企業の破綻時には債券は株式よりも優先されるため、クレディ・スイスのAT1債の全額毀損が発表されると社債市場は大きく混乱した。社債権者の間では、決定を不服として訴訟に向けた動きもある。FINMAの発表には決定の正当性を主張する狙いがあるとみられる。
半導体不足で自動車用の需要が伸び悩んだ。世界的な利上げなどを背景に鋼材輸出も減少傾向にある。
化学製品の基礎原料であるエチレンの生産設備について、2月の稼働率が81.1%(速報ベース)だったと発表した。好不況の目安となる90%を7カ月連続で下回った。物価高などで国内消費が落ち込んだ影響に加え、中国でも旧正月休暇明け需要が予想よりも弱かった。
エチレンは自動車・家電や日用品に使う合成樹脂の原料になる。
石油化学工業協会の岩田圭一会長(住友化学社長)は同日の会見で「23年も基本的には厳しい状態が続くが、中国経済の戻りに期待したい」と話した。「中国需要が戻ると同時に、21〜22年に新設された中国やアジア地域の新プラントの稼働率が伸びるだろう」と競争激化への警戒感も示した。
イエレン氏は「我々がとった強力な行動により預金の安全は確保されている」と強調した。22日に上院で証言した際は、預金保険の上限引き上げを否定したことが株安を誘った。23日は前日とほぼ同じ内容の冒頭発言に「さらなる措置」への言及を加えて配慮した。
金融不安が収まらないため、イエレン氏は21日のイベントで「より小さな金融機関が預金流出に見舞われ、それが広がる危険がある場合には同様の措置が正当化される可能性がある」と言及した。今回の議会証言は、こうした姿勢を改めて強調する狙いがあったとみられる。
NAHBは15日発表の調査で「中古住宅の在庫不足を受けて需要が新築にシフトしつつある」と指摘している。同協会による3月の住宅市場指数は前月から2ポイント上昇し、建設会社や販売企業による業況が小幅に上向いたことを映した。
住宅ローン金利の上昇も一服感が出ている。米抵当銀行協会(MBA)の調査によると30年固定の住宅ローン金利(週平均)は足元で6.48%まで下がった。ローン金利は22年10月に一時7.16%と01年以来の高水準を記録し、住宅需要の低迷を招いてきた。
声明文では「直近のCPIの予期せぬ上昇」を利上げの理由としてあげた。22日に発表した2月の英消費者物価指数は前年同月比10.4%上昇と市場予想を上回り、前月比の伸び率が4カ月ぶりに拡大した。
もっとも「変動しやすい衣服や靴価格の上昇の影響が大きい。サービス価格や賃金は予想以上に下落している」としてしつこい賃金インフレへの懸念が和らいだと分析。今後の利上げの一時停止の可能性を再び示唆した。「仮により粘着性のあるインフレ圧力の証拠が出た場合」と利上げに条件を付けた前会合の表現を変えなかった。「英国の銀行システムは潤沢な資本と強固な流動性を維持している」と強調した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
●中南米・アフリカ
3月前半の消費者物価指数は、前年同期と比べて7.12%上昇した。食料品などの価格が上昇した。ただインフレは減速傾向にあり、市場にはメキシコ銀行(中央銀行)が30日に開く金融政策決定会合で利上げ幅を0.25%に縮小するとの見方が強まっている。
農畜産物とエネルギー価格を除くコアインフレ率は8.15%だった。コアインフレ率に含まれる「農畜産物を除く食料品と飲み物、たばこ」は前年同期比で13.2%上昇した。コアインフレ率に含まれない「果物と野菜」は同6.97%増、「畜産」は同9.02%増だった。一方で「エネルギー」は同1.03%減だった。
●市況
日経先物27075、ダウ先32358、債先148.53、米3.419、独2.1875、仏2.704、西3.224、伊4.049、英3.3910、波5.930、原油69.53、銅8985、ドル円130.79、ユーロドル1.0834
※3/24 8時50分頃
備忘録(2023/3/22)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
今後20年以内にプラスチックの9割をバイオマス由来に切り替えるための振興策を検討していることが分かった。バイオ技術を活用し、これまで石油を主原料としてきた樹脂の脱炭素化を促す。米ブルームバーグ通信が報じた。
●その他産業
米銀パックウェスト・バンコープは、投資会社アトラスSPパートナーズから14億ドル(約1860億円)の現金を確保したと明らかにした。同行では年初から預金の20%が流出。資金調達の別の取り組みは諦めたとした。
22日の発表文でパックウェストは、預金流出額は計69億ドルで、そのうちの約49億ドルはベンチャー・バンキング部門からだと説明。預金水準は「安定」していると付け加えた。
同行は20日時点で、連邦住宅貸付銀行(FHLB)から37億ドル、連銀窓口貸出制度から105億ドル、バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)から21億ドルをそれぞれ借り入れている。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
イエレン氏は質疑で預金の「包括的な保険」は設けないと説明し、個別のケースごとに保護の可否を判断する従来の主張を繰り返した。
過度な預金保護は銀行経営の規律を緩めるとの批判があるが、相次ぎ銀行破綻を受けて米議会では預金保険の対象拡大を求める声がある。
足元の金融システム動揺に配慮して利上げ中断を予想する向きも事前にあったため、リスク資産である株式の持ち高を減らす動きが優勢となった。経営不安の続く銀行株主導で相場の下げ幅が大きくなった。
金融システムの動揺が実体経済に波及する経路についても説明した。シリコンバレーバンク(SVB)とシグネチャー・バンクの経営破綻や広がる中堅銀行の経営不安によって「家計や企業への信用供与は多少引き締まり、労働市場の需要を圧迫する可能性がある」と述べ、「金融条件の引き締めは(実体経済に)利上げと同様に働く」との認識を示した。
預金流出で懸念が強まっている中堅行ファースト・リパブリック・バンクの株価は前日比15%安となり、地銀全体の値動きに連動する上場投資信託(ETF)「SPDR S&P地銀ETF」も6%安となった。イエレン米財務長官が上院公聴会で「銀行預金の全面的な保険や保証に関することは検討も議論もしていない」と述べたことも重荷となった。
FRBは声明文で「継続的な利上げ」から「いくらか追加の引き締めが適切になるだろう」と表現を改めた。FOMC参加者らの政策金利見通しでは2023年末は5.1%と前回(昨年12月)から据え置かれた。物価や雇用市場の強さから政策金利の見通しの引き上げを予想する声もあったため、債券買いを後押しした。2023〜24年の成長率見通しが引き下げられたことも景気懸念を誘った。
悪天候による野菜不足の影響で食品価格が上昇した影響が大きい。インフレのピークアウトが見通しづらくなっている。
米地銀の破綻で不動産業界最大の資金調達源が脅かされる中、商業用不動産の所有者は年内に4000億ドル(約59兆円)近い債務の返済期限を迎える。MSCIリアル・アセッツの22日のリポートによれば、さらに約5000億ドルの債務が2024年に期限を迎える。
年内に借り換えが必要な不動産所有者は、借り入れコストの大幅な上昇と不動産価値の下落に直面している。シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクの今月の破綻を受けて貸し手がリスクの削減を急ぐ中、交渉は一層厳しいものになる可能性がある。
MSCIリアル・アセッツのエコノミスト、ジム・コステロ氏は「先週起きた混乱は、22年に他のどの住宅ローンよりも商業用住宅ローンを支えた貸し手グループの中心を襲った」と指摘。 「それは既に起きていたことであり、倒れている人を蹴飛ばすようだものだ」と語った。
米国の大手行は、借り入れコストが上昇し、オフィスなどの物件に関して規制当局が警告を発する中で、22年下期に不動産融資でのリスクテークを縮小し始めた。
MSCIによると、借り入れコスト上昇やリモートワーク増加の影響で特にオフィス不動産の所有者は苦戦しており、そのうち400億ドル近くに上る物件が窮地に陥る可能性が高いとみられる。23年に返済期限を迎える債務の約4分の1がオフィス関連となっている。
●中国・アジア・ロシア・東欧
外貨建て債務の再編方針を公表した。関連会社の株式への転換などを盛り込んでおり、恒大は一部の債権者の合意を取り付けているとする。ただ全ての債権者の同意を得られるか、今後安定した収益体制を構築できるかなど課題は多く、恒大の再建にはなお不透明さが漂う。
●中東
アラブ諸国も相次いで非難声明を出した。サウジアラビア外務省は「攻撃的で人種差別的な発言」だと批判した。アラブ首長国連邦(UAE)は「ヘイトスピーチや暴力に立ち向かう必要性を強調する」とした。同国は2020年にイスラエルと国交を正常化した。19日の協議を仲介したエジプト外務省は「平穏を達成する努力を損なう」とした。
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は20日「誤りであり、危険だ」として発言の否定をイスラエル政府に求めた。「パレスチナの指導者がイスラエルは存在しないと発言したら? 反応はどうだろうか」と訴えた。
●中南米・アフリカ
政策金利を13.75%で据え置くと決めた。据え置きは5会合連続。欧米で金融不安が強まっているのに加え、国内経済減速のさなかでもインフレが根強いために現行の金利水準を維持した。
●市況
日経先物26995、ダウ先32307、債先148.56、米3.445、独2.3235、仏2.829、西3.298、伊4.145、英3.4830、波5.990、原油70.09、銅8,945、ドル円131.19、ユーロドル1.0870
※3/23 9時00分頃
備忘録(2023/3/20-21)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
バイデン氏は拒否権行使にあたり声明を出し「ESGが市場、産業、ビジネスに重大な影響を及ぼすことを示す証拠は豊富にある」と記した。年金運用のリターン最大化とESG重視は両立すると説明し、決議案を提案した野党・共和党を批判した。
決議案は、企業年金の運用者がESGの要素を取り入れて投資対象を選別したり議決権を行使したりできると定めた米労働省の規則を議会として「承認しない」という内容だった。共和党が多数派の下院で通過した後、与党・民主党が多数派を握る上院でも1日、民主党のジョー・マンチン議員らが賛成に回って可決していた。
●その他産業
金融監督当局の幹部を呼び、破綻に至るまでの経緯や監督のあり方、破綻後の当局対応などについて検証する。
金融不安が今後広がった場合に預金の全額保護などの臨時措置をさらに拡大する可能性を示唆した。これまで米銀シリコンバレーバンク(SVB)への対応は特殊なケースだと指摘してきたが、やや軌道修正した。金融不安の拡大防止に注力すると強調した。
米国銀行協会のイベントで、イエレン氏はこれまでの措置について「特定の銀行、特定の規模の支援に焦点を当てたものではない」と表明した。「小さな金融機関が預金流出に見舞われ、それが広がる危険性がある場合には同様の措置が正当化される可能性がある」と認めた。
米財務省などは破綻したSVBなど2行に対して、保険の対象外となる高額預金も含めて全額を保護する措置をとった。同省は銀行経営に甘えが広がることを警戒して「今回は特殊なケース」(高官)と強調。それがほかの銀行からの預金流出につながっていた面もある。
イエレン氏は「状況は安定しつつある。米国の銀行システムは健全性を保っている」と指摘し、米連邦準備理事会(FRB)の緊急融資枠も含めた当局の対応が奏功しているとアピールした。銀行関係者に対して「私たちは警戒を怠らないので、ご安心ください」と呼びかけた。
米銀の相次ぐ経営破綻で米国のオフィス不動産投資への逆風が一段と強まりそうだ。銀行の融資態度の厳格化で、すでに目詰まりし始めている資金繰りが悪化するとの見方が多い。オフィスで運用する主要な不動産投資信託(REIT)も急落する。商業不動産融資の比率が高い中堅・中小銀行が目立ち、市場では銀行経営と不動産市場の「負の共振」に警戒が高まっている。
分社化はUBSによる救済買収前にクレディ・スイスが打ち出していた経営再建策の一環。クライン氏が率いるM.クライン&カンパニーの投資銀行事業を1億7500万ドル(約230億円)でいったん買収し、自社の投資銀行部門と統合したうえで分社化する計画を立てていた。
分社後の社名として歴史のある「CSファーストボストン」を採用することも決めていた。クライン氏は2022年10月までクレディ・スイスの取締役も務めていた。FTによると、UBSの経営幹部は一連の計画がクライン氏に有利すぎると問題視しているという。
クレディ・スイスが事業状況について「重大な虚偽あるいは誤解を招くような開示をした」点を問題視している。具体的には22年10月に始まった大規模な顧客資金の流出がその後も継続していたにもかかわらず、12月には事実と異なる情報を開示したとしている。レーマン会長が12月に、資金流出が止まったと発言したことを指しているとみられる。
テキサス州の液化天然ガス(LNG)プロジェクト「ポートアーサー」の投資を決定したと発表した。事業には石油大手コノコフィリップスと投資ファンドKKRも参画し、設備投資総額は130億ドル(1兆7000億円)を計画する。
年産能力は約1300万トンの大型設備で、2027年の稼働開始を目指す。設計や建設はプラント大手ベクテルが受注した。コノコと独RWE、仏エンジーなどがLNGを引き取る長期契約を交わした。
コノコは事業に30%出資し、20年間にわたり年500万トンのLNGを引き取る。KKRは25〜49%、センプラは子会社を通じて20〜30%を出資する。
ブルームバーグの試算によると、普通株等ティア1(CET1)に対する「その他ティア1債」(AT1債)の比率はUBSで約28%相当となり、バークレイズを上回って欧州の主要行のうち最高だった。欧州16大銀行の平均は約16%。
●決算関連
物流費などのコスト増や、積み上がった在庫を大幅に値引き販売したことが収益を圧迫した。新型コロナウイルスの感染拡大以降、回復に苦戦している主要市場の「グレーターチャイナ」は8%減だった。
●先進国、グローバル、金融市場
2月の中古住宅販売価格(中央値)は前年同月比0.2%下落し、11年ぶりに前年を下回った。販売件数(季節調整済み、年率換算)は1年1カ月ぶりに前月比プラスとなった。住宅ローン金利の上昇鈍化や価格の下落が需要回復を支えた。
販売件数は458万戸と前月比14.5%増加し、2020年7月以来の伸び率となった。ダウ・ジョーンズまとめの市場予測(420万戸)も大幅に上回った。前年同月比では22.6%減った。
NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は「住宅ローン金利の低下を利用して購入する人が増えた」と指摘する。15日発表の米抵当銀行協会(MBA)の調査によると、30年固定の住宅ローン金利(週平均)は足元で6.71%となった。ローン金利は22年10月に一時7.16%と01年以来の高水準を記録し、住宅需要の低迷を招いてきた。
一方で米銀の経営破綻に伴う金融システム不安の波及を不安視する声は強まっている。米PNCフィナンシャル・サービシズのエコノミストは「足元で起きている混乱を受けて銀行が融資基準を引き締めれば、住宅市場と米経済はさらに軟化する。2月に需要が回復したとはいえ、ローン金利の変動や景気後退懸念により23年いっぱいは住宅市場の低迷が続くとみられる」との見方を示した。
半導体などの部品不足は以前ほど問題ではなくなってきているが、自動車メーカーはなお物流面の障害や景気減速、インフレに対処している。ドイツのメーカーを対象とした今月の調査によると、今のところ注文書は埋まっているが、見通しについては一段と悲観的になっているという。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、ジリアン・デービス、マイケル・ディーン両氏は20日のリポートで、「サプライチェーンの制約は緩和されたが、インフレや金利上昇の中で消費者の家計はひっ迫しており、価格設定や自動車販売回復のリスクだ」と指摘した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
●中南米・アフリカ
●市況
日経先物27120、ダウ先32772、債先148.25、米3.600、独2.2795、仏2.816、西3.333、伊4.113、英3.3815、波5.976、原油69.47、銅8,790、ドル円132.37、ユーロドル1.0772
※3/22 8時45分頃
備忘録(2023/3/17-19)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
米銀シリコンバレーバンク(SVB)とシグネチャー・バンクの相次ぐ経営破綻を踏まえた公聴会を29日に開催すると発表した。監督当局の幹部を証人に招き、急な破綻に至った経緯や当局対応の問題点などを聞き出す見通しだ。
米国が金融不安の封じ込めに手段をつくしている。経営不安が広がった米中堅銀行には、大手銀11行が預金を提供する異例の措置を決めた。銀行による米連邦準備理事会(FRB)からの借入額はリーマン・ショック時の1.4倍となった。官民が緊迫感を強める背景には預金流出の連鎖がある。「預金危機」を止められるか予断を許さない。
経営破綻したシリコンバレーバンクの持ち株会社、SVBファイナンシャル・グループが17日、日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請したと発表した。傘下のシリコンバレーバンクは既に米連邦預金保険公社(FDIC)の管轄下にあるため含まない。持ち株会社にある資産を整理して、債権者への返済にあてる。
UBSグループはクレディ・スイス・グループを最大10億ドル(約1320億円)で買収することを提案したが、クレディ・スイス側は提示額が低過ぎるとして受け入れに難色を示している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
クレディ・スイスの株式時価総額は17日終値時点で約74億スイス・フラン(約80億ドル)。UBSからの買収案は株主と劣後株式を持つ社員の利益を損なうと、クレディ・スイスは判断しているという。
買収提案は19日午前に協議され、クレディ・スイス株1株に対し0.25スイス・フラン相当のUBS株で支払う内容となっている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、UBSはクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドが100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上跳ね上がった場合には取引を無効にする「MAC条項」も主張。19日中の取引完了を急ぐスイス当局は、株主投票を経る必要がないようにするため法律変更を計画しているという。
UBSとクレディ・スイスといった世界の金融システムにとって重要な銀行の統合に至った場合、2008年の金融危機以来となり、複雑な協議にはスイスと米国の当局が関与していると、事情に詳しい関係者は話した。
苦境に陥ったクレディ・スイス・グループをUBSグループが買収する合意を早急に取りまとめるため、スイスの当局者が進めている協議に世界最大の資産運用会社、米ブラックロックのフィリップ・ヒルデブラント副会長が参加している。
事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に語ったところでは、ヒルデブラント氏がどのような役割を果たしているのか正確には不明。ブラックロックは同氏を代表してコメントを控えた。
ブラックロックの副会長を10年余り務めているヒルデブラント氏(59)は、それに先立つ2010-12年にスイス国立銀行(中央銀行)の総裁だった。
一方、ブラックロックがクレディ・スイス買収に向けた対抗案の可能性を検討しているとした英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道について、ブラックロックはその内容を否定した。
スイスの銀行UBSグループと同国の銀行規制監督当局は、苦境に陥ったクレディ・スイス・グループを買収もしくは分割する案を早急に取りまとめるための協議を19日も続けている。20日のアジア市場の取引開始前の発表を目指す。
スイス政府による一部負担の肩代わりやクレディ・スイスの投資銀行部門の扱いといった難題をクリアする必要がある。
UBSはクレディ・スイス救済のための買収の可能性に当初難色を示していたものの、当局の催促を受けてクレディ・スイスの深刻な信用喪失の危機に歯止めをかけるため、迅速に執行可能な仕組みを模索している。協議について説明を受けた複数の関係者が明らかにした。
関係者によれば、UBSはスイス政府に対し、何らかの買収で合意した場合、法的費用の一部や将来的に発生するかもしれない損失の肩代わりを求めており、ロイター通信はその金額を約60億ドル(約7900億円)と報じた。
クレディ・スイスの顧客が同行から資金を引き揚げ、取引相手行も同行に関連した一部の取引を拒むなどしており、全関係者が早急な解決を目指して協議を加速させている。関係者の話では、遅くとも19日夜の合意発表が目標となっている。
関係者によると、UBSがクレディ・スイスを買収して資産管理・運用部門を取得する一方、投資銀行部門は売却する案が考えられるシナリオの一つ。また、クレディ・スイスのユニバーサルバンク部門の扱いを巡る協議も続いている。
ノースカロライナ州ローリーを拠点とするファースト・シチズンズは、SVB入札プロセスのデータルームにある少数の買い手候補の一角。オファーは19日午前が期限となる。
一連の話し合いでは、バフェット氏が米地銀セクターに何らかの方法で投資する可能性が議論の中心となっている。ただ、バフェット氏は現在の混乱全般についても勧告や助言を行っているという。
バイデン政権の経済チームは納税者からの反発を懸念し、公的資金の投入を必要としない形の銀行支援策のお膳立てに動いている。ファースト・リパブリック・バンクに対しては、複数の大手銀行が合計で約300億ドルを同行に預け入れることで合意し、銀行監督規制当局のトップは「最も歓迎すべきものだ」とする共同声明を発表した。
米中規模銀行の団体、ミッドサイズ・バンク・コーリション・オブ・アメリカ(MBCA)は同国の銀行規制監督当局に対し、連邦預金保険公社(FDIC)の預金保護を今後2年間にわたり預金全額に広げるよう求めた。取り付け騒ぎの拡大を予防するのに必要だとしている。
MBCAは規制当局に宛てた書簡で、「こうした措置を講じることで、規模が小さめの銀行からの大量の預金流出を直ちに食い止め、銀行セクターを安定させて、さらなる銀行経営破綻の可能性を大幅に減らすことになる」と訴えた。書簡の内容をブルームバーグ・ニュースが確認した。
書簡では「銀行業界全般の健全性や安全性にもかかわらず、最大手以外の銀行への信頼は損なわれた」と指摘。銀行破綻がもう一件あれば預金流出は加速するとし、「銀行システム全体への信頼を直ちに回復させる必要がある」と呼び掛けた。
MBCAは、保護拡大のプログラムに参加することを選んだ銀行自体がFDICの預金保険基金に支払う保険料を増やすことで、必要な資金を賄う案を提示している。
米シリコンバレー銀行(SVB)が破綻し、新興ハイテク企業とその投資家の隆盛が脅かされる約1年前、サンフランシスコ連銀はSVBの監督チームをより上位の担当官らに交代させた。新たな担当チームからは次から次へと問題が指摘された。
SVB幹部らには、業務とテクノロジーに深刻な脆弱(ぜいじゃく)性があると一連の公式警告が発せられ、是正が強く求められたと事情を知る関係者らが明らかにした。
そして昨年終盤に出された警告は極めて重大なものだった。関係者の1人によると、SVBは金利リスクの把握方法を改善する必要があると指摘された。これこそ今月、同行を破綻に導いた財務悪化の中心的問題だった。
米金融史上2番目に規模の大きい破綻となったSVBがどのように監督されていたのか、連邦準備制度理事会(FRB)は調査する意向を明らかにしている。多くの問題が比較的遅い時期に把握されたことから、規模膨張を続けていたSVBに対する連邦当局の監督が十分に強化されたのかという疑問が生じている。SVBの親会社だったSVBファイナンシャルは17日、ニューヨークで連邦破産法11条の適用を申請したことを明らかにした。
ソシエテ・ジェネラル、ドイツ銀行など少なくとも大手4行がクレディ・スイス・グループや同行の証券に関連する取引に制限を設けた。ロイター通信が事情を直接知る関係者5人の情報を基に報じた。
また、事情を直接知る匿名の関係者2人によれば、ソシエテはクレディ・スイスの既存のカウンターパーティーポジションを維持したが、増やしてはいない。
HSBCホールディングスはクレディ・スイスの証券に絡む融資を「精査」しているところで、いかなる行動も決定してはいないという。4番目の「世界的な大銀行」はクレディ・スイスとの取引で前金の支払いを要求していると、ロイターは伝えた。4番目の銀行の名前は明らかにしていない。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
オランダのスフレイネマーヘル外国貿易・開発協力相は17日、米国が主導する半導体技術や製造装置などの対中輸出規制について「夏前にも輸出制限の対象を広げる」と明らかにした。導入済みの先端品の輸出規制に加え、旧式でより汎用性が高い製造装置も対象に加える。中国による半導体の軍事利用を防ぐため米国と足並みをそろえる狙いだ。
フランスの野党は17日、国民議会(下院)でボルヌ首相内閣に対する不信任決議案を提出した。前日に政権側が議会の採決を経ずに、年金改革法案を強行採択したことに反発した。不信任決議案の可決には下院の過半数の賛成が必要だ。仏メディアでは野党の賛成票が足りず可決は困難との見方が多い。
日銀が保有する国債の含み損が2022年12月末時点で9兆円規模になったことが17日、わかった。日銀の政策修正で金利が上昇(債券価格は下落)し、9月末の8749億円から10倍以上になった。政府が発行する大量の国債を日銀が事実上無制限に引き受ける構図に、市場の視線が厳しさを増す可能性がある。
マクロン大統領の支持率が2月から4ポイント低下し、28%となったと報じた。政府が法案を強制採択した年金制度改革が主な原因で、支持率低下は3カ月連続。「黄色いベスト運動」の反政権デモが続いていた2019年2月以来の低水準となった。
同紙の委託で調査している大手調査機関IFOPの幹部は、昨年4月の大統領選でマクロン氏の再選を第1回投票から支持した基盤でも支持率が下がったことを指摘した。マクロン氏は「聞く耳を持たない」との批判を招いているという。
改革に反対する労組のストライキやデモが続く中、政府は16日、現在62歳の年金支給開始年齢を段階的に64歳へ引き上げることを柱とする改革の法案を国民議会(下院)で強制的に採択する措置を取った。国内各地ではその後も連日、抗議行動が続いている。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国政府は2023年に過去最大の財政赤字を計上する。少子高齢化で社会保障費の膨張が続き、赤字は3年ぶりに前年を上回る。地方財政は不動産関連の歳入が伸び悩むが、景気テコ入れへインフラ債の発行枠は過去最大に膨らむ。人口流出などで経済が停滞した地域では将来の破綻リスクが高まりかねない。
国連加盟国の6割が参加するICCがプーチン氏の戦争犯罪を追及する意義は大きい。ロシアの途上国外交の足かせにもなりそうだ。
ポーランドのドゥダ大統領は北大西洋条約機構(NATO)加盟国として初めてウクライナに旧ソ連製のミグ29戦闘機を提供すると表明。17日にはスロバキアも追随する方針を示した。ロシアは反発しており、米国は自国製戦闘機の供与に慎重な姿勢を崩していない。
●中東
トルコのエルドアン大統領が17日、首都アンカラを訪れたフィンランドのニーニスト大統領に加盟を容認する方針を伝えた。
エルドアン氏は会談後の共同記者会見で「フィンランドはNATOで積極的な役割を果たすだろう」と述べた。議会に批准手続きを進めるよう文書を送った。トルコで大統領選・議会選がある5月14日までに手続きが完了することを期待した。
一方、スウェーデンについてエルドアン氏は「協議を続ける」と述べ、当面は容認しない姿勢を示した。同国ではトルコ政府と対立するクルド系勢力が活動しており、「テロリストを擁護している」と批判した。
スウェーデンはトルコの選挙後の加盟実現を目指すとみられる。エルドアン氏の支持層には右派が多く、接戦が予想される選挙前に強硬姿勢を転換したくない事情がある。政権交代を目指す野党は北欧2国の加盟は問題ないとの立場だ。
ロイター通信によると、スウェーデンのビルストロム外相は17日、「(加盟は)時間の問題で、加盟できるかどうか自体は問題ない」と述べた。トルコに約束したテロ対策などはすべて履行したとの立場も示した。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物26720、ダウ先32071、債先148.81、米3.438、独2.1070、仏2.677、西3.234、伊4.045、英3.3055、波5.978、原油66.93、銅8,609、ドル円131.80、ユーロドル1.0668
※3/17 NY引け値
備忘録(2023/3/16)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
JPモルガン・チェースなどの米大手銀が、経営不安の高まる米中堅銀行ファースト・リパブリック・バンクとの取引に関して協議中と報じた。資本増強も選択肢という。報道を受けてファースト・リパブリック株の下げ幅は急速に縮小した。
協議にはJPモルガン、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスの6大銀行に加え、USバンコープ、PNCフィナンシャル・サービシズ・グループも参加しているという。報道によれば取引の内容や合意に至れるかどうかは現時点で流動的だが、早期にまとまり数日内に実行される可能性もあるという。
スイスの金融大手クレディ・スイス・グループを市場が不安視するのは、悪化した収益の回復が見通せないことだ。最終赤字が続き、主力の富裕層向けビジネス部門でも顧客離れがみられる。同部門の預かり資産は2022年に3割弱減少した。
クレディ・スイス・グループは16日、スイス国立銀行(中央銀行)から500億スイス・フラン(約7兆1500億円)の与信枠を確保した。社債買い戻しも提案し、投資家の信頼感回復を目指している。クレディ・スイス幹部と政府当局者は次の一手を模索している。
クレディ・スイスは中銀の流動性ファシリティーから最大500億フランを借り入れるほか、ドル建て・ユーロ建ての社債最大約30億フラン相当を公開市場で買い戻す計画。
クレディ・スイス株は16日に一時40%高と急騰したが、その後に上昇幅を縮めた。アナリストは中銀による支援策の発表などでクレディ・スイスがどの程度の時間を稼げるかを疑問視し始めた。スイス政府は同行の状況を協議するため16日に臨時閣議を開催する予定。
同行の筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクのアンマル・フダリ会長は、クレディ・スイスについて「何も問題はない」と発言。同行が一段の資本積み増しを必要とすることはないとの考えを示した。規制上の理由でクレディ・スイス株の持ち分を増やさないと語ったフダリ氏の15日の発言が株価急落を引き起こしていた。
スイス政府と中銀、連邦金融市場監督機構(FINMA)は緊密に連携し、クレディ・スイスの安定化策を協議してきた。支援を公に表明することに加える措置として、スイス部門の分離や、実現可能性は低いが国内同業のUBSグループとの提携などの案が挙がったと、複数の関係者が述べていた。
JPモルガン・チェースのアナリストらは、クレディ・スイスが買収されるのが最も可能性の高いシナリオだとの見方を示した。
キアン・アボホセイン氏らアナリストは信頼の危機にあるクレディ・スイスについて3つのシナリオを想定。その中で最もあり得るシナリオは他社による買収で、買い手候補には国内同業のUBSグループが考えられると分析した。
クレディ・スイスは昨年10月にも約30億ドル(現在の為替レートで約3960億円)相当の社債買い戻しを提案。当時の発表では、「市場環境を利用し魅力的な価格で債務を買い戻す」としていた。今回の公開買い戻しの対象となる社債は最大25億ドル相当のドル建て優先債10本と、最大5億ユーロ(約704億円)相当のユーロ建て優先債4本。中銀からの借り入れはカバードローン・ファシリティーと短期流動性ファシリティーの形を取り、高品質な資産によって完全に担保されるという。
表面利率1.305%の2027年償還債は10セント近く急落し、額面1ドルに対して62.5セント。スプレッドは1400ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)超と、ディストレスと見なされる水準。4.55%の26年償還債は8.5セント下げて同70セント。トレース・データによれば、この他の年限も下落している。
キアン・アボホセイン氏らアナリストは信頼の危機にあるクレディ・スイスについて3つのシナリオを想定。その中で最もあり得るシナリオは他社による買収で、買い手候補には国内同業のUBSグループが考えられると分析した。
クレディ・スイスはまずスイス事業を上場またはスピンオフするだろうとし、同事業の価値を100億スイス・フラン(約1兆4300億円)と試算。買収成立はその後になるだろうとみている。
クレディ・スイスの資本状況に問題はないとしつつ、「問題は、投資銀行事業の戦略に対する市場の信頼感と、企業としての弱体化だ」と指摘。「現状維持という選択肢はもはやない」と断じた。
JPモルガンのもう一つのシナリオは「自助努力アプローチ」で、投資銀行の閉鎖を伴う。しかし、これも市場の懸念を緩和するには十分ではないかもしれないとアナリストらはみている。
第3の選択肢はスイス中銀による全額預金保証または資本注入だ。JPモルガンはこれについて、既存株主にとって大きな希薄化につながるとしている。
一方、バンク・オブ・アメリカ(BofA)のアナリストは中銀が支援に乗り出したことは、クレディ・スイスが「現在の形で存続する」という明瞭なメッセージだと指摘。
「当局の支持は事実上、今回の発表を通じて表明されたが、それはクレディ・スイスの構造や継続企業としての性質に変更を伴うものではなかった」と、アラステア・ライアン氏はリポートで指摘し、クレディ・スイスの「買い」判断を維持した。
米ファースト・リパブリック・バンクの財務安定化を図る米政府の調整で、複数の大手銀行が合計で約300億ドル(約4兆円)を同行に預け入れることで近く合意する見通し。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
協議に参加している銀行にはJPモルガン・チェースやシティグループ、バンク・オブ・アメリカ(BofA)、モルガン・スタンレー、PNCファイナンシャル・サービシズ・グループが含まれるという。関係者らは非公開の協議であることを理由に匿名で話した。
報道によると、政府がこの会合で何らかの決定を下すかどうかは不明。政府は通常、金曜に定例閣議を開く。
日本の金融界トップらは米欧発の金融不安の国内への波及を否定した。全国銀行協会の半沢淳一会長(三菱UFJ銀行頭取)は16日の記者会見で、米シリコンバレー銀行(SVB)の破綻や、スイス金融大手クレディ・スイス・グループの経営不安を受け、「グローバルな金融システム不安に陥るリスクは小さい」との認識を示した。
半沢会長は、SVBの破綻について、調達基盤が特定業界や分野に集中していた上に、粘着性の低い預金を長期債券投資に回した結果、金利上昇で損失が拡大。同時に預金引き出しが起きるなど「個社固有の問題が同時発生」したためと分析。その上で「日本の金融市場や金融システムへの影響は見られない」と述べた。
FRBは金融機関が資金繰りに行き詰まることを避けるための安全弁として、民間銀行向けに貸し出しを実施している。8日時点で45億ドル強だったこの融資額は一週間で33倍に急増した。10日以降に米銀シリコンバレーバンク(SVB)などが相次ぎ破綻し、市場で資金のやり取りが細っているためだ。
この貸し出しは金融危機時などに急増する。これまでの最高はリーマン危機後の08年10月末につけた1107億ドルだった。金融機関はかつては経営不安の噂が流れるのを警戒して、FRBからの借り入れを敬遠する傾向にあった。
FRBがSVBの破綻を受けて新たに設けた「銀行タームファンディングプログラム(BTFP)」と呼ばれる緊急融資枠も15日時点で119億ドルの利用があった。破綻したSVBとシグネチャーバンクを管理するために米連邦預金保険公社(FDIC)が作った「ブリッジバンク」向けの融資も膨らみ、FRBが「その他の信用拡張」と分類する融資額は1428億ドルに拡大した。
スイスの銀行、UBSグループとクレディ・スイス・グループは強制的な統合に反対していると、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。ただ、政府の仲介で両行の提携を計画するシナリオは続いているという。
非公表の協議内容だとして匿名で語った関係者によると、UBSは単独でのウェルスマネジメントを中心とした自行の戦略に注力したい意向で、クレディ・スイスに関連したリスクの引き受けを渋っている。
一方、クレディ・スイスはスイス国立銀行(中央銀行)から流動性支援を確保できたこともあり、再編計画を貫徹する時間を求めているという。
クレディ・スイスとスイス当局が最近行った協議では、選択肢の一つとして両行の提携が話し合われたと事情に詳しい複数の関係者が今週述べていた。
キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズ(KBW)のアナリストらも流動性支援措置が発表された後に「ばんそうこう」と題するリポートを著し、同措置は時間稼ぎにはなるがクレディ・スイスの分割が最もあり得る解決策だと指摘。モーニングスターも再度の増資か分割が選択肢だろうとの見方を示した。
JPモルガンのストラテジストは「BTFPの利用は大規模なものになる可能性が高い」と15日の顧客向けリポートに記述。大手行が利用する可能性は低いが、利用額は最大で2兆ドルに近くなると予想されるとし、これは大手5行以外の米銀が保有する債券の総額と同規模だと分析した。
JPモルガンの見積もりは、米国の全預金のうち保険で守られていない預金の比率が最も高い米銀6行の預金額に基づいたもので、実際には4600億ドル前後になると同行アナリストらは予想。この額はFRBの別のファシリティーであるディスカウント・ウィンドウ(連銀貸し出し)のこれまでの利用規模と比べると、非常に大きい。
FRBは毎週木曜の午後4時半ごろに発表するバランスシートに関する情報の中で、BTFPの利用額を公表する計画だとしている。
●決算関連
2023年5月期通期の調整後の1株利益が14.60ドル〜15.20ドルになるとの見通しを発表した。配達料の値上げやコスト削減策による収益改善を受け、従来予想の13〜14ドルから上方修正した。
同日発表した22年12月〜23年2月期の純利益は7億7100万ドル(約1000億円)と前年同期比3割減ったが、市場予想を上回った。1月に配送料金を平均6.9%引き上げ、パッケージあたりの収益が同期間に11%増えたという。売上高は6%減の221億6900万ドルで市場予想を下回った。インフレや景気減速のなか、欧米地域で輸送需要の減退が続いている。
ラジ・スブラマニアム最高経営責任者(CEO)は「コスト削減策が定着しつつあり、今年度の見通しを改善する原動力となっている」と述べた。同社の株価は発表後の時間外取引で11%超上昇した。
●先進国、グローバル、金融市場
2022年10〜12月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)は、前期比0.6%減だった。NZ準備銀行(中央銀行)による積極的な利上げで個人消費や企業の設備投資が伸び悩んだ。マイナス成長は同年1〜3月期以来、3四半期ぶり。
産業別では「製造業」が前期比1.9%減となり、GDP全体を0.2ポイント押し下げた。「小売り・ホテル」が同1.9%減、「農林水産業」が1.6%減となるなど全16業種中9業種が前期を下回った。
支出面では個人消費が前期から横ばいにとどまったほか、乳製品や食肉の生産減が響き輸出も前期比2.2%減となった。NZは23年2月に大型サイクロンの直撃を受けた。農畜産物生産への被害などが、1〜3月期のGDPを下押しする可能性がある。
NZ中銀は新型コロナウイルスによる経済混乱を受けて20年、政策金利を0.25%まで引き下げたが、21年10月に利上げを開始。物価上昇を受けて23年2月まで10会合連続で利上げし、政策金利は足元で4.75%となっている。
フランスのマクロン政権は16日、受給開始年齢の64歳への引き上げを軸とする年金改革法案を強行採択した。公的支出の軽減と財政再建を優先し、野党や労働組合の反発が強い年金改革に踏み切った。
ボルヌ首相が、社会保障費関連の法案などを議会の採決なしで首相が採択できると定めた憲法49条3項の適用を表明した。国民議会(下院)で賛成多数が得られないと判断した。
米銀ウェルズ・ファーゴの調査グループは「米西部や南部では人口増加により集合住宅の需要が高まっている。また中古住宅の在庫不足や建設業者による購入促進のための取り組みを受け、最近は需要が新築にシフトしている」と指摘した。
住宅需要の低迷を受け、住宅建設業者が金利を負担するなどして購入を促す動きが増えた。全米住宅建設業協会(NAHB)が建設業者や販売企業に聞いたところ、3月には58%の事業者が金利負担や値下げといったなんらかの販売促進策を講じたと回答した。
理事会で、3会合連続となる0.5%の大幅利上げを決めた。スイスの金融大手クレディ・スイス・グループの経営不安などが高まったものの、インフレ抑制を優先した格好だ。ラガルド総裁は「すべての手段を使って対応する用意がある」と述べ、欧州金融システムの安定を保つことを強調した。
ラガルド氏は記者会見で「現在の市場の緊張を注意深く監視している」と述べた。ユーロ圏の銀行は「(金融危機の)2008年に比べて格段に強固だ」と指摘し、さらに必要に応じて流動性支援に乗り出す方針も示した。米シリコンバレーバンク(SVB)の破綻後、主要中銀の政策決定は初めてでECBの判断に注目が集まっていた。
米調査会社デカルト・データマインがまとめた2月のアジア発米国向けの海上コンテナ輸送量は、118万9997個(20フィートコンテナ換算)と前年同月に比べ29%減った。減少幅は1月(17%)から再び拡大した。米国のインフレなどを背景に家具類の荷動きが停滞している。
●中国・アジア・ロシア・東欧
旧ソ連製のミグ29戦闘機4機を数日中に引き渡すという。北大西洋条約機構(NATO)加盟国からの戦闘機の供与の決定は初めてとなる。
ドゥダ大統領は「追加の供与も準備しており、順次引き渡す」と述べた。ポーランドはミグ29を10〜20機保有しており、すでに同型機を使用しているウクライナ軍のパイロットが訓練せずに操縦できるという。ポーランドのモラウィエツキ首相は14日、提供には4~6週間かかるとの見方を示していた。
ミグ29を巡っては、スロバキアも供与を検討している。ただNATO加盟国の間ではロシアへの反発を警戒して慎重な姿勢をとる国も多いとみられる。ポーランドはドイツ製の主力戦車「レオパルト2」についてもドイツにウクライナへの供与を認める要請をするなど、軍事支援に積極的な姿勢を見せてきた。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況日経先物27025、ダウ先32483、債先147.96、米3.579、独2.2505、仏2.810、西3.365、伊4.179、英3.4125、波5.999、原油68.39、銅8,535、ドル円133.40、ユーロドル1.0615
※3/17 8時35分頃
備忘録(2023/3/15)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクが追加投資をしないと伝わったほか、フィナンシャル・タイムズ(FT)が関係者の話として、クレディがスイス国立銀行(中銀)に支援を表明するよう求めたと報じた。経営不安が強まっている。
FTによると、クレディは自行の財務状況についてスイス中銀に市場の安心につながる発表を要望しているという。スイス金融市場監督機構(FINMA)にも同様の要請をしているという。
クレディ株は一時前日比0.533スイスフラン(24%)安の1.707スイスフランまで下落し過去最安値を更新した。2022年10月に同社の増資引き受けを発表したサウジ・ナショナル・バンクの会長が15日、追加投資について「絶対にない」と答えたと米ブルームバーグ通信などで報じられた。
クレディは14日に過去の財務報告の内部管理に「重大な弱点」があったと発表している。22年度の財務諸表の監査を担当したプライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、内部管理の有効性について反対意見を表明した。
企業の債務不履行(デフォルト)リスクを織り込んで取引されるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、同社の5年物CDSが14日に約4.7%と、2月末の約3.5%から大きく上昇している。
フダリ会長はクレディ・スイスへの追加出資について、「答えは絶対的なノーだ。規制と法律という単純な理由の他にも多数の理由がある」とブルームバーグテレビジョンのインタビューで述べた。追加的な流動性を求められたら、さらなる資金注入の用意はあるかとの問いに答えた。
フダリ会長は持ち分を10%超とすると、サウジアラビアやスイス、欧州の当局から新たな規制の対象になると説明。持ち分を増やさない理由は「ほかに5つか6つ挙げられるが、一つは規制による暗黙の上限」だと指摘、新たな規制の対象に入りたいとは思わないと語った。
ルービニ氏は15日にブルームバーグテレビジョンに対し、「クレディ・スイスは一部の基準からすると、大き過ぎてつぶせないが、大き過ぎて救済できないかもしれないという問題もある」と発言。銀行監督当局に救済をうまく実行するリソースがあるか不明だと、付け加えた。
同氏は「問題はクレディ・スイスが資本を得られるかだ」とし、「さもなければ悪いことが起こり得る」と続けた。
クレディ・スイスの株価は一時25%安。ユーロストックス銀行株指数は8.5%安まで下げ、1月上旬以来の安値水準を付けた。フランスのBNPパリバは12%下落。欧州主要銀行の時価総額は合計で600億ドル(約8兆円)余りが吹き飛んだ。
ラザード・フレール・ジェスチョンの金融債戦略責任者のフランソワ・ラビエ氏は「米国の銀行が次々と姿を消すのを目の当たりにし、ネガティブなニュースに市場は非常に敏感になっている」と指摘した。
「短期的な債務サイクルでの非常に古典的なバブル破裂における非常に古典的な事象だ」とダリオ氏。「この銀行の破綻に続いて、もっと多くの問題が顕在化する可能性が高い。縮小はサイクルが一巡するまで続く」と述べ、「今はターニングポイントに近づいている」とした。
15日の発表によれば、S&Pはファースト・リパブリックの信用格付けを「BB+」とし、従来の「A-」から引き下げた。格付け見通しについては「ウオッチネガティブ」を維持する。ファースト・リパブリックは最近になり借り入れ能力を高めたものの、さらなる預金流出のリスクがあるとS&Pは指摘しており、今後格付けが一段と引き下げられる可能性がある。
S&Pのアナリスト、ニコラス・ウェツェル、ライアン・プレスマン両氏はリポートで、「株価の大きな変動と、預金の変動を巡るメディアの高い関心を受け、ファースト・リパブリックの事業環境は打撃を被る見通しだ」と指摘。「ファースト・リパブリックの信用力に対する市場の認識が悪化しており、同行の事業の安定性は弱まってきている」と付け加えた。
スイス国立銀行(中央銀行)は15日、スイス金融市場監督機構(FINMA)と「クレディ・スイスはシステム上重要な銀行に対する資本や流動性の要件を満たしている」との声明を発表した。必要な場合はスイス国立銀行が流動性を供給するとも明らかにした。米銀破綻による不安心理からクレディ・スイス・グループの株価が急落したことに対応した。
米銀シリコンバレーバンクの破綻を招いた含み損のある保有債券に対する潜在的なリスクも出ている。米ムーディーズが13日に発表した試算では、21年12月に欧州銀全体の債券の時価は簿価を1.3%下回っていたが、22年12月には8.9%まで拡大した。債券を損失覚悟で売らざるを得ない状況は発生しにくいが、潜在的なリスクを投資家は警戒する。
欧州株式と社債を運用するロンドンのあるファンドマネジャーは「破綻した米銀と欧州の大手銀の財務状態は違うとわかっていても疑心暗鬼とならざるを得ない。いまの株価が底なのかが見えないため、押し目買いを入れるのは難しい」と話す。
英キャピタル・エコノミクスのアンドリュー・ケニンガムチーフ欧州エコノミストは「収益性の低さに苦しんでいた銀行はクレディ・スイスだけではない。22年の英国債急落や米銀行破綻と問題が続いており、この先も何も問題が起きないと考えるのは愚かだ」と警戒する。
スイス国立銀行(中央銀行)は15日、スイス金融市場監督機構(FINMA)と連名で「クレディ・スイスはシステム上重要な銀行に対する資本や流動性の要件を満たしている」との声明を発表した。必要な場合はスイス国立銀行が流動性を供給するとも明らかにした。
投資家宛ての手紙で、シリコンバレーバンク(SVB)経営破綻に至る金融システムの亀裂は「長年の金融緩和の代償」と指摘した。信用不安の広がりを「ドミノ倒し」と表し、影響は今後も広がりうるとの見方を示した。
スイスの連邦金融市場監督機構(FINMA)とスイス国立銀行(中央銀行)は15日、苦境にあるクレディ・スイス・グループが必要に応じて流動性支援を受けると発表した。株価が記録的な下げとなったことを受け、同行に対する信頼回復を図る狙いだ。
FINMAと中銀は同日遅くの共同声明で「クレディ・スイスはシステム上重要な銀行に課される資本・流動性の要件を満たしている」とした上で、「必要であれば、スイス中銀はクレディ・スイスに流動性を提供する」と表明した。
銀行間の取引システムではドルの流通が続いているものの、調達コストが上振れしている兆候があり、金融機関は念のためにキャッシュを厚めに維持しようと動いている。
この日は翌日物レポ金利が一定時間上昇し、需要の高さと市場に広がる焦燥感を反映した。金利先渡し契約(FRA)とオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)のスプレッドといった他の指標も、緊張の高まりを示唆。連邦住宅貸付銀行(FHLB)を巡るここ数日の活動は、十分なキャッシュの確保に動く銀行の姿勢を示唆している。何よりも顕著なのは、多くの銀行株が急落し、この先にリスクが待ち受けている可能性をあらわにしていることだ。
米財務省は世界金融システムに混乱が生じた場合、通常、大手銀行から情報を収集し、次に打つ手の参考にする。欧州の大手銀行は米金融機関と多額の取引を行っており、問題が起きれば米銀に打撃を与えることから、米当局は大手欧州銀の健全性に注目している。
米財務省報道官はこの日の早い時間に、同省としてクレディ・スイスの状況を注視しており、世界の関係当局と接触していると説明していた。
関係者によると、クレディ・スイス幹部と政府当局者は、同行支援の声明を当局が発表することや流動性のバックストップなど複数の選択肢を話し合っている。関係者は非公表の協議内容だとして匿名を条件に明らかにした。
このほかスイス事業の分離や、可能性は低いものの国内競合であるUBSグループとの提携などの案もあるという。関係者はこのうちのどれが実際に実行されるかは不透明で、全く採用されない可能性もあると注意を促した。
●決算関連
2023年1月期通期の決算は、売上高が前の期比18%増の325億6900万ユーロ(約4兆5千億円)、純利益が同27%増の41億3000万ユーロだった。主力のZARAブランドが好調で、売上高は過去最高だった。
●先進国、グローバル、金融市場
3月のNAHB住宅市場指数は44となり、前月から2ポイント上昇した。販売見通しは47と前月比1ポイント下がり、4カ月ぶりに前月を下回った。中古住宅の在庫不足により新築の需要が回復し、指数は小幅に改善した。一方で米銀の経営破綻に伴う金融システム不安の波及を不安視する声は強まっている。
3月の内訳は「現在の販売状況」が49と2ポイント、「客足」は31と3ポイント、それぞれ前月から小幅に上昇した。「今後6カ月の販売見通し」は47と1ポイント下がり、2022年11月以来、4カ月ぶりに前月から低下した。NAHBの会長、アリシア・ヒューイ氏は「不安定になっている銀行システムや金利の変動を考えると、業況の見通しは非常に不透明だ」と指摘した。
23年の世界需要は前年比200万バレル増の日量1億200万バレルと、前回の2月時点よりも10万バレル上積みした。中国の需要が前年比100万バレル(7%)増の日量1600万バレルになるとみる。IEAは「中国の国内の航空便の往来はコロナ前の水準を上回っている。ジェット燃料の使用が増えることが世界の需要増につながる」とする。
2月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は前月比0.4%減の6978億7600万ドル(約93兆円)で、2カ月ぶりにマイナスに転じた。金額の大きい自動車・同部品やガソリンスタンドが減ったほか、1月に大きく伸びた外食の減少も響き、市場予想(0.3%減)を下回った。インフレ下で家具や衣料品などの裁量消費も振るわなかった。
ティー・ロウ・プライス・グループのポートフォリオマネジャー兼グローバル投資適格債責任者、スティーブン・ブース氏は14日の電話インタビューで「特に今日の値上がりの後では市場に飛び込む勇気はまだないが、もっと機会があるだろう」と話した。預金獲得競争が流動性懸念を悪化させ、その結果一部銀行は支払い能力に問題が生じる可能性もあると、同氏は指摘した。
欧州の銀行が発行した最もリスクの高いタイプの債券は年初来でのリターンがマイナスに落ち込み、数日前までは確実と思われていたシナリオがひっくり返った。クレディ・スイス・グループが財務報告の「重大な弱点」を発見したと発表したことも不安を高めた。同行の社債デフォルト(債務不履行)に備える保証料は過去最高に達した。
欧州銀の優先債および劣後債のスプレッドは14日に他のユーロ建て投資適格債に比べて大きく拡大、最もリスクの高い銀行債である偶発転換社債(CoCo債)は値下がりした。複数通貨の指数によれば、CoCo債の年初来リターンはドル換算でマイナス0.6%に悪化。金利上昇の中でデュレーションの短さが好まれ、同指数は9日には年初来で2%近く上昇していた。
しかし、市場心理への打撃は金融セクターと経済全体を巻き込む可能性がある。混乱が融資基準の厳格化につながれば特にそうだ。エコノミストらは、金融市場のストレス下で自己資本や運営資金を投資家から調達する銀行は、融資についてより選択的になると懸念している。
スイスのファンド、フィッシュ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネージャー、カイル・クロック氏は「最大のリスクは欧州の預金者も弱体化した銀行から逃げ始めることだ」と話す。
ウニクレディトのトゥリア・ブッコ氏らエコノミストは銀行債の売りが続く可能性を想定。「状況を分析するのが難しいことに加え、欧州の銀行も証券や債券のポートフォリオに隠れた損失を抱える可能性があるため、この不安定性が持続すると見込んでいる」とリポートで分析した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
サウジアラビアのジャドアーン財務相は15日、サウジによるイランへの投資について「迅速に実施されるだろう」との見通しを明らかにした。サウジとイランは10日、2カ月以内に外交を正常化すると発表している
スウェーデンとフィンランドが申請している北大西洋条約機構(NATO)への加盟を巡り、トルコ議会は近くフィンランドの加盟を批准する見通しだ。ロイター通信が15日、トルコ政府関係者の話として伝えた。フィンランドが単独で先行して加盟を果たす可能性がある。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物26545、ダウ先32106、債先149.04、米3.462、独2.1140、仏2.724、西3.288、伊4.128、英3.3420、波6.017、原油68.25、銅8,572、ドル円133.10、ユーロドル1.0587
※3/16 8時40分頃
備忘録(2023/3/14)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
米航空機ボーイングは14日、サウジアラビアの航空会社2社から最大121機の中型機「787」を受注したと発表した。サウジはオイルマネーを活用して観光を振興するほか、首都リヤドを地域のハブ(拠点)空港とする計画で「脱石油」の経済構造を目指す。
国営航空サウディアが39機を確定で発注し、10機をオプションで購入する。サウジアラビアの実力者ムハンマド皇太子が12日に設立を発表した新たな国営航空リヤドエアは39機を確定で発注し、33機をオプションで購入する。確定発注の78機分だけでカタログ価格は約370億ドル(約5兆円)にのぼる。バイデン米政権も後押ししていた数年がかりの大型商談だった。
リヤドエアに100%出資するサウジ政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)によると、リヤドエアは2030年までにリヤドと世界100以上の都市を結ぶ計画で、同航空によって非石油部門の国内総生産(GDP)を200億ドル押し上げ、20万人以上の雇用を創出する方針だ。
サウジは石油依存からの脱却を目指す経済改革の一環として、同国を訪問する観光客やイスラム教の聖地を訪れる巡礼者の数を増やすことを掲げる。リヤドエアはサウジを経由して欧州やアジア、アフリカに向かうヒトの流れも取り込む。
米航空大手のユナイテッド航空は13日、2023年1〜3月期の業績予想を下方修正した。パイロットの新たな契約で人件費負担が増える。調整後の1株利益は60セント〜1ドル(約81〜135円)のマイナスを見込む。従来は50セント〜1ドルのプラスを予想していた。想定より1〜2月の需要が伸び悩むほか、燃料費の高騰も逆風となる。
23年12月通期の予想は据え置いた。業績の下方修正が嫌気され、14日の米株式市場で株価は一時5%下げた。
米デルタ航空は14日に23年1〜3月期の業績見通しを発表し、調整後の1株利益0.15〜0.4ドルとする従来予想を維持した。
アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、米退役軍人保健局(VHA)が保険適用を始めたと発表した。VHAが定める対象基準などを満たした退役軍人に対し、レカネマブを処方する。
ブルームバーグがまとめたデータによると、欧州連合(EU)の規則の下でESG「促進」ファンドと登録している、あるいは投資「目的」をESGの振興だと説明しているファンドのうち、およそ915本のファンドが直接または間接的にSVBへのエクスポージャーがあった。
ESG投資家にとって、SVBは投資基準のいくつかを満たしているように思われた。再生可能エネルギー会社への融資額が大きく、低炭素社会実現への取り組みを重視するESGマネジャーの間では気に入られていた。だが、これらの運用者はガバナンスリスクにあまり注意を払わなかった様子だ。
「ESGスコアを適切に吟味せずうのみにする怠惰な資産運用者が多い」と、サステナブルファイナンス領域のベテランで、ネクストジェンESGの最高投資責任者(CIO)を務めるサーシャ・ベスリク氏は指摘。SVBの破綻は炭素に全てを賭けるファンドマネジャーが「必ずしも他のリスクを管理できているとは言えない」ことをあぶり出したと述べた。
欧州連合(EU)の投資ルールで最も厳しいESG分類である「9条ファンド」市場は、常識的に見て「サステナブル」に程遠い資産を組み入れている。チューリヒ大学のマーク・チェズニー教授とエイドリアン・ポール・ランビロン氏が、論文でこう指摘した。両者は今のルールについて、結局のところ「グリーンウォッシングのリスク」を生んでいると結論付けている。
同教授らの調査によると、ファンドマネジャーが恩恵を与えているのは、「目標設定や方針の提示、ESGレーティング引き上げを通じ、サステナビリティー関連のプロフィルやイメージの改善に向け多大な努力をする」ためのリソースを持った大企業だという。
チェズニー教授とランビロン氏が明らかにした点は、他にもある。9条ファンドの運用者はポートフォリオに組み入れた企業が、国連グローバル・コンパクト(UNGC)や経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業ガイドラインなどが定める基本的人権原則への対応について、情報開示手続きほどは重視していないという点だ。
EUのサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)で定義された9条ファンドの保有銘柄にも、国連とOECDの基準に「違反している企業が依然として多数存在する」と、両者は電子メールで質問に回答。9条ファンドが「石炭業界や兵器産業の企業」を組み込めることも分かったとしている。
●その他産業
米アポロ・グローバル・マネジメントやKKRなど複数の買収ファンドが、経営破綻した米銀シリコンバレーバンク(SVB)の貸出債権の買い取りを検討していることが14日、分かった。管財人となっている米連邦預金保険公社(FDIC)は、SVBの資産や事業の売却を目指し、調整を進めている。
米国銀行の連鎖破綻のショックが世界の金融市場を揺さぶっている。米当局は預金の全額保護を打ち出したが、13日の米国株市場ではテックと関連の深い地銀株が前週末比6割安などと急落した。14日は買い戻しが入ったものの、銀行間では取引相手の信用リスクを意識する動きもあり、市場の緊張は解けていない。欧米の利上げ観測は急速に後退している。
米テクノロジー業界で米シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻した余波が続いている。米金融当局が12日に預金を全額保護することを決めたことで「最悪の事態は免れた」との安堵が広がる一方、混乱も残る。景気減速によりスタートアップ企業の資本調達が難しくなるなか、融資が受けにくくなることを懸念する声も増えてきた。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは13日、米銀システムの格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更したと発表した。シリコンバレーバンク(SVB)やシグネチャー・バンクの破綻を受け、米銀の「経営環境が急速に悪化した」と説明した。見通しは格付けの中期的な方向性を示すもので、今後米銀が格下げされる可能性が高いことを意味する。
米金融当局による預金全額保護の緊急措置は「建設的」と評価した。一方、「預金者や投資家の信頼が著しく低下したことは、急速な金利上昇によって米銀のALM(資産・負債の総合管理)のリスクが顕在化したことを示す」と述べた。ムーディーズは見通しの前提として、米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを継続するシナリオを想定する。
見通しをネガティブにした背景として、利上げに伴う保有債券の含み損などの資産リスクの増大や預金金利の引き上げによる収益の悪化、流動性懸念の高まりを挙げた。一方、資本の状態や政府による支援については「安定的」と評価した。
SVBのように預金保護上限を超える大口預金を多く抱える銀行では「預金逃避の影響を受けやすく、資金調達や流動性、収益、資本に悪影響を及ぼす可能性がある」と警戒する。
スイスの金融大手クレディ・スイス・グループは14日、2021年12月期と22年12月期の財務報告の内部管理に「重大な弱点」があったと発表した。22年度の年次報告書で明らかにした。
「最高経営責任者(CEO)と最高財務責任者(CFO)は22年末時点でグループの情報開示の管理と手順は有効ではなかったと結論づけた」としている。具体的には経営陣が財務諸表における「リスク評価手順の設計と維持をしなかった」点が問題とした。22年度の財務諸表の監査を担当したプライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、内部管理の有効性について反対意見を表明した。
米メタは14日、約1万人の社員を追加削減すると発表した。同社は2022年11月に当時の社員の約13%に当たる1万1000人超を解雇すると発表している。景気減速などにより厳しい経営環境が続くなか、業務をさらに効率化する必要があると判断した。
SVBのグレッグ・ベッカー前最高経営責任者(CEO)ら旧経営陣が破綻の数日前に自社株を売却していたことについても調査を進めているという。
ベッカー氏は破綻の数日前に、約360万ドル相当の保有株を売却していた。SECへの開示資料によると、今回の売却は企業の経営陣が未開示の内部情報をもとに大量の自社株を売買して利益を上げる違法なインサイダー取引を防ぐための「10b5-1」プランに基づいている。ベッカー氏以外の経営幹部も同時期に自社株を売却していたという。同制度は株式を売却できる期間を事前に設定する。当局による調査は初期段階で、調査の結果、提訴にいたるかどうかは不明だ。
13日には持ち株会社の株主が、金利上昇がSVBの経営に与える影響度合いを隠していたとしてベッカー氏などを提訴し、カリフォルニア州の連邦裁判所に訴状を提出したと報じられた。
ファースト・リパブリック・バンクは、13日に62%急落したが、14日の米開場前の取引で28%高を付けた。パックウェスト・バンコープは40%、ウェスタン・アライアンス・バンコープは21%上昇。バンク・オブ・アメリカ(BofA)やシティグループなどの大手も上げている。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、米国のバンキングシステムの見通しを「ネガティブ(弱含み)」と、これまでの「安定的」から引き下げた。
ムーディーズは13日遅くに発表したリポートで、連邦監督当局が「SVBとシグネチャー・バンクの全預金者を保護すると発表したが、この措置を招いた銀行預金者と投資家による信頼感の急速かつ著しい低下は、金利急伸によって悪化した米銀の資産・負債管理のリスクを浮き彫りにした」と指摘した。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
14日発表の米消費者物価指数(CPI)を受け、米連邦準備理事会(FRB)が緩やかな利上げを継続するとの見方が強まった。米銀行の相次ぐ破綻もあって米景気減速の観測が強まり、原油先物が売られた。一時は70.78ドルと期近物として昨年12月以来の安値を付けた。
石油輸出国機構(OPEC)は14日に発表した月報で2023年の世界の原油需要見通しを据え置いた。経済再開が進む中国の予想を上方修正した一方、米欧は引き下げた。需給が引き締まるとの見方が薄れたのも売りの一因だった。
不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)がまとめた2022年の世界の不動産投資額が前年比19%減の1兆290億ドル(約136兆円)だった。米連邦準備理事会(FRB)を中心に金融引き締めが相次いだ影響で、欧米のファンドなどの投資が鈍った。低金利で投資家の関心が高い日本は、前年にあった大型案件の反動で投資額は3割弱減った。
2月の米消費者物価指数(CPI)統計では、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数が前月比ベースで5カ月ぶりの大きな伸びとなり、市場予想も上回った。銀行セクターにこれ以上の動揺を与えず、依然高い水準のインフレを落ち着かせたい連邦公開市場委員会(FOMC)にとっては難しい綱渡りが続く。
統計発表後、米金融政策との連動性が高い2年債利回りは上昇。S&P500種株価指数も上昇し、ドルはもみ合う展開。金利スワップ市場は依然、今月のFOMCで0.25ポイントの利上げがあるとの見方を織り込んでいる。
コア指数の月間ベース上昇に寄与したのは住居費のほか、娯楽、航空運賃など。食料品・飲料品の月間上昇率は2021年5月に迫る低さで、中でも鶏卵価格が大きく低下。新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となった直後数カ月に見られたような大幅な値下がりとなった。
総合CPIの約3分の1を占める住居費は前月比0.8%上昇。家賃と帰属家賃はいずれも前年同月比で8%以上の上昇率を記録した。ホテル宿泊費は前月比で昨年10月以来の大きな伸びとなった。
ブルームバーグの計算に基づけば、エネルギーと住宅を除いたサービス価格は0.5%上昇、昨年9月以来の大幅な伸びとなった。パウエル議長をはじめ金融政策当局者は、インフレ動向を見極める上でこうした指標が重要だと強調してきた。ただ当局の計算は別の統計に基づく。
スワップ市場が織り込む来週の米利上げ確率は約80%。前日の取引終了時点では約50%だった。2月のCPIは前年同月比ベースで1月から伸びが鈍化したが、食品とエネルギーを除いたコア指数は前月比での伸びが市場予想を上回った。
2月の消費者期待調査によると、1年先のインフレ期待(中央値)は前月から0.8ポイント低下の4.2%と、2021年5月以来の低水準となった。3年先のインフレ期待は2.7%で横ばい。5年先のインフレ期待は0.1ポイント上昇し、2.6%だった。
NY連銀の調査結果によれば、消費者は多くの日用品やサービスについて、それほど劇的な値上がりを想定していない。今後1年のガソリン価格の予想上昇率を4.7%、食料品は7.3%と、前月から0.4ポイントと1.7ポイントそれぞれ低下した。医療費と家賃は9.4%の上昇が見込まれている。
OPECは14日発表した月報で、第2四半期の産油量は需要を約30万バレル上回る日量約2892万バレルになると報告した。この時期は冬が終わり、夏のドライブシーズンを控えて世界的に石油消費が減速する。
OPECの見通しはロシアの石油生産が第2四半期に急減するシナリオを前提としていることから、世界的な制裁にもかかわらず同国の石油生産が引き続き持ちこたえれば超過分はさらに大きくなる可能性がある。
OPEC調査部門は石油需要が「上振れする可能性および下振れするリスクがある程度ある」と指摘。「世界経済が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準へ完全に回復する時期やその程度については、今も不透明感が強い」ことから、OPECと非OPEC主要産油国で構成する「OPECプラス」には引き続き慎重さが求められるとの考えを示した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
●中南米・アフリカ
●市況日経先物27205、ダウ先32385、債先147.84、米3.685、独2.4475、仏2.963、西3.501、伊4.271、英3.5235、波6.156、原油71.48、銅8,823、ドル円134.23、ユーロドル1.0733
※3/15 6時45分頃
備忘録(2023/3/10-13)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
米製薬大手のファイザーは米抗がん剤メーカーのシージェンを買収することで同社と合意した。シージェンの企業価値を430億ドル(約5兆7300億円)と評価する取引となる。
シージェンは「抗体薬物複合体(ADC)」と呼ばれる医薬品の開発でリーダー的存在。ADCでは抗体が高濃度の有効成分をがん細胞まで直接運ぶため、効き目が高い一方、副作用は少なくなることが期待される。
発表によれば、ファイザーは買収資金を新たに発行する310億ドル相当の長期社債と短期の借り入れ、手元現金などで賄う。
製薬世界大手の米ファイザーは13日、米バイオ企業のシージェンを約430億ドル(約5兆7000億円)で買収すると発表した。がん治療薬の品ぞろえを増やす狙いがある。2023年後半から24年初めの買収完了を予定するという。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は13日、兵器の国際移転に関する報告書を公表した。ロシアのウクライナ侵攻など地政学的な緊張を背景に、トップの米国の輸出は拡大し、世界の兵器輸出に占めるシェアが4割に達した。2位のロシアは2割を割り込み、米国の軍事大国としての地位が一段と増している。
米国は兵器の輸出を18〜22年に13〜17年に比べて14%増やし、世界の兵器輸出において米国のシェアは33%から40%に上昇した。輸出先はサウジアラビア、日本、オーストラリアがトップ3で、ロシアとの対立が深まる欧州向けも増えている。
2位のロシアのシェアは22%から16%に低下した。輸出先はインド、中国、エジプトを合わせて全体の3分の2弱を占めるが、3カ国はいずれも足元ではロシアからの輸入を抑制している。インド、中国は兵器の国産化を進めている。エジプトに対しては米国がロシア製を購入しないよう圧力をかけているとみられるという。
輸入では18〜22年にインドがトップで、シェアは11%だった。中東のサウジが2位、カタールが3位。4位オーストラリア、5位中国と続く。韓国は7位、日本は9位でアジア諸国が上位に目立つ。中国と北朝鮮への警戒が高まり、ほかの国々は長距離ミサイルなどの調達を急増させている。
米ロッキード・マーチンや英BAEシステムズの22年の受注は過去最高になるなど、ウクライナ向けの軍事支援や自国の防衛力強化で需要は急増している。
スウェーデンの防衛大手サーブは23年の売上高が前年比15%増えると見込む。同社のヨハンソン最高経営責任者(CEO)は米CNNに、在庫補充やウクライナ支援に伴う生産増が「何年も続くだろう」と語った。
●その他産業
銀行株全般に売りが目立ち、欧州主要銀行の株価動向を表すSTOXX欧州600銀行株指数の下落率は、一時前週末比6%に達した。独コメルツ銀行の下げが大きい。スペインやイタリアなど南欧の銀行株にも売りが目立つ。
ロンドン株式市場で、FTSE100種総合株価指数は大幅安となり、英国時間11時半時点は前週末の終値比1.77%ほど安い。経営破綻した米シリコンバレーバンク(SVB)の英国法人を買収すると発表した英HSBCホールディングスは3%強下落している。金融引き締めによる世界的な景気懸念からエネルギー株や資源株など商品関連銘柄にも売りが出ている。
英金融大手HSBCホールディングスは13日、経営破綻した米シリコンバレーバンク(SVB)の英国法人を1ポンドで買収すると発表した。銀行法の特別決議制度によって、英イングランド銀行(中央銀行)がSVBの英国法人の株主らの同意によらず買収することを承認した。英金融当局が市場の不安解消のため迅速に対応した。
10日時点でSVBの英国法人の融資額は約55億ポンド(約8970億円)、預金額は約67億ポンド。2022年12月期に8800万ポンドの税引き前利益を計上した。親会社の米シリコンバレーバンクの資産や負債は買収対象から除かれる。
HSBCのノエル・クイン最高経営責任者(CEO)は「買収によって英国内外のテクノロジーやライフサイエンス分野などの革新的で急成長する企業への対応力を高め、商業銀行部門を強化できる」とのコメントを出した。
米銀中堅ファースト・リパブリック・バンクは12日、米連邦準備理事会(FRB)や米銀最大手JPモルガン・チェースから追加の与信枠を確保したと発表した。シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻で信用不安が飛び火し、株価は前週に3割超急落した。13日の銀行業務や株式市場の取引開始前に不安を抑える狙いがある。
米連邦準備理事会(FRB)が金融機関に対して緊急の融資枠を新設し、米国債などを担保に融資して流動性を供給する。米金融当局は銀行の預金者や市場に広がる不安の連鎖解消に向け、早期の対応に動いた。
ニューヨーク州金融監督当局は12日、同州地盤の米銀シグネチャー・バンクの事業を同日付で停止したと発表した。10日に経営破綻したシリコンバレーバンク(SVB)に続く破綻となる。資産規模で全米29位のシグネチャー・バンクは米連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に入り、預金は全額保護される。
シグネチャー・バンクは暗号資産(仮想通貨)関連企業との取引で知られ、資産規模は2022年末時点で約1103億6000万ドル、預金は約885億9000万ドルあった。仮想通貨関連の取引が多かったシルバーゲート銀行の自主清算発表やSVB破綻を受けて、シグネチャー・バンクの信用不安も高まり預金流出が加速していたようだ。
バイデン米大統領は、銀行システムの規制強化を議会に求めていく考えを示した。シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクの経営破綻を受けて動揺が広がる中、破綻の責任を明確化させると表明。金融システムの基盤は強固だとして消費者と市場を安心させたい考えだ。
バイデン氏は13日、ホワイトハウスで演説し「銀行システムは安全で、必要な時に預金は口座にあると国民は安心して大丈夫だ」とし、さらに「これら銀行の顧客は全員、預金が保護され、きょう現在において預金にアクセスできる。安心して欲しい」と述べた。
バイデン氏は、納税者が損失を負担することはないと説明。議会に対し銀行規制強化のほか、両行破綻を巡りしかるべき人の責任を明確化させるよう求めると語った。
また「両行への投資家は保護されない」と言明。「投資家は承知の上でリスクを取ったわけであり、そのリスクテークが報われない場合には資金を失う。それが資本主義の仕組みだ」とバイデン氏は述べた。
預金保険で保護される上限は1口座当たり最大25万ドル(約3360万円)だが、FDICはSVBへの預金について、預金保険の対象外も含めて、顧客は13日以降全額アクセス可能になると明らかにした。「SVBの破綻処理に関係するいかなる損失も納税者が負うことはない」という。
SVB破綻に伴う危機の深刻化回避を目指す連邦準備制度は、顧客の預金引き出し需要に応える安全装置を提供するため、通常より貸し付け条件が緩やかな「バンク・ターム・ファンディング・プログラム」を設定すると発表した。イエレン財務長官の承認を得て、連邦準備制度の緊急貸し付け権限の下で融資プログラムを準備する。
連邦準備制度当局者はオンライン会見で、より広範な米銀行システムの保険対象外預金を保護するために十分な規模になると説明した。貸し付けプログラムの裏付けとして、財務省が為替安定化基金から最大250億ドルを利用可能とするが、連邦準備制度は活用を想定していない。
SVBの破綻を招いたような損失を発生させることなく、価格の値下がりした資産を現金化する手段を金融機関に提供するため、最長1年となる融資の担保価値は額面で評価される。米利上げで値下がりした米国債など、価値が目減りした証券を担保に銀行は通常より多く借り入れできる。
緊急貸付制度は連邦準備法に盛り込まれた大恐慌時代の法令で、借り手が他の場所で流動性を確保できない場合、連邦準備制度による直接融資が可能になる。
最長90日の貸し出しの担保評価で一定の割引率を適用する連銀窓口貸出制度についても、今後は新たな資金ファシリティーと同じ担保マージンの対象とする。
米オンラインブローカー、チャールズ・シュワブの株価が13日の米市場で急落。日中ベースで上場来最大の値下がりを記録した。シリコンバレー銀行(SVB)破綻の余波で動揺する投資家に対し、どのようなボラティリティー(変動性)にも耐えられる十分な流動性を確保していると同社は説得を試みている。
同社の株式はボラティリティーを理由にいったん売買が停止され、再開後に一時23%下げて45ドルとなった。その後の取引では8%安近辺に下げを縮小している。
シュワブによれば、同社が預かる顧客資産はおよそ7兆4000億ドル(約983兆円)。手元のキャッシュフローは約1000億ドルで、連邦住宅貸付銀行(FHLB)などの短期ファシリティーから段階的に引き出せる額は3000億ドルを超えており、同社銀行の預金のうち80%以上に連邦預金保険公社(FDIC)の保険が適用されているという。
世界経済において事業組織が破綻する場合、金融引き締めのせいにするのが伝統で、米銀シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻を巡っても同様だ。
しかし、実際にはその正反対で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前後に世界的な低金利があまりに長期にわたって続いたことが要因だ。それが油断を生んだ。米フェデラルファンド(FF)金利誘導目標の上限がわずか0.25%で、欧州中央銀行(ECB)の政策金利はマイナス0.5%、イングランド銀行(英中銀)は0.1%にとどまっていた当時、金利が上昇しても小幅になると安易に考えられていた。
金利が急上昇し得ると考えていた企業の財務担当者はほとんどいなかったが、それがまさに起こったことだ。もちろん、金利が上昇に向かっていると明白になってきたとき、多くの財務担当者が伝統的手段の金利スワップを活用してヘッジをかけただろうが、誰もがそうしたわけではないことが明らかになりつつある。
昨年に英国の年金業界が混乱に陥ったのが、超低金利の危険性に関する最初の警告となった。同業界は超低金利を背景に、スワップでレバレッジを利かせることを余儀なくされていた。それは英国債市場の混乱につながった。そして今、再び新たな混乱が起きている。
こうした理由から、今は米金融当局が大幅な利上げを検討するときではない。
WSJによると、12日の最終入札までにSVBの買い手は決まらなかった。米銀大手は入札に参加せず、それ以外の入札が1件あったがFDICが断った。再入札の時期など詳細は未定だが、買い手にとってより好条件が提示されるもようだ。
米政策調査会社パンゲア・ポリシー創業者のテリー・ヘインズ氏は「SVBの新たな所有者は、ソルベンシー(支払い能力)と安定性を向上させる能力が求められる」と指摘する。
SVBは口座の開きやすさや対応の速さがスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)の支持を受け、同社によるとVCが投資する米国のテックやヘルスケア企業の約半数と取引している。グループでVCも持ち、米調査会社ピッチブックによるとこれまで米国を中心に約530件投資した。富裕層向け資産運用事業も手掛けるなど、スタートアップのエコシステムの中核的な役割を果たしており、事業継続が焦点となる。
米連邦準備理事会(FRB)は13日、米銀シリコンバレーバンク(SVB)の破綻を踏まえ、金融機関の監督・規制方針を見直すと発表した。5月1日までに具体策を公表する。銀行破綻を繰り返さないための監督体制の強化を早めに打ち出し、信用不安の拡大を防ぐ狙いがある。
同日出した声明のなかでパウエル議長は「今回の出来事を受けて、FRBは徹底的かつ透明で迅速な見直しを求められている」と説明。見直しを主導する金融監督担当副議長のバー氏は「この銀行をどう監督・規制していたか、そしてこの経験から何を学ぶべきか慎重かつ徹底的な見直しをする」と述べた。
銀行の規制強化論は与党・民主党内の左派議員の間で強まっている。オバマ米政権が2008年の金融危機を経てドッド・フランク法などを成立させた後、共和党のトランプ政権が一部を緩和してしまったことに不満が強い。
パウエル氏が7〜8日に議会証言に臨んだ際も、多くの議員から米銀に求める自己資本比率を引き上げるよう求める声が出ていた。バー氏はこうした意見を踏まえて、金融規制の在り方を見直す取り組みを進めていた。
KBW地銀指数は一時12%安で取引時間中として2020年3月以降で最大の下落率を記録した。米連邦準備制度や連邦預金保険公社(FDIC)などが国内全ての預金を保護できるほどの大規模な銀行向け安全措置を新たに発表したが、銀行株への売り浴びせに歯止めはかかっていない。
「大半の銀行は、通常の環境下では支払い能力がある。問題は、全面的な銀行取り付けに耐えられる銀行などないということだ」とインタラクティブ・ブローカーズのチーフストラテジスト、スティーブ・ソスニック氏は指摘。「FDICの行動で、預金の取り付けが起きるという想定は排除されたが、投資家による銀行取り付けが起きている」と語った。
ファースト・リパブリック・バンクの株価は一時79%安と記録的な急落に沈み、あまりの変動に数回にわたって取引が停止された
ウェスタン・アライアンス・バンコープは一時85%安、上場来最大の下落率
パックウェスト・バンコープは60%下げ、過去最安値を更新
このほかカスタマーズ・バンコープ、コメリカ、イースト・ウェスト・バンコープ、ハワイ銀行なども下落率が20%を超え、取引が停止された
地域金融機関の重要な資金源であるFHLB制度は、短期債発行を通じて887億ドル(約12兆円)を調達した。当初は640億ドルの調達を計画していたという。
アカデミー・セキュリティーズのイアン・バーデット氏は、「これは確かに通常の規模ではないが、現状を考えると、銀行の資金需要を反映している可能性が高い」と指摘。「銀行の需要が実在しなければ、このようなことはしないと思う」と述べた。
全米11地区から成る同制度は民間銀行が短期資金調達のために利用できるバックストップで、連邦準備制度理事会(FRB)の連銀窓口貸出制度を利用する場合のように汚点と見なされることはない。FHLB制度は安全網と広く受け止められ、「最後から2番目の貸し手」と呼ばれてきた。
●決算関連
サウジアラムコは12日、2022年12月期の決算を発表した。ロシアによるウクライナ侵攻などを背景とした原油高で、純利益は前の期比46%増の1611億ドル(約21兆円)と19年の上場以来、過去最高となった。原油やガスの開発投資を続けるとしている。
世界的なエネルギー価格の高騰が産油国に莫大な利益をもたらしたかたちだ。アラムコのナセル最高経営責任者(CEO)は同日の記者会見で「過去最高の業績は原油価格の上昇や販売量の増加によるもので、この傾向は当面続くとみている」と強調した。22年10〜12月期の四半期配当は前四半期比4%増の195億ドルとした。
ナセル氏は23年の業績見通しについて「予測は困難だが、市場については楽観的に見ている」と述べた。その理由として中国が新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策を終了し、エネルギーの需要が増えていることなどをあげた。
マレーシアの国営石油会社ペトロナスが13日発表した2022年12月期決算は、純利益が前の期比2.1倍の923億リンギ(約2兆7700億円)となった。エネルギー価格高騰を受けて売上高も49%増の3330億リンギに達し、ともに過去最高を更新した。23年から5年間の設備投資額は直近5年間に比べ約4割増やす計画で、新たな権益確保や脱炭素への投資を加速する。
23年12月期の業績について「世界的な景気減速によって原油やガスの価格が下がる可能性がある」と、慎重な見通しを示した。ムハンマド・タウフィク社長兼グループ最高経営責任者(CEO)は「国営石油会社として長期的に持続可能な企業価値を維持する」と強調した。
●先進国、グローバル、金融市場
10年物国債を指定した利回りで無制限に買い入れる「連続指し値オペ」の対象を拡大すると発表した。財務省が直近で発行した3銘柄から4銘柄に広げる。日銀が市場参加者に国債を貸し出す際の貸出料を引き上げる措置も4銘柄で続ける。投機筋が国債を借りて売る「空売り」を抑える狙いがあるとみられる。
財務省が新発10年債を発行する4月5日から適用する。日銀は長期金利の上限を0.5%程度に抑えるため、10年債の直近3銘柄で連続指し値オペを続けてきた。現在は2022年7〜9月発行の367回債、10〜12月発行の368回債、23年1〜3月発行の新発369回債を買い入れている。
今の引き締めサイクルについて、金利スワップ市場が現在織り込む25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利上げの確率は50%を割り込んだ。金融政策との連動性が高い2年債利回りは一時60bp低下して3.99%と、昨年10月以来の低水準となった。
ドルのロンドン銀行間取引金利(LIBOR)3カ月物は一時27bp下げて2020年3月以来の大幅低下となった。
ドルも軟調。対円では下落率が一時2%を超え、132円台前半まで下げた。ドイツ銀行のストラテジスト、ジョージ・サラベロス氏は「米金融当局が引き締めを再加速するハードルは大幅に高くなった。金利の最終到達点は低くなる公算が大きい」と顧客向けリポートで指摘。「過去数週間、政策金利『6%への恐れ』が当行のドル弱気論に対する単一で最大の障害であると指摘してきたが、この後退は重要なドル下落の呼び水になる」と論じた。
これまでのところ当局者は、欧州への波及リスクがあるとは考えていない。フランスのルメール財務相は13日、米国の状況は「特異」なものだとし、SVBとテクノロジーセクターの結び付きを指摘。欧州にはそのような深い関係はないと説明。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のドナフー議長もブルームバーグテレビジョンのインタビューで、SVBの経営破綻に対するユーロ圏のエクスポージャーは非常に限定的だと述べた。
それでも、短期金融市場が織り込むECB中銀預金金利のピークはほぼ1カ月ぶりに3.75%を割り込んだ。今週の政策決定について、市場が織り込む0.5ポイント利上げの確率は50%となった。
欧州チーフエコノミストのジェイミー・ラッシュ氏は、SVB破綻が「今週の会合にあまりにも近い時期に起こったので、5月の0.5ポイント利上げを約束する意欲は弱まるだろう。ECBは具体的なシグナルを送るのを避けるとみている」と解説した。
豪州が2030年代に最大5隻の米国製原潜を調達する。米国は潜水艦の生産や補修能力拡大へ5年間で46億ドル(6100億円)を投じる。3カ国で中国抑止を強化する。
米政府高官によると、工程表は3段階に分かれる。23年から30年ごろまでの第1段階は主に訓練期間となる。米英の原潜が豪州への寄港を増やし、豪州軍に原潜の運用を訓練する。米国は造船所に豪州の技術者や労働者を招き、原潜の生産や維持・補修の技術を伝える予定だ。
第2段階の30年代初めに豪州が米バージニア級原潜を3隻購入し、必要に応じて2隻を追加する。米国と豪州は巨額の投資で米国の潜水艦の生産や維持・補修能力を拡大する。豪州向けの原潜生産が米軍の調達計画の遅れにつながらないよう配慮する。米政府高官は記者団に豪州の投資規模をめぐり「莫大な貢献になる」と説明した。
第3段階は米英豪の技術を組み合わせた新型原潜の生産に移る。名称は3カ国協力をアピールするため、攻撃型原潜「AUKUS」とする。豪州は自国で生産して40年代初めの取得を目指す。英国も30年代後半に同型の原潜を調達する計画だ。
豪州が原潜を取得すれば米国との役割分担が視野に入る。南シナ海では中国の潜水艦が米本土を射程に入れる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載し、有事での攻撃に備えているとみられている。豪州が南シナ海で中国の監視を担えば、米国は自国の潜水艦を東シナ海や太平洋など別の海域に回せる。
米政府高官は記者団に「海中戦力は我々に優位性がある分野だ。政権も議会もこの分野に投資を続ける重要性を強く認識している」と断言した。
中国は日本の沖縄から台湾を経由してフィリピンにつながる第1列島線に米軍を近づかせない戦略を採用していると米国はみている。米国の制海権や制空権が脅かされており、潜水艦を主戦力とする「海中権」の重要性が増す。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
原油高で湾岸産油国に多額のマネーが流入している。国際通貨基金(IMF)は、湾岸協力会議(GCC)に加わるサウジアラビアなど6産油国の2022年の経常収支黒字が3460億ドル(約46兆円)で、前年の2.5倍に達したと推計する。一部はサウジが取り組む「脱石油」改革の資金になり、消費国に還流する投資もある。だが、改革が大きく進むかは不透明だ。
イランとサウジアラビアが発表した外交関係の正常化計画について、サウジと同じアラブ諸国は歓迎する姿勢を相次いで示した。地域の安定につながるとの期待が広がっている。仲介した中国の役割を評価する見方も浮上している。
アラブ首長国連邦(UAE)のガルガシュ大統領外交顧問は10日「UAEはサウジとイランの合意を温かく歓迎する」とツイートした。同時に「地域の安定と平和に向けた前向きな一歩を促す中国の役割を高く評価する」とも書き込んだ。
イラクも合意に好意的だ。同国外務省は「両国の外交関係の新たなページが始まることを歓迎する」とコメントした。イラクもイランとサウジの協議を仲立ちしていた。イラク通信によると、イランのアブドラヒアン外相は10日、イラクのフセイン外相に電話で謝意を伝えた。
オマーン外務省も「地域と世界に利益をもたらす建設的な協力関係の強化に期待する」との声明を発表した。エジプト外務省は「合意が地域の緊張を緩和し、アラブの安全保障の安定と維持に貢献することを望む」と表明した。
イランを後ろ盾とするイエメンのイスラム教シーア派武装勢力フーシの幹部は10日「この地域は失われた安全を取り戻すため、各国間の正常な関係の回復を必要としている」とツイートした。フーシはイエメン内戦でサウジ率いるアラブ有志連合と対立している。
イランが支援するレバノンのシーア派組織ヒズボラ幹部も「よい進展だ」と評価した。ロイター通信が伝えた。
中東の大国であるイランとサウジアラビアが合意した外交正常化は「米国抜き」で交渉が進んだ。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は10日の記者会見で「米国は直接的に関与していない」と認めた。サウジとの関係悪化で生じた空白を埋める中国が主導権を握った。
●中南米・アフリカ
●市況日経先物27220、ダウ先32165、債先148.60、米3.545、独2.2855、仏2.816、西3.350、伊4.184、英3.4145、波6.000、原油74.65、銅8,926、ドル円133.27、ユーロドル1.0729
※3/14 8時30分頃
備忘録(2023/3/7)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
米司法省は7日、米格安航空会社(LCC)のジェットブルー航空による同業スピリット航空の買収を巡り、差し止めを求めて提訴したと発表した。競争が働きにくくなり、航空運賃の引き上げなどで消費者が不利益を被ると判断した。
スピリットは2022年10月にジェットブルーによる買収を受け入れると発表していた。買収額は38億ドル(約5200億円)で、合併が実現すればジェットブルーは米国内市場シェアで業界5位になる。提訴によって、買収計画は少なくとも数カ月は保留せざるをえなくなる。
ガーランド司法長官は「合併によって数千万人の旅行者に運賃上昇と選択肢の減少をもたらす。最大の影響は超低価格の航空会社に依存している人々が受ける」と説明した。同氏はスピリットの路線がなくなれば平均運賃が30%上昇するとの推定に言及した。
ジェットブルーとスピリットの合併計画は、多くの利用者を抱える米LCC大手2社の経営統合として注目を集めていた。米運輸省によると、21年12月から22年11月の米国内における両社の市場シェアはそれぞれ6位と7位で、2社を合わせると4位のユナイテッド航空に次ぐシェアになる。
●その他産業
S&Pは、日産の24年3月期の販売台数が360〜370万台程度になるとし、同社が20年に発表した事業構造改革計画「日産ネクスト」で示した生産能力年540万台を大きく下回ると見込む。新モデルを投入するものの、販売価格引き上げや販売奨励金の削減による増益効果は限定的とした。
また、部品不足の長期化で工場の稼働率は大きく改善せず、日産の23年3月期のEBITDAマージン(償却前営業利益率)は4%程度にとどまり、今後1〜2年も4%台後半から5%台前半の範囲で推移すると予想。同業他社に比べて「大きく見劣りする」とみている。
S&Pは「日産が電気自動車(EV)市場で一定の地位を確保するために必要な研究開発費や設備投資の負担が同業他社より重くなる可能性がある」と指摘。一方で19年比で3500億円の固定費を削減し収益性を重視した販売戦略を採用していることから「業績や財務基盤が今後大きく悪化する可能性は低い」としている。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
パウエル氏は雇用や個人消費、インフレの動向について「1カ月前に見られていた軟化傾向が一部逆転した」と認めた。2月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を通常ペースの0.25%に圧縮したが、次回会合で再び0.5%に引き上げる可能性を示唆した。
パウエル氏は「最新の経済データは予想を上回る強さとなっており、最終的な政策金利の水準が従来の予想よりも高くなる可能性があることを示唆している」とも話した。FOMC参加者による2022年12月時点の経済見通しでは利上げの到達点は中央値で5.1%だった。
カナダが外国からの選挙介入対策に乗り出す。トルドー首相は6日、過去2回の連邦議会選挙に中国が介入したとの疑惑が浮上した問題で、独立した調査官「特別報告者」を数日内に任命すると発表した。外国政府の利害に関連する人がロビー活動をする際に登録を求める制度の検討も始めた。中国への警戒が国内で強まっていることを受け、強硬姿勢を打ち出す。
こうした制度は既に諸外国で導入されている。オーストラリアでは18年に「外国影響力透明化法」が成立した。米国では外国政府から資金提供を受けてロビイスト活動をする場合、外国代理人登録法に基づき、司法省への届け出が必要となっている。
フランスでマクロン政権による受給年齢の引き上げを軸とする年金改革案への反発がさらに激しさを増している。7日は全土で産業横断のストライキが実施されて公共交通が止まったほか、原子力発電所の発電量も低下している。パリなど各地の路上では改革に抗議する市民がプラカードを掲げて練り歩いた。
ドイツ政府は高速通信規格「5G」の通信網から中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の排除を検討している。独経済紙ハンデルスブラットなどが報じた。米国のほか、欧州では北欧や英国などがすでに中国勢の排除を進めている。約6割の通信機器を中国製に頼っているドイツもようやく安全保障から脱中国にかじを切る。
今冬に温暖な気候が続いたことで需要が鈍る一方、米国内のガス生産が高水準で推移してきたためだ。米国内在庫も平年を上回る高水準で推移し、需給の緩和感から売りが膨らんでいる。
「穀物の低在庫は2〜3年続く」と指摘する。足元の穀物価格は落ち着いているが、低在庫に肥料不足が重なり食料価格が上昇圧力をうけやすい局面は今後も続く可能性がある。
世界最大の中古車再販業者であるマンハイム・オークションズによると、2月の米中古車価格指数は前月比で4.3%上昇した。2月の前月比の上昇率としては、4.4%だった2009年以来の大きさ。前年同月比では7.1%低下。
14日に発表される2月の米消費者物価指数(CPI)では、中古車価格は前年同月比11.6%低下と予想されている。中古車価格は総合CPIの約2.7%を占める。
●中国・アジア・ロシア・東欧
IMFは7日、スリランカが中国などを含む「全ての主要な2国間債権国」から協力の保証を得て「20日の(IMFの)理事会での承認検討に向けて道を開いた」と発表した。IMFとスリランカは2022年9月に、29億ドルの支援について実務者による暫定合意に達したと発表していた。IMFは支援の前提としてスリランカの経済改革のほか、対外債務の整理再編を求めていた。
●中東
●中南米・アフリカ
南アフリカ統計局は7日、2022年10〜12月期の実質GDPが7〜9月期比で1.3%縮小したと発表した。22年秋から深刻化した停電が経済活動の足を幅広く引っ張り、2四半期ぶりのマイナス成長となった。
鉱業3.2%減、金融業2.3%減、商業2.1%減など、10ある産業分類のうち7分類で経済活動が縮小した。季節調整済みの値で、新型コロナウイルスの感染拡大が影響する前の20年1〜3月期の経済規模を下回った。
国営電力会社エスコムは長年の放漫経営で巨額の負債を抱え、平均で40年以上が経過した発電所の設備更新を進められていない。22年秋に起きた発電所の故障では200万キロワットの発電能力が失われ、状況はさらに悪化した。
23年に入ってからは1日あたり数時間〜10時間程度の輪番停電が毎日続いている。政府は2月、「国家的災害事態」を宣言し、3月6日には電力相のポストを新設した。エスコムは十分な供給能力を得るまでには最低でも2年かかるとの見方を示している。
●市況
日経先物27995、ダウ先32892、債先145.42、米3.914、独2.6850、仏3.194、西3.732、伊4.515、英3.8515、波6.313、原油77.25、銅8,743、ドル円137.29、ユーロドル1.0548
※3/8 8時50分頃
備忘録(2023/3/6)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
新しい「やせ薬」の効能は美容だけではない。その恩恵を最も受けるのはロサンゼルスやマイアミに住むセレブたちではなく、体重の増加による健康の悪化に苦しむ普通の人々だ。その数は世界で数十億人に及ぶとみられる。
肥満症治療薬は昔から安全だが効果が乏しかったり、全くもって怪しいものだったりしたものだ。だが、新しいタイプの「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれる今回の薬は実際に効果があるとみられている。デンマークの製薬大手ノボノルディスクが開発した「セマグルチド」(一般名)は臨床試験で約15%の減量効果があることが確認されている。
ライバル薬として米イーライ・リリーが開発したGLP-1受容体作動薬は年内に販売が開始される見込みで、効果はウゴービを上回るとされる。
アナリストらはGLP-1受容体作動薬の市場規模が2031年までに1500億ドル(約20兆円)に達する可能性があると予測する。これは現在のがん治療薬の市場規模にほぼ匹敵する。循環器疾患に使われるベータ遮断薬やコレステロール低下剤のスタチン並みに一般に普及すると考えるアナリストもいる。
世界肥満連盟によると、35年には世界の肥満率が50%を上回り、40億人もの人々が過体重か肥満になるという。
肥満率の高まりは世界規模の問題になっている。平均体重の上昇ペースが最も速いのは西側の富裕国ではなく、エジプトやメキシコ、サウジアラビアといった国々だ。
やせ薬市場の「ゴールドラッシュ」で先頭を走るノボノルディスクの時価総額は2年間で3260億ドルへと倍増し、上場製薬会社として世界2位に躍り出た。
肥満症治療薬は高収益が期待できるだけに既に開発競争に拍車がかかっている。米アムジェンや英アストラゼネカ、米ファイザーが同様の新薬開発を進めている。ノボノルディスクも複数の後続薬のパイプライン(新薬候補)を抱える。将来的には、特許が切れた後は、安価なジェネリック薬の販売も可能になる。
エーザイは6日、米バイオジェンと開発するアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、米食品医薬品局(FDA)がフル承認に向けた変更申請を受理したと発表した。優先審査に指定されており、審査終了目標日は7月6日を予定する。フル承認が決まれば、治療薬が本格的に普及する段階に入る。
●その他産業
成長事業と見なす無煙たばこで品ぞろえを広げる。一方、約128億ドルを投じた同業ジュール・ラブズへの出資を一部製品の知的財産権と交換し、出資関係を解消したと公表した。
米国で市場が急拡大している後払い決済「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」で、サービスを提供する企業の業績が低迷している。急ピッチの利上げで資金調達コストが増加。新規参入も相次ぎ、競争が激しくなっているためだ。各国の規制強化も逆風となる。収益確保に時間がかかるなか、業界大手の米アファーム・ホールディングスなどは大規模な人員削減に乗り出した。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
欧州では債券が記録的なペースで発行されている。年初来の発行額は5000億ユーロ(約72兆6000億円)を過去最速で超えた。利回りは上昇基調にあるが、インフレや地政学的な不透明性から、企業や銀行、政府は計画を前倒しして発行を急いでいる。
フランクリン・テンプルトンの欧州債券責任者、デービッド・ザーン氏は「今年が再びボラティリティーの大きい年となるなら、待つよりも早めに終えた方がいいだろう。今年の残り期間がどうなるか、分からないからだ」と債券発行について指摘した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
マッカーシー米下院議長が4月上旬に西部カリフォルニア州で台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と会談する計画だと報じた。台湾当局が中国の激しい反発を抑えるため、マッカーシー氏に訪台を控えるよう説得したという。
●中東
トルコの6野党は6日、5月にも行われる大統領選で、最大野党・共和人民党(CHP)のケマル・クルチダルオール党首を統一候補として擁立することで一致した。反対して一時、野党連合からの離脱を表明した第2野党も復帰し、政権交代に向けて共闘する。
クルチダルオール氏は経済官僚などを経て2002年に国会議員、10年にCHP党首に就任した。イスラム教の少数宗派であるアレウィー派。世論調査では二大都市の市長らに水をあけられていたが、党内で影響力を持っている。
●中南米・アフリカ
●市況
日経先物27957、ダウ先33463、債先145.30、米3.967、独2.7355、仏3.216、西3.746、伊4.558、英3.8985、波6.396、原油80.50、銅8,833、ドル円135.93、ユーロドル1.0685
※3/7 8時45分頃
備忘録(2023/3/3-5)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
オランダ政府は2022年6月、スキポール空港での騒音と温暖化ガスの削減を掲げ、航空輸送量の減便を決めた。空港での輸送量の上限を年間50万便から44万便まで減らす方針だという。
これに対しIATAや航空会社は、オランダ政府の決定が欧州連合(EU)の定める騒音に関する規則などに違反していると主張している。この規則ではEU加盟国が新たな政策を決める前に、産業界との十分な話し合いの場を持つことを義務づけているが、オランダ政府はこれを守らなかったと指摘している。
●その他産業
22年初めから取引停止までのLMEの意思決定プロセスや管理体制を調査対象とする。約定取り消しに至った異例の事態の経緯を解明して再発防止につなげる。
売買停止は中国のニッケル生産大手、青山控股集団などがニッケルの値上がりで巨額の先物売りの損失を抱えたのがきっかけだ。LMEは香港取引所の傘下で、意図的に青山を救済したとの推測が市場に出ている。LMEは第三者機関による調査報告書を今年1月に出したが、取引停止に踏み切った意思決定プロセスなどは明らかにしていなかった。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
両国はいずれも主要貿易相手国である中国との間に摩擦を抱える。幅広い分野で連携し、中国依存の引き下げや安保面の協力強化を探る。
豪首相のインド訪問は2017年以来約6年ぶり。アルバニージー氏は声明で「両国のパートナーシップの強化は、我々の地域の安定につながるものだ」と強調した。
豪印は日米と共に4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」を構成し、インド太平洋地域で軍事的に台頭する中国を念頭に連携を強めている。アルバニージー氏は「今年半ばのクアッド首脳会議でモディ氏を豪州に迎えることを楽しみにしている」とも述べた。
豪州にとって中国は全輸出額の3割超を占める最大の貿易相手国だ。ただ、20年にモリソン豪首相(当時)が新型コロナウイルスの発生源を巡って独立した調査を求めたことに中国が反発。豪産大麦やワインに高関税を課すなどの措置に出た。豪州にとって貿易相手国の多角化は喫緊の課題となっている。
22年5月の豪総選挙で政権交代を実現したアルバニージー氏は、中国との関係正常化を目指す。ただ、安保面では中国への警戒姿勢を崩していない。今後も通商・安保両面でインドと協力を進める動きは続きそうだ。
米国向けの海上物流で西海岸から東海岸ルートへのシフトが続いている。主要航路であるアジア発米国向け輸送では、東海岸の割合が2023年1月時点で3年前に比べて10ポイント近く増加している。新型コロナウイルス禍で深刻化した物流混乱などの影響が大きく、国土交通省も新たな国際物流ルートの構築で後押しする。
「高インフレが、特に生活必需品のコスト上昇に対応できない人々に大きな苦難を強いることを痛感している」として金融引き締めへの決意を示した。物価抑制には労働市場の需給緩和が必要だと強調した。
物価上昇率を目標である2%に下げるには、労働市場の需給緩和と低い経済成長率が必要になりそうだと指摘した。米経済は新型コロナウイルス禍後に深刻な人手不足に陥り、賃上げ圧力の強さがインフレの沈静化を阻む要因になっている。
報告書は米国の労働人口が回復しない理由を詳しく分析した。コロナ禍を経て増えた早期退職が要因の半分以上を占め、残りはコロナ禍による死者の増加と移民の減少によるものだと結論づけた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国で国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が5日、北京の人民大会堂で開幕する。会期は13日午前までの9日間と発表した。22年より2日長い。任期5年の国家主席など主要人事を決めるためだ。18年の会期は5〜20日だった。新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策は終わったが、全人代の短期開催は続く。
23年の経済成長率の目標は「5%以上」とする案などが浮上している。
22年の中国経済は「ゼロコロナ」政策などで3%成長にとどまった。同年の政府目標「5.5%前後」を大幅に下回った。長期の景気停滞で企業や家計のマインドは冷え込んだ。政府内には「先行き不安を和らげるうえで政府目標は22年と同じ5.5%前後とすべきだ」との意見もある。
内需拡大に向けて積極的な財政政策を打ち出す方針だ。中国の証券会社、海通証券は財政赤字の国内総生産(GDP)に対する比率を昨年の2.8%から3.0%に引き上げると予測する。地方でのインフラ投資拡大のほか、「ゼロコロナ」政策への対応などで深刻な財政難に陥った地方政府への移転支出を増やすとみる。
政府活動報告で少子高齢化など構造問題への対応をどう取り上げるかも焦点だ。中国は22年、人口減少社会に突入した。年金制度の安定や働き手の確保には、法定退職年齢の引き上げが欠かせない。
5日公表した2023年の国防費は前年比7.2%増の1兆5537億元(約30兆5500億円)だった。経済成長が鈍るなかでも3年連続で伸び率が拡大した。24年1月の台湾総統選を見据え、軍拡の手を緩めない姿勢を示した。
●中東
中道左派で最大野党の共和人民党(CHP)と、右派で第2勢力の優良党の間で意見が割れた。CHPがクルチダルオール党首を主張するのに対し、優良党は同じCHPで国民的人気の高いイスタンブール市長や首都アンカラ市長を推した。
6野党の党首は2日に大統領候補を決める会合を開き、6日にも公表するとしていたが、議論は紛糾したもようだ。優良党のアクシェネル党首は3日に記者会見を開き、野党連合が「人々の意思を反映する力を失った」と批判。連合からの離脱を示唆した。
6野党の中ではCHPが約20%の支持率を握り、優良党が10%強で続く。ほかの4党にはエルドアン氏の与党、公正発展党(AKP)を離党した元首相、元副首相ら大物政治家が並ぶものの、支持率は合計で1〜2%程度にとどまる。優良党が離脱すれば影響は大きい。
WSJはUAE当局者の話として、同国がサウジアラビアとの対立を深めており、OPECからの脱退を内部で議論していると報じた。この報道についてロイター通信は「真実からかけ離れている」とする関係者の発言を伝えた。北海ブレントは反発し84ドル前後で推移している。
仮に脱退すれば、OPECに非加盟のロシアなどを加えた「OPECプラス」が取り組む協調減産に影響するとの思惑が浮上した。UAEはこれまで公式にOPECプラスの減産合意を順守する意向を示している。
●中南米・アフリカ
ブラジル前大統領「使命終わらず」 再出馬に意欲か
●市況
日経先物27945、ダウ先33370、債先145.47、米3.967、独2.7210、仏3.188、西3.701、伊4.520、英3.8950、波6.516、原油79.41、銅8,927、ドル円135.93、ユーロドル1.0631
※3/6 9時10分頃
●市況
日経先物27945、ダウ先33370、債先145.47、米3.967、独2.7210、仏3.188、西3.701、伊4.520、英3.8950、波6.516、原油79.41、銅8,927、ドル円135.93、ユーロドル1.0631
※3/6 9時10分頃
備忘録(2023/3/1)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、プロファイ・インフラ、ESG
大西洋条約機構(NATO)の各国は国防費を積み増す方針だ。実現すれば加盟30カ国の8割が目標である国内総生産(GDP)比2%かそれ以上になる見通しだ。ロシアが侵攻するウクライナに供給する武器を調達するだけでなく、自国の防衛強化も急ぐ。一方、財政の自由度は狭まることになり、物価高対策などに影響する可能性がある。
米国で糖尿病患者向けインスリン製剤を値下げし、新たな低価格品の販売も始めると発表した。主力製品の価格を7割下げる。患者団体や政界から価格が高すぎると批判を浴びていたのに対応する。
インスリンを使う民間保険加入者の自己負担額を月間上限35ドル(約4760円)に抑える販売措置を導入した。米国内で1日から適用する。
●その他産業
NTTとKDDIが次世代の光通信技術の研究開発で提携する。通信回線からサーバーや半導体の内部まで、光で信号を伝える超省エネの通信網の基盤技術を共同で開発する。情報流通の要であるデータセンター(DC)は全世界の消費電力の約1%を占め、今後も確実に急増する。両社は2024年中に基本的な技術を確立し、30年以降にDCを含む情報通信網の消費電力を100分の1に低減することを目指す。
●決算関連
2月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は47.7と市場予想(47.6)をわずかに上回った。仕入れ価格指数は前月から上昇し、インフレ圧力の高まりを示した。消費の減速を見込み、ディスカウントストア大手ターゲットが4%安、ホームセンター大手ホーム・デポが2%安、小売り大手ウォルマートが1%安で終えた。
1日に発表された小売り各社の決算をめぐっては、消費の見通しをめぐる市場の警戒感もみられた。百貨店大手コールズは2022年11月〜23年1月期の売上高が前年同期比7%減り、最終損益は2億7300万ドルの赤字に転落した。
背景にあるのは、インフレ下で迎えた年末商戦での裁量消費の不振だ。トム・キングスベリー最高経営責任者(CEO)は「主要なカテゴリーで後れをとっている」と認めた。同社は化粧品大手セフォラとの提携を通じた店舗改革などに力を入れるが、衣料品や家庭用品などの売り上げ減が響いた。在庫も4%増となお高水準だ。
24年1月期通期の予想は売上高が2〜4%減、調整後の1株利益が2.10ドル〜2.70ドルと予想する。株価は弱気な見通しを受け、2%安で終えた。
米ホームセンター大手のロウズは売上高が5%増と市場予想を下回った。木材価格の下落などを受け、既存店売上高は1.5%の減少だった。純利益は2割の減益で、市場予想は上回った。
ロウズのマービン・エリソンCEOは、住宅の買い替え需要自体は続いていると指摘した上で「消費者が景気後退の可能性を警戒していることもわかっており、ホリデーシーズンに経験した裁量消費の減退にも反映されている」と発言した。
24年1月期通期は売上高が880億ドル〜900億ドル、既存店売上高は横ばいから2%減を予想している。市場予想を下回る見通しを示したことで、同社の株価は5%超下落して終えた。
逆風下でも新たな顧客を呼び込んでいるのが1ドルショップ大手のダラー・ツリーだ。22年11月〜23年1月期の売上高は9%増の77億1620万ドル、純利益は0.4%減の4億5220万ドルといずれも市場予想を上回った。
リチャード・ドレイリングCEOは1日、店舗に年収8万ドル以上の高所得者の来店が増えていると明らかにした。同社は22年4月末までに商品の大部分の価格を1ドルから1.25ドルに引き上げたが、相対的な割安感からインフレで節約志向を高める消費者の支持を集めている。
24年1月期通期には平均時給の2ドル引き上げや650店舗の新設、1000店舗の改装などに20億ドルを投じる計画も明らかにした。営業費用がかさむため、調整後の1株利益は6.30ドル〜6.80ドルと市場予想を下回る見通しだ。インフレ下の成長継続に向けた計画を好感し、株価は2%高で終えた。
企業は足元のインフレの高止まりに加え、金融引き締めの長期化による景気減速の懸念にも直面する。年末商戦期の大幅な値引きで収益率の悪化もみられるなか、コスト削減や裁量消費の回復に向けた中長期策が求められそうだ。
●先進国、グローバル、金融市場
新型コロナウイルス下の財政支援で潤った米家計の余剰貯蓄が、2023年にも底をつきそうだ。米連邦準備理事会(FRB)によると残高ベースで21年9月末のピーク時には約300兆円あったが、その後は減り続け民間試算では秋にも消化する。インフレと金利上昇で家計の債務は膨張し、ローンの延滞も増え始めた。米経済を支える消費に回せるお金が減る可能性がある。
2月の米製造業景況感指数は前月から0.3ポイント高い47.7だった。半年ぶりに前月比でプラスに転じたが、好不況の節目である50を4カ月連続で下回った。生産や雇用環境を示す指数が低迷しており、米国の製造業は依然として弱含みの状態だ。
項目別では前月からの改善と悪化がまだら模様でみられた。1月に大きく低迷した新規受注は、4.5ポイント改善し47.0となった。仕入れ価格の水準を示す指数は1月より6.8ポイント上昇し、51.3になった。米証券ジェフリーズのアネタ・マルコウスカ氏は「モノの価格低下が一服したことを示唆している」と指摘した。受注残を示す指数は1.7ポイント上昇して45.1となったが、50は下回った。
生産は前月から0.7ポイント低下し、47.3となった。英キャピタル・エコノミクスのアンドリュー・ハンター氏は「中国の製造業活動が改善しても、米国にプラスの影響をもたらす兆候がみられない」と指摘する。雇用環境を映す指数は49.1と前月比で1.5ポイント低下した。
調査対象の企業からのコメントは、産業分野や項目によって分かれた。電気機器の企業は「新規受注は堅調で、生産は安定的に推移しているが、多くの品目で供給不足が続いている」とコメントした。非金属鉱物製品の企業は「景気後退の懸念は残るが、大きく落ち込むことはないだろう」とみる。
イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は、インフレ抑制のために追加利上げが必要な可能性を示唆した。
英経済は中銀が2月に想定した通りにほぼ展開しているが、労働市場の引き締まりが続き、物価圧力を高めていると、ブランズウィック・グループ主催の生活費に関する会議で語った。「労働市場のタイトさを反映した国内のインフレ圧力を注視する必要がある」と述べた。
中銀が1日公表したテキストによると、総裁は「今、金利についての行動が小さ過ぎれば、将来により多くが必要になる。1970年代の経験がこの重要な教訓をわれわれに残した」と語った。2021年にインフレが加速し始めた時にベイリー総裁は「一過性」だと論じ、70年代とは状況が大きく異なると主張していたが、認識を大きく変えたことが示唆される。
総裁は2008年以来の高水準である4%の政策金利が経済に「影響を及ぼしつつある」とした上で、「幾らかの追加利上げが適切となる可能性がある」と述べた。同時に、「利上げが完了したとも、追加利上げが不可避だとも示唆しないように」と慎重を促した。
短期金融市場はここ数日に、9月までに0.75ポイントの利上げを織り込む方向に動いたが、それ以来見通しはやや後退した。それでも市場が現時点で見込むピーク金利は、2月初めに中銀も認めた様子だった4.5%を上回る。
米国の住宅ローン金利は先週、昨年11月以来の高水準に達した。全米抵当貸付銀行協会(MBA)のデータが示したもので、住宅購入目的のローン申請指数はこれを受けて約30年ぶりの低水準に落ち込んだ。
住宅ローンの30年物固定金利は2月24日終了週に、前週比9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、6.71%。昨年11月11日終了週以来の高水準となった。購入目的の住宅ローン申請指数は3週連続で低下し、1995年以来の低い水準となった。
情報更新の頻度がより高いモーゲージ・ニュース・デーリーは2月28日、30年物固定の住宅ローン金利は6.85%との調査結果を示した。
MBAによれば、借り換え目的の申請指数は前週比5.5%低下と、同じく3週連続のマイナス。申請指数全体では同5.7%低下の188.5と、年初以来の低水準となった。
MBAのデータは祝日前後に変動が大きくなる可能性があり、2月24日終了週はプレジデンツデーの祝日を含む。
2月の消費者物価指数(CPI)は欧州連合(EU)基準で前年同月比9.3%上昇と1月の9.2%上昇から加速。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想は9.0%上昇だった。ドイツ政府は高騰するエネルギー価格による家計への負担を軽減するため支援を強化したが、インフレは加速した。
2月28日に発表されたフランスのインフレ率はユーロ導入後の最高、スペインのインフレも予想に反して加速した。これを受けて市場はECB中銀預金金利のピークが4%になることを織り込んだ。
現在の中銀預金金利は2.5%。3月会合での0.5ポイント利上げはほぼ確実となっているが、それ以降の大幅利上げを支持する声も多い。
ユーロ圏のインフレ率は2日に発表される。総合インフレ率は8.3%と前月の8.6%から低下が見込まれているが、コアインフレ率は過去最高の5.3%にとどまる見込み。
米産業全体で利益は現金が入ってくるよりも著しく速いペースで拡大し始めており、それが不穏な動きとなる可能性がある。UBSグループがまとめたデータによると、金融とエネルギー企業を除くS&P500種株価指数構成企業の利益は減価償却の調整を加えたベースで、昨年9月までの1年間に営業キャッシュフローを14%上回った。
1ドルの利益に対するキャッシュフローはわずか88セントにとどまり、その差異は少なくとも1990年以来の大きさとなっている。これが起こる一因は、企業に対して実際に現金が支払われる前に売上高が計上されるためだ。会計処理としては全く問題ないが、ここまでの傾向になってくると懸念要因となる。
このギャップ拡大は経営のまずさを示唆しているというよりも、むしろ厳しいビジネス環境を浮き彫りにしている可能性が高く、株式強気派が強調したがる「コーポレートレジリエンス」の信頼性を巡る疑念を強める。2022年10-12月期の企業決算はおおむね市場予想を上回ったが、赤字企業の数は過去最多付近で推移している。米金融当局がインフレとの闘いで需要減速を目指す中、企業は業績が財務状況の全体像を表していないかもしれないという状況にますます置かれつつある。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国経済の回復ぶりは政府上層部が見込んでいたよりも速いと、事情に詳しい関係者が明らかにした。今年の景気対策が控えめなものにとどまる可能性が示唆される。
政府内の情報だとして匿名で語った関係者によると、新型コロナウイルス対策としての行動制限が突然解除された後、感染の拡大は予想以上に早く収束した。感染拡大は今年の2月か3月までは続くと見込まれていたが、人口の大半が1月末までに既に感染していたために経済の急回復が可能になったと、関係者は指摘した。
別の関係者によると、指導部は景気回復に満足しており景気対策の必要性は今のところそれほどないと、5日に開幕する全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で伝えるよう国営メディアに指示が出ている。政府は景気について追加支援よりも、「維持」を考えているという。
●中東
●中南米・アフリカ
前年同月を33カ月連続で上回った。1月の送金回数は1176万回と前年同月比で11.1%増えた。1人当たりの送金額は374ドルと前年同月比で1.3%増だった。メキシコ人の主な出稼ぎ先である米国の雇用環境が堅調で、母国に住む家族らへの送金を下支えした。
日経先物27488、ダウ先32832、債先146.53、米3.994、独2.7175、仏3.204、西3.756、伊4.580、英3.8865、波6.540、原油77.61、銅9,132、ドル円136.09、ユーロドル1.0667
※3/1 8時15分頃
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