2022年7月4日月曜日

備忘録(22/7)

備忘録(7/29-31
●中国・ロシア・東欧
7月の製造業PMIは49.0(前月比▲1.2)、非製造業PMIは53.8(同▲0.9)だった。製造業については上海市のロックダウン解除などで6月は生産活動が正常化に向かったが、需要の戻りは鈍い。中国の景気回復は一進一退の様相を呈している。
7月の内訳をみると、柱の生産は3.0ポイント低い49.8だった。新規受注も1.9ポイント低下の48.5となり、いずれも2カ月ぶりに50を割り込んだ。
7月の乗用車の工場出荷台数は24日時点で前月同期より8%少ない。上海市の封鎖期間中に製造できなかった受注分の生産が6月分を押し上げたが、需要そのものの戻りは鈍く、生産回復の勢いに陰りがみられる。住宅販売も7月は伸び悩み、建材需要を下押しした。
海外需要の停滞も気がかりだ。輸出に限った新規受注も47.4と2.1ポイント下がった。米国経済が2四半期連続のマイナス成長となり、外需の下支えも期待しにくくなっている。
非製造業については、鉄道や航空輸送、宿泊、飲食、娯楽などサービス業が少しずつ持ち直した。建設業は2.6ポイント改善の59.2となった。地方政府のインフラ投資などが本格化し、21年8月以来の高さとなった。
ウクライナ軍がロシアが占領する南部の都市ヘルソンの奪還作戦を本格化させている。ロシア軍の弾薬庫や橋を破壊し、戦闘継続を難しくする狙い。ロシアは同市で住民投票を計画しており、一方的な併合を図るとみられる。
ウクライナ軍は30日、直近の戦闘で多数のロシア兵を殺傷し、同軍の弾薬庫2カ所を破壊したと発表した。ロイター通信が伝えた。ロシア軍が武器や弾薬を運ぶのに使っていたとみられるドニエプル川の橋3カ所もここ数週間で連続して砲撃し、補給経路を乱している。
英国防省は30日、ロシア軍がドニエプル川に浮桟橋2つを設置し、フェリーも使って補給を続けようとしているとの分析を発表した。ロシアは併合に向けた住民投票をヘルソンで計画しているが「ロシア政府は年内に実施するよう南部占領地に圧力をかけている可能性が高い」との見方を明らかにした。
7月末に暫定的な案をまとめるとしていた外貨建て債務再編計画について、資産査定の作業を近く完了し、年内の公表をめざすと発表した。債権者との調整や資産売却が難航しており、事実上先送りした。
上場する香港取引所に債務再編の進捗状況と原則を公表した。恒大は「グループの規模や複雑さを考慮して、デューデリジェンス(資産査定)の作業は継続している」と指摘。「中国の不動産市場は依然として調整中であり、事業や資産価値の回復には比較的長い時間がかかる」と認めた。
そのうえで、債務再編にあたり、国際的な原則を尊重するなどの基本方針を示した。債務再編はグループ傘下の電気自動車(EV)会社、中国恒大新能源汽車集団と不動産管理の恒大物業集団の株式も含めて検討する。今後、アドバイザーや債権者との協議を加速し、計画策定を進める。
●中東
ラクのイスラム教シーア派指導者、サドル師の支持者を中心とするデモ隊が30日、首都バグダッドの国会議事堂に押し入って占拠した。地元報道によるとデモ隊は数千人規模に上り、治安部隊が催涙ガスを使うなどして100人超が負傷した。議事堂の占拠は27日に次いで2度目で、混乱が続いている。
サドル師は反米で、イラクに強い影響力を持つ隣国イランとも距離を置くポピュリスト(大衆迎合迎合主義者)として知られる。昨年10月の議会選(定数329)で最大勢力となったが、スンニ派やクルド系などとの政権樹立協議に行き詰まり、今年6月に自派の全73議員を一斉に辞職させた。
繰り上げ当選などによって、同じシーア派ながらサドル師とは対立する親イラン系政治連合が最大勢力となった。シーア派連合は首相候補を決めるなど昨年10月以来空白となっている政権の樹立に向けて動いており、サドル師の勢力は反発している。
サドル師派による議会の占拠は27日に続き1週間で2度目となる。27日はサドル師自身の呼びかけで数時間内に退去したが、30日は夜になっても座り込みを続けている。
サドル師は7月中旬の礼拝に数十万人を動員するなど、議員らが下野した後も低所得者層を中心に強い支持を集める。民兵組織も抱えており、デモが暴力的な衝突に拡大する恐れも懸念されている。
イラン各地で今週、大雨による洪水や土砂崩れが発生し、29日までに53人が死亡、16人が行方不明となった。ペルシャ湾を挟んで隣り合うアラブ首長国連邦(UAE)でも大雨で洪水が起き、内務省は29日、7人が遺体で見つかったと明らかにした。AP通信などが伝えた。
●感染症
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
米証券取引委員会(SEC)は29日、米国に上場する中国企業で最大のアリババを上場廃止警告リストに追加した。アリババの会計監査を精査する許可を米当局に与えるのを、中国政府が拒否していることが理由。
今回の措置は2020年に制定された外国企業説明責任法(HFCAA)に基づくもので、3年連続で監査要件を順守できない企業は上場廃止となる恐れがある。
SECの発表後、米市場でアリババの米国預託証券(ADR)は急落。10%を超える下げとなっている。
●その他産業
●決算関連
2022年1~6月期の連結最終損益は13億5700万ユーロ(約1800億円)の赤字(前年同期は3億5400万ユーロの黒字)だった。1~6月期として2年ぶりに赤字転落した。売上高は前年同期比10%減の211億2100万ユーロだった。ウクライナに侵攻するロシアからの撤退を5月に表明しており、同事業で資産の評価損22億ユーロを計上した影響などが出た。
保有するロシア最大手自動車メーカー、アフトワズの株式68%を売却すると発表しており、売却額は1ルーブル(約2円)とされる。ルノーにとってロシア事業はフランス事業に次ぐ規模で、世界販売全体の2割弱を占めていた。半導体不足も響き、1~6月の販売台数は前年同期比30%減の約100万台となった。
一方、収益性は改善しているとして、22年12月期の売上高営業利益率見通しは従来の3%台から5%超に引き上げた。元会長兼最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン被告時代に進めた規模を追求する戦略を転換したことが奏功したとしている。
ルカ・デメオCEOは同日のアナリスト向け決算説明会で「コスト削減で、損益分岐点が大幅に下がっている」と自信をにじませた。だが半導体不足の影響が続き、通期の生産台数を30万台押し下げる見通しだ。
2022年4~6月期の連結決算(米国会計基準)は純利益が前年同期比97%増の804億円と、四半期ベースで過去最高となった。円安影響に加え、建機価格を積極的に引き上げたのが奏功した。中国のロックダウン(都市封鎖)で部品調達が遅れたのを補った。米利上げによる需要への影響については現時点で「大きな変調は見られない」としている。
3メガバンクの2022年4~6月期の連結純利益は前年同期比4割減の計5100億円程度になったようだ。企業の資金需要が伸びた半面、米国の金融引き締めで株式や社債の引受業務は低調だ。8月2日に公表する三菱UFJフィナンシャル・グループは米地銀MUFGユニオンバンクが抱える約2500億円の債券含み損を損失として計上、純利益は7割減の1000億円程度とみられる。
JR東日本が29日発表した2022年4~6月期の連結最終損益は189億円の黒字(前年同期は769億円の赤字)だった。同期間の最終黒字は3年ぶり。鉄道の運輸収入はコロナ前の7割の水準まで回復している。ただし、足元でコロナ感染が再拡大しており、業績の先行きはなお不透明だ。
23年3月期通期については、売上高で前期比24%増の2兆4530億円、最終損益で600億円の黒字(前期は949億円の赤字)の従来予想を据え置いた。鉄道収入は期末にかけて近距離でコロナ前の95%、中長距離で同90%まで回復する想定で、4~6月期時点では「おおむね想定通りに推移している」(JR東)という。
ジョン・メラー最高経営責任者(CEO)は米CNBCのインタビューで、「一部の消費者の間で低価格帯の商品に切り替える動きがある。PBのシェアがわずかだが上昇している」と警戒感を示した。
エクソンモービルが29日発表した2022年4~6月期決算は、純利益が前年同期の3.8倍の178億5000万ドル(約2兆4000億円)と、四半期として過去最高になった。ロシアによるウクライナ侵攻などで原油相場が上昇し、利幅が改善した。
ダレン・ウッズ最高経営責任者(CEO)は同日のアナリスト向け説明会で「決算は相場(上昇)だけでなく、数年前から実施している投資計画が実を結んだ結果だ」と語った。
南部テキサス州などにある「パーミアン盆地」でシェールオイルを増産し、南米ガイアナでは深海油田開発を進めた。ガソリン需要も回復し、北米製油所の収益性が高まった。液化天然ガス(LNG)にも投資し、モザンビークの浮体式プラントからは22年後半に出荷を開始する。
シェブロンが同日発表した22年4~6月期決算は純利益が前年同期の3.8倍となる116億ドル2200万ドルで、エクソンと同様、四半期で過去最高となった。
2022年4~6月期決算は、純利益が1億3300万ユーロ(約181億円)だった。新型コロナウイルスの感染拡大以降、四半期ベースで初めて黒字化した。欧米でコロナ規制が相次ぎ緩和・撤廃され、航空需要が戻っている。旅客輸送能力はコロナ前(2019年)の78%の水準に回復した。7~9月は80%に増えるとみている。通年でも黒字を維持する見通しだ。
英国の空港では、直前のキャンセルなどの混乱が相次いでいる。旅客需要の急回復に、従業員確保が追いつかないためだ。英BBCによるとBAは4~10月に約3万便のキャンセルを迫られる。
ルイス・ガイエゴ最高経営責任者(CEO)は「特にヒースロー空港で運営上の課題が深刻化している。業務体制の強化に注力し、顧客体験を改善させる」とコメントした。
●マクロ・その他
ペロシ米下院議長は7月31日、アジア歴訪を正式発表した。議員団を率いて、日本、韓国、シンガポール、マレーシアでハイレベル会合を開くとツイッターで明らかにした。焦点の台湾訪問については言及しなかった。
米英メディアはペロシ氏が8月上旬の台湾訪問を調整中だと報じていた。中国は訪台に強く反対しており、米政府は中国軍が台湾周辺で軍事威嚇を強める可能性も懸念している。ペロシ氏は29日の記者会見でも、台湾訪問について「安全上の問題なので話さない」と言及を避けた。
現職の米下院議長の訪台が実現すれば1997年以来。下院議長は副大統領に次ぐ要職で、台湾に対する米国の強い支持が明確になる。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は28日のバイデン米大統領との電話協議で「火遊びは必ず身を焦がす」との表現を使って警告した。ペロシ氏の訪台案が念頭にあったとみられる。
中国のロックダウン(都市封鎖)の影響などで4四半期連続で減少した。同社は急激なインフレと経済の先行き不透明感が個人消費を抑制し、全地域で在庫が増えていると指摘した。
IDCのリサーチディレクター、ナビラ・ポパル氏は「年初は供給不足で始まった業界が、需要不足の市場へと変化している」と説明した。在庫の増加を受け、中国勢を中心に各社は年内の生産計画を引き下げているという。
政策金利を1.5%引き上げて9%にすると決めた。利上げは8会合連続。2009年前半以来の高い水準となった。インフレの加速や通貨安の進行に対応した。
6月の消費者物価指数は前年同月比9.67%上がり、00年6月以来の高い上昇率となった。中銀目標の上限(4%)を上回るのは11カ月連続となった。食料品の価格上昇が目立つ。
中銀は22年の実質経済成長率見通しを6.3%から6.9%に引き上げた。ビジャル総裁は「堅調な需要は続いており、経済活動は強い」と指摘する。
通貨ペソは、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ開始を決めた3月半ばと比べ、1割強下落している。8月7日に左派のグスタボ・ペトロ氏が大統領に就任するのを控え、ビジネス環境の悪化が警戒されており、売られやすい地合いとなっている。
2022年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は、前四半期比で1.0%増(速報値)だった。産油国として世界的な原油高の恩恵を受けたほか、米国向けの自動車の輸出額が増加した。前年同期比で農業や石油などの第1次産業が1.4%増、製造業や鉱業などの第2次産業が3.3%増だった。金融・サービス業などの第3次産業も1.0%増えた。
メキシコの国営石油会社ペメックスは22年4~6月期に原油などの輸出額が3197億8300万ペソ(約2兆円)と前年同期比で89%増えた。ロシアによるウクライナ侵攻で世界的にエネルギー価格の高騰が続く中、ペメックスは原油の増産を急ぐとともに、精製能力を引き上げるために積極投資している。
自動車の輸出も回復している。INEGIによると、自動車の輸出額は22年1~6月に782億9920万ドル(約10兆5000億円)と前年同期比で11.5%増えた。主な輸出先である米国における需要が堅調だったほか、半導体不足による生産の停滞が徐々に解消しつつある。
●市況
日経先物(大証)27955、ダウ先32808、債先150.52、米2.658、独0.8255、仏1.375、西1.911、伊3.112、波5.523、原油98.30、ドル円133.21、墨ペソ20.38、トルコリラ17.9152、墨CDS161
※7/29 NY引け値

備忘録(7/28
●中国・ロシア・東欧
党中央政治局の会議終了後に発表された声明は、中国は今年可能な限り「最良の結果」となる経済成長を達成する必要があると指摘。一方で、新型コロナウイルス対策については、徹底的な感染抑制を図る「ゼロコロナ」政策を続けると表明した。「合理的な範囲内」の経済運営を維持するため、雇用と物価の安定に向けた取り組みも促した。
声明は5.5%前後の年間成長率目標には言及していない。この目標は今年、達成不可能だとエコノミストらは見なしている。ナットウエスト・グループの中国担当チーフエコノミスト、劉培乾氏は「年間目標の未達に含みを持たせた声明だ。政治局は長期的な優先課題を堅持し、積極的な刺激策の活用を控えている」との見方を示した。
政治局によれば、政府が「合理的に潤沢」な流動性を維持し、企業向け与信を強化することで需要促進を図る。地方政府が特別債発行枠を完全活用するよう支援するとも説明した。
政治局は声明で、地方政府が住宅プロジェクトの引き渡しを確実にする責任を負うと明確化。「住宅は住むためのもので、投機の対象ではない」との認識をあらためて示しながらも、不動産市場の安定性は維持されなければならないとしている。
●中東
イラクの首都バグダッドで27日、国会議事堂をイスラム教シーア派の指導者サドル師の支持者が一時占拠した。サドル師はイラクに対する隣国イランの影響力行使に反発しており、対立する親イランのシーア派勢力による新首相候補の擁立に反発した。イラクでは2021年10月の議会選後、新政権が発足できない状態が続いており、政治の混乱に拍車がかかる可能性がある。
反米強硬のサドル師派はイランにも反発し、議会選では第1党になった。だが、政権樹立に向けた世俗勢力やクルド人政党との協議は行き詰まった。サドル師は6月、同師派の議員をすべて辞職させた。かわって勢力を強めた親イラン勢力が独自の首相候補を決めて政権樹立を目指していた。
父親が高名なシーア派指導者だったサドル師は、ポピュリスト(大衆迎合主義者)としても知られ、低所得層を軸にイラクで広く支持されている。15日にもバグダッドで数十万人を礼拝に動員した。傘下に民兵組織を抱えている。
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
●その他産業
●決算関連
2022年4~6月期決算は、28%増収・純利益が前年同期の2.3倍の39億ドル(約5300億円)だった。。主力のがん治療薬に加え、がん免疫薬「キイトルーダ」が伸びた。子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチンも好調だった。これら製品の販売増加が新型コロナウイルスの飲み薬「ラゲブリオ(モルヌピラビル)」の売上高が12億ドルと、1~3月期の32億ドルから大幅に減った。米ファイザーの競合製品「パキロビッドパック」に比べ効果が低いとの検査結果を受け、販売が急減した影響を打ち消した
引き続きがん関連製品の販売増加を見込み、22年通期の売上高見通しを前期比18~20%増の575億~585億ドルと、従来予想(569億~581億ドル)から上方修正した。
2022年4~6月期の連結決算は、最終損益が3億7千万シンガポールドル(約362億円)の黒字だった。最終黒字は2四半期ぶり。4月に同国政府が新型コロナウイルス対策の入国規制を大幅に緩和し、旅客需要が急回復した。営業利益は5億5600万シンガポールドルと、四半期ベースで同社史上2番目の高水準だった。
シンガポール航空は一部路線で入国規制を緩和した21年10~12月期に、新型コロナの感染拡大後初めて四半期ベースで黒字を回復した。しかし、燃料費の高騰を受けて22年1~3月は再び最終赤字に転落していた。
今後の業績の本格回復で重荷になりそうなのが原油高に伴う燃料価格の高騰だ。4~6月の燃料費は前年同期の3.5倍になり、1~3月比で70.6%増えた。
年末の休暇シーズンに向けた事前予約について、同社は「力強い」としている。ただ、主要市場である欧米などのインフレは引き続き懸念要因で「利上げによる経済成長の鈍化が旅行需要回復のリスクだ」とみている。
2022年1~6月期決算は、営業利益が過去最高だった前年同期を13%上回り、128億2800万ユーロ(約1兆7700億円)となった。ただ同4~6月期は原料高などの影響を受け減益だった。ソフトウエアや電気自動車(EV)の開発遅れから9月の社長交代を公表しており、下半期に巻き返しを図る。
原材料価格や物流費の高騰が響き、為替の円安による業績押し上げ効果などでは補えなかった。
2割弱を出資する新興電気自動車(EV)メーカーの株式評価損を計上したのが響き、2四半期連続で最終赤字となった。
2022年4~6月期決算は、47%増収、純利益が前年同期比78%増の99億600万ドル。新型コロナウイルスのワクチンや飲み薬が好調で、関連製品の売上高が全体の6割を占めた。
「iPhone(アイフォーン)」と「iPad(アイパッド)」の売上高は予想よりも好調だったが、「Mac(マック)」やウエアラブル端末などの製品は予想に届かなかった。アップルの主要成長分野であるサービス事業の収入は予想をわずかに下回った。
それでもアイフォーンの売上高の数字からみて、アップルはスマートフォン支出鈍化の影響を乗り越えつつあるようだ。同社は4月、中国の新型コロナ対策に伴う操業停止などの影響で悪化したサプライチェーン制約で4-6月期の売上高が40億-80億ドル程度押し下げられる恐れがあると警告していた。
4-6月期の売上高は22%減の153億ドル(約2兆540億円)。アナリスト予想平均の180億ドルを大幅に下回った。
投資家はパソコン販売の低迷がインテルの業績に響くとは想定していたが、高級サーバー用半導体の16%減収は予想外で、これが全体の収益の重しとなった。同社によると、価格は下落しており、顧客の注文が競合他社に流れた。
パット・ゲルシンガー最高経営責任者(CEO)は、業績低迷の大半が景気減速に起因すると指摘しながらも、より良い製品をスケジュール通りに生産できなかったことも原因だとした。在庫整理に取り組んでいる顧客は新規発注を見合わせており、7-9月(第3四半期)が同社の業績の谷になるとの見通しを示した。
●マクロ・その他
4~6月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は前期比の年率換算で0.9%減り、2四半期連続のマイナス成長となった。世界的な資源の値上がりに伴う物価高で個人消費が減速し、急速な利上げで住宅投資が冷えた。米国は景気後退に陥った可能性もあり、ウクライナ危機に揺れる世界経済はけん引役を失いかねない。
マイナス成長が続いた最大の要因は、GDPの7割を占める個人消費の減速が強まったことだ。4~6月の個人消費は前期比1.0%増と、1.8%増だった1~3月期に比べて減速した。景気の回復で賃金は上がっていたが、ガソリンや食品など身近で購入頻度の多い商品を中心に物価が急激に上がり、購買力が低下している。
個人消費の先行指標として知られる米コンファレンス・ボードの消費者信頼感指数はこの1年余りで米リーマン危機などに次ぐ落ち込みを記録している。
4~6月期の住宅投資は前期比14.0%減と大幅な落ち込みになった。1~3月期は0.4%増だった。30年固定の住宅ローン金利は21年初めの2.7%から22年6月下旬には5.8%と08年11月以来の水準まで跳ね上がり、購入者から見ると物件の割高感が強まっている。
設備投資も0.1%の減少に転じた。1~3月期は10.0%の増加だった。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、銀行融資の金利上昇や人手不足などを理由に、企業が生産設備の建設プロジェクトを延期している例が複数の参加者から報告された。
米国では全米経済研究所(NBER)が景気後退を正式に認定する。2四半期以上続いたマイナス成長は第2次世界大戦後の1949年以降で計10回あり、すべてが正式に景気後退だったと認定されている。終戦直後の47年は認定されていないなど、例外はある。
NBERは景気後退を「経済全体に広がり、数カ月以上続く経済活動の著しい低下」と定義している。今回は景気後退の認定で重要視される失業率が歴史的な低水準になっている点が異例だ。イエレン米財務長官は24日のテレビ番組で「リセッションは経済が広範囲にわたって弱くなることで、今のところそれは見られていない」と述べていた。
2022年上期(1~6月)の世界生産の合計は、前年同期比6%減の1142万台だった。前年割れは2年ぶり。半導体供給不足に加え、新型コロナウイルスのまん延による中国のロックダウン(都市封鎖)の影響が出た。一方、同日8社が発表した世界販売は、トヨタグループ(ダイハツ工業、日野自動車含む)が6%減の513万台となり3年連続で世界首位を維持した。
英調査会社のLMCオートモーティブが26日に発表したリポートでは、22年通期の世界生産台数は8170万台と前年比で6%増となる見込みだ。半導体不足を中心とした部材の供給不足などのため1月時点からすでに430万台分、下方修正された。
インフレ急伸、巨額の財政赤字、通貨フォリントの急落、資産価値の暴落が重なり、かつてはEUの問題児とされてきたオルバン首相がEUに歩み寄っている。新型コロナウイルスの復興基金150億ユーロ(約2兆700億円)を受け取りたいからだ。
7月の景況感指数は99と、前月の103.5から低下。エコノミスト予想の102を大幅に下回った。
消費者信頼感指数はマイナス27と、過去最低。景気見通しへの家計の不安が強く示された。
7月の消費者物価指数(CPI)は欧州連合(EU)基準で前年同月比8.5%上昇。前月は政府の一時措置が影響し、インフレ率は8.2%に減速していた。ブルームバーグが調査したアナリスト予想中央値では7月のインフレ率は8.1%への低下が見込まれていた。
ウォレス氏は保守党員への7月上旬の世論調査で次期首相としての支持を最も集めていたが、現職の仕事に専念するため出馬を見送った。そのウォレス氏の支持はトラス氏に追い風になりそうだ。
トラス氏に「本物で正直で経験豊富で、首相の仕事のための誠実さを持っている」と賛辞を送った。保守党員への複数の世論調査で、トラス氏は対抗馬のスナク前財務相をリードしている。ウォレス氏の支持はさらなる好材料だ。
●市況
日経先物(大証)27917、ダウ先32489、債先150.52、米2.678、独0.8095、仏1.380、西1.989、伊3.326、波5.777、原油97.58、ドル円134.52、墨ペソ20.28、トルコリラ17.9517、墨CDS176
※7/29 9時20分頃

備忘録(7/27
●中国・ロシア・東欧
「これからの5年間は社会主義現代化国家の全面的な建設に向けてスタートする重要な時期に当たる」と指摘。「この5年間の発展をうまくやることが(中国建国から100年目に当たる2049年までに達成するとした)第2の100年の奮闘目標を実現する上で、極めて重要になる」と述べた。
秋の党大会で続投に向けた体制固めを進める習氏だが、このタイミングで「次の5年」にくり返し言及したのは党幹部らに忠誠を促す狙いがあったとみられる。
習氏は新型コロナウイルス対策を巡って「経済発展とコロナの予防・コントロールを一体的に管理し、世界で最も良い成果を収めた」と発言。党大会に向けて「実績」を誇示した。習氏は大きく変わる国際情勢などを念頭に「リスク」と「挑戦」にそれぞれ6回ずつ言及。危機感を強調し、党内の結束を促した。
「北戴河会議」を前に、一家言を持つ長老らの機先を制する思惑もあったとみられる。
中国の習近平国家主席は同国が国内および国外でかつてないほどの複雑なリスクや課題に直面していると述べた。国営新華社通信が伝えた。
同報道によると、習主席は26日に北京で地方政府の指導者向けに演説し、中国は戦略的機会となる新たな局面に入りつつあるが、ますます複雑になっている問題にも対応しなければならないと発言。今秋開催される第20回中国共産党大会で今後5年間もしくはそれ以上の期間を見据えた発展目標や主要政策の詳細を示すと述べた。
習氏はここ数年に多大なリスクをもたらした状況があったと述べ、台湾海峡や新型コロナウイルスなどの問題に党はうまく対処したと評価。人民民主主義の「包括的なプロセス」を促進するほか、国家の安全保障を強化し、台湾海峡の平和と安定を維持すると表明した。
●中東
●感染症
大半が欧州の感染例。約1割が入院を経験し、アフリカで5人が死亡したという。
WHOは、医療従事者を含むリスクの高い層のワクチン接種を推奨している。WHOのテドロス事務局長は記者会見で、「流行は止めることができる。最善の方法は接触の危険を減らすことだ」と訴えた。
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
●その他産業
2022年1~6月(上半期)の電気自動車(EV)のメーカー別世界販売台数は、21年に続き米テスラが首位だった。比較的低価格の車種をそろえる中国比亜迪(BYD)が2位に浮上。米国で4~6月にEV販売がハイブリッド車(HV)を上回り、主力モデルをヒットさせた韓国・現代自動車グループが5位となった。日産自動車などの3社連合は6位に後退するなど日本車の出遅れが鮮明だ。
●決算関連
2022年4~6月期決算は2%減収、純利益が前年同期比72%減の1億6000万ドル(約220億円)だった。増産している小型機「737MAX」が好調で商用機部門が持ち直したものの、防衛・宇宙部門が不振だった。無人空中給油機や宇宙船の開発で追加コストを計上した。小型機の納入が伸び、営業キャッシュフローは8100万ドルの黒字(前年同期は4億8300万ドルの赤字)に転換した。
製造の品質問題で納入を停止している中型機「787」の航空会社への出荷再開が最終段階にあると公表した。787は品質に不備が発覚し、生産工程を見直している。4~6月は2億8300万ドルの損失を計上した。米連邦航空局(FAA)と納入の再開に向けて詰めの協議をしているという。ボーイングのデビッド・カルフーン社長は同日「4~6月はカギとなるプログラムで重要な進展があった」とコメントした。
商業銀行部門は手数料収入の増加などが寄与した。金利環境の好転で収益は26%増と2桁の高い伸び率になった。投資銀行部門も11%増と堅調で、債券や外国為替を中心に収益を伸ばした。
ロシア関連の投融資の削減も進めており、直近の融資規模は13億ユーロという。ドイツ銀行は22年の収益を260億~270億ユーロとする計画で、ゼービングCEOのもと企業統治の改善など経営の立て直しを進める方針だ。
先行きは欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利政策の解除で金利が上向く見通しだ。銀行の融資には追い風となるものの、ロシアのウクライナ侵攻に伴うインフレ加速やエネルギー不安でドイツ経済が景気後退に陥る懸念も高まっている。取引先企業の収益が圧迫される恐れもあるだけに融資環境の不透明感は強い。
2022年4~6月期決算は、7%増収・純利益が前年同期比2%増の31億9800万ユーロだった。
世界的な半導体不足から同期間の乗用車販売台数は7%減ったが、「Sクラス」「マイバッハ」など高級車の販売が伸びた。
22年通期の見通しについては、売上高は21年の実績に対して「やや増える」との従来予想を、「大幅に増える」に改めた。特に高級車は21年比10%以上の販売台数の増加を見込む。当初は「同水準」だったEBITも「やや増える」に上方修正した。
2023年1月期通期の既存店売上高が前期比約11%減になる見通しだと発表した。インフレ下で需要の減退がみられるとして、従来予想の3~6%減から引き下げた。売上高営業利益率も約4%と、従来の5.2~5.4%から下方修正した。
自社株買いを一時停止した一方、四半期配当は継続する方針を明らかにした。「収益性を管理するためのさらなる行動を積極的に検討する」とも表明した。
ヘリコプターや防衛・宇宙部門は増収を確保したものの、主力の民間航空機が減収になった。世界的なサプライチェーンの混乱による部品不足で、民間航空機の引き渡しが減ったことが響いたほか、前年同期は新型コロナウイルスの感染拡大の影響が一巡して業績が急回復したため、その反動減もある。
ただ、新型コロナ対策に伴う行動制限の解除でヒトの移動が再開し、欧米を中心に航空需要は戻っている。国際航空運送協会(IATA)の予想では、22年の世界の航空旅客は前年比約7割増の38億人となり、コロナ前の8割の水準まで回復する。
航空業界は格安航空会社(LCC)の台頭で競争が激しくなるなか、燃費効率の高い機体の需要は旺盛だ。エアバスは主力の小型機「A320」シリーズを25年に月産75機に増やすことをめざしている。ギヨム・フォーリ最高経営責任者(CEO)は27日の声明で「顧客の強い需要に支えられ、増産に取り組んでいる」などと述べた。
投資銀行部門が振るわなかったほか、訴訟関連の引き当ても響いた。資産運用部門を率いてきたウルリッヒ・ケルナー氏を新たな最高経営責任者(CEO)に充てる人事も発表した。
メタの売上高の97%超を占めるネット広告事業の売上高は、前年同期比1%減の281億5200万ドルだった。米アップルがプライバシー保護規制を強めた影響で広告の配信先を絞り込む精度が低下し、中国発の動画アプリ、TikTok(ティックトック)との競争が激化していた。さらに景気減速の懸念から、一部企業が広告費を絞り込んだことが響いた。
メタのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は27日の決算説明会で、「デジタル広告にも幅広い影響を及ぼす景気後退期に入ったようだ。規模や期間を見通すのは難しいが、前の四半期よりも状況は悪化している」と述べた。
販売台数増加と価格上昇が寄与した。
2022年通期のEBIT見通しは115億-125億ドルに据え置いた。これは前年比15-25%増に相当する。
モーニングスターのアナリスト、デービッド・ホイストン氏は決算発表前に、「フォードは生産面では成功を収めている」とした上で、「保証費用を含めコスト面を改善し、社をよりスリムにする必要がある。こうしたプランはかなり近いうちに行われるようだ」と指摘した。
●マクロ・その他
米消費関連株で生活必需品を扱う銘柄が急落している。これまで動画配信サービスなど緊急性の低い銘柄を中心に売られていた。インフレの加速で消費者の節約志向が一段と高まり、携帯電話や日用品まで財布のひもを絞り始めている。米国内総生産(GDP)の7割を占める個人消費は賃上げで堅調という前提が揺らいでおり、投資家は警戒を強めている。
方面別の輸出量を見ると、米国に次ぎ2番目の輸出先である中国が20%減と大幅に減った。上海の都市封鎖により、現地工場の生産停止で貨物量が減る、空港の人員確保などが困難になるといった影響が相次いだ。
大手フォワーダーからは「上海が中国向けの中で特に物量が多く、他の地域の空港では受け皿にならない」との声が出た。
JPモルガンによると、インフレとロシアのエネルギー供給を巡る問題が経済を圧迫する中で、ユーロ圏は今年10-12月と来年1-3月(第1四半期)にマイナス成長が続く見通し。ストラテジストらは「9月に前倒しで0.5ポイントの利上げに動くこともあり得るが、経済成長を巡る不透明性は9月会合までにすでに一定の警戒を呼び、10月会合後の利上げ休止につながるだろう」との見解を示した。
27日発表のガートナーの予測によれば、世界の半導体売上高は今年、前年比でわずか7.4%増。3カ月前に予測されていた14%増から半分程度引き下げられた。昨年記録した26%増からは大幅な減速となる。
ガートナーのアナリスト、リチャード・ゴードン氏はリポートで、「世界の半導体市場は減速期に入りつつあり、これは23年末まで続くだろう。半導体売上高は同年に2.5%減と予想されている」と指摘。「既に半導体のエンドマーケットでは弱さが見られている。個人消費に関連する半導体では特に顕著だ」と続けた。
新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)中にパソコン市場は盛り上がりを見せたが、今は再び縮小しつつある。これに伴い半導体も低調だ。スマートフォン販売も失速している。インフレ加速が購買力に打撃を与え、消費者はスマホなどの購入を先送りしていることが背景にある。
パソコン出荷は今年13%減が予想されている。前年までは2年連続でプラスだった。パソコン向け半導体売上高は5.4%減と見込まれている。スマートフォン売上高は3.1%増と、前年の約25%増から大幅な減速が予想されている。
FOMCが26、27両日の会合で大方の予想通り0.75ポイントの利上げを決めた場合、アジア太平洋地域の中央銀行には金融引き締め加速を求める圧力が強まるはずだ。これを怠れば、自国からの一段の資金流出や通貨安につながる恐れがある。
ただリスクの度合いは国によって異なり、政策金利を過去最低水準に据え置いているタイなどは最も高い。一方、前倒しで早期に利上げに動いた韓国やニュージーランドのリスクは比較的低いが、トラブルを免れるわけではない。
本業の利益が借金の利払いより少ないのが特徴で、全体に占める比率は2021年度に金融危機後で最も高い16%になった。長期にわたる金融緩和のため増加傾向にあったが、直近では利上げの進む米国でこうした企業が破綻に追い込まれる事例が相次ぐ。世界的な利上げに伴う破綻増加懸念が、経済のリスク要因として意識され始めた。
全米不動産業者協会(NAR)のチーフエコノミスト、ローレンス・ユン氏は発表文で「年初以降に起きているように、住宅ローン金利が上昇し続ける限り、住宅購入の成約は減り続ける」と指摘した。
FOMCは会合後に発表した声明で、委員会は「インフレ率を目標の2%に戻すことに強くコミットしている」と改めて表明。「インフレリスクに細心の注意を払っている」と説明した。また「誘導目標レンジの継続的な引き上げが適切になると見込む」との文言も繰り返し、目標の達成を妨げ得るようなリスクが出現した場合は政策を調整するとした。
パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「次の会合で異例に大幅な利上げをもう一度行うことも適切となり得る」が、判断は今から次回会合までのデータ次第だと述べた。
また、いずれ利上げペースを落とすことになるとした上で、次の利上げ幅に関して明確なガイダンスを示すのではなく、政策は会合ごとに新たに設定されると説明した。
利上げペースを落とすことになるとのコメントで米株式相場は上昇。金利先物の動きは、9月のFOMCでは0.5ポイント利上げが決まる可能性が最も高いと現時点で予想されていることを示している。米国債利回りは低下し、ドルは下落した。ただ、一部のエコノミストからは懐疑的な声が聞かれた。
シティグループのエコノミスト、アンドルー・ホレンホースト、ベロニカ・クラーク両氏は顧客向けリポートで、「市場の解釈よりも、われわれはパウエル議長の記者会見をタカ派的と受け止めた」とコメント。食品・エネルギーを除いたインフレ統計が「米金融当局や市場の想定よりも積極的な利上げに当局を駆り立てる」とし、9月も0.75ポイントの利上げが行われると予想した。
野村証券のエコノミスト、ロバート・デント氏は「不確実性が高まっていることを踏まえ、米金融当局が具体的なフォワードガイダンスの提供から遠ざかりたいと望んでいることは明白だ」と分析。「これがハト派的なイノベーションだとは私は思わない」と述べた。
●市況
日経先物(大証)27883、ダウ先32138、債先150.36、米2.763、独0.9505、仏1.538、西2.142、伊3.417、波5.810、原油97.75、ドル円136.24、墨ペソ20.39、トルコリラ17.8745、墨CDS176
※7/28 9時20分頃


備忘録(7/26
●中国・ロシア・東欧
●中東
ムハンマド皇太子にとっては2018年のサウジ人ジャーナリスト殺害事件以来、欧州連合(EU)加盟国への初めての訪問となる。7月中旬にはバイデン米大統領とサウジ西部ジッダで会談しており、国際社会での存在感を高める狙いがある。
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
地上職員のストライキが原因だという。欧州の夏季旅行シーズンに生じている混乱はさらに悪化が予想される。
米航空、夏休みに相次ぐ遅延 人手不足でトラブル多発
●その他産業
●決算関連
2022年4~6月期決算は、純利益が前年同期比46%減の11億8800万ドル(約1623億円)だった。ウクライナ侵攻を受けたロシア事業撤退に伴う12億ドルの関連費用計上やインフレによるコスト上昇が響き、市場予想を下回った。売上高は3%減の57億1840万ドルだった。
商品の値上げを依然続けていることを明らかにした。主要市場の多くがインフレの打撃を受け、同社はここ数十年で最大のコスト増加に見舞われている。
発表資料によると、同社は急増するコストを相殺するため消費者への価格転嫁を進めており、2022年通期の増収率は従来の予想レンジの4.5-6.5%を上回る見込み。通期の営業利益率は約16%と、16-17%の従来予想レンジに沿った水準になると予想している。
それでもなお、売り上げは減少し始めている。消費者はやりくりしようとブランド商品からプライベートブランド商品にシフトしつつある。
ユニリーバは、インフレにより今年度は46億ユーロ(約6400億円)のコストを新たに吸収する必要があるものの、実際に相殺できるのはその一部だけだと指摘した。
1-6月(上期)の調整後営業利益は50億ユーロと、予想の47億3000万ユーロを上回った。売上高は296億ユーロ。予想は290億1000万ユーロだった。
2022年4~6月期決算は、売上高が同12%増の113億2500万ドルで、市場の事前予測(105億6000万ドル前後)を上回ったものの、純利益が前年同期比28%減の19億500万ドル(約2600億円)だった。レストランなどへの顧客回帰で増収を確保したが、ドル高やマーケティング投資の費用増加などが響いた。
2022年4~6月期決算は、売上高が186億ドルで前年同期比2%増だった。最終損益が8億ドルの赤字(前年同期は11億ドルの赤字)だった。最終赤字は3四半期連続。主力の航空機エンジン部門は航空機受注の回復基調を受けて、事業売上高が27%増の61億ドルとなった。事業営業利益も7倍の11億ドルとなり、収益が急回復した。一方、再生可能エネルギー事業は減収で、事業営業利益も4億ドルの赤字を計上した。サプライチェーン(供給網)の目詰まりが続いており、原材料や部品調達のコスト高が響いた。借り入れ負担も収益を圧迫した。
GEは「インフレ圧力などを抑える措置を講じているが、今後も利益への悪影響が続く可能性がある」としている。
2022年4~6月期決算は、純利益が前年同期比40%減の16億9200万ドル(約2300億円)だった。半導体不足が続き、生産と販売がともに停滞した。新型コロナウイルスの感染拡大で中国市場での販売も減少し、原材料などコスト高が利益を圧迫した。
欧州を中心とした旺盛な高級品消費に支えられたが、世界景気の減速懸念から先行き不透明感は強まっている。
景気の減速懸念が強まっていることを背景に主力のインターネット広告事業の成長が鈍化し、2四半期連続の減益となった。
企業が広告費を見直す傾向が強まり、アルファベットと同様にネット広告を主力とする米ツイッターの4~6月期の売上高は前年同期を下回った。
フィリップ・シンドラー最高事業責任者は「旅行や小売りの分野の広告が好調で、夏の旅行先の検索回数は前年同期の2倍に増えた」と説明した。
ただ、全社の売上高の前年同期増加率は過去8四半期で最低になった。ルース・ポラット最高財務責任者(CFO)は「サプライチェーン(供給網)や在庫などの問題から、一部企業が広告出稿を手控えている」と述べた。
また、株価低迷などの影響で有価証券の売却損や評価損が拡大し、業績の足を引っ張った。ドル高の影響も受け、ポラットCFOは「為替は7~9月期にさらに強い逆風になる」と説明している。
企業向けクラウドサービスの採用は堅調だったものの、ドル高が収益を押し下げた。
2023年末までに傘下のヘルスケア事業を分社・上場すると発表した。産業材事業を中核とする本体と切り離し、多角化が市場の評価引き下げにつながる「コングロマリット・ディスカウント」解消を目指す。
3Mのヘルスケア事業はマスクなどフィルター製品のほか、救急ばんそうこうや手術用品などの創傷ケア、歯科・口腔(こうこう)用品を扱う。2021年通期の売上高規模は86億ドル(約1兆1800億円)で、3Mの売上高全体の約4分の1を占めた。3Mは、分社後の新会社の株式19.9%を保持する方針だ。
すでに食品安全用品事業の切り離しも決めており、これについては22年9月中に分社化する方針だ。
22年4~6月期決算は、売上高が前年同期に比べ3%減の87億200万ドルだった。純利益は95%減の7800万ドルと大幅に落ち込んだ。コスト上昇に加え、ドル高で海外売上高が目減りし、収益の重荷となった。
22年12月通期の業績については、売上高で前期比1~4%増とした前回見通しから、同0.5~2.5%減に引き下げた。為替のマイナス影響を主な理由とした
3Mは同日、子会社のAearo Technologiesが米連邦破産法11条の適用を申請したと発表した。同子会社は主力製品である耳栓の品質問題で、累計10万件を超える訴訟に直面している。3Mは4~6月期に訴訟の関連費用として12億ドルの特別支出を計上した。
●マクロ・その他
2022年4~6月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は前期比0.7%増え、8四半期連続のプラスとなった。衣類や旅行など民間消費が活発でGDPを押し上げた。ただ、中国での都市封鎖(ロックダウン)の影響もあって輸出は落ち込んでおり、先行きは不透明感が高まっている。
民間消費は3.0%増と成長をけん引した。新型コロナウイルスの行動制限緩和を背景にレジャー消費が好調で、衣類や靴といったファッションの販売も伸びた。
韓国経済の屋台骨である輸出は振るわず、3.1%減だった。中国向け比率の大きい化学製品や鉄鋼製品が足を引っ張り、20年4~6月期以来のマイナス幅となった。輸入は国内生産の停滞や原材料価格上昇による買い控えもあって0.8%減となった。資源高の影響で4~6月は貿易赤字が続いており、輸出入がGDPの下押し要因となった。
IMFは26日に発表した見通しで、中心となる基本シナリオ以外に、起きる可能性の高い「代替シナリオ」を示した。2022年の成長率は2.6%、23年は2.0%と、基本シナリオをそれぞれ0.6ポイント、0.9ポイント下回る。
ロシアから欧州へのガス供給の途絶や深刻な人手不足による世界的なインフレの長期化、金融引き締めに伴う新興国や途上国の債務危機などを下振れリスクに挙げた。リスクが顕在化すれば10月の次回予測はさらなる下方修正となる。
これほどの急ブレーキがかかる予想は21年の段階ではほとんどなかった。
2月のロシアによるウクライナ侵攻で世界的に進みつつあったインフレに拍車がかかった。IMFは世界の消費者物価が22年に8.3%上昇すると見込む。4月時点から0.9ポイント引き上げた。先進国は6.6%、新興・途上国は9.5%に達する。
米国などは大幅な利上げを迫られ、中国の感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)も重なった。
基本シナリオをみると、ユーロ圏の見通しは4月より0.2ポイント低い2.6%となった。インフレに加え、中国のロックダウンによる供給網混乱の影響で輸出もさえない。
エネルギー相理事会を開き、8月から2023年3月までの天然ガスの消費を過去5年の平均に比べて15%減らすことで合意した。ロシアが欧州へのガス供給を一段と減らし、欧州のガス在庫が枯渇する懸念が強まっているためだ。ただ一部の加盟国に配慮して例外規定を設けるなど実効性には課題もある。ガスの安定調達に向け綱渡りが続く。
一部の加盟国が一律15%削減に反対したため、例外規定を設けることなどで合意にこぎつけた。具体的には加盟国が自主的な目標として実現に努め、ロシアがガス輸出を止めるなどの緊急事態になれば、欧州委が目標を加盟国に強制できる。
島しょ国など他の加盟国とガス網で結ばれていない国は除外する。発電をガスに大きく依存している国は目標を免除される可能性がある規定も設けた。十分なガスの貯蔵がある場合は目標の緩和を申請できる。鉄鋼や化学など重要な産業で使うガスは目標の対象外とできるルールも設けた。
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の白川裕氏の推計によると、ノルドストリームの供給量が8割減ったままの場合、高水準のLNG輸入を続けても、欧州のガス在庫は来年2月中に枯渇するという。EUが15%削減を実行できれば、こうした枯渇リスクも下がる見通しだ。
世界経済の2022年の実質成長率見通しを3.2%に下方修正すると発表した。4月時点の前回見通しは3.6%だった。歴史的なインフレとそれに対応する米欧の利上げ、中国のロックダウン(都市封鎖)が逆風となる。新型コロナウイルス禍から回復していた世界経済は急減速し、停滞感を強めている。IMFの予測は22年1月、4月に続き3回連続の下方修正となる。23年の見通しも4月の3.6%から2.9%に下げた。コロナ禍前の15~19年の平均成長率は3.4%で、22~23年は巡航速度を下回る。
4月の前回見通しと比べて、主要国で実質成長率の下方修正が最も大きいのは米国だ。22年は1.4ポイント低い2.3%となった。賃金の伸びを上回る物価上昇で家計の購買力が低下する。中国もブレーキがかかる。22年の予測は1.1ポイント低い3.3%となった。IMFは「ゼロコロナ」政策に伴うロックダウンのほか、深刻な不動産危機を理由にあげた。
ユーロ圏は0.2ポイント低い2.6%。もともと回復が遅れている日本は0.7ポイント下方修正し、1.7%になった。コロナ前の19年の国内総生産(GDP)への回復が遠のく。
ウクライナへの侵攻で経済制裁を受けているロシアはマイナス6.0%。ブラジルやメキシコ、南アフリカなどは成長率を上方修正した。
22年の物価上昇率は先進国を6.6%、新興・途上国を9.5%とそれぞれ大幅に引き上げた。世界経済はインフレや利上げ、新興国の債務危機の深刻化といった下振れリスクを抱える。IMFは成長率が22年に2.6%、23年に2.0%に沈むシナリオも示した。
7月の米消費者信頼感指数は、2021年2月以来の水準に低下した。高インフレが続く中、経済見通しが暗くなったことが背景にある。
現況指数は21年4月以来の低水準。今後6カ月の見通しを反映する期待指数は65.3と、13年以来の水準に小幅低下した。家計の見通しに対して一段と悲観的になっていることを反映した。
コンファレンスボードの景気指数担当シニアディレクター、リン・フランコ氏は発表文で、「ガソリンと食料品価格の上昇を中心にインフレ懸念が引き続き消費者を圧迫した」と指摘。「今後6カ月もインフレと追加利上げが個人消費と経済成長にとって引き続き強い向かい風になる可能性が高い」と予想した。
雇用が「十分にある」との回答比率は50%強と、過去1年の最低となった。職を得るのが困難との回答も増えた。
消費者の1年先のインフレ期待は前月から低下した。
今後6カ月間に自動車や大型家電製品を購入する意向だとの回答比率は低下。住宅購入予定の比率は15年以来の低水準に落ち込んだ。
6月の米新築一戸建て住宅販売は前月比で減少し、この2年余りの最低水準となった。前月比のマイナスは今年に入って5回目。物件価格の高さと住宅ローン金利上昇が見込み客の購入意欲に影響を与えている。
新築住宅販売価格の中央値は前年同月比7.4%上昇し、40万2400ドル(約5500万円)。2020年11月以降で最も低い伸びとなった。
6月に販売されたが未着工の物件は前月より増えて18万4000件と、1月以来の高水準。
6月末時点で売りに出されていた物件は45万7000件と、08年以来の高水準で、このうち建設中あるいは未着工は91%に上った。
販売に対する在庫比率は9.3カ月。5月は8.4カ月だった。全米4つの販売地域のうち、3地域で減少。西部が約36.7%、南部は2%、北東部は5.3%それぞれ減少した。
S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズのクレイグ・ラザラ氏は、価格の伸びは「非常に高い」水準から「若干」減速したと指摘した。
ラザラ氏は「米利上げの加速により住宅ローンで資金を借り入れるコストが増えている」とした上で、「マクロ経済環境は厳しさが増しており、異例ともいえる住宅価格の上昇もあまり長くは続かない可能性がある」と述べた。
20都市の住宅価格は5月に前年比20.5%上昇。前月の21.2%上昇から伸びが鈍化した。5月の前年比での価格上昇率が4月を上回ったのは4都市のみ。2月の時点では20都市全てで伸び率が前月を上回っていた。
世界的なドル高に加え、世界経済の先行きを懸念した資源価格の下落や左派政権によるビジネス環境の悪化が懸念されているためだ。政府当局は利上げや市場介入で通貨の下支えに動いているが、輸入物価上昇による一段のインフレ加速も警戒されている。
チリの場合、世界最大の生産量を誇る銅の価格下落に伴い、通貨の下落が進んだ。LMEの銅先物価格は3月の史上最高値から3割ほど下落している。
ボリッチ大統領は「我々には手の届かない問題もあるが、チリ経済を前進させるために可能なすべての施策を行う」と話す。
中央銀行は18日から9月末まで、250億ドル(3兆4000億円)規模で為替介入を実施する方針を示した。足元ではペソ相場はやや戻しているが、先行きは油断できない。3月に発足した左派のボリッチ政権は鉱業分野の増税に動いており、経済界からは懸念する声もある。
コロンビアは6月の大統領選で左派のペトロ氏が勝利し、8月に就任する次期大統領に決まった。選挙戦では石油探査の停止やFTAの見直しを主張しており、ビジネス環境の悪化への警戒が膨らむ。
ブラジルの場合は10月の大統領選に向けて左派のルラ元大統領が優位にたっている。
一方、メキシコペソは対ドルでやや上昇している。輸出の約8割が向かう米国の需要が旺盛なことが背景にある。2022年1~6月に米国への自動車の輸出台数は約110万台と前年同期比で3.6%増えた。
ロペスオブラドール政権が新型コロナウイルスに対応した財政出動を抑えたため財政の悪化が抑えられており、「経済の基礎的条件が良い」(メキシコ銀行のヘラルド・エスキベル副総裁)ことも通貨が底堅く推移する理由となっている。
FRBが利上げペースを一段と引き上げた場合には金利差は縮まるため、中南米通貨にとっては下落要因となる。米シティーグループは今年12月時点の中南米通貨について25日時点よりも対ドルで下落すると予測している。各国のインフレは依然としておさまる状況にはなく、輸入物価の上昇がさらにインフレを悪化させる可能性もある。
●市況
日経先物(大証)27572、ダウ先31848、債先150.27、米2.803、独0.9365、仏1.531、西2.124、伊3.349、波5.733、原油95.56、ドル円136.85、墨ペソ20.45、トルコリラ17.8767、墨CDS166
※7/27 9時30分頃

備忘録(7/25
●中国・ロシア・東欧
ロシアの国営天然ガス企業ガスプロムは、欧州向けの主要パイプライン「ノルドストリーム」経由のガス供給を一段と削減すると発表した。これを受けて欧州の天然ガス先物価格は急騰し、上げ幅は一時10%を超えた。
ガスプロムの発表によると、同パイプライン経由のガス供給量は27日から1日当たり3300万立方メートルと、20%の稼働率となる。同パイプラインでは別のタービンを保守点検のため取り出す必要があると、ガスプロムは説明した。
ノルドストリームは先月以来、すでに稼働率が40%にまで低下。カナダで修理を受けた別のタービンのロシア返送が遅れていることが背景にある。プーチン大統領は先週、タービンの問題が解決しなければ、稼働率は20%に落ち込む恐れがあると警告していた。
欧州の指標ガス先物価格は一時10%高のメガワット時当たり176ユーロに上昇した。
同氏が保有する企業と紫光集団の傘下企業の間で不適切な利益移転があった疑いなどで当局の調査を受けているという。紫光集団の経営破綻は有力経営者の腐敗疑惑に波及した格好だ。
ロシアのラブロフ外相は24日、アフリカ諸国歴訪の最初の訪問国エジプトで、シシ大統領らと会談した。ロイター通信によれば、カイロでアラブ連盟諸国の関係者らと会談後、エチオピア、ウガンダ、コンゴ共和国も訪問。ロシアがウクライナ侵攻で西側諸国から厳しい制裁を受ける中、アフリカ諸国との関係強化を模索する。
エジプト大統領府によると、シシ氏との会談でラブロフ氏は、ウクライナ情勢について説明。シシ氏は「対話と外交的解決の重要性」を強調した。エジプト外務省によれば、ラブロフ氏はシュクリ外相とも会談し、2カ国間協力のほか地域および世界の問題に関し意見交換した。
ロイターによると、ラブロフ氏は20日のロシア国営メディアとのインタビューで「われわれは常に、彼ら(アフリカ諸国)が望む通りに生きていけるよう、問題解決を手助けしてきた」と強調。ロシア・アフリカ首脳会議を来年計画していることも明かした。
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は23日の日次リポートで、ウクライナ軍は南部ヘルソン州ですでに反転攻勢を開始した可能性があると指摘。今月15日以降にドンバス地方の主要な前線でロシア軍の砲撃が著しく減ったのは高機動ロケット砲システム「HIMARS」の効果だとし、HIMARSがロシア軍の前線に武器を供給していた数十の兵器庫を破壊したと分析した。
ISWは25日、ヘルソン州のロシア軍とドニエプル川東岸の供給ラインを結ぶ全ての橋をウクライナ軍が損傷させたとも報告した。
ゼレンスキー大統領は21日、安全保障担当幹部らとの会合後、「前線で軍を進軍させ、占領者に新たに重大な損失を負わせる大きな見込みがある」と述べた。さらにウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が22日に掲載したインタビューで同大統領は、5-6月には1日100-200人に上っていた戦場での死傷者数が最近は30人前後にまで減少したと説明。ロシアに領土の割譲を認める休戦協定は結ばないと、あらためて強調した。
英スコットランドのセントアンドルーズ大学で戦略研究を専門とするフィリップス・オブライエン教授は、戦争が新たな段階に入りつつあることをこれら全てが示唆していると指摘。ロシア軍が電撃的にキーウ占領を目指し失敗した第1段階、勝利への道を進もうと東部の一部で撤退したのを第2段階と位置付け、「ドンバス地方でロシア軍の軍事力低下が続き、基本的に戦線が膠着(こうちゃく)するなら、ウクライナ軍による撃退は可能になるのかが問われることになる」と語った。
中国の深圳市当局がアップルの「iPhone(アイフォーン)」を受託生産しているフォックスコンなどの大手企業に対し、新型コロナウイルス対策として7日間は外部との接触を遮断する「バブル方式」で事業を行うよう求めた。 
ブルームバーグ・ニュースが確認した深圳市の通告によれば、こうした要請の対象となったのは同市で事業を行っている大手100社で、中国海洋石油(CNOOC)や電気自動車(EV)メーカーの比亜迪(BYD)、通信ネットワーク機器の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)、ドローンメーカーのDJIなどが含まれる。
フォックスコンの広報担当者は深圳拠点での業務について、「通常のまま」だと説明した。ZTEとDJIの担当者はコメントを控えた。深圳市の報道室はコメントを求めるメッセージに応じていない。同市の産業・IT局は電話での取材に対し、そうした行動は承知していないと述べた。ファーウェイとCNOOC、BYDの広報担当者はブルームバーグの問い合わせに対し今のところ返答していない。
中国で深刻化しつつある不動産不況は同国に4億人いるミドルクラス(中間所得者層)に衝撃を与え、不動産は確実な蓄財方法との概念を覆しつつある。
不動産開発が各地で停滞し、住宅価格が下落する中、多くの住宅所有者は支出を削減しているほか、結婚など人生の重要イベントを先送りし、未完成物件の住宅ローンの支払いを差し控えるケースも増えている。
ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、クリスティ・フン氏の試算によると、建設停止の影響は中国の住宅計4兆7000億元相当に及ぶ可能性があり、そうした未完成物件を完成させるには最大1兆4000億元、つまり国内総生産(GDP)の約1.3%相当が必要となる可能性がある。
中国の住宅価格は10カ月連続で下落し、1人当たりの可処分所得は4-6月(第2四半期)に5四半期連続で縮小した。過去10年の借り入れブームを背景に、2021年末の中国の家計債務は対GDP比で61.6%と、11年末の27.8%から上昇。それでもなお、米国や日本などと比べれば低い水準にある。
交銀国際の中国担当ストラテジストだった洪灝氏は住宅ローンの返済ボイコットが住宅価格と販売を抑制し、経済全体に波及する負の資産効果を生み出すと予測。不動産市場について、「良い投資先だとは思わない。かつては住宅価格が下がることは決してないと考える人が多かったが、パラダイムシフトが起きている」と指摘した。
格差是正を狙った「共同富裕」(共に豊かになる)運動を不動産セクター締め付けの中心に置いてきた習総書記だが、不動産危機に見舞われた市民の痛みを和らげるためなら、大きな譲歩も辞さない姿勢のように見受けられる。ブルームバーグ・ニュースは18日、開発が滞っている不動産物件の購入者を対象にペナルティーを科さずに一時的にローン支払いの猶予を認める可能性があると事情に詳しい関係者の話として報じた。
だが、住宅ローンの返済猶予を通じて住宅購入者を懐柔しようとするのは、支払いボイコットの拡大を助長しかねない危険な戦略だ。DBS銀行のマクロストラテジスト、チャン・ウェイ・リアン氏は「本格的な住宅ローン返済猶予は応急処置で、契約通りにローンを返済している大半の住宅購入者に誤ったメッセージを送る可能性がある」と指摘。「不動産業界のサプライヤーや下請け業者にもローン返済停止という似たような抗議活動を促す恐れすらある」と述べた。
ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、フランシス・チャン氏はいかなる債務モラトリアム措置であれ、住宅ローンの借り手に返済ストップを促す可能性に触れ、「すでに支払い停止を始めた借り手は、最終的にデフォルト(債務不履行)を選択するかもしれない」と語った。
中国当局は抗議活動が国際的なメディアで大きく取り上げられるかどうかも注視している。唐教授によれば、当局の懸念は住宅ローンのボイコットが連鎖反応を引き起こし広範な反発につながる「トリガーイベント」になることだ。「コロナ対策に不満を持つ失業者や店舗閉鎖に追い込まれた人々を含め、他の経済セクターに広がるかもしれない。仮にそうなれば、中央政府ははるかに大きな問題への対応を迫られる」と話した。
中国の今年の国内総生産(GDP)成長率は4%に届かない見通しだ。ブルームバーグの最新エコノミスト調査が示した。新型コロナウイルスを徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策や不動産セクターを巡る危機、世界経済の見通し悪化が中国経済の重しとなる。
エコノミスト調査の予想中央値によると、2022年のGDP成長率は3.9%が見込まれている。従来見通しは4.1%だった。中国政府が設定した今年の成長率目標(5.5%前後)を大きく下回る。
今年7ー9月(第3四半期)のGDPは4.2%増と予想されている。従来見通しは4.5%増だった。10ー12月(第4四半期)は5%成長と見込まれており、前回調査から変わらず。
ダンスケ銀行のエコノミスト、 アラン・フォンメーレン氏は「不動産のストレス拡大のほか、米国やユーロ圏の需要鈍化、新たなコロナ制限措置の不透明感による個人消費や小規模企業への大きな影響といった逆風の再燃に中国が見舞われている」と指摘。今年は2.7%成長にとどまると予想した。
●中東
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
ESGの測定方法にも問題がある。スコアリングシステムによって判定が大きくばらつき、スコアの操作も容易だ。企業の信用格付けにおいては、様々な機関による格付けの間には99%の相関があるが、ESG格付けの相関は5割強にすぎない。企業は問題のある資産を他社に売却すればESGスコアを改善できるが、新しい所有者が資産の運営方法を変えない限り、現実の問題は解決しない。
「S」に関して言えば、ダイナミックで自由な経済においては、企業は、法律にのっとって長期的利益を追求するなかで、社会においてどう振る舞うかをそれぞれに決定するものだ。テック企業は若者の価値観に訴えて若手を自社につなぎとめようとするかもしれない。衰退産業の企業が従業員のレイオフを余儀なくされる場合もあるだろう。その答えは一様ではない。
ガバナンスを示す「G」については、経営管理の実態を把握することが容易ではないため、○×式の調査で判断することはできない。英国の上場企業は入念に作られたガバナンスコードを持っているが、その成果はお粗末だ。
「環境」は生物多様性や水不足をも含む包括的な言葉だ。その中で、格段に大きな危険をもたらすのは温暖化ガス、特に二酸化炭素(CO2)の排出だ。それを明確にするために、Eは、種々の環境(environment)要因ではなく、温暖化ガスの排出(emission)の頭文字と考えるべきだ。
米ボーイングが22日に閉幕した世界最大級の航空展示会「ファンボロー国際航空ショー」で、小型機「737MAX」を約160機受注した。欧州エアバスのライバル機「A320neo」の2倍超となった。新型コロナウイルスのワクチン普及で旅客数は回復傾向にある。主流の小型機ではエアバスが大きく先行する。ボーイングは新型機の投入で追い上げようとしている。
ボーイングと労組が確定拠出年金(401k)の運用方法などについて協議していた。労組側は24日に投票で会社提案を否決し「ボーイングは組合員の年金をきちんと補償しないつもりだ」などとする声明を公表した。
一方、会社側は「競争力のある提案を否決した(組合の)投票結果に失望した。(工場の)稼働を続けるための対応策を実行する」と日本経済新聞にコメントした。工場では軍用の練習機「T7」や無人空中給油機「MQ25」も生産している。
米規制当局はボーイング777ワイドボディー型ジェット機を運航する米各社に対し、燃料タンクが爆発する可能性に対応した修理を指示している。
米連邦航空局(FAA)は25日の耐空性改善命令(AD)で、運航各社に同ジェット機を点検し、主要燃料タンクの一部にテフロンスリーブとキャップファスナーを取り付けるよう求めている。今回の命令は282機に適用されるという。
777初期モデルの777ー200から300ERが対象になる。
●その他産業
2023年1月期通期の調整後1株当たり利益の予想を従来の前期比1%減から11~13%減に下方修正した。インフレ下で消費者が食料品など必需品への支出を増やし、衣料品などの売り上げが伸び悩むためだ。
ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は「食品や燃料のインフレ率の高まりが消費行動に影響を与え、衣料品の(過剰在庫による)さらなる値下げが必要になっている」と述べた。ウォルマートの株価は時間外取引で一時約10%下落した。小売りの苦戦が長引くことを懸念し、ディスカウントストア大手ターゲットや百貨店大手メーシーズ株にも売りが波及した。
ウォルマートは一般商品の新学期に向けた販売は好調だが、年後半には買い控えが広がると予測する。一方で利益率の低い食料品の売り上げは伸びており、22年5~7月期の米国の既存店売上高(燃料除く)は従来予想の4~5%増から約6%増に引き上げた。
米食品メーカーのキャンベル・スープ株が堅調だ。22日時点で2021年末比で1割高く、2割近く下げたS&P500種株価指数に比べ底堅い。景気後退の懸念が強まるなか、相対的に景気変動の影響を受けにくいとされる「ディフェンシブ銘柄」として注目され、ブランド力や高収益性を評価した買いも続く。
●決算関連
オランダのロイヤル・フィリップスは25日、2022年通期の増収率見通しを引き下げた。4-6月(第2四半期)の利益は、インフレ圧力とサプライチェーンの問題に加え、中国での新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)が響き、予想を下回った。
発表資料によれば、同社は現時点で通期の増収率を最大3%と予測。従来は最大5%を見込んでいた。中国の販売・受注が感染拡大に伴う厳しい制限措置で4-6月に前年同期比で約30%減少した。
フランス・ファン・ホーテン最高経営責任者(CEO)はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで4-6月期について、「多くの逆風に」見舞われたと指摘。「受注は続いており、そうした力強い注文に対応するには資材や半導体を着実に入手する必要がある」と語った。
●マクロ・その他
世界的に感染が急激に広がっているウイルス感染症「サル痘」について25日、東京都内で感染者が確認された。国内での確認は初めて。同日夜に厚生労働省が発表した。サル痘は世界保健機関(WHO)が23日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言した。政府は関係省庁で連携し、検査や患者の受け入れ体制を整える。
就任後初の施政方針演説に臨んだ。南シナ海で中国などと対立する領有権について一歩も引かない姿勢を強調した。ドゥテルテ前政権が貫いた対中融和姿勢を修正する発言となった。
外交政策では「フィリピンの領有権は、外国の圧力によって寸分たりとも譲るつもりはない」と力説し、南シナ海における自国の領有権を重視する姿勢を打ち出した。具体的な国名には言及しなかったが、南シナ海で海洋進出を続ける中国を意識したものとみられる。
国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年7月に下した、中国の南シナ海における領有権の主張を否定する判決をマルコス氏は重視する姿勢を打ち出していた。
演説を通じて明らかになったのは、前政権から対中姿勢を修正していることだ。ドゥテルテ前大統領は21年の同氏にとって最後の施政方針演説で、仲裁裁判決について「本当の意味で仲裁というものはない」と強調。領有権問題で対立しながらも経済協力を優先して対中融和姿勢を打ち出したドゥテルテ氏の路線を変更している。
マルコス氏は「フィリピンは今後も全ての国に対して友人であり続ける。誰の敵でもない」とバランス外交を進める意欲を示した。一方で「我々が揺らぐことはない。フィリピンの国益を優先し、独立した外交政策を貫く」と話した。前政権は同盟国であり伝統的に協力関係を築いてきた米国と距離を置いたが、マルコス政権では連携を強化する可能性がある。
背景にあるのは、ロシアによるウクライナ侵攻の影響がアジアにも波及することへの警戒感だ。南シナ海で中国が海洋進出を継続し周辺国が反発しているうえ、台湾との統一を目指す中国のさらなる強硬姿勢も懸念する。
安全保障面で米国との関係を強化すれば、中国へけん制することにつながる。
反中の国民感情へ配慮した面もある。6月下旬に調査会社パルスアジアにより実施された世論調査で、仲裁裁の判決通りに西フィリピン海(南シナ海)の権利を主張すべきだと回答した比率は89%に上った。
排他的経済水域の領有権や海洋資源を守るため軍事能力向上に資金を投じるべきだと回答した割合も90%に達した。領有権を重視する姿勢を打ち出すことで、国民や親米派が多いとされる外務省や国防省の幹部の支持を取り込みたいマルコス氏の狙いもありそうだ。
演説ではエネルギー需要に対応するため「新たな発電所を建設する必要がある」と述べた。太陽光発電や風力発電だけでなく「原子力発電所の建設に向けた戦略も見直す」と語った。新型コロナウイルス対策について「もうロックダウン(都市封鎖)をすることはない」と話した。疫病管理などの対策を手がける組織の創設などを通じて体制を強化するとしている。
東京金融取引所は2023年1~3月をめどに、無担保コール翌日物(TONA、日次複利)の3カ月物の金利先物を上場する。融資などの際に参照する金利を見直す日本円金利指標改革を契機に、TONA後決め複利参照の取引が増えたことに対応する。現在取引停止中のTONAの1カ月物の金利先物は上場廃止を予定している。
世論調査では低所得者層の支持が厚い左派のルラ元大統領がリードしている。右派のボルソナロ氏は今後、得意とするSNS(交流サイト)を通じて支持拡大を狙う。
ボルソナロ氏は演説で「国民に機会がある国をつくっていく」と続投への意欲を示した。中南米の反米左派政権であるベネズエラやキューバを批判的に取り上げながら、ライバルであるルラ氏を間接的に批判した。家族や信仰を重視する姿勢を重ねて示し、支持基盤であるキリスト教福音派を含む保守層に訴えかけた。
集会に参加した元軍人のマルシオ・マルシアルさん(50)は「左派の労働者党政権は長い間、汚職にまみれていた。家族を重視するボルソナロ氏に期待している」と述べた。
ボルソナロ氏は元軍人で、下院議員を長く務めてきた。18年10月の大統領選挙では当初は泡沫(ほうまつ)候補とみられていたものの、汚職への厳しい姿勢や巧みなSNS活用で有権者の支持を広げて当選した。
19年1月の就任後は、年金改革や民営化では成果がある一方で、新型コロナウイルスの感染拡大を軽視して十分な対策を打たなかったとの批判がある。
イタリアのドラギ首相が21日、マッタレッラ大統領に再び辞表を提出し、今度は受理された。これを受け、保守系紙テンポは1面トップで「ドラギの自殺」との見出しを掲げた。一方、ライバル紙スタンパはドラギ氏を政治的な抹殺の犠牲者ととらえ、政権が「溺れ死んだ」と表現した。
趙報道官は北京での定例記者会見で、「中国側はペロシ議長の台湾訪問の可能性に対する深刻な懸念と断固たる反対を米国側に繰り返し明確に伝えた」と明らかにし、 議長訪台への対応を「真剣に準備している」と述べた。準備の詳細には触れなかったが、通常よりも強い警告を発したのかとの問いには、「あなた方の理解は正しいだろうと思う」と語った。
事情に詳しい関係者は先週、ペロシ議長が台湾訪問を含むアジア歴訪を計画していることを明らかにした。同議長はセキュリティー懸念を理由に外遊予定への言及は避けたが、「われわれが台湾への支持を示すのは重要だ」と述べた。
ドイツ企業の景況感が7月も悪化し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)初期以来の低水準となった。記録的なインフレ加速とロシアからのエネルギー供給制限で、欧州最大の経済大国がリセッション(景気後退)に陥るとの懸念が強まっている。
Ifo経済研究所が25日発表した7月の独企業期待指数は80.3と、6月の85.8から低下。ブルームバーグがまとめた市場予想は83.0への下げだったが、それ以上に落ち込んだ。7月の企業景況感指数と現状指数も低下した。
「ドイツはリセッションにひんしている」とIfoのクレメンス・フュースト所長は指摘。「高水準のエネルギー価格とガス不足の恐れが経済に重くのしかかっている。企業は今後数カ月間に事業活動が大きく悪化すると想定している」とコメントした。
ECB政策委員会メンバーの中でもタカ派色が極めて強いカザークス氏はフランクフルトでの22日のインタビューで、先週の大幅利上げが「唯一の前倒しだとは言えない」と述べ、「9月の利上げもかなり大きくする必要があると言える」と指摘した。
カザークス氏は「基本シナリオでは想定されていない著しい下振れリスクがある」とも述べ、最大級のリスク要因としてロシアによるエネルギー供給の制限を挙げた。「ロシアはエネルギー・食料供給を政治的手段に利用している」と主張し、主力パイプライン経由のガス供給一部再開後も、エネルギー供給への干渉はあり得ると警戒感を示した。
アジアの一部の国・地域で物価上昇を受けて中央銀行が利上げのペースを加速する中、リセッション(景気後退)入りのリスクが高まりつつあるとの見方が、ブルームバーグがエコノミストを対象に行った最新の調査で示された。
厳しい経済危機に見舞われるスリランカが今後1年でリセッションに陥る可能性は85%と、前回調査時点の33%から大幅に上昇し、域内で最高の値となった。ニュージーランドと台湾、オーストラリア、フィリピンの確率も33、20、 20、8%にそれぞれ上昇。こうした国・地域では中銀がインフレ抑制に向け利上げを実施している。リセッション入りの確率は一部では前回調査と変わらずだった。中国は20%、日本と韓国はいずれも25%。 
ただ、アジア経済は総じて欧米に比べ依然として弾力性が高い。エネルギー価格の高騰がドイツやフランスに大きな打撃を与え、地域経済に影響が波及しつつあると、ムーディーズ・アナリティクスのアジア太平洋担当チーフエコノミストのスティーブン・コクラン氏は語る。アジアの国・地域のリセッション入り確率が20-25%程度なのに対し、米国は40%前後、欧州は50-55%と同氏は指摘した。 
7月の企業景況感指数は88.6と前月から3.6ポイント低下した。新型コロナウイルス禍で経済活動が停滞していた2020年6月以来、2年1カ月ぶりの低水準だ。ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給不安でエネルギー価格が高騰し、景気後退の懸念が一段と強まっている。
業種別の業況指数では、製造業がマイナス7.1と前月のゼロから大幅に落ち込んだ。サービス業も厳しく、プラス0.9と前月から10ポイント急低下した。ドイツでは消費者物価の伸び率が8%程度と、歴史的なインフレが企業活動や個人消費の逆風になっている。
先行き6カ月後の見通しを示す期待指数は80.3と同5.2ポイント低下し、20年4月以来の低水準だった。ロシアからの輸入に頼る天然ガスの調達不安が根強いなか、冬場にかけてガス貯蔵が不足すれば工場の操業停止などを通じて景気後退に陥りかねない。
独Ifo経済研究所のクレメンス・フュースト所長は「高水準のエネルギー価格とガス不足の恐れが重荷になり、ドイツは景気後退の瀬戸際にある」と指摘した。
決選投票に残った2人によるテレビ討論が行われた。対中関係に関してスナク前財務相とトラス外相はともに、かつて「黄金時代」といわれた親密な関係に戻ることを否定し、厳しい外交姿勢を続ける方針を示した。
対中政策についてトラス氏は「外相として主要7カ国(G7)の仲間とともに中国の広域経済圏構想『一帯一路』に代わるインフラ支援の枠組みや、台湾防衛の重要性を提唱してきた」と指摘した。「ウクライナを侵略しているロシアを実質的に助けている中国にはより厳しい態度をとるべきだと確信している」とも述べ、安全保障と経済の両面で中国と距離を置くべきだと強調した。
一方のスナク氏は「我々の価値観や利益にそぐわない企業からの対英投資を阻止する法案を議会で成立させることもできる」と述べた。一部の保守党議員が求める中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の英国での使用禁止が検討課題になるとの認識も示した。
英政界ではスナク氏は英中間の経済・貿易関係の維持を目指していると指摘されている。スナク氏の発言には党内の強硬派に向けて、厳しい対中姿勢をアピールする狙いもあったとみられる。
チュニジアで25日、サイード大統領の権限を強化する新憲法案を問う国民投票が実施された。承認されるとの見方が多く、反対派は「独裁回帰」と批判を強める。中東の民主化運動「アラブの春」で唯一の成功例とされた同国が後戻りを始めた背景には、経済低迷による議会不信がある。
ビスコ氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「データ次第で進め方を考えるが、これは漸進的に進めないことを意味しない」と発言。漸進主義とは「着実に動くということで、極めてゆっくりということではない」と説明した。
ECBの次回の利上げが0.25ポイントになるのか0.5ポイントになるのかについては、「現時点で断言できることでは全くない」と語った。
ユーロ圏債券市場の分断化阻止でECBが新たに打ち出した「トランスミッション・プロテクション・インスツルメント(TPI)」にも触れ、自身の出身国であるイタリアを含め「単一の国を守るため」設計されたのではないと指摘。ただ、ドイツ債との比較で現在のイタリア債のバリュエーションには不満を示した。
「現在のドイツ債とのスプレッドは、マクロ経済のファンダメンタルズで正当化できる水準をはるかに上回っている。たが、市場が政策面で目にしている不透明性に対処が必要な表れでもある」と述べた。
●市況
日経先物(大証)27683、ダウ先31833、債先150.17、米2.807、独1.0155、仏1.609、西2.223、伊3.389、波5.845、原油96.33、ドル円136.43、墨ペソ20.46、トルコリラ17.8355、墨CDS166
※7/26 8時30分頃


備忘録(7/22-24
●中国・ロシア・東欧
ウクライナに滞留する穀物輸出の再開に早くも黄信号がともっている。ウクライナ軍は23日、黒海に面した南部オデッサがロシア軍のミサイル攻撃を受けたと発表した。両国は仲介役の国連やトルコを交え、輸出再開への合意文書に22日署名したばかりだ。世界の食料危機やインフレ高進を和らげるとみられた合意への期待感は今回の攻撃でしぼみかねない。
中国の新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策が、「世界の工場」と呼ばれる南部・広東省の経済に打撃を与えている。省内には様々な製造業が集積するが、求人が減り給与も大きく下がっている。上海市のロックダウン(都市封鎖)などの影響で、多くの工場が受注の減少で操業を止めたからだ。足元も求人件数は低迷しており、回復のメドが立っていない。
中国の不動産大手の資金難が業界の隅々に波及している。マンション開発会社などによる工事代金の支払いが滞り、工事会社までもが経営に行き詰まる。市民も住宅ローンの返済を拒否しており、業界全体で不良債権リスクが高まっている。
資金難の波及は内装会社にとどまらない。一部ネットメディアによると、内陸部の湖北省で恒大の物件を建設したり資材を提供したりするサプライヤーらが銀行返済を停止すると共同で宣言した。サプライヤーは資材メーカーへの支払いも拒んでおり、恒大に責任があると主張している。
中国当局が不動産大手の財務への監視を強めた20年以降、借り入れ依存の拡大策を続けてきた恒大など開発会社は資金繰りに窮し始めた。多くのマンション工事が止まったり遅れたりし、物件を引き渡してもらえない購入者が住宅ローンの返済を拒否する事例も出てきた。中国メディアによると今月中旬までに300カ所を超える案件で返済拒否が確認された。
各方面で不良債権リスクが高まるなか、市況回復が先決との論調が高まる。地方政府は物件取引などに関する規制の一部緩和に乗り出したが、住宅販売は前年割れが続く。不動産会社への信頼が揺らぎ、値上がりし続けるという不動産神話も崩れ、不動産不況の出口は当面みえそうにない。
債務危機に陥っている中国の不動産開発大手、中国恒大集団は22日、夏海鈞最高経営責任者(CEO)が辞任したことを明らかにした。
発表資料によると、同社幹部の肖恩氏が後任となる。最高財務責任者(CFO)の潘大栄氏も職を退いた。
中国恒大集団を巡っては、傘下の不動産サービス会社である恒大物業集団で預金134億元(約2700億円)相当が第三者の担保保証として使われていたことが判明。保証額は恒大物業が保有現金の大半を失いかねない規模で、中国恒大が調査を進めていた。
プーチン氏は6月以降、最低賃金の10%引き上げや年金の増額を相次いで実施した。主な歳入源である資源の価格上昇が、国民の支持を狙ったばらまき策を可能にしている。
一方で欧州各国には天然ガスの供給停止を示唆し、揺さぶってきた。ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」は21日に定期点検を終えて再稼働したものの、ガス供給量は4割にとどまる。
ロシアは資源の輸出先を欧州からアジアや中東へシフトし、これらの地域との外交にも力を入れる。ロシアから原油を陸路でも調達できる中国では、5月の原油輸入量は前年比55%増えた。インドも割安なロシア産原油の輸入を増やしている。
資源の輸出先を全面的にアジアなどに振り替えるには、設備の整備が課題になる。ロシアはモンゴルを経由して中国に向かうガスパイプライン「シベリアの力2」の建設プロジェクトの具体化に着手した。年間輸送能力はノルドストリームに匹敵する。
だが「現在の欧州向け販売を中国向けに振り替えるためのガスパイプライン設備を整えるには、12~15年の期間が必要」(ロシアの石油ガス専門家)との声が出ている。
エコノミスト調査の予想中央値によると、2022年のGDP成長率は3.9%が見込まれている。従来見通しは4.1%だった。中国政府が設定した今年の成長率目標(5.5%前後)を大きく下回る。
今年7ー9月(第3四半期)のGDPは4.2%増と予想されている。従来見通しは4.5%増だった。10ー12月(第4四半期)は5%成長と見込まれており、前回調査から変わらず。
ダンスケ銀行のエコノミスト、 アラン・フォンメーレン氏は「不動産のストレス拡大のほか、米国やユーロ圏の需要鈍化、新たなコロナ制限措置の不透明感による個人消費や小規模企業への大きな影響といった逆風の再燃に中国が見舞われている」と指摘。今年は2.7%成長にとどまると予想した。
●中東
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
欧州で人手不足による空港運営や運航の混乱が深まり、航空会社の業績回復を妨げている。職員の解雇を迫られた新型コロナウイルス禍から一変し、急速に持ち直す旅客需要をさばき切れなくなっているためだ。レジャー需要が高まる夏場のかき入れ時に大量キャンセルを余儀なくされ、原油相場の高騰によるジェット燃料のコスト増ものしかかる。供給制約の二重苦で機会損失が膨らむ。
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、各国政府は世界的な脅威を評価し直し、次世代のハイテク防衛システムに加えて通常兵器の購入を改めて真剣に考えるようになる――。世界最大手の防衛企業の一角を占める米レイセオン・テクノロジーズのグレッグ・ヘイズ最高経営責任者(CEO)はこう語った。
●その他産業
ドイツ銀行とスイスのUBSグループを中心とした金融機関のグループが、プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社クレイトン・デュビリエ&ライス(CD&R)によるコーナーストーン・ビルディング・ブランズ買収に絡む融資で合計約2億ドル(約274億円)の損失を被った。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
関係者らによれば、損失の大半はリスクの高い現物支払有価証券(PIK債)で発生。金融機関はPIK債を額面から大幅に割り引かれた水準でCD&Rに売り戻した。関係者らは取引が非公開だとして匿名を条件に語った。CD&Rは3月、コーナーストーンを買収し非公開化することで合意。買収規模は債務を含め58億ドルだった。
金融機関が被った損失は債務引き受けで得た手数料収入の数倍に相当すると、関係者らは語った。
独フォルクスワーゲン(VW)は22日、ヘルベルト・ディース社長が9月1日付で退任すると発表した。電気自動車(EV)への移行を急いだが、組織再編による混乱などで新型車の開発が遅れて創業家や監査役会の信頼を失った。労働組合も人員削減に反発し、事実上更迭された。EV化に伴う自動車産業の構造変化がトヨタ自動車と並ぶ業界の雄を揺さぶっている。
INPEXは2023年にも南米とアフリカの資源開発から撤退する。脱炭素の流れで石油や天然ガスの中長期の収益性が見通しにくくなり、採算が低い地域の開発に見切りをつけて中東やオーストラリアなどに投資を集中する。欧米の石油メジャーも権益の選別を急ぐ。新たな採掘権の獲得を競ってきたエネルギー大手の事業モデルが変わりつつある。
●決算関連
大幅値引きや高インフレといった環境の中、ベライゾンは契約者数の伸びで競合他社に後れを取っている。22日の発表によれば、4-6月(第2四半期)の携帯電話の月間契約者数は1万2000人の純増にとどまり、アナリスト予想(16万7200人の純増)を大きく下回った。
前日には競合するAT&Tが、一部顧客の間で利用料金の支払い延滞が見られ始めていると説明し、市場関係者には警戒感が広がった。マット・エリス最高財務責任者(CFO)によれば、ベライゾンでは顧客による利用料金の支払い延滞は見られていない。
ライトシェッド・パートナーズのアナリスト、ウォルト・ピエシク氏は「こうした決算内容に希望の光を見いだすのは難しい」とし、「ベライゾンの経営陣は成長方法について答えが見つかっていないようだ」と述べた。
ベライゾンは通期利益について、一部項目を除いたベースで1株当たり5.10-5.25ドルと予想。従来予想(同5.40-5.55ドル)から引き下げた。
世界の上場企業の2022年1~3月期の純利益は、前年同期比5%増の1兆1767億ドル(約160兆円)だった。6四半期連続で増益となったものの、新型コロナウイルス禍からの回復局面となった20年10~12月期以降では増益率が最も低かった。
●マクロ・その他
世界保健機関(WHO)が23日、動物由来のウイルス感染症「サル痘」のまん延が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言した。感染者が増えている米欧今後の感染拡大を警戒し、各国の保健当局はワクチンの確保など対応を強化する方針を打ち出している。
米疾病対策センター(CDC)によると、米国での感染者数は約2900人にのぼる。子ども2人の感染事例も判明している。同国では現在、ワクチンの供給が追いついていない状況にあり、米政府への批判も出ている。CDCは今後数週間から数カ月で供給を増やせるとの見解を示している。
サル痘は5月以降に欧米を中心に感染例の報告が相次ぎ、WHOによるとこれまでに世界75の国・地域で1万6000人を超える感染者が確認され、5人が死亡した。日本での感染者はまだ出ていない。
カナダの公衆衛生庁も23日、「WHOの決意を受けて、カナダ政府は引き続き各州・準州と連携して(感染拡大防止の)活動を続けていく」とする声明を出した。同国政府は7万回分以上のワクチンを州や準州に配布済みという。
欧州でも感染増への警戒が高まっている。ドイツのロベルト・コッホ研究所は22日までにドイツ国内で2268件のサル痘感染を確認したと公表した。感染者の大半は男性で、全体の半分超がベルリンでの感染事例だった。
ドイツ連邦保健省は4万人分のワクチンを用意。感染者の濃厚接触者を対象に、7月から順次ワクチン接種を始めている。6月末まで感染者数は急増していたが現在は横ばい状態が続いている。
タイ政府はWHOの緊急事態宣言を受けて、25日に対策レベルの引き上げを検討する会議を開くことを決めた。同国では21日にリゾート地のプーケットで国内初の感染例を確認した。感染者のナイジェリア人男性は逃亡し、23日に隣国カンボジアの首都プノンペンで見つかった。
まだ国内での症例が見つかっていない国は、水際対策や検査体制の強化を訴える。フィリピン保健省は24日、「サル痘の国内侵入を防ぐためにあらゆる手段を講じている」との公衆衛生責任者のコメントを載せた声明を発表した。
WHOなどによると、サル痘は手や顔に特徴的な発疹のほか、発熱、頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が出る。症状は通常、2~4週間程度続く。近年の致死率は3~6%程度としている。
5月に成立したばかりの経済安全保障推進法の拡充を急ぐため、2023年の法改正を目指す考えを示した。「不断に改正を重ねて深化させていく。来年を目指しとりかかる」と述べた。
安保分野を巡る機密情報への官民のアクセスを限定する「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度の導入を訴えた。「法体系を作ることを優先し、自民党としては大変残念なことが残った」と指摘した。
サブスクリプション(継続課金)型動画配信最大手の米ネットフリックスが初めて、2四半期続けて有料会員数を減らした。同社の有料会員数は4~6月期の間に97万人減った。1~3月期の20万人から減少が加速した。特に北米と欧州での減少が目立った。インターネット先進国では有料動画市場全体が高成長する普及段階が終わったとみられる。今後は低成長市場のシェアを奪い合う構図になりそうだ。
「アマゾンプライム」や「ディズニー+(プラス)」といったネットフリックスのライバルが育ってきた。専門テレビチャンネルやプロスポーツ団体などによる専門型のサブスク動画も増えている。IT(情報技術)、メディア、スポーツ、芸術など、多業種が入り乱れた競争になりつつある。
インフレのなか消費者は娯楽費について節約姿勢を強めており、料金の低い広告表示型のサブスク動画の人気が増している。広告無しにこだわってきたネットフリックスも会員数の頭打ちをうけて、来年から広告付きの廉価プランを導入することにした。価格競争はさらに激しくなりそうだ。
コンテンツ競争も激化している。ウォルト・ディズニーなどの映画会社は他社の配信サービスへの作品供給を止め、自社配信サービスによる囲い込みを始めつつある。対抗してネットフリックスは独自作品の拡充に力を入れ、アマゾン・ドット・コムは大手映画会社を買収した。
世界鉄鋼協会が23日までにまとめた世界64カ国・地域の1~6月の粗鋼生産量(速報値)は、前年同期比5.5%減の9億4940万トンだった。新型コロナウイルスの感染拡大などを背景に、世界最大の生産国である中国が減産したことが響いた。
中国の生産量は5億2690万トンと前年同期比6.5%減少した。中国では二酸化炭素排出量の抑制に向けて鉄鋼メーカーが減産。1~6月はコロナ禍で事実上のロックダウン(都市封鎖)が相次いだことも鋼材需要を抑えた。6月の中国南部の大雨も響いた。
インドの生産量は前年同期比8.8%増の6320万トン。日本は4600万トンと同4.3%減った。半導体をはじめとする部品供給網の混乱が続く中、日本の高炉メーカーの主要販売先である自動車の減産が鋼材需要を押し下げた。
6月単月の世界64カ国・地域の粗鋼生産量(速報値)は、前年同月比5.9%減の1億5810万トンだった。前年割れは11カ月連続。
ドイツ政府は22日、天然ガスの供給減と価格高騰で経営悪化に陥る独エネルギー大手ユニパーの救済策として、株式30%を取得すると発表した。政府が経営に一定の影響力を持つことで、ガスの安定供給を目指す。今秋からガス買い取り価格の高騰分を料金に転嫁し、消費者の負担が増えることも明らかにした。
「もはやガスは安全ではない。ユニパーは大きな危機に見舞われており、私たちは一緒に乗り越えていかなければならない」。ショルツ首相は22日の緊急記者会見で、ユニパーの救済策が不可欠だと訴えた。
ドイツ政府は2億6700万ユーロ(約370億円)の増資によるユニパー株取得で、親会社であるフィンランドのフォータム、同国政府などと基本合意した。合わせて政府系金融機関であるドイツ復興金融公庫(KfW)の融資枠を現在の20億ユーロから90億ユーロに拡大する。ユニパーはすでに20億ユーロ分を活用しており、政府に枠の拡大を申請していた。
ショルツ氏は同日、ユニパー救済の一環として、10月から消費者が支払うガス価格が上がると語った。4人家族で年平均200~300ユーロの値上げになるという。
7月前半の消費者物価指数は、前年同期と比べて8.16%上昇した。食料品や航空券の価格が上がった。市場ではメキシコ銀行(中央銀行)が8月に0.75%の利上げペースを維持するとの見方が強まっている。
7月前半は食料品と飲み物、たばこの価格が前年同期と比べて11.95%上がった。野菜と果物の価格は17.3%上昇した。農産物やエネルギー価格を除くコアインフレ率は7.56%だった。食料品では特に卵やジャガイモ、オレンジなどの値上がり幅が大きい。
メキシコ政府は5月に肥料の無料供与などのインフレ対策を発表した。主食であるタコスに用いるトルティーヤの原料となるトウモロコシなど穀物の生産増をめざす。メキシコのロペスオブラドール大統領は22日、定例の記者会見で「メキシコのインフレ率は米国や欧州よりも低い」と述べ、自身の対策が成果を上げていると主張した。
イタリアのドラギ首相率いる政権の退陣を受け、同国で前倒し総選挙が9月25日に実施される。足元では野党の極右「イタリアの同胞(FDI)」が支持率でトップを走る。右派色の濃い新政権が誕生する可能性もある。
欧州債に警戒感が広がっている。イタリアのドラギ首相の辞任表明を受けて同国の長期金利が急上昇し、ドイツ国債と南欧債のスプレッド(利回り差)も拡大した。欧州中央銀行(ECB)が21日に11年ぶりの利上げを決め、同時に決定した金利上昇を抑える施策が力不足との見方も浮上したためだ。南欧諸国の景気減速が懸念され、金融市場の波乱要因として意識されつつある。
英国の鉄道路線を保有・管理する国有会社「ネットワーク・レール」は20日、ここ数日間に観測されたような異常な高温にも耐えられるようにインフラを強靱(きょうじん)化するための見直しを行うと発表した。記録的な熱波による山火事で全国の60カ所以上の施設が被害を受け、その損害額に懸念が高まっている。
S&Pグローバルが22日発表した米国の製造業・サービス業合わせた7月の総合購買担当者指数(PMI)速報値は、約2年ぶりに活動縮小を示した。需要が振るわずにリセッション(景気後退)懸念が増している状況が浮き彫りになった。
総合PMI指数は前月から4.8ポイント下げて47.5。2020年5月以来の低い水準となった。新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた数カ月を除けば、09年のデータ開始後で最も低い水準だ。同指数は50が活動拡大と縮小の境目。前月に縮小を示していた新規受注の指数は、7月は小幅な拡大を示唆した。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのチーフ・ビジネス・エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は発表文で「7月のPMI速報値は懸念すべき経済の悪化を示した」と指摘。「製造業は失速し、サービス業もコロナ禍からの回復路線が反転している。繰り越し需要という追い風は、生活費と金利の上昇、景気の先行きに対して募る不安に押し戻された格好だ」と説明した。
サービス業PMIは47と、2020年5月以来の低水準。コロナ禍の時期を除けば、09年までさかのぼるデータ上で最悪の数値となる。ただ雇用は着実なペースで伸びていることが示された。
製造業PMIは52.3と、2年ぶりの低水準。新規受注は2カ月連続で縮小し、雇用の伸びは減速したことが示された。輸出受注も縮小。ドル高が影響したほか、世界的な景況感悪化が国外需要を圧迫した。
●市況
日経先物(大証)27695、ダウ先31875、債先150.19、米2.754、独1.0355、仏1.624、西2.251、伊3.423、波5.867、原油95.09、ドル円136.10、墨ペソ20.54、トルコリラ17.7405、墨CDS164
※7/22 NY引け値

備忘録(7/19
●中国・ロシア・東欧
ロシアのプーチン大統領は19日、イランの首都テヘランを訪問した。トルコのエルドアン大統領やイランのライシ大統領と会談し、ウクライナ産穀物の黒海輸送や内戦が続くシリア問題などを協議する見通し。
中国で広がる住宅ローン支払い拒否の動きは、そもそも同国中部にある都市のマンション購入者がいつまでも物件が完成しないことにいら立ち、これに抗議するため始めたものだった。それが今では全国で何万もの人々が追随する事態となっている。
最大2兆元(約40兆9000億円)相当の住宅ローンに関係する今回のボイコットは、資金難に陥る開発企業から国内の巨大銀行へと焦点が移ることで不動産市場の低迷がさらに深刻化する恐れもある。新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が景気を損ねる中、銀行は最も安全な収入源として住宅ローンに頼ってきた。
政策当局は警戒態勢に入っている。金融規制当局は銀行に対し、物件の完成を支援するため開発業者への融資を増やすよう求めた。また、事情に詳しい複数の関係者によれば、当局は住宅購入者にローン返済の猶予期間を設けることも検討している。
一連のボイコットはこれまでのところ、銀行の住宅ローンポートフォリオ全体のごくわずかにとどまっているとはいえ、抗議拡大のスピードが速く、多くを驚かせた。磁器で有名な江西省景徳鎮市で6月下旬、中国恒大集団が手掛ける未完成物件の900人の購入者が3カ月以内に建設を再開しなければ、住宅ローンの支払いを止めると地元政府や同社に訴えたことが発端だ。
中国ではローン返済は最初の手付金と共に始まり、物件の完成が遅れるとこうした状況が数年続くこともあり得る。現金の蓄積で不動産開発業者は従来の物件の完成を待たずに新たなプロジェクトを始めることも可能だった。事実上、開発業者は住宅購入者から資金を借り入れていた形で、異なる点は借金を返済するのではなく物件を引き渡す必要があるという程度だ。
DBS銀行のチャン氏によれば、中国の世帯が住宅ローン返済をやめるのは珍しく、銀行側にも全面的な支払いを要求する法的権利があることを考えると、今回の抗議はなおさら注目に値する。
天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1」を通じたロシアによるガス供給は、保守作業の完了後、21日に予定通り再開される見通しだ。ロイター通信が計画について詳しい関係者2人の話として報じた。
報道によれば、パイプラインは予定通りに稼働を再開する見通しだが、ガスの供給量についてはパイプラインの輸送能力である日量約1億6000万立方メートルを下回ることになる。
●中東
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
日本航空(JAL)は従業員約3000人を主力航空事業から格安航空会社(LCC)やマイル事業などの非航空分野に配置転換する。新型コロナウイルス禍でオンライン会議が広がり出張などのビジネス需要の低迷が長期化すると判断、いち早く回復すると見込まれている観光需要に対応する狙いだ。コロナ禍後の需要の変化をにらみ、航空や旅行業界で人員配置の見直しなど構造変革に踏み出す動きが広がってきた。
●その他産業
洋上風力発電に使う風車の世界大手、デンマークのベスタスは日本で補助金を使った工場建設を保留し、独シーメンスグループも日本向け製品の供給を絞る。洋上風力は脱炭素の有力な選択肢だが、再生エネルギー普及の壁になる可能性がある。
WSJによれば、当局は滴滴に主力アプリのアプリストアでの復活と新規ユーザー獲得再開を認める。さらに滴滴は香港での株式上場に向け準備を進めることが可能になる。
中国は2020年からインターネット企業を厳しく取り締まり、滴滴もその対象の1社となっていた。データセキュリティーを巡る違反行為があった可能性があるとして、CACは21年に同社への調査を開始した。
●決算関連
2022年6月期通期のオーストラリアでの鉄鉱石生産量(100%ベース)は2億8280万トンと、過去最高を記録した21年6月期とほぼ同水準を維持した。新型コロナウイルスの感染拡大などを受けた人手不足が下押し要因となったが、鉄鉱石鉱山のある豪西部が好天に恵まれたことが生産を下支えした。
4~6月期の生産量は前年同期比2%減の7170万トンだった。鉄鉱石1トン当たりの平均販売価格は6月期通期で113ドル(約1万5600円)と前の期から13%下落した。最大の輸出先である中国で新型コロナを受けた都市封鎖(ロックダウン)が広まり需要が弱含んだことなどが影響した。
6月に炭鉱の売却中止を発表した発電用石炭(一般炭)の生産量は22年6月期通期で1370万トンと前の期から4%減だった。製鉄に使う原料炭は同9%減の5830万トン。豪東部での降雨が影響した。
同社のマイク・ヘンリー最高経営責任者(CEO)は声明で「インフレ圧力による(経済への)影響、労働市場の逼迫やサプライチェーン(供給網)の制約は23年6月期を通じて続くだろう」と述べた。一方で中国については「(政府による)景気刺激策の効果で(BHPの)成長にプラスに寄与する」との見通しを示した。
大手銀行の2022年4~6月期決算で、ゴールドマン・サックスなどが大幅減益となった。ゴールドマンで主力の投資銀行ビジネスの収益が各行ともおおむね半減した。ブームとなっていた企業の新規株式公開(IPO)や株式・社債の発行が、歴史的なペースで進む利上げの影響で失速したためだ。当面は厳しい収益環境が続きそうで、各行とも「守り」の姿勢を強めている。
ネットフリックス4-6月会員数、減少は予想の半分未満-株上昇動画配信サービスの米ネットフリックスが19日発表した4-6月(第2四半期)会員数は97万人落ち込んだものの、減少幅は市場予想の半分未満にとどまった。同社の英語版シリーズで最も人気の高いSFドラマ「ストレンジャー・シングス」の新シーズンが大きく寄与した。株価は時間外取引で一時12%上昇した。
同社は7-9月(第3四半期)の会員数について、100万人増を見込んでいる。これはアナリスト予想(183万人増)を下回るが、1-6月(上期)の減少からプラスに転じることになる。
競争激化を巡る懸念にもかかわらず、ネットフリックスは自社の位置付けに引き続き自信を示している。同社は全米のテレビ視聴率で6月に7.7%と、過去最高を記録したと明らかにした。 
経営陣は経費削減や複数の分野での戦略見直しで会員数減少に対応してきている。同社は広告付きで料金を低めに設定したサービスを2023年序盤に導入する計画。またパスワード共有で課金する方法も試す方針だ。
BHPはウクライナでの戦争や欧州のエネルギー危機、世界的な金融引き締めの中で「世界経済の全体的な成長減速」を警告した。四半期生産に関する最新報告書で示したこうした見方は、同業のリオ・ティント・グループが先週示した警鐘に同調するものだ。BHPはまた、コスト圧力が向こう1年間続くと予想した。
マインライフのシニア資源アナリスト、ギャビン・ウェント氏は、収益性は依然として堅調なものの両社は「中国需要が著しく鈍化する場合に備えて市場に準備させようとしている」と指摘。資源価格の軟化で利益率が圧迫されていると付け加えた。
中国での需要後退や先進国のリセッション(景気後退)入り予想の広がりを背景に商品価格はここ数カ月、下落している。BHPとリオにとって大きな収益源である鉄鉱石の価格は先週、1トン当たり100ドルを割り込んだ。
一方で、鉱山会社はコスト高にも直面している。BHPのマイク・ヘンリー最高経営責任者(CEO)は発表資料で「労働市場のタイト化やサプライチェーン制約と同時に、インフレ圧力の遅れた影響が2023会計年度中は続くと予想される」と述べた。
ヘンリー氏は景気刺激策が向こう1年に中国経済を後押しするとも指摘したが、政府の措置が功を奏してくる時期は不透明。リオは中国で「かなりの」逆風があるとの認識を示している。
●マクロ・その他
ペトロ氏は国境再開だけでなく国交回復も望んでいる。国際社会から正式承認を得たいマドゥロ氏もそれは同じだ。だからペトロ氏はドゥケ政権とは違い、グアイド氏をベネズエラの指導者として認めないだろう。
ペトロ氏はベネズエラとの貿易再開も目指す意向だ。かつては活発だった両国の貿易もベネズエラ経済の破綻を受けて大幅に減少した。密輸業者によってありとあらゆるモノが国境を行き交っているとはいえ、今やコロンビアの公式な輸出に占めるベネズエラの割合は1%に満たない。
米国は緊張緩和の行方を注視している。ペトロ氏が米国とベネズエラとの関係修復を取り持つかもしれないと指摘するアナリストもいる。バイデン米大統領はトランプ前政権が打ち出したマドゥロ政権打倒戦略「最大限の圧力」を継承しており、両国関係はバイデン政権発足後もほとんど進展していない。米国はベネズエラに厳しい経済制裁を科しており、首都カラカスの大使館から外交職員を引き揚げ、代わりにコロンビアの首都ボゴタに代理大使を置いている。
ベネズエラ中央大学のアレリャーノ氏は、ペトロ氏が大統領選で勝利して以来、ベネズエラに関する発言が変化したことに衝撃を受けたと話す。都市ゲリラ出身のペトロ氏はチャベス氏を称賛しているが、マドゥロ政権については公然と批判し、ベネズエラで収監されている政治犯の釈放を求めている。ドゥケ氏が8月にボゴタで行われる大統領引き継ぎ式にマドゥロ氏を招待しない意向を示すと、ペトロ氏は同意し「賢明な」判断だと語った。
とはいえペトロ氏はすでにマドゥロ氏とは電話で会談し、両国をリセットする必要があると主張している。
アレリャーノ氏は「ペトロ氏はベネズエラと円滑な関係を築くのは容易ではないと認識している。対処すべき根本的な問題が山積みだからだ」と話す。「それでもなお、ペトロ氏は関係改善に努めるだろう」
銅の価格下落が止まらない。足元で国際指標となるロンドン金属取引所(LME)の先物価格が1年8カ月ぶりに節目となる1トン7000ドルの大台を割り込んだ。背景にあるのは中国を中心とした銅需要の縮小だ。中国はゼロコロナ政策で企業活動が停滞。経済的な結びつきが強い欧州も影響を受ける。金利上昇に伴う世界的な景気減速懸念も反映し、軟調な展開が続きそうだ。
欧州中央銀行(ECB)は21日の理事会で11年ぶりの利上げに踏み切る見通しだ。ロイター通信によると、利上げ幅は市場が想定する0.25%だけでなく0.5%も検討する。前回6月の理事会では0.25%の利上げ方針を示したものの、一部の幹部はインフレ抑制へ大幅利上げを求めていた。拙速な利上げは欧州経済を過度に冷やす恐れもあり、慎重に判断する方針だ。
21日の理事会では、南欧諸国の国債価格急落に対する具体策も焦点になる。ECBが6月に利上げ方針を示して以降、イタリアやスペインなどの国債利回りが急上昇(価格が急落)していた。特にイタリアでは政局不安も高まっており、欧州域内の分断を避けるため特定国の国債を厚めに買うなどの対応を議論する見通しだ。
議事録によれば、中立金利に関し「キャッシュレートの現行水準は推定される名目中立金利の低めのレンジを大きく下回っている。インフレ率を時間の経過とともに目標水準に戻すには、さらなる金利の引き上げが必要になる見通しをこれは示唆する」との見解が示された。
将来の利上げの幅とタイミングについては、「今後のデータのほか、見通しへのリスクも含めて、インフレと労働市場の見通しに対する政策委の判断に引き続き左右される」と確認した。
一戸建て住宅の着工件数と着工許可件数が2年ぶりの低水準となり、住宅市場の先行きが一段と暗くなっていることを示唆した。住宅ローン金利の急上昇やインフレに対応するための急激な利上げが値ごろ感を弱め、需要を抑制している。その結果、住宅在庫が増加し、売買契約が減少、一部の売り手は値引きに動いている。
ベイリー氏は、インフレがより強く定着する兆しがみられれば力強く行動するとした前回会合の方針を取り上げ「簡単に言えば次回の会合での0.5%引き上げが選択肢に含まれていることを意味する」と説明した。0.5%の利上げは「確定ではない」とも付け加え、具体的な方針については言及を避けた。
6月の前回は政策委員9人のうち3人が0.5%の利上げを主張した。議長のベイリー氏は0.25%の利上げ案をとりまとめ、6人の賛成多数で0.25%の幅に決していた。
ロンドンの金融街シティーで開いた講演では、量的金融緩和策として買い入れた保有国債の市場売却を、早ければ9月に始める可能性にも触れた。満期を迎える債券の再投資停止による残高の自然減に3月から乗り出しており、環境を見極めながら売却を伴うより積極的な圧縮も進める方針を表明してきた。
ベイリー総裁は8月会合で市場売却に関する詳細を公表したうえで、早ければ9月の会合で売却開始を決議し、実施が可能になるとの見通しを示した。残高の圧縮規模は償還によるものも含め、最初の1年間で最大1000億ポンド(約16兆6千億円)と想定している。
中国が長期的に保有額を減らした背景には、政治的対立がある。米国に覇権争いを挑むなか、ドルへの依存を下げようとしてきた。直近では米国の対ロ制裁も影響しているとの見方がある。米国はロシアの外貨準備を凍結するなど、ドルの利用を封じる措置を取った。
中国人民銀行(中央銀行)や中国財政省は4月22日、国内外の銀行幹部を集めた。台湾有事などで米国主導の制裁を受けた際に海外資産をどう守るべきかを議論した。
関係者によると、政府からの出席者がドル建てに偏った海外資産を円建てやユーロ建てに分散する可能性に言及した。中国の外貨準備は16年時点で6割をドル建てで運用していた。19年9月から金の保有量は変わっていないため、米国債を減らした分を円建てやユーロ建て資産に切り替えている可能性がある。
インフレによる米金利の先高観が強まったことも最近の米国債離れを加速させる。米連邦準備理事会(FRB)は3月に始めた利上げのピッチを上げ、6月には米国債の保有を減らす量的引き締めも始めた。
金利の急上昇に伴う損失を警戒する海外勢が米国債を売った。海外全体や日本の保有額も3カ月連続で減少した。大和証券の谷栄一郎チーフストラテジストは「魅力的な金利水準になり、米ドルを保有する国内勢が積極的に買っているようだ」と指摘する。
シーポートの証券仲介業は、ディストレスト資産や債券の取引に強みを持つ。ブルームバーグニュースが確認した先週の文書によると、同社はロシア国債について1日当たり数十億ドルの決済、取引を継続しており、今後もロシア債の買い手であり続けると顧客に伝えていた。
バイデン米政権はこうした債券の仲介を明確には違法としていないものの、米財務省は6月に国内投資家がロシア債を取得することを禁止した。これによりJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループなどウォール街の銀行の多くはロシア債のマーケットメーキング(値付け)や仲介業務から撤退した。
事情に詳しい関係者によると、それ以来、ニューヨークを拠点とするシーポートやロサンゼルスのインペリアル・キャピタル・グループなど少数の会社がロシア債の取引を行っている。財務省外国資産管理局(OFAC)の指針では、ロシア債の既存の保有者には継続保有または売却を認めている。
この文書でシーポートは、ルーブル建てロシア国債も購入していると明らかにし、顧客にはロシア債購入に関心がありそうな各方面に同社のことを広めてほしいと呼び掛けていた。
ウォルドロン氏は「われわれはターミナルレート(利上げの最終到達点)について3%半ば近辺と予想している」とした上で、「最終的にその水準となれば、経済がリセットされ、そこから成長していけるだろう。経済におけるマネーの価値をリセットするのは重要で、金融当局が非常に集中して取り組んでいるのはそこだ」と述べた。
●市況
日経先物(大証)27378、ダウ先31816、債先149.11、米3.028、独1.2720、仏1.841、西2.461、伊3.443、波6.608、原油100.35、ドル円138.20、墨ペソ20.51、トルコリラ17.5465、墨CDS189
※7/20 8時30分頃

備忘録(7/13
●中国・ロシア・東欧
協議はイスタンブールで開かれた。仲介する国連などは、穀物や肥料などを積んだ貨物船が通る回廊を設定し、イスタンブールに共同の監視センターを置くことなどを提案している。
回廊を巡ってはロシアは穀物に紛れて欧米の武器がウクライナに運び込まれることを警戒し、自国による船への立ち入り監査などを求めている。一方、ウクライナは南部オデッサなどの沿岸を守るために敷いた機雷を撤去すれば、ロシアが侵攻に利用する可能性があるとして、ロシアが一定の海域に立ち入らないことや、国際的な監視体制などを要求している。
ウクライナはロシアが占領地で穀物を盗み、トルコなどを中継して密輸していると主張している。報道によるとトルコは今月上旬、ロシアの密輸船をいったん拿捕(だほ)したが後に解放した。ウクライナ側はトルコの対応がロシア寄りだとしていらだちを強めているもようだ。
ウクライナは代替の輸出ルートの拡大を図り、12日には隣国ルーマニア国境のドナウ川から黒海に抜ける輸送ルートが稼働し始めたと明らかにした。ただ、オデッサなど南部の主要港を代替する規模にはほど遠いとみられる。
●中東
バイデン氏は13日、大統領専用機でテルアビブ近郊の国際空港に到着した。空港での歓迎式典でバイデン氏は「イスラエルと我々の関係はかつてないほど深く、強くなっている」と強調した。パレスチナ問題にも言及し「近い将来ではないとわかっていても、解決策への私の継続的な支援について話し合う」と語った。バイデン氏が2021年1月の大統領就任後、中東を訪れるのは初めて。
バイデン氏は14日、エルサレムでラピド氏との首脳会談に臨み、イランへの対応を協議する。トランプ前政権がイランの核関連活動を制限する国際枠組み「イラン核合意」を離脱し、イランは核合意の義務履行を相次いで停止した。イスラエルは懸念を強めており、バイデン氏は核武装を認めない方針を改めて伝える見通しだ。
バイデン政権はイランを共通の脅威と位置づけ、パレスチナ問題で対立してきたイスラエルとアラブ諸国の連携を後押しする。バイデン氏は10日付の米紙ワシントン・ポストに寄稿し「統合が進む中東こそが多くの点で米国に恩恵をもたらす」と強調。イスラエルとアラブの協力拡大が首脳会談での主要テーマの一つになるとの見方を示した。
14日にはイスラエルのネタニヤフ元首相とも面会する。ネタニヤフ氏はトランプ前大統領との親密さで知られ、パレスチナに強硬姿勢を貫いたことでバイデン氏が率いる米民主党のリベラル派から激しい批判を浴びた。バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権が15年にイラン核合意を結ぶと、ネタニヤフ氏は反発して米国とイスラエルの関係が悪化した。
バイデン氏がネタニヤフ氏と面会するのは、イスラエル政局が流動化している事情がある。ラピド氏は前任のベネット氏の退任に伴って7月に首相に就いたばかりで、11月には総選挙を予定する。総選挙を受けてネタニヤフ氏が首相に返り咲くとの観測もある。バイデン氏はネタニヤフ氏にも目配りし、両国関係の安定が選挙結果に左右されないようにしたい考えだ。
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
●その他産業
●決算関連
2022年4~6月期の決算は、純利益が前年同期比13%増の7億3500万ドル(約1000億円)、22年1~3月期までの直近2四半期は赤字で、4~6月期は3四半期ぶりの黒字となった。米国内のレジャー需要の回復で国内線の利用が増え、業績をけん引した。売上高は、新型コロナウイルスの感染が広がった20年1~3月期以降、四半期として初めて感染拡大前の19年の実績を上回った。
デルタ航空は、新型コロナの感染拡大以降、19年実績と売上高を比べることで、業績の回復度合いを示してきた。22年4~6月期の売上高は19年4~6月期と比べると10%高い水準となった。
売上高回復の背景は、米国内でのレジャー需要の高まりだ。新型コロナ下の外出制限が解かれたことで、消費者がこぞって旅行などに出かけたことを背景に4~6月期の国内線の旅客収入は前年同期比86%増の83億ドルとなっている。
売上高は好調だが、インフレの進行とエネルギー価格の上昇で収益環境は厳しい。1座席あたりのコストは19年4~6月期と比べ、44%増加した。利益は黒字を確保したが、一株あたり利益は1.15ドルと市場予想を下回った。
今後の見通しについて、デルタ航空は「特に法人の需要が増えている」と説明した。ただし、デルタ航空を含め、旅客各社は人手不足で減便を迫られている。22年7~9月期の売上高は、現時点では19年7~9月期比で1~5%の増加にとどまると予測している。
米デルタ航空の4-6月(第2四半期)決算は、利益が市場予想を下回った。同社はまた、営業コストのかさむ状況が年内いっぱい続くとの予想を示した。旅行需要の強さを背景に航空各社は利益拡大を目指しているが、コスト増が回復の重しとなる可能性がある。
デルタは13日の発表で、遅延と欠航を減らす取り組みの一環として、年末まで運航能力を削減すると説明。単位当たりコストの指標であるユニットコストは上昇するとの見通しを示した。第2四半期の調整後利益は1株当たり1.44ドル。アナリスト予想の平均(同1.64ドル)を下回った。
●マクロ・その他
政策金利である翌日物金利の誘導目標を1%引き上げ、2.5%にしたと発表した。利上げは4会合連続。直近の金融引き締めで1%の利上げに踏み切ったのは主要7カ国(G7)で初めてとみられる。4月から始めた量的引き締め(QT)も続ける。5月の物価上昇率は前年同月比7.7%とインフレが収まらず、物価安定のために引き締めを加速する。
カナダ銀による1%の利上げは1998年8月以来、23年10カ月ぶり。政策決定の会合後に公表した声明文では「物価の安定に注力し、2%の物価目標のために必要な行動をとり続ける」と説明した。市場予想の利上げ幅は0.75%で、予想外の上げ幅となった。
カナダの消費者物価指数(CPI)の上昇率は5月に前年同月比で7.7%となり、4月(6.8%)からインフレが加速した。1983年1月以来、39年5カ月ぶりの大きさだ。13日の声明文で「インフレは持続的で、今後数カ月は8%前後で推移する可能性が高い」との見方を示した。物価高が消費者や企業に及ぼす悪影響を考慮し、インフレ封じ込めを優先する。
政策金利を0.50%引き上げて年2.25%とした。通常の2倍となる0. 50%の利上げは初めて。韓国では6月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比6.0%と23年7カ月ぶりの高水準となったことでインフレ抑制のために利上げを急ぐ。
利上げは4、5月の通貨委員会に続いて3会合連続。韓銀は2021年8月以降に0.25%ずつ5度の利上げを実施し、1年足らずで政策金利を0.50%から1.75%に引き上げてきた。ただ足元のインフレに歯止めがかからず、1999年に始まった現行通貨政策の枠組みで初めてとなる0.50%の利上げに踏み切った。
同日記者会見した李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「物価安定のために先制的な対応が必要だ」とし、委員会の全会一致で0.50%利上げを決めたという。李総裁は年末の政策金利について2.75%~3%との市場予想について「高い物価上昇が続くため予想は合理的だ」との認識を示した。
一方で、急速な利上げは銀行借り入れで住宅を購入した多くの市民にとって利子負担の増加につながる。不動産高騰を背景に家計負債の急増が指摘されるなかで、韓銀の利上げで国内消費が低迷するリスクも高まっている。
ニュージーランド(NZ)準備銀行(中央銀行)は13日、政策金利であるオフィシャル・キャッシュレート(OCR)を2%から0.5ポイント引き上げ、2.5%とすることを決定した。
0.5ポイントの大幅利上げは3会合連続で、インフレ抑制を確信するまで金融政策の引き締めを継続するとした。
NZ中銀の声明によれば、「金融状況が十分にインフレ期待を抑制し、消費者物価上昇率を目標レンジの範囲内に抑えると確信するまで、OCRを速いペースで引き上げるアプローチを継続する」方針で、金融政策委員会(MPC)は一致した。 
NZ中銀はインフレ抑制のための利上げで他の多くの中銀に先行し、 今回2%と想定する中立金利を上回る水準に政策金利を引き上げた。
等価割れは2002年12月以来、およそ20年ぶり。米連邦準備理事会(FRB)が急速に利上げを進めるなか、米欧金利差が広がり、ユーロ安が勢いづいた。ロシアにエネルギーを依存する経済構造のもろさも、ユーロ売りにつながっている。
欧州での物価高騰を受けて欧州中央銀行(ECB)は7月に11年ぶりの利上げに踏み切る方針だ。もっとも利上げ織り込みの過程で経済基盤が弱いイタリアやスペインなど南欧の国債利回りが大幅に上昇(債券価格は下落)し、ドイツ国債との利回り差が2年ぶり大きさとなった。急激な利上げで南欧経済が受ける打撃が懸念されており、ユーロ売りの材料となっている。
製鉄原料の価格が下落基調になった。石炭や鉄鉱石のスポット(随時契約)価格は上昇から一転し、1カ月前に比べ2~4割ほど安い。最大の粗鋼生産国の中国で都市封鎖(ロックダウン)からの経済回復が遅れ、鉄鋼製品が供給過剰になったことが大きい。鉄スクラップも4月の高値から26%値下がりした。原料安が続けば、鋼材市況の下押し圧力になる可能性もある。
バイデン米大統領は13日、CPIの発表を受けた声明で、6月中旬以降のガソリンの値下がりが反映されていないとして「許容できないほど(伸び率は)高いが、古い数字でもある」と強調し、政権批判への予防線を張った。
6月の伸び率は5月の8.6%から拡大し、市場予想の中央値(8.8%)を上回った。1981年11月(9.6%)以来、およそ40年半ぶりの高い伸びだ。足元の動向をより反映する前月比の上昇率は1.3%と、5月の1.0%を上回った。
物価の基調を見るために変動の大きい食品とエネルギーを除く指数については、前年同月比5.9%上昇した。3月に6.5%を記録した後に3カ月連続で減少した。前月比でみた伸び率は0.7%と5月(0.6%)から拡大した。
物価高をけん引するガソリンの上昇率は6月に59.9%となり、5月から10ポイント以上拡大した。全米自動車協会(AAA)によると、レギュラーガソリンの全米平均価格は6月14日に1ガロン(約4リットル)あたり5.016ドルと過去最高を記録した。
夏の旅行シーズンが本番を迎えており、航空運賃も34.1%と高い伸び率が続く。食品や住居費もそれぞれ10.4%、5.6%と伸びが5月から拡大した。
生鮮食品やガソリンなど生活に身近な商品の値上がりが収まらなければ、消費者はインフレが落ち着くとは感じにくい。
ニューヨーク連銀の6月の家計調査によると、1年先の期待インフレ率は6.8%と過去最高を更新した。一方、3年先の期待インフレ率は3.6%と、前月の3.9%から下落した。
今回の統計は物価圧力の勢いが強く、かつ経済全般に広がっており、購買力や信頼感を引き続き損なっていることをあらためて確認する内容となった。米金融当局はこの結果を受けて、需要抑制に向けた積極的な政策方針を維持する見通しだ。中間選挙を控えて支持率が低下しているバイデン大統領や議会民主党にも一段の圧力がかかるとみられる。
今はペースを落として供給が続いているロシア産ガスだが、ドイツにガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム」は11日から10日間の定期保守点検で停止。再開されるか不安が高まり、影響はどれほど深刻になるだろうと投資家は自問している。
リベルム・キャピタルのストラテジスト、ヨアキム・クレメント氏は「ドイツやポーランド、他の中欧諸国発のショックがそれ以外の欧州や世界の至る所にどのように波及するかは大いに未知数だ。ロシア産ガスの代用品はどうしても入手不可能だ」と指摘した。
ロシアが欧州向けガス供給を停止した場合の影響に関し、UBSグループが今週公表した詳細な分析によれば、企業利益は15%余り減り、ストックス欧州600指数の下落率は20%を上回り、ユーロは0.90ドルまで下げる恐れがある。安全資産に資金が押し寄せ、ドイツ国債指標銘柄の利回りは0%に低下することになりそうだ。
UBSのチーフエコノミスト、アレント・カプテイン氏は「これらの予測はおおまかな推計と考えるべきであり、決して最悪のケースと捉えるべきでないと強調しておく。成長の実績をより悪化させる経済の混乱は想像に難くないのではないか」との見解を示した。
南米チリの中央銀行は13日、政策金利を0.75%引き上げて9.75%にすると発表した。利上げは9会合連続。決定は全員一致だった。インフレが加速しているのに加え、通貨安も進んでいるのに対応した。
上げ幅は前回6月会合と同じだった。6月の消費者物価指数は前年同月比で12.49%上昇し、1994年6月(12.73%)以来の高さを記録した。上昇率は16カ月連続で拡大しており、食料や飲料の値上がりが目立つ。
中銀が12日まとめた民間エコノミストの予測では2022年のインフレ率は11%となった。6月の10%から修正された。中銀のインフレ目標の中心値は3%で、大幅に上回る状況が続きそうだ。
地区連銀経済報告(ベージュブック)で、5月中旬以降、米経済は「穏やかに拡大したが、一部で需要に減速の兆しがみられた」と総括した。供給制約と人手不足が重荷となったほか、インフレで個人消費にも陰りがみえた。一部の地区は経済が減速したと記述し、景気後退を懸念する声も目立ち始めた。
全米12地区連銀の管轄地区ごとの経済状況では、ニューヨークとクリーブランドなど4地区で経済の減速や成長の鈍化を報告した。6月には全地区で拡大したと判断していた。「景気後退懸念の高まりから、顧客が支出を減らしている」(リッチモンド地区の専門サービス)など5地区から、将来の景気後退を不安視する声が上がった。
米国では夏の観光シーズンで、新型コロナウイルス下からのリベンジ旅行需要が期待されている。「娯楽需要は底堅く推移した」(アトランタ地区)、「米国内の旅客需要は堅調」(ダラス地区)との声が多い一方で、変調もみられた。クリーブランド地区の飲食店からはガソリン高で「『ステイ・ローカル(地元で過ごそう)』の流れが生じている」との指摘があった。
インフレは引き続き個人・企業の活動に重くのしかかった。「供給制約や人手不足、燃料高騰による価格上昇圧力がひどい」(ダラス地区の製造業)。カンザスシティー地区では多くの企業から「仕入れ価格の上昇ペースが販売価格を上回る」との指摘が上がった。セントルイス地区では飲食店がコスト増への対応でメニュー価格を引き上げたところ「客が減ったため、下げざるを得なかった」という。
労働市場は逼迫が続いた。「賃上げして福利厚生を高めても人が足りない」(リッチモンド地区のレジャー産業)。ダラス地区の飲食店は「従業員不足で、通常の85%までしか客を入れられない」と報告した。
スナク氏は新型コロナウイルス危機での大規模な経済対策で評価を高め、早くからポスト・ジョンソン候補として名前が挙がっていた。2位はジョンソン氏と距離を置くモーダント貿易担当閣外相で、67票を獲得した。3位には50票のトラス外相が入った。
バー氏は民主党のオバマ政権で金融機関を担う財務次官補を務めた。金融規制の専門家で、2010年のドッド・フランク法成立に尽力した。
6月のインフレ率について「容認し難いほど高い」としつつも、「きょうのデータは、ここ30日近くにわたるガソリン値下がりの影響を完全には反映していない。ガソリンスタンドでの価格は6月半ば以降、約40セント下がっている」と述べた。その上で、「こうしたガソリンの値下がりで、米国の家計には一息つく余裕が生まれている」と語った。
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会が最新の経済見通し草案で、ユーロ圏の2022年インフレ率予想を7.6%に上方修正し、従来予測の6.1%からさらに上振れを見込んでいることが分かった。草案の内容をブルームバーグが確認した。
草案によれば、来年のインフレ率予想も2.7%から4%に引き上げた。国内総生産(GDP)成長率は今年が2.6%、来年は1.4%と予測し、今年が2.7%、来年は2.3%としていた5月時点の見通しを下方修正した。
IMFが今月、最新の世界経済見通し(WEO)を公表する際に、今年と来年の予測が引き下げられると、ゲオルギエワ専務理事が13日公表したブログで指摘した。ロシアのウクライナ侵攻や新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴う中国の行動制限、インフレ高進が背景にある。
ゲオルギエワ氏は「見通しは依然として極めて不透明だ」とした上で、「2022年は厳しいものになり、23年はさらに厳しくなるかもしれない。リセッション(景気後退)のリスクが高まっている」との見解を示した。 
IMFは4月に今年の世界成長率予測を3.6%と、ウクライナでの戦争前にまとめた予想(4.4%)から引き下げた。今週末には20カ国地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれる。
●市況
日経先物(大証)26425、ダウ先30635、債先149.23、米2.935、独1.1330、仏1.637、西2.226、伊3.226、波6.814、原油96.04、ドル円137.46、墨ペソ20.77、トルコリラ17.4211、墨CDS174
※7/14 8時10分頃

備忘録(7/12
●中国・ロシア・東欧
●中東
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
●その他産業
米大手銀行の4-6月(第2四半期)トレーディング収入は、前年同期比で2桁台の増加率が見込まれる。リセッション(景気後退)懸念とインフレ高進、ロシアのウクライナ侵攻を含む世界の混乱を受けた市場の変動拡大が寄与した。
ブルームバーグがまとめたアナリスト調査によると、大手5行のトレーディング収入は16%増の278億ドル(約3兆8000億円)と予想される。債券トレーディング収入は合計164億ドルの見込み。これに加えて米利上げに伴う純金利収入の増加が、投資銀行業務および住宅ローン事業の減速、ウェルスマネジメント部門の資産評価額低下による打撃を打ち消し、全体の収益を押し上げたとみられる。
シティグループの市場事業グローバル責任者、アンディ・モートン氏は先月の業界会議で、「ボラティリティーは基本的にわれわれの味方だ」と語っていた。「しかも、ボラティリティーが高まったのは1つか2つの資産クラス、1つか2つの焦点だけではなかった」と述べ、政策金利を巡るサプライズや商品価格、外国為替の変動を指摘した。
●決算関連
米飲料品・食品大手ペプシコが12日に発表した2022年4~6月期決算は純利益が前年同期比約39%減の14億2900万ドル(約1950億円)だった。商品の値上げで増収を確保したが、ロシアでの販売停止などに伴う評価損14億ドルを計上した。
同社はロシアによるウクライナ侵攻を受け3月上旬からロシアでジュースや食品などの販売を中止した。4~6月期には生産停止などによる評価損を「ロシア・ウクライナ紛争関連費」として14億ドルを計上した。1~3月期の関連費は2億4100万ドルだった。
4~6月の売上高は前年同期比5%増の202億ドルだった。北米事業の売上高は11%増えた。スナックや飲料の販売数量は減ったが、原材料などコスト上昇分を販売価格に転嫁して増収につなげた。
同日、22年12月期の通期売上高見通しを10%増と従来予想(8%増)から上方修正した。ただ、さらなるコスト上昇を見込み、1株利益の予想は据え置いた。
ヒュー・ジョンストン最高財務責任者(CFO)は同日のアナリスト向け説明会で「現時点で消費者はインフレの影響を吸収している。だがこの先の消費者行動は未知数だ」と説明した。
●マクロ・その他
世界人口の年間増加率が、統計を遡れる1950年以降で初めて1%を割り込み最低となったことが、国連が11日に発表した推計で明らかになった。人口規模が世界最大の中国も長年の「一人っ子政策」などが響いて2022年から人口減に転じ、23年にはインドと逆転する。人類史でも特異な20世紀の経済成長を支えてきた人口爆発は近く終わりを迎える。
国連は19年以来、3年ぶりに世界の人口推計を改定した。世界的な少子高齢化や新型コロナウイルスの影響で、世界人口の増加率は20年に初めて1%を割り込み、22年は0.83%まで落ち込んだ。1%割れが明らかになったのは今回が初めて。
産業革命を経て世界人口は1900年の16.5億人から100年間で約4倍に急増し、20世紀の繁栄の基盤となった。2022年11月15日に80億人に達すると国連は予測するが、2086年に104億人でピークを迎えるとみる。前回推計ではピークは2100年の109億人としていたが、大幅に前倒しした。
これまでは主要な働き手である生産年齢人口(15~64歳)の比率が高い「人口ボーナス」が経済成長の重要な源泉だったが、急速な少子高齢化で好循環は幕を下ろそうとしている。
その象徴が中国だ。14億人という世界最大の市場はグローバル経済の需要を生み出してきた。ただ2022年7月1日時点の人口は前年より6000人減った。
2019年の前回推計では32年から中国の人口が減り始めると見積もったが、10年前倒しとなった。50年時点で13億1200万人、2100年には7億6600万人に減る。それぞれ前回推計より9000万人、3億人下振れした。23年にはインドの人口が中国を抜いて世界最大となる。
中国の人口増加と急速な都市化は、01年の中国の世界貿易機関(WTO)加盟もあって、世界の経済成長を押し上げてきた。今後は都市に移り住む人も高齢化し、経済を押し上げる力は弱まる。
23年に中国を抜くインドも、63年の17億人弱でピークを迎える。その後、人口増が目立つのはアフリカくらいだ。ただインドやアフリカは産業育成や雇用拡大が人口増加に追いつかない恐れがあり、中国のような世界経済のけん引役となるのは期待しにくい。
今後は少ない働き手が多くの高齢者を支える「人口オーナス」という逆風下にある国が増え、これまでのような経済発展を続けるのは難しくなる。自動化や人工知能(AI)の活用などで生産性を高め、人口増に頼らない成長モデルを示した国が国際社会の新しい主役になる。
世界の人口地図は今後100年で大きく変化する。国連が11日発表した世界人口推計では、経済発展を遂げてきた中国など東・東南アジア地域の人口が2030年代半ばに減少に転じると予測した。今後台頭するのはアフリカで、50年には世界人口の3割に達する。豊富な若年人口を労働力に生かせれば世界経済のけん引役になりうるが、実現には課題もある。
英ロンドンのヒースロー空港は12日、同空港を出発する航空機の夏季のチケットを新たに販売しないよう、航空各社に要請したと発表した。手荷物の検査や運搬などを担うスタッフが足りず、急回復する旅客需要をさばき切れなくなっているためだ。混乱を避けるため出発する旅客の数を1日あたり10万人に抑える。
旅客数の制限は同日から9月11日まで実施する。空港運営会社は夏場に対応できる出発人数について1日あたり10万人が限度とみているが、現状では平均10万4千人と超過が想定されている。既に航空各社に便数を10%削らすよう要請しており、航空券の販売自粛も求めざるを得なくなった。
て人員整理を進めた。足元では行動規制の緩和で旅行需要が大きく持ち直し、スタッフ不足が深刻になっている。英BBCによると英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は4~10月に約3万便のキャンセルを迫られる見込みだ。
運航の混乱は欧州各地で起きている。KLMオランダ航空は8日、オランダの首都アムステルダムのスキポール空港で人手不足が起きているとして、8月28日にかけて1日あたり10~20便の運航を取りやめると発表した。キャンセルされた顧客の代替便手配を優先するため残席の販売に制限をかける。
ヒースロー空港によると6月の旅客数は599万人と前年同月の6倍強になった。コロナ禍初期の2020年4月には20万人台まで落ち込んでいた。
石油輸出国機構(OPEC)が12日発表した市場見通しによれば、2023年にはOPEC産原油の需要が高まり、需給の逼迫(ひっぱく)が緩和されることはない。
OPECは来年の世界石油需要の伸びが供給の拡大分を日量100万バレル上回ると予測する。この差を埋めるためにOPEC諸国は生産量を大幅に引き上げる必要がある。しかし複数の加盟諸国では不十分な投資や不安定な政治動向などの理由から、現段階の生産量は必要とされる水準を既に大幅に下回っている。
新型コロナウイルス禍からの景気回復に伴い燃料需要が高まる中で、世界の油田や製油施設はその需要に追い付けずにいる。原油価格はバレル当たり100ドルを超え、生活費の高騰や世界的なリセッション(景気後退)リスクを悪化させている。
世界の石油需要は来年、新興国市場を中心に日量270万バレルの伸びが予測されている。OPEC以外の産油国からの供給は日量170万バレル増加すると分析されている。
来年の需給バランスを図るには、OPECは平均で日量3010万バレルを供給する必要がある。これは6月時点の生産量を日量138万バレル上回る。
ドイツの景気回復に対する信頼感は7月に大幅に悪化、2011年以来の低さとなった。ドイツではリセッション(景気後退)見通しが高まっており、ロシアからのエネルギー供給が途絶える深刻なリスクがある。
ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が12日発表した7月の期待指数はマイナス53.8と、前月のマイナス28から急低下。エコノミストの予想(マイナス40.5)も下回った。現状指数も悪化した。
ZEWのバンバッハ所長は発表資料で、「ドイツのエネルギー供給や欧州中央銀行(ECB)が表明している利上げ方針、中国でのさらなる新型コロナウイルス対策など、大型の懸念材料が景気見通しの著しい悪化につながった」と説明した。
欧州最大の経済大国であるドイツは、ウクライナの戦争で特に打撃を受けている。記録的なインフレで需要は冷え込み、供給目詰まりで製造業では部品不足が生じている。ブルームバーグがまとめたアナリスト調査によれば、ドイツ経済は55%の確率でこの先1年間にリセッションに陥ると見込まれている。
既に急落している銅相場はさらに値下がりする見通しだと、ゴールドマン・サックス・グループが指摘した。ゴールドマンは銅相場予想を下方修正するとともに、世界的なエネルギー危機による経済成長リスクが高まる方向に大きく傾斜しているとの見方を示した。
ゴールドマンのアナリストはここ2年、銅を中心に商品相場に対して比較的強気だったが、今や銅相場は予想を40%下回って推移しているほか、先進国のリセッション(景気後退)リスクを受け、年内は需要を巡る悲観的見方が強まるとの見通しを示した。
ニコラス・スノードン氏らアナリストは電子メールで配布したリポートで、成長を脅かしている世界的なエネルギー需給の逼迫(ひっぱく)が「冬にかけてエスカレートする方向に大きく傾斜している」と指摘。ドル上昇も銅相場の大きな重しになっているとした。ゴールドマンの向こう3カ月の銅相場見通しは1トン=6700ドル。従来予想は8650ドルだった。
ゴールドマンは最近の値下がりについて、「特に欧州の天然ガス高騰が経済活動に及ぼす影響など、域内の成長軌道への逆風が強まっていることに関係している」と分析した。
ただ、ゴールドマンは銅価格がなお2025年に1万5000ドルに到達する軌道にあると予測。向こう6カ月の銅相場見通しは7600ドル、今後1年間の見通しは9000ドル。従来予想はそれぞれ1万500ドル、1万2000ドルだった。
米共和党を支持する有権者の半分近くが、2024年大統領選でトランプ前大統領以外の候補者に投票する考えを示していることが、世論調査で明らかになった。20年の大統領選で結果を覆そうとしたトランプ氏だが、次回選挙への出馬を決断した場合、共和党予備選で厳しい戦いを強いられることが示唆される。
米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が実施した世論調査によれば、共和党予備選で投票する意向を示している有権者の間では49%がトランプ氏を支持。対立候補となる可能性のある他の5人に対し依然リードしている。ただ46%が対立候補のうちの1人に投票すると回答。5人の中ではフロリダ州のデサンティス知事の支持率が25%と最も高い。2桁の支持率を得たのはトランプ氏とデサンティス氏のみだ。
トランプ氏が早い段階での出馬宣言の是非を検討する中、今回の調査は共和党内での求心力維持を目指すトランプ氏の取り組みが、逆に有権者間の分断を生み出した可能性を示唆している。
若い世代ならびに大学の学位を持つ有権者では過半数が予備選でトランプ氏以外に投票すると回答。これらの有権者の間で支持率が最も高いのはデサンティス知事となっている。
共和党予備選でトランプ氏の対立候補となる可能性があるのは、同知事のほかにクルーズ上院議員(支持率7%)、ペンス前副大統領(同6%)、ヘイリー前サウスカロライナ州知事(同6%)、ポンペオ前国務長官(同2%)となっている。
24年大統領選でバイデン氏とトランプ氏が再対決すると想定した場合では、バイデン氏44%、トランプ氏41%でバイデン氏がリードしている。共和党支持有権者の16%は、トランプ氏が共和党指名を獲得した場合、バイデン氏もしくは別の候補に投票すると答えている。
12日公表の月報で2023年の原油の世界需要が前年に比べて日量270万バレル増加するとの見通しを示した。増加分は前年比2.7%増に相当する。世界的な経済成長と中国の需要回復がけん引すると見込む。
ロイター通信が伝えた。世界の原油需要は日量約1億バレルとされている。OPECによると、22年は21年に比べて日量336万バレル増加するとみており、新型コロナウイルスの感染拡大で需要が落ち込んだ20年から急回復している。22年の世界需要はコロナ禍前の19年を上回る可能性もある。
ツイッターは12日、同社の買収契約を打ち切ると表明した米テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏を相手取った訴えを起こした。契約解除は無効だとして、総額440億ドル(約6兆円)の買収取引を実行するよう求めている。同氏がSNS(交流サイト)上の影響力を駆使して注目を集めた「劇場型買収」をめぐる争いは、法廷に持ち込まれた。
米食肉業界における過去の類似の訴訟では、デラウェア州の裁判所は情報開示の不備などを理由に買収契約を打ち切ろうとした買い手企業に取引の完了を命じる判決を下している。ツイッターの提訴についてマスク氏の代理人弁護士にコメントを求めたが、回答は得られていない。
米アドビは12日、電子商取引(EC)の価格変動を示すデジタル価格指数(DPI)が6月に前年同月比で0.3%上昇したと発表した。2年1カ月連続の上昇となったが、伸び率はこの間で最も小さかった。電子機器や衣料品の価格下落が響いた。
アドビはインターネット通販の取引データを収集・分析し、DPIを算出している。2~3月までは3%を超える伸びが続いたが、4月以降は上げ幅を縮めている。
6月は対象となる18分野のうち、11分野が上昇、7分野が下落となった。電子機器が7.28%下げたほか、前月に大幅に上昇していた衣料品も0.1%の下落に転じた。一方、上昇したなかでは食料品が12.44%高と最も伸びが大きかった。
供給不足で2年間の好調が続いていた半導体の市場が、一転して変調をきたし始めた。代表的な半導体であるDRAMの在庫が今春以降だぶつき、価格が30%強も急落するなど大きな変化がみられる。中国経済の減速懸念や世界的なインフレを受け、企業の設備投資や消費者の購入意欲が減退している。世界の半導体生産の中心である台湾では、急速に警戒感が広がってきた。
米農務省は12日発表した7月の穀物需給見通しで、2022~23穀物年度の世界の小麦の期末在庫見通しを前月比70万トン増の2億6750万トンに引き上げた。ロイター通信が集計したアナリスト予想平均を上回った。欧州連合(EU)やロシアの侵攻が続くウクライナで、飼料消費が減る。
主要な政策金利である基準金利を2%引き上げ、年9.75%とすることを決めた。13日から適用する。インフレ率が上振れするリスクが一段と強まったと分析し、利上げを加速させている。
ハンガリー中銀は6月下旬に1.85%引き上げたばかり。利上げは2021年6月に開始してから14回連続で、利上げ前と比べると約16倍の水準だ。ロシアのウクライナ侵攻でエネルギーや食料価格が上昇しており、持続的なインフレリスクは金融引き締めの継続を「正当化している」と指摘した。
●市況
日経先物(大証)26435、ダウ先30980、債先149.31、米2.967、独1.1345、仏1.647、西2.291、伊3.323、波6.713、原油94.83、ドル円136.82、墨ペソ20.87、トルコリラ17.2928、墨CDS174
※7/13 9時20分頃


備忘録(7/11
●中国・ロシア・東欧
深圳証券取引所への11日の届け出によれば 恒大地産集団が発行し8日に早期償還期日を迎えた45億元(約920億円)の2023年償還債について、同社はさらに6カ月間の期日延長を求めたものの、先週の会合で計90%を超える議決権を握る複数の社債保有者がこの要請を拒否した。投資家が早期償還を求められるプットオプション付きの同社債に、猶予期間は設けられていない。
中国恒大は昨年12月、ドル建て債でデフォルト(債務不履行)。本土債についてはこれまで償還期限を延長することで、不履行を回避してきた。恒大地産がこの本土債の返済を怠れば、中国恒大にとって初の正式な本土債不履行となり得る。
フランスのルメール経済・財務相は10日、欧州連合(EU)による制裁とウクライナへの支援に対する報復として、ロシアが天然ガス供給を完全に遮断する事態に欧州は備える必要があると語った。
ルメール経済・財務相は、仏南東部エクサンプロバンスでの経済会議で、「ロシア産ガスの完全な遮断を覚悟しよう。現時点でそれが最も可能性の高いシナリオだ」と発言した。
同経済・財務相は、当面の一番の心配はインフレとの闘いだと述べる一方、欧州のリセッション(景気後退)リスクは、エネルギー危機の行方次第との認識を示した。
ルメール氏は、フランスはエネルギー消費に「大いに慎重を期す」と同時にガス備蓄を積み増し、再生可能エネルギーの開発を遅らせる官僚主義を排し、原発新設プログラムを加速させなければならないと主張した。
さらにガラスメーカーなどが回復不能な損害を被ることを確実に免れるよう企業別、地域別にエネルギー使用量を抑制する計画を立案する必要性に言及した。
中国で資金調達が再加速しつつある。銀行や市場からの調達総額を示す「社会融資規模」の残高の増加率は6月、1年ぶりの高さを示した。地方政府がインフラ建設の資金を調達するため債券の発行を急いだほか、企業が設備投資などに充てる中長期資金を銀行から借り入れた。
中国人民銀行(中央銀行)が11日発表した。社会融資規模の残高は6月末で334兆元(約6800兆円)と、前年同月末から10.8%増えた。6月の新規調達額は5兆1700億元で、前年同月から4割増えた。
企業の資金需要も回復の兆しが出てきた。銀行が6月、企業に貸し出した中長期資金は前年同月比73%増えた。新型コロナウイルス禍で経済活動がほぼ止まった前年の反動で2.6倍に膨らんだ21年2月以来の大きさだ。
気がかりなのは家計の資金需要だ。銀行が個人向けに貸し出した中長期資金は6月、前年同月を19%下回った。減少率は5月(76%)より縮まったが、昨年来の減少傾向は止まっていない。
これは住宅ローンの低迷が続いているためだ。習指導部が昨年、バブル抑制を目的に不動産規制を強めてからマンション市場の調整が長期化している。住宅の値上がり期待も弱まり、新規購入を様子見する人がなお多いとみられる。
●中東
サウジ首脳との会談では人権問題を取り上げる意向を示し「米国の基本的価値観を守りながら、相互の利益に基づく戦略的パートナーシップを強化する」と強調した。「(地域で影響力を強める)ロシアや中国に対抗し、世界の重要な地域がより安定する努力をしなければならない」と記した。
今回の中東歴訪では外交関係のないイスラエルからサウジに直接入る計画だ。バイデン氏は寄稿で「イスラエルとアラブ世界の関係の芽生えと正常化への小さな象徴になるだろう」と提起。自らが主導し、中東の安定につなげる意向を示した。
イスラエルとアラブ諸国の一部で、イランに対抗する防衛協力の議論が持ち上がっている。イスラエルが「防空同盟」の存在を明かし、ヨルダンのアブドラ国王は中東版の北大西洋条約機構(NATO)構想に支持を表明した。バイデン米大統領の13日からの中東歴訪は安全保障も議題になる見込みで、イスラエルとアラブ諸国がさらに接近する可能性がある。
●コロナ
欧州を中心に、世界の新型コロナウイルスの感染者が増えている。「BA.5」などオミクロン型の派生型が流行しているためだ。だが重症化率は比較的低く抑えられており、現時点では規制強化などの動きはない。欧州連合(EU)の専門機関は11日、感染増を受けて高齢者などリスクが高い人にワクチンの追加接種を受けるよう推奨した。
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
ANAホールディングス(HD)は11日、20機の導入を予定する米ボーイングの最新鋭の大型機「777X」のうち2機を旅客機から貨物専用機に変更すると発表した。2028年度以降に導入し、欧米路線で自動車や半導体製造装置などを運ぶ需要の獲得を狙う。新型コロナウイルス禍が主力の旅客収入に影を落とすなか、貨物事業を強化して収益源を多様化する。
導入を決めた貨物専用機「777-8F」型機は従来の「777-F」型貨物機と比べ輸送容量が約2割増え、燃費は1割ほど改善する。カタログ価格は1機あたり493億円(1ドル120円の場合)。ANAHDは14年3月に777Xシリーズの旅客機「777-9」型機20機を導入すると発表したが、2機を777-8Fに変更する。777-9は23~29年度に順次導入する予定。
計画変更により投資額は当初の計画を下回るという。ANAHDは現在11機の貨物機を運用しており、今後は一部機材を退役させる見通し。大型の777-F型機は2機にとどまり大型の商材への対応力が限られていた。
後払い決済サービスのクラーナ(スウェーデン)は11日、8億ドル(約1100億円)の資金調達をしたと発表した。米金利上昇やロシアのウクライナ侵攻などで世界的に成長株が下落しており、未上場のクラーナの企業価値評価は67億ドルと1年前にソフトバンクグループ(SBG)傘下のファンドが出資した際の7分の1近くに減った。
クラーナによると、今回の資金調達にはアラブ首長国連邦(UAE)の政府系ファンドであるムバダラ開発公社やカナダ年金制度投資委員会などが参加した。クラーナは「高インフレや金利上昇、景気後退懸念の高まりなどで恐らく第2次世界大戦以来最悪の状況に株式市場が苦しむ環境の中で新規投資がなされた」と説明している。評価額の大幅な引き下げは新興テック企業の苦境を象徴するといえる。
2021年6月にSBG傘下のビジョン・ファンド2が主導する資金調達をした際は、クラーナは456億ドルと評価されていた。欧州の未上場のフィンテックとしては最も評価額が大きく、世界でも有数のユニコーン(企業価値が10億ドルを超す未上場企業)だった。
クラーナは05年の創業で、ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)やイケアなど世界の40万社超の小売企業などと提携している。「BNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)」と呼ばれる後払い決済サービスを提供し、クレジットカードがなくても買い物できる手段として急成長した。
●その他産業
より大きく、かつ十分に認識されていない問題は、ティックトックを使う大勢の外国人が見るコンテンツを中国政府が操作するのを許しかねない点だ。今や陽気な動画アプリというよりニュースを提供するアプリとしても主流になりつつあり、米国の利用者の4分の1はニュースはティックトックでみると答えている。主流メディアがあまり存在しない国では、その割合は5割に達する。
それだけにティックトックの運営会社が中国企業なのは懸念材料だ。国内メディアに積極的に介入する中国政府は18年には、バイトダンスの別の人気の動画投稿アプリ「内涵段子」で共有されていた反体制的な冗談を問題視し、同アプリを閉鎖させた。ティックトックに不適切なコンテンツが投稿されていないか監視するモデレーターは中国以外の国で業務に当たっているが、そのアルゴリズムは北京で作っている。
あちこちを細工して、例えば新型コロナウイルスの中国起源説を疑問視する動画や、ウクライナでの戦争の責任は北大西洋条約機構(NATO)にあるとする動画の視聴回数を大幅に増やせる可能性がある。利用者の関心に合わせた動画を表示できる仕組みなので、何か工作されていたとしても発見しにくい。
ティックトックは、中国政府から干渉を受けたことはないとしている。だが運営母体が、メディア操作に熱心な強権的政府の標的になりやすいのは明らかなリスクだ。この懸念を払拭できる仕組みが確保されない限り、西側諸国はいつか自国でのティックトックの利用を禁止せざるを得ない可能性がある。
そうした事態を防ぐための第一歩は技術的な対応だ。ティックトックは現在、米規制当局と協力して米国人利用者のデータは米企業オラクルで保管し、同アプリの中国拠点のスタッフによるアクセスを制限する枠組み作りを進めている。コンテンツの不正操作については第三者によるアルゴリズムの検査を受け入れるとしている。AIによるアルゴリズムは、アルゴリズムを見ない限りAIがどう機能しているか理解するのは難しいからだ。ただ、現時点ではトランプ氏に好意的な内容の動画が大量に流れてくるのは中国政府が介入しているからなのか、利用者が世論を二分するコンテンツを楽しんでいるからなのか不明だ。
●決算関連
●マクロ・その他
ロシアのウクライナ侵攻や物価上昇が重荷となり、世界経済の先行きに不透明感が強まっている。米国経済の見通しや歴史的な円安をどう見るか。米ユーラシア・グループマクロ経済担当のディレクターで、米連邦準備理事会(FRB)シニアエコノミストなどを歴任したロバート・カーン氏に聞いた。
国連は11日、2023年にインドの人口が中国を上回り、世界最多になるとの人口推計を発表した。インドが中国を上回るのは1950年の調査開始以来初めて。世界人口は11月に80億人を突破するという。
南米コロンビアで6月、グスタボ・ペトロ氏が左派で初めて大統領に選出されたのを受け、資金を国外に移し、米国で不動産を買おうとするコロンビア市民からの問い合わせが急増していると米フロリダ州マイアミの不動産各社は話す。
ミラノ南部ビナスコで農業を営むファビオ・カミサーニさん(52)は70ヘクタールの水田の生育状況を見る時にはいつも足元がぬれないよう厚手のゴム長靴を履いていた。だが今年はカラカラに干からびた田んぼを運動靴で歩いている。
マカオは11日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、域内の経済活動を止める事実上の都市封鎖(ロックダウン)に入った。主力産業のカジノも閉鎖した。6月以降、全市民を対象にPCR検査を6回実施したが感染拡大に歯止めがかからず、さらに4回の検査を実施する。
マカオは香港と同じ「一国二制度」が適用される中国の特別行政区。6月中旬から変異型の感染が急拡大し、人口約68万人のうち1500人超が感染した。中国式の「ゼロコロナ」政策に従い、厳しい防疫措置をとる。
マカオ政府の発表によると、11~17日の1週間、スーパーマーケットなど生活維持に必要な分野を除き、企業活動を停止し、市民には自宅待機を求める。6月下旬に映画館やカラオケ店などの娯楽施設を閉鎖したが、感染が収束しないため、カジノ閉鎖に踏み切った。
カナダの銀行株のパフォーマンスは、米ウォール街の銀行株を上回っている。「ビッグ6」と呼ばれる大手6行の株価は2022年の年初に比べ、平均で14%安い。一方、米国のシティグループやJPモルガン・チェースなど全国展開する銀行と地方銀行24行をカバーするKBWナスダック銀行株指数は同じ時期に24%下落した。
米住宅市場では6月、購入契約を解約する比率が上昇した。ローン金利の上昇で住宅はますます手が届きにくくなり、いったん契約したもののキャンセルするケースが増えている。
米不動産サービス会社レッドフィンの分析によれば、米国全体で6万件近くの住宅購入契約が解約された。6月発効の契約に対する比率としては15%に相当し、新型コロナウイルスの感染拡大が本格化し始めた2020年4月以来の高いキャンセル率になる。
消費者の住宅購買能力が数十年ぶりの水準に低迷している現在、購入契約を解約する理由は増えている。住宅市場は2008年とは様変わりしているため、当時と同じような危機が訪れると予想する専門家はほとんどいない。しかし今年は借り入れコストが突然上昇しており、30年ローン金利の平均水準は年初の2倍に近づいている。かつて買い手が争奪戦を繰り広げた住宅需要は、急速に熱気を失い始めた。
レッドフィンのエージェント、クリスタル・ロペス氏は「最初の解約手続き完了を知った時、もっと増えることは目に見えていた」と語った。
平時でも住宅ローンの申請却下や、高額な補修工事が必要だと検査で判明するなど、さまざまな理由で購入契約の解約は起こり得る。単に買い手の気が変わることもある。購入希望者が展示会に殺到した2021年6月でも、同月発効の購入契約が解約になった比率は約11%だった。
回答者の64%は、次回の大統領選で別の候補者を希望。そのうち3分の1はバイデン氏の年齢を理由に挙げた。バイデン氏は現在79歳で、米史上最高齢の大統領となっている。また約32%がバイデン氏の仕事ぶりを理由に挙げたほか、10人中1人が進歩的な姿勢が不十分と回答した。今回の世論調査は米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が実施した。
そうした年齢や仕事ぶりへの懸念をよそに、バイデン氏は民主党内で優勢を維持している。他に候補者となりそうな人が有権者から支持されていないという現状だ。ハリス副大統領やカリフォルニア州のニューサム知事、進歩派で無所属のサンダース上院議員などが対立候補となる可能性があるが、英調査会社ユーガブが最近実施した複数の世論調査では一貫してバイデン氏がリードしている。

備忘録(7/8-10
●中国・ロシア・東欧
中国で消費者物価指数(CPI)の伸びが拡大している。6月の前年同月比上昇率は2.5%と、1年11カ月ぶりの高さとなった。燃料や食品が値上がりしたほか、新型コロナウイルスの感染を封じ込めるための行動規制が緩和され、サービス需要が持ち直した。
中国国家統計局が9日発表した。CPIの伸びは5月を0.4ポイント上回った。国際商品市況の高騰をうけてガソリンや軽油の価格が3割超高くなったほか、食品も2.9%値上がりした。
景気悪化で低迷していたサービス需要の回復も物価を押し上げた。主要国の中央銀行が物価の趨勢を見極めるうえで重視する「食品とエネルギーを除くコア指数」は1.0%上がった。8カ月ぶりに前月の上昇率を超えた。
上海市は6月1日にロックダウン(都市封鎖)を解除した。北京市も飲食店の店内飲食を再開させた。人出が戻り、接触型消費が上向いた。
旅行需要も復調した。航空券の料金は28.1%高くなった。中国最南端のリゾート地、海南省三亜市は封鎖明けの上海市からの旅行客でにぎわい、ホテル代なども跳ね上がっているという。
消費の回復が持続的かどうかには懸念が残る。厳格な行動規制が抑えつけてきた需要が規制の緩和とともに噴き出したが、家計の節約志向は根強い。CPIの内訳をみても、家庭用器具の上昇率は鈍った。
中国人民銀行(中央銀行)が4~6月に実施した預金者向けアンケート調査では、所得の見通しを示す指数が遡れる2001年以降で最低となった。新型コロナの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で長期化した雇用の悪化が影を落とす。
今後を見通すと、食品価格の上昇が家計の購買力を弱める可能性がある。ロシアのウクライナ侵攻に伴う肥料の価格上昇で、野菜が値上がりするとの見方が多い。
中国人の食卓に欠かせない豚肉も直近で大きく値上がりしている。7月初旬の養豚の出荷価格は3月時点の2倍に高騰した。警戒する中国国家発展改革委員会は養豚企業に対し、価格をつり上げるための売り惜しみなどをやめるよう指導した。
中国経済は、地方政府のインフラ投資をけん引役に企業部門が持ち直しつつある。その恩恵が雇用の改善を通じて家計に波及するまでには時間がかかりそうだ。
雇用や所得の回復が遅れるなか、生活必需品がさらに値上がりすれば、家計の節約志向も強まりかねない。消費持ち直しの重荷となり、需要不足がCPIにのしかかる可能性がある。
オーストラリアのウォン外相は8日、20カ国・地域(G20)外相会合のために訪れたインドネシアのバリ島で中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と会談した。両国は6月に国防相会談も実施しており、2020年から悪化した関係の正常化に向けた動きが徐々に進む。
米シンクタンク、戦争研究所のアナリストによると、ウクライナ北東部のハルキウ(ハリコフ)地域を占領する部隊の最近の行動は、ロシアが同地域の一部あるいは全てを併合する考えであることを示唆している。ハルキウはウクライナ第2の都市。
3億ユーロ(約410億円)を投じ、2024年から生産を始める。チェコやベルギーなど既存拠点でも増産投資し、生産能力を25年に足元の4倍に増やす。主要市場であるドイツや英国など欧州4カ国にまず照準を合わせ、急拡大する市場に対応する体制づくりを急ぐ。
中国の規制当局は10日、過去のM&A(合併・買収)などの際に当局への申請がなかったことが独占禁止法違反にあたるとして、ネット大手の騰訊控股(テンセント)やアリババ集団などに罰金を科すことを決めたと発表した。合計28の案件が罰金の対象になり、金額は大半が1件当たり50万元(約1000万円)となった。
独禁法などを管轄する国家市場監督管理総局によると、今回の処分はテンセントやアリババが関わった投資案件が多くを占めたほか、オンライン診療を手掛ける平安健康医療科技が日本のソフトバンクと合弁企業ヘルスケアテクノロジーズ(東京・港)を設立した件も対象になった。
中国当局は2020年末ごろからネット大手の摘発を強めており、これまでもテンセントやアリババに様々な名目で罰金を科してきた。
中国では8月1日に改正独禁法が施行される。08年8月の施行以来で初の改正となり、ネット大手への統制がさらに強まる見通しだ。M&Aの届け出義務違反に対する罰金は大幅に引き上げられる。
●中東
米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は7日、記者団に対して、バイデン大統領が7月中旬にサウジアラビアのサルマン国王と会談すると明らかにした。バイデン氏が距離を置くムハンマド皇太子が同席するとの見通しも示した。
バイデン氏は7月中旬、湾岸協力会議(GCC)諸国の首脳会議に出席するためにサウジを訪れる。カービー氏は、首脳会議についてエネルギー安全保障がテーマの一つだと説明した。バイデン氏はガソリン価格の引き下げに向けて各国に原油増産を求める見通しだ。サウジとの首脳会談でも増産を訴える公算が大きい。
カービー氏は「人権はバイデン氏の外交政策の柱だ」と強調し、サウジとの首脳会談で人権問題を提起する考えを示唆した。
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
●その他産業
米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は9日、米西部アイダホ州で開かれた企業経営者向けの非公開の会合で対談した。米報道によると8日に撤回を表明した総額440億ドル(約5兆9000億円)の米ツイッター買収に関する質問をかわし、参加者らの関心には応えなかった。
米ブルームバーグ通信は9日、匿名を条件に取材に応じた参加者の話として、マスク氏がツイッターの買収撤回に関するアルトマン氏の質問に答えなかったと報じた。対談では人類の惑星移住構想などを語り、火星については地球で大災害が発生した場合の「保険」になる存在だと話したという。
マスク氏は8日、ツイッター側が実態のない偽アカウントに関する情報提供に応じず、買収契約の複数の条項に違反したとして同社に買収の取りやめを通知した。一方的な契約打ち切りを不服とする同社の取締役会は合意に基づく買収取引の実行を求めて米デラウェア州の裁判所に訴えを起こす方針を示している。
マスク氏はSNS(交流サイト)上の検閲的な行為が行き過ぎであるとの考えからツイッター買収に乗り出した。「ネット上の言論の自由を守る」との公約を掲げ、2021年1月の米連邦議会議事堂襲撃事件をきっかけに同社が永久追放したトランプ前米大統領のアカウントを復活させる考えも示唆していた。
米証券取引委員会(SEC)はマスク氏が4月にツイッター株大量保有の届け出期限を守らなかった問題について調査に乗り出しているほか、情報開示が遅れたことで損失を被ったと主張する一部の投資家の間では集団訴訟の動きが広がる。マスク氏は今後、多くの訴訟を通じて様々なステークホルダー(利害関係者)と向き合うよう迫られる可能性がある。
●決算関連
●マクロ・その他
辞任表明したジョンソン英首相の後継を決める与党保守党の党首選で、ザハウィ財務相とシャップス運輸相、ジャビド前保健相、ハント元外相が9日、出馬を表明した。英メディアが報じた。スナク前財務相やトゥゲンハート下院外交委員長らも既に名乗りを上げており、候補者が乱立している。
ザハウィ氏はイラク出身。教育相を務めていたが、5日に辞任したスナク氏の後任として財務相に就任した。ザハウィ氏は9日、スカイニューズ・テレビに「私の目的は単純だ。誰であれ、どこの出身であれ、全ての英国民に機会を与えること。船を安定させ、経済を安定させることだ」と語った。
シャップス氏はジョンソン氏の側近の一人だったが、6日に他の閣僚らと共にジョンソン氏に退陣を勧告した。9日のサンデー・タイムズ紙によると、シャップス氏は弱者への減税や企業支援に意気込みを示した。
ジャビド氏はスナク氏と同時に保健相を辞任し、首相退陣への流れをつくった。日本通として知られるハント氏は前回党首選で決選に進んだ。
トラス外相も出馬をうかがっているとされ、10人前後の立候補が見込まれる。有力視されたウォレス国防相は9日、不出馬の意向を表明した。党の現行規定では、所属下院議員による予備投票を重ねて最終的に候補者を2人に絞り、党員も含めた決選投票で新党首を選出する。
党首選の日程は週明けに発表され、新党首が決まるのは9~10月になるとみられる。
国際物流網の停滞とウクライナ危機でレアメタルなど希少資源の供給不足が長期化し、関連企業が対策に動き出した。車載リチウムイオン電池大手のエンビジョンAESCグループ(神奈川県座間市)は取引先に値上げを要請した。川崎重工業はチタンの調達先を主産地ロシアから他地域に切り替えることを検討する。市況高騰と調達混乱の影響はさらに広がる可能性がある。
ブラジル地理統計院が8日発表した2022年6月の消費者物価指数IPCAは、前年同月比で11.89%上昇した。10%超となるのは10カ月連続だ。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、食料品や航空券などの値上がりが目立っている。
米労働省が8日発表した6月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から37万2000人増えた。失業率は3.6%で横ばいだった。ハイテクなど一部企業は雇用を減らし、全体でみた就業者数の急増も一服しつつあるが、逼迫した状況が続いている。
就業者数は市場予想の25万人増を大幅に上回った。5月の就業者数の増加幅は速報時点の39万人から38万4000人に修正された。失業率は3月から3.6%で横ばいが続いている。新型コロナウイルス禍の影響が深刻化する前の2020年2月に付けた3.5%という約50年ぶりの記録にほぼ並ぶ水準だ。
平均時給は市場予想通り前月比で0.3%上昇した。前年同月比では5.1%と高い伸びが続いている。
新興テクノロジー企業は4~6月にレイオフ(一時解雇)を増やしており、供給制約に直面する自動車部品会社の一部にも同様の動きがある。ただ失業者1人に対して2人分に近い求人がある現状では「レイオフされた労働者が新しい仕事を見つけるのは簡単」(PNCファイナンシャル・サービシズ)だ。雇用動態調査(JOLTS)によると非農業部門の求人件数は過去最高を更新した3月の1186万件からは減ったものの、5月も1125万件と高止まりしている。
中小・自営業者の業界団体である全米自営業者連盟(NFIB)によると、6月時点でも回答者の半数が「埋められない求人がある」と答えている。背景にあるのは働き手の減少だ。コロナ禍で仕事を辞めた60代がそのまま仕事探しをしなくなったことなどが響き、労働参加率はコロナ前の水準を下回ったまま推移している。
失業率などの雇用統計は景気の動きに追随する「遅行指数」と呼ばれる。すぐには崩れない堅調な労働市場は、FRBが急速な利上げを進める根拠となっている。FRBのウォラー理事は「埋められていない求人」があまりに多いため、利上げを進めても失業率が急に上昇する可能性は低いと分析している。
過去の米経済は失業率の上昇に合わせて景気後退局面に入ってきた。インフレを抑えつけるために経済の需要を縮小させるFRBの利上げは難しいバランスが求められる。米国の堅調な雇用情勢が悪化する兆しが鮮明になれば、金融政策の先行きは一段と見通しづらくなる。
ロシアからの天然ガス供給減で業績が悪化している独エネルギー大手ユニパーは8日、ドイツ政府に救済措置を求める申請書を提出した。独議会が同日、エネルギー企業への公的支援を可能とする関連法を承認したことを受けて申請した。同社は今後、ドイツ政府の管理下に置かれる可能性が出てきた。
南米ペルーの中央銀行は7日開いた金融政策決定会合で、政策金利を0.5%引き上げて6%にすると発表した。上げ幅は前回会合と同じで、利上げは12会合連続となった。ロシアによるウクライナ侵攻を受けてエネルギーや食料品の価格が上昇しており、加速するインフレを抑制する狙いがある。
20カ国・地域(G20)は8日の外相会合でロシアのウクライナ侵攻に伴う食料とエネルギーの需給逼迫の問題を協議した。ただロシアと日米欧の間で非難の応酬となって歩み寄れず、G20の機能不全ぶりは強まるばかりだ。
8日午前に始まった実質協議で、林芳正外相は食料とエネルギー価格の高騰は西側諸国の対ロ制裁が原因とするロシアの主張は「完全な偽りだ」と指弾した。「ロシアの侵略こそが原因だ」とも訴えた。
ロイター通信によると、ブリンケン米国務長官は「ウクライナはあなたの国ではない。ウクライナの穀物はあなたのものではない」と語り、ロシアにウクライナの食料輸出を妨げないよう求めた。
日米欧など主要7カ国(G7)は足並みをそろえて会合に臨む方針を確認していた。ロシアのG20からの排除を訴える米国などには、ロシアがG20の各種会議に参加した場合のボイコット論もあったが、ロシアと後ろ盾の中国が主導権を握る事態を懸念し、会合に出てロシアの主張に反論する戦略をとった。
ロシアのラブロフ外相はクレバ氏の演説の前に退席した。ラブロフ氏は「ウクライナの港に閉じ込められている穀物は世界生産の1%未満だ」と指摘し「食料安保に影響はない」と主張した。そのうえで解決に必要なのは欧米が「ロシアと穀物(輸入)契約をしている国への商品納入の阻止をやめることだ」と持論を展開した。
議長国のインドネシアのルトノ外相は会合終了後の記者会見で「すべての出席者が食料とエネルギーの価格高騰に懸念を示した」と表明した。そのうえで「出席者は世界の食料とエネルギーの安保強化に向けG20の協力を進めることを約束した」と訴えた。
G20外相会合はロシアが2月下旬にウクライナに侵攻した後、ロシアや後ろ盾となる中国、両国と対立するG7などの外相が対面で一堂に会する初の機会となった。ただ8日の実質協議の開始前からウクライナ問題をめぐる参加国間の亀裂があらわになった。
米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、高インフレを抑えるため、7月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ないし75bpの利上げが議論されるとの認識を示した。
総裁は8日、プエルトリコ大学で講演後、記者団に対し「フェデラルファンド(FF)金利は約1.6%で推移しており、なお年末までに必要とされる水準を大きく下回っている」と指摘。7月26-27両日に開催される次回FOMC会合での利上げ議論について、「50ないし75(bp)が妥当」と述べた。
講演では、6月のFOMC会合での75bp利上げについて、「新型コロナウイルス禍の初期に取った非常に緩和的なスタンスから迅速に離れるという意味で極めて重要なステップだった」と指摘した。
また「今後の利上げペースや、どの水準まで引き上げるかの判断においては、経済が金融環境の引き締まりにどう反応するか、またインフレとインフレ期待、経済見通しがどう変化するかを注視していく」と説明。「われわれは政策へのアプローチにおいてデータに基づく姿勢を取り、機敏になる」と付け加えた。
ウィリアムズ総裁は労働市場について「極めてタイト」だとし、金融当局の責務である最大限の雇用確保は「達成されている」と付け加えた。その上で、インフレ抑制を目的とした政策引き締めにより失業率はやや上昇するとの見通しを示した。
総裁は「米国の実質GDP(国内総生産)成長率については、今年は1%未満になると現在予想している。来年はやや改善し1.5%程度になるだろう」と述べた。その上で、「全体の成長が潜在成長率を下回るペースに減速することを踏まえ、失業率は現在の非常に低い水準から上昇し、来年には4%をやや上回る水準に達すると見込まれる」と述べた。
●市況
日経先物(大証)26800、ダウ先31355、債先149.02、米3.080、独1.3335、仏1.878、西2.410、伊3.365、波6.659、原油104.80、ドル円136.12、墨ペソ20.46、トルコリラ17.2780、墨CDS175
※7/8 NY引け値


備忘録(7/6
●中国・ロシア・東欧
中国財政省は地方政府に対して7-12月(下期)に1兆5000億元(約30兆円)相当の特別債発行を許可することを検討している。景気てこ入れを目指しインフラ投資を加速させる。
公に話す権限がないとして匿名を条件に述べた関係者によると、債券発行は来年の発行枠から前倒しされる。このような発行前倒しは前例がなく、中央政府が景気への懸念を深めていることがうかがわれる。
通常は地方政府債の発行は新会計年度が始まる1月1日以降になる。このスケジュールの変更は国務院による審査が必要で、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)の承認も必要な可能性があるという。
この地方債発行で調達した資金の大半は、従来の景気対策同様にインフラ投資に使われる見通しで、ここ数週間に発表された合計1兆1000億元規模のインフラ拡充策に上乗せされる。中国政府は年間5.5%前後の経済成長目標を達成するため景気を立て直そうとしている。
ソシエテ・ジェネラルのアジア太平洋調査責任者兼チーフエコノミスト、姚煒氏は「地方政府がさらに多くの資金を必要としていることは、しばらく前から明らかだった。本日のニュースは、中央政府が依然として自らのバランスシート拡大には消極的であることを示唆している。代わりに地方政府の債券発行枠を2023年から前倒しするとのことだが、それは来年に財政の崖が生じることを意味する」と述べた。
それでも、中国の成長目標達成は「困難を極める」と姚氏は指摘。ソシエテは中国の今年の成長率を4%と見込む予想を堅持すると明らかにした。
ブルームバーグが調査したエコノミストの予想によると、来週発表される中国の4-6月の国内総生産(GDP)は、前年同期比約1.5%増となる見込み。しかし6月の高頻度データは、一部都市のロックダウン(都市封鎖)が長引く影響で4-6月の景気縮小を示唆している。
調査会社ローディアム・グループの中国市場調査責任者、ローガン・ライト氏は「4-6月のGDPがプラスの伸びになりそうだと思わせる話は存在しない。世帯消費の減少は小売売上高の公式統計と他の代理指標でいずれも極めて顕著だ。不動産セクターも引き続き大きな妨げになっている」と指摘した。
TSロンバードの輸送データ分析によると、中国国内の乗用車のトラフィックは7月にかけ昨年の水準をほぼ下回っていた。またバリフライトによれば、4-6月の国内航空便の運航本数は前年同期比で62%減少した。
GDPとの密接な関連を専門家が指摘する都市を結ぶトラック輸送も伸び悩んでいる。デジタル物流会社G7コネクトのデータによると、6月最終週のトラックのトラフィックは前年同期を約20%下回った。
ウクライナのボドナル駐トルコ大使によると、トルコの当局は今月3日までに、ウクライナの占領地域で盗んだ穀物を積んでいるとされるロシアの貨物船「ジベク・ジョリ」をウクライナ側からの要請に基づいて拿捕していた。ウクライナはトルコに窃盗の証拠などを提示していたという。
ウクライナ外務省のニコレンコ報道官は7日、ツイッターでこの貨物船が解放されたとして遺憾の意を表明した。
ロイター通信は情報会社リフィニティブのデータとして、ジベク・ジョリが6日深夜に黒海沿いのトルコ北部カラス港を出港したと報じた。一方、ロシアは同船が拿捕された事実を否定しており、トルコも公式には拿捕を認めていない。
ウクライナはロシアが占領地で穀物を盗み、違法な輸出を繰り返していると主張してきた。外交ルートを通じて、経由地となっているトルコ当局に取り締まりを要請していた。
中国政府は7日、地方政府に対して新車販売の支援に向けた通知を出した。地元の電気自動車(EV)メーカーを優遇することを禁止するほか、充電スタンドの設置を積極的に後押しすることなどを求めた。6月の新車販売台数が4カ月ぶりの増加に転じたことを受け、さらなる拡大につなげる。
●中東
●コロナ
新型コロナウイルスの感染が世界で再び広がっている。世界保健機関(WHO)は6日、世界の新規感染者数がこの2週間で30%近く増えたと明らかにした。オミクロン型の新たな派生型で、感染力がより強いとされる「BA.5」などへの置き換えが進んでいるため。死者や重症者数は抑えられ、行動制限に踏み切る動きは少ない。
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
ソフトバンクグループ(SBG)の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)を統括するラジーブ・ミスラ氏が、「ビジョン・ファンド2(SVF2)」の運営会社の最高経営責任者(CEO)を退くことが7日、明らかになった。SBG以外で新たなファンドの立ち上げに参画するため。SBG副社長や大型のユニコーン企業に投資する「ビジョン・ファンド1(SVF1)」の責任者は続投する。
シンガポール航空は7日、環境負荷の少ない再生航空燃料(SAF)を使った運航を始めたと発表した。SAF利用拡大を目指す同国の実証実験の一環。今後1年間に1000トンのSAFを使い、二酸化炭素(CO2)排出を2500トン減らす。2050年までの排出実質ゼロ達成を目指す。
実証実験は同社と政府系投資会社のテマセク・ホールディングス、政府民間航空局が共同で進める。傘下の格安航空会社(LCC)、スクートも含めたシンガポール発の航空便が対象となる。シンガポール航空のリー・ウェンフェン上級副社長は「SAFは航空会社の脱炭素実現のカギだ」と述べた。
「持続可能な航空ハブ」を目指す同国では、SAF供給網の整備が進む。シンガポール航空が使用するSAFはフィンランドの再生燃料大手のネステ社製で、食用廃油や動物油脂を再利用している。当面はフィンランドからの輸入だが、ネステはシンガポール工場の拡張を進めており、23年3月までに年産100万トンのSAF生産を始める計画だ。
単月ベースの営業損益が7月で黒字に転じるとの見通しを明らかにした。本業のもうけを示す損益が黒字化すれば2021年10~12月期以来となる。
「業績は順調だ」。芝田浩二社長は強調した。23年3月期の連結営業損益は500億円と3期ぶりの黒字化を目指している。芝田社長は「22年4~6月期は利益計画の想定を上回る見通し」と語った。
その背景の一つが国内線の需要回復だ。ANAブランドと傘下の格安航空会社(LCC)のピーチ・アビエーション(大阪府田尻町)をあわせた旅客数は4~6月期、コロナ前の19年比7割に回復した。7~8月は同9割まで回復すると見込む。ANAブランドの国内線は4月末時点で、23年3月末にコロナ前の19年比の9割に回復するとの見通しを示している。
国際線も政府の水際対策緩和以降、回復傾向にある。芝田社長は国際線旅客数について「計画より上振れしている」と話した。国際線の旅客数は4月末時点で、4~6月期にコロナ前比25%、23年3月末に同4割の回復を見込んでいたが、4~6月期は計画を上回って推移している。
ミスラ氏は新ファンドのために中東の投資家などから既に60億ドル(約8150億円)余りを確保しており、同ファンドは複数の戦略を組み合わせて投資するという。元同僚のアクシェイ・ネヘタ氏もミスラ氏の新事業に加わる。
ブルームバーグが確認した内部文書によると、ミスラ氏はビジョン・ファンド1号の最高経営責任者(CEO)にとどまり、ソフトンバンクGのより広範な投資部門の副会長になる。現在のミスラ氏の役割は孫氏が引き継ぐという。
米製薬大手メルクががん治療薬に強い同業の米シージェンの買収へ向け交渉していることが分かった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが6日報じた。買収総額は400億ドル(約5兆4000億円)に達する可能性がある。
メルクはシージェン株1株あたり200ドル以上での買収案を提示している。5日終値は176ドルだった。同紙によると、両社は数週間以内に交渉をまとめる方向で調整しているが最終合意に至らない可能性もあるという。
1990年代後半に創業したシージェンは、がん治療薬を中心に2021年通期の売上高が約16億ドルだった。がん免疫薬「キイトルーダ」など大型薬を抱えるメルクは、シージェンの買収によってがん治療薬の製品群を拡充する狙いだ。
●その他産業
イーロン・マスク氏は8日、ツイッターを440億ドル(約6兆円)で買収して非公開化するとの合意を撤回することを明らかにした。ツイッターが同社サービスにおけるスパムや偽アカウントなどボットの数を巡って「誤解を与えるような説明」をしてきたと主張している。
マスク氏の当局への届け出にはツイッターに宛てた書簡が含まれている。書簡の中で同氏は、ツイッターが契約上の義務に従わず、自社のソーシャルメディアサービスで偽アカウントがどれだけ広がっているのか、その算定方法に関する情報を提供していないと訴えた。
マスク氏はこの数カ月、ユーザー基盤に含まれるスパムなどボットの数をツイッター側が少なく報告していると不満を表明していた。一方、ツイッターは同氏の主張を否定し、利用者全体に占めるボットの割合は5%未満にとどまっていると説明。同社幹部は7日の会見でも見積もりは正確だとの見方をあらためて示していた。
マスク氏と同氏のチームはボットに関する追加情報をツイッターに求めたものの、要求を満たすには不十分だったと書簡は指摘。同氏はボットの規模が5%を大きく上回ると信じていると証拠を示さずに書簡で説明した。
マスク氏とツイッターの合意には、物別れに終わった場合に合意を破った側が特定の状況下で10億ドル相当の解除手数料を支払うとの条項が含まれていた。ボットを巡る対立がマスク氏の合意撤回を認めるのに十分なのかは法律の専門家でも議論になっている。
さらに、マスク氏が手数料を支払えばそれで済むという話にならない可能性もある。当初の届け出によれば、合意にはツイッターがマスク氏に取引を完了させることができる具体的な履行条項が入っており、法廷の場で争われた場合、ツイッターは合意違反の金銭的補償の受け取りではなく、マスク氏に対する取引完了命令を確保することもあり得る。
●決算関連
●マクロ・その他
オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が7日発表した6月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率は6.39%と、5月に比べ0.02ポイント上昇した。上昇は2カ月ぶり。新型コロナウイルス感染対策の行動制限が緩和され、新たに契約する企業が増える一方、本社機能の集約などに伴う縮小移転で大型ビル解約の動きがみられた。
供給過剰の目安となる5%を17カ月連続で上回った。空室率は2021年12月以降、小幅な上下を繰り返し、膠着状態が続く。地区別では千代田、中央、新宿、渋谷の4区で空室率が上がった。港区は8.13%と前月より0.08ポイント下がった。
平均募集賃料は3.3平方メートル当たり2万273円と5月に比べ46円(0.23%)下がった。下落は23カ月連続。23年以降の新築ビルの大量供給を見据え、入居テナントを早めに確保するため、オーナーが賃料水準を下げる動きが目立つ。
オフィス仲介大手、三幸エステート(東京・中央)の今関豊和チーフアナリストは「オフィス需要の回復がみられる半面、好立地、かつ換気やセキュリティー対策などの設備が整った物件に応募が集中する傾向がみられる」と指摘する。大手企業を中心に入居するオフィスの取捨選択が進めば、空室率は一段と高まる可能性がある。
外国為替市場でドルに対するユーロ安が進み、保有するユーロ建て資産のドル換算額も減った。国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)や金のドル建て価値が下がった影響も出た。
IMFが3カ月ごとに公表する調査によると、22年3月末時点の世界の外貨準備高は12兆5501億ドルと、21年12月末時点に比べ2.9%減った。3カ月前から減少するのは1年ぶり。世界的な金利上昇で保有するドル資産を中心に外貨準備が目減りしたもよう。足元では資源価格の高騰なども続く中、自国通貨安を食い止めるために買い介入に動く国もあるようだ。韓国の中央銀行は為替介入の実施を事実上認めた。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「外貨準備が為替に依存して増減するのは当然だ。現時点で深刻な状況ではないが、円安基調が続くなか、水準がさらに減るかは見通しにくい」と指摘する。
スリランカのラジャパクサ大統領は6日、ロシアのプーチン大統領に支援を要請したと明らかにした。同国は外貨不足で燃料などの輸入が滞り、記録的な物価上昇に見舞われている。ウィクラマシンハ首相は議会で「破産国家」として国際通貨基金(IMF)との金融支援交渉に臨むと述べた。
ラジャパクサ氏は6日、プーチン大統領と遠隔協議を実施したとツイッターで明らかにした。「燃料輸入に向けた信用支援」などを求めたうえで、観光や貿易について2国間関係を強化していく方針で一致したという。
スリランカでは新型コロナウイルス禍で経済の柱である観光業が低迷し、5月末時点の外貨準備高は約19億ドル(約2600億円)と、2019年末(約76億ドル)の3割以下の水準に落ち込んだ。
外貨不足で食品や燃料の輸入が停滞し、政府はガソリンなどの販売規制に踏み切っている。地元メディアによると、給油所の列に数日間並んでいた男性が死亡するなどの惨事も相次いでいる。
米国の住宅ローン金利が週間ベースで2008年以来の大幅低下を記録した。フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の7日発表によると、30年物固定金利は平均5.3%。前週の同5.7%から下がり、1カ月ぶりの低水準となった。
フレディマックのチーフエコノミスト、サム・カーター氏は「住宅ローン金利の低下は買い手に小さな救いを与えるものだ。住宅取得能力の低さと予想される景気減速の組み合わせで住宅価格の伸びが大幅に鈍化すれば、住宅市場の正常化は続くとみられる」と述べた。
ロシアの裁判所が黒海にあるCPCターミナルからの原油荷積みを禁止するよう命じたことを受け、欧州の原油市場では取引業者の間で動揺が走っている。欧州市場は既に数年ぶりのタイトな状況にあり、競合油種の価格高騰につながっている。
ロシアの裁判所は5日、CPCターミナルの30日間の操業停止を命じた。同施設が原油漏れ防止計画に違反していたことが操業停止の理由だという。このターミナルからは、カザフスタン産を中心とする3000万バレル余りの原油が毎月輸出されている。
実際に操業停止となれば、リビアの情勢不安で大量の供給を失い、他地域からの供給も急減している欧州の原油市場に新たな衝撃となる。今のところ、同ターミナルは通常通りの運営が続いている。
アゼルバイジャン産のアゼリライト原油は指標のデーテッドブレントに対するプレミアムがバレル当たり10ドル超となった。複数のトレーダーによると、これは最高水準。アゼリライトは低硫黄のため、欧州の製油業者の間で人気が高い。ナイジェリア産のフォルカドス原油の上乗せ幅は同14ドルとなった。
CPCの操業停止は執行官の到着後に開始される予定となっている。これに対し、ターミナルを運営するカスピアン・パイプライン・コンソーシアム(CPC)は上訴し、突然の停止となれば、恒久的なダメージを引き起こす恐れがあると主張し、操業停止命令の延期を求めている。
日本半導体製造装置協会(SEAJ)は7日、2022年度の半導体製造装置(日本製)の販売高が前年度比17%増の4兆283億円になるとの需要予測を発表した。増加は3年連続。今年1月時点の見通し(3兆5500億円)から上方修正し、統計開始以来、初の4兆円台となった。
公表資料によると、19年から続くロジックやファウンドリーの積極投資が22年以降もさらにスケールアップして継続すると予測。量の需要拡大に加え、性能の進化要求やデータセンター、サーバー向けの比重が高まることで投資の増加が期待されるという。
牛田一雄会長(ニコン取締役会議長)は記者会見で、「半導体は国家レベルでの注目事項になっている」と指摘し、「大きな流れとして、半導体がますます重要で質量共に増えていくのは間違いない」と述べた。半導体不足については解消時期は明言しなかったが、しばらく続くとの認識を示した。
同時に公表した23年度の販売見通しは、前期推定比5%増の4兆2297億円(1月時点では3兆7000億円)。今回初めて予測数値を示した24年度は、同5%増の4兆4412億円を見込む。
リントナー財務相は財政赤字を増やせば歴史的な高水準にあるインフレをさらに助長しかねないとして、ドイツとユーロ圏他国は2023年から公的債務を圧縮する必要があると主張していた。だが、政府内で優勢な見解は変化しつつある可能性がある。
匿名を条件に語った関係者によると、同国連立政権の閣僚の間では、ロシアが予定するメンテナンス作業を理由に主要ガス供給パイプライン「ノルドストリーム1」の稼働を長期にわたり停止するような緊急事態に陥る場合、ドイツは従来の財政計画を維持できないという暗黙の合意がある。
ドイツはロシア産ガスへの依存度が高く、代替の供給元をすぐに見つけることもできない。このためロシアのガス供給が完全に止まれば、リーマン・ブラザーズ破綻による金融危機と新型コロナウイルスの大流行が同時に発生したのに匹敵する衝撃に見舞われるだろうと連立政権内では理解されているという。
メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)が7日発表した6月の消費者物価指数は、前年同月と比べて7.99%上昇した。2001年1月以来の高水準だった。ジャガイモやオレンジなどの食料品の価格が大幅に上がった。メキシコ銀行(中央銀行)は利上げを続けているが、物価上昇が加速している。
6月は食料品と飲み物、たばこの価格が前年同月と比べて11.84%上がった。野菜と果物の価格は14.39%上昇した。農産物やエネルギー価格を除くコアインフレ率は7.49%だった。ライムやブドウなど一部の食料品は落ち着きつつあるが、前年に比べると高止まりした状況が続いている。
中銀は6月23日に政策金利を0.75%引き上げて7.75%にした。利上げは9会合連続。米連邦準備理事会(FRB)の急速な金融引き締めと世界的なインフレの加速を受け、これまで0.5%だった利上げペースを引き上げた。インフレは収まっておらず、市場では中銀が今後も大幅な利上げを続けるという見方がある。

備忘録(7/6
●中国・ロシア・東欧
中国汽車工業協会は6日、6月の新車販売台数が4カ月ぶりに前年同月実績を上回るとの見通しを発表した。自動車産業の集積地である上海市でロックダウン(都市封鎖)が解除され、欧米の合弁工場などの生産が回復したほか、中国政府の販売刺激策が奏功した。
再開発地区の住民に立ち退きを求める場合、地方政府は代替の住宅を整備したり、これまで住んでいた物件に応じて価格を決める「住宅券」を発行したりする。住民は新たな住宅を買う時に、住宅券を購入代金の一部として使える。
今春から広まった住宅市場の支援策は、住宅券を使った購入時に補助金を支給する措置だ。中国メディアによると、少なくとも15都市がこの支援策を打ち出した。
在庫物件の消化を促す狙いがある。売れ残りが減れば、不動産開発会社が新たなマンション開発に動き、国有地の使用権を地方政府から購入する必要が出てくる。結果として、地方政府の土地収入の落ち込みも和らぐとの算段がある。
中国中央部の河南省の省都、鄭州市は1年以内の住み替えを条件に住宅券の金額を8%積み増す。新居に入居するまでの3カ月間の賃料なども現金で補助する。
東部の浙江省寧波市の一部エリアは、住宅券の発行から3カ月以内に新規物件を買えば、最大で住宅券の額面の10%を補助する。東部の江蘇省宿遷市泗陽県は最大10万元(約200万円)を支給する。
不動産シンクタンクの易居不動産研究院によると、主要100都市の新築住宅取引面積は21年6月から前年同月を下回り、今年6月は34%減少した。バブル抑制を目的とした住宅ローンなどの金融規制に加えて、新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策による景気の悪化が追い打ちをかけた。
販売不振で物件の在庫は積み上がっている。中国国家統計局によると、5月の在庫面積は前年同月から15%増えた。「チャイナ・ショック」と呼ばれ景気が減速していた15年8月以来、6年9カ月ぶりの伸びとなった。
習近平(シー・ジンピン)指導部は「地域の実情に合わせた政策で、不動産業の好循環と健全な発展を促す」との方針を掲げている。地方政府はこれまでも独自の不動産支援策を打ち出してきた。
マンション市場が変調を来していた21年夏以降、まずは大幅な値下げ販売を規制する動きが広がった。資金繰り難に直面した中国恒大集団など大手不動産会社が地方都市で値下げに走ると、地元の中小不動産会社の収益も悪化しかねないと判断したためだ。
日系自動車大手4社の6月の中国での新車販売台数が6日出そろった。トヨタ自動車とホンダは前年同月比で約2割増えた一方、日産自動車は約5%減、マツダは4割減だった。6月に上海市のロックダウン(都市封鎖)が解除されて生産が通常体制に戻り減税も追い風になったが、販売の回復には差が出ている。
トヨタは19.2%増の20万100台で3カ月ぶりに前年実績を上回った。「新型コロナウイルスの感染と対策の緩和を受け、各工場は通常稼働に戻り、販売店もほぼ全店で営業を再開した」(トヨタ)という。中国政府が6月に始めた乗用車の自動車取得税を半減する減免措置の効果もあって「カローラ」などの主力車種の販売が伸びた。
ホンダも19.4%増の14万1142台で4カ月ぶりのプラスになった。5月まで生産調整を実施していたが6月に入り通常出荷に戻ったという。同社も減税の効果を受けて「CR-V」「アコード」などの主力車種の販売が堅調だった。
ラトビアは2004年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟。07年に徴兵制を廃止していた。
23年1月に再開し、最初は任意の募集だが、5年以内に18~27歳の男性に兵役を義務付ける計画。兵役期間は12カ月で、女性も応募できるようにする。
仏エネルギー大手のトタルエナジーズは6日、ロシア北極圏のハリャガ油田から撤退すると表明した。保有する20%の権益全てを筆頭事業者のロシア石油会社ザルベジネフチに譲渡することで同社と合意した方。ロシアのウクライナ侵攻を受けてロシアでの事業を段階的に停止する方針を3月に表明しており、その一環で撤退を決めた。
●中東
アッバス氏率いるパレスチナ主流派組織ファタハはハマスと長年対立しており、2人が会うのは2016年以来とみられる。
アッバス、ハニヤ両氏は、アルジェリアで行われたフランスからの独立60周年を祝う式典に参加し、アルジェリアのテブン大統領が仲介したという。会談の内容は明らかでないが、イスラエル紙ハーレツは「選挙への道を開く期待から行われた」と報じた。
パレスチナでは昨年、15年ぶりとなる評議会(議会)選が予定されていたが、イスラエルが東エルサレムでの投票を認めないことを理由に、アッバス氏が延期を表明。ハマスが勝利する公算が大きかったことも判断に影響した可能性が指摘されていた。
●コロナ
米国で新型コロナウイルスのオミクロン型の新たな派生型が急速に広がっている。米疾病対策センター(CDC)は「BA.5」が5割に達したと推計する。新規感染者は10万人前後と高い水準だが、死者数は低く推移しており、マスクの着用義務を復活させる動きはほとんどみられない。
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
エーザイは6日、米バイオジェンと開発するアルツハイマー病の治療薬候補「レカネマブ」について、米食品医薬品局(FDA)が申請を受理したと発表した。FDAから優先審査の指定を受け、審査終了日を2023年1月6日とすることも決めた。
今回の申請内容は第2相の試験のデータが含まれている。エーザイの内藤晴夫最高経営責任者(CEO)は「FDAの審査に積極的に協力し、一日でも早く新しい治療オプションを当事者や家族に届けたい」としている。エーザイとバイオジェンは、22年5月、「迅速承認制度」を活用した段階的申請をしていた。
エーザイとバイオジェンは2014年にアルツハイマー病治療薬の共同開発・販売に関した提携を結んでいた。ただ、新薬候補の一つ「アデュヘルム」は収益拡大が困難で、契約関係を見直していた。それだけに、次の新薬候補であるレカネマブの収益貢献が期待されている。
EUの欧州委員会は2月に原子力とガスを「持続可能」と分類する案を公表。6日の欧州議会の採決で賛成は328、反対278、棄権33だった。欧州委案を拒否するには過半数の353の反対票が必要だった。
原子力やガスが環境面で持続可能な事業と認められ、ESG(環境・社会・企業統治)投資を呼び込みやすくなる。欧州委は発電中に温暖化ガスを排出しない原子力と、石炭よりも排出が少ないガスに民間投資が集まることで、気候変動対策やエネルギー供給に貢献すると説明した。
ただ一部の加盟国や欧州議員にはなお反対論がある。EU憲法などに違反するとしてEU司法裁判所への提訴を模索する動きもある。
英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、夏の旅行シーズンのピーク期に予定する欠航を1万300便追加する。人員不足の対応に同社は苦慮しており、欧州の空の便の混乱に拍車がかかりそうだ。
BAは今週初めにも夏の運航便削減を発表していた。欠航となるのは合計で、予定されていた便数の約13%に上る。全て短距離路線で、長距離路線は影響を受けない。
●その他産業
同社の輸送網を利用して倉庫や店舗に商品を届ける一部の納入業者から集荷費用の徴収を始める。燃料価格の高騰など輸送コストの上昇分を相殺し、高インフレが続くなかで小売価格への過度の転嫁を抑えて価格競争力を保つ狙いだ。
ボルヌ首相は6日の議会演説で、「気候の緊急事態においては強力で急進的な決断が求められる。われわれは生産とエネルギーの未来を完全にコントロールする必要がある。戦争の影響や先行きの大きな試練に直面する中、われわれの主権を守らなくてはならない」と説明。「EDFの資本100%を保有するという国の意思を、私がきょう確認するのはそれが理由だ」と述べた。
フランスのボルヌ首相は6日、国が株式約84%を保有する仏電力公社(EDF)を100%国有化すると発表した。EDFは多額の負債を抱えており、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰や、温暖化への対策を迅速に進めるために必要だと説明した。
●決算関連
●マクロ・その他
チュニジアは、2011年の中東・北アフリカの民主化運動「アラブの春」の後、民主主義への移行を遂げた唯一の成功例としての地位を固めたようにみえた。同国が前に採択した憲法は、2年間の公の議論を経て法改正された。
それから8年たった今、チュニジア国民の承認を待ち受けている新憲法案は、議会を停止するために戦車を送り込んだ大統領の下、20日足らずで作成されたものだ。
世界にインフレをもたらしてきた商品相場が変調している。米国の原油先物は5日、約2カ月ぶりに節目となる1バレル100ドルを下回った。鋼材価格もウクライナ侵攻前比で15%下げた。各国がインフレを抑えるために金融引き締めを急いでいる点で商品安は狙い通りともいえるが、市場には景気後退への懸念も広がる。中国の景気回復は鈍く、ガスなど供給制約もくすぶる。物価と景気の安定には遠い状況だ。
ヘッジ付き米10年国債利回りは0.24%と2020年12月以来の水準まで低下。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のため3月から段階的に利上げを進める中、ヘッジコストは年初の0.3%水準から7月初めには2.6%近くまで上昇。一方で、米10年国債利回りは6月に3.5%付近まで上昇後、2.8%台まで低下している。
ニッセイアセットマネジメント債券運用部の三浦英一郎リードポートフォリオマネジャーは、「米10年債利回りは3.5%で年内のピークを付けた可能性があり、これを超えるにはリセッション懸念が急激に修正されないと難しい」と指摘。生保の年度計画でもヘッジコスト悪化は織り込み済みで「ヘッジ付き外債に積極的でなく円債回帰といった方向性はあまり変わらないだろう」とみる。
シティグループの商品調査グローバル責任者エド・モース氏は、燃料価格が上昇する中、石油の需要見通しはこの先一段と下方修正される可能性が高いと指摘している。
米連邦捜査局(FBI)と英情報局保安部(MI5)のトップは6日、中国は経済や安全保障への「最大の脅威だ」との認識を示した。産業スパイなどを通じてあらゆる手段で西側の技術を盗もうとしているとして、企業に警戒を呼びかけた。
経済危機に直面しているスリランカのウィクラマシンハ首相は5日、議会で演説し、国の「破産」を宣言した。危機的状況は来年も続く見通しで、混乱の長期化は必至。ガソリンなどの燃料が極度に不足しており、AFP通信によると、給油所で自動車に乗って数日間列に並んでいた60歳の男性が車内で死亡しているのが5日見つかった。
米供給管理協会(ISM)が発表した6月の非製造業総合景況指数は約2年ぶりの低水準になった。人材確保が引き続き難しく、供給が制約されている中、受注が軟化した。
新規受注が2ポイント低下したものの、ISM製造業指数の生産に相当する業況指数は上昇。需要の伸びが昨年終盤より鈍化しているものの、依然として堅調であることを示唆した。
高インフレを背景に総合景況指数は過去7カ月で6回低下、昨年11月に付けた過去最高水準から約13ポイント低下している。仕入価格の指数は80.1に低下したものの、なお高水準を維持した。
ISM非製造業景況調査委員会のアンソニー・ニエベス委員長は発表文で、「ロジスティック問題や制限のある労働力、原材料不足、インフレ、新型コロナウイルスの感染拡大、ウクライナでの戦争がサービスセクターに引き続き悪影響を与えている」と指摘した。
6月は全18業種が活動拡大を報告。鉱業や建設などで拡大が目立った。
雇用指数はほぼ3ポイント低下して47.4と、2020年7月以来の低水準で縮小を示した。
人材確保の困難がリードタイム(発注から納品までにかかる時間)や受注残が加速している要因かもしれない。過去2カ月低下していた受注残の指数は前月比8.5ポイント上昇。1カ月の伸びとしては過去4年余りで最大となった。
在庫指数は今年の最低水準に低下した。
●市況
日経先物(大証)26247、ダウ先31006、債先149.31、米2.917、独1.1655、仏1.768、西2.299、伊3.250、波6.657、原油98.27、ドル円135.96、墨ペソ20.65、トルコリラ17.2223、墨CDS173
※7/7 9時45分頃

備忘録(7/5
●中国・ロシア・東欧
中国・上海市は5日、市内全16区のうち9区で新型コロナウイルスの大規模検査を始めた。過去2日間で複数の感染者が見つかったことを受けたもので、中国の金融ハブである同市が「ゼロコロナ政策」追求の中で再度ロックダウン(都市封鎖)に入るとの懸念が強まっている。
上海市政府が5日、対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の公式アカウントに掲載した発表文によると、9地区の全域以外に3地区の一部で検査を実施する。「リスクを可能な限り早期に特定し感染拡大を防ぐ」目的で、今週5-7日の3日間に2回にわたって行う。

人口2500万人の同市は、住民と経済に多大な犠牲を強いた2カ月間のロックダウンを先月解除したばかり。制限措置を緩和して間もなく感染者数の増加が報告されていることは、より感染力の強い変異株根絶の難しさを示している。
中国政府がハイテク製品の外資排除を拡大することを受け、中国で事業を展開する日本企業は対応を迫られる。中国での製品流通に使う「国家標準」の刷新により国内での設計や開発、生産を求められ、日本勢など外資企業は競争力の源泉となる中核技術の供与を迫られる。企業は巨大市場の開拓と自国の経済安全保障との間で難しいかじ取りを求められる。
バルト3国の一つリトアニアがロシア本土から同国西部の飛び地カリーニングラード州に向けた欧州連合(EU)制裁対象の貨物を積んだ列車の通過を禁じた問題で、アリハノフ・カリーニングラード州知事は5日、同州以外のロシア領とバルト3国との間の貨物通過を全面禁止する対抗措置も検討されていると述べた。リトアニア側への警告とみられる。タス通信が伝えた。
スイス南部ルガノで開いたウクライナの復興を議論する国際会議は最終日の5日、復興の指針をまとめた成果文書「ルガノ宣言」を採択して閉幕した。デジタル化を軸に社会・経済の再興を図る構えで、地域別に担当国を決めて支援する構想も浮上した。ただ侵攻の長期化で再建コストが膨張する可能性もある。
ロシアはウクライナ東部ルガンスク州の制圧を表明したが、欧米諸国の武器提供などで巻き返せるとの見方を示した。ロシアは東部ドンバス地方の完全支配に向け、ドネツク州での攻勢を強めている。
●中東
米国のバイデン大統領が15~16日、サウジアラビアを訪問する。ウクライナに侵攻したロシア包囲網強化へ、ほぼ唯一原油の増産能力を持つサウジの協力を引き出したい立場だ。人権を重視する米国内のリベラル派からの圧力も強まるなか、77年続いた石油と安全保障を巡る「盟約」は書き換えを迫られている。
サウジは、蜜月と呼ばれたトランプ前政権時代と打って変わり、人権問題に厳しい目を向けるバイデン氏に不信感を抱いている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、皇太子は21年9月、サウジを訪れたサリバン米大統領補佐官との会談で、記者殺害事件が話題にのぼるや声を荒らげて怒り、増産要請を突っぱねたという。米当局者は報道を否定したが、関係者によると「会談は友好的とほど遠いものだった」。
「皇太子に会いに行くのではない。国際会合に出る。そこに彼が参加する」。国内のガソリン価格引き下げのため皇太子に増産を頼み込むのではないか。そんな批判を意識するバイデン氏はあくまで地域機構の首脳会議の席で皇太子と会うと主張する。会談の形式をめぐる調整、駆け引きが続いている可能性がある。
「あり得ない組み合わせの結婚」と評される米サウジ同盟の始まりは、1945年、ルーズベルト大統領がヤルタ会談の帰路、初代アブドルアジズ国王と会談したことにある。
民主主義のリーダーと閉鎖的な王制国家のあいだの、石油と安保をめぐる戦略的な互恵関係は77年続いた。石油の時代の終わりが近づくなか、矛盾をはらんだ関係は見直しを迫られる。
英王立国際問題研究所のニール・キリアム氏は「米国にとってサウジの価値は個人的な好き嫌いを超える重要性を持つ」と指摘する。
中間選挙を前にインフレ対策に躍起のバイデン氏と、次期国王としての威信を取り戻したい皇太子。ウマの合うはずもない両者は結局、お互いを必要としている。
混迷するサウジの改革を本来の軌道に戻し、民主主義陣営に取り込むための同盟の書き換え。それはサウジと地域、世界にとっての利益となる。
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
●その他産業
ドイツ政府は天然ガス価格の高騰で業績が悪化している独エネルギー大手ユニパーに対する90億ユーロ(約1兆3千億円)規模の救済策の検討に入った。資本注入も視野に入れる。フランスなどもロシア産ガスの調達が不安定だ。多くの欧州企業のコスト高につながりかねない。ロシアによるガス供給の削減が欧州を揺さぶっている。
●決算関連
●マクロ・その他
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は5日の理事会で、政策金利を0.5%引き上げ、1.35%にすると発表した。利上げは3会合連続で、政策金利は新型コロナウイルス感染拡大前の2019年6月(1.25%)の水準を超えた。中銀は金融引き締めで加速するインフレを抑制する。足元の経済は底堅さを維持するが、急ピッチの利上げで住宅市場などを通じた景気の下押し圧力も強まりそうだ。
ロウ総裁は5日の声明で「豪州のインフレ率が政策目標内に戻るように必要なことを行う」と述べ、今後のさらなる利上げを示唆した。また1~3月期に前年同期比5.1%と約20年ぶりの高水準となった消費者物価指数(CPI)上昇率については、今年後半にピークを迎え23年には安定するとの見方を示した。
豪州ではガソリンなどの自動車燃料や生鮮食品が上昇し、CPIを大きく押し上げている。中銀が重視するエネルギーや食料品など変動の大きい品目を除く「刈り込み平均値」(コアインフレ率に相当)も1~3月期は同3.7%上昇し、政策目標(2~3%)を上回った。
足元で豪経済は堅調さを維持している。新型コロナのデルタ型を受けたロックダウン(都市封鎖)で実質国内総生産(GDP)がマイナス成長となった21年7~9月期を最後に、個人消費がけん引する形で同年10~12月期、22年1~3月期はそれぞれ前期比3.6%増、0.8%増となった。豪金融大手ウエストパックグループは23年4~6月期まで豪経済がプラス成長を維持するとの予測を出している。
ただ中銀が利上げを続ければ住宅ローン金利も上昇し、住宅価格が急激に下落するリスクが残る。住宅情報会社コアロジックによると、6月の豪住宅価格は前月比0.6%下落した。大都市の下落幅が大きくシドニーは同1.6%減、メルボルンも1.1%減となった。インフレが進む中で住宅価格の下落が続けば、逆資産効果で消費心理を冷え込ませ経済を下押しする懸念が残る。
マルコス氏は大統領選当選後の5月に「我々の権利を1平方ミリメートルも踏みにじることを許さない」と発言するなど領有権問題を重視する姿勢を打ち出している。経済協力を優先したドゥテルテ前政権が貫いた対中融和姿勢を修正する可能性がある。大統領に就任した6月30日には林芳正外相と会談し、対中国を念頭に法に基づく海洋秩序の維持・強化へ協力することで一致した。
地元報道によると、中国はマルコス氏に対し習近平(シー・ジンピン)国家主席からの招待として訪中を要請するとみられる。
マルコス氏に対しては欧州連合(EU)のミシェル大統領も訪欧を要請したほか、バイデン米大統領も訪米を要請したとされる。フィリピンによる米中との関係構築の動向次第では南シナ海の安全保障体制に影響を及ぼす可能性があり、初の外遊先をどこに選ぶかに注目が集まる。
世界の投資家心理が悪化している。独調査会社センティックスが公表した7月の「投資家信頼感指数」はマイナス14.5と、2020年6月以来およそ2年ぶりの低水準となった。米国などの金融引き締めに伴う景気後退リスクが強く意識されたほか、欧州などでのエネルギーの供給懸念が投資家心理を冷やした。
中国が新型コロナウイルスを徹底的に封じ込めようとする「ゼロコロナ政策」を緩めたことや米金融引き締めの織り込みなどから6月は4カ月ぶりに前月比で改善していたが、7月は再び悪化した。ロシアのウクライナ侵攻前の2月と比べて7月は30ポイント以上低い。「世界的な景気後退懸念に加えて、欧州ではエネルギー供給に対する懸念が高まった」(SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミスト)
国・地域別にみると、米国は前月比で10ポイント以上下落し20年8月以来の低水準となった。欧州はマイナス26.4と20年5月以来の低水準だ。「日本を除くアジア」はマイナス5.5と、前月比では悪化したものの5月(マイナス9.6)を上回った。
日本はマイナス13.4と前月比で約8ポイント下落し、約2年ぶりの低水準となっている。失望を呼んだ5月の鉱工業生産や6月の全国企業短期経済観測調査(短観)が投資家心理を圧迫したとの見方も出ている。
ユーロは一時1.4%安の1.0281ドルと、2002年12月以来の安値。この日発表されたフランスのサービス業購買担当者指数(PMI)改定値が下方修正され、短期金融市場が織り込む年内のECBの利上げ幅は140ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)未満に低下し、米国との金利格差が広がった。短期金融市場は3週間程度前には年内のECBの利上げ幅を190bp以上と見込んでいた。
ユーロの年初来下落率は9%余りに達した。過去最高のインフレ率が家計や企業を一段と圧迫する一方、ウクライナでの戦争の影響もありECBは米当局ほど速やかに金利を引き上げることができていない。ブルームバーグのオプションプライシング・モデルによると、年内にユーロが対ドルでパリティー(等価)を付ける確率は60%となり、前日の46%から上昇した。
みずほ銀行の金融機関向け為替セールス責任者ニール・ジョーンズ氏は、「パリティーは今や単に時間の問題だ」と語った。
HSBCの欧州FX調査責任者、ドミニク・バニング氏も「ユーロを巡る好材料はあまり見当たらない」と述べ、年内に対ドルでパリティーを付けると見込む。「ECBは従来の方針を堅持して7月の利上げを0.25ポイントにとどめ、利上げ加速を9月まで待つ見通しだが、他の中銀の利上げスピードははるかに速い。利回り上昇によるサポートもほぼない」と論じた。
需要に打撃を与えるリセッション(景気後退)が直撃した場合、原油相場は今年末までに1バレル=65ドルに下落し、2023年末までに45ドルに値下がりする可能性がある。シティグループがこうした見方を示した。
この見通しは、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」の産油国による介入がないことと、原油投資の減少という前提に基づいていると、フランチェスコ・マルトチャ、エド・モース両氏を含むアナリストがリポートで指摘。国際的な指標である北海ブレント原油は直近では1バレル=113ドル近辺で推移している。
シティのアナリストらは5日のリポートで、「原油については、最悪の世界的リセッション時のみに原油需要がマイナスになることを歴史的証拠が示唆している」とした上で 「ただ、原油価格は全てのリセッション時にほぼ限界費用まで下落している」と指摘した。
5日公表された月次リポートによると、6月の物流担当者指数(LMI)は65と、2020年7月以来の低水準。3月に記録した過去最高の76.2から3カ月連続の低下となった。今回は20年半ば以降初めて過去平均値も下回った。現在の同平均値は65.3。
「ロジスティクス業界の健全な拡大ペースをなお示しているが、3カ月前からは遠くかけ離れた状況だ」と同リポートは指摘した。
今回の弱い数字は「過去3カ月の経済全般の状況を反映しており、記録更新が続いた過去18カ月の拡大期から、4-6月(第2四半期)を通じて見られたかなり抑制された成長水準へと移行しつつある」ともリポートは説明。「2022年までは輸送や倉庫への需要が高く、在庫を構築するのが難しかった。6月はその反対だ」と続けた。
輸送価格の指数は61.3と、3カ月連続で低下し、輸送能力の指数61.7をわずかに下回った。「輸送価格が輸送能力を下回ると、深刻な景気の変化が起こっていることを意味することがある」とリポートは記述した。
これまでも保守党内の反ジョンソン派からの批判は高まっていたが、2人の重要閣僚の辞任はジョンソン政権にとって今までにない打撃となる。英BBCはジョンソン氏が「非常に不安定な立場になった」と指摘。「1人の閣僚の辞任なら生き残れるが、2人の重要閣僚では難しいかもしれない」と分析した。ジョンソン氏は財務相の後任にザハウィ教育相を、保健相にはバークレイ首相首席補佐官を充てた。
ジャビド氏は5日のジョンソン氏への書簡で相次ぐ不祥事を受けて「良心を持って、この政府に仕えることはできない」と辞任理由を表明した。「この状況はあなたの指導下では変わらない。私の信任も失っている」とも述べ、ジョンソン氏に辞任を促した。
スナク氏も「国民は適切に、有能に、真剣に政権運営が行われることを期待している」と記した書簡をジョンソン氏に送り、相次ぐ不祥事が辞任理由だと示唆した。スナク氏は次期首相候補として名が挙がっていた。
与党・保守党のピンチャー副幹事長が泥酔して男性2人に痴漢した件で6月30日に辞任した。ピンチャー氏を巡っては2019年の外務担当の閣外相時代にも似た事例の苦情がジョンソン氏に寄せられていたが、それでも22年2月に副幹事長に起用した。当初、首相官邸はジョンソン氏がこの苦情を知らなかったと説明したが、5日になってジョンソン氏本人が「間違いを犯した」と発言を翻した。
6月にはコロナ規制下でのパーティー開催問題をきっかけに、ジョンソン氏の辞任を求める保守党議員が一定数に達して信任投票が行われ、4割超の議員が「不信任票」を投じた。トラス外相やウォレス国防相など他の閣僚は首相を支持する構えだが、ジョンソン政権の屋台骨が急速に揺らぎ始めている。
ノルウェーで5日、石油・ガス業界の労働組合が賃上げ要求の大規模ストライキを始め、供給減への懸念がさらに強まった。ストによる減産規模は広がる見通しで、卸電力価格などにも上昇圧力をかけている。欧州の有力生産国からの供給不安がインフレに拍車をかける恐れがある。
同国のエネルギー最大手エクイノールは5日、北海の沖合で運営する3つの油田の操業休止に着手した。賃上げを求める石油・ガス業界労組と経営側の交渉が決裂したためだ。3油田の石油・ガス総生産量は日量8万9000バレル(石油換算ベース)で、天然ガスはうち日量2万7500バレル相当を占める。
ストは週末にかけて拡大が計画されている。ノルウェー石油ガス協会によると、減産規模は9日に石油が日量34万1000バレル、天然ガスは日量111万7000バレルにそれぞれ膨らむ。天然ガスではノルウェーの総輸出量の56%が失われるという。同協会は「秋冬を前にガス貯蔵の積み上げを依存している国々に重大な問題をもたらす」との声明を出し、欧州とノルウェー双方に深刻な打撃を与えると警告した。
ノルウェーは欧州連合(EU)にとって、天然ガス輸入先としてロシアに次いで2番目に大きい。EU統計局によると2021年は輸入額全体の25%を占めた。EUはウクライナ侵攻を続けるロシアからの調達削減を急いでおり、有力な供給源であるノルウェーで減産が長引けば影響は大きい。
米金融大手ゴールドマン・サックスは4日付で欧州天然ガスの相場見通しを大幅に引き上げた。7~9月期のTTFの予想平均価格は従来の104ユーロから153ユーロに変更した。ノルドストリーム経由の供給量回復が想定より遅れる可能性をより強く織り込んだ。供給量の停滞が長引く最悪のケースでは200ユーロを上回る恐れもあるとみている。
ドイツ政府は5日、調達コストの高騰で苦境に陥ったエネルギー企業への公的資金注入を可能にするため、エネルギー安全保障法の改正に着手することを決めた。エネルギー企業の破綻で供給に混乱が生じないよう万全を期す狙いがある。業績が悪化している独大手ユニパーへの救済策が検討されている。
デジタル市場法案は、ゲートキーパーと呼ばれる巨大プラットフォーム企業に自社のサービスをライバル企業より優遇したり、あるサービスで収集した個人情報を別のサービスに利用したりするのを禁じる。オンライン上で市場全体を支配するような大企業の影響力に歯止めをかける狙いだ。
デジタルサービス法案は企業に違法コンテンツへの対応を義務付ける内容だ。ヘイトスピーチや海賊版の販売などを対象にするほか、ターゲティング広告も一部規制する。
関係者によれば、ASMLに旧式の深紫外線(DUV)露光装置を一部販売させないよう米当局者がオランダ当局に働き掛けている。こうした装置は最先端品からすると一世代前に属するが、自動車や電話、コンピューター、ロボットなどに必要な汎用半導体の一部製造ではなお最も一般的に使われている。
ASMLは最先端の極端紫外線(EUV)リソグラフィーシステムについては、オランダ政府から輸出許可を得られず、中国に出荷できない状況にある。
米当局者は日本に対しても、中国半導体メーカーへの同様の技術の出荷をやめさせるよう圧力をかけようとしている。関係者1人が明らかにした。この分野ではニコンがASMLと競合している。
液浸リソグラフィーは「ArF液浸(ArFi)」とも呼ばれる。中国のファウンダー・セキュリティーズによると、ASMLは2021年にArFi機器を81台販売。ニコンの販売台数は4台で、ASMLが95%の市場シェアを握る。
●市況
日経先物(大証)26102、ダウ先30891、債先149.20、米2.822、独1.1945、仏1.809、西2.314、伊3.261、波6.691、原油101.05、ドル円135.45、墨ペソ20.53、トルコリラ17.0088、墨CDS173
※7/6 8時50分頃

備忘録(7/4
●中国・ロシア・東欧
中国の不動産開発会社である世茂集団は、ドル建て社債10億ドル(約1350億円)相当について、3日の期日に償還できなかったと発表した。同国不動産業界では今年、オフショア債の元利払いが期日に履行できない例が記録的な数に上っている。
世茂集団は香港証券取引所への同日の届け出で、他の数本のオフショア社債についても元本の償還ができていないと報告。債権者と協議を行っており、「友好的な解決策」での合意を目指していると説明した。ただ、合意に至らない場合は「債権者が支払い加速を要求する権利を有する可能性があり」、同社に対して執行措置を講じるかもしれないとしている。
中国当局による不動産業界の締め付けを背景に、同国社債の不履行は記録的な水準となっている。世茂集団については財務の健全性を巡る懸念がここ数カ月高まっており、先月には私募債を期日に償還できなかった。
世茂集団は中国不動産会社では最大級の社債発行体。ブルームバーグの集計データによれば、オンショア、オフショア合わせた発行残高は約100億ドルに上る。
ウクライナ軍参謀本部は3日夜、東部ルガンスク州の都市リシチャンスクから同軍が撤退を余儀なくされたと発表した。これにより、同州はロシア軍にほぼ完全に制圧され、隣のドネツク州を含むドンバス地方における、ロシア軍の支配面積は8割に迫る。ウクライナ側が目標としていた6月の反転攻勢が遅れた一方で、ロシア側も物量頼みの攻撃が目立ち、余裕のなさが浮き彫りになっている。
ウクライナの駐トルコ大使は3日、ウクライナから穀物を運搬していたロシアの貨物船をトルコ税関当局が「拘束した」と述べた。穀物は盗まれたものと訴えている。ウクライナ国営テレビに語った。トルコ当局者は4日、船を停止させ、ウクライナの訴えを調査していると明らかにした。ロイター通信が報じた。
トルコ当局者によると、船は、黒海に面した西部サカルヤ県カラスの港近くで停泊させている。ロイターによると、ロシア軍が制圧したウクライナ南部ベルジャンスクから穀物を積み出したとされる。
ロシア国営天然ガス独占企業ガスプロムの幹部は4日、ウクライナ侵攻を受けてロシアに制裁を科す「非友好国」向けの液化天然ガス(LNG)輸出に関し、ロシア通貨ルーブルでの支払いを求めることを提案した。下院での発言内容をタス通信が報じた。
●中東
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
4-6月期の出資先上場企業の株価騰落率を見ると、食事宅配の米ドアダッシュは45%安、米配車サービス大手のウーバー・テクノロジーズは43%安、韓国電子商取引のクーパンが28%安と軒並み下落。下落率は世界株式のベンチマークであるMSCIワールド指数の17%を上回った。
中でも中国の人工知能(AI)大手で、昨年12月に香港市場に上場した商湯集団(センスタイム)は6月30日の取引だけで47%安と急落。中国テクロノジー銘柄への売り圧力が根強い中、新規株式公開(IPO)後に大株主の市場での売却が可能にあるロックアップ期間の終了が影響した。ブルームバーグの試算では、ソフトバンクGの同社株の保有価値は4-6月期に約2500億円減少している。
中国南方航空、中国国際航空、中国東方航空は、欧州エアバスの小型旅客機「A320neo」を計292機調達する契約を結んだ。最大手の中国南方航空はこのうち、96機購入する。機体は2024年から順次納入されるという。中国国際航空は傘下を含め合計96機、中国東方航空も100機を購入する。3社合計の調達額は、20年1月時点でのカタログ価格を基にした単純計算で372億ドル(約5兆円)にのぼる。
今回の中国三大航空の動きは「既定路線で驚くべきものではない」(日系航空会社)との見方が大勢を占める。A320neoのライバル機種である米ボーイングの「737MAX」は18年、19年にそれぞれ墜落事故が起き、信頼を大きく損なった。米中関係悪化の影響を差し引いても、中国系航空が小型機をエアバス機で当面賄うことは自然な流れといえる。
ボーイングにとって気がかりなのは、中・大型機でのシェアだ。世界で実績のある「787」などを中国勢へ引き続き売り込みたい考えだが、エアバスの「A350」も安定性で評価を高めている。
●その他産業
大阪ガスは4日、米南部テキサス州の液化天然ガス(LNG)プラント「フリーポート」の火災について、代替調達などで330億円以上の費用が発生する可能性があると明らかにした。6月上旬から火災で停止しており、部分操業再開が10月上旬にずれ込む見通し。業績に与える影響については「算定中」としている。
財務省とウニパーはコメントを控えた。ドイツでロシア産ガスの大口購入企業の一社であるウニパーは先週、流動性確保に向け政府と協議中だと発表していた。4日の株式市場で同社株は28%安で取引を終えた。
ドイツ政府はまた、苦境にあるエネルギー企業への政府による資本注入や株式取得を可能にする法案を準備していると、関係者2人が語った。この法案はガス価格上昇によるコストをより多く顧客に転嫁することも認めている。同法案は今週、内閣が承認する見通しだという。
経済省もコメントを控えた。ショルツ首相は週末、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期にルフトハンザ航空の救済で策定した公的支援措置を今回の危機に活用できるかもしれないと示唆していた
●決算関連
●マクロ・その他
トルコ統計局は4日、6月の消費者物価指数(CPI)上昇率が前年同月比78.6%だったと発表した。前月の73.5%からさらに加速し、1998年9月以来、約24年ぶりの水準となった。民間団体はさらに高い数値を主張しており、公式統計への疑義も募っている。
発表によると、交通費が123.3%増、食料品(酒類を除く)価格が93.9%増などだった。卸売物価指数(PPI)は138.3%増だった。
世界的な資源・食料価格高騰に加え、トルコ特有の金融緩和路線が物価を押し上げた。エルドアン大統領は経済学の定石と逆に「金利が下がれば物価も下落する」という独自理論を掲げ、年14%の政策金利の引き上げを繰り返し否定している。インフレ率を考慮した実質金利はマイナス60%台に沈み、リラの対ドル価値は1年前の約半分になった。
実際のインフレは公式統計より深刻だとの指摘もある。イスタンブール商工会議所は6月CPIが94%増、学者らでつくるENAグループは175%増だったとの独自調査結果を公表した。現地報道によると統計局では幹部職員の辞職が相次いでおり、政府からの圧力に反発したものとの見方も出ている。
英ブルーベイ・アセット・マネジメントのティモシー・アッシュ氏はCPI発表後の顧客向けメールで「もはや誰もトルコのデータを信じていない」と述べた。
労働者が労使交渉で賃上げを求める姿勢を強めつつあることを示す材料は数多い。企業が賃金コストの上昇を価格に転嫁する状況になれば、インフレがさらに加速するおそれがある。
スペイン中央銀行の調査によると、インフレ率に応じて給与が自動的に変動する「物価連動条項」が団体交渉で労使合意に盛り込まれた割合は、23年に向けた交渉では約半数にのぼった。この割合は、コロナ前は20%程度にすぎなかった。
ドイツ最大の産業別労働組合、IGメタルは金属・電機業界で働く400万人近い労働者について7~8%の賃上げを要求した(最終的にはこの半分程度の賃上げで妥結する見込み)。英国では鉄道労組が7%の賃上げを求めてストに踏み切った。ただ、要求通りの成果を上げられるかは不透明だ。
こうした動きは賃金のさらなる押し上げ要因になる。G10の各国を対象とした米投資銀行ゴールドマン・サックスの賃金伸び率トラッカーはすでに垂直に近い勾配を示している。オルタナティブ・マクロ・シグナルズの価格上昇圧力指数も急上昇している。
最低賃金も上がっている。オランダ政府は最低賃金を引き上げる法案を議会に提出した。ドイツでは6月に最低賃金を約20%引き上げる法案が可決された。また、オーストラリアの労使裁定機関は22年7月からの1年間の最低賃金を5.2%引き上げることを発表した。これは昨年の倍以上の上げ幅だ。
インフレ緩和への大きな希望が持てるのはモノの値段だ。昨年初頭からのインフレ高進は、サプライチェーン(供給網)の混乱などを背景に自動車や冷蔵庫といった消費財が急速に値上がりしたことが発端だった。だが、ここへ来てそうした物品の価格が反落する兆しがみられる。
上海からロサンゼルスまでの貨物輸送コストは3月初旬に比べ25%ほど低下した。小売業者の間では過去数カ月は、店頭の在庫を確保するために仕入れに多額の資金を投じる動きが目立ったが、現在は多くの小売業者が在庫を減らすために値下げしている。米国の自動車生産がようやく回復し始めたことで、昨年来異例の高騰を記録した中古車価格が落ち着きを取り戻す可能性もある。
理論上は、消費財が値下がりすれば先進国のインフレが沈静化し、「生活費の危機」が緩和され、中銀には政策余地が生まれ、金融市場は活性化される可能性がある。だが、多くの指標は今後も物価上昇が続く可能性を示しており、インフレ終息のシナリオが実現する可能性は極めて低い。当面はインフレが猛威を振るっても驚くことではない。
同社チーフエコノミスト、ロブ・スバラマン氏らはリポートで、ユーロ圏と英国、日本、韓国、オーストラリア、カナダが米国とともにリセッション入りすると予想。インフレ抑制の信頼回復を目指す複数の中央銀行は引き締めし過ぎて失敗する公算が大きいとして、2023年には利下げに転じるとの見通しも示した。
また、同時不況を予想した背景には、「さまざまな国が輸出回復にもはや頼れなくなる」状況も挙げた。物価上昇圧力は商品からサービス、レンタル、賃金にも波及したとして、高インフレが続く可能性は大きいとみている。
米国とユーロ圏は23年に1%のマイナス成長になるとの見通しを示した。豪州とカナダ、韓国など中規模の経済国は金利上昇が住宅バブルの崩壊を引き起こせば予想以上に深刻なリセッションに陥るリスクはあると予想。中でも韓国は今年7-9月期に2.2%のマイナス成長に陥ると予測した。
日本は政策支援の継続と経済再開の遅れを背景に、他国と比べリセッションが最も軽微になるという。  
中国については緩和政策の下で経済が回復するとして、リセッション入りする対象国から外した。ただ、新型コロナウイルスを完全に封じ込める「ゼロコロナ」政策を続ける限り、ロックダウン(都市封鎖)が再導入されるリスクは残るという。
欧州中央銀行(ECB)は4日、社債の保有に際し「気候変動対応で優れた実績」を上げている企業へと「傾斜」させていく方針を明らかにした。環境への配慮を金融政策に盛り込む重大な転換となる。
発表文によれば、ECBは「今後数年に見込まれる大規模な償還の再投資を通じて」、債券保有における脱炭素化を図る計画だ。「気候変動対応は、温室効果ガスの排出削減やより積極的な二酸化炭素削減目標、気候関連情報の開示状況などによって判断される」と、ECBは説明した。
新たな方針は10月からまずは非金融企業に適用される予定で、それより前に詳細が発表される見通しだ。ECBが保有する社債の発行企業の気候変動関連情報は、2023年1-3月(第1四半期)から定期的に公表されるという。
南米チリの制憲議会は4日、取りまとめた憲法草案をボリッチ大統領に提出した。9月4日に国民投票を実施し、承認の是非を問う。
今回の新憲法案は388条から成り立つ。国民が教育や医療を受ける権利が明確に盛り込まれたのが特徴だ。第1条では国を「社会民主的な法治国家、多民族国家」として位置づけており、先住民重視の姿勢を示した。
制憲議会では当初、「すべての天然資源について国家が管理し、統制する」という文言を盛り込む可能性も浮上していた。ただ経済界を中心に反発が強く、最終的には条文に入らなかった。チリは銅の世界生産の約3割を占める重要な国で、国際社会で行方が注目されていた。
今後の焦点は9月の国民投票で過半数の賛成が得られるかに移る。調査会社CADEMが3日公表した調査では、反対が51%に達している。国民投票で承認が得られるかどうかは予断を許さない状況だ。
制憲議会のマリアエリサ・キンテロス議長は4日、「草案が完成し、満足している。完璧ではないのは分かっているが、より平等な社会に向けての基礎になることを望む」と国民に支持を呼びかけた。
制憲議会は左派が中心で、今年3月に就任したボリッチ大統領に近い議員が多い。ボリッチ氏も選挙で憲法改正を訴えており、承認を呼びかけていく方向とみられる。
台湾の調査会社トレンドフォースがまとめた、工場を持たない半導体設計に特化した世界上位10社の2022年第1四半期の関連事業の売上高は、前年同期比44%増の394億ドル(約5兆3000億円)となった。米クアルコムや米エヌビディアなどがスマートフォンやデータセンターなどの旺盛な需要を取り込んだ。
トレンドフォースは1~3月など各社の第1四半期のデータを米ドル換算で集計したという。売上高のトップはクアルコムで52%増の95億ドルだった。スマホや自動車など幅広い用途の半導体の出荷が増えた。
2位のエヌビディアは53%増の79億ドルで、データセンター向けのGPU(画像処理半導体)の収益がゲーム事業を上回った。3位の米ブロードコムを含めた上位3社は21年と変わらなかった。
米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)は同業の米ザイリンクスを買収しており、増収率は71%に達した。台湾企業でも、高速通信規格「5G」対応のスマホ向けの需要が増えた聯発科技(メディアテック)や聯詠科技(ノバテック)などが収益を伸ばした。
22年第2四半期はインフレやロシアによるウクライナ侵攻、中国のロックダウン(都市封鎖)によって消費者の購買意欲が低下し、家電関連の半導体の割合が大きい企業には逆風になると、トレンドフォースは予測する。このため、データセンターや車向けに事業領域を拡大する動きが広がっているという。
●市況
日経先物(大証)26420、ダウ先31167、債先148.81、米2.950、独1.3230、仏1.915、西2.690、伊3.379、波6.509、原油110.46、ドル円135.93、墨ペソ20.27、トルコリラ16.8022、墨CDS176
※7/5 9時40分頃

備忘録(7/1-3
●中国・ロシア・東欧
ロシア国防省は3日、ウクライナ東部ルガンスク州全域を制圧したと宣言した。ウクライナ側の最後の拠点になっていたリシチャンスクを「完全な支配下に置いた」と表明し、ショイグ国防相はプーチン大統領に「ルガンスク人民共和国を解放した」と報告した。目標とする東部2州の支配に向け、残るドネツク州で攻勢をかけるとみられる。
一方、ウクライナ国防省の報道官は3日、英BBCテレビとのインタビューで、ロシア軍がリシチャンスクを完全に制圧したとの情報を否定した。ただ現地ではロシア地上部隊の攻撃が続き、非常に厳しい状況にあるとの認識を示した。
ウクライナ政府はロシアとの戦争が泥沼化する中で、4、5両日にスイスのルガーノで開催される会議で国家再建計画を公表する計画だ。事情に詳しい複数の関係者によると、約2000ページから成る同計画は今週のウクライナ復興会議に提出される。
欧州連合(EU)当局者は先月ウクライナを加盟候補国としたEUが全体の金融支援の大部分を提供すると述べており、その規模は5000億ユーロ(約70兆4000億円)を上回る可能性がある。
同当局者が協議が非公開であることを理由に匿名を条件に語ったところによると、ウクライナ政府は計画についてEUなどと徹底的に議論しており、今後数カ月以内に計画への意見が提出される予定。
欧州委員会は贈与や融資を含む選択肢を検討しているが、当局者は戦争が激しさを増す中で評価を提出することをためらっているという。
選択肢の1つとしてはEUの新型コロナ復興基金と同様に市場で共同債を発行することが挙げられている。
新型コロナウイルスのまん延を受け、中国で大都市ほど雇用環境が悪化しやすくなっている。中小都市の失業率が高かった従来の構造は、2020年半ばに逆転した。大都市で比重が大きいサービス業が、感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で打撃を受けたためだ。しわ寄せは出稼ぎ労働者や若者に向かい、格差是正が進まない要因となっている。
今年5月の都市部失業率は5.9%と、過去2番目に高かった4月から0.2ポイント下がった。上海市のロックダウン(都市封鎖)などで急失速した景気も「最悪期は過ぎた」との見方が広がった。
ただ大都市に限ると、雇用環境の悪化はなお続いた。北京市や上海市の直轄市、省都、自治区の区都など主要31都市の失業率は6.9%と4月を0.2ポイント上回り、3カ月連続で最高を更新した。
中国の投資銀行、中金公司の彭文生チーフエコノミストは「感染拡大の影響が大きかった業種は接触型のサービス業」と語る。厳格な行動制限で外食や娯楽、宿泊などは需要が消えた。勤務先が突然、営業停止に追い込まれ、従業員が職を失う例も多い。
サービス業は大都市ほど存在感が大きい。域内総生産(GDP)に占める第3次産業の比率は、北京が8割、上海、広東省広州市、浙江省杭州市、四川省成都市が7割前後と、中国全体の比率(5割)より高い。
大都市で目立つ「ゼロコロナ失業」のあおりは、若者や「農民工」と呼ばれる農村からの出稼ぎ労働者が受けやすい。
16~24歳の失業率をみると、5月は18.4%で4月から0.2ポイント上昇した。主要31都市の失業率と同じように過去最悪の更新が続く。
人材会社の智聯招聘によると、22年6月卒業の学生の内定率は4月中旬時点で47%と、21年同時期より16ポイント低い。学生が内定を得ずに卒業して労働市場に参入すると、若年失業率は一段と高まる可能性もある。
希望の職につけなかった大卒の若者がネット通販の配達員などの仕事でなんとか生計を維持することも少なくない。出前アプリの美団の調査では、新型コロナの感染が広がる前の18年時点で出前配達員の約15%が大学卒業生だった。
21年時点で農民工の51%は第3次産業で働く。高齢化などで、この割合は13年の43%から8ポイント上がった。サービス業の経営悪化が農民工ら出稼ぎ労働者を直撃した。
都市部では家賃など生活コストが高い。「より良い待遇の仕事に就きやすい」という大都市の魅力が薄れ、相対的に給与が安い若年層や出稼ぎ労働者の雇用が一段と不安定になれば、所得格差という社会問題が大きくなりかねない。
●中東
●コロナ
●SBG、航空防衛宇宙、ヘルスケア、ESG
7月1日から10月29日までは成田発のホノルル便を金曜日と土曜日に週2往復運航させる。月曜~木曜と日曜に週5往復運航する羽田発と合わせ、東京圏から毎日ハワイと行き来ができる体制を整える。
●その他産業
米百貨店大手コールズは1日、自社売却に向けて米フランチャイズ・グループ(FG)と進めていた最終交渉を打ち切ると発表した。コールズは小売業界や資金調達を取り巻く環境悪化を理由に挙げ「完全に実行可能な合意に達するには大きな障害に直面した」との声明を出した。
●決算関連
●マクロ・その他
アルゼンチンのグスマン経済相は2日、辞任すると明らかにした。同氏は左派政権内では穏健派で知られ、強硬派の影響力が増している可能性がある。国際通貨基金(IMF)との債務再編を主導してまとめており、今後のアルゼンチン経済の不安材料になりそうだ。
グスマン氏は2019年12月に経済相に就任し、フェルナンデス大統領の右腕としてIMFや日米欧などで構成するパリクラブ(主要債権国会議)との交渉を担ってきた。与党内には大幅な債務削減や利率の引き下げを求める声があがる中で、国際機関との間に入って交渉を軟着陸させてきた。
メキシコ銀行(中央銀行)は1日、外国からメキシコへの5月の送金額が前年同月比14.3%増の約51億7200万ドル(約7000億円)になったと発表した。主な出稼ぎ先である米国で失業率が低水準で推移しており、母国であるメキシコに住む家族への送金が伸びている。前年同月を上回るのは25カ月連続だった。5月の送金回数は1万3615回と前年同月比で10%増えた。一方で1人当たりの送金額は平均380ドルと前年同月比で4%増えた。1~5月の送金額の合計は前年同期比17%増の224億1300万ドルだった。5月には母の日があるため、米国などに住む子供からメキシコに住む母親への送金が特に多い傾向がある。
米労働省が発表した5月の雇用統計によると、失業率は3.6%と前月から横ばいで推移した。非農業部門の就業者数は前月から39万人増えた。ただメキシコへの送金額はすでに高水準で推移しており、「今後の数四半期は伸びが緩和するだろう」(米ゴールドマン・サックスのアルベルト・ラモス氏)という見方もある。
トウモロコシの国際価格が急落している。6月30日の米シカゴ商品取引所で先物価格(12月物)が1ブッシェル6.19ドルで取引を終え、終値ベースで3月上旬以来およそ4カ月ぶりの安値となった。作付面積が市場予想を上回り、供給増加が意識された。在庫の増加も売り圧力となった。
熱延コイルやステンレス鋼板などの主要鋼材の国際価格が、アジアで軒並み下落した。熱延コイルは4月の直近高値に比べ2割ほど下がり、1年4カ月ぶりの安値をつけた。建築用のH形鋼は約2年ぶりに下落に転じた。中国では都市封鎖(ロックダウン)により経済活動が停滞した影響が残る。海外安が続けば国内の素材値上げが遅れる可能性もある。
欧州連合(EU)統計局が1日発表した6月の消費者物価指数(速報値)は前年同月比で8.6%上昇した。5月の8.1%から加速し、統計で遡れる1997年以降で過去最高を更新した。ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給不安からエネルギーや食品など幅広い品目の価格高騰がとまらない。
新型コロナウイルス禍をきっかけとした住宅市場の活況は急失速しつつある。住宅ローン金利が少なくとも50年ぶりの速いペースで上昇する中、住宅購入のハードルは一気に高くなり、多くの売り手が不意打ちを食らっている。わずか数カ月前までは、買い手は数日のうちに購入の意思表示を行い、住宅診断は放棄し、提示価格を大幅に上回る金額を申し出なくてはならないとの切迫感を持っていた。今では落ち着いて考えることができ、より好条件の物件を探すことも可能だ。
不動産市場が2008年のような崩壊に向かっているというわけではない。しかし、市場がこうした高みに達すると、正常に向かう低落ですら急激に感じられる。もちろん、リセッション(景気後退)が起きれば全ての状況がさらに深刻化する恐れがある。
不動産情報サイトのリアルター・ドット・コムのシニアエコノミスト、ジョージ・ラティウ氏は「住宅市場は間違いなくリセットを必要としている」と指摘。「市場の過熱は持続不可能だ。価格は調整する必要があり、既に減速している。問題は価格が下落するのか、あるいは横ばいで推移するのかだ」と述べた。
現在売りに出されている物件数は6月に前年同月比18.7%増加し、年間ベースでの伸びは2017年までさかのぼるデータで最大となった。リアルター・ドット・コムが今週公表したデータで明らかになった。ラスベガスやデンバー、カリフォルニア州のリバーサイドやサクラメントなど、コロナ禍で活況となった地域で特に価格の引き下げ傾向が顕著だったという。
ゴールドマンのストラテジスト、シーザー・マースリー、ジョリーン・ジョン両氏は1日付のリポートで、過去の下落局面を分析した結果、米国がリセッション入りすると、新興市場の株価はさらに8-15%下落する可能性があると指摘した。だが、MSCI中国指数には好機となり、マクロ経済指標の改善とともに上昇する可能性があるとの見方を示した。
両氏は「米国がリセッション入りする可能性を市場は懸念しているが、中国株は引き続き国内活動に左右され、少なくとも短期的には新興市場の他の地域とは相関関係がないとみている」と記述した。
高インフレとそれに対応する中央銀行の政策が懸念され、MSCI新興市場指数は年初来で約19%下落している。ただ、ゴールドマンによると、過去にS&P500種株価指数が少なくとも10%下げた時に新興市場指数は平均で26%下げてきたため、今回の下げはそれほどきつくはない。S&P500種は1月の高値から約20%下げ、弱気相場入りしている。
4-6月(第2四半期)の米自動車販売は、半導体不足で生産が困難な状況が続いたことや新車のメーカー希望小売価格の大幅な上昇が影を落とした。米ゼネラル・モーターズ(GM)などほぼ全てのメーカーが影響を受けたが、ホンダや日産自動車などアジア勢の落ち込みが目立った。   
ブルームバーグが集計した市場調査会社6社の予想平均によると、6月の米自動車販売台数は年率換算で1320万台となり、サプライチェーンの問題で生産は10年ぶりの低水準となっていることを示している。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前の2015-19年までは5年連続で米自動車販売は1700万台を超えていた。
GMは販売台数を減らしたものの、4-6月にトヨタ自動車から首位の座を奪った。GMの4-6月期の販売台数は前年同期比15.4%減の58万2401台。トヨタはサプライチェーン問題で生産に支障が生じ23%減の53万1105台だった。
日産は同39%減の17万2612台。セダン「アルティマ」の納車は増加したものの、他のほとんどの車種で半導体不足が生産に打撃となった。ホンダは第2四半期の厳しいサプライ問題を指摘し、51%減だったと発表した。
●市況
日経先物(大証)26313、ダウ先31061、債先149.23、米2.889、独1.2265、仏1.797、西2.280、伊3.199、波6.477、原油108.46、ドル円135.21、墨ペソ20.27、トルコリラ16.7499、墨CDS176
※7/1 NY引け値米コロナ感染、オミクロン派生型「BA.5」が5割に