備忘録(2023/11/30)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米連邦預金保険公社(FDIC)は29日、米銀の2023年第3・四半期(7―9月)の合計利益が684億ドルで、前期から3.4%減少したと発表した。非金利収入の落ち込みや投資損失の拡大が響いた。合計利益は前年同期比では4.6%減少した。
非金利収入が41億ドルと前期比5.2%減少する一方、投資損失は30億ドル増加した。貸倒引当金が前期比33.2%増加したことも業績を圧迫した。
証券の含み損は22.5%増の6839億ドル。住宅ローン金利の上昇による住宅ローン担保証券(MBS)の評価額低下が主な要因だった。
しかしFDICは、こうした逆風にもかかわらず米銀は強固な自己資本を維持し、預金流出率が安定、不良債権は引き続き新型コロナウイルスのパンデミック前の水準を維持していると指摘。グルーエンバーグ総裁は声明で「米銀行業界は第3・四半期も依然として回復力を示した」との見方を示した。
米医薬品のアッヴィは、抗がん剤「Elahere」を手掛ける米イミュノジェンを買収することで同社と合意した。イミュノジェンの株式価値総額を101億ドル(約1兆5000億円)と評価した取引となる。
両社の30日発表によれば、アッヴィはイミュノジェンの全発行済み株式を1株当たり現金31.26ドルで取得する。この額は、イミュノジェン株の29日終値(16.06ドル)のほぼ2倍。
米製薬大手アッヴィ(ABBV.N)は30日、がん治療薬を強みとするイミュノジェン(IMGN.O)を現金101億ドルで買収すると発表した。
イミュノジェンは「抗体薬物複合体(ADC)」と呼ばれる新しいクラスのがん治療薬を手がける。ADCはがん細胞を正確に標的とし、他の細胞への悪影響を軽減する可能性がある。
アッヴィの提示額はイミュノジェン株1株当たり31.26ドルで、前日終値に94.6%上乗せした水準となった。
イミュノジェンの30日終値は83%高の29.35ドル。今年に入り3倍以上に値上がりした。
買収は2024年半ばに完了する見通し。アッヴィは主力の関節リウマチ薬「ヒュミラ」の後発薬が今年、相次いで市場参入したことから売上高の大幅減に直面しており、イミュノジェン買収で事業を強化する。
●その他産業
オーストリアを本拠とする不動産大手シグナ・ホールディングスは29日、同国の裁判所に破産手続きを申請すると発表した。グループ企業の資金調達を巡るぎりぎりの交渉が不調に終わったためで、欧州の不動産企業破綻としては過去最大級の規模となる。
債権者保護団体などによると、シグナ・ホールディングスの負債額は約50億ユーロに上る。急激な金利上昇が事業の痛手になった。
オーストリアの大物実業家ルネ・ベンコ氏が経営権を握るシグナは、ニューヨークのクライスラービルを所有するほか、ドイツの老舗百貨店やオーストリア、スイスなどの大型プロジェクトに出資しており、影響の広がりも懸念されている。
ライファイゼン・バンク・インターナショナルのアナリストチームが今週まとめた分析では、シグナが所有不動産の処分を開始すれば、商業不動産の幅広い値下がりをもたらしかねないという。
不動産コンサルタントの1人は、シグナがドイツ国内に所有する不動産の大半は都市の中心部に位置するので、この破綻で各都市の開発計画が深い傷を受ける恐れがあると指摘した。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
欧州連合(EU)統計局が30日発表した11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)上昇率(速報値)は前年比2.4%と、10月の2.9%から低下した。
市場予想の2.7%を大幅に下回った。欧州中央銀行(ECB)はインフレ率が高止まりしていると主張しているが、市場では来年春の利下げ観測が高まりそうだ。
未加工食品を除くほぼ全ての項目で価格上昇率が鈍化した。
基調インフレ率も予想以上に鈍化。ECBが注視する食品・エネルギー・アルコール・たばこを除くインフレ率は4.2%から3.6%に低下した。サービス価格が大幅に鈍化した。
ドイツ連邦雇用庁が30日発表した11月の失業者数(季節調整済み)は前月比2万2000人増の270万2000人で、予想と一致した。
ロイターがまとめた市場予想は2万2000人増だった。
同庁のナーレス長官は「不況はドイツの労働市場に引き続き傷跡を残している」と表明した。
失業率(季節調整済み)は10月の5.8%から5.9%に悪化した。
11月の求人件数は73万3000件で、前年同月を9万件下回った。
ナーレス長官は「雇用は微増にとどまっており、労働需要の減少が続いている」と述べた。
フランス国立統計経済研究所(INSEE)が30日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)確報値は前期比0.1%減少した。
総固定資本形成の寄与度が大幅に下方修正され、内需の寄与度も0.2ポイントに鈍化した。外需の寄与度はマイナス0.4ポイント。輸入が増加した。
政府の今年の成長率予想は1%。
ルメール経済・財務相は国内ラジオに対し「自分の成長予想を維持している。今年はプラス成長で2024年は今年以上になるだろう」と述べ、自身の来年の成長率予想(1.4%)を堅持するとした。
一方この日発表された11月の欧州連合(EU)基準の消費者物価指数(CPI)は前年比3.8%上昇と、予想以上に鈍化した。ロイターがまとめた市場予想は4.1%上昇、10月は4.5%上昇だった。
エネルギー価格とサービス価格の上昇が緩和した。11月の食品価格は7.6%上昇(10月は7.8%上昇)、エネルギー価格は3.1%上昇(同5.2%上昇)。
前月比では0.2%下落。輸送・エネルギー価格が下落し、生鮮食費など食品価格の前月比での上昇を相殺した。
イングランド銀行(英中央銀行)が29日発表した10月の消費者向け融資は前年同月比8.1%増と、2018年10月以来5年ぶりの高い伸びだった。
生活費上昇の影響が浮き彫りになった。
キャピタル・エコノミクスの英国担当チーフエコノミスト、ポール・デールズ氏は「生活費危機で、必要な支出を賄うために借り入れを余儀なくされた家計があることが一因かもしれない」と述べた。10月の消費者向け融資は約13億ポンドの純増。金利上昇でも個人の支出がまだ大きく圧迫されていないことを示唆しているとデールズ氏は指摘する。
中銀によると、10月の住宅ローン承認件数は4万7383件で、7月以降で最多となった。ただ、1年前に住宅ローン金利が急上昇する前の水準は大幅に下回っている。
ロイターがまとめた市場予想は4万5000件だった。
経済協力開発機構(OECD)は29日公表した世界経済見通しで、英政府は新型コロナウイルスのパンデミックと昨年のエネルギー価格高騰への対応で緩んだ財政を引き締めるべきだとの見解を示した。来年の選挙に向け、再度減税を検討しているスナク政権にとって耳の痛い助言となった。
OECDは「多額の借り入れと負債を抱え、債務の利払いが増えて財政の余裕が狭まった厳しい環境下」、現在の財政再建努力を維持し、強化することが不可欠だと指摘した。
政府は最近、労働者と企業向けの減税や税制優遇措置を発表したばかり。与党保守党は野党労働党に支持率で大きく差を付けられており、来年2月か3月には追加的な減税措置などを発表して追い上げを図ると予想されている。
OECDは英国の公的年金制度について、(1)賃金上昇率、(2)インフレ率、(3)2.5%のうち最も高い数字に連動させる現在の方式を改め、財政負担を和らげるよう勧告。年金はインフレ率と賃金上昇率の平均値に連動させた上で、貧しい年金生活者には直接支給をする制度を提案した。
OECDは英国の国内総生産(GDP)成長率について、来年の見通しを0.7%と前回の0.8%からわずかに下方修正し、2025年は1.2%と予想した。今年の成長率は9月に予想した0.3%から0.5%に上方修正した。
また、イングランド銀行(中央銀行)は2025年まで政策金利を5.25%に据え置き、同年から利下げを開始し、年末に4%とするとの見通しを示した。
ドイツのリントナー財務相は29日、公共放送ZDFで、憲法裁判所の判決を踏まえ、2024年の連邦政府予算4500億ユーロに対して170億ユーロ(186億6000万ドル)程度の歳入不足が生じるとの見通しを示した。
憲法裁判所は15日、新型コロナウイルス対策向けの未使用金600億ユーロを気候変動対策などに転用するのは違憲と判断。歳入が不足することになり、混乱が巻き起こっている。
連立与党は2023年予算について、構造的財政赤字を国内総生産(GDP)の0.35%までに制限すると定めた「債務ブレーキ」を一時停止すると発表。24年予算でも引き続き債務ブレーキを停止する必要があるか、もしくは歳出切り詰めによって対応できるかは、不足額の規模によって決まる見通しとなっている。
リントナー氏の自由民主党(FDP)はこれまで、不足額が数百億ユーロ程度になるとしてきた。これに対してショルツ首相率いる社会民主党(SPD)の政治家は29日、1000億ユーロ近くになると予想し、24年予算でも債務ブレーキを停止することに支持を表明した。
財政タカ派のリントナー氏とFDPは、24年予算での債務ブレーキ停止に反対している。
リントナー氏は「2024年に緊急措置(債務ブレーキ停止)の条件が満たされるという確信はまだない」と発言。協議は続いているとした上で、緊急対応を毎年続けていると、「1回限りの緊急的状況だったはずのことが、ある時点で嘆かわしくも遺憾なニューノーマル(新常態)になってしまう」と懸念を示した。
オーストラリア統計局が30日発表した第3・四半期の企業設備投資は8年ぶりの高水準を記録した。鉱業部門の設備投資が大幅に増えたことが寄与した。また、企業の年間の設備投資計画も上方修正された。
同期の設備投資は前期比で実質0.6%増加。鉱業部門は5.6%増えた。
総額は399億豪ドル(264億3000万米ドル)で、2015年終盤以来の高水準。新規設備に対する優遇税制も後押しとなり、前年同期比で約11%増加した。
24年6月までの1年間の設備投資計画は1712億豪ドルと、前期から8.5%上方修正された。市場予想は約1690億ドルだった。
統計局によると、情報メディア・通信業界が新しいデータセンターへの投資計画により特に大幅な伸びを示したほか、鉱業部門も鉄鉱石プロジェクトやバッテリー関連鉱物開発向け支出を増やした。
原油先物価格は30日のアジア市場序盤の取引で下落している。中国の製造業統計が予想を下回ったことが背景。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」の会合を控え警戒ムードが広がっている。
0024GMT(日本時間午前9時24分)時点で北海ブレント先物は0.28ドル(0.3%)安の1バレル=82.90ドル。米WTI先物は0.24ドル(0.3%)安の77.68ドル。
中国国家統計局が発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4と、10月の49.5から低下し、景況拡大・悪化の分かれ目となる50を2カ月連続で下回った。ロイターがまとめた市場予想の49.7も下回った。
米エネルギー情報局(EIA)が29日発表した先週の原油と留出油の在庫は予想に反して増加。ガソリン在庫も予想以上に増えた。
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」は、日量90万バレル前後の追加減産で合意した。だが、完全に実行されるのか市場は懐疑的なままで、原油価格は下落した。
OPECプラスは11月30日、オンライン形式で会合を開き、ロシアやアラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、イラクを含むメンバーが追加減産を表明したと、ウェブサイトに掲載した声明で発表した。サウジアラビアは日量100万バレルの自主減産を来年1-3月まで続けると表明した。
ただ、追加減産が「自主的」なベースにとどまったことから、どの程度実行されるか市場は警戒している。協議は難航し、最終的にアンゴラは生産枠縮小を拒否し、現行レベルで生産を継続すると説明した。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は当初の上昇を消し、ニューヨーク時間30日午後1時11分(日本時間12月1日午前3時11分)時点で1.5%安の1バレル=76.67ドル
元ホワイトハウス当局者で、現在は米コンサルティング会社ラピダン・エナジー・グループの社長を務めるボブ・マクナリー氏は「サウジとロシアの自主減産継続と並び、漸進的な減産が確実に起きるのか具体的な証拠はまだない。このために原油価格は大きく下げている」と語った。
潤沢な供給と厳しさを増す経済状況を背景に、ここ2カ月で原油相場の見通しは悪化した。国際エネルギー機関(IEA)などは需要の伸びが大きく減速すると予想しており、来年は原油価格が一段安となる可能性もある。
UBSグループのアナリスト、ジョバンニ・スタウノボ氏は「OPECプラスの生産削減は全体合意の一部ではなく、『自主的』な減産のようだ」と述べ、「従って、その大部分は紙上の約束であるかもしれず、実際の削減はそれよりも少なくなる可能性が懸念される」と話した。
今回の会合は当初26日に予定されたが、アフリカの一部メンバー国の生産枠を巡って意見が対立したため、開催は4日間遅れた。アンゴラの生産枠は日量およそ20万バレル引き下げられ、110万バレルとなったが、同国の代表はこの生産枠を拒否した
アンゴラのOPEC理事を務めるエステバオ・ペドロ氏はインタビューで、「OPECが決定した枠を上回る生産を行う」と発言。「OPECに従わないという問題ではない。われわれの立場を説明しており、OPECはそれを考慮すべきだ」と述べた。
一方、OPECプラスの会合ではブラジルが、減産を義務付けられない協力憲章への参加を表明するという想定外の動きがあった。シルベイラ鉱業・エネルギー相は30日に会合で、ブラジルが来年にこうした行動を取ると表明した。
先週の米新規失業保険申請件数は小幅に増加した。一方で継続受給者数は約2年ぶりの高水準となり、労働市場の熱が冷めつつあることを示唆した。
キーポイント
米新規失業保険申請件数(11月25日終了週)は前週比7000件増加の21万8000件
エコノミスト予想の中央値と一致
この週には感謝祭の祝日が含まれる
前週は21万1000件、速報値の20万9000件から上方修正
4週移動平均は22万件に小幅減少
失業保険の継続受給者数(18日終了週)は8万6000人増の193万人。2021年終盤以来の高水準となった。この数字は9月から増加傾向にあり、失業者が新たな職を見つけるまでの期間が長期化していることを示唆する。エコノミストの予想は187万人だった。
米商務省が30日に発表した10月の個人消費支出(PCE)は緩やかに増加したほか、PCE価格指数の前年同月比の伸びは2021年以降で最小となった。需要の冷え込みを示唆し、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを終了したとの見方が一段と強まる可能性がある。
10月のPCEは0.2%増と市場予想に一致。9月は0.7%増だった。
10月のPCE価格指数は前月比横ばい。9月は0.4%上昇していた。前年同月比では3.0%上昇と21年3月以来の低水準。9月は3.4%上昇だった。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は0.2%上昇。9月は0.3%上昇していた。エコノミストによると、インフレ率をFRB目標の2%に戻すには前月比0.2%上昇を維持する必要がある。
コアPCE価格指数の前年同月比は3.5%上昇。9月は3.7%上昇だった。
10月は医療、住宅、公共事業、海外旅行を含むサービス支出が0.4%増加したが、新車の小型トラックやガソリン、その他エネルギー製品などの商品支出が0.2%減少したため、一部相殺された。小型トラックの支出減少は全米自動車労働組合(UAW)のストライキによる供給不足が原因とみられる。
個人所得は0.2%増加した。9月は0.4%増だった。賃金は0.1%増加。9月は0.5%増だった。貯蓄率は3.8%に上昇した。9月は3.7%だった。学生ローンの返済再開が来年の支出を圧迫する可能性がある。
ブリーン・キャピタル(ニューヨーク)のシニアエコノミックアドバイザー、コンラッド・デクワドロス氏は「今朝のデータは、米連邦準備理事会(FRB)にとって、追加利上げではなく政策の長期的な据え置きを検討する材料となった」と指摘した。
米経済指標でインフレ鈍化が示される中、連邦準備理事会(FRB)当局者らは30日、FRBの利上げサイクルが終了した可能性があると示唆した。同時に、物価を巡る進展が停滞すれば追加利上げの可能性を否定せず、市場で出ている早期利下げ着手の観測を退けた。
商務省発表の10月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比3.0%上昇し、伸びは前月の3.4%から鈍化し、2021年3月以来の低水準となった。
また、労働省発表の11月25日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は7000件増の21万8000件。市場予想は22万6000件だった。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は講演で、FRBが過去20カ月に行った合計5.25%ポイントの利上げを受け、金融、信用状況が引き締まり、インフレの一段の低下に貢献すると指摘。供給網の改善も物価上昇圧力の緩和につながっていると述べた。 もっと見る
その上で「先行きは依然として極めて不透明であり、われわれの決定は引き続きデータに依存する」と指摘。経済のリスクは現在、高すぎるインフレと景気低迷の両面があり、「これらのリスクのバランスを考慮し、現在私が知っていることに基づくと、フェデラル・ファンド(FF)金利の目標レンジのピークか、それに近い水準にあるというのが私の評価だ」とした。
金融政策に関しては四半世紀で最も制約的なスタンスにあるとし、「かなりの期間にわたり」制約的な政策を維持する必要がある公算が大きいと言及。今後発表されるデータを引き続き注視するとしながらも、「物価上昇圧力や不均衡が私の予想以上に続くようであれば、追加的な政策引き締めが必要になるかもしれない」と述べた。
サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は独紙ベルゼン・ツァイトゥングが30日に掲載したインタビューで、自身のベースシナリオには一段の利上げは含まれていないと言及。
FRBが利上げに終止符を打つかどうか「知るにはまだ時期尚早だ」とし、「今は時間をかけ、警戒を怠らず、慎重に行動すべきだ。経済で何が起きているのか、インフレがどのように進行しているのかをよく理解する必要がある。その上で必要であれば再び利上げを行うか、あるいは適切であれば引き締めサイクルは終了したと言えるように準備する必要がある」と語った。
同時に「現時点で利下げについて全く考えていない」と言及。「物価安定の回復に十分な引き締めを行い、十分に制約的であるかどうかを考えている」と述べた。
イエレン米財務長官は30日、米経済にはインフレ定着を防ぐためにこれ以上の大幅な金融政策の引き締めは必要なく、力強い雇用を伴う「ソフトランディング(軟着陸)」を達成する軌道にあるとの考えを示した。
フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、FRBが政策金利を今後数カ月間5.25─5.50%で安定的に維持するとの見方が大勢。また、5月から利下げが始まり、2024年末までに政策金利は4.00─4.25%に低下するとみている。
次回米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月12─13日。政策当局者が金融政策に関する発言を控える「ブラックアウト期間」入りを前に、12月1日にパウエルFRB議長が発言を行う。
イエレン米財務長官は30日、米経済にはインフレ定着を防ぐためにこれ以上の大幅な金融政策の引き締めは必要なく、力強い雇用を伴う「ソフトランディング(軟着陸)」を達成する軌道にあるとの考えを示した。
記者団に対し、過去には米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を大幅に引き締め、米経済がリセッション(景気後退)に陥ったこともあったと述べた。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は30日、米連邦準備理事会(FRB)は利上げを終了した可能性が高いとしながらも、インフレ圧力が緩和し続けなければ再び利上げに踏み切る可能性もあると述べた。
ニューヨーク連銀でのカンファレンス向けの講演原稿で「先行きは依然として極めて不透明であり、われわれの決定は引き続きデータに依存する」と指摘。経済のリスクは現在、高すぎるインフレと景気低迷の両面があり、「これらのリスクのバランスを考慮し、現在私が知っていることに基づくと、フェデラル・ファンド(FF)金利の目標レンジのピークか、それに近い水準にあるというのが私の評価だ」とした。
また、今後発表されるデータを引き続き注視するとしながらも、「物価上昇圧力や不均衡が私の予想以上に続くようであれば、追加的な政策引き締めが必要になるかもしれない」とした。
インフレ率については今年3%、来年2.25%に鈍化すると予想。2025年には2%に近づくとした。
成長率は来年1.25%に鈍化し、失業率は4.25%に上昇すると見込んだ。
金融政策に関しては四半世紀で最も制約的なスタンスにあるとし、金融政策の引き締めが金融情勢を一段と制約的なものにしていると述べた。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのパネッタ・イタリア中央銀行新総裁は30日、ECBは持続的な高金利によって経済と金融の安定に「不必要なダメージ」を与えてはならないと述べた。
イタリア中銀総裁就任後初の重要な講演で、9月まで10回連続で実施した利上げの効果はまだ十分に発揮されておらず、今後も需要を減退させ続けると指摘。ユーロ圏経済は今年の第4・四半期も引き続き軟調で、経済を巡るリスクは下向きに傾いていると警告した。
金利政策について「経済活動への不必要なダメージや金融安定へのリスク、ひいては物価の安定を危うくするようなリスクを避ける必要がある」と述べた。
また、現在の金利水準はインフレ率をECBの目標である2%まで低下させることと矛盾しないとした。
<インフレ低下>
欧州連合(EU)統計局が30日発表した11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)上昇率(速報値)は前年比2.4%と、10月の2.9%から低下した
これについてパネッタ氏は「好ましい進展」と評価。インフレ率の急低下により、ECBが現在のような相対的に高い金利を抑制できる可能性を示唆した。
講演で「ディスインフレを定着させるために必要な限り長期にわたり、引き締まった金融情勢を維持する必要がある。経済活動の低迷が続き、インフレ率の低下が加速すれば、この期間は短くなる可能性がある」とした。
日本の大手生命保険会社が外国証券にかける為替ヘッジの比率が8年ぶりの低水準となった。円高で収益が目減りするとの懸念が和らいでいることを示すものだ。
大手生保9社の決算報告書を基にブルームバーグが半年ごとにまとめるデータによると、為替のフォワード(先渡し)取引や通貨スワップ、プットオプションなどのデリバティブ商品を使って円高リスクをヘッジしている比率は9月末時点で47.8%と、2015年9月末以来の水準に低下した。3月末時点は52.7%で、半年で5ポイント近く低下するのは少なくとも11年以来となる。
一方、生保が保有する外国証券は同じ期間に6.1%増え、22年3月末以来の増加となった。こうした動きは、市場に大きな影響力を持つ生保勢が、日本銀行の金融政策正常化は非常に緩やかなものとなり、円安傾向がもう少し続くとみていることを示唆する。
ヘッジコスト高止まりへの対処で通貨スワップやオプションの利用は小幅に増えたものの、円高に対する主なヘッジ手段であるフォワード取引の活用がそれ以上に大きく減った。
三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは、日銀の政策変更が段階的なものにとどまる限り、生保勢は円が上昇しても1ドル=140円程度とみているのだろうと話す。日銀の利上げが緩やかで、かつ米国が急速な利下げに転じなければ「急激な円高は考えづらい」と言う。
名目実効為替レートに関する日銀のデータによると、円は21年、22年に主要通貨に対してそれぞれ8%以上下落した後、23年は年初来でさらに10%近く水準を切り下げた。日本と他の主要国との金融政策の乖離(かいり)や日本の貿易収支の悪化が背景にある。
日銀は22年12月以降、長期金利の指標となる10年国債利回りの上限を0.25%程度から1%のめどに引き上げた。ただ、米国など他の先進国がより積極的な利上げを行ったことに比べればはるかに小さい動きだ。
それでも、海外経済の減速が予想される中、米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする海外の中央銀行は金融引き締めの終了に近づいているか、あるいは既に引き締め局面を終えたとの見方が広がりつつある。来年には金融緩和に転じ、円高に追い風となる可能性がある。
この場合、生保の海外投資リスクは再燃し得るが、為替ヘッジにかかるコストは足元の高水準から下がる公算が大きい。
円高・ドル安に対する3カ月物のヘッジコストは約5.7%。日本から米国債に投資する場合、為替ヘッジを行うと損失が生じることになる。
マーケットリスクアドバイザリーの深谷幸司フェローは、「来年の春ごろからはヘッジ比率が上がる可能性もある」とみる。FRBによる利下げの見通しが明確になり、ソフトランディング(軟着陸)でなく景気後退のリスクが高まるなどすれば円高がさらに進むことも考えられるとし、ドル・円が「140円割れなどの見通しになればヘッジをかけた方が良い」と述べた。
ピクテ・アセット・マネジメントでは、日本銀行が金融政策を来年さらに正常化させるとの期待を踏まえ、円を2024年のトップ推奨に挙げている。同社のチーフストラテジスト、ルカ・パオリーニ氏が明らかにした。円は今年、主要10通貨の中で最悪のパフォーマンスとなっている。
同社では、円は対ドルで1ドル=135-140円に向かうと予想。日銀は早ければ1-3月(第1四半期)にもマイナス金利から脱却し、他国・地域の金利が上昇しない限り、円上昇につながる可能性があるとしている。
ピクテ・アセット・マネジメントのエコノミストも日本経済に関して強気な見方をしているという。
米経済が「異例」の年を経て減速するのに伴い、ドルは少なくとも5%下落するとの見通しも示した。
ただし、日本のインフレ容認姿勢は円上昇を抑える可能性もあると指摘。「日本では、インフレは賃金などを上昇させる手段であり、ポジティブなものとみられている」とし、「日本にとって、これは正常化の一環だ」と続けた。
世界的なリセッション(景気後退)となれば、円は同社の目標以上に上昇するだろうとも予想。ただ、こうしたリセッションは同社の基本シナリオではないという。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ロシア大統領府は30日、プーチン大統領が12月14日に年末恒例の記者会見を行うと発表した。この会見で来年の大統領選挙出馬を表明する可能性がある。
ロイターは今月初め、複数の関係者情報として、プーチン氏が2024年3月の大統領選に出馬することを決めたと報じた。
共産党のジュガーノフ委員長によると、連邦議会上院は12月13日に大統領選の日程を正式に発表する見込み。
ペスコフ大統領報道官は会見で「12月14日にプーチン氏は今年の総括をする」と述べた。「これまで通りテレビ局の企画番組で、ダイレクトライン(国民との質疑応答生放送)と大統領の年末記者会見を組み合わせた形式になる」という。
ロシアの法律では、上院は投票の100日前までに正確な日程を発表しなければならない。選挙日は3月17日という見方が強い。
国際通貨基金(IMF)高官は30日、スリランカ政府が債権国と債務再編に合意したことについて、来月予定されている救済プログラムの初回審査承認に道を開くとの認識を示した。
スリランカとIMFは10月、約3億3400万ドル相当の支援第2弾を巡り実務者合意に達した。IMF理事会が承認すれば実行される。
IMFのスリランカ担当ミッションチーフ、ピーター・ブロイヤー氏は「(債権国との)合意はIMF理事会が初回審査の完了を検討するための道を開くものだ」と述べた。
「理事会が12月中旬までに審査を行い、スリランカとの生産的な協力関係が継続することを期待している」と表明した。
韓国銀行(中央銀行)は30日、政策金利を3.50%に据え置いた。インフレリスクを回避するため、政策金利を長期間現行水準に据え置く可能性を示した。
据え置きは7会合連続。ロイターがエコノミスト36人を対象に実施した調査では全員が据え置きを予想していた。
中銀はインフレ予想を2.4%から2.6%に引き上げた。経済成長率予想は2.2%から2.1%に引き下げた。
声明では、制限的な政策スタンスが「相当期間」維持される可能性があるとの文言を「十分に長い」期間に置き換えた。
中銀の李昌ヨン総裁は、金利をどの程度の期間高水準に維持する必要があるかとの質問に「インフレが十分に収束したと確信できるまで十分な時間をかけるという意味だ。半年かもしれないが、現実的にはそれよりも長くなりそうだ」と説明した。
シニョン・セキューリティーズの債券アナリスト、チョ・ヨング氏は「当局者が少なくとも半年間は利下げ観測が出ないようにしていることを示唆している」と指摘。利下げは2024年第3・四半期から始まるとの見方を示した。
エコノミストの大半は金利はピーク水準に達したと考えており、インフレ鈍化により来年第3・四半期から金融緩和が始まると予想している。
第3・四半期の経済成長率は輸出の改善で予想を上回り、12月の景況感は1年超ぶり水準に改善した。
ただ、10月のインフレ率は食品価格の値上がりで前年比3.8%上昇し、中銀目標の2%を大幅に上回った。
モルガン・スタンレーのエコノミスト、キャスリーン・オー氏は今回の金融政策決定会合について「来年からハト派的据え置きに移行する前の最後のタカ派的据え置き決定だ」との見方を示した。
中国の時価総額第3位の投資銀行、中国国際金融(CICC)(3908.HK)はアナリストに対し、中国経済や金融市場について弱気な見解を発表しないよう指示した。ロイターが内部文書を入手した。
それによると、政府の方針に沿わない問題についてのコメントを控えるよう促したほか、高級ブランドを身につけたり給与を公開したりしないよう求めた。従業員は家族に「社会的・倫理的基準」を守らせる必要があるとした。
政治的・国家安全保障上のリスクを避けるため、海外顧客との取引には細心の注意を払うべきとも指摘した。
中国のアナリストらによる悲観的なコメントはこれまでに当局に検閲されることがあったが、昨年経済成長が弱まり始めてからこの傾向が強まっている。
中国国家統計局が30日発表した11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4と、10月の49.5から低下し、景況拡大・悪化の分かれ目となる50を2カ月連続で下回った。当局が追加の景気支援策を講じる必要性を示した。
ロイター調査によると、アナリストは49.7に上昇すると見込んでいた。
新規受注指数は2カ月連続の50割れ。新規輸出受注指数は9カ月連続の50割れとなった。
中国では第3・四半期の指標が予想を上回り、エコノミストが経済予測を上方修正しているが、一連の政策支援にもかかわらず、製造業者の間では内需と外需の低迷を受けて悲観的な見方が定着しているようだ。
ハンセン銀行(中国)のチーフエコノミストは「欧米の落ち込みを国内市場で補えない状態だ。製造業は生産と人員の採用を減らしている」と指摘。
「政府の政策への信頼喪失を示している可能性もある」とし、「現在の優先課題が地方政府の債務リスクと地方銀行のリスクの抑制であることは明らか」で、製造業の活動が近く改善する可能性は低いと述べた。
キャピタル・エコノミクスの中国担当エコノミストは「ハードデータは最近、調査ベースの指標に比べて底堅く推移しており、心理的な影響で減速の規模が誇張されている可能性がある」とした上で「状況が変わり始めるためには、経済の逆行を防ぐ政策支援の強化が必要だ」と語った。
国泰君安国際のエコノミストは「今日のPMI統計を受けて、政策支援への期待が一段と高まるだろう。財政政策に注目が集まっており、来年は財政政策が主役になるだろう。市場が注視するはずだ」と述べた。
中国は不動産不況や地方政府の債務リスク、世界経済の減速、地政学的緊張を背景に、新型コロナウイルス禍後の景気回復がもたつく状況が続いている。
製造業PMIは過去8カ月中7カ月で50を割り込んだ。50を上回ったのは9月のみ。PMIが3カ月を超えて連続して50を下回ったのは新型コロナ流行前の2019年10月までの6カ月間が最後。
非製造業PMIも10月の50.6から50.2に低下した。広範なサービス部門と建設部門の低迷が続いていることが浮き彫りになった。
PMIの発表を受け、朝方のアジア市場では原油価格が下落。オフショア人民元も値下がりしている。
中国商務省は30日、豪州産ワインに対する反ダンピング関税と補助金相殺関税の必要性を見直すと表明した。両国関係の改善に向けた取り組みの一環。
見直しは30日から開始する。
両国は先月、中国が豪州産ワインに課している関税を巡り、世界貿易機関(WTO)の紛争処理手続きを一時停止し、反ダンピング関税を見直すことで合意していた。商務省は関係者から20日間にわたって書面で意見を募集すると表明した。
中国は2021年にほとんどの豪州産ワインに対して218%の税を課した。年間12億ドルにも上っていた豪州産ワイン貿易は大打撃を受けた。
豪貿易相の報道官は、国内ワイン業界にとって朗報だと歓迎。豪州産大麦に対する関税の撤廃以来、ワインでも同様の解決を目指して中国と積極的にやり取りを重ねてきたと述べた。
インドネシア中央銀行のペリー・ワルジヨ総裁は29日、世界情勢に大きな変化がない限り、政策金利を2024年まで現行水準で維持すると述べた。利上げサイクルの終了を示唆した。
中銀が主催した金融および政府の関係者との年次会合で、2024年と25年のインフレ率を1.5─3.5%の目標範囲内に抑えるには、主要政策金利を6%に維持すれば十分だと述べた。今年のインフレ目標は2─4%。
その上で「インフレ率を目標範囲内に確実に抑えるため政策金利は維持される。さらなる対応は国内外の経済情勢次第だ」と述べた。
インドネシア中銀は22年8月から先月にかけ合計250ベーシスポイント(bp)の利上げを実施。10月の利上げは米金融引き締めを受けたルピア安対策だった。
総裁は来年のルピア相場について、米金利が下半期に50bp引き下げられる見通しであるため、より安定するとの見方を示した。
国内総生産(GDP)は来年は4.7─5.5%増、25年は4.8─5.6%増、28年までの中期見通しは5.3─6.1%増とした。中銀の今年の成長率見通しは4.5─5.3%。
●中東
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは戦闘休止を少なくとも1日延長することに合意した。仲介役のカタールなどがガザで拘束されている人質とイスラエルが捕らえているパレスチナ人の交換に向けた交渉を継続する。
ハマスは先に、イスラエルが戦闘休止延長に向けた人質解放案を拒否したと述べていた。
イスラエル軍は声明で「人質解放のプロセスを続ける仲介役の努力を考慮し、合意の条件に従って」戦闘休止を継続すると表明した。現地時間30日午前7時(日本時間午後2時)の戦闘休止期間終了が数分後に迫っていた。
ハマスも7日目への延長に同意したとの声明を出した。ハマスは29日に人質16人を新たに解放し、イスラエルは拘束するパレスチナ人30人を釈放したと明らかにした。
仲介役のカタールの外務省によると、戦闘休止は引き続き、人道支援物資の搬入などが条件となる。カタールの他にエジプトと米国が仲介を担ってきた。
イスラエル首相府は声明で「合意条件に基づき、イスラエルは女性と子どもの(人質の)リストを少し前に受け取った。このため、戦闘休止を継続する」と表明した。
ブリンケン米国務長官は30日、訪問先のテルアビブで、戦闘休止は、人質解放やガザへの人道援助搬入という成果を生んでおり、今後も続くことを望んでいると述べた。
またイスラエルの自衛権、および(ハマスが急襲した)10月7日の再発を防ぐ取り組みを米国は支持しているとした。
今年は、日本が中東の重要性を認識するきっかけとなった「オイルショック」から50年という節目の年であり、次の50年に向けて日本と中東の友好協力関係を構築するために、政府や社会に対していくつかの提言を行いたい。
はじめに、パレスチナの現状について深い懸念を表明したい。罪のない多くの尊い命が日々失われており、一刻も早くこの状況を終わらせなければなりません。50年前に勃発した石油危機もパレスチナ問題が原因であり、日本がイニシアチブをとって中東諸国と緊密に連携し、この問題を解決し、公正な解決に向けてあらゆる努力を払うことを期待します。
中東における石油をはじめとするエネルギーの重要性は今後も変わらないと思います。日本エネルギー経済研究所によると、2021年の日本の石油需要は約1億5000万トンだが、2050年でも1億トン、技術進歩シナリオでは5900万トンが残る。このように、長期的には石油需要は残り、主要輸出国が中東に集中している石油は大量に輸入されることが予想される。
中東もクリーン・エネルギー源として大きな可能性を秘めており、特に湾岸諸国ではクリーンな水素とアンモニアの生産が推進されている。化石燃料由来のブルー水素とアンモニアは、水素とアンモニアの原料である天然ガスが豊富で価格が安いこと、回収した二酸化炭素を貯蔵するのに適した場所があることから、世界で最も競争力のある生産地域のひとつである。また、自然エネルギー由来の電力を使って生産されるグリーン水素とアンモニアについても、豊富な太陽・風力資源が利用可能であることから、世界で最もコスト競争力のある生産地域となることが予想され、日本が2050年のカーボンニュートラルに向けて動き出す中、中東のクリーンエネルギー源が大きな恩恵をもたらすと期待されている。
日本と中東の関係は、文化やソフトパワーを含めて以前よりずっと多様化しているが、それでもまだ十分ではないと思う。例えば、防衛分野での関係はまだ非常に限られている。日本では長らく武器輸出がタブー視されてきたが、2014年に「防衛装備移転三原則」が制定され、ようやく限定的に解禁された。しかし、世界を見渡せば、このようなタブーを設けている主要国は他にない。限定的な武器輸出体制今後、中東諸国から日本製兵器の要請や共同開発の申し出があれば、日本は積極的に応じなければならない。
今日、日本は50年前とはまったく異なる、アジア近隣諸国との激しい競争の時代を生きている。先進的な日本製品はかつて中東で圧倒的な市場シェアを誇っていたが、多くの分野で中国や韓国製品にそのシェアを奪われている。中東諸国でも、特に一定の年齢層以上の人々の間では、日本の技術に対する絶大な信頼があるが、おそらく若い世代ではそこまでではないだろう。外交的にも、中国や韓国の存在感が増している。日本はもう一度、この地域で競争相手となるマインドを持ち、中東との関係を再びリードしていく姿勢が必要だと思う。
また、日本と中東の関係は50年前よりも深まっていると思うが、その見方は必ずしも日本人全体に共有されているわけではないと感じる。日本が世界有数の技術先進国であることに変わりはないが、湾岸諸国は莫大な資金を投じて産業の現地化を進めており、技術は少しずつ根付いているように見える。また、特に湾岸諸国では若者の層が厚く、優秀な人材も多く、国の産業を支えるエリートとして活躍している。COVID-19封じ込めに向けた世界的な取り組みの中で、中東諸国における予防接種関連アプリケーションへのアクセスが世界的に注目されている。
このような状況下で、日本がいつまでも技術や資金を提供する側だと思い続けていると、現実を直視する機会を失ってしまうだろう。
最後に、日本と中東の交流の大幅な拡大の必要性を指摘したいが、インターネットや格安航空券の普及により、日本と中東の心理的距離は50年前に比べればかなり縮まっているはずである。しかし、日本人の中にはまだまだ中東は遠い地域という認識があり、その中でさらに関係を拡大していくためには、例えば日本・湾岸協力会議の自由貿易協定交渉の進展が重要になると思う。先日の岸田総理の訪問で、この交渉の次回のラウンドが来年開催されることが確認された。自由貿易協定の発効により、双方のビジネス環境が改善され、経済交流が深まり、ここで述べたような様々な点に留意することで、日本と中東諸国の関係が次の50年で新たな高みに達することを期待している。これは日本にとっても良いことであり、この機会を逃してはならない。
リヤド: サウジ通信によると、アラブ・イスラム合同臨時首脳会議の閣僚委員会が水曜日、ニューヨークの国連本部で会合を開いた。
会議はサウジのファイサル・ビン・ファルハーン外相が主導し、中国、カタール、ヨルダン、エジプト、パレスチナ、トルコ、インドネシア、マレーシア、UAEの代表が出席した。
議題は、人道的停戦によるパレスチナ人囚人への成果や、停戦を達成するための努力など、ガザでの最近の出来事に焦点を当てた。
会合では、民間人の保護と国際人道法の執行における国連安全保障理事会常任理事国の役割が強調され、緊急人道援助がガザに入るための安全な経路を確立する必要性が強調された。
大臣らは、2国家解決策と、東エルサレムを首都とし、1967年の国境線に基づく独立した主権を持つパレスチナ国家の創設を支持する決議の実施を通じて、恒久的な和平を改めて呼びかけた。
また、国際社会に対し、国際的な法的・道徳的原則を一貫して適用し、ガザと占領下のヨルダン川西岸地区のパレスチナ人をイスラエル軍と暴力的な不法入植者から守るよう求めた。
ダマスカス:戦争で住居を失い、国内北西部にあるキャンプ生活を送るシリア人たちが、燃料費高騰、人道支援の減少、雇用機会の不足に見舞われるなかで、また厳しい冬を迎えようとしている。
イドリブ県南部の町アル・ターの自宅を追われたアブドゥル・サラーム・アル・ユセフさん(53歳)は、アラブニュースに対し次のように語る。「私たちはこの3年間、いろいろなキャンプを転々としてきました。生活に最低限必要なものも足りず、冬が始まるたびに私たちの苦しみは増していきます。
家族の長である私たちは、多額の支出を求められます。なぜならあらゆる暖房用資材が150ドル以上しますし、ヒーターの価格までも高いからです。私たちにはそういったコストを負担することはできません」
さらにユセフさんは、この3年間人々が暮らしてきたテントが劣化し、水が漏れるようになってきていると付け加えた。
同じくアル・ター在住だったハレド・アブデル・ラーマンさんも、同様のことを語る。
「私は5年間に渡って家を追われた状態にあり、毎年冬が来るたびに私たちは不安を感じています」ラーマンさんはそう話す。
「毎年冬の初めには暖房用資材の支援を受けていましたが、年を経るごとに支援は減っています。2年前から、ナイロン素材のゴミやプラスチック製のコンテナなどを燃やすようになりました。こういった素材は健康に悪影響で、特に子どもたちへの影響は大きいのですが、暖房用の資材は私たちにとっては高価すぎて買えないので使っています」
ラーマンさんによると、現在の薪1トンあたりの平均価格は約150ドルだという。
「このひどい環境では、薪1キロを買うこともできません。テントはとてもひどい状態です。毎年冬になると継ぎ接ぎして、強い風が吹くたびに修理しています」
シリア北西部の難民キャンプへの人道支援の量は、2021年以来徐々に減っている。
現地の市場で薪を売っているサミール・アル・アーマッドさんは、アラブニュースに対して次のように話す。「昨年までは薪の価格は今よりずっと安かったのですが、あらゆる暖房用資材の価格がとても高騰しています」
「ディーゼル燃料を使った温室を作りたかったのですが、それは無理なので薪を燃料にする温室を作りました。この市場の仕事で得た収入で、薪なら買えるからです。薪はとても高く、種類や品質にもよりますが、140ドルから210ドル程になっています」
さらにアーマッドさんは、最近では薪を買う余裕ができた人でも少量しか買っていかないと続けた。
シリア対応コーディネーターチームによると、難民のほぼ半数にあたる600万人以上が、シリア北西部で生活を送っているという。そのうちの200万人以上――女性60万人、子ども88万8,000人、特別なケアを必要とする人々8万4,000人――が、同地域のキャンプで生活を送っている。
ロンドン:一見、敵対行為の一時停止に成功したように見えるが、ガザでの戦争で家を追われたパレスチナ人の運命はどうなっているのか、また、敵対行為の恒久的な停止のニュースが流れた場合、そしていつ、彼らが家に戻れる望みはあるのか、疑問が募っている。
50日以上にわたって絶え間なく続く砲撃で、イスラエル軍はガザ北部の大部分を月面のような風景に変え、近隣地域全体が瓦礫と化した。
ガザ住民にどの程度の復興が必要かを判断するために、当局は一軒一軒、建物から建物へと足を運ばなければならないだろう。
チャタムハウスの国際関係学教授でMENAプログラムのアソシエイトフェローであるヨシ・メケルバーグ氏は、アラブニュースに対し、パレスチナ人の帰還に関する質問は「心が痛む」と語った。
「戦争が終結する前であり、イスラエルがさらに南部への攻勢を続けるつもりなのかどうかもまだわからない。
「北部の自宅から逃れたガザの何人かが、自分たちの家がまだ建っているかどうかを確認するために戻ってきた、あるいは戻ろうとしている」
75年以上続く紛争における今回の暴力の噴出により、100万人を超えるパレスチナ人が、飛び地の中心地とされるガザ市を含むガザ北部から避難したと考えられている。
イスラエル軍は、この空爆作戦をやむを得ないものだと説明しているかもしれないが、英国に拠点を置く紛争監視団体『エアウォーズ』は、その規模の大きさを強調し、第二次世界大戦以来最も激しいものだと呼んだ。
Airwarsのディレクターであるエミリー・トリップ氏はアラブニュースに対し、この評価は2016年から2017年にかけての9ヶ月間のモスルの戦いとの比較に基づくもので、国連や他の専門家によれば、モスルの80%が居住不可能になったという。
「当時、アメリカはモスルを第二次世界大戦以来最も激しい市街戦の戦場と評価していたが、我々のデータでは1ヶ月に投下された弾薬は6,000発以下である」とトリップ氏は言う。
「最初の1週間から10日間で6,000発の弾薬を投下したという最初のイスラエル国防軍の声明が真実であれば、先週の一時中断の時点で、イスラエル国防軍はダーイシュに対する作戦のどの月においても連合軍よりも多くの弾薬を投下したことになる。
PBSの取材に応じたノルウェー難民評議会の援助活動家で、ジャバリヤ難民キャンプの廃墟から南へ逃れたユセフ・ハマシュさんは、自分たちが行き着いたところに子供たちの未来はなく、「家の瓦礫の上で寝なければならないとしても家に帰りたい」と語った。
31歳のタクシー運転手、マフムード・ジャマールさんは、ガザ北部のベイト・ハヌーンから逃れたとき、”どこが通りか交差点かわからなくなった “と同じ放送局に語った。
イスラエルがガザへの立ち入りを制限しているため、被害規模の最新情報を得る努力は妨げられているが、11月の第2週には、国連の人権高等弁務官事務所が、その時点で住宅ストックの約45%が破壊されたと示唆した。
アラブニュースの情報筋によると、被害の大きさにもかかわらず、ガザのパレスチナ人の多くが家を出ることを警戒しているのは「当然」だが、それが最も安全な選択肢であることに変わりはないという。
ある人は言う: 「理想的な世界では、市民は短期間どこかに行って戻ってくることができるだろうが、安全のために離れるべきだと言うことは、イスラエルがガザを民族浄化しようとしているという主張を支持していると解釈されかねないという懸念が常にある」
オックスファムによれば、イスラエルが北部を捨てて南へ向かうよう繰り返し警告しているにもかかわらず、ガザにとどまっている人々は数十万人にのぼるという。
オックスファムの政策責任者であるブシュラ・ハリディ氏は、自身もラマッラーに拠点を置いているが、安全や帰還の保証がないにもかかわらず、イスラエルが市民に南への移転を呼びかけていることは、強制移住に等しいとし、「国際人道法の重大な違反であり、撤回されなければならない」と述べた。
アラブニュースに対し、「110万人以上の人々を他の地域に受け入れるだけの資源はない。シェルター、援助物資、水はすでに南部では不足しています。市民がガザの他の地域に避難できる保証はありません。ガザ北部に残る人々は、市民としての保護を奪われるわけにはいきません」
「イスラエルの政治的・軍事的指導部に影響力を持つアメリカ、イギリス、EU、その他の西側諸国やアラブ諸国は、イスラエルに対し、直ちに移転命令を撤回するよう要求しなければならない」
イスラエルのガザでの行動を左右する立場にある人々のリーダーシップが明らかに欠如しているのを前に、イスラエル国防軍は、すでに移転したガザ住民に、今度は海岸沿いのムワシに再び移転するよう促している。
メケルバーグ氏は、この紛争に関しては、「一時的なものが恒久的なものになる」傾向があると指摘し、「パレスチナ市民の次の居場所はどこなのか」と問う。
戦前のガザ住民の70%は、数十年にわたる紛争のさまざまな段階でパレスチナの他の地域から避難してきたため、すでに難民に分類されている。
その後、イスラエル政府によってなされたこの提案は、パレスチナ人とエジプトから鋭い非難を浴びた。
「私たちは、一時的に始まったことが恒久的なものになることを知っていますし、75年経った今でも、1946年に避難したパレスチナ人が他国に残っており、この現実が難民収容の難しさを複雑にしている」と語った。
このような懸念は、アラブの指導者たちの発言にも反映されている。ヨルダンのアブドゥラー国王は、「ヨルダンに難民を住まわせてはならない」と明言し、同国の外務大臣はイスラエルに対し、他国に混乱を残さないよう警告している。
メケルバーグ氏は、「もし各国政府が、この戦争がガザを民族浄化するためのイスラエルの努力であると疑えば、当然のことながら援助に消極的になるだろう」と述べた。
それでも彼は、当面は民間人の安全な避難場所を見つけることが「最重要」だと強調した。しかし、周囲の政治状況や、必要とされる人道援助が得られるか得られないかを考えると、これは難しいことだという。
ハリディ氏は国際人道法を指摘し、いかなる国も戦争から逃れてきた人々の安全な避難場所を拒むことはできないと述べた。
とはいえ、すでにガザで避難生活を余儀なくされ、イスラエルによって帰還の権利を拒否されているパレスチナ人を考えれば、どのような支援を提供しても、民族浄化を目指す行為者の手に不用意に渡ってしまう可能性があるという事実を、各国は認識しなければならないとも彼女は述べた。
答えよりも疑問が多い中、メケルバーグ氏は、このような状況の管理方法と、紛争に巻き込まれた人々の義務と権利について、全面的な再考が必要だと述べた。
「現在のガザの状況を見る限り、冬はやってこない。大雨が降り注ぎ、イスラエルの爆撃以前でも苦労していた下水システムに流れ込むようなことが一度でもあれば、残されるのは巨大な健康危機です」
「このような事態を前にして、難民キャンプを設置し、必要なものをすべて供給し、人々の安全を守るために、国際的な協力が必要です」
「今現在、我々は “非常に不幸な状況 “を目の当たりにしているが、戦闘が終結した際には、国際的な支援が必要であり、ガザの人々が家を再建し、移転した場合には、確実に元の場所に戻れるよう支援しなければならない」と強調した。
ハリディ氏はさらに、「個人は祖国で安全かつ平和に暮らす権利を持たなければならない」と付け加えた。
●中南米・アフリカ
アルゼンチンのミレイ次期大統領は29日、地元ラジオのインタビューで、カプト元同国中央銀行総裁を経済相に任命する意向を示した。
カプト氏はミレイ氏の側近の一人。急進的なリバタリアン(自由至上主義)で知られるミレイ氏は経済危機からの脱却に向け、法定通貨の米ドル化や財政赤字の削減、中銀の廃止などを進める計画だ。
ミレイ氏はラジオで「経済相はカプト氏になる」と述べたが、公式にはまだ任命は承認されていないという。
ミレイ氏の広報担当者は現時点でコメント要請に応じていない。
カプト氏は以前から、ミレイ政権で経済相に就く最有力候補と目されてきた。先週には、同国経済の再生に向けたミレイ氏の選挙公約である「ショック療法」を説明するため、国内の銀行や国際銀行の職員と面会した。
ミレイ氏は、12月10日に大統領に就任する。
●市況
<為替> ドルが上昇した。ユーロ圏の軟調なインフレ統計を受けてユーロ安が進んだことがドル高を支援した。一方、米経済の減速を示すデータが発表されたが、反応は限定的だった。
<債券> 米10年債利回りが月間で52.2ベーシスポイント(bp)低下し、2011年8月以来の大幅な低下を記録した。ここ数週間で利回りは急速に低下した。
もっともこの日の利回りは上昇。個人消費支出(PCE)価格指数の前年同月比の伸びが2021年以降で最小となったほか、新規失業保険申請件数は前週から増加し、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ終了の可能性を示唆したが、10年債利回りは7bp上昇の4.34%となった。
CMEのフェドウオッチによると、FRBが5月に少なくとも0.25%ポイントの利下げを実施する確率は75%超。1週間前は約55%だった。
<株式> ダウ工業株30種(.DJI)が今年の最高値を付け、好調となってきた11月を締めくくった。インフレ指標の鈍化を受け、米金融政策緩和の見通しが意識された。
ダウは決算が市場予想を上回った顧客管理ソフト大手のセールスフォース(CRM.N)に支援され、主要指数をアウトパフォーム。昨年1月以来の高値で引けた。
自動車大手フォード・モーター(F.N)は3.1%安。全米自動車労働組合(UAW)によるストライキ後に結んだ新たな労働協約により、88億ドルの費用が発生するとの見通しを示し、通期業績予想を引き下げた。
<米原油先物> 石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」による自主的減産合意の報に対し懐疑的な見方が広がり、3日ぶりに反落した。米国産標準油種WTIの中心限月1月物の清算値(終値に相当)は前日比1.90ドル (2.44%)安の1バレル=75.96ドルだった。2月物は1.94ドル安の76.05ドル。
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。航空宇宙・防衛株が上げを主導した。米国のインフレ鈍化を示す指標や原油価格の値上がりも投資家心理を押し上げた。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。欧米で発表されたインフレ率の鈍化を示す指標を受けて中央銀行が利下げに踏み切るとの観測が強まり、買いを促した。
11月では6.45%上昇し、月間の上げ幅としては1月以来、10カ月ぶりの大きさだった。金利動向に敏感な不動産株指数(.SX86P)が14.56%、テクノロジー株指数(.SX8P)が14.76%それぞれ上げた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りがここ最近の低下の反動で上昇した。ただ、月間では低下し、低下幅は過去1年超で最大となる見込み。インフレ率の鈍化が欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測につながった。
デリバティブ市場でトレーダーは来年4月に25ベーシスポイント(bp)利下げされることを完全に織り込んだ。
日経先物33,480、ダウ先35,986、債先146.40、米4.317、独2.4520、仏3.026、西3.474、伊4.237、英4.2165、波5.503、原油75.71、銅8,474、ドル円147.93、ユーロドル1.0895
※12/1 9時5分頃
備忘録(2023/11/29)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
英スタンダード・チャータード(STAN.L)、HSBC(HSBA.L)、仏ソシエテ・ジェネラル(SOGN.PA)、オランダのABNアムロ銀行の大手銀行4行は、企業が設定した温暖化ガス削減目標を精査する国際イニシアチブ「SBTi」から離脱した。関係筋が明らかにした。
化石燃料事業への融資継続が困難になる恐れや、SBTi(科学に基づく目標イニシアティブ)の目標設定基準が厳しすぎることが背景という。
SBTiは金融機関向けの新基準を2024年にも公表する方針で、銀行や資産運用会社は新規の化石燃料プロジェクトへの投融資を行わないよう求められる見込み。
スタンダード・チャータードの広報担当者は離脱を確認し、SBTiの基準案は「われわれの顧客と市場の(化石燃料からの)移行」を十分に考慮していないと述べた。
温暖化ガス削減目標については別の第三者による検証を求めており、国連環境計画が関与する「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」を通じて科学的根拠に基づく目標を設定していると説明した。
NZBAはSBTiよりも基準が緩く、温室効果ガスの排出量削減に改善があれば化石燃料事業への融資が可能。
HSBCの広報担当者はNZBAのガイダンスに沿って排出量目標を設定していると述べた。ソシエテ・ジェネラルはコメントを控えた。ABNアムロの広報担当者はSBTiを離脱した後もNZBAのメンバーだと述べた。
米主要行はSBTiに加盟していない。
●その他産業
米ゼネラル・モーターズ(GM)は配当を33%引き上げるほか、100億ドル(約1兆4800億円)相当の自社株買いを実施する。この自社株買い計画の規模は同社史上最大。テクノロジー投資の不振を受け、GMの株価は今年低迷している。
GMはまた、2023年通期の利益ガイダンスを改めて示した。新たなガイダンスは、6週間にわたる全米自動車労組(UAW)のストライキが悪影響を及ぼす前に示していた見通しを若干下回る水準となった。GMの発表によれば、純利益は91億-97億ドルの見通し。従来予想は93億-107億ドル。ストライキの間、同社は利益見通しを撤回していた。
GMでは高金利が自動車販売のリスクとなっているほか、電気自動車(EV)への取り組みが資本面の重しとなっている。EVへの取り組みでは、まだ大きな成果が表れていない。そうした中でGMは、投資家を引き付ける戦略に資金を費やしている。GMとしては、テクノロジーへの投資を続けつつも多額の現金を生み出せることを株主に証明し、株価を押し上げたい考えだ。
GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は29日付の株主宛て書簡で、「当社の業績、特に現金創出は非常に力強い状況が続いている」と説明。「EVへの移行を進める中で、大きなフリーキャッシュフローを生み出し続ける力があると、われわれは確信している」と記した。
GMは2024年初めから四半期配当を1株当たり3セント増やし、同12セントとする。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
オーストリアの大物実業家、レネ・ベンコ氏が経営するシグナ・ホールディングは、緊急資金調達の最後の試みが失敗に終わり、破産手続きを申請した。ニューヨークのクライスラービルの共同所有者である同氏は、欧州不動産危機のこれまでで最も著名な犠牲者の1人となった。
電子メールでの発表によると、同社は29日、ウィーンで自主再建型の再生手続きの開始を申請した。
シグナは発表文で「ここ数週間の多大な努力にもかかわらず、法廷外での再建に必要な流動性を十分に確保することができなかった。自主再建という枠組みの中で事業を継続し、持続可能な再生を目指す」と説明した。
この申請はベンコ氏(46)にとって痛手だ。同氏はロンドンのセルフリッジ百貨店、ウィーンの高級ショッピングモール、ベネチアの歴史的ホテルなど、数々の高級物件を持つ不動産帝国を築き上げ、自分に匹敵する不動産資産を持つのは英国の王族とカトリック教会ぐらいだろうと自慢したことで知られる。この不動産資産は昨年末時点で、総額230億ユーロ(約3兆7300億円)と評価されていた。
ベンコ氏が他の多くの不動産投資家と違うのは、構造的な債務の問題が表面化し始めていたにもかかわらず、注目を集める買収を続けていたことだ。低金利時代の終わりは、評価額の低下と資金不足を引き起こし、シグナの不明瞭な企業構造は特に同社を脆弱(ぜいじゃく)にした。
事情に詳しい関係者によると、最大6億ユーロの短期流動性資金を確保するため、シグナはアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の政府系ファンド(SWF)、ムバダラ・インベストメントやサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)、アテスター・キャピタル、エリオット・インベストメント・マネジメントなど、幅広い投資家と交渉した。
しかしシグナの複雑さと厳しい時間的制約のため、資金を調達できなかった。
破産により資産の投げ売りを余儀なくされ評価額がさらに下がる可能性もあるため、欧州の商業用不動産セクターにとって新たな打撃となりそうだ。
しかし、金融面の影響波及は限定的かもしれない。シグナに最もエクスポージャーがあるのは買収や開発プロジェクト用の資金を融資した銀行だが、これらの融資は不動産を担保としていることが多く、銀行は損失を回収できる可能性が高い。
一方、株主は深いやけどを負いそうだ。ベンコ氏のかつての忠実な支持者たちは昨年、シグナ傘下の主要2社に10億ユーロ近い新たな資本を提供したが、それ以上の資金提供には二の足を踏んだ。
ベンコ氏は不動産帝国を築き上げる間に、オーストリアの建設王ハンスペーター・ハーゼルシュタイナー氏、ドイツの運輸王クラウスミヒャエル・キューネ氏、フランスのプジョー一族など、欧州のエリートたちから信頼を得ていた。管財人がシグナの複雑な構造を調査し債権者への返済を進める際、こうした支持者は大きな損失を被ることになる見込みだ。
シグナの崩壊は、特にドイツに不安を残すだろう。ハンブルクのエルブタワーなどの建設工事は中止され、ドイツの数十の都市はシグナが持つガレリア百貨店の閉鎖に直面している。
勝者となる可能性があるのは、タイのセントラル・グループだ。この小売り流通財閥は今月、融資を株式に転換することでセルフリッジの運営会社の経営権をすでに確保していた。
7-9月(第3四半期)の米実質国内総生産(GDP)改定値は速報値から上方修正され、約2年ぶりの高い伸びとなった。設備投資と政府支出の上方修正を反映した。
キーポイント
米実質国内総生産(GDP)改定値は、前期比で年率5.2%増加
速報値の4.9%増から上方修正
改定値のエコノミスト予想中央値は5%増
前四半期は2.1%増
個人消費の改定値は3.6%増
速報値の4%増からは下方修正
エコノミスト予想中央値は4%増
個人消費の下方修正はサービス支出の伸び鈍化が背景にある。設備投資は1.3%増に上方修正。構造物への堅調な投資が寄与した。住宅投資も速報値を上回る伸びとなった。
別の主要指標である国内総所得(GDI)は7-9月に1.5%増加。GDPとGDIの平均値は3.3%増と、今年前半の平均ペースの2倍余りの伸びとなった。全米経済研究所(NBER)で景気循環の日付認定に当たる委員会は同平均値を注視している。
個人消費は速報値からは下方修正となったものの、雇用市場の底堅さや旅行需要などに支えられて堅調な水準を維持。年末に向けて勢いは失われつつあるように見えるが、大崩れする状況にはない。
米金融当局が注目するインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数は年率2.8%上昇に下方修正。食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も2.3%上昇に下方修正された。
企業利益(調整後、税引き前)は過去1年余りで最大の伸び。主として非金融セクターがけん引したものだが、金融機関の利益も伸びた。
世界の先進国経済の減速は悪化する見込みだ。著しい金利上昇が経済活動に大きな打撃を与え、それが深刻化する可能性があると、経済協力開発機構(OECD)が指摘した。
OECDは最新の経済見通しで、多くの国で成長が勢いを失いつつあり、実質所得がインフレショックから回復し中央銀行が利下げを開始しているであろう2025年まで、成長が上向くことはないと予想した。
OECDは24年の世界全体の経済成長率を2.7%と予想。既に低い23年の2.9%から一段と減速するとの見通しを示した。25年も3%までしか回復しないと見込んでいる。
さらに、地政学的緊張の高まり、貿易の先行き不透明、金融引き締め政策が企業、個人消費、雇用に予想以上の打撃を及ぼす可能性を背景に、予測に対するリスクは下振れ方向に傾いていると指摘した。
OECDチーフエコノミストのクレア・ロンバルデリ氏は発表文で「インフレは鈍化しているが、成長は減速している」とし、「先進国経済のソフトランディングを予測しているが、それを保証できるというには程遠い」と説明した。
この暗い見通しは、新型コロナウイルス禍と、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰を受けた世界的なインフレ危機の後遺症が長く残ることを示す。
世界の中央銀行は、史上まれに見る大幅かつ急速な利上げでインフレに対応し、金利は当分高止まりする可能性があると示唆している。
OECDは、総合インフレ率の低下にもかかわらずコアインフレ率は下げ渋っていることを指摘。基調的な物価圧力が持続的に低下する明確な兆候が見られるまでは、金融政策は景気抑制的であり続けなければならないと論じた。
米国での利下げ開始は24年下期、ユーロ圏は25年春以降になると予測し、連邦準備制度と欧州中央銀行(ECB)が早ければ来年上期にも利下げに踏み切るという市場の予想と対照的な見方を示した。
新興国は全般的に先進国・地域よりも良好な状況にあるとOECDはみている。先進市場の中でも欧州は米国に後れを取っているが、その理由の一つとして欧州諸国は銀行ベースの金融への依存度が高いため金利の影響を受けやすいと分析した。
OECDはまた、債務コストの上昇に伴い、多くの政府が「厳しい財政見通し」に直面していると警告。高齢化と気候変動による需要に対応するため、各国は当面、将来の支出に余裕を持たせる取り組みを強化する必要があると主張した。
「要約すれば、世界経済はインフレ、成長鈍化、財政圧力の高まりと闘っている」とロンバルデリ氏は指摘した。
経済協力開発機構(OECD)は29日公表した経済予測で、世界経済は来年、減速するがハードラインディングは回避し、2025年には持ち直すと予想した。
今年の世界の経済成長率を2.9%とし、9月の前回予想の3.0%からわずかに下方修正した。24年の成長率は2.7%に据え置いた。今回初めて示した25年の予想は3.0%。
米国の成長率は、今年が2.4%、24年は1.5%とし、前回予想(23年=2.2%、24年=1.3%)から上方修正した。25年は1.7%に加速すると予想した。
OECDは、米経済がハードランディングするリスクは後退したが、住宅市場の低迷や原油価格高、融資低迷を踏まえると景気後退リスクは払拭されていないと指摘した。
OECDのチーフエコノミスト、クレア・ロンバルデリ氏は記者会見で、中心予測はソフトランディングだが確実ではないとし、「成長への影響を最小限にしながらインフレ目標を目指すため、金融政策は慎重に調整する必要がある。判断はサイクルの初期に比べて難しくなっており政策ミスのリスクも拡大している」と述べた。
中国の成長率は今年が5.2%、24年が4.7%で、前回予想(23年=5.1%、24年=4.6%)から若干引き上げるものの減速を予想。25年は4.2%と一段の鈍化を見込んだ。
ユーロ圏は、域内最大の経済国ドイツが景気後退から脱したことを背景に今年が0.6%で24年は0.9%、25年は1.5%に成長が加速すると予想した。今年の予想は据え置いたが、来年は1.1%から下方修正した。OECDは、ユーロ圏の銀行融資は高水準であり、利上げの完全な影響は依然不透明で予想以上に成長に重しとなる可能性があると警告した。 もっと見る
主要先進国の中で唯一利上げをしていない日本については、今年の成長率を1.8%から1.7%に若干下方修正し24年は1.0%に据え置いた。25年には1.2%に回復すると予想した。
英国の成長率は今年が0.5%、24年が0.7%、25年は1.2%。23年の予想を0.3%から引き上げる一方、24年は0.8%から下方修正した。
OECDは、各国の成長見通しは乖離しているものの、主要7カ国(G7)では債務が今後何年にもわたって増加し続けると予想され、財政面の圧力が高まるリスクは共通していると指摘。
ロンバルデリ氏は、持続不可能な債務を防ぐため各国は行動する必要があるとし、「財政赤字の抑制、高齢化コストの削減、効果的で効率的な歳出の維持への中期計画などの改革が必要」と述べた。
世界の債券相場は、2008年金融危機以来の速いペースで上昇している。
世界の国債と社債のトータルリターンを反映するブルームバーグ・グローバル総合指数は今月に入り4.9%上昇と、リセッション(景気後退)の最中にあった08年12月に記録した6.2%上昇以来の大幅な上げとなっている。米金融当局や世界の中央銀行が利上げをおおむね終了したとの観測が強まり、上昇に拍車をかけている。
投資家は11月に再び債券に殺到している。世界的な成長鈍化の兆しを受け、トレーダーらは24年中の米利下げを見込むポジションを構築している。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事は28日、「経済を減速させ、インフレ率を2%に戻す上で政策が現在、好位置にあるとの確信を私は強めている」と発言し、こうした動きにさらに弾みをつけた。
ジェイミーソン・クート・ボンズのシニアポートフォリオマネジャー、ジェームズ・ウィルソン氏(メルボルン在勤)は、「ウォラー氏はタカ派に傾いているメンバーだったため、同氏がハト派的に聞こえる発言をしたことは重要だ」とし、「米連邦準備制度は利上げサイクルをほぼ終了したように思える」と指摘した。
米国債相場は29日に今月の上げ幅を拡大し、10年債利回りは4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.28%となり、2年債利回りは5bp低下の4.68%。オーストラリアの債券も上昇し、10年債利回りは14bp低下。豪インフレ指標が予想を下回ったことを受け、トレーダーが利上げの終了を織り込み始めた。
銀行の株主還元に対する欧州中央銀行(ECB)の厳しい姿勢に不満を持つ複数の規制当局者が、緩和を求める準備を進めている。
事情に詳しい関係者によると、ECBの単一監督メカニズム(SSM)銀行監督委員会の中で、エンリア委員長の路線に長年反対してきた複数のメンバーが、個々の銀行が配当のために満たさなければならない自己資本の要件を引き下げ、時間のかかる自社株買いの承認プロセスを廃止したいと考えている。
こうしたメンバーは今年末のエンリア委員長の退任を、後任のクラウディア・ブッフ氏の下でより規制の緩やかなアプローチを求めてロビー活動を行う好機だと考えているという。非公表の情報だとして関係者が匿名を条件に述べた。ただ、姿勢を変更するためには、現状維持を望む他のメンバーの反対を押し切らなければならない。
ECB報道官はコメントを控えた。
株主還元はかねてから、ECBと域内銀行との争点だった。2008年の金融危機後、資本準備金の積み増しを余儀なくされた銀行は、何年にもわたって株主還元を微々たるものにしてきたため、投資家を取り戻すのに苦労している。最近は金利上昇の恩恵を受けて多くの銀行が配当を増額することができるようになったが、大半の銀行の株価はウォール街の同業他社に比べ、依然として大幅に割安な水準で取引されている。
現在ドイツ連邦銀行副総裁のブッフ氏は、難しい議論において決定的な役割を果たすだろうと関係者は語る。規制緩和の支持者によると、来年予定されているECBの銀行監督に関する幅広い見直しの一環として、銀行の株主還元に関する議論をすることにブッフ氏は少なくともオープンだろうとの印象があるという。
しかし、ブッフ氏と仕事をしたことのある関係者は、銀行資本に対する同氏のこれまでのアプローチはタカ派的であり、手綱を緩めることを示唆するものではないと話す。
独連銀の報道官はブッフ氏に代わってコメントを避けた。
株主還元は世界的に対立の種となっている。規制当局は、金融機関が景気悪化時の損失を吸収できるように資本を留保することを望んでいるが、銀行は株主還元を、より多くの投資家を引きつけ株価を上昇させる手段と考えている。欧州では、新型コロナウイルス流行時にECBが過度に慎重な警告を発した一方、銀行はガバナンスに問題を抱え、双方の信頼が損なわれている。
ECBは銀行に対し、厳しい制限を課したコロナ期に積み上げた資本の分配をこれまでに許可し、数行は配当を大きく増やす複数年の計画を実行している。だが、税金や当局によるその他の制限でリターンが目減りする恐れが警戒され、株価純資産倍率(PBR)が1倍を下回る銀行が多い。
株主還元を巡りハト派が他のメンバーを動かせるかどうかは定かではない。ブルームバーグの取材に対して複数の規制当局幹部は、緩やかなアプローチは銀行システムから資本を過度に流出させるリスクがあるとの懸念を示した。景気の先行き不透明感を理由に、ECBがある程度の柔軟性を保持する必要があるとの主張もある。
一方、他の当局者は内々に、銀行の低バリュエーションの責任の一端はECBにあると認め、新たな資本を調達しなければならなくなる事態に備えて投資家にとって魅力的である必要があるとの銀行の主張に同意している。
銀行株の評価を上げるもう一つの方法は、大規模な自社株買いについて現行ではSSMトップまでの承認が必要なプロセスを廃止することだ。その代わり各銀行を担当する監督当局のチームが、資本水準の定期的な評価の一環としてそのような計画を検証すればいいだろうと、規制緩和支持者は言う。この方法であれば、株価の下落に乗じて銀行が自社株買いを迅速に行うことができるようになると関係者は語った。
ブッフ氏は全般的な銀行準備金の重要性を強調する以外には、公の場ではこの問題について発言していない。
イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は29日、今後数カ月以内の利下げ期待をあらためてけん制した。
ベイリー氏は、英中部スタッフォードシャーの地方紙デーリー・フォーカスのインタビューに応じ、インフレ率を目標の2%に引き下げるまで中銀として「必要なことは何でもする」と述べた。その上で目標達成への道のりは緩やかになり得るとの見方を示した。現在のインフレ率は4.6%。
同日付で掲載されたインタビュー記事によれば、ベイリー氏は「今は利下げを協議できる段階ではない」と言明、来年1-3月(第1四半期)末までにインフレ率は4%を若干下回る見込みだと述べた。「2%を達成する道のりで、最後の段階がどのような展開になるのかを見極める必要がある。まだ確信をつかめるところまできていない」とも述べた。
市場は来年8月までの利下げを完全に織り込んでいる。これまでは同年6月までと見込まれていたが、英中銀の金融政策委員会(MPC)の複数メンバーがここ数週間で根強いサービスインフレに対して懸念を示したことから、利下げ見通しの時期は後ずれした。
ベイリー氏は経済活動に幾らか減速兆候があることを英中銀が把握していることを認め、来年も引き続き経済活動は「抑制される」可能性が高いと述べた。供給面の制約に伴い、潜在成長率は「社会人になって以降の私の人生の大半と比べても低い」と指摘。同氏は自分は「超悲観主義者」ではなく、「現実主義者」だと考えていると語った。
スウェーデン経済は7-9月(第3四半期)にリセッション(景気後退)入りした。金利上昇と物価高の中で一般世帯が支出を抑えた。
スウェーデン統計局が29日発表した7-9月の国内総生産(GDP、季節調整済み)は前期比0.3%減少。先月発表の速報値は前期比変わらずだった。4-6月(第2四半期)GDPの0.8%減に続き、2四半期連続のマイナス成長となった。
スペインのインフレ率は11月に予想外に低下した。燃料と旅行に絡むコストの落ち込みで、消費者物価指数(CPI)の上昇が6月以来初めて鈍化した。
29日に発表された欧州連合(EU)基準のスペインCPIは11月に前年同月比3.2%上昇。ブルームバーグのエコノミスト調査(中央値)では、3.7%上昇と見込まれていた。10月は3.5%上昇だった。
エネルギーと生鮮食品を除いた11月のコアインフレ率は4.5%に低下し、予想を大幅に下回った。
ユーロ圏の主要国による今月のインフレ率公表はスペインが最初。ドイツも11月のインフレ率を29日中に発表する。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントによると、世界経済が低迷し、米国が景気後退に陥る中、日本銀行は向こう1年は利上げを見送る可能性が高いという。
他の中央銀行が金利を引き下げ、世界的な景気減速の最中に利上げを行うのは奇妙なことだと、マルチアセットソリューションチームのグローバルCIO(最高投資責任者)兼シニアポートフォリオマネージャー、ネイサン・スフト氏はニューヨークでのインタビューで語った。日銀は今後3年以内に政策を引き締めるだろうが、今後1年以内に引き締める可能性は低いと述べた。
日本のインフレ率が中央銀行の目標である2%を上回り続けていることや、他の主要国との金利差が今年に入って10%以上の円安ドル高を招いたことから、日銀のマイナス金利政策の行方が最近注目されている。
スフト氏のコメントは、日銀が2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を「十分な確度を持って見通せる状況にはなお至っていない」という植田和男総裁の見解と同じだ。
クレディ・アグリコル証券の大藤新マクロストラテジストは、「構造的なデフレ圧力がまだ残っている」として、市場のマイナス金利政策の修正期待が巻き戻される可能性は「十分あり得る」とみる。
オーバーナイト・インデックス・スワップは、日銀のマイナス金利政策が2024年6月までに終了し、短期金利がさらに上昇することを織り込んでいる。これとは対照的に、スワップは米国とユーロ圏の中央銀行による約100ベーシスポイントの利下げを反映している。
10月の調査では、70%のエコノミストが24年4月までに日銀が引き締め政策に向かうと予想していると答えた。
年度内のどこかで市場がマイナス金利の修正はないと織り込むならば、2年債金利はゼロまたはマイナスになってもおかしくないと思う、と大藤氏は言う。
ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)は29日、政策金利のオフィシャルキャッシュレート(OCR)を約15年ぶり高水準の5.5%に据え置くことを決定した。ただ、インフレ率は依然高すぎるとし、物価上昇圧力が鈍化しなければ追加引き締めが必要になる可能性もあると警告した。
据え置きは4会合連続。ロイター調査ではエコノミスト28人全員が据え置きを予想していた。
中銀は声明で「委員会は現在のOCRの水準が需要を抑制していると確信している」とした一方、「高水準のコアインフレ率を踏まえると、過剰な需要とインフレ圧力の継続は懸念される」と述べた。
その上で、インフレ圧力が予想以上に強ければ、追加利上げが必要になる可能性があると指摘。「インフレ率を目標に戻し、最大限の持続可能な雇用を支えるために、金利は制約的な水準を持続的に維持する必要がある」とした。政策金利のピーク予測も5.7%に引き上げた。現在のインフレ率は5.6%。
NZ中銀は低インフレと最大雇用を目指すという二つの責務を負うが、ラクソン新首相は29日、金融政策の軸足を物価安定のみに絞るための法改正に着手すると表明。政権発足から100日以内にNZ中銀の権限改革に向けた法案を提出するとした。
中銀のオア総裁は会見で、ルクソン首相とウィリス新財務相と前日に建設的な協議をしたと述べた。「中銀として第一の仕事はインフレ率を下げることだ」とし、物価安定という単一の責務に戻ることに関する話はないが、そうなるだろうと述べた。
市場は中銀声明をタカ派的と受け止め、NZドルは0.8%上昇、2年物スワップ金利は12ベーシスポイント(bp)上昇し5.205%となった。
ANZのエコノミストはメモで「最近の経済指標が中銀の予想通りに推移しているにもかかわらず、タカ派の傾向が見られる」と指摘。「海外で金融緩和が進んでいることから、市場にNZの利下げ観測が流れるのを防ぐ狙いもあるかもしれないが、コアインフレとインフレ期待が想定通りに反応していないことに真の懸念があるようだ」との見方を示した。
オーストラリア統計局が29日発表した10月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比4.9%と、9月の5.6%から鈍化し市場予想の5.2%を下回った。コアインフレ率も小幅に下落し、早期に追加利上げが必要になる可能性が低いことが示された。
CPIは前月比では0.3%下落した。ガソリン価格や家賃、旅行関連費用が主に値下がりした。
コアインフレ率の指標として注目されるCPIの中銀トリム平均値は前年比5.3%上昇。前月の伸び率は5.4%だった。変動要因と旅行を除いたCPIは前年比5.1%上昇と昨年4月以来の低い伸びだった。
指標発表を受け、3年債先物は12ティック高の95.95。豪ドルはいったん1豪ドル=0.6637米ドルまで下落したが、最近の米ドル安に支えられ0.6670米ドルで安定した。
ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、ハリー・マーフィー・クルーズ氏は「今回の指標から悪いニュースを見つけるのは難しい。予想を下回るインフレ率は家計と企業にとって一足早いクリスマスプレゼントだ」と述べ、来週のオーストラリア準備銀行(中央銀行)理事会での利上げはないとの見方を示した。
ただ、アナリストは単月のCPIについて、各四半期の最初の月でカバーされる商品の比重が大きく、サービス価格動向がさほど反映されていないと指摘する。
10月の貿易財価格は前月比1.6%下落した。
豪中銀は今月、政策金利を12年ぶり高水準となる4.35%に引き上げた。それまでは4カ月連続で金利を据え置いていた。
利上げ理由の一つとして中銀はサービス部門のインフレが続いていることを挙げた。
市場では中銀が12月に金利を据え置くと予想しているが、来年前半の追加利上げの可能性も50%程度織り込んでいる。
10月の家賃の伸び率は政府の補助プログラムにより9月の7.6%から6.6%に減速。統計局はこのプログラムがなければ8.3%に加速していたと推計している。
電気料金は10.1%上昇と、依然として高水準の伸びとなった。
チャレンジャーのチーフエコノミスト、ジョナサン・カーンズ氏は、インフレが高止まりし、賃金などに一段の影響を及ぼし始めることがリスクとの認識を示した。
大手世論調査会社ユーガブが29日に発表した調査結果で、英国民の57%が欧州連合(EU)への再加盟を支持していることが分かった。再加盟に反対しているのは約20%という。
2016年に実施されたEU離脱の是非を問う国民投票での主な賛成理由は移民の抑制だったが、ここ数カ月の調査では大多数の英国民が英国のEU離脱(ブレグジット)は誤りだったと考えていることが示されている。数日前に発表されたデータでは、昨年の英国への移民純流入数が過去最高に達し、16年の国民投票前の人数の2倍以上になった。
全体では英国民の72%がEUとの関係をより緊密にすることを望んでいるという。この中には再加盟派と離脱維持派の両方が含まれている。
米感謝祭の翌日、ブラックフライデーに最も依存している小売業者やブランドにとって、この日は不発に終わった。
リセッション(景気後退)を回避するためには消費意欲を高め続ける必要があるチェーン店や米経済にとって、それは悩ましい兆候だ。残りのホリデー商戦が期待外れに終わり、小売業者がさらなる値引きを余儀なくされるリスクも高まる。
米国内のクレジットカードおよびデビットカードの取引データを分析するブルームバーグ・セカンド・メジャーによると、年間売上高におけるホリデー商戦の比率が同業他社よりも高い40社のグループでは、ブラックフライデーの売上高(中央値)がマイナス4%となった。これは2022年よりも急な落ち込みだ。
ブルームバーグは、ウォルマートやホームセンター大手のホーム・デポといった大型店舗から、衣料品チェーンのアバクロンビー・アンド・フィッチやギャップまで、ブラックフライデーが売上高に占める割合が突出して高い小売企業を調査した。
同グループの推計中央値によると、ブラックフライデーは1日の平均販売額の5倍余りに相当する。これは2019年以来の高水準であり、バーゲンハンターの数が減少しているにもかかわらず、これらの小売業者がブラックフライデーへの依存を高めていることを意味する。
アドビ・アナリティクスによると、確かにブラックフライデーのオンライン消費額は前年比7.5%増加した。これは、ブルームバーグが分析した伝統的なブラックフライデー頼りの小売店から、ディスカウント店のほか、体験や旅行に消費がシフトしていることを示している可能性がある。
ウォルマートのようなディスカウントストアの売上高は増加しており、ブルームバーグ・セカンド・メジャーのデータで数少ない明るい材料となったこの現象を説明する一助になるかもしれない。クリスマス直前に消費が増える傾向にあるアマゾン・ドット・コムでさえ、ブラックフライデーの売り上げは12%増加した。
しかし、ブルームバーグが分析した他のほとんどの小売企業では、ブラックフライデーの消費額は減少し、2桁減のケースもあった。
JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は29日、米大統領選に向けた共和党の候補指名争いを巡り、ニッキー・ヘイリー元国連大使がドナルド・トランプ前大統領に代わる良い選択肢になり得るとの認識を示した。
ダイモン氏は米紙ニューヨーク・タイムズ主催の「ディールブック・サミット」で、「たとえ、あなたが非常にリベラルな民主党支持者であっても、ぜひニッキー・ヘイリー氏のことも支援してほしい」と訴えた
ヘイリー氏は前日にも、富豪チャールズ・コーク氏と関係のある政治団体から支持を獲得するなど、ここにきて勢いを増している。米政治サイト、リアルクリアポリティクスが算出した世論調査の平均によると、ヘイリー氏は支持率でトランプ氏、フロリダ州知事のロン・デサンティス氏に次ぐ3位だ。
ただ、ダイモン氏はトランプ氏が大統領に就任しても、他の誰が大統領になっても、協力して取り組む考えを示した。
米連邦準備制度理事会(FRB)が29日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)は、消費者が裁量的な支出を控えたため、米経済活動はここ数週間に減速したと指摘した。
ベージュブックは「消費者が価格に一段と敏感になったため、家具や家電製品のような裁量的アイテムや耐久消費財の売り上げは平均して減少した。旅行・観光業は概して好調だった」と記述している。
今回の報告は12地区連銀が11月17日までに集めた情報を基に、アトランタ連銀がまとめたもので、景況に関するコメントなどを含んでいる。
金融当局者は経済とインフレの行方を探るために、この種の情報への依存を高めている。政府統計は経済データの軸となるが、その数値は一般的に後ろ向きで、改定も行われる。
労働需要は引き続き緩和しており、回答者はレイオフや自然減による人員減少を指摘し、ほとんどの地区が雇用は横ばいか小幅な増加を報告している。しかし、いくつかの地区では、労働市場は引き続き「タイト」だと報告された。11月の雇用統計は12月8日に発表される。
ベージュブックは連邦公開市場委員会(FOMC)定例会合の2週間前に公表される。FOMCは来月、3会合連続で政策金利を据え置くと予想されている。
現在22年ぶりの高水準にある政策金利は、住宅購入や自動車購入、クレジットカードでの借り入れコストを高めている。
ベージュブックは「消費者信用はかなり健全に推移しているが、一部の銀行では消費者の返済延滞が若干増加している」と指摘した。
7-9月(第3四半期)は過去2年間で最も速いペースで景気が拡大したが、今回の報告はここ数週間で広範囲にわたって景気が冷え込んでいることを指摘している。4地区では緩やかな成長が報告されたが、それ以外の地区では活動の停滞または明らかな縮小が示された。今後6-12カ月の経済見通しも悪化した。
一方、インフレは全国的に「おおむね緩やかになった」という。
ベージュブックは「価格決定力はさまざまで、サービス業は製造業よりも価格転嫁しやすい状況にある。ほとんどの地区では、来年も緩やかな価格上昇が続くと予想されている」と記述している。
30日に発表される10月の個人消費支出(PCE)では、金融当局が選好するインフレ指標であるPCE価格指数が減速し、2021年初頭以来の低い伸び(年率)になると予想されている。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国人民銀行(中央銀行)は不動産危機の深刻化で、長く批判してきた政策手法である量的緩和(QE)の方向に追い込まれている。
人民銀はいわゆる担保付き補完貸し出し(PSL)を通じて少なくとも1兆元(約21兆円)の低金利資金を建設プロジェクトに提供する可能性があると、ブルームバーグ・ニュースは報道。同プログラムの下、人民銀は(融資を担保として受け入れることで)住宅やインフラ部門への融資に充てる安価な長期資金を政策銀行に提供している。
利回り押し下げに向けた大規模な債券買い入れを伴う米連邦準備制度などのQEプログラムとは異なり、中国版はより的を絞ったものだ。PSLは2014-19年に住宅建設に向けた資金調達に活用された。それが資金創出と人民銀のバランスシート拡大につながり、一部エコノミストの間で中国版QEと呼ばれた。
野村ホールディングスの中国担当チーフエコノミスト、陸挺氏は「これだけ政策が緩和され、刺激策や救済策が講じられてもなお、不動産セクターは明らかな改善を見せていない。伝統的な手段は全て使い尽くされ、残っているのは非伝統的ツールだけだ」と指摘。「未完成の住宅プロジェクトを救済するため中銀の資金を使う可能性が高まっている」との見方を示した。
最盛期に中国経済の約4分の1を占めていた不動産セクターは依然として低迷しており、10月の新築住宅価格はここ8年間で最大の下落率となった。住宅ローン金利の引き下げや購入条件の緩和、デベロッパーへの金融支援といった従来の政策措置では状況を好転させることができなかった。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の試算によると、融資や販売による資金調達が減少し、流動性圧力の高まりに直面しているデベロッパーが、短期債務を返済し、完工前に販売された住宅を完成させるためには年内に18兆9000億元が必要だという。これは国内総生産(GDP)の15%に相当し、24年も同程度の資金不足となる見通しだ。
人民銀は世界各国・地域の中銀のQE政策に長く反対しており、できるだけ長期にわたって「正常な」金融政策を維持すると表明している。人民銀にファクスでコメントを求めたが、返答はなかった。
タイ銀行(中央銀行)は29日、政策金利を1年5カ月ぶりに据え置いた。景気低迷と物価下落を踏まえ、これまでの利上げの影響を見極める。
同中銀の金融政策委員会は1日物レポ金利を10年ぶりの高水準である2.50%に据え置くことを全会一致で決定。ブルームバーグ調査でエコノミスト22人全員が予想していた通りとなった。
2022年8月から8回連続で0.25ポイントの利上げを実施したタイ中銀は、経済成長を支えインフレ抑制に適切な水準まで金利を引き上げたとのシグナルを発していた。
同中銀は、タイの2024年国内総生産(GDP)成長率見通しを3.2%に引き下げた。従来は4.4%だった。
中国の習近平国家主席は、不動産に基礎に借金で成長を押し上げる経済モデルからの脱却を図ろうとしている。この変革が世界第2位の経済大国、中国の成長を冷え込ませると投資家は懸念しているが、中国の旺盛な資源需要を支える構造的変化を見過ごしてはならない。
3000億ドル規模の銅市場を例に取ろう。中国は世界で取引される銅の60%以上を輸入している。あるコモディティートレーダーは、「銅イコール不動産、不動産イコール中国という考え方が一般的だ。そして中国の不動産が下がっているから銅も下がるに違いない、と続く」と語る。
事実、中国の国内総生産(GDP)の4分の1を占め、建設から家電製品まで約40の業種を支える不動産セクターは、まだ底を打っていない。着工面積は昨年既に落ち込んでいたが、今年10月までの1年間でさらに23%も縮小した。
米国との技術競争から対ロシア関係、台湾をめぐる立ち位置に至るまで、西側諸国との地政学的な亀裂も相まって、投資家は中国の幅広い資産に冷ややかな目を向けている。中国の外国直接投資は7―9月、四半期ベースで初めて赤字(118億ドル)を記録した。
しかし、2つの微妙な傾向が状況を複雑にしている。第1に、習氏は住宅バブルに気をもむ一方で、依然として社会不安は何としても防ぎたいと考えている。一般の中国人は財産の70%を不動産として蓄えているからだ。
中国恒大集団(3333.HK)のように経営難に陥った不動産開発業者が、販売済みアパートの建設を完工するよう習氏が望むのはこのためだ。中国は10月時点で約82億平方メートル相当の住宅が建設途上にある。一般的な3LDKの住宅にして約8000万戸だ。銅は建築後期に使用される傾向があるため、不動産危機から生じる潜在的な需要の損失は、建設開始時に多く使用される鉄鉱石ほど深刻ではないと思われる。
第2に、中国経済のけん引役を不動産からグリーン投資やハイテク産業にシフトさせるという習氏の使命は加速している。10月31日に開いた中国共産党「中央金融工作会議」では、これらの投資にもっと多くの資金を投入することが明示された。つまり、国有銀行は電気自動車(EV)、風力・太陽光エネルギー、人工知能(AI)、最先端半導体への融資を増やすよう指導されることになるだろう。これらの産業は銅やその他の金属を必要とする。
このように、中国の「新経済」は旧来の成長エンジンに比べればまだ小さいものの、その台頭はコモディティーに対する新たな需要も生み出している。例えば銅は、電気モーターやバッテリーの製造、送電網、再生可能エネルギーの普及に欠かせない。ウッド・マッケンジーによれば、中国が過去2年間に増やした風力発電能力は、その前の7年間の拡大分を上回っており、2032年末の風力発電能力は2.38テラワットに達する見込みだ。
資源商社トラフィグラの試算によれば、中国の銅需要は2020年の水準からさらに400万トン増加し、30年には年間約1800万トンになる見通しだ。2010年から20年までは500万トン増加した。
今年の銅需要は8%伸びており、習氏が目標とするGDP全体の成長率5%よりも速いペースとなっている。銅価格は今年、中国のゼロコロナ政策解除後の景気回復と失速につれて上下したが、それでも不動産不況によって恐れられたような暴落とは程遠かった。
アルミニウムも同様で、不動産建設やEV部品、充電ステーションのようなEVインフラに使用されている。トラフィグラによると、中国のアルミニウム需要は2010年から20年にかけて年間1800万トン増加しており、30年までにはさらに1300万トン増加して年間5000万トンを超えると予測されている。
これらの要因が相まって中国の成長を下支えしている。国際通貨基金(IMF)は今月、23年と24年の中国のGDP成長率見通しを上方修正し、24年分は10月時点の予想4.2%を4.6%に引き上げた。IMFと世界銀行のデータに基づくBreakingviewsの計算によると、中国の成長率が4%を下回ったとしても、来年の世界のGDP成長に中国は27%寄与する見通しだ。
もちろん、不動産セクターが徐々に衰えていくことは一部のコモディティーにとりわけ大きな打撃を与えるだろう。例えばオックスフォード・エコノミクスのアナリストによれば、鉄鋼に依存する中国建設セクターの今後10年間の成長率は年率2.5%程度にとどまる可能性があり、オーストラリアのような鉄鉱石輸出国にとっては懸念材料となる。しかし、それでも価格への打撃は激烈からは程遠いだろう。
中国は世界の鉄鉱石需要の70%近くを占めているため、15年に住宅市場が低迷すると、価格は過去最低のトン当たり約40ドルまで急落した。しかしHSBCのアナリストによれば、今年はトン当たり平均110ドルを超えており、現在は過去半年の最高値近辺で推移している。その理由の一端は中国の景気刺激策への期待にあり、また一端はEVや風力発電所、その他のインフラ向けの新規需要にある。
中国が新たな経済モデルに移行してグリーンテクノロジー志向を強めれば、銅の主要生産国であるチリや、ニッケルなどを生産するインドネシア、コバルトの採掘を独占するコンゴ民主共和国のようなアフリカ諸国にも引き続き利益をもたらすはずだ。
中国には「ラクダは痩せ死んでも馬より大きい」という故事がある。コモディティーに置き換えるなら、中国の経済的比重の縮小に注目し過ぎる投資家は、中国が依然として無視できないほど大きな存在であるという事実を見落とす危険性がある。
ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官は29日、フィンランドがロシアとの国境に軍隊を「集中」させる決定をすれば、ロシアはそれを脅威とみなすだろうと述べた。
ポーランド国家安全保障局のヤチェク・シウィエラ局長は、28日遅く、短文投稿サイト「X」(旧ツイッター)への投稿で、ポーランドは北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるフィンランドに軍事顧問団を派遣すると述べた。
フィンランドは29日、ポーランドの申し出は承知していないと述べた。
ペスコフ報道官は記者団との電話会談でこれについて質問され、「フィンランドとの国境に脅威はないのだから、これは全くむだな措置だ。フィンランドは、こうした措置はロシアにとって脅威となると明確に認識しなければならない」と述べた。
●中東
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは29日、拘束していた人質のうち16人を新たに解放した。当局者によると、イスラエル人、二重国籍者、タイ人が含まれる。
カタール外務省報道官は、イスラエルが未成年者16人と女性14人を含むパレスチナ人30人を同日夜に釈放する見通しと明らかにした。
戦闘休止合意が30日朝に期限を迎えるのを前に、パレスチナ側の関係者はロイターに対し、さらなる延長について協議が続いているが、合意には達していないと述べた。
イスラエルメディアのチャンネル12は、ネタニヤフ首相が29日夜に安全保障会議を開くと報じた。
サウジアラビアはイランに接触し、西側諸国から経済制裁を受けている同国に対し投資および協力の拡大を提案していたことが、複数の当局者によって明らかになった。イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘がより広範囲にわたる紛争に発展するのを阻止することが狙いだいう。
事情に詳しいアラブ諸国および西側諸国の当局者によれば、ハマスによる先月の奇襲攻撃以降、サウジはイランに直接提案しているほか、他にもあらゆる手段を通じて提案している。
こうした圧力団体の攻勢は、2001年9月11日の攻撃を受けた米国にイラクが侵攻された2003年に私たちが目にしたものに酷似している。その当時、ジョージ・W・ブッシュ大統領の米国政府はイラクのサダム・フセイン大統領の政権が9.11の攻撃とは一切無関係であることを認識していた。しかし、米国政府の関係者たち、特にイスラエルのリクード党員の米国版のようなネオコンの政界有力者たちは、イラクが大量破壊兵器を保有しているという主張が、イラクの占領と政権交代の正当化に利用可能であることから、イラク侵攻・占領計画を立案した。これが真実だったのだ。
思い起こしてみると、このイラク占領から最大の利益を得たのはイラン政権だった。実際のところ、バクダッドが米国の手に陥落するやいなや、イランに亡命していたイラクの宗教界や政界、民兵組織の指導者たちが占領下のイラクの首都に群がるように帰還してきたのだった。イラクの連合暫定当局の代表を務めていたポール・ブレマー氏が、イラクにおける「数世紀に及ぶスンニ派支配」を終わらせたと誇らしげに述べるまでに、あまり時間はかからなかった。
ネタニヤフ首相が、10月7日の襲撃後、イスラエルの聴衆に最初に語った演説は、イスラエルの目標はハマスの排除と「中東を変える事」なのだという内容だった。ガザ地区でのイスラエルの軍事作戦が開始されると、右派の閣僚や政治家たちが、ガザ地区住民をエジプトに強制移住させて、その後は世界各国に同地区住民を分散移住させるとの脅迫的な声明を発表した。ヨルダン川西岸地区の住民を強制退去させ、ヨルダンで「もう一つの祖国」を建設するプロジェクトを復活させることを仄めかした右派のイスラエル人たちもいた。
米政権は、イスラエルによるガザ地区への作戦開始時に、イランがハマスの攻撃に関与した証拠はないと言明し、戦闘をガザ地区に限定する必要性を主張した。イラン政府はハマスに対する支持を喜んで表明するだけだったが、レバノンのヒズボラはイスラエルが容認する「交戦規定」にを順守した攻撃を開始した。イラクやイエメンで展開するイランの民兵組織も、また、イラン本国の修辞的な支持を具現化し、いわゆる「抵抗の枢軸」の体面を保つために「問題を引き起こした」。
一時停戦を延長し、ガザ地区の将来のための打開策を見出し、ハマス排除後の統轄責任者を決定するための地域的、国際的な取り組みの最中、ハマスの指導者と、ヒズボラ幹部を含むイラン政権の報道官は、「勝利」のナラティブの喧伝を続けた。そのイランの報道官は、「戦士たちのおかげで、イスラエルは陥落し、私たちはこれまでになく勝利に近づいています。私たちには、パレスチナで何が起きているのか、そしてイスラエル軍が事態の解決のために何を軍事的に為そうとして失敗したのかを知っています」と述べたのだった。
勝利を確定させ取引を待つまでの間に、このように数多くのことが露呈している。
ドーハ / ワシントン:火曜日、米国中央情報局(CIA)とイスラエル諜報機関モサドの長官が、イスラエルとパレスチナ組織ハマスの間の2日間の停戦延長を踏まえて、ドーハでカタール首相と会談を行ったと、両長官の訪問に関する説明を受けた消息筋は語った。
この会談は「人道的な理由を背景とする一時停戦協定の延長の進展を踏まえ、考えらえる次の段階について、さらなる議論を開始するため」であると、この消息筋はロイター通信に語った。
そして、エジプト当局者らも出席したこの会談の結論は不明であると付け加えた。
CIAのウィリアム・バーンズ長官は、「人質に関する協議を含むイスラエル・ハマス紛争に関する会談」のためドーハを訪れていたと、米当局者が匿名を条件に語った。なお、会談の詳細は明らかにされていない。
バーンズ長官、イスラエル諜報機関モサドのダビド・バルネア長官、カタールのシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニー首相は、期限切れが迫っていたガザ地区での最初の4日間の停戦協定の2日間延長をカタールが発表した翌日に会談を行った。
ハマスの複数の政治指導者が拠点としているカタールは、このパレスチナ武装勢力とイスラエルとの交渉を主導してきた。
火曜日の会談では、ハマスが女性や子どもだけでなく男性や軍人の人質を解放することなど、停戦合意の新たな段階で考えられる要素について話し合われたと消息筋は語った。また、数日間以上にわたって続く停戦合意に達するために、何が必要かについても検討された。
カタールは、ハマスにとって合意可能な内容の感触を得るため、この会談に先立ってハマスと協議を行った。イスラエルとハマスは現在、会談で検討された内容について内部で議論していると、この消息筋は付け加えた。
今回の停戦により、イスラエルで約1,200人が殺害され、240人が捕虜となった10月7日のハマス武装集団による暴力行為に対抗して、イスラエルによる大規模な爆撃が行われてきたガザ地区に、7週間ぶりとなる休息が訪れた。
イスラエルはガザ地区を支配するハマスを殲滅すると誓っている。ガザ地区の保健当局は、イスラエルによるこの狭くて人口密度の高い地域への砲撃により、これまでに1万5,000人以上が死亡し、そのうち約40%が子どもであると話している。
バルネア長官とバーンズ長官は、今回の訪問に先立って、11月9日にシェイク・ムハンマド首相との会談でカタールを訪れていた。
停戦協定の最初の4日間に、ハマスは人質となっていたイスラエル人の女性と子ども50人を解放した。その見返りとして、イスラエルは拘留していた150人を釈放したが、全員が女性と十代の若者であった。
2日間の停戦延長では、ハマスは1日あたり10人のイスラエル人女性と子どもを追加で解放することに同意した。
これまでのところ、ハマスが拘束している人質のうち、イスラエル人男性や軍関係者を解放する意向を示すものはない。
●中南米・アフリカ
●市況
日経先物33,240、ダウ先35,579、債先146.78、米4.263、独2.4165、仏2.985、西3.420、伊4.170、英4.1265、波5.475、原油77.70、銅8,457、ドル円147.11、ユーロドル1.0973
※11/30 9時00分頃
備忘録(2023/11/28)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は、銀行により多くの資本を保有させるという規制当局の最近の提案は、世界の金融システムをより安全なものにはせず、航空運賃から退職者が受け取る年金まで、あらゆるものに影響を及ぼす可能性があると主張した。
連邦準備制度理事会(FRB)と連邦預金保険公社(FDIC)、通貨監督庁(OCC)が7月に公表したこの規則案は、米国の大手銀行に対し、さまざまな事業に対してより多くの資本を確保するよう求めるものだ。
ソロモン氏によると、影響を受ける分野の一つは無担保デリバティブ。これは航空会社がジェット燃料の価格をヘッジするために利用することが多く、安定的な運賃設定に役立つという。
ソロモン氏は、ロンドンで開催されたフィナンシャル・タイムズ紙主催の銀行業界会合でのパネル討論会で、提案されている規則の下でヘッジの「コストは大幅に上昇する」と指摘。「摩擦やコストに対して、金融システムの安全性や健全性が意味のあるほど変わるとは思われない」と語った。
ソロモン氏は、規則案は年金運用会社の証券貸し出し能力にも影響を与えると指摘した。
規制当局は、米国でバーゼル3最終化として知られるこの新規則について、銀行の安全性と健全性を確保するために必要だとしている。それに対しウォール街の幹部は総じて、新規則が借り手にとっての資金コストを上昇させると主張する。
ソロモン氏は「費用対効果を徹底的に分析する必要がある」が、「それがなされているとは思えない」と語った。
●その他産業
米アドビによるデザインソフトウエアメーカー、米フィグマの買収計画について、英競争・市場庁(CMA)は28日、英国のデジタルデザイン業界に悪影響を及ぼす恐れがあるとの暫定判断をを示した。
CMAは28日の発表文で、初期の見解として同買収計画は製品デザインソフトウエアにおける主要2社の競争をなくし、新製品の開発を減少させるとともに、競合企業としてのフィグマを排除する可能性があると指摘した。最終的な決定は来年2月25日までに示される見通し。
日本生命保険(NPNLI.UL)は、介護最大手のニチイ学館を傘下に持つニチイホールディングスを買収する。日生の広報担当者が明らかにした。当局の認可を得るため、金融庁と協議している。
株式の99.6%を約2100億円で取得する。ニチイは2020年、経営陣による買収(MBO)の一環としてベインキャピタル系のファンドが株式を公開買い付けした。
●決算関連
米半導体大手マイクロン・テクノロジー(MU.O)は28日、需給バランスの改善により、第1・四半期(9─11月)の調整後売上総利益が収支とんとんに近づく見込みと発表した。
第1・四半期の調整後1株当たり損失は約1ドルと予想。従来は1.07ドルプラスマイナス0.07ドルの損失を予想していた。
売上高は47億ドルに近づく見込み。従来予想は44億ドルプラスマイナス2億ドルだった。
一方、調整後営業費用は9億9000万ドル。従来予想の9億ドルプラスマイナス1500万ドルを上回る見込み。
同社の株価は序盤の取引で約4%下落。
●先進国、グローバル、金融市場
石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」内で2024年の石油政策に関する協議が難航しており、一段の減産ではなく前回合意の据え置きの可能性が高まっている。4人の関係筋が28日明らかにした。
OPECプラスは2024年の原油生産量を巡り、30日にオンラインで閣僚級会合を開く。当初26日に予定されていたが、アフリカの産油諸国の生産水準を巡る意見が折り合わず、30日に延期された。
関係筋によると、さらに延期される可能性もあるという。
岸田文雄首相は28日、都内で行われた共同通信加盟社編集局長会議で講演し、「2024年の国際社会は緊迫の1年になる」と指摘、万全の態勢で臨む考えを示した。
首相は、ウクライナ・パレスチナ情勢に加え、米大統領選や台湾、インドネシア、韓国、インドの国政選挙があり、「(それらの)結果が緊迫した国際情勢を大きく左右することが予想される」と述べた。
オーストラリア東岸カーティス島の液化天然ガス(LNG)輸出施設で、停泊中のタンカーに障害が発生して航行できなくなり輸送が停止している。オーストラリア・パシフィックLNG(APLNG)の運営会社、米コノコフィリップス(COP.N)と共同所有者の豪オリジン・エナジー(ORG.AX)が28日に明らかにした。
APLNGの大口顧客は中国石油化工(シノペック)(600028.SS)と関西電力(9503.T)。
船舶追跡データによると、航行不能になったタンカーは中国に向かう予定だった「Cesi Qingdao」。この船の管理会社は、22日に推進力に不具合が生じたと説明した。
すでに2カーゴ分の出荷に遅れが生じている。オリジンは影響がどの程度に及ぶかは、問題のタンカーがいつ航行可能になるか次第になると説明した。
米連邦住宅金融庁(FHFA)が28日発表した9月の米住宅価格指数(季節調整済み)は前年同月比で6.1%上昇と、8月の5.8%上昇(上方改定)から伸びが加速した。住宅市場の回復を浮き彫りにした。
第3・四半期では前年同四半期比5.5%上昇、前四半期比2.1%上昇となった。
9月の前月比は0.6%上昇。8月は0.7%上昇(上方改定)だった。
これとは別に米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが同日発表した9月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は、全国の住宅価格指数が前年同月比3.9%上昇した。8月は2.5%上昇だった。
都市別ではデトロイトが最も上昇。前月までシカゴが4カ月連続で最も上昇していた。
イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会のハスケル委員は、英国の労働市場はまだインフレの影響を受けているとし、中銀は15年来の高水準にある金利を直ちに引き下げることはできないと述べた。
ハスケル委員は28日に行う講演の原稿で「労働市場はなお歴史的に逼迫した状態にある。現在の変化のペースを踏まえると、逼迫の程度がパンデミック(世界的大流行)前の平均的な水準に戻るには少なくとも1年はかかる」と指摘。「金利は多くの人の予想よりも高い水準に、より長い期間にわたり維持されなければならない」と述べた。
米資産運用会社インベスコ(IVZ.N)は、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ休止観測が高まる中、2024年のアジアクレジット市場のリターン(収益率)が過去2年を上回るとみている。
インベスコ・フィクスド・インカムのアジア太平洋地域担当責任者フレディ・ウォン氏はロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラム(GMF)で、FRBが追加利上げを見送る中、アジアの投資適格社債のリターンが「平均10%台半ばになる」と述べた。
アジアのクレジット市場は来年おおむね1桁台後半から2桁台前半のリターンを達成すると予想した。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査によると、今年、投資適格社債には1450億ドルの資金が流入し、ハイイールド債からは90億ドル流出している。
BofAのデータによると、アジアの投資適格社債の今年のリターンはプラス1.3%で、米国のマイナス0.9%、EMEAのマイナス1.9%、中南米のマイナス2.3%をアウトパフォームしている。
ウォン氏は、アジアのハイ・イールド債はまだ十分魅力的な投資対象ではないかもしれないとし、来年米国が不況になるとは予想していない、と付け加えた。
投資家は通常、アジアのハイ・イールド市場に投資する際、2桁台前半のリターンを求めるが、市場はまだ「資金を投入する」ほど割安ではないとの見方を示し、「投資家はすでに、投資適格クレジットを通じて6%から8%のハイイールド並みのリターンを得られる」と指摘した。
アジアでは、インドとインドネシアの現地通貨建て債券に「力強い」パフォーマンスを予想。オーストラリアと韓国の債券は米国市場との相関関係が続いているため「良い動きをするだろう」と述べた。
中国債券には今後数年間は強気とした。世界的に中国への投資配分が少ないことを背景に「見逃してはならないビッグトレード」だと指摘した。
ウォン氏は、中国が伝統的なインフラ主導から質の高い成長モデルに変わりつつあり、中国への投資配分も重点を変えなければならないと述べた。
欧州中央銀行(ECB)が28日発表したユーロ圏の10月の企業向け融資は2015年以来初めて減少した。急速な利上げが融資にも影を落とし、景気をさらに圧迫すると一部で懸念されている。
企業向け融資は前年比0.3%減少で、9月の0.2%増からマイナスに転じた。家計向け融資も前年比0.8%増から0.6%増に鈍化し15年初め以来の弱い伸びとなった。
マネーサプライM3の前年比伸び率はマイナス1.0%。前月のマイナス1.2%からやや改善した。市場予想はマイナス0.9%だった。
UBSグループのコルム・ケレハー会長は28日、活況を呈するプライベートクレジット市場でリスクが高まっていると警告を発した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)がロンドンで開催した銀行業界会合での発言。
ケレハー氏は、プライベートクレジットでは「明らかに資産バブルが生じている」と指摘。「フィデュシアリー危機はたった一つのことで誘発される」と述べた。
金利の急上昇と投資家のリスク選好後退などを背景に銀行がハイリスク融資を敬遠する中、プライベートクレジットはバイアウト企業の資金調達手段としてますます人気が高まっている。
一方でプライベートクレジット市場でのリスクの高まりに懸念を表明するのはケレハー氏だけではない。パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の幹部2人も今月に入り、急拡大するプライベートクレジット市場でリスクが高まっており、規制当局の対応は十分ではないとして警鐘を鳴らした。
プライベートクレジット市場の規模は2015年以降で3倍に拡大している。
米国の住宅価格は8カ月連続で上昇し、過去最高を更新した。S&P・コアロジック/ケース・シラーがまとめたデータで明らかになった。
9月の全米ベースの住宅価格指数(季節調整済み)は前月比0.7%上昇
米20都市住宅価格指数(季節調整前)は前年同月比3.9%上昇
上昇率は市場予想に一致
住宅ローン金利は7%超で推移しており、潜在的な買い手と売り手の双方が様子見を続けている。物件不足の中、購入意欲の強い買い手は入札合戦に巻き込まれることが多くなっている。住宅価格は1月に底値を付けて以降、根強い在庫不足を背景に上昇が続いている。
統計発表元であるS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズのマネジングディレクター、クレイグ・ラザラ氏は「今年見られる住宅ローン金利の上昇が販売を抑制していることは確実だが、そうした中で販売可能な在庫の相対的な不足が価格を強く支えている」と説明した。
9月の全米ベースの住宅価格指数は前年同月比では3.9%上昇。8月は2.5%上昇だった。
都市別ではデトロイトやサンディエゴ、ニューヨークなどで価格の伸びが目立った。
オーストリアの大物実業家、 レネ・ベンコ氏の不動産帝国は、グループ企業の破産が相次ぐ瀬戸際にある。緊急資金の確保を目指す土壇場の努力が成功するのか疑念が広がる。
ベンコ氏が創業したシグナ・グループは、さまざまな国に展開する多数の部門から成る。事情に詳しい複数の関係者によれば、終盤で事態が打開されない限り、数週間以内に数十件の破産申請が行われる可能性がある。
シグナが破綻すれば、世界的な金融危機以降では欧州最大の不動産メルトダウンの一つになりかねない。商業用不動産が金利上昇の打撃を受け、10年余り続いたバリュエーションの向上は終わりを迎えた。
ニューヨークのクライスラービルやウィーンの高級モール、ドイツ最大の百貨店チェーンなど人目を引く不動産に権益を持つ非公開のシグナは、短期的な流動性ニーズを満たすため、最大6億ユーロ(約977億円)の資金調達を急ぐ。
内部事情を話すことを理由に複数の関係者が匿名を条件に語ったところでは、解決策を見いだす期限が迫る中で、さまざまなレベルで異なる投資家と債権者が関与する複雑な構造が、さらなる協議の妨げとなっている。
オーストラリアの10月の小売売上高は予想外に減少し、豪準備銀行(中央銀行)の積極的な利上げが家計に重くのしかかり始めていることが示唆された。
豪統計局が28日発表したデータによると、10月の小売売上高は前月比0.2%減と、予想外に落ち込んだ6月以来の弱い内容。市場予想は0.1%増だった。
豪中銀は今月の会合で金融引き締めを再開し、政策金利のオフィシャル・キャッシュレートの誘導目標を12年ぶり高水準の4.35%に引き上げた。
米連邦準備理事会(FRB)当局者は、米経済の「ソフトランディング(軟着陸)」を図るため、年内は金利を据え置き、2024年に入ってから初めて利下げ時期を検討する可能性が高まっている。
FRB内でタカ派として知られるウォラー理事は28日、インフレ率が低下し続ければ、数カ月先に政策金利を引き下げる可能性を示唆。「標準的なテイラールールに基づけば、あと数カ月─3カ月か4カ月か5カ月か分からないが─ディスインフレが続き、インフレ率が本当に低下方向に向かっていると確信が持てれば、景気回復などとは無関係に、インフレ率が低下したという理由のみで政策金利を引き下げ始めることができる」と述べた。
また、FRBの目標であるインフレ率2%への回帰には、現在の金利水準が適切だと「ますます確信している」と語った。
ウォラー氏の発言を受け、市場が織り込む来年の利下げ確率が上昇し、米債利回りは低下した。
もっともウォラー氏のコメントには、FRB高官が公の場で発言する際の定番となっている表現が含まれていた。「インフレ率はまだ高すぎ、現在見られている鈍化が持続するかどうか判断するのは時期尚早だ。将来の経済活動のペースにはまだ大きな不確実性があり、FRBが物価安定を達成するために十分なことをしてきたかどうか明言することはできない」とも述べた。
<かなり逼迫した労働市場>
ボウマン理事は28日、インフレ率を妥当な期間内に2%の目標まで引き下げるためには、FRBは借入コストをさらに引き上げる必要がありそうだと言及。「私の基本的な経済見通しでは、インフレ率を2%目標まで適時に低下させるために、十分に制約的な政策を維持するようフェデラル・ファンド(FF)金利をさらに引き上げる必要があると引き続き予想している」とした。
しかし、ウォラー理事のようにFRB内で最もタカ派的とされるボウマン理事でさえ、追加利上げは経済データ次第とし、追加利上げを明確に求めるには至らなかった。
米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は28日、全体的なインフレ率が1950年代以来のペースで低下しているとの見方を示した。
ウォラー氏は、10月の消費者物価指数(CPI)は前月比横ばい、小売売上高は前月比0.1%減、賃金の伸びも緩やかになっているなど、すでに望ましい方向へ動いている最近の健全なデータを列挙した。
一方、雇用市場は依然として「かなり逼迫」しており注視が必要だと述べたほか、最近の長期金利の低下は信用の引き締まりをいくらか低減したとも指摘した。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は28日、長期インフレ期待は心強く安定しているとし、インフレ圧力の低下を歓迎すると述べた。
ウィリアムズ総裁は国際決済銀行(BIS)報告書の中で「米国のインフレ期待の安定化に関するこのところのニュースに安心感を覚えている。長期インフレ期待を示す指標は極めて安定している」と述べた。
ウィリアムズ総裁は報告書の中で、金融政策の行方の手がかりを示すようなことは述べなかったが、インフレ率の低下傾向は心強いとしたほか、米連邦準備理事会(FRB)のインフレ目標達成に向けたコミットメントに言及。また、インフレの先行きに対する不確実性が高まっていることは、物価上昇圧力が増大すると予想されていると示すものではないとの考えを示した。
米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は28日、全体的なインフレ率が1950年代以来のペースで低下しているとの見方を示した。
シカゴ連銀主催の農業関連の会合で「食料品価格のインフレは平均的な米国人にとって快適なレベルをはるかに超えている。しかし、全体としては食料品以外の分野でのインフレは進展し、低下している。まだ目標値には達していないが、2023年にはインフレ率が過去71年間で最も低下する方向にある」と述べた。
コンファレンス・ボード(CB)が28日発表した11月の米消費者信頼感指数は102.0と10月改定値の99.1から4カ月ぶりに上昇した。ロイターがまとめたエコノミスト予想は101.0だった。
ただ、今月調査を受けた消費者の約3分の2は依然として、リセッション(景気後退)が来年「ある程度」起こる、または起こる可能性が「非常に高い」と認識していることが示された。
コモンウェルス・ファイナンシャル・ネットワークのブラッド・マクミラン最高投資責任者(CIO)は「全体として、今回のデータは現時点では成長が鈍化しているが、来年まで成長が続くという見通しを裏付けている」と述べた。
信頼感の改善は主に55歳以上の世帯に集中。35─54歳の年齢層は将来についてあまり楽観的ではなかった。
現況指数は138.2と前月の138.6からやや低下。一方、期待指数は77.8と72.7から上昇した。ただ、期待指数は歴史的に来年以内にリセッションに陥る水準とみられている80をなお下回っている。
CBのチーフエコノミスト、ダナ・ピーターソン氏は「幅広い所得層にわたって全般的な改善が見られた」が、消費者は依然として価格全般の上昇や戦争、金利上昇に気を取られていると述べた。
物価情勢については、向こう1年間の期待インフレ率が5.7%だった。10月は5.9%だった。
インフレ鈍化の兆しが見られる中、消費者は今後6カ月間の支出拡大に一段と意欲を示しているもよう。今回の調査では、自動車のほか、冷蔵庫、洗濯機、テレビなどの主要家電製品の購入を考えている消費者の割合が増加していることが示された。
雇用情勢については、職が「十分」と「就職困難」の回答から算出する労働市場格差に関する指数が23.9となった。前月は23.8だった
分析ツールのアドビ・アナリティクスによると、今年の「サイバーウイーク」(感謝祭からサイバーマンデーまでの5日間)のオンライン消費支出は7.8%増の約380億ドルと、予想の5.4%増を上回り、過去最高を記録した。経済不安が渦巻く中でも年末商戦は好調が見込まれることを示唆した。
また、全米小売業協会(NRF)の28日の発表によると、感謝祭の週末には2億人以上の買い物客が店舗とオンラインの双方でキャンペーンを利用。昨年の1億9600万人から急増し、予想の1億8200万人を上回った。
NRFのマシュー・シェイ社長兼最高経営責任者(CEO)は「予想を上回る好調な出足となった。大小の小売業者は消費者が必要とする商品やサービスを、安全で便利、かつ手頃な価格で提供する準備を整えた」と述べた。
オンラインの利用客は3.1%増の1億3420万人。一方、この週末に店頭に出向いた客数は約1億2140万人で昨年の1億2270万人から減少した。
アドビ・デジタル・インサイツのリードアナリスト、ヴィヴェック・パンディヤ氏は「サイバーウィーク期間中のオンライン消費は過去最高で、割引が消費者の需要に与える影響を示している。特に多くの衝動買いを引き起こしたのは高品質の商品だった」と述べた。
NRFのデータによると、おもちゃ、電化製品、ギフトカードなどホリデー関連の平均消費額は321.41ドル。昨年は325.44ドルだった。
アドビによると、サイバーマンデーの割引率は電化製品で31%、おもちゃで27%だった。
また、サイバーマンデーの後払い決済サービス(BNPL)を通じた消費額は前年比42.5%急増の9億4000万ドルと過去最高を記録。アドビの予想18.8%増を上回った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国当局は国内不動産企業が財務面で苦境に陥っていることを受け、本土銀行大手を通じた資金繰り支援を強化しているが、銀行業界にとってはさらなる難題を抱える形となっている。
すでに不良債権の急増や過去最低水準の預貸利ざやに苦しむ中国工商銀行など金融機関は、不動産開発企業への無担保融資の提供を初めて求められる可能性がある。こうした企業はそもそも債務不履行の状況だったり、破綻の瀬戸際に追い込まれたりしているところも多い。
銀行がライフラインの提供を余儀なくされた場合、すでに厳しい見通しがさらに悪くなる恐れもある。ブルームバーグ・インテリジェンスによると、工商銀など主要11銀行は2024年に不動産の不良債権でさらに引当金890億ドル(約13兆2000億円)、来年見込まれる引き当て前利益で21%相当を積まなければならなくなる可能性がある。
銀行側は選択肢として業績目標の引き下げや人員削減を検討していると、少なくとも十数人のバンカーが明かした。行内の問題だとして匿名を条件に話した。
北京を拠点とする投資銀行、香頌資本でディレクターを務める沈萌氏は「中国政府は銀行が抱える問題への解決策を示さずに、支援するよう金融機関にひたすら求めることはできない」と指摘。「銀行の利益はまだ表向き良さそうに見えるが、資産や不良債権をより深く掘り下げてみれば、良好に見える状況が長く続くということはない」と語る。
中国の銀行は、不動産セクターや財政難の地方政府への支援を通じた「国家サービス」の提供と、健全な経営義務という相反する要求の板挟み状態にある。一部の銀行にとっては利益の拡大はほぼ不可能となっている。
中国当局は先週、低迷する住宅市場をてこ入れするため金融機関への圧力をさらに強化。銀行支援の対象となる不動産企業のリスト策定に取り組む一方、開発業者に対する初の銀行無担保融資計画も検討している。
一連の要求は銀行の財務や業務を圧迫する。データによると、預貸利ざやの純金利マージンは9月時点で過去最低の1.73%。合理的な収益性を維持するのに必要と見なされる1.8%の水準を割り込んでいる。また、不良債権が過去最大を更新しているほか、一部の大手国有銀で17年以降続いてきた増収は今年途切れる可能性がある。
工商銀を含む4大国有銀の香港上場株の株価純資産倍率(PBR)は0.3倍と、過去最低近くにとどまっており、世界金融危機時に米銀株が取引されていた水準とほぼ同じだ。
ある地方商業銀行は、次年度の目標を低めに設定していると幹部は話す。優良な貸出先を巡る競争が激しくなる中、融資の規模や収入を伸ばすのは困難だという。関係者によると、一部の小規模金融機関は人員削減に動いており、融資担当部署に在籍する400人を今年半減させることを計画しているところもある。
不履行リスクが高いにもかかわらず、地方政府の資金調達事業体「地方融資平台」(LGFV)への貸し出しを実行し、当局への協力姿勢を示そうとする銀行もある。当局者によれば、ある大手銀の四川省の地方支店では今年の企業向け新規融資の約80%がLGFVだった。
ゴールドマン・サックス・グループは、中国当局が銀行に不動産開発企業の資金繰り支援の強化を求める新たな指導によって、同セクターの不良債権比率は21ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)押し上げられる恐れがあると指摘。また、JPモルガン・チェースは無担保融資の取り組みについて「リスクを伴う動き」だと警告した。
フィッチ・レーティングスの金融機関担当ディレクター、ビビアン・シュエ氏は「大手銀行の業務が大きく変動することは中国政府も望んでいないだろう。どんな犠牲を払っても不動産セクターやLGFVを救うよう、銀行が求められる公算は小さい」と指摘。「結局、大手銀は全て中央政府が保有しているわけで、主な財政収入源でもある」と述べた。
中国の習近平国家主席は27日、対外開放を高度に推進し国外リスクに対応するために、国外の問題に関連した法の支配を強化することが重要だと述べた。国営メディアが28日伝えた。
習主席は、中国共産党政治局の研究会で、法の執行で国際協力を深め、領事保護と援助を強化し、国外の自国の利益を守る強力な法治安全網を構築する必要があると述べた。
近年、中国の民間企業は海外で法的な問題に見舞われている。テンセント・ホールディングス(0700.HK)やアリババ・グループ(9988.HK)はオンラインプラットフォームで偽造品や海賊版が販売されているとして米国で批判されているほか、ネパールは中国系短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を国内で禁止すると発表した。
習主席は、法令順守の意識を高め、国際化の過程で市民と企業に法規制の順守を指導する必要があると主張。
当局によると、中国の法律事務所は35カ国・地域に180の海外事務所を設立している。2018年から50%近く増えているという。
習主席は、外国関連の法律サービスを積極的に拡充し、世界クラスの仲裁機関と法律事務所を育成する必要があるとの認識も示した。
ただ、米国、カナダ、英国、オランダなど一部の西側諸国は中国が違法に「在外警察署」を設置し、海外在住の市民を監視していると批判。中国政府は免許証の更新を支援することが目的で、中国人ボランティアによって運営されていると反論している。
フィリピン政府と反政府共産主義勢力は数十年にわたる武力衝突に終止符を打つことを目指し、6年ぶりに和平交渉を再開することで合意した。
政府とフィリピン共産党双方の代表団は先週、主要な問題に対処するための「和平に向けた共通ビジョン」に合意。仲介役のノルウェー外務省が28日に明らかにした。
交渉が首尾よく進めば、武装闘争を終結し政治運動に切り替えることになるという。
一方、フィリピン陸軍のブラウナー司令官は反政府勢力に対する作戦は継続すると述べたものの、和平合意に至ることへの期待感を示した。
交渉には1986年以来政府との和平交渉に繰り返し携わっている共産党の政治部門フィリピン民族民主戦線(NDFP)が当たる。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は28日、加盟国に対し、ウクライナ支援路線を継続するよう要請した。
NATO外相理事会に出席した際、記者団に対し「ウクライナに必要な武器を確実に提供することはわれわれの義務だ。これはわれわれの安全保障上の利益でもある」と述べた。
米国による支援継続についても楽観的な見方を示し、「米国が支援を提供し続けることを確信している。それはわれわれの合意にも沿っている」と述べた。
ストルテンベルグ氏はまた、ウクライナの戦争は国境を越えて大きな意味を持つと指摘。「プーチン大統領が勝利すれば、ウクライナの人々にとって悲劇であるのみならず、われわれにとっても危険だ。ロシアだけでなく中国にも、国際法に違反して武力で他国を侵略すれば、望みをかなえることができるというメッセージを送ることになる」とした。
同会議に出席するためブリュッセルに到着したブリンケン米国務長官も、NATO外相らがウクライナへの支援を再確認することに自信を示した。
ロシアのプーチン大統領は28日、モスクワで開かれた保守派の大会で「(ロシア人には)ロシアを守るというとても大きな責任がある」と演説し、欧米からロシアの主権を守るよう訴えた。2024年3月の次期大統領選に向けて保守的な有権者の愛国心を鼓舞し、支持を固める狙いがある。
プーチン氏はロシア正教会を中心とする社会組織「全世界ロシア民族大会議」の大会にオンライン形式で参加した。大会には文化人や政府機関、学界、宗教界などから数多くの保守派代表が出席した。
プーチン氏は演説で、ウクライナ軍事侵攻について「主権のための戦いだ」と言明した。保守派が重視する「文化的、精神的、歴史的なアイデンティティー」にも触れ、「ロシアであるという歴史的権利」を擁護していると主張した。
プーチン氏はかねてウクライナ軍事侵攻について、侵略ではなく欧米との戦いだと位置づけてきた。演説でも「欧米には原則的にロシアのように大きく多民族の国は必要ないのだ」と欧米との対立に焦点を当て、危機意識をあおった。
会議のテーマの「ロシア世界の現在と未来」にも言及した。「ロシア世界」という言葉について「わが祖国と精神的なつながりを感じる全ての人を結びつけている」と説明した。「ロシア世界」は、保守派がウクライナも含む概念として利用してきた。
プーチン氏は近く次期大統領選への5選出馬を表明する見通しだ。ウクライナ軍事侵攻を続行するためにも保守的な有権者の支持を必要としている。ロシアは保守層が国民の大半を占めており、政権の主な支持基盤となっている。
●中東
米中央情報局(CIA)のバーンズ長官とイスラエル情報機関モサドのバルネア長官が28日、カタールの首都ドーハでムハンマド首相と会談し、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘休止延長を巡り協議した。関係者がロイターに述べた。
関係者によると、今回の会談は「人道的な戦闘休止合意の延長の進展を基礎とし、潜在的な合意の次の段階についてさらなる議論を開始するため」に開催されたという。エジプト当局者も参加したが、会談の結果は不明。
米当局者によると、バーンズ長官は「人質に関する議論を含むイスラエル・ハマス紛争に関する会合のために」ドーハを訪れたという。
リヤド: サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外相は月曜日、イスラエル・ハマス戦争について協議するためスペインのバルセロナに到着した。
リヤドで先に開催されたアラブ・イスラム合同臨時首脳会議で、ファイサル王子率いる閣僚委員会は、ガザ紛争をできるだけ早く終結させる方法について討議することになった。
「会議は、戦争とそれが生み出す人道的大惨事を止めるための効果的な国際的行動と、民間人を保護し、国際法と人道法のルールの適用を確保するためのコミットメントについて議論した。
ファイサル王子と閣僚は、スペインのホセ・マヌエル・アルバレス外相と会談し、ガザの動向と、イスラエルの人質とパレスチナ人囚人の解放による人道的停戦のこれまでの成果について話し合った。
「(戦争の)唯一の確実な行き先は、さらなる破壊、過激化、パレスチナ人の命とイスラエルを含む地域の安全保障を犠牲にする紛争である。この危機が勃発して以来、私たちはどのような形であれ、双方の側で民間人を標的にしたすべての行為を非難することを明確にしてきました。双方の側」とファイサル王子。
委員会のメンバーは、二国間解決策に関連する国際決議の実施を通じて、公正で永続的かつ包括的な和平の道への回帰を強調し、パレスチナ国民が、東エルサレムを首都とし、1967年6月4日の線に沿って、独立した主権を持つパレスチナ国家を樹立する正当な権利を獲得できるようにすることを求めた。
彼らはまた、国際社会が、国際的な法的・道徳的基準を適用し、ガザ地区と東エルサレムを含む占領下のヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ人民に対する占領軍と入植者民兵による犯罪からパレスチナ人民を保護し、その責任を負うという要求を新たにした。
地中海連合が主催するこのイベントには、サウジアラビア、エジプト、ヨルダン、トルコ、パレスチナ自治政府、インドネシア、アラブ連盟など、多くの外相が代表を務める42の代表団が集まる予定だった。
スペインは、ハマスの攻撃を非難する一方で、イスラエルに攻撃をやめるよう求めたEU諸国のひとつである。
スペインのペドロ・サンチェス首相は先週、ベルギーの首相とともにイスラエル、パレスチナ自治区、エジプトを訪問した際、国際社会とEUがパレスチナ国家を承認する時が来たと述べた。そのため、イスラエルはベルギーとスペインの大使を召喚した。
バルセロナでの会議の議長は、EUのジョゼップ・ボレル外交政策委員長とヨルダンのアイマン・サファディ外相が務めた。
例年、EUとアラブ世界の協力の場となっているこの会議に、イスラエルは出席していない。
月曜日の会合は、EU設立から15年を経たEUの役割に焦点を当てる予定だったが、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃と、それに続くイスラエルのガザ地区での戦争以来、新たな意義を持つことになった。
ボレル氏は、イスラエルの欠席を「遺憾に思う」と述べた。彼は、ハマスの攻撃への非難を繰り返すと同時に、イスラエルに対し、5000人以上の子供たちの命を奪った攻撃を永久に終わらせるよう求めた。
「ひとつの恐怖が、別の恐怖を正当化することはできない。「イスラエルとパレスチナの和平は、ユーロ・地中海共同体全体、そしてそれ以外の地域にとっても、戦略的な必須事項となっている」。
ヨルダンのサファディ氏は、この会談がアラブ諸国とヨーロッパ諸国の間の「ギャップを埋める」助けになることを望んでいると、会談の前夜にAP通信に語った。
「わが友よ、ヨーロッパは重要な役割を担っている。二国家解決策を口先だけのものにとどめてはならない」
アンカラ:イランのイブラヒム・ライシ大統領が事前に発表されていた火曜日のアンカラ訪問を行わないと、トルコ大統領府は理由を明らかにせずに発表した。
この訪問は、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領によって今月初めに発表されていた。その際、両首脳がイスラエルとハマスの戦争への共同対応策を練ることに注力すると、エルドアン大統領は話していた。
エルドアン大統領は、10月7日のハマス武装勢力の攻撃に対抗したイスラエルのガザ地区攻撃に関して、イスラム世界で最も声高に批判する指導者の一人に浮上している。
同大統領はイスラエルに「テロ国家」の烙印を押し、イランが支援するハマスを「解放グループ」と呼んでいる。
また、ハーグの国際刑事裁判所でイスラエルの政治家や軍司令官を裁くことも提案している。
しかし、イスラム教やアラブの指導者との過去の会合では、今月リヤドで行われたものも含め、当面どのような経済的・政治的措置をとるべきかについて、共通点を見いだせないでいる。
アナリストらは、ライシ大統領がトルコに対し、巧言をやめ、発展しつつあるイスラエルとの貿易・エネルギー関係を断つよう圧力をかけるだろうとみている。
イスタンブールにあるイラン研究センターのハッキ・ウイグル所長は、「トルコがイスラエルとの直接・間接貿易をやめることをイランは期待しています」と語った。
「一方、トルコは政治問題と通商問題の分離を望む姿勢をとっています。」
ハマス主導のガザ政府によると、イスラエルがハマスによる前例のない国境を越えた攻撃に対して報復を開始して以降、1万5,000人近く(大半が民間人で、数千人の子供を含む)が死亡した。一方、イスラエルはこのハマスの攻撃で1,200人(大半が民間人)が死亡したと発表している。
ライシ大統領の訪問は、100人以上のパレスチナ人捕虜の釈放と引き換えに、イスラエル人の人質数十人が解放された、停戦協定の延長に焦点を当てた取り組みを伴う。
イランとトルコは535キロメートルにわたって国境を共有しており、そこには緊密な経済関係と地域紛争についての対立した見解という複雑な歴史がある。
トルコはシリア内戦中、イランとロシアが支援するバッシャール・アサド大統領を倒そうとする反政府勢力を支援した。
ナゴルノ・カラバフにおいて、アルメニア分離主義者に対する2度の戦争で勝利を収めたアゼルバイジャンに向けたトルコ政府の支援も、イランに深い苦悩をもたらした。
イラン政府は、コーカサス地域でのバクーの復活が、イランに大勢いる少数民族アゼルバイジャン人の分離主義の野心を刺激する可能性があると懸念している。
イランはまた、北部国境に沿って通るアゼルバイジャンとトルコの間の貿易ルート案についても懸念しており、これによりアルメニアへのアクセスが複雑になる可能性がある。
「トルコとイランの間の最も大きな紛争はコーカサスとカラバフをめぐるものでした」と、アンカラに拠点を置くイランの専門家アリフ・ケスキン氏はいう。
「ガザ地区の紛争により、この問題は棚上げになっていますが、依然として重要な問題として残っています」とケスキン氏は語った。
トルコ大統領府は、エルドアン大統領が日曜日に電話で「イスラエルの残虐行為に対する共通のスタンス」をとることについて、ライシ大統領と話し合ったと発表した。
アナリストらは、イランがイスラエルと米国に圧力をかけるために、ハマスやレバノンのヒズボラなどの組織をどの程度利用するかを見極めようとしていると考えている。
ユーラシア・グループはある報告書の中で、「イランは現在進行中の中東危機への介入に慎重であり、紛争を激化させるかもれしれないいかなる行動も避ける可能性が高い」と伝えた。
そして、「イランは同盟を結ぶ組織を完全に制御できるわけではないため、意図しない行動が米国の報復をもたらし、紛争が激化するリスクがある」とした。
エルドアン大統領も戦争の拡大について繰り返し懸念を表明している。
エルドアン大統領府はライシ大統領との電話後、「イランとトルコは一時停戦を恒久的なものにし、永続的な平和を実現するために引き続き一致協力して取り組む」と発表した。
バグダッド:イラク首相の外務顧問は、調停者がイスラエルとハマスの4日間の一時停戦の延長を求めている中、ガザでの現在の停戦が恒久的な停戦にならない場合、イラクは地域紛争の危険性を見ていると述べた。
ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃に対するイスラエルのガザへの壊滅的な砲撃は、レバノンのヒズボラやイラクのいくつかの派閥を含むこの地域のイランと同盟を結ぶ武装グループを引き込み、彼らはイスラエルとアメリカ軍にほぼ毎日攻撃を仕掛けている。
しかし、イスラエルとハマスが先週4日間の停戦を開始して以来、イラクやシリアでの米軍への攻撃は報告されていない。
カタイブ・サイイド・アルシュハダやカタイブ・ヒズボラなど、最近の攻撃の背後にいるイラクの主要武装勢力の一部は、ガザ停戦に従うと表明しているが、停戦が終了すれば攻撃を再開すると示唆している。
また、彼らは声明の中で、イラクに駐留する米軍の最終的な退去を依然として求めていると述べている。約2,500人の米軍が、「ダーイシュ」の残党と戦うイラク軍への助言と支援を任務としている。
イラクのムハンマド・シア・アル・スダニ首相の外交顧問であるファルハド・アラアディン氏は、「この地域全体が、すべての人を巻き込むかもしれない壊滅的な紛争の危機に瀕している」
「このため、この紛争におけるいかなる停戦も、まずはパレスチナとガザの人々にとって、そしてイラクを含むこの地域のすべての国にとって、現段階では有益かつ重要なものであると考える」と、彼はロイターに語った。
トーマス・ザイラー駐イラク欧州連合(EU)大使は、ソーシャルメディアへの投稿で、イラクの諸派が「攻撃の停止を継続する」ことを望むと述べた。
カタイブ・ヒズボラによるソーシャルメディアへの投稿によれば、先週イラクで行われた2回の米軍の攻撃でカタイブ・ヒズボラのメンバー10人が死亡した。
カタイブ・ヒズボラはイラクの民衆動員部隊(PMF)の一部であり、2014年にダーイシュと戦うために結成されたシーア派イスラム教徒を中心とする武装集団である。
表向きは国家の一部だが、このPMFの最も強力なイラン支援派閥の一部は、しばしば指揮系統の外で行動している。スダニ首相は、武装集団によるイラクの外国軍への攻撃は違法であり、国益に反すると述べている。
欧州資産運用最大手アムンディ(AMUN.PA)は、トルコリラに対する見方を強気方向に転換し始めた。5月下旬に再選を決めたエルドアン大統領の政権が、その後進めてきた経済政策を好感しているためだ。
エルドアン氏は、伝統的な経済理論に反するような政策を改め、積極的な利上げを容認。外資呼び込みに向けて、金融市場をがんじがらめにしていた規制の解除に動き、外貨準備の拡充にも乗り出した。
こうした中でアムンディは、全面的なリラ買いにまでは踏み込んでいないものの、長らく堅持していたリラ売り持ちを巻き戻しつつある。
同社の新興国市場債券共同責任者セルゲイ・ストリゴ氏は、トルコ中央銀行が先週500ベーシスポイント(bp)の利上げを実施したことは「非常に好ましい材料」で、インフレ対応に真剣な姿勢の表れだと評価した。
ストリゴ氏はロイターに「数週間前にトルコリラのアンダーウエートのカバーを開始した」と明かし、まだ資金配分を増やす態勢は整っていないが、その時期が視界に入ってきたのは間違いないと付け加えた。
アムンディ以外にも、リラ建て資産投資の「瀬踏み」を始めた外国の投資家や銀行が出現している。
JPモルガン(JPM.N)はここ数週間で、トルコの為替フォワード取引を推奨。同社とゴールドマン・サックスはいずれも、残存1―10年のトルコ政府債を積極的にセールスしていることが、複数の投資家の話で判明した。
過去4年で中銀総裁を4人も更迭するなど、エルドアン氏の行動には予測不能な面があるため、現時点ではリラ建て政府債の外国人保有比率は極めて低い。ただストリゴ氏は、政策の一貫性が保たれるなら、来年は外国資金が大量に戻ってくる可能性があるとの見方を示した。
●中南米・アフリカ
メキシコ中央銀行のジョナサン・ヒース理事は27日、インフレ率が今後も低下すれば2024年2月か3月までに金利を「調整する」可能性があると、地元放送局とのインタビューで述べた。
中銀は長期にわたり金融引き締めスタンスを維持する意向で、早期の金利引き下げがあったとしても「わずかな調整」と受け止めるべきで、利下げサイクルの開始ではないと説明した。
1度か2度の利下げはあるかもしれないが、「非常に緩やか」で「慎重な」ものになると述べた。
中銀は3月以降、歴史的高水準となる11.25%で政策金利を維持している。
国内インフレ率は10月に前年比4.26%に鈍化したが、中銀目標の3%(プラスマイナス1%ポイント)を依然上回っている。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ総裁は27日、IMFは対アルゼンチン支援に「非常に意欲的」で、脆弱な国が直面する長期的な課題への取り組みを支援する「強靭性・持続可能性トラスト(RST)」の対象候補になる可能性があると述べた。
ゲオルギエバ氏は、訪米しているアルゼンチンのミレイ次期大統領と28日に対面で会談する予定。ミレイ氏とIMFは24日、初のオンライン会合を開催。ゲオルギエバ氏は「非常に建設的な関与、非常に真剣な協議だった」と述べた。
ゲオルギエバ氏はロイターに「今後の関与を見極めたいが、期待が持てる最初のステップだ」と発言。
「アルゼンチンが自国でできる最も重要な方法は、蓄積されたマクロ経済の不均衡への対処だ。だが、繰り返しになるが、われわれはアルゼンチンを支援し、インフレという深刻な問題に対処するとともに、雇用と経済全体の活性化につながる民間セクター主導の成長に向けた環境を整えることを強く望んでいる」と述べた。
ミレイ氏は来月10日に大統領に就任する。
ゲオルギエバ氏は、アルゼンチンがどのように気候変動の影響を緩和できるか協議したいとも発言。「アルゼンチンには(干ばつなど)非常に深刻な適応の問題だけでなく、IMFが支援できる非常に大きな構造的問題がある」と述べた。
RSTは脆弱な中所得国や島しょ国を支援する制度で、約140カ国に低利融資を供与している。アルゼンチンは現在、IMFから440億ドルの支援を受けている。
●市況
<為替> ドルが3カ月超ぶりの安値に沈んだ。米経済の成長が鈍化し始めているとの見方が広がり、市場は来年前半の利下げを織り込み始めた。
<債券> 大半の米債利回りが低下。指標10年債利回りは2カ月ぶりの低水準を付けた。FRBの発言で、FRBの利下げが視野に入っている可能性が示唆されたことを受けた。
CMEのフェドウオッチによると、米金利先物市場では3月の利下げ確率を33%、5月は約65%と想定。27日時点ではそれぞれ21%、約50%だった。
<株式> 狭いレンジで推移した後、わずかに上昇して取引を終えた。相反する内容となったFRB当局者の発言を投資家が精査する中、堅調な消費者データが幾分の支援となった。
<米原油先物> 対ユーロでのドル安などを背景に買われ、5営業日ぶりに反発した。米国産標準油種WTIの中心限月1月物は前日清算値(終値に相当)比1.55ドル(2.07%)高の1バレル=76.41ドルだった。2月物は1.50ドル高の76.59ドル。
<ロンドン株式市場> 小幅続落して取引を終えた。HSBCによる目標株価の引き下げを受けて英高級ブランド会社バーバリーが売られたのが相場の重しとなった。
<欧州株式市場> 続落して取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)高官らの発言を受けて来年の利下げ開始観測が後退し、売りが優勢となった。
STOXX欧州600種ヘルスケア株指数(.SXDP)は1.43%下落。欧州のバイオ医薬品会社アルジェニクス(ARGX.BR)が10.1%と大幅に下げ、開発中の出血性疾患治療薬の治験で主要評価項目も副次項目も達成しなかったことが嫌気された。
デンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)は3.1%安。
フランスの高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)(LVMH.PA)は1.8%下げた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが低下した。欧州中央銀行(ECB)高官の講演や週後半に発表が予定されるインフレ指標に注目が集まる中、米国債の動きに連動した。
デリバティブ市場では、来年のECBの利下げ幅を90bp程度と織り込んでいる。
日経先物33,345、ダウ先35,462、債先146.17、米4.317、独2.4885、仏3.059、西3.495、伊4.265、英4.2050、波5.530、原油76.68、銅8,456、ドル円147.20、ユーロドル1.1000
※11/29 9時15分頃
備忘録(2023/11/27)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
スイスのプライベートバンク大手ジュリアス・ベア(BAER.S)は27日、欧州のあるコングロマリットに対し名目で6億0600万スイスフラン(6億8436万ドル)の融資債権を持つと発表した。
ジュリアス・ベアはこのコングロマリットの名前を明らかにしなったが、関係筋は、経営難に陥っているオーストリアの不動産グループ、シグナだとロイターに語った。
シグナは、ニューヨーク・マンハッタンの超高層ビル、クライスラービルを所有する不動産大手だが、金利上昇を受けた市況低迷で経営が悪化。24日にグループ会社の一つが独ベルリンで破産を申請したとされる。今週さらに子会社が破産申請するとの情報も出ている。
ジュリアス・ベアは6億0600万フランは異なるグループ会社に対し行った3件の融資だと説明。「この顧客グループに対するエクスポージャーは、商業用不動産と高級小売業に関連する複数の担保の裏付けがあり、現在、より長期的なリストラクチャリングの対象となっている」とした。
この融資債権は、同社の非公開企業向け融資債権(10月末時点で15億フラン)の中で最大という。
先週、関係筋は、ジュリアス・ベアがシグナに対するエクスポージャーを持ち、一部融資の減損処理をする見込みだとロイターに語っていた。
ジュリアス・ベアのフィリップ・リッケンバッハー最高経営責任者(CEO)は27日発表した声明で「一つのエクスポージャーのために、最近当行のステークホルダーに不確実性をもたらしたことを遺憾に思う」と述べた。
スイスのプライベートバンク、ジュリアス・ベア・グループは、超富裕層顧客の一部に融資する事業を見直している。単一の融資先へのエクスポージャーが6億600万スイス・フラン(約1030億円)に上っていたことが判明したためだ。
ジュリアス・ベアは27日の発表文で、貸し付けはある欧州複合企業の傘下にある3つの異なる事業体になされたもので、長期的な債務再編の手続きが取られていると説明。顧客の名前は明かさなかった。
だが、ブルームバーグはこれまでに、この顧客はオーストリアの大物実業家レネ・ベンコ氏が創業したシグナ・グループで、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)がエクスポージャーを調べていると報じた。
ジュリアス・ベアはこのエクスポージャーに関連して11月前半に7000万フランを引き当てたと認め、必要に応じ一段の調整措置をとると説明した。先週には引き当てが予想以上に膨らんでいることが伝えられ、株価は過去3年余りで最大の下落を記録した。シグナの一部門は24日にベルリンの裁判所に破産を申請し、グループ救済の取り組みが頓挫しつつある兆しが見えた。
ジュリアス・ベアのフィリップ・リッケンバッハー最高経営責任者(CEO)は発表文で、「残念だが、単一のエクスポージャーが当社株主にとって最近不透明性を生んだ」と指摘。「取締役会ととともに、当社のプライベートデット事業とその執行の枠組みを検証する」と表明した。
問題化した融資はプライベートデット事業で単一として最大のエクスポージャーだという。同事業は超富裕層向けに合計15億ドルを仕組み金融の形で貸し付けており、自身の企業の株式やその他の投資によって資金が固定されていると考えられる顧客に対し、非公開の資産を担保に流動性を提供するサービスだった。ジュリアス・ベア全体の融資残高は410億フラン。
●その他産業
デジタルデータ追跡のアドビ・デジタル・インサイツによると、サイバーマンデーのオンライン売上高は前年比5.4%増の124億ドルに達し、過去最高となる見通し。
日中時点では、投資家はネット通販大手アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)や小売大手ウォルマート(WMT.N)、アップル(AAPL.O)が勝ち組になるとみて、株価は上昇している。
ただ、小売コンサルタントのキャロル・スピークカーマン氏は27日、「最大の値引きはまだ先であり、消費者はそれを意識している」と述べた。感謝祭の翌日であるブラック・フライデーの店頭の賑わいのなさを、消費者が非常に選別的であることの表れだと指摘した。
マスターカード・スペンディングパルスによると、ブラックフライデーの店舗およびオンライン売上は前年比2.5%増。米国のオンライン売り上げは8.5%増加したが、実店舗の売り上げは1.1%増加にとどまったという。
サイズモア・キャピタル・マネジメントのチャールズ・サイズモア最高投資責任者(CIO)は、小売業者は今後数週間、さらに値引きを余儀なくされるだろうと述べた。
またアドビ・アナリティクスによると、サイバーマンデーでは後払いサービスを利用する消費者が過去最高になると予想されている。
サイバーマンデーの売上高予想は120億─124億ドル。そのうち後払いサービス利用の購入額は7億8200万ドルと、前年比約19%急増する見込み。
これを受け、後払い決済サービス(BNPL)大手の米アファーム・ホールディングス(AFRM.O)の株価は一時11%急騰した。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
新興国市場の株式と通貨は今月、月間ベースで1月以来の大幅上昇に向かっているが、今後はこの上げを頓挫させかねない大きな落とし穴が待ち構えている。
今後数カ月に予想される逆風としては、米連邦準備制度のタカ派姿勢が再び強まるリスクや、台湾やインドを含む主要市場での選挙などがある。また、南米アルゼンチンでは新大統領の下で経済が大きく変化する恐れがあるほか、チリでは国民投票を受けて暴動が起きる可能性もある。最後に、11月に大幅上昇しているだけでも、反落を招くことが見込まれる。
GAMAアセット・マネジメントのグローバル・マクロ・ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デメロ氏は「11月は全てのリスククラスで動きの振れ幅が非常に大きかったため、幾分かのボラティリティーを予想している」と指摘。ただ、プラスの実質金利と比較的混雑していないポジショニングによって新興国資産の上昇トレンドが支えられるだろうとの見方を示した。
新興国株の指標、MSCI新興市場指数は11月に入り7.1%上昇し、MSCI新興国通貨指標は2.3%高と、ポジティブな材料を背景にいずれも1月以来の大幅な上げとなっている。米金融当局が引き締めサイクル終了に近づいているとの楽観的見方が広がったほか、米カリフォルニア州で行われたバイデン米大統領と中国の習近平国家主席の会談が地政学的緊張の緩和を告げるものと受け止められた。
こうした好材料の多くが織り込まれた今、新興国市場は以下の弱気リスクに脆弱(ぜいじゃく)になっている可能性がある。
1. 米金融当局のタカ派姿勢
大半の市場関係者は、米金融当局のムード転換が主な脅威だとの見方で一致している。金利予測分布図(ドットプロット)の修正が発表される予定の12月12、13日の連邦公開市場委員会(FOMC)に注目が集まっている。
2. 台湾総統選
今後数カ月に予定されている多くの選挙の中でも、来年1月の台湾総統選は市場に影響を与える可能性の面で際立っている。
世論調査に基づくと、来年1月13日の総統選では与党・民主進歩党の候補が勝利する見通しだが、そうなった場合、同党は中国との関係改善により慎重な姿勢を取っているため、台湾の資産にとってはマイナスになるとみられている。
3. その他の国の選挙
インドネシア、エジプト、インドでも選挙が予定されており、ポピュリスト的な支出の公約が各国の財政を圧迫する可能性がある。
インドネシアの大統領選は来年2月14日に実施され、ジョコ大統領の後任が選ばれる。
エジプトでは12月10-12日に大統領選が予定されているほか、インドでは来年4-5月の総選挙に先立ち、今年11-12月に5州で地方選挙が行われる。
4. アルゼンチン、チリ
また、南米の政治情勢も、新興国資産にとって幅広い脅威となりかねない。
アルゼンチンでは今月19日に行われた大統領選の決選投票で、同国経済のドル化や中央銀行の廃止などを主張するリバタリアン(自由至上主義者)のアウトサイダー、ハビエル・ミレイ下院議員が地滑り的勝利を収めた。
チリは12月17日に憲法改正に関する国民投票を実施する。同国は2019年の大規模な抗議デモをきっかけに、3年間にわたり独裁政権時代に作成された現行憲法の改正に取り組んでいる。新憲法を目指す最初の試みは昨年、圧倒的多数で否決された。
来年前半の米国は軽度の景気後退に見舞われるため、米連邦準備理事会(FRB)は現在市場が想定するよりも大幅な利下げに動く――。ドイツ銀行(DBKGn.DE)のエコノミストチームは27日のリポートでこう主張し、来年中の利下げ幅が175ベーシスポイント(bp)に達するとの見通しを示した。
現在の政策金利は5.25―5.5%なので、来年末には3.5―3.75%まで低下する形。LSEGのデータによると、市場が織り込んでいる来年12月の政策金利水準は4.48%だ。
ドイツ銀行のシニア米国エコノミスト、ブレット・ライアン氏はロイターの取材に対して、米経済は来年第1・四半期と第2・四半期に連続のマイナス成長に陥り、失業率は足元の3.9%から来年半ばは4.6%まで「かなり急速に上昇する」と説明。こうした状況を受けて来年半ばにはインフレ圧力も和らぎ、より積極的な利下げ局面が始まると付け加えた。
具体的には来年6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で最初に50bpの利下げが決まり、さらに来年末までに合計で125bpの利下げが実施される、というのがドイツ銀行の見立てだ。
ただライアン氏は、これまでのように米経済が底堅さを発揮した場合は、利下げ幅が小さくなるとくぎを刺した。
米商務省が27日発表した10月の新築一戸建て住宅販売戸数(季節調整済み)は年率換算で前月比5.6%減の67万9000戸だった。ロイターがまとめた市場予想の72万3000戸を下回った。住宅ローン金利が高水準にあり、割高感が強まったことが背景にあるとみられる。
9月の販売戸数は71万9000戸と、前回発表の75万9000戸から下方改定された。
10月の前年同月比は17.7%増。
ネーションワイド(オハイオ州)のエコノミスト、ダニエル・ビルハーバー氏は「新築住宅市場は歴史的な基準から見ても非常に堅調であり、極めて低水準の中古住宅在庫によって引き続き押し上げられている」と述べた。
前月比の地域別では北東部と人口が密集する南部で増加。ただ、最も住宅価格が低い中西部や住宅価格が高価な西部では減少した。
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)のデータによると、需要が多い30年固定住宅ローンの平均金利は10月下旬に7.79%と2000年11月以来、約23年ぶりの高水準を付けた。その後下がったものの、先週時点で7.29%と高止まりしている。
全米リアルター協会(NAR)が先週発表した10月の米中古住宅販売戸数は13年超ぶりの低水準に落ち込んだ。市場に出回っている中古住宅の在庫は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の水準を50%近く下回っている。
一方、既に住宅を所有している人の多くは3%を下回る住宅ローン金利で購入していた。このため住宅を手放すことを控えており、新築住宅建設の需要を押し上げる要因となっている。
アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏は「(住宅を持っている)世帯はパンデミック中に低水準の住宅ローン金利を適用したため、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが望ましい効果を示していない」との見方を示した。
10月の新築住宅価格の中央値は40万9300ドルで、前年同月比17.6%下落。1964年の統計開始以来最大の下落率となった。建築業者による値下げなどが一因とみられる。
10月は15万─49万9999ドルの価格帯の物件が成約戸数の大部分を占めた。10月末時点の新築住宅の在庫は43万9000戸で、9月の43万3000戸からわずかに増加した。
10月の販売ペースに基づく在庫の消化期間は7.8カ月。前月は7.2カ月だった。
ドイツの連立与党は27日、2023年度の補正予算案を発表した。憲法裁判所が新型コロナウイルス対策予算の転用を認めない判決を下したことを受け、財政赤字を抑制する「債務ブレーキ」の一時停止を盛り込み、緊急的に予算を確保する。
議会が予算案を承認すれば、債務ブレーキの停止は4年連続となる。
連立与党は、ロシアがウクライナ全面侵攻を開始した2022年以降に発生したエネルギー危機の波及効果で物価が高騰し、債務ブレーキの一時停止を正当化する緊急事態が発生したと説明。「家計消費の落ち込みでドイツ経済の下降スパイラルが引き起こされ、繁栄と雇用の大幅な縮小につながるリスクが存在している」とした。
ドイツ政府は2023年補正予算案を承認した。新規の純借り入れを制限する「債務ブレーキ」を4年連続で停止することが盛り込まれている。
ドイツでは憲法裁判所が今月下した判決により、数百億ユーロに及ぶ特別基金の債務をさかのぼって通常の連邦予算に計上することを強いられていた。
これはドイツの債務負担が増えることを意味しないものの、今年の純借入額は250億ユーロ(約4兆700億円)増えて706億ユーロになると、財務省は説明。昨年末に承認された当初予算案では456億ユーロとされていた。
リントナー財務相は当初、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)、次いでエネルギー危機に対処するため停止していた債務ブレーキを今年は再開させると主張。この規則は憲法に明記されており、政府の管理が及ばない自然災害や緊急事態が発生する場合には一時的に停止することができる。
ショルツ首相率いる連立政権は、来年の財政計画でも通常予算外の新規借り入れを増やさざるを得なくなりそうだ。従来の計画では24年の新規連邦債務を約220億ユーロとしているが、いまや400億ユーロ前後に膨らむ公算が大きい。
企業寄りの政党、自由民主党(FDP)の党首でもあるリントナー財務相は、連立パートナーの社会民主党(SPD)と緑の党から、債務ブレーキをもう1年停止することを支持するよう圧力を受けている。
補正予算案は議会に送付され、12月1日朝から審議される見通し。
●中国・アジア・ロシア・東欧
2024年1月に実施される台湾総統選挙は三つどもえで争われる構図が固まった。
総統選は有権者にとって、蔡英文政権の下で亀裂が深まった対中関係を修復し、有事リスクを後退させるチャンスとなる。しかし対中融和を掲げる最大野党・国民党と野党第2党・民衆党が候補一本化の調整に失敗したことから、先行きは不透明となった。
総統選は与党・民進党の頼清徳副総統、国民党の侯友宜新北市長、民衆党の柯文哲前台北市長の争いとなった。頼氏は米国との連携を一段と強める姿勢を示している。一方、野党候補の2人は共に、中国との対話を再開する計画だと表明している。フォックスコン・テクノロジー・グループ創業者の郭台銘氏は立候補を断念した。
野党が候補一本化に失敗したとはいえ、民進党の3期連続の政権運営となるかどうかは予断を許さない状況だ。特に若い有権者の間では、8年近く政権を担ってきた同党への不満や、変化を求める声が高まっている。民間シンクタンクの台湾民意基金会が24日に公表した世論調査結果によると、頼氏の支持率は31.4%に低下し、侯氏(31.1%)が迫っている。柯氏は25.2%だった。
ペンシルベニア州のフランクリン&マーシャル大学の顏維婷助教は「変化を望む有権者はかなり多く、民進党が立法院(国会)で過半数を失う可能性は高い」と指摘した。
フーバー研究所の特別研究員、カリス・テンプルマン氏は「現在の情勢は台湾の多くの有権者にとって危険なように思われる」とし、「突然の禁輸措置や、外交的孤立の深まり、さらなる戦争の脅し」に関する懸念を理由に挙げた。
その上で同氏は、侯氏が自分の政権は中国と協調できると説得力をもって主張できるし、侯氏が総統になれば、より抜本的な国防改革を行うための時間が稼げるだろうと述べた。
副総統候補の人選は各候補の政策の優先度を如実に表している。頼氏は副総統候補に台北駐米経済文化代表処代表(駐米大使に相当)を務めた蕭美琴氏を指名しており、民進党が米国を中心に海外との関係強化に取り組んでいることを示す。
蕭氏は23日の会見で、「われわれは戦略地政学上、極めて困難な状況にあり、米国との揺るがないパートナーシップが非常に重要だ」と語っていた
一方、侯氏はテレビ司会者でメディア経営者の趙少康氏を副総統候補に選んだ。かつて国民党の立法委員だった趙氏は1990年代初頭に党を離党。統一を強硬に主張する政党を共同創立したが、2021年に国民党に復帰した。
顏助教は侯氏が趙氏を副総統候補に選んだことは、台湾の最終的な中国との統一を支持する有権者層を固めることを狙った明確なシグナルだと指摘。「国民党がこの戦略的な投票キャンペーンに成功すれば世論調査で同党候補の支持率が上がり、より接戦になることが予想される」と分析した。
中国人民銀行(中央銀行)は27日、経済へのシステミックリスクを回避し、金融機関の監督を通じて地方債務リスクを解決する方針を示した。第3・四半期の政策実施報告書を発表し、経済・金融政策の一般的な指針を示した。
金融政策は力強く的を絞ったものとし、拡大する内需をより支援すると述べた。
人民銀は「不動産市場の需給ダイナミクスは大きく変化している」とした上で、より迅速な経済変革が急務だとも指摘。今年の経済成長率は5%前後になるとの見通しも改めて示した。
来年1月に行われる台湾総統選で野党の候補一本化が実現しなかったことを受けて、中国では対中強硬路線を敷く与党・民主進歩党(民進党)が政権を維持するのではないかとの懸念が強まっている。
最大野党の国民党と野党第2党の台湾民衆党は候補一本化を巡る協議が決裂し、個別に立候補者を届け出た。世論調査でリードする民進党候補の頼清徳副総統にとって追い風となった]
中国で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は24日遅く、短い声明を発表し、総統選が平和と安定の維持に寄与することを望むと表明。台湾は「戦争か平和かの選択」に直面していると改めて主張した。
中国国内のソーシャルメディアでは、野党の一本化決裂に落胆する声が相次いでいる。
中国のシンクタンク、CICGアジア太平洋の戦略研究ディレクターであるZhang Xuesong氏は「(野党の協議決裂は)台湾海峡両岸の平和にとっての損失だ」と微博(ウェイボー)に投稿。「非常に悔しい一日だった」と述べた。
別の微博ユーザーも「協議決裂のニュースを見た。希望を失った」と投稿している。
民進党の頼氏は26日夜の選挙集会で、台湾が中国の一部であることを認めれば主権を失うと発言。「主権がなければ、土地や家の所有権も失う」と訴えた。
国民党の侯友宜候補は支持者に対し、頼氏に投票すれば戦争に賛成票を投じることになると主張。平和を実現できるのは自分だけだと訴えた。
中国共産党は政治局会議を開き、対外問題を巡って党中央の集中・統一的な指導をさらに強化する必要があるとの認識で一致した。国営メディアが27日に報じた。
また、体系的で完全な対外関連法規システムの形成を加速させる必要があるとも表明した。
中国の工業利益は10月に、デフレ圧力が続く中、伸び率が前月を大幅に下回り、2023年末の景気回復が依然脆弱(ぜいじゃく)であることを示唆した。
国家統計局が27日発表したデータによると、10月の工業利益は前年同月比で2.7%増。9月の11.9%増、8月の17.2%増から大きく伸びが鈍化した。1-10月は前年同期比7.8%減。1-9月は9%減だった。
●中東
エジプト国家情報局(SIS)のディア・ラシュワン長官は27日、エジプトとカタールはパレスチナ自治区ガザでの戦闘休止期間を2日間延長する方向で合意に近づいていると述べた。
2日間の延長にはイスラム組織ハマスが拘束しているイスラエル人の人質20人とイスラエルが捕らえているパレスチナ人60人の解放が含まれるという。
27日にはイスラエル人の人質11人が解放される予定だが、パレスチナ人33人の解放に向けた交渉は引き続き続いているとした。
北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は27日、戦闘休止を延長し、さらなる人質解放を可能にするよう要請。欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は同日、ガザの戦闘休止延長は手の届く範囲にあり、これにより国際社会は紛争の政治的解決に取り組むことが可能になると述べた。
イスラエルの戦時内閣に参加しているガンツ前国防相は26日、ネタニヤフ首相に対し、戦時予算に戦費や経済対策費以外の資金を盛り込むべきではないと主張、連立政権を維持するための費用は全て除外すべきだと訴えた。
ネタニヤフ首相は昨年、連立政権を樹立した際、連立相手のユダヤ教超正統派の政党や極右政党に補助金を支給することに同意していた。
ガンツ氏は野党から戦時内閣に参加。ネタニヤフ氏への批判をためらっておらず、戦時内閣の危うさが浮き彫りになっている。
ガンツ氏はネタニヤフ氏に宛てた書簡で、予算案が修正されなければ同氏の派閥が「反対票を投じ、次の措置を検討する」と表明。
首相府は、問題になっているのは予算全体の1%前後として、ガンツ氏の批判に反論。27日に予算案の採決を行う方針を示した。
パレスチナ自治区、ガザ: イスラエルとハマス間の停戦は27日、最後の24時間に入った。過激派組織は、攻撃によって孤児となった4歳の子供を含む、より多くの人質を解放した後、停戦を延長する用意があると述べた。
金曜日に始まった一時停止では、数十人の人質が解放され、その見返りとして100人以上のパレスチナ人囚人がイスラエルによって解放された。
今注目されているのは、28日の早朝に予定されている停戦の終了までに停戦が延長されるかどうかだ。
「ジョー・バイデン米大統領は26日に、「それが私の目標であり、我々の目標だ。ガザで困窮している人々に、より多くの人道的救援を送る、捕虜が居続ける限り戦闘を一時停止してほしい」と述べた。
「私は、この地域のすべてのプレーヤーが、人質がすべて解放され、…これを終わらせる方法を探していると認識している。ハマスがガザを完全に掌握することはなくなった」
ハマス側は停戦を延長する意向を示しており、ある情報筋はAFP通信に、ハマス側は停戦を「2〜4日」延長することに前向きだと仲介者に伝えたと語った。
「レジスタンスは、その間に20人から40人のイスラエル人捕虜の釈放が可能だと考えている」と情報筋。
休戦協定では、150人のパレスチナ人捕虜と引き換えに、武装勢力に拘束された50人の人質が4日間で解放されることになっている。少なくとも10人のイスラエル人捕虜が解放されれば、休戦は延長される仕組みになっている。
複雑な要因のひとつは、ハマス以外のグループが拘束していると思われる人質がいることだ。
イスラエルは、より多くの解放を確保するために停戦を延長するよう、同盟国だけでなく人質の家族からも大きな圧力に直面している。
フランス人を含むすべての人質が解放されるまで休戦を延長することは、「良いことであり、有益であり、必要なことである」と、フランスのカトリーヌ・コロンナ外相は26日にBFMTVに語った。
イスラエル政府関係者によれば、10月7日にハマスの過激派が国境を越えて押し寄せ、民間人を中心に1200人が殺害されてから数週間の後、3日連続で人質が解放されたことで、イスラエルでは涙の再会が実現し、士気が高まったという。
これに対してイスラエルは、ハマス壊滅のための軍事作戦を開始し、ガザのハマス政府によれば、15,000人近くを殺害した。
日曜日に解放された第3グループの人質には、ハマスの攻撃で両親を殺された4歳のアメリカ人、アビゲイルさんが含まれていた。
「彼女が私たちのところに戻ってくるのは、何という喜びでしょう。しかしその一方で、両親のいない現実に戻ってしまうのは残念だ」とイスラエルのネタニヤフ首相は語った。
「彼女には両親はいないが、彼女を受け入れる国民全体がいる」と彼は付け加えた。
また、日曜日に解放された人々の中には、「深刻な放置の後」重体で集中治療室に運ばれた84歳の女性もいた、と医療当局者は述べた。
日曜日に休戦協定に基づき、13人の人質が39人のパレスチナ人囚人と引き換えに解放され、パレスチナとハマスの旗を振って歓喜する群衆に迎えられた。
ハマス側はこれとは別に、タイ人3人とロシア系イスラエル人のロン・クリボイさんを解放した。ロン・クリボイさんは、「ロシアのプーチン大統領の努力を称え、パレスチナの大義を支持」して解放されたと語った。
イスラエルは、カタール、アメリカ、エジプトが仲介する一時停止を延長する圧力に直面している。
「我々は最後まで、つまり勝利まで続ける」とネタニヤフ首相は日曜日、2005年以来初めてイスラエルの首相が訪問したガザで語った。
ネタニヤフ首相は、90日間に300億シェケル(80億ドル)の戦争予算を提案している。
緑の軍服を着て兵士に囲まれたネタニヤフ首相は、人質を全員解放し、「ハマスの抹殺」を誓った。
「何者もわれわれを止めることはできないし、われわれには戦争のすべての目標を達成する力、強さ、意志、決意があると確信している」と語った。
ガザの別の場所では、数週間の砲撃の後、住民がかつて家が建っていた瓦礫の山を搔き分け、持ち物を探していた。
「何か残っていないか、何か救い出せるものはないかと見に来ました。私たちは何も持たずに逃げてきました」と、ガザ市の南、アル・ザハラにある自宅の廃墟を見ながらウス・サマ・アル・バスさんは言った。
「すべてを失いました。もう疲れた。もう十分です。もう耐えられない」
ガザ市郊外では、家族連れが荷車に乗せた荷物や親族を押しながら、子どもを抱いて徒歩で道路に出て南へ向かった。
イスラエルは、ガザにいるパレスチナ人に対し、北部から比較的安全な南部に避難するよう伝えているが、現在、南部の都市ハーン・ユーニスにいるパレスチナ人に対し、(その地域に)人質が拘束されていることを認識している、と警告するテキストメッセージを送っている。
「軍隊は人質を拘束する人物を無力化する」とメッセージには書かれていた。
国連は、ガザの人口240万人のうち170万人が戦闘によって避難したと推定している。
戦闘が一時停止したことで、水やその他の必需品が不足し、生き延びるのに苦労しているパレスチナ人により多くの援助が届くようになった。
しかし、国連パレスチナ難民救済機関(UNRWA)のスポークスマンであるアドナン・アブ・ハンサ氏は、「前例のない」人道的必要性があると警告した。
「少なくとも2カ月間は、1日200台のローリーを送り続けるべきだ」と述べている。
ロンドン:ガザ地区の停戦が火曜日以降も長く続く可能性は低く、日曜日にはイスラエルが空と地上の攻撃を再開する準備をしている兆候が見られたとガーディアン紙は報じた。
イスラエル国防軍(IDF)が「作戦の停止」と表現した4日間の停戦は、ハマスが拘束している人質50人の移送状況にもよるが、火曜日に期限が切れる。この協定はハマスが人質10人を解放するごとに1日延長される可能性がある。
「停戦が1週間以上続くとは思えない」と国際テロ対策研究所を運営する元イスラエル軍諜報員のミリ・エイシン氏はガーディアン紙に語った。
エイシン氏は、IDFはハマスの軍事能力を解体したいと考えており、「それを実現する唯一の方法は、体系的かつ慎重な地上作戦によるものだ」と述べた。
月曜日の朝、IDFのヘルジ・ハレヴィ参謀長はイスラエル兵に次のように語った。「君たちの目に、今この瞬間の重大さ、戦争のすべての目的を達成するための闘争心と決意が映っているのが見えた。」
「『人質を取り戻すまで戦いたい』という君たちの声が聞こえた。だからこそ、我々はそれに向かって行動しているのだ」と参謀長は言った。
イスラエル軍は、ハマスの3万人強の兵力のうち1,000人から2,000人の戦闘員を死に追いやったと推定している。
しかし、イスラエルはガザ地区で少なくとも1万4,800人のパレスチナ人(大半は民間人)を殺害し、さらに数万人を負傷させた。ガザ地区当局によると、イスラエル軍はこの包囲した飛び地に約4万トンの爆弾を投下し、病院や学校など重要な公共施設を攻撃した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はハマスを排除すると約束したが、ハマスは依然として戦闘と交渉の両方の能力を保持しているとガーディアン紙は報じている。
激しい爆撃作戦の後、金曜日に休戦協定が発効した際、IDFはガザ地区北部地域を包囲していた。しかし、抗戦は続いていた。衛星画像の分析によると、ガザ地区北部の建物の40パーセントから50パーセントが破壊され、ジャバリアなどの地域が都会の荒れ地に変わっていることが示唆されるとガーディアン紙は付け加えた。
IDFの次の目標はパレスチナ民間人が避難するつもりであった南部、特にハマスの本部があり、指導者のヤヒヤ・シンワールがいるとイスラエルが主張するハーン・ユーニスである。
先週の月曜日、イスラエルは人々(その多くは以前に避難生活を余儀なくされていた)に対し、市内からの退去を命じた。彼らは、すでに密集している西方のアルマワシ沿岸地域に避難することが予想される。
戦争再開の決定は、ネタニヤフ首相が率いるイスラエル戦時内閣に委ねられている。同首相は先週、右派連合同盟に対し、休戦協定を納得させるために、人質50人が解放された後に戦争を再開すると約束した。「はっきりさせておきたい。戦争は続いているのだ」と首相は水曜日に語った。
日曜日、米国の国家安全保障担当のジェイク・サリバン大統領補佐官は、確実に「軍事行動が民間人の無事が確認されたうえでのみ行われる」ようにすることについて、ホワイトハウスはイスラエルと「建設的な対話」を行っていると述べた。
英国王立防衛安全保障研究所と協力する中東専門家のH.A.ヘリヤー氏は、ハマスを完全に排除するのは難しいだろうとガーディアン紙に語った。
「問題は、人々がどれだけの犠牲を被るかということだ。そして、その犠牲は婉曲的なものではない。私たちはすでに恐ろしい数の民間人が殺害されるのを目の当たりにしている」とヘリヤー氏は語った。
ワシントン/リヤド:商業タンカーがアデン湾で武装集団に拿捕されたが、米海軍の軍艦が救難信号に対応して現在は無事だと、米当局者が26日に発表した。
リン酸の貨物を積んでいたこのタンカーは、船会社によってセントラルパークであることが確認された。米当局者は襲撃者の詳細については語らなかった。
米当局者の1人が匿名を条件に話し、米軍艦のUSSメイソンが救難信号に応答し、タンカーは解放されたことを明かした。
10月7日にイスラエルとパレスチナ武装組織ハマスとの間で激しい戦闘が始まって以来、中東の海域ではこのような襲撃事件が相次いでいる。
先週も紅海南部でイランの支援を受けるイエメンのフーシ派が、イスラエルに関係する貨物船を拿捕する事件が起きたばかりだ。このフーシ派は、イスラエルに弾道ミサイルの発射や無人機攻撃なども行っており、イスラエルの船舶に対する襲撃を今後も続けると宣言した。
セントラルパークは小型のケミカルタンカー(19,998トン)で、ロンドンに本社を置き、イスラエルのオフェル一族が所有する国際船舶管理会社ゾディアック・マリタイムが管理している。LSEGのデータによれば、2015年に建造のリベリア船籍で、クラムベズ・シッピングが所有している。
ゾディアック・マリタイムは声明を発表し、リン酸を満載するセントラルパークがソマリア沖約54海里の国際水域を航行中、海賊と見られる集団に襲撃されたと説明した。
リン酸は主に肥料として利用されている。
「弊社としては、乗員22人の安全を最優先に考えています。この船はトルコ人が船長を務め、その他にロシア人、ベトナム人、ブルガリア人、インド人、グルジア人、フィリピン人などがクルーとして乗船しています」と同社は声明で語った。
フーシ派からのコメントは出ていない。
英国海運貿易オペレーション(UKMTO)は26日、アデン湾の南西部で攻撃に遭う恐れがあるため、警戒するよう他の船舶に呼びかけた。
米国は過去数年間、この地域で犯行声明を出さずに行われている船舶への襲撃事件について、イランがその首謀者だとして非難の矛先を向けている。だが、イラン政府は関与を否定している。
米国防当局者は25日、イスラエルが運営する会社で管理しているコンテナ船が、インド洋でイランのものと思われる無人機と衝突したことを報告。船は軽い損傷を負ったが、負傷者はなかったと話した。
10月7日、ハマスの戦闘員がイスラエル国内になだれ込み、1,200人を殺害した。その日以降、イスラエルはガザ地区に爆撃を浴びせ、約14,000人を殺害。パレスチナ保健当局によれば、亡くなったパレスチナ人の約40%は子供だという。
26日早朝、ガザへの支援物資搬入をめぐる意見対立で当初の予定より遅れていたが、ハマスが拘束していた人質の2回目の解放が行われ、13人のイスラエル人と4人のタイ人がイスラエルに到着した。
メディアがこの悲劇に焦点を当てることを正当化しているために、ガザの虐殺以外には世界では何も起こっていないと考えがちだ。今月開催されたIISSマナーマ対話でも、政治指導者や代表団が議論しようとしたのは、事実上この議題だけだった。しかし、だからといって、緊急に注意を払うべき重大な出来事が世界中で起きているという事実に目をつぶってはならない。
オランダの選挙でゲルト・ウィルダース率いる自由党が衝撃的な勝利を収めたことを筆頭に、排外主義的な極右勢力はヨーロッパ全土で容赦のない前進を続けている。反移民的な発言の中で、ウィルダース氏はモロッコからの移民を「クズ」と悪者扱いし、「イスラムの侵略」を警告した。また、コーランを「ファシストの書物」と非難し、パレスチナ人をヨルダンに強制移住させるよう呼びかけている。
ジョルジア・メローニ政権下のイタリアはムッソリーニ以来最も極右的な政権であり、フィンランドやスウェーデンでも同じような考えの政党が政権連合の中核を占めている。ドイツ、オーストリア、ギリシャでは極右政党の人気が急上昇しており、フランスの世論調査ではマリーヌ・ルペンが優勢だ。ハンガリーのヴィクトール・オルバンは、こうした反移民の権威主義的傾向の顕著な応援者であり後援者である。南米では、急進的な極右候補ハビエル・ミレイがアルゼンチン大統領に選出されたばかりだ。
ポーランドの民族主義政党「法と正義」は前回の選挙でトップに立ったが、中道政党の連立によって政権から締め出される可能性があり、スロバキアでは9月の選挙でポピュリストのロバート・フィコが勝利した。ポルトガルの極右政党は今年3月の選挙でこの勢いを活かしたいと考えているが、スペインは7月の投票で右派政党ヴォックスが後退し、この傾向に逆行した。イギリスでは、選挙が1年後に迫っているにもかかわらず、大衆迎合主義的な右派が与党保守党を惨敗に追い込んでいる。そしてアメリカでは、2024年後半までにドナルド・トランプがホワイトハウスを目指すのか、刑務所の独房を目指すのか、あるいはその両方を目指すのか、それは天のみぞ知ることだ。
EU離脱というウィルダース氏の暴言は、ブレグジットという自滅的な論争のトラウマを抱えるヨーロッパの政治家たちに眠れぬ夜をもたらしている。ガザは、ドイツとイギリスの強固な親イスラエル政権と、アイルランド、ベルギー、スペインの親パレスチナ感情との間で、ヨーロッパの分裂を煽る一因となっている。西側諸国の首都では、大規模な親パレスチナのデモが行われている。
ガザ危機は、イランの核開発を抑制しようとする西側の努力にも大きな影響を及ぼしている。ある上級外交官は「中東での戦争に関連して、イランの反応を刺激しようという意欲はない」という不穏なコメントを残している。IAEAの最新の報告書によれば、テヘランは現在、原爆3発分の60%濃縮ウランを保有しているにもかかわらず、である。
84パーセントまでの濃縮を可能にする改良型遠心分離機が発見された後、イランはIAEA査察官の認定を取り消し、それは重要な時期に透明性を失わせることとなった。
イラク、シリア、レバノン、イエメンにおける広大なイランの代理民兵組織は、国際社会が目に余る不安定と無秩序を取り締まることに失敗したことの表れであるだけでなく、イスラエルとガザの紛争が地域化する可能性をはるかに高めている。イランは、同じように強化され対立的なクレムリンから外交的な援護を受けているため、さらに勇気づけられていると感じている。
一方、ウラジーミル・プーチン氏は、ガザの大虐殺がどのように展開されたのか、自分の運を信じることができないでいる。ウクライナ紛争に関する報道がメディアから消えただけでなく、アメリカとその同盟国はイスラエルへの重要な武器供給を転換しており、装備に乏しいウクライナにとってこれ以上の領土獲得が可能かどうかが疑問視され、和平協定がごまかされる可能性が高まっている。
米国が中東情勢に気を取られているのも、中国にとっては好都合だ。一部の識者は、北京が南シナ海でのさらなる拡張活動や、台湾に対する軍事態勢の強化のために、この機会をとらえる可能性があるのではないかと懸念を示している。
その他にも、世界的に注目されることのない紛争や危機が山積している:ナゴルノ・カラバフ、ミャンマー、ベネズエラ、リビア、シリア、エチオピア、イエメン、そして占領下のヨルダン川西岸の混乱は言うまでもない。アフリカのサヘル一帯は、クーデター、反乱、戦争の災禍に見舞われている。ダルフールの住民はスーダンの準軍事組織である即応支援部隊の手によって再び絶滅の危機に直面しており、ソマリア、マリ、ニジェール、ブルキナファソの大部分は聖戦主義者の支配下にある。その一方で、アフガニスタンの女性に対するジェンダー隔離政策をめぐるタリバンへの国際的圧力は完全に消滅した。
中国、ロシア、西側の超大国間の対立は、国連安全保障理事会を麻痺させ、信用を失墜させ、国際法制度を無力化させ、これらの紛争を解決するための世界的な機運を全て不可能なものにしている。このような対立は、二酸化炭素排出量を削減し、地球が沸騰するほどの温暖化を食い止めるために必要な大規模な取り組みをめぐる協力も無力化する。
言うまでもないことだが、国際社会は一度に複数の危機に対処できなければならない。世界の外交能力がこれほどまでに制約されているのは、有能で先見性のあるグローバル・リーダーシップの不在によるところが大きい。過去10年間、西側諸国政治は国内重視の傾向が強かったため、地球規模の課題に取り組む余地はほとんどなく、プーチン氏は悪影響を被ることなくウクライナを丸ごと食い尽くせると心から信じていた。
文明国が国際法を遵守しないと、除け者にされるような国家や敵対勢力が優位に立ち、さらなる破壊を引き起こすことが助長される。こうして、不正義が不正義を生む悪循環が永続する。
ガザでは1万4,500人が殺され、その70%が女性と子どもで、さらに7,000人が瓦礫の下に埋もれていると思われる。
ウクライナとガザは警鐘を鳴らしている。世界の指導者たちは、国際的な舞台で一斉にレベルアップしなければならない。多くの指標によれば、世界のどの地域を見ても、安定性、統治水準、社会正義は全て急落している。
キング牧師はこう言った。「どこであれ不正義は、どこであれ正義への脅威である」。全ての面で混乱が我々を襲っている今、パレスチナ人、ウクライナ人、スーダン人、シリア人、その他の抑圧された人々のために立ち上がることでしか、我々自身が長期的な安定と正義を享受することは期待できない。
カタール外務省は27日、パレスチナ自治区ガザでの戦闘休止を2日間延長することで合意したと発表した。ガザを実効支配するハマスとイスラエルは24日から4日間の戦闘休止に入り、27日が最終日となっていた。
カタール外務省報道官は「ガザ地区での人道的な戦闘休止を2日間延長することで合意した」と 短文投稿サイトのX(旧ツイッター)に投稿した。
ハマスも、前回の4日間の戦闘休止と同じ条件で2日間延長することでカタールとエジプトと合意したと確認。ハマス幹部はロイターの電話取材に対し「前回と同じ条件で、一時的な戦闘休止をあと2日延長することでカタールと、エジプトの同胞との間で合意した」と述べた。
イスラエルは今のところコメントを発表していないが、米ホワイトハウス当局者も、イスラエルとハマスがガザでの戦闘休止の延長に合意したと確認した。
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、ガザでの戦闘休止延長を歓迎。8─9人の米国人が人質として囚われているとの見方を示した上で、次に解放される人質20人に米国人が含まれることを期待していると述べた。
また、イスラエルに対する支援に条件を付けることは検討する価値があるが、バイデン大統領は自身のアプローチがうまくいくと確信しているとした。
バイデン大統領はその後、声明を発表し、戦闘の一時休止によりガザ地区の人々への追加的な人道支援が大幅に増えたと表明。「われわれは人道支援の拡大に戦闘休止を最大限に活用している。パレスチナの人々のために平和と尊厳の未来を築く取り組みを継続する」と述べた。
こうした中、イスラエル軍は27日、4日間の戦闘休止合意に基づきイスラエル人の人質11人が新たに解放され、イスラエルに到着したと発表した。
カタールによると、全員が二重国籍者で、内訳はフランス国籍3人、ドイツ国籍2人、アルゼンチン国籍6人という。
ハマスが24日以降に解放した人質はイスラエル人とその他の国籍を含め69人となった。4日間の戦闘休止合意ではハマスがイスラエル人の女性と子ども50人を解放するとしていたが、外国人の解放について制限は示されていなかった。
この日の人質解放に先立ち、イスラエル軍報道官は27日時点で 外国人14人と二重国籍のイスラエル人80人を含め184人がなおガザで拘束されていると述べていた。
2日間の戦闘休止延長で解放される人数は明らかにされていないが、エジプト当局者は先に、イスラエル人の人質20人の解放と、イスラエルで収監されているパレスチナ人60人の釈放を含む内容が交渉されていると述べていた。
●中南米・アフリカ
アルゼンチンのミレイ次期大統領は24日、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事と、同国の財政政策調整計画と金融プログラムについて話し合ったと明らかにした。
ミレイ氏は「IMFは、アルゼンチンが必要としている構造的な解決策を見つけるため協力する姿勢を示した」とソーシャルメディアに投稿した。
ゲオルギエワ氏は後に、アルゼンチン経済の「前途にある大きな課題」と、必要な「断固たる」政策行動について話し合ったと説明した。
アルゼンチンは、150%に迫る高インフレのほか、迫る景気後退(リセッション)、100億ドルの純外貨準備不足に見舞われている一方、IMFから440億ドルの拡大信用供与措置(EFF)を受けている。
ミレイ氏は「IMFは継続的なインフレ抑制、公共財政収支改善、民間部門主導の成長実現に向けた努力に対する支援にコミットしている」と投稿した。
●市況
<為替> ドルが下落した。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを終了し、来年前半までに利下げを開始する可能性があるとの見方が重しとなった。
<債券> 国債利回りが低下した。10月の新築一戸建て住宅販売戸数が低調だったことで、特に10年債利回りが大きく低下した。
米経済指標がこのところ軟調となっていることで、FRBは当面は政策金利を現行水準に維持するとの見方が強まっている。CMEフェドウオッチによると、FRBが来年5月に少なくとも0.25%ポイントの利下げを実施する確率は50%強。
<株式> 主要3指数が小幅下落して取引を終えた。年末商戦が本格化する中、一服商状となった。
サイバーマンデーの熱狂の中、後払い決済サービス(BNPL)大手のアファーム・ホールディングス(AFRM.O)は12%急伸。 BNPLの利用がサイバーマンデーの売上高を押し上げる見通しが好感された。
オンラインショッピングサイトのエッツィ(ETSY.O)とショッピファイもそれぞれ3.0%、4.9%値上がりした。
アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)とウォルマート(WMT.N)も買われた。
<米原油先物> 石油輸出国機構(OPEC)関連会合への警戒感がくすぶり、4営業日続落した。米国産標準油種WTIの中心限月1月物の清算値(終値に相当)は、前週末比0.6 8ドル(0.90%)安の1バレル=74.86ドル。2月物は0.68ドル安の75.09ドルだった。
来年にかけ、世界のエネルギー需要の伸びが大きく鈍化するとの観測が拡大する中、市場はOPEC加盟・非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」が30日に開く閣僚級会合の行方を注視している
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。鉱業株が下落したほか、目標株価の引き下げを受けて英高級ブランド会社バーバリーが売られたことも相場を圧迫した。
低調な中国の経済指標を手がかりに需要減少への懸念が再燃して銅価格が値下がりしたため、FTSE350種鉱業株指数(.FTNMX551020)は0.50%下落した。
ドイツ銀行による目標株価の引き下げが嫌気されてバーバリー(BRBY.L)は1.6%安。日用品・家庭用品株指数(.FTNMX402040)は1.07%下げた。
英銀行メトロ・バンク(MTRO.L)は4.9%と大幅上昇。英銀大手のバークレイズ(BARC.L)が、メトロ・バンクの30億ポンド(37億4000万ドル)の住宅ローンポートフォリオの買収について独占交渉をしていると伝わったことが株価を押し上げた。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。ヘルスケア銘柄が売られた。
ドイツの化学大手BASF(BASFn.DE)は3.1%下げた。モルガン・スタンレーが投資判断を引き下げたのが嫌気された。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りは低下した。週内に発表されるインフレ統計待ちとなった。
INGのシニア金利ストラテジスト、ベンジャミン・シュローダー氏は「きょうの動きを具体的な出来事と結び付けるのは難しい。基本的には米国が祝日だった感謝祭時の動きをたどっている」と指摘。「全体的に市場は次のトリガーを探しているようだ。ドイツの予算を巡る状況は強気心理に拍車をかける可能性があるが、それは発展途上の話であり、また、今週発表されるユーロ圏の消費者物価指数(CPI)速報値と米国の個人消費支出(PCE)価格指数によって、インフレ率の改善が確認される可能性がある」と述べた。
また、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の再投資を早期に終了するか否かを近く議論する可能性があるとの見通しも示した。
金融市場では現在、2024年12月までに約90bpの利下げが行われるとの見方を織り込んでいる。11月中旬時は100bpだった。一方、4月に0.25%ポイントの利下げが実施される確率は約66と10日前の約90%から低下している。
日経先物33,530、ダウ先35,392、債先145.91、米4.393、独2.5405、仏3.102、西3.534、伊4.296、英4.2455、波5.612、原油75.06、銅8,382、ドル円148.44、ユーロドル1.0958
※11/28 8時25分頃
備忘録(2023/11/24-26)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
脳から有毒タンパク質を除去する画期的なアルツハイマー病の治療薬が登場したことで、同病のワクチン開発熱が復活している。科学者と企業幹部10人へのインタビューによると、何百万人もの人々に安価で投与しやすいワクチンを提供できる可能性が出てきた。
米政府のデータベース「ClinicalTrials.gov」を調べたところ、少なくとも七つのアルツハイマー病ワクチンの臨床試験が進行、あるいは終了していることがわかった。
さらに多くの研究も進みそうだ。ワクチンは免疫システムを抑制し、同病に関連するタンパク質であるベータアミロイドとタウを除去する設計となっている。
アルツハイマーのワクチンを巡っては、20年以上前に最初の有望な開発が試みられたが、臨床試験を受けた有志のうち6%が命に関わる髄膜脳炎を発症したことで、中止された。現在の関心の高まりは、それ以来、初めての出来事だ。
研究者らはその後、より安全な方法として、高度に標的化された人工抗体を患者に注入し、体内の免疫構造を回避する方法に切り替えた。
エーザイ(4523.T)とバイオジェン(BIIB.O)が新たに発売した「レケンビ」と、イーライリリー(LLY.N)が現在、米国で承認審査中の「ドナネマブ」はこうした治療法であり、アミロイドの除去が早期のアルツハイマー病と闘う鍵であると、いう見解を確立させた。
これらの薬が成功するまでは、長年にわたる相次ぐ失敗によって多くの専門家が、アミロイド理論に疑念を抱いていた。
バクシニティ(VAXX.O)、ACイミューン、プロテナ(PRTA.O)といった医薬品企業の科学者らは現在、最初のワクチンで何が問題だったかを理解したと確信し、過剰な炎症を招くことなく免疫反応を引き起こすと期待される注射の試験を行っている。
米食品医薬品局(FDA)は、最初の2つのワクチンをファストトラック(優先審査)の対象に定めた。
ボストンの医療組織、マス・ジェネラル・ブリガムのアルツハイマー病研究者、レイサ・スペリング博士は、同病の予防を研究する上でワクチンが重要な役割を果たすと考えている。「われわれが進むべき道はこれだ、と強く思っている」と話す。
スペリング氏は、アルツハイマーのタンパク質を脳に持ちながら認知機能が正常な人々を対象とした試験を率いている。血液中にアルツハイマー病たんぱく白を持つが、脳スキャンに記録されるほどではない無症状の人々を対象とした次の研究に向け、ワクチンを検討中だ。
アルツハイマーワクチンの開発はまだ初期段階にあり、有効性が示されるまでには、数年間にわたる大規模な臨床試験が必要となるだろう。
それでも、四半期に1度、あるいは年に2度投与するワクチンが登場すれば、アルツハイマー患者は月に2回点滴する高価なレケンビから解放されるだろう。世界中で推定3900万人に上る患者が、投与を受けやすくなる可能性がある。
米国立衛生研究所の神経疾患部門ディレクター、ウォルター・コロシェッツ博士は「世界中に広がり、さほど高くないものになる可能性がある」と期待を示した。
<門は開かれた>
バクシニティはワクチン「UB─311」の小規模な第2フェーズ臨床試験を既に終えており、最も開発が進んでいる企業かもしれない。メイメイ・フー最高経営責任者(CEO)は、レケンビの成功によって長らく疑問視されてきた仮説が立証されたと語った。
「分かっているのは、特定の悪い形のアミロイドを除去すれば、臨床結果に効果が現れるということだ。これは素晴らしい」とフー氏は言う。
台湾で43人の有志を対象にバクシニティが行ったフェーズ2a試験のデータでは、同社ワクチンは78週間後の段階で安全性と忍容性を示し、ほぼ全ての参加者が抗体反応を示した。
脳腫脹の症例はなかったが、14%(6人)が脳出血を発症した。脳出血は点滴型の治療でもよく見られる副作用だ。このデータは8月に公表された。
バクシニティは、より大規模な確認試験に資金を提供してくれるパートナーを探していたが、ここ数年の環境は「かなり冷え切っていた」とフー氏は語る。「レケンビが承認されたことで門戸が開かれ、熱意が高まり投資も大幅に増えた」と述べた。
<過去の失敗>
最初に開発が試みられたアルツハイマーワクチンは有用性を示していたものの、免疫系のT細胞からの制御不能な反応を引き起こしてしまった。
現在、開発中の新ワクチンのほとんどは、抗体を生成する免疫細胞であるB細胞を標的としている。
ACイミューンのワクチンはB細胞のみを活性化すると、南カリフォルニア大学のマイケル・ラフィイ博士は言う。
ラフィイ氏が主導した第1フェーズ試験で、ACのワクチンは髄膜脳炎を起こさなかったものの、免疫反応を示したのは参加者の一部にとどまった。同社は現在、改良版の試験を行っている。
ACはまた、医薬品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)と、有毒なアルツハイマー病タンパク質、タウを標的とするワクチンについて共同研究を行っている。
一方、プロテナは来年、アルツハイマー予防を目的として、ベータアミロイドとタウの両方を標的とするワクチンの試験を開始したいと考えている。
プロテナのジーン・キニーCEOによると、同社のワクチンは高レベルの成熟した抗体を生成する。このようなワクチンは通常、免疫系統の弱い高齢者に投与されるため、強い免疫反応を起こすことが重要だとキニー氏は説明した。
同氏は、アルツハイマーの症状が出る前の人々にとってワクチンは理想的なものだと考えている。「何より望むのは、病気の発生を未然に防ぐことだ」と同氏は語った。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
今年の米感謝祭翌日のブラックフライデーの販売動向では、消費者が一段の値引きを期待していることが示された。小売業者にとっては年末商戦が伸び悩み、来年前半に発表する業績が低調となる恐れもある。
消費者の支出はここ数年と肩を並べる伸びになっていない。ブラックフライデーの実店舗売上高の推計はまだ得られていないが、セールスフォースは米オンライン売上高が11、12月に前年に比べて1%増えると見込んでおり、そうなれば少なくとも5年ぶりの低い伸びとなる。
今年のブラックフライデーも値引きが行われているが、一部の買い物客の反応は鈍く、さらなる割引を待つ公算が大きくなっている。ニュージャージー州ウェインのウィローブルック・モールを訪れていたアリッサ・ファネリさんはウエディングシューズを購入するため、メーシーズに買い物に来たが、成果がなかったと明かす。ファネリさんが好きなブランドは25%オフとなっていたが、「これはブラックフライデーの値段ではなく、単なる通常のセール価格だ」と話す。
値引きが大きくない一因として、過剰在庫の圧縮に向けた小売企業の取り組みが最近うまくいっていることが挙げられる。ジェーン・ハリ・アンド・アソシエーツのアナリスト、ジェシカ・ラミレス氏は取材で「今年の在庫は抑えられている」と指摘。「在庫を消化するプレッシャーは昨年ほどではない」と語る。
他のデータ会社も年末商戦売上高の伸び悩みを予想している。アドビ・アナリティクスは向こう2カ月の米オンライン売上高が4.8%増えると予測。昨年を上回る伸びだが、新型コロナウイルス禍前の年平均13%増に比べると大きく見劣りする。一方、マスターカードはオンラインと店舗の米小売売上高が昨年に比べて3.7%増と見込んでおり、コロナ前の伸びに戻ることになる。
アドビ・デジタル・インサイツのリードアナリスト、ビベク・パンディア氏はインタビューで、消費者が「価格に対して非常に敏感だ」と分析。アドビの初期データでは、ブラックフライデーのオンライン売上高は前年比で7.4%増加。玩具や衣料、コンピューターなど商品の大幅値引きが主因となった。この数字はインフレ調整されていない。
デジタルコンサルティング会社CI&Tの小売戦略担当ディレクター、メリッサ・ミンコウ氏はソーシャルメディアで同様に買い物客の不満を目の当たりにしていると明かす。取材に対し、「非常に大きな値引きが実施されるだろうとの期待があった」とし、「それは全く現実的ではない」と述べた。
アドビによると、玩具や衣料の購入を検討している買い物客で、最も大きな割引を受けたい場合は、日曜日まで待つべきだ。エレクトロニクス製品や家具なら月曜日まで待った方がいい。年末商戦が進むにつれて、小売業者は売り上げを伸ばそうとしたり、過剰在庫を減らしたりするため値下げに踏み切ることが多い。見方を変えれば、こうしたタイプの商品を販売する企業の利益はその分削られることになる。
今年の米感謝祭当日の消費支出額は56億ドル(約8370億円)と、前年同日比で5.5%増加したほか、2017年の支出額28億7000万ドルのほぼ2倍になった。アドビが発表した。オンライン消費へのシフト継続が浮き彫りになったとしている。
今年のホリデーシーズンにおけるこれまでのオンライン消費額は767億ドルと、11月最初の23日間ベースで前年同期比6.8%増加した。
力強いオンライン消費支出に寄与しているのは純新規需要であり、価格上昇ではないとしている。
感謝祭当日の電子商取引の伸びに大きく貢献したのはモバイルショッピングだったという。
アドビでは感謝祭翌日のブラックフライデーの消費額については、前年同日比5.7%増の96億ドルを予想している。
米メーシーズのジェフ・ジェネット最高経営責任者(CEO)はブルームバーグテレビジョンとの24日朝のインタビューで、「前日の感謝祭はオンラインで素晴らしい1日だった」と述べた。
米投資適格級社債のスプレッドが2022年以来の水準に縮小している。米金融当局が利上げサイクルの終わりに達したとの見方が背景にある。
ブルームバーグがまとめたデータによると、米国債の代わりに社債を保有するために投資家が要求する追加の利回りである同スプレッドは、22年4月以来の低水準となっている。
ブルームバーグの指数データによれば、高格付け債のスプレッドは22日に3ベーシスポイント(bp、bp=0.01%)低下して110bpとなった。投機的格付け債のスプレッドは6bp下げて380bpと、9月以来の低水準を記録。レバレッジドローンの平均価格は額面1ドル95.2セントに達した。
米国のホリデーを控え、投資適格級債の新規供給が減速し始める一方、優良債への需要は高い状況が続いている。
優良社債のスプレッドは今年、かなりタイトな水準にとどまり、3月の銀行危機の際に付けた163bpがピークとなっている。スプレッドは昨年よりもタイトな水準で今年を終えると多くのアナリストは予想していたが、今年はあと1カ月残っており、リセッション(景気後退)懸念が弱まる中、一段と縮小する可能性もある。
11月の米国製造業・サービス業を合わせた総合購買担当者指数(PMI)統計(速報値)によると、雇用の指数が2020年半ば以降で初めて縮小圏に陥った。S&Pグローバルが24日発表したもので、低調な需要と高コストが背景にある。
総合PMIは4カ月連続で分岐点の50を1ポイント未満上回る水準にとどまった。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのプリンシパル・エコノミスト、シャーン・ジョーンズ氏は発表文で、「雇用削減は製造業以外にも広がっている。サービス企業はコスト節減を求め、11月に新たに人員を減らしたことを示唆した」と説明した。
サービス業の雇用者数は20年6月以降で初めて減少。製造業の雇用指数は2カ月連続で縮小圏となった。
欧州中央銀行(ECB)はいまや手を休め、引き締めの効果を見極めることができる立場にあると、ラガルド総裁が24日主張した。
ラガルド氏はフランクフルトで開かれたドイツ連邦銀行のイベントで、「われわれは既に多くを行った。これまでに使用した弾薬の規模を踏まえ、ECBがどれだけ長くこの水準にとどまるのか、ここから上がるのか下がるのか、どのような決断をしなければならないかを判断する上で、弾薬がわれわれの経済生活にどう影響していくのか。そのような観点から、給与や利益、財政、地政学的な動向など市民生活の要素を注意深く見守ることができる」と論じた。
ECBは先月の政策委員会会合で金利据え置きを決め、この金利水準を十分に長く維持すれば、インフレ率を目標の2%に戻す助けになるとの認識を示していた。
ユーロ圏のインフレ率は10月に2.9%となり、今月も低下する公算が大きい。だが、統計上の要因により近いうちに再び上昇する可能性もあると当局者は警戒し、インフレ目標の達成は2025年7-12月(下期)になると予想されている。
ラガルド氏は「闘いは終わっていない。勝利を宣言する状態にないのは明らかだ」と述べ、インフレ率を目標値に戻すと約束した。
ドイツ企業の景気見通しは11月に3カ月連続で改善した。同国経済はリセッション(景気後退)に入っている公算が大きく、予算面の危機にも悩まされているが、回復が近いことが示唆された。
Ifo経済研究所が24日発表した11月のIfo企業期待指数は85.2と、6カ月ぶりの高水準に達した。ただ、ブルームバーグ調査の予想中央値である85.8には届かなかった。現状指数も上昇した。
Ifoのフュースト所長は24日の発表文で、「ドイツ企業の景況感はやや改善した。低い水準ではあるが、ドイツ経済は安定しつつある」と指摘した。
政治混乱や経済不振など暗い材料が続くドイツにとって、今回の発表は明るい内容だ。昨冬のエネルギー危機に端を発した低迷から回復が進まず、いまや金利上昇の衝撃も重くなりつつある。同国は主要国のうち、国際通貨基金(IMF)が今年のマイナス成長を見込む唯一の国だ。
24日はまた、ドイツの7-9月(第3四半期)国内総生産(GDP)が前期比0.1%減となったことも発表された。個人消費の0.3%減少が響いた。
大規模な製造業を抱えるドイツにとって、高いエネルギー価格と世界的な低成長が引き続き大きな逆風だ。製造業の大手数社はコスト削減を開始し、化学大手のBASFは向こう4年間で約15%の投資削減を計画している。
イタリアの金融安定へのリスクはなお大きいものの低下してきていると、イタリア銀行(中央銀行)が指摘した。銀行システムの健全性改善が寄与していると説明した。
その上でイタリア中銀は、政府に対し、慎重な財政政策と成長促進のための改革に注力する必要があると指摘した。
中銀は最新の報告書で、「マクロ経済の状況は依然として不透明だが、銀行システムの状況は改善しており、民間債務の水準は引き続き低い」と指摘。ただ高水準の公的債務と「構造的な低成長に回帰するとの懸念が、見通しに重しとなっている」と付け加えた。
欧州中央銀行(ECB)は追加利上げを控えることができる公算が大きいと、政策委員会メンバーのミュラー・エストニア中銀総裁が述べた。
ミュラー氏は24日、起業関連のイベントで同国紙サカラに対し、「恐らくECBはもはや利上げの必要がない」と語った。
ECBは先月の会合で、2022年半ばに金融引き締めサイクルを開始して以来初めて金利を据え置いた。インフレの伸び鈍化とユーロ圏経済の低成長で、市場は来年上期の利下げを織り込んでいる。ミュラー氏は発言の根拠を示さなかった。
ミュラー氏はインフレが減速のトレンドを示しているのは明らかだが、ECBが目標とする2%までには至らないと指摘。高金利は高インフレよりも「小さな問題」だと付け加えた。
ドイツ企業の景気見通しは11月に3カ月連続で改善した。同国経済はリセッション(景気後退)に入っている公算が大きく、予算面の危機にも悩まされているが、回復が近いことが示唆された。
Ifo経済研究所が24日発表した11月のIfo企業期待指数は85.2と、6カ月ぶりの高水準に達した。ただ、ブルームバーグ調査の予想中央値である85.8には届かなかった。現状指数も上昇した。
Ifoのフュースト所長は24日の発表文で、「ドイツ企業の景況感はやや改善した。低い水準ではあるが、ドイツ経済は安定しつつある」と指摘した。
政治混乱や経済不振など暗い材料が続くドイツにとって、今回の発表は明るい内容だ。昨冬のエネルギー危機に端を発した低迷から回復が進まず、いまや金利上昇の衝撃も重くなりつつある。同国は主要国のうち、国際通貨基金(IMF)が今年のマイナス成長を見込む唯一の国だ。
24日はまた、ドイツの7-9月(第3四半期)国内総生産(GDP)が前期比0.1%減となったことも発表された。個人消費の0.3%減少が響いた。
大規模な製造業を抱えるドイツにとって、高いエネルギー価格と世界的な低成長が引き続き大きな逆風だ。製造業の大手数社はコスト削減を開始し、化学大手のBASFは向こう4年間で約15%の投資削減を計画している。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は地元紙プレッセに寄稿し、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の下での債券再投資を早期に縮小すべきか来月のECB理事会で議論すべきだと述べた。
「私の提案は3月時点での段階的な再投資の削減だ」としている。
PEPPの再投資は2024年末まで継続する計画だが、一部の当局者は早期の縮小開始を主張している。
欧州連合(EU)欧州委員会は23日、ハンガリーへの9億ユーロ(10億ドル)資金提供を承認した。これによりEUのウクライナ支援が実現に前進する可能性がある。
欧州委は、ハンガリーの汚職やオルバン政権の民主主義後退的政策への懸念から、コロナ禍後の支援対象から外した。これを受け、ハンガリーはEUとしての500億ユーロ規模の対ウクライナ経済支援や、ウクライナのEU加盟交渉開始に待ったをかけていた。
今回、ハンガリーへの実施が承認されたのは、コロナ禍後の支援策の一つで脱化石燃料を支援する「REPowerEU」からの拠出。EUの金融支援では「法の統治」に関する条件を満たす必要があるが、8億ユーロはその条件が付かない方式で実行する。
欧州各地では年末商戦が本格化する24日のブラックフライデー(感謝祭翌日の金曜日)に、米アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)に対する倉庫労働者のストライキなどの抗議行動が計画されており、商品の配送に影響が出る可能性がある。
アマゾンは今年、11月17─27日の10日間をセール期間としている。
同社にとって2番目に大きい市場であるドイツの5カ所の発送センターでは労働者が集団労働協約を求め、24日午前0時から24時間ストを実施する。統一サービス産業労働組合(ベルディ)が明らかにした。
同社ドイツ拠点の広報担当者は、労働者には時給14ユーロ(15.27ドル)を上回る初任給に諸手当を加えた適正な給与を支払っているとコメント。ブラックフライデーに商品の配送をスケジュール通り行うとした。
英労働組合GMBによると、英中部コベントリーのアマゾン倉庫労働者1000人以上が賃金を巡り24日にストを行う。
フランスでは反グローバル化組織ATTACがアマゾンの宅配ロッカーにポスターやテープを貼るよう活動家らに呼びかけており、配達員や顧客がロッカーを開けられなくなる可能性がある。
イタリア労働総同盟(CGIL)やスペイン労働者委員会(CCOO)もストなどを呼びかけている。
スイス国立銀行(中央銀行)のジョルダン総裁は、12月14日の政策決定会合で利上げする可能性を排除できないとの見解を明らかにした。
スイス紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥングに「インフレを克服したと宣言することはまだできない」と語った。
スイスのインフレ率は中銀の目標である2%を下回っているが、ジョルダン氏はインフレの見通しについては不確実性が高いとの見方を示した。
「この不透明な状況の下でわれわれは今後の動向を注意深く見守り、12月の会合で金融政策をさらに引き締める必要があるかどうかを決定する」と述べた。
米国発の恒例の大規模セール「ブラックフライデー」が24日に始まり、小売業にとって重要な年末商戦が幕開けした。ただ米国では、長引くインフレと金利上昇で消費者が圧迫される中、年末商戦の消費の伸びは過去5年間で最小になると予想されており、多くの大手小売業者が年末商戦向けの臨時雇用を手控える動きなどが出ている。
証券会社のTDコーウェンは、今年のブラックフライデーの客足は横ばいにとどまると予想。米国の年末商戦の消費の伸びの予測を2─3%と、従来の4─5%から引き下げた。
小売企業でつくる全米小売業協会(NRF)は、今年のブラックフライデーに米国の店舗のほか、オンラインで買い物をする人は過去最高の1億3070万人にのぼると予想。NRFが11月初旬に8424人の成人を対象に実施した調査によると、 今年の年末商戦の消費予定額は平均875ドルと、昨年から42ドル増加した。
ただ、ブラックフライデー当日の客足は鈍く、米小売り大手ウォルマートのコネチカット州ニューミルフォードの店舗の駐車場は、午前6時時点で半分しか埋まっていなかった。
インフレが消費の重しになる中、ハーレムに住む主婦のジル・リゾさんは「商品を2つ買った時点ですでに100ドルの出費になり、ブラックフライデーは高い買い物になってしまった」と嘆く。
<グローバル化とオンライン化>
米国の感謝祭の翌日の金曜日に実施される ブラックフライデーは米国発のイベントだが、オンライン化と共にグローバル化が進んでいる。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の調査によると、フランス、イタリア、スペインではブラックフライデーに衣料品を買う予定の買い物客が最も多く、次いで電気製品が多かった。消費予定額はフランスの平均が295ユーロ(322ドル)。この65%がネットショッピングでの消費になるという。
ネットショッピングの台頭で、ブラックフライデーはもはや1日限りのイベントではなくなっており、百貨店大手メーシーズ(M.N)からネット通販大手アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)に至るまで、多くの小売業者は早くて10月にセールを開始。クリスマスが近づくころに一段の値引きを実施することもある。
<米各地で抗議デモ>
この日はパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルが4日間の戦闘休止を開始。ハマスによる人質の解放が始まった。こうした中でも、イスラエルとハマスの軍事衝突を巡り米各地で散発的な抗議行動が見られた。
テキサス州ダラスのショッピングモールで、床に寝そべり死んだふりをする「ダイ・イン」で抗議の意を示すデモが行われたほか、ノースカロライナ州ローリーではデモ隊がショッピングモールを一時閉鎖。ボストンでは、抗議活動参加者がイスラエルサッカー協会(IFA)の主要スポンサーだと指摘する独スポーツ用品大手プーマの店舗前で抗議活動を行った。プーマはいかなる政治的方向性や政府も支持していないとしている。
2024年米大統領選でバイデン大統領とトランプ前大統領の二者択一を迫られそうな事態を前に、多くの米国民は、もっと若くて国を分断しない別の選択肢を切望している。
第3の候補者に巨大な「市場」が開かれ、出馬すれば大きな影響力を持ち得る現状は、民主・共和2大政党のバイデン、トランプ両氏が飛び抜けて不人気だという事実を突きつけている。
米国は現在、経済問題と格闘し、政治は完全に二極化し、米国が支持するイスラエルがパレスチナ自治区ガザを攻撃して物議を醸す中、次世代の指導者を求める声が広がっている。
ギャラップが最近実施した調査では、米国の成人63%が「第3の主要政党が必要」という考えに同意した。共和・民主両党は民意を代弁するという仕事をまともに果たせていない、とみている。この割合は1年前から7ポイント上昇し、ギャラップが最初にこの質問を行った2003年以来で最も高かった。
バイデン、トランプ両氏はいずれも党の予備選で対立候補の挑戦を受けそうだが、結局は大統領候補に選ばれる可能性が高い。バイデン氏は高齢が憂慮され、トランプ氏は数々の刑事訴追を受けているにもかかわらず、だ。
現代の米大統領選で第3の候補が勝利した前例はない。しかし主要政党の候補者から大量の票を奪うことで、非常に大きな役割を果たした事例は数件ある。
1992年の大統領選では、大富豪で実業家のロス・ペロー氏が19%の票を獲得。民主党のビル・クリントン氏が現職のジョージ・H・W・ブッシュ氏を破る要因になったと言って差し支えない。
2000年の大統領選に出馬した政治活動家のラルフ・ネーダー氏は、全体の得票率こそ3%に満たなかったが、フロリダ州で民主党のアル・ゴア候補から十分な票を奪い、同州及び全国で対立候補のジョージ・W・ブッシュ氏を勝利に導いた。
現在、ロイター/イプソスの世論調査を見ると、反ワクチンの陰謀論者で民主党の名門ケネディ家のロバート・ケネディ・ジュニア氏が、バイデン、トランプ両氏との三つどもえ選挙となった場合に20%の票を獲得する可能性がある。ケネディ氏は10月に無所属出馬の意向を表明した。
ケネディ氏を支持する特別政治活動委員会(スーパーPAC)「アメリカの価値2024」は、元トランプ氏支持者を含む富裕な献金者から1700万ドル余りの資金を調達している。
この委員会は14日、ニューヨークのマンハッタンで黒人や中南米系有権者に訴えるためのイベントを開き、約40人が集まった。
出席者の1人で、ニューヨーク州知事選に出馬したことのあるリバタリアン(自由至上主義者)、ラリー・シャープ氏は「(元大統領の)バラク・オバマ氏が出てきて以来、われわれは反逆者を求めてきた。われわれはオバマ氏を反逆者だと思い、次にバーニー・サンダース(上院議員)を反逆者だと考えた。続いてトランプ氏を反逆者だと考えた。今はもちろん、RFK(ケネディ氏)が反逆者だと知っている」と語った。
共和・民主両党はともにケネディ氏の無所属での出馬に懸念を表明している。民主党は、名門ケネディ家の名前と、環境重視、反企業といった政策が同党有権者の心をつかむことを恐れている。共和党側は、反ワクチンを唱え保守派層に人気のあるケネディ氏が、同党有権者から一定の支持を奪うことを警戒する。
ロイター/イプソスなどの世論調査によると、三つどもえ選挙となった場合、ケネディ氏は両党からほぼ等しく票を奪いそうだ。しかし民主党は油断していない。
中道左派の民主党団体「第三の道」の共同創設者、マット・ベネット氏は「反トランプ氏陣営を分断するものは全て悪影響をもたらす、というのがわれわれの得た教訓だ。トランプ氏にだけは投票できないと考える有権者にとって、だれであれバイデン氏以外の選択肢ができるのは問題だ」と明かした。
一方、「米国の価値2024」の共同創設者であるトニー・ライオンズ氏は、ケネディ氏を単にバイデン氏もしくはトランプ氏にとっての脅威と考えるべきではない、とロイターに述べた。マンハッタンのイベントでライオンズ氏は「この部屋にいる人々を助ける仕事をやっていない腐敗した2大政党制にとっての脅威なのだ」と語った
トランプ陣営の報道官スティーブン・チュン氏は「世論調査では、全国でも激戦州でも、たとえ別の候補がいてもトランプ(前)大統領がバイデン氏を完全に打ち負かしている」と自信を示した。
バイデン氏の陣営はコメントを控えた。
<もっと良い選択肢>
第3の候補に資金が流れる中でも、バイデン、トランプ両陣営はさらに大きな額を調達している。バイデン氏の陣営は第3・四半期に7100万ドルを、トランプ氏の陣営は4550万ドルをそれぞれ集めた。
超党派の政治団体「ノー・レーベルズ」は来年の大統領選向けに既に6000万ドルを調達し、アリゾナ、ネバダ、ノースカロライナなどの激戦州を含む12州で候補者を出す資格を満たした。まだ候補者は決めていない。
ノー・レーベルズのチーフストラテジスト、ライアン・クランシー氏は「過去2年間、有権者の気持ちに耳を傾けてきたが、聞こえてくるのはずっと同じ話、つまり国民はもっと良い選択肢を求めているということだ」と語る。
ノー・レーベルズはここ数年間、議会選で穏健派候補を支持しており、今回初めて大統領選に臨もうとしている。メリーランド州前知事のラリー・ホーガン氏(共和党)や保守派のジョー・マンチン上院議員(民主党)に出馬を打診してきた。
来年の上院選で再選を目指さないと表明したばかりのマンチン氏は15日、NBCニュースで大統領選出馬を検討しているかと聞かれ「わが国を助けるためなら、できることは何でもする」と答えた。
クランシー氏は、バイデン氏とトランプ氏の再対決が避けられない情勢になり、ノー・レーベルズが推す候補の勝利に自信が持てるなら、来年4月に大統領選の候補者指名大会を開く計画だと語った。
第3の候補者はこの他にもいるが、いずれも上述の人物らに比べて大きな脅威にはならないとみられている。
バイデン大統領は最近のインタビューで、元側近のジョー・リーバーマン元上院議員(民主党)がノー・レーベルズによる第3の穏健派候補探しに協力していることについて、民主主義に基づいてその権利はあるとした上で、「それは別の男(トランプ氏)を利することになるし、彼(リーバーマン氏)もそのことは分かっている」と述べた。
欧州で住宅価格の下落が止まらない。ドイツでは戸建て価格が1年間で1割あまり急落し、フランスなどでも市況悪化の兆しが出てきた。欧州中央銀行(ECB)の急激な利上げで銀行が融資に慎重な姿勢を強めており、不動産マネーの停滞が欧州経済の新たな火種になっている。
米国債市場は2023年のかなりの期間で低迷したが、ようやく持ち直してきた。今や多くの米国債ウオッチャーが、本格的な復活に道が開かれたと見ている。
ブルームバーグ米国債指数は今月、年初来リターンがプラスに転じた。インフレ鈍化や雇用の伸び減速の兆しを受け、米国債相場は上昇し、指標利回りはこの10年強で最も高かった水準から急低下した。その間には、祝日を含んだ先週の終盤など幾つかの反転もあったが、指数はなお年初とほぼ同じ水準にあり、全体の傾向としては前向きだ。
ウォール街の大半のストラテジストは、こうした利回り低下傾向が持続し、2024年の本格的な相場上昇の下地ができると予測している。大幅な財政赤字の資金手当てに米国債の大量発行が必要になることを踏まえると、期間長めの金利低下はより緩やかに進む見通しだ。
こうした米国債市場の多くの専門家は23年については債券にとって大きな年になると予想していたが、今のところ実現していない。だが、今回はそうした主張を裏付ける要因が幾つかある。
インフレが引き続き鈍化し、米労働市場は徐々に落ち着く方向にある。かつて容赦なく弱気で、この1年に利回り上昇を見込んだ取引が大成功を収めた商品投資顧問業者(CTA)は、弱気な投資からゆっくりと手を引きつつある。
ここ数十年で最も積極的な米利上げサイクルが終了したとの投資家の見方が強まっていることが背景にある。24年上期(1-6月)にも米当局が利下げに転じると予想する向きもある。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)の公共投資最高投資責任者(CIO)を務めるアシシュ・シャー氏は、「米金融当局が迅速に方向転換するとは思わない」が、「進行方向」になるだろうと指摘。来年は「債券の年になり、パフォーマンスは好調だろう。大量の借り入れが行われることになり、利回り曲線はスティープ化するだろう」との分析を示した。
今週発表される米国とユーロ圏のインフレ指標はいずれも前年同月比ベースの伸びが、2021年の前半あるいは半ば以来の低さになるとみられている。追加利上げはないというセンチメントを補強する材料となりそうだ。
米金融当局が特に重視する個人消費支出(PCE)価格指数の10月分が、30日に発表される。総合価格指数は前年同月比3.1%上昇、食品と燃料を除くコア価格指数は同3.5%上昇の予想。基調的なインフレ動向を測る上では、コア指数の方が適切だと考えられている。
同じく30日には、ユーロ圏の11月の消費者物価指数(CPI)が発表される。市場予想では前年同月比2.7%上昇と、21年7月以来の低い伸びとなる見込み。コア指数は3.9%上昇に伸びが鈍化するとみられている。
ディスインフレ傾向が見えるが、米国、欧州の金融当局ともに消費者物価が持続的に抑制されている証拠をより多く確認したいとの考えを示している。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は24日、「闘いは終わっていない。勝利を宣言する状態にないのは明らかだ」と述べた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨によると、当局者は前回10月31日ー11月1日に開いた会合で、家計と企業が金利上昇により圧迫され始めているとの認識を示していた。
今週はまた、29日に地区連銀経済報告(ベージュブック)が公表される。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン、スチュアート・ポール両氏らは「インフレの勢いは10月に鈍った。米金融当局は年内、政策金利を据え置くことができる」と予想している。
オーストラリア政府は今週、オーストラリア準備銀行(中央銀行)の大幅刷新計画を推進するための法案を提出する。運営委員会を別途設置することなどを盛り込む。
先に行われた豪中銀を巡る独立した点検で改革のための51の提言があり、一部は中銀法の改正が必要とされているのを受けた動き。これまでのところ刷新には超党派の全般的な支持がある。
チャルマーズ財務相が声明で示した主な変更点は次の通り。
豪中銀の最重要目標を「現在および将来にわたり国民の経済的繁栄と安寧の促進」とするよう義務づける
金融政策には物価安定と完全雇用への寄与の二つの目標があることを確認する
中銀の金融政策決定を覆す財務相の権限を撤廃する
法案にはこのほか、豪中銀の運営を監督し、金融システムの安定に寄与する中銀の責務を明確にするための運営委員会設置も盛り込むと、財務相は説明した。
提言の残りの部分は新たな「金融政策運営に関する声明」などを通じ、政府および中銀による行政的な実施が計画され、チャルマーズ財務相は政府として来月に声明をまとめたい方針だと指摘した。
豪中銀のブロック総裁は22日、2-3%のインフレ目標レンジのうち、2.5%の中間値に特にフォーカスすべきかどうかが、声明でカバーされると見込まれる分野の一つだと語った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国当局は経営難にあえぐ同国の巨大なシャドーバンキング(影の銀行)グループ、中植企業集団系列の事業に対し、刑事捜査を最近開始したと発表した。同社は数日前、バランスシート上に364億ドル(約5兆4400億円)の不足が生じていることを認めていた。
北京市公安局は25日、同集団系列の複数の容疑者に対して「刑事上の強制措置」を講じたと、微信(ウィーチャット)で明らかにした。そのうちの1人の姓は「Xie(シエ)」とされる。公安局は投資家に対し情報提供などを要請した。中植の創業者、解直錕氏は2021年に死去したが、親戚の数人が現在、同社幹部となっている。
公安局はどのような措置が取られるのかや、容疑者が関わった可能性のある犯罪は詳述していない。発表の説明に使われている法律用語は、犯罪の疑いが持たれている中国恒大集団の創業者、許家印会長の事例と似ている。
当局の9月の発表によると、許会長の事例以前に、中国の不動産危機の中心にいるデベロッパーの資産運用事業担当者の一部に同様の措置が講じられた。
非公開企業の中植は22日付の投資家宛て書簡で、資金が不足し「深刻な支払い不能状態」にあると説明していた。
中国は資金繰り難の不動産開発会社を支援しようと、銀行への圧力を強めている。不動産セクター危機に対する習近平国家主席の忍耐が限界に近づいていることを示している。
当局は銀行の支援対象となる適格企業のリストを策定中で、銀行が初めてデベロッパーに無担保ローンを提供できるようにする計画を検討している。
事情に詳しい関係者によれば、この動きは不動産業界の資金不足緩和が狙い。政府はまた、銀行が抱えるリスクが増えるとしても、建設途中の住宅数百万戸を完成させるのに十分な資金を開発会社に確保させたいと考えている。
フィリピンとオーストラリアは25日、フィリピン周辺海域での合同パトロールを開始した。中国との間で係争中の海域を巡る緊張が高まる中、フィリピンは数日前に南シナ海で米軍との合同パトロールを実施した。
フィリピンのマルコス大統領はX(旧ツイッター)に投稿した声明で「われわれは海洋安全保障と領域認識における2国間の相互運用性を高めるよう努力する」と指摘した。
両国国防相の共同声明によると、合同パトロールはフィリピンの排他的経済水域内で27日まで行われる。オーストラリアのマールズ国防相は「オーストラリアとフィリピンは合意されたルールと規範が尊重される平和で安全かつ繁栄する地域に毅然(きぜん)とコミットする」と表明した。
フィリピンと米国は先週、台湾に近い北東部から南シナ海にかけての水域で合同パトロールを再開した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は9月下旬、北大西洋条約機構(NATO)のブリュッセル本部訪問についてストルテンベルグ事務総長と協議した。ウクライナに軍事支援を提供している国々と会談し、大きな成果を生めなかった今夏の反攻の後も兵器供給を維持することが目的だった。
ロシア侵攻後初のNATO本部訪問をゼレンスキー氏が果たした10月11日までに、その使命はいっそう緊急の度合いを増した。この4日前にイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザからイスラエルを攻撃し、イスラエルは報復を開始。中東での紛争が注目の的となっていた。
ウクライナを支援する約50カ国から成る「ラムシュタイン・グループ」の国防担当相は、今週再びバーチャル形式で会談した。ウクライナ支援があらためて表明されたものの、兵器供給の遅れや、国内政治により金融支援が滞る中で、当局者の間の雰囲気は以前よりも暗かったという。ゼレンスキー氏がブリュッセルを訪問して以来、ウクライナにはなんとかして勝利への道筋を描き出すよう圧力が高まっている。
再び冬を迎える中で弾薬は不足し、戦況は厳しさを増している。もう一つの懸念は人手だ。ロシアは犠牲を払いながらも次々と兵士を前線に送り込んでいるが、ウクライナはそうすることに消極的だ。
ウクライナのザルジニー総司令官がこう着状態だと認める戦争に、余力に乏しい資源を今後も投入し続けることができるのか、戦場から離れたところで米国と欧州は疑問を抱き始めている。
ウクライナ政府の意向に詳しい複数の関係者によると、米大統領選まであと1年と迫り時間がなくなりつつあることと、戦況の好転がパートナー国の支援増強を容易にすることを同国政府は認識している。だが、ハマスが攻撃した10月7日の前ですらも、ウクライナ当局者は関心の低下を感じていたと、関係者は述べた。
ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍が冬の間も戦闘を続ける準備を進めていると支援国に説明することに先週1週間を費やした。今月16日には大統領府で「今は西側からの支援確保に集中している」とし、西側の「注目は中東やその他の理由で移りつつある。支援がなければ、事態は悪化する」と述べた。
前線は1年にわたり大きくは動いていない。極めて重要な弾薬の供給で欧州の取り組みが失速しつつある一方、米国を中心に政治的な支援疲れの兆しは増えている。
支援の不足や先細りはゼレンスキー氏に尚早な和平協議を強いることになりかねず、さらに悪い場合にはロシアに軍事的な突破を許し、プーチン氏が交渉に応じる必要を感じなくなる展開があり得る。
プーチン氏の意図を長年警告してきた東欧の一部の指導者は、こうした展開を恐れている。ロシアはウクライナ国境では止まらず、西側はいまだに危険の深刻さを完全に理解していないと主張する。
ウクライナ支援国は防衛を十分真剣には捉えていないとのシグナルを発しているリスクがあると、エストニアのカラス首相は先月の欧州連合(EU)首脳会議(サミット)前に発言。リトアニアのランズベルギス外相は、緊急性の欠如はウクライナに望まないロシアとの交渉を強いる恐れがあると語った。
「新たな戦車も、新たなミサイルシステムも、弾薬すらも供給されず、解決策も見いだされていない。EUは決定に何カ月もかかっている。このような状況を見るに、勝利に貢献するわれわれの集団的な能力に懸念を抱く」とランズベルギス氏は22日、同国公共放送局LRTに述べた。ロシアが北朝鮮から支援を受けているのと比べると、「滑稽に見える」と続けた。
オースティン米国防長官は今週キーウを訪問し、米国の支援をあらためて確認した。だが、既存の資金枠は今年末で底を突き、共和党の保守派が下院を掌握する中で、バイデン大統領は支援継続で困難に突き当たっている。
米国防総省は今月、議会の行き詰まりにより既にウクライナ向けの兵器供給を削減せざるを得なかったと説明。バイデン氏にとって、来年の大統領選はウクライナ支援をいっそう難しくする。ウクライナへの支援提供に対し批判を繰り返しているトランプ氏が相手であれば、なおさらだ。
トランプ氏が1日で戦争を終わらせると公約する中で、戦争のこう着を有権者に売り込もうとするのはバイデン氏にとって政治的に難しいだろうと、欧州の上級当局者は指摘。11月前半に発表されたギャロップの調査によると、米国市民の41%が米政府のウクライナ支援は行き過ぎていると回答し、6月の29%から上昇した。
戦争の長期化で、ロシアは自らが有利な方向に流れが移ってきていると見なしている。事情に詳しい在モスクワの関係者が語った。ロシア側の見方では、プーチン氏にはいま選択肢が2つある。消耗戦を続けて相手とその同盟国を根負けさせるか、春に大規模な攻勢を新たに仕掛けるかだ。後者を選ぶなら、不評を買うであろう大規模な動員が必要になる公算が大きい。
ゼレンスキー氏は和平交渉の戦略をまだ考えてはいない様子だ。だが世論調査によると、平和のためロシアへの領土割譲はやむを得ない対価だとの考えを受け入れるウクライナ市民の割合が、少数ではあるが増えつつある。
ウクライナは同盟国の一部が戦闘の規模を完全には理解せず、反攻を停滞させたロシアの防衛線の強力さを過小評価していることに不満を募らせている。ゼレンスキー氏の側近の1人は、期待が高過ぎたと語った。
一方、ロシアの一部当局者も戦況は芳しくないと考えている。ロシア政府は西側との我慢比べに勝てると思い込んでいるが、それは危険な自己欺瞞(ぎまん)だと、モスクワの戦略技術分析センター(CAST)で防衛問題を専門とするミハイル・バラバノフ氏は論じた。
「戦争が長期化すれば、ウクライナはイスラエルのような、米国にとって重要な同盟国としての地位を固めることになる。そのような展開は、ロシアにとって地政学的に深刻な敗北だ」と、バラバノフ氏は述べた。
オースティン長官はX(旧ツイッター)への投稿で、米国のウクライナに対するコミットメントをあらためて強調しようとし、このコミットメントはゼレンスキー氏やプーチン氏だけでなく、欧州の同盟国と米国市民に対するものでもあると示唆。「プーチン氏の侵攻に対するウクライナの戦いはマラソンだ。短距離走ではない」と述べた。
ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日、北大西洋条約機構(NATO)がロシアに対抗するため、加盟国内で部隊を自由に移動できる欧州連合(EU)の「シェンゲン協定」のような体制を望んでおり、緊張をあおっているとの認識を示した。
NATOの統合支援司令部(JSEC)幹部は23日報じたロイターとのインタビューで、加盟国内で部隊を自由に移動できる体制が望ましいと指摘。欧州の官僚主義が部隊の移動を阻んでおり、ロシアとの紛争が起きた場合、大幅な遅れが生じる可能性があると指摘していた。
ペスコフ報道官は「軍事シェンゲン」構想が現実のものとなれば、ロシアは対応すると発言。「(NATOは)わが国を明確な敵対国だと考えている。これは欧州の緊張をあおることにほかならず、重大な結果を招く」と述べた。
米海軍は26日、南シナ海の西沙(英語名パラセル)諸島付近でミサイル駆逐艦ホッパーが「航行の自由」作戦を実施したと発表した。
これに先立ち中国人民解放軍南部戦区は25日、微信(ウィーチャット)の公式アカウントに、海軍と空軍を派遣し米駆逐艦を「追跡、監視、警告」したと投稿した。
「米国が南シナ海において明らかに『安全保障上のリスクを生み出す者』であることを証明している」と批判した。
米海軍第7艦隊のワイデマン報道官は「世界中の行き過ぎた海洋権益の主張には誰に対しても異議を唱える」と表明。「南シナ海における違法かつ広範な海洋権益の主張は海洋の自由に対する深刻な脅威となる」と指摘した。
中国軍はミャンマーとの国境付近で25日から「戦闘訓練活動」を開始すると発表した。「部隊の迅速な機動性、国境封鎖、射撃能力を検証する」ことが目的と、ソーシャルメディア(SNS)の微信(ウィーチャット)に投稿した。
ミャンマーに隣接する雲南省政府は、演習が28日まで行われると明らかにした。
ミャンマー軍事政権のゾーミントゥン報道官はSNSに、中国から演習について通知を受けていると投稿した。国境付近の「安定と平和の維持」を目的としており、ミャンマーの内政に干渉しない中国の政策を損なうものではないとの認識を示した。
「中国とミャンマーの軍事的結びつきは強固であり、両軍の協力関係は友好的で強まっている」とした。
ミャンマー国営メディアは24日、中国からミャンマーに物資を運ぶトラックの車列が中国と国境を接するシャン州のムセ町で炎上したと報じた。反政府勢力の攻撃としている
中国国務院(政府)は24日、学校や病院で呼吸器疾患が急増する中、国内に警戒を呼びかけた。
インフルエンザがこの冬から春にかけてピークを迎え、マイコプラズマ肺炎は今後も一部地域で高い感染水準が続くと指摘。また、新型コロナウイルス感染症の再拡大リスクにも警鐘を鳴らした。
発表文で「全ての地方は感染症に関する情報報告を強化し、適時かつ正確に報告すべき」とした。
また、中国政府に疾患データの提出を求めた世界保健機関(WHO)は、異常な病原体は検出されていないと表明した。
来年1月に行われる台湾総統選の立候補受付締め切りが24日夕方に迫る中、最大野党の国民党と野党第2党の台湾民衆党の候補者一本化協議は依然まとまっていない。
対中融和路線を掲げる国民党と台湾民衆党は、与党民進党に対抗するために協力することで合意。国民党の侯友宜氏と民衆党の柯文哲氏は23日に協議を行ったが、国民党が会場を出る形で協議は打ち切られた。
候補者受付の締め切りは0930GMT(日本時間午後6時)。侯氏と柯氏は24日午前中にそれぞれ届け出を行うとみられる。
中国の習近平(シー・ジンピン)指導部で、金融汚職の摘発が急増している。不正調査の対象となった金融機関や監督当局の幹部の数は3年で4倍超となった。指導部は金融リスクの増幅を抑制し、共産党の指導力を強化する狙いだ。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは24日、中国不動産大手の万科企業の発行体格付けを「投資適格級」の下限となる「Baa3」(トリプルBマイナスに相当)へと2段階格下げした。万科を巡っては筆頭株主が支援に乗り出したことで信用不安が緩む兆しが出ていたが、見通しを厳しく評価した。
10月30日朝、香港の高等裁判所にあたる高等法院の第29号法廷。裁判官の陳静芬(リンダ・チャン)は初の決断を迫られていた。経営再建中の不動産大手、中国恒大集団への清算の申し立てを認めるか否か――。2兆3882億元(約50兆円)の負債総額は香港史上最大だ。
中国の子どもの間で急増している呼吸器疾患を巡り、同国の保健当局は複数の病原体が原因だと説明した。中国当局は新種のウイルスが原因ではないかとの懸念の払拭に努めており、既に世界保健機関(WHO)に対し、病原体は既知のものだと報告している。
中国国家衛生健康委員会の米鋒報道官は26日の記者会見で、呼吸器疾患急増の主因の一つはインフルエンザだと指摘。このほかライノウイルスと肺炎マイコプラズマ、RSウイルスも流行していると付け加えた。その上で、国として医薬品の供給を保証し、治療のため開放する地域を増やすべきだと述べた。
中国疾病予防コントロールセンターと北京児童医院は23日、外来患者と入院患者が増加しているとWHOに報告。ただ、これまでのところ病原体は以前から知られているものだと説明していた。
●中東
かつてパレスチナ自治区ガザから世界への窓だったインターネットが閉ざされ、ガザで芽生えつつあったハイテク産業は、今回の戦争によって若い才能の育成場から墓場へと暗転した。
イスラエルからの砲撃でガザきっての俊才数人が命を落とし、発展しつつあったデジタルインフラは破壊され、より良い未来への希望は消えた。今恐れられているのは、ハイテクに精通した人材がこぞって域外に脱出することだ。
ガザのハイテク産業で働き、現在は同地域の企業に助言を行っているライアン・スターギル氏は「(ハイテクは)最も急成長している経済分野であり、ガザ市民の頼みの綱だった」と語る。
「インターネットが徹底的に破壊されたのは、今回が初めてだ。過去何年間にもわたる全ての戦争でも、ネットがダウンすることはなかった」という。
イスラム組織ハマスが10月7日にイスラエルへの奇襲攻撃を開始する前、若い秀才の集まるハイテク産業は多くのパレスチナ人にとって、投資、雇用、そして小さく孤立した祖国をはるかに越えた明るい未来を約束してくれるものだった。
だが、その希望は断たれた。
ハマスが統治するガザ政府によると、イスラエルによる爆撃で少なくとも1万3300人のパレスチナ人が死亡。技術革新の中心人物だったタリク・タベット氏も先月、アパートで家族15人とともに亡くなった。
タベット氏はUCASテクノロジー・インキュベーターでシニアマネージャーを務めていた。これは2010年に設立された技術革新拠点で、ガザで活躍する技術者の指導や新進起業家の支援を行っていた。
「彼はテック業界の柱だった」と語るのは、2021年にガザからヨルダンに移住した元同僚のダリア・シュラブ氏(41)だ。「何千人もの若者が、自分のアイデアをウェブサイトやモバイルアプリに変える手助けをした男が失われた」と話す。
スターギル氏も、タベット氏の死によってガザから真の人材が奪われたと嘆く。爆撃により、ガザの大学や貴重な人的資本とともに、重要なハイテクインフラが破壊されていると同氏は言う。「ガザから出ることが可能なら、一人残らず出て行くだろう。私が話をした人はみな、必死に脱出を試みている」と語った。
<経済成長の光明>
ガザのハイテク部門は急成長を遂げ、厳しい制限を課された経済下で一筋の光明だった。
失業率は高く、人口密度が高く、封鎖されたこの土地にチャンスは少なかった。
そうした中でも、Ibtikar(アラビア語でイノベーション)と呼ばれるベンチャー・キャピタリスト・ファンドがパレスチナの企業幹部らによって2016年に設立され、最近になって第2回目となる3000万ドルの資金調達を行ったばかりだった。
このファンドは子育てや瞑想、ゲーム、人工知能(AI)など、幅広い分野のスタートアップ企業29社に資金を提供している。
2021年の世界銀行の報告書によると、パレスチナのハイテク・通信産業の規模は5億ドルと、国内総生産の約3%を占めている。
こうした成長は、ネット接続が無ければ不可能だった。
シュラブ氏は「2006年末に(イスラエルによる)包囲が始まったため、ガザの人々にとって世界への窓はインターネットだけだった」と言う。<包囲されるデジタルスキル>
世界銀行の報告書によると、イスラエルによる輸入制限により、ガザのネットワークは2Gに制限され「デジタルインフラ向上の主な制約要因」になっている。
ハイテク部門はガザを外界とつなぐだけでなく、若者たちがデジタルスキルを学んで仕事を見つけ、生活費を稼ぐ場を提供した、とシュラブ氏は言う。
世銀によると、ガザの失業率は2022年時点で約45%だ。
シュラブ氏は、グーグルの親会社であるアルファベット(GOOGL.O)が一部支援するハイテクイニシアチブ、ガザ・スカイ・ギークス(GSG)で10年以上働いた後、2021年にガザを去った。
GSGのディレクター、アラン・エル・カディ氏は電子メールで、GSGが2011年の発足以来、5万人以上の人々を支援してきたと説明。天然資源が乏しく、厳しい制約を課されたガザにおいて「デジタル関連の仕事は、持続可能で包括的な経済成長に向けた数少ない現実的機会の1つだ」と話す。
しかし、現在はGSGのメインオフィスが深刻な被害を受けているという。「現時点では他の組織と同様、私たちも安全に活動することはできない」と訴えた。
<海外から追悼>
海外に暮らすパレスチナ人技術者もまた、故郷の仲間の死を悼んでいる。
イスラエルの空爆で家族もろとも死亡したGSGの卒業生、マイ・アベイド氏について、グーグルのソフトウェアエンジニアであるモハマド・カタミ氏は「彼女は私たちの仲間だった」と語っている。このコメントはアベイド氏の元同僚が書いた追悼文に引用されている。
カタミ氏は、グーグルがイスラエル政府・軍と結んでいる12億ドルの契約を解除するよう求める従業員グループ「No Tech for Apartheid(アパルトヘイトのための技術提供反対)」キャンペーンの活動メンバーであり、ガザでのイスラエル軍の空爆の犠牲者のための追悼集会開催に協力している。
「彼女の死は胸を刺した。私たちが取り組んでいる製品が、この暴力の一因になってほしくない」とカタミ氏は話した。
リヤド: サウジアラビア外相ファイサル・ビン・ファルハーン王子とコロンビア外相が、ガザ地区の最新の動向について討議したとサウジアラビア外務省が話した。
両者は、国際社会が、国際平和と安全保障を達成するような方法で、すべての軍事行動をやめさせ、パレスチナ問題について公正で包括的な平和への道筋へ戻す責任を果たす重要性を討議したほか、パレスチナ居留地とその周辺の動向、非武装の民間人への危害について話し合った。
両大臣は、二国間の協力関係とさまざまな分野で二国間関係を強化、発展させる方法についても話し合った。
東京:イスラエル軍の元諜報関係者は、ガザ地区からハマスを排除するイスラエルの作戦は5ヶ月程度を要し、軍事作戦に関しては何年も続くだろうとの見通しを示した。
元イスラエル軍参謀本部諜報局長のアモス・ヤドリン氏は日本経済新聞とのインタビューで、米国がイラクのイスラム国(IS)を弱体化させるのに5年を要したことを指摘した。
ヤドリン氏は、「人質の救出と軍事作戦を両立させるのは困難だ」と述べた。同氏はガザのアル・シファ病院地下にハマスの拠点があるのは明らかだが、巻き添えの可能性もあることを認め、被害を最小限に抑えるよう求める米国など同盟国に不満を示した。
ヤドリン氏は日経に対し、当初は「交渉の余地が全くなかったが、時間が経過するにつれて進む」として、イスラエル側の軟化や、軍事的に追い詰められたハマスが要求の水準を下げる可能性に言及、女性や子供が解放される希望はあると述べた。
元諜報局長は、ハマスによる攻撃を防げなかったことに失望感を表すとともに、世界をリードするサイバー技術を持つイスラエルはシグナル・インテリジェンス(シギント)に依存しすぎており、人を使った情報収集も欠かせないとした。
ヤドリン氏は40年以上にわたり国防軍に所属。イスラエル政府に国家安全保障について助言するコンサルティング会社MINDイスラエル代表。
ロンドン:人道援助団体は、ガザ地区において、イスラエルとパレスチナの武装組織ハマスの数週間にわたる戦闘を経て、11月24日に発効した4日間の一時停戦が恒久的なものになることを望んている。
この一時停戦は、ガザへの援助物資の輸送の円滑化を目的としている。イスラエルは、今回の戦争の引鉄となった10月7日の襲撃でハマスによって拉致された人質の内50人を、自国の刑務所で拘禁中の150人のパレスチナ人と交換する見込みである。
イスラエル当局者の発言として伝えられる報道によると、ハマス側が1日あたり少なくとも10人の人質の解放に同意すれば、戦闘停止は当初予定の4日間を超えて延長され得るという。
BBCによると、イスラエル政府がハマスに与えたインセンティブは、解放交渉が未完了の人質の家族にとっては重要であるものの、数多くの人々がハマスとの部分的な取引は容認出来ないと主張しているという。
しかし、そうした合意によって、イスラエルの監獄に拘禁されていると考えられる7,300人のパレスチナ人が引き換えに解放されるのか否かについての詳細は明らかではない。ロイター通信によると、イスラエルとハマスの双方が、一時停戦終了後に戦闘は再開されると述べている。
飢餓に対する行動やハンディキャップ・インターナショナル、世界の医療団、ノーベル女性イニシアチブ、ノルウェー難民評議会、オックスファム、難民インターナショナル、セーブ・ザ・チルドレンのすべてが、この停戦協定を大きな傷口に貼られた「絆創膏」に例えている。
セーブ・ザ・チルドレン・パレスチナの地域責任者であるジェイソン・リー氏は、11月22日の声明で、「人道的理由による停戦は正しい方向への歓迎すべき一歩ですが、戦争の終結の代替にはなりません」との意見を明らかにした。
リー氏は、パレスチナ領域の飛び地であるガザ地区の北部と南部の両方で起きている戦闘に言及し、「ガザ地区には安全な場所など実際のところは存在しません」と述べた。
ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は、11月第4週、国連安全保障理事会で、ガザ地区は「子供にとって世界で最も危険な場所」になったと語り、殺害された子供の数は5,300人以上であり、「この戦争の真の代償は子供たちの命で測られることになるでしょう」と付け加えた。
一時停戦のニュースにより、ガザ地区とエジプトの境界線にあるラファ検問所が改めて注目されることになった。イスラエルによる2007年の封鎖以来、パレスチナ領域の飛び地であるガザ地区の人々にとって国外にアクセスする唯一の方法であったラファ検問所だが、戦闘開始以来最初の3週間は閉鎖されていた。
国連人道問題調整事務所によると、ラファ検問所再開以後、援助物資を積載した約1,400台のトラックが同検問所を通過してガザ地区に入ったという。
しかし、複数の援助機関が、これはガザ地区住民が必要としているもののほんの一部に過ぎないと述べている。飢餓に対する行動の中東責任者であるキアラ・サッカルディ氏は、ラファ経由のアクセスの現状は「限定的」なものだと述べた。
サッカルディ氏は、11月22日のメディア会見で、「検問所経由でのガザ地区への輸送には物流的な限界があります」と語った。
「現在のところ、ラファ検問所経由で輸送できる物資では十分ではありません」と、サッカルディ氏は付け加え、さらに多くのエントリーポイントの設置を求めた。
世界の医療団のジョエル・ワイラー事務局長は、ガザ地区への人道援助物資の輸送にはラファ検問所のみでは不十分であることに同意し、ガザ地区とイスラエル、エジプトの三国間国境のケレム・シャローム検問所の人道援助物資輸送目的での使用を可能とすることを求めた。
ワイラー氏は、11月24日の一時停戦は、ガザ地区の支援を目指す医療機関にとっては、よく言っても「応急処置」、悪く言えば「冗談」だと語った。「人道主義のペンキを薄く塗ったようなものです」と、ワイラー氏は付け加えた。
ガザ地区への人道援助物資や商品の輸送を可能とするためにケレム・シャローム検問所の使用を可能とするよう、国連もまたイスラエルに要請している。
国連の人道問題担当事務次長で緊急救援調整官のマーティン・グリフィス氏によると、2007年のイスラエルによる禁輸措置まではガザ地区に輸送される貨物の60%以上がこのケレム・シャローム検問所経由だったという。
とは言うものの、主眼は依然として空爆を中止させることにある。
アムネスティ・インターナショナルUSAのポール・オブライエン事務局長は、破壊の度合と物資の不足を考慮すると、パレスチナ領域の包囲下の飛び地であるガザ地区での差し迫ったニーズは数日間の短い時間で満たすにはあまりにも深刻かつ甚大であると述べた。
オブライエン氏は、11月22日のメディア会見で、「ガザ地区での緊急のニーズへの対応は、数日間の停戦では実現できません。数百台の援助物資を積載したトラックは、必要不可欠かつ有用ではあるものの、それだけではガザ地区の状況に十分な対応はできないのです」と語った。
ガザ地区が被った破壊の程度を勘案してみると、こうしたニーズの規模が明らかになる。ガザ地区の住宅のほぼ半数が倒壊や深刻な損傷を受け、教育施設の51%以上が破壊されたのだ。
他方、燃料不足により停電が発生しており、その結果、浄水場に電力が供給されなくなり、水系感染症が蔓延している。
ハンディキャップ・インターナショナルのパレスチナ担当の地域マネージャーであるダニラ・ジジ氏は、イスラエルによる空爆は民間人を殺害するだけではなく、「多種の重傷を人々に負わせている」と語った。
空爆による負傷には、重度の脊椎損傷や切断を必要とする外傷が含まれている、ガザ地区の医師たちは、封鎖により援助物資が得られず、麻酔薬や鎮痛剤、適切なアフターケアやリハビリテーション無しでの手術を余儀なくされている。
「現在の耐乏状態が始まる前、私たちはガザ地区の障害のある人々の21%を対象としていました。現時点での状況がどうなっているのかはまったく分かりません。何人の障害を持った人々が無事でいるのか、推測すらできないのです」と、ジジ氏は語った。
ジジ氏は、アムネスティ・インターナショナルUSAのオブライエン事務局長と同意見で、医療や食料、水へのアクセスを確保し、そして人間の尊厳の守ることは、数時間や数日間では遂行不可能な継続的なニーズであり、現在の一時停戦は「200万人に援助物資を届ける」のには不十分だと述べた。
「一時停戦の実態がどうなるのか、私たちには分かりません。私たちは安全には活動出来ないのです。継続的な停戦が必要です。援助を必要としている人たちの実情を見極めるために、安全な通行許可が必要なのです」と、ジジ氏は語った。
ガザ全域での即時かつ継続的な停戦の要請に参加したオブライエン氏は、イスラエルに対して影響力を持つ人々、「特にバイデン大統領と議会」に、「人権の側に立ち、継続的な停戦のために尽力する」よう呼びかけた。
オブライエン氏は、米国に、「国際人道法に違反するあらゆる方策に対しても、武器移転と支援を停止する」ことを求め、国際人道法への違反があれば戦争犯罪として捜査を行うよう要請した。
「イスラエル国防軍(IDF)と米国は、標的はハマスであり、その拠点がガザ地区であることから、同地区内の教会や学校、病院に対しての空爆においても人道法は順守されていると主張しています。それは不当な主張です。そして、こうした事は戦争犯罪として調査される必要があります」と、オブライエン氏は語った。
継続的な停戦の見込みは、しかしながら、わずかである。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、同国政府の目標はハマスを完全に壊滅させることだと繰り返し述べている。
とは言え、ハンディキャップ・インターナショナルのジジ氏にとって、代替策などあり得ない。4日間の停戦は、ガザ北部の民間人の安全な南部への退避を図るためにイスラエルが11月9日に合意した毎日4時間の停戦よりも多少はましなはずのだ。
ところが、報道によると、ガザ地区南部は安全な避難場所であるとの言明にも関わらず、イスラエル軍はその南部だけではなくイスラエル側が退避用として定めた安全なはずの経路をも標的として攻撃し続けている。
その結果、国連機関を含む人道援助機関は、「安全地帯」を設置するというイスラエルの一方的な提案を受け入れなかった。
これらの人道援助機関は、共同声明で、現況下でのそのような「安全地帯」の設置は「大規模な人命の損失を初めとする、民間人への被害に繋がる危険性があります」と述べた。
エルサレム:イスラエルとイスラム組織ハマスとの合意に基づく戦闘休止は25日、2日目に入った。双方が激しく衝突してきたパレスチナ自治区ガザは24日は比較的落ち着いた状況と伝えられており、今後も続くかが焦点だ。戦闘休止を受け、ハマスは25日も前日に続きガザで拘束する人質を解放する予定。これと引き換えに、イスラエル側も収監するパレスチナ人の女性と未成年者を釈放する見通しだ。
イスラエルとハマスとの合意では、約240人いた人質のうち、女性や子供計50人を解放する。ハマスは24日、第1陣として2~85歳のイスラエル人計13人を解放。イスラエルとの合意とは別に、タイ人10人、フィリピン人1人を引き渡した。
拘束を解かれガザを出たイスラエル人らは国内の病院に搬送された。子供4人とその母親3人、高齢女性1人を受け入れた病院の院長は「体調は良好だ」と語り、「医学面と精神面で検査を行っている」と明かした。
ロイター通信によると、解放された男の子の親族の女性は、「(好きなおもちゃを)渡すのが待ち切れない」と喜んだ。ガザに成人の息子が残る女性は「うらやましい。そして悲しい」と語った。
イスラエルのネタニヤフ首相は24日に人質全員の奪還に向け「尽力する」と表明。首相府は24日、第2陣となる人質の名簿を受け取ったと発表し、「(内容を)精査している」と説明した。
一方、イスラエルは24日、収監する女性や未成年者のパレスチナ人39人を釈放した。収容施設を出た女性は、中東の衛星テレビ局アルジャジーラに「少し緊張している。外にいるなんて信じられない」と語った。現地からの映像によると、釈放された人々が乗るバスを大勢の人が取り囲んで歓声を上げ、パレスチナの旗と共にハマスの旗を振った。
ベイルート:イランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相が、ガザ地区の戦争開始以降イスラエルと国境を挟んで激しい銃撃戦を繰り広げてきたヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ書記長と会談を行ったと、Lebanese movementは木曜日に発表した。
10月7日にイスラエルとハマスの間で戦争が始まってから、レバノンとイスラエルの国境では主にイスラエルと、イランの支援を受けるヒズボラならびにパレスチナ人グループとの間で銃撃戦が激化している。
この衝突により、より広範な戦争が勃発するのではないかとの懸念が高まっている。
ヒズボラは声明で、アミール・アブドラヒアン外相とナスララ書記長は、「パレスチナ、レバノン、および地域における最新の動向、さらには…ガザ地区に対するイスラエルの攻撃を終わらせるために実施された取り組みを再確認した」と伝えた。
イランのヌール通信によると、アミール・アブドラヒアン外相は水曜日、戦争が制御不能に陥る可能性があると警告し、会談後ベイルートを離れドーハへと向かった。
ヒズボラは木曜朝、国境から約10キロメートル(6マイル)離れたイスラエル北部の町サフェド近くのアインツァイティムにある軍事基地に、カチューシャロケット弾48発を発射したと発表した。
さらに、国境近くのイスラエル軍陣地に対して少なくとも10回の攻撃を実施し、死傷者を出したと主張した。
レバノン国営通信によると、イスラエル軍はこれに対抗してレバノン南部の数か所を砲撃した。
ヒズボラは、パレスチナ・イスラム運動による10月7日のイスラエル攻撃以降、ハマスを支援する行動をとっていると話す。イスラエル当局は、10月7日の攻撃で1,200人(大半が民間人)が死亡、約240人が人質になったと発表している。
ガザ地区を統治するハマス政府によると、イスラエルはハマスを殲滅すると明言しており、このパレスチナの領土に対する空と陸からの報復攻撃で、これまでに数千人の子どもを含む1万4,000人以上が死亡した。
AFPの集計では、イスラエルとヒズボラの間の戦闘により、レバノンでは少なくとも108人の命が奪われ、そのほとんどがヒズボラ戦闘員ではあるが、ジャーナリスト3人を含む少なくとも14人の民間人も亡くなっている。
当局によると、イスラエル側ではイスラエル軍兵士6人と民間人3人が命を落としている。
●中南米・アフリカ
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事とアルゼンチンのミレイ次期大統領が24日夜、初めて電話協議し、140%を超えるインフレ率や自国通貨安に見舞われる同国経済を巡り意見を交わした。
ゲオルギエワ氏はX(旧ツイッター)に「アルゼンチン経済が直面する大きな課題や必要とされる断固とした政策措置について話し合った」と投稿。IMFはインフレ抑制や財政の改善、「民間主導の成長押し上げ」に向けた取り組みを支持すると表明した。
一方、ミレイ氏もXへの投稿で、アルゼンチンが必要とする構造的な解決策を探る上でIMF側に支援の用意があるとし、ゲオルギエワ氏とは自身の財政調整計画や金融プログラムに関して話したことを明らかにした。
警官が猛るサッカーファンに警棒を振るい、競技場のスタンドでは母親の腕に抱かれた子どもたちが泣いている。頭を抱え込んだ男の顔面は血まみれだ。
ブラジルの主要都市リオデジャネイロで21日に行われたサッカー2026年ワールドカップ(W杯)南米予選のブラジルとアルゼンチンの試合では、両国のファン同士が衝突して警察が介入、こうした衝撃的なシーンが繰り広げられた。
ブラジルは12月1日に20カ国・地域(G20)議長国の座をインドから引き継ぐ予定で、来年11月18―19日に予定されるG20首脳会議に向けて準備を進めている。しかしリオは今回のサッカーファンの暴動以外にも、米人気歌手テイラー・スウィフトさんのコンサート会場で観客女性が死亡したり、10月に一般市民がギャングに惨殺されたりするなど不穏な事件が連続して発生しており、治安の悪化が目立っている。
ブラジルは政治的混乱や過去数十年で最悪の不況に見舞われながらも、14年にサッカーW杯決勝、16年にリオ五輪を開催しており、注目度の高いイベントを主催する経験を持たないわけではない。
しかしリオは治安の悪化が進んでいる上、この数週間にいくつかの大きなイベントで混乱が相次いでおり、既にG20首脳会議の準備に入っている主要経済国の代表は懸念を抱きそうだ。
リオが記録的な熱波に襲われた17日に同地で開かれたスウィフトさんのコンサートでは、会場で若い女性が死亡した。観客の間では水が不足しているという不満の声が広がっていた。
次いで21日にはスウィフトさんのコンサート会場に近いマラカナ競技場で行われたブラジル対アルゼンチンの試合で暴動が発生し、試合開始が30分遅れた。テレビにはリオ州の警官がアルゼンチンのファンを警棒で殴りつけ、椅子が乱れ飛ぶ映像が流れた。小さな子ども連れの家族は恐怖のあまり逃げ惑った。
ブラジルサッカー連盟(CBF)とリオ州軍警察はブラジルとアルゼンチンのファンの座席を分けなかったことを巡り非難の応酬を繰り広げた。連盟は、軍警察は座席が混ざっているセクションがあることを十分に認識していたし、連盟は当局と事前に合意した警備・作戦計画を「厳格に遵守した」と主張。一方の軍警察は、連盟が各国のファンを分けずにチケットを販売したと批判し、スタジアム内の警備は連盟が業務を委託した民間業者の責任だとしている。
既に今月、クラブ南米王者の座を争うコパ・リベルタドーレスの決勝戦後、リオのコパカバーナビーチでボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)のファンに警察が暴力を振るう事件も起きていた。
駐ブラジル・アルゼンチン大使は当時SNSに「コパカバーナで見られたような残忍な弾圧は絶対に正当化できない」と投稿している。
G20のような重要イベントは厳重に計画され、万全なセキュリティー態勢が採られるものだが、リオの治安悪化によってブラジルは国際舞台でアピールする貴重な機会が台無しになりかねない。
ブラジルのルラ大統領は今月初め、リオの主要空港と主要港に一時的に軍隊を配置し、一連の暴力事件の背後に潜む「ミリシアス(民間武装組織)」と呼ばれる強力な麻薬組織や暴力マフィアの弱体化を図った。暴力事件の多発はルラ大統領の支持率が低下する要因となっている。
10月にはリオのビーチで深夜にビールを楽しんでいた医師3人が、ギャングに敵対組織のメンバーと間違われて惨殺された。さらにその数日後にミリシアスは、ボスの1人が警察に殺害された報復として、リオのバス数十台に放火する事件も起こしている。
●市況
<為替> 米経済指標で雇用の減速が確認されたことを受け、ドル指数が低下した。日本円は対ドルでほぼ横ばい。感謝祭の祝日の翌日で米株式市場などが短縮取引になる中、商いは薄く、狭いレンジ内での動きに終始した。
<債券> 米債利回りが上昇した。底堅い米経済を受けて米連邦準備理事会(FRB)が2024年に利下げを実施するとの観測が後退した。
<株式> ダウ工業株30種とS&P総合500種が上昇したものの、ナスダック総合はモメンタム銘柄に売りが出たことで小幅安で取引を終えた。この日は感謝祭の祝日の翌日で短縮取引となる中、商いは低調。恒例の大規模セール「ブラックフライデー」の状況が注目されている。
<米原油先物> 有力産油国の今後の生産方針に関する不透明感を嫌気し、3営業日続落した。米国産標準油種WTIの中心限月1月物の清算値(終値に相当)は、前営業日の22日比1.56ドル(2.02%)安の1バレル=75.54ドル。2月物は1.48ドル安の75.77ドル。米感謝祭祝日に伴い、この日は午後1時半までの短縮取引だった。
<ロンドン株式市場> 小幅続伸して取引を終えた。エネルギー株の上昇が相場を支えた。一方、中型株で構成するFTSE250種指数(.FTMC)は0.12%下げた。米国市場が感謝祭の祝日明けで短縮取引となる中、商いは薄かった。
<欧州株式市場> 3日続伸して取引を終えた。STOXX欧州600種指数(.STOXX)は終値として2カ月超ぶりの高値を付けた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが上昇した。リセッション(景気後退)を巡る懸念がくすぶる一方、2024年の利下げ観測を打ち消す欧州中央銀行(ECB)当局者の発言を受けた。
日経先物33,740、ダウ先35,433、債先145.68、米4.472、独2.6295、仏3.190、西3.616、伊4.389、英4.3205、波5.622、原油75.17、銅8,451、ドル円149.45、ユーロドル1.0941
※11/24NY引け値
備忘録(2023/11/22-23)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
欧州中央銀行(ECB)は銀行約20行に気候変動リスク管理の不備に対処しなければ、制裁金を科すと警告する書簡を送付した。事情に詳しい関係者が明らかにした。
ECBは今月および先月送った書簡で、来年3月末までなどとそれぞれ期限を設定し、指摘した問題を解決するよう各行に求めた。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。
関係者によれば、こうした制裁金処分は、対応が遅れている銀行にECBが不満を募らせていることを意味する。
デンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)は、肥満症治療薬「ウゴービ」を来年2月22日に日本で発売すると発表した。発売はアジア地域では初めてで、世界では6カ国目となる。既存市場では旺盛な需要に供給が追いつかない状況となっている。
同社によると、日本の患者がウゴービを処方された場合、他の処方薬と同様に大半が3割負担となる。1カ月分の価格は使用開始時の0.25ミリグラムの用量で7504円、2.4ミリグラムで4万2960円になるという。
対象となる患者は、肥満の度合いを示す体格指数(BMI)が35を上回っているか、BMIが27を超えると同時に2つ以上の肥満関連の併存疾患がある人のみとなる。
グローバル・オビーシティー・オブザーバトリーによると、日本では肥満と定義されるBMIが30以上の人の割合は2019年時点でわずか4.5%と、世界で最も低い部類に入る。
ノボはウゴービの供給能力が需要に追いついていないことから、発売国や治療対象の患者を制限している。
●その他産業
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のブロック総裁は22日、一時的なサプライチェーンの圧力よりも内需が物価を押し上げつつあると述べ、金利による一段と「大幅な(substantial)」な対応が必要になっているとの見解を示した。
同総裁の講演はタカ派的なトーンで、物価上昇圧力が広範囲に及びサービス部門でますます持続的になっているし、需要の過熱を示していると指摘した。
インフレに関する残る課題は国内の要因が大きく需要が主導していると分析。「より大幅な金融政策の引き締めは、経済の潜在能力を上回る総需要から生じるインフレへの正しい対応だ」と訴えた。
世界のサプライチェーンの目詰まりが解消されるにつれて製品の価格上昇は鈍化しており、この傾向はさらに続くとの見方を示した。
「インフレは単にガソリン、電気、家賃だけではなく、はるかに広範囲にわたる。製品やサービスの大部分の価格が大幅に上昇している」と述べた。
サービス部門のコスト圧力は特に根強く、美容院や歯科医、外食、スポーツやその他の娯楽活動に至るまで、あらゆるものの価格が大幅に上昇していると語った。
企業から聞き取りを行ったところ、労働力を中心に余剰生産能力が不足しているとの指摘があったという。
「このような国内発の需要主導の要因がインフレに及ぼす重要な意味は、インフレ率を目標に戻すには時間がかかるということだ」と述べた。
「中銀が金融政策で目指しているのは、雇用の伸びを維持しながら需要の伸びを鈍化させ、インフレ率を目標に戻すことだ」と説明した。
金利上昇が多くの家計を圧迫していることは承知しているとした上で、中銀の唯一の政策手段は金利であり切れ味の悪いものだと語った。
オーストラリア政府は22日、サイバーセキュリティー対策を発表した。中小企業のサイバー健全性を点検するほか、関連法執行の予算を増額する。
ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃の報告も義務化。重要インフラに関する通信会社のサイバー報告規則を強化する。
サイバーセキュリティーに対応する労働者を増やすため、移民も募集するほか、省庁間のデータ共有に制限を設け、問題の報告を奨励する。
対策規模は5億8700万豪ドル(3億8200万ドル)。
同国では企業に対するわずか2件のサイバー攻撃で人口2600万人の半分近い国民の個人情報が流出。今月も国内最大の港湾運営会社がサイバー攻撃を受け、供給網が停止した。
政府が今月発表した報告書によると、今年6月までの1年間のサイバー犯罪報告は25%近く増加。平均被害額は14%増えた。報告書は、米英との新たな防衛協定を受けて同国を標的とする攻撃が増えたと指摘している。
ドイツ政府は21日、予算のうち未執行の大半の財政支出を凍結した。ショルツ首相の率いる3党連立政権は深刻化する財政危機を打開しようとしており、複数の政府高官が凍結は不可欠なステップと述べた。
きっかけは先週の憲法裁判所判決だった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)対応の基金のうち、未使用の600億ユーロ(650億ドル)について、判決は気候変動対応への転用を容認しなかった。
この影響でドイツの産業界は競争力を維持するための財政支援を受けられなくなる可能性が出てきた。また、ショルツ首相の社会民主党(SPD)と財政支出に積極的な緑の党、財政規律を重視する自由民主党(FDP)の与党3党の間では、新規債務の自主的制限措置を一時停止するかどうかを巡り一段と緊迫した状態となった。
連邦政府予算のほぼ全分野に渡って今後の執行が凍結されたことは、財務省事務次官の書簡で明らかになった。この中で、同省が財政への潜在的な影響をいかに深刻に受け止めているかが示された。
新規支出の凍結は全省庁に適用される。また、財務省に近い関係筋によると、パンデミックとロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー危機に伴う企業支援対応の「経済安定化基金」(2000億ユーロ規模)の新規支出を政府は既に凍結した。
ある政府関係者がロイターに明らかにしたところでは、政府は年内に同基金を閉鎖する意向という。
議会予算委員会のメンバーの話では連立政権は依然、来年度予算案の審議を終える審議日程を堅持している。議会では12月1日に予算案採決が予定されている。
SPD内では、財政支出拡大のため、憲法が定める「債務ブレーキ」の変更を政府に求める圧力が高まっているが、リントナー財務相は反対している。財務相の所属するFDPでは債務ブレーキを極めて神聖なものとみる党員が多い。
債務ブレーキは、2020年から22年まで、パンデミックとロシアのウクライナ侵攻がもたらす経済への影響を緩和するため解除されていた。ある政府関係者は、政府内では今年も債務ブレーキの一時的な解除が検討されていると明らかにした。ただ、正当化するには憲法裁判決に示されたガイドラインに従う必要があると指摘した。
ただ、景気低迷と物価上昇に伴って政府への支持は低迷している。政府が今後どのように進むべきかについて、世論は分かれているようだ。
ユーロ圏経済の低成長は金利上昇による金融安定リスクを増幅しかねないと、欧州中央銀行(ECB)が警告した。
ECBは半期に1度の金融安定報告を発表。この中で、ECBの歴史的な連続利上げの影響が表れ続ける一方で予想を下回る経済状況が続けば、家計や企業の収入や公的財政は一層の逼迫(ひっぱく)を感じることになる可能性があると、注意を促した。
デギンドスECB副総裁はフランクフルトで、「低調な経済見通しに高インフレの影響が相まって、消費者や企業、政府の債務返済能力が圧迫されている」と指摘。「高金利に加え、不透明性と地政学的な緊張が深刻化する環境へと経済が移行するにあたり、強い警戒を維持することが重要だ」と述べた。
金融安定報告によると、インフレが成長に重大な打撃を及ぼすことなく収束する「ソフトランディング」を金融市場は現時点で見込んでいる。だが、歴史的な例からはそのような展開が「不可能ではないにしても、実際には難しい。短期間に金利が上昇した度合いを考えれば、なおさらだ」と論じ、成長に対するネガティブなサプライズがあれば、「無秩序な調整」につながるリスクがあると指摘した。
ECBは昨年半ばから10回連続で金利を引き上げた後、先月の会合で据え置いた。利上げの影響は不動産などのセクターで強まり始めているものの、家計や企業、政府の借り入れコストは徐々にしか動かないことから、引き締め効果の多くはまだ経済に浸透していない。
それでも景気下降がいっそう広がり信用コストが上昇すれば、増加し始めた企業破綻が加速する可能性があると、ECBは懸念を示した。
欧州連合(EU)統計局が22日発表した11月のユーロ圏消費者信頼感指数(速報値)はマイナス16.9と、前月のマイナス17.8(改定値)から0.9ポイント上昇した。
ロイターがまとめたエコノミスト予想はマイナス17.6だった。
EU全体の消費者信頼感指数はマイナス17.5と、前月から1.1ポイント上昇した。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのセンテノ・ポルトガル中銀総裁は22日、マクロ経済情勢を考慮するとECBの最近の利上げサイクルが近い将来、反転するとの見通しを示した。
記者会見で「金融政策はインフレ率の低下を効果的、持続的、かつ急速に進めることに貢献してきた」と指摘。「われわれは非常に激しい利上げサイクルの中にいる。それは金融条件の大幅な引き締めであったが、近い将来、(このサイクルを)継続するのではなく、反転させる条件が整うと予想される」とした。
また、ECBは「インフレ率低下のあらゆる兆候が2%目標への収束と一致するまで現在の金利を維持すべき」と強調。「ここ数週間、インフレ率が2%目標に収束しつつあるとの期待が強まっている」とした一方、警戒する必要性についても言及した。
センテノ氏によると、インフレ率の収束は2025年までの今後数カ月間で発生し、最終段階はゆっくりとしたペースになるという。
さらに、インフレ率の低下によりECBの名目金利が安定的に推移する可能性があるとしても、企業や家計、経済に直接影響を与える実質金利は依然として上昇すると警告。「実際、名目金利が一定であったとしても、金融引き締めはしばらく続くだろう」とした。
22日投開票されたオランダ総選挙では、ウィルダース党首が率いる極右の自由党(PVV)が勝利し、次期政権を率いる意向を表明した。選挙戦終盤の追い上げで、反欧州連合(EU)を掲げる同党が主流派の競合政党を制した。
暫定的な集計結果では、PVVは従来の議席数の2倍強となる37議席を獲得する見通し。単独過半数を握るのに必要な76議席は大幅に下回るため、ウィルダース党首は連立相手を見つける必要が出てくる。議会第1党の党首が首相にならなかった例は、近年のオランダ史上で一度しかない。
欧州委員会で上級副委員長(欧州グリーンディール政策統括、気候変動対策)を務めたフランス・ティメルマンス氏率いる左派連合は25議席で2位、ピーター・オムツィヒト議員が結成した新党は20議席の見込み。
ウィルダース氏が次期政権を率いる見通しは、中道寄りの政党と手を組めるかどうかに左右される。出口調査を受けた演説でウィルダース氏は、最近までルッテ首相が率いていた自由民主党(VVD)が参加する連立政権を呼び掛けた。VVDは同氏と共に政権を担う用意があることを示唆している。ルッテ首相は引退する意向。
ウィルダース氏は勝利宣言後の演説で、「オランダ国民の希望は、自分たちの国を取り戻すことだ」とした上で、「他政党との協議で歩み寄りをいとわない」と語った。
ユーロネクスト・アムステルダムに上場するオランダ企業上位25銘柄で構成するAEX指数は、選挙を受けた23日の取引でほぼ変わらず。オランダ国債はドイツ国債に比べ1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)のアンダーパフォーム。
PVVが勝利した背景には、国内で高まる移民反対の動きに焦点を当てた選挙戦がある。ウィルダース氏(60)は反イスラムの立場を取ることで知られ、殺害予告を理由に20年にわたり警察の保護下にある。
ロシアのウクライナ侵攻以降の難民増加、食料やエネルギー価格の上昇で、欧州全域で極右は支持を伸ばしている。ドイツでは「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持がいまや連立与党のいずれをも上回る。昨年のイタリア総選挙では、無名だったメローニ氏が政権を握った。
22日投開票のオランダ下院(定数150)選では、反移民・反欧州連合(EU)を掲げる極右の自由党が第1党になる見通しとなった。同党のウィルダース党首は次期首相就任に意欲を見せたが、連立交渉は難航する可能性がある。
一方、来年6月の欧州議会選で極右勢力がさらに伸びれば、移民問題や温暖化対策といったEUの政策にも影響が及ぶ可能性がある。
自由党は改選前の17議席から37議席に躍進する見通し。労働党とグリーンレフトによる左派連合の25議席や、ルッテ首相の中道右派の最大与党、自由民主党(VVD)の24議席を大きく上回る。今後連立協議が本格化する。
ウィルダース氏は党員を前に「首相になれたら、もちろんうれしい」と述べ、連立交渉に意欲を示した。
トランプ元米大統領や欧州連合(EU)懐疑派で知られるハンガリーのオルバン首相を支持するウィルダース氏は、反イスラム、反EUを主張している。
同氏が掲げるEU離脱やイスラム教の聖典コーランの禁止といった政策に連立相手から懸念の声が上がり、交渉が難航する可能性もある。
ハント英財務相は22日、来年見込まれる総選挙を前に景気浮揚を図ろうと、個人および法人向けの減税策を打ち出した。一方で、経済成長率の予測を下方修正した。
ハント氏は議会で秋季財政報告を行い、予算責任局(OBR)の予測を基に2024年、25年の経済成長率はそれぞれ0.7%と1.4%を見込んでいると述べた。従来予想は1.8%と2.5%だった。
総選挙を控え、野党・労働党の支持率は与党・保守党を約20ポイント上回る。その差を埋めたいハント財務相とスナク首相にとって今は重大な時期だ。ハント氏は減税を強調したが、それはスナク政権が直面する圧力を浮き彫りにする。
ハント氏は「われわれの選択は大きな政府、大規模な歳出、高税率ではない」と述べ、「代わりに債務を軽減し、税を引き下げ、労働に報いる」と続けた。
秋季財政報告の中でハント氏は、設備投資額の100%を課税控除とする企業向けの特別減税措置を恒久化するほか、給与天引きされる被雇用者負担の国民保険料率を2ポイント引き下げると発表し、近代の英国としては史上最大規模の企業向け減税だと主張した。
設備投資への課税控除は当初、法人税が19%から25%に引き上げられた際の打撃を吸収するために導入され、26年に失効する予定だった。
支出面では、社会保障給付額を10月の低いインフレ率ではなく9月の高いインフレ率に従って引き上げるとハント氏は表明。公的年金支給額の伸び率をインフレ率、賃金上昇率、2.5%の3つのうち最も高い率に合わせる「トリプル・ロック」を維持し、低い賃金上昇率の数字を使うことはないと言明した。
債務については、5年間の予測期間の終わりまでに国内総生産(GDP)に対する債務比率が低下するとし、3月時点で見込んだ額の倍の余裕が生じると主張。だが、独立系シンクタンクのレゾリューション・ファンデーションは、ハント氏の話す余裕は政治的に実現不可能な可能性が高い選挙後数年の政策に基づいており、「幻の財政」だと指摘した。
ハント氏の計画は、総選挙が見込まれる24年以降の数年に緊縮財政を続けることを前提としており、公的サービスの悪化につながる公算が大きい。これは実質的に、次期政権は緊縮財政を避けるためハント氏がこの日発表した減税措置を撤回せざるを得なくなる可能性を意味する。世論調査ではスターマー党首率いる労働党が優位を保っている。
英国は保守党政権下で税負担が戦後最高の水準に上昇。同党内では税負担の引き下げを求める声が高まり、ハント氏は個人向け減税を発表するよう強い圧力にさらされていた。
最近低下したインフレ率について政府は強気に転じ、スナク首相は20日、減税を検討できると述べていた。ハント氏はこの日、24年末までに2.8%へ低下する見通しだと発言。ただ、OBRが3月時点で予測した0.5%への低下と比べると、はるかに高い。
米証券取引委員会(SEC)は国債取引の中央清算機関処理拡充を狙った規則を準備しているが、金融業界はヘッジファンドなどが中央清算機関経由で取引を行う場合、どの程度担保を差し入れる必要があるかに注目している。
近く発表される見込みの規則は、米国債の現物・レポ取引で中央清算機関の利用を拡大する内容。
中央清算機関経由の取引では市場参加者が証拠金、ヘアカットとも呼ばれる担保を差し入れる必要がある。比率は米国債の中央清算機関の証券取引清算機関(FICC)が設定するとみられる。
背景には、レポ市場でヘッジファンドの多くが担保ゼロで取引していることがある。規制当局は、システムにリスクが蓄積し、市場にストレスが生じた場合にポジションの無秩序な解消が起こり金融の安定を脅かす可能性を懸念している。
ただ、こうした規制は取引コストを増大し市場流動性を低下させる可能性もある。米連邦準備理事会(FRB)エコノミストの最近の論文は、仮に最低ヘアカットが200ベーシスポイント(bp)だとするとヘッジファンド側の負担は124億ドル増えレバレッジが低減すると指摘している。
業界では、ヘアカットゼロの慣行は不健全だとしてSECの動きに賛同する声がある一方、一部投資家に対し垣根を高くしてしまい米国債の流動性改善や強靭性確保という目標にそぐわないとの指摘もある。
米国では先週、住宅ローン金利が大幅に低下。4週間の低下幅としては約1年ぶりの大きさとなった。こうした状況を背景に、住宅購入申請は増加した。
全米抵当貸付銀行協会(MBA)が22日発表したデータによると、30年物固定住宅ローン金利は17日終了週に20ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して7.41%。住宅購入申請の指数は3.9%上昇し、6月以来の大幅な上げとなった。
住宅ローン金利は10月半ばに8%近くに上昇して23年ぶり高水準を付けた後、0.5ポイント近く低下している。
住宅ローン金利は米国債利回りと連動して動く傾向がある。米10年債利回りは10月に16年ぶり高水準を付けたが、11月に入り急速に低下している。
格付け会社ムーディーズが今月、政治の機能不全を理由に米国の信用格付けを引き下げる可能性を示したことから、米議会は財政赤字と債務の膨張に歯止めを掛ける方法を探すべきだとの声が強まっている。
米国の公的債務は過去10年間で倍増して33兆7000億ドルと、国内総生産(GDP)の124%前後に達している。これを抑える方法は基本的に、増税、支出削減、これら2つの組み合わせの3つしかない。
このため一部議員は、債務膨張への現実的アプローチを検討するという「力仕事」を担う委員会の設立を求めている。財務省によれば、金利上昇を背景に、2023年度に返済が必要な公的債務は実に6590億ドルに上り、懸念は募るばかりだ。
上院予算委員会メンバーのマイク・ブラウン議員(共和党)は、インタビューで「財政に関する委員会が是非とも必要だ」と語った。
ブラウン氏は、来年の大統領・議会選挙で財政赤字と債務が重要な争点になると考えている。「重い利払い負担が、他の全ての事を圧迫し始める」とみられるからだ。
公的債務は2013年の16兆7000億ドルから2倍以上に増えている。この間、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応もあり、共和党は税収減につながる大型減税を実行し、共和・民主両党は財政支出の拡大を支持した。また、民主党は社会保障のセーフティーネット拡充に取り組んできた。
その結果、ムーディーズは今月、米国の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。金利上昇により、借り入れコストは高止まりするだろうとムーディーズは指摘している。
これに先立ち格付け会社フィッチ・レーティングスは8月、米国の格付けを最上級の「AAA」から「AAプラス」に引き下げた。議会審議が膠着し、政府がデフォルト(債務不履行)寸前に追い込まれたことが理由だった。
超党派団体、ピーターG・ピーターソン・ファウンデーションのマイケル・ピーターソン最高責任者(CEO)は「わが国の財政は深刻な状態だが、解決は可能で、超党派の委員会を設けるのが最良のアプローチだ」と言う。
ピーターGは十数人の専門家から、委員会が提案できそうな解決策を募り、それを回覧している。
例えば、ムーディズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は、温室効果ガスの排出に対する新たな課税と、社会保障プログラムに施す物価調整の決定方式の変更を挙げた。
コンファレンス・ボード(CB)のエコノミストらは、2043年までに増税と支出削減の組み合わせにより公的債務の対GDP比率を70%に抑える目標を提案した。
この他、高額所得者への社会保障課税を増やすことや、退職金を満額支払う年齢を、現在の67歳から徐々に引き上げて69歳とする案などが寄せられている。
<超党派の法案>
来年末に引退すると表明しているジョー・マンチン(民主党)、ミット・ロムニー(共和党)両上院議員は、いずれも超党派委員会を創設する法案の提出に加わった。
委員会は2025年には仕事を完了することとしている。同様の超党派法案は下院でも提出されており、予算委員会が10月19日に法案を巡る公聴会を実施した。
マンチン議員は21日、ロイターに書面で、委員会設置は「議会が二極化している環境下、膨張する国の債務に対処する上で最も期待の持てる」方法だとの考えを示した。10月末に就任したばかりのマイク・ジョンソン下院議長が委員会設置案を支持していることに「励まされる」と付け加えている。
連邦議会は今年、防衛、国土安全保障、一部の社会セーフティーネットといった「裁量的」プログラムの年間支出、約1兆6000億ドルを巡る闘争に明け暮れてきた。
これは財政支出全体の約3分の1に過ぎない。支出の最大部分を占める社会保障や高齢者向け公的医療保険「メディケア」といった「義務的」プログラムは、議論から外れている。
それでもリベラル派の議員は神経をとがらせている。バーニー・サンダース上院議員は、委員会設立案について「社会保障を削るための裏口」になると切って捨てた。
一部議員は、委員会が成功するには、議会に強制的に提言を実施させる権限が必要だと指摘している。それはつまり、委員会が増税を提案した場合、共和党は増税に対する長年の反対姿勢を取り下げる必要が出てきかねないということだ。
観光名所ナイアガラの滝の周辺にある米国とカナダの国境を結ぶレインボーブリッジで22日、車両が爆発する事件が発生し、米連邦捜査局(FBI)とカナダ当局が捜査に当たっている。
レインボーブリッジは米ニューヨーク州と加オンタリオ州を結ぶ。
CNNが報じたところによると、車は猛スピードで国境検問所の二次検査に向かっており、空中に舞い上がった後に爆発。男性2人が死亡したという。FOXニュースは匿名の関係者の話として、テロ攻撃を狙ったものだったと伝えた。
カナダのトルドー首相は議会で「われわれは事態を極めて深刻に受け止めている」と述べた。
ホワイトハウスのジャンピエール報道官によると、バイデン米大統領は事件について説明を受け、チームと共に動向を注視している。
事件を受けて、レインボーブリッジのほか、ピースブリッジなどナイアガラ周辺の国境を結ぶ計4つの橋が閉鎖された。
FBIのバッファロー支局はこれに先立ち、米国とカナダを結ぶレインボーブリッジで発生した車両爆発事件について捜査していると明らかにし、「状況は極めて流動的で、現時点で言えることはこれだけだ」としていた。
観光名所ナイアガラの滝の周辺にある米国とカナダの国境を結ぶレインボーブリッジで22日起きた2人が死亡の車両爆発について、ニューヨーク州のホークル知事はこれまでのところテロの「兆候はない」との見方を示した。
同氏が米連邦捜査局(FBI)、国土安全保障省、税関・国境警備局の担当者から受けた説明に基づく評価だという。
ホークル氏は、ニューヨーク西部に関係のある容疑者1人が特定されており、今後の調査によって故意か偶発かが判明すると説明した。
ナイアガラで記者会見した同氏は、「テロ活動の兆候はない」とした上で、「現場は広い。ここにいる連邦法執行機関の担当者たちが真相を解明するにはかなりの時間がかかるだろう」と語った。
22日午前11時30分ごろに発生した爆発を捉えた動画には、高速で走行していた車が中央分離帯に衝突し、高さ8フィート(約2.4メートル)のフェンスを乗り越え、爆発した様子が映っていると同氏は指摘。車両はひどく焼け、エンジン以外は何も残っておらず、ナンバープレートもなかったという。
レインボーブリッジは閉鎖されたままとなっている。ピースブリッジなどナイアガラ周辺の国境を結ぶ他の3つの橋も一時閉鎖されたが、既に再開されている。
この爆発については米国・カナダ両国の首脳も注目。カナダのトルドー首相は議会で「われわれは事態を極めて深刻に受け止めている」と述べた。
ホワイトハウス高官によると、バイデン米大統領は爆発について説明を受け、チームと共に動向を注視している。
ホークル氏は、10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃以降、米国と世界は既に高い「ストレスレベル」にあるため、国民を落ち着かせるために最新情報を共有したと説明。
「10月7日以降、われわれは厳戒態勢を敷いている。だからこそ、私がここに立ち、現時点で分かっている情報を全世界に知らせることがとても重要なのだ」と語った。
米ミシガン大学が22日発表した11月の1年先の期待インフレ率(確報値)は4.5%と速報値の4.4%から上方修正された。10月の4.2%、9月の3.2%から2カ月連続で伸びが加速し、4月以来の高水準となった。
5年先の期待インフレ率は3.2%と速報値に一致。ただ、10月の3.0%、9月の2.8%から伸びが加速し、2011年以来の高水準となった。同水準を上回れば、金融危機が始まった08年(3.4%)以来の高水準となる。
消費者調査ディレクターのジョアン・シュー氏は「消費者がインフレ率の持続的な鈍化に注目しているにもかかわらず、インフレ期待が高まっている」と指摘。「消費者はインフレ鈍化が今後数カ月または数年で反転することを懸念しているようだ」と述べた。
LPLの首席グローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は「データに依存する米連邦準備理事会(FRB)にとり、朗報ではない。消費者のインフレ期待が固定されなくなるのを望んでいないからだ。消費者心理を低インフレ環境に向けてリセットすることはますます困難な状況となっている」と述べた。
消費者信頼感指数は61.3と速報値の60.4から上方修正されたものの、10月の63.8からは低下。市場予想は60.6だった。
現況指数は68.3と速報値の65.7から上方修正されたものの、10月の70.6からは低下。一方、期待指数は56.9から56.8に小幅に下方修正された。10月は59.3だった。
日本生命保険の佐藤和夫常務執行役員は22日の決算会見で、国内金利の上昇について、運用利回りを押し上げ、将来収益の改善になり得るとの認識を示した。
長期金利の指標である10年国債の利回りは、日本銀行の2度にわたるイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の柔軟化後、1日に0.97%と10年ぶりの高水準を付けた。足元では0.73%台で推移している。佐藤常務は、足元の水準からおおむね横ばいで推移するとの見通しを示した。
日本生命は10月31日に日銀がYCCを再修正する前に行った下期運用説明会で、23年度末の10国債利回りについて、0.5-1.10%との見通しを示していた。
また、世界的にインフレや金融政策に対する不透明感、景気減速懸念があることから、年度末にかけて海外金利は低下、為替はドル安・円高方向で推移するとみていると述べた。
野村ホールディングスは、プライベートクレジットに関するグローバル戦略を構築している。内情を知る関係者の話で分かった。
野村は今後1年半に自社のバランスシートから10億ドル(約1500億円)を投じてプライベートレンディング案件に参加し、ブラックストーンやアレス・マネジメントなどに対抗することを目指す。非公開の情報だとして匿名を条件に関係者が明らかにした。
野村が検討している案件には、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社が支援する企業への融資などが含まれており、証券化商品およびプライベートクレジットのグローバル責任者であるゴードン・スウィーリー氏(ニューヨーク在勤)が率いている、と関係者は語った。
野村はこれまでも時折、プライベートクレジット案件に参加してきたが、先週16日には新設されたグローバルプライベートクレジット部門から皮切りとなる融資のうち1件を実施した。PGIMと組んで、1億1000万ポンド(約205億円)相当のタームローンと2000万ポンドの運転資金ブリッジファシリティを提供し、HIGによるDXグループの買収を支援した。
スウェーデン中央銀行は23日、金融引き締めサイクルを停止し、9回目の利上げを見送った。同国経済が悪化の度合いを増していることが背景にある。
テデーン総裁率いる理事会は政策金利を4%で据え置いた。この判断についてエコノミストの予想は割れ、ブルームバーグが調査した21人のうち過半数は利上げを見込んでいたが、据え置きも8人が予想していた。当局者は政府の債券発行が来年加速する必要があるかもしれないと述べた。
中銀は発表文で、「金融政策はスウェーデン経済の需要を減退させ、インフレ圧力の鈍化に寄与している」と説明。それでもなお「金融政策は引き締め的である必要があると理事会は判断している。インフレ見通しが悪化した場合には、政策金利をさらに引き上げる用意がある」と表明した。
日本銀行が2010年に金融緩和政策の一環として開始した不動産投資信託(J-REIT)の購入を、今年は初めて見送る可能性が大きい。同時に始めた上場投資信託(ETF)の買い入れも大きく縮小しており、中央銀行としては異例のリスク資産購入が静かに出口を迎えつつある。
日銀によるJ-REIT購入は22年6月の12億円が最後で、今年は一度も実施していない。日経平均株価が33年ぶりの水準まで上昇する中、ETF購入も10年以来で最も少ない3回にとどまっており、最少金額となるペースだ。
ETFとJ-REITの買い入れは、大規模な国債購入やマイナス金利などともに異次元緩和の象徴となってきた。日本経済が緩やかな回復基調をたどり、インフレ圧力が継続する中で、買い入れの縮小は副作用を抑えながら金融緩和を効率的に進めようとする日銀の姿勢を反映している。
東証REIT指数は、日銀が買い入れを開始して以降の底値から2倍以上に上昇。都心の商業地区では高額の取引が増加している。不動産経済研究所によると、23年度上期における東京都区部の新築マンションの平均価格は1億572万円となり、上半期で初めて1億円を超えた。
日銀で金融市場局長を務めた山岡浩巳フューチャー取締役は、日銀によるETFとJ-REITの購入は「売らないとエグジットできない一方で、売ると市場を壊してしまう」と問題点を指摘する。買い入れの縮小については「日銀が買わないという状況に市場を慣れさせるということだろう」との見方を示す。
白川方明元総裁が10年に導入した「包括的な金融緩和政策」の一環として始まったETFとJ-REITの購入は、黒田東彦前総裁による異次元緩和の下で増額が繰り返された。現在の買い入れ方針は、ETFが年間約12兆円、J-REITは約1800億円をそれぞれ上限に「必要に応じて買い入れを行う」としているが、実績は上限に遠く及ばない。
SMBC日興証券シニアアナリストの鳥井裕史氏は「買わないことは自然だ。もう日銀が買うことに対して期待を持たれている状況ではない」と指摘。「不動産価格自体も非常に高い状況が続いているので、わざわざ買って価格を押し上げる政策の必要性自体が今はないと思っている」と語った。
4月の植田和男総裁の就任以降、日銀は7月と10月にイールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)の柔軟化措置を相次いで決定し、市場では政策正常化に向けた動きとの見方が多い。9月の金融政策決定会合の「主な意見」によると、ある委員が出口に言及した上で「イールドカーブコントロールのみならず、国債以外の資産買い入れの要否についても検討すべきである」と述べている。
日銀が保有するETFの時価は3月末時点で53.2兆円に達し、J-REITも7350億円に上る。白川元総裁が「臨時・異例の措置」として導入したリスク資産の買い入れは結局、13年間も続いている。インフレ対応が植田日銀の優先課題になる中で、「ETFとJ-REITの売却は市場に大きな衝撃を与える。植田総裁の任期中でも売却によるエグジットは難しい」と山岡氏はみている。
S&Pグローバル/CIPSが23日発表した11月の英国の総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は50.1と、4カ月ぶりに好不況の分かれ目となる50を上回った。しかし金利上昇と需要の低迷を背景に受注は落ち込みが続いている。
ロイター調査では10月の48.7から横ばいの予想だった
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの経済ディレクター、ティム・ムーア氏は「総合インフレ率の明確な鈍化と利上げ休止を巡る安心感が企業活動を下支えしている」と分析した。しかし第4・四半期の国内総生産(GDP)がほぼ横ばいにしかならないことを示しているとも指摘した。
新規受注は5カ月連続で減少し、S&Pグローバルは景気の低迷が続いていることを反映しているとの見方を示した。
サービスPMIは50.5。製造業PMIは46.7と6カ月ぶりの高水準だった。
調査対象企業はすでに大幅に上昇している投入コストがわずかに上昇したと報告した。また「力強い」賃金の伸びが販売価格を押し上げたと回答した。
全体として企業は来年の見通しについてより楽観的な見方を示したが、先行指標は来年もリセッション(景気後退)リスクが高い可能性を示している。
S&Pグローバルがまとめた11月のユーロ圏のHCOB総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は47.1と前月から予想以上に上昇した。
しかし消費者の支出抑制が続いており、第4・四半期の域内総生産GDP)が前期に続いてマイナスとなることを示唆する結果となった。
ロイターがまとめた予想は46.9。10月は46.5と約3年ぶりの低水準だった。
ハンブルク商業銀行のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は「ユーロ圏経済は泥沼にはまっている」と指摘し、11月のPMIはGDPが2四半期連続で縮小する可能性を示していると述べた。
サービスPMIは48.2と前月の47.8から上昇した。市場予想は48.1だった。
需要は5カ月連続で減少した。ただ10月からペースは緩和した。新規事業指数は46.7と45.6から上昇した。
製造業PMIは43.8と前月の43.1から上昇し予想の43.4を上回ったが、2022年7月以降、好不況の分かれ目となる50を下回っている。
生産を示す指数は43.1から44.3に上昇し、6カ月ぶりの高水準となった。需要が減少する中、工場は原材料の購入を減らした。既存の注文を処理することで生産活動が活発になった。受注残指数は40.1と前月の38.4から上昇したが、18カ月連続で50を下回った。
総合雇用指数は50.0から49.4へ低下し、全体の従業員数は新型コロナウイルス禍だった21年1月以来初めて減少した。
11月のドイツの景況感は製造業、サービス業ともに前月より落ち込みが緩やかになり、景気後退が予想より軽微な可能性を示唆した。
S&PグローバルがまとめたドイツのHCOB総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は47.1で、10月の45.9から上昇し4カ月ぶりの高水準になった。エコノミスト予想の46.5を上回った。
ハンブルク商業銀行(HCOB)のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は、PMIが好不況の節目の50を上回ることも可能で来年前半に実現する可能性があるとの見方を示した。
サービスPMIは48.7で50を下回ったものの、10月からは改善しアナリストの予想(48.5)も上回った。
製造業PMIは40.8から42.3に上昇し6カ月ぶりの高水準となった。
「製造業では新規受注の減少が緩やかになっている。これは国内外の受注に支えられている」とデラルビア氏は述べた。
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、イタリアの財政赤字と債務の水準について、より厳格な対応が必要だと指摘した。伊大手紙コリエレ・デラ・セラが23日にインタビュー内容を伝えた。
同氏は現行予算に盛り込まれている措置を強化する必要があると述べ、現状の財政調整ペースは財政赤字と債務水準を引き下げるのに十分ではないと語った。
同国の財政逼迫が市場で懸念されているにもかかわらず、政府は先月、減税や歳出増を盛り込んだ240億ユーロ(262億ドル)の2024年度予算を承認した。
来年の財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は4.3%になると予測されている。予算案は現在、議会で審議されている
ドイツのリントナー財務相は23日、「首相、副首相と協議し、来週、今年の補正予算を提出する予定だ」と述べた。これには債務ブレーキの一時停止が含まれるという。
ドイツでは憲法裁判所が先週、新型コロナウイルス対策向けの未使用金600億ユーロをグリーン事業や産業支援に振り向けることを認めない判決を下したため、ショルツ首相率いる3党連立政権は深刻化する財政危機の打開を図ろうとしてる。
財務省の報道官によると、政府は2023年の「緊急事態」を議会に提示することで、ドイツの構造的財政赤字を国内総生産(GDP)の0.35%まで制限する債務ブレーキの解除を提案するという
ドイツは新規の純借り入れに対する憲法上の制限を4年連続で停止する。先週の憲法裁判所判決を受けて、ショルツ政権は劇的な予算見直しを強いられた。
リントナー財務相が来週発表する2023年補正予算案では、いわゆる「債務ブレーキ」の緊急停止が盛り込まれると、財務省報道官が23日明らかにした。憲法裁の判決により、家計や消費者の電気・ガス料金負担緩和のため通常予算外で少なくとも370億ユーロ(約6兆円)の新規債務をさかのぼって計上する必要がある。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)やエネルギー危機で、ドイツは純借入額に憲法上の上限を課す債務ブレーキを3年間停止していた。ブレーキの再開を主張し、自身を財政安定の守護者であると自任してきたリントナー氏にとっては、屈辱的な方針撤回となる。
財務省報道官は「補正予算で政府は2023年の臨時非常事態を乗り切るための解決策を議会に提示する」と電子メールで回答。高騰するエネルギーコストの負担軽減に利用された基金は「確固とした法的な基盤の上に置かれる」ことになり、新たな負債は発生しないと付け加えた。
報道官の発表に先駆け、ブルームバーグは政府が債務ブレーキを停止する計画だと伝えた。これを受けてドイツ債は下げを拡大し、10年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し2.62%に達した。
スウェーデン中央銀行は23日の会合で、政策金利を4.00%に据え置くことを決めた。
中銀は、これまで8回連続の利上げにより、一時10%超まで高まった物価上昇率は落ち着く方向にあり、経済と労働市場は減速しつつあると指摘。一方でまだ物価上昇率は高過ぎるし、物価情勢の見通しが悪化すれば追加利上げに動く用意があると説明した。
ただ市場関係者の間では、政策金利はピークアウトしたとの観測が広がっている。スウェドバンクは追加利上げを見込んでいないとしている。
中銀は、政策金利が来年から2025年にかけて現状、もしくはより高い水準で推移するとの見通しを示しているが、多くのアナリストの見立てでは、次の一手は利下げだ。
背景にはスウェーデン経済が今年と来年、縮小すると予想される上に、従来の利上げの影響はなお完全に顕現化していないという状況がある。
キャピタル・エコノミクスのチーフ欧州エコノミスト、アンドルー・ケニンガム氏は「われわれは来年5月に最初の利下げを予想している。これは中銀の想定よりずっと早い」と語った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
インド準備銀行(中央銀行)のダス総裁は22日、信用の伸びが加速する中、銀行・ノンバンクに対し融資が持続可能かを確認し「あらゆる形の熱狂」を避けるよう促した。ムンバイで開催されたイベントで述べた。
インド中銀は先週、小口の消費者金融に対する需要急増でリスクが高まる恐れがあるとして、銀行に個人向け融資とノンバンク経由の融資について、バッファーを引き上げるよう求めた。
ダス氏は「これらの措置は予防的なもので、調整され的を絞ったものだ」と説明した。
また「銀行やノンバンクはアルゴリズムだけに頼って融資を決定することに慎重でなければならない」と述べ、こうした融資モデルによるストレスの蓄積に警鐘を鳴らした。
住宅ローンや自動車ローンには現時点でストレスの兆候はないとの見方を示した。しかし銀行とノンバンクのつながりから生じるリスクに言及し、ノンバンクに資金調達先を多様化するよう求めた。
マイクロファイナンス業者について「金利は規制されているが一部の業者は相対的に高い純金利マージンを得ているようだ」と述べ、低所得者向けの融資が返済可能か検討する必要があると指摘した。
ブルームバーグによると、中国政府はさまざまな金融支援を受けられるデベロッパー50社のリストの草案を作成した。
リストには碧桂園(カントリー・ガーデン)(2007.HK)、遠洋集団、旭輝控股集団(CIFIホールディングス)(0884.HK)などが掲載されているという。複数の関係筋の話として報じた。
規制当局は数日中にリストを最終決定し、銀行などの金融機関に配布する予定という。具体的にどのような支援策が適用されるかは不明。
ANZバンク・チャイナのクレジットアナリスト、ティン・ミン氏は、中国政府が不動産業界について大きく軌道修正したことになり業界にとってプラスと指摘。ただ、すでにデフォルトした業者は新たな資金を債務返済ではなく住宅引き渡しに投入するとの見方を示し、債務問題の解決は再編交渉次第だとの見方を示した。
野村は21日付のリポートで。不動産回復の最大の障害は依然、小規模都市で停滞している大量の住宅プロジェクトだとし、中央政府がいずれ複数の大手を救済することになると予想した。
中国は銀行に対し、要件を満たした不動産開発会社への無担保の短期融資を初めて許可する可能性がある。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。実現すれば、経済成長の足かせとなっている不動産危機を緩和する大きな一歩となる。
当局は不動産業界に対する新たな支援パッケージの一環として、一部のデベロッパーに対するいわゆる運転資金融資を市中銀行に認めることを検討している。関係者が非公開情報を理由に匿名で語った。
デベロッパーが利用できる他のタイプの融資は通常、土地や資産を担保に求められるが、この新しい融資制度は無担保で日々の業務目的に利用できるため、債務返済に充てる資金を工面できるようになる可能性があるという。
当局者は、金融機関1社が融資計画について他の債権者と調整しつつ、苦境にある特定の不動産開発会社の支援を主導することを認める仕組みも検討しているという。
関係者によれば、その実施に際し当局はリスクが高い点を考慮し、融資が不良化しても市中銀行の責任を問わないことが必要になりそうだ。ただ協議は継続中で、変更の可能性もあるという。国家金融監督管理総局にコメントを求めたが返答はなかった。
インドネシア中央銀行は23日、主要政策金利の7日物リバースレポ金利を予想通り6.0%に据え置いた。インフレをコントロールする上で十分な水準との認識を示した。
翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)と貸出ファシリティー金利も据え置かれた。ロイター調査では大半のエコノミストが現状維持を予想していた。
ペリー・ワルジヨ総裁は今回の決定について、通貨ルピアの安定維持と輸入インフレの緩和に合致していると述べた。
今年と来年のインフレ率は中銀の目標範囲内に収まると予想しているが、世界的なエネルギー価格の高騰や国内の食料価格、ルピア相場などのリスクを注視していると説明した。
6%の政策金利は来年のインフレ率が3.2%を上回らないようにする上で適切な水準と記者団に語った。
経営難にあえぐ中国の巨大シャドーバンキング(影の銀行)グループ、中植企業集団は、364億ドル(約5兆4000億円)の資金が不足し「深刻な支払い不能状態」にあると投資家に説明した。資金繰りにいかに窮しているかが示唆される。
中植は投資家に送付した22日付の書簡で、流動性が枯渇し、資産売却で回収可能な額も少ない見通しだと明らかにした。ブルームバーグ・ニュースはこの書簡を確認した。
中植は傘下企業が組成した高利回りの信託商品で支払いが履行されず、8月に懸念が表面化。同社の資金難は、不動産危機と景気低迷に取り組む当局者の課題をいっそう困難にしている。
北京を拠点とするチャイナ・ビジョン・キャピタルの創業者、孫建波氏は「政府が支援に介入せざるを得ず、オープンで公正なアプローチによって資産売却が行われることを確実にするだろう」と述べた。不良資産は一般的に7割のディスカウントで売却されると指摘した上で、「投資家にとって、極めて高くついたレッスンだ」と語った
この書簡によると、中植の負債総額は4200億-4600億元(8兆8000億-9兆6000億円)に上ることが会計監査で判明。これに対し、資産は2000億元しかないという。
同社は創業者の解直錕氏が2021年に死去し、幹部が相次ぎ退社したため内部管理がうまくいかなくなったと書簡で指摘。「自己救済」のこれまでの取り組みも期待通りの成果には結びつかなかったと説明した。
中植はコメントの要請に応じなかった。同社はこれまでに、長期化が見込まれる再建プロセスを実行するためKPMGを起用した。
中植の経営難は、富裕層の個人に影響が及ぶ公算が大きい。同社のようなシャドーバンキングは緩い規制しか受けず、個人の資金を集めて融資を提供したり不動産、株式、債券、商品などに投資したりしている。中植とその傘下企業はここ数年、競合の信託がリスク縮小に動く中でも、問題のあるデベロッパーに対して融資を拡大し、中国恒大集団などの企業から資産を買いあさっていた
●中東
イスラム組織ハマスとイスラエルが22日、パレスチナ自治区ガザの戦闘を4日間停止することで合意した。ハマスは、イスラエルが捕らえているパレスチナ人の女性・子ども150人を釈放するのを条件に、拘束する50人の女性と子どもを解放することに同意した。
10月7日にハマスがイスラエル南部を急襲しイスラエル人や外国人をガザに連れ去ってから1カ月半になる。この期間は、米国とカタールが人質解放へ奔走した時間でもある。その緊迫の舞台裏を米当局者が明らかにした。
<10月7日:ハマス急襲直後>
「人質解放に向け、小規模な専門家チームを結成してほしい」。ハマスが民間人を連れ去ったと伝わった直後、カタール政府は人質に関する機密情報をもって米ホワイトハウスにこう要請した。
カタールは、イスラエルとの折衝へ「セル(cell)」と称するチーム結成をホワイトハウスに求めた。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は中東担当顧問のマガーク氏らにチーム編成を指示した。この作業は他の政府機関などに知らせず秘密裡に進められた。
マガーク氏はカタールのシェイク・ムハンマド・ビン・アブドルラフマン・アール・サーニー首相と毎日電話会議し、サリバン氏に報告。バイデン大統領も毎日、報告を受けた。
<10月18日:バイデン氏がイスラエル訪問>
バイデン氏は10月13日、人質となったり行方不明となったりした米国人の家族と面会し、時間かけて話をした。
10月18日、バイデン氏はイスラエルを訪問。ネタニヤフ首相との会談の主目的は人質の解放、そして人道支援だったという。
<10月23日:米国の人質2人解放>
ハマスは米国籍の母・娘2人を解放した。人質2人の解放を受け、バイデン氏は、カタールが専門家チーム「セル」を活用して人質解放を実現すると確信したという。
本格的な人質解放に向けた取り組みが始まった。米中央情報局(CIA)のバーンズ長官はイスラエルの対外情報機関モサドのバルネア長官と定期的な話し合いを開始した。
<10月24日:イスラエルのガザ地上侵攻が秒読み>
イスラエルが今にもガザ地上侵攻を開始しそうな10月24日、米政府に、ハマスが女性と子どもを解放するにあたっての条件に同意したという情報が入った。
米政府高官はイスラエル側と地上侵攻を延期すべきかどうか議論した。イスラエル側は、人質が生きているという証拠がないため侵攻延期に見合わないとはねつけた。ハマスは、戦闘が休止するまで拘束者を特定できないと主張した。
<バイデン氏の集中協議>
バイデン氏はその後3週間にわたり、具体的な協議を行った。その間、人質解放に向けた提案が交錯、ハマスに人質のリストとその身元情報、解放の保証を要求し、ワシントン、ドーハ、カイロ、ガザと連絡を取り合うという時間も手間もかかる作業が続いた。
やがて人質の段階的解放という構想が浮上し、バイデン氏はカタール首相と電話会談した。
構想は、第一段階としてハマスが女性と子どもの人質を解放し、それに応じる形でイスラエルが拘束しているパレスチナ人を解放するという内容だった。
しかしイスラエルは第一段階で女性と子ども全員の解放を要求。米国も同調し、カタールを通じて、ハマスに拘束している女性・子どもの生存証明や身元確認情報を要求した。
ハマスは第一段階で50人の解放は保証したが、身元情報のリスト作成は拒否した。
<11月9日:合意案の検証>
11月9日、バーンズCIA長官は合意案に目を通すためドーハでカタール首脳やモサドのバルネア長官と会った。その時点での大きな障害は、ハマスが誰を拘束するのか明確にしていないことだった。
その3日後、バイデン氏はカタールのタミム首長に電話し、50人の人質の名前、年齢、性別、国籍などの明確な身元情報を要求した。その後まもなく、ハマスは第一段階で解放する50人の人質の詳細情報を明らかにした。
<11月14日:バイデン氏、ネタニヤフ氏に合意受け入れ促す>
11月14日、バイデン氏はネタニヤフ首相に電話で合意を受け入れるよう促し、ネタニヤフ氏は同意した。その日、イスラエルにいたマガーク氏はネタニヤフ氏に腕をつかまれ「われわれにほこの合意が必要だ」と言われた。
しかし、ガザで通信が遮断され、交渉が止まった。
<これが最後のチャンスだ>
通信が回復した時、バイデン氏はサンフランシスコでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席していた。バイデン氏は、カタール首長に電話をし、これが最後のチャンスだと言った。カタール首長は合意達成に向け圧力を掛けると約束した。
<11月18日:最後の詰め>
マガーク氏はドーハでカタール首相に面会した。バーンズCIA長官もモサドと協議後にオンラインで参加した。会合で合意案の残っている対立点を特定した。
こうして合意案は、第一段階で女性と子どもを解放するとしたうえで、全員の解放をにらみ、さらなる解放の見通しも盛り込む形で出来上がった。
翌朝、マガーク氏はカイロでエジプト情報当局のカミル長官と面会。ガザからはハマス幹部が前日ドーハで策定された合意事項のほぼ全てを受け入れたとの報が入った。
その後、さらに交渉が重ねられ、22日の合意に至った。
トルコ中央銀行の総準備高が2014年9月以来の高水準になったことが銀行関係者の話で分かった。5月の大統領選挙後、新総裁の下で中銀が異例の緩和政策を転換して以降、回復傾向にある。
総準備高は先週60億ドル増加し1345億ドルとなった。選挙後の5月末時点は985億ドルだった。トルコは今月、選挙後初めて国際市場でイスラム債を発行し25億ドル調達した。利回りは大幅に低下し8.5%となった。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は地政学的懸念の高まりで11月初めに425ベーシスポイント(bp)に上昇したものの選挙期間中の700bp超を大きく下回る。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのデータで20日は343bpだった。
ただ通貨リラは引き続き軟調。先週は対ドルで28.9リラの最安値を付けた。21日は28.8リラで昨年末比35%下げている。
トルコ中央銀行は23日、市場で見込まれていた2倍の大きさの利上げを実施した。これを受けてトルコ・リラは上昇した。
エルカン総裁率いる金融政策委員会(MPC)は指標の1週間物レポ金利を5ポイント引き上げて40%とした。市場予想は2.5ポイントの利上げだった。
MPCは今後引き締めペースを減速させる方針を示唆した。エルドアン大統領が5月に再選されて以降、それまでの緩和的な金融・財政政策は巻き戻され、金利は合計で30ポイント余り上昇した。
MPCは声明で、「現在の金融引き締めの水準はディスインフレ路線を確立する上で必要な水準にかなり近い」と説明。「従って引き締めペースを減速させ、引き締めサイクルを短期間のうちに完了する」と意向を示した。
イスタンブール時間23日午後2時6分時点で、リラは0.4%高の1ドル=28.7374リラと、今月17日以来の高水準に向かっている。2年物トルコ国債利回りは1ポイント余り上昇。同国債のデフォルト(債務不履行)に備える5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドは一時の上昇を解消した。
トルコ中銀の利上げは6月から6回連続で、政策当局者が金融引き締めを協議する際に注視する実質金利は2024年末の予想インフレ率に対してプラス圏に転じた。中銀は来年末時点のインフレ率を年率ベースで36%と予測している。
サウジアラビアのファイサル外相は22日、ブリンケン米国務長官と電話会談し、イスラム組織ハマスとイスラエルによる戦闘停止合意やガザへの支援物資搬入に向けた取り組みを巡り討議した。サウジ国営通信が報じた。
人道危機の悪化防止に向けた取り組みに加え、ガザと周辺地域での軍事的エスカレーションを阻止し、停戦合意を順守する方策についても協議したという。
また、ファイサル外相は「サウジがガザ市民の強制移住を断固として拒否し、国際社会が真剣かつ効果的にイスラエル軍による度重なる国際法違反に立ち向かう重要性について強調した」という。
イランのアブドラヒアン外相は22日、レバノンの衛星テレビ局アルマヤディーンに対し、イスラム組織ハマスとイスラエルとの停戦合意が延長されなければ、戦争は中東全域に広がると述べた。
ハマスとイスラエルは22日、パレスチナ自治区ガザの戦闘を4日間停止することで合意した。戦闘停止中に双方が拘束・拘留している人を解放する。燃料や医薬品、その他人道物資の輸送も実施する。
バイデン米大統領は22日、イスラム組織ハマスとイスラエルの4日間の停戦合意を巡り、イスラエルのネタニヤフ首相、カタールのタミム首長、エジプトのシシ大統領と電話会談した。ホワイトハウスが発表した。
ホワイトハウスによると、バイデン氏はネタニヤフ氏に対し、ヨルダン川西岸だけでなくレバノン国境沿いでも「平静を保つことの重要性」を強調した。
タミム・シシ両氏に対しては停戦合意につながった両国の調停に感謝の意を示した。
また、シシ氏に対しては、米国はパレスチナ人をパレスチナ自治区ガザやヨルダン川西岸から強制移住させたり、ガザを包囲したり、ガザの境界線を引き直したりすることは認めないとの意向を示した。
バイデン氏は感謝祭のため、マサチューセッツ州のリゾート地ナンタケット島で家族と共に休暇を過ごしている。
リヤド:サウジアラビア外務省によると、22日、外務大臣のファイサル・ビン・ファルハーン王子は米国のアントニー・ブリンケン国務長官から電話を受けた。
双方はガザおよび周辺地域での軍事エスカレーションを阻止し、人道的停戦と停戦合意を遵守する方法について協議した。
また、人道救援や医療援助を届けるための取り組みについても協議した。
ファイサル外相は「ガザ住民の強制退避を断固として拒否すること、そしてイスラエル占領軍が現在も続けているあらゆる違反行為、国際法および国際人道法の度重なる違反行為に立ち向かうために、国際社会が真剣かつ効果的に動くことの重要性」を強調した。
同外相はまた、「国際社会が、国際秩序の信頼性を達成し、世界の平和と安全を維持し、過激主義と暴力の原因を防止する形で、先週採択された最新の安保理決議である国際正当性の決議の遵守を目指して、道義的責任および原則的責任を果たす」ことの重要性を指摘した。
ファイサル王子はガザ紛争について協議しているアラブ・イスラム代表団を率いて、国連安全保障理事会常任理事国の首都訪問中のパリで、この電話を受けた。
リヤド:サウジアラビアのムハンマド・アル・ジャダーン財務大臣は、22日に開催されたG20オンラインサミットで、ガザにおけるイスラエルの軍事行動と流血の停止を改めて訴えた。サウジ通信が伝えた。
サウジアラビアを代表してサミットに出席したアル・ジャダーン氏は、ガザにおける悲惨な人道的危機を強調した。また、イスラエルによるガザでの暴力は国際法に違反しており、史上最悪規模の人道的大惨事をもたらしたと述べた。
さらに、アル・ジャダーン氏は、イスラエルによる国際法違反と国連決議違反は、国際システムの信頼性を脅かし、広範囲に及ぶ影響をもたらす可能性があると述べた。また、ガザの民間人、インフラ、住宅地、医療施設を標的にすることに反対するサウジアラビアの強い姿勢と、包囲された飛び地からパレスチナ人が追いやられることへの懸念を改めて表明した。
サウジアラビアは、即時停戦と、ガザへの人道・医療物資の円滑な流入を改めて求めた。
サウジアラビアは、東エルサレムを首都とし、1967年の国境線に基づく独立したパレスチナ国家を樹立することを含めた、パレスチナ人の正当な権利を保証する長期的な平和的解決を訴えた。インドが議長国として開催された今回のオンラインサミットは、9月にニューデリーで開催された対面のG20サミットのフォローアップとして行われた。
その他の議論では、開発における多国間銀行の役割、気候変動対策、グリーンファイナンス、技術革新、デジタルインフラ、女性のエンパワーメントに焦点が当てられた。
サミットでアル・ジャダーン氏は、気候変動への取り組みにおける国際協力の重要性を強調するとともに、炭素排出を効果的に管理し、気候目標を達成するために、循環型炭素経済アプローチなどの最先端技術を活用する必要性を強調した。
アル・ジャダーン氏はまた、世界的な債務増大の問題と、多くの国が直面している圧力の高まりを強調した。
リヤド:サウジアラビアは11月22日、ガザ紛争の4日間の停戦合意を歓迎し、一時停戦を達成するためのカタール、エジプト、アメリカの努力を評価すると述べた。
イスラエルとハマスが22日に合意したのは、少なくとも4日間のガザでの停戦、支援物資の搬入、イスラエルに収監されている少なくとも150人のパレスチナ人と引き換えに武装勢力に捕らえられた少なくとも50人の人質の解放である。
サウジアラビア王国は、軍事作戦の包括的な停止、民間人の保護、救援の提供、人質と囚人の解放を改めて求めた。
パリ:アラブ・イスラム臨時首脳会議が任命した閣僚委員会は、ガザにおける4日間の人道的な戦闘休止を機に、これを恒久的な停戦へと発展させる必要性を強調した。
国営サウジ通信社の報道によれば、この声明は、パリで行われたエマニュエル・マクロン仏大統領とカトリーヌ・コロンナ外相との会談で発表された。
即時かつ永続的な停戦を促進し、人道的支援がガザ地区に送られるようにするため、アラブ・イスラム諸国の外相らは、国連安保理常任理事国歴訪の一環として、中国、ロシア、イギリスを訪問した後、パリに到着した。
サウジアラビアの外相、ファイサル・ビン・ファルハーン・アール・サウード王子が率いる同委員会は、フランスのマクロン大統領およびコロンナ外相との会談で、イスラエルとハマス間の人道的な戦闘休止を歓迎した。この戦闘休止中は、イスラエルの刑務所に収監されている少なくとも150人のパレスチナ人の女性と子供と引き換えに、50人のイスラエル人の人質をガザから解放し、包囲された同地区への人道的支援を拡大する。
アラブ諸国の外交官たちは、ガザでの敵対行為を終わらせるための国連安全保障理事会と国際社会の役割を強調し、フランスに対し、全面的かつ持続可能な停戦を推進する責任を果たすよう求めた。
また外相らは、包囲されたガザ地区に重要な人道支援物資、燃料、電力を届けるための安全な人道的回廊の開設を改めて求めた。
イスラエル軍のハガリ報道官は23日、パレスチナ自治区ガザの北部を制圧することはイスラム組織ハマスの殲滅(せんめつ)に向けたイスラエルの作戦の第一段階に過ぎないと述べた。
定例会見で「ガザ北部の制圧は長い戦争の第一歩だ」とし、「われわれは次の段階に備えている。今後数日間、戦争の次の段階を計画し、遂行することに集中する」と述べた。
イスラエル財務省は23日、イスラム組織ハマスの軍事衝突を踏まえ、2023年の経済成長率見通しを従来の2.7%から2%に下方修正した。
ハマスとの軍事衝突が始まる前に成長率見通しを3.4%に引き上げる予定だったため、軍事衝突の成長率に対する実質的な影響は1.4%ポイントになると説明した。
24年については、軍事衝突は同年を通して続くものの、激しい戦闘は第1・四半期中に収束するとの見方に基づき、1.6%になると予測。軍事衝突が24年の早い時期に終わり、回復が迅速に進めば2.2%に達する可能性がある一方、戦闘が継続し、回復が遅れれば、0.2%にとどまるとの見方を示した。
22年の成長率は6.5%だった。
イスラエルとイスラム組織ハマスはパレスチナ自治区ガザでの戦闘休止を24日午前7時(日本時間同日午後2時)に開始し、同日午後4時(同日午後11時)に最初の人質が解放される。イスラエルとハマスの交渉を仲介しているカタールが23日発表した。
カタール外務省報道官によると、解放される全ての民間人の氏名が記載されたリストが合意された。第1弾として開放されるのは女性と子ども13人という。この合意が恒久的な停戦につながることを目指しているとした。
報道官は「同じ家族が人質となっている場合、最初のグループと一緒に解放されるだろう」と述べた。
戦闘休止については、ガザの南部と北部双方での包括的な休止になると述べた。
また、合意の一環で、イスラエルの刑務所からパレスチナ人が釈放される見通しとしたものの、24日にイスラエルの刑務所から釈放される女性や子どもの人数や時間などの詳細については明確にしなかった。
ドーハに設置された作戦指揮所が戦闘休止や人質解放の状況を監視し、イスラエルやドーハにあるハマス政治部門の事務所、赤十字国際委員会(ICRC)とリアルタイムのコミュニケーションを維持するとも説明した。
イスラエル首相府は、最初に解放される人質のリストを受け取ったと発表。詳細を確認し、親族らと連絡を取っているという。
ハマスはテレグラムを通じ、戦闘休止は4日続くと発表。ハマス武装組織「アル・カッサム旅団」とイスラエル軍による全ての軍事行動が休止される。さらに、ガザ南部上空での「敵機」による飛行は完全に停止され、ガザ市と北部の上空でも毎日午前10時から午後4時まで6時間飛行が停止されるという。
ただこうした中でも、カッサム旅団のアブ・ウバイダ報道官はイスラエルとの対決のエスカレートを主張。アルジャジーラTVが放映したビデオ演説で「ヨルダン川西岸全域と全ての抵抗戦線において、占領軍との対決をエスカレートさせることを呼びかける」と述べた。
●中南米・アフリカ
19日のアルゼンチン大統領選決選投票で、右派でリバタリアン(自由至上主義者)のハビエル・ミレイ下院議員が勝利したことに対し、世界の首脳からは悲喜こもごもの反応が寄せられた。中南米の左派指導者がミレイ氏に敵意を示した一方、ためらいがちに支持を表明する指導者もおり、中国はミレイ氏への協力姿勢を示した。
ミレイ氏は「無政府資本主義者」を自称し、経済危機に憤る有権者の心をつかんで勝利した。アルゼンチン政治は中道左派の現政権から大転換を迎える。
メキシコの左派大統領ロペスオブラドール氏は21日記者団に対し、ミレイ氏の勝利をアルゼンチンの「オウンゴール」だと揶揄(やゆ)し、同国のためにならないとの見方を示した。
ボリビアの左派、モラレス元大統領は同日ソーシャルメディアで「ファシズム、超保守主義、新自由主義の成功」は決して願わないと断言した。
ベネズエラとコロンビアの左派指導者らも、ミレイ氏の勝利を嘆いた。
一方、チリのボリッチ大統領とブラジルのルラ大統領はともに左派ながらミレイ氏に祝意を示した。ミレイ氏は選挙戦中にルラ氏について「怒った共産主義者」で腐敗しているとこきおろしたが、ルラ氏は19日、「民主主義とは民の声であり、常に尊重されなければならない」とソーシャルメディアに投稿した。
中南米以外の指導者は、ミレイ氏から友好姿勢を示されていなくても外交辞令を送った。同氏は過去にウクライナ戦争で同国を支持すると表明したが、ロシアのプーチン大統領は勝利に祝意を示した。
ミレイ氏陣営は選挙戦で何度か中国に批判的なコメントを行ったが、中国外務省の報道官は、中国はアルゼンチンと着実な関係を維持する構えだと述べた。
右派のポピュリスト政治家からは、ミレイ氏に熱烈な支持が寄せられた。トランプ前米大統領はビデオでミレイ氏に「アルゼンチンを再び偉大に」してほしいと呼びかけた。
同じく右派のボルソナロ・ブラジル前大統領はビデオで、こぶしを突き上げながら祝意を示した。
エルサルバドルのブケレ大統領はミュージカル「エビータ」の楽曲「アルゼンチンよ、泣かないで」に引っかけて「さあ、泣かずに言おう」とX(旧ツイッター)に投稿し、ミレイ氏の勝利に喜びを表した。
南アフリカ準備銀行(SARB、中央銀行)は23日の会合で、主要政策金利のレポ金利(ZAREPO=ECI)を8.25%に据え置くと決定した。据え置きは3会合連続。中銀は、物流のボトルネックで成長見通しが悪化しているとの認識を示した。
今回の決定は全会一致。ロイターが実施した調査で全てのエコノミストが据え置きを予想していた。
ハニャホ中銀総裁は記者会見で「港湾施設と鉄道の運営が(経済活動に対する)深刻な制約になっている」と述べた。
南アフリカ統計局発表の10月の消費者物価指数(CPI)は前年比上昇率が5.9%と、9月の5.4%から加速。
これについてハニャホ総裁は「インフレ率の上昇は歓迎できない」としながらも、中銀は2025年までにインフレ率が目標の範囲内に収まると見方を変えていないと言及。だた、利下げに転じる時期については手がかりを示さなかった。
南ア中銀は、21年11月から10会合連続で利上げを実施。アナリストの間で、中銀は24年初頭に利下げを開始するとの見方も出ている。南アに拠点を置く独立系エコノミスト、エリーズ・クルーガー氏は、南ア中銀の利上げ局面は終了した可能性があり、次の動きは利下げになる公算が大きいとの見方を示した。
●市況
<外為市場> ユーロが上昇した。経済指標によってユーロ圏の景気後退が緩和し始めている可能性が示唆された。もっとも23日は日米が祝日だったため、市場の流動性が乏しく、やや荒い値動きとなった。
<ロンドン株式市場> エネルギー株に買いが入り、反発して終了した。ただ、米市場が感謝祭の祝日で休場となっているため、商いは薄かった。
<欧州株式市場> 上昇して取引を終えた。欧州中央銀行(ECB)理事会の議事要旨が消化される中、エネルギー株が買われた。
ヘルスケア株(.SXDP)も0.7%上昇。デンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)が1.0%上昇した。肥満症治療薬・糖尿病治療薬の生産強化に向け23億ドルの投資を実施すると発表したことを受けた。
アムステルダム市場のAEX指数(.AEX)は0.3%上昇。22日投開票されたオランダ総選挙は、反移民・反欧州連合(EU)を掲げる極右のポピュリスト政治家、ウィルダース党首率いる自由党(PVV)が第1党になる見通しとなった
<ユーロ圏債券> 利回りが上昇した。ユーロ圏とドイツの購買担当者景気指数(PMI)で景気後退が予想より軽微な可能性を示唆したことが背景。
<ロンドン株式市場> 3日続落して取引を終えた。原油安を受けてエネルギー株が売られたのが相場を押し下げた。
<欧州株式市場> 反発して取引を終えた。金利動向に敏感な不動産株が買われたのがけん引し、STOXX欧州600種指数(.STOXX)は約2カ月ぶりの高値を付けた。
<ユーロ圏債券> 小動き。前日発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨への反応は限られたほか、23日の米感謝祭の祝日を控え、閑散商いとなった。
<為替> ドル指数が2カ月半ぶりの安値から切り返した。新規失業保険申請件数が予想以上に減少したことを受けた。
CMEのフェドウォッチによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場は米連邦準備理事会(FRB)が12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げに踏み切る可能性は基本的にないとみている。また、5月までに利下げが実施される可能性を50%以上としている。
<債券> 米債利回りが序盤の低下から切り返した。新規失業保険申請件数の減少を受け、米連邦準備理事会(FRB)が6月ごろに利下げに着手するとの市場の見方が揺らいだ。
<株式> 反発。米連邦準備理事会(FRB)による利上げ終了への期待や米経済は引き続き底堅いという楽観的な見方が支援した。
半導体大手エヌビディア(NVDA.O)は2.5%安。21日引け後に発表した第4・四半期(11─1月)の売上高見通しは市場予想を上回ったものの、米国の対中半導体輸出規制に伴い中国では大幅減収を予想した。
農業機械大手ディア(DE.N)も3.1%安。2024年の利益見通しが市場予想を下回った。
<米原油先物> 石油輸出国機構(OPEC)会合延期を受け減産方針を巡る不透明感が台頭する中を下落した。米国産標準油種WTIの中心限月1月物の清算値(終値に相当)は、前日比0.67ドル(0.86%)安の1バレル=77.10ドル。2月物は0.67ドル安の77.25ドルだった。
日経先物33,782、ダウ先35,344、債先145.94、米4.455、独2.6185、仏3.184、西3.618、伊4.391、英4.2795、波5.598、原油76.34、銅8,409、ドル円149.65
、ユーロドル1.0905
※11/24 9時00分頃
備忘録(2023/11/21)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
今年の感謝祭は、ジュリッサ・アルカンタールマルティネスさんとその家族にとってこれまでと全く違うものになりそうだ。
米テキサス州ヒューストン地域の不動産業者であるアルカンタールマルティネスさんは、米製薬会社イーライリリーの減量効果を持つ糖尿病治療薬「マンジャロ」を1年半服用している。その前には、デンマークの医薬品メーカー、ノボ・ノルディスクの同様の糖尿病治療薬「オゼンピック」を1年3カ月使用していた。
アルカンタールマルティネスさんはダイエットと食生活に関連した病気との闘いを何年も続けてきた後、体重を115ポンド(約52キログラム)減らした。オゼンピックで17歳の息子は65ポンド、21歳の娘も50ポンド、それぞれ減量した。
一家の食生活は今では大きく変化しつつある一方で、伝統的な七面鳥と付け合わせで感謝祭を祝うことに変わりはない。もてなす側としてアルカンタールマルティネスさんはサツマイモとインゲン豆の鍋料理を作るが、自身はあまり食べずに、残った分は実家に送るつもりだ。「以前なら、少し自分たちのためにとっておいたかもしれない」と語った。
現在、食欲を抑制するGLP-1受容体作動薬の注射を接種する米国人は何百万人にも上り、多くの人にとって今年は同薬を利用し始めてから初めての感謝祭となる。
通常、年末年始のホリデーシーズンはごちそうを食べる機会が多く好調な売り上げが期待できる食品メーカーや小売業者だが、やせ薬流行の影響は1回や2回のホリデーシーズンでは済まない可能性があるとして身構える。
小売業者の米ウォルマートは10月、やせ薬を使用している買い物客による食品購入量がやや減少していると発表。ポテトチップス「プリングルズ」メーカー、米ケラノバ(旧ケロッグ)のスティーブ・カヒレーン最高経営責任者(CEO)はブルームバーグに対し、変化に対応できるよう食行動への影響を見極めていると語った。ドーナツ店チェーンの米クリスピークリームは先月、やせ薬によってドーナツ需要が減るとの懸念から投資判断を引き下げられた。
GLP-1受容体作動薬の処方は2020年から22年にかけて300%急増したが、この急成長は米国全土を席巻する伸びの始まりに過ぎないようだ。このカテゴリーには、もともとは糖尿病治療薬のノボ・ノルディスクのオゼンピックと「ウゴービ」、イーライ・リリーの糖尿病治療薬マンジャロ、そして今月初めに減量薬として承認された同社の「ゼップバウンド」が含まれる。
こうした薬は、食欲にブレーキをかけるよう脳に信号を送り、食べ物のことを考えないようにもして、服用する多くの人にとって体重減少をもたらす奇跡の薬となっている。
ただ、こうした薬は減量の特効薬ではないと、情報サービス会社ウォルターズ・クルワーのヘルス部門薬剤師、ステイシー・マッコイ氏は指摘する。ユーリカ・ヘルスのデータによれば、吐き気のような副作用のために服用を続けられない患者も存在し、使用を断念する理由では最も多い。
さらに、やせ薬は誰にでも効果があるわけでもない。ウゴービの1カ月のコストは1349ドル(約20万円)にも上る。こうした費用面もマイナス材料で、TDカウエンのアナリストは最近、この薬の影響が誇張されて終わるかもしれない理由に挙げている。
一方で、やせ薬は多くの人に食べ物との関係以上の変化をもたらしてもいる。カナダ人のジム・スクワイヤーズさんは、すでに10月に感謝祭を祝ったが、オゼンピック服用で以前より食べる量が減っただけでなく、減量によってこれまでよりもエネルギッシュに感謝祭を楽しむことができたという。食事の準備を手伝ったり、テーブルをきれいにしたりと、今は笑顔で祝日の活動全てを過ごすことが可能だと語る。
アルカンタールマルティネスさん一家も減量中の食生活に変化が見られている。子供たちが新しい食品を試すことにより積極的になり、「野菜を加えたり、果物を加えたりできるようになった」という。一家は、カードに感謝リストをつづったり、5キロメートルのコースをマイペースで走るターキートロットやカラオケをしたりするという、感謝祭を祝う新しい方法も見いだしている。
感謝祭は「常に食べ物が中心だったが、今はさほど気にならなくなった」とアルカンタールマルティネスさんは話した。
欧州の銀行が持つ商業用不動産へのエクスポージャーは、経済がより大きなショックに見舞われた場合、金融の安定性を損なう可能性がある。欧州中央銀行(ECB)が指摘した。
ECBが21日発表した金融安定報告の抜粋によれば、商業用不動産市場は「悪影響が及ぶシナリオを大幅に増大させる恐れがあり、銀行システムにおいて体系的な損失が生じる可能性を高める」と分析した。金融安定報告は22日に公表される。
●その他産業
米ブラックストーンはファンド「ブラックストーン・ダイバーシファイド・マルチストラテジー」を年内に閉鎖する。ツーシグマ・インベストメンツやマグネター・キャピタルなどのヘッジファンドに資金を配分していた戦略が終了する。
同ファンドは欧州連合(EU)の「譲渡可能証券の集団投資事業(UCITS)」指令の下で運用され、投資家が資本に日々アクセスできる仕組みになっているが、この仕組みが圧迫を受けている。運用資産は現在約2億ドル(約295億円)と、ピークだった2018年の23億ドルから急減した。
ブラックストーンの広報担当者は発表文で同ファンドの閉鎖計画を確認し、「現在の構造よりも柔軟性の高い新しい戦略への資本移行を顧客と話し合っている」と説明した。
厳しい市場環境下で突然の資金流出を回避するため、投資家に長期的な制約を課す大規模なヘッジファンドが増える一方で、UCITSファンドは、ヘッジファンドよりも頻繁に投資家が資本にアクセスできるよう設計されている。
ブラックストーン・ダイバーシファイドは、年初来のリターンが10月末まででプラス4.1%。HFRIファンド・オブ・ファンズ総合指数は1.8%上昇。
米資産運用会社ブラックストーン(BX.N)は、さまざまなヘッジファンドやトレーディング戦略に投資する「ブラックストーン・ダイバーシファイド・マルチストラテジー」ファンドを年末に閉鎖すると投資家に伝えた。同社が英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道を確認した。
4年間で資産が約90%減少、2020年初めから先月末までのリターンは2%低下した。同ファンドはブラックストーンのヘッジファンド業務の0.5%程度を占めるという。
同社は「2億ドル程度の小規模なレガシーファンドだ。現在よりも柔軟性の高い新戦略に資金を移すよう顧客と協議している」とした。
世界的な紛争の増加に伴う欧米の軍事予算の増加を見越し、投資家は10月以降、防衛関連株に連動する上場投資信託(ETF)への投資を増やしている。
リッパーのデータによると、インベスコ航空宇宙・防衛ETFは今月に入って1億ドル以上の純流入。10月は約1億8000万ドルが流入していた。
資産規模55億ドルのiシェアーズ米国航空宇宙・防衛ETFや同17億8000万ドルのSPDR・S&P航空宇宙・防衛ETFの10月以降の純流入額はそれぞれ1億7840万ドル、1億6360万ドルとなっている。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの公共投資担当、アシシュ・シャー氏は「国家安全保障上の脅威はますます大きく複雑になっており、最新の防衛技術に対するニーズが高まっている」と指摘した。
ロシアのウクライナ侵攻以降、各国の軍事費と支援が増加したため、インベスコ航空宇宙・防衛ETFの純資産総額はほぼ4倍の23億7000万ドルに増加。さらに、イスラム組織ハマスの急襲を受けてイスラエルがガザに攻撃を開始して以来、資産額は19%増えた。
防衛産業の多くが人工知能(AI)の進歩の恩恵を受けるため、防衛関連ETFはハイテク株への関心の高まりも追い風となっていると専門家は指摘する。
●決算関連
米半導体大手エヌビディア(NVDA.O)が21日発表した第4・四半期(11─1月)の売上高見通しは市場予想を上回った。サプライチェーン(供給網)の改善により、人工知能(AI)向け半導体の旺盛な需要に対応できると見込んだ。
ただ、米国の対中半導体輸出規制に伴い中国では減収が予想され、株価は下落している。
エヌビディアは、中国での減収分は他国での売り上げで十分補うことができるとの見方を示したが、決算発表後の時間外取引で株価は約1%下落した。同社の株価は今年240%以上上昇していた。
インベスティングドットコムのシニアアナリスト、ジェシー・コーエン氏は、投資家は米国の対中半導体輸出規制の拡大が悪影響を及ぼすことを懸念しているようだと指摘した。
それでもアナリストは、特に米国でエヌビディアのAI向け半導体の需要が引き続き供給を上回る中、少なくとも来年8月まで同社の受注台帳が埋まった状況が続くと予想している。
同社が示した第4・四半期の売上高見通しは200億ドルを中心にプラスマイナス2%。LSEGがまとめたアナリスト予想は178億6000万ドルだった。
第3・四半期の売上高(調整後)は206%増の181億2000万ドル。アナリスト予想は161億8000万ドルだった。
データセンター事業の売上高は、41%増の145億1000万ドル。ゲーム向け半導体の売上高は、15%増の28億6000万ドルだった。
調整後1株利益は4.02ドル。アナリスト予想の3.37ドルを上回った。
エヌビディアは、データセンター事業の売り上げの4分の1を中国で稼いでおり、中東などの他地域は現在、米国の新たな輸出規制の影響を受けていると説明した。
関係筋によると、同社は輸出規制拡大に対応するため、中国市場向けに3つの新製品を用意している
米パソコン大手HP(HPQ.N)が21日明らかにした第1・四半期の利益は、市場予想を下回った。一方、年間の業績見通しは維持した。
第1・四半期の調整後1株当たり利益は0.76─0.86ドルと予想。LSEGがまとめた市場予想中央値は0.86ドル。
時間外取引で株価は一時4%超下げた。
人工知能(AI)機能搭載のパソコンを来年後半に発売する予定であり、徐々に普及すると予想している。
2024年度の調整後1株当たり利益予想は3.25─3.65ドルに据え置いた。
第4・四半期の売上高は138億2000万ドルで、市場予想の138億5000万ドルを小幅下回った。
個人向けシステム部門(デスクトップパソコンとノートパソコンを含む)の売上高は前年比8%減、プリンティング部門は3%減だった。
米家電量販店チェーン、ベスト・バイが21日発表した8-10月(第3四半期)決算は、「まだら模様の消費者需要」を背景に、既存店売上高が予想以上に落ち込んだ。また年末商戦が本格化する感謝祭の翌日のブラックフライデーを控え、通期見通しを下方修した。
米国の既存店売上高は7.3%減った。このうち家電は15%落ち込んだ。
ホームシアターやコンピューター関連など、とりわけ高額商品の販売が低迷しているという。
11-1月の既存店売上高は3%-7%減を見込んでおり、年末商戦の予測の難しさを浮き彫りにした。
通期の売上高見通しは最大437億ドル(約6兆4800億円)とし、従来の445億ドルから下方修正した。
●先進国、グローバル、金融市場
フランスは欧州連合(EU)の財政基準を満たさない可能性があり、ドイツとイタリアも十分に順守していないと見なされている。ブルームバーグ・ニュースが20日、関係者の話として報じた。
ベルギーとフィンランド、クロアチアも財政目標に違反する恐れがあるという。
報道によると、21日に監視リストが公表される予定。
イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は21日、英国のインフレ率が高止まりするリスクはあるが、中銀目標である2%に戻る兆しもあると述べた。
財務省特別委員会(TSC)で、高水準だった英国のインフレ率が最近低下しているが、これは物価上昇との戦いに勝利したことを意味するものではないと改めて表明。「委員会の全員が同じ意見だと思うが、リスクは上向きだ」とし、英国内の労働者不足が今後の物価上昇に対するリスクになるほか、パレスチナ自治区ガザでの戦争もインフレ圧力を強める可能性があると警告した。
一方で、ベイリー氏は英中銀の政策金利に対するスタンスを変更する必要はないと言明。「個人的な見解では、2%回帰という目標に達する兆しが見えている」とした。
市場では現在、英中銀が2024年6月までに利下げを開始すると見込んでいる。
ベイリー氏は、市場は総合インフレ率の低下を示す最近のデータを「重視しすぎている」とし、インフレ率を2%に完全に戻すのは緩やかなプロセスになるとした。
また、ラムスデン副総裁はTSCで「われわれは市場の期待から距離を置くことを明確にしている」と述べた。
ベイリー氏は、23年末のインフレ率は英中銀の予想をやや下回るだろうが、それほど大きな差はないと言及。今政策金利を引き上げてインフレ率を目標値により迅速に戻そうとすれば、インフレ率を目標値より押し下げることになるとした。
ラムスデン氏は、家計と企業を対象とした調査では、インフレ期待に警告のサインは出ていないと述べた。
ただ、キャサリン・マン政策委員は、インフレリスクを確実に抑えるために政策金利を引き上げることに賛成だと主張。「2%目標へのコミットメントを強固にするためには、今以上の引き締めが重要だ」と語った。
欧州中央銀行(ECB)の金融政策担当スタッフは、ECBは債券の購入を再開する前に「量的引き締め」により保有残高を2026年半ばまでに現在の半分の1.5兆ユーロまで縮小すべきとの見解を示した。
金融政策の専門家3人は討議資料で、これは銀行システムが必要とする資金を満たす上で十分な水準と指摘。ECBはその後、銀行の流動性ニーズの高まりに対応するため、再び債券の残高を増やし始めるべきと述べた。
銀行はECBが債券購入を通じて創出した準備金のような「非借入準備金」を持っている場合の方が、より多くの信用供与を行うことが明らかになったとしている。
極端なシナリオを用いてシミュレーションしたところ、債券を多く保有する方が現在の予想よりも貸し出し、インフレ、成長率をゆがめないため、債券を全て処分するよりも好ましいとの見方を示した。
米連邦準備理事会(FRB)のように流動性を供給して金融市場金利の「下限」を維持するべきか、イングランド銀行(英中銀)のように「上限」金利で銀行が自由に借り入れできるようにするか、政策決定者が議論する際に参考となる可能性がある。
資料では「下限方式はベースラインと比較して貸し出しの縮小が緩やかなため、上限方式より優れている」と分析した。
準備金が低水準で、貸出金利と預金金利の間に「広いコリドー」がある金融危機以前の設定に戻ることは「全く非現実的」と指摘。中銀が常に銀行の現金需要を推計する必要があり「システム的な計算ミス」と「不必要な変動」につながると説明した。
代わりに「狭いコリドー制度」を提唱。この制度では現在市場が期待しているように、ユーロ短期金利(ESTR)をECBの預金金利に等しく保つのに十分なだけの準備金を銀行に恒久的に供給する。
この準備金の水準は資産の3.50─4.0%とし、2019年9月に米国で見られたような金融市場における突然のストレス発生を避けるため、ECBは控え目過ぎないようにすべきとの指摘した。
欧州中央銀行(ECB)は21日、ユーロ圏の商業用不動産市場は厳しい状況が今後数年続き、銀行の貸出債権、投資ファンド、保険会社がリスクにさらされる可能性があると指摘した。
ECBは金融安定報告で「銀行の商業用不動産ポートフォリオの規模は比較的限定されシステミックな危機につながる可能性は低いが、より広範な市場ストレスが発生した場合は重大な増幅剤の役割を果たす可能性がある」との見方を示した。
銀行の融資残高に占める割合は住宅ローンが約30%、商業用不動産は約10%。問題が起きた場合は「投資ファンドや保険会社など、金融システム以外で商業用不動産へのエクスポージャーが大きい企業にも多大な損失をもたらすことになる」と指摘した。
2023年上半期の商業用不動産取引は前年比47%減少した。
ECBは、取引減少で価格がどの程度下落したか判断するのは難しいものの、大手の取引価格は純資産価値から30%以上割り引いた水準だとした。割引率は2008年以降で最大という。
不動産会社向けの銀行融資のサンプルからは、最近の融資コストの上昇により、赤字企業向け融資の比率が2倍の26%に達する可能性を示唆したと指摘した。
厳しい資金調達環境が市場の予想通り2年続き、企業が期日を迎えた融資を全て借り換える必要がある場合、比率は30%に増加すると予想される。
ECBは「特に、資金調達コストの上昇と収益性の低下の両方が数年続くと考えると融資債権には相当な脆弱性がある」と指摘。「パンデミック前の収益性と低金利を前提としたビジネスモデルは、中期的には持続不能となる可能性がある」とした。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は21日、今月7日に開いた理事会の議事要旨を公表した。政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げた決定について、今月利上げしなければインフレ期待が不安定化する可能性があるとの懸念があったことが示された。
理事会は、インフレ期待が控えめにでも高まればインフレ抑制がより困難になるとの懸念を示した。
理事会メンバーは「いかなるコスト上昇も消費者に転嫁可能との企業心理が強まっている兆しがある」と指摘。「今回の会合で金利を据え置けばインフレ期待が高まるリスクがある」との見解で一致したという。
理事会は一方で、利上げを見送る根拠もあったと認識。景気減速や中東情勢など地政学的不透明感が含まれた。
理事会メンバーは「インフレを妥当な期間内に目標に戻すためにさらなる金融引き締めが必要かどうか」について、今後のデータで景気見通しがどのように変わるか次第との意見でも一致を得た。
消費者物価の上昇率は中銀の目標である2─3%を大きく上回っており、2025年末まで3%に鈍化しないと見込まれている。
理事会は、サービス部門のインフレがとりわけ粘着性があるとし、国内の需要超過が続いている可能性を指摘。
また、住宅価格のここ数カ月の再上昇が家計の富を拡大させ、金融状況が「特段引き締め的ではない」ことを示唆しているとした。
理事会はさらに、中銀のインフレ減速予想はあと1─2回の利上げを前提にしていると言及した。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のブロック総裁は21日、インフレが今後1、2年の重要な課題との認識を示した。メルボルンで開かれたパネルディスカッションで述べた。
インフレは全て供給面の課題により引き起こされているという認識があるが、需要動向もインフレを左右すると説明した。
「供給ショックが続けば誰もがインフレ高止まりを予想するようになり、インフレ期待が変化すれば問題になる」と指摘した。
金融政策は既に制約的段階にあり、消費を抑制するように機能しているが、金利が人々に与える影響は高齢者や住宅ローンを抱えている人などによって異なると述べた。
過去最高水準に達している移民流入は、国内のインフラや住宅分野の重荷になっているが、最終的に経済に恩恵をもたらすと述べた。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは20日、このところの大幅な相場変動にも関わらず、米国債に対する構造的需要は底堅いとの見方を示した。
米金融規制当局が米国債市場の回復力と効率性を向上させるために一連の措置を講じているとし、市場構造は今後も進化し続けると指摘した。
「今後、米連邦準備理事会(FRB)の国債保有縮小に伴い、海外の中央銀行や年金基金、保険会社、家計が市場の安定要因になる」と説明した。
ムーディーズは10日、米国債格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。米財政赤字の高止まりと債務支払い能力の低下を理由に挙げた
ゴールドマン・サックス・グループはヘッジファンドの米国株投資について、7-9月(第3四半期)に特定銘柄への偏りが過去22年で最も大きくなったと指摘した。
同社が20日に公表したリポートによると、ヘッジファンド業界全体の投資先の集中度を追跡するゴールドマンの「クラウディング指数」は過去最高を記録。平均的なファンドはロングポートフォリオの7割を上位10ポジションで保有しているとしている。
最も人気の銘柄は超大型ハイテク株で、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム社、メタ・プラットフォームズはゴールドマンの「ヘッジファンドVIP」リストに入った。また平均的なヘッジファンドのロングポートフォリオの約13%をハイテク7社が占めており、これは年初と比べると2倍の比重だという。
背景には、米利上げ局面が終わりに近づき経済成長が弱まる中で、収益性が高く安定したハイテク株に再びマネーが向かっていることがある。ナスダック100指数は10月下旬に安値をつけて以降、14%急伸している。
ヘッジファンドはハイテク株の勢いに乗りつつ、注目が高まっている減量薬から利益を得る方法も模索している、とベン・スナイダー氏を含むゴールドマンのストラテジスト陣は指摘した。米食品医薬品局(FDA)から減量薬「Zepbound(ゼップバウンド)」の承認を受けたイーライリリーは前四半期にヘッジファンドの間で特に人気が高まった。
ゴールドマンはヘッジファンド735社のデータを分析。これらファンドの株式のロングポジションは1兆6000億ドル(約236兆円)、ショートポジションが7970億ドル相当に上る。
米国債投資家の間では、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局が経済のソフトランディング(軟着陸)を達成することができるかどうか、懐疑的な見方が広がりつつある。
これがいわゆるタームプレミアムの最近の動きからうかがわれるメッセージだ。タームプレミアムは再びマイナスに転じ、期間が長めの米国債の保有に伴うリスクの見返りに債券の買い手が追加的な利回りを求めていないことが示唆された。
ニューヨーク連銀のデータによれば、米10年債のタームプレミアムの指標は17日にマイナス1.7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、10月後半に記録したプラス48bpの高水準から落ち込んだ。
10月の米雇用統計とインフレ統計が予想よりも弱めの内容だったことで、金融当局が2024年に利下げに急転換するとの観測がトレーダーの間に台頭し、国債相場は今月に入り上昇傾向にある。
拡大する財政赤字の穴埋めに国債発行が増えて、需要を圧倒するとの懸念もあるものの、米経済が減速しつつあるとの兆候の方が市場に響いている形だ。相場上昇は24年のリセッション(景気後退)入り懸念の高まりを示すものでもある。
経済や金利の見通しを巡る不確実性の高まりを反映し、タームプレミアムは9月に2年強ぶりにプラス転換していた。ただ、プラスの期間は長続きしなかった。10年債利回りが10月23日に付けた16年ぶり高水準の5.02%から0.5ポイント余り低下したのに伴い、タームプレミアムも縮小した。
MUFGセキュリティーズアメリカの米マクロ戦略責任者、ジョージ・ゴンキャルベス氏は供給も引き続き懸念材料だとし、それを踏まえると、マイナスのタームプレミアムは潜在的に厳しい経済見通しを示唆するものだとの見解を示した。
ドイツ財務省は事実上全ての新規支出の承認を凍結した。事情に詳しい関係者が明らかにした。先週の憲法裁判所判決を受けた対応で、財政危機が深刻化している。
ショルツ首相率いる連立政権は、憲法裁判決の影響を急いで手当てしようとしている。この判断で、通常の連邦予算に組み入れられていない特別基金の多額の財源に疑問符がついた。
規定により匿名を条件に語った関係者によると、財務省は広範かつ長期的な影響を特定しようとしており、今年の新規支出の承認を事実上全て停止した。
既存の債務に関する支出は認められるが、新たな支出は例外的な場合に限定されると、関係者は説明。この決定は議会や憲法裁など憲法が保障する機関を除き、全ての中央省庁に適用されるという。
ドイツには通常の連邦予算外の基金が29あり、その規模は総額で約8700億ユーロ(約140兆円)。ただ、軍事支出に利用される1000億ユーロの基金は憲法で保障されているため影響を受けない見通しだ。
カナダ財務省は21日に公表した中間財務報告で、財政赤字が3月時点の予想値を大幅に上回り、債務削減ペースも一段と緩やかになるとの見通しを示した。
金利が20年ぶり高水準となり、インフレ率も高止まりする中、トルドー政権に対する歳出削減圧力が高まっている。
アナリストは、住宅や温暖化対策補助金への歳出は最終的にはインフレ抑制に寄与するが、債務返済コストが急拡大する中で政府が十分な策を示していないことを懸念している。
2024/25年度の財政赤字は384億カナダドル、25/26年度は383億カナダドルと予想。3月時点予想ではそれぞれ350億カナダドル、268億カナダドルだった。
連邦債務の対国内総生産(GDP)比は24/25年度に2年連続で上昇し、その後に低下するが、低下する時期は従来予想よりも1年後ずれした。
欧州中央銀行(ECB)の利下げ開始時期について投資家は先走った見方をしていると、ECB政策委員会メンバーのシムカス・リトアニア中銀総裁が指摘した。
シムカス氏は21日、ビリニュスで記者団に対し、「われわれが数カ月以内に利下げするという見方は、個人的には楽観的過ぎるとみている」と述べた。
ECBの金利はピーク水準にあると総じて受け止められており、市場の関心は利下げ開始時期に集中している。早ければ4月の利下げが見込まれる中で、政策当局者の大半は利下げ協議は時期尚早と述べている。シムカス氏も同様の見解を示した上で、「来月に追加利上げを協議する理由はない」と続けた。
全米リアルター協会(NAR)が21日に発表した10月の米中古住宅販売戸数(季節調整済み)は年率換算で前月比4.1%減の379万戸と2010年8月以来13年超ぶりの低水準に落ち込んだ。ロイターがまとめた市場予想は390万戸だった。
住宅ローン金利が過去20年間で最高水準に達しているほか、住宅不足が重しとなった。
地域別では、北東部、西部、人口密度の高い南部で減少。中西部は横ばいだった。
全体の販売戸数の前年同月比は14.6%減だった。
ネイビー・フェデラル・クレジット・ユニオンのコーポレート・エコノミスト、ロバート・フリック氏は「価格上昇と高水準の住宅ローン金利、そして低金利でローンを組んでいる数百万人の住宅保有者が引っ越しに消極的なことが組み合わさり、市場を凍結させている」と述べた。
10月に市場に出ていた中古住宅は115万戸で前年同月比5.7%減少した。住宅保有者の大半の住宅ローン金利は5%未満で、ほとんどが売却に消極的となっている。
NARのチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は記者団に対し、長期にわたり自宅に住んでいる住宅保有者に住宅の売り出しを奨励する政府の税制優遇措置について、不動産業者らが米議会の代表者らと協議する予定と述べた。
また、たとえ住宅ローン金利が米10年債利回りとともに低下し続けたとしても、適切な供給がなければ値ごろ感が依然として得られにくいとした。
10月のペースに基づく在庫の消化期間は3.6カ月と前年同月の3.3カ月から延びた。健全な需給バランスは4─7カ月とされている。
LPLファイナンシャルのチーフエコノミスト、ジェフリー・ローチ氏は「住宅建設業者は需要に応じて市場に供給する機会を活用すべき」と述べた。
販売価格の中央値は前年同月比3.4%上昇の39万1800ドルで、10月としては過去最高だった。
10月に住宅が市場に出ていた期間は23日間で、前年同月の21日間を上回った。販売された住宅の66%は、1カ月未満で買い手が決まった。
初回購入者の割合は前年同月と同じく28%だった。現金のみによる販売の割合は29%となり、前年同月の26%から上昇した。投げ売り物件などは2%で、前年同月からほぼ変わらずだった。
米連邦公開市場委員会(FOMC)が10月31日ー11月1日に開いた会合では、今後の政策金利の動向に関して「慎重に進む」戦略を取るほか、追加引き締めの是非はインフレ目標に向けた進展度合いに基づいて判断することで政策当局者の見解が一致した。11月21日に公表された議事要旨で明らかになった。
議事要旨では、「委員会は慎重に進む態勢にあり、各会合での政策判断は引き続き、入手する情報の全体像に基づいて行うことで全参加者の意見が一致した」と記された。
FOMC会合では、消費と雇用での力強いデータ継続をよそに、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25-5.5%で据え置いた。
今回の議事要旨は、FOMCがインフレに対して辛抱強いアプローチで臨み、今後の政策判断は入手する経済データに左右されることを示している
「ディスインフレのプロセス継続や金融・信用状況の引き締まりを受けた総需要の鈍化、労働市場の需給バランス改善の度合いを見極める上で、向こう数カ月に入手するデータが助けになると、参加者は予想した」と議事要旨は記した。
10月は米10年債利回りが5%を超えて16年ぶり高水準を付けるなど債券市場が混乱。中長期の借り入れコスト上昇を受けて、一部当局者は金融環境の引き締まりが追加利上げの代役を果たすとの見解を示した。
議事要旨では、「中長期債利回りの変動性が高まり得るほか、最近の上昇とその根強さの背後にある要因が不透明だということを参加者は強調した」としつつ、「中長期債利回り上昇の要因が何であれ、金融環境の変化が続けば金融政策の道筋に影響を及ぼしかねず、従って市場の展開を注視し続けることが重要になる」と説明した。
FOMCはリスクの二面性に対処しようと努めている。つまり過度な利上げでリセッション(景気後退)を招くリスクと、消費を冷やし時宜を得た形でインフレ率を2%に戻すための引き締めが不十分なものに終わるリスク、その両方の回避だ。
議事要旨は、「参加者はインフレが過去1年間に減速したことを指摘しつつも、インフレは現在でもなお容認できないほど高く、委員会の中長期的な目標である2%を大きく上回っていると強調した」と指摘。また「インフレが2%目標への道筋を明確にたどっていると確信するためには、さらなる証拠が必要になるとも強調した」と付け加えた。
米国で年末商戦が本格的にスタートするブラックフライデー(感謝祭の翌日)を前に、世帯収入が年間10万ドル(約1500万円)を超える消費者層では支出抑制の動きがあることが明らかになった。リセッション(景気後退)回避で個人消費に大きく依存してきた米国経済にとって懸念材料となる。
米国内のクレジットカードおよびデビットカードの取引データを分析するブルームバーグ・セカンド・メジャーによると、ホリデー商戦を控えた3カ月間では、アップルやコーチなどアッパーミドル層向け小売企業群の売上高が過去2年で最大の落ち込みを記録した。小売業全体の売上高が増加傾向にある一方、比較的裕福な地域のショッピングモールでも消費の低迷が見られた。
記録的な高金利と高インフレにもかかわらず、アッパーミドル層は「予想以上に好調な消費の多くを引っ張ってきた」と、モーニング・コンサルトのシニアエコノミスト、ケイラ・ブルン氏は指摘。それが今では、世帯年収10万ドル超の消費者は倹約志向を強め始めていると同氏は語る。
米国の富裕層は好景気時は支出を惜しまないが、経済の先行きなどに懸念を感じた時に財布のひもをきつくするのも速い。そのため、富裕層向けのブランドや小売業、ショッピングモールへの打撃は、米経済の今後の潜在的な低迷を示唆する。
ブルームバーグは、高所得者の支出を示す指標として、衣料品、宝飾品、電化製品など10のカテゴリーにまたがる30の大手小売企業やブランドを対象にした指数を作成した。
ブルームバーグ・セカンド・メジャーによれば、この指数に含まれる小売企業やブランドは今年1月から売り上げが軟調に推移しており、最近その傾向が強まっている。8-10月の3カ月間では7割の企業で売上高が減少。売上高の中央値は14%減と、過去2年で最悪となっている。このトレンドに逆らったのは「UGG」など少数のブランドだけだ。
シアトルに住むジュリー・ロビンソン・ジャスパーさん(54)は世帯年収が10万ドルを超えるが、すでにホリデーショッピングでの支出を抑える計画を立てている。2人の子供向けプレゼントの予算は600ドルで過去3年と同じだが、高インフレを踏まえれば同額でも購買力はかなり低下している。高額出費を避けるため外食を控え、衣料品については古着に目を向けているという。
「レイオフや病気など、不測の事態に備えて万全を期したい」とロビンソン・ジャスパーさんは語った。
位置情報の分析などを手掛けるPlacer.aiのデータによると、比較的高所得者が住む地域のショッピングモールの客足も新型コロナのパンデミック以来初めて減少し始めている。10月は分析対象となったショッピングモール25カ所のうち、21カ所で客足が減少した。全体的な来店者数は直近3カ月間で3.3%減少し、2021年初頭以来最悪となっている
パンデミック後に人口が増えた地域にも消費低迷は及んでいる。世帯収入がテキサス州全体よりも20%多いヒューストン郊外にあるベイブルック・モールでは今年ここまで、来店者数が66万人(約6%)減少した。
同モール内の化粧品販売店ザ・ボディショップで働くブレ・クリントンさん(25)は「今は誰もが商品を眺めるだけのウィンドーショッピング状態だ。手に多くのバッグを抱えている人はいない」と話す。ホリデーショッピングはまだ盛り上がっておらず、高額商品よりも安価な商品の方が売れており、買い物客を惹きつけるために店では化粧水の試供品を例年より多く配っているという。
●中国・アジア・ロシア・東欧
21/中国外務省は21日、同国やブラジルのような主要国との関係を断ち切ることはアルゼンチン外交の「重大な過ち」になると表明した。
毛寧報道官は定例記者会見で、中国はアルゼンチンにとって重要な貿易相手国であり、アルゼンチン次期政権は中国との関係を非常に重視していると指摘。「中国は2国間関係の安定と長期的な発展を促進するためにアルゼンチンと協力し続けることに前向きだ」と述べた。
リバタリアン(自由至上主義者)で右派のミレイ次期アルゼンチン大統領は中国とブラジルを批判、「共産主義者」とは取引しないとし、米国との関係強化の意向を示している。
また、ロシアの通信社RIAノーボスチによると、ミレイ政権下で外相に就任する見込みのエコノミスト、ディアナ・モンディーノ氏は新興5カ国(BRICS)の枠組みに参加しない方針を示した。
アルゼンチンはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカからなるBRICSに新たに加わることが決まった6カ国の一つ。
21/イスラエルに対するイスラム組織ハマスの奇襲攻撃で多くの犠牲者が出たのは、ロシアのプーチン大統領の71歳の誕生日だった。同大統領がコメントしたのは事件の3日後、非難の矛先はハマスではなく米国だった。
プーチン氏はイラクのスダニ首相に対し、「中東和平プロセスを独占しようと試みた米国の、中東政策の失敗の実例であることに多くの人が同意すると思う」と語った。
プーチン氏がイスラエルのネタニヤフ首相に対し、約1200人のイスラエル国民の死に対し哀悼の意を示したのは、さらに6日後だった。その10日後、ロシアはハマスの代表団が協議のためモスクワを訪れていることを明らかにした。
ロシア、西側諸国の政策専門家によれば、プーチン氏はイスラエルの対ハマス戦争を利用して、西側諸国に対する「存亡を賭けた戦い」と称するものをエスカレートさせようとしているという。目指すのは、米国の優位に代えて、すでに誕生しつつあると同氏が考える多極的システムに移行する新世界秩序だ。
元ロシア政府顧問のセルゲイ・マルコフ氏は、「米国・欧州はイスラエルを全面的に支持しているが、米欧は今や悪の象徴になっており、どうしても正義になりえないというのがロシアの理解だ」と自らのブログに投稿し、プーチン氏には米欧とは別の立場を打ち出す必要があると説明する。
「したがって、ロシアは米欧と同じ立場には立たない。イスラエルにとって最も重要な同盟国は、当面ロシアの主敵である米国だ。そしてハマスは、ロシアの盟邦であるイランと手を結んでいる」
ロシア政府はますますイラン政府との関係を強化している。イラン政府はハマスを支持し、米政府は、ロシアがウクライナとの苛酷な消耗戦で運用しているドローン(無人機)はイランからの供給によるものだとして、イラン政府を非難している。
ベルリンで活動するロシア外交政策の専門家ハンナ・ノッテ氏は、カーネギー・ロシア・ユーラシア・センターに対して、ロシアはかつてのようなバランス重視の中東政策をすでに捨てており、「露骨にパレスチナ寄りの立場」を採用している、と語った。
「ロシアはこうした政策全般を進めるなかで、中東全域の、そしてもっと広くグローバルサウスの人々が抱くパレスチナ問題に対する意見に寄り添っていることを理解している。こうした地域ではパレスチナ側の主張が共感を呼んでいるからだ」とノッテ氏は指摘する。
米国の影響力を低下させる新世界秩序へと突き進んでいく中でプーチン氏が獲得したいと思っているのは、まさにこうした地域の人々からの支持だ。
「ロシアが今回のガザ危機を利用する際に一番重要なのは、グローバル世論という法廷において得点を重ねることだ」とノッテ氏は言う。
プーチン氏はこれまでに、「(ガザにおける)苦悩と血塗れの子どもたちを見れば、誰もが拳を握りしめ、目に涙を浮かべる」と語っている。
<米欧の「ダブルスタンダード」を批判>
ロシアの政治家は、米国政府がイスラエルによるガザ空爆を無条件に認める一方で、ロシアによるウクライナ侵攻に懲罰的な対応を取るという姿勢を指摘する。ウクライナでは多数の民間人が殺害されているが、ロシア政府は意図的に市民を標的にすることはないと弁明している。
イスラエルの国連大使は、ウクライナにおける所業を考えれば、ロシアは他国に何か説教できる立場にはないと述べている。
だがロシアのアレクセイ・プシュコフ上院議員は、西側諸国は、私利私益に基づく政治的な好き嫌いをもとに相手国によって扱いを変えるダブルスタンダードぶりを自ら露呈するという落とし穴にはまった、と指摘する。
「米国と西側諸国は異口同音にイスラエルの行動を支持したが、アラブ世界やグローバルサウス全域から見れば、それによって西側諸国の外交政策は手痛い一撃を受けた」とプシュコフ上院議員は通信アプリ「テレグラム」に投稿している。
またマルコフ元ロシア政府顧問は、ロシアは今回の危機について、あらゆる当事者とのルートを持つ有力な和平仲介者として振る舞うことで、中東地域における存在感を増大させるチャンスだと捉えているという。
ロシア政府は中東諸国外相会議の開催を呼びかけており、プーチン氏は、ロシアには支援の用意ができていると述べている。
プーチン氏は10月、アラブのテレビ局に対して、「私たちはイスラエルとの間にとても安定した実務的な関係を維持しているし、パレスチナとも数十年にわたる友好関係があり、私たちの友人たちはこれを承知している。私としては、ロシアは和平プロセスにも独自の貢献をなしうると考えている」と語った。
マルコフ氏は、経済面でも潜在的なメリットがあると指摘し、西側の財政的・軍事的リソースがウクライナから逸らされることもありがたい副産物だと続ける。
「この戦争による原油価格の上昇もロシアにとっては有利だ」とマルコフ氏は言う。「(さらに)米国とEUがリソースを投じなければならない紛争が生じればロシアの利益になる。ウクライナの反ロシア体制を支えるリソースがそれだけ減るわけだから」
<対イスラエル関係は悪化>
一方で、これまで緊密で実用主義的だったロシアとイスラエルの関係は悪化しつつある。
10月7日のハマスによる攻撃から2週間も経たない時点でハマスの代表団を受け入れたロシアに怒ったイスラエルは、ロシアのアナトリー・ビクトロフ駐イスラエル大使を呼び出し、「テロを正当化するメッセージ」を送ったとして抗議した。
不満はお互いにある。イスラエルのアレクサンダー・ベン・ツビ駐ロシア大使も少なくとも2回、ロシア外務省との協議に呼び出されており、ロシアの国連代表がイスラエルの自衛権の範囲について疑問を呈したことを受けて、両国の代表団のあいだでは厳しい言葉が飛び交っている。
ロシアの外務副大臣の1人であるミハイル・ボグダノフ氏によれば、イスラエルはロシアの同盟国であるシリアに対する空爆を行うときは事前にロシア政府に警告するのが習慣だったが、これを取りやめているという。
イスラエルの閣僚がガザに対する核攻撃も選択肢の1つと示唆してその後停職処分となった件について、ロシアはそうした発言が「非常に多くの疑問」を呼び起こしたと述べている。
ネタニヤフ首相の与党リクードでリバタリアン系の派閥を率いるアミール・バイトマン氏は、イスラエルはいずれ、ロシア政府の姿勢に罰を与えるだろうと述べた。
バイトマン氏は10月、ロシア国営放送RTによるインタビューの中で、「私たちは(ハマスとの)戦争を終わらせようとしている。その後、ロシアは代償を払わなければならない」と述べた。
「ロシアはイスラエルの敵を支援している。私たちは彼らがやっていることを今後も忘れはしない。私たちはいずれ、ウクライナに勝利をもたらすことになる」
ロシアのプーチン大統領は21日、オンライン形式で開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議で、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突の政治的な解決を呼びかけ、BRICSはこうした解決の実現に貢献できるとの考えを示した。
プーチン大統領は、米国の外交政策の失敗により中東危機が引き起こされたと改めて非難。「事態の緩和、停戦、イスラエル・ハマス紛争の政治的解決に向け、国際社会が共同で取り組むことを求める。この地域の国々のほか、BRICS諸国もこの取り組みに重要な役割を果せる」と述べた。
ただ、こうした取り組みがどのように組織されるかについては語らなかった。
中国人民銀行(中央銀行)は一部の銀行に対し、2024年初めに予定している融資の一部を今年末に前倒しし、第1・四半期に過剰な融資を行わないよう指示した。事情に詳しい関係筋3人が明らかにした。
融資が急激に伸び、その後減少する期間を少なくすることが目的とみられる。関係筋によると、各行は24年第1・四半期の新規融資額が過去5年間の四半期平均を超えないよう要請されている。
中国の銀行による貸し出しは、3年近くにわたるコロナ規制を受けて当局が融資の前倒しを促したため23年第1・四半期に急増したものの、その後に信用需要の低迷から激減し、人民元と中国株の変動に拍車をかけた。
中国の大手国有銀行は今週、オンショア・スワップ市場で人民元をドルに交換し、為替スポット市場でそのドルを売却しているもようだ。関係筋2人が21日、ロイターに明らかにした。
元相場はこの1週間で2%上昇し、約4カ月ぶりの高値となる1ドル=7.13元前後。関係筋によると、大手国有銀は今週もドル売り・元買いを続けている。
国有銀は当局に代わって為替市場に介入しているとみられることが多いが、通常は元安圧力が高まった際にドルを売っており、幅広くドル安となっているこのタイミングは珍しい。
元相場の回復を加速させる狙いがあるのではないかとディーラーは見ている。国有銀行が元の上昇を加速させ、輸出企業に外貨収入の元への交換を促そうとしているとの見方も一部から聞かれた。
国内スポット元は一時1ドル=7.1296元に上昇し、基準値(中間値)を4カ月ぶりに上回った。
中国人民銀行(中央銀行)が設定する元の対ドル基準値も今週上昇。きょうの基準値は7.1406元で8月7日以来の元高水準だった。
ソシエテ・ジェネラルのリード・アジア・マクロ・ストラテジスト、キヨン・ソン氏は「このレベルで基準値をドル安方向に設定しているのは驚きだ。人民銀が政策金利引き下げの地ならしをしているように見える」と述べ、外部環境が好ましい時に、できるだけ元を押し上げようとしていると指摘した。
経済の活性化になお政策支援が必要だが、米国などとの金利差を考えると一段の金融緩和は元を押し下げるとアナリストは指摘する。
人民銀は、流動性の供給を拡大しているが貸出金利は据え置いている。
クレディ・アグリコルの首席中国エコノミスト、Zhi
Xiaojia氏は「ドルがさらに大きく下げるか、センチメントを好転させる出来事がない限り、現在の水準付近で一定のボラティリティーが想定される」と指摘。そのうえで「現実に金利差は相当あり、金利や準備率の引き下げなど一段の政策緩和を予想する」と述べた。
中国とサウジアラビアは約70億ドル(約1兆円)規模の現地通貨スワップ協定に調印した。
両国の中央銀行は20日に発表したそれぞれの声明で、最大500億元もしくは260億リヤルをスワップできる3年間の協定に合意したと発表。主要なエネルギー・商品輸出国との取引で人民元の利用を進めている中国は、サウジにとって最大の貿易相手国。
中国人民銀行はスワップ協定について、「金融協力の強化に寄与」し、両国間の「貿易と投資を促進する」と声明で説明。サウジの中銀も同様のコメントを出した。
2027年。台湾を巡る戦いが始まろうとしている。
中国が台湾周辺の海上を封鎖し、サイバー攻撃で台湾の金融システムをまひ状態に陥らせた。パラシュート部隊は沿岸の飛行場に集結。日本からは戦闘機F35を搭載した米空母「ジョン・F・ケネディ」が全速力で南に向かっている。
これは米中台の首脳が想定している多くのシナリオの一つだ。台湾の今後を巡り緊張が高まる中、それぞれの軍隊がさまざまな事態を想定し日夜訓練に励んでいる。
中国は最新兵器や軍の近代化に巨額の予算をつぎ込んできた。だが習近平国家主席ら政府や軍の最高幹部は、人民解放軍には実戦の準備ができておらず、数年先になっても準備が整わないのではないかとの疑念を拭い去れていない。
中国指導部のこうした懸念は、ロシアが2022年2月にウクライナで始めた戦争の長期化でさらに強まった。ロシアのプーチン大統領や軍部に加えて、欧米の多くのアナリストや各政府も短期間での戦争終了を見込んでいた。
中国共産党の総書記でもある習氏の下、中国は紛争となった場合に必ず勝利できるよう取り組んできた。現役兵210万人超の人民解放軍は世界最大の軍隊であり、ロケット部隊の規模も世界トップクラスだ。
米国防総省によれば、中国軍は艦船400隻強と軍用機3100機余りを保有し、海軍の戦力は世界1位、空軍は世界3位だ。
中国の核弾頭保有数は21年に400発を突破し、35年には米国とロシアが常時配備している数とほぼ並ぶ1500発に達する見込みだ。
中国外務省はサンフランシスコ近郊で15日に行われた米中首脳会談後に出した声明で台湾問題について、中国は祖国統一を実現するとし、これを「止めることはできない」と主張した。
大きな弱点
しかし、米中両国の現職および元高官へのインタビューや人民解放軍の発表資料、そして習氏の発言を分析すると、人民解放軍の実像が浮かび上がってくる。
中国は空母から極超音速ミサイルに至るまで軍備面では急速な進歩を遂げたが、それを活用して効果的な戦闘行動を展開する能力という点でなお大きな弱点がある。
米中央情報局(CIA)で35年間、中国軍専門のアナリストを務め、現在は大西洋評議会の非常勤シニアフェローのジョン・カルバー氏は「中国には固有の高い殺傷能力がある。それは否定し難い」とした上で、「中国自らの評価から判断すると、進歩はしたものの、望む水準にはまだ至っていないとみているようだ」と指摘した。
台湾を巡る米中戦争が近く勃発する可能性は低いが、世界経済に壊滅的な打撃を与えることになる戦争の可能性は、軍の調達から投資決定に至るまで、すでにあらゆるものに影響を及ぼしている。
資産家で著名投資家のウォーレン・バフェット氏は今年、地政学的リスクを理由に半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の米国預託証券(ADR)を売却し、同社への投資から手を引いた。
日本は防衛費を増額し、米国は台湾への武器供与を加速させている。バイデン大統領は中国が台湾に侵攻すれば米国は介入すると繰り返し述べてきた。
イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争は、米政権の軍事的コミットメントが行き過ぎることへの懸念を高めているが、バイデン政権は米国が全ての脅威に同時に立ち向かうことができると同盟国や競合国にあらためて保証している。
共和党議員の多くは米国のウクライナ支援に疑問を呈しているが、イスラエルと台湾への支援については民主、共和両党とも強く支持している。
中国の戦力は強大であり、米国が参戦した場合は多くの人命と費用が失われるのは確実だ。シンガポールのリー・シェンロン首相は今月8日、第2次世界大戦末期に旧日本軍と米軍との間で行われた硫黄島の戦いに触れ、「台湾への攻撃は硫黄島の戦いのようなものではない。硫黄島でも十分多くの血が流れた」と述べた。
中国軍が最終的に勝利できるかどうかは、長期戦を効果的に戦うことができるかどうかにかかっている。しかしここ数十年、軍が大きな紛争を経験していないことや、腐敗が続いてきたこと、軍内部の連携に難があることなど、中国に不利なことを示す要因は多い。
●中東
イスラエルのネタニヤフ首相は21日、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスに拘束されている人質の解放に進展が見られていると述べた。
ネタニヤフ首相は「われわれは前進している。あまり多くを語る価値はないが、近く良い知らせがあると願っている」と述べた。ただ、詳細については語らなかった。
首相府は、人質解放に向けた進展が見られる中、この日のうちに閣議が開かれると発表した。
イスラム諸国数カ国の高官で構成される新グループが、パレスチナ自治区ガザでの即時停戦を促すために国連安全保障理事会の常任理事国5カ国などを訪問する。トルコ外務省筋が21日に明らかにした。
このグループはリヤドで今月開催されたアラブ連盟とイスラム協力機構(OIC)の首脳会議で結成され、トルコ、カタール、エジプト、ヨルダン、ナイジェリア、サウジアラビア、インドネシア、パレスチナ自治政府の外相や代表のほか、OIC事務局長が含まれている。
同筋によれば、同グループは20日に北京を訪問して話し合いを開始。「『2国家解決』に資する」ことが最終的な目標という。
中国の習近平国家主席は21日、パレスチナ自治区ガザでの紛争の全当事者に対し、これ以上の人命の損失と苦痛を避けるため、直ちに停戦し、市民に対するあらゆる攻撃をやめ、人質になっている市民を解放するよう求めた。中国国営メディアが報じた。
オンライン形式で開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議で、人道支援物資の安全かつ円滑な通過を確保し、ガザ市民への人道支援を拡大し、ガザ市民を標的にした強制移住や水・電気・石油の供給停止を阻止することも重要と述べた。
カイロ:エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領とレバノンのナジーブ・ミカティ首相は19日の電話会談で、ガザ地区とヨルダン川西岸地区の情勢について協議した。
また、ガザ地区での停戦、民間人の保護、人道支援と救援へのアクセスを推進するエジプトの取り組みのほか、紛争の拡大を防ぐ国際的な取り組みについても話し合った。
両氏は、中東に安全と安定をもたらす二国家解決に基づき、パレスチナ問題の公正かつ包括的な和解を実現させるための和平への道の復活を目指した取り組みについても検討した。
エルシーシ氏は18日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領からの電話の中で、ガザ地区での暴力のエスカレーションについて、エジプト側とフランス側の間で継続する協議の枠組み内で話し合った。
両氏はガザの最新の情勢について意見交換した。
エルシーシ氏は、即時停戦とガザへの人道支援の拡大というエジプトの希望について、負傷したパレスチナ人の受け入れや外国人の避難におけるエジプトの取り組みも加えて伝えた。
エジプトの大統領府によると、両首脳は、ガザの危機に対する緊急の解決策を見つけ、人道支援を確実に届けるための行動を起こすことの重要性について一致したと同時に、二国家解決に基づいた、パレスチナ問題の公正な和解に向けた包括的な政治プロセスを開始する重要性について強調した。
エルシーシ大統領は18日、エジプトのモハメド・ザキ国防相兼軍需産業相同席のもと、フランスのセバスチャン・ルコルニュ軍事相を迎えた。
エジプト大統領府の報道官によると、この会談は、中東地域の情勢の沈静化に向けた国際的な取り組みの観点から、ルコルニュ仏軍事相が最近行った中東地域歴訪の成果をエルシーシ氏に伝えたいという、同相の熱意から実現したという。
パレスチナ自治区ガザ地区:ハマスの指導者であるイスマイル・ハニヤ氏は21日、イスラエルとの停戦合意は間近だと述べ、同組織が10月7日の攻撃の際に人質に取った人々のうち数十人が間もなく解放されるのではないかという期待を高めた。
同氏の事務所から送られてきた声明によると、同氏は「我々は停戦合意に近づいている」と述べた。
ガザ地区での戦争が激化する中、交渉担当者らは数週間にわたり、ハマスに拘束されている推定240人の人質の一部を解放するための取引をまとめるべく努力している。
先月のハマスによる残忍な攻撃の際に連れ去られた人質の大半はイスラエルの民間人であり、その中には幼い子供や高齢者もいた。
拉致された人々のうち、ハマスによって解放されたか、イスラエル軍地上部隊の手で解放されたか、遺体が回収されたのはほんの一握りに過ぎない。
残りの人質の正確な居場所は公には知られていないが、ガザ地区内で拘束されているとみられている。イスラエルは同国史上最悪の攻撃への報復として、同地区で容赦のない空爆作戦と地上攻撃を行っている。
ハマスは10月7日の恐ろしい攻撃で約1200人を殺害した。犠牲者の大半は民間人だった。
ガザ地区のハマス政府によると、この戦争による死者は1万3300人以上に達しており、そのうち数千人は子供だという。
匿名を条件に語ったハマスとイスラム聖戦(10月7日の攻撃にも参加したパレスチナの別の武装組織)の情報筋らは、それぞれの組織が停戦合意の条件に同意したことを認めた。
この暫定合意には、地上での停戦とイスラエルによるガザ地区南部での空爆の制限からなる5日間の停戦が含まれているという。
それと引き換えに、両組織に拘束されている人質50~100人が解放される。
解放予定の人質はイスラエルの民間人と外国人で、軍関係者は含まれない。
この合意案では、女性や子供を含む約300人のパレスチナ人もイスラエルの刑務所から釈放されることになっている。
ハマスが政治事務所を置き、イスラエルと水面下で外交的なつながりを持つカタールが仲介する交渉への期待が高まる中、米国のジョー・バイデン大統領は20日、人質解放に向けた合意が近いとの見方を示した。
これとは別に、赤十字国際委員会は20日、「イスラエルとガザにおける武力紛争に関連した人道問題を進展させるため」、同委員会の総裁がカタールを訪問しハマスのハニヤ氏と会談したと発表した。
この合意が実現すれば、人質が解放されるだけでなく、イスラエルによる爆撃と拡大する地上攻撃のもとで6週間以上暮らしているガザ地区の人々に束の間の安息がもたらされる。
ガザ地区の大部分は、数千回におよぶ空爆によって破壊され、領土は包囲され、最小限の食料、水、燃料しか入ることができない。
前出のハマスとイスラム聖戦の情報筋らによると、この合意が成立すれば、最大300台のトラックが食料・医療援助をガザ地区に搬入することも可能になるという。
イスラエルは、燃料がハマスによってロケット弾やその他の準軍事的手段に使用されることを恐れて、同地区への燃料の搬入を警戒してきた。
イスラエルはハマスの粉砕と人質の解放を誓い、攻勢を押し進めることを宣言している。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、拉致された人々の親族らと面会した後、「我々は人質を家に帰すまで戦いをやめない」と宣言した。
ガザ地区では21日、イスラエルが北部全域で作戦を拡大したため、医療関係者と患者が再び前線に囚われた。
ハマスが運営する保健省の当局者らによると、イスラエルは20日にインドネシア病院を攻撃して12人を殺害した後、地上部隊を進行させた。
同省のアシュラフ・アル・クドラ報道官は、「イスラエル軍はインドネシア病院を包囲している」と述べた。
数十台の戦車と装甲車が同病院の郊外周辺に配備され、同病院に向かって砲撃していたという。
同報道官は、「我々は、アル・シファ病院で起こったのと同じことがこの病院でも起こるのではないかと恐れている」と続けた。ガザ地区最大の病院であるアル・シファ病院は、イスラエル軍によって包囲され捜索されている。
20日、28人の未熟児がアル・シファ病院からエジプトに避難した。
インドネシア病院は、ガザ地区最大の難民キャンプであるジャバリア難民キャンプの端に位置している。この戦争の新たな焦点となっている同キャンプは、ここ数日イスラエル軍による激しい爆撃の現場となっている。
クドラ報道官は、同病院内にはまだ約400人の患者がおり、院内と周辺には2000人の避難民がいると述べた。
20日、約200人が同病院から避難し、比較的安全なガザ地区南部のハーン・ユーニスの病院にバスで移送された。
AFPの記者はハーン・ユーニスのアル・ナセル病院で、血まみれの子供たちが運び込まれ、周囲に混乱が渦巻く中、担架の上で呆然と横たわっているのを目撃した。
インドネシア病院から脱出したという男性は、「奇跡的に出ることができました」と話した。「中にまだ兄弟たちがいる。私は…」と言ったところで声が途切れた。
イスラエルは、ハマスは戦闘員を潜伏させたり作戦の拠点としたりするために医療施設を使用しているため、それらの施設は正当な軍事目標だとしている。一方で、民間人の被害を抑えるためにできる限りのことを行うとも主張している。
しかし、国際社会からの激しい反発はここ数週間高まるばかりである。世界中でデモが発生し、国際機関は戦争犯罪の申し立てを行い、一部の国はイスラエルとの国交を断絶した。
世界保健機関(WHO)は、20日のインドネシア病院に対する攻撃に「愕然とした」としつつ、これは戦争開始以降に記録された医療施設や医療従事者に対する攻撃164件のうちの1件に過ぎないと報告した。
WHOは声明の中で、「安全な場所であるべきこれらの病院が死と荒廃と絶望の場と化している中で、世界は黙って立っているわけにはいかない」と述べた。
インドネシア病院は約10年前に開設された。その資金は、イスラム教徒が多数派の国としては世界で最も人口の多いインドネシアからの寄付金によって賄われた。
インドネシアのレトノ・マルスディ外相は21日、同病院に対する「イスラエルの攻撃を強く非難」し、それは「明らかな国際人道法違反」だと述べた。
さらに、同病院で働いていたとみられる3人のインドネシア人ボランティアと連絡が取れていないと付け加えた。
ドーハ:ハマスによる10月7日の対イスラエル攻撃で拘束された人質を解放するための交渉は、合意に「最も近い地点」にあり、既に「最終段階」に達していると、仲介を担うカタールが21日に発表した。
カタール外務省のマジド・アル・アンサリ報道官は、「我々は合意に向けて、これまでで最も近い地点にいる」とし、交渉は 「重要かつ最終的な段階 」に達したと述べた。
カタールは、一時的な停戦と引き換えに240人の人質の一部を解放することを目的とした交渉の仲介役を務めており、この努力によってこれまでに4人の人質が解放されている。
アル・アンサリ報道官は会見で、「我々は非常に楽観的で、また大きな希望を持っています」と述べた。
また、「しかし同時に、この仲介によって人道的な停戦が実現することを強く望んでいます」とした。
イスラエル当局によると約1200人が死亡し、その多くが民間人だった10月7日の攻撃に対し、イスラエルはハマスを殲滅すると宣言している。
イスラエルは、ハマスが支配するガザ地区に対して報復による絶え間ない爆撃作戦と地上攻撃を行っており、ガザ地区保健省によれば、これまでに1万3300人以上が死亡し、そのうち3分の2は女性か子どもだった。
ワシントン・ポスト紙が、戦闘の一時停止と引き換えに女性や子どもの人質を解放することで暫定合意したと報じたことを受け、米国は18日、イスラエルとハマスの間の合意を確保するために依然として努力を続けていると述べた。同紙は匿名の情報筋の話として、すべての当事者が少なくとも5日間は戦闘行為を停止し、人質の一部がまとめて解放されることになると伝えていた。
米国政府は18日午後、同報道に即座に反応し、X(旧ツイッター)において、大きな進展があったという話を否定した。
「様々なところで多くのリークや発表がなされていますが、合意に関する最終的な決定がなされるまで、我々の声明を出すことは控えたいと思います」とアル・アンサリ報道官は述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は21日、閣議を開き、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに拘束されている人質の解放に向けた合意条件を支持するよう要請した。
ネタニヤフ首相は閣議の冒頭で「イスラエル政府は今夜、厳しい決断に直面しているが、正しい決断だ」と語った。
人質は段階的に解放されるという認識を示したほか、バイデン米大統領が、より多くの人質の解放など、条件の改善を支援したと述べた。
同時にハマスとの「戦いは継続中だ。われわれが全ての目標を達成するまで続く」とも言明した。
米当局者によると、カタールの仲介によるイスラエルとハマスの交渉では、ハマスが女性や子供を中心に外国人を含む人質約50人を解放する一方、イスラエルは戦闘を4─5日間休止し、パレスチナ人捕虜150人を解放すると述べた。
ハマスの指導者ハニヤ氏は21日、イスラエルと停戦合意に近づいているとロイターに明らかにした
●中南米・アフリカ
アルゼンチンで19日行われた大統領選の決選投票を制したハビエル・ミレイ氏は、その翌日、投資家らからこれ以上ないほどの歓迎を受けた。
ミレイ氏が苦境にある経済を立て直し、インフレを抑えることができるかもしれないという楽観的な見方がウォール街で広がり、米国上場のアルゼンチン企業の株式は少なくともここ10年で最も大きく買われ、債券も値上がりした。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に加え、中南米市場向け電子商取引業者のメルカドリブレやソフトウエアソリューションのグローバントのトップらがミレイ氏を称賛した。
だが、アルゼンチンの連休が明ける21日はもっと厳しい状況になりそうだ。現地の市場や銀行が再開する予定だが、アルゼンチン国民がドルを買うために自国通貨ペソを引き出す動きが相次ぐ可能性について懸念が高まっている。
銀行は決選投票に向けて十分な手持ち資金を確保するための措置を講じたが、経営幹部は規制当局との私的な話し合いの中で、システムを強化するためにさらなる支援が必要になるかもしれないと話していた。
ほんの数カ月前までミレイ氏はリバタリアン(自由至上主義者)の下院議員としてあまり知名度もなかったが、アルゼンチン・ペソを廃止して米ドルに置き換えるという政策を柱とする抜本的な経済改革を約束。有権者と投資家を魅了した。
計画は大まかだが、自国通貨の価値が過去4年間で90%も急落し、「排せつ物」以下の価値しかなくなったとする同氏は、自身の公約の正当性をアピールした。
しかし、問題は移行期間中の経済活動をどう維持するかだ。ミレイ氏は移行に伴う具体的な手順やスケジュールを明らかにしていない。この計画を成功させるために痛みを伴うが重要な鍵となる、巨額の財政赤字の削減についても詳しく述べていないため、アルゼンチン国民は何が待ち受けているのか推測するしかない。
アルゼンチンは通貨規制と輸入制限を重ね、無数の為替レートを生み出し、ペソの1営業日当たりの下落を何年も制限してきた。
ミレイ氏のオフィスは20日、12月10日の大統領就任式まで閣僚人事を明らかにしないと発表。同氏はマイアミとニューヨーク、イスラエルを近く訪問する「スピリチュアルな意味を持つ」とする旅を行う意向を示した。
多くのアルゼンチン国民は闇市場でドルを購入し、手持ちのペソを直ちに清算することが最もリスクの少ない選択肢であると考え、待てば待つほどレートが悪化することを恐れている。オンラインの暗号資産(仮想通貨)交換業者では、ミレイ氏の勝利後にペソ安となった。
アルゼンチン中央銀行の報道官はコメントを控えた。
ゴールドマン・サックス・グループの中南米担当チーフエコノミスト、アルベルト・ラモス氏は、「われわれは未知の世界に向かっている」と指摘。「自国通貨に対する信頼は非常に低く、アルゼンチン経済はすでにかなりの程度、非公式のドル化が進んでいる。ただ、それは慣れ親しんだ通貨が国のために役立っていないという事実を反映しているに過ぎない」と述べた。
メキシコの2024年度歳出予算が下院を通過した。残り任期が1年を切ったロペスオブラドール大統領は、観光鉄道の新設や年金など看板政策に重点を置いた予算を編成させた。財政赤字は過去30年で最悪の規模に達する見通しだ。 人気取りを優先した予算編成により、中南米では比較的安定していたメキシコの財政悪化が確実になり、国際通貨基金(IMF)も苦言を呈している。
●市況
<ロンドン株式市場> 続落して取引を終えた。原油安を受けてエネルギー株が売られたほか、イングランド銀行(英中央銀行)高官の発言を受けて英ポンドが上昇したことも、輸出企業の比重が高いFTSE100種指数(.FTSE)の重しとなった。
個別銘柄では、飲料ボトラーのコカコーラ・ヘレニック(CCH.L)が4.2%と大幅上昇。20日遅くに自社株買いを開始したことから買いが広がった。
食肉生産のクランズウィック(CWK.L)は1.9%上昇。通期の利益が現在の市場予想の上限になるとの見通しを示したことが好感された。
<欧州株式市場> 小幅反落して取引を終えた。イタリアの銀行銘柄が売られたのがイタリア株を押し下げた。
イタリアの銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(MPS)(BMPS.MI)が7.9%下げた。イタリア政府が保有株の25%を売却したことが嫌気された。
イタリアの銀行バンコBPM(BAMI.MI)は4.0%安。ドイツ銀行が投資判断を引き下げて欧州連合(EU)の銀行のトップピック銘柄から外したことがマイナス材料視された。
<ユーロ圏債券> ドイツ国債利回りが小幅低下した。欧州中央銀行(ECB)当局者からは、2024年初めの利下げ観測を後退させるような発言が相次いだ。
短期金利先物市場では、来年4月に25ベーシスポイント(bp)の利下げが実施される確率を約60%とみている。また、来年末までに累計90bpの利下げが実施される可能性があると予測されている。
オッドBHFのチーフエコノミスト、ブルーノ・カバリエ氏は「ECBは2022年のインフレショックを予見できず、対応が遅れたことへの反省から、過度に制限的な金融政策スタンスを維持している。しかしECBには現在、米連邦準備理事会(FRB)よりも多くの利下げ理由があるように見える」と指摘した。
ドイツでは、深刻化する財政危機打開に向け、政府がほとんどの新規支出を凍結した。財政赤字を抑制する同国の債務ブレーキ制度を巡り、ショルツ連立政権内に緊張が走っている
<為替> ニューヨーク外為市場ではドルの地合いが改善。米連邦準備理事会(FRB)が10月31日─11日1日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、金利を巡り制約的なスタンスを当面維持する可能性を示唆したことに反応した。
<債券> 米金融・債券市場では、米債利回りが低下した。米経済指標を受け、鈍化する米経済がリセッション(景気後退)入りする可能性が示唆された。
エバーコアISIのマネジングディレクター兼マクロリサーチアナリスト、スタン・シプリー氏は「人々はリセッションに陥るのではないかと疑問に思っている。11月1日時点では誰もそんなことになるとは思っていなかった」と指摘。「現在、市場が織り込むリセッションの確率は35─40%程度だ。来年前半にはリセッションに陥るとみている」と述べた。
CMEのフェドウオッチによると、2024年3月の政策決定会合でFRBが利下げを実施する確率は28%。5月利下げの確率は46%となっている。
<株式> 米国株式市場は反落して取引を終えた。S&P総合500種は6営業日ぶりの下げとなった。業績見通しを嫌気して小売株が売られた他、テクノロジー株も下落した。
米小売業大手コールズ(KSS.N)は第3・四半期決算で売上高が予想を下回ったことから下落した。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、有力産油国による追加減産観測を手掛かりとした買いが一服し、利益確定の売りがやや優勢となった。
一部メディアが17日に報じたところによると、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」は26日開催の閣僚級会合で、最大日量100万バレルの追加減産を検討する可能性があるという。また、サウジアラビアが今年7月から実施している自主減産についても、2023年末から24年春まで期限を延長する公算が大きいと伝わった。
日経先物33,175、ダウ先35,123、債先146.25、米4.393、独2.5735、仏3.134、西3.570、伊4.334、英4.1365、波5.466、原油77.68、銅8,472、ドル円148.15、ユーロドル1.0918
※11/22 9時00分頃
備忘録(2023/11/20)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
航空機エンジン大手の仏サフランは20日、同社が進める米コリンズ・エアロスペースの飛行制御システム事業の買収に関し、イタリア政府が反対の意向を示したと明らかにした。対象の事業はイタリアにも拠点があり、同国がドイツなどと共同開発した戦闘機への部品供給を担うが、買収が現行の体制に与える影響を懸念しているという。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
ドイツのハーベック経済相は20日、財政赤字を抑制する同国の債務ブレーキ制度が「柔軟性に欠ける」とし、リントナー財務相の補助金削減に関する発言を批判した。
連立政権内の亀裂が浮き彫りになった形。憲法裁判所は先週、新型コロナウイルス対策向けの未使用金600億ユーロをグリーン事業や産業支援に振り向けることを認めない判決を下しており、連立政権は代替財源を確保を急いでいる。
ハーベック氏は歳出を重視する緑の党に所属。憲法裁の判決により、グリーン経済への移行や雇用の維持を支える政府の能力が大幅に損なわれる恐れがあると警告している。
これに対し、財政規律を重視する自由民主党(FDP)所属のリントナー氏は増税や歳出ルールの緩和に反対。従来より少ない補助金でより多くのことを成し遂げる必要があると主張している。
ハーベック氏はリントナー氏の主張について「理屈だけの話だ。現実は違う」と主張。債務ブレーキ制度の廃止を提案するつもりはないが「柔軟性に欠けている」とし、国内経済が成長しておらず、高インフレやエネルギー高騰といった課題があると指摘した。
欧州中央銀行(ECB)は20日、ユーロ圏銀行株のバリュエーションが低いのは、信用リスクや株主配当に対する懸念を反映しているもようで、融資条件厳格化を通じて将来的に与信の伸びを圧迫する可能性が高いと指摘した。
金利上昇を背景に銀行の収益は今年急増しているが、株価は割安な水準に留め置かれている。
ECBは金融安定報告で「これは長期的に金融の安定に悪影響を及ぼす可能性がある。割安に評価されている銀行が必要な時に新たな資本調達をすることが難しくなるとみられるためだ」とし、「弱いバリュエーションは、実体経済への融資条件の厳格化に直結する」と指摘した。
ECBは、銀行が企業の信用リスクの高まりにさらされていること、割安株と認識されていることが、バリュエーション低迷に大きく影響しているとした。
ただその一方で、バリュエーション低迷はファンダメンタルズだけでは説明しきれず、将来の株主配当に関する不確実性の高まりもある程度影響しているとの見方を示した。
ユーロ圏の一部の国は銀行に超過利潤税を課している。ECBは、配当原資が課税されるリスクについて、バリュエーションへの影響は成長株よりも大きいと指摘した。
米リッチモンド連銀のバーキン総裁は11月14日、サウスカロライナ州ウェストミンスターの小さな町を訪れた。集まった事業主ら120人に対し、来年の値上げ幅が新型コロナウイルス禍前よりも大きくなるかどうか挙手を求めると、約3分の2が手を上げた。
これを見たバーキン総裁は「物価上昇がいったん解き放たれると、再び封じ込めるのは難しいという、悪いニュースだ」と語った。
こうしたやり取りは、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる米金融当局が、政府の統計専門家がまとめたハードなデータではなく、一般の事業経営者や消費者からの意見聴取の形で、経済に関するリアルタイムの現場情報をますます求めるようになっている状況を浮き彫りにするものだ。
このような一般の意見は金融当局の調査担当者が組織的に集めて月間ベースで公表されるものもあれば、地区連銀総裁が現地を訪れて耳にするものもあり、7-9月(第3四半期)の実質GDP(国内総生産)が極めて高い伸びとなったことを示すハードデータとは裏腹に、米経済が今年後半に入り減速し始めているとの当局者の見解を支えることとなった。
一方で、10月の米消費者物価指数(CPI)総合指数が前月比横ばいとなっても、バーキン総裁がウェストミンスターで経験したように、持続的なインフレ圧力の存在も明らかとなっている。
ウェストミンスターがあるオコニー郡商工会議所のダリ・マクブライド会頭はバーキン総裁の訪問に関し、「インフレは大きな問題だ」と述べるとともに、「われわれは歯車の小さな歯の一つに過ぎず彼が耳を傾けてくれることに感謝する」と話した。
米金融当局者としては、一般の人々から語られる内容と政府統計とで相反するメッセージがときどき発せられ、不確実性も高まる中にあって辛抱強くありたい考えだ。
連邦公開市場委員会(FOMC)は過去40年で最も積極的な利上げサイクルで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジをこれまでに計5.25ポイント引き上げた一方、9月と11月の2会合連続で金利据え置きを決めた。一方で近いうちに利下げする意向も示していない。
ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルの米国担当シニアエコノミスト、ジェレミー・シュワルツ氏は、一般の人々との対話で得られる「アネクドート(実際に耳にした情報)」のデータが話題に上るケースが増えている点に「われわれも気づいている」と語り、ハードなデータとソフトなデータとの食い違いと、辛抱強く静観するアプローチとの関連性を指摘した。
当局者は転換点にあって経済やインフレの方向性を評価するのにこうしたアネクドートが特に力を発揮すると期待されると話す。米10年債利回りや他の借り入れコストの急上昇とその後の低下を含め、金融状況が急激な変動に見舞われている現状で、ハードなデータはもはや古くなったと感じられる可能性もある。
ダラス連銀のローガン総裁は10月9日、経済指標などは「しばしば後ろ向きで改定もされる」とした上で、「事業経営者と会話することで、ハードデータへの重要な補足を得ることができる。経済動向が複雑化する状況において、過去数カ月は特にこうしたことが当てはまる」と企業エコノミストに語った。
イエレン米財務長官は20日、米国はインフレ率を引き下げることにおいて「かなりの進展」を遂げていると述べ、労働市場の強さが続いていることを踏まえれば特筆すべきことだとの考えを示した。
10月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で3.2%上昇と、2022年に付けたピークの9%超から伸びが鈍化した。米金融当局が物価圧力の抑制を目指し、積極的な利上げを進めたことが背景にある。
ただ物価は昨年ほどのペースでは上昇していないものの、依然として伸びており、多くの必需品は新型コロナウイルス禍前よりも高い水準にとどまっている。
イエレン氏はCNBCとのインタビューで、「インフレ率の引き下げでかなりの進展を遂げているが、米国民は物価がかつて慣れていた水準よりも高いことに気づいている」と発言。「そして重要なことは、強い経済と強い労働市場を維持しながら、インフレを巡る進展が実現していることだ」と語った。
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのウンシュ・ベルギー中銀総裁は、金融緩和を見込む投資家の取引がECBの政策スタンスを損ねる場合、再び利上げしなければならなくなる可能性があるとの認識を示した。
同総裁はフランクフルトでのインタビューで、市場は追加利上げの可能性を軽視して「楽観的」な見方をしており、ECBの中銀預金金利が現在の4%から早ければ来年4月にも引き下げられると予想していると指摘した。
同総裁は「われわれの利下げを誰もが確信した場合、それは問題か」と問いかけ、「その場合、われわれの政策はそれほど景気抑制的ではなくなる。そうなれば政策が十分に抑制的になるのか、私は確信が持てない。従って、これは反対方向へと見方を調整しなければならないリスクを高めることになる」と述べた。
ECBは先月、今回の引き締めサイクルに入って以降で初めて利上げを休止したが、インフレ率を目標の2%へ引き下げるために政策金利を「十分な期間」高水準で据え置くとくぎを刺した。一部当局者は、来年上期に何らかの行動を起こすことはないと示唆している。
ユーロ圏の低調な景気とインフレ率の急低下を統計は示しており、市場は先行きの利下げを見込む。一方、当局者は依然として賃金上昇や、中東での紛争がエネルギー価格を再び高騰させる可能性を懸念する。
政策委メンバーの中でタカ派寄りとみられているウンシュ氏は、「われわれが追加行動を取る必要性に迫られる、あるいはより長期にわたり預金金利を4%で維持しなくてはならない可能性を今の市場は除外しており、これは相当楽観的だと思う」と語った。
ウンシュ氏の発言に市場は反応薄。短期金融市場は引き続きECBの利上げは完了しており、4月にも利下げが始まるとの見方を維持している。
同氏は「インフレ率に最近わずかながら前向きなサプライズ」があったとし、今後2回の政策会合では金利に変更があるとは予想していないと語った。
英国のスナク首相は、インフレ率を今年のうちに半減させる目標を達成したため、減税に着手することが可能だと表明した。週内にハント財務相が発表する経済計画に減税が盛り込まれることを示唆した格好だ。
スナク氏は年初に5つの公約を掲げ、そのうち最重要に位置づけたのが昨年12月に10.5%に上ったインフレ率を半減させることだった。政府統計局(ONS)が先週発表した10月のインフレ率は4.6%に低下した。
スナク首相はいまやインフレ率が半減したと指摘、「次の段階に入り、注意を減税へと向けることができる」とロンドン北部での講演で発言。「真剣かつ責任ある方法で、われわれはこれを行う」と語った。
「減税は可能で、実行する」と首相が約束した2日後の22日には、ハント財務相が秋季財政報告を行う。この中で税と支出の変更が打ち出される見通しで、政争の絶えない与党・保守党内でも歓迎される公算が大きい。英国の税負担は第2次大戦後最高の水準に達しており、首相と財務相には税を引き下げるよう同党内から圧力が強まっていた。首相は「慎重」かつ「持続可能な」形で減税を行うと述べた。
だが、ハント財務相に減税の余地はほとんどない。同氏は国内総生産(GDP)に対する債務比率を計画の5年目に低下させることを財政規則の柱としているが、ブルームバーグ・エコノミクスの分析によると、これを守りつつ使用できる額は110億ポンド(約2兆円)しかない。3月時点の65億ポンドからは増加したが、歴史的な基準に照らすと依然少ない。
ほとんど知られていないバイオマス燃料の木質ペレットメーカー、エンビバ(本社米メリーランド州)は、社債価格の8日の終値が額面1ドル当たり64セントだったが、翌9日午前9時54分に最初の取引で同38セントを付けた。この日は値崩れがさらに急速に進行し、 31セントまで急落した。
数日前には、米衛星放送会社ディッシュ・ネットワークの社債がフリーフォール状態となり、数時間のうちに約1000万ドル(約14億9700万円)の価値が失われた。1株利益が予想に届かなかった米ケーブルサービス会社ワイドオープンウエストも社債価格が約6セント下げた。
米財務省短期証券(TB)を保有することで、何年も定着していたゼロ近い利回りでなく、5%を上回るリスクフリーの利回りが得られる現状で、債券投資家に悪いニュースを許容する雰囲気はない。
エンビバに至っては事業を継続できない可能性を示唆するなど、いずれのケースもかなり悪いニュースが伝えられた。市場の反応は不可避とはいえ、驚きは価格下落の激しさとスピードだ。株式市場は債券と比べはるかに変動が著しいが、その一触即発の反応により近いと感じる向きもある。
ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、クリスチャン・ホフマン氏は「過去数年と比べるとこれは異変だ。キャッシュフローとビジネスモデルに人々はより厳しい目を向けている」と指摘した。
バークレイズのアナリストらも、こうした見方に同意する。企業業績に反応し、債券価格が額面1ドル当たり1セント以上動いた割合は、今年1-3月(第1四半期)に全ての債券の25%近くと、2022年の18%から増加したと同行はリポートで分析した。
マーケットウオッチャーによれば、別の市場の力学が作用している可能性もある。売り手と買い手との仲介役として動く銀行がバランスシートに同等のリスクを抱えることがもはやできないため、債券価格が一層急激に下げているとも考えられる。
エンジェル・オーク・キャピタル・アドバイザーズのシニアポートフォリオマネジャー、ニコル・ハモンド氏によると、価格の急降下はディストレストバイヤーにとって魅力的であり、リスクを伴う債券やローンの需要を最終的に押し上げることもあり得る。
債券価格報告システムのトレースのデータによれば、エンビバの26年償還債(表面利率6.5%)は流通市場で急落後、一時20セント余り値上がりした。
市場で米欧英の中央銀行が2024年に利下げに転じるとの観測が強まっている。インフレ鈍化や景気減速を背景に、早ければ来年半ばにも利下げを開始するとみる。もっとも、長期金利の低下や株高が引き締め効果を低減しかねず、当局はけん制する姿勢もみせている。利下げ期待の反動が市場変動を大きくするリスクもくすぶる。
米国では過去1年間で消費者の新規借り入れ需要が低下し、先行きの需要も低調にとどまりそうなことが、ニューヨーク連銀が20日公表した四半期調査結果で明らかになった。
米連邦準備理事会(FRB)による急激な利上げに伴う借り入れコスト増大が影響したとみられる。
調査によると、過去1年の新規借り入れの申請率は41.2%で、前年の44.8%とコロナ禍前の2019年の45.8%を下回った。
向こう1年についても、新規借り入れの申し込みを計画している人の割合は25.1%と、前年の26.7%から低下した。
過去1年はクレジットカード融資の申請意欲は高まった。ただ今後は、クレジットカード融資も、自動車ローンや新規住宅ローンと借り換えローンとともに需要が鈍ると見込まれている。
イングランド銀行(英中央銀行)のベイリー総裁は20日、利下げについて考えるのは「時期尚早」とし、インフレが予想以上に根強い兆候が出れば、再利上げを行わざるを得なくなる可能性があると述べた。
ベイリー総裁は講演で「インフレが高水準にあるときはリスクは冒さない」と述べ、利下げについて語るのは尚早との考えを改めて表明。イスラエルとイスラム組織ハマスの武力衝突でインフレが再び上昇するリスクが高まっているとし、「再利上げの必要性につながるインフレ持続の兆候を注視しなければならない」と語った。
英中銀は今月2日の金融政策委員会で、金利を5.25%に据え置くと決定。据え置きは2会合連続だった。同時に「インフレ圧力がさらに持続する証拠があれば一段の引き締めが必要になる」とした。 もっと見る
ただ足元では、英中銀は来年6月に0.25%ポイントの利下げに踏み切るとの観測が出ている。
ベイリー総裁は、食料品やエネルギー価格の上昇で実質所得が圧迫され、賃金要求に影響が及んでいる可能性があると言及。「金融政策委員会の最新の予測を踏まえると、金融政策は当面の間、制約的でなくてはならない」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのデコス・スペイン中銀総裁は20日、ECBによる利下げの可能性について語るのは時期尚早との考えを示した。
ECBはインフレ対応に2022年7月以降合計4.5%ポイントの利上げを実施してきたが、10月の理事会で11会合ぶりに金利据え置きを決定した。
デコス総裁は、政策金利が現行水準に「十分に長い期間」にわたり維持されれば、インフレ率を中期的な目標である2%に戻すのに十分だとECBは見なしているとし、「利下げについて語るのは完全に尚早だ」と述べた。
また、明確なフォワードガイダンスの発表について、不確実性の高さを踏まえECB政策担当者は「最も適切なこと」とは考えていないとし、フォワードガイダンスの発表は「短期的にも中期的にも想定されていない」と語った。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビルロワドガロー・フランス中央銀行総裁は20日、ECBの政策金利は向こう数四半期にわたって「高止まり」が続く公算が大きいとの見方を示し、利下げの話題は時期尚早だと一蹴した。
ECBは10月の理事会で、それまで10会合連続で実施してきた利上げを休止し、政策金利を据え置いたため、市場では利下げ時期に注目が移っている。
ただビルロワドガロー氏は「(政策金利サイクルには)ピークやボトムだけなく、プラトー(高水準での安定)という局面がある。それこそ恐らくわれわれが少なくとも次の数回の理事会と数四半期で実行しようとしていることだ」と語った。
パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘や、原油価格の変動は、ユーロ圏の物価上昇鈍化の流れを損なうことはないだろうとも予想した。
一方でユーロ圏の景気後退は回避可能で、「ソフトランディング」に落ち着く確率の方が大きいと見込んだ。
パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の下での保有国債償還金の再投資については、予定の2024年末よりも前に打ち切る必要があるかもしれないと述べた。
またECBは今後、政策金利を動かせる余地が限定されないように、フォワードガイダンスの修正も不可欠になるのではないかと付け加えた。
ドイツ政府は今年の連邦予算の大幅な見直しを模索している。先週の憲法裁判所判決を受けて、純債務の制限緩和も選択肢にあるという。事情に詳しい関係者が明らかにした。
憲法裁は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)対策として承認されながら利用されていない資金を、製造業のグリーン化や太陽光発電の拡大などに向けた予算外の基金に転用することはできないと結論づけた。この判断は他の特別基金にも適用される公算が大きく、エネルギー価格上昇による家計や企業の負担を緩和する措置を賄う基金などにも影響するとみられる。
想定通りに判断が幅広く適用されることになれば、リントナー財務相は2023年の連邦補正予算で過去にさかのぼって少なくとも300億ユーロ(約4兆8700億円)の新規債務を計上する必要があるだろうと、関係者は説明。関係者は部外秘の協議内容だとして匿名を要請した。
結果として、リントナー氏は純借入額に憲法上の上限を課す「債務ブレーキ」を今年から再開する計画の撤回を迫られると、関係者は述べた。債務ブレーキの再開は、リントナー氏が率いる企業寄り政党、自由民主党(FDP)の看板政策の一つだった。
財務省報道官は直接のコメントを控え、当局者は判決をまだ精査しているところだと語った20日の記者会見での回答を参照するよう促した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国当局は不動産危機に歯止めをかけるための新たな取り組みとして、さまざまな融資の対象となる開発会社50社のリストを策定している。事情に詳しい関係者が明らかにした。
融資適格のリスト入りしているのは、万科企業や新城発展、龍湖集団など。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。
関係者によれば、国有および民間のデベロッパーが含まれるこのリストは、金融機関が銀行融資や債券、エクイティーファイナンスなどを通じた業界支援を検討する際の指針となることを意図している。
銀行側が以前作成したこの種のリストは、一部の「システム上重要」な国有企業にのみ焦点を絞っていたが、策定中のリストはそれを拡大することになる。他のどのデベロッパーがリスト草案に含まれているかは不明。
記録的なデフォルト(債務不履行)や集合住宅建設の中断、不動産投資の大幅縮小が世界2位の経済大国を脅かしており、こうした取り組みはこのセクターに対する政府の懸念増大を裏付けている。
中国の大手銀行や証券会社、不良資産管理会社は金融規制当局トップとの17日の会合で、不動産会社からの「合理的」な資金需要全てに応えるよう指示された。金融機関はまた、融資に関して「民間と国有のデベロッパーを同等に扱う」よう求められた。ただ、政府の声明は融資対象の開発会社リストには触れていない。
当局はまた、銀行に対し、民間デベロッパーへの融資が業界平均と同じペースで増加するよう要請したと、事情に詳しい関係者は説明。中国の不動産ローン残高は9月末時点で初めて前年同月比で減少し、同セクターのストレスが浮き彫りになった。
中国人民銀行(中央銀行)と国家金融監督管理総局、新城発展、龍湖はコメント要請にすぐに応じなかった。万科はコメントを控えた。
ハンガリーのオルバン首相は18日、自ら率いる与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」の大会で、同国は欧州委員会が設計した現状の欧州モデルを否定しなければならず、欧州連合(EU)には変化が必要だと述べた。
首相は、ウクライナのEU加盟交渉に反対する政府の姿勢を改めて表明。「ウクライナはEUからはるかに遠い位置にあり、欧州委が加盟交渉開始を約束したとの誤解を正すのもわれわれの責務だ」と指摘。ハンガリーに移民を送り込もうとするEUの試みを阻止していくとも述べた。
ウクライナは2022年2月のロシアによる侵攻から数日後にEU加盟を申請し、これを最優先課題に据えている。来月のEU首脳会議では、加盟交渉を開始するかどうかが議題となっている。
ただEU高官は17日、ハンガリーの抵抗がEUの一致した足並みを乱す恐れがあるなどの理由から、加盟交渉のためウクライナを首脳会議に招請する決定が「リスクにさらされている」との見方を示した。
ロシア大統領府は20日、プーチン大統領がオンライン形式で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議で演説し「非常に不安定な世界情勢」について見解を示すと述べた。
ロシア国営テレビのパベル・ザルビン記者は19日、G20首脳会議についてプーチン氏と西側諸国の指導者の双方が「久しぶりに」参加する場になると通信アプリ「テレグラム」に投稿していた。
ロシア通信(RIA)によると、G20首脳会議は22日にオンライン形式で開催される。
これとは別にRIAによると、プーチン氏は21日に新興5カ国(BRICS)首脳会議でイスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争についてビデオリンクを通じて議論する予定という。
●中東
ドバイ:スーパノーバ音楽祭襲撃事件についての第一段階の警察の調査報告書によると、ハマスの戦闘員らはおそらく事前にこのイベントのことを知らず、その場で同会場を襲撃することを決めたのだろうとする見方が示されていることがわかった。
イスラエルのテレビ局、チャンネル12が今週入手した警察の調査報告書によると、ハマス側は当初、ガザ地区近くのキブツ・レムとガザ地区との境界近くの他の村々を襲撃するつもりだったとのことである。
捕虜となったハマスのメンバーへの尋問を含めた警察の調査では、当初ハマスにはこの音楽祭を標的とする計画はなく、ドローンや戦闘員がイスラエル側にパラシュートで降下する際に上空から同音楽祭の全容を発見したことが明らかになった。
さらに警察は、殺害されたハマスのメンバーの遺体から攻撃の標的とする場所の地図を発見したが、そこには音楽祭の会場は含まれていなかった。
イスラエルの新聞社ハアレツも18日、警察の捜査では、イスラエル軍がヘリコプターからハマスの戦闘員に向けて発砲した際に、音楽祭に居合わせたイスラエル人が負傷したと報道している。
北京:月曜日、サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハーン外相は、中国外相およびアラブ・イスラム諸国の閣僚との会合で、ガザ地区におけるイスラエルの暴挙を阻止する責任を国際社会が負う必要があると述べた。
サウジ外相とアラブ・イスラム諸国の外相は、即時停戦を強く求め、ガザ地区への人道支援を可能にすることを目的とした、国連安全保障理事会常任理事国訪問の最初の目的地として、月曜日に北京に到着した。
ファイサル王子は北京での外交団との会合で、ガザ地区での戦争を終わらせ、人命を救うためのさらなる国際的な取り組みを求めた。
「我々は明確なサインを送るためにここに来た。それは、我々が戦闘と殺害をただちにやめさせ、ガザ地区に人道物資を直ちに届けなければならないということだ」と同外相は話した。
そして、「戦争終結に向けて、事態の深刻さを理解する中国や他の国々と協力することを願っている」と付け加えた。
ファイサル王子は、これまでに約1万2,000人が死亡したガザ地区での危険な戦闘激化について、暴力を終わらせるための効果的な国際行動が必要だと指摘した。
支援者であり友人
中国の王毅外相は、中国政府に「中東の和平回復」への協力の用意があると述べた。
王外相は、北京での冒頭の挨拶で各国外相に向けて、「ガザ地区の状況を速やかに鎮静化し、できるだけ早く中東の平和が回復するよう協力する」と語った。
同外相は、中国政府は「アラブ・イスラム諸国の良き友人であり兄弟である」と述べ、「パレスチナの人々が正当な国家的権利と利益を回復するという大義を常に断固として支持してきた」と付け加えた。
さらに、ガザ地区で起こっている「人道的災害」を阻止し、この悲劇の拡大を防ぐために、国際社会が緊急の行動を取るよう求めた。
「ガザ地区の状況は世界中のすべての国に影響を与えており、人間の善悪の感覚や人類としての最低線に疑問を投げかけている」と王外相は述べた。
中国政府は、中東やグローバル・サウスの国々との関係を強化する一方、BRICS諸国など非西側主導の多国間グループとの連携を深めている。
王外相は月曜日、中国は「ガザ地区での戦闘をできるだけ早く鎮静化し、人道危機を緩和し、パレスチナ問題の早期、包括的、公正、永続的な解決を促進する」ために努力すると付け加えた。
月曜日に中国の王毅外相と会談したのは、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、インドネシア、パレスチナ、イスラム協力機構などの当局者である。
トルコのエルドアン大統領は20日、イスラエルの核兵器を巡る問題が世界的な議題から外されることをトルコは容認しないと述べた。
エルドアン大統領は閣議後、西側諸国はイスラエルによるパレスチナ自治区ガザにおける戦争犯罪を「正当化」しようとしていると指摘。「欧州の指導者は、文字通りに『ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の恥辱の人質』になっている」とし、「トルコはイスラエルの核問題が忘れ去られることを容認しない」と語った。
戦闘が続く中でも、大勢の人質解放に向けたハマスとの交渉は進展していると、米国は主張している。
ファイナー米大統領副補佐官(国家安全保障担当)は19日にNBCに対し、人質解放に向けた合意に「これまでよりも近づいている。恐らく、このプロセスを始めて以来、最も近い」と語り、合意は「あり得ると考えているが、まだ達していない」と続けた。
ニュースサイトのアクシオスによると、ハマスのガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏が交渉に携わり、女性と子供50人余りの解放に原則合意した。交換条件としてイスラエルは毎日一定の時間に軍事攻撃を停止し、一部のパレスチナ人囚人を釈放する。
ハマスの政治指導者の一部が拠点を置くカタールも交渉の仲介を助けている。
●中南米・アフリカ
19日投開票のアルゼンチン大統領選決選投票は、右派のリバタリアン(自由至上主義者)、ハビエル・ミレイ下院議員が勝利した。ミレイ氏は今後、経済危機への対応を迫られる。
同国のインフレ率は143%。純外貨準備は大幅なマイナス。預金者はペソを投げ売りし、景気後退が迫っている。国民の10人に4人は貧困状態にあり、急激なペソ安が進む可能性が高い。
中央銀行の廃止と経済のドル化を公約に掲げるミレイ氏は来月10日の就任後、経済の再建という重い課題に直面する。失敗すれば、10回目の国債デフォルト(債務不履行)、貧困の増大、社会不安につながりかねない。
<インフレ>
アルゼンチンは高インフレで毎週のように物価が変動し、市場と消費に大きなゆがみが生じている。中銀のアナリスト調査では年末のインフレ率の予想は185%だ。
コンサルティング会社EcoGoのエコノミスト、ルシオ・ガライ・メンデス氏は「次期政権の最大の課題の一つは、相対価格のゆがみの是正になるだろう」と指摘した。
中銀はインフレ抑制のため、政策金利を133%に引き上げており、与信や経済成長に悪影響が出ている。
<ペソの管理>
通貨ペソは2019年の市場の混乱以降、資本規制で厳しく管理されているが、「ブルーレート」「MEPレート」「優良スワップレート」など複数の非公式レートが存在し、公定レート(1ドル=350ペソ付近)の2倍以上の高値でドルが取引されている。
ミレイ氏は資本規制を速やかに解除し、最終的には経済をドル化する意向を示しているが、短期的には公定レートと非公式レートを差を縮めるため、急激なペソの切り下げが行われる可能性が高い。
<外貨準備>
中銀の外貨準備は2006年以来の低水準付近で推移している。大規模な干ばつで大豆、トウモロコシ、小麦など主要農産物の輸出が打撃を受けており、アナリストの間では純外貨準備はマイナスとの見方が多い。
外貨準備の減少は、主要債権者である国際通貨基金(IMF)や民間の債券保有者への返済能力低下につながるほか、輸入代金の支払いにも支障が出かねない。440億ドル規模のIMFプログラムの見直しが必要になるとみられる。
<景気後退>
中銀の最新のアナリスト調査によると、今年の経済成長予測はマイナス2%。干ばつの影響でトウモロコシと大豆の生産が半減したことなどが響くとみられる。
インフレ率も3桁で、今後、貧困が増大する可能性が高い。国民の5人に2人はすでに貧困ライン以下で生活しており、給与や貯蓄が目減りしている。
<かすかな希望も>
アルゼンチンは穀物、シェールガス、リチウムといった資源に恵まれいる。降雨で収穫が拡大したり、新たなガスパイプラインの導入で割高な輸入品への依存が減った場合、また電気自動車(EV)に必要なリチウムの需要が拡大すれば、来年、景気が上向く可能性がある。
大豆やトウモロコシは、大幅な収穫拡大が見込まれており、同国が切実に必要とする外貨収入をもたらすとみられている。
ムーディーズは20日、19日投開票のアルゼンチン大統領選でハビエル・ミレイ下院議員が勝利したことに関連し、次期大統領は非常に不確実な結果を伴う極端な政策課題に直面しているとの見解を表明した。
ムーディーズ幹部は、ミレイ氏が掲げた選挙公約について、時間をかければ「現在同国の経済活動を麻痺させている深刻な不均衡に対処する」可能性があると指摘した。
ただ、もし公約通りの措置が実施された場合、「急激で深刻な経済調整を引き起こし、内需を崩壊させ、金融の安定を脅かすだろう」とも警告した。
ミレイ氏の公約には、歳出削減のほか、中央銀行と通貨ペソの廃止などが含まれている。
同幹部はまた、アルゼンチン議会の分裂と社会的圧力が、ミレイ氏の改革の迅速な実施を妨げる可能性があると指摘した。
クレムリンのペスコフ報道官は記者団に対し、「われわれはミレイ氏が選挙期間中に行った多くの発言に注目しているが、主に就任後の発言に注目し判断する」と指摘。「われわれはアルゼンチンとの二国間関係の発展を支持する」とした。
クレムリンのウェブサイトに掲載された声明によれば、プーチン大統領はミレイ氏に祝意を示したという。
アルゼンチンのミレイ次期大統領は12月10日に就任する前に米国とイスラエルを訪問する予定だ。外交政策の優先順位をいかに見直す考えかを反映するものだ。
ミレイ氏は20日、ラジオとのインタビューで、「この訪問は何よりもスピリチュアルな意味合いがある」と語った。
アルゼンチン大統領選の決選投票で、与党連合の中道左派セルヒオ・マサ経済相に対し、誰も予想していなかった12ポイント近い大差をつけて圧勝した。ブラジルや中国との関係を重視する現政権のアプローチから転換し、米国やイスラエルとの関係を深めると繰り返し表明してきた。
20日の金融市場で、米国上場のアルゼンチン企業の株価が大幅に上昇。前日の大統領選決選投票で、リバタリアン(自由至上主義者)のハビエル・ミレイ下院議員が予想以上の差を付けて対立候補に勝利したことが好感された格好だ。
インフレ率が140%に上り低迷する同国経済を、アウトサイダーのミレイ氏が好転させてくれるとの期待が背景にある。
●市況
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。今週発表される英国の最新の財政報告が注目される中、英ポンドの上昇や、建機・産業機器レンタルのアシュテッドの株価急落が相場の重しとなった。
ポンドはドルに対して取引序盤に一時、約2カ月ぶりの高値を付けた。
<欧州株式市場> 小幅続伸して取引を終えた。石油・ガス株などが買われた一方、ドイツの製薬・化学大手バイエルは急落した。
バイエル(BAYGn.DE)は18.0%下げ、抗血栓薬の大規模な後期臨床試験を中止したことが嫌気された。ヘルスケア株指数(.SXDP)は0.48%下落。
<ユーロ圏債券> 先週強まっていた欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測がやや後退したことで、独連邦債利回りが小幅上昇した。格付け会社ムーディーズの発表を受け、イタリアとポルトガル国債は他をアウトパフォームした。
イタリア10年債利回りは2bp低下の4.338%。独10年債との利回り格差は、イタリア10年債が170.4bpと、9月21日以来の水準に縮小。ポルトガル10年債は57.3bpと、7月28日以来の水準に縮小した。
<為替> ニューヨーク外為市場では主要通貨に対するドル指数が2か月半ぶりの安値に沈んだ。米利上げサイクルが終了したことがほぼ確実視される中、投資家は利下げ開始時期を探る動きとなっている。
CMEのフェドウォッチによると、金融市場はFRBが来年5月までに少なくとも0.25%ポイントの利下げを実施する可能性を50%超織り込んでいる。
<債券> 米金融・債券市場では、国債利回りが低下した。160億ドルの20年物債入札が堅調に推移したことを好感した。
<株式> 米国株式市場は主要株価指数が上昇して取引を終えた。マイクロソフトが上昇し、ナスダックが相場の上げを主導した。米国債利回りの低下も相場を下支えした。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が追加減産を検討するとの一部報道が買い要因となり、続伸した。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)などは17日、OPECプラスが26日開催の閣僚級会合で、最大で日量100万バレルの追加減産を検討すると報じた。報道が引き続き買い材料視され、この日もほぼ一本調子で上昇した。外国為替市場で対ユーロのドル相場が軟化したこともドル建てで取引される商品の割安感につながり、相場を支えた。
一方、ロシア・エネルギー省は17日、ガソリン輸出禁止措置を解除した。同国は国内市場安定と供給不足解消のため、9月21日から一部の国以外への燃料の禁輸措置を導入していた。また、米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが17日公表した同日までの1週間の国内石油の掘削リグ稼働数は前週比6基増の500基と、3週ぶりに増加。増加幅は2月以来の大きさとなった。
日経先物33,455、ダウ先35,226、債先145.89、米4.422、独2.6070、仏3.165、西3.579、伊4.339、英4.1635、波5.502、原油77.60、銅8,450、ドル円148.30、ユーロドル1.0946
※11/21 8時45分頃
備忘録(2023/11/17-19)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ユーロ圏の銀行監督を担う欧州中央銀行(ECB)銀行監督委員会のアンドレア・エンリア委員長は16日、「AT1債(その他Tier1債)」の契約条項の国際基準策定を支持すると表明した。
AT1債を巡っては、スイス金融最大手UBS(UBSG.S)が今年、競合のクレディ・スイスを救済買収する際にクレディのAT1債を無価値としたため、投資家が想定元本160億スイスフラン(181億ドル)の全額損失を被るなどして市場に衝撃が走った。
エンリア委員長はこの日、欧州連合(EU)の金融リスク監視機関、欧州システミックリスク理事会(ESRB)の年次総会のパネルで講演。「バーゼル銀行監督委員会(BCBS)が今後、こうした分野での契約について一定の標準化をさらに検討することは素晴らしい」と明言した。
さらに「金融商品の間で一種の伝染が起きるのを避け、市場にストレスがかかる際に各金融商品の(契約条項が)どのように機能するのか誰もが理解するには、一定の共通の特性を追加することは有益と思う」と話した。
バーゼル委員会のパブロ・エルナンデス・デ・コス議長は、この検討課題は「リストにある」と述べた。
バーゼル委員会は11月の報告書で、AT1債の特性を見直す方針を表明。金融機関の「資本の階層構造(ヒエラルキー)」に関して、経営危機に直面した際に損失吸収をどのような順序で行うのかを示す「損失吸収ヒエラルキー」の見直しを含めて検討するとしていた。
クレディ破綻処理では、AT1債の契約条項に基づきクレディ株よりも先に損失が発生した。ただ、一般的には株式が先に損失を被る順序となっている。
EU加盟国に本拠を置く銀行が発行する債券にこうした条項はなく、ECBはまず株主に損失を課す方針を表明していた。
●その他産業
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは17日、円建て社債の発行条件を決めた。734億円を発行する3年債を中心に、5年債、10年債、20年債、35年債の5本で合計1220億円分を起債した。円建て債の起債は4月以来今年2回目。29日に発行する。
スウェーデンの大手不動産会社SBBが大幅なディスカウントで一部社債の買い戻しを提示しているが、S&Pグローバル・レーティングはこの提案がデフォルト(債務不履行)に等しい可能性があると指摘した。
S&Pは17日、SBBの格付けを「選択的デフォルト」への引き下げ方向で見直すと発表した。SBBの社債買い戻しの最終的な結果が公表され次第、S&Pはあらためて格付けを評価する方針だという。
スウェーデンでは低金利時代に多額の資金を借り入れた多くの企業が、借り換えに苦戦。同国は借り入れコストの上昇と不動産評価額低下の二重苦に直面し、不動産危機に陥った。この中心にあるのがSBBだ。
SBBは最近、カナダの資産運用会社ブルックフィールド・アセット・マネジメントに学校施設ポートフォリオを売却し、現金を受け取ることに合意。負債コストを削減し、高額な借り換えを回避するため、同社は額面以下で取引されている今のうちに社債を買い戻そうとしている。しかし格付け会社は、債権者が受け取る金額が当初約束された額を大幅に下回っていると判断した場合、こうした取引をディストレスとみなすことができる。
SBBは16日、ハイブリッド証券の一部について額面1ユーロにつき最低15セントの価格を想定した公開買い付けを提示。最大6億ユーロ(約980億円)の買い戻しを目指している。
●決算関連
米百貨店大手メーシーズ(M.N)が16日発表した第3・四半期(8─10月)決算は、特殊要因を除いた純利益が5900万ドル(1株当たり0.21ドル)となり、LSEGがまとめたアナリスト予想平均の収支トントンを上回った。在庫圧縮と好調な化粧品需要が収益を支えた。
純売上高は前年同期比7.1%減の48億6000万ドルで、6四半期連続の減収となった。アナリスト予想平均は7.9%減だった。
メーシーズは、在庫を昨年の高水準から圧縮する取り組みが年末商戦を前に奏功し始めた。ジェフ・ジェネット最高経営責任者(CEO)は声明で、同社は「健全な在庫水準で年末商戦に突入する」と表明した。
同社の在庫は前年同期比で6%、2019年比で17%それぞれ減少した。
第3・四半期の粗利益率は、メーシーズブランドの値引き販売の縮小と輸送費の低下が追い風となり、160ベーシスポイント(bp)改善した。
次期CEOに内定しているトニー・スプリング氏は年末商戦に向けた先行きについて、顧客は引き続き圧力を受けており、支出に慎重になっているとの見方を示した。
●先進国、グローバル、金融市場
米紙ワシントンポスト/マンモス大学が実施した最新の世論調査によると、2024年米大統領選に向けた共和党予備選の早期実施州である東部ニューハンプシャー州で、ヘイリー元国連大使が2位に浮上した。一連の討論会で評価を高め、支持を伸ばした。
ただ、首位は依然としてトランプ前大統領で、支持率で他の候補者を大きく引き離していることが分かった。
来年1月23日に実施されるニューハンプシャー州の予備選まで残すところ約2カ月となる中、トランプ氏の支持率は46%。
ヘイリー氏は18%にとどまっているものの、調査では3人に1人(35%)がヘイリー氏を第1もしくは第2候補と回答。さらに、現在トランプ氏を支持していない有権者の間では56%がヘイリー氏を第1もしくは第2候補と回答しており、ヘイリー氏が今後、ニューハンプシャー州の穏健派有権者の支持を取り込む可能性がある。
3位にはクリスティー前ニュージャージー州知事(11%)、4位には実業家のビベック・ラマスワミ氏(8%)がつける。これまでトランプ氏の最大のライバルになると目されていたデサンティス・フロリダ州知事は5位(7%)と後塵を拝した。
オーストラリアは太平洋諸国に対して、中国が決して用意できない「切り札」を駆使して大きな影響力を確保することに成功した。それは移住の機会提供だ。
地球温暖化による海面上昇で国土が水没する危機にさらされている南太平洋の島国ツバルを巡り、オーストラリアが毎年最大280人のツバル国民に特別受け入れ枠を設け、移住や就学、就労を支援する。オーストラリアのアルバニージー首相とツバルのナタノ首相が10日に結んだこの取り決めは、オーストラリアの太平洋諸国との関係を一変させる可能性がある、と専門家は話している。
オーストラリア国立大学で太平洋地域を専門に研究しているグレアム・スミス氏は「これは中国にはできない行動だ」と評価した。
オーストラリア議会は最近、年間で3000人の太平洋諸国の人々に永住への道を開く法案も可決している。
マールズ副首相兼国防相は、ツバルとの取り決めについて、オーストラリアがツバルの防衛力強化に手を差し伸べるためにこれまでよりずっと強い決意を示すものだと説明し、「われわれの太平洋諸国との関係において分水嶺」になったと述べた。
シドニーの米国研究センターで外交防衛ディレクターを務めるピーター・ディーン氏は「オーストラリアが連邦発足以来、最重要視してきた目標は、自国と利益が一致しない別の大国がこの地域に地歩を築くのを阻止することだった。(そこに)中国が登場し、彼らはより多くのインフラ整備資金を提供できる。(だが)移住申し出のような関係性を提示することは不可能であり、これは太平洋地域にとって一つのモデルになる」と指摘した。
先週のアルバニージー氏の訪中で、オーストラリアと中国の外交関係は改善している。それでも中国が太平洋諸国への関与を強めていることから、安全保障上の緊張状態は解消されていない。
そうした中でオーストラリアは12日にソロモン諸島で始まったイベントの警備要員として警察や兵士450人を派遣した。昨年中国と治安協力協定に調印したソロモン諸島に中国の警察が早速やってくるすきを与えないためで、この取り組みには周辺のフィジーとパプアニューギニアも参加した。
オーストラリアとツバルの取り決めでは、ツバルが中国との間で治安協力協定を締結したり、通信やエネルギー、港湾整備などの分野で取引したりするのを防ぐこともできる。
スミス氏は「オーストラリアと中国の関係が多少暖かくなったからといって、あるいは米中の対立が幾分和らいだとしても、このゲームが止まることはないだろう」と述べた。
中国人民大学のワン・イウェイ教授(国際関係論)は、太平洋諸国を巡って中国と米国が相手の影響力を封じようとする駆け引きが、中国のあらゆる行動に対するオーストラリアの感度を非常に高めていると分析した。
同教授は、米中の「戦略的ゲーム」が今やオーストラリアの玄関先にまで及んでいると説明。「太平洋地域における協力の枠組みは、公共の治安維持や気候変動に対処するためのインフラ整備など、非伝統的な安全保障の領域に焦点が当たる傾向にある。これらは本来、安全保障と強く関係づけて考えるべきではないが、米国は依然として神経過敏であり、オーストラリアはもっと過敏になっている」と付け加えた。
住宅の購入は、今も多くの人にとって、アメリカンドリームの大切な一部だ。ローラ・アルセ氏は、ヒスパニック系世帯がもっと住宅を購入できるよう支援に奔走している。だが、心配事もある。銀行が、低価格住宅購入のための融資にますます消極的になっていることだ。
全米レベルで見ると、ヒスパニック系米国人の住宅保有率は白人系米国人に比べて約4分の1低く、コロナ禍以降、この格差はさらに広がっている。住宅購入意欲の低さによるものではなく、雇用形態の違いによる部分がある、とアルセ氏は言う。
「ヒスパニック系は自宅を保有することをとても重視している」とアルセ氏は言う。同氏は、市民権擁護・啓発団体「ウニドスUS」が推進する、2030年までに400万人のヒスパニック系住宅所有者を生み出そうというキャンペーンを率いている。
「家族の中で誰が最初に住宅を購入できるかというのは、よく話題に上るテーマだ。米国社会の一員になるという点でも大きなステップだ」
ウニドスUSでは、比較的若い世代が多いヒスパニック系住民は、今後数十年、住宅の初回購入者の主力になるとみている。
問題は、その夢をかなえるための資金を用意できるかどうかだ。住宅価格が上昇する中、コストがかさみ、規制も厳しくなっていることから、銀行は15万ドル(2200万円)以下と定義されることもある小口の住宅ローンに消極的になっている。
住宅ローンの供給が不足するようになったきっかけは、2008-09年の金融危機だ。担保となっていた住宅が大量に差し押さえられ、企業による住宅保有が増加し、住宅建設は減速。新たな銀行規制も導入された。
アルセ氏はトムソン・ロイター財団の取材に対し、「利用できる住宅ローンも、融資市場の活気も、とにかく消えてしまっている。住宅ローンという商品に力を入れようというインセンティブが用意されていない」と述べた。
その結果、ヒスパニック系などの人々はノンバンク系の融資に頼るようになっている。アルセ氏は、「多くの人々が違法スレスレの悪徳業者の餌食になりかねない」と言う。
というのも、法的支援団体によれば、こうしたノンバンク系融資はハイリスクでコストも高く、消費者保護制度の対象にもなっていない場合が多いからだ。
当局も、ヒスパニック系コミュニティでは住宅保有が重要な資産形成の機会であることを認識しており、この問題を注視している。
住宅都市開発省の広報官によれば、住宅問題を所管する連邦当局者は、小口住宅ローンについて市民の意見を聴取しており、次の一手を模索しているという。
考えられるのは、住宅価格が比較的低く、住宅ローンの提供が不十分な市場において、手頃な価格の住宅を所有する機会を拡大する政策を推進することだ。
7月に「乱用的な」代替金融に関する公聴会の議長を務めたティナ・スミス上院議員は、小口の住宅ローンを提供したいというインセンティブに対応すれば、「搾取的になる恐れのある」ローン組成に対する需要は減るだろうとみている。
同議員は電子メールで「不謹慎な住宅販売業者がこのような問題を利用し、弱い立場の住宅購入者を食い物にするのは間違っている」とのコメントを寄せた。
<額は小さくても大きな問題>
ピュー・チャリタブル・トラストによると、2004年から2021年にかけて、小口住宅ローンによる融資が約70%減少する一方で、金額の大きな住宅ローンによる融資は52%増加したという。
同トラストで住宅政策イニシアチブのプロジェクト責任者を務めるアレックス・ホロウィッツ氏は、近年では15万ドル以上の住宅購入者の71%が住宅ローンを利用しているのに対して、それ以下の価格帯では26%にすぎなかったという。
「小口住宅ローンが本当に利用しにくくなっていることを示唆している」とホロウィッツ氏は言う。
「これが低価格住宅の所有率が低下している第一の理由で、住宅価格の低い地域や黒人世帯、高い家賃で賃貸住宅を利用しているヒスパニック系住民が影響を被っている。この問題を解決できれば、得るものは大きい」
ホロウィッツ氏は、住宅価格の急騰や手頃な価格の住宅の不足、そして金融危機後の規制の変更で住宅ローンを利用するためのコストが3倍近くに膨れあがったことを要因として指摘する。
米抵当銀行協会で業界分析を担当するマリーナ・ウォルシュ氏は、「実際に好調な市場においては特に、融資側にとっての収益性という点で(小口住宅ローンを組むことを)正当化するのは難しい」と語る。
一方でウォルシュ氏は、主として問題なのは、住宅の供給が需要に追いついておらず、価格を押し上げていることだと言う。
「融資の金額は小さくても、問題としては大きくなっている」
ラテンアメリカ系や新規移民らの「金融包摂」に取り組む約140の信用組合からなる「フントス・アバンサモス」(スペイン語で「ともに前進」)という団体がある。これを率いる「インクルーシブ・ネットワーク」のパブロ・デフィリッピ執行副社長は、小口住宅ローンの提供を目指している金融機関もあると話す。
「住宅ローン部門は、私たちが最も大きな影響を受け、最高の業績を上げている分野だ」とデフィリッピ氏は言い、需要の大きさと返済遅延の少なさを指摘した。「加盟する信用組合はこれを、市場機会であると同時に、自分たちの使命と合致しているとも考えている」
<「自己防衛が不可能な状況」>
前出のホロウィッツ氏によれば、住宅ローンが不足しているせいで、賃貸に頼るか、他の購入手段を模索するようになる人が増えている。昨年、住宅購入のために融資を受けた米国民の約15人に1人がノンバンク系融資を利用しており、ヒスパニック系の住宅購入者が最もリスクにさらされているという。
全米消費者法センターで啓発担当共同ディレクターを務めるサラ・ボリング・マンシーニ氏は、「こうしたハイリスクの要因によって、(住宅購入者が)自己防衛の不可能な状況に追い込まれてしまうというのは最悪の事態だ」と語る。
マンシーニ氏は、金融危機以降、法人家主が住宅ローンの代替となる住宅取得方法を提供する傾向が強まっていると語った。例えば、不動産割賦購入契約と呼ばれる方法では、購入者は数年かけて住宅代金を支払うことになる。
だが、支払いが完了するまでは購入者は所有権を得られないため、債務不履行が発生した場合には、住宅も支払い済みの金も失ってしまう可能性がある。
マンシーニ氏は、アトランタ地域での元クライアントの例を挙げ、リスクの理解が出来ていない人も多いと指摘する。2018年の訴訟によれば、このクライアントは、通常の住宅ローンの条件で低価格住宅を購入したと思っていたが、経済的な事情で債務不履行に陥ってみると、実際にはそうではないことが分かったという。
非営利団体(NPO)「ミッドミネソタ・リーガルエイド」で指導弁護士を務めるエリザベス・グッデル氏は、ジョージア州など他の多数の州と同様、ミネソタ州にも、こうした契約に対するしっかりした規制がないと語る。同NPOでは、金融危機後にはこうした事例を「多数」確認しているという。
「頭金は(通常の住宅ローンを利用する)購入者が支払うものと大差ないため、本当に騙されてしまう人もいる」とグッデル氏は言う。
「だが、分割返済の契約は3年から5年で終わってしまう。その後は、何とかして残額を用意するしかない」
グッデル氏によれば、ミネソタ州などの地域では住宅購入者を保護するための取り組みが進行中だ。特に、賃借人保護の範囲を不動産割賦購入契約にも拡大するバージニア州法からヒントを得ているという。
<コミュニティ規模の取り組みも>
ウィンストン・セーラム州立大学(ノースカロライナ州)経済的流動性研究センターの所長を務めるクレイグ・リチャードソン氏によると、小口住宅ローンが利用しにくいと、コミュニティにも悪影響が及びかねないという。
貧困層の多い東部ウィンストン地域では、小口住宅ローンの利用ができないせいで、金融危機後の回復が妨げられる一方で、企業による所有が進み、市場に出回る住宅がどんどん賃貸に回ってしまった可能性があるとリチャードソン氏は指摘する。
リチャードソン氏は共同執筆した最近の論文で、2013年以降、「この市場で業務を行っていた銀行が本格的に撤退してしまったため」、東部ウィンストンの不動産価値はウィンストン・セーラムの富裕な地域に比べて45%以上も下落したと指摘している。
これは悪循環を呼んだ。リチャードソン氏によれば、15年前には、この地域の住宅の約70%は自己所有だったが、現在その比率は3分の1以下になっているという。
このことが同地域の経済の低迷につながっているとリチャードソン氏は言う。「市内のこちら側に進出するよう投資家を説得するのが非常に困難になってしまった」
今年の欧米の年末商戦は、玩具の販売不振が予想されている。懐具合の寂しい消費者が食品や生活必需品の購入を優先し、玩具を後回しにしているためで、サンタクロースの運ぶクリスマスプレゼントは少なめになるかもしれない。
世界中の消費者が高インフレと経済の成長鈍化に苦しんでおり、11月末の大型セール「ブラックフライデー」から12月末頃にかけて続く年末商戦は今年、必需品以外の商品を扱う小売業者にとってとりわけ厳しいものになると業界幹部は予想している。
「バービー人形」や変形玩具「トランスフォーマー」、ミニカーの「ホットウィール」といった人気商品が依然として子どもたちの欲しい物リストの上位を占めそうだと、英調査会社ユーロモニター・インターナショナルの家電業界マネージャー、ルー・ウィー・テックは予想する。
しかし業界幹部によると、多くの親は今年こうした商品を買うだけの余裕がない。アマゾンのサイトで最も売れ筋のバービー人形「バービー・ポップリベール」は現在の価格が19.99ポンド(24.89ドル)。また保護者のブログによると、ホットウィールの「スコーピオン・プレーセット」の価格は2020年に35ポンドだったが、英アマゾンで今年は60ポンド前後だ。
人形の「ブラッツ」のメーカー、MGAエンターテインメントのアイザック・ラリアン最高経営責任者(CEO)はインタビューで、「消費者にとって今年のホリデーシーズンで最も重要なのは家族のため食事を用意することだ」と話す。
玩具メーカーのハズブロ(HAS.O)とマテル(MAT.O)はすでに業界の販売不振見通しを示している。しかし玩具メーカー4社の幹部や専門家は、今年の年末商戦はこうした予想よりさらに厳しいものになるとみている。ラリアン氏はMGAのクリスマス商戦で、全世界の売上高が前年比で10─12%落ち込むと予想した。
育成ゲーム「たまごっち」を手掛けるバンダイ(7832.T)のマネジングディレクター、ニック・オルドリッジ氏は、クリスマスまでの需要が昨年を下回ると見込む。小売店が品揃えを旧製品にシフトさせるため、価格はさらに下がると予想。「過去数年に供給した分の余剰があったことから、在庫一掃セールや大幅な値引きが行われている」と言う。
<ブラックフライデーに注目>
トランスフォーマーやスパイダーマンのようなフィギュアは全世界の売上高が今2%落ち込むとユーロモニターは予測している。
需要の減退を見込んで、すでに余剰在庫を抱えている小売業者の多くが今年は発注を例年よりも減らしている。つまり人気商品はすぐに売り切れる可能性があるということだ。
年末商戦を占う手掛かりとなるのがブラックフライデーの動向だ。マテルの社長兼最高商業責任者(CCO)、スティーブ・トッツケ氏は13日、「一部ですでにブラックフライデーの先行セールが始まっている」と話した。
マテルは先月、第3・四半期末の在庫水準が前年同期比で2桁減少したと発表した。
MGAは「慎重かつ保守的に」臨みたいため製品の発注と製造を圧縮したが、その結果、いくつかの新製品の供給が不足する見込みだとラリアン氏は明かした。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンス傘下の貿易データ会社パンジバによると、8月31日までの3カ月間に米国の玩具輸入はドルベースで前年比32%減少した。この時期は通常、年末商戦に向けた重要な発注時期に当たる。9月の海上輸送出荷(コンテナ数)は8%減った。
ドイツの玩具メーカー、シンバのフロリアン・シーバーCEOは「玩具市場は1年を通して落ち込んでいる」と述べた。欧州の消費者需要は昨年よりも弱く、昨年はすでに前年より弱かったという。
それでも終盤の需要増を予想する声もある。
トッツケ氏は「マテルにとって良いホリデーシーズンになると予想している。シーズン中にシェア拡大が続くと見込んでいる」と強気だ。
データ会社サーカナ(旧NPD)のグローバル玩具アドバイザー、フレデリック・タット氏によると、同社が追跡調査している国では今年1─9月に玩具の売上が前年比で約7%減ったが、クリスマス前の3週間に客足が戻る見込み。これまでに最も好調だったのはゲーム、パズル、ぬいぐるみ、組み立てセット、乗り物だ。
ただ、トイザらスやハドソンズ・ベイの元CEOで、コンサルタント会社ストーチ・アドバイザーズのCEOであるジェリー・ストーチ氏は「玩具用に残してあるお金もいくらかはあるだろうが、玩具は昨年ほど売れないというのが現実だろう」と慎重な見方を示した。
米連邦準備理事会(FRB)のバー副議長(金融規制担当)は17日、銀行自己資本規制の見直しを巡り、借入コストへの影響は最小限であり、業界の一段の安定につながるとの見解を示した。
ニューヨークで開催された会議での発言で同副議長は、「バーゼル3最終化」の提案では融資よりもむしろトレーディングなどの業務に対する自己資本規制の引き上げに主眼を置いていると述べた。
資本規制強化案に対し、銀行業界は積極的な反対運動を展開。ナショナル・フットボール・リーグの試合中やソーシャルメディア上などで意見広告を流している。
同副議長はこうした反対運動に驚いたとし、政策論争の常識を逸脱していると指摘した。
米政府がまとめる毎月の雇用統計に数百万人の「ギグワーカー(単発の仕事を請け負う労働者)」が含まれていない可能性があり、米連邦準備理事会(FRB)による雇用情勢やインフレリスクの評価に影響を及ぼす可能性がある。ボストン地区連銀の労働市場に関する会合向けの研究論文から分かった。
論文によると、米配車サービス大手ウーバー・テクノロージーズの運転手や臨時契約労働者らは自らを「雇用されている」、もしくは労働力の一角とは考えておらず、政府の統計で示される就業者数が大幅に過小評価されている可能性がある。
その数は最低で数十万人、もしくは1300万人程度に達する可能性もあるという。
研究者らは、労働市場が考えられているよりも「逼迫している」可能性を示唆していると指摘。同時に、米経済にはインフレを引き起こすことなく雇用を創出し生産を拡大する余地が残されている状況を示しているように感じられるという見方を示した。
とりわけ新型コロナのパンデミック(世界的大流行)前の数年間は、「相当量の非公式の仕事」が存在していたにもかかわらず、「インフレは加速していないかった」とし、「完全雇用の基準は上方に調整される可能性がある」とした。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル・ドイツ連銀総裁は17日、欧州中央銀行(ECB)が民間銀行が預け入れている一定以上の準備金に支払う金利を減らすべきとの見解を示した。
ECBはこれまでに、来年春に実施する枠組みの見直しが、そのような議論をするのにより適したタイミングだと主張している。
民間銀行は現在、特定の顧客預金の1%をECBに準備金として預け入れることが義務付けられており、これらへの利息は付いていない。他に預け入れている準備金に対しては4%の金利を付けている。
ナーゲル氏は余剰の準備金に対して手厚い金利を受ける民間銀行は預入額を増やす傾向にあると指摘。このような動きは、金融引き締めを通じてインフレを抑制しようとするECBの取り組みを阻害すると主張した。
ナーゲル氏は最低準備率については「現時点で金融政策の効率性を高めるための緩やかな引き上げを否定する理由はない」とし、「通貨ユーロの発足から13年間は最低準備率が2%だったことを思い起こしてほしい」と述べた。
最低準備率の2%への引き上げは、ECBの政策立案者が議論している数値の下限となっている。ECB理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は10%を提唱している。
米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は17日、連邦準備理事会(FRB)はインフレ率を目標とする2%に戻すためにあらゆる必要な措置を実施するが、住宅価格の上昇圧力が予想通りに緩和すれば、目標達成に向けた軌道にすでに乗っているとの考えを示した。
グールズビー総裁はシカゴ地区連銀の年次シンポジウムで「インフレが(目標達成に向けた)軌道に乗るかは、住宅価格の動向が極めて重要になる」と指摘。住宅価格の上昇圧力が予想通りに緩和すれば物価目標達成への道をたどることになり、リセッション(景気後退)が引き起こされない「王道」を行くことになると述べた。
同時に、インフレを巡る状況は改善しているものの、なお高すぎると言及。FRBが主に注目すべきことは物価で、現時点で雇用情勢と経済成長を主要な焦点にすべきでないとの考えを示した。
イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のラムスデン副総裁は17日、英経済の供給の健全性が低いことを背景に、政策金利を当面の間は制約的な状態に維持する必要があるとの見方を強めたと言及した。
ラムスデン氏は金融市場の政策金利の予想は英経済の供給能力を英中銀よりも肯定的に捉えているようだとけん制した。
経済の供給には労働者の供給能力や貿易の状況などが含まれており、疫病の世界的大流行や金融危機、政府の政策などで損なわれるとインフレを引き起こす前に経済の成長スピードが制限される。
ラムスデン氏は講演後の質疑応答で「労働市場の逼迫は需要の伸びと供給のわずかな伸びによって抑制されており、それは金融政策と因果関係がある」とした上で、「供給の弱さは英国の本当の特徴だと考えている」と言及した。
英中銀の政策決定者らはしばらくの間、政策金利を制約的に保つ必要性を繰り返し強調してきた。これに対し、金融市場は英中銀が2024年半ばまでに政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き下げ、24年末までにさらに2回利下げすることをほぼ織り込んでいる。
ラムスデン氏は、金融市場が平均すると英中銀の見方に比べて迅速な成長、より遅いインフレ、より低い失業率を予想していると指摘。その上で「私は金融政策に対して引き続き注意深く、かつ責任を持ってアプローチする」と訴えた。
米ボストン地区連銀のコリンズ総裁は17日、インフレの緩和を示す証拠が増える中でも、追加利上げの可能性を排除する用意はできていないと述べた。
コリンズ総裁はCNBCのインタビューで「妥当な時間内にインフレ率を(目標とする)2%に戻すためには、忍耐強く、断固とした態度で臨まなくてはならない。追加利上げの可能性を排除したくない」と述べた。
経済指標には「明るいニュース」も出ているものの、「入手される一連の情報を十分に精査し、リアルタイムで評価することに引き続き注力している」と述べた。
さらに「われわれは忍耐強くなれる状況にある」とし、「重要なことは現在の軌道を堅持する必要があるかどうかだ。これまでに講じた取り組みが経済に影響を及ぼしていることを確認している」と述べた。
労働市場については再均衡化していると指摘。インフレに関しては朗報もあるがむらがあり、コア物価圧力は連邦準備理事会(FRB)の目標を依然大幅に上回っているため注意が必要とし、インフレに対する「勝利宣言には程遠い」という考えを示した。
最近の債券利回り低下については直接言及しなかったものの、FRBが目指す「秩序ある減速と一致する特定の制限性を示す証拠が見られる」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は17日、ECBは必要であれば再び利上げを行う用意があると改めて述べた。また一部で考えられているようにECBが第2・四半期に利下げを開始するとは考えていないとした。
記者団に対し「われわれは(利上げが終了するかどうかを巡る)話がこれで終わるとは思わないでほしいということを(市場に)伝えようとしている」と指摘。来年第2・四半期の利下げの可能性を排除するかとの質問には「それは少し時期尚早だろう」と答えた。
米ボストン地区連銀のコリンズ総裁は17日、労働市場全体がタイトになるにつれ労働供給が改善するように見えているとし、こうしたことは連邦準備理事会(FRB)がインフレをそれほど懸念せずに、好調な雇用の恩恵を労働者に行き渡らせるようにすることができることを示している可能性があると述べた。
就業者数や求職者数の予想外の急増を受け、2010年代に続き現時点でも、賃金やその他のコスト圧力が増大することなく雇用が拡大。コリンズ総裁はボストン地区連銀が主催する労働市場に関する2日間の会合の冒頭で、FRBは物価安定と最大雇用を目指す金融政策の運営にあたり、こうした動きに対する理解を深めなければならないと述べた。
その上で「このところ、より良いバランスに向かう動きが見られているが、この一部は労働供給の増加でもたらされた。労働適齢層の労働参加率は現在、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)前よりも高くなっており、こうしたことは数年前までほとんど予想されていなかった」と指摘。「労働市場がタイトになっているときに需要を満たすために労働供給が拡大すれば、経済活動が一段と活性化したとしても、金融引き締めが必要になるような追加的な物価上昇圧力は生じない」と述べた。
同時に、FRBは「完全雇用」を評価することの複雑さについて理解を深める必要があるとの考えを示した。
米連邦準備理事会(FRB)のバー副議長(金融規制担当)は17日、FRBの政策金利はピークかその近辺にあるとの見方を示した。
最近のデータはFRBが金融政策において「より良いバランス」に移行していることを示唆しており、これは「非常に心強い」と述べた。
欧州連合(EU)統計局が17日発表した10月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)改定値は、前年比上昇率が速報値から変わらずの2.9%で、9月の4.3%から大きく減速した。
前月比は0.1%上昇だった。
前年比上昇に最も寄与したのはサービスで1.97%ポイント。次いで食品・アルコール・タバコの1.48%ポイントだった。
エネルギー価格は1.45ポイント押し下げた。非エネルギー工業製品は0.9ポイント押し上げた。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は17日、欧州にはデジタル化とグリーン移行をファイナンスするため、単一の監督機関や取引インフラなど資本市場同盟(CMU)が必要だと述べた。
多額の負債を抱えた政府や銀行では、欧州連合(EU)の生産性と自立性の向上に必要な資金を確保できないと指摘。
欧州委員会によると、EUはグリーン移行のため2030年まで毎年6200億ユーロ(6720億ドル)、デジタル化のために毎年1250億ユーロが必要になる見通し。
総裁は会議で「この投資をファイナンスするために既存の枠組みに依存できないのは明らかだ。CMUを軌道に乗せなければ、こうした移行を成功させることはできない」と述べた。
総裁によると、デジタル化や脱炭素化を望む企業は必要な資金を確保できておらず、ECBが調査した中小企業の40%近くがグリーン投資のファイナンスに対する投資家の意欲不足を嘆いている。
また、欧州のスタートアップ企業の資金調達力は米国の半分以下という。
総裁は改革の一例として、欧州証券市場監督機構(ESMA)の権限を強化して、米証券取引委員会(SEC)のような組織にすることを提案。
「国境を越えた大企業やEUの中央清算機関のような市場インフラがもたらすシステミックリスクを軽減するには、直接的な監督を含む広範な権限が必要になる」と述べた。
また「(証券取引データを集約した)欧州統合テープを創設すれば、国境を越えて統合された大規模な市場インフラ・取引所グループへの移行を奨励できる」とも発言した。
英国立統計局(ONS)が17日発表した10月の小売売上高(数量ベース)は前月比0.3%減と予想外に減少した。生活費の高騰が引き続き響いた。
ロイターがまとめたエコノミストの予想は0.3%増だった。
9月分は1.1%減に下方改定された。
ONSは「小売業者は、生活費、来店客の減少、月後半の雨天が減少の原因と指摘した」と述べた。
第3・四半期の小売売上高も小幅に下方改定された。
先週発表された第3・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前期比0.0%でマイナス成長を回避したが、改定値で下方修正される可能性がでてきた。
投資家はイングランド銀行(英中央銀行)が来年、利下げを迫られると予想している。
ガソリンを除く小売売上高は前月比0.1%減。
コンサルティング会社EY・ITEMクラブのチーフ経済アドバイザー、マーティン・ベック氏は「金利上昇の影響が強まっている。ただ、小売り業者に助け舟がないわけではない。短期的には10月の重しとなった燃料販売の減少が反転する可能性がある。最近の原油安がガソリン価格の下落につながる」と述べた。
小売売上高は前年比では2.7%減。市場予想の下限を下回った。
小売売上高は2018年の水準に戻っているが、小売り業者は年末商戦での業績回復に期待を寄せている。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、欧州連合(EU)の証券監督当局により強力な権限を付与し、米証券取引委員会(SEC)に相当する組織にすることを提案した。
ラガルド氏は17日の会合で、資本市場の監督は「ほぼ国レベルにとどまっている」と指摘。「直接的な監督を含む幅広い責務」を持つ欧州機関を設置すれば、この問題の対処に役立つだろうと語った。
「例えば、欧州証券市場監督機構(ESMA)の権限を広げて欧州版SECを創設することが、この答えになり得る」と述べた。
EUは域内金融市場の関係を緊密化させ、投資家にとって資本展開が容易になるよう取り組んでいる。パリを拠点とするESMAは金融商品市場指令(MiFID)など特定のプロジェクトの実行で指揮をとっているが、ECBの銀行監督部門のような他の欧州機関が持つ広範な執行権限はない。
「EU資本市場の強化やEUレベルの監督の呼び掛けをESMAは歓迎する」と、同機関の広報担当者は電子メールで回答した。
ヘッジファンドが円に対し一段と弱気な姿勢に転じている。円安の長期化がウォール街の一角で想定されていることが米商品先物取引委員会(CFTC)のデータで分かった。
CFTCによれば、レバレッジドファンドは14日までの1週間に円のネットショートポジションを6万5490枚に増やした。2022年4月以来の高水準だ。
ジェフリーズの外国為替グローバル責任者ブラッド・ベクテル氏(ニューヨーク在勤)は、投機的なトレーダーが今後、円に対してさらに悲観的になる可能性が高いと予想。
「円はショート」だが、それ以外の通貨は何でも円に対してロングというのが「実際だ」と述べた。
米国債市場は、ほぼ間違いなく世界で最も重要な市場だ。激動の時期における投資家の避難所であり、事実上全ての他の資産のベンチマークでもある。しかし、米政府の持続不可能な借り入れと米連邦準備制度の量的引き締め(QT)により市場に米国債があふれ、ストレスが高まっている。
米国債市場が不安定要因にならないよう、米当局は早急に何らかの調整を行う必要がある。
米国債が人気な理由の一部は、概して流動性が極めて高い、つまり大きな価格変動を引き起こすことなく売買するのが容易なことだ。この特徴は、プライマリーディーラーと呼ばれる少数の大手銀行がいつでも取引に応じ、バランスシート上に大量の証券を保有していることに依存している部分がある。しかし近年、米国債の発行残高が膨大になり、自己資本規制が厳しくなったことで、ディーラーは従来の役割を果たせなくなっている。突然に取引が急増し、価格変動が大きくなった時には特にそうだ。
他の参加者もこれまで以上の役割を担うようになり、それが脆弱(ぜいじゃく)性に拍車をかけている。アルゴリズム取引会社が提供している流動性は幻影だ。わずか数マイクロ秒の間だけ証券を保有し、市場が機能するためにその存在が最も必要とされる不安定な相場では撤退する。
一方、ヘッジファンドは、米国債の現物市場と先物市場における価格のわずかな乖離(かいり)を利用しようと、膨大なレバレッジをかけている。「ベーシストレード」と呼ばれるこの取引は市場をより効率的にするが、不安定な時にはレバレッジに対する追加担保の請求にファンドが応じるために大量の米国債を売却しなければならなくなるという大きなリスクを伴う。このような強制的な売りは、ポジションの大きさと集中度を考えると、不安定化の要因となり得る。
ではどうすればいいのか。リスクを軽減する3つの方法があると思われる。
第1に、十分に拡大可能なバランスシートを持つ誰かが、本物の信頼できる流動性を提供しなければならない。この目的で、米連邦準備制度理事会(FRB)は米国債を担保に資金を貸し付ける常設のレポファシリティーを全ての米国債保有者が利用できるようにすべきだ。これによりヘッジファンドなどが大規模な売却をせずに、迅速に現金を調達できるようになる。
FRBは、このファシリティーが緊急の事態にのみ利用されることを確実にするよう、レポ市場で通常適用される金利よりも若干高い金利を課すのがいいだろう。より広範な市場参加者と直接対話する代わりに、プライマリーディーラーを代理人とし、銀行のバランスシートに負担をかけないようにすることができる。
第2に、米政府はすべての米国債取引が中央清算機関を通して行われることを義務付けるべきだ。これにより、より多くの参加者がお互いの信用力を心配することなく、直接取引を行うことが容易になる。また、複雑に絡み合った当事者間取引を中央清算機関へのより小さなネットエクスポージャーに統合することで、システム全体へのリスクを低減できる。
第3に、レバレッジを効かせた米国債ポジションに対する当初の担保要件を十分に高く設定し、ボラティリティー上昇時に積み増しが必要にならないようにする。こうすればヘッジファンドが過剰なレバレッジを活用する可能性は制限され、追加担保の要求増加が強制的な売りを促し、それがまた追加担保の要求増加につながる悪循環のリスクも軽減される。
この適切な水準は、規制当局がどの程度ディストレスの可能性を減らしたいかによるだろう。常設レポと中央清算機関に関する筆者の提言が採用されるなら、要件は恐らくそれほど厳しくならない。
理想的なのは、政府が財政規律を回復することで役割を果たすことだ。しかし残念ながら、議会が近いうちにそうすることはなさそうだ。債券市場の自警団が戻ってきて、建設的な対応を政治家に強いない限りは無理だろう。それだけに、問題が起こる前に市場の脆弱性に対処する必要がある。FRBの関与は、筆者が提案した他の改善策とともに、不安を落ち着かせ、市場がメルトダウンに陥るリスクを減らすはずだ。
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連邦銀行(中銀)総裁は17日、ECBが近い将来に利下げすることはないとの見方を示した。
ナーゲル氏はフランクルトで講演し、金利は「十分な期間、高水準で推移する必要がある」と述べ、「この期間を正確に予測することは不可能だが、すぐに終わることはまずあり得ない」と続けた。
ECB当局者は中銀預金金利は2024年に入っても4%で推移するとの見方を強く示しているが、短期金融市場は早ければ4月の利下げを織り込み、来年中には計1ポイントの利下げを想定している。
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は、ECBが来年4-6月(第2四半期)に利下げすることはないだろうと述べ、市場の利下げ観測は時期尚早との見方を示した。
ホルツマン氏はウィーンで記者団に対し、インフレ見通しには賃金動向や食料品価格に関して不確定要素があり、ECBはまだ利上げキャンペーンの終着点に達していない可能性があると語った。
同氏は第2四半期というのは「いくらか早いだろう」と述べ、「われわれはまだ意思疎通を図ろうとしているところだ。既に道の終わりにいると思わないでほしい」と続けた。
欧州連合(EU)で加盟国の信用問題が再燃している。信用格付けが「投機的等級」の瀬戸際にあるイタリアでは長期金利などが高止まりする。各国でも新型コロナウイルス対応に伴う積極財政をやめられず、財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えるEUルールの逸脱が続く。景気悪化の逆風もあり、市場の不安心理が高まっている。
米格付け大手ムーディーズは17日、イタリアの長期発行体格付けを「Baa3(トリプルBマイナス相当)」に据え置いた。主要7カ国(G7)で初となるデフォルト(債務不履行)のリスクが高い「投機的等級」への格下げは回避された。
格付けの見通しは「ネガティブ」から「安定的」に引き上げた。イタリアの経済成長が今後数年間期待できるほか、銀行の財務状態の改善が好材料となった。ただイタリアのGDP比の政府債務残高は約140%と高水準が続いていることを問題視し、格付けは「投資適格級」の下限であるBaa3に据え置いた。
投機的等級に格下げされれば、イタリア国債の金利上昇(価格下落)を招く可能性が一部で懸念されていた。他の格付け大手では米S&Pグローバルとフィッチ・レーティングスはいずれもトリプルBと投資適格級としている。
新型コロナウイルスやインフレへの対応による財政支出の拡大で、世界の主要国の格下げ懸念が広がっている。ムーディーズは10日に米国の信用格付けを最上位の「Aaa(トリプルA相当)」としつつ、格付けの見通しを「ネガティブ」に引き下げた。
スペインの首都マドリードで18日、北東部カタルーニャ自治州の独立運動に絡んで有罪となった受刑者らの恩赦に反対するデモが行われた。100以上の市民団体が呼び掛けたもので、地元メディアが伝えた当局の推計によると、約17万人が参加。国内各地で連日行われている抗議行動の中でも、有数の規模となった。
サンチェス首相率いる与党社会労働党が、独立派政党の要求を受け入れて恩赦法案を議会に提出。7月の総選挙で社労党は第2党にとどまったが、サンチェス氏は恩赦の見返りに、下院で今月16日に行われた投票で独立派の信任を取り付け、首相続投を決めた。
首都中心部のシベレス広場と周囲の道路は、大勢のデモ隊で埋め尽くされた。参加者は国旗や「民主主義の危機だ」と書かれたプラカードを掲げ、「サンチェスは裏切り者だ」「刑務所送りにしろ」と気勢を上げた。
総選挙で中道右派の国民党を第1党に躍進させながら、政権奪取に失敗したフェイホー党首と、極右政党ボックスのアバスカル党首もデモに参加。フェイホー氏は「恐れることはない。スペインは良識に立ち返らねばならない」と訴えた。
投資ファンドが、インフレリスクを回避しつつ世界的な食糧需要の増加にも便乗しようと、米国の農地を買い漁っている。ロイターの取材によると、買い集めた土地は既に100万エーカーを超えた。
米議員らは、投資企業が農地に関心を強めれば、次世代の就農者が農地を手に入れられなくなるのではないかと懸念。ファンドによる農地購入に制限を課す法案を提出しようとしている。
米国の農地は全体で9億エーカー近くあり、ファンドの取得分はそのわずかな部分に過ぎない。ただ、ロイターがファンドマネージャーへのインタビューと併せ、全米不動産投資受託者協会(NCREIF)のデータを分析したところ、マニュライフ・インベストメント・マネジメントやヌビーンなどの投資会社が2008年の世界金融危機以降、新たな投資手段を求め、農地の取得ペースを加速させていることが分かった。
NCREIFが四半期ごとに発表している農地指数によると、こうした企業が所有する不動産件数は、2008年から2023年第2・四半期までの間に231%増加し、金額ベースでは800%以上増えて162億ドルに達した。
農地は高インフレ期でも安定したリターンをもたらす。また、国連の予想では、人口増加により世界の食糧需要は2050年までに60%以上高まる見通しで、投資側は農作物需要が安定的に推移すると期待している。
米農務省のデータによれば、投資会社による農地取得は外国企業による購入ペースを上回っている。
米議員らは今年、米国の敵対勢力が政治的影響力を行使するために農地を購入する可能性を懸念し、外国人による農地所有を制限すべきか否かを議論した。
上院は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮による農地購入を禁止する条項を「国防権限法」に盛り込んだが、下院とのすりあわせはまだできていない。
農務省の最新データを見ると、外国法人が所有する農地の面積は2010年から21年にかけて64%増えて約4080万エーカーとなり、金額も約725億ドルと倍増した。
NCREIFは、投資会社の所有面積を公表していない。しかし、ロイターが企業のウェブサイト、持続可能性報告書、年次報告書、連邦政府への提出書類を調査し、農地指数の調査対象である7社中6社の幹部にもインタビューした結果、投資会社は合計約165万エーカーを所有していることが分かった。
農場管理会社ファーマーズ・ナショナル・カンパニーの不動産事業担当バイスプレジデント、ポール・シャーデッグ氏は、投資家が農地市場に参入すると地価を押し上げる可能性があると説明。投資家によって「新たな底値が定まった」と話した。
農業従事者の平均年齢が上昇傾向にある中、地価の上昇は若い農家や新規就農者の参入障壁になっている、とミズーリ農村危機センターのコミュニケーション・ディレクター、ティム・ギボンズ氏は言う。「次世代が農場に戻ってくるように仕向けなければ、誰がその土地を所有することになるだろうか」と問いかける。
農務省によると、農地1エーカーの平均価格は2010年に2700ドルだったのが、23年には5460ドルと過去最高を記録した。コモディティー価格の上昇や需要の強さが原因だ。
農地の約60%は農家が所有・経営しており、残りは個人、信託、企業など農家以外が所有している。
<手堅い資産、金に類似>
農地はインフレに強く、土地のリースを通じて安定したリターンをもたらし、ダウンサイドリスクが限定的なので農地を購入する、と投資会社は説明している。2008年の金融危機後、投資家が分散ポートフォリオを構築するようになったことで、こうした農地の特徴は魅力を増した。
不動産投資信託、グラッドストーン・ランドのデビッド・グラッドストーン最高経営責任者(CEO)は「農地は手堅い資産だ。金に似ている。逃げて行く心配はない」と話す。
グラッドストーンが今年8月に行った投資家向け説明会によると、NCREIF農地指数の過去25年間の平均年間リターンは11.4%で、S&P500種総合株価指数(.SPX)の9.3%を上回った。
マニュライフのウェブサイトには、世界的に食糧需要が増えているため、農地は成長の潜在性を提供してくれる、と記載されている。同社は昨年の報告書で、米農地28万4413エーカー、33億ドル相当を保有していることを公表した。ヌビーンは今年の報告書で、75万1000エーカー、66億ドル相当の農地保有を明らかにしている。
議員らは次の5年間の農業法に、だれが農地を買えるかに関する基準強化の盛り込みを検討中だ。年内に可決したい意向だったが、議会のこう着状態により来年に持ち越される可能性が高い。
7月に提出され、70の農業・農村団体が支持した法案は、投資ファンドによる農地の購入とリースを抑制し、大企業が補助金や保険といった農務省の農業プログラムを利用することを禁止する内容となっている。
米テキサス州のアボット知事は、来年の大統領選でトランプ前大統領を支持すると表明した。
野党共和党の大統領候補指名争いで先頭を走るトランプ氏はアボット氏とともに、メキシコ国境近くにある同州エディンバーグで勤務する州兵らを慰問し、再び大統領に就任すれば移民を厳しく取り締まる姿勢を打ち出した。
アボット氏は、バイデン大統領の国境管理政策は米国全土の地域社会に危険をもたらすと批判した一方、トランプ氏は大統領時代に移民流入を過去数十年の最低水準に減らしたと評価した。
さらに「私はここで皆さんに言おう。バイデン氏の大統領としてのリーダーシップの下で米国はもはや絶対に存続できない。われわれには国境の安全を確保してくれる大統領が必要だ」と語った。
トランプ氏は、アボット氏の支持表明を光栄に思うと述べた上で「(私が大統領になれば)皆さんは国境問題で不安に思わなくても良くなる。テキサスでもアリゾナでも、州知事諸兄も国境の心配は無用になるだろう」と言い切った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中欧の防衛関連企業と政府当局者によれば、兵器や軍装備品、関連サービスの輸出を拡大するため、防衛関連各社が新たな契約交渉を進めているという。相手は、ロシアに代わる調達先を探しているアフリカ諸国だ。
たとえばチェコは、現在では西側の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の一員だが、チェコスロバキアの一部だった時期には、旧ソ連などで構成されたワルシャワ条約機構に加盟していた。共産圏だった頃にアフリカ諸国に対して武器の安定供給を行った実績があったため、関連システムのメンテナンスや改良はお手のものだ。
「アフリカ諸国は最高の新規市場だ。いまだに旧ソ連時代の軍備を使用しているが、今は西側のテクノロジーを取り入れたいと考えている」。チェコの防衛関連業界団体である防衛・安全保障産業協会で会長兼ディレクターを務めるジリ・ヒネック氏はロイターの取材に対し、そう語った。
「『ソ連製品の西洋化』と私たちは呼んでいる」
チェコの航空機メーカー、アエロ・ボドホディーがその一例だ。フィリップ・クルストルンク営業担当執行副社長によれば、練習・軽攻撃機「L-39NG」の売却契約、さらには旧型機の更新についても新規顧客と交渉を進めているという。
「新規の潜在顧客からの関心が高まっている。彼らはロシア製・中国製の軍備を廃棄し、西側の代替品に入れ替えることを模索している」とクルストルンク氏は言う。交渉の相手国についての詳細は明らかにしなかった。
チェコは2022年、約3200万ユーロ(52億2800万円)相当の弾薬、銃、軍用機などの軍需品をサハラ砂漠以南のアフリカ10カ国に輸出した。これらアフリカ諸国の多くは、西側が使用するものとは規格や口径が異なる旧ソ連時代の兵器に依存している。輸出額は、わずか200万ユーロ未満だった2011年に比べて大幅に増えた。
<ウクライナ侵攻による「隙」>
ロイターでは、チェコとポーランドの防衛関連企業、政府当局者6人ほどに取材した。その説明によれば、ロシアがウクライナ侵攻に気を取られている隙に、アフリカ軍需市場でのシェア拡大に向け新たな攻勢を仕掛けたという。
各社とも競争上の理由から、売り込みの具体的な内容やターゲットとする国についての詳細はほとんど明らかにしなかったが、交渉中の取引には銃、弾薬その他の装備やサービスが含まれているという。
防衛・民生品製造の未公開企業、チェコスロバク・グループ(CSG)はチェコ最大の防衛関連企業だ。同社は旧ソ連時代の規格を採用した装甲車両の保守・改修能力を備えており、アフリカでのビジネス獲得に役立っているという。
CSGの広報担当者アンドレイ・シルテク氏はロイターに対し、「当社は東側が開発した陸上軍事システムの保守・改修において傑出した能力を持っており、アフリカの顧客から見れば、ロシアの調達先に依存する必要がなくなる」と語った。「すでにアフリカでの多くのビジネスでこの能力を活用してきた」
ストックホルム国際平和研究所によると、ロシアは2018-22年の5年間で、サハラ砂漠以南のアフリカにおいて中国を抜いて最大の武器輸出国となり、市場シェアは26%に上昇した。
同研究所で武器供給分野における上級研究員を務めるピエテル・ベゼマン氏によれば、ウクライナ侵攻開始以降の最近のアフリカ向け輸出についてはデータ処理が完了していないものの、信頼性に対する懸念から、一部の国がロシア以外の調達先確保を急ぐ可能性があるという。
「チェコの防衛関連業界は旧ソ連製兵器に関する専門能力を持っており、アフリカ諸国への装備や部品の輸出、各国が使用する兵器の整備において有利になるかもしれない」とベゼマン氏は語る。
ポーランドの国営企業PGZ傘下の数十社は、兵器や銃弾、装甲兵員輸送車、無人機システムその他の装備を製造している。PGZのセバスチアン・シェワレク最高経営責任者(CEO)はロイターに対し、同社はこの1年間、アフリカ市場開拓に向けて売り込みを強化してきたと語った。
無人機やミサイルシステムなどを製造するポーランドの軍事技術企業WBグループも、この1年間、自社の得意分野に対しアフリカの潜在顧客からの注目が高まっていると感じている。
WBグループの広報担当者レミギウス・ウィルク氏は「先日もポーランドで開催された兵器見本市に参加したが、当社のブースには、この見本市を初めて訪れたとおぼしきアフリカからの視察団が数多く訪れた」と話す。
「ある市場で既存のプレーヤーが姿を消したり、存在感が低下すれば、他のプレーヤーには必ず有利に働く」
<貿易使節団>
アフリカへの進出強化を裏付けるように、今月初めにはチェコの貿易使節団がエチオピア、ケニア、ガーナ、コートジボワールを訪れた。チェコのフィアラ首相によれば、訪問の主な目的は防衛関連産業の商機拡大だという。
使節団に参加したチェコのポジャール国家安全保障顧問によると、この訪問を契機として交渉が始まった防衛関連取引の規模は数十億コルナ相当であり、エチオピアと協議を進めている軍用機の近代化や旧ソ連時代の技術の更新もその一例だという。
ポジャール氏はロイターに対し「私たちが力を注いでいるのは、アフリカ諸国が何よりも求め、必要としていることに耳を傾けることにより、アフリカにおける以前からのパートナーとの関係を再開、強化することだ」と語った。
チェコ政府の特使として複数回にわたり対アフリカビジネス使節団の団長を務めたコペクニー元防衛副大臣は、新たな防衛関連取引を促進するもう1つの策として、アフリカ諸国の指導者を首都プラハに招待することを挙げた。
チェコ語を話すモザンビークのニュシ大統領もその1人だ。同大統領は8月にチェコを訪れたが、コペクニー氏によれば、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の指導者によるプラハ訪問は20年以上ぶりだったという。
「こうした活動の一部は、防衛関連産業による協力にも支えられている。これまでの官民による共同の取り組みにおいても欠かせない部分だったからだ」とコペクニー氏は語った。
チェコの人口は1050万人。長年にわたり兵器生産に関しては国の規模に不釣り合いな競争力を誇っており、2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始以来、ウクライナに対する弾薬や装備、その他の兵器の供給においても先頭に立ってきた。
ウクライナ向け供給に力を入れることでチェコ企業は生産を強化し、供給ラインを拡大しており、評価が高まっている。そう話すのは、チェコを拠点に活動するフリーの防衛アナリスト、ルーカス・ビジングル氏だ。
ビジングル氏は「チェコの軍需産業はアフリカ諸国の一部に向けた営業努力を強化しつつある。これらの国は今も旧ソ連式の装備を使っているが、武器調達先としてのロシアには問題が多いと感じ始めているからだ」と語った。
ロシア政府は西側投資家からロシア企業株を強制的に収用する新たな大統領令の検討を進めており、西側投資家の間では、大幅な安値での株式売却を迫られるのではないかとの不安が広がっている。
ロシア政府は新たな大統領令により、外国人株主から戦略的企業の株式を買い取る「超先買権」を手に入れる可能性がある。ウクライナ紛争を機に西側諸国が強力な制裁を発動して以来、ロシアは海外投資誘致策を中止するなど、大手上場企業に対する外国人の所有権や影響力を抑えようと躍起だ。既に一部の投資家が損失を被ったり、保有株が部分的に消滅したりしている。
ロシア財務省のイワン・チェベスコフ金融政策局長は14日のロイターの取材で、大統領令の改正が進んでおり、ロシア市場から撤退する外国人から戦略的企業の株式を買い取る「超先買権」を政府に与える可能性があると明かした。「この超先買権は特定のケース、特定の企業に対してのみ適用される。正確なリストはまだ承認されていない」という。
また「関係するのは政府が既に株式を保有している戦略的企業だけ」で、「対象となる企業リストの範囲はかなり狭い」とも述べ、新たな政令が年内に発表される可能性は低いとの見方を示した。
大統領令改正は透明性を欠き、日程も曖昧で、対ロシア投資の見直しを望んでいる投資家や企業は予測不可能な状態に置かれている。
こうした大統領令が承認された場合、ロシアに敵対的とみなされる国の投資家は、保有するロシア株の価値を回復する上で一段と大きな困難に直面する可能性が高いと、投資アドバイザー5人が証言。法律事務所のパートナーは、改正大統領令によって、売り手が最終的な条件に満足しない場合には、申請を撤回し、売買を成立させない権利を有するかどうかが明らかになるかもしれないと述べた。
<売り手の不安>
投資アドバイザーによると、ロシア政府は株式収用の際に買い取り価格を市場価値から少なくとも50%割り引くことが予想されるという。
米国を拠点とするカイザー・コンサルティングの財務コンサルタント、トーマス・J・ブロック氏は「今回の措置は明確な資産没収とは言えないが、不安を抱える売り手にとっては同じ結果になる」と述べた。
ロシア政府が代金を米ドルで支払うかどうかも疑わしい。プーチン氏は10月、ルーブル相場を支えるため、一部の輸出企業に外貨収入の大部分をルーブル交換するよう強いる法令に署名した。
モーニングスター・ダイレクトの最新の推計によると、同社が追跡している、ロシア株に投資するグローバルファンドの資金動向は、9月が約4200万ドル(約63億円)の純流出となり、流出の規模が8月の約3700万ドル、7月の約650万ドルから増加した。
<狙いは資金調達か>
アドバイザー2人は、ロシアには財政ひっ迫を肌身に感じているらしい兆しがあり、株式の強制収用は資金調達手段だと説明した。
ロシアのアナリストによると、政府は軍事に予算を投入する一方、事業活動の課税を強化しつつ、政府予算は楽観的な収入予測に依存している。またロシア中央銀行はインフレ抑制のため政策金利を2桁の水準に維持する。
インタファクス通信は7月25日、連邦国家資産管理局に先買権を与える手続きについてプーチン氏が当局者に指示したと報じた。「大幅な割引価格で」購入された資産は、「その後に市場価格で売却」され、その代金は連邦予算に振り込まれるという。
西側の投資家は既にロシア資産の売却が難しくなっている。
JPモルガンは7月、同社が発行した預託証券の裏付けとなっている、ロシア食品小売り大手マグニト(MGNT.MM)の株式の回収を目指していると投資家に説明。これに先立ち、ドイツ銀行も顧客が保有するロシア株への完全なアクセスを保証できなくなったと警告を発していた。
投資会社リーガル・ポイント・キャピタルのマネジングパートナー、ビジェイ・マロリア氏は「普通に機能している市場の混乱は影響が非常に大きく、いつ信頼を取り戻せるかは誰にも分からない」と述べた。
中国人民銀行(中央銀行)と複数の金融規制当局は17日、不動産部門の資金調達の支援を確実に行うと表明した。地方政府の債務リスクの解消についても協力する意向を示した。
中国証券監督管理委員会は、中銀と金融規制当局の会合後、金融機関が不動産会社の合理的な資金調達ニーズに対応し、不動産会社からの融資の引き揚げを控えると表明。銀行融資、債券、株式を通じた不動産部門への与信を安定させる最近の取り組みに弾みがついていると述べた。
経済成長を支えるため、安定的な信用拡大を促すとも表明。金融機関は地方政府と協力して債務の返済期限延長・切り替え・借り換えを通じて債務リスクを解消すべきだと述べた。
中国商務省は17日、王文濤商務相がレモンド米商務長官との16日の会談で米国の半導体輸出規制や対中制裁、中国からの輸入品に対する関税に懸念を示したと表明した。
会談では来年第1・四半期に次官級で商務作業部会の初会合を開催することでも合意。国家安全保障上の懸念と貿易・経済協力のバランスを取る必要性について協議したという。
中国商務省は、王文濤商務相がサンフランシスコで行われたレモンド商務長官との会談で「国家安全保障上の懸念と貿易・経済協力の境界について双方が協議することが非常に重要だ」と伝えたと表明。
「王文濤商務相は、米国の対中半導体輸出規制の最終ルール、中国企業に対する制裁、双方向の投資規制、通商法301条に基づく関税に懸念を表明した」としている。
世界の貿易金融で人民元のシェアがユーロを抜いて2位になった。世界的に金利が上昇する中、人民元の金利が低く、多国籍企業が人民元建て債券の発行や中国本土の銀行からの借り入れを増やしていることが背景だ。
メイバンクの為替担当シニアストラテジスト、フィオーナ・リム氏は、海外投資家は地政学リスクや低成長に対する懸念で中国から資金を引き揚げているが、「元安や中国の利下げで中国元の資金調達コストが大幅に低下している」と指摘。
BMW(BMWG.DE)やクレディ・アグリコル(CAGR.PA)といった海外企業や中国企業の海外子会社がパンダ債(外国企業などが中国本土市場で発行する人民元建て債券)の発行を通じて1─10月に調達した資金は過去最高の1255億元(173億3000万ドル)。前年同期比61%急増した。
ナショナル・バンク・オブ・カナダ(NA.TO)も先月、期間3年のパンダ債で10億元を調達。表面利率は3.2%で、カナダ国内の4.5%を下回った。
香港の点心債(オフショア人民元建て債券)発行も1─8月に前年同期比62%増の3430億元と過去最高を記録。香港の人民元建て融資も急増している。
中国人民銀行(中央銀行)は先月、「パンダ債は資金調達通貨としての人民元の役割拡大に着実に寄与している」と指摘。銀行に対し海外企業への融資を行い、人民元の国際化を進めるよう促した。
国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、世界の貿易金融に占める人民元のシェアは9月に5.8%と年初の3.91%から上昇。始めてユーロを抜いた。
ドルのシェア(84.2%)は大幅に下回っているものの、人民元の国際的な利用状況を示すスタンダード・チャータード銀行の指標や中国銀行のクロスボーダー人民元指数(CRI)などは今年、軒並み過去最高を記録している。
<ローカルな国際化>
ただ、アナリストは人民元建て債券の利用は限られており、人民元の国際化が広範に進んでいるとは言いがたいと指摘。
ドイツのフォルクスワーゲン・グループ(VOWG_p.DE)はロイターに対し、初のパンダ債発行で調達した15億ドルを中国国内の事業のみに利用すると表明。メルセデスベンツ・グループ(MBGn.DE)もパンダ債で調達した資金を中国の自動車リース事業に充てる計画だ。
キャピタル・エコノミクスのアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は「人民元を使ったクロスボーダー取引の半分以上は、依然として中国本土と香港の間で行われている。これは非常にローカルな国際化だ」と述べた。
貿易金融や貿易決済での人民元の利用は、中国の広域経済圏構想「一帯一路」に参加する途上国など、概ね友好国に限られている。
ウィリアムズ氏は「人民元の貿易決済への利用は急増しているが、それはロシア、アルゼンチン、パキスタン、ナイジェリアといった特定の二国間に限定されている」と指摘。地政学的に米国と連携する国々は「人民元に切り替える姿勢は見せておらず、貿易での人民元の利用は世界的には伸び悩むだろう」との見方を示した。
台湾の野党、台湾民衆党を率いる柯文哲・前台北市長は19日、来年の総統選に出馬する意向を表明した。最大野党・国民党との候補者一本化に向けた協議はますます難しくなりそうだ。
柯氏はこの日のキャンペーンイベントで、民衆党の総統候補として「結束できる全ての力を結集し、最後まで戦い続ける」と述べた。
民衆党と国民党はこの数日間、1月13日に行われる総統選の候補者統一について協議していたが、世論調査結果をどのように解釈し、どの候補者の勝利の可能性が最も高いかを判断する方法を巡り、話し合いが行き詰まっていた。
立候補の届け出期限は24日。国民党の侯友宜・新北市長と民衆党の柯氏のどちらかに候補者を一本化できなければ、これまでの世論調査のほとんどで優勢を維持している与党・民進党の頼清徳・副総統に野党候補が勝利するのは困難になるとみられる。
民衆党は今回のイベント後、国民党との交渉にはなおオープンだと説明したが、柯氏のコメントは、自身が統一候補として率いるのでなければ参加しないことを示唆している。
中国のマンション価格が都市の規模に応じて二極化している。大都市では前年同月比で上昇が続くが、中小都市では下落が止まらない。人口の流出入という潜在需要の大きさに違いがあるほか、不動産刺激策など政策の効果が大都市に集中し地域間格差を広げている面もある。地方都市には不動産以外に目立った産業がない地域も多く、不動産の長期低迷は地方経済を一段と疲弊させ財政難に拍車をかける恐れがある。
●中東
ヨルダンのサファディ外相は16日、水と引き換えにイスラエルにエネルギーを供給する取引に署名しない意向を表明した。当初は先月批准する予定だったという。
中東の衛星テレビ、アルジャジーラのインタビューで「地域のプロジェクトについて対話していたが、進展しないことが戦争で判明した」と語った。
また、ヨルダンはイスラエルがパレスチナ自治区ガザで行っている「報復のための蛮行」を終わらせることに重点を置いて取り組んでいると述べた。
戦闘終結後に誰がガザを統治するかを巡っては協議しないとも強調。現時点でそうした議論をすれば、イスラエルが何をしても良いという「青信号」と受け止められかねないとし、「この問題について国際社会が協議を望むなら、直ちに停戦しなければならない」と訴えた。
米国とイスラエル、イスラム組織ハマスは、5日間の戦闘休止と引き換えに、パレスチナ自治区ガザで人質となっている数十人の女性と子どもを解放することで合意に近づいている。米紙ワシントン・ポストが合意案に詳しい複数の関係者を引用して伝えた。
6ページから成る文書によると、最初の50人以上の人質を24時間ごとに小出しに解放する間、全当事者が少なくとも5日間は戦闘作戦を凍結する。人質の解放は数日以内に開始される可能性があるという。
戦闘休止は、エジプトからガザへの燃料を含む人道支援の搬入を大幅に増やすことも目的。
ワシントンの在米イスラエル大使館の報道官は人質の状況について、ワシントン・ポストへのコメントを控えた。
ワシントン・ポストの報道に関する質問に対し、米国家安全保障会議のワトソン報道官は、「まだ合意に達していないが、われわれはそれに向け懸命に取り組んでいる」とコメントした。
イスラエルはイスラム組織ハマスとの6週間にわたる戦闘が「次のステージ」に入りつつあるとしており、照準をガザ地区南部にシフトさせている。
ネタニヤフ首相は、ハマス首脳が南部ハンユニス周辺に隠れていると確信しているかどうかについて明言しなかったが、「われわれは彼らに迫る」と記者団に語り、ハマス指導者は全員「死刑宣告を受けたようなものだ」と述べた。
国連機関によると、この1週間のイスラエル軍による地上作戦の中心となったガザ北部のシファ病院から18日、避難民約2500人が患者やスタッフと共に退避した。
ハマスのスポークスマンは、一部の人質の監視に当たっていたグループとの連絡が途絶えていると明らかにした。米国と欧州連合(EU)はハマスをテロ組織に指定している。
バイデン政権の中東担当上級顧問を務めるブレット・マガーク氏は、ガザへの援助を大幅に増やし戦闘を一時停止するには、ハマスがより多くの人質解放に同意しなければならないと述べた。
イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘が2カ月目に入った。ハイテクに強いイスラエルのスタートアップ企業にとっては労働力確保や資金調達の逆風となる。ただ過去の紛争からは速やかに立ち直ってきたとの自負が国内では強い。
リヤド:11月20日、アラブ・イスラム諸国の閣僚はガザでの戦争を終結させることを目的とした歴訪の最初の行先として中国を訪問する。サウジアラビアの外務大臣、ファイサル・ビン・ファルハーン王子が明らかにした。
サウジ外務省が18日にXに投稿したコメントによると、この歴訪は今月初めにリヤドで開催されたアラブ・イスラムサミットで成された決定をイスラム閣僚委員会が実行に移すための最初の一歩であると、ファイサル王子はバーレーンで開かれたIISS地域安全保障サミット(マナーマ対話)の際に述べた。
閣僚たちは中国に続いて、複数の国の首都を訪問して即時の停戦の実現とガザへの援助物資の搬入を進めるための強力なメッセージを伝える。
18日、ファイサル王子はジョセップ・ボレル欧州連合外交担当相とガザ情勢について議論を交わした。
会談後報道陣の取材に応じたファイサル王子は、和平の重要性について国際社会では合意があるものの、即時停戦の必要性に対してはまだ十分な注意が払われていないと述べた。
「ある時点で中東地域の我々全員にとって安全の保証となる、パレスチナ国家樹立を伴う恒久的和平に向けた取り組みを再開することが可能だ。しかし、目下の優先事項は戦闘の終結だ」
王子はさらに、次のように続けた。「我々は協力して、この戦争とガザで毎日見られる民間人の苦しみを終わらせなければならない」
イスラエルはガザ地区の標的に対して容赦ない爆撃と地上攻撃を行っており、その結果これまでに1万2,300人が犠牲になり、100万人以上が避難民となった。
リヤド:サウジアラビア外相のファイサル・ビン・ファルハーン王子は18日、欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表とガザ情勢の進展について協議した。
両外相はバーレーンで開催された英国国際戦略研究所(IISS)マナマ安全保障サミットに合わせて開かれた会談で、ガザ地区の最新情勢や同地域における軍事的エスカレーションについて話し合った。
ファイサル王子はガザ地区で軍事的エスカレーションや民間人に対する不法行為が続いていることを非難し、軍事行動の激化と、パレスチナ人のガザ地区からの強制退避を停止することの重要性を強調した。
「我々は国際社会に対し、占領軍によるガザ地区の民間人に対する暴挙をとめるよう求めます」とファイサル王子は語った。
イスラエル政府は19日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海で貨物船を拿捕(だほ)したと明らかにした。船は英国の会社が所有し、日本企業が運航しているという。
イスラエルの首相府は、乗組員にイスラエル人はおらず、イスラエルは所有や運航に関与していないと説明した。
「これはイランのテロ行為であり、自由世界の市民に対するイランの好戦的な態度がエスカレートしていることを意味する」と批判した。
フーシ派は、イスラエル企業が所有・運航する船舶やイスラエル国旗を掲げる船舶を標的にする可能性があると述べていた。
フーシ派は声明で、紅海で船舶を拿捕したとし、イスラエルの船だと主張。「イスラムの原則と価値観に従って船の乗組員を扱っている」と説明した。
パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの10月の戦闘開始後、フーシ派はイスラエルに向けて長距離ミサイルやドローン(無人機)による攻撃を行っている。
●中南米・アフリカ
南米アルゼンチンで19日、大統領選の決選投票が始まった。10月の投票では勝利の条件を満たす候補者がおらず、反米左派の与党連合から出馬したセルヒオ・マサ経済相(51)、右派で野党のハビエル・ミレイ下院議員(53)が決選投票に進んだ。両候補による接戦が予想されている。
19日投開票のアルゼンチン大統領選決選投票で、与党連合の中道左派セルヒオ・マサ経済相がリバタリアン(自由至上主義者)のハビエル・ミレイ下院議員の勝利を認め、敗北宣言を行った。
マサ氏はブエノスアイレスの選挙対策本部で「ミレイ氏に電話し、祝意を伝えた」と語った。
●市況
<為替> ドル指数が下落した。週間では今年2番目となる大幅な下げを記録。一方、世界経済の見通し軟化を巡る懸念が高まる中、円高が進み、ドル/円は1ドル=150円を下回った。
今週は14、15日に発表されたインフレ関連指標が市場予想を下回ったことで、米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げに対する市場期待が高まった。
ドル指数は9月1日以来の安値まで下落したほか、米10年債利回りは4.379%と2カ月ぶりの低水準を付けた。
CIBCキャピタル・マーケッツでFX戦略の北米責任者を務めるビパン・ライ氏は「最近の相次ぐデータはインフレ面での進展を示している」と述べた。
<債券> 長期国債利回りが低下した。11月に入ってからの米国債利回りの低下はこの日も続いた。指標となる10年債利回りは一時2カ月ぶりの低水準を付けた。
フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、FRBが3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げを行う可能性を28%織り込んでいる。
<株式> 小幅高。最近の値上がりを消化する動きとなったほか、連邦準備理事会(FRB)当局者の一連の発言を受け、利下げ開始時期見通しを巡る不透明感が強まった。ただ、米10年債利回り低下は相場を支えた。
半導体製造装置最大手アプライド・マテリアルズ(AMAT.O)は4%下落し、相場を圧迫。四半期決算のほか、同社が規制を擦り抜け、中国半導体最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)に製品を輸出した疑いで刑事捜査を受けているというニュースが材料視された
<米原油先物> 前日に大きく売り込まれた反動で買い戻しが入り、大幅反発した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値(終値に相当)は、前日比2.99ドル(4.10%)高の1バレル=75.89ドル。ただ週間では1.66%下落し、4週連続のマイナスとなった。1月物は2.95ドル高の76.04ドル。
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。インフレ鈍化や経済成長の減速を示す一連の経済指標を受けて政策金利がピークに達したとの見方が広がり、相場を押し上げた。
17日は、英スーパーマーケット大手のテスコ(TSCO.L)が0.3%上昇。同社の銀行業務買収の可能性を英銀大手のバークレイズ(BARC.L)が検討しているとロイター通信が伝えたのが買い材料となった。バークレイズは2.7%上げた。
LSEG(ロンドン証券取引所グループ)(LSEG.L)は1.6%高。中期的な増収率見通しを引き上げ、24年に10億ポンド(12億4000万ドル)の株主還元を実施すると発表したことが好感された。
<欧州株式市場> 反発して取引を終えた。主要中央銀行が来年には積極的な利下げに踏み切るとの観測が強まって買いが優勢だった。
ヘルスケア株指数(.SXDP)は1.21%高。英製薬大手アストラゼネカ(AZN.L)、フランスのサノフィ(SASY.PA)、デンマークのノボノルディスク(NOVOb.CO)が0.9─2.3%上昇した。
一方、スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーズ(VOLCARb.ST)は11.1%下落。筆頭株主の中国の自動車大手、吉利汽車(0175.HK)が前日終値を大幅に下回る価格で株式の一部を売却したことが嫌気された。
<ユーロ圏債券> 不安定な地合いの中、ドイツ債利回りが2カ月超ぶりの低水準を付けた。インフレ緩和と成長鈍化に伴い、主要中銀が来年、より早期により積極的に利下げに踏み切るとの見方を受けた。
デリバティブ市場では、ECBが来年末までに金利を現在の4.0%から3.0%に引き下げる必要があるとの見方が織り込まれている。
日経先物33,490、ダウ先34,987、債先145.81、米4.439、独2.5860、仏3.152、西3.593、伊4.353、英4.1320、波5.468、原油76.04、銅8,314、ドル円149.59、ユーロドル1.0916
※11/17 NY引け値
備忘録(2023/11/16)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は16日、欧州の銀行が資金調達のために債券を売却する必要が生じた場合、大きな損失を被る可能性があると述べた。
自身が議長を務める欧州システミックリスク委員会(ESRB)の年次会合で「欧州連合(EU)の銀行が保有する債券は、売却が必要になった場合、かなり大きな評価損が発生する可能性がある」と語った。
欧州中央銀行(ECB)は15日、委託先のIT(情報技術)サービスの質が低いことによりユーロ圏の銀行は多額の損失を被っていると明らかにした。
ECBはハッキングやシステムの老朽化、請負業者による約束不履行などのリスクに銀行がどれだけ対処できているかについて、今年調査を行い、2020年以降22回の検査を実施した。
それによると「外部委託したサービスが利用できなかったり、質が低かったり」した結果、銀行は22年に1億4800万ユーロ(1億6059万ドル)の損失を被った。損失額は前年比360%増加した。
ECBはニュースレターで、これらの損失は「少数の重要な金融機関に集中しているため、業界全体の傾向を示すものではない」と説明した。その一方で銀行の外部委託契約はセキュリティー要件に十分に対処できていないことが多いと指摘した。
銀行はデータの保管を自社サーバーからクラウドサービスに切り替えており、業務委託の活用が拡大している。
ECBによると、クラウド費用は22年に56%増加し、銀行のIT関連費用全体の3.1%を占めた。
銀行のサイバーセキュリティー対策には「予想以上に深刻で広範囲に及ぶ」根本的な欠陥があるとした。多くの銀行はリスクを全ては把握できていなかったり、問題を検知し対応するための適切なシステムを導入していなかったりしたという。
ITとサイバーセキュリティーのリスク管理を監督当局の期待に一致させるように早急かつ具体的な措置を講じるよう求めた。
米連邦預金保険公社(FDIC)は16日、地銀破たんに伴う預金保険基金(DIF)の原資補充を巡り、金融業界の一部反対を押し切って大手行に大半を負担させる計画を承認する見通しだ。
内情を知る関係者によれば、FDICは5月に提示した補充案の中核部分を承認するとみられている。DIFの保護対象となる預金額の上限は通常、口座当たり25万ドル(約3800万円)だが、FDICは3月、経営破たんしたシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー・バンクの預金を全額保護するという異例の決断を下した。
FDICはコメントを差し控えた。
DIFを補充するための追加保険料、いわゆる特別賦課金を巡っては、金融業界から支払い額の算出方法について変更を求める声が上がっていた。情報は部外秘だとして匿名を条件に語ったある人物によると、業界の要請は検討されたが、最終的には反映されなかった。FDICが5月に明らかにした計画では、資産規模500億ドル以上の金融機関が特別賦課金全体の95%を負担し、資産額が50億ドル未満の機関については追加支払いの必要がないとされていた。
欧州中央銀行(ECB)は、金融業界が気候変動や環境に関するリスクを十分管理できていない状態が続いており、その責任を問われ得ることを金融機関の幹部に知っておいてほしいと考えている。
ECBのエルダーソン理事は、一部銀行の帳簿に含まれるESG(環境・社会・企業統治)関連のリスクについて、担当する幹部の「適性や妥当性をますます疑わせる」との見方を示した。
ECBによると、銀行は気候変動や環境関連のリスクについて財務に影響を与えかねない重大な脅威として扱うのに時間を要し過ぎているという。
欧州連合(EU)がサステナブルファイナンス・アジェンダを策定し始めてから5年が経過。エルダーソン氏の発言は、このテーマに関するECBの最も厳しい警告の一つと言える。
気候変動や環境に関するECBによるリスク管理の要件を満たさない銀行は、「そうした問題が未解決のままの場合、日々ペナルティーを支払わなければならないだろう」と同氏はこのほど述べた。
こうした発言は、EU域内の金融業界にESGリスクの管理を強化させようとするEU当局の警告に拍車をかけるものだ。
欧州銀行監督機構(EBA)は10月、金融機関が環境・社会関連のリスクをいわゆる「第1の柱」(最低所要自己資本比率)によるバッファーに反映するよう自己資本規制の枠組みを見直すと公表。同月12日、ESG要素が「銀行セクターのリスクプロファイルを変えつつある」ことから、新たなルールが求められているとしていた。
●その他産業
●決算関連
米小売大手ウォルマート(WMT.N)は16日、2024年1月期決算の1株当たり利益予想を6.40─6.48ドルに上方修正した。従来予想は6.36─6.46ドルだった。また、通年の既存店売上高伸び率も5─5.5%増に引き上げた。従来は4─4.5%増としていた。上方修正は2回目となる。
ただ、インフレと金利上昇を受けて米消費者の支出に対する慎重な姿勢が続いているとも指摘した。
この日発表した23年第3・四半期決算(10月31日まで)の既存店売上高は4.9%増(燃料費を除く)となり、予想の3.35%を上回った。オンライン売上高は15%増加した。
第3・四半期の調整後1株当たり利益は1.53ドル。アナリストの平均予想は1株当たり1.52ドルだった。
しかし決算後の電話会議で同社幹部は、金利が上昇し家計の貯蓄が目減りしているため、過去2カ月間の売り上げには「多少ばらつきがある」と指摘した。レイニー最高財務責任者(CFO)は「これは90日前と比較して、個人消費についてより慎重に考える理由となる」と述べた。
第3・四半期の来店客数は3.5%増加したが、消費者は「まだ選別的かつ慎重だ」いい、ブラックフライデーやサイバーマンデーのような販促イベントを待っているとした。
幹部が年末商戦に向けて慎重な発言を行ったことで、株価は午前の市場で7%超下落している。
ただ、前日には史上最高値となる169.94ドルを記録。年初来では20%近く上昇しており、同業他社よりも相対的に割高となっている。
英高級ファッションブランド、バーバリー (BRBY.L)は16日、高級品への支出が世界的に伸び悩んでいるとして、2桁台前半の年間増収目標の達成が厳しいとの見通しを示した。
中国での成長が鈍化したことから第2・四半期の既存店売上高は1%増と前四半期の18%増から急減速した。
バーバリーの株価は序盤の取引で10%下落した。
ケイト・フェリー最高財務責任者(CFO)は記者団に、中国の需要は第2・四半期を通じて弱まり、9月には減速の程度が明らかになったと述べた。
英国でも需要が減退し、米大陸では既存店売上高が10%減少した。
バーバリーは中国の高級品消費者の支出が中国本土から海外にシフトしているとし、旅行客の増加が欧州各地で追い風になっていると分析した。
●先進国、グローバル、金融市場
米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)の資産残高は2週連続で過去最高を更新した。5%を超える金利や債券市場のボラティリティー上昇を受け、投資家が安全資産に向かった。
米投資信託協会(ICI)のデータによると、11月15日終了週に米MMFに流入した資金は約219億ドル(約3兆3000億円)。総資産は5兆7300億ドルと、前週の5兆7100億ドルから増加した。
米連邦準備制度理事会(FRB)が数十年ぶりの積極的な引き締めサイクルを開始した昨年以来、投資マネーがMMFに押し寄せている。ファンドマネジャーは金利上昇の恩恵を銀行よりも早く利回りに反映させている。
15日終了週の資金流入の内訳をみると、米財務省短期証券(TB)、現先取引、政府機関債などの証券に投資するガバメントMMFの資産は189億ドル増の4兆6800億ドル。一方、コマーシャルペーパー(CP)など相対的にリスクが高めの資産に投資する傾向があるプライムMMF
スペイン下院(定数350議席)は16日、サンチェス首相の信任投票を実施し、賛成179票・反対171票で首相の続投が決まった。7月23日に行われた総選挙以来、新政権樹立は膠着していたが、ようやく終止符が打たれた。
サンチェス氏が率いる社会労働党(PSOE)は、支持獲得に向けて争点となっているカタルーニャ自治州の分離・独立派に対する恩赦などを巡り多くの地域政党と個別に合意に達した。
ドイツのショルツ首相は、短文投稿サイト「X」(旧ツイッター)でサンチェス氏を祝福した。
マドリードに本部を置くシンクタンク、シンキング・ヘッズによると、サンチェス首相は重要法案を可決させるため、引き続き地域政党に依存することになる。
12日にフランスの首都パリで行われた反ユダヤ主義に抗議するデモで、群衆に合流した一つの政治グループが異彩を放った。それは極右政党、国民連合(RN)の支持者と前党首のマリーヌ・ルペン氏だ。
マリーヌ・ルペン氏の父で、RNの前身の国民戦線を率いたジャンマリ・ルペン氏がかつて、ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)について「第2次世界大戦の歴史におけるささいな出来事」との暴言を吐いたことを踏まえると、今回のデモにRNが登場したのは、これ以上ないほど注目に値する動きと言える。
デモへの参加は、マリーヌ・ルペン氏が進めてきた、RNを「普通の政党」と印象付ける戦略が功を奏しているという最も明らかな証拠であり、有権者の極右アレルギーが一段と薄らぎ、将来の選挙を通じて同氏が政権を握る可能性を高めている、と複数の専門家は解説する。
このような戦略は、イタリアやドイツ、英国など他の欧州諸国の極右勢力も、人種差別主義者とのレッテルを貼られるのを避けながら、移民反対を堂々と掲げる手段として取り入れている。
専門家の話では、フランスの場合、ルペン氏が非常に効果的な形でこれを実行したため、極右を権力の座から阻んできた「見えない壁」が壊れつつある。
一方で、ルペン氏を政治的な機会主義者と批判する人々は、RNは人種差別的な本当の正体を隠していると警戒感を強める。
ルペン氏はかねてから、失言や暴言を繰り返す父親と距離を置く努力を続け、特に党首の座を引き継ぎ、2018年に党名をRNに変更した後は、その姿勢に拍車がかかった。
しかし、フランスの他の政党は、いわゆる「防疫線」を設けて極右とともにデモなどの政治行動をするのを拒絶してきた。
そうした流れに終止符が打たれたのが12日のデモで、さまざまな政治家や専門家の間では、RNの歴史にとって転換点だとの見方が広がっている。
RN支持者やルペン氏らは、デモ行進の後方に回り、先頭を歩く主催者や2人の元大統領、政府高官らと肩を並べたわけではないが、合流する際に以前のように手荒に扱われることはなかった。
世論調査会社ハリス・インタラクティブの政治アナリスト、ジャン・ダニエル・レビー氏は、ロイターに「ルペン氏は、このデモから得られる全てのものを獲得した。2027年(の大統領選)に向けて、ルペン氏に反対する根拠はちょっと前までと比べても少なくなった」と語った。
環境保護派の政治家、サンドリーヌ・ルソー氏は、(デモに)ルペン氏が出現したことで不快になったと打ち明けた上で「RNにとっては転換点で、反ユダヤ主義の出自をごまかそうとしている」と批判した。
<欧州極右に共通する流れ>
RN内部では、ルペン氏の側近たちが大喜びした。その1人は、ロイターに「ルペン氏は行進の途中で何度も拍手をもらった。本当に変わった点は、われわれを悪魔化する試みはもう通用しないということだ」と言い切った。
反ユダヤ主義にノーを突き付けるルペン氏の戦略は、他の欧州の極右勢力にも共通する。例えば、イタリアでは、メローニ首相の政権が、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってからずっと、断固としてイスラエルを支持する姿勢を打ち出している。
若いころにはネオファシズム運動に身を投じていたメローニ氏だが昨年、ムッソリーニのファシスト政権時代の法律に基づいて処刑されたユダヤ人ジャーナリストを追悼する場で、いかなる種類の差別や反ユダヤ主義とも戦うと約束した。
ドイツでも、治安当局から党内に反ユダヤ主義が存在しているとされた極右政党ドイツのための選択肢(AfD)が、イスラエルとの連帯を表明。政府に対して、イスラム系移民から持ち込まれた「反ユダヤ主義」を防止する策を講じるよう求めた。
英与党・保守党の右派は、強固な親イスラエル姿勢を採用するとともに、パレスチナを支持する大規模デモを「ヘイト(嫌悪主義の)行進」と切り捨てている。
<ユダヤ社会も懐疑の目>
フランスの幾つかのテレビ討論で、父親の過去の発言について追及されて苦境に置かれたルペン氏は、その後、何人かの有力なユダヤ系フランス人から「援護射撃」をもらった。
法学者でナチス残党の追跡活動をしているセルジ・クラルフェルド氏は、フィガロ紙のインタビューで「私からすると、極右のDNAは反ユダヤ主義だ。だから、一つの大きな政党が反ユダヤ主義やホロコースト否定論を捨て去り、共和国の価値観を求めて行進するのはうれしいことだ」と語った。
ただ、ユダヤ人の各団体は、ルペン氏の行動について大いに懐疑的だ。
フランス・ユダヤ人団体代表評議会(CRIF)を率いるヨナサン・アルフィ氏は「デモをうまく利用した形で、非常に不愉快だ」と述べた。
実際、RNが反ユダヤ主義のイメージを払しょくするための闘いは、まだ続いている。2021年にはRNの元経済顧問が、同党はユダヤ人を差別していて、勝てそうな選挙区の候補に彼らを起用していないと主張。ルペン氏がこの発言を誹謗中傷だと裁判所に申し立て、9月には審理が始まった。
マクロン政権の報道官は「極右の意図に誰もだまされはしない。それはあるコミュニティーを支持し、別のコミュニティーをうまく排除するのに役立てるということだ」と語った。
それでも専門家の話では、ルペン氏とRNは世論や有権者の認識を変えることに成功しているという。政治アナリストのレビー氏は「彼らは有利な方向に論調を変化させている。有権者は、危険をもたらすのは極右ではなく、イスラム系の政治勢力だと信じるようになった」と指摘した。
ニューヨーク地区連銀高官で金融政策を担うロベルト・ペルリ氏は16日、米国債市場について、このところ不安定な動きが出ているものの円滑に機能しているとし、国債利回りは金融政策に対する見方の変化ではなく、経済見通しの不確実性を反映して上昇しているとの見方を示した。
ペルリ氏はニューヨーク連銀で行われた会議での講演原稿で「米国債市場は円滑に機能しているように見える」とし、「市場の機能不全を示す証拠は見当たらない」と述べた。
米国債利回りの上昇については、市場参加者が政策や経済見通しについてどう考えているかということではなく、むしろ、不確実性の高い時代に証券を保有するためにより多くの補償を求めていることが背景にあると分析していると述べた。
アンナ・ノードストロム氏は16日、米国債について、引き続き魅力的で、市場のボラティリティーにもかかわらず外国人保有者の投資離れは見られていないと述べた。
講演準備原稿で、「この1年は市場のボラティリティーが高く、仲介機関が流動性の提供方法を調整する中、国債市場の取引状況が注目されてきた」と指摘。
国債保有状況の全般的な変化は「市場のボラティリティー拡大にほぼ見合っているとみられ、市場機能に支障はない」とし、投資家はオンザラン(新発債)とオフザラン(既発債)の両方で効果的にリスクを移転することができているとの見解を示した。
また米国債は投資家に流動性と安全性を提供し続けていると述べた。
米フィラデルフィア地区連銀が16日発表した11月の製造業業況指数はマイナス5.9と10月のマイナス9.0から改善した。市場予想はマイナス9.0だった。
新規受注指数が10月の4.4から1.3に低下。従業員指数も4.0から0.8に低下した。
支払価格指数は14.8。10月は23.1だった。
今後の6カ月業況予測はマイナス2.1と10月の9.2から急低下。一方、今後6カ月の設備投資予測はマイナス4.8からマイナス1.3に改善した。
11月のNAHB/ウエルズ・ファーゴ住宅建設業者指数は34に低下した。10月は40だった。4カ月連続で低下し、2022年12月以来の低水準となった。
ただ、高水準の住宅ローン金利が低下する兆しが見え、経済全体の信用状況が緩和される見通しであることから、今後数カ月に信頼感は改善する可能性がある。
NAHBのチーフエコノミスト、ロバート・ディーツ氏は「11月も建設業者のセンチメントは低下したが、最近のマクロ経済データは今後数カ月間の住宅建設状況の改善を示している。住宅ローン金利がやや低下すれば住宅需要が刺激され、12月の市況に対する業者の見方は改善する可能性が高い」と述べた。
購入者のトラフィックを示す指数は、22年12月以来の低水準となる21まで低下した。
11月に価格を引き下げた建設業者の割合は36%で、22年11月以来の高水準となった。特に南部と西部を拠点とする業者からの引き下げ報告が多く見られた。
イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のラムスデン副総裁は16日、英中銀は長期にわたり高金利を維持する必要がありそうだと述べた。
欧州システミックリスク委員会(ESRB)の年次会合向けの準備原稿で「金融政策は長期にわたり制約的である必要がありそうだ」と指摘。「金融政策委員会(MPC)はインフレ率を中期的に持続的に2%目標に戻すために金融政策は十分な期間、十分に制約的である必要があると伝えている」と述べた。
また英中銀が保有国債の大部分を売却した後、バランスシートをどの程度拡大する必要があるのかはまだ分からないと改めて表明。「われわれは量的引き締めを通じて金融政策の目標を達成する一方で、金融の安定という目標の確保も後押しするために、将来の安定した状態での準備金がどの程度なのかを評価する取り組みを続けている」とした。
米投資大手カーライル・グループ(CG.O)が、現在募集中の汎アジア・プライベートエクイティ・ファンドの調達目標を少なくとも30%引き下げたことが関係者の話で分かった。世界経済の減速と地政学的緊張で投資意欲が減退している。
アジアに特化した資金調達は低迷している。プレキンのデータによると、調達額は2021年は2990億ドルだったが、22年は1540億ドルに減り、今年は730億ドルにとどまる。
カーライルが目標を引き下げたのは、アジア特化の第6号ファンド。85億ドルの調達を目標に22年半ばから募集を開始したが、調達額は30億ドルにも達していない。このため目標額を60億ドルに下げたという。
欧州最大の資産運用会社アムンディ傘下のアムンディ・インベストメント・インスティテュートで新興国マクロ戦略責任者を務めるアレッシア・ベラルディ氏は、来年は新興国市場に明るい見通しを持っていると明かした。先進国よりも経済状況が良くなることや、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が理由だ。
ベラルディ氏はロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムで、FRBが来年半ばに利下げを開始する公算が大きく、それが新興国にはプラスに働くと発言。米国は来年前半に景気後退の様相を呈すると見込んだ上で「米国(経済の)大幅な減速を踏まえると、成長プレミアムは新興国の優位性が高まっている」と主張した。
アジアについてベラルディ氏は、中国の景気鈍化にもかかわらず全体として底堅く推移していると指摘し、政策の組み合わせが他の地域ほど引き締め的ではないので、興味をそそる機会を提供しているとの見方を示した。
ベラルディ氏は、資金配分の観点では株式投資を慎重かつ段階的に増やしていくとしつつ、最初は質と成長力を優先してインドと日本を重視すると説明した。
またベラルディ氏は極めて過小評価状態にある新興国通貨として、キャリートレードの調達通貨に活発利用されているインドルピーとインドネシアルピアなどを挙げ、これらは来年投資妙味が増すと強調した。
国際金融協会(IIF)が16日公表したリポートによると、第3・四半期の世界の債務総額は307兆4000億ドルと過去最高を記録した。新興国債務の対国内総生産(GDP)比も最高を更新した。
今年末の世界の債務は310兆ドルに達し、過去5年で25%余りの増加となる見込み。さらにポピュリズム(大衆迎合主義)の拡大で来年はさらに債務が膨れ上がる恐れがある。
IIFの持続可能調査ディレクター、エムレ・ティフティク氏は、来年は米国やインド、南アフリカ、トルコ、パキスタンなど50カ国以上で選挙が行われると指摘した上で、「政治的な極端化の進行や地政学的緊張の高まりに直面したこれらの選挙はポピュリズムへの道を開くかもしれない」と述べ、それが政府の借り入れと歳出を増やし、財政規律を緩めてもおかしくないと付け加えた。
ティフティク氏は、世界全体で歳入に占める債務返済費用の比率がどんどん大きくなっており、パキスタンとエジプトでは「警戒すべき」水準に達したとの見方を示した。米国でも現在10%弱となっている政府の歳入に対する利払い費の比率は2026年までに15%まで高まるとみられている。
世界全体では債務の対GDP比は333%でほとんど変わっていない。ただ新興国は255%と、5年前の同時期に比べて32ポイントも上昇した。ロシアや中国、サウジアラビア、マレーシアが主に比率を押し上げた。
第3・四半期のセクター別債務では、政府が最も大幅に増えたが、米国や中国を含めた経済規模の大きい国では家計と企業の債務負担も増大している。
●中国・アジア・ロシア・東欧
「卒業したら、中国国内のインターネット関連企業に就職したい」。その夢は破れ、ピーター・リューさん(24)はある国営図書館の仕事に就いた。だが職場ではリューさんの力が必要とされることはほとんどなく、空き時間にはキャリアパスを変えるための勉強に励んでいる。
「大企業に就職することは本当に難しい」と言うリューさんは、北京にある大学でテレビ番組の制作を専攻した後、中部の河南省にある実家に戻った。
リューさんが図書館司書の仕事を見つけたのは、大卒者のために臨時職員を確保するという政府主導のキャンペーンのおかげだ。アナリストらは、景気減速で中国の若者にとって就職が厳しくなる中で、社会の安定性を維持するための短期的な解決策と評している。
こうした仕事は中国で「福祉職」と呼ばれており、受付係や秘書、警備員、コミュニティーワーカーなどの仕事がある。さまざまな政府機関が毎年こうした就職口を提供しているが、通常は高齢者や障害者など、不利な立場にある人々からの応募が集まる仕事だ。
だが今年は、世界第2位の経済大国である中国で若者の就職難が深刻化。大卒者やエコノミストらによれば、中心部から離れた農村地域でのポストを巡っても、一流大学を卒業した若者らの間で激しい競争が繰り広げられているという。
ここ数十年で最も悲観的な世代の不満を抑えるには、雇用が鍵になると政府は見ている。アナリストらは、大卒者がたとえ少しでも就労経験を積めるのであれば、景気の回復につれて将来の雇用主にとってはメリットになる可能性もあると指摘する。
こうした「福祉職」は1―3年の契約。給与はその地域の最低賃金とほぼ同じで、月2000ー3000元(4万2000―6万3000円)だ。食事が無料でつく場合もある。中国の求人サイト、猟聘が行ったアンケート調査では大卒者が希望する初任給は平均8033元であり、これに比べれば大幅に低い。
「福祉職」とは別に、今年はインターン100万人を採用するプログラムがあり、国有企業、民間企業の参加を募っている。
政府による取り組みや雇用市場について人事社会保障省にコメントを求めたが回答は得られなかった。同省は先週、国営メディアにおいて、若年層の雇用は改善しつつあると述べている。
中国はこの1年間、テクノロジー、不動産、金融といった、これまで大量の新規採用を行っていた業界の企業を対象に、規制による負担を一部緩和した。だが国営メディアの論説は、大卒の若者に対して低熟練労働にも目を向けるよう呼びかけている。
6月には1160万人の新卒者が労働市場に流入したことを受けて、若年層の失業率は過去最悪の21.3%に達し、国家統計局は7月にこのデータの発表を停止。11月15日にも4カ月連続で発表が見送られた。
短期の臨時職員やインターンシップに合計でどの程度の人数が就くかは不明だ。ただソーシャルメディアでは、選考プロセスについてのコメントや、キャリア上の選択肢として論じる投稿が多く見られることから、アナリストらは、景気減速のもとで、今後もこうした雇用機会への需要はあるだろうと予想している。
だが、中国の都市部における雇用のうち5分の1を国家部門が担っているとはいえ、こうしたキャンペーンによって経済的圧迫を免れるのは大卒者の一部で、しかも一時的なものに過ぎないとエコノミストらは指摘する。若年層の失業という問題は、長期的に中国政府にとって大きな頭痛の種としてつきまとう恐れがあるという。
「若者の失業という問題はかなり長い間、少なくとも5年から10年は続くだろう」と語るのは、華泰資産管理でチーフエコノミストを務めるワン・ジュン氏だ。臨時職員としての雇用は「安定性維持のための短期的な対策であり、失業がもたらす社会的葛藤を和らげる」と説明する。
中国では1970年代後半から80年代初頭にかけて、毛沢東・元国家主席の指示により農村で働いていた高学歴の若者が都市に戻ったことにより、若年層の失業率が上昇した。90年代末にも、政府が非効率な国営複合企業の縮小に着手したことで若年層の失業率上昇が見られた。
大学を卒業したチェンさん(23)は8月、10人を優に超えるライバルとの競争に勝って、南西部の都市重慶の地域農業センターで秘書の仕事を獲得したという。
「夢と現実のギャップはとても大きい」。教師志望だったというチェンさんは言う。
チェンさんも冒頭で紹介したリューさんも、職場での空き時間を使って、2024年の公務員試験に備えた勉強を進めている。国営メディアによれば、志願者は過去最高の260万人という狭き門になるという。合格すれば、中国で最も羨望(せんぼう)の的となるキャリアパスの1つを歩み始めることになる。経済的には「食いっぱぐれることのない」道と言われることも多い。
リューさんとしては自分が公務員志望になるとは全く予想外だったが、今のところは、少なくともそのチャンスがあることをありがたく感じている。
「1日中家にいる姿を両親に見せたいとは思わない」とリューさんは言う。
中国の王毅外相は、習近平国家主席とバイデン米大統領の会談について、包括的で踏み込んだ「非常に好ましい」会談だったと述べた。中国国営メディアが報じた。
王氏は会談後、両首脳は相互尊重に基づき複数の課題について意見交換したと記者団に述べた。
首脳会談には戦略的意義があり、米中関係の歴史において重要な節目になると説明した。
バイデン米大統領は15日、中国の習近平国家主席との会談後の記者会見で、習氏が事実上の「独裁者」という見方は変わっていないと述べた。
バイデン氏はこの日、サンフランシスコ郊外で習氏と約4時間にわたり会談した。その後に単独で行った記者会見で、習氏が独裁者だという見方を現在も抱いているか問われ、「われわれとはまったく異なる政治形態に基づく共産主義国を率いる人物という意味で彼は独裁者だ」と述べた。
バイデン氏は6月にも習氏を「独裁者」と表現し、中国の反発を招いた経緯がある。
米高官によると、習氏は今回の会談で、中国共産党に否定的な米国内の見方は不公平だとバイデン氏に伝えた。
中国外務省の毛寧報道官は定例会見で、バイデン氏を名指しすることは避けた上で、発言に「強く反対する」と述べた。
「この発言はひどく間違っており、無責任な政治的操作だ」とし、米中関係を扇動しダメージを与えようとたくらむ人々が常に存在するが、失敗に終わると指摘。具体的にどのような人々を指しているかは答えなかった
15日に米サンフランシスコ郊外で約4時間にわたり開かれた米中首脳会談は、低かった期待値を上回る成果を収めたが、同時に世界の国内総生産(GDP)の4割を占める両国による協力の限界も浮き彫りにした。紛争管理が今後も世界最大の課題であり続けることも確認された。
バイデン米大統領と習近平国家主席の握手は周到に準備され、弱々しいものだったが、両国関係の安定化に向け心強い材料でもある。トランプ前米大統領が2018年から仕掛けた対中貿易戦争や、米本土上空に飛来した中国の偵察気球を米軍が今年2月に撃墜した問題などが尾を引き、関係は冷え込んでいた。
首脳会談では実際に進展も見られた。バイデン、習両氏は軍同士の対話再開で合意。台湾を巡り意図的ではなく偶発的な衝突が起きる確率がおそらく低下した。ただ、台湾は来年1月に選挙を控えているため、米中の決意がより早く試される可能性がある。
それ以外の成果は、会合中のワーキングランチに並んだタラゴン風味のローストチキンとハーブ風味のリコッタラビオリと同じくらい当たり障りのないものだった。両首脳は米国で薬物過剰摂取問題の主な原因となっている医療用麻薬フェンタニルの供給源への対処や人工知能(AI)から生じるリスクについて協議することで一致した。
しかし、習氏はバイデン大統領に、米国が中国に背を向けたり、中国を変えようとするのは非現実的だと釘を刺した。米政府は過去20年間、中国を変えようとし、失敗してきた。一方、米国は既に中国に背を向け、対中関係で大きな変化が起きている。貿易や金融、人材、地政学的なノイズを分析すると、両国の意識的かつ構造的なデカップリング(分断)の方向性があらわになる。
この現実にバイデン氏は立ち戻ることになるだろう。習氏は15日午後に予定されるアップル(AAPL.O)やブラックロック(BLK.N)など米大手企業の最高経営責任者(CEO)との非公式夕食会でこの現実を目の当たりにすることになる。
少なくとも両首脳は会談を開き、かなり低かった期待感を上回る結果を出せた。
中国国家統計局が16日発表したデータによると、10月の新築住宅価格は4カ月連続で下落した。当局が不動産部門の支援策を相次ぎ打ち出しているが悲観ムードは和らいでいない。
統計局のデータを基にロイターが算出した新築住宅価格は前月比0.3%下落。9月は0.2%下落していた。
前年比では0.1%下落と、4カ月連続で同じ下落率だった。
資金繰り難に陥る不動産開発業者が増える中、消費者は住宅購入に慎重な姿勢を崩しておらず、統計局が15日発表したデータに基づくロイターの算出によると、10月の不動産販売(床面積ベース)は前年比20.33%減少した。
10月に住宅価格が下落したのは70都市中56都市。9月の54都市から増加し、2020年10月以来最多となった。北京、深セン、広州の主要3大都市は全て値下がりした。
国家統計局報道官は「不動産市場はまだ調整と変革の段階にあり、景気回復は紆余曲折を経る」と述べた。
植信投資研究院のシニアアナリスト、馬泓氏は「住宅価格が弱気になっている最も重要な理由は需要が弱いことだ。買い手はデベロッパーが約束した通りの期日に物件が引き渡されるのか分からないでいる」と指摘。また、「所得の伸びは依然不透明で、国内金融投資のリターンも芳しくない。人々は住宅のような高額商品の購入をためらっている」と語る。
野村の試算によると、未完工または建設が遅れている予約販売住宅は約2000万戸。これは経営難に陥っている中国不動産開発大手・碧桂園(カントリー・ガーデン)(2007.HK)の22年末時点の未完成プロジェクト数の20倍に相当する。
不動産仲介を手がける中原地産のアナリスト、張大偉氏は「住宅価格は例年低迷する11月と12月に下落し続けると予想される」と指摘。特に1級都市における不動産政策を強化する必要があると述べた。
中古住宅については、統計局データによると67都市で10月の前月比価格が下落。9月の65都市から増えた。
中国人民銀行は都市部の住宅改築や手頃な価格の住宅供給のために、少なくとも1370億ドルの低金利融資を提供する計画。
フィリピン中央銀行は16日、政策金利の翌日物リバースレポ金利を6.5%に据え置いた。ただインフレとの闘いはまだ終わっておらず、見通しのリスクは依然かなり上向きと説明した。
ロイターの調査では、エコノミスト23人中16人が据え置きを予想、残りは25ベーシスポイント(bp)の引き上げを予想していた。
中銀は先月26日、インフレを抑制する政策対応の「至急の」必要性が生じたことを理由に、25bpの緊急利上げに踏み切った。
先週発表された10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.9%上昇で、3カ月ぶりに鈍化していた。
中銀は16日、今年のインフレ率予想を6.2%から6.1%に、来年は4.7%から4.4%に下方修正した。それでも2─4%の目標を引き続き大幅に上回る。中銀はインフレを目標まで着実に下げるため必要に応じて引き締めを再開する用意があるとの方針を改めて示した。
ダキラ副総裁は会見で「インフレの持続的下降トレンドが顕著となり、インフレ期待が安定するまで政策を十分引き締め状態に保つことが必要という認識を維持している」と述べた。
●中東
イスラエル軍は16日、ガザ最大のシファ病院でイスラム組織ハマスのトンネル坑道と武器を積んだ車両を発見したと発表した。
「イスラエル国防軍はシファ病院で作戦用のトンネル坑道と大量の武器を積んだ車両を発見した」と述べた。
また、トンネル坑道と武器の動画と写真も公開した。
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は16日、イスラエルに対し、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる10月7日の攻撃に対する怒りに飲み込まれないよう呼びかけた。その上で「一つの恐怖が他の恐怖を正当化することはない」と言明した。
ボレル氏のイスラエル訪問は10月7日のハマスの攻撃以来初めて。イスラエルのコーヘン外相とともにハマス襲撃の標的となったキブツ・ベエリを訪れた。
ボレル氏は親や子供が人質として捉えられた人々の気持ちに理解を示した上で、イスラエルに対し、ガザの市民を支援・保護するよう求めている国際的な呼びかけに耳を傾けるよう求めた。
一方、コーヘン氏は10月7日の攻撃だけでなく、ガザにおけるパレスチナ人の現在の窮状の責任もハマスにあると主張した。
イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のイスマイル・ガアニ司令官は16日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの戦争においてハマスを支援すると述べた。イランのタスニム通信が報じた。
ガアニ司令官は「敵がガザとパレスチナで汚い目標を達成するのを許さない」と語った。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は16日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのガザ最大病院での活動について、米当局の情報に自信を持っており、イスラエル側の情報を共有する考えはないと述べた。
イスラエル軍は15日、ガザ最大のシファ病院に突入。イスラエル軍報道官は、病院内の建物からハマスの武器や戦闘装備品を発見したと発表した。
病院突入以降、イスラエルが新たな情報を共有したかという質問に対し、カービー氏は「米・イスラエル間で交わされる可能性のある特定の情報について話すつもりはない」とし、イスラエル側が発表することと応じた。
さらに米国には、ハマスがシファ病院を司令本部として、さらに武器の保管施設として利用していた公算が大きいと確信できる独自の情報があり、「われわれは独自の情報に自信を持っている」という見方を改めて示した。
イスラエルのヘルツォグ大統領は、パレスチナ自治区ガザを空白にすることはできないとし、イスラム組織ハマスの再台頭を防ぐため、イスラエルはガザに強力な軍隊を維持しなければならないとの見方を示した。英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が16日報じた。
インタビューで「われわれが撤退したら誰が引き継ぐのか。空白にすることはできない」と強調。「仕組みを考えなければならない。多くの構想があるが、ガザを再びテロの拠点にしたいとは誰も思わない」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は先週、ABCニュースに、戦闘終了後はイスラエルが「無期限で」ガザの治安の責任を担うと語ったが、米国はパレスチナがガザを統治すべきと考えている。
ヘルツォグ氏は、戦後のガザがどのように統治されるかについてイスラエル政府は多くのアイデアを議論しているとし、米国と「域内の近隣諸国」が何らかの関与をすることを想定していると語った
バイデン米大統領は15日、イスラエル・パレスチナ紛争は2国家共存という解決が唯一の答えであり、ガザを占領するのは間違いだとネタニヤフ首相に伝えたと明らかにした。
国際原子力機関(IAEA)が15日伝達した二つの報告書によると、イランは核兵器級に近い濃縮度60%のウランを月間約3キロのペースで生産し続けている一方、IAEAがイランに対して早急に対応を求めている監視受け入れなど幾つかの問題についての協議は、依然として進展が見られていない。
IAEAが加盟国宛てに送った報告書の内容をロイターが確認したところでは、9月4日の前回報告書以降で、イランが蓄えた濃縮度最大60%のウランは6.7キロ増え、128.3キロに達した。これはIAEAの定義に基づくと、理論的には核爆弾3発が製造できる量だ。核兵器級のウラン濃縮度は約90%とされている。
イランは9月、IAEAにウラン濃縮を検証する一部査察官の受け入れを拒否すると通告。今回のもう一つの報告書では、こうした事案で話が進んでいないことも明らかになった。IAEAのグロッシ事務局長は受け入れ拒否を見直すようイランに促しているが、イラン側は「要請に応じられるかどうか検討中」とだけ回答したという。
イスラエルは、パレスチナ自治区ガザにおけるイスラム組織ハマスとの戦闘により、来年の財政赤字が予想以上に膨らむ──。JPモルガンは15日こうした見通しを示した上で、戦費捻出のために国債発行も大幅に増えると付け加えた。
JPモルガンのアナリストチームが示した最新予想によると、イスラエルの来年の財政赤字は国内総生産(GDP)の4.5%。従来は2.9%と見込まれていた。
この予想は、戦闘が来年初めまで続くとの前提に基づいており、財政赤字を巡るリスクはさらに上振れする方向に傾いている。
JPモルガンの見立てでは、来年半ばまで戦闘が継続され、米国が提案した140億ドルの軍事支援が減額される場合は、財政赤字のGDP比は「1桁台後半」まで高まりかねない。
戦闘が始まる前の時点でGDPの57.4%だったイスラエル政府の債務規模は、現段階においても来年末までに63%前後まで増大する可能性があるという。
バイデン米大統領は中国に対し、イランと協議して中東地域で挑発的と見られるような行為を避けるよう促すことを求めた。米高官が15日明らかにした。
中国当局者は地域のリスクについてイランと協議したという。
トルコ議会の外交委員会は16日、スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟批准に向けた法案について、一段の討議が必要として採決を延期した。
議会外交委員長は、数時間にわたる討議後に記者団に対し「全議員がスウェーデンのNATO加盟を承認するには、十分に納得しなければならない。次回の委員会会合で討議を重ねる」とし、必要ならスウェーデン大使を招いて議員に対する説明を求めることもできると述べた。
来週にも討議が再開可能性があるとしながらも、具体的な日程は示さなかった。
スウェーデンのNATO加盟批准に向けた法案は、外交委員会の承認を経て議会全体で採決にかけられ、可決されればエルドアン大統領が署名して成立する。
ロシアによるウクライナ全面侵攻開始を受け、スウェーデンは昨年5月、隣国フィンランドと共にNATOに加盟を申請した。
●中南米・アフリカ
メキシコのロペスオブラドール大統領は16日、中国の習近平国家主席との会談後、メキシコと中国は互恵関係の維持を確約したと述べた。
両首脳は、米サンフランシスコで開かれているアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席した際に会談。在メキシコ中国大使館によると、習主席はロペスオブラドール氏との会談を受け「中国とメキシコの関係は時間と共に強まっている」と述べた。
ロペスオブラドール大統領は16日にカナダのトルドー首相、17日に米国のバイデン大統領と会談する。
コロンビア国家統計局は15日、第3・四半期の国内総生産(GDP)が前年同期比0.3%減少したと発表した。ロイター調査による市場予想(0.5%増)と、中央銀行の予想(0.4%増)をともに下回った。
四半期GDPのマイナス成長は新型コロナウイルス禍前の2020年第4・四半期以来。統計局の担当者は「四半期GDPが前年比でマイナス成長となるのは新型コロナウイルス禍以来」と述べた。
第3・四半期は、建設部門が8%減少、製造業と商業がそれぞれ6.2%と3.5%減少した。
一方、医療、教育、防衛を含む公的部門は5.3%増、娯楽とレクリエーションは4.9%それぞれ増加した。鉱業も3.5%増加した。
民間投資は前年比33.5%の大幅減だった。
スコシアバンクのチーフエコノミスト、セルジオ・オラルテ氏は、「数字は極めて悪かった。中銀はこれを受けて12月にも利下げ開始を検討する可能性がある」と述べた。
第3・四半期GDPは前期比では0.2%増だった。
●市況
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。英高級ブランド会社バーバリーの急落が相場の足を引っ張った。
バーバリー(BRBY.L)は11.1%安と、下落率は2012年9月以来の大きさとなった。中国の成長鈍化で第2・四半期の既存店売上高の伸び率は1%となり、第1・四半期の18%から急減速したと報告。高級品への支出の低迷が続けば売上高目標の達成が困難になるとの見通しを示したことが嫌気された。
15日に発表された10月の英消費者物価指数(CPI)の上昇率鈍化を受けて、イングランド銀行(英中央銀行)は追加の金融引き締めを行う必要がないとの期待感が高まった。投資家は来年の利下げ観測を強め、2024年12月までに3回の25ベーシスポイント(bp)の利下げがほぼ完全に織り込まれている。
<欧州株式市場> 4営業日ぶりに反落して取引を終えた。石油・ガス株などが売られたのが相場を押し下げた。
今週は米国と英国のインフレ指標が鈍化したのを受け、利上げ終了観測が強まった。投資家は17日に発表されるユーロ圏のインフレ率を注目している。
STOXX欧州高級品株10種指数(.STXLUXP)は1.55%下げた。英高級ブランド会社バーバリー(BRBY.L)が11.1%下落し、フランスの高級ブランド「グッチ」を抱えるケリング(PRTP.PA)は2.7%安。同業LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)(LVMH.PA)、スイスの同業リシュモン(CFR.S)はそれぞれ1.8%下落した。
ジェフリーズが投資判断を引き下げたドイツの化学大手BASF(BASFn.DE)は2.5%安。
一方、23年第4・四半期(7─9月)の工業部門の利益が予想を上回ったドイツの総合電機大手シーメンス(SIEGn.DE)は5.7%上昇した。ドイツのDAX指数(.GDAXI)は0.24%上げた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが低下した。予想より悪化した米新規失業保険申請件数を受け、主要中銀による利上げ打ち止め観測が高まった。
<為替> ニューヨーク外為市場で、ドルがほぼ横ばいで推移した。朝方発表された週間の新規失業保険申請件数が予想以上に増加したことで、労働市場の冷え込みを背景に米連邦準備理事会(FRB)は2024年の早い段階に利下げに踏み切る可能性があるとの見方が台頭した。
<債券> 米金融・債券市場では、米債利回りが約2カ月ぶりの低水準で推移した。新規失業保険申請件数が予想以上に増加し、米連邦準備理事会(FRB)がインフレを鈍化させるために再び利上げを迫られることはないとの見方が強まった。
<株式> 米国株式市場はダウ工業株30種が小反落して取引を終えた。慎重な見通しを示したネットワーク機器大手シスコシステムズ(CSCO.O)や小売り大手ウォルマート(WMT.N)が売られた。
シスコはネットワーク機器の需要鈍化を背景に通期の売上高と利益の見通しを下方修正したことを受けて急落した。
前日に上場来高値を付けたウォルマートも大きく下落。通期の業績予想を上方修正したものの、インフレと金利上昇を受けて米消費者の支出に対する慎重な姿勢が続いていると指摘したことを嫌気した。
これを受けて他の小売株も売られ、S&P主要消費財指数(.SPLRCS)が下落。前日に急伸したターゲット(TGT.N)も小幅安となった。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、需給緩和懸念が広がる中で売り込まれ、大幅続落した。
米エネルギー情報局(EIA)が前日に発表した週間在庫統計では、原油在庫が前週比360万バレル増と、市場予想(ロイター調査)の180万バレル増の2倍となる積み増し幅となった。米原油生産が過去最高水準を維持していることが明らかになったことも重なり、供給がだぶつくとの見方が広がった。
日経先物33,377、ダウ先35,030、債先145.59、米4.454、独2.5795、仏3.144、西3.580、伊4.324、英4.1550、波5.449、原油73.19、銅8,243、ドル円150.73、ユーロドル1.0849
※11/17 9時30分頃
備忘録(2023/11/14)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
格付け会社フィッチは15日、米国の地方銀行が2024年も継続的な課題に直面する見通しで、とりわけ商業用ローンの成長に重点を置いている銀行は極めて不利な立場にあるという見方を示した。
フィッチのアナリストは「米国の全ての銀行は、資本や見込まれる損失拡大に備える引当金の保全に向けた防衛策を講じる必要がある」と指摘。「制約的な金利環境、規制上の要件の厳格化、資本コストの上昇、信用の質低下」という環境において、収益拡大の機会は狭まっているとした。
●その他産業
●決算関連
米小売り大手ターゲット(TGT.N)は15日に示した第4・四半期の利益見通しが市場予想をおおむね上回り、株価が17%超急伸した。サプライチェーン(供給網)関連コストが減少したことや在庫管理の効果が出始めたことが背景。
調整後1株利益見通しは1.90─2.60ドル。中央値はLSEGがまとめたアナリスト予想の2.22ドルを上回った。
既存店売上高は1桁台半ばの減少を見込む。アナリスト予想は3.97%減。
株価は17.8%上昇し、過去4年余りで最大の上昇率を記録。S&P総合500種(.SPX)の上げを主導した。
第3・四半期の粗利益率は27.4%で前年同期の24.7%から上昇した。値引きが少なかったことや、在庫と関連コストが14%減少したことに加え、運賃・サプライチェーン・配送費用の低下が寄与した。
ブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は決算発表後の電話会見で、消費者は依然として支出しているものの、金利上昇や学生ローンの返済再開、クレジットカード残高増加、貯蓄減少などが重しになっているとして慎重な見方を示した。
ネットワーク機器大手シスコシステムズ(CSCO.O)は15日、通期の売上高と利益の見通しを下方修正した。ネットワーク機器の需要鈍化を示唆し、株価は時間外取引で10%超下落した。
同社はここ数年、サプライチェーン(供給網)の問題や新型コロナウイルス禍後の需要伸び悩みに直面しており、サイバーセキュリティーといったソフトウエア製品への参入を急いでいる。
シスコは「2024年度第1・四半期(8─10月)は新製品の受注が鈍化した。主な理由は顧客が現在、自社環境への製品のインストールと実行に集中しているためと考えている」とし、1─2四半期分の出荷済み製品が顧客側でまだ導入待ちとの見方を示した。
通期売上高見通しは538億─550億ドル、調整後1株利益見通しは3.87─3.93ドルとした。従来予想は売上高が570億─582億ドル、調整後1株利益が4.01─4.08ドルだった。
第2・四半期の売上高見通しは126億─128億ドル。LSEGがまとめた市場予想は141億9000万ドルだった。
第1・四半期の調整後1株利益は1.11ドルと、予想の1.03ドルを上回った。売上高は146億7000万ドル。市場予想は146億2000万ドルだった。
同社は9月、事業多角化を加速させ人工知能(AI)ブームに乗じるため、サイバーセキュリティー企業の米スプランク(SPLK.O)を約280億ドルで買収することで合意した
●先進国、グローバル、金融市場
2024年米大統領選に向けたロイター/イプソスの世論調査で、民主党のバイデン大統領に投票する可能性の高い有権者の約半数が、トランプ前大統領の再選を阻止するためにバイデン氏に票を投じると回答したことが分かった。民主党有権者のバイデン氏に対する熱意の低さとトランプ氏に対する軽蔑の念が背景となっている可能性がある。
また、故ケネディ元大統領のおいで、無所属で出馬する反ワクチン活動家のロバート・ケネディ・ジュニア氏との3者レースとなった場合、ケネディ氏を支持するとの回答は20%で、トランプ氏の32%、バイデン氏の30%に迫り、有権者の間でバイデン氏とトランプ氏に対する「倦怠感」が高まっている状況も浮き彫りとなった。
オランダ金融大手ラボバンクは、来年は食料インフレが幾分緩和するとのリポートを発表した。砂糖、コーヒー、トウモロコシ、大豆など主要品目の供給が拡大するという。
ただ、全ての主要品目の価格上昇が和らぐわけではなく、小麦は悪天候などの影響により5年連続で供給不足になると予想した。
コーヒー市場ではブラジルとコロンビアの生産改善で2024/25年度に供給余剰が予想されるほか、砂糖はタイの状況改善が見込まれる。
ブラジルの大豆生産量は過去最高の1億6300万トンと予想。一方、小麦はアルゼンチンとオーストラリアの生産が今後数カ月低迷する公算が大きいほか、ウクライナ戦争が引き続き輸出向け余剰の減少につながる見通しという。
オーストラリア統計局が15日発表した第3・四半期の賃金価格指数(WPI)は前期比1.3%上昇した。最低賃金の大幅な引き上げが影響したほか、企業の人材獲得競争が激化し、賃金が上昇した。
ただ、アナリストは繰り返される可能性の低い要因が重なったと指摘。市場は今回の賃金上昇に対応した利上げは見込んでいない。
第3・四半期のWPI上昇率は市場予想と一致。26年前の統計開始以降で最大の上昇となった。
WPIは前年同期比では4.0%上昇。第2・四半期の3.6%上昇から加速し、2009年初め以来の高水準だった。市場予想の3.9%上昇をわずかに上回った。
上昇率の加速は豪準備銀行(RBA)が予測していたもので、こうした予測を踏まえて先週、政策金利を12年ぶり高水準の4.35%に引き上げた。
このため、市場関係者は今回の統計だけで追加利上げが決まる可能性は低いと考えており、市場が予想する12月の利上げ確率はわずか7%にとどまっている。
公共部門の賃金上昇率は3.5%と12年ぶりの高水準。民間部門の賃金は企業が新規採用と従業員の引き留めで競争していることを背景に4.2%上昇した。
欧州連合(EU)欧州委員会は15日、ユーロ圏の今年の経済成長予測を下方修正した。ただテクニカルリセッションは回避し、来年には景気が拡大するとしている。
今年の経済成長予測は0.6%。9月時点の予測は0.8%だった。高インフレ、金利上昇、外需低迷が予想以上に重しになるという。
第3・四半期の域内総生産(GDP)は前期比0.1%減だったが、第4・四半期は0.2%増となる見通し。
来年の予測は1.2%増、2025年の予測は1.6%増。
欧州委は「経済活動は徐々に回復する見通しだ。安定した力強い労働市場、持続的な賃金上昇、インフレの継続的な緩和を背景に消費が回復する」と予想。
「金融政策の引き締めにもかかわらず、投資の増加が続くと見込まれる。全体として堅調な企業のバランスシートや復興・強靭性ファシリティーが支援要因になる」としている。
インフレ率の予測は今年が5.6%、来年が3.2%。25年が2.2%。
ユーロ圏の財政赤字は合計で今年のGDP比3.2%から来年は2.8%、25年は2.7%に減少し、EUの上限である3.0%を下回る見通し。主に来年のエネルギー関連対策費の大幅な縮小と25年の段階的廃止が寄与する見通し。
ただフランス、イタリア、スロバキア、マルタ、ベルギーは、来年と25年の財政赤字がGDP比4.0%を大幅に上回る見通し。EUが是正措置を発動する可能性が高いという。
ユーロ圏の公的債務残高は合計で今年のGDP比90.4%から来年は89.7%、25年は89.5%に減少する見通し。
「高インフレが支援要因だ。EUの公的債務の平均残存期間は長く、新規発行国債の金利上昇は利払い費を緩やかにしか増加させない」としている。
夏に盛んだった消費は10月に一服し、インフレ圧力は和らいだ。これは米金融当局が期待しているように景気が緩やかに落ち着く可能性を示している。
10月の米小売売上高は前月比0.1%減少。8月と9月の数字は上方修正された。10月の米生産者物価指数(PPI)は市場予想に反して前月比0.5%の低下。低下幅は2020年4月以来の大きさで、ガソリン価格急落が影響した。
15日に発表されたこれら統計は、全般的なインフレ減速を示した米消費者物価指数(CPI)や雇用の伸び鈍化を示唆する最近の統計に続くもので、経済がソフトランディング(軟着陸)に向かう軌道にあることを示唆している。
ネーションワイド・ミューチュアル・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏はリポートで、「期待が持てる10月のCPIと健全な雇用の伸び鈍化に加え、夏の旺盛な支出を経た後の消費後退で、米金融当局は自らの景気抑制的な金融政策スタンスがインフレ圧力を緩和しつつあるという安心感を得られるだろう」と指摘した。
国内総生産(GDP)算出に使われる、いわゆるコントロールグループの小売売上高は9月に前月比0.7%増に上方修正された後、10月は0.2%増だった。これは、7-9月(第3四半期)に消費が急増した後、10ー12月(第4四半期)に経済が順当なスタートを切ったことを示唆している。
コメリカ・バンクのチーフ・エコノミスト、ビル・アダムズ氏はリポートで、「個人消費は2024年も拡大が続くだろうが、ペースは緩やかになる」とし、「リセッション(景気後退)に陥ることなく、インフレ率と成長率がより正常な水準に戻る可能性は十分ある」との見方を示した。
CBREグループが開発した新たなサステナビリティー指数によると、英国の商業用不動産の中では、最も環境に配慮した物件だけが、過去2年半プラスリターンとなっている。
同指数によれば、建築物のエネルギー効率性を評価する「エネルギー性能証明」(EPC)の格付けがAないしBの物件は、金利急上昇で不動産セクターが混乱した中でも、2021年初めから6月末までの間、年率1.1%のリターンを記録した。
これに対し、格付けがC以下の物件は0.6%の損失。商業用不動産の危機が、環境効率が悪い物件を直撃している状況が浮き彫りとなった。
企業は二酸化炭素(CO2)削減目標の達成を急いでおり、エネルギー効率に秀でた建物を次第に求めるようになっている。これは、最良の新しい建物に需要が集中していることを意味する。
一方、投資家は購入する物件を検討する際、エネルギー効率が劣る建物の改修コストを考慮に入れるようになっており、そうした物件の評価額をさらに押し下げている。
アウトパフォームはオフィスで顕著
CBRE英国のサステナビリティー・バリュエーション部門責任者、サム・カーソン氏は「効率的な資産のアウトパフォームはオフィスセクターで顕著で、リテールセクターには見られるが、インダストリアルセクターでは今のところ見られない」と指摘した。
不動産評価に影響を与える要因は無数にあり、こうしたアウトパフォームの定量化は投資家にとって難題だった。指数を開発するに当たり、CBREは定期的に評価している英国の不動産1000件超を分析。6月末時点の総評価額は、177億ポンド(約3兆3000億円)としている。
分析対象としているエネルギー効率に優れた物件、非効率な物件ともに、調査期間の初期には賃料がプラス成長したが、キャピタルバリューの大幅な下落を受けて格付けの低い物件は全体でマイナスリターンとなった。
CBREのシニアリサーチアナリスト、トビー・ラドクリフ氏は「CBREサステナビリティー指数で、われわれは24年以降もEPCに対する四半期ごとの評価額を追跡し続けることから、将来にわたりエネルギー効率が資産評価にどう反映されるのか確認できる」とコメントした。
その上で「これにより、英国の商業用不動産のパフォーマンスと価値に、サステナビリティー、とりわけEPCがどう影響するのかについて、市場での透明性が増す」との見通しを示した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国国家統計局が15日発表したデータに基づくロイターの計算によると、10月の不動産販売は減少ペースが加速し、不動産投資も低迷した。当局の支援策にもかかわらず、同部門がまだ落ち込みから脱していないことを示唆した。
不動産販売(床面積ベース)は前年比20.33%減少。9月は19.77%減だった。
不動産投資は16.7%減。9月は18.7%減少していた。
統計局の発表によると、1─10月の不動産販売は前年同期比7.8%減少した。1─9月は7.5%減少だった。
不動産投資は9.3%減で、1─9月(9.1%減)より大幅な落ち込みとなった。
新規着工(床面積ベース)は23.2%減少。1─9月は23.4%減だった。
当局は住宅購入規制の緩和や借り入れコスト引き下げなど不動産支援策を強化してきたが、主要都市での目立った回復にはつながっていない。
先月開かれた中央金融工作会議で不動産市場に関するサプライズはほとんどなかったが、当局は他の業界にもリスクが波及し、金融安定を脅かす可能性を懸念している。
ブルームバーグ・ニュースは14日、中国が少なくとも1兆元(1370億ドル)の低利資金を都市部の再開発や手頃な価格の住宅プログラムに提供する計画だと報じた。
●中東
国際原子力機関(IAEA)が15日伝達した二つの報告書によると、イランは核兵器級に近い濃縮度60%のウランを月間約3キロのペースで生産し続けている一方、IAEAがイランに対して早急に対応を求めている監視受け入れなど幾つかの問題についての協議は、依然として進展が見られていない。
IAEAが加盟国宛てに送った報告書の内容をロイターが確認したところでは、9月4日の前回報告書以降で、イランが蓄えた濃縮度最大60%のウランは6.7キロ増え、128.3キロに達した。これはIAEAの定義に基づくと、理論的には核爆弾3発が製造できる量だ。核兵器級のウラン濃縮度は約90%とされている。
イランは9月、IAEAにウラン濃縮を検証する一部査察官の受け入れを拒否すると通告。今回のもう一つの報告書では、こうした事案で話が進んでいないことも明らかになった。IAEAのグロッシ事務局長は受け入れ拒否を見直すようイランに促しているが、イラン側は「要請に応じられるかどうか検討中」とだけ回答したという。
フランスの司法当局は、シリアでの民間人に対する化学兵器の使用疑惑に関連し、同国のアサド大統領ら4人に対する逮捕状を発行した。仏司法当局が15日、明らかにした。アサド大統領に対し国際逮捕状が発行されるのは初めて。
仏司法当局は、シリアの首都ダマスカス近郊ドゥーマと東グータ地区で2013年8月に化学兵器が使用された疑惑に関する刑事捜査に基づき、人道に対する罪へと戦争犯罪への加担の疑いで逮捕状を発行した。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘を巡り、ロイター/イプソスの世論調査が米国で今月実施した調査でイスラエルを支援すべきとの回答が約32%と、10月の前回調査の41%から低下した。
一方、「イスラエルは停戦を呼びかけて交渉を試みるべきだ」との考えに同意するとの回答が約68%に上った。
「米国は中立的な調停者であるべき」との回答は39%となり、前回の27%から上昇。米国はパレスチナ人を支援すべきだとの回答は4%、米国は全く関与すべきでないとの回答は15%となり、それぞれ前回とほぼ同じだった。
停戦を支持したのは民主党支持者の約4分の3、共和党支持者の半数だった。
イスラエルへの武器供与への支持は31%と、反対の43%を下回った。残りは「わからない」とした。
共和党支持者の多くがイスラエルへの武器供与を支持した一方、民主党支持者の約半数は反対だった。
イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの交渉を仲介するカタールは、3日間の停戦と引き換えにハマスが拘束する人質約50人を解放する案を模索している。交渉に関与する当局者がロイターに対し明らかにした。
当局者によると、ハマスは大枠で合意しているが、イスラエルは合意しておらず、詳細を巡り交渉が続いている。
この案は米国も連携し、イスラエル側がイスラエルの刑務所に収監しているパレスチナ人の女性や子どもを解放し、ガザへの人道支援拡大を認めることも条件に含まれる。
ただ現時点では、ハマスに拘束されている人質全員の解放を目指すより包括的な案を巡る交渉は行われていないという。
イスラエル当局者は、パレスチナ武装勢力による「心理戦」とみられる報道を煽ったり、交渉を台無しにしたりしたくないとして、人質交渉に関する詳細なコメントを控えている。
ハマス関係者はロイターに対し、この案についてイスラエル側がなお拒否しており、合意を遅らせていると述べた。
トルコのエルドアン大統領は15日、議会でイスラエルを「テロ国家」と呼び、その指導者や西側諸国による支援への批判を強めた。
イスラエルはパレスチナ自治区ガザで戦争犯罪を犯し国際法に違反していると指摘。ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに対する軍事作戦には、西側諸国からの「無制限の」支援による「人類史上最も背信的な攻撃」が含まれていると強く非難した。
イスラエルの指導者をハーグの国際司法裁判所(ICJ)で戦争犯罪で裁くよう要求。ハマスがテロ組織ではなく、選挙で勝利した政党であるという自身の見解とトルコの立場を繰り返した。
「占領政策に直面して自らの土地、名誉、生命を守っているハマスのメンバーがレジスタンスの戦士であるという真実を、一部の人々が不快に思うからといって、われわれが口にしなくなることはない」と述べた。
同大統領は週内にドイツを訪問し、ショルツ首相と会談する予定。10月7日にイスラエルとハマスの軍事衝突が発生して以来、同大統領が西側諸国を訪問するのはこれが初めて。ドイツはイスラエルとの強い連帯を表明する一方で、ガザの民間人被害を抑えることに重点を置くよう求めている。
●中南米・アフリカ
●市況
<為替> ドルが上昇。朝方発表された米小売売上高は7カ月ぶりに減少したものの、市場予想ほどは落ち込まず、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始時期がなお不透明であることを強調した。
10月の米小売売上高は前月比0.1%減少した。市場予想(0.3%減)ほどは落ち込まなかったものの、需要鈍化を示唆した。
また、10月の米卸売物価指数(PPI)は前年同月比1.3%上昇した。伸びは前月の2.2%から縮小し、予想の1.9%も下回った。前月比ではガソリン価格が急落する中、3年半ぶりの大幅な下落となり、インフレ圧力が沈静化しつつあることが改めて示された。
<債券> 米債利回りが2カ月ぶりの低水準から上昇した。インフレ鈍化の兆しが見られたものの、9月の小売売上高が上方改定されたことを受けた。
<株式> 続伸して取引を終えた。卸売物価指数(PPI)統計を受け、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが終了した可能性があるとの見方が強まった。また、小売り大手ターゲット(TGT.N)による強気の見通しを追い風に小売株が上昇した。
ターゲットは第4・四半期利益見通しがアナリスト予想を総じて上回ったことを受けて17.8%急伸し、2019年8月以来の大幅な上昇率を記録。S&P主要消費財指数(.SPLRCS)を押し上げたほか、メーシーズ(M.N)やコールズ(KSS.N)など他の小売株も買われた。<米原油先物> 需給引き締まり観測の後退を受けて下落した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値(終値に相当)は、前日比1.60ドル(2.04%)安の1バレル=76.66ドル。1月物は1.38ドル安の76.79ドルだった。
<ロンドン株式市場> 続伸して取引を終えた。インフレ鈍化の兆候を受けて中型株で構成するFTSE250種指数(.FTMC)は0.76%上昇し、取引時間中に一時、約2カ月ぶりの高値を付けた。
酒造大手のディアジオ(DGE.L)は1.8%安。デブラ・クルー最高経営責任者(CEO)が、中南米での在庫問題がいつ解決できるかを予測するのは難しいと発言したことが嫌気された。飲料株指数(.FTNMX451010)が1.56%下落したのが相場全体の上値を抑えた。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。主要国のインフレ鈍化を受けて利上げ終了の観測が強まり、買い注文が優勢となった。
日経先物33,560、ダウ先35,045、債先145.32、米4.517、独2.6370、仏3.201、西3.661、伊4.435、英4.2425、波5.594、原油76.52、銅8,283、ドル円151.22、ユーロドル1.0852
※11/15 9時45分頃
備忘録(2023/11/14)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
米ホームセンター大手のホーム・デポが14日発表した8-10月(第3四半期)決算は、既存店売上高と1株利益が予想を上回った。また住宅改築・改装需要が後退する中で、通期見通しの予想レンジ幅を狭めた。
新型コロナ禍で見られた特需は去り、足元では住宅ローン金利の跳ね上がりや住宅販売の落ち込み、旅行や娯楽への支出シフトを背景に、売上高の伸びを維持することは難しくなっている。
テッド・デッカー最高経営責任者(CEO)は声明文で、小規模なプロジェクトへの支出は継続しているが、大型出費は低迷していると述べた。
8-10月の既存店売上高は3.1%減と、市場予想の3.3%減ほど落ち込まなかった。1株当たり利益も市場予想をわずかに上回ったが、前年同期の水準は下回った。
顧客単価は前年同期から減少し、インフレによる収益押し上げ効果がなくなっていることを示唆している。
通期については、既存店売上高が従来の2%-5%減から3%-4%減になりそうだと明らかにした。1株当たり利益は9-11%減を見込む。従来は最大13%減としていた。
豪最大手コモンウェルス銀行(CBA)(CBA.AX)が14日発表した第1・四半期(9月末終了)決算は、税引き後純利益が25億5000万豪ドル(15億9000万ドル)と前年比横ばいだった。
昨年からの利上げにより金融機関の利ざやは拡大したが、住宅ローン市場の競争は返済コストの上昇で激化し、利ざやや与信の伸びに影響が出ている。
シティがまとめた利益予想は24億5000万豪ドルだった。
住宅ローン残高は第1・四半期に45億豪ドル減少した。
CBAは純金利マージンについて、主に預金における競争圧力と顧客の高利回り預金への切り替えにより低下したと説明した。
マット・コミン最高経営責任者(CEO)は、家計が逼迫する中で顧客は現実的な手段を取っており、それに伴い滞納がここ数カ月若干増えていると説明した。
CBAの競合となるナショナル・オーストラリア銀行(NAB.AX)、ウエストパック銀行(WBC.AX)、オーストラリア・アンド・ニュージーランド銀行(ANZ)(ANZ.AX)はインフレの逆風下にもかかわらず、今月初めの決算で増益を記録している。
三井住友フィナンシャルグループ (8316.T)は14日、2024年3月通期の連結純利益見通しを8200億円から9200億円(前期比14.2%増)に上方修正した。2014年3月期以来、10年ぶりの過去最高益となる。本業のもうけを示す業務純益の伸びに加え、下期に政策保有株の売却も予定している。
IBESがまとめたアナリスト11人による連結純利益予想平均値8532億円を大きく上回った。9200億円は現中期計画の最終年度となる25年度の目標9000億円も超過している。業務純益も600億円引き上げ1兆4000億円とした。
伊藤文彦グループ最高財務責任者(CFO)は会見で、下期について、市場部門を保守的に見ているほか、為替も1ドル130円を想定、米貨車リース事業売却のマイナス要因があるものの、引き続き業務純益の伸びを見込んでいることや政策保有株の売却予定があり、上方修正を行ったと説明した。
金利上昇の業績への影響については「一番大きいのは、短期のマイナス金利が解除されて10ベーシス上がることが大きい」と述べた。マイナス金利政策解除で政策金利がゼロ%になれば、業務純益を300億円強、純利益を200億円程度押し上げるとの試算を示した。マイナス金利解除の時期については「来年春、春闘の賃上げ動向を見極めたうえで必要に応じて解除がある」との見通しを示した。
米国債投資は「米国の利上げが最終局面にきている」と指摘し、足元まで買い増してきたが、今後は「残高をそれほど増やさない」という。一方、日本国債はぎりぎりまで残高を減らしている中「今すぐJGBのポートフォリオを増やしていくわけではないが、利上げのペースを見ながら機動的にポートフォリオを構築していく」とした。
業績の上方修正を踏まえ、株主還元の強化を打ち出した。同日、2600万株(発行済み株式の1.9%)・1500億円を上限とする自己株取得を決議した。取得期間は11月15日―2024年3月31日で、取得した全株式を24年4月20日に消却する予定。1500億円の自社株買いは、過去最大規模だという。
また、年間配当は期初予想比20円増額の270円(前年は240円)とした。これにより、総還元性向は62%となる。
23年4─9月期の連結純利益は前年同期比0.2%増の5264億円だった。上期として過去最高益を更新した。
三菱UFJフィナンシャル・グループ (8306.T)は14日、2023年4─9月期の連結純利益が前年同期比約4倍の9272億円だったと発表した。通期見通し1兆3000億円(前期比16.4%増)に対する進捗率は71%に達したが、通期計画は据え置いた。
IBESがまとめたアナリスト13人による連結純利益の予想平均値は1兆3740億円だった。
4―9月期は、業務純益の増益に加え、モルガンスタンレーの持分法適用決算期変更、円安の影響も純利益増に寄与した。MUFG発足以来の最高益となった。
亀澤宏規社長は会見で、通期見通しを据え置いた理由について、上期に比べて下期は、モルガンスタンレーの決算期変更や為替円安など一過性要因が剥落する可能性があることに加え、「円債、外債のポジション含み損があり、ポジション整理をやっていきたい」と述べた。
日銀の金融政策については、短期金利がどうなるかに注目しているとし「基本は来年の春闘での賃上げが確信できてからだと思うが、ある程度物価目標が達成されると思ったら早めのタイミングで金融緩和解除はあり得ると思っている」と述べた。業績への影響は「全体として金利が上がっていくとプラスの影響が出てくる」とした。
●先進国、グローバル、金融市場
ミシャールさんは2021年に英国に到着し、8月に難民認定を受けた。クウェート出身だが国籍を持たないミシャールさんにとって、法的な地位を認められたのは、それが人生で初めてだった。
ミシャールさんは、公式統計ではクウェートに約8万5000人いるとされるベドウィン族の出身だ。ようやくのことで、「人として生きる」ことができると感じ、将来の計画を考えられるようになったという。
トムソン・ロイター財団の取材に応じたミシャールさんは、「だが、その幸せは長くは続かなかった」と語る。プライバシーを守るため、フルネームと居住地は明かさなかった。
認定の1カ月後、ミシャールさんは政府運営の難民収容施設から7日以内に立ち去るよう退去通知を受け取った。だがその時はまだ、就労や銀行口座の開設、賃貸住宅の利用に必要な在留カードの交付を待っている段階だった。
ミシャールさんは通訳を介してアラビア語で、「(難民)収容施設から追い出されたら、在留カードがなければホテルにもどこにも入れない。働くこともできない」と語った。
「手錠をはめられたような感じで、何もできない」とミシャールさん。その後、支援者の助けを借りて、カードが交付されるまで滞在できる宿泊所を見つけた。
ミシャールさんのような事例は増えつつある。慈善団体によれば、8月に英内務省が、いわゆる「移行期間」、つまり難民認定から難民が生活拠点を見つけるまでの期間を決定する方法を変更したことが原因になっているという。
慈善団体によると、現在、28日間の移行期間は、在留カードを受け取ってからではなく、難民認定通知を受け取った時点から起算されるようになっているという。一部はミシャールさんのように、わずか1週間の猶予で難民収容施設からの退去を求められるケースもある。
内務省にコメントを要請したが、回答は得られなかった。
英国赤十字社では、政府が溜まっている亡命申請の処理を進める一方で、ただちに難民支援の措置をとらなければ、今年末までに最大5万3000人の難民がホームレスになる可能性があると話している。亡命申請の未処理分は昨年44%増加し、6月には17万5000件を超えた。
最前線の支援スタッフがこのところ難民に提供しているのは、就業や住居に関するアドバイスではなく、寝袋や防寒具だ。
「難民認定を受けても、それが大きな安心感や喜び、祝福の瞬間にはつながらず、むしろパニックに陥ってしまう。とにかく、立ち退きのための猶予が十分に与えられていない」と語るのは、英国赤十字社で難民支援部門を率いるエリー・シェパード氏。
シェパード氏はオンラインでのインタビューで、「難民たちは本来、新たな生活の一歩を踏み出し、英国社会に溶け込んでいくべきだ。でも私たちが彼らに伝えないといけないのは、『ホームレスになる覚悟をしておきなさい』というのが現状だ」と語った。
<「最悪の事態」>
ブレイバーマン英内相は4日、ホームレスの人々によるテントの使用を制限する法案を提出すると発言して、大きな批判を浴びた。同内相は、ホームレスの多くはテント暮らしを「ライフスタイルの選択肢」と考えている外国人だと述べた。
ブレイバーマン内相は、移民問題に対する英国のアプローチを全面的に見直すことを求めている。来年に想定される総選挙では移民問題が主要な争点になる可能性が高い。
リシ・スナク首相は、「ボートの阻止」、つまり英仏海峡経由での移民の到着を防ぐことを優先課題としているが、亡命希望者のルワンダ移送といったスナク政権の政策は、司法の場での異議申し立てにより阻まれている。
英国での亡命申請者は、本当に難民であると政府が認証するまで就労が許可されず、それまでの間は、政府が無料の住居を提供し、1人あたり週約47ポンド(約8700円)の手当が支給される。
ひとたび難民認定を受ければ、社会福祉制度の利用と就労の権利に向けての一歩前進となる。だが、言葉の壁もあり、文書作成に苦労する例もあるため、28日間という移行期間の短さはただでさえ問題になっている。
政治家や慈善団体は移行期間を56日に延長するよう以前から求めてきた。また、支援関係者らは、一部の事例で見られるように、難民収容施設からわずか7日で難民が退去できると考えるのは不可能だと指摘している。
英国赤十字社が退去通知の問題を察知したのは、他の多くの慈善団体と同様に8月だったという。それ以来、極貧状態にある難民が140%増加しているのを確認したと同社は話している。
「申請の処理ペース、退去通知、十分な準備を整える時間の不足という要素が揃っている」とシェパード氏は言う。「これは最悪の状況だ」
人身売買問題に取り組む慈善団体は、「現代の奴隷」状態から生還して亡命申請を行っている人々も厳しい状況に置かれていると話している。
「現代の奴隷」を支援する慈善団体「コーズウェイ」でシニアサービスマネジャーを務めるルース・オレンジ氏は、難民として法的な地位を認定された人身売買被害者が7日間の猶予で退去通知を受け取り、近所の公園での生活を余儀なくされた例を紹介する。
「かつて人身売買の犠牲になった人々だから、同じ被害に遭うリスクがある。つまり、それほど弱い立場だということだ」
<「寒空の下へ」>
公式統計によれば、2022-23年にはイングランドとウェールズでホームレス人口が約30万人に達した。地方自治体は、とにかく住宅が足りていないと指摘する。
地方自治体連合のショーン・デイビス代表によれば、地方議会は政府による定住計画の実現に向けて取り組んでいるが、その負担は大きくなっているという。
デイビス代表はメールで、「難民、亡命をめぐる制度全体で危機が続いている」とコメントした。
難民評議会は、行政におけるミスが問題を悪化させていると指摘する。「生体認証付在留許可証」(BRP)と呼ばれる在留カードが誤った住所や、難民がすでに退去した難民収容所に送付されるといった例が報告されている。
英国赤十字社でケースワーカーとして働くエリック・シュミット氏は、不正確な氏名や詳細が記載されたBRPが発行される例は珍しくなく、再発行には数週間かかると語る。レスターを拠点とするシュミット氏は、支援の要請が殺到して困惑していると話す。
「私たちはホームレス支援の専門家でもないし、シェルターでもない。この仕事をやっていて一番辛いのは、寒空の下に出ていくよう誰かに告げざるをえないときだ」
スペイン下院(定数350議席)の議長は13日、サンチェス首相の信任投票を16日に実施すると発表した。7月23日に行われた総選挙に基づく新政権の樹立へ向けた措置。
信任案は賛成179票、反対171票で可決されて、サンチェス氏の続投が決まる見通しだ。首相の任期は4年間。
スペインでは総選挙後も新政権が樹立できていなかったが、サンチェス氏が率いる社会労働党は、政権樹立の鍵を握るカタルーニャ自治州の独立派小政党と合意に達し、サンチェス氏続投の可能性が高まった。
ただ両党の合意は、支持の見返りに同自治州の独立活動家を恩赦する内容であり、恩赦に反対する激しい抗議活動が続いている。
オーストラリア政府は14日、産業界や大学が防衛技術を外国人と共有することに関する規制を強化する新法を発表した。米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」の原子力潜水艦建造計画に向け、技術情報の管理保持体制を整備する。
AUKUSは、豪が英国と協力して次世代の原子力潜水艦を設計・建造することにしている。次世代原潜が就役するまでの間の措置として、米国は豪にバージニア級原潜を売却する計画だが、関連法案の議会可決が遅れている。原因の一つが、米国務省が豪の防衛機密保持能力を精査していることにある。
新法は、米国の防衛技術輸出規制を参考に策定された。3つの刑事犯罪を設定し、防衛技術情報の国内外の外国人との共有の規制を強化した。AUKUS間のライセンスフリーの共有は認める。
マールズ国防相は新法について、「AUKUSのパートナーとの継ぎ目のない産業基盤を構築するために不可欠」と説明した。
一方、オーストラリア科学アカデミーは14日、国内の大学は国際的な共同研究に依存し、研究者の3分の1は海外留学生だとして、科学分野での中国を含む他国との協力への影響に懸念を表明した。
ウエストパック銀行とメルボルン研究所が14日発表した11月のオーストラリア消費者信頼感指数は前月比2.6%低下し79.9となった。中央銀行の利上げが重しとなり、悲観的な回答が楽観派を依然として上回った。10月は2.9%上昇していた。
指数は中立を示す100の水準を昨年3月から下回っており、1990年代初めの景気後退期以降で最長となっている。
オーストラリア準備銀行(中銀)は7日、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げ、12年ぶり高水準となる4.35%とした。 もっと見る
調査ではその直後に信頼感が6%低下した。
ウエストパックのチーフエコノミスト、マシュー・ハッサン氏は「調査が行われた週には中銀の利上げ前に信頼感はわずかに上昇していた」と指摘。利上げが家計に新たな圧力を与え、生活費上昇と追加利上げの可能性への懸念が再燃したと語った。
住宅ローンを抱える消費者の信頼感は5.3%低下し、73.4とかなり悲観的な水準となった。
家計に対する信頼感は2.0%上昇したものの、今後1年の見通しは7.3%悪化。今後1年間の経済見通しは2.7%改善したが、5年後の見通しは6.4%悪化した。
大型家財道具の購入に適した時期かどうかを示す指数は1.4%低下。回答者のほぼ4割がクリスマスプレゼントへの支出を昨年より抑える予定だという。
欧州経済センター(ZEW)が14日発表した11月のドイツの景気期待指数はプラス9.8と、予想以上に上昇し、4月以降初めてプラスとなった。
ロイターがまとめた市場予想はプラス5.0。10月はマイナス1.1だった。
期待指数は4カ月連続改善。今後半年に経済情勢が回復するとの見方が強まっていることを示唆する。
一方、現況指数は0.1ポイント上昇のマイナス79.8と、ほぼ変わらずだった。
ZEWのワムバッハ所長は「ドイツ経済が底入れしたとの印象を裏付けるものだ」と指摘。「ユーロ圏の経済情勢が悪化していることを考えると、現況指数の横ばいは素晴らしい」と評価した。
VPバンクのチーフエコノミスト、トマス・ギツェル氏は、エネルギー価格の下落、金利状況がこれ以上悪化することはないとの見方が見通し改善に寄与したと指摘。「ドイツ経済が突如、力強い成長局面に入ると予想する人はいないが、厳しい経済情勢がさらに深刻化することがなければよいと言える」と述べた。
国際エネルギー機関(IEA)は14日、ほぼ全ての主要国で景気減速が見込まれているものの、今年と来年の世界の石油需要の伸びの予測を上方修正した。
サウジアラビアとロシアが今年末までに自主的な削減で供給はタイトな状態が続くが、来年初めには供給が需要を上回る可能性があるという。
今年の需要は米国の底堅い納品と中国の9月の記録的な需要が支援要因となる見通し。
来年は利下げ期待や最近の原油価格下落が支援要因になるという。
「北半球の冬に向けて需要は依然として入手可能な供給を上回っているが、市場のバランスは高い経済・地政学リスクに引き続き左右されやすい。今後さらに不安定になる」と述べた。
IEAは今年の伸びの予測を日量230万バレルから240万バレルに引き上げた。石油輸出国機構(OPEC)の予測は246万バレル。
来年の予測は日量88万バレルから93万バレルに引き上げた。OPECの予測225万バレルを大幅に下回っている。
BofAグローバル・リサーチの調査によると、世界のファンドマネジャーは債券を2009年3月以降で最大のオーバーウエートにしており、61%が1年後の利回りは現在より低下していると予想した。
ファンドマネジャーは今年に入り2カ月を除いて債券をオーバーウエートにしているが、今回の11月調査では債券への配分が前月比で18%ポイント急増し、ネットで19%のオーバーウエートとなった。
「大きな変化はマクロ見通しではなく、インフレ率、金利、利回りの低下に対する確信だった。債券のオーバーウエートは過去20年間で3番目の大きさとなった」と述べた。
オーバーウエートの比率が今回より高かったのは09年3月と08年12月のみ。
調査はファンドマネジャー225人(運用総額5530億ドル)を対象に実施。回答者の76%が米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクルは終わったと考えている。
57%は世界経済の成長鈍化を予想。74%は世界経済のソフトランディングかノーランディングを見込んでいる。
株式はネットで2%のオーバーウエートと、22年4月以来初めてオーバーウエートに転じた。
欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)が14日発表した第3・四半期のユーロ圏域内総生産(GDP)改定値は、前期比0.1%減少で速報値から変わらずだった。
同じく前年比では0.1%増加だった。
国別では、フランスが前期比0.1%増、スペインが0.3%増、ベルギーは0.5%増だったが、ドイツは0.1%減、イタリアはゼロ成長だった。このほか、オーストリア、ポルトガル、アイルランド、エストニア、リトアニアがマイナス成長だった。
高インフレ、過去最高水準の金利、緩やかな財政引き締めが成長を圧迫した。しかし、雇用は底堅さを示した。
第3・四半期の雇用者数は前期比0.3%増、前年比1.4%増。ロイターがまとめた予想(前期比0.1%増、前年比1.2%増)を上回った。
スイス国立銀行(中央銀行)のジョルダン総裁は14日、来月の次回会合を控え、今後数週間のインフレ動向を注視すると述べた。
総裁はチューリヒで開かれた中銀の会合で「われわれは物価の安定がまだ確保されていない可能性を強調した。このため、必要であれば追加の金融引き締めを躊躇(ちゅうちょ)しない」と述べた。
総裁は、インフレ率が1年前より低下し金利が上昇しているため、金融引き締めが過度あるいは少な過ぎるリスクの間でバランスを取ることがかなり難しくなっていると指摘。「経済見通しの不確実性が高いことから、近い将来の金融政策の道筋が明確に描かれているわけではない」と述べた。
中銀は9月に政策金利を1.75%に据え置き、インフレ率が鈍化したが、追加引き締めの可能性は排除できないと表明した。
スイスの10月のインフレ率は5カ月連続で1.7%と中銀の目標レンジ(0─2%)内に収まっており、市場では来月14日の会合で金利が据え置かれるとの見方が強まっている。
英国立統計局(ONS)が14日発表した7─9月の賃金はボーナスを除いたベースで前年比7.7%上昇と、小幅に鈍化したが、依然として過去最高に近い上昇率だった。
イングランド銀行(英中央銀行)のインフレ圧力に対する懸念は和らがないとみられる。
ロイターがまとめた市場予想は7.7%上昇だった。過去2回は7.9%上昇と、2001年の統計開始以降で最高を記録していた。
変動の激しいことが多いボーナスを含む賃金は7.9%上昇で、6─8月の8.2%上昇から鈍化した。
中銀は利下げを検討するには賃金上昇率の鈍化ペースが緩やか過ぎると分析しているが、非公式の賃金上昇率の指標はONSの指標ほど上昇していないとも指摘している。
統計発表後、ポンドは対ドルと対ユーロで小幅に上昇した。
インスティテュート・オブ・ディレクターズの政策アドバイザー、アレクサンドラ・ホールチェン氏は「労働市場は依然として非常にタイトだ。企業は必要な人材の確保で引き続き問題を抱えている」と述べた。
INGのエコノミスト、ジェームズ・スミス氏は、民間部門の賃金上昇率が8.1%から7.8%に鈍化しており、来年3月に6.6%という中銀の予測が実現に向かっているようだと指摘。下振れる可能性もあると述べた。さらに進展があれば来年8月に最初の利下げが実施される可能性があるとしている。
求人件数は2021年4─6月以降で最低だった。
ONSの通常の家計労働力調査の回答率低下を補うための試験的な失業率の指標は4.2%で横ばい。
7─9月の就業者は5万4000人増。ロイターがまとめた市場予想では大幅な減少が見込まれていた。
PwC・UKのエコノミスト、ジェイク・フィニー氏は「今回の統計の精度には不透明感があるが、他の指標は労働市場が緩やかに鈍化していることを示唆している」と述べた。
雇用研究所のディレクター、トニー・ウィルソン氏は接客や建設など景気減速の影響を受けやすい職種で雇用が減少していると指摘。失業して求職活動をしていない人が多すぎるため、賃金が押し上げられており、政府が就職支援を拡大する必要があると述べた。
7月、米南部ジョージア州議会で初めてアフリカ系(黒人)女性の共和党議員が誕生した。アトランタ生まれのミーシャ・メイナー氏。民主党から転向した。上下両院236議席の州議会は共和党が多数派を支配する。
10月の米消費者物価指数(CPI)は全般に鈍化し、利上げ打ち止め観測が高まった。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.2%上昇にとどまった。ガソリン価格下落の影響で、総合CPIは前月比横ばいとなった。
インフレ率はここ数カ月変動がやや大きいが、昨年付けた40年ぶり高水準からは大幅に低下してきている。これを受け、一部の金融政策当局者は利上げ打ち止めを示唆しているが、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は必要に応じて追加利上げを実施する可能性を繰り返し強調している。
ウェルズ・ファーゴのチーフエコノミスト、ジェイ・ブライソン氏はブルームバーグテレビジョンで「追加利上げのハードルはますます高くなっている」と発言。「この統計は幸先の良いものだが、当局が任務完了を宣言するには、0.2%上昇があと数カ月続く必要があるだろう」と述べた。
家賃やパーソナルケア製品・サービスなどが上昇。医療保険料の算出方法を変更したことも寄与した。一方、航空運賃と中古車価格は低下した。
総合CPIの約3分の1を占める住居費は0.3%上昇。伸びは前月の半分にとどまった。コアインフレ率を金融当局の目標にまで引き下げるには、このカテゴリーが継続的に減速することが鍵になるとエコノミストはみている。帰属家賃も伸びが鈍化し、ホテル宿泊費は低下した。
ブルームバーグの算出によれば、住宅とエネルギーを除いたサービス価格は前月比0.2%上昇。前年同月比では3.7%上昇と、ほぼ2年ぶりの低い伸びとなった。金融当局者はこのカテゴリーの重要性を強調しているが、インフレ動向を判断する上では別の物価指数を使用している。
米債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)は2024年こそ債券が上昇すると予想している。多くの投資家と同様、同社は今年の相場上昇を予測して、裏切られた。
運用担当者のエリン・ブラウン、ジェラルディン・サンドストローム、エマニュエル・シャレフ3氏は新たなリポートで、「今ほど債券が魅力的なことはめったにない」と指摘。2024年は債券の「プライムタイム」になると予想した。
今年の債券市場は投資家を困惑させた。指標10年債の利回りは3.87%付近から5%台に上昇。現在では4.5%前後に戻っている。昨年に7回利上げがあったことから、今年は経済がリセッション(景気後退)に陥り、連邦公開市場委員会(FOMC)に利下げを迫るだろうと多くが予想していた。それとは裏腹にFOMCは今年、4回も利上げを実施。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はインフレが高止まりすれば追加利上げもあり得ると強調している。
1兆7400億ドル(約262兆円)を運用するピムコは、今年1月の時点で年内リセッションの可能性が高いとして「債券復活」への期待を表明。楽観的だったのは同社だけではなかった。しかし3月に地銀の破綻が相次いだ後も、労働市場は力強さを維持し、インフレはなおもFRBが目指す2%を1ポイント以上超えている。ブルームバーグ米国債指数は年初から1.2%下げ、3年連続低下のペースで推移している。
ピムコは2024年のリセッション確率を約50%としており、インフレ率の低下を見込んでいる。
運用担当者3氏のリポートは、経済成長とインフレがピークを付けると米国債は「リスク調整後で魅力的なリターンを提供する傾向がこれまでにあった」と指摘。「むしろ株式の方が比較的厳しい状況だった」としている。
米下院は14日、政府機関閉鎖回避のためのつなぎ予算案を可決した。送付される上院では与野党のトップが同案への支持を表明している。
バイデン米大統領は14日、翌日に予定されている中国の習近平国家主席との会談について、会談の目標は、両国の軍のコンタクトを含む、通常の意思疎通を再開することだと述べた。
バイデン大統領はホワイトハウスで記者団に対し、緊張関係が続いた米中関係をより良いものに変えようとしていると語った。
両首脳はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、15日に米サンフランシスコで会談する。
バイデン大統領はサンフランシスコに出発する前に、習主席との首脳会談の成功をどのように評価するかと質問され、「通常のコースに戻ること、連絡を取り合うこと、危機に際し互いに電話を取って対話することができるようになること、そして両国の軍隊が依然として互いに連絡を取り合っていることを確認できるようになることだ」と述べた。
さらに、米国は中国との「デカップリング」を望んでおらず、むしろ経済関係をより良い方向に転換させたいと述べた。
一方で「中国に投資するために米国の企業秘密を全て引き渡さなければならないというような立場を支持し続けるつもりはない」とした。
ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官によると、会談ではガザ危機のほか、ウクライナ支援に向けた米国の取り組みについても協議される見通しで、米国は中国がイスラエルを支援し地域に人道支援をもたらす機会を歓迎するという。
カービー氏は「両首脳は率直に対話することが可能で、そうなることを期待している」とし、バイデン大統領は「相入れない特定の問題で向き合うことが必要であれば、それを恐れない」と語った。同時に、気候変動など、協力が可能な分野を模索すると述べた。
米中首脳会談の開催は約1年ぶり。バイデン氏にとっては2021年1月の大統領就任以来、2回目の直接会談となる。
来年の新興国資産は厳しい滑り出しとなるものの、次第に上向いて、最後は先進国資産よりも高いリターンを達成する――。UBSのアナリストチームは14日、こうした見通しを示した。
各新興国資産についてUBSは、来年の債券のリターンが8─10%、株式は6─8%、通貨は1─3%と想定した上で、後になるほど堅調さが増す傾向とみている。
UBSによると、米国の景気後退が小幅であっても当初は新興国資産が下押しされるが、米連邦準備理事会(FRB)が利下げに動けば、世界的な借り入れコストが低下する公算が大きい。
同社は他の多くの大手投資銀行よりも来年の米国の予想利下げ幅が大きく、来年末の米政策金利は2.50─2.75%になると見込んでいる。
新興国資産にとって来年は、米国の金融政策を巡る逆風が弱まり、成長格差も縮小する中で地合いが改善するという。
オーストラリアと中国の関係が正常化に向かっている。2020年以降、冷え込んだ両国関係は22年の豪州の政権交代を契機に改善してきた。アルバニージー氏は11月上旬に豪首相として7年ぶりに訪中し、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と対話継続の重要性を確認した。貿易制裁の解除など経済面での雪解けが進む一方で、豪州は安全保障では対中を念頭に防衛力の強化を続ける算段だ。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国政府は苦境の不動産市場をてこ入れする最新の取り組みとして、少なくとも1兆元(約21兆円)の低金利資金を都市部の再開発や手頃な価格水準の住宅計画に提供する計画だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。
中国人民銀行(中央銀行)が政策銀行を通じて段階的に資金を注入し、最終的に住宅購入のための資金が家計に行き渡るようにすると、関係者は非公表の計画だとして匿名を条件に語った。
当局はいわゆる担保付き補完貸し出し(PSL)や特別融資を含む選択肢を検討しており、政府は早ければ月内にも最初の一歩を踏み出す可能性があるという。
何立峰副首相による新たなイニシアチブの一環であるこの計画は、経済成長と消費者心理を圧迫している数十年で最悪の不動産不況に歯止めをかけようとする当局の取り組みの大幅な強化を意味する。
国内最大手のデベロッパーの何社かが債務不履行に陥ったことで、各社の財務健全性を巡る市場の懸念は高まっている。
中国のPSL残高は10月時点で2兆9000億元。この融資枠が1兆元純増となれば、2019年時点の最高額を上回ることになる。新たな資金供給の最終的な規模は変更される可能性があると関係者は述べた。
関係筋によると、中国政府は地方政府に対し「問題がある」と指摘された官民連携事業(PPP)を中止するよう命じた。地方政府の債務リスクを抑制することが狙い。
地方政府や政策銀行、国有金融機関に宛てた先月の中国国務院(内閣に相当)の文書に新たなガイドラインが記載されていたという。
これまで年間予算の最大10%をPPPに充てることを地方政府に認めてきたが、これを廃止し今後は当局が事業を個別に審査する。多くの地方政府のPPP支出が過去数年間で基準の上限に達していた。
国家審計署が今年が実施した検査で「問題のある」と指摘された事業には停止し、指摘された問題に対処するよう命じた。関係筋の1人は問題のある事業ついて、地方政府のインフラ投資会社である融資平台(LGFV)が民間のパートナーを装ったケースなどが含まれると説明した。
また2月までにパートナーを決定する入札手続きが終了していないプロジェクトは全て停止される。
PPPの監督官庁は財政省から国家発展改革委員会(発改委)に変更される。地方政府は11月中に全てのPPPを国務院と発改委に報告する必要があるほか、特別目的債や一般債を発行して事業に伴う債務を返済することが奨励されているという。
中国政府は2014年から民間資金を公共インフラ事業に活用するPPPを推進してきた。しかし一部の地方政府が債務による資金調達のための「抜け道」として利用していることへの懸念が高まていた。
中国銀行のリポートによると、22年末時点で中国は1万4000件以上のPPPを実施し、投資額は20兆9000億元(2兆8700億ドル)とフランス経済にほぼ匹敵する規模に達している。
●中東
イスラエル軍は14日、パレスチナ自治区ガザとヨルダン川西岸を攻撃し、地元メディアなどによると20人以上が死亡した。
イスラエル軍はガザ南部の町ハーンユーニスを砲撃し、ガザ保健当局は住宅が標的にされ少なくとも13人が死亡したと明らかにした。
またヨルダン川西岸でもイスラエル軍の攻撃により少なくとも8人が死亡した。イスラエル軍と警察によると、戦闘員を拘束するために国境近くの町トゥルカルムに派遣された部隊がパレスチナ武装勢力と銃撃戦になり、数人を殺害したと。
また爆弾や火器で攻撃してきたパレスチナ人のグループに対して空爆を行ったという。パレスチナ自治政府の通信社WAFAはドローンによる攻撃で3人が死亡したと伝えた。
医療関係者らによると、ヨルダン川西岸南部ヘブロンの近郊でもイスラエル軍の銃撃により1人が死亡した。
イスラエル軍は13日、イスラム組織ハマスが実効支配してきたパレスチナ自治区ガザでの「支配を失った」と主張した。イスラエル軍は病院とその周辺の地下にハマスの司令部があると主張して地上作戦の範囲を広げる。患者の生命を危険にさらしていることに、米国からも懸念の声が高まっている。
イスラエルのガラント国防相は13日、「ハマスにイスラエル軍を止められる力は無く、ガザでの支配を失った」との見解を示した。11日にはネタニヤフ首相が「ハマスはガザ北部での支配を失った」と述べ、同国軍の影響範囲が急速に広がっていることを示唆する。
イスラエル軍は13日、ガザ北部にあるランティシ病院に部隊が踏み込んだと明らかにした。病院の地下や周辺の地下トンネルとする映像をネット上で公開したうえで、武器の保管や人質の拘束などハマスの作戦に利用された痕跡があると主張した。
映像公開によりガザで戦闘を継続する正当性を訴える狙いがあるようだ。ハマス側はこれまで病院の活用を否定している。ガザ北部では地区最大のシファ病院が燃料不足で機能を停止するなど、医療体制が崩壊しつつある。バイデン米大統領は13日、ホワイトハウスで記者団に「病院は守られなければならない」と強調した。
ハマスは13日、人質解放に向けた交渉を仲介するカタールとの協議で、5日間の停戦と引き換えに最大70人の人質を解放する用意があると表明した。ロイター通信などが、通信アプリ「テレグラム」でのハマス側の音声投稿を引用する形で報じた。
ハマス側が解放するとしている対象は、女性や子供の人質。米ニュースサイトのアクシオスによると、イスラエル当局は240人以上とされる人質のうち、ハマスが約180人を拘束しているとみる。残りの人質はガザの過激派「イスラム聖戦」などに捕らえられていると分析している。
ガザのパレスチナ人が直面している想像を絶する恐怖の中で、特に注目すべきは妊娠中の5万人以上の女性についてだろう。
その多くは、数週間にわたる食料不足のためにやせ細り、赤ん坊のために母乳を出すことができない。国連の児童機関ユニセフは、1日180人の女性が十分なケアを受けられずに出産していると推定しており、そのなかには鎮痛剤なしで帝王切開を受けたり、出産後数時間以内に出血したまま退院させられたりするなどのケースも含まれる。新生児集中治療室では、救命のための保育器に電気が供給されず、何十人もの赤ちゃんが死のリスクに直面している。
病院が最も必要とされているこの時期に、ガザにある35の病院の約半数が破壊され、または機能を停止しており、残りの病院も設備や電力の不足に直面している。病院までもが爆撃され、医師や患者が巻き添えになるような状況は、地獄の底に足を踏み入れたようなものだ。イスラエルは、包囲下にあるアル・シファ病院を戦場に変えたとして非難されている。自分の家が破壊されて大けがを負い、病院へ向かう救急車が空爆を受けてさらに負傷するという恐怖を想像してみてほしい。病院が何百体もの遺体を埋葬できないことも、恐ろしい状況と感染症の急速な拡散に拍車をかけている。
仮にハマスが病院の中に司令部を設置したとしても、その施設を攻撃することは紛れもなく戦争犯罪である。イスラエルは、国際法が適用されないかのように行動しているが、それは、西側諸国が長年にわたってイスラエルの行為を黙認し、甘やかしてきたからだ。ハマスがパレスチナ国家を代表しているわけではなく、この事態を引き起こした責任はハマスにもある。しかし、世界の指導者たちもまた、何十年もの間、イスラエルに絶対的な免罪符を与えてきたことによって引き起こされたこの凄惨な結果に責任がある。
驚くべき自滅行為として、英国のスエラ・ブレイバーマン内相はロンドンの休戦記念日に行われた親パレスチナデモを「ヘイトマーチ」と非難し、禁止するよう警察に圧力をかけたが、失敗に終わった。ブレイバーマン氏による無料宣伝のおかげで、何十万人もの人々が英国史上最大規模のデモ行進に平和的に参加した。実際のところ、イスラエルで無差別に殺害された人々とともに、ガザですでに殺害された4500人の子どもたちや何千人もの罪のない民間人のためのメモリアルデーを、私たちは生きている間に目にすることができるのだろうか?歴史が同じことを繰り返さないために、私たちは人類すべての命の神聖さを強調し、記念すべきである。
スペイン、フランス、ドイツ、米国などでも大規模なデモ行進が行われており、イスラエルがその最も親しい同盟国の間で急速に同情を失っていることが示されている。欧米の世論の流動性に、私は驚かされている。10月7日の直後は、親パレスチナの感情を表明する者はテロ同調者として糾弾された。しかし今、感情的にも道徳的にも麻痺した自己中心的な政治家を除けば、ガザの目を覆うような惨状に心を動かされない人がいるだろうか?多くの西側メディアは視聴者を失うことを恐れ、イスラエルに対する盲目的な支持から、よりニュートラルな表現へ変化しているが、一部のメディアは、パレスチナ人の人間性を完全に否定するような論説を続けている。
これらの出来事は、世界中で反ユダヤ主義やイスラム恐怖症の憎悪の種を解き放ち、極右勢力はユダヤ人やイスラム教徒コミュニティに対するジェノサイド的な措置の可能性を示唆する事態に陥っている。イスラエル国内でも、人質の家族を含む数千人のデモ参加者が、イスラエルの空爆によって多くの人質が犠牲になる前に、暴力の停止と約240人の人質を解放するための交渉を要求している。
イスラエルの観測筋は、ガザのパレスチナ市民に対する集団的復讐という明白な目的があるにもかかわらず、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が掲げる戦争目標は、一時的に自身の政治的保身を図るという点を除けば、非現実的で自滅的なものに見えると懸念している。イスラエル軍は、爆撃によって建物の3分の1以上が損壊したガザ市郊外を慎重に、様子を伺いながら包囲しているが、がれきが散乱する市街地には未だ大々的な侵攻を行っていない。イスラエルが本気でハマスの「壊滅」を実行に移すつもりなら、戦争はまだほとんど始まっていないことになる。実際、レバノン国境やヨルダン川西岸地区での挑発行為が本格的な紛争の引き金となれば、紛争は限りなく悪化する可能性がある。
ヒズボラのハッサン・ナスララ書記長がその最新の演説で「勝利」の美辞麗句を並べ立てても、ガザとイスラエル双方の状況に勝利の姿はない。イランのイブラヒム・ライシ大統領も、「イスラエルに抵抗する以外に道はない」と、同様にエスカレートした言葉で発言した。しかし、イランとその代理勢力たちの行動がパレスチナ人にとってどのように役立つかは明らかではない。
一方、リヤドで開催されたアラブ・イスラム首脳会議は、この戦争を「植民地占領政府による戦争犯罪、野蛮で残忍な非人道的虐殺」という異例の強い言葉で非難し、同時にガザ包囲網の終結を求めた。首脳会議で発せられた具体的な提案の中には、パレスチナ人に対する侵害を記録し、公表するためのメディア監視ユニットの設置や、イスラエルの法的責任を追及するための多くの国際的イニシアティブがあった。
国際刑事裁判所のカリム・カーン主任検察官が主張したように、私たちはこのレベルの苦悩や「非人間性のパンデミック」に鈍感になることを許してはならない。がれきの中から引きずり出された人々は私たちと同じ人間であり、等しく正義に値することを忘れてはならない。
数十年にわたるジャーナリストとしての経験から、私は政治家たちが正しいことを言っているときでさえ、非常に懐疑的になっている。目の前で何千人もの人々が無意味に殺戮されるような世界を受動的に受け入れることは、地球市民として許されることではない。
犠牲者がイスラエル人であれパレスチナ人であれ、この容赦ない非人道的な殺戮に、私たちは人類としての人道的共感を呼び覚まさなければならない。それは、この残虐行為を終わらせ、持続的かつ公正な平和を実現するための原動力となる。その不可欠な要素は、パレスチナの土地の不法占拠をきっぱりと終わらせ、双方の正当な権利を尊重する解決策を模索することである。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派を率いるアブドルマリク・アル・フーシ氏は14日、イスラエルに対する一段の攻撃を行うと表明し、紅海とバブ・エル・マンデブ海峡でイスラエルの船舶を標的にする可能性があると述べた。
フーシ氏は演説で「われわれは紅海、特にバブ・エル・マンデブ海峡とイエメンに近い海域を航行するイスラエルの船舶を常に監視している」と述べた。
イランの支援を受けるフーシ派は今月に入ってからイスラエルに対するミサイルやドローン(小型無人機)による攻撃を複数回実施。イスラエルとイスラム組織ハマスの武力衝突が中東の広い地域に拡大するリスクが懸念されている。
一方、イスラエル軍は14日、紅海付近で弾道弾迎撃ミサイル「アロー」を使用したと発表した。南部の港湾都市エイラートで警報が鳴ったという。
ミサイルはイスラエル領内には侵入していないという。イスラエル軍は誰が発射したのかは明らかにしなかった。
その後、フーシ派の報道官は、イスラエルの複数の標的に向けて弾道ミサイルを発射したと表明。エイラートにある重要な標的も含まれるとした。
報道官は「弾道ミサイル発射はイスラエルの同じ標的に対するドローン(小型無人機)による別の軍事作戦の24時間後に実施された」と表明。「フーシ派は紅海やその他のいかなる場所で、イスラエルの船舶を躊躇なく標的にする」と述べた。
●中南米・アフリカ
●市況
<為替> ドルが1%超下落した。この日発表された10月の米消費者物価指数(CPI)がインフレの一段の鎮静化を示したことを受けた。
<債券> 国債利回りが急低下した。米国の10月の消費者物価指数(CPI)の伸びが予想以上に鈍化したことで、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ局面が終了したとの見方が裏付けられた。市場ではFRBは来年上半期に利下げに踏み切るとの観測が強まっている。
<株式> ナスダック主導で大きく上昇して取引を終えた。インフレ統計が予想を下回ったことを受け、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが終了した可能性があるとの見方が強まった。
S&P総合500種(.SPX)とナスダック総合(.IXIC)は4月27日以来の大幅な上昇率を記録した。
金利に敏感なS&P500不動産セクター(.SPLRCR)や公益事業(.SPLRCU)が昨年11月以来の大幅な上昇率を記録し、小型株で構成するラッセル2000指数(.RUT)は5.4%高と相場全体をアウトパフォームした。
写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営するスナップ(SNAP.N)は7.5%急伸。アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)が米国内のスナップチャット利用者を対象に、一部商品を同アプリから直接購入できるようにすると発表した。
ホームセンター大手ホーム・デポ(HD.N)も5.4%高。第3・四半期の利益が予想を上回ったことを好感した
<米原油先物> 米エネルギー情報局(EIA)の在庫統計発表を翌日に控えて様子見姿勢が強まり、 横ばいとなった。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値(終値に相当)は前 日と変わらずの1バレル=78.26ドルだった。1月物は0.02ドル安の78.17 ドル。
<ロンドン株式市場> 続伸して取引を終えた。米消費者物価指数(CPI)がインフレ鈍化を示したことが好感され、買いが優勢となった。
その他の個別銘柄では、スイスの商品取引・資源大手グレンコア(GLEN.L)が4.5%上昇。カナダの鉱山会社テックリソーシズ(TECKb.TO)から製鉄石炭事業の株式77%を現金69億3000万ドルで取得することで合意したことが材料視された。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。米国の10月の消費者物価指数(CPI)がインフレ鈍化を示したことが好感され、買い注文が優勢となった。
ドイツの電力大手RWE(RWEG.DE)は3.7%高。2023年1―9月期決算のコア利益が前年同期より82%増えたことが好感された。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが低下した。米消費者物価指数(CPI)の伸びが予想よりも鈍化したことを受け、米利上げ終了観測が高まり、米債利回りが低下した。
CMEのフェドウオッチによると、FRBが来年5月までに利下げを実施する確率が約60%と、前日の約34%から上昇した。
市場はまた、欧州中央銀行(ECB)が利上げを終了し、2024年初に利下げに転じるとの見方を強めている。
24年4月のESTR先物は3.712%で、ECBが来年4月の理事会で預金金利を4%から引き下げる確率が約75%であることが示唆されている。
日経先物33,240、ダウ先34,926、債先145.20、米4.442、独2.5925、仏3.147、西3.625、伊4.398、英4.1975、波5.584、原油78.07、銅8,218、ドル円150.53、ユーロドル1.0876
※11/15 9時5分頃
備忘録(2023/11/13)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は13日の講演で、ユーロ圏ではサービス市場と労働市場が悪化しており、目先、経済成長の低迷が続く見通しだが、加盟国は痛みを和らげるために銀行の裁量的な資本バッファーを取り崩すべきではないと述べた。
ユーロ圏の一部の主要国では、銀行が好況時に資本を積み上げ不況時に取り崩せるカウンターシクリカルバッファーを導入している。
副総裁は「マクロプルーデンス当局は、銀行セクターの状況が悪化した場合に備えて、取り崩し可能な資本バッファーを維持すべきだ」と述べた。
「製造業の活動低迷がサービス業にも波及している。ユーロ圏経済は短期的に低迷が続く可能性が高い」とも発言。好調だった労働市場にも軟化の兆しが出始めていると述べた。
インフレ率は3%を下回っているが、今後数カ月で再び加速する可能性が高いも発言。ただ、全体的なディスインフレ傾向は中期的に続くとみられるとの認識も示した。
金利の見通しについては「インフレ見通しと必要な政策行動を再評価する」ための情報を12月にさらに入手できるだろうと指摘。現在の金利水準が「十分に長い期間」維持されれば、インフレ抑制で「大きな」役割を果たせるとの見方を改めて示した。
地球温暖化により、グリーンランドの氷河が解ける速度が過去20年間で5倍になっていると、コペンハーゲン大学の科学者が10日に発表した。
グリーンランドの氷が全て解けた場合、海面を少なくとも6メートル押し上げるとされており、特に懸念されている。
コペンハーゲン大学地球科学・自然資源管理学部のアンダース・アンカー・ビョーク助教授は、この地域の1000の氷河を調査した結果、融解の速度が過去20年間で新たな段階に入ったとロイターに語った。
「地球の気温と氷河が急速に解けていく変化の間には非常に明確な相関関係がある」という。
科学者らは衛星画像と20万枚の古い写真を通して130年にわたる氷河の変化を調査。氷河の融解ペースは約20年前の年平均5─6メートルから25メートルに加速したと結論付けた。
世界の平均気温はすでに産業革命以前に比べ1.2度近く上昇している。欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」(C3S)は8日、今年が過去12万5000年間で最も暖かい年になることが「事実上確実」だと発表した。
シンガポールの投資ファンド、SCキャピタル・パートナーズは大阪市内でデータセンターを建設する。総投資額は1000億円を見込む。完成後はIT(情報技術)企業などに貸し出す。不動産価格が上昇するなか、新たな投資対象としてデータセンターの存在感が高まっている。
●その他産業
自動車部品大手の独コンチネンタルは13日、自動車部門を再編し、全従業員の3%に相当する約5000人の削減を検討していると発表した。電気自動車(EV)シフトへの遅れを挽回する狙いで、6つの事業領域を5つに組み替え、意思決定のスピードを上げる。構造改革で2025年以降、年4億ユーロ(約650億円)のコスト削減効果を見込む。
米自動車ブランド「クライスラー」を抱える欧州ステランティスは13日、米国で働く事務系などホワイトカラー社員を対象に、早期退職者を募集すると発表した。対象人数は6400人で非組合員。全米自動車労組(UAW)との労使交渉をうけ、時間給労働者で大幅な賃上げを実施する見込みで、中長期で膨らむコストを抑える。
●決算関連
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)(ANZ.AX)が13日発表した9月末までの通期決算は、継続事業からのキャッシュ利益が74億1000万豪ドル(45億1000万米ドル)となり、過去最高を記録した。
前年同期の65億豪ドルを上回ったが、市場予想(75億6000万豪ドル)は下回った。
最終配当は1株当たり0.94豪ドルとし、前年の0.74豪ドルから引き上げた。
ANZの年度後半の純利ざやは10ベーシスポイント(bp)縮小して1.65%となり、住宅ローンの力強い伸びによる圧力が浮き彫りになった。
株価は一時3.6%下落した。
商業部門の収入は11%増加し、融資は620億豪ドルと過去最高となった。
過去1年半に行われた13回の利上げを背景に、顧客に支払う金利と投資により得る利益のスプレッド拡大が金融機関の利ざやを押し上げている。
ANZはコスト削減を進める一方で、為替や決済サービスなどに注力する事業を拡大する方針を示した。
みずほフィナンシャルグループ(FG)は13日、今期(2024年3月期)の連結純利益の計画を6100億円から6400億円に引き上げると発表した。年間配当予想も従来の1株当たり95円から100円に引き上げた。本業が堅調に推移していることに加え、円安効果で海外事業の利益も押し上げられる。
ブルームバーグが集計したアナリスト予想の今期純利益予想の平均6339億円を上回った。前期実績比では15%増となる。本業のもうけを示す連結業務純益(ETF関係損益など含む)は、従来予想の9000億円から9500億円に引き上げた。
記者会見した木原正裕社長は「為替で上振れているのもあるが、顧客部門、市場部門ともに好調だ」と述べた。市場部門は、日本株の上昇局面を捉えて利益を伸ばした。
一方、下期以降の運用方針について木原氏は「日本国債は居所が定まっていない。慎重スタンスだ」と述べた。米国債についても、米金利が高止まりする可能性があることから、同様に慎重なスタンスを取るとの考えを示した。
同時に発表した23年7ー9月期(第2四半期)の純利益は前年同期比2.4%減の1706億円だった。4-9月累計では同24%増の4158億円。上方修正した通期純利益の計画に対して65%の進捗(しんちょく)率となった。
4-9月の与信関係費用は110億円。通期で計画する1000億円と比べて低水準にとどまった。木原社長は、国内で大口の引き当てがあったが、海外中心に戻り益を計上したと説明した。将来の地政学リスクや海外の景況感悪化、国内の物価高などを勘案して積んだ引当金もあった。
また、傘下のみずほ証券が楽天証券に対して追加出資を決めたことについては、みずほ証と楽天証のプラットフォームを融合し、顧客が求める最善の選択肢を提供するとした上で「一体的に運営していくという発想だ」と述べた。具体的には、みずほ銀行の店頭に来た顧客に対し、楽天証を提案することなどが考えられるとした。
米食肉大手タイソン・フーズが13日発表した2023年7〜9月期決算は、最終損益が4億5000万ドル(約680億円)の赤字となった。前年同期は5億3800万ドルの黒字だった。主因は食肉事業の採算悪化で、主力の牛肉が人手不足や餌の価格上昇などによって生産コストが上がる一方、価格転嫁による高値を嫌って消費者の需要が下がった影響が大きい。
最終赤字は3四半期連続。7〜9月期の売上高は前年同期比2.8%減の133億4800万ドルだった。食品や日用品の値上がりを背景に消費者が牛肉を中心に買い控えた。営業損益は4億6300万ドルの赤字(前年同期は7億6600万ドルの黒字)だった。
部門別で最大の牛肉の売上高は50億ドルで、前年同期比3.5%増だった。販売価格が10.2%上昇した影響が大きい。高値が影響し、販売量は6.7%減った。輸出向けの牛肉販売もドル高が重荷となり振るわなかったようだ。
鶏肉の売上高は41億ドルと10%の減収となった。餌となる穀物価格が下がり、販売価格が9.2%下がった影響が大きい。一方、販売量は1.7%増えた。豚肉の売上高は7%減の14億ドル。価格は6.8%下がり、販売量はほぼ横ばいにとどまった。消費者の需要が牛肉から、安価な鶏や豚に移っている様子がうかがえる。
採算改善に向け、閉鎖が決まっている鶏肉処理場6カ所のうち、5カ所は閉鎖が完了したという。残る1カ所は24年3月に閉鎖するという。
タイソンのドニー・キング最高経営責任者(CEO)は同日のアナリスト向け説明会で「23年は厳しい運営環境だったが、改善の方向に向かっている」と話した。
24年9月期の通期業績について、売上高はほぼ横ばい、営業損益は10億から15億ドルの黒字を見込む。牧場主は飼育する牛の数を10年ぶりの水準に減らす見通しで、牛肉の売り上げは横ばいか減ることを予想している。
●先進国、グローバル、金融市場
スナク英首相は13日、内閣改造を実施し、警察批判で非難されていたブレイバーマン内相を更迭、内相に横滑りしたクレバリー外相の後任にはキャメロン元首相を起用した。
ブレイバーマン氏は、イスラエル軍のガザ攻撃に抗議する親パレスチナ派のデモを巡る発言で与野党から辞任を求める声が上がっていた。
スナク首相は、内相辞任圧力を受けて内閣改造の前倒しを迫られた。野党労働党に支持率で遅れをとっている保守党だが、キャメロン氏の復帰は、ブレイバーマン内相を支持する党内右派の懐柔よりも中道で経験ある人材を登用するスナク首相の方針を示した形。
ロンドンでは、先月のハマスのイスラエル急襲を受けたイスラエル軍のガザ攻撃に抗議するデモが頻繁に行われている。ブレイバーマン氏は、デモをユダヤ人社会を脅かす「ヘイト行進」や「暴徒」と呼び、厳しい姿勢を取った。
さらに先週、英紙タイムズへの寄稿で、ロンドン警視庁のデモの取り締まりが「二重規範」と指摘。親パレスチナ派のデモを妨害しようとする右翼の抗議者には逮捕など厳しい対応を取るが、親パレスチナ派のデモ参加者には手加減していると述べた。
こうした姿勢が物議を呼び、ブレイバーマン内相への辞任論が強まった。
内相解任に意外感はないが、キャメロン元首相の起用は保守党内に衝撃を与えた。中道派は歓迎した一方で欧州連合(EU)離脱を支持する右派の一部は批判的。
ブレイバーマン氏の警察批判を支持する党内右派からはキャメロン氏復帰に批判の声が強まっている。ブレイバーマン氏は今後も批判を主張し続けるとみられている。またEU離脱支持者からはEU残留派が党の主流になったとみる向きもある。
閣内から退いたことでブレイバーマン氏は、来年にも実施が予想される総選挙で保守党が敗北した場合に起こりえる党首選の準備に集中する可能性もある。
世論調査で労働党は常に20ポイント程度のリードを維持している。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)経済部門トップのマリオン・コーラー氏は13日、国内インフレ率は低下が予想されるが、中銀目標の2─3%達成は2025年末になるとの見通しを示した。
コーラー氏はUBS主催の会議でインフレ率の目標達成について、「内需が依然高水準であることや労働コストなどのコスト圧力が強いことから、このプロセスは当初想定していたよりも緩やかなものになる見通しだ」と述べた。
高インフレが賃金や価格決定に影響を及ぼし、それに対応するため一段の引き締め政策が必要になるリスクもあると説明した。
中銀は先週、政策金利のオフィシャルキャッシュレートを25ベーシスポイント(bp)引き上げ、12年ぶり高水準となる4.35%とした。
第3・四半期の消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は5.4%と、昨年ピーク時の7.8%からは鈍化しているが、中銀予想は上回っている。
これを受けて中銀は先週公表した四半期報告書でインフレ率と経済成長率予想を上方修正した。
スペインのサンチェス首相代行がカタルーニャ自治州の分離・独立派に対する恩赦と引き換えに政権への支持を取り付けたことを受け、12日に全土で数万人が抗議デモに参加した。
サンチェス氏率いる穏健左派の社会労働党(PSOE)が9日、カタルーニャ州独立派政党ジュンツと合意したもので、2017年に同州の独立を試みた罪で起訴された活動家らに恩赦を与える法案を通過させる内容が含まれた。
これを受けて右派政党は、サンチェス氏が自身の政治的利益のために法の支配を危険にさらしていると非難。中道右派・国民党(PP)のフェイホー党首はマドリードの広場で群衆を前に「新たな選挙が行われるまでわれわれは黙らない」と述べた。
当局によると、マドリードのデモには8万人が集まった。各地で抗議を呼びかけたPPは、全土で100万人近くが参加したとしている。
バルセロナの地元警察は6000人がデモを行ったとし、当局によるとグラナダでは3万人、セビリアでは5万人が参加した。このほかマラガ、パルマ、バレンシアなどでもデモが行われた。
サイバー攻撃を受けて操業を3日間停止していたオーストラリアの大手港湾運営会社DPワールド・オーストラリアは13日、同日午前9時に全ての施設で業務を再開したと発表した。
サイバー攻撃の影響により、10日からメルボルン、シドニー、ブリスベン、西オーストラリア・フリーマントルのコンテナターミナルの操業が停止していた。同社は豪州の輸出入品の約40%を取り扱っている。
国内の4つのターミナルから今日中に約5000のコンテナを輸送する。今後数日は調査の継続やネットワークの保護で一時的に業務が混乱する可能性があるとしている。
ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)による金銭の要求があったかについては明らかにしていない。
豪では昨年末からサイバー攻撃が増加しており、政府は2月に規則を改正しハッキングへの対応を調整する機関を設立したばかりだった。
豪政府は攻撃がどの組織の犯行なのか把握していないという。
ドイツのIFO経済研究所は13日、国内製造業の供給網の問題が大幅に緩和し、供給状況がほぼ危機前の水準に戻ったと述べた。
10月の調査で問題を報告した企業は18.2%で、9月の24.0%から減少。供給網の問題がピークに達した2021年12月は82.4%の企業が問題を報告していた。
IFOの調査責任者クラウス・ボールラーベ氏は「状況はほぼ危機前の水準に戻っている」とし「企業は将来の供給不足に備え、供給網を多様化し、在庫を増やすべきだ」と述べた。
10月に供給網の問題で最も打撃を受けたのは自動車業界だが、問題を報告した企業は36.8%で、9月の53.3%から減少した。
他の全ての産業では、10月に問題を報告した企業は30%未満だった。
モルガン・スタンレーのエコノミストは、インフレ鈍化に伴い米金融当局が今後2年間に大幅な利下げを実施すると予想する。一方で、ゴールドマン・サックス・グループのアナリストが見込む利下げ幅はもっと小さく、開始時期もより遅い。
モルガン・スタンレーの米国担当チーフエコノミスト、エレン・ゼントナー氏率いるチームは12日に発表した2024年の見通しで、米連邦準備制度は24年6月に利下げを開始し、その後9月と10-12月(第4四半期)および25年の全ての会合でそれぞれ0.25ポイントの追加利下げを実施すると予測。その結果、政策金利は25年末までに2.375%に低下すると考えている。
一方、ゴールドマンは、24年10-12月期に最初の0.25ポイント利下げが行われ、その後26年半ばまで四半期に1回のペースでの計1.75ポイント引き下げで、政策金利が3.5-3.75%のレンジに落ち着くとみている。これは、エコノミストのデービッド・メリクル氏が同じく12日に発表した24年の見通しに基づく。
ゴールドマンの見通しは米金融当局の予測により近い。9月に発表された当局の予測では、来年は0.25ポイントの利下げが2回行われる見通しで、政策担当者が見込む25年末時点のフェデラルファンド(FF)金利は3.9%(中央値)。当局の予測は来月の会合で更新される。
モルガン・スタンレーのチームは、リセッション(景気後退)はないものの、より大規模な緩和が必要になるほど経済が減速するとみている。失業率のピークは25年に4.3%(米金融当局は4.1%)と予測。成長率とインフレ率についても当局より低い水準を想定している。
モルガン・スタンレーとゴールドマンの25年予測の一部を、9月の米当局者の予測中央値と以下で比較した。
ゼントナー氏のグループはリポートで、「高金利が長期化すれば持続的な足かせとなり、財政刺激が相殺されるだけでなく、24年7-9月(第3四半期)以降の成長率が持続的に潜在成長率を下回ることになる。当社は米金融当局がソフトランディング(軟着陸)を実現するとの見通しを維持しているが、成長鈍化でリセッション懸念は続くだろう」との見方を示した。
一方、ゴールドマンのメリクル氏は自社の予想について、「インフレ問題が解決すればFF金利を高水準に維持する理由はほとんどなくなると考える当局者と、既に好調な経済を刺激する理由はほとんどないと考える当局者の妥協案と考えることができる」としている。
イタリアが今週、ジャンク(投資不適格)級に格下げされれば、主要7カ国(G7)メンバーとしては異例で、大きな論争を呼ぶのは必至だ。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは現在、イタリアを投資適格級としては最も低い「Baa3」と格付けしており、格付け見通しは「ネガティブ(弱含み)」。
イタリアのメローニ連立政権が緩めの財政スタンスを9月に採用して以来、ムーディーズはイタリアに付与している格付けに関し同社初の検証結果を17日に発表する予定。
ドイツ国債に対するイタリア国債の上乗せ利回りは一時、1月以来となる210ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)まで拡大。その後、190bp以下に縮小し、投資家は全般的に格下げを見込んでいないことが示されたが、ジャンク級への転落リスクが低下したわけではない。
バークレイズのユーロ金利戦略責任者ロハン・カーナ氏は「ジャンク級への格下げとなれば、すでに脆弱(ぜいじゃく)な市場に衝撃」を与えると指摘する。
同氏は、国債の利回り格差がメローニ政権を誕生させた2022年の総選挙前後以来となる250bpに向け拡大し得ると予想しており、そうなれば混乱を回避するよう欧州中央銀行(ECB)に対する圧力が高まる可能性がある。
連邦準備制度理事会(FRB)は来年に政策金利を合計275ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げると、UBSインベストメント・バンクのストラテジストは予想している。市場が織り込んでいる利下げ幅の4倍に近い。
アレンド・カプテイン、バーヌ・バウェジャ両氏は、継続的なインフレ率低下によりFRBは早ければ3月にも金融緩和をスタートできると予想。緩和サイクルでは典型的とされる大幅での刻みになる可能性が高いとみている。
バウェジャ氏はロンドンでのインタビューで「今回がそれほど特異となる条件は見当たらない」と話す。「インフレは急速に正常化しつつあり、3月に入る頃には非常に高水準になっている実質金利にFRBは目を向けるだろう」と述べた。
両ストラテジストはフェデラルファンド(FF)金利が2024年末までに2.5-2.75%に低下するとみており、2025年初期までにターミナル金利(金利サイクルの最終地点)の1.25%をつける見通しだという。両氏の予測は米経済が来年第2四半期までにリセッション(景気後退)に陥るとの見方に基づく。
これとは対照的に、マネーマーケットが織り込んでいる米利下げは7月スタートで幅は75bp。
両ストラテジストはこの見通しの根拠として、日本を除く主要10中銀が過去30年間に行った緩和サイクルを例に、政策金利は15カ月の期間に平均で320bp引き下げられたと指摘した。
「通常の利下げサイクルになるとわれわれは考えている」とカプテイン氏。「日本を例外として、どの中銀も市場が織り込むより大幅の緩和を実施するだろう」と述べた。
ダドリー前ニューヨーク連銀総裁が米国の財政状況は「持続不可能な軌道」にあると警鐘を鳴らした。債務コストが膨らむ中で危機を解決する政治的意思が欠如していると指摘した。
プリンストン大学経済政策研究センターの上級研究員を務めるダドリー氏は、シドニーで開催された会議でビデオ通話を通じて「状況はさらに悪化する。過去15年に比べはるかに高い金利によって米政府債務がリプライスされるからだ」と語った。
同氏はまた、ベビーブーマー世代が引退し、医療費や社会保障費が膨らむことで、財政見通しがさらに悪化するとも予想。
その上で、「最後の問題は政治だ。物事を成し遂げるという点で、今の米国にはよく機能する政府がない」とし、「われわれは確実に持続不可能な軌道に乗っている」と述べた。
世界市場のセンチメントは、米政府の財政と新規債務の必要性に対する継続的な懸念によって損なわれている。先週の米30年国債入札は過去10年で最悪で、10日にはムーディーズ・インベスターズ・サービスが財政赤字拡大を踏まえ米国の格下げもあり得ると警告した。
早ければ今週にも政府機関が閉鎖されるリスクもあるが、この確率は現在やや低下しつつある。
ダドリー氏によれば、計5.25ポイントに及ぶ金利引き上げ後に当局者らはまだ、インフレを押し下げるのに十分に景気抑制的な水準になっているかどうかという問いに頭を悩ませている。
米連邦準備制度は直近2回の会合で利上げを見送り、金融市場は来年半ばからの利下げを織り込んでいる。ただ、当局者らはインフレ抑制を最優先し、利下げを急ぐつもりはないと繰り返し強調。14日発表の10月の米消費者物価指数(CPI)が重要な焦点になるとエコノミストらは考えている。
米下院のジョンソン議長が政府機関閉鎖回避を目指して発表した暫定予算案について、上院民主党トップのシューマー院内総務が13日に支持する意向を示した。ただ、共和党の一部強硬派が反対しており、可決は不透明だ。
シューマー氏はジョンソン議長案について、完璧には程遠いとしつつ、大幅な歳出削減が含まれていないことに「満足している」と表明した。現行のつなぎ予算は17日に期限を迎える。
ただ、政府閉鎖を回避するための同案が上院に進むには下院を通過する必要がある。下院では共和党議員のうち少なくとも7人が反対の姿勢を示している。
強硬派として知られるチップ・ロイ下院議員は、歳出削減や保守的な政策がないなどとして同案を非難した。
下院民主党トップのジェフリーズ院内総務は、ジョンソン議長案を「慎重に評価している」と述べた。
下院共和党は14日の採決を目指している。
米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)は、今後12カ月でコモディティー(商品)への投資で得られるリターンが上昇するとの予想を示した。今後の金融政策や景気後退懸念の緩和を背景としたスポット価格の上昇や、地政学的な供給リスクに対するヘッジ強化を要因としている。
石油銘柄の多いS&P・GSCI商品指数の1年後の商品のリターンを21%と予想。エネルギー銘柄で約31%、工業用金属銘柄で17.8%のリターンを見込んでいる。
GSは12日付けの投資家向けノートで「2024年に商品へのロング投資を推奨する。景気循環的な背景の改善からスポット商品価格がいくらか上昇し、構造的な追い風による大幅なリターンを予想しており、ネガティブな供給ショックに対するヘッジ価値があるとみている」と記した。
S&P・GSCI指数スポット総リターン(.SPGSCITR)は今年に入ってから0.8%下落している。
変動が激しい食品、エネルギーを除いたコアインフレ率の鈍化は米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が利上げ局面を終えたことを示唆している。これは国内総生産(GDP)の伸びへの圧力を緩和し、商品需要を支える可能性が高い
GSによると、石油輸出国機構(OPEC)主導による石油在庫の減少と、主に中国から輸出されるリチウムやレアアースなどの脱炭素化に必要な「グリーンメタル」の需要も商品のリターンを後押しする。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)が米社債投資家を対象に実施した最新の調査によると、最も懸念される要素として米国が小幅の景気後退(リセッション)に陥る可能性を挙げた割合が前回調査時の56%から59%に増加した。
米経済がプラス成長を保ちつつ、物価上昇も鈍るという軟着陸(ソフトランディング)を果たすと見込んだのは約31%だった。
小幅のリセッションに次ぐ懸念要素は、中東の地政学リスク、その次は商業不動産セクターの社債デフォルト(債務不履行)増加リスクとなった。
調査では、投資家が全体的に9月から11月までの間に長期債の保有を減らしたことも分かった。投資適格債投資家は償還年限5─10年に軸足を移し、高利回り債投資家は1─3年でポジションを拡大したという。
投資適格債投資家の半数強は、向こう12カ月でリスク調整後のリターンが最も高くなるのは「BBB」格付け債と予想。2番目は「A」以上と「BB」とみている。
高利回り債投資家は、「BB」がアウトパフォームすると期待する割合が9月時点の24%から41%前後に増えた。
また投資適格債投資家と高利回り債投資家のいずれも、今回調査時には工業と通信のセクターから発行された社債をアンダーウエートにした一方、エネルギー社債をオーバーウエートにしていた。
調査期間は11月6─9日で、資産運用会社や保険、ヘッジファンド、年金基金、銀行など91の投資家が回答した。
ニューヨーク連銀が13日発表した10月の消費者調査によると、将来のガソリン価格上昇予測が高まったにもかかわらず、インフレ期待に軟化の兆しがみられた。
1年先のインフレ期待は3.6%と、前月の3.7%から低下した。3年先のインフレ期待は3%で前月と変わらず。5年先のインフレ期待は2.7%と、前月の2.8%から低下した。
住宅価格の予想上昇率は歴史的な低水準となる3%にとどまる一方、将来のガソリン価格の予想上昇率は5%に上昇した。前月は4.8%だった。
雇用市場の見通しはほとんど変化がなかった。来年の失業率上昇を予想する人は減少したが、今後12カ月の間に職を失うと予想する人はわずかに増加した。
10月の予想消費支出は5.3%で、1年前の7%を引き続き大きく下回る水準となった。家計所得の予想上昇率は3.1%だった。前月は3%だった。
個人的な財政状況に対しては、現況に改善が見られる一方、1年後については「まちまち」となった。
●中国・アジア・ロシア・東欧
インドネシア中央銀行のペリー・ワルジヨ総裁は13日、世界的な食料・エネルギー価格の上昇により、来年の総合インフレ率が3.2%に加速するとの見通しを示した。
中銀の来年度予算に関する議会の公聴会で述べた。従来予想は2.8%だった。来年のインフレ目標である1.5─3.5%の上限に近い水準だ。
今年のインフレ率は2.84%と、今年の目標である2─4%の範囲内に収まる見通し。
中銀は先月、ルピア防衛のため予想外の利上げを実施したが、総裁は追加利上げの可能性には言及せず「金利政策であれルピア相場を通じてであれ、金融政策でインフレを管理する(取り組みを)支援する」と述べた。
ルピアの予想平均レートは来年が1ドル=1万5510ルピア、今年が1万5280ルピア。国際金融市場の不透明感が影響するという。
来年の経済成長率が今年の推定値並みの5.00%になるとの予測も示した。来年2月14日の選挙に向けた支出や新首都ヌサンタラの建設が下支え要因になるとしている。
インドネシアの来年2月の大統領選に向けた最新の世論調査によると、プラボウォ国防相が支持率でガンジャル前中部ジャワ州知事にリードを広げた。プラボウォ氏を巡っては、現職ジョコ大統領の長男とペアを組んだことに批判的な声が出ている。
調査機関インディケーター・ポリティックが10月27日─11月1日に1220人を対象に実施した調査では、回答者の39.7%がプラボウォ氏を支持。ガンジャル氏の30%を大きく上回った。
10月26日発表の前回調査ではプラボウォ氏が36.1%、ガンジャル氏が33.7%だった。ジャカルタ特別州のアニス前知事が3位で両者に大きく出遅れている。
プラボウォ氏がジョコ氏の長男ギブラン氏(36)を副大統領候補に選んだことは国内で議論を呼んだ。憲法裁判所は数日前に40歳以上と定められていた正副大統領候補の条件について、例外を認める判決を出していた。
一部の政治アナリストはギブラン氏の立候補について、ジョコ氏が引退後も影響力の維持を狙い、プラボウォ氏はジョコ氏の支持層も取り込むことで選挙戦を有利に進めようとしていると指摘する。
インド統計省が10日発表した9月の鉱工業生産指数は前年同月比5.8%上昇した。
ロイターのアナリスト調査では7%上昇と予想されていた。8月は10.3%上昇だった。
製造業と電力部門の伸びが鈍化して予想を下回ったものの、エコノミストは祝祭需要を織り込んで楽観的な見方を維持している。
ICRAのエコノミスト、アディティ・ナヤル氏は 9月の指数の伸びが前月からほぼ半減したことについて、豪雨と、ヒンズー教の祝祭日が遅いことが原因と指摘した。
9月の生産は、製造業が前年同月比4.5%増、発電量が9.9%増、鉱業は11.5%増加した。インフラ資材と資本財はそれぞれ7.5%と7.4%増、消費材は1%増で前年の同じ時期に記録したマイナスからプラスに転じた。
4月に始まった今年度上半期の鉱工業生産は前年同期比6%増加した。
中国人民銀行(中央銀行)が13日発表した10月の新規人民元建て融資は7384億元(1013億ドル)だった。前月から大幅に減少したが市場予想は上回った。
ロイターがまとめたアナリストの予想は6650億元。9月は2兆3100億元だった。
住宅ローンが主体の家計向け融資は346億元の減少に転じた。9月は8585億元増加していた。
企業向け融資も1兆6800億元から5163億元に急減した。
マネーサプライM2の前年同月比伸び率は10.3%でアナリスト予想と一致した。9月も10.3%だった。
10月末時点の元建て融資残高は前年比10.9%増と、こちらも9月と同じ伸び率でアナリスト予想と一致した。
通常の銀行融資に加え、新規株式公開、信託会社の融資、債券発行などを含む広義の与信・流動性を示す社会融資総量は1兆8500億元で、9月の4兆1200億元から大幅に減少。アナリスト予想は1兆9000億元だった。
社会融資総量残高の前年比伸び率は9.3%で9月の9.0%から加速した。
民生銀行のチーフエコノミストは「季節要因や不安定な景気回復に影響されて銀行融資は前月比で減少したが、全体的な傾向は安定している」と述べた。
1─10月の人民元建て新規融資は20兆4900億元となり、今年も記録的な年となる水準で推移している。
多くのアナリストは、予定される債券発行増に対応するため、人民銀が流動性逼迫回避に向けて資金供給を行うと予想している。
華金証券のエコノミストは「中国は経済成長押し上げへ主に財政政策に依存するだろう。国債発行で市場の流動性がタイトになれば人民銀は預金準備率を再び引き下げる可能性が高い」との見方を示した。
中国の消費回復は10月に鈍化し、民間企業の景況感も低下した。民間の独自調査や代替データからは、中国経済の持ち直しが依然として不安定であることがうかがえる。
パリに本社を置くクオントキューブ・テクノロジーが発表した娯楽・交通に対する中国の消費者需要を示す指標と、米モーニング・コンサルタントが独自に行う消費者心理調査は、10月にいずれも前月から悪化。北京の長江商学院による民間企業の景況感指数も前月比で落ち込んだ。
クオントキューブはウェブ検索や人々の動きを反映した交通機関の数値、消費者レビューなどのデータソースに基づき指数を作成。「政府による最新の金融刺激策にもかかわらず、われわれのデータは10月中に全セクターで持続的な減速を示しており、特に運輸業で顕著だった」と同社はリポートで指摘した。
消費者の個人的な財務状況や景況感見通し、主要な家計の買い物に関する態度を尋ねる調査に基づくモーニング・コンサルタントの消費者心理指数は2月以来の150割れ。同社によれば、「中国の信頼感は急速に低下」している。
消費者の個人的な財務状況や景況感見通し、主要な家計の買い物に関する態度を尋ねる調査に基づくモーニング・コンサルタントの消費者心理指数は2月以来の150割れ。同社によれば、「中国の信頼感は急速に低下」している。
さらに、長江商学院の民間企業景況感指数は10月、前月からわずかに低下。この調査は一般的に各分野で比較的成功している民間企業を対象としている。
●中東
12日にリヤドで行われるイスラム協力機構(OIC)のガザ地区に関する話し合いを行う会合に、イブラヒム・ライシ大統領が参加することが発表されている。イランの大統領がサウジアラビアを訪問するのは、2012年のマフムード・アフマディネジャド大統領以来となる。ガザに関する話し合いの会合にイランを含めることは、同国を問題の一部ではなく解決策の一部にしたいという願望に端を発したものである。しかしながら、イランとアラブ湾岸諸国の間には大きな信用問題があり、お互いが様々な事案をゼロサムゲーム的な観点で捉えている。ライシ大統領はイランが善意を持っており、パレスチナの人々を近隣諸国や米国に対する立場を有利にするための手札ではなく、彼らのウェルビーイングを気にかけているのだとアラブ諸国を納得させられるだろうか。
イランがガザに関する話し合いに招かれたのは、仮に同国が除外され孤立した場合、イラン政府が妨害者として振る舞う可能性があることを近隣諸国が理解しているからである。今回のイランの参加はアラブ諸国を背景に検証すべきだ。デニス・ロス氏は先月、ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、アラブ諸国の複数の政府関係者から、イスラエルがハマスを壊滅させることを望んでいるという話を聞いたと書いている。その理由は、ハマスの勝利はイランとムスリム同胞団の勝利であると彼らが認識しているからだという。ここでは、アラブ諸国の立場を分析することが重要だ。
ガザはアラブ諸国にとってのジレンマだ。一方で彼らはパレスチナ人たちに同情しており、この問題に対する公平な解決を求めている。だが他方で、彼らはハマスを軽蔑しているのである。アラブ諸国はハマスを危険な存在だと見ている。ハマスの政治層はムスリム同胞団に属し、軍部のアル・カッサム旅団はイラン革命防衛隊と結びついており、強く嫌悪されている「抵抗の枢軸」の一部である。
ヒズボラのハッサン・ナスララ書記長は先週行った演説で、ハマスの勝利はパレスチナ人と周辺のアラブ諸国の勝利であると述べた。彼はイスラエルが失敗し目的を達成できなければ、パレスチナ人のための国家に関する交渉の席に就かざるを得なくなる(イスラエルはこれを長年に渡って避けてきた)はずだとほのめかし、アラブ諸国に対して間接的に保証を送ったのである。
米国のアントニー・ブリンケン国務長官との会談で、アラブ諸国は停戦と二国家解決実現に向けた交渉再開の必要性を伝えた。しかし複数の情報源によると、彼らはイランを蚊帳の外に置いておきたいと考えており、ハマスの役割については意見の相違があるという。
多くのアラブ諸国と米国にとって理想のシナリオは、イスラエルがハマスを壊滅させ、アラブ諸国が二国家解決の交渉を行い、パレスチナという手札をイランから取り上げることだ。しかし事態はそれほど単純ではない。イランが妨害を行う可能性があるため、無視することはできないのである。イランは全ての陣営の状況を複雑化させる可能性がある。ひとつ確かなのは、イランもアラブ湾岸諸国も戦争を望んでいないことである。イランはおそらく、米国およびアラブ諸国との交渉における立場を有利にできる状況を望むだろう。
ガザで悲劇が展開するなか、アラブ諸国はパレスチナ問題に対する答えを出さずにいることはできず、現在の状況は持続可能ではないことをより明確に理解し始めている。彼らは解決策を見出したい。だが、彼らはイランに関して多くの疑問を抱いている。イランは二国家解決を受け入れるだろうか。イスラエルが失敗した場合、抵抗の枢軸は強化され、イランのイラク、レバノン、シリア、イエメンに対する影響力は強まることになるのか。イランは好戦的な態度を強めるのか。別の問題としては、パレスチナ人が主権国家を与えられるという政治的解決が検討されたとして、その条件にハマスの解体が含まれる場合イランは受け入れるのかということがある。イランはパレスチナ人の総合的なウェルビーイングと引き換えに、ハマスという手札を失うことを受け入れるだろうか。
当然ながら、交渉がイスラエルと検討されることになった場合、ハマスにとっては――あるいは少なくとも、イランに属する軍部にとっては――ガザ地区を管理する立場に留まることは難しくなるだろう。イランはアル・カッサム旅団の解散を受け入れるだろうか。その場合、見返りに何を求めるのか。ハマスはヒズボラのように、イランにとってイスラエルに対する抑止力として機能していると理解することが重要だ。もしハマスが解体されるなら、イランは補償を受ける必要があるだろう。その見返りにイランは何を求めるだろうか。
仮にイランが、自分たちは問題の一部ではなく解決策の一部だとアラブ諸国を説得できた場合、彼らが共同戦線を張って米国に圧力をかけ、イスラエルに二国家解決を受け入れるよう真剣に働きかけさせる好機となるだろう。それでもなお、イランは明確な政治的ビジョンを示さなければならない。イランはパレスチナの解放を目標として宣言している。パレスチナ問題が解決した場合、イランは他の問題に対してどのような立場を取るつもりなのか。
米国も戦争は望んでいない。ジョー・バイデン大統領は主要な激戦州の世論調査でドナルド・トランプ氏にリードされており、戦争の長期化がバイデン氏にとってマイナスなのは間違いない。パレスチナ人の虐殺を支援しているという非難は、バイデン氏が有権者に受け入れてもらいたいと考えている自身の主義にそぐわないものだ。
アラブ諸国とイランが何らかの解決策で合意すれば、ある意味で米国にとってはやりやすい状況になるだろう。イスラエル政府に対する明白な米国の支持と、大統領および国務長官のイスラエルに対する感情的傾倒はあるものの、彼らは解決も望んでおり、占領が持続可能でないことも分かっているのである。潜水艦と駆逐艦が同地域に派遣されたが、米国はそれらを使わずに済むことを望んでいる。
では、ライシ大統領はアラブ諸国を宥めるために何をすべきなのか。アラブ諸国はどんな保証を必要としているのか。イランはアラブ平和イニシアチブを受け入れるかどうか、明確な立場を示さなければならない。また、イラクのシーア派武装組織フーシ、ヒズボラ、バッシャール・アサド氏とどのように方を付けるのか、説明する必要もある。たとえば、シリア国民の苦難を終わらせることを求める国連安保理決議第2254号を受け入れるよう、アサド氏に圧力を掛けるつもりはあるのか。
他方で、イランは見返りにどんな安全保障を求めるのか、はっきりさせる必要がある。サウジアラビアは、イランに安全保障を提供するには非常に良い立場にある。イラン政府は、イスラエルと敵対した際のサウジアラビア政府の立場を常に問うてきた。サウジアラビアは、イスラエルがイランに武力行使を行った際に領空を封鎖するという保証をいつでもイランに与えられるだろう。だがその見返りに、イラン政府は地域問題に関してサウジアラビアと協力せざるを得なくなる。そして現時点で最も急を要するのが、パレスチナ問題なのである。
親イスラエルのメディア監視組織オネストリポーティング(HonestReporting)は10日、イスラム組織ハマスによる10月7日のイスラエル急襲を巡り、事前に知らなかったとする4報道機関の声明を「適切」だとして受け入れたと表明した。
オネストリポーティングは9日、ロイター、AP、CNN、ニューヨーク・タイムズがパレスチナのフォトジャーナリストを通じて急襲を事前に知らされていたのではないかと指摘。4報道機関は断固否定していた。
オネストリポーティングのエグゼクティブディレクター、ギル・ホフマン氏はロイターとの電話インタビューで、急襲について報道機関が事前に知っていたと主張しているわけではなく、正当な疑問を呈したものだと説明。4報道機関の声明に「安心した」と語った。
トルコのエルドアン大統領は11日、イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争の恒久的な解決策を模索する国際的な平和会議を開催するよう提唱した。アラブ連盟とイスラム協力機構(OIC)が同日にサウジアラビアの首都リヤドで開いた合同の臨時首脳会議での発言。
同大統領は、恒久的な解決が1967年の境界線に基づくパレスチナ国家の樹立にかかっており、国際平和会議の開催が基盤となると指摘。さらに「平和を維持するため、われわれは保証人としての役割も含め、必要な努力をする用意がある」と表明した。
ガザで人道危機が深刻化しており、トルコはイスラエル批判を急激にエスカレートさせている。トルコはパレスチナ国家とイスラエルが共存する二国家解決を支持している上、米英など西側諸国とは異なり、ハマスをテロ組織とはみなしていない。大統領は「祖国を守るハマスの抵抗勢力を占領者と同じカテゴリーに入れることはできない」と述べた。
また、大統領はイスラエルの閣僚アミハイ・エリヤフ氏(エルサレム問題・遺産相)が核兵器によるガザ攻撃を考えていると述べたことに触れ、「国際原子力機関(IAEA)の査察から隠蔽された核爆弾を保有するのなら、明らかにされるべきだ」と言明した。
イスラエルは核兵器保有を公には認めていないが、米国科学者連盟(FAS)は核弾頭約90発の保有を推定している。
バイデン米大統領は12日、カタールのタミム首長とガザ情勢を巡り会談した。イスラム組織ハマスが拘束している人質の解放に向けた取り組みなどについて協議した。ホワイトハウスが発表した。
バイデン氏は多くの子どもを含む人質拘束を非難。両氏は全ての人質を直ちに解放すべきとの見解で一致したという。
ロイターは先週、複数のハマス政治指導者が拠点を置くカタールが人質を巡り双方の仲介を主導していると報じた。
カタール政府は、タミム氏がガザでの即時停戦とガザとエジプトの境界にあるラファ検問所の恒久的な開放の必要性を会談で強調したと発表した。
アラブ諸国などはイスラエルにガザへの攻撃を停止させるよう米国に求めているが、米国はこれを拒否している。
ホワイトハウスの声明は停戦に関する議論に言及しておらず、両氏が罪のない市民を守る必要性と、ガザへの人道支援の流れを強化する継続的な取り組みについて協議したと述べるにとどめた。
バイデン氏は「イスラエル人とパレスチナ人が安定性と尊厳をもって共存できる」将来のパレスチナ国家構想を改めて確認し、ハマスが長い間その障害となってきたと指摘したという。
イスラエル軍は、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによる国境を越えたミサイル攻撃で市民が負傷するなど、12日に敵対行為が拡大したとして、レバノン戦線を鎮静すると警告した。
イスラエル側によると、同日に仕事で国境集落にいた電気会社の作業員少なくとも2人が誘導ミサイル攻撃で負傷。ヒズボラは攻撃の責任を認めた。
また、迫撃砲攻撃でイスラエル兵7人が負傷。レバノン国境から27キロ離れたイスラエルの港湾都市ハイファの近くでは、ロケット弾により警報が鳴り響いたが、死傷者は出なかった。イスラム組織ハマスのレバノン支部が発射した。
ヒズボラ指導者ナスララ師は11日、イスラエル戦線は「活発」だと述べた。ただ、ヒズボラの戦闘員のうち少なくとも70人とレバノン民間人数人がこれまでにイスラエルの反撃で死亡している。
イスラエル軍報道官は「軍は(パレスチナ自治区)ガザに集中しているが、北部では非常に高い即応態勢をとっている」と説明。「レバノン市民は、この無謀な行為と、ハマス─(過激派組織)ISISの擁護者になるというヒズボラの決断の代償を負うことになる」と述べた。
バイデン米大統領は13日、パレスチナ自治区ガザ最大のシファ病院について、同病院は保護されるべきであり、同病院に対する侵入的な行為が減ることを望むと述べた。
また、ガザで拘束されている人質の解放に戦闘の一時休止を利用する取り組みが進められているとし、仲介しているカタールと交渉が進められていると明らかにした。
また、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、ガザ地区の病院で銃撃戦を行うべきではないというバイデン政権の見解をイスラエルも共有していると述べた。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスは13日、人質解放などで仲介しているカタールに対し、5日間の停戦と引き換えに、ガザで拘束している人質の中から最大70人の女性と子供を解放する用意があると伝えたと明らかにした。
ハマスの軍事部門「カッサム旅団」のアブ・オバイダ報道官は対話アプリ「テレグラム」に投稿された音声録画で「停戦には、戦闘の完全な停止と、ガザ地区の全地域での人道支援の実施を可能にすることが含まれなくてはならない」と述べた。
中東ヨルダンのアブドラ国王は13日、パレスチナ自治区ガザについて、イスラエルが一部を「占領」したり、同地区内に安全地帯を設置したりする案に否定的な見解を示した。
アブドラ国王は王宮で政治当局者に対し、イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争に「軍事的な解決はない」とした上で、「危機の根源はイスラエルによるパレスチナ領の占領とパレスチナ人の正当な権利の否定だ」とし、「解決はそこから始まる。他のいかなる手段も失敗に終わり、暴力と破壊の連鎖が繰り返されることになる」と語った。
また、ガザ地区がイスラエルによって他のパレスチナの領土から切り離されるべきではないとも言及。ヨルダンと国境を接するヨルダン川西岸地区でのイスラエルによる違反行為や、パレスチナ人に対するユダヤ人入植者による攻撃を受け、紛争が拡大する恐れがあると以前から警告してきたと述べた。
欧州連合(EU)の外相に当たるボレル外交安全保障上級代表は13日、ブリュッセルでのEU外相理事会後の記者会見で、パレスチナ自治区ガザの人道状況について協議するためイスラエルとパレスチナ自治区を今週訪問すると明らかにした。サウジアラビアやバーレーン、カタール、ヨルダンも訪れるとした。
ボレル氏は外相理事会で、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による解決策を見いだすべきだと強調。「ガザを再建するだけではなく、パレスチナ人のための国家を建設しなければならない」と述べた。
●中南米・アフリカ
南米アルゼンチン大統領選は決選投票を19日に迎える。反米左派の与党連合候補であるセルヒオ・マサ経済相(51)、右派で野党のハビエル・ミレイ下院議員(53)による接戦となる見通しだ。高インフレや通貨安で経済が苦境にあるなか、どちらの候補が勝利するかで、経済や外交のかじ取りは大きく変わる可能性がある。
メキシコ中央銀行のロドリゲス総裁は、インフレ圧力が緩和していることから主要政策金利の段階的な引き下げを検討し始める可能性があるが、年内の利下げ実施はないとの見込みを示した。13日に掲載されたエル・フィナンシエロ紙とのインタビューで述べた。
マクロ経済状況が許せば、利下げを開始するとした上で「年内はないだろう」と語った。
先週の会合では政策金利を11.25%に据え置くことを全会一致で決めた。声明文では、インフレ目標達成に向けて政策金利を据え置くべきとする時期の表現を、前回までの「長期間」から「しばらくの間」に変え、ややハト派方向へ修正した。 もっと見る
総裁は「予想されるインフレ見通しの改善により、今後の会合で政策金利を下方に調整する可能性について議論し始めることができる」と述べた。
一方、利下げは「緩やか」なものになるとし、「必ずしも継続的な利下げサイクルを視野に入れているわけではない」と強調した。
●市況
<為替> ドル/円が一時、約1年ぶりの高水準となる152円近辺まで上昇した。その後、オプション取引の影響で乱高下する場面もあった。
<債券> 国債利回りがまちまちとなった。小幅な動きにとどまる中、短期債利回りはやや低下した。金利見通しの手掛かりになるインフレ・小売統計の発表が待たれている。
<株式> S&P総合500種が小安く取引を終えた。翌日発表の消費者物価指数(CPI)統計を見極めようというムードが強かった。
ボーイング(BA.N)は4%上昇し、ダウ工業株30種(.DJI)を押し上げた。中国が「737Max」の購入再開を検討していると報じられた。また、ドバイ航空ショーでエミレーツ航空が新型大型機「777X」を90機発注した。
テスラ(TSLA.O)は4%超上昇。アップル(AAPL.O)やマイクロソフト(MSFT.O)は下落した。
<米原油先物> 石油輸出国機構(OPEC)が需要見通しを引き上げたことを好感した買いに3営業日続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物は前週末清算値(終値に相当)比1.09ドル(1.41%)高の1バレル=78.26ドルとだった。これは中心限月の清算値ベースで6日以来1週間ぶりの高値水準。1月物は1.04ドル高の78.19ドル。
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。英国や米国のインフレ統計など週内に主要な経済指標の発表を控える中、業績見通しを引き上げた英保険のフェニックス・グループが買われて保険株が上昇し、相場の上げを主導した。
<欧州株式市場> 反発して取引を終えた。イタリアの銀行銘柄やドイツの電力・ガス大手シーメンス・エナジーなど幅広く買われた。
イタリアの銀行株指数(.FTITLMS3010)は2.80%高。イタリアの銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(MPS)(BMPS.MI)が8.6%上昇し、10日に格付け会社フィッチが格付けを「BB」へ引き上げ、13日にドイツ銀行が「ホールド」から「買い」に投資判断を引き上げたことが好感された。
STOXX欧州600種石油・ガス株指数(.SXEP)は1.32%高。シーメンス・エナジー(ENR1n.DE)が6.0%上昇し、ドイツ政府の支援を受けた数十億ユーロのプロジェクト関連保証を15日に提示するとの関係筋の情報が材料視された。
デンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)は0.3%高。肥満症治療薬「ウゴービ」の心血管疾患の予防効果が体重減少だけにとどまらないことが示されたのが材料視された。
一方、過大な負債を抱えたスウェーデンの不動産会社、SBB(SBBb.ST)は8.4%下落。四半期決算の税引き前赤字が拡大したことが重しとなった。
<ユーロ圏債券> 米国債に追随し、国債利回りが小幅上昇に転じた。市場では週内に発表される米国のインフレ指標などの経済指標が注目されている。
格付け会社フィッチは10日、イタリアの格付けを「BBB」、格付け見通しを「ステーブル」にそれぞれ維持。市場では17日にムーディーズが発表するイタリア格付け見直しの結果が注目されている。
日経先物32,845、ダウ先34,391、債先144.43、米4.642、独2.7080、仏3.284、西3.757、伊4.561、英4.3705、波5.697、原油78.52、銅8,191、ドル円151.66、ユーロドル1.0702
※11/14 8時55分頃
備忘録(2023/11/10-12)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
格付け会社ムーディーズのマネジングディレクター、アナ・アルソフ氏は9日、銀行セクターは依然として危機を脱しておらず、金利動向を十分に予測できなければ、インフレ再燃によるリスクがあるという見解を示した。「ロイターネクスト」会議で述べた。
今春に急速な金利上昇によりシリコンバレー銀行(SVB)が多額の含み損を抱えて突如破綻し、米銀行セクターは混乱に陥った。
ムーディーズは8月上旬、米中堅銀行10行を格下げし、大手行6行を格下げ方向で見直しの対象とした。
アルソフ氏は銀行セクターの見通しは依然としてネガティブだとし、特に銀行が金利の動きを正しく予測してポートフォリオを適切に調整しなければ、インフレ再燃がリスクになると指摘。
「状況を改善するために、資本に多少の打撃となっても実際に証券を売却したり、売却を計画したりする積極的な動きが一部の銀行で見られている」とする一方、「しかし、フォワードカーブが正しいことを信じて利下げを待っている銀行もある。希望は戦略ではない」と述べた。
SVBが破綻に至った一因には、金利上昇を見込んで資金調達コストを固定するために米国債を売却したことがある。
アルソフ氏は今年第4・四半期と来年第1・四半期の銀行の自己資本に注目しているという。
デンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)は10日、肥満症治療薬「ウゴービ」の需要が世界的に拡大していることに対応するため、国内製造施設に今後数年で420億デンマーククローネ(60億ドル)以上を投資すると発表した。
製造施設を拡張し、医薬品原薬(API)の生産能力を増強するほか、パッケージングなども強化する。
ウゴービや糖尿病治療薬「オゼンピック」のAPIであるセマグルチドなどの生産能力を引き上げる。セマグルチドは全て国内で生産している。
広報担当によると、投資額はデンマークの民間企業としては最大。同社は株式時価総額ベースで欧州最大の企業だ。
デンマークの製薬会社ノボ・ノルディスクは肥満症治療薬「ウゴービ」の研究結果の詳細を公表した。研究結果は心臓血管疾患の既往を持つ肥満症患者の心臓発作と死亡例を減らす上で、同治療薬の使用を支持する内容として注目されている。
米国心臓病学会(ACC)心臓血管疾患予防セクションのユージン・ヤン氏はインタビューで、調査結果について「革新的」と評価。フィラデルフィアで開かれている米国心臓協会(AHA)の年次会議では、データが公表されると医師らから何度か称賛の声が上がった。
ウゴービの最高容量を使用する人々は体重減少に加え、心臓病の前兆である血糖と炎症が改善する結果が得られた。これは、同社が8月に報告した心臓まひや脳卒中のリスク減少を説明するのにつながる。
最新の結果は、高リスクの人々に関して、心臓の治療としてスタチンや血圧治療と共に、ウゴービ使用の論拠を強固にすることになると考えられる。
ラース・フルアーガー・ヨルゲンセン最高経営責任者(CEO)は10日、詳細発表前のインタビューで、「医師らの間では、これが単に体重や容姿だけの問題でないとの認識が広がっている。これはまさに健康上の利益だ」と語った。
同社の開発責任者、マーティン・ホルスト・ランゲ氏はインタビューで、体重減少と共に、血糖コントロールと抗炎症効果が研究結果で示された心臓病を巡る利益の主因であると考えられると話した。
45歳以上の肥満の成人1万7600人余りを対象にした治験では、ウゴービ使用で体重が2年間に平均9.4%減ったのに対し、プラセボ投与群は1%未満の減少にとどまった。また、ウゴービ投与の人々の3分の2で血糖値が健康なレンジに低下。患者の約70%について糖尿病を防ぐのに十分な数値だ。
また、肝臓で合成され炎症と関連のあるタンパク質「C反応性タンパク(CRP)」もウゴービ投与の人々の間で約40%%低下した。
イングランド銀行(英中央銀行)は10日、システム横断的な初のストレステスト(健全性審査)の第2段階を開始すると表明した。銀行、保険会社、市場、清算機関が10日間にわたり金利やリスク資産価格に関わるショックにどのように対処するかを精査する。
英中銀は6月、ストレステストを行うと発表し、情報収集を開始した。
今回は使用する仮想ショックを発表。パンデミック(新型コロナウイルス大流行)に伴うロックダウン(都市封鎖)に陥った2020年3月の「ダッシュ・フォー・キャッシュ」や、昨年9月から10月にかけてのLDI(債務連動型運用)危機で英国債が暴落した時よりも深刻で範囲が広く、かつ持続的なものだという。
英中銀は24年に第2段階を実施し、同年末までに結果に関する最終報告書を発表する。
S&Pグローバル・レーティングは10日、みずほフィナンシャルグループ(8411.T)による楽天証券への追加出資の発表を受け、出資総額を上回る増益効果を得るには時間がかかるとの見解を示した。みずほからの楽天Gの借入金・出資の合計は約4500億円となり、みずほFGには「大口先への集中リスクが高まる」と指摘した。
S&Pは、今回の追加出資で、より踏み込んだ顧客基盤の拡大につながる契機となれば、みずほFGの中長期的な収益拡大に寄与する可能性が高まるとみている。一方、日本株取引手数料の無料化による楽天証の収益減少などで、出資価値の低下により減損につながる可能性もあるとの見方を示した。
●その他産業
●決算関連
「カルティエ」などを展開するスイスの高級ブランド大手リシュモン(CFR.S)が10日発表した4─9月期決算は予想を下回った。
生活費の上昇、経済的な逆風、地政学的な緊張が個人消費の重しとなった。
高級ブランド業界では仏LVMH(LVMH.PA)など、ここ数カ月の需要鈍化を指摘する企業が相次いでいる。
リシュモンの7─9月の売上高は為替変動の影響を除くベースで5%増と、4─6月の19%増から鈍化。
4ー9月の売上高は6%増の102億2000万ユーロと、市場予想の103億4000万ユーロを下回った。
利益は15億1000万ユーロで、チューリヒ州立銀行がまとめた市場予想の21億7000万ユーロを下回った。
ヨハン・ルパート会長は「第2・四半期(7─9月)は、インフレ圧力、経済成長の鈍化、地政学的緊張が顧客心理に影響を及ぼし始め、比較対象が高水準だったこともあり、成長が鈍化した」とし「この結果、業界全体で市場の成長予想に広範な正常化が見られた」と述べた。
4─9月は、伝統的に景気に左右されにくい宝飾品の売上高が、為替変動の影響を除くベースで9%増と引き続き好調だったが、時計の売上高が4%減少した。
シンガポールのOCBC銀行(OCBC.SI)が10日発表した第3・四半期決算は、純利益が前年同期比21%増の18億1000万シンガポールドル(13億3000万米ドル)となり、LSEGが集計したアナリスト予想平均の18億シンガポールドルを上回った。純金利収入の増加が利益を押し上げた。
ヘレン・ウォン最高経営責任者(CEO)の説明資料によると、同行は今年の純金利マージンを2.25%と予想、従来見通しの2.2%から引き上げた。今年1─9月の純金利マージンは2.28%だった。
今年の自己資本利益率(ROE)は14%超と見込んだが、市場環境を踏まえて融資の伸び率見通しは従来の1桁台前半もしくは半ばから、1桁台前半に修正した。
ウォン氏は声明で「今後を見渡すと、マクロ経済情勢はインフレリスク、金融引き締め政策、高まった地政学リスクに伴う不確実性の拡大により、雲行きが怪しくなりそうだ」と説明した。
欧州株の低迷に拍車がかかっている。発表が進む主要企業の2023年7〜9月期決算は前年同期比10%の減益見通しと日米に比べ厳しく、投資家の先行き不安を強めた。マイナス成長に沈む欧州景気、企業の中国経済への高い依存度、景気敏感業種主体の産業構造という「三重苦」が重荷になっている。
●先進国、グローバル、金融市場
日本の投資家による8月の米社債売却が一時的な動きなのか、一つのトレンドの始まりなのか手掛かりを得ようと、クレジットマネジャーは米財務省が16日に公表する9月の対米証券投資統計を神経質になりながら待ち構えている。
日本銀行が超緩和的な金融政策の解除に向かうとの観測の高まりを背景に、日本国債利回りはこの数カ月上昇傾向にある。日本の投資家にとっては一層のリターンが見込めるとして、これが資金を本国に還流させる誘因として作用する可能性がある。
米社債の大口の買い手の一角である日本勢の間でこのような動きが広がれば、世界的な市場の流動性が減って、ボラティリティーが高まるリスクも増す恐れがある。日本を含むアジアの投資家の米社債需要には最近数カ月間に顕著な軟化が見られると、バンカー2人が公に発言する権限がないことを理由に匿名で語った。
同省統計によれば、日本の投資家は8月に米社債計172億ドル(約2兆6000億円)相当の売り越しと、売越額としては過去最高となった。為替ヘッジコストが20年強ぶりの高水準となり、米社債投資の魅力が低下したことが背景にある。
ドイツ銀行の欧米クレジット戦略責任者、スティーブ・カプリオ氏は「米景気が今後下降する前に日銀が政策を正常化するのが多くの意味で投資適格クレジットにとってリスクだ」と指摘する。
その上で「過去の下落のケースでは、日本勢からの資金流入が投資適格クレジットのスプレッド拡大を抑制したが、日銀が政策を正常化すれば、最も必要とされる局面でこのフローが極めて細る可能性がある」との見方を示した。
潤沢な資金を抱える投資家の間で米優良企業の社債への需要が減れば、既に金融危機以来の高水準の資金調達コストに見舞われている米企業にとり、借り入れ費用が一段と膨らむ公算が大きい。
ブルームバーグの米社債指数によると、利回りは6.07%と2009年の数字に並んでいる。2年余り前には2%を下回っていた。
ただ、フェデレーテッド・ハーミーズの債券責任者、フレイザー・ランディ氏は、外国勢の購入減少があったとしても、社債発行の水準が低下するとともに、プライベートクレジットに市場シェアを奪われている文脈の中で判断しなければならないとし、「現在の市場環境ではテクニカル的に引き続き十分な下支えがありそうだ」と語った。
新規投資を手控える流れはローン担保証券(CLO)にも及んでいる。事情に詳しい関係者1人の話では、日本の大手投資家の少なくとも一つが日本市場でのリターンの魅力が高まっているとして、新たなCLO案件への配分を70%余り減らしている。
この関係者は、為替ヘッジコストもこうした決定で考慮されていると明かす。ドル高に伴い、保有CLOの価値は円建てで増えているものの、保有を追加する魅力は下がり、日本国内の債券の方が一段と魅力的になっていると説明した。
格付け会社ムーディーズは10日、米国債の格付け見通しを「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ」に引き下げた。米財政赤字の高止まりと債務支払い能力の低下を理由に挙げた。
長期発行体格付けおよびシニア無担保格付けは最高位の「Aaa(トリプルAに相当)」で維持した。米国の高い信用力と経済力が裏付けとなっている。
ムーディーズは声明で「議会内で政治的二極化が継続」していることで、債務支払い能力の低下を遅らせるための財政計画が議会でまとまらないリスクが高まっていると指摘。
ムーディーズのシニアバイスプレジデント、ウィリアム・フォスター氏はロイターに、2024年大統領選を前に政治的二極化が予算に関する意思決定を難しくすると指摘。この結果、米国の格付け見通しを再び「安定的」に戻す時期が後ずれする可能性があるとした。
「財政基盤の弱体化に対するいかなる有意義な政策対応も、恐らく25年までに講じられることはないだろう」とした。
同氏によると、ムーディーズは通常、ネガティブの見通しに関して1年半─2年の期間内に「安定的」に戻すか、格下げをするかを判断するが、この手続きが長引く可能性がある。
主要な格付け3社で米国債に最高位の格付けを維持しているのはムーディーズのみで、フィッチは8月にトリプルAから「AAプラス」に引き下げた。S&Pは11年以降、AAプラスの格付けを付与している。
アディエモ米財務次官は声明で「ムーディーズは米国のAAA格付けを維持しているが、われわれは格付け見通しのネガティブへの引き下げに同意しない」とし、「米経済は引き続き好調で、米財務省証券は世界有数の安全かつ流動性の高い資産だ」と述べた。
ホワイトハウスジャンピエール報道官は、格付け見通し引き下げについて「議会共和党の過激主義と機能不全」を反映しているという認識を示した。
議会の上下両院は政府機関の閉鎖を回避するために、現行のつなぎ予算が今月17日に期限を迎えるまでにさらなる予算措置で合意する必要がある。
LPLファイナンシャルの首席グローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は「時間は刻々と過ぎており、政府閉鎖を招き得る混乱が再びわれわれを待ち受けているとの認識がじきに市場に広がるだろう」と予想した。
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは10日、米国の信用格付け見通しを従来の「ステーブル(安定的)」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。財政の健全性に関するリスクや政治の分極化を理由に挙げた。
「見通しをネガティブに修正した主な要因は、米国の財政力に対するダウンサイドリスクが増大し、もはや米国独自の信用力で完全に相殺できなくなった可能性があると判断したことだ」とムーディーズは声明で説明。格付けは最上級の「Aaa」で維持した。
3大格付け会社のうち、S&Pグローバル・レーティングは2011年に、フィッチ・レーティングスは今年8月にそれぞれ米国の格付けを最上級から引き下げている。
ムーディーズのシニア・クレジット・オフィサー、ウィリアム・フォスター氏はインタビューで、「金利は大幅かつ構造的に上昇してきた」とした上で、「これが新しい金利環境だ。われわれの予想では、この金利上昇に加え、財政赤字が今後数年間、対国内総生産(GDP)比6%前後ないしそれ以上が見込まれることから、米国は引き続き債務償還能力に圧迫される見通しだ」と指摘した。
フォスター氏はまた、政府機関閉鎖を巡る全てのリスクも格付け見通し引き下げに反映されていると説明した。
ムーディーズの10日のリポートによると、同社の予測では連邦政府の利払い費の歳入とGDPに対する比率は2022年の9.7%と1.9%から、33年までにそれぞれ約26%と4.5%に上昇する見込みだ。これらの予測は、10年債利回りの年間平均が24年に約4.5%でピークに達するなど、金利がより高くより長く維持される見通しを反映したものだという。
コロンビア・スレッドニードルのグローバル金利ストラテジスト、エド・アルフセイニ氏は、この分析がムーディーズの今回の決定の「核心的要素」だとし、重要なのは格付けよりも、「財政リスクが高まっていることを市場に常に喚起すること」だと指摘した。
サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)を控え、格付け見通しを引き下げられた米国は厄介な状況に追い込まれた。
バノックバーン・グローバルのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は格付け見通し引き下げについて、「意味があるというより、恥ずかしいことだ」と述べた。
ホワイトハウスのジャンピエール報道官は今回の格付け見通し修正は「議会共和党の過激主義と機能不全の結果」だと指摘した。アデエモ米財務副長官は米経済は引き続き好調であり、米国債は「世界で突出して安全で流動性の高い資産だ」と述べ、格付け見通し変更に異を唱えた。
ムーディーズの発表後、米10年債先物は下落。10年債利回りは上昇し4.65%を超えた。
米議会がつなぎ予算案で合意に至らなければ今月18日に政府機関閉鎖となる可能性がある。フォスター氏は来年に選挙を控え、合意形成は難しくなる一方だと指摘。
「大きな進展が見られれば、来年には格付け見通しを見直せるかもしれないが、25年になる可能性の方が高い。政府が歳出削減や歳入増、あるいは他の措置によって財政赤字を減らすいう証拠が必要だ」と述べた。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は10日、金融政策に関する四半期報告を公表し、インフレ率が予想外に上振れる可能性があると警告した。経済成長率と雇用に関する見通しも引き上げた。
中銀は7日の理事会で、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げ、12年ぶり高水準となる4.35%とした。
四半期報告では同会合で金利を据え置くことも議論したが、インフレ鈍化を確実にするために利上げが必要と判断したとした。
中銀は「理事会の優先事項はインフレ率を目標に戻すことだ」と指摘。「合理的な時間枠でインフレ率が目標に到達することを確実にするために追加の金融引き締めが必要かどうかは、データとリスク評価の進展次第になる」とした。
第3・四半期の消費者物価指数(CPI)上昇率は、昨年に付けたピークの7.8%から5.4%に鈍化したが、予想をやや上回った。中銀目標の2─3%も依然として大きく上回る水準。
中銀はサービス部門の根強いインフレを受け、インフレ見通しを引き上げた。
コアインフレ率の指標として注目されるCPIの中銀トリム平均値は来年末までに3.25%に鈍化し、2025年終盤までに3.0%をやや下回る水準になる見通し。どちらも前回予想から0.25ポイント程度の上方修正となった。
中銀は「インフレ率がさらに予想外に上振れる可能性がある」とし、国内のコスト圧力や地球温暖化などの外部要因に言及。そうしたサプライズによってインフレ期待が抑制できなくなり、追加利上げが必要になるリスクがあると指摘した。
一方で、国内経済は予想以上に底堅いとも指摘。移民急増や政府のインフラ支出などが要因になっているとの見解を示した。
成長率見通しは第4・四半期が前年比1.5%と従来の1.0%から上方修正。24年末時点の見通しは0.25ポイント引き上げて2.0%とした。25年終盤の見通しは2.25%で変わらずだった。
失業率は24年に4.25%でピークを打つとし、従来予想の4.5%から引き下げた。現在の失業率は3.6%で1950年代以来の低水準付近。
ただ中銀は、過去の利上げと高インフレが実質所得を目減りさせ、多くの家計が「痛みを伴う」圧迫に直面しているという認識も示した。
米エネルギーサービス会社ベーカー・ヒューズ(BKR.O)が発表した週間データ(10日までの週)によると、米国内の石油・天然ガス掘削リグ稼働数は前週比2基減の616基で、2022年2月以来の低水準だった。
前年同期の水準を163基(21%)下回った。
石油リグ数は2基減の494基、天然ガスリグは横ばいの118基だった。
米下院のジョンソン議長は11日、1週間後の政府機関閉鎖回避を目的とした共和党の暫定予算案を発表した。ただ、与野党双方から反対の声が出ている。
同案は軍や運輸、農業など一部政府業務が来年1月19日まで、それ以外は2月2日までの歳出をまかなう内容となっている。下院共和党は14日の可決を望んでいる。
イスラエルやウクライナへの支援といった追加予算は盛り込まれていない。
下院と上院は17日までにバイデン大統領が署名できる歳出案に合意しなければならない。
ただ、今回の案について、下院共和党の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」のメンバーで、歳出削減を含めるよう求めていたチップ・ロイ議員は「100%反対だ」とソーシャルメディアに投稿。
民主党のブライアン・シャッツ上院議員は「超複雑」で「無意味」と非難した。ホワイトハウスのジャンピエール大統領報道官は発表文で「下院共和党は両党の議員から非難されている不真面目な提案で貴重な時間を無駄にしている」と述べた。
ジョンソン米下院議長は11日、共和党保守強硬派が求めている大幅な支出削減は除いたつなぎ予算案を提示した。現行のつなぎ予算の期限切れに伴い、18日から連邦政府機関が閉鎖に追い込まれるリスクがやや後退した。
2024年度(23年10月-24年9月)歳出法案は未成立で、現行のつなぎ予算が17日で期限を迎えるのを前に、民主・共和両党が上下両院で新たなつなぎ予算案を審議・可決する時間的猶予は少なくなっている。
だが、ジョンソン議長の提案では、共和党保守派の一部が求めている支出の即時30%削減や移民政策変更を盛り込まなかったことで、民主党との間で妥結に至る見通しが改善した。イスラエルやウクライナへの新たな支援も除外された。
新規のつなぎ予算案の期限は退役軍人省やエネルギー省、農務省、運輸省、住宅都市開発省向けが来年1月19日まで、それ以外は2月2日まで。上院に対し審議・可決を急ぐよう促す。
下院議事運営委員会は13日に公聴会を開き、つなぎ予算案を審議し、下院本会議で採決を行うかどうかや、採決実施の場合の手順を設定する。
下院共和党指導部は14日の本会議採決を計画しているが、その場合、先月に議長に選出されたばかりのジョンソン氏と同党保守強硬派との蜜月の関係は早くも終わりを迎える可能性がある。党内の造反の動きを踏まえれば、議長のつなぎ予算案の下院可決には民主党議員の賛成が必要となるのはほぼ確実だ。
一方、共和党保守強硬派の造反が長引けば、ジョンソン議長は11日に示したつなぎ予算案の撤回を余儀なくされ、政府機関閉鎖のリスクがあらためて高まることになる。
ホワイトハウスのジャンピエール大統領報道官は11日の声明で、「この提案は共和党にとってのさらなる混乱と政府閉鎖リスクの種になる」と政権として懐疑的な立場を表明。他方、上院民主党スタッフの1人は、ジョンソン議長の提案に大幅支出削減が盛り込まれなかったことや、国防支出のつなぎ予算案が2月2日までの長めの期限の対象となっている点に歓迎の意を示した。
10日には格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが財政の健全性に関するリスクや政治的分断を理由に、米国の信用格付け見通しを「ネガティブ(弱含み)」に引き下げており、予算問題を巡る議会の対応には厳しい視線が注がれている。
ゴールドマン・サックス・グループのアナリストは9月、政府機関閉鎖となった場合、1週間続くごとに米国の四半期成長率が0.2ポイントずつ押し下げられるとの推計を示した。
米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は10日、インフレ率を目標の2%に戻すための連邦準備理事会(FRB)による利上げが終わったか、まだ明言する準備はできていないと述べた。
デイリー総裁はCNBCのインタビューで、FRBの金融政策は「極めて良好な位置に着けている」とし、「インフレを巡るニュースもかなり良好だ」と指摘。ただ「勝利を宣言するのはまだかなり尚早だ」と語った。
パウエルFRB議長は9日、FRB当局者は金利がインフレとの戦いを終わらせるのに十分高い水準に達しているとは「確信していない」とし、「政策をさらに引き締めることが適切となれば、躊躇することなく引き締める」と表明。
デイリー総裁はパウエル氏の考えを踏襲し「FRBの政策は極めて制約的だと考えているが、それでもなお、物価上昇圧力を引き下げるために必要なほどに制約的であるかどうかは分からない可能性がある」とし、現時点でFRBはデータを注視しながら、行動を起こす準備を整える必要があると述べた。
このほか、このところの国債利回りの低下にもかかわらず、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降見られている金融条件の引き締まりが、なお経済に対する重しになっているとの見方を示した。
このところの債券市場の動きについては、根本的な問題で引き起こされているとは考えにくいとし「多くの不確実性が存在しており、債券利回りは多様な理由で変動する。金融の混乱や市場機能に対する懸念を引き起こすボラティリティーと、大きな不確実性が存在するときに自然にみられるるボラティリティーを区別して考えたい」と述べた。
FRBは10月31日─11日1日に開いたFOMCで、2会合連続で金利据え置きを決定。デイリー総裁のこの日の発言は同FOMC以降で初めて。
米ミシガン大学が10日発表した11月の消費者信頼感指数(速報値)は60.4と、前月の63.8(確報値)から低下し、5月以来の低水準となった。低下は4カ月連続。市場予想中央値の63.7も下回った。
現況指数は65.7と、前月の70.6から低下。期待指数は56.9と、59.3から低下した。共に5月以来の低水準となる。
消費者調査ディレクターのジョアン・シュー氏は「今月は現在および予想される個人の財務状況がいずれも緩やかに改善したが、長期的な経済見通しは高金利の悪影響に対する懸念の高まりもあり、12%低下した」と指摘。「ガザとウクライナで続いている戦争も多くの消費者に重くのしかかっている」とした。
1年先のインフレ期待は4.4%。2カ月連続で上昇し、7カ月ぶりの高水準となった。
5年先のインフレ期待は3.2%。前月の3.0%から上昇し、2011年3月以来の高水準を付けた。
オックスフォード・エコノミクスの経済調査アナリスト、グレース・ズウェマー氏は「ガソリン価格の下落にもかかわらず、消費者のインフレ期待が上昇したことはFRBにとって懸念材料になる」と言及。 「インフレ期待の上昇は金利をより長期間高水準に維持する必要があることを示すもう1つの兆候だ」とした。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は10日、ユーロ圏のインフレ率は今後数カ月で上昇する可能性があるが、政策金利を少なくとも数四半期、現行水準で維持すればインフレ率を2%に戻すことは可能と述べた。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のイベントで、インフレ率について「今後、おそらくより高い数値が復活するだろうし、それを予想すべきだ」と指摘。「今はエネルギー価格がそれなりに横ばいであったとしても、1─2月にはベース効果を失うことになる」とした。
ただ、インフレ率が再び上昇したとしても追加利上げは必要ないかもしれないと示唆。政策金利は「十分長い期間維持されれば2%の中期目標に到達できると考えられる水準にある」とした。
「十分長い期間」は何を意味するのかとの質問に対し、「今後数四半期は」政策変更は予想されないと答えた。
一方、ECB理事会メンバーのビルロワドガロー・フランス中銀総裁は、新たなショックがない限り追加利上げはないが、利下げを議論するのは時期尚早と言及。同時に、インフレに対するリスクは引き続き存在し、ECBは欧州連合(EU)諸国が新たな財政枠組みについて合意できていないことに不快感を示していると警告した。
英国立統計局(ONS)が10日発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)は前期比0.0%だった。
ロイターがまとめた市場予想は0.1%減。景気後退(リセッション)の入り口に立つと予想されていた。
9月のGDPは前月比0.2%増。市場予想は0.0%だった。
8月のGDPは0.2%増から0.1%増に下方修正された。
統計を受け、ハント財務相は、引き続き高インフレが成長の最大の足かせになっていると指摘。22日の予算演説では投資や雇用を促進する対策を発表すると述べた。
キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミスト、ポール・デールズ氏は、第3・四半期のGDPについて、四捨五入すればゼロ成長だが、正確には0.02%のマイナス成長だと指摘。
「ただ、重要なポイントはコアインフレ率と賃金上昇率を急ピッチに押し下げるほど景気が低迷していないということだ。このため、イングランド銀行(英中央銀行)の利下げは、市場が予想している来年半ばではなく、来年終盤になるだろう」と述べた。
第3・四半期のGDPの内訳は、サービス部門が0.1%減、鉱工業部門がほぼ横ばい、建設部門が0.1%増。
GDPは新型コロナウイルス流行前の2019年後半の水準を1.8%上回っている。
先週、イングランド銀行(英中央銀行)は政策金利を15年ぶりの高水準に据え置いた。目標の3倍以上になっているインフレの抑制に取り組む姿勢を示す一方で、国内経済については第3・四半期と2024年はゼロ成長を予想した。
バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は15日、1年ぶりとなる対面での首脳会談を行う。
習主席はサンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議 (APEC)首脳会議のため米国入りする。これに合わせたバイデン大統領との会談は、米中関係に絡む問題に加え、幅広い世界的な懸念を議論する機会になる。米政府高官は何らかの明確な事態打開につながるとの期待をけん制し、2国間関係にある認識のずれを取り除くことが焦点になると説明した。
匿名を条件に記者団に9日語った高官によれば、バイデン大統領は習主席に軍を含め意思疎通を行うオープンな連絡経路の必要性を伝える見込み。人工知能(AI)や合成オピオイドのフェンタニル、中国で拘束されている米国人に関係する問題も話し合う予定だという。
ホワイトハウスのジャンピエール報道官は10日の発表文で、米中首脳は両国が「責任を持って競争を管理し、国際社会に影響する多国間の問題を中心に利害の一致する部分でいかに協力できるか」を協議すると説明した。
中国外務省も同日、「両首脳は米中関係に関連する戦略的、包括的、根本的な問題や、世界の平和と発展に関わる重大な問題について突っ込んだ意見交換を行う」と発表した。
ペロシ米下院議長(当時)による昨年8月の台湾訪問後、中国は米国との軍事連絡経路を遮断したが、米中両国は軍同士の意思疎通再開を発表する見通し。この計画に詳しい関係者が明らかにした。
米国はまたフェンタニル製造で使われる化学成分の取り締まりで中国の協力を得ることで合意したい考えだと関係者は語った。
香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)は匿名の関係者2人の話として、バイデン大統領と習主席はドローンを含む自律型兵器や、核弾頭の管理・配備にAIを活用することを禁止することで合意する見通しだと伝えた。
米国でAPEC首脳会議が開催されるのは2011年以来。米中首脳会談が行われる場所については、サンフランシスコのベイエリアとしか明らかにされていない。中国外務省は10日、習主席が14日から17日までサンフランシスコを訪問し、APEC会合に出席すると認めた。
バイデン大統領と習主席が最後に対面で会談したのは22年11月14日。20カ国・地域(G20)首脳会議が開催されたインドネシアのバリ島での会談は約3時間半続いた。
習主席の訪米は17年以来となる。この時はトランプ大統領(当時)とフロリダ州で会談した。
格付け会社フィッチ・レーティングスは10日、イタリアの信用格付けをジャンク級(投機的水準)より2段階上の水準に据え置いたと発表した。同国の財政に対する監視の目が厳しくなる中、メローニ首相への新たな追い風となった。
発表によると、イタリアの格付けは「BBB」、格付け見通しは「ステーブル(安定的)」に据え置かれた。極めて高水準の政府債務などの問題はあるものの、付加価値が高く、多様性がある大規模経済やユーロ圏加盟などの利点がバランスを取っていると説明した。
先月、S&Pグローバル・レーティングもイタリアの格付けをジャンク級より2段階上の「BBB」に据え置いていた。S&Pは欧州連合(EU)の復興基金による財政支援が寄与してイタリアの経済成長が2025年までに上向くと予想した。
一方、ムーディーズ・インベスターズ・サービスはイタリアの財政状態により強い懸念を示してきた。ムーディーズは今月17日に同国の格付け見直しを発表する予定。ただ発表を控える可能性もある。
●中国・アジア・ロシア・東欧
●中東
サウジアラビアなどのイスラム諸国は11日、パレスチナ自治区ガザにおける軍事作戦の即時終結を求めるとともに、イスラエルがパレスチナ人に対する行動を自衛として正当化する主張を拒否すると表明した。
イスラム協力機構(OIC)とアラブ連盟はリヤドで臨時の合同首脳会議を開催。イランのライシ大統領やトルコのエルドアン大統領、カタールのタミム首長、シリアのアサド大統領ら数十人の指導者が出席した。
共同声明は、国際刑事裁判所(ICC)に対し、パレスチナでの「イスラエルによる戦争犯罪と人道に対する罪」を調査するよう求めた。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は、パレスチナ人が「大量虐殺戦争」に直面していると述べ、イスラエルの「侵略」を終わらせるよう米国に求めた。
ライシ氏は、イスラエルと戦っているパレスチナのイスラム組織ハマスを称賛。イスラエルに石油や物資の制裁を科すようイスラム諸国に求めた。
イラン国家元首のサウジ訪問は10年以上ぶり。両国は3月、中国の仲介で国交正常化で合意した。
首脳会議は、ガザ包囲攻撃の終結、人道援助へのアクセス、イスラエルへの武器売却停止も要求した。
2人の関係筋がロイターに語ったところによると、アルジェリアを筆頭とする一部のアラブ諸国はイスラエルとの外交関係を完全に断ち切るよう主張。これに対し、イスラエルと外交関係を結んでいるアラブ諸国はネタニヤフ政権とのチャンネルを保持する必要性を強調し、反対したという。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相はテルアビブで記者会見し、アラブの指導者らに「ハマスに立ち向かう」よう求めた。
フランスのマクロン大統領は、イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザの空爆や民間人殺害について「正当性がない」として停止を求めた。英BBCが10日にインタビューを放映した。
停戦はイスラエルの利益になるとも語った。フランスはガザのイスラム組織ハマスの「テロ」行為を「明確に非難」し、イスラエルの自衛権を認めるとした上で、「空爆停止を強く促す」と述べた。
米英などの首脳も共に停戦を訴えることを望むとした。
パリで開かれたガザ人道支援を協議する会議の「明確な結論」は「まずは人道的休止、その後に停戦する以外に解決策はないということだ」と述べた。
「赤ちゃんや女性、高齢者が爆撃され、殺害されている。理由も正当性もない。それ故、イスラエルには停止を強く求める」とした。
イスラエルのネタニヤフ首相はマクロン氏の発言に対し、世界の首脳はイスラエルではなくハマスを非難すべきだと反発。ハマスがパリやニューヨークなど世界各地で犯罪を犯すことになると主張した。
サウジアラビアのムハンマド皇太子は10日、リヤドで開かれたサウジ・アフリカサミットで、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突の終結を呼びかけた。戦争終結の呼びかけは、同サミットで採択された共同宣言にも盛り込まれた。
ムハンマド皇太子はサミットで「ガザ地区が直面している軍事攻撃、民間人の標的化、イスラエル当局による国際法違反を非難する」とし、「この戦争の終結させ、パレスチナ人の強制移住を止める必要性を強調する」と述べた。
サミットには、ナイジェリア、ケニア、ザンビア、ジブチ、モーリタニアの大統領のほか、エチオピアとニジェールの首相らが出席。エジプトからは外相が参加した。
国営サウジ通信(SPA)によると、サミットで採択された共同宣言は、パレスチナでの軍事行動を停止し、民間人を保護する必要があるとし、「イスラエルの占領に代表される紛争の真の原因」を取り除く必要性を強調するとした。その上で、1967年の境界線上に東エルサレムを首都とする独立国家を樹立する権利をパレスチナ人に保証する「2国家共存」策に基づき、イスラエルとパレスチナの紛争を終結させる取り組みを強化するよう呼びかけた。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は10日、自治政府の主流派ファタハが治めるヨルダン川西岸地区を含めた完全な政治的解決があることを条件に、ガザ地区の統治に自治政府が役割を果せる可能性があると述べた。
アッバス議長は、民間人に多くの犠牲者が出ているガザ地区の状況について、イスラエルに全責任があるとした上で、パレスチナ自治政府は、独立したパレスチナ国家に基づく広範な政治的解決策の一部となり得ると指摘。「ガザ地区はパレスチナ国家の不可欠な一部だ。東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とガザ地区の双方を含む包括的な政治的解決の枠組みの中で、パレスチナ自治政府は全責任を負う」と語った。
エジプトのシシ大統領は10日、カイロを訪問したカタールのタミム首長と会談し、パレスチナ自治区ガザにおける暴力の鎮静化や人道支援の提供、人質解放の仲介に向けて協議した。エジプト大統領府が声明を発表した。
カタールも「ガザ侵攻を止め、エスカレーションを抑え、緊急人道援助を届けるための一致した取り組み」について議論したと述べた。
3人のエジプト治安筋は、ガザ北部での戦闘休止に向けた交渉は前進したが、双方が解放する人質や囚人の数については合意に達していないと述べた。
関係筋によると、カタールとエジプトは仲介の条件として、避難民のガザ北部への帰還保証を要求しているという。
カタールにはガザを実効支配するイスラム組織ハマスの複数の幹部が拠点を置いており、ハマスとイスラエル当局の仲介を主導してきた。エジプトもガザとの境界にあるラファ検問所を通じた支援提供や外国パスポート保持者らの避難などの交渉に関与している。
イランのアブドラヒアン外相は、イスラエルのイスラム組織ハマスに対する戦争によって引き起こされた民間人の苦しみが紛争の拡大につながると警告した。イラン国営のプレスTVが10日に伝えた。
同相は9日夜、カタールのムハンマド外相との電話会談で「(パレスチナ自治区)ガザの民間人に対する戦争の激化により、戦争の範囲拡大は避けられなくなっている」と述べたという。
12日にリヤドで行われるイスラム協力機構(OIC)のガザ地区に関する話し合いを行う会合に、イブラヒム・ライシ大統領が参加することが発表されている。イランの大統領がサウジアラビアを訪問するのは、2012年のマフムード・アフマディネジャド大統領以来となる。ガザに関する話し合いの会合にイランを含めることは、同国を問題の一部ではなく解決策の一部にしたいという願望に端を発したものである。しかしながら、イランとアラブ湾岸諸国の間には大きな信用問題があり、お互いが様々な事案をゼロサムゲーム的な観点で捉えている。ライシ大統領はイランが善意を持っており、パレスチナの人々を近隣諸国や米国に対する立場を有利にするための手札ではなく、彼らのウェルビーイングを気にかけているのだとアラブ諸国を納得させられるだろうか。
イランがガザに関する話し合いに招かれたのは、仮に同国が除外され孤立した場合、イラン政府が妨害者として振る舞う可能性があることを近隣諸国が理解しているからである。今回のイランの参加はアラブ諸国を背景に検証すべきだ。デニス・ロス氏は先月、ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、アラブ諸国の複数の政府関係者から、イスラエルがハマスを壊滅させることを望んでいるという話を聞いたと書いている。その理由は、ハマスの勝利はイランとムスリム同胞団の勝利であると彼らが認識しているからだという。ここでは、アラブ諸国の立場を分析することが重要だ。
ガザはアラブ諸国にとってのジレンマだ。一方で彼らはパレスチナ人たちに同情しており、この問題に対する公平な解決を求めている。だが他方で、彼らはハマスを軽蔑しているのである。アラブ諸国はハマスを危険な存在だと見ている。ハマスの政治層はムスリム同胞団に属し、軍部のアル・カッサム旅団はイラン革命防衛隊と結びついており、強く嫌悪されている「抵抗の枢軸」の一部である。
ヒズボラのハッサン・ナスララ書記長は先週行った演説で、ハマスの勝利はパレスチナ人と周辺のアラブ諸国の勝利であると述べた。彼はイスラエルが失敗し目的を達成できなければ、パレスチナ人のための国家に関する交渉の席に就かざるを得なくなる(イスラエルはこれを長年に渡って避けてきた)はずだとほのめかし、アラブ諸国に対して間接的に保証を送ったのである。
米国のアントニー・ブリンケン国務長官との会談で、アラブ諸国は停戦と二国家解決実現に向けた交渉再開の必要性を伝えた。しかし複数の情報源によると、彼らはイランを蚊帳の外に置いておきたいと考えており、ハマスの役割については意見の相違があるという。
多くのアラブ諸国と米国にとって理想のシナリオは、イスラエルがハマスを壊滅させ、アラブ諸国が二国家解決の交渉を行い、パレスチナという手札をイランから取り上げることだ。しかし事態はそれほど単純ではない。イランが妨害を行う可能性があるため、無視することはできないのである。イランは全ての陣営の状況を複雑化させる可能性がある。ひとつ確かなのは、イランもアラブ湾岸諸国も戦争を望んでいないことである。イランはおそらく、米国およびアラブ諸国との交渉における立場を有利にできる状況を望むだろう。
ガザで悲劇が展開するなか、アラブ諸国はパレスチナ問題に対する答えを出さずにいることはできず、現在の状況は持続可能ではないことをより明確に理解し始めている。彼らは解決策を見出したい。だが、彼らはイランに関して多くの疑問を抱いている。イランは二国家解決を受け入れるだろうか。イスラエルが失敗した場合、抵抗の枢軸は強化され、イランのイラク、レバノン、シリア、イエメンに対する影響力は強まることになるのか。イランは好戦的な態度を強めるのか。別の問題としては、パレスチナ人が主権国家を与えられるという政治的解決が検討されたとして、その条件にハマスの解体が含まれる場合イランは受け入れるのかということがある。イランはパレスチナ人の総合的なウェルビーイングと引き換えに、ハマスという手札を失うことを受け入れるだろうか。
当然ながら、交渉がイスラエルと検討されることになった場合、ハマスにとっては――あるいは少なくとも、イランに属する軍部にとっては――ガザ地区を管理する立場に留まることは難しくなるだろう。イランはアル・カッサム旅団の解散を受け入れるだろうか。その場合、見返りに何を求めるのか。ハマスはヒズボラのように、イランにとってイスラエルに対する抑止力として機能していると理解することが重要だ。もしハマスが解体されるなら、イランは補償を受ける必要があるだろう。その見返りにイランは何を求めるだろうか。
仮にイランが、自分たちは問題の一部ではなく解決策の一部だとアラブ諸国を説得できた場合、彼らが共同戦線を張って米国に圧力をかけ、イスラエルに二国家解決を受け入れるよう真剣に働きかけさせる好機となるだろう。それでもなお、イランは明確な政治的ビジョンを示さなければならない。イランはパレスチナの解放を目標として宣言している。パレスチナ問題が解決した場合、イランは他の問題に対してどのような立場を取るつもりなのか。
米国も戦争は望んでいない。ジョー・バイデン大統領は主要な激戦州の世論調査でドナルド・トランプ氏にリードされており、戦争の長期化がバイデン氏にとってマイナスなのは間違いない。パレスチナ人の虐殺を支援しているという非難は、バイデン氏が有権者に受け入れてもらいたいと考えている自身の主義にそぐわないものだ。
アラブ諸国とイランが何らかの解決策で合意すれば、ある意味で米国にとってはやりやすい状況になるだろう。イスラエル政府に対する明白な米国の支持と、大統領および国務長官のイスラエルに対する感情的傾倒はあるものの、彼らは解決も望んでおり、占領が持続可能でないことも分かっているのである。潜水艦と駆逐艦が同地域に派遣されたが、米国はそれらを使わずに済むことを望んでいる。
では、ライシ大統領はアラブ諸国を宥めるために何をすべきなのか。アラブ諸国はどんな保証を必要としているのか。イランはアラブ平和イニシアチブを受け入れるかどうか、明確な立場を示さなければならない。また、イラクのシーア派武装組織フーシ、ヒズボラ、バッシャール・アサド氏とどのように方を付けるのか、説明する必要もある。たとえば、シリア国民の苦難を終わらせることを求める国連安保理決議第2254号を受け入れるよう、アサド氏に圧力を掛けるつもりはあるのか。
他方で、イランは見返りにどんな安全保障を求めるのか、はっきりさせる必要がある。サウジアラビアは、イランに安全保障を提供するには非常に良い立場にある。イラン政府は、イスラエルと敵対した際のサウジアラビア政府の立場を常に問うてきた。サウジアラビアは、イスラエルがイランに武力行使を行った際に領空を封鎖するという保証をいつでもイランに与えられるだろう。だがその見返りに、イラン政府は地域問題に関してサウジアラビアと協力せざるを得なくなる。そして現時点で最も急を要するのが、パレスチナ問題なのである。
リヤド:サウジアラビアは11日、イスラエルは国際法違反を見逃されているとして、イスラエル・ハマス戦争に対する世界の反応における「二重基準」を非難した。
サウジの外相であるファイサル・ビン・ファルハーン王子は、リヤドで開催されたイスラム・アラブ臨時合同首脳会議が終了した後の記者会見で次のように述べた。「我々はこの二重基準を注視・観察しており、それに基づいて国際システムの信頼性に対する評価を改めている」
「全ての者をそれらの基盤に拘束するコミットメントがないのであれば、それらの基盤が統一的な基盤であると言うのは難しい」
今回の首脳会議で、サウジアラビアとその他のイスラム諸国はガザ地区における軍事作戦の即時終結を求めるとともに、イスラエルがパレスチナ人に対する自らの行動を自衛として正当化することは受け入れられないと表明した。
ファイサル王子は、アラブ・イスラム諸国が国連安保理に対し圧力をかけることは期待できるか、あるいは安保理は「パレスチナの期待を裏切り続ける」と思うかというアラブニュースの質問に対し、次のように答えた。「アラブ連盟は国連総会で、非常の強いメッセージを伴う決議を提案した」
「(同連盟は)国連安保理がその責任を果たせずにいることを指摘した。そのことは状況全体、すなわち国際安全保障構造の改革の必要性を浮き彫りにしている」
ファイサル王子は、安保理は「自らが国際社会の期待に応えられないこと、そして改革が絶対に必要であること」を示してきたと述べた。
「(国際安全保障構造に対する評価を改めているのは)国際社会がイスラエルの責任を問うことができなければ、そのことは我々の多くに、確立された国際秩序のパラメーターは本当に機能しているのかという大きな疑念を植え付けることになるからだ」
これに先立ち、今回の首脳会議は最終声明の中で国際刑事裁判所(ICC)に対し、パレスチナ自治区において「イスラエルが犯している戦争犯罪および人道に対する罪」を調査するよう求めた。
イランのイブラヒム・ライシ大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、カタールのシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ首長、今年アラブ連盟に復帰したシリアのバッシャール・アサド大統領など、数十各国の首脳が出席した。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下は、サウジアラビアは「パレスチナの同胞に対するこの野蛮な戦争を非難し、断固として拒絶する」と述べた。
皇太子殿下は首脳会議で次のように演説した。「我々は人道的大惨事に直面している。これは安保理と国際社会がイスラエルによる目に余る国際法違反を止められなかったことを証明するものだ」
マフムード・アッバース大統領は、パレスチナ人は「大量虐殺戦争」に直面しているとしたうえで、米国に対しイスラエルによる「攻撃」をやめさせるよう呼びかけた。
10月7日にハマス戦闘員らがイスラエルを襲撃して1200人を殺害して以来、中東では緊張が高まっている。
パレスチナ当局によると、イスラエルのガザ地区に対する攻撃による死者は10日時点で1万1078人に上り、その40%が子供である。
カイロ:ガザ地区における戦闘の鎮静化に向けての仲裁や人道援助の提供、イスラエル人の人質の解放を模索するカタールとエジプトの指導者たちは、11月10日、カイロで会談した。
エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領 とカタールのシェイク・タミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ殿下が、ガザ地区における停戦と包囲下にある230万人の住民への十分な量の援助物資の提供に向けた取り組みの強化について話し合いを行ったと、エジプト大統領府が声明で発表した。
カタール側は、「ガザ地区への武力行使を終結させ、戦闘の激化を阻み、緊急の人道援助を届けるための協力」についての話し合いが行われたと発表した。
カタール首長のエジプト訪問は、カタールの首相が米国中央情報局(CIA)とイスラエルの諜報機関モサドの長官とドーハで会談し人質の解放やイスラエルとハマスの戦闘の一時停止のための取り決めの諸条件について協議した翌日のことだった。
パレスチナの武装勢力であるハマスの政治的指導者が拠点を置くカタールは、1,400人が死亡したとイスラエルが発表した10月7日の襲撃時にハマス戦闘員が拉致した240人以上の人質の解放に向けて、ハマスとイスラエル当局の調停を主導してきた。
10月7日の襲撃以降、イスラエルは、ハマスの支配下にあるガザ地区へ容赦のない空爆を行い、装甲車による地上侵攻を開始した。パレスチナ当局によると、10,000人以上が死亡しているという。
エジプトも、また、ハマスとイスラエルの双方と接点を有し、ラファの国境検問所経由での、ガザ地区への援助の提供や、外国のパスポートの保持者や緊急の治療を要する若干名のパレスチナ人のガザ地区からの退避などについての交渉に参加している。
退避する人々を護送する車列の内の1つがガザ地区内部で標的にされたと赤十字が発表したことにより、ラファ経由での避難は中断していたが10月9日に再開された。
国連によると、10月9日には65両の援助物資を積載したトラックがエジプトからガザ地区に入ったが、それだけでは深刻化する人道危機への対処に必要な量を大幅に下回っているという。
米国は、10月9日、戦闘の鎮静化の兆しは無いものの、ガザ地区北部で毎日4時間戦闘を停止することと民間人がガザ地区南部へと移動するための人道回廊の設置にイスラエルが同意したと発表した。
ワシントン:ベンヤミン・ネタニヤフ首相は9日、イスラエル軍はガザ地区のハマスに対する攻撃を「非常に首尾よく」行っていると述べ、イスラエルはパレスチナ領土を再占領する計画はないと強調した。
ネタニヤフ首相は「イスラエル軍は非常に首尾よく行っていると思う」とFOXニュースに語り、次のように付け加えた。「イスラエルはガザを統治するつもりはない。ガザの占領を目指しておらず、ガザとイスラエルによりよい未来をもたすことができるよう努める」
●中南米・アフリカ
●市況
<為替> 前日の米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の発言が消化される中、ドルは対ユーロで下落したものの、対円では上昇した。円は対ドルで1年ぶりの安値近辺にとどまっているため、政府・日銀による介入が引き続き警戒されている。ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの外為戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は「市場では世界的なインフレの持続性が過小評価され続けており、これが一段の利上げの可能性の過小評価につながっている」と指摘。「現時点の市場の予想は2024年までの利下げ実施に大きく傾いているが、向こう数週間で見直しが迫られるだろう」と述べた。追加利上げの可能性を見極めるため、来週発表される消費者物価指数と小売売上高が注目されている。
<債券> 国債利回りがまちまちとなった。前日は米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の発言がタカ派的と受け止められたことで国債利回りは大きく上昇したが、この日はポジション調整の動きが出る中、長期債利回りがおおむね低下した。
レイノルズ・ストラテジー(マサチューセッツ州)のチーフ市場ストラテジスト、ブライアン・レイノルズ氏は「昨日の利回りの急上昇は、一種の短期的なエアポケットのようなものだった」と指摘。現在の10年債利回りは先週と比べると30ベーシスポイント(bp)ほど低い水準にある」と述べた。
CMEフェドウオッチによると、来年6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決定される確率は58%。前日の61%から低下した。
アメリベット・セキュリティーズ(ニューヨーク)の米金利戦略責任者、レッグ・ファラネロ氏は「市場では現在、FRBの利上げ局面は終了したという見方が受け入れられている」とし、「こうした見方は経済指標次第で変化、もしくは強化される」と指摘。来週14日発表の 消費者物価指数(CPI)が注目されていると述べた。
<株式> 大幅高。米債利回りの上昇が幾分落ち着きを取り戻す中、ハイテク株やグロース株が買われ、相場を押し上げた。投資家は来週発表される主要インフレ指標を注視している。
ナスダック総合(.IXIC)は1日としては5月26日以来の大幅な伸びを記録。S&P総合500種(.SPX)も終値としては9月19日以来の高値を付けた。
S&Pの主要11セクター全てがプラス圏で終了。情報技術(.SPLRCT)が2.6%高で上昇を主導した。エヌビディア(NVDA.O)は約3%高、メタ・プラットフォーム(META.O)は2.6%高、マイクロソフト(MSFT.O)は2.5%高。
<米原油先物> 週央まで売り込まれた反動から安値拾いの買いの流れが継続し、続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物は前日清算値(終値に相当)比1.43ドル(1.89%)高の1バレル=77.17ドルだった。週間では4.15%安。1月物は1.40ドル高の77.15ドル。
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。2023年第3・四半期の英経済がゼロ成長だったことでリスク選好度が後退したほか、酒造大手のディアジオが厳しい業績見通しを示したことも嫌気された。
ディアジオ(DGE.L)は12.2%と急落。中南米とカリブ海地域の「業績の大幅低迷」が響いて上半期の営業利益の伸びが鈍化するとの見通しを示したのが売り材料となった。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長のタカ派的な発言後、金利はピークに達したとの投資家の楽観的な見方が後退して国債利回りが上昇したのが嫌気され、相場を押し下げた。
ウイスキー「ジョニーウォーカー」を手がける酒造大手のディアジオ(DGE.L)は10日に12.2%と急落し、上半期決算の営業利益の伸びが鈍化するとの見通しが嫌気された。食品・飲料株指数(.SX3P)は3.06%下落。
「カルティエ」などを展開するスイスの高級ブランド、リシュモン(CFR.S)は5.2%下落。決算内容が予想を下回ったことが嫌気された。
フランスの同業エルメス(HRMS.PA)は1.6%、「グッチ」を抱えるケリング(PRTP.PA)は3.3%、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)(LVMH.PA)は3.8%それぞれ下げた。
<ユーロ圏債券> 国債利回りが上昇した。米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)の双方の当局者から利下げ観測を退ける発言が伝わったことが背景。
ウニクレディトの金利ストラテジスト、フランチェスコ・ディ・ベラ氏は「FRBとECBの当局者が必要なら一段の金融引き締めを行う可能性もあると示唆したため、市場は再び神経質になっている」と指摘。ただ「ユーロ圏債券市場では明確なトレンドは出ておらず、国債利回りは1週間前の水準より数ベーシスポイント上昇しているに過ぎない」と述べた。
日経先物32,818、ダウ先34,338、債先144.46、米4.646、独2.7125、仏3.297、西3.765、伊4.574、英4.3725、波5.633、原油77.35、銅8,043、ドル円151.52、ユーロドル1.0686
※11/10 NY引け値
備忘録(2023/11/9)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
新たな肥満症治療薬が、薬物乱用といった治療が困難な分野にまで広がる形で米国のヘルスケア体制を変える可能性がある。米中西部シカゴでの今週のロイター・イベント・トータル・ヘルス会議で講演する出席者が明らかにした。
「GLPー1」に分類される肥満症治療薬は血糖値を調整し、消化を遅らせ、食欲を抑制する仕組み。複数の製薬会社が開発している。
米食品医薬品局(FDA)は8日、米医薬品大手イーライリリー(LLY.N)が開発した肥満症治療薬「ゼップバウンド」(一般名チルゼパチド)を承認した。「GLPー1」に分類される肥満症治療薬としては2番目となり、「マンジャロ」の名称で2型糖尿病治療薬としては既に販売されている。
デンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)の「ウゴービ」(一般名セマグルチド)は2021年に肥満症治療薬として承認され、糖尿病治療薬としては「オゼンピック」として販売されている。
米国立衛生研究所(NIH)のローレンス・タバック主席所長代理は8日、トータル・ヘルス会議でのインタビューで「脳の満腹部位だけでなく、依存症を制御する可能性のある他の部位の制御という点で、これは何らかの劇的な新しい可能性を開く」と語った。
NIHが支援する研究はまだ「非常に多くのことが進行中」であり、薬剤は副作用を引き起こす可能性があるものの「肥満症や代謝一般、おそらく他の依存的症状などを制御する全く新しい可能性を開く」と言及した。
米薬局チェーン大手のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA.O)の米ヘルスケア担当のトップ、ジョン・ドリスコル氏はGLP-1分類薬剤に対する「莫大な需要」があるとして「こうした薬剤はヘルスケアの体験のあり方を変えると思う」と述べた。
米気候予測センター(CPC)は9日、山火事や熱帯性低気圧、干ばつなどの異常気象を引き起こす恐れのあるエルニーニョ現象が北半球で2024年4─6月まで継続する確率が62%と発表した。
「太平洋赤道域の海面水温が平均を上回ったことは強いエルニーニョ現象の兆候だ」と指摘。さらに11─1月に「歴史的に強い」エルニーニョ現象が起きる確率は35%とした。
米金融大手モルガン・スタンレーの富裕層向け事業が米連邦準備制度理事会(FRB)の調査を受けていることが9日、分かった。マネーロンダリングを防ぐために十分な管理体制を敷いていなかった疑いが浮上している。
●その他産業
風力発電機大手の独シーメンス・エナジー株が前日比6%高で終えた。信用保証の付与を求めて独政府などと進めている協議が、シーメンス・エナジーの大株主である独重電大手シーメンスも巻き込む形で合意へ向けて進展しているとの内容が伝わり、株価上昇を支えた。シーメンスの株価も上昇した。
●決算関連
ソフトバンクグループ(SBG) (9984.T)が9日に発表した2023年7─9月期の連結最終損益(国際会計基準)は9311億円の損失だった。4─6月期の4776億円から赤字幅が広がった。
傘下の英半導体設計大手アームの上場でビジョン・ファンド(VF)の運用成績が改善、外部の投資家への分配金の支払いが増加した上、為替が想定よりも円安方向で推移し為替差損を計上したことも利益を押し下げた。
人工知能(AI)関連企業に投資するビジョン・ファンド(VF)単体の損益は213.6億円の黒字。4―6月期は1597億円の黒字だった。
2四半期連続で黒字を確保したことに関して、後藤芳光・最高財務責任者(CFO)は会見で、「環境がまだまだ厳しいなかでも、最悪期を脱していることが再確認できる」と述べた。純資産価値(NAV)は15.5兆円から16.4兆円に伸びた。新規投資を再開したものの、引き続き慎重に案件発掘を行うとした。
SBGが出資し、6日に米連邦破産法11条の適用を申請したシェアオフィス大手の米ウィーワークについては、4―9月期で約2340億円の損失を計上した。VF1とVF2が保有する同社株式とワラントの帳簿価額を9月末現在の市場価値である177億円まで落としたほか、VF2が保有する同社債券の帳簿価額は0円まで引き下げた。
また、金融機関のウィーワークへの支払い保証枠に対するVF2のクレジットサポート分は全額を金融保証契約損失評価引当金として計上した。
SBGによると、債券と株など合わせて140億ドル程度のエクスポージャーがあったという。後藤CFOは、「非常に残念。結果を真摯に受け止めて今後の投資活動に生かす」といい、さらなる大きな影響はないとの認識を示した。
9月に新規公開したアーム株の売却益相当額は46.5億ドルだったが、引き続き連結子会社であるため、会計法上連結の損益計算書には反映されていないと説明した。
SBGは通期の業績見通しを開示していない。IBESがまとめたアナリスト9人による連結純損益予想の平均値は129億円の黒字。
楽天グループが9日発表した2023年1〜9月期連結決算(国際会計基準)は、最終損益が2084億円の赤字(前年同期は2625億円の赤字)だった。同期間の赤字は5年連続。携帯事業の赤字は縮小傾向にあるが、引き続き設備投資費などが重荷となっている。
今後の社債の償還については三木谷浩史会長兼社長は同日のオンライン記者会見で「銀行にコミットしてもらっているので問題ない」と強調した。その上で「楽天モバイルの投資は大きく減らせている。(一部の基地局など)無駄なものは他社と協力して投資を減らしたい」と効率的な投資を重視する考えを改めて示した。
23年1〜9月期携帯電話事業の営業損益は2662億円の赤字(前年同期は3714億円の赤字)だった。9月時点の契約数は512万件で6月時点と比べ35万件増えた。三木谷浩氏は「(携帯事業の)加入者数は増えている上、解約する人も減ってきた。法人契約も増えており、足元は減速ではなく加速している」と強調した。
契約数の増加要因として「地域の営業体制が確立されつつあるほか、マーケティングのレベルも高まっている」点をあげた。
高級ブランド「COACH(コーチ)」などを傘下にもつ米タペストリーが9日に発表した2023年7〜9月期は、純利益が前年同期に比べ微減の1億9500万ドル(約294億4500万円)だった。同社は北米とアジア地域での見通しが悪化したとして、24年6月期通期の業績予想を下方修正した。
23年7〜9月期の売上高は0.4%増の15億1300万ドル。地域別の売上高をみると、中華圏が9%増えた。日本でも12%増え、観光客の購買意欲に支えられた海外販売の伸びが全体をけん引した。北米は横ばいだった。
24年6月期通期の業績見通しは売上高が前期比ほぼ横ばいの約67億ドルにとどまる見通し。従来予想の69億ドルから引き下げた。希薄化後の1株利益は4.1〜4.15ドルとして従来予想を据え置いた。
スコット・ロー最高財務責任者(CFO)は9日の決算説明会で「アジアと北米の今後の需要は厳しいと見通している」とコメントし、需要減退が約7500万ドルの減収要因になると説明した。為替相場による逆風も見込まれると指摘した。
タペストリーは23年8月、英高級ブランド「ジミー・チュウ」などを展開する米カプリ・ホールディングスを買収すると発表した。24年の取引完了を目指し、規制当局とのやりとりを進めている。
●先進国、グローバル、金融市場
米労働省が9日発表した11月4日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は3000件減の21万7000件となった。市場予想は21万8000件だった。労働市場が大幅に減速する兆候は引き続き見られていない。
10月28日までの1週間の継続受給件数は183万4000件と4月以来の高水準に増加した。増加は7週連続だった。
オックスフォード・エコノミクスのリードエコノミスト、ナンシー・バンデン・ホーテン氏は「新規失業保険申請件数は労働市場が当面利上げが検討されないほど冷え込んでいることと一致しているが、利下げを検討するには依然として強すぎる」と指摘。「インフレ率が2%回帰に向けた持続可能な軌道に乗っていると連邦準備理事会(FRB)が納得するには、労働市場の状況と賃金の伸びが十分に軟化するのを見極める必要がある」と述べた。
一方で、労働市場の状況は徐々に軟化すると予想しており、FRBによる最初の利下げは9月になると見込んだ。従来は5月の利下げを想定していた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)グローバル・リサーチが7日公表したリポートで、高格付け企業の第3・四半期の利払い負担が前期よりやや増大したことが分かった。
事業利益が支払利息の何倍あるかを示す「インタレスト・カバレッジ・レシオ」は、高格付け企業の第3・四半期平均が10.71倍で、前期の11.24倍を下回った。これはBofAが動向を追っている社債発行企業の75%で集計した暫定値だ。
インタレスト・カバレッジ・レシオは、多くのセクターの企業がコロナ禍に伴う供給制約や需要減退に苦戦していた2021年第1・四半期以来の低水準だった。
これらの企業の収益は上向いており、第3・四半期の増益率(前年比)中央値は4.2%で、前期の0.6%から加速した。
しかし借り入れコストの増加率の中央値が3.77%と2018年第4・四半期以来の高い伸びを記録し、インタレスト・カバレッジ・レシオを押し下げた。
企業のグロスベースの債務水準はほぼ変わらなかったが、ネットベースでは21年第3・四半期以降で初めて伸びがマイナスに転じた。高格付け企業が利益を債務返済に充当し、借り換えコストにかかる圧力を緩和したためで、バランスシート上の借り入れ比率が幾分改善された。
金利トレーダーは、過去数十年で最も急激な世界的金融引き締めは終わったとみて、2024年半ばから金融緩和が始まると予想している。
ブルームバーグがまとめたデータによると、スワップ市場は先進国・地域の政策金利の平均が今後6カ月は動かないとの予想を示唆している。ブルームバーグがまとめたデータによれば、市場が半年にわたる期間で利上げを織り込まないのは2年ぶりだ。
1年以内の0.5ポイントの金利低下も織り込まれており、緩和予想は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降で最大。
欧州、米国、オーストラリアで、今月に入って債券価格は反発した。物価上昇圧力が後退すれば、近いうちに引き締めに歯止めが掛かることにトレーダーらが賭けているためだ。
これは危険な賭けとも言える。これまでは、インフレが予想以上に執拗(しつよう)でリセッション(景気後退)予想も実現しなかったため、こうした賭けは裏目に出てきた。
TDセキュリティーズの金利ストラテジスト、プラシャント・ニューナハ氏(シンガポール在勤)は「世界のデータを見る限り、政策金利の上昇は需要を鈍化させる方向に働いており、原油価格も同様の動きを示している」と述べた。
米連邦準備制度が利上げ終了の可能性を示唆したため、米10年債利回りは先月に達した16年ぶり高水準から0.5ポイント余り低下して約4.5%となった。オーストラリア準備銀行(中央銀行)がさらなる引き締めのハードルが高くなったことを示唆した後、豪10年債の利回りは月初から0.4ポイント余り低下している。
日本銀行は超緩和的政策脱却の地ならしをしており、豪中銀は今週利上げを再開したが、世界の政策金利見通しは変化している。金利トレーダーは豪中銀が2024年半ばに利上げしたとしても、今から1年後の政策金利は現行水準と同じと予想している。
欧州中央銀行(ECB)は利下げサイクルに入る可能性が最も高いと見なされており、トレーダーは来年4月の会合で利下げが実施される確率を68%とみている。
政策委員会メンバーのビレロワドガロー・フランス中銀総裁は9日、利下げについて話すのは時期尚早だと述べ、「インフレ率が2%に戻ると誰もが確信した」ときに行われるだろうと付け加えた。
米ニューヨーク市内のアパート家賃が過去最高をつけた今夏から一服しつつある兆候が出ている。
不動産鑑定会社ミラー・サミュエルと仲介会社ダグラス・エリマン・リアル・エステートによると、マンハッタンで10月に契約された新規家賃の中央値は4195ドル(約63万3000円)で、9月から3.6%低下した。家賃は7月と8月に4400ドルでピークをつけていた。
価格下落はマンハッタン以外で一段と顕著だった。ブルックリン地区の家賃は5.7%低下の3490ドルと、3カ月連続の下落。ロングアイランドシティとアストリアを含むクイーンズ地区の一部では9.4%低下の3198ドルとなった。
こうした兆候は、ニューヨーク市内の賃貸市場でコロナ流行前に見られた季節的な動向が戻りつつあることを示唆している。
ミラー・サミュエルのジョナサン・ミラー社長は、「1、2カ月ごとに記録を更新するような急激な上昇ではなく、季節的な波が市場に戻りつつあるようだ」と語る。
ミラー氏はまた、家賃はピークから下がったとはいえ、コロナ禍前と比べればなお2割ほど高いと指摘。季節的な価格低下によって賃料がコロナ前の水準に近づくとは考えていないと話した。
7月の総選挙後も新政権が樹立できていないスペインで、サンチェス首相率いる穏健左派の社会労働党は、政権樹立の鍵を握る北東部カタルーニャ自治州の独立派の小政党と合意に達した。支持の見返りに独立活動家を恩赦する内容で、サンチェス氏続投の公算が大きくなった。スペインメディアが9日伝えた。
ただ、活動家らの恩赦受け入れは右派が猛反発するだけでなく、身内の左派からも批判を浴びる可能性がありそうだ。
小政党は2017年にカタルーニャ自治州の独立の是非を問う住民投票を強行したプチデモン元州首相=ベルギーに出国=率いる「カタルーニャのための連合(JXC)」。議員は7人だが、支持に回るかどうかが成否の分かれ目となっていた。
総選挙では中道右派の国民党が第1党となった。これを受け下院で9月、国民党のフェイホー党首を首相候補とする信任投票が実施されたが、フェイホー氏は不信任に。国王は10月、第2党の社会労働党のサンチェス書記長を首相候補に指名、政権樹立を指示していた。
ドイツのショルツ政権は9日、高騰する企業向けの電気料金を引き下げる新たな経済対策を発表した。製造業が負担する電力税を欧州連合(EU)の最低水準まで大幅に下げる減税が柱になる。ウクライナ危機に伴う高インフレで景気不安が強まるなか産業競争力を高める狙いだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は9日、注意深い姿勢を保つとする一方、必要と判断すれば一段の政策引き締めをちゅうちょしないと述べ、インフレ率を2%に下げる上で十分な引き締めを行ったと完全には確信を持てていないとの考えをあらためて示した。
パウエル議長はワシントンで開かれた国際通貨基金(IMF)会議の冒頭で、「金融政策のさらなる引き締めが適切となれば、そうすることをためらわない」と発言。「しかし、数カ月の良好なデータで見誤るリスクと、引き締め過ぎるリスクの両方に対処できるよう、引き続き慎重に行動していく」と話した。
また、金融当局者はインフレ率を2%の目標に下げることに注力しているが、「そのようなスタンスを達成できたと確信していない」と述べた。
パウエル議長は、将来のインフレ抑制が供給サイドの改善によってどれだけ進展可能かは定かではないと指摘。「将来にインフレ率を下げる進展において、総需要の伸びを抑える金融引き締めの寄与が大きくなる必要があるかもしれない」と語った。
金融市場やエコノミストの多くは、現行の米利上げキャンペーンが終了したとみているが、9日のパウエル議長の発言のトーンは、当局者が引き締め完了を宣言する用意はまだないことを裏付けた。
JPモルガン・チェースの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は顧客向けリポートで、「現行サイクルでの利上げは完了したとわれわれは引き続きみているが、今日の発言はインフレについて一段の改善を目にするまでタカ派のレトリックを続けなければならないと注意喚起する趣旨だろう」と指摘した。
9日のフェデラルファンド(FF)金利先物市場で、米連邦準備理事会(FRB)が最初の利下げを開始する時期の予想が来年6月に後ずれした。パウエルFRB議長が討論会で、金利が「十分に制約的」であるとはまだ確信していないと述べたことを受けた。
発言前は5月に最初の利下げを実施する可能性が高いとの見方が優勢だった。
パウエル議長の発言後、12月か1月に利上げが実施されるとの見方が若干高まったものの、市場では依然としてFRBの追加利上げはないとの見方が多数派となっている。
円安を牽引してきた米金利が頭打ちとなる中、低金利の円を使ったキャリー取引が急速に勢いを増している。米国の連続利上げが終了して市場が安定すれば、値幅を追うより金利差収入を狙ったほうが確実、との読みが背景にある。新たな段階に入った円安を、日銀の政策微修正だけで止めるのは難しい、との声も出ている。
<米景気の軟着陸期待、リスクオンの円売り促す>
日米の中銀会合とその後の上下動を経て、外為市場では円の広範な下げが目立ってきた。円はきょうまでに、対ユーロで161円台へ下落して15年ぶり安値を更新したほか、対スイスフランでは167円台と史上最安値が目前で、対英ポンドでも185円台と8年ぶり安値に迫る勢いを見せている。
日銀が10月会合でイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の再修正に踏み切り、金融政策正常化へ向けた小さな一歩を踏み出したにもかかわらず、円安が逆に勢いづいたのは、米国の連続利上げがいよいよ最終盤に差し掛かったとの思惑が強まったことがきっかけだ。
利上げが打ち止めとなれば、金利の上昇は今後限られ、ドルは失速するとの見方が定石だ。実際ドルは今月に入り、対円以外では下げに転じている。しかし同時に、引き締め終了による米景気の軟着陸期待、それに伴うグローバル景気の安定化見通しなどが、投資家のリスク選好姿勢の高まり、いわゆるリスクオンの円売りにつながっている。
市場で不安心理が後退し、予想変動率が低下していることも、金利差収入に目を向かわせている。米株式市場では、前週のS&P500の週間上昇率が1年ぶりの大きさとなった一方、ボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)は2カ月ぶりの水準へ低下した。ドル/円も1カ月物は7%前半と、1年半ぶり低水準を推移している。
東京を拠点とする、ある外資系アナリストのもとには、国内外の幅広い参加者から、円売り戦略に関する問い合わせが多数寄せられているという。「国内では個人や生保、海外でもファンドから機関投資家まで、ドル/円がそれほど上昇しなくても、キャリー取引で日米金利差を収益源にしたいとのニーズはかなり強い」と明かす。
円キャリー取引の動向を客観的に示すデータは存在しない。しかし、近似値とされる在日外銀の本支店勘定は、最新の8月末時点で11兆円台と15年ぶり高水準に近づき、週次で投機筋の売買を集計する米商品先物取引委員会(CFTC)のまとめでも、円売りの規模は数年ぶりの高水準へ接近してきた。
別の外銀の幹部は、最近のドル/円の取引状況を眺めていると、考え込むことがあると苦笑する。「実需と介入を除いて、いま腰を据えてドル/円を売りたいと考えるのは誰なのか、それはなぜなのか。考えても思いつかないし、実際にほとんど出てこない」。
バークレイズ証券のチーフ為替ストラテジスト、門田真一郎氏も「リスクオン、キャリー取引が活発となるなか、ドル/円はじり高が続いている。介入が警戒される152円前後まで、上値に目立ったハードルはない」と指摘する。
それでも、さらに強まる介入への警戒感から、ドル/円に関しては一気に上値を試すとの声はほとんど聞かれない。当局が介入を判断する際の基準となる「過度な変動」の解釈が市場参加者の間で揺らぎ、疑心暗鬼が強まっていることも一因だ。
従来は短期間で急変動があった際との理解が一般的だったが、先月4日の神田真人財務官の発言に、参加者の目が奪われた。「一方向に一方的な動きが積み重なって、一定期間に非常に大きな動きがあった場合は、それも過度な変動に当たり得る」とした点だ。
この発言は、参加者の間に「1日の変動幅は小さくても、トレンドとして円安一辺倒が続く場合は、過度な変動にあたるとの新たな見解を与えた」(モルガン・スタンレーMUFG証券マクロストラテジストの杉嵜弘一氏)という。「過度な変動」がより広い意味を持つことになり、介入への警戒感が、さらに高まりやすくなっている。
ブラックスワン的なイベントに備えるファンド(ブラックスワン・ファンド)を運用するユニバーサ・インベストメンツのマーク・スピッツナーゲル最高投資責任者(CIO)は、株式市場は今後大きく値上がりするだろうとし、その後米金融当局が利下げに転じると急転する可能性が高いとの見方を示した。同社には、ベストセラーとなった著書「ブラック・スワン」で2008年の金融危機を予言したナシーム・ニコラス・タレブ氏が助言している。
スピッツナーゲル氏は今週ニューヨークで行われたインタビューで、「その時が本当にひどい状況になる」と語った。
同氏は10年以上にわたる低金利と国債買い入れプログラムを通じて、市場が米金融当局の支援に過度に依存していることへの懸念を強めている。
スピッツナーゲル氏は「これはぶっ飛んだ考えだが、金利はゼロに戻る思う。多くの人は自分が狂っていると考えるだろう」と発言。「だが、信用バブルがはじける時、それがいかにデフレ的な出来事であるかを思い出してほしい。巨大な現金の山に火をつけるようなものだ」と続けた。
また米金融当局が量的引き締め(QT)に苦戦し、金融緩和の再開を余儀なくされることもあり得るだろうと語った。
米政府の統計当局が9日、米国の人口が将来的に減少する現実的な予測を初めて発表した。2080年に3億7000万人に達するのをピークに減少に転じる。世界的に広がる少子高齢化の影響が米国でも表面化した。移民政策の重要性が一段と増している。
●中国・アジア・ロシア・東欧
イエレン米財務長官と中国の何立峰副首相との会談を直前に控え、中国が米国に対する不満を表明し、最近改善が進んでいると見られている両国関係のもろさが露呈した。
中国政府は米企業から中国はリスクが高過ぎて「投資できない」と伝えられたとのレモンド米商務長官の発言を取り上げ、中国のビジネス環境をおとしめていると米国を非難した。
国営中央テレビ(CCTV)のソーシャルメディアアカウントに投稿された論評では、米国に投資している企業に公平な競争条件が担保されていないとして、1300を超える企業・団体が制裁を受けているとの不満を訴えた。
論評は米国の経済政策について、「覇権主義的思考」に支配されていると主張。中国をグローバルなサプライチェーンから追い出そうとする米政府の取り組みは無駄であり、米企業は対中半導体規制に苦しめられていると論じた。
論評はまた、中国が途上国を債務のわなに陥れているというでたらめなシナリオをでっち上げているとも批判した。
バイデン米大統領は3日、中南米諸国との経済協力構想「経済繁栄のための米州パートナーシップ」に関する首脳会合をホワイトハウスで初開催した際、投資を求める国々にとって米国のアプローチはより健全な選択肢だと強調。
米国の隣国には「債務のわな外交と、インフラや開発に対する質の高い透明性のあるアプローチとの間で、本当の選択肢があることを知ってもらいたい」と中国を念頭に語っていた。
イエレン長官と何副首相はサンフランシスコで9、10両日会談する。中国の習近平国家主席は来週開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のためサンフランシスコ入りし、現地でバイデン大統領との首脳会談に臨むと見込まれている。
●中東
イスラエルは、イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザの北部から民間人が避難できるよう、9日から毎日4時間、戦闘を休止する。米ホワイトハウスが同日、明らかにした。
米ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官によると、バイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と行った会談を含む、ここ数日の米・イスラエル当局者の協議を通して、戦闘の一時休止案が台頭。「イスラエル側から、休止の間は該当地域で軍事行動は行わないとの報告を得ている。このプロセスはきょうから開始される」と述べた。
具体的には、イスラエルがガザ北部で4時間にわたり戦闘を一時的に休止。休止は3時間前に発表されるという。
カービー氏は、一時休止によって、民間人が危険から逃れ、人道支援を届けることができるようになるほか、人質を解放する方法として利用される可能性があると述べた。
その上で、こうした動きは正しい方向に向けた一歩と評価。「重要な第一歩であり、必要な限り継続されることを望んでいる」と語った。
イスラエルとハマスとの間の停戦については、10月7日のハマスのイスラエルに対する奇襲攻撃を正当化することになるとし、現時点で米国は支持しないとの立場を示した。
バイデン大統領は9日、記者団に対し、ガザにおける3日間の一時停止に加え、ハマスに拘束されている人質の解放に向けさらに長期間の一時停止を求めたと述べた。
ロイター通信は9日、パレスチナ自治区ガザでの戦闘休止などを巡り、米中央情報局(CIA)とイスラエルの対外特務機関モサド、カタール政府の会合が同日、カタールで開かれたと伝えた。関係者の話としている。
ロイターによると、会合は首都ドーハで行われ、CIAのバーンズ長官とモサドのバルネア長官、カタールのムハンマド首相兼外相が参加。イスラム組織ハマスが拘束する人質の解放や、ガザへの人道目的の燃料搬入も話し合われたという。
豊かな歴史と多様な文化を持つアラブ世界は、遠い昔から様々な課題と危機に直面してきた。人類文明の最前線だったイスラム黄金時代の輝かしい日々から、現代の複雑な地政学的状況に至るまで、我々の地域は波乱の道を歩んできた。
黄金時代から多くの脅威や陰謀がアラブ世界を取り巻いてきたが、その中でも最大のものはサイクス・ピコ協定である。この協定によりアラブ諸国はまるでケーキの切れ端かのようにフランスと英国の間で分割された。中東の国境は再編され、氏族のメンバー間、さらには個々の家族間までもが分断されることになった。
我々アラブ人は、非互恵的な透明性を以って様々な党派と付き合いつつ、時には「敵の敵は友」という古い格言から生みだされる、我々にとって不利益をもたらす、問題のある同盟関係が結ばれていることに気づかずにいると私は感じている。アラブ国家の未来を守る手段とは何だろうか。我々はこうした複雑なダイナミクスからどんな教訓を引き出し、活かすことができるのだろうか。
我々は、人類文明とその復興期に多大な影響を与えたイスラム黄金時代におけるアラブ世界の歴史的達成に言及する際、誇りを感じずにはいられない。アラブの学者、哲学者、芸術家たちは、人類の知識と文化に計り知れない貢献を果たした。残念ながら我々は、この時代の悟りと進歩を維持すること、そこからの恩恵で以ってこの地域を陰謀や計略から守ることができなかった。
著名な歴史家のバーナード・ルイスはこう書いている。「イスラムの黄金時代に課題がなかったわけではなく、内部の分断や外部からの圧力にアラブ社会の逆境への強さが試されることは度々あった。十字軍やモンゴルの侵略は、アラブ世界が直面してきた危機を厳しい形で
思い出させるものとなっている。『敵の敵は友』という概念がしばしば持ち出されたのも、この動乱の時代だった」
こうした外部からの脅威は、その後数世紀に渡って続く地政学的対立や権力関係の変化の発端となった。実際、今の我々の世界は同盟や敵対の複雑な網の目の中で動いており、西側諸国・イラン・イスラエルの奇妙なダイナミクスをはじめとして、この地域の未来の安定に先んじて問題のある同盟が形成されているという状況にある。
こうした各陣営がお互いを敵だと断じているにもかかわらず、彼らの行動が多くの場合自分たちの公的な立場と矛盾しており、アラブ諸国が両者から苦難を強いられるのと引き換えに、自分たちが敵だと断じた相手を利する結果になっている。このことは、多数のアラブ諸国に拡散している武装組織を通じて見えてくる。彼らはイスラエルへの敵対とイスラムによる抵抗を目標に掲げつつ、その本質は中東を永続的な不安定状況に置き、自分たちの信仰、アイデンティティ、神聖さを守るために動員をかけることにある。
このことは、国際関係の著名な研究者であるジョン・ミアシャイマー氏が西側諸国とイランの間の問題ある同盟に対して懸念を示した際の発言が裏付けている。ミアシャイマー氏は次のように書いている。「西側諸国が様々な地政学的舞台においてイランと協調していることは驚きである。中東での利益確保を目指す一方で、西側諸国は問題に対して見て見ぬ振りをしている」
この20年間で書いてきた記事を通して、私はアラブ世界、特に湾岸アラブ諸国協力理事会(GCC)のリーダーたちに対し、アラブの首都が次々にイランの手中に収められていくことを警戒するよう、常に呼びかけてきた。イランの政府関係者らは、この拡大を誇る態度を隠していない。マフムード・アフマディネジャド政権下で情報大臣を務めたヘイデル・モスレヒ氏は、2015年に「イランは4つのアラブの首都を支配している」と述べている。イランの最高指導者アリー・ハメネイ師も2022年11月の声明で、イランの影響力がアラブの各首都に拡大していることを誇示し、「シリア、イラク、レバノンにおけるイランのビジョンの成功」を祝福している。
イラク、イエメン、シリア、レバノンはイラン政府のムッラたちの手中に収められ、イランの拡大主義的野心が我々の神聖さや中東の他の国々に影響を与えるのではないかということが最大の懸念となっている。
同様に、イスラエル・パレスチナ紛争も依然としてこの地域の主要問題のひとつである。アラブ・イスラエル紛争に関する著名な歴史家であるラシード・カリディ氏は、「現行のイスラエルによる占領と入植拡大は、アラブ世界の平和を脅かし続けている。この紛争に対する公平な解決がなければ、アラブ諸国が苦境から完全に脱することはない」と指摘している。
まるでアラブの連帯、安定、結束が、西側諸国とその同盟国にとって脅威であるかのようだが、その危険性を私たちは認識していない。では、こう問うことは許されるだろうか。「イランと結託してアラブ世界のさらなる進歩と繁栄、黄金時代の復興を阻むのは、米国、西側諸国、イスラエルの利益のためなのだろうか」と。
アラブ世界を取り巻くあらゆる危機を考慮すれば、未来を守るための方針を示し、連帯と協調を優先させ、教育、イノベーション、研究、子どもたち、この地で生まれ育った人々に力を与えることが必要だ。それがアラブ世界を強化し、歴史的重要性を取り戻すことに繋がるだろう。地域および世界レベルにおいて共同で行動することは、我々が直面している複雑な問題への対処に不可欠だ。
アラブ諸国は、不安定な政治、経済開発、安全保障上の脅威など、共通の課題に団結して取り組まなければならない。アラブ連盟をはじめとするイニシアチブは、その役割が有効になれば、協調と紛争解決のプラットフォームとして機能しうる。地域紛争の解決を優先させることができるだろう。その最前線にあるのがイスラエル・パレスチナ紛争であり、イランの拡大という野心に終止符を打つことである。
アラブ世界の歴史は、その復元力と長期的な人類文明への貢献の証である。黄金時代から陰謀や課題に直面してきたが、アラブ世界には現代の危機を乗り越える力がある。連帯、明確性、協調を強化することで、アラブ諸国は明るい未来へと向かう道のりを定めることができるだろう。そんな明るい未来において、アラブ諸国は世界の舞台における文化・知識・進歩の導き手としての立場を取り戻すのである。
欧州連合(EU)の欧州委員会は8日、トルコのEU加盟へ向けた進展に関する年次報告書で、同国は民主主義、法の支配、人権、司法の独立といった面で「深刻と言えるほど後退している」と非難した。
報告書はトルコの司法制度について、いくつかの改革にもかかわらず、構造的な欠陥が対処されないまま放置されていると指摘。裁判官や検察官の採用・昇進を巡り、客観的で根拠に基づく統一された基準が依然として確立されていないことも懸念されるとした。
また、トルコはテロ対策において法の支配、人権、基本的自由といった原則を順守していないと指摘。テロ対策の措置は均整をとる必要があるとした。
さらに同国ではマイノリティやLGBTに対する性暴力やヘイトスピーチも懸念されるとした。
トルコは2005年にEU加盟へ向けた協議を開始した。だがここ数年は、欧州委からのこうした批判を偏見に基づいていると切り捨てており、加盟への取り組みは滞っている。
●中南米・アフリカ
メキシコ銀行(中央銀行)は9日、政策金利を11.25%に据え置くと発表した。据え置きは5会合連続。物価上昇(インフレ)の減速が鮮明になっているためで、市場関係者には2024年3月にもメキシコ中銀が利下げに転じるという見方が強まっている。
メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が9日発表した10月の消費者物価指数は、前年同月比4.26%上昇した。物価上昇(インフレ)率は前月(4.45%上昇)を下回り、9カ月連続の低下。7月以降は5%を下回っており、日用品を中心に物価上昇の減速トレンドが続いている。
●市況
<為替> 終盤のニューヨーク外為市場ではドルが上昇し、対円で1週間ぶりの高値を付けた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を材料視した。
<債券> 米金融・債券市場では、米債利回りが上昇した。30年債入札が想定より軟調だったほか、連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長によるタカ派発言を受け、債券売りが優勢となった。
ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのマクロストラテジスト、アンジェロ・マノラトス氏は、今週行われた3年債と10年債の入札がかなり好調だったため30年債入札に対して楽観的な見方があったが、実際には比較的需要が弱かったと述べた。
<株式> 米国株式市場はS&P総合500種(.SPX)とナスダック総合(.IXIC)が反落。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が政策金利が十分に制約的であるとはまだ確信していないと発言したことや、30年国債入札の低調な結果を受けて国債利回りが上昇、株式相場の重しとなった。
個別銘柄ではメディア・娯楽大手ウォルト・ディズニー(DIS.N)が6.9%の大幅高。四半期利益が市場予想を上回ったほか、ストライキを実施していたハリウッドの俳優組合がスタジオ側と暫定合意に達したことを好感した。
S&Pの主要11セクター全てが下落。ヘルスケア(.SPXHC)と一般消費財(.SPLRCD)が下げを主導した。
英半導体設計大手アームが5.2%下落。第3・四半期(10─12月)の売上高見通しが市場予想を下回った。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、売られ過ぎとの見方から買い戻しが入り、3営業日ぶりに反発した。
パレスチナ情勢の緊迫化に伴うエネルギー供給不安を手掛かりとした上昇基調が一服し、前日の相場は約3カ月半ぶりの安値に沈んだ。この日はやや売られ過ぎとの見方が台頭し、買い戻しが先行。午前中に一時77ドル台を回復した。
しかし、石油消費大国である米国と中国のエネルギー需要鈍化への警戒感は根強く、昼ごろには上げ幅を大きく縮小する場面もあり、不安定な値動き。米石油協会(API)が7日夕方に公表した週報では、米原油在庫が1190万バレルの大幅な積み増しとなったほか、中国国家統計局が9日に発表した10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.2%低下し、景気が冷え込む中で物価の伸び悩みが続いていることを示す内容だった。取引終盤に、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演での発言が伝わると、市場は売りで反応したが、小幅プラス圏を維持。パウエル氏は、米国のインフレ率が目標の2%を「依然十分上回っている」とし、追加利上げが適切なら「ためらわない」などと述べた。
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。投資家が企業決算の内容を分析する中、序盤の下げから上昇に転じてプラス圏で引けた。
英製薬のアストラゼネカ(AZN.L)は2.6%上昇した。抗がん剤の堅調な需要に後押しされて通期のコア利益見通しを上方修正したことや、最大20億ドルを投じて、急成長する肥満症治療薬市場でのパイプライン強化に動いたことが好感された。
バークレイズによる投資判断引き上げを受けて英日用品のユニリーバ(ULVR.L)が2.1%上昇したことも相場を支援した。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。STOXX欧州600種指数(.STOXX)は3週間超ぶりの高値を付けた。オランダの決済サービス会社アディエンや英製薬アストラゼネカの決算発表が好感され相場を押し上げた。
中長期見通しを発表したフランスの配電・制御機器大手シュナイダー・エレクトリック(SCHN.PA)は8.3%高。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが3日ぶりに上昇に転じた。中銀当局者の発言を受け、2024年に利下げに転じるとの市場期待が後退した。
デリバティブ市場ではECBが来年末までに政策金利を現在の4%から約0.90%ポイント引き下げるとの見方が織り込まれている。10月初時点では約0.60%ポイントの利下げが織り込まれていた。
金融機関SEBの金利戦略責任者、ユッシ・ヒルヤネン氏は「インフレ率が市場が予想しているような早期の利下げを正当化できるペースで低下し続けるかどうかについて2024年が本当の試金石になるだろう」と指摘。来年4月に利下げが開始されるとの市場の見方は「楽観的すぎる」とした。
日経先物32,433、ダウ先33,941、債先144.44、米4.649、独2.6575、仏3.240、西3.757、伊4.521、英4.3125、波5.574、原油75.56、銅8,125、ドル円151.35、ユーロドル1.0665
※11/10 8時40分頃
備忘録(2023/11/8)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
8日に公表された国連の報告書によると、2030年の世界の化石燃料生産量は、パリ協定で設定された気候変動目標の達成に合致する水準の2倍以上になる見込み。
国連環境計画(UNEP)などがまとめた報告書は主要な化石燃料生産国20カ国を分析した。それによると、30年の生産量は気温上昇を産業革命前から1.5度に抑える目標と一致する水準を約110%上回り、2度に抑えるための水準を69%上回る。
20カ国のうち気温上昇を1.5度に抑えるために石炭、石油、ガスの生産を削減すると約束した国はない。17カ国は温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」をうたっているが、ほとんどの国は化石燃料生産の促進、支援、拡大、補助金の支出を計画しているという。
調査対象となった20カ国は世界の化石燃料生産の82%、消費の73%を占めており、オーストラリア、中国、ノルウェー、カタール、英国、アラブ首長国連邦(UAE)、米国が含まれる。
スイスの金融大手UBS(UBSG.S)は8日、3月のクレディ・スイス救済合併後初となる「AT1債(その他Tier1債)」を起債した。
IFRによると、UBSのAT1債は5年物と10年物で、利回りはそれぞれ約10%と10.125%。
UBSは起債が完了したら追加情報を提供するとしている。
UBSによる買収に当たりクレディ・スイスが発行した170億ドルのAT1債は無価値とされた。銀行の資本が一定水準を下回った際の「緩衝材」としての役割に疑問が生じ、市場が動揺した。
欧州の銀行はその後AT1債の発行を再開したが、市場回復に向けた次の段階としてUBSによる起債が待たれていた。
欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は7日、ユーロ圏銀行の貸し出し収益が預金金利の緩やかな上昇によって負の影響を受けそうだと述べた。
スペインで開催されたイベントで、銀行にとって負債となる預金の金利は常に住宅ローンといった資産の利回りよりも動きが遅いが、遅かれ早かれ追いつくものだと指摘。「それこそ利ざやの改善が今後影響を受けるかもしれないと市場が考えている理由の一つだ」と述べた。
総じてユーロ圏の銀行は金利上昇の恩恵を受けているが、主にリテール金融機関であるスペインの銀行にとってはその傾向がより顕著となっており、住宅ローンからのリターンが上昇する一方、預金利息の支払いは抑えられている。
スペイン中銀のデルガド副総裁は同じイベントで、2024年に預金競争が激化するとして、預金金利は徐々に上昇するとの見通しを示した。
●その他産業
●決算関連
仏大手銀行クレディ・アグリコル(CAGR.PA)が発表した第3・四半期決算は、投資銀行業務などが好調で予想を上回る利益を計上した。
純利益は33%増の17億5000万ユーロ(18億7000万ドル)となり、同行がまとめたアナリスト予想(13億7000万ユーロ)を上回った。
グループの収入は19%増の63億4000万ユーロ。アナリスト予想の59億9000万ユーロを上回った。
引当金が予想を下回る4億2900万ユーロとなった。
JPモルガンのアナリストは、予想より少ない引当金と、投資銀行業務、特に資本市場・証券サービスの収入増に言及し、「堅調な第3・四半期」と評価した。
クレディ・アグリコルは、コーポレート・投資銀行部門の収入が9%以上増加したと発表。特に債券・通貨・コモディティー(FICC)取引が25.6%拡大したことに後押しされた。
フランス国内リテールバンキング部門の収入は0.4%増。預金コスト上昇に伴う純金利マージン(NIM)の縮小は、金利関連リスクに対するヘッジ契約によって一部相殺された。
同行にとって市場規模が2位となるイタリアはフランスに比べ金利上昇の顧客への転嫁ペースが速いため、NIMは拡大した。
ドイツのコメルツ銀行(CBKG.DE)が8日発表した第3・四半期決算は純利益が6億8400万ユーロ(7億3072万ドル)と、前年同期の1億9500万ユーロから3倍以上に増加した。金利上昇の恩恵を受けた。
同行が発表したアナリスト予想平均(6億1100万ユーロ)も上回った。
純金利収入は34%増の22億ユーロと、予想の21億ユーロを上回った。
また、同行は最新の戦略も発表。2027年までにコスト・インカム・レシオを55%まで引き下げ、同年に約34億ユーロの純利益を目指すとした。
同レシオは今年これまでが60%で、今年通年の利益は22億ユーロと見込まれている。
マンフレッド・クノッフ最高経営責任者(CEO)は「戦略を改善し、国内銀行市場における決定的なプレーヤーとしての地位を強化する」と述べた
米石油・ガス大手オキシデンタル・ペトロリアム(OXY.N)が7日発表した第3・四半期決算は、調整後の1株当たり利益が1.18ドルとなり、市場予想の0.84ドルを上回った。
ただ調整後の利益は前年同期に比べると半分にも満たない11億3000万ドルにとどまっており、エネルギー価格の下落や、化学事業とパイプライン事業の不振が響いた。
一方、税引き前で1億4200万ドルの資金を生み出した資産売却は支えになった。
第3・四半期の石油販売価格は平均で1バレル当たり80.70ドルと前年同期の83.64ドルから下落したが、前期比では10%上昇した。
生産量は石油換算で日量122万バレルとなり、8月時点の見通しの中心値の119万バレルを大きく上回った。
米医薬品メーカー、バイオジェンの7-9月(第3四半期)売上高はアナリスト予想を上回った。同社は買収関連コストを理由に通期利益見通しを下方修正した。売上高の落ち込みは従来予想より縮小するとみている。
8日発表の決算では、通期の調整後利益見通しが1株当たり14.50ー15.00ドルとされた。従来は15-16ドルの見通しだった。通期の減収率は1桁台前半を予想。これまでは1桁台半ばとしていた。
第3四半期の売上高は前年同期比でわずか0.9%の増加。医薬品売上高が8%減少した。受託生産やロイヤルティーの収入は急増した。バイオジェンはエーザイと共同開発したアルツハイマー型認知症治療薬「レケンビ」に関し、同四半期中に会計計上方法を変更。従来は売上高の減少に分類されていたコストの一部を、費用として計上した。
第3四半期の調整後1株利益は4.36ドル。前年同期比で8.6%減少した。売上高は25億3000万ドルと、アナリスト予想平均の24億ドルを上回った。
同社はスマートフォン市場の不振や新たなライセンス契約の不透明なタイミングなどの問題を抱えている。
アームの株価は通常取引終了後の時間外取引で一時9%安となった。株安が続けばIPO後の上昇分全てが帳消しとなる恐れがある。8日の通常取引終了時点では6.7%の上昇となっていた。
メディア・娯楽大手ウォルト・ディズニー(DIS.N)が8日発表した第4・四半期(9月30日まで)決算は、1株利益が市場予想を上回った。テレビ事業ABCの広告収入が低迷したものの、上海と香港のテーマークでの入場者増が寄与した。
引け後の時間外取引で、ディズニーの株価は1.6%上昇した。
特別項目を除く1株当たり利益が0.82ドルと、LSEGのまとめたアナリスト予想の0.70ドルを上回った。
売上高は212億ドルで、予想とおおむね一致した。
動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」の契約者数は、約700万人増加した。ディズニー+と「ディズニー+・ホットスター」を合わせた契約者数は計1億5020万人と、ビジブル・アルファのまとめた予想の1億4740万人を上回った。
「Hulu」などを含む動画配信サービス事業全体の損失は3億8700万ドルと、前年同期の14億7000万ドルから縮小。値上げや広告収入増が寄与した。
テーマパークやリゾート、クルーズ船などを含む事業の営業利益は、31%増の約18億ドル。上海ディズニー、香港ディズニーランド、ディズニーランド・リゾートでの入場者数の増加とクルーズ事業の成長が、米フロリダ州のウォルト・ディズニー・ワールドの業績低下を補った。
●先進国、グローバル、金融市場
米下院共和党は7日、政府機関閉鎖を回避する期限を10日後に控え、暫定予算を巡る選択肢を協議した。ただ、意見がまとまる兆しは見られなかった。
共和党議員は非公開会合を開き、現在のつなぎ予算の期限が切れる来週17日以降も政府資金を一時的に手当てするため「予算継続決議(CR)」と呼ばれる暫定措置をどのように構成するか議論した。
ブライアン・バビン議員は会合後、記者団に「誰も立場がやや異なっている」と述べた。
ジョンソン下院議長は「前向き」な議論だったと指摘。「政府閉鎖は当然避けたい。世界は現在危険な局面にあり、われわれはそれを認識している」とし、近く方針を明らかにする考えを示した。
共和党議員らはジョンソン氏が今後数日内に暫定予算案を公表し、来週初めにも下院で採決が行われるとみている。同党のダスティ・ジョンソン議員は党内の大多数が議長の案を支持するだろうと述べた。
米連邦準備理事会(FRB)のクック理事は8日、持続的なインフレ圧力や中国の一段の景気減速などが世界の金融安定を脅かす国際的なリスクと指摘した。
アイルランド中央銀行での講演原稿で「世界の金融システムの脆弱性を悪化させ得るショックに警戒し続けなければならない」と訴えた。
多くは6日に行った講演と重なる内容だったが、インフレ圧力が続くことによる予想外の金利引き上げ、中国の景気減速悪化による影響の海外波及、ロシア・中東・中国での緊張の高まりが世界市場に混乱が生じるなどの事態を新たに海外発のリスクとして挙げた。
「より広い意味では、地政学的緊張の激化は経済活動を低下させ、貿易の流れと金融仲介の分断を悪化させかねない。資金調達コストや生産コストが上昇し、サプライチェーンの問題とインフレ圧力が長期化する恐れがある」と述べた。
米経済の見通しやFRBの政策金利について踏み込んだ発言はせず、これらのリスクが現実化する可能性がどの程度あるかについても言及しなかった
金融システムは2000年代半ばよりも良い状態にあるとしながらも「慢心してはならない」とくぎを刺した。
欧州連合(EU)統計局が8日発表した9月のユーロ圏小売売上高は、前月比で0.3%、前年比で2.9%それぞれ減少した。ほぼ予想通りの内容となり、消費需要低迷と景気後退見通しを裏付けた。
ロイター調査では、エコノミストは前月比0.2%減、前年比3.1%減と予想していた。
前月比の落ち込みは、主にオンライン販売を含む非食料品の売り上げが急減したことによるもので、いずれも1.9%減。自動車燃料の販売も0.9%減少した。
前年比でも燃料販売はオンライン販売と同様に大幅に減少した。
欧州中央銀行(ECB)が8日発表した消費者期待調査によると、ユーロ圏の消費者の今後1年間の予想インフレ率は中央値で4%に上昇した。
調査は9月に実施。8月調査の3.5%から上昇し、今年春以降で最高となった。
3年先の予想インフレ率は2.5%で、前回調査から変わらず。ECBの目標である2%を上回っている。
ECBのインフレ予測は今年5.6%、来年3.2%、2025年が2.1%。
際通貨基金(IMF)は8日、ユーロ圏では急速な賃金上昇でインフレ率が長期間高止まりする可能性があり、欧州中央銀行(ECB)はインフレ圧力を抑制するため、来年いっぱい中銀預金金利を過去最高の4%かそれに近い水準に維持すべきだと指摘した。
IMFのアルフレッド・カマー欧州局長は会見で「金融政策は適切に引き締まっている。来年もそうあるべきだ」とし、「(中銀預金金利は)来年を通じて現行水準か、それに近い水準に維持されるべきだ」と主張。
利下げ時期が早すぎれば、さらに負担の大きい政策引き締めが必要になるとし、「緩めすぎよりは、引き締めすぎの方がコストが小さい」と述べた。
IMFはインフレ率が2025年に目標に戻ると予想しているが、極めてタイトな労働市場を背景に目標達成が26年にずれ込む可能性があるとも警告している。
失業率はすでに記録的低水準。労働市場に残された緩みは現在の推定値より少ない可能性があり、賃金インフレが進み、消費者物価に影響が及びかねないという。
実質賃金がインフレ率に追いつくにはまだ時間がかかるため、これもインフレ圧力の持続につながり得るとしている。
IMFは報告書で「リスクは引き続き、インフレがさらに持続する方向に偏っている」とし、「不利な仮定の下ではインフレ目標達成が26年までずれ込む可能性がある」と述べた。
カマー氏は、パレスチナ自治区ガザの紛争で国際エネルギー価格が上昇しており、これがさらなる物価の上振れリスクになっていると指摘。
ただ、今四半期の経済成長率は予想をやや下回っており、インフレ圧力を抑制する可能性もあるという。
同氏は、経済成長率は総じて予想に沿った水準で、ソフトランディングがIMFのメインシナリオであることに変わりはないとも発言した。
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは8日、日本の長期発行体格付け「A1」を確認したと発表した。見通しは「安定的」で維持した。
「A1」の確認は、債務水準は非常に高いものの、貯蓄の蓄積が継続し、財政状況が維持されるとみているため。
見通しを安定的としたのは、物価・賃金の上昇などリフレーションが進展する兆候と、過去10年にわたる異次元緩和の正常化見込みから債務負担能力に生じるリスクの両面を勘案したという。
日本銀行の植田和男総裁は8日、上方修正を繰り返している日銀の消費者物価見通しに誤りがあったと認める見解を示した。衆院財務金融委員会で答弁した。
植田総裁は足元の物価高は輸入物価の転嫁による「第1の力」と、賃金と物価の好循環の「第2の力」の二つがあると説明。前者による物価上昇率は下がるとの見通しを示したが、「上方修正を続けてきた」とし、「見通しの誤りがあったということは認めざるを得ない」と述べた。
一方で、後者がまだ弱いという判断は「あまり大きく外していない。その部分に基づいて金融政策運営を行ってきたことについては、大きな誤りはなかった」と強調。輸入物価に押し上げられた物価上昇は「早晩勢いが衰えてくる」と述べ、「第2の力を育てていくために金融緩和を維持している」と語った。
日銀は今年4月に消費者物価の上昇率が今年度半ばにかけてプラス幅を縮小するとの見通しを示したが、2%目標を上回る高水準が1年半にわたり続いている。7月と10月に見通しを上方修正し、予想の甘さを指摘する声も出ていた。植田総裁はこの日の答弁で、批判を一部容認しながらも、賃金上昇を伴う持続的・安定的な2%上昇はまだ実現できていないとし、現行の金融政策の正当性を主張した形だ。
日銀は10月31日の金融政策決定会合で、長期金利の上限の1%超えを容認するイールドカーブコントロール(YCC)の柔軟化措置を決めた。経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、2023年度から25年度までの消費者物価の見通しを全て引き上げた。
金融市場が予想する先行きの物価上昇率を示すブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、14年以来の高水準を更新している。10年債利回りから10年物価連動債利回りを引いたBEIは決定会合後の6日に一時1.4%と14年月4以来の水準に上昇した。
日銀の物価目標2%を下回るレベルだが、日銀の緩和的な金融政策によるインフレ期待の上昇が通貨の価値の減価につながる。通貨の実力を測る指標の一つであるブルームバーグ相関・加重通貨指数の円指数は6日、08年7月以来の低水準を更新している。
植田総裁は、金融政策の正常化を判断する際に、実質賃金が必ずしも上昇に転じている必要性はないと説明。賃金と物価の好循環の中でプラスになる見通しが「ある程度の確度をもって持てるという状態になるかどうかだ」とした上で、「プラスになっているケースも考えられるし、その少し手前でというケースも考えられる」と述べた。
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は9月に前年比2.4%減少し、18カ月連続で前年を下回った。名目賃金は21カ月連続で増加したものの、賃金の伸びが物価高に追いつかない状況が続いている。
一方、総裁は日銀保有の上場投資信託(ETF)の時価について問われ、8月末の試算で「24兆円程度の含み益がある」と語った。TOPIXが前日比で2%を超える下落となった10月4日の701億円が23年度の唯一のETF買い入れで、同月末時点の保有残高は37兆1862億円となっている。
市場が大きく不安定化してリスクプレミアムが過度に拡大した場合にETFを購入してきたと説明。参加者にある種の安心感を与えている効果があるかもしれないとした上で、「現在の株価水準にもある程度反映されている可能性がある」と語った。一方で、「そういう心配がある程度以上なくなるという状態になれば、こういうやり方をやめていく準備が整う」とも述べた。
7日に行われた米バージニア州議会選挙で、上下両院の過半数を民主党が制した。2028年の大統領選に出馬する可能性を視野に州内の共和党をまとめようとしていたヤンキン知事の思惑は外れた。
この選挙では州議会上下両院の全議席が改選され、ヤンキン知事の政治的将来だけでなく来年の大統領選挙にどのような影響を与えるか注目されていた。
民主党の勝利はバージニア州にとどまらなかった。ケンタッキー、オハイオ、ペンシルベニア3州でも民主党は勝利を収めた、特に人工妊娠中絶の権利に関する同党のメッセージが有権者の共感を呼んでいることが示唆された。
これらの勝利はバイデン大統領への強い追い風となる。任期中は野党が躍進するというこれまでのトレンドを克服したのはこれで2度目。同日行われたケンタッキー州知事選では、現職のビシア知事(民主)が再選を果たし、オハイオ州の住民投票では中絶の権利保護が有権者に支持された。
バージニア大学センター・フォー・ポリティックスのディレクター、ラリー・サバト氏は「中絶の権利は今も大きな問題だということだ」と共和党について述べた。
共和党の支持率が伝統的に高いとされる州では、オハイオ州よりも前にカンザス州が中絶の権利を支持。2020年の大統領選でトランプ氏が25ポイント近い差を付けて勝利したケンタッキー州でも、中絶が争点となり、民主党の現職知事を勝利に導いた。
シェアオフィス事業を展開する米ウィーワークの経営破綻が低迷する商業用不動産業界全体に波及し、ニューヨークやサンフランシスコなどの都市で多くのリース契約に悪影響を及ぼす恐れがある。
ウィーワークが破綻への過程で多くのリース契約について再交渉し、解消を目指したことで、不動産オーナーは打撃を受けた。同社は6日、米連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請し、70件近いリースを解約する計画を示した。これにより、オーナーの多くが直面している問題がさらに悪化しそうだ。
ウォートン・プロパティー・アドバイザーズのルース・コルプヘーバー最高経営責任者(CEO)は「多くのスペースが市場に出回る可能性がある。その一部は他のシェアオフィス業者が賃借すると思われるが、大半は見向きもされないだろう。そうした物件は深刻な問題に陥ることになる」と語った。
オフィス所有者は、ビルの価値を圧迫する借り入れコスト上昇とリモートワークの増加に伴うテナント需要の変化で低迷する市場に苦慮している。不動産調査会社グリーンストリートによると、10月のオフィス価格は前年同月比で21%下落した。
ウィーワークのプレゼンスの大きさを考えれば、同社の破綻は市場にとって大きな打撃だ。不動産仲介を手掛けるサビルズのデータによると、ウィーワークはマンハッタンに約420万平方フィート(39万平方メートル)のリーススペースを所有している。
ウィーワークのリース物件の所有者であるボストン・プロパティーズは、同社の破綻が2024年の自社の稼働率を圧迫する可能性があると警告している。
ウィーワークは今週、米国とカナダで計約70件のリース解約を申請。対象物件にはサンフランシスコの1455マーケットストリートやロサンゼルスのパシフィックデザインセンターが含まれる。
サンフランシスコの物件のオーナーであるハドソン・パシフィック・プロパティーズの広報担当にコメントを求めたが、すぐには返答がなかった。パシフィックデザインセンターを所有するコーエン・ブラザーズ・リアルティの担当者はコメントの要請に応じなかった。
ドイツ経済専門家会議は8日発表した年次報告書で、ドイツの2024年の国内総生産(GDP)が前年比0.7%増となり、23年見込みの0.4%減から小幅回復にとどまるとの予測を示した。24年は政府予測の1.3%増を大きく下回り、23年は一致した。
エネルギー価格の高騰や、インフレによる実質所得の減少が引き続き短期的な経済見通しの重しになっていると指摘した。さらに高金利が建設や投資に打撃を与えている。
報告書は、中期的な成長見通しが史上最低水準だとした。
経済専門家会議のモニカ・シュニッツァー議長は「成長の弱さを克服するためにドイツは将来に投資しなければならない」とし、「そのためには技術革新や投資、新興企業の一層の活力を通じた生産性の向上が必要だ」と表明。税制と年金制度の改革も「直ちに必要だ」と訴えた。
ドイツのショルツ首相は8日、投資促進の一連の施策を通じて24年に経済が再び成長することを確信していると言及。報告書を受け取る際に「確実に軌道に戻さなければならない」とし、「将来の成長のためであり、24年に再びそれ(成長)を期待している」と訴えた。
経済専門家会議の予測によると、物価上昇率は23年の想定値6.1%から24年に2.6%へ鈍化する。物価上昇率の緩和に伴って個人消費が回復し、来年の経済成長に寄与すると見込んだ。
米金融大手バンク・オブ・アメリカ(BofA)(BAC.N)のブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)は8日、消費支出と企業の借り入れが減速する中、米経済のソフトランディング(軟着陸)を想定していると述べた。
モイニハンCEOはロイターネクスト会合でのインタビューで、同社のリサーチ研究チームの見通しでは「経済が来年年央に減速する」という。
モイニハンCEOは数カ月前から、健全な借り入れ意欲と消費支出を挙げ、米経済が景気後退を回避できるとの見解を示してきた。こうした見方はしばしば、同業他社の悲観論と対照をなしていた。
同社のエコノミストは米経済成長率について、今年2.7%、2024年は0.7%と予測している。また、米連邦準備理事会(FRB)は12月にも利上げを実施し、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標はターミナルレート(利上げの最終到達点)である5.50─5.75%に達すると予測している。
モイニハンCEOは、FRBがもう1回利上げする可能性はあるが確実ではなく、他方で来年後半には金利が下がるという予想もあると述べた。その上で「インフレ率を2%台前半まで下げるには25年末までかかる」との見通しを示した。
米抵当銀行協会(MBA)が8日発表した11月3日までの週間住宅ローン平均金利は、30年固定金利型が7.61%と、前週比0.25%ポイント低下し約16カ月ぶりの低水準となった。住宅ローン金利の基準となる10年物国債利回りの低下を受けた。
住宅ローン金利の低下は2週連続。10月には8%近くまで上昇していた。
MBAの副会長兼副チーフ・エコノミストのジョエル・カン氏は「米財務省の国債発行計画や米連邦準備理事会(FRB)が11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明でハト派的見解を示したこと、雇用市場の鈍化を示す指標が影響した」と述べた。
前週の購入申し込み件数は前週比3%増加したが、それでも前年同期を20%下回る水準にとどまっている。カン氏は「金利低下にもかかわらず、購入希望者がまだ躊躇していることを示している」とした。
ユーロ圏が年内にリセッション(景気後退)入りすることはほぼ確実だと、前欧州中央銀行(ECB)総裁のマリオ・ドラギ氏が英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に対して語った。
ドラギ氏はFTがブリュッセルで主催した会合で、「深く」、「不安定な」リセッションには恐らくならないだろうとの見解も示した。
イタリアの元首相でもあるドラギ氏は「年内のリセッション入りはほぼ確実だ」とし、「来年初めの2四半期で、それが明らかになることははっきりしている」と語った。発言はFTが報じた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ポーランド中央銀行は予想に反して金融緩和サイクルを休止した。今回は先月の総選挙で親欧州連合(EU)の野党勢力が勝利して以来、初めての政策判断だった。
中銀は主要政策金利を5.75%に据え置くと決定したが、エコノミストの過半数は3会合連続の利下げを予想していた。
この決定を受けてズロチは上昇した。
資産運用大手の幹部らは8日、中国の経済政策の転換とそれが生み出す投資機会が、世界の資産運用会社による中国への長期投資の原動力になっていると指摘した。
多くの多国籍企業は西側諸国と対立する中国からリスクを分散しているが、グローバル市場での中国の重要性は否定できないとの見方が多かった。
香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)主催の「グローバル・ファイナンシャル・リーダーズ・インベストメント・サミット」でブラックロック(BLK.N)の顧客事業グローバル責任者、マーク・ウィードマン氏は、長期的に中国を国際的な投資ポートフォリオに組み込む必要があるとの見方を表明。
中国では重大な政策転換が起きており、これが将来的に投資における資本市場の役割を高めることになると指摘した。個人が不動産や定期預金から資産を分散しており「長期的に、われわれにとって大きな機会が存在する」とした。
キャピタル・グループのマイク・ギトリン最高経営責任者(CEO)も中国経済が大きな転換期を迎えているとの見方を示した。
その上で政策が「どこへ向かっているのかに関心を持てば、その分野への投資から恩恵を受ける機会が広がる」とした。
フィデリティ・インターナショナルのアン・リチャーズCEOは、中国は世界経済の重要な一部であり、その事実はすぐに変わることはないだろうと述べた。
シタデル・セキュリティーズのペン・チャオCEOも、中国は成長とイノベーションの原動力であり、それ以外の見方は「不可解だ」と指摘した。
英金融大手HSBCグループ(HSBA.L)のノエル・クインCEOは、シンガポールで同日開かれたフォーラムで、中国本土以外に進出する中国顧客の動きで事業が7割押し上げられたと説明。
同氏は前日のイベントで、中国本土から香港への資産流入が今年3─4倍に増えていると述べていた。
中国人民銀行(中央銀行)の張青松副総裁は前日、中国経済について「あまり懸念していない」としながらも、地方政府の一部債務には「構造的な問題」が残っていると指摘していた。
中国当局が、経営難に陥っている不動産開発大手・碧桂園(カントリー・ガーデン)(2007.HK)の支配株主となるよう中国平安保険(集団)(2318.HK)(601318.SS)に求めたことが分かった。事情に詳しい関係筋4人が明らかにした。
このうち2人の関係筋によると、中国政府は両社が本社を構える広東省の政府に対し、こうした救済策を後押しするよう指示した。
計画が実現すれば、巨額の負債を抱える不動産部門の支援策としては過去最大級の政府介入となる。
関係筋3人は、碧桂園の資金繰り問題を巡るリスクが経済全体に波及することを当局は望んでいないと指摘。中国企業が中央政府の要請を無視できることはまれだが、平安保険は計画の詳細をまとめるよう求められており、条件を交渉する余地はあるという。
関係筋2人によると、当局と平安保険幹部の協議は8月下旬に始まり、現在も初期段階にある。平安保険は碧桂園のデューデリジェンス(資産査定)を行うよう求められており、当局は平安保険が上場企業で株主に説明責任があることを理解しているという。
関係筋2人によると、当局と平安保険の協議を主導しているのは、中国人民銀行(中央銀行)の金融市場局。碧桂園や中国国家金融監督管理総局も協議に参加している。
4人の関係筋は、平安保険が碧桂園の支配株主になれば、当局が段階的に資本を注入し、資金繰りの問題を緩和する計画だと指摘。
関係筋2人によると、当局は他の資金繰りが悪化した不動産開発会社についても、今回の買収計画を支援のひな形としたい意向。
当局は碧桂園の問題を広東省内で解決することを望んでおり、同省に本社があり、碧桂園の大株主でもある平安保険が自然な選択肢になった。
香港証券取引所のデータによると、平安保険は8月11日時点で碧桂園株の4.99%を保有。現時点で同株を保有しているかは不明。
平安保険は政府から打診を受けていないとして、報道を強く否定した。また碧桂園株はもはや保有していないと明らかにした。
ブルームバーグは関係筋の話として、平安保険に碧桂園を保有する計画はないと報じた。
碧桂園は先月、1500万ドルの利払いを期日内に履行できず、約110億ドルにのぼるオフショア債がデフォルトに陥ったと市場でみなされている。同社は海外債務の返済義務を全ては履行できない見込みだとし、「全体的な」解決策を求めたいと表明している。
フォーサイス・バー・アジアのシニアアナリスト、ウィラー・チェン氏は平安保険の碧桂園買収について「そのような動きが起こる可能性は低い。国有でない保険会社に、このような国家的役割を引き受けるよう求めるのは奇妙だ」と話した。
中国の長引く住宅不況は経済成長をけん引する不動産セクターの力が低下していることを意味し、景気減速の一因となっている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の新たな推計によると、今年1-9月の最終需要に占める住宅関連需要の割合は19.4%。最近のピークである2018年の24.2%から低下し、今後も下がり続ける可能性が高いと予測している。
ブルームバーグのエコノミスト、舒暢、エリック・チュー両氏はリポートで、「不動産活動の縮小は短期的に成長に打撃を与える」と分析。
国内総生産(GDP)に占める不動産セクターの割合が低下すれば、経済成長における不動産への依存度は下がると説明し、こうした変化が「電気自動車(EV)生産やテクノロジーのイノベーション、環境保護など新興有望産業のより生産的な目的に向け資源を解き放つだろう」と予想した。
両氏の試算は、建設と不動産サービスの両方を対象とし、さらに資源や建材、家電製品など他のセクターへの波及効果も全て含んでいる。
GDPに占める不動産セクターの評価額が下がったとはいえ、他の多くの国に比べればまだ高いともリポートは指摘している。
シンガポールのリー・シェンロン首相は、中国と台湾の衝突が差し迫っているとの見方について、その可能性は高くないとの見解を示した。長く領土と見なしてきた台湾の統一に関して、中国は「むやみに好戦的」ではないと述べた。
リー首相は、シンガポールで開催されたブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラム(NEF)で8日、ブルームバーグ・ニュースのジョン・ミクルスウェイト編集主幹とのインタビューに応じた。
リー首相は「中国は台湾が『一つの中国』の一部であることを望んでいる」とした上で、どのようにしてそれを実現させるかについては確信を持っていないと指摘。中国政府が挑発を受けない限り、「ある日、目覚めたら中国がDデイ(大規模作戦の決行日)を決断した」と世界が知るような事態にはならないと付け加えた。
また、第2次世界大戦末期に旧日本軍と米軍との間で行われた硫黄島の戦いに触れ、「台湾への攻撃は硫黄島の戦いのようなものではない。硫黄島では非常に多くの血が流れた」と述べた。
リー首相はこのほか、10月7日に起きたイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃と、それ以降の民間人殺害を非難。イスラエル人とパレスチナ人の間の和平を確保するには「2国家解決」以外に方策はないと主張した。
●中東
来日中のブリンケン米国務長官は8日、イスラエルがパレスチナ自治区ガザを管理することはできないが、現在の紛争が終結した後には移行期間が設けられる可能性があると述べた。
主要7カ国(G7)外相会合後、記者団に対し「イスラム組織ハマスがガザを管理し続けることはできない。それは単に10月7日(に起きた事態)の繰り返しを招くだけだ。イスラエルがガザを占領できないことも明らかだ」と指摘。
「今のところ、現実には、紛争終結時に一定の移行期間が必要かもしれない。イスラエル指導部から聞いたところでは、彼らはガザを再占領するつもりはないようだ」とも語った。
サウジアラビアのハリド・ファリハ投資相は7日、パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルとイスラム組織ハマスの紛争について話し合うため、アラブ、イスラム諸国によるサミットを数日中に開催する計画を明らかにした。
シンガポールで開かれたブルームバーグ・ニューエコノミーフォーラムで「今週数日中に、リヤドで緊急アラブ首脳会議を開催する」としたほか「数日中にイスラムサミットも開催する」と述べた。
サウジのリーダーシップでこれらのサミットやその他の会合を開催し、紛争の平和的解決を目指すとした。
ニュースサイトのエテマドオンラインは、イランのライシ大統領がイスラム協力機構(OIC)首脳会議に出席するため12日にサウジを訪問すると報じた。イラン大統領のサウジ訪問は両国が中国の仲介で3月に外交関係正常化で合意してから初となる。
ファリハ氏はアフリカ諸国との首脳会議を開催するとも述べたが、日程は示さなかった。サウジ外務省は7日、同会議を今週末に実施する予定だったが、他の2つのサミットに集中するため延期すると声明で明らかにした。
イスラエル軍報道官のダニエル・ハガリ少将は8日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが同地区北部の支配権を失い、数千人の住民が南部に移動したと発表した。
ハガリ氏は記者会見で「5万人のガザ住民がガザ北部から南部に移動するのを確認した。ハマスが北部で覇権を失ったことを理解しているからだ」と述べた。
また、イスラエルは時間を限定して人道的な戦闘一時停止を認め、住民が南部へ移動できるようにしているとした。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスが拘束している人質について、イスラエルによる攻撃を1─2日、一時的に停止するのと引き換えに、10─15人の解放を確保する交渉が進められている。関係筋が8日、ロイターに明らかにした。
交渉はカタールが米国と連携して仲介している。
これとは別に、エジプト治安筋によると、人質解放の見返りとして、来週中に1─2日の停戦か、主要作戦の対象となる地域の制限が実施されると予想されている。
ガザ地区、カーン・ユーニス:食料も水も底をついたガザ北部から数千人のパレスチナ人が持てるものだけを持って徒歩で南部へ逃げている、と国連機関が8日に発表した。イスラエル軍は、ガザ市の奥深まで侵攻し、ハマスの武装勢力と戦っていると発表した。
ガザの人口230万人のうち70%以上がすでに自宅から避難しているが、南部へ向かう人数が増えていることは、イスラエルによる激しい砲撃を受けているガザ最大の都市とその周辺が、ますます絶望的な状況になっていることを示している。
10月7日のハマスによるイスラエルへの攻撃によって引き起こされた戦争は2カ月目に入り、この包囲されたパレスチナの飛び地において人道的危機はますます激しさをましており、終わりは見えない。
イスラエルは、ハマスの支配を終わらせ、その軍事力を粉砕するための戦争は長く困難なものになり、同国はガザに対する何らかの支配体制を無期限に維持することになると述べている。戦争に対する支持はイスラエル国内で強く、ハマスや他の過激派グループによって拘束されている240人以上の人質の状況に焦点が当てられている。
国際連合人道問題調整事務所(OCHA)の発表によれば、7日にガザ北部から避難した人々は約1万5000人で、これは6日に避難した人数の3倍である。イスラエルが発表した1日4時間の制限時間内に、彼らはガザの南北を結ぶ主要な高速道路を利用している。
OCHAは、避難している人々の中には、子どもや高齢者、障害を持つ人たちも含まれており、ほとんどの避難者が最小限の荷物を持って徒歩で移動していると述べている。彼らはイスラエルの検問所を通化しなければならず、そこで逮捕される人々を見たという人もいれば、イスラエルの戦車の脇を通り過ぎる間、両手を上げて白旗を掲げた人もいた。
住民は、ガザ市とシャティ難民キャンプで7日夜から翌日にかけて大きな爆発があったと報告した。シャティ難民キャンプは、1948年の建国をめぐる戦争の際、今のイスラエルから逃げた、または追放されたパレスチナ家族を収容している。
ガザ市のシェイク・ラドワン地区に住むモハメド・アベド市は、「爆撃は激しく、近かった」と語った。彼は、7日遅くにイスラエル軍の地上部隊が街の奥深くで戦闘しているというニュースを聞いたとき、住民はパニックに陥ったと語った。
イスラエル軍は、ハマスのロケット弾やその他兵器の主要な開発者の1人を殺害したと発表したが彼がどこで殺害されたかについて言及していない。ハマスは、イスラエル軍によるガザ市内への侵攻、また、イスラエル軍が重要な進展を遂げたことを否定している。両者における戦場での主張を独自に確認することはできなかった。
イスラエルは、ガザ市に作戦を集中している。この都市は、戦争開始前には約65万人が住んでおり、軍によれば、ハマスが中央司令部と広大なトンネル網を持っている場所だ。イスラエルは日常的に南部の武装勢力の標的を攻撃し、しばしば市民を殺害しているにもかかわらず、何十万人もの人々が、同国による北部からの避難勧告に従っている。
北部には数万人のパレスチナ人が残っており、その多くは病院や国連の学校に避難している。北部では何週間も水道が通っていない。国連機関によれば、6日、燃料、水、小麦粉の不足のため、運営を続けていた最後のパン屋が閉鎖されたという。物資が不足している病院では、切断などを含めた手術が麻酔なしで行われているという。
ガザ市に住むマジェド・ハロウン氏によると、女性や子どもたちは食料を求めて一軒一軒を渡り歩き、避難所にいる子どもたちは地元の寄付に頼っているという。「子供たちへの援助を許可すべきだ」と彼は言った。
車椅子に乗った年老いた親戚を押しながら、南部へ逃げる人たちと一緒にガザの幹線道路を下っていたアメール・ガルバン氏は、2人はこの3日間、それぞれ1日1個のパンで生活してきたと語った。「ガザの包囲網は完全なものになっている。大多数の人々が自分たちの土地を離れた。水も電気も小麦粉もない」と彼は言った。
何十万人もの避難民が、国連が運営する学校やその他の施設に詰め込まれている。国連事務所によれば、ある避難所では600人が一つのトイレを共有しなければならない状況だという。
ハマスの攻撃以来、1カ月間にわたる絶え間ない砲撃により、ガザでは1万300人以上のパレスチナ人が死亡した。ハマス支配下の保健省は、そのうち3分の2は女性と未成年者だと発表している。同省が発表するこれらの数字は、過去の戦争終結後に行われた真偽の検証をほぼ耐え抜いている。2300人以上が、場合によっては街区全体を破壊する規模の攻撃によってがれきの下に埋められたと考えられている。
ハマスの武装勢力は民間人を中心に1400人以上を殺害、子どもや高齢者を含む242人をしたが、そのほとんどは10月7日の侵攻の間に行われた。イスラエルによれば、地上攻撃が始まって以来、ガザでは31人の兵士が死亡し、パレスチナの武装勢力は毎日のようにイスラエルに向けてロケット弾を撃ち続けているという。
双方の死者数は、数十年にわたるイスラエルとパレスチナの衝突において前例がない規模である。
イスラエル当局は、数千人のパレスチナ武装勢力が殺害されたとし、民間人の犠牲者については、ハマスが住宅地で活動しているためだと非難している。ガザの保健省は、死傷者数の報告において民間人と戦闘員を区別していない。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエルはハマス壊滅後も「無期限」でガザの「全面的な安全保障の責任」を担うと述べた。
イスラエルの主要な同盟国である米国は、2005年にイスラエルが自国の兵士と入植者を引き上げたガザの再占領に反対している。
米国は、再生したパレスチナ自治政府がガザを統治する可能性を示唆している。しかし、16年前にハマスによってガザから追放された、国際的に承認されたパレスチナ自治政府は、1967年の第三次中東戦争でイスラエルが占領したガザ、ヨルダン川西岸地区、東エルサレムにパレスチナ国家を樹立する解決策の一部としてのみ、そうすると語っている。
イスラエル政府は、10月7日の攻撃以前から、パレスチナの国家樹立に一貫して反対していた。彼らは、2007年にハマスが政権を奪取して以来、エジプトとともにガザ封鎖を続けてきた。
10月21日以来、援助物資を積んだ何百台ものトラックがエジプトからガザに入ることを許可されている。しかし、人道支援に携わる人々は、この援助は必要な物資の量にはほど遠いと言う。エジプトのラファ検問所も開設され、数百人の外国人パスポート保持者と医療患者がガザから出国できるようになった。
イスラエルと、レバノンの過激派組織ヒズボラが国境エリアで銃撃戦を繰り広げるなど、この戦争はより広範な緊張をもたらしている。戦争が始まって以来、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区では、主に暴力的な抗議行動や、鎮圧を試みるイスラエル軍との銃撃戦で、160人以上のパレスチナ人が死亡している。
約25万人のイスラエル人が、ガザ境界付近やレバノンとの国境沿いの地域から避難を余儀なくされている。
ひとつ確かなことは、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が10月7日のハマス攻撃後に語ったように、イスラエルの対応は「中東を変えるだろう」ということだ。おそらくこの危機が始まって以来、イスラエル首相が発した唯一の賢明な言葉だ。
実際、最初の変化は彼をとりまく人物にあったかもしれない。世論調査によれば、ネタニヤフ首相の個人的支持率は27%にまで落ち込んでおり、イスラエル国民は圧倒的に彼の監督下における安全保障上の過失とみなし、彼の自宅の前では抗議デモが起きている。また多数のメディア記事はネタニヤフ首相の個人的責任を主張している。ハーレツ紙によると「イスラエルに降りかかった災難は…… 明らかに一人の人間の責任である:ベンヤミン・ネタニヤフの」とある。
第二に、以前このコラムで予測したように、10月7日に勝利を宣言し、人質を拘束することでより良い条件で交渉できると考えたハマスの指導者たちは、今や世界をイスラエルの反撃を抑制させる交渉しなければならない状況に追い込んでいる。長年の経験と2006年以来の5つの戦争を経て、ハマスはそのような目論見は実現あり得ないことを知っていたはずである。
イスラエルが現在もパレスチナの土地を占領し、パレスチナの権利を損ない続けていることが、今日のようなエスカレーションを引き起こした原因ではないと言っているのではない。ただ、ハマスが荒唐無稽に想像していた戦略的な成功は、現実のものとなっていないのだ。
つまり、どのような結末を迎えようとも、ハマスとイスラエルの現指導部は終わりを迎えるのである。和平の見込みを絶つという揺るぎないコミットメントにおいて、長い間タッグチームとは到底見えなかったパートナーであったが、このカップルにはふさわしい結末である。
実際、ネタニヤフ首相は、イスラエル政界のフランシス・アンダーウッドとも言える人物だが、パレスチナ問題の解決に真剣に取り組むことを避け、解決策を台無しにするために可能なことは何でもするというシンプルな戦術を展開することで、ここまで生き延びただけでなく、同国で最も長く首相を務めてきた。
これには、ガザでは宿敵ハマスに力を与え、ハマスが存在しないヨルダン川西岸地区ではパレスチナ自治政府を弱体化させるという、信じられないようなことも含まれている。
しかし、私の言葉を鵜呑みにしてはいけない。「何年もの間、ネタニヤフ首相はハマスを支えてきた。今、それは我々の目の前で吹き飛んだ」と『タイムズ・オブ・イスラエル』紙の見出しにある。さらに悪いことに、2019年にはネタニヤフ首相はこう言ったと報じられている:「パレスチナの国家樹立を阻止したい者は、ハマスの強化を支持すべきだ」
しかし、フランシス・アンダーウッドのようなしつこいサバイバーでさえ、最終的には運を使い果たす。有権者の80%、内閣のメンバーたち、そして先月国連でイスラエルに反対した121カ国が拘束力のない投票結果とはいえ彼を揺るがしている中、すべてはトランプカードでできた家のように崩壊する。これらすべてに加え、まだ汚職容疑が未解決であることから、ネタニヤフ首相が退任した際の次の住処はおそらく刑務所になる可能性がある。
一方、ハマスには別の方程式がある。たとえイスラエルが、ハマスの推定4万人の戦闘員を皆殺しにする、あるいは彼らや指導者たちをガザから追放するという不可能なミッションに成功したとしても(法的、人道的、政治的影響を完全に無視しながら)、ヨルダンのラーニア王妃がCNNのインタビューでベッキー・アンダーソンに語ったように、彼らは「戦闘員だけは殺せるが、大義は殺せない」のである。
では、勝者はいるのだろうか?過激派がモスクやシナゴーグを攻撃する正当性を現在の出来事に見出すことは別として、この戦争の激しさ、甚大な犠牲者、醜さ、そしてすでに世界的な影響を受けていることから、国際社会がこれ以上の場当たり的な解決は不可能だと受け入れざるを得なくなるという希望的観測はある。このようなことが二度と起こらないようにする唯一の方法は、最終的にパレスチナ人に土地と自由と希望を与える公正で公平な和平を結ぶことである。以前ここで論じたように、今こそ平和構築の努力を倍加させるべき時であり、そのためには違法な占領を終わらせることから始めなければならない。イスラエルに対して真の影響力を持つ唯一の国が、停戦にさえ拒否権を行使していることを考えれば、これは難しい要求であるが。
ガザで1万人以上のパレスチナ人(その多くは子どもたち)を殺害した占領勢力を恥ずかしげもなく支援する現アメリカ政府は、ロシアのウクライナ侵攻を非難するのに十分なことをしていないと他者に説教する道徳的な立場には最早ないのである。
結局のところ、アントニオ・グテーレス国連事務総長の言葉ほど的を射たものはない:
「ガザの悪夢は人道危機を越えている。これは人間性の危機だ」
●中南米・アフリカ
ブラジル中央銀行が10月31日─11月1日に開いた金融政策委員会で、インフレ率を目標に戻すにはまだ、長い道のりが残されているとの見方が示されたことが、7日公表された議事要旨で分かった。
金融政策委では3会合連続となる50ベーシスポイント(bp)の利下げを決定し、政策金利は12.25%となった。今後については同程度の追加利下げを再び示唆した。
議事要旨によると、政策委は世界的なシナリオにおける不確実性の高まりに注意を要するとの評価で一致。
委員の1人は、このシナリオはインフレのリスクバランスに非対称な上方バイアスをもたらすと指摘した。
議事要旨は「委員会の想定通りディスインフレがかなり進展しているものの、インフレ期待を固定して目標に戻すには、まだ長い道のりがある」としている。
●市況
<為替> ドルが対円で上昇し、対ユーロで安定的に推移した。先週は米連邦準備理事会(FRB)の利上げサイクルが終了したとの見方が強まったことでドルは大きく下げたが、落ち着きを取り戻しつつある。
<債券> 国債利回りがまちまちの動きとなった。財務省が実施した10年債入札が予想よりやや良かったことを受け、長期の利回りは低下した。
<株式> ほぼ横ばいで引けた。FRB当局者のここ数日の発言を踏まえて政策金利の先行きを見極めたいとのムードが強かったほか、米国債利回りの動向も意識された。
国債利回りは利上げ終了観測の強まりを受けてこのところ急低下しており、CMEのフェドウオッチによると、市場は来年5月にも25bp以上の利下げが実施される約5割の確率を織り込んでいる。
S&P総合500種(.SPX)とナスダック総合(.IXIC)は小幅高で終了し、連騰記録をそれぞれ8日と9日に伸ばした。ダウ工業株30種(.DJI)は反落し、連騰が7日で止まった。
医薬品大手イーライリリー(LLY.N)は3.2%上昇。米食品医薬品局(FDA)が同社の開発した肥満症治療薬を承認した。
<米原油先物> 需要が落ち込むとの懸念が広がる中で売り込まれ、続落した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物は前日清算値(終値に相当)比2.04ドル(2.63%)安の1バレル =75.33ドルと、7月中旬以来約3カ月半ぶりの安値となった。1月物は1.90ドル安の75.31ドル。
米石油協会(API)が7日の夕方に発表した週間在庫統計によると、3日までの1週間で原油在庫が前週比1190万バレル増となり、市場予想の30万バレル減に反して大幅な積み増しとなった。これを受けて、需要低迷への警戒感が台頭し、売りが強まった。
<ロンドン株式市場> 小幅続落して取引を終えた。ただ、決算内容が好感された英小売大手マークス・アンド・スペンサー(M&S)が大幅上昇したため、相場全体の下げ幅は限られた。
高級車メーカー、アストン・マーティン(AML.L)は2.0%上昇。サウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が持ち株比率を2.6%ポイント引き上げ、第2位の株主になったと明らかにしたことが材料視された。
<欧州株式市場> 反発して取引を終えた。好調な決算発表が好感され、投資家心理を改善させた。
投資家は経済指標や中央銀行当局者の発言から欧州中央銀行(ECB)の利上げの方向性を見極めようとしている。ユーロ圏の9月の小売売上高は減少し、ほぼ予想通りの内容だった。ECBが発表した消費者期待調査ではユーロ圏の消費者の今後1年間の予想インフレ率は中央値で4%に上昇した。
デンマークの風力タービンメーカー、ベスタス(VWS.CO)は9.8%高。2023年第3・四半期決算の営業利益と売上高が予想を上回ったことが材料視された。
STOXX欧州600種自動車・部品株指数(.SXAP)は1.07%、小売株指数(.SXRP)は0.98%それぞれ上昇。
ドイツ自動車部品大手のコンチネンタル(CONG.DE)は4.1%高。第4・四半期に自動車事業は好調で今年の世界自動車市場も従来予想より高い成長が見込まれるとしたことが好感された。英小売大手のマークス・アンド・スペンサー(M&S)(MKS.L)は8.4%上げた。
<ユーロ圏債券> 国債利回りが低下した。欧州中央銀行(ECB)の消費者期待調査で予想インフレが上昇したことを受け、市場では景気減速の兆候が意識されている。
デリバティブ市場のプライシングに基づくと、市場では2024年末までにECBの政策金利が約90bp低下すると予想されている。
日経先物32,440、ダウ先34,147、債先144.81、米4.514、独2.6155、仏3.202、西3.655、伊4.476、英4.2835、波5.466、原油75.62、銅8,113、ドル円150.88、ユーロドル1.0706
※11/7 9時20分頃
備忘録(2023/11/7)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
長期金利の上昇観測を背景に大きく買われてきた日本の銀行株に異変が起きている。直近2カ月は金利上昇に合わせ銀行株が買われる相関性が崩れており、市場関係者の間では強気相場の終了を示すサインだとの懸念も浮上している。
東証銀行株指数の年初来上昇率は36%(7日現在)と東証株価指数(TOPIX)の23%を上回り、今年の日本株上昇のけん引役となってきた。銀行株は長年の不人気で割安に放置されていたが、日本経済のデフレからインフレへの転換期待から投資家が見直し買いを活発化。長期金利の上昇が銀行の貸出金利の上昇につながり、利ざやが拡大するとの見方が強まった格好だ。
しかし、9月後半以降の値動きを見ると、日本銀行の金融政策修正観測や米国金利の急騰を材料に日本の10年国債利回りが上昇する中でも銀行株は頭打ち。相関係数は直近でわずかながらマイナスとなっている。
JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは両者の連動性が失われていることについて、日銀がマイナス金利の解除など短期の政策金利を来年早期に実施することを織り込み始めているのではないかと分析する。
高田氏によると、長期金利の上昇は銀行株などを含むバリュー株にポジティブな影響を与えることが多いが、「バリュー株の特徴は配当などで手元のキャッシュを株主に放出する」点にあると指摘。そのため、短期金利が上昇するとバリュー株の魅力が相対的に低下しやすくなるという。
また、メガバンクをはじめ金融機関は預金や金融市場から比較的短期で資金を調達している半面、借り手には不動産向け融資や住宅ローンなど長期の資金を供給している。短期金利が長期金利以上に上昇し、イールドカーブ(利回り曲線)がフラット化する局面では利ざやはむしろ悪化する構造も持つ。
銀行株指数の株価純資産倍率(PBR)は現在も0.7倍と東京証券取引所が上場企業に対し効率経営の一つの目安として掲げる1倍を下回っており、市場では株主還元策強化への期待感は強い。早ければ、来週相次ぐ7-9月期決算発表での自社株買いの表明を予測する向きもある。
一方、国内銀行の低い利益率を考えると、既に妥当水準まで株価は上昇したとの見方も出ている。銀行株指数の株主資本利益率(ROE)は6%台と欧米金融機関の10%台よりも低く、世界と比べた株価の高パフォーマンスを裏付けるほど業績の改善が伴っていないためだ。
日本の銀行株の年初来上昇率はドルベースで約20%と22%下げた米国を圧倒し、12%上昇した欧州も上回る。ただ、足元で国内の貸し出しの伸びは減速しており、海外と比べても見劣りする現状だ。全国銀行協会の統計によると、9月の貸し出し伸び率は3.3%と10%を超す欧米には遠く及ばない。
コムジェスト・アセットマネジメントのポートフォリオマネジャー、リチャード・ケイ氏は「日本国内で貸し出し需要に構造的な成長は見られない。銀行の成長にとっては長期的な問題だ」と指摘している。
●その他産業
孫氏は部下の反対を押し切り、ソフトバンクGとビジョン・ファンドの両方からウィーワークの創業者アダム・ニューマン氏に巨額を投資。ウィーワークの評価額を2019年前半の時点で470億ドル(約7兆800億円)と、天文学的な数字にまで押し上げた。そのわずか数カ月後、ウィーワークの新規株式公開(IPO)申請書類で大幅な損失と利益相反が明らかになり、投資家たちは困惑した。
その後のウィーワーク急転落でソフトバンクGは推計115億ドルの投資損失を出したほか、22億ドル相当のウィーワーク社債も保有している。ウィーワークの零落は、ビジョン・ファンドが昨年出した320億ドルという記録的な損失とともに、敏腕投資家としての孫氏の立場を傷付けた。孫氏はかつて中国の電子商取引大手アリババグループにいち早く資金を投じて勝利を収めたことで、ベンチャーキャピタル(VC)界で伝説的な存在となった。
ニューヨーク大学スターン経営大学院のアスワス・ダモダラン教授は「失敗から立ち直ることはあり得ても、自分の行動が分かっていない人物だという認識はどう返上できようか」と話す。「孫氏の行動は『自分は傲慢(ごうまん)だ』と言っているようなものだ」と語った。
ドットコム不況からアリババのような少数の勝者とともに立ち直った経験が、孫氏の判断力を鈍らせたのかもしれないとダモダラン教授は指摘する。
「ウィーワークの前は、ソフトバンクGは孫氏の下で驚くほど注意深く、賢明で、先見性のある組織だと認識されていた」とダモダラン教授。「しかし、成功は時として人をうぬぼれさせるのだと思う。成功したことで、自分たちは他の誰よりも物事が分かっていると思い込んでしまったのかもしれない。そして、そこに最終的な転落の種がある」と語った。
孫氏は2017年、世界最大のテクノロジー投資家となるべくソフトバンクGのビジョン・ファンドを設立し、何百ものスタートアップ企業に1400億ドル以上を注ぎ込んだ。評価額をつり上げ、創業者が要求する以上の資金を提供する傾向は、シリコンバレーのライバルたちから反感を買った。
孫氏自身はスタートアップ創業者の目の輝きや「スター・ウォーズ」のフォースのようなひらめきを引き合いに、自分の決断は直感によるものだと信じていた。しかし、自分の直感を信じるあまり、孫氏は危険信号やアドバイザーからの反対意見、さらにはニューマン氏自身から提起された疑問にも耳を傾けようとしなかったのかもしれないと、ソフトバンクとウィーワークの元関係者が話した。
「私はウィーワークにほれ込んでしまった」と孫氏は6月に株主に語ったが、その信念は間違っていると複数の取締役から警告されたと付け加えた。孫氏はもっと大きなことを考えるようニューマン氏に促していたことを認めた。ニューマン氏より「私の責任が大きいかもしれない。もっと積極的になれと言ったのは私だからだ」と孫氏は語った。
ウィーワークが19年に予定していたIPOを取りやめた後も、ソフトバンクGは95億ドルの救済策を打ち出した。孫氏はウィーワーク黒字化という「仮説としての」道筋を盛り込んだプレゼンテーションで、自身の決断を擁護した。
ウィーワークやその他の新興企業に対する孫氏の熱中ぶりは、サウジアラビアとアブダビの政府系ファンドが最初のビジョン・ファンドに600億ドルを拠出したことで、より大きなインパクトを持つことになった。新興企業の規模を拡大させることで、猛スピードでユニコーン(企業価値10億ドルを超える未上場の新興企業)を作り出そうという孫氏の決意は、世界中でスタートアップ企業の評価額をつり上げ、タイガー・グローバル・マネジメントやセコイア・キャピタルといったライバル企業には、ビジョン・ファンドに匹敵する巨額の小切手を切らなくてはならないという圧力がかかった。
アストリス・アドバイザリーのアナリスト、カーク・ブードリー氏は「重要なのは投資損失だけでなく、その背後にあるストーリーだ」と言う。「巨額の資金注入は、人為的な高評価と思い上がりをもたらし、最終的な暴落につながった」と指摘した。
ソフトバンクGのビジョン・ファンド部門は7-9月期には黒字を計上する見込みだが、業績は依然としてかんばしくない。中国の配車サービス会社、滴滴グローバルなどへの投資で多額の損失を出し、米建設会社カテラや英通信衛星ベンチャーのワンウェブ、ピザ調理・宅配のズーム・ピザなどは破産を申請、もしくは事業を閉鎖している。
損失の膨張は昨年、孫氏に投資活動を全面的に停止させ、ビジョン・ファンドの人員削減とデューデリジェンス(資産査定)の厳格化をもたらした。孫氏はまた、決算説明会の指揮を執ることもやめた。
こうした自制は、英半導体設計会社アーム・ホールディングスが9月に実施した49億ドルのIPOと相まって、早い時期から人工知能(AI)関連に注目してきた孫氏に、再び攻勢に出るための資金を与えることになった。
アストリスのブードリー氏は、ウィーワークの「破産はビジョン・ファンド1とビジョン・ファンド2がこれ以上は転落しないことを意味する」と指摘。人々の関心は孫氏が次は何に投資するかに移っていると付け加えた。「ポートフォリオの損失はあまり心配されていない」という。
ダモダラン教授は同意しない。孫氏が約30%を保有するソフトバンクGで指揮を執るのは孫氏ただ一人であり、孫氏の投資スタイルが変わる可能性は低いと同教授は言う。
ソフトバンクGはベンチャーキャピタル(VC)の考え方を後期ステージの投資に応用しているとよく言われる。しかし、VCは小さな賭けで成り立つものであり、ビジョン・ファンドは「ステロイドを注射したソフトバンクG」だとダモダラン氏は言う。「小規模であるべきなのに、孫氏はそれを巨大にした」と指摘した。
「何百億ドル、何千億ドルという大金が後ろ盾にあることで、行き過ぎた行動はさらに大きくなる」とダモダラン教授。「どうすればウィーワークのような大失敗が可能なのか
●決算関連
スイス金融大手UBSグループ (UBSG.S)は7日、第3・四半期決算が7億8500万ドルの赤字になったと発表した。クレディ・スイス買収に関連して21億ドルの費用を計上したことが響いた。
UBSがまとめたアナリストの株主帰属損益予想は4億4400万ドルの赤字だった。
買収関連の影響を除いた基礎的損益は8億4400万ドルの黒字だった。
セルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)は「クレディ・スイスの統合を急ピッチで進めており、買収後初の四半期で基礎的利益を達成した」と述べた。
富裕層向け事業のウェルスマネジメント部門は差し引き220億ドルの資金流入となった。このうちクレディ・スイスの寄与は30億ドルだった。
クレディ・スイスの買収によりUBSが管理する資産は5兆ドルを超えた。
UBSは人員削減を進めており、9月末時点の従業員数は11万5981人と、6月末時点の11万9100人から減少した。
米電子商取引大手イーベイ(EBAY.O)が7日発表した第4・四半期の売上高・利益見通しの中心は市場予想に届かなかった。物価高止まりに伴う消費減速に加え、アマゾン・ドット・コムなどとの競争激化で逆風が強まっている。
最新見通しによると、第4・四半期の売上高は24億7000万-25億3000万ドル、調整後1株利益は1―1.05ドル。LSEGデータに基づく市場予想は、それぞれ26億ドルと1.04ドル。
欧米における高金利と根強いインフレを受け、消費者は必需品以外の支出をさらに切り詰めている。ジェフリーズのアナリストチームは今月、イーベイのウェブトラフィックが下がり続けており、データでは7―10月にその流れに拍車がかかったことが分かると指摘した。
第3・四半期の売上高は前年同期比5%増の25億ドルで市場予想通り。調整後1株利益は1.03ドルと、市場予想の1ドルを上回った。
米プライベートエクイティ(PE)大手KKR(KKR.N)が7日発表した2023年第3・四半期の決算は、税引き後の分配可能利益が前年同期比7%減の7億7970万ドルとなった。前年同期は8億3520万ドルだった。
税引き後1株当たり分配可能利益は0.88ドルで、LSEGがまとめた市場予想平均0.82ドルを上回った。
KKRによると、資産売却による純利益は34%減の3億2720万ドル。インフレや金利上昇、地政学的緊張による市場の変動により、資産の売却価格が低迷した。
資本市場事業の取引手数料は14%近く減少して1億0020万ドルとなった。
PEのポートフォリオは5%増えた。オポチュニスティック・リアルエステート・ファンドは1%増、レバレッジ・クレジット・ファンドは3%増だった。
一般会計原則(GAAP)に基づく純損益は15億ドルに急増した。アセットマネジメントからの収益がけん引した。前年同期は3260万ドルだった。
第3・四半期には140億ドルの新規資本を調達。90億ドルを新規買収に投じた。未使用資本は1000億ドル近くを維持している。運用資産総額は5280億ドルに達した。
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは7日、2023年7〜9月期の純利益が前年同期比23%減の326億ドル(約5兆円)だったと発表した。原油価格高騰が追い風となった前年同期から落ち込んだ。サウジは原油の自主減産を年末まで継続し、原油価格の下支えを続ける。
ウーバーテクノロジーズが7日発表した2023年7〜9月期決算は営業損益が3億9400万ドル(約590億円)の黒字(前年同期は4億9500万ドルの赤字)と2四半期連続で黒字だった。出張などのビジネス利用や夏季の旅行需要がけん引し、ライドシェアなど移動部門が3割の増収となった。
●先進国、グローバル、金融市場
つなぎ予算が失効して政府機関の閉鎖につながりかねない17日を間近に控え、米議会は1つの重大な疑問に直面している。議員ら、とりわけ、少数ながら強力な共和党の保守強硬派が歩み寄ることができるのか、という問題だ。
下院は共和党221人、民主党212人と、共和党が辛うじて過半数を握っている。下院共和党は向こう1週間を新年度の本予算法案の通過に費やすと表明しているが、民主党が過半数を占める上院でこの案が通る可能性はゼロだ。とはいえ、共和党内でも17日の期限を巡る不安は広がっている。
一方、上院の構成は民主党51人、共和党49人。上院は政府機関の閉鎖を避けるため、「予算継続決議(CR)」と呼ばれる暫定措置を採るべきだとの声を強めている。
下院共和党のトム・コール議員は「この問題で争おうとするべきではない。両党とも、大半の議員は政府機関が機能し続けることを望んでいる」と述べた。コール氏は、新法制定の強力な門番役である下院規則委員会の委員長だ。
下院民主党トップ、ハキーム・ジェフリーズ議員も記者団に、「はっきりさせておこう。前進するための唯一の道は、2023年度(予算)水準でCRを超党派で通過させることだ」と語った。
データを見ると、議員らの歩み寄りがなぜこれほど難しいのかが分かる。党派心の度合いを測るボートビュー・ドット・コムをロイターが分析したところ、議会はこれまでで最も二極化していることが分かった。
共和党と民主党の投票履歴を見ると、重なり合う部分がほとんど無い。つまり下院を共和党、上院を民主党が支配するねじれ状況下で、両党が歩み寄って予算案を通過させられる確率が低くなっている。
事態をさらに複雑化させているのは、下院で両党の議員数の差が非常に小さく、民主党が反対する法案において共和党から4人以上の造反者が出れば、法案は否決されるということだ。この結果、下院共和党の保守強硬派「フリーダム・コーカス(自由議連)」の力が強まり、同党は今年、常に内輪もめにさいなまれている。
先月、ケビン・マッカーシー氏の後任として下院議長に就いたマイク・ジョンソン議員(共和党)はCRを通過させるべきか否かについて、どっちつかずのメッセージを発している。CRは来年1月15日までの暫定予算案であり、本予算の成立に時間がかかるようなら、これを4月まで延長するオプションも付く。
下院共和党ナンバーツーのスティーブ・スカリス議員は3日、記者団に対し、ジョンソン氏は、仮にCRを通過させる場合、どのように組み立てるべきかをまだ決めていないと説明した。
ジョンソン氏は5日、FOXニュースに対し、この週末は側近らと共に「歳出法案の手続きを継続する時間を確保するため」の「暫定措置」について検討したと述べた。
上下両院の共和党重鎮議員らは、CRはいずれ避けて通れないと考えている。しかしジョンソン新下院議長はその前に、共和党内の保守強硬派に対し、「下院は2024年度の歳出法案12本全てを個々に通過させるべきだ」、という彼らの要求を守る姿勢を示す必要がある。
保守強硬派の一部は、民主党の支持を得てCRを可決させたことを理由にマッカーシー前議長降ろしの旗を振った経緯がある。その保守強硬派が新たな暫定予算受け入れの条件として求めるのは、歳出削減と国境警備の強化だ。
下院は先週、共和党が提出した歳出法案3本のうち、議会運営と環境に関する2本を通過させた。これにより、可決済みの法案は12本中7本となった。一方、上院は超党派の支持で3本を可決している。
共和党のフランク・ルーカス議員はロイターに対し、「明らかに(暫定予算成立に向けた)決意は固まっており、この勢いを維持する必要がある」とした上で、「ただ、11月17日は近づいている。(つなぎ予算の)延長は不可欠だ。われわれは今週、理性を試されることになる」と語った。
中国の李強首相は7日、訪中しているアルバニージー豪首相との会談で、包括的戦略パートナーシップの着実かつ持続的な発展を推進する用意があると述べた。
中国国営新華社通信によると、李首相は、コミュニケーションをさらに強化し、信頼を深め、相違点を適切に管理するためにオーストラリアと協力する用意があるとも伝えた。
ドイツ商工会議所(DIHK)と海外ドイツ商工会議所(AHK)の調査によると、同国企業は国内よりも海外への投資を計画している。
調査対象3600社のうち今後1年間で海外への投資を増やすと回答したのは全体の約3割。減らすとの回答は約2割だった。
一方、DIHKが最近発表した別の調査によると、国内への投資を減らすと回答した企業は36%で、増やすと回答した企業(24%)を上回った。
DIHKの幹部は「国内投資と海外投資の差は、信頼できる魅力的な枠組みをドイツ企業が早急に必要としていることを改めて示している」と指摘した。
地域別では北米、北アフリカ、中東、アジア太平洋(中国・台湾を除く)への投資を計画している企業が多く、特にインドへの関心が高かった。
AHKインドの幹部は「会員企業は非常に楽観的で、今後数年で大規模な投資を計画している」と述べた。
欧州と中国への投資については、相対的に慎重な姿勢が強かった。
欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は7日、第4・四半期のユーロ圏経済はやや縮小するか、良くてもほぼ横ばいとなる可能性が高いとの見方を示した。
マドリードで開催されたイベントで「(第3・四半期の)経済成長率は前期比0.1%減だった」と指摘。「ほぼ停滞した状況で第4・四半期も続くと考えている」と述べた。
現在の不確実性の高さを踏まえ、ECBは今後の金融政策についてデータ次第との構えを維持すると述べた。
ドイツ連邦統計庁が7日発表した9月の鉱工業生産指数は前月比1.4%低下し、マイナス幅は0.1%だったアナリスト予想以上となった。最近の受注不振が響いた。
第3・四半期は前四半期比で2.1%低下した。
8月の指数は前月比0.1%低下と、従来の0.2%低下から上方修正された。
VPバンクのチーフエコノミスト、トーマス・ギッツェル氏は、今年に入ってから低迷する鉱工業生産はドイツ経済の現状を示していると述べた。
INGのマクロ担当グローバル責任者であるカルステン・ブルゼスキ氏は、第3・四半期のGDP(国内総生産)成長率が下方修正される可能性だけでなく、テクニカルリセッション(2四半期連続のマイナス成長)で今年を終える可能性が高いことを示唆する内容だと語った。
香港金融管理局(HKMA)主催の「グローバル金融リーダー投資サミット」に参加した大手金融機関のトップは7日、増大する地政学的な不透明感が次の金融危機の原因になり得るとの認識を示した。
モルガン・スタンレー(MS.N)のジェームズ・ゴーマン最高経営責任者(CEO)は、地政学や政治の領域が次の世界的な金融危機の引き金になる可能性が高いとし「一部の国では民主主義への挑戦がかなり明白だ」と述べた。
ゴーマン氏は詳細には触れなかったが、世界経済はイスラエルとガザの衝突で不透明が増しているほか、ウクライナ戦争や米中関係の緊張も続いている。
ドイツ銀行(DBKGn.DE)のクリスティアン・ゼービングCEOも、世界情勢に対して市場は総じて底堅く推移しているとした上で、「私が最も恐れているのは、地政学的なエスカレーションがもう1つ起き、市場がある時点で冷静さを失うことだ。そうした事態はかなり急速に起こり得る」と述べた。
ゴールドマン・サックス(GS.N)のデービッド・ソロモンCEOは、銀行規制の強化について「システムを安全で健全なものにしたいと考えているが、一連の規制は行き過ぎている」と指摘。「もし概要が示されている通りに施行されれば、経済活動と経済成長にとって最善とは言えないタイミングで、システムに対する大幅な追加の経済的引き締めが行われることになる」と述べた。
UBSグループ(UBSG.S)のコルム・ケレハー会長も「資本に関する一部の規制当局の今の動きは誤った方向に導かれている。他の問題に焦点を絞るべきだ」と主張した。
脆弱(ぜいじゃく)な市場、影の金融機関、国際的な緊張、各地での戦争。香港に集まった世界の金融業界トップは、金融の世界の「複雑さ」にどのように適応していくかを議論するはずだったが、代わりに大きな危機の可能性を巡る討議に終始した。
ドイツ銀行のクリスティアン・ゼービング最高経営責任者(CEO)は7日、香港で開催された「グローバル・ファイナンシャル・リーダーズ・インベストメント・サミット」で、「私が最も恐れているのは、地政学的なエスカレーションがあと一つでも起これば、マーケットイベントが発生することだ」と述べた。
先月イスラエルとハマスの戦争が勃発して以降で初めて業界トップが一堂に会したイベントで、銀行や投資会社の責任者らは見解や懸念を交換した。香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)が主催したこのイベントのテーマは「複雑性との共生」だった。
ブリッジウォーター・アソシエーツのボブ・プリンス共同最高投資責任者(CIO)は、欧米の金融引き締めがインフレとの闘いの中で均衡に達するまでどの程度続くのかを市場は「過小評価」していると警告した。一方、ヘッジファンド会社シタデルの創業者、ケン・グリフィン氏は、世界の指導者たちは既に物価暴騰を再燃させるリスクを冒していると語った。
脱グローバル化は「巨大な不確実要素」だとグリフィン氏は述べ、中国への投資を諦めないよう呼びかけた。平和とグローバル化によって経済は恩恵を受けてきたが、「脱グローバル化を含む世界がどのようなものになるかは分からない」と指摘。未知数の中には「システム的にどれだけインフレ率を押し上げるのか」ということも含まれると論じた。
シャドーバンキング(影の銀行)の成長に対する警告も聞かれた。UBSグループのコルム・ケレハー会長は、世界の金融資産のおよそ半分が「シャドーセクター」にあると推定。
「これは本当に懸念すべきことだ。次に危機が起きるなら、その分野だろう。フィデューシャリークライシス(受託者の危機)になるだろう」と語った。
約300人の金融業界幹部が集まったこの年次フォーラムは、香港の金融ハブとしての地位を復活させるための幅広い取り組みの一環だ。香港政府トップの李家超行政長官は7日の冒頭スピーチで、「香港はビジネスに戻ってきた」と聴衆に語った。しかし同時に「今日の世界はかつてないほど複雑で厳しい」とも述べた。
ゴールドマン・サックス・グループのデービッド・ソロモンCEOは「米国の財政赤字拡大に伴って起きていることを憂慮すべきだ」と述べ、米国債の増加および流動性の低い環境での借り換えの潜在的なコストを指摘した。
今年いっぱいで退任する予定のモルガン・スタンレーのジェームズ・ゴーマンCEOは、大きな混乱はしばしば予期せぬ力によって引き起こされるということが問題だと語った。
潜在的な原因として政治や地政学が考えられるとした上で、「この部屋にいる誰も新型コロナウイルスを予測してはいなかった」と付け加えた。
米金融大手JPモルガン(JPM.N)の調査報告書によると、額面を大きく割り込んで取引されるディストレスト債に分類される社債が10月、過去7カ月間で初めて増加した。大半は、多額の債務を抱える借り手企業に対して金利上昇がもたらす影響に起因している。
JPモルガンによると、額面100ドルで発行されながら90ドルを割り込んだ価格で取引される高利回り債は10月、前月比400億ドル増の6740億ドルとなった。
50ドルを割り込んだ価格の社債は57億ドル増の255億ドル。70ドルを下回る価格の社債は89億ドル増の967億ドルとなった。
報告書の筆者は「高金利が相場に及ぼす影響のため、90ドルを割り込んだ高利回り債の残高は、2020年3月の水準を上回った」と記した。
社債は、発行体の企業が債務の返済に行き詰まるとみられ、債務不履行のリスクを理由に低い格付けを付与される場合に、ディストレスト債に分類される価格で取引されることが多い。
米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めが企業の財務を直撃する中、ムーディーズやフィッチなど格付け会社は、企業の債務不履行が来年に増加すると予想している。
米国では新型コロナウイルス感染症の流行から3年半余りたった今でも、引退者が予想されていたより200万人程度多いことが明らかになった。米労働力の最も顕著かつ持続的な変化の一つとなっている。
コロナ流行が引き起こし、高齢者を中心に引退が相次いだ現象「グレート・リタイアメント」は、実際の退職者数と米連邦準備制度の経済モデル予測との乖離(かいり)にはっきり表れている。その差は昨年後半の280万人から縮小したものの、現在でも高い水準で推移しており、6月の170万人から増加している。
セントルイス連銀の経済政策アドバイザー、ミゲル・ファリア・エ・カストロ氏は「今年前半はこの差が縮小しているように見受けられたが、その後やや拡大したようだ」と分析。9月時点の差は約198万人と推計しているという。
65歳以上の労働参加率はコロナ禍前に20.8%に達していたが、2021年7月までに2.5ポイント低下。その後、19.3%と1ポイント上昇したものの、なおコロナ前の水準を大きく下回っている。
イングランド銀行(英中央銀行)が来年中に0.75ポイントの利下げを実施すると、短期金融市場で初めて織り込まれた。同中銀チーフエコノミストのヒュー・ピル氏が、市場のプライシングに反対しないと示唆したことが手がかりとなっている。
英中銀の政策決定発表日にリンクするスワップは、来年8月に金利が0.25ポイント引き下げられ、利下げが始まることを示している。これにピル氏は、「全く合理性を欠いているとは思われない」と述べた。
ピル氏は6日遅く、英国のインフレ率は間もなく先進国他国のような水準に低下するとも発言。スワップが示す水準に違和感がないと語った英中銀当局者は初めてだった。
トレーダーは8日に予定されるベイリー総裁の講演に注目することになりそうだ。ベイリー総裁にとって、ピル氏の見解への支持や反対を表明する機会になる。
米ニューヨーク(NY)連銀が7日発表した第3・四半期の家計債務・信用統計によると、米国内の家計債務は1.3%増の17兆2900億ドルに達した。クレジットカードの債務残高が4.7%増の1兆0800億ドルとなった。
NY連銀のエコノミスト、ドンフン・リー氏はプレスリリースで、「クレジットカードの残高は第3・四半期に大きく急増し、力強い個人消費や実質国内総生産(GDP)の伸びと整合した」と述べた。
米商務省が10月26日に発表した2023年第3・四半期の実質GDP速報値は年率換算で前期比4.9%増と、21年第4・四半期以来約2年ぶりの高い伸びとなった。
学生ローン残高は300億ドル増の1兆6000億ドルだった。
住宅ローンの新規組成額は3860億ドル。住宅ローン残高全体では1260億ドル増の12兆1400億ドルだった。
自動車ローン残高は130億ドル増の1兆6000億ドル。「2011年以来の増加基調が継続している」という。
堅調とされる米国の個人消費に変調の兆しが出てきた。7〜9月にクレジットカードの支払いができずに延滞した割合は8.01%と、2011年以来12年ぶりの高水準となった。若年層を中心に長引く物価高・金利高による家計負担が大きくなっているためだ。米国の国内総生産(GDP)の7割を占める消費が鈍れば企業業績や金融政策などに影響が広がりかねない。
ニューヨーク(NY)連銀が7日発表した。この延滞率はクレジットカード債務残高のうち、7〜9月に新たに30日以上の滞納に陥った残高の割合を示している。より深刻な90日以上の新規延滞の割合も5.78%と、ほぼ12年ぶりの高さになった。
クレジットカードは米国のキャッシュレス決済のうち、デビットカードに次いで支払い回数が多い。
内訳をみると、18〜29歳、30〜39歳の若年層で90日以上の深刻な延滞が急増した。NY連銀は「多額の学生ローンや自動車ローンを抱えており、より滞納に陥りやすい」と分析している。若年層は持ち家の割合が低いため、賃貸物件の家賃高騰がさらに家計を圧迫している面もある。
融資を受けるカードローンの高金利化も影響している恐れがある。米連邦準備理事会(FRB)によると、8月時点でカードローン金利は年率21.19%と過去最高になっている。金利が高ければ当然返済は滞りやすい。
米国ではコロナ下で積み上がった過剰貯蓄をもとにリベンジ消費が過熱し、堅調な個人消費を支えてきた。足元では若年層を中心に貯蓄が減っており、後払いできるカード消費を増やしているとみられる。7〜9月の米国全体のカード債務残高は1兆790億ドル(約160兆円)と、データを遡れる1999年以降で過去最大を更新した。カードや自動車ローン、住宅ローンなどを合算した家計全体の債務は17兆2910億ドルと、こちらも過去最高となった。
米国の消費全体は堅調さが続いている。米小売売上高は9月まで6カ月連続で前月を上回った。想定以上の伸びを示した7〜9月期の実質GDP成長率も、けん引したのは個人消費の強さだ。カードの延滞率が10%を超えていた08年の金融危機後の水準にはまだ遠く、危機的な水準ではないとの声もある。
ただ、警戒は強まっている。米クレジットカード大手、ディスカバー・ファイナンシャル・サービシズのジョン・グリーン最高財務責任者(CFO)は「労働市場が比較的堅調な一方、コロナ下での余剰貯蓄の減少や債務の増加が消費者にとって逆風になっている。とくに信用力の低い層で負担が増えている」と分析。「カードの滞納と焦げ付きは24年半ばから後半にかけてピークを迎える」と見込む。
富裕層の顧客が多いアメリカン・エキスプレス(アメックス)は、滞納や焦げ付きが増加するとみて、7〜9月期に貸倒引当金と、融資が焦げ付いた時点で計上する償却費を合計した不良債権処理費用(信用コスト)を12億3300万ドルと前年同期から6割増やしている。
延滞が加速すれば消費への影響は避けられない。消費者の間ではすでに節約志向が広がっており、大手小売りのターゲットのブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は「裁量消費財のみならず、食料品でも買い控えが広がっている」と指摘する。
最大の稼ぎ時の年末商戦にも影を落とす。全米小売業協会(NRF)が2日発表した最新の米年末商戦の販売予想は前年比3〜4%増で、伸び率は19年以来4年ぶりの低水準となる見込みだ。米アドビは「年末商戦でオンライン小売り各社は表示価格から最大35%引きという、過去最高の値引きを迫られるだろう」と厳しい商戦を予想する。
欧州中央銀行(ECB)銀行監督委員会のエンリア委員長は7日の欧州議会で、ユーロ圏の銀行に対して域内の不動産価格がさらに下落するリスクに備えるよう警告した。
欧州の不動産市場は、ECBによる急激かつ長期にわたる金融引き締めで重圧を受けている。過去10年間は、低金利やECBからの大量の流動性供給を追い風に、ドイツやフランス、オランダなどの不動産市場に膨大な資金が流れ込んでいた。
ただエンリア氏は、幾つかの国では既に不動産が値下がりしており、特にドイツでその流れが顕著だと指摘。「現在の金利上昇環境はオフィスと住宅の価格を一段と押し下げ、商業不動産オーナーや家計の債務返済がより難しくなりかねない。各銀行は引当金の計上や資本計画策定においてこのようなリスクを考慮に入れなければならない」と語った。
エンリア氏は年末で銀行監督委員長を退任し、ドイツ連邦銀行(中央銀行)のクラウディア・ブーフ副総裁が代わって就任する予定だ。
米国の債務返済額が急速に膨れ上がっており、新年にかけて米国債への売り圧力が再び強まる可能性がある。
ブルームバーグの分析によると、米国債の年間利払い額は先月末に推定で1兆ドル(150兆5200億円)を超えた。利払い額は過去1年7カ月で倍増しており、2022会計年度の連邦予算全体の15.9%を占める。
連邦政府の月次の債務残高と利払い額の平均を示す米財務省のデータを使って算出した。
米政府が巨額の借り入れを行う中、利払いの急増は財政見通しを巡る議論を再燃させそうだ。財政悪化に対する懸念がすでに債券利回りを押し上げており、8月には格付け会社フィッチ・レーティングスによる米国債の格下げを招いた。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアイラ・ジャージー、ウィル・ホフマン両氏はリポートで「当面は2兆ドルを超える赤字が見込まれるほか、2020年3月から増発してきた国債の償還分についても借り換えが必要になる」と指摘した。
7日のロンドン金属取引所(LME)の金属相場は下落。強弱入り交じった中国の貿易統計を受け、需要の先行きを見極める展開となった。前日は約5週間ぶりの高値を付けていた。
中国の輸出が10月に予想以上に減少した一方で、輸入は予想に反して増加し、国内需要の回復を示唆した。中国の成長支援策を巡る楽観的見方から、銅、アルミ二ウム、亜鉛相場はいずれも今月に入り下支えされていた。
LMEの銅相場はニューヨーク時間7日午後0時1分(日本時間8日午前2時1分)時点で0.7%安の1トン=8177.00ドルを付けた後、8187ドルで終了。前日はLMEで取引される主要非鉄金属6種で構成されるLMEX金属指数が9月29日以来の高値を付けていた。
ポルトガルのアントニオ・コスタ首相は7日、テレビ演説し、大統領に首相職の辞意を伝えたと明らかにした。首席補佐官らがリチウム採掘や水素工場計画を巡る汚職に関与したとして捜査当局に拘束されたことが背景にあるという。ロイター通信などが報じた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
国際通貨基金(IMF)は7日、コロナ危機後の「力強い」回復を理由に2023年の中国の国内総生産(GDP)成長率予測を5%から5.4%に引き上げた。
IMFは声明で、24年は4.6%へ減速する可能性があると予想。中国の不動産部門が引き続き低迷し、外需がふるわないためと指摘した。ただ10月のIMF世界経済見通し(WEO)で示した予想の4.2%を上回る。
中国は1兆元(1370億ドル)の新規国債発行を承認したほか、地方政府が24年の国債発行枠の一部を前倒しすることを認めた。
IMFのゴピナート筆頭副専務理事は「予想を上回る第3・四半期の結果と最近の政策発表を受けて、23年と24年はWEOの予測をいずれも0.4%ポイント上方修正した」と説明した。
ゴピナート氏は生産性の低迷と人口の高齢化が逆風となり、中国の成長率は中期的には徐々に低下し、28年には3.5%前後になるとの見方を示した。
中国は不動産市場を支援するために多くの政策を導入してきたが、より早い回復と移行期間の経済的コストを抑えるためには一段の措置が必要と述べた。
包括的な政策パッケージに含めるべき措置として、存続不可能な不動産開発業者の退場加速、住宅価格調整の阻害要因の除去、住宅完成に向けた中央政府の追加資金拠出、バランスシート修復と小規模不動産市場への適応に向けた存続可能な不動産開発業者への支援ーーを挙げた。
ゴピナート氏はまた、「中央政府は地方の債務負担に対処するため、協調的な財政枠組みの改革とバランスシートの再構築を実施すべきだ」と指摘。地方政府傘下のインフラ投資資金調達プラットフォーム「融資平台」の債務水準引き下げへ包括的な再編戦略を策定すべきとも述べた。
同氏は「新たな脆弱性の出現を防ぐには、地方政府の財政の透明性向上とリスク監視の改善が必要だ」とし「金融安定に対するリスクは高く、依然として増大している」と述べた。
フィリピン統計局が7日発表した10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.9%上昇で、伸びは3カ月ぶりに鈍化した。中銀への追加利上げ圧力が緩和するとみられる。
ロイター調査による予想は5.6%上昇、中央銀行の予想は5.1─5.9%の上昇だった。9月は6.1%上昇していた。
コメの価格上昇が減速したことなど食品全体がCPI減速に寄与した。変動の激しい食品とエネルギー価格を除いたコアインフレ率は5.3%と、前月の5.9%から鈍化した。
一方、年初からの平均インフレ率は6.4%と、中央銀行の今年の目標(2─4%)を依然上回った。
バリサカン国家経済開発長官は「地政学的な不透明性やエルニーニョ現象など世界的な困難の中、食品、輸送、エネルギーを中心とする商品価格の監視を続けることが不可欠」と述べた。
中銀はインフレ懸念を受けて10月26日に緊急利上げを実施。政策金利の翌日物リバースレポ金利を0.25%ポイント引き上げ6.50%とし、11月16日に再利上げすることにも含みを残した。
リザル・コマーシャル・バンキングのエコノミスト、マイケル・リカフォート氏は、10月のインフレ鈍化とペソ相場上昇、国際原油価格下落が相まって「金利据え置きを後押しするか、少なくとも追加利上げの緊急性を緩和するだろう」と述べた。
●中東
イランのライシ大統領は12日にサウジアラビアを訪問すると、ニュースサイトEtemadonlineが6日に伝えた。中国の仲介で両国が国交を再開してから初めてのイラン首脳のサウジ訪問となる。
報道によると、ライシ大統領はパレスチナ問題協議のためにリヤドで開かれるイスラム協力機構(OIC)首脳会議に出席するという。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエル南部を攻撃したことに端を発する戦闘を巡っては、周辺地域や国際社会が対応策で合意できずにいる。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる10月7日の奇襲で始まったイスラエルとハマスの衝突は、ガザの死者数がついに1万人を超えた。
そうした中で、民間人の死者を極力抑えるべくイスラエルに働きかけるよう求める国内外からの圧力にさらされているバイデン米政権は、イスラエルがハマスせん滅に向けて強硬姿勢を崩さないため、対応に苦慮している。
複数の米政府高官が公的にも私的にも、食料搬入や住民移動のための一時停戦要求を含め、ガザで人命を守る必要があると強調している。しかし、米国はこうした努力が不十分だと批判を浴びており、6日には国連の主要機関トップが、ガザでの人道的停戦を呼びかけた。
ロイター/イプソスの世論調査によると、米国民の大多数がガザ市民を救うため、米政府が交渉に動くことを望んでいる。
左派のバーニー・サンダース上院議員は5日のCNNの番組で、イスラエルには悪らつなテロ組織であるハマスから身を守るためのあらゆる権利があるとしつつ「何の関係もない何千人、何万人もの罪のない男性、女性、子どもを殺す権利は、イスラエルにはないというのが私の考えだ」と述べた。
バイデン大統領に近い民主党議員や人権団体、自制を求める欧州や中東の各国政府なども、同様の見解を示している。
サンダース氏は、米国がイスラエルに対して年間38億ドルの軍事支援を行っている以上、イスラエルに対して軍事作戦の変更を要請する権利があり、変更してほしいと訴えた。
バイデン政権幹部は、イスラエル向け軍事支援に条件を付けることを拒否している。だが、政権内からも、ガザ攻撃を自制するようイスラエルを説得できない現状にいら立つ声も出ている。
ハマスによる先月7日の奇襲でイスラエルでは1400人が死亡、240人余りが人質になった。イスラエルは心理的な打撃を被り、安全保障上の脆弱性が露呈するとともに「無敵神話」は崩壊した。
複数の米政府高官によると、イスラエルの指導者はこうしたダメージの修復には強力な報復行動しかないと考えており、自制を求める声は聞きいられていない。
イスラエル側は、ハマスが民間人や人質を盾にしていて、民間人が戦闘地域から退避するのを阻んでいるとも主張している。
<民間人の被害抑制を要請>
ブリンケン国務長官の中東訪問に随行した米国務省高官の話では、軍事作戦遂行を専門とする米政府高官が民間人の犠牲を最小限に抑える方法についてイスラエルに助言する一方、米政府がイスラエルに対してガザの一部を攻撃の標的から外すよう働きかけている。
ブリンケン氏はこれまで2度にわたり中東を訪問し、人道的な一時停戦受け入れるようイスラエルを説得したが、明確な進展はない。
複数の米政府高官は、こうした呼びかけはイスラエルの戦闘方法に多少なりとも影響を与える成果があり、この数日間は空爆の回数が減っているが、民間人が爆撃される映像に「飲み込まれている」と嘆いた。
イスラエルはハマスに対する「徹底的な締め付け」を望んでおり、人道的アクセス面のいかなる譲歩も、ハマスへの圧力の緩和だと考えている。だが、国務省高官は、それでも「(援助)トラック3台は多すぎる」としていた当初の立場からは、姿勢が軟化したと説明した。
<軍事支援への条件付与せず>
サンダース氏が言及した年間38億ドルのイスラエル向け軍事支援は、オバマ政権下で成立した10年間で総額380億ドルの包括的な軍事援助を指す。
この案件は当時、米国の他国への軍事援助としては最高額だった。バイデン氏はハマスの攻撃以来、イスラエルへの140億ドルの追加支援を議会に求めている。
ハリス副大統領は先週、民間人被害の低減優先を対イスラエル支援の条件とすべきかとの質問に「イスラエルに与えている自衛のための支援に、条件を付けるつもりはない」と答えた。
米国はウクライナやサウジアラビアなど他の国への軍事支援では、実施にあたり一定の条件を付けている。
中東アナリストで元国務省職員のアーロン・デビッド・ミラー氏は、米国がイスラエル支援に条件を付けるとは考えにくく、共和党や多くの民主党議員が反対すると見ている。
<停戦と一時停止>
イスラエルとバイデン政権は、ハマスの再編成を許すことになるとして停戦要求を繰り返し拒否。バイデン政権は「人道的な一時的な戦闘停止」を支持しているが、イスラエルはこれにも反対している。
停戦を支持する米議員の中には、ハマスの根絶を支持しつつ、イスラエルの戦略は裏目に出ると危惧する声もある。
民主党の急進左派の代表格、プラミラ・ジャヤパル下院議員は「何千人ものパレスチナ人、何千人もの子どもたちを殺害し、難民キャンプを空爆すれば、たとえハマスの指導者を何人か始末したとしても、こうした状況が続けば住民が過激化し、別のハマスが生まれるだろう」と警鐘を鳴らした。
オバマ前大統領は週末に発表されたインタビューの中で、米国の責任に言及。「誰の手も汚れており、私たち全員がある程度加担していることを認めなければならない」と語った。
米国務省のパテル副報道官は7日、パレスチナ市民のガザ以外への強制移住について米国は支持も検討もしていないと述べた。
また、イスラエルのネタニヤフ首相が6日にガザについて、イスラエルが無期限で治安全般の責任を担うという認識を示したことについてコメントを求められたパテル副報道官は、米政権はイスラエルによるガザ再占領に反対していると応じた。
英政府は7日、イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの戦争が英国内の地域社会の結束に与える影響について緊急治安閣僚会議(COBRA)を開催する。
スナク首相の報道官は「副首相がイスラエルとガザの状況に対する政府の対応を調整するためのCOBRAの議長を務める」と指摘。「幅広い分野を検討するが、特にテロ攻撃が英国内に与える影響や地域社会の結束を巡る重要事項にどう対処するかに重点を置くのは明らかだ」とした。
トルコ議会は7日、イスラエルを支持する企業の製品を国内のレストランやカフェテリアなどから排除すると発表した。関係筋によると、米飲料大手コカ・コーラ(KO.N)とスイス食品大手ネスレ(NESN.S)の製品が対象という。
イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの衝突が起きてから、政府や主要組織が世界的なブランドを標的とする初の動きとなる。
トルコ議会の議長は社名には言及せず、「イスラエルの戦争犯罪、ガザにおける罪のない市民の殺害に公然と支持を表明した企業の製品」のボイコットを呼びかける国民の声を支援するための決定と説明した。
トルコの活動家らはこのところ、イスラエルの製品とイスラエルを支持しているとみなされる西側諸国の企業のボイコットを呼びかけるソーシャルメディアへの投稿で、コカ・コーラとネスレの社名を挙げていた。
イスラエルのネタニヤフ首相は、パレスチナ自治区ガザの治安維持を同国が「無期限」で行う可能性もあると述べた。戦争終了後も長期にわたってイスラエルがガザに関与することを示唆した形だが、それが統治を意味しているのかは定かではない。
ネタニヤフ首相はABCニュースが6日遅くに放送したインタビューで、ガザの将来の治安体制について「イスラエルが無期限で全体的な治安の責任を負う。それを負わなかったときに何が起きるか、われわれは目の当たりにした」と発言。「われわれが治安確保の責任を担わなかった時に起きたのは、想像を絶する規模のハマスのテロだ」と続けた。
首相の発言について、外交政策顧問を務めるオフィール・ファーク氏は「ハマス後について、議論されている選択肢は数多くある」と説明した。
●中南米・アフリカ
11月19日のアルゼンチン大統領選決選投票を前に地元調査機関アナロギアが6日公表した最新世論調査によると、与党連合の中道左派セルヒオ・マサ経済相の、リバタリアン(自由至上主義者)のハビエル・ミレイ下院議員に対するリードが縮小したことが分かった。
支持率はマサ氏が42.4%、ミレイ氏が39.7%。アナロギアが第1回投票直後に行った調査に比べ、リードが8ポイントから3ポイント程度になった形だ。なお投票先を決めていないと答えた割合は18%前後だった。
ミレイ氏は、第1回投票で3位になった野党連合の中道右派パトリシア・ブルリッチ元治安相や、ブルリッチ氏に近いマウリシオ・マクリ元大統領の支持を獲得し、足元で勢いを強めている。
ブラジルに拠点を置く調査機関アトラス・インテルの世論調査では、ミレイ氏が支持率48.5%とマサ氏の44.7%を上回っており、投票先を「分からない」もしくは白票を入れると答えたのが約7%となった。
第1回投票では多くの調査でミレイ氏優勢が伝えられたが、結局マサ氏が首位に立った。ただアトラス・インテルはマサ氏の首位を予測した数少ない調査機関の一つだ。
南米チリの憲法審議会は7日、ボリッチ大統領に新憲法の草案を提出した。12月17日に憲法案の承認の可否を問う国民投票を実施する。草案をつくった審議会は右派勢力が強く、外国人移民や中絶に厳しい保守的な内容が多く盛り込まれた。
左派のボリッチ氏は7日、国民投票を実施する方針を正式に示して「チリ国民の英知を完全に信じる」と述べた。世論調査では承認に否定的な国民が多い。
●市況
<為替> ドルが上昇。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のハト派的な発言や軟調な米雇用統計を受けた先週のドル売りは行き過ぎとの見方が強まった。
7日にはFRB当局者による発言が相次いだ。ウォラー、ボウマン両理事は、年率4.9%という第3・四半期の米国内総生産(GDP)成長率について、FRBが次の政策を検討する際に注目すべき「爆発的な」数値という認識を示した。
ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、最近の好調な経済指標を踏まえると、インフレを目標の2%に回帰させるためにFRBによるさらなる取り組みが必要となる可能性があると述べた。一方、シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は、FRBがインフレ率を目標の2%に下げることに大きく前進したとし、この状態が続けば、政策金利をいつまで現行水準にとどめるかに焦点が移るとした
米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は、FRBはインフレ率を目標の2%に下げることに大きく前進したとし、この状態が続けば、政策金利をいつまで現行水準にとどめるかに焦点が移ると述べた
FRB内でもタカ派とされるウォラー理事は、年率4.9%という第3・四半期の米国内総生産(GDP)成長率はFRBが次の政策を検討する際に注目すべき「爆発的な」数値だったと述べた。ただ、政策を巡る発言はなかった。
金融市場は追加利上げの可能性を若干織り込みつつも、来年11月までに0.25%ポイントの利下げが3回行われるという見方を織り込んでいる。
豪ドル/米ドルは0.88%安の0.6431米ドルで、1日としては1カ月ぶりの大幅な下落率となる見通し。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は6日、予想通り政策金利を12年ぶりの高水準となる4.35%に引き上げた。ただ、追加利上げの必要性についてはデータ次第とし、市場では今回が最後の利上げになる可能性があるとの見方が浮上した。
<債券> 国債利回りが急低下した。この日発言したFRB幹部らがインフレと金利見通しについてよりバランスの取れた見解を示し、引き締めサイクルの終わりに近づいている可能性を示唆した。
<株式> 続伸し、S&P総合500種(.SPX)とナスダック総合(.IXIC)が2年ぶりの連騰を記録した。FRBの利上げサイクルが終了したとの観測を背景に米国債利回りが低下し、超大型グロース株に買いが入った。
S&P500は7日続伸、ナスダックは8日続伸となり、どちらも2年ぶりの連騰記録となった。ダウ工業株30種(.DJI)は7日続伸で、7月に記録した13連騰以来の長さだった。
超大型グロース銘柄ではマイクロソフト(MSFT.O)が1.1%、アップル(AAPL.O)が1.5%、アマゾンが2.1%、それぞれ値を上げた。
S&P500の業種別指数ではエネルギー(.SPNY)が2.2%安と最大の下落率となった。原油先物の急落を受けた。
<米原油先物> 石油需要減退への警戒感が浮上し、反落した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値(終値に相当)は前日比3.45ドル(4.27%)安の1バレル=77.37ドル。中心限月の清算値ベースで7月下旬以来約3カ月半ぶりの安値を付けた。1月物は3.39ドル安の77.21ドル。
<ロンドン株式市場> 下落して取引を終えた。コモディティー(商品)関連株が売られたのが相場を押し下げた。
中国の低調な貿易統計を受けて需要見通しが弱まり、FTSE350種石油・ガス株指数(.FTNMX601010)が1.90%下落し、鉱業株指数(.FTNMX551020)も2.44%下げた。
衣料品・食品大手のアソシエーテッド・ブリティッシュ・フーズ(ABフーズ)(ABF.L)は6.8%高。傘下の衣料品事業プライマークの堅調な利益率回復を追い風に、新年度の「意味ある進展」を予測したことが材料視された。
<欧州株式市場> 続落して取引を終えた。ポルトガル株が大幅下落し、コスタ首相の辞意表明がマイナス材料となった。
コスタ氏率いる社会党によるリチウム採掘や水素関連事業を巡る不正疑惑に対する捜査が進められる中での辞意表明を受け、ポルトガルのPSI─20指数(.PSI20)は2.54%下落した。
ドイツのダイムラー・トラック(DTGGe.DE)は4.6%安。第3・四半期の売上高と利益が予想を下回ったことが嫌気された。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが低下した。予想を下回るドイツ鉱工業生産やポルトガル首相の辞意表明が材料となった。
日経先物32,510、ダウ先34,222、債先144.47、米4.573、独2.6580、仏3.252、西3.712、伊4.481、英4.3220、波5.493、原油77.08、銅8,203、ドル円150.38、ユーロドル1.0696
※11/8 8時30分頃
備忘録(2023/11/6)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
ドイツ銀行は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に連動していたその他ティア1債(AT1債)の条件を変更する。債券保有者にとって有利な条件で合意した。
ドイツ銀の6日の発表によると、同行は12億5000万ドル(約1900億円)相当のAT1債でクーポンの基準となる金利を担保付翌日物調達金利(SOFR)に変更する。
変更がなければ、今年正式に廃止されたLIBORに基づく変動金利を算定することが不可能になっていた可能性があったため、ドイツ銀にとって問題が解決されたことになる。
LIBOR廃止が原因で混乱に直面しているAT1債はまだ210億ドル近くあり、同様に解決を強いられる銀行は今後増えるとみられる。
フェデレーテッド・ハーミーズの金融機関担当責任者、フィリッポ・マリアアロアッティ氏は「ドイツ銀にとっては問題だっただろう」とし、「サイクルのこの段階では、LIBORからの転換よりももっと重要なことがある」と話した。
ドイツ銀は約1年前にも条件変更を試みたが、十分な賛成が得られなかった。今回は同意に対して0.5%の料金支払いを提案し投資家の同意を取り付けた。
ドイツ銀のAT1債は2020年序盤に最初の繰り上げ償還日が到来したが、新型コロナウイルス流行で借り換えコストが懲罰的な高さとなり、償還を見送らざるを得なかった。
クレジットサイツのグローバル金融リサーチ責任者、サイモン・アダムソン氏は「AT1のリセット基準レートを変更するための同意獲得は難航している。一部の投資家は償還される確率を高めたいと考えているため、銀行は同意料を提示することが成功を確実にする最善の方法であることを受け入れざるを得なかった」と説明した。
米銀行大手シティグループ(C.N)のジェーン・フレイザー最高経営責任者(CEO)が進める組織再編に携わる幹部とコンサルタントが、複数の主要事業で従業員の最低10%を削減する計画を協議していることが分かった。米CNBCテレビが6日、関係者の話として報じた。
CNBCは協議が初期段階にあり、削減人数は変更される可能性があるとも伝えた。計画策定のために米ボストン・コンサルティング・グループを起用したと報じた。
シティは9月に発表した大規模改革の一環として人員削減を実施することを予告しており、2023年第4・四半期中に従業員削減とコスト圧縮の規模を見積もると表明していた。
CNBCによると、社内で「プロジェクト・ボラボラ」と呼ばれている再編は、組織簡素化を株価浮揚につなげたいフレイザー氏がより直接的にコントロールすることを目指している。フレイザー氏は役割が重複している幹部ポストの廃止を考えており、10%を超える幹部の削減につながるという。
シティは10月、幹部層を13から8へ圧縮すると発表。うち上位2層の機能ポストの15%が削減され、計60の委員会の廃止を盛り込んでいた。
シティが10月に公表した最新の世界全体の従業員数は24万人で、横ばいだった。
シティの広報担当者は、ボストン・コンサルティングを起用したかどうかにはコメントを控えながらも「以前も申し上げた通り、当社は銀行の潜在力をフルに発揮させ、ステークホルダーとの約束を果たすことに全力を尽くしている」と言及した
フレイザー氏は21年にシティのトップに就いて以来、利益水準の改善、銀行の合理化、規制上の問題の解決に向けて取り組んできたものの、株価は同業他社に比べて依然低迷している。
ゼイネブ・マガビさんは10年余り前に米マサチューセッツ州の自宅を改築した際、1年を通じて変わらない地中の温度を冷暖房に活用するというアイデアに血が騒いだ。
調べたところ、こうした地熱利用システムは稼働すれば驚くほど効率的だが、設置費用は5万ドルと予算をはるかにオーバーしていた。
ある企業からシステムに加わるよう近隣の住民を説得してくれたら割引すると提案されたが、地域で賛同は得られなかった。しかし、この経験を出発点に研究や体制作りを進め、それが大きく育ちつつある。
マガビさんが共同エグゼクティブ・ディレクターを務める非営利団体「ホーム・エナジー・エフィシェンシー・チーム(HEFT)」は、ガス会社がマサチューセッツ州で近隣住民規模の地熱利用ネットワークを構築する2つの試験プロジェクトの育成を支援している。
「ガス会社がガスからの転換を図るというのは、とても驚くべきことだ」とマガビさん。同プロジェクトはガス会社の人員、ノウハウ、料金徴収システムなどを利用しているという。
米エネルギー省は今年4月、10州で11件の地域地熱利用プロジェクトを支援すると発表。いくつかの州が、この戦略を後押しする新しい法律を可決した。
ガスのインフラが老朽化し、温室効果ガスの排出量削減目標を掲げる自治体が増える中、地熱はグリーンエネルギー移行の完成に不可欠なピースであり、その可能性は極めて大きく、しかも利用できるのは金持ちだけではない、とマガビさんは力説する。「地熱エネルギーは、どこにでもある。(電力網と同時に)今では地熱ネットワークが必要だ」という。
マサチューセッツ州フラミンガムで進む国内初の試験プロジェクトでは、1マイル(約1.6キロ)の距離に最大で深さ700フィートのボーリング孔が複数(訂正)掘削されており11月中に完了する予定だと、ガス・電気・水道事業者エバーソースのプロジェクトマネージャー、エリック・ボスワース氏は話す。「作業自体は、従来のガス工事と非常によく似ている。ガス事業者は試しにこうした作業を行うのに最適だと考えた」という。
ボスワース氏によると、このシステムは来年、一般家庭や企業、公営住宅、学校、消防署を含む140の顧客向けに冷暖房の提供を開始する予定。今後2年間にわたり専門家がコスト、顧客の電気代と排出量削減状況、電力網への影響などを監視する。
<関心高い消費者>
米連邦政府はフラミンガムなどの初期プロジェクトに倣う取り組みを模索中で、消費者の関心は高い。
ボスワース氏によると、システム沿いに住む住宅顧客の80%以上がプロジェクトへの参加を希望している。また他の顧客からこのシステムを近所に敷設できないか尋ねる電話も受けている。
エネルギー省の地熱担当部門のアレクシス・マッキトリック氏は「地面の下にある熱から安定したエネルギーを取り出す方法は全国で利用可能であり、地域規模で地熱による冷暖房を行えば、消費者にとってさらに利便性が増す可能性さえある」と述べた。
ニューヨーク州は昨年、全てのガス・電気企業にこうしたプロジェクトを義務づけ、労働組合や環境保護団体から大きな支持を得た。現在14の試験プロジェクトが進行中だ。
コロラド州も最近、地熱利用を促進する法律を可決。また、22人の州知事で構成する西部州知事協会は、地熱利用を促進するキャンペーンに乗り出した。
コロラド州では、既に先駆的なプロジェクトが行われている。コロラド・メサ大学は2008年からシステム構築が進み、今ではキャンパスの約3分の2に冷暖房を供給していると、ジョン・マーシャル学長は説明した。このシステムは深さ数百フィートのボーリング孔を通る何キロもの水道管で構成されている。
エネルギーコストの節約は年間150万ドル。システムがキャンパス全体をカバーするようになれば、さらに年間100万ドルが節約できると見込んでいる。学長は「非常にうまくいっている」と語った。
●その他産業
●決算関連
シンガポールの銀行最大手DBS(DBSM.SI)グループが6日発表した2023年第3・四半期(7―9月)決算の純利益は前年同期比18%増の26億3000万シンガポールドル(19億4000万米ドル)だった。LSEG集計の市場予想(アナリスト4人が回答)の25億シンガポールドルを上回った。堅調な金利収入に加え、手数料の伸びが好業績をもたらした。
前年同期の純利益は22億4000万シンガポールドルにとどまっていた。
同グループは23年12月期純利益が過去最高を更新するとの見通しを公表済み。24年の純利益予想を巡ってグプタ最高経営責任者(CEO)は6日の決算発表資料の中で「23年の記録的な水準を維持する見通し」と表明した。純金利収入(NII)に加え、富裕層向けビジネスとカード事業に伴う手数料収入について、23年とほぼ同水準を見込んでいるためという。
またグプタ氏は声明の中でバランスシートにも言及。潤沢な手元流動性や十分な引き当て、健全な自己資本比率が「マクロ経済の先行き不透明に対し強力な緩衝材になるだろう」と自信を示した。
DBSでは今年、システム障害が数回起きた。このためシンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)から先週、デジタルバンキング・サービスの強化に集中するため、新規事業の買収や絶対必要というわけでもないIT仕様の変更を6カ月間禁止されたばかり。グプタ氏は6日の声明の中で「包括的な一連の措置」を実行すると述べた。
オーストラリアの大手行ウエストパック銀行(WBC.AX)が6日発表した2023年度(23年9月30日終了)決算は、主要部門全てで業績が伸びた結果、26%の増益を確保したが、市場予想はわずかに下回った。24年度も事業環境に逆風が続くとの見通しを示した。
純利益は72億豪ドルと、前年度の56億9000万豪ドルから増えたが、LSEGがまとめた市場予想の74億1000万豪ドルを下回った。
預金、住宅ローン、機関投資家向け銀行業務など主要部門で事業状況が改善し、業績が伸びたという。
純金利マージンは2ベーシスポイント(bp)上昇して1.95%。資本利益率の上昇と一部例外を除く預金スプレッドの拡大が背景にある。
ただ、激しい競争で貸出スプレッドが縮小し、低リターンの流動資産が増えたことが利ざやの拡大を抑えたとした。
24年度については、融資競争の影響が時間差を伴い表れると見込む。また、根強いインフレが阻害要因になるとみており、24年度にコスト増加圧力が強まるとの見通しを示した。
期末配当は前年の0.64豪ドルから増やして0.72豪ドルにすると発表。また、15億豪ドル(9億7560万米ドル)の自社株買いを開始したと明らかにした。
7-9月(第3四半期)の米企業決算シーズンでは、売上高の失速が鮮明となっている。消費者需要の弱含みにより、企業はさらなる値上げが難しくなっていることがうかがわれる。
これまでS&P500種株価指数構成企業の80%余りが決算を発表した段階で、7-9月売上高が市場予想を上回ったのは半数に満たず、2019年7-9月以来の低水準となった。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)がデータをまとめた。ドイツ銀行のストラテジストは、売上高の伸びは世界的に「コロナ禍前のレンジ下限」まで減速していると指摘した。
そのため、今回の決算シーズンでは、予想外のプラスとなっている利益よりも、企業から相次ぐ売上高に関する弱気な発言に注目が集まっている。アップルは先週、年末商戦に当たる10-12月売上高が前年並みになるとの見方を示し、成長の回復を期待していた投資家の失望を誘った。大手化粧品メーカーのエスティローダーもさえない売上高見通しが嫌気され、株価が急落。欧州でも、酒類の仏レミー・コアントローといった有力企業による売上高見通しの引き下げが目立つ。
ステート・ストリート・グローバル・マーケッツのマルチアセット担当シニアストラテジスト、マリヤ・ベイトメーン氏は、今回の決算では、経営陣からガイダンスに関する慎重な発言が相次いでおり、同社では価格設定力の低下に伴う売上高の弱含み、利益率縮小について注目していると指摘。「今のところ、消費者と企業はまだ信用にアクセスできる状況にあるが、一段と難しくなっており、かつコストも増大している。これが枯渇すれば、さらに痛みが増す」と述べた。
ブルームバーグが決算会見の記録を分析したところ、欧米ともに「弱い需要」がキーワードのトレンド上位に入った。2000年以降のデータによると、まだ約2割の企業による決算発表を残した段階で、需要低迷への言及回数はすでに2番目の高さとなっている。
三菱重工業が6日発表した2023年4〜9月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比70%増の919億円だった。日本会計基準だった時期を含め04年3月期以降で4〜9月期として最高となった。脱炭素の流れを受け、高効率のタービンなどガス火力発電関連が好調だった。米社のエンジン品質問題に関する費用を補った。
東京株式市場では取引時間中の発表を受け、株価が一時前日比8%高の8573円を付けた。終値は7%高の8525円。売上高にあたる売上収益は10%増の2兆692億円、本業のもうけを示す事業利益は84%増の1009億円だった。為替の円安は130億円の増益要因となった。
けん引役の一つがガスタービンや航空エンジンなどの「エナジー事業」で、事業利益は80%増の353億円だった。ガス火力関連が好調で、中でもガスタービンの排熱を使って蒸気タービンも回す「GTCC」と呼ぶプラントが伸びた。
米航空防衛大手RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)傘下のプラット・アンド・ホイットニー(P&W)が開発するエンジン「PW1100G」の品質問題については、200億円弱の損失が発生した。三菱重工は同開発プログラムに2.3%出資しており、出資分に応じた損失を計上した。
フォークリフトや冷熱機器など中量産品事業の事業利益も4.4倍の367億円と好調だった。原材料高の価格転嫁が進んだ。新型コロナウイルス禍から航空機需要が回復したことで、米ボーイング向けなどの航空機部品も伸びた。
24年3月期の売上収益、純利益の見通しは据え置いた。売上収益で前期比2%増の4兆3000億円、純利益で46%増の1900億円を見込む。受注高は24%増の5兆6000億円と従来予想から1兆円引き上げた。「航空・防衛・宇宙事業」が8000億円上振れする。大半を政府が予算を増額する防衛事業が占めるという。収益貢献は来期以降となりそうだ。
検討を進めている新たな3カ年の中期経営計画について、泉沢清次社長は「脱炭素や省人化、国家安全保障関連分野に注力する」と表明。成長分野に3000億円投資する意向を示した。
●先進国、グローバル、金融市場
S&Pグローバルがまとめた10月のユーロ圏のHCOB総合購買担当者景気指数(PMI)改定値は46.5で、前月の47.2から低下した。新型コロナウイルス規制が強化されていた2020年11月以降で最低となった。
ユーロ圏の景気後退(リセッション)リスクが高まっていることを浮き彫りにした。好不況の分かれ目となる50を5カ月連続で下回った。速報値から変更はなかった。
サービス業の需要が一段と減少した。10月のサービス部門PMI改定値は47.8。前月の48.7から低下した。速報値から変更はなかった。
ハンブルク商業銀行のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は「ユーロ圏のサービス部門は第4・四半期の初めからつまづいているようだ。新規受注が急減しており、今後の明るい見通しは描けない」と指摘。
「ユーロ圏の域内総生産(GDP)は第4・四半期に減少する可能性が十分にある」とし、主要国ではフランスの経済情勢が最も悪く、ドイツとイタリアもフランスに近い状態という。
サービス部門の新規受注指数は46.4から45.6に低下し、21年初頭以来の低水準。物価や借り入れコストの上昇が響いた。
総合産出価格指数は52.2から52.0に低下。21年初め以来の低水準となった。
キャピタル・エコノミクスのエイドリアン・プレッテジョン氏は「PMI改定値は、ユーロ圏GDPが第4・四半期に再び縮小するという当社の予想と整合的だ。見通しも非常に悪い。新規受注はパンデミック初期を除いて12年9月以来の低水準だ。輸出も非常に弱い」と指摘した。
域内サービス部門はドイツが再び50を下回り、フランスは引き続き50を下回った。イタリアも3カ月連続で50を下回り1年ぶりの低水準となった。スペインは50.5から51.1に上昇した
S&Pグローバルがまとめたフランスの10月のHCOBサービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値は45.2と、前月の44.4から上昇したものの、需要低迷で好不況の分かれ目となる50を引き続き下回った。
速報値は46.1だった。
製造業とサービス部門を合わせた10月の総合PMI改定値は44.6。9月の44.1から上昇したが、45.3だった速報値を下回った。
ハンブルク商業銀行(HCOB)のエコノミスト、ノルマン・リープケ氏は「全体的にも外部からも新規受注が急減しており、企業活動は大幅に低下している」と語った。
S&Pグローバルがまとめた10月のドイツのサービス業景況感は需要低迷で再び縮小に転じた。
HCOBサービス部門購買担当者景気指数(PMI)改定値は48.2で9月の50.3から低下した。
ハンブルク商業銀行(HCOB)のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は、新規受注が7月から低迷しており、今後数カ月も厳しい状況が続くとの見方を示した。
ただ雇用への影響は引き続き限定的で、雇用はわずかな減少にとどまった。
経済全般やインフレ圧力への懸念から今後1年については、楽観しつつも慎重姿勢を保っている。
サービス業と製造業を合わせた総合PMIは46.4から45.9に低下した。
6日発表された10月のイタリアのHCOBサービス部門購買担当者景気指数(PMI)は好不況の分かれ目である50を3カ月連続で下回った。
10月のPMIは47.7と1年ぶりの低水準。9月の49.9から低下し、ロイターがまとめたアナリスト予想中央値の49.5も下回った。
新規ビジネス指数は50.0から46.9に低下。雇用指数も51.0から49.8に低下した。
HCOBのエコノミスト、タリク・カマル・チョードリー氏は「ビジネスの減少、スキルを持つ人材の不足で雇用が止まった」と述べた。
製造業PMIは7カ月連続で50を下回った。
サービス業と製造業を合わせた総合PMIは47.0で9月の49.2から低下した。
独IFO経済研究所が6日発表した調査結果によると、国内の住宅建設部門では10月もキャンセルが相次ぎ、プロジェクトの中止を報告した企業の割合は22.2%と前月の21.4%から上昇し、過去最高となった。
調査担当責任者クラウス・ボールラーベ氏は「金利上昇と建設価格高騰により、多くのプロジェクトが行き詰まっている。住宅建設では新規ビジネスは依然として非常に少なく、企業の受注残は減少している」と語った。
受注不足と回答した企業の割合も9月の46.6%から48.7%に拡大。1年前にはわずか18.7%だった。
調査会社センティックスが6日発表した11月のユーロ圏投資家センチメント指数はマイナス18.6で、前月のマイナス21.9から改善した。
ロイターがまとめた市場予想のマイナス22.2を上回った。
期待指数は前月のマイナス16.8からマイナス10.0に上昇し、2月以来の高水準を記録した。2カ月連続の改善となった。
センティックスのマネジングディレクター、パトリック・ハシー氏は「マイナスの勢いが鈍ったのは改善の初期兆候だ。ただ、最終的に危機が去ったと判断するには、期待指数がプラスになる必要がある」と述べた。
現況指数はマイナス26.8と、前月のマイナス27.0から小幅な改善にとどまった。
オーストラリアのアルバニージー首相は6日、中国北京の人民大会堂で習近平国家主席と会談し、中国の安定した成長の継続と世界との関与に関心を持っていると述べた。
アルバニージー首相は会談の冒頭、両国の強固な関係は「将来にわたり有益」と表明した。
豪首相官邸の発表によると、首相は「オーストラリアは、この地域の国々とともに中国経済の安定した成長の継続と、進行中の世界との関与に関心を持っている」と指摘。意見の相違が生じた場合は「コミュニケーションをとることが重要だ」と述べた。
米財務省が主導する米金融安定監督評議会(FSOC)は3日、金融システムにリスクをもたらすと見なす資産運用会社やヘッジファンドなどノンバンクに対する監視を強化することで合意した。
金融システムに迫るリスクを特定するための新たな枠組みも採択した。
これらの変更はノンバンクを「金融システム上重要な金融機関(SIFI)」に指定するプロセスに関するもので、4月に提案されていた。
FSOCはSIFIに指定する可能性のあるノンバンクの名称を挙げていないが、ブラックロック(BLK.N)やブリッジウォーターといった世界的な大手資産運用会社やヘッジファンドに焦点を当て、連邦準備理事会(FRB)の監督や資本・流動性要件の強化対象とする可能性があるとみられている。
新たなプロセスでは、FSOCは既存の情報に基づいて潜在的なSIFIを特定し、企業に対応する機会を与える。FSOCが手続きを進めることを決定した場合、企業は主要な規制当局とFSOCと協議する。FSOCのメンバー10人の3分の2が賛成すれば指定されることになる。指定は毎年見直される。
政策調査会社キャピタル・アルファ・パートナーズのマネジングディレクター、イアン・カッツ氏は「今回の変更により、ノンバンクをSIFIに指定することは今よりも容易になるだろうが、長い時間がかける慎重なプロセスになり、開始から終了まで少なくとも1年は要するだろう」と述べた。
米金融政策が経済を冷やし、金融環境を引き締める中、米連邦準備制度理事会(FRB)のクック理事は6日、銀行以外の金融機関の脆弱(ぜいじゃく)性を注意深く監視していると述べた。
ック理事はノースカロライナ州にあるデューク大学で講演し、「特定のノンバンクの脆弱性が、金融環境引き締まりと経済活動鈍化に伴うストレスの増幅において主要な役割を演じる可能性がある」と述べた。講演内容は準備原稿に基づく。
同理事は金融の安定について広範囲に発言した。金融市場ではリスクがここ数年高まっているとし、自身が注視しているという複数の分野を指摘。ノンバンクにおける流動性のミスマッチや債務返済延滞率、米国債市場の機能などを具体的に挙げた。
クック氏はまた、最近人気が高まっているベーシス取引(米国債の現物と先物との価格差を利用して利益を得ることを目指す取引)について特に言及。「ベーシス取引はしばしば高レバレッジであるため、米国債市場におけるボラティリティーの高まりや調達ショックを受けて、ヘッジファンドがディストレスト価格水準でポジションを突然巻き戻さざるを得なくなる可能性がある」と述べた。
2024年の米大統領選で再選を目指す民主党の現職バイデン氏は、投票まで1年となった今の段階で、勝敗を決する上で重要な6つの州うち5つの州で支持率が共和党のトランプ前大統領を下回っていることが、5日公表の世論調査結果で分かった。
米ニューヨーク・タイムズ紙とシエナ・カレッジが行った調査によると、24年大統領選の共和党指名候補争いでトップを走るトランプ氏は、アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニアの重要州5つでバイデン氏をリード。バイデン氏がトランプ氏を上回ったのはウィスコンシンだけだった。
バイデン氏は20年の大統領選の際にはこれら6州全てでトランプ氏を破った。しかし現在は6州の平均支持率はトランプ氏が48%と、バイデン氏の44%を上回っている。
全国調査ではバイデン氏とトランプ氏の支持率が拮抗している。しかし米大統領選は、選挙のたびに勝利政党が変わる「スイングステート(揺れる州)」が勝敗を左右することが多い。
バイデン氏は前回の選挙でスイングステートである上記6州での勝利が当選に大きく寄与したが、これら6州は16年の選挙ではトランプ氏が勝利していた。バイデン氏が再選を果たすには、再びこうした州の多くを制する必要がありそうだ。
米投資ファンドのブラックストーン・グループは、2024年の同社のプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資について、アジアではインドや日本に案件が集中するとの見通しを明らかにした。
PE事業を統括するジョー・バラッタ氏は、ブルームバーグの取材に対し「インドは最も成長率が高く、最も活気のある市場だ」と指摘。「日本も市場として非常に興味深い。日本経済は、世界の他の地域で起きている現象と切り離されているように思えるからだ」と述べた。
PEファンドによる日本への投資を巡っては、欧州系EQTが「アジアで最優先の市場」と位置付け、今後2-3年内に30億ドル(約4500億円)を投じる方針。ここ2年ほど他のグローバルファンドと比べて日本へのPE投資を抑制していた世界最大級のオルタナティブ(代替)投資運用会社であるブラックストーンも同様の認識を示したことで、海外勢からの日本への関心の高さが改めて示された形だ。
バラッタ氏は、日本での注目セクターとしては、IT(情報技術)サービスやヘルスケア、旅行・レジャー、消費関連を挙げた。「日本企業のデジタル化に多くのビジネス機会があると思う」といい、IT分野に成長余地を見込む。また、日本の消費支出は堅調になってきているとみており、レジャーや消費関連も有望だとした。
投資規模は1件当たり3億ー20億ドル(約3000億円)を想定。場合によってはそれ以上もあり得るという。大企業の事業売却案件などには強い関心を持っているとした。「好ましい投資機会がなければ無理して投資する必要はない」とも述べ、厳選していく方針も示した。
発表資料によると、ブラックストーンの直近の日本でのPE関連投資案件は22年、傘下のアリナミン製薬を通じたスキンケア商品製造販売を手掛ける悠香ホールディングスの買収。一方、ブルームバーグ・データによると、22年以降に米KKRは日立物流(7000億円弱)など6件、米ベイン・キャピタルはオリンパスの科学事業(4300億円弱)など8件、大型案件を含む積極投資をそれぞれ実施している。
バラッタ氏は21年夏以降、インフレや金利の先行きに対する不透明感が強まったことから、グローバルな投資方針がやや慎重になっていたと説明。一方、同社のパイプラインは同時期以降で最高水準に積み上がっているという。
また、PE投資は得られるリターンに比べて資金調達コストの割合が小さく「金利にそれほど敏感な市場ではない」として、日銀が大規模な金融緩和政策から正常化に向けて動いたとしても、投資の意思決定に影響を与えることはないとした。
1ドル=150円前後で推移する現在のドル高円安は、ブラックストーンによる日本への投資を後押しする可能性がある。バラッタ氏は円安という要素がないよりもあった方が、「より良いと感じるかもしれない」と述べた。
米国債が大きく値上がりする直前、ヘッジファンドがショートポジションを過去最大規模に拡大していた。米財務省が発表した四半期定例入札の規模が予想を下回ったことや10月の米雇用統計で雇用の伸びが予想以上に鈍化したことを受けて、先週は米国債の価格上昇に拍車がかかった。
米商品先物取引委員会(CFTC)が公表した10月31日時点の最新データによると、ヘッジファンドなどレバレッジ投資家による米国債先物のネットショートポジションはデータのある2006年以降で最大に膨らんだ。現物債が前週に値上がりしたにもかかわらず、下落を見込む取引が続いた。
マッコーリー・グループのストラテジスト、ガレス・ベリー氏(シンガポール在勤)は「先週は米国債のショートポジションが極端だったように感じられる。危険な賭けだった」とし、「ここ数カ月の米国債の相場動向は、説得力のあるストーリーが値動きを行き過ぎまで推し進めるという典型的なケースだ。今はその修正が起こっている」と話した。
10年債利回りは、10月23日に付けた5.02%のピークから43ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。米政府の借り換えニーズがより穏やかであること、雇用統計が予想を下回ったこと、連邦準備制度のタカ派色が薄まる兆しがあることなどが重なり、ショートカバーが一段と広まったとみられる。
スワップ市場は、想定されているピーク金利5.37%から来年末までに100bp余りの利下げを織り込んでいる。1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)決定と3日の雇用統計発表を受けて、トレーダーは利下げ開始時期の予測を来年7月から6月に前倒しした。
ジャバズ・マタイ氏らシティグループのストラテジストは、米当局者が利回り上昇に不快感を示していることは「モメンタム主導の売りにブレーキをかけることになる」と指摘。「弱めのデータ、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長からのハト派的なシグナル、そして借り換えについての予想より良好な見通しの組み合わせは、米国債が今週も上昇を続ける可能性が高いことを意味する」と分析している。
世界のジャンク級(投機的格付け)社債市場は2年連続の縮小に向かっている。米国債の10年物利回りが約4.5%となる中で、高リスク債への投資意欲が減退している。
中央銀行の利上げで借り換えコストが高くなったため、少なくとも一部の企業は負債の削減を図っている。ブルームバーグの指数データによると、ハイイールド債市場は1兆9400億ドル(約290兆円)規模。2022年に残高が2810億ドル減少と過去最大の縮小だったが、今年も約1700億ドル(約8%)減っており、このままいけば2回目の2年連続縮小となる。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)のクレジットストラテジスト、バーナビー・マーティン氏は「発行体が利用するには割高になったため、ハイイールド債市場は縮小している」と説明。「今の市場は10年前とは全く異なっているように感じられる」と話した。
低金利と緩和的な金融政策が何年も続いていたが、現在はジャンク級企業がいつでも借り入れができる状況ではなく、発行市場が事実上閉ざされていることも多い。3月に銀行が相次いで破綻したことで与信環境が引き締まった上に、先月は利回りが急上昇し、予定していた起債を延期・中止した企業もあり、市場の縮小につながっている。
今後は多くの企業にとって、借り換え先送りという選択肢はなくなるだろう。ゴールドマン・サックス・グループのストラテジストらによれば、18-36カ月以内に満期を迎える米ジャンク債の残高は07年以来の高水準で、借り手は間もなく借り換えを余儀なくされる見込み。
これらの企業の一部は、高額の負債と資本市場へのアクセス欠如、収益の悪化という少なくとも3つの弱点を抱えている。
ジャナス・ヘンダーソン・インベスターズの債券世界責任者ジム・シーリンスキ氏は1週間前のリポートで、「影響は遅れて表れるだろうが、金利の驚異的な上昇は現在の信用サイクルにドミノ効果をもたらすと予想される」と分析。
「高金利での債務借り換えは、インタレスト・カバレッジ・レシオの低下を招き、最終的には数年後にデフォルト(債務不履行)を引き起こす可能性がある」と警告した。
世界のジャンク債利回りはここ数カ月で急上昇。11月初めの低下後も8月の水準を大きく上回り、ブルームバーグの指数データによれば、6月前半以来の高水準に近づいている。銀行融資の確保も難しくなっており、レバレッジドローン市場も引き続き機能せず、選択肢は限られる。
これまでに世界のジャンク債市場が2年連続して縮小したのは、米金融当局が利上げサイクルを開始した15-16年だけだった。08年の世界金融危機後に行った緩和の巻き戻しだった。
市場は17年に景気回復を受け再び拡大したが、今回は借り手にとってそれほど幸運な状況にはならないかもしれない。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は7日に開く政策決定会合で、今年6月以来5会合ぶりに0.25ポイントの利上げを決定する見通しだ。執拗(しつよう)なインフレと景気のより広範なレジリアンス(耐久力)は、物価沈静化のために追加引き締めが必要な経済情勢をうかがわせる。
ブルームバーグが調査したエコノミストの圧倒的多数の予想では、政策金利のオフィシャル・キャッシュレート誘導目標は、12年ぶり高水準の4.35%に引き上げられる見込み。ブロック新総裁就任後初の利上げとなる。
豪中銀はインフレ率は2025年末までに2-3%の目標レンジの範囲内に確実に戻すことを目指しており、追加引き締めが必要と示唆する可能性がある。
豪州では7-9月(第3四半期)の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同期比5.4%と予想を上回り、9月の小売売上高の伸びも大きく上振れした。豪中銀が7日の決定会合で、タカ派バイアスに基づいて行動する約70%の確率をトレーダーは織り込んでいる。
シティグループのオーストラリア担当チーフエコノミスト、ジョシュア・ウィリアムソン氏は「政策委員会は50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを検討する可能性すらあるが、これまでの利上げの程度や現実的政治を考えれば、これが実行されるとは思えない」と指摘した。
ウィリアムソン氏は「高インフレの下で内需の伸びを十分抑制するほど、金利は中立水準を大きく上回っていない。もう1回の25bp利上げだけで、これは是正されないだろう」と見解を示した。
米連邦準備理事会(FRB)が6日発表した第3・四半期の上級銀行融資担当者調査(SLOOS)によると、銀行の融資基準厳格化ペースが第2・四半期から幾分減速したものの、資金需要は幅広く落ち込んだことが分かった。
第2・四半期に融資基準を厳格化した銀行は全体の半数以上だったが、第3・四半期にさらに厳しくしたと答えた割合は35%で、およそ62%は基準を据え置いた。また1行だけは、基準をやや緩めたと回答した。
融資基準を変更した理由については、実体経済や自行の財務状況に対する懸念を挙げた割合が減り、リスク許容度低下とローン債権が売却できにくくなった点を指摘する声が増えた。
資金需要に関しては、住宅ローンの需要がある程度、ないし大幅に減ったとの回答は第2・四半期の43%から60%に上昇。背景には、FRBの急激な利上げに伴って、住宅ローン金利が跳ね上がった影響などがある。
年間売上高が5000万ドル未満の企業の間で借り入れ需要が減ったと答えた銀行は全体の半分を超えた。一方、大企業の借り入れ需要減退を報告した割合は第2・四半期の60%弱から39%前後に下がった。
JPモルガンのエコノミスト、ダニエル・シルバー氏は今回の調査について、融資基準の厳格化と主な各ローンにおける資金需要の減少傾向は続いており、経済成長が鈍化するはずだという見方に沿った内容だと指摘した。
イングランド銀行(英中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は6日、英中銀は来年半ばまでに金利スタンスを見直せるようになる可能性があると述べた。
ピル氏は英中銀が実施したオンラインイベントで「新たな展開がなければ、その時点で金利のあり方を検討したり、見直したりする可能性がある」と述べた。
英中銀は2日、政策金利を15年ぶり高水準となる5.25%に据え置き、金利は当面高止まりするとの見方を示した。
英国は恐らく、すでにリセッション(景気後退)に入っていると、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)が分析した。高金利や失業率上昇の影響で家計は支出により慎重になっているという。
BEのエコノミスト、ダン・ハンソン、アンドレイ・ソコル両氏のリサーチによれば、英国が今年下期に緩やかなリセッションとなる可能性は52%。英国は10日に7-9月(第3四半期)の国内総生産(GDP)を発表する。
リセッションとなれば総選挙を控えるスナク政権にとって痛手だ。景気悪化はイングランド銀行(英中央銀行)が利下げへ転じる可能性を高めることになる。インフレ率が急速に低下した場合はなおさらだ。
ハンソン氏は6日発表のリポートで、「景気の停滞か緩やかな縮小かは際どいところだろう。しかし確率はわずかに後者に傾いている」と述べ、「リスクはGDPの落ち込みが想定よりもやや大幅なることだ」と続けた。
ブルームバーグの調査によれば、3日午後の段階でエコノミストは7-9月期GDPを前期比0.1%減と予想していた。
トルコを訪問したブリンケン米国務長官は6日、フィダン外相との会談後、スウェーデンのNATO(北大西洋条約機構)加盟に進展があると確信していると述べた。
ブリンケン氏は、トルコがスウェーデンのNATO加盟支持を保証したかとの質問に対し「前進が見られると確信している」と回答。トルコのエルドアン大統領がスウェーデンのNATO加盟批准に向けた法案を議会に提出したことに米国は非常に勇気づけられたとした上で、トルコと米国は「コミットメントを共有している」とした。
エルドアン大統領は10月、スウェーデンのNATO加盟批准に向けた法案を議会に提出した。
欧州連合(EU)欧州委員会は8日に公表するリポートで、ウクライナのEU加盟交渉について、所要の条件を満たした段階で開始するよう勧告する。2人のEU高官が6日明らかにした。
このリポートには、主要7分野におけるウクライナの改革の進展状況への評価が盛り込まれる見通し。評価内容は12月に開催されるEU首脳会議に提出され、そこでウクライナとの加盟交渉を始めるかどうかを正式に判断することになる。
2人のEU高官は、今回の勧告に基づけば、ウクライナとの正式交渉は来年中に始まる可能性があると説明した。
EU加盟交渉は通常何年もかかり、その間に申請国が欧州委の示す法制度や経済状況などの加盟基準をクリアする流れになる。またEUは一般的に、戦争状態にある国の加盟には慎重だ。
それでもウクライナにとって西側との統合は国家として最優先事項で、西側諸国でウクライナのEU加盟を支持する人々も、地政学的に必要不可欠だと主張している。こうした中でウクライナ政府のある高官は、欧州委がウクライナの加盟に関して積極的な評価をすることに期待していると述べた。
4日にウクライナ首都キーウを訪れた欧州委のフォンデアライエン委員長は、ウクライナが正式な加盟交渉開始に求められる条件の90%余りを既に達成していると発言した。
ただEU加盟国の全会一致が必要な加盟交渉開始を巡り、12月のEU首脳会議ではハンガリーが異議を唱える恐れがある。オルバン首相は、他のEU加盟国首脳よりもロシアとの距離が近いためだ。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ロシアのプーチン大統領は2024年3月の大統領選に出馬することを決めた。関係筋6人がロイターに明らかにした。
少なくとも2030年まで権力の座を維持することになる。
プーチン氏はエリツィン前大統領の辞任に伴い、1999年12月31日に大統領代行に指名された。同国の指導者としては、スターリン以降、すでに最長の在任期間となっている。
10月7日に71歳となった。
関係者は、出馬の決定が下され、顧問が選挙戦の準備をしていると一様に述べた。外交筋は近く発表があるとの見方を示した。
ペスコフ大統領報道官は、大統領は何ら発表していない、と述べた。ペスコフ氏は9月、プーチン氏が出馬を決めれば向かうところ敵なしだろうと述べていた。
プーチン氏は、80%という高い支持率を持ち、選挙自体は「無風」とみられるが、同氏およびロシアは、約30年前のソビエト連邦崩壊以降、最も厳しい試練に直面している。
昨年に始めたウクライナ戦争で西側の厳しい制裁を受け経済は打撃を受けた。民間軍事会社ワグネル創設者エフゲニー・プリゴジン氏による6月下旬の反乱は失敗に終わったものの「子飼いの乱」で威信が傷ついた。
モルガン・スタンレーは、北海ブレント原油が上昇して1バレル=110ドルを超える水準にとどまった場合、インド中央銀行が利上げを再開する可能性があるとの見方を示した。
経常赤字が拡大し、通貨ルピーに悪影響が出る可能性があるという。
同社のエコノミストは5日付のリポートで「原油高が続けば経常赤字が、不安のない水準である国内総生産(GDP)比2.5%を超えて拡大する可能性が高い」と指摘。
コスト上昇分が消費者に転嫁されると仮定すれば、原油価格が10ドル上昇するごとにインドのインフレ率が50ベーシスポイント(bp)押し上げられ、経常赤字は30bp拡大すると試算した。
インド中銀はインフレを抑制するため、昨年5月から今年2月にかけて計250bpの利上げを実施。その後は政策金利を6.50%に据え置いているが、インフレ率を目標の4%に引き下げることを引き続き重視している。
北海ブレントは現在85ドル付近。モルガン・スタンレーは10─12月に95ドルまで上昇し、来年にかけて下落すると予想している。
タイ商務省が6日発表した10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.31%下落し、2021年8月以来(訂正)のマイナスとなった。政府の支援策によりエネルギー価格が下落したほか食料価格も低下した。
ロイターがまとめたエコノミスト予想は0.0%。前月は0.3%上昇だった。
10月のコアCPIは0.66%上昇した。
総合CPIは6カ月連続で中央銀行の目標(1─3%)を下回った。
1─10月の総合CPIは前年同期比で平均1.60%上昇した。コアCPIは1.41%の上昇だった。
同省幹部は会見で、11月の総合CPIも前年比で小幅に下落する可能性があると指摘。政府の生活費対策と前年同月の物価が高水準だったことが背景という。ただ、国内経済は依然として成長しており、デフレにはつながらないとの見方を示した。
タイ中央銀行のセタプット総裁は先月、現状の政策金利水準は適切とする一方、世界的なリスク増大と中東紛争への懸念があると警告し、中銀は必要なら「調整」を行う用意があると述べた。
中銀は9月、主要政策金利を予想外に25ベーシスポイント(bp)引き上げ2.50%とし、成長率とインフレ率はともに来年加速するとの見通しを示した
S&Pグローバルが3日発表したインドの10月のサービス部門購買担当者景気指数(PMI)は58.4と、前月の61.0から低下した。ロイター調査では60.5と予想されていた。
好不況の分かれ目となる50を27カ月連続で上回ったものの、拡大は過去7カ月で最も小幅となった。
需要が若干弱まり雇用創出が鈍化したが、潜在的な活動は引き続き堅調で、輸出も順調に伸びている。
S&Pグローバルの経済アソシエートディレクター、ポリアンナ・デリマ氏は、「企業活動の拡大と新規採用のペースが13年超ぶり高水準となった9月から鈍化したにもかかわらず、インドのサービス経済は素晴らしい伸びを示し続けている」と指摘。「特に輸出が好調で、アジア、欧州、米国からの新規受注が伸びた」と述べた。
一方調査は、「一部サービスにおける激しい競争と需要低迷」で、今後1年間の見通しに対する楽観度は63.5と、9年超ぶり高水準だった9月から低下した。
雇用創出は3カ月ぶり低水準。
S&Pグローバルが1日発表した10月のインド製造業購買担当者景気指数(PMI)は55.5と、8カ月ぶりの低水準だった。
インドネシア経済の7-9月(第3四半期)は予想を下回る成長にとどまった。輸出の減少に加え、金利上昇が消費の重しとなり、経済成長率が2年ぶりに5%を割り込んだ。
6日発表の7-9月の国内総生産(GDP)は前年同期比4.94%増と、ブルームバーグがまとめた予想中央値(5%増)を下回った。前期比では1.6%増えた。予想は1.67%増だった。
東南アジア一の経済大国であるインドネシアのGDPが前年同期比で5%に届かなかったのは2021年7-9月以来。輸出は今年、データが入手可能な9カ月間のうち6カ月で減少。借り入れコストの上昇は消費を抑制し、景気の先行きを悪化させるリスクがある。
インドネシアの中央銀行は先月、通貨ルピアを支えるため、予想外の利上げに踏み切り、政策金利を4年ぶりの高水準となる6%に設定した。
●中東
イスラエル軍は6日、この24時間にガザの450のイスラム組織ハマスの標的を戦闘機で攻撃し、ハマスの施設を制圧したと発表した。
パレスチナの通信社WAFAは、イスラエルによる「前例のない爆撃」があったと報道。通信社パルテルによると通信・インターネットサービスが再び寸断した。
ガザ保健当局によると、空爆によりガザ市、南方のザワイダやデル・アルバラなどで数十人が死亡した。
イスラエル軍は、ハマスの地下トンネルや軍事施設、対戦車ミサイル発射基地などを空爆し、地上部隊が施設の制圧作戦中に戦闘員数名を殺害したとした。
イスラエルは、人質が解放されるまで停戦を受け入れない姿勢を示している。週末にイスラエルを再訪したブリンケン米国務長官は、6日にトルコの首都アンカラでフィダン外相と会談する予定。
米紙ニューヨーク・タイムズは、米中央情報局(CIA)のバーンズ長官が6日にイスラエルを訪問し、同国高官と戦争や情報活動について協議する予定だと伝えた。他の中東諸国も訪問しガザ情勢に関し話し合うという。
国連安全保障理事会で今月の議長国を務める中国の汪文斌・外務省報道官は6日の定例記者会見で、パレスチナ地域の平和回復に全力を尽くすと表明した。
また、国営メディアによると、張軍国連大使は議題のトップは中東紛争だと指摘。「停戦促進と戦闘停止、民間人の犠牲と大規模な人道的危機を防ぎ、紛争の波及を防止することが不可欠だ」と語った。
格付け会社フィッチはエジプトの長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を「B」から「Bマイナス」に引き下げた。
同国の国際収支、マクロ経済、政府債務状況に対するリスクを理由として挙げた。
新型コロナウイルス禍で打撃を受けた中核の観光産業は回復しているが、昨年のエネルギー価格上昇と現在進行中の世界的な金利上昇が逆風となっている。
対外債務は2022年までの7年間で4倍の1600億ドル超となった。エコノミストらは、借入金の大半は同国が必要としている外貨の獲得にすぐには結び付かない事業に費やされてきたと指摘している。
フィッチは24年6月と25年6月に終了する財政年度に期限を迎える対外債務が大幅に増えると指摘した。
トルコ統計局が3日発表した10月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比61.36%に鈍化した。夏場のリラ急落や選挙後の増税の影響が和らいだ。前月までは3カ月連続で加速していた。
前月比では3.43%上昇。
衣料品・靴、住宅・ホテル、レストランの価格上昇が月次データを押し上げたが、ロイターがまとめた市場予想は下回った。
9月のCPI上昇率は前年比61.53%だった。
トルコ中央銀行は2日、インフレ率について、今年末時点の見通しを65%に引き上げ、来年5月に70─75%程度でピークを打つと予想した
ロイターのエコノミスト調査によると、今年末時点のインフレ率予想の中央値は約69.5%。
10月の生産者物価指数(PPI)上昇率は前月比1.94%、前年同月比39.39%だった。
イスラエルは、子供4000人を含む何千人ものパレスチナ民間人を虐殺するのに十分な権限を欧米から与えられていると感じている。人口が密集する難民キャンプに1000kgの爆弾が膨大に投下され、救急車、学校、病院が空爆されているという事実が十分に示すのは、民間人の死傷者が、ハマスのそれと等しく、完全に無視されているということだ。
イスラエルは、文明世界の目から見た自国の評判を落とすために全力を尽くしているように見える。ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるファシストと原理主義者の陰謀団による司法機関破壊の試みに続いて起こったガザ大虐殺は、ロビー団体「アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」から資金提供を受けている政治家らが長年にわたり繰り返してきた、イスラエルが民主的で道徳的に優れた進歩の灯台であるとのレトリックを嘲笑している。
過去数十年間は、国際的な声の中で重要とされてきたのは米国の声のみだったし、欧州の同盟諸国はそれに足並みを揃えてきた。しかし、マルチラテラルな2020年代には、アジア、南米、アフリカの新興国が、イスラエルを非難して外交関係を格下げするために列を作っている。
欧米においてさえ、正義を支持する大量の有権者が怒りを爆発させた。選挙において重要な層であるイスラム教徒、アラブ人、進歩的なユダヤ人に加え、大学が、新たに政治化されたミレニアル世代による親パレスチナ運動にとっての大きな坩堝となっている。世界中で何百万人もの人々が街頭に押し寄せる中、イギリスの内相のような右派は市民の自由を激しく弾圧し、親パレスチナデモを「ヘイト行進」だとして犯罪化している。
親イスラエルのロビー団体がナラティブを支配していた時代は遠い過去だ。ソーシャルメディア上の恐ろしい画像が残虐行為をリアルタイムで暴露することを可能にする一方で、両陣営が同時に偽情報やプロパガンダを氾濫させている。その全てがコミュニティー間の緊張をさらに悪化させており、イギリス警察には過去1ヶ月間に1000件以上の反ユダヤ的ヘイト事案が報告されているほか、イスラム嫌悪的な襲撃も増加している。
ジョー・バイデン大統領やドナルド・トランプ前大統領のような米国の高齢の政治家は、死につつある親イスラエル的コンセンサスを体現している。特に、ミシガン州などの重要なスイング・ステートのイスラム教徒、アラブ系、アフリカ系米国人の大きなコミュニティーが、イスラエル政策をめぐってバイデン大統領に背を向けている。オバマ元大統領は後任者らにこう警告した。「問題を解決することを望むなら、ありのままの真実を受け入れなければならない。そして、潔白な者はいないこと、我々全員が共犯であることを認めなければならない」。さらにこう続けた。「人的犠牲を無視しているイスラエルの軍事戦略は、最終的に裏目に出る可能性がある」。現在の大惨事を受け、バイデン大統領には、中東和平調停を緊急に生き返らせる以外の選択肢はほとんどないだろう。
民主党は、現在ガザ大虐殺に抗議している幅広い層からの支持を受け、親パレスチナ的な進歩的派閥の方へと容赦なく傾きつつある。これらの進歩派がいつの日か十分な議席を獲得すれば、イスラエル軍に対する巨額の援助を盛り込んだ連邦議会予算案を躊躇なく拒否するだろう。
米国に匹敵する緊張が欧州の至る所で表出している。アイルランドやスペインが率直なほどに親パレスチナである一方、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長やリシ・スナク英首相などの人々は大げさな親イスラエル的表現を競い合っている。アラブ系住民やイスラム教徒を多く抱えるフランスやドイツなどの国々は、政治的レトリックを穏便なものにすることを余儀なくされている。敵に囲まれた国にとって世界における経済的孤立がどれほど壊滅的な結果をもたらすかを理解しているイスラエルは、国際的なボイコット運動に激しく抵抗した。
こういった傾向は、攻撃に晒されているガザ地区の住民に慰めをもたらすにはあまりにも長期的なものだが、今後数年間のパレスチナ紛争はイスラエルが国際的に孤立していく中で展開することを示している。国際法曹協会を含むあらゆる種類の国際組織が精力的に停戦を主張しつつ、イスラエルは普遍的な人権義務を免除されないと強調している。
10月7日のハマスによる攻撃から計り知れないほど大きな心理的ショックを受けたイスラエルは最終的に、和平を拒む限りは存続への脅威に直面し続けるという事実を認識することを余儀なくされた。この小さな国では、南部、北部、その他の危険な地域の大部分から相当な人数の住民が(一部の人はおそらく永久的に)避難しているが、人口の多い都市は今もヒズボラやイスラム聖戦のロケット弾が容易に届く範囲内にある。
和平交渉への復帰を不可避なものにしたのは、ハマスなどの対イスラエル強硬派とネタニヤフ首相の間の相互依存的行動である。パレスチナ社会でもイスラエル社会でも、オスロ合意の頃のような正義、平和、和解に向けた運動を行える平和活動家が再育成される必要がある。
イスラエルの報復に対する執着は根絶主義者に力を与えている。彼らは、ガザ地区における軍事作戦はパレスチナからアラブ人を追放するための完璧な煙幕を提供すると主張している。イスラエルの国家安全保障会議のトップを務めたギオラ・エイランド氏は同国に対し、「ガザ地区での生活が持続不可能になる状況を作り出す(…)人間が存在できない場所にする」ことで、「同地区の全住民がエジプトか湾岸諸国に移るように仕向ける」よう求めた。ネタニヤフ首相はエジプトに対し、ガザ住民のシナイ半島への「一時的な」避難を受け入れるよう圧力をかけつつ、包囲下の同地区の住民を飢えさせ、粉砕し、抹殺しようと積極的に努めている。
全てのパレスチナ人が求めているのは、世界が彼らの苦境をきめ細かく理解することだ。パレスチナに対する支持は、ハマスに対する支持とイコールではない。欧米による無批判な支援のせいでイスラエルは思い上がり、占領下の自治区で人道に対する罪を犯そうと、数えきれないほどの国連決議や世界秩序の基本的原則を毀損しようと、自分たちには誰も手出しできないと思うようになった。ガザ地区において国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員72人がイスラエルによって殺害された。これほどの短期間で殺害された人数としては記録的である。イスラエルは一方で、国連事務総長は「血の中傷」を行っており「テロ行為を正当化している」と非難した。
時が自分たちの味方だということは、イスラエル人にとって自明の理であり続けてきた。アラブ諸国は関心を失いつつあるように見えたし、パレスチナ人は領土が年々失われることに不機嫌に黙従していた。1947年と1967年の世代が死に絶えたら、ナショナリスト的感情も同様に霧散してしまわないだろうか。
それどころか、パレスチナ人の新世代と、全世界にいるその支持者らは、多くの点で以前の世代よりも情熱的で、覚悟があり、政治的意識が高い。それも当然である。あらゆる苦難や流血にもかかわらず、止められない世界的傾向は、時が、正義が、人々が、そして究極的には歴史が、彼らの味方であることを示しているからだ。
だから問題は、戦略的脅威が増大しイスラエルの地政学的強さが衰える中で、将来を見据えたイスラエル人が和平のために必要な妥協をどれだけ早く主張し始めるかということだ。
ドバイ/エルサレム:サウジアラビアは5日、包囲されたガザ地区への核爆弾投下に関するイスラエル政府の閣僚による過激な発言を最も強い言葉で非難した。
サウジアラビア外務省は、このような発言は「イスラエル政府の構成員の間に過激主義と残虐な思想」が浸透していることを示していると述べた。
「さらに、同大臣を解任せず、職務を一時停止するだけというのは、あらゆる人間的基準と価値観を最大限に無視するものだ」と付け加えた。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相の事務所によると、エルサレム問題・遺産相であるアミハイ・エリヤフ氏が5日、ガザへの核爆弾投下をインタビューで示唆した後、「追って通知があるまで」同氏の閣議参加が停止された。
超国家主義の政治家で、ネタニヤフ首相率いる連立与党の一員であるエリヤフ氏は、イスラエルのラジオ番組「コル・バラマ」で、10月7日にハマスの戦闘員がイスラエル南部で大規模な攻撃を行った後のイスラエルの報復の規模に完全には満足していないと語った。
インタビュアーによって、「全員を殺す」ためガザ地区に「ある種の原子爆弾」を投下すべきかと問われたエリヤフ氏は、「それも一つの選択肢だ」と答えた。
ネタニヤフ首相の事務所は、エリヤフ氏の発言は「現実とかけ離れている」との声明を即座に発表し、イスラエルはガザの「非戦闘員」に危害を加えないようにしていると付け加えた。
また、「追って通知があるまで」エリヤフ氏の政府会合への参加を停止し、イスラエルは「非戦闘員」に被害を出さぬようにしているとネタニヤフ首相の事務所は強調した。
自身の発言に対する抗議を受けて、エリヤフ氏は後にXへの投稿で、原爆に関する発言は「比喩的なもの」であったと述べた。
イスラエルはこれまで核兵器の保有を認めたことはない。
イスラエル当局によると、10月7日のハマスの攻撃により、1400人が死亡し、そのほとんどが民間人だったという。
一方、ハマスが運営するガザ保健省によると、10月7日以降のイスラエルによるガザでの軍事作戦により、9488人が死亡し、そのほとんどが女性と子供だった。
ラマッラー:パレスチナ自治政府が公表した写真によると、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は5日、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区を厳戒態勢で電撃訪問し、パレスチナのマフムード・アッバース大統領と会談した。
10月7日以来、イスラエルとハマスのガザでの戦争と並行して、占領地での暴力の激化に対する世界的な懸念が高まる中、アメリカのトップ外交官はアッバース大統領とラマッラーで会談した。
アッバース大統領は5日、イスラエルとパレスチナの紛争に「包括的な政治的解決策」が見出された場合にのみ、パレスチナ自治政府はガザ地区で権力を取り戻すことができると述べた。
イスラエルは、10月7日の致命的な攻撃以来、ガザを支配するハマスを殲滅しようとしており、戦争後にパレスチナ領土を誰が統治するのかという問題が浮上している。
WAFA通信社によると、アッバース大統領はブリンケン国務長官に対して「東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区全域とガザ地区を含む包括的な政治的解決策の枠組みの中で、我々はその責任を完全に引き受ける」と述べた。
イスラエル当局によれば、戦争は武装勢力ハマスがイスラエル南部への攻撃を開始し、民間人を中心に1400人が死亡した後に勃発した。
ハマスが運営する保健省によれば、イスラエルによるガザへの陸・空・海からの報復攻撃で9,500人近くが死亡したこの戦争が勃発して以来、ブリンケン国務長官はイスラエルを3回訪問し、その他多くのアラブ諸国も訪問している。
しかし、ヨルダン川西岸地区への訪問は10月7日以来初となった。
今回の訪問は、3日にヨルダンと隣国イスラエルを訪問した後に行われ、安全上の理由から事前に発表されなかった。
声明によると、ヨルダンのアブドッラー2世・イブン・アル・フセイン国王陛下との会談後、ブリンケン国務長官は「ヨルダン川西岸地区での暴力の激化に懸念を表明し、この地域における長期かつ持続可能な和平に向けてパートナーと協力するというアメリカのコミットメントを強調した」という。
ラマッラーに拠点を置くパレスチナ自治政府によると、戦争が始まって以来、イスラエル兵との衝突やイスラエル入植者による攻撃により150人以上のパレスチナ人が死亡している。
ハマスのライバルである世俗主義政党ファタハを率いるアッバース大統領とブリンケン国務長官の会談は、アメリカ政府がイスラエルを政治的・軍事的に支援しているなかで行われた。
アメリカは、イスラエルとパレスチナの紛争を解決する唯一の道は二国家間解決であると主張してきた。
ブリンケン国務長官は最近、現在ハマスが統治しているガザ地区をパレスチナ自治政府が掌握すべきだと述べた。
ヨルダン川西岸地区での緊張の高まりに対して、アメリカや多くのヨーロッパ諸国、アラブ諸国、そして国連が警戒を表明している。
イスラエル軍は3日、特に1967年以来占領しているヨルダン川西岸地区北部のジェニンとナブルスにおいて「ハマスに対抗する作戦を展開している」と発表した。
ブリンケン国務長官は中東歴訪に際して、砲撃を受けている人口密集地のガザ地区で民間人を保護し、支援物資の輸送を容易にするための「人道的な一時停戦」を提唱している。
ブリンケン国務長官は5日、トルコのアンカラに向かった。
ブリンケン長官がトルコ到着
ブリンケン国務長官はトルコの首都アンカラに到着した。6日に同国のフィダン外相と会談し、ガザ地区への支援物資の流れについて協議する予定だと、外務省当局者が明らかにした。イスラエルとハマスの戦争が中東の他の地域に拡大するのを防ぐための取り組みも話し合う見通しという。
米政権、イスラエルへの影響力行使に困難-Wポスト紙
ワシントン・ポスト紙によると、複数のバイデン政権当局者はハマスに対するイスラエル軍の軍事作戦について、民間人の犠牲者があまりにも多数に上っており、終了を念頭に置いた首尾一貫したプランを欠いているとみる一方、イスラエルに強い影響力を行使するのは困難と感じている。
匿名を条件に語った政権高官1人を引用して同紙が伝えた。ホワイトハウスは報道に関してコメントを控えた。
こうした状況を受けて、ガザ地区の苦境に米国としても苦悩している点を明確にし、アラブ諸国の怒りを静めようとしている。ただ、同諸国の指導者が米国のこうした取り組みに反応している兆候はほとんどなく、戦争が終結した場合の中東情勢やそこでの米国の役割は不透明となっているという。
ヨルダンのハサーウネ首相は6日、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの砲撃や地上侵攻について、軍事目標と民間施設を区別していないと批判し、ヨルダンの対応として「あらゆる選択肢」を視野に入れていると述べた。
ヨルダンはイスラエルのガザ攻撃に抗議するため、駐イスラエル大使を召還しており、先週はまた、ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃の直後にヨルダンを出国したイスラエル大使についても、帰任を認めないと表明した。
ハサーウネ氏は、イスラエルによるガザ封鎖は自己防衛ではないと指摘。「イスラエルの残忍な攻撃は、民間施設と軍事目標を区別せず、安全な地域や救急車にも及んでいる」と述べた。
イスラエル外務省は声明で「ヨルダンとの関係は両国にとって戦略的に重要」とし、ヨルダン指導者による「扇動的な発言」は遺憾と表明した。
ヨルダン政府の考えに詳しい外交官らによると、同国はイスラエルとの経済や安全保障、政治上の関係を見直しており、ガザの衝突が悪化すれば、両国の平和条約の一部を凍結または破棄する可能性があるという。
米国務省のパテル副報道官は6日、パレスチナ自治区ガザへの核攻撃を認めるようなイスラエル閣僚による発言は「全く容認できない」と強く非難した。
パテル氏は「この紛争の全ての当事者が憎悪に満ちたレトリックを控えることが重要だと信じ続けている」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相は5日、ガザへの核兵器使用が選択肢の一つだと発言したアミハイ・エリヤフ遺産相を職務停止処分にした
バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が6日、電話会談を行い、人道目的でのパレスチナ自治区ガザ攻撃の一時停止と人質解放の可能性について協議した。
ホワイトハウスの米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は、両国が攻撃の一時休止について意見交換を続けるとし、両首脳が今後数日間、協議を続けることで合意したと明らかにした。
6日にはより多くの米国人がガザから脱出する一方、より多くの支援物資が配送される見通しという。ただカービー氏によると、過去24時間でガザに入った援助トラックは30台に満たず、十分な援助は届いていない。
ホワイトハウスの声明によると、バイデン氏はイスラム組織ハマスから自国民を守るイスラエルの取り組みに改めて支持を表明する一方、ガザの民間人を保護する措置を講じることが不可欠だと強調した。
両首脳は今後1週間に人道支援物資の搬入を大幅に拡大する必要性についても協議した。
バイデン氏はヨルダン川西岸の状況や過激な入植者による暴力行為の責任を追及する必要性にも言及したという。
ブリンケン米国務長官は6日、4日間の中東歴訪を終えた。パレスチナ自治区ガザへの人道支援拡大やイスラム組織ハマスが拉致した人質解放に向け、米国が目指す人道目的での攻撃一時停止への進展はほとんどなかった。
ブリンケン氏はこの日、トルコの首都アンカラを訪問し、フィダン外相と会談した。パレスチナ自治区ガザでの人道支援拡大のほか、イスラエルとガザを実効支配するイスラム組織ハマスの武力衝突拡大抑制に向けた取り組みが議題となった。
アンカラ出発前に空港で記者団に対し「人道支援の大幅な拡大や紛争が他地域に拡大するのを防ぐための取り組み、さらにイスラエルとパレスチナの永続的な和平のための条件整備について話し合った」と明らかにした。
米国務省当局者によると、ブリンケン氏とフィダン氏の会談は2時間半に及んだという。ブリンケン氏とトルコのエルドアン大統領との会談は行われなかった。エルドアン大統領は、米国による「イスラエルへの無制限の支援」を批判している。
トルコ外務省筋によると、フィダン氏はブリンケン氏に対し、ガザでの即時停戦宣言とともに、イスラエルが民間人を標的にしていることを阻止すべきと述べた。
これに対しブリンケン氏は、米国はガザへの支援拡大と人質解放に焦点を当てていることに変わりはないとした上で、人質解放には同地域の他の国々が重要な役割を果たすことができるとした。
ブリンケン氏とフィダン氏との会談時、外務省の建物の外には何十人もの人々が集まり、米のイスラエル支援に対する抗議活動を行った。
記者団から、中東歴訪で具体的進展はあったかと問われたブリンケン氏は、紛争の地域全体へのエスカレートを回避する取り組みに言及。「事態が悪化していないことが、進展の明らかな証拠である場合もある」と答えた。
また、米国はガザへの人道支援拡大に集中しており、民間人の犠牲を最小限に抑えるための措置についてイスラエルと協力し続けるとしたが、突破口がないことも認めた。
ブリンケン氏は週末にイスラエルを再訪している。停戦を求める世界的な声が高まる中、イスラエルのネタニヤフ首相は米国の要請をはねつけ、人質解放がない限り停戦はあり得ないと述べた。
●中南米・アフリカ
●市況
<為替> ニューヨーク外為市場では、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを終了したとの見方が強まり、ドルが一時対ユーロで約8週間ぶりの安値まで下落した。終盤にかけては持ち直した。
<債券> 米金融・債券市場では、国債利回りが上昇した。利回りは先週は大きく低下。今週は週内に実施される大規模な国債発行に十分な需要があるか注目されている。
市場関係者は、先週に利回りが大きく低下した後を受けた「譲歩」のような動きも出ていると指摘。レイモンド・ジェームズ(テネシー州メンフィス)の債券資本市場担当マネジング・ディレクター、エリス・ファイファー氏は「先週は利回りが大きく下げたが、週内に控えている国債発行を踏まえると、同じような流れが続くとは考えにくい」としている。
<株式> 米国株式市場は小幅続伸して取引を終了した。金融政策の先行きを巡り、今週予定される米連邦準備理事会(FRB)当局者らによる発言を見極めたいとのムードが強かった。一連の国債入札の影響も注目されている。
CMEのフェドウオッチによると、市場が織り込む12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置きの確率は90.4%となり、来年5月に少なくとも0.25%ポイントの利下げを決定する確率は50%を超えた。
ウェドブッシュ証券のシニアバイスプレジデント、スティーブン・マソッカ氏は、経済指標の内容にもよるが、FRB当局者がトーンを変えてくることはないだろうと予想。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、主要産油国による供給削減方針の継続を受けて買いが優勢となり、反発した。
ロイターによると、石油輸出国機構(OPEC)の事実上の盟主、サウジアラビアのエネルギー省関係者は5日、現行の日量100万バレルの自主減産を12月も続けるとの声明を公表した。OPEC非加盟の有力産油国ロシアは日量30万バレルの輸出削減を年末まで続けると発表。さらに両国は12月に供給削減の規模拡大や延長などの見直しを行う考えを表明した。こうしたサウジとロシアの年末にかけての供給削減を巡る「鉄壁の合意」(市場関係者)を受けて、需給逼迫(ひっぱく)懸念が再燃する中、原油買いが先行し、相場は一時82ドル台まで上昇した。
<ロンドン株式市場> 横ばいで取引を終えた。主要な英経済指標の発表を控えて、様子見ムードが強かった。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。不動産分野の売りが優勢となったことが相場を押し下げた。
イタリアの通信大手テレコム・イタリア(TLIT.MI)は3.4%安。取締役会で固定電話部門を米プライベートエクイティ(PE)大手KKRに売却することを承認し、これに対して筆頭株主であるフランスのメディア大手ビベンディは反発した。
<ユーロ圏債券> 国債利回りが上昇した。先週は米国債が市場の動きを主導する中、独10年債利回りが7週間ぶり低水準を付けていたが、週明けはこうした動きが一服した。
市場関係者は、今週は米国とユーロ圏で共に主要な経済指標の発表がないため、国債利回りは安定して推移すると予想。INGの米州地域調査部門責任者、パドライク・ガーベイ氏は「主要なデータの発表がないため、米連邦準備理事会(FRB)当局者が長期金利をどのように評価するかが焦点になる可能性がある」としている。
日経先物32,570、ダウ先34,122、債先144.22、米4.650、独2.7450、仏3.345、西3.806、伊4.574、英4.4230、波5.518、原油81.00、銅8,251、ドル円149.95、ユーロドル1.0721
※11/7 8時25分頃
備忘録(2023/11/2-5)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
工業製品・事務用品大手の米スリーエム(3M)が業績立て直しで正念場を迎えている。このほど発表した2023年7〜9月期の決算では、年初から進めた大幅リストラとコスト削減の取り組みが奏功し利幅が改善した。
一方、電子機器や文具などの需要減で売上高は減収から抜け出せず、大型訴訟の関連費用も財務を圧迫している。主要事業としてきたヘルスケア事業の切り離しを24年に控え、再出発に向けた足場固めを急ぐ。
リストラ進め利益率改善
10月に発表した7〜9月期決算は、売上高が83億1200万ドル(約1兆2500億円)で前年同期比約4%減だった。
パソコン(PC)や携帯電話やタブレット端末など、電子機器関連の需要低迷を受けてアジア太平洋地域が16%減収と落ち込み、全体の重荷となった。
軍需用耳栓の品質問題を巡る訴訟関連の特別費用がかさみ、最終損益が20億7500万ドルの赤字となった。前年同期は38億5900万ドルの黒字だった。
3Mは23年の年初から、全従業員の1割弱に当たる8500人の削減と9億ドル規模のコスト圧縮を進めるリストラ策を進めてきた。効率化の取り組みが実を結び、営業利益率が前年同期の21.6%から23.2%に改善した。
特別費用を除いたベースの1株利益は前年同期と市場の予想を上回った。23年末にかけても引き続きコスト削減の効果が業績改善に貢献すると説明している。特殊要因を除いた1株利益ベースの23年12月期通期見通しを引き上げた。
ストライキは「大きな影響なし」
一方、売り上げ回復の行方には不透明さが漂う。23年通期の売上高見通しは前期比3%減とし「3%減〜横ばい」としていた前回予想から上限を引き下げた。
マイク・ローマン最高経営責任者(CEO)は電子機器の需要落ち込みは「直近で落ち着きを見せ始めた」と指摘する。
一方で、米国で9月の新学期に向けた学用品・文具の需要伸び悩みがみられたとして、「消費者が必需品などに支出を絞り込む傾向が続くかどうか、年末商戦の行方を見守っている」とコメントした。
3Mは自動車産業向けに、部品や研磨剤、塗料、接着剤など幅広い部材を供給している。全米自動車労組(UAW)が米自動車大手に対して進めたストライキも懸案事項だったが、ローマンCEOはストライキについて「これまでのところ大きな影響は出ていない」と述べた。
事業分離を先延ばしに
3Mは22年、主要3事業の1つ「ヘルスケア」事業の分離を決めた。本体に残る産業用品と消費材事業では環境対応技術や電気自動車(EV)向け部材などを成長事業と定め、投資を進める。
当初は23年中の手続き完了を目指していたが、その後24年前半に先延ばした。8月にはヘルスケア新会社の最高経営責任者(CEO)に、米医療機器ジマー・バイオメットCEOのブライアン・ハンソン氏を迎える人事を発表した。
口腔(こうこう)ケアなどを手掛けるヘルスケア事業は直近の23年7〜9月期では傘下4部門で唯一、売上高が前年ほぼ横ばいと、落ち込みを免れた。22年通期に売上高の25%を占め、切り離しにより3Mの事業規模は大幅に縮小する。
24年以降の見通しについて3Mのモニッシュ・パトラワラ最高財務責任者(CFO)「まだしばらく先のことで、まずは10〜12月期を乗り越えるべく、やるべき事に集中する」と明言を避けた。
需要底入れのタイミングが見通せない中、3Mは優先事項をコスト削減と大型訴訟での和解決着を含めた「リスクと不確定要素の低減」(同社)に定め、今後も現実路線の取り組みを進める構えだ。
キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)は10月に発売したナノインプリント技術を搭載した半導体露光装置の製品価格について、極端紫外線(EUV)露光装置と比較してかなり低額に抑えられるとの見方を示した。
御手洗氏は都内の本社での先月のインタビューでナノインプリント装置の特長について、「EUVに比べて全然安い。1桁違う」と述べ、「存在価値が非常にある」とした。具体的な社名の言及はしなかったが、半導体メーカーでは「期待してくれているところがたくさんある」とも述べた。
半導体の微細化に欠かせないEUV装置の供給は、現時点ではオランダのASMLホールディングが独占。ただ同装置は1台200億円程度と高額で、導入企業は限られている。ブルームバーグのデータによると、同社の顧客には台湾積体電路製造(TSMC)や韓国サムスン電子などが含まれる。
一方、ナノインプリント装置はウエハー上のレジストに回路パターンを刻み込んだ型をハンコのように押し付けて回路を形成する方式を採用。1回で回路が形成できるため、製造コストや消費電力の削減にもつながるという。
中国の電気自動車(EV)メーカー蔚来汽車(NIO)は、人員を削減し、非中核事業をスピンオフする可能性があると明らかにした。同社は売上高が目標に遠く及ばず、赤字が続いている。
ブルームバーグニュースが3日確認したNIO創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるウィリアム・リー(李斌)氏の署名が入った社内文書によると、同社は今月中に従業員数の10%に相当する役職を廃止する。「重複」し「非効率」な役職が取り除かれ、3年以内に業績への寄与が見込まれないプロジェクトの投資は先送りか削減されると、李氏は説明している。
米国株式市場3日早朝の時間外取引で、NIOの株価は一時3.2%高と上昇している。
人員を削減し部門閉鎖を検討するというNIOの決定は、比亜迪(BYD)やテスラなど大手の支配がますます強まり、中小のメーカーが苦しんでいる中国EV市場全体の状況を反映している。販売減速の兆しが見られる中でテスラが1年前に価格競争を仕掛け、他社も追随して価格を引き下げるなど、顧客獲得の争いが激化している。
世界最大のコンテナ海運会社、デンマークのAPモラー・マースクは、2026年頃まで海運市場の弱さが続く見通しを示し、利益率を守るため少なくとも1万人の従業員を削減すると明らかにした。
ビンセント・クラーク最高経営責任者(CEO)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「受注状況や今後数年の見通しから、向こう2-3年は極めて抑制された厳しい環境が恐らく続くのだろうと思う」と語った。
3日のコペンハーゲン株式市場で同社の株価は急落。下落率は一時12%を超えた。
人員削減は全従業員の9%に相当し、運賃低下や海運業界の競争激化によって余儀なくされたとクラークCEOは説明。既に約6500人分の削減を済ませたという。
マースクの3日の発表文によると、この人員削減で同社は6億ドル(約900億円)のコスト節約を見込んでいる。また来年の自社株買いプログラムを見直し、今年と来年の設備投資見通しを引き下げた。
●決算関連
米アップルは既に中国で減速に直面する中、ホリデー商戦を含む10-12月(第1四半期)の売上高が前年同期と同程度になるとの見通しを示した。投資家が期待していた伸びの回復が見込まれないことを示唆した。
ルカ・マエストリ最高財務責任者(CFO)は2日、アップルの四半期決算発表後の電話会議で、10-12月期にスマートフォン「iPhone」の売上高は増加するが、全体の売上高は前年同期並みになるとの予想を示した。この低調な見通しを受け、株価は時間外取引で一時4.6%下落した。
ウォール街は、アップルにとって常に売り上げが年間最大となる10-12月期の増収率を約5%と予測していた。同社はタブレット「iPad」およびスマートウオッチを含むウエアラブルカテゴリーの売上高が、同四半期に大幅に減少するとの見通しを示した。一方、パソコン「Mac」は加速が見込まれている。
アップルが2日発表した7-9月(第4四半期)決算では、売上高が減少。これで4四半期連続での減収と、2001年以来の長期低迷となった。パソコン市場の低迷や中国での需要鈍化が響いた。
7-9月の売上高は895億ドル(約13兆4700億円)に減少。市場予想の平均は894億ドルだった。アップルは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の際に採用した方針を維持し、10-12月期に関して正式なガイダンスを提示しなかった。
今回の決算は、アップルにとっての中国市場が懸念されていた以上に減速していることを示唆する。中国政府は一部の職場で米国のテクノロジーの使用を禁止しているほか、華為技術(ファーウェイ)の新型スマホが新たな競合製品となっている。中華圏の売上高は151億ドルと、前年同期から小幅に減少したほか、一部のアナリスト予想の170億ドルを大きく下回った。ティム・クック最高経営責任者(CEO)はMacやiPadの売り上げ減少、為替変動を理由に挙げた。
同社は7ー9月期にiPhoneの新モデルを発表。同四半期には、9月22日の発売後1週間強の販売データが含まれる。
iPhoneの売上高は438億ドルと、市場予想の平均(437億ドル)を若干上回った。また、クックCEOはアナリストとの電話会議で、中国本土のiPhone売上高が四半期ベースで過去最高になったと述べた。1株利益は1.46ドルと、市場予想(1.39ドル)を上回った。
クック氏はまた、同社が生成人工知能(AI)に「かなり」投資していると指摘。「時間の経過とともに製品の進歩が見られるだろう」とし、こうしたテクノロジーが製品の中核になるとの考えを示した。
パソコン「Mac」の売上高は76億1000万ドルで、市場予想(87億6000万ドル)に届かなかった。
米コーヒーチェーン大手スターバックス(スタバ)(SBUX.O)が2日発表した第4・四半期(10月1日終了)決算は、世界既存店売上高と利益が市場予想を上回った。北米で秋の定番メニュー「パンプキン・スパイス・ラテ」などの売り上げが好調だった。
決算を好感し、スタバの株価は約11%上昇した。
世界既存店売上高は8%増で、市場予想の6.56%増を上回った。調整後の1株当たり利益は1.06ドル。市場予想は0.97ドルだった。
米既存店売上高も8%増加した。分析会社プレイサー・エイアイによると、パンプキン・スパイス・ラテ販売開始当日の来客数は20%急増した
ラクスマン・ナラシムハン最高経営責任者(CEO)はアナリストの電話会合で、根強いインフレにもかかわらず、「顧客の需要は依然として力強い。消費者心理に変化は見られない」と述べた。
一方、中国の既存店売上高は5%増と、伸びは前四半期の46%から大幅に減速した。ただ、アナリストはおおむね想定内の内容とした。
2024年度については、通期の1株当たり利益伸び率見通しを15━20%とし、市場予想の15.1%を上回った。世界既存店売上高は5─7%増になると見込んだ。
中国の既存店売上高は、第2─第4・四半期に4─6%増、第1・四半期はそれを上回る伸び率になると予想した。
石油大手シェル(SHEL.L)が2日発表した第3・四半期決算は、エネルギー価格の低迷を受けて利益が62億ドルと前年同期比34%減少した。
今後3カ月で35億ドルの自社株買いを行うとした。前四半期の27億ドルから拡大する。配当は1株当たり0.331ドルで据え置いた。
同業の英BP(BP.L)とは対照的に、液化天然ガス(LNG)トレーディングの収益が第2・四半期を上回り業績に寄与した。しかし主力であるLNG部門の生産減少が再び重しとなった。
統合ガス事業の生産量は施設のメンテナンスにより、前四半期から9%減少した。一方、上流部門の生産量は3%増の日量175万バレルだった。
調整後利益は62億2000万ドルと、同社提供のアナリスト予想の62億5000万ドルとほぼ一致した。前年同期は94億5000万ドル、第2・四半期は50億ドルだった。
今年のグループ全体の設備投資目標は230億─250億ドルとし、従来の230億─260億ドルから修正した。
レッドバーンのアナリスト、スチュアート・ジョイナー氏は、業績はほぼ予想どおりだったが、自社株買いの拡大と設備投資目標の上限引き下げは若干のプラス材料として受け止められるだろうと語った。
再生可能エネルギー・エネルギーソリューション事業の大半は第3・四半期に赤字となった。
オランダ最大手銀行INGグループは2日、最大25億ユーロ(26億5000万ドル)の自社株買いを行うと発表した。同日発表した第3・四半期決算は、純利益が前年同期の2倍以上となった。
純金利収入は40億3000万億ユーロと、同行がまとめた予想(41億2000万ユーロ)を下回った。
貸倒引当金繰入額は1億8300万ユーロと、予想の3億2200万ユーロを下回った。リリャーナ・コルタン最高リスク管理責任者(CRO)はロシア関連事業のリスク回避などが奏功したと説明した。
電話会見で「ロシアへのエクスポージャーはオフショアで約15億だ」と述べた。
INGは今年、最大15億ユーロの自社株買いプログラムを開始している。
第3・四半期の純利益は103%増の19億8000万ユーロと、予想の18億3000万ユーロを上回った。
川崎汽船(9107.T)は2日、想定為替レートの円安方向への見直しと税金費用の見直しなどを反映し、2024年3月期業績予想を修正すると発表した。売上高は9300億円(従来9000億円、前年比1.3%減)に上方修正、純利益は1050億円(同1200億円、前年比84.9%減)に下方修正した。
ドライバルク事業は中国経済の先行き不透明感などの懸念要素があるものの、船腹需給の引き締まりなどで市況は底堅く推移すると見込んでいる。自動車船は生産・出荷の回復基調を受けてタイトな需給が継続するとみているが、コンテナ船は下期も厳しい事業環境が継続するとの見通しを示した。
米テクノロジー大手の業績が回復傾向にある。アップルなど5社の2023年7〜9月期の純利益はそろって増益を確保した。人員削減を中心とするコスト削減が寄与した。5社合計の時価総額は直近底値の22年末に比べ5割上昇し、約9兆1000億ドル(約1370兆円)まで回復した。
米製薬大手のイーライ・リリーが2日発表した2023年7〜9月期の決算は、売上高は前年同期比37%増の94億9860万ドル(約1兆4300億円)だった。同社の糖尿病薬が減量効果があるとして販売が急拡大した。買収に伴う研究開発費の計上で、最終損益は5740万ドルの赤字(前年同期は14億5170万ドルの黒字)だった。
米マリオット・インターナショナルなどホテル大手3社の2023年7〜9月期決算が2日、出そろった。3社ともに夏休みの旅行シーズンで高まった海外旅行の需要を取り込み、増収増益を確保した。アジア太平洋地域の売り上げが引き続き堅調だった。それぞれ23年12月期通期の業績見通しを上方修正した。
2日に発表したマリオットの23年7〜9月期の売上高は前年同期比12%増だった。地域別売上高の内訳を見ると、収益力の目安となる「1部屋あたりの売上高、RevPAR」(フランチャイズを含む)は中華圏が47%増の87.31ドル(約1万3000円)と伸びが最も大きかった。中華圏を除いたアジア太平洋地域も36%増え、全体をけん引した。
ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスのクリストファー・ナセッタ最高経営責任者(CEO)は10月25日の決算説明会で「中国の景気悪化を懸念する声があるが、旅行需要は堅調だ。この傾向は24年にかけて続くだろう」と指摘した。
各社はレジャー、ビジネスともに堅調だとする。マリオットと同時に決算を発表したハイアット・ホテルズのマーク・ホプラメジアンCEOは決算説明会で「消費者は引き続き体験への支出を優先している」とコメントした。
3社は好業績をうけて、23年12月期通期の業績見通しを上方修正した。2日発表のマリオットはRevPARが前期比14〜15%増と予想し、従来予想(12〜14%増)を引き上げた。ハイアットは15〜16%増とし、14〜16%増としていた従来予想の下限を引き上げた。
ただ、マリオットが発表した業績予想は市場予想に届かず、同社の株価は2日の株式市場で一時前日比4%下落する場面があった。ハイアットも一時7%下落する場面があり、逆行安となった。
消費者の節約志向が広がる米国で、国内旅行の需要が鈍化する兆しがある。ヒルトンの地域別のRevPARは、アジア太平洋地域が39%、中東・アフリカ地域が19%増えたのに対し、米国だけ1桁(3%)の増加率にとどまった。
イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突による影響についてマリオットのリーニー・オバーグ最高財務責任者(CFO)は「イスラエルやレバノン、ヨルダン、エジプトのホテルでキャンセルが出始め、需要が軟化している」としつつ、「他の中東地域には影響は見られない」と説明した。
米製薬モデルナが2日発表した2023年7〜9月期決算は、最終損益が36億3000万ドル(約5400億円)の赤字(前年同期は10億4300万ドルの黒字)だった。新型コロナウイルスのワクチンの販売減速で、2四半期連続の赤字となった。
同社の唯一の製品である新型コロナワクチンの需要が減った影響で、7〜9月期の売上高は18億3100万ドルと前年同期比46%減った。ワクチンの販売不振で13億ドルの在庫評価損を計上したほか、生産能力の縮小に伴う費用も重荷となった。
9月から新型コロナの派生型「XBB.1.5」に対応する新しいワクチン接種が始まったが、大半の人は11〜12月に接種すると予想している。モデルナのコロナワクチンの米国市場のシェアは22年の36%から足元で45%に増えた。
23年12月通期については、最低60億ドルのワクチン売上高を見込む。従来は60億〜80億ドルを予想していた。24年12月通期の売上高見通しは40億ドルとした。24年に米食品医薬品局(FDA)に承認される見通しの呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症向けワクチンの接種開始を見込む。同社は26年に損益均衡を目指す。
ジェイミー・モック最高財務責任者(CFO)は2日のアナリスト説明会で「24年は低水準となりそうだが、25年には再び成長軌道に戻る」と話した。25年には新型コロナとインフルエンザの混合ワクチンの承認も目指す。
●先進国、グローバル、金融市場
予想より弱い米雇用統計を受けて、トレーダーらは利下げ開始予想を従来の7月から6月に前倒しした。
金利スワップ市場は現在、6月までの30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下を見込んでいる。雇用統計が発表される前は23bpの低下が織り込まれていた。
米連邦準備制度理事会(FRB)の意思伝達に潜む落とし穴を、リアルタイムで学ぶ機会だ。インフレ抑制におけるウォール街の役割に関し、パウエル議長が発した言葉に市場がどう反応したのかを考えてみたい。
政策金利の引き上げは2会合連続で見送られた。FRB議長は米国債利回りの上昇を具体的に挙げて、金融環境の引き締まりに影響していると言及。この先、追加利上げの代役を果たす可能性があるとの考えを示唆した。
パウエル氏が名指しで言及した2年債利回りは、この発言にきっちり応じて下落。中長期債の利回りも後に続いて下げ、このところ投資家を神経質にしていた市場乱高下の沈静化に寄与した。不安定な市場は資産価格に打撃を与え、住宅購入を困難にし、企業の経営コストを押し上げることで世界経済に波及していた。
連邦公開市場委員会(FOMC)は強い経済成長を理由に将来の追加利上げという選択肢を残した。しかし高い水準にある米国債利回りがその代わりに抑制的な金融環境の維持を助け、ビジネスサイクルにおける過剰なインフレ要素を取り除くというのが、パウエル氏の見立てだ。
そこで問題が生じる。パウエル氏の発言を根拠に積極的な引き締め局面は終わったとの見方が広がり、金融環境が著しく緩むことになれば、FRB当局者は勝ち目のない立場に追い込まれる。
ダドリー元ニューヨーク連銀総裁はブルームバーグテレビジョンで、「現時点で議長が抱える問題の一つは、市場に協力的な発言をすることで株価が上昇し、利回りが低下し、つまり金融環境が緩むことだ」と指摘する。「これこそ、これ以上金融政策を引き締めないとの決定に至った要因を一部取り除くものだ」と説明した。
パウエル議長は1日の会見で、12月に利上げを再開する可能性を排除しなかったが、トレーダーらはFOMC声明の「家計と企業向けの金融・与信状況の引き締まりは、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼす公算が大きい」の解釈を重く見た。
ドイツ銀行の欧米クレジット戦略責任者、ジム・リード氏は「パウエル氏が金融環境の引き締まりが続くことを『重大』と考えるなら、前日のハト派的な市場の反応は一部のタカ派的な反撃をあおりかねない。状況が続けばなおさらその可能性は高い」とリポートで指摘した。
スタンダード・チャータードは、資金調達の環境が引き締まれば向こう1年間の経済成長率を1ポイント以上押し下げる可能性があると見積もる。
ダン・パン氏ら同行のアナリストはリサーチノートで「住宅ローン金利や社債および米国債の利回りが上昇し、これに強いドルと株安が加わり、米経済の足を引っ張ることが予想される」と指摘。「成長下振れの想定リスクは過小評価されている可能性がある。特に金融の不安定リスクが株式や社債の市場動向に完全に織り込まれていない場合は、その可能性は高い」と分析した。
パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の幹部2人は、急拡大するプライベートクレジット市場でリスクが高まっており、規制当局の対応は十分ではないとして警鐘を鳴らした。
ピムコのオルタナティブ投資事業を率いるジェイミー・ワインスタイン氏と、ピムコの社長でクレジット分析グループのグローバル責任者であるクリスチャン・ストラック氏は、プライベートクレジット市場の規制が不十分で透明性に欠けるため、投資家にリスクをもたらしていると指摘する。
プライベートエクイティー(PE、未公開株)事業への融資から始まったこの市場は、世界的な金融危機の後、規制強化に直面した銀行が融資から手を引いたことで急成長した。ヘッジファンド、政府系ファンド(SWF)、保険会社などから大量の資金が流れ込み、その規模は2015年以降、およそ3倍に拡大。中小企業への伝統的な直接融資からバイアウト資金、不動産やインフラ向け債務を網羅するまでに成長した。
ワインスタイン氏はインタビューで「世界的な金融危機以前は、銀行内部にリスクが存在したが、今は銀行の外にある」と指摘。「投資家への大きなリスク移転が起こっている。問題は規制当局がいつ目を向け始めるかだ」と述べた。
プライベートクレジットを巡っては、公開市場における時価評価に伴う損失のボラティリティーから投資家を守るとの主張も聞かれる。だが、ストラック氏は透明性の低いデット・ファンドに大量のマネーが流れ込んでいるのは憂慮すべき事態だと話す。
その上で「世界的な金融危機以降の動向、そしてシステム内のレバレッジの大きさには衝撃を受ける。問題は、誰がその債務を所有し、安全なのかどうかだ」と述べた。
米住宅市場では価格が上昇し続け、在庫が減少し続けており、住宅取得能力が終わりのない危機にあるかのようにさえ感じられる。その理由は、建設低迷から学生ローン、初期購入者向け住宅の買い占めまで多岐にわたる。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって住宅価格がかつてない速さで上昇しても、安価な住宅ローンが買い手を引き付けていた。しかし現在は、全く新しい住宅取得能力の危機が始まっており、明白な出口は見えない。
昨年来の積極的な金融引き締め策により、30年物の住宅ローン金利はこの四半世紀弱で最も高い8%近くまで上昇し、40万ドル(約6000万円)のローンの月々の支払いは1100ドルほど膨らんでいる。金利の上昇が価格の下落につながるのであれば、なんとかなるかもしれない。しかし、いわゆる「ロックイン効果」のため、供給への影響はさらに深刻だ。住宅所有者は、金利が底をついたときに組んだ割安な住宅ローンを手放したがらない。その結果、1980年代以降で最も値ごろ感のない住宅市場が形成され、販売額は記録的な低水準に近づいている。
底堅い景気は住宅ローンを何年も高額に維持する恐れがある。住宅ローンが少し安くなったとしても、繰り越し需要が喚起され、価格をさらに上昇させるだけだ。金利の引き下げを速めるような景気悪化が起これば、購入者の立場も厳しくなるだろう。さらに、住宅建設業者は限られた労働力や土地、資材の供給問題と闘っている。不動産仲介業者レッドフィンのグレン・ケルマン最高経営責任者(CEO)は「住宅の値ごろ感については、持てる弾丸をすべて撃ち尽くしてしまったようなもので、この状況を打開するには長い長い時間がかかりそうだ。若い世代が近い将来に家を買えないことは、米国の社会構造にひずみをもたらすだろう」と言う。
1980年代、カリフォルニア大学バークレー校のジョン・クイグリー経済学教授は、住宅売却を妨げているロックイン効果を指摘した。住宅ローン金利は1978年の9%から1981年には18%へと急上昇し、古い住宅ローンを抱える何百万もの世帯が市場金利を下回る金利を維持。新しい家を買うということは、より高額なローンを組むことであり、引っ越しの強力な阻害要因となっていた。
金利が低下するにつれ、クイグリー教授の研究はほとんど忘れ去られた。米住宅市場は経済の他の部分とともに2020年に一時的な凍結状態に陥ったが、その後は景気刺激策と借り入れコストの急落が相まって、過去一世代にない好景気を巻き起こすまでに回復した。30年物住宅ローンの平均金利は2021年1月に過去最低の2.65%まで低下。中古住宅販売件数は14年ぶりに年間600万件ペースに達した。どこでも勤務できる状態になり、パンデミック前に最も人気があった沿岸地域から遠く離れた場所でも、内覧のために家探しの列ができた。
金融引き締め政策は需要を急速に冷え込ませた。しかし、クイグリー教授の言うロックイン効果により、供給はさらに冷え込んだ。最近では、既存の住宅ローンのほとんどが4%を下回っており、新規の30年物ローンのおよそ半分のコストとなっている。イリノイ大学のジュリア・フォンセカ氏とペンシルバニア大学のルー・リュー氏の試算によれば、この大きなスプレッドは今後10年間で住宅所有者の移動を4分の1余り減少させる可能性が高い。
このトレンドは、初めて住宅を購入しようとする人たちに大きな影響を与えるだろう。政府が支援する住宅ローンを利用して富を築くという重大な機会を逃すことになるからだ。しかし、エコノミストは別の問題も指摘している。ロックイン効果により、若い世帯主がより大きな家に移り住み、家族を増やすことができなくなる恐れがある。また、古い住宅ローンを手放したくないと思えば、労働者は新しい仕事のために引っ越す可能性が低くなるため、移動性の低下は労働市場の効率を低下させる。
値ごろ感低下への政策対応はこれまでのところ、購入者にとっての利便性を高めることに重点が置かれている。バイデン政権はマイノリティーや初回購入者の住宅取得を促進するため、住宅ローン保険料の引き下げや頭金援助といった施策を実施した。しかし競争の激化によって在庫の減少という中心的な課題をさらに悪化させるだけだ。
住宅購入者のための共同投資プラットフォーム、ハウスのチーフエコノミスト、ラルフ・マクローリン氏は別のアプローチとして、特に月決めやエアビーアンドビーの民泊として住宅を貸し出している所有者に政府が売却のインセンティブを与えることを提唱。賃貸収入に対する課税を強化するか、キャピタルゲイン課税の一時的な免除枠を設けることで実現できると主張する。
パンデミック以前の正常な状態に戻る道筋について、見通しはさまざまだ。全米不動産協会のチーフ・エコノミスト、ローレンス・ユン氏は、米金融当局が年内にインフレを克服し、住宅ローン市場は将来の金利引き下げを織り込むと予測している。金利の低下は売り手を誘惑し、第4四半期に活発な動きをもたらすと言う。
多くのエコノミストはユン氏ほど楽観的ではない。全米抵当貸付銀行協会(MBA)は、2025年に緩やかなリセッション(景気後退)に陥り、金利が低下して住宅取引が回復すると予測している。ムーディーズのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は、2028年まで市場の正常化や健全化はないと予想。「一戸建て住宅市場は深い凍結状態にある。解凍には痛みが伴い時間がかかる」と話した。
米国債売りがようやく最悪期を脱したと時期尚早に判断すべきではないとの慎重な意見が相次いでいる。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は1日、2会合連続で金利据え置きを決定。利上げ打ち止めの思惑も強まり、米国債は大きく上昇した。
しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は追加利上げの選択肢を温存しており、経済が今後も想定以上の成長を遂げれば、利回りは直近の高水準を再び試す可能性があるとの指摘が出ている。
ヘッジファンドのK2アセット・マネジメントは、米10年債利回りが再び5%まで上昇すると予想。フランクリン・テンプルトンは、2007年以来の水準となる5.25%でピークをつける可能性があると述べている。シタデル・セキュリティーズの金利トレーディング部門グローバル責任者、マイケル・デパス氏は、国債市場は依然として「データに大きく左右される」と述べ、市場の楽観ムードが一変するリスクがあるとの見方を示した。バークレイズのグローバル市場共同責任者、スティーブン・デイントン氏は、米金融当局が引き締め政策を終了した「可能性は極めて低い」と述べた。
ファン・ランスショット・ケンペンのシニア投資ストラテジスト、ヨースト・ファン・リーンダース氏はリポートで「パウエル議長は記者会見で、利上げバイアスを総じて確認した」と指摘。「経済は利上げへの耐性が極めて強く、米金融当局は何とか金融環境をやや引き締めただけだ」と述べた。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は1日、金融当局として過去40年で最も積極的に進めた金融引き締めサイクルが終了した可能性があるとの見解を示唆した。当局は同日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で2回連続の利上げ見送りを決めた。
議長は会合後の記者会見で、「われわれが答えを求めているのは『さらに引き上げるべきか』という問いだ」と述べるとともに、「ペースを落とすことで、一段の行動が必要な場合、どの程度の行動がさらに必要なのかよりよく認識できている」と話した。
FOMCは同日まで2日間の日程で開いた会合でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25-5.5%に据え置いた。当局者は声明で、もう1回の利上げの可能性を残しつつも、最近の米中長期国債利回りの上昇で追加利上げの誘因が減じる可能性を示唆した。
オーストラリア統計局が3日発表した第3・四半期の実質小売売上高は前期比0.2%増加し、アナリスト予想におおむね沿った結果だった。これまで3四半期連続での減少に歯止めがかかった。
一方、前年同期比では1.7%減。一人当たりに換算すると前年比4%減と、集計が始まって以来最大の減少となった。生活費の上昇や借り入れコストの高さを背景に、節約志向が強まったようだ。
豪準備銀行(中央銀行、RBA)はこれまで400ベーシスポイント(bp)の利上げを実施し、政策金利は11年ぶり水準の4.1%に達している。ここ4カ月は金利を据え置いているが、ロイターが調査したエコノミストの約90%が、根強いインフレを受けて来週の理事会では利上げが再開されると予想している。
ANZのアナリストは(前期比での)小売売上高の回復は一時的なものと指摘。年末商戦やその後の時期に失速する可能性があるとした。
世界の国々の半数が、選挙の欠陥や表現・集会の自由の抑制など、民主主義の後退に見舞われている――。スウェーデンに本拠を置く政府間組織、「民主主義・選挙支援国際研究所(IDEA)」は2日公表した年次報告書でこう指摘した。
報告書によると、民主主義の度合いが低下した国の数が、向上した国の数を6年連続で上回った。こうした状態がこれほど長期間続くのは、1975年の調査開始以来で初めて。
IDEAのケビン・カサス・ザモラ事務総長は報告書で「要するに、民主主義は依然として困難に見舞われており、良く言っても停滞中、多くの地域では後退している」と総括した。
IDEAは、選挙、議会、独立した裁判所など、民主主義の「ガードレール」がほころび、法の支配を守るのに支障を来し、政治家の責任が問われているとした。
こうした民主主義の後退は、インフレによる生計費危機、気候変動、ロシアによるウクライナ侵攻が、多くの政治家に試練をもたらしたことと結びつけて考える必要があると指摘した。
一方、ザモラ氏は、「ジャーナリストから選挙組織、腐敗撲滅当局に至るまで、非公式のチェック・アンド・バランス機能が、独裁や大衆迎合主義といった傾向との闘いに成功することへの期待がある」とも述べている。
報告書によると、世界で最も民主主義が良く機能している地域は引き続き欧州だが、オーストリア、ハンガリー、ルクセンブルク、オランダ、ポーランド、ポルトガル、英国など、民主主義が確立した多くの国で、民主主義の機能度合いを示す特定の指標が大きく悪化している。
米州では、大半の国々が選挙の信頼性を保っているが、エルサルバドルやグアテマラは足元で民主主義が急激に後退している。
ただ、特にアフリカで政治への参加率が驚くほど高まったり、汚職が減るなど、改善の動きも芽生えているとIDEAは指摘した。
ドイツ連邦統計庁が3日発表した9月の貿易統計によると、輸出は前月比2.4%減少した。世界的な需要の弱さを背景に、LSEGがまとめたエコノミスト予想(1.1%減)を上回る落ち込みとなった。
INGのマクロ担当グローバルヘッド、カールステン・ブルゼスキー氏は「貿易はもはや、かつてのようなドイツ経済の成長のけん引役ではなく、むしろ足を引っ張っている」と指摘。サプライチェーンの混乱、より細分化された世界経済、輸出先から競争相手へと移行する中国、これら全てがドイツの輸出セクターの重荷となっていると述べた。
欧州連合(EU)諸国への輸出は前月比2.1%減。EU域外への輸出は2.8%減となり、特に米国と中国への輸出が大幅に減少した。
輸入は前月比1.7%減少した。予想は0.5%増だった。
貿易収支は165億ユーロ(175億4000万ドル)の黒字で、黒字幅は8月の177億ユーロ(改定値)から縮小した。
米商務省が2日発表した9月の製造業新規受注は前月より2.8%増加した。市場予想の2.4%増を上回った。コンピューターや電子製品などの旺盛な需要が伸びを後押しした。
8月は1.0%増えていた。
9月の前年同月比は0.7%増えた。
第3・四半期にモノへの支出が増え、米経済の11.1%を占める製造業を下支えした。一方、金利が高騰している中で借り入れコストが上昇し、製造業の課題となっている。
コンピュータ・電子製品の受注は1.0%増えた。電気機器・家電・部品も1.0%増加。機械は0.7%増えた。
民間航空機は92.5%増と大きく伸びた。自動車・部品、トレーラーも0.6%増。
製造業の出荷は0.4%増。在庫は0.2%、受注残は1.4%それぞれ増えた。
企業の設備投資計画の指標とされる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)の受注は0.5%増と、10月に発表された0.4%増の見込みを上回った。
コア資本財の出荷は0.1%減った。10月発表では横ばいの見込みだった。
イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のラムスデン副総裁は2日、英中銀が保有している約7500億ポンド(9140億ドル)の英国債の削減計画を堅持する方針を示した。ここ数カ月の英国債価格の急落も、その計画を変えるものではないとした。
一部の債券市場アナリストからは、長期債価格が下落すれば、BOEが国債売却計画を調整せざるを得なくなるとの見方が浮上。長期債への売り圧力を緩和するため、長期債売却を減速し短期債の売却増を選択する可能性があるとみている。
しかしラムスデン氏は、それはあり得ないと否定。「イールドカーブの変化はBOEの売却計画を全く変えるものではない」と述べた。
BOEの金融政策委員会(MPC)は9月、保有国債削減ペースを加速させる方針を決定。10月以降12カ月間で保有残高を1000億ポンド減らすこととした。従来は800億ポンドだった。
イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は2日、政策金利を15年ぶり高水準となる5.25%に据え置き、金利は当面高止まりするとの見方を示した。
2会合連続の据え置きは6対3で決定、ロイター調査によるエコノミスト予想通りとなった。
金融政策委員会(MPC)は声明で「最新の予測からみて、金融政策は長期にわたり制約的な必要がある。インフレ圧力がさらに持続する証拠があれば一段の引き締めが必要になる」とした。
前回9月の声明では金利を「十分な期間、十分に制約的」にするとしていた。
ベイリー総裁は「インフレ率が2%の目標まで低下し続けることを確認する必要がある。今月は金利を据え置いたが、さらなる利上げが必要かどうか注視していく。利下げを考えるのは時期尚早だ」と述べた。
また「はっきりさせておきたいのは、自己満足に浸る余地は全くないということだ。インフレ率は高すぎる。2%目標まで確実に戻すために、十分な期間、金利を高く維持するつもりだ」とした。
中東情勢の悪化がエネルギー価格の上昇を招き、インフレ率に反映されるリスクがあることを認めたものの、現在のところそうした事象は起きていないとした。
グリーン委員、ハスケル委員、マン委員が5.5%への引き上げを主張。今回初めてMPCに臨んだブリーデン委員は据え置きに賛成した。
BOEは、第3・四半期期の国内成長は横ばいとなり、第4・四半期は0.1%増、2024年はゼロ成長、25年は0.25%増との見通しを示した。
インフレ率が2%となるのは25年末とし、従来予想より6カ月程度の後ずれとなった。今年10月のインフレ率は4.8%となり、9月より2%ポイント低下するとした。一方で賃金の高い伸びは依然注視している。
労働市場の指標には「不確実性が増している」とし、雇用の伸びは以前の想定より弱く、堅調な賃金の伸びは鈍化すると予想。失業率は現在の約4.2%程度から2年後には5%に上昇すると予想した。
今年第4四半期のインフレ率は4.6%と予想した。
投資家は、景気後退のリスクを考えるとBOEは利上げの限界に達したと考えている。
KPMGのチーフエコノミスト、ヤエル・セルフィン氏は「MPCはタカ派的な据え置きを選択した。来年後半に向けて政策緩和を行うと予想している」と語った。
10月のイタリアのHCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)は44.9と、9月の46.8から低下し、好不況の分かれ目となる50を7カ月連続で下回った。
生産と新規受注の減少が続いた。ロイターがまとめた市場予想の46.2を下回った。
HCOBのエコノミスト、Norman Liebke氏は「製造業の不況が深まっている。第4・四半期の製造は0.5%減少する見通しだ」と述べた。
生産指数は47.4から44.9に低下。新規受注指数は43.2から40.3に低下した。
同氏は「イタリアの製造業は、需要の低迷から抜け出していない。経済情勢を取り巻く不透明感が明らかに受注の重しとなっており、受注は7カ月連続で減少している」と述べた。
ノルウェー中央銀行は2日、市場の予想通り政策金利を4.25%に据え置いた。インフレ率が持続的に低下しない場合、12月に利上げする可能性が高いと表明した。
事前のロイター調査では、エコノミスト29人全員が金利据え置きを予想していたが、12月の25ベーシスポイント(bp)利上げについては見方が分かれた。
バーチェ中銀総裁は声明で「委員会の現在の見通し判断によると、政策金利は12月に引き上げられる公算が大きい」とした上で「基調的なインフレ率が低下傾向にあるという自信が委員会で強まれば、政策金利は据え置かれる可能性がある」と述べた。
ノルウェークローネは0915GMT(日本時間午後6時15分)現在、1ユーロ=11.81クローネと、中銀の発表直前の11.83クローネから上昇している。
ノルデア・マーケッツのアナリストは「中銀は依然として12月の利上げを警告しているが、不透明感が強まっている」とし「われわれはインフレ率が中銀の予測を下回り、金利が据え置かれるとみている」と述べた。
同国の消費者物価はここ数カ月、中銀やアナリストの予測を下回っている。9月のインフレ率は前年比3.3%で、8月の4.8%から鈍化。中銀の予測は4.2%だった。インフレ目標は2.0%。
中銀は「労働市場は依然としてタイトだが、ノルウェー経済の圧力は緩和しつつある。インフレ率は目標の2%を大幅に上回っている。消費者物価上昇率は低下したが、基調的なインフレ率は高い」と表明。
「委員会の判断では、政策金利はインフレに対処するために必要な水準に近いとみられる。これにより、委員会は追加利上げが必要か判断する時間がもう少し得られる」と述べた。
10月のフランスHCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は42.8で、前月の44.2から低下し、2020年5月以来の低水準となった。受注と生産が低迷した。
速報は42.6だった。PMIは50を上回れば景況拡大を、下回れば悪化を示す。
ハンブルク商業銀行(HCOB)のエコノミスト、ノルマン・リープケ氏は「乏しい需要はフランスの製造業を著しく弱体化させている。全体的にも海外でも新規受注が少ないため、受注残は20年初頭以来の速さで解消されている」と述べた。
10月のユーロ圏のHCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は43.1で9月の43.4から低下した。新規受注が大きく落ち込んだ。
生産指数は43.1で変わらず。
新規受注は39.2から39.0に低下。18カ月連続の低下となった。
購入数量を示す指数も記録的な低水準となり、原材料の調達意欲の低下を示した。
販売価格は6カ月連続で下落した。
ハンブルク商業銀行のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は、新規受注、購入数量の低迷で目先的な回復は見込めないと指摘した。
10月のドイツのHCOB製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は40.8だった。需要の低迷で不況が続いている。
9月は39.6。3カ月連続の改善となったが、好不況の分かれ目となる50を引き続き大幅に下回った。
ハンブルク商業銀行のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は「製造業が今年も低迷していることは明らかなようだ。ただ、来年前半には回復する可能性がある」と述べた。
10月のPMIは5カ月ぶりの高水準。生産の減少ペースが6月以降で最低となった。
調査対象企業によると、顧客は不透明感と高金利を背景に在庫を減らし、総じて投資を控えている。
需要低迷を背景に供給網に対する圧力は引き続き緩和。投入価格と産出価格も一段と低下した。新規受注を巡る競争が激しいという。
将来の生産に対する予想は依然として悲観的だが、若干の改善が見られた。
デラルビア氏は、人員削減は加速しているものの「過去の景気後退との比較では、製造業全般の状況を踏まえると、足元の雇用シナリオは引き続き相対的に良好なようだ」と指摘した。
ドイツ連邦雇用庁が2日発表した10月の失業者数(季節調整済み)は前月比3万人増の267万8000人で予想以上に増加した。
ロイターがまとめたアナリスト予想は1万5000人増だった。
連邦雇用庁のナーレス長官は「この1年、ドイツ経済は多少足踏みしてきた」とし、それが労働市場に影響していると述べた。
季節調整後の失業率は5.7%から5.8%に上昇した。
10月の求人件数は74万9000件で、前年同月を9万8000件下回り、労働需要の鈍化を示唆した。
中国外務省の汪文斌副報道局長は3日の記者会見で、オーストラリアのアルバニージー首相が4〜7日の日程で中国を訪問すると発表し「今回の訪問を契機に両国関係の改善と発展を進めたい」と意欲を表明した。オーストラリアは約7年ぶりの首相訪中により、モリソン前政権下で悪化した対中関係の修復を図る。
オーストラリア側は10月下旬、アルバニージー氏が中国訪問で習近平国家主席や李強首相と会談すると発表した。アルバニージー氏は今月5日から上海市で開かれる「中国国際輸入博覧会」の開幕式に出席する。
またしても大きな被害をもたらした山火事の季節が一段落し、欧州の消防士たちが通常任務に戻る一方で、消防士組合の指導者たちは、被害が深刻だった地中海諸国では、人員や装備の増強に向けた投資が緊急に必要だと訴えている。
消防士組合では、夏季の大規模な山火事によって労働負荷が増大したことで、消防士らは疲弊し、健康が脅かされるだけでなく、士気にも影響が及び、森林火災や洪水その他の災害への対応能力も損なわれている可能性があるとしている。
イタリアの消防士で組合代表を務めているラファエレ・コッツォリーノ氏は、トムソン・ロイター財団に宛てたメールの中で、「急いでリソースに投資しなければ、消防士とその家族の生活は厳しくなるだろう」と語っている。
「何よりも心配なのは、消防士という職業に多く見られる、がんなどの職業病だ」とコッツォリーノ氏。今年に入ってから、そうした懸念を欧州議会に訴え、議員たちに、EU全域で消防士を守るためにもっと努力する必要があると伝えたという。
コッツォリーノ氏によると、イタリアでは消防士を3000人増やす必要があるという。イタリアには現在、プロの消防士が約3万5000人いる。
消防業務を管轄するイタリア市民保護当局にコメントを求めたが、現時点で回答はない。
洪水から山火事に至るまで、気候変動に関連した異常気象の頻度と被害の深刻さは欧州全域で高まっている。だが、消防士の数はリスク増大に見合うほど増えておらず、逆に減少している国すらある。
欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)によれば、EU加盟27カ国にはプロの消防士が2022年の時点で36万人いた。前年に比べて2800人減少したという。
9月に発表された報告書によると、EU全体で、消防業務のための政府支出が歳出全体に占める割合は、2001年に記録が開始されて以来、増加を見せていない。
ギリシャ選出の欧州議会議員コンスタンティノス・アルバニティス氏は9月、欧州議会で「欧州が炎上し、浸水している一方で、プロの消防士の数は減っている」と発言した。
「消防士は災害との戦いにおける英雄なのに、その後は使い捨て同然だ」
<火災と洪水>
ギリシャでは7月と8月、数週間にわたって山火事が続き、米ニューヨーク市よりも広い領域を焼き尽くした。ロードス島でもうもうたる煙から逃げ惑う観光客の様子が伝えられ、夏季の山火事による経済的影響が深刻化する懸念が高まった。
2023年の山火事による被災面積はEU全域で51万5000ヘクタールと試算されている。2022年の被災面積74万8000ヘクタールよりは少ないが、山火事の多くが自然保護区や観光名所に打撃を与えた。
ギリシャ全国消防士連盟のニコラス・ラブラノス事務総長は、「消防業務に携わって26年になるが、今年の山火事では、自然災害の激しさを前にして無力感を抱いた」と語る。
そのわずか数週間後、ギリシャの消防士たちは、記録が開始された1930年以降で最も激しい雨による洪水で立ち往生した人々を救出していた。
ラブラノス氏は、ギリシャの消防部門は近年、職員の「激しい流出」に見舞われていると語り、厳しい労働条件と、年長の職員らが定年退職の時期を迎えつつある点を指摘した。
ギリシャ気候危機・市民防災省にコメントを要請したが、今のところ回答はない。
<ボランティアかプロか>
2022年に大規模な山火事が発生したフランスの農村部では、ボランティアの消防士への依存度が高い。
ボランティアの消防士はプロの消防士と同等の訓練を受け、1時間当たり8─12ユーロ(約1280─1900円)の基本給を支給され、洪水や火災から交通事故処理に至るまで、全ての任務を補佐する。
だが、フランス消防士全国連盟のクリストフ・マルシャル副会長によれば、ひとつには気候変動の影響もあって負荷が増えており、ボランティア消防士も疲弊しつつあるという。
「今後の厳しい状況を考えると、消防士の増員がなければ対処できない」とマルシャル氏は述べ、フランスが消防体制を維持するには、2027年の時点で少なくとも25万人のボランティア消防士が必要になる、と続ける。2022年の水準から5万人の増員に相当する。
欧州公共部門労働組合(EPSU)のヤン・ウィレム・グードリアン事務総長は、たとえ追加のボランティアを採用したとしても、高度なスキルを持つプロの消防士を増員しなければ十分ではないと語る。
「農村地域の消防隊の多くでは、対応能力が減衰している。この課題をボランティアの消防士だけで解決できると考えるのは誤りだ」とグードリアン氏は語った。
フランス内務省にコメントを求めたところ、消防士の採用は地方自治体の責任であるとの回答だった。
<救助隊員の命を守るには>
労組指導者らは、人員増強の他に、業務に関連した病気や事故など、増大するリスクから消防士たちを守るために、装備と訓練への投資を増やすよう要求している。
コッツォリーノ氏は、通常の救急活動用の個人防護具(PPE)が支給されているものの、洪水や山火事といった現場での活動には必ずしも適していないと指摘する。
またラブラノス氏は、老朽化した車両の更新にも政府の財源が必要になると述べ、ギリシャの消防車の中には導入から30年も経過するものがあり、現場車両について推奨される耐用年数15─20年を超えてしまっている、と続けた。
EUは、加盟国の火災対応能力を強化するために、空中消火機の購入計画を発表した。完全所有とするのはEUとして初めてで、消防士組合もこれを歓迎している。
山火事への対応はEU加盟各国の責任となるが、応援が必要な場合には、EUが待機させている空中消火機による支援を求めることができる。
労組指導者らは、こうした協力体制は欠かせないが、それ以外にも必要なことがあるという。
欧州消防士組合連合のキム・ニクラ会長は、十分な要員、練度、装備を備えた多国籍消防隊の設立を呼びかけている。
「暴風雨はこれまでより激しく、洪水はさらに大規模になっているし、火災の消火は10年前に比べて倍も難しい。そこで、消防士が気候変動の影響に対処する上で、真っ当な労働基準を決定することも必要になる」
10月の米雇用統計が雇用の伸び鈍化と賃金圧力緩和の兆候を示唆したことを受け、3日の米金利先物市場では連邦準備理事会(FRB)の利上げを終了した可能性があるという見方が強まった。
市場が織り込む来年1月までの利上げの確率は12%と、雇用統計発表前の30%から低下した。
さらに、50%を超える確率で2024年5月までに利下げが実施され、その後24年末までに数回の利下げが行われるという予想も織り込まれた。
米労働者が3日発表した10月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比15万人増加で、市場予想以上に減速した。さらに、平均時給の前年比での上昇率は約2半ぶりの低水準となったほか、失業率は3.9%に上昇し、22年1月以来の高水準を更新した
米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は3日、米経済の現状況を踏まえると、一段の利上げはもやは必要ないことが示されていると述べた。
ボスティック総裁はブルームバーグのテレビのインタビューで「経済成長は緩やかで着実な軌道にとどまると予想している。このまま推移すれば、インフレ率を目標とする2%に引き上げるために現在の金融政策は十分に制約的だと考えられる」と述べた。
同時に「次回会合までの間でさえも、まだ多くのことが起こり得る」とし、数回の雇用統計、数回のインフレ指標を経て、経済で何が起きているのか、より良く把握することができるとの考えを示した。
朝方発表された10月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比15万人増と、市場予想以上に減速した。平均時給の前年比での上昇率は約2半ぶりの低水準に、失業率は3.9%に上昇し、2022年1月以来の高水準となった。
ボスティック総裁は、雇用統計の内容に「満足」しており、「私の見通しと一致する水準」と指摘。「苦痛を最小限に抑えつつ、インフレを目標の2%に回帰させる取り組みに寄与する形で、FRBの政策が経済に波及し始めていることを物語っている」と述べた。
また、自身の現時点の見通しにおいて、米経済が景気後退に陥るとは考えていないと述べた。
インフレは来年下期に2%近辺に到達する見通しとしつつも、利下げが必要になる時期については言及せず、「目標に近づくにつれ、政策スタンスの水準の緩和について検討する必要があるだろう。しかしそれはまだ先のことだ」と述べた。
米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は3日、連邦準備理事会(FRB)が追加利上げを検討する必要があるか判断するのは「時期尚早」との考えを示した。
カシュカリ総裁はミネソタ州のエコノミック・クラブで、労働省が朝方発表した10月の雇用統計について「単月の雇用統計に過剰反応したくない」としながらも、「労働市場の減速が示唆された」とし、経済が均衡を取り戻しつつあるとの安心感が得られた」と述べた。
雇用統計発表を受け米国債利回りが低下したことでFRBは追加利上げを余儀なくされる可能性があるかとの質問に対しては「インフレ率を目標とする2%に下げるのに十分な進展が得られているのか、データを見守り続けなければならない。判断するのは尚早だ」と語った。
これに先立ちカシュカリ総裁は、米長期債利回り上昇の要因を巡り多くの不確実性が存在していると指摘。「国債の利回り曲線と、この動きの背景にある要因が注目されている」とし、「何がイールドカーブを動かしているのか明確には分からないため、特定の説明に賭けるのはやめたい」と述べていた。
イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会のハスケル委員は3日、英労働市場のマッチング機能が悪化しているもようとし、「労働市場が機能不全に陥っている以上、金利はそうでない場合よりも長期にわたり高止まりせざるを得ない」と述べた。
また、自身が行った一部のモデリングでは、インフレ率の低位安定に必要な英国の均衡失業率が一時6%まで上昇していることが示唆されたと指摘。「かなり上限」に達しているとしながらも、均衡失業率は上方改定された英中銀の最新の推計より「おそらく若干高い」とした。
英中銀は2日、均衡失業率の予想を4.25%から4.5%程度に修正した。
一方、ハスケル氏はインフレ率を目標の2%に戻すために失業率が2025年後半に英中銀予想の5%を上回る必要があるかどうかは分からないとした。
●中国・アジア・ロシア・東欧
マレーシア中央銀行は2日、政策金利を3会合連続で据え置いた。東南アジアの各中銀がタカ派姿勢を維持する中でも、物価上昇圧力の鈍化で利上げを見送る余地が生じた。
同中銀は翌日物政策金利を3%に維持。ブルームバーグ調査で21人のエコノミスト全員が金利据え置きを予想していた。声明では、物価が安定する中で金融政策のスタンスが持続可能な経済成長に資するものであり続けるよう確実にすると説明した。
財新/S&Pグローバルが3日発表した10月の中国サービス部門購買担当者景気指数(PMI)は50.4と、9カ月ぶり低水準だった9月の50.2から小幅に上昇した。ただ、今年上期の平均を依然として下回った。企業信頼感が低下する中、販売が10カ月ぶりの低い伸びとなったほか、雇用も伸び悩んだ。
PMIは50が景況改善・悪化の分岐点となる。
ANZの中国担当シニアストラテジスト、シン・チャオペン氏は「若者の雇用に大きく関係するサービス部門は新型コロナウイルス禍前の水準を90%回復した」としつつ、「このセクターで予想以上の回復が見られる可能性は低い」と語った。
新規受注は10カ月ぶりの低い伸びにとどまり、国慶節(建国記念日)に伴う大型連休中に見られた旅行ブームによる増加分を相殺した。
ただ、海外からの観光客増加が報告される中、中国のサービスに対する海外からの需要はさらに改善した。
売上高の伸びが鈍化し、企業は採用に慎重になった。雇用は過去8カ月間拡大していたが、10月は横ばいとなった。
需要が低迷する中、全体的な楽観度は4カ月連続で低下し、2020年3月以来の低水準を記録した。
投入コストの伸びは22年6月以来の低水準だったものの、コスト上昇を顧客に転嫁する動きが強まり販売価格は上昇が加速した。
製造業とサービス業を合わせた総合PMIは50.0で9月の50.9から低下。22年12月以来の低水準となった。
●中東
トルコ中央銀行のエルカン総裁は2日、今年と来年の年末インフレ率見通しをそれぞれ65%と36%に引き上げ、緩やかな金融引き締めを継続すると表明した。
3カ月前の前回インフレ報告ではそれぞれ58%、33%と予想していた。
エルカン氏は講演で「高くて不安定なインフレを抑制するのは長く困難なプロセスだ。ディスインフレを確実にするため、断固とした態度で、利用可能なあらゆる手段を活用し続ける」と述べた。
インフレ報告を公表した記者会見では、インフレ率が来年5月に70%-75%程度でピークに達した後、ディスインフレが始まるとし、目に見えて改善するまで金融引き締めは続くと指摘した。
ブルーベイ・アセット・マネジメントのシニアストラテジスト、ティモシー・アッシュ氏は中銀について「メッセージはかなり一貫している。引き締めをしている中銀を信頼してほしいというものだ」と語った。
エルカン氏は、インフレ高進は同時に起こった複数の大きなショックによるもので、それらのインフレへの影響はほぼ終了したとし、中銀は5%の中期目標は維持していると述べた。
●中南米・アフリカ
●市況
<為替> ドルが全面安となった。米連邦準備理事会(FRB)が1日まで開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きを決めたことを受け、利上げが終了するとの見方から投資家のリスク選好意欲が高まった。
<債券> 指標10年債利回りが3週間ぶりの低水準を付けた。米財務省が発表した長期債入札の増額規模が予想よりも少なかったことを受けた債券買いが続いた。
<株式> 大幅続伸。米利上げ終了期待や企業の好決算が強気ムードを押し上げる中、主要株価3指数は軒並み約2%上昇した。
S&P主要11セクターは全てが上昇。エネルギー(.SPNY)と金利に敏感な不動産(.SPLRCR)はそれぞれ3%超上昇した。通信サービス (.SPLRCL)は0.9%高と小幅な伸びにとどまったほか、主要消費財(.SPLRCS)は1.3%高。
コーヒーチェーン大手スターバックス(SBUX.O)は9.5%高。第4・四半期(10月1日終了)決算は、世界既存店売上高と利益が市場予想を上回った。
半導体大手クアルコムは(QCOM.O)も5.8%高。第1・四半期(10─12月)の売上高および利益見通しは市場予想を上回った。
決済サービス大手ペイパル(PYPL.O)は6.6%高。通期調整後利益予想の上方修正が好感された。
バイオ医薬品のモデルナ(MRNA.O)は安い。2023年の売上高を少なくとも60億ドルと予測した。従来予測は60億─80億ドルだった
<米原油先物> 米欧中央銀行が政策金利を据え置いたことを背景にリスク投資意欲が回復し、4営業日ぶりに反発した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値(終値に相当)は前日比2.02ドル(2.51%)高の1バレル=82.46ドル。1月物は前日比2.06ドル高の82.16ドルだった。
<為替> ドルが下落し、6週間ぶり安値に沈んだ。10月の米雇用統計は雇用者数の伸びが市場予想を下回り、米連邦準備理事会(FRB)が12月会合でも利上げを見送る公算が大きいという見方が強まった。
<債券> 国債利回りが低下した。10年債利回りが5週間ぶり、2年債利回りは9月初旬以来の低水準を付けた。
CMEグループのフェドウオッチによると、FRBが12月の次回会合で利上げを決定する確率は5%と、前日時点の20%から低下。来年1月の利上げの確率は11%と、28%から低下した。
<株式> 主要株価指数が上昇して取引を終えた。米雇用統計を受け米利上げ終了期待が高まり米債利回りが低下したことを受けた。
週間ではS&P総合500種が5.9%高、ナスダック総合が6.6%高と両指数とも2022年11月以来最大の上昇を記録。ダウ工業株30種は5.1%高で22年10月下旬以来の大幅上昇となった。
S&P500の主要11セクターの大半が上昇。不動産(.SPLRCR)が2.4%高と上げを主導。9月下旬以来の高値を付けた。
11セクターのうち下げはエネルギー(.SPNY)のみ。原油価格の下落を受けて1%超下げた。
<米原油先物> 中国の景気見通しに不透明感が広がったことに加え、中東情勢の緊迫化への懸念が 幾分和らいだことで売り圧力が強まり、反落した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値(終値に相当)は前日比1.95ドル(2.36%)安の1バレル=80.51ドル。週間では5.88%安。1月物は1.93ドル安の80.23ドル。
<ロンドン株式市場> 反落して取引を終えた。原油価格の値下がりを受けてエネルギー株が売られた。
<欧州株式市場> 続伸して取引を終えた。主要中央銀行による金融引き締め終了の観測が強まる中、金利動向に敏感な不動産株が相場をけん引した。
STOXX欧州600種指数(.STOXX)は週間で3.41%高と伸び率は3月下旬以来、約7カ月ぶりの大きさだった。企業の決算発表やインフレ鈍化の兆し、2024年の利下げ観測の高まりによるユーロ圏国債利回りの低下も好感された。
自動車・部品株指数(.SXAP)も週間で6.11%上げた。3日は1.67%高。
23年第3・四半期の自動車部門の利益率が改善したドイツの自動車大手BMW(BMWG.DE)が2.0%上げた。スウェーデンの自動車メーカー、ボルボ・カーズ(VOLCARb.ST)も3.7%上昇。
一方、デンマーク海運大手APモラー・マースク(MAERSKb.CO)は16.9%下げた。決算の売上高と営業利益が予想範囲の下限になる見込みを示し、自社株買いの見直しを発表したことが嫌気された。
<ユーロ圏債券> 国債利回りが低下した。週初からの低下幅は約5カ月ぶりの大きさになる見通し。この日発表の米国の10月の雇用者数の伸びが予想を下回る中、米連邦準備理事会(FRB)を含む世界の主要中央銀行の利上げ局面は終了したとの見方が広がっている。
日経先物32,760、ダウ先32,137、債先144.30、米4.576、独2.6570、仏3.240、西3.694、伊4.442、英4.3285、波5.453、原油80.89、銅8,175、ドル円149.38、ユーロドル1.0730
※11/3NY引け値
備忘録(2023/11/1)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
洋上風力最大手デンマークのオーステッドは1日、米国の2件の洋上風力のプロジェクトから撤退すると明らかにした。計画の遅れに加え、インフレや金利上昇で事業費がかさみ、同日発表した2023年1〜9月期決算では284億デンマーククローネ(約6100億円)の減損損失を計上した。事業環境の変化から風力関連企業の業績悪化が続いている。
シンガポール通貨庁(MAS、中央銀行)は1日、国内最大の銀行DBSグループ・ホールディングスに対し、新規の事業買収と国内の支店・ATMネットワーク縮小を6カ月にわたり行わないよう命じた。DBSはデジタルバンキングで繰り返し障害を起こしていた。
MASは声明で、今回の禁止措置によりDBSはデジタル銀行サービスの改善に集中することになると説明。同行のバンキングサービスは今年、混乱が続き、直近では先月も異常が発生していた。
●その他産業
ブラックストーンが提供する660億ドル(約10兆円)規模の不動産投資信託(REIT)は、投資家への換金を12カ月連続で制限した。
「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」では10月、投資家から22億ドルの解約請求があったと、同社は1日付の書簡で明らかにした。9月の請求額は21億ドル。書簡によれば、BREITは10月に約13億ドルを換金した。これは請求額の約56%に相当し、昨年に換金が制限されて以来「最高の支払い比率」だったという。
BREITは2022年終盤に換金を制限。富裕層顧客が商業用不動産に投資することに不安を覚えるようになり、解約請求が増加したことが背景にある。米金融当局の利上げに伴い、借り入れコストが上昇する中、不動産価値は下落した。
BREITの昨年のリターンはプラス8.4%。21年は同30%だった。
米娯楽大手ウォルト・ディズニー(DIS.N)は1日、動画配信サービス「Hulu(フールー)」の未保有株33%を米ケーブルテレビ大手コムキャスト(CMCSA.O)から取得する手続きを正式に開始した。
ディズニーはこの取引によってHuluの全株式を取得し、動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」に組み入れることが可能になる。
コムキャストは2019年、Huluの経営権を持つディズニーに保有株を売却することで合意した。コムキャスト傘下のNBCユニバーサル(NBCU)もしくはディズニーがこの取引を開始できる時期は当初予定の来年1月から今年11月1日に前倒しされた。
ディズニーは合意に基づき12月1日までにNBCUに約86億1000万ドルを支払う見通し。これは19年に保証したHuluの最低価値275億ドルのうちNBCUの割合から、NBCUの未払資本を差し引いた額。
今年9月30日時点のHuluの株式公正価値を評価した上で、保証された最低価値を上回る場合はディズニーが差額を支払う。
米銀JPモルガン・チェースは、プライベートクレジット事業の強化に向けて提携先を模索している。内情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
情報は部外秘だとして匿名を条件に語った関係者によると、パートナー候補には政府系ファンド(SWF)、年金基金、寄付基金、オルタナティブ資産運用会社などが上がっている。協議はここ数カ月に始まり、初期段階にあるという。提携の構造や条件はまだ確定しておらず、複数のパートナーが選ばれる可能性もある。JPモルガンは何社かに接触し、他の会社からも問い合わせがあったと、関係者の1人は述べた。
JPモルガンは昨年から導入し始めたプライベートクレジット戦略に向けて、バランスシート上ですでに100億ドル(1兆5100億円)余りを確保しているが、これを補完するために第三者の資本を探している。資本プールが大きいほど、より大規模なコミットメントや大型取引への参加が可能になり、ブラックストーンやアポロ・グローバル・マネジメント、アレス・マネジメントなどに対する競争力を強化できるためだ。内情を知る関係者によると、JPモルガン幹部は今年に入り、100億ドルはスタート地点に過ぎないと顧客に語っていた。
ウォール街の銀行は、主要な手数料収入源であるレバレッジドローンとハイイールド債券市場のシェアを浸食しつつあるプライベートクレジットに対抗する手段を検討している。投資銀行は通常、ジャンク(投資不適格)級債を資産運用会社の大口機関投資家グループに売却して、バランスシート上でリスクを保有しないことが多い。一方、プライベートクレジットの貸し手は、自己資金で直接融資を行う専門の資産運用会社の役割を果たす。銀行が自らのバランスシートを使って競争する構図は、伝統的な融資への回帰となるが、こうした融資には高い資本負担が伴う。
●決算関連
大手化粧品メーカーの米エスティローダーは通期の業績見通しを引き下げた。中国市場での成長鈍化および中東情勢の緊迫化が理由だとしている。
同社の1日発表によると、通期の売上高は前年比2%減から1%増になる見通し。1株利益は2.08-2.35ドルを見込む。8月時点の予想は売上高が5-7%増、1株利益は3.43-3.70ドルだった。
「MAC」や「トム・フォード」ブランドなどを展開する同社は、アジアでの旅行小売り事業が予想を下回る需要で低迷している。そこにイスラエルとイスラム組織ハマスの戦争という足かせも重なった格好。今後も競合のロレアルに市場シェアを奪われる可能性が高い。
エスティローダー株は通常取引前の時間外で一時16%下落。その水準が続けば2017年10月以来の安値となる。株価は年初来(10月31日終値時点)では48%安。S&P500生活必需品株指数の同7.9%安を大きくアンダーパフォームしている。
米半導体大手クアルコム(QCOM.O)が発表した第1・四半期(10─12月)の売上高および利益見通しは市場予想を上回った。スマートフォンの販売低迷がようやく緩和し始めている上、米アップル(AAPL.O)との供給契約延長が業績を押し上げるという。
第1・四半期の売上高見通しは91億─99億ドル。市場予想の中間値は92億ドルだった。調整後1株利益見通しは2.25─2.45ドル。市場予想は2.23ドルだった。
これを受け、クアルコムの株価は引け後の時間外取引で3.8%上昇した。
第4・四半期決算は売上高が86億7000万ドル、調整後1株利益が2.02ドルで、それぞれアナリスト予想の85億1000万ドル、1.91ドルを上回った。
クアルコムは今年9月、アップルと少なくとも2026年までアップルに第5世代(5G)対応モデムチップを供給する新たな契約を締結したと発表した
第4・四半期の半導体事業の売上高は74億ドルと市場予想の72億6000万ドルを上回った。知的財産ライセンス事業の売上高は12億6000万ドル。市場予想は12億5000万ドルだった。
半導体事業のうち、スマホ端末向けの売上高は54億6000万ドル。市場予想は53億4000万ドルだった。
自動車向け半導体の売上高は5億3500万ドル。市場予想は4億8200万ドルだった。通期では24%増の19億ドルとなった。
日本製鉄 (5401.T)は1日、2024年3月期の連結事業利益予想(国際会計基準)を6900億円から7400億円(前年比19.3%減)を上方修正した。通期見通しの引き上げは今期2度目。好調だった上期の上振れ分を反映したものものの、下期は原材料高・製品安の厳しい環境を見込み、当初計画から引き下げた。
通期の事業利益見通し7400億円のうち、上期実績は4942億円と従来計画の3600億円から上振れて着地した。一方、下期は3300億円から2458億円に厳しく見直した。
森高弘副社長は会見で、中国の景気が停滞する中で過剰生産が止まらないことや欧米の景気後退懸念、原材料が上昇基調にあることなど、鉄鋼業界にとって「未曽有の厳しい経営環境」と語った。下期の海外マージンは過去最低水準になるが「ある意味想定の範囲内」とも述べ、差別化や安定生産、コスト管理を徹底していく方針を示した。
当初から厳しめに見ていたこともあり、通期の単独粗鋼生産量見通しは3500万トン程度で据え置いた。上期の鋼材価格は1トンあたり14万3000円の計画に対し14万4100円となった。通期では14万6000円を計画している。
前提為替レートは1ドル139円程度を145円程度へ見直した。下期は150円を前提としている。外需が弱い中、原材料を輸入に頼っていることから「円安がこれ以上進むことは望んでいない」と述べた。
23年4―9月期の連結事業利益は前年同期比8.8%減の4942億円だった。
●先進国、グローバル、金融市場
不動産コンサルティング会社コアロジックが1日公表した10月の豪住宅価格は前月比0.9%上昇し、前月の0.7%(改訂値)から伸びがやや加速した。
金融環境が予想より好調なことが示され、追加利上げを後押しする可能性がある中、11月にも最高値を更新するとみられている。
全国の価格は1月の底入れ後に7.6%上昇し、昨年4月の過去最高水準まで0.5%に迫っている。
数字を押し上げたのはパースの1.5%上昇とブリスベンの1.4%上昇で、ともに過去最高を記録した。
在庫は9月から5.1%増加した。
コアロジックのリサーチディレクター、ティム・ローレス氏は、それでも住宅市場に軟化の兆しが見られると指摘。「売り手が勢い付いている一方、購買活動は鈍化している。広告物件の供給が高水準の都市を中心に、販売条件が買い手寄りに調整されていく公算が大きい」と述べた。
さらに、需要と広告物件の供給バランスが均衡している市場では価格上昇ペースが鈍化すると予想した。
1日の金融市場で、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が近く追加利上げを行うとの見方が強まった。住宅価格が最高値付近まで回復したことを示すデータが発表されたほか、国際通貨基金(IMF)がインフレ抑制のために金融政策の引き締めを提言したことを受けた。
中銀が7日の理事会で金利を0.25ポイント引き上げ、4.35%にする確率が70%近くに達した。
不動産コンサルティング会社コアロジックが公表した10月の豪住宅価格は前月比0.9%上昇し、前月の0.7%(改訂値)から伸びがやや加速。11月にも最高値を更新するとみられている。
CBAのオーストラリア経済担当責任者、ガレス・エアード氏は「不動産価格の好転には目を見張るものがある」と述べた。
IMFは対豪年次協議後にまとめたスタッフリポートで、豪中銀はインフレを目標水準に低下させ、インフレ期待を抑制するためにさらなる金融引き締めが必要との見解を示した。
豪国内のインフレ鈍化は緩慢でコアインフレは依然として粘着的だと指摘した。その上で「2025年までにインフレ率を目標レンジに回帰させ、インフレ期待が抑制されなくなるリスクを最小化するため、金融政策のさらなる引き締めを推奨する」とした。
豪中銀は昨年5月以降に計400ベーシスポイント(bp)の利上げを実施し、政策金利は11年ぶり高水準の4.1%に達した。過去4カ月は据え置きを決定したが、インフレが高止まりするとともに、個人消費も底堅さを示している。
欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)は31日、2022年の域内観光客による宿泊利用が新型コロナウイルス禍前の96%まで回復したと発表した。
宿泊客の内訳で見ると、域内と域外を含めた海外客は21年を53%、国内客は30%上回った。
ユーロスタットは「22年にはフランス、イタリア、ドイツがそれぞれ4億泊超を記録。EU域内の6割以上を占めた」と分析した。
最大の訪問を記録したのは引き続きパリで7100万泊。ローマとベルリンがそれぞれ2920万泊と2630万泊だった。
地域別ではスペインのマヨルカ島が1位、パリ地域が2位だった。
1日発表されたS&Pグローバル/CIPSの10月の英製造業購買担当者景気指数(PMI)改定値は44.8と、速報値の45.2から下方修正された。9月の44.3は上回った。
生産指数は8カ月連続で50を下回り、2008─09年の世界金融危機以降で最長となった。
S&Pグローバルは「困難で不透明な市場環境により製造業者と取引先の双方が警戒感を強めた」と指摘した。
国内外の顧客は注文を減らし、製造業者は人員を削減、製造業の楽観度を示す指標は今年最低に落ち込んだ。
その一方で、企業の購買価格が6カ月連続で下落し販売価格も下落するなど、インフレ圧力はさらに弱まる兆しが見られた。
ミルテックFXの調査によると、国際的なファンドマネジャーは、最近の銀行危機を受け、カウンターパーティー(取引相手)リスクの分散を検討しており、カウンターパーティーとなる銀行の格付けを定期的に監視している。
調査は英国を拠点とする国際的な資産運用会社の幹部250人を対象に実施した。
ファンドマネジャーは、将来の銀行破綻で短期的に流動性が逼迫するリスクや、外国為替サービスの中断で給与や取引先への支払いに支障が出ることを懸念。80%のファンドマネジャーがカウンターパーティーの分散を検討していると回答した。
ファンドマネジャーは外国為替取引や為替リスクのヘッジで銀行などがカウンターパーティーとなるが、カウンターパーティーが破綻した場合、ヘッジや担保がリスクにさらされる恐れがある。
北米のファンドマネジャーを対象に実施した先の調査でも、カウンターパーティーリスクの分散が検討されていることが明らかになった。
ミルテックFXのエリック・ハットマン最高経営責任者(CEO)は「ファンドマネジャーが最近の銀行業界の出来事から学んだ大きな教訓の一つが複数のカウンターパーティーを持つ重要性だ」と指摘した。
銀行業界では最近、複数の米地銀が破綻。スイスの金融大手クレディ・スイスは同業UBS(UBSG.S)に救済買収され、市場に衝撃が走った。
三菱UFJ銀行は1日、円の定期預金金利を引き上げると発表した。期間10年は現行の0.002%を0.20%に引き上げる。11月6日から改定する。日銀の長短金利操作(YCC)修正を受けた長期金利上昇を反映する。引き上げは3メガでは初となる。
これまで、5年以上の定期預金金利は0.002%だった。今回、5年・6年は0.07%へ、7年・8年・9年は0.10%へ、10年は0.20%となる。0.20%は2012年以来の水準。5年未満の期間は変更しない。
10年長期金利は、7月に日銀が上限を1%に拡大したことを受けて徐々に水準を切り上げ、足元で0.9%台まで上昇。日銀は、10月31日の政策決定会合でも、「上限」を「メド」とするなど、さらなる柔軟化を決めた。「金利のある世界」に向け、先陣を切って動くことで、預金を確保する狙いもある。
米財務省は四半期定例入札の規模を前四半期に比べて拡大したが、増額ペースは大半の主要ディーラーの予想より低かった。ここ数カ月の米国債利回り急上昇を当局が懸念している可能性が示唆された。
同省の発表によれば、来週の入札での中長期債の発行額は計1120億ドル(約16兆9300億円)。多くのディーラーは前回と同じ増加ペースを予想し、1140億ドルになるとみていたが、それを下回った。
前回8月の定例入札と今回で大きく異なる点は、10年債と30年債の発行ペースを減速させたことだ。20年債の入札規模は変わらなかった。
財務省当局者は小さな変化にとどまったと説明。一部ディーラーの間では、年限が長めの国債発行についてはもっと大きく減速させるとの予想もあった。
ADPリサーチ・インスティテュートによると、10月の米民間雇用者数は伸びが市場予想を下回った。労働者への需要が低下していることを示した。データはADPとスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボが共同で算出した。
10月の米民間雇用者数は11万3000人増
エコノミスト予想の中央値は15万人増
9月は過去2年で最も低い伸び
雇用増は事業所の規模や業種を問わず全般に及び、教育・医療サービスや貿易・運輸がけん引した。新型コロナウイルス禍後の景気回復の原動力となってきた娯楽・ホスピタリティーは、2022年初頭以来の小幅な伸びとなった。一方、専門職・ビジネスサービスは人員を削減した。
地域別では、中西部を除く全地域で雇用が増加した。
今回の統計は、特に前月分も合わせて加味すると、労働市場の冷え込みが顕著になりつつあることを示唆している。失業率は依然低く、賃金は堅調なペースで上昇が続いているものの、雇用市場がコロナ流行時の高水準から正常化するのに伴い、雇用主は採用を控える傾向が強まっている。
ADPのデータは、賃金の伸びがさらに縮小していることを示した。同じ職にとどまった人の賃金は中央値で前年同月比5.7%、転職した人の賃金は8.4%それぞれ上昇。いずれも2021年以降で最も低い伸びとなった。
ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は「今月は雇用増加が圧倒的に集中した業種がなく、コロナ禍後の大幅な賃上げも過去のものとなったようだ」と指摘。「全体として、10月のデータはバランスの取れた雇用の構図を映し出している。労働市場が減速しているとはいえ、依然として力強い個人消費を支えるには十分だ」と述べた。
米金融当局は、インフレと連動する傾向がある賃金の動向を注視している。1日まで開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では金利据え置きが広く予想されているが、インフレ圧力が持続的に再加速すれば、金融当局が今後数カ月に追加利上げに傾く可能性がある。
米労働市場の先行きを見極める上で、今週発表される別のデータも一段の手掛かりを提供しそうだ。1日に発表される9月の米労働省雇用動態調査(JOLTS)では、求人件数が減少するものの、依然として高止まりを示す見通しだ。米労働省が3日発表する10月の雇用統計は、民間雇用者数が約15万人増と見込まれている。
9月の米求人件数は予想外に増加し、2カ月連続でプラスとなった。経済のさまざまなセクターで労働市場が力強さを維持していることが浮き彫りになった。
9月の米求人件数は955万件に増加
エコノミスト予想の中央値は940万件
前月は950万件(速報値961万件)に下方修正
採用はわずかに増加し、レイオフは減少した。
自発的離職者の割合である離職率は3カ月連続で2.3%。2021年1月以来の最低を維持した。離職率の低下は、労働者が別の仕事を見つける自信が薄れている現状を示している。
米供給管理協会(ISM)が1日発表した10月の製造業景気指数は46.7と、9月の49.0から低下した。ロイターがまとめた市場予想は49.0だった。
新規受注と雇用が低調だったのが大幅低下につながった。全米自動車労働組合(UAW)による米拠点の3大自動車メーカー(ビッグスリー)に対するストライキも悪影響を与えた可能性が高い。
拡大・縮小の分岐点となる50を下回るのは12カ月連続で、2007─09年に問題が顕在化した世界金融危機以来の長さとなっている。
先行指標となる新規受注指数は10月に45.5となり、9月の49.2から低下した。生産指数は50.4と9月の52.5から低下したが、50は上回った。
10月の価格指数は45.1と9月の43.8から上昇したものの、低水準が続いた。
供給業者の納入を示す指数は47.7と、9月の46.4から上昇した。
10月の雇用指数は46.8となり、9月の51.2から低下した。
UAWとビッグスリーが暫定合意に達したため、11月の製造業景況指数は上昇する可能性がある。
欧州の債券発行はボラティリティーの高さが嫌気され、10月としては2014年以来の少なさでほぼ10年ぶりの低水準となった。年末にかけて発行は低調にとどまりそうだ。
米10年国債利回りが5%に達し、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦争が勃発、予想を下回る大手企業の決算が相次いでいるという背景もある。
ブルームバーグがまとめたデータによると、10月の欧州市場における起債は700億ユーロ(約11兆1700億円)弱にとどまり、全てのセクターで前年同月から減少した。
投資適格級企業の落ち込みが目立ち、ユーロ建て債の発行額は10月として金融危機以降最少で、年初来でも最も起債額が少ない月となった。
最近の指標は、経済活動が第3・四半期に力強いペースで拡大したことを示している。雇用の伸びは今年初旬から緩やかになったが依然として力強く、失業率は低いままだ。インフレ率は高止まりしている。
米国の金融システムは健全で強固だ。家計や企業の金融および信用状況の引き締まりが経済活動、雇用、インフレの重しになる可能性がある。これらの影響の程度は引き続き不透明だ。委員会はインフレのリスクを引き続き大いに注視している。
委員会は雇用最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す。これらの目標を支援するため、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを5.25─5.50%に維持することを決定した。委員会は追加の情報と金融政策への意味を引き続き評価する。徐々にインフレ率を2%に戻すために適切とみられる追加的な金融政策の引き締めの程度を決めるに当たり、委員会は金融政策の度重なる引き締め、金融政策が経済活動とインフレ率に及ぼす影響の遅れ、および経済と金融の動向を考慮する。さらに、以前発表された計画で説明されている通り、委員会は保有する米国債およびエージェンシーローン担保証券の削減を続ける。委員会は、インフレ率を2%の目標に戻すことに強く取り組む。
金融政策の適切な姿勢を評価するに当たり、委員会は今後もたらされる経済見通しに関する情報の意味を引き続き監視する。もしも委員会の目標の達成を妨げる可能性があるリスクが生じた場合、委員会は金融政策の姿勢を適切に調整する準備がある。委員会の評価は、労働市場の状況、インフレ圧力、インフレ期待、金融と世界の動向を含む幅広い情報を考慮する。
政策決定の投票で賛成したのは、ジェローム・パウエル委員長、ジョン・ウィリアムズ副委員長、マイケル・バー、ミシェル・ボウマン、リサ・クック、オースタン・グールズビー、パトリック・ハーカー、フィリップ・ジェファーソン、ニール・カシュカリ、アドリアナ・クーグラー、ロリー・ローガン、クリストファー・ウォラーの各委員。
米連邦準備理事会(FRB)は10月31日─11日1日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%で据え置いた。決定は全会一致で、2会合連続での利上げ見送りとなった。
FOMC声明は「経済活動は第3・四半期に力強い(strong)ペースで拡大した」とし、9月会合時点に示した「堅調な(solid)ペース」から判断を引き上げた。
市場では、最近の市場金利の上昇が金融引き締め効果をもたらすとして、利上げサイクルが終了したという見方が台頭している。しかしFRBは声明で、雇用の伸びは引き続き「力強く」、インフレは依然「高止まり」しているとし、FRBは「インフレを2%の目標に回帰させるために適切とされる追加引き締めの程度」を引き続き検討するとした。
同時に「金融政策が経済活動やインフレ、経済・金融の動向に影響を与えるまでのラグ」を踏まえ、追加措置を検討する上で過去の利上げの影響の進展を注視しているとした。
また、「経済活動の重しとなる公算が大きい」要因の1つとして、金融状況の引き締まりに言及した。
スパルタン・キャピタル・セキュリティーズの首席市場エコノミスト、ピーター・カルディロ氏は「声明はハト派的に傾いている」とし、「2回連続で利上げを見送ったという事実は、12月も金利が据え置かれる可能性があることを示唆している。そうであれば、FRBの利上げサイクルが終了したことを意味する」と述べた。
フェデラルファンド(FF)金利先物市場でも、FRBは利上げを終了し来年6月までに利下げを開始するとの見方が強まった。 もっと見る
パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、米債利回りの上昇が追加利上げの必要性をどの程度上回っているかという質問に対し、将来のFRBの金融政策に影響を与えるには、市場金利は持続的に上昇する必要があると応じた。金融状況の逼迫が持続すれば、FRBの行動に影響する可能性はあるとしつつも、そのような状況になるかどうかは「まだ分からない」と述べた。
パウエル議長はさらに、FRBは現時点で「利下げについては全く検討していない」とした。その上で、インフレをどのように2%の目標に回帰させるか検討を進める中、「追加利上げをすべきかどうかというのがわれわれが問うところと言っても過言ではない」と述べた。
また、FRBスタッフがこの日の据え置き決定に先立ち、金融政策担当者に示した経済見通しには、景気後退予想は含まれなかったと明らかにした。
FRBが進めるバランスシートの縮小については「現在の縮小ペースを変更することは検討していない」と述べた。
米連邦準備理事会(FRB)は10月31日─11日1日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%で据え置いた。決定は全会一致。 もっと見る
パウエルFRB議長がFOMC後に行った会見の内容は以下の通り。
*引き続きデュアルマンデートにしっかりと焦点を当てる
*政策スタンスは制約的
*引き締めの完全な効果はまだ感じられない
*これまでの道のりを踏まえ、不確実性の中、慎重に進めている
*データ全体とリスクバランスを考慮して判断
*経済は予想を大きく上回って拡大
*労働市場は依然逼迫
*労働市場の需給バランスは引き続き改善
*雇用の伸びは力強いペースだが、今年これまでよりは減速
*名目賃金上昇率、幾分緩和の兆し
*労働需要、なお供給を上回る
*インフレ、依然として目標を大幅に上回っている
*インフレ、昨年半ば以降は鈍化した
*数カ月分の良好なインフレデータ、始まりに過ぎない
*インフレを2%に低下させるには「長い道のり」
*制約的な政策スタンス、経済活動とインフレ双方に下方圧力
*十分に制約的なスタンスの達成にコミット
*経済と労働需要のレジリエンス(回復力)を示す最新のデータに注意払う
*これらはインフレの一段の進展を危険にさらし、追加利上げを正当化する可能性
*金融情勢はかなり逼迫
*金融動向が与える影響を注意深く監視
*引き続き会合ごとに判断
*追加引き締めが必要かどうかを判断する際には累積的な引き締め、ラグ、経済・金融の動向を考慮
*インフレ抑制には潜在成長率を下回る成長と労働条件の緩和が必要となる可能性
*インフレ率は低下しているが、依然として目標を大きく上回っている
*労働市場は均衡を取り戻しているが依然逼迫
*国内総生産(GDP)は力強いが鈍化すると予想
*政策が十分に制約的とは確信していない
*長期債利回りの上昇に注意払う
*金融政策に影響を与える可能性
*長期金利の上昇、ドル高、株安による金融情勢の逼迫が将来の金利状況に影響を与える可能性
*より引き締まった状況を継続すべき
*政策金利の上昇期待が長期金利の上昇を引き起こしているようには見えない
*金融情勢が十分に抑制的であると確信しているわけではない
*今後のFOMCについて何も決定していない
*金融情勢は明らかに引き締まった
*時間が経てば(利上げの)影響は出てくるが、どの程度時間がかかるかは不明
*金融引き締めが何回の利上げにつながるかは判断が難しい
*景気は驚くほど耐性がある
*金利評価にあたっては全体的な見通しに注目する
*労働市場、経済成長、金融情勢に注目する
*追加引き締めが必要との判断に達すれば、そうするだろう
*利下げについては、今は全く考えていない
*金利が十分に抑制的であるかどうかに集中している
*次の問題は、いつまで抑制的な政策を続けるかだ
*12月会合について何も決定していない
*一時停止後に再度利上げを実施するのは難しいという考えは間違っている
*かなりのリスクが存在
*大局的な見地から言えば、労働市場、インフレ面で進展している
*十分に制約的な政策スタンスを達成したと確信することに重点的に取り組んでいる
*高インフレは人々に苦痛を与える
*ダメージを最小限に抑え、物価安定を回復することがわれわれにできる最善の行動
*失業率の急上昇を招かず、大きな進展を遂げたことは非常に喜ばしい
*成長鈍化と労働市場の状況が軟化することが必要となる公算が大きいと、私も他のFRB当局者も引き続き確信
*政策効果のラグの時間を見極めるのはなお非常に困難
*かなりの不確実性の中で、政策を決定する必要がある
*大きな不確実性の下で政策を決定しなければならない
*これが今年、プロセスを遅らせた理由の一つ
*急ぐことはできない
*遅らせることで一段の対応が必要な場合にどれだけの対応が必要なのかをより理解できるようになる
*「ドットチャート」は政策当局者の個人的見解を踏まえた適切な政策を描いたもの
*ドットチャートの有効性は会合の合間に低下
*われわれの考えの透明化に努める
*次回会合に近づくにあたり、データをどのように解析するかについて話し合う予定
*潜在的な成長が高まっている
*金融情勢を含むあらゆる経済データを検討していく
*今回の利上げサイクルでかなり遠くまで到達した
*サイクルの終わりに近づいている
*政策は制約的、その影響を確認
*バランスシートの縮小ペース変更は検討していない
*長期金利上昇下で量的引き締め(QT)が果たす役割は比較的小さい可能性
*現時点では準備金不足に近づいてすらいない
*新たな規制に関しては幅広いサポートを提供するパッケージを用意する予定
*米長期債利回りを単独で検討するつもりは決してない。米長期債利回りはより広い視野の一部として検討
*金融業者が適切な融資計画を立てられるよう金融業者と多くの取り組みを実施
*銀行システムは非常にレジリエンス(回復力)があると考えている
*これらの利上げがその状況を大きく変えると考える理由はない
*インフレ抑制の進展は一様でなく、時間がかかる
*政策面では十分前進したが、リスクはより両面的なものになった
*インフレ期待の上昇を放置することは問題だ
*インフレ期待は良好な水準にある
*インフレが下がると国民が信じることが、戦いに勝つために重要
*中立金利の予測範囲内では、政策は抑制的
*政策スタンス決定に向けデータ分析する時間をもう少し取る
*この18カ月で賃上げは大幅に鎮静化した
*インフレの主因は賃金ではない
*将来的には、インフレにとって労働市場がより重要になるかもしれない
*現在も、適切な状態への確信を得るための努力を続けている
*利上げの「やり過ぎ」と「不足」の間でよりリスクの均衡が取れる地点に到達した
*インフレがまだ幅広く鎮静化し、夏に予想した道筋を維持しているかどうか注視している
*消費の構造的な変化があったとは思わない
*家計や企業のバランスシートの強さを過小評価していた可能性がある
*パンデミック(世界的な大流行)効果の巻き戻しが、今回の利上げサイクルを独特のものにしている
*中東の紛争が米国に経済的影響をもたらすかは明らかでない
スイス国立銀行(SNB、中央銀行)のジョルダン総裁は1日、ベルンで開催された年次会合で政府に対し、一段の利上げを可能性を排除しないと述べた。
スイス中銀は9月の政策決定会合で、政策金利を1.75%に据え置くと決定。据え置きは2022年3月以来で、ジョルダン総裁は「様子見」局面に入ったと述べたが、物価動向次第で利上げする姿勢も示していた。 もっと見る
ジョルダン総裁はこの日の年次会合で、中銀目標(0─2%)を超える水準にあったインフレ率は9月に1.7%に低下したが、中銀は引き続き行動を起こす用意があると表明した。
政府は会合後に発表した声明で「インフレ圧力のわずかな低下に加え、スイスフラン相場の上昇を背景とした金融の引き締まりを受け、中銀は9月に様子見姿勢を取った。ただ、中期的な物価安定に向け、一段の利上げが必要となる可能性は排除されていない」とした。
ジョルダン総裁はこれとは別にベルンで開かれたイベントで、中銀は金融政策の次の動きを決定する前に、数点の不確定要素を考慮しながら様子見姿勢を取っていると発言。同時に、必要に応じて行動する用意があるとし、「インフレ圧力が再び高まれば、一段の金融引き締めを実施することをためらわない」と述べた。
米資産運用会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック最高経営責任者(CEO)は1日、米経済が悪化して来年初めにリセッション(景気後退)入りするのに伴い、金利は低下傾向をたどると予想した。CNBCのインタビューで語った。
現在の金利水準は持続できなくなるという見方を示した。
米連邦準備理事会(FRB)は1日まで開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.25─5.50%で据え置いた上で、追加利上げの可能性に含みを残した。
FRBは声明で、米経済の強さを認めつつ企業や家計が直面している金融状況の引き締まりにも言及した。
ガンドラック氏は、景気が減速すればFRBは200ベーシスポイント(bp)の利下げを実施すると見込み、利払いの問題が次の「金融危機」を引き起こすかもしれないと指摘。
「レイオフが起こると実際に考えている」と述べ、失業率は顕著に上昇すると予想した。
また、現金を保有しておくよりも米国債を選好するとし、10年債について来年末までおそらく現水準を維持するという見通しを示した。
日本銀行の円買い介入が機能する可能性は低いと、ドイツ銀行の為替調査グローバルヘッド、ジョージ・サラベロス氏が指摘した。同氏は円を、新興国通貨で過去10年間のパフォーマンスが最も悪い2つの通貨と同列に置いた。
サラベロス氏は顧客向けリポートで、「利回りや対外収支といった円相場を動かしている要因を一見すると、円はトルコ・リラやアルゼンチン・ペソと同じ部類に属する」と指摘。「円を防衛する日本の介入は良くて無力、最悪の場合には状況を悪化させることになるだろう」と続けた。
国際的な投資家にとって、円は伝統的に安全資産としての地位を確立している。それを過去10年でドルに対して90%余り下落したリラとペソになぞらえるのは目を引く。円は世界で取引量が3番目に多い通貨であり、日本の経済規模は世界で4番目に大きい。
サラベロス氏は、日本の当局によるいかなる為替介入もドルをさらに押し上げることになるかもしれないと主張。インフレ調整後の日本の利回りが大幅なマイナスとなるのに従い、日本から資本流出が加速すると予想した。
「過去2年間の幅広い円安が反転するのは、あるシンプルなことが起きる時だけだ。それは日銀の利上げ開始だ。金利をゼロに戻す小さな動きではなく、はるかにもっと引き上げることだ」と論じた。
自然災害の発生リスクなどを引き受けるCAT債(大災害債券)の市場は、今年最もパフォーマンスの良い債券区分の一つだ。主要発行体の世界銀行が発行拡大の準備を進める中で、販売額も大幅に増えようとしている。
世界銀行は今後5年間で、いわゆるCAT債の発行残高を現在の10億ドル(約1500億円)から50億ドルに増やす計画だ。総額約400億ドル規模の市場に対して大幅な増額となる。
「野心的だが、現実的だ」。世界銀行の財務部門でマーケットソリューションズ・ストラクチャードファイナンスの責任者を務めるマイケル・ベネット氏はこう語った。
CAT債のリターンは事実上、他の全ての債券市場に勝っており、その人気は高まっている。今年、米国債の投資家が損失を被っている間に約17%上昇した。
CAT債は保険市場のリスクを引き受けた対価として、買い手に利益をもたらす商品だ。そうしたリスクは、異常気象の増加に伴い増大している。
途上国に資金援助を行う世界銀行は、CAT債がカバーする自然災害の範囲を拡大する計画だ。
「ハリケーンやパンデミック(世界的大流行)、地震だけでなく、洪水や干ばつなどの災害もCAT債の対象になるだろう」とベネット氏はインタビューで話した。
欧州保険年金監督機構(EIOPA)のペトラ・ヒールケマ議長によれば、世界で最も裕福な地域でも、今後の潜在的な損失に対処する上で、「保険のカバーが足りていない」ところがあるという
途上国に資金援助を行う世界銀行は、CAT債がカバーする自然災害の範囲を拡大する計画だ。
「ハリケーンやパンデミック(世界的大流行)、地震だけでなく、洪水や干ばつなどの災害もCAT債の対象になるだろう」とベネット氏はインタビューで話した。
欧州保険年金監督機構(EIOPA)のペトラ・ヒールケマ議長によれば、世界で最も裕福な地域でも、今後の潜在的な損失に対処する上で、「保険のカバーが足りていない」ところがあるという
こうした状況について、「われわれの大陸を襲う自然災害はかつてないほど頻度が増え被害も増大しているため、重大なことだ」と同氏は最近、欧州議会の経済金融委員会で話した。
世界の多くの地域でサイクロンや干ばつ、洪水などの災害への備えは、ほとんど、または全くなされていない。スイス再保険研究所の自然災害レジリエンス指数によれば、2022年時点で世界のリスクの約75%が補償されていないという。
CAT債の投資家は、契約で定義された災害が発生し、ハリケーンでの気圧の値など特定の条件が満たされると被保険者に支払いを行う。全ての条件が満たされると、投資家は資金の一部または全額を失うことになり、その資金は対象となる自然災害関連費用を賄うために使われる。
CAT債の投資家は歴史的にほとんどの場合、そうした支払いを回避してきた。だが世界銀行が過去10年間に発行した約30件のCAT債のうち約6件については、発行体が備えようとした損害の一部ないし全部について、投資家はカバーを求められた。
鍵は十分なプレミアム
11月末からドバイで開催される国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、増加する証券化モデルについて議論が行われる予定だ。CAT債はそうしたモデルに含まれる。
気候変動リスクに関連して魅力的な金融商品を開発することは、地球温暖化の影響を受けやすい国々を守るのに要する膨大な民間資金の一部を引き出す鍵となる。
英ケンブリッジ大学の持続可能性リーダーシップ研究所のフェロー、アナ・ゴンザレスペラエス氏は「グローバルサウス(新興・途上国)を守ることによる分散のメリットは、グローバルノース(先進国)の民間資本にとって大きなインセンティブになる」とコメント。「資本を利用しやすくする鍵は、そうしたリスクを負うのに十分なプレミアムを安定的に供給することだ」と語った。
CAT債の値動きは、株式や他の債券と相関関係がないため、投資家はポートフォリオの分散を図ることができる。また最終投資家からのESG(環境・社会・企業統治)ニーズを満たす上でも有効だ。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の国家金融監督管理総局は1日、金融リスク抑制に向け、銀行の資本規制強化策を発表した。来年1月1日付で施行する。
銀行のリスク管理を改善し、経済にさらに貢献できるようにする狙いがあるとした。
銀行の自己資本比率に全体的なリスクをより正確に反映させる内容で、資本規制に異なる区分を設け、大規模銀行や海外事業の比率が高い銀行には厳しい資本要件を課す。
銀行はまた、非クレジット資産に対する損失引当金を積む増す必要が生じる。新たな要件を完全に満たすまでに2年間の猶予期間が与えられる。
さらに、銀行の住宅ローン融資残高について、不動産の種類や返済原資に基づくリスク管理措置を定めた。
民間不動産調査会社の中国指数研究院(CIA)が1日発表した調査結果によると、10月の国内新築住宅価格は2カ月連続で上昇した。
前月比で平均0.07%上昇し、9月(0.05%上昇)から加速した。
新築住宅販売(床面積ベース)は約10%減少。9月(20%減)から落ち込みが縮小した。
CIAは不動産市場の回復はなお不安定としつつ、一部主要都市での住宅購入規制緩和や頭金比率引き下げ、住宅ローン金利引き下げなど支援策は拡大しており、さらなる措置も見込まれると指摘した。
中国指導部は31日まで北京で開催した中央金融工作会議で、いかなる種類の不動産会社に対しても適切な資金需要を満たす支援をするとともに、住宅需要に応える政策を推進する方針を示した。
JPモルガンのエコノミストは、同会議で不動産部門のリスクを軽減する新たな具体的措置は示されなかったとし、同部門に対する慎重な姿勢を維持すると述べた。
中国人民銀行(中央銀行)は1日、不動産セクター向けの融資残高が9月末時点で53兆1900億元(約1099兆円)と、1年前から1000億元減ったと発表した。2005年からのデータで初の前年割れとなった。
7-9月(第3四半期)の住宅ローン残高は38兆4200億元と、前年同期比4900億元減少。2四半期連続で前年の水準を割り込んだ。
中国で住宅販売の落ち込みが10月に鈍化した。政府が住宅セクター支援策を強化していた。
中国房産信息集団(CRIC=克而瑞)がまとめた10月の暫定集計によれば、不動産大手100社の新築住宅販売額は前年同月比27.5%減の4067億元(約8兆4000億円)。9月は29.2%減だった。
10月の販売額は前月比では0.6%増加した。
財新/S&Pグローバルが1日発表した10月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.5と9月の50.6から低下し、景況改善と悪化の境目となる50を3カ月ぶりに下回った。市場予想の50.8も大幅に下回った。第3・四半期の国内総生産(GDP)は予想より良かったが、製造業はなお従来の想定ほど堅調ではないことが示された。
中国国家統計局が前日発表した10月の製造業PMIも49.5と9月の50.2から低下し、50を予想外に下回った。2種類の製造業PMIが予想外の悪化となったことで、製造業と全般的な景気の弱さへの懸念が改めて強まりそうだ。
ジョーンズ・ラング・ラサールのチーフエコノミスト、ブルース・パン氏は「PMIの主な圧迫要因は需要だ」と指摘。大型連休の影響で一部工場の生産が滞ったとも説明した。「第4・四半期は製造業にとって厳しい時期。工場は年内に作業を終わらせようと急ぐため、12月の生産は低調になりがちだ」などと述べた。
キャピタル・エコノミクスは、10月の鉱工業生産や利益など今月発表される経済指標が同様に弱い内容になれば、景気がこれ以上落ち込まないよう一段の措置を講じる必要があるとした。
<需要の弱さ顕著>
財新の製造業PMIでは、軟調な外需により販売の伸びが鈍化し、生産が減少した。新規輸出受注は4カ月連続で減少している。
財新智庫のエコノミスト、王哲氏は「10月の製造業は全体的に活気を欠いた」と指摘。「中国経済は底入れの兆しを見せているが、回復の基盤が盤石ではない。需要は弱く、国内外に多くの不透明感が依然としてあり、期待感が引き続き比較的弱い」とした。
生産減と低調な需要が購買活動の重しとなり、7月以来の縮小を示した。予想を下回る販売と製品出荷の遅れから、在庫は2015年9月以来の大幅増。雇用も2カ月連続で減少した。
原材料や石油の価格上昇で投入価格は9カ月ぶりの高水準を付けた。
今後1年の景況感を示す指数も再び低下し、22年9月以来の低水準を付けた。
インド準備銀行(中央銀行)のダス総裁は31日、米金融大手JPモルガン(JPM.N)が新興国債券指数「GBI―EM」にインド国債を組み入れると9月に発表したことを受け、「まず認識されねばならないのは、(組み入れは)インドの経済と金融市場への一種の信任投票であるということだ」と述べた。また、国内市場で大幅なボラティリティーが発生する可能性は低いとの見解を表明した。
「われわれは大規模な資金流入や流出があっても対応可能なため、そうした際に起きるボラティリティーは想定していないし、インド準備銀行には対処能力があり効果を発揮できると考えている」と述べた。
総裁は、国内の銀行とノンバンクの経営が依然として健全と堅調を保っているとの考えも表明。その上で、金融規制当局がこうした会社の持続的な成長と回復力維持を確実にするためガバナンス基準に焦点を当てていると述べた。
景気見通しにも言及し、平年より乾燥したモンスーン季が経済成長の足かせになると懸念されていたものの、2023年7―9月期に予想を超えるペースの経済成長だった可能性があるとの見方を示した。
S&Pグローバルが1日発表した10月の韓国製造業購買担当者景気指数(PMI)は季節調整済みで49.8と、前月の49.9から小幅に低下した。景気の拡大・縮小の分かれ目である50を16カ月連続で下回ったが、景況感の高まりで生産と受注の減少が和らいだ。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのエコノミスト、ウサマ・バティ氏は「10月のPMI指数は2023年第4・四半期の序盤で韓国の製造業の経営状況が依然として低迷していることを示している」と説明。その上で「生産と新規受注の双方が緩やかに縮小する中、悪化の度合いは小幅にとどまった」と指摘した。
新規輸出受注は3カ月連続で減少したが、縮小ペースは前月より鈍化した。ただ、中国本土や日本などの主要輸出市場で需要は低迷している。
原材料価格高と通貨ウォンの下落を受けて投入価格は10カ月ぶりに速いペースで上昇し、製造業全体でコスト圧力が高まっていることが示された。
一方、今後の見通しについては楽観的な見方が増えた。
S&Pグローバルが1日発表した10月のインド製造業購買担当者景気指数(PMI)は55.5と、8カ月ぶりの低水準だった。
9月は57.5。2カ月連続の低下となった。需要が鈍化したほか、原材料コストの増加が企業マインドの重しとなった。
ロイターがまとめた市場予想は57.7だった。好不況の分かれ目となる50は28カ月連続で上回った。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの経済アソシエートディレクター、ポリアンナ・デリマ氏は「世界経済の厳しい環境にもかかわらず、インドの製造業は10月に大幅な成長を遂げた」とした上で、一部の指標が悪化したと指摘。特に消費財部門が低迷した。
新規受注指数は1年ぶりの低水準。海外受注の伸びは4カ月ぶりの低水準だった。
企業信頼感は需要とインフレに対する懸念を背景に低下。将来の生産を示す指数は5月以来の低水準。9月は9カ月ぶりの高水準だった。
投入価格は小幅に上昇した。コスト上昇分の一部が顧客に転嫁されたが、販売価格の上昇率は鈍化した。
●中東
●中南米・アフリカ
ブラジル中央銀行は1日の金融政策委員会(COPOM)で、3会合連続となる50ベーシスポイント(bp)の利下げを決定した。政策金利は12.25%となった。中銀は今後について、同程度の追加利下げを再び示唆した。
決定は全会一致。ロイター調査ではエコノミスト40人全員が50bpの利下げを予想していた。
中銀は声明で、「経済が想定するシナリオ通り推移した場合、今後(複数回)の会合で同程度の引き下げを行うというのがCOPOMの一致した見通しだ」と説明。現在の引き下げペースは、政策金利をディスインフレ過程に必要な制約的水準に維持するのに適切との判断も示した。
中銀は外部環境が「悪い」とし、現状は「通常よりも不確実性が高く、金融政策の遂行に慎重さが求められている」とした。
緩和サイクルの先行きについては、インフレの状況やGDP(国内総生産)ギャップなどさまざまな要因に左右される見通しだとし、ディスインフレ過程が定着し、インフレ期待が目標に一致するまでは引き締め的な政策を維持する必要があると強調した
中銀はまた、政府が財政目標を「断固追求」することの重要性を再確認した。ルラ大統領が先週、来年中に基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の赤字を解消する必要はないと発言したことから、市場では公的債務の拡大懸念が再燃していた。
ブラジル地理統計院(IBGE)が31日発表した7─9月の失業率は7.7%と、6四半期連続で低下した。ロイター調査による市場予想と一致した。6─8月は7.8%だった。
高金利下でも労働市場の強さが浮き彫りになり、失業率は2015年2月以来の低水準となっている。
一方、就業者数は12年の統計開始以来最高の9980万人に達した。求職者は推計830万人と、15年3─5月以来の低水準となった。
今週発表された統計では、9月の正規雇用者数が予想を上回った。政府は年末にかけてさらに増えるとみている。1─9月では160万人増加した。
ルラ大統領はソーシャルメディアに投稿したライブ動画で、「年末時点の正規雇用者数は200万人の純増となっている公算が極めて大きい」と述べた。
●市況
<為替> ドルが下落した。米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言が、利上げ終了を示唆するものと受け止められた。
パウエル議長は、FRBがインフレ率を2%に回帰させるにはまだ長い道のりがあるとし、一段利上げを正当化しうる経済データと労働需要の耐性に言及した。一方、金融情勢は明らかに引き締まっているとも指摘し、多くのリスクを挙げた。
アリアンツ・インベストメント・マネジメントのシニアインベストメントストラテジスト、チャーリー・リプリー氏は「このことは、FRBがより多くの政策を実施する潜在的なリスクはあるものの、利上げのハードルはより高くなっていることを示唆している」と述べた
<債券> 国債利回りが低下した。米連邦準備理事会(FRB)が1日まで開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を据え置き、「経済活動の重しになりそうな」要因の一つとして金融引き締めに言及した。
<株式> 続伸し、ナスダック総合(.IXIC)は1.6%高で取引を終えた。米連邦準備理事会(FRB)はこの日まで2日間の日程で開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きを決定した。追加利上げの可能性を排除しなかったものの、市場では利上げサイクルが終了したとの楽観的な見方が浮上した。
S&P総合500種(.SPX)の主要11セクターで下落したのはエネルギー(.SPNY)と主要消費財(.SPLRCS)のみ。金利に敏感な情報技術(.SPLRCT)などの上げが目立った。
半導体大手アドバンスト・マイクロ ・デバイセズ(AMD)(AMD.O)は約10%高。人工知能(AI)向け半導体の売上高について強気の見通しを示した。
<米原油先物> 米連邦準備理事会(FRB)の金融政策決定後に売りが優勢となり、3日続落した。米国産標準油種WTIの中心限月12月物の清算値(終値に相当)は前日比0.58ドル(0.72%)安の1バレル=80.44ドルと、8月下旬以来約2カ月ぶりの安値となった。1月物は0.40ドル安の80.10ドル。
<ロンドン株式市場> 反発して取引を終えた。主要中央銀行による金融政策決定の発表を控えて様子見ムードが強まる中、明るい利益見通しを示した小売りのネクストが買われたのが相場をけん引した。
トレード・ネーションのシニア市場アナリスト、デービッド・モリソン氏は「英中銀が2日に政策金利を変更すると予想している人はいないと思うが、経済が特に堅調というわけではないため中銀のメッセージには細心の注意を払う必要がある」と述べた。
<欧州株式市場> 3日続伸して取引を終えた。米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)結果発表を控えていた中で、小売株やヘルスケア株が上昇したのが全体相場を押し上げた。
ヘルスケア株指数(.SXDP)も1.09%上昇。2日に決算発表を控えたデンマークの製薬大手ノボノルディスク(NOVOb.CO)が1.6%上げた。欧州のバイオ医薬品会社アルジェニクス(ARGX.BR)は4.5%上昇した。
スイスのチョコレート大手バリーカレボー(BARN.S)は4.9%高。予想に沿った通期決算の内容だったことや、新戦略に基づいて中長期目標を更新したことが材料視された。
一方、デンマークの洋上風力大手オーステッド(ORSTED.CO)は25.7%と急落。第3・四半期損益の赤字が予想より大きかったことが嫌気された。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが数週間ぶりの低水準を付けた。米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控える中、米国債入札規模の発表を受けた米債利回りの低下に追随した。
日経先物32015、ダウ先33379、債先143.95、米4.715、独2.7500、仏3.371、西3.792、伊4.665、英4.5315、波5.650、原油80.93、銅8,118、ドル円150.54、ユーロドル1.0587
※11/2 9時5分頃