備忘録(2023/8/31)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
2023年1月に破綻した豪スタートアップ「サン・ケーブル」が再始動する。海底ケーブルで再生エネルギー電力をアジアへ送る計画を巡り、事業方針を巡る内部対立などで追加出資をまとめられず破綻した。同社に出資していたオーストラリア有数の富豪などが事業を買い取った。再エネ送電計画を進めるとみられるが、実現可能性には疑問符もつく。
<参考>
研究ではペルー、コロンビア、カンボジア、タンザニア、コンゴ(旧ザイール)での18件のカーボンオフセットプロジェクトを分析。潜在的な8900万のクレジットのうち森林保全を通じた炭素削減効果に結び付いているのは、わずか540万で、割合にすると6%にとどまることが明らかになった。6000万超のカーボンクレジットが、森林伐採をほとんど減らさなかったプロジェクトから創出されている。
同研究の上席著者でケンブリッジ大学の環境経済学・公共政策学の教授、アンドレアス・コントレオン氏はインタビューで、「こうしたカーボンクレジットは、グリーンウォッシュをもたらすのではないかという疑念がある」とコメント。「われわれは今、それらのオフセットのプログラムに欠陥があることを示す確かで信頼できる証拠を手にしている」と述べた。
カーボンクレジットは、風力発電や植林などのプロジェクトにより大気中から削減・除去された二酸化炭素(CO2)を表し、削減単位1トンで認証・発行される。購入者はクレジットを取引したり、自らの排出量を相殺するために使用したりすることができる。
研究結果はカーボンオフセットに絡む「座礁資産」(不良化する恐れのある資産)のリスクを浮き彫りにしている。また、そうしたクレジットに依存する企業のカーボンニュートラルに関連した主張にも、疑問を投げ掛けている。
「REDDプラス」と呼ばれる森林保護プロジェクトは、もはや排出されない炭素が反映されたクレジットを創出する。過去の森林減少やそれに伴う排出量の推移などを参考に、森林の減少や劣化を抑制した場合の排出量を評価する仕組みだ。
基準を設定する機関のVERRAが公表しているデータを見ると、エネルギー企業の伊ENIや仏トタルエナジーズ、航空会社の英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)、スイスの食品大手ネスレ傘下のネスプレッソなどが、同プロジェクトから創出されたクレジットを購入している。
ENIは500万を優に超えるクレジットを「REDDプラス」から購入。これは約90万世帯の年間の電力使用量に相当する。ENIの広報担当者は、調査結果を強く否定しており同社のカーボンクレジットは最高水準の管理下にあるとした。
BAは、さまざまな気候変動を巡るイニシアチブに取り組んでおり、持続可能な航空燃料への投資など、50年までに排出量を正味ゼロにすることを優先しているとコメント。ネスレ・ネスプレッソはカーボンオフセットへの投資から脱却しており、温室効果ガス排出量の削減とバリューチェーン内の炭素除去によってネットゼロを達成する方針だと説明した。トタルエナジーズはコメントを控えた。
ここにきてカーボンクレジット取引最大手のシンガポールのトラフィグラ・グループは、森林プロジェクトの調査結果を待つ間、「REDDプラス」のクレジットの引き渡しを停止した。
調査対象となった18のプロジェクトは21年11月時点で、6200万のカーボンクレジットを発行。このうち1460万については、個人ないし組織による温室効果ガス排出量の相殺に使われてきた。最終的には「これらのプロジェクトは、森林保護で実際に削減した量の3倍に近い炭素を相殺するのに使用された」とコントレオン氏は指摘。「依然として4700万を超えるクレジットが市場に残っている」と話した。
「サイエンス」が詳述したカーボンオフセットは、VERRAが認証した。VERRAはサンプル数が少ないため、調査の方法論について「重大な懸念」があるとしている。
プロジェクトのうち約4分の1しか調査されていない以上、研究の結論を全てに当てはめるのは不当だとVERRAは主張。ウェブサイトの声明で「われわれは今の仕組みに改善すべき点があるのを認識しており、継続的な進化の促進に注力する」とした。
●その他産業
インテルは7月、今期の売上高を当時のアナリスト予想平均133億ドル(約1兆9350億ドル)に対し、最大139億ドルと予想した。中国での需要低迷や、一部の大規模データセンター所有者からの注文減少がサーバーチップ部門に重くのしかかっている一方、パソコン向けプロセッサーの在庫は通常状態に戻っており、顧客の注文回復を促している。
ゲルシンガー氏は、インテルを改革し、かつて支配的であった業界のトップに返り咲くという野心的な目標を達成するめどが立ったことを強調した。
同氏は「変革から2年半が過ぎた。今、会社を再建するという点では、当時私が予想していた通りになっている。これをやり遂げる能力については、懐疑的な見方をする必要はないだろう」と続けた。
ゲルシンガー氏は、ライバルのエヌビディアが人工知能(AI)ソフトウエアの急速な普及をサポートするのに必要なシステムの需要にうまく対応していることを認めたが、インテルは間もなくこれらのアクセラレーター市場で受注を獲得し始めるだろうと述べた。
8月31日の発表資料によると、8-10月(第4四半期)の売上高は約92億7000万ドル(約1兆3500億円)の見通し。ウォール街の予想平均は92億8000万ドルで、98億ドルと見込むアナリストもいた。予想される伸びは2020年以降で最も鈍い。
人工知能(AI)ブームが業界の一部で需要を喚起しているものの、ブロードコムの業績見通しは同社が広範な支出鈍化に見舞われていることを示す。ブロードコムはアップルのスマートフォン「iPhone」の主要部品メーカーだが、iPhoneは売り上げ減少。ブロードコムはまた巨大データセンターのコンピューター間のトラフィックを制御する半導体市場で優位にあるが、この分野の支出にはばらつきがある。
ホック・タン最高経営責任者(CEO)は前四半期に投資家に対し、AI市場関連の収入が急速に増加し、近いうちに売上高の4分の1強を占めるようになるとの見通しを示していた。31日の発表資料では、大手クラウドコンピューティング事業者の間で次世代技術の健全な需要があると指摘した。
●決算関連
スイスの金融機関大手UBSが8月31日発表した2023年4~6月期連結決算は純利益が前年同期比13倍の288億ドル(約4兆2000億円)となり、世界の主要金融機関の四半期純利益としては過去最高を記録した。クレディ・スイス・グループの買収によって発生した巨額の負ののれんが利益を押し上げた。
UBSは今年3月、経営危機に陥ったクレディ・スイスを30億スイスフラン(約5000億円)で買収すると決めた。純資産を大幅に下回る金額での買収となった点を反映し、負ののれん289億ドルを計上し、純利益を押し上げた。
もっとも統合が相乗効果を生み、将来にわたってUBSに実質的な利益をもたらすには時間がかかりそうだ。
クレディ・スイスの資金流出は足元ではプラスに転じたが、4〜6月期は大幅な最終赤字だった。当面はリストラが先行し費用もかかる。セルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)はこの日のアナリスト説明会で、スイス国内だけでも今後数年間で3000人の人員削減が必要になると明らかにした。
UBSのはこの日、切り離しや上場も噂されていたクレディ・スイスの国内商業銀行部門は24年にUBSの同部門と統合する方針も明らかにした。エルモッティ氏は記者会見で、優先的に削減するのは業務契約による人員であり、現在両行の人員合わせて6割程度の社員比率を「これを機会に85%以上に引き上げる」とした。
負ののれんの計上で収益が膨らんで見えるだけに、国内銀行の寡占化に対して反発する金融機関もある。スイスでは買収金額が低すぎると主張する株主1000人以上による訴訟の動きもある。
国民感情を気にするスイスの政治家も統合を歓迎しているわけではない。スイス議会は5月にUBSの救済買収の経緯を調査する委員会の設置も決めた。買収に伴いクレディ・スイスのAT1債を無価値としたスイス金融市場監督機構(FINMA)の判断を巡って、日本を含む各国の債券投資家も法的措置にも踏み切っている。
●先進国、グローバル、金融市場
欧州中央銀行(ECB)が31日に公表した7月26─27日の理事会の議事要旨で、政策担当者は9月の利上げを視野に入れると同時に、新たな経済予測が発表されれば追加利上げは必要ないとの主張も出ていたことが分かった。
議事要旨は「これまでの利上げの累積的な効果が、基調インフレ率を低下させるのに十分強いという説得力のある証拠が得られない場合、9月の追加利上げが必要になる」と指摘。基調的なインフレ率については、成長率が鈍化していたとしても、長期にわたり高どまりする可能性があるとの認識が示された。
一方、一部の政策担当者は、向こう数年間のインフレを抑えるのに十分なほどに政策はすでに引き締められているとし、9月の利上げは必要ないと主張。議事要旨は「9月のECBスタッフ予測でインフレの道筋が2%に向けて十分に下方修正される可能性が高く、9月に追加利上げを実施する必要はないとの主張があった」とした。
このほか、9月の理事会や新たな予測に重点を置き過ぎないよう注意が促されていたことも判明。不確実性を踏まえ、ECBは今後の会合に向けてリスク管理アプローチを採用すべきとの意見が示された。
政策当局者は「オープン・マインド」で9月14日の次回理事会に臨むことで大筋合意。議事要旨から、総じて均衡の取れた討議が行われた様子がうかがわれた。
8月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.3%上昇で、7月と同じインフレ率となった。ECBが目指す水準の2.5倍余りで、依然として高水準だ。エコノミスト調査では8月は5.1%上昇が見込まれていた。
変動の激しい項目を除くコアCPIは5.3%上昇と、7月から幾分鈍化した。
トレーダーの間ではコアインフレ減速が注目され、ECBの利上げ見通しは引き続き後退している。ナティクシスの金利ストラテジスト、テオフィル・レグランド氏は「市場にとっては9月の利上げ休止には十分な統計内容だ」と述べた。
2週間後に行われるECB政策委員会の会合では、ユーロ圏の成長モメンタムの減速が物価上昇圧力を十分に抑制し、目標のインフレ率2%を最終的に達成できるかを判断する。その上でコアCPIは特に重要な指標となる。状況によっては、10回連続の利上げによって中銀預金金利を過去最高の4%に引き上げる可能性がある。
トレーダーが織り込む来月の4%への利上げ確率は30%。CPI発表後のユーロは下げ幅を拡大し、欧州債は上昇した。
その一方で、ダンスケ銀行のチーフストラテジスト、ピート・クリスティアンセン氏は「全体的にはディスインフレのプロセスが進行しているとみられるが、われわれの見方ではインフレ率を適時に目標の2%へと戻せることをECBが確信できるほどではない」と述べ、「今回の統計内容は9月利上げの根拠になるというのがわれわれの見解だ」と続けた。
域内のインフレ率は依然として目標を大幅に上回っているが、市場は既にECBの利上げサイクルは終わったも同然だとみている。相次ぐ経済指標の悪化を受けて、次回の会合で利上げが一旦停止される可能性は十分にある。
欧州がスタグフレーションに直面しているとの懸念を背景に、多くのユーロ強気派が脱落した。バンク・オブ・アメリカ(BofA)やJPモルガン・チェースのアナリストは、ユーロ相場の予想を6カ月ぶりに引き下げ、ユーロが銀行危機のあった3月の水準である1.05ドルに向かって下落すると予想した。
BNPパリバ・アセット・マネジメントは、今年のピークからほぼ10%安い1.02ドルに下落する可能性があるとみている。
BofAのG10為替戦略責任者、アタナシオス・バンバキディス氏は「経済は明らかに弱体化しているが、コアインフレは依然として高止まりしている。これまでに見られた弱さがインフレ率を押し下げるのに十分でないなら、経済はさらに弱くなる必要がある。それがユーロにとっての最大の懸念だ」と話した。
消費者物価の伸びは大幅に緩やかになったとはいえ、30日の発表ではスペインで再びインフレが加速しドイツでは予想ほど低下しなかったことから、31日発表されるユーロ圏インフレ率は依然として高水準であることが見込まれる。同時に、先週発表された弱い購買担当者指数(PMI)は、利上げの影響がようやく現れ始めたことを示唆している。
「このような状況では、市場はユーロに対して強気過ぎているのではないかと疑問を抱くはずだ」とラボバンクの通貨戦略責任者、ジェーン・フォリー氏は言う。
短期金融市場はECBが今年中に4%への最後の0.25ポイント利上げを行った後、引き締めサイクルを終了するとの予想を織り込んでおり、最後の利上げが9月に実施される確率は60%となっている。
一方、ブルームバーグの調査でアナリストは年末のユーロ相場予想を1.12ドルから1.11ドルに引き下げた。
ユーロ圏にとって米国よりも大きな貿易相手国である中国の不調が、ユーロ圏経済への重しとなっている。中国の需要が鈍化すれば、ドイツをはじめとするユーロ圏諸国の輸出減少につながるだろう。
ノムラ・インターナショナルの為替ストラテジスト、ジョーダン・ロチェスター氏はリポートで「市場の話題は米国のディスインフレをテーマとした『ソフトランディング』から、中国と欧州の景気減速リスクに移っている」と指摘した。
HSBCホールディングスのドミニク・バニング氏は年内のユーロ相場を1.15ドルとアナリストの中で最も高く予想しているが、ここ数週間のデータ悪化が「循環的な課題 」を示唆しているため、強気を維持するのは「ますます難しくなっている」と述べている。
BNPパリバ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ピーター・バサロ氏は、欧州と米国の経済見通しの乖離(かいり)を考慮すると、ユーロは1.02ドルに近い水準で取引されるべきだとし、「ここ数週間のユーロ下落がそれほど劇的でなかったことに驚いている」と述べた。
欧州連合(EU)統計局が31日発表した8月のユーロ圏の消費者物価指数は総合で前年同月比5.3%上昇と、伸び率は前月と同じだった。変動の大きい食品やエネルギーを除いても5.3%で高止まりした。欧州中央銀行(ECB)は次回9月の理事会で利上げ継続を迫られる可能性がある。
総合の伸び率は市場予想の5.1%を上回った。品目別では食品などが9.8%、サービスが5.5%と高い伸び率を維持した。一方、エネルギーは3.3%下落と4カ月連続でマイナスとなった。
国別の上昇率は、ドイツが6.4%と2カ月連続で鈍化したほか、フランスは5.7%に加速した。イタリアは5.5%で、スペインは2.4%だった。ECBが物価安定の目標とする2%を下回っていたベルギーは2.4%に加速した。
ユーロ圏20カ国のうち、伸び率が拡大した国は10カ国と半数を占めた。最も高かったスロバキアは9.6%と高止まりしたが、10%を下回った。
ECBは次回9月14日の理事会で、10会合連続の利上げの是非を判断する。ラガルド総裁は「データ次第」で利上げ見送りの可能性に言及してきたが、インフレ率の高止まりをふまえ、金融引き締めの継続を見込む声が高まる可能性もある。
7月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比3.3%上昇し、伸びは前月の3.0%から加速した。前月比では0.2%上昇と、伸びは前月から横ばいだった。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は前年同月比4.2%上昇。伸びは前月の4.1%から加速した。
前月比では0.2%上昇。伸びは前月から横ばいだった。食品が0.2%、エネルギーが0.1%上昇した。前月比での伸びが収束していることで、FRBは9月19─20日の次回会合で金利を据え置くとの見方が強まっている。
米国の経済活動の3分の2超を占める個人消費支出は前月比0.8%増。モノとサービスに対する消費が共に伸びたことで伸びは予想の0.7%を上回り、6カ月ぶりの大きさとなった。6月は0.6%増と、当初発表の0.5%増から上方改定された。
インフレが鈍化する中、労働市場がなお引き締まっていることで賃金上昇が維持され、個人消費が下支えされている。FWDBONDS(ニューヨーク)のチーフ・エコノミスト、クリストファー・ルプキー氏は「需要は旺盛で、インフレは鎮静化している。これほど好調な個人消費を受け、インフレ鈍化がいつまで続くかは分からない」としている。
インフレ調整後の実質個人消費は0.6%増。伸びは前月の0.4%から加速し、1月以来の大幅な伸びとなった。
モノに対する消費は0.7%増。医薬品、娯楽用品、食料品、衣料品など寿命が比較的短い商品に対する消費の増加が顕著だったが、自動車や家具などの耐用年数の長い商品への支出も増加した。
サービス消費は0.8%増。ポートフォリオ管理や投資助言サービスのほか、住宅、外食、ヘルスケアなどが増加した。
激しい物価上昇が抑制された段階で、イングランド銀行(英中央銀行)の現行2%のインフレ目標は引き上げを検討すべきだとハント英財務相の顧問の1人が提言した。
JPモルガン・アセット・マネジメントのチーフ市場ストラテジスト、カレン・ウォード氏は、ブルームバーグのポッドキャストで、「3%が2%より良い数字かどうか話し合うべきだと思うが、それは2%の水準になってから行う話だ」と語った。
ウォード氏は「政策金利がゼロに達した段階で彼らが取り出した量的緩和(QE)やマイナス金利といった他のこれら全ての手段が、金利政策を申し分なく代替できると確信しない限り、システムを若干高めに固定することを話し合う必要があると思う」と主張した。
米労働省が31日発表した失業保険統計(季節調整済み)によると、8月20〜26日の週間の新規失業保険申請件数は22万8000件だった。民間調査によると、米企業が発表した8月の採用計画は計7744人と2021年11月以来、1年9カ月ぶりの低水準となった。労働市場の需給の逼迫は解消しつつある可能性がある。
新規申請件数は2000件上方修正された前週の改定値から4000件減った。ダウ・ジョーンズ集計の市場予測(23万5000件)を下回った。4週間移動平均は500件上方修正された前週の改定値から250件増加し、23万7500件となった。
8月13〜19日の週間の総受給者数は下方修正された前週の改定値から2万8000人増加し、172万5000人となった。
新規申請件数(季節調整前)が1000件以上減った州では、中西部オハイオ州(5905件)が「製造業で解雇が減った」と報告した。
一方、チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが31日発表した調査によると、米企業や政府機関による8月の人員削減計画は7万5151人だった。前年同月(2万485人)と比べ3倍以上増えた。8月は米トラック物流大手のイエロー・コーポレーションが経営破綻した影響もあり物流業の削減が3万2123人と前月から大幅に増えた。
23年1月〜8月にかけ、米企業は55万7057人の人員削減計画を発表した。チャレンジャー社が分析する30の業界のうち、25で人員削減が増加傾向にある。
同社のアンドリュー・チャレンジャー氏は「求人が減り、転職を考える米労働者も減った。新型コロナウイルス下の過熱が収まり労働市場が正常化している」と指摘。同氏は「人員削減の増加は新たな技術の導入や景気悪化を見越したコスト削減によるもので、驚きはない」と分析した。
バイデン米大統領は31日、熱帯暴風雨「イダリア」の被害が出た南部フロリダ州に大規模災害を宣言した。同州のデサンティス知事に電話し、連邦政府として被災地支援に全力を挙げると伝えた。南部サウスカロライナ州には非常事態宣言を出した。
ハリケーンセンターによると、イダリアは30日午前、最大風速57メートルの「カテゴリー3」のハリケーンとして南部フロリダ州に上陸。勢力を弱めて熱帯暴風雨になった後、北東に進んで大西洋に抜けた。
米ホワイトハウスは31日、議会に対し、つなぎ予算を成立させて2024会計年度が開始する10月1日に政府機関の一部が閉鎖する状況を回避するよう求めた。米紙ワシントン・ポストが報じた。
これによると、行政管理予算局(OMB)の報道官は「2024会計年度歳出法案(本予算)について上下両院で超党派合意をまとめるための重要な作業が継続しているが、来月に短期の継続予算決議(つなぎ予算)が必要なことは明白だ」と述べた。
現行予算は9月30日に失効するため、11月下旬か12月上旬までの期間の政府資金を手当てするつなぎ予算を成立させる必要性が指摘されていた。
国際的な再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、米国に拠点を置く企業が8月に発表した人員削減数は7万5151人と約1年ぶりの低水準だった7月の削減数から217%急増した。米トラック運送大手のイエローの破産申請が主因という。
イエローの破産により約3万人が失業し、人員削減数の急増の大半を占めた。一方、エコノミストによると、イエローでのレイオフは新規失業保険申請件数にまだ目立った影響を及ぼしていないという。
チャレンジャー社のシニアバイスプレジデント、アンドリュー・チャレンジャー氏は「求人件数は低下しており、米国内の労働者は今、職を離れたがらない。パンデミック(世界的大流行)およびその後の採用ブームが落ち着き、労働市場はリセットされつつある」とした。
ヘッジファンドの四半期報告にはタイムラグがあるため、研究者は2022年10月から今年5月9日までのスポンサードレポ取引による借り入れと米国債先物のショートポジションの増加を測定した。ベーシス取引はレポ市場で借り入れた資金で、先物をショート、現物をロングにすることで利益を狙う。
新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となった20年3月に現金への逃避が世界で広がり、ベーシス取引を解消する必要があったことが米国債市場をさらに不安定にしたと論文は結論付けている。
「ヘッジファンドによるベーシス取引の規模を確定するには十分ではないものの」、18年と19年に広がった状況と類似性が見受けられると論文は指摘。当時は利上げで資産運用会社のヘッジ需要が高まり、ヘッジファンドのベーシス取引が急拡大した。先物のショートポジションは5月9日の後も増加を続けており、特に2年債先物でその傾向は顕著だという。
「これらのポジションがベーシス取引であるならば、ヘッジファンドによる持続的な大きなエクスポージャーは金融の安定性を脅かしかねない」と論文は指摘。米国債市場は「依然として変動性が高く」、「金融市場全般が調整局面に入ると、現物/先物のベーシス取引は再びストレスにさらされる恐れがある」とした。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ムーディーズ・インベスターズ・サービスは31日、碧桂園を再び格下げ。格付けを「Caa1」から「Ca」に変更した。格付け見通しは引き続き「ネガティブ(弱含み)」。
ブルームバーグ・ニュースが確認した上海証券取引所の情報開示プラットフォームへの提出書類によると、9月4日が事実上の償還期限である人民元建て債を合わせて10.5%保有している投資家グループが、最近の格下げを理由に債券のデフォルトを宣言する提案をしている。投資家は特定されていないが、同社債の保有者は先に、満期までに全額返済されることを要求していた。
保有者らは北京時間31日午後10時まで、デフォルトを求める提案と、39億元(約780億円)の未払い元本の支払いを2026年まで延期するという碧桂園の提案について賛否を投票することができる。可決には元本の50%以上を保有する債権者の支持が必要となる。債券保有者はまた、40日間の猶予期間を追加するという会社提案についても投票を行っている。
碧桂園は30日遅く、今年1-6月(上期)に489億元という前代未聞の純損失を計上したことを明らかにし、不履行の可能性を警告した。同社は今月初め、2250万ドル(約32億8000万円)のドル建て債のクーポンを支払わず、中国のジャンク級ドル建て債市場全体を今年の安値水準に落ち込ませた。デフォルトを回避するためには、来週までの猶予期間内に返済しなければならない。
元建て債の10.5%を保有している投資家グループによるデフォルト提案は、ムーディーズが8月上旬に碧桂園の格付けを3段階引き下げ、「Caa1」にしたことがきっかけ。債券目論見書によれば、海外の格付け会社による2段階引き下げによって、債券保有者はデフォルトを宣言するかどうかについて会合を招集することができる。
ムーディーズは31日の格下げについて、「碧桂園の流動性逼迫(ひっぱく)とデフォルトリスクの高まりおよび、同社の社債保有者にとって資金回収の見込みが薄いことを反映したものだ」と説明。
ムーディーズの予測では、今後12-18カ月間の売り上げ低迷と多額の償還債務を考慮すると、碧桂園は近く満期を迎えるオフショア債に対応するための十分な内部資金源を有していない。
同社がデフォルトに陥った場合、債務レバレッジが高く、事業子会社レベルでの資金調達が多いことから、オフショア債保有者の回収見込みは低いと予想されるとムーディーズは分析した。
ブルームバーグ・ニュースが確認した上海証券取引所への提出文書によると、投票期限は1日遅らせて北京時間9月1日の午後10時(日本時間午後11時)に設定された。社債保有者が議案について議論し決定するための十分な時間を確保するためだという。
9月4日に事実上の償還期限を迎える39億元(約780億円)の社債保有者らは、支払期限を3年延長し、40日の猶予期間を設定するという碧桂園の提案、および一部の社債保有者が求める満期時の全額支払いについて採決する。採決期限は8月25日から31日に延期されていたが、直前に再度延期された。
先に届け出た30日付の文書によれば、ムーディーズによる格下げを受けて、人民元建て社債のデフォルト宣言を求める提案も議案に追加された。
中国の不動産開発大手、中国恒大集団の資産運用部門は8月31日、手元資金不足のため同月の理財商品(資産運用商品)の支払いができなかったと投資家に通告した。
恒大は資産処分が進捗(しんちょく)していないため資金を調達できず、支払いが行えないと短文投稿サイト「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントで説明した。
恒大はこの数年間続く中国の不動産不況でデフォルト(債務不履行)に陥った不動産企業の1社。同社は今週、オフショア債の再編案を巡る債権者との会合を再度延期し、長引く経営再建プロセスの先行きはなお不透明となっている。
同社は2021年、400億元(現在のレートで約8020億円)相当の理財商品の償還ができず、全国規模の抗議行動が巻き起こった。恒大の従業員の多くを含め7万人余りが同商品を購入していた。
通達によると、住宅ローンを利用している初めての住宅購入者は既存の住宅ローン金利の引き下げを9月25日から金融機関に申請することが可能になる。既存のローン契約の金利を引き下げるか、低金利の新規ローンに組み直すかのどちらかで金融機関と交渉することになるという。
また頭金比率について、ほとんどの主要都市では現在、初めて住宅を購入する場合で約30%、2回目の住宅購入の場合で40%以上だが、一部の都市でそれぞれ20%以上、30%以上に引き下げる。
両当局は「中国の不動産市場における需給関係は近年大きく変化しており、借り手と銀行の双方が資産と負債の秩序ある調整と最適化を求めている」とした。
8月の製造業PMIは49.7と、7月の49.3から小幅に改善。ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は49.2だった。活動拡大・縮小の境目は50。
建設業とサービス業を対象とする非製造業PMIは51と、エコノミスト予想の51.2をやや下回った。7月は51.5だった。
TDセキュリティーズのマクロストラテジスト、アレックス・ルー氏は「当局による最近の支援策を受け、製造業のセンチメントは底を打ったのかもしれない」と指摘。サブ指数で生産が伸び、新規受注も改善した点を挙げた。新規受注は50.2と、3月以来の拡大を示した。
投資家は、政府の景気支援策による効果が表れつつあることを示す兆候を期待している。中国の製造業はこの数カ月、外需の伸び悩みや国内消費の不振による影響を受けてきた。中国当局は大型刺激策への慎重姿勢を崩しておらず、政府が設定した今年の国内総生産(GDP)成長率目標である5%前後の達成も危うくなっていると指摘するエコノミストもいる。
だが、当局はここ数週間で、消費財の製造や自動車販売を拡大する計画など的を絞った支援策を打ち出している。国家統計局の趙慶河氏は発表文で、自動車メーカーの生産と新規受注は「供給と需要の両端が活発化していること」を示していると分析した。
製造業活動に持ち直しの兆しが見られる一方、今年の中国経済にとってプラス材料だったサービス支出が鈍りつつあることも示された。8月のサービス業の指数は50.5と、前月から鈍化。引き続き活動拡大を示したが、昨年12月以来の低水準にとどまった。
ジョーンズ・ラング・ラサールの大中華圏担当チーフエコノミスト兼調査責任者、龐溟氏は「需要不足が続いている」と指摘。「『リベンジ消費』が一段落する中で、サービス支出が持続的な拡大を続けられるのかが懸念材料になっている。追加刺激策の実行やその効果が今後注目すべき鍵となる」と話す。
中国当局は債務の拡大や金融リスクの悪化を警戒し、景気支援策は抑制的にとどまる。所得や雇用を巡る先行きは厳しく、企業や家計の借り入れ意欲も低いままで、緩和策を講じても経済活動に対する大きな効果は見込みにくくなっている。
統計局の趙氏は8月のPMIについて、「市場の需要不足がなお主要問題」であることが示されたとし、「製造業の回復に向けた基礎をさらに固める必要がある」との認識を示した。
インド当局が31日に発表した2023年4─6月期の国内総生産(GDP)は前年同期比7.8%増と、増加率は昨年4─6月期(13.1%)以来、1年ぶりの大きさとなった。増加率はロイターがまとめた市場予想の7.7%を上回った。
サービス業が好調だったのと、需要が旺盛だったのが成長を後押しした。ただ、モンスーン期の雨量が平年を下回っていることが今後の成長を抑制する可能性がある。
23年1─3月期は6.1%増えていた。
バローダ銀行のエコノミスト、マダン・サブナビス氏は「貿易・運送が9.2%増、金融・不動産が12.1%増と大きく伸びるなどサービス分野が全体を押し上げた」と指摘した。
建設業も7.9%増と好調だった。
ただ、多くのエコノミストらは乾燥した状況が今後数四半期の成長に悪影響を与える可能性があると警鐘を鳴らしている。8月のインドの降水量は過去100年超で最も少なかった。9月は平均的な降雨量になると見られている。
経済の60%近くを占める個人消費は4─6月期に前年同期比で約6%増え、前期(1-3月期)の2.8%増を上回った。製造業は4.7%増となり、前期は4.5%増だった。
一方、投資の指標となる資本形成は約8%増と、前期の8.9%増から鈍化した。
インド準備銀行(中央銀行)は昨年5月以降、政策金利を計250ベーシスポイント引き上げてきた。
中国の不動産開発会社に債務超過リスクが浮上している。主要11社の6月末の開発用不動産(開発用地)は約6兆3500億元(約130兆円)にのぼる。単純計算ではこの評価額がおよそ3割下落すれば現在の資本は枯渇し、債務超過に転落する。
●中東
ルコ統計庁が31日発表した第2・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比3.8%増だった。ロイターがまとめた市場予想の3.5%増を上回った。家計支出が好調だった。
前期比(季節・日数調整済み)では3.5%増。市場予想を上回った。
家計支出は10%ポイント以上増加。
キャピタル・エコノミクスの新興市場担当チーフエコノミスト、ウィリアム・ジャクソン氏は「個人消費が非常に強く、輸入の急増を招いた。このため、純輸出がGDP伸び率を押し下げた」と指摘した。
5月の選挙を控えた財政刺激策が経済成長を支援する要因となった。低金利も経済活動を下支えしたが、中央銀行は6月に金融引き締めを開始しており、年内は景気減速が見込まれている。
ジャクソン氏は、政策転換でも需要・インフレ・経常赤字の抑制で望ましい効果が出ていないと指摘。次回の中銀理事会で大幅な追加利上げが実施され、下半期の経済成長が鈍化するとの見方を示した。
第1・四半期のGDPは4.0%増から3.9%増に改定された
●中南米・アフリカ
ロイター通信は8月31日、クーデターが起きた西アフリカ・ニジェールの軍事政権が、旧宗主国フランスのイッテ駐ニジェール大使の外交特権を剝奪し、警察に大使の国外追放を命じたと報じた。ニジェール外務省が25日、大使が会合への招待を無視したことへの報復として、48時間以内の国外退去を要求していた。
フランスは、軍政が追放を宣言したバズム大統領の政権のみを正統と認める立場を取る。ロイターによると、フランス外務省は31日、軍政には大使に退去を求める「権限がない」とした一方、「常に大使館の安全状況を見極めている」とも付け加えた。安全を考慮して大使を退去させる可能性があり得ることを示唆した。
軍政はクーデター直後からフランスへの対立姿勢を鮮明にしていた。大使退去を巡り強硬手段の構えを示したことで、両国関係がさらに悪化するのは必至だ。
アフリカ西部と中部地域では2020年以降で8カ国目の政権転覆となる。
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の議長を務めるナイジェリアのティヌブ大統領は「コピーキャットが同じことを繰り返すのではないかという私の懸念がガボンで確認された」と述べた。
中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)は声明でクーデターを非難し、対応策を決定するため近く首脳会議を計画しているとしたが、日程は明らかにしなかった。
●市況
<為替> 終盤のニューヨーク外為市場では、ドルが上昇した。米の経済指標はまちまちの内容だったが、ドル指数は月間では1.69%上昇する基調にある。一方、ユーロは、欧州中央銀行(ECB)幹部の慎重な発言を受けて下落した。ドル指数は0.48%高の103.59。ただ、25日に付けた6月1日以来の高値104.44からは下落している。
<債券> 米金融・債券市場では、不安定な地合いの中、米債利回りが低下した。米経済指標を受け、連邦準備理事会(FRB)が9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で金利を据え置くとの見方が強まった。
アクション・エコノミクス(サンフランシスコ)のグローバル債券担当マネジング・ディレクター、キム・ルパート氏は、米債利回りは8月初旬からの大幅上昇から修正していると指摘。「FRBがもう1回利上げを行うという無視出来ないリスクはあるものの、おそらく打ち止めになると市場は予想している。11月利上げの可能性は50%を下回るだろう」と述べた。
CMEのフェドウオッチによると、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBが政策金利を据え置く確率は88.5%にとどまり、11月の据え置き確率は約51%となった。
<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、需給引き締まり観測を背景にした買いに、6営業日続伸した。
前日公表された米週間原油在庫が予想を大きく上回る取り崩しとなったほか、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が協調減産方針を維持するとの見通しが示されたことを背景に需給逼迫懸念が広がり、相場は朝方から午前にかけてほぼ一本調子で上伸した。
中南米金融市場では、メキシコぺソが急落した。同国中央銀行が為替ヘッジプログラムの縮小を打ち出したことを受けた。チリペソは0.3%下落。中国の需要減退観測を背景とした銅価格の軟化を受けた。
スイスの商品取引・資源大手グレンコアも2.5%下落。配当落ちに加え、汚職行為を隠蔽するために過去の株式目論見書に虚偽の記載をしたとして、数十の資産運用会社がグレンコアを非難したと伝わったことも嫌気された。
<欧州株式市場> ほぼ横ばいで取引を終えた。スイス金融大手UBSグループを含む金融関連株や不動産株は上昇した一方、高級株が下落した。
フランスの酒造ペルノ・リカールが6.7%下落。第1・四半期決算(7─9月)で中国と米国での売上高がそれぞれ減少する見通しを示したのが嫌気された。
<ユーロ圏債券> 国債利回りが1週間ぶりの低水準を付けた。ユーロ圏の8月総合インフレ率の伸びが予想に反して横ばいになった一方、コアインフレ率は伸びが鈍化し、欧州中央銀行(ECB)の金融政策を巡る状況が複雑化した。
アリアンツ・グローバル・インベスターズのシニアポートフォリオマネジャー、マイク・リデル氏は「欧州の大きな話題は成長面だ」と指摘。先週発表されたユーロ圏の8月HCOB総合購買担当者景気指数(PMI)では製造業の継続的な弱さに加え、サービス業に軟化の兆しが見え始めたと述べた。
日経先物32537、ダウ先34808、債先146.93、米4.116、独2.4615、仏2.981、西3.481、伊4.115、英4.3970、波5.570、原油83.54、銅8,438、ドル円145.53、ユーロドル1.0842
※9/1 7時45分頃
備忘録(2023/8/30)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米規制当局は一部地銀に対して、流動性計画を強化するよう要求している。今年相次いだ地銀の経営破たんを踏まえ、監督を強化する取り組みの一環だ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は資産規模1000億ドルー2500億ドル(約14兆6000億円-36兆5000億円)の銀行に対して、非公開で一連の警告を発した。シチズンズ・ファイナンシャル・グループやフィフス・サード・バンコープ、M&Tバンクがこれに含まれる。部外秘の監督関連情報だとして、匿名を条件に複数の関係者が明らかにした。通知は銀行の資本や流動性、テクノロジー、法令順守まであらゆる事項に及んだという。
FRBが送付したのは「要注意事項の喚起(MRA)」および「要注意事項の即時喚起(MRIA)」と言われるもの。ファースト・リパブリック・バンクやシリコンバレー銀行(SVB)、シグネチャー・バンクの相次ぐ破綻ですでに緊張状態にある銀行システムにストレスの兆候が出ていないか、審査官が目を光らせていることが背景にある。バーFRB副議長(銀行監督担当)は今年、監督の「スピードと威力、機敏性を向上させる」と表明。銀行の規模を問わず広範にわたり監督体制を強化している。
このような非公開の警告に対しては通常、是正措置の工程表を含め、取締役会レベルでの回答が必要になる。通知を受け取った銀行にとっては、是正措置の強化はコストを膨らませる恐れがある。問題を放置すれば、一段と厳しい指示が公に出される事態に発展しかねず、そうなれば解決に数年を要する可能性もある。
●その他産業
手数料の引き上げは今年10月と来年4月に開始する計画。引き上げ分の多くはオンラインでの購入向けだと同紙は伝えている。
●決算関連
中国の国有海運大手、中遠海運控股が29日発表した2023年1〜6月期決算は売上高が前年同期比56%減の918億元(約1兆8000億円)だった。1〜6月期で減収になるのは16年以来、7年ぶり。純利益は同74%減の165億元だった。世界の景気減速などによるコンテナ船の海上運賃低下が響いた。
通期売上高見通しを引き上げた。値上げに加え、クラウドおよびビジネス・ソフトウエア製品に対する底堅い需要が背景。
●先進国、グローバル、金融市場
米ハリケーンセンターによると、ハリケーン「イダリア」が30日、南部フロリダ州に上陸した。最大風速57メートルで、勢力は5段階のうち2番目に強い「カテゴリー4」から「3」に弱まった。一部では最大約4.8メートルの高潮や高波による「壊滅的な影響」が予測され、沿岸部などの自治体は住民に避難命令を出した。
デサンティス州知事は29日、記者会見で「(この地域で)記憶にある限り、過去に比べられる規模のものはない」と述べ、甚大な被害を受ける恐れがあると強調。手遅れになる前に避難すべきだとして「今が試練の時だ」と訴えた。
ハリケーンセンターは長期間にわたって停電が続く可能性があると警告した。バイデン大統領は28日にデサンティス氏と電話し、連邦政府が支援をすると伝えた。
米国南部フロリダ州などを米東部時間30日午前(日本時間同日午後)、大型ハリケーン「イダリア」が直撃した。5段階で2番目に強いカテゴリー「4」の強さまで一時は勢力を拡大。電力インフラが被害を受け、少なくとも40万件の停電が発生した。
最大風速は時速205キロメートルを記録した。フロリダ州とジョージア州で少なくとも40万件の顧客が停電となった。AP通信によるとフロリダ州で電力会社作業員ら約3万人が復旧作業にあたっている。
上陸したのはフロリダ州北部ビッグベンドで、この地域を直撃したハリケーンとしては125年ぶりの勢力と報じられている。上陸後は「1」に勢いを弱めている。31日にサウスカロライナ州やノースカロライナ州から大西洋に抜けると予想されている。
当局が高潮に警戒を呼びかけるなか、幅広い地域で道路が冠水。米メディアによると少なくとも2人が死亡した。バイデン大統領は30日演説し、「もう誰も気候変動危機を否定することはできない。洪水や干ばつ、熱波、山火事により、前例のない大きな被害が発生している」と訴えた。
バイデン氏は、フロリダ州やジョージア州など被災地の各州知事と電話で対応を協議した。米連邦緊急事態管理局(FEMA)のクリスウェル長官をフロリダ州に派遣して復旧にあたる。連邦職員1500人と救助隊員540人超を動員した。
米NBCはメキシコ湾の水温が例年より高いため、ハリケーンが大きくなりやすいとの見方を伝えた。大型ハリケーンは毎年のように米国南部を直撃しており、甚大な被害をもたらしている。
企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が30日に発表した8月の全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は17万7000人増加し、ロイターがまとめたエコノミスト予想(19万5000人増)を下回った。労働市場の失速が示唆された。
7月分は32万4000人増から37万1000人増に上方改定された。
ドイツ連邦統計庁が30日発表した8月の消費者物価指数(CPI)速報値は、欧州連合(EU)基準(HICP)で前年比6.4%上昇した。伸びは前月の6.5%から鈍化したものの、ロイターがまとめた予想の6.3%は上回った。
ドイツ国内基準での伸びは6.1%。前月の6.2%から鈍化したが、予想6.0%は上回った。
変動が激しい食品とエネルギーなどを除いたコアインフレ率は5.5%と、前月から横ばい。食品価格は9.0%上昇。伸びは引き続き平均を上回った。エネルギー価格は8.3%上昇した。
INGのグローバル・マクロ部門責任者、カーステン・ブルゼスキ氏は「ドイツの総合インフレ率は9月に大きく低下する」と予想。INGはドイツのインフレ率は年末までに3%近辺に低下すると予測している。
コメルツ銀行のシニアエコノミスト、ラルフ・ソルベーン氏は、外部要因によるコスト圧力が低下しているため、インフレ率は向こう数カ月で大きく低下すると予想。ただ、賃金の力強い伸びが引き続きサービス価格の上昇につながる可能性が高いとし、コアインフレ率は欧州中央銀行(ECB)が目標とする2%を大きく上回る公算が大きいとの見方を示した。
欧州連合(EU)統計局は31日にユーロ圏の8月のインフレ率を発表する。ロイターが実施したエコノミスト調査で、伸びは5.1%と、前月の5.3%から鈍化するとの予想が示された。
ECBの次回理事会は9月14日。INGのブルゼスキ氏は「ECBが予想されるデータよりも実際のデータを重視するという現在のスタンスを堅持する限り、9月の理事会で利上げが決定される可能性は高い」としている。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのセンテノ・ポルトガル中銀総裁は30日、ユーロ圏の経済成長はここ数カ月、予想を下回っており、景気の下振れリスクが明らかに顕在化しているとし、一連の利上げを実施してきたECBはこれ以上の政策引き締めに慎重になるべきと述べた。
ロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムで「景気に関する統計については下振れに驚いている」と指摘。ECBは「すでに多くのことを実施してきたため、決断には慎重になる必要がある。また(利上げを)一時停止したとしても金融引き締めの状況は続くだろう」とした。
ECBは次回9月14日に理事会を開催する。追加利上げを実施するか、金利を据え置くかは不透明だが、センテノ氏は金利はしばらくの間、経済活動を制限する水準にとどまるだろうと述べた。
9月の理事会がどちらに傾いているかは明言しなかったが、仮にECBが利上げを一時停止したとしても、利上げ打ち止めを宣言するのは誤りだと強調。「インフレ率が2%に達する軌道に乗れば、打ち止めとなる。そのため、現在進行中のプロセスであることを明確にする必要がある」とした。
また「欧州の労働市場はこれまでにない形で機能している。欧州の労働市場には、過去には見られなかったような柔軟性がある。このことは、過去にわれわれが経験してきたことに反し、労働市場における賃金圧力を緩和するだろう」とした。
米商務省が30日発表した2023年第2・四半期の実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で前期より2.1%増と、7月に発表された速報値の2.4%増から下方改定された。在庫投資と設備投資、知的財産権への支出が速報値から下振れしたのが要因。
ロイターがまとめたエコノミスト予想は速報値から改定なしだった。
ただ、引き続き堅調な経済成長を維持しており、労働市場の逼迫が個人消費を下支えしていることから第3・四半期の序盤に成長の勢いは増したとみられる。
エコノミストは第3・四半期のGDP予想を5.9%増へ引き上げたが、経済の健全性が誇張されている可能性が高い。
日本銀行の田村直樹審議委員は30日、2%の物価安定目標の達成が見通せる状況になった際の出口戦略では、マイナス金利の解除も選択肢の一つになるとの見解を示した。北海道釧路市で記者会見した。
田村氏は、持続的・安定的な2%の物価上昇の実現が見通せた場合、「当然マイナス金利の解除も選択肢の一つとして入ってくる」と語った。仮にマイナス金利を解除した場合でも、金利を低位に維持するのであれば金融引き締めではなく、「金融緩和の継続だというふうに捉えている」との認識も示した。
ただ、状況を見極めるのには「もう少しだけ時間を要する」とし、実現が見通せるようになれば金融政策決定会合で議論し、「適切な出口戦略を実行していく」と説明。イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)については維持と撤廃のそれぞれが選択肢だとし、「その時点の状況を踏まえて考えていきたい」と述べた。
緩和修正に前向きな姿勢で知られる田村氏は午前の講演で、2%目標の持続的・安定的な実現が「はっきりと視界に捉えられる状況になった」との認識を示し、来年1-3月ごろには一段と鮮明になるとの見解を示していた。田村氏の見解が9人の審議委員のコンセンサスを得られるかは不透明だ。
田村氏は記者会見で、目標実現が見通せる時期は1-3月がベースとしながらも前倒しや後ろ倒しもあり得るとし、「年内は難しいというわけではない」とも述べた。その理由として、11月や12月に企業経営者の発言から賃上げのモメンタムを感じ取れる可能性があるとしたほか、年末に公表される12月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)で確認できることも否定できないとした。
ドイツのインフレ率は予想ほど低下せず、スペインでは加速し、9月に再び利上げに踏み切るかどうかを思案中の欧州中央銀行(ECB)当局者に、域内の物価圧力の断面を示した。
30日に発表されたこれらのデータは、31日に予定されるユーロ圏の消費者物価指数(CPI)統計が強い数字となる可能性を示唆している。ECB当局者らはCPIデータが9月14日の政策決定に重要だと強調している。
ドイツの8月のCPIは前年同月比6.4%上昇し、ブルームバーグのエコノミスト調査の予想中央値、6.3%を上回った。
スペインのインフレ率は2.4%とドイツと比べると低いが、2カ月連続の加速となり、コアインフレ率は、はるかに高い水準を維持した
消費者物価インフレの高止まりを示すデータは、ECBに利上げを決意させるかもしれない。当局者らは、利上げを一時停止するには基調的物価圧力が強過ぎるのか、あるいは景気減速によってさらなる引き締めなしにインフレを抑え込むことができるのかを見極めようとしている。
31日にはフランスとイタリア、ユーロ圏のCPIが発表される。いずれも5%超が見込まれている。当局が最も注目するユーロ圏コアインフレ率は、中央値で5.3%と予想されている。
低迷する経済の活性化に向け、4年間で320億ユーロ(347億7000万ドル)規模となる法人減税策を承認した。企業のグリーン投資コストの15%を賄う補助金も盛り込まれている。
実現にはドイツ議会の通過と各州の承認が必要になる。
ただ減税規模は経済の大きさからすれば控えめで、エコノミストや経済団体からは不十分との批判も出ている。
法案は2024─28年の4年間を対象に、企業によるグリーン投資を後押しするほか、研究活動を税制面で優遇し、企業が赤字を他の年度の利益で相殺する余地を広げる内容。
内閣は一方、企業の電気料金負担を抑制するための価格上限に関する合意には至らなかった。
ショルツ氏は政府が昨年、エネルギー価格高騰の家計や企業への影響を和らげるために多くの資金を投じたと指摘。足元の価格下落で企業の負担は和らいだとの認識を示した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国当局は国内の大手金融機関2社に信託大手、中融国際信託の財務を検証するよう要請した。苦境にあるシャドーバンク(影の銀行)の政府主導の救済につながる可能性がある。事情に詳しい関係者が明らかにした。
非公表の情報だとして関係者が匿名を条件に述べたところによると、中信集団傘下の中信信託と中国建設銀行傘下の建信信託が、中融の事業を安定させる取り組みを主導する。こうした関与の結果としてどのような動きがあるかは現時点で不明だという。
ただ、過去において中国華融資産管理への中信による同様の検証が2021年の66億ドル(約1兆円)規模の救済につながっている。
今回の計画は2兆9000億ドル規模に上る信託業界の金融安定への影響を巡る当局の懸念の深まりを示している。中国では成長が期待に届かず不動産低迷が悪化している。
政府が景気テコ入れとリスク抑制で、強い国有企業に頼っていることも浮き彫りになる。
中融および関連の深いウェルスマネジメント会社の中植企業集団は今月、富裕層や企業向けの投資商品で支払いを怠り市場を動揺させ、北京での抗議活動にまで発展した。
両社のトラブルが公になる前に、国家金融監督管理総局(NFRA)は7月に中融のリスクを検証する作業部会を設置していたと、事情に詳しい関係者が明らかにしていた。中融が調達した資金の半分は親会社や関係会社に流れたと関係者の1人は述べている。
中信信託はコメントを控えた。NFRAと中融、建信信託の担当者はコメント要請に応答しなかった。
信託業界では損失が多年にわたり積み上がっていたが、中植はこれまでで最大の問題をもたらす可能性がある。同社は1兆元(約20兆円)余りを運用。富裕層や不動産開発会社、金融機関との取引関係は、中植の問題が金融業界全体に波及するとの懸念を呼んでいる。
中国の信託業界は、不動産開発会社や地方政府の資金調達事業体など銀行から融資を受けられない弱い借り手にとって重要な資金調達源だ。信託会社は顧客の投資家から集めた資金をさまざまな投資商品やプロジェクトに投資する。
ゴールドマン・サックス・グループは、中国の信託業界の損失が380億ドル相当に上る可能性があると試算している。
最近数四半期のデフォルト(債務不履行)では不動産関連商品が70%余りを占めた。住宅の販売と価格が低迷する中で中国恒大集団や碧桂園など不動産開発会社は債務返済に苦しんでいる。
信託業界には既に何回か公的救済が入っている。2020年には上海を本拠とする安信信託の再編に政府が関わった。当局が複数の信託会社を管轄下に置いたこともある。
信託会社には今、投資家に対する巨額の支払いが控えている。ユーストラストのデータによれば、中融だけでも年内に270の商品で総額395億元の支払いが必要。
中信信託は1兆5000億元、建信信託は約1兆4000億元の資産を運用している。
中国不動産最大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)が30日発表した2023年1〜6月期連結決算は、最終損益が489億元(約9800億円)の赤字となった。住宅と学校の一体開発で成長したが、習近平(シー・ジンピン)指導部の政策変更で経営モデルが崩れ、過去最大の赤字を計上した。
中国不動産大手の万科企業が30日発表した2023年1〜6月期連結決算は、純利益が前年同期比19%減の98億元(約2000億円)だった。1〜6月期として2年ぶりに減益となった。主力の不動産開発事業の売上高が減り採算も低下したことが響いた。
中国が10月中旬、国内で広域経済圏構想「一帯一路」首脳会議の開催を予定していることが分かった。関係国の大使館などに通知した。ロシアのプーチン大統領ら各国首脳を招待し、中ロ首脳会談を調整する。
中国政府が不動産セクターの回復と経済の立て直しを図る中、南部の広州市とハイテク産業の中心地である深セン市は30日、住宅ローン規制の緩和を発表した。
住宅購入者が過去の信用記録に関係なく、初めての住宅購入で有利な融資を受けられるようにすると通達した。
北京、上海の他の1級都市や、2級都市も追随する可能性がある。
両市政府の発表を受け、香港株式市場の本土系不動産株指数は0.27%上昇した。一方、中国市場の銀行株指数は1.17%下落した。
CGS─CIMB証券の中国調査部門責任者レイモンド・チェン氏は住宅ローン規制の緩和は遅すぎたと述べ、購入者の心理が非常に弱いことを踏まえると販売促進効果はそれほど大きくない可能性があるとの見方を示した。
「規制当局が6─9カ月前にこの政策を実施していれば、不動産開発会社の売り上げにもっと大きな影響を及ぼしたかもしれない」と述べた。
フィッチ・レーティングスのAPAC金融機関担当ディレクター、ビビアン・シュエ氏は利ざやの縮小と小口融資需要の低迷により、銀行収益への圧力は今年後半から2024年にかけて続くと予想されると述べた。
関係筋によると、貸出金利引き下げの影響を緩和するために主要国有銀行は一部の定期預金金利を10─25ベーシスポイント(bp)引き下げる。
●中東
トルコ最大の都市、イスタンブールのイマモール市長が2024年3月の統一地方選挙で再選を目指して立候補する意向を表明した。同選挙は野党がエルドアン大統領に対抗できるかどうかを示す試金石になるとみられている。
エヌビディアの提出書類によると、米政府は2024会計年度第2・四半期中、中東の一部の国などに向けた同社製最先端半導体「A100」と「H100」の輸出について、追加の認可要件を求めた。中東のどの国が対象になるかは明らかになっていない。
●中南米・アフリカ
メキシコ中央銀行は30日公表の四半期報告書で、23年の成長率見通しは従来の2.3%から3.0%に、24年は1.6%から2.1%に上方修正した。
理事会は、堅調な労働市場と国内消費が寄与する形で景気が底堅く推移していると指摘。一方、理事会はインフレ率を目標レンジに引き下げるため、政策金利を「長期にわたり」過去最高水準に維持する必要があるとの見解を改めて示した。
中銀のロドリゲス総裁は報告書に関する説明会で「金利を引き下げるかどうかについてはまだ検討されていない」と言明。インフレ率が目標値に収まりつつあるとの確証が必要だと語った。
報告書はまた、成長率見通しを引き上げた一方で、今後見込まれる米経済動向と連動してメキシコ経済の減速を引き続き想定しているとした。
アルゼンチン大統領選の予備選でトップに躍り出た独立系で極右のリバタリアン(自由至上主義)経済学者、ハビエル・ミレイ氏の政策顧問らはロイターに対し、通貨ペソを廃止し穀物税を引き下げる同氏の選挙公約について、実現には時間を要するとの見通しを示した。
ミレイ氏側近のラミロ・マラ氏は、ミレイ氏が本選で勝利した場合、2年以内に経済をドル化し、大規模な農業セクターへの課税を廃止すると述べた。ただ、有権者はそうした政策が「魔法によって実現」するのではないことを理解する必要があるとし、実現には時間がかかると強調した。
ミレイ氏の政党から上院選への出馬を表明しているフアン・ナポリ氏も、改革の下地を整えるのには時間を要すると述べた。
マラ氏はまた、ミレイ氏が大統領選で勝利したとしても同氏の政党が議会過半数を制する可能性は小さいと予想。議会の抵抗をかわすため、大統領令や国民投票といった手段を検討する可能性を示した。
インフレ高騰に対する国民の怒りを背景に、今月13日の大統領選予備選ではミレイ氏が与党連合と野党連合を抑えてトップに立ち、ショックを巻き起こした。本選は10月22日に予定されている。
アフリカ中西部のガボンでは、大統領選挙から4日後に軍が権力を掌握した。石油輸出国機構(OPEC)加盟国の同国のドル建て債は急落した。
先月はニジェールでクーデターが発生しており、サハラ砂漠以南のアフリカでは軍の反乱は過去3年間で9件目となる。軍による政権奪取の背景には、経済不況と脆弱(ぜいじゃく)な統治体制があり、それが市民の不満を助長し、特に西アフリカでは過激派による暴力のまん延につながっている。
ガボンの陸軍将校は30日朝に国営テレビに出演、26日の選挙結果を取り消し、国の機関を解散させたと発表した。ボンゴ大統領は家族と主治医とともに自宅軟禁状態にあり、息子の1人は拘束されたという。
アフリカ中部ガボンでクーデターを起こした軍の幹部は30日、国営テレビで声明を読み上げ、拘束されたボンゴ大統領の警護隊長だったオリギ氏を「暫定大統領」に指名したと発表した。AFP通信などが伝えた。軍関係者らが指導者選出の投票を行い、満場一致で決まったという。
クーデターを起こした軍は、ボンゴ氏が3選された26日の大統領選結果を取り消すことを改めて表明。投票後の混乱を受けて導入された夜間外出禁止令を当面、継続する方針も明らかにした。
今回のクーデターに対して、国際社会から批判が噴出している。国連のグテレス事務総長は「軍事クーデターに対する強い反対」を訴える声明を発表。アフリカ連合(AU)も「深い懸念」を強調し、自宅軟禁されているボンゴ氏の身の安全を保証するよう軍部に求めた。
●市況NY市場サマリー(30日)ドル2週間ぶり安値、株上昇・利回り横ばい
<為替> ドルがユーロのほか、通貨バスケットに対し2週間ぶりの安値を付けた。8月の全米雇用報告で民間部門雇用者数の伸びが予想下回ったことで、米連邦準備理事会(FRB)は利上げを終了するとの見方があらためて裏付けられたことが背景。
<債券> 国債利回りが横ばいとなった。軟調な経済指標を受けて米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測が後退し、序盤に3週間ぶりの低水準まで低下したが、その後は不安定な動きとなった。
<株式> 4日続伸。米経済の軟化を示す新たな指標が発表され、米連邦準備理事会(FRB)が9月に利上げを一時停止するとの見方が強まった。
米経済のソフトランディング(軟着陸)見通しが強まったことでディフェンシブ株よりもグロース株などリスクが高い銘柄を選好する流れになったと同氏は分析した。
<米原油先物> 大型ハリケーン「イダリア」が警戒される中、対ユーロでのドル安を受けて買われ、5営業日続伸
MSCI中南米通貨指数は0.4%上昇。取引時間中には約1カ月ぶりの高値をつけた。低調な米経済指標を受けドル指数が下落した。
チリペソは銅価格の上昇を受け反発。過去2営業日では1.5%下落していた。
原油高を背景にメキシコペソは0.3%、コロンビアペソは0.1%それぞれ上昇した。 (新興国市場サマリー)
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。デンマークの電力大手オーステッドなどの公益企業が売られた。
オーステッドは24.8%と過去最大の下落率となった。米国で160億デンマーククローネ(23億ドル)の損失が見込まれると発表したことが嫌気された。OMXコペンハーゲン20指数は1.55%安。
ドイツの重電大手シーメンス・エナジーは3.3%、ドイツの電力会社RWEは4.7%それぞれ下げた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが上昇した。ドイツおよびスペインのインフレ統計を受け、欧州中央銀行(ECB)が9月に利上げを決定するとの見方が強まった。ただ、予想を下回る米経済指標を背景に上げ幅をやや縮小した。
日経先物32382、ダウ先35007、債先146.82、米4.112、独2.5540、仏3.069、西3.568、伊4.196、英4.4680、波5.570、原油81.65、銅8,467、ドル円146.09、ユーロドル1.0929
※8/31 8時50分頃
備忘録(2023/8/29)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米連邦預金保険公社(FDIC)など米金融当局は29日、地銀破綻が相次いだことを踏まえて一定規模の地銀に財務基盤の強化を求める規制案を公表した。損失吸収力のある負債性資金の安定的な確保を義務付けるほか、リビングウィル(遺言状)と呼ぶ事前の破綻処理計画の整備を求める内容だ。
資産規模1000億ドル(約14.5兆円)以上の銀行に対し、リスク加重資産の6%か平均総資産の3.5%など一定規模の長期の負債性資金を維持し続けるよう求める。要件に満たない銀行は劣後債発行など新たな資金調達が必要になりそうだ。
米当局は7月下旬、大手・中堅銀行を対象とする自己資本規制の強化案を公表した。ここでは損失吸収力が最も高い資本の積み増しに力点を置いたが、既に大手行は備えを固めている負債性資金の増強を地銀にも求めることで銀行システム全体の健全性を高める狙いだ。
新規の資金調達など規制対応コストが膨らむ銀行側は反発を強めている。ロビー団体の銀行政策研究所は29日発表の声明で「今回の規制案は銀行に打撃を与え、中小企業に不可欠な融資を制限する恐れがある」と訴えた。
PNCファイナンシャルやシチズンズ・ファイナンシャルなどの地銀が対象となる。
高齢者向けの公的医療保険「メディケア」が価格交渉の対象にする処方薬10品を発表した。2022年に成立したインフレ抑制法でメディケアに対し、大手製薬会社に薬価引き下げを求める交渉権を初めて与えた。今回の10製品が第1弾となる。新たな価格は24年9月に公表し、26年1月から導入する。
米イーライ・リリーと独ベーリンガーインゲルハイムの糖尿病治療薬「ジャディアンス」などの薬価下げを求める。米ブリストルマイヤーズスクイブの血液凝固を防ぐ薬「エリキュース」、スイスのノバルティスの心不全治療薬「エンレスト」も対象に入った。
メディケアは65歳以上の米国人を対象とし、約6600万人に適用している。今回の医薬品10品はメディケアにとって最も負担が大きい50製品のなかから選んだ。DHHSによると、過去1年間に10品だけで505億ドルの負担となっていたという。
今後は製薬大手からの抵抗が強まることが予想される。すでにメルクやジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)などの製薬大手は収益減への懸念から、メディケアの薬価交渉をめぐって米国政府を提訴している。メディケアが決める医薬品価格は民間保険会社の多くが参考にしており、米国では事実上の標準薬価になっている。
米政府は29日、初めて価格交渉制度を適用するメディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)対象の処方薬10品目を発表。メディケアには高齢者らおよそ6500万人が加入する。処方薬の価格交渉はバイデン政権が2022年に成立させたインフレ抑制法(IRA)が柱の一つとしている。
交渉第1弾のリストにはブリストル・マイヤーズ・スクイブやイーライ・リリー、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどの大手メーカーの処方薬が含まれた。政府の見通しでは値下げ率は平均で50%前後となり、早いものでは2026年に発効する
今後6カ月以内で海外旅行を計画している米国民の割合が21.8%と6月時の17.7%から上昇し、過去最高になったことが分かった。
CBは1978年以降、消費者信頼感指数調査の一環として隔月で家計の旅行計画に関する調査を実施。8月の消費者信頼感指数はインフレ懸念が再燃する中、3カ月ぶりに低下した。
何らかの休暇旅行を計画している米国民の割合は45.9%と、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で観光業が打撃を受けた2020年初以降で2番目に高い水準を記録した。
また、今後6カ月以内で飛行機による旅行を計画している米国民の割合は24%と、20年3月のパンデミック発生以来2番目に高い水準となった。
●その他産業
●決算関連
2023年5〜7月期決算は、売上高が7%減の95億8300万ドル。米国内の既存店売上高は6.3%減り、オンライン売上高も7.1%減った。純利益は前年同期比10%減の2億7400万ドルだった。消費者のあいだでモノよりも体験に支出する「コト消費」の傾向が強まり、家電製品の需要が低迷した。ゲームなど一部で需要の持ち直しがあったが、主力のコンピューターやスマートフォン関連製品の売り上げは伸び悩んだ。夏の商戦で大幅値引きを迫られたことも響いた。
コリー・バリー最高経営責任者(CEO)は29日の決算説明会で、引き続く高インフレが消費者を圧迫していると指摘。「23年がハイテク製品の需要の底になると予想している」とコメントした。
全般に値ごろ品を求める消費者が増えており、家電業界で値引き競争が激しくなっている点に懸念を示した。同社は「7月のブラックフライデー」と銘打って大幅な割引キャンペーンを実施。賃金や輸送費の高騰に加え、安値販売の比率が増えて採算が悪化した。
消費者の間で需要の減退が続いているとして、24年1月期通期の売上高予想を従来の438億〜452億ドルから438億〜445億ドルへと上限を引き下げた。前期比で3〜6%の減少を見込んでいた既存店売上高は4.5〜6%減の見通しに変更した。
●先進国、グローバル、金融市場
6月の米住宅価格指数は前年同月比で3.1%上昇。5月は2.9%上昇だった。前年同月比では2022年2月以来、15カ月連続で伸び鈍化が続いてきたが、このトレンドに終止符を打った。
米S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズが29日発表した6月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数は、全国の住宅価格指数が前年同月比では横ばい。前月は0.4%低下していた。
過去1年以上、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な利上げを背景にした住宅ローン金利の上昇で販売量が減少し、住宅の売却を見送る所有者が増えている。在庫減少が価格の高止まりにつながっているが、年間価格上昇率は2022年初めの20%前後から大幅に緩やかになっている。
FHFAによると、住宅価格は22年第2・四半期から23年第2・四半期にかけて3.0%上昇した。
S&P DJIのマネージングディレクター、クレイグ・ラザラ氏は、住宅ローン金利が上昇する中でも、今回の結果は住宅市場の回復を指し示していると指摘。「住宅ローン金利の上昇や全般的な景気低迷によって、市場の上昇幅が縮小する可能性があることは認識しているが、今月のデータの幅の広さと力強さは、将来に対する楽観的な見方と一致している」とした。
7月の米求人件数は減少し、この2年余りで最も低い水準。市場予想も大きく下回った。労働需要が鈍化しつつあることを示唆する新たな材料となった。
自発的離職者の割合である離職率は2.3%に低下し、2021年1月以来の低水準となった。現在の労働市場で別の仕事を探すのをためらう人が増えていることを示唆する。
求人件数の減少に加え、労働参加率が上昇傾向にあることで、労働市場の均衡は改善してきており、賃金の伸びも緩やかになっている。労働者への需要は鈍化しているにもかかわらず、失業率は依然として過去最低水準付近にある。
コメリカ・バンクのチーフ・エコノミスト、ビル・アダムズ氏は「米金融当局は急速な賃金上昇が2024年にインフレ圧力をあおる可能性を懸念している。しかし、転職による報酬増加の機会が少なくなっていることを働き手が認識しているため、賃金の伸びは向こう数カ月で減速する公算が大きい」とリポートで指摘した。
失業者1人に対する求人件数は1.5件に減少し、21年9月以来の低水準。
採用は21年1月以来の低水準に落ち込んだ。直近2カ月間では合わせて45万8000件減少と、20年末以来の大きな減少幅となった
レイオフはほぼ変わらず。労働者不足への懸念がくすぶり、米消費が堅調であることを踏まえると、企業は従業員の解雇に依然消極的だ。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)のブロック副総裁は29日、インフレ抑制のために金利を再び引き上げる必要があるかもしれないが、政策立案者はデータを注意深く見ており、当面は月ごとに判断することになると述べた。
9月中旬に総裁に就任する予定のブロック氏は、オーストラリアではインフレ率が依然として高過ぎるとして、豪中銀トップとしてインフレとの闘いが最優先課題になるとした。
市場調査グループGfKが29日発表した9月の独消費者信頼感指数はマイナス25.5となり、前月のマイナス24.6(改定値)から低下した。市場予想のマイナス24.3も下回った。
GfKの消費専門家ロルフ・ビュルクル氏は「今年末までに消費者心理が持続的に回復する可能性はますます小さくなっている」と指摘。高止まりするインフレ率が改善を妨げているという。
GfKによると、消費者信頼感は今後数カ月低水準にとどまる可能性が高いため、個人消費が今年の経済全体にプラスに寄与することはなく、反対にドイツの成長見通しの重荷になりそうだ。
スウェーデン中央銀行のフローデン副総裁は28日、インフレとの戦いは終わっていないと指摘し、引き締め的な金融政策がかなり長期的に続くとの見方を示した。講演の内容が中銀のウェブサイトに掲載された。
「インフレは正しい方向に向かっているが、まだ先は長い。おそらく、引き締め的な金融政策をかなり長い間続ける必要がある」とした。
中銀は夏の間に多くの新たな情報を得たが、9月21日の次回の金利決定にどのような影響を与えるかについて話すのは時期尚早とした。
インフレ率がかつてよりは鈍化し、経済も減速する中、大半のアナリストは来年半ばごろに緩やかな緩和サイクルが開始されると予想する。
こうした見方についてフローデン氏は「目先の利下げについて話している向きもあるが、中銀ではそのような議論はしていない」と一蹴、近い将来の金融緩和観測に冷や水を浴びせた。
北京から上海へ向かう高速鉄道の車中で、同長官は「中国はリスクが高過ぎて投資できないという企業の声が増えている」と記者団に語った。
「昔から問題があり、米企業はそれらの対応に慣れてしまった」とレモンド氏。「そこに一連の新しい問題が加わり、中国はリスクが高過ぎて投資できないと企業は受け止めるようになっている」と説明した。
レモンド氏によれば、米国はインテルやマイクロン・テクノロジー、ボーイングに関する具体的な問題やその他の商業上の懸念など、多くの問題を中国側に提起した。一方の中国は米国に対し、関税の引き下げや輸出規制の削減、計画されている対中投資制限の破棄を求めたとレモンド氏は述べ、これらの要求を拒否したことを強調した。
レモンド氏は「われわれが非公式なコミュニケーションをとり、電話で話すことができるようになったという事実は、まさに一歩前進だ」と話す。「話し合うということは米国が妥協するとか、譲歩するという意味ではない。誤算を減らし、情報を共有できるということだ」と述べた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の不動産開発大手、碧桂園は近く償還期限を迎える人民元建て債を巡り、カレンダーベースで40日間の猶予期間を設ける案を示した。同社初のデフォルト(債務不履行)を回避するための新たな取り組みとなる。
碧桂園は9月2日に償還を迎える元建て債の保有者に対してこれを提案。上海証券取引所の私募債情報開示プラットフォームへの届け出をブルームバーグ・ニュースが確認した。遅くとも8月31日に開かれる会合で投票が実施される予定。同債券の償還日である来月2日は土曜日となっているため、実質的には9月4日に償還を迎える。
碧桂園は届け出で、猶予期間の追加に成功した場合、同期間内に元利払いを実行したり、延長を確保したりすれば不履行を招くことはないと説明した。
同社は今月、元本残高39億元(約780億円)相当の同債券の償還について、2026年まで延長した上で分割払いとする案を示していた。
中国経済の見通しに改善の兆しは見られず、エコノミストは景気回復や物価、貿易に関する予想を幅広く下方修正した。
ブルームバーグの最新調査(中央値)で2023年の国内総生産(GDP)は前年比5.1%増が見込まれている。従来予想(5.2%増)から下方修正され、3月の設定時点で広く保守的と見られていた政府目標の約5%に近づいた。
予想引き下げは7-9月(第3四半期)成長率見通しの下方修正が一因。エコノミスト予測では、この間のGDP伸び率は前年同期比4.4%増の見通しで、これまでの予想の4.6%増を下回った。
24年の成長率は4.5%への鈍化が見込まれている。この見通しも従来予想の4.8%から引き下げられた。
調査会社コンティニュアム・エコノミクスの調査担当ディレクター、マイク・ギャラガー氏は成長の勢いが鈍っていることについて「住宅不動産投資の落ち込み悪化と輸出不振に起因する」と解説した。同社による今年のGDP伸び率予測は4.9%。
ギャラガー氏によれば、財政・金融政策を通じた景気刺激策にもかかわらず、中国が年内に「ハードランディング」を経験する確率は最大30%に達している。
中国工商銀行や中国建設銀行などが、主要預入期間の人民元建て預金金利を5─20ベーシスポイント引き下げる可能性があるという。
関係者によると、中国は大手国有銀行が38兆6000億元(約775兆円)に上る既存の住宅ローンの大半について金利を引き下げると29日にも発表する可能性がある。引き下げは一時取得住宅のみが対象だと関係者のうち2人が語った。
●中東
来日中のイランのシェイホルエスラーミー外務次官は29日、都内で日本経済新聞の取材に応じ、断交が続くエジプトについて「国交回復を期待したい」と述べた。「イランにとって重要な国の一つだ」とも強調し、9月の国連総会に合わせてニューヨークで外相会談を開く予定だとも明かした。
●中南米・アフリカ
2023年4〜6月の実質国内総生産(GDP)の確定値は、前四半期比で0.8%増だった。7月に公表した速報値から0.1ポイント下方修正した。生産地を消費地に近づける「ニアショアリング」で米国市場向けの投資が活発になり、メキシコで建設需要が拡大している。
●市況ドルが下落。29日に発表された米雇用動態調査(JOLTS)で求人件数が約2年半ぶりの水準に減少したことに反応した。円は対ドルで一時10カ月ぶり安値に沈んだものの、その後切り返した。
<債券> 国債利回りが低下した。7月の雇用動態調査(JOLTS)で求人件数の減少が確認されたことを受け、幅広い年限で3週間ぶりの低水準を付けた。米連邦準備理事会(FRB)が9月米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置くとの見方も強まった。
<米原油先物> 大型ハリケーンの接近を受けて供給混乱を警戒した買いが入り、4営業日続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月10月物の清算値(終値に相当)は、前日比1.06ドル(1.32%)高の1バレル=81.16ドル。11月物は1.01ドル高の80.68ドルだった。
メキシコペソは第2・四半期の経済成長率が予想をやや下回ったことを受け下落した。ペルーソルは2023─24年の経済成長率見通しの下方修正を受けて0.2%下落。チリペソは対ドルで0.8%安と続落。中南米主要通貨で唯一、年初来で下落した通貨となった。
日経先物32422、ダウ先34899、債先146.87、米4.136、独2.5155、仏3.031、西3.527、伊4.156、英4.4875、波5.656、原油81.38、銅8,455、ドル円145.93、ユーロドル1.0871
※8/30 8時50分頃
備忘録(2023/8/28)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
個人富裕層向けの資産運用・管理事業を米独立系資産管理会社のクリエイティブ・プランニングに売却することで合意したと発表した。売却額は非公表。取引を完了する2023年10〜12月期に一定額の売却益を計上する見通しだ。
ゴールドマンは19年に当時の為替レートで約820億円を投じて米ユナイテッド・キャピタル・ファイナンシャル・パートナーズを買収すると発表し、投資アドバイザーが運用を助言するパーソナル・ファイナンシャル・マネジメント(PFM)事業を強化してきた。同事業は22年末で290億ドル(約4.2兆円)の契約資産残高がある。
足元では戦略の見直しに伴い個人向け金融サービス事業の縮小を進めており、今回の売却もその一環となる。個人向け資産運用ビジネスは、平均6000万ドルの資産を預ける「超富裕層」や法人顧客の幹部社員へのサービスに経営資源を集中する。
●その他産業
スリーエム(3M)は品質問題があったとされる軍需用耳栓に関連した訴訟で、55億ドル(約8065億円)以上の和解金を払うことで暫定的に合意した。米ブルームバーグ通信が関係者の話として28日までに報じた。
3Mの耳栓は爆発音などから十分に耳を守らず、難聴につながったと主張する退役軍人らによって、3Mは30万件余りの訴訟に直面している。「大規模不法行為(多くの人に影響を与える不法行為)」をめぐる訴訟では、米国史上で最多の訴訟件数に膨らんでいるという。
問題となっている耳栓は2001〜15年にアフガニスタンとイラクで支給された。
暫定合意した55億ドルの和解金は、当初想定されていた額より低いとの指摘が出ている。一部アナリストの推計では、3Mの支払いは総額100億〜150億ドルにのぼる可能性があるとされていた。
3Mは有害性が問題となっている化合物「PFAS(ピーファス)」をめぐる訴訟でも、最大125億ドルの和解金支払いを迫られている。財務上の負担が高まっていることから、軍需用耳栓の訴訟では和解金の規模縮小を迫られたとの見方も出ている。
原告団との交渉は継続中で、3Mが払う金額は確定していない。
耳栓をめぐる和解金の支払いは今回が初めてではない。2018年にも耳栓に品質問題があると知りながら米軍に報告を怠ったとして、3Mは米司法省に910万ドルの和解金を支払うことで合意していた。
ベトナムの電気自動車(EV)メーカー、ビンファストの時価総額が米テスラ、トヨタ自動車に次ぎ、世界の自動車メーカーで3位に浮上した。28日の米国市場で同社株は前週末比20%上昇し、米CNBCによると終値ベースの時価総額は1912億ドル(約28兆円)に達した。米国事業はこれから本格化する同社だが、米国内で広がるEVブームに乗って個人投資家らによる買いが殺到している。
28日の米株式市場で、ハワイアン・エレクトリック・インダストリーズが急伸。傘下のハワイアン・エレクトリックがハワイ州マウイ島で今月起きた大規模な山火事を巡り、発生の数時間前から同社の送電線は通電が停止されていたと明らかにした。この山火事では少なくとも115人が死亡した。
ハワイアン・エレクトリックが28日に発表したところによると、8月8日朝に起きた火災は強風による送電線の落下が原因だったようだが、海辺の街ラハイナを破壊した2番目の火災は同社の送電設備が止められてから6時間余りたった午後に発生した。
●決算関連
オーストラリアの鉄鉱石大手、フォーテスキュー・メタルズ・グループが28日発表した2023年6月期決算は、純利益が前の期比23%減の約48億ドル(約7030億円)だった。最大市場の中国の景気減速懸念で鉄鉱石価格が下落したことが響いた。同日、2月に最高経営責任者(CEO)に就任したフィオナ・ヒック氏の退任も発表した。
●先進国、グローバル、金融市場
自動車関連の調査会社S&Pグローバル・モビリティは28日付のリポートで、8月の米新車販売が底堅さを維持する一方で、鈍化の兆しが見え始めていると分析した。労働協約を巡る労使交渉や金利上昇が背景にある。
同社は8月の米乗用車新車販売台数が前年同月比18%増の134万台になると予想している。
同社の主席アナリスト、クリス・ホプソン氏は「金利上昇や信用状況の引き締まりのほか、新車価格が徐々に鈍化していることが、消費者にとって依然問題となっている」と説明した。
また、今年通年の新車販売台数見通しについては1520万台と、7月時点の予想1570万台から引き下げた。
リポートでは、ここ最近の労使交渉過熱に伴って、北米で自動車供給が滞る恐れがあると指摘した。
全米自動車労組(UAW)の25日の発表によれば、現行の4カ年の労働協約が9月14日に期限切れとなる前に経営側と合意に至らなければ、米自動車大手3社に対してストを決行することが組合員の圧倒的多数で承認された。
米運輸省は28日、旅客機の機内に乗客を閉じ込めたまま滑走路上で長時間の地上待機を続けることを禁止した規則に違反したとして、アメリカン航空グループに410万ドルの罰金処分を科した。この違反行為の罰金としては過去最大となる。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は28日、次回9月の理事会までにインフレデータに大きなサプライズがなければ、さらに金利を引き上げる可能性があると述べた。
ブルームバーグ・ニュースのインタビューで、ホルツマン氏は、インフレはまだ抑制されたわけでないとし「大きなサプライズがなければ、利上げを一時停止することなく続けるべきだと思う」と述べた。
欧州中央銀行(ECB)の報告書によると、ユーロ圏の非金融企業向け融資の前年比伸び率(調整済み)は7月に2.2%となり、前月の3.0%から再び鈍化した。利上げが影響している。
家計向けの伸びも6月の1.7%から1.3%に鈍化した。
7月のマネーサプライM3は0.4%減。ロイターがまとめた予想は横ばいだった。
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのナーゲル独連銀総裁は28日、ECBが次回9月の理事会で再び利上げを決定すべきか、まだ明言できないと述べた。
ナーゲル総裁は「何をすべきか9月に見極める。現時点で何らかのシグナルを出すつもりはない」と語った。
このほか、銀行破綻処理の枠組みが必要になるようなケースは回避するべきだが、必要になった場合は機能すると確信していると述べた。
カマクシャ・トリベディ氏ら同行ストラテジストは、円は今後6カ月で1ドル=155円を付けると予想。これは1990年6月以来の円安水準となる。以前は1ドル=135円を予想していた。
25日付のリポートでストラテジストらは「日銀が利上げからほど遠い状況にあり、株価が適度に下支えされている限り、円安傾向は続くだろう」と記した。米国の成長見通しが改善していることも円弱気見通しの一因だという。
ニューヨーク市では2021年に娯楽用大麻が合法化されて以降、規制の空白に乗じるなどして無許可の販売店が乱立。大麻製品の無許可販売は違法であるにもかかわらず、市内5つの行政区に現在2000もの店舗が存在する。
ブルームバーグ・ニュースと不動産情報会社ピンカスコーの分析によると、複数の無許可販売者をテナントとして抱えていた不動産所有者は20を超える。またJPモルガン・チェース、シグネチャー・バンク、ニューヨーク・コミュニティー・バンクはマリファナ販売店の所有者に対するローンを少なくとも25件抱えている。今年に入ってマンハッタン地区検察から警告書を受け取った400余りの無免許販売店に関する開示記録で分かった。
違法販売店の急増は、新型コロナウイルス禍に伴う空洞化で商業用不動産価格が落ち込んだ時期に重なっており、空室を避けたい貸し手にとってはテナントの選択肢が狭まっていたという事情がある。違法販売業者の多くは既存店舗に大麻製品を追加するなどしており、不動産所有者や銀行にとっては状況把握が難しかった可能性もある。
店舗スペースの貸し手が実態を把握していたかどうかは別として、違法販売店が存続していれば規制薬物販売に絡む法律の適用対象となる。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)とウェルズ・ファーゴも、マンハッタン地区検察のリストに掲載されている建物に対して債権を保有している。JPモルガン、BofA、ウェルズ・ファーゴはコメントを控えた。3月にシグネチャー・バンクの管財人となった連邦預金保険公社(FDIC)もコメントを拒否。ニューヨーク・コミュニティー・バンクはコメントの要請に応じていない。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国財政省は地方政府の債務リスクを防止・解消し、財政規律を強化すると表明した。同省による全国人民代表大会(全人代=国会に相当)への報告を国営新華社通信が報じた。
財政省はまた、積極的な財政政策を強化・実施し、地方への支払い移転を改善する方針も示した。
また、国家発展改革委員会(発改委)は全人代常務委員会への別の報告で、中国が内需拡大のためにマクロ政策の調整を強化すると説明した。
ポーランドとバルト3国の内務相らは28日、ワルシャワで、隣国ベラルーシに拠点を移したロシアの民間軍事会社ワグネルへの対応を協議し、ベラルーシ政府に対し即時の追放を要求した。対ベラルーシ国境では、移民や難民の流入を巡っても緊張が高まっており、各国は不測の事態が生じた際に国境封鎖などで足並みをそろえる方針で一致した。
ワグネルは創設者プリゴジン氏の死亡により、今後の動向が一段と不透明になっている。AFP通信によると、ポーランドのカミンスキ内相は「何でもありの大規模な集団だ」と警戒感をあらわにした。
リトアニアは既に一部の国境検問所を閉鎖。ポーランドも国境警備に1万人規模の派兵を決めている。
経営再建中の中国恒大集団は28日、同日夜に予定していた外貨建て債務の再編を巡る債権者との協議を9月25〜26日に延期すると発表した。債権者が会社側の提案を検討する時間を確保するためとしている。
中国が株価対策を相次いで打ち出している。株式取引に必要な印紙税の税率引き下げ、新規株式公開(IPO)の段階的抑制、上場企業の大株主による自社株売却の制限などだ。なりふり構わぬ株価対策で株式相場を活性化し、住宅不況による逆資産効果で落ち込みが危惧される個人消費の下支えを狙う。
野村ホールディングスの中国担当チーフエコノミスト、陸挺氏はリポートで、「週末の措置は値下がりのスパイラルを止めるには十分ではなく、実体経済を支える対策が続かなければ、その影響は短命にとどまる」と指摘。「追加的かつより積極的な政策刺激策がなければ、株式市場に焦点を絞った政策だけでは持続的なプラス効果はほとんどない」との見方を示した。
エバコアISIの中国リサーチ担当マネジングディレクター、ネオ・ワン氏(ニューヨーク在勤)も同様の見解だ。中国政府が08年に実施した4兆元(現在の為替レートで約80兆円)の包括的な刺激策のようなもっと「バズーカ砲」的な施策をしない限り、人民元建て株式相場の好転はないだろうと語った。
●中東
イラン国会が女性の髪を覆うスカーフ(ヒジャブ)の着用義務を厳しくする新法案を審議している。未着用時の罰金の増額などが柱となる。当局は既に監視を強めており、国民の引き締めを改めてはかる狙いとみられるが、2022年に女性の死をきっかけに起きた抗議運動が再燃する可能性もある。
エルドアン大統領が近くロシア南部ソチを訪問すると明らかにした。黒海穀物合意の再開に向けてロシアのプーチン大統領と協議するとみられる。トルコメディアが伝えた。
報道担当者は「穀物合意に関して進展があるかもしれない」と期待を示した。ロシアは7月、トルコや国連が仲介したウクライナ産穀物を輸出するための枠組みから一方的に離脱し、トルコなどは復帰を促している。
米ブルームバーグ通信はトルコ政府関係者の話として、首脳会談が9月8日に行われる可能性があると報じた。ロシア大統領府は25日、両首脳が近く会談することで合意していると説明していた。
●中南米・アフリカ
●市況ドルが対円で一時9カ月ぶりの高値を付けた。投資家は、今後予定されている重要指標を見極めたいとしているほか、日本当局の介入の可能性を警戒している。主要通貨に対するドル指数は下げた。
<債券> 薄商いの中、国債利回りがやや低下した。市場では米金融政策の行方を見極めようと、9月1日に発表される8月の雇用統計などの経済指標が注目されている。
2年債利回りは、根強いインフレを反映し米金利は当面は高止まりするとの見方が織り込まれる中、一時5.106%と、7月6日以来の水準に上昇。終盤の取引では5.039%と、1.7ベーシスポイント(bp)低下したが、一時上昇する動きは米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が米ワイオミング州で開催された経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で25日に行ったタカ派的な講演と整合性が取れるものだった。
<株式>続伸。複合企業スリーエム(3M)や金融大手ゴールドマン・サックスが上昇し、株価押し上げに寄与した。米政策金利の先行きを占う手がかりを得るため、市場の注目は週内に発表される主要インフレ指標や雇用統計に移っている。
3Mは5.2%急騰。米軍向けの耳栓の欠陥を訴える30万件以上の訴訟で和解に暫定的に合意したとの報道が材料。
<米原油先物> 熱帯低気圧の米国本土接近に伴い供給混乱を警戒した買いに支えられ、3営業日続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月10月物は前週末清算値(終値に相当)比0.27ドル(0.34%)高の1バレル=80.10ドル。11月物は0.18ドル高の79.67ドル。
中南米金融市場では、域内通貨の大半が下落した。一方、域内株式は上昇。中国当局が週末に市場てこ入れ策を発表したことを受けた。
日経先物32312、ダウ先34596、債先146.86、米4.194、独2.5550、仏3.079、西3.575、伊4.221、英4.4865、波5.719、原油80.10、銅8,401、ドル円146.36、ユーロドル1.0830
※8/29 9時15分頃
備忘録(2023/8/25-27)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
2件の墜落事故を受け、中国で2019年3月から運航停止となっていた737MAXは今年、運航が再開された。それ以来、事故前に中国に輸入されていた同機のほとんど全てが運航を再開している。
●その他産業
米エヌビディアが23日発表した2023年5〜7月期決算は、純利益が前年同期比9倍の61億8800万ドル(約9000億円)と過去最高を更新した。生成AI(人工知能)に使う半導体は需要が急拡大し、驚異的な成長局面に入った。唯一といえる懸念は米国による対中輸出規制の影響だが、市場では足元の米国の旺盛な需要が相殺し、楽観的な見方も広がっている。
ビール世界大手のオランダ・ハイネケンは25日、ロシアでの事業を1ユーロ(約157円)でロシアの包装メーカー、アーネストグループに売却し、完全撤退したと発表した。7カ所のビール醸造所などロシア国内の全資産をほぼ無償で引き渡す形となり、3億ユーロの損失を見込む。
ハイネケンはウクライナ戦争が始まった直後の2022年3月、ロシア事業からの撤退を表明していた。ただこの間、ロシア政府が現地資産の接収や売却申請の不受理など、撤退意向の外資系企業への締めつけを強めており、交渉が難航していた。
ハイネケンのドルフ・ファン・デン・ブリンク最高経営責任者(CEO)は「望んでいたよりはるかに時間がかかったが、従業員の生活保証など責任を果たす形で撤退できる」とコメントした。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、金融当局は必要に応じて追加利上げに動く用意があると指摘。またインフレ率が目標の2%に向けた軌道を進んでいると確信するまで、政策金利を高水準に維持する考えを示した。
議長は25日、ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で講演。事前に配布された原稿によれば、「インフレ率はピークからは下がってきており、それは喜ばしい展開だが、なお高過ぎる」と指摘。「適切と判断すれば追加利上げに動く用意がある。インフレがわれわれの目標に向かって持続的に低下していると確信できるまで、政策を景気抑制的な水準に据え置く考えだ」と述べた。
パウエル氏は金融引き締めのほか、新型コロナ禍後に起きた供給制約の改善が進んだことを背景に米国の物価上昇ペースが減速したことを歓迎。ただその上で、このところはデータが改善してきているものの、このプロセスは「まだ先が長い」と述べた。
同時に、米連邦公開市場委員会(FOMC)が次回9月の会合で、市場の予想通りに政策金利を据え置く可能性があることを示唆した。
パウエル議長は「これまでの道のりを踏まえると、今後の会合では入手するデータと変化する見通し、そしてリスクを精査しつつ、慎重に政策を進めていくスタンスだ」と語った。
米金融当局は、インフレ率を目標の2%に戻すためのキャンペーンにおいて新たな局面に入りつつある。2022年には積極的に利上げを進めたが、今年はそのペースを落としており、利上げ終了に近づいている可能性も示唆した。今後の重要な問題は、政策金利をどの程度の期間、景気抑制的な水準で維持するのか、そしてその状況下で経済がどう展開するかだ。
パウエル議長はこの日、リスク管理が「極めて重要」な段階になったとし、金融政策はより熟考が必要な局面にシフトしたとのシグナルを発した。
経済については、国内総生産(GDP)と個人消費のデータは力強いとし、米経済が当初の想定ほど速いペースで沈静化していない可能性があると指摘。4-6月(第2四半期)の米実質GDP速報値は、前期比で年率2.4%増と、市場予想を上回る伸びとなった。これを受け、多くのエコノミストが7-9月(第3四半期)の予想を引き上げ、リセッション(景気後退)の確率を見直している。
パウエル氏は「潜在成長率を上回るペースでの成長が根強く続いている証拠が新たに示されれば、インフレのさらなる改善がリスクにさらされ、金融政策の一段の引き締めが正当化されることもあり得る」と語った。
またインフレ目標の引き上げを巡る観測を一蹴。「現在、そして今後も2%がわれわれのインフレ目標だ」と言明した。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)での発言を受け、債券相場は彼の思惑通り、連邦準備制度の次のステップについて確信を欠く状態となった。
それは将来のポジショニングが割れていることでも一目瞭然のシナリオであり、経済データの進展に応じて、世界最大の債券市場を動揺させる可能性を心配することなく、今後数カ月の間に政策を速やかに調整する自由度をパウエル議長と同僚らに与える。
パウエル議長は25日の講演で、インフレ抑制のために必要なら追加の金融引き締めの用意があると語った。投資家にとっては、今週9月1日に発表される米雇用統計(8月)のような経済統計が極めて重要になり、米国債指数が4カ月連続の下落に向かう中でも、債券強気派と弱気派との闘いの勝者をすぐに認定することが難しくなる状況をそれは意味している。
アリアンツの首席経済顧問で、ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるモハメド・エラリアン氏は、ブルームバーグテレビジョンに対し、パウエル議長が「最大限の政策のオプショナリティーを確保した」との認識を示した。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「市場にとってデータが二の次という期間が続いたが、9月を待っていたということであり、それが1日の雇用統計から始まる」と指摘し、現時点ではインフレおよび賃金動向の方が「供給よりも長めの利回りの方向性に対する影響力が大きい」と分析した。
欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は25日、インフレ率を目標値へ引き下げるため必要に応じて金利を高水準に設定し、必要な限りその水準に維持すると述べた。
ラガルド氏はジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で講演し、「不確実な時代」において中央銀行が経済の頼みの綱として、それぞれの責務に従い確実に物価を安定させることが重要だと述べた。
同氏は「現在の環境に照らし合わせれば、これは、インフレ率を中期目標の2%へと適時に戻すため、ECBが必要な限り金利を十分景気抑制的な水準に設定することを意味する」と述べた。
データからは、これまで辛うじて免れてきたリセッション(景気後退)に陥りかねないことが示唆され、当局者は最後の利上げを実施すべきかどうかを検討している。
ラガルド総裁は今回、来月の会合は10回連続となる利上げか休止のどちらかになるとしてきた従来のガイダンスに何も追加しなかった。
ラガルド氏は同日行われたブルームバーグテレビジョンのインタビューでも、ECBが9月に10会合連続の利上げを決定すべきかを巡る議論について言及を控えた。
同氏は「インフレ期待が2%に抑制されることが極めて重要だ」と述べた。
日本銀行の植田和男総裁は、物価の伸びが日銀の目標より依然鈍いと述べ、それが現行の金融政策を継続している理由だと説明した。
植田総裁は26日、ジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)でのパネル討論会で「基調的インフレは依然として目標の2%を若干下回っていると、われわれは考えている」と発言。「日銀が現行の金融緩和の枠組みを堅持しているのは、それが理由だ」と述べた。
7月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比3.1%上昇。総裁は「年末にかけて鈍化する見込みだ」と語った。
今年に入ってからの日本の経済成長については、新型コロナウイルスの「パンデミック(世界的大流行)に関連した各種制限措置が緩和されたことで、それに対する反応がある程度」あったと発言。
第3四半期のデータで「確認する必要があるが、内需はなお健全なトレンドにあると、われわれはみている」と述べた。
グローバリゼーションに関するこのパネル討論会で、植田総裁は為替レートについてはコメントしなかった。
前日には米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が講演で、必要に応じて追加利上げに動く用意があると表明し、政策金利を高水準に維持する可能性を示唆したことを受け、円が対ドルで下落し、年初来安値を更新した。
植田総裁はまた、中国の最近の景気減速は「失望を誘うもの」だとし、7月の同国データは「弱い方」だったと指摘。「根本的な問題は不動産セクターの調整と経済全般への波及だと思われる」との見解を示した。
日本にとっては、その影響を比較的強い米経済が「幾分埋め合わせて」いるとも語った。
米国債利回りの話題がこれほど情熱をかき立てるとは、誰が予想しただろうか。6月下旬に私が、米国債利回りは当時主流だった3.75%よりかなり高くなる可能性が高いと主張したところ、猛烈な反発を受けた。モルガン・スタンレーのアナリストは、10年債は夏に値上がりし、利回りは最終的に2-3%の長期レンジに落ち着くと言い張っていた。
私は自分の予想に固執している。さらに、1980年代初頭に始まった債券の強気相場は終わったとのではないかと強く疑っている。
私の予測では、10年物米国債利回りを3つの要素に分解している。まず、Rスター(自然利子率、景気に中立的な実質利子率)だ。連邦準備制度が成長を阻害も刺激もしたくないと考えた場合に設定する「中立的」な短期金利である。私はこれを1%とした。次に平均長期インフレ率2.5%。最後に、投資家が長期債保有のリスクを補うために必要とする追加利回りであるタームプレミアムを1%と試算した。その結果1+2.5+1で目標利回りは4.5%という計算だ。
対照的に、モルガン・スタンレーのアナリストは過去10年の経験から、Rスターとインフレ率、タームプレミアムの全てが低下し、その結果、全体の利回りが低下すると予想した。
10年物利回りはそれ以降に大きく上昇し、約4.3%になった。しかし、私は勝利宣言をしているわけではない。私の評価は長期的なトレンドに照準を定めたものであり、この1カ月の利回り上昇は予想以上の景気回復など景気循環的な動きと大いに関係がある。私も利回りがすぐに上昇するとは想定していなかった。
とはいえ、長期的な要素も明らかだ。第一に、金利が大幅に上昇する中での経済の好調は、中立金利が以前考えられていたよりも高いことを示唆している。このことは米金融当局の見方にも浸透し始めている。6月の経済予測サマリーでは、フェデラルファンド(FF)金利の長期の中心傾向がわずかに上昇した。
私は米連邦準備制度当局者がRスターの推計を上方修正し続けるだろうと見込んでいるが、こうした動きは恐らく鈍く、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期のデータによって幾分ゆがめられた計量経済モデルに基づく推計には反映されないだろう。
第二に、米政府の財政状況は悪化の一途をたどっている。米議会予算局(CBO)は先月、今年度の連邦財政赤字の見積もりを1兆7000億ドル(約247兆円)と1兆5000億ドルから引き上げた。金利上昇が債務返済コストを高め、ベビーブーマーの退職がメディケア(高齢者・障害者向け医療保険制度)や社会保障のコストを押し上げるため、見通しはさらに悪化するだろう。財政赤字の拡大はRスターを押し上げ、米政府への長期貸し付けのリスクを高めて債券のタームプレミアムを拡大させる。
米国債の供給は、財政赤字が示唆する以上に増加するだろう。一つには、財務省が今回の債務上限問題を乗り切るために枯渇させた現金残高を回復させるために、さらに借金をしなければならないためだ。また、米連邦準備制度は量的引き締め(QT)プログラムの一環として年9000億ドルのペースで保有債券を減らしており、この状態は当局が金利政策を転換したとしても恐らくあと2年は続きそうだ。
タームプレミアムを予測するのは最も難しい。2008年に起きた金融危機の前は平均で約100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)だった。それ以来、リスクがほとんどなかったこともあり、タームプレミアムはゼロ前後で推移した。 債券はリセッション(景気後退)に対する良いヘッジであり、金利のゼロ下限制約によって金融政策が効かなくなる危険に対するヘッジであると考えられていたからだ。しかし今や、慢性的な高インフレはより大きな脅威であり、タームプレミアムは08年より前の水準まで押し上げられるかもしれない。
債券利回りが近い将来にどのように動くかを知っているふりをするつもりはない。成長と雇用、インフレが主な要因となるだろう。しかし、長期的に見れば、08年の金融危機後の順調な景気拡大はもはや意味をなさない。パラダイムがシフトしたのであり、高利回りが戻ってきた。
ピムコのエコノミスト、ティファニー・ワイルディング氏は24日のリポートで、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の間に消費者が蓄えた貯蓄が、経済成長ペースを押し上げる予想以上の支出を長引かせる可能性があると分析した。また、多くの消費者が既に低金利で住宅ローンを借りているため、消費者は住宅ローンコスト上昇の影響を免れているとも指摘。
「米国の消費者には余裕があるため、短期的な景気後退の可能性は低くなる」と論じた。
「今年後半も経済はさまざなな逆風に直面しそうだが、最近のデータは消費者と経済が金利上昇に直面しても驚くほど回復力を維持する可能性を示唆している。このことは、連邦準備制度が金利を据え置くだけでなく、来年さらなる利上げを発表することも考えられなくはないことを意味する」と説明した。
ピムコなど複数の金融機関が、7月の米利上げが最後になることを疑問視している。こうした懸念が今月、米国債相場の急落につながった。米経済がリセッション(景気後退)を回避しインフレが持続するとの思惑が長期債利回りを上昇させた。
貯蓄率が歴史的な標準を下回っていることから、余剰貯蓄は減り続けるだろうとワイルディング氏は予想。また、自動車ローン、クレジットカード、消費者向け割賦ローンなどの分野で延滞が増え始めているというデータもあり、幾つかの亀裂が生じつつあるという。
「それでも、低所得層以外での傾向は、パンデミック後の非常に低い延滞率が正常化している状況のように見える」とワイルディング氏は考察し、消費に関する良いニュース「全体的な経済、労働市場、基調的なインフレが、金融当局が望むほど急速に冷え込んでいないかもしれない」ことを意味すると説明した。
5日の米債券市場で2年債利回りが一時、前日比約0.07%高い5.09%に上昇(債券価格は下落)し、約1カ月半ぶりの高水準となった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が講演で根強いインフレに触れ「適切ならさらに利上げする用意がある」と発言。金融政策の影響を受けやすい2年債利回りが上昇した。
米金融調査会社MFRは講演内容について「大方の想定通り、ややタカ派的な内容となった」と指摘した。米金利先物の値動きから市場が織り込む政策金利予想を算出する「フェドウオッチ」では、11月までの利上げ確率が6割弱となった。5割弱だった前日時点から上昇した。
米中期債の利回り上昇はドル高圧力につながった。円相場は講演直後にドル=146円台後半と2022年11月以来の円安・ドル高水準を付ける場面があった。英ポンドなども対ドルで下落した。
一方で長期金利の指標である米10年債利回りは、上下に振れながらも前日をわずかに下回る4.23%となった。長期金利は22日に約16年ぶりの高水準を付けていた。
景気を熱しも冷やしもしない政策金利水準「中立金利」が切り上がっているとの見方が最近の長期金利上昇を促した面がある。ただ、パウエル氏は講演で「中立金利を確実に特定することはできないため、金融引き締めの正確な度合いは不確実だ」と述べるにとどめた。
地政学リスクの高まりを踏まえて日本企業が中国から他国に生産拠点を移す動きが出ていると指摘。世界経済に不確実性をもたらし、金融政策運営を難しくする一因になり得ると言及した。
この夏、欧州各国の人気観光地で旅行客が物価高騰に遭遇している。地元業者がコスト上昇分を価格転嫁しているからだ。欧州中央銀行(ECB)は物価上昇の抑制がこれまで以上に難しくなると懸念を強めている。
東京カンテイの高橋雅之主任研究員は「新型コロナウイルス禍前は東京以外にも投資先が波及する動きがあったが、今回はない。投資マネーの流入は東京一人勝ちの様相になっている。都心6区は堅調な推移を見せるだろう」と話す。
4〜6月期の実質国内総生産(GDP)は改定値で前期比ゼロ%と横ばいだった。3四半期ぶりにマイナス成長を回避したものの、急激なインフレや利上げが重荷となり個人消費は低迷した。先行きの景気後退懸念はなお強い。
米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は26日、ロイターのインタビューで、インフレを抑制するには、おそらくあと1回利上げし、その後「しばらく」据え置く必要があるとの見方を示した。2024年後半の利下げ開始という自身の予想は見直すことになると述べた。
メスター氏は、経済が崩壊するほどの引き締めは望んでいないが、インフレ率が25年末までに目標の2%まで下がるような政策を志向するとした。
インフレの高進は市民の重い負担になるばかりでなく、インフレを放置すれば経済が将来のショックに対し脆弱になると指摘した。
インフレ率が2%を上回る状態が長引くほど、物価水準はどんどん上昇して家計が打撃を受けるとし、「だからこそ、タイムリーであることが重要だと考えている」と述べた。
メスター氏は、6月時点では24年後半の利下げを想定していたが、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)向けに提出する予測は修正することになると指摘。「予想は見直すことになる。なぜなら、インフレ率がどの程度のスピードで低下するのかが問題になるからだ」と述べた。
経済成長は大方の予想以上に堅調で、労働市場も依然逼迫しているが、FRBの利上げはその両方の強さを緩和するとの見方を示した。
ただ、3%まで低下したインフレ率については、適切なタイミングで2%に戻ると想定することには慎重で、「時期尚早に政策を緩める立場にはなりたくない」と語った。
6月のFRBの予測では、25年末のインフレ率が中央値で2.1%。メスター氏の予測は2%だったという。
メスター氏は、25年末までの2%達成は絶対というわけでなく、それによって経済が大打撃を受けるようなら先延ばしもあり得ると述べた。
ただ、現時点でそれは想定しておらず「現在の状況やインフレの水準を考えると、実体経済にダメージを与えることなく2%まで下げることは可能だと思う」とし「(25年までにインフレ率を2%にする)時間枠に確実に戻れるよう、政策を調整するつもりだ」と述べた。
今回の引き締めサイクルでおそらく最後となる次の利上げについて「必ずしも9月である必要はないが、年内だと思う」と語った。
米ミシガン大学が25日発表した8月の消費者信頼感指数(確報値)は69.5と前月の71.6から小幅低下した。インフレ期待がやや悪化した。市場予想は71.2だった。
消費者調査ディレクターのジョアン・シュー氏は声明で「耐久消費財の購入条件と生活環境に対する期待がともに改善した一方で、長期的な経済見通しは今月約12%後退したが、2カ月前を引き続き上回っている」とした。
オックスフォード・エコノミクスのエコノミスト、マシュー・マーティン氏は、労働市場が軟化し、経済成長の鈍化期に突入するにつれ、「消費者信頼感は今後数カ月さらに低下する公算が大きい」と述べた。
1年先のインフレ期待は3.5%と7月の3.4%から上昇。5年先のインフレ期待は3カ月連続で3.0%。過去25カ月中24カ月は2.9─3.1%の狭いレンジ内にとどまっている。
計12の米地区連銀のうち2つの連銀の理事会が7月に公定歩合の据え置きを支持していたことが、連邦準備制度理事会(FRB)が22日に発表した公定歩合議事要旨で示された。他の連銀の理事会は0.25ポイントの引き上げを支持していた。
それによれば、ニューヨーク連銀とアトランタ連銀の理事会が据え置きを支持した。一方、連邦公開市場委員会(FOMC)は7月25、26両日に開いた会合で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを5.25-5.5%と、22年ぶりの高水準に引き上げることを全員一致で決めた。
各地区連銀理事会の要請は連銀総裁がそうした立場を支持していたことを必ずしも意味しないが、連銀総裁の見解が連銀理事会のものと合致することはしばしばある。
今回明らかになった公定歩合に関する要請は、今月16日に発表された7月のFOMC会合議事要旨で詳述された当局内の見解の相違をあらためて裏付けることとなった。
FOMC議事要旨では、インフレが鈍化しない可能性があり、追加利上げが必要になるかもしれないと当局者が総じて懸念を抱いていたことが示された一方、FOMC内が完全には一枚岩ではなくなりつつあることも浮き彫りとなった。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の工業部門企業の利益が7カ月連続で減少した。ゼロコロナ規制廃止後の回復が失速し、需要の減退が圧迫している。
国家統計局が27日発表した統計によると、7月の工業部門企業利益は前年比6.7%減少。1─7月は前年比15.5%減少した。
6月は8.3%減、1─6月は16.8%減だった。
国家統計局の統計官は「コモディティー価格が下がり、中・下流部門の原材料費負担が軽減した」と述べ、全体的に7月は単価が今年初めて前年同月を下回ったと説明した。
国有企業の1─7月利益は前年比20.3%減少、外国企業は12.4%減、民営企業は10.7%減。41セクター中28が減益となり、金属精錬・加工が90.5%減と最も落ち込んだ。
中国国務院(内閣に相当)は25日の閣議で、手頃な価格の住宅を計画し、建設するための指針を承認した。中国人民銀行(中央銀行)は、住宅ローン関連規制緩和に関する指針を発表した。
中国では不動産部門の危機が深まり、一部の開発業者は物件の販売や資金調達に苦戦して債務不履行のリスクが高まっている。
新華社によると、今回の指針は国民の生活を向上させ、効果的な投資を拡大し、不動産市場の安定的で健全な発展を促す内容。詳細は明らかにしていない。
これに先立ち、住宅都市農村建設省と中国人民銀行、国家金融監督管理総局は共同で、住宅分野の活性化策として住宅ローン政策を緩和するとの声明を発表した。
人民銀は居住用住宅ローン関連規則の緩和に係る指針を公表した。購入場所に自己名義の住宅を持たない場合、それ以前の住宅ローン利用の有無に関係なく、初めての住宅購入として扱うよう銀行に指示した。
ローン申請や住宅購入の拡大を狙った措置だが、人民銀は住宅は住むための物で投機の対象ではないとの原則は堅持するとも述べた。
中国では主要都市の住宅価格が高騰し、多くの若い購買層が締め出されている。このため政府は近年、手頃な価格の住宅の供給拡大を推進してきた。
住宅都市農村建設省当局者は昨年、2021─25年に主要40都市で計650万戸の低コスト賃貸住宅を供給すると発表した。
しかし、不動産不況に伴って今年7月の新築住宅価格が前月比で下がり、今年に入って初めて下落したことが公式データで示された。このことはより大胆な政策支援が急務なのを浮き彫りにした。
中国証券当局は27日、新規株式公開(IPO)を段階的に抑制すると発表した。株式市場の需給悪化要因になる新規上場の抑制で株式相場の下支えを狙う。一方、スタートアップへの打撃は大きく、中国が目指す産業構造の高度化の障害になりかねない。
中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は26日、新疆ウイグル自治区を訪れ同地の統治を強めると表明した。区都ウルムチで演説し「イスラム教の中国化を推進し、違法な宗教活動を効果的に取り締まる」と強調した。
インド政府が日本の中小企業のインド進出支援に乗り出した。7月に在日インド大使館内に「中小企業促進室」を設置し、きめ細かく相談に応じる体制を整えた。インド進出の日系企業を現在の約10倍となる1万5000社に増やすのが目標。シビ・ジョージ駐日インド大使はこの目標について「3年で達成したい」という意向を明らかにした。
●中東
●中南米・アフリカ
西アフリカのニジェールでクーデターが起きて26日で1カ月になる。「新政府」を立ち上げた軍事政権は支配を既成事実にしつつある。親欧米だったバズム政権の転覆は、欧米がイスラム過激派対策のためニジェールに築いた足場を崩しかねない。力の空白はロシアがアフリカで一段と影響力を増す隙を生む。
軍事政権トップのチアニ将軍は19日「権力の奪取は狙っていない」と主張し、民政移管に「3年とかからない」と述べた。ただ選挙など権限移譲の段取りは示さず、すぐに実権を手放す気がないのは明らかだ。
周辺国でつくる西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)はクーデター直後、民選のバズム大統領への権力返還を求め、軍事介入も辞さないと警告した。1週間の期限後も軍事政権は応じず、ECOWASは今月18日、軍事介入の「開始日を決めた」と表明したが、交渉による解決を優先している。事態は膠着気味だ。
欧米もバズム氏の復権を重ねて訴える。広大なサハラ砂漠南縁のサヘル地域にある人口2600万の貧しい国ニジェールを欧米が注視するのは、ここが周辺のイスラム過激派に対処する作戦の拠点だからだ。米軍が1100人、旧宗主国フランスは1500人規模の部隊を展開している。
「201基地」と称する砂漠の中の空軍基地は米軍のドローン(無人機)部隊の要だ。2019年に本格運用が始まり建設費は1億1千万ドル(約160億円)と報じられた。「リーパー(死に神)」の名を持つ米国製の無人偵察機MQ9が飛び立ち、砂漠に潜むイスラム過激派ににらみを効かせる。
こうした西側の治安対策に協力してきたのが、域内で例外的に民主的に選ばれたバズム大統領だ。クーデターで追放を宣言され、今月初めに米紙ワシントン・ポストへの寄稿で訴えた。「中央サヘル地域全体が、ワグネルを通じロシアの勢力圏に陥ってしまう」
周辺の旧フランス植民地ではオセロの駒を裏返すように「親ロ」の国が増えてきた。隣国マリとブルキナファソは20年以降に相次いだクーデター後、軍事政権がロシア寄りの姿勢を強めた。マリは22年に駐留仏軍が撤退し、ロシアの民間軍事会社ワグネルが活動を強めている。
マリとブルキナファソはニジェールの軍事政権に肩入れし、ECOWASの軍事介入を「自国への宣戦布告と見なす」とけん制した。周辺国が武力行使に二の足を踏む一因だ。
米政府はロシアやワグネルが今回の政変を「利用しようとしている」(ブリンケン国務長官)とみる。ワグネルは中央アフリカやスーダンに接近し、軍事支援の見返りに金などの資源権益を得てきたとされる。
ニジェールは世界のウラン生産の5%を占める。これまでフランスを中心に輸出してきたが、軍事政権がワグネルに接近し、同国のウランがロシアに流れる懸念もある。
米ブルッキングス研究所のバンダ・フェルバブ・ブラウン氏は「ワグネルのアフリカでの活動は、ロシアが影響を強め資源に近づくうえで非常に価値が高い」と指摘する。
既にニジェール軍事政権はフランスとの軍事協定破棄を表明した。米軍の駐留も難しくなる可能性がある。不安定なサヘル地域の「最後の砦(とりで)」(バズム氏)は風前の灯(ともしび)だ。
●市況
<為替> ドルが横ばい。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の発言を受け、一時は堅調に推移した。議長発言を受け、金利先物市場ではFRBが11月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを決定する確率がやや上昇した。
一方、ユーロとポンドは今週、企業活動の軟化を示す経済指標を受けて下落。投資家はユーロ圏と英国の追加利上げ見通しを後退させている。
円には依然として日本の当局による介入警戒感が根強い。ドル/円は0.31%高の146.28円だった。
<債券> 米債利回りが上昇した。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長がインフレを確実に抑制するために一段の利上げが必要となる可能性があるという認識を示したことを受けた。
CMEグループのフェドウオッチによると、パウエル議長の講演を受け、11月の利上げ確率が前日から上昇。一方、9月は利上げが見送られるとの見方が大勢となっている。
<米原油先物> 需給引き締まり観測を背景とした買いに続伸した。石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」は、 世界の石油市場の安定化を確保するため、現行の協調減産を当面維持する見通し。主導役のサウジアラビアは日量100万バレルの自主減産を9月も継続すると表明。さらに一部のアナリストは、サウジが10月も自主減産を延長すると予想している。需給逼迫(ひっぱく)への警戒感が根強く、原油買いが先行した。
ただ、買い一巡後は朝方の上げ幅を縮小。相場はいったん80ドル台を回復すると、利益確定や持ち高調整の売りに押され、マイナス圏に沈む場面もあった。西部ワイオミング州で開催中の「ジャクソンホール会議」で、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が午前に講演し、米国のインフレについて鈍化傾向を認めるものの、依然高過ぎるとの見解を改めて表明。この上で、「適切ならば利上げの用意がある」と強調したため、景気や原油需要の先行き懸念が再燃し、相場の重しとなった。
中南米金融市場では、域内通貨指数が序盤の下げから切り返し上昇に転じた。ドル高の失速を受けた。市場はワイオミング州で開催中の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でのパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の講演を見極めようとしている。
米ワイオミング州で開催中の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でのパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の講演を受け、金利先物市場ではFRBが11月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを決定する確率がやや上昇した。
レイモンド・ジェームズ(テネシー州メンフィス)の債券資本市場担当マネジング・ディレクター、エリス・ファイファー氏は「議長がハト派に希望の種を提供するつもりがないことは最初から明らかだった」と指摘。「インフレは冷え込んでおり、今後も冷え込むことが予想されるが、経済は労働市場とともにFRBの予想を上回るペースで推移している。FRBのより長期にわたりより高水準の政策金利を維持するとのスタンスは変わっていない」と述べた。
リフィニティブのフェドウォッチによると、11月のFOMCまたは12月のFOMCで0.25%ポイントの利上げが決定される確率は約53%と約52%。パウエル議長の講演前はそれぞれ42.7%、40.9%だった。
CMEのフェドウォッチによると、利上げ確率は11月のFOMCで約57%、12月のFOMCで約55%。1週間前はそれぞれ36.1%、31.7%だった。
日経先物31850、ダウ先34377、債先146.63、米4.231、独2.5545、仏3.082、西3.576、伊4.227、英4.4780、波5.698、原油80.05、銅8,367、ドル円146.46、ユーロドル1.0796
※8/25 NY引け値
備忘録(2023/8/24)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米資産運用大手ブラックロックは23日公表した報告書で、投資先企業の環境・社会問題に関する株主提案への支持が減少したことを明らかにした。理由として、企業のこうした問題への対応が進んだことや、株主提案が適切に策定されていない点を挙げた。
運用資産総額が9兆4000億ドル規模のブラックロックが世界各国の企業の年次株主総会でどのように投票するかは、多くの株主提案で鍵を握るだけに、その投票行動が注目を集めている。
報告書によると、今年6月30日までの1年間の年次株主総会でブラックロックは環境・社会問題に関する株主提案399件のうち7%を支持した。前年はこうした株主提案321件の22%、2年前は172件の47%を支持していた。
最新の報告書でブラックロックは、多くの株主提案は投資先企業の経営に資するものではないと指摘。「非常に多くの提案は行き過ぎた内容だったり、経済的な価値をもたらさなかったり、単に必要性がなかったりするため、長期的な株主価値の向上促進に資する公算は小さく、過去数年と比べて当社を含む株主からの支持が減少した」と説明した。
●その他産業
米ハワイ州マウイ島で発生した山火事を巡り、同島マウイ郡は24日、地元の電力会社ハワイアン・エレクトリックを州の裁判所に提訴した。強風で送電線が倒れて火災が発生する恐れがあるとの警告があったにもかかわらず、送電設備を停止せず、過失があったとしている。
郡は倒れた送電線が火災を引き起こしたと主張。ハワイアン・エレクトリックと子会社のマウイ・エレクトリックには送電線を安全に管理する義務があり、山火事発生前に米国立気象局(NWS)から危険な状況について警告されていたとした。
その上で、会社側が送電停止計画を実施していれば深刻かつ壊滅的な損失を容易に防ぐことができたとし、損害賠償を求めた。
ハワイアン・エレクトリックの株主も同日、山火事防止や安全手順に関する重要な情報を開示しなかったとして、サンフランシスコの連邦裁判所に同社を提訴した。
●決算関連
2023年5〜7月期決算は、売上高が前年同期比8%減の35億4800万ドル(約5170億円)だった。店舗の売上高は7%減った。生活必需品以外への支出を絞る米消費者の傾向が強まるなか、特に低所得層の買い控えで苦戦が続いている。
ブランド別では、主力の低価格ブランド「オールドネイビー」の全世界売上高が19億6100万ドルで6%減った。カジュアル衣料「GAP」も14%の減収だった。高価格帯の「バナナリパブリック」やスポーツウエアの「アスレタ」もそれぞれ部門売上高が減少した。
カトリーナ・オコネル最高財務責任者(CFO)は24日の決算説明会で、とりわけオールドネイビーは「(インフレなどの経済負担によって)低所得者層は圧迫されている。23年5〜7月期もその傾向が続いた」と説明した。
最終損益は1億1700万ドルの黒字(前年同期は4900万ドルの赤字)だった。売上原価が12%減ったことや、値引き率を縮小したことなどで採算が改善した。
23年8〜10月期の売上高は前年同期の約40億4000万ドルに対し、減少率が2桁台前半になると見通している。オコネルCFOは「米国で学生ローンの返済が迫っているため、(若い層が多い)オールドネイビーの顧客に影響を与えそうだ」と警戒感を示した。
●先進国、グローバル、金融市場
オーストラリア政府は24日、最新の「世代間報告書」を公表し、国内経済が高齢化を背景に今後40年で鈍化し、財政が圧迫され、国の借金が増えるとの見通しを示した。
提唱された改革案には税制改革は盛り込まれなかった。
報告書を発表したチャーマーズ財務相は、デジタル技術、気候変動、再生可能エネルギー、高齢化、高齢者介護の必要性が今後40年間の国内経済を形作ると指摘。現時点の政府の重要課題は、家庭の電気代の負担軽減など、生活費危機の緩和だと述べた。
炭化水素から再生可能エネルギーへの移行、情報技術(IT)から人工知能(AI)への移行、若年人口から高齢人口への移行、グローバル化から分断への移行を管理することが今後の課題になるとも指摘した。
報告書は、2063年までの年平均経済成長率を2.2%と予測。過去40年間の3.1%から低下するとの見通しを示した。
気候変動も景気減速の一因となる見通し。気温の上昇により40年間で1350億豪ドル(874億1000万ドル)─4230億豪ドルの経済活動が失われる可能性があるという。
借り入れに大きく依存し、不動産価格が下落しているという理由で、約1兆2000億ドル(約174兆円)相当の米商業用不動産(CRE)債権には潜在的に問題がある。CREサービスを提供するニューマーク・グループが分析した。
ニューマークの推計によれば、2025年末までに返済期限を迎えるリスク債権6260億ドル相当の半分以上をオフィス関連が占め、当面最大の問題になる。不動産分析会社グリーン・ストリートによると、米連邦準備制度が利上げを開始した昨年3月のピーク以降で、オフィスの価値は31%目減りした。
より高い金利で借り換えが必要な不動産オーナーのコスト負担も増し、デフォルト(債務不履行)増加の不安が高まっている。今年に入り貸し手によるオフィス物件の差し押さえやCREローンの支払い義務不履行に追い込まれた投資家には、ブラックストーンやブルックフィールド、ゴールドマン・サックス・グループが含まれる。
借り入れに過度に依存する不動産オーナーは、リターンを得る可能性が低下した物件に資金を投じるより支払いを停止する動機付けが働くことが多い。
ニューマークのリサーチ・グローバル責任者デービッド・ビットナー氏は「彼らには貸し手に鍵を返す十分なインセンティブが働くだろう。それがもっと多く起きていないことに驚く」とインタビューで語った。
同社の「潜在的に問題がある」という定義は、グリーン・ストリートなどの価格指数に基づき、債務が不動産時価評価額の80%以上の物件を指す。
ニューマークによれば、リスク債権を保有する割合は銀行が最も大きく、25年までに返済期限を迎える潜在的に問題のあるローン債権のうち3030億ドル相当を保有している。
ビットナー氏によると、より素早く損切りに動く不動産オーナーに比べ、手放さず嵐を乗り切ろうするオーナーは一層大きな打撃を受ける可能性が高い。「つけが回ってくることになろう」と同氏は指摘した。
イタリア政府は不良債権の処理について、借り手側を優遇する措置を年内に承認する方向で準備を進めている。メローニ首相は金利上昇に直面する家計や企業への支援を強化している。
事情に詳しい関係者が明らかにしたところによれば、メローニ政権は個人や中小企業による借り入れのうち、過去の年で未払いとなった分については額面価格に対し数分の一程度での返済を認める新たな枠組みをまとめたい考えだ。同関係者は方針が承認される前だとして匿名を条件に語った。
しかしこの新たな措置は、銀行への「超過利潤」課税に揺れる同国で金融機関や国際的な投資家をさらに動揺させる可能性がある。
ウルソ企業相はブルームバーグ・ニュースに対し、「われわれの目標はできるだけ多くの人や企業を不良債権から救い出し、古い借金を清算して仕事に復帰させることだ」と述べた。
この取引の鍵は、総額で約200億ドル(2兆9000億円)相当の金融商品が、廃止されたロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に連動していることだ。しかも、非常に古い商品であるため、LIBOR後の世界における利払いの処理方法が明確に規定されていない。
バークレイズやHSBCホールディングス、スタンダードチャータードなど一部の銀行は、既に償還要求に応じた。しかし、BNPパリバやロスチャイルドなどはまだ譲歩していない。
この戦略自体は新しいものではない。一部の運用会社は、金融危機後の規制変更で銀行がこうした債券で集めた資金を中核資本の一部に算入できなくなったことに着目。最終的には償還されると考え、永久ディスカウント債や優先株の保持を進めてきた。
この訴訟は、2014年にJPモルガンなどがミレニアム・ヘルスのためにアレンジしたシンジケート・ローンで、ローン債権を購入して損失を被った投資家の管財人が証券詐欺を主張して提起したもの。レバレッジドローンの取引が始まって間もなく、連邦当局の調査を受けていることが判明したミレニアムは調査を決着させるため破産申請を行った。
今回、もしレバレッジドローンが有価証券と判断されていれば、レバレッジドローン市場規制が大きく変わる可能性があった。有価証券であれば、借り手はさらなる開示や財務データの作成を義務付けられ、その後の取引は現在よりも迅速な決済を求められることになる。
●中国・アジア・ロシア・東欧
アジア開発銀行(ADB)は24日、新型コロナウイルス禍と生活費高騰により、アジアの途上地域で極度の貧困層が昨年時点で約6800万人増加したとする最新リポートを発表した。
1億5520万人(人口の3.9%)に上った。コロナ禍や生活費危機がなかった場合の推計を6780万人上回る。
ADBのチーフエコノミスト、アルバート・パーク氏は、「アジア太平洋地域はコロナ禍から着実に回復しているが、生活費高騰の危機で貧困撲滅への進展が阻まれている」と述べた。
中国は地方政府の資金調達事業体(LGFV)について、大規模な救済策を回避しながらリスクを軽減しようとしている。LGFVが発行した債券の市場規模は9兆ドル(約1300兆円)に上る。
習近平政権は危うさをはらむ戦略を進めつつある。世界最大のインフラブームをけん引してきた地方政府は、経済成長の足を極端に引っ張ることなく、支出を減らし、債務を再編する必要がある。失敗すれば、世界2位の経済大国を長期停滞に追い込みかねない。
このジレンマの中心となっているのが「融資平台」と呼ばれるLGFVで、中国全土に設立され省や市に代わって借り入れを行うが、その実態は不透明だ。習政権はこうしたLGFVを収益性の高いビジネスに変え、借入金の利払いに公的資金を充てずに済むようにしようとしている。
だが、幾つかのLGFVは、利息を支払うだけの収入を得ることができていない。ブルームバーグの取材に応じたあるLGFVの従業員によれば、銀行は融資に消極的で、投資家は債券を敬遠し、ボーナスはカットされ、実行可能な投資プロジェクトを見つけるのが難しくなっているという。
中央政府が救済を回避した場合、返済の負担は、地方政府もしくは金利の引き下げや債務の返済期限延長を求められる銀行に一段とのしかかることになる。どちらの選択肢も、景気を支える地方政府や銀行の能力を制限する。
中国本土社債市場の半分近くを占める2兆ドル相当のLGFV債でデフォルト(債務不履行)が生じれば、60兆ドル規模に上る中国の金融システムが揺らぎ、世界中に衝撃が走りかねないことから、投資家は懸念を強めている。
調査会社ロジウム・グループの中国市場リサーチディレクター、ローガン・ライト氏は、「今後2年間、中国の経済成長に影響を与える最も重要な変数は地方政府による債務再編の成否だ」と指摘。「地方政府が行った投資の破綻は、不動産市場の危機が経済に与える影響に匹敵するだろう」と述べた。
インドネシア中央銀行は24日、主要政策金利の7日物リバースレポ金利を予想通り5.75%に据え置いた。現行の金利水準でインフレ率を今年、目標レンジ内にとどめることが可能との見解を示した。
翌日物預金ファシリティー金利(FASBI)は5.00%に、貸出ファシリティー金利は6.50%にそれぞれ据え置いた。
据え置きは7回連続。中銀は通貨ルピアの安定を維持することが政策の主眼だと改めて表明した。
中銀は保有国債を裏付けとするルピア建ての新たな証券を発行する計画を公表した。会見したペリー・ワルジヨ総裁は新たなオペ(公開市場操作)の手段で、外国からの資金を金融市場へ呼び込む努力を支援すると説明した。
印中両軍は2020年6月、中国チベット自治区とインド北部ラダック地方の係争地を巡って衝突、24人の死者が出た。これ以降両国の関係は悪化している。
クワトラ氏によると、モディ氏は係争地の平和維持と実効支配線の尊重が不可欠だと強調した。モディ氏がこの問題を習氏に直接持ちかけたのはこれが初めて。
中国の新華社通信によると、習氏はモディ氏に対して、中印関係の改善は双方の利益であり、平和や安定、発展に寄与すると伝えた。
●中東
トルコ中央銀行は24日、政策金利を予想以上に引き上げた。メンバーが刷新された金融当局が50%近いインフレを抑制するためにより積極的に行動する意向であることが示された。発表後にリラは大幅高となった。
エルカン総裁率いる金融政策委員会(MPC)は、政策金利をを17.5%から25%に引き上げた。ブルームバーグの調査に答えたエコノミストの大半は20%への利上げを予想していた。
予想以上の利上げを受けてリラは上昇に転じ、ドルに対し2%余り上昇。銀行株の指数は6%近く上昇した。
MPCは声明で「ディスインフレ路線を早期に確立し、インフレ期待を安定させ、価格行動の悪化を抑制するため、金融引き締めプロセスを継続することを決定した」と説明した。
政策金利は依然、トルコの物価上昇率を大きく下回るが、5月に再選を果たしたエルドアン大統領がよりオーソドックスな政策を公約して以降は3会合連続で引き上げられている。
●中南米・アフリカ
アルゼンチンは、国際通貨基金(IMF)による金融支援を中国からの借入金返済に充てることを計画している。中国との通貨スワップ枠を通じた借り入れの一部だという。2人の関係者が23日明らかにした。
アルゼンチンは最近、2018年のIMF融資に関する2件の返済について、28億ドル相当の人民元で半分超を補い、デフォルト(債務不履行)を回避した。
関係者によると、アルゼンチンの純外貨準備高は80億ドル以上のマイナスで、7月に通貨スワップを通じて借り入れた17億ドルを今週にも中国人民銀行(中央銀行)に返済する見通し。
人民銀は09年にアルゼンチン中銀と通貨スワップ枠について合意した。同枠はその後、更新・拡大され現在は180億ドル強となっている。アルゼンチンはスワップ枠から借り入れた資金を輸入代金の支払いやIMFへの返済に充ててきた。
IMFは23日の理事会でアルゼンチンに対する75億ドルの金融支援を正式に承認した。
これによりアルゼンチンは中国に加えてラテンアメリカ開発銀行(CAF)に10億ドル、カタールに7億7500万ドル融資を返済する。
アルゼンチン中銀筋は「きょう受け取る資金はカタールとCAFに一部支払われ、(人民銀との)スワップライン利用分を引き下げることになる」と述べた。カタールにはIMFの特別引き出し権(SDR)で、中国には人民元で支払われ、CAFにはドルで返済されるだろうと説明した。
●市況<債券> 米債利回りが上昇した。米新規失業保険申請件数がなお力強い労働市場を示唆し、金利先高感につながった。
8月19日までの1週間の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は23万件と前週から1万件減少した。ロイターがまとめた市場予想は24万件だった。
7月の耐久財受注統計によると、設備投資の先行指標となる航空機を除く非国防資本財(コア資本財)受注は0.1%増加した。
アメリプライズ・ファイナンシャルのチーフ市場ストラテジスト、アンソニー・サグリンビーン氏はジャクソンホール会議について「インフレ率を2%の目標に近づけるためにもう少し利上げをする必要があるとパウエル議長が改めて強調する機会になるだろう」と述べた。
米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は24日、FRBが年内に追加利上げを実施する必要があるとは想定していないという認識を示した。ただ、FRBがいつ利下げに着手できるかを予測する準備は出来ていないとした。
エバーコアISI(ニューヨーク)のエコノミスト兼ストラテジスト、スタン・シプリー氏は「FRBはいつかの時点で利上げ停止を望んでいるのだろうが、経済成長の軟化などを確認する必要がある」と指摘。「5%を上回る2年債利回りはFRBが利上げを一時停止したとしても、来年に大きく利下げすることはないとの見方を示唆している」と述べた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが上昇。米ワイオミング州で開かれるカンザスシティ連銀主催のシンポジウム(ジャクソンホール会議)への警戒感から、慎重な取引となっている。
利回りは前日、欧州各国の低調な経済指標を受けて欧州中央銀行(ECB)が9月の利上げを見送るとの見方が強まり、急低下していた。
ジャクソンホール会議では、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が25日に行う講演に注目が集まる。同日には欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁の講演も予定されている。
ECBの次の動きについて、市場の見方はまちまちだが、モルガン・スタンレーのエコノミスト、ガブリエラ・シロバ氏は「ECBが9月に利上げを実施するかどうかは来週発表のインフレ指標にかかっている」とし、「9月利上げへの道筋は明らかに狭まっている」と述べた。
日経先物31805、ダウ先34186、債先146.64、米4.236、独2.5255、仏3.051、西3.549、伊4.175、英4.4695、波5.605、原油78.94、銅8,351、ドル円146.01、ユーロドル1.0799
※8/25 9時25分頃
備忘録(2023/8/22)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
欧米の気候学者らによる国際研究チーム「ワールド・ウェザー・アトリビューション」は23日、気候変動によって今年カナダ東部で発生した規模の山火事が起きる可能性が19世紀後半より2倍以上に高まったとする報告書を公表した。
研究チームはカナダの山火事について、気温、風速、湿度、降水量を組み合わせて気候変動の影響を分析した。研究者の一人は雪解けが早く進み、森林の乾燥が延焼につながったと結論づけた。化石燃料の使用増加も要因だと指摘した。
報告書は「地球が温暖化し続ければ山火事のリスクはさらに高まる」と言及した。健康リスクにも触れて「危険な大気質のリスクについて市民がもっと認識することが重要だ」と警鐘を鳴らした。
米地銀危機が和らぐと、ング氏は図らずも、カリフォルニア州で生き残った州認可の銀行で最大規模の銀行のトップになっていた。パサデナに本社を置くイースト・ウエスト・バンコープの預金残高は、競合銀行が破綻して数カ月間で2%、金額にして9億2140万ドル(約1330億円)増加した。総資産は685億ドルで、カリフォルニア州が認可した銀行の中で唯一、500億ドルを超える資産を抱える銀行となった。この水準を上回ると、州当局による監視が強まる。
ング氏(64)はインタビューで、自行が成長したというよりは「他行が去ったか、破綻しただけだ」と語った。インタビューの直後にはやはりカリフォルニア州のパックウエスト・バンコープがより規模が小さい競合のバンク・オブ・カリフォルニアに救済合併されることで合意した。
イースト・ウエストは1973年、中国系移民向けの小規模な貯蓄金融機関として創業。30年にわたるング氏の指揮下で米中間の商取引をつなぐ橋渡し役に成長した。一方、カリフォルニア州の銀行の相次ぐ破綻は、米国で最も人口の多い同州で資本や金融サービスへのアクセスを必要とする企業の選択肢を狭めている。
ウェルズ・ファーゴのアナリスト、ジャレッド・ショー氏は、地銀破綻による混乱を経て、イースト・ウエストは成長への下地を十分に整えていると指摘する。力強い流動性と自己資本を備えており、資産1000億ドル超の銀行に適用される厳格な自己資本規制の対象になっても打撃を受けないとの見方を示した。ショー氏は同行の投資判断を買いに相当する「オーバーウエート」としている。
ング氏は、SVBやファースト・リパブリックなどが撤退した新規分野にイースト・ウエストが進出する「好機」だとの認識を示した。
●その他産業
米鉄鋼加工・流通会社エスマークは23日、米鉄鋼メーカーのUSスチールを買収しない意向を表明した。全米鉄鋼労組(USW)がクリーブランド・クリフスによるUSスチール買収提案を支持したことを理由に挙げた。
米国の代表的なカジュアル衣料ブランド、アバクロンビー・アンド・フィッチが復活の兆しを見せている。「時代遅れ」「差別的」といったイメージが定着し、長く苦戦を強いられていたが、中価格帯路線にかじを切ったことで業績が急回復している。オフィスやフォーマル向けの品ぞろえを増やし、若者が主体だった顧客層を30〜40歳代にも広げる戦略が功を奏した。
「私たちはもはや、ジーンズとTシャツだけのブランドではない」。フラン・ホロビッツ最高経営責任者(CEO)は23日の決算説明会で強調した。「それぞれ(多様な客層)の生活様式にあった服を提供できている」とし、比較的金銭に余裕のある20代後半から40代前半のミレニアル世代の取り込みが進んでいると述べた。
これまで高校生から大学生を主要客としていたアバクロンビー&フィッチは、社会人向けのコレクションを大幅に増やしている。仕事場や冠婚葬祭でも使えるドレスラインを拡充し、従来より高い年齢層の客足が伸びた。
動画投稿アプリ「TikTok」などを通じて人気商品の認知度を高める販売手法も貢献した。23年の秋冬シーズンにかけても、デジタル戦略を強化していくという。在庫水準が30%減少し、全体の採算も改善した。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
米商務省が23日発表した7月の新築一戸建て住宅販売件数(季節調整済み、年率換算)は前月の改定値に比べ4.4%増の71万4000戸だった。2022年2月以来、1年5カ月ぶりの高水準となった。住宅ローン金利の高騰を受けた中古の在庫不足が新築需要を押し上げており、前年同月からは31.5%増えた。
金利や価格の高止まりが続くなか、購入者を誘致するために多くの建設業者が販売奨励金(インセンティブ)などを提供したことも新築需要の拡大につながっているとみられる。全米住宅建設業協会(NAHB)が建設業者や販売企業を対象に実施した調査によると、8月には55%の事業者が金利負担や値下げといった販売促進策を講じた。
NAHBは「中古の在庫不足がローン金利と建築費の上昇による影響を相殺した」と指摘した。記録的な在庫低迷により、相対的に需要が供給を上回っている状態が続いているとの見方が強い。一方でNAHBは、足元での急速なローン金利の上昇が再び購入希望者の重荷となり、8月は新築販売件数が弱含みで推移すると予想する。
8月の米国購買担当者景気指数(PMI、速報値)は総合が50.4と前月比1.6ポイント低下した。6カ月ぶりの低水準で、好不況の節目である50に再び近づいている。金利上昇や根強いインフレを背景に製造業、サービス業ともに景況感が悪化した。
製造業の指数は前月比2.0ポイント低下して47.0で、4カ月連続で50を下回った。サービス業は1.3ポイント低下し51.0となった。
新規受注の動向を示す指数は低下に転じ、需要低迷を示した。サービス業で金利の上昇やインフレ圧力の高まりで顧客が消費を控える動きがみられたという。米国の長期金利は21日に約16年ぶりの高水準を付け、7月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比伸び率は13カ月ぶりに加速した。
燃料や原材料価格の上昇もあり、製造業・サービス業ともにコスト負担が再び高まった。鈍い需要のもと価格転嫁は緩やかで、利益圧迫要因になっている。
S&Pグローバルのエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「(調査対象の)企業は、物価高や金利上昇により需要が徐々に活発でなくなっていると報告している」と説明し、「失速気味の指標は、米経済の力強さに対する疑念を生じさせる」と指摘した。
世界鉄鋼協会は23日までに、7月の世界粗鋼生産量(速報値、対象は63カ国・地域)が前年同月比6.6%増の1億5850万トンだったと発表した。プラスは2カ月連続。最大生産国の中国で生産量が伸びた。
中国の生産量は前年同月比11.5%増の9080万トンだった。不動産市況の回復遅れで足元の鋼材需要は強くないものの、鋼材市況の低迷で前年に中国の鉄鋼メーカーが減産した反動で大幅なプラスとなったとみられる。
2位のインドはインフラ投資などが堅調で、14.3%増の1150万トン。日本は0.9%増の740万トンと、19カ月ぶりのプラスとなった。半導体不足の改善で自動車の生産台数が回復し、自動車向けの鋼材需要が伸びた。
橋本氏は23日のインタビューで、日銀当座預金の3層構造というマイナス金利政策の枠組みを残しながら、残高の比率や金利を微修正することで「マイナス金利政策を実質的に解除することは日銀にとって造作のないこと。いつでも起きる可能性がある」と述べた。
橋本氏は7月のYCC修正について、日銀は長期金利が1%まで上昇しないと見込んだ上で、万一の保険としてその水準を上限とする枠組みは残したが、実質的なYCCの撤廃だと指摘。物価は世界的な景気後退や国際商品価格の急落がない限り、米欧と同様徐々にしか下がらず、今後も金融政策の正常化が進むと読む。
橋本氏は、いつでもマイナス金利に戻せるように3層構造を残しつつ、残高や金利の比率をいじるだけで無担保コール翌日物金利をゼロ%か小幅プラスに持って行くのは「マイナーチェンジであり、それほど難しくないのではないか」と語る。経済への影響も、個人の住宅ローンの変動金利が多少上がるだけでほとんどないと指摘する。
橋本氏が次に想定するのは、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するオーバーシュート・コミットメントの撤廃だ。
日銀は7月の政策修正後に臨時の国債買い入れを行ったが、為替は直後に円安に振れた。買い入れを増やすとさらに円安になる可能性があり、「オーバーシュート・コミットメントがチャレンジされている」と橋本氏。生鮮食品を除くコアCPI上昇率は既に1年以上2%を上回り、今後も当面2%超を維持するとみられ、「コミットメントは実質的に達成しているため撤廃はあり得る」とみる。
仮に日銀が国債の買い入れを減らしても10年債はほとんど日銀が保有しており、国内勢の円債回帰も見込まれ、長期金利は0.7~0.8%で徐々に安定すると予想。「10年あたりのアンダーウエートは賞味期限が切れた」と言う。一方で、マイナス金利解除はいつでもあり得るため、長期金利より中短期金利の方が上昇する可能性が高いとみている。
異常気象とウクライナでの戦争、保護主義の台頭が食料品価格を押し上げる中、7-9月(第3四半期)の農業関連株は世界全体の指数を上回るパフォーマンスを示している。農業セクターへのエクスポージャーは良いインフレヘッジになると指摘する投資家もいる。
ブルームバーグがまとめたデータによると、MSCI・ACWIセレクト・アグリカルチャー・プロデューサーズIMIネット・トータル・リターン・インデックスは7月初めから、より広範なMSCIワールド指数を3ポイント程度アウトパフォームしている(8月18日終了週時点)。国連食糧農業機関(FAO)の食料価格指数が7月に1年4カ月ぶりの大幅上昇率となる中で、アウトパフォーム傾向が見られている。
ユニオン・バンケール・プリヴェの脱炭素化投資スペシャリスト、マーク・エリオット氏(ジュネーブ在勤)は、通常石油セクターに行うように、保険という形で、食品関連株にもある程度エクスポージャーを持つことを勧めており、「農業関連銘柄への投資は恐らく、気候変動と地政学的リスクをヘッジする良い方法だろう」と語る。
食品価格上昇の背景には、欧州と中国の大雨、タイの干ばつ、ロシアがウクライナ産穀物の黒海経由の輸出合意打ち切りを決定したこと、さらにはインドがコメの輸出を一部禁止したことなどがある。
世界経済フォーラム(WEF)が1月に発表した「グローバルリスク報告書2023」によれば、食料供給危機は今年世界が直面する脅威トップ4の一つだ。
サクソバンクの株式戦略責任者ピーター・ガーンリー氏(コペンハーゲン在勤)は「天候パターンが一段と不安定になりつつあるため、食品価格は過去数十年よりも速いペースで上昇が続く」との予想を示し、業界を巡る見通しは依然良好で、買収の動きが加速する可能性もあると指摘した。
ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズは、食料インフレで特に農業機械などの農業資材を生産する企業が恩恵を受けるとみる。ニューフードシステム担当ファンドマネジャー、コナー・ウォルシュ氏(ロンドン在勤)は、農家は勝ち組で設備機器の刷新に熱心だとし、農業機械の「ディアやAGCO、CNHインダストリアルなどはすべて、こうした環境で有利な立場にある」と分析した。
また、より長期的なトレンドも業界にプラスに働いているとして、「2050年までに世界の人口が100億人に達すると予想される中、持続可能な方法で需要増に対応する方法を見つける必要がある。株式市場では、食料をより効率的かつ持続的に生産することを目的とした分野に早くも成長の兆しが見え始めている」と語った。
BNPパリバ・アセット・マネジメントは、これまでのところ価格上昇分を顧客にうまく転嫁しているとして、食料生産・取引関連銘柄を選好する。
同社の大中華圏・アジア株投資スペシャリスト、ミンユエ・リウ氏(香港在勤)は、特にアジアの生産者が「原材料価格の上昇から恩恵を受けるはずだ」と語る。ただ同時に投資家は、政府が価格の抑制に乗り出す可能性があることにも注意する必要があると同氏は指摘した。
世界最大のコメ輸出国であるインドは、国内供給の安定確保を目指し、7月にコメの輸出を部分的に禁止。その結果、インド国外でのコメの価格が上昇し、世界の食料市場で緊張が高まった。市場関係者らは次の輸出規制対象は砂糖ではないかと懸念している。
他に、食料インフレから利益を得る可能性があるのはスーパーマーケットやディスカウント店だとジャナス・ヘンダーソン・インベスターズは分析する。
同社ファンドマネジャーのスティーブン・ペイン氏(ロンドン在勤)は「買い物客は限られた予算を最大限に活用する必要から、より安い品を選ぶ動きが顕著になっている」と指摘。スーパーマーケットやプライベートブランドメーカー、ディスカウント店は「ブランド品よりも自社ブランド品の方が利幅が大きい」と同氏は語った。
S&Pグローバルが23日発表した8月のユーロ圏HCOB総合購買担当者指数(PMI)速報値は47と、拡大と縮小の境目を示す50をさらに大きく下回り、ブルームバーグの調査に答えた全てのエコノミストの予想も下回った。サービスセクターの縮小は昨年末以来。市場予想では拡大が見込まれていた。
国別ではドイツが特に低迷し、総合PMIは新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が深刻だった2020年5月以来の低水準となった。
HCOB(ハンブルク商業銀行)のチーフエコノミスト、サイラス・デラルビア氏は、「ユーロ圏のサービスセクターは残念ながら、低迷する製造業に合わせるように不振の兆候を示している」と述べ、「サービス企業は昨年末以降で初めて活動の縮小を報告し、製造業の生産は再び落ち込んだ」と続けた。
同氏は統計内容から7-9月(第3四半期)のユーロ圏経済は0.2%の縮小が示唆されると指摘した。4-6月期は0.3%の拡大だった。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国不動産大手の遠洋集団控股は22日、資金繰りの悪化により人民元債の償還が困難になり、債権者に期限の延長などを提案すると発表した。不動産不況で業績は悪化しており、債務不履行(デフォルト)の懸念が強まっている。
●中東
●中南米・アフリカ
国際通貨基金(IMF)は23日開いた理事会で、南米アルゼンチン向けに、借り換え融資の75億ドル(1兆900億円)の払い込みを正式に承認した。同国では干ばつや通貨安で経済情勢が悪化するなか、IMFは引き続き再建を支援する考えだ。
●市況ドル指数が下落した。米企業活動が停滞に近づいていることを示す経済指標を受けた。
米S&Pグローバルが23日発表した8月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は50.4と2月以来、6カ月ぶりの低水準となった。今年7月は52だった。
国債利回りが大幅低下した。欧米の企業活動を示す指標が世界的なディスインフレを示唆したことを受けた。
米S&Pグローバルが23日発表した8月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は50.4と2月以来、6カ月ぶりの低水準となった。
独、英でもPMIは軟調だった。
米10年国債利回りは13.6ベーシスポイント(bp)低下し4.192%となった。週初には4.366%を付けていた。PMI発表前、10年債利回りは今月に入って40bp近く上昇していた。
<米原油先物> 欧米の経済指標悪化などを嫌気した売りが広がり、下落した。この日に中心限月となった米国産標準油種WTIの10月物清算値(終値に相当)は、前日比0.75ドル(0.94%)安の1バレル=78.89ドル。11月物は0.76ドル安の78.59ドル。
中南米金融市場では、ブラジルレアルが対ドルで2週間ぶりの高値を付けた。ブラジルの下院で公的債務の急増防止に向けた政府の新たな財政規則法案が可決されたことを受けた。ルラ大統領による正式な承認を得て成立する。
一方、国際通貨基金(IMF)による75億ドルの金融支援を受けるアルゼンチンでは通貨ペソの非公式レートが1ドル=725ペソで推移。先週には1ドル=785ペソと最安値を付けていた。主要株価指数のS&Pメルバル指数は3%上昇した。
ロシュが3.8%上がり、肺がん治療薬の治験データの暫定解析結果が良かったことが材料視された。デンマークの製薬会社ノボノルディスクも2.7%上げた。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが急低下した。欧州各国の低調な経済指標を受け、欧州中央銀行(ECB)が9月の利上げを見送るとの見方が強まった。
市場では、ECBが9月に0.25%ポイントの利上げを決定する確率を約40%と想定。前日は50%超だった。
S&Pグローバルがまとめた8月のドイツのHCOB総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は44.7と、2020年5月以来の低水準となった。
また、S&Pグローバル/CIPSが23日発表した8月の英総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は47.9と、新型コロナウイルス禍の2021年1月以来の低水準となり、経済成長率が第3・四半期にマイナスに転じる可能性を示した。
ドイツ10年債利回りは一時13.5ベーシスポイント(bp)低下の2.519%と8月10日以来の低水準を付けた。
欧州連合(EU)統計局が23日発表した8月のユーロ圏消費者信頼感指数(速報値)はマイナス16.0と、前月のマイナス15.1から0.9ポイント低下した。
英国債利回りもイールドカーブ(利回り曲線)全体にわたり10bp以上低下した。
JPモルガンは23日、ECBは9月に引き締めサイクルを一時停止するとの見通しを示した。ユーロ圏の企業活動が予想を大幅に下回り、ユーロ圏経済への低迷深化が示唆されているためという。その上で、従来予想通り10月に最後の0.25%ポイントの利上げを決定すると見込んだ。
日経先物32107、ダウ先34528、債先146.67、米4.201、独2.4995、仏3.024、西3.522、伊4.150、英4.5230、波5.640、原油78.56、銅8,451、ドル円144.78、ユーロドル1.0865
※8/23 9時05分頃
備忘録(2023/8/22)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
ソフトバンクGはアーム・チャイナの約48%を所有しているが、アームチャイナの大半は、20年に利益相反の疑いで解任された同社の元最高経営責任者(CEO)、アレン・ウー(呉雄昴)氏の関連団体を含む地元の投資家が保有している。長期化する権力闘争は、依然として指導者交代のリスクを残しており、地域事業運営に影響を及ぼすとアームは述べた。
目論見書では、「当社は中国市場にアクセスするためにアーム・チャイナとの商業的関係に依存している」とし、「その商業的関係が存在しなくなるか、悪化した場合、中国市場で競争する当社の能力は、重大かつ悪い影響を受ける可能性がある」との見方が示されている。
より直接的なところでは、世界最大のスマートフォン市場で製造の中心地でもある中国の景気が減速していること、そして、米国とその同盟国が中国による最先端技術へのアクセスを制限する措置をとっていることが、売り上げを圧迫している。アームは、中国で低性能チップのアーキテクチャを販売せざるを得なくなったという。
アームの中国におけるロイヤルティー収入の伸びは昨年度鈍化しており、同社はロイヤルティー収入とライセンス収入が今後さらに打撃を受ける可能性があると警告している。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マービン・ロー氏とクリス・マッケンシュトゥルム氏によると、アーム・チャイナとの「不安定な関係」は、将来の利益に対するリスクになるという。
両氏はリポートで、「ソフトバンクGがアームのIPOのために提出した書類から、アームが米中技術戦争や業界のスマートフォンチップの在庫調整に対して非常に脆弱(ぜいじゃく)であることが明らかになった。「23年度の売上高の24%に貢献したアームのトップクライアントであるアーム・チャイナとの商業的関係が崩れる可能性がある」と指摘している。
アームの最大の顧客には米アップルが含まれるが、アップルは毎年収入の20%近くを中国に依存しており、同社の主要ハードウエア製品群はすべてアームベースのプロセッサーを搭載している。大手モバイルチップメーカーのクアルコムと聯発科技(メディアテック)は、アームの設計で製造されたチップの大部分を中国のスマートフォンメーカーに販売している。
アームは、売り上げの大半を一握りの企業に依存している。提出書類によると、アーム・チャイナを含む5つの事業体が合計でアームの23年3月期総収入の57%を占めた。
●決算関連
メーシーズの名を冠したブランドの5-7月(第2四半期)の既存店売上高は9.2%減、高級ブランドのブルーミングデールズは2.7%減、ブルーマーキュリーは5.8%増だった。メーシーズでは、アクティブウエア、カジュアルウエア、スリープウエアなどのカテゴリーが引き続き苦戦した。美容用品および化粧品は3ブランドとも好調だった。
メーシーズのジェフ・ジェネット最高経営責任者(CEO)は発表文で、季節商品を一掃するため、販売促進策を「外科的に実施した」と説明。「マクロ経済環境は引き続き不透明だ」と述べた。
2023年5〜7月期決算は、最終損益が2200万ドル(約32億円)の赤字(前年同期は2億7500万ドルの黒字)だった。主力の百貨店で売り上げが伸び悩む中、在庫圧縮のため進めた大幅な値引きが収益の重荷となった。
売上高は前年同期比8%減の51億3000万ドルだった。全体の既存店売上高は8%減。売上高総利益率は38.1%で、前年同期の38.9%から低下した。
事業別の内訳を見ると、中核の百貨店チェーン「メーシーズ」の既存店売上高が前年同期比8%減、オンライン販売も1割減と落ち込んだ。季節物の衣料品などが伸び悩んだ。高級百貨店「ブルーミングデールズ」は約3%減。化粧品専門チェーン「ブルーマーキュリー」は6%増だった。化粧品や仕事着は需要が底堅かった。
ジェフ・ジェネット最高経営責任者(CEO)は先行きについて「引き続き不透明なマクロ経済環境が続く」との見方を示した。同社は6月以降、顧客向けに発行するクレジットカードの支払延滞が予想を上回るペースで増え始めたと説明。顧客の購買余力を「慎重に見ている」と警戒を示した。
シンガポール・テレコム(シングテル)が21日発表した2023年4〜6月期決算は、純利益が4億8300万シンガポールドル(約520億円)と、前年同期から23.1%減った。出資先の為替差損などによる特別損失が響いた。
●先進国、グローバル、金融市場
S&Pは2015年に日本国債の格付けを「A+」に引き下げて以降、格付けを維持している。タン氏は21日のインタビューで「今後1、2年で格付けが変わるとはみていない。格付けの見通しも安定的になっている」と述べた。
一方、7月の日銀の政策修正は「金融政策の正常化の第一歩であり、その道のりは長く、多くの変化を伴うだろう」と指摘。日銀が金融市場や経済にショックを与えず、ボラティリティーを高めないやり方で正常化を行えば、大きな格下げ圧力にはならないが、そうでなければ格付けにも影響すると語った。
タン氏によると、現在が過去と異なるのは「日本でも物価が上昇し始めており、誰もデフレに逆戻りするとは考えてないことだ」と言う。日銀はどこかの時点で金融政策を正常化すべきであり、金利はもっと上がるべきだし、日銀は国債の購入を減らすべきだと多くの人たちが思い始めているとも話した。
日銀が長期間にわたり金利を抑制し、大量の国債を購入し続けたことで多くの人はそれが普通のことだと認識しており、急激に金利を引き上げて国債の買い入れを減らすと経済に大きなショックを与え、「日本国債の格下げが現実になるリスクがある」とタン氏は指摘。一方で、日銀の政策を市場が受け入れ、安定を維持すれば、格付けには影響しないと述べた。
タン氏は昨年11月のインタビューで、日本国債の格付け変更を判断する上で「日本銀行が恐らく最重要ファクターだ」との認識を示していた。
新たな契約内容には正社員とパートタイム従業員の賃上げや、従業員間の賃金格差の是正などを盛り込んだ。2024年1月以降に購入する配送トラックにエアコンを設置するなど労働環境も改善させる。
組合によると、会社側は最終交渉で300億ドルを拠出することを新たに提示した。パートタイム従業員の最低時給は現在の15.5ドル(約2250円)から即座に21ドルと3割強上がる。さらに、現在働いている正社員とパートタイム従業員の時給は5年間の契約期間中に7.5ドル上昇する。
パートタイムからの登用を含め正社員を7500人増やすことでも合意した。米紙ワシントン・ポストによると、労使交渉を受けてUPSが増やす正社員数としては過去数十年間で最大規模になる。
暗号資産(仮想通貨)は特に新興国において金融上の課題を素早く簡単に解決してくれるとの幻想を広げているが、今のところこうした地域で逆にリスクを増幅させている――。国際決済銀行(BIS)は最新のリポートでこう指摘した。
リポートは、将来的に暗号資産と伝統的な金融市場の統合がさらに進んだ場合に起きる事態に目を向けており、金融安定リスクを重視するには、暗号資産も他の資産と同じようにリスクと規制の観点で評価が必要だとの見方を示した。
各国当局に対してリポートは、市場を効果的に監視するために必要なデータの定義付けで協力が可能であり、金融機関や中核的な市場インフラとの重要な接点の特定に力を入れるべきだと提言している。
ただこうした取り組みには情報開示の要素が不可欠なのに対して、暗号資産に資金が流入する大きな理由となっている匿名性との矛盾が生じると問題点を挙げた。
また暗号資産市場がオフショアで匿名性を備えていることから、全面的に取引を禁止しても、実効性は担保できないかもしれないとしている。
対象となるのは現役と元の大学生・大学院生で、一定の所得以下の人は返済が全額免除されるほか、それ以外の人の毎月の返済額や未払い利息負担も軽減される。
今回の措置に基づくと、毎月の返済がゼロになる対象者は約100万人。返済軽減対象者の場合は、毎月の返済額が可処分所得の10%から5%に下がる。
バイデン政権が昨年打ち出した最大4300万人に対する総額4300億ドルの学費ローン返済免除策は、連邦最高裁によって行政権の過剰行使を理由に無効と判断されている。
ホワイトハウスは「われわれはできるだけ多くの人々の学費債務救済を速やかに実行するため別の道筋を模索し続けている」と述べた。
7月の米中古住宅販売戸数(季節調整済み)は年率換算で前月比2.2%減の407万戸だった。1月以来、6カ月ぶりの低水準となった。ロイターがまとめた市場予想は415万戸だった。6月の販売戸数は416万戸だった。
7月に前年同月比では16.6%減った。中古住宅は米住宅市場の大きな部分を占めている。
7月の中古住宅価格の中央値は前年同月比1.9%上昇の40万6700ドルとなり、上昇したのは1月以来6カ月ぶり。40万ドルを超えたのは集計開始後で4回目。
低い金利で住宅ローンを組んだ住宅所有者が高水準となっているローン利用による住宅の買い換えを控えているのを背景に、中古住宅市場は在庫が限られている。
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、住宅ローン金利は最近再び急上昇し、過去数十年で最も高い水準に達している。期間30年の住宅ローン固定金利の平均は直近の週で7%を超えた。
7月に市場に出ていた中古住宅は111万戸と前月比3.7%増えたものの、前年同月比は14.6%減った。
●中国・アジア・ロシア・東欧
17年間海外亡命生活を送っていたタイのタクシン元首相(74)が22日、帰国した。タイではこの日議会で首相指名投票が行われ、タクシン派であるタイ貢献党のセター・タビシン氏を首相に選出した。
タクシン氏は2008年に権力乱用などの罪による実刑判決を逃れるため海外に逃亡した。
タクシン氏はバンコクのドンムアン空港のプライベートジェット用ターミナルに家族と共に現れ、数百人の支持者に手を振った。
警察筋によると、タクシン氏は身柄を拘束され、裁判所で審問を受けた後に収監される見通し。最高裁判所の声明によると、計8年の刑期に服することになる。
5月の総選挙で第2党となったタイ貢献党は21日、親軍派を含む11政党から成る連立を結成。22日に行われた上下両院での首相選では元実業家のセター氏が過半数を獲得した。
タイ貢献党が長年敵対関係にあった軍と手を結んだ際に、タクシン氏の安全な帰国を保証する密約や恩赦の憶測が浮上している。
議会での採決を前にセター氏はタクシン氏の帰国を祝福し、家族の元に帰ることほど「大きな幸せ」はないと語った。
カンボジアで22日、長らく首相職を務めたフン・セン氏(71)の長男フン・マネット氏(45)が首相に就任した。首相交代は38年ぶり。フン・セン氏は与党カンボジア人民党の党首に残り、新政権にも一族や側近が目立つ。国際社会には政権交代後もフン・セン氏による「院政」が続くとの懸念が広がる。
経営再建中の不動産大手、中国恒大集団は21日、内部統制の問題点と改善状況について公表した。恒大は香港取引所に上場しているが、財務情報を規定通り公表できないことなどから、株式は売買停止となった。取引の再開には内部統制の改善も求められている。
コンサルティング会社が恒大の内部統制上の問題点を洗い出し、恒大が改善策を示した。例えば、内部統制の環境については「従業員や経営陣、取締役が利益衝突した際の報告制度がない」といった指摘があった。恒大は、利益衝突が起きる可能性について人事部門が毎年調査するといった制度を整えたとした。
このほか関連法規の順守状況を監視する方針や仕組みがないとの指摘があった。非中核事業でのプロジェクト管理体制の不備なども問題点として挙げられた。
韓国銀行(中央銀行)が22日に発表した6月末時点の家計債務残高は1862兆8000億ウォン(1兆3900億ドル)となり、第1・四半期から0.5%増加した。住宅ローン需要の拡大に伴い過去1年半でも最も速いペースで拡大した。
これを受け、政府・中央銀行は家計債務を管理する対策を講じる方針を示した。
中銀の李昌ヨン総裁は国会で、家計債務を管理するためミクロ・マクロ両面の対策を講じると表明。増加傾向が続けば問題になると述べた。
秋慶鎬・企画財政相も、債務を管理する厳格な政策を継続すると述べた。
中国浙江省の省都、杭州の郊外にある古びた小さな寺院からは、膨大な数の電気自動車(EV)が雑草やゴミの中に放置されている光景が一面に見渡せる。それはまるでEVの墓場のようだ。
中国国内の少なくとも6都市に、不要になったバッテリー駆動車の似たような集積地がある。杭州のそうした場所には、トランクから植物が生えるほど長い間放置された車もあれば、ダッシュボードの上にふわふわのおもちゃが置かれたままになっている車もある。
今回のEVの大量廃棄は、車両を所有していた配車サービス会社が経営破綻したか、より優れた機能とより長い走行距離を備えた新しいEVが各社から次々と発売され、時代遅れになりかけた車が増えたことが原因とみられる。急成長中の産業に資本が集中した際に起こり得る過剰生産と大量廃棄の顕著な例で、ここ数年の電気輸送の劇的な進歩を表す奇妙な記念碑でもあるかもしれない。
EVの墓場はそうした再編の負の遺産だ。単に見苦しいだけでなく、EVが生産時に温暖化ガスを大量に排出し、内燃機関車に対する優位性が生じるには数年かかることを考えれば、すぐに廃棄されれば気候変動面のメリットが少なくなる。また、各車両の使用済みバッテリーにはニッケルやリチウム、コバルトなどの希少金属が含まれており、これらの金属をリサイクルすることで中国のEV産業をより環境に優しいものにできるはずだ。
地元メディアの報道によると、杭州市政府は19年に増え始めた廃棄車両を処分すると表明している。しかし、ブルームバーグ・ニュースの記者が先月末に同市を訪れた際に衛星画像を精査した結果、市内の余杭地区と西湖地区に放置されたEVで埋め尽くされた場所が数カ所見つかった。
華安証券のリポートによると、1年未満に満期を迎える新発債の注文は今月これまでに発行額の4.6倍と、過去最高となるペース。満期まで1-2年の債券では、申し込み倍率は3.9倍で、約1年ぶりの高水準。
「AA」格付け債の倍率は今月7.9倍に上り、「AAA」格付け債では4.3倍で、華安証券によると、いずれも記録的高水準になるペースだという。
LGFVはインフラプロジェクトの資金調達のために設立されたが、その債務をカバーするのに十分なリターンを生み出すことはほとんどなく、債務を巡る懸念は強まっている。不動産危機の中で中国経済が減速する中、債務の増加やキャッシュフローの問題が懸念に拍車を掛けている。
しかし、7月下旬に開かれた中国共産党の中央政治局会議では、政策担当者が地方政府の特別債の発行と利用を加速させる方針を表明。省レベルの地方政府が債券発行を通じて約1兆元(約20兆円)を調達し、LGFVやその他のバランスシート外の発行体による債務の返済に充てることを容認するとブルームバーグ・ニュースは今月報じている。
来年3月の次期大統領選で再選を目指すプーチン氏にとって、物価高騰による国民の生活水準低下は大きな逆風になりかねない。昨年2桁の伸びだったロシアの物価上昇率は今年春にいったん落ち着いたものの、なお中央銀行が目標とする4%を上回り、足元でじわじわと高まってきている。
アジアのコメ価格は今月、約15年ぶりの高値に上昇。インドが一部白米の輸出を禁じたほか、タイの生産見通しを巡り懸念が広がった。
インドのモディ政権は来年の総選挙を控え、国内の食品価格を抑制する取り組みを強めている。
●中東
●中南米・アフリカ
中米議会は、地域統合を目指す「中米統合機構(SICA)」の機関で、機構に勧告するなどの役割がある。同議会に参加する6カ国はかつて、すべて台湾と外交関係を持っていた。しかし、台湾の孤立化を図る中国の切り崩しで、2017年以降、グアテマラを除く5カ国が相次いで中国との国交樹立に踏み切り、今では親中国家が多数を占めている。
●市況<債券> 国債利回りが低下した。ただ、米連邦準備理事会(FRB)が高金利を長期間維持し、連邦政府の財政赤字が拡大するとの懸念から、積極的な買いは限定的だった。オーバーナイトでは利回りは約16年ぶりの高水準を付けていた。
フェデラルファンド(FF)金利先物市場では現在、2024年の利下げ幅は95bpと予想されている。また、6月まで5%を上回ると見られている。
<株式> 金融セクターは0.9%下落し、S&P総合500種の最大の足かせとなった。米格付け会社S&Pグローバルが複数の米銀の格付けを引き下げたことを嫌気して、銀行株が軟調に推移した。
中南米金融市場では大半の通貨が上昇。南アフリカで22日、BRICSサミット(首脳会議)が開幕する中、ブラジルレアルは0.9%上昇し、全体の伸びを主導した。
ブラジルのルラ大統領はBRICSサミットで、隣国アルゼンチンのBRICS加盟に賛成の意を表明した。
また、ブラジルのアダジ財務相は、税制改革が年内に取りまとめられる見通しと明らかにした。
銅相場の上昇を手がかりに、チリペソやペルーソルも小幅上昇した。
日経先物31720、ダウ先34368、債先146.43、米4.326、独2.6480、仏3.165、西3.681、伊4.307、英4.7160、波5.760、原油79.67、銅8,363、ドル円145.」4、ユーロドル1.0848
※8/23 8時50分頃
備忘録(2023/8/21)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米中堅銀行持ち株会社キーコープの長期格付けを「BBB+」から「BBB」、傘下の銀行については「A-」から「BBB+」にそれぞれ引き下げたと発表した。格付け見通しは「安定的」とした。
S&Pは「より高い金利がより長期化する状況で、金利リスク管理が他の大手地銀よりもキーコープの収益性を抑制する」との見解を示した。
S&Pは、コメリカとバレー・ナショナル・バンコープ、UMBファイナンシャル、アソシエーテッド・バンコープも同時に格下げしたと明らかにした。
チャールズ・シュワブは人員削減とオフィスの閉鎖・縮小を計画している。投資家からの圧力に対応し、少なくとも年間5億ドル(約730億円)のコスト削減を目指す。
シュワブは21日の当局への届け出で、一部のオフィスを閉鎖ないし縮小し、従業員数を減らすと発表。それに伴い、「主に従業員の報酬と福利厚生、施設退去費用に関連する」約4億-5億ドルのコストが発生するという。
同社の広報担当、マユラ・フーパー氏は電子メールで送付した発表資料で、「当社は今年から2024年にかけて、コストベース縮小や運営モデルの合理化など、コストと複雑さを自社から取り除くことを狙った一連の措置を取るつもりだと表明してきた」と指摘。「今後数カ月間に、主に顧客担当以外の分野で一部のポストが削減されることになる。削減数に関する詳細はまだ分かっていない」と説明した。
エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、厚生労働省で21日に開かれた専門家会議は承認を了承した。今後、加藤勝信厚労大臣の承認を経て、アルツハイマー病の進行を緩やかにする国内初の薬になる。
世界保健機構(WHO)によると、現在世界には5500万を超える人が認知症を患っており、毎年1000万件の新規症例が発生している。その中でアルツハイマー病が最も多く、認知症全体の6-7割を占める。認知症は親族の介護などで19年に全世界で1兆3000億ドル(約189兆円)の経済損失をもたらしたとされる。画期的な新薬の登場は、高齢化が進む国内社会にとって大きな意義がある。
ただ、普及には課題も残る。米国での卸売価格は患者1人当たり年間2万6500ドルと高額な上、高齢者の保険適用となっても投与には専門医の診断が必要になる。国内では承認された後に原則60日以内、遅くても90日以内に薬価が決まる仕組みとなっており、引き続き注目が必要だ。
●その他産業
米化学大手デュポンは21日、米プライベート・エクイティ(PE)投資会社に傘下のデルリン樹脂事業の株式の過半数を18億ドル(約2600億円)で売却すると発表した。2023年末までに手続きを終える見通し。事業を絞り込み高付加価値製品に経営資源を集中する。
売却先はTJC(旧名ザ・ジョーダン・カンパニー)。デュポンはデルリン株式の80.1%を手放し、残る19.9%の株式を保持する。
デルリンはデュポンが50年代に特許を取得したポリアセタール樹脂(POM)。デュポンが同名で商標登録している。軽量で強度が高いことから、機械や楽器、医療器具の部品などに使われている。
デュポンは電気自動車(EV)向け部材や水処理技術などの高付加価値事業を成長の柱と位置づけ、非中核事業の切り離しを進めている。デルリンを含む「モビリティー・アンド・マテリアルズ(M&M)」部門も切り離しの対象とし、22年には米同業セラニーズに110億ドルで一部事業を売却している。
デュポンのエド・ブリーン最高経営責任者は「今回の売却で計画したM&M部門の切り離しがおおむね完了し、デュポンは幅広い産業に高付加価値製品を提供するプレミア企業として成長するための足場を固めた」とコメントした。
●決算関連
23年度の調整後利益は前年比37%減の134億2000万ドルとなった。同社の稼ぎ頭である鉄鉱石の価格が中国の景気減速を背景に下落し、収益を押し下げた。オーストラリア国内のコスト高や労働需給の逼迫も響いた。
24年度は鉱山の生産コストが、新型コロナウイルス前の水準を上回ると見込む。短期的に先進国の見通しは不透明だとした一方、中国とインドが引き続き比較的安定的な資源の需要源になると想定している。
●先進国、グローバル、金融市場
ドイツのIFO経済研究所は21日、7月に国内住宅建設業が一段と低迷しているとの調査結果をまとめた。受注の減少に不満を示す建設会社が記録的な数に達した。
受注不足を訴えた建設会社は全体の40.3%で、6月の34.5%から上昇。前年同月は10.8%だった。
IFOの調査責任者クラウス・ボールラーベ氏は「嵐が吹き荒れている。長年の拡大後、足元では金利上昇や建設コスト高騰が新規受注を圧迫している」と述べた。
受注のキャンセルに不満を示した建設会社の比率は18.9%に小幅低下したが、長期平均の3.1%を依然大きく上回っている。
多くの建設会社は受注残でしのいでいるが、財務上の困難を報告している建設会社は10.5%と、前年の2倍に達している。
先週発表のドイツの上半期の集合住宅着工許可件数は27%減。建築コストの増加や利上げが重しとなった。
ドイツ連邦銀行(中央銀行)は21日公表した月報で、基調インフレ率がピークに達した可能性はあるが、物価圧力の緩和ペースは遅すぎ、消費者物価上昇率が2%超で高止まりするリスクが高まっていると指摘した。
連銀は「インフレ率が中銀の目標とする水準を上回る状態が長く続くという印象が定着した。特に、強い賃金圧力が続いており、インフレ抑制を進めることが難しくなる可能性がある」との見方を示した。
高インフレとタイトな労働市場を踏まえると、欧州中央銀行(ECB)の2%のインフレ目標が賃金交渉で以前のようなアンカーの役割を果たさないという潜在的な問題があると指摘。
ドイツの賃金交渉に参加する専門家の調査では、ECBの2%のインフレ目標は賃金協定ではもはや役割を果たしておらず、交渉で重視されていないとの結論が出た。
連銀は「労働組合のインフレ期待が2%の目標を上回る状態が長期化すれば、金融政策の観点で懸念要因」とし「高いインフレ率が以前の想定より定着するリスクが高まるだろう」と述べた。
また、コモディティー価格が下げ止まったとみられ、一部の価格が上昇に転じていることも問題だとし、エネルギー価格の下落でディスインフレが進むという大きな期待を抱けない可能性があるとした。
ドイツ経済の見通しについては、第3・四半期の経済生産高はほぼ横ばいになると予想。鉱工業生産の低迷は続くとみられるが、個人消費は回復するだろうとの見方を示した。
7月の生産者物価指数は前年同月比6.0%下落した。エネルギー価格の落ち込みが主因で、下落は2020年11月以来になる。ウクライナ侵攻に伴うインフレ圧力が和らぐ半面、食品価格は高騰するなど品目別の差も広がっている。
欧州の天然ガス価格の指標となるオランダTTFの先物価格が21日の取引で、一時18%上昇し、メガワット時当たり42.90ユーロを付けた。オーストラリアの液化天然ガス(LNG)主要輸出プラントの労働者が、スト入りを準備する状況が懸念された。
労組が週末に明らかにしたところでは、LNG輸出プラントを操業するウッドサイド・エナジー・グループとの23日の賃金交渉が妥結しない場合、早ければ9月2日にスト入りする可能性がある。米シェブロンのLNG施設の労働者もスト権確立のための投票を開始した。
豪州からの供給途絶に伴い、全世界のLNG輸出の10%が影響を受ける恐れがある。
豪ドルは7-9月(第3四半期)に入り対米ドルで3.9%下落し、10カ国・地域(G10)通貨で最悪のパフォーマンス。中国経済の回復失速に加え、豪国債の米国債に対するスプレッド(上乗せ利回り)拡大が背景にある。先週は一時、昨年11月以来の安値となる1豪ドル=0.6365米ドルを付けていた。
中国不動産セクターの悪化に加え、米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれるカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムにおけるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演を前にドルが上昇する中、豪ドルは今週も圧迫される可能性が高いと、オーストラリア・コモンウェルス銀行はみている。
一方、ヘッジファンドは豪ドルに対しなお強気ポジションを維持。CFTCのデータによると、レバレッジドファンドのネットロングポジションは15日終了週に1万6227枚と、前週の1万7432枚から縮小した。
調査に答えたエコノミストの7割近くが、米金融当局がリセッション(景気後退)を引き起こすことなくインフレ率を目標の2%まで下げられることについて、少なくともある程度楽観している。ほぼ同じ割合が景気後退の回避に懐疑的だった3月調査から、センチメントが大きく反転した。
回答者の75%近くが、現在の金融政策はほぼ正しいと答えており、3月調査のほぼ60%から上昇した。
回答者のほぼ4分の3が、インフレ率は年内3%を上回るとみており、約56%が金融政策が経済に影響を与えインフレが低下するには1年から1年半かかるとの見方を示した。
エコノミストはインフレが緩やかになり労働市場が堅調に推移していることから、米国は当面景気後退を回避できる、あるいは完全に回避できると自信を深めている。景気後退の兆しが見えているセクターもあるが、経済の主役である消費者の支出は依然として旺盛だ。
新興国の債券と株式は、このままいけば月間ベースで昨年9月以来最悪のリターンとなる。ナイジェリアでは外貨準備高が従来開示していた水準を大きく下回ることを中央銀行が明らかにしたほか、アルゼンチンでは大統領選挙の予備選で政治的アウトサイダーが勝利し、エクアドルでは大統領候補の1人が暗殺された。
こうした大混乱は、米国債利回り上昇や中国経済指標の低調と相まって、投資家に高リスク資産の見直しを余儀なくさせている。
証券会社インサイト・セキュリティーズのカルロス・レガスピー最高経営責任者(CEO)は、「これこそが新興国市場だ。常にリスクは経済的な要因よりも政治的な要因の方が強い」と指摘した。
わずか数週の間に新興国資産に投資する根拠は低下した。ブルームバーグ集計のデータによると、ドル建て国債の年初来上昇率は約2.5%と、ピーク時の5.8%から縮小。一方、MSCI新興国通貨指数は、年初来の上げの多くを消している。
世界的に資本市場が調整する中、新興国の株式も8月としては2015年以来最悪のパフォーマンスとなる見通しだ。
こうした相場下落は、新興国資産の上昇の脆弱(ぜいじゃく)さを思い起こさせる。値上がりは一瞬にして崩れ、ボラティリティー上昇によって資産のリスクプロフィルが高まり、それがさらに売りを招く可能性がある。シカゴ・オプション取引所(CBOE)の新興国市場ETFボラティリティー指数はこのままいけば8月に2カ月連続上昇となる。
ロード・アベットのポートフォリオマネジャー、ミラ・スクルキナ氏によれば、リスクを軽減する一つの方法は、特に中南米や中東などの市場に友好的な変革を受け入れている国への投資に重点を置くことだ。
同氏は「システム上重要な新興国の多くは、市場に友好的な改革を成功させているとともに、困難な時期にも政策当局者がこうした改革を継続する決意を持っていた」と指摘した。
地下鉄とバスの乗車料金を従来の2.75ドル(約400円)から2.9ドルに値上げした。基本運賃の値上げは2015年以来8年ぶり。ロングアイランドとニューヨーク市中心部をつなぐロングアイランド鉄道(LIRR)などの運賃も上がった。
地下鉄など公共交通機関の利用者数は、新型コロナの感染拡大を受けて急減した。市内の地下鉄におけるマスクの着用義務が緩和されてから1年近くたった今も、地下鉄の利用者数は新型コロナ前の6〜8割で推移している。
ニューヨーク州の会計監査官が今年5月に発表した報告書によると、MTAは過去25年間で、老朽化したインフラの修復と拡充に必要資金がかさみ負債が膨らんだ。これが新型コロナ禍の乗客数の急減によってさらに悪化した。10年に290億ドルだった長期負債は22年には423億ドルに増えた。
ニューヨーク州は、ニューヨーク市中心部マンハッタンの一部区間に乗り入れる自動車に課税する「渋滞税」を来年にも導入することを計画している。導入によって、MTAは年間で10億ドルの歳入があると見込んでいる。
電車賃の値上げは米国各地に広がっている。カリフォルニア州サンフランシスコ市で郊外からの通勤者などが利用する電車「BART」の理事会は、24年1月から2年間で2回、それぞれ5.5%の運賃の値上げを承認した。首都ワシントンでも、今年7月から一部の地下鉄利用者に対して値上げする動きが見られた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
長期国内・外国通貨建て発行体格付けと、国内通貨建てのシニア無担保格付けは「Baa3」で変わらず、その他の短期国内通貨建て格付けは「P-3」という。
ムーディーズは「インド経済の潜在成長率は過去7─10年で低下しているものの、国際的な水準から見れば急速な成長を続ける可能性が高いという見解に基づく」とした上で、「GDP(国内総生産)の高成長は所得水準の漸進的な上昇と経済全体の強靭性に寄与する。ひいては緩やかな財政再建と政府債務の安定化を支えるだろう」と指摘した。
同国の金融セクターは引き続き強化されており、これまで格付けの引き下げ圧力となっていた経済・偶発債務リスクの大部分が低減しているとした。
一方で、国内外の持続的な金利上昇はインドソブリン格付けの長年の特徴となっている高水準の債務負担と脆弱な債務負担能力に起因するリスクを浮き彫りにしており、それらは今後も続くと予想しているとした。
中国政府の7月の土地販売収入は19カ月連続で減少した。地方政府の財政を一段と圧迫しそうだ。
7月の政府土地販売収入は、中国財政省が21日に発表した統計に基づくロイターの計算で前年比10.1%減少。前月は24.3%減だった。
1─7月の販売収入は前年比19.1%減の2兆2875億元(3131億ドル)だった。
不動産市況の悪化で債務不履行に陥る不動産開発業者が相次ぎ、多くの地方政府の財政は悪化している。
ムーディーズの副社長兼シニア・クレジット・オフィサーのジェニファー・ウォン氏は8月に「不動産セクターの経済への寄与が低下しており、結果的に土地の販売が構造的に減少し、地方政府の財政収入は目減りしている」と指摘。
「同時に、一部地方政府ではすでに債務負担にが増大している。融資平台(地方政府傘下の金融事業会社)の一部は借り換え負担が大きく、特に財源が悪化している弱い地域のデフォルトリスクを高めている」と述べた。
中国人民銀行(中央銀行)は21日、8月の1年物ローンプライムレート(LPR)が3.45%に設定されたと発表した。7月の3.55%から10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げられたが、5年物LPRは4.20%に据え置かれた。
多くのエコノミストは5年物LPRが15bp引き下げられると予想していた。先週の利下げは5年物LPR引き下げの前兆とみられていた。人民銀は15日、中期貸出制度(MLF)の1年物金利を2.65%から2.5%に引き下げると発表した。
住宅ローン金利に連動する金利が据え置かれたことは、不動産市場低迷に歯止めをかける政府のアプローチを巡り市場を困惑させた。
中国は融資需要が低迷しデフレ圧力が強まり、信頼回復に苦慮している。人民銀がMLF1年物金利を予想外に引き下げた数日後、人民銀と金融規制当局は銀行幹部と会談し、貸し出し増加を再度指示した。
こうした流れから、LPRも同じような引き下げになるとの観測が高まっていた。LPRは事実上の貸出金利の指標で、18の銀行が人民銀に毎月提出している最良顧客向け金利に基づいているが、人民銀は毎月の設定に影響力を持っている。
キャピタル・エコノミクスのジュリアン・エバンスプリチャード氏らエコノミストはリポートで、「MLF引き下げからLPRへの期待外れのフォロースルーは、人民銀が信用需要を回復させるために必要な大幅な引き下げを受け入れる可能性は低いとの見方を強める」と分析。
「金融緩和は負債を抱えた企業や家計に幾らかの救いになるだろうが、成長率を下支えするには十分ではないということだ。むしろ、財政支援の程度が鍵となるだろう」との見方を示した。
複数のアナリストは、先週の利下げでも中国の銀行にLPR引き下げに限界があった可能性を示唆。中国の銀行はここ数年、信用市場における競争激化と新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降の貸出金利低下により利ざやが縮小し収益性が落ちていると、人民銀は先週発表した四半期報告書で指摘していた。
新規住宅ローンの平均金利が記録的な低水準にあるため、貸し手も制約を受けている可能性がある。先週の人民銀報告によると、6月の平均金利は4.11%に低下した。
5年物LPRは昨年合計35bp引き下げられたが、これはMLFの20bpや1年物LPRの15bpよりも大きな引き下げだった。
スタンダードチャータードの中国マクロ戦略責任者、劉潔氏は、「これほど強力なMLFの引き下げにもかかわらず、銀行が決定するLPR金利を引き下げる能力がないことは、銀行の負債コストを引き下げるためのより多くの措置がより急務になることを示唆している」と述べ、市中銀行の預金準備率や預金金利の引き下げなど、さらなる措置が実施される可能性を示唆した。
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のシニア中国ストラテジスト、邢兆鵬氏は「意外な結果で、銀行の準備不足を示している。今後数カ月は引き下げが続くと思う」と語った。
最悪のシナリオは、こうした状況がスタグネーション(景気停滞)、もしくは「日本化」を招くことだ。最新の消費者物価データが示唆するような中国経済のデフレ入りに一部のエコノミストが警鐘を鳴らしている。
物価下落は需要低迷を示すとともに、一般世帯の買い控えや企業利益の減少、実質借り入れコストの上昇など、将来の成長の足かせとなる。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のチーフエコノミスト、トム・オーリック氏は、「不動産セクターの急激な落ち込みや起業家を再び鼓舞することの難しさ、対米関係の亀裂拡大は、成長期待が下方修正されたことを意味する。これまでの弱気シナリオが今や基本シナリオになった。2030年までに成長率が年3.5%程度に低下すると見込まれる」とコメントしている。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況オフショア人民元も介入が警戒されている。この日は対ドルで0.3%上昇し、1ドル=7.2853元となった。一時は1ドル=7.3元を超えて下落していたが、中国の国有銀行がオフショア人民元の流動性を積極的に吸収しているとのロイター報道を受けて反転した。
10年債利回りが2007年の世界金融危機時以来の高水準を付けた。米経済が底堅く推移する中、米連邦準備理事会(FRB)が金利を長期にわたり高止まりさせるとの見方が強まった。
日経先物31772、ダウ先34497、債先146.34、米4.351、独2.6890、仏3.228、西3.737、伊4.389、英4.7770、波5.788、原油80.10、銅8,291、ドル円146.24、ユーロドル1.0899
※8/22 8時55分頃
備忘録(2023/8/18-20)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米連邦準備理事会(FRB)が18日に発表したデータによると、国内商業銀行の信用総額が減少した。企業向け融資が縮小した。
8月9日までの週の信用総額は17兆2300億ドルと前の週の17兆2500億ドルから減少。前年同期の17兆3200億ドルからも減少した。前年同期比での減少は2週連続。
融資・リースが前の週の12兆1500億ドルから12兆1300億ドルに減少。商業・産業向け(C&I)融資は2兆7500億ドルから2兆7400億ドルに減少した。商業・産業向け(C&I)融資の前年同期比の伸びは1%未満に急減速した。
この傾向は、FRBによる急速な利上げ、信用基準のタイト化、今年発生した米地銀の破綻などの影響を受け、借り手の需要が減少していることを反映している。
●その他産業
アームの売上高、昨年度1%減少-ナスダック上場申請文書の草案今年最大規模とみられる新規株式公開(IPO)に向けて準備中の英半導体設計会社アームでは、昨年度(3月末終了)の売上高が約1%減少した。ブルームバーグが確認した株式上場申請文書の草案で明らかになった。
これによると、同年度の売上高は26億8000万ドル(約3900億円)に減少。数値は今後変わり得る。アームを傘下に置くソフトバンクグループは来月にもアームのIPOを計画しており、評価額は最大700億ドルにのぼる可能性がある。
経営危機で株価が低迷している米シェアオフィス大手ウィーワークは18日、発行済み株40株を1株に併合する計画を実施すると発表した。同社の株価がニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場基準である1ドルを下回っている状況を改善する狙いがある。
8日には、同社は事業継続に「重大な疑義」があると発表した。今回の株式併合はこうした経営状況には「影響を与えない」という。
株式併合計画は、同社の取締役会が承認した。対象となるのは、発行済み株のA株とC株。9月1日の取引終了後に実施する。NYSEでは株価が1ドルを30日間にわたって下回った場合、上場廃止を勧告することができる。
ウィーワークは2021年10月、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じてNYSEに上場した。初日の終値は11ドルを超えたが、今年8月17日には終値が0.16ドルまで落ち込んだ。
米保険仲介大手マーシュ・アンド・マクレナンは、オーストラリアの同業ホーナン・インシュアランス・グループを買収する方向で合意に近づいている。内情を知る複数の関係者が明らかにした。
マーシュはホーナンを所有するプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社のTAアソシエーツと詳細を詰めており、ホーナンを約7億豪ドル(約650億円)と評価する可能性がある。部外秘の情報だとして匿名を条件に関係者らが語った。21日にも合意が発表される可能性があるという。
関係者によると、マーシュは他の同業や投資会社に競り勝ち、買い手の有力候補に浮上した。合意は間近とみられるが、規制当局の承認を得る必要があるとしている。
ブルームバーグは6月、ホーナンの買い手候補らが関心を寄せる中、TAアソシエーツが金融アドバイザーを起用して売却を検討していると報じていた。
●決算関連
2023年4〜6月期決算は、最終損益が3200万ドル(約46億円)の赤字(前年同期は5000万ドルの黒字)だった。おひざ元の米国で高価格帯の製品の売り上げが低迷した。中国での販売回復も想定に届かなかった。
四半期で最終損益が赤字になるのは20年4〜6月期以来となる。売上高は前年同期比1%増の36億900万ドル。営業損益は500万ドルの赤字(前年同期は7900万ドルの黒字)だった。
米国での売上高は前年同期に比べ0.5%減った。消費者が節約志向を強めるなか高級ブランド製品など高額消費が低迷しており、仏ロレアルなど中価格帯を中心とするライバルにシェアを奪われた。
アジア太平洋での売上高は29%増えた。スキンケア用品や香水などを中心に新製品を投入し販売強化を目指したが、中国の国内旅行市場の回復が遅れ、主要な販売チャネルである免税店での売り上げが想定に届かなかった。
同時に発表した24年6月期の業績見通しでは、売上高を前期比5〜7%増とした。ファブリツィオ・フリーダ最高経営責任者(CEO)は「24年は米国で成長を再加速させる」と述べ、「M・A・C」など中価格帯のブランドで新製品の投入などテコ入れを急ぐ考えを示した。
今期の業績見通しが市場予想を下回り、同日の米株式市場でエスティ・ローダーの株価は前日比3%下げ、20年4月以来の安値を付けた。
●先進国、グローバル、金融市場
8月に入り下げ基調に入ったロンドン金属取引所(LME)の銅先物相場。中長期でみるとなお底堅さが目立つ。銅の需要が電気自動車(EV)向けをはじめとする「グリーン経済」にシフトし、市場の注目する景気動向に左右されにくい構造になってきたとの見方もある。
先進国で債務負担増への警戒が高まってきた。根強いインフレと各国中銀の利上げで金利が上昇し、超低金利時代に膨らんだ政府債務の利払いコストも急増している。先進国の2023年の利払い費用は新型コロナウイルス禍前から5割増近い1兆2800億ドル(およそ186兆円)にのぼるとの試算もある。
7月23日の総選挙で選出されたスペインの新下院(定数350)は17日、議長選を行い、サンチェス首相の穏健左派、社会労働党の女性候補フランシナ・アルメンゴル氏(52)を選出した。スペインメディアなどが伝えた。左派政権樹立に向けた一歩だが、情勢はなお不透明だ。
総選挙では中道右派の国民党が第1党となったが、反移民の極右政党ボックス(VOX)と連立を組んでも過半数に届かない。第2党となった社会労働党も他の左派政党と組んでも過半数を得られず、残りの少数政党の支持獲得に向けた交渉が熱を帯びている。
今回の下院議長選では、2017年に北東部カタルーニャ自治州の独立の是非を問う住民投票を強行したプチデモン元州首相=ベルギーに出国=が率いる「カタルーニャのための連合(JXC)」の議員7人がアルメンゴル氏支持に回り、同氏は過半数の178票を獲得した。
ただJXC側は今回の支持について、サンチェス氏の首相再選出の支持を意味するものではないとけん制。駆け引きが続くとみられる。
カナダ西部ブリティッシュコロンビア州で発生した山火事は19日にさらに拡大し、避難命令が出された住民の数が約3万5000人と前日の2倍に増加した。当局は厳しい状況が数日続くと警告している。
同州では18日に非常事態宣言が発令された。
トルドー首相は19日に主要閣僚と高官を招集し、山火事について協議。同州と北西部ノースウエスト準州(NWT)に「追加資源を提供」することで合意した。
NWTの州都イエローナイフでも山火事が発生しており、人口2万人のほぼ全てが今週避難する事態となった。
欧州中央銀行(ECB)のチーフエコノミストを務めるレーン専務理事は18日、ユーロ圏経済は「今後2年程度」成長を続け、深刻な、または持続的なリセッション(景気後退)に陥る可能性は低いと述べた。
ECBが公開したポッドキャストで「欧州経済が今後2年程度成長すると確信する理由が多くある」と指摘。ユーロ圏経済はパンデミック(世界的大流行)前のトレンドにまだ追いついておらず、そのトレンドに追いつく過程が成長を押し上げるとし、「このような傾向は時間の経過とともに現れてくる」と述べた。
また、エネルギー価格はロシアのウクライナ戦争が始まった当初よりも大幅に下落しており、このエネルギー価格の下げも最終的には消費者に波及して家計の可処分所得が増加すると主張。「時間が経てば、家計はより良い財政状態になるはずだ」とした。
ECBは過去1年間にわたり、記録的なペースで利上げを実施してきたが、レーン氏は、ECBは需要を「大幅なマイナス」に持っていきたいわけではなく、単純に供給の伸びよりも需要の伸びを緩やかにすることが目的とした。
米国が深刻なリセッション(景気後退)に陥る懸念が後退する中で、投資家は潤沢な手元資金をジャンク資産に投じる構えだ。満期が迫っている企業はこの機会を逃すまいと躍起になっている。
ハイイールド債市場では、発行低調は需要が供給をはるかに上回ることを意味する。1兆6000億ドル(約230兆円)余りのジャンク債が2029年末までに返済期限を迎えるが、こうした満期の壁を前に、借り手が借り換えや条件変更を通じてもう少し余裕を作れる状況に道を開く。
格付けが最低クラスの企業では満期の壁が下がる方向だ。ブルームバーグ・ニュースの集計データによると、25年に返済期限を迎える高利回りのクレジットの規模は現時点で2210億ドル弱と、今年に入ってから約12%減少した。こうした企業は通常なら年内に期限への対応を開始する必要がある。
ビシュワス・パトカー氏らストラテジストは顧客向けリポートで「足元の信用スプレッドは米投資適格債とハイイールド債で当社の強気のケースに到達し、ローンもその水準に近づいている」とし、「全般的なバリュエーションも、これまでの強気ケースの目標に近づいている」と指摘した。
米国の消費者が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の間に蓄えた余剰資金が減少しつつある。消費者がこれにどう対応するかは、世界最大の経済大国である米国がリセッション(景気後退)を回避できるか否かを決めることになりそうだ。
ここ2年間、米消費者は高水準のインフレに直面しながらも支出を続けるために、パンデミック期に積み上げた2兆ドル(約291兆円)以上の貯蓄を取り崩してきた。これは、米連邦準備制度がここ40年で最も速いペースで利上げを行う中でも、同国経済が前進することにつながった。
シンクタンクのブルッキングス研究所ハミルトン・プロジェクトのウェンディ・エーデルバーグ、ソフォクリス・グーラス両氏によれば、消費者は支出をいかに変更するか、また借金を増やすかどうか検討しており、「家計は岐路に立たされている」。調整余地の小さい低所得層では特にそうだ。
エコノミストの間では、これがどの程度懸念される動きかについて意見が分かれる。10月に学生ローンの返済が再開されるなど、他の負担と相まってリセッションにつながるとみる向きもある。
UBSグループの米国担当チーフエコノミスト、ジョナサン・ピングル氏は「ますます多くの家計が予算の制約に直面せざるを得なくなるだろう。それは個人消費にとって逆風になるはずだ」と分析。同氏は年末に向けてマイルドなリセッションが始まると予想する。
一方、より楽観的なエコノミストもいる。インフレ率の低下と依然として回復力のある労働市場により、消費者は手元資金が減少しても支出を続ける余力を持つとみる。
ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、マーク・ザンディ氏は「所得の伸びは今やインフレよりも強い。そのため、堅調な個人消費継続を支えるための過剰貯蓄の必要性は薄れつつある」と語る。
パンデミック期に米国人の貯蓄は膨れ上がったが、それがどの程度残っているのかは不明だ。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は6月28日、ポルトガルのシントラで講演した際、まだ残存している可能性が高いと述べた。ただその上で、消費と経済の「主な原動力」は労働市場の力強さと労働者に生み出される所得だと付け加えた。
より最近では、サンフランシスコ連銀の研究員、ハムザ・アブデルラフマン氏とルイス・オリベイラ氏は8月16日のブログ投稿で、パンデミック期に積み上がった過剰貯蓄はおそらく7-9月(第3四半期)中に底を突くだろうとの分析を示している。
一方、シティグループのシニアグローバルエコノミスト、ロバート・ソッキン氏は、そうした見方は悲観的過ぎると指摘。同氏の試算によれば、家計はなお1兆4000億ドル程度の余剰資金が利用可能だ。これによって、金融引き締めにもかかわらず消費者は支出を続けてきており、シティはリセッション入りの時期に関する予想を来年1-3月に先送りしている。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国不動産開発大手の中国恒大集団は18日、米国で連邦破産法15条の適用を申請したことについて、オフショア債務再編のための通常の手続きで、破産申し立てを伴うものではないと指摘した。
ドル建て債券はニューヨーク州の法律に準拠しているため、同州の連邦破産裁判所に対し連邦破産法15条に基づいてオフショア債務再編手続きの承認を申請したと説明した。
中国経済が大幅に減速している。同国に依存する企業の業績見通しが損なわれており、世界の株式運用者は身構えている。
中国の不動産低迷がシステミックな危機に発展する恐れもある中、今年最も有望と考えられていた中国関連の投資が裏目に出ている。これまでのところ株式相場の急落は中国に集中しているが、同国の需要動向による影響を受ける企業も多い欧州や米国、他のアジア諸国の株式に対する圧迫は強まっている。
キャタピラーやデュポンは直近の決算発表で、中国に関して警鐘を鳴らした。エコノミストによる中国の国内総生産(GDP)成長率見通しの下方修正が相次いでいるほか、投資家はポートフォリオのリスク低減を探っている。
対中エクスポージャーが大きいグローバル企業から成るMSCIの指数は今月に入り約10%安。より幅広い世界株の指数に比べて下落率がほぼ2倍となっている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは米国株がさらに約4%下落する可能性があると指摘する。
レイリアント・グローバル・アドバイザーズで最高投資責任者(CIO)を務める許仲翔氏は、「率直に言って、世界全体が中国と切っても切れない関係にある。大手のグローバル企業にとっては販売先が中国だったり、調達先が中国になったりしている」と指摘。「こうした企業は中国からの向こう1年の売り上げを大幅に下方修正しなければならないだろう」と話す。
中国にはマイナス材料が相次いでおり、15日発表された7月の経済指標は軒並み予想を下回ったほか、シャドーバンキング(影の銀行)大手の中植企業集団が顧客への支払いを停止し、不動産開発大手の碧桂園は公募債でデフォルト(債務不履行)に近づきつつある。これを受け、中国経済の先行きを巡る投資家や企業、消費者の見方も急速に悪化している。
こうした懸念から、香港や中国本土の株価指数は18日、昨年11月以来の安値を付け、ハンセン指数は弱気相場入りした。中国はなお世界のサプライチェーンで主要な地位を占めており、欧州や米国でも投資家の心理に影響が及び始めている。
GAMAアセット・マネジメントのグローバル・マクロ・ポートフォリオ・マネジャー、ラジーブ・デメロ氏は中国当局が支援策を強化しなければ、「多くの資産クラスが苦しむことになるだろう」と分析。欧州株や商品、金、新興国通貨へのエクスポージャーを減らしたと明らかにした。
中国の中植企業集団はほんの1週間前まで国内でほとんど注目されず、もちろん国外でもその社名を耳にする機会はなかった。
だが、この秘密主義の巨大シャドーバンキング(影の銀行)グループは今、中国経済における金融の脆弱(ぜいじゃく)性を示す新たな象徴となっている。18兆ドル(約2619兆円)規模の中国経済に対し、投資家や企業、消費者は急速に信頼を失いつつある。
1兆元(約20兆円)を超える資産を管理する非上場の中植とその傘下の信託会社は数千人の顧客への支払いを停止した後、厳しい監視下に置かれている。
この問題の重要性を裏付けるかのように、監督当局はリスクの連鎖を阻止しようと作業部会を設置。債務再編を探る中植はKPMGを起用した。事情に詳しい関係者が明らかにした。
中植のトラブルは中国では珍しい抗議活動に発展。本土各地の警察は不満を持つ顧客の自宅を訪れ、公での抗議活動を控えるよう求めた。
中国の中央銀行と金融規制当局は銀行幹部らと会談し、景気回復を支えるために融資を増やすよう要請した。
中国人民銀行(中央銀行)の20日の声明によると、地方政府の債務リスクを防止・軽減するための対策を当局と金融業界が議論する会議は18日に行われた。同会議には中国人寿保険と証券取引所の関係者も出席したという。
人民銀は先週、不動産不況の悪化と個人消費の低迷という新たなリスクに直面している経済をてこ入れするため、主要金利を予想外に引き下げた。引き下げ幅は2020年以来の大きさだった。
声明は、大手国有銀行を中心に主要な金融機関は融資を増やし、貸し出しにおける大規模な変動は避けなければならないと指摘。中国の新規融資は7月に09年以来の低水準と、一段の需要低迷の兆候を示しており、デフレ圧力が長期化するリスクを高めている。
規制当局と金融機関は、地方政府債務に関連するリスクを軽減するために連携し、監視を強化する必要があると人民銀は指摘した。
中国の国有不動産開発業者が広範な損失について警告しており、住宅危機が民間部門から政府系企業に拡大しつつあるとの懸念に拍車をかけている。
ブルームバーグが各社の届け出を基に集計したところでは、香港と中国本土に上場している国有開発業者38社のうち18社が上期(1-6月)の赤字を暫定報告。赤字企業は2022年通年の11社から増加した。政府が経営権を握るか主要株主の企業で、2年前に赤字を計上したのは4社だけだった。
2年にわたる住宅不況は中国経済を弱体化させ、民間不動産開発業者の何十件ものデフォルト(債務不履行)の引き金となった。次は碧桂園かもしれないとの観測も広がっており、国有企業も影響は避けられないことが損失警告から読み取れる。また、未完成プロジェクトを引き継ぎ、住宅購入者への引き渡しを確実にすることで市場を支える国有企業の能力も低下している。
クレジットサイツ・シンガポールのシニアクレジットアナリスト、ツェリーナ・ツェン氏は「中国不動産部門の減速で、政府系の大手企業を含む全ての開発業者は既に打撃を受けている。下期(7-12月)に状況が大きく改善するとは予想していない」と述べた。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のクレジットアナリスト、アンドルー・チャン氏によれば、国有開発業者にとって今回の赤字警告は必ずしも悲観的なだけではない。同氏は、こうした企業が価値の低下を反映させるために在庫の評価損を計上するのは当然と指摘。「重要なのは、銀行から流動性支援を引き続き受けられるかどうかだ。中小の国有開発業者については、ケース・バイ・ケースだろう」との見方を示した。
ただ赤字となれば、デフォルトに陥った民間企業が残した未完成プロジェクトを引き継ぐ余地が狭まり、住宅購入者のセンチメントはさらに冷え込むだろう。習近平政権が直接救済には消極的な中で、中国当局は資産売却が債務危機を緩和するための重要な措置だと考えている。
クレジットサイツのツェン氏は「セクター再編にはとにかく時間がかかる。特に不動産不況期には、国有企業や資産管理会社など買い手はより良いバリュエーションを求め、売り手は大幅なディスカウントでは売りたがらない」と語った。
中国の地方政府が中小銀行救済のための資金調達を急増させている。1〜7月に発行した特別債の合計額は2022年通年の2.3倍に達した。不良債権処理は銀行経営を圧迫しており、公的資金を注入してでも金融リスクを抑え込もうと躍起になっている。
資金繰り懸念が浮上している中国不動産最大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は私募債の償還を3年間延長する案を債権者に提案する。複数の中国メディアが報じた。同社は巨額の債務を抱え、不動産販売も低迷する。債務再編が進むか先行きは読めない。
中国人民銀行(中央銀行)は20日発表した声明で、地方政府の債務問題解決に向けた支援を金融当局が協調して進めていくとの方針を示した。
土地売却収入に依存している多くの地方政府の財政状況は、深刻な不況に陥った不動産セクターでデフォルト(債務不履行)が相次いで発生するとともに悪化。借金を抱えた地方政府は、中国の経済や金融安定にとって大きなリスクとみなされている。
こうした中で18日には人民銀行と国家金融監督管理総局、証券監督管理委員会の幹部が問題を協議する会合を開いていた。
人民銀行の声明によると、金融当局が力を合わせて地方政府の債務リスク解消を目指すべきで、さまざまなリスクの予防や解決のための手段を拡充し、リスク監視態勢を強化するとともに、断固としてシステミックリスクを回避しなければならないとされている。
中国共産党政治局は7月下旬、地方政府の債務リスク顕現化を防ぐことに注力し、そのための政策パッケージを実行すると改めて表明したが、現時点ではまだ具体的な対策は明らかになっていない。
ロシアでは通貨ルーブルが急落し、失敗に終わった武装蜂起が与えた衝撃もまだ収まっていない。ウクライナでの戦争は終わりが見えないまま、侵攻開始から1年半が経過した。
政府高官や財界の大物たちの間では将来への不安が広がっているが、プーチン大統領は5期目続投を目指し2024年3月の選挙に向けた準備をすでに進めている。政府に近い関係者4人が明らかにした。
ロシア中銀が先週行った緊急利上げは、足元のルーブル急落への対応のみならず、選挙前にインフレを抑えるための広範な取り組みの一環だと、関係者の1人はいう。
ロシア中銀は選挙に配慮する必要がなければ、次回の金融政策会合まで待って行動した可能性があった。だが、足元の状況を受けて、プーチン氏の側近らは中銀に公然と圧力をかけている。為替相場を安定させるとともに、家計の実質所得がこれ以上目減りしないよう確実にするためだ。
ある関係者によると、ロシア政府は有権者に対する選挙前の「アメ」として、追加の景気刺激策を含む3カ年予算案を策定している。こうした措置はインフレを助長しかねず、ルーブル相場を安定させる緊急性を高めているという。
プーチン氏が有する権威の絶大さは、民間軍事会社ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏の反乱で失われた可能性があるが、明白な対抗馬がいないのが現状だ。そのためロシアのエリート層は少なくとも今のところは、プーチン氏が生き残りを保証してくれる最善の選択肢だと考えている。こう指摘するのはドイツ国際安全保障研究所(SWP)のニコライ・ペトロフ客員研究員だ。
「プーチン氏が去った後の状況がどうなるのか不透明なため、エリートにとっては現状維持が自らの利益となる」とペトロフ氏は指摘した。
●中東
イランのアブドラヒアン外相は18日、訪問先のサウジアラビア西部ジッダでサウジの実権を握るムハンマド皇太子と会談した。国営イラン放送が伝えた。中東で対立してきたサウジとイランは3月に中国の仲介で外交関係の正常化で合意。実力者ムハンマド皇太子とイラン政府高官の会談で、両国は和解の具体的進展を印象付けた。
会談では、両国の事実上の代理戦争となってきたイエメン内戦の終結に向けて議論した可能性がある。
アブドラヒアン氏は17日にサウジのファイサル外相と会談し、安全保障や経済の分野で両国間の合意事項を前進させることを確認していた。
●中南米・アフリカ
クーデターを起こしたニジェール軍事政権トップのチアニ将軍は19日のテレビ演説で、「3年をかけず」民政移管を実施すると述べた。ロイター通信が伝えた。数年にわたり軍政を維持する意向を示したともいえ、バズム大統領への速やかな権力返還を求めている周辺国の反発は必至だ。
19日には西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の代表団が首都ニアメーを訪問し、チアニ氏らと会談した。ただ、演説により、政変前への状況回復を要求するECOWAS側と権力維持を図る軍政側の立場の隔たりの大きさが改めて露呈した形で、今後の交渉は難航が予想される。
ECOWASはこれまで、軍事介入も辞さない構えで軍政に圧力をかけてきた。18日には安全保障を担当する委員会のムサ委員長が、軍事介入の「開始日を決めた」と発言。同時に交渉を優先する意向も強調し、軍政に態度軟化を促していた。
●市況ドルが横ばいとなった。ただ、中国経済への懸念や米金利が高止まりするとの見方から安全資産への需要が高まり、週間では5週連続高と15カ月ぶりの連騰記録となった。中国当局が景気刺激策を十分に講じていないとの懸念もドル上昇を後押し。FXストリートのシニアアナリスト、ジョセフ・トレビサニ氏は「中国の統計を見て投資家はやや心配になっている」と述べた。
投資家の不安心理を示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー・インデックス(恐怖指数、VIX)は約3カ月ぶりの高値を付けた。
中南米金融市場では、メキシコぺソが域内通貨の上昇をけん引した。
メキシコペソは0.3%上昇。高金利の長期化観測が背景にある。
<ロンドン株式市場> 6営業日続落して取引を終えた。中国の経済成長減速への懸念と、英国の小売売上高が低調だったことが相場の重荷となった。
<欧州株式市場> 4日続落して取引を終えた。世界的な利上げ長期化や中国の経済成長減速への懸念を背景に売りが優勢となり、金融株やヘルスケア銘柄などが売られたのが相場を押し下げた。
中国で事業を展開する英保険大手プルーデンシャルは18日に3.2%、英金融大手HSBCは1.4%それぞれ下落した。
中国での需要減退への懸念が高まったのを背景に、中国へのエクスポージャーが高いフランスの高級ブランドエルメスは0.7%、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は1.0%、高級ブランド「グッチ」を抱えるケリング<PRTP.PA>は1.1%それぞれ下げた。
日経先物31500、ダウ先34565、債先146.62、米4.251、独2.6620、仏3.166、西3.676、伊4.319、英4.7195、波5.681、原油80.66、銅8,274、ドル円145.40、ユーロドル1.0872
※8/18 NY引け値
備忘録(2023/8/17)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
2024年1月期決算の純売上高が前期比約4.0─4.5%増になる見通しを示し、従来予想の3.5%増から上方修正した。
同時発表した23年第2・四半期決算(5─7月期)は売上高と利益が市場予想を上回り、低価格の食品や健康・ウェルネス商品への旺盛な需要が要因。
第2・四半期の米既存店売上高は燃料を除いて前年同期比6.4%増。市場予想の4.44%増を上回った。
営業利益は6.7%増の73億2000万ドル。調整後の1株当たり利益は1.84ドルとなり、予想の1.71ドルを上回った。
ウォルマートのレイニー最高財務責任者(CFO)はエネルギー価格の上昇や10月の学生ローンの支払い再開などを背景に、今後1年から1年半の間に米国人の消費力が打撃を受ける恐れがあるとして「困難を脱したとは断言したくない。消費者が慎重になる理由はある」と語った。
過去1年間、世界各国は半導体内製化の促進に向けて多額の財政資金を投じており、これがアプライド・マテリアルズを含めた半導体製造装置メーカー全体にとって追い風となってきた。同社のブライス・ヒル最高財務責任者(CFO)は、今年になって半導体製造装置関連の支出額は下振れしているが、保守管理など付随サービス事業は拡大を続けていくと強調した。
生活費増大や物価高騰に伴って米国の消費者の節約志向が強まり、タペストリーが展開するような価格帯300―800ドルの「ちょっと手を伸ばせば買える高級品」がもろに影響を受けている。
こうした中で「ケイトスペード」と「スチュアートワイツマン」の第4・四半期売上高はそれぞれ前年比で10%と13%の落ち込みとなった。TDセキュリティーズのアナリスト、オリバー・チェン氏は、ケイトスペードの不振は北米地域での販売の比重が大きいことも一因だとの見方を示した。
逆に北米市場の比重が小さい「コーチ」の売上高は前年比5%増加した。
●先進国、グローバル、金融市場
8月6〜12日の週間の新規失業保険申請件数は23万9000件だった。新規申請件数は2021年10月上旬以来、30万件以下を推移しており、米労働市場の逼迫はなお続く。
米格付け会社ムーディーズは、米国のミドルマーケットCLO(ローン担保証券)について、中堅企業の返済遅延リスクは全体として高まっているが、CLO自体の信用度はわずかにしか悪化していないと指摘した。
米格付け会社ムーディーズは、米国のミドルマーケットCLO(ローン担保証券)について、中堅企業の返済遅延リスクは全体として高まっているが、CLO自体の信用度はわずかにしか悪化していないと指摘した。
中堅企業は金利上昇で資金繰りが悪化しており、今後の資金調達が難しくなるとの懸念が浮上しているが、中堅企業向け債権に対する需要は根強い。
だが、ミドルマーケットCLO自体の信用力は「わずかにしか悪化していない」という。
調査対象のCLOでは、来年満期を迎える中堅企業向けローンの比率は9%弱。CLOマネジャーも、リスクの高いローンがないか積極的に調査し、必要に応じて安全性の高いローンに切り替えている。
フラット・ロック・グローバルのパートナー、シロ・ベイツ氏は「インタレスト・カバレッジ・レシオは記録的な高水準から低下しているが、ミドルマーケット・ローンは過去2年間、底堅さを見せている」と述べた。
8月の製造業業況指数は12.0と、前月のマイナス13.5から急上昇した。堅調な消費者需要を背景に新規受注が急増した。市場予想はマイナス10.0だった。
しかし、企業はこうした傾向が長続きするとはみていない。6カ月業況予測は3.9と、2年ぶりの高水準となった7月の29.2から25ポイント以上低下した。
将来見通しの悪化は、8月の利益率の緩やかな低下と連動している。受取価格指数は9ポイント低下の14.1となった。また、価格上昇の鎮静化は年内は続く見通しで、今後12カ月間の予想上昇率は4.0%と、過去12カ月間の5%から低下した。
FWDBONDS(ニューヨーク)のチーフ・エコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「労働市場は崩壊していない」と指摘。フェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標の5.25─5.50%への利上げが教科書通り総需要の鈍化を招いていないため「米経済は冷え込むどころかむしろ加熱しているかもしれない」と述べた。
ブリーン・キャピタル(ニューヨーク)のシニア経済アドバイザー、コンラッド・デクアドロス氏は「直近の週で増加したにもかかわらず、継続受給件数は4月中旬以降、緩やかな減少傾向にあり、新たな失業者がすぐに再就職していることを示唆している」と述べた。
ノルウェー中央銀行は17日、インフレ抑制のため、主要政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げ4.00%とした。市場の予想通りだった。
中銀のバーチェ総裁は声明で9月に追加利上げを実施する可能性が高いと表明。「将来の金利の道筋は経済動向に左右される。経済が現在の予想通りに推移すれば、政策金利は9月にさらに引き上げられる」と述べた。
同国の7月のコアインフレ率は前年比6.4%。6月は過去最高の7.0%だった。中銀が目標とする2%を昨年2月以降上回っている。
ノルディアのエコノミスト、ケティル・オルセン氏はTV2に「おおむねノルウェー中銀が予想していた通りとなった。インフレ率はやや高く利上げにもう少し積極的になる可能性があったが、その後通貨クローネが小幅上昇した」と語った。
ノルウェー中銀はクローネ相場が予想よりも弱かったり、経済の圧力が続いたりすれば、政策金利は4.25%以上に引き上げられるかもしれないと指摘した。
その一方で「ノルウェー経済がより顕著に減速したり、インフレ率がより急速に低下したりすれば、政策金利は想定よりも低くなる可能性がある」とした。
バーチェ総裁はロイターとのインタビューで「今日の会合でわれわれが示したのは、経済が予想通りに推移すれば9月に利上げする可能性が最も高いということだ」と述べた。
政策金利のピークが近いのかとの質問には、過去2年間で大幅な利上げを実施したが「現時点ではインフレ率を目標に戻すため、一定の追加引き締めが必要と判断している」と指摘。「同時に不透明感があり、今後のわれわれの決定はデータ次第であることも当然強調する」と語った。
米連邦準備制度の積極的な引き締めの中で、高リスク企業はジャンク債よりもローンでデフォルト(債務不履行)している。
モルガン・スタンレーの分析によると、米国のローンのここ1年デフォルト率は4%と、ジャンク債延滞率の2.7%を1.3ポイントも上回っている。ローン貸倒率がジャンク債をこれほど大きく上回ったのは、ここ30年で初めて。
ブラックロックのマクロクレジット調査責任者、アマンダ・ライナム氏は15日のブルームバーグテレビジョンの番組で「借り入れコスト上昇は直ちにローン借り手に影響するが、ジャンク債については時間がかかる」と指摘した。
高リスク企業の債務不履行が増加したのは米連邦準備制度がインフレ抑制のために急激に金利を引き上げたためだ。これに伴い、変動金利ローンの借り手は金利コストの上昇に見舞われている。
また、レバレッジドローン市場の借り手は小規模で格付けの低い企業やプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社が支配している企業が多く、ピッチブックのデータによると、6月30日時点で全体の約60%を占めていた。
ビシュワス・パトカー氏らモルガン・スタンレーのストラテジストによると、ポートフォリオ企業の債務再編を目指すプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社の間ではディストレスト・エクスチェンジ(救済目的の債務交換)がより人気の高い手段となっている。このことと、ローンを規定するコベナンツの悪化が、ローンの債務不履行増につながっていると、ストラテジストが11日のリポートで分析した。
ただ、ブラックロックのライナム氏は、ジャンク債の借り手は既存債務が満期になればより高いコストで借り換えざるを得ないため、ジャンク債投資家にとっての潜在的なリスクは残っていると指摘する。
「ハイイールド債の借り手には今のところ我慢する余裕がある」が、「満期の壁に近づくのは時間の問題だ」と同氏は述べた。
日銀の金融政策予想を反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)の1年先1カ月金利から足元のOIS金利を引いた数値が0.217%に上昇。向こう1年の利上げ幅の予想は、日銀が7月にイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を修正した後の高値を更新し、2月27日以来約半年ぶりの高水準に達した。
見込む投機的な取引」だと指摘。1年後にマイナス金利政策の解除に加え、0.1%程度の追加利上げを織り込んでいるとみている。
16日に公表された7月連邦公開市場委員会(FOMC、7月25ー26日開催)の議事要旨によると、資産バリュエーションの圧力は「留意に値する」とスタッフは判断。5月にFOMCに提出された前回のスタッフリポートでは、このリスクは「穏やか」と表現されていた。
株価はそれ以降に上昇したが、第2四半期決算や国債利回り上昇が影響し、8月に入ってからは伸び悩んでいる。
FRBは金融システムの安定性に対するリスクを把握するため、銀行システムの健全性や経済におけるレバレッジの大きさ、資産価格の評価など、多くの変数に注目している。
資産価格が高騰し、ファンダメンタルズからかけ離れている場合に懸念されるのは、突然の急落によって金融システムの仕組みが崩壊し、経済に打撃を与えることだ。
15年ほど前に住宅価格バブルが崩壊し、大恐慌以来の深刻な景気後退に陥ったときがそうだった。FRBはこれをきっかけに金融安定リスクの監視を強化した。
FRBスタッフは四半期経済予測サマリーの提出が予定されていないFOMCの会合で、金融の脆弱(ぜいじゃく)性に関する詳細な評価を政策当局者らに説明する。
FOMC議事要旨によると、FRBスタッフは7月の金融情勢について、株価指数の上昇と社債スプレッドの縮小を指摘。全体として、金融安定リスクは留意に値するとした。
他の要因としては住宅価格と商業用不動産価格を挙げ、「ファンダメンタルズに比べて高い」と指摘。議事要旨によると、住宅価格は再び上昇を始めており、価格対家賃比は住宅ローン市場バブル崩壊前の2000年代半ばの水準に近い。
商業用不動産価格はすでに下落しているが、在宅勤務の増加により、今後さらに顕著に下落する可能性があるとスタッフは示唆した。
議事要旨によると、FRBの政策担当者らは金融安定リスクに関する議論の中で、「商業用不動産の価値が急落する可能性」に警鐘を鳴らし、それが「一部の銀行や保険会社といった金融機関に悪影響を与えかねない」と指摘した。
国内大手生保は不動産や未公開株など代替資産(オルタナティブ)への投資を着実に増やす方針だ。債券など伝統的資産以外への分散投資により収益源を多様化する動きの一環で、中でも低格付け企業向け債権を中心に220兆円規模の市場に拡大した「プライベートクレジット(デット)」に着目している。
30年固定の住宅ローン金利は平均で7.09%となった。2002年以来、約21年ぶりの高水準だ。
ローン金利は22年11月に7.08%まで上昇した後はいったん落ち着きをみせていた。足元の長期金利上昇を受けて今春からじりじりと上昇が続いていた。全米不動産協会(NAR)のチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏はローン金利の上昇が一段と続く可能性もあると説明し「8%に達すると住宅市場(の売買)が再び『凍結』する」と指摘した。
ローン金利上昇は住宅購入意欲を冷やしている。中古住宅市場での供給も減っており、NAR集計の中古住宅の販売件数は直近6月分まで2年近く前年割れが続いた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国人投資家が中融国際信託の拠点前で抗議活動を行った。中国最大級のシャドーバンク(影の銀行)である同社が数十の投資商品の支払いを怠ったため、こうした商品の買い手が怒りを爆発させた。
中融などが販売している信託商品の多くは中国恒大集団のような問題を抱えた不動産開発会社が運営する住宅プロジェクトが裏付けとなっている。
中国の信託業界は2兆9000億ドル(約425兆円)規模に上る。業界大手の中融は富裕層や法人顧客の貯蓄を預かり、融資に回したり、不動産や株式、債券、商品に投資をしたりしている。
データプロバイダーのユーストラストによると、中融には今年満期を迎える総額395億元(約7900億円)の高利回り商品が270本ある。
中国当局はすでに、中融を一部所有している中植企業集団のリスクを調査する作業部会を設置した。中融は全額を償還するための計画を今のところ有していないとしている。
ゴールドマン・サックス・グループの楊碩アナリストはリポートで、「最近の純資産価値切り下げや償還を考えると、信託商品の伸びは鈍化すると予想され、その結果、不動産の融資条件が厳しくなり、銀行の収益やバランスシートに影響を与える可能性がある」と指摘した。
中融取締役会秘書の王強氏は今週の投資家との会合で、同社は一部商品の支払いを8月8日に怠り、7月下旬から少なくとも他に10件の支払いが遅れていると伝えた。関係者の1人によれば、中融は現在、少なくとも30商品の支払いが滞っており、幾つかの短期金融商品の償還も停止している。中融の流動性は突然枯渇したと王氏は説明した。
中国当局は今週、人民元の急激な変動を防ぐため、国有銀行に対し外国為替市場への介入を強化するよう指示した。事情に詳しい関係者が明らかにした。
当局はまた、急激な元安阻止を狙い、市中銀行の外貨準備高に関する最低要件引き下げといった手法の活用も検討している。こうした問題について話す権限がないとし、名前を明かさないことを条件に関係者が語った。
当局はまた、国内企業が人民元に対して投機的な取引を行い、人民元の下落を加速させたかどうかを調べているという。
人民銀は17日公表した4-6月(第2四半期)の「貨幣政策執行報告」で、同行の政策スタンスをほぼ再確認しつつ、「マクロ経済政策の調整を強化する」と表明。
人民元はまだファンダメンタルズから逸脱していないとし、人民元の「過度な調整」を断固として防ぐと誓った。人民銀には安定した外為市場を守る経験と十分な政策手段があるとしている。
中国の公式統計から判断すると、景気減速や不動産開発企業の記録的なデフォルト(債務不履行)にもかかわらず、国内住宅市場は極めて底堅く推移している。
政府のデータによれば、新築住宅価格は2021年8月に付けた高値から2.4%下落するにとどまっている。一方、中古住宅価格は6%下げている。
だが、不動産仲介業者や民間のデータ提供者が明らかにする状況はこれよりもはるかに厳しい。
こうした情報によると、中古住宅価格は上海や深圳など主要大都市圏の一等地のほか、二線・三線都市の半数超で少なくとも15%下落している。電子商取引大手アリババグループの浙江省杭州本社近くの中古住宅は、21年終盤の高値から約25%値下がりしたと、地元の仲介業者は明かす。
同一条件での比較は難しいが、中国当局の住宅価格指数では不動産低迷の深刻さが実際よりも控えめに出ていると、業界関係者やエコノミストらは指摘する。市場の転換点を捉えにくい長期にわたる統計手法が一因だ。
このため、時宜を得た経済データを入手できるのかどうか、投資家の間で懸念が広がっている。習近平指導部下では、一部の情報へのアクセスがますます制限されるようになっている。また、需要喚起策を練る政策当局者が市場の状況を正確に理解しているのか疑念も生じることになる。
先行きに慎重な住宅購入者がデータで値下がりが示されるのをさらに待ち、様子見姿勢を続けるリスクもある。
中国人民銀行(中央銀行)は17日、金融政策実施報告を公表し、不動産政策を適時に調整・最適化する方針を示した。
人民元相場の過度な調整リスクを断固として防ぐとも表明。システミックな金融リスクを回避すると述べた。
穏健な金融政策は的確かつ強力なものになるとし、適度に潤沢な流動性と人民元相場・物価の基本的安定を維持する方針を示した。
消費促進、投資安定、内需拡大に向けて金融を活用する意向も示した。
フィリピン中央銀行は17日の金融政策決定会合で、政策金利の翌日物借入金利を年6.25%で据え置くと発表した。据え置きは3会合連続。急激に上昇してきた消費者物価指数(CPI)が低下してきたことが背景にある。
中国の不動産開発会社、中国恒大集団は17日、米連邦破産法15条の適用をニューヨークの連邦破産裁判所に申請した。法廷文書で明らかになった。
連邦破産法15条の適用により、米国内の資産が保護される一方、米国外の場所では債務再編策が練られることになる。国際的な債務再編では、取引を最終的に取りまとめる過程で連邦破産法15条の適用申請が必要になることがある。
恒大の申請は香港とケイマン諸島で行われている再編手続きについて言及。同社は数カ月前からオフショアでの債務再編計画の仕上げに取り組んできた。4月には、債務再編計画の実行に必要なレベルの債権者の支持をまだ得ていないことを明らかにした。7月には、この取引に関する採決を行うことについて裁判所から承認を得ており、今月中に会議を開く予定。
恒大は財務を巡る不透明感が数カ月続いた後、2021年12月に初めてドル建て債のデフォルト(債務不履行)に陥った。同社の苦境をきっかけに中国不動産セクターを巡る懸念の波が発生し、その後も波紋は広がり続けている。
中国不動産開発大手の中国恒大集団は17日、米連邦破産法15条の適用をニューヨークの連邦破産裁判所に申請した。
外国企業は、債権者による訴訟や資産差し押さえなどを阻止するために連邦破産法15条を申請する。
傘下の天基控股も同日、破産法15条の適用を申請した。
中国恒大の弁護士からは今のところコメントを得られていない。
同社は最近の時点で3300億ドルの負債を抱えていた。
破産裁判所への提出書類では、香港、ケイマン諸島、英領バージン諸島で進行中の再編協議の承認を求めている。同社はこれまで、債権者が今月中に再編について投票し、香港と英領バージン諸島の裁判所が9月第1週に承認する可能性があるとしている。
中国恒大は連邦破産法15条適用承認を巡る審理を9月20日に開くことを提案した。
中国で地方政府傘下のインフラ投資会社の資金繰りが悪化している。不動産市況の悪化で資金不足に陥り、建設工事の中断も目立ち始めた。地方政府傘下の投資会社が発行する債券残高は約13兆6000億元(約270兆円)に上り、一部は利回りが10〜20%上昇している。対処を誤れば金融リスクの引き金を引きかねない。
中国の資産運用会社、中植企業集団は16日に開いた投資家との会合で、流動性危機に直面しており、債務再編を行う予定と説明した。会合の模様を撮影したビデオをロイターが閲覧した。
ビデオによると、中植の経営陣は会合で投資家に「流動性危機」に陥っていると説明し、全ての投資商品で投資家への支払いを停止したことを明らかにした。
包括的な監査のために大手会計事務所と契約したと説明。戦略的投資家を模索しているともした。
7月に始まった監査が完了するまでは債務超過状態なのか判断することはできないと語った。
債権回収や資産流動化に重点を置いた再編を通じて「自己救済」する計画だが、破綻も選択肢だとした。再編が必要な債務の規模については明らかにしなかった。
中植は鉱業から資産運用まで幅広いビジネスを手掛けるコングロマリットで、不動産へのエクポージャーも大きい。
国内メディアによると、中植は1兆元(1367億ドル)以上の資産を運用。シャドーバンキング帝国を築いており、資産運用会社5社、理財商品会社4社の株式を保有。傘下の信託大手、中融国際信託は7000億元(956億9000万ドル)以上の資産を運用している。
中植のような資産運用会社は、信託・理財商品部門を通じてシャドーバンキング関連の高利回り投資商品を販売し、資金を調達。銀行など金融機関との結びつきが強い。
中国では多くの個人・機関投資家が信託商品に投資しており、シャドーバンキング部門でデフォルトが続けば、国内経済に悪影響が及ぶ可能性がある。
シティグループは、不動産部門の低迷で今後も信託商品のデフォルトは予想されるが、「リーマン・モーメント」に発展する可能性は低いと指摘。
「不動産開発部門の問題は目新しいものではなく、すでに数年間続いている。投資家はデフォルトリスクについて心の準備ができているだろう」と述べた。
●中東
イランのアブドラヒアン外相は17日、サウジアラビアの首都リヤドを訪問し、同国のファイサル外相と会談した。イランのメディアが伝えた。訪問は3月に国交正常化で合意して以降で初めて。6月にはファイサル氏がイランを訪れていた。関係の改善が進みそうだ。
イラン側によると両外相は「イスラム教世界における互いの関心事や地域、国際問題」について協議した。
●中南米・アフリカ
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)のアブデルファタウ・ムサ政治問題・和平・安全保障コミッショナーは17日、ガーナで開かれた軍指導部による会合で、ニジェールで起きたクーデター撤回に向けた外交的取り組みなど「他のすべてが失敗した場合」、軍事介入する用意があると述べた。
ニジェールでクーデターを起こした軍事政権は15日、地域の危機を解決するための話し合いに前向きな姿勢を示した。米国やロシアなども平和的な解決を呼びかけている。
●市況ドル指数が約2カ月ぶりの高水準を付けた。前日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で利上げ継続の可能性が示されたことに加え、今週発表の米経済指標が堅調だったことが背景。
利回りが上昇。10年債利回りは10月以来の高水準となり、30年債利回りは12年ぶりの高水準となった。好調な経済指標を受けて、米連邦準備理事会(FRB)が高利を長期的に維持するとの見方が強まった。
中国経済の悪化に伴い、中国が人民元買い支え資金を調達するため米国債を売却するとの懸念も、米債市場にとってリスク要因となる。
ゴールドバーグ氏は「中国国有銀行に通貨防衛の指示が出されているため、国債が売られる可能性がある」と指摘する。
ドラッグストア・薬剤給付管理(PBM)大手CVSヘルスが8%下落し、S&P総合500種を押し下げた。カリフォルニア州の非営利保険団体ブルーシールドが同社のPBMサービスへの依存度を下げ、アマゾン・ドット・コムを含む他企業と提携する計画というニュースが重しとなった。
PBM部門を持つ医療保険大手ユナイテッドヘルスとシグナも売られ、それぞれ1.9%安、6.4%安となり、S&Pのヘルスケア指数を押し下げた。
製薬大手ファイザーは2.9%高。新型コロナウイルスワクチンについて、オミクロン型から派生した変異株「EG.5」(通称エリス)に対する効果がマウスを利用した実験で確認されたと明らかにした。
中南米金融市場では、域内通貨が総じて上昇した。ドル安と堅調なコモディティー価格が背景。アルゼンチンペソは反発した。株価は中国経済の健全性への懸念から下落した。
原油価格の上昇を受け、産油国コロンビアの通貨ペソは0.9%高となった。
ブラジルレアルは横ばい。ブラジル中央銀行のカンポス・ネト総裁は、利下げを加速させるハードルは「かなり高い」と述べ、将来の50ベーシスポイント(bp)の利下げが「適切」との見解を示した。
MSCI中南米株価指数は0.8%下落。中国の経済成長鈍化と米連邦準備理事会(FRB)の利上げの可能性への懸念を受けた。 (新興国市場サマリー)
日経先物31332、ダウ先34547、債先146.42、米4.276、独2.6830、仏3.227、西3.734、伊4.398、英4.7750、波5.673、原油80.09、銅8,239、ドル円145.66、ユーロドル1.0875
※8/18 8時55分頃
備忘録(2023/8/16)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
米ハワイ州マウイ島で発生した山火事による保険損害は約32億ドルに上る見通し。災害モデリングを手掛けるカレン・クラーク&カンパニー(KCC)が16日発表した。
KCCは衛星写真と航空写真による独自の地理空間分析で、火災の範囲に2200超の建造物が存在すると推定。特に壊滅的被害を受けた西部ラハイナは木造建造物の割合が高く築年数も古いため、被害が拡大したとみられる。
ハワイには東京海上ホールディングスなど保険大手各社がエクスポージャーを持つが、ハワイ事業がポートフォリオ全体に占める割合は低いため、容易に損失を吸収できる見通しという。
イスラエルの半導体受託生産会社タワーセミコンダクターの買収を断念すると発表した。2022年2月に54億ドル(当時の為替で約6200億円)で買収すると発表していた。複数の米報道によると、中国の規制当局から承認が得られなかったことが主因という。米中対立がM&A(合併・買収)戦略に影を落としている。
買収計画の終了を受け、インテルはタワーセミコンダクターに3億5300万ドルの違約金を支払う。両社は買収断念の理由として「買収に必要な規制当局の承認を適時に得られなかったため」としている。
タワーセミコンダクターはセンサーなどに使うアナログ半導体を主力とする受託製造会社。苦戦が続くインテルはパット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)のもと、受託生産(ファウンドリー)事業を中心に経営の立て直しを急いでいる。買収は同事業強化の柱の一つだった。
タワーセミコンダクターが持つアジアの顧客基盤獲得も狙っていたが、買収が白紙に追い込まれたことで、インテルはファウンドリー事業の成長戦略の転換を迫られる。
米中対立は「買収の可否にかなり大きく影響を与えている」(証券会社バンカー)といい、「事実上、業界の大型買収は不可能になった」(半導体製造装置幹部)との声もあがる。
世界第2位の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタルが米鉄鋼大手USスチールに対する買収提案を検討していると、事情に詳しい関係者3人が16日、匿名で述べた。
関係者によると、アルセロール・ミタルは買収提案の可能性について投資銀行と協議しているものの、提案に踏み切るかどうかは不確実という。
USスチールを巡っては、同業の米クリーブランド・クリフスと未上場企業エスマークがそれぞれ70億ドル以上の買収案を提示している。
USスチールの従業員が加盟する全米鉄鋼労組(USW)のトム・コンウェイ国際会長は、アルセロール・ミタルが買収を提案すれば「愚か」だとし、USWはクリーブランド・クリフス以外の買い手を支持しないとロイターに語った。
USスチールはクリーブランド・クリフスの買収案を「不合理」だとして拒否している。
アルセロール・ミタルが買収検討と報じられる中、USスチールの株価は16日の取引で一時6.3%急伸したが、労組の反対表明を受けて上げ幅を縮小。1.4%高の30.65ドルで引けた。
モルガン・スタンレーのアナリストは16日付のリサーチノートで、アルセロール・ミタルの動きについて、温室効果ガス排出量を削減し、インドとブラジルでの成長に焦点を当てるという同社の戦略と食い違うと指摘。USスチール買収によるコストシナジー効果の余地も限られているとの見方を示した。
●決算関連
米ディスカウントストアを展開するターゲットの5-7月(第2四半期)決算は、予想外の大幅増益となった。年内業績の会社見通しは慎重さを増したものの、株価は急伸し、このところの低調から持ち直した。
16日に発表された四半期決算では、調整後の利益が4倍を超える増益となった。積み上がった在庫の処分が進んだことを反映した。1年前は在庫処分で大幅な値引きを余儀なくされていた。
2023年5〜7月期決算は、売上高が前年同期比5%減の247億7300万ドル(約3兆6200億円)だった。高インフレで消費者の買い控えが続いており、食品や飲料といった比較的安価な商品に需要が集中した。
23年5〜7月期の既存店売上高は前年同期比5.4%減だった。販売点数も4.8%減った。生活必需品の需要は強い半面、物価高によって日用品以外の販売は振るわないという。
ターゲットはLGBTQ(性的少数者)の権利や機会平等を訴える6月の「プライド月間」に合わせ、関連する商品を展開した。こうした取り組みに一部の顧客が否定的な反応を示し、業績の重荷となった。
純利益は4.5倍の8億3500万ドルだった。値下げ幅の圧縮や流通費の削減で利益率が改善した。純利益が市場予想を上回ったことで、株価は一時、前日比8%上昇する場面があった。
ブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は決算会見で「消費者はモノよりも旅行や外食といったサービスへの支出を増やしており、必需品以外の商品の売り上げに短期的な圧力をかけている」とコメントした。
同日、24年1月期通期の業績予想を引き下げた。調整後の1株利益は従来予想の7.75〜8.75ドルから7〜8ドルに下方修正した。10月に米国で学生ローンの支払い猶予措置が終わることに言及し、一部の消費者にとって支出を控える要因になり得ると説明した。
●先進国、グローバル、金融市場
内閣府は日本国内で企業のビッグデータが生んだ価値が2010〜20年の平均で、国内総生産(GDP)に換算すると年17兆円だったとの推計をまとめた。企業の生産活動に欠かせないデータの価値を推計したのは初めて。25年以降にGDPへの計上を検討する。
GDP換算は電子商取引(EC)の購入履歴やセンサーで取得した機械の動作状況といった企業などが生産活動において記録した全データと、データをもとにした分析を対象とした。データ収集にかかった人件費などのコストを推計して価値を測った。
10〜20年の名目GDPの年平均と比べると3.2%に相当した。内閣府は推計で先行する他国の試算をふまえて3パターンではじき出した。企業が1年以上の長期にわたって使うデータなどに限ると同じ期間で名目GDP比は1.3%相当にとどまった。
7月の住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で前月比3.9%増の145万2000戸となり、市場予想の144万8000件を上回った。一戸建て住宅の着工件数が急増したことで押し上げられた。
一戸建て住宅の着工件数は6.7%増の98万3000件。中古住宅不足が深刻化する中で急増した。ただ、住宅ローン金利が20年ぶりの高水準に再び上昇していることで、新築需要が抑制される可能性がある。
6月の一戸建て住宅の着工件数は92万1000件と、従来の93万5000件から下方改定された。
7月の地域別の件数は西部が28.5%増、中西部が12.5%増。一方、北東部で3.4%減少したほか、人口の多い南部は1.3%減少した。
米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)のデータによると、需要が多い30年固定住宅ローンの平均金利はここ数週間で6.96%に上昇。昨年10月下旬から11月初旬にかけて7.08%と、2002年4月以来の高水準を付けたが、この水準に迫っていることで住宅市場の改善が鈍る可能性がある。
集合住宅の着工件数は横ばいの46万件だった。賃貸住宅需要の減少のほか、建設中の集合住宅が多いことが背景にあるとみられる。
住宅建設許可件数は0.1%増の144万2000件。
これまでの利上げが想定通りに支出とインフレ圧力の抑制に寄与しているという認識を改めて示したほか、利下げ開始予想を2025年にやや先延ばしした。
中銀は声明で「委員会は消費者物価指数(CPI)上昇率が1─3%の目標範囲に確実に戻るよう、予測可能な将来にわたりOCRを制約的な水準で維持する必要があるとの見解で一致した」と述べた。
中心的な経済見通しを前提に、インフレと雇用の目標を達成するためには、5月の声明で示した想定よりも若干長い期間OCRを現在の水準付近に維持する必要があるとの認識を示した。
金利決定と同時に発表した金融政策レビュー(MPR)によると、中銀はOCRが5.5%で据え置かれると引き続き予想。24年に25ベーシスポイント引き上げて5.75%にする可能性は40%程度となっている。
利下げは25年上期まで実施されない見込み。来年第2・四半期に利下げが始まると考えているエコノミスト予想より大幅に先送りされる形だ。
ASBのシニアエコノミスト、マーク・スミス氏は、OCRがどちらの方向に動くにもハードルは高いと指摘。「とはいえ、インフレ率の不愉快な粘着性は容認しないと示唆している」と述べた。
ニュージーランドのインフレ率は過去数カ月で低下し、現在は6.0%と30年ぶり高水準の6.7%を若干下回っている。24年下期までに中銀目標へ回帰する見通し。
HSBCのオーストラリア・ニュージーランド担当チーフエコノミスト、ポール・ブロクサム氏はリサーチノートで、依然として来年第2・四半期の利下げを予想。「予想より少し勢いがあるにせよ、経済活動は明らかに鈍化しており、経済はディスインフレとなっている。加えて、すでに実施された金融引き締めの影響が経済に完全に反映されるのはまだ先だ」と指摘した。
米金融当局が16日公表する7月25、26両日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)会合議事要旨では、年内の金利据え置きを支持した当局者がほんの少数派だったことが示される見通しだ。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)ではこのように予想している。
それと同時に、米経済がソフトランディング(軟着陸)に向かっているとして当局者の過半数が「慎重ながらも楽観的な見方を維持した公算が大きい」と、BEの米国担当チーフエコノミストのアナ・ウォン、スチュアート・ポール両氏がリポートで指摘した。
両氏は0.25ポイントの追加利上げを決めた7月会合以降の金利据え置きを支持した当局者について「FOMCの少数派」とした上で、「信用状況の悪化を一段と懸念」していた可能性があるとの分析を示した。
また、「会合後の記者会見でのパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長のややハト派的なトーンから判断すると、議長は委員会でハト派寄りである可能性がある」とコメントした。
7月会合以後のパウエル議長以外の当局者による公の発言からは、過去1年半にわたる積極的な引き締めキャンペーンを支えてきた強度のコンセンサスがほころびが生じつつある可能性がうかがわれる。
このうち、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁らは利上げ継続の必要はないかもしれないとの見解を示唆する一方、ボウマンFRB理事らは追加利上げが必要となるかもしれないと、正反対の立場を示している。
先物市場の価格動向を見ると、投資家は現時点で年内の追加利上げを見こんでいない。ただ、9月19、20両日の次回FOMC会合に比べ、10月31日-11月1日の会合で予想される利上げ確率の方が高くなっている。
FRBウオッチャーは、来週開かれるジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)でパウエル議長が何らかのシグナルを発する可能性を注視することになるだろう。
ウォン、ポール両氏は議事要旨に関し、7月会合時点のFOMCにおけるハト派とタカ派の相対的な規模の感触が得られるかもしれないとしつつも、その後に発表された経済統計を受けて双方のバランスに既に変化が生じている可能性を指摘する。
具体的には、7月28日に発表された4-6月(第2四半期)の雇用コスト指数(ECI)で急速な伸び鈍化が示された点や、8月3日発表の労働生産性指数で単位労働コストの伸びが抑制気味だった点などを挙げた。
両氏は「こうした状況を受けて、労働市場の動向がインフレ加速につながるとの懸念は抑えられるだろう」とし、「7月の会合以降、FOMCのセンチメントはもっとハト派的になったと予想される」と論じた。
政府統計局(ONS)によると、6月のロンドンの住宅価格は平均52万8000ポンド(約9815万円)と、前年同月から0.6%下落した。前回下落を記録したのは19年11月。この時は1.2%値下がりした。
ロンドンの住宅購入者は、他の地域と比べ収入に対する借り入れが多い傾向にあり、価格下落は金利上昇が住宅購入の重しとなり始めていることを示している。エコノミストらは英国全体で住宅価格は今年10%低下する可能性があると指摘する。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国の信託大手、中融国際信託の幹部は、先月末から数十の投資商品で期日までに支払いを履行できていないと明らかにした。危機に見舞われている不動産業界から金融セクターへの影響の波及に懸念が強まりそうだ。
チーフコンプライアンスオフィサーで取締役会秘書の王強氏は14日の投資家との会合で、短期的な流動性問題を抱えていると説明。会合に出席したある関係筋によると、満期を迎えた数十の商品について、支払いを履行する計画はないと語ったという。
中融はロイターのコメント要請に現時点で返答していない。王氏とも接触できていない。
中融の投資商品は不動産へのエクスポージャーが高いものが多い。週末には上場企業2社が、中融から満期を迎えた商品の支払いを受けていないとしていた。
相次ぐ低調な経済指標、不動産セクターを巡る懸念の再燃、シャドーバンキング(影の銀行)業界での危機進行などを理由に、中国のあらゆる金融市場で売り圧力が増している。この全てがデフレ圧力を生み、企業利益を損ねる恐れがある。小出しの政策は今のところ信頼の回復に結びついておらず、投資家は中国政府に一段と積極的な景気対策を求めている。
ストレーツ・ンベストメント・ホールディングスのファンドマネジャー、マニシュ・バルガバ氏(シンガポール在勤)は、「デフレ圧力に代表される中国の現在のリセッション(景気後退)的状況は、国内経済と世界的な相互作用の両方に重大な影響を及ぼす」と指摘。「景気悪化と潜在的リターン低下への懸念から、中国への資金配分に投資家は慎重になるかもしれない」と述べた。
当局が次々に打ち出した景気刺激策にも市場の反応はこれまで薄く、投資家の悲観が根深いことを浮き彫りにする。16日は当局が一部の投資基金に対し、株式を売り越さないよう要請したとブルームバーグが報じたが、それでも売りは続いた。
主要70都市の新築住宅価格(政府支援住宅を除く)は7月に前月比0.23%低下。6月は0.06%下落していた。7月の中古住宅価格は前月比0.47%低下した。
不動産開発大手の碧桂園は今月、ドル建て債2本で期日までに利払いを実行できず、30日間の猶予期間に入っており、デフォルト(債務不履行)の恐れが出ている。リスクは金融セクターにも広がりつつあり、不動産に大きなエクスポージャーを持つ信託会社が一部の商品で期日までに支払いを履行できなかった。
中指控股のチェン・ウェンジン副研究主任は「不動産市場の低迷は8月に入っても和らいでいない」と指摘。「地方の政策支援が講じられるまである程度の時間がかかることを踏まえると、短期的にはこうした市場環境が続く恐れもある」と述べた。
複数の中国メディアが16日までに、同国で1人の女性が生涯に産む子どもの平均的な人数を示す「合計特殊出生率」が2022年に1.09に下がったと報じた。人口1億人を超える国の中では中国が最も低いという。20年は1.3、21年は1.15だった。少子化や人口減少が労働力の不足につながり、経済成長を抑制する要因になる。
PIMCOのエコノミスト兼マネジング・ディレクター、ティファニー・ワイルディング氏は16日付のメモで「通常の遅れを考えると、デフレの波及は世界の消費者市場に影響を与え始めたばかりであり、今後数四半期にわたって値下げが加速する可能性が高い」とした。
中国の国営メディアは16日、李強首相が議長を務めるこの日の国務院(内閣に相当)の閣議で、今年の経済成長目標の達成に向けて政策調整を強化する方針を示したと報じた。
不動産危機の長期化、デフレ圧力、小売売上高と鉱工業生産の伸びの鈍化が明らかになるなど中国経済が苦境に陥っている中、消費拡大と投資促進に向けた政策を導入するとした。しかし、詳細は明らかにしなかった。
15日発表された低調な経済指標を受け、より堅固な経済基盤に回復させるよう当局が大規模な財政刺激策を展開するように求める声が出ている。
エコノミストらは、世界第2位の経済大国である中国が下振れ傾向にあると見ている。経済指標の低迷を受け、英バークレイズなどの国際的な金融機関は中国の2023年の経済成長率予想を引き下げた。
当局は経済の押し上げに向けた一連の政策を発表したものの、消費者への給付金支給や減税といった直接的な景気刺激策を講じていない。中国の家計は貯蓄を増やし、借り入れを減らし続けており、需要は引き続き落ち込んでいる。
UBSインベストメント・バンクのエコノミスト、ワン・タオ氏は「不動産建設の低迷が長引けば工業分野の在庫整理圧力を強め、消費需要も落ち込む」とし、「そうなれば経済の勢いは年内低迷が続く可能性があり、中国は今年の成長目標である5%前後を達成できない可能性がある」との見方を示した。
エデンツリー・インベストメント・マネジメントとGAMAアセット・マネジメントによれば、世界の工場としての中国の存在を考えると、同国の物価下落は世界全体でのコスト低下につながる可能性が高い。インフレ圧力が緩和されれば、各中央銀行は追加利上げを控えることができ、鈍化する成長のてこ入れのため緩和策に転換する可能性もある。
新型コロナウイルス禍後の景気回復が失速して勢いを取り戻せず、中国の物価下落の数少ないプラス面の一つは、世界的に物価上昇圧力が鈍化するとの見通しかもしれない。不動産業界の不況に加え、シャドーバンキング(影の銀行)業界の問題が消費者や企業の支出と投資を抑制していることから、物価の上昇は穏やかなものにとどまりそうだ。
エデンツリー・インベストメントのポートフォリオマネジャー、クリストファー・ハイオーンズ氏は「中国経済の弱さは金融引き締めピークの前倒しにつながる可能性がある。また、インフレ圧力を抑える商品需要の落ち込みをもたらし、西側経済は『より高い』成長が可能になるかもしれない」との見方を示した。
GAMAアセット・マネジメントのグローバル・マクロ・ポートフォリオ・マネジャー、ラジーブ・デメロ氏は15日、ブルームバーグテレビジョンに対し、「中国での若干のデフレと成長鈍化は、世界の他の地域でのインフレ圧力を一段と急速に抑えるだろう」とした上で、中国の成長鈍化はアジアと欧州の成長を抑制することにもつながると指摘する。
一方で、中国のデフレ輸出は世界の債券保有者と新興市場資産にとってプラスとの見解を示した。
ただ、中国の物価下落が米国やその他の貿易相手国に与える影響は軽微で一過性かもしれない。米国では中国からの物品輸入が減少する一方、ウクライナでの戦争が原油などの商品価格を押し上げている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、現在の軌道では中国の成長率鈍化が米経済や米連邦準備制度の判断に与える影響は限定的だと指摘。ただ、中国の景気刺激策が不十分で、成長率が急低下するような下振れシナリオでは、リスクオフ心理への転換と世界的な信用状況の悪化により、米金融当局は予想よりも早期に利下げに踏み切る可能性があると分析する。
一方、中国当局がさらなる刺激策を講じれば、景気悪化を食い止め、物価を下支えできるかもしれない。中国人民銀行(中央銀行)は15日、中期貸出制度(MLF)の1年物金利を予想外に引き下げた。引き下げ幅は2020年以来の大きさだった。
ダルマ・キャピタル・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、ゲーリー・ドゥーガン氏は中国経済の低迷とデフレの兆候は世界のインフレを明らかに抑制しているとした上で、「だが、中国当局が現在の停滞を黙って受け入れるとは思えない」と語った。
●中東
●中南米・アフリカ
南米アルゼンチン大統領選に出馬しているハビエル・ミレイ下院議員は16日、同国の債務問題を巡り「債務不履行(デフォルト)を避けるために全力を尽くす」と述べた。450億ドル(約6兆6000億円)規模の債権をかかえる国際通貨基金(IMF)が求めるよりもより大きい歳出削減に動いて、財政再建を目指していく。米ブルームバーグの取材に答えた。
ミレイ氏の計画には、公共事業の大幅縮小や省庁数削減、補助金廃止、企業が米ドルで取引できるようにする資本規制などにより、2025年半ばまでに国内総生産(GDP)の13%以上の歳出を減らすことが含まれている。さらに、中銀は「存在意義がない」として閉鎖し、6400億ドル(約94兆円)規模の同国経済をドル化する計画だ。
これまで本命視する投資家がほとんどいなかったアウトサイダーのミレイ氏が予備選で首位となったのを受け、アルゼンチンの資産価格は急落。政府は14日の市場取引開始時に、厳しく管理された公式為替レートの18%切り下げを余儀なくされた。
16日のアルゼンチン国債はインタビュー後、まちまちの動き。2030年償還債は0.2セント安の額面1ドル当たり31.4セントで、4日続落したが、2046年償還債は上昇。ペソは非公式の並行市場で一時4%下落し、1ドル=710ペソ前後と過去最安値を更新した。
ミレイ氏が予想外の勝利後に外国メディアとのインタビューに応じたのは今回が初めて。同氏は113%に達しているインフレ率を下げる方法として、ペソを廃止して米ドルに替える計画を詳述し、「地球上に存在するゴミで最悪のもの」と呼ぶ同国中銀への批判を強めた。
大統領選で勝利した場合、同氏は中銀の鍵をドル化計画の非公式アドバイザーであるエコノミストのエミリオ・オカンポ氏に渡し、中銀を閉鎖できるようにする方針。オカンポ氏はまた、アルゼンチン向けに440億ドルの融資プログラムを組んでいる国際通貨基金(IMF)との交渉も支援する。ミレイ氏はIMFにさらなる資金を求める計画はないとも述べた。
●市況円は対ドルで一時146.26円と昨年11月以来の安値に下落。終盤は0.45%安の1ドル=146.22円となった。
鈴木俊一財務相は15日の閣議後会見で、為替介入に踏み切る水準に関し「絶対的な数字があってそれを防衛するためにやるということではなく、まさにボラティリティーの問題」との認識を示した。
アンバーウェーブ・パートナーズの共同創設者、スティーブン・ミラン氏は「介入時期や水準について正確には分からないが、インフレを巡る状況がまだかなり悪いため、比較的近いうちに介入することになる」と指摘。「世界の他の国々の金利がはるかに高い中で円安を放置することはインフレの一段の悪化を招く可能性がある」と述べた。
米金融・債券市場では、米連邦準備理事会(FRB)が公表した7月会合の議事要旨を受け国債利回りが上昇し、10年債利回りは10カ月ぶりの高水準を付けた。
FRBは7月25─26日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%ポイントの利上げを決定。決定は全会一致だったが、議事要旨で、追加利上げの必要性を巡り当局者の意見が分かれていたことが判明。「大半の」政策当局者はインフレとの戦いを引き続き優先するとした一方、「一部の」当局者は過度な利上げによる経済へのリスクを指摘したという。
DRWトレーディング(シカゴ)のマーケット・ストラテジスト、ルー・ブライエン氏は「これまでの政策が経済にどの程度の影響を及ぼしたのか、FRB当局者はなお把握できていないもようだ」とし、利上げを一時停止した際、それまでの利上げの累積的な効果を見極めるためと説明していたが、まだ答えは得られていないようだと述べた。
7月の英CPIは前年同月比で6.8%上昇と、伸び率は昨年2月以来、1年5カ月ぶりの低水準となった。今年6月の7.9%から縮小したものの、高止まりした。
変動が激しい食品とエネルギーを除いたコア物価指数の上昇率は7月に6.9%と予想を上回り、6月分も7.2%から7.4%へ改定された。
この結果を受けてイングランド銀行(英中央銀行)が追加利上げを決めるとの予想が強まり、英通貨ポンドが対ドルで一時0.35%上昇して1ポンド=1.2744ドルを付けた。
AJベルの金融分析の責任者、ダニ・ヒューソン氏は投資家向けのノートで「14日に発表された数値は政府に少し息抜きを与えるものだが、コア(インフレ率)の数値は粘着質の絡みついた糸が切れるまで利上げを続けるよう英中銀に圧力をかけ続けるだろう」とコメントした。
市場関係者は、英中銀が9月の金融政策委員会で25ベーシスポイント(bp)の利上げを決める可能性が89%超と予想している。
中国の消費者需要の影響が大きいフランスの高級ブランドLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は0.2%、高級ブランド「グッチ」を抱えるケリング<PRTP.PA>は0.4%それぞれ下落した。
モーニングスターの欧州株式ストラテジスト、マイケル・フィールド氏は「中国がくしゃみをすれば世界中が風邪をひく。中国経済がうまく回っていないことを示すどんな指標も、中国の消費者需要という点で世界市場、特に欧州にとってマイナスだ」と指摘した。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが低下した。中国の低調な経済指標に加え、中国政府による景気刺激策は不十分との見方が引き続き投資家心理の重しとなり、安全資産である国債への買いを誘発した。
日経先物31610、ダウ先34842、債先146.53、米4.253、独2.6665、仏3.206、西3.715、伊4.354、英4.6765、波5.549、原油79.12、銅8,174、ドル円146-34、ユーロドル1.0875
※8/17 9時00分頃
備忘録(2023/8/15)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
フィッチのアナリストが最大手銀のJPモルガン・チェースも含めて格下げを示唆した。JPモルガンやバンク・オブ・アメリカの格付けは現時点で「ダブルAマイナス」としているが、格下げとなれば1段階下の「シングルAプラス」となる可能性がある。
最も格付けが上位の大手行が格下げされれば、中堅以下の銀行もあわせて影響を受ける可能性が高い。経営体質の弱い一部の中小金融機関はジャンク(投資不適格)級となる恐れがある。
フィッチは6月、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めにともない、米国の銀行業界全体の経営環境の格付けを「ダブルA」から「ダブルAマイナス」へ1段階引き下げた。米銀に対する資本規制の強化や預金金利の引き上げなど、収益を低下させる可能性のある材料を織り込んだ。
●その他産業
●決算関連
第2・四半期(5─7月)決算は、既存店売上高が2%減となったものの、リフィニティブのまとめたアナリスト予想の3.54%減ほどは落ち込まなかった。消費者が大がかりな住宅リフォームを手控えつつも、小規模な住宅修繕などへの支出を続けている様子を示唆した。5月に下方修正した通期業績見通しは据え置いた。
テッド・デッカー最高経営責任者(CEO)は「マクロ経済や消費者を巡り多くの明るい材料がある一方、かなりの不透明性も存在する」と述べた。
また、新たに150億ドルの自社株買いプログラムを発表した。
2023年5〜7月期決算は、売上高が前年同期比2.0%減の429億1600万ドル(約6兆2000億円)、純利益が9.9%減の46億5900万ドルだった。電化製品など高額品の需要が低迷していることが主な要因だ。
●先進国、グローバル、金融市場
米国で新型コロナウイルスのオミクロン型から派生した変異株「EG.5(通称エリス)」の感染が拡大している。米疾病対策センター(CDC)によると、8月5日までの1週間のコロナ入院患者数は約1万人で前週比14%増だった。4月下旬以来の多さで、米政府が5月にコロナ流行に伴う非常事態宣言を解除する前の水準に逆戻りしたかたちだ。
7月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は、前月比0.7%増の6963億5400万ドル(約101兆円)だった。市場予想(0.4%)を上回り、4カ月連続で増加した。夏季休暇シーズンに入り、外食や旅行など「コト消費」の需要が盛り上がった。
前年同月比は3.2%増だった。金額の大きいガソリンスタンドは0.4%増えたが、自動車・同部品は0.3%減った。自動車・同部品を除いたベースの売上高は1.0%増だった。
業種別の内訳を見ると、伸びが大きかったのはインターネット通販など無店舗小売り(1.9%増)だった。スポーツ・趣味用品(1.5%増)、外食(1.4%増)、衣料品(1.0%増)が続いた。
夏季休暇で旅行が回復し、コンサートなど大規模なイベントが多数開催されている。米航空最大手のアメリカン航空は4〜6月期の売上高が過去最高になるなど、外食やスポーツ用品など「コト消費」が全体の伸びをけん引した。
米バンク・オブ・アメリカが公表するクレジットカードなどの利用データに基づく消費動向によると、7月は4カ月ぶりの前年同月比プラスとなった。同社は「独立記念日に各所で実施されたイベントが前年を超える人出となったほか、映画『バービー』などの大ヒットが寄与した」と分析している。
22年夏には8%だったインフレ率が、2カ月連続で3%台まで低下する一方、賃金は上昇傾向にあり、家計の負担感は軽くなっている。
ただ消費の先行き不透明感はなお拭えない。7月も耐久消費財は低調な推移が続く。家電は1.3%、家具は1.8%それぞれ減少した。コロナ禍での在宅消費で買い込んだ反動に加え、長らく続いたインフレによる節約意識から高額品への支出を抑える傾向が続いている可能性がある。
コロナ下で抑制されていたコト消費の回復も、いつまで続くか見えづらい。9月以降は約2000万人を対象に学生ローンの支払い猶予措置の打ち切りが予定されており、消費マインドが悪化する可能性がある。
今回の統計は、力強い労働市場と賃金上昇が、多くの米消費者にさまざまな財やサービスへの支出余力を与えていることを示している。
電子商取引を含む無店舗小売りは1.9%増と、今年に入ってから最大の伸び。アマゾン・ドット・コムが実施したプライムデーのイベントが押し上げた。7月に2日間にわたって行われたこのイベントのうち初日の売上高は、アマゾンによると1日の売り上げでは同社として過去最高だった。
スティーフル・フィナンシャルのチーフエコノミスト、リンゼー・ピエグザ氏は「消費が堅調なためソフトランディングを達成できると、今回の統計は楽観を強めるだろう」とブルームバーグテレビジョンで指摘。一方で「このことは、米金融当局が政策金利をより高い水準に引き上げ、より長く維持することに一段と積極的になる必要が生じることを意味する」と述べた。
NY連銀製造業景況指数はマイナス19、予想中央値はマイナス1
前月(プラス1.1)から約20ポイント低下
同景況指数は過去2年間にわたって月間の変動が大きい状態が続いている。一方で、この統計の先行きに関する指標は、将来の需要への楽観の強まりを示唆した。
統計では、最近緩和しつつあったインフレ圧力の加速が示された。仕入れ価格と販売価格の指数は共に3カ月ぶりの水準に上昇した。
新規受注と出荷の指数はいずれも3カ月ぶりに縮小圏に沈んだ。今回のデータでは雇用水準は安定しつつも、週平均労働時間が減少したことも示唆された。
一方、景況指数の見通しは約1年ぶりの高水準に改善。企業は新規受注や雇用の見通しに楽観的だが、仕入れ価格も上昇すると見込んでいる。
8月の住宅市場指数は50となり、前月から6ポイント低下した。2022年12月以来、8カ月ぶりに前月比マイナスとなった。現在の販売状況や見通し、客足を示す指数もそれぞれ前月から低下した。住宅ローン金利が上昇基調にあることや、建築コストの高騰などを受けて需要が冷え込んだという。
8月の内訳は「現在の販売状況」が57と前月から5ポイント低下した。「今後6カ月の販売見通し」は55と4ポイント、「客足」は34と6ポイントそれぞれ前月から低下した。NAHBの会長、アリシア・ヒューイ氏は「ローン金利の上昇と、労働者不足や土地不足などを受けた建設コストの高騰が指数低下につながった」と指摘した。
2023年6月の平均賃金(ボーナスを除く3カ月移動平均)は前年同月比7.8%上昇した。データのある2001年以降で過去最高を更新した。根強いインフレへの懸念が広がっている。
伸び率は4カ月連続の上昇で、前月比0.3ポイント増となった。民間と公共部門のいずれも賃金が上がり、リフィニティブによる市場予想(7.4%)を上回った。英イングランド銀行(中央銀行)の利上げ継続の思惑も強まり、為替市場では1ポンド=185円を超える8年ぶりのポンド高・円安の水準を付けた。
欧州連合(EU)離脱による人手不足に新型コロナウイルス禍での早期退職の増加が重なり、労働需給が逼迫している。医師や鉄道職員など幅広い業種でのストライキが頻発し、賃上げを求める労働者側の圧力が強い。
短期金融市場では現在、9月の0.5ポイント利上げ確率はほぼ3分の1と見込まれている。賃金データ発表前は、0.25ポイント利上げすら完全には織り込まれていなかった。
英中銀の次の動きは16日と、9月21日の政策決定会合前日の20日に発表されるインフレデータに大きく左右される。7月の英消費者物価指数上昇率は6.7%に低下すると予想されている。これは昨年初頭以来の低水準だが、それでも英中銀の目標である2%の3倍以上だ。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の欧州グローバルマーケッツ・リサーチ責任者、デレク・ハルペニー氏は「25bpと50bpの間を行ったり来たりすることはあり得ない」としながらも、16日のインフレ指標を前に英国債利回りは上昇するだろうと述べた。
TDセキュリティーズのグローバルマクロ戦略責任者、ジェームズ・ロシター氏は、中銀が「9月に少なくとも25bpの利上げを行うことはほぼ確実だ。消費者物価指数や来月の賃金データがさらに上振れするようなサプライズがあれば、50bp利上げの可能性を排除できなくなるのは間違いない」との見方を示した。
期待指数はマイナス12.3と、前月のマイナス14.7から上昇し、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想を上回った。一方、現状指数は大幅に低下し、2022年10月以来の低水準となった。
ZEWのバンバッハ所長は発表文で「こうした期待の高まりは、独経済の現状に対する評価が著しく悪化しているという文脈で見る必要がある」と説明した。
回答者は総じて欧州や米国での追加利上げを予想しておらず、米国の経済見通しは「大幅に改善」していると指摘し、「これらの要素がドイツについての期待上昇の一因になった」と分析した。
ニューヨーク連銀の執行副総裁を務めた経歴を持ち、米クオンツヘッジファンド運営会社DEショーを今年退職したブライアン・サック氏は、「FF金利をどこまで高くするかではなく、そうした水準にどの程度の期間維持するかが、今後最も重点が置かれる公算の大きい政策的側面だ」とし、「当局者が望むならこうした方法で金融状況を引き締める余地はまだたくさんある」と話した。
次にどのような措置を講じるべきかに関しては当局者の間で見解の相違がある。フィラデルフィア連銀のハーカー総裁のケースのように、金利を「当面」据え置くことが可能だとする意見がある一方、ボウマンFRB理事のように追加利上げの必要性を指摘する声もある。
このほか、一段と重要なのは金利を景気抑制的な水準に維持する方針だとして、もう一回の利上げの可能性については、あまり重要ではないとする立場もある。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は今月、米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、ピーク金利に非常に近づいていると考えられると述べるとともに、「どれくらい長く景気抑制的なスタンスに政策を維持する必要があるかが論点となるのは明らかだ」と語った。
SGHマクロ・アドバイザーズの米国担当チーフエコノミスト、ティム・ドイ氏は、金融当局者が金利をどの程度の期間据え置くか明確にしていないのは、当局者自身が答えを見つけていないのも理由の一つだと分析する。今月開かれるジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)で当局者の一部が取り組む可能性のある課題となりそうだ。
当局者は非公式に金利をどのくらい長く高く維持するかの議論を開始しつつあり、利上げ終了でFOMCでいったん合意に達すれば、パウエル議長が他の当局者と共に文言を取りまとめて最終的にFOMC声明に盛り込まれることになるだろうと、ミード氏は解説した。
7月の消費者物価指数(CPI)の前月比上昇率は3.3%と、2年3カ月ぶりの低水準だった6月の2.8%から伸びが加速し、ロイター調査のアナリスト予想(3.0%)を上回った。
カナダ銀行(中央銀行)が重視するコア指数は高止まりしていることが示され、中銀が追加利上げに踏み切る可能性が高まった。統計局は7月のCPIについて、ガソリン価格が前年同月に前月比で大きく下落したことに伴う影響が大きいと説明。生鮮果物など食品価格が大きく値上がりし、全体を押し上げた。
●中国・アジア・ロシア・東欧
住宅が中国経済にとってますます足かせになるとの見方を示し、「住宅市場の見通し悪化」を指摘した。中国政府が若者の失業率公表を停止すると明らかにしたことについては「気掛かりだ」と記した。
中国の小売売上高や固定資産投資、工業生産が予想を大きく下回ったことは、不動産市場の不振深刻化や勢いを欠く消費という環境下で、需要の軟化を確認させるものだったと指摘した。
ロシア中央銀行は15日、臨時の金融政策決定会合を開き、政策金利を3.5%引き上げて年12%にすると発表した。急速な通貨安などでインフレ圧力が強まったことを受け、2会合連続で利上げに踏み切った。
●中東
●中南米・アフリカ
●市況主要通貨に対するドル指数が横ばい。朝方発表された7月米小売売上高は市場予想を上回った。一方、中国人民銀行(中央銀行)の予想外の利下げを受け、人民元は対ドルで9カ月ぶり安値に沈んだ。
ドル/円は一時145.865円と、6カ月ぶり高値を付けた後、145.25円まで下げた。終盤の取引では145.66円近辺で推移した。
市場では日本当局が介入のシグナルを示すか注視されている。前出のシャモッタ氏は、中国と日本の当局はともに「自国通貨の一段安をおおむね容認しているようにみえるが、為替市場で無秩序な動きが出れば介入する用意があるのは確かだ」と述べた。
<債券> 10年債利回りが一時約10カ月ぶりの水準に上昇した。7月の小売売上高が予想を上回って増加したことで、FRBがインフレ抑制に向け、より長期にわたり金利を高水準にとどめるとの観測が高まったことが背景。ただ10年債利回りはその後は失速した。
ノムラ(ニューヨーク)の米金利戦略部門責任者、ジョナサン・コーン氏は、金利が現在想定されているターミナルレート(政策金利の最終到達点)近辺に、現在の予想よりも長い期間にわたりとどまるとの観測が織り込まれたとしている。
<株式> 主要株価指数が反落して取引を終えた。予想を上回る米小売売上高を受け、金利がより長期にわたり高水準で推移するとの懸念が強まった。また、格付け会社フィッチ・レーティングスが一部の金融機関を格下げする可能性があるとの報道を受け、大手銀行株が値下がりした。
フィッチによる一部米銀格下げの可能性に関する報道を受け、JPモルガン・チェースは2.5%、バンク・オブ・アメリカ(BofA)は3.2%、ウェルズ・ファーゴは2.3%、それぞれ値下がりした。
中堅銀行のパックウェスト・バンコープ、ザイオンズ・バンコープ、ウェスタン・アライアンス・バンコープは3.7─4.5%安。連邦預金保険公社(FDIC)が14日、近く提案する新たな規制案により、大手地銀の「生前遺言(破綻処理計画)」が抜本的に手直しされることになるとの見通しを示したことが嫌気された。
S&P銀行株指数は2.75%下落し、1カ月ぶりの安値を付けた。KBW地方銀行株指数も3.4%値下がりした。
<米原油先物> 中国のエネルギー需要減退懸念の強まりを受け、続落した。米国産標準油種WTIの中心限月9月物の清算値(終値に相当)は、前日比1.52ドル(1.84%)安の1バレル=80.99ドル。10月物は1.42ドル安の80.50ドルだった。
中南米金融市場では、主要な貿易相手国である中国の景気を巡る懸念の高まりを背景に通貨が下落した。好調な小売統計を受けた米国の金利先高感も重しになった。
<ロンドン株式市場> 3日続落して取引を終えた。英国の賃金上昇率が集計開始後で最高を記録したとのデータが公表され、インフレ圧力が持続するとの懸念が強まったことで通貨ポンドが上昇したのが嫌気された。
ポンドが一時0.4%上昇したことが嫌気され、ドルでの収入が多い製薬のアストラゼネカは2.1%、鉱業のグレンコアは3.4%それぞれ下落した。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。英国とスウェーデンで発表された経済指標が利上げへの懸念を強め、売り注文を促した。中国人民銀行(中央銀行)が中期貸出制度(MLF)金利引き下げを発表したものの、投資家心理を引き上げるには至らなかった。
<ユーロ圏債券> 域内国債利回りが上昇。ドイツ10年債利回りは5カ月ぶりの高水準を付けた。直近で発表された経済指標を受け、米国の金融引き締めサイクルがピークに達したとの観測が後退した。
日経先物31905、ダウ先35008、債先146.56、米4.223、独2.6880、仏3.226、西3.721、伊4.359、英4.6480、波5.559、原油81.01、銅8,181、ドル円145.60、ユーロドル1.0902
※8/16 8時00分頃
備忘録(2023/8/14)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
米規制当局は近く、破綻した場合でも資本損失をカバーできるよう、銀行に十分な長期債発行を義務付けることを提案する。資産総額1000億ドル(約14兆5500億円)以上の銀行が対象となっている。
今年に入り相次いだ中堅銀行の破綻に対する政府の対応策の一環として、米連邦預金保険公社(FDIC)と連邦準備制度理事会(FRB)、通貨監督庁(OCC)がこの計画に取り組んでいる。FDICのグルーエンバーグ総裁が明らかにした。
同総裁はブルッキングス研究所で14日に行われたイベントで講演し、「こうした長期債の義務付けは幾つかの点で金融安定を強化する」と述べ、FDICや預金保険が適用されない預金者が損失を被る前に長期債によって損失を吸収できると説明した。
人工透析サービスの米ダヴィータ株が堅調だ。7日には一時116.97ドルと約1年3カ月ぶりの高値をつけた。買い材料として注目されたのは3日に発表された2023年4〜6月期の決算だ。増収に加え、コスト削減が進んだ点が好感された。
米連邦預金保険公社(FDIC)は14日、銀行などの経営状況を評価する年次の「リスクレビュー」を発表した。急拡大する商業用不動産(CRE)向け融資について信用リスクが拡大する懸念を示した。有価証券の含み損は高水準で推移しており、収益を圧迫するリスクも指摘した。
スイス金融大手UBSと米司法省は14日、2006年から07年にかけての住宅ローン担保証券(RMBS)の販売などを巡る問題で和解したと発表した。UBSは和解金として14億3500万ドル(約2070億円)を支払う。UBSは和解費用は全額引き当て済みとしている。
米司法省はUBSが顧客に対しRMBSの裏付けとなる住宅ローンについて不適切な説明をしたとして、18年に提訴に踏み切った。和解に伴い同省の訴えは却下される。
米司法省は2008年の金融危機をきっかけに金融機関などによるRMBS関連の不正を追及してきた。UBSとの和解によりRMBS関連のすべての案件が終了するという。UBSを含め米国内外の18の金融機関や格付け機関が和解金支払いに合意し、和解金額は合計で360億ドルを超えた。
●その他産業
4〜6月期に米大手住宅メーカーのDRホートンやレナー、NVRの株式を計8億1400万ドル(約1200億円)分、新規に取得したことがわかった。一方で米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)株は保有株式数を45%減らした。
米国では新築住宅への需要が旺盛で、住宅メーカー各社の業績は好調だ。米連邦準備理事会(FRB)の利上げで住宅ローン金利は高止まりしているが、住宅売買の大半を占める中古住宅の在庫払底により、住宅購入希望者が新築住宅を選ぶようになっている。こうした状況は当面続くとの見方が投資判断の背景にあったようだ。
開示を材料に14日の時間外取引でDRホートンやレナーは同日終値に比べて3%程度上昇する場面があった。バークシャーは1〜3月期に新規取得したクレジットカード発行大手の米キャピタル・ワン株を買い増し、保有株式数を26%増やした。
一方、米ゲーム大手アクティビジョン・ブリザードの保有株式数は7割減らした。米石油メジャーのシェブロンも株式数を7%減らした。4〜6月期決算資料によるとバークシャーの株式売買は79億8100万ドルの売り越しだった。
14日の米株式市場で、ハワイアン・エレクトリック・インダストリーズが急落。多数の死者を出したハワイ州マウイ島での大規模な山火事を巡り、同社の送電線が関連しているとの懸念が広がった。
ハワイアン・エレクトリック株は14日午前に一時42%超下げて18.70ドルを付けた。同社に対しては、乾燥した強い風で危険な状況につながる恐れがあるとの予報が出されていたにもかかわらず送電を止めなかったとして、批判の声が上がっている。弁護士らは、ハワイアン・エレクトリックの設備が発火源となった可能性があるとみて、週内に訴訟を起こす計画だ。
当局は今回の山火事の原因についてまだ特定していない。またハワイアン・エレクトリックは、考えられる原因についての情報を持ち合わせていないと説明。ハワイ州のロベス司法長官は11日、当局の山火事への対応に関して捜査を始めると明らかにしている。今回の山火事での死者は90人余りに達している。
米鉄鋼加工・流通会社エスマークは14日、米鉄鋼メーカーのUSスチールを現金78億ドル(約1兆1400億円)で買収する案を提示したと明らかにした。米クリーブランド・クリフスによる一方的な買収案に対抗する提案だ。
株式未公開のエスマークは最近、企業の合併・買収(M&A)に積極的ではなかった。同社の事業は粗鋼生産より鉄鋼の加工・流通が中心。
米鉄鋼業界の勢力図を塗り替えるとも考えられる状況が急速に進展しつつあり、エスマークの発表は思わぬ展開だ。USスチールはクリフスからの買収提案を拒否した後、代替策について戦略的検討に入ったと13日に明らかにした。クリフスの提案は11日の株価終値に基づく評価額が約72億5000万ドル。
●決算関連
●先進国、グローバル、金融市場
日本の不動産市場について、ブラックストーン不動産部門日本代表の橘田大輔氏は「引き続き非常に魅力的」との認識を示した。日本ではデータセンターやホテル、賃貸住宅などに注力しつつ「良いアセットなら何でも買う」と強調。特に一段のインバウンド需要が見込めるホテルや企業統治(ガバナンス)改革の一環で事業会社が保有不動産を手放す動きなどに好機を見いだしているという。
借り入れコストの上昇で資金調達が難しく、かつ社員がオフィス回帰を敬遠する傾向のある諸外国と比べ、日本は金利が低く、不動産資産からの収益が借り入れのコストを上回る数少ない先進国市場の一つとなっており、外国人投資家を呼び込んでいる。
投資余力について橘田氏は「過去の例では、アジア全体の投資余力の4分の1程度を日本に振り向けてきた」と述べた。ブラックストーンの決算資料によると、同社は新たにアジアファンド82億ドルを設定しており、単純計算では5年間で少なくとも20億ドル程度の対日投資を実施する可能性がある。
橘田氏によると、同社は新型コロナウイルス禍のピークだった2020年から22年半ばにかけて日本で75億ドルの不動産投資を実行した一方、22年半ばから売却を先行させ、逆に45億ドルの資産を手放した。足元は米国の金利上昇への警戒感が薄らぎ、グローバルに見た投資環境が好転していることもあり、投資を増やしているという。
複数の関係者によると、ブラックストーンは4月、都内のホテル1件を取得した。橘田氏は「投資に青信号はともった」としつつも、国内では金利動向に不透明さが依然残ることなどからも、「アクセルを踏むというよりは制限速度を守りながら」厳選投資していく方針を示した。
イエレン米財務長官は14日にラスベガスで開催されるイベントで、経済安全保障を守るために米国は弾力的で多様なクリーンエネルギーの供給網構築に取り組んでいると表明する。講演の準備原稿が明らかになった。
一部の国への過度の集中がもたらすリスクを避けることも表明する。
米経済の底堅さを称賛する一方で、米製造業を再生しボトルネックを減らし、混乱を緩和し経済安全保障を守る上で、1年前に成立したインフレ抑制法のような主要法案の重要性を強調する。
ロイターが入手した講演原稿の抜粋によると、化石燃料からの脱却を進める中で、クリーンエネルギーの供給網の過度な集中への懸念を表明する。
「バッテリーやソーラーパネル、重要鉱物などの重要なクリーンエネルギー製品の材料の生産は一部の国に集中している」と述べる。
米国はより強靭で多様な供給網を構築するために国内に投資し、また他国がエネルギー転換を加速させるのを支援していると説明する。
「インフレ抑制法はクリーンエネルギー経済にとって重要な生産拠点の再移転を支援している」と指摘。「こうした移行を加速させることは、米国の労働者が生産するクリーンエネルギー技術に対する需要の拡大を意味する。また国際的なクリーンエネルギーの供給網の強化にもつながる」と述べる。
300人を超える米軍高官の議会承認が滞っている。米兵が人工妊娠中絶をするための渡航費を補助する制度に野党・共和党議員が反対するからだ。党派対立が国防分野に波及し、中国やロシアへの対処に影を落とす。
ニューヨーク連銀が14日発表した7月の消費者調査によると、短期的な物価見通しを示す1年先の予想物価上昇率(中央値)は3.5%と前月から0.3ポイント下がった。2021年4月以来、2年3カ月ぶりの低水準となった。食品やガソリン価格、家賃、医療費などすべての分野で物価上昇期待が低下した。
より中長期的な見通しを示す3年先と5年先の予想物価上昇率はいずれも2.9%と前月からそれぞれ0.1ポイント低下した。米連邦準備理事会(FRB)が目標としている2%の水準は上回っている。
食品の1年先の物価予想は前月を0.1ポイント下回り、20年9月以来の低水準となった。医療費は0.9ポイント下がり、20年11月以来の低水準を記録した。ガソリンは0.2ポイント、大学教育費は0.3ポイント、家賃は0.4ポイントそれぞれ前月から下落した。
家計所得の増加予想は3.2%と前月から横ばいとなった。一方で家計支出の増加予想は5.4%と前月から0.2ポイント上がった。
中国にある生産拠点の代替候補地を中国マネーが席巻している。日米は友好国にサプライチェーン(供給網)を移す「フレンドショアリング」を急ぐが、ベトナムやタイ、メキシコへの投資で機先を制されつつある。ブロック化の穴を埋めるのは簡単ではない。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ラトビアのカリンシュ首相は14日、辞任の意向を表明した。連立政権の拡大を提案していたが連立相手の党の支持を得られなかった。新たな首相を選出することで事態の打開を図る。ロイター通信が報じた。
2022年10月の総選挙を経て、カリンシュ氏率いる中道右派の「新統一」は連立政権を発足させた。同氏は11日、新たに党を加えることを提案したが、支持を得られなかった。
与党連合は5月の大統領選挙でも共同候補の擁立に失敗し、関係が悪化していた。
中国最大級の資産運用会社の一つである中植企業集団を巡る懸念が、同国のシャドーバンキング(影の銀行)業界の健全性に対する新たな不安を引き起こしている。
中植の傘下企業が組成した高利回りの信託商品で支払いが履行されなかったと、顧客3社が11日遅くに開示した。中植の運用資産は約1兆元(約20兆円)。傘下の信託会社の一つである中融国際信託は昨年、回復を見込んで不動産プロジェクトの権益を取得していた。
支払い遅延で、中国の2兆9000億ドル(約420兆円)規模の信託業界の健全性を巡る懸念が強まる公算が大きい。信託会社は、商業銀行や投資銀行、プライベートエクイティー(PE、未公開株)、ウェルスマネジメントのそれぞれの特徴を備えている。個人の貯蓄を集め、融資の提供や不動産、株式、債券、商品への投資を行っている。
投資家の間では中国の経済と金融市場の状況について既に懸念が強まっている。中国有数の不動産開発業者である碧桂園は、先週7日の利払いを履行できず、デフォルト(債務不履行)回避のための猶予期間が30日を切った。中国の新規融資は7月に2009年以来の低水準に落ち込んだ。
中国当局はこの数年間で信託業界への懸念を強め、規模の抑制を目指してきた。同業界はかつて、中国の富裕層に高いリターンをもたらす安全な投資先と受け止められていたが、この数年間は特に不動産関連の投資で支払いの不履行が起きている。
南都物業と金博が中融国際信託による支払い遅延について最初に公表したのは11日夜。カーボン製品メーカーの金博は上海証券取引所に提出した資料で、支払いの滞りは中融国際信託の信託商品に投資された6000万元と関連するものだと説明した。中植は中融国際信託の第2位の株主で、出資比率は約33%。
11日には別の上場会社も、中植の傘下部門から購入した信託商品の一つで今月の支払いが遅れており、回収するため法的措置を取ると明らかにした。
国家金融監督管理総局と中融国際信託、中植はコメントの要請に返答していない。
中融国際信託はウェブサイトに掲載した資料で、同社が業務を継続できなくなったとする偽の書簡がソーシャルメディア上に出回っていることを認識しており、当局に報告したと明らかにした。
データプロバイダーのユーストラストによると、中融国際信託だけで270商品、総額395億元が年内に償還期限を迎える。これら商品の平均利回りは6.88%と、銀行がベンチマークとしている1年物預金金利の1.5%を大きく上回る。
中植は創業者の解直錕氏の下、信託会社やPE、ウェルスマネジメントの事業を抱える巨大な金融持ち株会社に成長したが、同氏は2021年に心臓発作で死去した。
米金融大手JPモルガンは14日、中国の不動産開発大手、碧桂園の債務支払い遅延を受け、運用資産2兆8000億元(3857億8000万ドル)相当と試算する中国の不動産投資信託(REIT)のリスクが高まると警告した。
JPモルガンは不動産融資問題の「悪循環」が予想され、不動産開発会社とノンバンク債権者の流動性ストレスを強める恐れがあると指摘した。
碧桂園は11のオンショア債の取引停止が明らかになった後、満期を迎えるオンショア私募債の償還を延期するよう求めるのは初めて。
キャサリン・レイ氏が率いるJPモルガンのアナリスト・チームは投資家向けメモで「持ちこたえる力があり、債権をロールオーバーして解決を待つことができる銀行とは異なり、信託などの代替的な資金調達チャネルは信託投資家が商品をロールオーバーする意向がなくなればデフォルト(債務不履行)に陥る可能性がある」と記した。
その上で信託は発行済み商品の支払いが滞った場合、既存の投資家の救済が必要になる可能性があると警告。この場合、可能性は低いながらも、銀行が資金ギャップを埋めざるを得なくなるかもしれないとの見方を示した。
より広範な影響として、信託のデフォルトが増えた場合は中国の経済成長を直接0.3─0.4%ポイント引き下げる可能性があると警告した。
中国で鉄鋼メーカーの再編が加速している。粗鋼生産量で世界3位の鞍鋼集団(遼寧省鞍山市)が7月末、中堅メーカーに出資した。世界1位の中国宝武鋼鉄集団(上海市)も新たな買収を検討中だ。中国では鉄鋼メーカーが乱立し、供給過剰が鮮明だ。政府の指示を受けて、今後も合従連衡が進みそうだ。
7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で7.44%上昇し、伸び率は2022年4月以来、1年3カ月ぶりの大きさとなった。インド準備銀行(RBI、中央銀行)のインフレ目標範囲(2―6%)の上限を5カ月ぶりに超えた。
野菜や穀物など食品価格が高騰したのが要因で、モディ政権に対応を求める圧力が強まるとみられる。 ロイターがまとめたエコノミスト53人の市場予想は6.40%上昇だった。6月の上昇率は4.87%だった。
インディア・レーティングスのエコノミスト、デベンドラ・パント氏は「23年7月のCPIの急上昇は予想されていたが、7.44%という上昇率は全く予想外だった」と述べた。
CPI全体の半分近くを占める食品価格の伸び率は7月に11.51%と20年1月以来、3年半ぶりの大きさとなった。6月の4.49%から大幅に上昇した。
7月の野菜の価格は37.34%上昇。6月は1%下落していた。トマト、タマネギといったインドで最も多く使われる野菜の一部の価格がここ数カ月で2倍超上昇した。
7月の穀物の価格は13.04%と、6月の12.7%から上昇した。パント氏は「野菜価格の高騰は季節的なものだが、心配なのは穀物価格上昇の構造的な性質だ」と指摘した。
報道によると、中国の電気自動車(EV)メーカー、比亜迪(BYD)の傘下部門を含む計8社が、総額500億元(約1兆円)相当の社債とABSを近く発行する可能性がある。
中国の景気回復は不動産不況の悪化に圧迫されており、最新の経済指標では成長回復の兆しがほとんど見られない公算が大きい。
15日発表の中国の7月の工業生産と小売売上高、1-7月の固定資産投資は小幅な増加にとどまる見通し。不動産投資は引き続き減少した公算が大きい。大手不動産開発業者の債務危機を巡る懸念や住宅販売のさらなる減少によって、同セクターの回復が抑制されている。
さらに、中国の一部地域が豪雨や洪水に見舞われたことで、先月の建設活動が妨げられた。
今回弱い指標が示されれば、これまでかなり消極的な対応だった当局に追加的な金融や財政刺激策を求める圧力が高まる公算が大きい。ただ、エコノミストによれば、人民元安と高い債務水準のため、政策当局者はより強力な措置を講じることを控えており、今年の刺激策は過去の景気低迷時の措置を下回る可能性が高い。
こうした慎重なアプローチを受け、7月にデフレの兆しが示されたにもかかわらず、中国人民銀行(中央銀行)は15日に中期貸出制度(MLF)の1年物金利を据え置くと、ブルームバーグのエコノミスト調査で見込まれている。
不動産投資は7月にさらに縮小した可能性が高く、ブルームバーグ調査のエコノミスト予想によると、1-7月は前年同期比8%減になったと見込まれている。1-6月は7.9%減だった。
1-7月の固定資産投資は同3.7%増と、1-6月とほぼ同ペースの伸びとなったと予想されている。
7月の工業生産は前年同月比4.3%増と、前月の4.4%増から若干伸びが鈍化したと見込まれている。
小売売上高は同4%増と、前月の3.1%増を上回る伸びとなる見通しだが、依然として新型コロナウイルス禍前の8%超の増加率を大きく下回るだろう。
●中東
米国とイランは関係修復を探る。両国は囚人交換とイラン保有資産の一部凍結解除で最終調整に入った。バイデン米政権はイランの核開発を制限する多国間協議の再開に向けて布石を打つ。中東で一定の影響力を維持する狙いだ。
米国家安全保障会議(NSC)は10日の声明で、イランの刑務所で拘束されてきた米国籍の5人が自宅軟禁に移ったと明らかにした。解放に向けた前進を示し「最終的な解放に向けて交渉は続いており機微に触れるものだ」と言及した。
イランのバゲリ外務次官は囚人交換に加え、米国はイラン資産の凍結解除に応じると説明した。米紙ニューヨーク・タイムズによると、イランは韓国にある約60億ドル(8700億円)の資金を使えるようになる。
NSCのカービー戦略広報調整官は11日、イランとの協議は続いているとしたうえで「資金は軍事転用ができない食料や薬、医療物資の調達にだけ使える」と記者団に話した。カタールで資金を管理し、米国が使途を厳しく監視すると強調した。
60億ドルは韓国政府が原油購入のために支払う予定だったもので、米国の制裁により凍結されていた。イランは違法に差し押さえられた資金だとして支払いを繰り返し求めてきた。
イランの外務省報道官は14日の記者会見で「囚人交換や資産凍結の解除は核合意と直接関係ないが、互いに影響する可能性はある」と指摘した。
米国とイランは数週間をかけて囚人の交換や資産凍結の解除を進める見通しだ。両国は国交を持たず、オマーンやカタールなどを介して交渉を重ねてきた。
米国とイランの間接交渉では、イランがウラン濃縮度を60%以下に下げる方針で一致したとされる。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルはイランが保有する濃縮ウランの一部で合意を履行したと報じた。
イランは米制裁の長期化で国内経済が疲弊しており、さらなる関係悪化を食い止めたい考えだ。拘束者の解放や核開発で一部譲歩する姿勢を見せ、米国側の出方を見極めるとみられる。
21年に発足したバイデン政権は核合意の再建を目指した。再建交渉は一時妥結に近づいたが、イランが米国の再離脱を警戒して暗礁に乗り上げた。22年には核合意に加わったロシアがウクライナ侵攻を開始。ロシアと米欧との亀裂は決定的となり、従来の枠組みでの再建はさらに遠のいた。
米国の離脱に反発したイランは核合意で制限されたウラン濃縮活動を加速した。米国家情報長官室は3月公表の年次報告書でイランが最大90%までウラン濃縮を進めるシナリオに言及した。濃縮度90%は核爆弾の製造が可能な水準と位置づけられる。
22年12月にはイスラエルでネタニヤフ氏が首相に返り咲いた。ネタニヤフ氏はイランに対して武力行使を排除しない構えだ。イランは核爆弾を保有する方針はないと公言するが、イスラエルの懸念は根強く、米国が対応を迫られている。
対立が続いていたイランとサウジアラビアは3月、中国の仲介により外交正常化に合意した。バイデン政権はイランとの核協議再開を通じて中東の安定に関与し、同地域で存在感を増す中国に対抗する狙いがある。
とはいえ、バイデン政権がイランとの歩み寄りに使える手段は少ない。イスラエルメディアによると、同国首相府は「イランの核関連インフラを解体しない取り決めは核開発計画を止めず、イランが支援するテロ集団に資金提供するものでしかない」と言明した。
60億ドルの利用をイランに認めるバイデン政権を非難するものだ。バイデン米大統領は秋に米国でネタニヤフ氏と会談する計画だが、イラン問題で協調を打ち出せるかどうかは見通せない。
米国内では野党・共和党もバイデン政権を批判する。マイケル・マコール下院外交委員長は13日、FOXニュースのインタビューで資産凍結解除に関してイランのテロ行為や核開発を後押しすると主張し「過去の誤りに回帰する」と唱えた。
24年11月の米大統領選に向け、共和党はバイデン政権がイランに弱腰だとの批判を強めていく公算が大きい。
米国はイランがウクライナ侵攻を続けるロシアを軍事支援していると非難してきた。バイデン政権はイランに弱腰と受け取られるとウクライナや欧州から批判を浴びるリスクをはらむ。
●中南米・アフリカ
南米アルゼンチンで13日、大統領選の予備選挙が実施され、極右と呼ばれる第三極のハビエル・ミレイ下院議員が首位となった。年率100%超というインフレに直面するなか、同氏の過激な主張に国民の支持が集まった。アルゼンチンは金利引き上げと自国通貨交換レートの切り下げを通じ、投資家の不安解消に努めている。中央銀行を焼き払うと宣言したポピュリスト(大衆迎合主義者)のハビエル・ミレイ下院議員が、大統領選挙の予備選で予想外の支持を集めたことを受け、14日の金融市場ではアルゼンチン資産への売りが止まらない。
通貨防衛のための資金が底をつく中、政府はペソの公式為替レートを18%切り下げ、1ドル=350ペソ前後とし、同時に主要金利を21ポイント引き上げて118%にするという大胆な政策転換を行った。ペソは並行市場で一時14%下落し、史上最安値を記録した後、下げ幅を縮小した。株価も売りを浴び、米国で取引される上場投資信託(ETF)は一時、2020年3月以来の急落となった。
西アフリカ・ニジェールでクーデターを起こした軍事政権は13日、追放を宣言したバズム大統領を反逆罪で訴追する方針を発表した。バズム氏が外国の指導者らに軍事介入を正当化するために虚偽の説明をし、平和的な政権移行の妨害を試みたとしている。有罪になった場合、死刑もあり得る。AP通信などが14日報じた。
周辺国や米国は激しく反発。ECOWASは、平和的な解決に意欲を示したとされるチアニ氏の姿勢に「矛盾する」との声明を発表した。米国務省のパテル副報道官は、訴追方針は「完全に不当だ」と非難した。
ECOWASは10日、介入に備える待機軍を編成することを決めており、地域の緊張が高まっている。
南米アルゼンチンの中央銀行は14日、通貨ペソを対ドルで約2割切り下げた。13日の大統領選の予備選挙で、中央銀行の廃止を主張するハビエル・ミレイ下院議員(52)が首位となった。同氏が大統領になれば、通貨が実質的に切り下げられるとの見方が広がるのに対応した。同時に、急速な下落を抑えるため、政策金利は97%から118%に引き上げを決めた。
アルゼンチン中銀は14日、自国通貨ペソを約18%切り下げるほか、政策金利を21%ポイント引き上げ118%にすると発表した。13日に実施された大統領選挙の予備選の予想外の結果を受け、アルゼンチン金融市場に対する圧力が高まっている。
アルゼンチン大統領選挙の予備選では、独立系で極右のリバタリアン(自由至上主義)経済学者であるハビエル・ミレイ氏が予想外にトップに躍り出た。同氏は中央銀行の廃止と経済のドル化を公約に掲げ、型破りなスタイルはトランプ米前大統領を彷彿とさせる。
中銀によると、公式レートは10月の大統領選挙まで1ドル=350ペソで固定されるという。非公式レートは取引開始序盤に約10%下落し、1ドル=670ペソと過去最安値を更新した。
キャピタル・エコノミクスのチーフ新興国市場エコノミスト、ウィリアム・ジャクソン氏は「ペソ切り下げはペソを公正価値に近づけるのに役立つ」と指摘。「しかし、(これまでの政策のように)ペソを徐々に下落させるのではなく、選挙まで安定させるということは今後数カ月間でペソが再び大幅に過大評価されることになる」と述べた。
●市況
中国経済への懸念から安全資産に資金が流入し、主要通貨に対するドル指数が約1カ月ぶりの高値を付けた。こうした中、円は対ドルで昨年11月以来の安値を更新し、市場では政府・日銀による介入警戒感が高まっている。
政府・日銀は昨年9月、145円台で円買い・ドル売り為替介入を実施。マネックスUSA(ワシントン)の外為トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「向こう2、3週間以内に日銀から何らかのニュースが出てきても、それほど驚くべきことではない。特に1ドル=147円に向かい始めれば、政府・日銀は動くだろう」としている。
この日は関係筋がロイターに対し、中国の不動産開発大手の碧桂園が9月2日に満期を迎えるオンショア私募債の償還を3年延期するよう求めていると明らかにした。米金融大手JPモルガンは碧桂園の債務支払い遅延を受け、運用資産2兆8000億元(3857億8000万ドル)相当と試算する中国の不動産投資信託(REIT)のリスクが高まると警告している。
こうした中、中国を中心に世界経済の健全性に対する懸念が高まり、安全資産としてのドルに買いが入り、主要6通貨に対するドル指数は0.301%高の103.170と、約1カ月ぶりの高値を更新した。
豪ドルは対米ドルで0.28%下落し、5月以来の安値を更新。豪ドルは中国に対する投資家心理を反映しやすいとされる。
アルゼンチンペソは急落。アルゼンチン大統領選挙の予備選で独立系で極右のリバタリアン(自由至上主義)経済学者であるハビエル・ミレイ氏が予想外にトップに躍り出た。これを受け、アルゼンチン中央銀行はペソを約18%切り下げるほか、政策金利を21%ポイント引き上げ118%にすると発表。ペソの公式レートは10月の大統領選挙まで1ドル=350ペソで固定するとした。
<債券> 指標10年債利回りが9カ月ぶりの高水準を付けた。15日に発表される7月の米小売売上高は堅調な伸びを示すと見込まれている。ただ、夏季休暇中で商いは低調だった。
<株式> 上昇。米半導体大手エヌビディアがモルガン・スタンレーの強気な見方を手掛かりに上昇し、ナスダック総合とS&P総合500種押し上げに寄与した。
モルガン・スタンレーのアナリストは14日付のリポートで「AI関連へと支出が大きくシフトしていることや、かなり例外的な需給の不均衡が今後数四半期続く見込みであることから、エヌビディアは引き続き当社のトップピック銘柄だ」と述べた。
電力会社ハワイアン・エレクトリック・インダストリーズは約34%急落。ハワイ州マウイ島で8日発生した大規模森林火災の原因が、同社の送電設備と関連している可能性があるという懸念が広がっている。
<米原油先物> エネルギー消費大国である中国の景気回復を巡る不透明感の強まりを受け、反落した。米国産標準油種WTIの中心限月9月物の清算値(終値に相当)は前週末比0.68ドル(0.82%)安の1バレル=82.51ドルだった。10月物は0.65ドル安の81.92ドル。
中南米金融市場では、アルゼンチンペソが非公式レートで1ドル=700ペソを越えて急落した。13日に実施されたアルゼンチン大統領選挙の予備選で、独立系で極右のリバタリアン(自由至上主義)経済学者であるハビエル・ミレイ氏が予想外にトップに躍り出たことを受けた。
ミレイ氏は中央銀行の廃止と経済のドル化を公約に掲げている。グローバルX MSCIアルゼンチンETFは日中に一時約8%安。終盤は2.9%安となった。
アルゼンチン中銀は14日、自国通貨ペソを約18%切り下げるほか、政策金利を21%ポイント引き上げ118%にすると発表。国際通貨基金(IMF)は14日、アルゼンチン当局による最近の政策措置および、安定を守り、外貨準備を積み増し、財政秩序を強化するとのコミットメントを歓迎した。
MSCI中南米通貨指数は1.2%下落。MSCI中南米株価指数は2%下げた。一方、安全資産としての需要を背景にドル指数は1カ月ぶりの高値を付けた。
<ロンドン株式市場> 続落して取引を終えた。中
国の景気回復と過大な負債を抱えた不動産市場への懸念が高まる中、鉱業株や石油株の下落が相場全体の重荷となった。
<欧州株式市場> 反発して取引を終えた。ヘルスケアや小売株が上昇した一方、中国の不動産分野への懸念が響いて資源株や石油・ガス株は下落した。
<ユーロ圏債券> ドイツ10年債利回りが1カ月ぶりの高水準を付けた。米指標や天然ガス価格の上昇を背景とするインフレ懸念の再燃を受けた米国債に追随した。
日経先物32350、ダウ先35371、債先146.56、米4.197、独2.6390、仏3.172、西3.648、伊4.265、英4.6125、波5.559、原油82.39、銅8,294、ドル円145.41、ユーロドル1.0908
※8/15 8時50分頃
備忘録(2023/8/10-13)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
医療用麻薬「オピオイド」入り鎮痛剤、「オキシコンチン」の中毒問題を巡り、米製薬会社パーデュー・ファーマが60億ドル(約8700億円)を支払うとして決着した和解について、米連邦最高裁判所は10日、無効化を検討することで合意した。創業家のサックラー一族を不当に保護するものだとするバイデン政権の主張を取り上げる。
パーデュー・ファーマの破産と再建計画はこれで白紙に戻される可能性がある。同社は破産によって山積する訴訟を終わらせ、数十億ドルもの資金を「オピオイド危機」緩和の取り組みに振り向ける計画だった。この和解の一環として、サックラー一族はパーデュー・ファーマの所有権を手放し、最大60億ドルを払うことに同意していた。
最高裁はまた、このケースを判事が審理する間は和解は停止されるとの判断を下した。12月に弁論手続きを予定しており、判決が出るのは来年早期になる可能性が高い。
イス金融大手UBSは11日、同業のクレディ・スイス・グループ買収に伴う損失に関するスイス政府の保証を終了すると発表した。UBSが自主的に終了を決めたという。クレディ・スイスの事業を精査し、保証が不要と判断したためだ。
UBSは11日発表した声明で「6月の買収後に保証対象となるすべての資産を精査し、資産価値を適切に調整した結果、保証は今後不要だとの結論に達した」と説明した。スイス中銀が提供する流動性支援枠の利用も終了する。
今回の判断の背景には、当局主導の買収に対するスイス国民からの反発への配慮があるとみられる。スイス国内では損失保証などによる納税者負担への懸念がくすぶる。大手2行の統合が競争を阻害して顧客の利便性が低下するとの不安もある。
●その他産業
アマゾン・ドット・コムやメタなど米テクノロジー大手5社の従業員数が減少に転じた。各社は大規模なレイオフ(一時解雇)などを通じて拡大路線を修正し、人工知能(AI)を使った自動化分野にも力を入れる。インターネット産業の発展とともに伸び続けたテック大手の雇用吸収力はピークを過ぎた可能性がある。
高級ブランド「COACH(コーチ)」や「ケイト・スペード」を傘下にもつ米タペストリーは10日、英高級ブランド「ジミー・チュウ」などを展開する米カプリ・ホールディングスを買収すると発表した。買収額は約85億ドル(約1兆2300億円)。経営資源や顧客基盤を集約し、再編が進む高級ブランド市場の競争激化に備える。
タペストリーとカプリが合意した。タペストリーはカプリのすべての発行済み株式を現金で買い取る。規制当局とカプリの株主の承認を経て、2024年に手続きを完了する予定だという。
統合後の売上高は年間120億ドルにおよぶ見通し。タペストリー傘下のコーチやケイト・スペードなどの高級バッグに加え、カプリのジミー・チュウや「ヴェルサーチェ」「マイケル・コース」といった服飾から靴、雑貨まで扱うブランドが加わる。互いの顧客ネットワークを生かし、全体の販売底上げを狙う。
タペストリーのジョアン・クレボイセラ最高経営責任者(CEO)は10日、米CNBCに対し、多様な顧客層を抱えるカプリの買収は相乗効果が大きいと強調した。マイケル・コースは若年層に人気がある一方、ヴェルサーチェやジミー・チュウは富裕層向けの販売が多い。
グッチやイヴ・サンローランなどの高級ブランドを持つ仏ケリングも7月末、イタリアの高級服メーカー、ヴァレンティノの株式30%を現金17億ユーロで購入すると発表したばかりだ。
グーグルの親会社アルファベットは雇用削減やさまざまな「ムーンショット」プロジェクトでの損失を食い止める取り組みなどにより、4-6月(第2四半期)に約290億ドル(約4兆2000億円)の現金を創出した。その結果、同社の現金および短期有価証券は約1180億ドルと、ナスダック100指数構成企業ではアップルの約1670億ドルに次ぐ規模となっている。
しかし、自社株買いや配当を通じて株主還元を進めるアップルとは異なり、アルファベットの資本還元策はあまり明確には定義されていない。
シノバス・トラストのシニアポートフォリオマネジャー、ダニエル・モーガン氏は「以前はアルファベットを巡り、この問題に取り組む必要はなかった。なぜなら同社は、これほどの現金を生み出すことにそこまで積極的ではなかったからだ」とインタビューで語った。
またアルファベットは、アクティビジョン・ブリザードを690億ドルで買収する計画を進めるマイクロソフトとは対照的に、大型買収からも遠ざかっている。
ただ、仮にアルファベット経営陣が大型買収を望んでいるとしても、規制当局の監視が厳しくなっていることを踏まえると、その実現は難しいかもしれない。マイクロソフトのアクティビジョン買収完了までの道のりは険しく、アマゾン・ドット・コムによるアイロボットの買収はまだ規制当局の調査を受けている。
CFRAリサーチのアナリスト、アンジェロ・ジノ氏は「マイクロソフトによるアクティビジョン買収のような大型案件は、規制環境を考えると難しい」と指摘。アルファベットは「非常に小規模な」買収などを続けていく公算が大きいと述べた。
アルファベットにとっては、マイクロソフトが「ChatGPT(チャットGPT)」の開発元オープンAIに対して行ったような戦略的投資の方が賢明な手かもしれないと、シノバス・トラストのモーガン氏はみている。
●決算関連
東京エレクトロンが10日発表した2023年4〜6月期連結決算は純利益が643億円と前年同期比で27%減った。半導体市場の低迷で半導体製造装置の販売が減り、3四半期連続の減益だ。事前の市場予想(610億円)は上回った。注目される生成AI(人工知能)向けは引き合いが強まっているが、本格的な業績貢献は25年3月期の見通しという。
●先進国、グローバル、金融市場
日本、英国、イタリアが共同で進める次期戦闘機の開発計画「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」にサウジアラビアが参画を打診した。英フィナンシャル・タイムズ(FT)が11日報じた。関係者によると英国とイタリアが前向きな姿勢を示す一方、日本は反対しているという。
英統計局が11日発表した2023年4〜6月期の英国の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比0.2%増と3四半期連続のプラスとなった。年率換算では0.8%増となる。医療従事者の賃金上昇で一般政府支出が大きく伸びた。
伸び率はリフィニティブがまとめた市場予想(0%)を上回った。一般政府支出が3.1%増とけん引した。
物価高による家計圧迫で病院などの医療現場でストライキが発生。これに対応して英政府が100万人以上の看護師や救急救命士の賃上げを実施した影響が大きい。
GDPの6割を占める個人消費も0.7%伸びた。原油価格の上昇が一服したことで、ガソリンを使う自動車での移動や、ガス代といったエネルギー関連の消費が増えた。6月の英消費者物価指数は前年同月比7.9%上昇と1年3カ月ぶりの低水準まで鈍化し、家計支出が持ち直している。
英イングランド銀行(中央銀行)は3日、14会合連続の利上げで政策金利を5.25%と08年以来の高い水準に引き上げた。急速な利上げによって経済の回復ペースが鈍化するとの懸念もくすぶる。
米労働省が10日発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が3.2%となり、13カ月ぶりに加速した。3.3%の市場予想は下回った。物価の鈍化ペースは緩やかになっており、米連邦準備理事会(FRB)は利上げの終結時期を慎重に見定める。
米労働省が10日発表した失業保険統計(季節調整済み)によると、7月30日〜8月5日の週間の新規失業保険申請件数は24万8000件だった。前週から2万1000件増加し、ダウ・ジョーンズ集計の市場予測(23万件)を上回った。
4週間移動平均は前週から2750件増加し、23万1000件となった。
7月23〜29日の週間の総受給者数は前週の改定値から8000人減り、168万4000人となった。
オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が10日発表した7月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は、前月比0.02ポイント低い6.46%だった。低下は3カ月ぶり。港区で大規模な新築ビルが空室を残して竣工したものの、既存ビルで中小規模の成約が広がったことから全体の空室率はわずかな低下にとどまった。
国際エネルギー機関(IEA)は11日公表した月報で、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」による供給削減によって年内に石油在庫が減少し、石油価格が一段と上昇する可能性があるとの見方を示した。また、2024年には経済的な逆風によって世界的な石油需要の伸びが制限されるという。
IEAはOPECプラスの現在の目標が維持された場合、石油在庫は第3・四半期に日量220万バレル、第4・四半期に同120万バレル減少する可能性があり、「価格がさらに上昇するリスクがある」と指摘。「OPECプラスによる供給削減の深化は、マクロ経済に関するセンチメントの改善や史上最高の世界石油需要と相反する」とした。
IEAによると、7月の世界の石油供給はサウジアラビアによる大幅減産などを背景に日量91万バレル減少。ただ、ロシアの7月の石油輸出量は日量約730万バレルで安定していたという。
IEAは来年の需要の伸びが日量100万バレルに急減速すると予想。その理由として、マクロ経済の低迷、パンデミック(世界的大流行)後の景気回復の失速、電気自動車(EV)の急速な普及を挙げた。
「パンデミック後の回復がほぼ完了し、複数の逆風が経済協力開発機構(OECD)の見通しを困難にする中、石油消費の伸びは著しく鈍化する」とした。
IEAの需要の伸び見通しは先月から日量15万バレル減少。OPECが前日に24年の石油需要の伸び見通しを日量225万バレルで維持したのとは対照的になった。
IEAは「世界経済の見通しは金利急上昇と銀行信用の引き締まりに直面する中で依然として厳しく、製造業や貿易の不振への対応をすでに求められている企業を圧迫している」とした。
一方、23年についてはIEAは需要が日量220万バレル拡大すると想定。夏季の航空旅行、発電における石油使用の増加、中国の石油化学セクターでの需要急増が後押しするという。OPECは日量244万バレルの増加を見込んでいる。
IEAによると、今年の需要は平均で日量1億0220万バレルになる見込み。世界最大の石油輸入国である中国の経済健全性を巡る懸念があるにもかかわらず、中国が需要の70%以上を占めるという。
JPモルガンは11日、2023年の英経済成長率見通しを従来の0.5%から0.6%に引き上げた。英国の第2・四半期の国内総生産(GDP)が予想外に増加したことを受けた。
英国立統計局(ONS)が11日発表した第2・四半期のGDPは前期比0.2%増加、前年比0.4%増加。ロイターがまとめたエコノミストの予想は前期比が変わらず、前年比0.2%増加だった。
JPモルガンの英国担当エコノミスト、アラン・モンクス氏は、第2・四半期全体の最終需要が好調で、実質家計所得が年後半に改善する見込みであることから、GDPの予想外の増加をバンクホリデーの影響として片付けることはできないと指摘。ただ、24年後半には英国が穏やかなリセッション(景気後退)に直面するとなお予想している。
米ミシガン大学が11日発表した8月の消費者信頼感指数(速報値)は71.2と、前月の71.6から小幅低下した。ただ、市場予想の71.0は上回った。また、消費者が来年以降、インフレが低下すると見込んでいることも示された。
消費者調査ディレクターのジョアン・シュー氏は「消費者は総じて経済環境について先月から大きく変わっていないと感じているようだが、わずか3カ月前からは大幅な改善を確認している」と述べた。
1年先のインフレ期待は3.3%と、7月の3.4%から低下。5年先のインフレ期待も前月の3.0%から2.9%に低下した。過去25カ月中24カ月は2.9─3.1%の狭いレンジ内にとどまっている。
米国債は非常に高いボラティリティーを伴った乱高下が続くと、投資家は見込んでいる。景気の不透明感を背景に米金融当局が軌道を変更する、あるいは金利を市場が現在想定しているよりも高い水準でかなり長期にわたって維持する恐れがあるためだ。
既に、一部の米金融当局者はまだやるべき仕事があるかもしれないと強調している。40年ぶりの積極的な金融引き締め政策にもかかわらず、インフレが2%目標を引き続き上回っていることが背景にある。
バークレイズのストラテジストは、金利が来年も高い水準で推移するとの見方から、米2年債の売りを顧客に勧めている。早ければ来年3月にも一連の利下げが開始されるとの広範な市場の臆測とは別の見方だ。米10年債利回りは昨年の高水準に向かって再び上昇している。
今月終盤に開かれるジャクソンホール会合(カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)にも注目が集まる。この会合はパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長にとって、当局が政策金利を2025年1月までに4%前後にまで引き下げるとの市場の織り込みを押し返す機会となり得る。
●中国・アジア・ロシア・東欧
中国は省レベルの地方政府が債券発行を通じて約1兆元(約20兆円)を調達し、資金調達事業体(LGFV)やその他のバランスシート外の発行体による債務の返済に充てることを容認する。経済や金融の安定にとって最大級の脅威となっている問題の対処に向け、小幅な一歩を踏み出した。
中国財政省は関係部局に対し、この「借り換え債」プログラムについて通知したと、事情に詳しい関係者が語った。それぞれの地方に限度枠が設定されているという。関係者は話す権限がないとして匿名を要請した。
関係者の1人によると、北京市と上海市、広東省、チベットを除く全ての省レベルの政府は「隠れ債務」として知られるバランスシート外の負債の返済に、このプログラムで発行した債券を利用することができる。
当局はまた、12の省と市を「高リスク」地域と特定。貴州、湖南、吉林、安徽の各省や天津市などが該当し、さらなる支援が提供されると、関係者の1人は述べた。
今回の措置はLGFVを含む弱い発行体の実質的な救済で、債務負担を地方政府に付け替えるものだ。
中国共産党の最高指導部である中央政治局は数週間前の会合で、政策パッケージを活用して地方政府の債務問題解消を図る方針を示していた。
外資による中国投資の減少が止まらない。4〜6月の対中直接投資は確認できる1998年以降で最少となった。ハイテク分野をめぐる米中対立への懸念に加え、中国の対外開放への疑念が背景にある。外資離れによるデカップリング(経済分断)が進めば、中国だけでなく世界の景気にも影を落としかねない。
中国の王毅共産党政治局員兼外相は訪問先のシンガポールとマレーシアで、最近フィリピンとの間で対立が強まった南シナ海問題を巡り、米国が「黒幕」だと批判した。中国外務省が12日発言内容を公表した。発言した日時や場所は明らかにしていない。
中国の不動産最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は10日、2023年1〜6月期の最終損益が450億〜550億元(約9000億〜1兆1000億円)の赤字に転落したもようだと発表した。物件販売の低迷を受け、業績が急速に悪化している。同社は22年の中国不動産販売額で首位だった。
ポーランドのブワシュチャク国防相は10日、隣国ベラルーシとの国境におよそ1万人の軍隊を派遣する計画を明らかにした。ポーランドの公共ラジオのインタビューで、侵略者に対するけん制が目的だと説明した。ベラルーシにはロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員が滞在し、緊張が高まっている。
中国の自動車業界団体、中国汽車工業協会が10日発表した7月の新車販売台数(輸出を含む)は、前年同月比1.4%減の238万7000台だった。前年同月の実績を割り込むのは1月以来、6カ月ぶり。前年にあった販売押し上げ効果が無くなって反動減が出た。
インド準備銀行(中央銀行)は10日、政策金利(レポ金利)を6.5%で据え置くと発表した。据え置きは3会合連続。農産物などの物価上昇を警戒しつつ、2022年度に実施してきた利上げの効果を引き続き見極める。
碧桂園は今週、6日が期日だったドル建て債2本の利払い(総額2250万ドル)を履行できなかったと表明。10日には、粗利の低下や在庫の減損処理増加を理由に、上半期が最大550億元(76億ドル)の赤字になるとの見通しを示した。
金融ニュースウェブサイトの財連社は、関係者の情報として、証券規制当局が11日に不動産開発会社数社との会合を開催し、各社の販売・債務の状況を話し合ったと伝えた。当局は、資金調達ニーズを尋ね、提案を求めたという
アナリストは、碧桂園の利払い不履行で当局が業界支援に本腰を入れる可能性があると指摘するが、業界の急回復につながるか懐疑的だ。
10日に碧桂園のコーポレート・ファミリー格付けを「B1」から「Caa1」に3ノッチ引き下げたムーディーズは11日、碧桂園の資金繰り悪化が国内不動産市場や金融市場に波及する可能性が高いと指摘し、「市場心理をさらに弱め、中国不動産セクターの回復を遅らせる可能性が高い」と述べた。
碧桂園は11日、ソーシャルメディアに謝罪文を投稿し、十分な対応ができなかったことを謝罪したうえで、住宅プロジェクトの完了、流動性問題の解決や業務の存続に全力を注ぐと述べた。
●中東
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル電子版は11日、イランが核兵器級に近い濃縮ウランの蓄積のペースを大幅に減速させ、保有するウランの一部の濃縮度も引き下げたと報じた。複数の関係筋の話としている。米イラン両国の緊張緩和や、イラン核開発問題を巡る対話再開につながる可能性がある。
バイデン米大統領は来年の大統領選で再選を目指しており、イランとの対立激化は避けたい考え。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は11日、報道の真偽の確認を避けた上で「濃縮の減速は歓迎すべきことだ」と述べた。
関係筋によると、イランはこの数週間に、濃縮度を60%まで高めたウランのうち少量の濃縮度を引き下げた。意図的な動きとみられるが、残りの分の引き下げを計画しているかどうかは不明という。60%は核兵器級の90%に接近し、核合意違反に当たる。
ただ、米当局はイランが核兵器少なくとも2発分の製造に十分な量のウランを保有しており、濃縮度を高めれば数カ月以内に核兵器を製造できる状態にあるとみて警戒を続けている。
●中南米・アフリカ
メキシコ銀行(中央銀行)は10日、金融政策決定会合を開き、政策金利を11.25%で据え置くと発表した。据え置きは3会合連続だった。メキシコではインフレ率が低下しており、市場には中銀が2023年末までに利下げに転じるという見方が出ている。
中銀の5人の委員が全会一致で据え置きを決めた。中銀は据え置きの理由について10日に発表した資料で「インフレ率は下がり続けているが、まだ高い水準を維持している」と指摘した。
中銀は10日、メキシコでインフレ率が政策目標の上限である4%を下回るのは24年4〜6月になるという見通しを据え置いた。国立統計地理情報院(INEGI)によると、7月のインフレ率は4.79%と2年4カ月ぶりに5%を下回った。
米シティグループ系のバナメックスは7日に公表したリポートで、中銀が当面は政策金利の据え置きを続け、23年12月に利下げに転じるというアナリストの見通しを示した。23年末には政策金利が11%に下がると予想する。
ブラジル地理統計院が11日発表した2023年7月の消費者物価指数IPCAは、前年同月比で3.99%上昇した。6月実績(3.16%)を上回ったものの、中銀目標の範囲内(1.75〜4.75%)に5カ月連続でおさまった。
前月の上昇率を上回るのは22年6月以来となった。22年7月には、ボルソナロ前政権による商品流通サービス税(ICMS)の税率引き下げによる燃料価格下落が大きかったため、その反動があった。
中央銀行は2日に金融緩和への転換を決めた。利下げは3年ぶりで、政策金利は0.5%低い13.25%となった。7月のインフレ率は上昇したが、中銀の利下げは今後も続き、次回9月会合では「追加の0.5%利下げが実施される」(英キャピタル・エコノミクス)との見方が多い。
中銀が民間エコノミストの予測をまとめて7日に公表した「FOCUS」では、23年のインフレ率は4.84%と見込まれている。今後は賃金引き上げの影響も広がり、中銀の物価目標上限を再び上回るとの見方が一般的だ。23年末の政策金利は11.75%と予測されている。
●市況ドルが上昇した。7月の卸売物価指数(PPI)の伸びが予想を上回り、米債利回りが上昇したことを受けた。
米労働省が11日発表した7月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前月比、前年比ともに伸びが加速した。前月比では0.3%上昇。前年比では0.8%上昇。ロイターがまとめたエコノミストの予想は、前月比0.2%上昇、前年比0.7%上昇だった。
ドル指数は0.21%上昇。週間では4週連続高となった。
金利先物市場では、FRBが9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置く確率を88.5%としている。インフレ指標発表前は85%超だった。
一方、ポンドは4日ぶりに上昇。英国の第2・四半期の国内総生産(GDP)は6月の好調に助けられ、予想外に増加。第2・四半期GDPは前期比0.2%増加、前年比0.4%増加した。ロイターがまとめたエコノミストの予想は前期比が変わらず、前年比0.2%増加だった。
国債利回りが1週間ぶりの水準に上昇した。11日発表された7月の米卸売物価指数(PPI)が前月比、前年比ともに伸びが加速したことが材料視された。また、夏の薄商いが利回り上昇の一因となったともみられている。
物価上昇圧力が再び強まることで、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを継続する可能性があるという懸念も漂うが、一部アナリストの間からは今回の統計が市場予想からさほどくかけ離れてはいないという指摘もある。
また、11日に発表された8月の米ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は低下したものの、消費者が来年以降、インフレが低下すると見込んでいることも示された。
<米原油先物> 需給引き締まり観測が広がる中で買われ、反発した。米国産標準油種WTIの中 心限月9月物は前日清算値(終値に相当)比0.37ドル(0.45%)高の1バレル= 83.19ドルだった。10月物は0.28ドル高の82.57ドル。
石油輸出国機構(OPEC)は10日付の月報で2023年下半期(7━12月)の石油市場は健全な状態との見通しを示し、24年の石油需要は堅調との従来予想を据え置いた。また、国際エネルギー機関(IEA)は11日公表した月報でOPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」による減産により23年内に在庫が減少し、石油価格が一段と上昇する可能性があると指摘。エネルギー需給の引き締まり観測が強まり、買いが優勢となった。
中南米金融市場では域内通貨の大半が下落した。予想を上回る7月の卸売物価指数(PPI)を受けドルが上昇した。一方、メキシコ中銀が政策金利を当面維持すると示唆したことを背景にメキシコペソは上昇した。
日経先物32490、ダウ先35351、債先146.72、米4.158、独2.6270、仏3.153、西3.638、伊4.247、英4.5775、波5.511、原油83.04、銅8,294、ドル円144.96、ユーロドル1.0946
※8/11 NY引け値
備忘録(2023/8/9)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
イタリア政府は8日、銀行に対する税率40%の追加課税案について、課税額の上限を銀行の総資産の0.1%に限定すると発表した。イタリアの銀行株は業績悪化の懸念から急落していたが、9日には課税額が想定を下回るとの見方から大幅に反発した。
イタリア財務省は課税額に上限を設けることについて「銀行の財務安定を守ることが目的だ」とし、預金金利をすでに引き上げている銀行には大きな影響はないと説明した。課税対象については2021年の各行の利ざやと比べて、22年に5%を超えた分か、23年に10%を超えた分に限定するとした。
大手のインテーザ・サンパオロは9日に一時3%高、ウニクレディトは5%高となった。前日の9%安と6%安から一転して上昇した。追加課税に対する市場の懸念や銀行の反発が強く、政府が修正を迫られたとみられる。
香港のキャセイパシフィック航空は9日、欧州エアバスから小型機「A321neo」32機を調達すると発表した。新型コロナウイルス禍で塩漬けになっていた購入権を行使する。また業績回復を受けて資金調達で政府に割り当てた195億香港ドル(約3600億円)相当の優先株を買い戻す計画も明らかにした。
米ファストフード大手ウェンディーズのグンター・プロッシュ最高財務責任者(CFO)は9日、急激な景気減速が現実に起こる可能性は低いとの見方を示した。
プロッシュ氏はアナリストとの電話会議で、「私はせいぜい緩やかなリセッション(景気後退)になる、リセッションは一切起きないかもしれないと考える一派だ」と述べた。
同社のトッド・ペネガー最高経営責任者(CEO)は同じ電話会議で、高所得者がクイック(迅速)サービスのレストランにシフトしているとし、消費者が圧力を受けていることも認めた。
ペネガーCEOは一方で、インフレが今年後半に鈍化するのに伴い、実質所得は改善すると予想。プロッシュ氏も同様の見解を示し、「可処分所得はやや改善し始めている」と指摘。「それはレストランビジネスと強い相関関係がある」と話した。
●その他産業
2021年10月の株式公開以降で、同社の株価は99%下落し、90億ドル(約1兆3000億円)近い市場価値が失われた。
債券価格報告システムのトレースのデータによれば、2025年満期の無担保社債(表面利率7.875%)は、直近では額面1ドル当たり33.5 セントと、著しいディストレスト水準で取引されている。
●決算関連
2023年4〜6月期決算は売上高が前年同期比4%増の223億3000万ドル(約3兆2000億円)、最終損益は4億6000万ドルの赤字(前年同期は14億900万ドルの黒字)だった。自社の動画配信サービスからコンテンツの一部を削除したことに伴い、24億4000万ドルの減損を計上した。動画配信事業の黒字化に向けて合理化を急ぐ。
ディズニーの4-6月(第3四半期)決算発表後にケビン・ランズベリー暫定最高財務責任者(CFO)は投資家との電話会見で、今年のコンテンツ支出は全体で約270億ドル(約3兆8800億円)を見込んでいると語った。通常、ディズニーの支出は約300億ドル。
ランズベリー氏によれば、こうした節減はハリウッドでの脚本家・俳優のストライキにつながっている制作費削減の結果でもある。ディズニーは複数のプロジェクトの実施時期をずらすことから、資本支出予測も50億ドルと、従来の見通しを下方修正した。
ディズニーの株価は通常取引後の時間外取引で当初、下げていたが、経営陣の発言を受け、一時6.1%上昇した。
4-6月期の1株利益は1.03ドルで、ブルームバーグ集計のアナリスト予想平均99セントを上回った。売上高は3.8%増の223億ドル(約3兆2000億円)で、アナリスト予想をわずかに下回った。
予想外の結果となったのがストリーミング事業。「ディズニー+(プラス)」を含むダイレクト・トゥー・コンシューマー部門の損失は5億1200万ドルと、前年同期の10億ドル余りから縮小した。3カ月前には経営陣が7億5000万ドル強の赤字を見込んでいた。
だがディズニープラスの会員数は前期比7.4%減の1億4610万人にとどまり、アナリスト予想平均1億5480万人を下回った。予想未達分のほぼ全てが、アジアで展開する「ディズニープラスホットスター」によるものだった。人気があるインディアン・プレミアリーグのクリケット試合の配信権を更新しなかったことから会員の25%近くを失った。
ディズニーは一部のストリーミングサービスの料金を最大27%引き上げることも発表した。
●先進国、グローバル、金融市場
2028年から始まる5年先5年物ブレークイーブンレートは2.5%前後まで上昇。今回の利上げサイクルのピークである22年4月の水準に迫った。昨年4月のこの水準は2014年以来の高さだった。
こうした動きは、米金融当局による大幅利上げが1980年代以来の物価高騰を継続的に抑制するとの見方とは対照的だ。スワップ市場は、金融当局が引き締めをおそらく終えており、来年には利下げに転じられるほどインフレが十分に冷え込むとのシナリオを織り込んでいる。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツの金利ストラテジスト、エド・フセイニー氏は「米金融当局の積極的な行動によりインフレは鈍化している。だが、基調のインフレ期待が上向いているというリスクはある」と指摘。「市場は当面のインフレ期待上昇と実質金利の上昇を織り込んでいる」とし、「それが正しいかどうかはいずれ分かるだろう。だが、市場はそういうメッセージを送っている」と述べた。
5年先5年物ブレークイーブンレートが上昇している背景には、足元の債券売りにより長期債利回りが短期債利回りを上回るペースで上昇したことがある。格付け会社フィッチ・レーティングスによる格下げや米国債の大量増発に対する懸念が背景にあるが、米経済が底堅いことで金融当局の目標水準までそう簡単にはインフレは戻らないだろうとの見方も反映している。
ウィズダムツリーの債券戦略責任者、ケビン・フラナガン氏は「投資家にとっての問題は、インフレ鈍化の大半は既に起きたと言えるかどうかだ」とし、インフレが順調に急低下する局面はすでに終わったのだろうかと問い掛ける。
MUFGセキュリティーズアメリカの米国マクロ戦略責任者、ジョージ・ゴンカルベス氏は、現時点で市場のインフレ期待はまだ大きな懸念ではないが、5年先5年物ブレークイーブンレートで2.75%あるいは3%を目指すような動きとなれば市場のインフレ心理の変化を意味することになり、「米金融当局が2%のインフレ目標を維持できるかどうか疑問符がつくだろう」と指摘。こうした疑問がくすぶれば、年限が長めの債券利回りに圧力がかかり、インフレ見通しへの懸念も強まるとみている。
日本銀行が長期金利をより柔軟に管理するとしたことで、短期金利の見通しが揺らぎ始めている。スワップ・トレーダーは、世界最後のマイナス金利政策が8カ月後にも終了すると予想している。
これは2016年初頭以来、マイナス金利政策の下で苦しんできた日本市場の投資家にとって重大な変化を告げるものだ。日銀に何年も足元をすくわれ続けてきた投資家は、植田和男新総裁や政策委員会の言葉をうのみにしていない。マイナス金利撤廃の予想は来年7月から同3月に前倒しされ、オーバーナイト・インデックス・スワップは短期政策金利が24年9月末までに0.1%を上回る可能性を示唆している。
日銀は先月、10年物国債利回りに1%までの上昇余地を与えるという予想外の動きに出たが、その際、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)をより柔軟にするためと説明した。しかし、YCCを管理するためには、流動性を低下させ市場をゆがめるような買い入れを行わざるを得なくなる可能性があり、日本でインフレが定着し始めたことで日銀に利上げ圧力がかかっているとみる一部投資家にとっては、政策当局の主張を弱める矛盾と映る。
マイナス金利政策が終了すれば、低迷する円相場は支えられ、余剰資金を日銀に預ける際に利子を支払わなければならない市中銀行の金融負担も軽減されるだろう。また、長期国債利回りの水準が切り上がり、日本の大手機関投資家が米国債などの資産を売却してより多くの資金を国内に振り向けるインセンティブを高めるだろう。
DBS銀行の債券ストラテジスト、ユージーン・レオ氏(シンガポール在勤)は「10年物国債の利回りが解き放たれるにつれ、市場参加者の関心は徐々に短期金利に移っている。短期金利が注目されるのはYCC撤廃後の自然な流れであり、それは24年に行われるかもしれない」と話す。
植田総裁は7月28日の調整はYCC終了に向けた動きではないと述べ、内田真一副総裁はマイナス金利の引き上げには「まだ大きな距離がある」との見方を示している。しかし、市場は懐疑的で、明らかに政策がその方向に動いているとみている、とレオ氏は述べた。
投資家は10年債利回りのさらなる上昇に対するヘッジを続けており、10年物オーバーナイト・インデックス・スワップは0.76%となっている。これは10年債利回りより15ベーシスポイントほど高いが、日銀の新たな上限である1%は下回っている。
YCC修正以来、投資家は金利上昇に伴い貸出の利ざやが拡大するとの期待から銀行株も買っている。政策修正前日の7月27日以降、TOPIXが小幅下落したのに対し銀行業指数は約4%上昇した。
シンガポールのオーバーシーズ・チャイニーズ銀行の金利ストラテジスト、フランシス・チャン氏は「われわれは日銀が年内、そうでなければ来年早々に政策金利をマイナス0.1%からゼロに引き上げる可能性を見込んでいる。インフレの背景を考えると、マイナス金利政策はもはや適切ではないかもしれない」と話した
欧州の天然ガス価格が9日に40%高と急上昇し、6月以降で初めて1メガワット時当たり40ユーロを上回った。オーストラリアの一部施設で労働者がストライキを起こす可能性があり、液化天然ガス(LNG)の供給リスクが強まった。
シェブロンおよびウッドサイド・エナジー・グループのオーストラリア施設で働く労働者がスト実施を決定。同国からのLNG輸出に影響が及び、LNG市場の需給が世界的に引き締まる恐れが出てきた。ストが決行される場合の時期は今のところ明らかではない。
オーストラリアのLNG輸出に障害が発生する場合、アジアの買い手が「LNG価格を競り上げる公算が大きい」と、コンサルティング会社インスパイアードのディレクター、ニック・キャンベル氏は指摘。「欧州のガス供給構成で、LNGはベースロードになった。従って、この供給が脅かされる兆しが少しでも表れれば、価格押し上げにつながる」と述べた。
これとは別に、ノルウェーの季節的なメンテナンスに遅れが生じる可能性があることもリスクで、価格上昇圧力を強める可能性がある。少なくとも今のところは、異例の高水準にある欧州の在庫や低調な需要といった要因を、強気の材料が上回っている。
年金を含めた運用資産が1470億豪ドル(約13兆8000億円)のコロニアル・ファースト・ステート・インベストメンツ(CFS)のジョナサン・アーミテージCIOは、労働市場が堅調ながらも変動が激しいこともあり、物価圧力は過去10年間の大部分よりも高水準にとどまる可能性が高いと指摘した。
同氏はインタビューで「インフレ指標が引き続き、現在人々が予想しているよりも大きく上下すると思われるため、資産のバリュエーションの変化が見込まれる」とし、「それが好機を生み出すと考えている」と述べた。
CFSは高インフレ環境下で良好に推移する非上場資産を探しており、データセンター、ケーブルネットワーク、再生可能エネルギープロジェクトへの投資に注目している。アーミテージ氏によると、同社は最近、より積極的な資産配分アプローチを取る中、投資チームで社内から何人かの重要な人材を起用した。
アドビが8日発表した7月のデジタル物価指数によれば、家電製品、家具・寝具、電子機器、コンピューターなどのカテゴリーで前年から大幅な価格低下が見られた。データはインフレ調整されていない。
月次ベースでは、食料品と非処方箋薬の価格は7月も上昇したが、アドビが追跡している他の16カテゴリーは下落した。これは、18カテゴリー中17カテゴリーが前月比で下げた2020年11月以来最多。
牛ひき肉やポテトチップのような基本的な品目は、パンデミック前に比べ平均で数ドル高くなっていることが、BLSの物価データで示されている。ガソリン価格は再び上昇しつつあり、電気代や他の生活に不可欠なさまざまなものが高水準にとどまっている。
今週10日に発表される7月のCPIは前年同月比3.3%上昇となり、伸び率は6月を若干上回るものの、ここ2年で最も低いペース付近にとどまると見込まれている。インフレ率のピークは昨年6月の9.1%で、過去40年間で最も高水準だった。CPI統計では、食料品価格はここ4カ月のうち3カ月で下落しているが、2年間の上昇を勘案すると、ほとんど意味がない。
問題なのは、こうしたモノの値段の上昇に賃金がほとんど追いついていないことだ。所得の伸びがインフレ率を上回り始めたのはほんのここ数カ月のことであり、それまで米国人は2年にわたり実質的に購買力低下を経験してきた。
BMOキャピタル・マーケッツのシニアエコノミスト、ジェニファー・リー氏は「食料品店に行くと誰もが、何もかも高いとぼやく。食べざるを得ないから買うに過ぎない」と語る。
米国人が家計状況に関してかなり悲観的で、信頼感を示す指標を押し下げている状況もほぼうなずける。米ミシガン大学の米消費者マインド指数は2020年2月に101を付けていたが、インフレがピークに達した22年6月にはその半分に低下し、過去最低の水準となった。その後回復傾向となり、今年7月は71.6。
インフレはバイデン米大統領にも打撃となっている。ギャラップの調査では、物価上昇圧力が高まって以来、ここ2年、支持率は一貫して50%を下回っている。同氏の政策は米経済のリセッション(景気後退)入り回避には役立つかもしれないが、財政赤字は膨らんでいる。
「米国の有権者は引き続きインフレにおびえている。バイデノミクスは全く役に立っていない」とAGFインベストメンツの米政策担当チーフストラテジスト、グレッグ・バリエール氏が7日にブルームバーグテレビジョンで語った。
インフレ下で、米国人の多くが一段とクレジットカードに頼り、貯蓄率は低めにとどまってきた。延滞率は上昇している。労働市場が好調でなければ、その痛手はもっと深刻なものとなろう。雇用主は安定したペースで採用を増やし続け、失業率は過去数十年での最低水準付近にとどまっている。これが、消費者の支出し続ける力を支えている。
カバナ氏は9日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「10年債利回り3%よりも、5%の方がはるかに想像し難しい」と発言。「それほど急速な利回り低下は見られないだろうが、米金融当局がいったん利下げに転じれば、利回りはやがて低下する。市場の予想よりもペースが遅いだけだ」と述べた。
同行のストラテジストは「戦術的なロング・バイアス」で長期債を取引するよう顧客に勧めていると、カバナ氏は話した。
同氏は10日公表の7月米消費者物価指数(CPI)といった、何らかの経済的要因が利回り低下の引き金になると指摘。同CPIでは食品とエネルギーを除いたコア指数が前年同月比4.7%上昇と、前月の4.8%から伸び鈍化が予想されている。
「特に実需筋が保有しているように見受けられるロングデュレーションのバイアスを正当化するためには、景気がそれを裏打ちする必要がある」とカバナ氏は説明。「10日のCPIはそうした方向に行くはずだが、より広範な景気鈍化の兆しを確認する必要がある。現時点でデータはそれを示していない」と続けた。
米国では新型コロナウイルス感染による入院が今年初めて増加している。猛暑のために屋内で過ごす時間が増えているほか、感染予防の効果が薄れてつつある。
米疾病対策センター(CDC)のデータによれば、7月最終週の新型コロナ入院患者数は、6月24日終了週の最低値から43%増加した。過去3年間のどの時点よりもまだ低いとはいえ、全米の公衆衛生当局は増加への注意を促している。
●中国・アジア・ロシア・東欧
国家統計局が9日発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.3%低下と、2021年2月以来のマイナス。ブルームバーグ集計のエコノミスト予想中央値は0.4%低下だった。
7月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比4.4%低下。予想中央値は4%低下、6月は5.4%下落していた。PPIの低下は10カ月連続。
消費者物価と生産者物価の両方が下落するのは20年11月以来となる。
モルガン・スタンレーの中国担当チーフエコノミスト、邢自強氏はブルームバーグテレビジョンで、「中国は確実にデフレ状態にある」と分析。「問題は期間の長さだ。それは政策当局次第であり、財政と金融緩和の連携で対応するかどうかだ」と述べた。
投資家は弱い物価指標を受け、中国人民銀行(中央銀行)による利下げなど追加の金融緩和を見込んでいるが、人民元安や国内経済の債務水準の高さなど幾つかの制約もある。また、資金繰りに苦しむ地方政府も多く、財政政策を通じた支援も抑制的にとどまっている。
邢氏は「この負債デフレのわなを打破するには、全ての政府支出を加速させ、政府債務を増やし、金融・財政緩和を連携させる必要がある」と語った。
ただ、追加の緩和策を妨げる別の要因もある。人民銀が銀行システムに資金を供給しても、貸し出しに回らないのではないかとの懸念も根強い。
国務院(政府)系の新聞、経済日報は9日付の1面で、利益の先行きに対する期待が弱く、「一部の企業は生産拡大に消極的だ」と指摘。資金需要が低迷し、「借り入れてもすぐに預金に回る」状況だとし、「金融システムに流動性が滞留している」と分析した。
物価が下落すると、実質の資金調達コストは上昇するため、人民銀は成長モメンタムの一段の鈍化を防ぐ対策を早急に取る必要があると指摘するエコノミストもいる。
ジョーンズ・ラング・ラサールの大中華圏担当チーフエコノミスト兼調査責任者、龐溟氏は「短期的にCPIとPPIがいずれもマイナス圏に下落する中、実質金利は上がる」とした上で、さまざまな構造的金融政策手段などを講じる余地がまだ残されているため、「短期的には金利よりも預金準備率の引き下げの必要性が増している」と話す。
国家統計局は7月のCPI低下について、比較対象となる前年水準が高かったためと説明。下落は一時的となる公算が大きく、消費者需要は7月も改善したと指摘した。
変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは7月に前年同月比0.8%上昇と、6月の0.4%上昇からプラス幅が拡大した。
スタンダードチャータードの大中華圏・北アジア担当チーフエコノミスト、丁爽氏は「CPIの下落は1、2カ月などのように短期にとどまるとわれわれは見込んでいる」とし、「食品とエネルギー価格は7-12月(下期)に上向く可能性が高く、1-6月(上期)の足かせとなったこうした要因は和らぐだろう」と述べた。
中国政府が日本行きの団体旅行を解禁する方針であることが9日、分かった。複数の関係者によると、在日本中国大使館が日本外務省に対して同日、10日に団体旅行を解禁すると文書で伝達した。
中国は足元で景気が低迷しており、日本との経済交流を拡大したい思いは強い。12日に日中平和友好条約の締結から45年になるのを前に、関係改善に向けた動きを作る狙いがあるとみられる。
気汚染防止技術を提供するスイスのIQAirのデータで、インドネシアの首都ジャカルタが世界で最も大気汚染の深刻な都市となった。ジャカルタは5月以降に汚染が最も深刻な10位以内に常に入っていた。
ジャカルタの住民は慢性的な交通渋滞や工場からのばい煙、石炭火力発電所からの排出による大気汚染に長い間不満を持ってきた。不満を抱く住民の一部は2021年、政府に大気汚染対策を求める民事訴訟を起こして勝訴した。
ジョコ・ウィドド大統領は8日に報道陣に対し、ジャカルタの公害問題について質問されると首都をジャカルタからボルネオ島のヌサンタラに移すことが解決策だと語った。
インドネシアは整備を進めているヌサンタラに首都を来年移転する計画。公務員や軍人、警官ら1万6000人以上がジャカルタから移る予定だ。
タイ中央銀行のセタプット総裁は9日、9月の金融政策決定会合で主要金利を据え置くか、引き上げる可能性があると述べた。輸出の低迷を理由に成長見通しは下方修正されるとの見方を示した。
中銀セミナーで総裁は、タイ経済は現在、新型コロナウイルス流行前の水準を上回る伸びを示しており、長期インフレ率は目標範囲に戻ると予想されると述べた。
経済状況の変化に伴い金融政策も緩やかで慎重な引き締めから「着地」に焦点を当てたものに変化していると指摘。「次回は(主要金利を)据え置くか引き上げる可能性がある。しかし引き下げはない」と語った。
「政策金利の最終到達点について言及したことはない。問題は(経済を)うまく着陸させることだ」と述べた。
韓国銀行(中央銀行)が9日発表した7月末時点の家計債務残高は、前月比6兆ウォン(45億5000万ドル)増加して過去最高の1068兆1000億ウォンとなった。4カ月連続の増加で、2021年9月以来最大の伸びとなった。
中銀当局者はブリーフィングで、一定の株式投資需要と下半期初めの季節要因が融資を押し上げたと説明した。
中銀は先月、4会合連続で金利を据え置いたが、家計債務などの増加に懸念を示し、一段の引き締めに含みを残している。
一方、金融監督当局は別途、声明を発表し、必要と判断した場合は下半期に家計債務を安定的に管理する予防的措置を準備すると表明した。
●中東
サウジアラビアがイスラエルを国家として正式承認する可能性を巡り、サウジと米国との協議が本格化していると、協議に詳しい複数の関係者が明らかにした。ただ交渉すべき事項はまだ多く、話がまとまる保証はないという。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は先に、複数の米当局者の話として、米国とサウジアラビアがイスラエルを巡る取り決めの大筋で合意したと報道。この報道を受け、イスラエル資産の価格は上昇した。WSJによれば当局者らは、実現の可能性は高くないものの、今後1年以内に取り決めの「より詳細な内容」を詰められると期待を示した。
米国とサウジアラビアは、サウジアラビアがイスラエルを国家として承認する見返りに、パレスチナ人への譲歩、米国による安全保障の確約、民生用の核開発への支援を得るという取り決めの大筋で合意した。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が複数の米当局者の話として報じた。
WSJによれば、当局者らは今後1年以内に取り決めの詳細を詰められると慎重ながらも楽観的な見通しを示したが、実現の可能性は高くないとも警告した。
●中南米・アフリカ
メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)が9日発表した7月の消費者物価指数は、前年同月と比べて4.79%上昇した。2年4カ月ぶりに5%を下回った。インフレの減速が続くなか、市場にはメキシコ銀行(中央銀行)が10日に予定する次回の金融政策決定会合で政策金利の据え置きを続けるという見方がある。
欧州連合(EU)加盟国は、クーデターを起こした西アフリカのニジェールの軍事政権のメンバーを対象とした制裁措置第1弾策定の準備を開始した。複数の関係筋が9日、ロイターに明らかにした。
制裁措置の策定に関与しているEU当局者と外交官によると、EUは制裁の基準を巡る討議を開始。ニジェールの「民主主義の弱体化」に関与したこと自体も制裁の対象になる可能性があるとしている。
現時点で具体的にいつ合意されるかは不明だが、EUは今月31日にスペインのトレドで開く外相会合で制裁措置を含むニジェール情勢について協議する見通し。
西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)はニジェール情勢について協議するため、10日にナイジェリアの首都アブジャで臨時首脳会議を開催。EUのスタノ報道官(外交・安全保障政策担当)は「EUには制裁措置を含むECOWASの決定を支持する用意がある」と述べた。
●市況ニューヨーク外為市場ではドルが小幅安。10日に発表される7月の米消費者物価指数(CPI)を見極めたいとの思惑から薄商いとなり、狭いレンジでの取引にとどまった。
中国国家統計局が9日発表した7月のCPIが前年比0.3%下落し、2021年2月以来2年5カ月ぶりにマイナスとなったことを受け、ドルは序盤の取引で下落。中国が追加刺激策を打ち出すという期待が強まり、資金がリスク資産にシフトしたことが背景。
米国株式市場は続落して終了した。前日発表の第2・四半期の家計債務・信用統計で米国のクレジットカード債務残高が過去最高を更新し、初めて1兆ドルを超えたことが重しになった。市場では10日発表の7月の米消費者物価指数(CPI)が注目されている。
CMEのフェドウオッチによると、市場が織り込む次回9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが見送られる確率は86.5%となっている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、需給逼迫懸念の強まりを受けて、続伸した。
ロイターはサウジアラビアの国営メディアの報道として、同国内閣が8日、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」による石油市場安定化を目的とした予防的措置への支持を再確認したと伝えた。サウジは前週、7月に開始した日量100万バレルの原油の自主減産を9月も続ける方針を表明していた。ロシアも前週、9月に日量30万バレルの石油輸出量削減を行う方針を示したほか、OPECプラスは4日に開いた合同閣僚監視委員会(JMMC)で現行の協調減産方針を維持。これらを背景に需給引き締まり観測が拡大し、原油に旺盛な買いが入った。
中南米金融市場では、大部分の中南米通貨が上昇した。中国政府が景気刺激策を打ち出す可能性があるとの観測からドルが圧迫されたことが背景。
日経先物32155、ダウ先35284、債先147.03、米4.010、独2.4685、仏3.028、西3.523、伊4.137、英4.4175、波5.501、原油84.23、銅8,409、ドル円143.65、ユーロドル1.0976
※8/10 8時25分頃
備忘録(2023/8/8)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
イタリア政府は、銀行に対し今年に限って40%の超過利潤税を課税することを承認した。税収は住宅ローンの支援に充てる。これを受け、株式市場では銀行株が急落している。
銀行は大幅な利上げを背景に記録的な好業績を達成しており、会見したサルビーニ副首相は、貸出金利と預金金利の差が大きいと批判した。超過利潤税は銀行の純金利収入に課税する。
メローニ政権は今年これまでに超過利潤税に関する構想を打ち出していたが、導入の可能性は遠のいたとみられていた。しかし銀行の上半期決算が好調だったことから再浮上した。
ある関係筋は、一部の閣僚は7日夜の閣議でこの計画を知り驚いたと明かした。
0915GMT(日本時間午後6時15分)現在、イタリアの銀行株指数は7.4%急落している。最大手のインテーザ・サンパオロは8%安、ウニクレディトは6.5%安。欧州の銀行株も連れ安となり2.4%下落した。ムーディーズが一部の米銀を格下げしたことも圧迫した。
イタリアの右派政権は銀行が金利上昇分を預金者に還元していないと繰り返し批判していた。
サルビーニ氏は「銀行の上半期の利益を見れば、われわれが話しているのが数百万ではなく、数十億だと分かるだろう」と語った。ローンと預金に適用される金利には大きな開きがあるとも述べた。
政府は銀行課税による税収を住宅ローンの借り手など、生活に苦しんでいる人たちのために使いたいと考えている。
シティのアナリストは2023年のイタリア銀の純利益が20%近く減少する可能性があると推計した。バンク・オブ・アメリカのアナリストによると、政府の税収は20億─30億ユーロとなり、銀行の利益が2─9%目減りする可能性がある。
関係筋によると、財務省はこの措置により30億ユーロ(33億ドル)弱の税収を見込んでいる。これは今年のエネルギー企業への課税(28億ユーロ)に近い水準。
政府は超過利潤税を23年に限って適用する。22年か23年の純金利収入の金額が大きい方が対象で、前年比の伸びが一定の基準を上回った場合に40%が課税される。銀行は24年6月30日までに納税しなければならない。
インテーザ・サンパオロは先月末、純金利収入が今年は135億ユーロを超える見込みと発表した。
主要行がこれまでに発表した決算は全て予想を大きく上回り、金利上昇による効果で利益見通しを上方修正した。
BNPが条件を先月変更した結果、普通株式等ティア1(CET1)比率が一定の水準を下回った場合、新発AT1債は元本を削減せず、特定の比率で株式転換される。バランスシート上は資本でなく負債となる。14日に価格設定が行われ、利回りは8.5%となる予定。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のシニアクレジットアナリスト、 ユルーン・ユリウス氏によれば、今回調達する資金は、ファーストコール日(発行体が満期前に繰り上げ償還できる最も早い日)が3月に到来する既存のAT1債(表面利率6.625%)15億ドル相当の借り換えに充てられる可能性がある。
米株式市場で医薬品のアッヴィが上昇基調だ。7月28日には一時151.76ドルと約3カ月ぶりの高値をつけた。足元も150ドル前後の高値圏で推移している。長く業績をけん引した関節リウマチ向けなどの主力の治療薬「ヒュミラ」が減収となったが、多角化を進めており美容関連や神経科学など他分野・製品の成長が目立つ。今後の事業成長を期待した買いが集まった。
格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが米東部時間7日夜(日本時間8日午前)、米中堅地銀や中小行10行の信用格付けを引き下げた。資産管理が主力のステート・ストリートなど大手銀も格下げ方向で見直した。米地銀への経営不安が再び強まり、8日の米株式市場では金融株が一時急落した。
米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、信用格付けリポートに記載していたESG(環境・社会・企業統治)の定量評価について公表を取りやめる。保守派層で「反ESG投資」の機運が強まるなか、米国の政治や社会の分断は格付けという投資判断を支えるインフラにも影響を及ぼしてきた。
ムーディーズは7日、地銀や中小行計10行の信用格付けを1段階引き下げたほか、一部の主要行を引き下げ方向で見直しの対象とした。金利の高止まりや資金調達コストの上昇、景気後退リスクの高まりによって米銀が収益を上げることが難しくなると警告。また、一部銀行の商業用不動産へのエクスポージャーを懸念材料に挙げた。
ムーディーズの金融機関担当マネジングディレクター、アナ・アーソフ氏は、ロイターのインタビューに「ムーディーズは向かい風を認識しているのであり、銀行システムが破綻していると言っているのではない」と述べた。
ガベリファンドのポートフォリオマネージャー、マクレー・サイクス氏は「地銀部門になお課題が存在することを思い起こさせた」と分析。商業用不動産への高いエクスポージャー、預金および資金調達コストの上昇などが主要な懸念材料に含まれるとした。
米株式市場のKBW地銀株指数は8日に1.38%下落し、ムーディーズの格下げ対象となったM&Tバンク 、ピナクル・ファイナンシャル・パートナーズ、BOKファイナンシャルなどが1.7─2.1%下落した。
格下げ方向で見直しの対象となったバンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)、ステート・ストリート 、トゥルイスト・ファイナンシャルも安くなった。
ウェルズ・ファーゴの銀行アナリスト、マイク・メイヨ氏は、投資家が既に銀行の将来的な収益に対する期待値を低下させ、ムーディーズが挙げた幾つかの要因も市場に織り込み済みだと指摘。「金利高の長期化と景気後退リスクがもたらす痛みだ」とした。
欧州株式市場でもイタリアの大手行インテーザ・サンパオロ、バンコBPM、ウニクレディトが5.9─9%下落。イタリア政府は時限的措置として、銀行が金利上昇で得た利益に40%を課税する。
シティグループのアナリストは、新たな課税でイタリアの銀行の2023年純利益の5分の1近くが消失する可能性があると試算。バンク・オブ・アメリカの試算では、この措置が政府に最大30億ユーロ(33億ドル)の収入をもたらす可能性がある。
デンマークの製薬会社ノボ・ノルディスクの肥満症治療薬「ウゴービ」が心臓まひや脳卒中のリスクを減らすことが、待望されていた研究結果で明らかになった。8日の株式市場では同社のほか、競合し得る治療薬を開発している米イーライリリーの株価も急伸した。
ノボ・ノルディスクが8日発表した研究結果によると、肥満や太り過ぎ、心疾患の既往歴のある患者がウゴービを服用した場合、プラセボ投与群と比べて心血管の異常が発生する確率が20%低かった。
この発表を受けて同社の株価は一時19%高と、日中ベースで上場後最大の上げ。時価総額は約4230億ドル(約60兆円)に膨らみ、欧州企業として高級品グループのLVMHに次ぐ2位に躍り出た。
イーライリリーは一時18%高。糖尿病治療薬で、近く肥満症の治療でも承認されると見込まれる「マンジャロ」の売り上げが予想以上で、業績見通しを引き上げたことなどが好感された。同薬の売上高は4-6月(第2四半期)に約10億ドルに達した。
●その他産業
ソフトバンクグループが8日発表した4-6月期(第1四半期)の純損益は、4776億円の損失となった。ハイテク株の好調などでビジョン・ファンド(SVF)事業は改善したものの、持ち株会社投資事業の不振が響き3四半期連続の赤字となった。
同社の発表によると第1四半期はSVF事業が6四半期ぶりに黒字化したものの、ソフトバンクG本体による投資とアーム事業で損失を計上した。SVF1号、2号、ラテンアメリカファンド事業の税引き前利益は610億円と、前の期の2兆3308億円の赤字から回復している。
後藤芳光最高財務責任者(CFO)は決算会見で、SVF事業について「6四半期ぶりの黒字転換はひとつのメッセージだと思う」と評価した上で4月以降「恐る恐る投資を再開した」が、今後については「油断は全くできない」と述べた。反転攻勢に言及した孫正義社長の発言についても「ちょっと言葉が強い」と修正した。
第1四半期には、ソフトバンクGが保有する企業の株価が大きく上昇した。米ドアダッシュ株は20%強、米グラブホールディングス株は14%、米クーパン株は9%上昇した。米オープンAIが開発した対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」が話題になる中、AI関連企業としてソフトバンクGの株価も約3割上昇した。
ソフトバンクGが投資活動で反転攻勢に移るかどうかは、傘下の英半導体設計会社アームの新規株式公開(IPO)の成否にも左右される。
第1四半期にアームは、半導体市場の売り上げ減少を背景に減収減益となった。前年同期に298億円だった税引き前利益は、人件費が増加したことなどで95億円の赤字に転落した。同社については上場により600億-700億ドルの評価額を目標とし、最大で100億ドル規模の資金調達をうかがっている。
投資分析サイトのスマートカルマにリポートを配信するアナリスト、ビクター・ガリアーノ氏は800億ドルという評価であれば、売上高の28.4倍という非常に高い水準で空想的だと指摘、推定では400億-450億ドルだという。
ソフトバンクグループ(SBG)傘下の英半導体設計大手アームは9月に米ナスダック市場に上場する方針を固めた。上場と同時に米アップルや韓国サムスン電子など複数の事業会社がアームに投資する。上場時の時価総額は600億ドル(約8兆6000億円)超が見込まれており、2023年で世界最大の新規株式公開(IPO)案件になりそうだ。
米シェアオフィス大手のウィーワークは8日、今後の事業継続に「重大な疑義」があると開示した。オフィスを利用する会員の解約が増えて最終赤字が続くなか、今後必要とする現金を確保できるかに疑義が生じているとした。
2023年4〜6月期の決算発表にあわせて開示した。ウィーワークは「継続企業として存続するためには、手元流動性と収益性を今後12カ月間にわたって改善する経営計画の成功が条件となる」と記した。具体策として、新株の発行などによる追加資本の手当やオフィス賃料など経費の抑制、会員解約を減らす営業努力などをあげた。
23年4〜6月期の最終損益は3億9700万ドル(約570億円)の赤字だった。ウィーワークは株主のソフトバンクグループ(SBG)が再建を支援するが、経営不振が続いている。8日の米株式市場の時間外取引で、ウィーワークの株価は同日終値より25%ほど安い水準で推移している。
半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)は8日、欧州初となる工場をドイツに建設すると発表した。総投資額は100億ユーロ(約1兆5700億円)以上で、2027年末の稼働を予定する。建設中の米国、日本に続く海外の生産拠点となる。
米半導体大手エヌビディアは8日、同社の人工知能(AI)プロセッサーに関する最新情報を明らかにした。性能を一段と向上させることで、急成長市場での優位性を確固たるものにしようとしている。
同社はロサンゼルスで開催されているグラフィックス関連の展示会で、グラフィックスチップとプロセッサーを組み合わせた「グレース・ホッパー・スーパーチップ」が新しいタイプのメモリーによって強化されると発表。毎秒5テラバイトという驚異的な速度で情報へのアクセスを可能にする高帯域幅メモリー3(HBM3e)に対応するとしている。
「GH200」として知られる同スーパーチップは2024年第2四半期に生産が開始される予定だという。展示会ではジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が登壇。ハードウエアとソフトウエアの新たなラインアップを相次いで明らかにした。
●決算関連
米物流大手UPSが8日発表した2023年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比11%減の220億5500万ドル(約3兆1000億円)だった。米消費の減速が響いた。採算面では大幅な賃上げが足を引っ張っており、23年12月期通期の営業利益率見通しを11.8%と従来に比べ1ポイント下方修正した。
4〜6月期の国内宅配収入は前年同期比7%減ったほか、企業向けの物流サービスも23%減少した。全体の営業利益は前年同期比21%減の27億8000万ドル、純利益は同27%減の20億8100万ドルにとどまった。
同社のトラック運転手ら30万人が加盟する労働組合と、大規模な労働争議を経て7月に合意した賃上げも業績に影を落としている。
会社側はフルタイムのドライバーの最高時給を49ドルに引き上げるほか、パートタイマーの賃金を3割増やすなど、大幅な譲歩を余儀なくされた。大規模ストライキは回避できたものの、将来の大幅なコスト増が業績の重荷になる。
ストライキ権を確立して強硬姿勢でのぞんだ組合に対し、土壇場まで妥結できなかった会社側の手腕に不安を抱いた顧客も多い。ストによる事業への影響を懸念し、組合を持たないフェデックスなど競合他社に一部顧客が流れたとみられる。
キャロル・トメ最高経営責任者(CEO)は「組合と合意に達したことは喜ばしい」としたうえで、労使交渉中もUPSの利用を続けた顧客に謝意を示した。
米国では賃上げや待遇改善を求める労使の争いが激しさを増している。6日には物流大手のイエロー・コーポレーションが組合との対立がきっかけで経営破綻した。アマゾンの配達員などにもこうした動きが波及する可能性もあり、米景気の新たなリスクに浮上している。
●先進国、グローバル、金融市場
8日発表の7月の中国の貿易統計では輸出と輸入がともに2ケタ減となり、世界景気減速への懸念が高まった。格付け会社が複数の米地銀の債務格付けを引き下げたことも投資家心理の重荷となり、ダウ平均の下げ幅は一時400ドルを超えた。
7月の中国の貿易統計では、ドル建ての輸出額が前年同月比14・5%減り、2020年2月以来の減少率となった。一方、輸入額も12.4%減と、5カ月連続のマイナスとなった。中国の内需の弱さに加え、海外からの引き合いが鈍く、世界景気の減速感が強まっているとの見方が台頭。米株式市場では、景気敏感株の売りにつながっている。
7日夜に格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが複数の米地銀の債務格付けを引き下げたほか、大手銀6行を格下げ方向で見直すと発表した。米地銀の流動性や資本に関する懸念が再び高まり、金融株全般に売りが出て、投資家心理を冷やしている。見直し対象になっていないが、ダウ平均を構成するゴールドマン・サックスとJPモルガン・チェースが下落している。
米国のモノの輸入に占める割合で2023年1〜6月にメキシコが中国を抜き、首位に立った。中国の首位陥落は15年ぶり。メキシコは比較可能な01年以降で初めてトップになった。
米国は友好国とサプライチェーン(供給網)を構築する「フレンドショアリング」を進めている。米中対立を背景にモノの流れが変わり始めた。
米フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁は8日、経済指標に急激な変化がない限り、金利を現在の水準に維持できる段階に差し掛かっている可能性があるという見解を示した。
ハーカー総裁は「9月中旬までに憂慮すべき新たなデータが出てこなければ、辛抱強く金利を据え置き、これまでに実施した金融政策措置が効果を発揮するのを見極める段階に達した可能性があると確信している」と述べた。
その上で、利上げ停止が適切と判断されれば、「当面はその水準にとどまる必要がある。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)からは絶対などないということを学んだ。金利を直ちに緩和するような状況は想定していない」とした。
「インフレが再び急上昇する可能性は見込んでいない」という認識も示した。
食料・エネルギーを除く個人消費支出(PCE)価格指数は年末までに4%弱まで低下した後、2024年には3%を下回り、「25年には目標の2%で安定する」と予想。失業率は若干上昇し、国内総生産(GDP)の伸びは最近のペースから鈍化するという見通しを示した。
その上で「経済活動は緩やかな減速にとどまると想定する。緩やかだが、確かなディスインフレとなるだろう」とし、「つまり、われわれはソフトランディングに向けた道筋にある」という考えを示した。
ニューヨーク連銀が8日発表した四半期報告書によると、4〜6月期の米家計におけるクレジットカードの債務残高は1兆310億ドル(約148兆円)と過去最高となった。債務急増にともない延滞率も上昇し、新たに支払いが30日以上遅れた割合は7.2%と前年から2.44ポイント増え、2012年1〜3月期以来の高水準となった。
23年4〜6月期の家計の債務残高は全体で17兆630億ドルと前年同期から5.6%増え、過去最高水準となった。最も急伸したのはカードローンで、前年から16.2%増加した。
NY連銀は「金利上昇や物価高、米銀破綻など消費者にとって多くの逆風があったにもかかわらず、金融不安はあまり広がっていないようだ」と指摘した。インフレ下でも底堅い消費が続いたとみられる。
住宅ローンの債務残高は5.5%、自動車ローンでは5.3%、それぞれ前年同期から増加した。一方で学生ローンは同1.3%減少した。
4〜6月期は債務残高の増加にともない、延滞も増えた。カードの支払いが新たに30日以上遅れた人の割合は11年ぶりの高水準となった。ローンのタイプ別でもっとも伸び幅が大きく、NY連銀のジョエル・スカリー氏は「新型コロナウイルス流行前の水準まで高まった」と説明した。
債務全体では、新たに支払いが30日以上遅れた割合は3.18%と前年から0.77ポイント上昇し、20年7〜9月期以来の高水準を記録した。自動車ローンは7.28%と1.64ポイント、住宅ローンは2.56%と0.66ポイント、それぞれ前年同期から上がった。
一方、学生ローンでは1.01%と0.12ポイント減少した。米政府がコロナ対策で打ち出した学生ローンの支払い猶予措置を受けて、延滞率は歴史的な低水準で推移している。3年以上続いてきた措置は8月末で打ち切りとなるため、今後の消費に与える影響が懸念されている。
英政府は8日、ロシアに武器を供給するトルコやアラブ首長国連邦(UAE)の企業に経済制裁を科すと発表した。武器の取引に関わったスロバキア人なども対象とした。ウクライナを侵攻するロシアの他国からの武器調達を阻む。
資産凍結などの制裁を科す。軍事活動に使う電子機器を供給するトルコの2社のほか、UAEとイランのドローン(無人機)メーカーを対象とした。
米国のガソリン価格は急速な値上がりに歯止めがかかり、ドライバーにある程度の安堵(あんど)をもたらしている。政策当局者はインフレ退治で追加利上げが必要かを見極めている。
全米自動車協会(AAA)のデータによれば、ガソリン価格は4日以降、下落もしくは横ばいとなっている。世界的な需要低迷を反映した原油価格の下落が背景だ。それまでは17日連続で上昇し、価格は8カ月ぶり高値を付けていた。
米サンフランシスコ連銀の新たな調査によると、消費者物価指数(CPI)の重要な項目であるシェルター(住居費)上昇率は2024年にかなり減速し、場合によってはマイナス圏に転じる可能性もある。
「われわれのベースライン予測では、シェルター上昇率は2024年後半まで鈍化が続き、同年半ばにはマイナス圏に転じる可能性すらある。これは住居費の急激な転換を意味し、物価全体の動きに大きな影響を与えるだろう」と、7日に公表されたリポートで執筆者の同連銀エコノミストのオーガスタス・クメッツ、スカイラー・ルイ、ジョン・モンドラゴンの3氏が指摘した。
リポートを作成した研究員らは、ケース・シラー住宅価格指数とコアロジックとジロー、アパートメント・リストが作成する貸し手側の希望賃料の指標を用いて、シェルター項目について予測するモデルを構築。その結果、「2022年前半からの急激な金利上昇は住宅市場の減速に大きな影響を与えている可能性が高く、この減速は今後も続く公算が大きい」と指摘した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
ポーランドのドゥダ大統領は10月15日に総選挙を実施すると発表し、選挙戦が正式に始まった。与党「法と正義」は前例のない3期目の政権維持を狙う。
法と正義率いる与党連立政権にとっては、今回の選挙で過半数を失う大きなリスクがある。生活費の危機や増え続ける欧州連合(EU)との法的争いで対応に失敗しているとして、野党は攻勢を強めている。EUはポーランドに対し、354億ユーロ(約5兆5500億円)に上る補助金を凍結した。
また、政府が合法中絶をほぼ全面禁止したことに対する街頭デモには、数十万人の市民が参加した。
世論調査では、法と正義が最大野党「市民プラットフォーム」をリードしているものの、支持率は約3分の1にとどまり、農村部を中心とする保守的なカトリック教徒以外に支持をなかなか拡大できていない。選挙では法と正義が過半数に大きく届かない結果となる可能性があり、2019年の前回選挙の得票率である44%の確保にも苦戦しそうだ。
中国の不動産大手、碧桂園が米ドル債の利息を払えなかったようだ。ロイター通信によると合計2250万ドル(約32億円)の利息を6日までに支払う必要があったが、できなかった。支払いには30日間の猶予期間があるが、経営環境の厳しさが浮き彫りになっている。
中国の不動産開発大手、碧桂園は8日、今月6日が期日だったドル建て債2本の利払い(総額2250万ドル)を履行できなかったと表明した。
投資家によると、利払いが行われなかったのは2026年2月満期債と30年8月満期債。いずれも30日間の猶予期間がある。
碧桂園はロイターに、利用可能な現金の減少が続いていると表明。販売環境や借り換え環境の悪化に加え、さまざまな資本規制の影響で「定期的に流動性に圧力」がかかっていると文書で説明した。
債権者の法的権利を守るため、資本の取り決めを改善しているとも述べた。不動産業界が「前例のない困難」に直面する中で、住宅の引き渡しと債務返済に取り組んでいると強調した。
2022年末時点の債務は1兆4000億元(1940億ドル)。
碧桂園は、今年の販売額が3位の大手だが、この数週間、流動性懸念が再燃し株・債券が売られている。
碧桂園の香港上場株は14.4%下落し、1日の下げ幅としては昨年12月以来の大きさとなった。デュレーション・ファイナンスによると、同社のドル建て債券の大半は1ドルの額面に対し0.1ドル以下に下落した。オンショア債の一つは28.6%急落し取引停止となった。
クレジットサイトのアナリスト、ニコラス・チェン氏は「(碧桂園が)債券の元本の全額償還ではなく、利払いに苦慮しているという事実は、おそらく流動性が非常に逼迫していることを示している」と指摘した。
「(碧桂園の)規模を踏まえると、こうした事態は不動産セクター全体に悪影響を及ぼし、特にまだ存続している他の民間デベロッパーに対する投資家心理に悪影響を及ぼすと思われる」と語った。
同社は9月に58億元の社債が満期となるほか、4800万元の利払いを行う必要がある。海外では30億香港ドル(3億8420万ドル)の転換社債が12月に、10億ドルの社債が1月にそれぞれ満期を迎える。
同社は先週、3億ドルの増資について、実施の最終合意に至らなかったとして、直前で中止した。また、1─6月の純損益(未監査)が赤字に転落すると警告。前年同期は19億1000万元(2億6731万ドル)の黒字だった。
中国が新型コロナウイルス禍に伴う厳しい制限措置を3年ぶりに解除した際、ニエ・シンチュアン氏は自社製革靴の売り上げが増えると期待していた。しかし実際には需要があまりにも低調なため、1年前の水準から3%値下げして利益を減らさざるを得なかった。
中国経済の成長が鈍化する中で、国内企業を襲うデフレ圧力の不吉な兆候だ。消費者が支出の先送りを選べば、政府が打ち出している景気刺激策の効果が損なわれる恐れがある。
ニエ氏は中国東部の温州市を本拠に国内の小売業者や消費者向けに事業を展開する自らの会社イタリア・エルシナ・グループについて、2月以来売れ行きが先細りになっていると語った。
法人顧客の多くはコロナ禍によるキャッシュフローと利益への打撃からまだ回復していない。新たな注文を入れるよりも、販売が急増することを期待しながら、抱え込んだ在庫を売り切ろうとしている小売業者もいる。
「誰もがただじっと耐えて、できるだけ利益を圧縮し、それでも生き残れるよう最善を尽くしている」と同氏は話した。
中国では、一部エコノミストが年初に予想した急激な物価上昇ではなく、物価下落が起きている。生産者と小売りサイド双方でこの現象が見られ、米国や他の主要国で経済再開後に起きた急激なインフレとは対照的だ。
石炭や石油などの商品安を背景に、中国の生産者物価指数(PPI)は昨年10月から前年同月比で低下が続いている。9日に発表される7月の消費者物価指数(CPI)は低下している公算が大きく、CPIとPPIが共にマイナスとなれば2020年終盤以来となる。
経済全体の物価動向を表す指標の国内総生産(GDP)デフレーターを用いれば、中国は既にデフレに陥っている。国際通貨基金(IMF)は、デフレをCPIやGDPデフレーターのような「物価の総合的な指標が持続的に低下すること」と定義している。
豚肉価格の下落が主な原因だった20年末から21年初めにかけての一時的な物価上昇率低下と異なり、最近のCPIの落ち込みはより深刻だ。中国にとって最大級の市場である米国と欧州などで消費者が支出を控える中で、中国の輸出が急減。国内不動産セクターの低迷長期化が家賃や家具、家電製品の価格を押し下げている。
また、米電気自動車(EV)メーカー、テスラの値下げに端を発した自動車業界の価格競争で、他の主要ブランドも今年に入り大幅値引きに踏み切った。
幅広い製品の価格下落が長期化すれば、消費者の購入が先送りされ、経済活動がさらに抑制され、企業は値下げを続けざるを得なくなるかもしれない。その結果、収益が減った企業が投資と雇用を抑制することになり、日本が何十年も苦しんだようなスタグネーション(景気停滞)を招きかねない。
中国人民銀行(中央銀行)や国家統計局などの当局者は長期的な物価下落の根拠はないとの見解を繰り返しており、政府はデフレ懸念を小さく見せようとしている。
デフレについて公に語ることは、多くの中国人アナリストにとってもタブーだ。国内証券会社のあるエコノミストは、当局からデフレについて話すなと指示されたという。中国経済の改善が着実に進んでいるとのシナリオを伝えるよう言われたと非公開情報であることを理由に匿名で語った。
中国を拠点とする別のエコノミストは、当局と自社の広報部門からデフレについて公に論じないよう指導を受けたと述べた。
一部のエコノミストは、CPIはあと数カ月、低下傾向にあるが、比較対象となる昨年の水準が高いことによるベース効果が薄れ、内需が回復するにつれて、年末に向けて上昇に転じると予想。ブルームバーグのエコノミスト調査では、23年の年間インフレ率はわずか0.8%と、09年以来の低水準になるとみられている。
低インフレはインフレ調整後の実質金利を押し上げ、企業の負債処理コストを増やし、人民銀の融資促進策にダメージを与える。
複数の人民銀当局者が預金準備率引き下げなど、幾つかの緩和策を示唆している。エコノミストの間では7-9月(第3四半期)に10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利下げがあると見込まれている。
みずほ銀行のアジア為替担当チーフストラテジスト、張建泰氏は「中国指標の弱さが引き続き消費に打撃を与えるだろう。雇用喪失や給与削減の潜在的なリスクを考えると、高額商品の購入に慎重な家計の姿勢が続きそうだ」と指摘。「デフレを巡る不透明感が人民銀に追加緩和策を促す可能性がある」と予想した
●中東
[ドバイ 8日 ロイター] - サウジアラビアの国営メディアによると、同国内閣は8日、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」による石油市場安定に向けた予防的措置への支持を再確認した。
OPECプラスの合同閣僚監視委員会(JMMC)は4日、現行の協調減産生産政策を据え置いた。
●中南米・アフリカ
●市況ニューヨーク外為市場ではドルが全面高。低調な中国の貿易統計を受け、人民元や豪ドル、ニュージーランドドルなどが下落する中、安全資産としてのドルの投資妙味が高まった。
中国税関総署が8日発表した7月の貿易統計によると、輸出は前年比14.5%減少、輸入は同12.4%減少した。いずれも予想を上回る減少で、輸出は2020年2月以降で最大の落ち込みとなった。
また、格付け会社ムーディーズは7日、米国の銀行10行の信用格付けを1段階引き下げたほか、一部の主要行を引き下げ方向で見直しの対象とした。
バノックバーン・フォレックスのチーフグローバルストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は「中国と日本発の低調なデータ、ムーディーズによる米銀格下げは全てリスク心理への重しとなった」と指摘。為替市場では成長見通しに対する懸念を反映し、豪ドル、ニュージーランドドル、カナダドル、ノルウェークローネ、スウェーデンクローナが対米ドルでアンダーパフォームしているという見方を示した。
米金融・債券市場では、格付け会社ムーディーズによる中・小規模の米銀の格下げを受け、長期債を中心に利回りが低下した。中国の7月の貿易統計で輸出入が共に予想を超えて減少したことで中国政府が追加景気刺激策を導入するとの観測も米債券相場に影響している。
米国株式市場は反落して取引を終えた。格付け会社ムーディーズによる米銀行格下げを受け、米銀および経済の健全性に対する懸念が再燃して幅広く売られた。
金属および石油の消費大国である中国の低調なデータは需要見通しを巡る懸念をあおり、商品価格が下落した。銅生産国チリの通貨ペソは0.3%安、石油輸出国のコロンビアのペソとメキシコペソはそれぞれ約1.4%、0.1%下落した。
続落して取引を終えた。8日に決算を発表したスイスの商品取引・資源大手グレンコアの大幅減益や、7月の中国貿易統計の不振を背景に鉱業株が売られたのが相場の重しとなった。銀行株の下落も相場の大きな足かせとなった。
<欧州株式市場> 反落して取引を終えた。イタリア政府が銀行に対する40%の超過利潤税の課税を承認したことを受けて、イタリアの銀行銘柄が売られた。一方、デンマークの製薬会社ノボノルディスクが急伸したため相場の下げ幅は抑えられた。
<ユーロ圏債券> 利回りが低下した。欧州中央銀行(ECB)が発表した月次調査でインフレ期待が低下したことを受けた。投資家がリスク資産から相対的に安全なソブリン債に逃避したことも、利回りに低下圧力をかけた。
サクソバンクのシニア債券ストラテジスト、アルテア・スピノッツィ氏は「経済的背景を見ると、欧州の方がはるかに懸念材料が多い。ユーロ圏の利下げ期待は加速しており、ドイツ国債のアウトパフォームにつながっている。ECBは米連邦準備理事会(FRB)より先に利上げを中止し、利下げに踏み切るだろう」と述べた。
日経先物32220、ダウ先35377、債先146.88、米4.021、独2.4400、仏3.002、西3.503、伊4.114、英4.4270、波5.510、原油82.73、銅8,378、ドル円143.25、ユーロドル1.0955
※8/9 8時15分頃
備忘録(2023/8/7)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
日本生命保険は石油やガスの採掘プロジェクトを投融資の対象から外す。石炭採掘への投融資から撤退する金融機関は増えているが、石油・ガスも含めるのは国内生保で初めて。企業に脱炭素の取り組みの加速を促すねらいで、他の金融機関にも同様の動きが広がる可能性がある。
日本生命保険は7日、ESG(環境・社会・企業統治)対応強化の一環で、たばこ関連銘柄を投資対象から除外すると発表した。ESGの観点から適当でないと考えられる銘柄を外す「ネガティブ・スクリーニング」の対象を広げる。たばこ関連を投資対象から除外するのは日本の大手生損保で初めて。
同社は2018年、クラスター弾など特定の兵器製造と石炭火力発電の2分野で投融資を行わない方針を表明。今回の措置では、たばこに加えて、核兵器やパーム油関連銘柄、石油・ガスの火力発電事業も投資除外の範囲に含めた。具体的にどの企業を対象とするかは明らかにしていない。
ネガティブ・スクリーニングを実施している例は国内でも見られるが、たばこ関連企業への投資を禁じるのは珍しい。ブルームバーグが大手生損保各社に確認したところ、同様の取り組みは見られなかった。
日本生命は発表資料で「健康への影響に鑑みた対応」として一歩踏み込んだ形だが、同社を含めESGを重視する投資家にとって、投資対象をどう線引きするかという難しさは残る。たばこを除外する一方で、例えばアルコールや戦闘機は許容されるのかという疑問も生じる。
ESG投資では、銘柄選別などの際にさまざまな手法が導入されている。日本では、投資先の株式を持ちつつ対話を続ける「エンゲージメント」が比較的多いが、ネガティブ・スクリーニングは、特に欧州で用いられる傾向が強い。
グローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンス(GSIA)の調べによると、ネガティブ・スクリーニングを用いた投資残高の国・地域別の内訳は、欧州が9兆2420億ドル(約1310兆円)で全体の61%、米国が3兆4040億ドルで23%、日本は1兆2540億ドルで8%だった。
●その他産業
米トラック物流大手のイエロー・コーポレーションが7日までに、日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請し、経営破綻した。多額の負債を抱えるなかで、労働組合との対立が深まり、自力再建に行き詰まった。従業員約3万人の雇用が失われる可能性がある。
●決算関連
東レが7日発表した2023年4〜6月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比65%減の139億円だった。車や家電に使う樹脂の中国需要が低迷した。新型コロナウイルス流行期に在宅需要を取り込んだ反動でテレビなどに使うディスプレー用材料の販売も低調なままだ。
新型コロナウイルス下の行動制限解除に伴い増えている交通事故の影響で保険金支払いが増加したほか、円安の進行で金融派生商品関連の損失148億円を計上したことが響いた。
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが7日発表した2023年4〜6月期の決算は、純利益が前年同期比38%減の301億ドル(約4兆3千億円)だった。原油高の追い風が吹いた前年同期から落ち込んだが、足元では減産などの影響で原油価格が持ち直している。
米食肉大手タイソン・フーズは7日、中西部ミズーリ州の2カ所を含む鶏肉処理場4カ所を閉鎖すると発表した。コスト高と需要伸び悩みで食肉事業の採算が悪化しており、拠点の統廃合を進め合理化を急ぐ。
タイソンが同日発表した2023年4~6月の決算は、最終損益が4億1700万ドル(約600億円)の赤字となった。前年同期は7億5000万ドルの黒字だった。
売上高は前年同期比2.6%減の131億4000万ドルにとどまった。食品や日用品の値上がりを背景に消費者が食肉を買い控え、販売量がほぼ横ばいと伸び悩んだ。価格は豚肉が16%下落と大きく落ち込み、鳥肉も約6%下落した。営業損益は3億5000万ドルの赤字だった。
タイソンは目下、24年9月期末までに10億ドル規模のコスト削減を目指すリストラ計画を進めている。23年に入り、上級管理職15%の削減や、南部バージニア州などの養鶏場2拠点の閉鎖と従業員1700人の削減などを発表している。22年10月にリストラに着手してから、約7億ドル規模のコスト削減を達成したと説明した。
タイソンのドニー・キング最高経営責任者(CEO)は今回発表した4拠点の閉鎖について「非常に難しい決断であり、タイソンが真剣に事業の改善に取り組んでいることのあらわれだ」と説明し、投資家に理解を求めた。
●先進国、グローバル、金融市場
世界的にモノの需要が落ち込んでいる。製造業の景気指数をみると主要29カ国・地域の7割で、企業活動が縮小した。運ぶモノの不足で供給網の需給バランスは崩れており、その度合いは2008年のリーマン・ショック時に匹敵する。消費の中心がモノからサービスに移行したことに加え、中国の内需低迷が響く。サービス業だけで雇用を支えきれるかが焦点となる。
インフレの劇的な影響力が低下したとの見方が背景。前月まで3カ月連続で低下していた。ただ、持続的な心理改善の兆しは見られないという。
センティックスのマネジングディレクター、パトリック・ハシー氏は、特にドイツがユーロ圏の「病人」になっており、大きな重しだと指摘。ドイツの投資家心理は2022年10月以来の低水準に落ち込んだ。
ユーロ圏の将来への期待度を示すサブ指数は7.3ポイント上昇しマイナス17.3。ハシー氏によると、前向きな見方が増えたのではなく、投資家の予想する悪化ペースが鈍った。
今後6カ月間について「寛大な見方が増えた」のは、投資家がインフレの劇的な影響力が低下したと認識したためで、状況が持続的に改善する兆しはまだ見えないという。
同氏は「ユーロ圏経済は依然リセッションモードにある。このため、今回の結果を喜ぶことはできない」と述べた。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、米政策金利を当面は景気抑制的な水準に維持する必要があるとし、インフレが減速すれば来年には利下げが正当化される可能性があるとの考えを示した。
ウィリアムズ氏は7日に報じられた米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)との2日のインタビューで、「金融政策は好ましい位置にある。政策はあるべきところにある」と発言。「ピーク金利の観点でこれを調整する必要があるかどうか、また景気抑制的なスタンスをどれくらい長く続ける必要があるかはデータ次第になる」と述べた。
その上で、「景気抑制的なスタンスを当面は維持する必要があると想定している」と付け加えた。
追加利上げの必要性については「議論の余地がある」と同氏は指摘。インフレ率が下がり続ける場合は、実質金利がさらに上がらないよう、2024年か25年に金利を引き下げる必要があるかもしれないとの見解を示した。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は7日付のニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、金利の低下が来年始まる可能性があると述べた。
総裁は、経済データ次第で来年初めの利下げの可能性を排除しないと発言。インフレ率は期待通りに低下していると述べた。
景気の鈍化に伴い失業率が若干上昇するとの見通しも示した。
英求人雇用連盟(REC)と会計事務所KPMGの調査によると、英国では7月、人材紹介会社を通じた正規雇用が2020年半ば以降で最大の落ち込みを記録した。経済見通しを巡る懸念が背景。
正規雇用指数は42.4で、新型コロナウイルス流行に伴うロックダウン(都市封鎖)下にあった20年6月の34.3以降で最低だった。
7月の臨時雇用は過去9カ月で最低の伸び。正規雇用を希望する求職者が増えたことが一因。
RECのニール・カーベリー代表は、正規雇用の低迷にもかかわらず、労働市場は依然「かなり力強い」とした上で「新型コロナ後のブームの落ち着きに伴う正常化と言えるが、先行き不透明感も一因だ」と述べた。
新規雇用の初任給は新型コロナ前の基準では大幅に上昇しているが、21年4月以降では最低の伸び率だった。
KPMG・UKの技能・生産性部門パートナー、クレア・ウォーンズ氏は、熟練労働者の争奪戦や生活費の高騰を背景に初任給は高水準を維持していると指摘した。
英国では労働市場の軟化を示す指標が相次いでおり、賃金上昇を懸念するイングランド銀行(英中央銀行)にとっては朗報と言える。
コメルツ銀行のチーフエコノミスト、イエルク・クラーメル氏は「6月のマイナスは今後数カ月の生産の不振を予感させる」と指摘。 受注が減少傾向にあり、新型コロナウイルスの流行による受注残を企業がすでに消化したことを示していると述べた。同氏は独経済が2023年後半に再びマイナス成長に陥ると予想した。
7月の中古車価格指数は前月比1.6%低下し、2021年4月以来の低水準。前年同月比では11.6%下がった。
マンハイムのオーナーであるコックス・オートモーティブのクリス・フレイ氏は「7月の1.6%低下は、少なくとも4月以降の前月比でのマイナスと比較すれば、価格下落ペースの減速を示唆している」と指摘。「前年比では再び2桁台の低下となったが、少し整理が必要だ。2020年7月から22年4月まで22カ月連続で2桁の上昇となっていたのに対し、昨年10月以降で2桁の低下はわずか6回だ」と述べた。
米商品先物取引委員会(CFTC)がまとめた今月1日までの週間データによると、レバレッジを効かせたファンドは年限が長めの米国債デリバティブ(金融派生商品)取引でショートポジションを増やし、その規模はネットベースでの2010年以降のデータで最大となった。
資産運用会社がロングポジションをネットベースで過去最高水準まで増やしたのとは対照的だ。
GSFMの投資ストラテジスト、スティーブン・ミラー氏(シドニー在勤)によれば、レバレッジドファンドは「インフレは緩やかにしか下がらない」と考えており、同氏は「それは正しかった」と指摘。一部のファンドが「米国債のロングポジションを手放し、利回りを押し上げた。レバレッジをかけた投資家はそれを生かす好位置にいた」と語った。
米政府が2020年秋に見つけ、日本政府に伝えた。日本がサイバー防衛能力を高めないと、日米の情報共有に支障が生じる可能性があると指摘した。
元米軍当局者はワシントン・ポストの取材に中国による不正アクセスは「衝撃的なほどひどかった」と語った。
米議会では、歳出や議論を呼ぶ社会問題を巡り民主・共和両党が激しい対立を解消せずに夏季の休会に入った。このまま2024会計年度(23年10月-24年9月)歳出法案の成立に至らなければ、9月末の23会計年度終了に伴い連邦政府機関の閉鎖に追い込まれるリスクが高まる。
これはまさに、フィッチが米国の格付けを最上級の「AAA」から「AA+」に引き下げる一因とした財政問題についての与野党の瀬戸際政策の最新例となる恐れがある。
フィッチの判断にはウォール街やワシントンで異議を唱える声なども上がったが、この格下げに勢いづいた共和党はバイデン大統領や民主党に対し、新たな歳出削減の受け入れで譲歩するよう呼び掛けている。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏は政府機関閉鎖となった場合に関し、直接の経済的打撃は限定的である公算が大きいとしつつも、「とりわけ不都合なタイミング」となる可能性を指摘する。
米金融当局は9月19、20両日に次回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合を開き政策金利について重要な判断を下すが、政府機関の長期閉鎖のリスクが高まれば政策運営にも影響が及ぶ。18-19年の閉鎖の際には多くの主要経済指標の発表が遅れた。
また、約4500万人もの米国民が10月から学生ローン返済再開に直面し、個人消費支出の落ち込みにつながる恐れがあるほか、全米自動車労組(UAW)が同月にストライキに入る事態も現実味を増している。
BEのウォン氏によれば、これまでの米利上げの効果は今秋にピークに達すると考えられ、米経済は新たなハードルに直面することになる。
TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディー・ゴールドバーグ氏は「政府機関閉鎖が長期化すれば米金融当局にとって一段と難しい状況になる。それこそ、市場が神経質になると考えられる理由だ」と話した。
イングランド銀行(英中央銀行)のチーフエコノミスト、ヒュー・ピル氏は7日、英国の食品価格の上昇率は年内に10%近辺まで低下する可能性が高いとの見方を示した。ただ、消費者物価指数(CPI)の全体の上昇率が中銀が目標とする2%に戻るにはさらに低下する必要があると述べた。
英国では飲食料品価格が他の多くの品目よりも急速に上昇しており、上昇率は3月に19.22%と、1977年以降で最高を記録。6月には17.3%に鈍化したが、CPI全体の伸び率をなお10ポイント近く上回っている。
ピル氏は慈善団体シチズンズ・アドバイス主催のオンライン・イベントで「食品インフレ率は年末までに10%近辺まで下がり、来年は一段と低下すると予想している」と述べた。
ただ「インフレ率全体を2%まで低下させようとしている中銀にとり、食品価格のインフレ率が10%の水準にあることは持続的な目標達成と相容れない」とし、食品インフレ率が10%に低下したとしてもまだ十分ではないとの考えを示した。
米連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)が7日公表した7月の消費者調査によると、今は住宅を購入するには「悪い時期」という回答が82%と、前月から4%ポイント上昇し、2010年の調査開始以降過去13年で最高の水準に達した。
住宅在庫の不足や販売価格の下げ渋りが背景にある。
今が住宅を売るには良い時期という回答は64%で、前月から横ばいだった。
また、労働市場に対する自信や住宅ローン金利低下見通しを反映し、住宅購入センチメント指数は66.8と、前年同月比で4ポイント、前月比で0.8ポイントそれぞれ上昇した。
●中国・アジア・ロシア・東欧
インド政府は11月からパソコンなどの輸入を制限する。インドでの生産拡大や、中国との貿易不均衡を是正する狙いがあるとみられる。米アップルや韓国サムスン電子といった海外メーカーのインド展開に影響を与えそうだ。
インドネシア中央統計局が7日発表した2023年4〜6月期の国内総生産(GDP)は、物価の変動を除いた実質で前年同期に比べて5.2%増えた。GDPの5割強を構成する家計消費の伸びが支えた。一方、新型コロナウイルス禍からの経済の回復をけん引した輸出は減少に転じた。
ロシア産原油が一段と値上がりしている。主力油種は一時9カ月ぶりの高値をつけ、西側諸国が経済制裁で設定する価格上限を超えたもようだ。
制裁に加わらないインドや中国による需要が根強い。ロシアによる自主的な減産や輸出抑制で供給も減り、価格を押し上げた。
タイのジュリン商務相は7日、同国は輸出と国内消費用に十分な生産量を確保しているとして、コメの輸出を停止する理由はないと言明した。インドのコメ輸出停止によりタイは恩恵を受けているとも述べた。
インドは7月下旬、一部の種類を除いてコメの輸出を停止した。同国のコメ輸出はほぼ半減することになり、世界的な食料価格の上昇が懸念されている。
UBP銀行のアジア担当シニアエコノミスト、カルロス・カサノバ氏はメモで「外需の弱まりが第3・四半期も引き続き景気の足を引っ張る」との見方を示した。
「デフレ圧力が高まる可能性が高い」とし、物価の下振れは内需の不振と軟調な上流の物価の影響が大きいと分析した。
中国本土では大半のセクターが下落し、不動産株とヘルスケア株の下げが目立った。
●中東
イランのアブドラヒアン外相は7日、都内で記者会見を開き、米国などとの核合意の再建に向けた交渉について「真剣な意志を持っている」と述べた。アブドラヒアン氏は岸田文雄首相との会談などのために来日していた。
アブドラヒアン氏は「イランは原子力の平和利用を目的としている」と核兵器の開発を改めて否定し、「昨年から米国と間接協議を進めてきた。すべての経済制裁を解除するため努力する」と訴えた。
●中南米・アフリカ
●市況ニューヨーク外為市場では、ドルが主要通貨に対して上昇した。米連邦準備理事会(FRB)当局者がインフレの高止まりや労働市場の引き締まりを背景に追加利上げの可能性が高いと発言したことが支援要因となった。
FRBのボウマン理事はこの日、インフレ率をFRBが目標とする2%に引き下げるためには追加利上げが必要になる公算が大きいと指摘。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、金利の低下が来年始まる可能性があるとの見方を示すと同時に、FRBは当面は制約的なスタンスを維持する必要があると述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、利益確定の売りに押され、3営業日ぶりに反落した。
今年下半期の需給引き締まり観測を背景に、相場は前週まで6週連続で上昇。前週末4日の清算値は約3カ月半ぶりの高値を付けていたが、7日は早朝から徐々に売りが優勢となった。
ロシア南西部から欧州へ石油を送る「ドルジバパイプライン」で週末に油漏れが発生し、一部区間の稼働が停止されたものの、8日に再開の見通しと報じられた。また、米国の夏場のドライブシーズンが終わりに近づき、ガソリン需要が鈍化するとの見方も投資家
心理を圧迫。相場は一時81ドル台半ば付近で取引された。
中南米金融市場では大半の域内通貨が下落した。金融緩和加速への警戒感からブラジルレアルが下落した。銅相場の下落に追随し、チリペソは6営業日続落となった。
FTSE350種鉱業株指数は1.27%下げた。最大の金属消費国の中国での過剰在庫と需要見通しを背景に銅価格が下落したのが嫌気された。
航空宇宙・防衛指数は1.38%上昇し、過去最高値を付けた。ここ数営業日にわたって最高値を更新しており、アナリストらは地政学的不確実性の高まりが上昇要因の1つになっているとの見方を示す。
不動産代理店のLSLプロパティー・サービシズは10.6%と大きく下落した。英住宅ローン市場の低迷が年間利益に悪影響を及ぼすと警告したのが嫌気された。
ドイツの重電大手シーメンス・エナジーが6.1%下落した。風力発電用タービン子会社を巡る問題で22億ユーロ(24億ドル)の費用を計上すると発表したことが重しとなった。
<ユーロ圏債券> 独連邦債の長短金利逆転の幅が縮小した。市場では欧州中央銀行(ECB)がインフレ対応のために金利を長期にわたり高水準に維持するとの観測が出ている。
日経先物32372、ダウ先35557、債先146.40、米4.087、独2.5630、仏3.124、西3.628、伊4.240、英4.4935、波5.564、原油82.42、銅8,499、ドル円142.51、ユーロドル1.1004
※8/8 8時30分頃
備忘録(2023/8/4-6)
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
●その他産業
●決算関連
金利上昇によるリターン増大と自動車保険会社ガイコの業績改善などが寄与した。
一方、住宅建設のクレイトン・ホームズと鉄道部門BNSFは減益。金利上昇や貨物輸送量の減少、賃金上昇などが響いた。
株高警戒の姿勢は維持しているとみられ、第2・四半期の株式売買は売却が126億ドル、購入が46億ドルで80億ドルの売り越し。同社の3530億ドルの株式ポートフォリオの約半数はアップルが占めている。
クボタは4日、2023年12月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比28%増の2000億円になる見通しだと発表した。2年ぶりの最高益を見込んでいた従来予想から140億円上積みする。ショベルカーや住宅建設などで使う小型建機の販売が北米で伸びる。前期は原材料高が重荷となっていたが、海外を中心に値上げを浸透させて吸収する。
けん引役となっている建機は、1〜6月期の売上高が3119億円と前年同期比41%増えた。米国では住宅ローン金利の上昇が落ち着き、住宅建設に使う建機の需要が盛り返している。「来年にかけても引き続き堅調に推移する」(北尾裕一社長)。販売先であるディーラーの在庫も逼迫していたが、生産体制を整えて供給を増やしている。
農機も堅調だ。22年4月に連結子会社化したエスコーツクボタ(旧エスコーツ)では、インド市場などで低価格のトラクターを販売してきた。9月以降にクボタの技術を生かした防水性能のある新ブランドを発売する予定だ。インドで調達した安価な部品を他地域の工場で活用することも視野に入れており、すでに一部のユニット部品は北米に出荷している。
値上げ効果も浸透してきた。トラクターや建機などを製造するために必要な鉄鋼などの原材料高が続いているものの、「値上げは通期で1200億円あまりの営業増益要因となる。(原材料の高騰分を)カバーできている」(北尾社長)と話す。
日本製鉄は4日、2024年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比42%減の4000億円になる見通しだと発表した。従来予想を300億円上回り、減益幅が縮小する。原料安で在庫評価損が膨らむ一方、原料と鋼材の価格差であるマージン(利ざや)が想定よりも改善する。年間配当も前期比30円減の150円と従来予想から10円増額する。
上方修正の要因は原料安だ。世界的に鋼材需要が低調で市況が悪化し、鉄鋼各社が四半期ごとに決める原料炭の調達価格(FOB=本船渡し)は4〜6月期に前年同期比46%安、鉄鉱石は5%安となった。
日鉄はトヨタ自動車など大口顧客向けのひも付き価格について先決め方式に転換しており、上期の鋼材平均価格は1トン当たり14万3000円程度になる見通しだ。原料安の鋼材価格への反映には時間差が生じるため、原料と鋼材との価格差が拡大する。
加えて高い強度と成形性の良さを併せ持つ「ハイテン(高張力鋼板)」など、高単価な製品の販売も伸びる。高付加価値製品の販売比率が高まることで利益率が改善する。製鉄事業ではマージン改善による増益効果が前期比で500億円と、ゼロ想定だった従来予想から上振れする。
一方、原料安により在庫評価損は膨らむ。在庫評価損による減益要因は3600億円と、従来予想から400億円増える。在庫評価損や為替影響などを除いた実力ベースの事業利益は8400億円と過去最高を見込むものの、最終利益は市況に左右される構図に変わりはない。
競合のJFEホールディングスは24年3月期通期の売上収益の見通しを前回予想から1600億円下方修正した。中国などで鋼材需要が低迷し、単独粗鋼生産が従来予想から40万トン下振れすることが響く。値上げ浸透で純利益は17%増の1900億円で据え置いたものの、日鉄との収益格差はなかなか縮まらない。
今後のカギを握るのは鉄鋼需要の動向だ。足元では自動車の生産台数が伸びているが、日鉄の森高弘副社長は「(今期は鋼材の)数量が増えるとは思っておらず、むしろ厳しい状況が想定される」と指摘する。建築や産業機械向けも弱含んでいる。想定よりも国内需要が下振れすれば、堅調にみえる日鉄の業績のリスクにもなりかねない。
三菱重工業が4日に発表した2023年4〜6月期の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期の2.8倍の531億円だった。4〜6月期としては四半期開示を始めた06年3月期以降で最高となった。ガスを燃料とする高効率な発電用タービンが好調で、フォークリフトなどの値上げ効果も利益を押し上げた。
けん引役はガス火力の発電プラントなどエナジー部門だ。部門の事業利益は245億円の黒字(前年同期は24億円の赤字)だった。ガス火力の新設や修繕などが伸びた。前年同期に利益を圧迫した石炭火力の構造改革など、一時費用がなくなったことも利益を押し上げた。
●先進国、グローバル、金融市場
2024年大統領選への出馬を表明した米共和党のデサンティス・フロリダ州知事は4日、20年米大統領選で不正があったとするトランプ前大統領の主張について「真実と証明されなかった」と述べた。米紙ニューヨーク・タイムズなどが中西部アイオワ州での発言として報じた。
欧州経済の先行きに不透明感が出ている。4〜6月期のユーロ圏の実質域内総生産(GDP)は速報値で前期比0.3%増と、3四半期ぶりにプラス成長に回復した。ただ米国と比べて景気の持ち直しは鈍く、欧州最大の経済大国ドイツは横ばいのゼロ%と低迷した。景況感の悪化も目立ち始め、景気回復のけん引役は不在のままだ。
先月の0.25%の利上げを支持するとした上で「インフレ率をFRBの目標である2%まで低下させるには、追加利上げが必要になる公算が大きい」と指摘。
同理事はタカ派として知られている。
講演原稿では、利上げが「rate increases」と複数形で表記されており、同理事が複数回の利上げを視野に入れていることをうかがわせた。
* 7月の米平均週間労働時間は34.3時間(予想:34.4時間)=労働省
* 7月の米政府部門雇用者数は+15,000人=労働省
* 7月の米非農業部門雇用者数は+187,000人(予想:+200,000人)=労働省
* 7月の米民間部門雇用者数は+172,000人(予想:+179,000人)=労働省
* 7月の米製造部門雇用者数は-2,000人(予想:+5,000人)=労働省
* 7月の米時間当たり平均賃金は前月比+0.4%(予想:+0.3%)=労働省
* 7月の米U‐6失業率は6.7%=労働省
強い労働市場に支えられて堅調に推移する米経済の姿を、統計は映し出した。新たな働き手の需要は依然健全で、レイオフは減速傾向にあり、賃金の伸びはついにインフレを上回り、消費者の信頼感上昇につながっている。
LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏は連邦準備制度理事会(FRB)が目指す「経済のソフトランディング(軟着陸)」と整合していると話す。「雇用者数の伸びは順調に失速しており、熱過ぎず冷め過ぎずといったところだ」と述べた。
平均時給は前月比で0.4%、前年同月比で4.4%増加し、いずれも予想を上回った。とはいえ、労働力が不足したコロナ禍の数年を経て労働需給のバランスは改善が続いており、賃金の伸びは減速の兆候を示している。
この日の統計は約2年ぶりの低水準に落ち着いた物価指数と合わせ、FRBがリセッション(景気後退)を引き起こさずに物価圧力を抑制できるとの期待をさらに高める可能性がある。
ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン、スチュアート・ポール両エコノミストは、「労働市場は冷めつつあり、今年いっぱいインフレが続くと予想されるカテゴリーに、ディスインフレの刺激を与えている。米利上げは7月が最後となる可能性が高く、長い据え置き期間に入ったと考えられる」と分析した。
労働市場のミスマッチが徐々に解消に向かっていることが、統計に示された。労働参加率は62.6%と、前月から変わらなかったが、依然2020年3月以来の高水準。ただ、25ー54歳の年齢層では女性の労働市場撤退が主な原因で、昨年11月以来の低下となった。
7月の米雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが予想を下回ったことを受け、フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場が織り込む、年内の追加利上げ確率は30%以下に低下した。雇用統計発表前は約35%だった。
米労働省が4日発表した7月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は18万7000人増となり、ロイター調査によるエコノミスト予想の20万人増を下回った。
ネイションワイドのチーフ・エコノミスト、キャシー・ボストヤンチッチ氏は「7月の雇用統計は米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢を変えるものではないが、当局者は8月の雇用統計と今後2回のインフレ統計を見極めた上で、据え置くのか、それとも労働需要とインフレ圧力を冷やすために追加利上げが必要なのかを判断したいだろう」と述べた。
JPモルガンのチーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は4日、米国が年内にリセッション(景気後退)に陥ることをもはや想定していないとし、米経済は「健全なペース」で拡大しているため経済成長率予想を引き上げると発表した。
リサーチノートで、今四半期の実質国内総生産(GDP)成長率予想(年率)を0.5%から2.5%に引き上げた。「この成長率を考慮すると、早ければ次の四半期に穏やかな縮小に陥るほど経済が急速に勢いを失うことはないだろう」とした。
来年もリセッションのリスクは高いものの、フェローリ氏は小幅な成長を予想。その上で、リセッションはもはや自身の基本シナリオではないが、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを終了しなければリセッションが現実化する可能性はあると警告した。
また、次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されるのにインフレ率の伸び加速というサプライズはそれほど必要ないとの認識を示した。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は経済成長率見通しをやや下方修正するとともに、インフレ率が2025年末までに目標の2-3%のレンジ内に戻るとの見通しを明らかにした。
4日発表の金融政策に関する報告書で、豪中銀は25年12月までに総合インフレ率が目標レンジ内の2.8%に低下するとの予想を示した。今年の国内総生産(GDP)成長率の見通しは0.9%と、1.2%から引き下げられた。
こうした予想は、政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートの誘導目標が23年末までに4.25%でピークに達し、25年末までに3.25%まで低下するとの前提に立つもので、引き締めサイクルに対する豪中銀の慎重な姿勢が世界の他の地域・国と比べて際立つ。今回の利上げサイクルでの累計引き上げ幅は、豪中銀は4ポイントと米連邦準備制度の5.25ポイントを大きく下回っている。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は経済成長率見通しをやや下方修正するとともに、インフレ率が2025年末までに目標の2-3%のレンジ内に戻るとの見通しを明らかにした。
4日発表の金融政策に関する報告書で、豪中銀は25年12月までに総合インフレ率が目標レンジ内の2.8%に低下するとの予想を示した。今年の国内総生産(GDP)成長率の見通しは0.9%と、1.2%から引き下げられた。
こうした予想は、政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートの誘導目標が23年末までに4.25%でピークに達し、25年末までに3.25%まで低下するとの前提に立つもので、引き締めサイクルに対する豪中銀の慎重な姿勢が世界の他の地域・国と比べて際立つ。今回の利上げサイクルでの累計引き上げ幅は、豪中銀は4ポイントと米連邦準備制度の5.25ポイントを大きく下回っている。
ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏はバイデノミクスをプラスと受け止める一人だ。連邦準備制度理事会(FRB)の積極的な信用引き締めが遅れて経済に及ぼす影響を、バイデノミクスは相殺し、リセッション回避を可能にすると主張している。
「タイミングは非常に好都合だ」と話す同氏は、向こう 1年の予想経済成長率わずか1%のうち、バイデノミクスが0.4%ポイント程度を占めると計算している。
一方でバイデン政権の景気刺激策は、成長を鈍化させインフレ率を2%目標に低下させたいFRBの努力と相反する方向に働いており、来年さらに金利が引き上げられる可能性を生み出すと懸念するエコノミストもいる。
「強い経済成長が後にインフレを上昇させるリスクは高まっている」とルネサンス・マクロ・リサーチの米経済調査責任者ニール・ダッタ氏は指摘。矢継ぎ早に放たれた一連の利上げも、強じんな経済と耐久性のある労働市場の前ではすでに形無しだったと同氏は言う。
米国人というものは一般的に何でもナンバーワンになって当然と思っている。だからこそ過去に1度しか前例のなかった米国の格下げは、国の威信と世界の金融システムを揺るがした。格付け会社フィッチ・レーティングスは1日、米国の長期外貨建て発行体デフォルト格付け (IDR)を最上級の「AAA」から「AA+」に1段階引き下げ。記憶から呼び起こされるのは、10数年前のS&Pグローバル・レーティングによる米格下げだ。いずれも拍車をかけたのは国の借り入れを巡る激しい対立だった。過去の例からは金融市場への打撃は短期で終わる可能性が高いが、格下げはさらなる政治的争いの種をまくことになりかねない。
フィッチは格下げの発表文で「度重なる債務上限を巡る対立と瀬戸際での解決の繰り返しに体現されてきた、ガバナンスの劣化」を反映させたと説明した。背景には、米国が自ら策定した政策によって、数年おきにデフォルト(債務不履行)の危機に追い込まれていることがある。債務上限を法律で定めたのは1917年のことだ。これを引き上げるには、議会が法案を可決し大統領が署名する以外にない。デフォルトの危機は今年前半、借入総額が約31兆4000億ドル(約4500兆円)の上限に近づく中で、常に米国に影を落とし、政界は秒読みに入っていた。対立は5月下旬に決着したが、政治家らがリスクをあおる表現を控え、山積する債務を返済する責務を果たすのか、不透明感は再び高まった。
S&Pが米国の信用格付けを引き下げた2011年当時は、欧州が債務危機の最中にあり、不安の火の手が米経済に広がった格好となった。それでも長期的には打撃はほとんどなかった。投資資金は米資産に流れ込み、米国債利回りは年末までには低下。米経済に力強さがみられたことも一因だが、欧州連合(EU)が通貨同盟の維持に苦戦していたことも背景にあった。今回、金融市場の懸念は米経済にも向かっているが、焦点はインフレ沈静化を目指す連邦準備制度理事会(FRB)の積極利上げ政策に絞られる。そういう意味で米連邦公開市場委員会(FOMC)の決定が米金利に及ぼす影響は、フィッチの格下げよりはるかに大きくなる可能性が高い。ムーディーズは今も米国に最上級格付けを付与しており、フィッチの格下げ後、その重要性が増している。
最上級格付けの国は減少傾向にある。ブルームバーグがまとめたデータによれば、今も格付け3社から最上級格付けを付与されているのは、オーストラリアとドイツ、シンガポール、スイス。フィッチはカナダにも「AA+」を付与している。世界2位の経済国、中国のフィッチ格付けは1位米国から3段階下の「A+」だ。ソブリン債格付けは、その国の企業格付けの上限とみなされ得るが、必ずしもそうとは限らない。格付け3社のいずれからAAA格付けを付与された企業は減りつつあるが、マイクロソフトやジョンソン・エンド・ジョンソンといった消費者になじみの深い企業が含まれる。
●中国・アジア・ロシア・東欧
台湾総統選、与党候補・頼清徳氏の訪米焦点 中国は反発2024年1月の台湾総統選を控え、与党・民主進歩党(民進党)候補の頼清徳・副総統の訪米が焦点になっている。台湾の有権者は米国と強い関係を築ける候補を好む傾向がある。頼氏も週内に始める訪米でアピールし、選挙戦を優位に運びたい狙いだ。
中国が2023年1〜6月の自動車輸出で初めて日本を抜き、世界首位となったことが分かった。1〜3月に続いて日本を逆転した。電気自動車(EV)など新エネルギー車輸出は全体の25%を占めた。日米欧の自動車メーカーが撤退したロシアに加え、欧州向けも伸ばした。中国国内の消費が弱含む中、世界の自動車市場で中国の影響力が一段と高まる可能性がある。
米政府は来週にも中国への投資を規制する大統領令を公表する検討を始めた。ロイター通信が4日報じた。対象には先端半導体や量子技術、人工知能(AI)などが浮上している。実現すれば、ハイテク分野での米中分断が一段と深まる。
●中東
今年建国75年を迎えたイスラエルが、社会分断の危機に直面している。史上最も右寄りのネタニヤフ政権が強行する「司法制度改革」が亀裂を深め、国外移住を検討する人が3割との世論調査まで出た。ハイテク企業が勃興し経済成長を遂げた「起業立国」の足元をむしばんでいる。
サウジアラビアの政府系ファンドは2022年の包括損失が156億ドル(約2兆2100億円)に達した。ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)への投資価値が急落し、他のハイテクベンチャーが市場低迷の打撃を受けたことが影響した。
ソブリン・ウェルス・ファンド・インスティテュートによると、PIFの資産規模は現在約7770億ドルと推定されている。
イスラエルのネタニヤフ首相は政権が当初計画した司法制度の抜本改革を完全には進めない考えを示した。判事を選任する委員会の構成変更のみにとどめ、他に予定していた改革は取りやめる。
ネタニヤフ首相は6日、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「他の要素については立法化すべきではないと考えている」と発言。次の動きに関しては「判事を選任する委員会の構成について取り組むことになるだろう」と述べた。
その上で、「地球上で最も急進的な裁判所」や「裁判所が下した判断を全て覆し得る議会」といった極端な措置は取りたくないと説明。
「バランスが必要だ。われわれが取り戻そうとしているのはそれだ」とネタニヤフ氏は語った。
●中南米・アフリカ
メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)が4日発表した7月の自動車の生産台数は、29万4350台と前年同月比で13%増えた。15カ月連続で前年同月の水準を上回った。半導体不足の解消で生産規模が回復する傾向が続いている。
●市況ドルが下落し、今週の上昇分をほぼ吐き出した。7月米雇用統計を受けて景気軟着陸への期待が高まったものの、賃金の上昇が米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続の必要性を示唆した。
米労働省が4日発表した7月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は18万7000人増と、ロイター調査によるエコノミスト予想の20万人増を下回った。ただ平均時給は0.4%上昇したほか、失業率が3.5%と50年強ぶりの低水準となった。
バノックバーン・グローバル・フォレックス(ニューヨーク)のチーフマーケットストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は「予想を下回る雇用統計は、今週の国債利回りの急上昇を止め、ドルの最近の上昇を止めた。ドル以外の通貨でショートスクイズが起きており、金利の急低下がドルロングの整理を促している。ドルの上値修正はほぼ終わった」と述べた。
ドル指数は0.4%安。1日の下落幅はここ3週間で最大となった。3日には7月7日以来の高値となる102.84まで上昇していた。
利回りが急低下した。7月雇用統計が予想を下回ったことを受けた。しかし投資家は、労働市場が引き続き底堅いことから、さらなる金融引き締めの可能性を排除していない。
米10年債利回りは13ベーシスポイント(bp)近く低下し4.062%。低下幅は7月12日以来の大幅なものとなった。
2年債利回りは約11bp低下の4.791%と、2週間ぶり低水準となった。
今週の市場で利回りは急上昇し、10年債は昨年10月以来の高水準を記録した。財務省の国債発行計画やフィッチによる米国債格下げなどが複合的な要因となった。
CMEグループのデータによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場では、9月の利上げの可能性を13.5%織り込んでいる。3日は18%だった。
ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの戦略的アドバイザリーソリューション幹部のキャンディス・ツェ氏は、「FRBはここ数十年で最も積極的な引き締め局面を終え、ソフトランディングへの合理的な道筋をつけたと思われる。しかし可能性の幅はまだ広く、インフレが粘着性を保てば追加利上げに傾くリスクがあることは認識している」と述べた。
MSCI中南米通貨指数の週間の下げは2022年6月以降で最大となった。ブラジルとチリの利下げにより、キャリートレードが行われるリスクが意識された。
フランスの大手銀行クレディ・アグリコルは4日に6.1%上昇した。2023年第2・四半期決算で保険と消費者金融部門がけん引し、収入と利益が予想を上回ったことが材料視された。
ドイツのコメルツ銀行は2.6%下げた。コスト見通しを引き上げ、手数料収入の予想を下方修正したことが嫌気された。
リフィニティブIBESのデータによると、これまでに決算を発表したSTOXX欧州600種の構成企業のうち半数超がアナリストの利益予想を上回っている。
日経先物31980、ダウ先35145、債先146.60、米4.042、独2.5145、仏3.071、西3.567、伊4.205、英4.4230、波5.557、原油82.64、銅8,554、ドル円141.74、ユーロドル1.1010
※8/4 NY引け値
●航空防衛宇宙、ヘルスケア、銀行、プロファイ・インフラ、ESG
邦銀、欧州ビジネス見直し みずほはリスク資産1割減
3メガバンクが収益性の低下する欧州ビジネスを見直す。みずほフィナンシャルグループ(FG)は域内で抱える貸出金などのリスク資産を2025年度までに1割超減らす方針だ。三井住友FGは銀行と証券の拠点を再編し、業務の効率化を進める。海外市場の拡大を続けてきた邦銀の戦略に転機が訪れている。
欧州銀大手6行が1日までに発表した2023年4〜6月期決算は、純利益が前年同期比9%の増益となった。金融引き締めによる貸出金利の上昇が追い風となった。一方で景気の減速懸念から企業の融資需要が低迷し、融資残高は2四半期ぶりに減少した。
●その他産業
●決算関連
石油メジャーの純利益6割減 4〜6月、原油相場下落で
欧米石油メジャーの収益に陰りがでている。大手5社の2023年4〜6月期の純利益は合計で約229億ドル(約3兆3000億円)となった。過去最高だった前年同期より約6割減った。世界景気の先行きが不透明となり原油価格が下落したことが響いた。
JR本州3社の4〜6月、営業利益95%増 新幹線回復
JR本州3社(JR東日本、JR西日本、JR東海)の2023年4〜6月期の連結決算が1日出そろい、3社合計の営業利益は前年同期比95%増の2789億円だった。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し、新幹線などを中心に旅客需要が回復した。
3社合計の単体ベースの運輸収入は25%増の9087億円と、コロナ前の18年比9割の水準まで回復した。コロナの5類移行に伴って中長距離の移動需要が伸び、JR東の新幹線収入は前年同期比43%増の1216億円を確保した。JR東海の東海道新幹線の収入はコロナ前の92%に回復した。テレワーク定着の影響が残り、JR東の関東在来線の定期収入はコロナ前比8割にとどまった。
足元のリベンジ消費を追い風に、新幹線などの定期外は旅客回復が続きそうだ。JPモルガン証券の姫野良太氏は「賃上げなどによる所得回復が進んでいる。夏以降にかけて一層の行楽需要を取り込める可能性がある」と分析する。
証券会社に株高の恩恵 主要16社が増益・黒字に
米キャタピラー、4〜6月7割増益 米の建設需要取り込み
2023年4〜6月期決算は、純利益が前年同期比で75%増の29億2200万ドル(約4100億円)となった。主力の北米市場でインフラ整備などの建設需要を取り込み、建機の販売を拡大した。製品価格も積極的に引き上げており、大幅な増益につながった。
売上高は前年同期比22%増の173億1800万ドルだった。北米地域の売上高は32%増の89億ドル超となった。建機、鉱山機械とも販売が伸びた。バイデン米政権のもと21年に成立したインフラ投資法による建設需要の底上げが、建機などの販売増加につながっている。
営業利益は36億5200万ドルで、前年同期比で88%伸びた。機械の増販に加え、値上げが増益に貢献した。営業利益ベースの増益寄与額は販売数量の増加が8億ドルとなった一方、価格改定による効果は14億ドルだった。値上げにより、大幅な増益を実現したかたちだ。
キャタピラーのジム・アンプレビー最高経営責任者(CEO)は1日に「トップライン(売上高)は2桁成長を達成した。健全な需要を反映している」とコメントし、需要は底堅いとの認識を示した。23年12月期通期に7億ドルの費用を計上して構造改革を進め、中長期の収益底上げにつなげる方針だ。
●その他産業
●決算関連
石油メジャーの純利益6割減 4〜6月、原油相場下落で
欧米石油メジャーの収益に陰りがでている。大手5社の2023年4〜6月期の純利益は合計で約229億ドル(約3兆3000億円)となった。過去最高だった前年同期より約6割減った。世界景気の先行きが不透明となり原油価格が下落したことが響いた。
JR本州3社の4〜6月、営業利益95%増 新幹線回復
JR本州3社(JR東日本、JR西日本、JR東海)の2023年4〜6月期の連結決算が1日出そろい、3社合計の営業利益は前年同期比95%増の2789億円だった。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し、新幹線などを中心に旅客需要が回復した。
3社合計の単体ベースの運輸収入は25%増の9087億円と、コロナ前の18年比9割の水準まで回復した。コロナの5類移行に伴って中長距離の移動需要が伸び、JR東の新幹線収入は前年同期比43%増の1216億円を確保した。JR東海の東海道新幹線の収入はコロナ前の92%に回復した。テレワーク定着の影響が残り、JR東の関東在来線の定期収入はコロナ前比8割にとどまった。
足元のリベンジ消費を追い風に、新幹線などの定期外は旅客回復が続きそうだ。JPモルガン証券の姫野良太氏は「賃上げなどによる所得回復が進んでいる。夏以降にかけて一層の行楽需要を取り込める可能性がある」と分析する。
証券会社に株高の恩恵 主要16社が増益・黒字に
米キャタピラー、4〜6月7割増益 米の建設需要取り込み
2023年4〜6月期決算は、純利益が前年同期比で75%増の29億2200万ドル(約4100億円)となった。主力の北米市場でインフラ整備などの建設需要を取り込み、建機の販売を拡大した。製品価格も積極的に引き上げており、大幅な増益につながった。
売上高は前年同期比22%増の173億1800万ドルだった。北米地域の売上高は32%増の89億ドル超となった。建機、鉱山機械とも販売が伸びた。バイデン米政権のもと21年に成立したインフラ投資法による建設需要の底上げが、建機などの販売増加につながっている。
営業利益は36億5200万ドルで、前年同期比で88%伸びた。機械の増販に加え、値上げが増益に貢献した。営業利益ベースの増益寄与額は販売数量の増加が8億ドルとなった一方、価格改定による効果は14億ドルだった。値上げにより、大幅な増益を実現したかたちだ。
キャタピラーのジム・アンプレビー最高経営責任者(CEO)は1日に「トップライン(売上高)は2桁成長を達成した。健全な需要を反映している」とコメントし、需要は底堅いとの認識を示した。23年12月期通期に7億ドルの費用を計上して構造改革を進め、中長期の収益底上げにつなげる方針だ。
鉱業・建設機械大手の米キャタピラーは、中国の建設現場で広く使用される主要機械の売り上げが約3カ月前の予想よりも一段と悪化していると明らかにした。中国の低迷する経済見通しをさらに裏付ける形となった。
ジム・アンプレビー最高経営責任者(CEO)は8月1日の決算電話会議で、中国の建設プロジェクトで最も使用されている機械の売り上げについて一段の鈍化を見込んでいると語った。同氏は4月27日の時点で、売上高に占める中国の割合が通常の予想範囲である5-10%を下回るとの見通しを示していた。
中国の経済データは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴う厳格な措置からの景気回復が予想よりも時間がかかっていることを示している。
JAL、4年ぶり最終黒字 旅客回復で4〜6月230億円
2023年4〜6月の連結最終損益(国際会計基準)は、230億円の黒字(前年同期は195億円の赤字)だった。4〜6月期の最終黒字は4年ぶり。新型コロナウイルス禍で急減した旅客需要が着実に回復した。ANAホールディングス(HD)も純利益が31倍の306億円と大幅増益となった。
JALは売上高にあたる売上収益が前年同期比42%増の3814億円だった。本業のもうけを示すEBIT(利払い・税引き前利益)は313億円。276億円の赤字だった前年同期から黒字転換した。
国内線の旅客収入は前年同期比39%増の1220億円だった。国内では5月8日に新型コロナが感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。JALの斎藤祐二グループ最高財務責任者(CFO)は「行動制限がなくなり、以前のような社会経済活動が再開したことで、本格的な回復期を迎えた」と説明。国内線の旅客数は19年同期の93%の水準となった。
国内線が堅調なのはANAHDも同様だ。ANAHDは連結売上高が前年同期比32%増の4610億円だった。国内線の旅客収入が4割増の1425億円と新型コロナ前の9割弱の水準まで回復した。
一方でANAHDの中堀公博グループCFOは「国内線のビジネス需要の回復が当初想定よりも遅れている」と話す。24年3月期のビジネス需要の前提について、「年末にコロナ前の80%水準まで回復」という予想から「同70%水準まで回復」と下方修正する方針を示した。ビジネス需要の回復の遅れ分は観光需要で補うとして、業績の通期見通しは据え置いた。
国際線も中国を除き回復の動きが加速してきた。JALの4〜6月の国際線の旅客数は前年同期比2.2倍の157万人、旅客収入は2.4倍の1475億円だった。旅客数は新型コロナ前の19年同期の65%の水準にとどまったが、燃料費の高騰や円安による単価の上昇で、収入は19年同期を13%上回った。
方面別では北米や東南アジア方面は堅調だ。中国政府の意向で中国から日本への団体旅行がまだ解禁されていないため、中国線は戻りが遅いことが全体を押し下げた。
ANAHDも4〜6月の旅客数が北米方面は新型コロナ前の約9割の水準、中国を除くアジア・オセアニアが約7割と順調に回復が進んだ。中国は約2割にとどまった。ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア上空を飛行できないため、欧州方面も約5割と低水準だ。
ANAHD、JALともに国際線はインバウンド(訪日客)など海外発の需要が高い。国内の地方空港では人手不足によって、海外の航空会社が路線を再開できていないところもある。このため需給が逼迫して、両社の国際線の単価が高止まっている。今後、海外の競合他社の路線が再開すると、単価はピークアウトする可能性もある。
英HSBC、4〜6月期純利益27%増 利ざやが大幅改善
2023年4〜6月期決算は、純利益が前年同期比27%増の66億3900万ドル(約9500億円)だった。世界的な中央銀行の金融引き締めによる利ざやの改善で、金利収入が増加した。20億ドルを上限とする自社株買いも発表した。
純金利収入は35%増の93億500万ドルだった。預貸の利ざやを示す純金利マージンが1.29%から1.72%と大きく改善し、主力の富裕層・個人部門を中心に収入が大きく伸びた。
貸出残高は8%減の9595億5800万ドルとなった。金利上昇による景気悪化懸念で融資需要が減少したほか、借り入れを使って投資額を大きくするレバレッジ(てこ)が解消された。融資の焦げ付きに備えて計上する予想信用損失(ECL)は中国の商業用不動産に対する引き当てがかさみ、9億1300万ドルと2.1倍に増えた。
ノエル・クイン最高経営責任者(CEO)は「好調な純金利収入と厳格なコスト管理によって世界的に利益確保ができた」とコメントした。
3メガ銀の4-6月純利益2倍の1兆円-特殊要因や円安が押し上げ
国内3メガ銀行グループの第1四半期(2023年4-6月期)の連結決算が1日、出そろった。純利益の合計は前年同期比2倍の1兆516億円に拡大した。ブルームバーグがまとめた事前の市場予想7800億円を大幅に上回った。特殊要因が利益を押し上げたほか、円安も追い風となった。
米格安航空ジェットブルー、通期利益見通しを大幅下方修正-株価下落
英運用大手マン・グループ、上期は一部成績不振 運用資産は最高
2023年4〜6月の連結最終損益(国際会計基準)は、230億円の黒字(前年同期は195億円の赤字)だった。4〜6月期の最終黒字は4年ぶり。新型コロナウイルス禍で急減した旅客需要が着実に回復した。ANAホールディングス(HD)も純利益が31倍の306億円と大幅増益となった。
JALは売上高にあたる売上収益が前年同期比42%増の3814億円だった。本業のもうけを示すEBIT(利払い・税引き前利益)は313億円。276億円の赤字だった前年同期から黒字転換した。
国内線の旅客収入は前年同期比39%増の1220億円だった。国内では5月8日に新型コロナが感染症法上の分類が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行した。JALの斎藤祐二グループ最高財務責任者(CFO)は「行動制限がなくなり、以前のような社会経済活動が再開したことで、本格的な回復期を迎えた」と説明。国内線の旅客数は19年同期の93%の水準となった。
国内線が堅調なのはANAHDも同様だ。ANAHDは連結売上高が前年同期比32%増の4610億円だった。国内線の旅客収入が4割増の1425億円と新型コロナ前の9割弱の水準まで回復した。
一方でANAHDの中堀公博グループCFOは「国内線のビジネス需要の回復が当初想定よりも遅れている」と話す。24年3月期のビジネス需要の前提について、「年末にコロナ前の80%水準まで回復」という予想から「同70%水準まで回復」と下方修正する方針を示した。ビジネス需要の回復の遅れ分は観光需要で補うとして、業績の通期見通しは据え置いた。
国際線も中国を除き回復の動きが加速してきた。JALの4〜6月の国際線の旅客数は前年同期比2.2倍の157万人、旅客収入は2.4倍の1475億円だった。旅客数は新型コロナ前の19年同期の65%の水準にとどまったが、燃料費の高騰や円安による単価の上昇で、収入は19年同期を13%上回った。
方面別では北米や東南アジア方面は堅調だ。中国政府の意向で中国から日本への団体旅行がまだ解禁されていないため、中国線は戻りが遅いことが全体を押し下げた。
ANAHDも4〜6月の旅客数が北米方面は新型コロナ前の約9割の水準、中国を除くアジア・オセアニアが約7割と順調に回復が進んだ。中国は約2割にとどまった。ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア上空を飛行できないため、欧州方面も約5割と低水準だ。
ANAHD、JALともに国際線はインバウンド(訪日客)など海外発の需要が高い。国内の地方空港では人手不足によって、海外の航空会社が路線を再開できていないところもある。このため需給が逼迫して、両社の国際線の単価が高止まっている。今後、海外の競合他社の路線が再開すると、単価はピークアウトする可能性もある。
英HSBC、4〜6月期純利益27%増 利ざやが大幅改善
2023年4〜6月期決算は、純利益が前年同期比27%増の66億3900万ドル(約9500億円)だった。世界的な中央銀行の金融引き締めによる利ざやの改善で、金利収入が増加した。20億ドルを上限とする自社株買いも発表した。
純金利収入は35%増の93億500万ドルだった。預貸の利ざやを示す純金利マージンが1.29%から1.72%と大きく改善し、主力の富裕層・個人部門を中心に収入が大きく伸びた。
貸出残高は8%減の9595億5800万ドルとなった。金利上昇による景気悪化懸念で融資需要が減少したほか、借り入れを使って投資額を大きくするレバレッジ(てこ)が解消された。融資の焦げ付きに備えて計上する予想信用損失(ECL)は中国の商業用不動産に対する引き当てがかさみ、9億1300万ドルと2.1倍に増えた。
ノエル・クイン最高経営責任者(CEO)は「好調な純金利収入と厳格なコスト管理によって世界的に利益確保ができた」とコメントした。
3メガ銀の4-6月純利益2倍の1兆円-特殊要因や円安が押し上げ
国内3メガ銀行グループの第1四半期(2023年4-6月期)の連結決算が1日、出そろった。純利益の合計は前年同期比2倍の1兆516億円に拡大した。ブルームバーグがまとめた事前の市場予想7800億円を大幅に上回った。特殊要因が利益を押し上げたほか、円安も追い風となった。
米格安航空ジェットブルー、通期利益見通しを大幅下方修正-株価下落
英運用大手マン・グループ、上期は一部成績不振 運用資産は最高
2023年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比12%増の91億6830万ドル(約1兆3000億円)、純利益が25%増の11億4170万ドルだった。中国で新型コロナウイルスの感染が収束したことで客足が4割回復した。一方、主要市場では消費者の節約志向により客単価が伸び悩んでいることが課題だ。
既存店の来店客数は米国が6%、中国は48%と大幅に増加した。中国のゼロコロナ政策の撤廃で大きく人出が戻ったほか、米国でも旅行や外出の回復が続いている恩恵を受けた。売上高に対する店舗賃料などコスト比率が小さくなり、利益率が高まった。
一方で既存店の1人当たり購入額は北米で1%増、中国で1%減だった。インフレによる原料高に対応するため、商品の値上げとフローズン飲料などの新商品投入を織り交ぜる戦略をとってきたが、節約志向を強める消費者の買い控えに直面している。
来店目的の多角化と客単価の引き上げを狙い、店舗へのオーブンの設置率を高めて店内調理食品の販売拡大にも取り組む。朝食用サンドイッチの販売は過去最高を記録したという。
2023年4〜6月期決算は、純利益が前年同期比77%減の23億2700万ドル(約3335億円)だった。新型コロナウイルス向けのワクチンや治療薬の販売が縮小しており、2四半期連続で減収減益となった。
売上高は54%減の127億3400万ドルだった。1株利益(EPS)は0.67ドルと、アナリスト予想(0.57ドル)を上回ったが、売上高は予想(132億7000万ドル)を下回った。コロナワクチンと飲み薬「パクスロビド(日本での製品名パキロビッドパック)」を除いたベースの売上高は5%増だった。
コロナワクチンについては、流行している変異型に対応するものが承認された後、9月に市販が始まる予定だという。
アルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は同日の投資家向けの説明会で「過去との比較がないため、コロナ関連製品については不透明性が他より高い」と述べた。一方で、米国では足元でコロナ感染がじわりと増加していることを挙げ「秋に感染が拡大すると予想している」と指摘した。
7月に竜巻被害を受けた南部ノースカロライナ州の工場についてブーラ氏は「再稼働をいつ始められるか判断している途中だ」と明かした。「無菌環境の工場であるため、電気が切れてしまった後に稼働を開始するのは容易ではない」と説明した。
23年通期の売上高は670億〜700億ドルとなる見通し。レンジの上限を従来予想の710億ドルから引き下げた。1株利益は48〜51%減の3.25〜3.45ドルの予想を据え置いた。新型コロナ関連製品を除いた売上高は6〜8%増と、竜巻被害を受けて稼働停止している工場の影響などが原因で従来予想の7〜9%増から下方修正した。
ファイザーは7月、ノースカロライナ工場について「製造エリアの大きな被害はなかった」としていた。
大手格付け会社フィッチ・レーティングスは1日、米国の格下げを発表した。外貨建て長期債務格付けを最上位の「トリプルA」から1段階低い「ダブルAプラス」に引き下げた。今後3年間で予想される財政悪化や、債務上限問題を巡る政治の混乱を理由にあげた。
フィッチは格下げについて、米政府の債務負担が増える見通しに加え、債務上限の引き上げを巡る「度重なる政治の膠着と土壇場での解決が示す(米国の)ガバナンスの低下」を反映したと説明した。
イエレン財務長官は同日、「フィッチの決定は恣意的で、古いデータに基づく」と反論する声明を発表した。米政府のガバナンス低下を指摘されたことに対し「債務上限対応、インフラ投資、競争力強化に向けた投資の法案を超党派で可決するなど、改善をみせている」と強調した。
イエレン氏は「米国債は世界有数の安全で流動性の高い資産であり、米経済が堅調なことに変わりはない」と加えた。バイデン米政権が財政赤字を削減する政策をとっている点も強調した。
フィッチは5月下旬、上限引き上げを巡る混乱を受け、米国の格付け見通しを「ネガティブ」とし、状況次第で格下げの用意があると警告していた。
ウォール街をはじめとするあらゆる地域の借り入れコスト抑制に寄与した極めて異例な金融実験に乗り出してから7年、日本銀行は国内債券利回りに対する手綱を緩めつつある。これが、全米の金融取引および家計に深刻な影響を及ぼす可能性がある。
日本の投資家がより高いリターンを求めて、巨額の対外投資資金を自国に戻す場合、米企業にとっては金利が上昇し、住宅購入者にとっては住宅ローン金利が一段と引き上げられ、株式などリスクの高い資産への需要は低下すると考えられる。
アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏は「主要なリスクは、日本国債の利回り上昇を受けて、米金融市場から日本の金融市場への大規模な資産再配分が起こることだ」と指摘した。
いかなるレパトリエーション(本国への資金回帰)も定着するのに数年とはいわないまでも、数カ月かかる可能性がある。従って、世界の金融市場は今のところ借り入れコスト上昇への暫定的なシフトを冷静に受け止めている。
ブラックロック・インベストメント・インスティテュートは、投資家は年限が長めの国債保有を一段と求めるようになると指摘する。その結果、高いレバレッジを効かせた為替取引からバリュエーションの高い株式に至る金利の影響を受けやすい市場の一角は打撃を受け、世界経済に波紋が広がる恐れがある。
みずほインターナショナルのグローバルマクロ戦略責任者、ピーター・チャットウェル氏は「日銀のYCC修正の影響は米国や欧州で行われている量的引き締めを助長する可能性がある」と述べた。
優良企業社債のリスクプレミアムは7月31日時点で、この1年余りの最低水準となった。これは、金融引き締めが続いても企業はバランスシートを管理できるとのトレーダーの見方を示唆している。
パインブリッジ・インベストメンツのクレジット・債券担当世界責任者、スティーブン・オー氏は「米経済の先行きやソフトランディング(軟着陸)の可能性、つまりリセッション入りの可能性後退に対する信頼感は高まっている」と指摘。「これは株式やハイイールド債のスプレッド、投資適格級債のスプレッドなどリスク市場全体で見られる」と続けた。
米商業不動産、迫る借り換え5年で400兆円 利上げ影響
米国の商業用不動産が苦境に直面している。在宅勤務など需要の構造変化に加え、金利上昇や融資の引き締めで資金繰りに変調が出ている。5年間で返済満期を迎えるローンは400兆円近くにおよび、債務不履行予備軍の物件は膨らんでいる。銀行の経営体力をそげば実体経済への影響も出る。米当局は監視を強めている。
英住宅価格、7月は前年比-3.8% 09年以来の大幅下落
英住宅金融会社ネーションワイドが1日発表した7月の国内住宅価格は前年比3.8%下落し、2009年以来の大幅な落ち込みとなった。6月は3.5%の下落だった。
ロイターがまとめたエコノミスト予想と一致した。前月比では0.2%下落した。
ネーションワイドのチーフエコノミスト、ロバート・ガードナー氏は、頭金20%の一般的な初回購入者は、現在の金利では住宅ローンの支払いが手取り収入の43%を占め、1年前の32%から拡大していると指摘。過去数カ月の住宅市場の低迷は、こうした厳しい住宅取得状況が一因と分析した。
21年に始まったイングランド銀行(中央銀行)の利上げの影響が今後さらに表れるとみられ、エコノミストの多くは住宅市場の低迷が続くと考えている。
しかしガードナー氏は、住宅市場の軟着陸は可能との見方を示した。「活動は当面低迷が続く公算が大きい。だが名目所得が堅調に拡大し住宅価格が緩やかに低下すれば、長期的には住宅がより入手しやすくなる」とし、中銀が利上げを停止し住宅ローン金利が抑えられれば、こうした傾向は強まると予想した。
豪中銀、2カ月連続で金利据え置き 追加引き締めの可能性も言及
前月に続き政策金利のオフィシャルキャッシュレートを4.10%に据え置いた。これまでの利上げが需要鈍化につながっているとした。ただ、インフレ抑制に向け幾分の追加引き締めが必要になる可能性もあるとの見方は維持した。
経済予測は3カ月前からおおむね据え置き、インフレ率が2024年末までに3.25%前後に鈍化し、25年終盤までには2─3%の目標レンジに戻るとの見通しを示した。
市場では据え置き観測が高まっていたが、ロイター調査で36人中20人が利上げを予想するなどエコノミストの間では見方が分かれていた。
ロウ総裁は「生活費高騰による圧力と金利上昇を受け、消費の伸びは全体として大幅に鈍化した」と指摘。利上げは需要抑制に働いており、今後もその効果が予想されるとし、きょうの据え置き決定は、これまでの利上げの影響と経済見通しを見極める追加の時間を確保するためだと改めて表明した。
「最近のデータは、インフレ率が予想期間中に2─3%の目標レンジに戻り、生産と雇用が拡大し続けるとの見方と一致している」とし、さらなる引き締めはデータとリスク評価の進展次第と説明した。
第2・四半期の消費者物価指数(CPI)上昇率は予想以上に減速したが、家賃を含むサービス部門の価格は大きく上昇し、インフレの粘着性を示唆した。労働市場は減速予想に反して50年ぶり低水準近辺の失業率を維持。住宅価格は7月も上昇が続いた。
市場では利上げがすでに終了したとの見方が出ており、9月に就任するミシェル・ブロック次期総裁は、景気減速に対処し利下げを検討することになるだろうとアナリストは指摘する。
ジャナス・ヘンダーソンの金利ストラテジスト、エマ・ローソン氏は「政策金利の据え置きが長引くほど、景気の現状を示す指標は悪化し、インフレ抑制のための利上げがしにくくなる」とし「景気はピークを打ちつつあるが、政策は引き続き景気抑制型で来年初めに浅い景気後退が始まる可能性は排除できない」と述べた。
前回の声明では、雇用や景気と物価安定のバランスを取るための「道筋は狭い(narrow path)」としていたが、今回はこの文言が消えた。
キャピタル・エコノミクスのアジア太平洋部門責任者マーセル・ティーリアント氏は「中銀は今回も、さらに幾分の追加引き締めが必要になる可能性を指摘した。しかしインフレ面で新たなショックがなければ利上げは打ち止めとなる可能性が高い」と述べた。
オーストラリア・コモンウェルス銀行は、中銀が年内はしばらく金利を据え置くとの見方を示した。
同銀のシニアエコノミスト、ベリンダ・アレン氏は「中銀は引き締めバイアスを維持しているが、再利上げのハードルは高いと予想している」とし「中銀が見通しの判断を変えるには、経済指標の予想外の上振れが必要だろう」との見方を示した。
ナショナル・オーストラリア銀行と米ゴールドマン・サックスは11月に利上げし、金利を4.35%に引き上げると予想した。
IGの市場アナリスト、ヒービー・チェン氏はロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムで「オーストラリアのインフレ率が先進国の中で最も高い部類に入るにもかかわらず、中銀のトーンが緩すぎることに少々驚いている」と指摘。「労働市場が予想以上に底堅くなれば、引き締めを25年まで延ばす可能性も否定できないと語った。
米FRB、9月は利上げ見送りの可能性-「ディスインフレの夏」で
次回FOMC会合前に発表される統計でインフレ率の一層の鈍化が予想され、学生ローンの返済再開など景気への逆風も迫っていると想定されるため、一時的であっても利上げを見送るさらなる理由になると複数のエコノミストは指摘。市場が織り込む9月利上げの確率は約20%だ。
モントリオール銀行のチーフエコノミスト、ダグラス・ポーター氏は「米金融当局の納得が得られるほど十分に穏やかなデータが見込まれる」と述べるとともに、「短期金利は今や実質ベースでしっかりとプラス圏にあり、コアインフレ率が鈍化し始め、労働市場も多少軟化しつつあり、当局は十分なことを行ったというのがわれわれの中心的見解だ」と語った。
調査会社インフレーション・インサイツ創業者のオメイア・シャリフ社長は7、8両月の消費者物価指数(CPI)に関し、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数がそれぞれ前月比0.2%上昇にとどまる公算が大きいとして、「ディスインフレの夏」だと呼んだ。
7月28日には金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数が発表され、6月の総合指数は前年同月比3%上昇と、2年ぶりの低い伸びとなった。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏は「賃金の伸び鈍化は、これまで沈静化が遅れ気味だった経済的側面の一つで、労働市場の需給が緩和しつつあると当局者を安心させるものあり、ディスインフレで前進し続けるための必要条件とパウエル議長が説明してきた点だ」と話す。
「それはPCEコア指数の伸びが2%の当局目標と整合的なペースであることを示す別のリポートと相まって、FOMCが9月の会合で金利据え置きを決めるとのわれわれの見解を強めることになる」とウォン氏は語った。
コアインフレ率鈍化を示す重要な証拠はある。世界最大の中古車再販業者であるマンハイム・オークションズによれば、重要な物価変動要因の一つである中古車価格は7月の当初15日間に低下した。また、不動産会社レント・ドット・コムの調査では、米国のアパート賃料が22年8月の水準から下げている。
このほか、FRBが7月31日に公表した銀行の上級融資担当者調査は、4-6月(第2四半期)の融資基準厳格化を示した。今週には7月の雇用統計などが発表され、エコノミストは労働力需給のさらなる緩和を予想している。
米ISM製造業総合景況指数、7月は46.4に上昇-市場予想は46.9
独製造業PMI、7月改定値は38.8 20年5月以来の低水準
英製造業PMI、7月改定は今年最低 国内外で需要減退
ユーロ圏製造業PMI、7月改定は20年5月以来の低水準 生産低迷
米国の商業用不動産が苦境に直面している。在宅勤務など需要の構造変化に加え、金利上昇や融資の引き締めで資金繰りに変調が出ている。5年間で返済満期を迎えるローンは400兆円近くにおよび、債務不履行予備軍の物件は膨らんでいる。銀行の経営体力をそげば実体経済への影響も出る。米当局は監視を強めている。
英住宅価格、7月は前年比-3.8% 09年以来の大幅下落
英住宅金融会社ネーションワイドが1日発表した7月の国内住宅価格は前年比3.8%下落し、2009年以来の大幅な落ち込みとなった。6月は3.5%の下落だった。
ロイターがまとめたエコノミスト予想と一致した。前月比では0.2%下落した。
ネーションワイドのチーフエコノミスト、ロバート・ガードナー氏は、頭金20%の一般的な初回購入者は、現在の金利では住宅ローンの支払いが手取り収入の43%を占め、1年前の32%から拡大していると指摘。過去数カ月の住宅市場の低迷は、こうした厳しい住宅取得状況が一因と分析した。
21年に始まったイングランド銀行(中央銀行)の利上げの影響が今後さらに表れるとみられ、エコノミストの多くは住宅市場の低迷が続くと考えている。
しかしガードナー氏は、住宅市場の軟着陸は可能との見方を示した。「活動は当面低迷が続く公算が大きい。だが名目所得が堅調に拡大し住宅価格が緩やかに低下すれば、長期的には住宅がより入手しやすくなる」とし、中銀が利上げを停止し住宅ローン金利が抑えられれば、こうした傾向は強まると予想した。
豪中銀、2カ月連続で金利据え置き 追加引き締めの可能性も言及
前月に続き政策金利のオフィシャルキャッシュレートを4.10%に据え置いた。これまでの利上げが需要鈍化につながっているとした。ただ、インフレ抑制に向け幾分の追加引き締めが必要になる可能性もあるとの見方は維持した。
経済予測は3カ月前からおおむね据え置き、インフレ率が2024年末までに3.25%前後に鈍化し、25年終盤までには2─3%の目標レンジに戻るとの見通しを示した。
市場では据え置き観測が高まっていたが、ロイター調査で36人中20人が利上げを予想するなどエコノミストの間では見方が分かれていた。
ロウ総裁は「生活費高騰による圧力と金利上昇を受け、消費の伸びは全体として大幅に鈍化した」と指摘。利上げは需要抑制に働いており、今後もその効果が予想されるとし、きょうの据え置き決定は、これまでの利上げの影響と経済見通しを見極める追加の時間を確保するためだと改めて表明した。
「最近のデータは、インフレ率が予想期間中に2─3%の目標レンジに戻り、生産と雇用が拡大し続けるとの見方と一致している」とし、さらなる引き締めはデータとリスク評価の進展次第と説明した。
第2・四半期の消費者物価指数(CPI)上昇率は予想以上に減速したが、家賃を含むサービス部門の価格は大きく上昇し、インフレの粘着性を示唆した。労働市場は減速予想に反して50年ぶり低水準近辺の失業率を維持。住宅価格は7月も上昇が続いた。
市場では利上げがすでに終了したとの見方が出ており、9月に就任するミシェル・ブロック次期総裁は、景気減速に対処し利下げを検討することになるだろうとアナリストは指摘する。
ジャナス・ヘンダーソンの金利ストラテジスト、エマ・ローソン氏は「政策金利の据え置きが長引くほど、景気の現状を示す指標は悪化し、インフレ抑制のための利上げがしにくくなる」とし「景気はピークを打ちつつあるが、政策は引き続き景気抑制型で来年初めに浅い景気後退が始まる可能性は排除できない」と述べた。
前回の声明では、雇用や景気と物価安定のバランスを取るための「道筋は狭い(narrow path)」としていたが、今回はこの文言が消えた。
キャピタル・エコノミクスのアジア太平洋部門責任者マーセル・ティーリアント氏は「中銀は今回も、さらに幾分の追加引き締めが必要になる可能性を指摘した。しかしインフレ面で新たなショックがなければ利上げは打ち止めとなる可能性が高い」と述べた。
オーストラリア・コモンウェルス銀行は、中銀が年内はしばらく金利を据え置くとの見方を示した。
同銀のシニアエコノミスト、ベリンダ・アレン氏は「中銀は引き締めバイアスを維持しているが、再利上げのハードルは高いと予想している」とし「中銀が見通しの判断を変えるには、経済指標の予想外の上振れが必要だろう」との見方を示した。
ナショナル・オーストラリア銀行と米ゴールドマン・サックスは11月に利上げし、金利を4.35%に引き上げると予想した。
IGの市場アナリスト、ヒービー・チェン氏はロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムで「オーストラリアのインフレ率が先進国の中で最も高い部類に入るにもかかわらず、中銀のトーンが緩すぎることに少々驚いている」と指摘。「労働市場が予想以上に底堅くなれば、引き締めを25年まで延ばす可能性も否定できないと語った。
米FRB、9月は利上げ見送りの可能性-「ディスインフレの夏」で
次回FOMC会合前に発表される統計でインフレ率の一層の鈍化が予想され、学生ローンの返済再開など景気への逆風も迫っていると想定されるため、一時的であっても利上げを見送るさらなる理由になると複数のエコノミストは指摘。市場が織り込む9月利上げの確率は約20%だ。
モントリオール銀行のチーフエコノミスト、ダグラス・ポーター氏は「米金融当局の納得が得られるほど十分に穏やかなデータが見込まれる」と述べるとともに、「短期金利は今や実質ベースでしっかりとプラス圏にあり、コアインフレ率が鈍化し始め、労働市場も多少軟化しつつあり、当局は十分なことを行ったというのがわれわれの中心的見解だ」と語った。
調査会社インフレーション・インサイツ創業者のオメイア・シャリフ社長は7、8両月の消費者物価指数(CPI)に関し、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数がそれぞれ前月比0.2%上昇にとどまる公算が大きいとして、「ディスインフレの夏」だと呼んだ。
7月28日には金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数が発表され、6月の総合指数は前年同月比3%上昇と、2年ぶりの低い伸びとなった。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏は「賃金の伸び鈍化は、これまで沈静化が遅れ気味だった経済的側面の一つで、労働市場の需給が緩和しつつあると当局者を安心させるものあり、ディスインフレで前進し続けるための必要条件とパウエル議長が説明してきた点だ」と話す。
「それはPCEコア指数の伸びが2%の当局目標と整合的なペースであることを示す別のリポートと相まって、FOMCが9月の会合で金利据え置きを決めるとのわれわれの見解を強めることになる」とウォン氏は語った。
コアインフレ率鈍化を示す重要な証拠はある。世界最大の中古車再販業者であるマンハイム・オークションズによれば、重要な物価変動要因の一つである中古車価格は7月の当初15日間に低下した。また、不動産会社レント・ドット・コムの調査では、米国のアパート賃料が22年8月の水準から下げている。
このほか、FRBが7月31日に公表した銀行の上級融資担当者調査は、4-6月(第2四半期)の融資基準厳格化を示した。今週には7月の雇用統計などが発表され、エコノミストは労働力需給のさらなる緩和を予想している。
米ISM製造業総合景況指数、7月は46.4に上昇-市場予想は46.9
独製造業PMI、7月改定値は38.8 20年5月以来の低水準
英製造業PMI、7月改定は今年最低 国内外で需要減退
ユーロ圏製造業PMI、7月改定は20年5月以来の低水準 生産低迷
7月の米製造業景況感指数は、前月から0.4ポイント上昇し46.4となった。好不況の分かれ目となる50を9カ月連続で下回った。製造業は不況への懸念を強めたままだが、新規受注や生産活動は前月より改善の兆しをみせる。
6月の景況感は2020年の新型コロナウイルス禍に入った時期を除き14年ぶりの低水準となったが、7月はわずかに持ち直した。ISMで調査を統括するティモシー・フィオレ氏は「製造業の活動縮小の度合いがいくぶん弱まった」と指摘した。
指数の内訳をみると、新規受注は前月から1.7ポイント上昇の47.3となった。生産も1.6ポイント上昇の48.3、受注残を示す指数は4.1ポイント改善し42.8だった。ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、ティム・クインラン氏は「景気後退に陥る可能性はいまだ高いが、(不況を回避する)軟着陸は不可能ではない」と述べた。
調査対象の企業からは「インフレの影響を受け、顧客の注文が予測を下回ったり、注文をやめたりしている」(コンピューター・電気製品)との報告があった。「少なくとも10〜12月期まで売り上げの好転は見込めない」(化学製品)など需要の弱さを指摘する声もあがった。
雇用環境を映す指数は前月から3.7ポイント低下して44.4となった。金融調査会社MFRのジョシュア・シャピロ氏は「生産高に見合った雇用削減が近い将来進む兆候があらわれている」と指摘した。
米国外からの受注も低迷している。新規輸出受注は1.1ポイント下落の46.2だった。企業からは「中国への半導体の輸出制限が北米の産業に悪影響を及ぼしている」(電気機器・家電)との指摘が出た。
米連邦準備理事会(FRB)の当局者らは1日、労働市場の大幅悪化を避けてインフレの抑え込みに成功する可能性に期待感を示した。一方で、高い政策金利を長期間維持することが条件になるとした。
●中国・アジア・ロシア・東欧
鉄鉱石先物が下落、中国の新築住宅販売額の急減を材料視
中国製造業の民間指標、7月は半年ぶり低水準-輸出期待できず
1日発表された7月の財新製造業購買担当者指数(PMI)は49.2と、6月の50.5から低下し、半年ぶりの低水準にとどまった。国家統計局が先月31日に発表した7月の製造業PMIは49.3と、活動の縮小を示していた。財新の指数は統計局のPMIよりも規模が小さめで、輸出型の企業が中心となっている。
財新智庫の王喆シニアエコノミストは発表文で、「市場は停滞しており、需要は低迷、それに合わせて供給も縮小している」と指摘した。
今回のデータは、中国経済の勢いが7月に一段と鈍化したことをあらためて示している。個人消費の伸び悩みが続く一方、不動産市場には持ち直しの兆しが見られない。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の舒暢、エリック・チュー両氏は「輸出が景気回復を支援する公算は小さい。中国の輸出は6月に2桁の減少となっており、7-12月(下期)の見通しも厳しい。米国やユーロ圏、日本の製造業PMIは7月も50を割り込んでおり、需要の先行きは芳しくない」と分析した。
中国の7月住宅販売額、この1年で最大の減少-不動産市場一段と悪化
中国の7月の住宅販売額はこの1年で最大の減少となった。景気回復の重しとなっている不動産不況への対処が政策当局者の急務であることが裏付けられた。
不動産調査会社の中国房産信息集団(CRIC)の暫定データによれば、不動産開発上位100社の新築住宅販売額は前年同月比33.1%減の3504億元(約7兆円)。4カ月連続で前年比プラスになった後、6月に続いてマイナスとなった。前月比では33.5%減。
販売額の落ち込みは、緩和の兆しが見られない信用危機で現金を必要とする不動産開発会社にとって痛手となる。IFRによると、年末までに29億ドル(約4140億円)の債務支払いに直面する不動産開発会社、碧桂園は1日未明、第三者割当増資を中止した。
CGS-CIMBセキュリティーズの中国・香港調査責任者、レイモンド・チェン氏は「低調な販売傾向が続けば、さらに多く不動産開発会社、特に民間の不動産開発会社が近いうちにデフォルト(債務不履行)に陥るだろう」と、7月の住宅販売データ公表前に指摘した。
中国碧桂園の株価下落、3億ドルの増資中止 「内部で検討必要」
中国の不動産開発大手、碧桂園控股は1日、内部で検討が必要として、3億ドルの増資を中止した。これを受けて香港市場で同社の株価が下落した。
関係筋によると、7月31日の株式発行手続き開始2時間後の時点で、全株式を売却するめどが立っていた。しかし「社内でのさまざまな検討事項を理由に計画を続行しないことを決定した」とするメッセージが1日に投資家に送られたという。
中国、一部銀行にドル買い控え要請 人民元安緩和を意図=関係筋
中国の通貨規制当局がここ数週間、一部の商業銀行に対し、ドル買いを減らすか遅らせるよう要請していると、事情に詳しい関係者2人が述べた。
関係者によると、このような指示は非公式だが、人民元の下落ペース緩和を意図しているという。また銀行は自己勘定取引でのドル買いを控えるべき規制当局が強調したとした。
中国人民元は対ドルで年初来3.6%下落。1日には1ドル=7.16元となり、アジアで最もパフォーマンスの悪い通貨のひとつとなった。
中国人民銀行(中央銀行)は現時点でロイターのコメント要請に応じていない。 中国国家外貨管理局(SAFE)はロイターに対し、為替レートの見通しは安定しており、企業や金融機関において「リスク中立的」な考え方を推し進めるとした。
中国政府、民間企業への与信強化誓う-景気対策の一環
中国当局、中小企業の資金調達支援を強化へ
●中東
UAE国営石油「脱炭素」5年前倒し COP28議長国
●中南米・アフリカ
フランス、ニジェールから国民退避開始 クーデター受け
●市況
鉄鉱石先物が下落、中国の新築住宅販売額の急減を材料視
中国製造業の民間指標、7月は半年ぶり低水準-輸出期待できず
1日発表された7月の財新製造業購買担当者指数(PMI)は49.2と、6月の50.5から低下し、半年ぶりの低水準にとどまった。国家統計局が先月31日に発表した7月の製造業PMIは49.3と、活動の縮小を示していた。財新の指数は統計局のPMIよりも規模が小さめで、輸出型の企業が中心となっている。
財新智庫の王喆シニアエコノミストは発表文で、「市場は停滞しており、需要は低迷、それに合わせて供給も縮小している」と指摘した。
今回のデータは、中国経済の勢いが7月に一段と鈍化したことをあらためて示している。個人消費の伸び悩みが続く一方、不動産市場には持ち直しの兆しが見られない。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の舒暢、エリック・チュー両氏は「輸出が景気回復を支援する公算は小さい。中国の輸出は6月に2桁の減少となっており、7-12月(下期)の見通しも厳しい。米国やユーロ圏、日本の製造業PMIは7月も50を割り込んでおり、需要の先行きは芳しくない」と分析した。
中国の7月住宅販売額、この1年で最大の減少-不動産市場一段と悪化
中国の7月の住宅販売額はこの1年で最大の減少となった。景気回復の重しとなっている不動産不況への対処が政策当局者の急務であることが裏付けられた。
不動産調査会社の中国房産信息集団(CRIC)の暫定データによれば、不動産開発上位100社の新築住宅販売額は前年同月比33.1%減の3504億元(約7兆円)。4カ月連続で前年比プラスになった後、6月に続いてマイナスとなった。前月比では33.5%減。
販売額の落ち込みは、緩和の兆しが見られない信用危機で現金を必要とする不動産開発会社にとって痛手となる。IFRによると、年末までに29億ドル(約4140億円)の債務支払いに直面する不動産開発会社、碧桂園は1日未明、第三者割当増資を中止した。
CGS-CIMBセキュリティーズの中国・香港調査責任者、レイモンド・チェン氏は「低調な販売傾向が続けば、さらに多く不動産開発会社、特に民間の不動産開発会社が近いうちにデフォルト(債務不履行)に陥るだろう」と、7月の住宅販売データ公表前に指摘した。
中国碧桂園の株価下落、3億ドルの増資中止 「内部で検討必要」
中国の不動産開発大手、碧桂園控股は1日、内部で検討が必要として、3億ドルの増資を中止した。これを受けて香港市場で同社の株価が下落した。
関係筋によると、7月31日の株式発行手続き開始2時間後の時点で、全株式を売却するめどが立っていた。しかし「社内でのさまざまな検討事項を理由に計画を続行しないことを決定した」とするメッセージが1日に投資家に送られたという。
中国、一部銀行にドル買い控え要請 人民元安緩和を意図=関係筋
中国の通貨規制当局がここ数週間、一部の商業銀行に対し、ドル買いを減らすか遅らせるよう要請していると、事情に詳しい関係者2人が述べた。
関係者によると、このような指示は非公式だが、人民元の下落ペース緩和を意図しているという。また銀行は自己勘定取引でのドル買いを控えるべき規制当局が強調したとした。
中国人民元は対ドルで年初来3.6%下落。1日には1ドル=7.16元となり、アジアで最もパフォーマンスの悪い通貨のひとつとなった。
中国人民銀行(中央銀行)は現時点でロイターのコメント要請に応じていない。 中国国家外貨管理局(SAFE)はロイターに対し、為替レートの見通しは安定しており、企業や金融機関において「リスク中立的」な考え方を推し進めるとした。
中国政府、民間企業への与信強化誓う-景気対策の一環
中国当局、中小企業の資金調達支援を強化へ
●中東
UAE国営石油「脱炭素」5年前倒し COP28議長国
●中南米・アフリカ
フランス、ニジェールから国民退避開始 クーデター受け
●市況
日銀が大規模金融刺激策からの緩やかな転換を決めた28日以降、円相場は乱高下している。OANDA(ニューヨーク)のシニアマーケットアナリスト、エド・モヤ氏は「日本のYCC政策の調整が年内の焦点になるだろう」と述べ、誰もが、日銀からいつタカ派的な強いシグナルが出るのかを注視しているとした。
豪ドルは1.61%急落し、1豪ドル=0.661米ドル。下落幅は3月上旬以来、1日としては最も大きなものとなる見込み。
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は1日、前月に続き政策金利のオフィシャルキャッシュレートを4.10%に据え置いた。インフレ抑制に向け幾分の追加引き締めが必要になる可能性もあるとの見方は維持した。
米債利回りが上昇した。30年債利回りは年初来の最高水準を更新した。経済活動の鈍化を示すデータが発表されたにもかかわらず、国債発行が増加するとの見方や経済の底堅さを示す兆候が増えるとの期待を受けた。
中南米金融市場では、域内通貨が総じて下落した。将来の金融緩和への思惑が高まったコロンビアペソが通貨安をけん引した。
日経先物33087、ダウ先35675、債先146.84、米4.011、独2.5245、仏3.089、西3.576、伊4.185、英4.4325、波5.438、原油82.25、銅8,637、ドル円142.87、ユーロドル1.1013
※8/2 8時45分頃
※8/2 8時45分頃